衆議院

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第10号 平成13年4月6日(金曜日)

会議録本文へ
平成十三年四月六日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 赤松 正雄君

   理事 赤城 徳彦君 理事 大村 秀章君

   理事 実川 幸夫君 理事 橘 康太郎君

   理事 玉置 一弥君 理事 樽床 伸二君

   理事 河上 覃雄君 理事 山田 正彦君

      稲葉 大和君    今村 雅弘君

      木村 太郎君    木村 隆秀君

      倉田 雅年君    佐藤 静雄君

      坂本 剛二君    菅  義偉君

      田中 和徳君    高木  毅君

      中馬 弘毅君    中本 太衛君

      西野あきら君    林 省之介君

      平井 卓也君    福井  照君

      古屋 圭司君    松野 博一君

      松本 和那君    吉田 幸弘君

     吉田六左エ門君    阿久津幸彦君

      井上 和雄君    大谷 信盛君

      川内 博史君    今田 保典君

      手塚 仁雄君    永井 英慈君

      伴野  豊君    細川 律夫君

      前原 誠司君    牧野 聖修君

      吉田 公一君    井上 義久君

      山岡 賢次君    小沢 和秋君

      瀬古由起子君    吉井 英勝君

      原  陽子君    日森 文尋君

      保坂 展人君    井上 喜一君

      二階 俊博君    森田 健作君

    …………………………………

   国土交通大臣       扇  千景君

   国土交通副大臣      泉  信也君

   国土交通大臣政務官    今村 雅弘君

   国土交通大臣政務官   吉田六左エ門君

   政府参考人

   (総務省行政管理局長)  坂野 泰治君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長

   )            風岡 典之君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  三沢  真君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  安富 正文君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  深谷 憲一君

   政府参考人

   (国土交通省政策統括官) 洞   駿君

   国土交通委員会専門員   福田 秀文君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月六日

 辞任         補欠選任

  西野あきら君     林 省之介君

  林  幹雄君     稲葉 大和君

  古屋 圭司君     吉田 幸弘君

  堀内 光雄君     平井 卓也君

  川内 博史君     井上 和雄君

  佐藤 敬夫君     牧野 聖修君

  伴野  豊君     手塚 仁雄君

  大幡 基夫君     吉井 英勝君

  保坂 展人君     原  陽子君

  二階 俊博君     井上 喜一君

同日

 辞任         補欠選任

  稲葉 大和君     林  幹雄君

  林 省之介君     高木  毅君

  平井 卓也君     堀内 光雄君

  吉田 幸弘君     古屋 圭司君

  井上 和雄君     川内 博史君

  手塚 仁雄君     伴野  豊君

  牧野 聖修君     佐藤 敬夫君

  吉井 英勝君     小沢 和秋君

  原  陽子君     保坂 展人君

  井上 喜一君     二階 俊博君

同日

 辞任         補欠選任

  高木  毅君     西野あきら君

  小沢 和秋君     大幡 基夫君

    ―――――――――――――

四月四日

 倉庫業法の一部を改正する法律案(内閣提出第五五号)

同月五日

 不況打開、国民本位の公共事業と建設産業の民主的転換に関する請願(保坂展人君紹介)(第一〇六九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 倉庫業法の一部を改正する法律案(内閣提出第五五号)




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     ――――◇―――――

赤松委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、倉庫業法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。国土交通大臣扇千景さん。

    ―――――――――――――

 倉庫業法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

扇国務大臣 おはようございます。

 ただいま議題となりました倉庫業法の一部を改正する法律案の提案理由につきまして御説明申し上げます。

 倉庫業は、国民生活に欠くことのできない重要な物資を大量に扱い、その保管機能を通じて物資の需給調節、物価の安定等に資する事業であり、我が国における産業活動や国民生活を維持していく上で極めて重要な役割を果たしているところでございますが、一方において、経済構造の転換や国民生活の向上を背景とした保管ニーズの高度化、多様化に適切に対応していく必要性が高まってまいっているところでございます。

 このような状況を踏まえて、倉庫業に係る参入規制及び料金規制についての規制緩和を行うことにより、事業者間の競争を促進するとともに、事業者の創意工夫を生かした多様なサービスの提供や事業の効率化、活性化を図ることが求められているところでございます。

 また、その一方で、近年、一般消費者を対象に衣類、家財等の保管を行ういわゆるトランクルーム事業が急激に伸長しているところでございますが、この中には、物品の保管責任を負わないものもあるなどさまざまな営業形態があり、消費者が容易に選択し得る制度を創設するなど、消費者保護のための措置を講ずる必要があります。

 このような趣旨から、このたびこの法律案を提案することといたした次第でございます。

 次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。

 第一に、倉庫業に係る参入について、許可制を登録制とし、国土交通大臣は、登録の申請があった場合においては、倉庫の施設または設備が一定の基準に適合しない場合、倉庫管理主任者を確実に選任すると認められない場合等の登録拒否要件に該当する場合を除くほか、倉庫業者の登録をしなければならないことといたしております。

 第二に、料金の事前届け出制を廃止することとしております。

 第三に、倉庫業者は、管理すべき倉庫の規模その他の一定の基準に従って、倉庫の適切な管理に必要な知識及び能力を有する倉庫管理主任者を選任して、倉庫における火災の防止その他の倉庫の管理に関する業務を行わせなければならないこととしております。

 第四に、国土交通大臣は、倉庫業者の事業について倉庫の利用者の利便その他公共の利益を阻害している事実があると認めるときは、当該倉庫業者に対し、料金の変更その他の事業の運営を改善するために必要な措置をとるべきことを命ずることができることとしております。

 第五に、トランクルームをその営業に使用する倉庫業者は、トランクルームごとに国土交通大臣の認定を受けることができることとし、その認定基準を、トランクルームの施設及び設備が一定の基準に適合すること、消費者に有利な内容を有する約款を定めていること等とすることといたしております。

 第六に、倉庫業を営む者以外の者は、その行う営業が寄託を受けた物品の倉庫における保管を行うものであると人を誤認させるような行為をしてはならないことといたしております。

 以上が、この法律案を提案する理由でございます。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御賛同賜りますようお願い申し上げて、趣旨説明にさせていただきます。

赤松委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省総合政策局長風岡典之君、住宅局長三沢真君、鉄道局長安富正文君、航空局長深谷憲一君、政策統括官洞駿君及び総務省行政管理局長坂野泰治君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。阿久津幸彦君。

阿久津委員 民主党の阿久津幸彦でございます。

 本日は、倉庫業法の改正案について質問をさせていただきたいと思います。

 今、倉庫業は大きな変容の過程にあると言われております。大量生産、大量販売が中心であった時代の倉庫業は、平準化した荷物の保管が中心業務でした。しかし、今日のように多品種少量生産が中心になってくると、倉庫業務も出入庫の頻度が多くなったり、また在庫期間の短縮といったことへの対応を迫られるようになります。また、貨物管理の徹底や物流コスト削減のため、荷主が物流業務の合理化を図るようになってきています。

 こうした中で、倉庫業は、従来の在庫スペース中心の保管型倉庫から、一時的な仕分け、荷ぞろえスペースとしての、流通型倉庫としての性質を強めてきていると言われております。

 一方、倉庫業は、その九割以上が中小零細企業によって構成されており、特に冷蔵倉庫業などは九八%が中小零細企業です。一般に倉庫業者は荷主に対する立場が弱く、長引く不況とデフレ圧力の中で、そのしわ寄せがこれら中小零細企業の方々に集中するといった事態も生じてきています。近年、ユーザー企業の業績悪化から倉庫業に対する料金引き下げ要求が強まり、また倉庫業者間での顧客獲得競争も激化していることから、価格の下落が著しく、その結果、倉庫業の採算性は大きく低下しております。

 今回の倉庫業法改正案は、倉庫業への参入を許可制から登録制に変え、また料金の事前届け出制を廃止するなど、倉庫業に対する規制緩和に着手することをその目的としております。

 言うまでもなく、私は、中央官庁が経済や市民社会のあらゆることに関与してきたこれまでの日本社会を改め、規制緩和と地方分権を積極的に進めていかなければならないと考えております。その一方で、規制緩和ないし規制改革というものは、実体経済のあり方や業界の実態を十分に踏まえた上で、それとマッチするように行わなければなりません。

 以上の点を念頭に置きながら、ここでは、本改正案が倉庫業の現状を十分踏まえたものになっているか、そうした点に注目しながら質問を行っていきたいと思います。

 実は、きょうは政局の方も大分動いておりますので、扇大臣の方にはそちらの方の質問からとも思ったんですが、同僚の樽床議員の方がそちらの質問を中心にいくということでございますので、私の方は、いきなり本論の方から入らせていただきたいと思います。

 最初に、内外価格差について伺いたいと思うんですが、衆議院調査局国土交通調査室がつくっていただきました、今皆様のお手元にもございます倉庫業法の一部を改正する法律案についての資料、この資料を見ますと、「国際競争力強化のために内外価格差の是正が求められるが、この内外価格差を大きくしている要因の一つに、日本の物流コストの高さが指摘されている。」そのように書かれております。

 私も日本の物流コストの高さが指摘されているということをよく聞くんですが、実際に私なりの調査をしてみると、どこがどういうふうに、なぜ日本の物流コストが高いのか、統計上からはなかなか出てこないんですね。

 といいますのは、一つが、以前の経企庁が調査したものです。これによると、物流コスト、個別に運輸関係とかという形のくくりでいろいろな資料が出ているんですけれども、ほとんどが、日本の一に対してニューヨーク、パリ、ロンドンあたりはもうちょっと安い。せいぜい一、二割安い程度なんですね。これは、一、二割は大きな違いじゃないかと言うかもしれませんが、為替レートの問題がありますので、誤差に近い部分じゃないか。

 それから、先日、国土交通省の政府委員室でこの内外価格差の調査の資料をいただいたんですけれども、これを見ても、例えばトラックなどは、近距離は日本の方が安いんですね。長距離は日本の方が確かにアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスなどに比べて高くなっている。なかなか内外価格差を調べるのは難しいとは思うんですけれども。

 そこで、ちょっと扇大臣に伺いたいんですけれども、日本の物流コストの高さが指摘されておりますが、その理由はどこにあるというふうにお感じでしょうか。どこの部分がなぜ高いと言われるゆえんになっているのか。

 物流業種といえば、鉄道貨物運送業種、トラック運送業、海運業、航空貨物運送事業、利用運送事業、倉庫業、港湾運送業、トラックターミナル業、いろいろなものがあると思うんですが、その辺、なぜ日本の物流業、コストが外国に比べて高いと言われているようになっているのか、お答えいただければと思います。

扇国務大臣 今阿久津先生が、あらゆる面がすべてであると、余りたくさんおっしゃいました。私は、それらがすべて総合的に高いと言わざるを得ないと思います。

 まず、人件費もございます。それから、先生のお手元に行っていると思いますけれども、あらゆる面で、地価も高い、あるいは賃金が高い、燃料費等の水準も高い。あるいは輸送単位、輸送頻度などの輸送条件ですね。それから交通結節点などのインフラ整備の不足というのがございます。

 私は、これはいつも申し上げていることですけれども、外国に比べてどれほど高いというのは、各業種によって一つ一つ挙げていかなければいけないと思いますけれども、今阿久津先生が例を挙げられましたことのすべてであろうと思います。

 いつも私が女性の会合でもわかりやすく言いますことは、百キロのものを岩手から横浜に送れば千四百九十円かかる、その同じ百キロを横浜から北米に送れば千百円である、それ一つとってみても、いかに高いかということがわかるでしょうと。

 では、それがなぜそんなに高いんだろうかということは、例えば先生が今例を挙げられましたけれども、空港、港湾、道路の連結の強化が残念ながら今までできていなかった。それは、行政的にいえば、運輸省であり、建設省であり、今までの縦割り行政の中での連結ができていなかったと言えるかもしれません。

 けれども、例えばインターチェンジから十分以内に到着可能な国際空港あるいは国際港、空港も港も十分以内にインターチェンジに入れるような状況はどうなのか、しかも一時間以内に主要都市に荷物が運べるのはどうかといいますと、御存じのとおり、アメリカでは、空港では九八%、そして港湾では九三%。ヨーロッパでは、十分以内というのは空港では七二%、港湾では九三%。ところが、日本の現状は、空港までは大体四六%しか達成ができていない。しかも、港湾ではもっと悪くて、三三%である。

 それは、今私が申しました、空港と港、道路、都市、この連結がなかったということが二十世紀の大きな反省であろうと私は思いますので、そういうことは一つ一つ、国土交通省になったので、これからは立体的な図面が描けるために、私は物流コストをそれだけでも下げることができるのではないか、そういうふうに努力していく政策を国土交通省としてはやっていくということで、全部が一遍に国際的にはなりませんけれども、私は、目標は、倍増したい。九〇%まで行かなくても、今の四〇%台を、せめて八〇%を目標に頑張っていきたい。全部の政策ではありませんけれども、先生が今るるおっしゃった品目すべてにかかわりますけれども、例えば今私が申しましたようなことで物流コストを安くしていきたいというふうに努力していくつもりでございます。

阿久津委員 扇大臣は海外も随分行かれていると思いますので、特に日本の航空、飛行場がなかなか便がよくないということも含めて、その辺の距離の部分の指摘もされました。

 確かに、あらゆる分野が積み重なって物流コストが総体的に高くなってしまっているんだと私も思います。今回は倉庫業法ということですけれども、各分野、勇気を持ってそれぞれ規制緩和に向けて取り組んでいただきたいというふうに思っております。

 そこで、物流の問題に移りたいと思うんです。

 物流に求められる機能が高度化、多様化するなど、物流業を取り巻く環境は変化しております。日本の物流における倉庫業の役割、社会的使命についてどう考えるか、倉庫業を取り巻く現状についてどう認識しているか、お答えいただきたいと思います。扇大臣にお願いいたします。

扇国務大臣 冒頭に私が趣旨説明させていただきましたように、戦後、今日までのこの長い間、倉庫のイメージというものが本当に変わってまいりました。

 阿久津先生も御存じのように、私も主婦の一人ですけれども、季節外のものを預けようとか、子供が成長して幼児期に使ったものもうちに入り切らない、そうすると乳母車も次のときまでは不用だから、とにかく倉庫に預けよう、例えばお金持ちの皆さん方はこのごろは高級な毛皮も預けるというようなことも言われておりまして、今までの倉庫という概念が今日は大きく変わってきた。

 狭い、あるいはそこで子供が何人も生まれたら、要らないものは、季節外のものは倉庫に預けて、そして限られたスペースを広く使おうとか、本当に私は倉庫の概念が、一変したと言うのはオーバーかもしれませんけれども、本当に概念が変わってきたということだけは、今の現実を見ますときに、やはり時代だなとか、あるいは生活の合理性をみんなが考えてきたなというふうに、実感としては私感じております。それは先生も同等のお考えであろうと思います。

 では、果たして今までの倉庫業というイメージのままでいいのか。ただ安易に物を預けても、預けた物の保証はだれがどうするのかというところが、今までの倉庫業ではそこが守られていなかった。今の時代に合った倉庫業法というものに、広域的に、時代に合ったように変えていかなければならない。そういうふうに思って、今回、法案を提出させていただいたということでございます。

 少なくとも、保管機能だけではなくて、流通加工機能、例えば包装ですとか詰め合わせですとか組み立て、配送等、そういう意味での機能の拡大性。倉庫に置いたものを再活性する。今までは、預けたままで寝かせていたわけですね。そうではなくて、今は、先生が先ほどおっしゃいました、物流の中での倉庫の活用、一時期であってもすぐ荷物を出すとか、そういうことでの倉庫の利用範囲が拡大しているということで、私たちは、利用業者間の競争をもっと促進しよう、そしてよりよい業者間の創意工夫を生かした多様なサービスの提供が事業の効率化、活性化を図るようにということの保障のためにも本法案に盛り込んだつもりでございます。

阿久津委員 今、扇大臣が指摘されましたとおり、確かに日本の倉庫業は、本当に相当変わる時期に来ているんじゃないかと思うのです。

 これまでは、倉庫業といえば、会社対会社で、穀物などを主に集めるという機能が中心でした。後ほどまた御質問させていただきますけれども、例えばトランクルームなどは、まさに消費者に対して直結する形の倉庫業になってくる。その新しい分野を十分に発展させれば、私たちの生活はもっともっと豊かにすることができると私は思うのです。本当に狭い日本、そのスペースの中で、自分が借りているのは二DKだけれども、でも倉庫業をきちんと使えば、もっともっとスペースを広く使う、こういったことも可能だと思っております。

 一方、大切な部分が、規制緩和を進める。経済的な規制は緩和するけれども社会的な規制をどうしていくか、その問題も確かにあると思うのです。

 そこでまず、規制緩和の部分についてお話を伺いたいと思うのです。

 平成十年、行革推進本部規制緩和委員会が倉庫業について見解を発表されました。平成十一年には規制緩和推進三カ年計画が閣議決定され、平成十二年、同計画の改定により十二年度中に結論を得ることが決まりました。その規制緩和三カ年計画では、倉庫業の参入許可制について、政府の規制を最小限にする方向で検討するとしておりましたが、今回の倉庫業法改正の基本的な考え方について、泉副大臣にお伺いをしたいと思います。

泉副大臣 先ほど来先生御指摘のように、国民生活の変化あるいは物流の高度化、こうしたことから倉庫に期待される機能が変化をしてきておるわけでございます。そうした中で、政府の関与は最小限にという考え方で今回の法案の改正に取り組ませていただきました。

 若干、歴史的に見ますと、当初、倉庫業法ができましたときには、構造基準一つとりましても、あるいはまた物品の管理のあり方等につきましても、必ずしも十分ではなかった。そうしたことから、経営の健全化ということも視野に入れた規制が必要であるということで、これまでは許可制をとってきたわけでございます。

 先ほどの御指摘のように、単なる保管機能だけではなくて、流通加工機能や配送機能というような新しい機能が出てきたことを背景に、今日では、倉庫の構造設備の水準、そうしたものが相当程度向上してきております。また、経営基盤も相当足場をしっかりしてこられたのが今日の状況でございまして、そうした事柄から、個々の事業者について国が必要以上の関与をすべきではない、必要性も乏しくなってきておるというのが第一義でございます。

 むしろ、利用者の利便を増大する、そして新規事業者の参入を容易にし、市場原理に基づく競争原理の中で国民へのサービスに努めていただく、こういう考え方でございまして、一条の「目的」のところにもそうした利用者の利便ということを書き込ませていただいた背景があるわけでございます。

 倉庫業界の基盤がしっかりしてきたということと同時に、先ほど来申し上げました、流通のあり方が変わってきた、そして国民へよりよいサービスを提供するという、そうした考え方に基づきまして今回の法律案の改正をお願いした次第でございます。

阿久津委員 そうすると、今度の改正によって、行政の裁量というものは狭まるのですか、広まるのですか。泉副大臣、ちょっとそこだけ確認したいのですけれども。

泉副大臣 行政の関与という意味でよろしゅうございますか。

阿久津委員 関与というよりは、法律に基づいて行政がそれを運用していくわけですけれども、あいまいな法律であれば、それだけ運用するときの幅ができてしまいますね。それに対して、きちっとした法律であれば本来狭くなるはずだと思うのです。今回の法律によってそこのところがどうなるかということなんです。

泉副大臣 一言で申し上げれば、狭くなっております。

阿久津委員 私は、その行政裁量を狭めていく努力というのは、どの法律にあってもそうなんですけれども、極めて大切なことだと思っております。運用面で、質問しながら、確認しながら、そこの部分をはっきりして、あいまいなままじゃないような方向へ持っていきたいというふうに思っております。

 それで、今回の規制緩和の法律なんですけれども、では業界はどう考えているのか、あるいは労働組合の方はどう考えているのかというと、どうもすんなりとは賛成をされていないようなんですね。

 そこで、その関連の質問をちょっとさせていただきたいと思うのです。

 社団法人の日本倉庫協会は、運輸省記者発表内容に対する日倉協会長のコメント、こういうものを平成十二年十二月二十日に発表されました。その中で、倉庫業の規制緩和が提起された経緯について納得していない、物流業の中で倉庫業のみがなぜ突出して緩和の対象とされたのか、疑問を呈しています。また、倉庫労働者で組織する全日本倉庫運輸労働組合同盟からも、本年四月二日付で、中央執行委員長名によって、倉庫業法の現行程度の規制は国民経済にとって必要不可欠な社会的規制であるとの観点から、慎重審議を求める要請が届いております。

 これらの意見を踏まえ、また物流のボーダーレス化、中小零細企業が大多数を占める倉庫業の諸事情並びにほかの物流規制との整合性等について、国土交通省としてどのような配慮をすべきと考えるか、泉副大臣の方からお答えいただければと思います。

泉副大臣 旧運輸省時代から、いわゆる運輸業におきます規制の見直しということを各分野にわたって行ってまいりました。そのことは先生も御承知のとおりだと思います。その最大の眼目は需給調整規定の廃止というところにございまして、その前提に立って各事業者が市場原理の中で競争をする、しかし一方で、国民生活に重大な影響を与えないように配慮していく、そうした基本的な考え方に基づいて今日まで規制の見直しを行ってまいりました。

 今回、倉庫業のあり方についても、先ほど例に出されました日本倉庫協会あるいは労働組合等からいろいろな御意見があることは私どもも承知をしております。そうした方々の御意見も踏まえる、あるいは御意見をちょうだいするという考え方で、昨年十月以降、倉庫業の規制のあり方に関する懇談会を国土交通省に、旧運輸省に設けさせていただきまして、活発な御議論を展開いただいたわけでございます。

 そうした御議論の上で今回の法律案の原案をつくらせていただいたところでございまして、先ほど少し申し上げましたように、倉庫業法制定当時と比較しまして構造設備の水準及びその経営基盤も向上してきている、倉庫業についても国の事前関与を必要最小限とするなど、参入規制及び料金規制の緩和が望ましいという結論をいただき、そうしたことに基づいて今回の法案を提出させていただいているところでございます。

 倉庫業の登録制への移行、他の物流の分野と少し違うのではないかという御意見を先生述べられました。確かに、違うところがございます。

 しかし、例えばトラック事業であれば安全の管理というようなことを特に重視しなければなりませんし、またタクシー業界にもやはりそれなりの状況がございます。それぞれの業界のあり方を念頭に置きながら、国民生活をどうやって豊かにしていくかという観点から、今回はこのような法律案を提出させていただいた次第でございます。

阿久津委員 それぞれの業界の性格というか違いは私もよくわかっているつもりなんですけれども、倉庫業界も中小零細企業が非常に多いんですね。過当競争に陥りやすい性格を持っておりますし、また、そこで働く人々も、かなりの重労働、いろいろな厳しい条件の中でやっている。大体、経営が困難になると労働条件の切り下げが行われてしまうので、そこの点に十分留意して運用していただきたい、そのように思っております。

 次に、政府参考人の洞駿政策統括官の方にお伺いをしたいと思うんですけれども、今回の登録制への改正によって、経営が不安定であったりサービスが劣悪であるなど、不適切な業者が参入し、これにより我が国の物流に支障を生じるようなことはないか、お答えいただきたいと思います。

洞政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正によりまして物流に支障が生じるようなことはないかという御質問でございます。

 今回、事業の参入について許可制から登録制へ移行するわけでございますけれども、その要件といたしましては、不特定多数の者から物品の寄託を受けてその保管を行うという倉庫の性格から見まして、保管物品を良好な状態で保管するための必要最低限の規制として、それぞれ保管する物品に応じました構造施設基準を維持するということとしております。

 また、倉庫の管理体制につきましては、現在の許可制のもとでは何ら明示的な基準というのはないわけでございますけれども、今回、保管物品の適切な保管を確保するというソフト面から、こういう安全面でありますとか保管の管理に関しまして責任を有する倉庫管理主任者の選任というものを登録制の基準に加えることとしております。

 このように、倉庫の基本でございます保管管理体制をきちっと見る、押さえていくということを行った上で、今回の改正は、さらに、事業者間の競争を促進して、事業者の創意工夫を生かした多様なサービスの提供や事業の効率化が可能となるような環境整備を図るというものでございます。

 また、万一の不測の事態に備えて、事業改善命令というようなセーフティーネットの措置もきちっと備えておりまして、そういう意味におきまして、御懸念の、今回の改正によって非常に不適切な業者がどんどん参入していって、その結果として物流に非常に問題が生じる可能性というのは少ないのではないかというふうに考えている次第でございます。

阿久津委員 今の審議官の御説明で、規制緩和を進めるところは進めるけれども、厳しくするところは厳しくするんだよという趣旨はよくわかりました。

 規制改革の考え方としては、事前規制から事後チェックへというのは一つの大きな流れではあるというふうに考えておりますが、今回の改正において、料金の事前届け出制の廃止や事業改善命令制度の創設など、こうした考え方を取り入れた理由について、ちょっと先ほどとダブってしまう部分があるんですが、お答えいただきたいと思います。

洞政府参考人 お答え申し上げます。

 料金の設定というものは、先生も十分御承知のとおり、倉庫業者が創意工夫を生かした事業運営を行うという上で最も重要な手段の一つでございます。そういうものに対して事前抑制的な効果をもたらすような規制を設けるというのは、倉庫業の今後の活性化というものを妨げる懸念というものもございます。

 また、先ほど御指摘ございましたように、現在、倉庫業を含みます流通業界といいますか物流業界というのは非常に目まぐるしい変化の中にあるわけでございまして、そういうダイナミックな動きの中で利用者のニーズに対応していくというためにも、倉庫業者は、物品ごとあるいは荷主ごとに多様な料金を設定せざるを得ない場面といいますか、そういった状況というのがだんだんふえてきておりますし、また、そういったことに対しまして、料金の事前届け出制が新たな取引契約を機動的に行う場合の障害になる場合というのも考えられるところでございます。

 そういう意味におきまして、事前規制は極力縮減していくという政府全体の方針もあるわけでございますけれども、倉庫業界と荷主の間の交渉によって適宜適切な料金設定が行えるよう、料金の事前届け出制というものを今回廃止することとしたわけでございます。

 しかしながら、倉庫業界は中小企業者も多く、また倉庫業の公益性というものを十分考えますれば、ダンピング料金の設定など、万が一不適切な料金が定められまして、これによって利用者の利便とか公共の利益が害されているような場合には、これを早急に行政としてチェックするあるいは是正する必要があるということから、今回、事業改善命令というものを新たにつくりまして、不測の事態に備えて国土交通大臣が料金の変更等の命令をすることができることとした次第でございます。

阿久津委員 著しく高い料金とか異常と感じるようなダンピングについてはきちんとチェックできるんだというお話だと思います。

 それで、今回の法律の改正の中では、改正される部分と維持されている部分があると思うんです。そういった大きな流れの中で規制緩和が行われていくわけですが、一方で税制特例措置が継続されているんですけれども、この税制特例措置継続の理由について、政策統括官の方からお答えいただきたいと思います。

洞政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正によって倉庫業についての税制特例措置を継続する理由についてお尋ねがございました。

 倉庫業につきましては、現在、法人税とか固定資産税あるいは都市計画税などにつきまして各種の税制の特例措置が講じられております。今回の法改正に当たりましても、関係の税務担当部局とも協議を行ったところでございますけれども、許可制を登録制に移行するわけでございますが、倉庫の公益性といいますか重要性というものはいささかもその性格に変更があるものではございませんから、今回の改正においてもこれらの税制の特例措置は引き続き維持されているところでございます。

 そもそも、倉庫業にこういうふうな税制の特例措置が設けられております趣旨は、倉庫業というのは、設備産業、一種の装置産業でございまして、そういう意味で多額の投資を必要とするという一方で、その回収には、何十年と非常に長い時間をかけて少しずつ回収していくという、言ってみれば収益性の余り高くない事業でございまして、特別償却でありますとか割り増し償却でありますとか課税標準の特例でありますとか、そういった税制の特例措置というのは、そういった倉庫業の経営に必要不可欠な要素、措置でございます。

 そういう意味におきまして、今後ともこれらの措置が維持、継続されるよう私どもとしては努めてまいりたいと考えております。

阿久津委員 それでは、ちょっとトランクルームの方の質問に移りたいというふうに思うんです。本改正案のもう一つの大きな柱であるトランクルームの問題でございます。

 近年、倉庫業における新しい業態として、企業だけでなく個人消費者を主要な対象として家財や書類などを保管するトランクルーム事業が浸透してきております。

 トランクルームのそもそもの起源は、昭和六年に江戸橋で三菱倉庫が始めたものであり、これ以降同様の業態が広まり、現在、一般消費者に対するトランクルームの認知度もかなり高まりました。しかし、それと同時に、倉庫業の認可を受けていない業者がトランクルーム事業に参入するようになり、問題のある業者の増加や顧客とのトラブルもふえてきていると聞いております。非倉庫業者はトランクルームを不動産賃貸契約の形で行っているため、荷物の劣化や紛失に対する管理責任があいまいであるということがトラブル発生の大きな原因の一つです。

 また、倉庫業としてのきちんとした体制をとり、消費者にしっかりとしたサービスを提供しているトランクルーム業者は、サービスの水準の低い業者も消費者からは同様のトランクルームだと認識されてしまう、要するに、きちんとした倉庫業の体系の中での業者もサービスの水準の低い業者も消費者からはなかなか区別がつけにくいということで、大きな不満も抱かれております。

 消費者保護という観点から、トランクルーム認定制度は今後どうあるべきなのか、この点を明らかにするため、幾つかの質問を行わせていただきたいと思います。

 先ほど、私、冒頭でも申し上げたとおり、倉庫業は基本的には企業対企業の分野でありますが、トランクルームは一般消費者が相手であり、異質であります。消費者対策としてトランクルームの優良認定制度で対応するという考え方でありますが、その有効性確保においては、消費者の賢明な選択が前提となるということでございます。

 今回のような認定制度の創設で、消費者保護や倉庫業者の行うトランクルームサービスにどのような効果が期待し得るのか、お答えいただきたいと思います。

洞政府参考人 お答えを申し上げます。

 トランクルームの認定制度の創設で期待できる効果についてお尋ねがございました。

 先生御指摘のとおり、近年、トランクルームに対する利用者ニーズというのは非常に増大しておりまして、トランクルーム事業者というのが非常にふえてきております。

 この中には、二つのタイプがあるわけでございます。先生御指摘ございましたように、いわゆる不動産賃貸業という形をとってのトランクルーム事業者、それから倉庫業の許可をとって保管責任を負うという形の契約形態で行っているトランクルーム事業者、二つあるわけでございますけれども、倉庫業者以外のところは私ども統計がないのではっきり言えないのですけれども、トランクルーム業者と多分同じぐらいの数があって、それがどんどんふえてきているというような状況がございます。

 そういう中で、倉庫業の許可を受けていない者が物品の保管責任を伴わない倉庫業類似の営業形態を行うケースというのがあらわれておりまして、そういうところで、利用者との間でいろいろな損害とかトラブルが出てきたときに非常にもめごとになって、苦情がどんどんふえてきている、こういう状況です。

 また、倉庫業者であるトランクルーム事業者についても、倉庫業法は最低基準しか定めておりませんので、そのトランクルームのレベルというのも、だんだん高度化が、いろいろな性能を要求されるようになってきておりまして、倉庫業者が持っておりますトランクルームについてもいろいろなサービスレベルといいますか、そういったものがございます。

 そういうものに対して我々一般消費者は、専門的な知識あるいはそういった事業者といろいろ交渉するテクニックとか、そういったものについてはすべて不利な状況にあるわけでございまして、そういう意味では、安心して利用できるようなトランクルームサービスというものの仕組みというのが求められているわけでございます。

 今回、トランクルームの性能といいますか、一定のレベル、扱う物品等において一つ上乗せした基準に合致するようなトランクルームを事業者が申請すれば国がそれを見て認定をするという制度でございますけれども、こういった優良トランクルーム制度の創設によりまして、安心して利用できるよう消費者の選択を手助けするということになりまして、消費者保護の効果がまず上がるということが考えられます。

 また、認定をもらう、もらわないというのはあくまで事業者の任意でございますけれども、認定されたトランクルームについては、優良トランクルームというふうに名乗って広告宣伝を行うことが可能となりますので、倉庫業者にとっても、認定が受けられるようにハードあるいはソフトの両面からそういう消費者保護に資するようなトランクルームを整備しようとするインセンティブが逆に働いてきて、全体としてレベルアップが図られていくんじゃないか、こういうことを考えている、あるいは期待している次第でございます。

阿久津委員 どうも今の説明だとちょっと納得がいかない部分があるのです。果たしてトランクルームを、ちゃんと規制緩和をしているならしているでその方向で行けばいいのですけれども、一方で認定制度という形を残している。本当にそれできちんと消費者の方から区別がつくのかなという感じもするのです。

 今度は泉副大臣の方に伺わせていただきたいと思うのですけれども、倉庫業者以外の者による人を誤認させる行為の禁止規定により具体的にどのような行為が禁止されるのか。そもそも消費者保護の観点から、保管責任を負わないような営業行為を禁止すべきではないのか、そういうふうに考えております。もっと言えば、トランクルームという名称そのものを倉庫業に限定して使用させる考えはないのか、泉副大臣にお伺いしたいと思います。

泉副大臣 今回の法改正の一つの大きな柱が、今御指摘のトランクルームの課題でございます。国民生活の中に大変なじんできた言葉であり、また実態であるために、従来のような関係の業者の商行為がそのままでいいのかどうかという検討をした結果が今回の法改正でございますが、御指摘のように、確かに二十五条の十でそのような無責任な行為が起こらないようにということを規定しておるわけです。具体的には、確実に保管をいたしますとか責任を持ってお預かりしますというような広告を出して、だれもが品物をお預かりすることは問題があるという認識でございます。

 それは、いわゆる倉庫業法に基づく寄託契約によって物をお預かりする場合と、不動産賃貸業者みたいな方々が保管場所を提供する、野積みの状態のところもありましょうし、簡単なプレハブみたいなものでそうした機能を提供するような場合もあると思います。しかし、どちらを選ぶかというのは、あくまで消費者の選択にゆだねられておるということは、これはいたし方ない点がございます。

 しかし、少なくとも、除湿でありますとかあるいは防じんでありますとか、そういう必要な機能をきちんと備えたものを倉庫業法に基づいて優良なトランクルームと認定することによって、利用者の方々に安心して預けていただくということが最も重要だ。

 ですから、今先生がおっしゃいましたように、倉庫業に限定してということが一つの考え方ではありますけれども、不動産賃貸業者の皆さんがそうした類似のサービスをすることを利用者が求められる場合を阻止するということは、本来の趣旨ではないというふうに思うわけであります。

 これは一つの例ですけれども、横浜市内の電話帳で調べますと、トランクルームという看板を掲げておる二十六事業者のうち、いわゆる倉庫業の資格を持っておられる方は十三業種というふうに、非常に幅広いところでこの言葉が使われておりますので、私どもとしましては、繰り返しになりますが、認定制度をとって優良なトランクルームを明確にして、利用者の方々に御迷惑、御不便をかけないようにしたいという趣旨でこの法案をつくらせていただいたわけでございます。

阿久津委員 三菱倉庫の百年史というのを読むと、トランクルームをつくるに当たって、昭和六年の当初のころから、いかに苦労しているのかが出ているんですね。これほど苦労して開発したトランクルームという新しい分野、これはアメリカにもこのままの形ではないそうなんですけれども、本当だったら商標登録をしておいていただければこんなことにはならなかったと思うんですけれども、なかなかこのトランクルームについては、やはり消費者からすると見えにくいんじゃないかと思うんです。

 それからもう一つ。倉庫業者にとっても、優良認定を受けるについて、倉庫業法の一部を改正する法律案を見ても、大体六ページぐらいですか、トランクルームの認定に当たって細かい条件が書いてあるんですね。これを全部クリアしないと認定が受けられない。それで、約款をつけて、細かい作業、事務手続をやって、もらえるのは何かというと、この認定証なんですね。これを張るだけなんですよ。このトランクルーム認定というのがあるんですけれども、今、実情では、ほとんどこれに似たマークを勝手につくって張っている、いかにも優良認定みたいな業者もいるみたいなんですね。

 倉庫業のボーダーレス化が進んでいく中で、仕分けがなかなか難しくなっているのは事実だと思います。特に、何々倉庫株式会社というふうに書いてあっても、必ずしも倉庫業者でなくて、トラック業者に分類されているというような例もあると聞いています。一時保管の場合は倉庫業者に入らない、そんなこともあると思います。そんなこんなで、いろいろと新規参入分野、倉庫業のボーダーレス化で厳しいことになっているんですけれども、倉庫業でまじめに運営しようとする人たちが不利にならないように、ぜひ心がけていただきたいのです。

 もう時間がなくなりましたので、一つだけ例を申し上げると、トランクルームは倉庫業の許可を受けたということですから、その場合は、都市計画法による立地規制が適用されるために住宅地に施設を建設することができないそうなんですね。だけれども、顧客の多くが一般消費者でありますから、トランクルームは住宅地での潜在需要が大きい。その中にあって、建造物ではない海上コンテナを用いたレンタルスペースサービス、つまり倉庫業ではないものはどんどん自由にできちゃうんですね。こんなこともあって、私は、このトランクルームに関する部分においては、ちょっとまだ法の整備が甘いんではないかというふうに思っています。

 それから、ちょっともう時間がなくなってしまったんですが、行政コストの削減効果が果たしてこれらの改正によってどれだけ上がるのかということも本当は聞きたかったところなんですけれども、最後に、業者及びそこで働く人々そして消費者がこの法律改正によってきちんとメリットを得られるような運用をお願いいたしまして、質問を終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございます。

赤松委員長 樽床伸二君。

樽床委員 阿久津委員に引き続きまして、質問をさせていただきます。

 まず、今回の倉庫業法の一部を改正する法律案でありますが、これは、昨年の三月三十一日に閣議決定をされました規制緩和推進三カ年計画を受けてこのような法改正をする、こうお聞きいたしているわけであります。

 まず、個別の問題を考えるに当たって、国土交通省として、規制緩和ということについて、総論としてどのようにお考えになっているのかということは、私は大変重要なことであろうというふうに思っております。

 特に、扇大臣が盛んにおっしゃっておられますように、建設省、運輸省、国土庁一緒になって、ほかにもありましたら申しわけございませんが、要は、大きな省庁になって、国土交通省になって、二十一世紀の国土交通行政をやるんだ、こういう大きな議論が私はまず前提になければならぬだろうというふうに思っております。

 特に、昨今の社会情勢は非常に複雑多岐にわたっております。変化も速い。こういうことでありますから、個別のことに一つ一つ対応していくと方向が見えなくなる、こういうことが必ず起きるだろうというふうに思います。

 ちょっと言い方が不適切かもわかりませんけれども、歩くときに、一メートル前だけを見て歩くと何が障害物があるのかわからないということで、何かにぶつかって歩けなくなる場合もあります。また、一メートル前ばかりを見て歩いて、真っすぐ歩いているつもりでいても、百メートル歩いて振り返ると、初めは真っすぐだったのが全然違う方向に来てしまったということも当然あるだろうと思います。

 ですから、先をしっかり見据えて歩くべきであろうというふうに思いますし、そういう大きな方針をきちっと立てて、その上に一つ一つの施策を、その方針にのっとっていいのか悪いのかということを考えていかなければ、特に今のような時代はだめだというふうに思っているわけであります。

 そういう観点から、今回の改正案は規制緩和の閣議決定に基づいてやります、それだけじゃなくて、国土交通省として、この規制緩和ということについてどう考えてきたのか、それから、これからどうこの規制緩和という問題について、基本をどのように対処していかれようとしているのか、お聞きしたいと思います。

洞政府参考人 お答え申し上げます。

 運輸省として、そもそも規制緩和というものをどういうふうに……(樽床委員「国土交通省でしょう」と呼ぶ)済みません。国土交通省として、どういうふうにこれまで考えて対処してきたのかという御指摘でございます。

 私の場合、倉庫業法を所管しているという立場で、全体を必ずしも全部見ているというわけではございませんけれども、総論としまして、国土交通省といたしまして、特に運輸事業に関連いたしましては、そもそも運輸事業に係る参入規制とか運賃料金規制を緩和することによって、競争を促進して、事業活動の活性化、効率化を図る、と同時に、サービスの多様化や高度化、運賃の多様化や低廉化等による利用者利便の増進を図るということを目的として、これまで各事業法全般について規制緩和に取り組んできたところでございます。

 今回の倉庫業法の規制緩和の問題も、規制緩和三カ年計画で指摘されたものではございますけれども、そういった基本的な考え方、方針にのっとって、この倉庫業法についても、規制緩和三カ年計画の決定が直接のきっかけにはなりましたけれども、見直しを行った、こういうことでございます。

 やはり、原則として、その場合の基本的な考え方というのは、経済的な規制は事前のチェックから事後チェックへ、そして安全とか社会的な規制というのは、そのときの状況で守るべきものはきちっと押さえていくというのが基本であろう。こういう基本的な方針にのっとって、これまでの運輸関連の各事業法の規制緩和というものについては見直しを行ってきた、こういうことでございます。

樽床委員 旧運輸省はそれはいいんですが、国土交通省というのは旧運輸省だけじゃないわけであります。それは昔の縄張りがありますから、運輸行政はそれはそれでよろしいだろう。結局、今のお話は、市場メカニズムを重視しましょうよ、こういうことであるのかなというふうに若干聞こえたわけでありますけれども、こういう点でいくと、例えば旧の建設関係でいくと、果たしてそこら辺をどう考えるのかということがちょっと今よくわかりません。

 旧運輸省はいいんですが、旧建設省も含めて、新国土交通省としてはどのようにお考えでございましょうか。

扇国務大臣 今樽床先生のお話でございますけれども、国土交通省としては今までとどこがどう違うのか、また今までの縦割り、四省庁統合したメリット、デメリットは何か、そういうことが私は基本だろうと思います。

 一月の六日から国土交通省に、北海道開発庁と国土庁、運輸省、建設省、四省庁が統合いたしました。今私も全国を歩いておりますけれども、なぜ全国を歩いているか。二月から四月の二十一日までかけて私が全国を歩いている理由は、今樽床先生がおっしゃいましたが、旧建設省、旧運輸省等々、縦割りがなくならないよと言われておりますし、また国土交通省になったら総合政策というものはどうあるべきか、その縄張りを、縦割りを取ったときにはどんな案ができるのか、そのことの徹底のために私は全国を歩いております。あすも北海道に参ります。北海道はちょっと別途ですけれども、北海道開発庁がなくなりまして北海道局になりましたので、北海道は単独であす伺おうと思っております。

 それは、今樽床先生がおっしゃいました、さっきも私は阿久津先生にちょっとお答えしたんですけれども、今までは、道路、港、空港、鉄道、全部縦割りでつくってまいりました。これは万やむを得なかっただろうと思うんですけれども、二十一世紀に入ったら、今までのような縦割りでは、さっきの阿久津先生がおっしゃった、今の日本の物流コストの高さというもので、今後二十一世紀の国際社会で果たして生きていけるんだろうか、日本に物が来るんだろうか、日本の物を外へ出すときはどうなるんだろうか。この物流コスト一つとってみても、今までの縦割りを全部やめて四省庁統合した立体的な政策をつくるべきである。

 さっきも私は阿久津先生に例を挙げました。国際空港から、国際港湾から、道路から、鉄道から、少なくとも欧米先進国のように十分以内に高速道路に、フリーウエーにアクセスできるとか、あるいは主要都市には一時間以内に物が運べる、そういう立体的なものができないで、今私全国を回っておりましたら、いつもむだ遣いだ、ばらまきだと言われますけれども、地図の上に今全部それを合わせております。国土交通省としての、旧運輸省、旧建設省の公共工事はどんな工事があるのか、ブロックごとに全部地図をつくっております。そして何年に完成か、そして十年後はどうかというので、上に一枚重ねると十年後の道路が見えるようなものを全国に今つくっております。

 ですから、そういうことで、今まではそのアクセスが十分以内にできなかったけれども、国土交通省になれば、港と道路と鉄道と空港とが国際レベルに、少なくとも今の四〇%を八〇%まで上げることができるのではないか。欧米ではもう九〇%台です。

 そのような総合的な政策をつくるというのが、先日も私が申し上げましたグランドデザインということになるんですけれども、この一つ一つは、きょうのような法案で細かく、今の現状に合わせた二十一世紀型にしていかなければいけない法改正はそれぞれお願いいたしますけれども、総合的な面では、二十一世紀の国際社会に日本があらゆる面でどう生きていけるか、また、どうしなければならないかという基礎を今つくらせていただきたいと思っているのが基本でございます。

樽床委員 縦割りを廃して総合的な施策をやっていく、こういう大臣の御決意は、まことに私は称賛を送らせていただきまして、ぜひ頑張っていただきたいと思うわけであります。

 そういう中で、規制緩和という問題は、今大臣がおっしゃった、総合的な中で規制緩和というものを国土交通省としてどう位置づけていくのかということについて、副大臣、もうちょっとお話しを。

泉副大臣 私ども国土交通省としては、あくまでも国民生活の安寧、もう少し細かく言いますならば、安全であり快適な環境を目指す、あるいは日々の生活が安心して送れるというような、そういう社会を目指すために、基本的には自己責任、そして市場原理に立ってこのことを進めていく、その過程にあっては、民に任せられるものは民にお願いをする、地方にお任せすることは地方にお願いする、そういう考え方に立っての規制緩和、規制の見直し、そうした行政に取り組んでまいりたいと考えております。

樽床委員 そういうお考えの中で、規制緩和ということについては、いろいろ意見がありますけれども、昨今の、日本が構造改革をしていかなければならぬ、その構造改革をしていくに当たっては、実は規制緩和というのが大変重要なんだ、こういう論調は、規制緩和という話が出てきた十年ぐらい前はまだそういうことは余り言われなかった。要するに、お上がいろいろなことにうるさいというところから話が入っていったんですけれども、私は当初から、規制緩和というのは、それだけじゃなくて、構造改革を進めていく大変重要な手段といいますか、一つの方策であるという考えを持っておりました。

 ちょっとかた苦しい言葉で言うと、経済政策としての規制緩和という観点が実はあるわけですよね。この経済対策としての規制緩和ということを、これは旧の通産省、今の新しい省庁、経済産業省ですか、そこでは経済政策としての規制緩和ということをかなり中心に考えていかれるだろうというふうに思いますけれども、国土交通省として、経済政策という観点から規制緩和というのはどのようにお考えでございましょうか。

扇国務大臣 今おっしゃいましたことで例を挙げますと、私ども一番困っておりますことは、規制緩和、規制緩和と世に言葉で言われますけれども、例えば国土交通省の運輸部門一つとってみても、タクシーの営業面で規制緩和をしよう、営業したい人はどうぞ自由に台数をふやしてください、これ一つとってみても、ある面からいえば、業者からとったら、それでなくとも今過当競争で、これを緩和されたらやたらタクシーがふえて、不良不適格業者とは私は言いませんけれども、それこそそれに近い競争が起きて、労働者からとってみれば、過当競争でいじめられて客が少なくなる、不景気になったにもかかわらず、客が少なくなったのに、車の台数が、タクシー業者がふえるではないか、そういう現実と、規制緩和をするという言葉との裏腹、二面性というものが現実に出てくるわけですね。

 ですから、今先生がおっしゃった、経済的な規制緩和は必要ではないかと。私どもは経済的な規制緩和であると思って実行しても、それが産業的な規制緩和になって、ある面では苦しむ方もあるということも現実にはあるわけでございます。

 たくさん例を挙げると時間がありませんから失礼しますけれども、少なくとも、そういう面で、経済的な規制緩和は大いにするべきである、もう自由競争時代、二十一世紀だ、世界に伍していくためには経済の規制緩和はどんどんしようと言われる中でも、実際の日本の産業界を考えれば、すべて、今全部、一〇〇%緩和してしまったらいいかというと、そうではない。やはり、今の日本の実情に合った、徐々に皆さん方の理解を得ながらやっていかなければいけないという中で、国土交通省としては、ぎりぎりのところで、規制緩和はなるべくしていくという努力をしているところでございます。

樽床委員 ぎりぎりのところで、現実との兼ね合いを見ながら、極力ソフトランディングをしながら規制緩和をしていきたいというふうに聞こえたわけでありますけれども、それはそれで結構だろうというふうに思います。

 ただ、運輸、建設、こういった分野においても民間企業というのがちゃんとありまして、当然のことでありますが、要するに社会的規制と経済的規制、特に国土交通行政でいくと、国民の生命と財産、安心、こういうことと規制緩和とのトレードオフの部分もある部分においては生じるであろう。こういうことをいろいろ見ながら、これは上手な、かなり微妙なハンドルさばきが要るんであろうとは思います。

 しかし、主体はやはり民間の企業がやっているわけであります。だから、ベースとして規制緩和というものは、例えば建設業、これは余りぐちゃぐちゃ言うとさらにちょっと問題がほかの方向へ行きますからやめますけれども、建設業自身も、より時代に合った新しい構造の中で建設業がよみがえらなければならないということでいくと、今の建設業の構造が今のままずっと続いた方が業界全体として建設業の活性化になるのか、それとも、いろいろ痛いところはあっても、その痛みを乗り越えていくことが建設業界のさらなるトータルとしての発展につながるのか、こういう最初の分かれ目がありました。私は、実は後者だろうというふうに思っております。

 つまり、建設業の業界が全体としてより活性化していくためには、痛みを乗り越えていかなきゃいかぬ、そういう場面に、個別のことは全部省きますけれども、やはり規制緩和という一つの道具というのは、きちっと国土交通省は手に持って、大変重要にしながら、しかし、もろ刃の剣であるということはきちっと認識しながらやっていただかなければならぬ、このように思っているわけであります。

 大臣、何かお話があるそうでございますので、よろしくお願いします。

扇国務大臣 お話があるということではなくて、今、樽床先生がおっしゃいました、私、運輸省の例を一つ挙げましたけれども、例えば規制緩和とその社会性ということを考えますときに、きょうも緊急経済対策の中で都市再生ということが項目に、閣議で決定しました中に入っておりますけれども、例えば都市再生一つとってみても、規制緩和ということで、もうこれだけ狭い中で、規制緩和をしたらどうだ、建築容積も、容積率も緩和してはどうだ、高さ制限も緩和したらどうだ。まさに、おっしゃることもよくわかるんです。

 ただ、現実的に、都市再生という言葉一つとってみても、御存じのとおり、東京都内あらゆるところで都市再生を行っておりますけれども、一定の大きさ、少なくとも五ヘクタールぐらいでないとできないと私は思います。

 現実に見ていただくと、例えば今の全日空のあのあたりの都市開発、それから今のテレビ朝日の跡の六本木の都市開発、これは六百軒ございましたけれども、全部立ち退きました。そして、これを全部都市開発しています。そして、残るところは一つですけれども、元防衛庁跡、これも公園を入れたら十ヘクタールあります。これも都市再生しようといって、規制緩和をしたらどうだ、狭いところに住むんだから、一種、二種なんてやめなさいよとおっしゃる方もあるんですけれども、それは社会的規制、高さ制限をどんと緩和して、高いものを建てても、たくさん住むと、道路幅が今のままでは高いところへ大きい消防車のはしご車が入れないというようなことも、東京都と一緒に連携しなければできないんですね。

 ですから、今先生がおっしゃった社会的規制と国土交通省が持っている建築基準とかそういうものの規制というものの整合性をどうするか。

 例えば、今の全日空ホテル、アークヒルズ、あれは全部規制緩和で容積率緩和を倍近くしております。例えば日本橋のところの明治座のビル、あれも容積率の規制を緩和しております。それから聖路加病院のあの高い建物も、周りに公園をとるということで、初めて規制緩和、容積率緩和をしました。

 建設業のことをおっしゃいましたので、そういうふうに一つずつとってみても、社会的な規制とそれぞれの建設業自体の容積率緩和とかそういうものの整合性は、国と地方自治団体と住民の皆さん方の理解がなければ、一つ我々だけがやるよといってもできないことでございます。

 少なくとも二十一世紀型にしていこうという気持ちだけは御理解いただいて、私たちも今後その努力をし、新たに日本橋地域等々は全部それを行っていくつもりでいますので、少しずつ二十一世紀の都市づくりにも規制の枠を外していって、国民の皆さんが快適な生活ができるように努力をしているということだけは御理解賜りたいと存じます。

樽床委員 もっとしたいんですが、ちょっと次の問題もございますので、この問題はこのあたりにいたします。

 経済政策ということでちょっと規制緩和をお聞きしたんですけれども、経済政策という観点からいくと、実は従来の国土交通省が、従来といいますか、昔、建設省と運輸省に分かれていた、北海道もそうでありますが、そういう時代からずっと、それを押しなべて国土交通省という枠で申し上げますと、これまでは、国土交通省の言う経済政策というのは、公共事業を拡大しましょう、大体これが通り相場でありまして、大体国民の皆さんもそういうふうに御認識をされておられる。景気対策といえば、国土交通省は、公共事業の額をふやすんです、こういう話であります。これは非常にアナウンス効果も大きいわけでありまして、私は全面否定しておるわけでも何でもありません、かつては大変それはそれなりに効果を持ったであろう、こういう認識を持っております。

 昨今、公共事業の乗数効果というのがかなり低減をしてきている、こういうことがいろいろ言われております。これは人によっていろいろ違うんですよね。二を超えていたとか一・何ぼであるとか、かつての一番乗数が高かったときの数字も人によって意見が違います。今も、民間では〇・九ぐらいだと言う人もいますし、国土交通省は、いやいや、一・二ぐらいあるんですよとか、一・一だとか、こういうお話をされるんですけれども、乗数効果の推移というものについて、国土交通省は、どのように把握をし、そしてそれをどのようにお考えになっておられるのか、お聞きしたいと思います。

風岡政府参考人 公共工事の乗数効果でございますけれども、これは旧経済企画庁が何度もモデルをつくりまして、これまで実施をしてきております。

 一番最新のものは第五次の世界経済モデルでございますが、これは一九九四年。その後、短期モデルというものもありますけれども、とりあえず第五次のモデルというので見てみますと、投資効果に対しまして、一年目の乗数効果が一・三二倍です。一九九四年のもののときは一・三二倍です。過去をさかのぼってみますと、例えば第一次のモデル、これは一九八一年ということで大分前になりますが、このときの一年目の効果は一・二七倍です。ちなみに、中間的な、第三次のモデルを見ますと一・三五倍ということでありまして、今三つのモデルの計数を申し上げましたけれども、過去の数字を比較しますと、必ずしも大きな変化はないというように考えております。

 なお、先生御指摘のように、乗数効果が低下しているんじゃないかという指摘も確かにあるわけですが、これにつきましては、平成十二年度の経済白書でその辺の分析をしておりまして、いろいろなモデルで少しずつ数字が低下してきているのは、言うなればモデルの構成要素の違いということでありまして、八〇年代と九〇年代で同じモデルでやるとほとんど計数上は差がないというのが経企庁の方の検証の結果でありまして、私ども、基本的にはそういうように考えているところであります。

樽床委員 いや、この問題はすっと通り過ぎようかなと思っていたんですけれども、今の局長の意見を聞きますと、私とかなり認識が違っております。

 今、要するに、国土交通省としては、乗数効果は下がっていない、こんなふうに結論としておっしゃった。私は、下がっていないと言い切るのはちょっと問題ではないのかというふうに思っているんですよ。今出されたデータでは、国土交通省が言うデータではそうなのかもわかりませんが、でも、いろいろ我々がちまたでちらちら耳にするのは、かつては二あった、今は一を切ると言う人もいる。こういう意見についてはどのようにお考えですか。

風岡政府参考人 公共工事の乗数効果につきましては、下がっていないというふうに断定するというよりは、過去の推移を見ますと、大幅な低下というような変化はないのではないかということで、若干、もちろんモデルによりまして変動要因はあるのは認めますけれども、基本的な傾向として大きな変化はないというのが私どもの考え方であります。

 政府としましても、やはりこういった公共投資の経済効果というものを適切に把握するために、旧経済企画庁が中心になりまして、先ほど申し上げましたようなモデルというものを、今まで何度かそういった形でモデルの試算を出しているわけでございますので、私どもとしましては、そういったモデルから見て、現在の水準というのは、先ほど第五次のモデル、一年目の効果一・三二ということです。

 最新の、九八年のマクロモデルというのも出ているんですが、それは一・三一ということで、若干下がっている面はありますけれども、ほぼ同じ水準だということでありますので、先ほど申し上げましたようなことかというふうに考えております。

樽床委員 局長、個人的に文句を言うつもりはございませんが、実は、この見解の違いというのはまことに大きい。現状をどう把握するかということによって、今後の行く道は当然変わってくるわけであります。

 この乗数効果に対して、国土交通省が、減っていないとは言っていない、ただ余り変わっていないんだと同じことをおっしゃっているわけでありまして、要するに、さほど乗数効果についての変化がない、昔と、十年も二十年も三十年前もほとんど同じ乗数効果でずっと来ているんだ、こういう認識に立っての施策と、乗数効果は下がっているんですという前提に立ってつくる施策というのは全く違うというふうに言わざるを得ない。そうすると、今のこの問題は、私は、さっきもちょっと言いましたけれども、すっと通り越そうと思っていたんですけれども、ここでちょっと前に行けなくなってしまった、こういう感がしております。

 この点についてもうちょっとお聞きしますけれども、常識的に考えまして、私は先ほど、かつて効果がなかったとは言っていないというふうに申し上げました。これは非常に誘導するような意見なのかもわかりませんけれども、非常に一般的な個人のレベルの考え方でいくと、発展途上の段階において、例えば道路をつくります。そうすると、発展途上の段階ですから、今から三十年、四十年ぐらい前を想定していただきましたら、今のように車を皆さん持っていない。また、自動車メーカーも今のように、十年前は世界に冠たるということで、今はちょっとしんどいんですけれども、でも、そのような世界に誇るべききちっとした自動車産業もメーカーもまだ十分育っていない。

 こういう時代に公共事業をやって、日本全国道路をばあっと引いていく、こういう施策をとれば、どういう次の効果が生まれてくるかというと、道がよくなった、そうしたら車を買おう、車の販売台数もどんどん伸びていく。そうすると、その関連のいろいろな業界も潤う。また、道路が整備されると、流通のコストも下がる、時間も短くなる、流通機能も向上する。道路一本つくればいろいろいい効果がたくさんあるじゃないか、こういうふうには当然思うわけであります。

 これは、私は否定しているわけでも何でもない。それはそうだったでしょう。しかし、今の段階で道路をばんばんつくって、昔のように道路をつくったからといって車が急速に売れるようになるかといえば、もうそういう時代ではないでしょう。流通も飛躍的に向上するかといえば、そうではないでしょう。もはやインターネット等々情報の中での流通で、流通の形もかなり変わってきているということになると、違いますね。道路一本とってみても、道路一本つくることの乗数効果は、明確に僕は減っているんではないかというふうに思わざるを得ないわけであります。

 こういう我々の率直な感情に対して、国土交通省があくまでも乗数効果は変化はないんですと、このようにおっしゃっても、これは納得できないと思うわけであります。であるならば、なぜ民間のいろいろな調査機関が、私は詳しいことは忘れましたけれども、例えば〇・九しかないということを言っているところもあるんですよ。これはなぜですか。もうちょっと納得できるように御説明をいただきたいと思います。

扇国務大臣 今、数字の上で余り変わりはないんだと局長は答えましたけれども、中身が変化してきているんですね。ですから、今先生がおっしゃったように、時代の変化というもので、例えば国の、私たち国土交通省の予算一つとってみても、公共事業の予算一つとってみても、去年とことしと大体横並びじゃないか、公共事業何も減っていないじゃないか、数字の上で予算減っていないじゃないかとおっしゃるけれども、中身ががらっと変わるんですね。ですから、数字の上でそれほど変わっていないといっても、中身が変わったことだけは、私、ぜひ御理解賜りたいと思うし、また、変わらなければ二十一世紀型の公共工事もできないし、私は、投資効果、相乗効果というものも出てこないだろうと思います。

 例えば、私が今全国歩いておりまして、皆さんがおっしゃることは、今樽床先生おっしゃるように、地方によっては、まだ道路が足りないんだ、頼むから道路をつくってください、鉄道もついでにお願いします、こうおっしゃるんですね。そして、道路をつくれば鉄道の乗客が少なくなるんですよ。そうすれば赤字路線になる。赤字路線になるけれども、いや、道路も欲しいんです、鉄道も欲しいんです、いや、飛行場もなんですとおっしゃると、つくることによってどこかにでこぼこが出てくる。

 全体の投資効果というものから考えていけば、今まではただつくっていたけれども、二十世紀はハードだったけれども、二十一世紀は、環境とかあらゆる面を考えて、ソフトですよと。同じ公共工事一つ例をとってみても、二十一世紀は、バリアフリーでエレベーターもつくりましょう、エスカレーターもつくりましょう、そういうことでの費用の転換といいますか、政策の転換、工事の転換、あらゆるものが、同レベルの数字が出ていても、中身が変わってきたということだけは御理解いただいて、今局長が言ったように、横ですよとか、少しは下がっていますけれども余り変わらないということの補足としては、そういうことも御理解いただきたいということを申し上げておきたいと私は思います。

樽床委員 大臣のおっしゃることも非常によくわかるんです。でも、我々の実感としましては、やはり乗数効果は実質はもう減っている。でなければ、発展途上の段階と今のような成熟した段階で同じような数字が出るのはどうも合点がいかない。それは違って当たり前であります。それを、違っていないと大上段に構えておっしゃり続けることは、逆に、今扇大臣がおっしゃった今後の公共事業のあり方ということを考えるときにネックになりはしないですかということを、私は今お話を聞いて大変強く懸念をいたしました。

 国土交通省としましては、我が党が公共事業三割削減とか、こういうことを一応大上段にかぶって申し上げておりますから、余りそれを言うとまたそこら辺に波及するのではないか、こういう御心配をされているのかもわかりません、これは邪推かもわかりませんが。

 私は、乗数効果が落ちています、しかし必要な公共事業は必要なものとしてこれはやらなければならないと、公共事業をゼロにしようなんてだれも言っていないわけであって、必要なものは必要なものとしてやりましょう、むだなものはやめましょうと。こう言うと、だれがむだか有効かを決めるんだ、こういう大変難しい問題にこれは当然突き当たる。しかし、それは我々知恵を出し合って乗り越えていかなければならない、このように思うわけであります。私は、乗数効果は落ちているという前提に立つ立場にありますけれども、それは今の国土交通省と見解が違うことは、きょうはこれ以上言いませんけれども、そういう中で、扇大臣が中身が違っているということをおっしゃった。つまり、こういう厳しい財政状況の中で、今後新しい時代の公共事業というものはどうあるべきなのか、国土交通省の見解をもう一度お聞かせいただきたいと思います。

扇国務大臣 二十一世紀型の国土交通省のあり方ということで、これは、基本は、昨年の臨時国会で皆さん方に全会一致で通していただいた公共工事の入札と契約に関する適正化法、これを四月一日から施行したということで、本当に戦後の日本の中で初めての法案ですから、今まで公共工事の冠がついた丸投げ、談合、むだ遣い、ばらまき、私は、これは、少なくともこれを施行することによってみんなの意識を変えていただきたいという一念で、全国を歩いているのはその意味でございます。それは、国だけではなくて、各地方のすべて網がかかっていますよと。

 ですから、その内容の通達一つとってみても、今までは、談合や丸投げ、通知して事業停止などということをしたことはほとんどありません。けれども、今局長がいますけれども、省内の通達によって、今度は事業停止までする、厳しいことを全部しております。ですから、今おっしゃいましたように、今後どう違ってくるのかということは、同じ公共工事であっても、そこに技術者がいないにもかかわらず、技術者がいるような顔をして受注をして、技術のあるところへ丸投げする、こういうことは全部できなくなるわけですね。発注者責任もあるし、それをした人は今度は事業停止も受ける。

 そういうことで、皆さんに全会一致で通していただいたこの法案の重みというのは、公共工事の二十一世紀のあり方を根本的に変える、皆さんのありがたい御賛同によってこれができたことによって、私は、そういうものがかなり変わってくる、また変えなければならないと思っています。

 御存じのとおり、今日まで全国で六十万業者と言われる建築業者が登録されております。六十万業者、しかも、六百万人の従業者がいる。けれども、今度それをすることによって、現段階では公共工事の受注量が二〇%減ってきている、にもかかわらずこの十年間で百万人の雇用がふえている、こういうギャップをどうするのかということも考えて、我々は公共工事の入札と契約に関する適正化法を維持しながら、そして適正な公共工事をしながら、丸投げ、談合をやめさせる。電子入札まで入れているわけですから、電子入札したら完全に談合なんかできなくなっちゃうんですね。そういう意味では、本当に、これを基礎として、私たちは、それを指導していく、全国にそれを徹底していくということに最大限の努力をするということ。

 ただ、一言申し上げれば、今の六十万業者の中には不良不適格業者というものがあります。ペーパーカンパニーと言えばいいんでしょうか、我々は、この法案によって全国の六十万業者の中の不良不適格業者は完全に排除すべきであるということにも力を入れていきたいと思っております。

樽床委員 扇大臣が就任されてから、この問題、旧建設省としてこれまでなかなか踏み込めなかったところにかなり踏み込まれたという認識を我々も持っておりますから、昨年の臨時国会でもいろいろ注文はつけましたけれども、附帯決議もばらばらばらっとつけて賛成をさせていただいて、政府の閣議決定のガイドラインもかなりそれを踏まえた閣議決定をしていただいたというふうに我々認識をしております。それはそれで、これから、今の決意の中で、要するに民間と公共事業という関係の中で鋭意やっていただきたい、こういうふうに思うわけであります。

 もう一つ、別の、今後の公共事業のあり方ということでいうと、先ほど私、むだなものとむだでないもの、必要なものと必要でないもの、これはだれが決めるんだと。実は、このだれが決めるかというのが非常に難しい。これは率直に認めざるを得ない。そういう中でいくと、国と地方という視点もこれまた必要になってくるのではないかというふうに思います。

 地方の、地方と言うとちょっと言い過ぎですが、地域のそれぞれの住んでおられる人にとってこれが一番必要だ、こういうものが欲しいという意見が、本当に今の公共事業の決定の中で反映されているのだろうかというふうに逆に思わざるを得ない面も多々ある。それは、霞が関でそれぞれの地域の事情はよくわかるはずがないわけでありまして、そういう中で決める話と、そこに住んで本当に生活するとこれが必要だと思うことと、ずれがあるのは当たり前の話であります。やはり、そういうものはそれぞれの地域の方で決定をしていくという流れも必要ではないのか。

 そうすると、広域的なものは地域に任せておったら決まらないじゃないか、また、地域でやったらまた好き勝手なことをするんじゃないかとか、いろいろ意見はあるんですが、しかし、それを全部聞いていたら何も前に進まないわけでありまして、そこら辺をどうやるのか。

 こういう観点からいくと、一つ弊害が出てきておりますのは、公共事業の額を優先した例えば補正予算とかをやる。そうすると、国が地域に、今度一週間後にこれだけ予算をおろすから、何か計画をつくれというふうな指示が出る。が、市町村はギブアップするわけですよ。ちょっと待ってくれ、一週間後に金をやるから何か選択せいと言われても、そんないいかげんなことをやられちゃ我々もうふらふらになる。これが本音ですよ。実態なんです。

 しかも、国が金を出すといっても、その負担は、裏負担は、裏負担という表現が適切かどうかわかりませんが、地方の負担分も必ずついてくる。本当はやりたくない、本当に必要かどうかわからない、でも補助金が出るからやりなさい、ここで断ったら後で響くからやらなしゃあないなということでやる。そのつくったものがむだになる。しかも、今後のランニングコストは地域の負担になる。

 こういうことを繰り返して本当にいいんでしょうかという懸念が私は大変強くあるわけでありまして、そういうふうな点も、公共事業の今後のあり方ということについて国と地方という観点からどのようにお考えであるのか、お聞かせいただきたいと思います。

扇国務大臣 今先生がおっしゃるとおりでございまして、一つの例を挙げさせていただきますと、日本の下水道整備、社会資本整備の中の下水道整備一つとってみても、私は少なくとも、先進国、ヨーロッパ等々九九%、そこまでいかなくても、日本は四〇%台だからせめて五〇%まで持っていきたい、社会資本整備一つとってみてもそう思うんですね。

 ところが、県の名前は言いませんけれども、下水道整備の社会資本整備の予算を差し上げますから、おたくの県は下水道整備が低いですから高くしてくださいねと言ったら、うちは地方分担金が足りませんから要りませんとおっしゃったんです。そのように、今先生がおっしゃった、私たちが国民の快適な生活を保障するためにしようと思っていることでも、地方によっては、負担金が今財政上だめだからノーとおっしゃるところも事実あるんです。けれども、私どもは、そういうところに関してはなるべく時間を得ながら、かといって、今先生がおっしゃったような、公共事業のあり方というものを見直すべきではないか、ただつくるだけじゃないとおっしゃるのもそのとおりでございます。

 ちょうど三日ほど前でしょうか、私は、今後ダムをつくった場合は――ダムの周辺は物すごくみんな環境がいいんです。森林に囲まれて、しかもダムをつくるために物すごい道路をつくっているんです。ダムまですごい道路ができ上がっているんです。ところが、ダムができちゃうとそれで終わりなんです。それで私は、もったいないと思いまして、この間、国土交通省で、ダムの周辺整備、皆さんがレクリエーションでダムへ行けるように、ダムの周りはすごい環境がいいですから、マラソンコースをつくって地元の皆さんにも利用していただけるようにと、そこまでの道路ができているんですからと。そういう意味で、ただつくらないで、環境を住民の皆さん、県民の皆さん、市民の皆さんに使っていただけるように全部工夫をするべきだというので、四つの項目を挙げて全部通達を出しました。

 ですから、今後はそういうことも、少なくとも今までと違った形にしていくべきであるということは、今先生がおっしゃったとおり、私は実行していきたいと思っております。

 ただ、一つ言わせていただきたいことは、ダムの中止ということで、今いろいろな公共工事の中止の話が出ています。私は、それでもいいんですけれども、ただその場合は、事業認可をするときには、あらゆる委員会、県会、市会等々の順番を経て初めて事業認可するんですね。中止するときには、今まで御努力いただいた事業認可と同じような手順で私は事業中止をしていただきたい。

 それは、御存じのとおり、昨年、与党三党で公共工事の見直し案件を出しました。その中で、百八十七件の中止をしました。けれども、この百八十七件の公共事業を中止したものも、私どもは、今まで手順で御協力いただいた皆さん方に、事業評価監視委員会、全国で三百回開きました。九月の一日から十二月の十日まで三百回の地方の皆さんの評価委員会の了解を得て、初めて十二月に百八十七の事業中止をしたんです。

 ですから、中止をするときも、二度と中止はあってはならない、屈辱ですけれども、もしもそういうことがあっても、やはり手順を踏んで、今まで御協力いただいた皆さんに意見を聞いて中止をするべきだということも私は肝に銘じて、地域の皆さんの御意見を拝聴しようと思っております。

樽床委員 実はもっとたくさん聞きたいことがあったんですが、時間になった、こういうふうに言われました。もっといろいろ御意見を本当はお聞きしたいんですが、これもルールでありますからそろそろやめなきゃならぬというふうに思います。

 まことに、何をこれまで、あなた、これ、倉庫業法の改正案の質疑ではないのということで怒られそうでありますので、最後に一点、この法改正で我が国の経済にどのような影響を与えて、法改正の効果はどうなるのか、最後にお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。

赤松委員長 時間がもう終わっていますので、短くお願いいたします。

泉副大臣 今回の倉庫業法の改正は、利用していただく方々に安心して使っていただける、そのことが一つの大きなテーマでございますし、また、業界の方々が御自分の知恵と、そして新しい取り組みができるような自由な競争ができるという、この二つの効果がある。物流の中でいい役割を果たしていただける状況が出てくる。結果として、物流コストが下がることもありましょうし、また国民が安心して生活できる分野が拡大する。このように考えておるところでございます。

樽床委員 以上で質問を終わらせていただきます。

赤松委員長 井上義久君。

井上(義)委員 今回の倉庫業法の改正は、行政改革推進本部規制緩和委員会の平成十年九月二十二日の「規制緩和に関する論点公開」それから平成十年十二月十五日の「規制緩和についての第一次見解」に基づいて、規制緩和推進三カ年計画として閣議決定をされた、そういう経過だとお伺いしているんです。

 きょうは総務省に来ていただいていると思いますけれども、この倉庫業の規制緩和が規制緩和委員会の検討事項として上がってきた背景について、最初にちょっとお聞きしたいと思うんですね。

 要するに、現行の許可制のもとでも十分に新規参入が行われているのではないか、それからまた料金についても、幅を持った事前届け出制で規制としては極めて緩やかなものだ、こういう議論があったというふうに聞いているわけです。そういう状況下でこの業態自体を大きく変えるような措置を導入していこうとした背景には、やはり倉庫業界に問題点が何かあったのか、それから規制緩和をしなければならない根拠というものがあったんじゃないか。その点について規制緩和委員会でどういう議論が行われたのかということを、まず最初にお聞きしたいと思います。

坂野政府参考人 規制改革委員会の前身でございました規制緩和委員会というのが政府の行革本部のもとに設置をされておりまして、そこでの御論議に関しての御質問と承りました。

 この委員会では、各分野を通じて、特に経済的規制については原則自由の世界に転換をしたいという考え方で論議をされまして、また、特に運輸分野につきましては、事業参入を促進する、あるいは運賃料金を自由に設定できるようにするということから、特に需給調整規制の廃止でありますとか、運賃・料金規制の緩和などを中心に論議をされ、例えばトラック事業、タクシー事業あるいは貨物運送取扱事業等についての提言をすると同時に、倉庫業につきましても、参入規制及び料金規制について緩和すべきであるという論議となったと承知をいたしておるわけでございます。

 特に倉庫業については、倉庫の保管の安全については、倉庫業者の経営の根幹にかかわることであって、事業者みずからが確保すべきものであるという考え方のもとに、参入規制については必要最小限のものに、また料金設定については事業者の自己責任で選択ができる、そういうことにすべきだという提言がされたわけでございます。

 それを受けて、御指摘のとおり、政府では、規制緩和三カ年計画の中でそのスケジュールあるいは検討の手順を明らかにしたということでございます。

井上(義)委員 どういう問題点があって、なぜ規制緩和をしなければならないのかという御説明は余りなかったかと思うのです。

 要するに、国際化とか自己責任原則とか市場原理とか、あるいは過度な行政介入の排除というような規制緩和の目指す目的、それ自体は全く異論がないし大いに進めるべきだ、私はこう思っておるわけですけれども、それぞれの業界の実態だとか、あるいは規制緩和がもたらすべき結果についてきちっと検証してそれを進めるということが、本来、規制緩和委員会の大きな役割だったんじゃないかな、こう思うんですね。

 平たく言うと、今回の法改正が、いわゆる規制緩和が業界の活性化につながりますよ、ひいては国民の利益というか消費者利益につながりますよ、そういうきちっとした検証があって初めて規制緩和ということについて国民の理解が得られるんじゃないか。その辺はどうだったんでしょうか。

坂野政府参考人 規制緩和委員会は親委員会のもとに分野別にワーキンググループというものを数名の委員で編成しておりまして、そのワーキンググループで具体的な検討をかなり濃密に行った、そういう仕組みの中で、規制緩和がどのような成果をもたらすべきか、あるいは業界の実情がどういうことになっておるかということも議論をしておられたと承知をいたしておるわけでございます。

 特に、当時の運輸省の担当課あるいは担当の専門家の方との議論や、倉庫業界の業界団体の方と直接にひざを交えていろいろ議論をされたというふうに承知をいたしておるわけでございます。そういう中で、業界の実情についても十分いろいろ把握をされつつ、最終的に委員会としての御判断で見解をまとめられたというふうに私ども承知をいたしておるわけでございます。

 なお、運輸省におかれても、この委員会の論議に参加されると同時に、みずからさまざまな御検討をされ、調査もされ、あるいは業界との話し合いもされて、このような成案を得られたものと承知をいたしておるわけでございます。

井上(義)委員 議論をして決めたということはよくわかったんですね。私は、要するに、この規制緩和がどう業界の活性化に結びつき、ひいては消費者の利益になるのかという検証をきちっとしたのかということを実は聞きたかったわけで、総務省の方にそこまで詰めて言っても、当事者じゃないという面もあるので申しわけないのですけれども。

 旧運輸省の側は、今回、法改正に当たって、当然、そういう議論をして、検証をしてこの法案を出されたと思います。このことで言うと、いわゆる隣接物流業界、いろいろあるんですけれども、例えば倉庫業と兼業あるいは結節しているトラック運送業、これは許可制だ、それから臨港地帯の倉庫で兼業の多い港湾運送業、これは昨年、事業が免許制から許可制になりましたし、料金は許可制から届け出制に移行した。個別の業態の実態というのはあるんだと思うんですけれども、密接な隣接産業で規制の程度が異なるのはいかがなものなのか。

 やはり、物流における規制改革というものを一体的に整合性を持って進める方が効果が上げられたのではないか、こういうふうにも思うんですけれども、この辺について、国土交通省、どうなんでしょうか。

洞政府参考人 お答え申し上げます。

 倉庫業の規制緩和につきましては、閣議決定を受けまして、私どもといたしましては、昨年、半年ぐらいかけまして、おっしゃるとおり、倉庫業の規制緩和がもたらす影響、あるいはその必要性等々について、事業者の皆さん、組合の皆さん、あるいは学識経験者の皆さん、それから荷主の皆さん等々と緊密な意見交換、議論等を重ねて、いろいろ検討を重ねまして今回の案というものをまとめたわけでございます。

 当然のことながら、そのときの基本的な考え方というものは、倉庫の重要性というものを認識しつつ、やはり倉庫業界が持っている基本的な使命というのは何かとか、行政の関与というものをもう少し客観的に透明性を図るべきではないかとか、あるいは中小企業等が多い業界の実態等に配慮すべきではないかとか、そういったいろいろな基本的な考え方というものを踏まえながらいろいろ検討を行ったということでございます。

 今の、倉庫業の登録制への移行というのがほかの物流事業と比べて均衡を失しているのではないかという御質問でございますけれども、まさしく先生の御指摘のとおり、物流にかかわりますほかの事業法におきましても、旧運輸省時代から順次規制緩和というものを行ってきたところでございますけれども、その際のポイントというもの、事業法の見直しに当たっては、それぞれの事業の特性、あるいはその事業が置かれております経済社会情勢といいますか、そういったものに対応して、確保すべき観点といいますか法益といいますか、そういったものは何か。例えば、自動車、トラック運送事業でありますれば安全な運行の確保でありますとか、あるいは港湾運送につきましては一般的には港湾の安定性の確保とか、それぞれの観点等を含めまして総合的にいろいろ考えた結果、それぞれの規制の結果というものが出てくるというふうに考えております。

 そういう意味におきまして、それぞれの事業の特性やその置かれている状況等を反映して、免許制とか許可制とかいった制度の差というのが出てくるわけでございますけれども、その違いをもって、均衡を失している、おかしいではないかということには直ちにならないんではなかろうかというふうに考えております。

 事実、他の事業法は免許制あるいは料金の認可制をとっている中で、倉庫業法は三十一年以来から、一段緩い、需給調整とかそういったものがない許可制、あるいは料金は事前届け出制という形をとっておりましたし、倉庫業法が制定されました三十年代と現代との状況では、その置かれている状況も大きく変化しているわけでございます。そういう意味で、今回、物流事業全体の見直しが図られる中で、倉庫業法においても、現状に照らしていろいろ検討した結果、参入の基準については、いわゆる裁量行為をできるだけ排除した許可から登録というような形等々に変えるのが適当であるというふうに判断した結果でございます。

井上(義)委員 扇大臣、今までの答弁を聞いていますと、要するに、この規制緩和によって業界も活性化するし、消費者の利益につながるんですよという前向きな答弁が余り聞こえないのです。

 せっかく法改正をするわけですから、やはりこれからの施策の展開にもこれはつながってくると思いますので、やはり前向きにこれをとらえる、消費者の利益にこれをきちっとつなげていくんです、日本の物流コストの引き下げの全体につなげていくんですという積極的な姿勢がないと、国民の理解が得られないんじゃないか。この点、大臣、どうですか。

扇国務大臣 井上先生がおっしゃるとおりでございまして、私どもは、今の時代に合った、そしてまた今後の時代に貢献できるということで法案を提出させていただいているわけですから、その効果が上がらなければ出す意味がないということで、今冒頭に先生がおっしゃいましたように、これによって少なくとも物流も大きな改革の一歩につながるとか、あるいは先ほども私は冒頭に申し上げたんですけれども、今の時代に合った、倉庫を利用する一般の感覚も時代の変化とともに大きく変化している、そういうことに対して、例えばトランクルーム一つとってみても、保証がないではないか、安心して預けるのに、預かった物の保証はどこでどうするのかという、新たな倉庫業法というものも出てきているわけでございますので、私は、そういう意味では、この法案を御提出したことによって、物流分野においても大きな安心を得られて、しかも利用しやすくなるということに対しても促進できるのではないか。

 そういう意味では、まさに二十一世紀型のこういう改革を随時していかなければならない。先ほども樽床先生にグランド的なことは申し上げましたけれども、そうではなくて、生活に密着した、今の社会の情勢に応じたものも一つずつ手当てをしていくことによって、今後、港湾も空港も、あるいは道路等の基幹インフラの重点的な整備と、あるいは港湾、空港等の国際拠点の整備と、全部相まちまして、生活、物そして物流が、今言ったあらゆる空港等々の起点になって、一時保管されるものに対しても新たな視点で物を見るということでは、私は、二十一世紀型の、今これをしておかなければ、物流も含めて、国際的にも、あるいは国民の安心、業者の安心にもつながらないと思っていますので、これの成果というものは必ずあると自信を持って提出させていただいたわけでございます。

井上(義)委員 少し具体的な話をさせていただきますけれども、今回、事業参入が、許可制から、一定の基準を満たせば参入できる登録制に移行するわけです。それで、許可制のもとで図られていた安全保管体制、これは一番大事だと思うんですけれども、これがきちっと担保されるのかどうか。建物の構造を初め、危険物の保管に関する対応など、我が国の倉庫業が培ってきた特徴が、悪貨が良貨を駆逐するようなことにならないのか、この点、ひとつお聞きしたいと思います。

 それからもう一点は、料金規制の廃止で不当な価格競争とか不公正取引が誘引されるおそれはないのか。特に、改正案では、倉庫利用者の利便その他公共の利益を阻害している場合には事業改善命令が出せるようになっているわけですけれども、その発動要件というものをどのように考えていらっしゃるのか。

 この二点について。

洞政府参考人 お答え申し上げます。

 登録制への移行に当たりまして、許可制のもとで図られていた安全保管体制が保たれるのかという御指摘でございます。

 倉庫業は、いわゆる不特定多数の者から物品の寄託を受けて保管を行うという性格から、保管物品を良好な状態で保管するということが基本的な使命でございまして、そのための必要最低限度の規制として、まず設備構造基準というのを要件としております。

 また、このようなハード面と並んで、ソフト面につきましても、倉庫の管理体制について、今の倉庫業法の許可制のもとでは、その辺が非常にあいまいな行政裁量の範囲内で判断していたところでございますけれども、これを客観的な基準に引き上げまして、倉庫管理主任者の選任を登録制の基準に加えるということにしております。

 そういう意味で、改正案にございます倉庫業の登録制というのは、単なる届け出とは異なり、このような一定の基準を満たさないものは登録できないということでございますので、そういう意味で、倉庫業を営むのにふさわしくない者が参入してくるおそれというのは余りないのではないかと考えております。

 また、料金面につきまして、料金規制の撤廃によりまして不当な価格競争や不公正取引が誘引されるのではないか、事業改善命令の発動要件というのはどういうものかというお尋ねでございますが、今回の改正によりまして料金の事前届け出制を廃止いたしますけれども、後はもう野放しというわけではございません。

 今後は、国土交通省として、倉庫業者からの料金に関する報告とか定期的な監査等を通じて実際の料金水準をきちっと把握することとしておりますし、さらに、事業改善命令というものを今回新たに創設して、ダンピング料金の設定など不適切な料金が定められて利用者の利便とか公共の利益が害されている場合にはその是正命令が出せるということにしたところでありまして、事前から事後のチェックへ移行したわけでございます。

 その具体的な対象となる料金といたしましては、現在でも料金は事前届け出制になっておりまして、その際、料金変更命令が出せることになっているわけでございます。事前にチェックしているわけでございます。

 その場合の要件として、不当に高過ぎる料金とか不当な差別的な料金であるとか、また不当に安過ぎる、いわゆるダンピングというのが想定されますけれども、このほか、トランクルームなんかにつきましては、一般消費者に非常にわかりにくい、例えば基本料金を非常に低く設定して非常に高い追加料金を設定しているもの等々も対象になってこようかと考えられると思います。

 また、料金のほかにも、当然のことながら、不適切な管理が行われて利用者の利便等が非常に害されている場合には、この改善命令の対象になります。

 以上でございます。

井上(義)委員 今お話があったトランクルームなんですけれども、最近、住宅事情の悪化とか事務所スペースの不足などが要因で、首都圏を中心にその利用が非常に急増しているわけです。

 一方、先ほどから議論が出ていますけれども、保管機能のないレンタルスペースやレンタルボックスなどというのも非常にふえているわけで、物品の保管状態に関して業者と消費者間でトラブルが多発しているというふうに伺っているわけです。

 そこで、このトランクルームの実情と、実態がどうなっているのか、どの程度掌握されているのかということと、そういう優良トランクルームの認定制度、それから倉庫業以外の誤認行為の禁止を今回法律で定めるわけですけれども、具体的な運用、例えばトランクルームが、本来は場所貸しなんだけれども、荷物預かりますよという宣伝をした、当然改善命令が出る、その改善命令に従ったら、それは、では次どうなるのかというような具体的な運用について、ちょっとお話しいただければと思います。

洞政府参考人 トランクルームとそれに係る消費者トラブルの実態について、まずお答え申し上げます。

 トランクルームにつきましては、最近非常にふえてきているわけでございまして、十一年度末時点で大体二百七十事業者、千百カ所ぐらいの事業所があります。これは倉庫業者が行っているトランクルームでございまして、それ以外にも、いわゆる場所貸しといいますか、スペース貸しという形で行っているトランクルーム業者もいます。

 先ほど副大臣が申し上げましたとおり、電話帳を繰ると、倉庫業者と同じぐらいの数の場所貸しの事業者がございまして、こういうのは、実際に預かっている物がなくなったり毀損したりする場合にトラブルが顕在化してくるわけでございまして、ほとんどが、いわゆる倉庫業者じゃないトランクルーム業者のものが多いという実態がございます。

 例えば、こういったものは国民生活センター等にいろいろ苦情が寄せられております。中央ではございますけれども、これは年々ふえてきております。年間で大体四、五十件ぐらいずつございます。地方の方の統計が今ちょっと手元にございませんけれども、やはり同じぐらいあるんだろうと思います。

 トランクルーム業者に預けていた家財道具が火災によって損傷した。倉庫業者でないために保険を掛けておらず、損害賠償に応じてもらえなかったとか、あるいは粗雑な業者の管理によって損傷したけれども、業者側は契約に際して寄託責任を負っていないから、要するに苦情には、あるいは損害賠償には対応しないとか、こういったたぐいのものがほとんどでございます。

 また、今回、優良トランクルームの認定制度といいますか、あるいは倉庫業者以外の者が行ういわゆる消費者を惑わすような誤認行為の禁止というような措置がなされておりますけれども、どういうふうな運用をされるのかという御質問でございます。

 私どもは、地方の運輸局が倉庫業の優良認定制度を運用していくわけでございますけれども、まず、優良認定トランクルームを認定した場合には、窓口においてちゃんと掲示をするし、あるいはホームページ等でそういったことの周知徹底を図りますし、先ほど阿久津先生が示されましたが、今度もうちょっと工夫したいと思いますけれども、きちっとした商標みたいなものを消費者がはっきりわかるような形で掲示させるようなことも考えております。

 また、誤認行為を行っているような事業者については、これまでは私どもは何の注意喚起とかそういったこともできなかったわけでございますけれども、この法律の改正によりまして、運輸局にそういう権限が与えられるわけでございますが、そういう事実を把握した場合においては、当然のことながら、そういう行為の禁止といいますか、是正措置というのを命じることとしておりますし、それに応じない場合には、罰則として五十万円以下の罰金をかける、こういう措置をこの法律においてしているところでございます。

 以上でございます。

井上(義)委員 今回の法改正と直接かかわりはないんですけれども、私は東北を基盤としておりまして、ことし非常に雪が降ったわけです。

 それで、倉庫業者の方々といろいろ懇談をして、この法改正について意見を聞いたんですけれども、税制上の特例を受けるために、倉庫の前にプラットホームというのを当然設置するわけですよ。プラットホームを設置するんですけれども、ことしは雪が非常に多くて、そこの除雪に非常に費用がかかった。

 そこに本当はひさしをかければ、除雪の作業は要らないし、それから労務管理上も非常にいい。当然、建物の部分がふえるわけですから、建設業者の皆さんも売り上げが上がるんじゃないか。ところが、これがひさしなものですから、建ぺい率に加算されちゃうわけですよ。ここを何とか規制緩和してくれれば一石二鳥じゃないか。

 こういうお話があって、私も、なるほど、そうかなと思ったんですけれども、これについて何とかいい方法はないものかなということで、きょう国土交通省来ていただいていますけれども、よろしくお願いします。

三沢政府参考人 屋根、ひさしに係る建ぺい率制限の問題でございます。

 一般論から申し上げますと、建ぺい率制限は、御承知のとおり、敷地の中に一定以上の空地を確保して、いわゆる建て詰まり防止ということで、いろいろな、火災に対する安全性とか、あるいは採光、通風等の環境を確保する、こういう趣旨からやっているわけでございます。

 その場合の軒、ひさし等の扱いでございますけれども、一メートル以上突き出ているような軒、ひさしにつきましては、その端から一メートル以内の部分、その部分は非常に開放性が高い部分だということで、これは建築面積に算入しないということになっております。したがって、この部分はまず建ぺい率の制限の対象ではないということでございます。

 さらにこれを、一メートルを超えて、そもそも屋根、ひさしを、全体について、例えば降雪地帯の倉庫について建ぺい率に算入しないということについてどう考えるかということでございますけれども、一律にこれについて対象にしないということについては、冒頭申し上げました建ぺい率制限の趣旨からいいますと、なかなか難しいところがあるんじゃないかなというふうに感じております。

 ただ、個別の場合に何か規制緩和するような方策がないかということで申し上げますと、昨年、建築基準法の改正によりまして、前面道路と反対側の隣地の方に壁面線の指定をしまして、そこまでセットバックするということを前提に、一定以上、道路側以外にまとまった空地をきちんと確保する、そういう場合に特定行政庁が許可をすれば建ぺい率制限の緩和の対象とすることができるという制度を設けたところでございます。

 これはいろいろな使い方がございまして、例えば密集市街地での建てかえの促進策にも使うこともできますし、それから、ある程度これから計画的な、例えば流通業務団地なんかを整備する場合にそういうものを設けるということもいろいろ可能でございます。

 この制度はことしの五月の十八日から施行だということでございますので、私どもも、こういういろいろな条件を満たす場合にはこういうことが活用可能なんだということを、できるだけ幅広く、いろいろな周知徹底に努めていきたいというふうに考えております。

井上(義)委員 ぜひ現実的な対応ができるように、周知徹底をよろしくお願いしたいと思います。

 時間が来ましたので、まとめて二問お伺いしたいと思います。

 一つは、今回、登録制への移行に伴って、これまで講じられてきた倉庫業への税制の特例措置、この問題についてお聞きしたいと思います。

 倉庫業は、事業としての特性、つまり土地とか建物、設備に多額の資金投入が必要な反面、資金回収が非常に長期にわたるということで、減価償却、金融費用の負担が非常に大きいということを考えますと、税制上の措置というものを継続すべきではないか、こう思うんですけれども、この点が一つ。

 それともう一つは、これは特に大臣にお聞きしたいんですが、先ほどもちょっと触れておられましたけれども、日本の物流は高コスト構造ということがよく言われているわけです。

 それで、旧の運輸省の資料を取り寄せてみましたけれども、そうしたら、来た資料が、例えばトラックはこうですよ、宅配便はこうですよ、あるいは貨物鉄道はこうですよという話で、確かにそれだけを見るとそれほど高コスト構造じゃないのかなという数字が出ているんですけれども、物流のコストというのは、例えば港湾とか空港の利便性の問題とか、あるいは荷役サービスとか通関業務とか、このスピードの問題とか、それからそれに結節した道路とか鉄道とか、それらをトータルにコストとして判断しなきゃいけないわけで、そういう観点から見ると、やはり高コスト構造というのは否めないのだろう。

 今回、国土交通省に移行して、そういう意味では、物流というところにきちっとした視点を置いた新たな施策の展開というのが私はこれから可能になると思うし、またやらなければいけないのじゃないか。やはり、物流というのは産業の血管ですから、産業構造の転換というのは極めて重要な課題でございますので、これからの物流のあり方についてどのようにお考えになっているか、この点を確認して質問を終わりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

洞政府参考人 税制に関する御質問について簡単に、手短にお答え申し上げます。

 倉庫業については、先生御指摘のとおり、非常に多額の投資を要する一方で投資回収に長期間を要する収益性の非常に低い事業である、そういう事業の特性を持っていまして、そういう観点からもいろいろな税制特例措置というのが認められているわけでございますけれども、今後とも、倉庫業の高度化、近代化等の事業展開を図っていくためには、やはり必要不可欠な措置であると私ども認識しております。

 今後とも、これらの措置の維持継続について一生懸命頑張りたいと思っています。どうぞよろしく御支援のほどをお願いしたいと思います。

扇国務大臣 今、井上先生が最後におっしゃいました、物流が世界的なレベルでどうあるべきか。私はそのとおりだと思いますし、先ほどからも私が事例を申し上げましたように、日本の物流コストというものは政策の総合性があって初めて削減ができる、そのためには、いかに国土交通省が総合的な今後の政策をつくっていくかということが基本になろうと私は思います。

 ですから、少なくとも物流の効率化を進めるためには、物流コストの削減あるいは低減をしなきゃいけない、それが日本経済の国際競争力の維持向上のためにも重要な課題であるということは、私が先ほど細かいことを申し上げましたとおりでございますので、ぜひ私は、今回も、そしてまた今後も、国土交通省として総合的な政策を出すことによって、世界のレベルと日本がどこが違うのかという点を先ほど申し上げましたけれども、その是正のために、国土交通省は総力を挙げて、二十一世紀型の物流コストの基準というものが世界水準に一歩でも近づくために努力していきたいと思っております。

井上(義)委員 それでは、期待を申し上げまして、質問を終わりたいと思います。よろしくお願いいたします。

赤松委員長 山田正彦君。

山田(正)委員 自由党の山田正彦です。

 きょうは、倉庫業法の一部を改正する法律案について質疑をさせていただきたいと思います。

 先ほどから大臣の答弁を聞いておりました。日本は物流コストが大変高い、そのためにいわば国際競争力を失ってきている、まことにもっともなことで、ダボス会議とかパレルモのG7等々におきましても構造改革をしろということが言われているわけです。

 大臣にお聞きしたいのですが、諸外国に比べて、アメリカに比べて、果たしてどれくらい物流コストは高いのでしょうか。大体わかっている範囲で結構です。そして、どこにそういう原因がおありとお考えでしょうか。

扇国務大臣 どこまで例を挙げればよろしいか、切りがないので少しだけ例を挙げさせていただきたいと思います。

 例えばコンテナ。今、世界じゅうにコンテナが流通して、物流の大きな拠点になっております。ところが、コンテナの取り扱いランキングという世界水準がございますけれども、今まで、一九八六年、日本の中では、世界の中で一番上位にいたのが神戸で、六位でございました。これが阪神・淡路大震災で番外に落ちました。そして、同じく八六年、横浜がやっと十二位に入っていました。コンテナの量でございます。それはどのくらいの量かといいますと、私も詳しくはありませんけれども、標準のコンテナ、横幅が二十フィートだというのですね、私たち目にしておりますけれども、あの二十フィートの長さの世界水準のコンテナ、百三十一万個を扱ったんですね、横浜が。それで十二位なんです。

 ところが、一九九八年になりますと、八六年に五位にあったシンガポールが一位になったんです。そして、シンガポールはどれくらい扱っているかといいますと、これがもう断トツに抜けまして、千五百十万個のコンテナを扱いました。それで世界の一位になりました。そして、日本の東京がやっと十五位、十二位だった横浜は十八位に落ちております。

 そのように物流コストの高さ一つとってみても、全部挙げ切れませんけれども、これだけ世界の水準から低下してきているということだけは言えると思います。

山田(正)委員 大変懇切に、今、説明をいただきました。

 ところで、このように、なぜ日本がどんどんと落ち込んできたのか、物流コストがなぜ日本だけ高いのか、抽象的にで結構でございますが、そこはどこにおありと大臣お考えでしょうか。

扇国務大臣 それは先ほどもお答えしたと思いますけれども、要するに人件費の高さ、それと、空港、港湾、道路、鉄道の総合的な政策ができないで、みんなばらばら。先進国に比べて、国際空港から主要道路に入るのに十分以内というのが欧米先進国は九十数%、日本は、港からも空港からも、あらゆるところから十分以内にインターチェンジに入ったり、一時間以内に主要都市に入るというのが四六%、そして港湾に至っては三三%なんですね。それ一つとってみても高くつくのは当たり前ですし、それから人件費の高さ、そして中間マージンというものも、日本は世界に比べて中間業者が多いということ。

 そういう総合的な面からこういう結果が出ているので、国土交通省では、今後、こういう結節点の悪さは、港湾と空港と道路との立体した政策をつくっていかなければこれは解決できないというふうに心して、徐々に取り組んでいるところでございます。

山田(正)委員 大臣は、総合政策をすれば、あるいはアクセスを本当に十分でも短縮できれば随分違うんじゃないかというお考えのようですが、どうやら、そうじゃなくて、いわば倉庫そのもの一つとってみても、日本の場合には倉庫のコストが諸外国と比べて高いんじゃないか。なぜ高いのか。その高いのは、いわゆる倉庫に関するいろいろな規制があって新規参入の競争が妨げられているんじゃないか。そういうお考えはいかがでしょうか。

扇国務大臣 今先生がおっしゃったことも当然あろうと思います。

 ただ、規制があるからということのためには、少なくとも、倉庫の設備という点から考えましても、皆さん方が安心して預けられる設備というものも私は大きな要件になってこようと思います。

 まして、先ほども私はお答えしておりますけれども、倉庫というものの概念が今までと違ってもっと広くなりました。経済界なり産業界が倉庫を使って大きな物を預けるだけではなくて、御存じのとおりのトランクルーム等とか、我々の一般の生活の身近な物を、先ほども申しましたように、不用品とか長期に要らない物を倉庫に預けて今の狭い生活空間を最大限に利用するんだという生活様式の変化で、倉庫という概念がもっと広くとられるようになった。

 では、果たして、それを規制緩和するだけで、その倉庫の保証というもの、預かった物の保証というものはどうするのか。

 逆にそれは規制するというふうにおとりになるかもしれませんけれども、私は、それは相反するものではなくて、倉庫業の基本にかかわるものですから、倉庫業自体の規制は緩和するけれども、預かった物の品質保証は、逆に、倉庫の業界のためにも今度は加味していかなければならない。新規参入のところほどその保証ができていないというのが現状であろうと思っておりますので、相当数の倉庫業者におきましても営業所ごとに倉庫の管理指導員が設置されるべきである。

 そういう意味で今回も私は申し上げておりますので、ある意味では規制が強くなるんじゃないかという御批判もあろうと思いますけれども、倉庫業を持続するためには、品質保持ということのためには、ある程度理解がいただけるものであろうと私は思っております。

山田(正)委員 私、手元に平成十二年三月三十一日の閣議決定を今持っているわけですが、この中で、経済的規制は原則自由、必要最小限度にする、そう定められております。また、その中の例えば運輸関係の倉庫業においては、参入許可制について、政府の規制を最小限にする方向で検討し、できるだけ速やかに結論を得る、そうなっております。料金についても事前届け出制を事後届け出制にするということで、実は、今回こういう改正がなされるということは、規制緩和にとって、流通コストを下げていく意味においても大変結構なことだ、私はこの倉庫業法の関連の質問は要らない、意見表明だけでいい、五分でいいと当初述べておったわけです。

 ところが、私は、よくよくこの法案を読んでみますと、その実態として、規制の緩和がされたどころか、そうではないんじゃないか、むしろ重い規制がかかって、いよいよもって新規参入が難しくなってきているんじゃないのか、流通コストが倉庫業においてかなりかかってきているんじゃないか、そういう感じを受けたわけです。

 なぜそういう思いに至ったかと申しますと、許可制をやめて登録制にしております。確かに、この新しい改正案の第五条は登録制になっております。ところが、第六条に「登録の拒否」。普通でしたら、登録といいますと、要件さえ備えれば登録して、登録の拒否とか云々とかはあり得ないわけですが、これによりますと、第六条でいわゆる「登録の拒否」という新たな条項を設けている。

 例えば、許可制で許可を拒否するのとどこが違うのか。御丁寧に、第六条の四号の中に、倉庫の設備または施設が倉庫の種類に応じて国土交通省令で定める基準に適合しないとき登録を取り消すと。

 それでは、規制緩和前の法律ではどうなっているのか。

 これによりますと、やはり「許可の基準」の中に、倉庫の位置、構造または設備が保管する物品の種類に応じて国土交通省令で定める基準に適合しないときその他倉庫業の適確な遂行に支障があるとき、そういった場合には許可しないと。言ってみれば、その中身においては、許可を登録ということにしているけれども、あたかも閣議決定を受けて規制緩和したように見えるけれども、その内容においては変わらないんじゃないか。大臣、いかがでしょうか。

泉副大臣 許可と登録の物の考え方については、先生もう十分御承知の上でお尋ねをいただいたものと思います。

 今回の法改正で、先ほど来申し上げておりますように、登録制に変えたということで、今お尋ねの、現在の法律でどこが変わってくるのかということでございます。

 許可制の場合には、引用されました五条の四号に、適確な遂行に支障があるときは、許可基準の一つとして、能力がなければ許可をしないというようなことでありまして、こういうあいまいなことでは倉庫業界の皆さんが自由に自分の能力で参入することができないということで、その部分を削除して、共通しておる部分は、構造基準はきちんと守ってほしいと。そしてなお、消費者の皆さん方に安心していただけますように倉庫管理主任というものを位置づけるということが、先生の御指摘流に言いますならば、一つ加わっておるではないかということになりますが、これは、利用される方々に安心していただけるために、たしか四日市だったと思いますが、かつての大きな爆発事故等の経緯を踏まえて、こうしたことが今日まで省令で設けられておったものを今回法律に書き込ませていただくということでございまして、決して、規制の強化、そういう物の考え方ではないことを御理解いただきたいと思います。

山田(正)委員 私の方で、いわば国土交通省令というんですか、いわゆる倉庫についての省令での基準をいただきまして、それをつぶさに見てみましたが、副大臣は見られたでしょうか。まとめて御質問しますので、もし見られたら、見られたと答えてほしいと思うんです。

 この省令を見ていきますと、大変細かく規制されております。

 一例を挙げますと、床の強度。保管する物品の重量に耐える構造の床とは、一平方メートル当たり三千九百ニュートン以上の積載荷重に耐える強度を有するものとすると。そういう規制のほか、屋根の鉄筋コンクリートづくりやPC板、ALC板でつくられているもので、各構造に応じた工法による防水工事を必ず施行したものであるとか、外形がどうあるとか、こうして三ページ、四ページ、五ページ、さらに図面までなされております。これは大変な規制。

 こういうものが満たされていない限り倉庫業法で言う業者としての登録が取り消される。言ってみれば、新しい改正された法案の第六条の四号、倉庫の施設または設備が倉庫の種類に応じて国土交通省令で定める基準に適合しないとき登録を取り消しできる。ということは、中身は全く変わっていないんじゃありませんか。

泉副大臣 当初この構造基準を設けましたとき以来若干の修正をさせていただいておりますが、それでも、この倉庫業法ができましたときのいわゆる倉庫業界の倉庫に対する構造基準は、ある意味では甘かったと申しましょうか、そういう実態を踏まえて倉庫業法をつくらせていただき、構造基準を制定いたした次第でございます。

 もちろん、預け入れいただきます品物によって一つ一つ細かく規定してあるところがございます。最近ですと、温度管理の問題、除湿の問題とかいろいろございますが、今先生がお読みになりました事柄については、この法改正に基づきまして見直しをさせていただく、新たないわゆる基準をつくらせていただくということを考えておるところでございます。

山田(正)委員 扇大臣、お聞きになっておられたと思いますが、先ほどコンテナの例を挙げられて、日本がいかにコンテナの利用量が少なくなってきたか、各会社が港湾を利用されなくなったか。ということは、港湾の、いわば保管、荷役そして倉庫等々について日本はこういった規制が事実上なされ、そして今なお、今度の規制緩和といっても、中身は従来とほぼ変わらない、ただ名前だけが登録になって、実際の許可制と変わらないような行政がなされている。

 大臣としては、これをぜひ改めなければ日本はこのままだめになってしまう、そういうお気持ちはありませんでしょうか。

扇国務大臣 私が冒頭に申しましたように、世界水準に一挙に行ければこんなありがたいことはありませんし、二十一世紀の日本の産業も経済も私はバラ色になると思いますけれども、なかなか一挙にできないというところが苦しいところでございます。私は、少なくとも一歩ずつ今までと違ったことを今の社会情勢に合った二十一世紀型にしていかなければならない、そのための努力をするべきであると。

 私は、規制緩和というものが大前提にあるということだけは認識しておりますので、あらゆるところでの規制緩和はしていかなければいけない。けれども、先ほど申しましたように、規制緩和することによって全部が自由になって、それで業界としては困る部分もあるというのは、さっき車の話もいたしましたけれども、私は、基本的には、閣議決定しておりますように、規制緩和というものが大前提にあるということだけは認識しておりますけれども、一気呵成にできないということは山田先生も御理解いただけるところであろうと思っております。

山田(正)委員 扇大臣に、私は、日本の経済のこの落ち込みようというのは、もう残された時間は少ないんじゃないか、ないんじゃないか。大臣も御認識のように、こういう規制が余りにも多過ぎて物流コストが高くなり過ぎた。これは早急に、蛮勇を持って一気にこの規制緩和をしていかなきゃいけないんじゃないか。

 実は、閣議決定は、この内容を読んでみますと、平成十年から十二年度までの三カ年にわたりいわゆる規制緩和を計画的に推進するとなっていますが、今既に二〇〇一年、一年おくれております。一年おくれてやっとできた内容がこんなことでは、大臣として、今の日本経済がここまで落ち込んでさらにどうなるかわからないというときに、恥ずかしく思いませんか。大臣、お答え願いたいと思います。

扇国務大臣 恥ずかしく思うのではなくて、私は一気呵成にできればいいと言っていますけれども、あるいは規制緩和一つとってみても、労働組合の皆さん方は反対だとおっしゃることもございます。

 ですから、私は、国民の感情すべてを無視して一気呵成に、一刀両断にできるというのではなくて、少なくとも国民の皆さんの、各界各層の意見を聞きながら、お互いに一番いいことをみんなで理解してもらうという時間的なものがなければ、私たちは独裁国家ではございませんで自由主義国家でございますので、一刀両断に全部緩和して全部自由にしてしまえばいいということではない。

 けさも、ネギとかあるいはシイタケとか、今の日本が、これはちょっと話が変わりますけれども、中国から余りにも入っているので、しばらく、二百日間規制を、中国に遠慮していただこうというようなことまで言っておりますから、日本の現状とそして多くの皆さんの意見を聞かなければ、全部を一刀両断にできる状況にはない。

 それは、むしろみんなの労働意欲を阻害することであるということで、経済効果以上のマイナス面も出てくると私は思いますから、多くの皆さんの了解を少しでも丁寧にいただくようにしているというので時間がかかっていることも、それは確かにあろうと思います。

山田(正)委員 大臣に、少なくともこの新しい登録制、登録制といいながら登録の拒否、私も法律家として、「登録の拒否」という珍しい条文を見せていただきましたが、事実上許可制と変わらない。登録というのは本来届け出だけで済むはずなんですが、その中で、いわゆる「国土交通省令で定める基準に適合しないとき。」これは大変問題でございまして、この中身をこれから大臣が省令で決められると思いますが、ぜひ、先ほど話したように、細かいことを決めずに、ひとつだれでも新規参入できるような、そういう細かい不要な設定そのものが流通コストを高くして日本をだめにしている、それを十分認識して、私どもが常日ごろ尊敬している大臣の力をもってして、ぜひその点の御配慮はいただかなければと、そう思っております。その点について、一言で結構ですが、交通省令について大臣のお考えを。

泉副大臣 先ほどから、言葉が、許可制が登録制になったけれどもという御指摘がございました。

 しかし、そもそも一番最初に私がここでお答え申し上げましたように、許可制と登録制の法的な違いは先生よく御承知の上でお尋ねですねということを申し上げたのは、今回は、届け出制ではない、登録制だ。ですから、拒否要件に該当する場合には排除するということが登録制の原点でございますので、何が拒否要件かということになりますと、お客様に不安を与える、預けた品物が安全に倉庫の中である一定時間保管をしていただけるかどうか、そういうことに対しては、経済的規制ではなくて、やはり社会的規制という認識の中で守っていくべきだ、そういう思いでございます。

 先ほど申し上げましたように、現在の省令の中で決めておりますことにつきましては、今回の法律改正を受けました後、物品の安全、確実な保管を行うための最小必要限度なものということを大前提にいたしまして見直してまいる所存でございます。

山田(正)委員 どうも、副大臣のお話を聞いておりましたが、登録制と許可制がどう違うか。確かにこの第五条の中に、「その他倉庫業の適確な遂行に支障があるとき。」いわゆる裁量の余地でもって許可できるか、できないかという部分と、いわば第六条の四号、交通省令に定める基準に適合するとき、しないときという意味で、問題はその基準の中身なんですが、その基準を、中身をどう判断するかということではやはり裁量の余地もそこに働いていくはずなんで、こういう規制そのものがおかしいんじゃないかというのが私の論なわけです。まあ、泉副大臣とこれ以上議論しても仕方がありませんが。

 次にお聞きしたいと思いますが、社会的コストという言い方をなさいました。経済的コストと社会的コストがどう違うのかわかりませんが、いずれにしても、そういう規制があることによってコストがかさむということは事実。これで国際競争力が失われているというのも事実。その中で、今度の法案は、私はこれを読ませていただいて最悪だなと思ったのは、第六条の五号それから第十一条、倉庫管理主任者です。

 これは、今までの倉庫業法を見てみますと倉庫管理主任者なんてありません。ところが、これから先は倉庫管理主任者を選任してそれを登録しなきゃいけない。もしそういった人がいなければ登録を拒否しますよと。

 ということは、倉庫業にかかる経費にさらに管理者を選任して、これは社会的コストとは言いませんよ、経済的コストですよ、それで経費がかかるわけです。これで、さらにその管理主任者を選任するということは、まさに経費をさらにかけるということ、コストをかけるということ。言ってみれば、これは改正というよりも改悪の法律ではないか。さらに規制を重ねるという法律ではないか。

 それぞれ、副大臣と大臣に御答弁いただきたいと思います。

扇国務大臣 今、山田先生がおっしゃいましたけれども、先ほど副大臣が答えましたように、要は、社会の規制という観念からすれば、預ける人にいかに安心していただけるかというのが基本にあるというのは、私は、先生も意見を同じくしていただけることであろうと思います。

 そして、先ほど私が冒頭に申しましたように、倉庫業というものが近年拡大してきた。従来の倉庫だけではない、経済的範囲の倉庫だけではなくて、生活一般にも、トランクルームのような、預けられるような、社会的な倉庫としての意義も高まってきた。そういうことでは、預ける方の安心が得られないのではないかということで、少なくとも、参入規制と料金についても事前規制を緩和することということは入っております。そこであわせて倉庫業者において一定の要件を備える倉庫管理主任者を選任するというのはコスト高にならないか、今先生はそうおっしゃいましたけれども、この倉庫管理主任者の要件につきましては、資格試験ではございません。少なくとも二、三年の倉庫業の実務経験を持っている人ということにいたしておりますので、それに対しては、実質的に何ら新しい負担を強いるものではないということはおわかりいただけるものと思っています。

 今後は、新規参入者に対しましても、実務経験者にかわるものとして、講習を受けていただければそれで足りるというふうにも私たちは考えておりますので、少なくとも新規参入を排除するというようなことには至っておりませんし、そんなつもりもさらさらございませんので、私は、コスト高になるということにはならないと思っております。御理解賜ればと存じます。

山田(正)委員 今まで倉庫管理主任者なんてないところに、それが必要であって、例えば倉庫業をやっている、新しく参入しようというところが、そういう二、三年の経験を有する人がいないとなったら、どこからか雇ってこなければいけない、あるいはお金をかけて講習を受けなければいけない。それがコスト高につながらないとはどういうことで言えるんでしょうか。

泉副大臣 現在の法律でも、いわゆる倉庫管理指導員というものを、過去のいろいろな事例から置いていただく必要があるということで、通達で置かせていただいていることは、先生御承知のとおりだと思います。

 こうした、安全を大切にする、安心を大切にするというのは、どうしても社会にとって必要なコストだ、私どもはそういうふうに考えております。それなしに仮に大きな事故が起きた場合の経済的なロスを考えますと、予防的な意味からも、こうしたプロの方が品質管理を含めて倉庫の安全性を確保するということは、不可欠なコストではないかというふうに思っておるわけです。

 今、最後に先生お尋ねになりました、そうした適任者がいらっしゃらない、新規参入の場合にそういう者がいないではないかということでございますが、もしそういう方を持ち合わせていらっしゃらない新規参入者にありましては、講習をさせていただくということでこの規定の倉庫管理主任者制度というものを整えることができるということでございまして、大きな負担を業界の方、新規参入の方々に課すことにはなっていないところでございます。

山田(正)委員 大臣も副大臣も実際にはおわかりだと思いますが、ぜひ、今この施行規則の中で規制緩和を大胆に御指導のほどを、いわゆる官主導でなくて、政治主導のもとに断行していただきたいな、そう思うところです。そうしなければ日本はだめになるんではないか、そう思っております。

 その中で、きょうはいろいろ予定しておりまして、今村政務官にお聞きしようと思っておりましたら時間になってしまいました。

 それで、政務官に、トランクルームの件で、アメリカと日本、アメリカでは、トランクルームに限らず、倉庫業法にどういう規制があるのか、そういったことを調べていただいて、きょうひとつ答弁いただこうかと思っておったんですが、調べた範囲で結構でございますが、ひとつ、御意見と一緒にトランクルーム一般についての御見解を述べていただいて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

赤松委員長 吉田政務官。もう時間切れでございますので、短目にお願いします。

吉田大臣政務官 アメリカにおける規制についてのお尋ねと思いますけれども、アメリカにおきましては、特に食品でありますとか、あるいは危険物、医薬品保管施設については構造の規制が存在するわけでありますが、倉庫業という業態が確立しておられないものですから、多くの業者は、今ほど先生お話のありました物流業の一環として倉庫による保管を行う、こうした状況になっております。

 アメリカの場合は、土地のスペースにゆとりがあったり、あるいは自然条件も保管に適するということから、どちらかというと、トランクルームも含めて自家用倉庫の比率が大変高い、こういうことになっておりますものですから、御理解いただきたいなと。

山田(正)委員 規制はあるんですか、ないんですか。

吉田大臣政務官 規制はございません。

山田(正)委員 終わりますが、一言だけ。

 アメリカの例を見ても、そして日本の例を見ても、各政務官、副大臣、大臣はよくこの内容については御理解いただけたと思いますので、ひとつ施行規則においてぜひとも厳しい措置をお願いいたして、私の質問を終わらせていただきます。

赤松委員長 この際、休憩いたします。

    午後零時十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時五十九分開議

赤松委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。瀬古由起子さん。

瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。

 まず最初に大臣にお聞きしたいと思うんですけれども、政府として、倉庫業の国民生活に果たしている役割についてお聞きいたします。

扇国務大臣 今、倉庫業の社会的役割ということをおっしゃいましたけれども、きょう、るる各先生方にお答え申し上げましたとおり、国民生活で欠くことのできない重要物資を大量に扱っておりますし、御存じのとおり、その保管機能を通じて物資の需給調整あるいは物価の安定等に資する事業でございますし、我が国における産業活動や国民生活を維持していく上で極めて重要な役割を果たしているものである。また、それに加えさせていただきますと、先ほどから申しましたように、倉庫を利用する範囲というものが、今の生活上、我々の日常生活の中でも大変広範囲になってきたということが言えると思います。

瀬古委員 今大臣が御答弁いただきましたように、倉庫業は国民生活にとっても大変重要な役割を果たしているということでございます。

 物流事業の場合には、この間、実は需給調整が廃止されて、新規参入が進められてまいりました。現在の倉庫業法は、既に許可事業でありまして、料金は事前届け出制となっております。一連の規制緩和で他の物流業の規制が現在の倉庫業法並みの許可事業になったことで、現在、中小業者の営業と労働者の労働条件の悪化という問題が実は全国あちこちで起きております。

 にもかかわらず、今回の改正案では、倉庫業はさらに規制を緩和して登録事業となります。その上、形の上でも残っていました事前届け出制も法的に廃止するという内容の規制緩和が行われますが、一体それはどういう理由でしょうか。倉庫業の事業実態等から、規制緩和の必要性について具体的に明らかにしていただきたいと思います。

扇国務大臣 今先生、参入の許可制を登録制に今般させていただいた理由ということをおっしゃいました。

 御存じのとおり、倉庫業法制定時におきましては、倉庫の構造設備が不良なものが多かったというのも先生は御記憶にあろうと思いますけれども、今でもその不良な倉庫を持続しているところも多々ございます。そういう面では、火災でありますとか盗難等の事故が本当に多発しております。

 倉庫業者の経営基盤も一般的には弱体であるということが言えると思います。その理由は、言っておりますと長くなるのでちょっと省きたいと思いますけれども、例えば一つ例を挙げさせていただきますと、トラック業者やメーカーが自家用の倉庫として用いていた施設を、施設の有効利用のために営業倉庫に転用する事例がふえている。こういう事例もございますので、今申し上げましたように、確実な倉庫業の、本来の、国民の皆さんにお預けいただいて安心ですよ、そういうものはきちんと担保しなければいけない、またそれを保証しなければいけない。

 預かる方の責任としてそれをきちんとするためには、今回は、倉庫の構造設備の水準は相当程度向上はしておりますけれども、その経営基盤も向上させていかなければいけないということで、少なくとも私どもは、利用者の利益の増大のためには、新規事業者の参入を容易にしまして、倉庫業者間での適正な競争が行われることが望ましい、そう思って、この参入許可制を、必要最小限度の基準をクリアした場合にはだれでも倉庫業が営める登録制に移行するということでございます。

瀬古委員 適正な競争と言われましたけれども、今倉庫業が直面している最大の問題は、料金のダンピングをいかに防止、是正するかという対策が求められているということなんですね。実態は、今大臣が言われましたように、経営基盤が大変弱いというものがございます。

 倉庫業は現在でも自由な新規参入が行われておりまして、毎年百社程度の新規参入があり、約五千社が倉庫業を営んでおります。

 旧運輸省の八四年に調査した結果によりますと、普通倉庫事業者のうち、資本金一億円以下の中小企業が全体の八割を占めている。資本金一千万円以下の小規模企業が三〇%を超えて、資本金一億円以下または従業員三百人以下の中小企業は九五%近くにもなる。倉庫部門に従事する一社平均の常用従業員は約二十一人という実態でございます。

 冷蔵倉庫について見ますと、資本金一億円以下の中小企業は全体の八六%、一千万円以下の小規模が三七%を占めて、倉庫部門に従事する一社平均の常用従業員数は約十二名となっております。

 このような傾向は現在でも大きな変化はなく、倉庫事業の圧倒的多数を、今大臣が言われたように、経営基盤が大変弱い小規模事業者で占められているということが言えると思うんですね。

 そこで、今問題になっているのは、適正な競争と言われたんだけれども、実際には適正な競争どころか大変ひどいダンピング状態にある。倉庫業の規制のあり方に関する懇談会、これは一九九八年に設置されたわけですけれども、この懇談会では、最近、満庫状態、倉庫がいっぱいになった状態でも赤字になってしまう、今の料金は事実上コストを割ってしまっていると言える、このように冷凍倉庫の社長さんが述べておられました。

 特に、現行法では、料金の問題なんですけれども、事前届け出制になっているわけですね。その料金が不当な場合は、現在の法制度の中では届け出の段階で変更命令ができるようになっております。今まで政府としてこの料金の変更命令を行ったことはございますでしょうか。

洞政府参考人 お答え申し上げます。

 料金の変更命令を行った実績があるかというお尋ねがございました。

 倉庫業におきましては、好況時にその立地条件を利用して、不当に高い料金を収受したり、特定の荷主に対して不当な差別的な待遇を行ったりした場合には、公共の利益を阻害する可能性が強い。また、不況時にダンピングによる過当競争に陥った場合には、結果としてサービスの低下とか管理水準の劣悪化を招くおそれがあるわけでございまして、そういう意味におきまして、現行の倉庫業法におきましては、料金については事前届け出制といたしまして、その届けられた料金がこのような不当な料金である場合には変更を命ずることができる、こういう制度立てになっております。

 現在、料金は幅を持った料金で届けられてきておりますけれども、従来のこのような届け出料金につきまして、このような不当な料金といいますか、そういった料金であるというような問題は特になかったために、これまで料金変更命令というものを発動したことはございません。

瀬古委員 変更命令がないと。実際には、懇談会の中でも社長さんが、もう事実上コストを割ってしまっている、こう実態が言われて、そして、現場に入っていただければはっきりこの実態がわかると私は思うんですけれども、料金が事実上コストを割ってしまっている状態があるにもかかわらず、今お話がありましたように、変更命令はまだ一度もない、こういう状況なんですね。

 現行法では、このような料金ダンピングを届け出段階で防止して、その後も、届け出料金を下回った場合には、ダンピングが監査で認定されれば、その是正を倉庫業者に対して、罰金を科するということもできることになっております。しかし、今までも、今言われたように一回も変更命令をしたことがない。

 料金ダンピングの原因やその実態はどうかというと、荷主が圧倒的に優越的な地位にあるわけですけれども、その地位の利用、また、倉庫業も兼業している大手の全国ネットのトラック業者、また大手荷主が物流部門も経営している会社が実態としてはダンピングをやっている、こういう状況がございます。特に、倉庫業も兼業している物流業者による料金ダンピングは、倉庫料金で行われている実態がございます。

 今回の改正案では、料金そのものの法的規制が廃止される。そのことは、他の物流業者の料金規制と比べても、倉庫業の場合には最も緩和されることになってしまうわけで、これでは今まで以上に、倉庫業を兼業している物流業者の倉庫料金ダンピングに一層拍車をかけることになるのではないかという不安が、これは倉庫業界も含めて出てきているわけですけれども、その点の不安について、どのようにお答えになるでしょうか。

洞政府参考人 お答え申し上げます。倉庫業におきます料金規制の廃止の是非についてお尋ねがあったわけでございます。

 今回の改正におきましては、事前規制は極力縮減するという規制緩和の方針に従いまして、倉庫業者と荷主との間の交渉によって適宜適切な料金設定が行えるよう料金の事前届け出制は廃止することとしております。

 しかしながら、一方で、今回の改正におきましては、事業改善命令制度というのを新たに創設することとしておりまして、一般消費者に対しまして非常に不当な料金を設定したり、過当競争によるダンピング料金を設定するなど、差別的な料金、高過ぎる料金、また事業者相互間で不当な競争を引き起こす料金など、非常に不適切な料金が定められまして、結果として公共の利益が害されている場合には、早急に是正するために、国土交通大臣が料金の変更を命令するということをあえて明文でうたっているところでございます。

 さらに、その前提としまして、料金の事前届け出制は廃止しますけれども、実勢の料金がどういうふうになっているかということを把握するために、事業者から、法の二十七条に基づきまして料金の報告をきちっと求めることとしてございます。

瀬古委員 現在でも事前で変更命令がないわけで、後で事業改善命令がありますからといっても、本当にそれが機能できるかどうかというのは、私は大変疑問だと思っております。荷主と倉庫業者の立場というものを考えた場合には、きちんと法的にその料金が担保できるようなものがなければ事実上荷主の言いなりになってしまう、こういう業界のスタイルはやはりきちっとつかんでいただきたい、つかんでいてそういうふうに言ってみえるなら大問題ですけれども、今の御答弁では納得できません。

 改正案は、倉庫業として最低必要な要件で、第四条「登録の申請」というのがございまして、登録申請要件として、倉庫の施設と設備というのを定めております。このことは、一方で、倉庫の施設と設備は倉庫業に必要なコストだ、この施設と設備には一定のコストが必要だということを認めて、それが登録申請の条件になっているわけですけれども、その一方では、そのコストを賄う料金の最低限の基準を決めない。こんなおかしなことがあるだろうか。

 これでは、政府は、一方では倉庫業として事業をすることを認めておきながら、その事業を行うに必要な最低限のコスト、これをきちんと認めないというものじゃないんだろうか。幾ら新規参入や撤廃は自由だといっても、社会的公共性を法的に認めておきながら、その料金は勝手にやってくださいという点では、私は無責任にならないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。

洞政府参考人 お答え申し上げます。

 倉庫業に関する料金というのは、おっしゃるとおり、今物流業界においては、倉庫業に限らず、コストダウンといいましょうか、物流の効率化というのが非常に厳しく問われているというのは御指摘のとおりでございます。そういう意味で、倉庫事業者を含め、物流事業者というのは、コストダウンに努め、懸命の経営努力を図っているところでございます。

 その上で、料金というものは自由市場において荷主と事業者の合意、交渉によって適正な料金が形成されるべきものと考えておりまして、最低限の料金をここで決めるとか、こうあるべきだとか、あるいはどちらか特定の一方の当事者に対してどうこうするというのはなかなか難しい面があろうかと思います。

 ただ、そうは申しましても、先ほど申しましたように、要するに、明らかに不当な料金とかダンピング等が行われているような場合には、そのまま放置しておけば大変な問題になるということから、何度も申し上げますけれども、事業改善命令というのを創設して、必要な場合には行政として介入できるということを担保しているわけでございまして、言ってみれば、これがしょっちゅう発動されるということになれば問題になろうかと思いますが、逆に、こういうことがあることによって、また行政としても料金を把握しておりますので、一定の歯どめといいますか、そういった機能というのも果たせるのではなかろうかというようなことを考えております。

瀬古委員 今回の改正案第十五条では、先ほど出ておりました事業改善命令の問題が出ておりますけれども、これが発動されるのは、倉庫業者の事業について倉庫の利用者の利便その他公共の利益を阻害している事実があると認める場合は、当該倉庫業者に対して、その約款とか倉庫の施設及び設備のほか、料金の変更その他の事業運営を改善するために必要な措置をとるべきことを命ずることができる、このようにしているわけでございます。

 この改善命令の発動要件には、届け出料金のダンピング、料金の五〇%以上を占める人件費の削減による著しい労働条件の低下などについて、その是正等を行えるような命令ができるんでしょうか。公共の利益を阻害している事実、こういうものに当てはまっていくんでしょうか。いかがでしょう。

洞政府参考人 事業改善命令の発動の可否について、特に、労働条件を切り下げて賃金を不当に抑えるような事業者に対してできるかという御質問でございます。

 事業改善命令制度というのは、今回の改正によりまして、参入規制と料金の事前届け出制を緩和することになるわけですけれども、これにあわせて、事後チェック型の行政への転換を図るために創設するものでございます。したがいまして、倉庫における管理方法が不適切なために保管物品に損害が生じた場合など、倉庫事業者の事業について倉庫の利用者の利便その他公共の利益を阻害している事実があると認める場合には、料金の変更も含めて改善命令をとることができると規定しているところでございます。

 労働条件を切り下げ、あるいは賃金を不当に抑えるような事業者についてでございますけれども、これは、言ってみれば、客観的な基準、例えば労働基準法等の法律違反を行っているような事業者について、それを是正すべきというような事業改善命令の場合には、それは可能ではないかというふうに考えております。

 ただ、これについては、具体的な判定というのはなかなか難しいのではなかろうかと思います。労働者について労使間でどのような労働条件にするか、賃金を幾らに設定するかという問題については、本当に先生の方が御専門でございますけれども、事業者のいわば一種の経営判断の問題でございまして、基本的にはこういったものは事業改善命令の対象とはなり得ないのじゃなかろうかと思います。もちろん、適正な労使関係を維持して健全な倉庫業を営むよう国土交通省としてもきちっと監督をしていくというのは当然であると考えております。

瀬古委員 今の御答弁でも明らかなように、もちろん、労働基準法違反をやっていればこれは労働基準監督署が入りますから、皆さんの方が入らなくても、もともと問題外なんです。しかし、今こういう規制緩和で問題になっているのは、労働基準法違反すれすれのところで、労働条件が、大幅に賃金カットされたり切り下げられたり、そうして業者がこの今の規制緩和の競争の波を何とか乗り切っていかなきゃならないというところに追い込まれているところに、今こういう業界の大変大きな問題点があるわけです。

 形の上では、倉庫や設備の問題では、何とか契約書との関係で維持しなきゃならないということがあっても、こういう業界そのものもかなり人件費が占めるわけです。その人件費を労働者の労働条件の悪化で乗り切ろうというような業者が出てきても、それは労使関係の問題です、このことについては事業改善命令は出せないんだということになれば、結局、労働者へのしわ寄せになっていくことも十分考えられるということは、今の御答弁からも明らかだというふうに思うのです。

 今回の改正案では、事前の適正な料金の基準、それが法的に廃止されてしまうわけです。そうすると、この料金はダンピングの料金だとか、これが適正なのかどうかという、この料金水準はどういうようにして決められていくんでしょうか。事業改善命令をやるにしても、法的に担保されていなければこれがあいまいになっていくということはないでしょうか。その点、いかがですか。

洞政府参考人 お答え申し上げます。

 現在の料金変更命令、料金の事前届け出制を前提とする現行法における料金変更命令は、先生御指摘のとおり、不当に高過ぎる場合、あるいは不当な、差別的な取り扱いをする料金である場合、あるいは不当に安い料金、そういうことで基準が書いてあるわけでございまして、それに対しまして、今回新たに創設しました事業改善命令では、法律上はこういう場合というのは書いておりません。ただ、料金の変更を含めということで、料金の変更はできるんだ、事業改善命令もその対象になるんだということを明確に規定しております。

 その基準はどうするんだという御質問でございますけれども、これにつきましては、今の法律の料金変更命令で考えております考え方と同じ考え方をとることが基本であろうと私どもは考えております。

 先ほど申しましたとおり、料金の事前届け出制は廃しますけれども、私どもは、別途といいますか、事後的に事業者の皆さんから料金を法の二十七条に基づきます報告という形でいただきまして、料金の実態等把握した上で、そして実際の料金が不当に原価を割って非常に不当な競争を及ぼすものであるかどうか等々、他の類似の業種等々の料金の実態等とも突き合わせながらいろいろ判断していくということになろうかと思います。

瀬古委員 現在、法律でどういう場合に不当な場合かということがきちんと書かれているのに、それがなくなってしまう。そして、いろいろ後で料金を聞いてそれが不当かどうか調べるといったって、その判断の基準がなくなってしまうわけですから、それも、法律で書かれていたことをわざわざやめてしまうわけですから、これは私はもう重大な問題だと思うのです。現行の法律できちっと決められている第六条は、絶対廃止すべきでないと思うのです。

 時間がありませんので次に伺うのですけれども、実際に倉庫業法の規制緩和がどういう形で先取りされているかという実例をぜひ紹介したいと思うのです。

 日本通運の加古川支店が、その敷地内に倉庫業法に違反してテント倉庫を設けて倉庫営業に使用しているということが明らかになりました。加古川市役所から建築基準法に違反する旨の指摘も受けたと聞いております。外部からの手紙で指摘、告発を受けて初めて神戸海運監理部が把握して対処を講じた事例がございます。

 前もって依頼してありますけれども、この事案について実態、違反の事実、そして神戸海運監理部がどういう対処を講じて、その結果、現状どうなったのか、簡潔に説明してください。

洞政府参考人 お答え申し上げます。

 日通加古川支店の倉庫業法違反問題の概要というお尋ねでございます。

 まず、違反事実の有無といいますか、概要でございますけれども、日本通運加古川支店におきまして、ソフトボール、バレーボールなどスポーツ用品のゴム製品をテント倉庫に、鋼管を骨組みして防炎性の生地を表面に使用したものでございますけれども、保管しているということが、昨年の十一月に判明いたしました。通報を受けて神戸海運監理部が把握したわけでございます。

 これは、その一年前の平成十一年の十一月、ちょうど一年前には、本来の認可倉庫といいますか、きちんとした倉庫の中に入っていたのですけれども、それを改造するためにゴム製品を荷主の了解をもらった上で当該テント倉庫に一時仮置きしていたというものでございます。

 そして、改造の工事が終了したわけですけれども、もとの認可倉庫の中はもうほかの荷物がいっぱい入っていたので、これも荷主の了解を引き続き得ながら当該テントの中に保管していたということでございます。

 日通の支店は、寄託者に当該テント倉庫に一時仮置きするということの了解をとっておりまして、その後についても荷主側はそれを十分承知していたということで、クレームとかそういったものは発生していない。

 倉庫業法の取り扱いでございますけれども、当該テント倉庫というものを使用する場合には、倉庫の位置、設備等の変更の認可というものが必要になるわけでございますけれども、日通の加古川支店はその認可を受けておりませんから、倉庫業法に違反するという行為に当たるわけでございます。

 これを所管しております神戸海運監理部は、昨年の十一月の十四日に運航部長の名前で、違反行為を早急に是正すること、こういう事態が二度と発生しないように再発防止の措置を講ずることを命ずる注意書というものを同社に発出いたしました。

 そして、日通は、これを受けて、直ちに荷主の了解を得て、貨物の保管をするための契約である倉庫寄託契約が結ばれていたわけですけれども、それを直ちに解除しまして、言ってみれば、そのままそこに置いておくということで賃貸借契約に変えたということであります。そして、違法状態を是正した。また同時に、こういう事態の再発防止に向けて、倉庫担当者を対象とした研修を実施して倉庫業法の遵守というものを徹底した。こういう事案でございました。

瀬古委員 今の話を聞いておわかりのように、倉庫業法の違反が起きても、荷主と話し合って場所貸しの賃貸借契約に変えてしまって、もう違反じゃなくなりました、倉庫業法の範疇外になりましたなどということが平気で行われる。契約を切りかえるまでの間に、工事終了の倉庫に入り切らないほどのたくさんの分量を、しかも認可されていない倉庫で扱っていた。こういうことが行われて、実際にはこれは第二十七条による立ち入りも行われていない。単なる任意で聴取されただけだ。こういう違反行為が起きても、平気でこういうことが見逃されているわけです。

 このような構造設備に対する事案について、二十七条で報告、検査、立ち入りということが言われているわけですけれども、これまで立ち入りもやっていない、こういう状況がございます。そういう意味では、今回外部からの告発がなければ、全くそのまま違法行為が、ちょっと書類を書きかえるだけで倉庫業法以外のところへ行ってしまうということがまかり通るわけですね。こういう状況ですから、このまま登録制に切りかえるということになりますと、大切な預かった荷物を確実に保管するという目的遂行にも支障が出かねないということになってしまいます。

 今回、優良なトランクルームを国が認定するという制度の創設そのものは、私たちは消費者保護に資するものとして評価できるんだけれども、今紹介しました事例に見る状況では、行政の対応に極めて不安が残るわけでございます。きちんと法の目的をもっと認識して、本当に倉庫業の果たす重要な役割について深めていくべきで、これ以上の規制緩和をやって、脱法的なことまで認めていくようなやり方は断じて許すわけにはいかないということを述べて、私の質問を終わります。ありがとうございました。

赤松委員長 日森文尋君。

日森委員 社民党の日森文尋でございます。

 お疲れのところ大変恐縮ですが、三十分ですので、質問させていただきたいと思います。

 先ほども御報告ございましたが、あり方懇談会が五回開かれて、そのうち二回、特に業界の方中心だと思うんですが、ヒアリングが行われたという報告がありました。

 最初に、ちょっとそのヒアリング、どういう中身であったかという資料を持ち合わせていないものですから、ぜひこの法律の改正に当たって、関係労働者や労働組合あるいは倉庫業界の意見を聴取したのはわかりましたけれども、聴取したその中で、特にそれぞれの各界からの特徴的な意見はどんなものであったのか、具体的にお聞きをしておきたいと思います。

洞政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年の秋から冬にかけまして倉庫懇談会というのを開きまして、いろいろな各方面からの御意見を伺い、議論、意見交換を行いました。

 倉庫業界及びその労働組合、意見聴取の特徴的な御意見はどうであったかというお尋ねでございますけれども、まず倉庫業界につきましては、一般倉庫の団体でございます社団法人日本倉庫協会、それから冷蔵倉庫の団体であります社団法人の……(日森委員「それは資料に出ているからわかりますから、意見を」と呼ぶ)はい、済みません。

 この中で特徴的な意見というのは、やはり、なぜ倉庫だけが突出して規制緩和の対象となるのか。先ほど、いろいろ先生方から御指摘受けましたように、倉庫は、参入については許可制であります。料金については事前届け出制でございます。ほかの事業法がいろいろ規制緩和をされた結果、許可というようなことで並んできたのに、また倉庫が登録あるいは事前届け出制の廃止というような規制緩和を行うということになれば、他の物流業の規制の態様との整合性がとれないではないか。それから、中小企業が大多数を占める倉庫業のいろいろな特殊な事情、実情等に十分配慮していただきたいということ。また、これもいろいろ御質問等が出ていますけれども、倉庫の税制特例措置について、この規制緩和が非常な悪影響を及ぼすのではないだろうか、ぜひ現行どおり維持することが必要であるというようなことが、倉庫業界の主な御意見であったかと思います。

 また、労働組合からは、特に料金規制の緩和に伴います労働条件の悪化といいますか、そういったものについて強い懸念が示されたということでございます。

日森委員 それもちょっと後で触れさせていただきますが、同時に、需給調整は当然撤廃されていて、言ってみれば新規参入の障害にはなっていないという今の制度になっているのですが、それでも、調査室の資料を見させていただきますと、この九年間で千三百業者が新規参入している。廃業した方もいらっしゃいますが、それは約六百業者であって、差し引き、これは大まかな約の数字なんですが、そうすると七百業者ぐらいがもう既にこの九年間で新規に参入を果たしているわけですね。

 先ほど瀬古先生の話にもあったんですが、倉庫がいっぱいになってもなかなかペイしないという状況が今でもあるよ、そういう話もあるわけです。そうしますと、だれでも倉庫業に参入できるということになると、今ですら厳しい経営実態がさらに厳しくなるということも当然予想されるんですが、現在の倉庫業界の需給関係、これについて把握されているものがありましたら、教えていただきたいと思います。

洞政府参考人 お答え申し上げます。

 倉庫業界の現在の需給関係についてのお尋ねでございますけれども、倉庫業者に対する報告徴収や任意の調査によって私どもは倉庫業の需給関係について把握に努めているところでございます。

 いろいろなとり方があろうかと思いますが、これによりますと、例えば一類から三類倉庫まで、危険物や穀物等の倉庫を除いた普通倉庫で大ざっぱに見てまいりますと、例えば平成十一年度と五年前の平成六年度を所管面積あるいはその利用率について比較してみた場合には、平成十一年度の所管面積というのが全体で三千七百万平方メートル、全体の利用率が大体六五%ぐらいでございます。その五年前の所管面積というのは三千二百三十万平方メートル、利用率にいたしますと大体六六%ということでございます。景気の変動によりまして若干の変動はございますけれども、おおむね一定の水準の需給関係にあるというふうに考えられるわけでございます。

 ちなみに、一般的に、倉庫を合理的に利用した場合の限界の利用率というのは、おおむね七割程度というようなことが言われております。

日森委員 そこで、そういう状態で新たな法改正が行われるということになるわけです。これはもう各委員の皆さん方それぞれ問題にされてきたことなんですが、許可制を登録制に改める、それから料金の事前届け出制を廃止する、その二つが目玉だ、こういうふうに言えると思うのですが、実際これをやったことによって新たな混乱が生じるんじゃないかという懸念が払拭できないんです。

 特に、競争が一層激化をするということになると思いますし、それは言いかえると、この法改正によってスクラップ・アンド・ビルドというのが一層促進をされるんじゃないか。言ってみれば、スクラップをされるのは中小零細の倉庫業であって、いわば基準を満たして、これから、また大臣の言葉をかりて申しわけない、二十一世紀の倉庫を設立できるのは、かなり大手の、資本力の大きいところだけが生き残っていくような、そういう状況になるんじゃないかという心配をしているんです。

 それについて、まず最初に、ちょっとお伺いをしておきたいと思います。

洞政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、先生の御指摘の後半の、今後の倉庫業の将来見通しといいますか、そういったものについて私なりの意見を申し上げますと、御存じのとおり、物流業界、倉庫業も含めて、今非常に激動期にあるわけでございまして、倉庫業というものも、一般倉庫、実際の倉庫業五千社ございますけれども、大抵の業者が兼業をしているという状況でございます。その程度はいろいろ差はありますけれども、そういういろいろな業種を兼業してやっている業者が非常に多いということです。

 これからいろいろ物流の高度化、効率化というものがどんどん進んでいくと、倉庫業もその波から逃れることはできないわけでございまして、言ってみれば、これからは倉庫業も、総合物流業、そういったものにいろいろ変わっていくグループ、あるいはもう一つは、やはり倉庫の保管という専業化というもの、自分のノウハウといいますか、倉庫の保管に対するノウハウというのを徹底的に高めてその専業化をさらに強めていく、そういう二極に分かれていくんではなかろうか、こういうような見通しといいますか、そういう考えを持っているところでございます。

 それで、最初の御質問に戻りまして、参入規制を登録制に改めて新たな混乱が生じるおそれがないかというお尋ねでございます。

 これも午前中から何度も申し上げておりますけれども、現行の許可制において要件としております設備構造基準というものは、登録制に移行いたしましても基本的に維持することとしておりますので、それこそ不十分な構造設備の倉庫といったものが、先ほどのテント式の倉庫とか本当に戦後あったバラックのような倉庫とか、そういう不十分な、保管に適さないような施設をもってどんどん不良なる参入業者が参入してくるということは今後もやはりなかなか難しいだろうと思います。

 だから、今まで百社ずつぐらいふえてきているわけですけれども、この登録制によって直ちにこれが一気に二倍、三倍になって怒濤のごとく他業種から倉庫業に入ってくるということは、実際問題としては余り考えられないのではないか。そういう意味で、数が急激にふえて過当な競争が起こって混乱が生ずるおそれというのはそれほどないのではなかろうかと思います。

 ただ、こういったいろいろな他業種からの参入、あるいはそういった参入を容易化、客観化することによって、そういう競争条件あるいは料金規制の緩和と相まって、事業の活性化あるいはいろいろな多様なサービスの展開につながっていくということが期待される、また、そのためのこの法律改正であるということでございます。

日森委員 それから、関連して料金の問題なんですが、これも随分御意見がありました。ダンピング競争や不当料金の設定、もしそんなことがあった場合は事後チェックで事業改善命令を出すというお答えを何度もいただきました。しかも、事業主から料金の報告をさせる、それでチェックをしましょうということなんですが、そういうことをずっと事後になってチェックしてやっていくのであれば、事前届け出制があっても何ら支障はないんじゃないか、その方が後の手間暇はかからなくて、今までのやり方の方がよほど効率的でいいんじゃないのかというふうに思ったりするんですが、その辺はどうなんでしょう。

洞政府参考人 お答え申し上げます。

 事前と事後で実態は変わらないではないかという御指摘であろうかと思いますが、大いに違うと思います。

 何度も申し上げておりますけれども、料金をどう決定するかということは、事業者の事業運営によって非常にキーファクターとなるわけでございまして、それで、それを事前に運輸局の方に持っていって細かく審査し、あるいは原価計算書等々を示していろいろ手続をとるというのは、これはやはり大変な事前抑制的な規制につながるのではなかろうかと思います。

 それこそ、物流事業というのが非常に多角化し、いろいろなきめ細かいサービスあるいはいろいろな新商品等々が出てきているわけでございますけれども、それに応じた弾力的、機動的な料金設定というものが役所の事前届け出、事前チェックによってブレーキがかかるというようなおそれもあるわけでございます。そういう意味で、事前届け出制というのを今回逆転しまして、事後的に、これも一件一件届けさせるつもりはございませんけれども、一定の幅を持った料金というような形で報告をさせるということ、そして、実際問題として、問題がある場合にはそれを是正させるというこの事後チェック行政の方が、事業者にとっても彼らの事業展開を図る上で極めて沿うものであるというふうに考える次第でございます。

日森委員 先ほどの御答弁ですと、事後チェックで料金について改善命令を出すとかいうときの基準も、これまでの基準をいわば踏襲するような御答弁であったかと思うんです。

 そうすると、一体何だというふうに逆に言いたくなるんですよ。だったら、ここであえて、そうではなくて、倉庫業の安定とか秩序を守っていくとかいうことも含めて、先にきちんと事前のチェックがあったって何ら問題がないんじゃないのかというふうに思えてならないんですけれども、それはどこにどうメリットがあるのか、さっき言われたように、少しサービスの幅が広がるとかいうことだけのメリットなんでしょうか。

洞政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますけれども、やはりきめ細かなサービスに対応した、これまたきめ細かな料金設定といったことが今後の倉庫業の事業運営においてもますます必要になってこようかと思います。それを、一つ一つ事前に役所に、運輸局に届け出てその審査を受けるというようなことを行っていたのでは、機動的、弾力的な経営といいますか、そういったものができないおそれがあるわけでございまして、それがひいては事業の活性化とかそういったものにつながらないといいますか、むしろそれを否定するおそれがあるということを懸念しているわけでございます。

日森委員 わかりました。

 それでは、ちょっと次の質問に移ります。

 ダンピングや不正な料金については改善命令なんですが、これも恐らく労働組合の側からの御意見があったと思うんです。特に、こういう法改正が行われていく中で、倉庫業に従事する労働者の雇用問題とか労働条件の問題、ここに大変重大な影響を及ぼす懸念もあるというふうに恐らくおっしゃっていたと思いますし、当然私もそう思うんです。

 そこで、ここに働いている方々の雇用労働条件、これについてどのような影響が出るとお考えになっているのか。これは労使関係だけの問題で、法律を改正して参入しやすくなるというふうになるわけですし、料金も、自由化とは言いませんけれども、それぞれサービスの度合いに合わせてやろうということですから、それを決めるわけですから、そうすると、どのような影響が出るというふうにお考えなのか、それとも全く心配ないという前提でお進めになっていらっしゃるのか、そこについて最初にお聞きをしたいと思います。

洞政府参考人 全くそういう問題は起こらないと思っているのかということでございますが、そういうことではございません。

 倉庫業の経営実態というのは、本当に八割ぐらいが中小企業で占められているわけでございまして、そういう意味で、一気に規制緩和を行い、そして料金の事前届け出制も廃して全くフリーにするというようなことになれば、やはり不当なダンピングとか、あるいは非常に問題が生じる事態というのが考えられるわけでございます。

 そういう可能性が起こり得るということを考慮した上で、事業改善命令というものを置いて、また、その前段として、料金の実態がどうなっているかということを私どもとして常時把握することによってそこを監視していくということにしておりますので、そういったことで、非常に利用者の利便が損なわれ、あるいは公共のサービスの改悪が行われ公衆の利便が損なわれることがないよう、十分監視していかなければならないということを肝に銘じているというところでございます。

日森委員 関連して、八割とも九割とも言われる中小零細の事業者、この方々への影響というのはどのようにお考えになっているでしょうか。

洞政府参考人 そういう意味では、そういう労働者にしわ寄せが行ったり、雇用労働条件に重大な影響を与えないように、私どもとしても、料金の実態がどうなっているかとか、そういった問題が生じていないかというものを常時監視していく必要があるということを今申し上げた次第でございます。

 しかし、だからといって今のままでいいというわけではなくて、物流業の中における倉庫業も今大きな変革期にある。また、そういうふうにどんどん脱皮していかなきゃいけない。こういう状況の中で、倉庫業者も労働者と一緒になって、経営者も労働者と一緒になって、そこのところを創意工夫、活性化を図っていただきたいという必要性も、また片一方においてあるわけでございます。

 そういう意味で、そういうところにしわ寄せが行かないような観点から今回の改正案をまとめたということでございますので、どうぞ御理解を願いたいと思います。

日森委員 ですから、結局、中小零細事業者、それからそこに働く労働者の雇用、労働条件、これらについても、セーフティーネットとはとても言えないんですが、そこをチェックするのは、業務改善命令、これ一本しかないですよね。それ以外何も準備をされていない。

 例えば中小零細が倒産の危機に至っても、それはもう競争の中で仕方がない、自然淘汰だ、そこで関連する労働者が首切りになっても、これは仕方がない、自然淘汰だ、料金だけをきちんとチェックしていれば、経営がうまくいって公正な競争ができるというふうにお考えになっているとしか思えないんですが、もう一度お聞きしたいと思います。

洞政府参考人 現行法におきましても、料金は事前の届け出制で、それが不当であるかどうかをチェックしているということでございまして、細かく、労働条件とか雇用の確保とか、そういうことについて特別の手当ての規定があるというわけではございません。

 この事前の規制を事後に変えて、事業活動の支障にならないようにするというのが今回の改正の大きな変更点でございまして、そういう意味では、今回の改正によって、労働者、あるいは雇用とか労働条件を切り捨てることを考えているものではないということを、繰り返し申し述べさせていただきます。

日森委員 大臣、よろしいですか、突然で申しわけないんですが。

 今、もちろん、首切りを考えているなんということはあっていいはずがないわけですが、午前中の樽床先生のお話とも関連するんですが、規制緩和一般、それから構造改革、これらをやっていくときには、それによって影響を受ける方々のセーフティーネットをきちんと整備していくことが大前提だ、それは当たり前の論議になっていると思うんです。これは、この倉庫業だけではなくて、規制緩和にさらされているすべての分野でそのことが当然問われなきゃいけないと思っているんです。そういう意味では、事業改善命令という伝家の宝刀一本だけで何とでもなるんじゃないかというふうにお答えになっていらっしゃるようだったので、ちょっと心配になったんです。

 大臣、御見解があったら、恐縮ですが、一言お願いしたいと思います。

扇国務大臣 午前中からもお答え申し上げましたように、何でもぶった切ればいいなどというような乱暴なことを考えているわけではございませんで、規制を緩和するときには必ず競争原理も起こってくるという社会の情勢の中では、私たちはやはりそのセーフティーネットとして違ったものを、そのときに規制緩和によって、弱者と言うのは言い過ぎでございますけれども、それに近い人たちが出たことに対するセーフティーネットというものは考えなければならないというのは、私は今の二十一世紀の大きな構造改革の中ではこれも重要な一点だと思っております。

 また、今議題にいただいておりますこの倉庫業法に関しましても、先ほども瀬古先生がおっしゃいましたように、現時点では、事業者数が五千九十一社、そして従業員数が十万七千人ということになっております。しかも、先ほどからお話しになっておりますように、倉庫業者の中でも、中小企業の占める割合というのは実に八四%であるということで、今申しましたように、これらの御論議いただいている中で、中小企業の雇用者の皆さん方の、規制緩和することによって、ある程度のセーフティーネットはどうするかということ。

 また、この規制緩和によって新たに業者がふえるかもしれないわけですね、先ほどから申していますように、今、新たなトランクルームというような業者もふえてきておりますので。そういう意味では、規制緩和することによって、また違ったところでの就職口もふえてくるということもありますので、一概に、全部規制を緩和したらセーフティーネットがなくなるということではなくて、規制緩和することによって新たな産業の業種もふえてくるということも勘案していただきたい。

 その辺のところは先生よくおわかりの上でお話しになっているんだろうと思いますけれども、規制緩和という言葉の中には、規制緩和をすることによって弱者に近い人たちも出てくるけれども、新しい産業の創設というものが二十一世紀型にどうしても必要だということで、閣議決定しております規制緩和というものは推進していきたいというふうに私は思っております。

日森委員 ありがとうございます。

 ちょっと時間がなくなったので、少し質問を飛ばさせていただきます。申しわけございません。

 きょうは、大臣お疲れなので、統括官とさしでやろうという決意をしてまいりましたので、済みません、突然の御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 現行法では、事業遂行能力というのが許可の条件になっている。今度は、倉庫管理主任を置くことと変えているわけですが、実際に、事業遂行能力があるかないかを判断するのはかなり重要なことじゃないかというふうに思っているんです。ところが、それが消えて、倉庫管理主任者で対応する、対応するというのはおかしいですけれども、変わることになったということで、新規参入してくる事業者の力量とかいうものについては一体どこでどんな判断をされるのかということがちょっと不明瞭だったものですから、そこをお聞きしたいのと。

 ちょっと時間がありませんので、幾つかまとめて聞かせていただきますが、それから登録要件の中で、倉庫の施設基準を見直すということになっていましたが、この事業遂行能力の検討が必要なくなって、しかし、なおかつ、登録要件についてはこれを見直した上で維持していくということになるわけですが、これはやはり事業遂行能力みたいなものがきちんと把握されないと難しいのではないかという気もするんですけれども、その辺について、ちょっと御意見を伺いたいと思います。

洞政府参考人 現行法の事業遂行能力という、許可基準の中で言葉だけとりますと非常にあいまいな基準があるわけでございまして、実はここで、私どもは経営の安定性というものを見ておりました。

 具体的には、集荷の見通しであるとか、収支見通しであるとか、資金の調達先であるとか、そういったものをチェックして判断していたわけでございますけれども、こういった判断要素というのは、ある意味で、審査の仕方によっては非常にあいまいなものになるおそれがあるわけでございます。非常にわかりづらいところがありますし、また、事業者の主観的な要素にかなり左右される部分もございます。そういう意味では、透明性であるとか客観性に非常に欠けるという部分がございました。

 それで、今回、許可制を登録制に改めるについて、その登録の基準としては、倉庫の基本的な要件というのは何であろうかということを考えました場合には、責任を持って寄託貨物を保管するということに尽きるわけでございます。そこがきちっと担保されていれば、ほかの要素は、それこそプロ対プロの世界でございますから、そこはもう細かく見なくてもいいという判断のもとに、そしてその上で、では、客観的な基準というのは、保管について基本的な要件は何であろうかというと、やはり倉庫の建物の設備構造基準というものと、これはハード面でございますけれども、もう一つはソフト面で、五十年代後半に事故とか不祥事が倉庫においてもいろいろと多発いたしまして、そこで、私どもは通達で、倉庫の保管の責任体制をきちっとさせるという意味で、今回法律に入れております倉庫管理主任者に相当するような、そういった者を指導してまいりました。おかげさまで、倉庫の安全とか保管責任とか、あるいは労働災害の防止等々について責任を有する倉庫管理指導員を置いたおかげで、その後、大きな事故等は余り発生しておりません。

 そういう意味で、先ほどの質問に戻りますと、事業遂行能力というのは、倉庫の設備構造基準と、それとソフト面であります倉庫管理主任者を着実に選任することという客観的な要件をクリアすれば登録を受理するということに変えるものでございます。

 それから、設備構造基準を見直す。午前中の答弁でもいろいろございましたけれども、これは先生の御質問にもございましたとおりに、設備構造基準も今の時代に照らして見直す部分というのは多々あるわけでございます。基準としても非常にあいまいなものもございますし、他の法令と重複している部分もございます。そういう意味では、倉庫の設備構造基準についてもきちっと見直して簡素合理化をする。基本的には、ここを維持して、事業遂行能力について、能力といいますか、実力といいいますか、力量をここでしっかり見ていくということにしているものでございます。

日森委員 もう時間になってしまいました。

 最後に、お願いと言うとおかしいんですが、先ほども大臣にお伺いしたんですが、セーフティーネットの確立というのは本当に大事な話で、これを一切つくらないで規制緩和だけ進めていけば、それは犠牲者は膨大に出てくる。たまたま、新たな事業が発生する、あるいは雇用が発生することに伴っていいことがあるかもしれませんけれども、これまでの例からいうと必ずしもそうとも言えないような、そういう実態になっているんじゃないかと思うんです。

 そういう意味では、ぜひ国土交通省全体としてそういうことを進めていっていただきたいと思いますし、同時に、倉庫業でいえば、設備にはお金がかかるけれども回収になかなか時間がかかるという収益性の低い企業になっているわけなので、税金の特例措置だけではなくて、新たな立地のときに支援策をつくるとかいうことも含めて御検討いただけたらありがたいということを最後に申し上げて、時間ですので質問を終わります。ありがとうございました。

赤松委員長 井上喜一君。

井上(喜)委員 井上喜一でございます。

 倉庫業法の改正が行われるということで質問をさせていただきますけれども、私は、倉庫業というのは、大変重要な役割を果たしているにもかかわらず、日常的に余りそういう機能が評価をされているとも思えないし、また華々しく取り上げられるというようなことも余りないと思うのであります。

 私は、倉庫業の役割といいますか、機能というのを正しく評価しまして、倉庫業者についてもそれなりの努力をしてもらうと同時に、国におきましても適切なる対応をしていくということが必要だ、こんなふうに考えまして、そのような視点から質問をさせていただきたいと思うのであります。

 倉庫業は日常の経済活動の変化に伴いまして発展をしてきていると思うのであります。経済活動が量、質ともに変化をしていく、多様化していく、あるいは産業構造が変わるということに応じましてどんどん変わってきていると思います。あるいは、生活スタイルの変化というんですか、そういうことに応じましても、例えば倉庫からすぐ家庭の冷蔵庫に直結するような、そういうような機能も果たしてきている等々、効率的な物流の中で倉庫業が果たしている役割というのは大変大きいと思うんですね。

 ということで、国土交通省として、率直に言って倉庫業の機能というのをどういうぐあいに評価しているか。いや、大変重要ですなんと言ったらこれは何をかいわんやで、もう少し具体的に、こういうような機能を果たしており、こういうように評価をしているんだというようなことを、もう少しわかりやすくひとつ御答弁をいただきたいと思うのであります。

 それともう一つは、国民経済の中で倉庫業が占めておりますウエートというんですか、位置、これをお尋ねしたいんです。

 例えば、生産の物量の中でどれぐらいが倉庫に保管をされるとか、入出庫量ですね、あるいは売上高がどれぐらいになっているかとか、あるいは雇用の面ではどれぐらいの人を雇用しているか等々、そんなことをお聞きいたしたいと思います。

 さらに、三番目は、近年の倉庫業の経営状況がどうなっているのか、そんなことをお聞かせいただきたいと思います。

洞政府参考人 お答え申し上げます。

 倉庫業の役割というものについてでございます。

 倉庫業は、言うまでもございません、国民生活に欠くことのできない重要物資を扱っているわけでございますけれども、機能を分析すると、例えば物資の需給調整を行ったり、それから、そういったものを通じて物価の安定等に寄与しているとか、いわゆる物流業の一環でそこに物を保管するわけですけれども、それが経済の面でいろいろな機能、役割を果たしているという意味で、やはり非常に地味ではございますけれども、我が国の産業活動、国民生活を維持していく上で極めて重要な役割を果たしている。

 倉庫業法ができました昭和三十年代というのは、まさしくこういう倉庫業、倉庫というのは本当にございませんで、掘っ立て小屋が建ち並ぶだけのそういうもので、輸入してきても保管するものがない。そういったところで日本の経済発展に非常にブレーキになった。だからこの倉庫業法というのができたと言えば言えるわけでございますけれども、その基本的な機能は今でも変わっておりません。

 そして、今、倉庫業がどういう状況にあるかということでございますけれども、先ほども申しましたが、倉庫のそういう基本的な機能を維持しつつ、それを核として、あるいはほかの物流業と一緒になって、総合物流業といいますか、トータル物流業といいますか、そういった物流全体の分野にいろいろ進出していこうというグループと、それからまた、保管という業務に専念して、そこのサービスを高度化していこうというグループと、そういったものに今後いろいろ分かれていくのではなかろうかと思っております。

 倉庫業の現在の全体の事業の概要は、事業者数にして五千ぐらいでございますけれども、売り上げにしまして一兆七千億の売り上げでございます。十一万人の雇用を賄ってございます。

 それで、その経営の状況でございますけれども、国土交通省の、私どもの調査によりますと、十一年度のデータによりますと、いわゆる一般の普通倉庫では、大体八五%の事業者が事業トータルとして黒字でございますが、これはあくまで全部、いろいろな兼業を合わせたものでございまして、そのうちの普通倉庫部門だけをとらえますと、経常収支というのはトータルで九八・三%ということで、一〇〇%を切っている、赤字ということになります。

 冷蔵倉庫につきましては、冷蔵倉庫もいろいろ兼業をしておりますけれども、六七%ぐらいが事業全体としては黒字でございますけれども、冷蔵倉庫部門だけでいいますと、経常収支率は九九・六%ということで、とんとんといいますか、若干赤字という状況になっております。

 そして、一般倉庫について、主要な原価というものは、コストはどういうふうになっているんだということを分析してみますと、下請費用を含めました人件費というのは、普通倉庫でいいますと四九%ということで、これは港運とかトラックに比べると低いと言えます。そのかわりに、賃借料、要するに倉庫をよそから借りてきたり、それから自分でつくった倉庫の減価償却費等を合わせますと、これが大体二五%ぐらいを占めているというような、これもやはり一種の装置産業のような、そういう構成になってございます。冷蔵倉庫についても、若干数字は違いますけれども、施設部分のコストが若干高くなっていますけれども、基本的には変わらないと思います。

 最近における状況をちょっと見ますと、経営としては、そんなにもうかりもしない、むしろ若干赤だということでずっと推移してきているわけでございますけれども、昨年の四月からことしの一月までの累計でいいますと、荷動き量といいますか、それは一〇二・一%で、若干増加しているというような状況でございます。

井上(喜)委員 国民経済の中ではかなりのウエートを持っているということがわかりましたけれども、経営的には幾分問題があるというように理解をいたしました。なお努力をして、収支相償うようなところが残っているんだ、こんなふうに思います。

 それから、日本経済のネックは物流のコストが高いことにあるということがよく言われるんですね。私は、物流の中で倉庫業も大きな部分でありますので、倉庫業につきましてもコストということが大きな課題じゃないか、こんなふうに思います。

 コスト削減のために設備投資をしたり、あるいは経営の合理化とか、あるいは産業の合理化等々取り組まれてきたと思うんでありますけれども、どういうような取り組みを今現在されているのかをお尋ねしたいと思います。

 それともう一つは、倉庫料というんですか、保管料が今どの程度になっているのか、過去十年ぐらいの推移の中でどうなっているのかというようなことをお答えいただきたい。

洞政府参考人 倉庫業者のコスト削減への取り組みの御質問でございます。

 先ほども申しましたとおり、倉庫業は人件費が下請も含めて五割ぐらいということでございますから、そこのところを圧縮するということ。片一方で、物流ニーズの高度化とか多様化とかいったものへの対応とあわせまして、例えば立体自動倉庫等の新規装置の新設でありますとか、あるいは自動仕分け機とか荷役機械等の整備、それからパレット化、パレチゼーションの推進であるとか、それからIT等いろいろ活用しました情報化の推進によって生産性の向上に努めてきているというところでございます。

 そういう意味で、十年前と比べますと、例えば一人当たりの取扱量とか、あるいは単位面積当たりのコストというものを見てみますと、そこは着実に下がってきているということが言えようかと思います。ただ、冷蔵の部分というのは、荷動きというのは余りふえていませんので、そこのところのコスト削減というのは直ちに出てきてはおりません。

 料金の推移はどうなっているかということでございますけれども、昨今の景気の状況を反映しまして料金の改定というのはなかなかなされておりませんで、ここ五、六年以上でしょうか、ほとんど横ばいで推移している。むしろ、先ほどの質問ではございませんけれども、事業者の皆さん方の話を聞いてみますと、今、物流コストの削減、効率化という強い要請があって、荷主との間で非常に厳しい交渉が行われているわけでございます。そういうものを反映して、なかなか厳しいものがあるというふうに聞いております。

井上(喜)委員 私は、倉庫業というのは、物流の中でこれからますます重要な役割を担う、大事になってくると思うんでありますけれども、国土交通省としては業界にどういうことを望むのか、希望していくのか、また、国土交通省としてというか、国としてどういうようにこれからの課題に対応していくのか、お聞かせいただきたい。

扇国務大臣 井上先生は先ほど、倉庫業の重要性ということをおっしゃいました。私は、まさに日本の物流にこの倉庫業というものはなくてはならないものであると思っております。

 それと、先ほど局長からのお答えの中にありませんでしたけれども、井上先生は兵庫県御出身ですから、よくおわかりだと思います。

 物の備蓄、しかも災害列島と言われる日本の中で、災害のための安全確保のために、この間の地震がありましたり、水害がありましたり、せっかく倉庫に入れておきながら、去年の名古屋西の水害のときには、倉庫に入れてあった非常用の乾パンが全部水没してしまったというような、倉庫の役割を果たしながら、それが備蓄にならなかったというような事例もございますので、単なる物流だけのための倉庫の役割ではなくて、我々の日常生活の安全保障面でも、倉庫の床を高くするとか二階に食べ物を置くとか、あらゆる面で、生活の安定のために果たす倉庫の役割は、物流のみならず私は大事なことであると思っております。

 そういう意味では、今後、倉庫の果たす役割というものは、物流と、あるいは物資の安全、また確実に保管して、少なくとも生産から消費までの時間的な調整あるいは物品の輸送の手段の連絡調整など、あらゆる面で私は今後の倉庫の役割というその重みというものを重要視しながら、そしてその倉庫の役割が完全に果たせるように、せっかくありながら、それが逆に意味がないというようなものでは私は申しわけないと思います。

 きょうも朝から申し上げましたように、ただ荷物を預かるだけの倉庫意識ではなくて、狭い団地の中では、不用品はトランクルームに預けて、今あるスペースを最大限に利用するといった新しいこともできている。そういう意味では、二十一世紀の我々の生活、産業、あらゆる面において倉庫の果たす役割の重さというものを考えながら、今後も倉庫の設備の高度化あるいは倉庫の管理システムの情報化に追従できるようなシステムというものを構築していきたい、そういう二十一世紀型の倉庫にしたいということを先ほどから申し上げておりますので、ぜひ安全面も加味させていただきたいと思います。

井上(喜)委員 今回の法律改正というのは、倉庫業の許可制を登録制に変更するとか、あるいは料金の事前届け出制を廃止するということであったんですが、私は、倉庫業界というのはかなり競争の激しい業界だと思うんでありまして、今回のこの法律改正をいたしましても、実態はそんなに変わらないんじゃないかというような感じがするんですね。規制を緩和すれば確かに競争がそれだけ促進されるんでありますけれども、しかし現実にはそう変わらない。

 変わるぞ変わるぞと、そういうことを余り強く言い過ぎると無用の心配を関係業界なんかに引き起こしますので、その辺は現実に即して、実態に即して、ほどほどに言われる方がよろしいんじゃないか。これは私の感想であります。それだけを申し上げまして、質問を終わります。

赤松委員長 森田健作君。

森田(健)委員 森田健作でございます。

 最後になりますと、ほとんどといいますか、すべてもう質問されておりますので、どれを質問していいかと本当に迷っているところでございます。

 倉庫業法の一部を改正する法律案、倉庫業について参入の許可制を登録制に改めた、これはもう諸先生方が質問したところではございますが、重複するところではございますが、もう一度、改めましてその経緯とお考えを賜りたいと思います。

洞政府参考人 お答え申し上げます。

 倉庫業を許可制から登録制に規制緩和する理由というものについてお尋ねがございました。

 倉庫業法の制定時、これは昭和三十一年にできた法律でございますけれども、その当時においては、倉庫の構造設備が不良なものが多く、火災とか盗難等の事故が多発しまして、また倉庫業者の経営基盤も非常に脆弱でございました。このため、倉庫業法というものができまして、倉庫業に対して事前に監督するということで、倉庫営業を一般的に禁止しまして、構造設備が適切な倉庫を有して経営基盤が十分であるということが明らかである場合等、倉庫業の適確な遂行に支障がない場合に限って禁止を解除するという、いわゆる許可制をとってきたところでございます。

 しかしながら、今日におきましては、設備の構造基準の水準というのは相当程度向上してきております。また、その経営基盤も比べ物にならないくらいしっかりしてきているというところから、倉庫業が今日のように成長をしてきた中では、国が後見的な立場から個々の事業者について細かく関与をする必要性というものが非常に乏しくなってきているところであります。むしろ、利用者の利便を増大するためには、新規事業者の参入を容易化して、倉庫業者間で適正な競争が行われることが望ましいものであります。そういう意味で、今後は、一般的な禁止の解除たる許可制を廃止するということが適当であると考えた次第でございます。

 このため、今後の倉庫業の参入規制については、保管責任、保管体制が十分に図られることが必要であるという基本的な認識のもとに、倉庫の設備構造基準と倉庫管理主任者の選任など、必要最小限度の客観的な基準をクリアした場合にはだれでも倉庫業が営める登録制というものにするものでございます。

 以上でございます。

森田(健)委員 十二分にわかりました。ありがとうございます。

 委員長、そんなわけで、法案からちょっとかけ離れた質問もしますが、ひとつお許しを賜りたいと思います。

 過日でございますか、日航のニアミスがございました。多くの負傷者が出たこともまた事実。大変残念でございます。

 しかし、ああ、やっぱりなと思う原因というのは大体あるのでございますね。

 例えば交通事故。車と車がぶつかった、酔っぱらい運転だったよ、いや、何かちょっと居眠りしていたらしい、やっぱりな。それから、雨がすごく降っていたよ、スリップしやすかったよ、カーブもいっぱいあったよ、ああ、やっぱりな。そういうところがあるものでございます。

 ところが、この間のニアミスのあれを見ていますと、やっぱりなというよりも、どうしてという言葉が出てくるんですね。

 空を見ると、空港周辺はともかくといたしまして、じっと見ていても、飛行機が通るのを見るといってもなかなか見られないものでございます。そうして考えてみますと、あんな大きな空で、こんな、それこそちっちゃな飛行機がニアミス、あわや衝突するなどということがどうして。それから、飛行機と飛行機の間は九キロメートルとっているというんですね。異常接近したならば異常接近の警報機が鳴るんだよ。それでああいうことが起きた、どうして。視界も良好だった、飛行機の中のお客さんも飛行機が接近しているのが見えた、パイロットも見えるんじゃないのか。それから事故が起きて、機長さんに事情を聞きたい、弁護士をまず立ててください。どうしてなの、そういう言葉が出るのでございます。

 でも、こう言っている間にも、多くのお客様を乗せた飛行機が今飛んでいるのでございます。その人の中にも、ふとこの間の事故のことを思い出して、あれはどうなっちゃっているんだろう、どのように改善し、原因はどうだったんだろう、そう思っている方が多いのではないかなと思うのでございます。

 このように、表面的に見ても、報道されているところを見ても、正直な話、非常にわかりにくい点がございます。

 私は、こういうことに関して原因を究明していくということは大変なことだと思います。前、扇大臣がおっしゃっておりました、どっちが優先だの、どっちがこうだのというのではなくて、まずこういう事故を二度と起こさないように原因を究明していくことが大事だと。まことにそのとおりだと思います。私は、やはり空の安全、そして乗客がそういう不安を持たないように、取り除くためにも、しっかりとした原因究明と事後対策をお願いしたいと思います。

 このことに関して、本当は大臣から御答弁を賜りたいと思ったんですが、私、通告しておりません。しかし、大臣のお顔を見てもその決意のほどはうかがえますので、ありがとうございます。

 それで、飛行機の話が出ました。羽田空港、成田空港、私も、この場において羽田空港の国際化について何度か御質問をさせていただきました。

 米国の運輸長官も、航空市場開放に向け、羽田国際化に期待、そのようなことを言っております。そして、先日でございますか、千葉県の知事に堂本さんが御当選になり、今までと違って羽田の国際化を容認するような発言があり、また、きょうの新聞を見ますと、堂本さんが、羽田国際化、否定しない、都知事らと会談の意向、そのような記事も載っております。

 その中で、国土交通事務次官の小野さんが、羽田空港の国際化困難、便数は限界に来ていて国内線を減便しない限り国際線は不可能、二月に解禁した羽田空港発着の国際チャーター便で精いっぱいだと。現状では、確かに非常につらいところがあるのかもしれません。

 他国を見てみますと、韓国は、過日、仁川国際空港が開港いたしました。全体計画といたしましては、三千七百五十メートルから四千二百メートル級の滑走路四本。お隣の中国でも、全体計画としましては四千メートル級を四本。さて、私たち、羽田を見ますと、三千メートル級が二本、二千五百メートル級が一本、成田は、四千メートル級が一本、二千百八十メートルが暫定ときております。

 今、羽田では、二千五百メートル級の滑走路、それから三千五百メートルの滑走路、いろいろ議論をなされておりますが、国土交通省といたしまして、これから内外の期待も大きいし、特に利用者から、何とか羽田をもっと国際化してほしいという要望があることも事実だと思います。

 しかし、現実を踏まえて、どのようなビジョン、またどのように羽田の国際化を引っ張っていきたいか、そのようなお考えを賜りたいのでございますが、大臣もおくたびれでしょう、泉副大臣、ひとつお願いいたします。

泉副大臣 東京周辺の国際航空需要が既に逼迫しておると申しましょうか、今後見通しましても大変大きな伸びが予想される中で、成田、羽田をどうしていくか、私ども航空行政を預かる者としては、大きな課題と認識して取り組んでおるところでございます。

 成田につきましては、御承知のように、今暫定滑走路を鋭意進めさせていただいております。これは、二〇〇二年のワールドカップの開催に際しまして十分供用できるように、地元の皆さん方にも御協力をいただきまして、順調に工事が進んでおるところでございます。

 この暫定滑走路が完成いたしますと、発着回数は現在の十三万五千回から二十万回になり、ある意味では大きな余裕ができてまいりますし、海外の航空会社が既に大変お待ちでございますが、その方々にも門戸を開くことができる。また、国内線の充実を図ることによって、いわゆる国内のお客様方が成田を使って海外に行っていただく、あるいはお帰りいただくという機会がふえてくると思っております。

 もう一つ、成田について私どもが取り組んでいかなければならない、これは千葉県を中心に今御検討いただいておりますが、いわゆる東京を中心とする場所から成田への足の問題でございまして、今の道路、鉄道以外に、三十分から四十分ぐらいで都心から成田に到着できるように、そうした便利さを確保するということが成田については大きな問題だろうと思っております。

 羽田につきましては、これまでも順調に整備をさせていただきまして、増便もやらせていただきましたが、最後として、来年の七月に二十六便の増便をいたしますと、今の滑走路がほぼいっぱいになるという状況でございます。そうしたことで、私どもとしては、羽田の拡張、あるいは首都圏の第三空港と言われるものを、今局内で、省内で検討会を設けて御議論をいただいておりますが、いずれにいたしましても、当面の需要を確保、賄うために、何らかの手当てを打たなければならないということで、国土交通省といたしましては、先日、ある考え方を検討の場に出させていただいたところでございます。

 先生御指摘のように、国際線を羽田にというのはアメリカの運輸長官からもお話が出ておるようでございますし、我々もそういうことを近い将来を頭に置きながら考えていかなきゃならない。その一つが、先日来の、二十三時から午前六時までのチャーター便を使っての国際線の離発着を可能にしておるわけですが、もっと大きな需要があると思いますが、御承知のCIQの問題等がございますので、これを一気にふやすことにはもう少し時間をいただかなければならないと思っております。

 いずれにいたしましても、成田と羽田をうまく使って、日本のお客様にはもちろん、海外のお客様にも活用を十二分にしていただけるように、日本の国際航空路、地位が低くならないように、ハブ空港としての十分な機能を果たせるように、これからも取り組んでまいる覚悟でございます。

森田(健)委員 本当にそれは、もちろん千葉県側におきましては、いろいろ過去のいきさつもございます。それは私たちも、羽田空港を抱える大田区としても十分に尊重しております。しかし、大所高所に立って、国益を考えて、お進め願いたいと思います。

 もう時間でございますが、吉田政務官、最後にお聞きします。

 実は、これは私はどうしても聞きたかったんですが、吉田政務官、政務官はせっかちでしょう。私、そう思うんです、性格的に。

 例えば、大阪から新幹線に乗った。ところが、途中ちょっとした地震があったり事故があったり、新幹線が走ったりとまったりして、一時間以上おくれていた。どうなっているんだよ、早く着きたいな、おれは忙しいんだよと。そして、小田原を過ぎたあたりで前にぱあっと走り出した。ああ、よかったなと思ったら、また今度は新横浜の駅でぴたっととまった。そうしたら、車内の放送で、いや、もう復旧はしたんですが、東京駅はいっぱいだ、そしてまた途中でも待ちがあるんだ、今三十分ぐらい待っているけれども、まだ何時に発車するかわからぬ、もう少しお待ちくださいと。こういうことがあったんですよ、事実。

 そうしたら、私の隣の人が、おい、森田さんよ、あんた議員だろう、冗談じゃないんだよ、線路のところでとまっているのにおろせとおれは言っているんじゃねえんだ、今、在来線はちゃんと動いているんだよ、新横浜なんだよ、おれは在来線に乗って東京へ行きたいんだよ、ここでは何であけてくれねえんだ、もう三十分以上も待っている、いつ出るかわからないと言っている。私はそう言われたんです。

 これは、私も、ああそうだなと。せっかくぴたっとホームにとまっているんだから、こんなときにはどうしたらいいんだろう。吉田政務官だったら何とお答えしますか。

吉田大臣政務官 森田委員おっしゃるとおりの思いがいたしますし、ケースは違いますけれども、私も似たような経験がございます。ですけれども、地震ですとかあるいは自然災害等で、今のでいう新横浜、本来その停車駅でない駅に停車した場合の取り扱いについては、国は特別に規則を持ちません。この対応については、各鉄道業者にその事情に応じて決めてもらっているということなんですね。

 例えば、今の例でございますと、JR東海は輸送指令マニュアルということで二つのケースを定めています。

 一つは、大幅な列車遅延が生じ、旅客の救済のために臨時停車する場合で、その場合は旅客の乗降扱いを行います。今のような場合ですね。それから二つ目は、他の優先列車を先に通過させる場合などで、一時的にちょっととまる場合があります。この場合は乗降扱いをしないことを原則にしているんです。

 ですから、このJR東海の例からしますと、とまる時間のある程度の長さを一つの目安としているのではないかなと感じられるわけなんですね。

 先生御指摘のその例は、どんな状況だったのか正確にはわかりませんけれども、大幅におくれた場合は、乗務員ではなくて、路線全体を掌握しています輸送指令が運転開始の見込みを勘案する、乗降扱いを行うかどうかの判断は、全線を管理します東京駅にあります輸送指令が運転を判断する、こういうことになっておりますので、きっと時間その他を勘案されて、いらいらされたかもしれませんけれども、この場合はドアがあかなかった、こういうことだと思っています。

 国土交通省としましては、利用者の利便にかかわることですから、車内放送とかそうしたことに細かく気を払いながら配慮していきたい、そんなことでございます。

森田(健)委員 ありがとうございました。これからも柔軟にお願いいたします。

 ありがとうございました。

赤松委員長 これにて本法案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。瀬古由起子君。

瀬古委員 私は、日本共産党を代表して、倉庫業法の一部を改正する法律案に反対する討論を行います。

 倉庫業は、もともと国民生活に不可欠な物資の保管、貯蔵を行うものであり、公共性の高い産業でございます。倉庫業者の多くは、港湾に倉庫を持ち、輸出入物資にかかわる経営を行っています。とりわけ、食料品を初めとする生活物資の輸入が急増している中で、輸出入物資の適切な保管と安定供給を図ることは行政の重要な課題でございます。

 反対の理由を申し上げます。

 その第一は、本法案による料金の事前届け出制の廃止による料金の自由競争によって、現在でも起こっている料金のダンピングに拍車をかけ、価格競争を一層激化させるなど、中小零細業者の経営に大きな影響を与え、倒産が促進され、ひいては国民生活に影響を与えることは明らかであるからでございます。

 第二に、参入規制を許可制から登録制にすることによって、倉庫業者の中小零細業者が九割を占める市場に大手業者が参入し、中小業者の淘汰、企業のリストラなどによって、働く労働者に対する労働条件の切り下げが行われることが十分予想されるからでございます。

 第三に、これらによって、国民生活にとって欠かせない食料を初めとする生活物資の安全保管、安定供給が脅かされる事態が起こりかねないからでございます。

 以上の理由により、本改正案に反対するものでございます。

 委員各位の、皆様の賛同をお願いいたしまして、討論といたします。(拍手)

赤松委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 これより採決に入ります。

 倉庫業法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

赤松委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

赤松委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十一分散会




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