衆議院

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第21号 平成14年6月14日(金曜日)

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平成十四年六月十四日(金曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 久保 哲司君
   理事 木村 隆秀君 理事 実川 幸夫君
   理事 橘 康太郎君 理事 林  幹雄君
   理事 古賀 一成君 理事 細川 律夫君
   理事 赤羽 一嘉君 理事 一川 保夫君
      赤城 徳彦君    小里 貞利君
      倉田 雅年君    菅  義偉君
      田中 和徳君    高木  毅君
      高橋 一郎君    谷田 武彦君
      中本 太衛君    菱田 嘉明君
      福井  照君    二田 孝治君
      堀之内久男君    松野 博一君
      松宮  勲君    松本 和那君
      吉川 貴盛君    阿久津幸彦君
      井上 和雄君    大谷 信盛君
      今田 保典君    樽床 伸二君
      津川 祥吾君    永井 英慈君
      伴野  豊君    平岡 秀夫君
      前原 誠司君    高木 陽介君
      瀬古由起子君    原  陽子君
      保坂 展人君    松浪健四郎君
    …………………………………
   国土交通大臣政務官    菅  義偉君
   国土交通大臣政務官    高木 陽介君
   参考人
   (慶應義塾大学理工学部教
   授)           村上 周三君
   参考人
   (高崎健康福祉大学健康福
   祉学部教授)       松本 恭治君
   参考人
   (東洋大学工学部助教授) 高橋 儀平君
   参考人
   (社会福祉法人日本身体障
   害者団体連合会会長)   児玉  明君
   国土交通委員会専門員   福田 秀文君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月十四日
 辞任         補欠選任
  二階 俊博君     松浪健四郎君
同日
 辞任         補欠選任
  松浪健四郎君     二階 俊博君
    ―――――――――――――
六月十三日
 障害者対応のETCシステム導入に関する請願(山口俊一君紹介)(第六〇三八号)
 公営住宅に関する請願(保坂展人君紹介)(第六〇三九号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第六二八五号)
 国土交通省の地方整備局等の機構拡充及び職員増員に関する請願(大出彰君紹介)(第六〇四〇号)
 同(大谷信盛君紹介)(第六〇四一号)
 同(後藤茂之君紹介)(第六〇四二号)
 同(肥田美代子君紹介)(第六〇四三号)
 同(保坂展人君紹介)(第六〇四四号)
 同(細野豪志君紹介)(第六〇四五号)
 同(山岡賢次君紹介)(第六〇四六号)
 同(阿久津幸彦君紹介)(第六二八九号)
 同(一川保夫君紹介)(第六二九〇号)
 同(今川正美君紹介)(第六二九一号)
 同(生方幸夫君紹介)(第六二九二号)
 同(江崎洋一郎君紹介)(第六二九三号)
 同(玄葉光一郎君紹介)(第六二九四号)
 同(小林憲司君紹介)(第六二九五号)
 同(今田保典君紹介)(第六二九六号)
 同(仙谷由人君紹介)(第六二九七号)
 同(樽床伸二君紹介)(第六二九八号)
 同(徳田虎雄君紹介)(第六二九九号)
 同(中山義活君紹介)(第六三〇〇号)
 同(永田寿康君紹介)(第六三〇一号)
 同(野田佳彦君紹介)(第六三〇二号)
 同(羽田孜君紹介)(第六三〇三号)
 同(松野頼久君紹介)(第六三〇四号)
 同(三井辨雄君紹介)(第六三〇五号)
 同(水島広子君紹介)(第六三〇六号)
 同(山内功君紹介)(第六三〇七号)
 同(横路孝弘君紹介)(第六三〇八号)
 働くルールを確立させ、建設労働者の雇用を守り、公共事業の生活・環境重視への転換に関する請願(今川正美君紹介)(第六〇四七号)
 同(植田至紀君紹介)(第六〇四八号)
 同(大出彰君紹介)(第六〇四九号)
 同(大島令子君紹介)(第六〇五〇号)
 同(後藤斎君紹介)(第六〇五一号)
 同(肥田美代子君紹介)(第六〇五二号)
 同(古川元久君紹介)(第六〇五三号)
 同(保坂展人君紹介)(第六〇五四号)
 同(松原仁君紹介)(第六〇五五号)
 同(山内惠子君紹介)(第六〇五六号)
 同(吉田公一君紹介)(第六〇五七号)
 同(阿久津幸彦君紹介)(第六三〇九号)
 同(小沢和秋君紹介)(第六三一〇号)
 同(大森猛君紹介)(第六三一一号)
 同(金田誠一君紹介)(第六三一二号)
 同(川田悦子君紹介)(第六三一三号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第六三一四号)
 同(木下厚君紹介)(第六三一五号)
 同(玄葉光一郎君紹介)(第六三一六号)
 同(小林憲司君紹介)(第六三一七号)
 同(児玉健次君紹介)(第六三一八号)
 同(近藤昭一君紹介)(第六三一九号)
 同(志位和夫君紹介)(第六三二〇号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第六三二一号)
 同(土井たか子君紹介)(第六三二二号)
 同(長妻昭君紹介)(第六三二三号)
 同(野田佳彦君紹介)(第六三二四号)
 同(羽田孜君紹介)(第六三二五号)
 同(松野頼久君紹介)(第六三二六号)
 同(横路孝弘君紹介)(第六三二七号)
 同(吉井英勝君紹介)(第六三二八号)
 気象事業の整備拡充に関する請願(阿久津幸彦君紹介)(第六二八六号)
 同(大幡基夫君紹介)(第六二八七号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第六二八八号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 建築基準法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五八号)(参議院送付)
 高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五九号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――
久保委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、参議院送付、建築基準法等の一部を改正する法律案及び高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
 本日は、両案審査のため、参考人として、慶應義塾大学理工学部教授村上周三君、高崎健康福祉大学健康福祉学部教授松本恭治君、東洋大学工学部助教授高橋儀平君及び社会福祉法人日本身体障害者団体連合会会長児玉明君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。両案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いをいたします。
 議事の順序でありますが、村上参考人、松本参考人、高橋参考人、児玉参考人の順で、御意見をそれぞれ十分程度お述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際には御着席のまま、その都度委員長の許可を得て御発言なさるようお願いいたします。質疑される委員の方々も着席のままで結構です。また、参考人は委員に対し質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。
 それでは、村上参考人にお願いをいたします。
村上参考人 御紹介いただきました村上でございます。
 私は、社会資本整備審議会の建築分科会の室内化学物質対策部会の審議に参加してまいりまして、審議会の答申の作成に携わってまいりました。
 今回の改正法案に関しまして、意見を述べさせていただきます。
 社会資本整備審議会の答申は、本年一月三十日に出されております。答申の中身は、集団規定に関するものとシックハウス問題に関するものの二つでございます。私は、シックハウス問題について、答申内容と法案の改正内容の関連についてコメントいたします。
 まず最初に、規制の方式について御説明いたします。
 答申では、シックハウス対策として、化学物質の室内濃度を厚生労働省の指針値以下に抑制するために、建材と換気設備の基準を定めるべきとしております。この重要な点は、室内濃度そのものではなくて、目標達成に必要な建材と換気設備の基準を定めたということでございます。これはいわば入り口規制でございまして、出口規制ではございません。
 なぜ入り口規制にして出口規制にしなかったかということの理由について申し上げます。
 まず、化学物質の室内濃度は、周辺を含めて、いろいろな条件の影響を大変受けやすいものでございます。例えば、建物の構造とか、あるいは気象条件、温度、湿度、日射、風、特に温度と風の影響が強うございます。それから、窓の開閉あるいは家具や生活用品などの生活条件でございます。でございますから、ある時点の測定結果が指針値をクリアしていたとしても決して安心はできない。これは、他の測定条件のときにはパスしないかもしれないわけでございます。
 それからもう一つは、年間約八十万件ぐらいの新築建物がございます。マンション一個一個数えますと百五十万戸ぐらいになるかと思いますけれども、これを一軒ずつ測定することは大変手間もコストもかかる。これは結局国民一人一人の負担としてはね返ってくるわけでございます。それに比べて、建材規制の方が、社会的コストという点で有利でございます。それからもう一つは、建材規制によるシックハウス対策の有効性に関しましては、既にヨーロッパで実績がございます。
 以上の理由によりまして、規制の基準を、濃度測定結果ではなくて、建材と換気設備といたしました。
 次に、規制対象物質について御説明申し上げます。
 当面は、ホルムアルデヒドとクロルピリホスということでございます。例えば、トルエン、キシレン等ほかの物質につきましては、今後研究を進めて追加すべきというふうに答申ではしております。
 さらに、次に述べる三条件、これから述べますけれども、三条件に該当する物質は今後すべて規制すべきとしております。その三条件と申しますのは、まず一番目が、厚生労働省により指針値が設定されているもの。二番目が、実際の建物で使用され、濃度が高くなることが確認されているもの。三つ目が、発生源と室内濃度の関係について科学的因果関係が十分に明らかにされているもの。
 繰り返しますと、三つの要件というのは、厚労省の指針値が設定されている、もう一つは実際の建物で使用されている、三つ目が発生源と濃度の関係について科学的関係が明らかだということでございまして、トルエンとかキシレンは、現時点では科学的メカニズムを含めて因果関係の解明がいまだ不十分ということでございまして、これは今後研究の進展とともにどんどん追加されるだろうというふうに予想しておりますし、そうすべきだろうと考えております。
 それから三番目に、建材と換気設備の基準について御説明申し上げます。
 今回規制対象としているものは、ホルムアルデヒドとクロルピリホスの二つでございます。御存じのように、クロルピリホスはシロアリの対策剤でございますけれども、これは全面使用禁止ということでございますので、ホルムアルデヒドに関して説明いたします。
 ホルムアルデヒドの室内濃度と換気量と建物の気密性、この三者は大変密接な関係にございます。例えば、換気量がふえれば濃度は下がる、あるいは建物の気密性が向上すれば換気量は減るということで、したがって、答申では、建築材料と換気設備の適切な組み合わせを基準化することが合理的とされております。
 ただし、シックハウス対策のための規制は中小の工務店の方やあるいは一般生活者を含めいろいろな人が関係するので、簡便でわかりやすい基準にすることが大切であると考えております。また、わかりやすいことが基準の遵守につながる、そう考えております。
 次に、研究と技術開発の重要性についてお話ししたいと思います。
 シックハウスの問題は、人体影響を含めてまだまだわからない点が多うございます。さまざまの化学物質について研究と技術開発を進めて、高濃度発生の因果関係を今後より明確にする技術開発を続けていくことが非常に重要だと考えております。ぜひこれは政府としても応援していただきたい。また、技術開発が進めば、トルエン、キシレン等他の物質も順次その規制対象に加えていくべきと考えております。
 それから最後に、情報提供の重要性についてお願いしたいと思います。
 一般生活者や設計者、工事業者の方はシックハウスのための情報を大変強く求めております。ヘルシーな家をつくろうとしても、どんな建材が安全か、どんな工法が安全かということで、十分な情報がないということで、今後、住まいづくりや住まい方に関して、さらに、各種ガイドラインとかマニュアルに関しまして、あるいは建材に関するデータベース、こういったものの整備ということで、情報提供に努力をしていただきたいと思います。
 それからもう一つ。建築基準法による規制でこれは事足れりというものではなくて、現在の化学物質過剰時代では、ライフスタイルも含めて、こういう問題は国民一人一人の問題としてとらえる視点が大事だということで、政府も、法改正を契機として、ヘルシーな生活のための強力なキャンペーンを張っていただきたい、そういうふうにお願いしたいと思います。
 最後に、まとめとして四点申し上げたいと思います。
 まず一番目が、審議会の答申の要点は、今回の基準法改正案に十分に盛り込まれておると思います。
 二番目に、シックハウス問題の重要性、緊急性にかんがみて、速やかに本改正が行われることを期待しております。
 三番目に、対策の具体的内容については、審議会の答申の趣旨を御理解いただいて、政令等によって技術的な基準を整備して、実効あるものにしてほしいとお願いしたいと思います。
 最後に、本改正が我が国の居住環境の改善に大きく貢献するものと期待しておりますし、また、私もそう信じております。
 どうもありがとうございました。(拍手)
久保委員長 ありがとうございました。
 次に、松本参考人にお願いをいたします。
松本参考人 主として容積率関係の意見と、それからハートビル法について、ちょっと一言お話しさせていただきます。
 まず、容積率につきましては、今回の高層化、高容積化ということについては、都市全体の公衆衛生や居住の安定、福祉とどのようにかかわり合うかということについて考える必要があると思います。
 高層化、高容積化が局所限定的な場合、それは、建物を利用する人とその周辺への直接的影響を論ずることに主な論点が集中しますが、最近の大量の高層建物、高容積の建物が普及いたしますと、大都市圏レベルでの特に住宅ストックへの影響が強く感じられております。さらに高層化、高容積化を推進するのは、今までの高層化の影響をさらに強めるということで、その懸念を感じております。
 これまでの容積緩和の中では、共用廊下、地下室、地下駐車場の一部を容積不算入とした結果、建物の質を上げるという点では貢献している部分がありますが、ある種の底上げ型マンション、景観問題、危険不良建築物を増加させている傾向が見られます。脱法的な方法で、駐車場を実質一階につくりまして、地盤面を上げるために擁壁をマンションの周りにつけている、そういう状況で、容積が上がります。
 そのほかに、最近は、地下室を居室として認めるがために、横浜市や川崎市のような丘陵地帯の開発が急ピッチに進みました。途中階を地上階の一階として、下の数階を地下階として居住する建物の防災上の問題とか、あるいは緑地を削っていくという自然保護の問題、そういった問題もあります。それから、住宅に関しては、三階建て地下一階というようなものが普及しますと、土地のさらに一層の切り詰めが進んだのが特徴的にあらわれています。
 これを一番目にしますと、二番目として指摘したいことは、高層居住の公衆衛生上の諸問題というのが過去の研究でも随分指摘されております。ただし、これは、疫学的調査で病原菌のような直接的影響を見出すものではありませんので、住まい方との関係が非常に強く出ますので、日本においては、そういう研究があっても、今のところ社会的にそのデータを受け入れられるという素地はまだまだ少ないかと思います。
 ただ、ヨーロッパでは、もう既に高層住宅の建設を中止または禁止している国がふえておりますが、この背景の中には、一方で優良な低中層住宅のストックがあるということも影響しているかと思います。ほかにも、教会とか市庁舎が市民のシンボルであるということで、日本と社会事情が違いますが、そういった公衆衛生上あるいは社会学上の問題というのが現にいろいろなところで指摘されています。
 三番目に、高層住宅ほど将来維持管理費がかかるということなんです。かかる原因の中に、建物の修繕について、設備費関係の費用もうんとかかるということなんですが、特に、容積が高い場合には機械式駐車場を入れているケースが多いんですが、最近の分譲マンションを見ていますと、中には、機械式駐車場を入れながら、一台六百円とか、修繕積立金を伺いますと二千円とか、それで一体将来修繕できるだろうかというような高層住宅の供給が頻繁に見られます。
 要するに、高層、高密度化する前提としては、こういったマンションの適切な維持管理システムというものを前提にして高層化しませんと、まさにスラム化の懸念を感じることになります。
 さらに、ここからが大事な問題点なんですが、最近の十年間を見てみますと、都心へのUターン、マンション建設がかなり二十三区内に集中して、人口も、かつて減少していたところが上昇に転じております。一方で、郊外は、人口減少を始めたところ、あるいは住宅建設がかなり落ちたところが目立ってまいりましたが、このUターン現象によって郊外の衰退という問題が新たに出ております。一戸建てにおいてはさほど強く感じられませんが、マンションストックの、特に分譲マンションの中古価格の低下というのは、買い手がいなくなったという市場原理に基づくわけですけれども、急激な低下によって老後の不安というものがかなり訴えられております。この件に関しては、後ろの方に参考資料としてちょっと新聞記事なんかを挙げております。
 それから、高層化しますと、あるいは高容積化しますと、中低層住宅の資産価値の低下を促進するという調査結果が分析できました。中古価格というのは一般に、これは分譲のことですけれども、土地の持ち分は表面化しない。床面積単価であらわれますが、経過年数が同じ場合に、中古価格評価は床面積単価で大体同じく落ちついてくるんですけれども、高層住宅が市場価格を支配してまいりますと、低容積率住宅は初期価格に比べてかなり低減してまいります。これも後ろの方の資料に載せてあります。
 さらに、六番目に、過度の容積率緩和というのは、都市計画のコントロールを不可能にしてまいります。容積を緩和しますと、建築の自由度は増します。その分だけ、行政の指導の効力というのは失われていく可能性が高いと思います。
 七番目に、分譲マンションの建てかえ問題もこの容積緩和と大いに関連しておりますけれども、老朽マンションの建てかえは容積緩和でというのは大変安易な方法でありまして、一度限りの切り札であります。都市住宅の更新というものの普遍的な方法にはならないと思います。また、行ったとしても、今回のマンションストックの建替え法、施行になりましたが、このような等価交換方式で行えるマンション数を私、試算したんですけれども、一%ないだろうと。容積緩和でしのいでいきますと、行き着くところ、さらに緩和を求めるという結果になるだろうと思います。
 それから、容積率というのは、銀行金利のように上げたり下げたりすることはできません。一度上げたら、そのときにできた建物は、後から下げた場合には不適格建築物になるわけですから、社会的混乱を生みます。それだけに、容積率を引き上げるということは、長期的な視点で都市像というものをきちんと把握した上で検討する必要があろうかと思います。
 後ろの方の資料としては、最近の住宅の平均床面積が都内で上がっておりますが、それだけに、郊外の住宅の魅力がなくなって、かなり最近はたたき売りの状態になっております。
 それから、その次の「選別される郊外マンションストック」というのも、かつて四千万円の物件が今六百万円になっているとか、群馬の方に行きますと百万円で買いたたかれるマンションもあるわけですが、そうなってきますと、まさに維持管理そのもの、都市のスラム化につながる。この原因は、やはり急激なUターンの問題と大いに関係があるかと思います。
 最後に、ちょっと時間がなくなりましたので、高齢者、身体障害者が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進についての若干の意見だけ述べさせていただきます。
 建築物のバリアフリー検討会の中で、共生というノーマライゼーションの理念というものを挙げられていますが、このこと自体は、今後の社会の方向性を確実にするため極めて重要なキーワードであるかと思います。
 ただし、今回のハートビル法の改正を行うには、物的バリアをなくすということ以外に、心のバリアを一緒になくしていくということが大事なんですが、これは建築基準法自体の目標ではないと思いますが、ただ、建築関係者、建築確認者も含めて、あるいは交通担当者も含めて、実際に障害者との交流の経験というのは大変少ないものでありまして、空の車いすを押したり引いたりする経験はあっても、実際に他人に介助してもらったり、あるいは他人を介助したということの経験は大変乏しいものでありまして、基本的になかなかマインドは追いつかないというのが現状であります。この辺は、戦略的に、ほかのところで、法律以外のところでどういうふうにつくっていくかという重要な課題かと思います。
 また、法律の趣旨を実現していくためには、特に多い既存ストックの改善が重要なんですが、ただし、既存不適格の建物を新しく改善をする場合に、その不適格部分の是正というのがかなり大きな課題になっております。実際に、古い住宅では、最近は分譲マンションで特に高齢者がふえたためにその課題が検討されていることが多いんですが、実際にその対応、不適格部分の是正ということが大きな課題になるがために、新しい改善ができない。特に、その不適格部分の改善が指導主事の考え方一つで、かなり地域によって、自治体によって差がございます。この辺もぜひ是正していただきたいというふうに考えております。
 時間が超過しました。どうも失礼しました。(拍手)
久保委員長 ありがとうございました。
 次に、高橋参考人にお願いをいたします。
高橋参考人 それでは、私の意見を述べさせていただきたいと思います。
 私は、一九九四年にハートビル法が制定されましたが、そのときに設計標準の見直しワーキングに参加させていただきました。今回もまた、社会資本整備審議会の専門委員、あるいはその前の建築物バリアフリー検討委員会の委員として、答申等の作成作業にかかわりまして、また最近では、地方公共団体の福祉のまちづくり条例等の制定にかかわってきた者として、改正案について一言述べさせていただきたいと思います。
 まず、私たちが参加しました答申がどのように反映されたかについて、改正案を評価していきたいというふうに思います。
 今回の委員会意見並びに答申との関係ですと、七つのポイントになるかというふうに思われておりますけれども、まず一点目ですが、これはハートビル法の基礎的基準の適合義務化であります。
 審議会答申、以下答申というふうに簡略化いたしますが、義務づけの対象となる施設用途、規模に関し、さまざまな意見が提起されてきました。最終的には、地方条例、地方の福祉のまちづくり条例等の動向や現状での適合状況等を踏まえまして、二千平方メートル以上の新築建築物を答申しました。また、議論の中心となりました小規模施設の義務化ということにつきましては、地方公共団体条例による制限の付加を可能とするということで、地域の実情を踏まえることにいたしました。
 今回の政府案でも、今後の政令にゆだねられる部分も多々ありますけれども、ほぼ答申どおりということでございます。
 それから、二つ目のポイントとして、対象施設の拡大です。
 答申では、従来不特定者の利用と限定されていました建築物の枠組みから、通常は特定者の利用とする高齢者等の福祉施設、これは入所系ですけれども、工場、事務所、学校、共同住宅等を包含しまして、努力義務等により整備を促すことを求めました。
 政府案でも、ほぼこの答申どおりでありまして、地方公共団体の条例等により規模等についてはさらに拡充していくことも可能ということにされております。私は、この点につきまして、特に懸案でありました学校が対象になりまして、差別のない社会を築いていくために、大切な教育の場の整備が行われていくことを特に期待しておきたいと思います。
 それから三つ目、既存建築物への対応でございます。
 答申では、現行のハートビル法が大規模な改修工事のうち増改築のみを施策の対象としていることから、より積極的な対応を求めまして、修繕、模様がえについても努力義務、認定による支援等の対象としてバリアフリー対応を促進するように求めております。
 既存建築物に関する今回の政府案につきましても、努力義務の対象を拡大しまして、既存建築物対策の充実に対応しています。もちろん、これにつきましては、各地で展開されております福祉のまちづくり条例の既存建築物改善方策、大半が努力義務でありますけれども、さらにこれを具体的に示したものとして評価できます。
 四点目のポイントです。優良なバリアフリー対応の推進であります。
 答申では、税制、融資等の支援措置の充実、特定施設の整備に必要な拡幅部分に関する容積率の特例措置、認定建築物の表示制度など、建築主の負担軽減を通じ優良な対応を誘導する方策を創設するように求めております。
 政府案は、良質な建築ストックの形成、施設用途による個別整備の促進、将来の社会基盤整備のモデルとなるような整備のあり方を模索したものと推測されまして、認定建築物の整備の促進に向けた容積率の特例措置、表示制度の新設等を図っております。
 五つ目に、基準のあり方でございます。
 答申では、高齢者入所施設、先ほど申し上げましたけれども、社会福祉施設等新たに特定建築物に追加される建築物の整備につきまして、基準の適用方法や改修工事において段階的、柔軟な基準の適用のあり方が議論され、提案されています。
 政府案では、今後の政令等にまたれる部分となっておりますけれども、今後大変重要な課題でありますので、十分留意していただきたいというふうに思います。
 この点につきましては、義務化対象建築物でも同様でありますし、用途によりまして建築主の判断が適切に行われ、利用者の利用にバリアが生じないような周知が不可欠であるというふうに認識しております。
 六つ目ですけれども、義務づけ等の執行体制です。
 答申では、義務づけ基準への適合強化を図るために建築確認、検査と一体的に処理する仕組みとすべきこと、そして指導助言、認定等の関連事務を建築主事を置く市町村で担うべきことを求めております。
 政府案でも、答申の方向にあるような権限委譲を図るべく、所管行政庁が事務を行うことになっておりまして、これは、先ほど申し上げました基礎的基準の義務化とあわせまして、今回の重要な改正ポイントであるというふうに私は認識しております。
 それから、七つ目のポイントでありますけれども、総合的なバリアフリー化対策であります。
 答申は、交通環境整備との一体的な整備あるいはそのほかの面的整備等、建築主等への適切な啓発を図り、バリアフリー化にかかわる関係者の資質向上及び国民全体へのバリアフリー教育、広報活動に努めるように求めております。
 政府案では、法文上、現在のところはこれらの諸点が記されておりませんけれども、法案提出理由に見られますように、これらの趣旨をベースにしていることは明らかであります。
 そして次に、まとめと今後の課題でございますけれども、以上のように、政府案は、建築物バリアフリー検討委員会、社会資本整備審議会答申をほぼ網羅しておりまして、大変評価できるものと思います。
 もし今回の改正審議が順調に進みまして、法案趣旨を理解されて地方公共団体等が主体的に実行していくことが可能となれば、各地における建築物のバリアフリー化がさらに促進されるものと思います。
 なお、今後の政令等の検討及び法施行に当たり留意していただきたい点は、次のとおりであります。
 一つ、バリアフリー整備の義務化であります。
 特別特定建築物への義務化及び特定建築物の努力義務化が今後の社会づくりにとって大変重要であるということの広報活動を徹底して行っていただきたいというふうに思います。これは、特定施設の範囲あるいは利用円滑化基準等、今後の政令等にまたれる部分はありますけれども、国民各位の意見が十分反映されるような方法を講じてもらいたいというふうに思います。
 それから二つ目、既存建築物への言及であります。
 今回、既存建築物が整備対象となりました。今回の法改正に伴って恐らく改定されると思われます設計標準におきましても、多様な事例を挙げまして、地方公共団体への指導助言を推進し、建築主等の主体的な取り組みがなされるように、さらに検討を加えていただきたいと思います。
 それから三つ目は、地方公共団体の主体の明確化であります。
 先ほども申し上げましたが、今回の政府案の重要な柱の一つは、地方公共団体の役割が明記されたことであります。国民生活にとって身近な視点で地域のバリアフリー化が促進されることになりますけれども、各地の福祉のまちづくり条例、あるいはハートビル法の改正に伴って新たに制定される関連条例等が効果的に機能するように、国による適切な助言を期待したいと思います。また、地域への主体を促進するとともに、地方公共団体における取り組みの格差が必要以上に相違しないように助言もお願いしたいというふうに思います。
 最後に四点目ですけれども、総合的なバリアフリー化の促進であります。
 建築物とあわせて交通機関、道路、公園等の施設のバリアフリー化が一体的、総合的に推進され、さらにはハード面、ソフト面のバリアフリー化が同時に進展するよう、国が率先して意識啓発や情報提供に努めていただきたい。そのためにも、建築主、施設管理者、事業者、設計者に対する適切な研修の機会の確保、義務教育を初めとする各段階の教育機関におけるバリアフリー化教育の支援等についても検討を進めていただきたいと思います。
 以上、総合的に評価してまいりましたけれども、今回の改正案に伴いまして、高齢者、障害者などすべての人の暮らしやすい生活環境の整備が促進されますように、速やかに改正案の内容が実現することを期待しております。
 以上でございます。(拍手)
久保委員長 ありがとうございました。
 次に、児玉参考人にお願いいたします。
児玉参考人 ありがとうございます。
 私は、ただいま御紹介をいただきました社会福祉法人日本身体障害者団体連合会の会長の児玉と申します。
 私ども社会福祉法人日本身体障害者団体連合会と申しますのは、全国五十九の都道府県、政令指定都市の障害者の当事者団体でございます。また、私どもの団体は、日本盲人会連合、全日本ろうあ連盟の計六十一団体で構成されております。すべての障害のある人の完全参加と平等を実現するため、お手元に配付しております当協会の冊子をごらんになっていただくとよくわかると思います。
 我が国の身体障害者の総数は、先生方も御承知のように、十八歳以上の在宅障害者は、平成十三年六月一日の厚生労働省の調査結果の報告で、約三百二十四万五千人と発表されております。
 この三百二十四万五千人を障害別に申し上げますと、視覚障害者が三十万人。聴覚と言語の障害者が三十五万人。肢体不自由な身体の障害者が二百万人、全体の五四%を占めております。また、十八歳未満の障害児がどのぐらいおるかと申し上げますと、約九万人おるわけでございます。さらに、知的障害者が四十万人。精神障害者になりますと約二百万人。全体六百万人弱が我が国の障害者の総数でございます。
 障害者、高齢者、健常者などの区別がなくて、だれもが分け隔てなく使える、車いすも通れるような道路、段差がなくて心配なく住める住宅、またそれらの人が日常使う品物、また町とか公園、家の設計など、これを使いよくデザインしようというユニバーサルデザインなる言葉が使われております。
 我が国では、これら特定建築物のバリアフリーを求めまして、一九九四年に、駅や公共建造物、百貨店などの公共施設は車いすなどが通れるように定めたハートビル法ができましたおかげで、新たに交通バリアフリー法が二〇〇〇年五月に制定されました。私どもが使っております駅など、階段がエスカレーター、エレベーターなどになって、私どもは、アクセスの利便の恩恵を心から感謝しております。この法律によりまして、駅の施設、また鉄道車両、バス車両や駅前広場など、また駅のトイレなど、十年前には考えられないほど飛躍的にバリアフリーになっておりまして、関係者の御努力には私どもは心から感謝しておる次第でございます。
 ただ、残念なことに、いまだに駅などで車いすの障害者が駅員の介助によって階段を上りおりしているのを見ることがございますが、一日も早くエレベーター、エスカレーターなどの設置によって、駅員の介助、早くこれを解消していただきたいと思っておるわけでございます。
 また、この法律では、乗降客の人数によって設置するとかしないとかの基準がございます。お年寄りや妊婦や障害者は、大きな駅ばかりでなく小さい駅にもおりますので、ユニバーサルデザインの観点から、よろしく改善の方法をとっていただきたい、そういうふうに思っております。
 交通のことで、私の頭の中にはいつも考えていることなので、この機会に一言述べさせていただきます。それは、自動料金徴収システムのことでございます。
 昨今、高速道路でETCの表示がされております。私は、今から八年ほど前、イタリアの高速道路で体験いたしました。便利なものだなと思いながら、一日も早く日本の障害者の車にもあの装置が導入できたらと思いました。
 障害者は、あの高速道路の料金徴収所が苦手なのでございます。例えば、脳溢血で片手の不自由な障害者が、まず高速道路割引証、身体障害者手帳、みずから乗ってきました高速道路の料金の三点セットを、片手で窓をあけて、お願いしますと言って渡すわけです。
 先生、どうかひとつ考えていただきたいと思います。障害者は、病院に行くために高速道路に乗るのです。まだまだ一般道路にはトイレはございません。サービスエリアに障害者用のトイレがあるので安心だと私に言っておる友人がおりました。
 ハートビル法の改正の審議の中で脱線いたしましたが、高速道路のバリアの一つでございますので申し上げました。
 ハートビル法の改正は、私ども日身連を初めあらゆる障害者団体及び障害者にとりまして自立と社会参加を促進させる法律でありますので、ぜひとも推進させていただきたいと思っております。
 以上でございます。(拍手)
久保委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
久保委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。倉田雅年君。
倉田委員 自由民主党の倉田雅年でございます。
 参考人の先生方からいろいろと御意見を伺いまして、本当にいろいろな角度から物事を考えなくちゃいけないんだなということを感ずるわけでございます。
 最初に、児玉先生にハートビル法の関連でお尋ねをしたいと思いますが、既に、この委員会でも自民党の中本先生などからお話が出ているところでございますけれども、現状、各種の建物にかなりバリアフリー化がされた、こういうことでございますけれども、バリアフリー化はされているけれども、実際、障害者のお立場からしまして使いにくいとか、あるいは、例えば公民館などに確かにトイレはついているんだけれども、実際には余り使われない、あるいは使いにくいので使われないのか、所によっては、子供がいたずらをしては困るということでかぎがかけてあるなどというお話もございました。それから、駅などでも、障害者用のトイレはあるんだけれども、そこへ行くまでがなかなか大変だというようなこともある。あるいは、構造的に施設が使いにくいものがついているとか、そういうことから、バリアフリー化されてはいるけれども、いわばおざなりな措置といいますか、義務的についているというような要素もお感じになることはないんだろうか。
 これは、心の問題といいますか、先ほど松本先生ですか、心のバリアを除くことが重要だというお話もございましたけれども、やはり、ただ施設を云々ということのみでなくて、日本人全体が自分たち自身のこととして考えていかなきゃならないのではないかということを考えるんですが、先生の方から、使う側からのいろいろな問題点というのがもしございますれば、お教えを願いたいと思います。
児玉参考人 私、日ごろ思っておることでございますが、やはりまだ駅などにおきましては、バリアが残っているところが、トイレだとか階段にはございます。
 しかしながら、乗降客が多いところにつきましては重点的に、上りの階段を障害者が、また高齢者、妊婦などが使う場合にエスカレーターなどが設置されて非常によいのでございますが、階段をおりていくというような点につきましては、まだまだいま一歩というところがございます。できれば下りのエスカレーターなどもこれから急いで準備していただくようにお願いしたいというのが、私ども障害者団体の中では、あの駅に下りのエスカレーターがあればなあというような声もよく聞くわけでございます。
 現在、皆さん方がお考えのように、ハートビル法の改正という点につきましては、どうか一日も早く実施していただきたい、そういう願いが、本年徳島県で行われました全日本の福祉大会におきましてもそういう要求が出ております。予算もございますが、障害者団体の考え方といたしましては、障害種別にこだわらず、協力できますことはお互いに協力いたしまして、例えば視力の方につきましては肩をかしてあげるとか、介助をするとか、そういうように、私どもは、みずから自立と社会参加を促進するようなことに全力を尽くしております。よろしくお願いいたします。
倉田委員 ありがとうございました。
 もう一点、ちょっと児玉先生にお伺いしたいんですけれども、現行法でも、あるいは今回の改正でも、平常時のいろいろな施設のことが書かれておりますけれども、非常時といいますか、災害時に、例えば建物の中に避難通路がありますが、ああいうところへのものがまだ考えられているのかいないのかという、これは政令でふやせばできるんだと思いますけれども、その辺のことはどうでございましょうか。
児玉参考人 ホテルとか旅館などの客室の内部などのバリアフリーをぜひ義務づけてほしいというふうに私どもは思っております。
 といいますのは、先生今おっしゃいましたように、義足をつけている障害者が宿泊しておりまして、災害時に従業員の誘導によってそこを逃れるわけでございますが、日本式の旅館などにおきましては、誘導方法というようなものは掲示はされておりますが、非常階段は右の方にございますよとか、そういうような御案内はございますが、あの真っ暗やみの中で、やはりきちんとした避難路、そういうものがきちんと決められているように、ひとつこれからも義務づけるということをぜひお願いしたいと思っております。
倉田委員 ありがとうございました。
 次に、同じくハートビル法関係につきまして、高橋先生にお伺いをしたいと思うんです。
 先生が前にお書きになったものの中で、既存建物についてのバリアフリー化が十分でないということをおっしゃっておられましたところ、今回は、特定施設の修繕それから模様がえをしようとするものについても努力義務を課した。それからさらに、そうした修繕または模様がえの場合にも誘導的基準にまで達したものについては、つまり認定建物については支援措置が及ぼされる、こういうことが決められておりまして、この点は評価をいただいているところでございますけれども、修繕時とか模様がえとかそういうときに限定をしないで、さらに、一般的にその施設だけについてバリアフリー化する、修繕時とか増改築、そういうときだけでなくて、一般的に努力義務を課するという考えもあると思うんですが、その辺のことをどうお考えになりますでしょうか。
高橋参考人 今の御質問は、修繕という機会をとらえることではなくて、既存建築物であれば、当然、法の努力義務にのっとって全体的にすべきではないか、率先してやるべきではないかという御質問かというふうに承りましたけれども、基本的には私もそのように思います。
 ただし、今、全国の状況を見ますと、そのために事業主あるいは設計者や施設管理者がどんなふうに進めていいかという目標が、多分今の段階ではまだ見えていないのではないか。やらなければいけないということは、恐らく大半の事業主の方が理解されているというふうに思いますけれども、どこから手をつけたらいいのか、それから、その費用をどこで負担をすればいいのか。地方公共団体によりましては、その補助を出しているところもありますけれども、それも現状の財政状況の中ではなかなか厳しいということで、今回の改正では今までなかったものに対して、さらにある程度目標を掲げて、修繕、模様がえ、そして部分的な、今回の政令の中で決められていくような特定施設の範囲について、とりあえずそこを行うことで、特段の利用の不自由がないように定めたというふうに理解しておりますので、それを周知していくためのデザインといいますか、改修のための方法について、さらに御指摘のように検討を図るべきだというふうには思います。
 そして一番大事なのは、事業主に対して、建築物を所有している方あるいは維持している方が当然やるべき行為、それが将来の日本の社会にとってとても大切なことであるというような啓発活動を進めることがまず先決かな。と同時に、それを具体的に示すような次の設計標準等の改定、地方公共団体のさまざまなガイドラインを国の方でも指導していただきたいというふうに思っております。
倉田委員 現段階は現段階で、また将来の段階として全般的に国も考え、それぞれ地方も考えるべきだ、よくわかりました。
 ただ先生は、高橋先生にお伺いしていますが、福祉のまちづくり条例というのをもう長い間手がけておられた。そうした中で、さらに一歩進んで、一般的にその部分だけのといいますか、廊下とか特定施設部分のバリアフリー化を努力させるような条例といいますか、そういうものは現実にございますでしょうか。いかがでしょうか。
高橋参考人 残念ながら、私の知る限りは、そういうガイドラインあるいは条例で具体的に示したものはないんでありますけれども。
 今回のハートビル法の改正の動きが数年前から始まっておりますけれども、それをにらみながら、各地方公共団体、特に現行のハートビル法が制定された前後に、平成七、八年ぐらいに建てられたところは、現在、そのための既存建築物をどうやって改善するかという取り組みを始めているところでございます。
 ここで大事なのは、恐らく新規のものと既存のものとの整備のあり方、方策が、とりあえずボトムアップを図るという視点で変わってくるというふうに推測されるんですけれども。それが誤解のないように、もし基準の数値を下げた場合は、それが少なくとも利用は満足しているというようなことを示しながら改善の基準をつくっていかなければいけないんですけれども、これについては、今回のハートビル法の中ではまだ整備基準、利用円滑化基準が示されておりませんので、どうなるかわかりませんけれども、それらをうまく適合できるようになればさらにいいというふうに私は思っております。
 条例の中では、現場あるいは各市町村、都道府県等の人たちの理解がまだまだ得られていないのではないかというふうに思います。これについては、さらに国の方の指導あるいは助言、アドバイス、適切な情報の開示がないと進まないというところも事実かというふうに思いますが、その点については私も残念に思いまして、私がかかわっている中でも、それを具体化できるような取り組みはさせていただいているところでございますが、まだそれを公表できるような段階までに至っていないという形でございます。
倉田委員 わかりました。ありがとうございました。
 それから、高橋先生にもう一点。
 児玉先生にもお聞きしたんですが、災害時の避難通路ということも、私は特定施設の中に入れていくべきだと思うんです。現在、法律の方の例示だとかあるいは政令で挙げられている中に、廊下とか敷地内通路、こういう言葉があるんですが、避難通路というのはこれだけでカバーされ得るものでしょうか、どうでしょうか。
高橋参考人 もちろん、廊下等だけではないですし、特に今回、特定建築物の中に高齢者等の入居系の施設が入ってきておりますので、そうしますと、通路から逃げた後にどこにたまるかということなんかも大事な視点になってくると思います。特に垂直移動が非常に不自由な方々にとっては、まず適切な避難の場を工夫しなければいけないということになります。建築物外の状況もその中でありますので、設計の中で適切に示していかなくちゃいけない部分、それから、ある程度円滑化基準に準じた形で指導できるようなガイドラインの作成も、今後さらに強く求められるというふうに思います。
 それから、これは多分具体化はできませんけれども、同時に、その基準等を示すときに、人的な誘導のあり方について、いま一度各事業者に検討していただくような、そういう方針案の作成は可能かというふうに思っておりますけれども、それについても、先生方も含めて御検討いただければというふうに思います。
倉田委員 ありがとうございました。
 次に、松本先生にお伺いをしたいわけでございますけれども、先生のお話の中で、都市への回帰ということがバブル崩壊後起こっておる、郊外の方が寂しくなってきている、この御指摘は非常に重要な御指摘だと思うんです。そうしたことの原因はどこから来るのかな、地価下落なのかなということも考えますが、先生、先ほど市場原理だということをおっしゃられましたけれども、その原因をどういうぐあいにお考えになりますでしょうか。
松本参考人 バブル直前までは、土地は利用するというよりは所有するということで、実際には、都市の内部に相当の空地を抱えながら郊外に開発を伸ばしていった。だから、市街地が薄く広く伸び切っちゃった状態でバブルがはじけたわけです。その後に、中心部にあった空地、あるいは、むしろ企業が次々に本社まで手放している状態ですから、そういうところに大量のマンション建設を可能としたわけです。
 その結果、新築マンションの値段も下がりましたものですから、無理やりに郊外に押し広げられた人たちがUターンするチャンスでもありますし、これから住宅を取得しようとした人たちが無理やりに郊外にまで行かなくても済むようになった。そういう点では、都心の再生に寄与しているのかもしれませんけれども、一方で、郊外のマンションが、何ら維持管理は悪くないのに、あるいは住宅水準もある程度は満足しているのに、もはや買い手がいなくなった状態ということになりまして、逆にこれが連鎖反応を生んできたということになると思います。
倉田委員 私は確かに、けさのテレビのニュースなんか見ていますと、江東区でマンションの建設ラッシュが起こっていて、区としては小学校の増設など、いろいろなことを考えなくちゃいかぬ、こんなような現象が起こっているということを聞きまして、大変大きな問題だなとは思います。
 ただ一方で、これから情報化社会がますます進展いたします。郊外にいても、あるいは地方にいても、インターネットで物が買える、こういうことになりますと、郊外あるいは地方の生活と、都会での高層ビルの中での生活と、選択し得るような社会が、もう少し長い目で見ると出てくるんじゃないかなんという印象を持っているんです。したがって現在、先生の御指摘は非常に重要ですが、やや一時的なものなのかもしれぬなということも考えるんですが、いかがでございましょうか。
松本参考人 電話が普及したときに、人々は会わなくてもいろいろ仕事ができるというふうに考えたわけですが、今は、携帯電話が普及して、むしろ会うための約束をしているような状態でして、多分IT化が進んでも実際には都心への魅力というのはかなり大きなものだろうと思います。
 それから、つけ加えれば、今まで女性は子供を産むと家に引きこもるというのがありましたんですが、これからはかなり働き続けるだろう。そうなりますと、育児、通勤、そういったものが便利なところに、親の世代とは別のところで、親というのは高齢者、と別のところで居住する、そういう人たちがやはり便利なところに求めるということになるだろうと思いますが、多分、一時的なものというよりは、これから少子高齢化という中で住まい方も含めて大幅に変わってきます。それから、新しい結婚世帯がどんどん減ってきます。そうすると、どこで人口が減るかというと、多分郊外だろうというふうに私は推測しております。
倉田委員 ありがとうございました。
 村上先生にもお聞きしたいことがございましたんですが、時間となってしまいました。村上先生は、シックハウスについて建築基準法で定めるべきだとかねて御主張なさっていて、今回はそのとおりになってきましたんですが、シックハウス法というか、建築基準法のその部分の改正は評価していただけるんではないかと思いますが、いかがですか。簡単にひとつ。
村上参考人 今回の法案で、シックハウス問題は大変改善に向かうだろうと期待しております。
倉田委員 ありがとうございました。これで質問を終わります。
久保委員長 次に、井上和雄君。
井上(和)委員 おはようございます。民主党の井上和雄と申します。参考人の皆さん、よろしくお願いいたします。
 まず、村上参考人にシックハウスの法案に関連してお伺いしたいのでございますけれども、先ほど村上参考人から、今回の法案の規制がなぜ入り口規制かというお話がございました。濃度測定そのものの問題点は、温度や風の影響がある、それで信頼性に問題があるというお話もございましたし、また、ヨーロッパでは建材規制が一般に行われているということで、入り口規制をとることが望ましいというお話でございました。
 私はこの問題に詳しいわけではございませんが、素人考えで、理想的にはやはりできた住宅の、最終的に消費者が住む住宅の濃度をはかることが一番いいんじゃないかと。つまりは、いろいろな技術的な問題はあるかもしれませんが、出口規制というのが、すべての化学物質の存在をちゃんとはかるわけですから、住宅を購入した人はこれなら安心して住める、そういうデータがちゃんと得られれば最も理想的なんじゃないかというふうに私は思うんですね。もちろん建材規制も必要かもしれませんが、出口規制というのを今後とも、理想的なものとして、濃度測定の問題、技術的な問題を解決する等、やはり導入するように努力していくべきじゃないかと思うんですけれども、それに関していかがでございましょうか。
村上参考人 お答えします。
 御指摘のように、出口規制と申しますか、でき上がった建物の濃度を測定して判断するというのは大変わかりやすいのでございますが、繰り返しになりますけれども、室内の濃度と申しますのは、時刻時刻で変動が大変激しゅうございまして、あるいは生活の状態とか、一度はかったといってそれで決して安心できない。例えば、平均的には指針値を超えている場合にも、たまたま条件がよければパスするような濃度測定結果も得られるというようなことは十分に予想されるわけでございます。そういうふうに、室内濃度の測定というものに関して、変動が大き過ぎて信頼性が十分持ちにくいということがまず一点でございます。
 それから、もう一つは、住宅で申しますと、毎年百五十万戸ぐらいございます。それを一戸一戸はかるということは大変手間もコストもかかることで、それは結果的に国民が負担するわけでございまして、それと入り口規制の方を比べた場合に、そちらの方が手段として有利じゃないか、そういうことでございます。別途、品確法、住宅品質確保法の方で濃度測定ということは、これはボランティアでございますけれども、定めておりまして、濃度を測定したいという場合には、そちらのシステムを利用することも可能じゃないかと思います。
 それから、もう一点。完成時点では、家具も入っておりませんし、それから生活用品も入っておりません。ですから、室内濃度は、その時点でオーケーでも、しばらく生活するうちにまた濃度が高くなる、そういう問題もございます。
 以上でございます。
井上(和)委員 家具を入れると濃度が高まるということを今おっしゃったんですけれども、そうしますと、やはりこれは建材で規制しても同じことじゃないかなというふうに思うんですよね。そうしますと、やはり住宅に住む方が住む状態で濃度をはかるしか最終的な結論、つまりこの家が本当に化学物質に汚染されていないかどうかというのを知る方法というのは濃度測定しかないのかなと私は思うのでございます。確かにいろいろな技術的な問題はあるとは思うんですが、やはり国民の健康に本当に密接に関係する問題ですから、これは国を挙げて技術的な問題を解決するというような努力が必要じゃないかなということで、御存じのように、私たち民主党も、参議院におきましてはシックハウス法案を提出させていただきまして、シックハウス対策としての出口規制というものを提案させていただいているわけでございます。
 今回の法案でも、入り口規制、つまり建材に関する規制とともに換気の基準というものを非常に重視しているんですが、換気といって私が考えつくのは、要するに換気扇とかそんなものなんですけれども、具体的に有害化学物質を除くという効率的な換気の設備というのは今一般的にもう導入されているんでしょうか、一体どういうものなんでしょうか、教えていただきたいと思います。
村上参考人 お答えします。
 最初のお話で、家具が持ち込まれたらやはりわからないじゃないか、問題が出るじゃないか、それは建材を規制しても同じじゃないかという御指摘がございましたが、今回の答申では、ある程度の家具の量を想定して、建材から出る汚染物質の量がゼロになっても家具からの分は少なくとも十分排除できるような換気のシステムを考えよう、そういう形で家具から出る分を担保しております。
 それから、後の方の換気のシステムでございます。
 換気のシステムは大変長い歴史を持っておりまして、今先生御指摘ありました換気扇と申しますのは、あれは、短期的に、料理をするときだけ一時的に十分とか十五分つける換気システムでございまして、多分、今回のシックハウス対策のための換気は、いわゆる常時微少量換気という形で、おふろとかトイレに、そんなに大量じゃないけれども、ずうっと二十四時間換気していただく、そういうシステムにせざるを得ないだろうと、私は個人的にそう考えております。それは、ダクトを引いて、各部屋から少しずつ常時吸引している、そういうシステムを設置すべきであろうと考えております。
井上(和)委員 その換気システムというのはもう現在でも新しい住宅とかマンションには導入されているんでしょうか。
村上参考人 お答えします。
 既に一部の個人住宅、一部の集合住宅では導入されております。
井上(和)委員 それでは、今回のシックハウスは、化学物質に関しては十分検討はされたと思うんですけれども、シックハウスには、いわゆる微生物汚染によって起こされる、つまりカビとかダニによって起こされるアトピー、そういう問題もあると思うんですね。特に、今お子さんのアトピーというのは非常に大きな問題になっておりますし、その原因としてダニがあるということは私も聞いております。その微生物汚染の原因となるのが、特にマンション、高気密の住宅内に発生するいわゆる結露の問題。結露によって湿度が高くなってカビが生えて、そしてまたそれによってダニが発生するとか、そういう社会的にも非常に大きな問題じゃないかなというふうに思うんです。
 今回、社会資本整備審議会では、そういった微生物汚染の問題に関してはどういった議論がされているのか、また、例えば結露を防ぐ、技術的に今どういう検討がされているのか、そのあたりについて御意見をお伺いしたいと思います。
村上参考人 お答えします。
 先生御指摘のとおり、微生物汚染は、私はこの二十一世紀の大問題だろうと思います。ただし、これは、アトピーのことも御指摘されましたが、屋内環境とそういう微生物汚染の関係がまだほとんどわかっていない状況でございまして、いわゆる化学物質によるシックハウスに比べますと因果関係はほとんど不明確で、もしもそれがもう少し明確になれば、やはり今回と同じように、結露問題を含めてその対策を当然とらなければいけないだろうし、これは多分、住宅の性能が向上するほどこの微生物汚染の問題は深刻になるだろうと考えております。
井上(和)委員 私も幾つか医学的な文献をこの委員会の前にちょっと読んでみたんですけれども、やはりダニとの相関関係が非常に強いという文献が幾つかございましたし、医学的には、アトピーの原因はダニだということが確立されてきているんじゃないかなというふうに思うんですね。
 それで、あと、カビの問題に関しても、やはり結露対策が非常に重要だというふうに言われているんですが、具体的に結露対策というもので私が今非常に関心を持っているのは、特にマンションなんかの外断熱工法が非常に結露に対して有効であるということが言われておりますし、私自身もそういったマンションを幾つか見まして、住んだ人に話を聞いても、結露が非常に少ないということを聞いておるんですが、まだまだ日本では、そういったいわゆる外断熱のマンションもほとんど普及はしていないし、結露対策そのものもまだ非常におくれているんじゃないかと思うんですが、参考人の御意見はいかがでしょうか。
村上参考人 お答えします。
 結露の問題というのは建築環境でも最も難しい問題の一つでございまして、これは、温度、それから換気、湿度、日射、全部関係しまして、先生がおっしゃるように、結露の問題、これは極めて古いテーマでございますが、いまだに十分には解決されておりません。それは、住宅が高気密化するとともに換気量が減って、それで湿気が部屋の中にたまるという、そういう地球環境問題、省エネ法との絡みもございまして促進される側面もないわけではございません。
 それで、外断熱が効果的じゃないかということは、確かに効果的でございまして、北海道なんかでは外断熱がどんどん普及しております。ただ、これは、例えば東京以西の非常に人口の多いところで、暖房をつけたり消したり、あるいは冷房もつけたり消したりというところで、本当に外断熱がいいか内断熱がいいかということはまだ議論の途中の段階でございまして、結露だけのために外断熱をすべきだというふうに結論をつけるのは難しいんじゃないかと思います。
井上(和)委員 ありがとうございました。
 それでは、児玉参考人と高橋参考人にハートビル法関係に関してお伺いしたいんです。
 先ほども宿泊施設のバリアフリー化の問題で倉田委員からも御質問がありましたし、また、一昨日ですか、委員会でも何人かの委員の方が、とにかく宿泊施設のバリアフリー化がおくれているという問題の指摘がございました。
 それで、ことしの十月に札幌で障害者インターナショナルの総会、いわゆるDPIと言われている組織の世界大会が行われるそうですね。それで、世界から二千人の代表の方、恐らく多くの方が障害者の方だと思うんですが、札幌に集まってきて大会をやるんだけれども、千四百ベッドが必要なうち、車いすが使えるのがもう本当に十室ぐらいしかない、そういう状況であるということをお伺いしております。
 では、高橋参考人にまずお伺いしたいんですけれども、宿泊施設のバリアフリー化ということに関して、社会資本整備審議会で一体どういう議論がされていたのか、少しお伺いしたいと思うんです。
高橋参考人 宿泊施設については、私も大変重要なテーマだというふうに思っています。
 これだけ社会が豊かになって、移動する社会、欧米ほどではないかもしれませんけれども、かなりのレベルで移動をしていきますので、当然宿泊施設を何らかの形でバリアフリー化していく、あるいはユニバーサルデザイン化していくということは社会的な責務ととらえてもいいというふうに思っております。そのときの一つの考え方としては、短期であっても、住まいの中がバリアフリー化になっていれば宿泊施設も同じようであるべきだというふうに、私は、個人的な意見では思っています。
 ただ、私は申し上げましたけれども、現状では、社会資本整備審議会の議論の中で、事業者、それから利用者、そして設計をする側、それぞれが必ずしもまだ意見の一致を見られていないということです。この理由は何かといいますと、今までの設計のあり方について、私たちの責任もあるんですけれども、少し特化したようなデザインの提示をしてきたのかというふうに反省しております。
 現在では、先ほど児玉さんもおっしゃられていましたけれども、すべての人が利用しやすいという視点に立ちますので、例えば要望があって、何でもかんでもそれをつけることがユニバーサルデザインかということになると、そうではないわけですね。特に、ホテルの場合ですと、いつでも、どこでも、だれが来ても宿泊できるように、現状では、障害を持っている人たちの客室がありますと、そこに視覚障害を持っている人も耳の不自由な人たちもみんな入ってしまう、そういう何か変な関係になっておりまして、これについては、やはり施設管理者の理解、そして求められて設計する側、改修を求められる側もそのことについて十分理解していくような期間が少し必要かなというふうに考えております。
 ただし、今後この改正法案がどんなふうに見直しされていくかわかりませんけれども、近い将来はやはり、そういうことが法的になるか、これはデザインはなかなか規制できないんだろうと思いますけれども、できるだけ多くの施設が利用可能なようにということは当然時代の要請になっていくだろうというふうに考えております。
児玉参考人 ただいま先生おっしゃられましたように、本年の十月十五日から十八日まで、札幌におきまして世界障害者のDPI大会が開かれます。このDPIの大会の主な点は、車いすの障害者が世界から約三百名集まるということでございまして、先生の御指摘どおりでございます。
 札幌市内のホテルの障害者の受け入れ、例えば、車いすの場合は幅が八十センチなければドアを入ったり出たりすることはできません。そんなような制約がございますし、また、外国の障害者の皆さん方は、日本の和室のようなところに泊まるということはちょっと不可能でございまして、洋式のホテルを要求してきております。私ども日身連といたしましても、このDPIのホテルの確保ということにつきまして、札幌近辺でございますが、あの周辺のいろいろなところを現在確保しつつございまして、何とか実行できるんではないかというようなめどまで立ってきております。
 しかしながら、今先生御指摘のとおり、これからの障害者の宿泊施設というものは、トイレの扉とか部屋に入る扉の寸法などにつきましても八十センチ以上というような規定はあるのでございますが、また今回の改正の中に出ておりますが、ぜひひとつ欧米型のホテルというような形も十分参考にしていただきましてやっていただきたい、そういうふうに思っております。
 また、十月の十九日から二十三日に、大阪で、アジア太平洋障害者の十年の最終年を記念して大きな会議が開催されるわけでございます。そこにもやはり、全国、世界から車いすの障害者の代表が参ります。私も、そちらの方に重点を置きながら、今先生御指摘の宿泊施設につきまして検討している最中でございまして、何とか半分ぐらいはめどが立ってきたというような状況でございます。
 以上でございます。
井上(和)委員 最後に、松本参考人に一言お伺いしたいのですけれども。
 今回の建築基準法の法案にもありますような、いわゆる容積率の緩和の件でございますけれども、総合設計制度に準ずる制度というものができまして、今回容積率が一・五倍まで緩和される。そして、これまでのいわゆる総合設計制度ですと、これは許可が必要だったわけですけれども、これは建築確認だけで進めることができるということで、先ほども先生の御指摘があったように、自治体の関与というのが単体に関しては非常に少なくなってしまう。私自体は、これによってマンション紛争なんかがまたふえるんじゃないかということも心配しておるのですが、先生の御意見はいかがでしょうか。
松本参考人 今、最後にマンション……
井上(和)委員 マンション紛争ですね。要するにマンション、高層建築を建てることによって地域住民との問題が起こるとか、そういうことがふえるんじゃないかというふうにちょっと心配しておるのですが、先生、御意見ございましたら、いかがでしょうか。
松本参考人 今、超高層住宅は、都心だけでなく郊外に相当普及してきました。戸建て住宅の隣にまさに超高層が建つ時代になりまして、その辺にも、地域でのトラブルがこれからふえるだろうというふうな感じがしております。
 先ほどの、一番最初の総合設計制度の話ですが、こういう形でその地域での、あるいはそのポイントでの環境のよさというか、そういうものを担保するものとしての総合設計制度は、ある評価ができると思うのですね。
 ところが、先ほど容積率緩和の中で、局地限定的な場合はその地域の問題として考えられるわけですが、これが、大量のという、かなり広範囲な、大量の話になってきますと、今度はそこの土地の、あるいは地域の人たちだけではなくて、場合によっては首都圏レベルの、自治体の領域を超えた影響が出始めてきているというのが私の認識であります。そうしますと、一つの自治体だけで問題を考えることのできない問題だろう、その局面に来たかなというふうに思っております。
井上(和)委員 どうもありがとうございました。終わります。
久保委員長 次に、赤羽一嘉君。
赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。
 まず、本日は、四名の参考人の皆様方におかれましては、大変御多忙の中にもかかわりませず、また早朝から足をお運びいただきまして、大変参考になる貴重な御高見を御開示いただきましたことを、まず心から感謝を申し上げる次第でございます。
 きょうは、私も二十分間という限られた時間でございますので、私は、ハートビル法の改正について御質問させていただきたいと思います。全員の参考人の皆様に御質問できないかと思いますので、まずその点、御容赦をいただきたいというふうに思います。
 今回のハートビル法の改正が数年ぶりに行われて、ある意味では、努力義務から強制義務化されるという大変大きな一歩を踏み出したなというふうに、私自身、この法律を評価するところでございます。
 実は、交通バリアフリー法が、平成十二年ですか、成立したとき、当時私、運輸委員会に所属をしておりまして、質問に随分立たせていただきました。参考人のこういった質疑の場がございました。今でも非常に印象に残っているそのときの参考人の方の御発言で、新幹線を利用するときに、あらかじめ何時に着くかということを事前に連絡しなければいけない。そして、着いたら四人とか六人の方に支えられて階段をホームに上がらなければいけない。これは、設備の問題ではなくて、人としての尊厳にかかわる問題なんだ、こう言われた参考人の方がいらっしゃいまして、私、そのときに改めて大変感銘を受け、本当にそうだな、これは箱物行政とか、国土交通省的な考えですと施設設備というような、それは役所の権限としてそうなんですけれども、そういっただけの話ではなくて、これは本当に、社会のあり方というか精神性の問題というか、二十一世紀の日本の国のあり方にかかわる大変重要な問題だという認識をその場で新たにいたしまして、それ以来、私なりに一生懸命取り組んできたところでございます。
 一昨日の本委員会でも、実はこの質問に立たせていただきまして、先日、障害者の方々が企画されたシンポジウムに参加させていただいて、皆さんから出た要望のうちの数点を質問させていただいたところ、扇国土交通大臣、また住宅局長からも、本当に前向きな答弁も出たところでございまして、本当に、一歩一歩ではあるかもしれませんが、日本の社会がここ数年、いわゆるバリアフリーのまちづくりを目指した社会になっているなということを実感しながら、きょうも質問させていただくところでございます。
 まず一つは、高橋先生の発言要旨のメモの中にございますが、「優良なバリアフリー対応の推進」という項目がございまして、私もこの点は大変大事なのではないかな。このハートビル法ができ上がって本日に至るまで、努力義務の中で、どのような形で、どれだけこの施策が進んできたか、こういった状況の中で、基礎的基準をクリアした建物が七割以上ある、こういう状況でございますが、また一方で、もうちょっとハードルが高い誘導的な基準という観点で見ると、まだ一割にしか満たない、こういった状況があるわけでございます。
 また、障害者の方といっても、障害のありようというのはすごく多様であって、段差があることが大変な障害になる場合もあれば、視覚障害の方にとってはその段差がないことが逆にバリアになってしまう、こういったことで、バリアフリーと簡単に言っても、難しさというものも感じますし、先ほど高橋先生の御答弁でもありましたが、ホテルの部屋の中といっても、バリアフリー化というと、非常にステレオタイプになって、いろいろな障害を持たれている方が全部そこに住まわされてしまうというようなことがどうかというような御指摘もあったところでございます。
 また、車いすといっても、先日も改めて実感したわけでございますが、電動車いすの方と普通の車いすの方では、重さも違うし、幅も違うし、縦の長さも違う。これは、扇国土交通大臣も改めて自覚をしたという御発言もありましたが、そういった意味で、バリアフリー化が進んでいることは喜ばしいことでありますけれども、ある意味では障害者の方々から見ると、まだまだ物足りない部分があるというのが実感なのではないかなというふうに思うんですね。
 基礎的な基準、誘導的な基準という基準を決めた瞬間に、実は基礎的な基準をクリアすればバリアフリー化ができると、バリアフリー化という概念が実は非常に矮小化されてしまうのではないか。交通バリアフリー法があって、全国各地でいろいろな駅にエレベーターがつきました。ところが、エレベーターが一つつけばバリアフリー化になったと、これは前進は前進であるんだけれども、本当に障害者の方の立場から見ると使い勝手としてはどうなのかな、だけれども、統計的にはバリアフリーの中に入ってくる、こういった大変なギャップがあるのではないかなというふうに私は実感をしております。
 そういった、実体験としてどうなのかということをまず児玉参考人にお聞かせいただきまして、その後に高橋先生に、基礎的な基準、誘導的な基準という基準設定を設けることについてというか、こういったこともやむを得ないのかなと思う気持ちもありますが、先生もこの法案自体に間接的に深く関与されてきたお立場として、この辺についての議論がどうなされたのか、御意見をいただければと思います。
児玉参考人 今先生おっしゃいましたように、基礎的な基準を設けることが妥当かというような御意見だと存じます。
 私は、障害者の中におきましても、最近の兆候といたしまして低肺機能、例えば、私たちが今こうやって空気を吸っておりますが、低肺の障害者の場合ですと酸素吸入器を持って歩いておるというようなことでございますが、その酸素吸入器のボンベ、約三キロぐらいございます、それを手に引いて、JRの駅または私鉄の駅など、バリアのないところを探しながら通っております。よくお見かけするんではないかと存じますが。
 低肺機能の障害者の団体につきましては、バリアフリー化による物すごい福音だ、かつてない歴史的な改革だとまで言っております。私どもといたしましても、A駅からB駅へ移動する場合に、どこを通ればエレベーターがあるとか、この駅にはないとか、そういうようなアクセスのホームページを、エコモ財団などを紹介いたしまして、障害者本人がそれをメモして移動するというようなことが現実に行われております。
 これからもどしどし、先生御指摘のように、たしか電車とホームの間には幅の広いすき間があったりなかったり、また、車両とホームとの間の高さ、低さがございます。そういうようなこともすべて、これから私たち障害者団体が一つ一つ検証することによって、また情報として提供することによってユニバーサルデザインの本旨が生かされるような気がしてなりません。
 以上でございます。
高橋参考人 申し上げたいと思います。
 今の先生の御質問につきましては、基礎的基準という整備基準をどこまでどのように設けるかというようなこともあるかと思いますが、私も、本来であればそういう区別をしないで、当然事業主あるいは設計建築士としてはやるべき行為であるというふうに理解をしています。ただ、さまざまな法令基準もそうですけれども、ある程度段階的にどこかに決めておかないと、理解する時間がない人にとってはどうしようもないというようなこと、それから、すぐれた理解をする人については、それはあるけれどもさらにこんないい工夫があるよ、そういうような一つのベースにもなるという形、考えを持っています。
 ですから、現状では何らかの形でガイドラインを設けなければいけないというような感じがしますが、ただし、問題は、現行のハートビル法でもそうですけれども、それができていて、そしてとにかく基準さえ守っていればいいんだというような事業主の方が、おっしゃるようにたくさんいらっしゃるわけですね。
 私も、実は国等の施設なんかもたくさん拝見させていただきましたけれども、ハートビル法の認定建築物の基準に合っている、あるいは基礎的基準に合っている、ただし実際にはその間の連結が、動線がうまくいっていないというようなケースはたくさんあります。駐車場についてもトイレについても一応物はある、だけれども、利用し切れないというのは地方でも国の施設でもたくさんあることは存じています。
 ここで、どういうことを伝えなければいけないかということになりますと、やはりその基準を整備することがゴールではないということを、はっきりとこれから関係者の人たちに伝えていかなければいけないんだろうと思います。バリアフリーをすることは、社会のゴールではなくて、その後の、住みやすい環境、あるいは先ほどおっしゃっておられましたけれども、人権の確保ですとか、そういうようなことのほんの一里塚にすぎないわけですね。できる限り公平な社会をつくっていく、みんなが安心して暮らせる社会をつくっていくということですから、ゴールとはしないような、そういう基本的なコンセプトをしっかりイメージしたような、将来つくられるであろう設計のあり方、ガイドライン、各地方公共団体の設計標準に対しても、そういうことを国としても示していく必要があるだろうというふうに思います。
 それから、もう一つの問題は、施設を整備した後の問題。基礎的基準でも、それがどんなふうに使われているのかということを、施設管理者あるいは設置者がきちんと利用者の意見も聞きながら、場合によっては改善せざるを得ないということがあります。
 私も、さいたま新都心のバリアフリー計画にかかわりまして、そして、全体の計画をさせていただきました。そのときも、利用者の方々、三十団体ぐらいの方が集まってやりましたけれども、結果的にはうまくいったところとうまくいかなかったところがありました。その結果、その後、埼玉県あるいは関係事業者と協議をしながら、さらに改善を進めるという行為を行いました。
 やはり、そういうことを何度か繰り返していって、基礎的基準がどこにある基準なのかということを、その地域地域あるいは施設ごとに理解をし合っていくということが必要ではないかと思います。そうすることによって、異なる障害を持っている人たちについても、相互の立場を理解をして、そして、一緒にできる部分、これは最大公約数ではありませんけれども、場合によっては相互に譲り合わなきゃいけない、ともに暮らす社会をつくるというような視点に立つことができるのではないかというふうに思います。
赤羽委員 どうもありがとうございました。
 先ほどの質問でもありましたが、宿泊施設の部屋のバリアフリー化の問題でございます。
 これは簡単ではない話だという話もありましたが、例えば、アメリカのようにベッド数の一割とか二割を義務化するとか、そういったことがどう整備されているかというのを情報公開していくとか、やはりそういった方向性を目指して施策としてもとっていくべきだと思うし、本来的に言えば、民間事業者ですから、そういったホテル、宿泊施設の方たちが自分たちのビジネスの上でのセールスポイントとしてそういったことに取り組んでいくのが望ましいというふうに考えておりますが、アメリカのようなシステムというのはどのように評価されるのか。これも高橋先生、簡単にいただければと思いますが。
高橋参考人 アメリカ、おっしゃるのはADAのガイドライン等に定められた基準だというふうに思いますけれども、小さなものですと大体四%前後から整備がされていると思いますが、日本の場合は、客室については整備の定めはありませんけれども、現行の認定建築物ですと大体二%ぐらいということで、大きなものですとそのぐらいまでいくかと思いますが。
 整備の数を決める、アメリカでも九〇年代に決めたということは、その前からいろいろな検討をされて決めたということで、それが必ずしもいいものというふうには多分認識していないだろうというふうに思うんですね。
 日本の場合、一番問題になるのは、これは先ほどの基礎的基準の整備根拠とも似ているんですけれども、例えば百室あって、それは一室以上あればいいということになりますと、それだけあればいいのかということになってしまうわけですね。ですから、もう少し利用する側、お客さん、そしてホテル側あるいは旅館側との協議をもっとオープンにやってもいいのではないかというふうに思います。そうすると、特別に部屋をしつらえるということではなくて、ちょっとした間口があればいい、それが恐らく施設整備の基礎的基準になるんだろうというふうに思います。
 日本でも、全然ないわけではなくて、すぐれた整備をしているところがたくさんあるわけですね。ただし、私も改修事例を幾つか見ていますけれども、少ないものですから、たくさんの障害を持っている方が来る。そうすると、逆に、障害を持っていないお客さんが、私がこういうところにいるのは一体何かという、そういうところに来たのではないということもあるらしいんですね。
 ですから、これは一生懸命考えても、国民の意識もまだまだ少ない。そうすると、これは障害を持っている人と障害を持っていない人との会話ですとか、いろいろなことも、先ほど鉄道のお話がありましたけれども、ホテルの宿泊施設等でも十分やはりこなしていく必要があるのではないかというふうに思います。これについては、もっといい意味で積極的に、そしてそれが負担がなくて、単に数だけではなくて、通常の施設でも十分間に合うというような方向に、私は日本の社会では築けるんじゃないかというふうに思います。かえって、今で数を決めてしまうと、逆に、整備をしたくないと思っている、こういう言い方はよくないんですけれども、事業者はそこでとどまってしまう危険性も一部ではあるのではないかというふうに考えております。
赤羽委員 確かに、先生御指摘のように、ガイドライン、線を引くと、その線が線を引く思いとはちょっと別に使われるというか、アリバイづくりになるという傾向はあると思います。
 今のお話にありました、国民の意識ということがまた非常に重要だと。そういった意味で、私、今回、学校のバリアフリー化というのが努力義務に入ったということも大変大事だというふうに思うんですね。
 私の子供も、中学生と小学生なんですが、学校自体は施設的には全然バリアフリー化されていないですね。ただ、小学校までは、私の長男の同級生に障害を持たれた同級生がいまして、御本人ではなくて周りの、私たちの息子とか周りの同級生たちが大変な教育を受けることができた。障害を持たれている同級生と幼稚園からずっとのつき合いで大変な教育になったというふうに、そう親として感じております。
 学校というのは地域に開かれていて、障害を持たれている方、高齢者の方が利用されるというケースも多くなりますし、またそれ以上に、教育の場において、バリアフリー化とは何ぞや、こういったことが小さいころから当たり前のこととして学ぶことができる環境をつくるというのは私は大変大事なんじゃないかな、そう認識をしておるんですね。
 この点について、不特定多数のところが対象になって、特定多数のところは段階として置かれるというのは、私、個人的には余り理解ができなくて、実は一昨日、学校なんというのはもっと強力に推し進めるべきだという質問をして、そのような方向に沿ってという政府の答弁もあったわけであります。
 この学校についての、なかなか経済的な問題として難しいところもありますが、その評価を、松本先生のペーパーにもございますので松本先生と高橋先生、それぞれ短く、時間も参りましたので、コメントをいただいて、学校のバリアフリー化についてどうお考えかということを触れてお答えいただければというふうに思います。
松本参考人 私が健康福祉大学というところに来まして、極めて狭い体験なんですけれども、健康福祉大学ですから障害者や高齢者に対する理解のある人たちが教員にたくさんなっていると思ったんです。実は、車いすでない方ですが、障害者が入ってこられました。実を言うと、大変パニックになりました。要するに、教える側が、外ではなかなかよいことをおっしゃっているんですが、実際自分が教育をする立場になりますと、どうしていいかわからないと。結局問題は、障害者のお手伝いをするというよりも、障害者から直接教えられているということが大変大きな成果でした。
 最初はいろいろ想像するんですね。ところが、一番早いのは、聞いてみるというのが一番早かったということで、やはり教育の世界で遠くから眺めていろいろ思いをめぐらせているよりも、直接接して聞いてみる。そうすると、実は、障害者が先生になりまして、先生が生徒になる、そういう関係があって、ともに学び合うという感じになると思います。
高橋参考人 それでは、簡単にお答えさせていただきたいと思います。
 なぜ学校が努力義務にとどまっているかということですけれども、これも、恐らく私の記憶では、最初のハートビル法の制定のときもその議論があったというふうに思います。ただし、その時点での教育側、当時の文部省側との調整等の問題が恐らくあったんだろうと思いますし、各現場においても障害を持っている人たちの教育の問題の混乱がありまして、そんなようなことも多分全体的に含まれて、とりあえずその枠から外しながら文部省は文部省なりに整備を進めていく、そういう合意がなされたんだろうというふうに理解しております。
 その後、幾つか整備が進んでいるというふうに思いますし、現在でも義務教育施設あるいは高等教育機関等でそういう整備が進んでいると思いますが、やはりそれはまだまだ十分な現場等の調整が行き届いていない、手順の一歩というふうに理解しています。
 私も基本的な考えは、今赤羽先生がおっしゃられたように、学校は地域の核であるし、生涯学習の拠点でもあるし、災害時のときには大変重要な居住の場にもなりますので、そういう視点での、たとえ努力義務であっても、そういう方向性も含めたような情報だとかさまざまな事例を、たくさんの事例が今全国でありますので、そういうものを全国の教育委員会等に提示することで、公共的な施設ですので、かなり改善は進むだろうというふうに思ってはいます。
 これは財源もありますので難しい部分ですけれども、やれるところからまず手をつけながら、そして自然に子供たちが、障害のある人ない人が、学び合ったり、あるいは同時に生活をし合える、そういう体験の場をできるだけ早目につくれる、そのチャンスが一つ拡大しているという、これは努力義務なんですけれども、大変大きな努力義務のような感じがしております。
赤羽委員 どうもありがとうございました。
 実はこのほかにも、義務づけ等の執行体制については地方自治体がやっていかなければいけないとか、また二千平米以下の建物に対しても、これも地方自治体の判断で条例化で可能になるとか、地方自治体の役割というのは非常に重くなる、そういった点もちょっと質問もしたかったのでございますが、時間も参りましたので、これで終わりにいたします。
 私たちの立場でも、今回の法制化で本当にバリアフリーのまちづくりがしっかり進んでいくように頑張っていきたいと思いますので、今後とも御高見、御開陳いただきますように、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
久保委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
    〔委員長退席、実川委員長代理着席〕
    〔実川委員長代理退席、委員長着席〕
久保委員長 速記を起こしてください。
 一川保夫君。
一川委員 私は、自由党の一川保夫と申します。
 きょうは、参考人の先生方、大変御苦労さまでございます。
 まず最初に、村上先生にちょっと教えていただきたいんですけれども。
 先ほど来のいろいろなお話の中で、シックハウス症候群等にかかわるような研究なり技術開発的なものは、どっちかというと開発途上というか研究途上にあるということで、その因果関係が明確にされていないという中で、今回の法律は入り口規制ということで、一応発生源と思われている建材に対する規制、あるいはまた室内のそういう汚染を、できるだけ濃度を下げるという意味での換気の問題だと思います。
 こういう発生源と思われている新しい建材等、もともとこういうものが出てきたのは、要するに、建築物により耐久性を持たせようとか、あるいはもっと強度を持たせようとか、あるいは見た目にきれいにしようとか、そういうふうなことが一つの動機になって新しい建材というものが生み出されてきたんだろうというふうに私は思います。
 そうした場合に、こういったものはまだ因果関係ははっきりしませんけれども、代替の建材等が明確に見つからなければ、この委員会でもちょっと問題提起しましたけれども、もっと原点に立ち返って、従来の木造建築的なものに立ち返って、素朴な建築物がいいんじゃないかという話もさせていただきました。
 ただ、シックハウス症候群にかかわるような話題がだんだん出てきたときに、新しい建材等の仕様が使いづらくなってきたときに、建築物のコストに逆に高くはね返ってくるということがちょっと気になるわけですけれども、そのあたり、先生はどのようにお考えですか。
村上参考人 お答えします。
 現在でも、従来例えばFc0、Fc1、Fc2とかいうランクがございまして、化学物質を放散する建材はもうどんどん市場からマーケットメカニズムで消えていっておりまして、ほとんどFc0になりつつございます。
 それで、先生の御心配の価格の問題でございますが、例えばホルムアルデヒドをほとんど発生させない建材でございますと一割程度の上昇か、そんなふうに私は見ております。こういうシックハウスの規制をやったからといって、それでもって新しい建材が開発されないとか、あるいはやたらと値段が高くなるとかいうことで現在の建築活動に支障が出るというふうには特に考えられないと思います。
一川委員 先ほどちょっと私触れさせていただきましたけれども、我々が小さいころの建築物はこういうことが余り話題にならなかった。これは当然ながら、今の合板だとかそういうものについての接着剤等々、いろいろなことが言われていますけれども、俗に言う木造建築ですね。
 木造建築は、その優位性が非常に指摘されて、今いろいろな面で、公共的な施設でも、専門家の方々も、学校等に対しても地域材をできるだけ活用した方がいいじゃないかというようなお話もございます。それが体のためにも、精神的な面にもプラスになるというお話がありますけれども。
 こういう木造建築、私は国産材を大いに活用していただきたいわけですけれども、ただしかし、コスト的に非常に高いという現状があります。
 こういう木造建築をもっともっと奨励すべきじゃないかということに対しては、先生はどういうふうにお考えですか。
村上参考人 お答えします。
 昔の木造建築、確かに優雅で住み心地のいい面もございましたが、例えば、冬の寒いときは非常に寒いとか、夏は割合よかったんでございますけれどもね。トータルで見ると、居住性は決してよろしいとは言えないわけです。郷愁というのはございますけれどもね。ですから、私は、今の文明時代に、一方的に木造がいいから木造に戻るということは適切じゃないと考えます。ただ、ちょっとさっきも申しましたように、今、化学材料過剰時代でございまして、そういう伝統的な天然材料を必要に応じて使うということは、どんどん推奨すべきでございます。
 今、非常に多くの方が集合住宅に住んでおりますけれども、集合住宅を全部木造でというようなことはまたなかなか難しゅうございまして、火災の問題を含めて、やはりある程度の限定的な使用にとどまらざるを得ないんじゃないか、そういうふうに考えます。
一川委員 では、次に、ちょっと松本先生にお伺いします。
 先ほどお話を聞いておりまして、ちょっと我々も反省すべきだなという中の一つに、今回の法律改正の中にも盛り込まれておりますけれども、容積緩和なりいろいろな形態緩和等が、必ずしも住宅の質といいますか、住宅のストックに対してプラスに働かない場合も今後出てくるのではないかと、都心部で高層化が目立ってきておりますけれども、こういったことが、ある面では、今後、将来大変な課題を残すんじゃないかというような御指摘だったと思いますけれども、このあたり、もうちょっと具体的な例として、先ほどのお話以外に何かお話しすることがありましたら、ちょっと教えていただきたいんですけれども。
松本参考人 日本ではフィルタレーションという言葉は余り知られていないと思いますけれども、その地域全体が特定の階層が蓄積していく。お金持ちが蓄積するのもフィルタレーションですが、所得の低い人が蓄積するのもフィルタレーションです。
 一戸建ての時代には、隣がお金持ちで隣が失業していても、これは別に何らお互いに気にせず住んでおりましたんですが、集合住宅の場合には、共同管理ということから、大体同じような人たちが同じような意識で住むことが多いわけですから、この住宅がちょっと将来不安だなと思ったら、お金持ちから逃げ出していっちゃうということがあります。
 郊外の、これは住んでいる人に申しわけないんですけれども、かつて昭和四十年代には、華やかな、まさに天国のような住宅を取得したような気持ちになったものが、今や陳腐化して低水準化した住宅になってまいりました。この低水準化をさらに進めていくのは、新しい住宅の規模水準の向上なんですね。
 ある程度のフィルタレーションというのは住宅の更新に必要ですが、急激なフィルタレーションは、まさにそこに住んでいる人たちに将来の老後の不安を非常にかき立てさせるということになりまして、しかも分譲マンションの場合には、それを撤去するあるいは建てかえるということが極めて難しい。
 そうしますと、今のフィルタレーションの構造というのは、一方でいい住宅を、すぐれた住宅を供給すると、それのツケが下位の住宅の方で、自分の家が理由はわからないけれどもなぜか下がっちゃったということで、その地域の衰退が始まるということで、これは集合住宅の、ある種の宿命的な問題であります。
 ですから、基本的に都市というのは世界的に集合住宅化しておりますので、フィルタレーションをどう考えて計画するか。全くとめるということはできませんので、緩やかに進めるということが必要なのではないかというふうに思います。
一川委員 ありがとうございました。
 次に、これは高橋先生と児玉先生、両方の先生にお伺いすることになると思います。
 ハートビル法もそうだと思いますし、それから交通バリアフリーの法律でもそうだと思いますけれども、ある一定の基準を満たしたものについてはできるだけバリアフリー化しなさいというような趣旨の流れが法律の中に流れておりますね。今回は二千平米以上について義務化をするような流れになってくるわけですけれども。交通バリアフリーの場合には、駅の乗りおりする人の数が一つの基準にあったと思いますけれども。こういう一つの基準を設けてバリアフリーの制度を動かすということが、私は必ずしも現実的じゃないのじゃないかというような気持ちがございます。
 それはなぜかといいますと、我々、田舎に住んでいるわけですけれども、田舎の方は、割と高齢化率が高い、しかし、面積は小さい、乗りおりする人は少ないという現状があるわけですね。ある一定規模以上といえば、当然人口が集積している場所になるわけですけれども、そういうところは、どちらかというと、田舎に比べると高齢化の比率は小さいような気もします。ただしかし、一方では身体障害者等の皆さん方のウエートが高い場合もございます。一概に割り切れない点もあるわけですけれども。
 そういうことを考えますと、一定規模で対象の建物等を行政の対象にするかしないかということのやり方がちょっと気になるわけですけれども、そのあたり、両先生からお話を聞きたいと思います。
児玉参考人 現在は、交通バリアフリー法、それとハートビル法など、さまざまな形でバリア関連の法律が制定されております。しかしながら、総合的な交通バリアフリーの法律がないわけでございますね。いわば物理的な壁、それから情報の壁、制度の壁、これらを一体化しましたバリアフリー法を制定していただきたい、そういうふうに思っております。
 駅から目的地までの、また建物までの総合的なバリアフリー法が必要だと思うわけでございまして、点から点のバリアフリーから面のバリアフリーというふうにぜひお考えいただきたいなと団体では思っております。
 以上でございます。
高橋参考人 一定の規模で義務化を図るのがいいかどうかというようなことかと思いますけれども、私も、理想からすれば、そういう規模ではなくて、私の持論の一つなんですけれども、施設の規模によって利用の格差あるいは利用の区別を行ってはいけない、地域のさまざまな日常生活施設についてはそういうことがあってはいけないわけですね。当然、このコンビニは使えて、このコンビニはちょっと小さいから使えないということがあってはいけないわけですので、それは多分どなたも同じようにお考えになるかというふうに思います。
 それから、交通バリアフリー法では五千人以上というようなことになっておりますけれども、今回の改正案の特徴の中では、そこを、先ほどおっしゃられましたように地域にはさまざまな実情がある、その地域の実情に合わせて地方条例にゆだねていく、その義務化をさらに付加するというような、大変重要な権限を与えています。これはかなり画期的だというふうに私は思っています。ただし、今の国が定める二千が妥当なのかどうかということについて、非常に難しい議論になるだろうというふうに思いますし、場合によっては必ずしも明確な線が出せないかもしれない。
 ただし、今までの七年の経験の中で、二千ということを指示対象にして、大方の事業者の方々、設計者の人たち、あるいは都道府県でそれを行っていた人たちが、ある程度のラインでわかる。現状では、まだまだ七割弱というような整備状況ですけれども、そういうことが理解されておりますので、それらのことも含めて、審議会等では二千平方メートルということで特段の意見がなかったのでありますけれども、理想的には、おっしゃられるような考えは、私もそれは同感でございます。
 私も地方の都道府県なんかに参りましてそこの担当の建築指導課の職員の方とお話しすると、ハートビル法とか地方条例があっても、やはり地形によってとてもとても無理なんですよというような、条例はできているんですけれども、条例をいざ執行するとなると大変厳しい立地条件がある。確かに、高齢化は格段に進んでいる。三〇%、四〇%進んでいるけれども、なかなか難しい。ただし、ここでは住みなれた山をみんな平らにしてバリアフリーにしようというようなお考えは多分ないだろうというふうに思うんですね。
 ですから、長崎であれば、そこの坂をどんなふうに利用して、住みやすい、生まれ育ったところの環境として維持していくかということが多分問われると思いますので、その地域地域の実情に合ったようなバリアフリーのベース、考え方を示していく、これをもう一遍ちゃんと考えなさいというような法律の中身にもなっているような感じがいたします。それにこたえていくような地方のあり方が今後問われていくのではないかというふうに思います。
 義務化のラインをどこに下げるかということは今後もさらに繰り返し繰り返し議論になっていくだろうというふうに思いますけれども、少なくともこの改正法案をきちんと地方公共団体、市町村が受けとめていただければ、それに見合ったような整備案件を地域でつくっていくことができるだろうというふうに思います。
一川委員 最後の質問にしたいと思います。
 今のお話にちょっと関連して高橋先生にお聞きしますけれども、これは交通バリアフリー法を制定した折にある地方公共団体のリーダーの方からお聞きしたんだけれども、先ほどおっしゃったように五千人以上が一つの境になっていますけれども、今これから地方分権という一つの時代の流れの中で、法律で五千人云々とかそういうものを決めてもらっちゃ困る、できるだけ地方に判断を任せてほしいというようなお話をお聞きしたことがございました。
 今ほどのお話を聞いておりまして、確かに、こういうバリアフリーに関するような施策というのは、それぞれの地域にはいろいろな特色がございますから、できるだけ地方公共団体、一番身近なところにある責任ある行政として、地方公共団体にいろいろな判断をゆだねていくような制度が望ましいのではないか。ただ、全国一律的に何か一つのガイドライン的なものを示すということは差し支えないと思いますけれども。
 そうしたときに、これからのバリアフリーの施策の中で地方公共団体というのは本来どういう役割を担っていくべきなのかなというところが我々もまだ十分判断し切れない面もあるわけです、各市町村で格差がついてくる可能性も当然あるわけですし、いろいろな財政負担も伴うわけでございますから。
 また、一方では、市町村の合併問題というのがいろいろなところで話題になって、いろいろなところで進んでいるのは皆様方御案内のとおりでございますけれども、こういう、地方分権とか行政改革とかいろいろな背景の中で、こういったバリアフリーという施策をこれから積極的に推進していく上で地方公共団体というのはどういう役割を担っていくべきかなというところについて、高橋先生、何か御意見がございましたら、よろしくお願いしたいと思います。
高橋参考人 まず、地方の役割ということですけれども、その前に、もしこの改正法案を無事に通過させていただけましたら、できるだけ早い時期に、この改正法案の趣旨それからねらいということを、できるだけ地方の方々に徹底するような、そういう、学習の場といいますか講習の場、これを国も含めて設けていただければというふうに思います。その上で、地域が受けとめる方策としては幾つかあると思いますけれども、その地域の市民の方々の、あるいは利用者の方々の意見を受けとめる場をやはりつくるべきだというふうに、これは交通バリアフリー法でもハートビル法でも、あるいは地方条例でも同じだと思います。
 ですから、交通バリアフリー法でも五千人は決めていますけれども、その地域の実情に応じて少なくてもいいということが基本方針の中にあると思いますけれども、それを受けとめられる地方公共団体の窓口、あるいは、場合によっては建築士の方々にかなり理解の差がありますね。鉄道関係の事業者でもそうですけれども。そこの事業者間、行政側の事業者間と言ってもいいかもしれませんけれども、そういう事業者への周知徹底がまだまだおくれているのではないか。これは、そこの市町村のトップの方々は、やはり職員の方々にきちんと講習していただけるような、そういう機会をつくっていただきたいというふうに思いますね。設計者についても同じです。工務店さん、これから改修の業務がいろいろな意味で入ってくると思いますので、現場の大工さんも含めたようなそういう人たちにも、条例ですとか整備基準、あるいは改正法の趣旨というものが伝わるような、そういう努力を傾注していただきたいというふうに思います。
一川委員 ありがとうございました。
久保委員長 瀬古由起子さん。
瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。
 きょうは参考人の皆さん、御苦労さまでございます。短い時間ですけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
 まず最初に、松本参考人にお聞きしたいと思うんですが、今回の建築基準法の改正は、用途地域における規制の緩和が進められるものなんですけれども、既にもう規制緩和がどんどん進んでいまして、先ほど参考人が指摘されましたように、例えば、横浜や川崎などでは地下利用マンションなども、私も実際見てまいりましたが、地上三階地下十階などというマンションが続々と建設されているという大変ひどい状況で、周辺の住宅や環境がどんどん破壊されているという状況もございます。
 また、都市再生という名前で都心居住が促進されているんですが、先日、私も東京の江東区に行ってまいりましたら、ここは準工業地域に指定されていて、倉庫とか工場がどんどん撤退して、そこにマンションが建てられているわけですね。ところが、先ほど御指摘がありましたように、教育とか福祉とか、こういうものが追いつかない、行政が到底手がつかないような状態になっている。
 今回の改正というのは、そういうものをさらに促進していくのではないかということを、新たなまた都市問題を生み出すんじゃないかということを心配しているんですが、その点いかがでしょうか。
松本参考人 全く同じ問題意識を持っております。
 それで、開発地域の問題の裏側に、同時に、その影響を受けるところがあるということですから、開発地域だけ眺めた対策にされては困るなというふうな感じがしております。
瀬古委員 同じく松本参考人にお伺いしたいんですが、今回の改正では、日影制限を低層の住宅専用地域以外では測定面を四メートルから六・五メートルに緩和する措置が行われることになっています。国土交通省は、東京都などでは多くのビルは二階までは商店が入っているから余り影響ないんだなどと言っていますけれども、私はこれは完全に二階以下に住む住民の権利を無視したものだということで、日影規制の意味がなくなってしまうんじゃないかと心配しているんです。その点いかがでしょうか。
松本参考人 二階以上に底上げしますと、またその後ろの建物も二階以上のマンションだ、そういうような前提でなければならないわけですね。
 まず問題は、大体環境のいいところはお金持ちが住みまして、収入の少ない人が悪いところに住む。で、そういう建物が連担しますと二十四時間日が当たらない、実質的にそれぞれの建物によってほとんどふさがれてしまうという建物も出て、これは東京の大きな問題点の一つだろうと思います。一棟一棟は責任が軽いんですが、全体としてつながってしまうというような問題もありまして、私は、そこは居住地の公衆衛生上のやはり大きな課題だというふうに思います。
瀬古委員 では、村上参考人にお伺いしたいと思うんですが、今回初めて、居室内の化学物質による衛生上の支障がないようにということで、建築材料及び換気設備が規制される根拠が明記されるということは、私は前進だと思っています。そして、建築材料の使用制限。規制の中身も、政令によってそういう使用制限が行われるという点でも当然だと思っているんです。
 先ほど出ていましたように、室内濃度の問題が出されていて、これをはかる仕組みを何としてもつくってもらいたいというのが関係者の切実な要望だと思うんですね。ところが、なかなか技術的に難しいというお話、いろいろな条件によって左右されるというお話も今ございました。これは、室内濃度をはかる仕組みというものが全くできないのかどうか、今後の見通しも含めてですね。そして、住宅の品質確保の促進等に関する法律、品確法というのがございまして、この品確法に基づく住宅性能制度という中に化学物質濃度に関する事項が位置づけられている。そういう点では、例えば一定の何らかの対応というのが私はできるんじゃないかと思うんですけれども、その点いかがでしょうか。
村上参考人 お答えします。
 室内濃度の測定は可能でございます。
 私が申し上げておりますのは、それを測定したとしても、それをどう判断するか、それが大変難しい、条件によってその都度その都度非常に変わるということで、代表性が低いということがございまして、例えば、温度が違えば温度補正等で補正すればいいじゃないかという御意見がございますけれども、今私どもがたくさんのデータを集めて温度補正しようとしても、なかなか信頼性のある形にはならない。これは、温度以外にも、換気とか湿度とか日射とかあるいは生活用品とか、いろいろ要因がございまして、現時点では測定結果を代表性のある形で取り扱うすべがない、そういうことでございまして、測定自体は可能でございます。
 それで、入り口規制か出口規制かということで、いろいろ、それは優劣があるんでございますけれども、一つの立場としては、やはり一番のもとを断つ、とにかく発生させない、それがこういう問題の一つの基本的な考え方で、有害物質を出さない建材に絞っていくというのは割と明快な方法の一つだろうと思っております。
 それから、品確法で補完できないかというのは御指摘のとおりでございまして、これは既にもう実施に移されております。ただ、そのときの取り扱いは、ちゃんとはかります、はかりますけれども、それは測定条件を明記して、そのときの測定結果ですよという形であって、それを一般的な、その規制の値まではなかなかまだ持っていけない。
 そういうことで、私は、今の建材規制の基準法とボランティアの品確法の測定とを両立させて運用するのが適切かと考えております。
瀬古委員 この建材の場合に、一番のもとを断つという点でいいますと、もともと危険な建材そのものをつくらせないということなどは私は大変大事だと思うんですね。それから、この建材にはどんな化学物質が実際に使われているのか、どこの国で生産されているのかという情報公開、こういうものも大変大事だと思うんですが、その点いかがでしょうか。
村上参考人 お答えします。
 いや全く御指摘のとおりでございます。それが一番おくれているところだろうと思います。
 ただ、現実に、それを求めて、技術的に可能かどうかということは検討すべき余地があると思います。それからもう一つは、海外から安い建材で必ずしもそういう化学物質の放散の規制がないものが輸入された場合にどうか、そういう問題も今後出てくる可能性はあるかと思います。
 でも、そういうふうに情報を整備するというのは全く賛成でございます。
瀬古委員 このシックハウスの問題で、松本参考人にお伺いしたいと思うんです。
 松本参考人は、医療、保健衛生、福祉の立場から住宅へのアプローチという研究テーマでずっとやっていらっしゃったんですが、今のこうした化学物質の測定、ある意味では住民の健康という問題は、どのように考えていらっしゃるでしょうか。
松本参考人 住宅建設とかビル建設、特に新築については割とシステマチックに、材料の段階から建設までは割と資本の理屈でいろいろ特定の専門家が活躍できる場所ができるわけですけれども、いざストックの段階になりますと問題はばらばらに出てまいります。
 それで、例えばシックハウスの問題でも、やはり一番最初に知り得る立場は病院なんですね、あるいは保健所とかケースワーカーとか。ところが、医療、保健、福祉の人たちがこの問題に対して十分な建築的知識を持っていない。それからもう一つは、国のいろいろな委員会でも、シックハウスの技術的な議論はされていると思うんですけれども、その人の生活をどう支えるかという、例えば精神科医の助けとか心理学者の助けとか、そういう、技術でないところでサポートする仕組みというのが今のところほとんど議論されておりませんから、あるいは多分その審議会のメンバーにもほとんど入っていらっしゃらないんだろうと思います。すべての科学的な対策ができてからそういう人が入っていったのでは間に合わない問題なんですね。
 だから、医療、保健、福祉の人たちと建築の人たちがどのようなサポートができるかということ、あるいはネットワークがつくれるかということが極めて大事でして、私は、たまたま前の職場が国立公衆衛生院という厚生省の機関だったんですが、ちょうど建築と医療、保健、福祉の間に立っていますと、いかにお互いが、それぞれがばらばらに仕事をしているかということを痛切に感じておりました。
    〔委員長退席、実川委員長代理着席〕
瀬古委員 では、高橋参考人と児玉参考人にお伺いしたいと思います。
 今回のハートビル法に関する提案は、前進面はあるというふうに私も感じています。しかし、例えば障害者等の社会参加が当然の権利だ、こういう理念が実際に入っていないという問題はございます。ですから、基準は満たしているんだけれども、盲導犬を連れて入ると断られる、こういうような事例がまだ後を絶たない状況にございます。
 それから、目標や年次を定めて計画的に推進するという立場に法律が確立されているかというと、その点でも私は不十分な面があると思うのです。少なくとも、この改正案のもとになりました社会資本整備審議会の答申でも、六十五歳以上の高齢者の比率が約三割に達する二〇三〇年代には、基礎的基準に適合する建物がストックの大半を占めることになるという、かなり大ざっぱですけれども、そういう一定の目標みたいなものが出されていることから見ると、やはりここは若干弱いんじゃないかというように思っています。
 それから、精神障害者だとか知的障害者の問題が抜け落ちているとか、二千平米に達していなくても学校や投票所など公共施設にはやはりこの円滑化基準を義務づけてほしい、こういう要望もございます。
 それから、現在、例えば理髪店だとかコンビニだとか、こういう個人の事業主にも、個人ではなかなか大変だ、せめて例えば入り口の改修をするとかトイレの改修をするとか、こういう細かい単位での整備をするための助成措置ができないか、こういう御要望もございます。
 補助、支援措置が認定建築物に限定されているという点での不十分さ、こういう問題点について、それぞれどのようにお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。
高橋参考人 今、大きく分けまして四点ほど御質問があったかというふうに思います。
 まず、障害を持っている方の参加が権利として認められていないではないかということですけれども、これは、私も法案をつくる側ではありませんので、どんなふうに表現をしていいのかどうかというのはわかりませんけれども、ただ、この法案提出の理由の最初の前書きを見ますと、言葉ではありませんけれども、基本的に、我が国社会が当然到達すべき目標を今の二千何年かのときに定めていくという、そういう目標値は出しているかというふうには見ています。ただし、審議会答申にありますように、法文上に十年後とかあるいは二十年後とか、そういうふうに書き切れていないところがありますが、これは今後、それを実施に移していく段階での当然国の役割だというふうに思います。
 それから、先ほど来申し上げていますけれども、地方公共団体がこの改正法案を受けとめてどんなふうに、これは障害者プランでも、あるいはエンゼルプランでも、ほかの、老人保健福祉計画でも同じですけれども、その地域単位でどんなふうに自分たちの町に合ったバリアフリー化の目標を立てるのかということを、むしろそれを指導助言していく役割が国の方にあるのではないかというふうに思います。
 それから、障害を持っている方のさまざまな種別の問題でありますけれども、この点につきましても、審議会の中でもあるいはその以前の検討委員会の中でも、たくさんの方から意見が出ています。私も、その最初の検討委員会、一昨年だったかと思いますけれども、その中でも申し上げましたけれども、日常生活にさまざまな意味で不自由な場合ということで、障害とか、あるいは年齢ですとか、あるいは性差ですとか、そういったことがないようにということで、その報告書の中にまとめられています。
 今回の法の中でも、一応身体障害者等になっておりますけれども、私の理解ではその中に実際の運用の過程の中では含まれているというふうに思っておりますし、それが実際に設計の現場あるいは広報周知の場面で間違わないように徹底されていく必要があるだろうというふうに思います。
 それからもう一つ、二千平米以下のことについては、これは国では、多分助成についてはあるのかもしれませんけれども、個人事業主までは、個人事業主というのは範囲がありますけれども、小さな理髪店ですとか美容院というところまでは決められないだろうというふうに思います。ただし、公益施設としての意味が大変ありますので、地方公共団体で十分検討していただかなければいけないというふうに思っております。
 以上でございます。
児玉参考人 先生御指摘のとおりでございます。やはりバリアフリー化に対しましては、目標また計画など、きちんと施策を講じていくべきではないかと思っておりますし、また、今回の改正によりまして数値目標などを盛り込んだプランを立てていただいて、これを建設的に推進されているということにつきましては、非常に私ども団体といたしましても喜んでおるところでございます。
 また、心のバリアフリーという問題が残るわけでございますが、どうか障害者団体、私どもの意見も参考にしていただきまして、一定の期間を設けましてこの法案の見直しを随時行うということも入れていただくようにお願いしたいと思います。
 また、先生御指摘のとおり、障害者も急速に高齢化が進んでおります。バリアフリーへの対応は、これからが本当の意味で正念場と思っておりますので、どうかよろしく御指導のほどお願いしたいと思っております。
 以上でございます。
    〔実川委員長代理退席、委員長着席〕
瀬古委員 もう一度児玉参考人にお伺いしたいと思うんですが、建物のバリアをなくしていくということも大事だと思います。同時に、障害者の皆さんの移動の自由など、そういう点でも、交通機関のバリアフリーということは大変大事だというふうに思います。また、情報だとか通信のバリアフリー、今、郵便の問題などが大変大きな問題になっていると思うんですね。やはりハードな面とソフトな面のバリアフリーをきちっと位置づけて、これを改善していかなきゃならないと思うんですが、その点、児玉参考人が今願っていらっしゃる問題点がありましたらお聞かせいただきたいと思います。
児玉参考人 先月、私ども、先ほども申し上げましたが、徳島におきまして第四十七回日本障害者福祉大会というのがございまして、各県の代表が五千人ほど集まりまして大会を開いたわけでございますが、その中の要望事項の一つとしまして、今先生御指摘のように、高速道路における障害者が乗ったバスについては何とかひとつ、これは障害者が遊びに行くのではなくて、社会参加のための移動であるという見地から、ぜひ割引制度を使っていただいたり、そういうような措置をとられたいというような要望も出ております。
 また、通信のバリアということでございますが、三種、四種につきましては、ぜひ割引制度を、従来と同じように法律的に決めてひとつ実施してほしいという要望も大きく出ております。
 私どもといたしましては、障害者みずからが社会参加をするということにつきましては十分配慮しておりますが、なおかつ、先生方の御協力なくしてこのハートビル法を完全に実行するというようなこともできませんので、ぜひその点もあわせてお願いしたいと思います。
 以上でございます。
瀬古委員 どうもありがとうございました。
 大変短い時間で失礼いたしましたが、きょうの貴重な皆さんの御意見をぜひこれからの審議に生かして、反映させるように努力したいと思います。きょうはどうもありがとうございました。
    〔委員長退席、実川委員長代理着席〕
実川委員長代理 原陽子さん。
原委員 社会民主党の原陽子です。
 きょうは貴重な御意見を本当にありがとうございます。限られた時間ですので、早速御質問をさせていただきたいと思います。
 まず、松本参考人に質問をさせていただきたいんですが、先ほど松本参考人が、この規制緩和によって周辺の人々へのさらなる影響ということをおっしゃったと思いますが、そのさらなる影響の部分をもう少し詳しくお話をいただきたいと思います。
松本参考人 高容積化する場合は大体高層化と一緒になるわけですけれども、その高層化の場合の影響の範囲というのは、まずそこを利用する人と、それから、その建物によって影響を受けるその周辺の人たちの問題があります。
 その周辺のというのが、直接的にいえば風害だとか日照だとか、そういう問題が起きるんですけれども、日照、風害の場合はかなり局地的な問題でして、むしろ市場性、そういうものがどういう影響を受けていくかというのは、例えば中心部がかなり容積緩和された、区部のレベルでされたとか山手線の内側レベルでされたとか、かなり大量にされたときの郊外の問題ということになります。
 実は、容積緩和の話は大都市の中心部の都市の再生の話として考えられています。地方都市の再生というのは、多分、容積緩和しても再生にならないだろう。三十階建ての建物を建てても、五階ぐらいまでしか需要が埋まらなければ何の意味もないわけですから。今までこの点は指摘しなかったんですが、大都市圏の中心部の再生と地方都市の再生はちょっと違う。ちょっと話が外れましたが、そういう問題があります。
 周辺への影響というのは、ちょっと長くなりましたが、直接物理的な影響とかというのが今までの議論の中心でした。それが、経済的な影響とかそういったものは、十分まだ研究し尽くされていないというのが現状だと思います。
原委員 引き続き松本参考人にお伺いしたいのですが、先ほどのお話の中で、容積を緩和して建築の自由度を増せば、行政による規制は効き目を失っていくというお話があったと思います。私もこの点は非常に心配している点でございまして、例えば、もう既に各自治体などで持っているまちづくり条例みたいなものがありますね。そういうものとこの法律との整合性というものは、どのようになっていくとお考えになられるでしょうか。
    〔実川委員長代理退席、委員長着席〕
松本参考人 容積緩和の種類には幾つかあると思うんですね。経済的効果をねらうための容積緩和、それから既存不適格建築物を救済する意味の容積緩和。
 今回、ハートビル法で既存建築物にも努力義務を課したいという。この中で、大変大きな、相当量の数があるのが、集合住宅の問題なんですね。それが、古い住宅ほど高齢者がそこの中に大勢住んでいらっしゃる。需要は、ハートビル法に従う要望はかなりあるかと思うんですが、実際は同時に既存不適格ということで、改善する費用よりも既存不適格を是正する費用の方が、あるいは既存不適格を是正する技術、こういうものの方がかなり大きな問題をはらんでいる場合に、結局のところ、既存不適格の部分を修正できないがために改善ができないということが、これからうんとたくさん出るだろうというふうに思っております。
原委員 引き続き、もうちょっと松本参考人にお考えをお聞きしたいんですが。
 今回、法律の中で斜線規制が緩和をされていきますよね。その緩和によって確保されるものとして「採光、通風等」というふうに法律の中で書かれていますが、いろいろな規制緩和が行われていく中で、やはり良好な住宅環境というものを提供していくことが国の立場としてはあると思うので、そのときに確保されるものとして、先生はどのようなものをお考えになられるでしょうか。
松本参考人 かつて、公営住宅は日照四時間、それから公団住宅は日照六時間、それを確保することを前提に設計されてきましたが、何年か前から、冬至のときに二十四時間日が当たらない住宅も建設できるということで、その建物は多摩ニュータウンに最初に建てられたと思います。計画的な供給組織が建てたものですね。
 この場合に、日の当たらないところは家賃を下げるということで対応されたと思いますが、そうしますと、収入の低い人は日が当たらなくてもいいじゃないかということになるわけですね。これは、ある面では、公共住宅が守ってきた倫理の問題だろうと思うんですね。これが、新しい技術で、例えば布団は、干さなくても、乾燥機を持ち込めば何とかなるとかですね。確かに布団は乾燥機を持ち込めば何とかなるかもしれませんが、家の中の湿気というのは、畳とか壁とか、あらゆるところにあるわけですね。部分部分を一生懸命解消しようとして全体はちっとも改善にならないというようなことがやはり起きてまいります。
 この日照の問題は、北欧に行きますと、冬至は二十四時間日が当たらないということで、ヨーロッパには当たらない住宅もあるじゃないか、だから日本もいいのかと。でも、気候風土が実を言うと全然違うんですね。日本は、夏、湿気が多くて、高温多湿ですね。ヨーロッパの場合には、夏は湿気がうんと少なくて、冬は湿気がありますけれども暖房すれば部屋の中はかなり乾燥できる。そういう前提のところを、ヨーロッパは太陽が当たらないんだから日本も当たらなくていいんじゃないかというような考え方が、一見合理的に見えながら、実際にはそれは弱者切り捨てを進めているというふうに私は思います。
原委員 もう一点、規制緩和のところで松本参考人にお考えをお聞きしたいんですが、良好な住環境というふうに考えたときに、日照権とか通風とか採光とか、そういうものプラス、あるいはその性能評価をするのはなかなか難しいところかもしれませんけれども、町並みとか景観とか、あと心理的な圧迫感のなさとか、そういうものもやはり私はちゃんと確保されていかなくてはならないと思っております。
 私は、今回の規制緩和によって、果たして一体、どっちかというと主観的なものなんですが、こうした町並み、景観とか圧迫感のなさというものは確保していけるかどうかということを非常に心配しているんですが、参考人のお考えをお聞きしたいと思います。
松本参考人 最近でも、たしか国立か国分寺かで、マンション建設が条例に反するということで、その条例をつくったときの時点も争われているんですけれども、市民運動とディベロッパーあるいは市長も巻き込んで紛争になりました。
 要するに、町並みをどう考えるかというのは、これは基本的に国レベルでどう考えるかよりもそこの地域でどう考えるかということが尊重されるべきですが、その町並みを決定する大きな要素というのが、この建築基準法なんですね。それで、各市町村の条例というのは基本的に効力が薄い、信頼されない。ですから、実は、次々と市町村レベルの条例がディベロッパーによって訴えられて敗れたというケースはたくさんあるわけです。
 ですから、どういう都市像がよいのかというときに、同時にその都市像をだれが決定するのかということもあわせていかないと、この規制緩和は、全国一律ということはないんでしょうけれども、地方自治の問題と、規制緩和を規制できるかという、今度は逆に、そういう選択が地方自治にあるかという問題が議論されていいかというふうに思います。
原委員 ありがとうございます。
 次に、高橋参考人にお聞きをしたいと思います。
 先ほどから議論に上がっておりますハートビル法のところなんですが、もちろん学校というのは各市町村に属しているものだとは思うのですが、そういうものというのは地域格差がやはりあってはならないものだなというふうに思っておりまして、これは先ほどほかの方々からの御意見もあったと思いますが、私も、学校というものは、努力義務ではなく、義務の方の範囲に入ってもいいんじゃないかなと実は思っております。
 先日、文部科学省の方に、公立と私立の学校におけるバリアフリー率はどんなものですかということをお聞きしましたら、出てきた数値が、大体五〇%ぐらいのものが出ているんですよね。この数値を見ると、結構頑張って達成されているのかなというふうに思うんですが、じゃ、どのようなものをバリアフリーの設置された学校としてこの数値を出したんですかと聞いたら、エレベーター、自動ドア、スロープ、障害者用トイレなど、そのどれか一つが入っていればバリアフリー化されている学校ということで今回統計を出したそうなんですが、先生がお考えになるそのバリアフリー化された学校というものはどんなものだとお考えになられるでしょうか。
高橋参考人 私も、職場にいて、たまたま、ことし一年生で電動車いすの学生が入ってきまして、建てかえの最中でして、その建てかえの現場を見まして、その図面をすべて変更するようにお願いしました。半分ぐらいもう建ちましたけれども、それについても利用ができないということがわかりましたので、それについても改善を申し入れて、大学の当局も比較的好意的で、改善をする、今もう既に工事に入っていますけれども、そういうようなことをしています。
 ですから、学校と一概に言いましても、このバリアフリー化の一番難しいのは、どんな人が生徒になってくる、学生になってくるかによって対応が随分変わってきます。ですから、先ほどおっしゃられたように、五〇%でも、全く使わない人もいるし、もう全然それで問題ない人もいる。障害を持っている方の範囲は非常に広いですから。
 そこで、最低限、例えば入り口から、歩道があるとすれば歩道から職員室まで何らかの形で行ける、あるいは教室から教室までは移動ができるとか、あるいはトイレに行きたいときにはトイレに行けるとか、そういう最低限の、障害のある子が学ぶ上で必要なものというのは当然なければいけない。その上で、もし必要があれば、例えばスポーツの活動をするとかそういったときには何らかのサポートが必要ですとか、これも広い意味のバリアフリー化対策、バリアフリーの教育対策にはなっていくというふうに思っています。
 ただし、建築物としてのハード面では何らかの形でラインを引かなければいけませんけれども、今回の改正法、まだまだ今後政令等が審議されていくと思いますので、その段階で、例えば、努力義務であっても、学校の場合はここまでが必要である、あるいはここまではそれぞれの地域の教育委員会にゆだねる、あるいは子供たちが入ったときにまたお願いするとかというようなことが多分段階的に行われていくんだろうというふうに期待しています。
 ですから、既存の学校の中で、私は五〇%というのはちょっと多過ぎるかなという感じがします、体験的にもとてもという感じがしますが、ただし、実際には、既存の、大変難しい、ひょっとしたら不適格建築物かもしれませんけれども努力しているというところもありますので、そういうところにはなるべく教育委員会の方あるいは設計者の方にも周知していけるような、そういう機会を持つべきだというふうに思います。
原委員 引き続き高橋参考人にお聞きをしたいんですが。
 先ほど、こうしたバリアフリーに関しては地域間の格差がなるべく少ない方がいいというお話でした。また学校のことなんですけれども、学校も地方の財政の問題があるというお話で、今、公立学校のバリアフリー化の中で、国の支援として三分の一ぐらいの国庫補助を出しているそうです。
 この補助率についてどう思われるかというのと、国の支援策として、さらにこういう支援策があったらいいなというようなことがあれば、教えていただきたいと思います。
高橋参考人 今回の法改正にも絡みますし、三分の一の数値が適切かどうかというのはありますけれども。通常の、地域における義務教育施設であれば、障害のある人もない人も、その人たちが選択できる。親にとっては義務ということになりますけれども。そういう部分が必要になってくると思っていますので、そうしますと、当然国が行う、施設補助であればこのハートビル法にのっとった形で、努力義務でありますけれども公共的な施設ですので、ほぼ義務的な要素が多分入ってくると思いますので、そういう意味で、地方公共団体が条例等の整備についてもう一度努力していただければというふうに思っております。
 整備率そのものについては、はっきり申し上げることはできません。
原委員 もう一つ、次に村上参考人にお聞きをしたいと思います。
 今回、この法改正で、シックハウス対策でこの二物質が入ったということは前進であると思っています。
 私は、つい先日まで環境委員会というところにおりまして、いろいろな有害物質を対策していきましょうという中で、日本と欧米とかの例を比べると、規制していく物質の数がやはり全然違うんですよね。それはなぜかなと思ってちょっと調べてみると、欧米の方では予防原則という考えを用いて、グレーゾーンにある、安全かどうかわからない物質も規制をしていこうと。日本はどっちかというと、危ないとわかるまでは使っちゃうというようなことですよね。
 それで、今回はこの二物質だけが対象となっているんですが、私は、ぜひ予防原則という考えを用いて、安全かどうかわからないものはやはり使わないというような方向に進んでいくべきだと思うのですが、その辺、先生のお考えをお聞かせください。
村上参考人 お答えします。
 今回の規制は、厚生労働省の方で示された指針値は守るようにするということがまず一点でございますね。ですから、厚生労働省の方でまだ出されていないものに関しましては、言及しないというか、できない、そういう事情もあったかと思います。
 それから、もう一つは、実際の建物で使用されていて高濃度を発生するものは、やはりどんどん規制しよう、もう一つは、発生源と濃度との因果関係が明らかになったものは、どんどん規制しようということで、当面はホルムアルデヒドとクロルピリホスでございますけれども、今後トルエン、キシレンも、それに限らず、厚生労働省の指針値が出されてさっき申し上げた三つの条件に適合するものはどんどん規制の対象になるかというふうに考えておりますし、実際、大臣もそういうふうに前に参議院で明言されたそうでございます。
原委員 それでは最後に、児玉参考人にお聞きをしたいと思います。
 今回のハートビル法によって、ハード面でのバリアフリー化というものはさらに進んでいくと思うのですが、ソフト面でのバリアフリー化ということを考えたときに、何かこれからの課題として残っているものがあれば、最後にお聞きをして、終わりたいと思います。
児玉参考人 まず、私が考えておりますことは、数値目標を盛り込んだプランを立てていただいておりますが、これをさらに建設的に推進していただきたい。
 それから、私どもいつも思っておることでございますが、交通バリア法、ハートビル法など、さまざまな形で交通バリアの関連の法律が制定されておりますが、しかし総合的な交通バリア法律がないわけでございます。どうか、その辺もあわせて、統合したバリアフリー、総合的なバリアフリー法が必要ではないかと思っておりますので、その点もあわせて、よろしくお願いしたいと思います。
原委員 どうもありがとうございました。これからの審議に貴重な御意見を一生懸命生かしていきたいと思います。
 終わります。
久保委員長 松浪健四郎君。
松浪委員 保守党の松浪健四郎でございます。
 参考人におかれましては、お忙しい中、御出席を賜り、そして真摯な答弁をいただいておりますことに心から御礼を申し上げたいと思います。
 実は私は、二人の子供を持っておりますけれども、一人の子供は、いわゆるシックハウス症候群で、大変悩んだことがありました。そして、悩んだ期間というのは、一日や二日というようなものじゃなくて、小さいときから数年に及んだ。そして、家をわざわざかえた、こういう経験を持つものであります。
 その経験から言わせていただきますと、今回の建築基準法の一部を改正する法律案の中で、シックハウス対策のための規制の導入等が行われることを大変うれしく思うのでありますけれども、この改正によってシックハウスの規制がなされるわけですけれども、シックハウス症候群をどの程度解消できるのだろうか。私は、完全に解消するいい方法はないのかもしれませんけれども、少しは前進するんだろう、こういう思いでおりますけれども、どの程度解消できるのか、まず村上参考人にお尋ねしたいと思います。
村上参考人 お答えします。
 まず、ホルムアルデヒドに関しましては、今後新たに発生する患者に関しましては、僕は劇的に減るだろうと思います。ただし、問題はたくさん、既にシックハウス症候群になっておられる方は、過去の蓄積でなっておられるわけでございまして、今ここで家の中をきれいにしたからといって、直ちにその方々の症状がなくなるわけではございませんで、そういう患者さんのストックの問題が非常に重要だろうと思います。
 それから、VOC関連のトルエンとかキシレンも、順次、科学的解明が進めば規制対象とされるという予定でございまして、そうなればやはり、新しい患者さんに関しましては劇的に減るだろう、そういうふうに考えております。
松浪委員 ありがとうございます。
 劇的に減るということは、我々は大変喜ばしい改革である、このように思うわけでございますけれども、政府は、化学物質の室内濃度は気象条件によってかなり変動するため、規制の方式としては、完成後に濃度を測定するのではなくて、あらかじめ建材や換気設備の基準を定めると言っているわけですけれども、科学的見地からすれば、濃度測定の現状と課題、これを教えていただきたい、こういうふうに思うわけであります。
村上参考人 お答えします。
 現時点でも濃度を測定することは十分可能でございます。JISも、ISOとの国際的整合性も考えながら、随分整備されつつございます。
 ただ、測定は可能でも、その測定結果をどう解釈するか、それがどれぐらい安全に関して信頼性があるか、そういう判断が今のところまだまだつきにくい、そういうことでございます。ですから、まだ何年かかかると思うのでございますけれども、測定結果から、もろもろの条件を組み込んで、一年通じて安全とか、あるいは一年通ずれば安全でないとか、そういったことが予測できるには、あと何年か研究が必要だろうと思います。
松浪委員 ありがとうございました。
 次に、ハートビル法についてお尋ねをしたいと思います。
 私は、長い間、発展途上国で生活をしてまいりました。途上国でも、新しいビルをつくる、そういうときには、やはり体の不自由な皆さん方、あるいはお年寄りの皆さん方の視点から設計されているということに時に感心をさせられているものでありますけれども、だんだんと我が国の建造物についての考え方、これがバリアフリー法ができたことによって変わってきておる、意識改革がなされておる、こういうことを大変喜んでおります。
 まず高橋参考人にお尋ねをしたいと思いますが、ハートビル法の改正法案は、義務づけ対象の拡大を条例により可能とするなど地方公共団体に大きな役割を与えておりますけれども、今後、各地域で地域の実情に即したバリアフリー対策を進めていくためには何が必要なのか、このことをお尋ねしたいと思います。
高橋参考人 大変難しい御質問なのでありますけれども、現状の地方の条例の整備を見ていますと、地方条例でも、建築等の許可法ではありませんが、一応整備しなければいけないということが決められております。なおかつ、その一定の範囲において、今回の改正法案とほぼ同じような形で義務的な側面を持っているわけですけれども、それを今回の改正法案で後押しをする、サポートする、そういう構図になっているかというふうに思います。
 そこで、ではそれが本当に実行に移されるためにはどうするかということになりますけれども、やはり先ほど来申し上げておりますけれども、今のところ、そういう地方条例はできておりますけれども、実際に運用する側の問題、それから、そこで生活している人たちの意見の場面がすれ違っているという現状があると思います。ですから、私は、今回の改正法案を機会にして、地方において、できるだけ早い時期に、改正法案あるいは地方の条例についてもう一度確認し合うそういう場、あるいは見直しをするそういう場を早急につくっていただきたいなというふうに思っています。
 それから、もう一つは、改正法案にかかわる精神について、先ほど障害の範囲の問題もありましたけれども、そういったようなことについても改めて周知を徹底していくことが必要ではないかというふうに思います。
 それから、もう一つは、設計する側、建築の立場でいえば、よい事例をたくさん拾い上げて、そして、まだまだ理解できていない人たちに対して、理解し切れないような事業主に対して、広報周知活動を徹底していただきたいというふうに思っております。
松浪委員 今お答えをいただいたことに深いかかわりがあるかもしれませんけれども、法律の施行に関する事務の権限の移譲が、都道府県知事から所管行政庁、いわゆる市町村の長に移譲されるわけでありますけれども、どういうメリットがあるんだろうか、どんなデメリットが出てくるんだろうか、そのことが気になるわけであります。
 先ほどるるお聞きしましたけれども、具体的に、こういうメリットがあります、こういう不都合な面がありますというようなことがございましたら、お答えいただきたいと思います。
高橋参考人 メリットとすると、恐らく、これは建築主にとって、当然守るべき行為を行いながら非常に時間がかかってしまう、そういうルールについてはかなり簡略化されてくるんだろうというふうに思います。それから、ハートビル法の政令ですとかあるいは省令といったようなものと地方条例が今度かみ合わさってくるかと思いますけれども、具体的に、その地域地域の現場で、議論がその窓口で行われて、そして適切なアドバイスを受けるというようなことも可能かというふうに思います。
 それから、デメリットに関しては、先ほども御発言させていただきましたけれども、やはりまだまだ条例あるいはハートビル法等の理解が十分でない、これは担当者の中でもそうでありますので、そういったことについての地域間格差がしばらく起こるだろう。ただし、いい意味でそれを競争し合うような仕組みを国全体ではかるようなことが可能であれば、その仕組みといいますか、さまざまな周知活動になるかと思いますが、あるいは講習会の活動ですとかそういうことになると思いますけれども、それが徹底してくれば、デメリットについては、少し時間はかかるかもしれませんけれども、少しずつ改善されていく。
 あとの問題は、地域の自然条件ですとかさまざまな条件によって、必ずしも統一されたような指導が起こり得ないというようなことがあります。これについては、ソフト面も含めて総合的なバリアフリー化ということで対応していかなければいけないんだろうというふうに思っております。
松浪委員 バリアフリー対応の努力義務、これが二つに分かれるわけですね。努力義務とそれから義務づけに変わるわけでありますけれども、義務づけになったのは二千平米以上に限る建造物というふうに理解しておるわけでございますけれども、これで日本という国が、先進諸国と比して福祉国家の建造物をつくるようになったなというふうな評価を受けるのかどうか、これではまだまだ甘いんだというふうにお考えになられるのか、お尋ねしたいと思います。
高橋参考人 私は、個人的な意見で申し上げれば、もちろんまだまだ甘いというふうに思っております。
 ただし、今回の法改正の中で、先ほどより申し上げていますように、ハートビル法そのものだけで勝負をするということではありませんので、それ以外の、権限を移譲される方々も含めて一体になってやろうということですので、そうした場合には、先進諸国と比しても、それほど遠くない時期に、同等レベル、あるいは場合によっては乗り越えられるような、そういう場面に出会うことが十分可能ではないかというふうに考えております。
松浪委員 ありがとうございます。
 最後に、児玉参考人にお尋ねをいたしますけれども、ハートビル法の改正法案は、身体障害者の自立、社会参加の促進の観点からどのように評価されているのか、お尋ねしたいと思います。
児玉参考人 先生おっしゃいますように、今回、特別特定建築物、例えば老人ホームとか二千平方メートル以上が新たに創設されました。また、対象となる建物についてはバリアフリー化が義務づけされました。また、地方公共団体の条例によりまして、義務づけの対象となる建築物の規模が二千平方メートル以下に引き下げることが可能になったことは、障害者である私たちの団体にとりましても非常に喜ばしいことだと思っております。
 また、公共性が高く、不特定多数の障害者、また高齢者、妊婦などが使用する小規模な建物、二千平方メートル以下につきましても、ぜひ義務づけをしていただきたいと思います。
 また、今回の法律におきまして、地方条例において義務化することが可能だということになっておりますので、ポスター、また地方団体が、行政が発行する広報などでぜひこれを宣伝し、アピールしていただきたい、そういうふうに思っております。
 以上でございます。
松浪委員 ありがとうございました。
 時間が参りましたので、これで終わります。どうもありがとうございました。
久保委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、参考人の方々に一言申し上げます。
 本日は、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。まことにありがとうございました。(拍手)
 参考人の方々は御退席いただいて結構でございます。まことにありがとうございました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時九分散会


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