衆議院

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第22号 平成13年6月13日(水曜日)

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平成十三年六月十三日(水曜日)

    午前九時四十二分開議

 出席委員

   委員長 赤松 正雄君

   理事 赤城 徳彦君 理事 桜田 義孝君

   理事 実川 幸夫君 理事 橘 康太郎君

   理事 玉置 一弥君 理事 樽床 伸二君

   理事 河上 覃雄君 理事 山田 正彦君

      今村 雅弘君    木村 太郎君

      木村 隆秀君    倉田 雅年君

      佐田玄一郎君    坂本 剛二君

      菅  義偉君    田中 和徳君

      高橋 一郎君    中馬 弘毅君

      中本 太衛君    林  幹雄君

      福井  照君    松野 博一君

      松本 和那君    谷津 義男君

      吉田 幸弘君   吉田六左エ門君

      阿久津幸彦君    大谷 信盛君

      今田 保典君    佐藤 敬夫君

      永井 英慈君    伴野  豊君

      細川 律夫君    前原 誠司君

      山内  功君    井上 義久君

      山岡 賢次君    瀬古由起子君

      矢島 恒夫君    日森 文尋君

      保坂 展人君    二階 俊博君

      松浪健四郎君    森田 健作君

    …………………………………

   国土交通大臣       扇  千景君

   国土交通副大臣      佐藤 静雄君

   環境副大臣        風間  昶君

   防衛庁長官政務官     嘉数 知賢君

   国土交通大臣政務官    木村 隆秀君

   国土交通大臣政務官    田中 和徳君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    山崎  潮君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房長) 岩村  敬君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長

   )            風岡 典之君

   政府参考人

   (国土交通省都市・地域整

   備局長)         板倉 英則君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  大石 久和君

   政府参考人

   (国土交通省港湾局長)  川島  毅君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  深谷 憲一君

   政府参考人

   (国土交通省政策統括官) 山本 正堯君

   国土交通委員会専門員   福田 秀文君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十三日

 辞任         補欠選任

  松岡 利勝君     吉田六左エ門君

  阿久津幸彦君     山内  功君

  大幡 基夫君     矢島 恒夫君

  二階 俊博君     松浪健四郎君

同日

 辞任         補欠選任

  吉田六左エ門君    松岡 利勝君

  山内  功君     阿久津幸彦君

  矢島 恒夫君     大幡 基夫君

  松浪健四郎君     二階 俊博君

    ―――――――――――――

六月十三日

 精神障害者に対する交通運賃割引制度の適用に関する請願(伊藤公介君紹介)(第二六一五号)

 同(尾身幸次君紹介)(第二六一六号)

 同(奥谷通君紹介)(第二六一七号)

 同(金田英行君紹介)(第二六一八号)

 同(亀井静香君紹介)(第二六一九号)

 同(古賀誠君紹介)(第二六二〇号)

 同(高村正彦君紹介)(第二六二一号)

 同(津島雄二君紹介)(第二六二二号)

 同(中谷元君紹介)(第二六二三号)

 同(中本太衛君紹介)(第二六二四号)

 同(萩野浩基君紹介)(第二六二五号)

 同(松岡利勝君紹介)(第二六二六号)

 同(三ッ林隆志君紹介)(第二六二七号)

 同(山本明彦君紹介)(第二六二八号)

 同(横内正明君紹介)(第二六二九号)

 同(渡辺具能君紹介)(第二六三〇号)

 同(伊吹文明君紹介)(第二六八八号)

 同(今村雅弘君紹介)(第二六八九号)

 同(衛藤征士郎君紹介)(第二六九〇号)

 同(佐藤剛男君紹介)(第二六九一号)

 同(園田博之君紹介)(第二六九二号)

 同(田村憲久君紹介)(第二六九三号)

 同(八代英太君紹介)(第二六九四号)

 同(谷津義男君紹介)(第二六九五号)

 同(山口俊一君紹介)(第二六九六号)

 同(山本幸三君紹介)(第二六九七号)

 同(吉川貴盛君紹介)(第二六九八号)

 同(岩屋毅君紹介)(第二八〇九号)

 同(熊代昭彦君紹介)(第二八一〇号)

 同(佐田玄一郎君紹介)(第二八一一号)

 同(坂井隆憲君紹介)(第二八一二号)

 同(塩崎恭久君紹介)(第二八一三号)

 同(橋本龍太郎君紹介)(第二八一四号)

 同(林省之介君紹介)(第二八一五号)

 同(原田昇左右君紹介)(第二八一六号)

 同(藤井孝男君紹介)(第二八一七号)

 同(松宮勲君紹介)(第二八一八号)

 同(宮腰光寛君紹介)(第二八一九号)

 公営住宅に関する請願(大幡基夫君紹介)(第二八〇七号)

 同(辻元清美君紹介)(第二八〇八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 土地収用法の一部を改正する法律案(内閣提出第五四号)




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     ――――◇―――――

赤松委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、土地収用法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省大臣官房長岩村敬君、総合政策局長風岡典之君、都市・地域整備局長板倉英則君、道路局長大石久和君、港湾局長川島毅君、航空局長深谷憲一君、政策統括官山本正堯君及び法務省民事局長山崎潮君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中本太衛君。

中本委員 おはようございます。自由民主党の中本太衛でございます。

 本日は、華やかな扇大臣に質問させていただきますことを、まことに光栄に思います。

 さて、大臣、私、「できること できないこと」、この本を読ませていただきました。大変大臣の情熱が書かれておりまして、一気に読ませていただきました。

 この中で大臣は、マーガレット・サッチャーを尊敬されていると書かれております。やはり私も同時に尊敬しておるのですけれども、男性、女性を感じさせないあのリーダーシップ、私は扇大臣にも日本のマーガレット・サッチャーになっていただくことを御期待申し上げます。

 それでは、きょうの質問の内容、土地収用法の改正について質問させていただきたいと思います。

 今回の土地収用法の改正は、大臣の目指されております二十一世紀のグランドデザインをつくる上では、前に決められました公共事業の見直し法案よりも、より重要な法律だと思います。しかしながら、残念なことに日本には公益性という概念が大変薄い、これがこの土地収用法の中で最大の問題となってくると思います。

 しかしながら、一方では、やはり政治家、役人の責任というものも感じなければいけないと私自身は思います。

 政治家、役人は、例えば予算をとることには一生懸命でございますが、一度予算が決まってしまえば、その使われ方というものに余りにもむとんちゃく過ぎる面があると思います。この政治家の部分の反省、役人の部分の反省というものをしなければ、この土地収用法の改正をしても、この改正案がうまく行われるとは思いません。

 そこで、公共事業の見直しの件数を見れば、行政はこれからはコスト認識というものが大変必要になってくると思いますし、そして公共事業が本当に必要なのかということを問われた場合に、必要だということを完全に言えるような公共事業を行っていかなければいけないと思います。

 まず最初に、住民に公共事業の重要性を訴えるのであれば、まず、隗より始めよというわけではないのでございますが、政治家そして役人が反省していかなければいけない点、このことに関しまして大臣はどうお考えか、お聞かせ願えないでしょうか。

扇国務大臣 中本先生に私のつたない本をお読みいただいて恐縮でございます。

 また、今、大所高所に立った、二十一世紀の日本をどうするか、そういう基本的な姿勢を中本先生に御示唆いただきました。

 私も、この世紀の変わり目に国会議員をしているという、この責任の重さを、どう皆さん方とともに共有し、なおかつ、私たちの子供や孫のために二十一世紀の行く末をどういう国土づくりに持っていくか、私はそれを示す一番大事な時期に国会議員をさせていただいている、その責任の重さを私は痛感している次第でございます。

 今先生がおっしゃいましたように、今まで、公共工事というもの、ある意味では、戦前のあの強権的な、あるいは押しつけによって何でも図られたというイメージがなきにしもあらず。ただ、一つ言えますことは、少なくとも二十世紀という世紀は、我々日本にとって、中本先生はお若いから御存じないと思いますけれども、あの終戦のとき、私ども日本は劣等国だ、三等国だと言われたのです。その焦土と化した日本を、とにかく欧米先進国に追いつけ追い越せということで公共工事をし、多くのものをつくり、道路をつくり、港湾をつくり、飛行場をつくり、やっと先進国に追いつくまでになり、まして日本で先進国首脳会議を開けるまでになった今の日本の現状を考えますときに、二十世紀は公共工事であらゆるものをつくってきたハードの世紀だと私は認識しております。

 けれども、その二十世紀のハードの世紀に、果たして二十一世紀はそのままでいいのかというと、そうではなくて、二十一世紀はこれに環境とかバリアフリーとかソフトの面を加味したそういう公共工事でなければならない。また、二十世紀につくった公共工事というものを、いかに品質を保持して二十一世紀に持ちこたえるか、メンテナンスを図るか、これも大事な、二十一世紀の大きな仕事であろうと思います。

 そういう意味では、私たちは、二十世紀にしたことを是としながらも、いけなかったことは改めようということで、先生も御存じのとおり、昨年の暮れには与党三党で公共工事の見直しをしましょうということでみんなで協力をいたしました。そのときに、先生も御存じの、百九十七の事業を見直そうといいまして、そして年末には、九月から十二月にかけまして全国の三百のいろいろな地方自治体で事業評価監視委員会で審議をして、そして最後は、百八十七の事業を中止いたしました。

 これも私は、二十世紀の締めくくりとして、二十一世紀に、よりむだ遣いをしない、そしてあらゆる面での見直しをする、いわゆる評価制度、事前評価、事業評価、事後評価、この評価制度の確立によって公共工事の適正を図ろう、そういう意味での大きな見直しのうねりがあったというのも、世紀末としては大変大事なことであったと私は思います。

 かてて加えて、公共工事というと、すべて、ばらまき、丸投げ、談合、むだ遣い、こういうまくら言葉がつくものですから、何としてもそれを是正しよう、正しい方向に持っていこうということで、昨年、皆さん方に御審議をいただきまして、日本で初めての公共工事の基本法と言えるような、公共工事の入札と契約に関する適正化法を全会一致で通していただいたことは、私は、二十一世紀を迎えるのに大変役に立ったと。

 そういう意味では、この四月一日から公共工事の入札と契約に関する適正化法が適用されておりますけれども、まだ市町村の隅々までこの法律の趣旨というものが徹底されていないという疑念がございますので、ことしの二月から四月にかけて全国を歩いてその法律の説明をし、なおかつ、二十一世紀型の公共工事のあり方というものをみんなに理解していただいて、そして今後、国民の皆さんに真に喜んでいただける公共工事でなければならない、そして、理解を伴って、みんなで、ああ、これはつくってよかったな、そう言えるような公共工事にしていかなければならないというのが原点でございます。

 また、私は神戸生まれ、神戸育ちでございまして、六年前の阪神・淡路大震災のときに現場に入りました。みんなが言うんです、扇さん、私は公共工事でつくったあの文化会館の大きいところに避難して助かったんだよ、こう言ってくださる人もありました。そういう意味では、公共工事の是と非、その区別を私たちはきちんと見きわめながら、今後二十一世紀型の公共工事のあり方の原点を皆さんと探っていきたいと思います。

中本委員 大臣が今言われたことと、もう一つ、昨年、国のバランスシートというものが発表されました。やはり、このバランスシートも公共事業の結果というものが如実にあらわれてくるものだと思いますので、これからの公共事業、そういった面でも期待できると思います。

 そして、大臣、私、扇大臣が国土交通大臣になられてよかったなと思いますのは、実は、今までの大臣と違って、都市の景観というものに非常に気を使っていただける大臣だからでございます。これからの都市計画に景観というものはどのように大切なのか、一言だけお聞かせ願えないでしょうか。

扇国務大臣 端的な例を挙げますと、このゴールデンウイークも新記録の日本人が外国へ行きました。外国へ行く魅力、あそこの国に行ってみようというこの魅力があるから、日本から外国へ出る人は世界第三位です。ところが、日本に来る世界じゅうのお客様は世界で二十四位です。隣の韓国でさえ二十二位です。

 私は、少なくとも、世界じゅうの皆さんが、点と点、京都はすばらしい、奈良がすばらしい、あらゆるいいところがいっぱいある、天橋立を見ようとか北海道の雪祭りとか。けれども、その点と点が線で結ばれていない。そのために世界から来るお客様が世界で二十四位。これでは私は残念でならないんです。

 もっと日本のよさを日本人がまず自覚して、どう世界にPRするかということをぜひ私たちは知らなければならないし、まず自分たち日本人が、自分の国がいい国だ、いい町だと誇れるようなものをつくるためには、今後、二十一世紀の、第三次産業の中の観光という産業の大きさというものを考えれば、日本が観光で生きるということも、私は大きな二十一世紀型であろうと思っています。

 例えば、東京の例を挙げれば、日本橋。日本橋は文化財に指定されました。けれども、先生お通りになったらわかるように、日本橋の上には高速道路が二重にかかっています。日本橋というあの橋の命名すら懐中電気を持っていかなきゃ見えないような暗いところにあります。私は、何年かかっても、あの地上の高速道路は地下に走らせて、日本橋を自然の回帰に持っていくべきだ、そういう一つ一つの景観というものをいま一度二十一世紀は見直す世紀だと思っています。

中本委員 これからも景観に気を使ったグランドデザインの作成をよろしくお願いいたします。

 さて、二十一世紀の公共事業の争点は、市民の財産権、つまり私権と公益性との闘いであると私自身思います。憲法二十九条では、「財産権は、これを侵してはならない。」と明記されている一方で、その三項で、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」とも記しております。

 私は、本当に正当なる公益性は私権を制限しなければならないと思っておりますが、公益性と私権のバランスをどうお考えになっているのか、この法案で私権をどこまで制限できるのか、お聞かせください。

扇国務大臣 私は、よりよい日本にするためにはこれが一番大事な点だろうと思っております。そういう意味では、少なくとも私権も公益も、いずれもこれは十分に尊重しながら、どこに接点を求めるかというのが私は大きな基本であろうと思っております。

 そういう意味で、今、中本先生がおっしゃいましたように、今回の土地収用法の根拠は憲法第二十九条第三項に求められておりますけれども、憲法第二十九条第三項におきまして、今先生がお読みになりました「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」そう規定されているのは、今お説のとおりでございます。この「公共のために」、すなわち公益性が存在する場合においては、私権であってもある程度皆さん方の財産権を制限することができることは憲法上明らかになっております。

 現在、確かに、公共工事の実施がおくれることによりまして公益の早期の実現が妨げられている例は多々ございます、例がたくさんございますから今一々挙げませんけれども。そういう意味では、少なくとも国民の生活の向上のために、あるいは憲法第二十九条第一項は、「財産権は、これを侵してはならない。」こう規定しておりますので、私権としての財産権、それを保障しているその憲法のもとの私権についても十分に尊重し、話し合えば、お互いに、国のために、あるいはまちづくりのためにこれは御理解いただけるところではないかと私は思っておりますので、公益性についても広く国民一般から十分な理解を求められるように、その必要が不可欠であるという認識のもとに今回の法案では配慮したつもりでございます。

中本委員 円滑また効率的な公共事業が実施できないのは、例えば政治的な意図があったり、環境を著しく悪化させる場合であったり、文化、歴史の重要性との比較があったりする場合を除いては、やはり損失補償の問題が大きいと思います。特に、土地だけではなくて建物に事業がかかる場合、例えば店舗にひっかかった場合、営業補償はどうするのか、また、工場にひっかかった場合、工場のプラントが減価償却の年数が過ぎているために建てかえの費用が出ない、こういった話をよく耳にしております。

 効率性からいえば、時間のロス、また話し合いや訴訟にかかる費用を考えれば、多少の負担はあっても、ルールを決めて何割かを増額して補償した方が早期解決になるのではないかと私自身思うのでありますが、大臣、どうお考えでしょうか。

扇国務大臣 公共の用地を取得する場合の補償について、本当にこれは皆さんの財産の価値に対する補償でございますから、その際には、少なくとも生活の再建というものを私は最重視しなければならないと思っています。収用されることによって生活が破壊されたのでは何にもなりませんし、合意が得られるわけはありませんので、少なくとも、生活再建を重視して補償基準の充実を図るというのは、これは当然のことでございます。

 また、今先生も、そのことによって少し最初から高目にしたらどうだ、こういうふうにおっしゃいましたけれども、これは、補償金増額の制度の創設を求める御意見があることを私も承知しておりますし、きのうも先生方からの御質問にその話もありました。

 要するに、用地の買収期間の短縮、これによりまして補償金の増額分に見合う費用の削減効果が得られるかどうか、これは大事なところでございます。また、公共事業用地の所有者に対して市場価格を超える土地代金を支払うこととしたときに、その他の周りの土地の所有者との間で不公平が生じる、この不公平感を周りの人たちにどうすればいいのだろうか。また、補償金の財源が国民の税金あるいは公共サービスの利用料金で賄われているということにかんがみますと、高目に査定することが果たして国民の理解が得られるだろうか。こういう三つの大きな問題点を抱えていると私は思っております。

中本委員 私の地元は相模原市というところでございまして、首都圏の周辺部ということで急激に栄えたところでございます。そういった地域におきましては、やはり営業補償でありますとか減価償却の問題、こういった問題が多発しております。どうか御配慮を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 そしてもう一つ、具体的な例を申し上げますと、私の地元の方で、相模縦貫道というものが開通されようとしております。この相模縦貫道は、横浜から八王子に抜ける道でございまして、これが開通すれば、相模原というところは大変交通渋滞で有名なところでございますが、それが解消されると思います。

 この土地収用法の改正によりまして何らかの発展があるのか、そのことに関しまして、道路局長、お聞かせ願えないでしょうか。

大石政府参考人 首都圏中央連絡自動車道の一部をなします相模縦貫道は、神奈川県内の南北方向の幹線交通軸として、茅ケ崎市の新湘南バイパスから神奈川、東京県境を結び、都市間の連絡の強化や交通混雑の緩和などに大きく貢献する約三十四キロメートルの高規格幹線道路でございます。

 平成六年度より都市計画決定がなされた茅ケ崎市から順次用地買収に着手し、平成八年度より一部工事に着手したところでございます。現在、当該区間の用地買収につきましては、近年、任意の交渉により順調に進捗しておるところでございまして、例えば平成十一年末に一六%、平成十二年末に三〇%、平成十三年末には四〇%の用地買収を完了する予定でございます。

 今後とも、地元の皆様方の御理解、御協力を得まして事業の進捗に努めまして、従来、平成十年代後半の供用を目途というあいまいな表現で御説明をしてまいりましたが、大臣の御指示もございまして、目標を明確にするということで、今回、平成十三年度より逐次供用を開始し、平成十九年度末全線供用に向け努力するという表現で述べさせていただきたいと思いますが、そういう目標に向けて努力してまいりたいというように思います。

 なお、土地収用法の改正との関係につきましては、今後とも皆様の御理解、御協力を得て、引き続き任意の交渉により用地買収を進めさせていただく予定でございますので、具体の適用の可能性につきましてはコメントを差し控えるべきと存じますが、本事業におきましても、改正収用法により円滑な用地取得に努めることはあり得ると考えております。

中本委員 これからも、正当な公共事業に関しましては、この土地収用法が有効に生かされることを望みます。

 次に、日ごろから都市問題を勉強されております、私の最も尊敬しております田中政務官に質問させていただきたいと思います。

 日本の社会資本の整備は、欧米諸国に比べて非常に立ちおくれているのは事実だと思います。首都圏に関しましても、渋滞の解消、都市公園の整備、電線の地中化といったインフラの再整備ができておりません。膨張する首都圏にインフラが追いついていないわけでございますが、政務官は川崎の中心地にお住まいですから、都市の問題は実感されていると思います。今や、住環境や交通の面では、一部の地方に比べて首都圏の方が見劣りするようになってしまいました。

 私は、都市部においては、個人の志向よりも厳格な法律の規制が必要だと思います。今の日本の用途制限は建築物の許可を主眼としたものであり、規定内であればどのような建物を建ててもよいということになっております。ですから、個々人はおのおの、法律内、目いっぱいの条件で建築物を建設しております。これでは景観、住環境、また災害や交通の安全性までもが失われてしまいます。

 庭つき一軒家志向が今でも日本にはありますが、例えば、建物の形、色、用途などを限定する地区詳細計画が今後都市部には必要になってくると私自身思いますが、政務官、いかがお考えでしょうか。

田中大臣政務官 ただいま中本委員からいろいろな御質問がありましたし、お考えを承りました。

 中本委員とも、ともに党の都市問題対策協議会で勉強をさせていただいた仲間でもございますし、きょうは会長をお務めでした中馬先生も同席をしておられるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、問題意識は中本委員と私、全く同じような考えを持っているものだと思っております。

 ただ、我が国の都市化の状況というものが余りにも急激であった、こういうことがやはり多くの都市問題を引き起こした一番の原因だと思っております。ちょっと数字を見てみますと、東京の昼間人口が、二百八十四万も差異があるという現実がございますし、私は、こういうことを考えるときに、やはり今後どうしても早急に解決をしていかなければならない都市問題が我が国の重大な政治課題になっていく、このように認識をしております。

 そして、ただ生活の面だけではなくて、品格のある国家や都市をつくるということも極めて重要でありまして、先ほどから中本委員がおっしゃるように、アーバンデザインなどはやはり一番考えていかなければならないと思います。大臣からも、なぜ日本の人たちが外国に行って、外国の方たちが日本に余り来ていただけないのか、このようなお話もされたわけでございますが、極めて重要な視点ではなかろうかと思っております。

 私的な制限等についても今お話があったわけでありますけれども、例えば、私たちのこの状況の中でどこまでできるのか、こういう議論はあると思います。

 既に国土交通省といたしましても、従来から、優良なまちづくりを進めるための各種プロジェクトについて、特定街区、高度利用地区などの容積率を緩和する制度の充実に真剣に努めております。

 また、さきの緊急経済対策を受けて、本年の四月にも、容積率の緩和制度の積極的な活用等についても地方公共団体に強く要請をしたところであります。

 また、都心部における都市基盤整備公団の賃貸住宅の積極的な供給だとか、公営住宅や公団住宅の建てかえにおける高層化だとか、民間の行う都心共同住宅供給事業の積極的な推進だとか、こういうことを考えておりまして、三大都市圏だけでも平成十七年度までに百万戸の優良な住宅を供給していこう、このような意気込みになっておるわけでございます。

 いずれにしても、小泉政権の目玉であります都市再生本部の設置ということで、私たち国土交通省も、この事務方をしっかりと務め上げて、扇大臣の目指される日本の本当にすばらしい国土、都市の形成というものに力を注いでまいりたいと思います。

 以上でございます。

中本委員 政務官、例えばこの千代田区に庭つき一軒家がある状況は、世界の大都市と比べて異常な状況だと私自身は思うわけであります。

 例えば、東京の千代田区、中央区、港区、新宿区、この四区の人口を合わせてみれば、大体五十万ちょっとぐらいであります。ところが、その四区の合計よりも面積の狭いニューヨークのマンハッタン、百五十万人もの人間が住んでおります。また、パリを見てみると、東京二十三区の中で一番人口密度の高い中野区よりも実はパリの方が人口密度が高いわけでございますが、東京のように乱雑した景観、こういった状況にはなっていないわけでございます。

 やはり、政務官の言われたように、これは用途制限をきちんともっと緩和して、例えば山手線内は一軒家を全部なくしてもっと人口をふやそうじゃないか、こういったことが考えられると思いますけれども、政務官、こういう考えにどう思われるでしょうか。

田中大臣政務官 今、都心を中心にいろいろと人口のふえている状況があらわれております。それはやはり、仕事と住宅が接近していること、あるいは都心部の、都心における便利さ、いろいろな利点があると思います。もう一方では、価値あるものは、土地の値段も上がりつつあるような状況が今日存在するわけでありますが、以前に比べればそれでも相当安くなった、このような値ごろ感も実際にはあるだろうと思います。

 今言われましたように、都市の機能を、さらに検討を加え、規制を外して、やはりもっと多くの人たちが住んでいただける魅力的な町としてつくりかえていくということは当然のことでありまして、国土交通省といたしましても、地方自治体の皆さんあるいは民間の皆さんと知恵を絞りながら、結集をして努力してまいりたいと思います。

中本委員 大臣、一つだけ最後に。

 話は変わるんですけれども、例えば、沖縄と違いまして、この本土におきましては米軍基地の考え方が違うと思います。私の町にも米軍基地があるんですけれども、以前は何にもなかった野っ原に米軍の基地ができました。しかし、今やそれが市街地となり、そして人口密集地となっております。

 そういった地域の基地は、もうほかの場所に移転してもいいんではないか、移転した方がより都市機能が充実するんではないか、私はそう考えるんでありますが、大臣、このことについてお考えをお聞かせください。

扇国務大臣 基地の問題と日本人の安全、安心の問題とは不可分だと思います。

 我々は、日本国として、みずから自衛をするというこの原点に立って自衛隊というものが位置づけられておりますけれども、果たしてすべてのものをなくして自衛ができるだろうか、その原点に入ると私は思います。自衛隊が憲法違反だと言われた人もいます。しかも、今でも、憲法学者、憲法学者ですよ、その人たちの間でも、自衛隊一つとってみても違憲、合憲の判断が分かれるところです。そういう意味では、日本が今日のあるべき日本国としてどうするべきなのか。

 そして、今先生がおっしゃいましたように、急激な都市化によって住民の集中しているところから移転したらどうだと。では、どこへ移転するのか、そういうことも私たちは考えなければなりませんし、なおかつ、今の現状では、日米安保によって我が国を守ってもらっているという、この安保がある以上は、私たちは自分たちで自分の国をみずから守ることがまだ不可能である。しかも、それを守る自衛隊さえ違憲であると言う人が日本の中にいる。学者の中でも意見が分かれる。

 私は言っているんです。少なくとも二十一世紀を迎えたときに、中学生の高学年が、憲法の前文だけでもいい、話してわかるような、そういう憲法にしてほしい。学者でも意見が分かれるようなことでは、私たちは子供たちに何を教えればいいのか。そういう国のあり方の基本にかかわることを重視していかなければならない。

 それが、あっちがいいとか悪いとかということではなくて、国のあり方自体の大きな基本問題であると認識もしておりますし、私たちも国会で堂々と、憲法調査会ができておりますので、そこで、私たちはその根幹にかかわることをみんなで衆参で論議して二十一世紀のあり方を示すことが、私はどこに持っていくかということの最も基本であろうと思っています。

中本委員 大臣、これからも、できること、できないことをはっきりと言われることを御期待申し上げます。

 最後に、この本にサインをしていただくことをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

赤松委員長 河上覃雄君。

河上委員 本を持ってきませんでしたのでサインは求めませんが、土地収用法の改正につきまして、何点か質問をさせていただきます。

 今回の改正が、事前説明会や公聴会を義務づけたことを初めといたしまして、第三者機関の意見聴取、認定理由の公表、私は、現行法に比べまして透明性、公平性、合理性が確保されました点におきましては、大きな前進であり、一定の評価をするものでございます。

 しかし、一方、これまで土地収用法の執行に当たりましてさまざまな問題が起きてきたことも事実でございます。こうした背景の一つに、認定されました事業が地域住民に十分な理解が得られなかったこと等が指摘をされております。

 当事者を初め地域住民の十分な理解を制度的に担保するということは非常に重要なことだと思っております。憲法二十九条第三項は、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」このように規定しておりますが、問題は、改正案が、地域住民の理解に対して実効性の上から十分担保され、運用されるかという点が大切なことだと考えます。

 今の趣旨に基づきまして、何点か、やや具体的、細かい質問になるかもしれませんが、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 第一点目に、まず、今回の改正案が、法的に義務づけられた事前説明会及び公聴会の対象者を、それぞれ利害関係人と、このように規定しております。

 そこで、利害関係人とは、土地所有者に限定をされるのか、あるいは当該事業によって社会生活に影響を受ける者まで対象とするのか。この点についてお伺いいたします。

風岡政府参考人 利害関係人の範囲についてのお尋ねでございますけれども、これは、法律上は「利害関係を有する者」というふうにしか書いてありませんので、解釈に及ぶということになるわけでございます。

 私どもとしましては、この「利害関係を有する者」の考え方でございますけれども、これは、起業地内の土地所有者などの法律上の利害関係を有する者だけではなくて、できるだけ幅広く考えたいというふうに思っております。経済的、社会的な関係など事実上の利害関係を有する者、こういったものも含めていきたいというふうに考えております。

 例えば、具体的には、道路事業によって騒音とか振動を受ける可能性のある方、こういった方も社会生活に影響を受けるという意味で利害関係者であるというふうに考えておりまして、この点については、できるだけ幅広く意見をお聞きするという立場で範囲を考えていきたい、このように考えております。

河上委員 事業認定申請前に起業者による事前説明会を義務づけておりますことは今申し上げたとおりですが、例えば、任意買収の大半が完了している段階での事前説明会と、買収が開始された段階での事前説明会、開催時期や参加対象者によって事前説明会そのものの性格が変わってきますね。前者ならば、土地収用という問題を前提とする事前説明会となるでしょうし、後者ならば、事業内容が前提の事前説明会の性格となると思います。

 これは、ある意味では、事前説明会の方向性がまだ明らかではない。十分な住民参加を得て、関係者や地域の理解を深める努力を行おうとするならば、事前説明会のあり方について、単なる手続規定に終わらせないためにも、より詳細に規定する必要があるのではないのか、こう考えますが、いかがでしょうか。

風岡政府参考人 ただいま先生の御指摘をいただきましたように、今回の事前説明会、これを義務づけましたのは、起業者が事業の認定について利害関係を有する者に対しまして十分に説明をするということは、それ以降の事業認定の手続だとか収用委員会の審理の円滑化ということについても大きな効果がある、このように考えております。

 まず、利害関係者に対する周知でございますけれども、これにつきましては、起業地の地方紙、その地域の新聞でございますが、これによって周知をするということで、利害関係者に対して、あらかじめそういうようなものが行われるということをわかりやすくさせていきたい、このように思っております。

 それからまた、説明会の開催時期、これをどうするのかということでございますが、事業ごとに事業計画の熟度というのはそれぞれ異なるものでございますので、一律にいついつやりなさいということまではなかなか決めがたいということで、個別具体の状況において適時適切な時期に説明会を開催していただく、こういうことが基本かと思います。

 また、事前説明会をせっかくしていただいた後の対応でございますけれども、事業認定の申請に当たりまして、事前説明会における実施状況の書面、これも申請書に添付をさせるということで、認定庁においてどういったようなことが行われたのかということも、参考になるようにしていきたい、このように考えております。

河上委員 周知徹底の方法について伺います。

 官報だけじゃなくて、例えばホームページを活用する。事業の内容によっては、関係地域に限定する場合もあるでしょう。この場合は、新聞の地方紙等も活用していただく。国民的な関心が想定される場合などは、全国紙等を活用して、行き届いた周知徹底の方法というものを検討する必要があると思いますが、この点についてはいかがですか。

風岡政府参考人 事前説明会の開催のルールにつきましては、これは省令ベースで具体的に記載をしたい、このように考えております。

 まず、周知措置というのは極めて大切なことでありますので、これは先ほども申し上げましたけれども、起業地の地方紙、ここには少なくとも掲載していただく、このように考えておりますが、単にそれだけではなくて、ホームページを活用するとかいろいろなことがありますので、先生御指摘のように、できるだけいろいろな手段で徹底されるように指導していきたい、このように考えております。

河上委員 大事な点は、やはり政治や行政に対する国民の信頼という点が最も大切だと思います。時代や社会の進展に伴いまして国民の権利意識というものが変化をいたしております。その上で、ぜひとも、これらを的確にとらえながら、地域住民の一層の理解を深める努力、あるいは情報公開を促進するという観点から、事業計画策定段階と事業認定手続段階において地域の住民の意見ができる限り反映される工夫というものが必要であろう、私は、こう考えております。

 例えば、事業計画段階において、公共性の高低、環境の配慮、あるいはミティゲーション、高齢者等の居住の確保、あるいは生活再建のための措置の可否、総合的な見地から、地域住民とともに協議をし、計画策定に住民の意見を反映させていく。また、事業手続段階では、公益性、環境への配慮などを厳格に適用し、申請された事業について一定の条件を付して事業認定を行うなど、公平性、中立性、透明性の確保を実現する。

 すなわち、初期の計画段階では公益性のみならず総合的な見地から緩やかにチェックをし、事業認定段階では厳格にチェックをするという二段階の評価システムの考え方などが必要なのではないのか、このように考えますが、これについての見解をお尋ねいたします。

風岡政府参考人 事業の公益性とか妥当性というものを考えるときに、先生の御指摘いただきましたような計画段階と事業段階、それぞれ観点の違いが若干あるけれども、そういうような形で考えるべきじゃないかというのは、これは極めて貴重な御意見だというふうに考えております。

 私ども、今回の収用法は事業の実施段階の対応ということにとどまっておりますけれども、やはり事業の計画段階で幅広い御議論をしていただくということは、事業を円滑に進める上でも、また国民の理解を得る上でも、これは重要な手続だ、このように思っております。

 もちろんそういった手続を踏んでいただくことが望ましいわけでございますけれども、事業認定は事業認定の段階で、公益性、これは法律にのっとって公益性の有無というものを厳格に判断していくということになりますが、川上段階でいろいろな議論がされているということは、また、その事業認定の段階につきましても、そういう意味で適切な計画だと評価される可能性が非常に高いのではないか、こういうように思っております。

 なお、先生、事業認定に当たって一定の条件を付与するようなやり方という御指摘がありました。

 これは、私どもが土地収用法につきまして研究会で御議論していただいたときにも、事業認定に当たって条件を付与するというやり方を検討したらどうかという御意見はありました。いろいろありましたのですが、最終的な研究会の御意見としては、それぞれの計画というのは個別事業法に基づいて計画づくりがなされておりますので、それを土地収用法という段階で条件変更することになってしまうということで、その両方の法律の取り扱いというのをそもそもどういうふうに考えたらいいのかという、やや基本的な問題がありまして、この点については、引き続き議論すべきだということになりました。

 確かに、一定の条件を付与するという考え方は、考え方として非常にわかるのですけれども、やや法律上の問題というのがありまして、その辺につきましては、引き続きの勉強課題ということでさせていただきたい、このように思います。

河上委員 今回の改正案には、生活再建のための措置というものを設けております。しかし、あくまでも努力義務、このようになっております。

 高齢者の居住の確保、これは非常に重要な問題です。それから、職業など生活基盤そのものの転換を余儀なくされる方々、これらの方々に対する対策というものは果たして努力義務規定で十分措置できるのだろうか、対応できるのだろうかと、やや心配な点がございます。

 将来の生活に対する不安というものを除去してこそ初めて協力が得られるのではないかとも思いますし、その意味で、現行の規定で実効性ある生活再建措置が図られてきたと考えていらっしゃるのか。また、その事例は多々あるのか。

 憲法二十九条第三項の正当な補償について、生活再建は行政の措置とする判例もございます。しかし一方、生活再建措置を補償とするべき学説もございます。その意味から、政治的、政策的にも、この点については本格的な検討の時期に来ているのではないか、私はこう考えますが、大臣、いかがでございましょうか。

扇国務大臣 一番大事なところを今河上先生はおっしゃいました。先ほど中本先生ともその論議をいたしましたのもお聞きいただいたと思いますけれども、要するに、公共工事に必要な土地を提供するということ、そのことに対して生活基盤を転換しなければならない、それを余儀なくされたという人たち、そういう人たちに対しては、少なくとも私たちは、生活再建に配慮する、この原点を忘れてはならないし、また一番重要なことであると認識しております。

 また、私たちは、それに従って補償を行うに当たりましては、財産の価値に対する補償のほかに、生活再建を重視する観点から、例えば、先生も御存じだと思いますけれども、建物移転料について、新たに建物を建築した場合に必要となる費用に着目して、それも加味して補償する、そういうこともやっております。

 また、駐車場の一部が買収される場合においては、買収地の財産価値に対する補償のみならず、駐車場の立体化とか他の駐車場の借り上げに要する費用の補償をも一緒に行っておりますとか、そういうことも今回は配慮しなければならない。

 また、三つ目には、家を借りている人たちが、大変狭いところに借家として借りている、そういう場合には、家賃の差、小さいところだから、補償金額、計算どおりですよということではなくて、そういうものを算定するときに当たりましては、根拠となる住居の面積を割り増す、これを加味するということも今回は配慮しなければならない、そう思っております。

 また、特に高齢者の、今先生がおっしゃいました、大変高齢者で、今まで住んでいるところからやむなく移動しなければならない、そういう方に対しましてはさらに割り増しをする、そういうことも今回は配慮したいと思っておりますけれども、高齢者の皆さん方の補償には十分に配慮しなければならない、そう思っております。

 また、これに加えまして、私どもは、今回の土地収用法の改正案に当たりましては、生活再建措置の実施につきまして、要するに起業者に努力義務を課す、このことによって、一般の皆さん方が言えないことも言えるというふうに、起業者の責任ですね、そういうものも今度の制度で設けられた旨を、少なくとも権利者にはそれを知っていただく、あなただけではないんですよ、起業者も一緒にやるんですよということも今回は周知徹底させなければならないなと思っております。

 また、用地買収の際に、今先生がおっしゃいました、生活の実態並びに要望の内容、これはそれぞれが的確に把握していかなければいけないことだと思っておりますので、起業者間の連絡会議等におきまして周知徹底を図って、今回の措置が単なる努力義務に終わらないように、現実に皆さん方に不安を与えないようにするということを今後も十分勘案してまいりたいと思っております。

河上委員 大臣、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 土地収用制度研究会報告では、土地収用法の補てんに関する補償基準、細目でございますが、法令化するように求めておりました。損失補償は権利対価補償が基本であることは認識をいたしますが、高齢者等の居住の確保について、極めて細やかな補償の必要性と居住上の損失に対する補償を追加すべきであると提言いたしました。大臣も今おっしゃられましたが。

 そこで、この補償基準を法令化する場合、補償基準細目について、昭和四十二年十二月改正の公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱、これは閣議決定をされておるわけですが、これをベースに検討することとなると思います。この公益性の高い低い、きめ細かな生活再建、環境への配慮などの視点から、これを幅広く検討するお考えはございますか。

風岡政府参考人 公共用地の補償の考え方、先ほど大臣からも御答弁がありましたように、財産的な補償というのが基本でございますけれども、その際、生活再建というものも重視する方向でいろいろな見直しも行ってきたところでございます。

 この補償をめぐっては、先生今御指摘をいただきましたようなことも含めて、いろいろな御指摘が外部から私どもに投げかけられております。

 例えば、生活再建の立場からは、補償内容をさらに充実すべきではないかというようなこととか、あるいは環境に影響があるような場合の事業損失、これも今、影響の項目ごとに基準を決めておりますけれども、こういったものも今のままで本当にいいのかというようなことも含めて、いろいろな御議論があるのは私どもとしても十分承知をしております。

 御指摘のように、今回、補償基準につきましては法令で義務化をするということにしておりますので、単に法令に根拠を置くということだけではなくて、この機会にその内容についてもさらに精査をする必要がある、このように考えております。

 そんなことで、今後、有識者等多方面の御意見を伺って、補償基準全般の内容についての見直しというものに取り組んでいきたい、このように考えております。

河上委員 これもぜひよろしくお願いを申し上げます。

 改正法の附則第二条の経過措置について、一点だけ確認をいたしたいと思います。

 第二条の経過措置で、事業認定手続に関しまして、事業認定申請が施行日の前の申請であれば、施行日後においても改正法は適用されないこととしております。それに対して、収用裁決手続は、施行日前に収用手続が開始された場合、施行日後においては改正法が適用されることになっております。前者と後者とは適用法が違うわけでありますが、この理由。私は、この場合、改正法に準拠した運用に努めていいのではないのか、こう考えますが、いかがでしょう。

扇国務大臣 今の河上先生のお考えもごもっともなところがあろうと思います。

 少なくとも、公聴会の開催等の事業認定に関する手続規定、これは、現に旧法の規定に基づいて事業認定の手続がもう既に進行している、そういうところに関しまして、その流れとは別に、公聴会の開催等、そういうものが、新たな措置を適切な時期に行えるかどうか。これも、逆流するという言い方をすればいいのですか、もう一度もとに戻す、そういうことにならないかということも微妙なところだろうと私は思いますので、そういうことで、新法の施行前に事業認定の申請がされた事業に対しては新法を適用しない。どこかで線を引かなければいけないものですから、私はそういうふうに今回はさせていただいた。

 そしてなおかつ、収用の裁決に関します手続につきましては、土地所有者の権利に十分配慮して行っておりますので、権利の侵害をすることにならないようなことから、改正法の施行前に事業認定の申請があった事業に関しましては新法を適用しない。どこかで線を引くので、こういうことで線を引かせていただいたようなものでございますけれども、このことから、法律的な整理をして、改正案のような経過措置をしたものでございます。

 しかしながら、事業認定の判断の透明性とか、あるいは今言われております一番大事な公正性、そして合理性の向上も図るという今回の法律の趣旨を踏まえまして、私どもは、改正法の公布後に事業認定の申請がなされた事業につきましても、公聴会の開催を求める旨の意見書の提出があった場合には必ず公聴会の開催を実施するというこの法案の趣旨を踏まえた運用を図ってまいりたいと思っておりますので、ぜひその辺は河上先生にも御理解いただきたいと思っております。

河上委員 わかりました。

 もう一つ、これはやや外れるのですが、この一月の省庁再編に伴いまして、各省庁に政策評価を担当する部局というものが設置されました。これをしっかりと、収用法に関しても政策評価をしていただきたいな、こういう趣旨で質問をさせていただきますが、その際、公共性の認定、環境影響評価、地権者への損失補償など、これらは政策評価の対象とする考えはございますでしょうか。

 また、評価後、損失補償などで、逸失利益が著しい場合、補てんする考え方があってもいいのではないのか、私はこう考えておりますが、いかがでございましょうか。

山本政府参考人 お答えさせていただきます。

 土地収用の諸制度も政策評価の対象とすべきではないか、こういう御質問でございます。

 私ども国土交通省におきましては、成果重視、目標による行政運営という考え方のもとに、このたび、省全体の主要な政策分野について、わかりやすい目標と指標を明示いたしまして、その実現に向けた取り組みを総合的に評価する新しい政策評価体系をことし一月から全省的に導入いたしまして、現在、先月省議で決定された具体の計画に基づきまして、早速政策評価を実施し始めたところでございます。

 私どもといたしましては、所掌する制度、施策等につきまして、できる限り総合的な視点から政策評価を実施し、その結果を二十一世紀型の真に必要な新しい制度、施策等の企画立案に反映させるというマネジメントサイクルを確立することが大変重要であるというふうに考えているところでございます。

 先生お尋ねの土地収用制度につきましても、政策評価の対象として、今後必要となる新たな制度の見直し等を、こうした評価を活用しつつ実施していくことが適切であるというふうに考えておるところでございます。

 このように、私どもは、今後、幅広い政策分野に関しまして、真に実効性のある政策評価を強力に推進してまいりたいというふうに考えているところでございます。

河上委員 もう一点、払い渡し方法についてこの際質問をいたします。

 改正法は、権利者が補償金等を確実に受領しているか否かにかかわらず、一定の期間前までに現金または郵便為替証書等を書留郵便で配送したときは権利取得裁決や明け渡し裁決を失効せしめないという、発信主義という立場をおとりになっていらっしゃいます。私は、土地収用法という趣旨からすると、到達主義が適切妥当なのではないのかと。

 民法は原則として到達主義を採用いたしておりますのに対しまして、改正案では発信主義の立場をとった理由とはいかなるものなのか。また、発信主義の場合、転居によって所在不明の権利者に対する払い渡しはどのように担保されるんでしょうか。さらに、権利者が海外居住の場合、どのように対応されますか。

風岡政府参考人 まず、今回の制度、先生御指摘のような変更をさせていただきたいということでございます。

 書留郵便によりまして補償金を送付するということでございますが、これは、我が国の現在の郵便制度というものを前提にした場合には、その配達の確実性というのは非常に高いわけでございます。通常は、到達し、そこで弁済の提供がなされる、本人が受け取って弁済が完了するということでありますので、発信主義という方法をとっても、実質的には、到達し、また受領されるという期待可能性は非常に高いというふうに思っております。

 到達主義というものを採用するという考えはないのかということでございますけれども、到達主義を採用しますと、これは例外的な場合ということかもしれませんけれども、例えば郵便事故とか受取人が不在とかで補償金の支払い期限までに支払いが至らないということで、その結果として収用裁決が失効してしまう、こういう事態が生ずる可能性があるわけでございます。そういう意味で、今回の法案におきましては、払い渡しの期限までに権利者の支配領域に達するよう時間的な余裕を持って発送した場合には裁決が失効しない、こういう取り扱いをさせていただきたい、また、このことは合理性を持っているのではないだろうかというように考えております。

 ただ、個々の人にとりまして、郵便事故や受取人の不在によって期限までに払い渡しに至らないような例外的な場合というのも出てくる可能性がありますので、それにつきましては、やはり権利でございますから、明確な保障が必要だということで、補償金の事後的な支払いを確実にするために権利取得裁決に債務名義を付与するという法律的な措置も講じておりますので、権利者の保護の面からは問題はないというふうに考えております。

 なお、この制度は、郵便事情というのは国内、国外いろいろ差がありますので、とりあえず国内の制度に適用するということであります。

 また、権利者に届かなかった場合ということでありますけれども、これは、しかるべき時期に発送していれば権利取得裁決の面ではそれは失効しないということでありますが、権利者に対する保護は、先ほど申し上げましたような形で、もちろん必ず補償金の支払いをする、こういうことかと思います。

 それから、先ほど御質問いただきました点で、ちょっと私の方でお答えすべき点が残ってしまいましたので、それだけ一言申し上げたいと思います。

 損失補償における逸失利益の関係でございますけれども、例えば公共事業の施行が予定されることによって事業地の地価が下がってしまうというようなケースも例外的にあるかもしれません。そういった場合の補償の考え方は、やはり地権者が近傍地において同種のものを購入できるようにするということが基本でありますので、そういうことができるような形で補償基準というのを整備している、このようなことでございます。

河上委員 最後に一点だけ、ややかた苦しい議論になりますが、ぜひとも御見解をちょうだいいたしたいと思います。

 公共の利益のために私有財産の譲渡を強制または制限されること、これは憲法第二十九条一項で明らかにされておりますが、これに基づきまして、土地収用制度は、憲法第二十九条三項の規定に基づいて、公共の利益となる事業の遂行と私有財産の補償という二つの利益を調整する役割を担っております。

 昨日の参考人質疑の際にも、私は、私権の制限と公共性について参考人の方からの御意見をちょうだいいたしました。いろいろと、今申し上げたことに準拠してしっかりとやらなくちゃいけない、そのためには住民の皆さん方の理解を十分に得なくちゃならないという御回答でございました。

 私は、その意味で、国民と政府がともに公共的なるものの形成に協力するシステムづくりというものもこれから必要なのではないのかと。当然、その前提には、政治や政府に対する国民の皆さん方の信頼というものが大前提になると思っております。ある意味では、公共の財産と私有財産は密接な関係にあるだろう。公私の対峙ということではないと私は理解をいたしておりますし、その意味では、公と私は、トータルとしてその価値の蓄積を見詰めていくという考え方の方が大切なのではないのかと思っております。

 そこで、この前提で、残念ながら手続が中心に書いてある法律でございますので、公益性とは何かということについてはここからは導き出されてまいりません。ややこれからの将来のこの法律の持つ意味も考慮いたしながら、私はあえて、果たして公益性というのはどういうふうにとらえればいいのか、公益性とは何か、また公権力と私的制限との関係はどうあるべきなのか、公益性の高低と損失補償はどのようにあるべきなのかということを、きょうはこれで時間がありませんので議論はできませんが、これに対する見解だけ得て、終わりたいと思います。

風岡政府参考人 公益性とは何かという非常に難しい御質問でございまして、私も法令用語辞典もいろいろ引いてきたんですけれども、なかなか明快な回答がないんです。一般的には、公共の利益、社会一般の利益と言われておりまして、それぞれその利便が及ぶ範囲とか内容というのは非常に多岐にわたりますので、具体的な内容に即して考えていく必要があるわけです。

 例えば土地収用法の考え方は、これは、対象となる事業を実施することによって得られる利益、これを公益。それから、失われる利益もあるわけです。公益も失われることもありますし、私益も失われることがあります。それを比較して、得られる利益が優先しているという場合には事業の公益性があるという判断をしているわけでございまして、基本的には、公益性というのは、そういう形で判断をしていくのかなというように思っております。

 そうはいいますものの、公権力と私権の制限、これはやはりある意味ではバランスがとれていく必要があるわけでございますので、収用法の適用によって私権の制限ということが認められるためには、やはり公共性について幅広く国民の理解を求めるような、事業の内容も含めて、そういった取り組みが必要かなというふうに思っております。

 今回の土地収用法の事業認定手続の改善規定は、そういったことが可能になるというような、少しでも可能にしたいということで、広く国民の意見を取り入れるような仕組みにした、こういうことであります。

河上委員 いろいろと大事な問題ですから、これはまだ、これから議論を深めたいと思います。別の機会にまたさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。ありがとうございました。

赤松委員長 松浪健四郎君。

松浪委員 おはようございます。保守党の松浪健四郎でございます。

 土地収用法の一部を改正する法律案が審議されておるわけでございますけれども、今回の改正案の背景には、私自身は、二つのことがあろうか、こういうふうに思っております。

 まずは、事業の公益性そのものが問われるようになってきたのではないのか、そしてもう一つは、財政難の中で事業の効率化、迅速化を求める声も高まってきた、それゆえに改正する必要があるのではないのか、こういうことだろうと思っております。

 そこで、昨年、当時の建設省でありましたけれども、公共事業を二百以上中止する、このように発表されました。公共事業は悪である、こういうふうな考え方がマスコミを中心にして広がっておるのも事実でございますけれども、これら中止された公共事業というのは、まず土地の収用が難しかったのだろうか、あるいは公益性を問い直した結果なのか、それとも環境アセスメント、これらが影響したのか。いろいろな理由があると思います。

 私は関西国際空港を選挙区に持つ者でありますけれども、この空港をつくるのには、海を埋め立てるということで、土地を必要としなかったわけであります。したがいまして、比較的スムーズに工事が進み、若干おくれたとはいえ、開港し、そして今、二期工事に入っておるわけでありますけれども、これも大体順調に進んでいくであろう、こういうふうに我々は期待を寄せるものであります。

 あちらこちらを見たときに、公共事業がなかなか進まない。もちろん、地域、場所、物によってその原因、理由、これらはあると思うのですけれども、その原点、公共事業が進まない原因の原点は一体どこにあるというふうに考えておられるのか。そして、住民の皆さんの理解を得るための努力を行政側がしっかりしているのだろうか。私は、不足しているのではないのか、こういうふうに思ったりしておるわけですけれども。

 公共事業が進まない原因について、まずお尋ねしたいと思います。

扇国務大臣 基本的なことなので、松浪先生の御意見、またお考え等々、これは、今例を出されましたが、昨年与党三党において、少なくとも百九十七の事業を見直そう、国土交通省独自でも三十四の事業を見直すようにしました。結果、百八十七の事業を中止いたしました。これも私は、むだだから中止したということではなくて、あるいは五年たっても事業が進んでいないとか、あるいは十年たってもでき上がっていないというものを見直したということなんです。

 少なくとも、今先生がおっしゃいます、公共工事がなぜこんなに、事業認可されていながら五年たっても着手しないのか。そういうことを考えますと、複雑な権利関係の調整等によりまして、事業の進捗に長期間を要する、そういう結果がある場合、これは一つ大きな理由として挙げられると思います。また、二つ目には、事業の着手後の調査等によりまして、当初予期し得なかった状況、そういうものが生じる場合がございます。例えば自然のために、オオタカがすんでいたとか、あるいは自然が、ここを見たら、これは調査したら環境上ここは壊さない方がいいとか、あるいは予測し得なかったそういう状況が発生して事業が進まなかったことも大きな影響の一つでございます。

 また、公共事業の実施に当たりましては、住民の理解と協力を得ることを基本としているところですけれども、いわゆるパブリックインボルブメントの実施、あるいは事前の説明会、公聴会の開催など、計画的に段階をしていくときに、この最初の事業の説明が住民とうまくかみ合っていなかった、足りなかった。役所側の努力も、あるいは地方自治体の努力も、説明が足りなかったという点で、最初のボタンのかけ違いという点も私はあったものと思っておりますので、今後は、そういう皆さん方の、最初からの住民参加でございますとか、情報公開を伴う、そういう対話型の行政を積極的に推進していきたいと思っております。

 今後も、できる限り早い段階から積極的に住民参加を推進して、住民の理解と協力を得ながら、公共工事が真に国民に喜ばれる公共工事になり得るように、私たちは最大の努力をしていきたいと思っています。

松浪委員 先進国、とりわけ欧米の憲法を見ましても、また我が国の憲法でも同じように書かれてあります。先ほど河上委員からも、憲法第二十九条三項、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」このように書かれてあり、それで収用法ができておる。こういうふうに思うわけであります。

 収用法が行き詰まっている原因として、いろいろあると思うのです。その中には、もしかしたならばイデオロギーの対立等、これらもあるかもしれませんけれども、公共の福祉の観点が不足しているのではないのか。公共事業における公共の福祉の重要性の国民への普及啓蒙活動が必要ではないのか、私はこういうふうに考えますが、御所見はいかがでしょうか。

風岡政府参考人 公共事業の行き詰まりということの一つの要因として、それに関する情報開示というものが必ずしも十分ではなかったというようなことも指摘をされているわけでございます。

 私どもは、特に収用の対象となるような大規模な事業につきましては、これは、計画段階での情報開示とか住民参加とか、そういったことも必要でありますし、また、事業の新規採択のときのコスト・ベネフィットの評価も必要です。また、そういうことを通じまして、その事業が地域の住民あるいは国民にどういうような影響を与えるのか、いわゆるアウトカム効果は何なのかというようなことも明らかにしていく必要がある、このように考えております。

 収用との関連では、用地の取得が円滑に進まなくなった段階での収用手続になるわけでございますけれども、やはり公共の福祉の実現という面からも、収用手続自体についても国民の理解を得るということに努めていかなければならない、このように考えております。

 私どもとしましては、先生御指摘の公共の福祉についての普及とか啓蒙ということにつきましては、今申し上げました事業の計画段階からの住民参加だとか情報開示、そういったものを進めていく中で、あるいは収用法の趣旨を今後御説明する中で、そういったことについて、地域住民のみならず広く国民に対して、改めて公共の福祉の重要性ということについてもいろいろな説明その他をしていきたい、このように考えております。

松浪委員 次にお尋ねしたいのは、予算の執行が適正な手続で決定されている以上、事業の公益性について、収用手続において改めて事業認定を厳格に行う必要があるのか。迅速な公共事業の執行という面から考えますと、これではおくれるばかりではないのか。こういう疑問がありますが、いかがでしょうか。

風岡政府参考人 予算措置と事業認定との関係ということになろうかと思いますが、土地収用法の事業認定は、これは、法律に基づく要件に該当しているかどうかを厳格にチェックするということであります。

 それから、一方、予算の方は、これは、適切な財務会計手続を経て予算の執行を行うというような観点で行われているものでありまして、予算の方は、その事業について個人の土地を強制的に収用するということまでそれの中に含まれているものではないというふうに考えております。したがいまして、両者はそれぞれ目的を異にするという側面もあります。

 したがいまして、予算執行の手続を経た事業でありましても、その土地を強制的に収用するということになりますと、これは公共の利益と私権の制限の調和、こういう別の問題でありますので、収用法の手続に従って事業認定をとる必要がある。もちろん、事業の迅速化ということは極めて大切なことでありますけれども、一方、私権との調整という意味で、収用法の事業認定の手続は、これはこれとして踏んでいく必要がある、このように思っております。

松浪委員 改正案には、廃棄物処理センターを収用適格事業の対象に追加しておりますけれども、ごみ処理施設の強制収用対象拡大は、ごみ問題の根本解決にはなじまないのではないのか、こういうふうに思うものであります。

 日の出町の事例が行政代執行までしていることを参考として、廃棄物処理行政のあり方についてお尋ねしたいと思います。

風岡政府参考人 今回の法律改正におきましては、収用適格事業の一つとしまして、リサイクル施設等を加えさせていただいております。これは、収用対象事業として、従来リサイクル施設についてはそもそも対象になっておりませんでしたので、それを加えさせていただいたわけでございます。個々の事業ごとに、その事業認定の手続で収用すべき事業かどうかというのは、当然個別に判断をするということになろうかと思います。

 先生御指摘の廃棄物対策としての問題、これは、総論賛成、各論反対という代表的な施設ということになるわけでございますけれども、いずれにしましても、こういったものは社会として当然必要なものであるわけでございますので、これは計画段階からやはり幅広い議論をしていく。その上で、その事業についてどうしても用地が必要な場合につきましては、これはリサイクル施設であれば、今回適格対象に加えていただくということにしておりますので、それに基づいて収用に適するかどうかの判断をするということかと思います。

松浪委員 本法律案提出の経緯の中に、公共事業に関する損失補償、損害賠償は、従来、金銭補償を原則とし、現行土地収用法も金銭補償を原則としているが、生活再建補償などの補償の充実が必要になっている、こういうふうに考えられてまいりました。

 それで、生活再建は、努力義務ではなくて、正当な補償の対象として予算化すべきではないか、このように考えます。裁判例では、憲法上の補償とまでは言っていない。これは理解しているわけですけれども、公共事業の迅速な執行のため、政策判断として一歩も二歩も踏み込む時期に来ているのではないのか。このことについてお尋ねしたいと思います。

扇国務大臣 これも先ほどから御論議をいただいています。松浪先生にも基本的な大事なところを御指摘いただいたと思います。

 少なくとも我々は、生活再建というこの一番大事な住民の皆さん方の権利というものをいかに補償でき、またそれが実現できるか。そういうことには最後まで努力をしなければいけないと思っております。

 少なくとも、公共工事、公共事業に必要な土地等を提供することによって、今先生がおっしゃった生活の基盤を失うことになりかねない、また、なってしまう方に対しましては、生活再建に配慮することが重要であるというのは当たり前のことでございます。そういう意味で、財産的な価値に対する補償のみならず、生活再建を重視する観点からも補償基準の充実を図るということが今回の大きな基本になろうと私は思っております。

 また、今回の改正には、これに加えて、側面的な支援の性格を有する代替地のあっせん等生活再建措置の実施に、あるいは起業者に努力を義務化する、義務づける、こういうことによって、金銭の補償にはない、プラスアルファの、金銭にはなじまないものもここに加味される。そういう意味では、今までと今回は改正の部分が大変大きく変わってきている。

 しかし、今後は、起業者はこのような制度が設けられた旨を権利者に周知徹底する。皆さんが知らないとこれはできないことですから、その方法に関しては、用地買収の際には、生活の実態及び要望の内容を的確に把握していくことが必要でございますし、また起業者間の連絡会議、これも設定しようというふうにしていますので、起業者同士がお互いに連絡し合って、周知徹底を図って、今回の措置が単なる努力義務に終わらないように、最後まで私たちは見守っていき、また指導していきたいと思っております。

松浪委員 どうも真摯な答弁、ありがとうございました。時間が参りましたので、これで終わります。ありがとうございました。

赤松委員長 森田健作君。

森田(健)委員 21世紀クラブの森田健作でございます。

 大臣、国家財政が厳しい中で、国民の公共投資、公共事業に向ける目が大変厳しくなっているのは現実でございます。しかし、日本の今を見てみますと、実態を見ていますと、私は、欧米と比べても、下水道一つとってもまだまだ劣っているのではないかな、そう思うところでございます。ですから、社会資本整備の向上、これは避けて通れないのではないかな、そう思うものでございます。しかし、財政は事実厳しいのでございますから、その中で、どの公共事業をどうやっていくか、言うなれば、これは国家的課題かな、そのように思うところであります。

 そこで、大臣にお聞きしたいのでございますが、これからの公共事業の必要性等、事業推進についての大臣の基本的な理念、考え方をお聞きしたいと思います。

扇国務大臣 今小泉内閣、聖域なき構造改革、これを標榜しております。ただ、皆さん方の、公共工事はむだ遣いが多かった、もう必要ないのではないかという御意見が一方にもあります。森田先生も御存じのとおり、私たちの生活水準をどこでとめるか、どれで満足するか、この価値観をどこに持っていくかというのが基本であろうと私は思います。

 戦後、今日までになって、二十一世紀になった。もうこれでいいのよ。下水道完備もできていない、今先生が事例をお挙げになりましたけれども。例えば環状道路一つとってみても、ロンドン一〇〇%、パリは七四%、そしてベルリンが九六%、何と日本は、東京圏は、まだ環状線二〇%です。でも、これでいいのか。

 例えば東京、先生も東京ですけれども、余りにも見苦しいまちづくりだと。けれども、ロンドンで一〇〇%、パリも一〇〇%、電線の地中化が。では一方、東京の二十三区三・一%です。ですから、もうこれで公共工事は十分ですよとおっしゃるのであれば、ここでストップすれば日本の生活水準はここまででいい、そういう御判断があれば、私は中止してもいいと思うのです。けれども、先ほどからるる御説明がございましたように、多くの外人の皆さん方にも日本に来てほしい。日本もすばらしい、きれいなまちづくりをするのだと、そういうことになれば、私は、電線の地中化一つとってみても、まだまだしなければいけないことはある。

 けれども、むだをやめてどこに集中して投資するかということは、今後これが二十一世紀型になる。そう思っておりますので、私は、これからも、欧米に比べてまだ水準は低い、国民の価値判断として、欧米先進国と同等にするまでには、まだまだしなければいけないことはいっぱいある。

 ただし、財政難のときから、ここまででいいというレベルをお示しになるのであれば、私は、地域格差があることも是正しなければいけない。また、どこまで持っていくかという国民の公共事業に対する要望というものも、私は、那辺にあるかということも、先生方と御論議していく上で探っていきたいと思います。

 また、今、私ども国土交通省として、二十一世紀型のむだのない公共事業で、一点集中して、そこに集中投資することによって工事を速めて、そして工事が速くなることによってコストダウンも図れる、そういう二十一世紀型の公共工事に変わっていかなければならないということを認識しております。

森田(健)委員 期待しております。

 私たちは、社会、一つの共同体の中でお互いに助け合い、お互いに認め合って生きております。土地収用がスムーズにいくためには地権者や地域住民との公益性の合意形成が不可欠かと思います。

 そこで、佐藤副大臣にお伺いいたします。

 適正な手続により公益性が認定された事業については、一部の反対を恐れることなく、収用手続に従い粛々と円滑な遂行を期待するところでありますが、副大臣のお考えを賜りたいと思います。

佐藤副大臣 従来から、用地の取得に対しましては、まず八割用地を取得する。さらに、計画しているところに幅ぐい、くいを打ちますね。そのくいを打ってから三年たつ。それでもなかなかうまくいかない状態になっていますね。そのときに、いずれか早い時期で事業認定申請を行うことをルール化してやってまいっております。これは昭和六十三年からやっているんですけれども、それをやりましたところ、大臣認定は一・九五倍にふえております。それから、都道府県知事認定は一・七八倍に増加してきているところです。

 さらに、今回の法案は、事業認定手続については、事業認定庁に公聴会の開催とかを義務づけているわけでありますけれども、できるだけ住民の意見を幅広く聞くことによって住民の理解を促進して、さらに収用裁決関連手続については権利者の保護に十分に配慮してやっていこうということでやっていきたいと思っております。

 こうすることによって、起業者といたしましても収用手続が非常に利用しやすくなる、そして適切な時期に収用手続に移行することができる、そう考えているところであります。

森田(健)委員 正直者がばかを見ないように、言うなれば公共性を認めて積極的に協力した人、しかし、諸事情もある人もいるでしょう、しかしその中には、言うなれば、ごね得ではありませんが、そういうやからもいるかもしれません。ですから、私はこれは田中政務官にお伺いしますが、初めに積極的にやってくださった人たちに、後で、ああばかを見たな、こんなことを思わせちゃいけないでしょう、これは。しかし、今の社会情勢において民意は多様でございます。今まで、そしてこれから、そういう多様な民意に対してどのように対処していこうと思っているのか、お聞かせ願いたいです。

田中大臣政務官 ただいま森田委員からの、ごね得を許すべきでないし、やはり公共事業を適正に執行するためには当然しっかりとした対策を講ずるべきだというお尋ねでございます。

 私も実は、自分の卑近な例として、都市計画道路の執行に当たりましてなかなか時間がかかって、最初に土地の買収に協力した人には、そのときの値段で評価されて支払いが行われたわけでございますが、それからはるか、長々とかかった事業でございましたので、値段が上がった後売った方もあったわけですよ。当然、最初に土地を売った人から見ればごね得に映ったわけでございまして、地域でも大問題になりました。

 今後、こういうことは、やや土地の値段が下がりぎみでございますから、早く売っていただいた方が、買収に応じていただいた方が得をするということが、社会的な逆さまの現象も今日あるようでございますけれども、いずれにいたしましても、森田委員のおっしゃったように、とにかく公共事業のあり方というものについてしっかりと踏まえて努力をしてまいりたいと思っております。

 憲法第二十九条の第三項の正当な補償というものを受けて手続をしておりまして、一般補償については、公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱が閣議決定をされておりまして、それに基づいて努力をしております。

 今回の土地収用法の改正による補償基準の政令化により、補償基準の公表等を通じて、公共事業に協力された地権者の方々が損をするというようなことが絶対ないように、不公平感が生じないように適正に努力をしてまいりたいと思います。

 以上でございます。

森田(健)委員 大臣、実際にそういう、今、田中政務官がおっしゃったことがちょくちょくあるんです。よく聞くんです。ですから、そういうことが決してないように、やはり、私たちは共同体の中に生きていて、そして、お互いに助け合ってお互いに認め合うという、この精神をしっかりと持って行政を賜りたいと思います。

 ありがとうございました。

赤松委員長 樽床伸二君。

樽床委員 昨日の参考人質疑以降、ずっと質疑を聞かせていただいておりまして、この問題は、非常に微妙な問題もありの、また民主主義の根本にかかわる考え方もありの、大変な問題だなという認識をしながらお聞かせいただいているところでありますが、そういう大所高所の話の前に、ちょっと具体的なことをお聞きしてみたいと思っております。

 というのは、昨日、私は参考人質疑の中で、要するに、上流、中流、下流、こういう言い方をさせていただいて、計画段階が上流段階であって、そして事業認定にかかわるところが中流段階であって、収用段階に入ったら下流、流れでいくとこういうことでありますが、特に中流段階において、昨日の参考人の原科先生でありましたか、公聴会それから第三者機関に対して非常に疑問をお持ちの御意見をお聞かせいただいたわけであります。私どももその気持ちがわからないわけではないわけでありまして、そういう観点から、ちょっと数点確認をさせていただきたいんです。

 まず、上からずっと流れてきますと公聴会の問題がありますが、公聴会について、多くの方は、公聴会といっても、どうせ形だけ開いて、ほとんど、要はガス抜きのために公聴会をやるのではないか、こういう疑問をお持ちの方も世の中におられないわけではない、このように思うわけであります。それを、いや、そんなことはないんだ、こういろいろ言っても、これは水かけ論議に終わってしまうところがありまして、今回の法改正に当たって、公聴会の開催を義務づける、こういうことであるならば、この公聴会が形骸化しないためにどのような措置をお考えになっておられるのか、まずお聞かせをいただきたいと思います。

風岡政府参考人 公聴会の開催の義務づけということを法令の内容に盛り込んでいるわけでございますけれども、公聴会、今先生からお話がありましたように、これは、公の場でその事業についての公益性について広く一般の方々の意見を求める、こういうものであるわけです。当然、事業認定庁は、公聴会で出されました意見も考慮して、事業の公益性について総合的な判断をするということです。

 御指摘の、公聴会が形骸化しないためにどういうようなことをするのかということでありますけれども、まず、公聴会が、公述人である起業者、住民、これは一方的に意見を述べるだけということになりがちなんですけれども、そういうことだけにしないように、特に先進国の公聴会等のやり方というのも、質疑を認めているようなところもあるわけですので、これはもちろん公聴会の主宰者の許可を得てということでございますけれども、そういうことを前提にして、他の公述人に質疑ができるようなこと、こういうこともルールとして決めていきたいというふうに思っております。

 いずれにしましても、公聴会で出ました意見というのが単にその場でとどまらずに、第三者機関である機関の意見をお聞きするときにその参考資料として公聴会で出てきた意見もお伝えをするとか、公聴会を有効に活用するように仕組みをつくりたい、このように思っております。

樽床委員 公聴会のことについて、今第三者機関というお話が出てまいりましたけれども、後でもうちょっと第三者機関についてはお聞きをしたいと思いますが。

 今、政府の方から、公聴会の意見が第三者機関に参考になるようにやります、こういうことでありましたが、これもあえてちょっと厳しいことを言うと、本当に言うのと思われる方もおらないわけではないわけでありまして、例えば公聴会で出た意見は、そのまま加工せずに、こういう意見がありましたということは第三者機関に必ず行くようになるんですか。

風岡政府参考人 先ほど申し上げましたように、公聴会で出ました意見、これは貴重な利害関係者の意見ということでありますので、基本的には、これは第三者機関の方にそのままお伝えをしたいというふうに思います。

 ただ、件数が非常に多いとか、あるいは内容的にほとんど類似だということにつきましては、これは加工するという意味じゃなくて、整理をするということも場合によるとあるかもしれませんが、基本はそのままの形でお伝えをする、こういうようなことでやっていきたいと思います。

樽床委員 加工というのは、さっき言ったように、整理、私の言うのはそういう意味でして、同じ意見が百も出たら百全部を言う必要はないわけであって、それは一つで当然いいわけであります。

 そういう形で、要するに公聴会で、先ほどお答えの中でおっしゃった、質疑もできるような形にしたい、出てきた意見がその趣旨がたがわないようにちゃんと第三者機関に伝わる、このようなことを政府の方は今おっしゃったわけでありますから、この法案が通るかどうかはわかりませんけれども、通った段階ではそのあたりのことはきっちりと実行をしていただきたい、このように思っておるわけであります。

 また、今答弁でそういうお話をいただいたわけでありますが、たしか土地収用法の二十三条三項で、公聴会のあり方は省令で定めるというふうに書いてあったように記憶をいたしておるわけであります。先ほどの、質疑形態をとるとかそういうようなことは、省令とかそういうことで担保していただけるというようなことなんでしょうか。お聞かせいただきたいと思います。

風岡政府参考人 公聴会の具体的なやり方につきましては、省令で通常記載すべきような項目と、それから運用段階に及ぶ項目、多分内容的には大きく二つに分かれると思います。

 もちろん、ルールは決めまして、それは、省令で明記するものは明記する。それに至らないものについては、そういった方針であるということ、それは通知等において当然明らかにする。いずれにしても、きっちりとルールはつくりたい、このように思っております。

樽床委員 それから、先ほど河上委員の質問で、たしか説明会の開催のところのお話で、地方紙に出しているとかそういうお話があったように思っておりますが、公聴会も、説明会だけではなくて、公聴会の透明性、また広く一般にきちっと周知をする、こういうようなことがなければ、中で出てきた意見はきちっと伝えるけれども、そこに来る人が非常に限られておるというようなことではいかぬのだなというふうに思っておりまして、公聴会を開くに当たっての透明性、また周知ということをどのようにお考えでございましょうか。

風岡政府参考人 現在、公聴会は法律上規定があるわけでございまして、それを受けまして、公聴会に関する省令が施行規則の中で規定をされております。

 当然のことながら、公聴会がいつ開かれるかということを広く周知するということがスタートとして極めて大事でございます。それにつきましては、周知措置というものもこの省令の中に定めておりますので、当然、公聴会だけではなくて事前説明会も含めて、そういう形で、周知措置については省令で明らかにしたいというふうに思っております。

樽床委員 次に、公聴会の後に来るのが先ほどお話があったような第三者機関でありますが、この第三者機関について、昨日の参考人の横島参考人でありましたか、私はあのお話を聞いておりまして、横島参考人の意見に非常に近い考え方を持っているなというふうにお聞かせをさせていただいておったわけであります。

 その質疑の中で、いや、私は審議会の委員なんです、こういうお話がありまして、審議会を今のあり方でいくと、あらかたそんなにおかしなことはないのではないかという御意見はおっしゃっておられましたけれども、しかし、先ほどから一連の流れの中で、第三者機関はいいけれども、公正性、中立性を担保するというような形は、どういうふうな形で担保をされていかれようと考えておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

扇国務大臣 これは大事なことで、第三者機関が何のためにあるのか、この原点から考えますと、今樽床先生がおっしゃいますように、公正性、透明性、中立性、これはもう大原則でございます。

 そういう意味では、第三者機関の公平性と中立性を担保するために、メンバーを特定の分野に偏ることなく、バランスよくこれをまず選ぶ。これは一番大事な最初の出発点でございますので、そういう意味では、その氏名を公表すること、並びに事業を推進する中央省庁のOBを入れない、これが第一の条件でございます。

 二つ目には、第三者機関の意見あるいは考え方を示されました議事録、この議事録というものを、議事の趣旨を公開する、そういうことが二つ目の重要な公平性であろう、透明性であろうと思います。

 また、その第三者機関の意見を事業認定の判断に当たって尊重すること。それでなければ何のための第三者機関かわかりませんので。

 そういう意味で、私は、この三つの原則というものを大事にしながら、そして、最初に先生がおっしゃいました透明性、中立性、公平性というものを第三者機関の役割として保っていただきたいと思っております。

樽床委員 まさにそのとおりでございまして、ぜひともよろしくお願いをしたいと思います。

 そこで、実は、その尊重するということにつきまして、本会議の私どもの大谷委員の質問の中でも申し上げさせていただきましたが、平たい表現を使うと、同じ人が答案用紙をつくって、同じ人が書いて、同じ人が点数をつけるようなものなので、例えば国のことで言うと、大臣が決めてそれを最終的に決裁をする、こういう仕組みになっておるわけでありまして、そこに対してお手盛りではないのかという批判があることは、これは私は仕方がないと思うんですね。それはいろいろな仕組みの中でそうだけれども、いや、実はちゃんとやっているんですというのが恐らく役所のお立場だろうというふうに思いますが、そうはいっても、なかなかこれは納得されない方も多いわけでありまして、そうするとこの第三者機関というのが大変重要になる。

 そうすると、尊重されるとおっしゃったわけでありますが、尊重するということは、例えば、第三者機関がこれはマルだと言った、大臣がそれをペケだ、こういうことを言われる場合があるのかないのか。いろいろ状況によってあるんでしょうけれども、尊重するというのは、どこら辺までの重みを我々感じたらいいんでしょうか。

扇国務大臣 せっかく公聴会、第三者機関と手順を踏んでいただくわけでございますから、私はそういう意味では、こういうような義務づけがされたというこの趣旨、これにかんがえれば、少なくとも事業認定庁は、当然、第三者機関からの意見聴取というものを尊重して事業認定の判断をする。また、そのときには、結果として、第三者機関の意見というものは一定の拘束力を有する。それは私は一番大事なところであろうと思いますので、その辺のところは、第三者機関の意見は一定の拘束力を有する、私ども、この重みを参考にしながら事業認定に運んでいく、これが一番大事なところであろうと思っています。

樽床委員 ということは、第三者機関の議事録も全部公開をされる、一定の拘束力もある、こういうことでありますと、もし第三者機関の結論と違う結論を国の場合であると大臣がされる場合は、要するに第三者機関の内容も全部オープンになっているわけでありますから、よっぽど第三者機関と違う決断を大臣がされたとするならば、国民の皆さんが、なるほど、それは大臣の方が正しいという理由がなければ、これは第三者機関と違う決定は恐らくできぬだろう、ずうっと考えると、私の理論ではそういうふうになるんですが、そのように考えてよろしいのでございましょうか。

風岡政府参考人 この第三者機関の意見というのは、大臣が今御答弁されましたように、これは法律で義務づけてお聞きするわけですから、当然尊重する、一定の拘束力が事実上あるということであります。

 今の御指摘は、もし大臣が別の判断をするという余地があるのかどうか、その場合どうするのかということでございますが、基本的には、ないと私は思いますけれども、仮に、もし違う判断をする必要があるのであれば、これは特別な事情があるということでしょうから、その理由を明らかにする、その上で別の判断をするということは、考え方としてはあると思います。

 仮に、そういう事態になった場合には、当然そういう手続を経る、そういう取り組みをするということが最低限必要だ、このように思います。

樽床委員 ありがとうございます。

 この第三者機関の問題について、一点ちょっと細かい質問をさせていただきますが、先ほど大臣から、要するに中央省庁のOB、事業を推進する官庁のOBは入れない、各階層をバランスよく、要するに意見が公平に出るように、こういうお話がありましたが、人によっては立場が二つ三つある方がおられまして、例えば公益的な各種団体の、各種団体といいますか、経済界の役職と、その方が本来、日常なりわいとされている企業の肩書。これは、それだけではなくていろいろあるわけでありますが、例えば公益的な、経済界の役職でいうとそれは全然関係ないけれども、本来の仕事においてはちょっと関係するかなというお仕事をされている会社の場合もないことはないわけでありまして、そういうような方は、当然、この中でいうと利害関係を有する人というふうに入るんでしょうか。

風岡政府参考人 ただいま先生御指摘のケースで、例えば経済界の代表の方が選ばれた、その方が例えば電力事業をやっていますということだというような形で置きかえるとわかりやすいと思うんですが、一般的に、メンバーとしましては、経済界の代表で、その方がふさわしいという方であれば、メンバーとして入っていただくことはあり得ると私は思います。

 ただ、個別事案につきまして、例えばその方の会社の仕事に関連するということであれば、その審議からは当然排除されるべきだ、個別的に。そういうようなことを通じて、問題のないようにすることかなというふうに思っております。

樽床委員 ありがとうございます。

 今いろいろ、細々とお聞きをしたわけでありますが、そういうようなことをきちっと答弁でお答えいただいたわけでありますから、それはそれでお守りをいただきたい、このように心からお願いを、お願いというのはおかしいわけでありますが、きちっと申し上げておきたい、このように思っております。

 もう一点、実は今度は川上の、要するに上流部分の話でありますが、結局は、公共事業を認定、計画を決めるときに、すっと、皆さんがこれはいいものだと思って、みんながやりましょうとやって進んでいっているものは、それに反対されるということは、それはあなた、ちょっとわがままじゃないですかということになるわけでありまして、要は、その前の部分が余りにもこれまではちょっとなおざりになっていたのではないか。なおざりになっていたというのは別に悪意で言うわけじゃありませんが。

 要するに、役所の方で、我々聞いておりますと、土地収用制度調査研究会というものをつくって、そこでいろいろ議論をしてもらった。そのときにも、かつては、公共事業といえば、公共事業だけで全部フリーパス、昔はこういう時代でありました、しかし今は、公共事業というだけでは、本当にそれがいいものかどうかというのは、もうちょっと考えなければいけない時代になった、こういう認識を、そちらの研究会でそういう話が出てきておる、こういうことであります。

 そういうことであるならば、当然、土地収用法を初めにつくられたときには、公共事業といえば、それは全部それでいいものだという前提のもとでの土地収用法でありましたから、川上部分というのが非常になおざりになってきたというのは、私は過去をどうのこうの言うつもりはありませんから、仕方がなかったのかな、仕方がないというと怒られるかもしれませんが、法的にはそういう時代であったんであろうと、私は生まれておりませんでしたからわかりませんけれども、理解をせざるを得ない。

 ただ、こういう時代に収用法を見直すというときには、こういう時代だから、その計画段階のことは全く知りませんという判断でこの収用法に手をつけてはいかぬだろうというふうに私は思うわけでありまして、その前の部分の問題につきまして、どのようにお考えになっておられるのか。

 特に、私どもは、行政手続法とか、これは推進しなければいけないという我々の党の立場もございます、考え方もございます。また、公共事業のコントロール法、これはいろいろ御意見があろうかと思いますが、趣旨としては、本当にいいものをつくり、要らないものはやめましょう、単純に言うとこれだけの話でありますけれども、そういうような方向に向けてのこの今回の収用法が、この収用法、要するに、収用段階の見直しだけじゃなくて、その前の部分も視野に入れた、そういう観点からつくられているのかどうか、提出をされたかどうかということについて、お聞かせをいただきたいと思います。

扇国務大臣 今簡単におっしゃいましたけれども、私は、今樽床先生が御指摘になったところが一番肝心なところであり、今まで公共事業が進んでこなかった、あるいは余りにも長きにわたったということの原因もそこにあったと思います。

 それは、初期段階での多くの皆さん方との意見交換が不足していた、そのことも私は認めざるを得ないだろうと思いますし、また、そこに、今までの公共工事に対する、官の、あるいは地方自治体との、あるいは住民に対する配慮というものが不足していた、こう言わざるを得ない状況も多々あったと思います。

 そういう反省に基づいて、今回は改めて、この公共工事のことを一つ言うわけではありませんけれども、少なくともこれからは、公共工事というものの進め方の一つとしては、まず事業計画の立案、あるいは実施決定、入札・契約、あるいは事業実施、評価といった公共事業の大きな一連の共通する手続、これが私は一番大事であり、また今まで不足してきた点であろうと思います。

 そういう意味で、国土交通省としましても、これからは、統合したメリットを生かせるような整合性を図り、透明かつ効率的な、そういう公共工事の実施に努めていく必要がある。まさにそれが、国土交通省が四省庁統合して、立体的な、二十一世紀型の政策を実施する大きな転換期であろうと私は思っておりますので、過去の反省をしながら、今回は皆さん方の共感を得られるような、御賛同をいただけるような立場に変えていきたい、そう思っております。

 例えば、計画段階におきましても、幅広く住民参加とか、あるいは情報公開を行う対話型の行政を行っていく、そういうことを推進することによって、必要性を多くの国民の皆さんに御理解いただく、そういうことをやっていきたいと思っておりますし、事業の決定段階におきましても、私は、原則として、すべての事業について、費用対効果の分析を含めて新規の採択時の事業評価を行って、その結果については公表していく、こういうことが新たな国土交通省としてのやり方であろうと思っておりますので、そういうふうに今後は推進していきたいと思っております。

 また、今先生がおっしゃいました、公共工事というものの今までの入札と契約の段階において、いろいろなことを言われました、むだ遣い、ばらまき、談合、丸投げ。けれども、これも、先ほど申しましたように、昨年の公共工事の入札と契約の適正化法、全会一致で通していただいて、そしてこれが、少なくとも全部地方自治体にも御理解をいただいて、これを実施する段階におきましては、また、電子入札というものもあの法案の中に書かせていただきました。そうしますと、嫌でもこれは透明性というものが出てまいりますので、そういう意味でもこれは二十一世紀型の入札になるということも、皆さんに御理解賜ることだろうと思っております。

 そういう意味で、今るる申し上げましたけれども、これからの評価、事前評価、事業評価、事後評価、これも、評価制度というものの、今まで行ってきた以上に政策自体のレビューというものをしていかなきゃいけない。そういうものが二十一世紀型の国土交通省の大きな、省庁が大きくなっただけに、なおこのレビュー制度というものが重要視される、そういうふうに認識しております。

 今後も私どもは、小泉内閣の一員として、聖域なき構造改革の実施に当たっては、どこに集中して、どれを省いて、どこが必要なのか、私の言葉で言えば、できることとできないこと、必要なものと不必要なもの、この区別を国民の前にはっきりしていきたいと思っております。

樽床委員 ありがとうございます。

 端的に、公共事業について国民の皆さん方の意見が変遷をしてきたというのは、一に日本の社会が発展途上から成熟段階に至ったという、社会全体の流れに完全に影響を受けているだろうというふうに私は思うのですね。

 発展途上の段階は、社会全体の底上げをしなきゃならぬ、どんどんパイも拡大をしていく、そういう時代の公共事業と、パイは拡大をしない、しかも発展途上じゃなくて成熟段階で、そして国民の皆さんのニーズも、底上げだけじゃなくて、もう底上げは終わったんだからということで多様化している、そういう時代に、やはり公共事業のあり方も、当然、昔は必要であったものが今は必要でなくなるということは当たり前のこととしてあるわけでありまして、そういうことについて今大臣から御答弁をいただきました。そのような方向でぜひともやっていただきたい、このように考えるわけであります。

 ただ、一点だけ私どもの方から、注文ではありませんけれども、お願いでもないのですが、申し上げておきたいことは、今大臣がそういうふうにおっしゃっていただいた、それはそれでよくわかるのです。私は、役所が全部悪いとは言いません。役所も人間がやっている話でありまして、民間企業も人間がやっている話でありまして、同じ人間がやっている話なんですけれども、私はまた、大きな政府よりも小さな政府がいいとは思っています。私はそういう考え方なんです。

 ただ、役所を一〇〇%否定してしまうと国が動かない。だれが事務をやるのか、だれが実務をやるのかということになると全く何も動かなくなるわけでありまして、だから、役所をきちっとコントロールする政治の役割が大変重要だ。こういうことで、私は、今政治家としての大臣がそのように努力をしていただいていることは大変敬意に値するとは思います。

 しかし、その仕組みとして、今おっしゃっていただいた、計画段階から公共事業をきちっと国民の皆さん方に理解してもらい、いいものだと思うものを進める仕組みを、先ほどの答弁をもとに早急に国土交通省の中でも検討していく、スキームを検討していくということをぜひともお願い申し上げたい。そうしなければ、扇大臣のときにはそれで済みますが、また全然違う大臣が来られて、いや、そんなものは要らぬのだ、こういうことにならないとは思いますが、そういうこともありますか、(発言する者あり)あるという声も飛んできておりますので、そのためには、大臣がまだこうやって頑張っておられるときに、そのスキームの検討を始めていただくということを、ぜひとも今回の法案を契機として始めていただきたい、そのことを切に申し述べまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

赤松委員長 大谷信盛君。

大谷委員 こんにちは。民主党、大谷信盛でございます。

 さっきの樽床議員とほとんど同じ内容の質問を順番を変えてやらせていただくことになります。民主党のきょう最後の質問者ということで、締めさせていただくということでやらせていただきたいというふうに思います。

 一応私も衆議院議員、国民の代表でございます。一般市民の観点から、主婦感覚を持つ扇大臣に質問をさせていただきたいというふうに思いますので、この観点からまた御答弁いただけたらというふうに思います。

 まず最初に、公共事業の今までの事業計画とか、どうやって公共事業をやってきたのか。これからは新しい時代だというのが再三繰り返して述べられておりますが、ではどうやってやっていくんだという漠とした質問をさせていただきたいのです。

 御存じのとおり、我が国は年間約三百兆円、一般会計と特別会計を入れて何らかの形で公共事業というものにお金を使ってきているのです。確かに、雪に閉ざされて陸の孤島になる、そんな村が日本海側にたくさんあった四十年前には、道が一本通るというだけでとてもありがたいことだった。しかしながら、ここからは後で議論するのですが、今や、ある意味、道が最低限できたような状況にある中、道一本つくるときにも本当に考えてつくっていかなければいけない、そんな状況になってきた。要するに、それは足りてきたからということだと思うのです。

 では、今まではどうやって計画をつくってきて、これからはどうやって計画をつくっていくのか。要するに、どんなシステムで、これからの公共事業、今後減っていくであろうこの三百兆円という財源を使っていくのかということについて、方向性を、理念をお述べいただけたらと思います。

扇国務大臣 先ほども御論議がございましたけれども、戦前は別といたしましても、少なくとも戦後今日まで、日本は、欧米先進国に追いつけ追い越せと、私たちの両親、おじいちゃん、おばあちゃん、本当に物のないときから努力してくれたと思います。私は、大谷先生もきっと、外国へ留学される前と帰ってこられての日本が違うというのをごらんになって、あっと思われたと思うのですね。

 私も、友人が駐留軍として戦後日本に駐留しました。それがリタイアして、再び奥さんを連れて日本へ来たときに、彼は私にこう言いました、これは日本ではないと。それくらいあの終戦のときの日本と今日の日本が、余りにも発展したことに彼は驚いたのです。奥さんにいろいろなことを言って連れてきたはずなのに、自分がしゃべった日本と現実に見た日本が、余りにも近代的になっている。しかも、何もなかった、六階建て以上のものが全然なかったものが、今やアメリカに匹敵するような高い建物もある。そういうふうに彼は、自分が奥様に言った日本と今の現実の日本とは、余りにも急成長していることにびっくりした、そういう述懐をしたことがございます。

 それと同じように、我々はふだん気がつきませんけれども、今大谷先生が私に主婦感覚でとおっしゃいました。私も子供のときには、少なくとも今のような電化生活は考えられませんでした。大変失礼ですけれども、私なんかも忙しいので、夜セットしておきますと、朝、御飯が炊けています。洗濯も全自動で乾燥までできてしまいます。あらゆる我々の日本の社会水準というものが今日大きく変わってきたことは、私は、日本のすばらしい国民性、勤勉性、努力性、そして外国の開発した技術でも、日本へ持ってきて、それを加工して我々の日本製に変える、この日本の国民の適応性の範囲の広さ、こういうものも考えますと、本当に今日の日本、ありがたいことだという感謝とともに、果たして今まで二十世紀にできた財産を、我々今生きている者が今度子供や孫の代に、二十世紀はあの人たちがやった、ただ二十一世紀はあの人たちは何をしたんだろうなと、こう思われるのでは困る。

 そういう意味で、先ほども水準を申しましたけれども、私たち日本人の生活水準、社会資本整備をどこまででやめるのか、また伸ばさなければいけないのか。お金との相談ですけれども、私は、そういう意味で、日本の国土づくりというものを、基本線をつくっていきたい。

 私が大臣に就任して以来、二十一世紀の国土づくりのグランドデザインを示したいと言ったのはそこにあるわけでございまして、理想は高くあっても、現実の財政上からは、一段飛びで、十段飛べなくても、一段ずつ上がっていくということを示すためにも最終のグランドデザインが必要だということを私は言い続けたわけでございますので、それに一歩ずつ、先生方の御意見を拝聴しながら、そのグランドづくりの基本にさせていただきたい。きょうの土地収用法の改正法案もその一歩であるということを申し上げたいと思います。

大谷委員 ありがとうございます。理想的な像をつくって、そこに向かって、この委員会を通じ、議論を通じ進んでいくという、そのグランドデザインをつくるのが初代国土交通大臣としての大きな役割なんだという抱負だったというふうに思います。

 そのグランドデザインの形、色というものも大事ですが、そこに向かっていくときの優先順位なりなんなり、これを事業につけていかなければいけないわけですよね。きょうの議論の中では、大臣、集中的にこの事業というふうに決めて、その事業が本来ならば十年かかるところを五年でとかいうような形で、時間軸の中でコストダウンを図っていくような方法とかいろいろあるというふうに言われました。

 大きく分ければ二つだと思うんです。一つは、効率性というものが今まで以上に求められている。そして、もう一つは、いわゆるこの土地収用法にかかわることですが、立ち木トラスト運動や一坪運動というものは、ある意味、行政がひとりよがりに今までつくってきた、明治時代から続いていますからね、つくってきた今の事業の計画というものに限界が来ているんだ、そこにいわゆる住民合意、住民参加というものを入れていく。

 この二つが大きなそのグランドデザインに向かっていく歩みの中で必要になってきていることなんだなというふうに思いますが、そこはお互い、大臣と議員である私が共有しているかどうか、確認させていただいてよろしいですか。

扇国務大臣 私は、大谷先生の御質問と今までの御趣旨等と同じ土俵の上にのっていると思います。ただ、その方法論が、お互いに政党があったり何かして違う方向で、到達点は同じでもそこへ行く経路がAルートもあればBルートもある、そういう違いはあると思いますけれども、大谷先生がるる今まで御質問いただいた中でも、私は、その到達点、目指すものは同じ部分が多々あると思っております。

 ただ、そのときに、少なくとも私は、今までの、先生も今明治時代からのとおっしゃいましたけれども、本当にこの法律が三十年間も改正されなかったということ自体考えても、時代の変遷とともに、やはり変わってきた、またそれに適応するようなことをしなければ、先ほど私が申しました、限られた予算の中でどの点に到達するかということを考えますと、多くの皆さん方の御意見をある程度集約しなければ、百人いれば百人意見が違うのは当然でございます。けれども、ある一点で皆さん方の意見を集約して、そしてより多くの皆さんが共有できる、あるいは共感できる、そういうものを積み上げていく、それが私は今回大事なことだというふうに考えて、この改正案の中でも、多くの皆さん方の意見を聞くと。

 ですから、事業認可するまでの話し合いの部分が今までよりもむしろ長くかかるかもしれない、けれども事業認可してからは一気に事業をさせていただく、そういう今までと違った、一番最初を大事にする、そういう意味で今回この法案の改正に当たったということは、御認識賜りたいと存じます。

大谷委員 その辺は認識をさせていただいております。大きな公共事業をつくっていくシステムの中で、土地収用法のある位置づけであり、また、そのために、この土地収用法がそれなりに公共事業の中で役割を果たすように、今樽床先輩の方から出ましたけれども、その上流段階を大事にしていくということで認識をさせていただいております。

 この効率性、住民合意というものの重要性を、お互い方法論は違えども認識をしていることでいえば、少し気になるのが、例えば道路や港や飛行場というものは、大体、一九五〇年代の後半か六〇年代の前半にできた整備緊急措置法というような名前のついた法律を根拠にして五カ年計画等々含めてつくられていっている。そんな中、本当にこれが、目的だけを何かずっと、五〇年代後半から二〇〇一年の今日まで、目的、目標というものを一部改正という名のもとに変えてきて、どんどん何でもできるようになってきてしまっているような気がする。要するに、緊急性というものが、ある意味、当時に比べたら変わってきているというふうに思うんですよね。

 そういうことを議論していかなきゃいけないというふうに思うんですが、そのグランドデザインに向かっていく中、当然、Aの道とBの道と、もしかしたら政党の関係の違いもあって、こっちの方が効率的だよという、言い方は違うにしても、この緊急性というのは今見直していかなきゃいけないですよね。どうでしょうか。

扇国務大臣 大谷先生がおっしゃることも、私も同じ意見だと思うんですね。

 それはなぜかといいますと、少なくとも公共工事というもので、あるいは緊急性というもので、私があると言うなれば、あるいは緊急経済対策の中でも、これは森内閣のときに言われたことですけれども、その四つ目に都市基盤整備というのがあるわけですね。その都市基盤整備を、では小泉内閣になってどうするかということで、都市再生本部というものを内閣につくった。都市再生本部をつくったのは戦後初めてでございます、内閣に設置したのは。

 その意味でも、私は、少なくとも、今の緊急性ということから考えれば、財政難の中で、私が二月から四月まで全国地方懇談会を開いた意味はどこにあったか。

 それは、例えば九州なら九州を、ブロック単位一つ、九州ブロックという考え方で、今私が言いました公共工事の優先性、どこに港をつくった方がより経済効果が上がるのか、あるいは新幹線を先に通すかわりに高速道路は後にするのかとか、そういういわゆる工事の順位、公共工事のあり方そのものも、私が決めるのではなくて、そのブロックごとの皆さん方、これは、今回、私、日本を十のブロックに分けて全知事さんあるいは政令指定都市の市長さん、財界と会いましたけれども、そういうブロックごとの皆さん方で、公共工事の順位なりあるいはそのブロックでの経済効果のありようというものをぜひ地域から出してください、地域でお決めください、それが私は二十一世紀の公共工事のあり方ではないかと。そういう意味で、私は、国土交通省としては今までと違ったやり方。

 ですから、全国歩いてみますと、とんでもないところに港があるけれども、その港と道路がつながっていない、主要道路に入っていない、そういうところも、地図の上に載せてみますとわかるんですね。そういうことが、今までは運輸省、建設省という役所の縦割りで、その連携の政策がなかった。そういう意味で、私は、これからはそういう総合的な連携のない事業は一切することはならない、そういうふうにみんなに言ってあります。それが、今までの運輸省、建設省とかの縦割りと、今度国土交通省になったこの一つの役所との違いであります。

 地方の皆さんにも言いました。今までは、あっちの役所、こっちの役所に行っていただいたけれども、国土交通省になったらワンストップサービスですよ、うちへ来てくださいと。地方懇談会も利用してください、地方整備局も利用してくださいというふうに申しましたので、それが今までとこれからとは違うところだろうと思います。

大谷委員 ありがとうございます。大体住民合意と効率性の重要性を確認できたところで、ちょっと具体的に、住民合意と効率性についての議論をさせていただきたいというふうに思います。

 大臣も本会議の質問で、木曜日、パブリックインボルブメントという単語をお使いになられました。この御定義というものも役所の方からいただきたいというふうに思うんですが、要は、構想、計画段階から、なるべくその地域の市民、そして広く言えば国民という普通の人たちを、納税者かな、市民を計画段階から巻き込んでいって、みんなが納得できるような、合意ができるようなものをつくっていこう、今までとは違って、それがあってこそ初めて、そのプロセスが質の高い公共事業という結果を生むんだというふうに思うんですが、国土交通省の持っているPI、パブリックインボルブメントの定義というものを、ぜひともまず最初にお示しいただきたいというふうに思います。

風岡政府参考人 パブリックインボルブメントですけれども、道路事業等で既に試行の段階ということになっております。

 国土交通省としての、ちょっと今持ち合わせておりませんが、基本的な考え方は、まさに先生御指摘をされましたように、公共事業の計画あるいは構想段階から、従来は行政のみの判断で実施をしてきた、あるいは行政が決めたものを見せるという考え方であったものに対して、国民の声、地域の声を受け入れて、必要であれば計画に反映する、これによって行政と国民とが一体として公共事業を実施する仕組みだ、このように考えております。

大谷委員 僕もそのように考えております。

 一点だけ今の局長の答弁の中で気になったのは、必要であった場合は反映するというのではなく、これを絶対に反映しないと、後でまた、土地収用法が今大体年間二百件ですけれども、何百件もふえていく、行政コストがかかっていくというふうになると思いますので、ぜひともそれは、必ず反映をしていくのがPIなのだというような認識を持っていただきたいというふうに思います。

 本会議の中でも何個か、聞いたものを指摘させていただき、大臣の方から、いや、建設省時代からこういうふうにしてやっているのだよというのが出てきました。例えば盛岡の方の国道であったり、島根、鳥取の方の国道九号線であったりするようなものを、住民参加のもとで、広げるのがいいのか、バイパスをつくるのがいいのか、バイパスなんか要らないのか、そんな議論をしてきたというのがありますし、また、広域道路に限ってだったかな、住民参加をするためのガイド指針というものを、多分本省から整備局の方に、当時は建設省だから整備局と言わなかったですね、建設局の方にお出しになられたというふうに思うのです。

 これからPIの重要性を認めるならば、具体的なPIの、パブリックインボルブメントの実験的試みみたいなもので代表的なものを一個、二個でもちょっと教えていただけたらというふうに思うのですが。

大石政府参考人 今先生の方から御紹介もございましたが、例えば地域の交通渋滞状況を緩和するために、現道をバイパスするのか、あるいは拡幅するのかといったような対策手法が考えられるわけでございます。その際に、地域づくりの計画と整合をとる必要がございます。バイパスにいたしましても、北区間をとるのか、あるいは南区間をとるのかといったようなことがございます。

 これにつきましては、私たちも、交通処理上の問題、その道路が当然持つべき機能を有する道路としてつくらなければなりませんので、そういった主張はさせていただきますが、あわせて、今先生からもお話がございましたように、当該地域を今後地域の方々がどのようにつくり上げていくのかというものに貢献できる道路でありたいということから、地域の皆様方との選択をさせていただくというようなことを進めております。

 すべての道路でこのようなことをやっておるということではございませんが、道路の種別に応じまして、道路の機能に応じまして、対象とする範囲、あるいはお聞きする対象の、例えば線形、機能まで聞くのか、ルートだけの問題なのか、あるいはそれ以外の問題なのか等々をしんしゃく、判断しながら多くの方々の御意見をお伺いするということは、実践的に、大変多くのところでといいますか、ほとんどの道路事業で進めているところでございます。

大谷委員 後でちょっと議論するのですけれども、道路整備緊急措置法なんかは、最初は、要するに足りないから道路網をつくっていこうと。いまだに足りないから道路網をつくっていこうなのですけれども、それがだんだん最近は、自動車から歩行者、歩行者から地域住民も対象にして目的がつくられていっている。ある意味、嫌らしい見方をすれば、目的をふやして、事業費をとるのに正式な理屈をつくっているのだななんというふうに見る方もおられるでしょう。

 だけれども、このパブリックインボルブメントもしっかりやっていくならば、地域住民が計画段階に入ってくるわけですから、いろいろなことを道路に求めていくわけですね。だから、結果的に住民の意見を入れてつくった公共事業はすばらしい道になるのだというのが僕の理屈なのです。

 ですから、ある意味、少しややこしいことになるのじゃないかなというような構えでもってこの住民参加、住民合意というものを見るのではなく、実は、理屈とするならば、この緊急措置法が改正されるごとに、目的が、対象となる人が、分野が大きくなっているのと同じ理屈で必要なのだよというふうに、ぜひともくっつけて考えていただきたいなというふうに思っているのです。

 今、具体例は局長の方から余り出ませんでしたが、努力をしているのだ、実験的な試みをしているのだというふうな回答があったというふうに思います。今道路局長が、いつも、どこへ行ってもここの委員会では主役になってしまっているのですけれども、港でも構いませんし、空でも構いません、何だったら治水でも構いませんので、政策局長の方から、具体的に、これから省としては大体こんな段取りでパブリックインボルブメントを制度的にこの事業計画に組み込んでいくような構想を持っているのだというような前向きな方向性、ないはずないですよね、いただけたらというふうに思います。

大石政府参考人 まず私から、道路の例で御説明申し上げたいと思います。

 現行の五カ年計画、平成十年度からスタートいたしておるものでございますが、この五カ年計画をつくりますときから、パブリックインボルブメントという手法を用いさせていただきました。私たち、五カ年計画に盛り込みたい内容をキックオフレポートという形で取りまとめさせていただきました。これを広く公表することで、多くの国民の皆様方の御意見をお伺いするということをやり始めたわけでございます。

 その内容につきまして、地域の方々から、新たにつくることとなる道路整備五カ年計画について、盛り込むべき内容、御要望等をお聞きするということにいたしました。繰り返し種々の方法で御意見をお伺いしましたが、延べ十三万人の方々から御意見をお伺いして、それを五カ年計画に反映して、現在、その方針のもとに進めさせていただいているということでございます。

 しかしながら、これは五カ年計画、長期計画でございますので、具体的に一つ一つの路線を事業採択していく、あるいは事業を進めていく際には、その後、それぞれの路線におきまして、先生の御質問の中にもございましたが、事業評価、BバイC等の評価をやりながら、それを公表して、この道路を整備することによってどれだけのベネフィットが出るか、それはコストに対して何倍なのかといったようなことを公表させていただくとともに、このバイパスあるいはその道路整備が地域にどういうインパクトを与えるのかといったようなことにつきましても、我々のわかる範囲で整理して公表させていただいているということでございます。

 それから、先ほど先生からお話がございました、例えば先ほど私が申し上げた例で申し上げますと、拡幅でいくのか、北側でいくのか、南側でいくのか。道路というのは、地域の、それぞれ住んでおられる方々に極めて大きな利害関係の変化をもたらすものでございますので、地域の方々にとって、中で利害対立が起こることが多うございます。北をとると得をする人、南をとると損をする人というようなことになるわけで、私たちもそのことの混乱を非常に恐れるという時期がございました。

 結果として、行政側でベストの案をつくって、それを示すのが私たちのやり方だということでやってきたことがあったわけですが、どうもそれでは役所の中でどういう作業をしているのか見えない、不透明だ、アカウンタビリティーが足りないといったようなことがございましたので、私たちも、冒険ではございましたが、むしろその過程を明らかにして、地域の方々の中の矛盾も一緒にそこで明らかにさせていただく中で一つの方向を見出していただくというような手法が定着し始めております。これは、そういうことをやらせていただいて、我々が長い間危惧しておったことがむしろ杞憂だったということがわかって、大変よかったなというように思っています。

 いずれにいたしましても、着手いたしました事業が円滑に進むということが重要でございますので、こういった手法を今後も多用させていただきたいというように思っています。

川島政府参考人 次に、港湾について若干御報告させていただきます。

 まず、五カ年計画、こういう長期計画を定める前に、そもそも二十一世紀について、港湾としていかにあるべきか、こういう議論をする必要があるということで、一年間かけてやってまいりました。

 大臣が行かれたそのブロックごとに、さらに密接な関係者に集まっていただきまして情報交換いたしました。かつ、その結果はインターネットで公表しまして、さらにアンケート票をお送りするということで、広く国民の意見をお聞きしたところでございます。また、それを取りまとめた後におきましても、各地方ブロックでその報告について意見交換を、今現在十ブロックで順次開催しておるところでございます。

 これは国のレベルでのビジョンでございますが、港湾につきましては、地方分権の進んだ形になっておりまして、港湾の計画は各港湾管理者、地方公共団体が定めます。現在、各地方公共団体におかれまして、いかにして住民の意見を港湾計画に反映するか、港湾審議会があるわけでございますが、その前段階でいかに意見をお聞きするかということで、いろいろなアンケートをとっておられる港湾管理者もおられますし、構想を固める前に、前広に説明会をして意見を伺う。そういうことを港湾計画の策定作業に反映した上で、各界の代表を集めた中央港湾審議会で計画を策定すると決めております。

 私どもも、できるだけ国レベルあるいは港湾管理者のレベルでこういうパブリックインボルブメントを進めていくことが大事だというふうに考えております。

風岡政府参考人 パブリックインボルブメントにつきまして、所管事業全体でどういう取り組みをするのかということかと思います。

 このパブリックインボルブメントにつきましては、これはやはり計画段階からの住民の意見の反映、そういう手法の一つということになるわけでございます。もちろん、そういったためには、それだけではなくて、収用法の議論にもありましたように、公聴会を開催するとかあるいは事前の説明会をするとか、いろいろな手法があるわけでございます。私どもとしましては、やはりこれからは、そういった計画段階での取り組みというのを重視する行政というものを当然展開していかなければならない、このように考えております。

 したがいまして、道路の方の実例というものも今紹介がありましたけれども、こういったものの実績というものも十分勘案しながら、所管事業全体として、個別法令に基づく計画の策定に当たって、ある程度整合的な取り組みができるように検討していきたい、このように思っております。

大谷委員 ありがとうございました。危惧していたものが杞憂だったという非常に名言を言われまして、私も感動をいたしました。

 本当に、事業計画をつくっていくときに、市民も責任を持つ立場にしてしまうということは、僕は大事だというふうに思うのです。

 これはほとんど公益性と主権の闘いですから、それはもう自分の家の前に大きな道が通ったらだれだって嫌です、僕だって嫌です、局長だってきっと嫌だというふうに思います。そこで、どれだけ自分がわがままなのか、絶対我慢できない部分がどこにあるのかというようなことを考えるというためにも、何らかの形でその地域の方と議論をしていく場をつくる。

 そして、決めたときには、やはり西側の人は、東側に道ができるから東側の人には悪いな、しかしながら、これでいいと言ってしまったからには、何かあったときには責任を持って、同じ地域の人として、説得ということはなかなか地域住民同士でしにくいのかもしれませんが、その計画を決めた責任ある市民というような自覚を地域の市民の方が持ってもらえるような、そんな仕掛け、仕組みをしていくことによって、大分、今までもめている部分をなくして、行政コストが下がるんじゃないかなというふうに思いますし、道をつくっていく大きな目的というものも広がっていくし、それは我々市民にとってすれば、道の付加価値というものが高まっていく、地域の活性化につながっていく、地域の潜在能力を高める刺激剤になるというふうに僕は考えます。

 ぜひとも何らかの形で制度に入れていっていただきたいのですが、これは初代国土交通大臣としては結構大きな役割であり、もしかしたら初代国土交通大臣しかできないのかなというふうに思っています。

 具体的には、例えばドイツなんか、法律に定めて、計画段階から説明をしなければいけませんよという法律があります。我が国でいえば、それに値する法律が行政手続法なんですけれども、これは向こうの中では、ドイツ語で何て言うのか知りませんが、日本語の本を読むと行政確定手続なんて書いてあるのですが、それが入っていて、法律で説明をしなきゃいけないのですね、最初にこんなのをつくろうとしている、皆さんどう思いますかという意見を。もめたときには、あなたちゃんと説明していたのですか、説明していなかったのですかと。成田空港の問題でいえば、説明していなかったから当時その計画をつくった人が悪いという判定が出てくるんです。

 これは、国土交通省だけで決められる法律ではないのですけれども、ぜひともそんなものを前向きに考えていただきたい。それに対しての、いやそんなものが急にできては困る、しかしながら必要だとか、少しコメントを、大臣でも局長の方からでもいただけたらというふうに思います。

風岡政府参考人 先生御指摘のように、ドイツの計画確定手続、これはドイツはそういう手続になっておりますけれども、例えばフランスとかイギリスとか、かなり類似のものがあるわけでございます。

 このドイツの計画確定手続の取り扱いにつきましては、ただいま先生からも御指摘がございましたように、行政手続法の制定のときに大分議論になりまして、結果的には、これはとりあえず将来の課題というふうになっております。

 そもそもの考え方の問題としまして、計画確定をします、計画が決定しますと、集中効ということでの効果が発生する。これは、それの計画が確定すれば他の計画の手続をとる必要がないんだ、要するに集中効というものが発生するという法律構成になる。そういった場合に、責任関係というのでしょうか、本来の計画に基づく官庁の責任と、集中効による責任、これをどう考えるべきなのかというような基本的課題もありまして、なお検討課題ということになってきているというふうに理解をしております。

 もちろんこれは、国土交通省だけの取り組みではなくて、先生御指摘のように国全体で取り組むべき課題ということで、私ども、公共事業の大宗を占める役所として、この問題についても真剣にいろいろ議論をしていきたいというふうに思っております。

 それはそれとしまして、それでは、それまでの間、一切そういう計画面での住民参加みたいなことが行えないのかということだとすると、先ほど申し上げましたように、基本法令について、パブリックインボルブメントも含め、公聴会も含めて、そういったものについて、所管行政の立場で、現行法の運用に当たってできるだけそういったものが整合的、統一的に行えるような努力は一方でもしていきたい、このように考えております。

大谷委員 言うはやすし、やるはかたしでございまして、私なんかよりか、本当に現場で苦労されている大臣、局長さんの方は大変かと思いますが、方向性だけは確認いただけましたので、そのパブリックインボルブメントの方向でぜひとも頑張っていただきたいというふうに思います。

 次に、効率性について質問をさせていただきたいのです。

 大きな意味で、需要予測というものがいつも出てくるのですけれども、本会議場でも質問させていただきましたが、これは多分、GDPの成長率等々によって何らかの相関関係が需要にあるからということで、何か係数、数式があって、それに合わせてできてきているのかなというふうに思います。

 もちろん、港や道路や飛行機等々で、計算の仕方や事業によって内容は違うというふうに思うのですが、一番聞きたいことは、昔と今とでは多分計算方法は違うんだろうなというふうに思うのですよ、これだけ時代が、価値観であったり、国際化する社会であったり、少子高齢化であったりするわけですから。

 一番簡単な例でいうと、僕の住んでいる地域に四国と本州をつなぐ橋ができました。需要予測というものがありました。どうも、そうじゃないどころか、下方修正どころか、反対の現象が起きている。

 地域の活性化ということであの橋はたしかかかったような、大きな目的としてかけられたというふうには思っておるのですが、反対に、向こうの地域の人が、都心にこれは近づいたぞということでどんどんこっちに来る。週末遊びに来れば、こっちでどうも仕事があるらしいぞということで、地域から都心に来て都心で仕事をしてしまう。この方が楽じゃないかと。いざ帰ろうと思えば、二時間で大阪から四国のどこどこまで行けるんだからというふうになっている。まさに価値観というか、経済構造の違い、社会構造の違いから、高度成長期とは絶対に違う形での相関関係ができているわけですよね、成長率等々と需要予測に対しては。

 その辺、どんなふうに違いを見きわめて、どんなふうに今割り出そうとしているのか、教えていただけたらというふうに思います。別に、道路に限らず、何でも結構ですが。

大石政府参考人 道路の需要予測、長期計画をつくります際に、あるいは個別の路線の事業採択等を行います場合に需要予測を用いております。

 マクロの需要予測をつくりまして、多くの全国の道路の交通量の伸びでありますとかいうものを予測して、五カ年全体の中で入れるべき道路計画を考えるというようなものと、それから、個別の路線を採択する際に、先ほど申し上げましたように、BバイCを計算する際には将来交通量が必要になるわけでございます。当該地域の発展状況やバイパス効果等を考慮しながら需要予測を行うといったような手法を入れさせていただいております。

 当然それらに対する検証が必要でございますが、例えば、現在の五カ年計画の全体の交通量でございますが、これは平成十年が初年度でございますので、十年度におきまして、予測値、これは全体で、乗用車、貨物車計で七千六百億台キロという予測をさせていただき、現在の実績値が七千四百六十億台キロという実績になってございまして、ほぼ予測どおりの交通量というようになってございます。

 しかしながら、今後は、さらにその精度を上げるために、目的別や品目別に、交通機関分担により、より精緻に分析いたしまして、それぞれの交通機関の将来的なニーズを把握し、例えば、従来の人口当たりの移動回数の予測は人口全体で回帰式を持っておったわけでございますが、今後は、性別、年齢階層、就業、非就業別に分析するでありますとか、あるいは、自動車の機関分担率を計算する際に、従前ですと経年変化のトレンドで分析いたしておりましたものを、地域別、目的別に交通施設等を考慮して分析、配分するといったような考え方を取り入れることといたしておりまして、いろいろな指標を従来よりも二十種類ほどふやして、分析の精度を上げたいというように考えております。

 有料道路につきましては、有料道路はまた別に、有料化によります交通の負荷といいますか料金抵抗といったようなものを考慮しながら、それぞれの路線の交通需要予測を行い、償還計画等を考えながら有料限度額を算出いたしておるところでございます。

川島政府参考人 続きまして、港湾の需要予測でございます。

 港湾の将来の需要予測につきましては、我が国を初めとする諸外国のGDP、それと国際海運等の国際的な貨物需要の動向をベースとしまして、東アジア地域等の経済発展とこれにつれて進む企業の水平分業の動向、あるいは長期エネルギー需要の見通し等、これらの要因について多角的な分析を加えた上で行っているところでございます。

 若干補足いたしますと、GDPと港湾貨物量の相関、これは時代によって変わります。戦後の臨海工業地帯を造成したときの貨物、さらに、コンテナ化が現在急速に進んでおりますが、こういうときの貨物は違います。これらにつきましては、きちっと時代の変化に合わせて実態を把握し、予測した上で行っておるということでございます。

 また、東アジア地域の発展、これは御案内のとおり、非常に目覚ましいものがございます。コンテナにつきましては、既に輸入が輸出を超えております。かつ、日本企業のアジア進出によって、アジアからの製品輸入は非常に急速な勢いでふえております。こういう貿易構造の変化、これも現状を把握し、将来について予測をした上で最終の需要予測に反映させております。

 また、先ほどの国際海運の動向でございますが、これにつきまして、世界の船会社が生き残りをかけてコンソーシアムを組んでおります。この変化によりまして、昔であれば、それぞれの船会社が自分のターミナルを各港に確保する時代から、コンソーシアムを組んだグループとして、世界のうち拠点的なところに大規模なターミナルを確保するという方向に変わってきております。

 こういうさまざまな要因を加えまして、将来、できるだけ間違いのないような予測に努めておるところでございます。

深谷政府参考人 航空関係についても御説明をさせていただきたいと思います。

 航空関係につきましては、現在、第七次空港整備七カ年計画というものの期間中でございますけれども、この整備計画をつくる際にも、私どもといたしましては、国内旅客、国際旅客あるいは国内貨物、国際貨物、こういった分野がそれぞれあるわけでございますけれども、国内総生産、いわゆるGDPの見通し、あるいは国際貨物の分野もございますので、こういう部分につきましては、北米地域ですとかアジア地域、こういったところの年平均の成長率を見通しながら、あるいは為替レート、こういったものも勘案しながら、人口推計を加味しまして、多角的に分析して需要予測をして、計画を整理いたしております。

 もちろん予測でございますので、上振れ、下振れ、それぞれあるわけでございます。国内の航空旅客でございますと、現在の七次空整で見通しておりましたところより絶えず需要の方が多いということで、言ってみれば上振れ状態。国際旅客につきましては、これはマクロ的に申し上げますけれども、我が国の国際旅客につきましては、計画のスタートの段階では上振れ状態だったのですけれども、アジアの経済危機等がございまして、その後やや下振れ、現在はやや下回っているというふうなことで、見通しとそれぞれの乖離はございますけれども、そういった需要予測をもとにいたしまして全体を整理し、また、個別の事業、それぞれ新規に採択するようなケースにつきましては、航空局におきましては、平成九年度から、新規の事業採択につきまして、それぞれの需要予測あるいは費用対効果分析、こういったことを行いまして採択の当否を判断するという仕組みにいたしております。

 また、毎年度の予算執行に当たりましても、その時々におきます経済社会動向でございますとか財政事情等、そういったものを踏まえながら、なるべく弾力的な運営を、事業の実施をしたいというふうな努力をしておるところでございます。

大谷委員 ありがとうございました。

 三つもやってしまったのは、自分でちょっと時間的にミスだったなと思いました。これ、今書きとめましたので、改めてこの委員会の中で、また個別に議論をさせていただけたらというふうに思います。

 効率性の中で今需要予測という一つの切り口を使ったのですけれども、もう一つ、緊急性という切り口で、せっかく御三局長おいででございますので、いただきたいというふうに思うのです。

 例えば道路でいくと、今で多分十一回目の五カ年計画に入っているのかなというふうに思うのです。これは数字を間違っていたら教えてほしいのですが、改良率でいうならば、国道で八八%、主要地方道でいえば七〇%という、ある意味、毎回五カ年計画というか整備法の目的になっている。道路需要の増大で道路の整備が立ちおくれている、だから緊急だという理屈でいうと、これだけ改良率が上がってくると緊急性というものはなくなってくるのではないかな。緊急性という言葉は外して、何か別の、バリアフリーだとか、そういう少子高齢化に求められている、道の付加価値を高めるための法律なんだよというのに改めて議論をし直していく必要があるのじゃないかなというふうに思うのです。

 いわゆる危惧ということがこの中にも出てくると思うのですけれども、僕はもう、そんな、道の価値というようなもの、いつも需要がふえて、それに対して整備ができていないからということだけではなく、何がふえてきて何が減っているのかということが議論できるような、そんな法律に基づいた五カ年計画等々をつくれるようにしていったらいいのじゃないのかなというふうに思っているのです。

 港湾の方に、港の方で教えていただきたいのですが、たしかここ十年、二十年ぐらいは、取扱貨物量というものは大体三十億トンぐらいでずっと推移していますよね。それにもかかわらず、五カ年計画はずっとそれからも続いていますよね。若干ちょろっと調べたのでいくと、七五年から九八年までで、取扱実績が大体三十億トン強ぐらいで、ほとんど取扱貨物量は変わっていない。第四次港湾整備計画が終わった一九七五年でもう実質の取扱量の方が計画よりか下になっていて、緊急性は、ここでもやはりなくなっているのかなというふうに思っているのです。

 今の目的というのを調べてみたら、環境や地域の活性化や公害対策やということになって、これまた目的がどんどん拡大化されていっているのですけれども、その目的を見るや、緊急性ではないですよね。そこもやはり同じ理屈で何らかのことをきっと考えておられるのかな、もし考えていないのだったら、この場で考えていかなければいけないのかなというふうに思っているのです。

 飛行機の方なのですけれども、飛行機の方でいいますと、僕は余りよく算数が小学校のころからできなかったのですが、TRWという一つの指標が、これは七次五カ年計画ですから九六年のときに終わったものかな、総滑走路延長指標というものがあって、その数値目標が五カ年計画の中に出ているんですよね。次のときにも使えるのかなと思ったら、なくなってしまっているんですね。

 どうしてなくなったのかなと、いろいろ聞いてみると、どうも欧米並みの数値に近づいたので、これは嫌らしい見方で、数値が近づいてしまったので、これを使ったって、空港整備にお金が必要なんですよという理屈が通らなくなったからやめちゃったんだというようなことを言う人もおられます。それへの反論というのをしっかりこの場でやっていただきたいし、今進んでいる七次の五カ年計画の整備目標というのは、数値目標というものが全くなしでやっているのか、いや、目的はあるはずだというならば、どんな需要予測のもとにやっているのか。

 もう松浪議員はおられなくなりましたが、松浪さんのところには関西国際空港がある。僕のところには大阪国際空港、国際空港と名がつきながら、国際線が一本も飛んでいない空港があるのです。そんな全体的なことを考えて整備をしていかなければいけないので、箱物という古い言い尽くされた言葉ですけれども、箱物よりかその中身ですね、その中身のことについて、もっともっと飛行機のこと、空港のことは考えていくべきかなというふうに思っておるのです。

 この三つの、緊急性ということの事業を続けていく理屈について簡単に御説明いただいて、次に移りたいというふうに思いますので、よろしくお願いします。

大石政府参考人 今先生からは、改良率が上がってきている状況から見ると、改良率というものを指標として緊急性を説明できないのではないか、このような御指摘がございました。

 なるほど、現在の改良率は、一般国道で八九%、都道府県道で六二%、市町村道で五〇%、全体としてはまだ五三・九%でございますので、かなり低い改良率だと言わざるを得ないところがございます。しかし、今申し上げましたように、一般国道では八九%、特に国土交通大臣が管理いたしております指定区間で申しますと九九・八%でございますので、相当高い改良率になっていることは事実でございます。

 しかしながら、現在私たち国民が日常消費する物質の九九・九%が車で運ばれるようになったり、あるいは国内旅客の移動の七〇%が自動車で負担しているというような状況から考えますと、特に大都市の中心部を除きますれば、自動車と国民生活の関係はさま変わりしてきたと言っていいのだと思います。

 私たちは、かつて舗装もされていない道路空間に自動車が進入してきた際に、道路の整備率を舗装率という形で国民に御説明したことがございました。しかし、それは、とりあえず舗装してほこりを立てない道路にすることが緊急の目標だった時代には、なるほど意味を持ち得た指標でございますが、現在私ども、近代生活をやる上で道路が舗装されているということが常識である。例えばイギリスでは一〇〇%舗装でございますが、そういったことを考えたときに、舗装率という概念で、道路が今国民に提供しようとしているサービスの内容を国民に説明することはできないというように考えてございます。

 また、改良率につきまして申し上げますれば、大型バス、大型トラックがすれ違える状態にあるかどうかというようなことが改良率の概念でございますから、当然そのようなレベルで国民の皆様方は道路の改良を求めておられるのではなくて、もう少し混雑がないだとか、あるいはいざというときに迂回路があるかというような意味で道路に対するサービスを求めておられるわけでございますし、また地下空間をいろいろ利用するというようなこともあるわけでございます。時々の国民が道路に求めるニーズに応じていろいろな指標を考え、それで国民に説明していくことが必要なのだというように考えてございます。

 いずれにいたしましても、現在自動車交通が担っている交通の実態と道路の整備状況を考えますと、緊急性というのは引き続きあるのだというように考えております。

川島政府参考人 次に、港湾の貨物の動向でございます。先生御指摘のとおり、三十億トン程度で推移をしております。

 今回の七カ年計画で私どもが重点を置いておりますのが、中枢国際港湾における大水深コンテナターミナルの整備というものを第一番に掲げてスタートしております。この対象としますコンテナ貨物につきましては、一九八〇年で四千九百万トン、九〇年で倍以上の一億一千五百万トン、九八年は、アジアの経済危機の影響を受けて前年に比べ若干減少しておりますが、そこにおきましても約一億六千万トンと着実に増大をしております。

 私どもの将来の貨物の予測でございますが、トータルな貨物量、これにつきましては微増だというふうに考えております。コンテナにつきましては、運輸政策審議会の、若干一年ほど前になるかと思いますが、四%程度で今後も着実に増大していくということで、今最重点をここに置いております。また、その他の貨物につきましても、我が国の産業競争力ということで、いかに安く海外から物を入れるかということがございます。例えば北海道の畜産につきましても、外国の飼料を使っておるわけでございますが、これが諸外国からの輸入品に対抗していくためには、少しでもコストを下げる必要があります。

 そういう中で、一方、運ぶ船がどんどん大きくなっております。要するに、車と違って、船の場合はどんどん大型化していくというのが悩みでございまして、それに対応して、できるだけ既存ストックを活用しながら、その岸壁を深くするといった努力も必要かと思います。

 さらに、国内輸送につきまして、これからの環境問題を考えましたときに、CO2の排出量、労働力の問題、あるいは沿道環境の問題も考えまして、道路とフェリーと道路、いかに効率的なネットワークをつくるかということが大きな課題かと思います。これにつきまして、道路のネットワークと連携をさせた形で、複合一貫輸送のための内貿ターミナル、フェリーとかローローでございますが、それをきちっとネットワークに合わせて拠点的に整備していく必要があるかと考えております。

 また、そのほかの課題でございますが、阪神・淡路の経験も踏まえまして、あのときに神戸港が壊滅的な打撃を受けて、アジアの工場の生産ラインまでストップしたという事実がございます。非常に膨大な影響を与えたという経験にかんがみまして、耐震時のネットワークをいかに確保するか、必要最小限については耐震強化をするということでございます。

 また一方、大きな課題としては、廃棄物の問題がございます。最終処分場の確保は非常に逼迫しております。東京二十三区の一般廃棄物は、すべて東京港で最終処分されております。

 こういう新たな要請に対しまして、港湾として着実にこたえていく必要があるというように考えております。

深谷政府参考人 航空関係について御説明を申し上げます。

 現在は第七次空港整備計画の期間中でございますことは先ほど御説明申し上げましたけれども、先生御指摘の指標につきましては、第六次空港整備五カ年計画、これは平成三年からスタートした五カ年計画でございますが、その際におきましては、御指摘のとおり、そういった考え方を持ちながら五カ年計画を整理したという事実がございます。

 私どもといたしましては、現在の計画期間に入る際にいろいろ検討いたしまして、現在の第七次空港整備計画の中では、いわゆる大都市圏拠点空港、これは例えば首都圏でございますとか中部圏、近畿圏、そういったところの空港整備、これが、将来を見据えましたときに、現時点におきましても緊急に整備していかなきゃいかぬ分野であろうということで、大都市圏拠点空港に重点を置いた整備を進めたい。

 他方で、その他の一般空港につきましては、おおむねネットワークとしては概成しつつあるだろう、ついては、むしろ既存のストックの活用あるいは高質化というふうな面に比重を移そう、そういう意味合いにおきまして、先生御指摘の指標につきましては、どのエリアにおきましても、滑走路長としては五百メートルは五百メートルでございますので、今申し上げましたような考え方に沿いまして、私どもといたしましては、現在におきましては、地方空港については、滑走路延長で利用しやすくするとか運用時間を延長することによって既存ストックのさらなる活用を図る。

 そういう面を見据えながら、他方で、今申し上げましたように、首都圏の空港につきましても先生の御案内のような状況でございますので、成田空港を早期に完全空港化する。あるいは羽田空港につきましても、二〇一五年ごろには本当にパンク状態になってくる。こういうことを考えますと、やはり首都圏の空港につきましても、その空港容量の拡大あるいはアクセスの改善、こういったものに十分力点を置きながら、それは日本におきます首都圏、中部圏、近畿圏、それぞれの大きな経済圏を抱えた、そういった大都市圏を中心に緊急に整備をしていきたい、こんな考え方になっておりまして、ぜひ先生の御質問にそういう形でおこたえしたいと思います。

大谷委員 ありがとうございました。

 こんな長い時間を使って何が言いたかったかというと、国民、市民というのはますます納税者意識が高くなってきていますから、行政の側には一つ一つの事業に今まで以上に納得のいく説明をしていく努力をしていただかなかったら、結果的には行政コストが高くなってしまうようなこと、いわゆる土地収用法が出てきてしまうようなことになってしまうんだということが一番言いたかったのです。

 私なんかは、何が起こっているのか、何を今すればいいのかということを説明し、御意見をもらうために税金をいただいてお仕事を、議員というものをさせていただいております。多分、議員よりかは現場の声をいただくということは少なくて済むお役に今おられるのかもしれませんが、説明責任というものだけは同様以上にお持ちであるというふうに思いますので、ぜひとも、今いただいた三局長からの答弁、確かにわかったようなわかっていないようなところがありましたが、うちの母親が聞けば、多分ほとんど理解不能だというふうに思います。その辺の苦労を、これから広報ということをもう少し政策決定の質の中に取り入れていただけたらというふうに思います。

 あと五分でこの収用法の樽床理事がやったところを詰めさせていただきます。

 まさに、僕、今聞いていて驚いたのは、第三者機関というものの意見を聞いて認定手続をやっていく、その中で、意見を尊重するというふうに今局長の方からいただきました。非常に大きな進歩を、今国会の半ばぐらいにこの土地収用法の案が出てきたときに比べたら、踏み込んで、覚悟をして今御答弁いただいているのだなというふうに思っています。

 そして、樽床先輩の方が確認いたしましたように、これはそれなりに重みのあることだね、もし大臣と認定の方向性が違った場合には大変なことになるよというふうなことも出ました。その大変なときはどんな説明をしていかなければいけないのか。どんな大変さが、重要性があるのかということについて知りたい。

 もう一つは、その第三者機関が出す尊重されるべき意見というのが、両論併記、ダブルスタンダードであっては何にもならないわけですよね。それは確認させていただきたいのです。もちろん、この第三者機関には、ここの委員会と同じように、どこの党の部会でもそうですが、けんけんがくがく意見を出し合いますが、最後には一つにまとめます。同じように、この第三者機関から出てくる意見も、両論併記ではなく一つの方向性を出してくるものなんでしょうか。

 それともう一つ、公聴会なんですけれども、ルールを決めて公正中立を保つためにやる、そんなものは字で書いてあるからいいですよ。昼やるのか夜やるのか、どこまでの人を対象にしてやるのか、どれだけの時間をやるのか。そこでまだ意見が言い切れなかったといった場合には、次の日に、さらに再来週にというふうにして延長があるのか。これは一回だけの話じゃないと思うのです。どこまでいけば、これで公聴会は打ち切りますというところができるのか。その辺の明確なルール、細かいルールじゃなくて、これは大きな姿勢の問題ですから。

 この三つについて、最後、詰めさせていただきたいというふうに思います。

風岡政府参考人 公聴会の具体のやり方ということで何点か御指摘をいただきました。

 まず、どういう範囲の人が参加できるのかということにつきましては、法律上は、利害関係を有する人の意見を聞かなければならないということで、利害関係者ということになります。利害関係者の定義につきましては、これは解釈ですということになりますので、もちろん地権者という直接的な利害関係者もおりますけれども、先ほども御答弁させていただきましたけれども、事実上利害関係があるという方も含めて幅広く御意見をいただく、こういうようにしたいと思います。

 また、公聴会を開催するに当たりましては、あらかじめ、いついつ開催するのだという周知措置、これが非常に重要でございますので、これも起業地の新聞に広告を出すということで、これはあらかじめ出して、いついつここで行われるのだということを明示したいというふうに思います。

 それから、どれぐらいの時間をやるのかとか、場所とか時間帯も含めてでございますけれども、公聴会については、事前に御意見を発表してもらう方については通知をしていただくことになります。

 その方々がどういうような御意見を言うのかということについては、要旨もあわせて御連絡をいただくことになりますので、主宰者の側におきまして、どういうような意見が出るのか、また、同じような意見なのかどうかというようなことで、ある程度整理をさせていただくところというのは出てくると思いますが、基本的には、できるだけ幅広くいろいろな方から意見を聞くという思想のもとに整理をされるべきだというふうに思います。

 詳細につきましては、何分にも、公聴会、現行収用法もありますけれども、収用法としての経験はないものですから、他の公聴会の実例というようなものもよく見まして、どういうようなやり方をすると比較的皆さん方の意見が出るような環境になるのかというようなこともよく勉強しながら、具体的なルールについて検討してまいりたい、このように思っております。

 第三者機関において御意見をお聞きするわけでございますので、事業認定庁としましては、自分たちが考えている方向でいいのかどうかということの判断を求めるという意味でございますので、基本的には第三者機関において統一的な御意見をまとめていただくということを大いに期待しておりますが、意見はこうだけれどもこういう参考意見があったというようなことがあるのかどうかというのは、第三者機関としての審議のやり方でございます。考え方としては、一つの考え方をまとめていただきたい、これがお願いの趣旨でございます。

大谷委員 これは最後の質問にしたいというふうに思います。

 通知制であるとかいうこと、とても僕には我慢ができないのですが、これは、今まで使ってきた時間の中で、上流、要するに構想段階の計画の中で一生懸命やっていくということであれば、本当にそうなればバランスがとれるのかなというふうにも思わせていただいています。

 なぜかというと、これは大臣、もう時間がないので首を縦に振るか横に振るかだけでお答えいただけたらというふうに思うのです。これが今後三十年五十年続いていく土地収用法にあらずだというふうに思います。いろいろな役所の方とお話をさせていただきました。フランスやドイツのように、構想段階の中から住民参加、住民合意ができるような公共事業計画のシステムをこの国は今つくっていこうとしている。その第一歩として、この土地収用法の部分で、これは問題が起きてからになるのですけれども、それなりに住民合意、住民参加ができるシステムをとっていこう、一歩だ、そしてこの議論の中で二歩進めたいな、そんな思いで、この三カ月間勉強させていただき、議論をさせていただいてきました。二歩三歩進んでいって、理想の公共事業システムになっていく。

 ですから、この土地収用法、今回提案された土地収用法というものは、ある意味、そんな大きなすばらしい公共事業システムが生まれていく第一歩になるのだ、必ずしも未来永劫この形じゃないんだ、今回は改正するまでに三十年間かかってしまいましたけれども、また新しい社会、そしてこの制度自体が変わっていく、そのバランスをとって変わっていくことがあるんだということを確認させていただいてよろしいでしょうか。

扇国務大臣 私は、あらゆる法律も法案もアンタッチャブルではないと思います。少なくとも、その時代あるいは日本の国のあり方等々によって、我々の生活水準も変わりますし、社会情勢も変わります。そういう意味において、私たちは、その時代に合った、変えることに勇気を持たなければならないと思います。

 そういう意味で、小泉内閣の聖域なき構造改革というのは、まさにその一点にあろうと思います。完璧なものというのはなかなかあり得ませんし、また、我々国会議員が、常にこうして国会の中でその時勢に合った論議を皆さんでしていただくこと、これが私は、国民の皆さんが安心をして国会論議を見、聞き、そして国会の成り行きによって、多くの皆さんの意見を代表した国会議員によって論議されることによって、日本の国づくりの基本をつくっていく、そのための委員会であろうと思っております。

大谷委員 これにて質問を終わりますが、これは借金をして公共事業をしていくわけですから、ここの委員会の議論が将来世代に本当の意味で便益のあるものになるよう、行政の側で、またこの委員会の側で頑張っていくことをお誓いするのか、お願いをし、終わりたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

赤松委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十一分開議

赤松委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。瀬古由起子君。

瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。

 「財産権は、これを侵してはならない。」とする憲法二十九条第一項がございます。そして、その第三項では、正当な補償のもとに、公共のために用いることができるとしておりまして、その憲法の条項に基づく法律が土地収用法でございます。

 正当な補償が求められることは当然ですけれども、さらに、公共のためと認められるものでなければなりません。事業者自身が公共のためのものだと言っただけで、即、公共性があると決定できるわけではないわけですね。

 そこで、土地収用法に入る前に、公共事業のあり方について質問いたします。

 政府・与党でさえ、不十分ながら、公共事業の中止、見直しをする時代に今なっております。昨年、約二百三十三事業、事業費二兆八千億円。私からすればほんの一部にすぎませんけれども、そういう状況が生まれております。また、吉野川の可動堰のように、住民の運動によって住民投票条例をつくり、事業を中止させる、こういう事例も出てまいりました。

 土地収用法は、公共性のある事業を正当な補償のもとに、いわば国民の財産権を取り上げるものであるだけに、それだけに一層、計画段階で、果たしてこの事業の公共性があるのかどうか、これをよく住民と協議をして、そして合意のもとに事業を実施することが重要だと思います。しかし、現行の都市計画法、都市再開発法、区画整理法などの事業法で公聴会や事前説明会が形式的にあっても、十分機能していない、住民が求めていない事業がどんどん進められているという状況がございます。

 なぜ、土地収用法という財産権を制限する法律で、住民がいわば最後の手段として、その事業に公共性がないとか、また住民犠牲になるのだということを主張せざるを得ないのか。それは、事業法そのものに、計画段階での民主的な手続、すなわち住民と協議をする、また合意のもとに事業を実施するという手続が欠落しているからだということは、この間の審議の中でも明らかになりました。この点は、昨日の参考人質疑の中でも共通の認識だったと思います。

 この点については、旧建設省の建設経済局長の私的研究会としての土地収用制度調査研究会でも、情報公開と住民参加を何度も指摘しております。

 また、ことし行われた国土交通省の土地収用法改正試案についてのパブリックコメントで一番多いのは、事業認定以前の事業の計画段階からの住民参加、情報公開の促進、行政の説明責任の遂行などが必要だとする意見でございます。

 計画段階からよく住民と協議して、合意のもとに事業を実施する、これが欠落しているということに国民が今一番不信感を持っているのではないかと思うのですが、その点、国土交通省の見解を伺いたいと思います。

    〔委員長退席、河上委員長代理着席〕

風岡政府参考人 公共事業の実施に当たりましては、計画段階からの住民の参加、確かに重要な視点であります。

 今回の土地収用法は、これは収用法の体系上の限界というのもあるわけでございますけれども、これは用地の取得が進んで、ある段階から法的手続に移行するということでありますので、考え方としては、事業の途中の段階から、この段階においてできるだけ住民の意見を聞くという体系になってきております。

 ただ、冒頭に申し上げましたように、公共事業を円滑に推進するという上では、その面だけでは足りないというのは御指摘のとおりでありまして、これについては、都市計画法だとか河川法とか道路法とか、個別法の運用に当たって、できるだけ住民参加、情報公開を行っていくという取り組みを一生懸命やっているところでありますし、また今後、この情報公開、住民参加の要請が高まるという中で、その点については、先ほども御答弁をさせていただきましたけれども、所管事業全体について、できるだけ整合性のあるもので積極的に取り組んでいきたい、このように考えているところであります。

瀬古委員 トラスト運動がなぜ起きるのか。

 私は愛知の出身ですけれども、愛知万博にしても、シデコブシ、ギフチョウ、オオタカなどのいる貴重な里山を、環境アセスも大変不十分なまま工事をどんどん進めようとしました。そこで、全国の自然を守りたいという人たちがトラスト、立ち木トラスト運動も含めて立ち上がって、そして現在の事業規模の縮小へと、事業そのものの計画を変更いたしました。

 静岡空港は、全国でも前例のないオオタカの営巣木まで切り倒し、すばらしい茶畑まで壊して空港建設が進められています。ここでも今トラスト運動が起きていますけれども、本当にこんな空港が必要なのかという住民運動、住民投票の条例制定運動が行われて、今、知事の姿勢が変わりつつあるという状況でございます。住民運動は、よく考えれば、地域づくりの大きなエネルギーになっているとも言えるわけですね。

 公共事業も本当に必要かどうか。今まで決められたから、これでいいというものでない。そういう点では、やはり大臣が、何度も、きちんと見直すべきものは見直さなければならないし、きちんとメスを入れるものはメスを入れなければならない。しかし、それをどういう点から見直していくのか、チェックしていくのかということが重要だと思うのです。

 そういう点では、住民の目からやはりチェックをしていく。それから、計画の段階からの住民参加。情報公開だけではなくて、ここで大事なのは、やはり合意形成ですよね。やはり住民も、そして進める側も、お互いに納得して、一つ一つ段階を踏んで進めていくということが大事だと思うのです。

 ですから、一方的に情報を流せばいい――情報公開も十分ではないのですけれども、やはりきちっと住民と一つ一つ確認をしていく、こういうプロセスを踏むということが大事だというように思うのですね。

 そういう意味では、いろいろやりましょうというのは、私もこの間の審議で聞いておりましたけれども、今問題がある事業法そのものの、合意ができる、合意形成をきちっとそこでうたわれるような事業法の改正、こういうものも必要になってくるのだと思うのですけれども、その点いかがでしょうか。

風岡政府参考人 計画段階から住民の御意見をいろいろ反映していく、住民参加、情報公開、その二つだと思います。

 これは、先ほども実例の御紹介がありましたけれども、PIを実施するというようなことは、まさに計画、構想について地元の人々の意見をいろいろ聞いて、また、それを十分反映していくという取り組みであります。例えば、道路等におきましては、そういうような試行的な取り組みというのが現実問題として実施をされてきているわけでございます。これについては、先ほども申し上げましたように、道路だけではなくて、いろいろな事業があるわけでございますので、そういったものにつきまして、できるだけそういう取り組みというものを一体的に行っていくということを御説明したわけでございます。

 ところで、収用法は収用法で、事業の段階において、これは手続としてやはりいろいろ見直すべき点は見直さなければならないということで、これも例えば、住民の理解を得ていくというような観点、そういう面から見て、現行の土地収用法が、それではこのままでいいのかということになれば、これはやはり見直さなければならない。

 また、収用委員会の裁決手続についても、これもできるだけ効率的にやっていかなければならないという時代では、これも今の手続では不十分ではないかということで、現行制度がやはり社会の状況に一致していないということで、十分慎重にやるべきところは慎重にやる、また合理化できるところについては、権利者の保護を図りつつ、その範囲で進める、こういうような改正を提案しているところでございます。

瀬古委員 収用法の段階については、どう改善するかというのは私も聞いておりますし、この問題は、また後でお話ししたいと思うのです。

 その以前の段階で、事業法そのものについても、きちんと手続的に変えなきゃいかぬのじゃないか、住民の合意がきちんと得られる、そういう仕組みに変えていかなきゃならないのじゃないかという意見があるわけですね。その点はどうなんですか。

風岡政府参考人 公共事業を実施する上で、計画段階の取り組みというものの重要性は、先ほど御説明したとおりであります。

 一つの例として、PIというやり方が、構想段階からいろいろな御意見をお伺いするというやり方で、道路事業について既にそういう取り組みがなされております。

 私どもは、そういったものも参考にしながら、今後、公共事業、所管事業を実施する上で、PIという手法はどういうような活用の余地があるのか、あるいは公聴会みたいなものをどういうふうに使っていったらいいのかとか、あるいは事業の説明会というものもどうしたらいいのかというようなことも含めて、計画段階でのいろいろな対応ということについては、幅広く、これは省を挙げて大きな問題として取り組んでいきたい、このように考えております。

瀬古委員 今までの事業法においても、例えば事前説明会だとか公聴会というシステム、制度があるわけですね。これについても、いろいろ問題が指摘されているわけですね。ちゃんとした公聴会や事前説明会というのが、きちんと住民合意の場になっていない、一方的に説明するだけで打ち切り、こういう状況がある。これについて意見がいっぱいあるわけですね。

 だから、そういう点では、今回の土地収用法の中で事前説明会なり公聴会が義務化されるということになりましても、今までの公聴会や事前説明会のやり方がどうだったのかということをちゃんと踏まえてやらないと、公聴会、事前説明会を名乗っても、依然、今まである事前説明会や公聴会が大変問題があると言われている中で、同じことをまた繰り返して、また不信がわくだけですね。その点での、今までの事前説明会や公聴会に対する深い反省はお持ちでしょうか。どうですか。

扇国務大臣 今、瀬古先生がおっしゃっていることは、この法案ができて、少なくとも三十年間改正されなかった。この三十年間の日本の世の中の進歩、情報化時代、そして今も、こういう委員会で審議しておりますことも全部モニターで映すことができる、また私たちのこの審議自体も公表することができている、こういうシステムへ変わってまいりました。そういう意味では、私は、三十年前に比べて、またこの三十年間、そういう今の情報化時代のあらゆる先進的なものを駆使しないで、住民の皆さんの理解を得ることの足りなさ、不足している部分が多々あったと思います。

 先ほども私申し上げましたとおり、私たちは、その反省に立って、さっきも樽床先生に、過去には我々も行き届かない点もあったという反省も申し上げました。また、今重ねて瀬古先生には、そういう行政のおごりもあったでしょうし、また三十年前には余りにも伝達方式がなかったということも多々あったと思います。

 今後は、この三十年ぶりの法改正を皆さんに提示したということは、より皆さんに公開をする、公正性、透明性を持つという意味で、今回はその点を重視して、ですからさっきも私申しましたように、事前に、事業認可するまでの時間は今までよりもかかってもいい、むしろかけるべきだ、それが第一歩である。

 そして、合意が得られて事業化したら速やかに進むということが、今までの公共工事等々、あらゆる面での、特に国土交通省は陸海空でございますから、そういう意味での、今回の改正によって、より国民の皆さんに開かれた、また開いた意見をいただき、そしてお互いにそれを交わしていくという、このPI方式というものを取り入れて、公聴会までにも、まず事業説明をする、その方法をとっていくのが、今回は大きな基本であるというふうに御理解賜りたいと思います。

瀬古委員 三十年間これが変わらなかった、ある意味では、そういう事前の計画段階の場合に住民の合意が得られるようなシステムが検討されなかったという点では、今大臣が反省も含めてお話しされたと思うのですね。

 しかし、では、その姿勢が本当に変わったのかどうかという点では、私は、幾つかの事例、公共事業で見てまいりましたし、実際、今も、立木トラストなど、運動せざるを得ない事態があちこちで火を噴いているのですね。

 そういう点では、今大臣が深く反省をしていただく、その不足に思いをいたしていただいて、本当にそれが今後そういうものにつながっていくのかどうかというのが問題だと思うのです。

 そこで、私、具体的にお聞きしたいと思うのです。

 例えば、高尾山を守れという圏央道の都市計画、そして事業化に反対する運動がございます。この場合に、例えば計画の縦覧であるとかあるいは説明会がたしか五回、六回持たれたのですね。環境アセスについて言えば、当初の起業者がつくった環境アセス案の段階と最終的な評価書とは何ら変わりがない。公聴会を開いたけれども、二十五人の発言者のうち、賛成はわずか一人ないし二人だけで、あとは全部反対意見が出たのです。

 では、この住民の意見が反映されたのか。先ほど、きちっと反映していきたいと言われたのですが、今まで、圧倒的多数が反対だと言っても、反対の意見が全然反映されていないわけですね。そして、住民の意見を聞きましょうと言いながら、最後は打ち切り、聞く耳を持たず、こういう状態なんです。

 そういう点では、こうした状態はもう二度とないというふうに言えるのでしょうか。今度の新しい公聴会や事業の事前の説明会では、大臣が今深く反省されて、こんなことはもう二度とございませんというような、新しい公聴会や事前説明会のあり方になるのでしょうか。

扇国務大臣 瀬古先生に、一つだけ、私は、お互いの認識を共通しなければならない点があろうと思います。

 それは、多くの皆さん方がいろいろな御意見があります。少なくとも、百人いらっしゃれば百人御意見が違う。一人でも反対したらしないとおっしゃったかつての東京都の美濃部都知事、あの当時の現状から考えれば、東京都がこれだけ渋滞、混雑しているというのも、東京に関係ない人たちが、東京に用事のない人がただ東京を通過するというのが、東京の混雑の一四%を占めている。その人たちが、用事がないのに、ただ道路ができていないために、東京を通過点にしている。そのために東京が混雑し、CO2が排出され、多くの皆さん方が困っているという事態も、私は、少なくとも公共工事というものは、公共というのは、どこで妥協するか。

 あるいは、多くの皆さんとおっしゃるけれども、百人いれば百人全部が賛成できないこともあるのです。けれども、私は、一人一人の御意見を聞くのは大事ですけれども、その地域の皆さんが、その百人の意見を集約していただきたい。私たちがこうしろ、ああしろと言うのではなくて、地域の皆さん方で、どうあるべきかということの集約をぜひしていただきたい。百人百色の意見があっても、その皆さんで、集約的に、こういうふうにしていこうじゃないかと。ただ反対することではなくて、これが二十一世紀の自分たちの地域をよくすることなんだ、これが公共なんだという意識をぜひ取りまとめていただくということも国民の合意性であるというふうに、ぜひ共通の認識をそこで持って、私は、今後もより開かれたものにしていきたいということだけは申し上げておきたいと思います。

瀬古委員 私は、百人のうち一人が反対したら何が何でもだめだという立場じゃないのです。最終的には、収用法も必要だと私は思っています。しかし、そこに至るまでの過程を本当に丁寧にしていただきたいと思うのですね。

 先ほど公聴会の問題を言いましたけれども、二十五人が反対だと言って、一人か二人の賛成しかいないという中でこれを強引に進める、一切その意見も反映しないというのは、これはいかにも異常なんですね。

 そして、私は自分では、例えば万博だとか藤前干潟だとか、そういう公共事業にもかかわってきましたけれども、住民投票や住民のアンケート調査をやったら、もうかなりの方々が、自然を壊すのは反対だという方が多い。それでも、何が何でも強引に進めるというやり方が批判されて、そしてあちこちで、やはり改善しようじゃないかというようになっているんだけれども、そこに行くまでに物すごく時間がかかるわけですね。

 例えば具体的に、私も資料を見せていただいてびっくりしたのですが、この圏央道の問題でも、建設省は十三年間、住民との話し合いを一貫して拒否してきた。そして、いろいろ住民の皆さんは言って、意見を取りまとめて、起業者である建設省や相武国道工事事務所に話し合いを申し入れてきた。しかし、それも、まともな説明会もないまま話し合いを拒否してきた。それで、建設大臣が話し合いをしましょうといって訪れたけれども、いろいろ意見が出て、わかりましたと言うのにもかかわらず、その直後に、抜き打ち的に事業認定を行う。

 こういうことをやったら、本当に住民から不信を、みんながせっかく一緒に話し合ってやろうと言っているのに、話し合いましょうというポーズはしているけれども、一方的にこの事業を認定する。それから、例えば国道工事事務所も、説明会では、住民の質問に対し、土地収用法は使わない、住民との話し合いを重視する、納得をいただいていくんだ、こういう回答をしているにもかかわらず、事業認定をしてしまう。

 私は今圏央道の問題を言いましたけれども、実はこういうことが至るところで、それはもう三十年前の話じゃないのです、今現在でもあちこちで、住民との話し合いは一切問答無用という形で、一、二回やったけれども後はもう全く話し合わない、こういう姿勢があちこちで貫かれているからこそ、住民の皆さんが、これは何とかしなきゃいかぬということで、そのためにも、最後の、もうぎりぎり、本来ならばもっと早くやらなきゃならぬところを、収用法の段階でやらざるを得ないというところまで追い込まれてしまうわけですね。

 こういう点では、今度大臣が、もうこういうことは絶対にないんだ、きちんと住民の合意ということを、一方的にしゃべるというだけじゃないんだ、一方的に説明して、住民が納得しないのに強引に進めるということはしないんだということならいいですけれども、その点での保証というのはあるのでしょうか。

扇国務大臣 今瀬古先生は一つだけの例をおとりになりましたけれども、少なくとも我々は、公共工事の中で、我々の社会資本整備というもののあり方、どこまでどうするべきか。これは、私は、先ほども申しましたように、国としての基本政策を示し得なかった、示していなかった、その大きな反省のもとに、二十一世紀の国土のグランドデザインをどうするかというのをみんなに示して、その段階を地元の皆さんに御理解いただいて判断していただくという手続が、今までも落ちていた、欠けていたと思うのですね。

 そして、変な話ですけれども、たまたま先生は圏央道のお話をなさいましたけれども、少なくとも、この三十年の間に建設大臣って何人いらしたのでしょうか。ちょっと今数がわかりませんけれども、去年私が建設大臣にならせていただくまで、三十三年間ですか、みんな現地に行かないのですね。

 ですから、外環とあれとは違いますけれども、少なくとも私は、そういうふうに、現実に、私も人間ですし、私も反対意見を言うときがありますから、それはもう堂々と意見を闘わすべきだと思っております。

 少なくとも、公共というものの見地から考えれば、今までは、住民の皆さん方の最初の段階での、私はさっきも申しました、ボタンのかけ違いもあったでしょう、あるいは説明不足もあったんでしょうと、そういうことを私たちは認識しながら、今後、以後、新しいことに関しては、一切この法案では、きちんと事前の話し合いを計画段階から開示するというふうに明示してございます。

 皆さん方にこの改正法案を通していただきますと、今後、このことはきちんと国民の皆さんに認識され、また地方自治体の皆さん方も自分たちの地方自治体としての責任も自覚されるだろうと思いますので、そういう意味では、二十一世紀型にやっとなったんだな、そういうふうな御理解がいただけるんじゃないかと思います。

    〔河上委員長代理退席、委員長着席〕

瀬古委員 大臣はいらっしゃったけれども、住民にうそをついて、それで認可しちゃったんです。いらっしゃった大臣もいるわけですよ。そこでは、やはりきちっとした住民との誠意ある対応が必要だと思うのです。

 今大臣は、今後、この収用法自身に、いろいろな住民の声を聞く、そういうシステムをつくっていくということは提案されている。これについても私はまだ後で意見があるのですが、今言っているのは、事前の計画段階で幾ら大臣が話を聞きますよと言っても、それを今まで長い間言って、住民を無視し続けてきた経過がありますから、ちゃんと事業法そのものを改正するなり、住民との話を聞くだけじゃなくて、そこで合意をきちっと形成する、その段階を踏む、そういう事業法の見直しというものが必要になってくるのじゃないですか、このことを私の方で言っているのです。

扇国務大臣 一見、瀬古先生のお話を聞いていますと何もしていなかったように聞こえるものですから、私は、そういう意味では、圏央道のこともやはりある程度数字を言わざるを得なくなるのです。

 こういうことで私は瀬古先生とやり合いたくもありませんし、これが万全だとは思いませんけれども、少なくとも手続というものに関しては、手続期間中、昭和五十九年十月から始まっておりますけれども、四年六カ月、この都市計画の決定をしました後でも、手続の期間中の説明会の状況、都市計画の素案の説明会を五十九年十月から六十一年三月、三十八回、延べ二千四百人が出席して行っております。

 環境アセスメントの説明会は、六十一年九月から十月、これは十回行いまして、千四百人の出席者がありました。また、環境アセスメントの公聴会、これも、東京都の条例に基づいて開催され、昭和六十一年十一月から十二月、三回、公述人約七十五人。あるいは見解書の説明会、これは昭和六十三年の二月、六回行って、千二百人出席。

 とにかく、説明会だけでも合計五十七回行っているわけなので、私は、それを行ったから賛意が得られるとは思いませんけれども、一見、瀬古先生のお話を聞いていると、何もしていなかったように思われることだけは、みんな努力している、ただ、賛意が集約されなかったということはあるかもしれませんけれども、これだけの努力をしたということだけは、議事録に何もしなかったように載ってしまったのでは困りますので、ぜひ私は、きちんとそのことだけは申し上げておきたいと思います。

 また、けさもちょっとこの委員会で日の出の廃棄物の問題も言われました。日の出の話も、私、やはり考えますのに、日本じゅうの皆さん方がどうお考えかわかりませんけれども、百四十坪の土地に、これは平米でしたら四百六十平米ですけれども、この百四十坪の土地に二千八百二十九名の共有者がいる、しかも、そのうち二千四百三十一名は外の人たちだ、そういうことは、日本の皆さんが常識で考えて、私はこれは常識だと思えないのですね。

 百四十坪のところに二千八百二十九名がひしめいて一坪地主になっている。しかも、それが地元の人ならもちろんごもっともだろうと私も思うのですよ。ところが、そのうちの二千四百三十一名が全然違う場所の人だということ。やはり二十一世紀になって、どこまでが常識で、どこまでが許容範囲かということも、国民の皆さんの意見集約の中で議論していただいて、みんなが、ああ、なるほど、これが常識的なんだなと思えるところも、私は、皆さんの意見を闘わせて御賛同賜ったり集約をしていただきたいということも申し添えておきます。

瀬古委員 例えばごみの問題でいいますと、そこの地権者だけの問題じゃないでしょう、そのごみを出している住民だってかかわり合いがあるわけです。今大臣が言われたのは、本当にそこに、地元に住んでいる人だけの話でしょう。そんなことはないのです。

 私は、例えば愛知万博の問題なんかに取り組んできましたけれども、全国からこの森を守ってもらいたいという声がいっぱいあって、立ち木トラストなんかは本当に全国の人がいらっしゃいました。今大臣に言わせれば、そんなものはよその人の話だと言うのだけれども、しかし、そこの自然や貴重な森を守るということは、今やその地域の人たちだけの問題じゃないのです。ある意味では、この海上の森なんかは、世界からあの森を守らなきゃならないという声が沸き起こったわけです。藤前干潟だってそうですね。

 だから、大臣が二十一世紀型と言うなら、今までの、もちろんそこにいる地権者の意見が一番大事です、しかし、その森を守ってもらいたい、その自然を守ってもらいたい、空気を守ってもらいたい、こういう声が全国から沸き起こるというのは、それだけの必然性がある大事な場所だからなんですね。そういうように理解しないと、相変わらず、わずかな地域にこれだけしか地元の人がいないのにという発想は、大臣、もう二十世紀型なんですね。二十一世紀型というのは違うのです。やはりもっと全体で地域を守っていく、地域の自然を守っていく、そういう視点にぜひ立ってもらいたい。

 それと、大臣はいろいろな説明会をやられたと言うのだけれども、その説明会だって一方的で、いろいろな意見を出しても全然返事が来ないとか、それを説明会と言うのか何かというのは、地元の人たちと大臣が言われているのと、またカウントの仕方が全然違うと思うのです。

 そこで、私は、考えてみるに、なぜそこですれ違いが起こるのかというのは、これから一生懸命説明いたしましょう、いろいろやりましょうと言うけれども、やはりそこに合意というものを一つ一つ積み重ねていないというのが最大の問題だと思うのですよ。何百回やっても、一方的にやるだけではここには合意は生まれない。

 それを先ほど大臣が、では一人でも反対したらいつまでも続けるのかと。そんなことは言っていないのです。全体の合意というのは、住民の自治や住民自身の民主主義、そういうものがありますから、それを話し合う中で、住民がこういうふうにまとめていこうというふうになってくるわけです。あるときは妥協しなきゃいかぬという面があります。そういうものを抜きにして、ともかく説明しましたよと言って、あとはもう聞きおくだけで、公聴会や事前説明会をやって、意見が圧倒的に反対と出ているのに、それが全く通じていかない。こういうものはもう二十世紀型の古い手法なんですね。

 さっき大臣はグランドデザインと。これも私も何度も言われたことがあるのですけれども、グランドデザインの描き方だって、国土交通省が、よし、全国これでやるぞ、まだ道路が足りないんだとかいろいろ言われていましたけれども、しかし、そのグランドデザインの描き方も、やはり住民がきちんと入って、本当にうちの地域で何が必要なのか、そういう描き方にしないと、これでどうだ、これでどうだというやり方は、二十世紀型でもう古いと思うのですね。

 いろいろな話し合いをやったけれども、そこは住民とのすれ違いがある。それは、やはり合意形成というものがきちっとされていないからなんですね。だから、幾らいろいろな手続を踏んだり制度をつくっても、説明会だとか公聴会だけをやっても、形の上だけになってしまうというのがこの問題点だと思うのですけれども、どうでしょうか。

扇国務大臣 基本的に違う点があるのかもしれませんけれども、瀬古先生のお話を聞いておりますと、万博誘致は、私たちが誘致しろと言ったんじゃないのです。名古屋の、愛知の皆さん方が愛知に万博を誘致したいと言って、地元の声が起こったのです。政府を挙げて応援してくれという地元の要請なんです。ところが、万博を誘致したらこの場所はさわってはだめといったら、では最初から誘致しなきゃよかった、どこへ持っていけばいいんだろうと。誘致した原点も瀬古先生は反対なんでしょうか。

 私は、誘致した以上は、やはり国を挙げて、世界じゅうからお客様を迎え入れるために、そのために環境にも配慮しながら面積も小さくしました。それも、海上の森を大事にしようというこの成果によって縮小したわけですね。ですから、あれもいけない、これもいけないと言われていると、国を挙げて万博を誘致して、地元の声で、それを賛成なさってしたにもかかわらず、これもいけないと言われると、ではどこへ持っていけばよかったのか、海上の森をやめればよかったのか、海に建てるべきだったのか、そういう原点になるわけでございます。

 やはりその基本を、万博も地元の声で誘致したのですから、そういう意味では、国が協力できるところはしてくださいと。中部国際空港も、国際空港から道路もつくってくださいと私は陳情を受けているのです。けれども、先生の話を聞いていると、海上の森にすることは許せない、これだけ日本じゅうが反対しているのだと言われたら、今度どこへ持っていったらいいのかなと。何で誘致したのかなというその原点がちょっとわからないものですから、教えていただければありがたい。

瀬古委員 私は海上の森のある瀬戸市に住んでおりましたからその事情はよくわかっておりますし、実際には、この話は通産省や財界から持ち出されたという事実経過もつかんでおります。

 そして、海上の森は、本当に豊かな森で、世界からも残してほしいという、そういう貴重な絶滅危惧種の動植物がたくさんあるところで、そういう点では、ある意味では、住民の皆さんがあれだけ運動しなければ縮小にもならなかったかもしれません。

 万博問題はここでは議論するあれはありませんが、私が今言っているのは、個別の問題を言っているわけじゃなくて、そういう考え方ですね。住民のきちっとした合意の上にやらないものだから、万博一つとったって、上からの、知事さんや財界や、ある意味では、当時の通産省からの意向、そういうものがあって打ち上げられて、最後は事実上、海上の森でやれないような混乱状態に今陥っているわけでしょう。このままやったらそれこそ採算も合うかどうかわからないという事態になっている。そういうのをもっと早くから住民合意でやられていればこんなことにならないのですよ。

 だから、私は個別の問題を言っているのじゃなくて、一つ一つの開発、道路をつくる、いろいろな施設をつくる場合でも、基本的には一つ一つ住民との合意を積み重ねていく、こういうものが必要じゃないか。それをさっきから何遍も言っているのだけれども、どうもそれについてちょっと待てという意見を言われると、いや、本当に住民合意でやるつもりなのかなというふうに、今の大臣の御発言を聞いてみても、若干不安を覚えるわけですね。

 いろいろ話し合うと言うけれども、そういう説明はされるかもしれないけれども、今後もっと今まで以上にされるかもしれないけれども、合意形成というのは、外国なんかではこういう開発には必ず住民との合意がほとんどです。これは、後に戻れない、そういう合意形成をきちんとやることが大事なんです。

 実は、平成十二年度の建設白書の中にこういうふうに書いているのです。これは東京外郭環状道路についてなんですけれども、「早急な整備の必要性が叫ばれながら、なぜこれほどまでに遅れることになったのだろうか。」と述べて、計画調整に二十四年の期間を要し、都市計画決定をいったん行った後に十七年を費やして都市計画変更を行っていることが大きい、多くの関係者に対して、早期段階からの情報公開や意見聴取等、合意形成を得るための仕組みが必ずしも十分でなかったと建設白書は分析しているのです。

 そして、この住民合意とは一体何か、明確に書いております。明確に拘束性を持つ、原則として覆されることはない合意形成の仕組みが必要なんだ、こういうふうに述べているのですね、建設白書にはっきり書かれている。

 要するに、単に一方的におしゃべりして、一方的に説明するだけではだめですよ、住民と一つ一つ確認して、これでいいですね、これでやりましょうねという確認をして、明確に拘束性を持つ、原則として覆されることはない、こういう合意形成の仕組みがないから十七年も二十四年もおくれてきたんだとはっきりと建設白書は述べているわけです。この認識はお持ちなんでしょうか。

扇国務大臣 それは、さっき瀬古先生に私申し上げたとおりでございます。今までも、公的な手続、あるいは国、地方自治体等々でその手続が、まだ情報が開示されないで合意形成に至れない時代があったことは事実だと申し上げたじゃありませんか。そのとおりだと思います。

瀬古委員 そういう点では、単なる説明責任だけじゃなくて、合意形成をきちっと踏まえてやる、こういう建設省の建設白書に書かれた立場は、明確に、これからきちんと踏襲していくというふうに確認させていただいてよろしいですか。

風岡政府参考人 十二年度の建設白書につきましては、先生今御指摘いただきましたような、計画段階の住民の参加とか情報開示の必要性というものをうたったということで、記載をされているのは事実でございます。

 ただ、先生御指摘のように、住民の合意を取りつけるという方式、これは基本的には、例えばドイツにありますような計画確定手続とか、そういうような形で法制上整備するということをもって初めてできる話でありまして、その点につきましては、行政手続法の制定時もいろいろな議論がありました。それについては、内容としては、いろいろ今後検討すべき課題が多いということになっているわけでございますので、今の時点でそういう合意形成という形ですべて進めるのかといえば、それは法律上、法制もできていませんから、それは不可能であります。

 ただ、私どもの気持ちとしましては、PIの実施というようなことも言いました。いろいろな個別法制の中で、計画段階からできるだけ幅広く意見を聞いていくような姿勢というのは示しているわけでございまして、そういう意味では、現行制度、これをできるだけ活用して、少しでもそういった形に近づけたい、こういうことが今のところは限界であるし、またそういうふうになろうかというふうに思います。

 それからもう一点、済みませんけれども、収用法の段階で、事前説明会とか、それから公聴会というのもありますけれども、これも、本来の目的というのは、やはり事業者が住民に対して事業の内容を説明する、あるいは事業認定庁が住民から広く公益についての意見をお聞きするということでありますので、そのレベルで住民合意とかそういったものは、本来、制度の中からもちょっと出てこないのかなというふうに思っております。

 ただ、新しい制度として、できるだけ生きたものにしていかなければならないというのは、当然そういう努力はしていきたいと思いますけれども、住民合意という意味では、ちょっとそこのところは違うのかなということを申し上げさせていただきたいと思います。

瀬古委員 そこが大事なところなのよね。いろいろ説明します、これからも一生懸命やりますといっても、住民合意の形成という点では否定されるでしょう。これをやるなら、さっき言われたように、法制度の改正だって必要になってくるわけです。そこは無理だという御意見でしょう。いろいろやりました、何回もこうやって説明しています、しかし住民は納得しない、それでもやりますというのと余り変わらないんです。確かに説明回数は多くなるかもしれない、大臣の熱意で、何回も現場へ行ってお話しされるのは多くなるかもしれないけれども、今のように、最終的には住民合意の形成がないということなんです。

 余りこれでやりたくありませんから、住民合意の形成の法制度を改正するというのなら私はそれはそれでお伺いしたいと思うんですが、そうでなければ、それは今までのとどこが違うのか、やや熱心に少し御説明なさるだけだということになるんです。

 私、まだ収用法の中身の方まで行っていないので、まだ事前の段階でのやりとりをしていて、時間がだんだん迫ってまいりましたので、引き続きやらせていただきます。

 法案では、第三者機関からの意見聴取としていますけれども、そして国の場合は、それは社会資本整備審議会だということなんです。この審議会は、国土交通省の諮問機関として設けられている。三十人以内とする委員はもちろんですけれども、臨時委員、専門委員を含めて学識経験のある者の中から国土交通省が任命することになっている。

 さらに、審議会の庶務は、総合政策局総務課が総括、処理する。これは、昨日、大臣もお話ししていましたけれども、やる課が違うんでこれが第三者的だと言われたんですが、同じ国土交通省の中で、単に担当するところが違うからといってどうして第三者的になるのか。ある意味では、いわば国土交通省の施策の是非を判断する社会資本整備審議会がどういう公共事業をやるのかということを認定しちゃっているわけです。その審議会が、自分の認定したものを、いろいろ住民から御意見が出たからといって、それを否定するなんということは考えられないわけです。自分のやったことが間違っていましたなんて言うはずがないんです。

 そもそも、この土地収用法自体、国でいえば国土交通大臣が事業者の顔と事業認定者の顔を持っていた。その上、私から言わせれば、第三者機関と称する顔まで持つのかというぐらいの内容になる。今までの、そういう独立した機関を持ってもらいたい、こういう思いとは全く別に、こんなやり方で中立性の担保というのはどこで出てくるのかということを言わざるを得ないと思うんですが、その点、いかがでしょうか。

扇国務大臣 さっき瀬古先生、最後の一言で、住民の合意形成を図るということをおっしゃいました。私も大事だと思います。

 一点だけ申し上げておきたいのは、住民の合意形成というものを、住民を代表してだれが責任を持ってそれをしてくださるのか。こっちから意見を百人に聞いて、それをこっちがまとめるのではなくて、百人いらっしゃれば百人の意見の中の合意というものを、地元の皆さんから代表を出して集約していただくということを、地元の皆さんに任すことというのが一番住民の合意形成のまとまりというものができると思いますので、地元の皆さん方にも、そういうきちんとした、お互いにとことん話し合って、ここの住民の合意形成はこういうものだというものを、ぜひ私は協力していただきたいことを一つつけ加えさせていただきたいと思います。

 それから、今の、認定する者と受ける者と同じ人間でどうするのかというお話でございましたけれども、今回は、私は、この第三者機関の公平性、透明性、先ほどもお答えしておりますけれども、少なくとも特定の分野に偏っちゃいけませんよということで、バランスよく選ぶというのはこれは当たり前のことですけれども、あえてこのことももう一度言わなきゃいけないと思いますし、またバランスよく選んだ人たちの氏名も公表することになりました。ですから、これも、バランスよくあの人を選んでいるなと、きちんと皆さん方の目に見えるような氏名公表もさせていただきます。また、少なくとも、先ほども申しましたように、その中には、かつての中央省庁のOBも入れない、一切関知するなということで、OBを入れないことも今回はきちんと私は明示してあります。

 また、そういう意味で、国土交通大臣が社会資本整備審議会の委員を任命するだけであって、その審議の内容に対して私は一切指導監督いたしません。ですから、審議会の中で自由な御意見の交換をしていただきたいということで、一切私は関知いたしません。また、第三者機関の意見とか考え方を示す議事を、この要旨を、完全に公表することになっています。公開でございます。

 ですから、そういう意味でも、今までと違って、先生が御懸念いただいたようなことも、今回の改正によって、一つずつ、透明性、公平性、中立性、それが今回は確保されるように前進するというふうに御理解賜りたいと存じます。

瀬古委員 このメンバーは、バランスよく選べばいいという問題じゃないんです。この収用法を申請する事態はどういう事態かというと、もう社会的には紛争状態なんです。ある意味では、意見が対立して、そしてお互いに話し合えないところにまで来ているという状態なんです。

 そういう場合は、当然、第三者機関というのが、例えば公害なんかの場合は公害審査会というのがあって、きちんと第三者的な機関として設けられているわけです。だから、調停とか仲裁とか裁定の機能を持つ、こういう点では、幾らバランスよく、OBを入れないといっても、紛争状態の中で調停する機能というのがやはりもっと独立したものでなければ、それはいろいろあっても、国土交通省の何らかの影響を受けるというのは、もうはっきりしているわけです。

 ほかの、公害だとか、例えば公正取引委員会なんかもそうですけれども、そういうところは独立した機関をちゃんと持ってやっているわけです。何で、今全国で一番話題になっているというか、あちこちで火が噴いて何とかしなきゃならないようなところをどうして、またこのまま十年も二十年もやるなんということはできないわけです。

 そういう点では、調停機関としての役割、第三者機関の役割というのが当然考えられるべきだと思うのですが、今までそういうことは一切考えたこともないんですか。いかがですか。

風岡政府参考人 現行の法制につきましては、事業認定については、国土交通大臣または都道府県知事が行政として判断をするという仕組みになっているのは御案内かと思います。

 今回は、改正案の内容といたしましては、行政だけで判断するんではなくて、公益性についての見方というのはいろいろな見方があるわけでございますので、それを幅広く、中立的、公正なメンバーの意見をお聞きしたいということで、国の場合には社会資本整備審議会の意見をお聞きする、こういうふうにしたわけです。

 本来の目的が、あくまでも公益性についての意見をいただくということでありますので、私どもが第三者機関に求めているのは、仲裁だとか調停とか、そういうものではないということは御理解いただきたいと思います。

 なお、その結果について、事業認定について、住民の方々がいろいろな形でそれはもちろん訴えることはできるわけですけれども、それは行政不服審査とかあるいは行政事件訴訟ということで抗告訴訟するとか、そういうことだというふうに思いますので、今回の第三者機関の意味合いというのは、私どもはそういう意味で御提案をしているわけでございます。

瀬古委員 こういう公共事業のあり方で、先ほど言っていますように、やはり住民と話し合いながら進めるという中で、文句があれば訴訟で訴えればいいじゃないかという姿勢は、私は問題だと思うんです。「第三者機関については、国の事業の場合、国土交通相の諮問機関の社会資本整備審議会を当てる、としている。お手盛り認定がまかり通る懸念は強い。」と、ちゃんときょうの朝日新聞の中にも書かれていますように、厳しい批判があるわけです。

 さっき言われたように、確かに、いろいろな顔があっても、申請する人と認定する人が、どう見たって国民から見れば同じなんですよね。国の場合でいえばそうです、県の場合でいえばそうですけれども、そういうときに、最後に頼るべきというか、第三者機関まで事実上国土交通相の、大臣はタッチしないといったって、監督権は当然大臣になってくるわけで、そういう点では、もう本当にお手盛りの疑念ということが強いというのは、これは私は国民の感情としてあると思うんです。

 具体的に、どんなにひどい内容になっているかということをまたお話ししたいと思うんです。

 五月に徳山ダム共有地の収用裁決が行われたんですけれども、このときの委員会の会長は、岐阜県の徳山ダムの公金支出差しとめ住民訴訟の際の被告代理人、つまり知事の代理人になっているわけですね。いわば起業者側に立った人物を収用委員会の会長にしている。きのう日森議員が、この徳山ダムの事業を担当した人の問題についても疑念を言いましたけれども、ここでも収用委員会の委員長が、住民が裁判をやったら、そのときの県の代理人になってくる。

 こんなことがあちこちであったらたまらないですよね。そして、こういう起業者側に立った人物を収用委員会の会長にする。これで本当に公正な判断ができるんだろうか。今一番火が噴いている私の地域でいうと、そこで大問題になっているわけですよね。公正にやりますよというけれども、事実上、それぞれの県レベルにおりていきますと、こんな事態が起きている。

 こういう収用委員会の人事のあり方についても、本当にこれは正しいかどうか。徳山ダムは国の事業ですから、こういうことについてもはっきり物が言えるのかどうか。その点、いかがでしょう。

扇国務大臣 徳山ダムの細かいことは局長から答えさせますけれども、収用委員会のメンバーが不公正であるというよりも、私は、一つの例を挙げさせていただきたいと思います。

 千葉県の収用委員会は一人もいません。委員長が辞任されて、千葉県の収用委員会の委員は全員がお断りでございます。収用委員会の皆さん方は命をかけて、あるいは家庭を犠牲にしても収用委員会においでいただき、また、収用委員会の皆さん方は、何の意味かわかりませんけれども、自家用車に火をつけられる、あるいは危ない郵便物を送られる。そういうことで、今、千葉県は、収用委員会の委員、ゼロでございます。委員長もいらっしゃいません。これも、設置することと、知事さんに権限があるんですけれども、なり手がないんですね。

 そのように、収用委員の皆さん方は自分が収用委員であるということの重みを本当に感じて委員になってくださっていると、私は心から尊敬申し上げているんです。

 また、今瀬古先生、第三者機関といったって私は信用できないわよ、こうおっしゃいますけれども、私は、これは時間をとりたくないんで言いたくないんですけれども、少なくとも、現在の第三者機関にだれが選ばれているかということを考えますと……(瀬古委員「もう時間がないので」と呼ぶ)だから、その三十名の中には学者もいれば民間人もいれば起業者もいれば、女性も、残間さんも入ってくだすっているし、みんな、とにかくすばらしい三十名の人がバランスよくお入りになっています。それと同じ意味で、収用委員会のメンバーがいいかげんなメンバーでないということだけは、私は皆さん方に、命をかけて入ってくださる人たちの名誉にかけても言っておきたいと思います。

 徳山ダムは、局長から答弁します。(瀬古委員「いいです」と呼ぶ)

瀬古委員 それぞれ、まじめに仕事はなさっているでしょう。しかし、こういう徳山ダムみたいな任用の仕方も、これは一生懸命やっているからいいのだというふうに、こんな居直りされたら、これから、一生懸命やっている人はどんなにつながりがある人だっていいということになっちゃうので、こういう点ではやはり問題だというふうに思うんです。

 それから、千葉の問題なども取り上げられたんだけれども、もともとといえば国が強引な事業を進めたから、ある意味ではトラブルが起きているんですよ。それなのに、何か人ごとみたいに言われたんでは、それは千葉の皆さんもたまったもんじゃないと思うんだけれども、実際にこういうところまでいったのはなぜかという点、国はやはり反省しなきゃいかぬと思うんです。

 もう時間もございませんので、次に行きます。

 それで、徳山ダムの――言われますか。では、これでいいかどうか。どうぞ。

風岡政府参考人 具体的な事案についての御指摘でありましたので、お答えさせていただきたいと思います。

 もう先生御案内のとおり、収用の体系というのは、事業認定というのは、徳山ダムの場合には大臣がやりました。当時の建設大臣ということです。それから、収用委員会の方は、県に置かれていますけれども、これは補償金の確定手続をやる、こういうことでございます。

 今回、収用委員会の御指摘の委員が公金支出の返還訴訟の代理人という立場についている、これは私も知りましたけれども、この活動は訴訟における活動行為でありまして、その行為と収用委員会が補償金を確定する手続の話とは全く別の話ですので、そこのところは私どもは全く問題ないというふうに考えておりますので、そこは御理解をいただく必要があるんじゃないかと思います。

瀬古委員 しかし、実際に、収用委員会をちゃんとした、正確な判断をしようと思えば、少なくとも関係者が訴訟の知事の代理人になるなんということは私は非常識きわまりないと思うので、これは意見の違いですけれども、こういうことはもうどんどんやってくださいよみたいなことを国土交通省が言われるようでは本当に恐ろしいなと思うんですが、次に参ります。

 徳山ダムの例を見てみますと、事業認定に不服があっても、司法の場で争っている最中にも事業はもうどんどん進んでいくわけですね。幾ら裁判で公益性に問題があると争っても、結論が出たときには、事業が完成してオオタカもクマタカもイヌワシも居続けられない、こういう環境破壊が今どんどん行われております。

 この点、法務省に伺うんですけれども、現在、公共事業に関する行政の処分に対して取り消し訴訟を起こしても、行政事件の訴訟法では執行不停止の原則がとられている。執行停止を実現する道は極めて険しく、裁判の係属中に事業は取り返しのつかないところまで進行してしまうことが多いわけです。執行停止を申し立てても、裁判所の執行停止判断をすることはほとんど期待できません。また、仮に裁判所が執行停止の判断を下しても、内閣総理大臣の異議によって裁判所の判断が覆ってしまう、こういう仕組みになっている。

 司法制度改革審議会は、昨日、最終意見書を発表しました。執行不停止の原則についても見直しの課題と示されております。執行不停止の原則をどう考えているか、法務省に伺いたいと思います。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 行政事件訴訟法でございますけれども、一つの行政処分が行われますと、それを前提にいたしまして次から次へ行政行為が積み重ねられるという場合が多いわけでございますので、そこで、行政の円滑な運営が阻害されることを防止するという観点から、裁判が提起されましても、いわゆる執行不停止の原則をとっているということでございます。

 ただ、その一方で、回復の困難な損害を避けるため緊急の必要性があるという場合には、裁判所は原告の申し立てによって行政処分の執行等を停止することができるということで、いわゆる住民の方と行政庁の双方のバランスをとっているというのが現在の法制でございます。

 先ほど御指摘のとおり、司法制度改革審議会でもこの問題を一つのテーマとして取り上げられていることは間違いございません。瀬古委員のおっしゃるような考え方、そういう考え方もあるということも私どもは承知はしております。

 この中で一番重要なのは、やはり行政と司法のバランスをどうとるかということでございまして、これは相当な議論を重ねて結論を出すべきものだというふうに理解しておりまして、両方のチェック・アンド・バランスの問題でございます。そう簡単にどちらかにというふうになかなかいかない性質のものでございます。

 ただ、仄聞するところによりますと、三年以内に一応結論を出していくということでございます。その中でいろいろ議論をされていくということで、私どもも政府の一員として必要な検討と協力はしてまいりたいというふうに考えております。

瀬古委員 民事局長はこれで結構ですので、御退席くださって結構でございます。

 次に参ります。

 本法案では、第三セクターが設置しようとする廃棄物処理施設についても、新たに収用適格事業に追加しようとしております。第三セクターについて、情報公開法または関係条例の規定において、国または地方公共団体の場合と同一の取り扱いで情報が公開されていくんでしょうか。

 国民にとっては、情報公開の度合いは、第三セクターの場合は極めて劣るんじゃないかという不安がございます。事業主体が第三セクターの場合、情報公開のあり方にも何らかの配慮する規定が必要だと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。

佐藤副大臣 収用適格事業は、その対象とすべき事業の有する客観的な公益性に着目して限定列挙しているものでありまして、情報公開の点が、その客観的な公益性に直ちに影響を与えるものではないと考えております。

 例えば、情報公開法や情報公開条例の対象とならない私鉄ですとか電力会社が送電線を整備する場合に、その施設の公共性が高いことから収用適格を認めてきたところであります。情報公開法の適用のない事業主体であることを理由に収用適格を認めないことは、適当ではないと考えております。

瀬古委員 今回の改正法案は、収用裁決の手続においては、重要な局面で手続を簡略化、合理化することが盛り込まれております。相当期間内に署名押印をしない所有者等について首長の代行署名を可能にするとか、権利者が多数の場合は土地・物件調書作成を公告縦覧方式でできるようにする、また審理手続において補償額の是非と無関係な事項の主張を制限するなど、これらは公正性とか住民の意思の反映という点では、こういう規定のやり方、盛り込まれ方というのはいかがなものかと思うんですけれども、どうでしょうか。

風岡政府参考人 収用手続の改善ということで、御指摘のような項目を盛り込ませていただいております。個々に御説明すると非常に長くなりますので、全体的な考え方ということで申し上げたいと思います。

 今回のそういった手続の改善でございますけれども、私どもは、やはり権利者の権利に対する配慮ということは十分心がけているつもりです。例えば、手続の中には、相手方の意思が十分反映できるように配慮をしているとか、あるいは既に判例とか学説等で認められたものを確認的に書くんだとか、あるいは土地所有者の権利の保全ということにも配慮する、そういうことで、土地調書、物件調書の作成だとか、あるいは収用委員会における主張内容の整理とか、あるいは代表当事者制度の導入とか、こういったことをやっているわけでございまして、私どもの収用手続の段階の取り組みというのは、権利者の権利を阻害しない範囲内で合理化をした、こういう意味だということで御理解をいただきたいと思います。

 また、その前の段階の事業認定の手続につきましては、先ほど申し上げましたように、できるだけ住民の意見をお聞きするような新しい仕組みというのを入れたというのも、あわせて申し上げたいと思います。

瀬古委員 権利者の権利を阻害しない範囲でということなんですけれども、実際には、権利者がいろいろ迷ってまだ考えている最中だ、そういう場合でも問答無用ということでさっさと代行署名に切りかえてしまう、こういうことはありませんか。

風岡政府参考人 改正法の三十六条の四項で、代行署名の要件として新たなものを加えているわけでございますが、これも、相手方の責めに帰すべき事由によらないで署名、そういった事例につきましては、当然、一定の期間待つとか、本当に拒否をするかどうかというのを確認するとかというようなことを含めてやるということにしておりますので、その点につきましては合理的な適用ということを当然行っていかなければならない、このように考えております。

瀬古委員 現行法では代行署名に切りかえることができるのは、署名押印を拒んだとき、または、することができないときとしております。拒んでもいない、客観的にすることができないわけでもない、今まだ考えているんだ、こういう場合には、署名をしないというだけで代行署名に切りかえることになるんじゃないかというふうに思うんですね。

 これは、憲法で規定して土地収用法に求められている公益性の認定という問題なんですけれども、主権者である国民が本来なら認定しなきゃならない、ところが、地権者の意思がないまま勝手にこういう形で、合理的だという理由で進められるということはありませんか。

風岡政府参考人 先ほどちょっと不正確に申し上げましたので、三十六条の四項の趣旨を申し上げますけれども、今回改正をさせていただきたいのは、署名押印を求められたにもかかわらず相当の期間内にその責めに帰すべき事由によってこれをしない方、こういった方々については市町村長による署名代行ということをやらせていただきたい。ここに今申し上げましたように、相当の期間内に署名しないということでありますから、もちろんそういった期間を置いてということになるわけでございます。

 また、こういう改正をさせていただきたいというのは、実際の問題としまして、署名押印の際に、ちょっと言葉は悪いんですけれども、例えば居留守を使ったり、あるいは署名に応ずるのか応じないのか何かはっきりしないという状態が極めて長く続く、こういうようなケースが現実にあるものですから、そういったものについての取り扱いの明確化ということで、私どもとしては、署名押印を求められたにもかかわらず相当の期間内にその責めに帰すべき事由によりしないという者については、これを代行署名するということは合理的な理由があるというふうに考えております。

瀬古委員 考えても考えても、強引なやり方がとられた場合は、相当の期間内、考えざるを得ないという場合だってあるわけですね。それを、ある意味では、文字どおり憲法に規定されている財産権の問題も含めて、それを否定してしまうようなやり方というのは本当に合理性があるのかどうか、この点は慎重にも慎重にやらなきゃならないということを私は思うわけで、こういう規定を設けるというのは大変問題だ、これは指摘をしておくだけにします。

 時間が迫ってまいりまして、まだたくさん質問があるんですが、言います。

 今回の改正法案では、収用委員会の審理とは関係ないものを意見書に記載したり意見を述べたりすることができないとしております。法案説明の資料では、主張内容の整理と言っているわけですけれども、法案化の以前に土地収用制度調査研究会報告というのがありますが、これはもっとはっきり率直に言っております。主張の制限ということまで書いているんですね。

 これでは、入り口も物は言えない、出口も物は言わさない、民主主義とはほど遠い規定ではないかと思うんですが、その点、いかがでしょうか。

扇国務大臣 今、収用委員会の主張の制限、整理ということについてのお話がございました。口を封じる、先にも後にも言えないじゃないかと今瀬古先生はおっしゃいましたけれども、私たちは決してそういうことで今回整理したわけでもございません。

 少なくとも、公益性というものあるいは公共性というものを判断します事業認定に関しましては、事業認定庁がこれを行う。けれども、一方では、補償金等の額の確定に関することは収用委員会が行う。きちんとこれは両方で基本的に分けているわけでございます。私は、その基本的な役割の分担が、きちんと土地収用法における今回の分担になっていると思いますし、また、このことは、裁判例上におきましても、昭和六十三年の千葉地方裁判所の判決などにおきまして明快に認められているところでございます。

 そういう意味では、私どもは、今回の改正に先立ちまして、専門学識経験者等で構成されました土地収用制度調査研究会から昨年十二月に報告を受けたのは先生も御存じのとおりでございます。その報告において、「収用委員会の審理において、事業認定が違法である等の主張を制限し得ることを条文上明確化すること。」とちゃんと御報告をいただいております。

 私どもは、昨年十二月にその報告をいただいて、先生も御認識賜っていると思いますけれども、今回の法案では、それに従って、収用委員会の審理においては、事実の認定に対する不服に関する事項その他の事項であっても、収用委員会の審理とは関係がないことを主張できない旨を規定することで収用委員会の役割を明確化することを図っているものでございますので、研究会からの御指摘に沿った内容である、これは内容も先生御承知のとおりですので、私は、今回はその内容に沿ったものであるというふうに認識しております。

瀬古委員 もう時間がございません。たくさんまだ質問を残したままなんですが、また引き続き委員会で審議をさせていただきたいと思います。

 今言われた研究会の報告そのものが私は問題があるというふうに思うんです。最初に大臣が認められたように、事業計画の段階で、なかなか住民が物を言えない、こういう仕組みになっているにもかかわらず、ある意味では収用委員会に言わざるを得ない、どこにも言うところがないですから。それで、事業法そのものもまだ変えるような状況ではない。そういう場合には、それはどこで言うんだといったら、ここで言わざるを得ないわけです。そういう点では、一定の主張を言わざるを得ないというところまできちんとやらなければ、物を言うところはどこもつくらせないということになってしまうわけです。

 今回の法改正は、収用手続の簡略化、迅速化という場合には、やはり計画段階の住民の合意をよほど慎重に、きちっと民主的な手続にのっとらなきゃならないと思います。計画段階の民主的な手続は改善されない、出口の問題には口を封じる、本当にこれは問題だというふうに思います。

 冒頭で触れましたけれども、トラスト運動など、住民、市民運動がうんと広がっているのは、結局、計画段階での住民の意思が反映されていない、このことを深く反省して、やはりこういう強引な問答無用というやり方は改善すべきだと思います。

 以上で終わります。

赤松委員長 午後四時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後二時四十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後四時一分開議

赤松委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。山田正彦君。

山田(正)委員 自由党の山田正彦です。

 土地収用法の改正についての質問をさせていただきます。

 実は、この土地収用法の二十条によれば、国土交通大臣または都道府県知事は、土地を収用し、または使用する公益上の必要があるときに、いわゆる土地収用に関する事業だと認定できるということになっていますが、この国土交通大臣と都道府県知事というのはそれぞれ、事業において、どっちが国土交通大臣がやる、これは都道府県知事がやるというふうに分けられているのでしょうか。

 副大臣、通告しておったはずなんですが。では、風岡さん。

風岡政府参考人 事業認定につきましては、先生御指摘のように、国土交通大臣と都道府県知事というふうに記載されておりまして、事業の内容によりまして両者に振り分けられております。

 非常に大ざっぱに申し上げますと、国とか公団等の事業あるいは県の事業につきましては大臣の方で、主として市町村の事業につきましては都道府県知事と、そういうように分かれているところであります。

山田(正)委員 それでは、公団等というと、例えば空港公団とかそういったものは大臣の所管になるわけですか。

風岡政府参考人 御指摘のとおりでございます。

山田(正)委員 後で関連してお聞きしますけれども。

 第十五条の十四に、新しく説明義務、いわゆる関係住民に対して説明しなければいけないと法律ではっきり決められていますが、この説明義務も、どういう範囲の人たちに対して具体的にどうやって通知をし、どうやって行うかということを、副大臣。

佐藤副大臣 事前説明会の開催につきましては、関係する地域の方々に通知をする、そのほか地元の新聞に公告をする。できるだけ多くの方々に説明をするということが必要でありますから、そういうことをしたいと考えております。

山田(正)委員 関係する人にというところの範囲なんですが、土地のいわゆる権利者もある、あるいは、例えば地元住民といっても、各部落があるわけですが、その利害関係者があるし、その辺、どういうところまで通知するのか。たしか土地の地権者には通知はしないというふうにも聞いたのですが、その辺はどうなんですか。

佐藤副大臣 起業者が実施をするわけですけれども、広く利害関係を有する者と一応規定しております。ですから、いろいろな騒音ですとか環境ですとか、そんなことに関係ある方々もみんな寄っていただく。通知をするのは、できる限り、その地域の町内会長ですとか、そういうのも含めまして通知をするということであります。

山田(正)委員 具体的に要綱か省令等々で決まっているのでしょうが、私がいろいろお聞きしたときに、第十五条の十四では土地の地権者に対してはまだ通知はいたしませんとお聞きしておりますが、そのことについて、局長。

風岡政府参考人 方法としましては、個別に通知する方法、それから地元の地方紙に載せる方法というのがあります。

 確かに、できるだけ幅広くということで、個別通知といってもどこまで通知をすればいいかというそもそもの問題がありますので、基本的には地方紙に掲載をするということがいいのかなというふうに現時点では考えております。

山田(正)委員 ただ、地方紙に掲載して、それでこういう説明会をやりますといって、それを見て来る人はほとんどいないと思うので、少なくともその範囲内の土地、例えば収用の対象になる土地の地権者、権利者には、どんなことがあってもそこは調べて説明会の通知をすべきだと思いますが、大臣のお考えはいかがでしょうか。

扇国務大臣 私は、今山田先生のおっしゃったことは大変大事なことだと思います。一番最初に手をつけることのイロハのイだと思っておりますので、そのことはぜひ実行してまいりたいと思っておりますし、またそうするつもりでございます。

山田(正)委員 次に、公聴会のことですが、公聴会をどういう形でやるのか。例えば一方的に説明するだけではどうしようもないわけですが、副大臣、公聴会はどういうふうに考えておられますか。

佐藤副大臣 公聴会は幅広い意見の聴取が必要でありますから、公聴会の開催の要求があった場合には、できるだけ多くの方々の意見を参考にする必要があります。ですから、公述人相互で、賛成者と反対者がお互いに意見を言い合ってもらったりすることも必要だろうと思っています。お互いに質疑する、そういうことも必要だろうと思っています。

 できるだけ第三者の機関の審議に提供されるように運用していきたいと考えております。

山田(正)委員 ヨーロッパにおいて、例えばフランスの場合ですと、市民が参加する委員会をつくって、そこでいろいろな公聴会の話を聞く、またイギリスでは、インスペクターというのですか、審問官が公聴会を主宰する。イギリスもフランスも第三者機関でもって事実上審問、公聴会を開いていますが、この公聴会を開く主体は、日本の場合にはどうなるのでしょうか。

風岡政府参考人 公聴会の主体につきましては、事業認定の部局において公聴会を主宰する、こういうように考えております。

山田(正)委員 事業認定をする機関というと、各都道府県か国かということですかね。そうすると、認定する側が公聴会を開いて、ただ話を聞くというと、これは一方的になって、フランスやイギリスがやっているような、委員会がやるとか第三者的な審問官が主宰してやるとか、そういうのとは違って、これは単なる説明会に終わってしまうのではないでしょうか。局長はいいです。そこは大臣にお答え願いたいと思うのです。

扇国務大臣 公聴会の基本的なありようというのは、先生、参議院でも衆議院でも公聴会というのがありますからよくおわかりだと思いますけれども、それぞれの人たちが、こういうすばらしい人の御意見を聞こうといって、一方的な、反対なら反対の人ばかり、賛成なら賛成の人ばかりということではなくて、広く透明性を持って、その名簿をも公開いたしますし、どういう人にどういうお集まりをいただいたということも全部公表するわけでございます。

 そういう意味では、あらゆる層の皆さん方、専門知識を持っている人も必要ですし、また冷静な、中立性を持った人も、とにかく公平、中立、公正、この三原則によって人を選び、そしてその内容も、例えば公聴会というものをしましても、一切私が監督とか口出しをするというのではございませんので、私はその中で、皆さん方できちんと公聴会の委員長をお決めいただいて、それぞれの論議をして、そして報告書を出していただいて、それも公表する。そして、それを第三者機関にということもあるわけでございますので、私は、公聴会というものは、どなたがごらんになっても、中身を見たいと言っても、公平性と中立性と公正性を保つ、それが公聴会の持つ意義であるというふうに考えております。

山田(正)委員 公聴会の意味はよく私どもわかっているのですが、私が言っているのは、主宰しているのが公聴会の第三者であるか、起業者か、あるいは事業認定する側か。事業認定する側が主宰して公聴会を開くのと、第三者、例えばフランスやイギリスのように審問官とか市民の委員会、住民の委員会が開くのでは随分違うと思うのですね。だから、そういう意味では、今回の聴聞会というのは、ちょっと一方的になり過ぎはしないか、そういうおそれがないか、不十分ではないか、そういうことの趣旨で質問したのです。

扇国務大臣 それは山田先生に御指摘いただくまでもなく、きょうも朝からいろいろと言われておりますので、この委員会でいろいろな御論議があったことを私ども深く受けとめながら、しかも三十年ぶりに改正していただくのですから、今後、そういう意味で、ああ、公聴会がこんなに公平に行われたなと多くの皆さんに納得していただけるような方法でしていきたいと思いますし、また今申しましたような公聴会のあり方、そして持っていき方、どういうふうに開催するかということも、今後ぜひ御指導もいただきながら、私たちはそれに沿った開会をしていきたいと思っております。

山田(正)委員 今大臣もお答えでしたが、まさしく公聴会を公平に公正にするかどうかという問題と、公聴会をだれが開くか、事業認定側が開くか、第三者が開くか、市民の側か、それは大事なことなのですが、これ以上論議しても仕方がありませんので、いわゆる問題点の指摘にとどめておきたい、そう思います。

 次に、いわゆる公聴会の中、あるいは説明会の中で一番問題になってくるのは、騒音であれ日照権であれ、いろいろあると思うのですが、いわゆる環境アセス、この環境アセスの点でいろいろと具体的には問題になってくるのではないかなと思います。

 そういった中で、この環境アセス法によると、環境アセス調査は一体だれが依頼して、その費用はだれが負担しているのでしょうか。総務省ですかね。環境省か。

風間副大臣 先生今お尋ねの件でありますけれども、一九九六年にアメリカが最初に環境アセス法を実施しまして、世界各国でそれが進展を見て、我が国におきましても平成九年に環境アセス法が公布されまして、二年前のちょうど昨日、六月十二日から完全実施になっているわけであります。

 この環境アセス法は、そもそも事業を行っていくとしている事業者が、みずからのプランをみずから費用を出して立てていくというのが根幹になっておりまして、その際に、当該都道府県あるいは自治体の首長、そして住民の皆様方の意見を聞いて、そしてその事業の規模や方法についての準備書をまずつくらせていただく、住民の方々の意見もその際に聞いていく。そういう形で進めて、そしてこういうことをやるという項目を決めた上で、そこで初めてアセス法に乗っかってやり方を調査していく。そして、実施していくまでに、再度都道府県知事あるいは地域住民の方々のお話を伺っていく。その際に、環境大臣の方が主管大臣の方に御意見を申し上げて、ここの部分についてはこうあるべきではないかということを踏まえて、主管大臣がさらに、そのアセスに乗っかった項目一つ一つについて指示を出していく。そういう仕組みになっております。

 これはアメリカからスタートをしておりますので、アメリカもカナダも、それからオランダを含めたEUも、すべて事業者が主体になってやっていくというふうになっております。

山田(正)委員 確かに、環境アセス法第十四条ですか、これによると、準備書の作成は事業者に課せられているようですが、一体その事業者は、例えば第三者機関、いわゆる大学とか、そういう研究機関がやっているのか、民間のコンサルタント会社に委託しているのか、その辺はいかがでしょうか。

風間副大臣 コンサルト会社を含む民間でございます。

山田(正)委員 これは大臣、お聞き願いたいのですが、大変大事なことで、実は私の知人がコンサルタント会社の研究員をやっております。環境アセスの調査の依頼をよく受けている民間会社なのですが、自分たちの調査した結果が、結局、最後の段階で修正させられてしまっていると。というのは、いわゆる事業主から頼まれているから、事業主に反するような調査結果というものをアセスの環境影響として出すわけにはいかない、大変残念である、そういうお話を現にお聞きいたしました。

 これは大事なことなのですが、その方が言ったのに、例えば私どもが大学の研究室であったら、もし同じ環境影響調査を書いたとしても、これを修正しろと上から言われて修正して大丈夫だということはないのではないかと。例えば諫早の干拓事業でも、佐賀大学の調査と民間のコンサルタントの会社は、諫早干拓でも結果として中身は違っておった。農水省としては、民間のコンサルタント会社のあの環境アセスの調査を活用した。そういういきさつがあるのです。

 いわゆる土地収用の認定に当たっての環境調査、この調査においても、依頼先を、民間のコンサルタント会社は避けて、大学の研究室とか、そういった研究機関でやるべきではないか、大臣、どうお考えでしょうか。

扇国務大臣 これはまさに先生がおっしゃるように、二十一世紀型の、あらゆることは環境を加味しなければならない。そういう意味におきましては、環境アセスの基本的な数値、これは私はあると思いますから、今先生がおっしゃるように、民間のコンサルタントと大学で環境アセスの評価が違って出てくるということ自体が、今の私の素人の頭では、基本的な基準があって、何でそれが両方とも違うのだろうという、今クエスチョンマークが、私の頭では判断できません。

 けれども、少なくとも環境アセスとしてその評価を国民に開示するわけですから、そのときには、だれがどういうことでアセスの評価をしたということを。きちんと評価する方法ということであっては、民間であっても大学であっても、その事業者に頼まれてそこで何か手を加えて加減するというようなことがあってはならない、何のためのアセスかわかりませんから。そういう意味では、私は、そういう不正行為をしたところは今度仕事が行かなくなると思います。

 そういう意味では、日本の決められた環境アセス、これは国際的にも統一しようということですから、そういう基準に基づいて正確な環境アセスというものを図って、そして国民に堂々と公表し、こういう結果が出ましたということが言えるようなアセスメントを依頼することに気をつけて、また出す方も、それに自信を持って出していただきたいと思います。

山田(正)委員 風間副大臣、お聞きになっていたと思いますが、民間のコンサルタント会社は、ビジネスですから、そこで事業を起こしたい起業者は、その事業者の意向に反した環境アセスでは、いや、ここは大変重大な影響が出ます、だめです、そういうものに対してお金を払えるものかと。仮に払ったとして、事業はできなくなるわけですから。そうすれば、当然、その起業者は、いわゆる環境アセスをする事業者にお金を払って環境アセスの調査を準備するとしたら、自分のところに都合のいいものにしか金を出さない、まじめに、正確な、大学と同じような研究結果というか調査結果を出すところには頼まないと。それが現実で、実際にそういう話を民間コンサルタントの研究している担当者から私はつぶさに聞いたことがあるんです。

 そういう意味では、環境アセス評価というもののありよう、そういったものは大変大事だと思うので、風間副大臣、どうお考えでしょうか。

風間副大臣 さきに発言させていただきました、アメリカで制度化されたのは一九六九年、昭和四十四年からでございまして、九六年というふうに僕は言ったかと思いますが、申しわけございません、間違えていました。

 ただいまの先生のあれですが、事業者がみずからの責任において負担をして計画書を準備し、その時点でも地元の皆様方あるいは一般の学識経験者そして自治体の方々からも意見を聞いていく仕組みになっております。そのやり方を決める準備書ができたとしても、さらにその手続においてもまたアセスを取り入れていくという方向になっておりますので、そういう意味では極めて公平な担保がとられる仕組みになっているというふうに私ども思っています。

 そのことによって、今先生からお話のあった、コンサルの方が事業について損得の部分で当然動いていくにしても、途中のアセスがきちっとなされていけば、きちっと私は運用していけるものというふうに思っておるところでございます。

山田(正)委員 諫早干拓の事業で、佐賀大学の評価と農水省が頼んだ民間のコンサルタント会社の評価は実際に大きく違っておった。これは歴然たる明白な事実です。農水省、事業主体がお金を払ったのは、民間のコンサルタント会社である。

 先ほどいろいろな学者云々に聞いてというお話をしましたが、風間副大臣、実際に環境アセス調査を読んだことはございますか。

風間副大臣 アセス評価書の中身でございましょうか、斜め読みでありますけれども読ませていただきました。今先生から御指摘があった個々の例についても、これからきちっと検証させていただきたいというふうに思います。

 いずれにしましても、しっかり仕事をしていただけるコンサルがきちっと社会的に評価していけるような形をとっていくことが環境アセスにおける最大の眼目ではないかというふうに私どもは思っておるところでございます。

山田(正)委員 この問題を聞くのが土地収用法じゃありません。ただ、公聴会においての環境アセスというのは、この前の参考人質疑でも大変重要な問題だと指摘されましたので、環境アセスの問題を取り上げたんです。

 環境省の副大臣、それから国土交通省の大臣もいらっしゃいますが、これからの環境調査というものは必ずや大学の研究機関とか権威あるところにやっていただきたい。これはぜひ考慮いただきたいと思います。

 次に、日本の場合、公聴会が終わって、もう一度いわゆる第三者機関に意向を聞くということになるわけですね。それについて、副大臣、御説明いただけますか。土地収用法において、第三者機関というか、社会資本整備何とかとおっしゃいましたね、等々その仕組みとその内容について。

佐藤副大臣 社会資本整備審議会の意見の取り扱いについてでありますけれども、今回の法案は、事業認定に当たり、事案によって中立的な第三者機関から幅広い意見を聞くことを義務づけておるわけであります。御承知のとおりです。

 このような今回の義務づけの趣旨にかんがみまして、事業認定庁が国土交通大臣である場合には、当然、社会資本整備審議会からの意見聴取を十分に尊重して事業認定の判断をすることになっております。

 したがって、第三者機関の意見が合理的でないことが明らかであるような例外的な場合を除きまして、事業認定庁は第三者機関の意見に従うことになると考えております。

山田(正)委員 風岡局長にお聞きをしたいと思うんですが、その第三者機関の意見は、最終的には多数決で決めるんでしょうか。それとも、意見はそれぞれの委員から聞いて、それをただ参考にするという程度なんでしょうか。お答え願いたいと思います。

風岡政府参考人 事業認定に当たりまして、第三者機関、国の場合には社会資本整備審議会の意見を聞くということでございますので、これは審議会の意見を聴取するということになりますので、合議体としての意見というものを取りまとめをしていただくということが基本かと思います。

山田(正)委員 審議会というのがいっぱいあって、取りまとめ取りまとめということで、事務局が意向を取りまとめて、それで皆さん、場合によっては持ち回りで、はい、これでオーケーですと。これが今までの審議会。

 今度の場合の審議会も、恐らくや、取りまとめという言葉の中に、必ず反対の人も賛成の人もいるはずで、本来、意見を聞くならば、審議会の意見をきちんと出す、出さなきゃいけない、多数決でもいいから。そうしなければ、審議会そのものの意味がない。

 大臣は、どうお考えでしょうか。

扇国務大臣 もともと、これは個人的なことを言っていいかどうかわかりませんけれども、私は絶えず役所の中で言っております。審議会を隠れみのにするな、役人が審議会を隠れみのにして、審議会の答申を、自分たちが作文したものを審議会に認めさせるようなそういう傾向が今まで、全部ではありませんけれども、まま見られなくはない。

 そういう意味では、審議会にかけると法律に書いてあるけれども、これは審議会にかけたということでもう全部手続が済んだと思うことはまかりならぬ、そういうふうに私は言っておりまして、国土交通省はみんな困っております。審議会も、なぜこんなにたくさんあるのだ、国土交通省、四省庁分の審議会があったのでは困る、これを全部小さくしなさいということを言って、今、泉副大臣が担当になって、この審議会を私のところへ持ってきましたら、審議会は三つになって、あとは全部分科会に分かれておりましたので、これも拒絶いたしました。

 今うちの中で、国土交通省の審議会のあり方、そして、法律に審議会にかけると書いてあるから、ただかけたらもうこれでいいのよということではなくて、今先生がおっしゃるように、審議会の中で賛否両論あったということも私は大事なことだと思いますので、そのための審議会のあり方なり、審議会の意見の最後の取りまとめも、一本にしたというのではなくて、反対意見もあったということを公表していきたいと私は思っています。

山田(正)委員 大変な前進だと思うのですが、反対意見もあったということではなく、多数決で、反対が何人、賛成が何人、反対意見はこうであった、賛成意見はこうであったと、大臣、もう大臣が任期中に必ずその審議会をそこまできちんと決めていただきたいと思います。いかがでしょうか。

扇国務大臣 ただ、私は先生に一言申し上げておかなければいけませんのは、あらゆる分野の方がおいでになりますので、だれが何を発言したかという名前だけは削らせていただく、それでなければ本当の意見が出てまいりませんので。

 もしもこれを公表する場合も、だれが何と言ったと、言葉はそのままでも、上の発言者はむしろ伏せていただいた方が、いろいろな御意見が、反対論も堂々と言っていただけるという意味では、あるいは審議会の報告をしますときに、だれが何を言った、だれという名前だけは、例えば山田先生の山田という、審議会の委員の山田というのだけは削らせていただく方が本音が出るのではないかということも私は考えていますので、今回もしもありましたら、その最初の発言者の名前は削らせていただくことがあっても、正直に報告させていただきたいと思っております。

山田(正)委員 大変結構だと思うのですが、確かにその審議の過程の名前は出さなくていいと思うのですが、最後に、どの人が反対、どの人が賛成というのは、審議委員としての責任を明確にする上においてもきちんとしていただきたい。大臣、いかがでしょうか。

扇国務大臣 私、今参考意見としてインプットさせていただいて審議しますけれども、今ここでそこまで確約することは、私自身もまだ自信はございません。審議会をひっくり返すだけでもえらいことでございますので、そういう意味では努力いたしますし、また、そのようにできるかどうか、これは最終決断をもう少し見ていただきたいと思います。

山田(正)委員 では、次に参りたいと思います。

 副大臣にお聞きしたいのですが、事業認定を国、都道府県がやった後、土地収用委員会にかけられるわけですが、これは今、毎年、まず土地収用に関する案件、いわゆる公共事業としての買収案件が年間どれくらいあって、そして、そのうち土地収用委員会に事業認定される案件がどれくらいあるのか、土地収用委員会にかけられる案件がどれくらいなのか、政務官でいいです、いろいろ中身をお願いします。

田中大臣政務官 お答えをいたします。

 今山田委員から、事業認定、裁決及び訴訟の件数等についてのお尋ねでございますけれども、平成十二年度の事業認定件数は、大臣認定が百二十件、都道府県知事の認定は五百六十七件、合計六百八十七件となっております。

 平成十二年度の収用委員会の裁決は、権利取得裁決が百七十四件、明け渡し裁決が百八十一件であります。

 また、平成十二年度に提起された事業認定取り消し訴訟は、大臣認定に対するもの六件、知事認定に対するもの一件、なお、上訴など、控訴、上告及び特別抗告を含むものとなっております。

 平成十二年度に提起された収用委員会裁決についての取り消し訴訟の提起件数は七件、なお、上訴など、控訴、上告及び特別抗告を含んでおります。

 平成十二年度に提起された補償金についての当事者訴訟、起業者及び土地所有者等を当事者とする訴訟の提起件数は十四件、なお、上訴等を含むものとなっております。

 さて、今お話がございましたように、事業認定件数に比べて裁決件数が少ないのは、事業認定を受けた後に、任意の買収交渉が妥結し、裁決申請に至らないことがその主たる原因と思われるわけでございまして、一応御報告とあわせて答弁とさせていただきます。

山田(正)委員 今お話を聞いていまして、土地収用委員会にかけられている案件は我々の想像以上にあるのじゃないか。その中で、最後の裁決まで行くのは数少ないにしても、話し合いでもって、仲裁とかいろいろな形でかなり解決してきている。ということは、土地収用委員会は各県それぞれかなり機能してきておった、そう考えるのですが。

 大臣、先ほど、千葉県において、土地収用委員のなり手がなくて収用委員会がないということでしたが、これはいつごろから、なぜそうなっているのでしょうか。

扇国務大臣 今山田先生から御指摘のありました千葉に対しては、私もいろいろな思いがございます。

 と申しますのは、私、一九七七年当選組でございます。成田は一九七八年に、でき上がって十年目に開港いたしました。そのときは福田内閣でございました。今は亡き安倍晋太郎先生が官房長官でございました。私は一年生で、この成田の開港のときに、大変印象的な事件といいますか、せっかくつくったものを開港するために、あの成田騒動が起こって、しかもあの騒乱状態の中で開港したという、私は国会議員になって、あの七八年の壮絶な、テレビ中継をしながら、武装集団に襲われて、でき上がったものを壊されながら、なおかつテレビでそれを映しながら、だれも逮捕されないであの日を迎えたことが、今でも私には大変印象深く残っております。

 それと、もう一つは、今山田先生がおっしゃったように、現在まで、まだ今日に至っても、一九七八年から、開港以来今日まで一本しか滑走路を持たない国際空港成田、これは国際という看板がついておりますけれども、先進国の中で一本しか滑走路がなくて国際空港と名のつくところはどこにもありません。本当に私はそういう意味でも恥ずかしい思いをしております。

 私がいろいろ話を聞きましても、どうもこれは、やはり成田に持っていくときの地元の皆さんとの話し合いが最初からそごがあった、国も誠意が足りなかったと私は思います。そういう意味から、ボタンのかけ違いとよく言われますけれども、やはり成田に持っていくに関してのボタンのかけ違いがあったことも、大変初歩的に大きな間違いがあったのだろう。

 その反省も含めて、私は、今回は、収用法の見直しで、まず事業認可の前の事前計画、そのときから国民との、住民との話し合いを、うんと今までの倍かかってもいいからそれを重要視しようというのが今回の法改正をしたときの大きな原点でございます。

 その成田を見習って、勉強して、新たな二十一世紀はそういうことをなくそうという意味で、私は、今回この改正に当たっては一番最初の手続を一番重視しよう、周知徹底をし、話し合いをしていこうというふうに、今回はそこを重視して書かせていただいたというのが原点でございます。

山田(正)委員 大変立派な御答弁なのですが、私が言っている、なぜ収用委員会ができなかったかを、具体的に、副大臣で結構ですが。

扇国務大臣 これは日時を追っていると大変長い話でございますけれども、基本的には、これは収用委員会がなくなりましたのが昭和六十三年なのですけれども、一番最初は六十三年の九月、千葉県の収用委員会の会長さんへの鉄パイプでの襲撃事件、覚えていらっしゃるかもわかりません。これで襲撃を受けまして、このときの委員長さんは足が御不自由になられました。それから、六十三年の十月、千葉県の収用委員会の委員が全部辞任をしてしまいました。そこから、千葉県では現在、先ほど私が申しましたように、収用委員は一名も千葉県には存在し得ません。それは、私が今冒頭に申しましたいろいろな事情で行き違いがあって、今でも成田は住民の反対があるということから、この収用委員会、だれも引き受け手がないという現状であるということでございます。

山田(正)委員 今そういうふうにお聞きしたのですが、先ほどの田中政務官の話だと、随分、各県土地収用委員会はそれなりに公共事業に対する大変大きな役割を果たしております。

 実は、先日の参考人質疑で、公共事業の時間管理概念というお話を森地茂東京大学大学院の教授が話しておられましたが、実はその中で大変印象深いのは、年間五十兆円の公共投資と多くの事業が十年程度を要しているのが現状、十年間五百兆円に対し、各事業を一年から二年時間短縮できれば、コスト縮減と社会的便益の早期出現で、一〇%、五十兆円程度以上の節約ができると。これは、我が国土交通省にとっても大変大事なことだと思うわけなのです。

 この前のお話ですと、実際に地下鉄半蔵門線で、千七百億円の工事ですが、経済的損失が二百七十億、財務的損失が百六十億、そういう試算結果を出していただきました。

 こうして考えるときに、もう既になり手がないからありませんと。でも、二十年とは言いませんが、もう十年も経過しております。それで仕方がありませんというわけにはいかないと思うのですが、大臣、いかがでしょうか。

扇国務大臣 この千葉県に対します特別措置法の適用、これがございますけれども、その場合には、法律上、収用委員会から大臣への事件の送致というような行為が必要とされているのですけれども、今皆無ですから、それをする人がありません。

 ですから、そういうときにはどうするかということですけれども、これは、千葉県における事業について公共用地の取得に関する特別措置法を適用したとしても、大臣による代行裁決を行うことはできない、こうなっておりますので、いろいろ苦労しながら、今でもまだ解決できていない部分があるということは、そのとおりでございます。

山田(正)委員 その点についてはこれから聞くつもりなのですが、先にちょっと答えられたようです。

 もとに戻って、では、千葉県において、大臣、一度お答えになったようですが、東葉高速鉄道ですか、どこかの鉄道問題で、一人が反対したために随分何年かおくれたというお話。東葉高速鉄道、これは一人が反対しただけで三年間延びた。そしてまた、外環道路の千葉県側、そしてまた常磐鉄道、これも大変問題があるようなのですが、大臣、こういった問題を抱えておって、土地収用委員会をこのままにして、ないままでいいものでしょうか。

扇国務大臣 これは副大臣からお答えすべきだろうと思いますけれども、あえて御指名でございますから。

 少なくとも私は、国土交通省といたしましても、地元の皆さんの御理解と御協力を得て事業の推進に努める。そして、早期に供用する。これはもう国民の皆さん方の切なる希望でございます。

 そういう意味においては、まだまだ、今先生がおっしゃいました東京の外郭環状道路、あるいは常磐新線等、常磐新線につきましては、千葉県内の十三・五キロ、そのうちの一体型の土地区画整理事業により取得する用地を除く部分について、現在はまだ任意で交渉中、こういう状況でございますけれども、少なくとも現時点におきまして、私たちは、この件に関しまして、収用手続に直ちに移行する必要はないもの、そういうふうに認識しております。

 それも、将来、必要な事態が発生した場合には、これは知事さんと協議して私たちは事に当たるということですから、千葉県の堂本知事と連携をとりながら、これを今すぐ土地収用委員会にかけるというようなことではございませんし、また千葉県は収用委員がおりません。

山田(正)委員 一番最初に聞いたときに、いわゆる公団の仕事とか、あるいは事業者の認定、土地収用法三条の事業者の認定の中で、それぞれ、大臣がやるべきもの、いわゆる土地収用委員会、大臣が決めるべきもの、あるいは都道府県知事が決めるべきもの。その中で、空港公団、成田とか、あるいは、例えば二県とか都道府県にまたがるもの、私が調べますとそれについては大臣のものとなっているようですが、大臣が裁決するものと。

 そうなれば、常磐新線にしても、成田空港の土地の問題にしても、いわゆる外環道路にしても、これは大臣がやらなければいけないのを、大臣として怠っている、そういうことになりませんか。

扇国務大臣 先ほども御意見が出たと思いますけれども、確かに、私は、歴代の大臣、三十三年間も現地にも行かなかったということは、ある意味では怠慢だったと言われてもいたし方ないと思います。それは、それなりに、東京都の美濃部都知事の誕生によって、凍結せざるを得なかった三十三年前の事情というのもあったのだろうと思います。

 けれども、私は、それではいけない、やはり二十一世紀型で、今までできなかったこともみんなで話し合って解決していこうということで、あえて私は、何年ぶりであろうと現職として行くということで行ったことでございますので、それによって、多くの皆さんの御意見を、そして気持ちも、みんなが、あっ、やっと来たなということを言ってくださった方もあるし、今ごろ来たなと言う人も、それはいろいろありました。けれども、私は、まず行くということの勇気を私たちは持つべきだと思ったので行きました。

 そういうことでは、今後、東京都知事と話し合いながら、私は地方自治体の長と連絡をとり合いながら、これを進めていくということに、私は前向きに検討していきたいと思っています。

山田(正)委員 その問題はもう一度聞くことにしまして。

 沖縄において、米軍が使用している駐留地における、土地収用委員会が収用の裁決をしなくて、それで大変困ったという事例がまだ記憶にあるわけですが、安保協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法、これについてはどのように処理したか、ひとつ、防衛庁から来ていらっしゃるかと思うので、政務官。

嘉数長官政務官 防衛庁長官政務官の嘉数でございます。答弁の機会を与えていただきまして、感謝申し上げます。

 お答えいたします。

 駐留軍特措法による緊急裁決、代行裁決制度は、国が国際的に負っている安全保障上の義務を的確に履行するという観点から、極めて高度の公益的要請を満たす収用委員会の事務が遅延するなどして土地等の使用権原の取得に支障を生じる事態に立ち至らないように仕組みを整備する必要があることから、平成十一年に駐留軍特措法が一部改正されて設けられたものであります。

 多少長くなりますけれども、具体的に説明申し上げますと、新規に使用、収用する必要がある土地等に係る裁決が遅延することによって当該土地等の使用、収用に支障が生ずるおそれがある場合には、防衛施設局長による緊急裁決の申し立てがあれば、収用委員会は、損失の補償に関する事項がまだ審理を尽くされていないものがあっても、申し立て後五カ月以内に権利取得裁決及び明け渡し裁決を行わなければならない。

 しかし、収用委員会がこの期間内に裁決しない場合には、防衛施設局長の異議申し立てを受け、収用委員会が事件を内閣総理大臣に送致し、内閣総理大臣がみずから裁決を行うものとされています。

 さらに、収用委員会における何らかの事情により事件が送致されない場合においても、異議申し立てから一月を経過したときは、内閣総理大臣がみずから裁決を行うことができるものとしているところであります。

 なお、収用委員会が緊急裁決の申し立てに係る事件を却下裁決し、審査請求を受けた内閣総理大臣が却下裁決を取り消し、あわせて使用、収用裁決を行うように指示したにもかかわらず、再度却下裁決が繰り返されるということも考えられるが、この場合においても、内閣総理大臣がみずから裁決できるものとするという内容であります。

山田(正)委員 今、防衛庁政務官からお話があったように、沖縄においては、土地収用委員会が裁決しなかった、しかし安保条約の手前、いわゆる公益のために緊急にそういう裁決を、代理裁決を内閣総理大臣がやった、そのための法律もできておったということです。

 成田空港にしても、あらゆる事業において、千葉県に収用委員会がないままに来ているという事実ですが、この中で、公共用地の取得に関する特別措置法という法律があります。先ほど扇大臣がちょっとお話しになったこの法律ですが、この法律によりますと、裁決の代行は、いわゆる収用委員会が裁決をしない場合、裁決をしない場合ということは、裁決ができない、委員会はあるけれども委員の任命がなされていない、この場合も含まれると思います。

 裁決をしない場合において、起業者から、例えば成田空港公団からでも構わないんですが、行政不服審査法の規定による異議申し立て、何とかしてくださいという異議申し立てがあったときは、収用委員会はこれを国土交通大臣に送らなければならない、そういうふうに第三十八条の二で規定されております。国土交通大臣は、事件が送られたときは、収用委員会にかわってみずからが当該事件に係る裁決を行うことができる、いわゆる裁決の代行、これをこの公共用地の取得に関する特別措置法によって国土交通大臣ができるようになっている。

 その中で、当然、事業主体は異議の申し立てはするんでしょうが、先ほど言ったように、これは沖縄の米軍の特別措置法と違うのは、いわゆる委員会が、その事務局がそれを送致するかしないか。それを大臣先ほど言われたんじゃないかと思うんですが、事務局が送致しないとしたら、なぜしないのか。しないままで済ませることができるのか。

 例えば、これが県の、千葉県側の責任による事業であったら、それは送致しなくたっていいだろうけれども、空港公団の仕事は国土交通大臣の責任所管の仕事である、裁決も。法律で明らかにそうなっている。そうなった場合に、送致されないから大臣は今まで裁決できなかった、代理裁決できなかった。こんな無責任なことが許されるのか。大臣、いかがですか。

扇国務大臣 それは、今山田先生は無責任だとおっしゃいますけれども、これはきちんと法上明記されていることでありまして、少なくとも、公共用地の取得に関する特別措置法において、収用委員会が裁決しない場合に国土交通大臣がかわって裁決を行う代行裁決制度を置いているところで、これはもう先生がおっしゃるとおりです。

 それをしなかったら無責任だとおっしゃいますけれども、そうではなくて、この場合は、法律上の、収用委員会から大臣への事件の送致という行為そのものが行われないんですね。ですから、送られてこないものに対して私が代行裁決というのはできない。これは明記してありますから。送られてきたら代行裁決できる権利があるかもしれません。もともと送られてこないものに対しては、大臣は裁決するもしないも、それ以前の話でございます。

山田(正)委員 大臣はそうおっしゃいますが、土地収用法の二十条をしかと見ていただきたい。

 この二十条には、「国土交通大臣又は都道府県知事は、」と、「国土交通大臣」と明記されており、国土交通大臣としての仕事と都道府県知事の仕事の区分は、都道府県知事はいわゆる市町村の仕事、二県にまたがる事業とか公団の仕事はまさに国土交通大臣の所管となっているわけです。そうすると、国土交通大臣として、送致がないからほっておくということができるのかどうか。

 実は、ハンセン病で立法府の不作為を裁判所から指摘されましたが、まさに行政の不作為によって何兆円という損害をかけた、大変な経済的損失を日本国にかけた、これの責任は大いにあるんじゃないかと思いますが、いかがですか。

扇国務大臣 収用委員会が一定の期間内に裁決をしない場合がありますね。例えば、収用委員会があったとしても、一定の期間内に裁決をしない場合には、起業者の異議申し立てがあれば、第二十三条第一項により内閣総理大臣が裁決を代行する。また、これまでは、公共用地の取得に関する特別措置法第三十八条の三第一項の国土交通大臣の代行裁決と同じである。これは書いてございますので、これは二十三条にも匹敵することですけれども。

 今先生がおっしゃいましたように、代行裁決というのは、収用委員会から大臣への事件の送致が必要である。これが事件ですよという送致が必要であるのは、先生本職ですからよく御存じだと思いますけれども、この事件の送致という行為は、合議体である収用委員会本体がなすべきものと解されているのですね。

 ですから、少なくとも、収用委員会が不存在の場合は、また収用委員会が会議を開いて事件の送致の決定をしない場合においては、大臣の代行裁決の規定が働かないことになってしまう。こういう解釈は、私は法的になり得るものだと思うし、山田先生なら御理解いただけるものだと思っております。

山田(正)委員 大臣の真摯な姿勢と申しますか、非常に前向きな形での答弁は私も大変評価させていただきますが、先ほど防衛庁の政務官が御答弁になった、いわゆる駐留米軍基地については、平成十一年に送致に向けてのそれなりの緊急裁決の法案までつくってあった。今回、その送致については、単なる送致ですから、行政的にもでき得るはずであったし、あるいはそれが無理であったら、法改正もできるはずであった。そういった意味では、行政の責任は免れなかったのじゃないか、私はそう思います。

 時間が参りましたので、私の方で一つ。

 大臣、この成田空港の問題は今大変微妙な段階にあるようでして、私が今質問したのは、決して土地収用法をここで強行しろとかそういうわけではありません。さきに大臣がお話しされたように、やっと暫定滑走路も供用できるようになり、またそれぞれの話し合いが進められつつあるということも、私も事情は聞いております。

 そういう意味で、大臣が現地に赴き、さらに話し合いで、何とか早く、我々国家的損失である成田空港問題、これは国土交通省にとって、扇大臣がこれをうまく解決できるかどうか、国民が大変注目を持って期待しているところではないか、そう思いますので、ぜひ御検討のほどをお願いして、私の質問を終わらせていただきます。

赤松委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二分散会




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