衆議院

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第21号 平成13年6月12日(火曜日)

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平成十三年六月十二日(火曜日)

    午前九時三十二分開議

 出席委員

   委員長 赤松 正雄君

   理事 赤城 徳彦君 理事 桜田 義孝君

   理事 実川 幸夫君 理事 橘 康太郎君

   理事 玉置 一弥君 理事 樽床 伸二君

   理事 河上 覃雄君 理事 山田 正彦君

      今村 雅弘君    木村 太郎君

      木村 隆秀君    倉田 雅年君

      佐田玄一郎君    坂本 剛二君

      菅  義偉君    田中 和徳君

      高橋 一郎君    中馬 弘毅君

      中本 太衛君    林  幹雄君

      福井  照君    松岡 利勝君

      松野 博一君    松本 和那君

      谷津 義男君    吉田 幸弘君

      阿久津幸彦君    大谷 信盛君

      小泉 俊明君    今田 保典君

      佐藤 敬夫君    田中 慶秋君

      永井 英慈君    伴野  豊君

      細川 律夫君    前原 誠司君

      井上 義久君    山岡 賢次君

      塩川 鉄也君    瀬古由起子君

      日森 文尋君    保坂 展人君

      松浪健四郎君    森田 健作君

    …………………………………

   国土交通大臣       扇  千景君

   国土交通副大臣      佐藤 静雄君

   国土交通大臣政務官    木村 隆秀君

   国土交通大臣政務官    田中 和徳君

   政府参考人

   (内閣府沖縄振興局長)  安達 俊雄君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局整

   備部長)         太田 信介君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長

   )            風岡 典之君

   政府参考人

   (国土交通省土地・水資源

   局長)          河崎 広二君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  大石 久和君

   政府参考人

   (国土交通省港湾局長)  川島  毅君

   政府参考人

   (国土交通省政策統括官) 山本 正堯君

   参考人

   (東京大学大学院工学系研

   究科教授)        森地  茂君

   参考人

   (市立高崎経済大学地域政

   策学部教授)       横島 庄治君

   参考人

   (前東京都収用委員会会長

   )            貫洞 哲夫君

   参考人

   (東京工業大学大学院教授

   )            原科 幸彦君

   参考人

   (日本道路公団理事)   城処 求行君

   国土交通委員会専門員   福田 秀文君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十二日

 辞任         補欠選任

  今田 保典君     田中 慶秋君

  吉田 公一君     小泉 俊明君

  大幡 基夫君     塩川 鉄也君

  二階 俊博君     松浪健四郎君

同日

 辞任         補欠選任

  小泉 俊明君     吉田 公一君

  田中 慶秋君     今田 保典君

  塩川 鉄也君     大幡 基夫君

  松浪健四郎君     二階 俊博君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 土地収用法の一部を改正する法律案(内閣提出第五四号)




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     ――――◇―――――

赤松委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、土地収用法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、東京大学大学院工学系研究科教授森地茂君、市立高崎経済大学地域政策学部教授横島庄治君、前東京都収用委員会会長貫洞哲夫君及び東京工業大学大学院教授原科幸彦君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の皆様方に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いを申し上げます。

 議事の順序でございますが、森地参考人、横島参考人、貫洞参考人、原科参考人の順で、御意見をそれぞれ十分程度お述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、御了承願います。

 なお、参考人及び質疑者におかれましては、御発言の際は着席のままで結構でございます。

 それでは、森地参考人にお願いいたします。

森地参考人 御紹介いただきました森地でございます。

 時間制約がございますので、簡単な資料を用意させていただきました。目で追っていただきながらお聞きいただきたいと思います。

 先に、結論から申し上げたいと思います。

 一つは、財政制約からくる社会資本に割ける総投資額と、必要な社会資本整備の総額、ここにはいつの日にかギャップが来る、これはどの国もがそうでございます。したがって、とり得る方法は、社会資本整備についての厳選をすること、それからコスト縮減をすること、この二点であろうかと思います。そのコスト縮減の一番大きな手段といいますか、今までとられてこなかった手段が時間管理概念の導入ということではないかと思います。その時間管理概念の導入のその中でも重要なのが本法案の内容である、こういうことでございます。したがって、本法案は大変歴史的な意義を有する、こういうふうに考えてございます。

 資料の一ページ目、図―1をごらんいただきたいと思います。皆様御承知のとおり、日本のGDPに対するIGの比率、公共投資の比率は六%から七%ぐらいのところで推移をしてございます。それに対して欧米諸国は、七〇年から、ごらんのとおり比率を下げてきてございます。一般的に、高速道路や下水を初め、全国的規模で投資が必要な社会資本整備が一定水準に達したとき、この比率が低下している国が多いと思われます。しかしながら、日本では、それらの整備は道半ばの状況にございます。

 一方、(2)のところでございますが、財政制約と維持更新費及び新規投資、この調整をどうするかということで、仮に欧米並みの公共投資水準に落としますと、以下のような理由で、国民生活に深刻な影響をもたらします。

 第一は、社会資本整備率の低さでございます。第二は、災害多発国の防災投資でございます。三番目は、地盤条件とか、山間部、急流河川が多い等の地形条件、また都市の密集度の高さ、こういうような国土条件にございます。四番目は、高度成長期に集中的に整備された社会資本が更新期を迎える、こういうことでございます。五番目は、地方部の経済的自立、あるいは人口定着のための生活圏域の再編、大都市の社会資本不足、地域の国際競争力等の国土計画的課題を解決するために新規投資が必要なわけでございますが、維持更新費用の増大で新規投資が圧迫されること。最後は、七〇年代末から八〇年代にかけて米国で、アメリカ・イン・ルーインズ、荒廃するアメリカということが盛んに議論されました。そういう状況が起こる危険が多いこと。こういうことではないかと思います。

 そこで、図―2でございますが、仮に欧米並みの水準と日本の現状の水準のちょうど中間ぐらいまでGDPに対する公共投資水準を下げたとき、どういうことが起こるかということを示した図でございます。これは、土木学会でこの数年間こういう議論をしてございまして、そこでつくった資料でございますが、ごらんいただきますとおり、仮に欧米並みと今の日本の現状の中間ぐらい、四、五%のところまで落としたとしても、ほとんど新規投資が不可能になる、こういう時期が来ることが懸念されます。

 そこで、厳しい財政制約下で公共投資が制約を受けることは避けられないということから、財政問題と社会資本の問題をどう調整するかが国民にとって極めて深刻な国家的課題であると考えております。公共投資の性悪論的な単純化した議論ではなくて、今とるべき方策は、各分野の投資の必要性を厳しく評価した上で必要な社会資本整備財源を確保し、同時にコスト縮減を最大限行うことであります。コスト縮減策として大きな効果を有するのが、時間管理概念の導入であります。

 2のところでございますが、二ページの一番下に書いてございますように、公共事業には金利の考慮がないため時間管理が不十分である、こういう認識は従来されておりましたが、それを制度化するようなことは行われてきませんでした。幸い、平成十一年の七月の経済審議会答申、そのワンパラグラフではございますが、審議会答申の中に記載され、閣議決定をされております。今回の法案はその実行策の一つとして高く評価したいと思います。

 時間管理概念の導入の意義でございますが、今年間五十兆円ぐらいの公共投資、これは補償費、用地費を含んでございますが、それぐらいの投資をされてございます。しかも、割合小さ目の、例えば駅前広場をつくるとか、駅への取りつけ道路をつくるとかという割合小さな規模の公共投資も十年程度を要しているのが実情でございます。十年間では五百兆円になりますが、各事業を一、二年時間短縮できれば、コスト縮減と社会的便益の早期出現で一〇%、五十兆円程度以上の節約が可能と考えられます。これは、リニア中央新幹線や第二東名・名神高速道路五本分に相当するような節約額でございます。

 ただ、この節約をしていただくためには、それに対するインセンティブが働くような仕組みがもちろん必要でございます。したがって、地権者や住民との合意形成、用地取得、関係機関間の行政手続、プロジェクトの選定プロセス、予算配分、積算、発注制度、工程管理、埋蔵文化財調査あるいは補助金制度、事業評価等々あらゆる仕組みに時間管理概念を導入する必要があります。まさに構造改革に相当するかと考えます。

 住民の方々との合意形成のための制度と多様な意見を収束させるための仕組みづくりの必要性は欧米でも大きな課題であり、両面の取り組みがなされてきました。我が国でもパブリックインボルブメントの努力はなされてきましたが、後者の努力が不足しておりました。また、一坪運動や立ち木トラストに参加する多くの方々は善意に基づいての行動であったと思われますが、それがどの程度の税金のむだ遣い、すなわち国民にどの程度の負担を強いるかの意識はなく、その情報も与えられてこなかったと考えられます。

 時間管理概念の導入を図るために、できることから具体化していくことが望まれます。

 四ページ目をごらんいただきたいと思います。私どもの研究室で、幾つかの前提のもとではございますが、事業の遅延でどのような損失が発生するかを試算したものでございます。事例は地下鉄半蔵門線の例でございます。

 図―3にございますように、半蔵門―三越前間が五年の遅延、さらに水天宮前までが三年の遅延となってございます。最後のページにその計算結果を示してございますが、この遅延の結果、上の表―2でございます、交通事業者便益の損失百七十億、鉄道利用者の損失九十億、沿線住民の損失十億、合計二百七十億の損失でございます。表―3の方は財務的な分析でございます。表―2が費用対効果の分析でございますので、ここには移転の費用が入ってございません。具体的には補助金ですとかあるいは金利とかこういうものでございます。したがって、両表は整合はしてございませんが、営団地下鉄の財務的な損失は百六十億ということでございます。

 我々、ほかにもいろいろ計算してございますが、これは割合少ないケースでございます。なぜなら、半蔵門線がなくても銀座線を使えるということで、おくれの損失が割合小さく出てくるケースでございます。ほかの例えば高速道路の例ですとか新幹線の例ではもっと巨大な損失が発生している、こういうことでございます。

 最後に、この国会でこの法案を通していただくことは大変大きな意義があり、まさにこういう法案を早く通していただくことも時間管理概念を踏まえた行動である、私はこういうふうに考えてございます。

 以上でございます。(拍手)

赤松委員長 ありがとうございました。

 次に、横島参考人にお願いいたします。

横島参考人 御紹介いただきました横島でございます。

 本日は標記のタイトルでお招きをいただいておりますが、私自身は、長く放送ジャーナリストとして勤めた体験や、現在地域におりまして、具体的な地方自治体の公共事業にさまざま関係している立場も含めましての見解を述べさせていただきます。

 二つの点で、私は、将来へのさらなる改革を前提にして、今回の土地収用法の改正には賛成であるという論点でございます。

 最初に、お手元の資料に基づいての話の中で「概成しつつある社会資本整備」という言葉がございますが、実は、概成という言葉はどこの辞書にも出ていない大変不思議な言葉でございまして、すぐれて官僚用語の意味合いが強うございます。

 昨今の日本の社会資本というのは、戦後五十六年間の我々の先輩の努力によってほぼほぼのところまできたと私は考えております。これについては見解の差があるかとは思います。これを家づくりに例えますと、基礎工事が終わった、柱も立った、棟上げも済んだ、ほぼほぼの家の形はできた、いよいよ附帯工事と仕上げ工事に入る、こういう時期に差しかかるわけでございますが、壁の色をどうしようとかドアはどうするとかあるいは照明器具まで考えますと、これからの日本の概成後の社会資本整備というのは、これまでのように、だれがやっても同じもの、だれが提案しても似たようなものになる時代から、そこに一つの地域の選択、住民の好み、必要性に対する認識の差というようなものが新しい要件としてさまざま入ってくる時代に向かいます。そこから先は、今までのような官僚主導型の合意形成あるいは事業提案に対して、今後は使う者、つまり、その家を使う者というのは国民ということになりましょうが、その国民がどのようなものを求めているかということに極めて重点が移ってまいりますから、合意形成の手法というものは当然変わらなければいけないということであろうと思います。言葉を簡単に申し上げれば、官僚が提案をして国が提供するという社会資本から、国民が提案をして、その提案を是とする国があるいは地方自治体が提供する、提案者と提供者の立場が役割分担として明確に位置づけられる時代に入った、このように考えるわけでございまして、その時代における公共事業のあり方というものは当然基本的に変わらなければいけないというのは前提でございます。

 その段階で、(2)の話になりますが、「構想段階から求められる情報公開」というのはいろいろなところで議論されておりますから皆様共通の御認識であろうかと思いますが、情報公開がなぜ必要かという考え方は、説明責任を果たすための手段であるというふうに考えるべきではないかと私は思います。アカウンタビリティーのアビリティーという言葉は、説明するに足る価値のある計画でなければいけない。説明する価値のある計画を言葉を尽くして説明するために、情報を官と民が、あるいは提案者と需要者が共通の情報として共有する、このことが前提になって初めて説明責任が成立するわけでありますから、公共事業を計画する場合には、計画以前の構想段階からプロセスを極めて重要視した形で住民側と合意形成を図っていくということが情報公開と説明責任の論旨の基本になるのではないか、このように考えます。

 この点において、日本のこれまでの公共事業の推進は不足があったというふうに私は考えておりまして、よく比較されますが、二枚目の資料でおつけしてございますフランスにおける公益事業宣言を例えにちょっと説明をさせていただきます。

 各委員もう既に御賢察のとおりでありますが、フランスにおける公益事業宣言、この表における上から六段目にある四角でございますが、この公益事業宣言の前と後のスピード感覚と手法が日本とは極めて違っているという特徴がございます。

 一つは、一番上に書いてありますように、これは道路の手法を図にしたものですが、最初に一キロの幅で計画をつくって、それを四段目の三百メートルの幅に縮めて、そして公益事業宣言後は百メートルの幅にルート決定をしていく。一キロ、三百、百と、こういう非常に幅の広いものから最終決定していく、このすべての段階に住民の意見が入ってくるような仕掛けになっている。そして、公益事業宣言に至る段階でのさまざまな住民の意見の取りつけ方の手法は、御存じのとおりではございましょうけれども、国の決定に至る段階で地方自治体と地方議会が非常にきめの細かい審議をし、さらに、住民からの意見に対しても、全国紙とローカル紙にその所定の計画というものを公示して、それによって住民からの意見を求めて公聴会につないでいく、こういう手法をとっております。つまり、公聴会というものを設定して、意見があるなら言ってください、こういう言い方ではなくて、この計画をどっと見せて、問題をなるべく掘り下げるために、いわば隠さずに全部出してなるべくたくさんの意見を求めるという姿勢が行政側に明確にあらわれているというところが極めて特徴的であると私は考えておりまして、文句があるなら受け入れる、あるいは公聴会で意見があったら聞くということではなくて、何もわからない人にも十分な資料を伴ってこの情報を提供して小さな意見も拾い上げていく、この努力が大事だと思います。そして、公益事業宣言に至るまでに極めて長い時間をかけております。

 一方、後段で申し上げるように、公益事業宣言以降は一気呵成というスピードがつくわけでございまして、この六段目の前段に時間をかけて後段の時間を短縮していくというやり方と、今森地参考人が言われましたように、後段に非常に長い時間をかけて前段はどちらかというとすらっといってしまうという日本の現行制度は、住民合意を取りつける手法としても、また事業推進のための効率性からいっても、思わしくないという点では森地参考人と同意見でございます。

 見解書のもとへ戻っていただきますが、四番目の土地収用法についての現状の私の認識でございます。

 「理想的なトラブル対応法」と書いてありますのは誤解があってはいけませんのでちょっと御説明申し上げますが、伝家の宝刀は抜かないんだ、なるべく皆さんの合意を取りつけて、収用法の適用というものはなるべくしないというのが現在の行政の感覚でございます。

 それは、努力が足りないというふうなマイナス評価を得ないようにというような意識もございましょうし、二番目に書いてある意味では、「なあなあ収用」と言いまして、時間をかけて、行政側も説得される住民側もくたびれてしまった、もう時間がこんなにたったからそろそろなあなあでいこうじゃないか。

 この手法が双方に時間的にも労力的にも財政的にもいかに負担になっているかということを考えますと、理想的なトラブル対応法にはなっておりますけれども、極めて非効率的な事業推進法になっている。この二点の矛盾を同時に解決するのが最も理想的ではございますが、それをすべて百点満点でなかなか解決はできない。

 今回の土地収用法の改正は、この二点の前段に若干の強化を行いながら後段にかなりの改正を加えていくという特徴はございますが、できることならば、今後の一つの目安としては、できるだけ前段への時間のかけ方、民主的手続というものを理想的に進めるということに将来的な展望をぜひ含めていただいた上で、今、余りに非効率な事業推進に陥っているこの公共事業の推進に、現実的にはとりあえずの改革が必要ではないかというのが私の論旨でございます。

赤松委員長 ありがとうございました。

 次に、貫洞参考人にお願いいたします。

貫洞参考人 御紹介をいただきました貫洞でございます。

 私は、平成九年四月から平成十二年三月まで東京都収用委員会の会長を務めました。

 先生方も既に御承知のことと存じますが、収用委員会は、土地収用法に基づき都道府県に置かれる独立行政委員会で、都道府県議会の同意を得て知事が任命する七人の委員により構成をされております。国土交通大臣または知事により土地収用に値する公益性があると事業認定をされた事業につき、起業者と権利者の間で補償金額等につき合意ができない場合に、起業者の申請に基づき正当な権利の内容及び補償金額を確定することが主な任務であります。

 さて、近年の傾向として、公共事業に対する国民の関心の高まり、都市化の進展による事業適地の減少などを受けまして、公共事業をめぐる紛争が各地で見られるようになりました。特に、多数当事者にかかわる道路、ダム、鉄道等に関する収用関係事件がふえてまいります。東京都収用委員会でも、多数当事者に関する事件として地下鉄半蔵門事件などがございましたが、最近では、日の出町の二ツ塚廃棄物処分場事件にかかわり、私も直接この事件に関与いたしました。

 本日は、二ツ塚廃棄物処分場事件の経験をもとに、収用委員会という実務をこの間まで担当していた立場から、土地収用法について感じましたことを述べさせていただきたいと存じます。

 二ツ塚廃棄物処分場事件は、多摩地域二十七市町で構成する一部事務組合であります三多摩地域廃棄物広域処分組合が建設する廃棄物処分場に係る土地収用事件でございました。

 収用地は、西多摩郡日の出町大字大久野字玉ノ内七千五百八十五番、同七千五百八十七番という二筆の土地で、面積は四百六十一・二七平方メートル、約百四十坪でございました。権利者の数は二千八百二十九人。これは裁決時の時点での人数でございますが、二千八百二十九人。うち二千四百三十一人、八六%は地元以外の方でございました。一番人数の多い共有の形は、一人当たりはがき一枚分の土地を約千四百人が持ち分として共有をしているものでございました。

 平成八年十二月十三日に収用委員会に裁決申請がなされ、収用委員会の審理を二年半にわたり十一回行い、平成十一年十月四日に収用裁決を行いました。

 補償金の総額は五千七百万円、土地が約七百万円、物件約五千万円でございました。一番多い共有の形であるはがき一枚分の土地を共有していた方の一人当たりの補償金額は、約二百五十円でございます。収用裁決後もそれまでの権利者が明け渡しを拒否されましたので、平成十二年十月十日から十四日までの間に行政代執行が行われました。

 この事件から、次のように感じた次第でございます。

 まず第一に、収用委員会の審査権限についての認識を両当事者及び収用委員会の間で共有するために、特に事業の公益性に関する審査権限の有無などを法律で明確にしていただきたいというものであります。

 現行の土地収用法では、事業の公益性についての判断は事業認定により行い、収用委員会では補償金額の確定等を行うこととなっております。ところが、現実には、公共事業に反対をしている方々が、収用委員会の審理の場で、事業の公益性に関する主張を延々と行うことが見られるわけであります。

 例えば、二ツ塚廃棄物処分場事件では十一回にわたって収用委員会の審理を行いましたが、長時間をやった審理の中の発言の七、八割は事業の公益性に関する主張でございました。本来の収用委員会が審理すべき補償金額等についての発言は、まことに少ない状態でございました。

 起業者、権利者は根深い対立関係を引きずっていることも多く、収用委員会には事業の公益性につき権限がないことを権利者に収用委員会から説明しても、なかなか納得をしてもらえない状態でございました。したがって、事業の公益性に関する審査権限が収用委員会にはない旨明確に法律で規定をしていただければ、審理の促進が図られるのではないかと考えるものでございます。

 第二に、前の意見に関連をいたしますが、収用委員会に至るまでの事業認定の段階やそれ以前の事業の計画段階で、権利者や地域住民に事業につき理解がいただけるように、住民参加や情報公開等の制度が設けられ、収用委員会では補償金額の確定という本来の業務に専念できるようにしていただきたいのであります。

 今回の土地収用法の改正案では、事業認定の段階で、事前説明会や公聴会の義務的開催、第三者機関の意見聴取、事業認定理由の公表が講じられようとしておりますが、それに加えて、事業の計画段階において、権利者や地域住民に事業の理解がいただけるように、住民参加や情報公開の制度が設けられることを期待するものでございます。

 二ツ塚廃棄物処分場事件では、これから新しく建設する処分場に関する問題よりも、隣接する同じ事業者により建設された谷戸沢廃棄物処分場の環境問題、情報公開の有無の問題が実質的な関心事であり、新しい処分場の建設を計画する段階でこれらの点が地域住民の十分な理解を得ることができていれば、全く違った展開になったことと思うわけであります。

 第三に、収用委員会審理の円滑かつ合理的な遂行のため、当事者が百人、二百人と多数である場合で主張が同一であるときには、総括代表者の選任の指示をできることとするなど、行政手続一般の問題として多数当事者手続の検討を進めていただきたいということであります。

 当事者が百人以上の多数である場合には、例えば、それら当事者に相続や住所変更等が発生してもそれを把握することが非常に困難なため、収用委員会の開催通知を送るという事務ですら難渋をしております。外国にいる権利者も含め、多数の人の所在や相続関係などを事務局の職員が一生懸命徹夜して調査して連絡をしておりますが、事務の合理化の観点から、改善が必要と考えるものであります。

 また、多数の人との日程調整や、百人以上を収容する審理会場の確保も大変でございます。二ツ塚処分場事件では権利者が二千八百人以上おられたので、日比谷公会堂などを会場として使用せざるを得ませんでした。

 さらに、多数の人が発言をされる場合、同一のことの重複発言が行われることが多く、どうしても大幅な時間延長が避けられません。収用委員会審理は長いものでも通常約半年で裁決が出せるのですが、地下鉄半蔵門事件や二ツ塚廃棄物処分場事件のように多数の当事者がおられる場合には、三年弱の期間を必要といたしました。

 多数当事者の問題は、単に収用法上の手続のみではなく、行政手続一般の問題として御検討いただければありがたいと思うわけであります。

 最後に、第三の問題に関連して申し上げたいのは、補償金の支払いの問題であります。

 この問題は、裁決後の問題であり、直接収用委員会の事務ではありませんが、五千七百万円の補償金に対して、その支払いに要した費用は実に十億円と聞いております。権利者の権利を十全に擁護しながらも、合理的な支払いの方法を検討していただきたいと思う次第でございます。

 以上、大変雑駁でありますが、感じたことを申し上げました。よろしくお願いを申し上げます。(拍手)

赤松委員長 ありがとうございました。

 次に、原科参考人にお願いいたします。

原科参考人 お手元の資料をごらんいただきたいと思います。「土地収用法改正案に関する意見」ということでまとめさせていただきました。ちょっと資料が多くて恐縮でございますが、頭のページを順に目で追っていただきたいと思います。

 五つのポイントを書いてございますが、収用手続と申しますのは、お三方御説明のように、事業計画が長期にわたりますが、最近では平均十年ぐらいかかるということが先ほどございましたけれども、その最終段階のものでございまして、通常は、この手続は、最終段階、収用には半年あるいはトータル一年程度で終わるものだと思います。ですから、期間全体では一部ではございます。

 では、こういった収用手続が必要なものがどの程度生じているかと考えてみますと、実は極めて例外的であるということでございます。

 これも御承知のとおりでございますが、「「土地収用法の一部を改正する法律案」について」という参考資料がございます。これを今回いただきましたけれども、これにも出ておりますけれども、収用手続、年二百件前後でございます。では、着手している公共事業は全体でどのぐらいあるかこれは正確な統計はございませんが、最近の公共事業見直しの議論の中で五万から七万件という数字が出ておりますから、それを十で割れば五千から七千でございましょうか、あるいは、十年というのは平均ではないかもしれませんので、一万件程度かもしれません。そうしますと、いずれにしても、二%とか、数%も行かない、極めて制限的なんですね。しかも、そのうち強制収用まで至るものは実際三、四件なんですね。ですから、今御紹介いただきました日の出の例のようなものは、極めて例外中のまた例外でございますということをまず考える必要がございます。

 公共事業の効率化を図るという観点、これは極めて重要でございまして、森地先生のおっしゃったとおりなんですが、そのためには、まさにこの収用手続に入る前の長期にわたる事業計画のプロセス、ここの部分の合理化を図らなければ、公共事業の効率化にならないわけです。ですから、観点をしっかり見詰めないと、これはおかしなことになってしまうんですね。これを申し上げます。

 なぜ例外的な事情の収用手続に手間取るか。これも既にもう皆さん御発言のとおりでございまして、事業の公益性が争点になるということで時間がかかってしまうわけですが、それが十分社会的に合意が得られていないんですね。日本のシステムは、その点で大変欠陥がある。これは、この中にも、あるいは建設省、現在の国土交通省も、例えば建設白書の中にはそれが書いてございます。

 そういった問題点を明確に指摘しておられますので、そのような認識のもとに収用法の改正ということを御提案しておられるわけですが、しかし、これは対象を間違えておられるようでございまして、それであれば、事業の計画段階の住民参加、情報公開を徹底しまして、ここの効率化を図れば、まさに一、二年の短縮は十分可能でございます。これは、私は住民参加の研究で実際にやってまいりましたので明確に申し上げますが、これは可能でございます。ですから、そういった観点で見るべきであるかなと。

 そして、三番目に書きましたが、では現行法の意味合いは何か。これは、私は安全弁として機能していると思います。つまり、極めて例外的な事例でございますから、それには何らかの問題があるわけです。公益性に関する疑念があるわけですね。そういうことを示すシグナル効果があるんですね。しかも、非常に例外的ですから、公共事業全体の中でいえば、それにかかる社会的費用というのは非常に小さいわけですよ。

 そんなことを考えますと、こういった安全弁としての機能がある今の手続、これを変えてしまうことは、むしろ社会的には大きなリスクを生じる可能性があるということを申し上げておかなければなりません。

 先ほど横島参考人が土地収用法の限界ということでメモをお示しになっておられますが、理想的なトラブル対応法であるとおっしゃっておられます。しかし、非効率な事業推進と言われました。それは、極めて例外的な事例に関して目を当てるからそうなるのでありまして、トータルシステムについて見ますと、これはそうじゃないんですね。

 つまり、社会システム安定のためには、こういった非常に問題が大きいものに関しては、こういったことは起こり得ますけれども、それは非常に少なくて、一千分の一、一万分の一ぐらいです。むしろこのような例外的なケースには、国民の声に耳を傾けるべきなんです。小泉内閣はその意味ではまさに構造改革を言っておられますから、構造改革のための情報提供の一つのツールなんですよ。この点はしっかり見きわめるべきだと私は思います。ですから、現行法の改正はむしろリスクが大きくなると思います。

 例えば、手続の簡素化ということでございますが、それはむしろ国民の反発を生みまして、結果的には時間的に手間取ってしまって、コストが余分にかかる可能性が出てまいると思います。

 では、欧米ではどうなっているか。先ほどフランスの例を御紹介になったとおりでございます。前段階でしっかり時間をかけて情報公開と住民参加をやっております。アメリカはどうか、アメリカはまさにその最先端でございまして、ですから収用手続が非常にスムーズですね。前段に時間をかけているからです。これが極めて重要なんですね。しかも、アメリカの場合には、司法制度がしっかりしておりますから、前段で、国民的に合意された公益性に対応した判断を事業者がしない場合には、裁判で、行政訴訟で訴えられるんです。この両面があるんですね。

 ですから、公益性を、国民的合意を得た上で、これに対して適正な判断をしたかどうかの確認も、そういったチェックができる。チェック・アンド・バランス機構がきちんと機能しているわけでございます。ですから、収用手続にそんなに手間取らないんですね。

 先ほど、後段で随分時間がかかる場合がある、そのとおりなんです。それは極めて例外的ですから、全体のシステムで見ればそんなにしょっちゅう起こることではございません。

 それで申し上げたいんですが、ちょっとお手元の資料、二枚目、三枚目、四枚目、五枚目、用意しましたのでちょっと御紹介いたしますが、二枚目には、これは朝日新聞の「オピニオン」という欄に書きました。土地収用法改正案の是非について議論しております。

 今、事業認定手続に関しまして、公聴会を義務づける、あるいは説明会でございますが、これはもちろん必要なことでございますけれども、これは言ってみれば住民参加のシステムの中の部品なんですね。

 住民参加の本質は何かといいますと、そういった公聴会とか説明会による情報提供を相互にやっていって、きちんとフィードバックすることです。公聴会をやったのであれば、それに対して、国民の意見にきちんと答える、文書で答えるんですね。そういったフィードバックのシステムがなければ、これは有効には機能いたしません。ですから、今の改正案は不十分でございます。

 そして、しかも、安全弁として機能しています後段の部分ですね。そこのところで手続の簡素化をしてしまいますと、これが安全弁でなくなっちゃいますから、先ほど申し上げたように、リスクが大きくなります。意見はこれを読んでいただきたいと思います。

 その次に、日刊工業に出ました記事でございます。

 環境アセスメントというのは、例えばそういった意味で大変に具体的なわかりやすい例だと私は思いますが、日本の制度の中で、そういったフィードバックがきちんとできるもの、辛うじてそういった仕組みになっておりますのは、唯一アセスメントの制度だけでございます。つまり、ちゃんとレスポンスすることがシステムとしてできているんですね。

 これをさらに進化させたものが、例えばアメリカのNEPAの制度です。

 次のページには、私、アセスメントの研究が専門でございますので、その私の拙著からちょっと引用させていただきましたけれども、NEPAの制度をフローチャートでごらんいただきます。これだけ丁寧なフィードバックプロセスがございまして、意見を出して、それに対してパブリックコメント、これにレスポンスする。この場合、通常都合四回のフィードバックがあります。それだけの丁寧なやりとりをしますので、公益性の判断ができるんですね。社会的合意が成り立つわけですよ。ここまでのことをやらないで、最終段階の収用法だけいじってもおかしなことになってしまいます。

 それから最後に、これは朝日新聞の社説に出ておりますけれども、公共事業の転換ということは、これはもう世論の大きな要請でございますから、公共事業をまさに峻別するためには、そういった計画決定手続にきちんと民意を反映させる、そのための手続を整備することでございます。

 具体的にどんなことがあるかということで、例えば長野県の廃棄物処理施設の問題ですが、中信地区で私が今関与しております具体例、これは最新の例でございますが、この検討委員会はまさにそういった方向を志向したものでございますので、こういったものも資料としてつけさせていただきました。

 そのほかいろいろございますけれども、とるべき道について、最後にまとめて申し上げたいと思います。

 まず一点は、全体のシステムをトータルでとらえる視点を持っていただきたい。まさにこれは国会のとるべき道ですね。そのためには、まず現行法の有しているプラスとマイナスを比較考量していただきたい。私は、社会システムの安全弁としての機能は大変大きい、それに比較して、コストは公共事業全体で見たら非常に微々たるものであるということをまず申し上げます。

 それから二番目に、むしろチェック・アンド・バランス機構をきちっと整備するためには、行政訴訟法の改正ですね。例えば事業認定に対して裁判が、これは疑義があるという場合に、今裁判している最中なのに事業の執行がとまらないというようなことがあります。これは極めておかしなことですね。ですから、その期間は当然とめるべきです。

 さらには、公益性の判断というのは、国民だれしもがこれに対して意見を持っているはずでございますから、原告適格性を当然拡大するべきでございますから、こういった行政訴訟法の改正があって初めてチェック・アンド・バランス機能がきくわけであります。

 それからもう一つは、事業の計画の決定過程での住民参加システムの充実でございます。

 このためのテクノロジー、私は社会工学をずっとやってまいりましたので、随分こういったテクノロジーの蓄積がございますので、そういったものを実際にこれから活用していっていただきたいと思いますけれども、そういうシステムづくり、これも早急にやるべきでありますし、そのための準備は、我が国も、我が社会も十分できていると思います。

 そして、さらに言うならば、これにあわせて一般法としての行政手続法の改正でございます。

 これは、一九九三年に行政手続法ができましたけれども、そのときに大きな問題点が二つありました。

 一つは、透明性を高める。行政の裁量を減らそうということですね、手続をスムーズにする。

 もう一つあったんですね。これは、行政立法とか行政の計画決定、これに関する住民参加、国民参加、この手続の議論、随分されました。皆さんも御記憶かと思います。ところが、そのときは時期尚早という議論でございました。

 その後、情報公開法がこの四月に全面施行されましたし、それからアセスメントの法律も、これも二年前には全面施行されております。つまり、社会の状況は変わってきたんですね。ですから、今こそ行政手続法の改正が可能になるということでございますから、そういったことをあわせてやること、これが私はとるべき道だと思います。

 ですから、言うなれば現行法の改正は十年は早いんじゃないかと思いますね。まずこれはストップして、安全弁を残しておいて、そしてしかるべく措置をぜひとっていただきたい。

 以上でございます。

赤松委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。実川幸夫君。

実川委員 自由民主党の実川幸夫でございます。

 きょうは、大変御多用のところ、参考人の先生方、御出席をいただきまして、大変ありがとうございました。また、ただいまは大変貴重な御意見等伺いまして、ありがとうございました。

 今回の土地収用法の一部を改正する法律案でありますけれども、たしか昭和四十二年以降、ほとんど抜本的な改正はしていないと思います。今日に至るまで、自治体はもちろんですけれども、各方面、分野から、一日も早く改正を、そういう声は大変強かったというふうに思っております。私自身も、一日も早くこの改正は必要である、いろいろな場面を見ましてそういうふうに考えておりました。

 そういう観点から、何点か先生方に御質問させていただきます。

 今、四人の先生方から、それぞれ専門分野から公共事業につきましてお話がございました。確かに、中央または地方を問わず、公共事業につきまして大変議論の多い今日でございます。その公共事業につきまして、最初に森地参考人にお尋ねさせていただきます。

 先生、土木工学の権威でいらっしゃいますけれども、先ほど公共事業につきましていろいろお話聞きましたけれども、最近特に、もう既に公共事業はその役割は終わったのではないか、そういう議論もございます。また、その一方では、先生がおっしゃるように、まだまだ欧米諸国にとても追いついていませんし、まだまだ役割は終わっていないんじゃないか、そういう御意見がございます。

 公共事業につきまして、一体どのようなものなのか、まだまだ役割は終わっていないんじゃないか、そういう点につきまして先生の御所見をお伺いしたいと思います。

森地参考人 この十年ぐらい、アメリカも、ヨーロッパも、それから発展途上国も公共事業の予算を膨らませております。それは、強いアメリカという議論、あるいは強いEU、こういう議論、あるいは発展途上国について、これからテークオフするのにそれが重要なのは明らかであります。日本だけが特殊な議論をしている、こういうふうに考えていいかと思います。

 ただ、たくさんむだがあるのは、これまた事実でございますから、先ほど申し上げたようなそういう観点で、必要なものは必要だということを明確にする必要があろうかと思います。

実川委員 さらに森地参考人にお尋ねしたいんですが、先ほど地下鉄の半蔵門線の工事につきまして具体的に例を挙げまして、いわゆる公共事業の費用対効果でありますけれども、これによりますと、三年以上ですか、大変おくれをとっておりますし、また、いわゆる一坪運動という反対があったからだと思いますけれども、それによります相当な税金のむだ遣い、また環境的にも、迂回するということにつきまして、大変悪い面も出ております。

 この費用対効果、もう少し詳しく御説明をいただきたいと思います。

森地参考人 御承知のとおり、橋本政権以降、公共事業についての評価をクリアにしなきゃいけないということで、社会的に見たときに、トータルの費用、これは、建設費あるいは運営コストだけではなくて、環境の問題ですとか交通事故の問題ですとか、あらゆるものについて費用と効果を計測して、それの高いものをより重視して投資していこう、こういうことに使われる方法でございます。

実川委員 ありがとうございました。

 引き続き、横島参考人にお尋ねさせていただきます。

 先生は、今、大学の教授でいらっしゃいますけれども、以前、放送ジャーナリストとして大変御活躍をなさっております。その経験をもとに、先ほどいろいろと公共事業についてお話しいただきました。

 いわゆる公共事業に関しましてトラスト運動が発生することもたびたびございますし、また反対運動としてのトラスト運動の是非は別にしましても、一般論として、そのような運動が行われるということは、従来の公共事業の進め方、いわゆる決定過程あるいは実施過程などにも大きな原因があったかと思います。

 そこで、先生のこれまでの経験から、公共事業の進め方にどのような問題があったのか、また、これからの進むべき、あるべき姿、この二点についてお伺いをさせていただきます。

横島参考人 ただいまのお尋ね、公共事業については非常に多様な切り口での問題意識が今全国的に広がっていることは御承知のとおりでございますが、私、ここで今の御質問に一つお答えするとすれば、公共事業というのは、いわば行政官のインハウスエンジニアリングと言われるものが、すぐれた技術的特性を発揮して、国民にとって必要な社会資本を整備していくという行き方をとってまいりました。

 それは、かかって日本の国土がいかに住みにくい国土であるかという前提のもとで、他の諸国に比較にならない大きなお金を投じ、極めて難しい技術を導入して、住みにくい国土を一流の国土に切りかえてきた、この必然性は今も将来も変わらないわけでございます。その中で、官が持っている技術特性というものが、今必ずしも民との形の上で両立していなくなってきた、競争関係に入ってきた。そして、場合によっては、民間の技術の方がいいものもあるし、発想もすぐれたものも出てきております。これを、社会資本整備はすべて官の発想で、官の技法で、そして官の主張だけで進めるということが必ずしも百点満点の時代ではないというふうに私は考えておりまして、そこによりよき官民の役割分担というものを持つべき、そういう変化を認識しております。

 もう一点、進め方の問題として、すべてこれは最終的に公益事業宣言的なものに行き着くプロセスで見た場合に、この手のものは我が国の民主主義の熟度との関連で考えなければ、幾ら法律や制度をいじっても、国民的民主主義の熟度が達しなければ、上滑り、空回り、あるいはせっかくのものが使い切れないという形になると私は思いますので、日本人における民主主義の熟度、国家における民主主義の熟度、それは、私権と公益性との兼ね合いをそれぞれの国民がどのように価値づけ、評価していくか、この点の意識がどこまで浸透するかという、時間のかかる問題であるという、その時間軸も同時に入れておかなければいけないのではないか、このように考えます。

実川委員 ありがとうございました。

 もう一点ですが、今回の法改正によりまして、今先生からいろいろと具体的にお話がありましたけれども、過去に生じたいろいろな問題点があると思うのですが、この点について、最もこれは改善されるべきだという点についてお尋ねさせていただきます。

横島参考人 民主主義の熟度にかかわるところで、もう一言今のお答えとして申し上げておくならば、今、国民がある公共事業に対しての賛否を意思表示をする場合に、よくわからない部分もあって、そこは一つの住民運動として政党が、あるいはNPOが、あるいは地方の指導者がリードしながら住民運動が起きる場合もございます。それはそれで、一つの民主主義の育っていく過程としてはよろしいかと思いますけれども、その場合に、必ずしも思わしくない形で、いわば落下傘的におりていった団体がその地域の住民運動を指導する、あるいは他の目的でその運動を利用するというようなことがなきにしもあらずだったということは、過去にはあったかと思います。

 その意味で、住民運動が正しく育ってきたかどうかというところをチェックしつつ正しい住民運動を育てていく、このことは、土地収用法と関連しないようですが、実は非常に大事な日本の国民の、いわば民意というものの醸成のために必要ではないか、このように考えます。

実川委員 ありがとうございました。

 貫洞参考人にお尋ねさせていただきます。

 昨年まで東京都の収用委員会の会長をなさっておられまして、先ほど、日の出町の廃棄物の事例を中心にお話しいただきました。これまでの経験をもとに、お尋ねさせていただきたいのですが、トラスト運動が起きている場合ですが、どのような問題が発生し、またそれに対してどのような対応ができ、また何ができなかったのか、この点についてまずお尋ねさせていただきます。

貫洞参考人 トラスト運動が発生をします経過の中には、先ほど私から申し上げましたように、直接的に二ツ塚の問題というよりも、その以前に起きたいろいろな問題が発火点となって、その疑問を引きずったまま二ツ塚処分場の問題にトラスト運動として参加されてきている、そういう現状もございます。したがって、広く言えば、トラスト運動というのは、そういういろいろな意味の社会問題を含めて大きな住民合意の形成というものが欠くべからざるものだという印象を一つ持つわけであります。

 私どもが二ツ塚の処分場事件を担当いたしまして、先ほど冒頭に申し上げましたように、本来収用委員会が行うべき審理の範囲を超えて、事業認定の内容にかかわる議論がほとんどを占めたということは、やむを得ざる経過もあろうかとは思いますけれども、私どもとしては、できなかった面の非常に代表的な面、つまり本来の収用委員会の職分を果たせなかった面の代表的な例の一つだ、そういうふうに言うことができると思うわけであります。

 以上でございます。

実川委員 今参考人から、これまでの経験を生かしてお話しいただきましたけれども、さらに、収用委員会の立場から、今回の法改正に当たりまして改善すべき点、また将来的に検討していくべき点、残された課題が多いかと思いますが、この点についてお尋ねさせていただきます。

貫洞参考人 冒頭に私の所見として申し上げました中で尽きているかとは思いますけれども、まず第一に、本来の収用委員会の職分が十全に果たせるような環境をつくっていただきたいということであります。

 再三申し上げるようでありますが、私どもが二年半にわたって十一回にわたる公開審理を行った過程で、本来的な収用委員会の職分と言われるものの議論はほんのわずかでしかなかったというところが、本問題の一番重要な問題であろうかと思います。

 したがいまして、審理の過程で本来の職分が全うできるような形で法律の改正がなされることが一番望ましいわけであります。この辺を御検討いただくようにお願い申し上げたいと思うわけであります。

実川委員 ありがとうございました。

 最後に原科参考人にお尋ねします。

 先ほど先生からいろいろお話がございましたけれども、公共事業、一番最優先すべきは環境アセス見直しではないか、そういうお話もあったと思いますが、これにつきまして、公共事業と環境アセス、また住民、これらを含めた、どのような御感想を持っているのか、お尋ねしたいと思います。

原科参考人 これは先ほどちょっと申し上げましたけれども、収用手続に入る前の段階、これはまさに貫洞参考人がおっしゃったように、その前の段階で公益性に関する確認がきちんとできておれば収用手続はスムーズにいくんですね。ですが、ここの整備をしないで、今の収用法改正というのは非常に危険だということですね、そういう意味で申し上げたのですね。

 ですから、まず収用法は今のまま、これは安全弁ですから。これはやはり日本の制度のいいところかもしれないです。それまでちゃんとやらなくても、最後の段階で何とかそれがバランスがとれて、辛うじてバランスをとっているんですね。ですから、これは安全弁で残しておく。その意味で、アセス法の改正をするべきだ。

 アセス法では、今環境面だけの配慮が中心でございますけれども、これは手法の改善によって、公益性の国民的合意を得るための手法として使えるんですね。NEPAの制度がそうなんですよ。お手元の資料につけておきましたのはそのNEPAのプロセスなんですが、実はNEPAのプロセスは大変丁寧なフィードバックプロセスでございます。その中で、実は、事業を行わないということも比較対照いたします、代替案ですね。ですから、公共事業A案を提案すると、それをしない場合も比較するんだと。そのことによって、では事業をやった場合には、公共的な便益、社会的便益、経済的便益がございますので、それとの相対比較をするわけですね。これがポイントなんですね。

 ですから、代替案の比較検討をちゃんとやって、そして特に、とりわけ事業を行わない場合も比較する、そのことによって本当に公益性があるかどうかが判断できます。ですから、環境面だけでなくて、経済面、社会面までそういった比較考量をする、こういったアセス手続もアメリカはやっておりますので、そういったことがあって初めて収用手続が簡素化できるのですよ。それなしでやったら大変危険だと申し上げます。

実川委員 ありがとうございました。時間が参りましたので、終わります。

赤松委員長 樽床伸二君。

樽床委員 きょうは、大変お忙しい中を当委員会に御出席をいただきまして、参考人の先生方、本当にありがとうございました。

 まず、四人の先生方のお話をお聞かせいただきまして、共通をしておりますのは、計画段階においてもっと丁寧にやりなさいということについては、この法律についての賛成、反対のお立場はそれぞれあろうと思いますが、このことにつきましては、四人の先生方すべて同じ御意見をおっしゃっておられる、このように私はお聞きをいたしました。私も全く同じ意見でありまして、これは当然、恐らく日本の国内のほとんどの方がそのような認識をお持ちであろうというふうに認識せざるを得ないだろうというふうに私は思っております。

 そういう段階において、今回の改正案については、現在のところ、その計画段階のところまでは踏み込んでいないという問題がございます。

 このことについて、この収用法の法律でそこまで踏み込むことができるかどうかというのは、これはそれぞれ意見があろうかと思いますけれども、今回の収用法の改正ということを一つのきっかけとして、さらにその計画段階にどんどん、国民のほとんどの方がそう思っておられるという前提でありますと、これをきっかけにその計画段階のところをさらに丁寧にやっていくという方向に持っていくにはどのようにすればいいのかということについて、それぞれの先生方の御意見をお聞かせいただきたいと思っております。

森地参考人 一般的な方向としては、先生のおっしゃるとおりかと思います。ただし、大変難しい問題が二つございます。

 一つは、長期で広域の問題と、限定された住民の同意の話をどうバランスをとるか、この問題でございます。例えば、コミュニティーゾーンの問題ですとか、地域の公園ですとか、商店街ですとか、こういう問題はまだ地域の方が極めて色濃く、外側の人たちは割合少ない、こういうことでございます。

 この問題に関しては、先ほど原科先生からも御指摘がございましたが、アメリカの場合、住民参加とは言っておりません。関係者が参加する、パブリックインボルブメントでございます。したがって、そこで昼間住んでいる人も、例えば交通でいいますとタクシーの経営をしている方も、だれもが入ってくる、これを拒まない、こういう格好でございますが、日本では、翻訳が住民参加という格好に訳されたために誤解がございます。したがって、広域的な問題をどう処理するのか、この問題は大変難しい問題がございます。

 もう一つは、御承知のとおり、間接民主主義と直接民主主義をどうバランスをとるのか、この問題もございます。

 この二つの問題とも色濃く政治体制そのものにかかわることですから、そこのところをやらないと次に進めないということをやっていますと、いつまでたっても問題が解決しない、こういうことかと思います。私が申し上げたのは、できるところからやっていくべきだ、こういうことでございます。

 ちなみに、先ほど原科先生から十年早いというお話もございましたが、十年間待っているうちに我々の財源はどんどんなくなっていく、こういう状況にございます。

横島参考人 フランスに例をとっておりますので申し上げますが、だからといってフランスの制度が百点満点とは思いませんが、公益事業宣言的なものを行うべきであるというのは私の理想であります。

 しかし、例えば、フランスで公益事業宣言を国段階でやる場合には、首相が宣言するわけですが、首相宣言は絶対に変えられない、国務院だけがこれをいわば裁定できるという力を持っております。国務院というのは行政訴訟の最高裁みたいなものでございますが、日本の場合にはそういうものは用意されておりません。よって、いきなりフランスの制度を持ってきても、日本の場合にはその関連した制度が整っていないために、すぐにはなじまないといううらみはございます。

 しかし、できるだけこの公益事業宣言的な事業認定が行えるような法律の内容に近づいてほしいというのが現行における理想ではないか。

 そのための一つの権威づけとしては、やはり事業認定者というものをきちっと権威づける、これは、国に属するものなのか第三者機関になるのかは今法律の原案では出ているようでありますけれども、しかし、どういう形の第三者機関になるにしろ、その中で行われる審議というものが、住民の意見に本当に真摯に耳を傾けて、そして、かなう範囲できちっとした認定をするという権威と誇りを持つような組織にぜひしてほしい、これは、法律の中に盛り込まれないならば省令でもいいですが、きちっとそこのところは文言として書きとめていただきたい、このように思います。

貫洞参考人 収用委員会の立場からは御意見を申し上げにくい問題でありますけれども、少なくも、事業の実施を計画いたします実施機関は、その事業の計画をするに当たって、それらに関連する多くの事業におきます住民運動あるいは御意見というようなものを十分に参考にされて、そういう方々の御意見が新しい事業にどう反映するかを工夫していただけることが大事ではないか、そのように考えておる次第であります。

原科参考人 先ほどちょっと申し上げた点の最後でございますが、とるべき道の四番目に書きましたが、行政手続法の改正というのは具体的な方策としてはあると私は思います。

 先ほど申し上げたように、九三年に審議しておりまして、半分ぐらい審議が進んでいるわけですね。そのとき、時期尚早という議論でございました。ですから、情報公開法が施行になったとか、アセス法ができたということですから、実はそういった社会的な状況は随分変わったわけですね。おっしゃるように、こういった問題に対する国民的要求が極めて強いわけです。ですから、そういった状況でございますから、行政手続法の改正はすぐに国会で着手していただける問題でございます。

 もう一つは、個別具体的な手法としましては、アセスメントがまず具体でございます。少なくともアセスメントで、さっき申し上げたような手続、これをきちっとやっていく。とりわけ、公益性を確認するような手続に変えていけば、これは十分可能性があるかと私は思います。

 さらには、都市計画法の改正ですね。

 ちょっと土地収用法の改正案に戻りますけれども、例えば、この中では、前段の事業認定のところで公聴会を設けるとなっております。これを義務づけるんですが、実は、義務づけはこれまでありませんけれども、公聴会を開けたんですね。ところが、これまでそれをやっていないんですね。そういったことで、これまでの対応がその部分は余りにも十分ではなかったと思いますので、現行のほかの制度を改善する。

 それから、一般法としての行政手続法を整備する。

 こういうことで、十分、次の段階に進めると思っております。

樽床委員 ありがとうございます。

 もう一回、収用法と公共事業の全体の流れを見てみると、今回法案で出ておりますのは事業認定の手続とそれから収用手続であり、計画段階、その前の段階の必要性を四人の先生方がくしくも同じ、共通認識として、事業認定の前の話は大事ですよというお話があった。

 そうすると、これは三つに別れておるというふうに考えて、この事業認定の前の、今先生方がおっしゃった計画段階の問題、それから今回の収用法に関する事業認定手続のところ、これを中流とすると、一番下流は収用段階、こういうふうに分けますと、中流の部分に相当する事業認定の問題につきまして、今、最後に原科参考人の方からお話がありましたように、公聴会の問題とか第三者機関の問題などなど、今回の法律改正案で出ておりますが、この公聴会、それから第三者機関の意見を聞いて、それをどのように参考にするのかということについて、それぞれ皆さん方、御意見が違うのかもわかりませんが、このあたりをどうきちっと担保すればいいか。

 私は、ここをきちっと担保すれば、その一番最終段階はかなりスムーズに流れてもいいのかなと思いますが、この上流、中流をどうきちっと担保していくのかということが大事だと思っておりまして、この中流段階について、特に具体的には公聴会、第三者機関等々の問題についてはどのようにお考えであるのか、また、うまく機能するとお考えであるのかどうか、お聞かせをいただきたいと思います。

森地参考人 基本的には、今までよりもはるかにうまくいく、いい方向に改善されているというふうに考えます。もちろん、いろいろなケースがございますから、これですべてのことがすべての人の納得のもとにうまくいくかというと、決してそういうことはないかもわかりません。

 一例だけお話ししますと、例えば東葉高速という鉄道がございます。運賃が高くて大変なところでございます。これは、最後、たった一人の方の御反対のために一年間おくれてございます。運賃が上がり、千葉県あるいは鉄道建設公団、こういうところが多額の負担をするようなことになってございます。

 こういうケースを何とかしていく、最終段階に行く前の、何とか納得していただく、こういうことの機能としてはうまくいくのではないか、こういうふうに考えます。

横島参考人 社会資本整備審議会へ付託するという構想が示されておりますが、私自身もその審議会の委員を拝命しておりますけれども、当審議会としては、これからの社会資本整備を単独に、道路だ、港湾だ、河川だというふうな単科目評価をやめようではないか、社会資本の総体としての評価をして、必要なものは必要であるというふうに考えるというふうな方向に行っております。その審議会に、ある公共事業が公益的なものであるかどうかを付託されたことを想定いたしますと、今の質からいくとかなり幅広の審議ができそうだというふうに私は期待しております。ただ、それは国土交通大臣の諮問機関であるという宿命は免れません。ですから、一番いいものとは言い切れないかもしれませんが、今の置かれている我々の認識としてはたえるものではないかというふうに思っております。

 しかし、そこで問題があるならば、次なる第三者機関の設定に進むこともやぶさかではない。そこはフレキシビリティーを持ちながら、当面付託してみるということでいけるのではないかと私は考えております。

貫洞参考人 現行制度では、事業認定の段階ではほとんど意見が反映される仕組みというのがなかったわけでありますから、それに比較をすればはるかに前進であるというふうに考えておりますし、恐らく、収用委員会の当事者としても、そういう前提が置かれれば一層スムーズに審理が進むものと期待をできるものだと考えております。

原科参考人 私は、残念ながら否定的でございまして、公聴会は大賛成なんですが、それはあくまでもシステムの部品、コンポーネントなんです。公聴会があって、それに対して明確なレスポンスの手続がなかったら、これは機能しません。つまり、意見を言っただけで、それに対してちゃんと回答してもらえないということになります。それで、決定が下された後に理由を公表しますけれども、これではだめなんです。フィードバックしなきゃいけないです。そういったシステムとしてつくられ、くみ上げない限り、これだけでは機能しないです。

 そうしますと、どういうことが起こるかと申しますと、さっきも申し上げましたが、これは最終段階での手続でございますので、そもそもその段階で計画の手直しなどは難しいのです。事業者も困ります。ですから、計画段階、早期段階から公益性のチェックをしておかないと、社会経済的にも大変なコストがかかると私は思います。

 ですから、公聴会の手続改善、これは基本的に必要なことですが、それだけでは不十分でありまして、それに期待するとかえっておかしなことが起こる。ですから、公聴会の規定はそれ自体はよろしいのですが、それとあわせて、前段のことはこれは必要不可欠だと思いますということでございます。

樽床委員 原科参考人にもう一度だけお聞きしたいのですが、公聴会については今の御意見でよくわかったのですが、第三者機関のことについてどのようにお考えであるのか、ちょっと御意見をお聞かせいただけたらと思います。

原科参考人 そこで申し上げたいのです。申し上げたいことはこういうことです。

 第三者機関は、私は、今の日本の全体のシステムを見渡して考えますと、前段が不十分でございますので、全体のバランスをとるためには、日本の場合には、第三者性の高いように独立の行政委員会という格好で、事業官庁と独立の立場できちんとした形でつくらないといけないと思います。それから、メンバー構成も相当程度注意を払って、国民の声が反映するようにしないといけないと思います。そうしますと、この段階での手続はある程度きちんといきますけれども、その場合に我々がとり得る選択肢、代替案、これが限られてまいりますので、なかなか解決は困難になります。

 ですから、第三者性をきちっととること、私は、最低限それは必要だと思います。ですから、そのことなしに、今のままでただ単純に公聴会だけではだめなんだと思います。独立の委員会をつくることです。これはもう必要不可欠なことです。

樽床委員 ありがとうございました。

 大変貴重な御意見をお聞かせいただきまして、今後の審議の参考にさせていただければなと、このように考えております。心から御礼を申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

赤松委員長 次に、河上覃雄君。

河上委員 公明党の河上覃雄と申します。参考人の皆様方には、本日は、大変に御多忙の折、ありがとうございます。

 早速質問に入りますが、まず森地参考人に。

 今回の改正案は、事前説明会の開催の義務づけあるいは公聴会の義務づけ、第三者機関の意見聴取、事業認定理由の公表などを盛り込まれております。この改正によって地域住民の声というものが十分に反映されるとお考えか、また公共事業の事業規模、対象事業の公益性などによって関係者の意見の反映の仕方に工夫が必要であるのかなと私は考えるのですが、どのようにお考えでしょうか。

森地参考人 原科先生からたびたび御指摘のとおり、これは土地収用法の手続でございますから、プロジェクトをやるときに、事前に、こういうプランがいいかあるいはその事業にどういう意味があるかという議論は当然続いているはずでございます。

 これについて申し上げたのは、先ほど御説明しましたパブリックインボルブメントのステップでございます。ただ、これも同じく御説明しましたように、それを制度化する前にいろいろなところでトライをして、うまくいくということを確認しながらやっている、それが今の段階かと思います。

 抽象的なあるいは机上の空論で法律をつくって制度化してばっとやってしまうのは、かえって危険でございますから、それぞれの事業をおやりになる方がそれぞれの場でなるべくパブリックインボルブメントを行使していく、こういうことをしていくことによって反映していく、こういう問題だと考えます。

河上委員 先ほど陳述の中で大変参考になるお話をいただきました。時間管理の概念の導入の意義は極めて大きいと。なるほど、お伺いしていて私もそのとおりだと考えます。あらゆる仕組みの中に時間管理概念を導入することが必要であるとおっしゃられましたが、学問的蓄積が不足しており、世界的に公共事業の時間管理についての体系的制度化はまだなされていない、このような御指摘もいただきました。

 この時間管理の概念を導入するには、何が今最も必要だとお考えなのか、そしてどういう環境にすればこれが機能するのか、その点についてちょっとお話をいただければありがたいと思います。

森地参考人 体系的な制度化は各国でもされていない、これは事実でございますが、部分的には随分努力がございます。例えば、レーンレンタル方式という入札方式、これは日本で総合評価方式という格好で既に実行に移ってきてございますが、こういう制度もサッチャーさんの時代からイギリスで、それからアメリカでと、こういう格好で展開をしてございます。ただ、すべてのことがうまく仕組みとしてできているかというと、そうではございません。

 何が一番重要かということになりますと、基本的には、なぜ時間管理概念という言葉を私が用いたかということにも関係いたします。これはすべての関係者が時間を短くしましょう、それは適正に短くしましょう、こういうコンセプトを持っていただきたい、こういう意を込めたつもりでございます。例えば、今補助金をもらって、国レベルあるいは県レベル、市町村レベル、それぞれもらって短く工事をしますと、積算上それは少ない費用になってしまいますから返さなきゃいけない、こんな制度になってございます。それではだれも節約しようとしない、こういうことでございますから、先ほど申しましたように、すべての人がもう一回すべての制度を見直す、こういうことが大変重要かと思います。

河上委員 ありがとうございました。

 森地参考人にさらにお尋ねいたします。

 今回の改正でリサイクル施設と廃棄物処理センターが収用適格事業に追加をされております。今後、この収用適格事業の対象は今回の改正のままでよいと思われるか、それとも、さらにまた見直しが必要とお考えになられるか、この見解についてお尋ねします。

森地参考人 リサイクル施設それから廃棄物処理センター、こういう二つが入ってございますが、御承知のとおり、循環型社会、このためにはまだまだいろいろな仕事がございます。ちょうど、戦後我々がやってきた社会資本整備というのは多くが動脈流側のものでございまして、したがって、リサイクル施設という項目だけではまだ読めない項目が出てくる可能性はあろうかと思います。

 それから、ほかの、環境の復元ですとかいろいろなことも出てまいりますが、出てこないかと言われれば、それは出てくる可能性はあります。ただ、それはそういう問題が起こってきたときにまたお考えいただく、こういうことでいいのではないかというふうに考えてございます。

河上委員 もう一点お尋ねいたしますが、社会資本整備に当たりまして、民間の技術と資金を活用するPFIの手法を積極的に導入すべきという議論もございます。どのような公共事業にこのPFIの手法を導入したら効果的であって、国や地方自治体が実施すべき公共事業はどのような分野がよいとお考えになられますか。

森地参考人 二つの制約があろうかと思います。一つは、民間がリスクを負い切れる範囲、そういう規模のものか、こういうことが一点でございます。それからもう一つは、多くの公共事業が内部補助の仕組みを組み込んでございます。例えば、高速道路の例、鉄道の例。そういうふうには言っておりませんが、例えば、民間でやっている私鉄も、ある線の工事費を既存の線で内部補助をしている、こういう格好でございます。これも、第一点目に申し上げた、リスクをどこまで負担できるかと関係はいたしますが、民間の範囲内でカバーできる、こういうところに限定していかざるを得ないというふうに考えます。

 それからもう一つは、日本の補助制度、補助金というのは、原則として民間会社には出ないことになってございます。三セクとかが出てくるのも、そういう理由でございます。

 アメリカの場合は、補助金入札制ということをやってございます。民間に対して、どの補助金ならその事業をやりますか、こういう制度を持ってございます。そういう仕組みを日本で、また別の理由で組み込んでございませんので、PFIについては、法律上はそこにもお金が出るような格好になってございますが、これを具体化するときにどこまでできるかというと、少しまだ問題がある。したがって、割合小ぶりで、単体で、こういうところから順次やっていく、こういうことではないかと思います。

河上委員 ありがとうございました。

 次に、貫洞参考人にちょっとお話をお伺いしたいと思います。

 東京都の収用委員会会長の経験のお立場から、国家プロジェクトによる広域公共事業と、地方自治体による単独公共事業とは、収用委員会における裁定手続においてその差異をお感じになられたことはあったか。また、今回の改正について先ほどお伺いいたしましたが、それ以外に、今後、土地収用のあり方について、もしつけ加えるようなことがありましたら、率直に御意見を承りたいと思います。

貫洞参考人 私が経験をいたしました時期は、一期三年ということで大変短うございまして、私が会長の間に担当いたしました案件としては、今御指摘のような、国家的な大きなプロジェクトというようなものがございませんでした。

 都道府県の範囲の中に入るような仕事がほとんどでございましたので、直接的な事務的なかかわりの中から差異について御意見を申し上げることはちょっとできないかと思いますけれども、収用委員会の本来の任務から考えますれば、両者とも、いずれも淡々と、起業者及び権利者の双方に十分に理解ができるような、公平中立の立場で事務を進めるということが本来の収用委員会の任務でございますから、その任務の上から考えれば、そう大きな差異は事務的にはあり得ないだろうというふうに考えているところでございます。

 それから、今後の収用事業について新たな意見はないかという御指摘でございましたけれども、先ほど申し上げましたように、私の任期は一期で、大変短い期間でございましたので、冒頭に申し上げました意見でほぼ出尽くしているかと思いますけれども、願わくは、一層順調に収用委員会の事業が取り計らわれるようになってほしいということが、最大の願いでございます。

 以上でございます。

河上委員 貫洞参考人にはもう一点だけお伺いしたいと思います。

 地方自治体の事業として事業認定をする際、公益性の判断をする上で、どのような点に留意をされましたか。また、地域住民の声をくみ上げるために、どのような点に配慮をなさったか。具体的にお答えいただければありがたいわけでございます。

 この二点、よろしくお願いを申し上げます。

貫洞参考人 私が御質問の趣旨を取り違えているかもしれませんが、もしそうであればお許しをいただきたいと思うわけでありますが、私が担当いたしました収用委員会は、事業認定の事務には一切かかわっておらないわけでございまして、これはまさに都知事の権限として、都知事のもとで事業認定が行われました。

 その行われた事業認定の結果、収用委員会が収用案件として出てくるわけでございますけれども、当然、事業認定をする知事の立場としては、公益性については十分に配慮して認定をしたもの、そういうふうに考えるわけでございます。それは、一つの収用案件、事業につきましても、類似の事業が全国にたくさんございますし、また都道府県内においても同じ事業がたくさんあるわけでございまして、長い間の経験その他がございますので、当然、そういう広い範囲の中から、新しい事業についての価値判断というものを行わざるを得ない、それが実情でございますので、十分に公益性を判断して事業認定をしているものと推察するところでございます。

 以上でございます。

河上委員 横島参考人に一点だけお願いを申し上げたいと思います。

 ペーパーの(2)に「情報共有と説明責任」というのがございますが、その三番目に、「私権制限と公益性の関係」というところがございます。実は、今お話し申し上げましたように、私は、今回のこの土地収用法における一番の基として、この公益性とは何なんだろうか、ここに非常に着目をいたしております。その意味で、先生のお考えになられます公益性と私権の制限、この関係について御見解があれば、ぜひこの際いただきたいと思います。

横島参考人 一つの公共事業が発生した段階で、その事業が制限する私権の形というのは多様でございまして、そのことによって生活ができないような影響を受ける場合もあるでしょうし、先祖伝来の土地に対する心とのつながりを断ち切られるという心理的なつらさもございましょうし、あるいは環境的なものとして、その他、地域全体の思想として許せないというふうな意味での反対運動もあって、制限される私権というものがどこから発生してくるかということについては、多様性があるから一概に言い切れないところはつらいわけですけれども、ただ、自分の財産が社会全体にとってどのような役割を果たすべきなのかということについては、これからは考えていかなければならない時代でありまして、例えば、自分の土地がこれだけある、これは、どんなにそれ以外の土地に有利な移転条件があっても嫌だというようなことが、私権として最終的に主張していい場合と、そこはひとつ譲ってもらった方がいいんじゃないかという場合というのは、ケース・バイ・ケースですけれども、あり得ると思うんですね。その理解度の問題というのは非常に難しいわけです。

 ですから、私が最前から申し上げているように、民主主義の慣熟度ということだと思うんですけれども、公に対する私の貢献というものが全体のために必要だということについての正しい理解というものを得られるならば、そのための私権の制限というものは、個人の自発的な意図の中で受容されるべきではないか、また、受容されるべき私権の制限というのはあるんだという前提のもとで、私はこの種の事業を考えております。

 ですから、受容されるべきであるという事業は、あくまでも、その前提として、公益的であるということのきちんとした吟味とそれに対する合意というのが成立していなければいけない。それを前提にするならば、制限されるべき私権は憲法二十九条に抵触しない、私はそのように考えております。

河上委員 ありがとうございました。大変貴重な意見をちょうだいいたしました。大変にありがとうございました。

 終わります。

赤松委員長 山田正彦君。

山田(正)委員 自由党の山田正彦です。本当に、参考人の先生方、お忙しい中、こうしてありがとうございました。

 私の方から今回の土地収用法の改正について何点かお聞きしたいと思います。

 森地教授のいわゆる公共事業の時間管理概念という考え方と、半蔵門線の、どれだけ損失であったかという資料を見せていただきまして、本当にそのとおりだと参考にさせていただきます。

 実は、公共事業、社会資本の整備の面で、日本はかなり高い数値というか、この先生の資料で見ると六・九ぐらいいっていて、あとの各国、アメリカにしてもドイツにしても低い数字のようですが、これでいて、先生の方は、まだまだ社会資本の整備は日本はおくれているという言い方をされたと思います。一方、横島先生は、もう仕上げの段階に公共事業は来ているんじゃないか、もう基礎工事を終わってだんだん終わりに近くなってきているんではないかというふうに、両先生それぞれ御意見、考え方として違うように思ったんです。

 森地先生のおっしゃっている、まだまだ公共事業はといっても、私ども見ていますと、要らないところの公共事業というのがかなり多うございまして、その中で、下水等々についてはまだまだ設備が必要だというのはわかりますが、具体的に一体どういう面でどの程度日本の社会資本整備はおくれているとお考えか、その面についてどういうふうにやったらいいというお考えか、それをお聞かせいただければと思います。

森地参考人 ありがとうございます。

 具体的な事例で申しますと、新しい全総で問題提起しているところの、私自身は大変重要なポイントが二つあろうかと思います。

 一つは、人口六百万から一千万ぐらいの単位で経済的な自立圏域を構成してほしい、これはヨーロッパの一つの国を想定したものでございます。ヨーロッパは近間に似たような豊かさの国がたくさんある。こういう構造にアジア地域も変わってまいりますので、東京経由とかではなくて、九州は九州として自立していける、こういう環境条件が整ってまいります。

 そういうことができるような格好になっているかといいますと、例えば板付の空港は、伊丹の空港がだんだん込んできて、関空を新たにつくろう、こう決心したときの需要を既に超えてございます。それから、御承知のとおり、福岡の上空をどんどん飛行機が飛んでいる、こういう状況でございます。これをもって、もう十分だ、こう言っていいのかどうか、こんなことがございます。

 あるいは、横断系の高速道路、これについてもいろいろ議論がございますが、日本の場合、日本海側だとか太平洋側だとか、あるいは山国だとか海国だとか、こうやって五十キロ圏域ぐらいで圏域を構成してきたわけでございますが、これが横断系の道路でつながることによって、より広域的な経済圏あるいは生活圏が構成される、こんなこともございます。

 それから、時間が長くなって恐縮ですが、もう一つのポイントは、人口三十万から五十万ぐらいで、大体一時間ぐらいでいろいろなサービスが受けられるようにした方がいいんではないか、こういう問題提起を全総ではしてございます。小さな診療所を町ごとにつくるんではなくて、三次医療までできるようなちゃんとした病院を持てないだろうか。それは、大都市の方が一時間ぐらいは我慢して移動している、地方の方はその意味ではぜいたくでございまして、近間でいろいろなことを処理したい、こうお考えになっている。ここにいろいろなばらまきが生ずるわけで、この圏域を再構成していく、こんなことがございます。

 最後に、もう一点だけ。

 日本には、二万五千ヘクタールの密集市街地で、地震が来たら大変なところがたくさんございます。こういうことも何とかしていかなきゃいけない、こんなこともございます。

 ほかにもたくさんございますが、時間が限られてございますから。

山田(正)委員 森地先生のそのお話はわかるんですが、例えばダムなんかも私も見て回ったり、あるいは港湾なんかも、あるいは土地基盤整備なんかも、考えなきゃいけない工事がかなりなされている。そういったときに、トータルとして、総額として日本の社会資本の整備金額、これは私、必要なものは必要だというのはわかりますが、大きいんじゃないですか。もう少し切り込めるんじゃないか、むだなものが多過ぎるんじゃないかという気はしているんですが、どうも先生の御報告では、まだまだ日本は社会資本整備が必要であるという感じを受けたものですから。ただ、確かに必要なものは必要だというのはわかりますけれども、そういった意味で、先生の今の御説明であれば私も理解できやすいわけです。

 先ほどの横島先生の公共事業に対してのお考えなんですが、いかがでしょうか。

横島参考人 例えば、IT時代を迎えて、人の動きはふえるのか減るのか、物の動きはふえるのか減るのか、先生方同士でお話ししても議論百出でございますが、私は、情報化時代の人の動きは減ると思っております。行かなくても情報は得られる、大学へ行かなくても講義が受けられる時代でございますから、情報化時代は人の動きは減るだろう。物の動きは、情報によってやりとりした合意によって動くものがありますから、ふえないにしても減らない、そんな予測をしておりまして、これからの需要というものは、今までの需要予測とは大きくその社会基盤が変わってきていると思うんですね。

 そういう需要予測というものを、水にしても、あるいは道路にしても空港にしても鉄道にしても、人口の減少というもう一つの原因をあわせて、総体に見直さなければいけないんじゃないか。そして、やはり要るものと要らないものを選別するのは、今の時期非常に大事な科目なんですね。それが、需要予測はおおむね見直しをしないで、今までの右肩上がりに若干のマイナス修正を加えた程度に抑えて見ている、このところは違うんじゃないかというふうな予感を私は持っております。

 そういうことになりますと、もう一つは、概成と申し上げました、基礎工事が終わった段階での社会資本をいろいろと組み合わせて使い回しをする、つくるよりは使う方法、つまりコンストラクションよりはマネジメントという概念で見直すと、またいろいろな使い回しがふえてまいりますから、一たん全部ゼロにするということではないんですが、今までのような形での社会資本整備を一たん見直すならば、使い方の再工夫というようなものを概念として取り入れて、その中で、やはり要るものは要る、利用の使い回しで、利活用によって発掘される社会資本はもう一回見直すというようなことが大事なことではないかと思っております。

山田(正)委員 次に、今度の土地収用法の問題で、公共事業であるということの、収用に値する事業であるということの認定なんですが、その認定について今回いろいろな改正がなされております、いろいろ公聴会の義務づけとか。横島先生、そういった改正で十分であるとお考えか、これではまだまだ住民の声が反映されないし、ちょっといろいろな形で合意形成とは言えないとか、ちょっと問題じゃないかとか、いろいろ御意見を伺えればと思うんですが。

横島参考人 今までの発言でも申し上げてきた節はございますけれども、理想的な形に至っているとは私は思っておりませんが、さまざまな関連要因が、例えば原科参考人もおっしゃっているような関連法律の改正もやはり必要でありましょうから、そういうものがすべてそろった段階で、日本における公共事業のあり方を一番理想的な形に持っていくということは次の段階であると思います。しかし、今の段階で、他の要因が未熟な部分でできることは、この辺あたりが一つの妥当な線ではなかろうかと。

 しかし、もっと進めていきたい、進めるべきではないかということは、今回も私は思い残しとしてはございます。なるべく、住民の意見を吸い上げる場合に、ありませんかといって聞くのではなくて、小さな意見をわざわざ足を向けてでも探していく、そして、それを大きな解釈の上にのせて、住民の意見というものを解釈していく、こういう姿勢が行政側に欲しいし、そのための制度がもう一つ、二つ入ってもいいのではないかという感じはしております。

山田(正)委員 フランスの場合には、事業の段階ごとに住民が参加する委員会でもって、先ほどの先生のようにやっていく。イギリスの場合では、審問官が公聴会を客観的立場で開いてやっていく。そういうところと、今回の日本の土地収用法の公聴会並びに説明の義務づけ、情報の公開というのは、かなり隔たりがあるんじゃないかという気がしないでもないんですが、その辺、原科先生、それから横島先生、どうお考えでしょうか。

原科参考人 日本の場合、情報公開法が施行されたばかりですから、まだこれからでございますけれども、しかし、情報公開に関しまして、意思形成過程情報が、六つの例外になり得る情報の種類に入っております。これは、意思形成過程情報も原則的に公開ですから、こういったものが十分に公開されるようになれば、そうしていただきたいんですが、そういうことで状況は変わると思います。ですから、私はそういうことがこれからの大きな一つの基本的な条件だと思いますね。

 ちょっと御質問のポイントを、私、取り違えたかもしれないので、もう一度お願いしたいんですが。

山田(正)委員 もう一つ原科先生にお聞きしたいと思ったのは、先生がおっしゃっていた公聴会でのフィードバック、いわゆる、質問を受けて、工事をするという側がそれを返す、きちんと回答する、それに対してさらに質問してやっていこうということなんですが、私、具体的に言ったら、結局、公共事業の必要性と環境アセスとの問題になっていくんじゃないか、具体的になると。

 そうすると、環境アセスの評価のあり方が、諫早湾の干拓事業を見ていると、佐賀大学の教授の先生方の見解と農水省が委託した環境アセスとは、大きく当時から違っている。そして、考えてみますと、こういう土地収用法における公共性の認定では、環境アセスのあり方、これを客観的な立場でやらせないといけないんじゃないか、そう思うんですが、先生方、だれでも結構ですが、いかがでしょうか。

原科参考人 改めて申し上げます。アセスを客観的に進めるための基本条件はこういうことでございます。

 これは、一つは、今の手続で随分改善されておりますけれども、十分な意見交換はまだできておりません。アセス法の手続では公聴会がないんですね。地方自治体の制度ではございます。そういうことで、手続上は不十分でございます。

 それから、審査のプロセス。アセスの場合には最終段階、評価書が出てから環境省が意見を出しますけれども、これは実は、その前の準備書段階とか方法書段階、早い段階から環境省が公式に関与して審査をしていくことが必要なんですね。

 それから、審査を環境省だけで十分できるかどうか。つまり、技術的な問題がありますので、その意味では、環境影響評価委員会、これも独立行政委員会ですか、そういう独立性の高い専門技術的な委員会を設けまして、そこで審査をしていけば、これはきちんとできます。

 こういった事例はオランダにございまして、オランダの環境影響評価委員会の場合には、そういうことで、国の事業に対する審査をするだけではなくて、ODAの事業も対象にしているんです。そのぐらいの技術力は日本だって本当はあるんですよ。だから、そういう組織をつくれば十分可能であります。

山田(正)委員 ありがとうございます。

 最後に、貫洞参考人にお聞きしたいんですが、実は今度の土地収用法の改正は、私は本当言って、時間管理概念からすれば、非常に不十分だという気がしているんですが、その中で、実際の土地収用に当たっていて、実際にこれでいいと思われるか、これでは大した効果はないと思われるか、その辺はいかがですか。

貫洞参考人 やってみないとわからないという点もあるいはあるかもしれませんけれども、少なくも、現行制度よりは数段進んだ制度になっているのではないかというふうに思います。具体的な審議の過程の中で、今回の改正によって、多分審理指揮が非常にやりやすくなるだろう、そういう予想は十分につくわけでありまして、そういう点から申し上げるならば、今回の改正によって、委員会の審理という面から見ても、数段進んだものになる可能性が大きい、そういうふうに私は考えております。

山田(正)委員 どうもありがとうございました。

赤松委員長 瀬古由起子君。

瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。

 参考人の皆さん、本当に御苦労さまでございます。では、質問させていただきます。

 今回の土地収用法の改正は、昭和四十二年の改正以来抜本的な改正がなされない中、そして、今回、想定しなかった状況に直面する状況、それへの対応策として改正されるということになっております。東京・日の出におけるごみ処分場の建設の問題などが背景にあったということは多くの方が指摘されておりますし、認めておられます。私は、このごみ処分場の問題にしても圏央道の問題にしても、やはり、物事の出発点といいますか、ボタンのかけ違いがある。

 今回の改正におきましては、先ほどもそれぞれの参考人の皆さんがお話をなさっているんですけれども、やはり、事業認定の手続における義務的な手続の導入以前の問題、そもそも、事業の計画、決定に至る過程において、本当に民主主義が徹底されているのかどうか、これが大変大事だと思うんですね。ここできちんとした住民合意が行われていれば、ごみ処分場の問題、圏央道の問題でも、こうした事態には立ち至っていないんじゃないかというように思います。

 そこで、参考人に、これは全員にお聞きしたいと思うんですけれども、公共事業の計画段階からきちんと住民合意が十分機能しているのかどうか、その点の認識、あり方、この点についての御意見を伺いたいと思います。

森地参考人 直接のお答えとしては、住民合意が完全にできているかということは、もし、それがあらゆる公共事業に反対者がいないということを意味するとすれば、それはもともと求むべきものではないと考えます。ただ、多くの方が見て、それはやはりいいかどうか、こういうところで議論をしたいと思います。

 例えばアメリカの場合、交通に関しては、連邦の補助を出す事業については住民団体の合意を得るべし、こういうことを法的に規定してございます。これはもう今から十年ぐらい前に法制化されたわけでございますが、そのバックグラウンドとしては、一九二〇年代から住民参加の歴史がございますし、もともと、御承知のとおり、ボストンにピューリタンたちが入ってきたときから地方分権の思想がある国でございますから、そこでいてやっと十年前にできた、こんなことでございます。

 申し上げたいことは、その国でも、その法案が出た後、大変な混乱をいたしました。いい方向に向かっていることといたしましては、NPO的な環境団体の幾つかは、大変な数、二けたの数の専門家を雇って、反対ではなくて、具体的にこうすればいいという提案を書くような、そんな段階にもなってまいりました。

 先ほどから、いろいろな国でこういうことがあるということがございますが、理想を言うと、横島さんの、民主主義がどこまで定着し、そういう情報がどこまで国民に認識されているか、こういうところで、ステップ・バイ・ステップでいくものだというふうに考えます。

 直接のお答えとしては、冒頭申し上げたとおりでございます。

横島参考人 地方分権の問題でよく問題になりますのは、地方議会の質の問題でありますが、今の御質問とのかかわりで申し上げますと、制度としてあるチェック機関は、まず第一に市町村段階における議会がその計画の妥当性をきちっと審議すべきなんですが、実態としては、極めてここのところは抜け落ちていると思います。

 住民が議会を通じて物を申す方法もあるわけですが、一般論で申し上げますと、地方議会が首長側の絶対与党の中で余り審議されないままほっと認めてしまう、そのことが生活者の段階に戻ったときにおやっということになってくるわけで、そのことをもって言うならば、今の先生の御質問でいうと機能していないのではないか。

 ですから、これは現行制度の問題だ。それをどう変えるかという問題は別でありますが、御質問にはそういうお答えをさせていただきたいと思います。

貫洞参考人 冒頭にも申し上げましたけれども、二ツ塚処分場の問題について申し上げれば、事業認定の段階でもう少し権利者の側の方々の御意見というものが事業認定に反映されるような仕組みがとられていれば違った展開があり得たのではないか、そのように考えているところでございます。

原科参考人 私は、これはケース・バイ・ケースでございますから、一概に言えないと思います。

 ある事業に関してはかなり住民の合意がとれておりますが、しかし、そうでないものもあります。そういうものが住民の運動になるわけでございまして、そういった問題の極めて大きいものがトラスト運動というような形で生まれるわけです。

 トラスト運動を行うというのは大変なことだと思います。ですから、一般の通常の我々の市民がある日突然そういった運動をやらざるを得ないということが起こるわけですから、そういった意味では、そういったケースがまだ見られるということは、十分合意ができていない部分があると思います。

 しかし、そういったことで社会的に常にチェックすることが必要ですね。痛みがわからなければ体の危険はわからないですよ。だから、痛みを知るための装置は残しておくということは大変大事なんですね。ですから、安全弁としての機能が今の制度にあると申し上げます。

瀬古委員 引き続いて原科先生にお伺いしたいんですけれども、土地収用の認定に関して住民参加が出発点から不十分なまま進行しているという事業で、これをいろいろな認定手続、義務的な手続で一応チェックできるという仕組みをつくり、例えばそれに住民が行って意見を言っていく、それから、例えば司法の場にこういう問題が持ち込まれる、そういう場合に、ちょっと待ってくれと言うのに、事業は一方的にどんどん進んでしまう。そして、実際には、結果的にはもう開発が進められて、後でこれは間違っていたと言ってもどうしようもないような事態になってしまう。これは何か、食いとめるといいますか、仕組みの上では方法は、お考えございますでしょうか。

原科参考人 答えは明確でございまして、行政訴訟法の改正で執行停止をちゃんと命ずれば、これは簡単にできます。その仕組みをつくればいいんです。それがアメリカはあるわけですね。アメリカはそれがあるので、事業認定に対して歯どめがかかるといいますか、公益性をきちっと判断したことを事業者がやれるわけです。しかも、公益性は何かという内容に関しては、十分国民の合意、住民の合意を得て、これを時間をかけて判断しておりますので、この両面が相まってうまく機能しているんですよ。

 ですから、事業認定は事業者がやっちゃいけないという議論は、私もそのとおりだと思いますけれども、アメリカで必ずしもそうなっていないのは、実は、前段のことと後のこと、両方があるのでちょうどバランスをとっている結果なんですね。日本は前段がだめですから、日本でまねしたらとんでもないことになります。これは実際に今アメリカに行ってこの研究をしている研究者にきのうも電話で確認しましたけれども、アメリカは歴史的にも、先ほど森地先生がおっしゃったとおりで、そういう歴史的民主主義の背景がありますので、事業官庁が国民の公共の福祉をまず考える。実は彼はもともと建設省の官僚だったから、官僚のビヘービアをよく知っているんです。日本の官僚のビヘービアと随分違うよと言うんですね。そういったことがまずあった上で、しかもシステムとしてしっかりできている。こういったことがありますから、その辺はやはり考えないといけない。ですから、方法は簡単で、行政訴訟法をしっかりと改正していただくということで対応できます。

瀬古委員 横島先生と原科先生に伺いたいと思うんですけれども、今回の土地収用法の仕組みで、事業官庁である国土交通省が、例えば自分の事業認定をするというところでは、大変不公正だという意見が住民の不信の原因にもなっております。今回の改正による、事業認定の手続における社会資本整備審議会の意見を聴取するということにもなっていますが、これについても中立性や公平性の点で批判があるんですけれども、この点で横島先生と原科先生にお伺いしたいと思います。

横島参考人 先ほどお答えしたときにも今のお話を申し上げましたけれども、一〇〇%理想的な位置づけではあるいはなかろうかと思いますが、現実に私がその審議会に所属しておりまして、スタート当初から審議会のあり方について私自身も意見を申し上げて、いわば体質改善を図っております。だからいいんだというわけではございませんが、現行の中で、それほど、今おっしゃられるような形でのひずんだ、いわば大臣寄りといいますか、国土交通省寄りの委員構成にはなっておりませんので、私は、当面これでいけるのではないかというお答えを繰り返させていただきます。

 もちろん、問題があるならば、次なる段階で考え直すということも必要になってくる場合はあるかと思っております。

原科参考人 私は、システムのあり方として、やはり独立の機関を設けなきゃいけないと考えます。それは、アメリカの場合と状況が違うからです。つまり、前段の部分は現在ではちゃんとやっていない。後段の行政訴訟法に関しても十分でないという状況のもとで考えるならば、今度は事業認定の部分はできるだけ独立性の高い機関をつくることです。

 これは果たして可能だろうかどうか。私は十分可能だと思います。

 地方自治体においては、もう既にそういった例がありまして、きょう資料でおつけしました長野県の廃棄物の処理施設検討委員会はまさにそういった仕組みでございます。もちろん知事が関与しますけれども、知事が委員長に私を指名しまして、あとは私の判断で委員構成、メンバーを決めまして、運営も全面公開ということでやっております。これはもうつい先月始まったところでございますけれども、そういうことで十分可能なんですね。

 ですから、私は、そういった中立性の高い仕組みは日本でもつくれるし、そういった努力をするべきだと思いますね。当面、社会資本整備審議会でやるというお考えがございますけれども、しかし、ほかにつくってはいけないか、できないか、十分私はできると思いますね。ですから、そういった方向でぜひ建設的な御議論をいただきたいと思います。

瀬古委員 貫洞参考人にお伺いしたいと思うんですが、参考人は東京都の収用委員会の委員長としての御経歴をお持ちなんですけれども、いわゆる日の出のごみ処分場についての裁決で、このように述べておられます。「事業認定が違法であるかどうかは、原則として収用委員会の審理の対象にならない。ただし、事業認定に重大かつ明白なかしがある場合は、その事業認定は無効であり、この点については収用委員会は判断すべきである。」とされております。この点を裁定理由の中に記述された意味というのはどういうものなんでしょうか。

貫洞参考人 御承知のように、七人の委員で構成をされます合議体でありますけれども、その七人の委員の中でいろいろ議論がありまして、七人の委員が全員同じ主張になったわけでありますけれども、判例その他によれば、収用委員会は事業認定の内容審査にはかかわれないというのが常識になっているわけでありますけれども、収用法の規定の中で、事業認定が重大かつ明白な瑕疵がある場合には却下できるという規定があるわけでありまして、その重大、明白な瑕疵があるかないかはどこが判断するのかというと、収用委員会が判断せざるを得ないわけで、裁決の時点で却下するかしないかを判断せざるを得ないわけで、したがって、これは当然収用委員会の判断の範疇にあるという理解のもとにそのような文言を書いたわけであります。

 ただし、これは書いてありますように、重大、明白な瑕疵があるかないかを問うものでありまして、公益性の内容そのものについて収用委員会が判断をした、そういうことではないわけであります。

 以上、それが収用委員会の判断であるということを申し上げておきたいと思います。

瀬古委員 そうしますと、貫洞参考人に伺いたいんですけれども、例えば、裁決の中で述べられている「重大かつ明白なかし」という場合は、どういう場合が重大かつ明白な瑕疵という例示に当たるんでしょうか、その点、どのようにお考えでしょうか。

貫洞参考人 例えば、たしか四十七条の規定にあったかと思いますが、事業認定をした事業計画と全く違う計画が例えば実施に移されている、そういうような場合であるとか、何人が見てもこの事業認定が不当であるということがわかるような場合に限られる、そのように理解をしているところであります。

瀬古委員 以上、時間が参りましたので終わらせていただきます。どうも、きょうは参考人の皆さん、ありがとうございました。

赤松委員長 日森文尋君。

日森委員 社民党の日森文尋でございます。

 参考人の先生方には、大変お疲れのところ恐縮ですが、もうしばらくですので、ぜひ真摯な御意見をいただきたいと思います。

 では、座って失礼いたします。

 四人の参考人、それぞれ、先ほどもお話ございましたけれども、前段、要するに入り口、上流での住民参加、情報公開ということが非常に重要なんだという共通した御意見をおっしゃいました。先ほどちょっと原科先生も触れましたけれども、旧建設省の建設白書の中でも、事業のおくれというのは、その一つの重要な要因として、計画段階からの住民合意を形成するための仕組みが非常に不十分である、そのために非常に長い時間かかってしまうということもおっしゃっていますし、それから、この収用法の改正の土台をつくった、これも旧建設省ですが、土地収用制度の調査研究会報告、その中でもやはり同じように、入り口段階での住民合意や情報公開、そういう制度を充実しなければいけない、その充実をした限りにおいてのみといいますか、要するに収用手続の簡素化というのはあり得るんだというふうな報告をされているんです。

 そこで、にもかかわらず、この国のいわば上流の、入り口段階での民主的な手続が非常に不十分である、一体何がネックになっているのか、なぜ諸外国が当たり前としていることがこの国でできないのか、その辺についてぜひ四人の参考人の方から最初に感想をお聞かせいただきたいと思います。

森地参考人 外国でうまくいっているというより、外国も模索していると言った方がいいかと思います。冒頭申しましたように、同じ問題を抱えて、この十数年間、住民参加というかパブリックインボルブメントの仕組みをつくると同時に、多様な意見を持ち込めば、その多様な意見を何か一つに収束させなきゃ結論に至りませんから、その収束させる仕組みと同時並行でやってきた。

 日本の場合は、先ほど申し上げましたように、それぞれの場でパブリックインボルブメントの努力がされております。それになじまないものももちろんございますので、そういうことを考えながら事例を積み重ねている。そういうことと同時に今回のようなものがやっと出てきた、こういうふうに認識してございます。

横島参考人 社会資本の質の変化が時代とともに起きているわけでありますが、申し上げましたように、だれがやっても、だれが考えてもほかにやりようのない絶対的必要性のある社会資本から、徐々にこれが附帯的にあるいは仕上げ的に変化をしてきたとき、その工事そのものは細かくなったり、非常に身近になったり、あるいは住民と直結する場所に発生したりというふうに質が変化した。そこで、やはりもう少し住民合意が必要だという声が、必要だったんですけれども、ここへ来てにわかに大きくなってきている。

 ですから、もう少し前で、例えば成田時代にこういうものが入ってきてしかるべきだったと思いますけれども、しかしこれは過去の反省としておくにしても、必要な時期に反省があるいは十分でなかったということはあるかもしれません、しかし、全体としては、そういうものの積み重ねの結果、今ようやくこの時期に達したんだということで、新たなスタートと考えざるを得ないと思います。

貫洞参考人 役所に身を置いた立場としては大変申し上げにくい点もあるわけでありますが、一言で言えば、社会条件の変化というものが今日のような状態をもたらしたのではないか。

 先ほど諸先生方がお話をされているように、やはり住民参加というものの質も内容も変わってまいりました。そのことを重大視しなければならない環境が現実に起きているんで、そのことを重視しながら今後は進めていくべきだろう、そのように思うわけであります。

原科参考人 私も、社会の状況が随分変わったということは大変に感じております。ずっと住民参加の研究をやってまいりましたけれども、三十年前あるいは二十年前に研究室の段階で議論してきたものが、ある部分は実現されております。それだけ変わってきたと思いますね。ですから、私は、その意味では、これから前段部分での改善を図るには本当にいい機会だと思います。ですから、この土地収用法の議論をきっかけに前段部分の改善をぜひ図っていただきたい。土地収用法は安全弁ですから、当面とめておいて、むしろ前をしっかり直すというのが今やるべきことだと思っております。

日森委員 公益性の評価をめぐっていろいろ意見の対立があって、実際、日の出の問題も含めてさまざまな紛争が生じているということは事実で、それについて参考人の方々から入り口論の話が出ました。そうすると、これからもそういう紛争が生ずる可能性というのは非常にあるわけで、現行法そのままでは、この紛争を処理することがなかなかできないのではないかというふうに私は考えるんですが、具体的に原科先生は、行政手続法というのはすぐ手がつけられるというお話がございましたけれども、それぞれまた、どんなところに手をつけていって、どう変えていったらいいのかという感想がもしございましたら、お聞かせいただきたいと思います。

森地参考人 基本的には、先ほど申したことに尽きるかと思います。

 ただ、先ほどから議論が少し、私の理解が間違っているのかもしれませんが、議論が少しすれ違っている気がしております。

 今回の改正で収用手続のところに関しては、主として、極めて多数の方々に納得いただくための手続をもう少し簡素化しよう、こういうことでございます。ある人がブラジルでたった一本の立ち木トラストに参加している、ある人は沖縄で、ある人は稚内にいる。こういう人に対して、それぞれのお役所の人が二人で行って、議論をして、お金を払って、そういうことが本当に合理的なのかどうか、こういうところがメーンでございます。それを一方的にやることではなくて、事業認定のところも、今までよりは、第三者があるいは公聴会が、こういう格好で出てきてございますので、このことが、もちろん住民というかいろいろな方の意見や合意形成のプロセスは大切でございますが、そのことと抵触する話として私は認識しておりませんので、そこで少し意見が違うのかもわかりません。

横島参考人 先ほど原科参考人から、私の意見にもありましたが、ごく例外的なもので対立が起きている、それをもって一般化するなという御趣旨の発言があったと思いますが、例外的ではあっても極めて典型的な紛争については、私どもはやはりそれぞれの体験を生かした学習効果を社会に還元していくべきだと思っております。その意味では、一気に百点満点の改正がいいということにはなるんでしょうけれども、現実的選択としましては、今回のような合意形成のところに若干の行きつ戻りつの部分があるんですが、何か手をつけて入っていく、そして考えながら進んでいくという積み上げが、この種の極めて多様な見解の集中するテーマについては手法としてはやむを得ないのではないか、こういうことだと思います。

貫洞参考人 私の理解が必ずしも十分ではないかもしれませんが、今回の改正で最も重要な点は、事業認定にかかわる部分が改正案の中で非常に重視されたという点であります。

 私が冒頭で申し上げましたように、収用委員会の審理が本来の機能に基づいて十分にされるようにしていただきたいということは、とりもなおさず、その事業認定の部分がきちんとされていれば結果的に収用委員会の審理もスムーズにいくであろう、そういう論理でありまして、そういう点から見まして、今回の改正は、収用委員会の立場から見てもかなり進んだものというふうに理解できるわけであります。

原科参考人 今の御質問は、現行制度、前段階の制度をどう変えるべきかという点だったと思いますが、これは先ほど申し上げましたのであえては繰り返しません。簡単に一言で言えば、いろいろな個別法での枠組み、それから行政手続法、こういったことがございます。

 もう一つは、今御議論ありましたように、収用法の中の事業認定の部分、この改正がその前段の不備を補うような改正になっているかどうかでございますが、これはどう見ても不十分だと言わざるを得ないんです。

 日本の公聴会は結構種類はあります。しかし、ほとんどが言いっ放し、聞きっ放しで終わっております。これは皆さんよく御存じのとおりです。アセスの手続の中で唯一、アセスではちゃんと文書のやりとりがありますのでそっちの方へつながっていきますから、地方自治体のアセスメントの一部は今申し上げたフィードバックがちゃんとあるんですが、国の制度は全部言いっ放し、聞きっ放しですから、これでは全く期待できないですよ。

 ですから、形としてはできますが、余りよろしくない状況で、むしろアリバイづくりみたいな形になっちゃいますから、大変危険ですね。

 そういうことで、事業認定をきちっとやるのであれば、むしろ先ほど申し上げたように、第三者性をきちっと持った委員会で審議して、しかも公開の審議、その中の情報提供の一つの形態として公聴会を位置づける、こういったシステム設計をしないとだめなんです。

 部品だけつくっても、結果的には国民の期待にこたえられません。私は、この結果の、それがうまくいかなかった場合の、反動といいますか、リアクションを恐れます。これは大変によろしくない方向だと思います。

日森委員 ありがとうございます。

 その特殊な例ということでちょっと突っ込んだお話をお聞きしたいんですが、先ほど貫洞参考人から日の出の話がございました。収用手続よりもその事業認定の段階に非常に問題があったんじゃないのか、そのことがトラスト運動という運動を引き起こしてきたという御認識を示されました。私もそのとおりだと思うんです。その段階で情報公開が十分にされないとか、今ほど原科先生がおっしゃいましたフィードバックがないとか、そういうことが、行政がやろうとしている事業に対する不信感を非常に生んで、やむにやまれぬ格好でトラスト運動が進んできたということになったんじゃないかと思うんです。

 一方、今度の法律では、その改正をするために東京都がいろいろなことを国に申し入れて、いわばそのとおりの法改正案が出てきたんですが、先ほど貫洞さんがおっしゃいましたけれども、五千何百万円払うのに十億円お金がかかったんだというお話がございました。しかし、ちょっと見てみると、実際には随分違うお金の使い方がされているんじゃないかという気もしているんです。

 ちょっと誤解を解くために、原科先生はその辺を調査されているようですので、もしおわかりだったらお話しいただきたいと思います。

原科参考人 我々、理工学の分野ですから、森地先生も私と同じような立場で、考え方も、というか、考えるんですね。ですから、結果を見まして、それが我々の実感と合うかどうかまずチェックするわけですよ。そういうことで、十億円というのは法外な金額だなと思いました。

 そこで、事実関係を調べました。これは、我々サイエンスにかかわる者のやり方ですね。確認しました。資料で御提供いただいたのですが、まず、十億円という数字は違います。六億五千万円というのが広域処分組合からいただいた数字でございます。ですから、三分の二ですね。しかも、中身を見ましたら、行政代執行に関係する費用が一億三千万円です。だから、これは対象外ですね。それから、二千八百名を超える権利者等のデータ処理委託経費、これはコンピューターか何かでいじるんでしょうが、これが何と二億五千七百万円なんですよ。我々のセンスではちょっと考えられない金額ですね。二けた、三けた多い金額です。何でこんなに金がかかるのか。

 そうやって見ていきますと、実は補償金払い渡しに係る訪問旅費等が含まれている費用は一億九千万円で、その中には土地鑑定及び物件調査、積算、通信費、弁護士報酬、みんな入って一億九千万円。そこの一部なんですね。ですから、今、五千七百万円補償するために十億円かかったというのは、これはとんでもない間違いだと思います。せいぜい数千万円だと思いますね。

 例えば、海外居住権利者への補償金払い渡し、海外の人に払うのは大変だとおっしゃいましたが、実際のところこれは十六名ですね。しかも、外国に行きまして訪問した職員の方が五名でございまして、五名で五百万円です。お一人百万円ですね。しかし、我々大学の教官が海外出張を一週間程度やるのに一回百万円かかりませんよ。何か外交機密費を使っているような感じがしまして、とんでもない金額で、アメリカだったら通常二、三十万円で行けます。ですから、我々は今ディスカウントチケットを使って行っていますので、この辺のお金の使い方はちょっとツーマッチだと思いまして、むしろ精査していただきたい。

 とにかく、十億円かかったなんてとんでもないことで、実際こうやって見ますと、この資料から見ても数千万円、一億円はかかっていないと思いますね。ですから、特殊な事例であって、しかも過大に費用がかかったというものであっても、実はそうではないかもしれないのですね。これは精細に国会でまた調べていただきたいですね。

 ということで、ちょっと間違った判断をしているように思います。

日森委員 ありがとうございました。

 あと二つほど聞きたかったんですが、今、時間という紙が来そうですので、また委員会の中で質問をさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

赤松委員長 松浪健四郎君。

松浪委員 保守党の松浪健四郎でございます。

 参考人の四人の皆様には、お忙しい中、土地収用法の一部を改正する法律案を審議するに当たり御出席をいただきましたことを御礼申し上げたいと思います。

 公共の利益の増進と私有財産との調整を図り、もって国土の適正かつ合理的な利用に寄与することを目的として昭和二十六年にこの法律は制定されました。公共事業関連法制度の中で、本法律は、社会資本の整備において重要な役割を果たしてきた、このように私は思います。しかしながら、本法は、昭和四十二年以来抜本的な改正はなされておらず、社会情勢の変化により、公共事業の円滑な実施の確保等の見地から見て、必ずしも想定していなかった諸問題を抱えた現状に直面している、こういうふうに理解するものであります。その視点から幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、森地参考人にお尋ねいたします。

 公共事業の効率化、迅速化が言われておりますけれども、その観点から見て、今回の改正案は効率化、迅速化に貢献すると思われていらっしゃるかどうか、そして、効率化、迅速化により社会経済に与える効果はどのようなものであるとお考えでいらっしゃるか、お尋ねしたいと思います。

森地参考人 ありがとうございます。

 先ほどからの御議論にございますように、この土地収用法の一番時間がかかっている公益性の認定のところ、それから実際のお金の払い渡し、こういうところで相当の時間の短縮が図れるので、効果は大変大きいと思います。

 それから、資料を使って御説明しましたのは最も少ないような事例でございまして、私の別の計算では、ある高速道路の場合、建設費以上の損失が発生している、こういうこともございます。

 以上でございます。

松浪委員 ありがとうございました。

 次に、横島参考人にお尋ねいたしますけれども、これからの公共事業は住民参加がキーワードになると思いますけれども、今回の改正案は、住民参加の観点から見て前進というふうにお考えでいらっしゃいますかどうか、また、仮に今後検討すべき点が残っているとすればどのような点であるか、お尋ねしたいと思います。

横島参考人 確かに、事業認定に至るプロセスが理想的な展開になっていないうらみはございますけれども、今回の法改正の総意として感じるところは、制度上やや問題点が残ったとしても、住民側が、いよいよ法律が改正になった、我々の意見が言えるんだ、あるいは住民団体が積極的に動くという刺激は十分に得られていると思いますので、制度を超えた住民側の立ち上がりというものは当然起こってくるだろう。そのことは次なる改正へのインパクトにもなるでしょうし、そこのところは制度上の問題で、現実論として云々するよりも、走らせてみたときの効果というものを非常に多く期待しておりまして、その点では住民の意思が十分反映される方向に変化をしていくというふうに私は期待をしております。

 先生、二つ目の御質問はそれでよろしかったですか。

松浪委員 今後検討すべき点が残っているとしたならば。

横島参考人 失礼しました。

 それは、第三者機関の設置にしろ何にしろ、地方マターにおさまった場合地方が弱いのではないかという感じがいたしまして、地方でこのような方法をとる場合の対応にもう少し具体的な制度を入れておいた方がいいのではないかという不安を残しております。

松浪委員 どうもありがとうございました。

 次に、貫洞参考人にお尋ねをいたします。

 参考人は収用委員会会長の経験をお持ちでいらっしゃいます。その経験からすれば、事業反対派の言い分のうち、これはどうも行き過ぎだなというふうに思われた点はどういうところにあったかをお尋ねしたいと思います。また逆に、これはもっともな言い分だと思ったような経験があれば、そのことをもお聞きしたいと思います。

 今回の改正案によりまして、収用手続において行き過ぎた反対活動は防止できるようになると思われるかどうか、これもあわせてお尋ねしたいと思います。

貫洞参考人 行き過ぎた点、あるいはもっともであるという両方の御質問でございますが、どれをもって行き過ぎと考え、どれをもって正当であるというふうに考えるかはなかなか難しい問題であろうかと思います。

 しかし、私どもが実際に経験をした中で感じておりますのは、収用委員会の審理というのは事業認定にかかわる公益性の判断については及ばないんだということを、多分権利者の方々、大宗の方々が御承知の上で審理に臨んでおられるのではないだろうか。

 これは、権利者の方々の中にも弁護士の方々がたくさんおいででございますし、司法の判断がどういう経過を持っていたかということも十分御承知の上で審理の席に臨んでおられるわけでありまして、にもかかわらず、二年半、十一回の審理の大宗が事業認定の公益性の問題に及んだということは、やはり制度を御存じの上でのあえての御発言であろうかとは思いますけれども、行き過ぎといえば行き過ぎなのかなという気が一ついたします。

 それから、それと矛盾するような話で恐縮でございますが、お話を伺って、権利者の方々がなぜそんなに公益性の問題に言い及んだかということを考えますと、これもある意味ではもっともかな、もう少しそのことが事前に議論されていれば収用委員会の席ではそういう話にはならなかったのではないだろうか、そういう気もいたしますので、その点をもっともな点だというふうに考えればそう言えるかもしれないという気がいたすわけであります。

 しかし、今回の改正案によりまして、事業認定の面についてもそうでありますし、審理の指揮の問題についてもいろいろと改正が行われまして、実際上、これはやってみなければわからないということがあるかもしれませんけれども、実際の指揮は現行制度よりははるかにしやすくなるだろうという気がいたすわけであります。したがって、時間的にも短い時間で済むのではないだろうかというふうに予想できるわけであります。

 以上でございます。

松浪委員 ありがとうございました。

 最後に、原科参考人にお尋ねしたいと思います。

 民間等による公共施設等の整備の増大、加えてリサイクル施設など、新種の事業の登場による伝統的公益概念の変更など、現行土地収用法が想定していた公益概念の変動、拡大が見られるようになった、私はこう思っておりますけれども、参考人はこういうことは当然のことながら予想できた、こういうふうにお考えでいらっしゃいますでしょうか。

原科参考人 公益の考えというのは、社会の変化といいますか、これによって変わってまいりますので、この法律ができた当時に想定できたかというと、これは難しいと思います。ですから、これは時代の変化に即応することですね。

 ですから、対象事業をある程度広げることは可能性としてはありますが、そのためには、やはりその内容が本当に公益性があるかどうか慎重な吟味が必要ですね。それが余りなされないような状況では、甚だ危険であると思います。ですから、そういった慎重な議論をした上で、拡大ということがあり得ると思います。

 しかし、既に対象になっている事業に関しても、今、貫洞参考人がおっしゃったように、やはり事前の吟味というものが十分でないことがありますので、そのシステムをきちっとそろえないと、ただ必要だからというので広げるのではかえって危ないかなという感じもいたします。

松浪委員 時間が参りましたので、これで終わります。どうもありがとうございました。

赤松委員長 森田健作君。

森田(健)委員 21世紀クラブ、森田健作でございます。

 参考人の諸先生方、お顔を見ていますと、相当つらくなってきたような、おくたびれになっているように推察をいたします。私が最後でございます。どうぞよろしくお願いします。また、最後になりますと、質問自体が重複するところもありますが、御容赦賜りたい、そのように思います。

 厳しい国家財政の中、公共事業はもういいんじゃないか、いや、必要だ、公共事業をもう少し削れ、今幅広く国民の中から叫ばれていることもまた事実でございます。しかし、日本の現状を考えますと、例えば下水道一つをとっても、まだまだ社会資本整備の向上は避けられないこともまた事実かと私は思います。厳しい財政の中で必要な社会資本の充実をどう図るか極めて重要な国家課題ではないかな、私自身そう思うのでございます。

 今回の土地収用法の改正の骨子は、事業認定の前に事前説明会と公聴会の義務づけ、そして事業推進のスピード化を図るものと認識しております。

 そこで、森地参考人にお伺いいたします。

 日本の現状を考えるとき、社会資本整備について、例えば欧米諸国と比較しながら、その必要性を幾つか代表的な分野でお話しをいただければ、お願いいたします。

森地参考人 例えば、東京の通勤鉄道でございます。御承知のとおり混雑率が、昔二五〇%、一平方メートルに四人が一〇〇%として、それが二五〇、こういう状況からようやく一八〇ぐらいになってまいりました。しかしながら、二〇〇以上のところはまだたくさん残ってございます。

 パリもロンドンも公共投資について随分抑制をして、ほとんど整備を進めない時代がずっと続きました。その後、パリはややまた復帰してございます。昔、日本の基準で一二〇%だったのが、込んだ込んだといって一五〇%でございます。これは典型的な例かと思います。

森田(健)委員 ありがとうございます。

 我々国民から見ますと、例えば公共事業、あるものは完成まで二十年、三十年かかる、おれの生きている間はこんなのはできやしないよと嘆く声もあることもまた事実かと思います。

 今回の改正により、どの程度のスピード化が図れるか、また事業のスピード化によるコストの削減について、森地参考人、御意見を賜れましたら。

森地参考人 事例によるかと思います。この手続にすごく長いことかかっているものはいろいろございますから、私は希望としては、半年から一年ぐらいは平均的に短くできればいいなと思ってございます。もし半年から一年短くできますと、それだけで五%から一〇%のコスト縮減に相当する効果の早期実現と文字どおりのコスト縮減が図れる、こういうことでございます。

森田(健)委員 そうですか。半年から一年でございますか。

 原科参考人にお伺いいたします。

 事前説明会と公聴会の義務づけで地権者や地域住民との合意形成について十分であると考えられるかどうか、また、問題点がございましたら、御意見をお聞かせ願いたいと思います。

原科参考人 今御提案の制度では不十分だと何度も申し上げてきました。これは、私の研究の成果から見てもそうですし、実際に実例はたくさんありまして、これは枚挙にいとまがありません。

 それから、先ほどちょっと合意形成、確かに時間感覚、管理というのは大変大事で、森地先生がおっしゃるとおりなんですね。ただ、収用手続というのは、平均一年かからないでしょう、平均値、この資料で。だから、それで幾ら頑張ってもそんなに短縮できないんですよ。だから、前段の、事業の計画決定段階での合意の方を工夫しないと効果が上がらないということを申し上げたいんです。それが今不十分ですから、そのところを改善すれば、本当に時間管理という点で社会的な貢献は随分大きいと思うんですね。

 ですから、ねらう対象を間違っているんじゃないかということを申し上げたいと思います。

森田(健)委員 時間を縮めたいと思います。ありがとうございました。

赤松委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の皆様方に一言申し上げます。

 本日は、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。

 この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時三十五分開議

赤松委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、土地収用法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省総合政策局長風岡典之君、土地・水資源局長河崎広二君、道路局長大石久和君、港湾局長川島毅君、政策統括官山本正堯君、内閣府沖縄振興局長安達俊雄君及び農林水産省農村振興局整備部長太田信介君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として日本道路公団理事城処求行君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 これより政府に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中慶秋君。

田中(慶)委員 委員長のお許しをいただきまして、民主党の立場から質問をさせていただきます。

 このたびの土地収用法の一部を改正する法案についてでありますが、まず一つは、公共事業をめぐる環境というのは大幅に変わっているわけであります。公共事業見直し、あるいはコントロール法、あるいはまた評価法等々があるわけでありますが、これらについても、土地収用法との因果関係は非常に大きいわけでありますけれども、しかし、今日まで土地収用法を三十年間見直しを行わなかったところは、やはり多くの問題があると思います。

 昨今では、やはりスピードその他の問題を含めて、時間という問題、あるいはコストという問題が求められておりますけれども、これらに対して、まさしく欠落をしていたんではないかな、こんなふうに思うわけであります。

 そういう点で、私は、土地収用法について、三十年間見直しをしなかったという問題と、あるいはまたコスト、時間という問題等々含めて、どのように今回の改正法案について考慮されているのか、冒頭にお伺いしたいと思います。

扇国務大臣 この土地収用法の改正法案を御審議いただくに当たりまして、今田中先生から、今までの諸般の経緯、果たして良だったのかどうなのかという御質問もいただきましたが、時代の変遷とともに、我々は今何をしなければいけないか、私はこれも基本的に問われている大きな問題であろうと思います。

 公共工事に関連して、昨年は大事な法案を委員会で御論議いただきまして、公共工事の入札と契約に関する適正化法も四月一日から施行されて、やっと二十一世紀型、多くの皆さんから預かっている税金を、むだなく、よりスピーディーに、コストダウンをして使う、どの方法が選択できるか、今先生がおっしゃいました時代の大きな変遷とともに我々は考えていかなきゃいけない。

 そして、先生も大変長い間県会議員として、地方のこともよく御存じですし、また河川にもとりわけ熱を入れて事情を御承知でございますので、今回の土地収用法の改正というものの重要性、なおかつ昭和四十二年以来この三十年間、これが改正というものはなされなかった。ただ一度も改正されなくて論議もされなかったというわけでもございませんけれども。

 先生も御承知のとおり、昭和六十三年でございますけれども、「土地収用制度の活用について」という通達を出しまして、その適切な活用を図るようにというように努力はし、また措置もいたしましたけれども、正式な改正が今日まで三十年間なされなかったということは、私は、時代の変遷とともに、やはりここに乖離ができてきたと。

 そして、事業認可しますまでに時間をかけても地元の皆さんの御意見をよく聞かなければならないという、多くの住民の皆さん方の御意見もその辺にあって、今までいろいろな公共工事がございますけれども、最初の話し合いの時間の足りなさというものが、現在もそれが事業化されていなかったり、あるいは工事の進捗状態が悪かったり、そういう多くの事例がございますので、今先生がおっしゃった、スピードを上げて、低コストで公共事業をしろよとおっしゃった、その意味でも、今回は、こうした公共工事推進のためにも土地収用法の見直しを何としても皆さんに御論議をいただきたい。またそのためには、私どもは、今後、必要な事業に関しまして一層の重点化を図るとともに、何としても事業認可するまでに地元の皆さんの御理解を賜る、そのことを特に強調していきたいと思います。

 この土地収用法の見直しについて、コストダウンすると先生おっしゃいましたけれども、例えば、一例を挙げさせていただきますと、私、渋谷でございまして、国会へ来るのに地下鉄の半蔵門線を利用するときが時々ございます、このごろ余り乗るなと言われて、車が来るので困るのですけれども。当時、この営団地下鉄半蔵門線の建設事業におきまして収用手続が遅れたんですね。そのために二百七十億円損失を出したのです。こういうことで、公共工事の必要性と、今先生がおっしゃったコストダウンをいかにしていくか。

 ただ、そういう意味では、最初から住民の理解を得られるようにしなければいけないというこの基本点が、今回の改正の大きな根本だと思いますので、そのとおり御理解いただければと思います。

田中(慶)委員 いずれにしても、政治、行政というのは、時の変化に即応し、かつまた敏感に対応しなければいけないわけでありますので、今回の土地収用法の問題についても大変重要な役割を果たしているのであろうと思っております。

 特に土地収用法は、国民の権利と公共の利益を調整するための法律であろうと思います。改正に当たっては、公共事業の促進の見地のみに一方的に偏ったものであってはいけない。だれのための改正なのか。住民なのか、あるいはまた起業者なのか、あるいは収用委員会なのか、このことをしっかりと念頭に置いた改正法でなければいけないと私は思っております。

 大臣は、このことについて、どこに一番シフトをされた改正法とお考えになっているのか述べていただきたいと思います。

扇国務大臣 私は、今回の改正に当たりまして、二十一世紀の国土のあり方、国民の認識、そして我々が注意しなければいけないこと、これを総合的に考えていくのがこの委員会で御審議いただく大きな原点であろう、そう考えております。

 そういう意味では、今回の法案は、御存じのとおり、事業認定手続に関しましては、事業の認定庁に公聴会等の開催を義務づけて、なおかつ住民の理解を促進しながら、一方は、収用裁決の関連手続については、権利者の保護に十分配慮しながらその中で合理化を図っていこう、そういうことでしております。

 今回の場合は、結果としては収用にかかるトータルの所要時間の短縮につながるとはいいながら、私は、住民と起業者、そして収用委員会と、三位一体がなければ事は運ばない、そしてそれを二十一世紀型に持っていきたい、そういうふうに考えておりますので、これは、だれが得をするとかということじゃなくて、住民の皆さんの理解を得ることも大きな重要課題であり、また、収用委員会が迅速に委員会を開催して回を重ねるということも事業のコストダウンを図れるという、一挙三得という言葉を使うと失礼ですけれども、それくらい効果が上がると私は思っておりますので、すべからくみんなが幸せになれる大きな原点がこの改正にあるというふうに御理解賜りたいと存じます。

田中(慶)委員 そこで、大臣にお伺いしますけれども、今、国土交通省では、都市計画を初め、あるいはまた河川、道路その他の計画があるわけでありますけれども、大臣が言われている住民参加、大変重要だと思われておりますが、しかし、今のそれぞれの計画はみんなばらばらであります。私は、統一的な運用の指針というものがこの際必要ではないか。特に、省庁再編成になって、河川法もあれば、港湾法もある、道路法もあれば、あらゆる法律があるわけでありまして、こういう点では、やはり何といってもその運用の一元化、こういう指針というものが求められていると思います。

 今大臣の話の中でも、計画やあるいはまた住民参加が十分必要だということでありますので、この辺について、今の実態はばらばらなんですから、どうお考えになっているのか、まず大臣の考え方を述べていただきたいと思います。

扇国務大臣 田中先生がおっしゃいましたように、計画段階から一般の参加が必要であるというのは、まさに今回の改正法の原点であろうと思っております。

 それは、先ほど私が申しましたとおり、公共工事の実施に当たりまして、地域の皆さん方の理解そして協力がなければ、これはもうできることではありませんし、また、透明性を確保するために、できる限りすべての事業、今までは建設省あるいは運輸省と縦割りになっておりまして、それぞれ、運輸省は運輸関係を住民の皆さんに説明し、道路は建設省が説明しというふうに縦割りになっておりましたけれども、今回は、おかげさまで一月六日から国土交通省になりまして運輸、建設が一緒になりましたので、計画段階から幅広く住民の参加あるいは情報公開、そういう意味では対話型の行政を行うことに、一元化できると。私はワンストップサービスというふうに申し上げておりますけれども、国土交通省が、窓口が一緒になったために、そういう意味では住民の皆さん方に、窓口一つでお話し合いができる、大きな成果があったのではないかと。

 ただ、計画の初期の段階から積極的に住民参加を推進していくということに関しましては、事業分野によって計画の策定の仕方は異なりますものの、少なくともパブリックインボルブメントの実施、あるいは事前の説明会また公聴会の開催など、できるだけ適用の運用面で整合性を持たすというのは言うまでもありませんので、そのように今回も努力していきたいと思っております。

田中(慶)委員 そこで、若干具体的な問題を含めながら触れてみたいと思っておりますが、大都市では都市計画審議会でそれぞれ事業を決定されておるわけでありますが、道路にしても、河川にしても、公園にしても、この法律が決定されて、現在着手されている着手率といいますか着工率といいますか、大体四〇%程度、あとはもう現実にはいろいろな問題を抱えて放置されたままになっている。そこに、ある面では都市計画審議会の権威の問題もあるでしょうし、あるいはまた、具体的に事業者としてこの計画を扱っている皆さん方が着工できない幾つかの問題点があるんだろうと思います。

 例えば、一部反対によって、それぞれ虫食い状態になってみたりヘビタマのような状態になっているこういう問題については、少なくとも工事の促進を求められるところであろうし、あるいは着工のできないところについては、都市計画審議会の再検討を初めとする計画の見直しというものは思い切ってやる必要もあるだろう。三十年も四十年も着工できないものはそこに問題があるのですから、そういう点でやはり見直しというものは、この際しっかりとした取り組みは必要じゃないか、このように思いますけれども、大臣、いかがでしょう。

扇国務大臣 田中先生は実情をよく御存じなので、ポイントをついた御質問をいただいております。

 今先生がおっしゃいましたように、例えば、東京都区部の都市計画道路の大部分は、先生が御存じのとおり、昭和二十一年に決定されたんです。ところが、現段階では、先生も今四十数%とおっしゃいましたけれども、この二十一年に決定された都市計画道路の整備というのはまだ五五%しかできていないという、もう戦後今日まで来て、しかも線引きしたところは皆さん方不自由していらっしゃるのです。にもかかわらず、これが動いていない。しかも、達成率が現段階で、昭和二十一年に都市計画決定してから五五%しか達成できていない。その他の皆さん方はその中で苦しんでいらっしゃるという現実もございます。また、建物等に利用されております土地の収用が多いために、事業費が本当に大きくて、また関係者も多いことなどから、必要な土地の確保に余りにも時間を費やし過ぎている、そういうことは先生も御存じであろうと思いますので、今後急速にこの整備が必要であることは言うまでもありません。

 けれども、都市計画道路というものは、都市生活を支えるあるいは都市活動を支える上で本当に根幹的な都市基盤であるというものをきちんとお示ししなきゃいけませんし、また、その役割は大変重にして大でございます。

 今回、小泉内閣で初めて都市再生本部が内閣府にできたわけでございます。そういう意味では、今までと違った、また新しい意味での都市計画道路の見直しにつきまして、例えば、東京都区部においては数次にわたりまして、都市計画道路の全面的な見直しを行ってはおりますけれども、昭和五十六年には約五十路線の変更を行っております。そしてまた、必要に応じて変更を行ってきているところですけれども、昨年の十二月、国の地方公共団体に対する技術的な助言として、都市計画運用指針が示されました。それによって、都市計画道路の見直しの考え方について周知徹底を図っていかなければならないと思っております。

田中(慶)委員 いずれにしても、都市と地方ではその差が大分あるわけでありますけれども、大都市において、例えば道路整備のおくれというものが慢性的な交通渋滞を来すことは、大臣も承知だと思います。その時間のロスを初めとして、日常の経済活動に与える影響というものが大変大きいわけでありまして、前々から言われているように、年間十二兆円程度の時間のロスがあるということ。

 そればかりではなく、最近では環境問題、地球温暖化の問題を初めとするCO2対策、大気汚染の問題等々、大都市の道路整備について、あらゆる問題を含めながらこの土地収用法の改正というものが大きく期待をされるであろうと思いますけれども、その辺についてどのようにお考えになっているのか、大臣の考え方をお聞きしたいと思います。

扇国務大臣 交通渋滞は、御存じのように、時間やエネルギーのロスだけではなくて、大変な経済的な損失を私たちに与えております。その損失は日本全国で年間平均して、先生が御指摘のとおり、大体十二兆円という損失を出していることが計算上出てまいります。

 ただ、十二兆円の損失だけではなくて、時間をなくすという、時間のロスというものは、人生にとってもあるいは物流コストという面にとっても、大変大きな負担になっている。また、それが目に見えないことで、外国から例えば横浜に入る荷物も、物流コストが高いために減ってきた、要望が少ないとかあるいは出入りが減ってきたとか、そういう現実が既に起きているわけでございます。

 そういう意味では、私は、金額だけではなくて、時間的なロスあるいは物流コストの高さというものは、この道路整備ができていないことが大きな障害になっている。また、今先生がおっしゃいました環境問題あるいは交通事故の増加、交通事故が年々ふえ続けている、これも道路整備ができていないことに原因が多々ある、こう思っておりますので、そういう意味では、首都圏の三つの環状道路、これは計画延長に対する供用延長が約二割、その整備がわずか二割しかないという、そのおくれ、そういうものに対しても、これらが全部完成しますと走行時間が短縮され、今おっしゃいました燃料のCO2の排出の減少によって、ざっと計算しましても年間約四兆円の直接効果がある、こういう数字も出ておりますので、お金だけではなくて、人生でのロス、物流の高さ、あらゆる面からいっても、いい面が一つもないというのが現状であると認識しています。

田中(慶)委員 そこで、今申し上げたことを前段に踏まえながら、今回の土地収用法の問題に触れてまいりたいと思っております。

 今回の収用法のまず一つは、認定と起業が同一の場合において、その事業認定の中立性、公平性という問題について若干の疑義があり、あるいは事業者を分離すべきではないかという、こんな意見もあります。あるいはまた、現行の認定制度を前提とした場合において、今回の法案の第三者機関の意見をどのように扱うのか、私は極めて重要な問題だろうと思っているわけであります。

 第三者機関の意見というものは、従来、単なる意見として聞きおく程度あるいは参考に、こういうことで、今の新しく三十年ぶりに改正される土地収用法では、もっと真剣に、第三者機関の意見というものが法律あるいは何らかの形でしっかりと担保されるべきではないか、このように考えておりますけれども、大臣の考え方をお聞かせいただきたいと思います。

扇国務大臣 先生が今おっしゃいました第三者機関の意見の取り扱い、これも大変私は重要なものだと思っておりますけれども、私ども国土交通大臣が起業者である場合、これは事業認定庁と起業者が同一主体となります。それに疑義を先生はおっしゃいましたけれども、事業認定の判断には事業に関する技術的な専門的知識が必要なのは申すまでもございません。それが第一点。

 第二点は、事業認定の中立性等を担保するための新たな措置として、第三者機関であります社会資本整備審議会の意見聴取、そして公聴会の開催あるいは事業認定理由の公表の義務づけを措置する、これも大きな要件でございます。

 そして、最後には、諸外国において事業所管大臣が事業認定を実施することが通例になっておりますので、世界的に見ても、これは別に日本だけが特別ではなくて、世界の通例になっているということも先生もおっしゃるとおりで、御認識あろうと思います。

 また、第三者機関の審議会は、特定の分野に偏ることなく、法学界あるいは法曹界、そしてまた都市計画、環境など各界からバランスよく人選をしまして中立性と公正性の確保に最大限の配慮を払っていく、これが第三者機関というものの問題点であろうと私は思っておりますので、そういうふうに今後私どもも努力したいと思っておりますので、それを基本にして、第三者機関と事業認定者の関係というものを分離しながら、第三者機関の中立性を尊重していきたいと思っています。

田中(慶)委員 大体、従来ですと、第三者機関なり専門という形の意見というものは、聞きおく程度、こういう形であったわけであります。個人の私有財産が影響される土地収用法というものは、やはりそれを真剣に取り扱うために――どちらかというと今までの流れの中では行政への不信というものがあるわけでありますから、やはり第三者機関というものは役所の代弁者という、こんな形でとらえられているのが今までの実態だと思うんです。

 今、大臣は、社会資本整備審議会というものを第三者機関の一つに挙げられているわけでありますが、その中立性、公平性という問題が今も大臣から述べられておりますけれども、従来の流れからすると、どうしてもこの問題というのは、中立性だ、あるいは公平性だ、こういうことが述べられていながらも、なかなかそれがそう実行に移されていない。いろいろな審議会には役所のOB、特に直接関係のある、国土交通省なら国土交通省のOBがどうしてもかかわっている、これが従来のパターンでありますから、今回は、収用法が第三者機関というものを設置するんであれば、そういうものを抜いて、今大臣が言われた、司法であるとかあらゆる機関を含めて、本当にだれが見ても、ここは公平、中立であるな、こういうことがわかるように、私は具体的に何らかの形で担保する必要があるだろうと。言葉で幾ら言われていても、そういうものが担保されない限り、中立性、公平性というものがやはり実感としてわかないわけでありますから、そのことを明確にしていただきたいと思います。

扇国務大臣 今先生がおっしゃいました、社会資本整備審議会の中で、この審議会の中に公平性を保て、しかも役人が多いではないか、天下りといいますか、経験者が入るという今までのパターン、それを御指摘になりましたけれども、今回は、この委員の中に中央省庁の出身者を選定しますことに関しましては、審議会等の整理合理化に関する基本計画、これが平成十一年四月二十七日に閣議決定されております。それにおきまして、「府省出身者の委員への任命は、厳に抑制する。」また、「審議会等の所管府省出身者は、当該審議会の不可欠の構成要素である場合、又は属人的な専門的知識経験から必要な場合を除き、委員に選任しない。」こうなっておりますので、これは閣議決定されていることでございますから、今先生の、今までもこういうことがあったという、これは本当でございますので、今後はこういうことのないということで、この方針に従った人選をしていこうと思っております。

田中(慶)委員 そういう閣議決定をされているということは、少なくとも、多くの皆さんの目には見えない、ある面では不透明な部分があるわけでありますから、そういう点では、僕は、何らかの形で法律条文等で担保する必要があるんではないかなと。難しいけれども、新しい時代というのは、そのぐらいわかりやすい、お互いに納得のしやすいようなことを担保することが、それぞれ皆さん方の私有財産も含めてこの土地収用法というものは関係するものですから、そんなところにしっかりと力を入れていく必要があるだろうと思いますが、再度大臣の答弁をいただきたいと思います。

扇国務大臣 今までそうであったからやはり変わらないんだろう、皆さんにそういうお気持ちがあるのは否めないところであろうと私は思いますけれども、こういう委員会で御審議いただいて、田中先生のようにはっきりと証拠を見せろとおっしゃって、今先生がおっしゃいましたように、今後、閣議決定していることを皆さん方にどのように伝達していくか。これからはインターネットもございますし、国土交通省も、インターネットで、それこそ公共工事は電子入札ということまで言っておりますので、そういう意味では、より多くの皆さんに周知徹底しながら、皆さんに信用される国土交通省でありたいと思っています。

田中(慶)委員 大臣のその言葉を信用しながら、いずれにしても、第三者機関というのは本当に公平、中立性を担保していただきたい、このように思っております。

 そこで、具体的に。

 現在、この事業認定をするに当たって、すなわち事務局というものがあるわけであります。事務局は、いろいろな省庁でいろいろな事務局がありますけれども、本来ならば、土地収用法という法律を担当する別建ての事務局があっていいんじゃないかな。そうすると、今言った第三者機関なり、あるいは中立性、公平性というものが完全に担保できるんだろうと思います。その辺について具体的にどのようにお考えになっているのか、お聞かせをいただきたいと思います。

風岡政府参考人 事業認定の事務局の御指摘でございます。

 まず、現在、国、公団が起業者である場合には、私ども国土交通省の総合政策局の中に土地収用管理室というそれ専門の組織を設けているわけでございますし、また、都道府県が起業者であるものにつきましては、これは各地方整備局の建政部でこの事務を担当するという取り組みをしております。

 特に、大臣認定の事務を行います私どもの土地収用管理室でございますけれども、今申し上げましたように、もちろん総合政策局の中の室ではございますけれども、その事務を専属的に実施する、こういう体制をしいて、十名の体制ということでやっているわけでございます。私どもとしては、そこのメンバーにできるだけこういった事務に適する人間、すなわち中立公正な判断ができるような幅広い知識経験を持った人材を充てるということがまずスタートとして一番大切かなというふうに思っております。

 そういう意味で、従来は、中の職員で適格者を充てるというやり方をずっとやっておりましたけれども、今後の取り組みとして、できるだけ幅広く人材を集めるという意味で、最近、省庁間の人事交流その他もいろいろやっておりますので、そういったことも含めて、まずできるだけ公正中立な判断ができるような人材の確保ということについて努力をし、実質的にそういう専門の事務局として本当に機能するような中身というものの充実にまず努力をしていきたい、このように考えております。

田中(慶)委員 言われていることはよくわかるんですけれども、現実問題として、せっかく今第三者機関をつくって、中立公平、こういうことを明確にするというのに、その受け皿の事務方がある面では国土交通省の土地収用に関する部門であっては、本当に中立性、公平性が保てるんだろうか。

 人事交流もあるでしょう。ある面では外部からの専門家を一部投入するとか、そんなことを含めながら、全体的に独立した形に受け取られるような組織の見直しというものに、今せっかくここまで収用法見直しをしようということであるならば、そこまで踏み込む必要があるんだろう、私はこのように思いますけれども、いかがでしょう。

風岡政府参考人 ただいま私が申し上げましたのは、事業認定の事務を大臣が実施する、それを補佐する立場としての事務局ということで申し上げました。もちろん、社会資本整備審議会の方で御審議をいただくときに、それをまたお手伝いする事務局というのがあるわけでございますけれども、前者の意味で申し上げたわけでございまして、少なくとも、先ほど申し上げましたような形で、実質的にはその仕事だけを独立的にやるわけですので、その肩書として審査官とかそういう発令がいいのかどうかということは別にしまして、できるだけそういう意味で省内の各部局からも業務面では一応独立したような取り組みができるように、そういう努力はしていきたいというふうに思っております。

田中(慶)委員 重ねてお伺いしますが、独立行政法人じゃありませんけれども、この辺が今回の法改正の、やはり土地収用法としての一番決め手になるんじゃないか。ですから、これ専門にやるということで、仕事量とかいろいろなことも含めて難しいのかもわかりませんけれども、しかし、大変重要な仕事、ましてこれから公共工事が大きく変わる。そこで一番問題なのは、スピードが要求されてくる、その事務方の仕事なんです。その人たちの人事交流もする、しかし、一部では専門的な要素もさらに加えるということも含めながら、私は組織の見直しが必要だろう、このことを重ねてお伺いしたいと思います。

風岡政府参考人 御指摘の趣旨は、やはりこの事務というものの重要性にかんがみて、できるだけ客観的な組織という位置づけが必要である、こういうふうな御趣旨かと思います。私どもの組織の中でも、少しでも独立性が発揮できるような、例えば先ほど申し上げましたような審査官的な位置づけとか、そういうことも含めて十分議論をさせていただき、検討させていただきたい、このように思っております。

田中(慶)委員 私、なぜこのことを申し上げるかというと、例えば今日までもいろいろな事業認定をしてきたわけですね。そして現実に公聴会を認めているわけです。しかし、大臣、収用法で今まで一度も公聴会をやったことはないんですよ、長い間これだけの歴史を考えても。ですから、私は先ほど、いろいろなことを形骸化される心配もあり、第三者機関というものをしっかりと担保する。

 公聴会というものについても、先ほど大臣が、地域の声なり住民の声ということを大切にしたいということを言われておりました。公聴会は、社会的にいろいろなしがらみもあるかもわかりませんけれども、住民参加ということを促進する意味でも、あるいはまたいろいろな事業認定についてその運用を高める意味でも、一番私は重要だと思っておるんです。

 今日まで一度も開催されなかった理由、今後具体的にどうするのか、このことも含めて答弁を願いたいと思います。

扇国務大臣 今田中先生がおっしゃいました公聴会、今回の収用法の改正に当たっては、少なくとも四つの大事な点がございます。それは、先ほどから私が申し上げておりますように、今局長が答えましたけれども、今答えました局長は総合政策局でございます。総合政策局というのは事業にタッチしない局なんですね。ですから、河川局だとか道路局とか、そうではなくて総合政策局の局長が答えているというのも、第三者機関の一つの方法であるということもぜひ御認識賜りたいと思います。

 今私が、今回の改正によって違うと言いました。事業認定します中で今後気をつけなければいけない中立性というのを先ほど先生にお答えしました。その中立性を保つためには、少なくとも審議会など、完全に行政の機関としては独立した第三者機関の意見聴取をするというのが大事な一つでございます。

 今までなぜ公聴会が開かれなかったかとおっしゃいましたけれども、それは、今までは、現行の土地収用法において公聴会の開催は事業認定庁の裁量とされていたんですね。ですから、地方の皆さん方に対しても、認定者が公聴会の趣旨というものを今までは、軽く見ていたというわけではありませんけれども、事業過程でこの三十年来されていなかったということの中から、今回の改正で公聴会の義務的開催、これは義務化するわけですから、そういう意味では、私は大きな違いがあると思います。

 また、住民参加で事前説明会の開催、これも今度改正します中の大きな重要な点で、第三者機関の審議会をつくり、なおかつ公聴会を義務づけ、そして事業の事前説明会をする。もう一つ、事業認定の公表というものをいたします。これも四つの大きな今回の改正の中身でございますので、そういう意味では、先生がおっしゃいましたように、今まで公聴会が開かれなかった点はあったと思いますけれども、今回はこれを義務づけるということですので、ぜひ変わったということを御認識賜りたいと存じます。

田中(慶)委員 今までは起業者側の裁量である。しかし、公聴会を含め、事業者側がそのように非常に軽く受けとめてきたということ自体、私は、収用法というものを、個人の私有財産に大きく影響するものでありますから、そんなに軽く見てもらったのでは困るわけであります。

 そして、今度はこのことを明文化して、法律で明確に担保するんですか。答弁ください。

風岡政府参考人 公聴会の開催、先ほど大臣の御説明がありましたように、現行法では任意開催ということで、事業認定庁に裁量というものが認められております。結果的に、申請者の申請の資料だとか、あるいは意見書を見て一応判断ができるということで、公聴会の開催ということは行っていなかったわけでございます。

 しかしながら、公益性の判断というのが、こういう時代で非常に複雑でありますので、できるだけ幅広く御意見をいただいて判断をする。また、住民自身も、やはり積極的に住民参加という要望も高まっておりますので、そういう状況の中で、私ども今後事業認定をするに当たっては、公聴会の開催要求があった場合には必ず実施をする、このことを法律上明文化しているわけでございまして、今後要求があった場合には義務として、必ず実施をして幅広く御意見をお伺いする、このように考えております。

田中(慶)委員 そこで、従来、公聴会というのは土地収用法においてはなかったかもわかりませんが、例えば都市計画法で事業認定をする段階で、この公聴会というのはいいかげんなものであって、非常に形式的に、何回やったからと、こういうことが従来、この開催の実績として報告をされております。公述人の意見等についても、本来ならば参考に入れてその事業認定やいろいろなところに生かされなければいけないわけですけれども、今までは、言いっ放し、それで聞きおく程度、これでは公聴会の意味もないし、公述人がお互いに質疑を交わすこともできないわけでありまして、私は、少なくとも公聴会が、住民の参加やいろいろなことを含めて意見をお互いに交わす、そして公述人の意見も生かされるような公聴会でなければいけないと思うんです。

 今まで一度もやったことがないんですから、新しくこれからやる、法律で担保する、それであるならば、私は、今申し上げたようなことも含めて明確に担保してほしい。どう思いますか。

風岡政府参考人 公聴会の開催、大変重要な手続でございます。私どもは、直接の権利者だけではなくて、幅広く意見をいただきたいということでありまして、そういったことを可能にするために、あらかじめ公聴会の開催というのを例えば地元の新聞紙に載せるとか、そんなようなことをしていきたいと思います。

 また、開かれた公聴会、これをやはり生きたものにするということにつきましては、先生御指摘のとおり、大変重要な御指摘であります。私どもとしましては、公聴会というのはあくまでも事業者が一般の住民の意見をお聞きするということではありますけれども、公聴会に出席をされた方々同士で例えばお互いに質疑をするとかいうようなことも、主宰者の承認を得て進めるというようなことは、これは必要なことではないかというふうに思っております。諸外国の公聴会の手続を見ましてもそんなような取り組みというものが認められているわけでございますので、できるだけ生きた公聴会にするという意味で、これは省令運用のレベルになるかもしれませんけれども、そういったことができるようなルールというものを明記していきたいというふうに思っております。

 また、公聴会で出ました意見を単に事業者だけが聞きおくということではなくて、これは第三者機関でこの事業認定の当否について御意見をお聞きするわけでございますけれども、そういったところにも公聴会で出た御意見というのをお伝えするとか、そういうような形で、せっかくの御意見でございますので、大いに参考にさせていただきたい、このように考えております。

田中(慶)委員 いずれにしても、一度も今まで経験のない公聴会を収用法としてはこれから実行に移すわけでありますから、やはり実のある公聴会でなければいけないし、今局長が言われているようなことがしっかりと実行段階へ移されるようにぜひ取り組んでいただきたいな、こんなふうに思っております。

 そういうことを考えてみますと、繰り返して申し上げますが、この事務局というものがやはりもっともっと独立性のあるものであってほしい、あるいはまたそういうことが担保できるように組織の見直しが必要だろう、私はこのように繰り返し申し上げておきたいと思います。

 そこで、若干の問題を現場の感覚で質問させていただきたいと思います。

 収用委員会の問題になるわけでありますけれども、事例ですから、こういうことがあるわけです。三年前に用地交渉に入られました。具体的な金額の提示もされた。ところが、財政事情によってその間放置をしておいて、三年後に再交渉されているわけですが、地価が下落をしておりますから、当然のごとく示された単価は三年前よりも低いわけであります。これに対して、権利者として、起業者側に対する、あるいは役所に対する不信を持つことは当然であろうと思います。

 こういう減額されるようなことは、その地権者の立場に立つならば、やはりこれは問題が多いんじゃないかな、このように考えますけれども、いかがでございましょうか。

風岡政府参考人 地価が下落する中で、先生御指摘のような事例というものも見られているわけでございます。

 やや建前論的な説明で申しわけございませんけれども、現在の補償の基本的な考え方といたしましては、それぞれの権利者の方々が自分の近傍でその買収地と同等の代替地を取得する場合に必要な金額を補償するというのが原則的な考えでありますので、公共用地を取得する時点での契約締結時の価格で補償するというのが原則的な考え方でございます。

 ただ、先生御指摘のような事例というのも現実にありまして、それは相手方の責任というか事業者側の都合ということもあるわけでございますので、私は、一つの解決策としては、これは予算の制約がありますけれども、せっかく売ってもいいよというふうに地権者の方が言っていただいたわけですから、その時点で、他でもし余っているような予算があればそれも活用しながら、できるだけ積極的に買っていくという、まずスタートとしてはそういう取り組みが必要ではないかというふうに考えておりまして、予算の状況と弾力的な執行というようなことでの最初の取り組みということをまずやっていきたい。

 補償の基本的な考え方というのは、正直言ってなかなか難しいところがありますが、補償についてのいろいろな問題点というのは、これに限らず指摘がされておりますので、これはこれでもう少し幅広くいろいろな勉強をさせていただきたいというふうに思っております。

田中(慶)委員 土地の買収に当たって、特に、みんなそれぞれ価値観が違うわけであります。例えば先祖代々のすばらしい植木があった。この植木の補償、立ち木補償を含めて、現実問題として、その価値がなかなかわからない。単なる立ち木のような形で補償されてみたり。あるいはまたすばらしい塀がある。その塀もブロック塀と同じような形で査定をされたのでは、それぞれの物に対する価値観が違うわけでありまして、そういう点に対する補償のベースというものはやはりしっかりとした形で評価をできるようにしていかなければいけないんだろう、私はこのように思いますけれども、いかがでしょうか。

風岡政府参考人 これもやや建前的な説明で申しわけございませんけれども、補償自身は、物の客観的な価値を評価してということになります。したがいまして、権利者の精神的な苦痛というような、なかなか数量的に計測できないようなものというのは、正直言って、正面から補償というのがなかなか難しいなというふうに思っております。

 ただ、現在の補償のやり方としましては、そうはいうものの、権利者の生活再建への配慮というようなことも含めまして、財産的価値の補償だけではなくて、いろいろな観点からの配慮というものは行っております。例えば、移転先の選定とか、引っ越しのために就業不可能になった場合の補償とか、あるいは転居等が必要になった場合にそれに関連する経費とか、あるいは一時休業する、その後また例えば店舗を再開するというようなときにはその再開に必要な経費とか、本体とは別に、関連してさまざまな事情があって経費がかかるものについては、これは広い意味で、いろいろな御迷惑をかけるということで、精神的負担を少しでも軽減したいということで補償を行っているというところは一部ございます。

 ただ、先生御指摘のように、もう少し中身に応じて、やはりそれぞれの愛着とかいろいろなものがあるから、そういうものを正面から受けとめた補償をすべきではないか、こういう御指摘だと思いますけれども、この辺は正直言ってなかなか難しいんですけれども、先ほど御指摘をいただきました案件も含めて、これは全体的にいろいろな事例を集めて勉強するということにしておりますので、なおしばらくそういったお時間をいただきたい、このように思います。

田中(慶)委員 いずれにしても、こういうものを含めて、運用指針、マニュアルをつくる必要があると思うのです。特に、あなたが言われていても、実行段階で道路局があり河川局があり港湾局があり、あるいはまた地方自治体があるわけでありますから、そういう点で、その精神を生かされるようにしていかないと、収用法の改正というものが仏つくって魂入れず、やはりこういうことになってはいけないわけであります。

 具体的に申し上げましょうか。例えば、公共補償は機能回復を一〇〇%補償されているんです。そうでしょう。ところが、民間の場合においては金銭補償だけなんですよ。それぞれの立場で違って評価をされる、こういうことであります。役所と民間、官民で格差がある。同じ事業をするのにそんな差があってはいけないだろう。この収用法の改正に伴って、この際補償基準の内容を全面的に見直す必要があるだろう。どうですか。

扇国務大臣 私たちは、民間への補償は財産価値が減じないように、これは第一条件でございます。先生が先ほどおっしゃったとおりでございます。

 他方、学校等、今先生が仰せの公共補償に関しましては、公共施設を使っている以上、少なくともその継続性というか、その財産価値にこだわらないで、公共施設の機能を停止したりあるいは廃止したり、そういうことがないようにしなければならないという、一般と公共の施設というものの完全に違った面があるということは、先生もおわかりいただいているんだろうと私は思います。

 価値においては同じですけれども、公共のものは停止することができないという、例えば学校ですとかそういうものに関しましては、移転するからやめるのよというような、学校を中止するよというようなことができないという意味では、少し公共の施設というものの違いというものをぜひ御理解賜りたいと思います。

 公共補償というものに関しましては、私たちは、廃止したり、あるいは中断したりすることのないように、現実的に機能を復元するという考え方で補償を行ってきておりますし、また、補償基準が民間に対するものと異なるというのも、そういう意味で異なっているのでございます。

 民間に対する補償につきましても、財産価値のみに着目するのではなくて、先ほど局長が言いましたように、生活の再建をも重視するという意味での民間に対しての補償というものも公共施設と同じように図っていかなければならないことは言うまでもありませんので、その点では努力させてはいただきますけれども、そもそも、建物の公共性というものに関しては、学校などを突然中止したり何かできないということだけは、その使用方法だけは民間と同じにできないということだけは御理解くださるものかと思っております。

田中(慶)委員 ですから、官民格差というものがそこで生じる。公共の事業と同じような感覚で民間についても当たれば、あるいはまた補償基準というものの見直しを行えば、それはできるのであって、やはりこの際、収用法の見直しなんですから、そこまで突っ込んでやることが敏速な事業推進になるだろう。

 大臣、先ほど言っていましたでしょう、環状線で、この何年間も着工できなくて、それで二百億。これだけのお金がかかったら、事前にそういう見直しなり補償なり等々行ったならば、もっと少なくてもっとスピードが上がってできるわけでしょう。私が申し上げているのは、補償というものはもうそういう形の時代。今は法律が違っているからできないとか、そうじゃなく、この際少なくとも補償の基準を見直しする、こんなことを行えばいいんじゃないか。

扇国務大臣 今おっしゃいましたように、今回の違う場合は何かというのが、まさに今先生が御指摘になったところでございまして、民間の皆さん方に対しましても、生活再建をも無視することない、今回はそういう必要がある、ここが違ってきたところでございます。

 例えば、建物に関しましても、建物の移転料そのものにつきましても、財産的な補償を重視した移設費の補償にかえまして、新たに建物を建築した場合に必要となる費用に着目して補償する、これも変わってきたところでございます。ですから、今までだったら出ていくそのお金だけでしたけれども、今回はそれにかわって、新しくお建てになるものに対しても補償できるという、これがやはり変わってきた部分でございます。

 あるいは、駐車場の一部が買収される場合におきましても、今までだったら買収地の財産価値に対します補償のみでこれを行っていました。けれども、今度は生活再建の観点からは、完全にその機能を維持するために、具体的には駐車場の立体化とか、あるいは他の駐車場の借り上げに要する費用、これも補償する、そういうふうに継続性を持って、しかも行き先まで面倒を見る、この辺のところが、民間の皆さんにとっても今までと違った、今回の収用法の見直しについて、よりきめ細かに、より民間の皆さん方に配慮した改正であるということが言えると私は思います。

田中(慶)委員 若干大臣と私の意見の違いというのが出ていると思います。

 大臣が言われていることはよくわかりますけれども、少なくとも基本は、官と民の格差をなくさなければいけない。官民格差という、大体今はこういう形でとられる。公共のものは一〇〇%補償されるけれども、はっきり申し上げて民間はそうではない。

 例えば大臣、二十年たった建築物が、今公共事業、土地収用の対象になる。この査定は、二十年経過後の建物として査定をされます。その材料を一〇〇%使って家はできないんです。その材料を使って新しく建築をすると、その差というものは当然自己負担になるわけであります。

 こんなことを含め、いろいろな問題が負担増になるわけでありますから、割り増しであるとか、公共の場合においては十年たとうが二十年たとうが一〇〇%補償されるわけでありますから、民間についても、そういう問題を含めて、この際見直しをされる必要があるんだろうと私は思いますけれども、局長、その辺どうですか。

扇国務大臣 これは大事なことなので。少なくとも私は、一般の国民の皆さん方が生活保障をしてもらうという、これが原則だと思うんですね。ですから、今先生がおっしゃいましたように、民間の皆さん方も、まず生活の保障をしてください、そういうことに関しては、私たちは生活再建のために最大限の措置を強化しようと、今回はそう思っております。

 また現実的には、私たちは、起業者が代替地の取得のあっせんでございますとか、あるいは代替建物の取得のあっせん、あるいは職業の紹介、指導または訓練のあっせん、こういうふうにちゃんと明記してございまして、今回は今までと違って、皆さん方に最大限、我々の持ち得る能力をすべて傾注して、生活に支障を来さないようにというのに配慮していきたいと思っております。

 足らざるは、どうぞ。

風岡政府参考人 大臣が申し上げたとおりでございますけれども、補償の考え方の原則は、先ほどのように、機能補償と金銭補償という大きな考え方があります。しかしながら、実際でも、民間の補償に対しても、できるだけ生活再建ということで、機能補償に近いような形でどんどん変化してきております。その意味で、私は、今一般補償と公共補償というのは余り差がなくなってきているというふうに思っております。

 ただ、補償基準においてその辺の考え方をきっちり整理をするということ自身はやはり必要なことだというふうに思いますので、先ほど来いろいろ御指摘をいただいております項目につきましては、法の施行までに、いろいろな有識者のメンバーを入れた会議等でその辺の取り扱いを十分議論して臨みたい、このように思っております。

田中(慶)委員 時間が参りましたので、以上で終わりますけれども、いずれにしても、この土地収用法というものが、それぞれ多くの地権者の皆さんの協力なくしてできないわけでありますし、あるいはまた地域住民の理解なくしてできないわけでありますから、この改正に当たっては、そういう問題をより重要視しながら取り組んでいただきたいということを要望して、私の質問を終わります。ありがとうございました。

赤松委員長 日森文尋君。

日森委員 社民党の日森でございます。

 最初に、今回の法改正なんですが、現行土地収用法が想定をしていなかった状況に対応するために、住民の理解の促進、一層の円滑、効率的な実施、循環型社会の形成の必要性から見直しをします、こう大臣おっしゃいました。しかし、この改正案を見る限り、そのねらいの焦点というのは、行政にとっての円滑かつ効率的な実施、これがすべてではないのか、そういう感じがしてなりません。特に、最も重視されるべき住民の理解の促進ということは、この改正案を見ても現行法を見ても、実態としては余り変わらない、もうこう言わざるを得ないんじゃないかというふうに思っているんです。

 確かに、この法律の改正については、知事会とか市長会からも恐らく要望があったと思うんです。しかし、現場で直接住民に接しているところでは、やはり違った動きも実際出ていまして、これはぜひ報告をしてくれと言われたんですが、脱ダム宣言を行った長野県の田中知事は、この改正法案には明確に反対だというふうにおっしゃっています。そして、現行法はきちんと確保しておこう、その上で、先ほど参考人の方々もるるおっしゃいましたけれども、入り口のところでの議論、計画段階での情報公開や住民参加、この手続をきっちりとやることにしよう、こういうふうにおっしゃっていまして、先ほど原科参考人からお話がございましたけれども、第三者機関と言っていいんでしょうか、処分場をつくるときの検討委員会をいわば独立してつくって、そこでしっかりと論議をして、その上で、事業認可について決断を下していこうというようなやり方もやろうとしているのです。

 そういう意味から考えると、必ずしも今度の法律が住民の理解を促進するということにはなり得ていないということを改めて痛感するのですが、大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思います。

扇国務大臣 私、いつも思うのですけれども、日森先生もおわかりになっていると思うのですけれども、法案を出しますときに、出す前から賛成とか反対とかいうのでは、私は違うと思うのですね。

 先ほども田中先生が公聴会の重要性をおっしゃいました。どんな法案でも、賛成、反対、両方から意見を出していただいて、それを参考にして、法案を修正するとか、あるいは補足するとか附帯決議をつけるとか、それがまさに国会審議の原点だろうと私思うのですね。そういう意味では、公聴会が形骸化しないようにとさっき田中先生もおっしゃいました、私もいつもそう思っています。

 国会でも、公聴会をして、その公聴会の先生方の御意見によって、それを取り入れれば、反対だったけれども賛成に回るとか、そういうことがあるのが私はしかるべき国会の審議であろうと思っておりますので、こういうふうに、賛成、反対、両方から御意見をいただいて、そして、皆さん方に委員会が公表されておりますので、そういう意味ではすべからく御審議に加わっていただく、第三者からも声をいただく、私にも委員会でたくさん皆さんから声をいただきますので、そういう意味では本当にこの国会の審議というもののありようが大事だなと私は思っています。

 始まる前から、これは反対だからと中身の審議を聞かないで、一地方の知事さんが反対だからとおっしゃったからこれは反対だと、それは一意見としては当然だろうと思いますけれども、全然論理が矛盾していますので。私はそれよりも、国会のこの御論議というものがいかに大事か、国会論議というものの尊重さあるいは重要さというものを日森先生はわかっていらしておっしゃっているんだと思いますけれども。

 今回、前と変わらないんじゃないかと今先生がおっしゃいましたけれども、少なくとも住民の理解の促進に関しましては、今回は大変な変わり方、そして、皆さん方の参加の機会が多くなり、また事業認可以前に住民の意見を聞くという、大変オープンな、そして皆さん方に参加していただける大きな変わりようがあるということをぜひ、三十年ぶりに改正できるんだということで、住民の皆さんにも参加意欲を持っていただきたい、まずそのことを申し上げておきます。

日森委員 私は別に田中知事が反対をしているから私も反対だと言った覚えはございませんで、しかも、私、まだ反対ということを一言も言っていないのですが、先に何か見透かされてしまいまして、さすが大臣という感じがしないでもありませんが。

 公聴会の話はまた後でしますけれども、公聴会は、現行法でも開くことができるんだけれども、結局開かなかった。今回は開くことを義務化したけれども、しかしそれは開くだけに終わるのではないかということなんですね。先ほどの参考人の中でも、フィードバックがなきゃだめだと、それを何度も何度もやるから実際に住民の合意が形成されていくのであって、もちろん時間もかかる、そういう制度になっていないじゃないか、これはやはり問題じゃないかという指摘もあったのです。それは後で触れたいと思います。

 ですから、一月に実施されたパブリックコメント、既に試案が出て、それについてパブリックコメントを行ったわけですよね。これについて多くの意見が、事業認定以前の事業計画段階で住民参加、情報公開の促進、行政の説明責任、これを求める意見が多数ありました、圧倒的多数と言ってもいいでしょう。それからまた、公益性についても、これを討議をしている段階で用地の取得や事業実施をしてしまう、これはやめてほしい、こういう意見が多かったのです。

 パブリックコメントというのは、これも聞きおくだけだったら話は別ですが、多くの公衆から意見を聞いて、法案をつくるときにこれを生かしていくという意味でやっているわけでしょう。ところが、この意見が一体どう受けとめられたのか、今度の法案の中でどう生かされたのか、よくわかりません。

 これを見ていると、さっきの公聴会も事業説明会も、やはり言いっ放し、聞きっ放しで、聞きおくぞということで終わるんじゃないかという不安があるのですよ。パブリックコメントの結果がどう生かされたのか、これをお聞かせください。

風岡政府参考人 パブリックコメントで貴重な御意見をいろいろいただきました。その中に、先生御指摘のように、事業認定以前の計画段階からの住民参加、情報開示の促進あるいは行政の説明義務を促進するというようなことを求める意見とか、あるいは公共性について討議をしている間は事業を中止すべきである、こういった意見、確かに多くの意見としていただきました。

 これは先生御案内のとおりでございますけれども、現行の土地収用法の仕組みというのは、公共の利益と私有財産との調整を図るということで、土地を収用する場合の手続とか補償の内容というのを定めているのがこの収用法でございまして、公共事業の計画手続につきましては収用法の中には取り込んでいない体系になっているということでありますので、パブリックコメントでいただきました事業の計画段階からの住民参加、情報開示等は、この法律の中に直接受けることは難しかったというのが、この法律上の限界であります。

 ただ、そういった御意見については、特に計画段階からの住民の参加というのは、私どもも非常に大切なことだと思っておりますので、公共事業を実施する場合には何も収用法だけでやっているわけではなくて、都市計画法あるいは河川法とか道路法とか、いろいろな法律の段階で、計画をつくり、またそれを事業に結びつけていくということであります。そういう個別法のレベルにおきまして、計画段階からできるだけ住民の御意見を聞くとか、あるいは情報公開をしていく、こういう取り組みは、収用法ではない、他の法律の運用において強力にやっていかなければならない。その意味で、私どもとしましては、この収用法の改正をさせていただくものとあわせて他の法令の適用についてもそういう気持ちでやっていきたい、このように思っているところであります。

日森委員 今局長がお話しになりました河川法とかそれから都市計画法、これは、私が本会議で質問したときに大臣からも御答弁いただきました。そこでも、ちゃんと住民参加やっているよというお話があったのですが、しかし、この河川法や都市計画法で実際に住民意見を反映するようなことが実態としてやられているのかどうなのか、私は大変疑問に思っているのです。

 ちょっと国土交通省に確認をしていただいたのですが、例えば河川、全国の一級河川は百九本あるそうです。これに河川整備基本方針が定められたのは十本しかない。その十本のうち、河川整備計画が定められた河川は二本しかないということ、これを国土交通省は確認をしています。二級河川でいえば、基本方針が定められた河川は六十六本、しかし整備計画の方は二十二本しかないのですね。

 それで、住民参加ができる段階というのは河川整備計画だけになっていて、基本方針については住民参加ができないのです。基本方針の中で何を決めるかというと、この河川にダムをつくりましょうとかいうことを決めてしまうのでしょう。決めてしまった後の整備計画だけに住民参加ができて、基本方針にはできないということだったら、これは十分に住民参加がされているということにはならないんじゃないだろうかというふうに思うのですよ。都市計画法についても住民参加を一応認めていますよ。公聴会の開催等住民の意見を反映させるための必要な措置をしなければいけないとそれぞれ書いてあるのですが、これも上位計画などに随分左右されていて、現実には非常に難しさがあるし、都市計画そのものの計画を変更するなんというのは至難のわざになっているわけです。

 そうすると、本当に住民参加が保障されているのか、それと、住民の意見が反映しているのか、実態としては大変疑問だと思っているんですが、それについてお答えいただけますか。

田中大臣政務官 今先生いろいろと御指摘があったわけでございますが、確かに数字的なものはそのようでございます。

 河川整備計画や都市計画の決定における住民意見の反映についてでありますけれども、また、私ども実施しております道路計画でのパブリックインボルブメントの試行等についても、あわせてお答えをしておきたいと思っております。

 まず、河川整備計画についてでありますが、平成九年の河川法改正によりまして、河川整備計画の策定の際に、地域住民や学識経験者の意見を反映させる手続を導入いたしております。また、既に河川整備計画が策定された河川においては、各河川ごとに学識経験者、住民団体の代表などから成る委員会を設置して、河川整備計画の策定のための議論を実施してまいりました。

 また、地域住民からの意見についても、住民説明会や計画案の縦覧などを通じて聴取した意見を計画へ反映させる方法について、委員会で審議することにより対応してまいったところであります。

 次の都市計画についてでありますけれども、決定に際しては、住民の意見を反映させるために、法律に基づく手続として、従来から住民に対し公告縦覧を行っております。

 さらに、都市計画の案の策定の段階から積極的に住民の意見を反映させるため、公聴会、説明会の開催等、住民の意見を反映させるための措置について、先般の法の改正により、昨年五月に、実は国の事務から自治事務に移管をされることが公布されて、それに基づいて昨年十二月に制定された都市計画運用指針において、原則としてこれらの措置を講ずべきことを地方公共団体に周知をいたしております。

 また、あわせてお話し申し上げましたけれども、三つ目の道路計画についても申し上げておきたいと思うのでございますが、これまでも設計、用地買収、工事などの各段階において地域の皆さんと協議を実施いたしまして、御理解を得ながら事業を進めてまいりましたし、この際、道路の機能の特性や通過地域の沿道状況などを踏まえて、さまざまな形で地域の皆さんの意見を十分把握できるように努めてまいったところでございます。

 さらに、バイパスなどの道路整備の計画においても、環境影響評価だとか都市計画決定において意見を集約する法的な手続だけではなくて、国民の価値観の多様化に適切に対応するためのアンケートの調査や委員会などにより、地域住民などの関係者の意見を広く聴取して計画に反映するパブリックインボルブメント方式を試行しており、平成九年のスタートから現在までに、直轄国道などの全国約二十カ所で実施をしておるわけでございます。

 今後、今御指摘がありましたように、地域の住民の意見を十分に反映する公共事業のあり方ということは当然原則の話でございまして、努力をしてまいりたいと思いますし、御指摘の点も十分受けとめてまいりたいと思います。

 以上でございます。

日森委員 当たり前の話で、原則の話というのはもう当然で、結局、パブリックコメントで出された意見を、そういうことだけでは不十分だという指摘だと思うんです。外国にあるように、責任を持ってもっとやりとりをちゃんとできるような、フィードバックがあってまた意見を言う、そういうやりとりがきちんとできて合意が得られるようなシステム、手続、そこまで踏み込んでつくらないと、公聴会を開きました、あるいは説明会の義務がありますというだけでは、住民合意、理解を得るための手続としては非常に不十分だということだと思うんです。それについて指摘だけしておきたいと思います、時間がなくなってきましたので。

 公聴会についてちょっとお伺いをしたいんですが、公聴会で出された意見については、参考意見として第三者機関に提供し、事業認定理由の中で住民意見をどう反映したか実態を明らかにしますというふうに大臣は御答弁なさいました。

 一つは、参考意見というのは一体どの程度重みを持ったものなのか。単なる参考ですから、ふっと吹いて消してしまっても結構ですよという程度のものなのかどうなのか。

 それから、第三者機関、これはまた後で触れたいと思いますが、これに市民代表を参加させること、こういうことは外国で随分やられているわけですが、それはどうなのか、むしろ当たり前のことではないのか。

 専門家だけが集まっていろいろ議論をするのも結構だけれども、そこにやはり利害関係を持った住民がきちんと行く、あるいは客観的な立場で判断できる市民代表が入る、そこで議論をしていく、そういう第三者機関にすることはできないのか。あるいは、公聴会で意見陳述をした人が第三者機関に行ってきちんと意見を言う、中立公正に判断してもらう専門家の方々にきちんと意見を聞いてもらう、そういうことについてお考えがあったらお聞かせいただきたいと思います。

風岡政府参考人 公聴会で出されました意見、これは当然住民等の貴重な意見ということになるわけでございまして、私どもとしては、これは事業認定の参考であり、また第三者機関から意見聴取をする場合に、当然貴重な意見として第三者機関の方へお伝えをする、こういう扱いをしていきたいというふうに思っております。

 先生、第三者機関に市民代表というかそういう方が入るのがいいんじゃないかという御指摘でございます。第三者機関というのは、いろいろな分野の方々の専門的な、あるいは有識者の意見をお聞きするというのがまさに第三者機関の意味でありますので、この段階では、第三者機関に市民の代表が入るというのはいかがかなというふうに思っております。一般の市民の声というのは、事前説明会とか公聴会あるいは通常の意見書とか、そういう中で十分把握をしていきたいというふうに思っております。

 また、第三者機関のところへ地権者が出席をして意見を述べるということでございますけれども、これは、今申し上げましたように、第三者の専門的また有識者の意見をいただくということで、住民の意見というのは第三者機関の方へお伝えをしているということでありますので、御出席して御意見をいただくというところまでは必要がないのではないか、このように考えております。

日森委員 公聴会の御意見をお伝えするのは行政の裁量でありまして、そういうところに不信感が生まれてきて、それが公共事業がうまくいかない、紛争が起きる、そういう一つの大きな原因になっているんじゃないかと思っているんです。

 第三者機関についてですが、先ほど田中先生からも効率性、中立性のお話がございました。私は、それに加えて、専門性は大臣もおっしゃっていますが、独立性とか透明性、こういうものをしっかり担保した委員会でなければならないと思っていますし、そういう意味では、国土交通省が所管する委員会であったとすれば第三者機関とはとても言えないというふうに言わざるを得ないと思うんです。大臣は一生懸命、いや、そんなことはない、清廉潔白にやりますというふうにお話ししていましたけれども、これまでの中身を見ていると、どうもそうは言えないんじゃないか。

 そういう意味では、第三者機関について、例えば国家行政組織法の第三条委員会にするとかいう形で、全く国土交通省、所管の官庁から独立をして、もうちょっと言えば、いわば議会だけに責任を持つというような、そういうきちんとした機関にして、そこできっちり論議をしてもらう、そういう格好が望ましいんじゃないかと思うんです。そうでないとやはり色眼鏡で見られる。国土交通省、いや、確かに先ほど答弁されたのは総合政策だから関係ないといったって、局長だってどこかへ異動して何かの局長になることがあるわけですよね、道路局長になるかもしれないし、いや、もっと偉いのかもしれませんけれども。そうなってくるわけですから、それは今はそうだって、なかなかそういうことについて国民の側は理解できないと思うんですね。

 そういう意味で、ちょっと幾つか質問をはしょっていますけれども、第三者機関、まさに文字どおりの第三者機関としてやっていくことについて御見解を伺いたいと思います。

風岡政府参考人 三条委員会というような形の御指摘、これは確かにパブリックコメントの中でもございました。そういう御意見があることは十分私どもも承知しております。

 ただ、三条委員会みたいなものを設けることにつきましては、一つは、やはり新しい組織ということになりますと、行政改革というようなこととの関連あるいは業務の処理量との関連ということで、そういった独立的な機関というのがいいだろうかということ。

 それからまた、こういう事業認定の判断というのは、やはり専門的な知識とか技術的な知見とか、ある程度そういうものに裏づけられる必要があるのではないかというようなこと。

 それから、海外の事例も一つの参考になるわけでございますけれども、海外の事例も、これはいろいろな前提の違いがありますけれども、基本的には事業省庁のところでこの判断が行われるというのが通例なわけでございます。

 そういったことから見ると、今のやり方の中で改善をするということが現実的ではないだろうかということで、この改善の中身は、先ほど大臣から御説明がありましたような形で、メンバーの選び方の厳正性とか、あるいは役所の身がわりになるような機関にならないような人選だとか、また、そこで行われた審議をオープンにしていくということ、それからまた、そこで得られた意見については、やはり原則尊重する。そういうことを通じて、できるだけ今のやり方の中の工夫で、中立性、公平性というものを確保していきたい、このように思っております。

日森委員 全然わかりません。

 なぜ、できないのか。役所の都合はわかります。しかし、国民の側からいうと、なぜ三条委員会にできないのか、全く独立した委員会にできないのか、機関にできないのか、理解できません。

 外国の話をされました。これも、大臣も本会議で私の質問に対して答弁いただいたのですが、外国も、確かに所管する官庁が認定しているというような話になっていますが、その経過については大分違うんじゃないですか。この国のやり方とは大分違う。アメリカにしたって、例えば、裁判、司法の判断が入っていますね。イギリスとかフランスも、先ほどお話が出ましたけれども、経過については大分違う。そこで十分いろいろな調査が行われ、情報の開示も行われ、審査も行われ、その上で出した結論をいわば行政が追認するような格好で認可しているんじゃないでしょうか。そういう思いがあります。

 ですから、そういう意味からいいますと、この第三者機関というのは極めて重要な位置を占めている、こう言わなければならないと思うのです。それについて、行政の都合だけで、例えば、行革だからできないというのはちょっと理由にならないと思うのですね。小泉さんは、構造改革をやるけれども必要なところは金を使うというふうに言っているので、これは本当に民主主義の根幹にかかわる問題なんだから、ここには金を出しなさいと、大臣、言ってくださいよ。そうでしょう。人にやらせて。

 専門性だって、できないことはないのですよ。本当に民主主義を保障していくんだ、これからの公共事業は住民と一緒にやっていくんだから、住民が納得できるまでどこまでもきちんと議論をするし、そういう第三者機関できっちり判断していこうという態度を示す。それにお金を使うんだったら、できないはずがないんです。

 どうですか。大臣、何か言いますか。

風岡政府参考人 基本的なことは先ほどの答弁と同じということにならざるを得ないのですけれども、私どもとしましては、今やっているようなやり方というのは、国際的に見て、事業部局においてできるだけ客観性、合理性を確保しながらやっていくと判断をするというやり方、これが一般的、国際的なスタンダード等から見て外れたものであるということかどうかということについては、私どもの理解はこれが通例だと。

 確かに先生のおっしゃるような形で、やや行政裁判所的なところが関与したりするというのは一部にございます。だけれども、通常のやり方は、私どものやり方というのが、国際標準だと言うのもちょっとオーバーですけれども、そういう範疇に入っているのかなと思います。

 ただ、やはりできるだけこういう行政に対する信頼あるいは中立性というものを確保するために、その枠組みを維持しながらも、今回のものについては最大限、透明性とか公正性とか、そういうものを確保するように努めたつもりでありましたので、運用面でその実を上げていくということがより重要なのかなというふうに思っております。

日森委員 ですから、それはもう行政の論理というふうに先ほどから申し上げているのです。

 というのは、こんなことがありました。

 これは、関連していますと言ってもいいと思うのですが、事業認定を国土交通大臣が行います、起業者も国土交通大臣だったとします。これは裁判の資料なんですが、名前は申しわけないので伏せます。

 現在内閣法制局第一部にいらっしゃる方が、実は、徳山ダムという今係争中のダムがございまして、そこの裁判の証人にお出になりました。事業認定がいかに正しいかということをそこで御証言なさるのですが、この方は、この徳山ダムを管轄している中部地方建設局河川部にいらっしゃった方なんです。結局、徳山ダムは責任を持ってやりますと言った人が、ずっと異動していって、今度は裁判になったら証人に出てきて、それは正しかったということをやる。これはもうお手盛り以外の何物でもないという感じがするのですね。

 こういうことがあるから国民の側は、第三者機関というのはもっとしっかりしたものでなければだめだ、それから、国土交通省が起業者で国土交通大臣が認可するようなやり方はだめだ、こう言っているのですよ。こういう事例というのは、これだけじゃないかもしれませんけれども、独立していなければ、やはり出てこざるを得ないのです。

 そのことを心配していて、そういうことが続いていけば、ますます行政に対する信頼感というのは失われていくし、公共事業は前に進まないということになるんじゃないでしょうか。これについては御答弁は要りませんけれども、そういう意味で、ぜひ検討していただきたいと思っています。

扇国務大臣 今のお話で一番大事なところは、だれが最後の責任を持つかということになってくると私は思います。ですから、大臣の事業認可ということは、少なくとも国土交通省として全責任を持つということのあらわれであります。

 特に継続性とかなんとかいろいろありますけれども、国民の皆さんがまず安心、安全を思っていただかなければならないと私は思いますから、事業をする限り、だれが責任を持つか、最後までだれが責任をとるんだ、そういうことの明確化のためには、今の方法で、第三者機関の皆さん方の御意見を聞いて、そして多くの住民の皆さんに公聴会等々に御参加いただくことで、窓を閉じていないのですから、そういう意味では、今回の改正でより多くの住民の皆さん方の御意見が拝聴できるようになる、そこが今までと特に違う。公聴会を義務づけるということも大きな変化であると私は思っております。

日森委員 大臣のお言葉はそれなりにわかりますが、それを担保する制度がないということなんですよ。公聴会は義務づけました。住民の意見は尊重します。では、尊重するのはどうやって尊重するのですかというと、行政の裁量なんでしょう。そういうことへの不信感を持っているということじゃないんでしょうか。これは質問じゃないのです。後で私の同僚の保坂議員がやることになっています。

 大臣に最後にお聞きをしたいのです。

 ちょっとはしょって申しわけなかったのですが、収用裁決手続が合理化されました。幾つか問題点があって、それについても質問しようと思ったのですが、この合理化については、私はどうも行政側の政治的な判断が多分に作用しているのではないか、そう思えてなりません。

 強引な公共事業のあり方に対して、これは代表質問でも申し上げましたけれども、住民側がどうにもやりようがなくて抵抗する手段としてあったトラスト運動を排除するのが目的の一つにあったのじゃないか、こう思えてならないのです。それが、補償金払い渡し制度の合理化であったり、代表当事者制度、これは外国では余り例がないようですが、これを今回突然導入してきたり、そういうことになっているんじゃないか、そんな気がしてなりません。

 私は、そういう運動というのは、むしろ公共事業をやっていく上で避けられない課題なんだから、こういう形で無理やりねじ伏せてしまうようなことは避けていただきたいというのが一つありますし、同時に、それは、東京都が申請した中身がそっくりそのまま法律の改正案になっているわけですから、というふうに私も考えるのですが、だから、そう思うのですが。

 なぜ、そういうトラスト運動のような運動が起きてしまったのか、その基本的な原因は一体何なのか、どういうふうに総括をされているのか。その上でこの法案の改正が出たのか。大臣に最後に、簡単で結構ですから、お聞きしたいと思います。

扇国務大臣 今、日森先生がいろいろおっしゃいましたけれども、私たちは、今回の土地収用法の改正に当たりましては、まず事前説明会そして公聴会の義務づけ等々、それを基本にして第三者の機関で意見聴取するから、トラスト運動を排除することを目的としてとおっしゃったことは当たりません。

 なぜなれば、では、トラスト運動で、それがよかったのかということも私は反省材料の一つであろうと思います。正直申し上げて、喫緊の例を申し上げなければならないというのはそういう意味でございます。

 東京都の日の出町の廃棄物の処理場におきまして、坪数にすれば約百四十坪でございます。そこに何と二千八百名の権利者がいるわけでございます。しかも、その中で二千四百三十一名、八六%の人は域外の人です。その中に住んでいる人、本当の人たちはその残りしかないのですね、一四%なのです。八六%が外部から、しかも百四十坪の土地に二千八百名の権利者がいるというのは異常ではないでしょうか。私は、これは正常ではないと思います。これはトラスト運動ということとは違うと思うのですね。そういう意味で、この百四十坪の土地、五千七百万円の補償金の土地、物件に対して約十億円の経費を要したのです。

 そういうことで、私は、トラスト運動を排除するための法案であるということだけは違うということだけは明快にしておかなければならないと思います。

日森委員 大臣の総括はわかりました。同僚の保坂議員がその点については改めて正しい意見を申し上げたいと思いますので、私はこれで終わります。

赤松委員長 保坂展人君。

保坂委員 社会民主党の保坂展人です。

 ただいまの扇大臣の答弁が私の質問の内容ぴったりの話題でございますので、早速入らせていただきたいと思います。

 今大臣もおっしゃったように、今回の土地収用法の立法動機、一番の引き金になったのが日の出町のごみ処分問題、トラスト地をめぐる収用手続の問題でした。

 私自身は、この第一次の処分場にも四年前に行ってまいりました。そして、トラスト地にも入りまして、その二千八百人の幾ばくかの、全員ではもちろんありませんが、恐らく何十人かの人たちと会ってお話もしました。さらに、収用委員会、これは日比谷公会堂であったわけですが、恐らく国会議員としてはただ一人、この収用委員会、一回目は傍聴をしてやりとりを聞かせていただくことができました。

 実は、この収用委員会に出ていて大変勉強になりました。こんなに大事なことが起きているのかということで、改めてこの問題を考えました。

 先ほど、参考人で前東京都収用委員会会長さんがおっしゃっていましたね。この問題、結局収用委員会を開いてみてわかったのは、新たな第二次の処分場問題ではなくて、第一次の既につくられたごみ処分場から、汚水データあるいは土壌の汚染のデータ、こういうものが実際になかなか明かされなかった、そういうところで一部事務組合と住民との間の不信がさらに裁判につながり、トラスト共有地につながっていったと思います。

 実は、私は、ぜひこの問題、直近の例でと大臣もおっしゃったので、本来なら参考人の中にトラスト運動を推進した地元の住民である絵本作家の田島征三さんに来ていただけたらいいなと思ったのですが、残念ながらそうはならなかったので、御連絡をとって、どのように今お考えになっているかということをお聞きしました。

 簡単に紹介をいたします。これは、田島征三さんのメッセージということで私が受け取ったものでございます。

  第一処分場から、有害物質が漏れ出し、周辺住民に被害が出はじめているというのに、そのデーターをかくして、第二処分場を強引に建設した。

  日の出の処分場建設は、私の住む、第二処分場地元とされた集落の合意をとるところからはじまりました。猛烈なやり方で、反対意見を封じ込め、地元は、賛成しているということにしてしまったのです。

  わずか百世帯の地元の合意が、この巨大処分場建設計画の中で、常に、錦の御旗となったのです。

  しかし、住民の多くは、心の底では、決して納得していませんでした。

  建設予定地内の複数の地主さんたちが、トラスト地売却を、反対住民に申し出たのです。この事実から、行政や集落のボスからのおどしにもかかわらず、地元では、根強い抵抗があったことを知ることができます。

  そして、ゴミを持ち込む三多摩住民をはじめとする、二千八百人の人々が、真のゴミの解決を行政と共に創り出したい一心で、地権者になってくれました。

  この段階で、行政は、計画の見直しをするべきだったのです。

  ところが、行政は、土地収用のみにこだわり、十億円に近い公金と莫大な時間を無駄使いしてしまいました。

  だから、土地収用法を改正するというのなら、話はまさに、逆立ちしています。

  日の出町第二処分場計画に関しては、公害審査会も、アセス説明会も、土地収用公開審理会も反対意見を云わせっぱなし、聞きっぱなし、でも、結論は、すべて、行政のおもわく通りでした。これをみせかけの民主主義というのでしょうか。

  その上、住民にとって、最後の抵抗手段をも奪い取るのでしたら、日本はますますとんでもない公共事業がこれからも強行されてゆく、土建国家となってゆくでしょう。

  第一処分場周辺では、飛散した焼却灰によるとみられるガン死者が、急増しました。私自身も現在ガン治療中です。

  でも、この事実さえも、行政によって、なかった事と、されつつあるのです。

 私は、田島さんは以前から知っていますし、大変すぐれた作品も残しているのですけれども、がんに倒れられて今闘病中ということで、この日の出町から静岡の方に転居をされて静養している中で、このようなメッセージをいただきました。

 そこで、国土交通省に伺いたいのですけれども、まず、この収用委員会での議論がこれだけ長引いた、あるいは二千八百人にも上る地権者が生まれてしまったということは、健康と安全のための情報公開、最初のボタンのかけ違いの部分で、そこが不足していたというふうに思うのですが、その点の認識を改めて、大事な点ですから問いたいと思います。

風岡政府参考人 確かに、午前中の参考人の御意見の中で、第一処分場の話も出てまいりました。

 第一処分場につきましては、それはそれで係争になりまして、先生御案内のような結論に達しているわけでございます。

 私どもとしましては、そのデータの問題については、裁判上処理をされておりますので、第二処分場は、それはそれとして、事業認定の手続を経て、それで公益性が判断されたわけでございます。事業ですから、いろいろ反対の方がいるというのはもちろんあるわけでございますけれども、公益性が判断された段階で、その後収用委員会の段階でそれの議論をずっと続けるということはいかがかなというふうに思います。

 そういった方々についての救済としては、行政不服審査法とか、あるいは国家訴訟とか行政訴訟とかいろいろな道もあるわけでございますので、そういう意味で、本来の権能のないところでの議論が続いたということ自身は、非常に残念なことだと思っております。

 ただ、こういった事例をもとにして考えると、いろいろ計画段階からの住民の理解を得るような取り組みというのはもちろん必要だな、その点についてはそのように思います。

保坂委員 先ほど来扇大臣もおっしゃっていますけれども、これは、わずか七百万円程度の土地を取得するのに、きょうの話だと七億円かかった、これはいかにもひどい話だということで、わかりやすいのですね。七百万円に対して七億円。

 ところで、きょう午前中、原科参考人が指摘をしていらっしゃったのですが、その七億円の三分の一強の二億五千七百万円が二千八百名を超える地権者のデータ処理委託費、こういうことになっているようですね。

 とすると、何か計算が間違っているかもしれませんが、一人当たり十万円近いデータ処理料ということになるのではないか。これはちょっと破格じゃないかと思うんですね。つまり、二千八百人のデータベースをつくる、これをどこかの企業に委託する、こういうことなんでしょうけれども、どうしてそんなにかかったのか、どのような企業にどんな処理内容を依頼するとこういうふうになってしまうのか、この点、いかがですか。

風岡政府参考人 午前中の参考人の御質疑でそういった問題が提起されましたので、私なりに、地元の広域処分組合の方から経費の内訳というものをとってみました。

 先生御指摘のように、全体の経費の中で、二千八百人を超える権利者の方々のデータ処理委託費として、二億五千七百万かかったという報告を受けているわけでございます。そのほか、当然、権利者についての土地証書、物件証書をつくるとか、あるいは九十人の方々を補償金の支払いのためにアルバイトみたいな形で採用するとか、いろいろな経費があるわけでございます。

 現時点では、そういった形での報告を受けておりまして、データ処理委託費の細かい内容まで、午前中の話でありましたので、ちょっと確認をしておりませんけれども、当然公表されておりますので、そういった方々のデータ処理のために当然適正に使われているというふうに私は思っております。

 ただ、内容については、それ以上のデータを、今細かい書類を持っておりませんので、さらなる説明はちょっと差し控えさせていただきたいと思います。

保坂委員 これは恐らく一部事務組合からの、この簡単な予算決算表をごらんになったと思います。

 私は、二千八百人の地権者データの処理のための二億五千七百万円というのは、ビジネスベースの常識をはるかに超える価格かなと思いますし、また、今局長もお話しになったのですが、これは、七百万円で七億円というのは、全部この受け渡しに使われたという印象を我々は持ったのですね、あれはそんなにかかるものかなと。

 ですから、この補償金受け渡しに係る訪問旅費が一体どれだけだったのかというようなことも全部つまびらかにしていただけますか。今は結構ですから、概算じゃなきゃできないでしょうから。

 さらにもう一点指摘しますと、原科先生のお話もあったのですが、海外に住む五人の地権者をお訪ねして、出張に出られて、一人当たり百万円かかったと。これも、我々の感覚からすると、どんなものかなと。どのようにかかったのか。具体的に、この七億円の中身について、納得ができるように後で示していただけますか。

風岡政府参考人 今いろいろ御指摘をいただきましたけれども、特に補償金の支払いにそんなにお金がかかるはずがないというようなことがありましたので、この点は大きなポイントだと思いますので、ちょっと数字だけ申し上げたいと思います。あるいは先生がごらんいただいているものと同じものを見ているのかもしれませんが。

 二千八百人余の補償金の支払いのために、応援職員というのを九十名、人件費を確保しておりまして、これだけで三億七千五百万というふうに聞いておりますので、やはり個別に補償金を持っていくということについては大変な経費がかかるということは明らかだ、このことだけは申し上げたいと思います。

保坂委員 ですから、経費がかかったというのはわかる。経費はかかったでしょう。しかし、このそもそもの議論の根拠がわずか七百万に対して七億とか十億とかという話になっていますので、だから、これは直さなきゃという話になっているので、大変大事なデータなんです。

 これは委員長にお願いしますけれども、委員会に、細目どのように使用されたのかを提出をお願いしたいと思いますが、委員長、いかがですか。

赤松委員長 はい、わかりました。はい、検討します。

保坂委員 次に、公共事業は走り出すとなかなかとまらないわけなんですけれども、この土地収用法の御説明を聞いていますと、やはり行政の方も数々の、これは日の出のことも含めてなんでしょう、公共事業というのは、一たん決めれば行け行けどんどんで、絶対に引き返さないのだということじゃなくて、住民に対していろいろ開示をしたり、情報を出したりとったりしながらいくのだということに一応なっていると思うんですね。表向きはと言ったら反論がおありでしょうけれども、そうなっている。

 実は先週末、土曜日でしたけれども、沖縄にある南西諸島最大の干潟、泡瀬干潟というところに行ってまいりました。これは干潮時には最大二百九十ヘクタールという大変大きな干潟なんですね。どうして行ってきたのかといえば、実はぜひ来てくれという要請があったから行ったのですね。これは公共事業をチェックする議員の会という単位で見てまいりましたけれども、歩いても歩いても飽きないですね。水たまりの中に貝はいるわ、カニはいるわ、子供たちもそこで一日じゅう遊んでいる。我々都会に住む者からすれば、非常にいやしの場である。沖縄本島の中でも、これだけ広い干潟というのはそうないというふうに聞いています。ところが、この干潟は、実はこの夏に埋立工事が始まります。

 そのあたりの経過について、公共事業の質が本当に今変わってきているのかどうかを検証したいので、お聞きをしていきたいと思うんですけれども、当初、この埋め立ての内容を見て、その干潟を歩いてみて、率直に言って、私は驚いたのですね。なぜなら、その計画は、その干潟の中央部に人工島をつくって、そこにリゾートホテルを誘致して、海岸を人工ビーチでつくって、観光客をお招きするという発想なんですね。シーガイアの破綻もしかりで、私は、沖縄の自然を全部観光資源にしてというのは、これはちょっと発想が余りにもバブル時代の、昔の発想じゃないかというふうに率直に言って感じたのですけれども、実は長いこと温められてきた計画で、平成九年六月の段階で、平成十年度新規国庫要求を二十五億したけれども、これは認めてもらえなかった、国の方から却下されたということを現場で聞きました。

 どういう理由で却下されたのでしょうか。

安達政府参考人 お答えを申し上げます。

 この事業について地元から予算要望がなされましたのは平成九年六月ごろでございます。平成十年度予算に関連してのことと承知をしております。

 この中城湾港港湾計画の中に位置づけられております新港地区の港湾整備に伴いまして発生する土砂を泡瀬地区の埋立土砂として利用するとの事業の前提が、この平成七年の港湾計画の段階から置かれておったわけでございますけれども、この両地区の整備というのはそういう意味で相互に連動するものでございました。

 しかし、当時、平成九年の六月という状況を振り返ってみますと、新港地区の政策的な位置づけがいまだ不明確な時期でございました。

 ちょっと詳しく御説明申しますけれども、御承知の方もいらっしゃるかと思いますけれども、当時は大田県政下でございました。一部の地域じゃなくて、全県フリー・トレード・ゾーン構想というのが盛んに議論されておりました。私ども政府サイドとしては、こういった県の議論に対して、どういうふうな受けこたえをしていくべきかということで、県の検討と並行して、総合研究開発機構、NIRAに研究会をつくっていただいて検討をお願いしておりました。

 県自身の国に対する要請自身も、ようやくまとまりましたのが平成九年の十一月の初めでございました。それを受けて、今申し上げましたNIRAの研究会の中間報告を十一月の下旬に行うというようなことで、そういった中で地域を限定した特別自貿地域制度ということで、ようやく県と国の歩調がそろったわけでございました。

 それを受けて、翌年平成十年に入り……(保坂委員「ちょっと待ってください、その前の段階まででいいです」と呼ぶ)そういうことで、この特別自貿制度が、国会に、沖振法の改正案ということで上程をさせていただいたということで、平成九年段階において、政府として、この新港地区の位置づけが、県の議論も途中であったということで明確でなかったというのが大きな背景としてあるものと私どもは理解しております。

保坂委員 聞こうと思っていることをずっとお答えになっちゃうと、ちょっと質問のペースが狂ってしまうので、お答えは簡素にお願いしたいんですね。

 今、新港の計画が不備だったということなんですが、地元自治体のこの資料では、大規模開発で、リゾート開発であってリスクが大きい、あるいは余り急ぐ理由はないじゃないか、バブルがはじけた中、国の財政も厳しい中で、これはちょっと見直しが必要だという、かなり厳しい意見が出たんじゃないですか。その点についてだけ答えてください。

安達政府参考人 バブルの昭和六十年当時に基本的な計画があり、これは余りにも過大過ぎるということで地元でも議論がありまして、その後、規模を縮小し、また人工島方式ということで、陸域から直接埋め立てで続いていくということでなくて、干潟の大部分でございますけれども、保全する形の計画に、途中のそういった議論を通じて縮小された計画になっていったという経緯は存じております。

保坂委員 それでは、国土交通省の方にちょっと伺いますが、同じ平成九年の十一月に当時の運輸省の方で、この新港地区の港湾も十分な需要がないのではないか。実は埋立地は二つありまして、新港地区というのはもう既に埋め立てられているすぐ近くの埋立地なんですが、新しくその隣に別の、干潟がきちっと残っているところにもう一つの埋め立てをやるという計画なんですね、これは。それについて、旧運輸省では、もう既に埋め立ててしまった新港地区の港湾需要も必ずしも展望ないよと言って、廃棄物埋立護岸による方式を推薦したというようなことがあったと思うんですが、その経緯をお願いします。

川島政府参考人 廃棄物埋立護岸を検討した事実はございます。港湾管理者であります沖縄県の方で、財政上の事情ということで断念したというふうに伺っております。

保坂委員 では、続けて伺いますけれども、実は、先週の土曜日、これは世界遺産にも指定をされた勝連という昔のお城の跡で、お城の跡ですから全部見渡せるところですね。そこで、二つの、予定地と既に埋め立てられたところ、それからFTZの指定地を見ながら、いろいろ議論させていただきました。

 FTZの方は、九十社入るはずがまだ四社なんですね。台湾などに誘致に一生懸命に行っているんですが、なかなか企業が来てくれない。このようにおっしゃっていました。また、もう新港の方で港ができているわけですけれども、荷の扱い量は、予想をしていたあるいは予定をしているところのまだまだ下のライン。しかも、加工貿易地域ということでこれは形成していこうという計画があったようなんですけれども、ほとんど輸入と移入ですか、外から荷が来て、出ていくものはほとんどないということなんです。

 現場の皆さんとお話をしたのは、実は、今回の泡瀬の干潟を埋め立てる国の直轄事業の中身というのは、新しくFTZの前の海を深くしゅんせつして大型船が来るようにできて、その土砂を干潟のところにどんどん移して埋め立てていこうという内容になっているんですね。したがって、このしゅんせつをそんなに焦る必要はないんじゃないかと言ったら、現場の方はそんなに急ぐ理由はないとおっしゃっていましたけれども、このあたりの需要予測はどうなんですか。現状を踏まえて、いかがでしょうか。

川島政府参考人 中城湾港の新港地区でございますが、これは、三期に分けて事業が進められております。

 御案内のとおり、一期地区におきましては、分譲用地約七十ヘクタール、これは九九%以上分譲が進んでおりまして、企業立地が進んでおります。一期地区計画で整備をしました航路泊地、岸壁、これにつきましては年間百十万トン扱う計画でございまして、実績も百十万トンということで、当初の計画どおり予定されております。

 現在進めておりますのが二期地区でございます。二期地区につきましては、用地造成は完了しております。分譲用地約六十五ヘクタールのうち約三割が分譲済みでございます。一方、これに対応する港湾施設につきましては、企業の立地動向を見ながら、現在、用地前面の岸壁と泊地の整備を進めているところでございます。

 なお、三期地区でございますが、三期地区につきましては、現在、用地造成中でございます。港湾施設につきましては、いまだ整備に着手をしておりません。現在整備中の二期地区の港湾施設の完成後、その利用状況を踏まえて整備に着手する予定でございます。

 さらに、今後、特別自由貿易地域への企業立地、これが計画どおり進んだ段階では、新港地区全体で年間三百五十万トンの貨物を取り扱うということを見込んでおります。

保坂委員 そういう話を現地で、全く同じ数字を聞きました。けれども、九十社が入る予定のところにいまだ四社しか入っていないというのもまた事実でございます。

 そこで、扇大臣に伺いたいんですが、これは余り細かいことではありません。干潟の持つさまざまな力、生命の力というふうに言ったらよいでしょうか、諫早湾の干拓をめぐり、あるいはあの水門を閉じることをめぐって大きく関心が高まりましたね。その後、藤前の干潟、これは名古屋市のごみ処分場計画がすんでのところで撤回をされました。そして、千葉・三番瀬、これもいろいろな議論があったけれども、干潟を残す方向で議論が今進んでいます。

 扇大臣に伺いたいんですが、これはこういう図面で見ているとなかなかわからないんですよ、行ってみると、いや、なかなかすごいところだと私は実感したんですね。こういう干潟を人工島で埋めて、リゾートホテルを誘致して、そしてわざわざ人工海岸をつくるという発想は、ちょっと一時代前のものじゃないかなと私は思うんです。もちろん、これは地元が要望してきたことに対して国が直轄事業で援助しているという内容ですから。しかし、公共事業に多くの税金が注がれていくあり方として、特に干潟の保全ということについて、大臣の見解、伺いたいというふうに思います。

扇国務大臣 干潟そのものの重要性、これは環境面からいっても大変重要な、また、二度とつくり得ない自然の宝庫だと私は認識もいたしております。

 ただ、最近あらゆるところでそういうことが問題になっておりますけれども、これは少なくとも、今内閣府からお答えがございましたけれども、沖縄県の政策とあるいは内閣府の判断。

 それで、私どもが今皆さん方に言えることは、この整合性、事業の発展、あるいは今先生もおっしゃいました、大きな港をつくって、そしてリゾートとして経済的な発展をしていきたいという地元の皆さん方の、これは一部なのかどうなのか私まだ詳しくわかりませんけれども、先生お行きになって、住民のみんなが干潟よりも経済効果を重視したいんだと思っていらっしゃるのか、あるいは一部の人が一部の利益のためだけにそのような計画がなされたのか、その辺のところは私わかりませんからどうこうは言えませんけれども。私は、両方とも大事だと思っておりますので、その整合性をどこに見るか、これが二十一世紀の大きな問題であろうと思います。

 地元の皆さんの総意があれば別ですけれども、地元の経済効果、そういうものを考えながら、どうあるべきか、私は、これは住民の皆さんの意見を聞きながら、所管の沖縄県と内閣府できちんと判断をしていくべきだと思っております。

保坂委員 干潟が大変大事であるということは扇大臣も認識をされていると思います。

 また、生態系がおもしろくて、もう一つの干潟にも行ってみたんですけれども、シオマネキというはさみの片方が大きなカニがそこの隣にある佐敷干潟だけで何種類もいるんですね、そこにしかいないもの。極めて複雑な、しかも太古の昔から続いてきている生態系でございますので、やはりこれは地元の意識もかなり最近になって変わってきているようです。鈴木規之さんという琉球大学の教授がアンケートで調べたところでは、干潟の埋め立てについては必要だと思わないという方が六八%という結果も出ているんです。

 そこで、内閣府の方、地元総合事務所で、要するに先ほど産業振興のために大型船が来れるように、着岸できるようにとしゅんせつをするということは、僕は、それは振興のために、いろいろな数値が出て予測できるのならそれはそれもありと思うんです。しかし、その土砂を干潟に置く、両方のセットになっているんですね、事業が。そういうことも、やはり環境保全の視点から慎重に、これは住民の意見を聞きながら、考えていくべきじゃないかと思うんですが、大臣、その点についていかがですか。

扇国務大臣 それは先ほど私が申しましたように、事業重視かあるいは環境重視か。先生が地元で見ていらしてその重要性を認識していらっしゃるのであるから、今後もぜひそのことについて大いに主張して、また両立できる点はどこなのかというのをお探りいただくべきだろうと私は思います。

 この間もNHKでずっと生態系を私も拝見しておりまして、なかなか自分自身で見に行く時間がないものですから、藻場がなくなって生態系が変わってきて絶滅の危機にあるということも私はよく拝見させていただきました。自分の足で見に行けなかったのが残念ですけれども、日本じゅうのあらゆるところでそういうものがある。

 藻場を失うことなく、あるいは藻を大事にすることによって生態系が絶滅に瀕しない、また生物の強弱もありますし、その藻を食べているのをまた食べに来る、それによって生きている、そういう自然体系というもののありようをどこまでこの狭い日本の中で保持し得るか。経済効果との整合性は、先生も現地へいらしたことで今後も皆さん方に啓蒙し、一番良好な方策を、両立できるようなところはどこにあるのか、ぜひ御参考意見をまたお聞かせいただければと思います。

保坂委員 今扇大臣から私の最後の質問の部分を全部おっしゃっていただいたので、大変そこは、干潟の重要性と、そしてまた産業振興という重要性もある。そこは地元の皆さんの意見を基本にいろいろ知恵を出していきたいと思います。

 さて、東京でも、これは石原都知事が中心になって、外環道のいわばたたき台というものが出てきたようでございます。これについて、ちょっと二つだけまとめて道路局長に伺いたいんです。

 今、各地で説明会が行われていると思いますけれども、このインフォメーションの範囲はどの程度の範囲で、関係する住民というのをどのぐらいのエリアでとらえておられるのかという点。

 それから、地下方式が検討されているんですけれども、地下方式の場合、万が一の事態、火災事故だとか、あるいは爆発物、危険物を積んだ車の車両事故だとか、そういうことの爆風だとか、あるいは火災の熱だとか、そういうものが、幾つかの検討されている候補の中で住宅街の下をトンネル状にというのがありますよね。そういうことの危険性をどの程度議論されているのか、その二点に絞って伺いたいと思います。

大石政府参考人 まず、外環道のたたき台の周知のことでございますが、現在、地元七区市の住民を対象に、例えば新聞の折り込み九十三万部でありますとか、あるいは説明会を実施させていただいております。また、この範囲内の地元の自治会等から御要望がある場合に、説明会等に東京都及び関東地方整備局の職員が伺っているという状況でございます。

 次に、トンネルの火災等が生じた場合のお尋ねでございます。

 現在、もう既に同種のトンネルが首都高速の中央環状線という形で環状六号の下に整備されております。そこでも同様の安全対策を講じているところでございますが、外環道を整備する場合にも同様の安全基準を設置することになると考えております。

 それは先生も御存じだと思いますが、昭和五十四年に道路公団が管理いたしております日本坂トンネルで大変大きな火災事故がございまして、七名の犠牲者が出るといったような不幸なことがございました。その際に、トンネルが備えておるべき安全基準、我々はそれまではA基準というものが最高の基準であったわけですが、それではこの事故に対応することができないという教訓を得ましたので、AA基準というのを新たに設けることとなりました。トンネルの延長と交通量でその態様が決まるというものでございますが、例えば水噴霧装置でありますとか、避難誘導施設でありますとか、あるいは警報設備等々を新たにこういう長大トンネルでかつ交通量が多いトンネルには設置するという基準を決めさせていただきまして、安全に万全を期するという考え方で整備することといたしております。外環道が整備される場合にも、当然AA基準で整備されることになるというように考えております。

保坂委員 それでは、時間が迫ってまいりましたけれども、この土地収用法で幾つもの問題点がある中で、私が最大の問題点だと感じている点について伺います。

 これは事業認定手続と収用手続の二つのバランスをとるんだ、つまり、前半の部分で情報公開、住民参加のところをきちっとやるから、後半のところで余り何千人のトラスト運動に対して一人一人にというようなことは簡素化させていただきたい、こういうことだと思うんですね。

 であるならば、経過措置というのはちょっと矛盾しているんじゃないかと思うんです。つまり、この法律が施行されたら、やはりこの入り口のところから、ここの最初のところから入ってきた件については新法の手続でやるんだというのが普通の法律の考え方じゃないでしょうか。施行されたら今現在進行形でやっているものも新しいいわば書留でやってしまいますというのは、いわゆる立法技術論的にもちょっとおかしいのじゃないか。これはいかがですか。

風岡政府参考人 経過措置の書き方についての御指摘でございますけれども、これは、事業認定の改善のところの規定とそれから収用手続の見直しのところの規定、それの適用関係がずれるんじゃないか、こういうことでございます。

 まず、事業認定の手続につきましては、新法施行前に既に申請があったものにつきましては、これはもう手続がずっと始まっているわけです、旧法に基づきまして。その手続自身は事業認定処分にかかわる手続ということでずっと進行しておりますので、そういうものにつきまして新しい手続を適用するということになりますと、どういうことまでした場合にそれじゃ新しい手続を守ったことになるのかということが非常に法令技術的に書けないということで、ここはある意味での割り切りをしまして、そこのところについては、事業認定手続については新しく申請があったものから、こういうように整理をしたわけでございます。

 ただ、先生おっしゃるように、手続的には既に申請があったものについてもいろいろな段階に来ているのがあるわけです。例えば法律の施行の前日に申請があったというのもあるかもしれませんし、あるいは法律の施行日にはもう既に官報に掲載をする直前まで来ているというのもあるわけですので、この辺がなかなか法技術的には書きにくいということで、一律的な適用をさせていただきました。

 ただ、運用面についてどうするのかという御指摘も重ねてあるわけでございますけれども、この辺につきましては、それぞれの申請の段階に応じてそれじゃどういうことができるのかということについては、これは運用の問題としてはいろいろ考えてはいきたい、このように考えております。

保坂委員 議論はもっとしたいですが、ぜひ続けていきたいと思います。

 終わります。

赤松委員長 小泉俊明君。

小泉(俊)委員 民主党の小泉俊明でございます。

 それでは、通告に従い御質問させていただきます。

 森総理から小泉総理にかわりまして、人がかわっただけで、支持率が限りなくゼロに近い一けたから八割、九割まで行ってしまう。これは何を意味しているかといいますと、大臣のポストにだれがつくか、これが極めて重要だということだと思います。このポストについている方がどんなお考えを持った方かというのは、かなり国民の注目しているところでありますので、特に現状を正確に把握することがさまざまな政策とか対策を立てる前提になりますので、内閣の一員であります扇大臣に、日本の経済や景気の現状についてどのような認識を持たれているのか、そしてまた、大臣としてどのようにこれに取り組む御決意かをまず一番最初にお聞かせいただきたいと思います。

扇国務大臣 昨日発表されました、私たちも閣議で言われましたけれども、ことしの一―三月期のGDPの成長率がマイナス〇・二%、これは年率でマイナス〇・八になりますね。そういうことで、目標でありましたことが達成できないのではないかというふうに言われております。その原因としては、少なくとも、アメリカの経済の減速とかあるいは設備投資が鈍化してきたとか、あらゆる問題があろうと私は思います。

 私たちもそれに関しては、きのうも内閣として懸念があるというふうには判断をいたしましたけれども、さりとて、一―三月というのは前内閣のことでございまして、これは我々としては前内閣の最後の数字、そういうふうに認識いたしております。一―三月がマイナスでありましたけれども、次回、我々新たに小泉内閣が発足して、支持率はいいけれども成長率はどうなのだろう、これが大変興味の持てるところではございます。

 御存じのとおり、この十年間で二〇%公共工事の受注が減っております。けれども、四月の工事の受注額が前年の同月比でマイナス七・二なのですね。それからしますと、やはり総じて低調に推移していると言わざるを得ない。また、住宅建設につきましても、マンションの着工は大変好調なのです。これも私は都心に回帰するという多くの要望のあらわれだろうと思っておりますけれども、マンションの着工は好調な反面、新築住宅の着工数が、一―三月期で見ますと年率で大体百十七万戸、これも弱含みですね。

 そういう意味では、国民の皆さん方の志向、考え方が変わってきたのかもしれません。マンションでもいいから、少しでも職に近いところ、職住近接と言われますけれども、そういうふうに多くの皆さん方の考え方が変わってきたのかもしれません。数字の上だけでいいますと、やはりマンションはふえたけれども一戸住宅の注文が減っている。これも認識しなければいけないことだと思っております。そういう意味では、昨今の厳しい経済状況自体は変わっていない。

 また、小泉内閣が発足して、今内閣の一員としてどうかというお話でございました。

 森内閣の最後に言われました緊急経済対策、四項目ございました。その四項目めの最後に都市基盤整備というのがございます。その四項目の最後の都市基盤整備に関して、小泉内閣になりまして都市再生本部を内閣に設置しました。これは、その緊急経済対策の一環を占めて、なおかつこれに重点投資しよう、こういう計画でございます。私は、今までと違って、緊急経済対策というものがどう効果をあらわすか、また、どこに重点を置くか、これが小泉内閣としては、また担当大臣としては、大きな認識と責任と、どう行動するかということが今度かかってくると思います。

小泉(俊)委員 ただいま、経済の現状についての御認識をお伺いさせていただきました。

 実は株価が、小泉総理が就任したときに一万四千円を超えたわけでありますが、本日また三百八十六円安ということで、ついに一万三千円を割りまして、一万二千八百四十円。また、月例経済報告によりますと、四月、景気が弱含んでいるという表現から、五月、景気はさらに弱含んでいる。完全失業者が直近で三百四十八万人。新卒の就職も非常に厳しい状況にあります。倒産数が、去年の秋ぐらいまでは月一千五百件を割っていたのですが、三月、また何と一千七百件を突破した。これは大変厳しい状況にあります。

 そしてまた、今までいろいろな委員会でいろいろな大臣に御質問をさせていただいたのですが、扇大臣は経済の現状に関しましては、聞いた中では一番厳しい御認識をお持ちだということです。ただ、大臣のいろいろな発言を聞いていますと、扇大臣だけではないのですが、どうも庶民感覚と大きくずれているのではないか、これを常に私ども感じております。

 そういった中で、基本的なことをちょっとお尋ねしたいのですが、最近、町に出まして御自分のお財布でお買い物とかをしたことがありますか、大臣。

扇国務大臣 小泉先生御存じかどうか知りませんけれども、私は家庭の主婦でございまして、役所の帰りにしょっちゅう途中下車しまして、青山通りでしょっちゅうスーパーにも寄りますし、しょっちゅう買い物をしませんと干ぼしになりますし、私自身の食べ物も、私自分の好きなものを買いたいものですから、お料理が趣味ですので、しょっちゅう買い物もしておりますし、そういう意味では自分のお金で買い物をいたしております。

小泉(俊)委員 それでは、百円ショップとかユニクロというのは行ったことがありますか。

扇国務大臣 ユニクロは行っていませんけれども、百円ショップは渋谷に二軒すごいのができておりますので、今度御案内いたします。

小泉(俊)委員 今まで聞いた大臣の中で、実は百円ショップとユニクロを知っているのは、扇先生だけなのですよ。もうほとんど町も歩かないという方ばかりでして、そういう方たちがいろいろ、経済を担当しているということに私どもは非常に強い危機感を実は持っているところであります。

 それでは、先ほどお話ししましたように、完全失業者が直近で三百四十八万人おります。これは、ハローワークとか職業安定所というのは現実に行かれたことがございますか。

扇国務大臣 渋谷のハローワークは私の散歩道にございます。

小泉(俊)委員 当然中にもお入りになられたことがありますね。(扇国務大臣「入っていません」と呼ぶ)ない。ぜひともこれは中に入っていただきたいのです。

 ハローワークは私もあちこち行っておりますけれども、昔のハローワークというのはかなり高齢の方たちがいっぱいいたのですね。今は二十代、三十代、四十代の若い男の人と女の人、両方かなりいます。何をやっているかといいますと、今は全部パソコンになっていますので、パソコンの画面をかなり真剣に見ながら就職を探している。特に新宿なんかもそうなのですけれども、あるビルの中にあるのですけれども、異常なくらい出入りが激しいです。今の失業者三百四十八万人というのは、数字よりもやはり自分の目で見ていただいて、散歩道にあるわけでございますから、大臣、ぜひとも一回中に入って御自分の目で見ていただきますようによろしくお願いします。

扇国務大臣 行ける時間に開放していただければ、私が行くときは大抵もう閉まっておりますので、こういうときに時間をいただければ入ってみたいと思っております。

 ただ、一つ言えることは、私は国土交通大臣でございますから、昨今、この十年間で、十年間といいますか現時点で、二十一世紀の初頭に建設業者というものが、五十八万六千ぐらい業者がありますので、六十万業者いたのです、ところが五十八万業者に減ったわけですね。それは、これだけバブル崩壊後十年間、崩壊したにもかかわらず十万業者ふえたのです。ですから、そこに働いている人たちも当然失業しています。

 ただ、今先生がハローワークで若い年代が多いとおっしゃいましたけれども、日本人の感覚が変わってまいりまして、終身雇用制という頭がなくなりました。より自分を生かし、自分の好きな仕事に転職する、これが欧米先進国並みになってまいりまして、職業があっても転身したい、転職したい、自分のもっと好みの職業につきたい、終身雇用制という、今まで日本が財産としてきたものの国民の認識も変わってきて、違った意味でのハローワークの繁盛さというものも、自分に適した職業がないかという、転職を目標としたハローワーク利用もあると思いますので、そういう意味では、もっと開かれた日本になってきたんではないか、その一端もあると私は思います。

小泉(俊)委員 非常に大臣がお話しになられたこともあると思いますが、やはり今新卒の就職が大変厳しい状況です。特に女性の就職は大変みたいです。どうか御自分の目でちょっとお確かめいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 あと、大臣、私は電車で地元から通っておるんですが、毎日電車がとまります。ひどいときは朝の通勤のときもとまっていますし、帰りは下手すると電車がとまっているために帰れないときがあるんですよね。これは何かというと、飛び込み自殺なんですよ。

 大臣、今一年間に自殺者がこの日本で一体何人ぐらいいるか御存じでございましょうか。

扇国務大臣 何かこの間、三、四万人という数を聞いてびっくりしたんです。しかも高齢者が多いということで。三万人台だと思います。

小泉(俊)委員 実はこの質問を宮澤さん、柳澤さん、塩川さんにさせていただいて、数を答えられたのは扇大臣が初めてなんですね。だれも知らないんです、実は。

 公式発表は、二年連続何と三万三千人、新聞の一面か二面に出ます。ところが、実際は自殺しているんですけれども、いろいろな事情がありまして事故死という形で処理されている方が、暗数という数字が常にありますので、実際は東京ドーム二つ分の十万人が、この日本では二年連続で自殺されていると言われています。ですから、今数字を聞いて安心したんですが、日本の現状がどれくらい厳しい状況にあるかというのをまず大臣にしっかり御認識していただいて政務に当たっていただく、そういった意味でちょっと今質問させていただいたわけであります。

 私、今の日本の現状を見まして、これはどうも明治、特に幕末の明治時代に似ていると。そのときの政治家と今の政治家を比べまして――今三つ質問して、答えられたのは実は先生が初めてなんですよね。それで、何が違うかといいますと、現状がわかっていないために危機感がないんですね。例えば木戸孝允なんかも、「偶成」という詩の中で、邦家の前路容易ならず、三千余万の蒼生をいかんせんと。結局、明治時代にも、国家の前途が非常に危ない、国民をどうしたらいいんだというのを眠れないで考えていたという非常に有名な詩がございますけれども、そういった危機感をぜひとも強く持っていただいて今後の国政に当たっていただければと思います。

 それでは、今回の改正というものは土地制度自体に大きくかかわる問題でありますので、土地制度についてちょっと質問させていただきます。

 いつまでたっても、大臣が先ほどおっしゃいましたように、バブル崩壊後十年たっても全然景気がよくならないんですよね。さっき経済対策をおっしゃいましたが、実はこの九年間で緊急経済対策はこれが十四回目なんです。しかし、全然効果がないために、十年全く同じことが起きているのが今の日本です。だから自殺者がいて、倒産が千二百社もあるわけですね。

 それでは、景気の悪い最大の原因はどこにあるか。私は今財務金融委員会におりますが、これは不良債権の問題にあるというのはわかっていると思うんですね。

 小泉総理と塩川財務大臣、柳澤金融担当大臣も、何しろ二、三年でこの不良債権の最終処理を行うと明確に本会議でも委員会でも明言されています。しかし、お話を聞いていまして、私一つ欠けていると思うのが、この不良債権処理に当たっての最大のポイントが、実は金融機関が担保にとっている不動産。これを流動化させない限り絶対最終的な処理というのはもう不可能なんですよね。数字を、オンバランスとかオフバランスの問題ではなくて、そこを動かさない限りは最終的な日本の景気の回復はあり得ない。特に、今何で不良債権がふえているかというと、もう当然のことですね、担保にとっている不動産の地価がどんどん下がっていますので、不良債権が減るわけないんですよね。

 ですから、地価の下げどめをしなければ不良債権の処理はいつまでたっても絶対にできないと思います。特に、地価を上げる政策をとらないで今総理とか財務大臣とか金融担当大臣が言っている二、三年で不良債権の処理をしたら、とんでもないことになると思います。

 また、バブル期に実は約二百万世帯が家を買っているんですよ。この人たちが、資産価値が買った価格の三分の一ぐらいになっていますから、資産価値の下落によってローンが物すごい重圧になっていますね。だからGDPの六割の個人消費というのが上向かないんですよ。だから、この点の資産価値の下落をとめるということは絶対不可欠だ。

 それで、大臣、最近の地価の下落の状況がどうなっているかというのは御存じでしょうか。

扇国務大臣 小泉先生がそうおっしゃいます基本的なこと、なぜ景気が上向かないかとおっしゃいましたけれども、緊急経済対策ということで、今十何回目だとおっしゃいました。そのとおりで、構造改革と一体にしなかったからなんです。二兎を追う者は一兎をも得ずという話で、あるいは緊急に経済対策ばかりしましたけれども、片方の構造改革は二兎を得ずということで追わなかった。今は経済と構造改革と一体なんですね。一兎になったんです。両方しなければ景気は最後までよくならない、これが基本なんです。

 ですから、小泉内閣で聖域なき構造改革といったのはそこなんであって、苦しくてもという小泉総理のお話でございましたけれども、私は言ったんです、苦しくても我慢しなさいと言っても、先にいいものがなかったらだれが我慢しますかと。それと同じなんですね。ですから、アクアラインが高くて全然通らないというけれども、先に楽しみがないから通らないんです。あれは千葉県へ行っても何もないんです。あれが成田までつながっていれば行くんです、アクアライン。四千円を三千円に下げなくても通ったでしょう。それと同じで、国民に我慢してくれと言うのであれば、構造改革をして完全に経済を立て直しますという先の楽しみがなければ、国民に我慢を強いてもそれは無理なことです。

 けれども、私ども小泉内閣としては、改めて申し上げることは、二兎を追う者は一兎を得ずじゃなくて、今二十一世紀になったら、二兎を追って、一緒になって、財政再建と構造改革を一体になってやる、これが小泉内閣の今までと違う大きな点だということをぜひ小泉先生にも申し上げておきたいと思います。

 土地をどうするかという話ですけれども、土地は私は下げどまりつつあると思います。そして、土地の流動化を図らなければ日本の経済が再生できないことは先生が仰せのとおりです。

 土地が最低線まで来ているかなと私が判断しますのは、小泉先生もいろいろなところにいらしているようですから、私もいろいろなところに行っていますので、先生は銀座の並木通りあるいは原宿の骨董通り、表参道、いらしたことがあると思いますけれども、これは土地が下げどまったなと言わなければ欧米の会社は出てきません。今銀座の並木通りは、ヨーロッパの有名なところが全部軒を並べています。それは、下げどまりだなというリサーチがあって初めて来たんです。骨董通りもそうです。表参道もそうです。外国の企業が来る場合には、日本よりも厳しいリサーチをしています。それは、土地が下げどまったなと。銀座の一点ではもう上がりつつあります。

 そういう意味で、少なくとも東京都内一つとってみても、下げどまっているから外資が入ってくる。それであれば、今一番お金のある人は土地を買うべきなんです。しかも、土地を流動化させるためにはどうしたらいいか。土地の証券化もアメリカはやって成功しています。

 そういう意味では、今先生が土地ということに焦点を絞られましたけれども、経済のことを考えれば、少なくとも二十三区内に今眠っている土地がどれだけあるか。これは六千ヘクタールあるわけですね。では、この六千ヘクタールをどう動かすか。先生もお歩きになればわかります。広い道路になって、突然狭くなっている。六千ヘクタールを都市計画で決めながら、都市計画が実行されていないんですね。これは五五%しか実行されていないんです。残りの四五%を実行すれば、今空き地になっている六千ヘクタールそのまま、飛び地を代替に差し上げることができる。

 これが新たな経済の基本的な立場であるし、今一番土地が下げどまっているようなところこそ移動していただいて、安いところへ安い値段で移っていただいて活性化を図る。そのためには、道路をまず都市計画どおり実行しなければ、高い建物も容積率緩和もできません。その点は、まず基本的には都市計画どおりの道路をつくることによって、周りに全部家が建っていきます。それによって少なくとも今回は六十万戸つくることができるというのが試算されております。

 ですから、そういう意味では、土地の流動化を図り、その原点は都市計画を実行して道路をつくることが第一段階だと思っています。

小泉(俊)委員 今非常に詳細な御説明をいただいたわけでありますが、若干ちょっと認識が違うところは、実は今東京の土地は七割が外資に買われています。これは安いから入ってきているというだけではなくて、外資は非常に有利な条件で買っていまして、今日本の企業が買おうと思っても現実には外資に負けてしまうというような状況も結構あります。銀座みたいな超一等地は、ルイ・ヴィトンにしろ、いろいろな会社が出てきまして、確かに下げどまりという傾向があるかもわかりませんけれども、データを見ますと、地価公示価格、これは明らかに十年連続下落していますよね。

 一点、扇先生と非常に意見が合うところは、一割地価を上げれば今の不良債権問題というのはほとんど解決するんですよ。これをこのままにして、今の小泉内閣がやろうとしているように二年、三年で不良債権を処理しますと、今は都市銀しか表に出ていませんけれども、これは地銀が壊滅的になります。ここを十分御認識いただきたいと思います。

 私は財金なんですけれども、財務金融委員会ですと税制しか動かせないんですよ。ところが、土地に対して一番権限を大きく持っているのが実は扇大臣の国土交通省なんですよね。ですから、そういったお考えをぜひとも閣議でも明確に扇大臣に述べていただいて、今地価を上げるという目的を一本化しないと、本当にこのままいくと、日本経済は三番底、四番底へ行って、最後の奈落の底までこれは行くんじゃないかという大変強い危機感を私は持っております。

 また、そういった意味では非常に扇大臣と私は認識が共通しておりますが、国土交通省というのは土地の流通化促進に当たって本当に大きな権限を持っていますので、バブル崩壊後、全く何にもしていないとしたら、その不作為というのはかなり大きな責任がありますよね。バブル崩壊後十年内にどんな対策を一体とってきたのか、もし具体的な例があれば、簡単で結構でございますので、御紹介いただければと思います。

河崎政府参考人 バブル崩壊後の土地の流動化対策についてお尋ねをいただきました。

 お触れのとおり、バブル崩壊後は地価は下落をいたしました。その中で、私どもの土地政策は、政策目標を転換をいたしまして、土地の有効利用の実現ということに一点集中をしているということでございます。その実現のために各般の施策を推進してきているということでございます。特に御指摘の土地の流動化というのは大変重要でございますので、そのための対策を講じてきております。

 国土交通省といたしましては、土地の有効活用に向けた需要創出を促進する観点から、例えば、これまで都市基盤整備公団による土地の有効利用事業の推進等によりまして、都市部の虫食い地や低未利用地の有効活用を促進することや、住宅税制の拡充による良質な住宅の建設の促進、さらには都市計画、建築規制の見直し等の施策を進めているところでございます。

 さらに、土地取引の活性化という観点からは、国土利用計画法に基づく土地取引規制を緩和をいたしました。また、特に収益性等が重視される現在の土地市場におきまして円滑な土地取引が行われますように、不動産鑑定評価制度の充実、あるいは土地税制の見直しなどの市場の条件整備を進めてきたところでございます。

 また、不動産取引の活性化を促進する手だてとして、近年、不動産の証券化というのが大変注目を浴びているわけでございますが、その促進を図るための関係法律の整備や税制上の特例措置等についても実施をしたところでございます。

 今後とも、土地の流動化を促進するための施策について、その推進に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

小泉(俊)委員 きょうの本会議でも、竹中大臣が、資産デフレの認識が極めて甘かったと、私ども民主党の仲間の質問に明確に答えられました。竹中さんが経済担当大臣になりまして、ようやくそこにポイントが移ってきたのかなと安心しているところなんですが、これは、今まで十年そういった対策をとられたのですが、現実には、地価は十年どんどん下がり続けてきたわけですよね。ということは、私は、これはやはりその対策が不十分で、目的が不明確だからだと思うんですよね。

 ここでもう一度、国土交通省だけではなくて、今は全省庁合体して日本の国をどう救うかの問題ですから、やはり横断的に考えまして目的を地価を上げるということに持ってこないと、それをまどろっこしくほかの趣旨とかを持ってきてやっていると、私は、もうこれは少なくとも本当に予定どおり二、三年で不良債権を処理するのであれば、とんでもない事態が起きる。これはいろいろな委員会で明確に申し上げておりますし、その場合、一体どういう責任をとるんだというのをすべての大臣に私は今質問しております。

 次に移りますが、実は国土交通省の所管で土地の流通化の促進につきましてできること、これはまだまだかなりあります。そこで、ちょっと幾つかの点につきまして大臣の所見をお伺いしたいと思います。

 まず、単純な話ですけれども、物価が下がり続けたり、物が下がれば、買うわけないんですよね。三年待っていて土地の値段が二割も安くなるのであれば、買う人はよほど珍しいですよね。ところが、今、地価公示制度というのがありますよね、実は先ほど私はデータで十年下がり続けているというお話をさせていただいたんですが、これが発表されますと新聞の一面に出るんですよ、七%本年も下がったとか、毎年毎年新聞の一面で七%、六%、八%下がってきたと言い続けてきたわけですね。実は、この発表をされるたびに消費者の心理が完全にへこむんですね。これは物すごい大きな影響がありまして、公示価格の発表をした後の土地の取引の動きを見ていただければわかるのですが。

 ただ、そもそもこの地価公示制度というのは、これは昭和三十年代からの地価の高騰を背景に、四十四年にできた制度なんですよね。御案内のように、バブル期はこれを基準に国土法価格を出していまして、それで売買価格を抑えましたので、地価高騰を抑える機能があったわけですが、もうはっきり言いまして、この地価公示制度ができたときと状況が百八十度違うんですよ。公示制度が採用になったそもそもの趣旨自体が、私は、前提が崩れているんじゃないか、弊害の方が大きい。

 また、公示価格というのは、「取引において通常成立すると認められる価格をいう。」というのです。これもうそです。市場は公示価格なんかでは取引していませんから。今、対象は路線価なんですよ。相続税の対象額であります路線価の方が時価になっちゃって、実際、公示価格というのは取引価格になっていないんですよね。

 これは一つもお金を使わないんですよ。ほかの政策は全部お金がかかるんですよね。ところが、お金を使わないで、制度を改革するだけで、かなりこれは土地の流動化とかそういったすべてに波及するものとして、私は地価公示価格制度自体をもうそろそろ、聖域なき構造改革というなら、見直してもいいんじゃないかと思うんですが、大臣、いかがでございましょうか。

田中大臣政務官 今小泉委員から、地価の公示制度というのがもう時代に合わないんじゃないか、もうその制度そのものを抜本的に見直さなきゃいけないんじゃないか、このようなお話であったわけでございます。

 確かに、公示価格というのは、全体としてずっとこの十年間、このグラフを私も資料で持っておりますけれども、これは下がりっ放しなんですね。ですから、いろいろな意味で影響があることは当然だと思っているんです。

 ただ、一方においては、公的な立場できちっと土地の価格についての一つの視点を確認をしておかないと、これはやはり国民生活にまさしく多大な影響を与えるということになるだろうと思いますし、公共の事業等についても重大な影響が出てくるんじゃないかと思うんです。

 全国の三万一千地点の一月一日現在の正常な価格ということになっておるのでございますが、一般の土地の取引価格に対する指標であることと同時に、公共用地の取得価格を定める場合の規準、相続税評価や固定資産税評価の目安、不動産鑑定評価における価格の規準、こういうことになっておりまして、やはりまだ我が国にとって必要な制度ではなかろうか、このように思っておるわけでございます。

小泉(俊)委員 私が何のために一番最初に日本経済の現状をわざわざ時間をかけて聞いたかといいますと、いかに今の現状が厳しいか、今のままでいけば本当に奈落の底に落ちるんじゃないかという危機意識をしっかり持っていただきたい、持っているんですかと聞いたんですよ。平時であればそのお答えでいいんです。私は、今平時じゃないからこそ、考え得る限りの手を知恵を絞って出すべきなんですよ。これは一円もかかりませんからね。ほかは、税制改正するとすべてお金に関係するんですよ。そんな常識的な答えだったら、答えなんか要らないんですよ。そんなのわかって聞いているんですから、全部。その辺、もう一度お答えいただきたい。

扇国務大臣 私は、小泉先生の言葉で一言お願いがございます。地価の値上がりのためにということではなくて、土地の有効利用と言っていただきたい。再びバブルを起こすということではなくて、バブル崩壊後寝ている土地あるいは生かされていない土地を生かすということで、土地の有効利用という言葉を使っていただかないと、再びバブルが起きると思ってそれを待つ人のためにまた経済がおかしくなると困りますので。

 土地の有効利用を図るために、先ほど私が申しましたように、道路の都市計画というものは昭和二十一年につくられたにもかかわらず、現段階、昭和二十一年から今日までの都市計画道路の整備というものが五四%しかできていない。これは、私はぜひ認識していただきたいと思います。

 道路整備というのは、二十三区内だけで申しますと、私が先ほど申しましたように、多くの皆さん方、今道路が途中になっているものと、今生かされていない、寝ている土地に移動していただくのはどんぴしゃり合うんです。今二十三区内で、先ほどもぽつぽつあいているではないかと小泉先生おっしゃいましたけれども、その六千ヘクタールと、道路を整備するために必要な土地とがどんぴしゃり合うんですね。ですから、今寝ている土地へその人たちが移ってくださることだけで、高さ制限も容積率緩和もできますし、また、その費用が、投資効果というものが、例えば六千ヘクタールというのはどれくらいのあれかといいますと、今の霞が関ビルが少なくとも四百棟分の土地なんですね。それが今動くということになりますと、私は、土地利用というものに対して大きな効果が出てくる。単純に計算しましても、住宅でいえば、さっき私が申しました六十万戸分の値打ちがある。

 また、少なくとも公共投資が八兆円なんです、六千ヘクタール動かすために。八兆円を投資しますと、二十兆円の民間の活力が出てくる。しかも、家をかわったことによって経済効果というものが四十兆円に及ぶ。こういう計算もできているわけですから、バブルを再現するのではなく、今動いていない土地を利用する、土地を活用することによって経済効果があるということだけがきちんと数字で出ておりますので、都市再生本部の使命というものがいかに大きいかというのは小泉内閣で達成できると私は思います。

小泉(俊)委員 今バブルが再燃するというお話をされていましたが、そういう認識だからいつまでたってもよくならないんですよ。今のゼロ金利政策を初め自民党がとってきた政策、政権党がミニバブルを起こしたくてやってきた政策でしょう。バブルというのは、株と土地が上がることなんですよ。今の状況で、この日本の国の中で何で株が上がるんですか、何で土地が上がるんですか。それができないからこそ、僕たちは今ここで真剣に議論しているんですよ。

 だから、現実を直視して、きちっと見て、そういう詭弁、バブルが起こるからやらないというのは官僚がよく言いますけれども、建設官僚の方と話したら、何で土地をもう少し上げるような対策をやらないのと、バブルが起きるからと。今そんなこと現実に起こるわけないんですよ。

 それどころか、少しでもそういう方向性に持っていかなければ、私は、二、三年以内に本当に小泉内閣が不良債権処理をするならば、明確に言っておきますよ、地方はもう壊滅ですよ。皆さんの選挙区はみんな壊滅ですからね。都市銀があれだけ傷んでいるだけじゃないんですよ。地銀がかなりこれは傷みますからね。そういうのをわかって私は言っているわけで、その認識は百八十度違うんですが、次に移ります。

扇国務大臣 私が言っているのは、小泉先生が地価を上げるということで、バブルの再現をしてはいけないということを言っているのであって、あなたはそれじゃ代替論がないんです。私はきちんと政策を提示してこれだけ効果が上がると言っているので、先生がおっしゃるのは、不良債権処理という言葉だけで具体論がないというのでは、私は政策論争にならないと思います。

小泉(俊)委員 ですから、地価公示価格のような、市場心理、個人の心理に影響するものを変えていったらどうですかと制度の変更を申し上げているんですよ。

 次に行きますよ。

 それでは、土地の流通化の促進のためには、何よりも需要を喚起しないと絶対に流通は促進しませんね。需要が今本当に減ってきてしまっているのが、中古の物件にしろいろいろないい物件が安くなっているんですけれども、これがなかなか動かない一つの理由であります。

 そこで、また提案でございますが、制度の変更の提案なんです。

 いろいろ問題はありますけれども、現在、住宅金融公庫の融資というのは住宅に関してのみされていますね。土地については住宅と一緒に買ったときのみ一千万融資を受けられる、そういう制度になっているわけです。

 しかし、一番最初から言っていますけれども、今大変厳しい状況にあると僕は思います。この中で、やはりでき得る限りの措置はやっていくというのは政治家の責任だと私は思っていますので、土地の流通化を促進するためには、若年層が将来家を建てるために事前に土地だけでも購入できる、要するに、二十代、三十代でも、奥さんをもらって結婚する前に将来のために持っておける、そういったようなことを進めていけば需要は喚起できると思うわけですね。

 すなわち、住宅金融公庫は、もう既に住宅というだけではなくて、確かにこれは問題があるんですが、緊急避難措置としましては、土地住宅金融公庫というように制度を改変しまして、土地を購入する若年層にも融資を認めていくような制度を僕はもうそろそろ考えていかなきゃいけないほど状況が極めて悪化しているんじゃないかと思うんですが、いかがでございますか。

田中大臣政務官 住宅金融公庫の融資について、土地にもっと広げて制度化できないのか、住宅抜きでも土地を先行取得するための資金にもっと融資ができないのかというお話でございます。

 私も、政府の立場で答弁をしなければなりません。本当に、今小泉委員の話を聞きながら、なかなか私も胸にしみ入るところがあるのでございますが、お答えをいたします。

 平成十二年から十四年に住宅建設する場合は三年前まで緩和をしたということが現実にあるわけでございますから、このように努力をしてまいりましたし、これからも、住宅金融公庫の本来の趣旨というものはやはり、住宅を建てて良質なストックをきちっとしていくという国是に私は一致しているものであって、土地だけを切り離した融資というものはやはり無理がある、私はこのように認識しております。

小泉(俊)委員 今の現状におきましてはまだいいかもわかりませんけれども、これから先、私が先ほどから述べているような状況になったときには、そういう意見もあったなと、参考に思い出していただければ幸いであります。

 また、住宅金融公庫は、今融資の要件として、敷地面積が百平米、約三十坪以上の土地でなければ、新築も中古も融資を認めていませんよね。しかし、東京都内や大都市圏は、先生方のように大きな家に住んでいる方たちはわからないかもわかりませんけれども、私たちの友人がどんなところに住んでいるかといいますと、東京都内に住んでいる友達というのは、大体十三坪から二十坪前後のところに二階建てとか三階建てを建てて住んでいるというのが結構多いんですよ。ところが、百平米の敷地制限、要件があるために住宅金融公庫を使えないんですね。ですから、買える方たちというのは、お父さんがお金持ちとか、かなりキャッシュを持っている方じゃないと現実なかなか買えない。それで、長期固定でございますので、できればこういう要件を住宅金融公庫でも緩和していただければもう少し取得がしやすくなるのではないか。

 特に、私が申し上げている理由は、GDPの一五%を占めます民間設備投資が、データを見ていただければわかるのですが、もう完全にこれは右斜め下に落ち込んできましたですね。あと、九%を占める公共事業も、これは財政悪化からもう限界なんですね。そうしますと、日本の経済、GDPを引っ張っていくのは、五・五%を占める住宅と、住宅を買ったときにはありとあらゆるものを新しく買いますので、これが六〇%を占める個人消費にかなりのインセンティブを与える。

 ですから、何度も言いますけれども、制度の改革だけでお金は別にかかりませんので、融資の面積要件を緩めろと言っているだけで、お金のない人に貸せと言っているわけではないのですね。ですから、事態の実態、東京都内とか大都市圏、百平米切るような住宅がどのぐらいあるかというのをお調べいただいて、これに対しても要件の緩和をお願いできればと私は思っております。いかがでございましょうか。

扇国務大臣 先生が先ほどから住宅ローンのお話をなさいましたけれども、昨年私が建設大臣になってから一番最初に言ったことは、今の住宅ローン減税がことしの六月で切れます。それが今、先ほど先生がおっしゃったように、地価が大体目安として底をついてきたな、下げどまりが近づいたのではないかというときに、改めて若い人たちが、今買いどきである、金利も安い、そういうときになって、私はその日本の現状を考えるときに、若い人たちに家を持ってほしい。下げどまりだなと思えば、しかも一番、世界で初めてというぐらいな低金利のときに自分の望みを達してほしい。そのために、六月で切れる住宅ローン減税というものを何としても新しく延長できるか、もしくは新規にしようということで昨年動きましたのが、初めて皆さん方に新たな住宅ローン減税の創設ができたわけでございます。これが今先生がおっしゃいました住宅ローン、これは二次取得も建てかえも中古も可能でございます。この法案に先生御賛同をいただいたのかどうか私は忘れましたけれども、そういう意味では、新たな今先生が提示された住宅ローンに関しては、全くこれが大きく寄与し、そして若い人たちが住宅を取得しようといった大きな理由の一つ。

 もう一点は、今先生がおっしゃいましたけれども、今千三百兆と言われております個人資産、この中の五〇%以上は六十五歳以上のお年寄りが持っています。けれども、若い人たちがお年寄りと一緒に住みたいと思っても、今このお年寄りが老後の不安があるためにこのお金を使わないのです。それで今先生が若い人たちのためにとおっしゃいましたけれども、今度改めて不動産の皆さん方と一緒に、この生前贈与をしようということで、土地の有効活用のために今度は住宅の取得資金の生前贈与をしてお年寄りが若い人たちと一緒に住めるということで、これを税制で緩和しよう。そういうことで若い人たちと一緒に住めれば、お年寄りも、老後は安心だなということでお金を出してくれる。それが今先生がおっしゃった、家を一軒建てれば、室内装飾もする、電化製品も買うだろうという経済効果があるということは、先生がおっしゃったとおりでございますけれども、国土交通省としては、この住宅ローンの新設、そして生前贈与等々、今の事例にあった、小泉先生がおっしゃったとおりの要望の法案を通していただいたということを御認識賜りたいと思います。

小泉(俊)委員 今扇大臣がおっしゃったことは全部認識した上で私は、またさらに住宅金融公庫の融資要件を緩和してくれと。

 なぜかといいますと、この前、現実に江戸川区で私の友人が家を買いました。十二坪の土地に建物を建てて、三階建てで四千五百万ですよ。これは住庫を使えないのですね。こういう人たちを助けてあげなければ、若年層は買えません。三十坪の東京の土地を買ったら七千万を超えますよ。

 ですから、現実にそんなお金を持った若い人はいないのですね。だから、もう少し現実をしっかり見て、その中で今の制度をどう活用していきながら、この綱渡りのような日本経済をどうやって上昇させるか、そういった思いから今質問しているわけであります。

 時間がありませんので、次に行きますが、細かくなりますので、これは副大臣か政務官でお願いできればと思います。

 市街化区域内の土地の開発行為をする際、適用を受ける面積が原則千平米以上から開発行為の適用があります。近郊整備地域では五百平米です。この面積要件はいいのですけれども、開発行為がかかりますと、建築指導課に資料を出して、売り出しまでに大体半年かかるのですね。ただ、そのときに、これは法律規制ではないのですが、例えば私どもの茨城県なんかでは、県の開発指導要綱によりまして、一区画の最低面積を百六十五平米、五十坪に制限されちゃっているのですよ。そうしますと、これは地価がすごく安いような地域はいいのですが、実際は、私の住んでいる茨城県ですら五十坪というのでは実は買えないのですよね、もう、地価が高過ぎまして。一坪五十万なら、土地だけで二千五百万になりますので、もう住宅が四千五百万ぐらいいっちゃうわけですね。こういった意味で、開発行為の一区画の最低面積はもうぜひとも市場に任せる、原則百六十五平米というような指導は規制緩和の流れの中で廃止していただきたいと私は思うのですが、これはいかがでございましょうか。

扇国務大臣 小泉先生がさっきおっしゃった、住宅金融公庫の制度を緩和してほしいというお話がございましたけれども、私は、同じ民主党の先生方が、住宅金融公庫はもう民を圧迫しているから要らないんじゃないか、そうおっしゃったこともございますので、その辺のところはよく調整していただいて、我々はまだ必要だと思っていますので、その基本線が違うということだけはぜひ調整していただきたいと私は思います。

小泉(俊)委員 違うのです。長期的に見れば私も改革をしていくべきだと思っています。ただ、事はこの火事場の短期、制度自体を見直す前に活用できるものは活用して、少しでも日本の経済のためになればということで申し上げているのです。これは全然私ども民主党の立場と変わりません。申し上げておきます。

 あと、質問についてお答えいただけますか。

田中大臣政務官 ただいまの小泉委員の御質問でございますが、いわゆるミニ開発の防止、良好な市街地環境の形成を図るという観点から、最低敷地規模について独自に宅地開発指導要綱を制定して、全国で八百十市町村、全市町村の約四分の一が平成九年度の調査でそのような状況になっております。

 そのうち、地域の実情を勘案せず一律に敷地規模を設定したり、また二百平方メートル、約六十坪ぐらいございますが、を超える規模を求めるなど過大な水準を要求しているものについては、国土交通省としても、かねてより、国民の適正な負担能力、地域の特性に配慮する観点から、適当ではないという旨で地方公共団体に対して周知をしてきているところでございます。

 また、平成十二年の都市計画法の改正においても、地域の特性に応じて合理的な規制の実現を図るという観点から、地方公共団体が良好な住環境の形成または保持のために必要と認める場合、条例により、区域などを限り、最低敷地規模規制を開発許可の基準として定めることができる、このようになっておりまして、当省といたしましても真剣に取り組んでおるのでございます。

小泉(俊)委員 開発行為の適用あるものに関しましては、面積要件を一区画減らしても、おっしゃったような乱開発とかスプロール化というのは一切ありませんので、購入者の負担能力に応じて極力――これは現場を知らない人は全然わからないものですから、先生よく御存じでございますので、ぜひとも監視をしっかりしていただいて、少しでも日本経済の上向くことにプラスになることをやっていただければとお願いいたします。

 あと、土地の流通化を高めまして、地価下落を防止するためには、先ほど大臣がおっしゃいましたように、道路をきちっとつくるとか土地の有用性や利用度を高めるということが一つの方法なのですね。

 その中で、一定の場合、先ほど大臣もおっしゃいましたが、やはり容積率の緩和をしていくことによって土地の利用度を高める必要があるのではないか。また、容積率を制限しております建築基準法五十二条ですか、これができた当時と建築技術や工法も全然違うんですよね。ですから、土地の利用に関しまして規制緩和できる許容性も十分ありますし、何度も申し上げますが、税金一円も使わないでできる対策なんですよ。合理性も高いということで、ぜひともそういった方向でお願いできればと思うのでございますが、大臣、いかがでございましょうか。

扇国務大臣 高さ制限緩和も容積率緩和も、道路を整備しなければ緩和できません。それはなぜか。東京都は消防車も通れませんし、高くなったらはしご車も通れません。まず道路を都市計画どおり整備するということがもとでありまして、それをしないで容積率緩和をしたり高さ制限緩和というのは、国土交通省も東京都も危なくてできません。

小泉(俊)委員 もちろんそういうのも同時にやりながら、基本的な方向性として、何度も申し上げます、土地の流通化を図ることが日本経済を復活させる唯一の方法です。その基本的認識の中から、何ができるかということを一生懸命考えて、できることはやっていく。道路はもちろんやるべきです。それプラス、やはり容積率の緩和もできるものであれば緩和していく、そういった意味で申し上げているのでございます。

田中大臣政務官 容積率の制限の緩和については、国土交通省といたしましても、従来より、都心居住の推進、そのほか望ましいまちづくりを目指す優良なプロジェクトについて、その内容に応じて、特定街区だとか高度利用地区などの容積率を緩和する制度の充実に今までも努めてきたのでございます。また、さきに決定された緊急経済対策を受けて、本年四月、容積率などの緩和制度の積極的な活用について、主役となる地方公共団体にも強く要請をさせていただきました。

 今後とも、都市計画道路などの基盤整備を図りつつ、容積率の緩和制度の積極的な活用を、今大臣の答弁にもありましたように、真剣に努めてまいりたいと思います。

小泉(俊)委員 よろしくお願いいたします。

 時間がなくなりましたが、東京都内におきまして何で不動産が動かないかといいますと、中古のローン破産は実はたくさんあるんですよ。ところが、この中古が買い主がいないわけですね。これの大きな理由として、容積率が二%とか三%オーバーしちゃっているのです。なぜかというと、土地が十二、三坪なんですよね。ですから、どうしてもそのぐらいオーバーしちゃっているために、民間の金融機関のローンが通らないんですよ。

 ということは、いい場所にある、駅のそば五分ぐらいのところ、七千万したのが今は二千五百万ぐらいで買えるんですよ。ところが、容積が二%ぐらいオーバーしているために、現金を持っていないと買えないんです。今、ローン破産の中古住宅とかそういうのが、東京都だけじゃなくて、千葉、埼玉、神奈川、そういう大都市圏では起きているわけですね。

 それはいろいろありますが、一つお聞きしたいのが、実は、国土交通省が容積オーバーのものに関しては民間金融機関に融資しないように働きかけているという動きもあるんじゃないかという話をちょっと聞いたのでございますが、事実はいかがでございますか。

 実は、私、財金におりまして、金融機関の方の融資を柔軟にせい、そういうふうに今要望しているところなのでありますが、牛の角を矯めて牛を殺さないように、ぜひとも、そういった行為がもしあったとしたら、厳に慎んでいただきたいと思います。

 ちょっと時間がありませんが、次に、本論の土地収用法の一部を改正する法律案の方に移らせていただきます。

 これは先ほど何人も質問に立ちまして、実は日本の国は、世界に冠たる、世界で一番土地所有権が強い絶対的土地所有権の国なんですね。アメリカもヨーロッパもすべて相対的土地所有権でありまして、非常に公共性のものに関しましては、収用にしろある程度法整備がされているわけです。ところが日本の場合は、歴史的に明治以来絶対的土地所有権だったために、収用法の改正、これは四十二年以来三十年間やってこなかった。

 これをやったことに対しては、ぜひとも私は必要性があると思っています。やはり迅速に公のための公共事業を進めなければ、国も発展しませんし、住環境もよくならないし、経済も発展しません。そういう意味では認めるのでございますが、今回の法改正によりまして、事実上、収用手続の簡略化が図られまして、公権力による私有地を収用する強制力を一層認めることになりましたね。それだけに、収用を認められた公共事業には、より高い公共性が何よりも求められなければいけない。

 そこでまた、先ほども質問されましたが、端的に御質問いたしますが、事業認定手続におきまして、現行法は、公聴会の手続に関し必要な事項は国土交通省令で定めるとしている。ただ、具体的手続は全く不明なんですよね。そこで、国土交通省令で定められている公聴会の手続を具体的にお示しいただけますでしょうか。

風岡政府参考人 公聴会につきましては、現在も公聴会の規定はございます。裁量権はありますので、まことに申しわけございません、今まで開いたことはないのですけれども、そこの中では、省令で公聴会を開催する場合のルールというのを決めております。

 今回、私どもとしましては、公聴会については要求があった場合には必ず開催するということで開催義務を設けておりまして、この機会にできるだけ公聴会を生きたものにしたいということで、例えばの例でございますけれども、公述人が主宰者の許可を得ながら他の公述人に質問をするとか質疑をやるとか、そういう生きたものにできるだけしていきたいということでありますので、そういった観点は現在の公聴会のルールを定めております省令に掲げておりませんので、そういったものについては新たに省令改正で追加をするとかというような形で取りまとめをしていきたい、このように考えております。

小泉(俊)委員 よろしくお願い申し上げます。

 次へ急ぎますけれども、事業認定の中立性と公正性を確保するために第三者機関である審議会の意見を聞く、義務化になっているわけでございますが、私権制限を強く認める一方で、やはり公共性をきちっと打ち出さないと国民は納得しないと思いますので、審議会の意見を極力尊重すべきである。先ほど田中慶秋先生も質問されましたが、ぜひともこれは審議会の意見を尊重すべきであるというような方向で明文化していただければと思うのでございますが、いかがでございましょうか。

風岡政府参考人 今回、審議会の意見というのは法律で聴取をするということを義務づけたわけでございます。その気持ちは、当然のことながらその意見について尊重するという取り扱いをしたいというふうに思っております。法文上そういったものについて記載をするかどうかにつきましては、国会の方のいろいろな御審議その他を見守りたい、このように思います。

小泉(俊)委員 次へ行きます。

 この法改正がなされたとしても、問題は運用にあると思います。特に地方自治体におきましては、私の地元なんかは都市計画道路を決定して、もう二十年ですね。もう道路はできないですよね。これはなぜかといいますと、強制収用を知事とか市長は住民に近いためになかなかできないんですよ。そういった意味では、やはりつくった制度をよりきちっと運用してもらう、特に地方において、国はいいんですけれども、何らかのそういった配慮はされているんでしょうか。

風岡政府参考人 事業認定の申請につきましては、これは大臣認定の分と知事認定の分があります。年によって申請件数に若干ばらつきはありますけれども、平成十年ですと両方合わせて大体千件くらいです。それから平成十二年ですと七百件弱ということであります。

 これにつきましては、私ども一応のルールというのを示しておりまして、用地買収の比率が八〇%に達するか、あるいは用地幅ぐいの打設をしましてから三年まで、そのいずれか早い時期までに事業認定の申請の準備に入れるようにということで事業者の方に通知をしているわけでございまして、当然のことながら、できるだけ任意買収で御協力を得て進めていくということでありますけれども、土地収用の手続への移行につきましては、今のような考え方を示しているところであります。

小泉(俊)委員 時間がありませんので、次にすぐ行きます。

 現実に、これは知事の場合に、審議会と地方自治体の議会が対立するような場合が多々出てくると思うのですが、そういう場合に関しましては、どのようにお考えでございましょうか。

風岡政府参考人 事業認定につきましては、都道府県知事の権限に属するものについては、知事が条例で定める第三者機関の意見を聞いて判断をするということでありますので、事業認定につきましては、土地収用法の新しいルールによれば、それで判断ができるのではないかというように思います。

 なお、それに先立つ事業の予算につきまして、議会承認とかそういったものは別途あるかと思います。

小泉(俊)委員 最後ですが、ある市町村でやったものが県の審議会に上がるのですが、実は、その地元の地方議会が請願を受けまして反対決議するということが多々あるのですよ。そういう判断が対立した場合まで予想しておかないと、現実、実は日の出と似たようなのが全国に今四百ありますね。これからかなりこういった事態が具体化してきますので、それについての配慮はどんなふうになっているかというのをお答えいただければと思うのです。

風岡政府参考人 今の先生の御指摘の案件は、議会でそのプロジェクトについて反対の請願があるようなケースだということですね。土地収用につきましては、確かにいろいろ国民の理解を得て進めていくということでございますけれども、収用自体の事業認定の立場は、その事業について公共性があるかどうかを客観的に判断するということでございますので、とりあえずは、そういったいろいろな意見はありますけれども、最終判断は、要するに公共性があるかどうかを収用法にのっとって判断する、こういうことになろうかと思います。

小泉(俊)委員 時間が参りました。ありがとうございます。

赤松委員長 次回は、明十三日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五十二分散会




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