衆議院

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第10号 平成14年4月16日(火曜日)

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平成十四年四月十六日(火曜日)
    午前十時一分開議
 出席委員
   委員長 久保 哲司君
   理事 実川 幸夫君 理事 橘 康太郎君
   理事 林  幹雄君 理事 古賀 一成君
   理事 細川 律夫君 理事 赤羽 一嘉君
   理事 一川 保夫君
      赤城 徳彦君    小里 貞利君
      倉田 雅年君    菅  義偉君
      田中 和徳君    高木  毅君
      高橋 一郎君    谷田 武彦君
      中馬 弘毅君    中本 太衛君
      菱田 嘉明君    福井  照君
      堀之内久男君    松岡 利勝君
      松野 博一君    松宮  勲君
      松本 和那君    吉川 貴盛君
      阿久津幸彦君    井上 和雄君
      大谷 信盛君    今田 保典君
      樽床 伸二君    津川 祥吾君
      永井 英慈君    伴野  豊君
      平岡 秀夫君    前原 誠司君
      高木 陽介君    山岡 賢次君
      大幡 基夫君    瀬古由起子君
      原  陽子君    日森 文尋君
      西川太一郎君
    …………………………………
   国土交通大臣政務官    菅  義偉君
   国土交通大臣政務官    高木 陽介君
   参考人
   (全国マンション管理組合
   連合会会長)       穐山 精吾君
   参考人
   (弁護士)        戎  正晴君
   参考人
   (早稲田大学法学部教授) 山野目章夫君
   国土交通委員会専門員   福田 秀文君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十六日
 辞任         補欠選任
  保坂 展人君     日森 文尋君
  二階 俊博君     西川太一郎君
同日
 辞任         補欠選任
  日森 文尋君     保坂 展人君
  西川太一郎君     二階 俊博君
    ―――――――――――――
四月十五日
 首都圏整備法及び近畿圏整備法の一部を改正する等の法律案(内閣提出第五四号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 マンションの建替えの円滑化等に関する法律案(内閣提出第二六号)


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     ――――◇―――――
久保委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、マンションの建替えの円滑化等に関する法律案を議題といたします。
 本日は、本案審査のため、参考人として、全国マンション管理組合連合会会長穐山精吾君、弁護士戎正晴君及び早稲田大学法学部教授山野目章夫君、以上三名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いをいたします。
 議事の順序でございますが、穐山参考人、戎参考人、山野目参考人の順で、御意見をそれぞれ十分程度お述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、御了承賜りますようよろしくお願いをいたします。
 なお、参考人及び質疑者におかれましては、御発言の際は着席のままで結構でございます。
 それでは、穐山参考人に陳述をお願いいたします。
穐山参考人 本日は、衆議院国土交通委員会で発言の機会を得られましたことを感謝いたしております。
 私が会長をいたしております全国マンション管理組合連合会は、昭和六十一年に設立いたしております。現在は、北海道から九州まで十二の管理組合団体で構成しております。
 設立以来、分譲マンションの維持管理について、地域間の情報交換を初め、全国的な問題については、区分所有者を代表しまして各界に意見や要望を出し、マンション管理の向上と関係法規等の整備のために努力してきたところでございます。今後も我々の活動は重要なものであると認識いたしております。
 なお、本日お手元に、当全国マンション管理組合連合会が、昨年、法務大臣及び法制審議会会長あてに、区分所有法の改正に関して意見書を提出いたしております、その写しを差し上げてございます。御参考にしていただければ幸いでございます。
 委員の皆様には御承知のように、日本における分譲マンションは、都市型住宅として、大都市圏中心から地方の基幹都市へ広がり、その数は加速度的に増加し、ストックは平成十三年末で約四百万戸程度に達するものと思われております。今後も大都市部を中心に増加するものと思われます。
 このような状況から、マンションの長命化、あるいは既に三十年を超える古いマンション等の将来のあり方など、多くの課題を抱えており、国や地方自治体にとっても、適正管理の誘導やスラム化防止など、分譲マンション対策が大きな政策課題としてクローズアップされてきております。
 この都市型住宅としてのマンションストックが、区分所有者で構成する管理組合の責任で維持管理や運営をしていくには多くの解決しなければならない課題があり、これらは法的にも、技術的にも、また経済的にも難しい面を持ちます。容易に解決し得ない複雑な面をあわせ持っております。
 本日は、多くの問題から、分譲マンションの建てかえ問題について発言させていただきます。
 古い分譲マンションは、昭和三十年代中ごろに建設されております。既に四十年を経過しておりますが、この時代は、当時の日本住宅公団が建設したものが中心で、大規模な団地型のものが多く建設されております。その後、次第に民間の開発業者が参入して、年間建設戸数も拡大しており、十年後の平成二十二年ごろには、築後三十年以上の分譲マンションが百万戸程度に達するのではないかと言われております。
 これら初期のころのマンションは、建物の物理的な老朽化より、専有面積の狭さ、設備の陳腐化、機能の古さ等で住みにくいと言われております。このようなことから建てかえを検討するところもふえておりますが、現実には建てかえは非常に困難で、阪神・淡路大震災による建てかえ例を除いて、これまでに七十例程度ということになっております。そのほとんどは比較的条件に恵まれたもので、いわゆる等価交換方式による建てかえであると言われております。
 現在の経済情勢からしますと、等価交換方式は非常に難しく、区分所有者個々人の負担によって、かつ、みずからの手で建てかえを行わざるを得ない状況になってきております。
 この区分所有者みずからによる建てかえには多くの問題を抱えており、以下に問題点を申し上げますが、これらが解決できる道筋を、ぜひとも政策、行政施策でかなえていただきたいと希望するところであります。
 なお申すまでもなく、分譲マンションは、基本的には、維持管理を適正に行い、できる限り長もちさせることが区分所有者の当たり前の意識であるということも申し添えておきます。
 まず、建てかえ合意手続についての問題点です。
 まず一番、建てかえの合意形成の困難性というものがございます。居住者の考え方の相違、あるいは経済的環境の相違、あるいは建てかえの客観的要件のあいまいさなどがございます。
 二番目、居住者の高齢化という問題がございます。マンションが古くなりますと、当然、そこに居住する人たちも年齢が高くなっていくということでございます。この高齢者は、環境の変化を余り好まない、現在のところで我慢する、こういうことになっております。また、建てかえ資金の負担力に問題が出てまいります。
 三番目に、建物の価格の問題でございますが、建てかえ不参加者からの買い取り等の価格設定の基準が明確でなく、紛争の原因となっております。
 四番目に、紛争議の調整の問題でございます。建てかえ決議の有効性、決議後の建てかえ参加者の認定、建物の価格等で問題が生じたりしまして、建てかえ事業に支障を来すという可能性があります。こういったところで迅速な調整というものが求められるということでございます。
 五番目に、同一敷地、同一居住性という問題がございます。例えば、資金捻出のための敷地の一部売却、既存不適格の解消のための敷地の購入、住居専用から店舗を含むものへの転換など、現在の区分所有法では認められていないということでございます。
 六番目に、団地の建てかえの問題でございます。現在の区分所有法には、団地の建てかえの手続についての規定がございません。どのように手続をすべきかわからないながら、現在は一棟建てかえの規定を適用して、さらに全体の決議をとるという方法を行っております。このような団地の建てかえについても法の整備が必要ではないかというふうに思っております。
 七番目に、建てかえ具体化までの費用の問題でございます。建てかえは管理組合の業務ではございません。したがいまして、別組織などをつくりまして、そこで検討をするということになるわけですが、この段階では、調査、設計、あるいはコンサルタントなどをつけていろいろ勉強していくわけですが、これらの費用の出どころというものが問題になります。そういった面での困難性という部分がございます。
 八番目に、建てかえ資金でございます。等価交換方式による負担軽減が難しいということになりますと、自己資金によることになります。しかし、この負担能力の格差というものが大きな問題になってくるということでございます。
 九番目に、一時居住住宅の問題がございます。建てかえを計画する段階で仮住居の問題をきちんと解決しておかないと先に進まない、こういうことがございますので、一時居住住宅の確保が非常に難しい。特に団地型の場合は、多数の戸数がありますので、非常に難しくなってきておるということでございます。さらに、仮住居に住んでいる間の家賃の問題、特に高齢者の方の家賃負担能力についての問題、こういったものがございます。
 次に、建てかえ円滑化について必要ではないかと思う点について申し述べます。
 一番目ですが、区分所有法の整備を図っていただきたいということでございます。特に、建てかえ手続についての規定の整備、システム化、さらに団地建てかえの手続についても規定をきちんとしていただきたいということでございます。
 二番目に、建てかえを行う事業体の問題がございます。現在の区分所有法は、建てかえ決議までの規定でありまして、建てかえ決議がされて建てることになった場合に、区分所有者による事業体というものの形がございません。したがいまして、こういった面についての整備が必要である、ぜひ法制化をしていただきたいと思っております。
 三番目が、建てかえにかかわる場合に、優良建築物整備事業として適用していただけないかということでございます。マンションにつきましても、都市再開発事業として適用されるということになれば、こういったものの利用も可能かと思います。適用の拡大等について行政の努力を期待したいところでございます。
 四つ目は、規制緩和でございます。団地等につきましては、一団地認定というようなものが網にかぶっておりまして、容積率の問題、建ぺい率の問題、いろいろの問題が出てまいりまして、これが足かせになって話が先に進まない、こういうようなところもございます。ぜひこういったものについてもお考えをしていただきたいということでございます。さらに、既存不適格の問題でございます。特に市街地における古いマンションでは、既存不適格のものが非常にたくさんございまして、建てかえをしようというときには、今の建物よりも小さくしないとできないというような状況になるわけでございますので、この問題も解決していただかないといけない問題だと思っております。
 五番目には、税制の整備でございます。マンションの建てかえにかかわって、土地の売却、あるいはそういったもので得ます所得、こういったものについて特例措置などを考慮していただかないと、非常に厳しい状況に置かれることになるということでございます。
 六番目に、権利変換にかかわる登記の円滑化でございます。区分所有物件の多くには複雑な権利関係が設定されております。これらの整理をきちんとしないと、建てかえが先へ進まない。個々にこの整理をしておりますと、非常に時間がかかってしまいます。したがいまして、一括で処理をできるような方法がぜひ必要になる、かように思っております。
 七番目が、資金供給の問題でございます。資金力のない、特に高齢者の方々が多いということになりますと、建てかえに参加しにくくなります。できるだけ参加しやすくするために、やはり資金供給という面での施策をぜひお願いしたいというふうに思っております。
 最後でございますが、行政の支援措置でございます。先ほどから申し述べてまいりました中で、仮住居の問題、それから資金援助の問題、あるいは建てかえに関する技術の提供、情報の提供、あるいは容積率等の緩和など、もろもろのものがございますが、これらの点につきまして、行政の支援をぜひお願いしたいと思っております。
 以上、簡単でございますが、私の方からの意見とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
久保委員長 ありがとうございました。
 次に、戎参考人にお願いいたします。
戎参考人 戎でございます。よろしくお願いいたします。
 兵庫県弁護士会に所属する弁護士でございますが、私は、阪神・淡路大震災が発生しましたけれども、その後のマンションの復興に多く携わってきました。そのような立場から、本法律案について意見を陳述させていただきます。
 結論的には、そのような経験に照らしてみて、本法律案は、ぜひとも必要なものであり、かつ有用なものであるというふうに考えます。
 阪神・淡路大震災では、多くのマンションが被害を受けて、初めて本格的なマンションの建てかえというものがそこで行われるようになったわけですけれども、改めてマンションの建てかえというのは非常に難しいものだということが認識されました。
 幾つかの問題点がございますが、大きく四つぐらいに分けるといたしますと、一つは、マンションの建てかえというものの一番基本、私法の部分を規律しております区分所有法の建てかえの部分の解釈、なかんずく建てかえ決議の客観的要件の不明確性とか、そういった部分の制度的、解釈的に不明瞭な部分が多く存在していたということでございます。それが第一点。
 それから第二点は、建てかえというのは非常に大きな一大事業でございますけれども、その事業を進めていくための主体がこれまたはっきりしません。その上、どういうレールの上にその事業が乗っかっていくのかというような法律上の枠組みが何もない。つまり、ばらばらの人たちのばらばらの権利をばらばらに処理して、個別的に処理して、それを積み重ねていかなければ建てかえ事業が成り立たない、こういうような構造がはっきりしたわけです。
 それから三番目は、既存不適格問題などに見られるように、都市計画との衝突ということが浮き彫りになったということ。
 それから四番目には、ダブルローンだとかあるいは借り入れができない高齢者だとか、いわゆる資金、経済的な問題ということです。
 このうち、本法律案は、建てかえという事業についての主体と法的な枠組みを提供しようと。その部分に対する一つの対策としての意味を持ちます。先ほど申し上げた区分所有法の要件の不明確性その他は、現在法制審議会の区分所有法部会で検討しておられますけれども、それは別個の問題でして、この法律案が対象としているのはあくまで建てかえの事業という部分でございます。
 先ほど申し上げた四つの問題というのは、実は被災マンションに固有の問題ではありません。この膨大なマンションストック一般の問題にすべて置きかえられるわけですけれども、今後、そういうことを考えますと、どうしてもマンション建てかえを円滑にするための仕組みをつくっていただきたいというふうに思うものです。
 まず、本法律案は、先ほどのマンションの建てかえ事業の主体という観点に関しましては、初めてそこに建替組合という団体を認め、その団体に法人格を与えております。これは、従来は実務的には任意の組合というような形で再建組合というものを立ち上げて、その再建組合が主体となってディベロッパーと共同して事業を進めていくというような形をとっておりましたが、いかんせん法人格もありませんし、契約関係その他の処理もすべて個々の区分所有者とやらざるを得ないというような部分がございましたので、この点、法的に主体が明確になったことによってそういう契約関係などは非常にスムーズに処理されていく、その意味で、建てかえ事業の円滑化には資するというふうに考えられます。
 それから、先ほど申し上げた事業のレールがないという部分ですけれども、マンションというのは多数の区分所有者から成っております。多数の区分所有者のその一つ一つの区分所有権、敷地の権利についてそれぞれ借家権だとかあるいは抵当権等の担保、つまり数多くの権利がそこに存在しているわけです。マンションの建てかえというのは、そういう多くの権利関係をスムーズに従前の建物、土地から再建後の建物、土地へと移行させる、あるいはその途中でスムーズに解消する、こういうことにほかならないわけですけれども、先ほど申し上げたように、これは一つ一つの契約、一つ一つの合意で、例えば抵当権を外すというような問題に関しましても一つ一つ合意を取りつけないといけない。あるいは借家人の処理も、引き継ぐにせよあるいは解消するにせよ、すべて個別の話し合いによる、そういうようなことをしなければいけない。このことは実務的には非常に大変なことでございまして、そのことゆえに、悪く言えば一部ごね得を発生させるような温床にもなりかねないというようなことが実際にはあったわけです。
 今回のこの法律案の持っています権利変換システム、これは一回の行政処分でそういった数多くの権利を集団的にスムーズに処理するということを可能にするものでございまして、先ほど申し上げたような問題点の解決には非常に有用であると考えますし、そのことによって建てかえ事業の推進というのはより円滑なものになっていくということでございます。
 この権利変換のシステム自身は、考えてみれば、先ほど申し上げたマンションの建てかえの構造というのは、地権者の敷地を新しい区分所有ビルに完成させていくという従前の市街地再開発事業とほとんど仕組み的には同じわけです。したがいまして、そこで採用されております一種再開発事業の権利変換の仕組みをそのままマンションの建てかえにも持ってくるということは非常に合理的なことですし、そのことによって先ほどの個別の権利を個別に処理しなきゃいけないという問題点は克服できるものというふうに考えております。
 それと、そういう部分を区分所有法の改正で手当てができないのか、こういうこともあろうかと思いますが、区分所有法というのはあくまで純粋の私法でございますから、こういった事業法的な発想、そういった条文をそこに盛り込むことはできません。したがいまして、一たん決まった建てかえ事業を円滑に進めるというためには、この法律案のような別の立法がどうしても必要だ、こういうふうになるわけです。
 この法律案自身は、建てかえの円滑化と、それからさらに円滑化を超えて建てかえそのものを促進するという二つの場面といいますか、二つの意味を持っているといいますか、あくまで一般のマンションが対象になっているのは、建てかえ決議が成立した、つまり合意形成自身はもう調った、そのマンションのこれから行う建てかえ事業を円滑にしようということでして、合意形成の困難さということが指摘されていますけれども、その合意形成の困難さ自体をこの法律で解消することはできないわけです。
 それから、さらに進んで円滑化を超えて促進という部分をこの法律は持っておりますが、この場合の対象マンションというのはマンション一般ではございませんで、あくまで不良有害マンションだけということになっておりますけれども、こういったマンションに関しては、この法律案は市町村長が建てかえ勧告をするという形でより強い公共の関与を認めているわけです。
 話は戻りますけれども、先ほどの権利変換システムを建てかえ事業に採用するということに当たっては、一つそのこと自体が問題ではないかというふうに思われる向きもあるかもしれません。といいますのは、一回の行政処分でそういう多数の私人の権利を変動させてしまうわけですから、そこに何がしかの権力的な部分があるわけです。そのことが妥当かどうかというのは一つ議論のあり得るところなんですけれども、この点に関しましては、昨年もマンション管理適正化法ができましたけれども、マンションの管理、もっと言えばマンションというものに対しての公の関与ということは認められてその流れが定着しております。
 さらに、もう一度強調しますが、何も建てかえの話が起きていないようなマンションにいきなり事業法の網をかけて建てかえをしてしまうという法律案ではなく、あくまで住民、区分所有者が建てかえを合意した、決議が成立した、そこから後にいわば追撃するような形でこの法律が登場する。合意が既に成立しているということを前提とすれば、行政処分によって権利関係を変動させるということも正当化されるんではないか、このように考えております。
 それから、建てかえの勧告という先ほどの促進の部分は、これも従前からある、略しますと密集市街地整備促進法からある不良賃貸住宅の建てかえというような、これまた同じような仕組みをそのまま拝借して採用されているものでございますから、特に変な仕組みだというふうには私は思いませんし、その中で非常に合理的に借家権などの処理もできるというようなことですから、この制度についても私は賛成をしております。
 ただ、一つ、少数者保護ということが問題になるかもしれません。この少数者保護は、転出する区分所有者と、そこに居住している借家人と、二通り考えられると思います。この法律案によりましても、転出するといいますか、建てかえ決議に反対する区分所有者に対して、あるいは建てかえ決議には賛成したけれども、その後権利変換計画が定められて、その権利変換計画には反対だという転出する区分所有者、そういう区分所有者に対しては、相手方が拒否できないような形の売り渡し請求が認められております。こういう制度は、特に権利変換計画、つまり、決まった計画に対して、建てかえには賛成していたんだけれども、具体的に決まった計画に対しては反対だという人に対しては、これは従来何も有効な手段がなかったんですが、本法律案で初めて採用されております。
 売り渡し請求自体は、そういう転出者に対する請求自体は、区分所有法の中にも既に書かれたものでございますし、対価としての時価ということが払われるわけですから、これをもって少数者保護に欠けると言うことはできないだろうというふうに思いますし、また、促進の場面の不良危険マンションの建てかえに関しましては、確かに借地借家法上の正当事由、これが適用除外となっておりまして、一見借家人保護に欠けるかのようでございますけれども、それと引きかえに、きちんとした居住安定計画等が立案されて認定されることになっておりますので、そちらの方で改めて保護をされるという仕組みが採用されておる以上は、特に本法律案をもって少数者保護に欠けるというようなことにはならないのではないかなというふうに思っております。
 以上で私の意見陳述を終わりにさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
久保委員長 ありがとうございました。
 次に、山野目参考人にお願いをいたします。
山野目参考人 早稲田大学の山野目でございます。本日は、このような意見開陳の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。
 私は、大学におきまして民法の研究に従事しておりますが、本日御審議のテーマであるマンションの問題に関心を抱くに至りました契機は、何より一九九五年の一月に起きました神戸の震災でございます。その際、本日ともに参考人を務めておられます戎参考人を初めとする被災現地の弁護士の方々などが、未曾有の法律問題と格闘しておられる御様子を拝見いたしました。
 もとより、マンションの問題は、必ずしも法律制度の整備により解決がつくものばかりではありませんし、また、本日御審議の法律案は、老朽化に伴う建てかえをも射程に置いたものであり、震災のような不時の災害により必要となる建てかえと様相のすべてを同じくするものではありませんが、反面、参考とすることができる部分が多いことも確かでございます。
 そのようなところから、戎参考人を初めとする方々のお仕事から取材をいたしまして、マンション建てかえを主題とする書物をつくらせていただきました。日本評論社から刊行いたしました「建物区分所有の構造と動態」というその本におきましては、マンションの建てかえの制度的な仕組みに欠けている部分の幾つかを指摘させていただきました。すなわち、民事の法律制度であります建物の区分所有等に関する法律の六十二条に基づきまして建てかえ決議が成立し、これにより、同じ法律の六十四条により建てかえの合意の成立が擬制されます場合には、本来は早速建てかえの事業に着手することができるはずのところでありますが、現実には工事を発注する主体の法律的な位置づけが不安定であり、その解決策としては、発注主体が、例えば建替組合といった仕方で法人となっていることが望まれるといった問題がございました。
 また、いささか細かな問題になりますけれども、従前のマンションにおいて抵当権が設定されている住戸がある場合には、建てかえ事業を円滑に進めることに支障がございますが、対処の方策といたしましては、権利変換の仕組みを取り入れることなどが考えられるところでございました。
 今般の法律案におきましては、六条以下のマンション建替組合の制度及び五十五条以下の権利変換の仕組みの、特に七十三条の担保権の移行の規定などにおきまして、結果といたしましてこうした考え方が取り入れられており、本参考人はこれらの点を高く評価するものであります。
 その上での今後の展望といたしまして、幾つかの残された問題を指摘させていただきたいと考えます。
 まず何よりも、今般の法律案の主たる目的は、建てかえの合意形成がなされたマンションについて、建てかえの事業が円滑に進むものとすることであり、大筋において、そもそも建てかえをしようということの合意形成の問題は、今般御審議の法律案ではなく、民事の法律制度の一翼をなす建物の区分所有等に関する法律が担うところであります。
 これから後、本日の御質疑におきましては、マンションに関する民事の基本法でありますこの建物の区分所有等に関する法律を、単に区分所有法と略称させていただくことをお許しいただきたいと存じますが、その区分所有法による建てかえの意思決定を適切ならしめることと、なされた建てかえの意思決定の実行を今般法律案により円滑ならしめることとはひとまず別の問題であり、そのことのゆえに、政府が三月二十九日に閣議決定をいたしました規制改革推進三カ年計画におきましても、これらは二つの項目に分けて書き起こされております。そして、前者の区分所有法の定める建てかえの要件につきましては、目下、法務大臣の諮問機関であります法制審議会におきまして、見直しのための立案、検討の作業がなされております。
 事柄は、民事の法律関係の中でも重要な位置を占める所有権のあり方にかかわるものであり、いやしくも、そこでは多数者の専横が見られるような事態とならないようにする配慮が求められます。そのためには、意思決定のプロセスをとりわけ大切にする制度構築が望まれることは申すまでもありません。この論点は、そう遠くない時期に御院の御審議の俎上にのるものと思いますから、立法府におかれましては、引き続き関心を持っていただきたいものと切望いたします。
 もう一つ、今後の課題として強調させていただきたいこととして、今次立法の性格づけにかかわることでありますが、今般の法律案は、都市再生という大綱的な課題の中で、とりわけ良好な居住環境の確保を図る観点からの施策でありますから、それは都市政策及び住宅政策の一翼を担うものであることが特に顧みられなければなりません。
 建てかえ事業を推進するための民間事業者の能力の活用といったことが、過度に経済主義的なコンテクストで受けとめられることのないよう、適切な位置づけがなされなければならないと考えます。日々そこに暮らし、住まい、そのようにして社会的関係形成の主体である生活者の方々に大きな影響を与える問題であることの自覚が関係者になければならないものと考えますし、そのような観点からは、今般の法律案が、例えば建てかえの対象となるマンションの賃借人やあるいは転出区分所有者の居住の安定について、九十条や百四条以下などの規定を設けていることにも特に言及しておきたいと考えます。
 以上をまとめますと、建てかえ事業の円滑を期する今般の法律案は、それ自体として重要なものでありますが、それは、建てかえの意思決定をつかさどる区分所有法が定めるルールの適切な見直しと相まって初めて実効を発揮するものでありますし、また、この法律案それ自体につきましても、危険、有害な状況にあるマンションの建てかえ勧告や賃借人居住安定計画の認定に任ずる市町村長などによる法律運用の適正が確保されてこそ、全体としての政策目的を達成することができる関係にあります。
 このことを重ねて強調させていただきまして、所見の開陳といたします。ありがとうございました。(拍手)
久保委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
久保委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松野博一君。
松野(博)委員 自由民主党の松野博一でございます。参考人の皆さん、御苦労さまでございます。
 皆さんのお話をお伺いして、本法案に対します理解が進んだわけでありますが、それぞれの方のお話の中にありましたとおり、このマンション建替えの円滑化に関する法律案といいますのは、区分所有法における建てかえ決議の成立が前提となるということはもちろんでありますけれども、事柄の性質上、質問が区分所有法の領域まで入ることをまずお許しをいただきたいと思います。
 十五分間の時間の中で、それぞれ三人の参考人の皆さんに質問をさせていただきたいと思います。
 まず、穐山参考人に質問させていただきたいと思いますが、穐山参考人が会長をお務めになっておられます全国マンション管理組合連合会、この会が、法務大臣に対して、区分所有法の改正に関する要望を出されております。その中で、売り渡し請求権の行使の前提として、当該区分所有者が、それまでの居住条件と同程度の居住性、このことが保障されることを売り渡し請求権行使の前提というふうにされておりますけれども、今回の本法案によって、転出された方々に関するさまざまな補助、援助の策が提示をされておりますが、参考人からごらんになって、本法案のそういった施策というのをどう評価されているか、お話しをいただきたいと思います。
穐山参考人 ただいまの御質問でございますが、私ども、五分の四という特別決議で建てかえが進むということにつきまして、ある面では危惧を持っているわけでございます。残りの五分の一の方々をどうするかという問題でございます。したがいまして、基本的に、こういう方々についての将来の生活、そういったものまでやはり考慮しなければいけないものではなかろうかというふうに思っておりますので、参加できない方についても、できるだけ将来生活が保障できるような形で建てかえが進められるということになることがやはり必要じゃないか。もしこれがきちんとしていれば、建てかえに反対じゃなくて賛成に回っていく可能性もあるんじゃなかろうか。
 賛成者多数で実際に建てかえに入りますといったときに、建てかえには反対したけれども、後々には建てかえに参加する、こういうようなこともあり得ることでございますので、この辺のところを、やはり私どもは、五分の四でいいということじゃなくて、できるだけ一〇〇%に近い賛成を得て建てかえができるようになるのがやはり理想ではなかろうかな、かように思っております。
松野(博)委員 ありがとうございました。
 続きまして、戎参考人に質問をさせていただきたいと思いますが、先ほどお話の中で、転出をされる方に関しては時価による買い取りがなされるので、必ずしも少数者に対する保護がなされていないという批判は当たらないというお話がありました。これは、財産権上のことにおいては整合性がとれたお話だというふうに思いますが、時価ということに関しては、今問題がさまざまな方面から指摘をされております。
 例えば、解体を前提としたマンションの時価というのはどういうふうに算出をされるんであろうかという問題。また、現実問題として、建てかえ決議がされるということは、安全性の問題、構造上の問題、もしくは、お住まいになっている皆さんの生活の質を維持するに当たって問題が生じたということで建てかえということになるわけでありますから、そういった状況のマンションにおける時価というのは、日本における上物の評価の低さも相まって、その後の生活を保障できるほどの価格にはならないであろう。
 ですから、転出される方の財産権という見方では整合性がとれても、従前の生活権を保護する、保障していくということにおいては、時価による買い取りということだけでは少数者保護が完遂されないんじゃないかという観点があるかと思いますけれども、その点について御所見をお伺いしたいと思います。
戎参考人 御指摘のとおりではないかというふうに思います。
 まず、時価に関しては、実は今現在判例も分かれておりまして、最高裁でこの区分所有法上の時価というのをどのように考えるのかというような結論は今出ておりません。現在上告審にかかっていますので、間もなく出るかなとは思いますけれども、それまでは時価が何なのかということすら実は争いがございまして、そのような中で、交換価値的な面で、時価だけが払われるから少数者の保護になるというのは、確かに問題のあるところでございます。
 そのことは私もそのとおり考えますけれども、区分所有法が前提としている少数者保護は、あくまで時価を対価として支払うという交換価値的な側面だけでしたけれども、本法律案では、転出者に対しても居住の安定を図る、そういう計画を立てて、かつその計画に基づいて努力義務ということも定められておりますから、この法律案によって、さらに御指摘の点はプラスされて少数者保護には資しているものというふうに考えております。
 確かに御指摘のとおり、所有権を自分の意思に反して奪われる少数者の立場から見ますと、お金だけをもらってもしようがないわけで、そこに住めていたという利益そのものを何とかしてほしいというのが心情でしょうから、そのこと自体はよくわかります。ただ、建てかえということになって、そこから転出ということになれば、全く同じ環境には今後暮らせないわけですから、できるだけ時価相当、それから、先ほどの居住の安定という意味でも、引き続き安定した居住生活が送れるようにという安定計画の方で、そのあたりは今後は対処していかざるを得ないのではないかなというふうに思います。
 以上でございます。
松野(博)委員 ありがとうございました。
 続きまして、山野目参考人にお話をお伺いしたいと思いますが、今回の法案の一つの大きな柱というのが、従前非常に難しかった権利変換の手法というのが法的に担保される、確立をされるということであるかと思いますが、この従前の権利の第一は、区分所有権であり、借家人の権利でありということだと思いますけれども、もう一つ抵当権の問題があるかと思います。
 この抵当権の場合は、まず抵当権者が建てかえの賛成決議には参加できないということでありまして、参加できないにもかかわらず、自分が一たん持っていた抵当権の建物自体が消滅をしてしまうという事態が起こるわけであります。もちろんこの抵当権の権利変換手法というのも本法案の中に盛り込まれているわけでありますが、抵当権者の保護に関してこの法案がどう機能するべきであるか、参考人の御意見を聞かせていただきたいと思います。
山野目参考人 お答え申し上げます。
 御指摘のとおり、区分所有権を目的とする抵当権が設定されていた場合には、建てかえ事業の遂行に関してさまざまな問題が生起いたします。ただいま御指摘のとおり、抵当権者から見てもそれは困った事態でありますし、片や、売り渡し請求をして抵当権の対象となっている住戸を取得する建てかえ事業を遂行する側にとっても、抵当権の負担ということが、建てかえ事業の遂行にとって障害となる部分が大きゅうございました。これらの問題は、神戸での震災における被災マンションの建てかえの際に極めて大きな問題として指摘されたところでございます。
 今般の法律案が、基本的には権利変換の枠組みの中で、先ほどの意見陳述でも申し上げましたように、担保権の移行の制度を盛り込んでいるということで、この問題に対して対処しようとしていることを、私は適切な方向ではないかというふうに評価するものでございます。今般入りましたこの権利変換及びその中での担保権の移行の仕組みは、従前の市街地再開発事業においても用いられた手法であり、既存法制上安定的に用いられている手法であって、その運用において注意していくべき部分はあろうかと思いますけれども、その制度化に期待してよいのではないかというふうに考えます。
 一点申し添えますと、抵当権の対象となっている住戸を取得する建てかえ事業遂行の側は、現行の民法が定めております、ちょっと難しい漢字を書きますが、滌除という制度がございまして、この制度によって抵当権を除去するということが神戸の震災の際には検討されました。ただ、必ずしも整備された制度ではございませんで、また加えて申し上げますと、現在、法制審議会の担保・執行法制部会においては、このような滌除の制度の存続、及び存続させる場合のその見直しに関して審議が鋭意進められているところでございます。
 まとめますと、今般の権利変換の仕組みで抵当権の問題に対処することで基本的には極めて適切であるものと思料いたしますが、あわせて、申し上げましたような並行して進んでいる幾つかの立法上の動きをも見据えながら、この問題が適切に解決されていくことを切望するものでございます。
 以上でございます。
松野(博)委員 ありがとうございました。以上で質問を終わります。
久保委員長 阿久津幸彦君。
阿久津委員 民主党の阿久津幸彦でございます。
 まず初めに、私も、先ほどの松野委員と同様に、今回の法律はどうしても区分所有法と切って考えることができないというふうに考えておりますので、そちらの方に少しオーバーラップする形で質問させていただきますが、御了解いただきたいと思います。
 まず初めに、穐山参考人に質問させていただきます。
 先ほど、穐山参考人のお話の中で、建てかえ合意手続の中で、客観的な要件のあいまいさというものが指摘されておりました。
 そこでお伺いをしたいんですが、穐山参考人の考え得る客観的な要件としてどのようなものがあるんでしょうか。例えば、区分所有法が建てかえか修繕かを客観的に判断し得る何らかの明白な基準となるような技術的な情報を提供する必要があると思うんですが、具体的に何か妙案というものがあればお答えいただきたいと思います。
穐山参考人 ただいまの御質問でございますが、建てかえ判断にかかわる点で客観的要件というものにつきまして、現在の区分所有法の中では非常に不確実な不確定な、あいまいな言葉で述べられておりまして、これが問題になりまして建てかえが非常に先に進まない状況が続いております。
 私どもは、きょう、お手元にお配りしております意見書、要望書の九ページに、「公正な独立機関による統一的な判定制度の必要性」というふうに申し上げておりますが、いわゆる五〇%ルールというものでございますが、これは、アメリカのFEMAにおきまして、災害時に建てかえか復旧かという判断をするときに、それにかかる費用の比較で五〇%を超えた場合には建てかえるという一つの判断基準があるわけでございます。
 こういったものをぜひ我が国にも導入していただいて、公平中立機関でそういったものを、これは老朽化のマンションについてもこういうようなものの基準で判断ができる。それを提供していただければ、区分所有者にとっても判断基準として非常にわかりやすいものになるんじゃなかろうか、かように思っている次第でございます。
 以上です。
阿久津委員 ありがとうございます。
 続けてお伺いしたいと思うんですが、客観的な要件とともに、個々の区分所有者側の事情というものも、建てかえを推進していく、あるいは円滑化する上で非常に大切というふうに考えておりますが、高齢者等には個人的な状況があります。負担能力の格差というものもあるというふうに私も考えているんですけれども、この個人的な状況を打破するために何か必要と考えていらっしゃるものがございますでしょうか。
穐山参考人 ただいまの御質問でございますが、先ほども申し述べましたように、お年寄りになりますと環境の変化というものをやはりどうしても好まないというところがございまして、まず、一般的に、普通に、そういうものが先に頭に入ってくるんだろうと思います。
 実際に自分が住んでいるところで建てかえという問題が起きてきたときに、次には、やはり経済的な能力の問題が出てくるんじゃなかろうかというふうに思っております。そうしますと、資金能力がないとなると、もう反対に回る。
 本来ですと、集合住宅という一つの集団生活をしている場でございますので、自分だけのことじゃなくて、やはり住んでいる方皆さんのことも頭の中に入れていただいた上での判断をしていただかなければいけないんじゃなかろうかなと思いますが、どうしても個人だけの判断になってしまう可能性があります。
 この点を何とかして和らげていく方法はなかろうかということでございまして、それは結局、資金を提供できるシステムをつくっていただけるかどうかということでございます。
 例えば、現在、住宅金融公庫で、六十歳以上の高齢者が建てかえ資金を、自分の持っている区分所有権を担保にしまして一千万まで借りることができるという一つのシステムがありますが、このようなものをさらに充実拡大していただく。あるいは助成の制度など、そういったものをつくっていただければ、高齢者にとっても環境としては余り変わらない、そして住環境としてはよくなる、そういうようなものに移行することができる、そういうことが一つ、やはり今後考えていかなきゃいけないことじゃなかろうかなというふうに思っております。
 以上です。
阿久津委員 ありがとうございます。
 次に、戎参考人並びに山野目参考人にお伺いをしたいと思うんです。
 先ほど、戎参考人、山野目参考人のお話を伺っておりましてよくわかったんですが、本法は、もちろん建てかえ決議後について述べられている法律でございます。ただ、一方で、阪神・淡路大震災のときに、その建てかえ決議をめぐってかなり難しい局面をお二人とも実体験として経験されていると思うんですが、それを踏まえて質問させていただきたいと思うんですが、まず、ちょっと法体系の話で申し上げます。
 確かに、区分所有法がありまして、そのほかにもう一つ必要だということで、今回の円滑化法があるわけなんですけれども、逆に、区分所有法という非常に客観的な法律があって、建てかえ決議まであって、その後に促進という、あるいは円滑という目的を持った円滑化法があるわけですけれども、その建てかえ決議に至るまでの段階での円滑化という目的を踏まえて、もう一つ法律をつくったらどうかという提案を、実は私は質疑の中でさせていただいたんですが、それについてはどのような御意見があるでしょうか。簡単で結構でございます。
戎参考人 こちらの側から質問が許されないということなんで。どのようなイメージかにもよるかなとは思うんですけれども、お考えの新しい法律が。
 私が一言言えるとすれば、確かに、本来入り口の段階の区分所有法の合意形成までの段階、ここがまず整備されなきゃいけないということは、一つ言えると思います。それを、現在進められております区分所有法の改正だけでやれるのか、あるいは、それでだめだとすればまた新法というようなことも必要かなとは思うわけですけれども。
 ただ、法体系からしましても、合意形成そのものに関する各種の制度というのを書き込むとすれば、それはマンションの基本の私法である区分所有法の建てかえのところに書き込まれるべきものでございましょうから、その部分を整備するという方向の方が、私としてはすんなりと納得できるようなところがございます。
 あと、申し添えさせていただきますと、最もマンションの合意形成を難しくしているというのは、何も区分所有法だけじゃなくて、先ほどの経済的な問題等もたくさんあるわけですけれども、それが最後は訴訟にまで発展してしまうという一つの要素としては、費用の過分性という、要は回復維持に過分の費用を要するとき、そういうような書かれ方をしているわけです。
 そういう費用が過分であるということを建てかえ決議の客観的要件と呼んでいるわけですけれども、そういう条文の書き方自身が非常にあいまいであって不明瞭であるということ、それから、加えてこれだけの価値のマンションを維持するのにこれだけお金がかかる、そのことがかけ過ぎなんだという、そういうことは個人によっても感じ方が非常に違ってくるわけですね。
 そうしますと、もともと意味が不明瞭な上に、個人によって感じ方が違うとしますと、その部分をめぐってどうしても争いが起きてしまう。こういった条文の書き方、紛争を残すような条文の書き方がひとついいのかというような観点も、現在法制審議会の方では審議されているというふうに思いますけれども、その部分に関しては、確かに明瞭化する必要が私自身もあると考えております。
 済みません、お答えになったかどうかわかりませんが、以上でございます。
山野目参考人 お答え申し上げます。
 御指摘の点は、今後のマンション建てかえの問題に関する立法を考えていく上で大変重要な御示唆を含んでいるものと考えます。
 二つのことを分けて申し上げたいと思います。
 先ほどの意見陳述の際には、一番大事なことを大づかみに申し上げるという見地から、区分所有法が建てかえの意思形成までのことをつかさどり、その後のことを今般審議の法律案が取り扱うというふうに申し上げましたけれども、しかしながら、もう少し細かく見てまいりますと、今般審議の法律案が、建てかえの合意形成ということに関して、そのこと自体に関して全く無関心なのであるかというと、必ずしもそうではなくて、これは既に御案内のことだと思いますけれども、今般法律案の第四条におきまして、大臣が定める基本方針というもので、建てかえのあり方に関して国土交通大臣がさまざまなテクニカルな面での援助、支援をしてあげるということが予定されているわけでございます。
 したがいまして、基本的には区分所有法が民事のルールとして建てかえの合意形成ということをつかさどりますけれども、今般法律案が、その過程におきましてもまるで無関心ではなくて、側面から援助する部分がある。この四条が定めている制度ということについて特段の御関心を持っていただきたいものと考えます。
 もう一点申し上げます。
 今般成立しようとしているこの法律案の性格づけでありますが、ただいま議員が御質問で、最初促進というふうに言いかけられて、その後円滑化というふうに言い直されたのはまことに適切、厳密でありまして、今般法律案が、これが促進立法なのかというと、決してそうではないわけでございまして、促進という言葉が出てくるのは、危険有害なマンションの建てかえに関する部分だけでありまして、それ以外の部分に関しては、促進ではなくて、合意形成を見守り、場合によっては助けますけれども、基本的には、全体としてそれらが滑らかに運んでいくということをねらった立法であるというふうに認識しております。こうした二つのことを盛り込んだ今般立法の運用を少し見ていってはいかがかなというふうに私は考えます。
 議員御指摘の事柄というのは、今後の展望として重要な観点でありますが、今般法律の運用を見た上で、また新たな立法措置が俎上にのることは、これはあり得るだろうというふうに考える次第でございます。
 以上でございます。
阿久津委員 私の質問の意味を酌み取っていただき、適切にお答えいただきまして、本当にありがとうございました。
 私は、客観的な要件というのはできるだけ整えるべきだというふうに考えております。ただ、実際に阪神・淡路大震災のときの実例を勉強させていただきますと、客観的な要件だけではどうにもうまくいかない部分があって、建てかえ決議に至るには、個人個人の条件というもの、主観というものがかなり入ってくるんだと思うんです。
 そこで、最後、もう三十秒ずつ一言お答えいただきたいと思うんですが、扇大臣は答弁の中で、情報の開示が大事だという指摘とともに、もう一つ、相談体制の整備ということを申されているんですね。この相談体制の整備について、一言コメントがありましたら、お三方から一言ずつお願いいたします。
穐山参考人 私どもにとりましては、大臣からそういうようなお言葉があったということは非常にありがたいことでございます。できるだけ地方公共団体で、相談窓口の中にそういった建てかえに関する技術的な面のアドバイスができる制度をつくっていただければありがたいと思っております。
 そしてもう一つは、建てかえに至るまでのいろいろな情報というものがどうしても必要でございますので、そういった情報ですね。それから、どういう人たちに建てかえの問題を相談あるいはコンサルタントしていただくかというような情報、技術的な問題についての相談の情報、そういったものをいただけるようなシステムをつくっていただければ、飛行機でいえば助走段階といいますか、その段階での建てかえというものの方向性を探っていくときに非常に大変でございますので、ぜひそういったところで支援をしていただきたいと思っております。
 以上でございます。
戎参考人 マンションの建てかえというのは、例えばペット問題のように、管理組合の中だけで何とかできる問題かというと、それはもう管理組合の、区分所有者の能力をやはり超えてしまう問題です。したがって、そういう建てかえに関しての技術的、専門的な情報というのが、できるだけ早い段階で区分所有者に相談体制などが整備されることによって提供される、そのことによって、マンションは一つ一つ異なるわけですから、自分たちの持っているマンションがどういう状況にあって、どういう条件がそろえば仮に建てかえができるのかというようなことを早期に把握することは必要なことだというふうに思います。
 それからもう一つ、マンションの建てかえをめぐる相談で重要なのは、個々の区分所有者の相談ということも実は大事です。それは管理組合の中では相談できない、先ほどおっしゃられました個々の事情というのがございますし、それは一部プライバシーにもかかわってきますから、そういった部分を全部オープンにして、管理組合の中でどうしようか、ああしようかということをすることは不可能です。したがいまして、そういった部分もケアするような形で相談体制が組まれることが非常に重要ではないかというふうに考えます。
 以上でございます。
山野目参考人 御指摘のとおり、建てかえにおけるアドバイスをする専門家というのは大変に重要な問題であるだろうと思います。
 町の中には、例えばNPOのような形態をとりながら、あるときは行政と密接な関係を持ち、しかしあるときは行政と特段の関係を持たないで、いずれにしても自分たちのまちづくりを考えていこう、マンションを建てかえをする人たちとも、相談に乗って一緒に考えようではないかというふうな営みが、既に多くの場所で芽生えてきております。
 しかしながら、そういう方々もかすみを食べて生きているわけではございませんから、特定非営利活動法人や中間法人などが整備されてきておりますけれども、まちづくりや住宅の問題を考える、そのような良好な望ましい活動をしている団体に対して、国や地方公共団体の施策上の支援、後援などについても、本院の御所管事項とは直接かかわりがないかもしれませんけれども、立法府において御認識をいただきたいものと切望いたします。その余の点については他の二人の参考人がおっしゃったとおりであるものと考えます。
 以上でございます。
阿久津委員 どうもありがとうございました。
久保委員長 赤羽一嘉君。
赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。
 まず、三名の参考人の皆様方におかれましては、きょうの委員会設定自体大変急な設定の中、大変御多忙の中にもかかわりませず御足労いただき、また御高説を賜りましたことを心からまず御礼を申し上げる次第でございます。
 十五分間ですので、大変恐縮でございますが、端的にお答えをいただければと思います。
 まず、三人の皆さんのお話を聞いておりますと、やはりマンションの建てかえ、こういったことが、あの阪神・淡路大震災を契機に本当に現実のものとなった、そこから事が始まったなということを非常に印象深く聞かせていただきました。
 私も、実は選挙区が神戸市、阪神・淡路大震災が一番直撃をしたところでありまして、私自身が住んでいたマンションも大変な被害を受けて、再建にするのか、大規模修繕にするのかというのは大変な議論がありました。マンションというのは、全部がつぶれるわけじゃなくて、ある階層が物すごくダメージを受けて、全然全くダメージを受けないところがある、こういった集合住宅の難しさということを非常に私自身も実感したわけでございます。
 まず冒頭、質問をさせていただきますが、区分所有法のことにつきましてはちょっと二問目以降で触れさせていただきますが、区分所有法以外で、まず戎先生にお伺いしたいんですが、神戸で今まで国土交通省調べで百七十七のマンションの建てかえ地区がある、そのうち百八の地区が神戸の、神戸というか兵庫県の事例にある、そういう認識なんですが、先ほど先生の冒頭の御発言にもありましたが、このマンションの建替えの円滑化に関する法律、今回のこのような法案がなかったがために、建てかえ決議があったとしても前に進めることは大変御苦労があった、さっきそういうお話がございましたが、繰り返しになるかもしれませんが、その神戸、たくさんの事例を見られてきて、今回のような法案がもしあったならば、今回、建てかえまでに要した日数とか労力みたいなものが具体的にかなり減少して、まさにこの法案どおりの円滑化というものが図られたかどうかということについて、御見解をいただければと思います。
戎参考人 御指摘のとおり、兵庫県下で震災時にかなりのマンションが建てかえにはなったわけですけれども、先ほど申し上げましたように、事業の枠組みがないという部分でかなり実務は苦労をさせられたということがございます。
 例えば、一つ例を挙げれば、先ほど山野目参考人もおっしゃいましたけれども、抵当権の問題です。一たんディベロッパーに区分所有権と敷地を売り渡して、また立ち上げてもらって、それを再度買い戻すという形でマンションは建てかえをしていくわけですけれども、そのディベロッパーに譲渡するときに抵当権というのを一回外さないと、これがだめなわけですね。ところが、もしこのような法律案がありますと、権利変換の仕組みが存在していますから、従前の敷地についていた抵当権はそのままスムーズに移行していくという形で、外す外さないのところでトラブルになるということは防げるわけです。
 実際も、抵当権者にも銀行さんを初めとする一般の金融機関からだんだんと異なった金融機関もございまして、そのさまざまな抵当権者と、先ほど申し上げたように、個別にすべて一つ一つ交渉をして、ある区分所有者に対する抵当権を外してください、その条件はというような形ですべて処理をしていかないといけないということですね。そういったプロセスが、今回の法律案がもし通りますれば、その部分はすべてこの法律の仕組みにのっとった形で処理できますから、これは時間的にも労力的にも大変助かるということがございます。
 あと、建てかえ期間中、権利が恒定できないといいますか、建てかえをしている間にも相続は発生する。破産する方がおられる。あるいは、組合に無断でといいますか、やむを得ずという面も多いんでしょうけれども、区分所有権なり敷地を第三者に譲渡してしまうというような方もおられます。そうしますと、すべてがもう具体的な個々の権利を個別に処理しなきゃいけないという前提がありますと、そういった事態に一つ一つまた改めて対処していかなきゃいけない。この法律案では、権利変換の登記ができれば、そういう形でその後の無用な権利の変動等も防げますし、そのことによる混乱等も防げるわけです。一例を申し上げれば、そのようなことでございます。
赤羽委員 どうもありがとうございました。
 次に、建物区分所有法の改正について、現在、法務省の法制審議会の中で中間試案が出ておりますので、そのことについて、ちょっと何点かお伺いしたいと思います。
 まず、建てかえ決議ができる要件ということで条件が出ております。老朽化の場合ということで二つの案が出ておりまして、一つには、老朽化、新築された日から三十年ないし四十年を経過したときという案と、もう一つは、それに加えてただし書きが実はついております。
 このただし書きの意味は非常にわかりにくい日本語なんですが、この前の委員会のやりとりでは、法務省の答弁としては、修繕積立金の範囲内で所要の修繕工事が行えるような建物であれば、建てかえを行わずに建物を維持していくことは必ずしも不合理ではないのではないか、建てかえなくてもいいんではないかと。こういう建物については、まず建てかえ対象から除外するという、そこのただし書きの意味が書いてある、こういうことなんですね。
 ここについて、私たち公明党は、マンション管理適正化法をつくることに大変一生懸命やってきたというような経緯もあり、マンション管理組合の方がマンションをしっかり管理して維持していくということは、老朽化に対しても大変、何というか、セーブをかけていくという意味で非常に重要な意義がある、そう考えております。
 まず、穐山参考人にお伺いしたいんですが、マンション管理という立場から、一生懸命マンション管理をやっていてマンションの老朽化をとめようと維持しているところが、最終的に建てかえ決議をしたいというような状況になったときに、いわゆる大規模修繕しか認められないようなことになりかねないこのようなただし書きというのは私は余り意味がないのではないかというふうに思っておるんですが、穐山参考人の御見解、端的に伺えればと思います。
穐山参考人 お答えします。
 私自身は、あそこに三十年ないし四十年という形で出ているわけでございますが、これにつきましては余り同意できないというふうに思っております。
 B案のただし書きにつきましても、今お話がございましたように、長期修繕計画に基づいて大規模修繕をきっちりやっている限りは建てかえなくてもいいような形になると、建てかえそのものも今度は逆にできなくなっていくという部分がございまして、ちょっと私も疑問を持っている部分ということでございます。
 以上でございます。
赤羽委員 このただし書きについては、ちょっとそこは私たちもおかしいんじゃないかと盛んに質問をして、法務省は再答弁の中で、この長期修繕計画の見直しをすれば、長期修繕計画の内容を変更していただければこういった要件が外れるので、その後は年数の経過と五分の四の決議で建てかえ決議ができる、こういった答弁がございました。
 山野目先生にお伺いしたいんですが、法律家として、私、法律家じゃないんですが、このような長期修繕計画の見直しを行うことをすれば実際は余り実効性が伴わないというようなただし書きは、私はあえてつける必要がないのではないかと。本質的な内容としても、今穐山参考人が言われたように、マンション管理を一生懸命やっているところに不利益を結果としてもたらすようなことは反対なんですが、法律論として、こういうただし書きというのはどのような、法律論に限らなくても結構ですが、先生の御意見をいただければと思いますが。
山野目参考人 お答え申し上げます。
 結論から申し上げますと、私自身の現時点での評価では、今のところ、このただし書きを伴っている乙案とただし書きがない甲案と、両方にらみながら、議論が進むのを見守っていくのでよろしいのではないかというふうに考えております。
 もっと簡単に言いますと、このただし書きを含んだ乙案というものが、あるいは議員のおしかりを受けるかもしれませんけれども、それほど理由のないものではないのではないかなというふうに感じておる次第でございます。
 と申しますのは、ただいま議員が御指摘のとおり、修繕積立金に関して一度議決をし、そして建てかえ決議をするという二度の議決をするということになりますが、そのことをむだだと考えるのか、手順であると考えるのかという問題であろうと思います。
 ちょっと例え話で恐縮でございますけれども、いわばこの乙案は建てかえの意思決定について読会制を持ち込もうとしているものだというふうに言うこともできると思います。つまり、第一読会が、同じ会議体が、まず修繕積立金について検討をして結論を得、しかしもう一回念のために検討してみましょうじゃないかという、建てかえ決議がある第二読会ということを踏むわけでありまして、それを、結果が決まっていることであるからむだだというふうに考えるのか、当該区分所有者の団体において討議、議論を尽くしてほしい、プロセスを大切にする観点なんだと考えるかは両方評価があり得るところでございまして、ただいま法務省民事局参事官室が意見照会を一般に対して行っているところでございますから、そこでさまざまな建築や法律などの専門の意見が出てきたのを見据えてから議論をしていきたいなというふうに考えております。
 以上でございます。
赤羽委員 どうもありがとうございました。別に怒りませんし、そういう考え方の方がなるほどなというふうに今聞かせていただきました。
 それで、この点も踏まえてなんですが、またもう一つ、団地内の区分所有建物建てかえ。
 これは、幾つもの棟がある建てかえ、神戸でも大変苦労があったわけでございますが、この点についても、この中間試案で、一の場合というのは、戎先生に伺いたいので、よく御存じだと思いますが、建物の敷地を新たな建物の敷地として利用することが団地内の他の建物の区分所有者の建物の敷地の利用に特別の影響を及ぼすとき、容積率の先食いとかという話なんだと思うんですが、この場合は当該区分所有者全員の承諾を得なければならないものとする、こういった部分がございます。
 私、この点について、この特別な影響を及ぼすときというのは大変表現ぶりがあいまいなのではないかという質問をしましたら、法務省の答弁は、これは現行の建物区分所有法の十七条の、共有部分の変更についての、特別の影響を及ぼすときは云々という現行法の規定ぶりに倣っている、したがって、現行の規定の運用が確立すれば、こういう表現ぶりで紛れが生じなくなるのではないかと思いますと。法務省らしい答弁だなというふうに思ったんですけれども。
 現状、実態論として、戎先生、こういう団地の建物再建にかかわった立場として、今回のこの中間試案、この部分について御見解があればお聞かせいただければと思います。
戎参考人 御指摘のとおり、団地内の一棟もしくは数棟が建てかえになる、そういう部分建てかえですから、そういったケースは実際にありましたし、実はその部分に関しては区分所有法がはっきりと書き込んでいないという部分でありまして、ほかの棟との関係がどうなるのかというあたりは、実は解釈でゆだねられていた面がございます。
 実務的には、法律上は、建てかえ決議自体を団地ですることはできませんから、各棟ごとにやることになります。したがって、建てかえられる棟と、その棟の立てた建てかえの計画を今度ほかの棟の区分所有者に承認を求めるような形で立ち上げていくというようなプロセスを踏むわけです。
 御指摘のありましたその条文案ですけれども、それは、先ほどの建てかえの計画を他の棟の区分所有者に諮る際に、そのことによって敷地の利用について特別のそういう不利益をこうむるというような者があれば、その者の同意は必要ですよと。つまり、多数決だけではだめで、多数決プラスその者の個別同意がなかったら建てかえを許しませんよ、こういうふうに機能する条文だと思いますけれども、文言そのものは、確かに法務省さんのおっしゃるように既に区分所有法の中にもあることですから、これ自体は仕方ないわけです。
 ただ、敷地の利用に関してということが一体どこまでそれに含まれるのかに関しては、確かにおっしゃるようにあいまいな面がございまして、例えば、建てかえによってごみ置き場の位置が変わるだとか、あるいは外へ出るための通路がちょっと遠くなるとか、果ては、自転車置き場が変わる、あるいは駐車場の位置が変わったではないかとか、言ってみれば、さまざま、土地の利用ということに関して言えば、影響を受けるケースの方が多いわけですね。
 その中で、受忍限度というようなことを媒介にして、それが許される、要するに、受忍すべき影響なのか、それとも許されない影響なのかを個別的に判断することになるかとは思いますけれども、私が危惧いたしますのは、非常に実務屋のような見解で申しわけないんですが、今までそういう条文がなければないで、それで済んでいたものが、そのようなただし書きを正面から規定されますと、従前もきちんと配慮した形で建てかえ計画というのは諮っていたわけですけれども、もしそういった正面からの条文がありますと、やはり、その条文をてこに御自身の利益などを追求する、あるいは不満をその条文をてこに言って、その結果、そこが紛争になって、建てかえ自身が進まなくなってしまうということは現に起こり得ることだろうと思いますし、そのこと自身は実務的な観点からすれば心配なところです。
 ですから、もしそういう条文を残すとしても、かなり解釈上明確な形で定義をされる必要があろうかなというふうに考えます。
 以上でございます。
    〔委員長退席、実川委員長代理着席〕
赤羽委員 済みません、もう時間もないので、あれなんですが。
 あとは、今度実際建てかえるというときに、やはり先ほど参考人からお話がありましたように、資金面のサポートというのをどうするかということが現実には非常に大事になってくるんだなと思うんですが、それとはちょっと、似たような、ちょっと別なんですけれども、出ていかなければいけないという気持ちの部分は物すごくひっかかる人がいるんだと思うんですね。
 ですから、私、前回の委員会で、今回の建替組合に法人も参加できる、ディベロッパーが参加する際に、建てかえをする建物のスペースに賃貸スペースをつくるべきだと。既存入居者で今回建てかえに参加できない人たちが、他の公営住宅とかへ移るのではなくて、その同じ建物の中の賃貸スペースに入れるような、そういうことを考えていくべきではないかということで、国土交通省としても非常に前向きな答弁が出たんですが、このアイデアについてはどのようなのか。
 ちょっと時間もないので、穐山参考人と、もしあれだったら戎先生もちょっとお願いします。
穐山参考人 建てかえというものでできるだけ合意をということになりますと、一つの方法としてあり得ることかというふうに思います。
戎参考人 確かに、その場を離れたくない、ですから、その場に住み続けられるのであれば、たとえ所有者から借家人になったとしても、それはそれで、建てかえ事業には反対をしませんという方は現におられるわけです。そういう方が建てかえに参加していくための一つの方策としては、そういったことが実現すれば、これは望ましいことだと思います。
 ただ、問題は、そこを賃貸に出すということになりますと、ディベロッパーなりの方の参加組合員の事業性の方がむしろ心配ですが、そこさえ手当てできるんだったら、非常に重要な、いい制度だと考えます。
赤羽委員 どうもありがとうございました。
実川委員長代理 一川保夫君。
    〔実川委員長代理退席、委員長着席〕
一川委員 自由党の一川保夫と申します。
 三人の参考人の皆さん、御苦労さまでございます。
 皆さんがお聞きしたようなことで、項目は大分出尽くした感はあるんですけれども、私の方から三人の方にそれぞれちょっとお伺いしたいと思いますのは、先ほど穐山参考人かどなたかちょっとおっしゃった中に公的関与の問題が一つあると思うんですけれども、これからの一つの大きな課題としてのマンションの建てかえという中で、公的関与の中でも二種類あると思うんです。
 一つは、現行のいろいろな制度を規制緩和をしていただくという公的関与の中で、マンションの建てかえを、自主性を持たせて、できるだけやりやすい形に持っていくような、そこに一種の公的に関与をしていただくというやり方。それからもう一点は、先ほど、建てかえするに当たってのいろいろな資金面の支援だとかあるいは技術面の支援だとか、あるいはまた建てかえ中の仮の住宅のいろいろな課題に対する対応とか、いろいろな問題点に対するそういった公的な支援を逆にもっと充実した方がいいというお話があったような気がするわけです。
 こういったマンションの建てかえについて公的な関与というのはどういうふうにあるべきかというところを、ちょっとポイントのところだけ三人の先生方にお聞きしたいと思います。
穐山参考人 基本的には、区分所有者の自主性、主体性というものがまず必要だろうと思います。
 ただし、どうしても区分所有者のみでは立ち行かない部分もございますので、その面につきましては、ある程度公的な支援あるいは関与等が必要になってくるのではなかろうかなというふうに思います。
 特に、建てかえ期間中におきます仮住居の問題のほかに、事業そのものが成り行かなくなるような場合、例えばディベロッパーあるいは建設会社等が倒産等というようなことになりますと非常に大変なことになりますので、こういうような状況に至ったときには、特に公的に支援をしていただけるというようなことがあれば非常にありがたいことじゃなかろうかというふうに思っております。
 以上でございます。
戎参考人 まず公的関与ということで、積極的な方向、建てかえをやりやすくするという規制緩和とおっしゃった方向ですけれども、これも確かに、この現在の法律案が審議されておりますように、現在のところ、建てかえをもし区分所有者たちが決めても、それはなかなか実行ができないという状況があります。したがって、そういう状況自体は、どんどんそういった制限をなくすような方向であらゆる法が整備されることが望ましいとは思います。
 ただ、先ほど穐山参考人もおっしゃったように、区分所有者の自主性というのはやはり重要でして、区分所有者たちが何も考えないうちに、規制緩和の結果、周りから建てかえにのみ込まれていくというようなところまで行きますと、事が所有権その他の基本に絡む部分でありまして、一般の、例えば経済関連法規などとは違うわけですから、規制緩和といっても、おのずと限度はあろうかなというふうに考えます。
 それから、一たん区分所有者が自主的に決めたという際に、その建てかえを実行していくためのありとあらゆる支援策というのは、公的関与の中でもこちらの方をむしろメーンとしていただきまして、どんどん充実をさせていただければというふうに考えます。
 以上でございます。
山野目参考人 ただいまのお二人の参考人の御指摘につけ加えることは余りありませんけれども、今般提出なさっておられるこの法律案の条文との関係で若干の指摘をさせていただきたいと思います。
 今回の法律を見ますと、その中には、例えば何カ所かで都道府県知事が認可を行う場面があります。これは、従来の市街地再開発の制度などで出てくるところを、おおむねそれをなぞって取り入れているところのものでありまして、従来型の行政の関与の仕組みであるというふうに言うことができると思います。
 また、何カ所かで市町村長が賃借人居住安定計画などを認定するという場面が出てまいりまして、これも、例えば密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律などにおきまして既に用いられている手法でありますから、やはり伝統的な手法であるだろうというふうに言うことができます。
 これらは、伝統的な、行政法学的な、いわばかたい行政の関与だというふうにひとまず位置づけることができると思いますけれども、反面、今回の法律案には、四条のところで、マンションの建てかえの円滑化等に関する基本的な方針を国土交通大臣が定めるということにしておりまして、そこで定められた方針は、だれに参考にしてもらうのかというと、先ほどから話題になっております、まさに自助努力、自主性が期待されるところのマンションの方々を一つの読者としてそういう方針を定めて、ぜひ参考にしていただきたいという趣旨で定めるものであるだろうというふうに理解しております。
 これは、許可だとか認可だとかいうかたい行政の関与ではなくて、いわば参考のものを提示するというソフトな行政の関与であります。例え話を言いますと、認可とか許可とかというのは、勉強をしない息子を厳しくしかるお父さんの地位に行政がいるわけなんですが、それとは別に、この四条が定める基本的な方針というのは、そうではなくて、いわばわきから優しく勉強を見てあげる家庭教師のような役割をもう一つ行政に求めて、本人が勉強する気になるのを促すというような、そういう幾つかの手法が、今般、法律案の中で組み合わされているというところを私は指摘させていただきたいと思いますもので、先ほど阿久津議員のお尋ねの際にも強調申し上げましたように、この四条が果たす役割というものも、今後の法律運用の中で注目してまいりたいなというふうに考える次第でございます。
 以上でございます。
一川委員 ありがとうございました。
 お話のありました、役所といいますか行政サイドが過度に関与といいますか、今説明のあった基本方針なり、いろいろな認可という手続の中で、一種の無言の圧力的なものがかかって、それをそのとおりやらないと資金面的な援助もすんなり出ないとか、そういうことに支障があるようなことがあっては絶対にならないと私は思うんですけれども、これまでのいろいろな事業のやり方等を見てきた場合にそういう点が幾つか指摘されている面もありますので、そのあたりは十分注意しなければならないというふうに思っておるわけです。
 今ほどの御意見、また参考にさせていただきたいと思います。
 また、冒頭、山野目先生の方からは、今後の課題めいたものが二点ほどお話があったと思うんですけれども、穐山先生と戎先生に、この法案が一応法的に整備された後、残された課題としては、マンション建てかえの分野において、まだ何が残されているというふうにお考えですか。そのあたり、お二人の先生からお聞かせ願いたいと思います。
穐山参考人 マンションの建てかえにつきましては、先ほどからもお話がございましたように、今回のこの円滑化法と区分所有法がリンクするというものでございます。
 ただし、私どもとしましては、区分所有法上で建てかえ決議を行うに至るまでのシステムにつきましては、これは区分所有者に現在はお任せという形になっております。したがいまして、先ほど私の意見でも申し上げましたが、建てかえの提案をするまでの、準備に至る部分で非常に時間と労力を費やすということでございます。
 現実に、私も承知しております団地の建てかえで、十年以上かけて最終的には合意ができずに建てかえは中止というようなものもございますので、法的には、区分所有法で、今度改正されて、団地建てかえとか建てかえの手続についてある程度整備されましたとしても、また、建替え円滑化法で、事業組合、建替組合というものができることによっての一つのシステムができるわけでございますが、一番頭の、最初の部分での整備がどうしてもやはり必要じゃなかろうかな。この辺をきちんとしないと、本当に建てかえを考えたときに、どうやっていくのかというのが区分所有者としては非常に難しい部分じゃなかろうかというふうに思っております。
戎参考人 ただいま穐山参考人の方から御指摘のあった点はそのとおりだと思います。
 管理組合が建てかえをなかなか進められないのは、当初の部分からの支援策が非常にないということと、あと、管理組合が果たして建てかえというところまで、日常の管理を目的とする管理組合がそこまでやっていいのだろうかというような部分の疑問があるからでございますけれども、そういった点も含めまして各種の制度が整備されることを望みますが、それ以外に、残された課題としては、一つは合意形成までの段階。
 これは、先ほどから議論が出ていますように、専ら区分所有法の方の領域の改正問題を伴うわけですけれども、その合意形成までの段階でできるだけ紛争を防がないといけない。一たん合意形成ができた後またそれがぐらついて、結局のところ建てかえが実行できないというようなことは防がないといけないということですから、まず何よりも、客観的な要件の部分は明確にしていただかなければ、その課題を積み残したままではいけないのではないかな。明確にするというその手法はさまざまですけれども、少なくとも明確なものであることが望まれると思います。
 それと、建てかえ決議に関しては、実は手続的なことは余り区分所有法の中に書かれていないわけです。といいますのは、通常の決議と同じように、何か一回の決議で決めてしまえるような、しかも普通の総会と同じように、議案の送付の期間も全く同じですし、かなり重要な決議、しかも区分所有関係の解消にまで発展していくような重要な決議であるにもかかわらず、そのプロセス面に関しては非常にお寒い限りでございますから、その部分を手続的に整備して、そのことによって十分に区分所有者の中で議論を尽くしてもらうという、そういう制度を設けることによって多数の意見を反映した結果合意形成が調ったということであればより紛争を防ぐ方向に働くでしょうから、そういう手続面での制度も含めて区分所有法の改正が必要だと思います。
 それと、もう一つは団地でございます。先ほど申し上げたように、団地に関する建てかえの規定というのは、非常に区分所有法の中の制度でもおくれているといいますか、ほとんど書かれていない部分でございまして、ここが手続的に整備されることはもちろん、もっと言いますと、団地というのは、公法と私法とが密接にといいますか、一体不可分の形でできているものですから、そういう公法、私法の枠を超えたような形で、団地というものをどういうふうに合理的に規律してその更新などをやっていけるのか、そういう観点から、公法、私法の別をなくしたような形での新しい立法などがもし考えられるのであれば、必要なところまで来ているのではないかなというふうに考えます。
 以上でございます。
一川委員 時間が参りましたので、三人の参考人の皆さん、ありがとうございました。終わります。
久保委員長 瀬古由起子さん。
瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。参考人の皆さん、御苦労さまです。
 では、まず最初に穐山参考人にお伺いしたいと思います。
 全国マンション管理組合連合会の提案では、建物の長寿命化を図るための法整備ということをうたっていらっしゃいます。そういう提案をされているんですけれども、私も、例えば、建てかえという問題ももちろんあるんですけれども、環境面から考えて、そして居住者の負担、特に高齢者が多くなってきているという面を考えますと、その負担を考えますと、どう長寿命化するかという点は、私はもっと力を国も入れるべきじゃないかというふうに思うのですね。その点での法整備の内容、長寿命化のための行政の援助のあり方についてお伺いしたいと思います。
穐山参考人 ただいまの御質問は、私どもの意見、要望書に出ている部分だと思いますが、マンションの、現在出ておりますのは建てかえということでの話でございますが、マンションは、行き着くところ、通常の維持管理をきちんとやっていくということでできるだけ長もちさせるということは、既に現在国土交通省の方もストック重視という面に置きかえてきておりますので、私どもも、できるだけ長らえるマンションというものを考えているわけでございます。
 そして、建てかえとはもう一つ違いまして、再生というものもあっていいんじゃないか。これは、横浜市が住宅政策審議会の中で再生というものを取り上げておりますので、私どもとしましても、マンションには建てかえのほかにもう一つ、できるだけ長命化するためには再生という手法もあってはいいんじゃないか。そうしますと、建てかえのときには建物そのものを除却しなければいけない、非常にごみが出てくるわけでございますので、できるだけそういうものを少なくして、再生という手法でさらにマンションを長らえるという方法もあるのではなかろうか。その上で建てかえというものがあってしかるべきではないか、このように思っている次第でございます。
瀬古委員 もう一点穐山参考人にお伺いしたいと思うのですが、建てかえを望まない、または参加したくてもできない高齢者の方々がいらっしゃいます。こういう方々については、今回の法律で、公共の賃貸住宅への優先入居など居住の安定のための措置という形がとられているわけですけれども、しかし、参考人も言っていらっしゃいましたが、公営住宅の問題も含めて、今もうほとんど満員で入れない状況があったり、それから仮住居も押さえられない、そして地方自治体はもう公営住宅を新たにつくらない、こういう状態があるわけですね。そうすると、もう本当に行き場がないという状態に高齢者などが置かれてまいります。
 特に高齢者の場合は、先ほど参考人も言われたように、環境の変化を余り好まない。長い間ここに住んでいたんだから、人間関係も大事にしていきたい、それが突然どこかへやられた場合には生きる希望も失ってしまう、こういう問題も十分配慮して考えなきゃならないと思うのですね。
 そういう点で、公共の関与という問題があったんですが、例えば、そういうマンションや団地づくりに高齢者のためのいろいろな施設や、デイケアだとかそういうものも含めた住居をつくっていく。マンションだけ、そこの住宅だけというふうに考えないで、その地域全体を、高齢者も含めてそこにずっと住み続けられるようにするにはどうしたらいいか。
 あるところでは、私はずっと分譲マンションで、年いっているからもう維持できないので、できたら賃貸に移りたいという方もいらっしゃるかもしれない、しかし遠くの賃貸じゃなくて、そばにそういう賃貸の公営住宅ができればそこで送りたいという方もいるかもしれない。そういうまちづくり、団地づくり、マンションづくりにもっと行政が関与したあり方が必要じゃないかと思うのですが、その点いかがでしょうか。
穐山参考人 先ほど申し上げましたように、基本的には、やはり区分所有者の主体性、自主性でやっていくことが中心になることであろうと思います。
 ただ、古いマンションほど高齢者が多いということになっていきますので、先ほど赤羽委員からのお話がありましたように、賃貸というものがあってもいいんじゃないかというお話でございましたけれども、団地のようなところは比較的敷地に余裕がございますので、場合によっては、地方公共団体とタイアップして、敷地の一部に老人施設のような、福祉施設のような、そういったものも建てることによって、できるだけ高齢者の住み続けたい場所ということで、しかも合意形成にも役に立ってくるような、そういうものもあってしかるべきかなというふうにも思っておりますので、これは私ども区分所有者の方でも少しそういった意識改革も必要になってくるんじゃなかろうかと思いますが、考えられることではないかと思っております。
瀬古委員 そこで、次に戎参考人にお伺いしたいと思うのですが、戎参考人は、阪神・淡路大震災のマンションの建てかえ問題にもかなり深くかかわっていらっしゃるということをお聞きしました。
 そこで、お聞きしたいのですけれども、今回のこの法律は、区分所有法の合意形成ができた後の建てかえの円滑化もしくは促進、こういう位置づけをされていると思うのです。しかし、建てかえに当たっては、合意形成ができたとしても、権利変換をしていく中でディベロッパーが入ってくる、そうしますと、その過程で、ディベロッパーが途中で倒産をするとかまた賛成者が反対に回るとか、さまざまなトラブルが発生するわけですね。
 それで、阪神・淡路大震災で私もお聞きしたのですけれども、この権利変換の手続の中で、実際にはディベロッパーやゼネコン中心のというか、あるいは言いなりに進んでいってしまう、なかなか居住者の声が届かない、あるときには、もううちは建てかえじゃなくて、何とか修繕、改修でできないかと言っても、その意見が随分無視されたという御意見も幾つか伺いました。権利変換中に事業がとんざする、こういうケースも出てまいります。
 そういう場合には、では、一体だれが責任をとるんだ、ディベロッパーがとるのか、居住者の建替組合がとるのか、また区分所有者一人一人が責任を持たなきゃいかぬのか、その点も、法律が不十分な状況もございます。その点、もっと住民の一人一人の意見が反映できるようなやり方というのは、どういうふうに考えていらっしゃるでしょうか。
戎参考人 御指摘のような例は、阪神・淡路大震災後の建てかえでもたくさん見られました。
 まず一つ、住民の主体性をどうやって確保していくのかという御指摘ですけれども、先ほど申し上げましたけれども、決議に至るまでの合意形成の過程で、反対意見も全体の会議の場でそれが十分に開陳されて、かつそれが検討されるというような仕組み自体をやはりつくる必要があります。
 したがって、先ほど申し上げたように、建てかえ決議というのは、区分所有法の管理組合が行う決議でも特別の決議だというふうに位置づけて、それなりに手続的に厳重な、しかも実質的に議論ができるような手続をそこで設けるということがまず入り口だと思います。そのことによって、一種、事業者からの情報だけで踊らされて、勢いだけで建てかえになだれ込んでいくとか、そういったケースがあるとすれば、そういうようなケースはそのことによって防げるのではないかなと。あわせて、そういうプロセスを整備することによって、建てかえだけではなくて、建物を修繕、維持していく方向の、被災の場面でいえば復興ということもあり得たわけですから、要するに、複数の選択肢を十分に議論できるような、そういった制度を区分所有法の中につくることがまず重要だろうなと思います。
 それから、途中で事業がとんざするというようなケースは確かにありますし、特に、現在の経済状況が経済状況なものですから、途中でゼネコンが会社更生法を申し立てたとかいうケースも間々ありました。そのときに、最終的に、とんざしたら、確かに現在の状況のもとでは何ともできない、いかんともしがたいようなケースが発生することは、これは避けられないですね。
 ですから、そういった現在の経済情勢なども踏まえた上で、自分たちのマンションをどういうふうにしていくのか、あるいは自分たちの経済的な能力からいって、例えば維持の方向がいいのか建てかえがいいのかといったあたりを十分に議論した上で決めていっていただくしかないのではないかなというふうに思っております。
 お答えになったかどうかわかりませんが、以上でございます。
瀬古委員 穐山参考人と山野目参考人にお伺いしたいと思います。
 今回の法律では、民間事業者が組合員として参加できるというふうになっています。今、ディベロッパーの参入の問題をお話ししたのですけれども、例えば資金力もある、ノウハウも持っている、そういう業者が入ってくることによってマンション居住者の意見が反映されないのじゃないかという不安がやはりございます。ディベロッパーの言うままにならないといった歯どめというのはどういうものに求めたらいいのでしょうか、その点、お二人にお伺いしたいと思います。
穐山参考人 一つは、建替組合の組合員の皆さん、旧区分所有者がやはりしっかりとした意識を持ってそういうディベロッパー等をしっかりと抑えていくといいますか、そういうことをしなければいけないんだろうというふうに思います。これにつきましては、一応建替組合の中には、そのほか審査委員制度も入っておりますので、この方々にある程度そういった部分についての抑え役というものも期待していいんじゃなかろうかなというふうに思っております。
 以上です。
山野目参考人 お答え申し上げます。
 ただいま議員御指摘の、民間事業者の能力の活用などが場合によっては適正でない事態を招くのではないか、そのことに対する歯どめはないのかという御心配は、まことにごもっともなことであると思います。
 先ほどの私の意見開陳で、民間事業者の能力の活用等が不適正に経済主義的なコンテクストで受けとめられてはならないと申し上げましたのは、まさにそのような心配を私も共有するものだからであります。
 その上で申し上げますが、歯どめはないのかというお尋ねでございますが、しっかりした歯どめはないと思います。また、歯どめをしっかりつくってしまうことは、裏返して申しますと、マンションの住人たちの自助自立、場合によってはそのこととの関係で適正でない結果をもたらす場合もあるだろうと思います。
 しばらく前の週刊ダイヤモンドにこういう記事が載ったのですけれども、素人で構成されている区分所有者の、区分所有者は普通素人ですけれども、この人たちの集会で、理事会で決定をして大手の管理会社を解任した、その管理が適正でないので、別な、もっと有名ではない管理会社なんですけれども、それを新たに任命したというような出来事が書かれていました。
 今では、大手の管理会社だとかディベロッパーだとかいってあぐらをかいていられる時代ではなくて、区分所有者自身が賢明になってきていますし、また、その賢明になっていく状況を側面からソフトに見守ってあげて助けてあげるという視点も重要なのではないでしょうか。
 加えて、関与するディベロッパーなどとの関係を調整し、取り持つ特定非営利活動法人のようなもののまちづくりに向かっての活動というのも育ってきているところでありまして、そうした幾つかの動きを注目していきたいものであるというふうに私としては考えております。
 以上でございます。
瀬古委員 どうもありがとうございました。
久保委員長 原陽子さん。
原委員 社会民主党の原陽子です。
 きょうは貴重なお話をどうもありがとうございます。私の質問は、たくさん重なるところもあるかと思いますが、よろしくお願いします。
 まず最初に、瀬古さんと全く同じ質問なのですが、戎さんにお伺いをさせていただきたいと思います。
 今回、組合に民間事業者が入ることのメリット、デメリット、できれば住民の立場に立ったメリット、デメリットは何かということを教えてください。
戎参考人 まず、メリットから申し上げます。
 先ほど申し上げたように、建てかえというようなことになりますと、一般の区分所有者たちだけの経験だとか知識だとかではいかんともしがたい面がございます。そういう専門的な部分の知識なりを組合の決議に反映させるというような観点からいたしますと、そういう専門の事業者が組合員として参加できるという仕組みは、むしろ、情報をできるだけ出すという意味では歓迎すべきものだというふうに思います。
 それと、従前もそういう民間の事業者が関与しなければ、半公的な公社みたいなところもございますが、そういったところが関与しなければ、実はマンションの建てかえというのはできないわけで、これは新法ができようができまいが、依然としてそうなわけです。つまり住民さんだけでやれるかというと、そうはならないわけですね。
 従前は、組合と事業者とが事業委託契約のようなものを結んで、契約ベースでやってきたわけですが、今回の新法になりますと、それが、法人格を持った組合があって、その参加組合員という立場で民間事業者がかかわれるということですから、より積極的に民間事業者の方がマンション建てかえというものにかかわりやすい環境になりますから、そういった意味で、建てかえを真に希望している区分所有者にとっては、そういう専門家の関与が見込める、より見込めるという意味ではメリットだと思います。
 他方、デメリットでございますけれども、先ほど来御指摘のありましたように、仮に、区分所有者の側に、自分たちこそが建てかえの主体なのだというような意識がなければ、その参加組合員を通じて入ってくる情報のみがそのまま合意形成の材料となってしまう、そこでやはり問題の発生するおそれは確かにございます。そういった意味では、同じ組合員という立場で事業者がかかわってくるということによって、いわば組合内での発言力がかなり大きいというふうに考えられますから、そういった意味で、誘導というようなことが考えられないではないということが、デメリットとしてはデメリットだろうなと思います。
 以上です。
原委員 これもまたまた同じ質問なのですが、建てかえ決議の要件のところで、先ほど、甲案と乙案があるという話がありました。
 私は、端的にお三方にお聞きをしたいと思います。
 国土交通省内は、一律に三十年、四十年経過したときという甲案の方を希望しているというような声を聞いているのですが、参考人の方は、甲案と乙案はどちらがいいとお思いになられるか、教えてください。
穐山参考人 築後年数三十年ないし四十年という甲案につきましては、客観的基準としては、ちょっと私どもとしては承認しかねるというところでございまして、先ほど申し上げましたように、私どもの方は五〇%ルールというものを言っておるわけでございます。
 マンションの寿命というのはそのようなものじゃないはずでございます。もう少し長いはずでございますので、これは、三十年程度たてば、あるいは四十年程度たてば建てかえという一つの思考にいってもいいのじゃないかという程度ならまだよろしいのですが、むしろそれによって、社会的評価として、マンションというのは三十年もって終わりかというような価値の判断に使われるようなことになると、私どもとしてはちょっと困るな、まずいのじゃないかなというふうに思っております。本来ですと、やはり五、六十年以上はもつはずでございますし、維持管理をしっかりやっていけば相当もっていくはずでございます。
 そういった、一つの客観的基準として法務省がそういうものを出して、今、パブリックコメントをしているということでございますが、恐らく、相当の反対の意見が出てくるのじゃなかろうかと思いますけれども、私どもも、連合会としましては反対の方向にあるということでございます。
 以上です。
戎参考人 私は、これまで申し上げました建てかえ決議の客観的要件の明確化ということは非常に大切であるというように考えておりますから、そのような見地からいたしますと、三十年ないし四十年ということのみをもって客観的要件とすることもあながち不当ではないというふうに考えております。十分に考えられることではないかなというふうに思っております。
 確かに、穐山参考人のおっしゃるように、三十年、四十年たったらマンションはもう建てかえなければいけないんだというふうにそれを読むとすれば、それは問題でございますけれども、あくまで、一定期間は建てかえが禁止されているという、これは建てかえ禁止期間というふうに考えられます。その後は、ただし書きを入れるか入れないかは、先ほど議論はありましたけれども、その後は区分所有者が、建てかえの方向か、三十年、四十年たってもなお維持していく方向かというのをそのときに再度検討できるというような仕組みが保証されているわけですから、そういうふうにこの三十年ないし四十年ということを読みかえれば、あながち不当ではなかろう。
 しかも年月の経過ということだけですから、従前のように、老朽とは何かとか、費用が過分でという意味は何なのかといったような、そういった解釈の疑義を残さない、明瞭な、時の経過ということになるわけですから、そのことによって、要らぬ紛争も避けられようかなと思います。
 ただし、先ほど申し上げたように、耐用年数とは全然関係がございませんから、そういった点はあくまで区分所有者の誤解を招かないような、そういった別の施策が必要かなとは思いますけれども、基本的には、三十年ないし四十年ということを客観的要件とするという方向に賛成でございます。
 以上です。
山野目参考人 お答え申し上げます。
 甲案、乙案それぞれについて、私が留意点として重要であるだろうなというふうに考えておりますところを申し上げますと、まず甲案の方については、確かに、三十年、四十年という数字自体が妥当であるかという議論があると思います。これは、現在法務省民事局がしている意見照会で出てくる意見などを見た上で、数字としてなお詰めていくべきであるだろうと思いますし、あの中間試案自体も、三十年、四十年以外の年数の数字を選ぶことがあり得ないとしている趣旨ではないものと理解をしております。
 それからもう一つ、こちらの方が大きな問題だと思いますが、あのようにして年数の数字を掲げるということは大きな誤解を招くおそれがある部分があって、それが誤解なのであるということを適切に趣旨説明をしていく必要があるだろうと思います。仮に三十年と入れたときに、法律が三十年たったマンションはもうもたないのだと寿命宣告をしている趣旨なのだというふうに理解をされたのでは大変に困るわけでございます。
 甲案の掲げている趣旨は、三十年とか四十年を経過した段階であれば、多数決による建てかえ決議の議論を始める前提条件が整ったということを申しているにとどまるものでありまして、それを超えるものでもなければ、また、それ未満のものでもないというところを御理解いただきたいと考えるわけでございます。
 それから乙案の方でありますけれども、確かに、案文が、法律の専門でない方から見てわかりにくい部分があるかもしれません。しかし、先ほどから私の強調させていただいております議論のプロセスを大切にしようという見地からいえば、乙案の発想は十分にあり得るものではないのかなというふうに思っております。乙案の本文の部分は、何十年経過したという客観的な事実であって、ただし書きの部分は修繕積立金のことに関する区分所有者の団体の意思決定の手続の問題でありまして、本文とただし書きがやや異質なことの組み合わせになっておりますために読みにくい部分がございますし、また、これをこのまま法律の条文として案文化することが法制執務上適当であるかという問題はあるかもしれません。しかしながら、発想の骨格は必ずしも悪くないのではないかなというように私は認識しております。
 お尋ねでございますので、最後に一点をつけ加えさせていただきたいと思いますが、このように三十年、四十年、あるいは加えて乙案ただし書きというような議論が客観要件の内容をめぐって続いております。このような客観要件の明確化の議論をしていただくことは、私は大変に適切だろうというふうに思います。
 政府が先般閣議決定をいたしました規制改革推進三カ年計画におきましては、そのような客観要件をすべて撤廃して多数決だけでマンションの建てかえを決議することができるような道もあり得るのではないかという示唆を含んだ部分がありますけれども、私はこれは適切ではないというふうに考えます。政府としてはこの段は慎重に対処していただきたいものであるということを、この機会をかりまして切望させていただきます。
 以上でございます。
原委員 それでは、戎参考人にお聞きをしたいと思います。
 区分所有法の中での建てかえ決議の要件というものは、合意形成に必要な要件ということになってくると思います。そこで、弱者や高齢者について考えた場合、弁護士のお立場から、どのようなことがこの建てかえ決議の中の要件に盛り込まれていくべきだとお考えになるか、教えてください。
戎参考人 恐らく、建てかえに参加できない、いわば取り残されて転出を余儀なくされる方にどのように配慮をするかという御質問だという前提でお答えをします。
 一つは、現行法上、確かに、建てかえ決議に賛成しなければ、催告の後、売り渡し請求権という形で、半ばというか、もう強制的に区分所有権なり敷地利用権を奪われてしまうわけですね。その理由のいかんを問わず、手続的にはそういうふうになってしまいます。したがいまして、建てかえ決議に至るまでの段階で、できるだけ、それぞれの問題を抱えた大勢の方々がそれぞれの問題を克服しながら、みんなで合意できる建てかえ決議というのは何なのか、建てかえ計画というのは何なのかというのをまず検討することが最初でありまして、そういう建てかえ計画で、計画自身で弱者なりを救済できるという部分はかなりございます。例えば、小さい部屋だったら参加できるということであれば、何とか建築計画の中で、そういった方々のために一部小さい部屋を用意できないかとかいうような形で、計画自身で図っていくのが普通です。
 どうしても合意を得られずに反対に回られたという方に関しては、現在のところは時価による売り渡し請求という形で、時価をお支払いしてという形しかありませんけれども、それでも今回の立法ができますれば、その後の居住のことについても、公共なりがある程度関与して次の住居を確保するとかいうような一定の施策が盛り込まれていますので、まずは計画の中で救って、それでもだめな場合にはそういった部分で何とか救済を図っていくということしかないのではないかなというふうに思います。
 以上です。
原委員 ありがとうございました。終わります。
久保委員長 西川太一郎君。
西川(太)委員 穐山先生にまずお伺いをさせていただきたいと存じますが、先ほど、十年後には建設三十年を経過したマンションが百万戸というお話、そして、それは必ずしも建物の寿命ではなくて、インフラの陳腐化、または使い勝手の悪さといいますか、狭いでありますとか、そういうような御指摘がございました。
 穐山さんが都庁で御活躍のころ、私はここにおいでの高橋議長のもとで都会議員でありまして、そのころから、マンションは早く建てかえのためのきちっとした体制整備をするべきだということを年来の主張として私は申してまいりました。
 と申しますのは、当時、マンションというのは、若い方々にとっては、ある種のあこがれの響き、中南米における大邸宅という本来の意味とは全く違うけれども、しかし、そういうところに住めるのは大変モダンな結構なことだというような雰囲気がございまして、随分急ピッチに、狭い、西洋長屋という悪口を言う人もいましたけれども、そんなものができてきて、私は、いずれこれは社会問題になるんじゃないか、こういうふうに何回も指摘をしてきた経験があります。
 前置きはさておくとして、先生のようにそういう実務にたけておられる先駆者に伺うのでございますけれども、具体的に、例えば、一度に建てかえの合意をとるというのは非常に難しいという、先ほどから参考人の先生方のお話がございました。どんな手順や手続で合意をとって建てかえを行っていくのが一番現実的なのかということをもう一度お聞かせいただけないか、こう思います。
穐山参考人 まず、建てかえというものを区分所有者が検討するということになりますと、先ほど戎参考人の方からのお話もございましたように、建てかえは管理組合の業務ではございません。管理組合は共用部分の維持管理というのが業務でございますので、これがないために、建てかえを検討するのはどこがやるんだという、そこからまず始まるわけでございます。
 したがいまして、先ほども申し上げましたように、一番最初の段階でのシステムの整備をして、きちんと建てかえというものの検討ができるようにしていただきたいというお話を申し上げたわけでございますが、この段階で、建てかえのための調査費だとか、あるいはコンサルタントだとか、こういった費用も問題になってくるわけでして、通常は、規約を改正いたしまして、建てかえ検討は管理組合の仕事にする、そして、かかる費用については修繕積立金の中から一部使う、こういうような形をとりましてやっていくわけでございます。
 そして、建てかえというものに入っていくわけでございますが、どのように建てかえというものをやるかといいますと、区分所有法上、一応、建てかえる建物の形というものを見せなければいけなくなっておりますので、そういったものをきちんと整理していきまして、その上で区分所有者に情報公開していく。
 この部分が非常に大切でございまして、どのようにしていって、一体どの程度かかるものなのか。そして、先ほどもございましたが、合意形成のために非常に問題になってまいります居住者の考え方、住まい方、あるいは年齢の問題とか、いろいろございまして、なかなか合意が難しいものですから、こういった合意をきちんとしていくというためにはどうしても支援措置というものが必要になってくるということでございますので、そういった支援をどのようにしていくか、これがまた管理組合にとっては手だてとしてなかなかないものでございますので、こういった面での支援を外部からいろいろとお願いしてやっていかざるを得ないだろうというふうに思っております。
 その上で、現在の区分所有法の改正の中でも、総会の決議には、今度建てかえについては招集期間一カ月という形に考えられているようでございますので、こういった中でできるだけ皆さんの合意を得られる努力をしていくということが必要じゃなかろうかな、かように思っています。
 以上でございます。
西川(太)委員 戎先生にお伺いをしたいと思いますが、阪神大震災、先生その復興に当たられて、本当に大変な御活躍をなさって、御苦労さまでございました。私どもも発災の直後に国会議員団として現地に参りまして、特に夜中にリュックをしょって町の中を歩きますと、東灘区なんかはごろごろ家が根っこから転がっている。まことにおかしな表現でありますが、吐き気を催すような恐ろしさを感じたわけであります。
 そしてマンションも、むしろ小型のマンションが傾いて、ちょっと地名は失念してしまいましたけれども、液状化現象があったすごい巨大なマンションは、下の土壌はどこかへ飛んでいったけれども建物自体はびくともしないであれだとか、それから恐ろしかったのは、ドアをあけてマンションの上から逃げようとした人が、ドアをあけたら廊下そのものが下へ落ちていて、そのまま落下して亡くなったというようなケースも伺ったり、見てきて、マンションというものはしっかりつくらなきゃいけないな、こういう感じを実感として持ったんでありますけれども、これの建てかえに当たられて、先生、大変御苦労があったんだろうと想像いたします。
 これは山野目先生の陳述の御意見の中にもあったわけでございますけれども、今回、この円滑化の問題と、パブリックコメント募集中の区分所有法改正案の問題が相まって実効を上げていくと。先生の御意見でも、これだけではだめだ、また区分所有法だけでもだめだ、別の立法が必要だ、こういうお話があったわけでございます。したがいまして、もう十分御意見を伺っているのにお尋ねして恐縮でございますけれども、これらの二つの法案によって、先ほど先生が列挙せられました幾つかのマンションの建てかえについての問題はかなり解消されると改めて理解をしてよろしいんでしょうか。
戎参考人 先ほど私の方の意見を述べさせていただきましたとおり、幾つかの問題点があるわけですけれども、それらを全部この現在御審議中の法案で解決することはできません。
 あくまで、先ほど言いましたように、建てかえの事業についての主体を明確にして、その流れについて法的な枠組みを提供する、そのことによって多数の権利関係をスムーズに処理できるということの部分と、あと、それに対しての公共の関与ということが現在御審議されている法律案の内容ですが、その部分については明らかに、もしこの法律が成立すれば、自分で言うのもなんですけれども、あれほど震災時にいろいろ苦労を重ねてきた部分、これはかなりの程度といいますか、ほとんど克服できるというふうに考えます。
 ただし、あくまでそれは問題のうちの一部でございまして、先ほどの、合意形成に至るまでの過程においてさまざま発生した問題点とか、あるいは経済的な問題点、あるいは公法、都市計画との衝突をどのように処理していくのかとかいった部分については、この法律案をもってそれの解決策に充てるということにはなりませんから、それは現在の区分所有法の改正問題その他のところで新たな施策かあるいは法制化をしていただかなければいけませんけれども、この法律ができれば、間違いなく現状よりは建てかえは進歩することは確かです。
西川(太)委員 時間もございませんが、最後に山野目先生にお尋ねをしたいんでございますけれども、私は、この法案審査の過程でも再々伺ったんですが、マンション建てかえに当たっての抵当権の取り扱いの問題でありますけれども、現行ではどういう問題があり、またこの法案によってどの程度この問題が対応可能になるかという点を御教示いただければありがたい、こう思います。
山野目参考人 お答え申し上げます。
 松野議員のお尋ねに対してお答え申し上げたことと重なる部分があるかもしれませんけれども、戎参考人が神戸の震災の際に実務上まさに御苦労なさったところでございますが、抵当権がついていますと幾つかの実務上の問題が生じます。法律的に問題があることに加えて、しばしばオーバーローンでありますので、そのマンションの値段をもってしては抵当権の担保する債権を完済することができないということが珍しくないわけでございます。建てかえ事業の執行主体、事業者などが売り渡し請求をして区分所有権を取得しますが、これに抵当権の負担がついているということになると困難が生ずるということになります。
 民法に、先ほどちょっと難しい漢字でというふうに申し上げましたけれども、滌除という制度がございまして、この抵当権を消すための制度が設けられてございます。神戸の震災の際には、この制度も用いられました。ただしかし、この制度にはそれ自体として、現在の仕組みの立ち上げ方として幾つか細かな問題がある部分がございます。加えまして、この滌除というのは、今までどちらかというと必ずしもよからぬ方々が競売を妨害するための手段として用いられてきたような経緯もございます。
 戎参考人は、神戸の地方裁判所に行って滌除をしたいんですけどというふうに申し立て書面を出しますと、最初、全然経緯を知らないと、何だ、これは執行妨害ではないのかというふうな誤解を受けそうになるところを、震災復興の経緯を一生懸命御説明なさって、御苦労の上この仕事を果たされたというふうな経緯もございました。
 申し上げましたように、この問題は現在法制審議会の別の部会で審議の俎上にのっておりますので、そちらの動きもにらみながら今後の法制の整備がなされていくべきものと考えます。しかし、当面、今回の立法においては、申し上げておりますような権利変換の仕組みの中で、理屈としては、制度としては一応の対処が講じられたところでございますので、後はその運用の適切を見守っていくということが課題として浮かび上がってくるものと認識しております。
 以上でございます。
西川(太)委員 三先生、本当にありがとうございました。
 余分なことを申して恐縮でありますけれども、私、きょうずっと先生方のお話を伺い、途中ちょっと所用で抜けましたが、同僚、先輩議員のお尋ねを拝聴しておりまして、こういう委員会こそテレビ中継をして多くの国民の皆さんに聞いていただきたいと。
 私ども選挙区へ帰りますと、国会はスキャンダルばっかりやって、何をやっているのか、まじめに議論しているのか、こう言われるんですが、新聞は一行も書いてくれない、テレビは一分も放送してくれないから、それは知らない方はやむを得ないんですよね。だけれども、こういうふうにまじめに党派を超えてやっているということは、私はもっと多くの人にこの議事録なんか読んでもらいたいな、こう思うわけであります。自分の部分を除いてきょうは大変よかった、こう思っております。
 どうもありがとうございました。
久保委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、参考人の方々に一言申し上げます。
 本日は、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)
 次回は、明十七日水曜日午後三時二十分理事会、午後三時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時二十九分散会


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