衆議院

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第13号 平成13年5月23日(水曜日)

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平成十三年五月二十三日(水曜日)

    午前九時三十六分開議

 出席委員

   委員長 赤松 正雄君

   理事 赤城 徳彦君 理事 桜田 義孝君

   理事 実川 幸夫君 理事 橘 康太郎君

   理事 玉置 一弥君 理事 樽床 伸二君

   理事 河上 覃雄君 理事 山田 正彦君

      今村 雅弘君    岩屋  毅君

      木村 太郎君    木村 隆秀君

      倉田 雅年君    後藤田正純君

      佐田玄一郎君    坂本 剛二君

      菅  義偉君    田中 和徳君

      高橋 一郎君    谷田 武彦君

      中馬 弘毅君    中本 太衛君

      林 省之介君    林  幹雄君

      福井  照君    松岡 利勝君

      松野 博一君    松本 和那君

      谷津 義男君    吉田 幸弘君

      阿久津幸彦君    大谷 信盛君

      今田 保典君    今野  東君

      佐藤 敬夫君    永井 英慈君

      伴野  豊君    細川 律夫君

      細野 豪志君    前原 誠司君

      吉田 公一君    井上 義久君

      山岡 賢次君    大幡 基夫君

      瀬古由起子君    大島 令子君

      日森 文尋君    保坂 展人君

      松浪健四郎君    森田 健作君

    …………………………………

   国土交通大臣       扇  千景君

   国土交通副大臣      泉  信也君

   国土交通大臣政務官    木村 隆秀君

   国土交通大臣政務官    田中 和徳君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   吉井 一弥君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議

   官)           素川 富司君

   政府参考人

   (国土交通省河川局長)  竹村公太郎君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  三沢  真君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  安富 正文君

   政府参考人

   (気象庁長官)      山本 孝二君

   参考人

   (東日本旅客鉄道株式会社

   代表取締役社長)     大塚 陸毅君

   参考人

   (日本貨物鉄道株式会社代

   表取締役社長)      伊藤 直彦君

   参考人

   (社団法人日本民営鉄道協

   会理事長)        野崎 敦夫君

   参考人

   (島根県知事)      澄田 信義君

   参考人

   (慶應義塾大学名誉教授) 藤井彌太郎君

   参考人

   (日本大学商学部教授)  桜井  徹君

   国土交通委員会専門員   福田 秀文君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十三日

 辞任         補欠選任

  倉田 雅年君     谷田 武彦君

  佐田玄一郎君     後藤田正純君

  中馬 弘毅君     岩屋  毅君

  松野 博一君     林 省之介君

  川内 博史君     細野 豪志君

  保坂 展人君     大島 令子君

  二階 俊博君     松浪健四郎君

同日

 辞任         補欠選任

  岩屋  毅君     中馬 弘毅君

  後藤田正純君     佐田玄一郎君

  谷田 武彦君     倉田 雅年君

  林 省之介君     松野 博一君

  細野 豪志君     今野  東君

  大島 令子君     保坂 展人君

  松浪健四郎君     二階 俊博君

同日

 辞任         補欠選任

  今野  東君     川内 博史君

    ―――――――――――――

五月二十三日

 気象業務法の一部を改正する法律案(内閣提出第五六号)

 水防法の一部を改正する法律案(内閣提出第五七号)

同月二十二日

 川辺川ダム建設環境アセスメント実施に関する請願(金子哲夫君紹介)(第一七二二号)

 同(小林守君紹介)(第一七二三号)

 同(今川正美君紹介)(第一七五一号)

 同(日森文尋君紹介)(第一七五二号)

 同(今川正美君紹介)(第一九二五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一九二六号)

 同(中林よし子君紹介)(第一九二七号)

 同(中村哲治君紹介)(第一九二八号)

 同(長妻昭君紹介)(第一九二九号)

同月二十三日

 川辺川ダム建設環境アセスメント実施に関する請願(保坂展人君紹介)(第二〇二八号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二〇五九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七三号)

 気象業務法の一部を改正する法律案(内閣提出第五六号)

 水防法の一部を改正する法律案(内閣提出第五七号)




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     ――――◇―――――

赤松委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。国土交通大臣扇千景君。

    ―――――――――――――

 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

扇国務大臣 おはようございます。

 ただいま議題となりました旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律案の提案理由につきまして御説明を申し上げます。

 JR各社につきましては、累次の閣議決定により「できる限り早期に純民間会社とする」ことが求められております。JR各社のうち、東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社及び西日本旅客鉄道株式会社のJR本州三社につきましては、昭和六十二年四月の国鉄分割民営化による発足以降、安定的に経常黒字を計上し、順調な経営を続けております。また、平成五年十月には東日本旅客鉄道株式会社、平成八年十月には西日本旅客鉄道株式会社、平成九年十月には東海旅客鉄道株式会社がそれぞれ株式の上場を果たしており、株価も堅調に推移しているところであります。このような状況から、JR本州三社については、純民間会社とするための条件が整ったと言える状況にあります。

 他方、JR各社につきましては、一般の民営鉄道とは異なり、国鉄改革の中で誕生したという経緯があります。例えば、国鉄改革において、国鉄の長期債務の大半を日本国有鉄道清算事業団に承継させた上で、国鉄の鉄道のネットワークを極力維持しつつ、JR各社とも健全な経営が行えるよう事業用資産の承継等を行ったほか、運賃、線路使用料等においてJR各社間の協力・連携体制がとられた等の経緯があります。こうした国鉄改革の趣旨にのっとった事業運営については、これまで旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の枠組みの中で確保してきたところでありますが、純民間会社とするJRについても、引き続き確保していく必要があります。

 このような趣旨から、このたびこの法律案を提案することとした次第でございます。

 次に、この法律案の要旨につきまして御説明を申し上げます。

 第一に、東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社及び西日本旅客鉄道株式会社のJR本州三社を特殊会社として規制している旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の適用対象から除外し、これらの会社の財務、人事、事業計画等の面において一層自主的かつ責任のある経営体制の確立を図ることといたしております。

 第二に、国土交通大臣は、国鉄改革の経緯を踏まえ、JR各社間の連携及び協力の確保、国鉄改革の実施後の輸送需要の動向等を踏まえ、路線の適切な維持等に関する事項について、適用除外されるJR本州三社が事業運営上踏まえるべき指針を策定し、必要がある場合には指導、助言を行うことができることとし、さらに正当な理由がなく指針に反する事業運営を行う場合には勧告、命令を行うことができることといたしております。

 なお、JR本州三社の株式のうち未売却分については、この法律の施行後、株式市場の動向等を踏まえつつ、順次売却してまいりたいと考えております。

 以上が、この法律案を提案する理由であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同賜りますようお願い申し上げます。ありがとうございました。

赤松委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、本日午後一時から、参考人として東日本旅客鉄道株式会社代表取締役社長大塚陸毅君、日本貨物鉄道株式会社代表取締役社長伊藤直彦君、社団法人日本民営鉄道協会理事長野崎敦夫君、島根県知事澄田信義君、慶應義塾大学名誉教授藤井彌太郎君及び日本大学商学部教授桜井徹君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

赤松委員長 本日付託になりました内閣提出、気象業務法の一部を改正する法律案及び水防法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。国土交通大臣扇千景君。

    ―――――――――――――

 気象業務法の一部を改正する法律案

 水防法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

扇国務大臣 ただいま議題となりました気象業務法の一部を改正する法律案の提案理由について御説明を申し上げます。

 温度計、風速計等の気象の観測に用いられる測器のうち、防災目的等公益性の高い観測に用いられるものについては、現在国がみずから検定を行っているところであります。

 しかしながら、近年の気象測器に関する民間の製造技術の向上に伴い、気象測器の検定合格率は非常に高いレベルで推移いたしております。測器の種類によっては最初の検定後検定を行わなくとも観測の精度が維持されるものもあらわれるなど、気象測器製造事業者の能力の底上げが図られてきております。また、検定対象気象測器について標準化が図られてきたことを受けて、気象測器検定での検査方法もその定型化が進んでおり、日々の検定実務を国の検定員がみずから実施しなくとも安定的に検定制度を運営できるようになってきております。

 このような状況に的確に対応するには、民間の能力の一層の活用を図るため、検定の有効期間の見直しに加えて、気象測器製造事業者の能力を活用するための制度及び気象庁長官にかわって一定の能力を有する民間の法人が検定を行うことができる制度の創設等の所要の施策を講じることが必要であります。そのために、この法律案を提案するものであります。

 次に、この法律案の概要について御説明を申し上げます。

 第一に、気象測器の有効期間については、その構造等から見て有効期間を定めることが適当であると認められるものについてのみ国土交通省令で定めることといたしております。

 第二に、型式証明を受けた型式の気象測器の検定における器差の検査については、気象庁長官の認定を受けた者が器差の測定を行ったときは、その測定の結果を記載した書類によってこれを行うことができることといたしております。

 第三に、気象庁長官は、営利法人を含む民間の法人に、気象測器の検定の実施に関する事務の全部または一部を行わせることができることといたしております。

 なお、この法律案の施行期日は、周知に必要な期間等を考慮し、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日としております。

 以上が、この法律案を提案する理由であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同賜りますようお願い申し上げます。

 次に、水防法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。

 近年、河川整備の着実な進捗により、かつてのような大河川のはんらんの頻度は減少してきているものの、都市化の進展に伴う人口及び資産の集積を背景に、一たびはんらんが発生したときは被害が甚大なものとなるおそれがあります。また、特に住民の生活と密着した中小河川の水災対策の推進の必要性が指摘されているところでございます。

 この法律案は、このような近年の水災の状況を踏まえまして、水災による被害の軽減を図るために、洪水予報河川の拡充、河川の浸水想定区域の公表、浸水想定区域に応じた円滑かつ迅速な避難の確保を図るための措置等を講ずるものであります。

 次に、その要旨を御説明申し上げます。

 第一に、国土交通大臣に加えて、新たに都道府県知事が、洪水により相当な損害を生じるおそれがある河川を洪水予報を行う河川に指定し、気象庁長官と共同して、洪水予報を行うことといたしております。

 第二に、国土交通大臣または都道府県知事は、洪水予報を行う河川について、洪水時の円滑かつ迅速な避難の確保を図るため、河川整備の基本となる降雨により河川がはんらんした場合に浸水が想定される区域を浸水想定区域として指定し、指定の区域及び想定される水深を明らかにして公表することといたしております。

 第三に、市町村防災会議は、市町村地域防災計画において、浸水想定区域ごとに、洪水予報の伝達方法あるいは避難場所その他円滑かつ迅速な避難を図るために必要な事項を定めることとしております。また、浸水想定区域内に地下街等の不特定かつ多数の者が利用する地下の施設がある場合には、同計画に利用者の円滑かつ迅速な避難の確保が図られるよう洪水予報の伝達方法を定めることといたしております。

 第四に、市町村長は、市町村地域防災計画において定められました洪水予報の伝達方法、避難場所等を住民に周知させるよう努めることといたしております。

 その他、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うことといたしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその要旨であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決いただきますようにお願いを申し上げます。ありがとうございました。

赤松委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省河川局長竹村公太郎君、住宅局長三沢真君、気象庁長官山本孝二君、内閣府政策統括官吉井一弥君及び文部科学省大臣官房審議官素川富司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上義久君。

井上(義)委員 水防法の改正につきまして、何点かお尋ねしたいと思います。

 今回の改正ですけれども、浸水想定区域の指定と公表、あるいは円滑、迅速な避難の確保など、水防におけるソフト対策の強化が図られることになったわけでございます。また、近年その被害が増大している中小河川のはんらんや都市型水害にも一定の対策が講じられるようになったわけでございまして、この点につきましては、私も高く評価しているところでございます。

 そこで、まずお尋ねしたいんですけれども、水防活動と治水事業、いわゆる河川の整備は、水害防止対策の車の両輪だと思うんですよね。したがって、この河川整備の進捗状況、特に近年被害が増大している中小河川の整備状況について一点御報告いただきたいということと、それに加えて、これまでのいわゆるハード整備に加えて、今回の改正で大幅なソフト対策を打ち出したわけでございますけれども、その背景とそれから意図、また今後の方向性について、御説明いただければと思います。

竹村政府参考人 最初の御質問の中小河川の整備状況等について、まず私の方から事務的に御説明させていただきます。

 これまでも河川整備を着実に実施してきましたが、過去三カ年平均の床下浸水戸数が約六万戸、床上浸水戸数が約二万五千戸に上るなど、まだまだ浸水被害は後を絶たない状況でございます。大河川では、確かに破堤、はんらんによる甚大な被害は近年減少しておりますが、中小河川では災害がふえている傾向にございます。水害による一般資産被害額は減少しておらず、都市化の進展により、浸水面積当たりの被害額は増大しております。

 特に、御質問の中小河川の整備状況につきましてでございますが、時間雨量五十ミリ――時間雨量五十ミリと申しますのは、地区によって違いますが、大体五年から十年に一度起きる、非常に頻繁に起きるであろう雨量でございますが、この五十ミリの降雨に対応して整備を行っておりますが、平成十一年度末で、中小河川の整備状況の水準は約四二%の状況でございます。

扇国務大臣 今お話がございましたように、本当に近年、河川のはんらんによって、あっという間にという表現をよく使われますけれども、河川事業におきましても、近年は都市化が進んでおりまして、昨年の名古屋の集中豪雨を見ましても、私は、平時の予測というものができれば、こんなに皆さん方が避難のときに迷うことはない。

 例えば、例を挙げましても、宅地の開発が進んでおりまして、名古屋の御出身の先生いらっしゃると思いますけれども、予防をして、私が伺いましたら、食料も備蓄をした、ポンプ車も置いてあった、けれども、それが低地に置いてあったために全部水をかぶって、備えたことが何にもならなかった、そういう例もございます。

 またその一方で、あらゆるところで、都市化の進展によりまして、人口やあるいは資産というものが一定のところに、河川のはんらんするところに集中している。それが、今の都市化による、一たび河川のはんらんがあったときの被害の大きさというものが言えると私は思います。

 昨年の東海水害におきましては、家屋や事業所などの被害が九千二百億円に上っております。それから見ましても、私は、これが予測できればこんないいことはないし、しかも、備蓄したものが置き場所によって水につかってしまうということも防げるのではないかと思いますので、ぜひそういう意味で、河川の整備とあわせて、住民の避難に役立てることができるというときのためのソフト対策がいかに必要かということで、この今回の法案に関しては、マップをつくるということも大きな予防になると思っております。

井上(義)委員 今大臣から御指摘があったように、河川流域、これまで住宅が建っていなかったところがどんどん都市化して、住宅が建ってくる。そうすると、そういう水害の経験とか知識のない人がどんどんふえてきているという現状があるわけで、そういう意味からいいますと、いわゆる一部市町村で作成、公表されている洪水ハザードマップ、これは極めて有効だと思うんですね。

 ところが、実際にこの策定が必要だと思われている市町村、千二百市町村あるそうですけれども、現在九十六市町村しか策定されていないわけで、今回、浸水想定地域の指定と公表を行うことになって、それをもとにしてハザードマップを作成できるようになるということで、大きな前進になると思うんですけれども、今後、市町村におけるそういうハザードマップの策定の見通しとか、あるいは国土交通省として、作成の推進についてどういうことを考えていらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。

竹村政府参考人 今委員御指摘の、全国で必要であろうと思われる千二百市町村が今後予定されておりますが、現在、九十六のハザードマップしかできておりません。

 これは大変技術的に難しいというか、労力がかかりますので、市町村が苦労しておったわけでございますが、この水防法の改正によりまして、私ども河川管理者、つまり国と都道府県が浸水想定区域を指定する、それを公表していくということでございますので、その浸水想定区域に基づいて、住民が避難するルート、避難場所のハザードマップをつくるのは大変容易というか、随分労力は軽減されると考えてございます。そういう意味で、今後、私どもが浸水想定区域を公表しさえすれば、ハザードマップの作成は非常に進んでいくと私ども期待してございます。

 具体的に申しますと、私ども、市町村だけに、お頼みするということと同時に、その技術的な助言、支援をしていきたいと思います。各工事事務所と市町村が県を含んだ連絡会議を持ちまして、洪水のハザードマップの作成について技術的な支援をしていきたいと考えてございます。

 なおまた、できたものについては、新しい住民、いわゆる知らない方々が大勢いらっしゃいますので、その住民に対しての広報、具体的に申しますと、豊川市、岡崎市等の既にできているところでは、私どもの工事事務所のホームページで一緒にPRをしたり、郡山、高槻市のようなところでは、電話帳のハローページの中にレッドページという部分を設けまして、掲載を私どもがやっていたり、さまざま、すべての機会をとらえてこの広報に努めて、協力、支援していきたいと考えてございます。

井上(義)委員 それで、浸水想定地域を指定して公表する、ハザードマップができる。そうすると、当然、地域内の居住者の皆さん、自主的に水防対策を講じていただくことが非常に大事だと思うんですね。

 ところが、先ほど扇大臣からお話があったように、緊急食料についてはぬれないように上に上げておこうとかということはだれが考えてもわかるんですけれども、やはり具体的なノウハウということになると、なかなか一般の皆さんではわからないわけでございまして、例えば市町村に相談窓口を設置するとか、あるいは住宅の耐水補強、改築などのノウハウを提示するとか、あるいは、住宅改築とか補強あるいはかさ上げというようなことに係る費用について、公庫の低利融資制度を設けるとか、そういう居住者の支援策を講ずるということが必要なのじゃないかな、私はこう思うわけでございまして、浸水想定地域の指定に伴う居住者の支援策ということについて、国土交通省、どのようなことをお考えなのかお伺いしたいと思います。

三沢政府参考人 浸水想定地域における住宅の浸水対策でございますけれども、一つは、やはりできるだけ居住者の方々にわかりやすく、どういう対策を講じたらいいかという、そういうマニュアル的なものが必要だということで、現在、水害による被害を軽減するための浸水対策マニュアルあるいはガイドブックといったものを作成しているところでございます。これにつきましては、できるだけ早くということで、六月中にも作成して、公表したいというふうに考えております。

 それからもう一点、いわゆる融資でございますけれども、浸水対策のための住宅の改築、補強に係る経費については、住宅金融公庫のリフォームローンが御利用いただけるということでございます。

 いずれにいたしましても、こういった事柄について、やはり周知徹底を図っていくということは大変重要でございますので、今後、河川部局と住宅部局が連携をとりまして、この地域の指定に合わせまして、都道府県の住宅センターとかあるいは市町村において住民からの相談に応じられるような、こういう支援策についての周知徹底に努めてまいりたいというふうに考えております。

井上(義)委員 それから、今回、地下空間の水災に対する具体的な施策が盛られたわけですけれども、地下空間への浸水は、福岡の例でもわかるように、短時間に集中して水がたまるということで、人命にかかわる深刻な被害にもつながりかねないわけです。ともかく、迅速なおかつ的確な情報伝達と避難確保ということが重要だと思いますけれども、では、具体的にどういう体制をそれぞれの地下空間について構築していくのかということについて、よろしくお願いします。

竹村政府参考人 ただいま御指摘の地下空間に対する水災対策でございますが、実は、これは大変新しいテーマでございまして、潜在的にはありましたが、顕在化したのが、今御指摘の平成十一年六月の福岡の御笠川のはんらんのときでございます。そして第二回目が、去年の名古屋市の豪雨でございまして、三十七時間にわたり地下鉄が最大水深二メーターにわたって全線浸水するということでございます。

 ともかく、地下街はその地域において最も低いところでございまして、水がすべてそこへ集中するという状況になってございます。そういう中にいる方々の避難をどうやって迅速にやるかということを、これから私ども真剣になって取り組んでまいりたいと考えてございます。

 具体的に申しますと、平成十一年六月の、福岡の御笠川のはんらんによりまして死亡者が出たわけでございますが、現在、河川管理者であります福岡県、福岡市、そして博多駅周辺地区、天神周辺地区の地下空間管理者による研究会を発足させております。そして、その研究会の中で、危険情報の事前周知、洪水時の情報伝達、避難体制の確立を現在検討しておりまして、県の地域防災計画に地下空間の災害が追加されたところでございます。

 今後、この水防法におきましても、地下空間管理者に対する情報伝達が市町村の地域防災計画において定められるということになりますので、この法律制定後、早急に河川管理者、市町村、そして不特定多数の人が出入りする地下空間管理者との連絡会議を設けまして、万全を期してまいりたいと考えてございます。

井上(義)委員 最後に、都市型水害で、今回、河川によるはんらんについては、いわゆる浸水想定区域というのを公表するということになったんですけれども、もう一つ、最近、集中豪雨が物すごくふえていて、いわゆる河川によらない内水による洪水というのがあちこちで頻発しているわけで、私は、いわゆる河川によらない内水の都市内の浸水についても、今回導入された浸水想定区域に準じたそういう震災のハザードマップなどを策定、公表していく必要があるんじゃないか。かなり技術的には難しいことだと思うのですけれども、最近の傾向を見ていますと、ここも一つ必要なんじゃないかというふうに思うのですけれども、この点についてはいかがでしょうか。

竹村政府参考人 従来の洪水は、大雨が広域的に降りまして、山に降った雨を川が集めてきて、そして一気に都市部を襲ってくるという伝統的な水害が私どもの対象の中心でございました。ところが今、委員御指摘のように、近年の集中豪雨によりまして、私どもが想像もつかないところに急激にゲリラ的に大豪雨が襲ってくるという、いわゆる内水のはんらんの被害が大変頻発してございます。私ども、これから、新しいこのようなゲリラ的な豪雨に対しましてどのようにやっていくのかということは、気象庁とともに考えていかなければならない重要なテーマだと考えてございます。

 さて、具体的に、その内水に対するハザードマップでございますが、これは、私ども現在進んでいるとは思いません。やっと着手した段階だと思っております。具体的に申しますと、東京都の河川部局、下水道部局、防災部局、そして新宿区、中野区、杉並区が連携しまして、神田川水系における内水のハザードマップの作成についての検討を協力して現在やってございます。

 下水道の普及の変化、地下街の出現、または都市の再開発と、非常に時間的な軸も動きますので、技術的には大変難しい問題でございますが、都市の生活者の安全のために、内水のハザードマップの作成についてもこれから私ども対応してまいりたいと考えてございます。

井上(義)委員 では、以上で終わります。

赤松委員長 次に、永井英慈君。

永井委員 民主党の永井英慈でございます。おはようございます。

 気象業務法の一部を改正する法律案につきまして、先ほど扇国土交通大臣から提案の説明、まことに歯切れのいい、耳の中へすぽんと入ってくるような説明をお伺いしまして、この法案についてもう議論の余地はなしと、時代のまさに要請にこたえる、いや、時代の要請から一歩おくれてしまっているなという感じさえする法案でございまして、これは当然、私どもとしては賛意を表し、強力に推進していただきたい、そのように考えているところでございます。

 ただ、一点、地震計とか強震計とか、地震に関する計測器が検定対象から抜けているような感じがするんですけれども、その辺について一言説明をいただくと同時に、これは今まで特殊な世界ですから、業界ですから、中小企業等々に対する配慮は十分できているのかどうか、その点もお伺いいたしたいと思います。

山本政府参考人 お答えいたします。

 現在、市町村、気象庁が展開してございます震度計は、地震情報の提供に関する客観性及び迅速性を確保するということが大変大事でございまして、これは気象庁が開発したものでございます。

 平成七年一月の阪神・淡路大震災を契機といたしまして、地方自治体でもこの気象庁が開発した震度計の整備を推進してまいっておりますが、この整備に当たりまして、気象庁によります委託検定という制度がございまして、この検定を受けまして震度計の品質が保証されたものが、現在全国で統一された基準で運営されているということになってございます。

永井委員 それでは、ちょっとそれに関連して、地震についてお伺いをしてみたいと思います。

 申し上げるまでもなく、我が国はまさに地震大国というか地震列島というか、大変な地震が今まで起きておりまして、私は、「SEISMO」という雑誌、この四月に初めて手に入れて見ました。ところが、もう通巻五十何号というんですね。いろいろ地震に関する情報が入っているんです。しかも、専門的なのがかなり入っているんですね。この地図を見ただけでもおわかりのとおり、赤い点々、小さくて見えないかもしれませんが、すごいんですね。さらに、世界の地震発生分布を見ますと、環太平洋というんでしょうか、日本列島からずっと、アメリカの西海岸を回る環太平洋の地震発生分布というのはすごいものだと改めて驚かされたような次第でございまして、そこで、我が国は大変地震に苦しめられてきたことは、私が申し上げるまでもございません。

 そこで、明治以来百年余りたちましたけれども、我が国で発生した巨大な地震というか、甚大な被害をもたらした地震、恐らく最低十数回はあろうかと思いますが、この実績というか発生の状況、被害の状況等々について国土交通省では把握しておられるか、その被害の人員あるいは物的な損失その他を含めて、ちょっと御説明いただければ大変ありがたい。

山本政府参考人 お答えいたします。

 明治以降でございますが、我が国において発生した地震によりまして死者が百名以上の被害を伴う地震は、十八回発生してございます。これらはおおむね海溝型の地震あるいは直下型の地震によるものでございました。

 また、世界について見ますと、明治以降、一万人以上の死者を伴った地震については、三十回以上と、多数発生してございます。

永井委員 そこで、地震発生のメカニズムで分けた場合に、プレート型の地震と直下型あるいは断層のずれによる発生メカニズムというのでしょうか、あるいはその複合型と、三つに分けられるようでございます。

 そこで、私どもも関東地方に住んでいて、とりわけ昭和五十年に入ってからだと思うのですが、もう二十五年ぐらい、四半世紀ぐらいたちますけれども、南関東に直下型地震が来る、その震源地は何と私ども地元の川崎だというようなうわさが飛びまして、うわさがうわさを呼んで、市民は大変な恐怖に襲われたという記憶があるのですけれども、近い将来の発生が予想されます南関東地域直下の地震及び東海地震についてお伺いしたいと思います。

 南関東地域は、余りにも有名ですから御承知だと思うのですが、フィリピン海プレートと太平洋プレートがユーラシアプレートの下に沈み込んでおり、地下の構造が極めて複雑で、地震活動が活発な場所であるようでございます。

 大正十二年といいますから、一九二三年の関東大震災以降もう七十年を超え、言ってみれば、七十九年周期説というのですか、もう既にその期間に入っているわけでございますが、マグニチュード七級の直下の地震が発生する切迫性が高まっているとよく言われております。南関東地域には、関東大震災以降大規模な地震が発生した経験がない。そのうちに終戦になり、都市の一極集中が進み、言ってみれば、東京にありとあらゆるものが集積をしてきているのが実情だと思うのです。

 それに加えて、最近はIT革命と言われるように、情報通信のインフラ等々もかなりの勢いで整備されていることは御承知のとおりでございまして、そこで地震が起きれば、この東京というところはあるいは首都圏というところは、地震災害に極めて脆弱な地域構造になっており、地震の規模や震源地いかんによっては、震災時に多数の人命、財産の損失を招く危険が大きい。

 さらに、都市機能の阻害による二次的な災害あるいは三次的な災害までが起こると大変懸念されているところでございます。国民生活や経済の混乱となって被災地域を超えて著しく広域に波及するおそれがあるなど、都市型の地震災害が発生、拡大するおそれが増大してきていると言われております。

 南関東地域直下の地震については、地震発生の前兆現象の把握は困難である、大変残念ですけれども、現状では地震の予知は非常に難しいというのは、これは日本の専門家あるいは行政府等々で出している一つの見解でございますが、気象庁は、関係機関と協力して必要なデータの気象庁への集中を進め、常時監視を充実していると伺っております。

 地震活動等の異常の把握に努めるようにすべきですが、現時点における南関東地域の直下型の地震の発生の可能性について、ぜひかなり詳しく御説明をいただきたい。しかも、これはプレート型でなくして、断層型、直下型と言われておりますので、よくわかるように説明をお願いしたいと思います。

山本政府参考人 お答えいたします。

 南関東直下に発生する地震につきましては、平成四年に中央防災会議におきまして、南関東地域の地震対策に関する大綱を定めております。その中で、南関東地域直下におけるマグニチュード七程度の地震の発生は、ある程度の切迫性を有しておって、今後その切迫性が高まってくることは疑いがないと指摘されてございます。現在においてもその評価は変わりがないと認識してございます。

 これは、プレートの沈み込みによって蓄積されたひずみのエネルギーの一部が、マグニチュード七程度の地震として放出される可能性が高いということでございまして、現在、私ども気象庁におきましても、この推定に修正を迫るような新たな地震学的な知見は得られてございません。

 なお、関東地域におきましては、この南関東直下、つまり相模トラフ沿いの規模の大きい地震のほかに直下型の地震というのがあるわけですが、それについてはまだ断層系の構造だとかそういうことがよくわかっていないのが実情でございます。

 現在の技術では、南関東地域の直下の地震の発生を予知することは、大変残念ながら、非常に困難でございますが、私ども、将来的な地震の直前予知の実用化を目途にいたしまして、南関東地域における地震活動予測に関する研究を鋭意進めているところでございます。

 なお、南関東地域の監視体制を強化するために、気象庁、国土地理院、防災科学技術研究所、大学等のすべての機関の地震データ、あるいは一部の地殻データについては、気象庁に一元的に収集、処理されておりまして、常時監視をしているところでございます。

永井委員 それでは、七級以上の地震が発生した場合にどのくらいの被害が出るか、被害想定について、ぜひお話を伺いたい。とりわけ私の知人の総合研究所に勤めている研究員によりますと、関東大震災程度の地震で、首都圏で人的被害はわからない、発生時によってあるいは震源地によってわからないけれども、少なくとも、金額にして百五十兆円から百七十兆円の被害は出るだろう、こういうショッキングな話も伺いましたので、どうぞ御説明をいただきたいと思います。

吉井政府参考人 お答え申し上げます。

 内閣府、旧国土庁時代の話でございますが、先生御指摘の中の、いわゆる関東大地震程度、マグニチュード八程度の海溝型地震につきまして、昭和六十三年でございますが、被害想定を出しております。それによりますと、冬の夕方にそのような大地震が起きた場合、建物の大破が三十八万棟余り、建物の焼失二百六十万棟以上、死者十五万人というふうな数字を出しております。

 また、先ほど来お話のございましたいわゆる南関東直下型地震でございますが、これにつきましては、先ほど気象庁長官から話がありました南関東地震についての大綱を出しました際に、その前提として、平成四年に、マグニチュード七程度の地震による震度がどのようになるかというふうなことを国で想定しておりまして、それに基づきまして、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県におきましてそれぞれ被害の想定を行っております。それによりますと、例えば東京都の被害想定によりますと、東京都区部直下でマグニチュード七・二規模の地震があった場合、都内で建物の大破四万棟、死者七千人等の被害が想定されているところでございます。

永井委員 あくまでも想定ですから、先ほど申し上げましたように、震源地とか深さとかあるいは発生時刻等々によって被害というのは物すごく変わってくるわけです。

 そこで、いろいろお話を伺いたいんですけれども、時間が三十分ということでございますので、もうあと十分しかございませんので、ちょっとはしょって話をさせていただきたいと思うんです。

 あの阪神・淡路大震災で大変な被害をこうむった。あの後、本来ならば、防災対策、それから地震予知、地震研究、地震観測等々の議論が沸騰して国民的な議論が巻き起こってしかるべきだと思うんですが、実は、あの阪神・淡路大震災以降、我が国の地震観測、地震研究、特に地震予知の議論、あるいは体制、これが大きく後退している。私、図書館へ行って、忙しいですからちょこちょこっと調べてみた。確かに後退しているんです。

 世界じゅう百八十カ国余りある国の中で、地震大国である日本が地震の研究、予知体制をつくっていかなければ、人類は永遠にこの地震の恐怖から解放されないんじゃないか。逆に言えば、経済大国であり、世界の国々のあらゆる協力、善意を得て経済大国となって、資源、エネルギーもないこの我が国が、これだけの発展、これだけの生活を維持しているわけですから、この地球社会に対し、人類に対しと言ったらいいんでしょうか、この恩恵をどういう形でお返しするか。こういった科学技術の進歩、開発、特に地震予知等々の開発によって、完全に実用化をする、そして人類へ貢献する、私はこれが実は一番の安全保障の基本ではないかと。有事法制もいいでしょう、あるいはガイドラインもいいでしょう、あるいはいろいろ議論がされていることもいいでしょう。しかし、一番大事なことは、科学技術等によって人類に御恩をお返しするということが最大の安全保障の基本でなければならないという考え方を私は持っているんです。

 そこで、非常に後退しているんですね。それで、順序からいえば、その後退の事実を知らしめなければいけないんですけれども、簡単に申し上げますと、地震予知は将来の課題で実用段階の技術でない、これは測地学審議会の報告で出ているんですね。これはもうやってもしようがない。同報告書は、地震予知をして警報を出すという実用化の見通しは立っていないとはっきり述べておる。このことから、こういう機関が行う地震予知の見通しは暗いと言えるのではないか。したがって、当分の間、地震予知は期待できない。

 私は、地震予知の歴史をちょっと調べてみたんです。大体百十年ぐらい前なんですね、地震予知をやろう、地震観測をやろうと我が国で言い出したのは。それからまだ一世紀ちょっとしかたっていないんですね。地震は、毎日毎日起きるとか、毎日毎日天気のように変わるというようなことでなくして、データが極めてとりにくい、観測も非常にしにくい。そういう状況ですから、地震というのを予知するのは大変難しい。難しいけれども、これはまだ百年しかたっていないんだから、大いにこれは体制を整えて地震観測の推進をしていかなければならないと思っているところです。

 そこで、我が国の地震調査研究推進本部というのがあの阪神・淡路大震災の直後につくられました。この本部長が文部科学大臣となっているんですけれども、どうも私にはすぽんと理解できないんです。この辺について、当然私は国土交通大臣が本部長になってリーダーシップを発揮すべきだと考えているんですけれども、いかがでしょうか。

扇国務大臣 永井先生からいろいろなデータをもとに、地震列島と言われるような我が日本に対しての、予知というものがいかにできないかという難しさを御指摘いただきました。そのとおりでございまして、今お話がございましたように、平成七年に設置されましたこの委員会でございますけれども、地震予知に関する協力体制も今までとってまいりました。けれども、地震調査研究推進本部につきましては、地震に関する調査研究を総合的に実施するためということで、平成七年に設置されたものでございますけれども、今先生がおっしゃいましたように、文部科学大臣が本部長となっております。

 ただ、私が国土交通大臣だからということでもございませんけれども、私は、だれがなろうと、本当に国のために、国民のためになればいいことでございまして、私が本部長の方がいいとおっしゃっていただくのも結構ですけれども、それよりも何よりも、私は、省庁を挙げて全省庁で協力する体制がとれれば、だれがなっていてもいいというわけではございませんけれども、平成七年に設置されたものですから文部科学大臣がということになっているんだと思いますけれども、少なくとも、気象庁と国土地理院、文部科学省の三者が協力してこの予知というものをしようということで一元化したために文部科学大臣がなった。国土庁からは地理院とかそういうものが入っているのでということになりましたので、私は、だれがなろうとも、これが貢献できればいいと。いろいろなことを予測しますけれども、ナマズが一番当たると言われているようでは情けないと私は思っていますので、頑張っていきたいと思っています。

永井委員 この地震予知の体制にしても、大きく後退しているんですね。これはなぜかというと、地震予知推進本部だった。予知が先へ来て、予知に重点が置かれた。ところが、今は予知は入っておりませんで、地震調査研究推進本部となっているんですね。まことに残念でございまして、それが一点。

 それから、これが我が国の、言ってみれば地震国の研究調査、予知体制のシステムチャートだと思うんですが、非常に手落ちの多いところが気がつくんです。特に、一つだけ申し上げたいんですが、海上保安庁、気象庁、国土地理院、文部科学省、経済産業省、大学、その他地震研究所等々がありますけれども、大きく落ちているのが地方自治体なんです。地方自治体がここからすっぽり落ちている。それから、先ほど言いましたように、民間の研究団体、民間の情報交換をする団体等々がおっこちちゃっている。

 一つだけ申し上げますと、これは私の提案でもあるんですけれども、ちょうど今から二十五年ほど前、まだ地方議員をやっておりました。神奈川県でございました。神奈川県衛生部に温泉研究所というものがあった。衛生部に温泉研究所があった。当然のことです。温泉の効能とかそういうのを調べるところ。行ってみたら、これはぐあいが悪い。もうその必要はない。役割を終わったから、これを衛生部から環境部へ移して、災害対策に、とりわけ地震の観測予知に重点を置くようにしたらどうかということでやったんですが、たったそれだけのことでも二年三年かかって、ようやくにして実現して、今日に至っておるんですけれども、地方自治体でこれだけ充実してやっているのは神奈川県だけじゃないかと思うんです。

 ところが、地震の観測とか、研究とか、予知とかというのは、今ちょっとナマズを頼りにしちゃしようがないとかという話がありましたけれども、いや、実はナマズもばかにできないという説もあるんですね。そのように、地震国ですから、全国都道府県、市町村、あらゆる力の及ぶ範囲に観測体制あるいは研究体制、予知を張りめぐらすべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 予知体制につきまして、推進本部並びに地震強化判定会、あるいは地震予知連絡会等々ございますが、気象庁といたしましては、それらの機関の中核的な役割を果たしてございまして、私どもとしては、そういう情報の収集に努めているところでございます。

 民間におきましても、例えば温泉研究所のデータ等については、気象庁では、例えば伊豆半島群発の際にも、直ちにそういうデータの収集に努めましたし、また、静岡県におきましては、宏観現象と申しまして、例えば地震の前兆に結びつく可能性があるとされております動物等の異常行為、こういうことについての情報は直ちに気象庁に集まるよう、静岡県と連携してございます。また、地方自治体が展開してございます地震計や震度計のデータについても、地方自治体の御協力をいただきまして、気象庁に収集できるものについては収集している体制でございます。

 このように、国だけでなくて、広く民間の方あるいは地方自治体との連携について、現在、私どもとして努力しているところでございます。

永井委員 それは静岡や神奈川、特殊なところだけで、全国的にそういった体制は、地方自治体に対しても要請をするなり協力を求めておるところですか。

山本政府参考人 地震計、震度計の展開につきましては、消防庁、気象庁と地方自治体と協議をいたしまして、すべての市町村の有しております震度計のデータについては、気象庁に現在一元的にオンライン化されている。例えば、火山活動の場合、北海道の有珠山でございますが、道立温泉研究所が持ってございます地下水位のデータ、これが大変重要でございまして、これについては、経済産業省の御協力を得て、気象庁の噴火予知連の検討に資してございます。

 このように、状況に応じまして、それぞれの機関がオンラインで必ずしも提供できる体制になってございませんので、過去データの蓄積等については、私どもの地震活動あるいは火山噴火活動の診断に、鋭意、そのときそのときに使わせていただいているところでございます。

赤松委員長 永井君、時間がやってまいっております。

永井委員 時間が来ておりますので簡単にしますけれども、予報観測の人数が二千七百人。それから予報観測、これが約百四十億です。地震観測のためには二十三億、非常に予算が少ない。トータルで、アバウトで予算が大体二百億足らずです。それで、従事している研究員が、私の記憶では二百人足らず。これではとても勝負にならぬ。

 そこで、ちょっと私の思い出話をさせてもらいますけれども、小さいころ、台風が来る、全然わからずに、予期せずに台風が来るわけですね、進路だとか規模だとか。それで、アイオン台風だとかキティ台風だとか、いろいろな台風が来ました。土石流が発生し、部落が流れたり人が流されたり、大変な悲劇の繰り返しが終戦直後あったことを私はよく覚えているんです。あのころ、地震の震度とか規模は絶対にわからなかった。どうしてもわからなかった。夢にも、何とかなってくれないかと思ってもできなかった。

 もう一つ、私、小学校高学年になってですけれども、「月世界探検」という空想科学小説を読みました。絶対月になんか行ってこられない。ところが、アポロ計画によって、現在の状況、宇宙科学はあれだけ進歩しているわけですね。

 ですから、強い国家意思さえ出して、強いリーダーシップによって、国民のコンセンサスによって地震予知というのは可能なので、地震観測版アポロ計画のようなものをきちっとつくるべき。そのためには、今申し上げたような、あっちがどうの、こっちがどうの、気象庁がどうの、国土地理院がどうのということでなくして、思い切って地震庁のようなものをつくって、地震予知計画を徹底的に進めていくことが、世界から、あるいは地球社会から求められているのではないか、そう考えますので、最後に、研究、予知の一元化、さらには予算の増額、研究員の増加等々、日本の予知体制の充実について、扇国土交通大臣にお伺いして、私の質問は終わりたいと思います。

扇国務大臣 今るる永井先生から予知についての御示唆がございました。私たちも、なるべくそうして国民の皆さんが安心して生活できるようになっていただきたいと思っております。

 私自身も、三十年前、四十年前には、我が家の中を見ても、電気冷蔵庫があんなになると思いませんし、あらゆる電化製品、ボタンを押しておいたら朝、御飯が炊けているなんて、主婦にとっては夢の夢でございます。それがもうできているというのが現状でございますので、予知というものも、私は、今後、今先生がおっしゃいましたように、確立されるときが来るであろうことを念じておりますし、また、今、日本の国の体制の中では気象庁に各省庁からの情報を一元化してやっておりますけれども、内閣としても、今先生がおっしゃいました多くの体制をとっていかなければならないと思っております。

 三点だけ、今、今後どうしなければいけないかということだけ申し上げさせていただきたいと思いますけれども、我々も、地殻活動がどのような過程を経て地震の発生に至るかの調査が一つ、二つ目は、各地域における地殻変動の状況を把握するための観測システムの開発、三つ目には地殻活動の推移を予測するためのシミュレーションの手法の開発、地震に関してはこの三点について努力していきたいと思いますけれども、今御審議いただいております気象業務法あるいは水防法の業務に関しましてもすべてシミュレーションが大きな要因の一つになっておりますので、できれば今、お金とか人数だけではなくて、英知を結集して地震の予知ができるように、我々も最大限の努力をしていきたいと思っております。

永井委員 終わります。

赤松委員長 樽床伸二君。

樽床委員 水防法の一部を改正する法律案につきまして御質問をさせていただきます。

 元来、我が国の治水対策というのは、ややもすれば自然と闘う、こういう発想の中で、水害がないように、こういう前提でいろいろ努力をされてこられたんであろう、このように思っております。かつて江戸時代のように、まだまだそういう発想が中心的な時代でありますと、それはそれで結構かと思いますが、これはどこまでいっても一〇〇%ということはあり得ないわけでありまして、人類が自然に勝つなんという大それたことを考えちゃいかぬというふうに私は思っております。

 そう考えますと、起きたときにどうすんねん、起きたときにいかに被害がないようにするにはどうしたらいいのかという発想が当然のごとくなければ、財源の限界がある中で、国民の生命と安全は守れない、従来からこの委員会、旧の建設委員会等々でもこのように私は申し上げてきたところでありますが、そういう観点からいきますと、今回の法律案は一歩前進なのかな、このように考えております。時間も残り少ないわけでありますが、そのような観点に立ちまして質問をさせていただきたいと思っております。

 まず、一〇〇%はないとはいうものの、でもできるだけの努力はせないかぬ、自然と闘うということじゃありませんが、水害に対してできるだけのことはしなければならないだろう、このように思っておりますが、そのようなことにつきまして本当は国土交通省からこれまでの状況についていろいろお聞きしたかったわけでありますが、ちょっと時間が押しておりますので省略をさせていただきます。

 ただ、先ほど井上委員の質問にもあったように、昨年もいろいろなところで水害が発生をいたしました。実は、従来の予測を超えた雨が降ったり、こういうことが出てきておるわけでありまして、最近のいろいろな事例からすると、これまでの予測をちょっと変えなければならないのではないかというようなこともあるのではないかと私は思っております。これまでの近年の被害が、予測を超えた状況が来ている、これは気候のいろいろな変化が原因であろうとは思いますが、それを今後の予測の中にどう取り入れていくのか、またいっているのか、お聞かせいただきたいと思います。

竹村政府参考人 委員御指摘の御質問は、技術的には大変困難な、難しいテーマだと私ども認識しております。難しいけれどもやっていかなければいけない。

 予測を超えたデータ、明治以降百二十年程度のデータを私ども蓄積しておりますが、今御指摘のように、最近のこの二、三年のデータが全くそのトレンドの上に乗ってございません。非常に特異なデータが集まってきております。このデータを、技術的にどう処理して、私どものこれからの検討課題にするのかということは、これから気象庁と私どもともども技術的に担当していきますが、少なくとも、予測もできないさまざまな災害が来たときに、ハードな事業を着実にやるとともに、私ども、可能な限りありとあらゆるソフトな対策を考えていかなきゃいけないというような体制でこれからも河川行政の推進に向かってまいりたいと考えてございます。

樽床委員 今かなり正直に、予測を取り込むのはなかなか難しいと。明治以来のデータをかなり超えたところにここ数年間の実際の降雨量とかそういう自然の災害がある、こういうお話でありましたが、ぜひともお願いをしたいのは、ちょっとこれまでよりも大きい、予測をもっとかさ上げせないかぬ、こういう状況になれば、従来型の発想でいきますと、だったら金が要るな、より強固なことをせないかぬから金が要るなと。金が今なかなか国にないから、自治体にもないから、ちょっと、余りかさ上げした予測はやめておこう、そういうことにゆめゆめならぬようにお願いをしたい。

 そうなると、これは結局ツケが回ってくるのは国民の生命と安全ということにかかわってくるわけでありますから、かさ上げするならかさ上げをして、そのかわりに、限界はあるので、そのところをソフト面でどうきちっとフォローしていくのか、こういう発想の中で、正直なところの予測ははっきり国民に伝えていただいて、国民もばかじゃありませんから、できることとできないことというのは十分わかっているはずであります。そういう前提の中で情報をきちっと国民に公開していただくということを切にお願い申し上げる次第であります。

 続きまして、ハザードマップについてでありますが、先ほどから、千二百の該当がある中で九十ぐらいのところしかできていない、こういう話がありました。

 実は、これは国土交通省の方が私どもの部屋に、こういうものをつくるんです、こういうことで持ってきていただいた地図でありますが、この地図の上に私の家もございまして、実は私が住んでおる市でございます。よくよく見ると平成八年七月寝屋川市というふうに書いてございまして、平成八年につくったのかな、このように思っております。住んでおる人間としてはこれは、よくできているかどうかは専門家が見ればいろいろ意見があるんでしょうけれども、よくできているというふうに役所の方は説明をされました。うちの市長に申し上げますと市長は大変喜んでおりましたが、住んでいて実感をすると、この程度のことはそんなに難しい話じゃないというふうに思うんですね。土地カンがあれば、ああ、それはそうやろというような話ばかりでありまして、こういうものをつくるのになぜ進まないのかということが私は甚だ疑問でありますが、この点につきましてはいかがお考えでございましょうか。

竹村政府参考人 ハザードマップ、いわゆる災害が起きたとき住民たちの避難及び避難路を明示して、そしてそれを掲示していくというのは地方自治体の業務となってございます。さまざまな地方自治体が、災害を受けた歴史的な経過を踏まえて、その市または町は、これではいけない、住民にきちんとしたハザードマップをつくろうという意識の強い市町村が九十六市町村ございまして、市議会または議会のさまざまな御不安、または、我々をおどかす気かというような住民のさまざまな御意見を乗り越えて、過去の水害等を踏まえて、こういうのを公表しなきゃいけないとみずからやったところが九十六市町村でございます。

 このようなことで、私ども、国民の安全に関しましては全国同じレベルで、同じ方向で確保していかなきゃいけないということがございますので、基本的な考え方は国の方できちんと示してやろう、実際やるのは市町村になりますが、方向性は国の方で示していこうという考え方から、今回の、水防法の改正をし、各市町村がこのハザードマップを作成しやすい、また公表しやすい方向性をきちんと法律で定めるという状況になったわけでございます。

樽床委員 ハザードマップの公表自治体一覧というのをあらかたざっと見ていきますと、その九十幾つの自治体も、大体平成に入ってからつくっているところがほとんどであります。私が見ておるこの表によりますと、昭和につくられたのは一自治体だけでありまして、あとは大体、早くて平成の七年、八年、それで九年、十年、十一年、十二年、このあたりにもう全部、九十前後のものが集中をしているわけであります。

 これは、この時期にやはりこういう指導をしたのか、それとも勝手に自然発生的にこの時期に集中したのか、これはちょっと通告しておりませんが、わかる範囲で、いかがでございましょうか。

竹村政府参考人 率直に申しまして、私ども国の方が各市町村長と打ち合わせをして、連絡会等で、ぜひつくっていただくようにというような強いお願いをし、御協力を申し上げるというようなことを繰り広げて、この時期、急激に御理解を得ながら作成していったという実態でございます。

樽床委員 ということは、この時期に中央の役所から、あるいは言葉が適切かどうかわかりませんが、指導的なことをさせていただきながらこれまでやってきた、それを指導ではなく法律としてきちっとより強力に推進していきたい、こういうお考えであるというふうに理解をさせていただいてよろしいんでしょうか。

竹村政府参考人 先ほども申しましたように、住民の方々の身体、生命を物理的に直接救うというのは、まさに地方自治の本来業務でございます。その地方自治の本来業務の方々が本来的な業務をやりやすく支援するためには、私ども、指導または打ち合わせ等をやってきましたが、そういうことではなくて、法律できちんとそういう方向性を全国民にお示しすることが、私どもの、国の、中央の行政の役目かと認識しまして、このような法律を提案させていただいているわけでございます。

樽床委員 実はもっとたくさん聞きたいんですけれども、時間が参りましたので、このあたりで終了させていただきたいと思いますが、先ほど冒頭に申し上げましたように、このようなソフト面の、とにかく自然と闘うというんじゃなくて、自然と共生していく、最近の時代はこういう流れになってきておりますから、そういう点でいくと、自然が敵ではなく、自然と楽しい場合も苦しいときも一緒につき合っていかなければならない、こういう発想に立つならば、こういう次善的な、堤防をつくったり、こういうことで守ることも一つ。

 しかし、いろいろ難しいところもあって、こういうソフト的な面で、情報をとにかくたくさん提供して、自治体そして住民の方々みずからに守っていただく、こういう意識を高めていただく、そういう方向に向けて、より一層地方の自治体に、財源を押しつけることなく、自治体の皆さん方の発意でこのようなことが進むように御尽力いただきますようお願いを申し上げまして、質問を終了させていただきます。ありがとうございました。

赤松委員長 谷田武彦君。

谷田委員 自由民主党の谷田武彦でございます。

 水防法の一部を改正する法律案について、順次お尋ねをいたします。

 私は名古屋市の出身でございまして、昨年九月に発生をいたしました東海豪雨の災害対策につきまして、激特事業を初めとして、当局から大変手厚い対応をしていただいておりますことに、まずもって厚くお礼を申し上げたいと思います。

 それでは、順次お尋ねをいたします。

 現在、国土交通大臣が指定する洪水予報河川として、一級河川の中で百九十二河川が指定をされております。今回の改正で、新たに都道府県知事が洪水により相当な損害を生ずるおそれがある河川を洪水予報河川として指定するものとするとされておるわけでありますが、対象となる河川の数はどれぐらいになると予想されているのか、お聞かせをいただきたいと思います。

 東海豪雨に限っていいますと、庄内川は既に国土交通大臣が指定をする洪水予報河川であるわけでありますが、新川及び天白川はどうなっておるのかお聞かせをいただいて、そしてまた、都道府県知事によるこれらの指定はいつごろに行われるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

竹村政府参考人 御質問の洪水予報河川でございますが、あくまでも、都道府県が今後指定しますので、都道府県知事の判断によるところがございますが、おおむね全国で百河川程度が指定されるのではないか、比較的流域面積が大きいものだとか、県庁所在地を流れている重要な河川だとか、そういう河川が対象になるかと考えてございます。

 そして、個別の、この間の名古屋の大きな災害が起きました新川、天白川、これも愛知県知事の管理でございますが、新川は二百四十五平方キロと大変大きくて、そして重大な災害も受けましたので、ほぼこれは指定されるだろうと考えてございますが、天白川は新川の半分の大きさでございまして、これもそういう方向に向かっておりますけれども、技術的な検討が大変難しゅうございます。天白川については、特に技術的な検討をきちんとしながら、愛知県知事は指定していく方向で検討していくのかと考えてございます。

 そして、もう一つの御質問でございますが、いつごろ指定になるのかということでございますが、洪水予報河川に指定されますと、遅滞なく洪水予報を実施しなければなりません。

 洪水予報と申しますのは、雨が降っている最中に、あと三時間後にこの川は一番大きな洪水が来るよという予測を、三時間または四時間後に来るよということを言わなければいけません。これは、予測というのは、大変大きな、技術的な、洪水の真っ最中にコンピューターを動かして、真っ最中に判断しなければいけないということでございますので、大変準備がございます。

 具体的に申しますと、気象データの収集、河川の水位等のデータのリアルタイムな各機関との交換等をしなければいけません。そしてさらに、洪水予報をした場合は、各市町村へその結果を伝達しなければいけませんので、各市町村への情報伝達システムを整備しなければいけません。

 このようなさまざまな洪水予報河川の指定を行った後の具体的な業務が出てまいりますので、各都道府県、この準備の状況によって若干の時間が要るのかなと思われておりますが、今回のように大災害を受けたところではもうなるべく早く、つまり今年度中にも洪水予報河川の指定ができるように、各都道府県は懸命に今業務、この法律が改正されるという前提になりまして、その業務にもう既に当たっているわけでございます。

 これからも、気象庁とのさまざまな技術的な連携を踏まえて、各都道府県が各洪水予報河川の充実に当たっていくものと考えてございます。

谷田委員 ありがとうございました。

 今回の改正で、国土交通大臣または都道府県知事は、洪水予報河川について、河川がはんらんした場合に浸水が想定される地域を浸水想定区域として指定し、公表することになります。

 そういたしますと、この想定区域に土地を持っていらっしゃる方には心配なことが出てくる。すなわち、土地の値段が下がってしまうのではないだろうか、地価に影響を及ぼすことがあるのではないかという懸念を抱くわけでありますが、いかがでありましょうか。

 また、浸水想定区域をその区域に含む市町村は、市町村地域防災計画の見直しを行うことになるわけでありますが、そのことが市町村にとって負担になるのではないかと思われますが、いかがでありましょうか。

竹村政府参考人 委員御指摘の、不動産が今回の私どもの水防法によって大変大きなダメージを受けるのではないかというのは、大変心配した点でございまして、私どもも、この件につきまして十分調査をいたしました。

 まず、不動産価格の評価を行う際、不動産鑑定評価基準におきましては、洪水や地すべりなどの災害の発生の危険性を、災害発生の回数や災害の損失などを勘案して評価するということになってございます。ですから、不動産の鑑定評価の観点からは、洪水の危険性がもう既に評価に入っておると思っております。

 ただし、今回の水防法の改正によって、それがさらにクローズアップされるということでございますが、今回の水防法の改正は、土地利用等についての新たな規制を全く行うものではございません。あくまでも避難ルートや避難場所等をきちんと明示していくということでございまして、土地利用などの新たな規制を行うものではないということから、私ども、大きな影響はないと思っております。

 具体的に申しまして、平成十一年四月現在、洪水ハザードマップを作成しました四十三市町村の二百六十八地点におきまして、私ども地価の動向調査を行いました。バブルの後で、長期低迷傾向を持っている地点もございましたが、基本的に各地点とも、ハザードマップの公表の前後で地価の下落につながったという事例は見られませんでした。ということで、私ども、地価の動向には影響はないのではないかと思っております。

 さらに、市町村地域防災計画の見直しにおきまして、市町村の負担になるのではないかということでございますが、今回、浸水想定区域は私どもがやります。その後に避難ルートと避難場所を市町村がやるわけでございますので、これは、住民の財産、身体を守るという、市町村がやる本来的な必要最小限の業務支出ではないかと考えてございます。

谷田委員 東京大学社会情報研究所の廣井教授の調査によりますと、東海豪雨の際、大雨洪水警報を知った時点でも、回答者の約八割が災害が起こるとは思わなかったと答えているんですね。

 これは名古屋市にハザードマップがなかったことも一つの原因かと思うわけでありますが、被害を受けました名古屋市の西区や北区、ここはあの伊勢湾台風のときでさえ水が出ていないんですよ。過去に一度でも被災経験がある場合はそうではないようでありますが、どうも国民の皆さんは、何があろうとも自分のところだけは大丈夫だよ、そういった楽観的な考え方、希望的な見方をするのが一般的であると思います。

 水害に対して適切に対処するためには、住民の皆さんの意識を変えていかなければならないと思います。具体的な方策についてお示しをいただきたいと思います。

竹村政府参考人 委員御指摘の、住民の意識の改革が必要ではないかということでございますが、私どもまさに行政としては、私ども行政は国民に対する知らせる努力をしなきゃいけないということで今回の法改正がありますが、住民の方々も、国民の方々も知る努力をしていただきたいという思いでございます。行政の知らせる努力と国民の知る努力によりまして、この災害大国日本においての生活が確保されるのかと考えてございます。

 なお、今回の住民に対する、国民に対する周知でございますが、市町村がやるハザードマップが主体でございますが、そのバックアップとして、私どもありとあらゆる機会を設けまして、国としてもさまざまな機会をとらえて住民の意識の改革または啓発にこれからも努めてまいりたいと考えてございます。

谷田委員 今のハザードマップなんですが、先ほどからもいろいろ論議があるわけなんですが、これは、ハザードマップというのは簡単にできるものなんですか。

 私は、決してそうだとは思わないんです。例えば、大臣からも冒頭お話がありましたけれども、備蓄倉庫、これはもう水につかっちゃうというので、これはやはりかさ上げするなり違うところに探さなければならない。避難施設も、一般的には小中学校の体育館なんかが想定をされている場合が多いですね。ところが、東海豪雨の際は、その学校が水につかってしまったら、これは避難所になり得ないわけでありまして、そういったところの設定からもう一度やり直していかなければならないとすると、そんなに簡単にハザードマップ、完璧なものができるとは私は思わないわけであります。

 そこで、お尋ねをしたいのは、現時点で九十六市町村ができている。千二百市町村ほどが必要だというお話があったわけでありますが、おおむねこれらの市町村でハザードマップが完成する時期はいつごろか、お答えをいただきたい。

竹村政府参考人 大変難しい御質問を承ったと考えてございます。

 私ども、今回の法改正に基づきまして、浸水想定区域を全国で提示してまいります。浸水想定区域が私どもの努力によって早くできれば、かなり早くその浸水想定区域に対応する市町村はハザードマップができていくのではないかと思っております。

 私どもの浸水想定区域をつくる努力と、そしてその後に続く各市町村のハザードマップの策定の努力、これが相まって成果が上がっていくわけでございますが、現在、千二百程度の市町村が将来必要であろうと思っておりますが、これがいつごろ達成されるのかということは、現時点では私ども、大変残念でございますが、委員にお答えする手法を持ってございません。

谷田委員 時間がなくなってまいりましたので、最後に大臣にお尋ねをしたいと思います。

 東海豪雨に関しまして、庄内川、新川、さらに天白川につきましては、いわゆる激特事業で大変な予算をつけていただきまして、五カ年をめどにいろいろと事業が進行しておるところであります。大変ありがたいわけでありますが、ここで忘れてならないのは、これらの事業が完了したとしても、水害は軽減されるだけで、決してなくなってしまうわけではないという点なんですね。

 例えば庄内川、新川について言いますと、この事業が終われば、床上浸水戸数はぐっと減るわけでありますけれども、想定被害額というのは六千七百億円が千二百億円になる。大変減るからいいよと言われるかもしれませんが、絶対数としての千二百億円という数字は歴然として残っているわけなんです。天白川についても同じようなんですね。

 私は、これは大変無理な話だということはわかっておるわけでありますが、あくまでも目指すべきものは限りなく被害ゼロに近いものであるべきだ、このように思っております。

 東海豪雨災害の直後、都市型水害緊急検討委員会の皆さんの手で都市型水害対策に関する緊急提言がなされました。これは大変すばらしい提言だと思います。この提言を一刻も早く具体的に推進していただきたいと念じているわけであります。

 きょうは天気が悪いわけでありますが、いよいよ本格的な梅雨のシーズンに入ります。台風もやってきます。東海豪雨は、決して百年に一度の例外的な豪雨ではありません。お金もないでしょう。しかし、時間もありません。やらなければならないことが山積をいたしております。国民の生命と財産を守るため、いかに対処していくのか、国土交通大臣の決意のほどをお聞かせいただきたいと思います。

扇国務大臣 今、谷田先生から、現実に愛知御出身でいらっしゃいますから、あの水害を御経験なすって、冒頭に感謝の言葉をいただきましたけれども、私たちは、感謝していただくよりも、むしろあれを教訓として全国の皆さん方が意識改革をしていただくということの方が、あらゆる災害に対しての原点であろうと思っております。

 ですから、今お話ございましたように、私ども何を知らなければならないかというのは、雨が降ってから洪水になりますピークを迎えるまで一週間以上かかるような大陸と違いまして、我が国は少なくとも国土の面積の一割の洪水のはんらん区域に五割の人口と七五%の資産を持っている、そういうところに住んでいるわけでございますから、私たちは、洪水が急激に来るということを改めて知らなければならない。

 そして、御存じのとおり、ハザードマップのことを皆さんにお願いしておりますけれども、かつて、平成十年の八月に、阿武隈川におきます水害が起こりました。そのときに、ハザードマップを見たことがある人とハザードマップを知らなかった人、避難状況を聞きましたら、見たことのある人の方が見たことないという人より一時間も早く避難ができたという事例もございます。

 そのために私は、今回もこういうことで今御審議いただいておりますように、まずふだんからハザードマップを見て、そして一番大事なことは自助、自分でどこまで助けられるか、これがハザードマップの大きな意義であります。その次が共助ですから、市町村等々とともに助け合う、近隣の、御近所とも助け合う、これが共助。そして、最後が公助でございます。

 そういう意味では、自助、共助、公助という段階を踏むということを周知徹底することが、水害のみならず、地震とかあらゆる災害に対しての我々の大きな役目であろうと思いますので、ぜひそういう意味で今後も多くの皆さん方の、国民の安全と安心のために、こういうハザードマップを平素から見ていただくための啓蒙をしていくのが一番の安心、安全のもとであると私たちは認識しております。

谷田委員 ありがとうございました。

 一層の御努力に期待して、私の質問を終わります。

赤松委員長 大島令子君。

大島(令)委員 社会民主党・市民連合の大島令子でございます。

 扇大臣は、今や河川と気象の両方を束ねる大臣となりまして、我が国の洪水対策の最大の責任者となりました。どうぞ、しっかりとよろしくお願い申し上げます。

 では、改正案に関しまして、質問を順次進めてまいります。

 今回の法改正により、都道府県知事が新たに浸水想定区域を指定することができるようになりまして、よりきめ細かな災害対策が可能となることは評価すべきと思っています。

 そこで、質問でございますけれども、現在国が管理している河川においては、百年から二百年に一度の大雨を対象としております。これは、ある意味では潜在的な危険という程度のことと認識されます。しかし、都道府県が管理している河川が、五十年に一度あるいはそれ以上に短い時間の安全性だということは、いわば危険地帯の指定ということになるのではないでしょうか。

 住民感情としましては、もっと抜本的な治水対策、つまり、河川改修というハードの整備もあわせて行ってから洪水予報河川として発表してくださいというふうな考え方にはならないでしょうか。

 以上のことに関して、大臣の考えを聞かせてください。

扇国務大臣 先ほどもお聞きいただきましたように、我々は、国民の生命財産を守る一番大事な役所として今後大いに頑張っていかなければならないというのは、大島議員の御指摘のとおりでございますので、私たちもできる限りの努力をしていこうと思っております。今回皆さん方に御審議いただいています法案も、大きな要因がそこにあるわけでございまして、ソフトの面での水災の防止対策と相まって、今先生がおっしゃいました堤防とかあるいはダム等の治水対策、これは車の両輪でございます。

 ですから、今先生がおっしゃいましたように、ソフトの面だけではなくて、ハードというのは、当然私どもとしては万全を期していくというのは、大事なことでございますけれども、例えば、中小河川の整備状況、これは約四二%にとどまっているのです。この四二%という数字は、整備水準を向上させるというのは本当に困難なことではございますけれども、これを私たちは向上させていかなければならない。

 また、治水対策の足らざるところを補うために、少なくとも先ほど私が申しましたように、住民への確かな情報の提供、これを円滑にしていかなければならない。そういう意味での今回のハザードマップ、あるいは市町村も加えた一貫的な連携をしていくということの大事さというのは、私は、今回の水防法改正の趣旨にぜひ御賛同いただいて、御協力を賜りたい。

 なお、治水対策の内容の公表につきましては、先生も御存じのとおり、平成九年に改正しました河川法に基づきまして、住民の皆様の意見等を反映しつつ、策定する河川整備計画の公表を通じて行っております。この河川整備計画というのは、大島先生御存じのとおり、河川整備計画で具体的にどこまで、どのような事業が実施されるかがこれによって明らかになるわけでございますので、より一層の連携と情報公開によって、少なくとも危険を回避できるような施策をとっていきたいと思っております。

大島(令)委員 私が申し上げました百年、二百年に一度の大雨ということは、住んでいる住民の皆さんにとっては二世代、三世代の中で一回大雨があるかな、だから潜在的な危険と申し上げました。

 中小河川、今度、浸水想定区域に入ります都道府県管理の河川は五十年に一回大雨があるのではないかということは、五十年に一回危険なんだよ――私たちは平均年齢が上がりまして、七十、八十まで生きている。そうすると、そこに指定した地域は、自分が生きている間に一回はそういうことが起きるんだということを行政によって指定される、そういう意味も含まれているんだという前提を踏まえての今回の法改正になるんだという認識を行政の方々に持っていただきたい、そういう質問でございます。

 もう一度、大臣、この私の考えに対する見解を聞かせていただきたいと思います。

竹村政府参考人 委員御質問の、河川の洪水に対する安全性の考え方でございますが、私ども、ある一定の計画を持って国民の税金を使って河川改修事業をやっていくということから、どういう目標で投資をしているのかということを国民にわかりやすくするために、百年に一度または五十年に一度というような言い方をさせていただいております。

 特に、大河川の場合は、堤防が破堤した場合にはその破堤した勢い、力というのは大変大きゅうございます。ですから、大きな川、利根川だとか淀川だとか一級河川、国が管理する河川の破堤というのは大変な災害を及ぼすために、この安全性は百年に一度または二百年に一度という形できちんと守らなきゃいけない。

 ところが、県の管理している今御指摘の河川では五十年に一度ではないかというようなお話でございますが、県の管理している河川は比較的小さくございます。そして、水があふれて人々の住宅地へ押し寄せてくるという形でございますが、その被害は大河川の破堤、はんらんと比べると比較的に少のうございます。

 そのために、現時点では予算の制約もございますので、そのようなレベルを変えた河川整備をしているんだという国民への私どもの表明でございまして、河川整備を前提として水防法があるということではなくて、現在このような水準でもって私どもハードな河川整備をしているんだという説明だと認識していただければと考えてございます。

大島(令)委員 それでは、河川局長に再質問させていただきますが、先般、二〇〇一年三月八日の記者会見におきまして、二百年に一回という安全性に達したら、水防の視点はハードの面からソフトの面への転換を図るべきと述べておられます。今回の水防法改正の視点がここにあるというふうに理解しております。

 しかし、先ほど大臣からは、私の指摘しました、中小河川の整備達成率が四二%である、今回の改正はソフト面の改正であるが、治水対策、河川の改修ということも念頭に置かなければいけないという前向きな答弁をいただきました。やはり、国土交通省の中で見解を統一していただきたいと思います。

扇国務大臣 今、大島先生がおっしゃいましたように、ハードとソフトが車の両輪であると私は申し上げて、ハードの部分は、国がしなければいけないことはきちんとやります、ただ、それに今度はソフトの面、国民の皆さん、住民の皆さんにも意識を持っていただきたい、国と地方自治体と一緒になってソフトの面の開発もし、啓蒙もしていこうということで、ハードとソフトが両輪であるということを私申し上げたつもりでございます。

大島(令)委員 次の質問に移ります。

 罰金等の引き上げを行うことに対し、いささか疑問を持っております。まず、平成十一年の同法改正時には提案されなかったのはどういう理由でしょうか。その後、何か重大な事件が発生したのでしょうか。

 私は、本来、消防と同様、共同体の営為であるはずの相互扶助の精神に立脚しているべき水防法においては、例えば阪神大震災以降の緊急事態にさまざまに活動しているボランティアの活動に期待しなければならないと思います。そのようなある意味崇高な人間関係を前提としている水防法におきまして、重罰化を思わせる罰金等の引き上げは立法の精神にそぐわないのではないかと思っております。

 とりわけ、この法案の四十条三号の関連は水防計画作成段階のことであり、にもかかわらず罰金が五万円から五十万とか、一万円から三十万など、どういう根拠でこのような引き上げがあるんでしょうか。水防計画作成の段階ということは、緊急性と危険性とは同等の事項とは私は思わないわけなんです。計画の段階ということは、立ち入りに対して協力をしない地権者の方にも、説得を重ねれば済むことだと思います。

 近年において、このように罰金の引き上げをするような具体的な事例があったのか、御説明をお願いいたします。

扇国務大臣 大島先生がおっしゃいましたことに対しましては、少なくとも水防法の罰金制度の規定というものは、私は、地域の住民の安全の確保にとっては大変重要な水防事務の妨害行為に当たるということで、限定して適用されているということをぜひ御理解賜りたいと思います。

 少なくとも、今回の罰金額の引き上げというのは、これらの妨害行為に対する罰金額が、この法律を制定しましたのは、先生も御存じのとおり昭和二十四年でございます。その当時のことを考えますと、それ以来据え置かれておりまして、例えば、今先生が一、二、例を挙げられましたけれども、水防管理団体が管理する水防用の器具等を損壊、撤去した場合に当たるということですけれども、昭和二十四年ごろには高速道路もできておりませんでしたけれども、今はできておりますので、今の高速道路法あるいは高速自動車国道損壊等の罰金の五十万円というのに倣いまして、五万円を五十万円に、今の時代に合うように合わさせていただいた。

 また、例を挙げられましたけれども、水防計画の作成段階における資料提出命令または立ち入り拒否ということに関しましては、御存じのとおり、土砂災害防止法あるいは基礎調査のための土地の立ち入りの拒否等に三十万円というものが科せられております。それと見合わせて、一万円を三十万円にさせていただいたというので、昭和二十四年に策定されたまま、当時はまだ他の法令との横並びがなく、また日本の今の現状とも変わってきておりますので、時代の流れとともに、同じようなものにそろえさせていただいたというのがその根拠でございます。

大島(令)委員 私が特にこの重罰化に関して取り上げたいことは、四十条の三号でございます。

 例えば、水防管理団体の保管している器具とか資材、そういう設備を破壊するということは非常に残念なことであり、いけないことだと思います。しかし、四十条の三号に関しましては、水防計画作成の段階であり、今大雨が降っているとか洪水の危険性があるとか、そういう場合を想定していないわけなんです。ですから、先ほども申し上げましたが、緊急性と危険性は他の号とは同一視できません。

 私が問題にしているのは、四十条三号関連の重罰化でございます。この件に関しまして、もう一度御答弁をお願いいたします。

竹村政府参考人 御質問の、いわゆる水防計画の作成段階における資料提出または現地の立ち入り拒否に関しましてでございますが、私ども、その地域の市町村長が、当該地域の安全を守るために、大きな山に入っていったり、他人の所有する山の状況を調べたり、大きな土砂が蓄積されているようなところへ入っていったり、または大きな土砂の結果として大きな水たまりができているというような状況も見受けられるときがございます。現在も、岡山県で大きな砂利採取の山が崩落して人がそこに埋まってしまったという事故が、つい最近もございましたが、自然災害に伴いまして、さまざまなそういう危険だと思われるような土地の損壊によって、自然災害と人為災害が混然とした災害が発生しているのが現状でございます。そのようなことを事前に調査し、その所有者に対して安全を確保するための打ち合わせ等を市町村長たちがするのは、当然の義務かと考えてございます。

 そのようなとき、ぜひ協力を願いたいというようなことでお願いをするわけでございますが、そのお願いが聞き入れられずに、第三者である住民の方々の生命、身体が危険にさらされると判断するようなときを想定した条文でございまして、特にこれをすぐ発動するということではなくて、そういうことも想定できるという前提の、私ども、他の法律との横並びの条文だと認識してございます。

大島(令)委員 次の質問に移ります。

 河川局長にお尋ねします。

 一級河川は、より流域面積が大きく、いわば大河川が多いわけです。こういう河川に関しましては、歴史上、はんらんについての情報が語り継がれ、河川管理の情報などが蓄積されてきていると思います。しかし、中小河川に対しての過去の水害情報の蓄積は、大河川に比べ、少ないと思います。

 そこで質問でございますが、浸水想定地域がより細かく特定され、そして、より広がることは、ある種の財産権の侵害的なことになるのではないでしょうか。先ほど谷田議員も質問しておられました。行政の行為により地域の評価に影響を与えることは想定していないのでしょうか。谷田議員は、土地の評価と質問いたしましたが、私は、地域全般の評価に影響を与えることに対しての質問でございます。これをどういうふうに想定しているのか、御説明をいただきたいと思います。

 また、流域面積の一定の大きさが浸水想定地域として指定できる前提とも受けとめられる法案でございます。いわゆる暴れ川、山から海までの流れる距離が短い、流域面積が少ない場合にも多く見られることでございます。過去においてのはんらんや被害の状況も、法案の文章として入らなければならない事項だと思いますが、今回、過去のはんらんや被害の状況が入らなかった理由、また、検討されなかったのかどうか、御答弁をお願いしたいと思います。

 また、次に、ハザードマップの義務づけを市町村防災会議にしておりますが、非常に財政が逼迫している中で、自治体にとっては大変な作業であると思います。国の財政的援助は、水防法三十三条においての措置、すなわち、水防施設というハードの設置時における費用の三分の一にとどまっております。ハードからソフトへの転換をうたった改正において大きな負担を強いることは、ハザードマップ作成に対する市町村の援助、これの検討が必要だと思いますが、具体的にどのような支援を市町村に対して考えていますか。

 また、インターネットで洪水ハザードマップを作成している団体の一覧表を入手しました。ほとんどが閲覧のみとなっております。先ほど扇大臣は、ふだんからハザードマップを見ることが必要だと述べられました。しかし、現状は、閲覧のみとしている市町村が圧倒的に多いわけです。このハザードマップをつくる目的は、やはり家庭などにおいて日常的に見ることができるようにしなければならないと思います。このハザードマップを有効に生かしていく方法を国はどのように考えているのか、市町村に指導するのか、お考えを聞かせていただきたいと思います。

竹村政府参考人 浸水想定区域またはハザードマップを公表することによって、地域全体の評価を下げるのではないかという御質問でございますが、あくまでも、そこに住んでいる方々の避難路、避難場所等を明確に明示するというのが趣旨でございまして、私どもハードの事業を進めておりますが、ソフトの面でも、そのような形で充実した地域だということで、地域全体の評価を下げるというような趣旨ではないと私ども認識してございます。

 また、浸水の過去の被害状況も法的にオープンにすべきじゃないかという御質問でございましたが、私ども、過去の浸水実績はすべて公表してございます。全国の総合治水対策特定河川におきましてもしかり、その他の普通河川においても浸水実績を公表してございます。過去の浸水実績を公表することはもう既にやっておりますので、法律に措置するまでもなく、当然の私どもの情報提供の業務としてしておるということで、今後とも私ども、それはきちんとやっていきたいと考えてございます。

 次の、市町村の防災会議におきますハザードマップをつくる費用の支出でございますが、今までのハザードマップをつくるとき、一番費用がかかっていて技術的に大変だったのは、実は浸水想定区域、ある一定の規模の雨が来たときこの町がどのように水につかってしまうか、また、この地点では一メーターなのか二メーターなのか、または五十センチで済むのか、そういう浸水想定区域が、実は技術的にも費用的にも大変な業務の部分でございました。

 浸水想定区域ができますと、その上で検討する避難ルートまたは避難場所というのは、それほど大きな負担がかかる作業ではございません。

 今回の法改正におきましては、私ども、一番の業務のハードな、大きなところの浸水想定区域は私ども河川管理者がやらなきゃいけないと、みずからに課した義務にしてございまして、市町村は、私どもが提出した浸水想定区域を前提とした安全な都市をつくっていただくようなハザードマップをつくっていただくことにしてございますので、市町村の負担は、従来のハザードマップをつくることに比べると、逆に大きく軽減される、または、ハザードマップがなかったところから見れば若干の支出はございますが、市町村の当然の業務の中の支出かと認識してございます。

 最後に、各家庭において日常的に見られなきゃいけないというのは、全く私どももそのように考えてございます。

 これは各市町村の業務でございますが、私ども国、県も、各市町村にお任せするのではなくて、さまざまな支援をこれから考えていきたい。国が地方自治の業務に関与するのではなくて、どのような形で支援できるのかという点から、各市町村が、各家庭にこのハザードマップが届くように、さまざまな形、具体的に申しますと、私どもの国土交通省のインターネットを使っていただくだとか、または電話帳のハローページのレッドページで、私ども国土交通省の枠でそれを表明していくだとか、または水防演習のときや広報誌への掲載だとか、ありとあらゆる努力をしていきたいと考えておりますので、具体的にはこれからの私どもの課題と認識してございます。

大島(令)委員 市町村は、広報を大体月一回ですとか二回、その中に健康便りですとかいろいろなものがセットになって家庭に配布されております。ごみカレンダーなどもそういうものです。

 こういうハザードマップがインターネット以外の媒体によって各家庭に配られるには、やはり市町村にとっても財政的な負担になると思うわけでございますけれども、地方分権一括法が一昨年通りまして、昨年度から施行されました。やはり、市町村長さんに聞きますと、なかなか、事務ばかり僕たちにやってきて、お金は国から出てこないと。やはりこういう法律は、一定評価はできるわけですが、この法律本来の趣旨が末端の家庭にまで届くには国のそれなりの財政的支援も必要だと私は思っております。

 最後に、このような河川行政というのは、先般、十月五日の東海豪雨のときの災害対策委員会でも私も質問させていただきましたが、河川相互の問題、そして下水道との相互連携を図りながら、急に都市化したことによって起きる都市型水害の問題を解決していく、一級、二級河川、下水道など多くの垣根をできるだけ取り払い、一元的な管理体制をしながら河川行政に取り組んでいっていただきたいことを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

赤松委員長 瀬古由起子君。

瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。

 今回、水防法の一部改正が行われるわけですけれども、正直なところ、この改正は遅きに失するものと言わざるを得ないと思います。昨年の通常国会では、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律が制定をされました。これは、一九九九年六月の広島土砂災害の教訓から制定されたものです。こうした経過を見ていますと、大規模な災害が発生しないと、なかなか対策が前進しないのではないかというように感じざるを得ません。

 最近では、大規模な災害が発生すると、それに対しての制度的な措置の対応が早いとも言えるかもしれませんけれども、いずれにしても、現実に後追いとなっているんじゃないかと思うんですね。このことの政府の責任は大変大きいと思います。政府は、こうした対応のおくれを真摯に反省して、今回の法改正にとどまらず、さらに一歩前に出た、また従来の枠にとらわれない防災行政を進めるべきだというように思います。

 そこで伺うわけですけれども、今回の改正で洪水予報河川の指定、あるいは浸水想定区域の公表等が行われます。昨年の土砂災害の法律でも、土砂災害の警戒区域の指定がありました。あらかじめこうした箇所を明らかにすることは、災害の備えとしては大変重要なことだと思うんですね。

 自然災害の危険性を示すものとして、先ほどからお話がありましたハザードマップがありますが、その効果は既に知られているところでございます。ハザードマップ、今回水防法ですから、洪水のハザードマップ、先ほどお話もありましたけれども、もう一度正確に、全国にどのくらいの市町村で制定されているんでしょうか、伺います。

竹村政府参考人 全国の現時点での状況でございますが、本年二月までは、豊川水系の豊橋市を初めとします直轄河川の市町村では八十八、知事の管理河川につきましては八市町村、合わせて九十六市町村でございます。

瀬古委員 これまで国土交通省はその作成や公表を推進しておられたわけですね。しかし、なぜそれほどおくれているのか、進まなかったんでしょうか。その辺、原因はどのようにあるとお考えでしょうか。

竹村政府参考人 ハザードマップが進まなかった原因は、私の判断しているところでは二点ございます。第一点が社会的な状況でございまして、各地方自治体の災害に対する認識の度合いと将来に備えてやるかやらないかの必要性の判断、それが一番目でございます。

 二番目が技術的な問題でございます。これは大変技術的な問題で大きな問題がございまして、私ども従来、はんらんシミュレーションの結果はお渡ししていたんです。はんらんシミュレーションの結果とは何かと申しますと、コンピューターで、五百メーターメッシュの平均の浸水深は五十センチですよというようなデータを市町村にお渡ししたんですが、市町村はその五百メーター掛ける五百メーターのところの平均五十センチの浸水深という結果をもらったら、今度は、地形のアンジュレーションと申しますか、五百メーターの中の地形のでこぼこを前提として、今度は、ここは一メーターまたは二メーターになってしまう、またはここは沈まなくて済むとかいうようなことをやる浸水想定区域の作業に大変技術的に問題があったということでございまして、社会制度上の問題、そして技術上の問題、これでなかなかハザードマップの進展が進まなかったと私は認識してございます。

瀬古委員 そうしますと、その問題点は今後の改正でしっかりと援助をしていくということでよろしいんでしょうか。

竹村政府参考人 委員御指摘のとおりでございます。

瀬古委員 先ほど話もございましたけれども、ホームページなどで見ておりますと、洪水ハザードマップの情報入手方法の一覧表は、閲覧のみというのが圧倒的に多いわけで、それ以外にも、手渡しとか郵送可能市町村、こういうところまで、いろいろ市町村がございます。また閲覧も、担当課の一カ所というところから、市内各所でそれが閲覧できたり入手できたりする、こういうこともありまして、大変差が大きいのが実情でございます。火山のハザードマップなどは、せっかくつくっていても公表しないところもあるというふうに聞いております。こういう状況を見ますと、やはり国にしても地方自治体にしても、本当に真剣にこのハザードマップの整備を進めようとしてきたのか、もっと早く手を尽くすべきだったというふうに私は思うんですね。

 今、しかし、これからやろうというその意欲は買いたいと思いますけれども、改めて、このハザードマップの整備の促進というのがまず今回の改正では大変重要だと思います。二つ目には、住民にいかにわかりやすいハザードマップをつくるかということも大変大事だというふうに思います。それから三つ目には、やはり提供方法ですね。こういう三つの点から、今後の改正についての改善を行っていくべきだというふうに思います。

 大臣や知事が浸水想定区域等の指定を行うわけですから、さらに市町村との連携を強めて、これをわかりやすく示したハザードマップを市町村が早急に整備し、住民にわかりやすい形で、各戸に公表する、こういう点での推進を図るべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

竹村政府参考人 今の委員の御指摘、そのとおりでございまして、私ども、市町村がつくるハザードマップをいかに国民にとってわかりやすいものにするかということがこれから大きなテーマかと思っておりまして、単に市町村に投げるのではなくて、私ども国、県も知恵をおかししながらわかりやすいハザードマップをつくっていきたいと考えてございます。

 具体的に申しますと、先ほど寝屋川のハザードマップ、樽床委員がお示しになりましたけれども、あれでも正直言いましてわかりにくい部分がございます。例えば福祉施設がどこにあるんだとわかりやすいマークをつくったり、避難所のマークをわかりやすくしたり、または浸水深、水の深さのランクをもう少しわかりやすくしたらどうかとか、特に高齢者世帯の方々にお配りする資料と一般の若い家族にお配りする資料は同じものでいいんだろうかというような、さまざまな議論を今実はしてございます。

 そのような、今御指摘のわかりやすいハザードマップをつくるということにつきましては、私ども河川管理者だけではなくて、さまざまな幅広い見識の方々のお知恵をかりながら、そして各市町村の発想を生かしながら、わかりやすいハザードマップをつくるために、私ども国も、これからも支援していきたいと考えてございます。

 なお、これらの各家庭への配付、そして個別への周知につきましては、先ほどからも申していますように、市町村がやる業務でございますが、国、県は最大限の支援をさせていただきたいと私ども考えてございます。

瀬古委員 今回の改正の背景には、一九九九年の集中豪雨あるいは昨年の東海豪雨などの都市型の水害の発生があります。これを受けた河川審議会や建設省の都市型水害緊急検討委員会の提言を受けて、今回の改正が行われたということだと思うんです。

 昨年十二月の河川審議会の中間答申では、「洪水の氾濫域における土地利用方策」として、「建築基準法に基づく災害危険区域の指定を行うなど、これらの情報を土地利用に関する計画・規制措置に反映することが必要である。」このように述べております。そして、今後検討すべき課題として、治水の観点からの土地利用の誘導方策の検討を掲げております。

 災害による危険な区域の建築規制としては、建築基準法で建築の制限をすることができる制度があります。その場合には、災害危険区域条例、がけ条例、こういうものが必要になってまいります。しかし、都道府県では全国都道府県で両方あるいはいずれかが制定されていますが、市町村ではそこまで条例をつくっているというところはそうたくさんございません。現実には建築規制等が実効あるものにはなかなかなっておりません。そういう意味では、中間答申でも土地利用の誘導方策を言っていますが、地方公共団体が浸水想定区域に建築基準法の建築制限をかけることがあってもいいのではないかと思うんですけれども、その点いかがでしょうか。

竹村政府参考人 ただいま委員御指摘の、土地利用方策との組み合わせの河川審議会の中間答申でございますが、これは、あの答申をよく読んでいただければおわかりだと思いますが、山間部の非常に狭い土地で常に水害に襲われている土地がございます。そこを連続堤防、普通のように堤防でつくってしまいますと、堤防でほとんどの土地をつぶしてしまう、大事なそこの田畑をつぶしてしまうというようなことになってしまうというような状況が山間部ではございます。大都市部ではきちんとした堤防で守らなきゃいけませんが、そういう山間部で都市部と同じような形で堤防をつくるのがいいのかどうかという議論の中で、少なくてもそういう山間部では連続堤以外の土地利用方策、または集落を堤防で囲む輪中だとか宅地のかさ上げ等による新しい水防災対策特定河川事業を実施していこうというような内容になってございます。これは十三年度から新たに創設したものでございます。

 さて、このような土地利用と防災に関してのこれからの将来の考え方でございますが、具体的に申し上げますと、新宮川の上流の三重県の紀宝町におきましては、水害常襲地帯でございまして、例えば標高九・四メートル未満の区域を災害危険区域にもう指定してございます。そしてその中の住宅建設を禁止するなど、紀宝町はかなり厳しい災害危険区域を設定してございます。紀宝町だけではなくて、札幌市の建築条例、岩手県の川崎村、島根県大和村における危険区域に関する条例等がございます。まだ事例はわずかでございますが、私どものハードな河川改修事業とその地域の土地利用とが連携し合って、さらに安全な地域の生活、地域住民の生命と財産を守っていくということが肝要かと思われますので、将来このような方向で私ども国と市町村が連携して安全を確保していきたいと考えてございます。

瀬古委員 私は、この東海豪雨の被害の発生直後に現地に入りまして、救援活動にも入ってまいりました。また、現地調査も行いましたけれども、その中で感じましたのは、破堤した新川あるいは天白川の流域には宅地開発がずっと進んで、洪水はんらん予想区域もどんどん宅地化されていったことに大きな被害の原因もございます。

 昨年十二月の河川審議会の中間答申「流域での対応を含む効果的な治水の在り方について」は、今後の治水対策を進める上で大変示唆に富むものだというふうに思っています。ところが、今回の法改正では、指定や公表と避難のための措置というふうに限られているわけですね。そうした地域における土地利用の規制だとか開発行為の規制、こういうものが盛り込まれておりません。そういう意味では、河川審議会の中間答申でも、今後検討すべき課題だとして、治水の観点からの土地利用の誘導方策などの検討と掲げているわけですから、やはりこういう都市型災害については開発規制だとか利用規制、そして移転の促進、こういうものも視野に置いて進めていくということが大事ではないかと思うんですが、その点いかがでしょうか。

竹村政府参考人 今委員御指摘の土地利用規制との安全策の向上というのは、大変重要だと私ども先ほども申し上げました。現時点におきましては、いわゆる土地利用の規制につきましては規制という大きな権利規制に入ってまいりますので、今回の水防法では入れておりません。将来の大きな一つのテーマと認識しておりますが、私ども、事業をするだけではなくて、山間部におきまして先ほど申しました輪中、そして宅地のかさ上げ、そのようなこともメニューを広げながら、より安全な国土にしていきたいと考えてございます。

瀬古委員 本当に一瞬にして胸まで水が来る、逃げる間もないというすさまじい都市型災害を私も見せていただきましたけれども、そういう点では、開発規制、土地利用規制などは早急にやらなければ本当に大変だというふうに思っております。ぜひ御検討いただきたいと思います。

 さらに、福祉施設。

 この災害で重度の障害者の施設もあったわけですけれども、そういうところが集中して水につかって、そして、たまたま職員の方が帰る時間をおくらせたりいろいろな事情で帰れなかったために、間一髪というところで障害者が助かった、こういう事例がございました。

 そういう意味では、特に福祉施設、重度の障害者や寝たきりのお年寄りのいるそういう施設などについては、やはり立地規制だとか安全なところへの移転防災を考えるだとか、移転できないという場合は、建物の場合でも、直ちに避難できる避難所を確保できるような、そういう改築などを真剣に考えなきゃいかぬと思うのです。そういう点では、災害危険区域などについては一定の移転整備の施策もあるようですけれども、今回の水防法による浸水想定区域においても同じ扱いをぜひしてもらいたいと思います。また、実際には、移転する場合の財政的な支援だとかいろいろな問題が出てまいります。そういう意味での支援措置の拡充というものが必要ではないかというふうに思うのです。

 ちょっと時間がございませんので、もう一点。

 今のは浸水想定区域にある福祉施設の問題でしたが、もう一方は、個人の住宅の問題についても、移転できないという場合もございます。そういう場合は、都市部においても、もう堤防をあきらめて輪中だとかかさ上げだとか、浸水想定区域における住宅への防災のための一定の援助というのが必要になってくるというふうに私は思います。そういう点では、どのような方策や支援措置が検討されているのかということをお聞かせいただきたいと思います。

扇国務大臣 今、瀬古先生は大事なことをおっしゃいましたけれども、本当に、福祉施設等を移転または改築するかどうかというのは、これらの施設の管理者であります地方公共団体におきまして主体的に判断される、先生もそう認識していらっしゃると思います。けれども、それを無視しては考えられない、今そういう現状でございます。

 私も名古屋へ行きましたときに、皆さんがおっしゃいました。最後にこの家の中にはもうだれもいませんよという印をつけてもらうと、見回ったときに、ああ、ここはもうだれも中にいないんだなというようなことがわかる。特に、福祉施設、心身障害者の方を持っているおうち、あるいは老人を持っているおうちは、最後に、その人を連れ出しましたという何か印が家表に張れないものだろうか。黄色いリボンでもいい、赤いリボンでもいい、そうすると、巡回するときに、ああ、このうちは全部避難したなというのがわかる。そういうことも今後検討してくださいという御指摘を私はいただきました。

 今先生がおっしゃいました福祉の面におきましても、そういうことはやはり経験で皆さん方が教えてくださる、それを我々は市町村と一緒になって今後そういうこともしていかなければならないなというふうに考えて、勉強させていただいた次第でございます。

 また、今先生は重ねて、個人の住宅はどうかというふうにおっしゃいましたけれども、これも、宅地のかさ上げ等を行うかということもさっき局長が答弁をしておりましたけれども、住宅金融公庫融資におきましては、宅地のかさ上げのほかにも、浸水の対策を施した住宅の建築、改築、補強に係る費用を融資対象といたしております。

 例えば少し例を挙げますと、融資の種目では、リフォームローンでありますとか、マイホームの新築融資、建て売り住宅購入の融資、そういうのもやっております。また、対象となる工事としましては、宅地のかさ上げ、住宅の高床化、そういうこともしておりますし、防災性のある塀やあるいは門塀の設置、これも対象になっております。

 そういう意味では、今後皆さんと協力し、また地方自治団体と勉強しながら、住宅金融公庫の融資につきましても御利用いただいて、そして、特に福祉施設等々には最大の配慮をするということは、災害のときの私どもの大きな懸念材料であり、また対処しなければならない要因だと思っております。

瀬古委員 時間がもう迫ってまいりましたので、ぜひ防災の観点から、本当に国民の命、安全を守る点から、さらにいろいろな援助措置の拡充をお願いしたいと思います。

 最後に、気象業務法の関係で伺いますけれども、今回は規制緩和の一環という形になるわけですけれども、気象観測におけるデータの信頼性が損なわれることにならないかどうか、これが最大の問題になります。規制緩和によって観測に支障が出るようなことのないよう、例えば、今後事業者に対して立ち入りの措置だとか、こういうものが求められると思うんですけれども、その点いかがでしょうか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 今回の法改正におきましては、気象庁長官が認定した測定者が作成した測定データの提出によりまして検定を受けることができることとしております。

 測器の測定精度につきましては、先生御指摘のとおり大変重要でございますので、気象庁がみずから個々の気象測器の検査を行わなくとも検定が安定的に行われるよう、測定者の認定に際しましては、一定の設備、人員を有することを要件として、従来と変わらぬ測定精度を維持する措置をとっているところでございます。

 また、認定を受けた測定者が有する設備につきましては、一定期間ごとに、気象庁の保有します基準となる基準器、これと認定者との間の整合性を図ることにしてございまして、測定精度維持のための十分な体制が図られると考えております。

瀬古委員 測器の測定の有効期間が、現行の五年から原則として有効期間を設けないということになります。部品の摩耗とか劣化などの心配があるわけですから、当然、有効期間が必要と認められる測器につきましては、国土交通省令で有効期間が設けられることと考えていいでしょうか。また、それはどのような測器に有効期間が設定されるのか、答弁いただきたいと思います。

山本政府参考人 お答えいたします。

 気象測器の中では、長期間使用した場合、部品の摩耗だとか材料の劣化だとか、そういうのが避けられないものもあるわけでございますが、具体的には、例えば可動部を有するような風車型の風速計だとか、雨量計でございますと転倒升型雨量計、これは雨が降ったときにかたかた動くものでございますが、こういうものについては、可動部を有する、摩耗をするということで、先生御指摘のように今後も適切な有効期間の設定は必要かと思います。

 なお、ガラス製温度計などのように部品の劣化がないようなもの、これらについては、有効期間を設けることも必要ないのではないかと考えております。

瀬古委員 今回、民間法人による検定制度が導入されるわけですけれども、従来気象庁の職員が検定業務に携わっていたわけです。もちろん、今回の制度が導入されても気象庁が行っていた検定が全部なくなるわけではないと思うんですけれども、職員の体制は一体どうなっていくでしょうか。

 また、検定を行っているがゆえに、気象庁自体が今まで保有してきた、維持してきた測器に関する技術力とか技術水準、これを失うことがないのかどうか、この点での配慮といいますか、検討はどのようになっておりますでしょうか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 気象庁は、気象測器に関しまして、民間の方の検定だけではございませんで、気象測器の開発、改良、あるいは部内のための検査あるいは調整、こういうさまざまな業務を行ってございまして、こうした業務を通じまして気象測器に関する技術水準の維持をしているところでございます。

 今度の法改正によりまして、気象庁みずからが気象測器検定を実施しないことになるわけでございますけれども、今申し上げましたように、気象庁の保有する気象測器の維持管理、開発、こういう業務は引き続き残るわけでございまして、気象測器に関する技術水準は低下することはないというふうに考えてございます。

 なお、アジア地域におきまして、気象庁は気象測器の測器センターでございますので、当然技術水準の維持は重要な課題でございます。

瀬古委員 以上で終わります。ありがとうございました。

赤松委員長 山田正彦君。

山田(正)委員 自由党の山田正彦です。

 水防法の一部を改正する法案と気象業務法の一部改正法案について、質疑させていただきます。

 実は私は、もう二十年も前になりますが、長崎大水害のとき、家がたまたま中島川に面してあって、あっという間に水かさが胸元まで来るという、大変恐怖の経験をしたことがありますが、本当に洪水というか、水害は大変厳しいものだと。それで、それについていろいろ論議し、かつ水防法をこうして改正していくことは大変ありがたいことだ、そう思っております。

 ところで、この水防法の一部改正案を読ませていただいたときに、この前の東海大水害のように、大洪水が刻々と迫ってきたときに、国としてできることは何があるのか、どこまで国ができて、あとは市町村あるいは県に任せているのか、その辺を少し明確に御答弁いただければと思います。大臣でも、副大臣でも、政務官でも結構です。

    〔委員長退席、河上委員長代理着席〕

田中大臣政務官 長崎の大水害の経験を踏まえての山田先生の御質問でございますけれども、東海水害を踏まえてのこの水防法の改正の趣旨について、一番基本的な部分について述べさせていただくとともに、国と地方の役割がどのように今後検討なされていくのかということをお答えさせていただければと思っております。

 先般の、昨年九月の東海水害におきましては、五十八万人に避難勧告が出されておりますが、河川の水位の状況や避難の指示が住民に適時に的確に伝わっていなかったのではないか、あるいは住民が迅速な避難行動をとることができなかったのではないか、このようにも言われておるわけでございまして、災害情報の伝達や避難誘導のあり方に課題を残したという教訓がございます。

 この法案は、このような東海水害の教訓を踏まえて、まず一つは、洪水予報対象の河川の拡充をする。国の直轄河川のみならず、都道府県知事が管理をしておられる河川まで拡大をするということがございます。二つ目といたしまして、浸水想定区域の公表であります。すべての河川を対象に、洪水ハザードマップを公表することによって明らかにしていきたい。三つ目は、浸水想定区域を踏まえた適切な避難場所の設定であります。

 先ほど来より議論がございますように、市町村の皆様方こそ一番地域の事情に詳しいわけでありますから、その部分の対応は地元の皆さんにしっかりとお願いをする。以上の対応によりまして、円滑、迅速な避難を確保して、水災による被害の軽減を図ろう、こういうことであります。

 また、先ほども御答弁がありましたけれども、過去に、平成十年八月の阿武隈川による郡山市民の皆さんのハザードマップを公表しての効果についての調査が行われておりますが、避難勧告六時間後の避難率が、何と、見た人と見ない人で二〇%、三〇%と、一〇%も差が出ておりますし、また、避難指示後の、避難をした時間についても、一時間という、まさしく生命や何かにも重大な影響を及ぼす大きな差が出ておりますことを、あわせてお答えしておきたいと思います。

山田(正)委員 政務官、大変丁寧にお答えいただいたんですが、私の質問には答えていないんじゃないかと。私が聞いているのは、大雨がどんどん降ってきている、その中で、国土交通省としては当然気象庁その他と協力しながら警報等を出すことができるということは私もちょっと調べてみたんですが。警報を出しても、避難地域は、政務官おっしゃったように、各市町村で一番高台のいい場所にと指定するのはよくわかるんです。ところが、いざ洪水のときに、各県とか市町村にまたがる場合もある。そういった市町村にまたがる場合とか、あるいは国は単なる警戒警報だけしかできないのか、その辺を少し答えていただきたい。

田中大臣政務官 先生の質問の趣旨と少し違った答弁で、申しわけございませんでしたが、重ねて答えます。

 今回の改正案のポイントでございますけれども、まず一つとして、国土交通大臣、都道府県知事が、気象庁長官と共同して洪水予報を行い、報道機関の協力を得て一般に周知、二点目としては、国土交通大臣、都道府県知事が、河川の浸水想定区域を指定し、その区域と水深を事前に公表、そしてここが問題でございますが、三点として、地域としては、市町村地域防災計画において、浸水想定区域ごとに予報の伝達方法、適切な避難場所を定めて、住民の皆様に周知をさせる、こういうふうになっておるわけでございます。

山田(正)委員 伝達まで国土交通省、国がやるんですか。それとも、いわゆる警戒警報まで国ができるんですか。あと、いわゆる避難勧告とか避難指示、これはどこが責任持ってやるんですか。災害基本法はありますが。

田中大臣政務官 最終的にはやはり地域の指導徹底ということになるだろうと思いますが、あわせて、国の段階としても、当然今申し上げたプロセスの中で責任を持って努力をするということになるだろうと思います。やはり一番住民の身近にある自治体の皆さんにも一定の責任を持って実行していただく、このようになるのではないかと思います。

山田(正)委員 どうもちょっと最後のところがわからなかったんですが、大臣にお聞きしたいと思います。

 長崎の普賢岳のあの大噴火の際に、いわゆる避難勧告すべきかどうか、当時の鐘ケ江市長が大変悩まれた、危機一髪のところで避難勧告をして大変助かったといういきさつがあるんですが、例えばこの前、東海の大水害のときには、先ほど五十七万人でしたか、私の新聞記事では三十七万人が避難勧告を受けたと。各市町村にまたがるわけです。そういったときに、それぞれの町長さんが、この町は避難勧告をしないで、この町は避難勧告を指示する、そういったばらばらのことがあり、かつ、例えば町長さんがいないときにたまたま、災害というのはいつあるかわかりませんで、助役さんしかいなかったとか、そういった場合に、責任持った判断ができるかどうか。そう考えると、国は単なる警戒警報、それだけを責任持ってやって、あとは市長さん、町長さん、法律に従って責任持ってやってくださいというのは、余りにも無責任じゃないのか、そこを大臣はどうお考えか。

扇国務大臣 山田先生おっしゃいますとおり、一たん災害があれば、あらゆるところが一致協力するのは当然のことでございます。

 私、昨年の東海水害のときも、翌日、無理にヘリコプターを飛ばして現地に行きました。そのときも、本来は、愛知県で持っておりますポンプ車、水を吸い取るポンプ車を動かすはずだったんですけれども、それが水につかって使えないというときに、国土交通省、その当時はまだ建設省でございましたけれども、前日の夜から徹夜で、広島からもポンプ車を全部集結いたしまして、私が行ったときには三台来ておりました。最終的には、旧建設省が持っておりますポンプ車二十台を全国から集結したわけですね。

 それも、地方自治体から要請があったわけではなく、そのときの降雨状況と堤防の決壊、破堤した状況を勘案して、これは大変だということで、すぐ旧建設省が河川局長等々協力してこのポンプ車を全国から走らせたというようなことも、地方自治体だけではなくて、国が判断し得るところは最大限に判断して協力する、有珠山のこともしかり、昨年は三宅もしかりで、そういうことで、国とか地方でということではなくて、最大限に連絡をとり合うことが、ふだん連絡網をどうするかの一番大事なところだろうと私は思っております。

山田(正)委員 大臣が真っ先に名古屋、東海の水害のときも行かれたというお話で、私も後で行ってまいりました。現地も見てまいりましたが、その中で、私が大臣に聞きたいのは、ポンプを何十台集めたとか自衛隊と連絡をとったとかということではなく、人の命にかかわる避難勧告、指示、命令の法的権限、これを、この水防法によって各市町村長に任せてある。大臣、このこと自体は国として手落ちではないのか。

 例えば、さっき申し上げましたように、水害がどっと来るわけですが、各都道府県に大きくまたがってくる場合もあるし、その町村、長がいない場合もあるし、いろいろな危機的状況があるわけです。そのときに、危機管理体制として、市町村長が第一次的に避難勧告、指示、命令を出すことがあっても、場合によっては、二次的には国土交通大臣が出せる、そこまでやらなければ国民の生命と財産を守れないんじゃないのか、それについて大臣の見解を私としてはお聞きしたい。これは通告してあったはずだと思うんですが。

扇国務大臣 これは先生はもう百も御承知でお聞きになっているんでしょうけれども、地方自治法にもきちんと明記してございますし、少なくとも、きょう皆さん方にお示ししました水防法の一部改正案、これも、今までは国土交通省に名前が変わりましたから国土交通大臣ということになっていますけれども、今回は、都道府県知事さんもということで、今後それが気象庁長官と共同してというのが今回の改正案でございます。

 ですから、今山田先生おっしゃいましたように、地方自治体だけではなくて国も、そして、国土交通大臣と都道府県知事さんとが一緒になって、気象庁長官に一番新しい資料を出しなさいということを共同してできる。ですから、都道府県知事もそこに入れたということが今までと違った改正の大きなことで、今先生がおっしゃっていることが、今度の改正によって、両々相まって連絡をとり合える、そういうふうに国と地方自治体が一体になるということを明記したというところが私は変わったことだと思っております。

山田(正)委員 いわゆる連絡し合うあるいは警報し合う、気象庁とか市町村とか、それは当然のことで、それをただ法文にしたということはわかるんです。

 ただ、私が言いたいのは、いわば、先ほどの普賢岳の災害でもあるように、市長が何時間か決断がおくれたら本当に何十人という人が死んでいたであろう、その決断が法律で市長に任されている、知事でもない、大臣でもない。その実態というのは、この水防法でも、洪水のときに変わらないんじゃないのか、変わっているのか、いわゆる一番大事なところが欠落しているんじゃないのか、そこを大臣はどう考えられますかと聞いているんです。

扇国務大臣 私は、やはり法的にもきちんと明記していなきゃいけないという意味で改正のことを先生に今お答え申し上げたのですけれども、少なくとも、平時から我々はあらゆる情報を伝達するということで、特にNHK等々を通じて、個々の皆さんには全部、テロップ等々で住民への洪水予報を伝達するということも、これはあります。

 では、停電したらどうするんだということですが、この間の東海の洪水で、先生も御経験があると思いますけれども、それを住民に知らす広報車すら走れなかった、そういう事態もありますので、少なくとも法的には、地方自治体の都道府県あるいは市町村長等と書いてありますけれども、一たん緩急あれば、それは、できないときにはあらゆる方法を使って周知徹底する、でも、責任は国務大臣と都道府県知事に必ずある、両方が相まってということを書いてありますから。

 どっちが先、どっちが後ということではなくて、お互いに最高に対処し得る方法をとるというのが今回の法案の中に明記してあることでございますから、いなかったらどうするんだと言われると、それは、いないところもありますけれども、最後は責任はやはり長がとるということになっておりますので、いなくても長が必ず責任をとる。いなければ長の代理というものを、そのためにふだんから防災訓練をするべきだ、地震にも水害にも、あらゆることで防災訓練の周知徹底で手順を決めるべきだ。

 去年の鳥取西部の地震のときもそうでございました。知事さんは八月にマニュアルどおりやってみた、そういうことをおっしゃいますので、やはりふだんからそのマニュアルを確立するということが被害を最小限にできる大きな要因だろうと思っています。

 責任は長でございます。

山田(正)委員 今大臣のおっしゃる一生懸命の説明はわかるんですが、一番大事な法制度として、例えば市町村長がこの市町村は避難勧告をしこの町は避難勧告をしない、そういった場合にだれかかわる者がやれるのかどうか、そういう根拠、法律があるのかどうか。

 これは、もし役所に聞くとしたら、今、河川局長かだれかいますか。

竹村政府参考人 従来より、日本の災害対応、特に自然災害対応につきましては、各住民の状況を一番把握し、その災害の中にともに住民といる市町村長が責任をとって住民の避難勧告等をするという法体系になってございます。これは災害対策基本法であり、私どもの水防でも全く同じでございまして、その体系は今回も変わってございません。

 御質問は、首長さんがいないときの状況でございますか。

山田(正)委員 いや、いないときではなくて、市町村長がそれぞれの判断で、ここの町村は避難勧告をし、隣り合わせているこっちの町長は避難勧告もしないでいる、そういった場合とか、あるいは町長が緊急時でいなかったとか、そういった場合は助役かだれかがやるようになっているんでしょうが、そういった場合に、災害対策本部が緊急にできたら、そこの本部長がそれにかわって指示、命令、あるいは避難勧告を出すことができる、そういういわゆる危機管理の整備をやらなきゃうそじゃないか、それじゃないと困るじゃないか、無責任じゃないか、国土交通省は。そういう質問です。

竹村政府参考人 ある同じ災害につきまして、複数の市町村が関係します。有珠山のときでもそうでございましたし、今回の名古屋水害、そして雲仙・普賢岳も同じでございました。その同じ災害の対応に対する各首長さんの行動、避難勧告等の時間的な差異は厳然としてございます。その首長さんの、まさにそれが首長の判断によるものと考えてございます。その首長の判断をいかに国及び県がフォローするかというシステムについて、これからもきちんと対応させていただきます。

山田(正)委員 局長の答弁にしても大臣の答弁にしても、今お聞きしたとおりだと思いますが、この問題は大変大事な問題である。命と財産にかかわることで、国土交通省としては、まさに危機管理にも関することですが、そういった法的整備を、基本的なものをやらずに、言ってみれば、今回の法案では、単なる、ハザードマップをつくるとかそういうことだけだと、まさに、私に言わせれば、無責任じゃないか、もっと考えなきゃいけないのじゃないかということを指摘して――いや、もう結構です。(扇国務大臣「いやいや、ちょっと、委員長」と呼ぶ)もう時間がもったいないから。

扇国務大臣 所管の問題でございますから。

 今先生がおっしゃいました災害対策基本法は、これは内閣府の仕事で、今度も危機管理担当と、大臣を内閣府につくったのも、担当がそれぞれございまして、我々は、一たん緩急あればということで、内閣府で危機管理担当もつくってございますので、私たちが無責任にしたということではなくて、それぞれの担当があるということをぜひ御理解いただきたいということだけ申し上げておきます。

山田(正)委員 このことはこれ以上論議してもしようがない話なんですが、いわゆる洪水等の場合、一つだけ言っておきますが、本当に一瞬にして私も首まで水が来たという経験がありますので、この指示、避難勧告について、各市町村長が洪水の場合にいざ指示、命令、避難勧告が出せないような場合には、例えば水位を調べて警報を出すのは国土交通省の責任であるとしたら、第一次的には市町村長であっても、国土交通省はそこまでできるという方に水防法の改正も考えていただきたいな、そう考えております。

 次に、実は、洪水等を避けるために、よくダム建設が言われておりますが、実際に、ダムをつくることによって水害を防止するという、いわゆる洪水を防止するということの効果があるのかどうか。

 今、アメリカにおいては、ダムが五百近く取り壊されていっている。そしてヨーロッパ等も、調べてみますと、オランダからあらゆる国々が、今やダムを壊そうとしている。洪水等に対する一つの災害防止の役割を果たしていないんじゃないか、そういう言われ方をしていますが、それについては、大臣でも副大臣でも政務官でも結構ですが、御答弁をお願いします。

    〔河上委員長代理退席、委員長着席〕

田中大臣政務官 今のお尋ねでありますが、具体的な数字だけを述べさせていただきたいと思っております。

 ダムによる洪水調節の効果についてでありますが、近年、昭和六十二年から平成十一年の十三年間における直轄、公団ダムの洪水調節による被害軽減効果は、金銭に換算すると約三兆六千億円、平成十一年度の価格でカウントしたものでございますが、そういう数字が出ております。

 また、個別ダムの洪水調節効果の事例でありますが、浜田ダムというのが島根県の浜田川に昭和三十七年に完成しておりまして、昭和六十三年七月に洪水が起こっております。二十四時間の雨量が三百九十一ミリ、このときにダムによって、ダム地点の最大流入量が毎秒当たり五百三十立方メートルのうち、約三百立方メートルをダムに貯留し、下流へは二百七十九立方メートルの放流をした、こういうことでございまして、ダムによる洪水調節と下流の改修の実施によって、約二千五百億円の洪水被害額を軽減したという実績がございます。

 以上、お答えをいたします。

山田(正)委員 私が聞きたいのは、アメリカにおいて、ヨーロッパにおいて、なぜ今ダムを取り壊そうとしているのか。そして、本当にダムが洪水防止等のそういう役割を果たしているのか。ちょっと時間がなくなってきたので、実はこの話をきょう徹底してやろうと思っていたんですが、非常に残念です。

 ただ、私の方で言っておきたいのは、ダムをつくった場合に、ダム建設においては、非常に土砂その他の堆積、例えば中国での三門峡ダム、ここにおいては、わずか二年間で貯水池が土砂でたまって機能を果たさなくなった。

 実際に、アメリカでダムの取り壊しを責任持ってやったクリントン政権の内務長官のバビットさんは、洪水に備えるにはダムを空にしておかなくてはならない、ところが、日本のダムにおいてもよそのダムにおいても、ほとんど空にしていないと。

 こうして考えると、本当に国土交通省が言うようないわゆるダムの災害防止の機能が果たしてどこまであるのか。ダムによっては大変大切な、必要なダムがあることも私も承知ですが、これから先、本当にダムの問題も十分考えていただきたい、そう思って、私の質疑時間も参りましたので、終わらせていただきます。

赤松委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 これより両案について討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、気象業務法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

赤松委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、水防法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

赤松委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

赤松委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時五分開議

赤松委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 内閣提出、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、東日本旅客鉄道株式会社代表取締役社長大塚陸毅君、日本貨物鉄道株式会社代表取締役社長伊藤直彦君、社団法人日本民営鉄道協会理事長野崎敦夫君、島根県知事澄田信義君、慶應義塾大学名誉教授藤井彌太郎君及び日本大学商学部教授桜井徹君、以上六名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。

 議事の順序でございますが、大塚参考人、伊藤参考人、野崎参考人、澄田参考人、藤井参考人、桜井参考人の順で御意見をそれぞれ十分程度お述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の皆様に申し上げますが、御発言の際には、その都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、大塚参考人、お願いいたします。

大塚参考人 JR東日本の大塚でございます。

 本日は、当委員会におきまして私どもの意見を表明させていただく機会をちょうだいいたしまして、大変ありがとうございます。

 当社といたしましては、国鉄改革の最終目標でもある完全民営化ということが一日も早く実現できますよう、これまでも強くお願いをしてまいったところでございます。

 このたび、JR会社法の適用を除外するという法案を御審議いただく運びとなったわけでございますが、この点につきましては、国土交通大臣を初めといたします関係の皆様方の御尽力に対しまして、心から感謝申し上げたいというふうに思います。

 本委員会におきましても、迅速に御審議を賜りまして、本法案を早期に成立させていただくことをお願い申し上げる次第でございます。

 きょうはよい機会でございますので、国鉄改革以降私どもが重点的に取り組んでまいりました経営課題並びにその成果というようなことにつきまして具体的にお話し申し上げるとともに、本法案に関連いたしまして若干の意見と要望を述べさせていただきたいというふうに思います。

 まず、JR発足後の成果でございますが、もともとこの国鉄改革というのは、鉄道事業を再生させるという目的を持って行われたわけでございまして、JR各社が極めて競争の激しい交通市場におきまして、お客様のいろいろなニーズにこたえられるように、あるいは企業性を発揮した活力ある経営を行えるようにということで、民間企業と同様の経営の自由と自主性というものを持つことが必要とされたものであります。

 当社は、会社発足以降の十四年間にわたりまして、この国鉄改革の趣旨というものにのっとりまして、自主自立の経営、あるいは健全で安定した経営基盤の確立ということに向けまして、全社一丸となって努力をしてまいりました。この間、特にJRがスタートした数年間というのは、経済情勢にも大変恵まれましたし、また、お客様を初めといたしまして関係の皆様からの温かい御支援というものもちょうだいいたしまして、おかげさまをもちまして堅調な経営実績を積み重ねることができました。

 少し具体的にお話しさせていただきたいと思いますが、まず、安全性の問題でございます。当社にとりまして、この安全性の維持向上というのは、経営の最も根幹をなすものという認識のもとに重点的にこれまで取り組んでまいりました。

 鉄道運転事故件数について申し上げますと、発足初年度に比べましておよそ六割の減少という形になっておりますし、また、踏切事故につきましても三分の一程度にまで減少をしております。

 また、サービスの向上にも力を注いで、列車の増発あるいはスピードアップ等を実施してまいりました。

 首都圏で申し上げますと、民営化後、およそ三〇%程度の輸送力の増強をいたしました。これはなかなかイメージがわきにくいんではないかというふうに思いますが、実はこの量というのは、関東の大手私鉄二社を新たにつくったのと同じぐらいの規模に相当いたします。こういう形で、利便性の向上、あるいは混雑緩和ということに努めてまいりました。

 混雑緩和について申し上げますと、首都圏の朝通勤のピーク時の混雑率というものにつきましては、会社発足時、スタートは二四〇%程度ございましたけれども、現在では、およそ二〇〇%程度にまで低下をしておるという実情であります。

 また、列車のスピードアップを進める、あるいはまた、山形や秋田、こういったところに新在直通の新幹線、いわゆるミニ新幹線というものを開業させることによりまして、東京から地方の主要都市までの所要時間というのを大幅に短縮しております。

 このように、安全性の向上でありますとか、お客様へのサービスアップというものに取り組むという経営姿勢は、当社だけではなくて、これはJR各社に共通したものでございまして、実際にJR各社とも大きな成果を上げているというふうに考えております。

 また、国鉄改革時には毎年運賃値上げをするという計画でございましたけれども、この運賃値上げにつきましても、本州三社は、消費税に伴うものを除きまして一度も実施をしないできております。また、三島会社につきましても、平成八年の一月に一度運賃値上げを行いましたけれども、それ以外は行っておりません。当社といたしましては、これからも現行の価格水準をできるだけ維持していくということが、お客様のサービスにとって非常に大事なことであるというふうな認識を持っております。

 地方ローカル線についてでございますけれども、この地方ローカル線につきましても、国鉄改革の際に、地域に密着したきめ細かい営業施策を展開するということによりまして、地域の交通機関にふさわしい効率的な経営体制を確立することとされておりました。当然、私どもとしても、この考え方に基づきまして、健全経営の維持というものに向けまして、それぞれの線区の活性化あるいは徹底した効率化といった努力を行ってまいりました。JRのほかの会社につきましても、同様の方針によりまして、地方ローカル線の経営状態の改善ということに努めているところでございます。

 なお、当社につきましては、廃止を前提に国鉄から引き継いだ特定地方交通線以外の線区のすべてを存続しております。

 長期債務の問題についてちょっと申し上げたいと思います。

 この長期債務につきましては、国鉄改革の際に処理すべきとされた総額が三十七兆一千億ございました。そのうち、JRが負担したもの、これは本州三社と貨物会社が負担をしておりますけれども、これは負担能力ぎりぎりの範囲で負担させるということで、十四・五兆を背負ってスタートいたしました。

 その後、この債務縮減に懸命に取り組んだわけでございますけれども、平成十一年度までに、JR全体でおよそ三・六兆円、当社だけでもおよそ二兆円の長期債務の返済を行っております。

 これは仮定の話になりますけれども、もし仮に国鉄改革が行われていなかったとすれば、国鉄のままでずっと存続したとすれば、この長期債務というのはどの程度になっただろうかということを試算してみますと、恐らく三十七兆円の長期債務は優に六十兆円を超す規模に膨らんでいたのではないかというふうに想定をされます。

 そういう点で、国家財政の観点から申しますと、国鉄時代は、俗に言う金食い虫といいますか、非常に国家財政にとっての大きな負担となっておったというふうに思いますが、改革後は、逆に、国家財政に何がしかの貢献ができるようになったということでございます。

 数字で申し上げますと、国鉄時代は、特に国鉄時代の末期につきましては、毎年六千億円程度の補助金をちょうだいいたしておりました。しかし、JRになりましてからは、逆に、毎年全体で約二千億円の納税をしております。当社だけをとりましても、一千億円程度の納税をしておるという形に、さま変わりになっておるということでございます。

 また、この間、JR株式の売り出しが行われましたけれども、これによりまして、国には、全体で二兆七千億、当社の株だけでも一兆七千億の収入がもたらされております。

 このように順調な実績を上げておるという観点から見ましても、完全民営化を実施する条件というものは既に十分に整っておるというふうに考えております。

 また、JRの本州三社の株式が上場された際の売り出し目論見書というのがございますけれども、この売り出し目論見書の中にも、「できる限り早期に純民間会社とする」という政府方針が記載されているところであります。

 そういう意味で、各社の株主の皆様方は、早期の完全民営化ということを前提に株式を購入しているということも言えますし、実際に、国内外の多くの投資家の皆さん方からは、完全民営化に対します強い期待というものが寄せられているところでございます。

 国鉄改革は、言うまでもなく、二十世紀中の日本の行政改革の大きな柱であったというふうに考えます。一日も早くこの大改革の最終目標であります完全民営化を実現させていただきたいというふうに思います。

 ここで、今回の法案にかかわる話を少し申し上げたいと思います。

 一つは、今回の法案に定められております指針についてでございます。

 完全民営化に当たりましては、私どもは、一切の規制を撤廃していただくということが原則であるというふうに考えておりましたが、この間、いろいろな方の御意見があるということも十分承知をしております。そうした御意見があるということを踏まえた上で、JR会社法の適用除外と株式の完全売却ということを最優先させる必要があるという観点から、今回の法案の枠組みについては、基本的にこの方向でぜひ法案を通過させていただきたいというふうに考えたものでございます。

 指針で定めるとされている事項につきましては、まだ具体的なものがあるわけではございませんが、一応考えられております内容につきましては、私ども、当社といたしましては、あるいはJR他社も同様であると思いますが、従来から十分な配慮をしながら事業運営を行ってきているところであります。当然今後もこういった配慮をしていく所存でおります。

 今後、具体的な指針の内容が検討されていくというふうに思われますけれども、これからの利用者へのサービスというようなことを考えますと、こういったことに、より柔軟に対処していくというためにも、指針で定める内容は必要最小限のものにしていただくようにというお願いをしておきたいというふうに思います。

 最後に、株式の完全売却についてお願い申し上げたいと思います。

 今回の法改正によりましてJR会社法の当社に対する適用は除外されるわけでありますが、これとあわせまして株式の完全売却が実施されて初めて本当の意味での完全民営化というものが達成されるのではないかというふうに考えております。したがいまして、現在、日本鉄道建設公団が保有しております当社株式五十万株につきまして、極力早期に売却していただくようお願い申し上げる次第でございます。

 完全民営化が実現されました暁には、自己責任の原則に基づきまして、より一層の自主自立経営を貫徹することが当然求められます。今後予想されます厳しい競争社会の中で、これまで以上に経営努力を重ねまして、スピード感のある経営を実現して、お客様、地域社会、そして株主の皆様、それぞれから信頼をかち得ていくように努力するという強い決意を表明させていただきまして、私の意見表明を終わらせていただきたいというふうに思います。

 ありがとうございました。(拍手)

赤松委員長 ありがとうございました。

 次に、伊藤参考人にお願い申し上げます。

伊藤参考人 JR貨物の社長の伊藤でございます。

 諸先生方におかれましては、平素、鉄道貨物輸送に深い御理解を賜りまして、厚く御礼申し上げます。また、本日、JR会社法改正の御審議に当たり、このような意見陳述の場を設けていただきまして、まことにありがとうございます。

 今回の会社法改正案は、JR本州旅客三社の完全民営化を内容とするものでありますが、これにより国鉄改革がまた一歩前進するものと考えております。

 早いもので、国鉄改革から十四年の歳月が経過いたしました。私は、国鉄改革において分割されたJR七社がございますけれども、三つのカテゴリーに分けることができると考えております。一つは、今回のJR本州旅客三社、二つ目は、経営安定基金を備えたJR三島旅客会社、三つ目が、当社でございますが、全国一元の事業体として鉄道貨物輸送を行うJR貨物でございます。

 なお、最近経営が非常に厳しいものでございますから、時々いろいろ誤解がありますので申し上げますけれども、当社にはもちろん経営安定基金はございません。開業当初、逆に九百四十四億円の旧国鉄債務を背負ってスタートしたわけでございます。

 貨物部門にこのような事業形態がとられましたのは、御案内の先生がたくさんいらっしゃると思いますけれども、国鉄時代に大きな赤字を計上しておりました貨物部門の収支管理を正確に行い、経営責任を明確にする、そういう必要があったこと、また、輸送距離が長く、往路と復路が不均衡になりやすい貨物輸送の特徴を円滑に運営していく必要があったこと、こういうことによるものと認識しております。

 鉄道の業務量をあらわすのに、列車キロという概念が一般に使われます。一本の列車が何キロ走ったかというのを掛け合わせたものでございますけれども、我が国における旅客と貨物の列車キロの割合は、国鉄改革当時、おおよそ七対三でございました。現在、おおよそ八対二になっておりますけれども、言うまでもなく旅客が鉄道輸送の主体を占めているというのが、今の日本の鉄道の姿でございます。

 こうした状況にあったために、JR貨物は、第二種鉄道事業者として、みずからは線路等を保有せず、第一種鉄道事業者である旅客会社の線路を走行し、その使用料として、貨物が運行することにより追加的に発生する経費だけを支払えばよいという枠組みになっております。つまり、貨物列車の運行と関係なく発生する経費は貨物会社は負担する必要がない、こういうことでございます。この線路使用料は、昨年度の実績では百五十億円にも上りまして、当社の貨物運輸収入の一〇%を超えるものになっております。

 せっかくの機会ですので、当社の営業の実態、また経営状況等を御説明させていただきます。

 当社は、日本には線路が約二万キロメートルございますが、その約半分、一万キロメートルに列車を動かしておりまして、一日に二十数万キロ、列車が動いています。ちょうど地球を六周回っている仕事量になるわけでございます。

 トラック、船舶等あらゆる輸送機関に占める鉄道のシェアは、トンキロベースで約四%しかございません。数字だけを見ますと極めて小さいと言われることがよくございます。しかしながら、千キロメートル以上の国内陸上輸送に占める鉄道のシェアは約三六%ありますし、また、内陸である長野県への石油輸送のシェアは約七〇%もございます。このように、鉄道輸送の特性である長距離大量輸送及び石油列車のような短距離ピストン輸送においては大変な力を発揮しておりますことを御理解賜りたいと存じます。

 また、JR貨物の経営につきましては、国鉄時代の経緯もございまして、開業当初、大変厳しいものと予想されましたが、初年度以降六年間は経常黒字を続けることができました。しかしながら、その後、バブルが崩壊し、日本経済が長引く不況に低落した後は、トラック等との厳しい価格競争にさらされ、また、たび重なる自然災害等もございまして、大幅な減収を余儀なくされました。近々、十二年度の決算を発表することになっておりますけれども、まことに遺憾ながら、八期連続経常赤字となっております。

 当社といたしましては、この間、労使力を合わせ、総力を挙げて血のにじむような経営改善に努めてまいりました。

 一例を申しますと、輸送規模、仕事量が余り変わらない状況で、国鉄から承継した当時は一万二千人の社員がおったわけでございますけれども、現在、約九千人を切りまして、さらにそのうち二千人は関連会社等へ出向しております。実際の鉄道事業に従事している社員数は六千人台になっております。約半分というところまで来ているわけであります。また、その間、これは民間等でいろいろと幾らでも例はございますが、早期退職制度も取り入れ、約二千人にやめていただくなど、大幅な要員縮減を図るなど、経営の体質改善に努めてまいりました。

 一方、過日環境省が中央環境審議会へ提出された資料によりますと、鉄道は二酸化炭素排出量において、自動車のわずか十八分の一、船舶の二分の一となっております。このため、昨今深刻化している地球温暖化等の環境問題対策として、鉄道輸送を見直す機運が荷主企業の一部に出始めております。政府において進められておられます総合物流施策大綱の見直しにおいても、物流インフラの強化と相まって、いわゆるマルチモーダルの推進の重要性が改めて大きく取り上げられるものと期待している次第でございます。

 さて、今回のJR会社法改正との関係で、JR貨物がかねてより要望してまいりました点につきまして御説明させていただきます。

 一つは、JR旅客会社が完全民営化された後においても、当社がJR旅客会社の線路を使用できることについて担保されることでございます。国鉄から分かれたJR貨物ですから、何か当たり前のような感じを持たれるかもしれませんが、極めて大切なことだと考えております。もう一つは、現行の線路使用料ルールが維持されることでございます。将来にわたり、当社の安定的経営が確保できるよう、この二点について御配慮賜りますようお願い申し上げます。

 若干敷衍させていただきたいと存じます。

 線路などを保有していないJR貨物は、第二種鉄道事業者としてJR旅客会社の線路を使用して鉄道事業を行っているわけでありますけれども、この線路使用にかかわる基本的枠組みにつきましては、引き続き堅持していくことが不可欠であり、当社の存立にかかわる重要な基盤となるものでございます。この点につきましては、国鉄から公益性の高い鉄道事業を承継されたJR旅客会社におかれましては、完全民営化の後も当然に御配慮いただくべきことと考えております。

 二つ目の線路使用料ルールにつきましては、鉄道線路設備を当社が使用する場合に、先ほども申し上げましたとおり、追加的に発生する経費相当額として算定した額に一%のインセンティブを加算して支払うルールとなっております。これは、JR貨物を存続させるために定められた国鉄改革時の極めて重要なスキームの一つであると認識しております。

 なお、国鉄改革時に参考とされたアメリカにおきましては、実はアメリカは旅客と貨物は全く逆でありまして、鉄道の利用でございますけれども、貨物が約九割、旅客が一割というような状況でありまして、客貨の立場は逆転しておりますけれども、同様の線路使用料ルールが適用されております。その旨はアムトラック法という特別法に規定されております。

 最後になりましたが、全国幹線輸送ネットワークにより貨物鉄道事業を行う当社は、将来とも企業性を発揮し、利益を確保していく中で、いわゆるマルチモーダルの受け皿としても公共的な使命を果たしつつ、今後とも維持発展させていく必要があると肝に銘じております。

 以上の基本的認識に立って、国鉄改革の最終目標である完全民営化を一日も早く達成すべく、なお一層の経営改善に努めてまいりますので、今後ともよろしく御指導賜りたいと存じます。

 以上をもちまして私の意見陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

赤松委員長 ありがとうございました。

 次に、野崎参考人にお願いいたします。

野崎参考人 日本民営鉄道協会の理事長を務めております野崎でございます。

 本日は、JR会社法の一部改正法案の審議に当たりまして、私ども民営鉄道協会の意見を説明させていただく機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 私ども民営鉄道事業は、改めて申すまでもございませんが、地域社会を支えております基幹的な公共交通機関として重要な役割を今日も担っているところでございます。安全で快適な輸送サービスの提供、これを目指して日夜努力を続けております。

 諸先生方には既に十分御承知のこととは思いますが、民鉄事業をめぐる昨今の経営状況を見ますと、輸送需要が近年連続して減少するという極めて厳しい状況にございます。御審議中の法律案に対する私ども民鉄業界の意見を申し上げさせていただく前に、そうしたことなどにつきまして簡単に触れさせていただきたいと思います。

 私ども、大手民鉄十五社と言っておりますが、十五社の輸送人員を見ますと、戦後、毎年ずっと増加してまいりました。平成四年度からこれが逆に減少傾向で、今日まで来てございます。平成十二年度の輸送実績は、現在精査中でございますけれども、多分、対前年マイナスの傾向が依然として続いていると思われます。

 この原因を考えますとき、やはりバブル崩壊後の景気の低迷もございましょうし、また、リストラなどによります雇用の調整といったものも考えられますが、少子化あるいは高齢化といった構造的な要因も大きいのではないかと思っております。

 このように輸送人員が大幅に減少する状況から、私ども民鉄の経営というのは、人件費あるいは減価償却費といった固定費用が大半を占めることから、経営は非常に圧迫されているのが現状でございます。

 そうした中にありましても、鉄道事業の原点であります安全輸送、あるいはまた輸送力の増強、そして高速化、これらの輸送サービスの向上とともに、従来にも増して人と環境に優しい鉄道を実現するべく、鉄道輸送のネットワークを拡大するための共通乗車カードの導入、あるいはまた乗り継ぎ利便を向上させるための駅施設の改良、これらの諸施策にも積極的に取り組んで投資をしているところでございます。

 さらにまた、本格的な高齢化社会を迎えました今日、先般国会で成立されましたいわゆる交通バリアフリー法を踏まえまして、現在も、エレベーターあるいはエスカレーターの整備など、バリアフリー化設備の充実強化にも努めておるところでございます。

 民鉄事業をめぐるそうした厳しい経営環境を御理解いただいた上で、御審議いただいておりますJR会社法の一部改正法案につきましての私ども民鉄業界の意見を申し上げさせていただきます。

 昭和六十二年四月に国鉄が分割・民営化され、JR旅客鉄道会社六社、あるいはまたJR貨物鉄道会社が成立したわけでございますが、この国鉄改革は、破綻しました旧国鉄の鉄道事業を、分割・民営化という手法によりまして、明確な経営責任あるいは自主的な事業運営、これを使いまして再生していくということが目標であったと思っております。そういう意味では、当初より、今回の完全民営化というのは、そのゴールと位置づけられているというふうに理解しております。

 したがいまして、今回のJR会社法の一部改正によりまして、JR各社のうちJR本州三社の完全民営化が行われることになるということでございますけれども、この点については、当時からの既定路線のものであるというふうに受けとめているところでございます。

 現在、大競争時代というふうに経済的には言われると思いますが、あらゆる産業におきまして、事業の活性化、あるいは新たなビジネス機会の創出、さらにまた利用者、消費者利益の向上などの観点からの規制緩和が進められております。競争の中から、よりよい製品あるいはサービスを生み出していくという動きかと思います。

 交通の分野もその例外ではございません。鉄道事業におきましても、平成十一年に鉄道事業法の一部が改正されまして、需給調整規制の撤廃、あるいは運賃・料金規制の緩和などが平成十二年三月から施行されておりますが、鉄道事業者も、鉄道事業者相互に、あるいはまた他の交通機関とも競争し合い、その中で英知を絞ってサービスの向上あるいは利用者の拡大に努める時代となっておると考えます。

 今回の改正によります完全民営化によりまして、JR本州三社は、これまで必要とされた人事、財務、あるいは事業計画の重要な決定についての大臣認可が不要となります。経営判断をより機動的に実施することができるようになるわけでございまして、これによりまして、お客様にすぐれたサービスを迅速に提供することができるようになるというふうに理解しております。

 また、完全民営化によりまして、国の特殊法人としての監督から離れて経営の自由度が増しますが、これによりまして、経営者としても、お客様本位の、より自律的かつ責任ある経営を自覚していくことになり、このことは、お客様にとっても大きなメリットになるものと思われます。

 また、私ども民鉄事業者の間では、個々の事業者間の競争ばかりではなく、お客様によりよいサービスを提供するという共通の目的のもとに各社間で協力できる場合は、例えば関西地区におきましては、共通乗車カードの「スルッとKANSAI」というのを平成八年から実施いたしました。関東におきましては、「パスネット」という同種のものを、昨年十月、鉄道の日から実施してきておりますが、これに見られますとおり、民鉄あるいは公営事業者各社間では、連携協力を積極的に進めてきているところでございます。

 鉄道事業者として、お客様によりよいサービスを享受していただくという観点からは、民鉄、JRの間でも連携できる部分もあるものと考えておりますし、鉄道輸送の事業者を超えたネットワークを促進すべき昨今におきまして、民鉄、JRという枠を超えた鉄道事業者間の協力連携がより強く求められるものと考えております。

 民鉄各社とJR各社との協力連携ということで考えますと、従来からは連絡運輸というのがございました。また、JRと民鉄の相互乗り入れというのも現在幾つかの線で実施されております。さらにまた、JRと民鉄の連携によります企画乗車券も幾つかの会社間で発売されております。このように、従来は、主として実務的な面を中心に必要な連携協力がとられたところでございます。

 今後、先生方御承知のとおり、関西の「スルッとKANSAI」あるいは関東の「パスネット」、これに加えまして、JR東日本におきましては乗車券のICカード化というのを現在進めておられまして、現在埼京線で試験をやっておられますが、私ども民鉄各社もこれに積極的に協力しているところでございます。

 こうした取り組みなどに対しまして、お客様の視点に立った鉄道事業者間の連携協力が従来にも増して必要であるという共通の認識から、昨年九月に、関東の大手民鉄各社と東京都交通局、それにJR東日本の、言ってみれば三者によります鉄道輸送サービス連絡協議会というのを立ち上げまして、鉄道輸送サービスの改善向上に関する情報交換を行っているところでございます。

 鉄道事業者としましては、日ごろからいかにお客様に喜んでいただけるサービスを提供できるかということが基本でございまして、あるときは各社の競争を通じて、またあるときは各社間の協力によって、サービス向上に努めてきております。

 今回の会社法改正によりまして、本州三社が完全民営化され、民間会社としてさらなる発展が期待される一方、鉄道事業者間におきましての競争関係にも拍車がかかることになろうと予測されますが、公正適切な競争は鉄道事業全体の輸送サービスの向上に結びつくものと考えられ、私どもは、むしろ歓迎すべきものと理解しておるところでございます。

 ただし、今回完全民営化される本州三社を見ますと、例えば鉄道収入でいいましても、JR東日本一社が一兆八千億を超えております。この額は大手民鉄十五社の鉄道収入の規模をはるかに超えるものでございまして、本州三社の合計では私ども民鉄の三倍の鉄道収入を上げるということでございます。つまり、あらゆる面におきまして、JRは私ども民鉄にとりまして非常に手ごわい強力な競争相手であるということは確かでございます。

 私ども民鉄事業者とJR各社とは、お客様に、より便利で快適な輸送サービスを提供できるよう、今後とも公正適切な競争関係を築いてまいりたいと考えているところでございまして、民鉄線とJR線の並行区間に設定されておりますいわゆるJR特定運賃のあり方などを含めまして、JR側の御理解、御協力を期待する次第でございます。

 以上が、本法案に対する私ども民営鉄道協会の意見でございます。

 本日は、貴重な機会をいただき、ありがとうございました。(拍手)

赤松委員長 ありがとうございました。

 次に、澄田参考人にお願いいたします。

澄田参考人 島根県知事の澄田信義でございます。

 JR会社法の一部を改正する法律案について、私の意見を述べさせていただきます。

 国鉄は、かつて公社制のもとで、交通市場の激しい競争の中で財政的に破綻に瀕した状態にありました。このため、国鉄の抜本的な改革が不可避なものとされ、土光臨調の答申等を経て分割・民営化と進んでくるわけですが、その中で、私たち地方の関心事は、これにより地域の足が守れるかどうか、利用者の期待にこたえるよりよいサービスをどう確保していくかという点にありました。

 国鉄改革は、このように、破綻した国鉄の鉄道事業を分割・民営化することにより、地域と一体となった活力ある経営を可能とし、これにより鉄道を地域の足として再生し、残していこうというものであったと認識しております。

 国鉄改革から十数年がたったわけでありますが、JR発足後は、サービス水準が向上し、経営状況が改善するなど、大幅な状況改善が見られるところであります。

 しかし、国鉄の分割・民営化に際して、採算性の低い地方ローカル線を軽視するようになるのではないかという心配の声が地元沿線にはありました。例えば、設備投資がおろそかになり安全面で支障が出るのではないか、あるいは、利益率を高めるため、ダイヤが削減され、利便性が悪くなるのではないか、さらに、廃止されてしまうのではないかといった不安の声であります。

 これまでのところ、地方ローカル線も、ダイヤの削減等によるサービス水準の低下が見られましたが、路線はほぼ維持され、現場職員の対応や車両の更新などサービス面の改善もあり、国鉄の分割・民営化は、地域からも一応の評価がなされているものと考えております。

 地域社会にとって、特にお年寄り、子供など、マイカーを持たない住民にとっては、公共交通機関は生活を行っていく上で必要不可欠なものであります。私は、このような住民の足を守ることは、地方公共団体の重要な行政課題であると考えております。特に鉄道については、定時性、安全性にすぐれた安定的な交通機関であり、民間企業によって経営が行われているとはいえ、地域社会の重要な共有財産とも位置づけられる存在であります。

 私の地元の島根県では、東西に細長い県土で、県庁所在地である松江市が県の東部に位置するということから、県の西部にある益田市や浜田市など、石見地域と言っておりますが、そういう西部地域との時間距離は、県政上の大きな課題でありました。

 山陰本線の松江―益田間について言いますと、約百六十キロございます。その大部分が単線・非電化であることから、特急列車で参りましても約二時間四十分もかかる。本数も少なく、利便性を欠いておりました。このため、私は、松江―益田間を二時間で結ぶ山陰本線高速化を選挙公約に掲げまして、その実現に向けてJR西日本と協議を重ねてまいりました。

 JR西日本単独では事業の採算性の確保が困難であり、地方の支援策にも多くの制約がありました。このため、関係者でいろいろと知恵を出し、財源のフレームも固め、地上設備の改良と新型車両の導入によって高速化を図り、約四十分という大幅な時間短縮を目指す山陰本線高速化事業を平成十一年八月からJR西日本とともに取り組み、このほど工事がほぼ完了し、この七月七日には開業する運びになりました。これにより、大幅な時間短縮や特急・快速列車のほぼ一時間置きの運行が実現し、利便性が大きく向上することから、地域の経済や文化の活性化に大きな役割を果たすものと期待しております。

 この高速化事業は、JR西日本の御理解はもとより、沿線市町村を初め多くの県民が、鉄道を地域社会の重要な共有財産として、地域になくてはならないものであるという共通の思いがあって初めてできたものと考えております。今後は、県民を挙げて、その利用促進に取り組んでまいりたいと考えております。

 また、山陰本線以外に、本県には地方ローカル線の木次線という線と三江線、さらには山口線があります。利用者が減少しているため、その存続が心配されておりますが、地元では、利用客の増加を図るため、さまざまな取り組みを行っております。

 例えば、木次線におきましては、利用促進と地域の活性化を目指して、平成十年からトロッコ列車「奥出雲おろち号」を運行したところ、年間二万人の利用者があり、沿線地域に活力を与えております。トロッコ列車を中心として新たな旅行企画を商品化するなどの動きもあり、さらに利用者がふえることが期待されております。

 また、三江線におきましては、ダイヤ改正に合わせ、沿線の高校の始業時間を変更して、利用する生徒の便宜を図るなど、地域が一体となってその存続維持に取り組んでいるところであります。

 このように、地方公共団体は、地域住民の生活交通確保を図るため、各地域でさまざまな取り組みを行っているところであります。

 なお、地方において鉄道整備等を行うに当たりましては、この財政負担がますます大きくなることを懸念しております。このため、今後、JR各社と一体となって、地域の実情を踏まえ、工夫を凝らしながら多様な取り組みを進めていく上で、国の積極的な財政支援や、地方公共団体の役割を明らかにした新たなスキームづくりが必要であると考えております。

 さて、今般の法案によりまして、JR各社のうち、島根県もエリアとするJR西日本を含め、JR本州三社が完全民営化されるわけでありますが、今後ますます採算性の低い地方ローカル線を軽視するようになるのではないかという心配の声が地元にはあります。

 今般の法案においては、国鉄改革の趣旨を踏まえた事業運営を確保する観点から、いわゆる指針制度を導入しております。この指針には、国鉄改革実施後の輸送需要の動向その他の新たな事情の変化を踏まえた現に営業している路線の適切な維持に関する事項が盛り込まれることとなっております。

 JRにおいては、地域の実情を十分に踏まえていただき、単に赤字であるということを理由に、地域住民にとってかけがえのない地方ローカル線を廃止していくことのないよう、この指針にのっとって適切な経営判断を行っていただきたいと考えております。

 また、JR本州三社にあっては、完全民営化後においても、国鉄の鉄道事業を地域と共生する鉄道として再生させていくという国鉄改革の理念にいま一度立ち返っていただいて、地域の期待にこたえる事業経営に努めていただきたい旨要望させていただきたいと思います。

 以上が、本法案に関する私の意見でございます。よろしくお願い申し上げます。(拍手)

赤松委員長 ありがとうございました。

 次に、藤井参考人にお願いいたします。

藤井参考人 藤井でございます。

 ただいま私、慶応義塾大学を定年退職しまして、帝京大学の経済学部というところで交通経済論と公共経済学を中心に勉強をしております。

 きょうは、JR会社法の一部を改正する法律案について意見を述べさせていただきます。

 十数年前に国鉄が分割・民営化された際に、国鉄改革法とともにJR会社法が制定されて、JR各社が特殊会社として設立されたわけでありますけれども、当時の国鉄監理委員会の意見書は、経営基盤の確立など諸条件が整い次第、逐次株式を処分し、できる限り早期に純民間会社に移行するというふうに明記しておりますので、完全民営化が最終的な目標であるという趣旨は明らかであろうと思います。

 そこで、今般の問題は、JR法に定められた特殊会社としての取り扱い、この中には、一方では国の支援、他方では私鉄以上の規制という両面があるわけですが、その取り扱いを変えて、一般の私鉄並みの位置づけにする、同じ規制にすることが適切な時期に至ったかどうかという問題であろうかと思います。この点につきまして、私は、基本的には、本州三社はそのような位置づけに置くことが適切な時期に至ったというふうに考えます。

 各社の経営成果を拝見しますと、サービスの向上と運賃の据え置きによりまして利用者の利便性は向上していること、経営成績として当初の予想を上回る安定した営業利益、経常利益を上げておられること、設備投資も堅実に行われていること、また、安全の記録も改善されていることなどが見受けられるわけです。これらの成果をお上げになったJR各社の経営努力は高く評価されるべきものだというふうに考えますし、同時に、そのことはまた、各社間における、そしてまた他の交通機関との間の競争という市場環境に置いたこと、そのことがこうした成果に寄与しているものと私は考えます。

 こうした成果を踏まえて、既に、平成五年以来、本州三社の株式は民間への売り出しが行われているわけで、現に、各社とも過半数の株式が既に民間で所有されているわけです。

 ただ、完全な民営化に全く問題がないかというと、そういうわけでもないように見えます。特に、国鉄から継承した債務、それから、その後に発生しました新幹線の引き取りに伴う債務、これらが一時に発生しているわけですので、現在、長期債務が運輸収入に比べてかなり大きな比率になっているという点の問題もあるわけですが、それらを含めて、全体として、株式市場においては各社の株価は堅調を示しているわけで、市場においても経営状況が評価されているというふうに判断をいたします。

 さらに、今後の交通市場のことを考えますと、大都市圏空港あるいは地方空港の滑走路の延伸その他の整備が進みますし、高速道路のネットワークも最後の段階の追い込みにかかっているわけです。そういう他の交通機関との間の競争の激化が予想されること、それから、少子高齢化の社会の到来から、交通に対する需要の推移が楽観を許さないということ、さらに、環境問題への対応が焦眉の要請となるだろうということ、それらの問題を考えますと、今、この時点で積極的に経営上の柔軟性を拡大することがむしろ必要な時期になっているというふうに思います。

 これらを総合しまして、特殊会社であるための制約を解いて、純民間会社化の位置を与えるべき時期に至ったというふうに考えて、その点について法案に賛成をいたす次第です。

 なお、JR北海道など四社につきましては、厳しい市場条件から、まだ公的な支援を受けておりまして、経営基盤が確立されるというところまで至っていないように見えます。したがって、今回の措置から外れることはやむを得ないと思われます。今後、さらに各社の経営の御努力や政府による制度の整備によって、できるだけ早く民営化の方向が得られることを期待いたします。

 今回の法案において問題になる点は、指針制度が導入されるということかと思います。

 率直に申しまして、このような政府の介入の余地を残すということは、完全民営化の趣旨からは矛盾しておりますし、効率的な企業経営を実現する観点からは、原則的には私鉄と同じ規制としていく必要があるわけです。ただし、ほかの私鉄にない規制がJR各社に適用される、いわゆる非対称規制というものは、それ自体は、それが根拠である限り、頭から否定するべきものではないと思います。

 純民間会社になった後であっても、JR各社は他の私鉄と異なる点が幾つかあるわけです。

 一つには、JR各社は国鉄改革によって誕生したということ。したがって、改革の際にとられたさまざまな措置を踏まえた事業経営を確保することが要請されるという点。いま一つには、他の私鉄とは比較にならない大規模、広範囲な地域にサービスを提供しているということ。したがって、ほかの私鉄とはかなり性格が異なっているわけです。

 そういう意味で、実際、改革当時におきましても、純民間企業に移行した後にJR各社に対する規制を在来の私鉄と全く同じものにするかどうかということについては、全く規定されておりません。事後の検討にゆだねられているわけです。

 具体的に指針が定めるものとされている事項の多くを見ますと、国鉄改革当時に措置された事柄でありまして、これを一括して所与として民営化が行われたのでありますから、完全民営化の後もそれらの措置を確保するというのが指針の趣旨であれば、各社によってそれが自主的に継承されていくことが確認されるまでの間、当分の間の措置を指針として行うということは理解できるというふうに思います。

 しかし、改革後の数十年の間に著しい状況変化が見られる場合の一つとして懸念されるのが、赤字線区の維持の問題であります。国鉄の改革当時よりも乗客数の著しい減少があったという場合には、民間企業としては撤退することも原則として認められるべきだと思います。ただ、当時に比べて著しい乗客の減少があったかどうかというのは、一つには、これは判断にかかわる問題です。また、率直に申して、他の私鉄に比べて大規模なJR各社の場合、内部補助の余地も相対的に大きいわけです。

 したがって、完全民営化への円滑な移行のために、他の私鉄のような、廃止について一年前の届け出ということに加えて、さらに地域の合意を得る努力をJR各社に一層求めるということも、そのようなルールが一応形成されるまでの経過措置としては、やむを得ないものではないかというふうに考えます。

 ただし、指針の運用に当たりましては、言うまでもないことでありますけれども、純民間会社となるJR各社に過度の負担にならないように留意する必要があることは申すまでもありません。そのために、必要な最小限のものとすること、運用の基準を明確にして透明性を確保すること、地域自治体とJRとの交渉を、例えば情報の面から支援すること、さらに、JRに大きな負担を求める結果となる場合には、政策当局として何らかの政策の責任をとる必要がある、あるいは何らかの補償も考慮する必要があるのではないかというふうに考えます。

 ちょっと蛇足になりますけれども、一般に過疎地域においては、私の意見では、鉄道よりもバスの方が便数も多いわけですし、停留所も多いので、アクセスがしやすいという意味では利便性が高いわけです。バスへの転換に抵抗があるのは、一つには、バスの方が利用者の料金負担が著しく高くなるということ、高校生を中心にして定期運賃が高くなるということでありますが、いま一つには、地域の中心地への直通性が断たれるというおそれ、そこら辺が地域の方々にはあるかと思います。料金の激変緩和でありますとか、あるいは直通運行、接続便の確保などの措置を講ずることがやはり必要であろう、肝要であろうと思います。

 いずれにしましても、指針というのは、経過措置として当面の間行われるものであることが規定されておりますので、JR各社の自主的な協調体制、あるいは地域との円滑な対応のルール、あるいは種々の制度の整備というものにめどがついたら、できるだけ早く役割を終えることが好ましいかと思います。

 この法案によりまして純民間会社となるJR各社が、その経営資源を一層活用されて利用者の利便をさらに増進されることを期待いたすものでございます。

 以上、私の意見でございました。どうもありがとうございました。(拍手)

赤松委員長 ありがとうございました。

 次に、桜井参考人にお願いいたします。

桜井参考人 日本大学商学部の桜井徹です。

 専門は、企業形態論や公企業論です。ここ十年間は、民営化の国際比較をテーマといたしまして、特に鉄道事業の民営化における日本とドイツの比較の研究に携わってきました。

 そうした立場から、提出されております法律案、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律案についての意見を述べさせていただきます。

 この法律案は、結論的に言えば、矛盾ないし対立する二つの側面を持っているのではないかということです。JR本州三社の企業性ないしは営利性を促進する側面と、その公共性を確保しようとする、矛盾、対立する二つの側面があるのではないかということであります。

 まず第一の企業性、営利性を促進する面は、本法律案の本文に規定されておりますように、JR東日本、JR西日本、JR東海のいわゆる本州三社をJR会社法の適用除外とするということにあらわれています。この適用除外によりまして、JR本州三社は、政府規制を受ける特殊会社という地位から、日本鉄道建設公団国鉄清算事業本部が保有する株式の完全売却を経て、他の民鉄会社と同じように鉄道事業法のみの規制を受ける純民間会社となるということであります。つまり、多くの人々が指摘しているように、JR本州三社の完全民営化が実現するということであります。

 ここで民営化の形態についてやや学問的に言いますと、民営化は、法律形態のみを変更する形式的民営化と、所有形態をも変更する実質的民営化に大別されます。また、実質的民営化は、所有を完全に民間に移転するという意味の完全民営化と、所有の一部を民間に移転するという部分民営化があります。

 JRについていえば、一九八七年四月一日に公共企業体である国鉄から特殊会社であるJRに移行したことが形式的民営化に当たり、九三年十月から九九年八月にかけて行われましたJR本州三社の株式売却が実施されたことが部分民営化に当たります。そして、今回、完全民営化ということになるわけであります。

 この完全民営化に関して、二つの問題点を私は述べたいと思っております。

 第一は、世界の鉄道事業の民営化の中で完全民営化の事例の数が非常に少なくて、慎重に行う必要があるのではないかということであります。

 鉄道事業の民営化は、我が国の国鉄改革以降、ドイツ、イギリス、イタリア、スウェーデンなどでも実施されていますが、しかし、イギリスを除いては、形式的民営化や部分民営化にとどまっている事例が多いということであります。それは、鉄道事業の公共性を政府の経営への関与を保留することによって担保しようという考え方からであると考えられます。

 その完全民営化を行ったイギリスでは、我が国と分割のあり方が違うのですが、JR東海社長葛西敬之氏の近著「未完の「国鉄改革」」でも触れられておりますように、イギリスでは分割・民営化による鉄道輸送サービスの劣化が大問題となり、分割・民営方式の再点検、修正が大きな関心事項となっております。

 完全民営化の第二の問題点といたしまして、完全民営化は確かに企業の営利性を高めることでありますが、それだけに、鉄道の公共性を阻害しかねない側面を持っているということであります。完全民営化によって、安全性が低下し、地方線の廃止が進行するという危惧も実際に生まれているのです。特にJRの場合は、民鉄とは異なり、規模も大きく、またJR貨物とJR旅客会社との関係をも含め全国鉄道網を形成しており、鉄道事業の公共性が民鉄における鉄道事業の公共性よりも高い、いわばJRの公共性というのを特別に持っているのではないかと思っています。

 だからこそ、この法律案でも附則第二条から第四条で、国土交通大臣は当分の間いわゆる指針を制定し、そして助言、指導、場合によっては勧告、命令を行うこととされています。

 その内容についていえば、会社間における旅客の運賃及び料金の適切な設定、鉄道施設の円滑な使用その他の連携協力の確保、営業路線の適切な維持、あるいは中小企業者への配慮ということになっております。こうした規定は、冒頭で指摘しました本法律案のもう一つの側面でありますが、それは、鉄道事業法で規制される民鉄以上にJRに対して規制することを意味しており、明らかに第一の側面である完全民営化と対立するものだと考えます。

 完全民営化によって生ずるかもしれない鉄道の公共性、もっと言えば、JRの公共性が低下することを事前に防ごうとしたのかもしれません。問題は、国土交通大臣の指針の公表、指導、助言、勧告、命令の権限がこの法律では明確ではないので、この附則の実効性がどれだけあるか疑問となります。

 なお、本法律案附則で、地方税法の改正や自衛隊法の改正に見られるように、JR本州三社は、民鉄とは異なり、JR三島会社やJR貨物と同一の地位にとどまるということもこの法律案は明記しているように私には思われます。

 最後に、言うまでもないことですが、本法律案は、JR三島会社やJR貨物が経営する鉄道事業については全く何も述べておりません。

 確かに、JR本州三社は九三年をピークに営業利益の減少が見られますが、それでも三社合計で年間の営業利益は七千億円以上、経常利益二千億円以上に達しています。だが、JR三島会社は、九三年以降、経営安定基金の減収もあり、営業利益だけでなく経常利益もマイナスを示すようになっており、九六年一月の運賃値上げもあって、辛うじて経常利益は現在プラスに転じているところであります。JR貨物に至っては、九四年度から九九年度に至るまで営業利益、経常利益ともマイナスを示しており、完全民営化の見通しはもちろんのこと、鉄道事業の縮小合理化しか残されていないのではないかと危惧されます。

 地球温暖化防止や大気汚染防止のためにも、二酸化炭素や窒素酸化物の排出量の削減のためにもモーダルシフトが今求められているわけですが、鉄道貨物事業の再生は、そうした地球環境問題の観点からも重要な課題であります。

 JR三島会社の再生については、例えばJR北海道とJR東日本との連携などのJRグループ間の再編成といった政策をとることも一つの選択肢でありますし、JR貨物の場合には、スウェーデンで実施されているような上下分離を前提とした自動車と鉄道との競争条件の平等化のための政策が必要不可欠になってきているように思われます。JR三島会社やJR貨物については、口幅ったい言い方になりますが、何ら展望を示さないままJR本州三社だけの完全民営化を行うことには問題があると考えています。

 私は、国鉄分割・民営化の最大の欠点の一つは、企業経営上の収支の改善を図ることに重点が置かれ、交通政策、とりわけ陸海空の各輸送を調整することを含む総合交通体系を考慮しなかったということにあると考えております。旅客輸送でも貨物輸送でも、一九八七年度の国鉄分割・民営化以降、JRのシェアが低下しております。明瞭に低下しております。今こそ、上で述べたような問題を内包しているJR本州三社の完全民営化を拙速に行うのではなく、JRが経営する鉄道事業を我が国の交通政策の中に位置づけていく必要があるのではないかと考えております。

 以上で、私の意見表明を終わらせていただきます。(拍手)

赤松委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森田健作君。

    〔委員長退席、橘委員長代理着席〕

森田(健)委員 参考人の皆様、きょうは、ありがとうございます。私は、21世紀クラブ、森田健作と申します。よろしくお願いいたします。

 まず、東日本旅客鉄道の大塚参考人に御意見を賜りたいと思います。

 航空と鉄道、言うなれば、最近はライバル視されております。そしてまた、多くの国民は、よきライバルであってほしいと願うところでございます。航空各社は、オフシーズンの稼働率を高めるために、例えばGET何とかとか、いろいろな割引制度を導入しております。それと同時に、各ホテルとか旅館とかと提携して、格安のツアーをつくりまして、それで稼働率を上げていることも確かでございます。

 先日でございますか、私の友人が、鹿児島なのでございますが、鹿児島から東京に来て、普通、往復割引を使ったといたしましても大体五万五、六千かかるのでございますが、東京の一流ホテル二泊、それも朝食もついて何と四万三千円でございます。それで、帰る日も航空機が決まっているんじゃないかと思ったところ、それは、非常に許容範囲があるといいますか、適当にずらすことも可能なのでございます。そしてまた、そういうツアーが、今、利用者に大いに歓迎されているということも事実であり、また、これが経済の上においても非常に有効であるということも言われております。

 それに比べて、鉄道においては、何かもう一つその辺の展望が見えづらいな、私はそう思うのでございます。確かに、鉄道が速くなることは私たちは大いに歓迎するところでありますが、しかし、航空機とは比べようがないところもあります。

 しかし、最近の国民感情といいますか、また一つの考え方といたしまして、言うなれば、旅に対して、今までは、速く行って、いろいろなものを見て、さあ、帰ってくるんだ、安ければいいんだと。それが、ゆっくりと行こうじゃないか、ゆとりの旅、心の旅を望む、そういう旅人もふえているのではないでしょうか。

 例えば、先日、私は週刊誌を見ていましたところ、世界一周、豪華客船、一月以上の日程があるのでございますが、何と一人一千万円、その席があっという間に完売された、そのようなことが書かれておりました。

 国内に目を向けてみますと、例えば大阪から札幌、約千五百キロあります。トワイライトエキスプレスというのが何と二十一時間かかって行くわけですね。そんなに長い間、よっぽどくたびれるんじゃないか、そんな列車なんてがらがらじゃないか、一昔前だったらそう思ったかもしれません。

 ところが、このトワイライトエキスプレスというのは、私も一回乗ってみたいと思ったんですが、なかなか切符が手に入らない。なぜならば、この列車は、豪華な客室、ベッドも、昔のベッドと違って、本当に家庭にあるような非常に心地よいベッドでございます。それから、シャワーも浴びられる。そして、レストランカーにおいてはフランス料理のフルコースも食べられる。窓の景色もゆったり見られるように設計されているのだそうでございます。

 ですから、二十一時間かかったといたしましても、非常に短く感じるし、心がリフレッシュされるし、そしてまた家族で旅行すると、その中に温かさが残るし、また、その温かさが列車によって運ばれるのではないかな、そのように思う利用者が多いのだそうでございます。

 私は、鉄道がこれから利用者、国民により一層親しまれるためには、そのように、心の旅、ゆとりの旅を重視し、そしてまた、これを国民に提供していただきたい。それをするならば、言うならば、稼働率と申しますか、それが上がっていくのではないかな、私は、そのように感じるのでございます。

 大塚参考人、どうでございましょう。航空会社がホテルとか旅館なんかと提携して、先ほど言ったように、往復割引を使って五万五、六千円が、ホテルまでついて四万三千円。しかし、決して赤字ではないと思うんですね。その辺をいかに利用するか。利用者獲得のためのいいアイデア、また展望があったら、御意見を賜りたいと思います。

大塚参考人 ただいま先生からちょうだいいたしました御意見、まことにごもっともであるというふうに思います。私どもも、何とかお客様に喜んでいただける、値ごろ感のある、楽しい旅を楽しんでいただけるような旅行商品というものをつくるように努力をしております。

 例えて申し上げますと、安いという意味で申し上げますと、御利用の少ない列車を対象にいたしまして、出発日の七日前までに購入していただければお値段が半額になるという、「たび割7きっぷ」と言っておりますけれども、こういう切符も出しております。また、先ほど東京―鹿児島で大変安い航空機のお話がございましたけれども、例えば東京―新潟間の往復、これをいたしますとおよそ二万円かかります。私ども、これを宿泊費込みで、「おどろきダネ」と呼んでおりますけれども、こういう商品を九千九百円で出しておるというようなこともいたしまして、お客様に喜んでいただけるものもいろいろ工夫していかなければいけないというふうに思っております。

 確かに、国内の旅行は少しお金がかかるのではないかということが一般的に言われているというのは承知をしております。そういう点からいいましても、当社といたしましても、長期滞在型ホテルというものをつくりまして、ここで家族が長い期間安く泊まれるというようなこともやっております。

 あわせまして、こういうホテルにおきましては、ホテルで食事をしていただくということではなくて、外へ出ていただいて、その地元の郷土料理を楽しんでいただくという形で、地元との共生といいますか、そういったことを目指したホテルを運営したりというようなこともしております。これからも、お客様の視点に立ったサービスというものをやってまいりたいと思います。

 昨年の秋には、これからの五年間を見通しました中期経営構想というのを発表いたしましたけれども、その中におきましても、これからの列車の旅、あるいは列車を御利用になるお客様に対するサービスという観点から申し上げますと、車内にいる時間ができるだけ楽しくなるような、ある意味では我々はお客様から時間をお預かりしているということでありますから、その時間ができるだけ楽しくなるようなことをこれからもいろいろ考えていきたいというふうに思っております。

 今後とも、いろいろな面でサービスということには意を用いてまいりたいと思いますし、これからの時代というのは、それがなければ目の肥えたお客様からなかなか選択していただけないという厳しい状況になろうというふうに思っておりますので、そういう点の努力は、さらにこれからもしてまいりたいというふうに思っております。

森田(健)委員 今いろいろな特別割引制度を聞いたのでございます。申しわけございません、私、余りよく知らなかったもので失礼いたしました。しかし、例えばいろいろなアイデアを国民から募集するということも、そういう制度を認知してもらうための一つの手段かな、そのように思うのでございます。ありがとうございました。

 次に、日本貨物鉄道の伊藤参考人に御意見を賜りたいと思います。

 大体千キロ以上になりますと貨物のシェアが四〇%ぐらいになる。ところが、輸送費は少のうございますね。五百キロメートル、言うならば東京―大阪間、ここが一番多い。ところが、ここになりますと、トラック等他の事業者に、九五%以上でございますか、シェアを占められて、貨物が苦戦しているというのがまた事実かと思うのでございます。

 しかし、私は、貨物鉄道というのは大変重要だなと思うのです。例えば、最近言われております環境問題も含め、それから安全性、安定性、有事の際の確実な輸送手段として、この貨物鉄道というのを決して私たち国民は忘れてはならないのではないかな、私はそう思うのでございます。しかし、これは競争でございますから負けてはなりません。負けたら、これはもう敗退しかないのでございます。

 さて、先ほど言ったように、五百キロメートル以内、東京―大阪間、これは今二、三%ぐらいなんでしょう、シェアは。これを勝つためにどうしたらいいか、どのような手段があるか、その辺のお考えを賜りたいと思います。

伊藤参考人 先生がおっしゃるとおり、JR貨物は、長距離であればあるほど利用率が高くなるような形になっておりまして、現実は、まさに東海道線の特に東京―大阪間、この五百キロメートルの物流が、環境問題なんかも考えて、どういうふうにJR貨物の方に、鉄道貨物輸送に流れてくるかということだと思うのです。

 今我々が社内的に勉強しておりますものが、荷主さんのニーズももちろんございますけれども、六時間前後で鉄道が走れるかどうかというような御要望がございます。そういう列車があれば、列車、一本でも二本でも買いたいというようなこともございまして、これは、当然技術的な問題、またはJR旅客各社との連携もございますけれども、そういう新しい商品開発を今進めようというふうにまず考えているところであります。そういうことになりますと、一番太いところが環境に優しい鉄道貨物輸送に流れてくることが可能であろうということであります。

 また、大事なことは、当然価格競争がございますから、そういう商品がトラック等との面でいわゆる競争になるような形でなければいけないという意味での内部的な経営改善、コストダウンを、これからまた、もちろん今年度もいろいろやっておりますけれども、特にIT時代にふさわしく、ITを駆使したような形での、いろいろな意味での効率的な仕組みに切りかえていくようなこともやっていきたい、こんなふうに考えている次第でございます。

森田(健)委員 ありがとうございました。

橘委員長代理 樽床伸二君。

樽床委員 参考人の皆さん方には、大変貴重な御意見を賜りまして、まずもって心からお礼を申し上げる次第でございます。

 私は、今回の法案の審議、こういう時期を一つのいい区切りとして、国鉄の改革から十四年間、これまでやってきたその流れを一度きちっと総括して進んでいかなければならぬ、このように考えているわけであります。そういうような観点から、数点御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、JR会社の方でございますが、特に長期債務の問題につきまして、実は、東海の方は債務の解消の手だてというふうにおっしゃっておられましたけれども、そういうようなことを国に期待したい、そういう御意向も聞いておるわけでありますけれども、会社側として、長期債務の総括、この十四年間、どのように総括をすればいいとお考えでございましょうか。

大塚参考人 国鉄改革の際に、大きな問題といたしまして、国鉄がしょっておりました債務、これをどのように処理するかということがあったというふうに思います。

 そういう中で、この改革の際には、国鉄のしょっている債務、当時、全体で三十七兆一千億という巨額の額があったわけでありますけれども、この三十七兆一千億のうち、JRに負担できるぎりぎりの限度いっぱいまで負担させようという考え方のもとに、そのうちの十四・五兆という額をJRが、これは本州三社とそれからJR貨物とで負担しておるわけでありますが、これを負担するということになったわけであります。

 この十四・五兆という額がどういう規模の額かということを申し上げますと、当時のJR各社の売り上げの四・五倍に相当するという額でありましたから、大変多額な額であった。当社だけで申し上げましても、実質的に六兆六千億。これは、当時の売り上げ見込みから見まして、四・八倍に相当するという多額の額でありました。

 通常よく言われるのは、売上高と債務、借金の額がほぼイコールになるとその会社の経営というのは黄色い信号がともるのではないかというようなことが言われておりましたので、そういう意味では本当に大変な額をしょったということでありますが、これも、一方におきましては、残った借金につきましては国民負担という形になるわけでありますから、その国民負担というのもできるだけ軽減していこうという考え方のもとに、こういう割り振りをしたというふうに理解をしているところでございます。

 その後、各社とも懸命にこの債務の縮減に取り組んでまいりまして、現在、JR全体では、それでもまだ売上高の二・七倍に上ります十一兆九千億という債務を背負っております。

 今低金利でございますけれども、当然これから金利の変動というのも想定されます。そういう金利変動のリスクなども考えますと、今後とも、この長期債務の返済というのが、それぞれの会社にとりましても経営の最重要課題になるということは間違いないというふうに思いますが、これだけの債務をしょいながら、やはりきちっとした健全な経営をしていくということも国鉄改革の重要な視点であったというふうに理解しておりますので、各社とも、多額の債務がございますけれども、全力を挙げまして、この債務の返済と、そしてきちっとした経営体制の構築ということに努力をしているところでございます。

樽床委員 貨物会社の方にも似たような御質問をさせていただきたいと思うわけであります。

 長期債務が一度減って、バブルが崩壊後また債務がふえる、こういう経緯もたどっておるわけでありますが、そういう点も踏まえまして、今私が会社側にお聞きいたしました長期債務の総括ということで、お聞かせいただきたいと思います。

伊藤参考人 お答えいたします。

 先ほども申し上げましたように、JR貨物は発足時には九百四十四億の旧国鉄債務を承継いたしまして、最初の六年間、それなりに経営成績もよかったものですから、平成二年には、いわゆる過去の債務を返して、一部借りかえもございますけれども、七百七十七億まで減ったことがございます。その後、いろいろございまして、平成十二年度末時点では、有利子債務が七百六十一億、それから無利子債務が三百十九億で、合わせて千八十億というのがいわゆる債務となっております。

 経営自体が赤字になりましたのは七年目からでございまして、今日まで八期連続になるわけでありますけれども、そういう中で、借金が今の状況になっている一番大きな問題というのは、もちろん経営がいろいろと厳しかったということもございますが、国鉄から承継した機関車とか貨車、これが大変古いものばかりございまして、これもそれなりにゆえがあってでございますが、国鉄改革の前の約十年間、貨物部門については、スクラップ、スクラップという中、その間の投資がほとんどないという状況で貨物会社がスタートしたものですから、過去の投資の約五〇%弱は輪転資材の取りかえの投資に使ったものでございます。いまだにそういう面での債務が残っているという現状でございます。

樽床委員 藤井参考人にお聞きしたいわけであります。

 今、お二人の方々のお話、私はそれはそれなりに現状的によく理解できるわけでありますが、藤井参考人、大体適切な時期を迎えたというふうな御判断をされたというふうにさっきお聞きをいたしましたが、現行の長期債務の問題につきましては、それぞれの会社側に責任を押しつけるような問題でもなかなかなかろうというふうに思わざるを得ない。余りにも大きな額を当初から背負ってスタートする。しかも、その国鉄改革のときは、ちょうど昭和六十年前後の時代でありますから、これは言うまでもなくバブルの時代でありまして、計画策定のときに、どうしても当時の社会状況というものがいろいろな判断に大きく影響を与えるのはもちろんのことであります。

 しかし、その後バブルが崩壊をしまして、債務がなかなか思うように、当初のどのような考え方からどうなったかというのは詳細には追っておりませんが、時代の状況も変わりまして、結局、藤井参考人の御意見をお聞きしたいのは、この長期債務の問題について、フレームそのものの正当性を今この時期にもう一度総括しておく必要があるのではないかというふうに私は思うわけでありますが、学識経験者としての藤井先生の御意見をお聞きしたいと思っております。

藤井参考人 ただいま先生から、今度の完全民営化で一番問題になるだろうと思う点の御指摘がございました。

 私が先ほどお話しいたしましたときも、完全民営化の時期に至ったけれども、問題があるとすればその点だというのを申し上げたかと思います。

 国鉄の改革の当時に承継した金額は、先ほども大塚社長からお話のありましたように十四・五兆円。ただ、その後に、平成三年でしたか、新幹線の引き取りにより約九兆円ほどの承継があったわけですね。結局、問題がそこのところにあった。民営化のために株式を上場するためには、新幹線の引き取りをやるというような財務構成の適正化を行わざるを得ない。しかし、それは、ある意味では一時期に発生する財務でありますので、その点、その後の何年間かにおいてはそれが非常に後を引くというのは、十分に考えられることであります。

 ほかの事業ですと、例えば東京電力あたりですと、長年の間にわたってネットワークをつくって減価償却していきますので、総収入に対してほぼ二倍ぐらいの借入金の比率かと思います。民間の私鉄ですと、やはり大体二倍、東京急行の場合なんかですと、三千億ぐらいの収入に対して七、八千億の長期債務があると思います。ですけれども、この東京急行のような場合には、不動産経営が御案内のように不可分に入っておりますので、どの部分が鉄道に帰すべきものかというのはわかりません。

 そういう意味で、例えば株主の立場から見ますと、例えばJR東海の場合、長期債務の中に三兆円近い用地費の債務が入っているわけです。これは元来、減価償却の上では非償却資産でありますし、これがそのまま残っていくことは非常に財務上の硬直性を増すばかりでありますので、株主の立場からいえば、これは一時期、国鉄改革に伴う一部のフレームについて、ある程度の政府による何らかの検討が必要でないか、私自身はそういうふうに思っております。どういうような形になるかというのは、これは政策問題でありますが。

 以上でございます。

樽床委員 次に、ふるさとの大先輩でございますが、澄田参考人にお聞きしたいと思います。

 実は、それぞれの自治体におきまして、JR、国鉄のときにもなかなか話がうまく進まなかった、JRになってもなかなかうまく進まない、民営化になったらもっと進まないのではないか、こういういろいろな話し合いが、それぞれの自治体、都道府県になるとスムーズにいくのかもわかりませんが、市町村レベルになるとなかなかハードルが高いというような意見もちらちら私どもの耳には聞こえてくるわけであります。

 先ほど澄田参考人のお話を聞いておりまして、非常にうまくいってきた、そういう事例を一部お話しいただいたんだろうと思いますが、結局、十四年間の過程の中で、そういう、つぼといいますか、自治体とJRが連携をしていくのに、いろいろな壁を乗り越える心構えといいますか、ポイントというものはどういうところか、改めてお聞かせいただければと思っております。

澄田参考人 ただいまの御質問でございますけれども、まず、私、基本的に、鉄道そのものが地域の鉄道であるという心構え、そうしたものが県にもあるいは市町村にも必要ではないかなと思っております。また、そうした気持ちがそれぞれの地方の鉄道を支える一番の根本ではないかと思っております。

 もちろん、ローカル線は、JRの方も、国鉄時代からも、それから分割・民営化された後も、収支採算、あるいは経営上非常に大きな課題を抱えておられまして、例えば列車のダイヤを削減するとか、あるいは駅を無人化するとか、いろいろな話が出てきております。また、地方にとりましても、欠くべからざる足として、特にローカル線におきましては、通学とかあるいは通院とか、そうした問題でいろいろな要請がございます。そうした要請とJR側のいろいろな考え方を双方十分にぶつけ合いまして、そうした話し合いの中で活路を見出していくということが一番大切ではないか。

 県といたしましては、そうした市町村の要望なり地域の要望、そういうようなものをくみ上げ、JRの方へ伝えていく、そうした共同作業といいますか、そうした考え方がお互いに接点を見出しながら進めていく一番の根本ではないかなと思っております。

樽床委員 最後に、野崎参考人にお聞かせいただきたいと思います。

 御発言の中でも出てまいりましたが、結局は、これからは民間と民間との戦いということになるわけでありまして、私は、脅威に感じないというのはうそだろうというふうに思っておりまして、非常に大きな三つの民間企業が出るわけでありますから、これは民鉄にとりましても非常に大きな脅威であろうというふうに思っております。

 そこら辺の率直な御意見と、それから、要するに、純民間企業になれば、民間と民間でありますから、この間では、協力のあり方というのは、ただ単に切符をやるとかそんなことではなくて、民と民でありますから、実は資本提携も何らおかしな話ではないわけでありまして、そんなことも視野に入るのかどうかわかりませんが、そんなこともひっくるめまして、どのようにしてその脅威というものを御認識され、そしてまた協会としてお考えになり、別に対決するわけじゃありませんけれども、どういう形でやっていこうとされておられるのか、お聞きさせていただきたいと思います。

野崎参考人 お答えいたします。

 先生の御指摘、お答えするのが非常に難しい面もございますが、まず、脅威かどうかという問題、恐らく鉄道の特性だろうと思いますが、路線の存在する関係において、およそ関係ないところ、協力できるところ、あるいはまた激しく競争しなければいけないところ、会社によってかなり個別の事情があって、分かれるんではないかと思っております。

 それを捨象してトータルで民鉄として考えますと、やはり民鉄会社自身もある意味で競争している点もございますし、スーパーパワーが同じ土俵に上がってきたという意味では、まさに脅威でございますし、その点では、いろいろな業界で行われております体力勝負になった場合は大変ではございましょうが、ただ、鉄道は、現状では、まずそこまではいかないのではないかと個人的には思っております。

 それから、協力のパターンとして、今、資本提携ということをちょっと先生リファーされましたけれども、今後、いろいろな業界でそういうのがございますが、まだまだそこまではいかないかなという、これまた個人的な印象でございます。ただ、これはあくまで個々の会社の経営方針、施策の問題でございますので、協会として、何とも言いがたいところでございます。

 以上でございます。

樽床委員 ありがとうございました。

 貴重な御意見を賜りまして、心からお礼を申し上げます。ありがとうございました。

橘委員長代理 河上覃雄君。

河上委員 公明党の河上でございます。

 きょうは、参考人の皆様方には、大変に御多忙の折、ありがとうございます。

 早速質問に移らせていただきますが、まず大塚参考人にお願いを申し上げたいと思います。

 実は、きょう参考人として御出席していただかない方の中に、駅周辺の飲食店やら、あるいは旅館を経営する方等々いらっしゃいます。今回、中小企業者への配慮に関する事項が指針の中で盛り込まれております。完全民営化に伴いまして、まさに民民の調整になるわけでありますが、今申し上げたこの配慮について、どのようなお考えで臨むのか。できれば、具体的な事例があれば、それを挙げて御説明いただければ幸いです。

大塚参考人 ただいま御質問のございました、いわゆる中小企業者への配慮という問題でございますけれども、そもそも国鉄改革のときに、それぞれスタートするJR、新しい会社が健全な経営を行う、あるいは経営基盤を強化するという観点から、原則として鉄道事業以外の事業も自由に行えるという形にしたわけでございます。その際に、中小企業者に対してそれが非常に大きな影響を与えるおそれがあるということで、いわゆる会社法の第十条でございますけれども、中小企業への配慮条項というのが設置されたというふうに思っております。

 当社といたしましては、民営化以降も、ホテル開発あるいは駅構内における開発等々、具体的に進めておりますけれども、当然、開発に当たりましては、この十条の趣旨を十分踏まえた上で、地域の中小企業者の皆様方と十分話し合いをし、地元の自治体等との話し合いも行うという中で行ってきておりますし、また、反対がたくさんある中で、そういった周辺の方々に理解を求めずに強行突破をするというようなことが万が一にでもありますと、これは事業としてもうまくいかないだろうというふうに思っております。したがいまして、その点につきましては十分配慮をしながらやっておりますし、これからもその方針には変わりございません。

 何か具体的な事例がないかという御質問でありますけれども、幾つも事例はあるんでありますが、一つだけ、北上にメッツという小ぶりのホテルをつくりましたときの経緯を、ちょっと御参考までに申し上げたいと思います。

 メッツというホテルは宿泊に特化したホテルでございまして、比較的安い料金で宿泊に特化するというホテルでございますが、これは平成十一年七月に北上駅に開業しております。

 実は、この計画が発表されたときに、地元の旅館組合の皆様方から建設反対という要望をちょうだいいたしました。そこで、その後、こうした皆さんと誠意を持った話し合いというのをずっと続けてまいりましたが、その結果といたしまして、北上地区へできるだけお客様を誘致するというようなことに我々も努力する、また、地元の活性化というようなことについても努力をしてまいります、あるいはまた、北上地区のほかのホテルあるいはスキー場といったところと鉄道の利用というものをセットにした旅行業商品といったものをつくります、そういうことによりまして北上地区のPRあるいは誘客ということを中心にした北上地区の活性化ということに取り組んでまいりますというようなお話し合いをいたしまして、結果的に、ぜひそういうことでやりましょうということでこの調整が進みまして、先ほど申し上げました十一年の七月にホテルメッツを開業することができたということでございます。

 これは一つの事例でございますけれども、そうした配慮というのをこれからも十分しながら、事業展開をしていきたいというふうに思っております。

河上委員 ありがとうございました。

 次に、冒頭、参考人は株の話をお話しになりました。完全売却で初めて完全民営化が完結をする、こうおっしゃいました。

 そこで、政府が所有する本州三社の株の処分につきましては、完全民営化に向けて、市場との関係を踏まえながら、できる限り早い時期に売却することが望ましいと思います。そこで、東日本の社長としては、参考人としては、具体的にタイミングはいつが望ましいのか、三社同時に行った方がいいのか、順次行う方が望ましいのか、どんな方法とどんなタイミングがよろしいですか。これは率直にお伺いしますので、率直にお答えください。

    〔橘委員長代理退席、委員長着席〕

大塚参考人 株の売却につきましては、実はこれは当社が直接行うものではございませんで、私どもは、できるだけ早く売却をお願いしたいということを申し上げる立場にあるわけでありますけれども、もともとJR株式の売却ということにつきましては、できる限り早期に適時適切な処分を行うように努めるものとするという閣議の決定がございます。この決定に従いまして、これまで三社の上場がなされ、株の売却もなされて、いよいよ残り株の売却というのが、今回の法案が通過した後に具体的になっていくだろうというふうに思います。

 私の気持ちを率直に申し上げますと、三社同時に行うべきか、あるいは順次行うのがよいかということについては、これはいろいろ市場の問題等々もあると思いますので、私どもはそれに特にこだわるということではございませんが、いずれにしましても、当社としては、できるだけ早期にということを強くお願いいたしておきたいというふうに思いますし、そうしていただけることによりまして、むしろいろいろな意味で、さらに機動的な、弾力的な、あるいはスピード感のある経営ということを行うこともできると思いますし、お客様あるいは株主の方、あるいは地域の皆さん方にさらに貢献できるような形になれるのではないかというふうに思っておるところでございます。

河上委員 ありがとうございます。

 続いて、先ほど伊藤参考人から、特に貨物についての線路使用あるいは使用料の継続というお話がございました。環境の上からの御説明もちょうだいをいたしました。確かにそのとおりであろうと。私も、環境の側面あるいはエネルギー対策、物流効果の上からも、中長距離輸送、大量輸送に最も適しているのが鉄道輸送ではないか、その意味では、総合的あるいは体系的に、さらにこうした運輸政策を抜本的に考えていく必要があるんではないかとも思っております。

 そこで、JR三社は、完全民営化後、JR貨物に対します貨物輸送ルートの確保、あるいはこれまで行われてまいりましたアボイダブルコストルール、これらについてどのように対処をなさっていくお考えか、これは大塚参考人にまずお聞きしておきたいと思います。

大塚参考人 鉄道貨物輸送というのは非常に効率的でもありますし、また環境的に見ましても、いわゆる環境に優しいといいますか、非常に問題の少ない輸送機関であるというふうに思いますので、こうした貨物輸送へのモーダルシフトというのは、私は非常に大事なことだというふうに思います。また、こういう方向で進められているということもお聞きしているところであります。

 旅客会社といたしましては、我々も旅客列車の輸送の責任を持っておりますが、そういった旅客の輸送計画に影響を与えない範囲内におきまして、できる限り貨物の輸送ルートの確保ということには協力を行っていくという考えでこれまでもやってまいりましたし、これはこれからも変更はございません。

 例えば、つい最近も、当社の管内でありますけれども、京葉貨物ルート第一期事業ということで貨物の運行ルートの変更が行われましたが、これに伴います設備の整備等に対しましては、私どもも協力をしてまいったところでございます。

 アボイダブルコストの問題でございますけれども、このアボイダブルコストにつきましては、これはもう既に、平成の八年から九年にかけまして、JR本州三社とJR貨物、それから物流事業者あるいは学識経験者の皆さん方で構成されましたJR貨物の完全民営化のための基本問題懇談会というのがございます。

 この懇談会の意見で、JR貨物の完全民営化が実現されるまでの間は国鉄改革の基本的枠組みの一つであるアボイダブルコストルールを基本とするべきであるという整理がなされておりますし、また、完全民営化された後につきましても、これを見直すという場合があるいは出てくるかもしれませんが、その場合であっても、JR貨物あるいは旅客会社双方にとりまして、民間会社としての経営責任を損なうことなく、かつその自立経営を阻害することがない範囲でなされるべきであるという意見が出ております。

 当社といたしましては、こうした懇談会の意見の趣旨をきちっと踏まえまして、これからも対応していくという考え方でおります。

河上委員 伊藤参考人にお伺いいたします。

 自動車の十八分の一ですか、船舶の二分の一のCO2の効果もあると。環境問題の視点、あるいはリサイクル施策の展開などが昨今めまぐるしい勢いで変化をいたしております。こうした社会経済情勢の変化の中で、JR貨物の今後の経営基盤の強化、そしてさらに営業戦略等のポイント、どんなことを考えてこれから進めていく考えか、この点御説明いただきたいと思います。

伊藤参考人 環境問題につきましては、単なる輸送業務という側面だけではなくて、地球規模でいろいろなことが言われ、また新聞等にも出ておりますが、大変個人的にも心配しております。

 私どもは、まさに物流業界にあるわけでありまして、これはもう十年ほど前から言われておりますが、日本の輸送の仕組みが、ややもするとトラック輸送に偏った形になっている。これにはまたいろいろな歴史的原因もあるわけでありますけれども、それを、先ほども御説明申し上げましたが、トラックに比べれば十八分の一、船に比べても二分の一ということでありますけれども、これはCO2の単位当たりの、いわゆる排出量なのでございますが、今、船または鉄道へ、そういうオーバーフローしている物流、トラックに偏った部分をいかに環境に優しい方に移そうかということを含めて、物流施策大綱が見直されております。

 我々はその受け皿になるわけでございますので、当然のことでありますけれども、荷主さんから見ますと、ただ環境というだけで荷物が動くわけではなくて、コストと、またはサービスという側面で荷物というのは動いてくるわけでございます。そういう面で、先ほども申し上げましたけれども、物流施策大綱の中でもいろいろな政策のうたい方を期待するとともに、我々としては、輸送機関として、今申し上げましたコスト、サービスの関係で努力して、その受け皿としての頑張りをこれからしていきたい、こんな気持ちでおります。

河上委員 もう一問だけ、これは大塚参考人にお願いを申し上げたいと思います。

 冒頭のごあいさつの中で、安全性というものは経営の根幹をなす、このようにおっしゃってくださいました。事故も六割の減少、そして踏切事故等も三分の一に減少しております、このようなお話もちょうだいいたしました。

 実は、過日、JRの新大久保駅の痛ましい事故がございました。乗客を救出しようとした韓国人留学生並びに日本人の方が亡くなられた。私は、新大久保の駅に行かせていただきまして、いろいろと視察をさせていただきました。その後いろいろと安全対策上の変化というものも、駅舎を見ますといろいろなところで講じられてきているなと思いますが、ぜひとも、転落検知マット、あるいは緊急通報装置、避難スペース、防護さく、ホーム側面のステップ等、さまざまなバリエーションはあると思いますが、どうぞこの安全対策をしっかりと講じていただきたい。

 これで完全民営化するわけでございますので、ややもしますと、これらが後退いたして経営全般の方に傾いてしまうんではないかという懸念もなくはないし、そういう観点から、ぜひともこれら安全対策についてのお考え方をこの際披瀝していただきたい。よろしくお願い申し上げます。

大塚参考人 御指摘のございました新大久保の事故につきましては、これは、転落したお客様を助けようということで二人のお客様が線路に飛びおりられたということで、結果的にお三方とも電車に巻き込まれて死亡するという、大変痛ましい事故でございました。私どもも心から御冥福をお祈りし、新大久保駅には、その勇気のあるお二人をたたえる顕彰碑というものを設備させていただいたということでございます。

 ホームの安全対策といたしましては、これまでもいろいろやってまいりましたが、この事故を機に、さらにそれを徹底させるという観点から、列車の非常停止ボタン、ホームですぐだれでも押せるようなボタンというものの設置をさらに拡大しております。また、ホーム下に逃げられるスペースをつくるというようなこともしております。また、運転間隔が非常に短い駅では、しかもホーム下に退避する余裕がないという場所については、できるだけホームに上がれるように、どうもお客様はホームに上がろうとする意識が強いというふうに感じておりますので、上がりやすいようなステップを設置するというようなこともしております。あるいは、転落検知マットなどもさらに拡大をするというような手を打っております。

 いずれにしましても、安全対策というのは、ホームの対策だけに限らず、いろいろな面で重要なことでありますし、民間会社になると、完全に民営化されるとその部分が心配だという御懸念をあるいはお持ちかと思いますけれども、私は、むしろ、民間会社になったからこそ、この安全問題というのをますますきちっとやらなければいけないというふうに考えている次第であります。

 民間会社にとりまして、安全問題で、お客様の死亡事故などを出すということは非常に致命的な話にもなりますし、こういう点につきましてはさらに十分留意をしていかなければいけない、そういう観点から、設備投資につきましても、先ほどもちょっと申し上げましたが、全体の約四〇%を毎年この安全対策に振り向けるというようなこともしております。

 まだまだ我々も、もちろん完璧だと思っているわけではありません。さらにこういった点の努力をしていかなければいけないということを考えながら、日夜安全対策というものに取り組んでまいりたいというふうに考えているところであります。

河上委員 参考人の皆さん、大変ありがとうございました。

 終わります。

赤松委員長 山田正彦君。

山田(正)委員 自由党の山田正彦です。

 きょうは、皆さん方、本当に御苦労さまでございます。

 ところで、JR法案の審議を今いたしておりますが、私ども自由党としては、JRのいわゆる民営化を前々から推進してまいりまして、今回このように、JR東とかを完全に民営化していこうという、非常に前向きの法案だ、そうとらえているわけですが、中でも、取り残されると言ってはなんですが、三島、JR九州、JR北海道、JR四国、そういった面において、どうしてうまくいっていないのか。先に、財団法人日本民営鉄道協会理事長野崎さんに、民鉄の立場から、どういうところにその原因があると思われるか、御意見を伺えればと思います。

野崎参考人 私どもの協会は、民営鉄道会社、約七十社ございますが、数の上では非常に多くが地方でございまして、かつまた非常に小さい会社でございます。距離もそれほど長い路線を持っているわけではございません。

 そういうところの問題点というお尋ねでございますれば、まず第一義的には、地方におきまして住民が減っているという基本的な背景があろうかと思います。それが減っている中でも、かつまた地方の道路整備が進むと、それに比例しまして自動車が普及し、結局鉄道からお客が逃げていくというようなこともよく指摘される事実でございます。

 そういった意味で、私ども民鉄の地方も大変でございますが、鉄道自身がそういう過疎地域、人の少ないところでどうやって自立していくかというのは、JR、民鉄、恐らく共有する課題の部分もあろうかと思っております。

 以上でございます。

山田(正)委員 過疎化して利用者が減っているからちょっと無理だろうというお話に承ったのですが、藤井先生それから桜井先生、それぞれ順々にお聞きしたいのですが、この三島の問題、桜井先生はドイツの鉄道の民営化を比較研究なさったということですが、JR東、こういった非常に順調に債務を払ってきたものと、三島、取り残されて苦しんでいるところといいますか、どこにそういう原因があって、どうしたらいいのか、ひとつ先生のお考えを聞かせていただければと思います。

藤井参考人 これも甚だ難しい問題でありまして、本州の三社と比べて三島の会社がどうして経営状況に差があるかというのは、一言で言えば、市場に差があるということを言わざるを得ないわけです。東日本の場合には、特に東京というような非常に高密度のマーケットを持っておりますし、それから新幹線がかなりいいところを走っているわけですね。

 三島の中でも、実は、九州の場合には、整備新幹線が将来どのくらいの時期に着工、供用を見て、それから在来線がどういうふうに扱われるか次第では、やはり一つの収益のプロフィットセンターを持つことになるかもしれません。そういう意味では、九州の場合には、やはり早い時期に民営化ができるような状況に至るかもしれません。

 ただ、北海道や四国につきましては、やはり全体としてのマーケットはなかなか厳しいものがありますし、それでも、札幌の場合には人口集積がかなりありますので、札幌を中心とした、あるいは旭川―札幌間というような路線が高密度に利用できますので、かなりそこで稼ぐことはできるであろう。したがって、経営努力を重ねていっていただいて、何とか最終的に民営化の方向に進められないかというふうに思います。

 四国につきましては、なかなか集積度がありませんので難しいと思いますけれども、唯一、本州―四国の橋がございまして、あの橋の鉄道側の負担というのが制度的に非常に軽い負担になっておりますので、それを利用して経営改善のてこにしていただくしかないように思います。

 差し当たってはそのくらいの知恵しかございません。

桜井参考人 今議員から、ドイツの問題、少し質問をいただきました。

 その前に、三島会社については、藤井先生が言われましたように、やはり市場規模が大いに違う。そもそもが、国鉄分割・民営化の際に、JR東日本にしても、すべて一応営業利益が出るように算定されたわけですが、JR三島については、御承知のように、もともと経営安定基金でしか維持できないというようになっていまして、経営安定基金そのものが、いわゆる低金利の進行とともに収入が減少している。ですから、やむを得ないんじゃないか。そういうところに大きな原因があるんじゃないかなと思っております。

 ドイツの場合ですが、ドイツでも一九九四年一月一日に民営化を行いましたが、その際に、五十キロメートル以下を近距離部門といいますけれども、そういう近距離部門の経営権というのを、ドイツ連邦共和国は十六の州から成り立っておりますが、各州に経営権を移転しました。

 各州は、その公共近距離旅客輸送の経営を、民営化いたしましたドイツ鉄道の近距離輸送部門会社、デーベ・レギオという名前になるんですけれども、その会社に経営委託します。経営委託されましたデーベ・レギオは、それを経営するわけですが、出た赤字については州が補てんするということになっておりました。この州の補てん基金については、もともとドイツ連邦政府、中央政府がドイツ鉄道に交付していました資金よりもはるかに多額の資金を各州に交付します。この資金は、いわゆるガソリン税でありますが、鉱油税を原資として補てんしているというようなことで、これをドイツでは鉄道の地域化というようにいいますけれども、そういう地域化法案というのを通しまして、地域の旅客輸送の経営に各州が責任を持って、一応、地域住民の足としての確保を図るというような政策がとられて現在に至っております。

山田(正)委員 ありがとうございました。

 藤井先生のお話を聞いていますと、JR九州は近い将来何とか自立できるんじゃないかというお話かと承りましたが、ではJR四国、JR北海道、これは、JR東日本、JR西日本とそれぞれ合併して、そして再建を図るという考え方はいかがなものかと思うのですが、両先生、どうでしょうか。

藤井参考人 三島の場合に、基本的に問題になるのは、高密度の路線は、それぞれ九州の場合も北海道の場合もお持ちである。四国の場合にしても、瀬戸内海側はかなりいい路線をお持ちである。問題は、不採算路線を抱えていて、国鉄改革のときの状況でそれを切れないというところが問題になるわけです。

 したがって、その意味では、それらの会社を今の東日本あるいは西日本に吸収するということは、逆に東日本の中での内部補助を拡大することになりますので、これは元来、国鉄改革のフレームワークの分割ということに反するわけです。むしろ望ましい方向というのは、今桜井先生からも若干御示唆がございましたけれども、地域の自治体が、北海道なり四国なりあるいは九州なりの三社の不採算路線に対してどのくらい協力するかです。そちらの方に道を見出すべきじゃないかというふうに私は考えております。

 むしろ、内部補助を拡大するということについては、私は、その形をやったら、東日本や西日本、あるいは東海にしても、またこの前の国鉄改革の再現をしてしまうことになるんじゃないかというふうに恐れております。

桜井参考人 ただいまドイツの事例を取り上げたわけですけれども、ドイツの場合は、今言いましたように、財源が中央政府から保障されているというような状況がありまして、そういうような状況が今の日本にあるかどうかということが一つの大きな問題になろうと思います。

 もし、ない場合に、しかしJR三島旅客会社の経営を安定させなきゃいけない、鉄道事業を再生しなきゃいけないといった場合に、私が当初の意見で述べましたように、例えばJR北海道とJR東日本が連携するということは、あるだろうと思うんです。その場合に、例えば上部団体としての持ち株会社方式で、そのもとに二つの会社が入って、経営の自立性を損なうことなく共生するようなことも可能ではないか。

 これはあくまで選択肢で、基本的には私はドイツのようなやり方がいいのではないかと思っていますが、そういうような選択肢もあるということであります。

山田(正)委員 今お話を聞いたんですが、ただ、ドイツのようなやり方では、今非常に財政赤字で悩んでいる自治体にとってそれだけの負担は、なかなか容易ならざる、国自体も大変である、そういったところで、自治体からの支援は、今の状況としてはなかなか難しいんじゃないか。それで、今、持ち株会社の連携とか、あるいは分割にこだわらずに、ある意味では、再生に向けて、合併とか、大胆に考えなきゃいけないんじゃないかなと思っております。

 東日本の大塚社長にちょっとお伺いしたいんですが、大変企業努力をなさって、順調に負債も返してきたということで、大変御立派だ、そう思いますが、今お話ししました、例えばJR北海道の問題等々を一緒にやれないものかどうか、その点からちょっと一言御回答いただければ。

大塚参考人 JR北海道あるいはJR九州、JR四国、この三社とも、今先生がいろいろおっしゃられましたように、確かに市場規模が本州三社に比べると小さいということはございますが、一方において、債務の負担、借金ゼロ、そして経営安定基金を持って経営するという形の中で、私は、この三社ともJR発足以来大変な努力をしているのではないかというふうに思いますし、また、その努力の成果というのも上がっているというふうに考えております。

 そういう中で、北海道をこれからどうするか、あるいは、今先生のお話の中で、合併ということも含めてお話がございましたけれども、現実には、経営者それぞれは、いずれの日にか上場するという目標を持って必死の経営努力をしているわけでございますから、やはりその経営を見守るということが大事なのではないかなというふうに私としては考えております。

 そういう中で、ほかの、例えば北海道、まあ九州でも四国でもよろしいのですが、北海道を例に挙げますと、北海道との間でいろいろ連携協力、こういったものがJR東日本としてできないかということが一つあろうかと思います。

 当社は、もちろん株主さんがたくさんいらっしゃる独立した会社でございます。JR北海道ももちろんそうでございます。ですから、そういう意味では、何でもやれるということではなくて、やれることにはおのずと限度があると思いますが、そういう中で、例えば営業面の協力のようなこと、お互いに、北海道の商品をうちの市場で売る、あるいは共同で広告宣伝をするというようなこと、こういったことはやれるだろうと思います。現実にやっております。

 また、資材の購入なんかにつきましても、大量に購入する資材、例えば油でありますとかレールでありますとか、こういったものにつきましては、まとめて交渉して買った方が単価は安く済むということもございますので、これは当社が代表して交渉をするというような形をしておりますし、そういう各社間の自主自立した経営というのを侵さない範囲内でのいろいろな意味での連携協力というのは、これからも、やれる範囲においてやってまいりたいというふうに考えております。

山田(正)委員 私どもは、特殊法人の民営化等を今勉強させていただいておるところですが、民営化に関して、特に東日本の株をどのように売却し、それをどのように債務の支払いに充てていったか、いろいろお聞きしたいところがあったのですが、実は時間が来てしまいました。

 もう一つ、労使関係についてもちょっとお聞きしたかったのですが、うちの党の西村眞悟議員が今週聞く予定になっておりますので、きょうは差し控えさせていただこうと思います。

 私の質疑を終わらせていただきます。

赤松委員長 瀬古由起子君。

瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。

 参考人の皆さんには、きょうは大変御苦労さまでございます。短い時間ではございますけれども、質問させていただきます。

 まず、桜井参考人にお聞きしたいと思うんです。

 完全民営化によるJR三社の経営が今後どうなっていくのかということになりますけれども、完全民営化ということになりますと、どうしても営利第一にならざるを得ないという場合に、地域ローカル線、それから不採算部門の廃止等、これが大変促進されていくんじゃないかというのが、やはり住民の皆さん、国民の皆さんの不安としてございます。

 それで、今回、国鉄改革の経緯を踏まえた経営を担保するための措置ということで、新たに指針を定めることになっておりますが、この指針で果たして国民のこうした不安にこたえることができるのかどうか、その点、どのようにお考えでしょうか。

桜井参考人 今の地方線の維持の問題ですが、先ほども意見の中で言いましたように、附則におけるこの指針の規定が少し抽象的でありまして、より具体的にする必要があるのではないか。具体的にならない段階では、完全民営化という本文の規定の方が優先されて、いわば営利優先の経営が行われる可能性があるということです。

 その場合に、では、どうしてその指針の内容を具体化するかということで、先ほど各参考人の中からも出ておりましたように、やはり地元住民の合意というものを指針の中に必要条件として入れるというようなことですね。その前段階としては、恐らく自治体の合意ということがあるだろうと思うんですが、自治体の合意があったとしても、自治体の意見と地元住民の意見がそごする場合もありますので、やはりどうしても地元住民の合意ということが必要ではないか。そういう点を、今回の指針の公表あるいは助言、勧告を行う場合に、していく必要があるのではないかということであります。

 その場合に、一つ参考になるのが鉄道事業法でありますが、鉄道事業法でも業務改善命令を行うことができるようになっているんですけれども、この業務改善命令については鉄道事業法第二十三条ということなんですけれども、それについては余り生きていない。

 そこらあたりを勘案しまして、今後、その反省の上に立って、指針の公表のより実質的な具体化というのを図っていただく必要があるのではないかと考えております。

瀬古委員 さらに桜井参考人にお聞きしたいと思うんです。

 先ほど、国鉄の分割・民営化によってシェアが低下しているという御指摘がございましたけれども、低下していることによって具体的にどういう実態が起きているのか、その点、具体例がありましたらぜひ教えていただきたいというふうに思います。

 それからもう一点。国鉄改革の基本方針、政府が進めてきたわけですけれども、これの完結といいますか、JR七社の完全民営化という問題だろうと思うのです。

 しかし、先ほどからも御指摘がありますように、JR本州三社以外は鉄道事業としての経営の見通しが立っていない、このままいけば廃止の道をたどらざるを得ないんじゃないかというお話もございました。また、これは藤井参考人の方からもお話がありまして、そういう場合には、最終的には、住民、自治体、こういうものが引き受けていくという方向も出されてまいりましたけれども、実際には、廃止するか、もしくは自治体が負担するか、こういう道をたどらざるを得ないんじゃないかというように思うのです。その点、桜井参考人はどのようにお考えになっていますでしょうか。

 二点、お願いいたします。

桜井参考人 先ほど、旅客輸送においても貨物輸送においてもJRのシェアが低下すると言いましたが、具体的な数値を申し上げておりませんでした。

 人キロないしはトンキロをベースにいたしましたJRの旅客輸送のシェアは、一九八七年度に一八・五%でしたが、一九九八年度に一七・〇%ということで、減少しております。また、貨物輸送においても、一九八七年度は四・五%でしたが、一九九八年度には四・一%というように、減少がとめられない。それは、国鉄改革の目的が鉄道事業の再生にあったということをるる言われるわけでありますけれども、果たして我が国において鉄道事業が再生したかということについて、もう少し深く考えていく必要があるのではないか。

 それで、瀬古議員からの質問で、では、この輸送シェアが低下したらどういう影響が出ているかということであります。ここでは時間がないので、貨物輸送についてぜひ言いたいわけであります。

 ドイツにおいても、あるいはヨーロッパにおいても、EU統合下における各国において、地球温暖化あるいは大気汚染防止のために、いわゆる日本でいうモーダルシフトを進めようとして、鉄道貨物輸送への輸送需要の転換を図ってきているわけです。

 我が国においては、そういうような努力は一応なされているわけですけれども、今、貨物輸送のシェアに見られるように、ずっと低下している。本来であれば、運輸省も言うように、シェアを増加させなきゃいけないわけでありますけれども、シェアが低下している。この点において私は非常に危惧を持っているわけで、もう少し、上下分離のような措置を含めまして、あるいはガソリン税のようなものを鉄道貨物輸送の方に投入をするというようなことを含めまして、総合的な見地から考えていかないといけないのではないかと思っております。

 もう一つの御質問であります地方線の廃止については、かなり進んでいるのではないか。意見では述べられませんでしたが、特に整備新幹線の着工あるいは経営によりまして、JRの自立的な経営ということでは、在来線を兼営するということはJRの経営にとってはマイナスになるというような見地から、在来線の第三セクター化ないしは廃止というようなことがあるわけであります。そういうことが今後もずっと起こってくるだろうと思うのです。

 整備新幹線の問題は、単に並行在来線の問題ではなくて、全国網を経営いたしますネットワークの利便性という点で重要な意味を持ちます鉄道貨物輸送においても、そういうネットワーク性というものがなくなるということで、非常に大きな問題ではないかと思います。そういうことを今後考えていかなきゃいけないのではないかと思っております。

瀬古委員 東日本旅客鉄道株式会社の大塚参考人にお聞きしたいと思うのですけれども、今後、完全民営化になることによって、先ほど言いましたように、住民の中では、地方のローカル線や不採算区間が切り捨てられるんじゃないかという不安が大変大きいわけです。今後、こういったローカル線をどうしていくかという問題では、例えば住民や自治体が反対しているという場合には、一方的に切り捨てる、こういうことはないというふうに思うのですけれども、その点、どのようにお考えでしょうか。

大塚参考人 地方ローカル線の今後の扱いでございますけれども、そもそも国鉄改革のときに、ローカル線の考え方というのがございまして、地域に密着したきめ細かい営業施策というのを展開することによりまして、それぞれの地域の交通機関としてふさわしい効率的な経営体制を目指そうというのが一つの考え方としてございました。

 当社もですし、またほかのJR各社においても、この考え方に基づきまして健全経営の維持に向けて、それぞれの路線の置かれた状況でありますとか、あるいはお客様の御利用いただいております実態でありますとか、そういうことを見ながら、地域の実情に即したいろいろな合理化施策等を展開いたしまして、そして基本的には、廃止を前提として国鉄から引き継いだ特定地方交通線を除きまして、ローカル線については存続をするという形でここまで来ております。

 完全民営化されるとどんどんローカル線が切り捨てられるのではないかという話は、実は国鉄改革のときにもかなりあったわけであります。大変不便になるんではないかとか、事故がどんどんふえるのではないかというような懸念がいろいろ言われたわけでありますが、現実には、そういったものはほとんど杞憂にすぎなかったというような形になっているのではないかというふうに私は思います。

 民営化されるとどうも心配だというお考えにつきましては、私は、そこのところは少し違う考え方を持っております。

 国鉄時代は、いろいろな意味で経営がどんどん悪化していく、悪化していく中でいろいろなコストを落とさなければいけない、ローカル線なんかでも、大分廃止せざるを得ないということになったわけでありますけれども、民営化して、むしろ、そういったローカル線についても、効率的な経営体制にすることによってできるだけ維持をしていく、御利用いただくということに努力しようということで、各社これまで来ているんだろうというふうに思います。

 当社で申し上げますと、これからもそういった努力を続けていくという基本的なスタンスについては、今後とも変わるものではございません。精いっぱいの努力をしてまいりたいというふうに考えております。

瀬古委員 大塚参考人にもう一度伺いたいのですけれども、安全性の向上、お客様へのサービスのアップというお話も出てまいりました。先ほど新大久保駅の事故の問題がありましたが、落ちたときにどうやってはい上がるかとか、そういう問題もいろいろありますけれども、例えば視覚障害者の方は、ほとんどがホームからの転落事故を体験されていると。そういう意味では、やはり安全さくの設置だとか。それから、だれかが落ちたときにも、人を呼ぶにも駅員が配置されていないという問題もございます。

 こういう問題点は今後改善していただかなきゃならぬのではないかと思うのですが、その点、いかがでしょうか。

大塚参考人 ホームの安全対策ということにつきましては、いろいろなやり方があろうかと思います。もちろん、人を配置するというやり方もありますし、逆に、安全設備といいますか、ハード面でいろいろカバーするというようなやり方もあると思います。どういう方法をとるかというのは、それぞれの駅におけるお客様の御利用状況、あるいは列車の運行状態、あるいは駅の形状といいますか、そういったものを見た上で安全を確保するために最適な方法というのをとっていくということになろうかと思います。

 私ども、当社といたしましては、こうした対策をこれまでもずっと講じてまいりましたし、今御指摘のありました、目の御不自由な方に対してどういう安全対策を講じるかということにつきましても、警告・誘導ブロックなどを初めとするいろいろな面での対策というのをこれまでもとってきましたし、またこれからも、できる限りそういうことを基本的に進めていきたいというふうに思っているところであります。

 いずれにしましても、この安全対策というのは、会社の経営上、一番プリミティブなといいますか、根幹的な問題だという認識を持っておりますので、これからも、我々のできる限りで、安全対策をさらに高めていく、より安全な利用しやすい鉄道にしていくという努力は、さらにしていきたいというふうに思っております。

瀬古委員 安全さくや、それから人の問題、ここはなかなか対応してもらえていないので、ぜひお願いしたいと思っております。

 もう時間になりまして、皆さんに御質問できないのは残念ですが、最後、澄田参考人に伺いたいと思うんです。

 今後、民営化が一層進むということになって、先ほど例が出ておりましたけれども、例えばローカル線を維持するという問題で、地方自治体にかなり負担がかぶってくるんじゃないかとか、それからバス路線、今までは何とかバスを維持していたのが、今バス会社そのものも、子会社化になって、かなり厳しい運営を強いられております。そういった場合に、今度は地方自治体がバス路線も持たなきゃならないという実態もございます。そういう点で、地方自治体の負担はどうかという問題。

 それから、今、バリアフリーの問題が出ていまして、駅のエレベーター、エスカレーターの問題なども、JRと相談しても、経営という点で言われると、なかなか負担してもらえない。これも、駅の改造、バリアフリー化については、かなり自治体の負担ということが出ておりますけれども、その点での御意見を伺いたいと思います。

澄田参考人 ただいま御質問のございました、完全民営化された場合のローカル線の問題でございます。

 採算性の低い地方ローカル線につきましては、地域住民の生活交通確保のために、それぞれの地方公共団体が、JR各社と一体となって、地域の実情を踏まえながら、工夫を凝らしたさまざまな取り組みを行う必要があると思っております。したがいまして、一概には申し上げられませんけれども、一般論といたしましては、JRが安易に地方自治体に負担を求めるべきではないというぐあいに考えております。

 いずれにいたしましても、その線をどういうぐあいに維持していくか。もちろん、地域には地域の要望がさまざまございます。そういったものをJRに対しましてどんどんお話をし、またぶつけていって、ともにそれを解決するという方向でやはり取り組んでいかなきゃいかぬと思っております。

 それから、バリアフリーの話でございますけれども、旅客施設等のバリアフリー化につきましては、今日では、今やもう時代の趨勢であると言っても差し支えないと思います。早期に整備されるべきであると考えております。平成十二年に交通バリアフリー法が成立しておりまして、今後も、同法に基づき着実な取り組みがなされるものと期待しております。

 本県の例を申し上げますと、人口八万ちょっと、九万弱の都市でございます出雲市というのがございますが、ここで連続立体交差が実現できまして、ここに高架化された駅が出現いたしましたが、今やエスカレーターも設置いたしましたし、そうしたバリアフリー化について、当然これは国、国土交通省、それから県、地元の市、JR、それぞれの負担区分の中で、そうしたバリアフリー化にも取り組んでいる実例がございます。

 そうしたバリアフリー化への取り組みが、民営化によって後退するということは今や考えられないとは思いますけれども、ぜひ、そうした方向で進めていただきたいと思っております。

瀬古委員 ありがとうございました。

赤松委員長 次に、日森文尋君。

日森委員 社民党の日森文尋でございます。

 大変お疲れのところ恐縮ですが、もう少しでございますので、ぜひよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 最初に、桜井先生にお伺いしたいんですが、先ほど先生の御報告の中で、日本の民営化に見習ってかどうかわかりませんが、これを契機というか、それ以後、ヨーロッパ各地でも民営化が行われてきた、しかし、完全民営化が行われたのはイギリスのみであって、例えばドイツ、スウェーデンというのは、いわば部分民営化というか不完全民営化というか、そういう格好になっているんだと。

 先ほど、具体的にドイツの例をお示しいただきました。イギリスも、イギリスの会社は百を超えているんですかね、施設ごとに、設備ごとに全部別の会社がやっているということで、大変問題があって、今や、ある路線は自転車の速さにも勝てない、そういう鉄道がイギリスには出現しているんだという冗談めいた話もあるぐらいなんですが。

 そのイギリスを除いて、よその諸国では、なぜドイツのような、あるいはスウェーデンのような格好で完全民営化せずに来たのか、それから、一体、その目的というか、ねらいは何で、ドイツやスウェーデンではどんな効果があったのかということについて、最初にお聞きをしたいと思います。

桜井参考人 お答えします。

 今議員から、ドイツないしスウェーデンにおける鉄道民営化が不完全であるというような内容について詳しく述べていただきたいというような御質問だったかと思います。

 まず、ドイツですと、先ほど地域化ということについて言ったのですが、それだけではなくて、ドイツの場合には、いわゆるヨーロッパ一般がそうでありますが、上下分離というのが行われています。上下分離という場合は、線路、信号、駅舎などを持つ会社、管理運営する会社と、旅客輸送や貨物輸送を運営する会社とを分離するということです。

 このうち、ドイツの現代の民営化の道筋の中では、運営会社については、将来完全民営化もあり得るというような話が出ております。しかしながら、線路を保有し、管理運営する会社、通路会社というのですけれども、その通路会社については、連邦政府が過半数、五〇・一%の株式を保有するということが、ドイツ連邦基本法、日本の憲法に当たるものですが、そこに規定されておりますので、この憲法に当たる基本法を改正しない限り、ドイツでは全体の完全民営化はあり得ないというようなことになっております。それで、地域的な旅客輸送について、先ほど言いましたように、地域化法の中で、州あるいは自治体の経営関与があります。

 それから、スウェーデンにつきましては、株式会社化が行われたわけですけれども、株式会社化を行ったと同時に、スウェーデンも上下分離を行いまして、この場合は、線路保有会社は、会社ではなくて、バンベルケットというのですが、政府の中の省庁になっております。道路局と同じように、鉄道局のようなもので行っております。その道路局と鉄道局とが連携いたしまして、交通関係の施設整備予算というものがありまして、そこで、道路と鉄道との間で、どれだけの投資資金を確保するかというようなことが出ております。

 スウェーデンの場合は、先ほど意見の中でもちょっと言ったんですけれども、いわゆる社会的費用の内部化ということで、自動車やトラックなどが大気汚染や交通事故のような社会的費用を出しているものですから、それに対して鉄道よりも高く課税をすることによって、その部分を鉄道の投資資金に回すというようなことが行われています。

 そういうように、なぜドイツやスウェーデンで、不完全な民営化といいますか、形式的民営化にとどまるとか、部分民営化にとどまるようなことになっているかというと、やはり鉄道整備を政府の責任で行っていきたいということが基本にあるのではないかと思っております。

 以上であります。

日森委員 ありがとうございました。

 ちょっと関連して、先ほどほかの方からも質問が出たんですが、地域の交通をどうするかということは、JRだけの責任じゃないんですが、整備新幹線ができるとJRから並行在来線は切り離される。政治の決めがあって、どうもそうなっているようなんです。

 実は、先日青森に行ってまいりました。岩手の銀河鉄道と青森の青い森鉄道、それぞれ沿線の自治体の首長さんや助役さんにお話を具体的に伺いました。当初は仕方がないけれども、これ以上自治体に負担を求められてこの三セクを維持するということはもう困難だ、何とかしてほしいという悲鳴めいた話を各所から聞きました。

 これは、もう既に、しなの鉄道の例で、発足をして、これは調子がいいぞ、一千二百万人の乗客がいるから大丈夫だという話があったんですが、累積赤字が二十一億数千万ですか、またここへ来て一〇%運賃を値上げするとかということで、どうも第三セクターがなかなかうまくいかないということがあると思うんです。これはますます、これから北陸もあるいは九州もそういう格好が生まれてくるというふうに感じていますし、あるいはもう既に三セクで出発しているところは大変な思いをしてやっているということなんです。

 ここで両先生にお聞きしたいんですが、地域のそういう足をきちんと守っていくために、国でとっていくべき方策といいますか、それについてお考えがあったら、それぞれちょっとお二方にお聞きをしたいと思っています。

藤井参考人 先ほどから何回か総合交通政策という言葉が出ておりますけれども、私は、地域についても総合交通政策があるだろうというふうに思います。端的に申して、なぜ鉄道でなければならないのかという問題は、まさに総合政策の問題だろうと思います。

 現実に鉄道が、有利なような状況というものは別として、不利なような状況というのは、実はバスについては有利なマーケットであることが多いのです。そこで鉄道を無理に維持しますと、バスについてはそこで有利な市場がありませんので、その結果として、バスは山間部の路線を切らなきゃならないという事態になっているんですね。すると、鉄道のローカル線を残したために鉄道以外に何も足のない路線がなくなってしまう。そういうところまで目を配るのが総合交通体系だろうと思います。

 その一つのやり方として、一九七四年でしたが、イギリスが採用した方法が、トランスポート・ポリシーズ・アンド・プログラム、TPPと言われている方法です。各地域に与える交通についてのいろいろな補助金を一括しまして、一括補助として与える、その上で、鉄道を選ぶか、バスを選ぶか、道路を整備するか、あるいは集落の再編成に使うかは各地域の自由に任せるということをやってみたんです。その結果が現在までも続いているわけですが、残念ながら鉄道が余り選ばれなくなった。人々はむしろバスの方を選んだというのが実態なんです。

 私は、そういうような地域の総合政策をやるからには、財源の方で、むしろ一括的な財源を与えた方がいい、そういうふうに思っております。

桜井参考人 地域の旅客輸送を確保するための方策であります。

 先ほどからもドイツの地域化法の事例を紹介しているわけですけれども、ドイツでも、民営化をするときに、近距離旅客輸送をすべて州自治体の負担にするということは州自治体の財政負担になるのではないかということで、連邦参議院というところが、州の代表が集まっているところでありますが、その連邦参議院が反対しました。その結果として、連邦政府が、先ほども言いましたように、ガソリン税の一部を、州自治体の負担軽減のために交付金を与えるというようになっております。

 しかし、同時に見ておかなきゃいけないのは、地域化というのは、ドイツでは州や自治体が賛成する側面もあったわけです。つまり、鉄道については連邦政府が管轄し、バスやタクシー、路面電車そのほかについては州自治体が管轄するということで、管轄権が、ばらばらといいますか、分裂しておりまして、そのために、地域では総合的な交通政策が立てられない。そういう意味で、地域化を歓迎するというような話がありました。

 ドイツは、現在、各地域における鉄道、バス、それから路面電車、すべてを一元的に経営するというような運輸連合がありまして、日本では首都圏を初めとしてそうはなっていないんですけれども、その中に、地域化ということで、ドイツ鉄道の民営化されました近距離輸送部門も入っているということで、そういうようなものもあわせまして、ドイツでは、地域の旅客輸送を総合交通体系の中で維持しようというようになっているということであります。

日森委員 ありがとうございました。藤井先生、桜井先生、大変勉強になりました。大変重要な課題なので、ぜひ生かしていきたいというふうに思っています。

 それから、貨物の伊藤参考人にお聞きしたいんですが、この話もたくさん出ていました。線路使用はこれからも合理的に、スムーズにいけるようにしてほしいということと、それからアブコストルール、これについてもずっと維持してほしいという二つの要望がございまして、先ほど大塚参考人からのお話もございました。

 先ほどのお話を聞いていましたら、どうも今のような協議だとかお互いの合意だけでは不十分ではないのかというような意見に聞こえました。というのは、アメリカの例を出しまして、アメリカでは法律でこれをきちんと決めているというお話がございまして、そうすると、今度の法案の中でも、これでは不十分であって、もう少しきちんとしないとJR貨物としてはなかなかうまくいかないんじゃないかというふうにおっしゃっているのかなという感じがしたものですから、改めて御意見を伺いたいと思いました。

伊藤参考人 先ほどの私の意見陳述でも、その二点について御配慮をお願いしますと申し上げましたように、今回の会社法そのものは本州三社の完全民営化を目的とした法律改正案でありますけれども、いろいろと指針の問題等々出ている中で、私たちが今まで御要望していたことについてそれなりに触れていただけるものと考えております。

日森委員 ありがとうございました。

 もう時間がなくなったんですが、最後に大塚参考人にお聞きしたいんです。

 新聞の記事で読みましたニューフロンティア21、これはもう社長みずからが各機関に出張っていって説明していらっしゃる、これで新たな出発をしていくんだという意気込みが感じられるというふうな新聞の記事が出ておりましたが、その具体的な中身、概要だけ、もし差し支えなければちょっと教えていただきたいと思います。

大塚参考人 ちょうどことしは二十一世紀の最初の年でもあります。あるいは最初の年度でもあります。そういう中で、これまで十四年間JRとしていろいろ努力をしてまいりましたけれども、やはり新しい時代にふさわしい、そして多くの皆様方の御期待に沿えるような企業あるいは企業グループというものにしていかなければいけないという考え方のもとに、昨年の秋に、五年間の中期経営構想、これはJR東日本グループの構想でございますけれども、これをニューフロンティア21というネーミングをいたしまして発表したところでございます。

 このニューフロンティア21の一番基本になるところは、徹底した顧客志向といいますか、お客様を大切にするということ、まさに名実ともにそういう気持ちを徹底させていこう、そしてお客様の視点というものを大切にして、お客様の視点を大切にしたいろいろな営業施策、あるいはサービス、あるいは安全、こういったものに取り組んでいこうというのを中心的な考え方にしております。

 具体的には、これまで進めてまいりました鉄道事業のシステム化というものにつきまして、さらに抜本的に、いろいろな面で、この鉄道の安全性、効率性あるいは快適性等々、鉄道の持つ特性をこれからもフルに磨き上げて、我々は世界一の鉄道システムを目指そうという言い方をしておりますけれども、どの面をとっても非常にすぐれた交通システムであるというものをぜひ築き上げていきたいということを一つの大きな柱にしております。

 当然その中で、安全、サービスの問題というのもやってまいりますし、また、あわせまして、当社の持つ経営資源というものも十分に使って、より健全な経営を目指していく。そして、言うまでもなく、企業というのは社会的な存在でもあります。社会的な責任を果たしていくということも極めて重要なことであるという認識をしております。そういった社会的な責任、社会的な貢献というのも十分行っていき、そして、株主様だけではなくて、利用されるお客様、それから地域社会、こういった方々の期待にこたえられるような企業グループにしていこうというのが、今回のニューフロンティア21の大まかな構想であります。

 いろいろ、数値目標とか細かい点はございますけれども、きょうは、この場ではその点については控えさせていただきますが、そういった形でこれからも精いっぱい頑張っていきたいというふうに思っております。

日森委員 ありがとうございました。

 もう時間が来てしまいました。実は、大塚参考人、十年間労務担当もなされていらっしゃったということなので、労使関係についてもぜひお聞きをしたいというふうに思っていたんですが、また別の機会に譲りたいと思います。どうもありがとうございました。

赤松委員長 松浪健四郎君。

松浪委員 保守党の松浪健四郎でございます。

 参考人の皆さんにおかれましては、御多忙中のところ、わざわざこうしてお出ましをいただいて意義ある陳述を賜りましたことを御礼申し上げたいと思います。そして、平素より運輸行政に多大なる御貢献をいただいておりますことにも敬意を表させていただきたいと思います。

 私は、たくさんのことをお尋ねしたい、こういうふうに思っておりましたけれども、何といいましても、最後の方に質問者として回ってまいります。多くのことが述べられたわけでありますけれども、繰り返しになるかとも思いますが、私なりにお尋ねしたいことを聞かせていただきたい、こういうふうに思うわけであります。

 先ほど大塚JR東日本社長のお話をお聞きして、民営化された企業というのはどういうふうにあるか、それは、サービス向上のために一生懸命努めなければならない、そしてまた、利益を上げて株主を満足させなければならない、同時に、社会の一員としての社会貢献が求められておるというお話をお聞きして、本当にそうだなという思いを深めたわけであります。

 そこで、大塚社長にお尋ねいたしますけれども、二十一世紀に、新しい時代に突入した。高齢化社会に入り、少子化時代である。同時に、地球の温暖化等、環境というものについても我々は思いをめぐらさなければならない時代に入ってまいりました。それらについてJR東日本はどういうふうに対応されようとしておるのか、お尋ねしたいと思います。

大塚参考人 今先生御指摘ございましたように、これからの企業といいますか、今日の企業といいますか、企業というのは社会における一員であるということは、これは紛れもない事実でございますので、そうした観点から、やはり、ある種の高い倫理観といいますか、あるいは遵法精神、こういったものをきちっと持っていなければいけない、あるいは透明度の高い経営というものをやっていかなければいけないということがございます。

 それとあわせまして、地球環境問題でありますとかあるいは少子高齢化、特にこの高齢化社会への対応をきちっとやっていくということも非常に大事なことだというふうに認識をしております。

 環境問題につきましては、既に当社、いろいろ取り組んできております。もともと鉄道というのは環境に優しい交通機関ということが言われておりますが、ただ、そういうことに満足するということではなくて、二十一世紀は環境の世紀ということも言われておりますので、やはりそれにふさわしい努力をやっていくということが必要であろうというふうに思います。

 現在までの取り組みについて簡単に申し上げますと、私どもは、やはり具体的な目標を持ってきちっと環境問題に取り組んでいかなければいけないというふうに考えております。

 そこで、実は平成八年に、平成十三年度、今年度でありますけれども、これを達成年度とした具体的な数値目標というのをつくりました。例えばCO2の排出量、これにつきましても、平成二年度比で一〇%削減しようという目標を持ってやってまいりましたが、今年度、この目標は達成されるということがほぼ確実になりました。そこで、この目標以上の高い目標をさらに掲げようということで、二〇〇五年度というものを目標にいたしまして、CO2の総排出量を平成二年度との比較で二〇%削減しようという新たな目標を設定しております。

 また、駅とか列車から出るごみ、これは年間数万トンというごみが出てくるわけでありますけれども、これのリサイクルというのにも努力しようということで、このリサイクル率を三六%まで持ち上げようというような目標も立てております。

 また、恐らく交通業では初めてだと思いますけれども、環境会計というようなものも導入をいたしました。

 こういう努力を環境問題についてはいろいろしておるところでございます。

 それから、高齢化社会の問題でございますけれども、やはりお年を召された方でも十分御利用できるような設備をつくっていくということが非常に大事ではないかというふうに思います。

 具体的には、もう既に平成十年度からの計画で、東京五十キロ圏内に、十三年度末を目標年度といたしまして、八〇%の駅にエスカレーターを設置するという計画を進めております。これはもう今年度末でありまして、これも計画どおりにまいります。したがって、現在、社内では次の計画をどうするかということを議論しているさなかでございます。

 御案内のとおり、昨年、交通バリアフリー法が施行されておりますので、こうした法律の趣旨も踏まえまして、これから地方自治体ともいろいろ協力をしながら、こうした問題については、積極的に、かつ計画的にきちっと整備をしていくということをしてまいりたいというふうに思います。

 こうした問題だけではなくて、ほかにも、社会貢献活動として、例えば文化活動でありますとか、あるいはスポーツ活動の支援のようなことでありますとか、こういったことについても積極的にいろいろ進めていきたいというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、こうした社会貢献をしていく、あるいは社会的責任を果たしていくということが企業にとって極めて重要であるという認識のもとに、今後とも努力をしてまいりたいというふうに考えております。

松浪委員 大塚社長のお話を聞いておりますと、COP3の京都議定書から離脱を表明しておるアメリカのブッシュ大統領、ホイットマン環境保護局長官に聞かせてやりたいな、こういう思いをいたしました。そして、大変心強く思った次第でございます。

 次に、伊藤JR貨物社長にお尋ねをしたいと思います。

 JR貨物につきましては、経営状況が厳しいというふうにお聞きしておりますけれども、鉄道貨物輸送は環境に優しい輸送モードでございます。今後とも必要だという立場を我々はとらせていただいておりますけれども、今後のJR貨物の経営展望をどのようにお考えでいらっしゃいますのか、お尋ねしたいと思います。

伊藤参考人 お答えいたします。

 先ほど意見陳述の中でも申し上げましたけれども、先生今御指摘のとおり、この七年間経常赤字が続き、かつ、近々発表します決算におきましても赤字になるような状況でございます。赤字額そのものは減ってきておりますけれども、我々、これを本当に真剣に受けとめて、今後どうするかということをやっております。

 何といっても、会社でございますから、この平成十三年度、まだ始まって一カ月でございますが、今年度は不退転の決意でまず黒字にするということ、それから、その後でございますけれども、さらに新しいいろいろな取り組みをいたしまして黒字体質の定着を図ろうということが、まず経営の本質論だと思います。

 その中で、先生が御指摘のとおり、環境対策その他においてのいろいろな需要がございます。最近、大手の荷主企業さん、これまでほとんど鉄道を使っておられなかった荷主さんから、今の環境問題等から、かなり大口で鉄道にシフトしようというようなお話もございまして、大変感激しているわけでありますけれども、問題はやはり、荷主企業から見れば、コストとサービスということがこの輸送機関に求められる一番大事な点でございます。

 そういう面で、繰り返しになりますが、この十三年度以降、コストの削減をどのようにして荷主サービスに提供できるかという問題と、国鉄時代と違いまして、コンテナ輸送がどんどん伸びている状況にございますので、そのコンテナ輸送についてのサービスをどのように拡大していくかというようなことも取り組んでおります。

 それからもう一つ、先ほど別の先生からも御質問がございましたが、何といっても東海道線の大変物量が多いところで鉄道が少ないではないかというお話がございました。まさに東京―大阪、ちょうど約五百キロでございますけれども、荷主企業から見ますと、六時間を切るか切らないかというのがトラックとの関係では勝負になっております。何とか列車でもってこの六時間を切れるかどうかについて、技術開発を含めてやっているところでございまして、できれば我々は、環境問題等々から、そういう大量に物が流れているところの荷物をいかに鉄道にシフトしていくかということについて力を入れていきたい、こんなふうに思っております。

松浪委員 伊藤JR貨物社長にはぜひ頑張っていただきたい、こういうふうに思います。

 次に、野崎日本民営鉄道協会理事長にお尋ねいたしますけれども、消費者利益の向上等の観点から、必要な規制緩和は行っていくべきである、こういうふうに思いますけれども、行き過ぎた競争は当然のことながら問題であると思われます。民鉄協会は、今後のJRとの競争と協調の関係がどのようにあるべきだとお考えでいらっしゃいますか、お尋ねしたいと思います。

野崎参考人 お答えいたします。

 もう先生御承知のとおり、JRが民営化されて十四年がたっておりまして、この間、それぞれ、JR本州三社のみならず、三島会社を含めまして、地域の民営鉄道会社とはそれなりの、連係プレーといいますか、協調、協力体制を築き、かなりの実績を上げているのが実情でございます。もちろんその内容は、地域におきまして、また路線の態様、お客のパターンによりまして千差万別ではございますけれども、同じ鉄道を営業するということから、共通するものがございます。

 さはさりながら、また別の観点では、近接する路線あるいは起終点が似た近傍の路線につきましては、鉄道会社として激しい競争がございます。これは何もJR対民鉄というスキームのみならず、民鉄相互でも当然あるわけでございます。そういった中で、当然ながら、お客を集め、あるいは増収を図るという意味での競争は行っております。その場合の問題点としましては、一つは安全にまで及ばないこと、それから経営が順調にいくような形での競争に限られるということは、何も鉄道産業のみならず、いろいろな産業でも共通のものかと思います。

 そういう意味では、幸いにして、JR各社あるいは私ども民鉄もそうでございますが、従来からの健全経営あるいは企業としての社会的責任を自覚した経営をずっと続けてきておりますので、それぞれの経営者が各社の方針に応じて、従来のパターンをそう変えないでやっていっても、それなりの競争あるいは協調をすることによりまして、消費者あるいは旅客の利便向上が図られるものと思っております。

 ちなみに、東京におきましては、今民鉄及び都の交通局は共通乗車券「パスネット」をやっておりますし、恐らく東日本も間もなく新しいカードを入れると思いますが、これもどこかの段階で協調するということが要請されると思います。関西でも、民鉄及び大阪市、神戸市の交通局などと一緒に共通乗車券を入れまして、一枚のカードでどの鉄道でも乗れるという拡充を図っております。

 いろいろなところで新しい時代あるいは新しいお客のニーズに対応していくという一種の鉄道の企業文化は、JR、民鉄も同じではないかと考えております。

松浪委員 次に、澄田島根県知事にお尋ねしたいと思います。

 個人的な話になりますけれども、私は知事から遣島使という辞令をいただいておりまして、島根県の宣伝をしなければならない立場にある者であります。そして、「シマネスク」という立派な雑誌を毎回送っていただいて、島根県というのはすばらしい県だというふうに認識をするものであります。

 そして、知事におかれましては、バリアフリー法案ができる前より、この趣旨を御理解いただいて、一生懸命こういう施策にも熱心に取り組まれているということに対しても敬意を表したいと思います。

 地域と共生する形で鉄道を再生させるとの考えに立ちまして国鉄改革が行われました。このような経緯を踏まえまして、地域における鉄道の役割に関する知事の所見をお伺いしたいと思います。

澄田参考人 ただいま松浪先生、遣島使をやっていただきまして、本県のためにもいろいろPRその他御活躍いただいておりますことに対しまして、御礼を申し上げたいと思います。

 ただいま御質問がございましたが、民営化後、地方ローカル線におきましては、確かに、ダイヤの削減がございましたり、駅の無人化などは行われましたものの、路線はほぼ維持されてきております。また、本州三社におかれては、民営化後、それこそ十三年間運賃値上げをすることもなく今日まで来ており、かつ経営状況も改善されております。さらに、運転事故の減少とか、車両及び接客サービス等も向上されておりまして、私ども地方自治体といたしましても、高く評価をしているところでございます。

 今、本県におきましても、道路網の整備等に伴いましてマイカーの進出が非常に著しく、今のJR西日本、山陰本線を中心とされましていろいろ一生懸命取り組んでおられますけれども、そうした中にありましても、本県における生活、産業等を支える、まさにかなめでございます。鉄道は、そうしたかなめであるという意識とともに、人々の交流とか、あるいは定住促進に不可欠な大切な基盤であると認識しているところでございます。

 そうした中で、JRは民営化後も公共的使命を持つ交通機関として地域から大いに期待されているところでございます。その役割を十分に認識していただいた上で、地域と共生する鉄道として再生させるというのが国鉄改革の趣旨であったと思います。それをひとつ忘れずに、地域の足となるダイヤの改善とか、あるいは施設の改善及びローカル線の存続など、地域の要望について真摯に耳を傾けていただきたいなと思っております。

 以上でございます。

松浪委員 整備新幹線の問題、それからフリーゲージトレーンの導入の問題等、藤井、桜井両参考人にもお尋ねしたい、こういうふうに思っておりましたけれども、時間が参りましたのでかないません。お許しをいただいて、私の質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

赤松委員長 菅義偉君。

菅(義)委員 自由民主党の菅でございます。

 参考人の皆さん、御苦労さまです。私が最後でありますから、しばらくおつき合いをいただきたいなというふうに思います。

 私は、この法案を提案されるについて、民営・分割以前の国会での質疑やら、あるいは新聞論調等を実は読んでみました。当時も、ちょうどきょういろいろな質問がありましたけれども、完全に民営化にされたら、利潤を追求して、事故が多くなるんじゃないか、あるいはローカル線が廃止をされるんじゃないかとか、いろいろなことが実は質疑されておりましたけれども、このことが、十四年たって全く杞憂であったわけであります。

 当時の国鉄と比べてサービスはよくなってきている。あるいは、当時は値上げも必要でありました。三%から五%値上げしなければ黒字の経営はできないだろうということも予測されましたけれども、この値上げについても、三社については全くないわけであります。

 まず最初に、大塚参考人にお尋ねしますけれども、大塚参考人は当時国鉄の職員であったと思いますが、当時考えていたJR東日本の将来、そして今日のJR東日本の現状、これについて率直な感想をお聞かせいただきたいと思います。

大塚参考人 昭和六十二年の四月に、国鉄改革でJR東日本という会社が発足したわけでありますけれども、今十四年前を振り返ってみますと、今先生がおっしゃられたように、正直なところ、本当にうまくいくのだろうかなという大変な不安と緊張感の中でスタートしたという記憶がございます。

 何といいましても当社の目標が、とにかく黒字にしようという目標であったということでありますから、それほど黒字ということに飢えていたといいますか、黒字が難しいといいますか、そういう状況の中でスタートして、こんなことは民間会社では当たり前の話でありますが、その当たり前の話が目標になるという状況であったということであります。

 また、先ほどもちょっとお話し申し上げましたけれども、スタートのときに大変な債務を背負ったというようなこともございまして、御指摘のとおり、当時のマスコミの論調も、本当にこれだけの債務を持って大丈夫かという論調が非常に多かったということを記憶しております。

 したがいまして、当時の社長、会長以下末端の社員に至るまで、とにかくもう後がないといいますか、頑張るしかないという悲壮な決意でスタートしたというのが実態であったというふうに思います。

 それが、非常に想像を超える、予想以上の成果が上がったという背景には、いろいろなことがございますが、一つは、スタートした当初の経済環境というのが比較的よかったというようなこともございますし、何といいましても多くの皆さんに御支援をいただいたというようなこともございました。

 しかし、やはり大事なのは、会社の中にいる社員一人一人あるいは経営陣、こういった者の意識が変わるか変わらないかというのが一番大事なことでありまして、そういう意味では、社員一人一人の意識改革というのが非常に進んだ、国鉄時代の親方日の丸という状況から、自分たちで頑張らなければいけないという状況になったというのがやはり大きい変化ではないかというふうに思いますし、その結果として、いろいろな、安全の問題でありますとか、サービスを向上させるというようなこと、あるいはコストダウン、こういったものに積極的に真剣に取り組むというようなことで業績の向上が図られた。しかも、努力すれば報われるんだということが社員の間にもしみついてきた、わかってきたということが非常に大事なことではないかというふうに思います。そういう意味では、私は、この国鉄改革というのは、いろいろな見方がありますが、ある意味では、人間性の回復といいますか、心の回復といいますか、要するに、本来国鉄職員が持っていたそういう気持ちというのを引き出したという部分があるのではないかというふうに思います。

 そうは申しましても、これからの経営環境というのは非常に厳しいものがあるというふうに思いますので、初心忘れずという言葉がございますが、あの国鉄改革のときの情熱というものを持ち続けて、さらにまだまだやらなければいけないことがたくさんございますので、そういった一つ一つに取り組んでまいりたいというふうに思っております。

 そういう点からも、現在御審議いただいておりますこの法案をぜひ通過させていただきまして、そして自主自立経営を貫徹するという状況をつくっていただくということを、改めてお願い申し上げたいというふうに思います。

菅(義)委員 大塚参考人にもう一点だけ。簡潔にお答えいただきたいと思いますけれども、この法案が通れば、指針は残りますけれども、完全に民営化になるわけであります。完全民営化になった時点で何を一番重点事項として行っていくのか、そのことについてお尋ねをします。

大塚参考人 完全民営化された暁には、これまでいろいろ規制があったものがすべて撤廃されるわけでありますから、いろいろな面で、経営の自主性あるいは機動性あるいはスピード感というのが上がってくると思います。

 一方、これからの経営環境というのは、少子高齢化というような社会的ないわば構造変化が起こっておる。あるいは、よく言われる、グローバル市場といいますか、こういったグローバル市場経済というものがますます進んでいく。あるいは、消費者の皆さん方の目が非常に肥えてくる、消費者主導の時代というようなことも言われております。

 そういう意味で、二十一世紀にさらに飛躍を図るために、当社としては、先ほどもちょっとお話し申し上げましたが、新しい経営構想を策定したところでございますけれども、私といたしましては、完全民営化後には、お客様の視点に立った徹底した顧客志向というのを貫いて、サービスの向上、それから安全性の向上というものにさらに力を入れていきたいというふうに思っております。

 具体的には、例えばお客様のいろいろな御意見を伺うような仕組みというものをさらに徹底させていきたい。この五月には、インターネットでもお客様からの御意見を伺えるような仕組みをつくりました。こういったような形でお客様の御意見というものを、サービスなりあるいは経営なりというものにできるだけ反映させていくというような経営をしていきたいと思います。

 具体的なサービスといたしましては、例えば混雑の緩和というようなことについてもさらに努力をしてまいりたいというふうに思っております。今現在二〇〇%という形になっておりますけれども、これを何とか二〇〇五年度までには一八〇%ぐらいまでには引き下げたいというふうに思っています。そのためには、列車の増発もしなければいけない、あるいは新型の車両も投入しなければいけない、あるいは新しい直通運転のようなものもやっていかなければいけない、いろいろな施策をとっていかなければいけないというふうに思いますし、安全という問題につきましても、これは最優先課題として今後ともさらに徹底して取り組んでまいる所存でおります。

 いずれにしましても、お客様、地域社会あるいは株主の皆様から信頼をかち得られるような、そういった経営をしていくという決意を強く持っているところでございます。

菅(義)委員 桜井参考人にお尋ねをします。

 先ほどの意見陳述の中で、三島の会社がまだ経営的に不安定である、そういう中で本州三社を先行して完全民営化はすべきではないというような趣旨の意見陳述であったと思います。例えばJR北海道とJR東日本が連携するとか、実はそういうお話でありました。

 しかし、私は、国鉄改革の原点というのは、まさに自主自立であります。十四年前に、このことを再建監理委員会等で決定をし、それに基づいて本州三社は、総収入の四・五倍の十四・五兆円という巨額の債務を背負いながら今日まで努力をしてこられたと私は思っています。そして、結果としては、国民の皆さんに評価をされるような現状になってきている。民営・分割してよかったなというのが現実であると私は思います。

 今、大塚参考人も、今日の成功の中で、社員や経営陣の意識改革、努力をすれば報われるんだ、そういうことを実は述べておられました。しかし、もしこれが、東日本と北海道が一緒になってしまう、こういうことになったらば、私は、もとのもくあみじゃないか、全く当事者能力がなかったのがかつての国鉄でありますから、これは大変なことになってしまうんじゃないかなという懸念を持っておりますけれども、これについてはいかがでしょう。

桜井参考人 非常に難しい、厳しい御質問であります。

 まず第一に、先ほどから出ております債務十四兆円ですか、引き継がれたということですが、これについて私は異論があります。

 一つは、新幹線の収益調整措置ということで、新幹線保有機構ということで、かなりその中で調整されたということであります。それから、残りの部分についても、会計上、資産マイナス債務イコール資本というような方程式になっておりますけれども、その場合の資産というのは、新幹線は確かに時価、再調達価額でありましたけれども、鉄道用事業資産については簿価で継承されたということで、JR本州旅客三社については、かなり含み資産があるんじゃないかと思っておりまして、債務が非常に大きくてかなりしんどいというような状況とはかなり違うのではないか、私はそういう認識をしております。

 それから、今言われましたJR東日本とJR北海道を合併しますと、いわゆる内部補助が生じまして、そして経営の効率性が奪われるんじゃないかというようなお話であります。

 私自身は、公共企業体から特殊会社にいったことそれ自体は一つの意味があって、公共企業体の問題をどうとらえるかということでありまして、日本的な公共企業体が問題ではなかったかと思うわけで、そこらあたりでちょっと議員と意見が違うと思います。

 しかし、それにしても、仮に現在の特殊会社化を認めたとしても、経営の効率性ということで分割のもとでの特殊会社は意義があったとしましても、私自身がさっき言いましたように、合併するということじゃなくて、持ち株会社を介しましてJR東日本とJR北海道との収益調整を図るということは、現在のNTTでも行われていますし、広く世界の鉄道民営化の中でもそういうような形もあるわけです。

 先ほど言われましたように、分割が国鉄改革のときに決まったじゃないかと言われているんですが、これは、先ほど紹介しました「未完の「国鉄改革」」の中で葛西さんも述べられていますように、新幹線保有機構が収益調整措置としてあったわけです。それも国鉄改革のときにきちんと決められたわけです。にもかかわらず、新幹線保有機構という枠組みをなくさないといけないというような事態になっていったわけですから、そういう意味で、分割そのものも、その後の状況の変化、つまり、三島会社については赤字経営である、本州旅客三社については黒字経営である、三社合計で年間経常利益二千億円を上げているというような状況を考えた場合に、国民の財産を引き継いだということをもあわせて考えますと、そのままJR本州三社だけはひとり勝ち、後は野となれ山となれ、縮小合理化で知らないよというのでは、ちょっと腑に落ちないのじゃないかと考えておりまして、そういうふうに言わせていただいたわけです。

菅(義)委員 いずれにしろ、当時の債務は収入の四・五倍でありまして、まして三社というのは当時たしか一・五倍ぐらいの債務であったと思いますから、いかに巨額の債務であったかということはおわかりをいただけるのかなというように思います。

 藤井参考人にお尋ねをします。

 指針の問題についてでありますけれども、今度の法案の中では「当分の間」ということになっておりますけれども、これについて参考人のお考えをお尋ねいたします。

藤井参考人 指針の項目の中には幾つか性質の違った項目が上がっておりますので、それぞれについて「当分の間」という考え方が違ってくるだろうと思います。

 例えば、通算制の問題であるとか、あるいは駅でほかの会社の案内もちゃんとするとか、そこら辺は、自主的な態度が見えれば、もはやそれについて指針を出す必要はないと思います。それから、アボイダブルコストの問題なんかにしますれば、JR貨物会社がある程度民営化のめどがつくまではやはり外せないだろうというふうに思いますし、それからローカル線の場合であれば、国鉄の関係のローカル線の廃止についてのある程度のルールが見えてくるまで、やはり当面の間ということになろうかと思います。したがって、時間的には、それぞれの項目について当面の間というのが変わってくるだろうというふうに思います。

 以上です。

菅(義)委員 ありがとうございました。終わります。

赤松委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の皆様方に一言申し上げます。

 本日は、貴重な御意見を長時間にわたりまして賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 参考人の皆様方は御退席いただいて結構でございます。ありがとうございました。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

赤松委員長 速記を起こしてください。

    ―――――――――――――

赤松委員長 引き続き、内閣提出、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省鉄道局長安富正文君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 これより政府に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田公一君。

吉田(公)委員 質問いたします。

 JR法の前に一つ、議題にはなっていませんが、今話題になっております道路特定財源、小泉総理の発言によりまして、参議院の予算委員会で、扇大臣も事務当局に指示をしたというふうに聞いておりますけれども、この道路特定財源は参議院選挙の前に出すのか、あるいは参議院選後に改めてやるのかですね。

 もともとこの道路特定財源というのは前から問題になっておりまして、一番大きな既得権益がこの道路特定財源でございます。時が移り、暫定税率なんというのがございますが、この暫定税率を上げた。例えば、創設時は揮発油税が二四・三円だったんですね。ところが、暫定税率で四八・六円。つまり、ガソリンを一リッター入れれば半分が揮発油税で持っていかれてしまう。こんな重税のあるところはないので、そういう意味では、まさに日本は近代国家と言えるかどうか。まだ道路財源にこんなお金を、予算を分捕って、しかも暫定税率などという、わけのわからない暫定などという使い方をして、そして、この自動車時代に、石油ガス税、自動車重量税、それから自動車を買えば取得税、こういう税金を取っていいものかどうか。

 そういうような状況でございますが、大臣としては事務当局に御指示をされたということでございますけれども、小泉総理のおっしゃっているこの既得権益の窓口であります道路特定財源について、いつごろまでに事務当局から返事をもらう御予定なのか、まずそういうことを伺っておきたいと思います。

扇国務大臣 今吉田先生から、参議院の予算委員会の質疑をとって特定財源のお話をなさいました。

 少なくとも小泉内閣、平成十四年度の予算からこれを見直すというふうにおっしゃっていますし、聖域なき改革、そして二十一世紀維新とまでおっしゃっています。私は、二十一世紀、小泉内閣の御趣旨以前に、国土交通省になった、四省庁統合したときから、みずから行政改革の実を上げなければいけないと役所の中で言ってまいりました。

 吉田先生御存じのとおり、昨年の公共工事の見直しのときにも、省庁みずからやりなさいと言って、与党三党以外にも三十四直しまして、トータルで百八十七の公共工事の見直しもいたしました。けれども、今回は、小泉内閣になったから特にスピードアップをしろ、そういうことでございまして、私はもともと改革に着手しなければならないと存じておりましたけれども、特に小泉内閣になったので、しかも私は五月いっぱいというふうに期限を切っております。と申しますのは、六月の二十九日で通常国会が終わりますので、せめて一カ月前に国土交通省としてみずから何ができるかということをお示ししたいと思ったので、今月いっぱいという期限を切っております。

 今までの歴史的経緯、今日自動車が多くなったと今先生おっしゃいますのも、道路ができたからこそ多くなったということも言えるわけでございまして、この道路特定財源、今までもいろいろなところに使っておりますけれども、だからそれでいいということではないということ、今月いっぱいと切っておりますということだけ、お知らせしておきます。

吉田(公)委員 わかりました。

 大臣、ついでに、暫定税率というのはどういうことなのかもぜひ事務当局にお尋ねいただきたい。暫定税率にしては高過ぎる。一リッター二十四・三円が四十八・六円だから、倍だよ。それで暫定などと。

 今、自動車時代ですから、大体一台持っている。だから、税金と同じようになっているわけです。道路特定財源に食い込めば小泉内閣の改革の旗がまず立つわけでありまして、これで挫折するようなら、それはもうだめだ。そういう意味で、ぜひひとつ、私たちからも応援したいと思っている次第であります。

 それでは、JRについてお尋ねいたします。

 まず、国鉄改革の当時は、一つの精神として、経営責任の明確化、長期債務の処理、地方交通線の確保、余剰人員対策、後に絶対問題を残さない、こういう基本方針があったと思うのであります。

 これに沿って国鉄改革は順調に進んできたのかどうか、そういうことでありますが、このJRの改革の法律案を見ても、三島を残してみたり、貨物を残してみたり、どうもばらばらになっているわけでありまして、一体大丈夫か、そういう質問でございます。

扇国務大臣 吉田先生から、国鉄改革に関する評価についてのお尋ねがございました。

 この国鉄改革、当時の国鉄は壊滅的な経営状況でございました。御存じのとおりでございます。そして、あの当時、債務を切り離しまして、人員を適正化した。

 あのリストラされた人たち、私、本当に偉いと思いましたのは、今まで国鉄マンだった人たちが、パン屋さんになったり、あるいは屋台のおうどん屋さんになったり、リストラを皆さん甘んじて、人生設計の変更までして国鉄の民営化というものに努力なさった多くの職員に対しては、私はよく見ておりますので、心から敬意を表したいと思っております。

 そしてまた、現段階では、今先生がおっしゃいましたように、あらゆるところで皆さんに頑張っていただいたおかげで、民営化しまして、その努力のかいがあって、国鉄時代には大体六千億から七千億の補助金を投入しておりましても赤字でありましたものが、七社で今現に年間では千五百億円を超える法人税を納付する、これだけ民営化によって変わってきた。その陰で、リストラされた人の努力というものなしには語れないと私は思いますけれども、それほど変わってきた。そしてまた、経営が好転し、なおかつ、御存じのとおり昭和六十年度から事故が四割減ってまいりました。これもみんなの気が引き締まった大きなあらわれであろうと私は思います。

 皆さんの努力で、そして民営化というものでこれだけ体質が変わるということは、国民の皆さんの、民営化になってサービスがよくなった、そういう声も私は聞いておりますし、私自身もそう感じておりますので、そういう意味では、順調に進展してきたと思っております。

吉田(公)委員 戦前は、知る限りでは鉄道省、戦後は、国有鉄道になって、そしてJRになったわけでありますが、戦後間もなくも国鉄は相当の人員整理をやりまして、それに関連しているかどうかわかりませんが、下山事件なんというのがあった。歴史的にそういうふうに認識をしているわけでございます。

 最近は、リストラはJRに限らず、大手の証券会社や金融会社、または日産その他、リストラするところじゃないような大きな会社までリストラがされているわけでございます。

 不良債権の処理ということを政府も言っていますけれども、不良債権の処理をするということは、リストラがあるぞということと同意語でございまして、そういう意味では、今大臣からお話がありましたように、いつの時代でも、時に当たって人員整理、削減される方々にとっては気の毒な話だ、そういうふうに実は思っているわけであります。

 また、今般の法改正によって、本州三社については会社法の適用除外とする、規制の撤廃を行うとのことであるけれども、逆に、指針を定めてしまって、指針があるんじゃ民間会社にならないじゃないかという意見もありますが、その点についてはどうなんでしょうか。

泉副大臣 今回、会社法から本州三社を切り離すということを御提案させていただいております。

 委員御承知のように、JR各社に対しましていわゆる特殊会社としての規制を今は課しておるわけでありまして、今回の法改正は、この本州三社を特殊会社の規制から外そうという、特殊会社でなくすることが主な目的であるわけであります。

 提案理由でも御説明をさせていただきましたように、やはり国鉄改革の歴史というものをないがしろにしての完全民営化というのはなかなか難しい問題がございまして、国鉄改革において、公的な財産であった事業用資産の承継などを行わせるなど、ほかの鉄道事業者とは違った事情があったことは御承知のとおりでございます。

 そうした経緯を踏まえますと、完全民営化されることとなります本州三社に対しまして、一挙のいわゆる民営化ということについては、私どもとしては考えなければならないことがある、こうした思いでございます。

 今回の指針というものは、国鉄改革の経緯を踏まえた事業運営を確保していくための必要最小限の措置でございまして、これまでJR会社法に基づき行われてきました代表取締役の選定でございますとか事業計画の認可、こうした包括的な、事前的な規制とは性質が異なるものである、このように考えておるわけであります。この指針は、多くの国民もきっと理解をしていただけるものと思っておるところでございます。

吉田(公)委員 本来は、JR七社を一括民営化していくということが基本だ、こう思っています。ところが、残念ながら、北海道も四国も九州も、特に貨物なんかもそうでありますが、この四社は置いてきぼり。なおかつ、この四社については、まだ大臣並びに鉄道局の傘下にあって、これは当分の間と、こう言っているわけであります。

 大体、役所の言う当分とか暫定とか、そういうのは余り当てにならないんだよ。大体、当分といって五十年だから。普通の社会じゃ考えられない。暫定といって三十年。臨時措置法といいながら、三十年平気だから。臨時でも何でもないんだよ、三十年もたてば。だから、そういう意味では、当分の間なんていったって、要するに、それは見通しが立たないというのと同じ話だよ。

 だから、そういう意味では、残されたJR四社について、JR三社はいいですよ、独立してどんどんできるんだから、何も鉄道局で監督する必要はないんだ。だけれども、JR四社については、どうやって民営化していくか、そのためにはどうやって持ち上げていくか、そのことは非常に難しい問題だと思うんだ。JR四社を置いてきぼりにするとまた国鉄と同じことになってしまう。だから、これをどう改革していくか。置いてきぼりにするのは簡単な話で、とりあえず成績のいいところだけ、三社だけ民営化いたします、あとは、四社については社長から何から全部国土交通大臣に届けろ、届けて、この人が社長になればいいやなんて、それじゃ民営でも何でもないよ。それは公団、公社、公庫と同じ話だ。だから、そういう意味では、ぜひ、四社をどうしていくかという計画をちゃんを示してもらわないと、とりあえず切り離した三社だけひとつよろしく頼むよなんていったって、そうはいかない。趣旨に反するんだから。

安富政府参考人 今先生御指摘のように、今回の法律ではJRの本州三社を完全民営化するということで法案を出させていただいております。

 ただ、御指摘のように、JR北海道、JR四国それからJR九州、JR貨物につきまして、我々としても当然この完全民営化ということを目指してやっていくということで、これらの四社につきましても、経営基盤等の条件が整い次第、順次株式売却を進めまして、完全民営化に向かって努力を続けていくということが基本方針でございます。

 ただ、残念なことに、これら四社につきましては、現在、経済環境等もございますが、輸送需要の減退、あるいは、特に三島会社につきましては、経営安定基金のいわゆる運用益が非常に少ないというようなことがございまして、低金利の長期化が続いておりますので、非常に厳しい状態でございます。

 ただ、我々としては、こういう三島及び貨物につきましても、例えば経営安定基金の運用益の確保を図っていくとか、あるいは固定資産税の軽減措置を図る、さらには各種助成制度の活用といったような経済的な支援措置を現在も講じているところでございますが、これからも講じていきたい。そういうことを講じながら、ぜひこれら四社の株式の上場等について、まだ今のところ具体的なスケジュールというのをお示しする段階ではございませんが、各社とも、速やかに上場が可能となるような経営基盤の確立に向けて努力するということで現在進めております。

 我々政府としても、今後、各社の経営動向を十分勘案して、いろいろな支援策を講じながら、ぜひこれを達成していきたいというふうに考えております。

吉田(公)委員 いろいろな支援策というのは具体的にはどういう支援策かということが聞きたいんで、いろいろな支援策等を考えていきますだけじゃ回答にならない。最初から北海道と四国と九州と貨物は除きますといって国鉄改革をやってきたわけじゃないんだから、そういう意味では、切り残されたその四社については、どういう方法、方針で具体的に引き上げていくのか、民営化していくのか。さっき言ったでしょう、当分の間なんて信用できないというんだよ。当分の間といって、五十年だから。

 あの起債許可なんというのは、当分の間なんて、内務大臣だよ、あれ。戦後、内務大臣が、当分の間、起債は許可制にすると内務大臣通達で出した。内務大臣というんだから、戦後間もなくの話でしょう。その内務大臣通達がいまだに生きていたんだから、五十年もたって。役所の言う当分の間なんというのは、五十年たつ。もう、しまいにはわけがわからなくなっちゃうんだよ。だから、そんな当分の間なんという話は、大体この文言に入れたって、やらないという話と同じこと。

 だから、その「当分の間」というのは、大体どのぐらいの目標のことを言っているんですかね。もうごまかされないんだよ、私も。

安富政府参考人 今回適用除外になりますJR本州三社について指針を設けるということで、その指針を設ける期間として「当分の間」ということを規定しておるわけでございますが、先ほど指針を設けた趣旨については副大臣の方からもお話がございましたので重複は避けたいと思いますが、基本的に、公的な財産であった事業用資産の承継等を行わせたという経緯がございますので、本州三社については、このような国鉄改革の経緯を踏まえた事業運営を行わせるということで、指針を設けるものでございます。

 そういう指針の目的からしまして、いわゆる当分の間というその期間につきましては、今の段階で具体的な年数を確定することは困難でございます。ただ、完全民営化後の本州三社の経営状況、あるいは他のJR各社の完全民営化の状況といったようなこと、あるいは長期債務の償還状況といったようなことをにらみながら、国鉄改革が最終的に完了したと総合的に判断されるまでの期間を指すものというふうに我々は理解しております。

吉田(公)委員 局長の方は理解していても、こっちは全然理解できない。局長が一人で理解したって、我々が理解しなければしようがない。答弁にならないよ、そんなもの。

 次に、JR三社について。四社はもう問題外だよ、これは。今度完全民営化しようとしているJR三社は、指針に定める事項というのがあるんだそうですよ。つまり、まだ監督下に置こうとしているんだよ。運賃、共用駅等に関する他のJR各社との連携協力の確保に関する事項だとか、国鉄改革の趣旨を踏まえた路線の適切な維持や駅施設の整備に当たっての利用者利便の確保に関する事項とか、中小企業者への配慮に関する事項だとか。国土交通大臣は、上記指針を踏まえた事業経営を確保する必要があるときには、JR各社に対して指導、助言する、あげくの果てには、正当な理由がなくて反対した者は勧告、命令をするぞ、こういうことになっている。

 そうすると、私鉄にはこんな勧告、命令権なんというのはあるの、鉄道局で。JR三社だけが命令権があるわけ。

安富政府参考人 いわゆるこのような制度による勧告、命令というのは私鉄にはございませんけれども、私鉄については、鉄道事業法におきまして、安全性あるいはサービス面、運賃面等でいろいろな規制がかかっております。

 私鉄についてのそれらの問題について、何らかのいろいろな改善すべき事項がある場合には、鉄道事業法の中で事業改善命令というのがございまして、国土交通大臣の方から、運賃なりサービス、安全問題につきまして、それぞれ具体的な改善命令が出せる形となっております。

吉田(公)委員 事業改善命令というのは、本来、民間企業になったらば、自主的にやるんじゃないの。一々国土交通省が改善命令を出してやるということについては、おかしいんじゃないかな。その辺、どうなんですか。

扇国務大臣 これは、先生、いろいろなとり方があると思いますけれども、私は、今回一番気にしましたことは、完全民営化したときに、採算性を重視して、赤字のローカル線を切るのではないかと。それは皆さん方にとっては本当に困ることだから、経営だけということを考えて、民営になったから自由なんです、赤字のローカル線全部切っちゃいますよとか、そんなことは絶対にしないでくださいよと。私は、三社の社長に、くれぐれもそのことはお願いします、もしそういうときには、国土交通大臣として勧告とか命令というのをしますよと。この項だけは、皆さんに、国民のために、保障してほしいということも含めた勧告、命令もあるということをお含みいただきたいと私は思います。

吉田(公)委員 大臣の御趣旨はよくわかるんです。つまり、幾ら民営といっても、公共性ということからいえば、確かに採算性だけで廃止をするとかしないとかというのは多少問題があると思います。

 だけれども、本来は、民営というのは、廃止してもやむを得ない、つまり、採算性に合わなければ廃止せざるを得ないという、民間企業じゃよくある話ですよね。人員整理なんていい例ですよ。つまり、採算性に合わないから人員整理をしてしまう、退職勧告をする。まことにもってその人の生涯にかかわることだって、民間企業では採算性ということが第一義で、そのためにはリストラが行われて、どんどんやっているじゃないですか、今。

 だから、そういう意味では、矛盾しているんじゃないですかね。完全民営化にするといいながら、赤字路線はそうはいかないぞと。では赤字路線の赤字はだれがしょうんだということになれば、JR三社がしょわなきゃいけないんだから。勧告だけして、命令だけして、国土交通省は全然責任をとらないよ、こういうことになる。

 私は、必ずしも赤字路線を廃止しろと言っているんじゃない。ただ、問題は、完全民営化ということになれば、そういうことも考慮に入れなければ、完全民営化、つまり本当の株式会社になれないんじゃないですかということを言っているわけで、ぜひそういう意味を含めて、鉄道局長、答弁してくださいよ。自分だけわかっていてもだめなんだよ。

安富政府参考人 今先生がおっしゃいました完全民営化ということでございますが、我々としては、今回、特殊会社としてのJR会社法の規制を外す。さらに、こういう規制、今現実に人事面あるいは財務面、事業活動面、いろいろな規制をJR会社法でかけておりますけれども、こういうものを外すと同時に、現在鉄道建設公団で保有しておりますJR株式をすべて売却するという形で純民間会社という形にしたい。そういう形で、いわゆる完全民営化ということを、純粋な形の、一〇〇%の民間資本を持った純民間会社とするということが、今回この法律を出させていただく趣旨でございます。

 ただ、その際にも、先ほど大臣の方からもございましたように、公共性というものがある。その公共性ということについては、例えば路線維持の問題であるとか、あるいは、国鉄改革の中から生まれてきたJR本州三社でございますから、このJR本州三社がお互いに協力して、例えば運賃の通算制であるとか、お互いの共用駅の、いわゆる共通に使う施設の協力関係であるとか、そういったものについては、やはり十分配慮していただきたい。あくまで、そのために指針を設ける。国鉄改革の趣旨を踏まえた最小限の、ある意味での規制といいますか、一つの考え方ということでこの指針を設けるわけでございます。

 ただ、この指針がうまくいかない場合に、幾つか、正当な理由がないということで、本当に我々としては最後の手段だと思っておりますけれども、勧告あるいは命令というような形で担保しようという趣旨でございますので、基本的に我々としては、この勧告、命令があるからといって直ちに完全民営化ではないということではなくて、あくまで完全民営化、さらに国鉄改革の趣旨を踏まえたJR本州三社の完全民営化を確実にするという意味でこの指針制度を設けているというふうに御理解いただきたいと思います。

吉田(公)委員 もともとは、国鉄をなぜ改革しなきゃならなかったかということでありますが、要するに、国鉄は赤字が累積をしてしまって、このままじゃどうしようもないということで国鉄改革が始まって、民営化しようじゃないかという話が出てきた。

 では、なぜ国鉄が赤字になったか。体質もあったかもしれないけれども、一つは、政治路線と言われるローカル線をどんどん敷かされた。そして、そのローカル線の採算性については、敷け敷けと言いった方は全然責任とらないで、敷かされた国鉄があとは責任とらされた。

 例えば、百円の切符を売って汽車を走らせると三百円の費用がかかるという完全に赤字のローカル路線がたくさんあるわけだ。だけれども、地域にとってみれば、それは生活と鉄道と一体だから、そんな簡単に廃止するわけにはいかない、一部バス路線にかえたところもあるけれども。

 何でも線路を敷いて、バス路線にすればいいというんじゃなくて、今いろいろな乗り物があるでしょう。モノレールだってそうだし、今東京の立川なんかでも敷いているけれども、ああいう軽便鉄道というのがある。

 HSSTなんというのがあって、これは磁気式浮上鉄道というんだ。こんなのは一キロ七十億ぐらいの建設費でできるんだ。地下鉄地下鉄と言っているけれども、地下鉄は一キロ三百億円だよ。磁気式浮上鉄道、たしか運輸省で六十キロまでは許可出しているはずだよ。今名古屋の方でやっているんじゃないか、HSSTというのは、磁気式浮上鉄道というのは。名古屋鉄道と一緒になっているんじゃないかな。

 やはり知恵だよ。二十一世紀は知恵の時代だと言われているんだよ。だから、国土交通省は、そういう赤字路線は、政治路線で生活路線だからこの路線は絶対外しちゃいかぬなんと言って命令ばかりしていないで、やはりもっと知恵を使って、磁気式浮上鉄道。

 磁気式浮上鉄道というのは、台車が要らないんだよ。それから鉄輪が要らないから、飛行機のジュラルミンで、磁気で浮上してくるんだよ。今、山梨実験線でやっているけれども、あんなスピードなんか出なくたっていいんだよ。

 私がたしか運輸省に十年ぐらい前に聞いたときに、要するに六十キロまでは自動的に許可してやる、こういうお話になっていたんだ。だから、そういうものを含めて、そういう軽便鉄道を設置する。そうすると、鉄道を外した道路も利用しながら、そして軽便鉄道も利用できる。一石二鳥なんだよ。だから、そういう知恵を出してこれからやらないと、とても二十一世紀なんというのは国全体が知恵を出さなきゃ乗り切っていけない。だから、赤字路線はだめだと言っているだけじゃなくて、そういうものもぜひ組み込んで。

 私が都会議員をやったときに、東京湾で万博を鈴木俊一知事がやろうとしたんだ。私は、ロープウエーを敷いたらどうだ、箱根鉄道だって函館だって神戸の方だってみんなロープウエーで登っているじゃないか、あれを都市に利用したらどうなんだ、今百五十人乗りのロープウエーがあるんだよ、マンハッタンとニューヨークは通勤に使っているんだよ、だから日本だってロープウエーができるじゃないか、あんなもの一キロ三十億か二十五億でできるんだから、そういうものをやったらどうだと言ったけれども、要するに考え方がついてこないんだよ。

 結局、それじゃ万博で使いましょうということになって、やっとそうなったんだ。そうなったら、今度は青島という知事が出てきて万博中止だなんて言うから、私のロープウエーまで一緒にだめにしちゃったんだ。随分ひどい話だと思っているんだよ。

 だから、どこでもいいから一遍、登山、観光、見物だけでなくて、ロープウエーというのは百五十人乗りだよ。シャトルバスなんというのは、何か私が答弁しているみたいで悪いんだけれども、参考までに言うと、シャトルバスなんて幾ら走らせたってだめなんだよ、七十人しか乗れないんだから。それで、もう下の道路を使ってバスの増発をしようなんていう時代じゃない。空中を利用しなきゃだめなんだ。地下を利用してもいいんだけれども、地下は一キロ三百億だよ、地下鉄は。財政難の折に、そんな簡単に地下鉄建設なんかできない。

 だから、そういう意味では、ぜひ、大臣、副大臣、政務官はかわる可能性があるから、どこまでやってくれるかわからないけれども、運輸省の人、ちょっとよく聞いていてくれよ、ちゃんとね。

安富政府参考人 今、地域の交通の維持のお話がございました。

 先生がおっしゃいますように、赤字ローカル線の問題がございますけれども、やはり地域地域で、その地域に合った交通手段、どういうふうな形でやっていったらいいのかということは十分議論して、地元でもいろいろ研究する必要があると思います。

 先生がおっしゃいますように、単に鉄道じゃなくて、例えば、最近ではデュアルモードバスみたいなものが名古屋で行われております。あるいは、最近、LRTという路面電車の低床式のものが行われている。さらには、先ほど先生の方からもございました都市内ロープウエーという構想は、実は技術的にはございます。

 こういういろいろな手段というものを、やはりそれぞれ地域ごとに考えていかなきゃいけない。我々としても、そのためのいろいろなお手伝いは、できるところはするという形で、いわゆる鉄道に限らず、地域の交通の維持を考えていくことは非常に重要だと考えております。

吉田(公)委員 さっき言ったように、バスはどんなに運んだって七十人だから。ロープウエーなんか、今百五十人乗りのゴンドラができているんだから。私は箱根へ視察に行ったんだ。これは風でとまりませんかと言ったら、一回もとまったことはないと言うんだから。ただ、東京都の方は、当時、ロープでもってそこにつるすものだから危ないと、こう言うんだよ。危ないって、ロープでつるしておいて危ないんじゃ、飛行機やヘリコプターなんか飛ばすなと私は言ったんだよ。ロープなんか全然ついていないじゃないかと。だけれども、やらなかったんだよ。

 だから、今度は私は国土交通省にぜひどこかでやってもらいたいとお願いしておきますよ。知恵使わなきゃ。

 次に、赤字路線がたくさんあるものだから、これは国鉄改革しなきゃいけないということもあって、一つは、サービスもよくなったよ。感じもよくなったし。列車なんかに乗っかっても、車掌さんの態度なんというのは、本当に乗っていて気持ちいいというぐらいにサービスがよくなって、私は乗客の一人として大変喜んでいる。

 ところが、ここでまた一つ。これはもう済んだ話だろうと思うんですよ。ただ、私は運輸委員会にいなかったし、その検討委員会だとかなんとかのメンバーでも何でもないから、新聞や何かで聞くしか手はないんだけれども、整備新幹線。

 何でも整備なんだよ。頭に整備をくっつけなけりゃ予算がつかないんだよ。だから、そういう意味では、整備新幹線が何か地元の人たちにとってみれば十分望んでいることだろうとは思うんですよ。だけれども、第二の国鉄の赤字路線と同じじゃないか、これは。お客さんが乗らないのに、同じ規格でやるんだと。

 言っているそこの議員の気持ちはよくわかるし、地元の人たちの気持ちはわかるよ、それは。だけれども、問題は、採算性ということを考えれば、本当にお客さんが乗ってくれるんだかくれないんだかわからないような整備新幹線を採算性を考えないでばんばんやるなんということは、大体、整備新幹線というのは、後はだれが面倒を見るのかね、これは。

泉副大臣 委員に誤解を解いてほしいわけでございまして、整備新幹線というものの考え方は、全国の地方の方々が大変待ち望んでおられることは御承知のとおりでございます。これは今ここで申し上げることではないかもしれませんが、明治時代の狭軌の鉄道が時代の変化とともに広軌に変わる一つの手段だというふうに考えれば、ある程度、全国の鉄道の骨格をつくるときに新しい基準で整備をしていくということは、これは私は当然だ、こう思っております。

 今、第二の国鉄をつくらないようにという先生のお話がございました。私どもは、今の整備、制度でやる限りその心配は全くない、こうした制度をつくって、予算の許す範囲内で整備をさせていただいているところでございまして、いわゆる下物を国と地方が分担し、そして、JRは、新幹線をつくった場合とつくらない場合の利益の範囲の中で線路の使用料を払う、オペレーションにかかわる費用を持ち出していただくということでございますので、今、第二の国鉄をつくらないようにという御指摘がございましたけれども、全く違うわけでございまして、この点を誤解しておられる方が国民の中にいらっしゃることは大変残念でございます。そのようなことはないということを申し添えさせていただきます。

吉田(公)委員 そのとおりだとすれば大変安心しているわけで、そうはいかないから心配しているんだ。

 そして、広軌時代だと。世界の鉄道は広軌ですよ、みんなね。だけれども、山形新幹線方式だってあるんだよ、何も正式にやらなくたって。乗客の少ないところは山形新幹線方式だっていいんだけれども、そうはいかないとかなんとかいって、結局国民の税負担になってしまう、ツケのツケは。

 だから、そういうことを心配しているわけで、その地域の人たちにとってみればわからないことはないけれども、仮に二十分や三十分遅くなったってそのとおりに生活すれば別にいいわけだから、そういう意味では、財政ということを国民も考えなくちゃいけませんよ、これからは。何でもかんでも自分たちの要求だけではだめで、政府はそこを言うんだよ、これから国民の皆さん方にも協力してもらわなきゃだめですよと。

 何でもかんでも必要だからと、そういう発想ではだめなのです、財政や財源のこと、効率性のこと、そういうものを考えて、これから国にどうやって協力してもらうかということを、メッセージを発しない限りは。もう地方公共団体でも言っていますよ。皆さん方は何を市にしてくれるんですかというようなことを言っている人たちもいますよ。そういう時代に日本も入ってきたので、高度経済成長は終わったんだから、やはりみんなが、高度経済成長時代のような、何でもつくってやればいいじゃないかというようなことは、もう終わりにしていかなきゃいけないのではないか、そう思っているわけです。

 例えば、新幹線をつくった結果、つまり在来線、東海道線、山陽本線、東北線、上越線、そういうものは、一体乗降客はどうなっているのかね。新幹線にお客さんをとられて、長野へ行くときだって、軽井沢からはしなの鉄道なんてなっているのをおれは知らなかったよ。しなの鉄道というのは、要するに、アプト式を廃止して、新幹線を通しちゃった。そのかわり、軽井沢発しなの鉄道になっているわけだよ。だけれども、従来の線は廃止しちゃって、しなの鉄道は、営業係数というか、営業成績というのはどうなっているんですかね。みんな、東海道線でも、山陽本線でも、東北線でも、新幹線をつくってスピードアップしたけれども、在来線は全部ダウンしたとすれば、これもまた経営の問題にかかわってくるんじゃないの。鉄道局長、どうですか。

安富政府参考人 今、具体的に、JRが既に運行している東海道本線とか東北本線とかと新幹線との関係、こういう意味では、当然新幹線というものは、いわゆる昔でいう特急ですね、速達性を重視した機関ということでやっておるものでございまして、それと、東海道本線といういわゆる在来線につきましては、地方のローカルあるいは都市間の交通機関ということで、現在、それぞれ役割分担を持ってJR本州三社の中で運行されているわけでございます。

 ただ、もう一つ、先ほどちょっとお話が出ましたしなの鉄道みたいに、整備新幹線を整備する際に、いわゆる並行在来線と呼んでおりますけれども、この部分については、JRの経営主体から離しまして、地方自治体が具体的に、並行在来線について三セクをつくって運営する、そういうことをはっきりとした場合に、現在、整備新幹線とセットで整備新幹線計画がつくられて整備が行われているわけでございます。

 確かに、並行在来線の第三セクターの経営というのは非常に厳しゅうございます。そこら辺については我々も十分認識しておりますが、やはり、この並行在来線の第三セクターについて十分収支見通しを立てた上で、今後どういう形で整備新幹線を整備していくかということについては、各地方自治体、十分検討していく必要があるかというふうに考えております。

吉田(公)委員 今局長から答弁いただきましたけれども、例の第三セクター、三セクは、成功しているところはないんだ。なぜかというと、景気が悪くなってきたでしょう。要するに、まず県なり市が十億とか二十億とか出資するんだよ。利回りは五%にしているんだよ。だから、補てんできるからよかったわけさ。五%利回りをやって、その利回りで、つまり地方公共団体の外郭団体の人件費や事務費やそういうものをできる、こういう発想で五%利回りでやった。今、金利は〇・一%だよ。

 政策金利で〇・一%というと、どういうことかというと、鉄道局長にそんな預金の話したってしようがないんだけれども、局長だって貯金しているんだろう、一千万円預けて六千四百五十円ぐらいしかくれないんだから。毎月一万円ずつ積んで一年間、満期になりました、金利はどうですか、六十四円だよ。あげくの果てに、利子税二〇%国がとっていっちゃうんですから。利子税は下げないんだ、金利だけぼんぼん下げちゃってさ。

 〇・一%利回りでもって出資して、だから第三セクターはみんなつぶれちゃうんだ。金利が高いときはそれで通用したけれども、景気のいいときは。今、三セクなんて全然だめだよ。見ていてみな、そのうち全部ほっぽり投げられちゃうから。それを全部国土交通省で面倒見てくれればいいが、それはもう知らない、こういうことになっちゃうんだな。三セクでやっていますなんて調子のいいこと言って、そんなものはだめに決まっているんだから。

 それから、プライスキャップ制というのがあったね。一時騒がれましたよ、プライスキャップ制。これは難しくて、私も勉強したんだけれども、なかなかよくわからない。ただ、言えることは、物価上昇を続けていて、高度成長が続いているときは、料金算定のためにある程度よかったかもしれない。だけれども、デフレになって、料金は上げられない、物価指数は下がってくる、景気はよくならない、こうなると、料金下げなきゃいけないんだよ。だから、景気が悪くなった途端にプライスキャップ制の話をしなくなっちゃった。

 これは私鉄なんかも反対のようなんだけれども、プライスキャップ制の問題点というのはどういうことなんだろう。

安富政府参考人 今御質問のいわゆるプライスキャップ制でございますけれども、このプライスキャップ制というのは、いわば、行政が物価指数等の外生的な数字、例えば消費者物価指数といったようなものを用いて運賃改定率の上限を設定しまして、その設定した範囲内であれば事業者が自由に運賃設定をできるという仕組みでございます。

 ただ、こういうプライスキャップ制という制度につきましては、ある意味で、運賃の設定、変更に関する事業者の自主性が非常に高いという意味では、まあどっちにメリットがあるかということはありますが、一つのメリットかと思いますけれども、一方では、価格の上限値の算定に際して、直接原価に関係のない物価指数等の外生的な数字を用いるということについて、果たして利用者が納得する合理的な方法というのができるのかどうかといった問題、それからもう一つは、設備投資を非常にする会社にとりましては、その設備投資をする部分についてのいわゆる原価といいますかコストをどうこのプライスキャップ制で賄えるかという問題、こういう問題がございます。

 我々としても、過去に、平成八年ごろ、プライスキャップ制について鉄道運賃問題等検討会で議論をしてきたわけですけれども、先ほど言いましたような幾つかの課題が指摘されております。こういう課題を克服していかないとなかなか難しいかな、こう考えております。

 ちなみに、現在の鉄道運賃につきましては、平成九年一月に新しい旅客鉄道運賃制度を導入いたしまして、いわば総括原価のもとでの上限価格制という形で設定いたしまして、この上限の範囲内であれば、鉄道事業者による自主的、主体的な運賃設定が可能というような仕組みになっておるところでございます。

吉田(公)委員 では、プライスキャップ制については今後進めていくという予定は今のところない、こういうことですね。

 それから、JRについてどうしても触れなきゃならないのは、国鉄改革のときに、国鉄が抱えている借金を、最終的には、国民という言葉で、つまり、税金で返せ、国民が返せというような論理もあって、国鉄清算事業団というのが引き受けて、そして、二十一兆円だか二十二兆円だかの借金を残して、この理事長とかなんとかという人は、隔年ごとだか順番で、大蔵省から来て、それから運輸省から行って、その次は大蔵省から行ってと、天下り先のところだったわけだ。

 国鉄清算事業団そのものは、要するに、国鉄の用地を売り飛ばして、それで国鉄の赤字を少なくしていこう、こう思ったんだけれども、土地の下落によって売り損なっちゃった。それは政府が悪いんだよ。政府の方針で、高いときに売るな、ますます土地が高くなるじゃないか、したがって国鉄用地を売っちゃいかぬ、こういうことで待っていたら、途端に土地が下落しちゃって、採算性に合わなくなってきちゃった。そういう事情もあるんだけれども、国鉄清算事業団の借金、これは一般会計で返すようにしちゃったらしいな、いつの間にか。

 しかも、青函トンネルというのをつくったね。その青函トンネルというのは、日本の土木技術の粋を集めたすばらしいトンネルで、私も視察に行ったことがあるんだけれども、しかしこれは一兆円かかった。六千億円が工事費、四千億円が金利だというんだ。だから、要するに、もう面倒くさいから、そういう青函トンネルの建設費までこの際国民に払わせちゃえというので、一般会計から払うようにしちゃったらしいんだ。

 それで、国鉄清算事業団というのはもうないというんだ。これは、どういうことで、どういうふうにして国民にツケを回しちゃったのか。それでなくったって国民は、さっきの自動車重量税、取得税、揮発油税じゃあるまいし、年じゅう、見渡す限り税金に囲まれているんだよ。また税金にツケにして、何か技術的にうまくやったのかどうか知らないけれども、こういうことが許されること自体がおかしいと思っているんだよ。これはいつの間にかやっちゃった。それはどうですか。

安富政府参考人 先生御指摘のように、国鉄改革の際に、当時、国鉄で三十七・一兆の長期債務がございました。この中には、先ほども言いました青函連絡トンネル等の、新幹線も含めてでございますが、過去のいろいろな鉄道整備に対する債務というものも含めて入っておるわけでございますが、これを鉄道事業者、JRに、先ほど参考人質疑でもございましたように、一部持たせる、さらには、新幹線保有機構でこれを引き取るという形でやっておりましたけれども、そのほかの権利義務関係につきましては、日本国有鉄道清算事業団というところで、約二十五・五兆でございますが、引き継いだところでございます。

 これにつきましては、当然、その後の土地の売却であるとか、いわゆるJR東等を初めとする株式の売却で、自主的にこれをできるだけ返していこうということで考えておったわけですが、それでもなかなか返し切れないということで、この部分については国民の負担を仰がなきゃいけないということから、平成十年の国鉄長期債務処理法におきまして、この清算事業団が抱えております長期債務につきまして、一般会計の承継も含めまして国民負担という形で処理をしたところでございます。

 現在の国鉄清算事業団は、事業団自体はなくなっておりますが、鉄建公団の清算事業本部というところに移管して、さらに、株式の売却であるとか土地の売却という業務を行っているところでございます。

吉田(公)委員 国鉄清算事業団の返済は十五年だか二十年でやろうというので、国民の税金から毎年一兆二、三千億返していくのかな。また、小泉さんが五兆円減らすとかなんとか言ったって、青函トンネルの建設費まで国民の税金で払わされたのでは、国民はたまったものじゃないんだ。だから、一般会計から毎年一兆二、三千億返済していくのか、十五年ぐらいで。局長、それはどうなっているんですか。はっきりしてくださいよ、これは国民の皆さん方によく知らせておかなきゃいけないから。

安富政府参考人 ちょっと今、一兆何千億というお話がございましたけれども、正確な数字はわかりませんけれども、平成十年の国鉄長期債務処理法の一つのスキームとしまして、国鉄長期債務のうちの有利子債務十六兆、それから無利子債務八・一兆につきまして、これを一般会計が承継する、この一般会計が承継した部分につきまして、財投資金の繰り上げ償還等も行いまして、発行しました国債については、六十年償還ルールに従って償還していくという形で現在進められているところでございます。

吉田(公)委員 そのときに、たばこ一本二円値上げして債務の補てんに充てた。JRにも、要するにあんたのところも出せというので、JR東の社長だか西の社長だかが大反対して、最後は、何で民間企業があんなものをやらなきゃいけないんだとかなんとか言って、結局、たばこの値上げ。

 私はたばこを吸うんだけれども、ニコチン中毒だと思って、みんな、値上げしたってあいつらは吸うんだから大丈夫だなんていって、何かというとたばこの値上げをするんだよ。何でたばこの値上げと国鉄の債務が関係あるのか、おれは不思議でしようがないんだけれども、何かというとたばこを値上げしてくるんだよ。

 大体、たばこの値上げで、たばこを吸わない人はいいけれども、我々みたいにたばこを吸う人は、よっぽどやめてしまおうかと思ったんだよ、理不尽な値上げだから。でもやめられないんだよ。だから、そこがそっちのねらい目なんだよ。あいつらはニコチン中毒だから、ぶうぶう言ったってそんなのは三日間しか言っていないんだから、値上げしても構わないんだと、どっちみち中毒患者みたいなものだなんていって、値上げされてはかなわないんだよ。

 そういうように、常に、借金ができるといろいろな方法を考えて埋め合わせしちゃうんだよな。だから、運輸省なんかは残土処理業者みたいなもので、何だって穴ぼこがあいたらどんどん埋めていっちゃって、こっちは何だかいつの間にかたばこを値上げされたりなんかして、わけがわからないうちにやられちゃうんだよ。だから、そういうのはぜひ今後気をつけてもらって、ついでに債務処理させちゃえというので、青函トンネルの建設費までぶち込んでしまって、何だかわからないうちにやらないようにしてもらいたい。

 それから、鉄道貨物。これは歴史があって、昔は、貨物といえば鉄道だよ。自動車なんというのは、まだまだエンジンだってそんなに馬力があるわけじゃないし、年じゅう故障するし、山は登らない。だから、そういう意味では鉄道が主役だったんだよ。だけれども、いつの間にか鉄道貨物が主役から落ちちゃって、今度は内航海運みたいなのにとられちゃう、でっかい荷物は。あとは、高速道路ができているから、トラックの積載量も、馬力のあるいいエンジンができてきて、そういう意味では、鉄道貨物というのは救われないんじゃないかと思う。

 今、東京なんかでもそうなんだ、大阪もそうかもしれないが、つまり、貨物線を通勤列車の線にみんなかえてしまったんだ。池袋から出て埼玉県に行けるような埼京線だとか宇都宮線なんて、何で新宿から出るんだと思ったら、貨物が通らないから、貨物線を利用してどんどん人員輸送にかえていっちゃうんだ。昔は貨物線というのは専用にあったんだ、大消費地東京に貨物路線がなければどうしようもないんだから。だから、貨物専用線というのがあって、そしてそこを使っていたわけだ。ところが、貨物がないものだから、線路をあけておいてももったいないというので、サービスの面も含めて、そこへ今度は電車を通してやっている、こういうふうになったわけだけれども、本当に貨物は大丈夫かなと。

 昔はチッキというのがあったんだよ。知っていますか、局長。人間と荷物と一緒に行って、割引運賃で、荷物も出しますよというと、鉄道貨物運賃取扱所なんというのがあって、荷物はこっち、それで切符を買うんだよ。チッキというのだけれども、どうしてチッキというんだか知らないけれども、そうすると、運賃が安く、割引になる、そのかわり駅どめだよ。そういうサービスの悪いことばかりしているからいけないんだ、駅どめだなんて、そこからまた担いで自宅まで行かなきゃならないんだから。大体、そういうようにサービスが悪いからそういうことになる。

 それで、今度、貨物はどうするの。

泉副大臣 貨物のことについてお答えを申し上げます前に、先ほど来いろいろな御指摘をいただきました。御高説を拝聴させていただきました。

 しかし、国土交通省、旧運輸省は、国鉄時代のこの大きな借金をどう処理するか。先生御指摘のように、清算事業団に土地を売るなという指令も出ましたし、売り損なったといえばそのとおりではありますが、国鉄改革は、当初のときから、土地を売る、努力をする、それでも処理できないところは恐らく一般国民に御負担をお願いしなければならないだろうという答申をいただいております。これは六十年七月二十六日の答申でございまして、その中で、国民負担をどう減らしていくかということについて、我々は最大限の努力をしたつもりでございます。なお努力が足りなかったという御指摘は甘受しなければならないと思いますけれども、精いっぱい努力をし、そして平成十年には国会の御同意をいただいて、処理の仕方を御承認いただいたということを申し上げておきたいと思います。

 それで、鉄道貨物につきましては、今、昔のチッキの話もお出しをいただきました。鉄道が貨物を運ぶ唯一の機関であったと思います。しかし、道路の延び、自動車、トラック輸送の便利さ、こうした輸送構造の変化の中で、鉄道貨物が現在トン数で一%弱、トンキロベースで四%程度に落ちておることは事実であります。JR貨物が七期連続の経常赤字という厳しい経営環境にあることも、先生のお話の中で指摘をいただいておるようなことでございます。

 しかし、申すまでもなく、環境の問題、安全性の問題、輸送コストの問題からしますと、私どもとしては、モーダルシフトという大きなテーマを掲げさせていただいておりますが、なお鉄道に大きな役割を貨物輸送の分野で果たしてほしい、こう考えております。今日においても、長距離のコンテナ輸送でありますとか、石油、セメント等がそういう役割を担っておりますが、もっと利便性の高い鉄道貨物輸送を期待しておるわけです。

 具体的にはどうするかということで、JR貨物にも、新フレイト21というような新しい貨物輸送計画をつくって努力していただいておりますが、十四年度以降、また新しい中期経営計画を策定していただいておるところでございます。

 国土交通省としましても、いわゆるJR貨物の経営基盤の安定に向けまして、税制の面あるいは日本政策投資銀行からの融資、さらには、具体的には、門司貨物拠点事業という事業をやらせていただいておりますが、十分の三の補助をするなど、とにかく日本の貨物輸送における鉄道の役割は大変重要なものがあるという認識のもとで、これからも助成策を考えていきたいと思っております。

吉田(公)委員 時間がありませんが、最後に、JR完全民営化ということでございますが、JRの民営化についても、公共機関であることは間違いない。

 いろいろなこういうビラが労働組合から出ておりまして、かつて何人かの国会議員が、参議院でもそうでありますし、衆議院でもそうでありますが、革マル派の問題について取り上げてまいりました。金重警備局長はそれぞれ答弁をいたしておりまして、浸透している、心配もしているというようなこともございまして、省として、警察当局等においてさまざまな指摘がされていることは承知しているということでございまして、完全民営化にするのは結構でありますが、公共機関であるという認識だけは、何も私が言うまでもありません。

 こういう革マル派問題、こういうビラが出て、会社経営上も非常に問題が残るでしょうし、そしてまた、労働問題としても残るでしょうし、社内が対立していたのではいい会社にはなれないわけでありますから、この革マル派問題というのは何回か国会で取り上げておりますけれども、これは警察庁の問題としてではなくて、まだ監督官庁ですから、ぜひそういう意味で適正に、適切に対処してもらいたいということを要望して、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

赤松委員長 今野東君。

今野委員 民主党の今野東でございます。

 きょうは、国土交通委員会は朝からの大変長い時間の委員会でございまして、大臣初め皆さん、大変お疲れでございましょう。短くせよというサインも出ておりますが、まだやるのかと思わずに、ぜひおつき合いいただきたいと思います。よろしくお願いします。

 さて、それでは旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律案について質問させていただきます。

 国土交通省では、恐らくJR民営化について随分と力を尽くしてこられたのだろうと思います。二月二十一日だったと思いますが、国土交通大臣、扇大臣は、東日本、東海、西日本のJR本州三社の社長と会談をしまして、それぞれの三社の社長が民営化の方針を受け入れました。随分ほっとされたと思うのです。

 JR東海の葛西社長がなかなか納得されず、随分説得されたのではないかと思いますが、このJR東海の社長を納得させるためにどういうお話を大臣はされたのか、そしてJR東海側はどのように納得をされたのか、お話しいただきたいと思います。

扇国務大臣 民営化をするときには三社同時というのが私の念願でございました。就任しましたときからこの問題がありまして、今先生が御指摘のように、JR東海が、どうしてもしょった荷物が大き過ぎると。

 端的に言いますと、一般の皆さんにぜひ御理解いただきたいことは、JR三社、私は、嫁にやったという表現をいたしました。嫁にやるときに、本家の借金をしょっていってくれた。けれども、結婚して三社がそれぞれ一人前になった。一人前に独立するようになったのに、いつまでも嫁に行く前のうちの借金をしょったままでは一人前になったことにはならなくて、時代も変わったし、そして採算性が上がり、経営改善もし、あらゆる努力をしてくださっているのですから、それぞれ三社がもう一人前になったということをぜひ国民の前にも認めたいし、国土交通省としても、一人前になりましたよ、どうぞ独立して頑張ってやってくださいということを申し上げたいというふうに私は念じておりました。

 ですから、今、JR東海が反対し続けたということも先生はおっしゃいましたけれども、少なくともJR東海は、問題点として幾つか私におっしゃいました。その幾つかの観点は、国鉄改革の趣旨を踏まえた事業運営を確保する必要があるということが大きなJR東海さんの御趣旨でございました。

 そしてまた、他のJR会社と比較して大きな債務が、今私、荷物をしょっていると言いましたけれども、それが他のJR二社に比べて、JR東海は荷物が多いではないか、そういうことをおっしゃいました。

 それで、これらの問題点につきまして、JR東海さんと担当者も鋭意努力して話し合いまして、JR東海が完全民営化に転じた理由としては、JR東海によりますと、本法の指針制度によって、冒頭に申しました、国鉄改革の趣旨を踏まえた事業運営が確保されることになりました。それは、さっき私、先生にお話ししましたように、税金を納めるくらいに経営努力をしていただいたということも踏まえまして、JR東海さんの債務問題について関係者の尽力された、その努力と期待というものを、私たちは皆さん方に御理解をいただいて、JR東海さんが判断していただいたと思っております。

 また、先生はもう全部御存じですけれども、JR東海さん、現在、債務残高が、大体収入の五倍近い大きな額が残っております。そのためにJR東海の葛西社長とるるお話し合いをいたしまして、今後の会社の健全経営に支障を生じかねないと主張されたんですけれども、税制を含む何らかの措置を国に御要望という形でなさいました。そのことも含めて、私どもは、JR東海の主張している問題に対しては、今後、具体的な制度の検討を行って適切に処理してまいりますということをお約束しまして、葛西社長も納得されて、三社が同時スタートということで民営化に踏み切っていただいたというのが経緯でございます。

今野委員 税制を含む何らかの措置をお約束されたんですか。

扇国務大臣 お互いに検討していこうということを申し合わせました。

今野委員 大臣がお話しになった、嫁にやった娘への荷物ですが、JR東海は、九一年に新幹線設備を当時の新幹線保有機構から買い取った際、東海道新幹線の最終的な調達価格三兆円に二兆円上乗せされたおよそ五兆円の債務を負ったという過去のこと、これはもちろん大臣御存じなわけですが、今回の交渉の中で、今おっしゃったように債務が多い、債務を減らす手だてが必要だということを葛西社長は訴えておられたのだろうと思いますが、この点はどのような支援策を考えていらっしゃるんでしょうか。

扇国務大臣 今申しましたとおり、お互いに腹を割って、できる限りのことを協力していこう、検討しましょうということで、快く御了解をいただいたので、検討材料はこれからでございます。

今野委員 そうすると、具体的な方策はまだ何も決まっていなくて、これからなのだというふうに理解をしてよろしゅうございますか。

扇国務大臣 さようでございます。

今野委員 済みません、お疲れのところ、何度も立たせまして。

 JR本州各社ですが、それぞれに安定的に経営黒字を計上して、それぞれ株式も上場して、株式も順調に、堅調に推移しているということなわけですが、各社とも多大な債務を負っておりまして、債務額を営業収益比でいいますと、今ここでわざわざ言わなくても皆さんよく御存じなわけですが、JR東日本二・八倍、JR東海は四・七倍、JR西日本一・八倍というふうになっております。

 完全民営化に当たって、財政上の特例措置を施すという必要はないんでしょうか。その点、もう一度伺います。

扇国務大臣 今、今野先生がおっしゃいましたように、JR東海、長期債務四・八兆、そして運輸収入が一・〇兆、そしてJR東日本、長期債務が四・七兆、収入が一・七兆、そしてJR西日本が、長期債務が一・四兆、運輸収入〇・八兆、これが十一年度の決算状況でございます。

 今先生がおっしゃいましたとともに、このJR東海等々、具体的な方策は確定しているわけではございませんけれども、私たちは、今後具体的なものをお互いに検討していこうということで、快く御了解いただいたということは、こちらの誠意も、JR東海の葛西社長も御納得いただいて、これなら三社同時スタートしようという決意をしていただいたんだと思います。それは、お互いの信用と信頼と、そしてお互いに頑張っていこう、今後の、二十一世紀に向かっての展望をみんなで協力しようということを私は御理解いただいたんだと思いますし、また、各新幹線の収益力を勘案しながら、私どもは、今後、国としてでき得るものを、いろいろなことが考えられると思いますので、一緒に努力していきたいと思っております。

今野委員 やはり幾ら聞いても具体的には出てこないわけで、随分お互いに信頼し合っているのだな、それがベースになっていて、これが本当にそのままいけばいいことだと思いますが。

 さて、ことしの三月二日付の新聞なんですが、それによりますと、税制優遇を受けられる補修費の準備金制度ですね、これを創設すると言われているんです。そして、これは、実際に採用されたとしても、運賃収入と同額程度の工事でなければいけないという条件がありますね。そうしますと、運賃収入というのはおよそ一兆円ですか、それと同程度の事業になりますと、実際に返済なんかも考えますと、着工するのは非常に困難というふうに思われるんですが、この制度の導入について、ありやなしやということと、実際に、そのあたり、着工すれば大変難しいのではないかということと、お答えをいただければと思います。

安富政府参考人 JR東海のいわゆる税制上の措置も含めた支援策については、大臣からお話ございましたように、まだ具体的な形で方策が固まっているわけではございません。

 ただ、新聞記事にございますような、いわゆる準備金制度と申しますのは、民鉄線の複々線化とか線増をやる際に特特制度というのがございまして、この特特制度というのは、いわば運賃をプラスして、その分を準備金として利用者から取って、準備金としてためておく。その際に、そのためておく準備金について、税制上の措置をとって免税するというような形で、いわゆる民鉄の輸送力増強のための運賃の前取り制、それから後で返すという制度としてできたものでございまして、必ずしもJR東海とか、ここの新聞記事にございますような形で制度的にぴったりくるものではないと思います。

 そういう意味で、我々は、税制上のいろいろな具体的な措置を検討するに際して、例えば、こういう特特制度のような準備金というのも一つの例としてあった、こういうものをさらに発展させる、あるいはいろいろJR東海なりに具体的に当てはめることができないか、あるいは全く別の制度として考えられないか、そういうことも含めて、今具体的にいろいろ検討しているところでございます。

今野委員 そうすると、補修費の準備金制度というのは、きちんと固まっているものではない、これからの検討課題なのだということなんですね。わかりました。

 では、ちょっと質問が変わりますが、このJRの民営化によりまして、JR各社は、関連事業、社債募集あるいは役員の選任等について自由にやれるようになるというわけですが、こうすることによって、利用者、国民ですね、地域、あるいは経済、社会にどういうメリットがあるんでしょうか、お示しください。

扇国務大臣 先ほども私、国鉄が民営化されただけでもサービスがよくなったと申しました。そのように、JRは、民間的な手法を導入することによりまして効率的な経営を実現していますね。そして、現に、先ほど申しましたように、税も納めるような体質になってきた。そういうことでは、サービスの水準の向上、少なくともそれは確実に国民の皆さんの声だと思います。

 ですから、そういう意味では、事業運営の改善にますますこれから努めていく、そういうことは国民の皆さんに高く評価されているし、私自身も高く評価しております。より国民へのサービスがよくなってくるというのは、国民の皆さんにとっても、乗り心地のいい鉄道に乗れるということは大きなあれになろうと私は思います。

 また、少なくとも、今度社債の発行ができます。適用除外によりまして社債の発行をし、長期借入金あるいは重要財産の処分等につきましても許認可が不要となるわけですね。本当の民営に、民間の皆さんと同じようなことができるようになる。そういうことによって機動的な経営が可能になってくる、これも私は大きな裁量になるだろうと思いますし、一層迅速に利用者のニーズにこたえた対応が民営化によってできてくる。

 また、経営者及び従業員によって、民間企業としての自覚と責任感というものがさらに深まってくる、少なくとも私はそう思っておりますので、そういう意味では、一層のサービスの向上とそして責任を持った対応というものがより国民の皆さんの大きな期待につながり、現実的にそういう実効性があらわれてくると私は思っております。

今野委員 今のお話の中で一番国民の皆さんがぴたっとくるのは、やはり、サービスがよくなる、乗り心地がよくなるというところだろうと思います。それだったら大賛成と国民の皆さんは思うのではないかと思いますが、民営化になった後で、サービスがよくなった、乗り心地がよくなったということをぜひ実感させていただきたいと思います。逆に、サービスが低下した、乗り心地が悪くなったということになれば、またどこかで問題にせざるを得ないと思いますが、この点、よろしくお願いいたします。

 さて、本法案の第二条の「新会社がその事業を営むに際し当分の間配慮すべき事項に関する指針」に基づいて必要な指導、助言をすることができるというふうにあるんですが、この指針の中ですね、どういう事項について指導、助言をすることができるようになっているんですか。

安富政府参考人 指針に定める事項についてのお尋ねがございました。

 今回の法律におきましては、先ほど言いましたように、国鉄改革の中からJR本州三社が誕生したという経緯も踏まえて、いわゆる国鉄改革の趣旨を十分勘案した事業運営を行っていく必要があるという観点から、次の三項目を指針として定めることを考えております。

 一つは、運賃制度、共用駅等に関する他のJRの会社等の間における連携協力の確保に関する事項、それから二番目として、国鉄改革の趣旨を踏まえた路線の適切な維持や駅施設の整備に当たっての利用者利便の確保に関する事項、それから三番目につきましては、これは現在の会社法の十条でも既に規定されておりますけれども、関連事業における中小企業者への配慮に関する事項、この三点を現在のところ指針に定めるということで考えております。

今野委員 ローカル線の維持について、やはりそこでさまざまな生活の中の大事なラインとして持っている方々は、民営化すると廃止になっちゃうんじゃないかという点を最も心配しておられるのではないか。特にお年寄りは、そういう線を使って病院に通ったり、まさに命の綱の状態である場合も多いわけなんですけれども、これはJRが民営化になったからといってすぐにそういう線を冷たく廃止するということはないんでしょうか。お尋ねします。

安富政府参考人 先ほど言いましたように、この指針の中の二番目の項目として、国鉄改革の趣旨を踏まえて路線の維持を図ってほしいということを具体的に書いておるわけでございます。そういう意味で、今回完全民営化ということで会社法の規制が外れることになりますが、当初、国鉄改革のときに不採算路線も含めて事業用資産をJRが引き継いだという経緯、さらには、国民の負担という形で長期債務処理を平成十年の際にやったという経緯、そういうものを踏まえまして、国鉄改革の趣旨を踏まえた路線維持ということをやっていただきたいという趣旨でございます。

 ただ、もちろん、国鉄改革後の輸送需要であるとか周辺の状況であるとか経営状況、そういうものによっていろいろ変わってくるかと思いますが、その際にも、JRとしては十分地元と協議し、説明責任を果たしていただきたいということを我々としては期待しているところでございます。

今野委員 民営化になったら急に冷たくなったということがないように、ぜひお願いをしておきたいと思います。

 さて、今、その指針の中の項目、各社間の連携、それからラインの維持、それから中小企業、この三つの項目を挙げていただきましたが、鉄道を利用する者としては、私たちの安全性あるいは利便性について、それが何らかの形で損なわれた場合、これが指針を公表して指導し助言をするということにはならないのではないかと気になるんですが、その点はどうですか。

扇国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、ただ、先ほども局長から答弁しましたように、あえてこの中に勧告、命令という言葉を入れたというのは、先ほど今野先生がおっしゃいましたように、吉田先生にもお答えしましたけれども、赤字の路線を切り捨てるということがないようにということを私は三社社長と懇々とお話し合いをいたしました。

 今、今野先生がおっしゃいましたように、お年寄りとか通学とか、あらゆるところで、赤字ローカル線だと言われているところでも、地元にとっては本当に生活の足でございますので、そういうものをぜひということで、あえて勧告と命令という、言葉が、何か法律的にいいますと勧告、命令というのはすごい言葉に聞こえますけれども、私は、そのことをぜひ守っていただきたいという言葉で入れたということだけ今野先生に御理解いただきたいと思います。

 それから、今の、どのようにというお話でございましたけれども、この指針制度というもの、これ自体も、今野先生御存じのとおりでございまして、これは、JR各社というのは本当に公的な財産でございます。ですから、その財産を継承して設立されたという趣旨にかんがみまして、少なくとも私たちは、国鉄改革の趣旨を踏まえた事業運営を確保するために必要な事項に関して設けるという、これはもう先生御存じのとおりで、けれども、今回の場合は、その指摘の安全性や利便性の確保等につきましては、ほかの民鉄事業者と同様でございますし、あらゆるものに、陸海空に通じることですけれども、これは、鉄道事業法等の他の法律によって十分担保されていると思っておりますのでこれは入っておりませんというのがその理由でございます。

今野委員 今のこの三つの指針のほか、ここから漏れている部分については、恐らく鉄道事業法で担保できるというお話なのだろうと思います。

 企業をさまざま運営していきますと、問題というのは実に複雑に絡み合っておりまして、例えば鉄道の場合、私たちの安全とか利便性とかの問題だけが独立してあるわけではなくて、そこに例えば労使の問題などが絡んでくるという場合もあるわけですが、当然そういう場合も、勧告、命令や、指導あるいは助言、どういう言葉になるのかわかりませんが、そういうことをするのでしょうか。

安富政府参考人 安全にかかわる労使問題についてこの指針で担保するのかというお話でございましたが、先ほど大臣からも説明がございましたように、今回の指針は、あくまでJR本州三社が、通常の民鉄とは違って特異な状況、いわゆる国鉄改革の中から誕生したという経緯の中で、その国鉄改革の趣旨という観点から、民鉄業者以上にプラスして設ける基準として指針を定めるものでございます。

 先生おっしゃいますような安全性とかそういうものについては、鉄道事業法あるいは鉄道営業法、さらにはそのもとにおける安全上の基準、各種の省令等ございますが、それによって担保していくということになるかと思っております。

 そういう意味で、安全にかかわる労使問題につきましては、いろいろな問題があれば、我々としても当然、安全の確保という観点から、いろいろな鉄道事業法等の関係法令に基づいて指導をしていくということになるかと思いますが、そういう意味で、労使問題につきましてはこの指針の中には特に設けていないということでございます。

今野委員 安全性に絡んだ労使問題については、当然何らかの指導や助言、あるいは、そうじゃなくても、それに近いような形でのことはあるということと理解してよろしいですか。

安富政府参考人 あくまで、交通分野につきましては、当然安全の確保というのが最重要課題でございますので、我々としては、常日ごろから、JRに限らず、民鉄業者も含めて、鉄道事業法等の安全基準の法令でその安全性を確保しているわけでございます。

 そういう観点の中で、労使問題というものが、労使問題だけに対して我々がどうこうと言うのは、これは基本的には会社の経営上の問題でございますので、直接労使問題に介入することは難しいと思いますが、安全性という観点から、いろいろな問題が出てくるということになれば、我々は、その安全性という観点について、鉄道事業法等の適切な運用を図っていきたいというふうに考えております。

今野委員 労使問題は、それぞれの会社のことなのでかかわることは難しいというお話でしたけれども、ただ、国鉄労働組合千四十七名の不採用問題が、これは新たに起こってくる問題ではなくて、今の問題としてありますね。

 八六年の十一月二十八日に国会で、所属組合等による差別が行われることのないよう特段の留意をするという附帯事項が合意されて、ILOも昨年十一月十七日、採用差別事件の早期解決と満足のいく公正な補償を求める勧告を日本政府に発しておりますが、これについてはどのように対処されるんでしょうか。

安富政府参考人 国鉄労働組合の不採用問題、いわゆる一〇四七問題についてのお尋ねがございました。

 この問題につきましては、政府として、いわゆる再就職促進法等に基づき、さまざまな職業訓練やいろいろな職業相談等を行ってきまして、国鉄改革の前後を通じまして、万全の雇用対策を講じてきたところでございます。

 ただ、残念なことに、平成二年の四月に結果として国鉄清算事業団を解雇された者、いわゆる一〇四七人問題というのがございまして、実際に平成二年の四月に解雇されたわけでございますが、この問題につきましては、人道的観点から、政治の場における解決に向けた努力が積み重ねられた結果、昨年の五月三十日に、いわゆる四党合意というのが取りまとめられました。その基本方針に基づいて、現在、四党を含めまして、国労を含めた関係者によって調整がなされているところでございます。

 我々としては、この四党合意を踏まえつつ、四党の中に含まれております与党の方々とも十分連絡をとりながら、適切に対処してまいりたいというふうに考えております。

今野委員 さて、それでは、問題はちょっと違いますが、先ほどの三つの指針の中で、中小企業に対する配慮を要請するという事項がありましたが、これは、JRがいずれも規模の大きな特殊な条件のもとにある会社として発足し、また、なおかつ大量の利用者が集散する駅を持っているために、事業規模によっては、周辺の同じ商売をしているようなこと、それらがよくぶつかり合ったりなんということもあるわけですけれども、そうした中小の企業者に大きな影響を与えるおそれがあるために、現行の法律の十条に定められているものであります。

 これについてちょっとお尋ねしたいんですが、たしか二年前だったと思うんですけれども、JR埼京線板橋駅の周辺で、東日本キヨスクのスーパー出店計画がJRと地元住民との間で問題になったときに、現行法の十条について、東日本キヨスクは、JRと我が社は別の会社であって、JR会社法第十条は適用されないとこのときに言っているというふうに報道されているんですが、こういう場合に対する見解をおっしゃってください。

安富政府参考人 今の御指摘の事案でございますが、少なくとも、JR会社法十条という形で規制の対象としておりますのはJR会社でございます。そういう意味で、JR会社法十条の規定が直接的にキヨスクなりそういう別の子会社に適用になるかということについては、法律的には多分適用にならないと思います。

 ただ、我々としては、JRの子会社も含めて、やはり大企業という形で、JRグループという形でやっておるわけでございますので、そういう問題については、個別に具体的な話としてJRに対していろいろ指導するということは、今までも十条の規定の中で実際的には行ってきているところでございます。

今野委員 民営化することで、市場原理、経営効率を追求する余りに、そういう周辺の商店街とさまざまなトラブルが続出するというようなことがないように、ぜひ気配りをお願いしたいと思います。

 また、同じように、市場原理、経営効率を追求する余り、鉄道の安全性、それから、駅員が少なくなって、この間の事故のように、ホームでの転落などというような事故が多発するというような、公共性が損なわれるということはないんでしょうか。完全民営化のもとで、こうした公共性というのは保障されるんでしょうか。どのように保障されるんでしょうか、お話しください。

扇国務大臣 今、今野先生がおっしゃったことは基本であろうと私思います。完全民営化されたときに、安全性はどうなのか。他のJR、あるいは既に走っております他の民間鉄道、あらゆるものと共存共栄をしていくためには、どういうことなんだろう。

 ただ、基本的には、完全民営化しましても、民間的手法を導入することによって効率的な経営を実現して、国鉄時代に破綻に陥った、あの鉄道事業の再生を図るという国鉄改革の理念というものは、きちんと基本に持っていなければならない。二度とああいうことにならないために、新たに、民営をしてくださった皆さん方が、肝に銘じて頑張ってくださると私は思っていますし、また、それを信じたればこそ今回の民営化というものができたんだと私は思っております。

 ですから、今、今野先生がおっしゃいましたように、国鉄改革の中から誕生したという、その原点を忘れなければ、安全性のことに対しましても、もちろん大事なことでございますし、そういう国鉄の改革に沿った事業運営、キヨスクでもそうでございます、従業員がみんな努力してあのキヨスクの経営もしているわけでございまして、それぞれのところで民間に負けないだけの、また民営化したことによって、よりサービスの向上も含めた幅広の経営というものと、経営事業、その拡大も図っていく。

 ただ、それによってどこかがどうなるかということ自体よりも、今回の法案は、三社が完全民営化してひとり歩きをすることのフリーハンド、それによって経営の向上が図られると私は思っております。

今野委員 ぜひ、安全で、そしてサービスも向上していくものであってほしいと思いますが、私もしばしば駅の売店とか立ち食いそばとか利用するんですが、今もそうなんですけれども、やたらに無愛想なおばちゃんがいて、せっかく気持ちよく旅行をしている人の気分を害したりなんということがよくあるんですね。そういうようなことが、民営化によって全部ばらばらになって、うちは関係ないんだ、こっちは関係ないんだということがないように、ぜひお願いしたいと思います。

 さて、先ほど吉田議員も質問をいたしましたが、JR貨物であります。

 JR貨物は大変厳しい経営状況にありますが、恐らくそのあたりを配慮してのことなんですよね、JR貨物の線路使用料について、レール、まくら木の修繕費のみを負担するというアボイダブルコストルールが設けられておりますが、これは永久に続くものなんでしょうか。

扇国務大臣 これは先ほども吉田先生に少しお答えしたので、今野先生も頭の中にお入りいただいていることであろうと思いますけれども、少なくとも、JR貨物につきましても、経営基盤等の条件が整いますれば順次株式の売却を進めて、完全民営化に向かって努力を重ねていくという、その基本方針は今でも変わっておりません。今、ずっとこのままいくのかと今野先生がおっしゃいましたけれども、そうではない。今私が申しましたように、基本方針はきちんとしております。

 ただ、残念ながら、JR貨物の経営状況につきましては、他の輸送機関との競争激化あるいは自然災害、例えば阪神・淡路大震災がございましたが、あのときも大変な被害を受けたわけですけれども、そのために大変厳しい経営状況にあるというのは先生も御承知のとおりでございます。

 現段階におきまして上場等の具体的なスケジュールが未確定であるというのは先生にも御理解いただけるところであろうと思いますので、速やかな上場が可能となるように、経営基盤の確立に向けて努力していただきたいということを申し上げておりますし、また国としても、少なくとも今後ともJR貨物の経営動向を十分に勘案しながら、私たちは引き続き所要の支援を講じて、そして早く民営化できるように持っていきたいなと思っております。

今野委員 そうすると、JR貨物の将来については、非常に悲観的ということですか。

安富政府参考人 今、大臣は別に悲観的ということで言ったわけではなくて、当然、基本的な考え方として上場を目指すということで、JR貨物自体もそうですし、我々自体も一生懸命努力していきたい。そのために、JR貨物としては、自分たち自身の経営努力として、当然のことながら営業活動による収入増を図る、さらにはコスト低減を図る、合理化を行うということが必要ですし、それは、もちろんJR貨物にやっていただくと同時に、我々としても、現在でも進めておりますけれども、税制上の支援措置あるいは貨物拠点整備に対する国の補助といったような制度、そういうことをこれからも充実して、側面的に支援していきたいというふうに考えているということでございます。

今野委員 それでは、民営化を目指しているJR三社にちょっと戻りますが、将来、人口はふえるとはちょっと考えられない。少子高齢化のために減っていっているわけですね。少子高齢化の社会になっているわけです。人口全体が減るということは利用者が減るということなわけでして、そのために、完全民営化しても将来経営が成り立つのだろうかとちょっと心配をする向きもあるんですが、そのあたりはどうでしょうか。

扇国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、私ども、日本全体が少子高齢社会になるというのは、二十一世紀を考えた場合、やむを得ざる現状であろうと思います。

 その中で、人口の減少によってというお話がございましたけれども、民間的な手法を導入することによって、民営化されればそれなりの効率的な経営を実現していくというのは、民営になったら必ずそれはみんな考えなきゃいけないことであって、先行きどうなるかという見通しが立たないのでは、私はつぶれていくと思います。それは、JRだけではなくて普通の会社でも、営業方針の誤りというのがあったのでは、私は大変なことになると思っています。

 JR本州三社、少なくとも、毎年経常利益を計上するなど、今までも順調な経緯をたどってまいりましたので初めて民営化ということに踏み切れたので、今までの実績で順調な経営ができたということは、民営化しても大丈夫だということで、今後の社会現象にとりましても、少なくとも私は、経営努力によって利用者のニーズの変化に機動的かつ的確に対応して、着実な経営を続けていってくださると信じておりますし、また、そうしなければ民営化した意味はないと思っております。

今野委員 例えば、十年前、二十年前に民営化したんだけれども、採算が成り立たなくなった、また国有化を考えてくれなんということになってきたらどうしますか。

泉副大臣 そういう仮定を置いての御返答を申し上げることは難しいところがございます。そういうことにならないようにするのが経営者の責任でございます。したがって、先ほど先生がおっしゃいましたように、人口が減少するということはございますが、高齢化の中でも相当多くの方々が活動的な動きをしておられるというプラスの面もございます。また、高齢者の方々が旅行等で人生を楽しまれるということもございまして、プラスマイナスいろいろございますが、そこをどう乗り切るか、それが経営者の資質であると思っております。

 今日までの状況を見ますと、JR三社についてはそうした危惧を持つことはないと私どもは思っておるところでございます。

扇国務大臣 今副大臣が申し上げたとおりですけれども、私は、せっかくJR三社同時スタートで民営化するという、二十一世紀型の経営を図ろうというスタート地点でございますので、少なくとも、全員が希望を持ってスタートしましたので、その士気を低めるようなことは今は全く考えておりませんし、より国民のための民営化された健全な経営に努力するということを信じております。

今野委員 さて、別の質問になります。

 超電導磁気浮上式鉄道、リニアモーターカーをこういうんだそうですが、このリニアモーターカーについて伺います。

 これについては一九九〇年、当時の運輸大臣がJR東海及び鉄道公団に、中央新幹線全線の地形地質等に関する調査を指示しております。ですから、JR東海と今このリニアモーターカーの技術開発を進めている鉄道総合技術研究所は一体と考えていいんでしょうか。お尋ねします。

安富政府参考人 JR東海と現在リニアの技術開発をやっています鉄道総合技術研究所、一体という意味は、リニアの技術開発を協力して一体としてやっているという意味ではそうでございますが、もちろん、当然のことながら、主体は別でございますし、いろいろよってきた組織体も別でございます。そういう意味で、JR東海と鉄道総合技術研究所が協力しながら、それぞれの役割分担のもとに、現在リニアの技術開発について一体的に推進しているわけでございます。

 具体的に申しますと、山梨リニア実験線において、トンネルや橋梁等の将来営業線に転用可能な施設についてはJR東海が事業主体として自分で整備しております。さらに、その施設を使いまして技術開発に関して実際にやっていますのが鉄道総研でございますが、この鉄道総研がやっています技術開発につきまして、国としては、これに対して補助金を交付して支援を行っているという状況でございます。

今野委員 つまり、JR東海と鉄道総研は一体ではないということですか、今のお話は。

安富政府参考人 鉄道総研は、先生御存じのように、昔、昭和六十二年の国鉄分割・民営化に際して鉄道技術研究所と鉄道労働科学研究所が合併して新たな財団法人という形でできたものでございます。JR東海とは法的な主体としては当然別でございますが、実際のリニアの技術開発を行うに際しては、山梨実験線において、先ほど申しましたように、JR東海が施設を整備し、その整備した施設を使いながら鉄道総研が技術開発を行うという形で、山梨実験線という形では一体的に現在技術開発を進めているところでございます。

今野委員 そうすると、別のような一緒のようなという感じなんですが、つまり、一元経営と考えていいんでしょうか。

扇国務大臣 一元経営という言葉はちょっと当てはまらないと思うんですね。

 例えばJR東海と技術開発をするという研究所、これはやはり一元ではなくて、技術研究というものは永久に研究でございます。研究開発のために補助金が出ているわけでございますから、JR東海の、一元ではなくて、技術開発の研究所、ですから、下部組織という言葉もおかしいかしら。

 これは、なぜかといいますと、リニアの研究が開発されますと、JR東海のみならず、先ほども吉田先生がおっしゃったように、こっちへも、東京都にも使いたいよというお話をなさいましたね。あくまでも研究開発ですから、補助金が出ているわけですから。一体だったらJR東海だけしかリニアが使えないのかということではない。

 一体という言葉、うまく適当な言葉も私今見当たりませんけれども、将来の交通機関のリニアに対しての研究に補助しているというのはそういう意味でございますので、ちょっと今いい言葉が、適切な言葉が思い当たりませんけれども、研究開発とJR東海は一体ではない。でなければ、開発したリニアの研究はJR東海しか使えないということに、一体という言葉を使いますとそうなるんじゃないでしょうか。そういう意味では、一体ではないけれども、縁戚関係であるという意味でございます。

今野委員 ちょっと私もわからなくなってきているんですが、一九九〇年に公文書を交換して、JR東海と鉄道総合技術研究所は一元経営をするという確認をしているんですが、そうすると、この時点と今で違うんですか。

安富政府参考人 あくまでリニアの技術開発についてJR東海と鉄道総研が一体、まあ一体と言うとまたちょっと語弊がありますけれども、一つの場所で、山梨実験線というところで行うわけですから、共同開発という形で一緒にやっていこうということだと思います。

 あくまで、経営的に一元という意味じゃなくて、技術開発を一元的に実施していくという趣旨ではないかと思います。

今野委員 どうもあいまいなままなんですが。

 それで、私考えているのは、ここ、どうするんだろうかということなんです。これまでのリニアモーターカーに関しての総事業費は二千九百億円かかっておりますね。このうち四百九十四億円、およそ五百億円が国から補助金として出ております。平成十二年度を見ますと十一億八千四百万円、今年度、平成十三年度は十二億五千百万円の開発費、補助金が出ていますが、これ、民営化したらどうするんですか。

安富政府参考人 先ほどもちょっと、開発体制についての説明をしたときにも申し上げましたけれども、我が方のこの補助金は、あくまで鉄道総研が行っている実験の事業に対して行っているものでございます。JR東海に対して直接補助金をやっているものではございません。したがいまして、JR東海が民営化しても、現在の体制について、さらには現在の我々がリニア技術開発に対してやっております補助の体制についても何ら変更はないというふうに考えております。

今野委員 この鉄道総合技術研究所に対してJR東海が予算のうちの幾つかを出しているという事実はないんですか。

安富政府参考人 具体的には、JR東海が、これはJR東海だけではなくて東日本、西日本もやっておりますけれども、負担金という形で鉄道総研の事業運営のために金を出しているのはございます。ただ、鉄道総研は、リニア技術開発だけじゃなくて鉄道のいろいろな技術研究を行っておりますので、それらに対するいろいろな運営費という形で、JR東海も含めてJR各社がこの鉄道総研に対して負担金を出しているという事実はございます。

今野委員 その負担金というのは、今おわかりでしたら教えていただきたいんですが、どれぐらいですか。

扇国務大臣 この負担金に関しましては、年間予算百八十七億円、平成十二年度でございます。そして、内訳ですけれども、JRの負担金は百二十八億円、受託が三十五億円、補助金等が二十五億円という配分になっております。

今野委員 そうすると、それは民営化されてもそのまま認めていくんでしょうか。

安富政府参考人 この鉄道総研に対する負担金は、国が何らかの形で、こう出せと言って出させているものではなくて、あくまでJRが自主的にこの鉄道総研に対して負担金という形で出しているものでございますから、民営化しても、逆に言うと、しなくても、今後民営化してもこの問題については従来どおり負担金という形で出していただけるものと考えております。

今野委員 それでは、鉄道総研が開発をしているリニアの今後の開発、実用化についてなんですが、仮に東京―大阪に設置、整備する場合、新幹線よりも非常にかかるんですね、コストが。一キロに百二十億円かかると言われております。もちろん、この百二十億円というのは、土地の買収費とかなんとかそういう経費を見ないで百二十億円という説明を受けておりますが、今後のリニアの開発、実用化についてどう考えていらっしゃるんでしょうか。

扇国務大臣 これをお答えする前に、今野先生にもう一つ理解しておいていただきたいことは、先ほどもお答えしましたように、鉄道総研に各社がみずから研究費を出しているという基本的な研究開発の目的が四つございます。

 研究開発の目的は、一つは、信頼性の高い鉄道をつくる。これは安全性、安定性も含めましてです。二つ目は、低コストの鉄道。これは経済性に関して研究する。三つ目が、魅力的な鉄道。これは速達性だとか便利性とか快適性というもの。四つ目は、環境と調和した鉄道。これは環境の調和性の問題です。鉄道総研に対しては、この四つの研究目標というものをみんなが理解してそれぞれが出資したというふうにぜひ御理解を賜っておきたいので、追加させていただきます。

 そして、実用化に関する見通しはどうかという今のお話でございますけれども、今私が申しましたような鉄道総研の、いかに二十一世紀型の鉄道をつくるかということで研究を進めてまいりましたけれども、少なくとも今の技術開発は、先生御存じのとおり、平成九年四月から山梨のリニアの実験場におきまして本格的な走行実験を行っております。この間も中国から国賓が見えて、きちんと山梨まで乗りに行っていただきまして、お会いしたときには、今から山梨へ行ってまいります、世界一の乗り物に乗ってまいりますと私に勇んでお答えくださいました。けれども、果たして、その技術が幾ら世界一であっても、実用化する場合には、今の段階では有人の最高速度が五百五十二キロまで達成している。これもさっき吉田先生は、あんなにたくさん走らなくても東京都に持ってくるよ、あんなにスピードは出なくてもいいんだと。そういう民営化を希望するところもございます。

 少なくとも、平成十二年の三月九日の実用技術評価委員会におきまして、平成九年度から三年間の走行試験などの実用技術評価が現実的に行われております。ですから、実用技術評価委員会のこの検討というものと評価というものを、超高速の大量輸送システムとして実用化に向けた技術上のめどは現段階では立ったものと考えられるという評価はいただいているんです。

 けれども、今先生がおっしゃいましたように、今後、引き続いて長期耐久性の確認あるいはコストの低減といった残された課題を克服するために、平成十二年度からおおむね五年間の予定で山梨の実験場の先行区間の十八・四キロメートルにおいて走行試験を実施すると決まっておりますので、実用化に向けた技術の目的を達したいということで実験するということを御理解賜りたいと思います。

今野委員 つまり、実用化のプランは何もないわけですね。実用化のめどが立っていない、プランがないというものに対して民営化をするJR三社に対してお金を出させ続け、国が多額の補助金を出し続けるということはいかがなものでしょうか。お考えをお聞かせください。

扇国務大臣 JR三社等々に出させているわけではございませんで、先ほど申しました四つの目的に照らして、国民のために、より走行性、高度のもの、あるいは軽便性、あらゆるものを研究してくださいとみずから進んで出しているので、国が出させているとかそういうことではありませんので、その辺は御理解いただきたいと思います。

 例えば、先生がおっしゃいましたように、日本の場合は土地代が高いから利用できないけれども、では中国でこれを利用しますよと言われたときに、日本よりも先に外国の方が利用することだってあるかもしれない。そのために、より国民性を考えた研究を続けているということだけはぜひ御理解賜りたい。現段階で、むだな研究ではないということが評価委員会できちんと出されているということでございます。

今野委員 そうなんですよ。私もあれに乗ったとき、日本には必要ないんじゃないかと。例えば、私は仙台の出身なんですが、東京―仙台に当てはめて考えると、四十分で行ってしまうんですね。四十分で行くと年じゅう帰らなければいけない、我が身を思うとそうも思うのですが。

 それはともかくとしまして、不便であることの便利さというのもあるわけですね。そんなに速く行って、急いで、私たちはどこに行けばいいんだろうという疑問もあるわけですが、これが中国大陸あたりだと、確かにこういうものがあったらいいだろうなとは思います。ただ、それが実際に、中国でこれを、技術も引用するんですよというようなことが見えているのならいいかと思いますが。

 今大臣はJRがここにお金を出すということについてお話しくださいましたが、それでは、国が補助金を出すということについては、これは私にではなくて、国民の皆さんに説明をされるという観点でお話しいただきたいと思います。

扇国務大臣 私、先ほど先生に申し上げたつもりですけれども、日本の国民にとって、より研究開発をして、国民の利便性を考えたものを提供するというのは我々の役目でございます。

 例えば、今の新幹線一つとってみても、昔は想像できなかった三百キロというスピードも出るようになりました。そして、東京―大阪間、八時間かかっていたものが六時間になり、しかもだんだん減ってきて、今は二時間二十五分。こういう利便性ができたことによって飛行機が脅かされるというぐらいにまでなりました。

 ですから、狭い日本そんなに急いでどこへ行くというコマーシャルがございましたけれども、そういう意味では、ゆっくりのんびり旅行したいという人は在来線をお使いになるであろうし、出張してもビジネス的には日帰りで往復したいんだ、そういう人たちは、やはり、より速い、より利便性のあるものを求めるというのが、それぞれの生活習慣に合った、あるいは生活に即したものを選ぶ、それを我々は研究開発するという意味では国民の皆さんに御理解いただけるところだろうと私は思っております。

今野委員 ほかの国々が日本の経済成長に対して目をみはるほどの成長率が担保されているわけではありません。そういう状況を見ますと、こういう事業も大胆に整理をするという発想もしていかなければ、JR民営化も国民の納得を得られないのではないかということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

赤松委員長 次回は、来る二十五日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時二十七分散会




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