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第9号 平成14年4月12日(金曜日)

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平成十四年四月十二日(金曜日)
    午前九時三十二分開議
 出席委員
   委員長 久保 哲司君
   理事 木村 隆秀君 理事 実川 幸夫君
   理事 橘 康太郎君 理事 林  幹雄君
   理事 古賀 一成君 理事 細川 律夫君
   理事 赤羽 一嘉君 理事 一川 保夫君
      赤城 徳彦君    小里 貞利君
      倉田 雅年君    菅  義偉君
      田中 和徳君    高木  毅君
      高橋 一郎君    谷田 武彦君
      中馬 弘毅君    中本 太衛君
      菱田 嘉明君    福井  照君
      二田 孝治君    堀之内久男君
      松岡 利勝君    松野 博一君
      松宮  勲君    吉川 貴盛君
      阿久津幸彦君    井上 和雄君
      大谷 信盛君    今田 保典君
      樽床 伸二君    津川 祥吾君
      永井 英慈君    伴野  豊君
      平岡 秀夫君    高木 陽介君
      東  祥三君    山岡 賢次君
      大幡 基夫君    瀬古由起子君
      原  陽子君    日森 文尋君
      二階 俊博君
    …………………………………
   国土交通大臣       扇  千景君
   国土交通副大臣      佐藤 静雄君
   国土交通大臣政務官    菅  義偉君
   国土交通大臣政務官    高木 陽介君
   政府参考人
   (総務省自治税務局長)  瀧野 欣彌君
   政府参考人
   (法務省大臣官房審議官) 原田 晃治君
   政府参考人
   (国土交通省総合政策局長
   )            岩村  敬君
   政府参考人
   (国土交通省住宅局長)  三沢  真君
   政府参考人
   (環境省大臣官房廃棄物・
   リサイクル対策部長)   飯島  孝君
   国土交通委員会専門員   福田 秀文君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十二日
 辞任         補欠選任
  山岡 賢次君     東  祥三君
  保坂 展人君     日森 文尋君
同日
 辞任         補欠選任
  東  祥三君     山岡 賢次君
  日森 文尋君     保坂 展人君
    ―――――――――――――
四月十一日
 民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第五三号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 マンションの建替えの円滑化等に関する法律案(内閣提出第二六号)


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     ――――◇―――――
久保委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、マンションの建替えの円滑化等に関する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省総合政策局長岩村敬君、住宅局長三沢真君、総務省自治税務局長瀧野欣彌君、法務省大臣官房審議官原田晃治君及び環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長飯島孝君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
久保委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
久保委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。津川祥吾君。
津川委員 おはようございます。民主党の津川祥吾でございます。
 一昨日の委員会に引き続きまして、マンションの建替えの円滑化等に関する法律案について質問をさせていただきます。
 先日の当委員会の審議の中で、各委員の皆様方から多くの点につきまして指摘がなされまして、答弁もいただきました。私の視点から、主に四つの点につきまして質問をさせていただきます。
 まず第一は、民間ディベロッパーの関与についてであります。まず、このマンション建替え円滑化法の趣旨の中に、そもそも、区分所有法の範疇において建てかえ決議がなされた後の法的手続をまず整備する、決議された建てかえが円滑に行われることを目的としている、その点において、この法案が非常に必要な法律であり、その整備そのものに対して特に異議はございません。
 特に、老朽化が進んだりして、安全上あるいは防災上問題がある場合など、明らかに建てかえなどの対応が必要な場合などは、都市の居住環境の向上という観点からも、早急な対応が求められますし、その際、法律の不備により円滑な建てかえが阻害されるということであるならば、当然このような法律も早急につくらなければならないというようなことになろうかと思います。
 また、この法案のもう一つの重要なポイントでありますが、建替組合の法的な位置づけを明確にするといったことのほかに、民間のアイデア、資金を活用しようという点であります。確かに、補修や新築、こういったノウハウに関しては、そういった蓄積がある民間のディベロッパー等々が参加組合員として加わることは、計画の立案やその施行に関し大いにプラスになることかと思います。
 しかし、この法案で私が最初に気になったのが、この参加組合員とはどんな人なのかということであります。
 例えば、自分でマンション建設もするし、販売も手がけますというような業者の方が参加組合員になった場合、実際の工事の施行に関しても、当然その業者の方が、やらせてくださいという形になろうかと思います。もちろん、可能性としては別の業者さんが入ることは当然あり得るかと思いますが、ただ、その場合、工事の発注者と受注者に同じ業者が関与するというような形になります。そこが、まず最初に少し気になった点であります。もちろん、業者が露骨に営利獲得をしようとするようなことに対しては、当然幾つもの歯どめがあろうかと思います。
 そこで、具体的にお伺いをいたしますが、参加組合員となった民間事業者の方が自分の利益獲得のために勝手なことを余りし過ぎないように、し過ぎないようにというか、勝手なことをしないように、歯どめというものがどのようなものがあるのかということを、まずちょっと冒頭、具体的に確認をさせていただきたいと思います。
三沢政府参考人 建てかえ事業で、参加組合員としてのディベロッパー等が自己の利益のみを追求しないようにどういう歯どめがあるかということでございます。
 この法案におきましては、事業計画、収支予算を初めとする組合の運営に関する重要事項は、総会の議決または定款の定めによることとされております。それで、例えば、その参加組合員の取得する権利、具体的に言うと保留床、そういうものの内容を定めるような権利変換計画は、組合員の五分の四以上の賛成が必要とされております。この場合、参加組合員は、組合員の一人として一票の議決権を行使することができるだけでございます。
 したがいまして、そういう意味で、ディベロッパーが自分の利益だけを考えてそういうことに多大な影響力を及ぼすということは、手続上できないということになっております。
 それから、そもそも、参加組合員を、どういう方を入れるか入れないかも含めまして、入れる場合には定款の中できちっと決めるという手続でございまして、この定款につきましては組合員の四分の三以上の同意が必要だというようなこと。それから、建てかえ事業の認可に当たりまして、当然、認可する場合には、その事業等の経済的基礎というのは見るわけでございますが、その場合には、やはり参加組合員の資力、信用というのもきちっとチェックして、その上で認可するということになりますので、こういうこと全体を通じまして、参加組合員についてはきちっとしたチェックが及ぶというふうに考えております。
津川委員 参加組合員は業者であったとしても一票という話でありますから、参加組合員としてそう多く権限を行使するというようなことはないであろうという話かと思います。また、その参加組合員も、どんな業者でもいいわけではなくて、当然、必要な資力及び信用を有する者であって、定款で定められるというふうにあります。その定款は、組合員の方で決められた定款であります。
 ただ、これだけですと、ちょっとよくわからないものですから、例えば、一見、実績もある、健全のようにも見える業者だったけれども、実は倒産しそうだったというような業者も当然あろうかと思います。そこを組合員の皆さんが見抜けるかどうか、何とも言えないところであろうかと思います。
 本来は組合員の皆さんが定款の中で決めるわけでありますから、その方々がしっかりと見なければならないということでありますが、参加組合員になれる基準のようなものがあるのかどうなのか、ガイドラインのようなものを示すおつもりがあるのかどうか、ちょっとお答えをいただきたいと思います。
三沢政府参考人 基準ということでございますが、先ほど申し上げましたように、参加組合員というのは、事業の参加に必要な資力及び信用を有する者で、定款で定められたものであるということが基準でございます。それがさらに、組合設立認可においての都道府県知事の判断要素の非常に大きなものになるわけでございます。
 ただ、具体的にどの業者が本当に信用できるかということについて、これはなかなか難しいところがございまして、例えば、これはよく、新聞等で急に会社更生法になった会社というのもあるわけでございますけれども、一般に、これについて事前に知り得るということはなかなか難しいということもございます。ですから、一般的なガイドラインを設定するということについては、どういう情報を得てそういうガイドラインができるかということもございますので、ちょっと慎重な検討が必要だなという感じがしております。
 ただ、いろいろな会社につきまして、例えば都道府県とかそういうレベルでいろいろな情報がある場合には、必要なアドバイスを、そういう相談窓口あるいは情報提供窓口において可能な範囲でするということは当然必要なことでございますので、このことについてもいろいろな相談体制の整備を図っていきたいというふうに考えております。
津川委員 当然、組合の設立の際に知事の認可も必要なわけですし、これこれといった業者であることというようなガイドラインまでは確かに定めにくいのかもしれませんが、やはりそこについて何らかの配慮、一言で言えば情報公開を徹底させるというようなことになろうかと思いますけれども、そういったことをぜひやっていかなければならないのではないかなというのがまず問題意識であります。
 そこで、一つ確認させていただきたいのですが、この法案、私今も若干読みましたが、第十七条で、前条に規定する者のほか、こうこうこういったものは、参加組合員として、組合の組合員となるというふうに書いております。ということは、必ずしもこういった民間事業者の方が参加組合員にならなければならないというふうには書いておらないわけでありまして、彼らが参加しないということも一応この法律の設計上はあり得るのであろうかと思います。
 そこで、もしそうなった場合のことを少しお伺いをさせていただきます。
 実は、先ほども申し上げましたが、民間事業者の参加が一つの目玉である法案であろうかと認識をしますが、そもそも、読んでいると、今の十七条に関しては、参加組合員となることも可能だというような書き方でありますけれども、全体を見ると、参加しないことは余り想定していない法律じゃないかという感じがするわけです。必ず民間事業者の方が入ることを前提にした法律だ、そういった形でつくられているのではないかということです。
 例えば、ディベロッパーなどの民間事業者の方が参加組合員としてマンション建てかえ事業に参加しなかった場合、仮に、実際建てかえられた後に、施行再建マンションの余剰床、保留床について建替組合が販売しようとするとき、これは宅地建物取引業法に定める宅建免許が必要ではないかというふうに思われますが、組合員の中に宅建免許を持っていらっしゃる方がいない場合も当然あろうかと思います。そういった場合をこの法案でどういうふうに想定されているのか、お伺いをいたします。
岩村政府参考人 今委員御指摘のように、建てかえをする際に、その事業費の一部に充ててそれに参加した方々の負担を軽減し、結果としてこの事業がうまく進むようにするために、当然のことながら保留床の販売ということがあり得ようかと思います。
 その際の業法との関係でございますが、先生よく御承知のように、宅地建物取引業は、建物またはその一部の売買やその代理または媒介、こういうことをする行為で業として行うものを取引業と言っておるわけでございます。そして、宅地建物取引業を営む場合には、取引の公正、さらには購入者の利益の保護というようなことを考えて免許が必要というふうになっているわけでございます。
 そして、では、この宅地建物取引業に該当して免許が必要となるか否かの判断の基準でございますが、一つは、取引が営利を目的としているか、また反復継続性があるか等々の事項を参考にいたしまして、社会通念上の事業の遂行と見ることができるか、こういったことを総合的に判断をしているわけでございます。
 翻って、マンション建替組合が行う保留床の売却が、ここで言う宅地建物取引業に当たるかどうか、すなわち免許が要るかどうかについては、今申し上げたような基準に照らして個別具体的に判断をしなければいけないと思います。
 一般的に言って、こういった保留床の販売というのは、反復継続性も見られませんし、売却も営利目的というふうには言えないと思います。専ら事業費の一部に充てる、そして負担を軽くするという場合が多いと思われますので、宅地建物取引業の免許は不要となることが多いのではないかというふうに思うところでございます。
津川委員 確かに、普通に考えますと、建替組合が、余ったところを売りたい、それで幾らか資金を捻出したいという考え方のときに、これを宅建業だと言うのはちょっと妙な感じがします。しますが、仮に、マンションが新しくなりました、これまで五階建て、六階建てかわかりませんが、それが十階建てになりました、たくさんふえました、それを売りますと。どういう形になるかわかりませんが、ここに民間ディベロッパーが一枚かんでいればその方々がやるわけですから、当然そういった方々は宅建免許を持っていれば何の問題もないと思います。
 ただ、それがない場合、全くの普通の組合員さんだけがやった場合は、この宅建業法で言うところの、宅地建物取引業というものは何かというところでありますが、同法三条一項では、このように定められています。「宅地建物取引業を営もうとする者は、」ちょっと省略しますが、「当該事業所の所在地を管轄する都道府県知事の免許を受けなければならない。」と。そして、この二条の二号におきまして、この宅地建物取引業とは何かという用語の定義がございます。宅地もしくは建物の販売もしくは交換または、ちょっと省略しますが、媒介を行う行為で業として行うものをいうと。これだけですと、今局長の説明をいただいたとおりで、この業には当たらないんじゃないかなというような感じがします。しますが、私がいただいている資料によりますと、これは当然局長よく御存じだと思いますが、取引業法の解釈・運用の考え方、最終改正平成十四年一月三十日、よく御存じだと思いますが、二条第二号関係、業についてであります。本号に言う「業として行なう」とは、社会通念上の遂行と見ることができる程度に行う状態を指すものであるというふうに書き、その中の「判断基準」として、1、2、3、4、5というふうにございます。
 その一つが、例えば「取引の対象者」、広く一般の者を対象に取引を行おうとするものは事業性が高い。これは事業性が高いんです、この視点からいえば。広く一般の方に買っていただく。特定の方に買っていただくわけじゃありません。親族に買っていただくとか隣に住んでいらっしゃる方に買っていただく、こういうことではありませんから、この視点から見れば事業性は高いと見るでしょう。
 その次、「取引の目的」であります。営利を目的とするものは事業性が高い。特定の資金需要の充足を目的とするものは事業性が低い。
 今、局長も、こういう点からいくと営利を目的としているのではないのではないかという話でありますが、この注釈によりますと、「特定の資金需要の例としては、相続税の納税、住み替えに伴う既存住宅の処分等利益を得るために行うものではないものがある。」この見方からすると、余剰床をそもそも多くつくって、そこでお金をいただいて何とかしよう、これは、残念ながら、利益を目的としているというふうにとる方が私は普通だと思います。
 その次、「取引対象物件の取得経緯」。これも、相続したり何かというものであれば事業性は低いというふうにありますが、「転売するために取得した物件の取引」は事業性が高い。
 それからもう一つ、先ほど局長は、反復継続性がないではないかという話がございました。確かに、反復継続性がないものに関して、「一回限りの取引として行おうとするものは事業性が低い。」となります。なりますが、この注釈も、「一回の販売行為として行われるものであっても、区画割りして行う宅地の販売等複数の者に対して行われるものは反復継続的な取引に該当する。」これは、局長がつくられたかどうかわかりませんが、当然よく御存じの注釈であろうかと思います。
 これから考えれば、やはり宅建業法に抵触をする。宅建業の免許を取らなければできないんですよ。別に私はそれを問題だと言っているわけではありません。そうであれば、宅建業の免許を取っていただければもちろん問題は済みますが、それより、例えば特例措置ですとかあるいは宅建業法の方に少し何かをつけ加えていただくなり、改正していただくなり、そういったことをしていただければ済む話であって、だからこそ、これはよくないということを私は言っているのではなくて、私が申し上げたいのは、この円滑化法の中にそもそも事業者が入らないことを想定していない、ほぼ間違いなく入ることを想定しているのではないかなというふうに感じるわけでありますが、どうでしょうか。もう一回お答えいただけますか。
岩村政府参考人 先ほど、個別具体的に判断をしなきゃいけないということを申し上げました。そして、それを販売することで利益を上げたりというようなことを考えているケースは一般的に少ないんではないだろうかなというふうに思ったわけでございますが、仮に、この機会にマンションを売ってというか保留床を売って、それによって大きな利益を上げようというのであれば、これはまた事業法の適用の問題が出てくるだろうというふうには思います。ただ、一般的に、普通、それだけ大規模な建てかえによって大きな保留床が出てきて、それによって別途商売をしようということであれば、そういうときは、今いらっしゃる方だけの参加ではそういった事業はなかなかうまくいかないんじゃないだろうかというふうに思うわけでございまして、先ほど先生御指摘したように、もしそこまで大きな仕事をしようとすれば、そういう専門の人が入ることもあろうかと思います。
 いずれにしても、どういうケースかというのは、個別に判断をしなければいけないわけで、当たる場合には、当然、業の免許を取っていただくことになろうかと思います。
津川委員 済みません、実は少し意地悪な質問をさせていただきました。質問通告をしておりましたのでそのまま質問させていただきましたが、この「解釈・運用の考え方」の中にもう一つ、取引の形態というものがあります。みずから購入者を募り一般消費者に直接販売しようとするものは事業性が高い、しかし、宅建業者に代理または媒介を依頼して販売しようとするものは事業性が低いんです。だから、組合が、いや、これを売りたいというときに、直接売るんじゃなくて業者に頼めば売れるんですよ。宅建業の免許は要りません。
 大変失礼な質問をさせていただいたかもしれませんが、今の局長の答弁だと私は不十分だと思います。その考え方ですと、これはまさに、何も大規模にやるという話じゃないんです。二戸か三戸、あるいは四戸か五戸かわかりませんが、新しくつくった余剰床を販売するというのは、これは一回であったとしても宅建業法に間違いなく抵触するんです、直接売れば。だけれども、売るときに、そういったところに、直接ではなくて間接的に、これを売ってくださいというふうにお願いすれば宅建業の免許は要りません。
 ですから、私がなぜこのような非常に意地の悪い質問をさせていただいたかと申しますと、恐らく想定しなかったんだろうなということであります。最初から入っていれば問題ないから、全く想定しなかった。仮に入っていないことをしっかり想定していれば、販売するときにそういったところに申し出て仲介をしていただければ済みますよという御答弁をいただくんだろうと思いました。まあ、ちょっと失礼をいたしました。
 それは別に悪いということではありませんが、恐らくこの法律のメリットという点から考えても、業者が入ることが非常に大きなメリットである。ただ、業者が入ることによるデメリットも当然あるわけでありまして、そういったところについて見ていかなければならないだろうなというふうに感じます。
 そこで、当該民間ディベロッパー、事業者が参加組合員として参加する場合に関しては、先ほどお答えいただいたとおり、議決権に関しても一人分、一個でありますから、それだけ特に大きな行為をするということはなかなかできないかと思いますが、当該民間事業者が参加組合員としてではなくて実際にその当該マンションの所有権を保持していた場合どうなるか。例えば、築三十年か三十年弱のマンションの幾つかを、その業者さんが五戸とか十戸とか所有していた場合、議決権はどうなりますか。
 区分所有法第三十八条では、「各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、第十四条に定める割合による。」というふうに書いております。第十四条は、共用部分の持ち分割合について専有部分の床面積の割合で決めるというものであります。ただ、マンションは普通、部屋ごとに若干広さが違いますから、面積ごとに議決権の量を決めると一々計算が面倒くさいので、大体、まさにこの「規約に別段の定め」というものをしておるようであります。その規約というのが、実際には、各区分所有者の所有する住戸一戸につき各一個の議決権を有するというふうになっているものが実例として多いというふうに伺っております。
 民間業者が単に参加組合員として参加する場合には、先ほど御答弁いただきましたが、それなりの制約があると考えてもいいんですが、幾つかの住戸をそれこそ時価で購入して複数の区分所有権を持てば、建替組合としての議決にも相当多くのかかわりを持つことが可能になるかと思いますが、いかがですか。
三沢政府参考人 ディベロッパーに限らず、複数戸を所有されている場合にはその戸数に応じた議決権を持つということは、おっしゃるとおりだと思います。
津川委員 大変じゃないですか。それはちょっと大変な御答弁で、もう少し、いや、そんなことはございませんという御答弁をいただくかなと思ったら、それはちょっと困ったことになりましたですね。
 ちょっと一点、それまして確認をさせていただきますが、先日の我が党の阿久津委員の質問に対しましてお答えをいただいた点をちょっと確認させていただきます。
 建てかえに参加することが困難な方々に対し、施行者、国、地方公共団体は安定措置を図るというものでございます。その中で、御答弁いただいた中であれっと思ったものがありまして、これは賃借人も入っている、家賃対策補助をされるというお答えになりましたけれども、これは建てかえ前の家賃と建てかえ後の家賃の差額を補助するというものであろうかと思いますが、どの程度補助することになるんでしょうか。
三沢政府参考人 ちょっと、まず第一点、訂正させていただきます。
 先ほど、区分所有法のことで申し上げましたが、今回の建てかえ決議で申し上げますと、複数戸を持っているときも頭数で数えますので、実はディベロッパーが一人であれば一つの議決権ということで、大変申しわけございません。訂正させていただきます。
 それから、家賃対策補助でございますが、要するに、例えば公営住宅にお入りいただく場合に、公営住宅として、通常、収入とかあるいは立地等において、いわゆる応能応益家賃というのが基準で幾らになるかというのが決められるわけでございます。ただ、要するに、従前の家賃がそれよりも低かった場合に、ある程度、何年かかけて経過的にその間、だんだんすりつけていく。一挙にその家賃まで上げないでだんだんすりつけて、そうすると、当然そこに差額が生じますので、その差額について国と地方公共団体で補助するという仕組みでございます。
津川委員 程度について、例えば何年間ぐらいとか何%ぐらいとか、そういうことは考えていらっしゃいますか。
三沢政府参考人 すりつける期間は五年間ですから、要するに、六分の一ずつ上がっていくという形でございます。
津川委員 まず、先ほど訂正をしていただきましたが、済みません、法律上はそうは書いていません。法律には、規約に定めがない限り云々ですが、規約に定めがあれば当然その規約に従うわけです。この規約に今、現状あるのが、区分所有者の所有する住戸一戸につき各一個の議決権とするという規約があれば、二戸、三戸、四戸持っていれば、二個、三個、四個の議決権が持ててしまうのですよ。
 それで、今、五年間にわたり家賃の差額の補助、国と地方がするという話でありますが、大臣にお伺いいたします。済みません、なかなか大臣にはお伺いいたしませんで。
 ちょっと仮定の話をさせていただきます。仮に、私が民間ディベロッパーであったらどうするかという話であります。
 例えば、こうします。築三十年近いマンションを探します。そこで分譲マンションを探して、空き家を幾つか買って、当然そのままでは貸せないでしょうが、中身を多少手直しをして、賃貸として定借か何かで安くお貸しをいたします。いざ建てかえになったときは、当然私は、つまりディベロッパーとしては区分所有権を幾つも持っていますから、建てかえ不参加の方々から少しでも高く買わせていただきまして、さらに多くの所有権を持たせていただく。余剰床についても買わせていただく。やはり賃貸として一般の方々にお貸しをさせていただく。これは再建後ですね。そのとき、この民間ディベロッパーとしての私にとって問題なのが、築三十年近い物件を、仮に安かったとしても借りてくださる方がいらっしゃるかどうかということでありますが、その不安を解消して余りあるのが、このペーパーでございます。
 これは、我が党の国土交通部会に対して国交省の担当の方が提出くださったものでありますが、「マンション建替えに係る住居安定措置について」ということでいろいろ書いていただいております。
 今、御説明の中で、大体五年間ぐらいという話でありますが、どういうことになるかといいますと、こういう補助があるなら大変お得なわけですよ。言ってみれば、バージョンアップ寸前のパソコンソフトを、古くなるから、これ、安く売ります、ただ、バージョンアップされた後は無料でバージョンアップしますよ、これは無料じゃなくて幾らか補助をしますよという話でしょうけれども、そういう話なわけです。そうであれば、建てかえ寸前のぼろっちいマンションでも安く借りて、しかも建てかえの後の新しいマンションにそのまま安い家賃で住むことができる。これは、ディベロッパーとしては非常に、商品としては非常にいい商品になろうかと思いますし、借りる側にとっても大変いい話であろうかと思います。これは、借りる側にも貸す側にもいい話ならいいじゃないかという話でもありますが、せっかくつくっていただいたこの居住安定措置ではありますが、若干やり過ぎなんじゃないのかなという気がするわけです。
 つまり、この法案は、何度も大臣も強調されましたが、円滑化というものである、別に促進するものではないというお話でありますが、ここまでやってしまうと、民間ディベロッパーは頭がいいですから、こういった形でこううまく使えば、実は、円滑化ではなくて、相当な建てかえインセンティブを持つ、促進にまでなるのではないかということであります。貸す側、借りる側、どっちもよくても、一戸建てを持っている別の方々とのアンバランスというのは当然生じるわけで、そういった意味でやはり大きな問題であろうかと思います。民間事業者の方の参加のメリットは言うまでもありませんが、こういった一種のデメリットというものもあろうかと思います。
 大臣、今私が指摘いたしました点も踏まえて、民間事業者の関与というものについて御所見をいただければと思います。
扇国務大臣 先ほどからやりとりを拝聴しておりまして、少なくとも今回の、基本的にはマンションというものは、津川議員が御存じのとおり、所有している者は一個人である、そういうのが原則ですし、土地とか建物の権利関係とか、工事の設計とか施工でございますとか、そういうものに関しては、一個人の場合は、普通、通常で考えて、専門的な知識を持っていないと見るのが普通ではないかと私は思います。また、資金力も十分ではない、今入っているのがせいぜい精いっぱいだという人が多いと思うのですね。
 けれども、一方、現在のマンションのストックというのは約四百万戸ございます。そして、住んでいる人というのは、今居住者が一千万人いるわけですね。そういうものをいかに回転していくか。しかも、今老朽化しているものを、築三十年から三十八年というのが大ピークになってきているわけです。ですから、そのときに、少なくとも今津川議員がおっしゃったように、区分所有者、個人の者が、例えば僕のようにという例を挙げられましたけれども、例えばそれが、津川議員がディベロッパーの一人として何戸も持っているんだよというふうにおっしゃいましたけれども、私は、そういうディベロッパーが持っております資金力とかノウハウとかそういうものを大いに活用すべきだと思います。
 その活用する場合には、マンションの参加組合制度というものを、先ほど局長が答弁しましたように、組合制度というものをきちんと定義してございますから、その組合制度にディベロッパーが、例えば津川議員、自分がディベロッパーでとおっしゃいました、どれだけの権利を持って組合員として参加するかということにかかわってくるものですから、それは私、冒頭に申しましたように、一個人の者であるということが、ディベロッパーとしてたくさん持っていれば有利じゃないか、それはそのとおりですけれども、それを組合員としてどうカウントするかというのは、それぞれのマンションの組合員としての、いわゆる組合自治といいますか、そういうものであろうと私は思います。
 私は、その点は、全然問題ないといいますか、それぞれの組合での御判断であろうと、ほとんど民間の者が多うございますから。そういう意味では、私は、この参加組合制度というものの定義があれば、それはそこで御判断いただくべきことであろうと思いますし、少なくとも、組合にお入りになる区分所有者それぞれの個々のメリットがあると判断した場合に限ってこれが活用されるというのですから、私はその点は、今おっしゃったように、問題はない。限ってというのをぜひ御理解いただきたいと思います。
津川委員 ですから、今申し上げたのは、参加組合員として参加するのではなくて、区分所有者として組合員として参加をすることも可能ではないですかということがまず一点。それも、複数の住戸を取得していれば、この議決権も、今ある通常の組合の中の規約であれば、複数の、持っている戸数に応じた議決権を持ってしまいますから、参加組合員として参加したときには確かに一票かもしれませんが、区分所有者として参加すれば複数票になりますというのが現状です。そうやって建てかえて、私が先ほど申し上げたようなやり方でやれば、住んでいらっしゃる方も大変メリットを感じると思います。業者にとっても大変メリットです。ただ、要するに、それはやり過ぎじゃないですかということを言っているのです。
 どっちにとっても当事者にとってはいいかもしれませんが、ほかのところに住んでいる方から見れば、一戸住宅、自分で建てた人から見れば、何で、マンションを持っている人がここまでこういう手当てを受けるのはアンバランスではないですかという話を今させていただいたわけであります。
 例えば、それを防ぐためにどうすればいいかというのは、簡単な方法です。管理組合の規約を変えればいいのです。複数戸を持っているところでも、所有者が一人あるいは一業者であれば議決権は一つとするというふうにしてしまえば問題はないのです。だから、そういうふうにしたらどうですかというお達しでも出していただければ、そうなるでしょう。それから、家賃補助に関しても、今後決められるようでありますから、その中で、こういった業者の介入があって、まさに自分の営利追求、これがある意味ちょっと行き過ぎかなというようなところがもし見受けられる場合は、それは適用しませんよと、そういった形にすれば済むわけであります。
 今私が指摘したのは、どうも、この法案とこの間いただいた安定措置の両方を見る限りにおいては、これは相当ディベロッパーにとってはおいしい話だなと。私が今委員会で質問したのを見ていたディベロッパーさんがいたら、おまえ、そんなこと言うな、おれは気がついていたんだからやらせてくれればよかったのにと怒られるかもしれないなというふうに思いながら質問をさせていただきましたが、その辺のところは、やはりしっかりと見ていただきたいと思います。
 それから、やっと二点目に参りましたが、二点目の質問をさせていただきます。
 マンション管理士というものがございますので、例えばマンション管理士さんは今普通の管理というものを前提としているようでありますが、場合によっては建てかえというものもある意味しっかり見据えたような管理士としてやっていただけばいいのではないかな。いわゆるディベロッパーというのとは違う立場で、まさにマンション管理、マンション建てかえのスペシャリストとして、アドバイザーとして参加していただけるような形ができれば、これはそういった不安もなかろうかなというふうに思います。
 先日の御答弁の中で、今管理士さんが七千人ぐらい合格されたと、昨年の試験のようでありますが、これがどういった方々かアンケートをとられているか。例えば、建設会社の方なのか、ディベロッパーの方なのか、あるいはマンション管理組合のだれかが、こういうのがあるから取ってみようというふうな形で取られたのか、これはアンケートか何かされていますでしょうか。
三沢政府参考人 マンション管理士試験の合格者の職種でございますけれども、申し込みの際に受験者の職業区分を一応参考情報としていただいておりまして、それによりますと、合格者を職種でいいますと、一番多いのは、やはり不動産関係業でございます。こういう方々が二九%ぐらい。それから、マンション管理業の方々が二〇%程度いらっしゃいます。それから、建設関係業というのも一〇%ぐらいいらっしゃいますが、あと、その他の職種ということで、ちょっとその他の中身は詳細に書いてございませんが、こういう方々は二六%ぐらいということでございます。
 それから、ちょっと先ほどの参加組合員のことで、補足してよろしいですか。
 ちょっと言葉足らずだったかもしれませんが、要するに、複数戸を持った場合に、単純に床面積だけじゃなくて、建てかえ決議でも権利変換計画でも、多数決で例えば五分の四とカウントするときに、区分所有者の頭数というのも同時にクリアしなきゃいけない。その頭数のときは、ディベロッパーは一票は一票である。床面積と頭数の両方をクリアしなきゃいけない、その頭数の方できちっとそこはある程度チェックができるということを申し上げたので、ちょっと言葉足らずで、申しわけございません。
津川委員 大事なところですから、今御答弁いただいたところに改めて質問させていただきますが、頭数というのは、区分所有法上どこに明記されているか。それから、各管理組合さんの規約に、各区分所有者の所有する住戸一戸につき各一個の議決権とするという規約がある場合、どっちが優先されるか、お答えをいただきます。
三沢政府参考人 区分所有法六十二条の「建替え決議」で、建てかえ決議をするときは「区分所有者及び議決権」の各五分の四の多数でということでございます。その「区分所有者」というのが頭数という意味であるということでございます。「及び議決権」の「議決権」の方が床面積だ、こういう解釈でございます。
津川委員 それを頭数というのかどうかの議論は置いておきまして、規約がある場合はどちらが優先されますか。
三沢政府参考人 区分所有法の解釈ですので、詳しくは法務省さんにお聞きいただければと思いますが、規約で別に定めるのは議決権についてでございまして、頭数の方は別段の定めができるということになっていないというふうに解されていると聞いております。
津川委員 そうした場合は、読み方として、頭数というふうに読めるのかどうなのかちょっとわかりませんが、どなたかわかりますか。それを頭数と読みかえる根拠はわかりますか。法務省の方、来ていただきましたが、いいですか。
原田政府参考人 区分所有者と書いてあるのは、頭数のことでございます。
津川委員 これは、私が持った資料によりますと、法にはそのことを特に明記していないというふうに指摘をされております。ただ、一人で多数の専有部分を所有している場合であっても一人と計算するのは性質上当然のことであるという判断が、これは民法上でしょうか、されているようであります。もう一つ、同じような判断で、逆に、多人数で一戸の専有部分を共有している場合は、その多人数の数を合わせて一人として計算することができる。これは今回の法案の中にも入っているんです。一つを複数で持っていても複数になりませんよ、一人ですよと。それは書いてあるからいいんですが、何でもう一方の方を書いていないか。
 落としたのかどうかわかりませんが、法の専門家がそう読めると言えばそうなのかもしれませんが、いかがなものかなという感じがしますので、これはむしろ、一般の組合員の方に聞けば、例えば二つ持っている方は二票とやっているのが普通のようでありますので、御確認をいただきたいと思います。
 それから、次の三点目に移る前に、マンションの管理士、先ほどのお話ですが、まさにこれは始まったばかりの制度でありますけれども、こういった方々、本当に仕事としてされている方々というのは当然多くあろうかと思いますので、そういった方々を活用していただくのを前提にされるのもいいのかな。これは議員立法でありますので、大臣に聞くのもおかしいかもしれませんが、そのような議論があってもいいのかなというふうに思います。今後の推移を見ながらということであろうかと思います。
 次の三点目に移らせていただきますが、マンションの耐用年数についてであります。
 先日の当委員会の中でも多くの委員の方々がこの点を指摘されました。マンションの耐用年数については、例えば法制審議会で区分所有法改正の議論の中で、老朽化の場合の要件として、建物が新築された日から三十年または四十年を経過したときを挙げております。この三十または四十でありますが、三十、四十という数字は、甲案であれ乙案であれ、どちらにも入ってくる数字であります。これらの数字の根拠が何であるのか、お伺いをしたいと思います。
原田政府参考人 御指摘のとおり、現在、法務大臣の諮問機関でございます法制審議会において、建てかえ要件の明確化のための審議をしております。その中で、老朽化の場合の要件としまして、今委員御指摘の三十年または四十年という数字が出ているところでございます。
 この三十年または四十年という数字の根拠についてお尋ねでございますけれども、まず一つは、現在、公営住宅法であるとか都市再開発法等によりまして、例えば、建てかえ事業を開始する場合の要件、それから再開発の要件等につきまして一定の年数要件がかかっております。
 一つ例を申し上げますと、例えば公営住宅法によりますと、公営住宅建てかえ事業という制度がございますが、そこで、建てかえ事業を開始する場合の要件の一つとして、耐火構造の住宅の耐用年数は七十年とされておりますけれども、住宅の耐用年限の二分の一程度を経過することを一つの要件としているというような例がございます。まず、このような幾つかの法で定められた数字を参考にしたということが一つでございます。
 それから、もう一つは、マンションの建てかえに関する、これは国土交通省の実態調査でございますけれども、これまでに実施された老朽化を理由とするマンションの建てかえの事例では、築後三十年から四十年で建てかえられたケースが多いという調査結果が報告されている。
 このようなことを参考にいたしまして、案におきましては三十年または四十年という数字をお示ししたということでございます。
津川委員 ほかの法案の中の規定と、もう一つは実例という話であろうかと思います。
 老朽化を一つの要件とした建てかえの実績が三十年から四十年というお話でありますが、その場合の老朽化は、いわゆる社会的な老朽化というものがあります。
 いわゆるウサギ小屋でよかった時代、よくはないんでしょうけれども、であった時代と、さすがに今それにだれも住みたくないよという時代の変化によりまして、それは例えば建物として物理的には老朽化が必ずしも進んでなかったとしても、これは建てかえなきゃもうだれも住みません、今住んでいる人も何とか建てかえてほしいと、そういう状況もあろうかと思います。
 そういった意味で、実例として三十年、四十年とおっしゃいますが、これは必ずしも物理的な老朽化ばかりではなかったと思います。その具体的な内容については今ないかもしれませんからお伺いをいたしませんが、そういった意味で、老朽化といっても、大きく分けてその二つの分け方があるのかなというふうに私は思います。
 もう一つの、法律の方です。公営住宅法と、あと都市基盤整備公団法、これで三十五年というふうな話がございました。
 ただ、私がいただいている資料は、これは建物区分所有法改正要綱中間試案補足説明というものでありますが、その中によりますと、これを読む限りでは、「住宅の耐用年限の二分の一を経過すると、住宅の老朽化が進行して、防災安全上の問題が生じるようになり、」云々というふうに書かれております。そして、これは公営住宅法なんですが、耐火構造の住宅の耐用年限は七十年、これを二分の一にしますから、三十五年ということであろうかと思います。
 ただ、法律の専門家がお見えですからお伺いいたしますが、この書き方ですと、住宅の耐用年限の二分の一を経過していることを建てかえ事業を開始する場合の要件の一つとしている。この読み方からいくと、これは逆に、三十五年の前にはこれは要件に入らないんですよ。今説明いただかなかったけれども、都市再開発法の第一種市街地再開発事業の方で、鉄骨鉄筋コンクリート造または鉄筋コンクリート造の建物で用途が住宅であるものの耐用年限は四十七年。そして、その建てかえの目安、ちょっと幾つかありますが、目安として、耐用年限の三分の二を経過している建物を、老朽化が進行し、近い将来建てかえられる蓋然性の高い建物と位置づける。四十七年の三分の二は三十一・三年です。しかも三十一・三年を目安として、近い将来建てかえる蓋然性が高いんです。
 つまり、法律を見た限りでは、三十年という数字は絶対出てこないんです。三十五年以降じゃなきゃだめですよという法律と、三十一・三年を過ぎた少しのところぐらいかなという法律。これらの法律を参考にして、なぜ法律の専門家の方々が、三十年または四十年、三十年と言う方がいらっしゃるのか非常に不思議です。
 お答えできますか。
原田政府参考人 これは議論をする際の一つの目安ということでございまして、公営住宅法であるとか都市基盤整備公団法であるとか都市再開発法であるとか、この数字を全くそのまま使うということではもちろんないわけでございます。一つの目安として使用したということが理由でございます。
 それから、先ほど申し上げましたように、実態調査によりましても、築後三十年から四十年の間で建てかえをされるケースが多いということも参考にしたということでございまして、それらの事情を考慮して、三十年または四十年という一応の案を示しております。
 ただ、これは申すまでもございませんけれども、現在、中間試案ということでパブリックコメントに付しておりますので、この数字を皆様にお示しする際に、今申し上げたような事情を考慮してお示ししたということも説明をして、それで御意見をいただきたい、このように考えているところでございます。
津川委員 そちらの審議会の方では、この法律から引っ張ってきた書き方としては、「法令においては、建物を維持することが不合理となるような事態が生じ得る年数として、おおむね三十年から四十年の間を想定しているのではないかと思われる。」と書いてあります。
 この書き方からすると、確かにそのとおりなんです。三十年から四十年のどこかに入っていますねと。ただ、三十年と四十年というふうにはならない。この間に法的な基準がある場合に、その前に持ってくるというのは非常に、少なくとも法律から引っ張ってくるのは不自然だろう。
 それから、先ほどの、実例という話もありましたが、実例の中には社会的老朽化も含まれるでしょうから、そこから見ても、三十年、四十年という数字は余りにもちょっときついのではないかなと。意見として、三十年、四十年を二者択一の議論と限定するべきではないという御意見も出たようであります。そのとおりであろうかと思います。
 物理的老朽について少し指摘をさせていただきます。
 コンクリート構造物の耐用年数として見た場合の老朽化。私は、昨年の十一月の当委員会で本州四国連絡橋についてお伺いをいたしました。そのときに、道路橋の耐用年数については超過確率の考え方を入れて耐用年数を出していると大石道路局長からお答えをいただきました。
 例えば本四連絡橋では、地上部の橋梁にその考え方を適用し、本四基準で、風速及び地震に対して百年の非超過確率五〇%、再現期間百五十年、道路橋、鉄道橋の併用部材においては、その疲労の照査において百年の繰り返し荷重に耐えられるよう設計されている、結論として、本州四国連絡橋の耐用年数は百年ですというお答えでございました。
 本州四国連絡橋は鋼製の橋、鉄の橋でありますから、もちろんこれと同じ話をするわけではありませんが、コンクリートの部分もございます。コンクリート構造物といいますと、一般的には百年という言い方がございます。これはなぜかというのが幾つかあります。今の、もちろん超過確率の考え方も場合によってはあり得ますが、もし建物の話であれば、むしろ多いのがコンクリートの劣化であります。
 コンクリートの劣化については幾つか要因がございます。一つには、一番基本的なのは酸化であります。コンクリートそのものがまずアルカリ性のものでありますが、コンクリートのすき間を通して中の鉄筋に空気が触れた場合、あるいは水が触れた場合、中の鉄筋がさびる、中の鉄筋がさびればそのコンクリートの強度が急激に落ちるというのは常識でございます。
 そういった考え方で、仮にすき間がなくても、アルカリ性ですから、いろいろな要因によって中性化をしていく、それだけでも中の鉄筋が腐食をして、耐用年数が来ると壊れてくるという話であります。
 その一般的な考え方としては、大体一年間で三ミリでしたっけ、専門家がいらっしゃるからあれですが、基本的なマンションの建て方の、厚みから考えると、コンクリートと鉄筋の距離から考えれば、この距離だけから計算すれば九十年ですよね、コンクリートの耐用年数。まさにコンクリートだけの耐用年数ですけれども、ほかが崩れたらマンションとして当然使えませんが。一番大きな部分で、コンクリート構造物として考えた部分は、その部分が非常に大きくなります。
 しかし、実際にマンションが老朽化する、三十年たって、あるいは三十年たたないのに危険になってくるというのは、原因は何か。これはコンクリートそのものというよりも施工不良です。
 JR西日本の山陽新幹線のトンネルの天井がはがれたり何とかというときに随分話題になりましたが、コンクリートはセメントと砂と水でありますが、その砂に川の砂ではなくて海の砂を使ったことによって、塩性、つまり塩が含まれていて、さびが早くなった、だからそもそも設計された耐用年数の前に劣化が始まった、こういう話がございます。これは明らかに施工不良であると言っていいと思います。
 こういったこと、あるいは、そもそも生コンの打ち方が悪いがためにジャンカが発生したり、あるいは水をあえて多くしてシャブコン状態にするですとか、業界としてはそういうものがいろいろございまして、やっちゃいけないんですけれども。そういうものが仮に行われれば、コンクリート建築物、九十年もつとか百年もつと言われても、その前にコンクリートそのものが劣化してくるということは当然あり得ます。
 ただ、一方で、施工不良がなければ相当長もちするでしょうし、アルカリコンクリートの酸化について、例えばリフレッシュ工事、またアルカリ性に戻すという作業がございますから、こういったことを、まさにしっかりメンテナンスをして続ければ、コンクリート構造物は相当長い期間長もちをいたします。
 そこでお伺いをいたしますが、どうも国土交通省の中では、これはマンションに限った話ではございませんが、耐用年数についてどうもはっきりとした数字をお持ちではないように感じます。建物によって違うということはもちろん一つの結論でしょうが、少なくともマンションに関しては、めどとしてこれ以上もつように設計あるいは施工しなければなりませんよと、こういった指針は出して当然だと思います。
 いろいろな数字が出ておりますが、例えば建築学会からは、四十七年ですか、そういった数字が出たり、六十年という数字が出たり、百年という数字が出たり、いろいろございます。先ほど御説明いただいたように、今、いろいろな法案によると、七十年であったり四十七年であったり、いろいろな数字がある。
 そこでお伺いしますが、旧建設省時代に建築物の耐久性向上技術の開発というものをされたというふうに伺っております。どのような研究結果を得られたのか。できれば、マンションは建築物ですから、建物の物理的老朽と社会的老朽に分けて御説明をいただければというふうに思いますが、いかがでしょうか。
三沢政府参考人 耐久性の問題に関しましては、幾つか私どもも研究しておりまして、一つは、今先生から御指摘ありました建築学会とほぼ同じような趣旨の研究を、これはたしか昭和五十年代の後半でございますが、やっております。
 そこで、今お話の中にもございましたように、一般的には耐用年数を六十年ぐらい、さらに高耐久性のものについては百年ぐらいにする、そうするためにはどういう設計施工をしたらいいんだろうか、そういう指針をつくっております。ですから、その点の考え方については、先ほど申し上げました建築学会で出された研究とほぼ同じような内容のものを設計指針として出しているということでございます。ですから、それはあくまで、六十年なり百年にするためにはやはりこういうふうにしなければいけませんよという、ある意味では一つの目標を示したものだというふうにお考えいただきたいと思います。
 ただ、これはもう釈迦に説法でございますけれども、現実に常にそのとおりの設計施工が行われているわけではございませんので、現実にあるマンションなりが常に六十年というものが確保されているかどうか、これはまさに個々のマンションのいろいろな設計とか施工、あるいは、さらに管理の状態とか、それからいわゆる気候、その地域の気候とか、そういうものによってかなり影響されるというふうに言えるかと思います。
 それから、さらに、そういうものを踏まえまして、いわゆるスケルトン・インフィルについての技術開発、調査研究というのをやっております。
 今もおっしゃいましたように、躯体は仮に百年もっても、内装なり設備がその間にやはり老朽化するなり、社会的ニーズに合わなくなってしまう。そのときに、全部躯体を取りかえてしまうのではやはり大変なので、スケルトンはスケルトンとして、躯体は残しながら、中のインフィルを取りかえていけるような、そういうようなやり方の技術開発というのも進めておりまして、こういったことで、マンションを含めた建築物の耐久性ということについていろいろな研究をし、さらに具体化を図っているところでございます。
津川委員 今のお答えですと、昭和五十年の後半にやっているんですよ。今から十年以上前の話ですよね。その段階で、六十年、もしくは頑張れば百年というような、そういう話で、建設省がもう出したはずなんですよ、技術的に。
 しかし、まさにそのスケルトンというのは社会的老朽の話が入ります。間取りが、昔はこうでよかったけれども、だんだんいろいろな需要の変化によって変わってくるとか、デザインが古くなってきたから新しくしたいとか、そういうときに、建物そのものを一々壊すのではなくて、スケルトンの部分、躯体の部分は残して、内装ですとか中の設備に関して変えていく。これは非常に建物を長もちさせて、非常にいい話であろうかと思います。
 そういった意味で、国土交通省、本当はやっているんです。やっているんですから、やらなきゃだめなんですよ。こんなと言ったら怒られますが、法制審議会にこんないろいろな法律から推定して三十年かな四十年かななんて言わせないで、国土交通省は、建設省時代の研究あるいは最近のスケルトンの研究からいっても、相当長くできるんだと、長くやりなさいというやり方はできていいと私は思います。
 もちろん、そうじゃなければだめだという法的な制限等々をどういうふうにかけるかは、技術的な問題でありますし、まさに、その土地の気候、風土ですとか、あるいは超過確率みたいなものを考えれば、大きな地震があったときにどうするかとか、台風が来たときにどうするかという話がありますから、そう簡単に決められるものではないのはよくわかった上で言っておりますが、まさに建設省で研究をして、六十年あるいは百年という数字を出したんです。これはもう十年以上前です。ですから、そこについて、私は、もっと研究をして、出すべきだと思いますよ。
 今現在あるストックのマンションが、三十年しかたっていないけれども、これは確かに建てかえなければならないという判断については別個あると思います。ただ、これはまさに建てかえの話ですから、これからまた新しくマンション建てるわけじゃないですか。そのときに、こういう、まさに今おっしゃったような話で、六十年、百年もつようなものにしなければならないとか、あるいはスケルトン構造、まあ、そうでなければならないかどうかは別として、社会的老朽化も防げるような設計のものにしなければならないということをこの法案の中に入れてもいいぐらいだと私は思うんです。まあ、これは法の設計上は入らない、別の法案かもしれませんが。
 まさに先日、各委員の皆様方が指摘されたように、三十年、四十年は短いじゃないかというのが、これはごく一般的にも言われることであります。技術的にはもっと長いというのは、国交省ももう既に十年以上前に出されたことです。しかも、社会的老朽に関しての研究もされているんです。
 ですから、そういったものに関しては当然、今、法制審議会で区分所有法の議論をしているときに、ほったらかしにしていちゃだめだと思いますよ。別の法案から持ってきたとか実例から持ってきたとか、そういうことではなくて、今現状の、建てかえが必要であるかどうかの判定というものは一方で必要であるにしても、マンションの建てかえ決議云々という、これは一般論として議論するときには、これは実際にはもっと長くすることができるんだということぐらいは、しっかり国土交通省として言っていただかなければいけない。建築学会が六十三年に示しましたなんというものをいまだにやっているようじゃだめなんだと思います。あんまりきつく言うと怒られますが、そういうふうに思いますので、せっかくそういった研究をされているわけですから、ぜひやっていただきたいと思います。
 それで、アメリカ、イギリスとよく比較する話がございます。アメリカ、イギリスは百三年とか百四十年とかいうけれども日本は三十年だ、これは短い、短いという言い方があります。ただ、これはまさに超過確率の問題がございまして、日本は地震大国です。百三年、百四十何年という建物があれば、その間に受けるであろう風水害、風ですとかあるいは地震にどれだけ耐えるかということから考えれば、そう簡単にアメリカやイギリスと同じようになるとは思いません。また、文化的な背景から、必ずしもそのようなものをこれまでの日本は求めていなかったということも一方であるのかもしれません。
 そういったことから、必ずしも一緒にするわけではありませんが、やはり、日本のマンションを例えば六十年とか百年とかいうものにしていくべきだということになったときに、私は当然、免震技術というものが必要なものであり、避けて通れないことだと思います。
 最近のマンションで免震マンションなんというものが随分出ております。そこでお伺いをいたしますが、免震マンションというものが実際今どのくらい建てられていて、新築の中で最近はこのぐらい割合がふえてきたですとか、そういったものもいただければありがたいんですが、そういった数字、あるでしょうか。
三沢政府参考人 免震マンションにつきましては、現在、全国でおおむね三百棟程度あると推定しております。免震構造は、一番最初は昭和五十八年ぐらいには出現しておりますけれども、平成七年の阪神・淡路大震災以降、非常に数がふえてきているというふうに聞いております。
津川委員 免震マンションというのは、地震に対して安心だという意味での付加価値が高くて入居される方が多いということも当然あろうと思います。今、各建設会社さんが免震マンション、それぞれの技術でやっておりますが、そういうやり方をしていることの背景は、まさに阪神大震災のあの悲惨な状況を見て、免震マンションであれば、仮に阪神・淡路大震災級の地震があったとしても大丈夫だ、こういう言い方をすれば、これは住む側としては付加価値としては大変高いものになろうかと思います。ただ、そういった視点だけではなくて、マンションが何年もつのかという話をするときに、この免震という技術も当然想定するべきではないかということであります。
 住宅局長が御専門かどうかちょっとわかりませんが、耐震と免震の違い、どういうふうに認識をされていますか。
三沢政府参考人 私の理解を申し上げますと、免震というのは耐震の工法の一つでございまして、免震というのは鉄筋造やあるいは鉄筋コンクリート造の構造体の基礎部分に積層ゴム等を用いた免震装置を設置したものというふうに理解しております。
津川委員 確かに、ダンパーを使った建物、それが免震の建物ですが、免震は耐震の中の一つです。確かにそうであります。
 ただ、これまでの日本の建築学界の中で、あるいは耐震というものを専門とされている方々の中で、これまでの耐震設計というものと、ここ二、三十年の間に出てきました免震というものは思想が全く違います。
 どういうことかといいますと、いわゆる過去の耐震と言われるものは、揺れという力に対してどれだけ耐えることができるか、まさに耐震でありますが、十階建て、二十階建てでも、上の方がこのぐらい加速度がかかる、でもそれだけ加速度がかかって変形しても崩壊しない、壊れないという建物をつくるという発想がこれまでの耐震の考え方です。今でももちろんありますが。
 免震というのは、その地震の揺れをエネルギーとしてとらえる。地震の揺れをエネルギーとしてとらえると、実は、カロリーですと非常に少ないんですね、二千とか。だから、よく、男性が一日に必要なカロリーなんと言われますが、その程度のカロリーなんです。そういった意味では非常に少ないんです。そういったエネルギーとしてとらえるようになり、それを、では例えば熱という形に変換したらどうなるか。二千ですから大した熱ではありません。そうであるならば、それをそのまま放出しても問題ないだろう、つまり、二次災害はないだろうという考え方から出てきたのがダンパーです。つまり、ゴムと鉄のこういうダンパーというものによって、揺れて何が起こるかというと、ここで熱が発生するわけです。熱が発生することによってエネルギーを変換するという考え方です。ですから、これまでの、揺れに耐えようというものと、エネルギーを別のものに変換しようというのは、発想からして全然違うんです。この考え方でいけば、私は、建物は、地震に対するということに関しては、耐用年数は相当安全と見ていいというふうに思います。
 そこの発想の転換があったのが二、三十年前ですね、学界でも必ずしももちろん最初から支持された考え方ではないというふうに伺っておりますが。そういった考え方が、本当に長い建物をつくろうというときに、少なくとも日本においては非常に不可欠な考え方だと思います。各建設会社さん、私も現場にいましたから知っていますが、実は、それぞれまだ大分違います。必ずしも成熟した技術とはまだ言えない段階かなというふうにも思っております。
 今後、例えば、先ほども言いましたが、マンションを建てかえるんだ、今後新しいマンションに建てかえる、そのときの新しいマンションはどうあるべきか。これは、そもそも、日本の国の中でマンションというのはどういうふうに位置づけるかということであろうかと思います。その中で、例えば、今後、今回の国会の中でもかかるようでありますが、例えばバリアフリーですとかシックハウス対策ですとか、そういったものもマンションの中に恐らく入れていかなければならない発想であろうと思います。
 それから、耐震というものも今現在入っておりますが、それも、耐震というものから、もう現場はどんどん進んでいるわけですから、業界はもう免震の方に進んでいるわけですから、免震というものを想定した考え方をすれば、マンションというのも、これまでのマンションの耐久年数、耐用年数、老朽化というものとは随分違うものになろうと思います。
 それから、先ほどの、コンクリートの劣化をもとに戻すリフレッシュというものも、構造上できなければこれはできません。そういったものを最初から前提とした構造にしなければできません。そういったことを建設する段階にやらない限り、これは後で何とかしようとしてもなかなかできないわけですね。
 そういうことを、まさに今これからどんどん建てかえていかなければならない、建てかえ事業が急増するんだというときに、今やらなかったらこれはいつやるんですかということであります。実際に、その辺のところも相当入れたものを今後の政策の中でぜひとも出していただきたいというふうに思います。
 最後になりますけれども、この法律の実効性についてであります。
 先ほど私が申し上げた中では、民間ディベロッパーにとっても、賃借人あるいは区分所有者にとっても相当いい法律でありますから、これはなかなか円滑化が進むんじゃないかなということを申し上げましたが、一方で、どうしても気になるのが、建てかえ決議に最初から参加されない、あるいは反対をされる方がいらっしゃったり、権利変換計画に合意をしない組合員の方がいらっしゃったりということも想定をされております。その場合は、売り渡し請求というものをそれぞれ組合設立後の二カ月以内、あるいは議決に関しては決議後二カ月以内に請求を出すことができる、この請求を出すことによって権利変換が同時に行われるということでありますから、これは非常に円滑化されるように見えます。確かに権利という意味ではそうでありますが、これは、反対者の意向に反するといいましょうか、反対者の意向にかかわらず権利は移転する、そして計画を進めることができるということで、これはある意味で、まさに円滑化の最大の重要なポイントであろうかとも思います。
 しかし、先日も我が党の委員も質問しましたが、この時価というものがはっきりしません。この時価についてどういうふうに想定をされているか、お答えをいただければと思います。
三沢政府参考人 この時価につきましては、おっしゃるとおり、法律に時価とはどういうものかということは書いてございません。これは、いろいろな法律で時価というのを引用しているのが多いわけでございますが、それは、やはりすべて時価の中身まで書かなくて、結局、時価というのは、そのときそのときの運用といいますか、取引事案の集積とかあるいは収益還元とか、いろいろなことを総合的に勘案して決めていく、最後、本当に争いがあるときは結局民事的な裁判の中で決められていく、こういう性格のものとして法律上にはいつも時価と書いてあるということでございます。
 今回も、いろいろ御議論はあるかと思いますけれども、そういう通常の法律用語としての時価という用い方をさせていただいているということでございます。
津川委員 まさにそうなんだと思います。時価というふうには書いたけれども、実際幾らになるかは全くその場その場のケース・バイ・ケースでしょうし、当事者の間で、反対だけれどもこのぐらいでいいよというふうに和解が成立すれば、それの金額がこの法律で言うところの時価という形になろうかと思います。
 それが実際に売る金額ではないものですからなかなか非常にわかりにくいわけでありますが、そもそも、計画に反対をされたり、この計画そのものもそうですし、建てかえ決議にも反対されるような方が、いろいろな状況はあろうと思いますけれども、時価と言われるような、恐らく相当安いお金になろうかと思いますけれども、そのお金だけもらえば、いや、私は出ていってもいいですよという方はなかなかいらっしゃらないかもしれない。それはある程度想定をしなければならないことでございます。実際に売り渡し請求を受けたということによって権利は持っていかれます。しかし、時価についての金額は定まっておりません。いろいろな交渉の中で、このくらいでどうだ、いや、だめだ、だめだと。最終的に金額が定まらなかったときには、今おっしゃったとおり、民事裁判に持ち込まれるということに最終的にはなろうかと思います。
 そこで、裁判はどのぐらい時間がかかるんですか。これもわかりません。要するに、一般的には時間がかかるんです、何とも言えませんから。仲介に組合が入るとかなんとかといろいろありますけれども、あくまでも反対者の方が、嫌だ、引き渡しはできませんと。つまり、権利がないわけですからある意味不法なのかもしれませんけれども、そういう状況があったとしても、まさに行き先がないかもしれない、その行き先についてある程度手当てをしたとしても、私はどうしてもここに住んでいたいんだ、移るわけにはいかないんだ、理由は何であれ、とにかく嫌なんだということがあったとしても、これは裁判に持ち込まれたら相当時間がかかりますよ。
 この流れの中で、例えば権利変換計画の決議がなされて、売り渡し請求は決議後二カ月以内、二カ月たてば自動的に権利は確かに組合の方に移りますが、その方が同意しない。例えば組合員の方がいつ出てくれるかは、これはやはり何とも言えないんですよ。これは、やはりある意味で今の現状と変わっていないんです。
 こういう円滑化法なるものができたとしても、私は立ち退きませんという方がいた場合、このマンションの区分所有法上の問題からいくと、行政代執行で出ていってくださいという形は多分できないと思うんです。裁判を、どのくらいかけるかわからないけれども、それをかけて、最終的に和解勧告を双方がのめばいいですけれども、のまなかったらどうするか。そういう状況まで考えたら、それは別にそんなに珍しい状況じゃないと思います。非常に想定しやすい話です。とにかく嫌だという人がいた場合、一人でもですよ、いた場合どうなるか。計画そのものが塩漬けになるんじゃないですか、どうでしょう。
三沢政府参考人 おっしゃるとおり、最後まで反対するという方がいた場合には、最終的にはやはり裁判で解決しなければいけないという限界はあるわけでございますが、ただ、やはり今回の法律の中で、明確に、建替組合というものがきちっとまず権利を取得できるということを法律上明記したということと、それから一方で、そういう反対者の方々に対して、本当に住宅にお困りになるのであれば、いろいろな手当てを用意して、そういうことをあわせまして、全体でできるだけ円滑化するような方策をいろいろ講じていくということでございます。
 ここは、最後どうしても裁判に行くということはいろいろな法律でもございますけれども、やはりそこは一種の限界ではございますけれども、今までの建てかえでそういうようないろいろな措置がないことに比べれば、はるかに円滑に進みやすくなるという点は評価できるんではないかというふうに考えております。
津川委員 その決議に参加されない方ですとか反対される方ですとか、計画に同意されない方々、基本的には何らかの事情があるわけですから、その事情に対して方策を、手当てをとれば、何らかの、立ち退いていただくなり参加していただくなりというようなことになるというお話だと思いますが、別に理由は何でもいいわけですよ、反対される方は。何かわからなくてもとにかく反対だという方がいた場合、やはりこれはうまくいかないじゃないですか。法律の目的ですとか内容、非常によくできているし、でき過ぎじゃないかという部分もあるのではないかということを申し上げたぐらいですが、そこまでやっても、でも、とにかく嫌だという人が一人でもいたら、実はこれはうまくいかない。実効性という点でやはり疑問符がつくのかなというふうに思います。
 特に、その方が別にそんなに理不尽なことで言っているんじゃなかったとしても、個人的な理由ですぐには今同意できないんだ、あるいは、同意したいけれどもすぐには今移れないんだ、いろいろな事情によってちょっと待ってくれ、ちょっと待ってくれと、少しずつでも時間がかかるとどうなるか。方向性としては何とか前に進んでいるように見えますが、やはりこの計画でいくと、時間をかけるのは相当まずいですよ。つまり、今不動産物価がどんどん下がっています、基本的に。時間をかければかけるほど、計画どおりの値段で売れなくなる可能性があるわけですよ。そうすると、計画そのものがうまくいかなくなる。計画を直さなきゃいけなくなる。時間がかかることによって、最初同意した方々も、いや、ちょっとこれは困ったことだなということに、結局今の状況と余り変わらないんです。そういう状況が、やはりこの法律ができたとしても、非常に想定しやすいものとしてあるということは指摘をさせていただきたいと思います。
 それで、ただ、いろいろな状況が想定されますから何とも言えませんけれども、多くの場合、何割かわかりませんが、この法案ができることによって少しは前進するということもあるのかもしれないというふうに、私は実はそういう認識をさせていただいております。
 やはりこの計画そのものがちょっとおかしいんじゃないのかなと思うのが、余剰床をつくってそれを売るという話ですが、これから人口がどんどん減っていく中で、本当にそのマンションを買いたいという人が常に出てくるのかどうかというのも疑問です。大臣がこの間おっしゃった話の中では、地方に行った方が、通勤時間が長いからやはり東京に帰ってこよう、都心に帰ってこよう、こういう話は当然あると思いますが、地方においてはありません。逆です。どんどん人が減っちゃうわけですから、マンション建てかえはこのスキームじゃ非常に難しいという話になると思います。
 全体的に人口がどんどんふえている状況であればこういうやり方もあり得るでしょうけれども、今の状況、今後の状況から考えれば、実は、これでできるのは、東京ですとか大阪ですとか名古屋ですとか、大都市圏の中心部、そういったところに結局限定されるのかなと。地方都市の中心部もあるかもしれませんが。
 実はこれ、最初にいただいたレジュメの中の太文字になっているところ、「背景」というところで、マンションストックの総数がこのぐらいになった、それから三十年以上のマンションがこのぐらいになった、どんどんふえていく、「マンション建替えの円滑化が、都市の再生と居住環境向上の観点から急務。」だと。だから、都市の再生の発想から考えて、都市の中心にどんどん皆さん来てください、その住むためのマンションをこれで提供しましょうという発想があるんだとしたら、これは、ひょっとしたらですよ、これからつくられるマンションが仮に六十年、百年もつものだとしても、その期限が来たときに結局今と全く同じことが起こるんです。建てかえ、どうするんですか。
 そこで、これは個人的な見解もありますが、マンションを所有することにそもそも若干無理があるんじゃないかなというのが正直ございます。定借で借りた方が、期間が決まっている、つまり、建物として建てかえなければならないという期間が決まっている場合でも、定借で借りていただくのであれば、いろいろな契約の中でどんどん活用していくということもあり得るでしょうけれども、所有していただくというのを前提にするやり方は、実はちょっと難しいのかなというのは正直感じます。今喫緊の課題としてどうするかという、対処としては必要な話ですが、これをやっても、要するに、言葉は大変悪いですが、問題を一時的にしのぐ、先送りするにはある程度の効果はあるかもしれませんけれども、本質的な問題の解決にはやはりなかなかならないというふうに思います。
 先日の当委員会で、私どもの民主党の委員から、他党のほかの委員の皆様からも御指摘がございましたが、当法案の以前の問題であります区分所有法の建てかえ決議ですとか、あるいは私もきょうも申し上げましたが、法制審議会の区分所有法改正論議について、こういったマンションというものそのものが持つ大変難しい問題であります建てかえ、こういった問題に対する指摘が随分ございました。要するに、この法案の必要性は十分認識をいたします。建てかえ決議がされた後、組合のしっかりとしたものが決まっていなかった、権利の変換がなかなかうまくいかなかった、それを円滑化しよう、そういう意味でのこの法案の存在意義は十分認識をします。
 冒頭申し上げたとおりでありますが、マンションの建てかえというのは、必要であるとともに、相当慎重に考えなければならない部分もあろうかというふうに思うわけであります。やはり、マンションのあり方そのものについて、どういう位置づけなのか。つまり、一戸建て、ほかの建物、住み方、所有するかあるいは借りるか、定借で借りるかといったものをすべて含めて、住宅政策の中でマンションをどう位置づけるかということがない限り、これは先送り先送りになってしまう。最後のところでは、結局似たような問題が出てきてしまう。
 今考えれば、建てかえを要する築後三十年以上のマンションが、平成十二年で十二万戸、二十二年で九十三万戸、どんどんふえてくるというような状況になったときに、このような法律をつくるということ自体がちょっと奇妙に感じます。建てるときに、もうある程度想定できたんじゃないですかという話です。
 高度成長期時代にせっせとマンションを建てながら、それが老朽化したときのことを考えていなかったというのは、やはり、今考えればですが、少し配慮が足りなかったのかなというふうに言わざるを得ない部分もあろうかと思います。これから再建されたり新築されたりするマンションが将来どうなっていくのかという問題も、やはり先送りするのではなくて、今の段階、まさにどんどん建てかえをしていかなければならないという今の段階に十分な議論をしていかなければならないというふうに思います。
 実は、私ども民主党は、まさにこの点について、自画自賛ではございませんが、相当骨太の住宅政策というものを現在検討中でございます。こういったものをそう遠くないうちに出させていただくという気概で今取り組んでいるということを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
久保委員長 井上和雄君。
井上(和)委員 おはようございます。民主党の井上でございます。
 本日もまた、大臣、よろしくお願いいたします。
 今、津川委員からお話がありましたように、このマンションの建てかえ問題、非常に大きいし、難しい問題だなというのを、私、本当に今つくづく感じております。急遽この質疑に立つことになりまして、当初は、この法案は非常にいい法案です、これでマンションの建てかえがどんどん進んでいけば、東京の町並みもよくなるし、非常にいいことだなというふうに私は考えておりました。しかし、このマンション建てかえ問題というのを、各委員の質疑を聞きながら、また自分なりにちょっといろいろ数字を見ていますと、これは生易しい問題じゃないということが、まず私の今の偽らざる実感です。
 先ほど大臣がおっしゃったように、四百万戸マンションがある。そして、十年後には、築三十年以上を経過したマンションは約百万戸、正確には九十三万戸になるわけですよね。今回の円滑化法案で多少は建てかえができるんでしょうけれども、ネズミ算式に古いマンションがどんどんふえていくという状況になってくる。これは、もう国土交通省としても本当に真剣に取り組まなきゃいけない。だからこそ、こういう法案を出されたと思うし、それに関しては非常に評価をいたします。しかし、津川さんが先ほどおっしゃったように、本当に、これだけではとてもこの問題に対処できる状況にはないし、こういった状況はもっともっと今後非常に厳しいことになってくるということだと思います。
 そこで、ちょっと数十年昔に返って、こういったマンションがつくられてきた時代、つまりは、高度成長の時代で、マンションがつくれば売れるという経済環境の中で、サラリーマンの方、どちらかというと仮住まい的な気持ちでマンションを購入されたと思うんですね。しかし、昭和四十年代、三十歳ぐらいのサラリーマンが、価格的には年収の五倍以上、そしてほとんどの方が三十年から三十五年の住宅金融公庫のローンを恐らく組んで購入していると思うのです。そして、ローンの支払いにずっと追われながら、やっとローンを支払うことができた。子供の教育費もあったし、本当に大変だった、そして、そのやっと買った、自分のものになったマンションというものは、広さでいえば平均五十六平米だ。また、五階建てなのにエレベーターもない。しかし、ぜいたくは言えないな、とにかく自分のものになったんだから、これで会社も定年になるし、年金生活でしていかなきゃいけない。しかし、まあ、自分の住むところがあるから、何とか年金でやっていくことができる、一安心だなんていうふうに思って、数十年間、三十五年間一生懸命ローンを払ってきたかいがあったな、そういうふうに思っているマンション所有者サラリーマンがほとんどだと思うのですよね。
 ところが、建てかえなきゃいかぬ、またお金がかかる、ローンを組んで借金をする。そうしたら、もう年金の中から死ぬまで返済を続けていかなきゃいけない。人生設計もう一回一からやり直し。これは、私は、もう人生の悲劇としか言えないと思うのですね。恐らく、私は、これを外国人の友人に言ったら、これは喜劇だと言うと思うのですよ。
 一体何でこんなことになっちゃったのか。さっき津川委員が指摘したように、本来もっともつものが、施工不良であったり、海砂を使ったためにコンクリートが早く劣化しちゃったとか、いろいろな問題があったんでしょう。しかし、そういったことを、我が国の住宅政策の責任機関であった建設省がきちっと考えていくことができなかった。そして、まさにそのツケが、三十年、三十五年先の今起こっている。こういったほとんどの多くのマンションに住んでいる勤労者の中に人生の悲劇を引き起こしているというふうに私は思うのです。
 私は、我が国の住宅政策の貧困は本当にひどい、日本の住宅というのは開発途上国並みじゃないかということを常々思っているのですけれども、一体何でこんなことになっちゃったのか。我が国の住宅政策の欠点を本当にきちっと見詰めて、さっき津川委員も指摘したけれども、今もマンションはどんどんできているのだから、それがそうならないようにしなきゃいけない。まさしく、そういったこれまでの住宅政策の欠点を見据えた新しい政策を考えていかなきゃいけない。レッスンですね、教訓を学んでいかなきゃいけないというときにあると思うのですけれども、大臣にぜひ、大臣として一体どういう教訓を学んだか、そして今後どういうふうにしていきたいかということを、ちょっと一言言っていただきたいと思うのです。
扇国務大臣 全く違う観点から申し上げたいと思います。
 私、かつて、キャンピングカーに乗りまして、アメリカの北部をずっと横断、イエローストンからですから半分ですね、ロッキー山脈等々を回りまして、そのときに言われました。国民性の違いがどの程度あるか。
 アメリカの皆さん方は、なぜ日本人は一生かかって働いたお金を全部住居につぎ込むのですか、しかも、つぎ込んだその家に子供や孫は住まないじゃないですか、こんなばかな人生、どうして日本人はやるんですかと質問されました。
 では、アメリカ人はどうか。私たちはそんなことしません、退職金のうちの一部、千五百万から三千万でキャンピングカー使ったら立派なものができます、寒いときには南へおり、暑いときには北の涼しいところへ行って、孫や子供たちには一年に何日か会えばいいのですと。基本的な住まいに対する認識が、日本とアメリカと全く違いますと。私たちは一生かけて働いたお金を、だれも後に住んでくれない家になんかにつぎ込みませんよ、それよりも人生を楽しみますと、千五百万から三千万で。とにかく、お金が欲しいなと思ったら、庭のスプリンクラーで一生懸命芝生の水まきをしてお金をもらう、川へ行って魚をとって、夫婦だけで食べられる、どこへ行っても私たちはそれで十分人生を楽しんで、いろいろなところへ行けますと。
 設備が整っていることもさることながら、日本人は自分のマイホームを持ちたいという、この需要と供給のバランスというものが基本的に違う。狭い国土の中で、どうしても土地がない、でも自分の土地が欲しい。これはやはり国民性の違いであって、需要と供給がなければマンションも建ちませんし、家もできません。ですから、私は、根本的な日本人の国民性とアメリカのような合理主義的な考え方と、基本的に違うものを、全部行政でもって指導しなさいとか、行政でもってこうしなさいというのではなくて、国民のニーズに合った、私たちはその一番の気持ちを大事にしながら、行政で指導し、お手伝いできるところはどこまでか。そういうものが、きちんと国民性と行政の間に立つべき、どこまで行政が介入するか、あるいは国民性の需要をどこまで私たちが受け入れるか、私はそこの差だと思うのですね。
 ですから、今おっしゃったように、住宅政策が間違っていたじゃないかというのじゃなくて、住宅金融公庫だってそうです、戦後、何とかというので、今三割、三〇%、みんな供給してきたわけですね。ですから、それはやはり需要と供給のもので、マンションを建てるのは悪いとおっしゃいますけれども、全部国がマンションを建てているわけじゃないので、やはり需要と供給という、世情というものを考えながらやっています。
 ただ、その中で、この法案に関していえば、先ほどからも津川議員がおっしゃったように、長もちできて安くて丈夫なものをつくる。当たり前の話なんです。けれども、やはり、地震があったときと地震を経験したときとでは、建築基準法も変わる。そして、私たちは住宅の品確法もつくった。少しでもあるものを長もちさせて、国民が不安を感じないようにするための法案は一つ一つつくってきたつもりでございます。最初からきちんと、旧建設省が、こういう枠でこういうものをつくれよといって全国民に示すことがいいことなのか、あるいは国民の皆さんの所得に応じたものをつくっていくのがいいのか。そして、個人が自分の人生設計の中でこれを選ぶ。私は持ち家が欲しい、私はマンションがいい、いや私は賃貸にする、これは私、個人の選択があって当然だろうと思いますので、その人生設計の中でそれぞれを選ぶ。
 特に私は、国民性というものは、日本の場合は他の国と違ったものを持っていたということだけは、今総括的に御質問がございましたので、総括的にはそのように感じております。
井上(和)委員 大臣は非常に頭が鋭いですので、そういうふうにおっしゃいますけれども、お立場上そういうふうにしか言えないということで私は非常に同情いたしますが、やはり、現実にローンを払い続けてきた、苦労して払ってきた人たちがほとんどですよね。そういう人たちの苦しみ、痛みとか悲しみをぜひ理解していただきたいと思います。
 そしてまた、当たり前なことができなかったからこういう結果を招いているんじゃないかというふうに私は思うのですね。政治は結果じゃないですか。恐らくは、昭和四十年代にマンションを買った方々は、ずっと住めるからこれで安心だと思って無理をして一生懸命ローンを払ってきたと思うのですよ。
 そこで、まさしく、そうじゃなかったんだ、やはりそこに政策的な不作為があったんじゃないかと。あったというのは私は確かだと思うのですけれども、そこをしっかりお認めいただいて、やはり私は、この問題にとにかく真剣に取り組んでいかなきゃいけないんだという決意をしていただきたいのですが、決意の方は、では言っていただけますか、よろしくお願いします。
扇国務大臣 せっかくですから。井上議員がおしゃっることで、これとこれとは違うというふうに私は言っているんです。
 今までの政策が間違っていたというよりも、私は、今ちょっと、失礼ですけれども、何年生まれかなと思って拝見させていただいたのですけれども、私なんかは戦後の苦しさを知っております。まず、日本人は衣食住が足りなかったんです。ですから、せめて一応衣食住を足りるようにしようという戦後の今日までの政策の中で、全部一遍にできなかったことは当然だろうと私は思います。雨露しのぐようにという本当に苦しい時代があったわけですから、その中で、政府として助成できるものは何だろう、せめて国民が衣食住をできるようにしようという政策の中で、私は、そのときそのときに助成したり、あるいは都道府県と一緒になって援助してきたというのが現実だと思うのですね。
 それが、現在になってみると、あのときは粗雑だった、耐久性のないマンションも建てた、それがもう建てかえの時期になった。本来なら六十年、百年もつはずがといいますけれども、そういう意味では、政策としてその時期その時期に日本というのはやっとこれだけできたということだけは、私は、政策は間違っていたとは思いませんけれども、その中で苦しんでローンを払っている、そのこととこれとは違うので、基本的な政策のことを申し上げているので、ローンを払い続けた苦しさというのは、私はよくわかっていますし、私の息子も、今ローンを一生懸命払って困っていますから、二人目の子供が生まれるのにどうしようなんて言っていますから、それはよくわかっていますけれども。
 戦後の今日までの日本の状況を見たときには、これだけ衣食住が足りるようになって、しかも過食まで出てきたということになれば、私は、政策的に間違っていたというよりも、そうせざるを得なかったという日本の状況というものは、我々は戦後生きてきましたので、よくお若い皆さん方には理解しておいていただきたい。
 ただ、そのときに、一言言えることは、古いと思ったマンションでも、同潤会アパートというのは、大正末期の施工でも、今約七十五年ももっているのですね。そういうものもあるということからいえば、やはり建てかえ時期というものは建物によってもいろいろあるということと、私たちが戦後とった政策と、今困っていらっしゃる建てかえというのとは切り離して私は考えさせていただきたいと思います。
井上(和)委員 大臣、今、最後に同潤会のアパートのことをおっしゃいました。七十年もつ。そうなんですよね。先ほどの津川さんの話もありましたように、躯体がもつものは非常に多いと思うんです。私もいろいろ知人に聞いてみましたら、専門家に聞いても、もう十分そういうことは可能だと。
 例えば、今、住宅であればリフォーム、非常に盛んですよね。マンションリフォームも非常に盛んです。私も建築に興味があるものですから、よく住宅雑誌なんか見るんですけれども、本当にもうまるきり新築のような、間取りも、全部壁を取り払って変えて、新しいマンションと同じような部屋ができる。もちろん一軒家でありましても、よくテレビでも宣伝していますけれども、壁をずっと、外壁を張りかえたり張ったりして新しくなっている。
 この法案の、実際のマンションの建てかえの実効性というのを考えても、これは私非常に難しいと思います。もう既にいろいろな問題が出ています。だから、建てかえるということよりも、専門家の用語によれば、これはリモデリングということらしいんですが、リモデリングする。つまりは、今あるものをとにかく長もちさせるようにするための、日本語で言えば改修なのかもしれません。ただ、改修というよりはもっと大規模な、それこそ間取りを変えたりエレベーターを設置したりする。
 現在の古いマンションの状況を見ますと、非常に狭い。例えば五十平米ぐらいしかない。しかし、これは二部屋壁をぶち抜けば百平米になるわけですよね。そしてまた、エレベーターがない。しかし、エレベーターを外づけにして、今時々見ますが、公営住宅なんかでも外側にエレベーターをつくっている建物も出てきています。
 だから、そういう知恵といいますか技術的な力をもってすれば、建てかえではなくて、今あるものを使ってさらにそれをもう数十年もたすということも可能だと私は思うし、現実に建てかえというものができない状況にあれば、それしか選択肢がないですよね。
 今、国土交通省として、このリモデリング、どのように研究をしているんでしょうか。ぜひ御説明してください。
三沢政府参考人 まず申し上げたいのは、マンションを建てかえるのか、それとも改修によって使い続けるかという判断は、結局、やはり個々の物理的な劣化状況とかあるいは住戸面積とか設備の水準、こういうものに対して居住者ニーズがどうなのかと。要するに、自分たちで建てかえを本当に望むのか望まないのか、そういうことがまず基本にありまして、それが、その場合の投資、どのくらいお金がかかるのかということと、それによって得られる効果と、やはりそういう比較を総合的に行って行われるというものでございます。それで、当然、そういう選択肢の一つとして改修というのも非常に重要だということは、もうおっしゃるとおりでございます。
 私どもは、そういう建てかえと改修とどちらが望ましいかということを判定するためにいろいろな技術的な研究というものを進めておりまして、今回、この法律に基づいて基本方針を定めることになっておりますけれども、そういう基本方針の中で、国民、消費者の合意形成に資するようにきちっといろいろな手当てをするようにということを盛り込みます。その非常に重要な一つとして、建てかえか改修かということを判断できるような技術的指針をつくるということにしています。現在やっておりますそういう判定のためのいろいろな研究は、そこに生かしていきたいというふうに考えております。
 それから、なお、リモデルというのも、いろいろなリモデルがございまして、業者によっていろいろ違うわけですが、単なる住戸内のリモデルというのも相当ございまして、ここで言っている改修というのはそういうことじゃなくて、躯体そのものがもう相当なお金をかけないともたなくなっている、そういうものと建てかえがどっちがいいんだろうか、そういう比較検討をする話でございまして、住戸内を、いわゆる自分のニーズなり趣味に合わせて改装するという話とこれはちょっと全然違うものだというふうに御理解をいただきたいと思います。
井上(和)委員 それは、どうしても躯体がもたないということになれば、これはもう建てかえせざるを得ないと思うんですよ。ただ、外壁の補修をするとか、新たに例えばベランダの外側に外壁をつくるということも可能だということを、私、専門家からも聞いておりますので。
 ただし、やはり建てかえか補修かとなりますと、普通は、普通のうちでも業者さんに話すと、いや、すぐ建てかえた方がいいですよ、その方がまるっきり新しくなるからと。少し余計にお金がかかるからという話にすぐなるじゃないですか。大体、補修、修理というのはだれもやりたがらないですよね。だから、その辺、だれが判定するのか。そういった躯体の状況、そういう物理的な観点を考慮して、建てかえた方がいいのか、それとも改修が可能なのかどうかということを客観的に比べられるようなことが必要じゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
扇国務大臣 井上議員に御理解いただきたいのは、マンションによっては管理組合を設立しています。管理組合のないところもわずかにございますけれども、大体管理組合ができています。その管理組合の定款の中で、こうこうこうという定款が書いてございまして、皆さんで、管理組合で、今言ったような、建てかえるべきか、あるいは補修で済むのかということを、そのために、相談していただくためにマンション管理士等々の専門知識というものを管理組合でお聞きになって、そして管理組合でこれはどうしようと。そのために、補修費というのは、組合が設立されているマンションというのは全部払っています。毎月積み立てています。
 けれども、その積立金で済む補修なのか、あるいは補修といっても、あるいは耐震性といっても、もう積み立てたお金では済まないというものとの判断は各管理組合でお決めになることでございますし、管理組合のないところは、今言ったような制度ができたマンション管理士等々に相談されてお決めになる、こういうことが当然一番民主的だろうと思っています。
井上(和)委員 これは一軒家の場合もそうなんですけれども、リフォームが盛んになってきたというのはやはり最近なんですよね。つまり、どういうことかというと、リフォームの技術が進んできた、安くできるようになった。以前だったら建てかえようと思っていたのに、リフォームで安くこんなにきれいになってしまうんだという人が多いんですよ。
 つまりは、以前はそういうリフォームの技術そのものがなかったし需要もなかった。ところが、だんだん、やはり建てかえとなると、全部つぶして廃棄物がふえるわけですよね。環境にとっても非常に問題がある。やはりそういう意識が芽生えているし、高齢化社会で、新たにローンを組むのが大変だからやはり何とか安くしようとか、そういう人がふえてきて需要がふえてきた。
 それに伴って、リフォーム技術も、リフォーム業者というのは今随分ふえていますね。テレビでも宣伝しているし、雑誌なんかでも新聞なんかでも出ているじゃないですか。以前は、十年前はなかったですよ。十年前だったら、恐らく、すぐ建てかえた方がいいです、それしか方法がありませんよというふうに言われたと思うんですね。
 だから、私がここで言っているのは、だれが決めるとかそういうことじゃなくて、建てかえとリモデル、もう一回大規模な改修を客観的に選択できるようなまず選択方法と、やはりそれができるような技術的な開発、進歩が必要だということを申し上げているわけです。
 だからこそ、やはりそういう研究開発をしっかりやるべきだし、そういうことによってリモデルを専門にする業者もふえてくるでしょう。業者がふえてくれば競争も多くなってきますから、コストも下がってくる。技術革新が進めばコストも安くなって、安くていい修理ができるようになってくるということです。
 先ほどの三沢局長の、内部と外部は違うという話ですけれども、私は、内部と外部は一体だと思うんですよね。だから、一体化してやる。つまりは、先ほども申し上げたような、狭い、設備が悪いということも当然非常に大きな問題だからこそ建てかえるという話も出てくるわけですから、それをあわせてできる、そういったリモデリングを今後もっともっと研究していかなきゃいけないし、普及させていかなきゃいけない。そうしなかったら、この問題、マンションの問題、解決できないじゃないですか。そういうことなので、ぜひ大臣にも御理解いただきたいと思います。
 それで、先ほど津川委員が、今できているマンション、では後どうなっちゃうのかという話もされていたんですけれども、今大体どの程度マンションができているのか、ちょっと参考のためにお伺いしたいんですけれども。
扇国務大臣 先ほども津川議員にお答えしましたけれども、現在、マンションのストック、少なくとも約四百万戸ございます。そして、それに住んでいる居住者、約一千万人おります。
井上(和)委員 現在の、最近の供給状況というのに関して教えていただけますか。
三沢政府参考人 平成十三年のマンションの新設着工戸数は二十一万五千戸ということでございます。これは、前年比でいいますと一・一%減という数字でございます。
井上(和)委員 二十一万戸、これは今年度でしたっけ。済みません、もう一回。
三沢政府参考人 平成十三年の着工戸数、二十一万五千戸でございます。
井上(和)委員 つまり、二十万戸もできているわけですね。これは本当に大変な数だと思うんです。そして、これがまた何十年後、古くなっちゃったと。だったら、これは大変なことですよね。だから、ぜひその点に関しては、そういう、今抱えているような問題がどんどん拡散していくということのないように、国土交通省としても本当に真剣に取り組んでいただきたいということをお願いいたします。
 あと、先ほどのリモデリングにちょっと話は戻るんですが、質問するのを忘れちゃったんですけれども、法務省に、大規模な改修、私が言っているような大規模な改修に関しての区分所有者の必要な賛成者の数というもの、これは五分の四ということでいいんでしょうか。ちょっと教えてください。
原田政府参考人 五分の四というのは建てかえの場合の決議要件でございまして、委員おっしゃいましたようないわゆる大規模な改修ということになりますと、恐らく共用部分の形状または効用について著しい変更を伴う場合になるだろうと思います。そのような場合につきましては、区分所有法上、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数決により決する必要がある、このようになっております。
井上(和)委員 あと、先ほど言った、例えばマンションの壁を抜く、つまり共有部分を壊すというような場合なんですけれども、これは法的に可能なんでしょうか。
原田政府参考人 今、部屋と部屋の間の壁をなくすということでございますが、それぞれ別個の専有部分がございまして、その間の壁を取り除くということになりますと、これは共用部分の変更に当たるということで、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数決がやはり必要になろうかと思います。
井上(和)委員 区分所有者の四分の三が賛成でいいわけですから、これはやりやすいとも言えるわけですよね、逆に。だから、先ほども申し上げたように、ぜひリモデリングというものを推進するような政策をとっていただきたいと思います。
 それで、この法律の実効性、これもさっき津川さんの質問に出たんですけれども、大臣、何もおっしゃってなかったんですけれども、例えばこの法案によってどのくらいの数のマンションが実際に建てかえられるとか、その辺の見通しというのをお持ちですか。
三沢政府参考人 これは、この見通しというのはなかなか難しいので、一定の仮定に基づいて推計するしかないわけでございます。
 一つの仮定といたしまして、これから、新たに、建築後三十年を超えるようなマンションがだんだん建てかわっていく、しかし、どういう分布で建てかわるかといいますと、大体建築後五十年ぐらいをピークにして建てかわっていく、それで七十年ぐらいまでの間に全部終わる、仮にそういう仮定をして推定いたしますと、今後十年間で約五万六千戸ぐらいの建てかえが起こるという推計はございます。
井上(和)委員 五万六千戸ですか、そうしますと、現在四百万戸のマンションストックの中の非常に微々たるものだし、今後十年間、恐らく、三十年以上の築年数がたっているマンションが九十三万戸になるわけですよね、二〇一〇年ぐらいまでには。そうしますと、本当に六%とかその程度の数のマンションがこの円滑化法案によって建てかえになってくるということですね。だから、本当に微々たる数だというふうに思うんですけれども、三沢局長、いかがですか。
    〔委員長退席、実川委員長代理着席〕
三沢政府参考人 先ほど申し上げましたように、要するに、三十年経過したものが三十年時点でトタで全部建てかわるということではなくて、それが一定の期間の幅の中で建てかわっていく、そういう推計でございますので、当然のことながら、十年間では五万六千戸でございますけれども、さらに長い期間をとってみると、基本的には三十年経過したものはいつかは全部建てかわっていく、そのためにできるだけそれを前倒しして円滑化するようにしていくということが必要だろうということでございます。
井上(和)委員 いずれにしても、異常に数的には少ないことには変わりないというふうに思うんですね。
 やはり建てかえの障害は、金を払わなきゃいけないということが一番の大きな障害だと思うんですね。現在、建築後三十年超のマンションでは、六十歳以上の世帯が三六%、五十歳以上が一一%。今、建てかえ平均が大体三十八年ということですから、三十八年というふうに考えると、約五〇%が六十歳以上の世帯だというふうになってくる。
 そうなっていきますと、ほとんどが年金生活者、その人たちに、今現在、大体平均で約一千五百万ぐらい建てかえにかかっているという状況で、これを負担する負担能力、よく言うのは、英語で言えばアフォードなのかどうか、アフォーダビリティーとか言いますけれども、それがやはり一番の大きな問題になってくると思うんですけれども、それに関しては、国土交通省、どういうふうに考えているでしょうか。
三沢政府参考人 これも一概に言えないわけでございまして、よく言われますように、千三百兆の預貯金の相当部分は高齢者の方々が持っているということでございますが、やはり高齢者も相当収入とか資産の状況において個人差があるというのが事実かと思います。したがいまして、一律に、マンションにお住まいになっている方がすべて年金のみに頼っているというような推計もなかなか難しいんじゃないかという気はしております。現に、戸建ての場合ですと、やはり高齢者が住んでおられる戸建てでも、建てかえをされているというケースも相当ございます。
 ただ、そういうことではございますけれども、仮に建てかえをした場合に千五百万くらいかかるといたしまして、これに対していろいろな、国と公共団体で建てかえ費用に対して補助することもできます。それから、全く完全に自己資金をお持ちでないという想定も、ちょっとなかなか非現実的なところがございます。それを差し引いて、例えば八百万から一千万くらいの借り入れをするといたしますと、それについて、去年御審議いただきまして制定いただきました例の高齢者の居住安定法、あれに基づきまして、まさにマンション建てかえの場合に、高齢者が住宅金融公庫からお金を借りた場合に死亡時一括償還できるという制度を導入しております。それで、その制度を使いますと、一千万から八百万くらいの借り入れですと、大体月額二万円前後ということで返済が可能でございますので、これは決して非現実的な数字ではないんじゃないかというふうに理解しております。
井上(和)委員 月額二万円前後で本当に理想どおりにいけばそれは可能かなという感じもしますね。ただ、本当にそれがそれだけで済むのかどうかというのは、私はちょっとよくわかりません。
 これまでのマンションの建てかえというのは、ほとんど等価交換でやっていますよね。やはり現実的に、等価交換でなければお金がかかるということで非常に難しいというふうに思うんです。
 今回、建築基準法の改正で総合設計制度に基づいた新しい制度もできてくるんですけれども、やはり容積率をある程度緩和をせざるを得ない状況も出てくるんじゃないかなと思っています。そうなってきますと、やはり、今ある総合設計制度をうまく使うという必要もあると思いますね。
 そうなってきますと、総合設計制度なんかの場合は三千平米とか四千平米とか、ある程度敷地が大きくなければいけないという制限も出てきます。例えば、隣接地を買収して敷地を拡大して建てかえられるようにする、つまりは総合設計制度などを使って容積率をふやす、そういうことも私は一つの手法じゃないかなというふうに思っているんですが、それに関してはいかがでしょうか。
三沢政府参考人 隣地を買収して敷地を拡大して建てかえるようにすべきではないかということでございます。
 これは、実は、まず区分所有法でどう扱うかという問題があるわけでございます。現行の区分所有法は、建てかえ決議を行うことができるのは同一の敷地で建てかえを行う場合というふうになっております。
 この法律は、あくまで建てかえ決議を前提として、その後の建てかえ事業の円滑化を図るということでございますので、基本的には、敷地が同一でない場合の建てかえというのはこの建てかえ事業では想定していないんですが、ただ、この法律の中で、個人施行者という制度を用意しております。これは、同意に基づきまして個人施行者が施行できるということで、これにつきましては、必ずしも建てかえという決議を前提としない制度でございますので、隣接する土地をいわゆる再建マンションの敷地に編入するということも想定して、必要な規定は盛り込んでいるところでございます。
 なお、今後の問題として、区分所有法の改正につきましても、今、法制審議会で御議論いただいているようでございまして、この中で、例えば敷地の同一性についても今後いろいろな検討がなされた場合には、当然私どももそれに応じて必要な対応はしていきたいというふうに考えております。
井上(和)委員 つまり、今、基本的な考え方は、やはり、まちづくりをなるべく大きな区画でやっていこうという考えが普通だと思うんですよね。そうしますと、どうしても、街区全体を整備する、なるべく少しでも区画を大きくしてやっていった方が、当然土地も有効に使えますし、町並みとしてもいいものができるというふうに考えられます。
 そういった意味で、やはり、隣に小さな家があったらそれを買収して、等価交換でもいいですけれども、よりよい建物をつくる、また周りの環境を整備するということが当然大事だと思うので、ぜひこれを早く検討していただければ、割と使い勝手がいい制度になるんじゃないかと思いますので、ぜひお願いします。
 その際に、例えば、これは区画整理なんかでもそうなんですけれども、なかなか土地を売ってくれない、もう今家があるのに何で売らなきゃいけないんだとか、そういう問題が往々にして生じます。私、これはいつも思うんですが、やはり、それは思い切って税制の優遇、例えば譲渡税を免除するとか、そういうインセンティブをしっかりつけないとなかなか土地を手放してくれない、そういう状況があると思います。そういった面で、譲渡税また登録免許税などの税の優遇というのはやはり非常にかぎになると思うんですね。これは区画整理事業でもやはり非常に大事な問題だと思うんですが、余りその辺が進んでいないんですね。その辺に関しては、ぜひやっていただきたいと思うんですが、どうでしょうか。
    〔実川委員長代理退席、委員長着席〕
扇国務大臣 これは私、一昨年暮れの税調のときから言い続けております。今のデフレの状況を脱出するにも一番経済効果がある、また国民が元気になるということで、先日の月例報告会のときにも、このことをぜひ、与党三党だけではなくてみんなでこれを実行していただくように、少なくとも私は、一昨年暮れに言ったときには、継承税制の前倒しとかあるいは相続税の拡大とか、あらゆることで、住というもののあり方、二世帯同居の税制面での優遇とか、そういう少子高齢化社会に対しても対応できるようにということを閣僚の一人としても、内閣を挙げてこれをしていただきたいということを財務大臣等々全員の前でお願いしておりますので、今、ぜひこのことは党派を超えて皆さんと一緒に私は少子高齢化社会に対応するということと、このデフレを乗り切るということに対しても御協力をいただき、私たちもできる限りの努力をしたいと思っています。
井上(和)委員 やっと意見が一致いたしましたけれども、恐らくは野党も賛成すると思うので、ぜひ大臣に頑張っていただければと思います。
 それで、実際の建てかえを行う際、現在の金融の状況の中で、例えば工事の請負業者が非常に資金繰りが厳しいというような現状もあると思うんですね。例えば、マンションの建てかえ事業を円滑に進めるための金融的な支援がないと、普通は、建物ができてから恐らく業者はお金をもらうんでしょう。しかし、そのつなぎ資金の問題とかいろいろな問題が出てくると思うんですけれども、そういった金融的な面に関しての支援というものは何か考えていらっしゃいますか。
三沢政府参考人 一般論で申し上げますと、マンション建てかえ事業というのは民間発注の工事でございまして、資金繰りが苦しいということについて言えば、恐らく、一般的マンション建てかえに限らずいろいろな工事について共通する問題ですので、マンション建てかえについて特に金融支援を講ずるということなのかどうかというのは、ちょっといろいろ議論があるところでございます。
 ただ、一つ申し上げられますのは、例えば住宅金融公庫に、マンション建てかえもできるように都市居住再生融資制度というのがございます。そういう融資を使った場合には、例えば公庫融資の資金の交付、貸し付けの仕方も、工事の出来高に応じてお金を貸し付けるというやり方ができますので、そういう意味では、そういうことも資金繰りに資するんではないかというふうに考えております。
井上(和)委員 私も地元で建設業者の方にお会いすることがあるんですよね。例えば、古いマンションがある、利便性のいい駅のすぐそばだったら、これは建てかえればすぐ住む人はいますよねという話をするんですよ。何でやらないんですかと言ったら、やはり銀行が金を貸してくれないからという話が非常に多いんですね。だから、やはり、実態的にそういう金融面の金詰まりという状況があるんだということをぜひ知っていただきたい。こういったマンション建てかえの問題でも、大きなディベロッパーとか建設会社、ゼネコンクラスだったらそんなことはないでしょうけれども、中小建設会社とかそういうことになってくれば、当然資金繰りの問題が出てくるし、銀行も貸してくれないという状況があると思うんですね。そういうことをちょっと私は指摘したいと思いました。
 これまでのマンション、日本の高層建築で一番の欠陥は何かというと、私は、やはり景観の問題だと思うんですね。
 先日、山手通り、環状六号線を池袋から新宿までずっと走ってみたんですけれども、今ちょうど地下鉄の工事をやっているところなんですが、ぜひ大臣にも走っていただきたいんですが、両側のビルを見ますともうばらばらなんですね。ありとあらゆるデザインのビルが建ち並んでいます。何か本当に、悲しいというか、余りにいろいろなデザインがあって、統一性がとれていない。まちづくりの理念とか、そういうものはないんだなというふうに本当に思いました。
 だから、このマンション建てかえでもそうなんですけれども、まちづくりでもそうですが、やはり町をどういう町にしたいか。同じ環状六号線の両側に建物を建てていくなら、どういうものをつくって町並みをそろえていくか。景観をそろえていくとか、そういうことがちゃんと考慮される、そういったマンション建設、建物の建設が必要だなというふうにつくづく思ったんですけれども、例えば、そういった景観に関して何かお考えはございますでしょうか。
扇国務大臣 景観に関して言えば、私は、ある意味では規制をかけるかかけないかという大変重要なところにかかわってくると思います。
 もともと、その地域地域できちんとした景観条例というようなものをつくるかつくらないか。例えばイタリーでもフランスでも、景観条例というもので、一番厳しいのはイタリーです。それは、ビルと、ビルの高さはもちろんのこと、ビルにかける色まで規制しております。
 一つの例を挙げますと、イタリーに、ビルの一階に日本の業者が初めてイタリーの事務所を持つことができて、うれしくて、周りを全部赤の窓枠をつくって支店をオープンいたしました。あえて名前は言いません。一晩のうちにイタリアから全部退出するようにという命令が出ました。それは、町並みの景観条例で、ビルに色を合わせなければいけないという条例ができているんですね。ですから、日本の業者が、うれしくて、目立つようにと赤で窓枠をつくって、これは一晩で塗りかえざるを得ないという、それほど厳しい規制をかけております。
 そのように、ある程度そういうものを規制する基本というものが、各市町村等々で確立したまちづくりの条例をつくる能力ありやなしや、また、つくったときに、その条例の規制にどの程度住民が賛成するや否や、そういう根本的な問題になりますから、むしろ、私がこの部署についてから言い続けておりますところは、日本じゅうどこへ行っても同じ建物はやめていただきたい、個性がないということを言い続けております。
 例えば、有珠山の噴火によって虻田町が全部退去いたしました。避難いたしました。そして、住宅を建てようといったときに、その代替の住宅は、全部いわゆる四角いマンションで、色気のないと言うと怒られますけれども、規格的なものを有珠山のふもとに三棟と、私のところへ持ってきたんです。私は、これはおかしい、有珠山、噴火したけれども、これを建てるんだったら有珠山に合った景観の、美的観念を入れたものを建ててあげてほしいといって頼んで、設計変更しまして持ってきたら、今度は、これはスイスではないかと思うぐらいすてきな、山の景観と、今度移転いたしますマンションがきちんとできたんですね。
 そのように、その町、その町によって、どこまで条例をつくれるか、あるいはそれを規制できるか、そういうことを根本的に、井上議員などはお若いんですから、日本の国の地域のあり方も含めて、そういうものはぜひ共同でさせていただければありがたいと私は思います。私も山手線等々はいつも通っておりますので、よく見ておりますので、残念だなと思っておりますので、そういうものができれば、なお日本がこれで五十年、六十年プランでできればいいなと思っております。
井上(和)委員 まさしくそういったまちづくりをやるには、これはもう都市計画法というか都市計画のコンセプトを本当に根本的に変えて、やはり地方自治体が中心となったまちづくりをできるというふうに法律を変えていかなきゃいけないというふうに思います。だから、そういう意味で、やはり自治体が本当に条例でやれるのかといったら、今はちょっとそうじゃない場合も非常に多いんですよね、もう三沢局長よく御存じだと思いますけれども。幾ら条例があったって、建築確認が優先しちゃうという現状がある限りは、自治体中心の、自治体が望むまちづくりがなかなかできないという状況があるんじゃないかというふうに私は思いますので、我々も、ぜひ都市計画法、都市計画というものを、本当に地方分権を徹底させるような法案を考えていきたいというふうに思います。
 最後に、これはちょっと法案とは直接は関係ないんですけれども、ぜひ大臣にも聞いていただきたいんですが、最近、業者がつくったマンションを買うんじゃなくて、設計士なんかが中心となって組合をつくって、コーポラティブハウスというものをつくろうという機運が非常にふえてきているんですね。まさしく今回のマンション建てかえと非常に考え方は似ているわけですね。組合をつくって組合が建てる。
 このメリットは、マンションであれば、とにかく一般のディベロッパーの場合、広告宣伝費、間接経費というのが二割から二割以上あるわけですね。つまり、四千万円のマンションを買ったって、実質的なマンションの価値というものは三千万ぐらいしかないわけですね。だから、もう買った翌日から、四千万円で買ったマンションの本当の価格というのは三千万円になっちゃう、それが今の日本の現実です。これは本当におかしいのであって、だから、四千万円払ったら、やはり四千万円に相当するような質と機能を持ったものが手に入るべきだというふうに私は思うんです。
 コーポラティブハウスというのは、自分たちである程度土地を手当てして、自分たちでそれぞれの家族に合った間取りとか計画ができる、そして間接経費も非常に安いということで、これは制度的には非常にいいし、また、ディベロッパーがやるわけじゃないですから、敷地が狭くても可能である。そういう意味で、これからやはり普及させていくべきものだし、それに関してもいろいろな法整備の必要があるんじゃないかなと私は思っているんですね。
 そういう意味で、ぜひ国土交通省としてもこういったコーポラティブハウスに関して研究していただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
扇国務大臣 今コーポラティブハウスのことをおっしゃいましたけれども、これ、実績を調べてみますと、大体、一九六七年から二〇〇〇年までで三百五十七件、そして約六千七百五十五戸建っております。メリットとデメリットがございまして、メリットは、今井上議員がおっしゃいましたように、広告費が要らないとか、自分たちで好きな間取りが個々にできるとか、そういう意味では、共同でやりますから、みんなで仲よく、最初からもめごとがなくて順調にいくという利点はあるのです、メリットとして。
 ところが、デメリットもあるのですね。では、どういうところがデメリットかといいますと、広告費等々の宣伝費が要らないかわりに、それぞれの設計が個々の、私は和室がいい、私は洋室がいいといって個々の設計が全部違うものですから、全部統一でないためにコストアップになるということもデメリットの一つ。それから、お互いに何人かで共同でやりますから、その話し合いの時間が物すごく長くかかるのですね。そのためにコストアップの時期を迎えてしまうということで、話し合いの時間が長期にわたるということでのデメリットもある。それから、問題は、最初は十人で話し合って十人でやっていたのに、途中で抜けたなんて、二人抜けちゃって八人になっちゃうというようなこともあって、そういう場合もデメリットとしてあるというふうに、メリット、デメリットを両方抱えているというのが今のコーポラティブハウスの現状でございます。
 ただ、今おっしゃったように、一般的には価値が安くなるということは必ずしも言えないということもあるということも頭に入れながら、私は、良質なコミュニティーをつくるということでは一つの方法であろうと思っておりますので、今後もこういうような多様なニーズに対応できるようなということは、私は考えていく一つであると思っております。
井上(和)委員 どうもありがとうございました。ぜひ、今後もコーポラティブハウスを促進してください。どうも、時間ですので終わりにします。
久保委員長 赤羽一嘉君。
赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。
 三十分という短時間でございますので、端的に御質問したいと思いますので、手際よく御答弁の方もよろしくお願いいたします。
 まず、今回のマンションの建替えの円滑化等に関する法律案の提出の動機づけ、いろいろ御説明がありました。しかし、これは、私は、やはり阪神・淡路大震災を経験して、実際にマンションの再建というものが大変な御苦労があった、何とか法整備をしていかなければいけない、新法をつくらなければいけないということが最大の原因ではなかったかというふうに思っております。
 全国マンション管理組合連合会の穐山会長も、建てかえというのはこれまで、遠い話なんだ、身近なところで起こらないんだ、だから法律、制度ともあいまいであった、住民の関心も低かった、しかし、阪神・淡路大震災を契機に建てかえというものが現実問題となったのだ、このようなコメントをされております。
 現実に、これまで国土交通省の調べでは、全国百七十七地区でマンションの建てかえというものが行われておりますが、そのうち実は百八地区が阪神・淡路大震災の際の再建でありました。残りの六十九地区につきましても、大変容積率の低いところ、ほとんどが等価交換で行われた、実際、費用負担の発生がほとんどなかったといったことで行われたという話も伺っております。まさに阪神・淡路大震災を契機に、老朽化とかという話ではなくて、震災でもう住めなくなった、こういう現実に住めなくなったという状況がありながら、大規模修繕の方がいいとか、建てかえがいいとかという論議が大変な問題があったということであったと思います。
 私は、地元選出の議員としてそういう認識をしておりますが、今回、法案提出者である国土交通省として、阪神・淡路大震災のマンション再建問題について、どのような点が問題点として指摘ができ、その問題点を受けて今回の法案提出に至ったのかということを端的に御答弁いただきたいと思います。
扇国務大臣 阪神・淡路大震災のことに関しましては、私も神戸出身で、私の身内も被災しておりますから、それは赤羽議員と同じ立場に立って私も考えております。
 この阪神・淡路大震災の後、数多くのマンションの居住者が、資金難あるいは容積率、そういう意味で、その当時は、建てかえに参加する区分所有者の集まりに法人格が決められていませんでしたね。ですから、この法人格を認められてなかったということによって、抵当権の抹消とかそういうものが金融機関の理解が得られないということで、その費用が、建築会社等との契約が結べない等、あらゆる事例が出てまいりました。ですから、そういうことで、登記手続が大変できなかったということで、現在もいまだにマンションの建てかえをあきらめた地域もございます。これも、数多く私も手元に資料を持っておりますけれども、一々言っていると時間がたちますので省略いたしますけれども、それは赤羽議員も同地区ですから御存じだろうと思います。
 そういう意味では、今言いましたような資金難でありますとか、あるいは容積率の不足等の問題に関して、今度は、共同施設整備費等への補助、あるいは住宅金融公庫の融資による対応とか、そういう容積率の緩和等を行うための総合設計制度の積極的な活用をしていくということで今後対応していきたいと思っておりますし、建てかえの主体への法人格の付与、あるいは関係権利を建物に円滑に移行するための権利変換制度、登記の一括処理、そういうようなことを今回の法案によってできるようになるということ、そのための法案であるということを御理解いただきたいと思います。
赤羽委員 ありがとうございました。
 私、神戸の被災地をずっと歩いていて、マンション再建問題にも立ち会ったところもありますが、常々思っていることは、震災以前からそのマンションの中のコミュニティーがしっかりしているマンションほど再建がしやすかった。ひどいところになりますと、全員、だれが住んでいるかわからない、どこへ行ったかわからない。この区分所有法も、全員の決議が必要だといったのを五分の四に改められたのも、そういう状況下だったというふうに思っておりますが、まさに日ごろからのコミュニティーをつくっていくという意味合いが大事だ。
 そういった意味で、この当委員会というか、出てきましたマン管法ですね、マンション管理法、あの法律のもとでマンション管理組合をしっかりする、マンション管理士を育てる、コミュニティーを維持していくということは、私は、マン管法の成立の意義は大変大きいものがあったというふうに、そう認識をしておりますが、マン管法施行以後どのような評価をされているのか、御見解をいただきたいと思います。
三沢政府参考人 おっしゃるとおり、マンション建てかえにおきましては、最初の、初動期での合意形成というのは非常に大事だというふうに言われております。その合意形成のためには、やはり日ごろのマンションの中のコミュニティーが円滑に機能しているということが非常に重要だというふうに認識しております。その意味では、日ごろの管理がきちんと行われているかどうか、これはかなり大きな一つの決め手になってくるのではないかと思います。
 この点、今お話ございましたマンションの管理の適正化の推進に関する法律、これに基づきまして、例えばマンションの管理の適正化に関する指針というのを定めまして、国、公共団体あるいは管理組合、それぞれの立場でどういうことをやるべきかということを、きちんとガイドラインを示したこととか、それからマンション管理士制度、これが創設されまして、マンションの管理に関していろいろなアドバイスあるいは相談に乗るような体制が出てきたこと、あるいはマンション管理士に限らず、マンション管理センターとか地方公共団体などいろいろな情報体制の整備も図られてきたこと、こういうことが、いろいろな面でそのマンション管理の適正化に大きな意義があるというふうに考えておりまして、引き続き、この制度に伴ういろいろな事柄を活用しながら、マンション管理の適正化に努めていきたいというふうに考えております。
赤羽委員 今の御答弁にもあるように、マンション管理組合、またマンション管理の大事さというのがいろいろな意味で評価されていると思いますが、今回の法務省の建物区分所有法の見直しに関する法制審議会の中間試案を読んでおりまして、今のところにちょっと抵触するのではないかと心配されるような箇所がございます。
 それは、第五の「建替え決議の要件」ということで、「ア(老朽化の場合)」ということで、甲案、乙案二つが示されております。
 乙案の方は、「建物が新築された日から三十年、四十年を経過したとき。ただし、」と、ただし書きがあって、この委員会でもいろいろ議論がありましたが、「一定期間の経過ごとに行う修繕の計画及びそれに要する費用として修繕積立金を積み立てておくことをあらかじめ集会で決議し、又は規約で定めていた場合であって、区分所有者に新たに費用の負担を求めることなく当該計画に基づく修繕を行うことができるときを除く。」と。私は日本人を四十三年間やっていますけれども、ほとんど理解できないただし書きであるので、その真意をちょっと聞きたいのですけれども。
 国土交通省も私たちもすごく心配をしているのは、マンション管理適正化法というのはつくった、マンション管理組合のもとでしっかりした管理を行っていこう、修繕積立金もちゃんとやっていきましょうと、こんなことを一生懸命やっている、まじめに管理をやっているマンションは、建てかえというチョイスがなくなって、大規模修繕しか選択肢が与えられないというようなおかしな話になってしまうのかどうかという危惧があるのですが、ここがよく理解できないので、この日本語の意味を踏まえて、明確に御答弁を法務省からいただきたいと思います。
原田政府参考人 ただいま委員の方で御説明いただきました乙案についてでございますが、これは、建てかえの要件として、年数の要件だけではどうだろうかという意見を踏まえた案でございます。
 この案が出てきた背景でございますけれども、現在、現行法では、建物を維持するのに多額の費用を要する場合という要件がかかっておりますが、これは、どういうことでこういう要件がかかったかといいますと、建物を維持すること自体が客観的に見て不合理なものと考えられるような場合には建てかえ決議ができるという趣旨で定められたものだろう。ただ、その要件が余り明確でないということもあり、これを明確にしていこうという観点から要件の見直しを行っているわけでございます。
 甲案の方は、まさに年数だけということにして、一番明確な形だろうと思います。
 乙案の方は、このような修繕積立金の範囲内で所要の修繕工事が行えるような建物であれば、先ほど申し上げました、建てかえを行わずに建物を維持していくことが必ずしも不合理ではないのではないかという御意見がございまして、こういう建物についてはまず建てかえ対象から除外するという形で乙案を立てているというふうに考えております。
赤羽委員 そういう説明ですと、では、相当老朽化してきたが、まじめに積み立てしたりとか、管理、修繕すると建てかえたくても建てかえられない、住民が五分の四以上建てかえようと思っているのに、まじめにこれからマンション管理組合を機能させると建てかえができないというのは、これは余りにもわけのわからない話であって、結論的に、ちょっともう一度聞きますが、そういう五分の四の決議ができない要件になってしまうということはないんだ、そういう真意であれば、ちょっとその点だけクリアにしていただけませんか。
原田政府参考人 この要件でございますけれども、乙案によった場合に、では五分の四の決議で建てかえができないかというお尋ねでございますけれども、この場合、乙案の場合は、長期修繕計画というものの内容を当然変更していただけばこの要件が外れますので、その後は、年数の経過と五分の四の決議で建てかえ決議ができる、こういうことになろうかと思います。
赤羽委員 乙案のただし書きは、五分の四の決議の際に、建てかえをしたい、そういう意思が区分所有者の中であった場合に、その妨げにならない、そういう御答弁だと理解させていただいてよろしいのですね。
原田政府参考人 長期修繕計画の見直しということになりますが、長期修繕計画の見直しは、普通決議、つまり過半数の決議でできますので、今委員のおっしゃったような形で進めていただければ、これが障害になるということはないであろうと思います。
赤羽委員 あと、同じ箇所で、客観的要件の明確化の中で、築年の問題、老朽化ということで、三十年ないし四十年という表記がありますが、これはやはり非常に誤解されやすい。私が心配しているのは、マンションの耐用年数と老朽化というのもまた余り一致しない話だというふうに思いますし、三十年、四十年というのも、同じ築年でも、やはり維持管理の程度で相当大きな開きがあるし、施工の状況自体が根本的に違うということで、同じ三十年の建物でも相当な開きがある、こういったのが現実だと思いますね。
 ここは、三十年とか四十年ということを書くとしても、あくまでこれは建てかえ決議することのできない年限という意味でしかないということを私は明確にすべきだ、そう理解しますが、どうでしょうか。
原田政府参考人 御指摘のとおりでございまして、この要件はマンションの一般的な耐用年数を示すものではございません。建てかえ決議をすることができない年限という意味でございます。また、この年数が経過したからといって、さらに、建てかえを推奨したり、建てかえを強制するという意味でもございません。
 今御指摘いただきましたが、中間試案に年数を掲げた趣旨が正確に伝わり、一般の方々に誤解を招かないように、今後とも十分な注意を払ってまいりたいと思っております。
赤羽委員 私は、この年限の表示というのはちょっといかがなものかなというふうに思いますが、もしこういった年限を入れるとするならば、老朽化というのは、やはりちょっと再考していただきたいというふうに思います。
 次に、この委員会の質疑の中で、建てかえ不参加の区分所有者が追い出されるという懸念がある、悪質なディベロッパーが云々というような質疑もございましたが、もちろん私は、建てかえ決議に参加できない、いわゆる弱者というか弱い立場の人に対する保護的な措置、十分な配慮というのは必要である、当然そう考えております。
 しかし一方、阪神・淡路大震災の再建のケースを見ておりまして、五分の四の合意というのは大変高いハードルだというのを実感しています。神戸市役所の担当に、マンション再建について何かないかと言ったときに、たった一つだけ、合意の決議を四分の三にしてくれないとなかなか進みませんと、こういった話もありました。私も、五分の四の決議というのは、実は実態としては、合意形成というのは極めて高い。阪神・淡路大震災というのは、マンションが壊れていて、なおかつ五分の四のケースが難しかった。これは、老朽化ということで、五分の四というのは、非常にハードルが高いというふうに思います。
 考え方を変えますと、高いハードルを超えるぐらい、五分の四の人たち、いわゆる全体の八割の区分所有者が再建したい、こう言っている状況にありながら、残りの五分の一の人たちとか、またいろいろな条件をつけて云々ということで、なかなか再建ができないということの方が民主主義的な感覚からいくとどうなのかな、私はそう思うわけでございます。
 悪質なディベロッパー云々という指摘もされておりましたが、今回は、午前中の答弁にもありましたが、五分の四というのは区分所有者及び議決権ということでありますから、区分所有者というのは頭数であって、悪質ディベロッパーは何戸持っていようとも、五分の四でいけば、あくまで一ということであれば、こういった想像されるような悪質な事案というのは起こりにくい、そう考えますが、ちょっと繰り返しになって恐縮ですけれども、この点確認をさせていただきたいと思います。
原田政府参考人 まず、今回のお示しした案でございますが、これは法制審議会の建物区分所有法部会における意見を集約して、案を併記してお示ししたものということでございます。これはまだ最終的に確定したものでも何でもございません。その中で、今先生御指摘のような、決議要件のみで建てかえを認めるべきであるという案もございました。これは中間試案の注の方にお示ししております。
 実は今回、決議要件だけで建てかえができるという案を本文に入れなかった経緯を御説明申し上げますと、この考え方につきまして、今先生のようなお考えにつきましては、区分所有者の私的自治を尊重する立場から、支持する意見も確かにございました。一方で、合理的な、客観的な理由がない場合でも多数決だけで建てかえができるというふうにした場合に、財産権の保障の観点から問題があるのではないかという指摘がございました。
 それから、今回の、もし区分所有法を改正するということになりますと、恐らくこれは遡及的に現在のマンションに適用しなければ意味がないということになろうと思います。そうしますと、現在の法律と余りにも隔たりが大きくなり過ぎますと、新たな規定を既存の区分所有建物に適用する際の説明に苦慮するのではないかという意見もございました。
 ただ、これらはいずれも法制審議会の建物区分所有法部会における意見ということでございまして、そういう意見もあわせて補足説明等でお示ししておりますので、これをパブリックコメントに付しました。これについての意見を十分に我々はお伺いしながら、今後また検討を進めていきたい、このように考えております。
赤羽委員 秋の臨時国会には提出されるとも伺っておりますので、その区分所有法の改正のときにぜひ議論をさせていただきたいと思います。
 最後にもう一つだけ確認をしておきたいんですが、区分所有法の、「団地内の区分所有建物の建替え」、こういったところで、「建物の敷地を新たな建物の敷地として利用することが、団地内の他の建物の区分所有者の建物の敷地の利用に特別の影響を及ぼすべきときは、当該区分所有者全員の承諾を得なければならないものとする。」こういった筆記がございます。
 これは、私は、「特別の影響を及ぼすべきときは、」これは非常に表現ぶりもあいまいですし、これはだれが認定するのかと法務省に聞いたら、最終的には裁判所がみたいな話をしていましたが、これはちょっとどうなのかなと。
 そういう「特別の影響を及ぼすべきとき」と。例えば一人の区分所有者が訴えて、明らかに一人以外はそんなこと思っていないのに、一人の区分所有者が異議を訴えることによって建てかえ全体が進まなくなってしまうというようなケースも出てくることが予想されるんじゃないかなと心配をしておりますが、ここも、条件というか、ここの表現ぶりを、あいまいな表現を少し変えなければ、問題、禍根として残るんではないかと思いますが、いかがでしょうか。
原田政府参考人 利用に特別の影響を及ぼすべき場合という表現ぶりでございますが、これは現行の建物区分所有法の十七条に、共有部分の変更について特別の影響を及ぼすときにはその者の同意が要るという規定がございまして、その規定ぶりに倣っているということでございます。したがいまして、現行の規定の運用が確立していれば、こういう表現ぶりで紛れが生じなくなるのではないかと思います。
 このような規定を置いた趣旨でございますが、団地内の一棟の建物を建て直すときに、従前どおりの敷地の利用形態で建て直すということであれば、もちろんこういう同意も要らないわけでございます。
 これはどういう場合を想定しているかといいますと、団地内の一棟の建物を建て直すときに、例えば規模を拡大する、その結果、ほかの建物に案分されるべき容積率、これが侵害されるというようなことが起き得るであろう。そういう場合に、結局、将来、他の建物が建てかえをしようとしたときに、建てかえについて制限がかかってくる。こういうことはやはり防止できるようにしておく必要があるということで、これは明らかに不利益を受けるということになろうかと思いますので、その場合には同意を得ていただく。こういう趣旨でございます。
赤羽委員 今回、マンション建替組合の設立に当たっては、いわゆる民間事業者、ディベロッパーの参加も認めていることになりますが、私、一つ新しい提案をさせていただきたいんです。
 この委員会での質疑の中でも指摘されていた、既存住居者、従前住居者で、経済的な側面で建てかえに参加できない方がいる、それに対しては近くの公営住宅のあっせんとかというのをやると言いましたけれども、これからマンションを買う人は別かもしれませんが、マンションを買った人については、先ほどの質疑もありましたが、やはりこのマンションは生涯自分の持ち物だ、こう思ってしまっていると思うんですね。
 私は、マンションが震災で壊れたのを見て、ああ、マンションというのは家を買ったんじゃないんだな、居住空間を買った、幻を買ってしまったんだなというふうに思いましたけれども、現実はなかなか、生涯の買い物として買った以上、それが、そこから出ていくというのは大変ちょっと抵抗があるんではないか。経済的な側面で賃貸していくというのはやむを得ないにしても、建てかえには参加したくないけれども、何とかそこに残りたいという方もやはり心情的には多い。
 その場合、建替組合に参加するディベロッパーに対して、参加する際の条件として、建てかえしたマンションに従前居住者優先のための賃貸スペースをつける、こういったことをディベロッパーの参加条件に加えたら、こういった従前居住者、建てかえに不参加の区分所有者に対する部分というのはかなりフォローができるのではないかというふうに思います。
 この点について、すぐここでどうだこうだという話ではないかもしれませんが、こういうことは考慮されてもいいのではないかと思いますが、どうでしょうか。
三沢政府参考人 先ほどから申し上げていますが、参加組合員は、事業の参加に必要な資力及び信用を有する者であって、定款で定められたものという要件でございます。
 その場合に、参加組合員を決めるに当たって、参加組合員になることを希望するディベロッパーに、例えば従前住民向けの賃貸スペースを確保するという条件をつけるということもこの法律上は可能なことでございますので、あとは具体の運用の中で、そういうことが例えば採算も含めて成り立ち得るかどうかという問題かと思います。
赤羽委員 先ほどの話ですと、ディベロッパーにとってみればかなりおいしい話だという指摘もありましたし、本当かどうかは知りませんが、ぜひそういった条件づけをして、再建というのは、僕は思うんですけれども、コミュニティーの破壊になってしまってはしようがないんですよね。経済的な余裕がある人は参加できる、余裕のない人は参加できないというと、ここに完璧に亀裂が入ってしまうんです。これまでマンション管理組合のもとに仲よくやっていたマンションという一つのコミュニティーを、再建という大きなテーマで真っ二つにするというのは私はできるだけ避けるべきだ。そういった意味で、今のような一つの提案でありますが、前向きに考えていっていただきたいというふうに思います。
 ちょっときょうは幾つも項目を出したんですが、審議時間もたっぷりまだあるようではございますので、ちょっと飛ばして、マンションの耐震診断について最後の質問に出させていただきました。ここについて確認したいんです。
 やはり、阪神大震災が終わって思ったのは、案外ひどい施工のマンションもあったな、こういったことだったと思うんですね。神戸という土地柄、耐震構造に弱いというか、余りケアされていない建物も多かったな、そういったことを痛切に思いました。
 国土交通省の補助制度のメニューの中で、耐震診断とか改修設計、改修工事費のすべてに補助制度が用意されている。耐震診断については国と地方公共団体から費用の三分の二が出る。大変すばらしいメニューだと思うんですが、どうも、仄聞するところによると、これは余り利用されていない。マンション管理組合の人たちなんかとも話すと、余り自分たちの住んでいるマンションが耐震診断で非常に悪い成績だというのが出ると困るみたいな、何かちょっと本末転倒なんじゃないかなというような意見もあったりとかして、これは実は使われていないんですよ。
 だけれども、これはやはり、先ほどの質問の中にもあったかもしれないが、結果として悪い施工者をはっきりさせるとかという意味もあるし、現在住んでいる人たちに対するセーフティーというのを確立させるという意味で、せっかくの耐震診断、改修設計とか、この補助メニューが使われていないというのは大変もったいない話だと思います。
 もったいないだけではなくて、せめて耐震診断ぐらいは、今のマンション、これこそ三十年以降でも構わないと思いますが、ある意味ではもう全面的に行う。義務、強制化するというのがなじむかどうかわかりませんが、そういった方向で、せっかくの補助制度があるわけですから、耐震構造をしっかりとらせる前提としての耐震診断を本当にとっていってもらう、こういった方向に持っていくような施策が必要なのではないかと思いますが、最後の質問としてお聞きをしたいと思います。
菅大臣政務官 確かに、委員御指摘のとおり、余り利用されていないことも事実でありますけれども、ただ、ここ数年上がってきていることもぜひ御理解をいただきたいなというふうに思います。
 強制ということでありますけれども、耐震診断の必要性については、マンション所有者がやはり自分の資産を適切に管理する一環として行うべきであり、強制をすべきでないというふうに思っています。ただ、やはり全員の合意の上に行われるべきであると思います。
 しかし、また御指摘のとおり、公共性ですか、公益性というものを考えた場合には、この耐震診断の重要性や補助制度というものを、地方自治体と連携をしながら宣伝、普及に努めて、利用してもらえるように努めてまいりたい、こう思います。
赤羽委員 菅政務官の地元の横浜市でも、市独自のメニューで戸建ての耐震に関する補助制度も確立されているようですし、これも一つの国民に対する啓蒙運動だというふうに思うんですね。マンションという公的な側面からいろいろな補助制度をつくっているのでありますから、公的な役割は、何というか、守るべき責務というのもあるはずでして、耐震診断ぐらいはぜひやっていくべきだ、そう強く主張しまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
久保委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時三十三分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十二分開議
久保委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。東祥三君。
東(祥)委員 こんにちは。自由党の東祥三でございます。
 扇大臣、佐藤副大臣、そしてまた菅政務官、高木政務官、どうぞよろしくお願いいたします。
 集合住宅問題は、まさしく三大都市圏の、なかんずく東京の問題だと常々実感いたしております。私が住む江東区も、人口三十八万前後でありますが、そのうちの六〇%強は集合住宅に住んでおります。そういう意味で、この法案の推移に対して大変関心を持っている一人でございます。
 まず、本法案の基本的な考え方についてお伺いしたいと思います。
 マンション建替え円滑化方策検討委員会取りまとめによれば、これまでの老朽化等による建てかえ事例は、住宅需要のある地域に立地して、建てかえ前の容積率に余裕があり、民間事業者の積極的な参画のもと、等価交換方式により区分所有者の負担が大幅に軽減されるという恵まれたケースに限られ行われてきた、このように私は認識いたしておりますが、今後はこのような事例が多くは見込まれない状況なのではないのか。
 そういう視点から、そもそもマンションの建てかえが円滑に進まなかった、あるいはまた進まない阻害要因は一体何なのかということについて、国土交通省にお伺いしたいと思います。
三沢政府参考人 マンションの建てかえが進まない要因は幾つかございますけれども、主なものを申し上げますと、一つは、例えば建てかえ決議をやった後でも、具体的に事業を進めるための法制度が未整備なこと。具体的には、例えば建てかえを担う団体についての法的な位置づけがないとか、あるいは従前の建物から新しいマンションへ権利が円滑に移行する仕組みがないというような、そういう法制度上の未整備が一つございます。
 それから二つ目に、区分所有法の建てかえ決議を含めまして、やはり多数の区分所有者がかかわるということから、合意形成の難しさということがあるかと思います。
 それから三点目に、資金確保について、今後保留床で事業費が全部賄えるという状況が必ずしも期待できないというときもございます。そういう場合には、やはり資金確保の問題というのが非常に大きな問題になるかと思います。
 それから、建てかえるに当たっての既存不適格の問題も含めて、容積率が不足で、それがなかなか進まない要因になっているというようなケース。
 そういうような幾つかの要因があるかと思います。
東(祥)委員 これまでの区分所有マンション、先ほど住宅局長から御指摘あったような点にも触れますけれども、この区分所有マンションの建てかえ事例としては、老朽化に伴うものが六十九件、阪神・淡路大震災の被災マンションの再建が百八件の計百七十七件というふうに聞いておりますけれども、区分所有者全員の同意と強い団結に加えて、地方住宅供給公社や民間事業者等の特段の理解と協力があって再建できたとも聞いております。
 ここで申し上げているこの阪神・淡路大震災後にマンション建てかえで生じたさまざまな問題や事例というのは、今議論しております本法案にどのように考慮、参考にされ、反映されているんでしょうか。その内容はどういうものなのかについてお伺いさせていただきたいと思います。
三沢政府参考人 阪神・淡路大震災におきまして建てかえに困難を伴った要因、これも幾つかございますけれども、制度的な問題点といたしまして具体的に出てきましたことを申し上げますと、例えば、建てかえに参加する区分所有者の集まりに法人格が付与されていないので建設会社等との契約が結べない、あるいは、結ぶにしてもだれの名前で結んだらいいだろうかというような問題点があったとか、それから、従前の建物を除却するために必要な抵当権の抹消に際して金融機関の理解が得られない、つまり、従前マンションの抵当権を一回抹消して再建マンションにもう一回設定するということをしなきゃいけませんので、一たん抵当権が途切れるということについてなかなか金融機関の理解が得られないというようなこともあったということがございます。それから、建てかえに当たって、今度登記するにしても、登記を一人一人がやらなきゃいけない、その登記手続が非常に煩雑で大変多くの時間と労力を要したというようなことが挙げられております。
 こういった問題を解消するために、この法案につきましては、マンション建替組合という法人格を持った建てかえ主体の設立、運営ルールの明確化、それから権利変換手法によります再建マンションへの権利の円滑な移行の制度、あるいは登記の一括処理といった制度を設けているところでございます。
 また、制度的な問題以外に、例えば資金難とか容積率の不足等の問題に関しましては、補助や融資の制度による対応、それから容積率の緩和を行います総合設計制度の積極的な活用ということで支援を行っていくという考え方でございます。
東(祥)委員 扇大臣、以上を踏まえた上で基本的なことをお伺いしたいんですが、この法案で、建てかえの基本的な阻害要因、これはほとんど取り除かれていると思いますか、あるいはまた、まだ足りない部分があると思われますか、大臣の御所見を承りたいと思います。
扇国務大臣 これですべてうまくいくという、一〇〇%というのは、ほとんど、どの法案によってもないと私は思います。やはり施行してみて、欠陥がある場合はそれを補充していくということですけれども、東議員がおっしゃった阪神・淡路大震災等々、また今お住まいの江東区は、東京の中でも、集合住宅が建ち過ぎるのでマンションの建設をしばらく保留してくれということを江東区がおっしゃるくらい、一番関心があり、また一番問題点をお知りになっている地区だと思います。
 私は、そういう意味では、現段階では一番、きょう皆さん方に御審議いただいている法案がよりベターで、そして潤滑にこれが円滑化法として効をなすというふうに認識しております。
東(祥)委員 その上でお伺いさせていただきますが、大臣また佐藤副大臣もおわかりのとおり、マンションの建てかえというのは、そのマンションの住民の主体的な意思で実施されるものであると考えます。
 行政の役割は、住民、ここでは区分所有者の主体的な建てかえを支援すべきとの視点から講じられるべきものであると考えておりますが、この法案に無用な行政の関与はなされていないのかどうなのか、この点についてお伺いしたいと思います。
三沢政府参考人 この法案は、今先生おっしゃいましたとおり、マンション建てかえが区分所有者みずからの意思及び責任で行われるということを基本としながら、多数の区分所有者による意思決定の必要性などの特性にかんがみまして、住宅政策上の観点から必要な支援を行おうとするものでございまして、この法案によります行政の関与も、こういう観点から必要最低限のものになっているというふうに考えております。
東(祥)委員 今の御指摘、重要なことだと思うんですが、それでは、区分所有法との整合性、区分所有法も秋には改正されるというふうに聞いておりますが、本来、この法案というのは区分所有法の改正と一緒に出してくればよりクリアカットになるのかなというふうには基本的に思っているわけでありますが、この区分所有法との整合性、関連について若干質問したいというふうに思います。
 区分所有法は、区分所有建物の権利関係を調整している法律でありまして、いわば本法案の前提となるべき法律だと思います。区分所有法は、私的自治の原則に基づいて、行政の関与は基本的に存在していません。建てかえ決議を定めた区分所有法六十二条においても、区分所有者同士で決議するものであって行政の関与はない。区分所有法上は行政の関与がないのに、マンション建替え法案では、組合設立事業計画や権利変換など多くの場面で行政の関与がなされております。これは一体なぜなのか。行政の無用な関与であって、私的自治や住民本意の建てかえをかえって阻害することになるのではないのか、こういうふうに危惧もいたします。
 主体者はあくまで住民であります。仮に行政の関与が必要だとしても、財政面の支援や基本的ルールの提示などにとどめるべきであって、各種手続にこれほど関与する理由はないのではないかと素朴に思うわけでございます。法制的にも、現行区分所有法上、行政の関与のない建てかえ決議のみで民事上の強制力を有するのだから、強制力の発動のために行政の関与が必要であるというのは合理的とは言えないのではないか、このように思うんですが、いかがですか。
    〔委員長退席、実川委員長代理着席〕
扇国務大臣 御承知のとおり、例えば、私も含めてかもしれませんけれども、マンションにお住まいの皆さん方、それぞれ年齢あるいは世帯構成、そういう多岐な、全部さまざまな形態の方がお住まいになっておりますから、それぞれが専門的な知識を有していないと考えるのが通常であろうと私は思います、私が住んでおりましても私も素人でございますから。
 そういう意味で、区分所有者が互いに意見が違う、それぞれの状況も違う、それを一つにして意見を集約しながら十分に、建替組合の設立でございますとか今も局長が言いました権利変換手続、そういうものをより円滑に進めていくために、また、少なくともその中に、先ほどからも議論になっております、お住まいになっている皆さんの中の、高齢者や資金力のない皆さん方そして一部の弱者というような人たちに少なくとも不利益を与えることがないように、そういう公平さを担保するために、建替組合設立の認可をし、あるいは権利変換計画の認可等の最低限必要な行政の関与というものを今回の法案でしているわけでございます。
 そういう意味では、先ほどから議論になりました、建てかえに参加できないで転出せざるを得ないような高齢者の居住の安定を図るために、公共賃貸住宅への優先入居など、それは進めておりますけれども、行政が一定の関与をすることは必要であるということでございますので、今東議員がおっしゃいましたように、民法の特別法である区分所有法とはおのずからこれは異なってくる、そう思っております。
 そういう意味で、この法案で、行政の関与は、住民が主体となっておりますマンション建てかえ事業の円滑化のために最低限必要であるという意味でございます。
東(祥)委員 今、大臣が御指摘なされました、例えば高齢者への対応だとか、あるいはまた国として特別な優遇税制措置をとってあげるだとか、そういうことについてはまた後ほど個々具体的に質問させていただきたいと思いますが、私が申し上げているのは、いわゆる建てかえを進めるに当たって行政の関与が余りにも過剰であれば、それがかえって逆に、建てかえを進めようと思っている主体者の出ばなをくじいてしまうのではないのか、そういうところからも質問させていただいているわけであります。
 例えば、事業計画の認可基準というものが法案の中に盛り込まれているわけであります。マンション建てかえが住民の主体的な発意、合意形成によってなされる以上、マンションの設備、構造が一定水準以上であること、法案第十二条六号、あるいはまた良好な居住環境の確保のために必要であること、同条第四号、また同条第五号などは、余計な制約になり得ないかということであります。
 築後二十年、三十年たった、そのようなマンションをかえる場合、行政の方が、当然、二十年前、三十年前と比べるならば、今の基準でいけば、設備上あるいはまた構造上老朽化しているのは当たり前である、しかしそのときに、今の基準に合わせて設備、構造も一定水準じゃなければそもそも事業計画の認可基準そのものがおりませんよと、そういう足かせになってしまっているんではないですかと、こういう視点で質問させていただいているわけであります。この点についていかがお考えですか。
 あるいはまた、そのときに、もし追加的な財政負担が強いられるということであるならば、その基準を行政側が策定する以上、それに基づいてやられる場合、国が財政的な支援をちゃんと担保してあげるということであるならば話は別であります。ただ単に足かせ、あるいはまた基準、規制という側面だけ持つとするならば、それは不十分なのではないのか、こういう角度から質問させていただいております。いかがでしょうか。
三沢政府参考人 この法案の第十二条で認可の基準を定めております。
 この趣旨でございますけれども、この法律に基づきます建てかえ事業というのは、例えば売り渡し請求権であるとか権利変換手続、こういったものに一定の範囲での強制力は伴うわけでございます。こういう公的ないわば法律効果をこの法律によって与えている。それはやはり、居住環境の改善という住宅政策上これを特に支援すべきだという、この法律の目的から出てくるわけでございます。
 したがいまして、この十二条の認可基準というのは、そういう住宅政策上の要請に最低限かなったものでなきゃいけない。例えば、建てられたものが違反建築物でも何でもいいということにはやはりならないのであって、そういう点について一定の基準を定めて認可するというものでございます。
 ただ、先生おっしゃるとおり、この内容につきまして、やはり過剰なものであってはならないので、そこは、内容について十分吟味して、住宅政策上のある意味での最低限の要請と言えるようなものを定めていくということが必要かと思います。
東(祥)委員 さらにこの点について、より込み入った形で聞かせていただきますが、私には、区分所有法と比較してはるかに強い行政の関与がなされているように見える。
 そこで、本法案に基づいてマンション建てかえを実施した場合に、計画の資金が不足したとする、あるいはまた経済変動等でとんざした場合などは、行政はいかなる責任をとれるのか。あるいはまた、住民、区分所有者は、行政のお墨つきがあった以上うまくいくとの期待を有するのは当然であって、その場合には、認可等の関与をした行政の責任、これが追及されてしかるべき問題ではないのか。そういう観点からも私は聞かせていただいているわけでありますけれども、そのような場合、関与した行政が代行して事業を継続すべきではないのか、このようにも考えますけれども、この点についてはいかがですか。
三沢政府参考人 この法律は、先ほどから先生おっしゃられていますように、基本的には、マンションの建てかえについて区分所有者が自分の責任で行うべきところを、それがやはりマンションという非常に戸建てと違った特性がございまして、多数の意思決定にかかわる、それから非常に大規模な複雑な構造物であるということから、やはり一定の事業手法を用意しないとこれがなかなか進まないということから、ある範囲での強制力を持つ事業手法を用意しているというものでございます。
 しかしながら、基本的に、一定の国としてのでき得る限りのいろいろな補助、融資等の支援はするにしても、みずからの責任と能力においてするというのが基本でございますので、これを仮に途中でとんざした場合に、当然それは行政が代行すべきという性格のものではないのではないかというふうに考えております。
東(祥)委員 もう一点つけ加えさせていただければ、事業計画の認可基準というところで、第十二条六号で、マンションの設備、構造が一定水準以上である、これは、ある意味で一般論なんだろうと思うんです。そして、個々のいわゆる建てかえを申請してくるところに対してこれを当てはめた場合、当然そこに資金負担がなされる。当然、それも合意のもとでその計画を進めていくことになると思うんです。
 ただそこで、認可を与えているのは行政でありますから、一定の状況で自分たちも建てかえを促進させることができるという前提で進めて、そしてそれが破綻してしまう、そのときの最大のポイントが、この新たに付加される構造あるいはまた設備上の改善の問題であったとするならば、認可を与えているのは行政でありますから、当然それに対してそれなりの、共通の、共有する責任を私は有するんじゃないのかと。
 そうでなければ、その認可を与えるということは、前、三月十五日に、いわゆる都市再生法のときに、扇大臣と極めて有益な議論をさせていただきましたが、日本のこの国が、中央が地方をコントロールするということではなくて、あくまでも民、地方の主体的な意思に任せていく、それをいかにして促進し、そしてまたサポートしていくか、そういう視点でこのマンションの建替え法案というのは当然考えられるべき主要な法案なんだろうと思うんです。そういう意味で、あえてお聞かせ願いたいと思って質問させていただいているんですが、いかがですか。
    〔実川委員長代理退席、委員長着席〕
三沢政府参考人 具体的に省令で定める基準がどんなものになるかということでございます。私どもは、先ほど申し上げましたように、良好な居住環境の確保を図るため、住宅政策上の観点から必要な範囲のものを定めるということでございます。
 具体的に申し上げますと、例えば住戸の構造として、耐火建築物または準耐火建築物でなければならないとか、設備についても、各戸が台所とか水洗便所とか浴室を具備しなければならない。ある意味では、今の社会的な常識の範囲内のものでございまして、せっかく建てかえをする場合に、不良なストックを再生産することのないようにという観点からの、いわば最低限のものであるということでございますので、先生おっしゃるように、過大な設備を要求して、過大な資金需要をもたらして、それで採算を危うくする、そういうような性格のものではないというふうに考えております。
東(祥)委員 わかりました。
 それでは、法務省にお尋ねします、原田大臣官房審議官に。
 全区分所有者の同意のもとなら区分所有法上できるにもかかわらず、本法案によりますと、区分所有者により建てかえの決議がされて設立されたマンション建替組合が、建てかえ促進のために、マンション近隣の敷地を買い取り、規模を拡大して容積率を上げることにより、建てかえ資金に充当しようとしてもできないということになっている。
 わかりやすく言えば、百戸建てのあるマンションがあって、これを建てかえよう、その近隣の地域を、普通ならば、今までならば、全員が合意して初めて建てかえが可能になる。今回、五分の四あれば建てかえられるというふうになっている。そういう仕組みの中で、周りの敷地が浮いていて、組合が、これはぜひ全体として買い上げておこう、それによって、新たな建てかえをしたときに当然大きな上物を建てることができる、こういう判断をしたときに、その周りの敷地を変えることができないというふうになってしまっているわけですけれども、これをできるようにするべきなのではないのかと私は当然のごとく思うわけであります。
 区分所有法の範疇で本法案に盛り込めないなら、区分所有法もそういう意味では同時に改正すべきなのではないか、このように思うわけでありますが、いかがでしょうか。
原田政府参考人 建てかえの際の敷地の同一性の問題につきましては、現行の区分所有法上は、敷地が同一であるということが要件となっております。今先生の方の御指摘は、現在、区分所有法につきまして、法制審議会の区分所有法部会でこの敷地の同一性の要件を外すということを検討しているということを前提に、敷地の同一性の要件を外す改正を、今回の促進法とあわせて同時に改正すべきではないかというお尋ねであろうかと思います。
 区分所有法につきましても、我々も、今申し上げましたとおり、法制審議会で鋭意検討を進めておりますが、区分所有法が私人間の権利関係の調整を行う民事基本法にかかわる問題であるということもあり、幅広く意見を聞きながら進めているということで、今回の、今国会への法案提出には間に合わなかったわけでございます。
 ただ、御指摘のとおり、マンションの建てかえを一層円滑に実施するためには、御指摘の敷地の同一性の要件の緩和を含めた区分所有法の見直しを急ぐということは要求されるということも我々十分承知しておりまして、現在の法制審議会の予定では、この秋に臨時国会が開かれるようなことであれば、これに法案の提出をすることを目標に検討を進めていきたい、このように考えているものでございます。
東(祥)委員 幅広く議論するのはいいんですが、問題点をちゃんと絞った上で、今その問題意識を持たれているということをお聞きしてうれしく思うわけでありますが、それをちゃんと具体化できるように、そういう意思を持ってやっていただきたいとお願いしておきたいと思います。
 次に、公営住宅とのかかわり合いについてお聞きしたいと思います。
 地方自治体が、建てかえマンションの区分所有権を希望者から買い受け、あるいはまた公営住宅に供する措置を講じたらどうかというふうに思っています。年齢、世代も混在し、社会コミュニティーのあり方としてもよいと考えております。
 良質な住宅不足に悩む三大都市圏、とりわけ東京では推進され、また国もバックアップしていただけたらと考えますが、扇大臣あるいはまた佐藤副大臣、この点についていかがでありましょうか。これは政治的な問題でありますから、大臣、副大臣がお答えなさる方がより適切だろうというふうに思います。
扇国務大臣 地方自治体が、同じように、今議員がおっしゃいますように、公営住宅の整備の面から、少なくとも、これは平成八年でございますけれども、公営住宅法を改正して、しかも、それまでの公共団体が直接建設し供給するという方式に加えて、民間住宅を買い取る方式等を、公営住宅として買い取ることも、住宅の基準に適合するというような一定の条件で可能になったということがあると思います。
 そういう意味では、個別具体の公営住宅の供給につきましては、地域の住宅事情でございますとか既存の公営住宅の状況等を踏まえて、あるいは地方公共団体が判断することによって、直接建設する方法と民間住宅の買い取り等の方法を選択して行うことができるわけでございます。
 私は、なお、今回のことによっても、マンションというものは基本的には私有財産の集合体ということでございますので、建てかえに当たっての費用というのは、一義的にはもちろん区分所有者が負担するべきものであると思っております。建てかえに参加しない区分所有者の権利の買い取りも、建替組合が売り渡し請求等によって実施することが、これは原則としてはあるということでございます。
東(祥)委員 三沢局長、何か補足説明できるところはありますか。
三沢政府参考人 今大臣が申し上げたとおりでございまして、一義的には区分所有者がみずから費用を負担するという原則から、やり方といたしましては、まず、建替組合が建てかえに参加しない区分所有者の権利を買い取った上で、その上で、建設されたマンションの住戸について、これは今の公営住宅法の中で買い取り方式というのもあるわけでございますので、これを活用していくということが公共団体の選択によって可能であるというふうに考えております。
東(祥)委員 次に、高齢者への対応について御質問させていただきたいと思います。
 先ほど扇大臣から既に言及がなされているところではありますけれども、建築後三十年を経過したマンションは、平成十二年度までに十二万戸、そしてそれが十年後には九十三万戸に達すると見込まれております。同時に、日本の高齢社会もなお一層進むわけであります。したがいまして、例えば施行者が建てかえを計画する場合、従前の権利者に当然高齢者の方々がいるわけでありますから、計画の中に、デイケアセンターやあるいはグループホームなどの高齢者施設を取り入れた複合施設を計画したい、そういう要望も多々あるんではないか、このように思われます。
 そこで、この際、本法案の中に、支援措置として、地方自治体とも連携された高齢化施設対応の補助制度なども盛り込むべきではないのか、このように思いますが、扇国土交通大臣、いかがでありましょうか。
扇国務大臣 先ほども私ちらっと申しましたけれども、現段階で、築後三十年のマンションの中で、六十歳以上の方だけが住んでいる世帯というのは平均で三六%にも上っております。そういう意味では、今おっしゃいましたように、デイケアセンター等の高齢者の生活を支援するための施設を併設するというのは、これはもう周辺の居住者におかれましてもお年寄り自身にとっても大変重要なことだと私は思っておりますし、もちろんこれを歓迎しない人はないと思います、あすは我が身でございますから。
 国土交通省といたしましての補助制度、そういうものとしては、一定の場合には共用部分の整備に要する費用等について補助を行う、こういう制度を設けておりますけれども、デイケアセンター等の併設を推進するためにも、老人福祉施設を併設する場合には、さらに補助の割り増しを行うということにしております。これは、建築工事費の一五%の割り増し補助ということにいたしておりますので、そういう意味では、先生の今おっしゃった御要望がかなえられるように私たちも努力していきたいと思います。これは、基本的には、福祉施設の設置につきましては厚生労働省の所管ということになってしまうんですけれども、私たちは、その点も勘案しながら、働きかけを十分に行って現実的にしていきたい。
 もう一言申し添えさせていただきますれば、福祉施設のみならず、私は、託児所もできればというふうに考えております。
東(祥)委員 非常に前向きな御発言に安堵いたすところであります。
 次に、税制とのかかわり合いについてお伺いさせていただきますが、マンションの建てかえの際に大きくのしかかってくるのが、登録免許税や不動産取得税などの種々の税制であります。特に個人の場合は、法人と異なって大変な重税感に駆られるわけであります。
 本法案ではどのような税制上の支援措置が講じられているのか、簡単に御説明いただければと思います。
三沢政府参考人 まず、マンションの建てかえに限らず、自己居住用の住宅につきましては、既に住宅ローン減税、あるいは譲渡に当たっての三千万円の控除等のいろいろな特例の適用がございますが、これに加えまして、今回、この法案とあわせまして、特に次のような特例措置を創設しております。
 大まかに言って三つございますが、一つは、権利変換によって権利が移行するわけでございますけれども、そのときに、その権利の移行について、例えば登録免許税とか譲渡所得税をそのたびごとに課税されては大変なことになりますので、例えば譲渡所得課税であれば従前資産の譲渡がなかったものとみなすとか、登録免許税についても従前資産価額の分については非課税にするとか、あるいは不動産取得税についても取得土地価額の五分の一相当額を控除するとか、こういう措置を講じております。
 それから、二つ目は、今度、建てかえに参加しないで転出される方について、この方についても補償金等を得られるわけでございますが、これはまた、課税されるというのが非常に大きいものでございます。したがって、こういう買い取られて転出する場合についての軽減税率とか、あるいはやむを得ない事情で転出する場合について千五百万円特別控除をするとか、そういう措置を講じております。
 それから、三番目は、今度建替組合という事業主体自体に課税されるということについてできるだけ軽減したいということで、いろいろな登録免許税の非課税措置とか、一定のものについて法人税等の非課税措置というものを講じている次第でございます。
東(祥)委員 あと五分しかありませんので、最後に二つの質問をさせていただいてやめさせていただきたいと思いますが、一つは、相談体制と情報公開の問題について、それからもう一点は、防犯対策の問題についてであります。
 第一点目に関しては、施行者が建てかえを計画する際に、権利変換や税制の問題などの極めて専門的な知識が必要になってきます。その際、昨年施行されたマンション管理士や建築士などへの相談、また、ディベロッパーやコンサルタント会社などの専門業者の事務代行などが予想されます。しかしながら、大手ゼネコンや金融機関が倒産する中で、だれに相談したらよいのか、どの業者を選択すればよいのか、施行者としても判断に窮することがあるのではないか、このように推察されます。
 そこで、窓口の情報公開が必要になるのではないのか。例えば、東京都が実施している、特定民間優良賃貸住宅のコンサルタント会社を登録制にしているように、国土交通省または地方自治体において、施行者が正確な判断ができるように、委任できる専門業者や相談できるマンション管理士、建築士などを登録制にして、情報公開を公平に正しく行う制度をつくるべきではないかと考えますが、この点についてどのようにお考えになっているか。
 もう一つ、防犯の問題でございますが、私は、現在、自動車、自動二輪車の盗難防止、被害対策に関する質問主意書を政府に提出して回答を待っている最中でありますが、本法案の効果としてマンションが高層化した場合には、盗難被害の発生が増加するおそれがあります。また、そのデータもあるわけでありますが、盗難犯罪防止についていかに対応されるかということをお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
扇国務大臣 端的に申し上げます。
 今の建てかえの相談の専門知識の供給についてどういうことが行われているかということでございますけれども、それは、専門家に相談するというのは今おっしゃったとおりでございますので、今回は、マンション管理士とか建築士等の専門家からの情報提供、アドバイスが行われる体制の整備が重要だと思っておりますので、これはすべて国土交通大臣が定める基本的な方針に盛り込もうとしております。
 どういうことを盛り込むかというのを二、三点申し上げます。
 マンション管理士についてはマンション管理センターへ、建築士につきましては都道府県の建築士会に、そして、再開発コンサルタントにつきましては再開発コーディネーター協会にそれぞれ相談すればいいということで、明快にこれは明示しようと思っております。
 それから、今の、最後の防犯の件につきましてでございますけれども、マンションでの盗難が多発しております。共同住宅の計画とか設計に関しては、防犯を、共同の防止体制、これを十分にしなければいけないと思っています。
 例えばピッキングによります盗難が平成十年には約四万二千件でございました。それが、今、平成十二年、わずか二年間で約六万八千件に増加しております。こういうことから、私たち国土交通省といたしましても、警察庁と連携をしながら、防犯に配慮した共同住宅に係る設計の指針というものを策定しております。それで、国土交通省としましても、策定したこれらの条件を配慮するように、そして、それぞれの共同住宅で、死角というものを生じないような空間の構成ですとか、あるいは犯罪者の接近を防ぐための構造あるいは設備、そういうもののあり方を示していく。そして、特に、地方公共団体及び関係団体に周知を図るとともに、警察庁と連携して、モデルになるような取り組み方については今後推進してまいりたいと思っておりますので、これもより推進していきたいと思っています。
東(祥)委員 どうぞよろしくお願いします。
 最後の防犯のところは、ただ単に家にピッキングで入っていくだとか、そういうことのみならず、私が強調したいのは、自動車それからオートバイ、これが多発しているんです。とりわけ高層住宅になっていけばいくほど、その被害の頻度と額がウナギ登りになっている。そういうことも踏まえた上で、今大臣がおっしゃってくれた部分の中に入れていただいて、さらに検討していただければと。
 どうもありがとうございます。終わります。
久保委員長 瀬古由起子さん。
瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。
 マンションを建てかえる場合、建てかえるか改修するかの適切な判断、そして、組合員の十分な合意形成、建てかえの諸準備、建てかえを円滑に進めるための制度など、一定の法整備が必要だと私は考えます。
 まず最初に、大臣にお伺いしたいと思うんですが、本法案は、建物の区分所有に関する法律による適法に議決された建てかえ決議を受けての対応を定めるものだと思います。区分所有に関する法律が改正される前に、本法案成立を急がなければならない理由は一体何でしょうか。
扇国務大臣 先ほどからも御論議が重なっておりますけれども、まさに老朽化マンションというものが急増してくるというのは御論議のあったとおりでございます。そういう意味で、地震に対しましての安全性、その不安を解消するためにも、あるいは建物の居住性に対しましての不満、それらの理由から建てかえを望んでいる居住者が大変たくさんいらっしゃいます。そういう場合には、建てかえを検討しているマンションも多数あるというふうに伺っておりますし、現実に私も見ております。
 そういう意味で、それらの人たちの建てかえを行う団体への法人格の付与、そういうものとか、権利の円滑な移行のための仕組みの整備というものが緊急を要しているというふうに思っておりますので、そういう意味では、根本的に必要な制度を確立しなければならないということが基本でございます。
瀬古委員 では、法務省に伺います。
 現在、法制審議会区分所有法の部会で、区分所有法の見直し作業が行われております。本年三月五日には、建物区分所有法改正要綱試案が発表されています。現在、四月三十日までパブリックコメントが行われている。試案の内容は、建てかえ決議の手続の規定など住居の移転、変更にかかわる重大な問題が明記されております。しかも、建てかえは莫大な費用を要します。事は居住者の居住権、財産権に関する問題だけに、その検討は慎重に行う必要があると思います。
 ところが、先ほどの御答弁でもありましたように、この秋の国会にも関係法案を作成すると聞いております。これは、私は、余りにも性急ではないかというように思うんですね。昭和五十八年、一九八三年にも大改正がありましたが、このときは、かなり長期の日時をとって、関係団体など広く国民の声や要望を聞いていたと思います。分譲マンションは二〇〇〇年の時点で三百六十万戸に上るとされております。それだけに、事を急がず、国民の声、とりわけマンション住民の意見を十分聞いて行うべきだと思うんですけれども、その点、いかがでしょうか。
原田政府参考人 御指摘のとおり、建物の建てかえ要件の見直しを含む今回の区分所有法の見直しは、区分所有者の財産権及び居住権にかかわる重要な問題であると認識しております。したがいまして、マンション住民等の声を十分に聞きながら慎重に進めるというつもりでございます。法制審議会におきましても、経済界のみならず、管理会社、不動産関係の会社、さらに利用者等々、多方面から識者に集まっていただいて審議をしているところでございます。
 マンション住民等の声を十分に聞くという観点から、今回の中間試案につきましては、現在、パブリックコメントを実施して広く意見を募っているところでございます。これに寄せられた意見を十分にしんしゃくしながら今後検討を進めてまいりたい、このように考えております。
瀬古委員 先ほど大臣は、今マンション居住者が建てかえを望んでいる、ある意味では緊急を要している、そういう問題で急がなきゃならないという理由をお話しされました。
 私は、この円滑化法は、本来ならマンションの区分所有法の見直し作業を受けて、その法改正が行われて、それを受けてやるものだと思うんですね。私は、もっともっと区分所有法についても十分に関係者の意見を聞くということは、事は権利問題にかかわる問題だけに、急がなきゃならないけれども、やはりしっかり議論を、関係者の意見を聞くということがあると思うんです。そういう意味では、まだ区分所有法の見直し作業が行われている段階で、何でそれを急がなきゃならぬのか。
 これは、小泉内閣が都市再生の一環として法案を提出するんだと言われて、ともかく公約されたんで、何が何でも先にやらなきゃならない、こういうのがあるのかなと思わざるを得ないんです。しかし、法制審議会での議論と同じように、やはりこの円滑化法についても、急がなきゃならないけれども慎重にやらなきゃならない、関係者の意見を十分聞くということが必要だと思うんです。
 大臣にお聞きしたいんですが、例えば、後から区分所有法の改正ができたとしますと、現在のこの円滑化法との整合性がないという問題点が幾つか出てくるかもしれません。そういう整合性がないという場合は、どういうように扱われるんでしょうか。
扇国務大臣 ちょっと前半と後半に御質問が分かれておりますので。
 都市再生するのに慌ててしているんじゃないかという、それは全く関係のないことで、これは、都市再生法がどうのこうのという前に、これを法案化しようと言っていることでございますので、その点はぜひ御理解いただきたいと思います。
 既に建てかえ決議が行われているマンションの建てかえ実施が促進される、もうここまで来ているというところがあります。
 それで、建てかえの決議済みのマンションというのは全部で五地区ございます。それから、平成十四年度中に決議予定のマンションというのも四地区ございます。そして、そのほかに、建てかえ検討中のマンションというのは百二十二地区ございます。そのように、これらの法案が通ったらというような、もうそこまで来ている、順番を待っているといいますか、法案ができるのを待っているというようなところまで合意ができているものもございます。
 そういう意味で、マンションに関しましても、決議に至る過程で、建てかえ事業の運営ルールとか、あるいは法的な仕組みというものが明らかにされてきますと、私は合意形成の促進の上で大きな効果があらわれると思っておりますし、それを待っていらっしゃる方もあるということは現実でございますので、この法案を特別ほかの関連として慌てて出したということではないということだけは申し上げておきたいと思います。
瀬古委員 後で重大な改正点が出て整合性がなくなるという場合の対応はどうされますか。そういうケースが出た場合。
三沢政府参考人 これは、基本的には先生も御認識されているとおり、建てかえ決議があった後の事業執行の法制度を整備しているものでございます。それで、基本的にそういう何か重大な違いが出てくるというようなことがあるとは認識しておりません。
 ただ、もちろん今後、区分所有法の改正によりまして、いろいろこちらの法案でも工夫すべき点が出てくれば、それはまたその内容を吟味してきちんとした対応はしていきたいというふうに考えております。
瀬古委員 国土交通省に伺いますけれども、この法案が成立した場合、どれだけのマンションの建てかえ事業量になると想定されておられますか。
三沢政府参考人 一つは、今後、建てかえのストックとしてどのくらいのものがふえていくかということなんですが、建築後三十年を超えるマンションのストックベースで申し上げますと、現在十二万戸であるものが十年後には九十三万戸に急増する。これがすべて建てかえ対象に直ちになるというわけではございませんけれども、こういった九十三万戸の中で、建てかえをしたらいいのか、あるいは改修でいったらいいのかという相当真剣な議論が活発に行われることになる、これはもう間違いないところであるかと思います。
 ただ、その結果として、どのくらい建てかえの事業量として毎年毎年のフローが出てくるか、ここは非常に推計が難しいので、一つの仮定のもとに、やや乱暴な試算をするしかないのですが、これも一定の仮定のもとということで御理解いただきたいのですが、一つ、例えば建築後三十年を超えるようなマンションが三十年後直ちに建てかわるのじゃなくて、ある程度のスパンを持って建てかわる、これが例えば七十年後にすべて建てかわるといたしまして、しかもその間のパターンも、五十年くらいまでだんだんふえていって、五十年後は減っていく、そういう一つの仮定でございますので、そういう仮定で計算いたしますと、今後十年間で約五万六千戸というような計算が得られるわけでございます。ただ、これも結局こういう法制度の整備によって建てかえの時期がより前倒しになるということも十分考えられますので、ここはあくまで一つの推計であるというふうに御理解いただきたいと思います。
瀬古委員 今の推定も一つの根拠になると思うのですけれども、三十年を超すマンションが、十年後でいえば九十三万戸、それまでの建てかえの事業量は、今想定されている数でいうと五万六千戸、その後五十年目をピークに七十年まで次々と建てかえられていくという、こういう流れだと思うのですが、実際にはまだ九十三万戸のうち五万六千戸ですから、大半は、建てかえるときの条件整備はもちろんだけれども、マンションをどう長寿化させていくかということが、やはり大きな基本的な問題が重要になってくると思うのです。そういう点では、建てかえるときの法整備と同時に、長寿化させるための法整備、こういったものも真剣に考えなきゃならないと思うのですが、その点いかがでしょうか。
三沢政府参考人 マンションをできるだけ長く使っていただくということも当然非常に大事なことでございます。したがいまして、建てかえだけではなくて、改修によって長もちさせるという選択肢もやはり非常に大事な選択肢であるというふうに考えております。
 これは、一つは、維持管理という面から申し上げますと、やはりきちっとした管理をしていくということが非常に大事でございまして、例えば長期修繕計画をきちっとつくって、定期的な修繕をやっていただくようにいろいろ応援措置をしていくとか、マンション管理適正化法に基づいて、マンション管理士の方々に、マンション管理に対しましていろいろなアドバイスをして、いい管理をしていただくというような、こういう施策を推進していく必要があると思っております。
 それから、そもそもつくるときに、できるだけ長もちするようなマンションがつくられるようにということで、例えば公庫融資の基準においてきちっと耐久性にも配慮していくとか、それから住宅の品確法に基づく性能表示制度で、消費者の方々が、これは一体どのくらい耐久性があるマンションか、そういう情報がきちっと得られた上で買うか買わないかという選択をしていただけるような体制を整えるとか、あるいは、いわゆるスケルトン・インフィルと呼んでおりますけれども、躯体は長い耐久性を持ちながら、その中で、内装設備については変えていけるようなそういう技術開発を行っていくとか、そういう施策に積極的に取り組んでいく必要があるというふうに考えております。
瀬古委員 法整備そのものは必要だとお考えになっていませんか。
三沢政府参考人 ただいま申し上げましたように、長寿化のための施策というのは、管理面とかあるいは消費者に対する情報提供面とか、融資とか技術開発とか、それぞれいろいろな政策手段がございまして、やはり建てかえのときと違いまして、このために何か一つのまとまった法制度が要るというよりは、総合的にいろいろな手段を講じていくという性格のものかなというふうに考えております。
瀬古委員 建てかえのための法整備というのは当然必要なんですけれども、私は、長寿化のための法整備というのは、今後起きてくる問題からいって大変重要な問題だというように思っているのですね。
 そこで、大臣にお聞きしたいのですけれども、マンションの管理費とか修繕積立金の滞納が今大変多くなっています。旧建設省が一九九九年度に行ったマンション総合調査結果によりますと、三カ月以上管理費、修繕積立金の滞納がないマンションは四八・四%、前回の調査の五三・一%より四・七%ダウンしております。要するに、半数のマンションは滞納があるということなんですね。滞納の増加という問題は、日常管理や大規模修繕などが行われなくなって、マンションの劣化にもつながってまいります。国土交通省としては、この点についてどのような改善策が必要だと考えていらっしゃるでしょうか。何か検討されていることがあるでしょうか。
扇国務大臣 マンションの管理費とか修理の積み立て、これは本当に大事なことで、これを払うことは、みずからの財産を目減りしないといいますか、より持続をさすということに一番大事なことだと思っております。
 そういう意味で、マンション管理の適正化を推進する法律というものが昨年の八月に施行されておりまして、マンションの管理の適正化に関する指針というものがございます。その指針の中で、法令等の措置について、区分所有者が管理費または修繕積立金を支払わない場合には、他の区分所有者全員または管理組合法人は、総会の四分の三以上の多数の議決によって、最終的には滞納者の区分所有権等の競売を請求することができる、これは、区分所有法第五十九条でございますけれども、そこまで厳しく、きちんと修理費とか管理費をみんなで払いましょうということを明記してございますので、私は、これを払うこと、また、これを実行することによって自分たちの財産の維持、あなたのところはどれくらいの値段か査定してあげますよ、無料ですよなんて案内が今来ていますけれども、その査定によっても、こういうことをいかに実行しているかによって目減りは少なくなっていると思っておりますので、これを確実に実行するようにするべきだと私は思っています。
瀬古委員 今日の経済状況の中で大変深刻な事態になってきているわけですね。そして実際には、マンションを修理しようと思った場合には、裁判等でやらなければなかなか解決しないという問題も出てまいります。そういう点での対応が今求められていると思います。
 次に参ります。
 この法案第百二条には、市町村長は、保安上危険または衛生上有害な状況にあるマンションの区分所有者に対し、当該マンションの建てかえを行うべきことを勧告することができるとございます。震災等の破損がひどい状況では建てかえの勧告というのは大変理解しやすいんですが、通常の管理状態で老朽化に起因する場合、いきなり建てかえ勧告ではなく修繕勧告の方が適切ではないのかという意見がありますが、その点、いかがでしょうか。
三沢政府参考人 建てかえ勧告の制度でございますけれども、老朽化が著しく進行し、危険または有害な状況にあるマンションにつきまして、市町村長の勧告によりまして建てかえの合意形成を促して、区分所有者による自発的な建てかえを実現しようという性格のものでございます。
 それで、実際に市町村長が勧告する場合の運用としては、これは当然のことでございますけれども、事前に区分所有者と話し合って、可能な限り区分所有者の理解を得た上で行うということになりますので、区分所有者が知らないときに、寝耳に水で、いきなり建てかえ勧告が発動されるというようなことにはならないということでございますが、なお、この運用に関しまして、そういう趣旨についてきちっとした徹底をしていきたいというふうに考えております。
瀬古委員 もちろん、即建てかえ勧告という形にならないかもしれませんが、老朽化の場合に、まだ修繕するという余地は十分あっても、勧告というものがありますと、どうしてもその点が省略されていくというか、本来なら修繕をうんとやって、それでもだめな場合は建てかえということになるんですが、何だか建てかえを先にみたいなそういう印象があるので、十分その点は配慮していただきたいというふうに思います。
 次に参ります。
 危険が、構造上の場合は大変理解しやすい面があるんですが、ここに言う建てかえ勧告の中に、衛生上の理由という場合がございます。この衛生上の理由、衛生上有害な状況というのは大変判断が難しいんですね。これは具体的にどういう内容の状況を指すんでしょうか。
三沢政府参考人 建てかえ勧告の基準については、これから国土交通省令の中で定めるという予定でございまして、真に建てかえが必要となるマンションを対象として勧告制度が適切に運用されることとなるように、わかりやすく客観的な基準を策定するという考えでございます。
 その場合に、では、その衛生上有害な状況というのはどういうことかということでございますけれども、想定いたしておりますのは、例えば、屋根の防水機能が劣化をして、どんどん雨漏りが生じているような状態とか、あるいは、汚水の排水管が破損して、汚水が流出して悪臭等が発生している状況とか、そういうような状況等を想定しているということでございます。
瀬古委員 そういう場合でも、今日的な状況でいえば、修繕の一定の指導ぐらいでやれる場合も多いかと思うんですが、衛生上有害な状況で即建てかえ勧告というのは、ちょっと今日の時代からいうとどうなのかという問題はございます。
 次に参ります。
 同じ年代の団地が並ぶ場合は、建物によっては、危険、衛生上の有害な程度というのは棟で異なってまいります。特定の棟に対して勧告というのは可能なんでしょうか。
三沢政府参考人 建てかえ勧告について、団地を構成する棟のうち、特定の棟だけがそういう基準に該当するという場合には、その当該棟に対してのみ建てかえ勧告を行うということは可能でございます。
瀬古委員 災害に伴う建物の損傷、滅失による場合と、経年に伴う老朽化、だんだん古くなった場合とでは、建てかえの諸条件というのは大きく違ってくると私は思うんですね。法律もぜひ分けて考えてほしいという意見が全国マンション管理組合連合会からも出されていますが、これはどのように検討されているでしょうか。
三沢政府参考人 勧告の基準についてのお尋ねだと思いますが、老朽化による建てかえの場合と災害による建てかえの場合で、その基準を違えたらどうかというお尋ねかと思います。
 先ほど申し上げましたように、勧告の基準というのは、わかりやすい、客観的な基準として定めていくということになります。そうしますと、そういう客観的な基準、ある状況がこの基準に適合するかどうかということを判断してやっていきますので、そういう意味では、そういう状況になった原因が何であるか、災害なのか老朽化なのかということにかかわらず、保安上の危険性とか衛生上の有害性で一定の限度を超えているものについては勧告をし得るというような基準を定めていくことになろうかと思います。
瀬古委員 危険だという場合でも、突然地震が起きて、もう見た目で大変な状態だと、しかし、即建てかえよと言われても、そういう災害の場合には大変困難な状況もあります。そういう点でもよく配慮をしなきゃならない。老朽化の場合は、危ないぞというのはだんだんわかってくるわけで、そういう点では震災の場合の一定の配慮というのは当然必要だというふうに思うんですけれども、その点はどうでしょうか。
三沢政府参考人 それは、恐らく建てかえの基準そのものよりも、実際その基準に該当するに至ったとき、勧告をするまでの一つの運用上の手順の問題であろうというふうに考えておりますので、それは当然、ある日突然災害になってそういう状態になったときに、直ちに勧告というようなことは運用上なかなか難しいかと思いますので、そこは、運用上の手順については、それぞれの状況に応じてやっていくということになろうかと思います。
瀬古委員 先ほども質問の中で出てまいりましたが、時価の問題なんですが、組合は建てかえに参加しない区分所有者から区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができるとございます。時価の定義という問題なんですが、中古価格そのものという場合と、中古価格に建てかえ後に付加される含み益といったものを加えた、こういう場合もございます。その点はどのように考えればいいんでしょうか。
三沢政府参考人 時価というのは、売り渡し請求権を行使した時点における区分所有権、敷地利用権の客観的な取引価額だということでございますけれども、そういうものの算定に当たりまして、確かにおっしゃるように、将来の潜在的な価値というのも考慮すべき一つの要素にはなり得るかと思いますが、一方、それを実現するための費用というのも当然かかってまいりますので、そういうものを加味したものが常に一般の中古マンション価格より高いものになるかどうか、それはやはりケース・バイ・ケースであろうかというふうに考えております。
瀬古委員 強制的に買い上げた後、建てかえがとんざした場合、とんざした段階で処分した場合は損金が生まれやすくなります。このリスクはだれが負担するのでしょうか。建替組合か、それともディベロッパーか。資金力のない建替組合の過度の負担を取り除くという道は一体あるのでしょうか。それはいかがですか。
三沢政府参考人 これはなかなか難しい問題でございまして、まず、建てかえ事業そのものについては、あらかじめ事業を遂行するために必要な経済的な基礎とかそういうものをきちっとチェックした上で、そういうような事態が生じないというようなことで事業を始めるわけでございます。
 ただ、やはり予測しがたい事由により、結果としてそういうことが起きるということも否定し得ないわけでございます。その場合のリスク負担について、例えばディベロッパーに負担させることは可能かどうかということかと思いますけれども、それはまさに参加組合員としてディベロッパーが参加するときの取り決めの条件がどういうものなのか、どういう条件を前提にして区分所有者が合意しているのか、そういうことに尽きるかと思いますので、先生おっしゃるように、ディベロッパーが負担するということも当然あり得るかと思います。
瀬古委員 最初の約束のときにしっかりそこはやっておかなければ、後々大変になってくるということが言えると思います。
 建てかえ勧告のマンションが社宅の場合はどうなるかという問題なんですが、賃借人に対する居住安定計画、それから移転料の支払い、家賃対策補助などはどのようになるのでしょうか。
三沢政府参考人 社宅に入っておられる従業員の方々について賃借人の居住安定計画の関係規定の適用があるかどうかというのは、結局、社宅の従業員が賃借人に当たるかどうか、つまり社宅の使用関係が賃貸借関係に当たるかどうかということで決まるというものでございます。
 それで、ここは実はいろいろなケースがございます。社宅については、法律的に一律にこういうものだということではなくて、やはりケース・バイ・ケースで判断されるものだというふうに考えられますが、最高裁の判決によりますと、市場家賃に比して著しく低いとは言えないような家賃を負担している場合には、これは賃借人に当たるという最高裁判決もございますので、そういう場合には本法案の賃借人居住安定計画の対象になるというふうに考えられます。
瀬古委員 大臣にお聞きしたいと思うのですが、建てかえに参加しない者に対する居住安定のための措置、とりわけ高齢者などの建てかえに参加することが困難な者に対して、公共賃貸住宅への優先入居など居住安定のための措置を講じるとしております。長い間築いた人間関係を絶たれるということは、高齢者にとっては、とりわけ生きる希望を失わされるということで、あの阪神・淡路大震災の例でも明らかなんですね。住宅を与えるからそこへ行きなさいといえばいいというものではないのですね。
 そこで、単身高齢者それから高齢夫婦世帯については同一住宅地に居住し続けることが可能になる、そういう取り組みも私は必要だと思うのです。特に、だんだん高齢者がふえてきている大規模団地などは、深刻な問題が出てまいります。先ほどもお話がありましたように、高齢者向けの住宅、グループホーム、ケアつき住宅、それから、例えば近親者と一緒に同一敷地内に住むことができるとか、それから、高齢者も、かなり年がいきますと持ち家から借家に転換する、そういうことも可能になるような賃貸公共住宅の建設、こういうものも行政が参加してつくっていく、または、あるときには公的機関が建てかえを直接行う、こういう住宅づくりや地域づくりが必要になってきているのじゃないかと思うのですが、その点いかがでしょうか。
扇国務大臣 先ほどからもその件についてお答えもしておりますし、また各先生方からそういう御要望も出ております。
 今瀬古議員がおっしゃいますように、団地というものには大規模のものがございまして、子供からお年寄りまで幅広い居住者がおります。そういう意味では、今おっしゃるようなこと、できるだけ多様な要望に対応できるようなものが望ましいというのは当然のことでございます。
 そういう意味で、マンションの建てかえに当たりましても、今問題になっておりますようなケアつきのものでありますとかグループホームですとか、そういう事業を営もうという事業者をあらかじめ参加組合員として入れるということも、私は、より居住者のニーズにこたえ得るものに発展していくと思います。いろいろな事業者が、高度利用により生まれるという、先ほどから保留床と言っておりますけれども、いわゆる保留床というものを取得して賃貸住宅を供給する場合には、これを有効に使っていくということも大事なことだろうと私は思っておりますので、国と地方公共団体の補助を受けて高齢者向けの優良賃貸住宅でありますとか特定有料賃貸住宅として供給することが可能になろうと私は思っております。
 先生も御存じだろうと思いますけれども、港北ニュータウン、これはボナージュ横浜というところですけれども、今、大規模住宅団地におきますケアつき住宅等の併設事例というものもございます。福祉施設の併設というのは厚生労働省の所管ではございますけれども、こういうことこそ、こういう委員会の議論を、ぜひ両々相まって相談しながら発展させていきたい、有効に利用させていただきたいと思っております。
瀬古委員 マンションは共同所有、共同管理、共同居住という特徴を持つものです。その要諦は合意形成を図ることにあります。すべての分譲マンションには管理組合というものがあるのですが、実際には、多くの人々の多様な意見を管理組合が一つにまとめていく努力をなさっています。全国マンション管理組合連合会は、区分所有法に管理組合が全く出てこないのは不自然であるとして、管理組合が区分所有者全員で構成することなど、管理組合の目的や性格などを法的に明確にしてほしいというふうに要望されております。この点、法制審議会ではどのような論議が行われているのでしょうか。
 また、国土交通省は、管理組合の目的や性格についてどのようにお考えでしょうか。また、管理業者に対する義務要件が必要であるというふうに考えますが、その点いかがでしょうか。
原田政府参考人 マンション管理組合につきましては、マンション管理組合という言葉は使っておりませんが、区分所有者全員で構成する建物及び敷地等の管理を行うための団体ということで、区分所有法三条に定義されているところでございます。この区分所有法第三条に規定されている管理組合については、委員御指摘のように、その組織に関する規定等を整備すべきであるという御指摘があり、これを受けて法制審議会の区分所有法部会においても審議がされたところでございます。
 ただ、管理組合の実態を見ますと、これは建物の規模であるとか区分所有者の数であるとか、その間の人的な関係等の違いから、相当に多様な性格を有する団体が含まれると考えられるところ、その組織について、法律で画一的に規定を設けるということは適当でないという意見が多く寄せられたところでございます。
 また先月、区分所有法部会で取りまとめられた中間試案にも掲げられておりますが、管理組合の法人化につきまして、人数要件の撤廃を現在検討しているところでございまして、これが実現いたしますと、すべての管理組合にこの組織規定が整備されている管理組合法人になる道が開かれるということもございます。
 そのほか、各管理組合は、規約等で定めることによって、必要な組織を任意に置くことが可能でございますが、これはむしろ画一的な組織規定を設けるより、かえって個々の組合による柔軟な組織運営を実現することができる、このような理由がございまして、管理組合の組織規定を設けることについては、中間試案では取り上げていないということになっております。
三沢政府参考人 管理組合の目的、性格についてのお尋ねで、これは法務省さんにお聞きいただくことかとは思いますけれども、管理組合につきましては、区分所有法第三条において、区分所有者は全員で建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成するとされておりまして、管理組合はマンションの建物等の維持管理について主体的な役割を果たすものだというふうに認識しております。
 管理業者につきましては、昨年八月に施行されましたマンションの管理の適正化の推進に関する法律によりまして登録が義務づけられることになっております。この法律に基づきまして、マンション管理業者に対しまして、さらに管理業務主任者の設置とか、重要事項説明とか、修繕積立金の分別管理等の業務規制が課せられることになることから、このマンション管理の適正化法によりまして、管理業者と管理組合との間で発生している、例えば管理委託内容の説明不足とか修繕積立金の管理等をめぐるトラブルの防止が図られるというようなことが期待されるというふうに考えております。
瀬古委員 一九九五年に発生した阪神・淡路大震災でマンションの倒壊が多発しました。倒壊マンションでは、建てかえかそれとも補修かで区分所有者間での深刻な対立が表面化しました。裁判所などに紛争が持ち込まれて、いまだに解決を見ていない事例があると聞いております。中間試案では、この点に関し、大規模滅失による復旧決議に賛成しなかった区分所有者の買い取り請求に対する買い受け人の指定を明記しているだけです。
 現行法の六十一条等で規定する滅失の規定は、建物の価格に基づいております。六十一条一項、「建物の価格の二分の一以下に相当する部分が滅失したときは、各区分所有者は、滅失した共用部分及び自己の専有部分を復旧することができる。」こうなっています。こうした経済的判定方法は、滅失度の建築工学的な評価と直接結びつかないために、客観性に欠け、極めて恣意的に運用されるおそれがあります。滅失の建築工学的、客観的基準を作成する必要があると思うんですけれども、この点、法制審議会ではどのような議論がされているんでしょうか。
原田政府参考人 区分所有法におきましては、大規模一部滅失の場合に、復旧工事を実施するには、これは四分の三以上の特別多数決を必要としております。建物の価格の二分の一を超える部分が滅した場合の復旧工事は多額の費用がかかりますし、単純な多数決で復旧工事を行って、その費用を全区分所有者に負わせるのは不合理な場合がある、こういう趣旨でございます。
 このような大規模一部滅失の場合の復旧決議を特別多数決とした制度趣旨からいたしますと、これが大規模一部滅失であるか否かの判断基準につきましては、これは建物の価格と復旧費用を基準に考えるというのが適当であろうと考えているところでございます。
 ただ、委員の御指摘は、具体的な算定方法において建築工学的な評価基準を取り入れるべきであるという指摘でございます。十分建築工学的な評価基準という中身を理解しているかちょっと不安でございますが、すべての建物に当てはまるような客観的かつ統一的な基準というのを、例えば法律で規定するなり、そういうことを設けることができるかどうかという点については、なお困難が伴うのではないかと考えておりまして、さらに慎重に検討をさせていただきたい、このように考えております。
瀬古委員 時間が参りました。
 引き続き法制審議会、また国土交通省でも十分マンションの居住者の意思がきちんと反映されるように検討していただきたいというふうに思います。
 以上で終わります。
久保委員長 日森文尋さん。
日森委員 社民党の日森文尋でございます。
 大臣、副大臣、それから政務官、特に三沢局長、大変御苦労さまでございます。心中お察し申し上げますが、もうしばらくおつき合いいただきたいと思います。
 最初に、これは改めてお聞きをしたいということなんですが、法案の二条で、マンションの定義を「二以上の区分所有者が存する建物で人の居住の用に供する専有部分のあるもの」とされています。
 居住部分がなく、店舗だけが入っているビルでも区分所有権では共通の問題がある、こう考えられますが、今回の法案で店舗ビルを対象としなかった理由について改めてお聞かせいただきたいと思います。
三沢政府参考人 この法案におけるマンションの定義におきましては、今先生御指摘のとおり、店舗のみのビルなど、人が居住する部分のない区分所有建物は含まれないことになっております。
 この趣旨でございますけれども、この法案は、土地建物の権利関係とか工事の設計施工等に関する専門的な知識を持たない多数の居住者が意見調整を行いながら事業を進めるというマンション建てかえの特性を踏まえながら、マンションにおける良好な居住環境の確保という住宅政策の観点から御提案しているということで、そのような定義とさせていただいているものでございます。
日森委員 しかし、そういうマンション等も現実に多数存在しているということでもあると思うんです。
 将来の展望なんですが、それについても何かこういう考え方を拡大して適用していくようなことがあるのかどうか、改めてお聞きをしたいと思います。
三沢政府参考人 将来の検討課題ではございますけれども、ただ、やはり店舗の建てかえについて、住宅政策上の居住環境の改善と同じような公益的な目的を認めるべきだという社会的なコンセンサスがあるかどうか、それがやはりこれからの、いろいろな情勢を見ながら検討していくものなのかなというふうに考えております。
日森委員 店舗がほとんどで、居住部分の区分所有があれば、つまり居住部分が二つ以上あればこの法律は適用されるというふうに判断していいわけですね。
 そこで、マンションの一階が店舗になっている、そういう構造のマンションが大変多いんですが、店舗の区分所有者と住居の区分所有者は区分所有上の同等の権利義務が発生するというふうに理解をしていますけれども、それについての御見解はいかがでしょうか。
三沢政府参考人 これはちょっと若干ややこしくて恐縮なんですが、マンションそのものの定義は二戸以上の住戸でございますけれども、このマンション建てかえ事業の対象というのは、住宅政策上の効果という観点から、国土交通省令で定める一定戸数以上の住宅戸数を有するものというふうに規定しておりまして、これは国土交通省令で今後決めるものではございますけれども、今現在は建てかえ前後の住戸の数がやはり五戸以上のものとすることを予定しております。
 もう一つのお尋ねの、ではその場合でも同等の権利義務を店舗の区分所有者も持つのかどうかという点につきましては、こういう要件を満たすマンションの区分所有者であればマンション建てかえ事業に関して同等の権利義務を有するものでございます。
日森委員 わかりました。
 そうしますと、店舗の区分所有者に対して税制上の支援措置があるのではないかと思うんですが、補助制度などはどの程度の範囲で適用されるものなのかどうなのか、お聞きをしたいと思います。
三沢政府参考人 店舗の区分所有者に対しましても今回創設されました税制上の特例措置は適用になります。
 具体的な中身は、例えば権利変換によって権利が移行する方についても、例えば譲渡所得課税とか登録免許税、不動産取得税についてのいろいろな課税の特例、あるいは建てかえに参加しないで転出される方についての譲渡所得課税等の特例、こういったものは適用されます。
 また、補助事業につきましても、優良建築物等整備事業と呼んでいますけれども、これに基づく補助制度をマンション建てかえに対しても適用できるようにしておりますけれども、この場合でも、店舗の区分所有者も対象になるものでございます。
日森委員 例えば、建てかえの期間、仮店舗などで営業をしなきゃいけない、その間、引っ越しをしたりさまざまなことがあったりして、そういう営業補償等もそれに含まれるというふうに考えてよろしいんでしょうか。
三沢政府参考人 営業補償も含めて、補助の対象になります。
日森委員 わかりました。
 それから、これは何度か質問が出ているんですが、建てかえによりまして非常に高層化をするということが、当然ケースとして考えられるわけです。現在でも日照権の問題、いや、もう都市部では日照権というのは消滅して、ないんだよという意見もあるんです。
 しかし、実際に日陰になる人たちは大変な思いをされるわけで、そう考えると、日照権の問題を初め、近隣住民とのトラブルということは今でも日常茶飯事に起きていて、私の住んでいるところでも、実は、マンションの前にマンションが建ったら、先に建ったマンションの人たちがマンション建設反対という看板を掲げて断固戦っている、同じぐらいの大きさのマンションなんですが、それぐらいすごいバトルが行われているという状況があるわけですね。
 これからもそういうことは当然想定されるわけで、そういう日照権や周辺環境の維持について、どういうふうな、指導というとおかしいですけれども、基準で対応されていくのか、ぜひお答えいただきたいと思うんです。
 これはちょっと通告していなかったんですが、きのうですか、先ほど大臣もお触れになった江東区の話で、地価が大分安くなったのでマンションがどんどんできている。できるのはいいんだけれども、子供がふえちゃって学校の教室が足りないとかいう問題が起きてきた。だから、ちょっと建設待ってくれと言ったら、つくる方は、冗談じゃない、こんなことをやったら損害が起きちゃうんだから、とてもじゃないができないよという話があって、こんなトラブルも起きているようなんです。
 そう考えていくと、これは別問題としても、この前、都市再開発のときにお話しさせていただいたんですが、アメリカなんかでは、そういうときはディベロッパーがちゃんと社会資本整備のためのお金を出しているよと。どうも江東区のマンション業者は、だれだか知りませんけれども、そういう気持ちは余りなくて、ともかくおれたちが損しないようにつくらせろという話になっているので、こういうのでいいのかなという気もするんですが、そうすると、高層化したときなどに、そういう今までのと同じような問題がさらに発生していくようなことが心配されるんです。それで、どのような対応をされるかということを改めてお聞きをしたい。
三沢政府参考人 マンション建てかえに限らず、新築のマンションを含めまして、これはやはり建築基準法とか都市計画の規制によりまして、いろいろな周辺環境への配慮も含めて、きちっとした担保を図っていくというのが非常に大事なことなんだというふうに考えております。
 したがいまして、一般的なそういう都市計画の規制に加えまして、必要に応じて、やはりその地域の実情を踏まえて、例えば地区計画等によってさらにこういう高さにするとか、そういうことはあらかじめ決めておいていただくということが一番大事なことじゃないかなというふうに考えております。
 それから、総合設計制度というのを活用して容積を割り増す場合もあるわけでございますけれども、その場合には、この制度を適用するときは、きちっと市街地環境の整備改善に資するということを審査して許可するというようなことになっておりますので、そういう意味では、この制度の活用については、周辺環境の維持も十分配慮しながらやっていくということかと思います。
 したがいまして、そういう都市計画なり地区計画のあらかじめのルールをきちっと決めていただく、そういうようなことによって、そういう周辺環境への配慮をしていただくというのが一番大事だと思っております。
 それから、ちょっと個別の話で江東区の話が出ましたけれども、私ども、区の実情から見まして、区が非常にお困りであるという実態もよくわかるわけでございます。ただ、いわゆる開発指導要綱に伴う問題は、一つは、負担金を求めるとき、負担金の合理的な根拠とか、それがいわゆるつかみ金にならない、例えば使途がきちっと明確になっているとか、そこがやはり非常に大事なことだろうというふうに考えております。
 それから、今回は、ちょっと個別の事案についてどうだったかというコメントを差し控えますけれども、何というか、抜き打ち的に急にという話じゃなくて、やはり事前に十分御説明をした上で、ある程度事業者の方々にも納得いくようなやり方をやっていくというのが一般論として言えば非常に大事なことでございまして、そういう点に配慮しながらこういう指導要綱というのを運用していただくように、私どもとしてもいろいろお願いはしてまいりたいというふうに考えております。
日森委員 そこら辺はもっと話をしたいところなんですが、ちょっと時間がありませんので、次に移らせていただきます。
 これも大変皆さん方心配されていることなんですが、市町村長が勧告を行うことができる、これが今度の法律の目玉の一つにもなっていると思うんです。しかし、ちょっと想像してみると、現実的には非常に困難が予想されるのではないかという気がしているんです。
 特に市町村長というか市町村、自治体の責務、責務と言うとおかしいですけれども、役割がかなり大きくて、例えば代替建物を要請されたら提供したりあっせんしなきゃいけないとか、建てかえのアドバイスや合意形成の援助なども当然やらないといけなくなってくるんじゃないかというふうに考えていくと、むしろ、これはちょっと大変だけれども、勧告しなければならないわけではなくて、勧告することができるわけでしょう。
 そうすると、勧告したらさまざまなことを全部自治体の側で引き受けなきゃいけない。そうすると、勧告よりも、さっき改修勧告というのが出ていましたけれども、建てかえ勧告というのはなかなか市町村側では出しづらいのではないかという懸念が一つあるんです。
 根拠法というか、今までもそういうことでやってきましたよという二つの法律、密集市街地法と住宅地区改良法ですか、例が出ていましたけれども、そんなことも踏まえて、そういうおそれがないのかどうなのか、ひとつお聞きをしたいと思うんです。
 そういう市町村に、これは本当に危険なんだということになれば、積極的に勧告を出して、しかも援助もきちんとできるということも含めて、国土交通省としてどういう支援措置を講じられるのかということについてお伺いをしたいと思います。
三沢政府参考人 今回の勧告の制度というのは、老朽化が著しく進行したり、あるいは危険または有害な状況にあるマンションにつきまして、市町村長の勧告によりまして建てかえの合意形成を促して、自発的な建てかえを実現しようという性格のものでございます。
 それで、なぜ勧告の主体を市町村長としているかということでございますけれども、マンションの老朽化の状況とか、それから、じゃ、そのかわりの代替住宅がどういうところにあるんだろうという、そういう住宅の立地状況などを含めて、そういう地域の住宅事情を一番よく知っているのはやはり市町村であろうということから、勧告の主体を市町村長にしているわけでございます。
 二の足を踏むおそれはないかという点でございますけれども、今先生がおっしゃいました二つの事業、密集住宅市街地整備促進事業や住宅地区改良事業、これも御承知のとおり、市町村が事業主体となっております。
 現在、密集の方は百七十二地区、それから改良事業の方は二十七地区で事業を実施しておりまして、実際にこういう事業を実施するに当たって相当いろいろな御苦労をしながらも、その中でいろいろなノウハウを身につけて市町村が事業を実施しているところでございます。
 そういう意味からいいますと、そういう地域の居住環境の改善についてのいろいろなノウハウというのは、ある程度、やはり多くの市町村で相当身につけつつあるという実態でございますので、そういう例から見ましても、勧告に二の足を踏むということにはならないんじゃないかなというふうに考えております。
 もちろん、国といたしましても、勧告に基づくマンション建てかえが実施される場合に、例えば、公営住宅等への公募によらない入居ができるとか、従前の家賃を上回る場合の家賃の減額とか、移転料の支払い等の居住安定措置を講じることになっておりまして、国はそれに対して所要の補助を行うことと法律に決めております。こういう財政的な援助に加えまして、さらにいろいろな情報提供とかアドバイスを行うことによりまして、市町村で積極的な取り組みが行われるように、いろいろ支援してまいりたいというふうに考えております。
日森委員 私の最後になりますが、大臣に感想をお聞かせいただきたい、感想じゃなくて、もうちょっと強い意味で決意をお聞かせいただきたいと思うんです。
 法案の九十条で、基本方針に沿って、施行者、国、地方公共団体が居住者、賃借人、転出区分所有者の居住安定確保に努めなければならないというふうにあります。この基本方針は大臣がお決めになるというふうになっているわけです。その基本方針の中に、高齢者あるいは転出居住者が路頭に迷うことのないような万全な対策が講じられるよう、それを具体的に記すことができないのか、ぜひそうすべきではないかという要望が一つと、これは蛇足になりますが、この資料の中に明治二十九年の民法が出ていました。実に読みづらいというか、全く読めない話で、大臣も恐らく余り経験のない文章だと思うんです。これは要望ですが、ぜひこれは読みやすい現代風に書き改めて、我々が活用できるようにしていただきたいと思っていますので、後の方はどうでもいいんですが、前の方の決意を中心にお聞かせいただきたいと思います。
扇国務大臣 この法案審議、委員会の進行の中で、高齢者の居住の安定を図るということが大きな問題になっておりますし、また、これが重要な問題であると私も認識しておりますので、そのようにお答えしてきたと思います。
 ここで、国土交通大臣が定める基本方針というのを、先ほども私御紹介いたしました。これは、賃借人及び転出する区分所有者の居住の安定の確保に関する事項、これを定めるというのを先ほども申しました。これも改めて申し上げておきたいと思います。
 その法案の第九十条、基本方針に従って居住の安定の確保に努めるべき旨を規定してございます。どういうことかということに関しまして、この基本方針におきましては、高齢者など住宅に困窮する皆さん方、そういう人が転出するのには具体的な支援をしてほしいという先ほどからの御要望もございまして、これは三点ございますけれども、第一点は、地方公共団体による住宅のあっせん、そして公営住宅等の公共賃貸住宅への優先入居、これが一つ。二つ目には、従前居住者用の賃貸住宅にかかわる家賃対策の補助、これをいたします。それから三つ目には、賃貸人が賃借人に支払う移転料の支払いに当たっての補助。この以上三点というものを含めて定めて、これを実施したいと思っております。
 さらに、勧告を受けてマンションの建てかえを実施する場合におきましては、この法案におきまして、公営住宅等への公募によらない入居を規定する、公募によらないで優先的に入居を規定する。それと、家賃対策の補助及び移転料の補助を法律補助として実施する。
 以上のようなことで、最大限高齢者の皆さん方に不安を与えないように規定をして、基本的に安定の確保に努めていきたいと私は思っております。
日森委員 ありがとうございました。
久保委員長 原陽子さん。
原委員 社会民主党の原陽子です。
 きょうは最後の質問になりましたので、皆さん、もうしばらくおつき合いをよろしくお願いします。
 質問に入る前に一つ大臣にお願いをしたいことがありますので、よろしいでしょうか。
 先日の一般質疑の中で、新幹線の騒音基準が全線で超えることについて私は質問させていただきました。その中で、いつまでにだれの責任で達成するかと質問をさせていただいたところ、政府の参考人の方から、新幹線を運行する鉄道事業者、建設主体の鉄建公団が責任者であり、国土交通省として早期に基準が達成されるよう今後とも指導してまいりたいと明確な御答弁をいただきました。
 そこで、こうした国会の審議の中で言ったことが実行されるかどうかということ、それに対して国民の目がしっかりと届くということを、私は実現していかなくてはならないと思うので、この答弁にあったことを新幹線の各社、JR東海、東、西などの全社、そして公団にあてて、通達という形、文書という形でぜひ出していただきたいということを一つ、冒頭、大臣にお願いさせていただきたいと思います。これはお願いなので、ぜひ大臣、よろしくお願いします。大きくうなずいていただけたので、期待をしておきたいと思います。
 きょうは、ずっと午前中から質疑があった中で、このマンションの建替え法案そのものの質問というものはある程度網羅されてきているのではないかと思うので、今回は関連法案について、環境の観点から少し御質問させていただきたいと思います。そして、関連法案の中でこの法律がどのように位置づけられているのかということを把握したいと思っています。
 まず初めに、マンションとごみの関係について質問をさせてください。
 先日、社民党の日森委員が、マンションの建てかえに伴って出てくるごみのことを質疑の中で言われたと思います。第四条で大臣が定める基本方針に何らかの形で入れるべきではないかということを日森議員は述べられていたのですが、私も全くそのとおりだと思っています。住宅を供給しよう、建てかえようという発想ばかりで、使い終わったときのことまで、さらにその後、それがどう廃棄されてリサイクルされるかというところまで、建てかえるだけではなくてその後のことまでしっかりと考えていかなければ、私は循環型社会とは言えないと思っております。
 マンションの建てかえの例はまだ六十九例しかないそうで、マンションごみが出てくるのはこれからということになると思います。せめて次にマンションを建てるときは、巨大なごみを出すということを繰り返さないという必要があると思います。内装や外装、そしていろいろな資材というか使われるものを含めて、有害な物質を使わないとか、分別解体しやすい設計を考えるとか、壊したときにごみの量ができるだけ少なくなるような設計をするとか、どうしても出るごみはリユースやリサイクルできるようにする。また、最終的にリサイクルできないものだけを焼却や埋め立てをする。そのためにもやはり有害物質は避けるなど、法律の中で制度として確立され、推進されるべきことだと私は思います。
 今回の法律に限らずに、国土交通省の中の住宅行政の中で、それらは現在法的にどのように位置づけて推進しておられるのか、教えてください。
扇国務大臣 今の原議員の御質問の中で、基本的なものと、それから現実、今どうしているかという二つの御質問に分かれていたと思います。
 住宅行政においても、循環型社会形成基本法、こういう法律がちゃんとできておりまして、これに基づいて、廃棄物の発生の抑制でありますとか、あるいは資源の再利用を推進していくということは重要なことだと認識しているのは当然のことでございます。
 その中で、廃棄物の発生の抑制の観点からは、マンションの耐久性を高めることとか、あるいは中古市場で円滑に流通させるということが必要だと考えておりまして、これは四つございます。一つは、公庫融資における耐久性に配慮した基準の設定、二つ目には、住宅性能表示の制度による耐久性の表示、三つ目には、耐久性の高い工法の開発、四つ目には、中古住宅について適切な情報開示などの市場環境の整備、これらの施策を推進するというのが、この循環型社会形成基本法の中に明示してございます。
 また、資源の再利用の観点から、本年の五月でございますけれども、建設リサイクル法を全面的に施行することによって、コンクリートとかあるいは木材等の特定建設資材、そういうものの分別解体、それから、再資源化の義務づけ、そういうことを踏まえて、今後は特定建設資材以外の材料の分別解体でございますとか、再資源化された材料の再利用というものの推進が特に重要だと考えております。
 このためには二つのことが決められておりますといいますか、これを推進していきたいと思っております。一つには、都市基盤整備公団建てかえの団地におきます徹底した分別解体とリサイクルの推進、二つ目には、リサイクル資材を活用した建材の実用化にかかわる提案募集を実施する、こういう大事な二つの施策を推進しているところでございますので、今、原議員がおっしゃった住宅建設等々にかかわるリサイクルあるいは循環型環境の問題も留意した施策というものをとっております。
原委員 では、引き続き、関連して質問させてください。
 コンクリートとか木片などさまざまな物質がまじった混合廃棄物というものは、物質別の分離が難しいそうです。再資源化率はわずか九%ということを聞いております。
 今大臣の御答弁の中にもありました建設リサイクル法の中では、分別解体と再資源化に関して措置をされているという御答弁があったと思うんですが、私は、ごみの発生を抑制するための工夫は、もちろん大臣がおっしゃったこともあると思いますが、設計の段階でも十分いろいろな工夫ができると思いますので、設計の段階ではどうあるべきだと考えておるか、住宅局長さん、お答えいただきたいと思います。
三沢政府参考人 御指摘のように、廃棄物の発生抑制を行うためには設計段階における取り組みが重要であると認識しております。
 具体的には、一つは、コンクリートの強度を強くするなど構造躯体の耐久性の向上を図っていくこと、二つ目には、躯体と内装の分離や躯体と配管の分離により改修や維持管理を容易にするということ、それから三番目に、端材とか余剰材の発生が抑制されるような建設資材の選択や積算の適正化を図るということ、こういう考え方を踏まえた設計を進めていくということが大変重要であるというふうに考えておりまして、住宅の設計においてこういう考え方が普及するように、いろいろな形での情報提供に努めてまいりたいというふうに考えております。
原委員 それでは、環境省さんに来ていただいているので、ここで環境省に一つ質問させていただきたいと思います。
 このマンションの建替えの法律が成立すれば、今現在では六十九例しかない建てかえが今後どんどん進んでいくことが予測されると思います。ということは、やはり、マンションごみといいましょうか建設廃材というものでしょうか、がふえてくるということは、可能性として考えられると思います。今、環境行政の中でも、そうした廃棄物の処分場というものが逼迫しているというお話を聞きました。
 その中で、そうした、これからごみが出るということが予測されることに対して、どのように対応をしていくおつもりかということと、これまたこの法律に当たって、例えば国土交通省と環境省でこのことについて何か話し合いをなさったかということを聞かせてください。
飯島政府参考人 マンションの建てかえから生じます建設廃棄物につきましては、ことしの五月三十日から本格的に施行されます建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律、いわゆる建設リサイクル法によりまして、受注者に対しまして分別解体や再資源化を義務づけ、廃棄物の減量化を図ることとしております。
 そもそも、この建設リサイクル法、環境省と国土交通省の共管法でございますが、建設リサイクル法制定の背景といたしましては、建設廃棄物が廃棄物の全体の発生量あるいは最終処分量に占める割合が非常に高いこと、また昭和四十年代以降に急増した建築物が更新時期を迎えまして、その発生量が今後増大していくことが見込まれることから、建設廃棄物の再資源化に取り組むこととしたものでございまして、この建設リサイクル法の円滑な施行を図ることにより、建設廃棄物の増大に対応してまいりたいと考えております。
 なお、御質問の、マンション建替え円滑化法案に関する環境省と国土交通省の協議におきましては、本法に基づくマンション建てかえ事業に係る建設リサイクル法の適用関係、すなわち、本法に規定されておりますマンション建替組合が、建設リサイクル法で定める発注者として届け出などの義務を負うことを確認したものでございます。
原委員 ありがとうございます。
 ごみが出るということが予測されるということがあるので、ここは、建てかえた後の部分に関しては、やはり国土交通省と環境省とさまざまな話し合いをぜひ進めていっていただきたいと思います。
 次に、またちょっとこれも環境の側面からなんですが、地球温暖化とマンションということで質問をさせてください。
 地球温暖化対策大綱が三月の十九日に発表をされました。これは政府全体が定めたもので、住宅についても幾つか、さまざまな点が定められております。しかし、政府が定めた地球温暖化対策を推進していこうとこの中でうたっているにもかかわらず、国土交通省に出てくる法律案の中にその考え方が余り取り入れられていないというふうに私は思っております。
 国土交通省の中でも、住宅局としては、地球温暖化防止に向けてどのようにこれから取り組んでいくおつもりなのか、今国会で審議される予定になっています建築基準法、省エネルギー法の中で、どのような措置がとられていくかということを教えてください。
三沢政府参考人 本年三月に決定されました地球温暖化対策推進大綱におきましては、新築住宅については、二〇〇八年度において、平成十一年に改正した現行の基準を五割達成すること、それから住宅以外の二千平米以上の新築建築物につきましては、二〇〇六年度において、平成十一年に改正しました現行基準を八割達成すること、これによりまして、二〇一〇年度時点で、対策を講じなかった場合に比べて、原油換算で約八百六十万キロリットルのエネルギーの使用を削減するということを目標にしております。
 この目標を達成するために具体的に何をするかということでございますけれども、住宅金融公庫融資等の誘導措置あるいは省エネルギーに係る性能表示制度の活用等による省エネルギー性能のすぐれた住宅、建築物の普及の促進、それから公共住宅における省エネルギー措置の実施等に加えまして、今後、オフィスビル、商業施設等の新築、増改築の省エネルギー措置の届け出の義務づけ、それから住宅金融公庫融資における省エネルギー性能に関する基準の強化によりまして省エネルギーに配慮した住宅の誘導等を講ずることを定めております。
 それで、現在国会での御審議をお願いしております省エネルギー法の改正案の中で、この大綱を踏まえまして、二千平米以上のオフィスビル、商業施設等の新築、増改築時に省エネルギー措置の届け出を義務づける制度の創設、それから建築物に関する指導助言等に関する権限について、国土交通大臣から建築確認を行う市町村等への権限の移譲等を行うことにしております。
 これからこれらの施策を通じまして、住宅、建築物の省エネルギー性能の向上によります地球温暖化防止対策の一層の推進に努めてまいりたいと考えております。
原委員 マンションを建てかえるときというのは、マンション丸ごと温暖化対策を行う上で非常にいい機会だと私は思います。例えば、ソーラーパネルをつけたいと思う人がつけられる仕組みになるとか、太陽熱を利用するとか、緑化するとか、さまざまな仕組みを取り入れることは、この建てかえをするときが一つ大きなチャンスだと私は思っていますので、いわゆるエコマンションというものが推進されるように、マンション建替組合の参加者の皆さんにこそ、そうした情報提供というものを十分にしていただきたいと思います。
 もう一つ、総務省の方にお聞きをしたいのですが、地球温暖化対策は、税制とあわせて義務化、制度化することも一つの方法だと考えます。地球温暖化対策をする、してある、していくマンションには税を低くして、対策をしていないマンションには税を高くするというような、そうした税制の措置というものが考えられると思うのですが、現在どのような工夫がなされているかということと、また、今後の方向性についても教えてください。
瀧野政府参考人 地球温暖化対策の推進に当たりましては、地球温暖化対策推進大綱にもありますとおり、国、地方公共団体、事業者、国民等、それぞれ役割に応じて総力を挙げて取り組む必要があるというふうに我々も考えてございます。
 その際の税制についてのお尋ねですが、例えば固定資産税を例にとりますと、固定資産の所有者に資産価値に応じまして広く負担をお願いするという市町村の基幹税であるわけでございまして、従来から、新築住宅一般につきまして負担軽減措置を講じるということをしておるところでございます。
 ただ、御指摘のように、個別の特例措置につきましては、公平、中立、簡素というような税の基本原則もございますものですから、慎重な検討が必要であるというふうに考えております。
原委員 そろそろ時間になってきてしまったのですが、本日二つ目の大臣へのお願いを最後にさせていただきたいと思います。
 実は、このマンション建替え円滑化法検討委員会、正式名称はちょっとあれなんですが、このいただいた資料に検討委員会の名簿というものが載っておりました。この名簿を見たときに私が思ったことは、環境の専門家の人が一人も入っていないということを非常に疑問に思いました。
 先日、私は、新幹線騒音に関する質問を大臣にさせていただいたときに、大臣は御答弁の中で、人間はすべからく、より速く、より快適に、そしてより経済的に、これを追求するのが世の常でございますという御答弁をいただきました。覚えていらっしゃると思うのですが。もちろん、速く快適にという希望をかなえるということもあるかもしれないけれども、その一方で、静かに暮らしたいという考えを持っている人たちがいる。これは全く別の人物であるわけなので、やはりその両方の声を聞くことが大切であります。
 このマンションの建てかえのときも、つくる、つくる、つくるということばかりではなくて、きっと最終的に廃棄物となったごみは海や山に行くと思うのですよね。そうすると、そこにある自然環境とか生態系というものがやはり破壊されていってしまうということは、わからないけれども、でも、想像がつくことだと思うのです。
 それなので、もちろん、物質的な豊かさを求めていくことも必要かもしれませんけれども、それはやはり何か二十世紀的な考え方だと思うのですよね、物質的なものだけを求めていくというのは。それなので、今二十一世紀であり、大臣も女性として頑張ってくださっているので、環境という観点をこれからの国土交通省のさまざまな事業とかに私はぜひぜひ組み込んでいっていただきたいということを一つ大臣にお願いをさせていただきたいと思うのですが、どうでしょうか。
扇国務大臣 原議員は、私がこの通常国会冒頭から言っていることを残念ながら聞き逃していられるんだろうと思います。
 というのは、私は、二十世紀はハードの世紀、二十一世紀は環境とバリアフリーを、そのハードの上にソフトをかぶせた世紀であるということを明言しております。
 そういう意味では、今おっしゃったことは、すべて私ども国土交通省の政策の中で二十一世紀型と二十世紀型を区別して、私たちはハードの上にソフトをかぶせるということを明言しておりますので、そういうことはぜひ御理解いただきたいと思います。
原委員 大臣、そのような御認識があるということはわかりました。
 ただ、例えばこの法律を決めていく中でも、ちょっと一つ例を挙げて、せっかくなので大臣に聞いていただきたいお話なんです。
 例えば、自動車の排ガスを規制しましょうという法律をつくったときに、環境省と国土交通省で覚書というものが結ばれていたことを大臣は聞いたことはございますか。その結んだ覚書というものは、要するに、環境省は道路行政に対して余り物を言わないでねという覚書。そういう法律をつくったとしても、裏で覚書というものが結ばれていると、そのことによって環境行政が少し窮屈な思いというか、制限を与えられてしまっているという実態があるということも大臣には私は知っていただきたいのです。
 大臣が、二十一世紀は環境とバリアフリーの世紀だという意識があるということは、私は非常に大切だと思っておりますので、さまざまなところで環境という観点をぜひ意識してこれからも頑張っていっていただきたいと思います。
 では、終わります。ありがとうございました。
久保委員長 次回は、来る十六日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時三十七分散会


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