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第19号 平成14年6月7日(金曜日)

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平成十四年六月七日(金曜日)
    午前九時二分開議
 出席委員
   委員長 久保 哲司君
   理事 木村 隆秀君 理事 実川 幸夫君
   理事 橘 康太郎君 理事 林  幹雄君
   理事 古賀 一成君 理事 細川 律夫君
   理事 赤羽 一嘉君 理事 一川 保夫君
      赤城 徳彦君    小里 貞利君
      倉田 雅年君    小島 敏男君
      菅  義偉君    高木  毅君
      高橋 一郎君    谷田 武彦君
      中馬 弘毅君    中本 太衛君
      林 省之介君    菱田 嘉明君
      福井  照君    二田 孝治君
      堀之内久男君    松野 博一君
      松宮  勲君    松本 和那君
      吉川 貴盛君    渡辺 博道君
      阿久津幸彦君    井上 和雄君
      大谷 信盛君    今田 保典君
      樽床 伸二君    津川 祥吾君
      永井 英慈君    伴野  豊君
      平岡 秀夫君    細野 豪志君
      前原 誠司君    高木 陽介君
      山岡 賢次君    大幡 基夫君
      瀬古由起子君    原  陽子君
      日森 文尋君    西川太一郎君
    …………………………………
   国土交通大臣       扇  千景君
   国土交通副大臣      月原 茂皓君
   国土交通大臣政務官    菅  義偉君
   国土交通大臣政務官    高木 陽介君
   政府参考人
   (国土交通省総合政策局長
   )            岩村  敬君
   政府参考人
   (国土交通省鉄道局長)  石川 裕己君
   政府参考人
   (国土交通省自動車交通局
   長)           洞   駿君
   政府参考人
   (国土交通省航空局長)  深谷 憲一君
   政府参考人
   (国土交通省政策統括官) 丸山  博君
   参考人
   (日本貨物鉄道株式会社代
   表取締役社長)      伊藤 直彦君
   参考人
   (全日本交通運輸産業労働
   組合協議会事務局長)   中西 光彦君
   参考人
   (流通経済大学法学部教授
   )            野尻 俊明君
   国土交通委員会専門員   福田 秀文君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月七日
 辞任         補欠選任
  田中 和徳君     渡辺 博道君
  高木  毅君     林 省之介君
  松岡 利勝君     小島 敏男君
  津川 祥吾君     細野 豪志君
  保坂 展人君     日森 文尋君
  二階 俊博君     西川太一郎君
同日
 辞任         補欠選任
  小島 敏男君     松岡 利勝君
  林 省之介君     高木  毅君
  渡辺 博道君     田中 和徳君
  細野 豪志君     津川 祥吾君
  日森 文尋君     保坂 展人君
  西川太一郎君     二階 俊博君
    ―――――――――――――
六月七日
 公営住宅に関する請願(原陽子君紹介)(第四一一一号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第四三〇二号)
 同(原陽子君紹介)(第四三〇三号)
 気象事業の整備拡充に関する請願(前田雄吉君紹介)(第四三〇一号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 鉄道事業法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四五号)(参議院送付)
 建築基準法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五八号)(参議院送付)
 高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五九号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――
久保委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、参議院送付、鉄道事業法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案審査のため、参考人として、日本貨物鉄道株式会社代表取締役社長伊藤直彦君、全日本交通運輸産業労働組合協議会事務局長中西光彦君及び流通経済大学法学部教授野尻俊明君、以上三名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いをいたします。
 議事の順序でございますが、伊藤参考人、中西参考人、野尻参考人の順で、御意見をそれぞれ十分程度お述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、御了承願います。
 なお、参考人及び質疑者におかれましては、御発言の際は着席のままで結構でございます。
 それでは、伊藤参考人にお願いいたします。
伊藤参考人 JR貨物社長の伊藤でございます。
 諸先生方におかれましては、平素より鉄道貨物輸送につきまして、大変深い御理解と御支援を賜りまして、厚く御礼申し上げます。また、本日、鉄道事業法改正の御審議に当たりまして、このような意見陳述の場を設けていただき、まことにありがとうございます。
 それでは、座らせていただきます。
 今回の法案について意見を申し上げる前に、我が国の貨物鉄道の現状及びJR貨物の経営状況について一言触れたいと思います。
 国鉄改革から早いもので十五年の歳月が経過いたしました。先生方御案内のとおり、十五年前に六つの旅客会社と一つの貨物会社ができたわけでございますが、貨物会社は、鉄道貨物輸送はいわゆる輸送距離が長いということで、複数の旅客会社にまたがって輸送されるという側面から、いわゆる分割になじまないという観点で、全国一社制がとられたわけでございます。また、国鉄時代、貨物部門は大変大きな赤字を出していたこともございまして、経営責任を明確化するという観点から客貨の分離があったということでございます。
 鉄道の業務量を一般にあらわす場合に列車キロという単位が使われておりますけれども、我が国の現状におきまして、これが旅客が八、貨物が二という形になっております。こうした状況を踏まえまして、JR貨物は、第二種事業者、つまり日本における国鉄改革は、線路は旅客会社に保有させ、貨物会社は第二種鉄道事業者としてその旅客会社の線路を使用して運行するという形をとりました。それに際しまして、線路使用料を支払うという概念が発生したわけでございます。それも、先ほど申し上げましたように、八対二という形で、貨物が主体でございませんものですから、貨物列車が走ることによって追加的に発生する費用を負担すればよい、こういうルールができてございます。
 クイズのような話で恐縮でございますけれども、貨物列車につきましては一般の方々は余り見る機会もございませんし、また御利用される機会もございませんものですから、時々、どのくらいの列車が走っているかということを聞かれることがございます。実際には、毎日約二十四万キロの列車が動いております。毎日二十四万キロといいましてもおわかりにくいかもしれませんけれども、地球を一周しますと約四万キロでございますから、約六周、毎日基本的にはダイヤどおり列車が動いている、こういうことになるわけでございます。
 この中でも、最も長い列車は北海道から九州、福岡から札幌、約二千百三十キロでございますが、三十八時間かけて日本を縦断して列車が動いております。これは大変御利用率の高い列車でございますけれども、これは北海道と九州の農産物のとれるシーズンが違うということであります。それから、当然とれるものも違うという意味で、北海道―九州間の二千百三十キロを毎日三十八時間かけて、大変御利用の高い列車も走っております。
 その次に、よく鉄道のシェアが四%、トンキロベースでございますけれども、全国で六十数億トンの荷物の動いている中で、鉄道のシェアが四%だ、小さいじゃないかというお話がございます。確かに、数字全体でどんぶり勘定で見ますとそのような数字になりますけれども、鉄道特性を発揮している分野では大変大きな強み、または役割を担っております。
 一例を申し上げますけれども、先ほども申し上げました北海道でありますけれども、タマネギやジャガイモが日本でも生産の一番高いところでありますけれども、そのタマネギやジャガイモなどはほとんど鉄道で輸送しております。
 最近大変伸びております宅配便等でございますけれども、この種の荷物も、北海道から東京、または九州から東京、長距離になりますと、必ずしも自分の会社のトラックで走っているわけではなくて、鉄道を利用されて動いておられます。どういうことかと申しますと、例えば北海道でゴルフバッグをお預けになりますと、それが東京に、自宅に翌日届くわけでございますけれども、その間、トラック会社が専用の私有コンテナ、大きなコンテナをお持ちになり、それに荷物を混載で載っけまして東京の隅田川駅に着き、そこからトラックで配送する、こういう形で、我々は専門的に複合一貫輸送と言っておりますけれども、そういうような利用形態も大変最近多くなっております。
 それから、内陸の物資輸送で、例えば長野県で消費される石油の約七〇%というのは鉄道貨物輸送で行われております。こういう現実もございます。
 その次に、JR貨物の経営のことについてでございますけれども、今から十五年前、国鉄貨物、大変大きな赤字を背負っておったこともございまして、貨物会社が独立して、本当に経営収支は大丈夫であろうかという御心配を各般からいただいたことを覚えております。今から思えばバブル景気ということになりましょうが、おかげさまで、開業当初から六年間は経常黒字が続きました。しかし、バブル崩壊とともに日本経済が長期低迷状況に入りますと、また、阪神・淡路大震災のような大きな自然災害もございましたけれども、六年間の黒字の後は、いわゆる収入関係に大変厳しい状況があらわれまして、八期連続の経常赤字となりました。
 もちろん、この間、我々は血のにじむような努力で経営改善に努めてまいりました。一、二の例を申し上げますけれども、国鉄からJR貨物になりましたときには、一万二千人の職員を承継いたしました。この方々のほとんどが鉄道事業に従事していたわけであります。それが、今日、六千人台の方々で鉄道事業を運営している実態にございます。また、厳しい状況を踏まえて、我々は、物流業界に目線を置き、ベアとか賞与等については厳しく抑制してまいりました。
 こうしたこともございまして、平成十三年度、昨年でございますが、わずかでございますけれども、九期ぶりに二億八千万の経常利益を計上することができました。これを契機に、気持ちを新たにして、今年度から新しい中期経営計画を作成いたしました。社内的にはニューチャレンジ21という計画でございますが、この計画の中において、お客様からこれまで以上に選択される商品づくり、いい列車をつくりまして、またその結果、安定的な黒字体質の定着化を図り、国鉄改革の最終目標である完全民営化への道筋をつけることを目指してまいりたいと考えております。
 さて、今回の法案の規制緩和につきましては、当社としてもより機動的な事業運営が可能となるチャンスと認識しており、このメリットを十分に生かしてまいりたいと考えております。
 まず、参入規制の緩和についてでございますけれども、これにつきましては、鉄道事業に携わっている立場からあえて申し上げるならば、貨物鉄道事業は、たくさんの鉄道車両と荷役設備、駅施設等を保有するいわゆる装置産業でございます。そういう点から考えますと、そう簡単には参入できるものではないと思いますけれども、今回の改正を契機として貨物鉄道事業の分野が活性化されることになれば、我々自身にとってもよい刺激であると受けとめておる次第でございます。
 ただ、規制緩和に当たりまして、JR貨物の立場からぜひお願いしたいことがございます。
 現在、我々は、完全民営化という国鉄改革の完遂を目指している途上にございます。言うまでもなく、国鉄改革時にいろいろな基本フレームが定められました。これらのフレームを、引き続ききちんと維持していただくことでございます。
 次に、運賃・料金規制の上限認可制が廃止されるわけでございますけれども、この運賃・料金問題につきましては、この物流業界においては、現在でも市場競争原理の中で適切な価格決定がなされております。今後とも、我々も、お客様のニーズを踏まえ弾力的に対応してまいりたい、こういうふうに考えております。
 せっかくの機会ですので、先生方に一つ二つお願いを申し上げたいと思います。
 御案内のとおり、鉄道輸送は、今はやりの言葉で言えば、二酸化炭素の問題になりますけれども、CO2の排出量がトラックの約八分の一となっており、昨今の地球温暖化等の環境問題が深刻化する中、我々鉄道貨物輸送の果たすべき役割はますます大きなものとなっております。政府におかれても、新総合物流施策大綱において、二〇一〇年までの船舶または鉄道へのモーダルシフトの数値目標も定められております。当社といたしましても、この要請にこたえることができるように、一生懸命頑張ってまいりたいと思います。
 現在、JR貨物には、コンテナを取り扱っている駅が百四十六ございます。ただ、その駅施設が、もちろんすべてではございませんけれども、大変使い勝手が悪く、近代化を早急に推進していかなければならない状況にございます。
 この種のインフラ整備につきましては、今から十五年前、国鉄改革のときに、基盤整備事業と称して、十三の駅が新しく生まれ変わりました。駅が新しく生まれ変わるということは、効率のよい駅ができるということでございまして、土地の面積も減ります。また、そこで働く社員の数も減ります。そういうような形の駅が近代化された駅というふうに我々は言っております。
 また、最近の例としては、新聞にも出ておりましたように、国と北九州市から事業費の五割の助成をいただきまして、北九州貨物ターミナルという駅が完成いたしまして、大変大きな効果を発揮しているところでございます。
 今後とも、全国の枢要なコンテナ貨物駅の近代化を進めていく必要があるわけでございますが、JR貨物の力だけでは極めて困難なものでございます。鉄道貨物の発展に資する公共的な施設整備等につきましては、引き続き公的な御支援をぜひお願い申し上げる次第でございます。貨物鉄道施設の近代化を進め、JR貨物が新しい時代の鉄道貨物輸送を担える形に脱皮していくことこそ、私の悲願でございます。
 全国幹線輸送ネットワークにより貨物鉄道事業を行う当社は、安定的な経営基盤を確立すべく、今後とも、自主自立の精神で経営改善に努めてまいる所存でございますので、引き続き先生方の御指導、御支援を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。
 以上をもちまして、私の意見陳述とさせていただきます。まことにありがとうございました。(拍手)
久保委員長 ありがとうございました。
 次に、中西参考人にお願いをいたします。
中西参考人 御紹介いただきました交運労協の中西です。
 私どもの団体は、陸海空の交通運輸の労働者七十三万人で構成している組織です。国土交通委員会の先生方の皆さんには、常日ごろから私たちの政策に対して御理解、御協力いただき、大変ありがとうございます。
 座って述べさせてもらいます。
 最初に、私たちの団体が非常に気にしております規制緩和全般について、少し話をさせていただこうと思っています。
 御存じのとおり、ことしの二月一日で、すべての交通輸送機関の需給調整規制が廃止されました。今、私どもが見ているところによりますと、規制緩和さえすればいいということで、規制緩和が目的化してしまっているような現象がいろいろなところで見られます。あくまで規制緩和は手段であって、目的は、安全で安心して利用できる輸送サービスを安定的に供給することだと思います。このことを忘れないように私どもも取り組むし、また先生方も十分おわかりだと思いますが、よろしくお願いしたいと思います。
 そこで、今までの旧運輸省、国土交通省の施策としては、事業者行政であったり、それから事前規制であった。今回この需給調整規制が廃止になって消費者行政に変わり、また、事後規制、事後チェック体制というふうなことを言われていますが、そういうことになった。その切りかえが、もうすべて終わったにもかかわらず、私どもとしてはスムーズにいっていない、おくれているということではないかなと思います。
 多民族国家のアメリカのように、あの量とあの体制をつくれとは言いませんが、やはり行政コストのかからない事前規制にしておって、これが事後規制にしたんですから、やはり少し、幾ら小さい政府ということであっても、事後規制する要員をつくっていただきたいというふうに思っております。この事後規制というのは初めてのことで、なかなか難しいところがあるかもしれませんが、ここはよろしくお願いしたいと思います。
 個別の法案についてなんですが、鉄道事業法については、需給調整規制の法案の論議のときに、貨物鉄道がある程度完全民営化の見通しができるまでは需給調整は外しませんよというふうな約束であったんですが、このところの物流における環境が大きく変化しておるところから、この物流関連三法を新しい環境に適合する方向に持ってくることに対しては仕方がないかなというふうな感じがしております。
 そういっても、先ほど伊藤さんからもありましたとおり、鉄道というのを国家戦略として、もう少し完全民営化できるようになるまで、国としてしっかり補助して育てていっていただきたいなというふうな感じがします。
 それからまた、どこに活路を見出すのかというふうな話があります。先ほども話がありましたとおり、旅客鉄道の線路を借りてやっていて、売れる時間にダイヤが引けないというふうな状況では、幾ら頑張れとしりをたたいてもどうにもならないんではないかなと思います。そういうことから、このところ、一連のリサイクル法がどんどん施行されて、静脈物流ということが活性化を呈しておりますから、こういうところに対して優先的に実施するというのも一つの方法ではないかなと思います。
 鉄道貨物の最後のお願いは、九年ぶりに黒字になったというふうなお話ですが、これは縮小均衡の黒字であって、やはり二十一世紀の鉄道の夢を見るというふうなことでは、今のような状況ではいけないんではないかなと思います。
 次に、貨物取扱事業法なんですが、この法律はなかなかわかりにくくて、僕らのように毎日それに接していてもなかなかわからぬ法律です。そういうところで、初めて運輸省の管轄の中で横断的になった事業法ではないかなと思います。そういうところから、今回こういうふうな改正は、新しい物流ニーズに沿った改正というふうに理解をしております。
 また、その中でも、とかく問題があったトラックの実運送事業者による運送利用事業が貨物自動車運送事業法の中に一体化して、すべてのことが取り扱われるということに対しては評価をしますし、また、港湾運送事業に影響のない形で、第二種利用運送事業の中に海運を入れるということについても、私どもは賛成をいたしたいと思います。
 これによって、一部ではモーダルシフトが進むというふうなお話がありますが、これだけでは僕はモーダルシフトは進まない、やはり今モーダルシフトが進まない最大の原因はコストの問題だと思いますので、そこはまたよろしく御議論願いたいと思います。
 最後に、貨物自動車運送事業法なんですが、これは大きな問題を抱えております。
 平成二年に今の物流二法が施行されました。私どもとしては、経済規制はしっかり守ろうということで努力をしました。行政の方も、恐らく守らすように努力していただいたんだと思います。きょうは事業者はいませんが、事業者も守るように努力したんだと思います。
 しかし、自由経済の市場の中で、この経済規制を守らすということは本当に難しい話です。特に、この区間は百三十円ですよ、百七十円ですよと決まっておるお客様に対しては比較的守りやすいんですが、事業者対事業者、それから、強大な力を持っている荷主と私どものような中小、弱小の業界の中ではなかなか守ることができません。認可運賃も守れなかった。届け出制運賃も守れなかった。
 そういう中で、次は何をしていくかということについて、これは、今問題になっている安全な輸送をどうしていくか、それからまた、環境にも優しい輸送をどういうふうにつくり上げていくかというふうなことに新たな規制をかけるしかないんではないかなというふうなことから、お手元にお配りしました、三ページの中ほどに、新たな有効な規制の基本的考え方というふうなことをお示ししました。安全規制、公平競争条件、情報公開等の規制の内容を明確化して、上記の規制が完全に守られているか、漏れがないように、公平公正に、透明性を持って点検して、点検の結果を審査して、悪いものについては悪い、いいものについてはいいと。
 ここで今までのような抜けがあって、処分が緩やかということではなくて、厳罰に処す。それから僕は、最大の効果があるのは結果の公表だと、公表をして、悪いものには出ていっていただく、こういうふうな業界にしていただければと思っています。
 それから、私どもは、この法案に対して反対もしませんが、ここの次に書いてあるんです、新たなルールとそれを遵守するための具体的な事例ということで、これは法律条項ではありませんから、これから省令とか運用規則で決まることなので、ここを、トラック事業における事後チェック体制をしっかりつくり上げていただいて、活力のある、また働きがいのある職場に、事業にしていただきたいというふうなことです。
 これは少し順番がまちまちなんですが、一つ目は、トラック事業者の安全評価システムの導入ということで、トラック事業者はいろいろなことをチェックして、いい事業者、普通の事業者、悪い事業者というふうなことで選別していく。
 二番目が、これは、これからの事後規制の目玉と思いますが、現在、トラックの事業者は日本で五万五千四百七十二社ぐらいあります。非常に多い人数です。この事業者台帳をみんな電子化して、それによってEメール等で監査をするという方法、そこで虚偽の申請だとかいろいろなものがあったときは監査に入って、しっかり見ていくという方法をとっていただければなと思います。
 それから次に、貨物自動車の場合は、自主的に自分たちで管理するという意味で貨物自動車運送適正化事業実施機関というのがあるんですが、現在トラック協会が代行しているということですから、これを完全に独立して、新たに、中立性が保てる状況の中でしっかりやっていくと同時に、国土交通省の検査官もこの中に入って一緒になってやっていくというふうな新たな監視体制をつくっていったらどうか。
 それからまた、これは先生方の議論の中でもあったと思いますが、トラック運転者の資格免許の新設ということで、人を運んでいる運転者に対しては、二種免許という一つのプライドを持てるものがあるんですが、トラックの運転者については、免許証を取ったらあしたからでも運転ができるというふうなことで、この業界を盛り上げる、モラールを持って運転するという意味から、トラック運転者の資格免許制度の新設をぜひお願いしたいなと思います。
 それからもう一つ。今、アメリカだとかヨーロッパなんかにあります、ウエートステーションといって、路上で自動車の重量をはかったり、免許証のチェックをしたりするところを常設で設けてあります。これはぜひ日本でも、トラックステーションの入り口だとか、高速道路の入り口だとか、海上コンテナターミナルの入り口に設けていただいてチェックをしていただき、悪いのは悪い、いいのはいいというふうな判断をしていただくというのが非常に効果的なんじゃないかなと思います。また、このところ、高速道路の橋梁のクラックの問題がありますが、これはオーバーウエートが大きな原因であるので、これも取り締まれる効果がある非常にいいものではないかなというふうに思っています。
 それからもう一つは、下請と元請との責任体制のあり方ということで、今回初めて、すべてをトラック事業法の中で包含してやるというふうなことになって、この下請と元請との関係ということを整理をする必要があると思いますし、これがトラック業界の中の一つの大きな問題点になっておるので、荷物がどういうふうに動いたのかが明確に見えるようにしていくというふうな方向を考えていただきたいと思います。
 それから九番目には、今回、営業区域を外すというふうなことになっておりますが、安全性の問題その他でかなり難しい問題があるんですが、これは後でチェックをする関係で、今、デジタルタコメーターといって、記録がたくさんあるものがありますから、ここを外す車についてはこれを必ず装着させて、後で監査できるような方法をとっていただくというふうなことが必要なんじゃないかなと思います。
 あとは労働時間の問題です。
 世の中は一千八百時間なんて言っておりますが、私どもの平均は、恥ずかしいんですが、二千六百時間ぐらいになっています。給料の単価の低いところは時間で稼いでいるというふうな状況です。このために二・九告示というふうなものがあって、また安全規則の中にもそれを盛り込んでいただいて、事業法でも取り締まれるようになったんですが、なかなか効果が上がっていないというのが実情です。これについても、厚生労働省としっかり連携をとって実効あるようなものにしていただきたいと思うと同時に、問題は違いますが、最低賃金なんということについてもこれから制定していきたいと思いますから、御協力、応援をしていただければと思います。
 以上です。
久保委員長 ありがとうございました。
 次に、野尻参考人にお願いをいたします。
野尻参考人 流通経済大学の野尻でございます。
 本日は、この委員会で私の意見を述べる機会をいただきまして、大変ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 私は、流通関係、とりわけ物流の法律制度につきまして、ささやかではありますが、内外の事柄について勉強をさせていただいている者であります。
 実は、昨年の夏からでございますが、国土交通省内につくられました貨物自動車運送事業及び貨物運送取扱事業の在り方に関する懇談会、さらには貨物鉄道事業の規制緩和に関する懇談会、これらの懇談会に参加をさせていただきまして、その場を通じて多くの方々と論議をさせていただきました。本日は、両懇談会の議論を私のベースにいたしまして、さらに私見を加えながら御意見を述べさせていただきたいと考えております。また、両懇談会の概要につきまして、先生方のお手元に簡単なものを配らせていただいておりますので、後でごらんいただければありがたいと思います。
 そこで、今回提案されている三法案でございますが、率直な感想を申し上げますと、大いなる期待と若干の不安を抱いているというのが今の私の思いでございます。
 総論として、三法案を通じまして、現在、物流の市場というのは非常に競争が激しい、あるいは物流をめぐる経済社会環境というのは非常に激変をしてございます。こういう中で、我が国の物流産業、あるいは物流のシステムをより安定的に、さらに柔軟に、さらに強靱なものとして維持存続させることは極めて大切な事柄、かように考えております。その点を考えますと、基本的に行政の事業への介入を最小限にする、民間の事業者の事業活動を、より自由性を高める、さらには、そうした中から創意工夫を生み出していただくという考え方は、私は基本的に賛成であります。したがいまして、経済的規制の緩和という形での法改正につきましては、賛成をしたいと思っております。ただし、規制緩和につきましては、やはりデメリットの面にも目を向ける必要があるのではないかと思っております。
 物流の分野におきましては、非常に激烈な企業間競争の中で、競争条件について必ずしも公平な、あるいは公正な土俵がつくられているとは言えないという側面を私は感じております。今回、事前規制から事後チェック型の規制に大きく規制の方針を転換するということにおきましては、こうした公平な競争条件の確保に関するチェック等の適正な執行を切にお願いしたいところであります。さらには、安全問題あるいは環境問題というのがこの物流について極めて深くかかわっているところでございますので、これに向けての施策もぜひお願いしたい、かように考えてございます。
 具体的に三つの法案について意見を述べさせていただきます。
 まず、トラック事業法、貨物自動車運送事業法でございますが、今般の法案におきましては、運賃・料金の規制を事後チェック型にするということになっております。従来、認可制から事前届け出制という制度の変更がございましたが、残念ながら、制度の建前と運賃の実態というのが乖離をしていた。この運賃規制の問題というのは、我が国ばかりではなくて、諸外国の制度においても非常に難しい問題を多々含んでおります。
 そうした中で、今回、事後チェックのシステムに変えるということにつきましては、競争の現実を見るといたし方ないのかなというふうに思っておるところでありますが、一方で、競争の中で極端な原価割れを起こしておるような低運賃の実態というのも間々耳にするところでございます。こうしたことがさらに進むかについて、一部懸念をしているところであります。
 それから、営業区域の規制の撤廃でございます。これは、現実のトラック輸送市場、あるいはトラック事業者のサービスにおきまして、高速道路網の発達、あるいはITの発展、あるいは荷主の物流システム、具体的には、物流ターミナルを分散型から集中化、全国に一カ所もしくは二カ所に集中するというシステム化が進んでございまして、そういう現実に対応するためには、営業区域規制の撤廃もやむなしというふうに考えておるところでございます。
 しかし、一方、特にトラックにつきましては、事業場を離れて仕事をするということでございまして、トラックは公道上で仕事をしているものでございますので、やはり適切な安全運行にかかわるチェックシステムというものをつくり上げる必要があると考えております。先ほど中西参考人がデジタコ、デジタルのタコグラフ、タコメーターシステムということをお話しありましたけれども、それも一つ有力な手段ではないかというふうに考えております。
 トラック事業法につきましては、やはり先ほど申し上げましたが、公平な競争条件の確保ということをぜひお願いしたいと思っております。やはり事業者が競争を行う場合には、共通の土俵というものを整備することが大切でございます。最低限のルールをつくり、それをしっかり守っていただくような仕組みをつくっていただきたいと思っております。そういう意味では、行政処分等の基準の見直しや監査体制の強化という新たな仕組みづくりというものをお願いしたいところであります。
 続きまして、貨物取扱事業法でございます。これはソフトのビジネスでございまして、実際に輸送手段を持たないで輸送手段を利用して事業展開するビジネスでございます。そういう意味では一般には非常にわかりづらいところでございますが、今回、第一種の利用運送事業につきまして登録制に緩和がされる、さらには、運送取次事業につきましては全面的に規制を廃止するということでございました。ソフトという非常に柔軟なニーズへの対応が求められる事業にとっては、制度の合理化を図るというところに寄与をするものと考えております。
 ただ、運賃・料金等のチェックの仕組みにつきましては、これも事後のチェック型になるようでございますが、なかなか難しい局面もあるのだろうということを漠然と考えておるところでございます。
 最後に、鉄道事業法でございますが、これはプロとプロの仕事ということになっておりまして、規制の介入はやはり最小限にとどめることが適切であろうと考えております。事業者みずからが経営判断に基づいて迅速、機動的な事業展開をできるような仕組みをつくるのが必要と考えております。
 ただ、その中で、需給調整の廃止ということは、参入の自由化とともに、退出、休廃止の自由ということも当然裏側についてくるわけであります。先ほど申し上げました懇談会の中でも、一部の荷主や鉄道利用者の中から、鉄道でなくては運べない貨物というものの存在、それをどう考えるかと。トラックでは運べない貨物というものがあるのではないか、そういった場合に、鉄道が休廃止を一方的にするということについての御懸念が出されておりましたので、この場をかりて御報告を申し上げます。
 いずれにいたしましても、今盛んに言われておりますモーダルシフトにつきましては、伊藤、中西両参考人のお話のとおり、非常に重要なことでございます。鉄道の特性を生かした新たな仕組みづくりというものを今後ぜひお願いしたいところでございます。
 簡単でございますが、以上でございます。(拍手)
久保委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
久保委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福井照君。
福井委員 おはようございます。自由民主党の福井照でございます。
 三人の先生方には早朝から大変御苦労さまでございます。それでは座らせていただきます。
 それでは、私の方からは、伊藤社長様そして野尻先生に御質問をさせていただきたいと思います。
 物流全体につきまして、今どこにいて、これからどこに進もうとしているのかという時代認識につきましてお示しをいただきたいと思います。こういう時代認識とか歴史認識がないまま制度を変えていくということは、時代をどうしてもミスリードするということになると思うからでございます。
 特に、日本社会、一番大事だけれども欠けているというのは論理性であるというふうに私自身は思っておりますし、したがって、今何を目的として何をどのように操作しようとしているのかという、至極当たり前だけれども足元を見据えたような議論が必要だと思いますので、そのような観点から御質問申し上げたいと思います。
 我々は今何をやっているのかといいますと、今から五十年あるいは百年持続可能な日本の制度設計をしているわけであります。各自の価値基準によって、やれ構造改革だ、やれ規制緩和だ、やれ一九四〇年体制の打破だとかまびすしいわけでございます。そしてまた、市場は一〇〇%正しい、競争は絶対的に善であるというような極端な議論も出てきているわけでありますけれども、しかし大事なことは、私たちは、日本の民族性も見据えて、そして時代認識、歴史認識も前提として、バランスのいいものを探していくということが大事だというふうに考えておるわけであります。
 そこで、伊藤社長様から、国鉄マンとして誇り高く長年お仕事をしてこられまして、国鉄も、明治以来の人流、物流を支えてきました、技術の粋もきわめました、組織も巨大化しました、そして十五年前に民営化されましたというこの近代日本の流れの中で、どのようにこの歴史を評価され、そして現状で何が問題に残っているかということをとらえ、これからどのように展開すべきか。そして、JR貨物はその中でどのような役割を果たそうとしていらっしゃるのか、その戦略はどうかということにつきまして、どうか思いのたけをお述べいただきたいと思います。今、もちろんこの十分の中で一端はお示しをいただいたわけでございますけれども、さらにまたコメントをいただきたいと思います。
 続きまして、野尻先生からは、鉄道貨物、トラック全般にわたりまして、今申し上げました時間軸、空間軸、立体的な地図とでもいいましょうか、歴史認識の御教示を賜りたいと思います。特に、役所もここにおるものですから、行政セクターの足らざるところ、あるいは官民のパートナーシップの足らざるところ、ひょっとするとその懇談会の中でも話題にはなったけれどもペーパーにはできなかったのではないかということを勝手に御推察申し上げておる次第でありますけれども、そういう点も含めまして、さらにまた総括的なコメントをお願い申し上げたいと存じている次第でございますので、申しわけございませんが、順番に社長様の方からよろしくお願いいたしたいと思います。
伊藤参考人 私ごとで恐縮でございますけれども、私は、新幹線の開業の年、昭和三十九年に国鉄に入社いたしました。自来、国鉄で二十三年間、JRになりましてから十五年間、都合三十八年間、鉄道人としての生活をしてまいった次第でございます。
 もちろん、国鉄改革の渦中にも身を置きまして、その当時のことを今思い出しておりますけれども、いわゆる歴史的に見ればこの国鉄改革というのは大成功だったと思っております。一言で言えば、経営者も、それから社員も、目線が内部から外部へ、いわゆるお客様へですね、向いたということだと思います。そして、現在七社とも、それぞれ独自性を発揮し、自主自立の精神でお互いに切磋琢磨していることは、先生御案内のとおりだと思います。
 私、JR貨物の社長でございますので、JR貨物を例えて言いますと、開業当初でございますけれども、国鉄から分かれたばかりでありますから、我々の目もやはりどうしてもJRグループということにいろいろな問題で行っていたんでありますが、昨今の状況を申し上げますが、我々はまさに物流業界に、貨物鉄道輸送というものは物流業界にあるんだという、軸足をそこに置いた形での経営を行っているつもりでございます。
 貨物鉄道といいましても、この数十年を見ても大きく変化しております。かつては、四セと言っておりますけれども、石炭、セメント、石油、石灰石というように全部セがつきますけれども、そういう素材産業型の物資輸送が鉄道の中心であったんでありますが、昨今はこれが大きくさま変わりしてまいりまして、いわゆる消費者物資的なものが鉄道輸送でも主流を占めるようになってきております。また、最近は、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、いわゆる産業廃棄物とか生活廃棄物輸送のようなものにも、いろいろと鉄道輸送が使われるようになってきているというようなことも新しい姿でございます。
 そういう中で、我々が何を考えていくかということでありますけれども、実は、いろいろな意味でまだまだ鉄道輸送そのものが不備な面があるからかもしれません、また、いわゆる市場競争原理の中で我々の提供する商品が悪いからかもしれませんが、一般に鉄道は、長距離大量輸送と言っておりますように、五百キロメートル以上は鉄道が有利であると言われておりますが、今、日本の現状は、一、二年前のデータでちょっと古くて恐縮でありますが、千キロメートル以上をまだ一千三百万トンもトラックで運ばれている現状にございます。いろいろな事情があってのことではありますけれども、千キロメートル以上の距離は、鉄道は、普通、陸上では三十数%シェアを持っておりますから、もっともっと我々が担わなきゃいけないと思います。
 そんな意味で、我々が今回、先ほど申し上げましたニューチャレンジ21の中で考えておりますものは、新しい時代にふさわしい形で、荷主様に選択される、その種の列車をどのようにつくり、また、コスト的に荷主さんが選択できるというような形の、価格問題も含めて、新しい展開を図っていきたい、こういう形が我々のねらいでございます。
 ただ、先ほども申し上げましたが、そういう中で、昔よくイコールフッティングという議論がございましたけれども、港湾、道路等々いろいろな設備投資が行われております。かつての国鉄貨物輸送からJRの貨物輸送に切りかわる際に、いろいろな形でこれまでも政府の御支援も受けておりますけれども、新しい二十一世紀にふさわしい設備への近代化がおくれている面がまだございまして、そういう形で、今、私の頭の中には、仮に全国の百四十六の駅のあと二十駅程度を近代化しますと、かなりいい形のダイヤ編成ができるとか、また、今回の引き継ぎ業務の円滑化ではございませんけれども、トラックと鉄道の接点が極めてうまくいくというような形もございますものですから、そういう意味での設備投資については、とてもJR貨物だけではできない。これについて大きな見地から国を挙げて御支援賜れれば、こんなふうに思っている次第でございます。
野尻参考人 それでは私見を申し述べさせていただきます。
 時代認識という御質問がございました。私は、現在の日本の物流というものに非常に危機感を感じているものでございます。我が国の物流の中でも、宅配便とかジャスト・イン・タイムの物流という世界に冠たる高品質の物流サービスもございますが、全般的に見ますと、日本は物流後進国であります。これは間違いのないことであります。そうした中で、日本のこれからの国内物流あるいは諸外国との物流のシステムというものをどういうふうにつくっていくかということについて、非常に危機感を抱いているものでございます。
 今回の懇談会の議論でもそうでございましたが、物流にかかわる法規制の緩和というのは、言ってみれば従来型の許認可の行政のシステムというものの限界、これに対してどういう答えを出すのか、次のステージとしてどういう答えを出すのかということで、いろいろと議論がなされました。非常に極端な議論があったことも事実であります。規制を全部なくせというような御意見の持ち主もいらっしゃいました。
 しかし、そうした中で、日本の産業あるいは国民生活にとって極めて重要な役割を果たしているこの物流を一挙に崩してしまうといいますか、劇薬をもって病気を治療するという方式がいいのか、あるいは、少しずつ、弊害のないように経済的な規制を緩めながら、しかし、社会的な規制を強化するような形での規制の改革がいいのかということにつきましては、後者の結論をとりましたし、私もそれを支持しているところでございます。
 そうした中で、現行の物流二法、平成元年にでき、平成二年から施行されておりますが、このプロセス、今日までの過程を見てみますと、いろいろなコメントができますが、一つ今の関連から言わせていただきますと、例えばトラックにつきましては、参入規制が緩やかになりまして、非常に急激な参入が行われた。しかし、競争のもう一つの観点であるサービスの質の面での競争というのが、果たしてどこまで行われたのか。
 この物流二法の時代に新たなサービスが本当にできたのだろうかということを考えますと、やはり創意工夫、新しい時代のニーズを先取りしたような創意工夫のあるサービスがうまくできなかったなということを感じている次第でございます。次のステージでは、やはり民間の事業者の皆様の創意工夫が生かされるような、ストレートに生かされるような仕組みというものをぜひつくっていただきたい、かように考えている次第でございます。
 以上でございます。
福井委員 ありがとうございました。
 同じ問題意識で中西局長様からコメントをいただきたいんですけれども、御協議会も長年御努力をされてきて、過去に何があって、そして今何が問題で、これからどのように中西局長を初めとして皆さん方の活動を進化させようとしているのかということにつきまして、同じ質問で、時代認識、歴史認識をぜひ御披瀝いただきたいと思います。
 特に、我々がやっている経済の目的は、別にGDP拡大でもなければ何でもないわけで、雇用が確保され、物価が安定し、そして、それぞれの人がそれぞれ幸せになるようにということで、家族の幸せ、個人の幸せを追求できるようにということが目的だというふうに考えておりますし、今般、まちづくりも含めて、ライフスタイルの追求というのを社会全体が、国家が、そしてみんなでサポートするということが目標となっている、全体の時代はそんな感じじゃないかと思いますけれども、中西局長の方はどのように御認識か、御質問させていただければと思います。
中西参考人 私のところは労働組合ということなんですが、そういう枠を外れまして、ちょっとお話をさせていただこうと思っています。
 先生がおっしゃられた、時代認識、歴史認識ということを持たないと新しい政策というのは考えても仕方ないというのを私どもの基本的な認識にしておりますし、それから、特に物流というのは、いろいろなことを書かれておりますけれども、いかにこの日本の国の産業全体を、経済社会を発展させていくのか、国民生活をどう安定させていくのかということがまず基本にあらねばならぬというふうに思っております。
 そこで、いろいろな現象が起こってきておりまして、物流が大きく変化してきているのは、やはり工業化社会がだんだんコストの安い国に移動している、こういう時代認識ということを一つ大きく掲げないかぬ認識だなというふうなことを思っております。
 あと、このところ、いろいろなところへ出てきておりますように、持続可能な循環型社会を形成するためにどういうことをやらないかぬのかということから、今余りにも便利さを追求し過ぎているところがありますから、その便利さを少し犠牲にしても、環境に優しい持続可能な経済社会をつくるにはどうするか、循環型社会をつくるにはどうするかという配慮も必要じゃないかなというふうなことをもとにしながら、私どもとしては、今野尻先生もあったとおり、物流について新しいサービスというのは、宅配便とかそういうものについてはできたけれども、そのほか、もう少し大きいものの物流についてはどうなったんだろうかというふうなところを今研究しているところです。
 以上です。
福井委員 どうもありがとうございました。以上で終わらせていただきます。
久保委員長 大谷信盛君。
大谷委員 民主党の大谷信盛でございます。
 お忙しい中、三人の参考人の皆さんにはお時間をいただきまして、ありがとうございます。余り時間がございませんので、一人一人に、さっきの十分、十五分では言い尽くせてないと思いますので、簡単な質問をさせていただいて、教えていただけたらというふうに思っております。
 まず、伊藤社長の方なんですけれども、モーダルシフトの率のアップというのは大事だということは、もう重々わかっておるんです。それに鋭意努力されているということも重々理解をさせていただきましたし、また、自立したJR貨物株式会社をつくるという、その心意気も十分理解をさせていただいたつもりでございます。
 今お話を聞いておりますと、駅とかのインフラ整備がよくなったらモーダルシフト率が上がるんだ、また、モーダルシフト率を上げるために駅の整備等々を努力しているんだというお話でございました。
 具体的に、本当にそれだけでモーダルシフト率が上がるのかな。営業努力というようなものとか、二十一世紀のあるべき物流システムをかんがみても、努力、戦略というものが必要ではないかなというふうに思うんです。そこの部分を全然お聞かせいただいていないので一つ欲しいのと、具体的な例として、北九州の貨物ターミナルというものについて例示されましたが、では、北九州でどれぐらいトラックに載るべき雑貨が鉄道、北九州の駅を通して載ってきているのか。どんな効用があるのかというのを、具体的に少し教えていただけたらというふうに思います。
 次に、中西事務局長にお聞きしたいのは、私もたくさん、トラックの運転をされている方、またトラックの事業所を経営されている方々、地域の中でお話をさせていただきます。昔はよかったけれども、今はもう大変だ。何が大変かというと、特に私が聞いていて驚いたのは、荷主さんが、ある意味、言葉にしない強要で過積載を強要されるというようなケースが多々あるんだと。
 今、それなりのチェック機能をというような御提案、こちらのペーパーの方にも出ておりましたが、具体的にどうやったらそういうものが、現場に一番近いところを知っておられる中西さんにとって解決できるのかなと。
 今、安全や環境という規制を中心にして、そのようなことがないようにというふうなことを僕は理解したんですけれども、では、具体的にはどんな施策があるのかな。それは、政府の役割もあるでしょう、また自治体の役割もあるでしょう。しかし、企業間同士の役割というか、すべきこともあるというふうに思うんです。その辺について少し教えていただけたらというふうに思っております。
 そして、野尻先生には、教えてほしいんですが、大きなお話の中で、先生、アカデミックな分野からきょう出ていただいておりますので、教えていただきたいのは、僕自身もまだはっきりわからない、この二日前も、大臣、また鉄道局長とも議論させていただいたのでございますが、新物流大綱ということで、去年でき上がりました、あれの先生自身の、先生の持っておられる物流への哲学、概念、コンセプトという観点から見た御評価をお聞かせいただきたい。
 何か大臣なんかは、諸外国に比べての競争力が高まれば、我が国の物流システムはよくなるんだと。確かにそれは一見そうです。海運、特に港の使い勝手のよさということでいえば、競争力が低いというふうに判断できると思う。
 しかしながら、トラックであったり鉄道であったり飛行機であったりするもののコストが安くなるだけではなく、何を運ぶんだと、そして、何よりもこの国の産業のインフラでございますから、二十一世紀の産業は何なんだと、それにかんがみて、その物流システムが効率がいいのか、効率が悪いのか、競争力があるのかないのかという話になるというふうに思うんです。大臣も、グランドデザインをつくっていくというふうにおっしゃいました。そんな、あるべき二十一世紀の物流システムをどのようにお考えなのか。
 特に、効率という言葉がよくこの物流システムの中では使われるんですが、一体何をもって効率が高まったというんだろうか。安いからか。競争が激化して、公正な競争がふえて、コストが安くなって、効率がよくなった、これは僕は、八〇年代、九〇年代の考え方であって、二十一世紀の効率化というものは、そんな簡単な規制緩和や競争だけでできていくものではないのではないかというような思いを持っております。
 しかしながら、鋭意私も議員として勉強させていただいておりますが、まだまだこれという確信を持った答えを持っているわけでもなく、野尻先生にお聞かせいただけたらというふうに思っております。
 順次、漠としたもので結構ですから、ぴしっとしたやつで、社長、お願いいたします。
伊藤参考人 お答えいたします。
 多少専門的になるかもしれませんけれども、いわゆる鉄道貨物輸送の歴史を振り返ってみますと、一番大きな動きというのは、昭和五十九年二月にございまして、これは世界ではまだ残っておりますけれども、マーシャリングヤードという、貨車を集結してそこで列車を仕立てるという、ヤードというのをなくしました、日本の場合には。これが今は全国三百駅ちょっとでございますけれども、当時はまだ四百六十ぐらい駅がございましたが、そういうヤードを経て列車が動くという形で、当然大変時間もかかるしサービスも悪いという実態がありました。この形で駅の施設ができている。
 どういうことかといいますと、貨車単位の輸送ですから、それが駅へ入りますと、いわゆる駅は長くなくて、むしろ面的な駅で、そこに、入れかえという概念ですけれども、貨車を数車ごとに割っていくわけですね。そこに当然、作業する人も要りますし、時間もかかる。着発線に一回列車が来て、そこから貨車をばらして、荷役線、荷物作業をするところに入れていくということで、大変時間がかかったということがまず一つであります。
 これが、先ほど申し上げましたように、新しい駅はコンテナが中心でございまして、コンテナというのは基本的には列車単位で動かすような仕組みになっております。直行輸送体系と言っておりますけれども。これは、私自身は旅客列車方式なんて言っていますけれども、昔は貨車が一車一車ばらばらになるんでありますが、コンテナの列車方式というのは、旅客列車のように、列車が着きます、コンテナですから、それはフォークリフトで積んだりおろすことが簡単にできます。そういう面で、お客様が駅で乗りおりするように、貨物は足がございませんから人がやるしかないんですが、フォークリフトで載せたり、到着したらおろして、また次のコンテナを載っける、こういう形で、列車ができればすぐに出ていけるという形で、ダイヤ調整なんかも非常にやりやすくなるということですね。
 もう一回申し上げますが、昔の形の駅ですと、一回貨車をばらばらにするものですから、それをまたつなぎ合わせたりしているうちに時間がかかってくるというようなことから、これをEアンドS、エフェクティブ・アンド・スピーディー・コンテナ・ハンドリング・システム、EアンドS駅と言っていますけれども、そういう形の駅が現在もう二十二駅ほどできております。
 さっきも申し上げましたが、百四十五のコンテナの駅を全部そうする必要はないと思いますけれども、少なくとも主要な駅の四十ないし五十駅がそうなりますと、かなり列車の商品の質がよくなるということですね。中継作業なんかが早くできる。それから、当然ですけれども、列車の到達時間も早くなるとかというような意味で、このモーダルシフト、モーダルシフトというのは、やはりお客様がどう選択するかということでありますから、我々が幾ら使ってください使ってくださいと申し上げましても、お客様の方からごらんになって、この列車は非常にいい、時間帯またはお値段ですね、そういう面で初めて御利用されるという意味でありますから、モーダルシフトだから黙っていれば来るわけではございません。
 そういう意味で、まだまだおくれている、つまりヤード輸送をやめて、いわゆる直行輸送方式をとったコンテナ中心の輸送体系の中で、昔の駅のままの駅を、まだ数十駅そのままになっているところを直すことによってかなりの効果があるというふうに私は思っている次第でございます。その例の一つが、先般の北九州でございます。
 北九州貨物ターミナルは、先ほども申し上げましたように、七十億の約半分は国ないし市の助成ででき上がった駅でございますけれども、九州には福岡ターミナルという駅しかございませんでした。そこですべてのコンテナを中心として扱っておりましたが、日豊線でいいますと、逆線運転といいますか、一回福岡に行ってからまた戻るような形でございますので、北九州貨物ターミナルができたことによって、中には十時間ほど早くなった例がございます。五時間とか十時間列車が早くなる。この列車が早くなるということは、いい時間帯にいい列車を入れやすくなるということでございまして、大変荷主さんの好評を得て、現在まだまだできたばかり、この三月でございますけれども、既にもう一一〇%弱まで荷物が伸びているという状況であります。
 それから、またもう一つ、先ほど触れませんでしたけれども、いい悪いは別でありますが、現在、産業空洞化が大変進んでいる中で、これから海上コンテナがかなりふえてまいります。これが、九州は中国と一番近いわけでありますから、これは北九州市で進めておられる、響灘コンテナヤードというのをやっておられるようでありますけれども、そのセッティングとして、北九州貨物ターミナルが海上コンテナの受け皿となり、そこから全国に海上コンテナを発送できれば、これまた大変大きなモーダルシフトの話ではなかろうか、こんなふうに思っている次第でございます。
中西参考人 私の方からは、現場の状況はどうなっているんだという御質問なんですが、過積載なんというのは昔のことで、もうなくなったんだろうというふうなことかもしれませんが、警察のデータを見ると、依然としてまだふえ続けている、減っているような状況ではないということです。
 それで、おっしゃるとおり、現場で、安くできないんであればこれだけ積んでいったらいいんだよというふうな話があるということはよく聞いております。それは、先ほどもお話ししたとおり、強大な力を持っておる荷主に対して中小零細が、それはできませんということはなかなか言いにくい。言うと、あしたから来なくてよろしいですよというふうなことになることが多くありまして、なかなか言いにくい。
 そういうことから、先ほどもお願いしたとおり、いろいろなところに、いろいろなゲート部辺に重量計みたいなものを設置していただいて、それでしっかり点検をしていただく。一時、自重計をつけたらどうなんだという話がありましたが、自重計をつけたって、それはおまえのところのあれだから認めぬということでありますから、警察と国土交通省で連携して、しっかりそういうところでチェックをしていただきたい。
 それと同時に、捕まった場合、今のところは法を犯した運転手だけの名前が出ます。そうじゃなくて、運送会社、または積み荷、例えば、例が悪いんですが、これは国土交通省の補強工事の残土でしたとか、そういう積み荷も報道公開していただくとかなりの部分が解消できるんじゃないかなということで期待しております。
 以上です。
野尻参考人 大変難しい御質問をいただきまして。
 効率性につきましては、やはり物差しがいろいろありますので、まだ私の頭の中でも、どの物差しから効率をはかるかということにつきまして具体的な考え方はまとまっておりません。教科書的に言えば、資源を最大限有効に使うための仕組みというものをどう考えるかということだろうと思っております。
 それから、物流施策大綱につきましては、平成九年に最初にこの大綱を見せていただきましたときの率直な第一印象は、たしか、うろ覚えですが、当時の十四の省庁が横断的にこの物流というものを共通の認識として新たな施策をつくっていただく。ああ、十四も省庁があったのかというように思ったんですが、いずれにしましても、従来、旧運輸省、旧建設省、あるいは旧通産省というような物流にかかわりの深い省庁だけではなくて、多くの省庁の方々あるいは政府がこの物流というものの大切さを認識していただいたということが第一印象でありました。
 その中で、諸外国との競争ということがございましたが、やはり物流もグローバルな国際的な視点に立って物事を考えていく必要性というものを御認識いただいたのかなというふうに考えております。今、中西参考人からの発言がございましたが、あるいは伊藤参考人もありましたが、例えば海上コンテナにつきましては二十フィート、四十フィートのコンテナが日本に入ってきておりますが、世界の趨勢はもう四十五フィート、四十八フィートです。アメリカの内陸に行きますと、五十三フィートという長尺物が動いております。標準で八フィート六インチでありますが、日本の場合に、まあ九フィート六インチも、ハイキューブも入ってきておりますけれども、それは世界の共通になっているわけであります。四十五フィートの海上コンテナが自由に走れないというのは恐らく日本だけだろうと思います、先進諸国の中では。香港でも四十五フィートが走っておりますので。そういう認識をいただいたのかなというふうに思っております。
 それで、これからのことでございますが、この三法案もいわば規制緩和、ディレギュレーションという道筋の中で御議論をいただいているというふうに認識しておりますが、ポストディレギュレーション、その規制緩和、規制改革の後にある政策というのは一体何なのかということをしっかり認識する必要があるだろうと思います。
 ディレギュレーション先進国のアメリカにおきましては、ポストディレギュレーションの政策といたしまして、やはり国民がいつでも必要なときに安心して物を送れるという仕組みは何なのか、国の介入はどこまで、連邦政府はどこまで介入し、地方政府はどこまで介入し、あるいは市民はどこまでこのことについて思いをいたすのかというような、さまざまな研究がなされておるという認識をしております。
 以上でございます。
大谷委員 ありがとうございます。
 伊藤参考人に一つだけ。北九州のこれは七十億使って、半分国が出しているのですけれども、売り上げはどれぐらい伸びたんですか。一個の駅だけでは、モーダルシフトに荷主さんがなろうというふうには確かにならないと思います。二つだけ簡単に。北九州で幾ら売り上げが七十億投資をして伸びたか、今後伸びていきそうか、四十から五十の駅を近代化してどれぐらい売り上げというか荷物量がふえていくのかという具体的な何か経営戦略上持っていると思うんですけれども、一言で結構です。
伊藤参考人 これからも大きく伸びていくことはもう間違いないんでありますけれども、輸送量的にいうと、この三月からで、まだわずか二月でありますが、五%ぐらい伸びております。ですから、福岡との関係の調整はまだこれからやりますので、私はもっともっと大きく伸びてまいると思います。
大谷委員 わかりました。ありがとうございました。
久保委員長 赤羽一嘉君。
赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。
 本日は、三名の参考人の方々には早朝よりお出ましをいただきまして、大変参考になる御意見を拝聴させていただきました。心から感謝を申し上げる次第でございます。また、この後、政府への質問もありますので、きょう御提案いただいたところも政府へ投げかけてみたいなというふうに思いました。
 まず、鉄道事業法に関して、伊藤参考人に質問させていただきたいと思います。
 率直に言いまして、伊藤参考人の陳述を聞いておりまして、何となくほっとしたというか、もっと暗い話が出てくるのかなとも思いましたが、九期ぶりに黒字を回復して、今回の法改正についても、より機動的な新しいチャンスだというふうにとらえていただいているというのは、これは本音なのかどうかはよくわからないなという気もしなくもありませんが。
 そういうふうな参考人としての陳述をいただいたというのは非常に安心したという感じがいたしましたが、中西参考人の先ほどのペーパーの御指摘の中に、今回の黒字は必ずしも前向きな黒字じゃなくて緊縮均衡政策の結果なのではないか、将来の明るい鉄道貨物のビジョンがなければなかなか未来は描けない、こういった御指摘もありますし、一方で、完全民営化のプロセスの中で、完全民営化への整備を怠ることのないように国として支援するべきだ、こういったコメントもあるようでありますが、この点について当事者としてどのようなお考えなのか、簡単に御答弁いただけますでしょうか。
伊藤参考人 言うまでもなく、この八期連続赤字が、今回九年ぶりに黒字になったということについては、これは、厳しい日本の経済の今の状況でありますから、私が言うのも変でありますが、まさに社員みんな我慢に我慢を重ねてといいますか、臥薪嘗胆の境地という中ででき上がったものだと私は思っております。
 しかし、これは各社、物流業界、今みんなどこも大変な状況にあるわけでございまして、先生御案内のとおり、赤字、黒字の問題ではなくて、この厳しい経済状況の中でも頑張っていかなきゃいけない。
 我々は、今そういう中で、先ほど申し上げたニューチャレンジ21というのは、新しい時代にふさわしい形でのいろいろなスタイルを今模索しておりまして、運ぶ荷物もだんだん変わってくるわけでございますので、そういうものに対応するためのいろいろなシステム化、今まさにIT技術の最先端の技術を応用するとか、いろいろなことも考えております。
 そういう中で、中の質的変化を起こすこととともに、いわゆるモーダルシフトではございませんけれども、世の中全体の動き、世の中全体のそういう流れに対して、我々が受け皿としてどこをどういうふうに対応していくかということによって、必ずやなし遂げられると思ってつくった計画でございます。
 そういう面で、かつての、開業当初五千万トン近い荷物があったのでありますが、今四千万トンちょっと切るぐらいでありますが、必ずしも縮小均衡という言葉ではなくて、これはさっきも申し上げましたように、産業構造の変化に伴って、例えば石炭なんかがゼロに近いとか、セメントもかなり、三分の一ぐらいになっているとか、そういう輸送物資の変化に伴うものでございまして、必ずしも縮小均衡という言葉ではすべてを言いあらわせない、こう私は思っております。
赤羽委員 ありがとうございます。
 ニューチャレンジ21というのは、きのう日本貨物鉄道さんからいただいたんですけれども、ちょっとまだつまびらかにしておりませんので、もう少し詳しくわかった上で質問した方がよかったかなとも思うんですが、これは私の私見なんですが、やはりモーダルシフトというのは大変大事なことで、鉄道輸送がもっと活用されるべきだろうというふうに考えております。
 しかし、なかなか使い勝手が悪いとか、コストの面で競争力がないとかという指摘がある。こうなると、先ほど伊藤参考人のお話にもありましたが、コンテナの取り扱いを基盤整備事業を使ってより近代化をしていきたい。これは、恐らく、結節点というかアクセスを非常にレベルアップしていく、そういうことなんだろうなと思うんですが。
 ちょっと奇抜なことを言うようですけれども、物流の他の事業者が鉄道貨物事業に参入するというのはなかなか難しいと思うんですね。法律で今回担保されても、現実にはそれは難しい。逆に、今度はJR貨物さんが、鉄道だけじゃなくて、駅からのトラック輸送とか港湾関係の部分とか、少しそういったところに新規事業化をするような発想というのはこのニューチャレンジ21の中にあるのかないのか。この辺はどうなんでしょうか。
伊藤参考人 ニューチャレンジの中で、今先生がおっしゃった、販売経路といいますか、鉄道そのものはまさにステーション・ツー・ステーションで、駅で終わってしまうわけでありまして、我々は、昔でいう通運事業者、今は鉄道利用運送事業者といっておりますけれども、その連係プレーがきちんとできて、ドア・ツー・ドアの、お客様にきちんと満足いただけるという輸送システムというのがございます。また、先ほどちょっと触れましたように、トラック事業者が鉄道を御利用なさるという形もたくさん最近ありますように、やはり駅から先のところはトラックとの連携が大事であります。
 これを直接鉄道がどうだというお話も、過去いろいろと議論はあるのでありますが、私は、現時点では少なくとも、全国にある、これは大きいところでは日通さん、その他、昔流にいえば新免の全国通運系といっておりますけれども、数百社の事業者が鉄道貨物輸送と一体となって旅客サービスの向上に向けて今やっておるところでございますので、このニューチャレンジ21の中で、先生がおっしゃったような形で、直接我々がそういう部門に出ていくようなことは、特に今は考えておりません。
 しかし、言うまでもなく、連係プレーですね。この連係プレーがそごを来しますと、当然、お客様の非難または不満というのは出てまいります。これをいかに少なくするかということは非常に大事なことだ、こういうふうに思っております。
赤羽委員 ぜひ、民間企業として知恵を大いに出して、連携をとりながら、物流の先進化に寄与をしていただきたいというふうに強くお願い申し上げたいと思います。
伊藤参考人 ありがとうございます。
赤羽委員 次に、貨物自動車運送業について、中西参考人また野尻参考人にお伺いをしたいと思います。
 先ほど、中西さんのペーパーの中の提案というのは、非常に注目するべきところだと思いますし、御指摘もすばらしいものだというふうに読ませていただいておりますが、この三ページの「トラック運送事業者の「安全評価システム」の導入」、これは大変重要なことだろうなと思うんですが、現実にはこれはどこがこういう安全評価をするか、というか、主体はどこだというお考えなのか、まずお聞かせいただけますか。
中西参考人 この中でも書いてありますとおり、私どもで今研究しておるところは、そもそもこれは国土交通省の中で一つのプロジェクトをつくってやっていることであって、それをどこにやらすかということについては、その次の四ページの、現在ある貨物自動車運送適正化事業実施機関、これを再編して独立させて、その中でやったらどうなのかということで、国でやれということでなくて、民間のそういうところを活用してやったらどうかという提案です。
赤羽委員 これは、現状は、今トラック協会がこの実施機関でしたか、ということでやっているけれども、権限を与えられているわけではないし、ある意味では事業者の仲間と言っては失礼ですけれども、非常に中立化というのは難しい。だからこういった新たな提案をされているという理解でよろしいですか。
中西参考人 はい、そのとおりです。
 やはり事業者団体が自分のところで自分の会員を縛るというのはなかなか難しいところがありますから、そういうことをしたらどうかという提案です。
赤羽委員 野尻先生に伺いますが、その次の五ページの「トラック運転資格免許の新設」とか先ほどの「「路上検査制度」の導入」、こういった提案については、専門家の立場からどのような評価をされますか。
野尻参考人 例えばトラックの運転資格免許につきましては、アメリカでは、通常のドライバーズライセンスのほかに、CDLと言っていますが、コマーシャル・ドライバーズ・ライセンスという商業用自動車運転免許証の所持が義務づけられております。これはトラックとバスでございます。
 そういう形の中で、アメリカにおきましては、自家用の自動車の運転者と、こうした商業用に使われる自動車、貨物にしろ旅客にしろ、これを峻別しているという実情がございますので、大いに検討に値するというふうに考えているところであります。
 それから、路上検査の制度、ウエートステーションというお話が出ましたが、アメリカではもう一九三〇年代から何らかの形でロードサイドでの自動車のチェックというのが行われております。こうしたウエートステーションが整備されましたのは、もう既に三十年ぐらい前からのことであります。ただ、アメリカでディレギュレーションが行われましたのは一九八〇年でございますが、本格的にウエートステーションがどんどん開いて、あらゆるトラックをチェックするという仕組みになったのは、八〇年代の終わりからであります。
 ただし、それは非常にコストのかかることであります。主体的には州政府が行っておりまして、連邦政府は州政府に膨大な資金の援助をしております。実際に運営しているのは、各州の運輸省とハイウエーパトロール、交通警察が一体となってトラックのチェックをしております。
赤羽委員 中西参考人に伺いたいんですが、元請下請の多重下請構造が現状はあり、その中で、契約の書面も交わされていない、これはちょっと、商習慣とはいうものの、普通じゃなかなか考えられないんじゃないかな。
 こういうことというのは、そうなってきた背景も多分あるんだと思うんですが、書面の契約書を結ぶ契約というのは、やらなければいけないものだと私は思いますが、どのようにしたらこういうことが現実に可能になるとお考えですか。ここに書かれてあるかもしれませんが、そんなに詳しく読んでいませんので。
中西参考人 ここに少し強調して書きましたが、この下請関係の、一〇〇あったら八〇%ぐらいは契約が交わされておるんです。残りの二〇%が契約を交わされなくて、大きな事故を起こして新聞に載ったり、いろいろなことをして問題になっておるところで、この二〇%をどうしようかということで、ここには荷の動きがわかるようにいろいろなことをしたらどうだというふうなことを書いてありますが、これはまだ私どもとしても、実際それでいけるかどうかということを今実験しているような段階で、まだ確信はありません。これからぜひやってみたいと思っておるところです。
赤羽委員 今の御指摘のように、やはり悪質な業者を排除していけるような、そういう評価システムというのが私も大事だと思いますし、そのような陳述もあったかというふうに思っております。
 最後に野尻先生に、きょう陳述のとは少し外れますが、やはり先ほどのお話にもありました、公平な競争条件の確保が大事だと。
 これは、私はかねてからこの委員会でも取り上げているんですが、自動車NOx・PM法の施行というのがありますね。これはいろいろな対象地域がかけられているんです。私は実は兵庫県の神戸市なんですが、兵庫県はかかっているんです、阪神地域は。ところが、岡山県はかかっていないんですね。
 これは、環境省の発想としては、公害の度合いが高い地域に網をかけて、車種規制を求められているんだけれども、地元のトラック協会にしては非常におもしろくない話で、兵庫県の道を走っているのは兵庫県のトラック協会だけじゃない、岡山県だって競合関係にあって、競合関係の方は車種規制を受けないでどんどん荷物を大阪に持っていっている。これは私は余りにも不合理なんじゃないかということを環境省にも国土交通省にも再三申し上げて、この後の質問でまたくどいぐらいやろうかと思っているんです。
 ここについては、網のかけ方の難しさというのはありますけれども、私は、公平な競争条件を確保するという意味では、ここは非常に、やはり何とか対策を打たなければいけないんじゃないかな、また、それぐらい競争が厳しい状況に置かれているのがトラック協会事業者の皆さんなんじゃないかなというふうに思うんですが、もし、この点、何か御意見がありましたら、お答えをいただければと思います。
野尻参考人 実は私、この分野は余り専門じゃないんですが、今こうしたNOx・PM法によって低公害車の導入が求められているところであります。そういう意味では、一部の地域の事業者が非常にコスト負担を強いられるという、その側面を考えますと、やはりかなり問題があるのかなという気がいたしております。
赤羽委員 どうもありがとうございました。以上で終わります。
久保委員長 一川保夫君。
一川委員 自由党の一川保夫といいます。
 きょうは、参考人の皆さん方、御苦労さまでございます。
 お聞きしたい質問はもう大分出尽くしておるわけです。伊藤参考人に、直接関係ないかもしれませんけれども、今、新幹線の整備の問題に絡んで、在来線の問題とか貨物輸送の問題がその地域の一つの課題としていろいろと出てまいります。今後の一つの問題というか課題の中に、当然そういう御認識があろうと思いますけれども。今九州新幹線なり東北新幹線も間もなく一部開通を目指して鋭意仕事がなされておりますけれども、北陸新幹線もそういう問題を抱えております。在来線の経営実態も、なかなかうまくいっていないようなお話もよく聞いております。
 そういうことをいろいろと考えますと、全国ネットの鉄道による貨物輸送、こういうことと新幹線の問題というのは、どういうふうに御認識をされていますか。そのあたりをお聞かせ願いたいと思います。
伊藤参考人 整備新幹線が日本の国の中で逐次できていくことについては、私はもちろん賛成でございます。
 具体的に東北整備新幹線の例で申し上げたいと思いますけれども、あの線区は、貨物が五十本も走っております。今回、東日本から経営分離されることによって、当然客貨の中身は変わってくるわけでありますが、我々は、政府・与党で決められたように、整備新幹線ができることによりまして、貨物輸送についての適切な輸送ルートの確保がきちんとできることというのが第一条件であります。二つ目には、それに伴ってJR貨物に受損が発生しないこと。受益の限度というのは、JR旅客会社においてもJR貨物においても、いわゆる受損を生じないことという基本原則の中でこれまでも進めてまいりました。
 御案内だと思いますけれども、昨年、国土交通省の整理の中で、また政府の見解としても、貨物会社が引き続き第三セクターを走る場合に、貨物輸送で負担しているルールというのは、先ほどもちょっと触れましたように、国鉄改革の経緯によって、ある一定の、追加的に発生するコストだけを負担しております。貨物輸送があることによって全体的にはそれ以上にコストがかかるということについては、その差額を政府が調整金という形で出す仕組みが今できております。そういう面で、貨物の問題で第三セクターがということは、基本的には収支論ではないというふうに私は考えております。また、貨物の輸送ルートがきちんと確保できるということになったことについても満足している状態であります。
 ただ、問題は、これは私の範疇ではございませんけれども、今後長く第三セクターが、旅客輸送を含めて、その経営収支論というのが出てくるわけでありますから、その辺の問題については、私の問題ではありませんけれども、大きく、この国としてといいますか、この第三セクター問題というのは一つの問題点として残るのかな、そんなことを個人的には考えているというところであります。
一川委員 ありがとうございました。
 では次に、トラック運送関係のことが非常に話題になりますけれども、その問題について。
 中西参考人のこのメモの中にも、運送事業も活性化させながら、なおかつ労働者の労働条件を守るという、二つのこういった大きな課題のある中でこういう今のような法律改正がなされていったときに、こういうことを達成するのは何かだんだん難しくなるのかなという感じも一方でしますし、いや、本当に意欲のあるやつがうまくそれを乗り切っていくんじゃないかということも考えられますが、ここでは安全規制なり、あるいは先ほどのように、公平に競争できる条件を整備するなり情報公開なりというようなことが徹底されるべきだというふうなことをお書きになっておられますけれども、何か新たなルールをつくる必要があるというふうなお考えがあるのかどうかということも含めて、ちょっとお聞かせ願いたいと思います。
中西参考人 新たなルールをつくる必要があると思います。
 今、トラック業界全体がおかしいとか変な業界だということじゃなくて、先ほどもお話ししたとおり、八割くらいの人はまじめに一生懸命やっていただいている。二割ぐらいのアウトサイダーがどうにもならないような状況になっているということで、この二割が業界の秩序も大きく乱しているというところがありますから、この二割の人たちにこの業界から出ていっていただくという新たな規制といいますか安全規制をぜひつくっていただきたいと思うし、それをつくらないかぬのじゃないかなというふうに思っています。
一川委員 ちょっとそのことに関連しますけれども、その新たなルールというのは、例示的に挙げると例えばどういうことなんですか。
中西参考人 新たなルールと言いましたけれども、新たなルールじゃなくて、例えばこの業界では、労働関係の保険もそれから社会保険も掛けていなくて、その分値引きしているようなところもたくさんありますから、それからまた労働時間にしても、もう決められた労働時間なんてどこかへ行ってしまって、新たな自分のところのルールみたいなことでやっていますから。法で決められたものはちゃんと守るということですから、新たなルールじゃなくて、今設定されているものをちゃんと守らせるというルールです。
一川委員 私も、このトラック運送関係のお仕事をされている中で非常に皆さん御苦労されているのは、今の運転時間等にかかわるかつての労働省の告示が、改善基準なるものがある、しかし、それが本当に荷主の皆さん方とか幅広く国民の方々に、そういう基準というもの、ルールがあるということが十分徹底していないんじゃないか、認識されていない点があるんではないかなと。
 そこのところはこの前、厚生労働省の方とかあるいは国土交通省の方にもそのお話をしましたけれども、今おっしゃった中に、新たなものをつくるというよりもそういう既存のルールをしっかりと啓蒙していくということが大事だというふうにお聞きしたんだけれども、そういうことでよろしいんですか。
中西参考人 はい、そのとおりなんです。
 それで、ここはぜひお願いしたいんですが、厚生労働省はこの二・九告示は法制化していないんです。それはどうしてかというと、労働基準法とダブルスタンダードになるからということなんですが、先生方御存じのとおり、労働基準法というのは工場法から出てきておるものですから、路上で働く私どもとしてはなかなか合わない。そういうことで二・九告示があるんですから、これは決してダブルスタンダードにならないので、ぜひ法制化していただいて、法のもとで、強制力を持ってこれを守らすようなことにしていただきたいなというのが希望です。
一川委員 次に、野尻参考人にお聞きするわけですけれども、先ほどどなたかの質問の中の最後の方で、今回のこういう法改正に基づいていろいろと規制緩和的なものが講じられた後、その後の施策としてはどうあるべきかみたいなところがちょっとございました。アメリカ等でもいろいろな勉強がなされているということでございましたけれども、このあたりが非常に関心のあるところなんです。
 今ほどの話にも関連しますけれども、基本的には国民全体のモラルの問題もその根底にあると思います。しかし、何か一つの新たな施策として展開すべきものがあるとすれば、そのあたりは当然我々も十分勉強しなきゃならないと思いますけれども、そのところをもうちょっと具体的にお話ししていただければありがたいと思います。
野尻参考人 とりあえずは、今中西参考人からお話しありましたように、今あるルールあるいは今度の法改正で決めるルールをきちんと執行していただくというのがまず第一のステップだろうと思います。その後、次のステップとして、規制緩和という一つの政策が終わった後、具体的にどういう政策、施策をつくり上げるかということについて、まだ明確な私自身の答えは持っておりませんが、総論的に言えば、やはり安定的な仕組みをつくっていただくしかないかなと。
 その中で、先ほどの先生の御質問にもありました効率性の問題もありましたが、日本はスタンダード、標準をつくることが非常に下手なんですね。したがって、パレットのサイズも、コンテナ輸送に使ういろいろな段ボール箱のサイズにしても、個々ばらばらのサイズが勝手に動いているという世界が今の物流の世界であります。
 次の時代には、そういうシステム化あるいは標準化というようなことをどういうふうに考えていったらいいのかということが大きな課題だろうと認識しておるところであります。
 以上でございます。
一川委員 では、ちょっと最後に野尻先生にお伺いしたいんですけれども。
 要するに、飛行機を使った輸送、航空輸送、こういったものは近年徐々に伸びてきているというふうに私は認識しているわけですけれども、それは国内、国際問わず、先生はこれからのこういった輸送全体の中で、航空輸送というものはどういう役割を担っていくものだというふうにお考えですか。
野尻参考人 物流の歴史を見ますと、馬車から本格的な貨物輸送、そして鉄道の時代が訪れまして、今は自動車、トラック全盛の時代だろうというふうに思っております。やはり、この次の物流の主役になる一つの候補としては、航空機の利用というのが考えられるわけであります。
 ただ、航空機につきましては、国内の輸送につきましては距離が短いといいますか、そういう点もございまして、なかなか運ばないわけでありますが、これは工夫のしようによってはいろいろな可能性を秘めた、物流にとって魅力的な輸送機関だというふうに認識しております。
 それから、先ほどの御質問にも多少関連するのですが、利用者としては多様なサービスを選択できる。航空機を使えば、恐らく早いけれども高くなりますでしょう。あるいは、ほかの輸送手段は、多少遅いけれども安くなるというふうな、そういう多様なサービスの選択の自由をたくさん持てるようなサービスがこの物流の中に出てくるということを期待してやまないところであります。
 以上でございます。
一川委員 ありがとうございました。
久保委員長 瀬古由起子さん。
瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。参考人の皆さん御苦労さまです。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず最初に、伊藤参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、貨物輸送は深夜帯の走行が多いということで、とりわけ運転者の健康状態などが大変重要だと思うのです。それによっては安全問題にもかかわってくるような要素が大変多いと思うんですね。随分人を削減したというお話が先ほどございましたけれども、それによってかなり無理な労働実態になっているんじゃないかということもお聞きいたします。
 例えば、二日連続の夜の勤務でなかなか家に帰る余裕がなくなって、二日三日駅で泊まらなきゃならない。そうすると、やはり自宅へ帰るのと違って十分な休息がとれないという問題も出てきたり、労働者の皆さんが自分が休みたいときになかなか休めない、こういう問題も幾つか出ているんじゃないかというふうに思います。
 その点で、今後の労働者の労働条件と安全の問題、その点をどのように考えていらっしゃいますでしょうか。
伊藤参考人 先生から言われるまでもなく、我々輸送業務に当たっている者は、列車の安全運行と、社員が安心、安全に働ける環境というのが一番大事であると思っております。これは、もちろん国鉄時代もそうでありましたし、JR貨物になってからも、また新しい計画においても同じでございます。
 そういう中で、国鉄からかわってJR貨物になってから、各種の効率化というのは当然やってまいりました。これは、まさに国鉄改革の精神である国鉄時代以上に能率よく仕事をしていくという前提は、これは旅客会社も含めてあるわけでございまして、当時全体で十九万人ぐらいいた鉄道事業従事員が、恐らく今は七社集めても十数万人、十一、二万人になっていると思います。というように、まず貨物だけの問題ではなくて、各旅客会社を含めて、国鉄改革の目標である効率的経営ということを目指して頑張ってきているというふうにおとりいただきたいと思います。
 それから、我々の会社もそうでありますが、先ほども申し上げましたように、確かに六年間の後の厳しい状況にさらされている中でいろいろなことをやってまいりましたが、決して単なる労働強化ということではなくて、入れかえ業務のやり方を変えるとか、先ほど申し上げました、いろいろな駅の形が変わったりした中で、それからまた機械化をする中で効率を上げてきている実態でございますので、言うまでもなく、当然社員の安全とかいうことについては頭に置いてまいった次第でございます。
 それで、乗務員の問題も、これまた客貨に分離したという中で、開業当初は客貨でお互いに、ある程度乗務員も乗り合っていくようなケースがかなりあったのでございますが、最近においては各会社の独自性という中で、これは受委託と言っておりますけれども、なるべく受委託をしなくて、自分の会社の仕事は自分でするという形になりつつある中で、いろいろと列車の乗務員のダイヤも変わってきております。
 そういう中で、先生がおっしゃったような形の二回泊まるようなケース、ダブル泊と言っておりますけれども、というのも多少あるわけであります。その中で、社員との関係になりますけれども、列車運行の安全と休養時間、休憩時間の問題等についても、いろいろときめ細かくやっております。そういう面で、安全を無視してとか、乗務員の健康を無視してというようなことは、もちろん毛頭考えておりません。
瀬古委員 ぜひ今後とも御配慮をいただきたいと思います。
 そこで、さらに伊藤参考人と、今度は野尻参考人にお伺いしたいと思います。
 この鉄道貨物輸送の問題では、トラック輸送との過当競争、こういうものも考えられて、荷主からの今後一層の運賃の値下げ、ダンピング、こういうものも考えられる可能性が出てまいります。そういう場合は、今回の法律の改定によって、一層この傾向が強まるんじゃないかというように考えます。
 先ほど野尻先生の方からもお話がございましたように、トラックでは運べない鉄道輸送の重要性というのも私はあると思うんですね。そういう意味では、鉄道輸送の場合には、単に市場競争原理にゆだねられない問題が十分あるというふうに思います。そういう点で、今後、この改定によって、かなり値下げといいますか、そういうものが要求されて、一層困難な状況になっていくんじゃないかということを心配しています。
 それは、例えば先ほど野尻先生もおっしゃいましたけれども、今後のモーダルシフトの問題で、本来ならもっとこれを大きく、環境の面からいっても、世界の大きな流れでいうと、重要視していかなきゃならない。海上輸送もそうですけれども。これが事実上後退していくんじゃないかと。現状でも、今モーダルシフト率がずっと下がってきていますよね。この点、伊藤参考人と野尻参考人に伺いたいと思います。
伊藤参考人 我々の鉄道貨物輸送の大半は、やはり船舶よりもトラックとの競争場裏にあるという実態にございます。トラックは日本に約五万七千社ほどあるわけでありますが、中小企業が多いわけでありまして、そういうトラック会社の実情の中で、我々鉄道貨物輸送と競争しているわけでありますが、これはやはり鉄道とトラックの違いから来る、例えばトラックでいいますと、よく言われているのは、帰りの荷物は大変安く運んでいく形があります。これはこれで、効率をよくということでトラック会社はやっておられますけれども、今度我々鉄道側から見ますと、では、うちも同じように下げてというわけにはまいりません。やはりそこにはコスト意識といいますか、列車別のいろいろな意味の収支管理も行っておりまして、特殊なケースにおいては鉄道が負けざるを得ないという面はあります。決して、トラックがべらぼうな運賃を提示したから、我々が荷主さんにそれを提示しているというようなことではないわけでございます。
 上限認可制がなくなりましても、今後とも、我々の会社はやはり収支というのは頭になきゃいけないわけですから、相手との競争もありますけれども、荷主さんとの対応の関係で適切な運賃を提示していくということになります。
 ただ、問題は、大量にお出しになる荷主さんというのは、やはりトラックは量が少ないわけでございますので、その辺の、輸送機関としての長所が生きるところにおいては我々は強いということがございますから、逆に言えば、かなり高い運賃をもらうこともできるということがございます。
 そういう中で、今後の運賃決定も市場競争の中で闘ってまいりますけれども、そうおかしな形に運賃がなるとは、今私は思っておりません。
野尻参考人 ただいま伊藤参考人がお答えいただいたことと、基本的には私は同じように考えております。
 鉄道にしろトラックにしろ、やはりその特性に合った貨物というものがあると考えられますので、それをどううまく取り込むかということが非常に大切だろうと思っております。さらに、御質問いただいております価格競争、ダンピングという言葉をお使いになられましたけれども、これが今後ともより一層激しくなる可能性は否定できないだろうというふうに考えております。
 その中でいかにモーダルシフトを進めるかということでございますが、現在、環境問題、安全問題等で、鉄道貨物というものが見直されてきておりますが、もうちょっと長期を経ますと、我が国の若年労働力が極端に不足してくるというのは、これはもう明らかなことでありまして、先ほど申し上げましたように、現在はトラック輸送が花形の物流という時代がどこまで続くかということについては大変懸念を抱いているところであります。
 したがいまして、鉄道とトラックの関係というのを、お互いに価格を下げ合う、競合する関係ではなくて、何とか協同してお互いの特性を、補完するという言葉はいかがなことかと思いますけれども、特性に応じた、両者の協同による新しい仕組みというものを何とか考え出していただきたいなというふうに個人的には希望している次第であります。
瀬古委員 中西参考人にお伺いしたいと思います。
 中西さんは、規制緩和はあくまでも手段とおっしゃっていて、目的は、安全で安心して利用できる輸送サービスを安定的に供給できる体制の構築、このように言っていらっしゃいます。
 しかし、現状は、先ほどからも出ていますように、トラック協会の調査だとか、地方議会の意見書の採択を初めとして、物流二法の規制緩和による荷主によるダンピングの強要などが実際には起きているわけですね。その場合に、今かなりトラックの労働者、事業者に対する深刻な影響もございます。
 私も、実際に埼玉から大阪まで長距離のトラックに乗って、実態も調査させていただきました。ほとんど眠らないで、必死で走っていらっしゃる。そして、実際には埼玉―大阪間五万円ぐらいで行って、そのうちから高速道路料金も払う。そして、もちろん帰りの荷物を積んでようやくとんとんになるという、ガソリン代を出しますと。だから、かなり無理な労働実態があるなというふうに思いました。それでも、高速道路を利用する労働者はまだいい方で、今はもう一般道路におりている、こういう状況があるんですね。
 そういう点では、やはり労働者に与える影響というのが、この規制緩和によってさらに深刻になるのではないかということを心配していますし、さらに、私は、中西さんが提案されています産業別最低賃金の問題、これが運賃・料金のダンピングを抑える役割を果たすんじゃないかと。この点での提案についてもお伺いしたいと思います。
中西参考人 今先生から言われた部分というのは、私どもも認識しております。この新しい物流二法が施行されて十年間、私どももこれを守れるようにしっかり努力をしてきました。事業者も恐らく一生懸命やっていただいたと思います。役所も一生懸命やっていただいたと言うけれども、いろいろな発動した経過がないというふうなことから、少し傍観するような状況だったのかなと思います。
 そういうことで、今の経済的規制を守っていても、幾らやったって今の状況はよくならずに、だんだん悪くなってくるというふうな認識のもとに先ほどからいろいろなことをそこに書かせてもらったり、答えさせていただいておるとおり、今現在あるルールをどういうふうにしっかり守るか、守れない人は出ていっていただくかという新たなシステムを構築したい、それを構築するように今度の改正でやっていただきたいというふうに思っております。
 それからもう一点、産別最賃の問題ですが、これは規制緩和の時代で、トラック、タクシー、バスもそうですが、この労働集約産業においてはどうしても必要なことです。トラックの場合は、車庫が要ったり営業所があったりして資本が少し大きいですから、全コストに占める労働の割合というのは五〇か六〇%ぐらいになっておりますが、これらの固定的なものというのは動きませんから、何か節約しよう。いろいろなことをするということになると、すぐ人件費にきますから、この人件費の部分を最低どれだけにしておかないかぬかということは、ぜひ私どもとしてはこれは確立したいと思うんですが、これも事業者の合意があって初めてできる今の法体系になっておるので、なかなか難しいんです。
 そういうことから、先生方にもお願いですが、私どもとしては、こういう時代、労働者が安全に毎日楽しく働いていけるというふうなことで最低限必要な条件だと思いますので、ぜひ応援をしていただければと思います。
瀬古委員 最後の質問になります。伊藤参考人にお伺いしたいと思うんです。
 JR貨物会社は、ニューチャレンジ21計画、先ほど出てきましたけれども、これをつくるに当たって、国土交通省から何度も計画変更を申し渡されたと組合の場などであなたたちが言っておられるそうです。国土交通省からは、全国ネットワークにこだわるな、赤字になる路線を廃止すべきだと繰り返し言われたというように、あなたたちが労働組合との話し合いの場で言っていらっしゃるということをお聞きして、大変びっくりいたしました。これは事実でしょうか。
伊藤参考人 今先生がおっしゃられたことを、私、社長としてはそういうお話はありません。ありませんといいますか、今初めて聞くような感じであります。
 言うまでもなく、大変厳しい経営状況の中で、国土交通省といろいろな勉強会を持ったことは事実であります。今回のニューチャレンジ21をつくるに当たりまして、我々自身も、我々の中だけで物事を見るのではなくて、いわゆる管理監督にある国土交通省の御意見もいろいろと参考にしながらつくり上げてきたという実態でありまして、それを今、どういう場面でそういう話が出たか私は知りませんが、組合にそういう話をしたというようなことを今初めて聞いてびっくりしたのでありますが、そういうことは私はないと思います。
瀬古委員 ありがとうございました。終わります。
久保委員長 日森文尋君。
日森委員 社民党の日森文尋でございます。
 きょうは御三方の参考人、大変御苦労さまでございます。それでは座って質問させていただきます。
 最初に、伊藤さんに二点ほどお伺いをしたいことがございます。
 一つは、先ほど来から出ていますが、JR貨物の経営実態の関係なんですが、八期連続赤字になった、しかし、昨年度は若干の黒字に転向して、経営状態は徐々に好転をしているのではないかというお話でございました。
 しかし、実際に今回、運賃・料金の関係や、それから規制緩和がずっとかかっていくわけです。例えば、国鉄改革の理念でいえば、健全経営がきちんとできた、そういう段階でやろうじゃないかとか、完全民営化、純民営化という展望が開けた段階でとかいうことが言われてきたと思うんです。
 実際には、例えば、承継段階で膨大な債務を引き継いだという負の遺産もずっと抱えているわけですよね。それから、六割ぐらいが旧国鉄時代の、例えば、機関車なんかというのはいまだに使用せざるを得ない。これから現下の情勢の中でニーズにこたえていくとすると、新たな機関車を購入するとか、それだけでも二千億とか数千億のお金が、投資がかかるんではないかというふうに言われていますね。そうすると、これからも借入金は大分ふえていかざるを得ないということをちょっと心配しているんです。
 そこで、新フレイト21という前の中期計画がございまして、それからニューチャレンジ21、新たな中期計画に変わったんですが、新フレイト21は目標が達成できなかったということで、新たな中期計画がニューチャレンジ21ということでつくられたというふうに判断しているんですが、一つは、どういう総括をされてきたのか。なぜ新フレイト21は目標を達成できなかったのか。できなかった原因ということについてどうお考えになっているのかということと、それを踏まえて恐らくニューチャレンジ21という中期計画をつくられたと思うんですが、まずその辺の経緯、そして、ニューチャレンジ21計画に基づいてどの程度貨物会社が改革の理念である純民営化の展望を切り開くことができるのかということについてが一点です。
 それからもう一点は、先ほど来お話がございまいした、一万二千人が六千人になりましたと伊藤社長がおっしゃったとおり、血の出るような努力をしている。大変御苦労されていると思うのです。それは社長以下社員の方々も本当に大変な御苦労をされて、三年間ベアゼロとか、JR他社から比べたら一時金もずっと低い額に抑えられているということで、みんな我慢して、一生懸命になって、一致団結して、ともかく会社の健全経営を達成しようということになっているんだと思うんです。
 ところが、そこにちょっと水を差すような話を実はお聞きしました。労働協約にない二%の成績率というものを、これは特例ということらしいんですが、それを導入して、そして、去年ですか、夏季・年末手当で適用したと。それはそれで結構なんです。結構なんですが、しかし、その適用に当たって、その支給に当たって、社員の所属する組合、これによってかなり著しい差別があったという話も聞いているんです。
 一体どういう基準でその二%を出しているのかわからないという話も聞いていますし、仮にそういうことがあると、これから六千社員が一致団結して、JR貨物を本当に健全経営に立ち直らせていくぞという決意が、むしろ逆に内部でいろいろなそごが生じて、社員の団結もできなくなってしまう、そういうことになるんじゃないかと思うんです。私は、仮にそういうことがあったとしたら、これは非常に大きな問題だというふうに考えておるんです。私は、どの組合がどうかということは申し上げませんけれども、明らかにそういう差別があるのかどうなのか、まずその一点。
 もし、二%の成績率、それは原資は八千万とか一億とか言われているようですが、それが仮にあるとすれば、今までベアゼロとかずっとやってきたんだけれども、そういうお金があるんだったらば、それは社員の士気を高めるために、一時金にもうちょっと上積みしようじゃないかと。例えば、それはばらしていくと〇・〇六カ月分ぐらいの額になるそうなんですよ。そうして、苦しいけれども、ぎりぎりのところで皆さん方全員にそういう手当を出しましょう、だからこれからも一生懸命頑張ろうというふうになぜならないで、そういうことが行われてきたのか、ちょっと疑問に思っていますので、その二点について最初にお聞きをしたいと思います。
伊藤参考人 まず、新フレイト21計画が計画どおりいかなかったのではないかということでございますが、これは実は半分正しく半分間違っているような感じがします。
 と申しますのは、一つは、収入面でははっきり申し上げてかなり大きく乖離が生じました。当初、新フレイト21をつくったとき、まずそもそもその前に旧フレイト21というのがあるんでございますが、先生御案内のとおり、あの大きな阪神・淡路大震災があって全く大きく変化してしまったものですから、平成九年に改めてつくり直したのが新フレイト21という計画でございます。それにしましても、当時の状況において現在の日本の経済状況を読み切れなかったと言えばそれまででございますが、収入、特に輸送量の計画等については、かなりのそごがあったと思っております。これはまさに経営側の判断ミスだったと思います。
 しかし一方、それはそれとして、まさに入るをはかって出るを制するではございませんが、我々も経営をしているわけでございますので、そういう中で、新フレイト21計画で考えていた、またはそこになかったものも含めて、相当な効率化等々の努力はしたつもりでございます。そういう面では、ほぼ要員体制の関係については我々が当時考えていた体制にできたというふうに思っております。
 ただ、収支という面で見ますと、今申し上げましたように、収入面の大きな乖離がございますものですから、当時、出口において三十億円ぐらいの黒字を出そうという目標があったんでございますが、これについて残念ながら出せなかったことを、さっき申し上げましたように、二・八億円の黒字でございますから十分の一でございます。そういう面では、先ほど申し上げましたように、大変厳しい状況に社員の方々に我慢していただいたということになります。
 そういうことでありますけれども、我々のねらいは、昨年、JR本州三社が完全民営化の道筋、つまり会社法の改正があったんでございますけれども、我々七つの会社がすべて完全民営化して初めて国鉄改革が終わるという考えのもとに今やっております。
 そういう中で、新フレイト21が昨年終わりまして、その過程において、いよいよ黒字になったときからどのように完全民営化の道筋へ持っていくかということが課題でございまして、当然、言うまでもなく、去年黒字で来年赤字というわけにはもちろんいきません。このニューチャレンジ21の基本的なねらいというのは、まずこの黒字の体質というのをきちっと定着化させ、多少の災害があったり多少の経済変動があっても揺るがないような形の、まず体質転換をしていこうというのがこの三年間の計画でございます。
 その段階で、まだ残念ながら、株式上場が完全民営化というならば、いつの時点で完全民営化をできるということをまだ言える状況にはございませんけれども、私の気持ちとしては、三年間終わった後、つまりニューチャレンジ21を終えて黒字体質の定着化を図った段階で、その見通しが言えるような状況になっていればいいのかなというようなことを考えて今やっているところでございます。それが、新フレイト21とニューチャレンジ21とのつながりでございます。
 それから、続きまして二点目の御質問でございますが、これはいろいろの民間会社にもあるような制度だと思いますけれども、ボーナス等を支給するときに、いわゆる業績評価を行って、よく働いている職員に差をつけるといいますか、業績評価で、成績率ともよく言われていますが、そういうものがございます。これはどこの会社でもやっておられます。我々の会社も就業規則の中に、特に優秀な社員というようないろいろな決め方で、一五%、一〇%、五%という増額率、増率ができるような仕組みというのはございます。
 この率を適用してこれまでやってまいりましたが、昨年度、先生からも御指摘ございましたように、厳しい経営の中でベアゼロ、賞与も、賞与は当然交渉の中で一・五カ月という基準額は決めるわけでございますけれども、そういう厳しい数字の中で、何とか少しすそ野を広げてあげたいという気持ちで二%という数字をつくりました。一五%、一〇%、五%よりは、当然ですが二%の場合の方がすそ野が広がるということでございます。
 そういう面での制度をつくることによって、これはもちろん組合と協議を行い、協定も結びまして実施したわけでございまして、これは、言うまでもなく個人評価でやるわけでありまして、どこの労働組合がどうだということではなくて、あくまでも職場で働いているそれぞれの職員の、それはある一定の期間でございますけれども、一定の期間における業績評価を五%、一〇%、一五%、同じような形で行って適用するということでございますので、どこの組合がどうだということを考えたものでは全くないことであります。
 以上でございます。
日森委員 その話はもう時間がなくなりましたので続けませんが、事実、労働組合の調査によると、明らかに差別がある。私もその資料を見せていただきましたけれども。そういうことであると、せっかくこれからみんなで前に一歩出ようということにそごを来すということで、大変心配しているんです。その意味で、そういう発言があったということをぜひ含んでいただいて、もし問題があれば、それは公平公正、そういう取り扱いをきちんとするようにお願いをしておきたいと思います。
 時間がもうありませんので、中西先生に聞きたかったんですが、ちょっとごめんなさい。
 野尻先生にちょっとお聞きしたいんです。
 私も、先ほどの先生のお話で、全くそうだというふうに思ったんですが、環境問題とそれから安全問題。最初に、今度の法改正について期待と不安が両方ありますというふうに先生おっしゃいまして、私もまさにそのとおりだと思うんです。私は不安の方が大きいんですが。
 その意味で、一つおっしゃったのは、環境、安全問題ですね。これについて、規制では行政処分等を強めることによって新しい最低限のルールをつくる必要があるのではないか。これは私から考えると、規制緩和をしつつ新たな規制をきちんとやらないと、安全問題、それから労働条件などもそうなんですが、これは守れないような実態が今あるということを先生自身が御認識なさっていらっしゃるというふうに思うんです。
 具体的にどういうことが今手だてとして考えられるのか。モーダルシフトの問題も先ほど質問が出ましたけれども、それも含めて、環境、安全、労働条件等についてきちんと、これ以上の劣化をさせないとかいうことについてどのような手だてがおありになるか。先生の個人的な見解で結構なんですが、お聞かせいただけたらありがたいと思っています。
野尻参考人 全く個人的でございますが、特に労働条件とか安全問題。環境問題は若干違うかもしれませんが。根本は、先ほどどなたかの先生の御質問にありましたけれども、トラックについて言えば、例えば契約書とか契約内容、約束した内容が書面化されていないというような事実がございまして、その結果、例えば運賃なんかがどんどん下がっていってしまう。そういう中で、個々の事業者はある意味ではいたし方なくというんでしょうか、弱い部分にしわ寄せをしていく。労働条件あるいは安全規制の面での言ってみれば手抜きをするような局面というのを私自身は認識してございます。
 そういう中で、新しい時代の事業法ができるわけで、とにかく最低限のルール、つまり社会的規制をきっちり、だれでも平等に、公平にといいますか、イコールに守らせようという仕組みをどうつくり上げるか。
 たまたま諸外国の勉強もさせていただいておりますが、いずれの国でも、例えば、我が国では国土交通省でありますけれども、旧運輸省。しかし、諸外国では交通省というふうに呼ぶことが多くて、その交通省の中身は、単に許認可だけではなくて、例えば労働条件等の規制というのも全部一つの役所でやっているんですね。そういうことも、これから最低限の社会的ルールを守っていただくというための一つのアイデアかなというふうに考えておる次第でございます。
 余りお答えにならなくて申しわけございませんでした。
日森委員 時間が来てしまいましたので、ありがとうございました。
久保委員長 西川太一郎君。
西川(太)委員 三人の参考人の皆様、大変御苦労さまでございます。
 きょうは、私は伊藤参考人にだけ質問をさせていただく予定でありますので、お許しをいただきたいと思いますが、しかし、先ほどちょっと席を外しておりまして、テレビで見ておりましたら、中西参考人が私がお尋ねすることについて言及をしていただいておりますし、いただいた資料にもそのことがございました。
 その御指摘を踏まえて質問いたしますので、中西参考人にも、質問はしませんけれども、ちょっと仁義を切っておかなきゃいかぬと思って、お名前を使わせていただきますが、いただいた資料の中に、中西さんが「特に、旅客会社優先で「売れる時間帯にダイヤが引けない」現状では、家電をはじめ各種リサイクル法の施行によって、ますます増加する静脈物流について、環境にやさしい鉄道輸送が最適で、ここに活路を見出すのも一つの方法ではないか。」こう御指摘になっておられまして、全くその線に沿っての質問でございますので、御発言をなさった御本人に聞かないのは失礼かも存じませんけれども、しかし、経営側にこのことをお尋ねしたい、こういうふうに思いますので、伊藤さんに伺いたいと思っております。
 実は、平成十三年の六月二十六日に閣議決定が行われた今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針の中で、いわゆる循環型経済社会の構築というものを重視していこう、こういうことでありまして、そして、新総合物流施策大綱というものを十三年七月六日に、これも閣議決定をしているわけであります。
 これらを見ますと、鉄道を活用した廃棄物リサイクル資源の輸送の実施状況というのは、現在でも、北海道の北見に全国から蛍光灯の廃棄物を集めたり、そのほかいろいろ、時間がないので例は省略いたしますけれども、鉄道がこうしたことに大変貢献をしていただいているわけでありますし、今後もこのことについてはやっていただかなければならない、こう思うわけであります。
 そこで、お尋ねをいたすわけでございますが、JR貨物において、現在、いわゆる静脈物流システムについてはどう取り組んでおられるのかということ。既に、今申し上げましたように、私が承知しておる中でも幾つかの例があるわけでございますけれども、現状について改めて御教示をいただきたい、こう思うわけであります。
    〔委員長退席、実川委員長代理着席〕
伊藤参考人 お答えいたします。
 当社においても、平成五年ぐらいから、いわゆる廃棄物問題、これは一般廃棄物、産業廃棄物と生活廃棄物に分かれておりますけれども、廃棄物輸送についてのいろいろなお問い合わせがございました。そういうこともありまして、平成九年に、本社に窓口をきちんとつくろうということで、環境事業室をつくりました。十年にはさらに拡大して環境事業部というところでもって、現在、その種のリサイクル物流も含めて扱っているセクションがまずございます。
 先ほど先生がおっしゃった北海道の例でございますけれども、全国の電池、それから蛍光灯についてはほとんどすべて鉄道のコンテナで運ばれているというような現状でございます。
 我々自身、特に家電製品等のリサイクル問題については、足が長い、つまり輸送距離が長いものは、これは鉄道の分野に来るということを一つは考えております。
 それから、必ずしもこの種のものは急いで行くものではないわけでございますし、きょう行かなきゃいけないものでもないという意味で、鉄道には日別波動等がございますので、輸送力にももちろん限界がございますから、料金価格の問題もございますが、例えば、土曜日、日曜日のすいた列車で運ぶというようなことも考えられるのかなというような勉強もしております。
 それから、あわせて申し上げますけれども、既に十年に東京ターミナルというところが、大変大きな、全国一の駅でございますが、そこで、あるコンピューターメーカーのコンピューター部品のリサイクルをする場所を駅の中に設置いたしまして、そこに一部が、全部ではございませんけれども、コンテナで古いコンピューター機械が来まして、そこで、工場で処理する。何と九九%リサイクルできるような姿だと聞いていますけれども、そういうようなことについても、我々としては協力しているつもりでございます。
    〔実川委員長代理退席、委員長着席〕
西川(太)委員 結局、循環型経済社会をつくる最終処分地または処理工場、こういうところに有価物であるリサイクル資源を運ぶ、こういう非常に大事な機能を鉄道貨物が担う、こういうことであります。
 自動車リサイクル法がきょう衆議院を通過する予定でありますけれども、これは今に競合先の自動車が貨物列車に廃棄物になって載っていくということもあるんじゃないか。これは決して皮肉で言っているんじゃなくて、そういうこともあるんじゃないかと私は想像しているわけであります。
 ただ、問題は、そういう循環型経済社会を充実させていくためには、これが機能しなければいけない。そうすると、通常の貨物を出すのとは違って、荷主をなかなか集めにくいといいますか、やはり自治体などで廃棄物または資源回収、こういうことをしているところと連携をとりながら営業活動をしていく必要があるんじゃないか、こんなふうに私は思っております。
 ちなみに、私の選挙区に隅田川貨物ヤードがあるわけでありまして、私の子供のころは、父が経営しております会社は、専らマル通さんと言ったんですが、日通さんが三輪トラックで荷物を引き取りに来てくれる。私の家業は布団屋でありますので、東北地方に大量にそういうものを出す場合には、当時私もアルバイトを、高校生ですが、おやじの会社でしましたけれども、鉄道運送が非常に盛んだったわけですね。それが一時いろいろなことで自動車に負けてしまった、こういうことでありますが、京都議定書の問題等でモーダルシフトということで、またその機能が大いに期待できる、こういうことだろうと思うわけであります。
 この点について、自治体等への働きかけ、いわゆる荷主を開拓する、こういう静脈物流の営業活動といいますか、これをどんなふうに考えておられるか、伺いたいと思います。
伊藤参考人 いわゆる家電製品等のリサイクルとはちょっと違いますけれども、既に平成七年に、これはかなり当時新聞でも取り上げました、川崎市で生活廃棄物の市内の輸送を専用列車をつくって、わずか二十三キロでございますけれども、川崎市は南北に長いということもあって、市と協力し合って、年間約十万トンでございますけれども、列車で輸送する。つまり、それによってごみを収集する車が、四百台の車を川崎市は持っていたようでありますが、五十台ほど削減できた、CO2の削減効果もありましたというようなお話があって、たしか環境庁から当時二億円の奨励金というようなものももらったようなことも、当時、記事に出ておりました。
 そういうような意味の、いわゆる産業廃棄物というより生活廃棄物系のものについては、川崎市の例もありまして、かなり全国の市町村からいろいろと問い合わせがございます。そういうものについて、いろいろと、これまでも受けているのもありますし、現在進行形のものもございます。
 一方、いわゆる産業廃棄物等については、処理業者といわゆる共同営業を展開するということが非常に大事でございまして、いろいろ法律がございますものですから、安全性の問題とかいろいろな意味で、処理業者と連携をとっております。
 現在のところ、御利用いただいているお客様からは、貨物会社の輸送システムは安全確実だという高い評価もいただいているところでございます。いずれ、今先生がおっしゃったように、処分場が不足してくるという事態になりますと、さっき申し上げましたように、近いところはトラックということになりますが、広域処理ということになりますと、かなりの距離をそういうものが動くということになりますと、鉄道のまさに分野でございます。我々も積極的に、まさに今おっしゃった静脈物流に取り組もうと思っています。
 ちなみに数字でございますけれども、既に今から五年前の倍、量的に倍です。それから、やっております量が、昨年が三十八万トンぐらいやりましたが、ことしの計画が五十一万トンぐらいございます。そのように、ニューチャレンジ21の中でもこの静脈物流というのは一つの商品として位置づけておりまして、五年前の三倍ぐらいにまで持っていくような計画を持っております。
西川(太)委員 もう時間ですので、最後に要望をして終わりたいと思いますが、ぜひ、こういう分野、新規開拓をしていただくと同時に、形状が一定でありませんし、荷姿がなかなか複雑であったり、中には危険なものもあるかもしれません。働く方々の安全性ということを十分に会社側も考慮をされて、ぜひ、この分野の新規開拓を進めていただきたい、機能を担っていただきたいとお願いをして、質問を終わりたいと思います。
 どうもありがとうございました。
久保委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、参考人の方々に一言申し上げます。
 本日は、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。
 参考人の方々は御退席いただいて結構でございます。
 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
久保委員長 速記を起こしてください。
    ―――――――――――――
久保委員長 引き続き、内閣提出、参議院送付、鉄道事業法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省総合政策局長岩村敬君、鉄道局長石川裕己君、自動車交通局長洞駿君、航空局長深谷憲一君及び政策統括官丸山博君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
久保委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
久保委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。今田保典君。
今田委員 民主党の今田保典でございます。
 一昨日の五日の委員会では、トラック関係の問題点を中心にして、また、これまでのいろいろなトラック事業に対しての規制緩和の問題点について御指摘をさせていただいたわけでありますが、きょうは、そういった意味で、私の意見といいますか、こうあるべきだというものを申し上げたい、こういうふうに思っております。
 そこで、これからのトラック事業規制のあり方として、私は、その最大目標を公正競争ということでやっていかなければならない、あるいは事業管理システムとかそういったものを中心にしてやるべきだというような考えのもとで御質問をさせていただきたいというふうに思います。
 まず一つは、事業管理システムの確立でございますけれども、簡単に言えば、事業者台帳の電子化というものが必要なんではないかというふうに思います。参入のときから定期的にパソコンに報告を義務づけする、こういうことでございます。そして、この情報は一般に公開するものということで、だれでもアクセスできるものとしたい、こういう考え方でございます。そうなれば、問題となりました社会保険への加入状況などは、当然一目瞭然でございまして、そういうシステムを確立すべきではないのかなというふうに思うわけであります。
 何といっても、トラック事業者数は五万五千という膨大な数になっておるわけでありますから、そういった事業者を把握するには、やはり、先ほど言ったように、事業管理システムというものをきちっと確立していく必要があるのではないかというふうに思うんですが、どうお考えなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
洞政府参考人 トラック事業者に対する事業者台帳の電子化につきまして既に着手しておりまして、国土交通省におきましては、平成十年度から道路運送関係行政情報システム構築の一環として進めてきておりまして、平成十三年度までに営業所や車両数などの事業者情報を全国規模でデータベース化したところでございます。
 さらに、この電子化されました事業者台帳を今後さらに活用いたしまして、これに事故や苦情の情報、労働基準局あるいは各県の公安委員会、それから適正化事業実施機関等の関係機関から得られました情報、監査、処分の情報等をさらにデータベース化して、これを、監査対象事業者の抽出であるとかあるいは重点監査項目の抽出等を行うための電子システムの構築を今年度から二カ年で整備することとしております。
 さらに、その後は、これをさらに進めて、監査の効率化を図るという意味からも、事業者等からの報告をこの監査システム等につなげる等のいろいろな工夫を今後展開していきたいと思っております。
今田委員 次に、管理専門機関というものをつくる必要があるというようなことで、十一年前のトラック事業法が改正された段階で設置されたわけでありますが、いろいろな方々からお聞きしますと、どうも評判は余りよくないということが結論的に言えるんではないかというふうに思います。関係者は非常に努力をされておるようでありますけれども、一言で言えば中途半端だ、こういうふうに言わざるを得ないわけでございます。
 しかし、現実的には、この適正化実施機関を改革してこれを活用するしかないというふうに私は思います。そのためには、まず、独立性の確保というものが必要だろう、さらにまたトラック協会やいろいろな行政機関との連携を十分にしないと成り立たないのではないかというふうに思うわけでございます。
 いずれにしろ、現在のトラック協会と適正化実施機関というものが一緒になっているんだというような、第三者から見ればそういうふうに思われがちなわけですが、実態は、これは独立性が強いはずですから、やはり完全に分離すべきではないのかというようなことでございます。先ほど、ちょっと参考人の方も言っておられましたけれども、現在の方式ではそういった誤解を招いているんだというようなこともありました。
 それから、権限の強化の問題でありますが、改正案では説明や資料要求の権限は与えることにしておりますけれども、しかし、これぐらいのことは当たり前のことでございまして、直接の処罰権限というものはどうなっているのか、あるいはその一歩手前の警告ぐらいの権限を与えるべきではないのかというような感じがするわけでありますけれども、その事業管理システムとかあるいは適正化実施機関とか、そういったものを改革する意味で、今ほど申し上げたようなことはどのようにお考えなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
洞政府参考人 貨物自動車運送適正化事業実施機関についてのお尋ねでございますが、この実施機関は、貨物自動車運送事業法に基づきまして、トラック業界がみずから主体的に輸送の安全を阻害する行為の防止等に関するトラック事業者への指導、それからトラック事業者に関する苦情の処理等のトラック事業の適正化のための事業を実施するための機関でございます。
 こういった事業を全国的に実施するためには、一定の組織、それから人員、それから財政的な基礎、それから適正化指導のためのノウハウが必要でございまして、そういう観点から見ますと、トラック協会はこれまでこの適正化事業を適切に実施してきた実績を有しているところでございます。そういう観点から、国土交通省といたしましては、現段階においては、トラック協会が適正化事業を運営するのにふさわしい機関であると考えております。
 しかしながら、適正化事業をより効率的かつ強力に推進するためには、適正化実施機関の独立性、中立性を高めることが必要であるという観点から、例えば、適正化事業の事業内容を幅広い視点からチェックする第三者機関の設置や、予算、決算の区分経理等の実施等、いろいろな工夫を行って、その独立性、中立性を高める方向で改革していきたいと思っております。
 また、事業実施機関の権限につきましては、その位置づけがトラック事業の適正化を事業者が主体となって推進するために設立された民間団体ということから、行政処分を行う権限までは与えられておらないのは当然でございますが、今回の改正によりまして、事業者に必要な資料の提出等を求められるようになったことや、今後、この適正化事業機関の指導をもとに、国がその後速やかに監査に入る等、国との連携を強化することによって、そして速やかな行政処分につなげることによって、実質的な適正化事業機関の権限強化に資するような効果が得られると考えております。
 また、先ほど申し上げました電子台帳によります事業者管理システムにつきましては、国土交通省がこれは推進しているところでございますけれども、監査情報、処分情報等の情報管理の観点からも、この民間団体であります実施機関ではなくて、国が主体的に管理するのが適当ではないかと現時点では考えております。
 ただし、この実施機関との連携の強化という観点からは、実施機関もコンピューターによるデータベースというのを整備しておりますので、相互のデータベースの間で必要な範囲内での情報の有効活用を大いに進めていくということが必要ではないかと考えております。
今田委員 次に、ルール違反者への罰則強化ですが、今回の法案の内容を見ますと、今までよりさらに厳しく、懲役一年を二年以下にするとか、あるいは罰金の百万円を三百万にするとか、いわば三倍になるわけです。しかし、今の世の中、こういう額で本当に皆さんがしまったということを思うのかどうかということを思えば、私はやや心配なんですね。
 ちなみに、農水省で食品の虚偽表示についていろいろ問題になっておりますけれども、これなんかは罰金五十万円から一気に一億円、こういうことになっておるようでありまして、いわゆる一罰百戒の信念で、むしろ厳しくやるべきではないかというような私の考え方でございますが、この行政処分についてももう少し強化すべきではないのか。そうでなければ、なかなか守ってもらえないのではないかというような感じがするわけですが、この点、どうですか。
洞政府参考人 罰金、それから処分基準の強化についてのお尋ねでございます。
 今回引き上げられました罰金額につきましては、先生がおっしゃいましたとおり三倍から、五倍というのもございますが、近年の物価上昇、あるいは同様にこのような参入許可制をとっている道路運送法等の他の法令の罰金額との均衡を考慮して今回の引き上げに至ったものでございまして、そういう意味では、相場としては適切な額ではないかと考えております。
 一方で、行政処分の基準につきましては、昨年の九月にもこの見直しを行い、一部引き上げを行ったところでございますが、今回の法改正を踏まえまして、下請事業者に安全を阻害する指示を行った元請事業者であるとか、あるいは重大事故の惹起者等に対する処分の強化など、さらなる全般的な見直し、強化を図っていくこととしておりまして、これらによって、悪質な事業者に対する取り締まりを一層強化してまいりたいと考えております。
今田委員 時間もありませんので、もう一点だけお伺いします。ちょっと今回の法案とはかけ離れた問題ですが、しかし、こういった法案を出されるまでのいろいろな機関で検討される、そういった意味で、問題点としてちょっとお聞きしたいんですが。
 交通政策審議会というものがあります。これは旧運輸省では運輸政策審議会といっておったわけですが、これが再編になりまして、交通政策審議会、こういうふうになりました。当初はかなりの人数がおって、四十五名おったのが、今は二十六名ですか、そういったことで縮小されて、密度の濃い委員会にしよう、こういうことだろうというふうに思いますが、それに対しては私はある程度評価をするんですが、このメンバーを見ますと、余りにも学者に偏り過ぎてはいないのか、こういうんですね。
 こういう複雑な運輸事業というのは、先ほどからいろいろな問題があったように、複雑きわまりないものでございます。したがって、この審議会には、そういった専門的なものにかかわっている人たちの意見というものを取り入れるために、私は入れるべきではないのか、こういうことでございます。
 学者の方々には大変失礼ですが、へ理屈で物事を解決できれば世の中簡単なわけでありますけれども、そうではないんですよ。現実はどうなっているんだ、そのことをじっくりとわかっていなければ論議できないというのが私の持論でございます。
 そういった意味からして、どうも偏り過ぎている。むしろ、利用者側の代表、あるいは企業を起こされている代表、あるいはそこで働く方々の意見、そういったものを幅広く意見として取り入れる審議会であるべきだ、こういうふうに思うわけですが、きょうは岩村総合政策局長がおりますので、このことについてお伺いをしたいと思います。
岩村政府参考人 交通政策審議会の委員でございますが、先生御指摘のように、交通政策審議会令に基づきまして、学識経験のある方の中から国土交通大臣が任命をするわけでございます。そして、今御指摘がありましたように、従来、運輸政策審議会のときは四十五人という委員でございましたが、少数精鋭で密度の濃い議論ということで、絞っておりまして、現在、御指摘の大学の教授、学界から、さらには報道関係、そして経済界、そして労働組合、その他学識経験を有する方、合計で二十六名の方々に委員になっていただいているわけでございます。
 それの具体的な審議に当たってですが、分科会を設けて議論をしているわけでございますが、分科会においても少人数で精力的に議論を行おうということで、審議会委員の中から、審議内容を考えてふさわしいと考えられる方々に分科会の委員になっていただく、そして、必要に応じて臨時委員も指名をしているわけでございます。
 これまで開催されている四つの分科会の委員には、労働者の代表といいますか、労働組合の代表の方は入っていないわけでございますが、今先生からの御指摘もございました現場の話が大事だということで、ヒアリングなどの場を通じて、労働組合の方々の意見も伺ってまいりたいというふうに思っております。
 また、今後新たに分科会を開催する際には、審議内容に応じて、テーマにふさわしい学識経験を有する方、委員あるいは臨時委員の方々に審議に参加いただけるように人選はしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
今田委員 時間ですので終わりますが、ぜひひとつ、私の性格もあるんですが、とにかく現場の声を聞くというのがやはり国の政策として必要なんですよ。ですから、ぜひひとつそういった意味で御検討いただければ大変ありがたい、このことを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
久保委員長 赤羽一嘉君。
赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。
 きょうは、与党を代表して総括的な質疑をさせていただきたいと思いますが、十五分間という短い時間でございますので、主に貨物自動車運送事業法について御質問をさせていただきたいと思います。
 これまで運賃については事前届け出制というものが定められていたわけですが、極めて競争が激しいトラック市場の実態に対して、なかなかこの事前届け出制というものがそぐわなくなった。その実勢に合わせて、経済規制緩和という流れの中で、今回法改正が行われるわけであります。
 その意味で、先ほどの参考人質疑でも複数の参考人の方が御指摘になられたところでございますが、事後チェックをどう整備していくのか、事後チェックをどう整えていくのかということが大事だ、こういった御指摘がございました。
 国土交通省の管轄だと思いますが、貨物自動車運送事業及び貨物運送取扱事業の在り方に関する懇談会が平成十三年十二月十三日にまとめられました「今後のトラック事業及び貨物運送取扱事業の在り方について」というこの報告の中でも、公平な競争条件の確保に向けた事後チェック体制の強化が必要だというふうに述べられております。
 この点について、先ほどの質問に対して、ちょっと局長の御答弁の中で、あれということがあったわけですが、現在では本法三十八条で貨物自動車運送適正化事業実施機関はトラック協会だということが定められているわけであって、ここに対する評価が、先ほどの政府の答弁ですと、最適だという認識である、こういうふうな評価であったわけです。
 しかし、この懇談会での指摘もありますし、多分、実態の指摘も、私なんかもそう感じているんですが、トラック協会自体は、やはり内部組織である、民間の自主的な組織であるがゆえに、当然ながら処分権限がない、こういったこともあって、現実にはトラック事業者に対して厳正な指導を行いにくいという面があるのではないか、こういう指摘もされておりますし、私もそう感じておるわけであります。
 この点について、何らかの形でその独立性、中立性を高めていく必要があるというふうな指摘もあり、先ほどの参考人の御提案では、これを、トラック協会ではなくて、トラック協会から分離して、財団法人貨物自動車運送事業振興センターに移して、別の機関として、別のところでそういうことを推進していったらどうか、このような具体的な提案もあるようでありますが、こういったことについて、どのような御見解なのか、お答えをいただきたいと思います。
洞政府参考人 貨物自動車運送適正化事業実施機関の独立性、中立性を高めていくための具体的な方策について申し上げます。
 先ほど私申し上げましたが、トラック協会が最善であるというふうな受けとめ方をされるような、そういう説明になったかとも思いますが、現段階では、トラック協会をおいてほかにこういったことをやる適切な機関はなかなかないということでございます。それから、これをさらに、ほかの団体にする、あるいは新たな団体をつくるという上においては、いろいろ越えなきゃいけない高いハードルがあるということも事実でございます。
 それで、国土交通省といたしまして、適正化事業の実施をより効率的かつ強力に推進するために、そして今の実施機関がやっている事業についていろいろ問題点があるということを踏まえまして、同機関の独立性、中立性を高めることがぜひとも必要であるということを考えております。
 そのために、例えば、先ほど申しましたが、適正化事業の事業内容を幅広い視点からチェックする第三者機関を新たに設置して、事業計画であるとか業務の執行状況であるとか、そういったものをチェックしてもらう。
 それから、予算、決算というものは、今は地区のトラック協会と一体となって経理されているわけでございますけれども、その辺をしっかり区分経理化を実施する。
 それから、今はトラック協会の中に事業実施本部という部が置かれている、そういう組織形態になっておりますけれども、トラック協会の内部組織から完全に独立した専任の責任者、本部長というものを置いて、事業を実施するような実施本部長制の導入を含めた執行体制の整備というものを検討してまいりたいと考えております。
 また、トラック事業者に対してより適切な指導が行われますように、適正化指導員につきましては、トラック協会のほかの業務から切り離して専任化するということを指導してきたところでございますけれども、今後はこの専任化を、今三百人ぐらいいる中の二百数十人が専任化されていますけれども、これを三百人の専任化を進めますと同時に、この指導員自体を三百人からさらに拡大するという方向で、いろいろ工夫しまして、こういったことをもって独立性とか中立性の方向により近づいていきたいということで、考えているところでございます。
赤羽委員 この事前届け出制から、事後チェック体制をどう整えるか。今回の法改正がまた形式にならないためにも大事なことだと思いますので、ぜひしっかり取り組んでいただきたいというふうに思います。
 次に、運行管理における元請下請関係のあり方に関しましては、今回の法改正で、運行管理は、従来どおり下請がそのすべてを行って、その責任を負うこととする、元請は下請による運行管理を阻害してはならないということを法文上明確化されるというふうに伺っておりますが、これは、法文上明確化することで元請下請に関して指摘される問題が解決されるのかどうか。かなりこれは多重の下請構造にもなっているとか、全体の一部だとは思いますが、大変悪質な部分もあるというようにも伺っておりますが、この点についての対策はどう考えていらっしゃるのでしょうか。
洞政府参考人 トラック事業におきましては、一般的に、元請が下請に対して本来行ってはならない運行面での指示を具体的に行っているケースが多く見られます。昨年行いました私どものアンケート調査の結果を見ましても、元請の運行面での依頼、指示状況を見てみますと、いつも指示をしているというものから具体的な依頼や指示をすることが多いというものを合わせますと、五〇%前後と非常に高くなっているわけでございます。こういう元請からの指示のうち、無理な指示というものが事故につながる場合も多く、元請下請運送別の重大事故発生状況の調査結果というものを見てみましても、下請が起こしました重大事故の比率が約四〇%と非常に高くなっているところでございます。
 今回の法改正におきましては、これらの状況を踏まえまして、トラック事業の元請下請関係の改善を図ることを目的として、トラック事業者自身が元請となって下請のトラック事業者を利用するような場合につきまして、下請の行う運行管理等を阻害してはならないという規定をはっきりと設けたということでございます。
 具体的に、この規定に違反した元請事業者に対しましては、国土交通大臣から輸送の安全の確保を阻害する行為の停止命令を発出することとしておりますほか、法令違反としての行政処分あるいは罰則等がかかってくるということになるわけでございますけれども、今まではそういう規定がなかったわけですから、今度は元請はしっかり罰せられますよという規定が新設されたことによって、これは非常に大きな、この規定があるだけで大きな抑止力になるということが考えられます。
 また、具体的な取り締まりにつきましては、今後、元請の不適切な運行管理等が原因と考えられる下請による事故が発生しました場合には、下請だけじゃなくて元請にもあわせて監査に入ることによって、悪質な元請に対して厳格な処分を行うことによって不適切な元請事業者の排除を進めてまいりたいと考えております。
 また、先ほどの参考人の御意見の中にもございますけれども、契約関係とか指示の内容等が全部口頭でやられていて、そういうのが記録に残らない。実際に、中小企業等の間で、電話による指示だけでそういう指示、あるいは契約もそうなんですけれども、行われているという事例がございまして、この点に関しましても、私どもは、運送状を元請下請関係においても発出するようにという指導を二年ほど前から行っているところでございますけれども、いかんせん、証拠となるようなそういう書類が残っていないとなかなかその辺の摘発等も難しゅうございますから、その辺の指導等をさらに進めていくということも必要であると考えております。
赤羽委員 事故が起きた、その中で、元請の条件が厳しいというのは、なかなか立証するのが難しかったんだと思うんですね。今回の法改正によってかなりの抑止力というのが発揮されるという御答弁が今あった、そのとおりであると思いますが、やはり商慣習であったとしても、ペーパーレスというような、契約書もないような話というのは、これは相当強制的に契約書をちゃんとつくらせるという指導をするべきだと思います。
 同時に、先ほどの参考人の提案で、デジタル運行記録計の装着を義務づける、こういったものをつけることによって、後でトレースして、それが元請下請の不正常な関係が原因だということを突き詰められるとか、契約についても、契約書があれば、明らかに原価割れの価格でやっているということがわかれば、こういったことが正せられる、そういったアイデアも出てくると思うんですが、全車両に装着を義務づけるというのはそんなに簡単なことではないと思うんですが、こういった提案についてはどのように考えられますか。
洞政府参考人 いわゆるデジタコにつきましても私ども非常に関心を持っておりまして、いろいろこの辺についても、今の開発状況とか普及の状況等把握に努めているところでございます。
 正直申し上げまして、まだ高うございます。非常に便利なものでございますが、これは、単に取り締まりだけではなくて、事業者側にとっても、デジタコを各車両につけることによって効率的な運行とか、要するに、経営コストの削減とかそういったものの分析にも資するものでございまして、そういったものをつけている事業者も徐々にふえてきておりますが、先ほど申しましたように、まだいかんせん一台一台のデジタコ、それから、トータルにそれを分析するようなシステム、全体を含めますと相当な投資になってきまして、これを一律にトラック事業者に義務づけるというのは、まだ今の段階では時期尚早かなと思っておりまして、将来の検討課題ではなかろうかと認識しているところでございます。
赤羽委員 ぜひ、洞さんが局長のうちに答えを出すようにお願いしたいと思いますが、五万五千四百社あるという話を聞くと、やはりちょっとこの業界というのはどういう状態にあるのかなと。
 先ほどの参考人質疑のやりとりの中でありましたが、アメリカなんかではかなり以前から、大型免許を取ればすぐトラック事業者になれるということじゃなくて、トラック運転資格免許という制度があったと。これはやはり日本でも実際行うべきではないか。こういったことを続けることが一部の悪質な事業者を排除できることになるだろうし、先ほど言いましたデジタルの運行記録計をつけているつけていないみたいな、各事業者に対する評価みたいなことを、評価制度なんというのをしっかり確立すれば、そういう意味でそういうことを進めていくことが、良質な事業者が残り、健全な競争が行われるということにつながるものだと思います。
 この懇談会の報告の中にも、トラック事業者に対して中立的な機関が評価をする制度を創設することが、荷主にとっても、またトラック事業者自身にとっても効果があるという指摘もありますが、このことについては国土交通省としてどのようなお取り組みを考えておりますか。
洞政府参考人 私どもも先生の御指摘と全く同じ立場に立ってトラック事業者の評価制度というものを今研究しております。トラック事業者の安全性に関する法令遵守あるいはその他の取り組み状況等々について、第三者機関による評価を行って、利用者の事業者選択を容易にすると同時に、事業者全体の安全性確保のインセンティブの向上を図るという効果が得られるものでございますから、そういった安全性の評価制度について、実は平成十一年度からその導入に向けた検討を行ってきておりまして、今年度からはその具体的な運用方策の検証等を行うべく実験を開始するという段階にまで来ております。
 今後、この実証実験の実施を通じまして、評価の厳正性とか透明性、公平性をいかに確保するかといったことを中心に十分な検証を行った上で、できるだけ早期に、具体的には十五年度中にも当該制度の導入ができるよう努めてまいりたいと考えております。
赤羽委員 今回の法改正によって規制緩和を進めていくわけでございますので、この業界の公平な競争条件の確保ということをどのようにして担保していくかということをぜひ、きょうは自動車NOx・PM法のことについてはあえて触れませんけれども、その点も含めて、どうか国土交通省としても知恵を出していただきたいということを念願して、質問を終了させていただきます。どうもありがとうございました。
久保委員長 一川保夫君。
一川委員 私の方からも総括的に質問をさせていただくわけですけれども、時間も短いわけでございますので、焦点を絞って、今まで話題に出なかったことについてお考えをお聞きしたい、そのように思います。
 それは、飛行機を使った貨物輸送という、今回のこの法改正と直接関係はございませんけれども、しかし空港から国内に輸送する場合には当然いろいろな輸送機関を使うわけでございますし、また、輸出する場合、品物についてもその生産地等から飛行場へ運んでいくという面でいろいろな輸送機関を使うわけでございます。そういうものに非常にかかわりの深い、この航空貨物という、新しい時代に向けての一つの課題だと思いますけれども、現状がどのように推移してきているかというところが、まだ私も正確に知っているわけではありませんけれども、感じとしましては、飛行機を使った貨物の取扱量は徐々にふえてきているという感じを持っております。そのあたりの近年の実態、推移みたいなものをちょっと教えていただきたいと思います。
深谷政府参考人 御説明を申し上げます。
 我が国におきますところの航空貨物輸送についてのお尋ねでございますけれども、平成十二年度、最も直近のデータとして確かなものにつきまして御報告を申し上げますと、国際貨物が二百九十三万トン、国内貨物九十三万トンというふうな状況でございます。
 我が国の航空貨物につきましては、産業構造が高度化してくる、そういったことで、製品の高付加価値化などによりまして運賃負担力がついてきているものが多くなってきた、あるいは企業活動がグローバル化してまいりまして、航空輸送への選好の高まり、そういったことの事情を背景にいたしまして、近年急激な伸びを御指摘のとおりしておりまして、最近の伸び率をちょっと申し上げますと、一九九三年度から二〇〇〇年度までの伸びで、年平均で、国際貨物につきましては七・九%、国内貨物については四・三%という毎年の伸びを示しているところでございます。
一川委員 着実に伸びてきているというようなお話だろうと思います。
 近年、日本の経済が低迷しているという中では、その影響も当然受けての実績だと思いますけれども、私は、こういう航空貨物というのは大幅にふえていくということはちょっと難しいかもしれませんけれども、着実にやはり伸びていく可能性を持っているなという感じをいたしております。
 前にちょっとその中身の説明を受けたときに、航空貨物というのは成田空港と関西空港が圧倒的に取扱量が多い。国際貨物を含めてのことだと思いますけれども。大都市圏を抱えている、そういう大規模な飛行場、国内では大規模な飛行場ですから、そういうふうになるのは当然といえば当然かもしれませんけれども。
 我が国には第二種空港、第三種空港、共用空港も含めた地方の空港もたくさんあるわけですけれども、こういう国際化時代の中で、しかも、過去それぞれの地域、経済がいろいろな面で低迷し、これからの先行き、不安感といいますか、ちょっと不透明感のある中で、地域経済にもっと活力を持たせるという意味で、その飛行場を抱える地方の国際貨物便的なものをもっともっと何かうまく受け入れていく、あるいはその地域の産物を海外へ出すというようなことも含めた施策がちょっと見えてきていないんだけれども、そのあたりに対する基本的なお考え、これはどなたに、大臣が御答弁なのか、ちょっとお聞かせ願いたいと思います。
深谷政府参考人 御説明を申し上げます。
 国際貨物につきまして、先生御指摘のとおり、我が国におきましては、成田空港で六二%、関西国際空港で三〇%というものが扱われておりまして、九割以上がそこで扱われているというふうな状況でございます。
 御指摘の、地方空港におきますところの国際貨物の取り扱い、これにつきましても、基本的には、その地域と申しましょうか、その空港を背景としますところの地域と外国との間での需要、この辺のことが十分見込まれるというのが国際貨物路線の設定には必要だろうというふうにも思いますけれども、他方で、国際貨物のチャーター便、こういった仕組みもございますので、そういったものが十分活用されるということも、地方の空港を国際貨物で使っていく場合の一つの有効な手段かなとも思っております。
 他方では、国際貨物輸送におきまして地方空港をより活用するというふうな観点からは、航空サイドといいますか、空と地上との結節点であるわけでございますので、そこでの貨物を円滑に扱うための、設置管理者、エアライン、フォワーダー、CIQを含めた全体の関係者間でいろいろな、例えばダイヤの調整の話等々を含めまして運用面での調整というものも積極的に行っていくことによりまして、そういった地方空港におきますところの国際貨物取り扱い、これをより活発化するソフト的な手法であろうかなと思っております。
 他方で、私どもといたしましても、そういった貨物取り扱いのための施設、こういうものにつきましても需要に対応したものが当然確保されていかなければならないと考えておりますので、その辺は十分見きわめながら検討し、適切に対応していきたいというふうにも考えております。
一川委員 私の地元の方にも共用空港の小松空港というのがあるんですけれども、この飛行場も関係機関のいろいろな努力のおかげで、国際貨物を平成六年ごろから扱い始めました。そのころは年間の扱い量が八千トン台だったと思いますけれども、今それが二万トンを超えてきたというふうに聞いております。
 これは地域にとっても、その地域にかかわる品物を海外と直接やりとりしているのはもちろんでございますけれども、その飛行場を一つの拠点にして近郊の県に運ばれるということで、やはり今ほどの説明のように、これからの地域経済に活力を持たせていくという面では、地方空港を使ってそういう国際貨物便の取扱量をふやしていくということも、これは成田とか関西空港に余り集中し過ぎるというのも何か問題がありそうな気もしますので、ぜひその点にまた配慮した施策を展開していただきたいというふうに思います。
 そこで、最後に大臣にお聞きしたいわけです。
 今回この法改正に伴っていろいろな物流の議論が当然されておりますけれども、鉄道を使ったいろいろな動きなり、またトラック等自動車を使っての輸送、また海上輸送等も当然あるわけでございますけれども、飛行機を使った航空貨物というものは今後どういう役割を担っていくべきか、また、それに対してどういう施策を展開していくかということに対する基本的な姿勢が当然おありかというふうに思います。
 先ほど、参考人のいろいろな話題の中で若干の議論だったんですけれども、これから物流に関するユーザーのいろいろな考え方が多様化してくるという中で、いろいろな選択肢を与えておくということが非常に大事なことだと、非常に短時間で運ぶ人には、多少コストが高くても飛行機を使うというような選択肢もつくっておく必要があるのではないかと。
 飛行機による貨物輸送ということ。当然海外とのやりとりも大変重要な課題でございますけれども、そういうことも含めて、航空機を使った貨物輸送ということに対する国土交通省の基本的なお考えを御説明願いたい、そのように思います。
扇国務大臣 この御論議の中で、るる今までも委員会でお話が出てまいりましたけれども、近年におきます経済のグローバル化、そういう傾向から考えましても、私は、国民生活を取り巻くあらゆる需要、そういうものから考えても、物流の果たす役割、冒頭、この委員会が始まりましたときに、私、物流の国際化に日本がいかに処していくかということを例を挙げて申し上げましたけれども、この空港というものを物流という観点から見まして、中距離あるいは遠距離をより迅速にということを考えますと、私たちの生活の中で生鮮食料品でございますとかあるいは高付加価値のつくもの、そういうものの有効な輸送手段の一つとして空港を利用する、そういうことが今後も大きく飛躍するであろう、また、国民の要求もどんどんそういうふうに高まってくるだろう、私はそう考えております。
 それに対して我々は、航空貨物というものが、背後に大生産地だとか、あるいはまた大消費地を抱える大都市における拠点空港に需要の大半が、今も局長から数字を申しましたように、大都市に大需要があって、そしてそこに荷物の大半がおりているという現実だけは逃れられないものだと私は思っておりますし、今までの数字にありますように、成田と関空に集中的におりている、これが九割を占めているというのも事実でございます。国内の貨物につきましても、羽田空港ほか四空港で大体七六%の貨物を取り扱っています。
 今、一川議員がおっしゃいました小松も、主要空港以外を含めますと、小松は六位でございますので、これも私は大変な数字だと思うんですね。
 そういう意味では、私は、今後大都市との連結の整備が整いさえすれば、物流というものに対して、空港の需要というものに大きくたえていける、また、それを考えて整備をしていかなければいけないということは十分にあろうと思います。
 ですから私も、この委員会が始まりましたときに、冒頭に、二十一世紀の国際社会にたえ得るような物流社会を構築していこうということを申しました。
 また、特に、昨年の八月ですけれども、一川委員御存じのとおり、都市再生プロジェクト、これは第二次決定というものをいたしまして、大都市圏の国際競争力を高めていこうということも決めております。我が国の国際都市にふさわしい国際交流、物流の機能というものを確保すべく、大都市圏における空港の機能強化と空港アクセスの利便性の向上、これを決定されておりますので、それに一日も早く着手し、そして、むだと言われる公共事業というものの見直しは当然ですけれども、必要不可欠なところへは集中して投資をして、国民の社会資本整備と、そして二十一世紀型の、国際競争に勝ち得るような施策というものを実行していかなければならないと思って、進めていきたいと思っております。
一川委員 終わります。ありがとうございました。
久保委員長 瀬古由起子さん。
瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子です。
 きょうは、鉄道貨物について絞って伺います。
 今回の法改正で、鉄道貨物についても規制緩和が盛り込まれていますけれども、鉄道貨物輸送が持つ特徴というのはどのように考えていらっしゃるでしょうか。
石川政府参考人 鉄道貨物輸送の特徴でございますけれども、鉄道貨物は長距離大量輸送に適するものでございまして、また定時性にもすぐれております。さらには、CO2の排出量が少ない、営業用トラックの八分の一、などの環境面でもすぐれておりますし、エネルギー効率の面から見ても、営業用トラックの六分の一というところでございます。
瀬古委員 そのすぐれた特徴を大いに生かして鉄道事業は展開されるべきだというふうに、私は思います。
 一九九九年の鉄道事業法の改正で、鉄道貨物については、当分の間の措置として、貨物鉄道事業への参入許可条件に需給調整要件を残しました。今回これを廃止して、貨物鉄道事業の休廃止を許可制から事前届け出制に緩和することで、一体で進めようとしております。
 一九九九年の改正のときに、当分の間ということで参入許可条件に需給調整要件を残した理由は何でしょうか。また、今日、それを廃止するのはなぜでしょうか。
石川政府参考人 平成十一年の、前回の鉄道事業法の改正のときでございますが、鉄道事業にかかわる需給調整規制の廃止というものを行ったところでございますけれども、同法附則におきまして、鉄道貨物輸送については、当分の間、需給調整規制を維持するということにしたものでございます。この理由でございますけれども、当時はJR貨物において経常赤字が続いていたわけでございまして、新規参入による物流市場全体への混乱を回避するという観点などから、暫定的に需給調整規制を行うこととしたものでございます。
 JR貨物は、御案内のとおり、中期経営計画、ニューチャレンジ21におきまして、安定的に黒字計上ができる企業体質というものに転換していくということを目標に掲げておりまして、現に十三年度に、決算では経常黒字に転換したというところでございます。このような状況のもとで、今回の法改正により、従来暫定措置として存続してきた需給調整規制を廃止しようとするものでございます。
瀬古委員 安定的に経営することを目標にするということ、それは当然なんですけれども、では、今回九年ぶりに黒字になったといっても、本当にそうなのかと。黒字分はわずか二億円でしょう。運輸収入において、前年を十億円下回る千三百五億円と、減収なんですよね。そして、人件費を三十八億円余り削減したことによる、括弧つきの経常黒字と言えるんじゃないかと思うんです。十三年度末の長期債務残高は千百三十四億円で、前期と比べて五十四億円もふえているんです。
 私の地元の愛知県の稲沢機関区では、運転士、先ほどの参考人質疑の中にもありましたように、今どんどん人が減らされて、要員不足で、二日連続夜勤で家に帰れない、職場に泊まり込む。本来自分が希望するときに年休がとれない。自分がとりたいといったときにとれるのは、一人平均五日程度だというんですね。そして、全体的に機関区の統合で、故障が起きても近くに駆けつける人も列車もない、故障ぎみでも何とか列車を動かすなんていう、安全輸送に危険信号がともるような、人件費を圧縮するような経営が続けられております。
 一体、どこに規制緩和の条件が生まれたというんですか。
石川政府参考人 JR貨物の経営は、非常に厳しいものがございます。しかしながら、JR貨物というものは、先ほど議論がありましたけれども、JRグループの中にいるんではなくて、物流市場において、他のトラック事業者等との厳しいモード間競争をしているわけでございます。
 したがいまして、こういう中において、貨物鉄道事業につきましても参入規制、需給調整規制の廃止を行う、運賃の事前規制の廃止を行う、こういう規制緩和を行うことによって事業者の自主的な経営判断というものに基づいて機動的な事業運営を可能にする、それによって企業体質を強化する、それによってさらに鉄道貨物の活性化を図っていくということがむしろ重要であると考えております。
 先ほどの参考人質疑でJR貨物の伊藤社長も申し上げたと思いますけれども、今回の法改正による規制緩和をよい刺激として受けとめて、一層の企業努力をしていきたいというお話があったと思います。私どもとしても、そういう意味で、今回の規制緩和を前向きにとらえて、サービス改善と業務効率化に努めて、JR貨物の経営改善、経営体質の強化を図って、鉄道貨物の活性化、維持というものを図ってまいりたいと考えております。
瀬古委員 トラック貨物についても、猛烈な競争が起きて、そして値引きが要求されて、労働者も大変な実態になっていますし、中小業者も大変な状態です。今度はそれと競争するということになりますから、今回の改正でJR貨物の運賃・料金が一層自由化されるということになる。そして一方では、JR貨物の経営状況はそう楽観できないような実態にある。そうすればどうなるか。もうからない部分はもうやめようじゃないかということだってできるような条件を今回つくるということになるんじゃないかと私は思うんですね。JR貨物はもうからない部分を廃止するなんていうことは絶対ないというふうに言えるんでしょうか。こういうことを許しておくと、全国ネットワークのすぐれた特徴がなくなっていってしまう。これは、政府が目指している二〇一〇年までに五〇%を超えるというモーダルシフト政策にも反するんじゃないかと思うんですが、その点、いかがでしょうか。
石川政府参考人 先生御指摘のモーダルシフト政策でございますが、先ほど私が申し上げましたように、長距離大量輸送に適するという鉄道特性の高い分野を中心として、鉄道の輸送分担率の向上を図ろうというものでございます。
 したがいまして、例えば、工場の閉鎖等によって貨物輸送需要そのものがなくなってしまった、あるいは鉄道輸送の長所である大量性、定時性、低廉性という特性が必ずしも十分に発揮できないような路線についてまでそれを維持するかどうかということにつきますと、そういうところについて鉄道事業者が撤退等をすることについては、必ずしもモーダルシフト政策に矛盾するものではないと私どもは考えております。むしろ、採算性の著しく低い路線につきましては、場合によっては撤退も含めて見直しを行うことによって企業体質を強化して、鉄道特性に適した分野を中心に全体としての競争力を高め、鉄道全体としての分担率を高めていくということがモーダルシフトの推進になるものと考えてございます。
瀬古委員 世界的な流れでいうと、環境に負荷をかけないという点で、うんとモーダルシフト化をしようという流れなんですよね。それが、実際にはもうからない部分をどんどん切っちゃって、これでモーダルシフト化になるかというと、そんなことにはならないですよ。結局、その分野はトラック輸送にかえられるということだってあり得るわけですね。そういう点で、私は、政府の言ってきた政策と全く違っている、政府が一応掲げている政策とは違っているというふうに思います。
 今局長が言われたように、JR貨物会社もニューチャレンジ21計画というのをつくったと。私、先ほど聞いたら、社長は初めて聞いたなんて言っていらっしゃったんだけれども、このチャレンジ計画でも、計画変更が再三国土交通省から申し渡されて、計画ができるまでに半年の期間を要したと。
 そして、国交省の指摘は何だったか。全国ネットワークにこだわるなと。採算のとれる線区だけの営業で早急に黒字を出して、完全民営化を早期に実現できる企業体質をつくり上げること。列車別原価計算をして黒字の出せない線区から撤退して、利益を生み出せる線区のみ営業するように言われたと。こうして、どんどん人も減らすような計画がつくられたわけですね。
 今局長が言ったように、社長はそんなことを言われていなかったと言うけれども、今の答弁を聞いたら、もうからない部分はもう切り捨てよと言った形跡は大だと思うんですよ。そういう点では、私は、こういう姿勢は本当に鉄道貨物の輸送の本来の利点を生かす、こういう観点に立っていないというふうに思います。
 そういう意味では、今回のJRの貨物の法案というのは切り捨てにつながるもので、さきに法案が審議されました、新幹線などドル箱を持っているJR本州三社は至れり尽くせり、こういう援助をしながら、もうからない分野は切り捨てていく。国民にとっては、本当に大変なところに列車もバスも来ない、荷物さえも届かない、こういう地域を大規模につくり出す。こういう点でも、この法案は大変重要な問題を持っているということを指摘して、質問を終わります。
 以上です。
久保委員長 日森文尋君。
日森委員 社民党の日森文尋でございます。
 質問の順番を変えまして、ついででございますので、鉄道局長から、申しわけございません、立ったついでにちょっと続けて出ていただければありがたいと思っています。
 先ほど参考人の御意見も伺っておりまして、どうも初めに規制緩和ありきという流れがずっと続いているような気がしてなりません。中西参考人は、規制緩和が目的化されているのではないかというふうに、手段と目的を取り違えているという御発言もございました。私は全く同感でございます。そして、これは鉄道貨物についても全く同様のことが言えるというふうに思います。
 そもそもの話になって恐縮なんですが、規制緩和三カ年計画、御存じのとおり、JR貨物の経営の改善が図られた段階で需給調整規制を廃止します、こうおっしゃっていて、運賃・料金制についても届け出制にしましょうと。国鉄改革の目的でいいますと、JR貨物の経営基盤の確立等諸条件が整い次第できる限り早く民間会社にすることというふうになっているんです。しかし、こうした流れからいうと、経営改善も経営基盤も現状を見る限り大変厳しい状況にあるというふうに指摘をしなければならないと思うんです。
 したがって、今回の法改正は、JR貨物が持つ構造的な問題点、このことに一切手を触れずに、このことの改善をしないで、これを置き去りにしたまま強行突破で規制緩和する、こう言わなければならないと思います。
 したがって、国土交通省が、先ほども参考人の質疑で社長にもお聞きしましたけれども、JR貨物の現状及び将来展望について具体的にどんな展望を持って、今度の規制緩和によって一日も早い民営化が成立するのかどうなのか、どういう見解を持っていらっしゃるのか、改めてお聞きをしたいと思います。
    〔委員長退席、実川委員長代理着席〕
石川政府参考人 今回の規制緩和の目的につきましては、先ほどからるる申し上げているとおりでございますが、この規制緩和によってJR貨物自身の自主性、自立性というものをより以上に高めたいというふうに私どもは考えております。これによって物流という社会にいるJR貨物が企業体質を強化する、これによって昔の国鉄の民営・分割のときの目標も達成していきたいというふうに考えているわけでございます。
 したがいまして、そういう中で私どもは規制緩和を当然やっていくわけでございますが、ほかに、あわせて幾つかの助成措置も講じていきたいと考えております。そういう中で、繰り返しになりますけれども、JR貨物が経営基盤を強化して、自主的な経営判断を進めていくということが目的であると考えております。
日森委員 私は、早過ぎた規制緩和、規制緩和自体が大きな問題点を持っているわけですから、JR貨物については、そのことだけ指摘をしておきたいと思います。
 それから、今度の規制緩和の中で、先ほどもどなたかお触れになっていましたが、貨物鉄道事業の休廃止についても六カ月前の事前届け出制でいいよ、こういうふうになったわけです。
 これが実際に施行されるということになりますと、これは先ほども触れましたけれども、例えば中期計画、新フレイト21も、それからニューチャレンジ21もそうなんですが、輸送量の減少、これは明らかにそうなっているわけで、輸送量の減少を前提とした縮小均衡計画になっている。これはもう否定できない事実ではないかというふうに私は思うんですが、これに拍車をかけることになりはしないのかということを大変心配しています。
 そうでなくて、むしろこれは先ほど伊藤社長さんが、最後にかなり深刻な顔をしておっしゃっていましたが、先行してすべきことは、例えば最も輸送量の多い太平洋ベルト地帯における鉄道利用策を具体的に検討していくこと、あるいはターミナルの改善ということを社長はおっしゃいました。
 そういうことについて、具体的にその対策を検討することや、あるいはそこに対するアクセスを改善していくこと、荷役作業の効率化をどう図っていくか、あるいは災害など異常事態に対して、ターミナルや貨物路線の整備、これについてきちんとした対策をつくる。これはJR貨物だけでは大変な話ですから、こうした問題について国が積極的に関与をしていく、そして、鉄道貨物の有効活用に向けた実効ある政策を策定すること、これが今緊急に、しかも重要な問題としてあるんだというふうに私は思うんですが、先ほどの伊藤参考人の意見も踏まえて、改めて鉄道局のお考えをお聞きしたいと思います。
    〔実川委員長代理退席、委員長着席〕
石川政府参考人 鉄道貨物輸送力の増強ということにつきましては、既に、平成五年から平成九年にかけまして、東海道のコンテナ輸送力の増強工事というものに対して政府として支援をしてきてございます。それから最近では、平成十四年から十八年度にかけまして、山陽線の鉄道貨物輸送力の増強事業、こういうものに対しても補助を行うというふうな形で支援をしてございます。さらに、アクセスの改善であるとか荷役作業の効率化という観点から、平成十一年から十三年度には門司貨物拠点整備事業を行いました。さらには、米原貨物ターミナルにおきましては、アクセス道路との一体的な整備という形でアクセスの整備を図っているところでございます。
 今後とも、鉄道貨物輸送が有効に活用されるよう、必要な諸施策を講じてまいりたいと考えているところでございます。
日森委員 そうした個々の改善に対する支援と同時に、これは何度も主張しているんですが、総合的な物流体系、これを整備していくことが国の基本的な任務になっていると思うんです。その意味で、そうした全体的な構想の中で貨物鉄道をどう位置づけるのかということについても、ぜひ早急に検討していただきたいということをお願いしておきたいと思います。
 それから、トラック関係についてお伺いをしたいと思うんですが、これも先ほどの参考人の質疑の中で明らかになったことですが、現状でもトラックの重大事故が多発をしている、過労運転や過積載、社保それから労保、これへの未加入ということが指摘をされていて、こうした問題が、社会的ルールを無視した競争や不公平な競争を招いて、運賃・料金水準をさらに低下させているということが指摘をされていますし、今後のトラック事業及び貨物運送取扱事業の在り方についてという懇談会の報告の中にもそれが示されておりました。
 これに対しては、再三再四御答弁されているんですが、監査によって指導、行政処分を強化するという事後チェックを強化することでこうした状況を改善できるというふうにおっしゃっているわけですが、しかし、この改善策そのものが、いわば働く者の側に立っていないで、事業者側のサイドに非常に偏った立場で行われているという感じがしてならないんです。そうしますと、事業者と労働者の間には、もちろん相対立する関係があるわけですから、今のような劣悪な労働者の労働条件その他について、本当に改善をするということにつながっていかないのではないかというふうに思っているんですが、その辺について、自信のほどをお聞かせいただきたいと思います。
 また、これは直接には厚生労働省とタイアップをしてやっていかなきゃならない仕事なんですが、具体的にどのような連携をとって対処をされようとしているのか、お聞きをしたいと思います。
洞政府参考人 事後チェック体制の強化につきましては、今後、監査体制の充実を行って、その効率を上げていくということが最大のポイントになろうかと思っています。このために、行政におきましては、監査項目の重点化を図りますと同時に、地方局に監査を専門に行う組織を新たに設けることとしておりますし、また、先ほど来申し上げております業界の自主的な取り組みであります適正化事業機関との連携強化を図ることによって、全体として監査の効率、あるいは指導の強化を図っていきたいと思っております。
 御指摘のような労働者の処遇の面につきましても、このような監査の実を上げていく中で、労働時間の管理あるいは過労運転の防止など、労働条件面でのチェックや、社会保険、労働保険の加入状況のチェック等厳しく行っていくことでその改善を図られるようにしていきたいと思っています。事業者は、労働改善基準とかそういったものの内容は十分知っているんですけれども、知っていてそれを守らないというのでございまして、これを摘発していくというのが重要だと思うのです。
 また、厚生労働省との連携につきましても、これまでは、中央、本省は本省同士、それから地方運輸局は地方労働基準局、そして運輸支局、それぞれのレベルにおきまして連絡会議等を開催しておりまして、労働時間の違反等の情報を相互に通報することによりまして、悪質な事業者に対する監査を重点的に行って、違反者に対しましては、厳正に処分を行っているところでございます。
 今後とも、こういう連携強化、さらに警察との連携強化等もあわせまして、事業者に対する指導の強化を図ってまいりたいと考えております。
日森委員 もう時間が来てしまいましたので、最後に要請だけしておきたいと思います。
 先ほどの懇談会の報告の中で、安全、環境等の社会的要請に対しては、施設・設備等の追加的コストを荷主に提示するなどの方策を国も協力して実施すべきというふうに書かれておりました。荷主の方が力が強いという関係がありますから、これについては、具体的で、しかも実効ある政策を展開するようにお願いをしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
久保委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
久保委員長 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。大幡基夫君。
大幡委員 日本共産党の大幡基夫です。
 私は、日本共産党を代表して、鉄道事業法等の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
 反対理由の第一は、今、荷主企業が、極端に安い運賃と無理な運送時間を押しつけていることで、今、運賃・料金の事前届け出制を廃止すれば、トラック運送業界などに蔓延している、過当競争下での運賃ダンピングや、大企業荷主による一方的な運賃切り下げをますます助長し、そのことがまた重大な交通事故の増発につながるからであります。トラック協会の調査でも、運賃水準低下の要因として、荷主からの一方的な値下げ要請を挙げている事業者が三二%にも達しています。石油輸送では、この六年間に何と四四・三%もの運賃切り下げが強行されています。
 反対理由の第二は、貨物自動車運送事業法にある営業区域規制の廃止によって、積み荷を求めて全国どこへでも次々とトラックを回していくことが可能になります。そのことがトラック労働者の労働条件を悪化させ、過労運転などによる交通事故の増加につながることは、警察庁の資料などからも明らかです。一たび交通事故を起こすと悲惨な重大事故になる大型トラックの安全対策は、社会的、国民的要請であります。
 第三に、今日、自動車排ガスの抑制や地球環境保護などの国民的要請にこたえるためにも、鉄道輸送などクリーンな輸送機関の見直し、充実強化が重要な課題になっていますが、本法案は、これに逆行するものであります。
 本法案にある鉄道事業における運賃・料金の上限認可制の廃止は、荷主等とその都度自由に運賃契約ができるようにすることであり、国鉄の分割・民営化によって、ダイヤの設定権限をほとんど持っていないJR貨物が運賃値引きによって貨物を集める経営に走ることは必至です。その結果、不採算区間の撤退、JR貨物鉄道の労働者にさらなる労働条件の切り下げが押しつけられ、それが旅客鉄道も同一路線を走るJRの安全運転にも重大な影響をもたらすことになりかねません。
 このような国民の願いとかけ離れたさらなる規制緩和を容認することはできません。
 以上、本法案に対する反対討論を終わります。(拍手)
久保委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
久保委員長 これより採決に入ります。
 鉄道事業法等の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
久保委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
久保委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、実川幸夫君外四名より、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び保守党の五会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。今田保典君。
今田委員 民主党の今田保典でございます。
 ただいま議題になりました鉄道事業法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び保守党を代表して、その趣旨の御説明を申し上げます。
 案文はお手元に配付してありますが、その内容につきましては、既に質疑の過程において委員各位におかれましては十分御承知のところでありますので、この際、案文の朗読をもって趣旨の説明にかえることといたします。
    鉄道事業法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺憾なきを期すべきである。
 一 貨物鉄道事業の参入規制の緩和について、国は需給調整規制の廃止後においてもJR貨物に関する国鉄改革の趣旨及び経緯に十分に配慮すること。
 二 鉄道貨物輸送を利用した円滑な複合一貫輸送の確保に努めるとともに、旅客の乗継ぎ又は貨物の引継ぎの円滑化のための措置については、措置内容を具体的に定め、適切に運用すること。
 三 整備新幹線開業に伴う並行在来線の扱いについては、物流ネットワークの確保に支障を生じないよう十分に配慮すること。
 四 環境問題、労働力問題及び交通安全等に配慮した物流体系を構築する観点から、鉄道貨物輸送力の増強に資する支援措置等モーダルシフト向上施策を一層推進すること。
 五 貨物利用運送事業者の参入については厳正な審査を行うとともに、第一種貨物利用運送事業の参入規制の許可制から登録制への移行に当たっては、登録拒否要件を具体的に定め、統一性、透明性を確保すること。
 六 貨物利用運送事業者が実運送事業者に対して不当な運賃料金の引き下げを強要することのないよう関係者に対する指導監督を強化するとともに、運賃料金の遵守について貨物利用運送事業法及び関係事業法の適正な運用を図ること。
 七 港湾運送事業に貨物利用運送事業法の適用がないことを関係者に周知徹底すること。また、貨物利用運送事業者が行う国際複合一貫輸送の進展により港湾運送に関する秩序に支障が生じることのないよう、港湾運送事業に関し講じられているこれまでの措置を維持するとともに、港湾運送料金の適正収受の確保につき効果的対策を講じること。
 八 貨物自動車運送事業の営業区域規制の廃止後においても、適正な運行管理が行われるよう、過労運転等の防止のための運行管理体制の充実、携帯電話等による運行管理者との緊密な連絡体制の確保、デジタル式運行記録計等最新の情報技術の効果的な活用の促進を図るとともに、関連する施策に関し、所要の支援措置の充実・強化を図ること。
 九 貨物自動車運送事業の適正化を図るため、貨物自動車運送適正化事業実施機関を活用し、計画的かつ着実な監査を実施するとともに、輸送の安全確保に関する是正命令、事業の改善命令、許可の取消処分等について人員の適切な配置等必要な環境整備を図り、厳正かつ機動的に運用すること。
   また、貨物自動車運送事業者の安全性を評価するためのシステムを確立し、その円滑な推進のための環境整備を進めること。
 十 元請・下請関係に関する貨物自動車運送事業法の適用関係を明確にするとともに、元請事業者の下請事業者に対する違法行為の強要等元請事業者の不当な活動(行為)に対しては、輸送の安全の確保を阻害する行為の停止命令等により適切な指導監督を行うこと。
 十一 「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(平成元年二月九日労働省告示第七号)」を輸送の安全確保に関する事業者の遵守すべき事項として、国土交通省及び厚生労働省において、その徹底を図り、労働時間の短縮及び労働力の確保について業界を指導するとともに、国土交通省及び厚生労働省による相互通報制度の確立等その円滑な推進のための環境整備を図ること。
 十二 貨物鉄道事業、貨物利用運送事業及び貨物自動車運送事業の運賃料金の事前規制の廃止後においては、各事業の運賃料金の正確な実態把握に努めること。
   また、国土交通大臣の運賃料金の改善命令については、厳正かつ機動的に運用するとともに、発動基準の統一性、透明性を確保すること。
 十三 国際海上コンテナの安全輸送の確保につき、荷主に対する積み付け、重量、危険・有害物の明示等に関する規定の整備に努めること。また、不法行為を強要する荷主に対しては事業許可の取消処分等について厳正かつ機動的に行うこと。
以上でございます。
 各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。(拍手)
久保委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
久保委員長 起立総員。よって、実川幸夫君外四名提出の動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
 この際、扇国土交通大臣から発言を求められておりますので、これを許します。扇国土交通大臣。
扇国務大臣 鉄道事業法等の一部を改正する法律案につきまして、本委員会におきまして熱心な御討議をいただき、ただいま可決されましたことに深く感謝申し上げたいと存じます。
 今後、審議中における委員各位の御高見、または今附帯決議において提起されましたJR貨物に関します国鉄改革の趣旨及び経緯への配慮、貨物利用運送事業者の参入に対する適正な審査、そして貨物自動車運送事業者の運行管理体制の充実促進及びこれらの事業の運賃・料金の適正な実態把握に向けた努力等につきましては、その趣旨を十分に尊重してまいる所存でございます。
 ここに、委員長初め委員各位の御指導、御協力に対し深く感謝を表し、ごあいさつとさせていただきたいと存じます。ありがとうございました。(拍手)
    ―――――――――――――
久保委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
久保委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
久保委員長 次に、内閣提出、参議院送付、建築基準法等の一部を改正する法律案及び高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
 順次趣旨の説明を聴取いたします。国土交通大臣扇千景君。
    ―――――――――――――
 建築基準法等の一部を改正する法律案
 高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
扇国務大臣 ただいま議題となりました建築基準法等の一部を改正する法律案及び高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律の一部を改正する法律案の提案理由につきまして御説明申し上げます。
 まず、建築基準法等の一部を改正する法律案について申し上げます。
 我が国の活力の源泉である都市を、豊かで快適な、国際的に見て経済活力に満ちあふれたものへと再生するとともに、居住環境の向上を図ることは、喫緊の課題であります。
 これら課題に対応していくためには、地域住民等が行うまちづくりの取り組みを促進すること等による都市再生の推進を図るとともに、居住環境の改善を図るため、化学物質による室内空気汚染問題に対応するシックハウス対策を進める必要があります。
 この法律案は、このような状況を踏まえ、適正な土地利用の促進等に資するとともに、居住環境の改善を図る合理的かつ機動的な建築制限を行うこと等ができるようにするものであります。
 次に、この法律案の概要について御説明を申し上げます。
 第一に、住民等の自主的なまちづくりの推進や地域の活性化を図りやすくするため、まちづくりに関する都市計画の提案制度を創設することとしております。
 第二に、まちづくりの多様な課題に適切に対応できるようにするために、容積率制限、建ぺい率制限、日影制限等の選択肢を拡充することとしております。
 第三に、総合設計制度における審査基準を定型化し、許可を経ずに、建築確認の手続で迅速に容積率制限等を緩和できる制度を導入することとしております。
 第四に、地区計画制度を整理合理化し、地区の特性に応じて用途制限、容積率制限等を緩和または強化できる、わかりやすく、使いやすい制度とすることとしております。
 第五に、シックハウス対策のため、建築材料や換気設備の規制を導入することとしております。
 その他、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うこととしております。
 次に、高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。
 我が国においては、諸外国に例を見ないほど急速に高齢化が進展しており、平成二十六年には国民の四人に一人が六十五歳以上の高齢者となる本格的な高齢社会が到来すると予想されているところであります。
 このような状況の中、高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律の制定以降、大規模な特定建築物についてバリアフリー対応が浸透しつつある状況を踏まえて、さらにそのスピードアップが求められているところであります。
 また、一昨年に成立しました高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律により、公共交通機関を利用した高齢者、身体障害者等の外出機会の拡大等が見込まれており、建築物のバリアフリー対応の促進のための施策の拡充強化が求められているところであります。
 このような趣旨から、このたびこの法律案を提案することとした次第でございます。
 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。
 第一に、特定建築物のうち一定の用途及び規模のものについてバリアフリー対応を努力義務から義務づけに強化するとともに、バリアフリー対応の努力義務の対象を拡大することとしております。
 第二に、バリアフリー対応が誘導的な水準を満たすとの認定を受けた特定建築物について、容積率の特例、表示制度の導入等の支援措置の拡大を行うこととしております。
 第三に、この法律の施行に関する事務を、都道府県知事から所管行政庁すなわち建築主事を置く市町村または特別区の長に委譲することとしております。
 その他、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うこととしております。
 以上が、建築基準法等の一部を改正する法律案及び高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律の一部を改正する法律案を提案する理由であります。
 これらの法律案が速やかに成立いたしますよう、御審議をよろしくお願い申し上げたいと存じます。
 ありがとうございました。
久保委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
久保委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 両案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
久保委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 次回は、来る十二日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時五十五分散会


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