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第1号 平成14年11月6日(水曜日)

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本国会召集日(平成十四年十月十八日)(金曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。
   委員長 久保 哲司君
   理事 実川 幸夫君 理事 橘 康太郎君
   理事 林  幹雄君 理事 細川 律夫君
   理事 赤羽 一嘉君 理事 一川 保夫君
      岩崎 忠夫君    小里 貞利君
      倉田 雅年君    栗原 博久君
      菅  義偉君    砂田 圭佑君
     田野瀬良太郎君    高木  毅君
      谷田 武彦君    中本 太衛君
      西田  司君    西野あきら君
      原田 義昭君    菱田 嘉明君
      福井  照君    堀之内久男君
      松野 博一君    松宮  勲君
      松本 和那君    山本 公一君
      阿久津幸彦君    井上 和雄君
      大谷 信盛君    今田 保典君
      佐藤謙一郎君    玉置 一弥君
      津川 祥吾君    永井 英慈君
      伴野  豊君    前原 誠司君
      高木 陽介君    土田 龍司君
      大幡 基夫君    瀬古由起子君
      原  陽子君    保坂 展人君
      二階 俊博君
平成十四年十一月六日(水曜日)
    午前九時四十八分開議
 出席委員
   委員長 久保 哲司君
   理事 栗原 博久君 理事 実川 幸夫君
   理事 菅  義偉君 理事 田野瀬良太郎君
   理事 橘 康太郎君 理事 林  幹雄君
   理事 玉置 一弥君 理事 細川 律夫君
   理事 赤羽 一嘉君 理事 一川 保夫君
      岩崎 忠夫君    倉田 雅年君
      後藤田正純君    砂田 圭佑君
      高木  毅君    谷田 武彦君
      西田  司君    西野あきら君
      林 省之介君    原田 義昭君
      菱田 嘉明君    福井  照君
      堀之内久男君    松野 博一君
      松宮  勲君    松本 和那君
      山本 公一君    阿久津幸彦君
      井上 和雄君    大谷 信盛君
      今田 保典君    佐藤謙一郎君
      津川 祥吾君    永井 英慈君
      伴野  豊君    平岡 秀夫君
      高木 陽介君    土田 龍司君
      大幡 基夫君    瀬古由起子君
      原  陽子君    日森 文尋君
      保坂 展人君    松浪健四郎君
    …………………………………
   国土交通大臣       扇  千景君
   国土交通副大臣      中馬 弘毅君
   国土交通副大臣      吉村剛太郎君
   環境副大臣        弘友 和夫君
   国土交通大臣政務官    高木 陽介君
   国土交通大臣政務官    岩城 光英君
   国土交通大臣政務官    鶴保 庸介君
   政府参考人
   (内閣府道路関係四公団民
   営化推進委員会事務局長) 坂野 泰治君
   政府参考人
   (厚生労働省労働基準局安
   全衛生部長)       大石  明君
   政府参考人
   (国土交通省大臣官房長) 安富 正文君
   政府参考人
   (国土交通省大臣官房官庁
   営繕部長)        春田 浩司君
   政府参考人
   (国土交通省総合政策局長
   )            三沢  真君
   政府参考人
   (国土交通省都市・地域整
   備局長)         澤井 英一君
   政府参考人
   (国土交通省河川局長)  鈴木藤一郎君
   政府参考人
   (国土交通省道路局長)  佐藤 信秋君
   政府参考人
   (国土交通省鉄道局長)  石川 裕己君
   政府参考人
   (国土交通省自動車交通局
   長)           丸山  博君
   政府参考人
   (国土交通省港湾局長)  金澤  寛君
   政府参考人
   (国土交通省航空局長)  洞   駿君
   政府参考人
   (環境省総合環境政策局環
   境保健部長)       南川 秀樹君
   参考人
   (首都高速道路公団理事長
   )            橋本鋼太郎君
   国土交通委員会専門員   福田 秀文君
    ―――――――――――――
委員の異動
十月三十一日
            補欠選任
             米澤  隆君
同日
 辞任         補欠選任
  米澤  隆君     平岡 秀夫君
十一月六日
 辞任         補欠選任
  中本 太衛君     後藤田正純君
  福井  照君     林 省之介君
  保坂 展人君     日森 文尋君
  二階 俊博君     松浪健四郎君
同日
 辞任         補欠選任
  後藤田正純君     中本 太衛君
  林 省之介君     福井  照君
  日森 文尋君     保坂 展人君
  松浪健四郎君     二階 俊博君
同日
 理事木村隆秀君十月四日委員辞任につき、その補欠として栗原博久君が理事に当選した。
同日
 理事古賀一成君十月十五日委員退職につき、その補欠として玉置一弥君が理事に当選した。
同日
 理事実川幸夫君及び林幹雄君同日理事辞任につき、その補欠として菅義偉君及び田野瀬良太郎君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
十月十八日
 公共事業基本法案(前原誠司君外一名提出、第百五十一回国会衆法第三六号)
 公共事業関係費の量的縮減に関する臨時措置法案(前原誠司君外一名提出、第百五十一回国会衆法第三七号)
 公共事業一括交付金法案(前原誠司君外一名提出、第百五十一回国会衆法第三八号)
 ダム事業の抜本的な見直し及び治水のための森林の整備の推進等のための緊急措置法案(前原誠司君外一名提出、第百五十一回国会衆法第三九号)
 航空法の一部を改正する法律案(細川律夫君外一名提出、第百五十三回国会衆法第二三号)
 交通基本法案(細川律夫君外四名提出、第百五十四回国会衆法第二九号)
十一月五日
 建物の区分所有等に関する法律及びマンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇号)
同日
 肢体障害者が地域で一市民として生活するための交通権の総合的保障に関する請願(細川律夫君紹介)(第六〇号)
 同(一川保夫君紹介)(第一五四号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第一五五号)
 福山道路建設に関する請願(山田敏雅君紹介)(第一〇〇号)
 同(山田敏雅君紹介)(第一二五号)
 同(山田敏雅君紹介)(第一三九号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の辞任及び補欠選任
 国政調査承認要求に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 国土交通行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――
久保委員長 これより会議を開きます。
 理事辞任の件についてお諮りいたします。
 理事実川幸夫君及び林幹雄君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
久保委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 引き続き、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。
 ただいまの理事辞任並びに委員の異動及び退職に伴い、現在理事が四名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
久保委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 それでは、理事に
      栗原 博久君    菅  義偉君
     田野瀬良太郎君 及び 玉置 一弥君
を指名いたします。
     ――――◇―――――
久保委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。
 国土交通行政の基本施策に関する事項
 国土計画、土地及び水資源に関する事項
 都市計画、建築及び地域整備に関する事項
 河川、道路、港湾及び住宅に関する事項
 陸運、海運、航空及び観光に関する事項
 北海道開発に関する事項
 気象及び海上保安に関する事項
以上の各事項について、本会期中国政に関する調査を進めたいと存じます。
 つきましては、衆議院規則第九十四条により、議長の承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
久保委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
     ――――◇―――――
久保委員長 この際、国土交通大臣、国土交通副大臣及び国土交通大臣政務官から、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。国土交通大臣扇千景君。
扇国務大臣 おはようございます。
 第百五十五回国会における御審議に当たりまして、国土交通行政の当面の諸課題について、私の考えを述べさせていただきたいと存じます。
 国土交通行政につきましては、自立した個人の生き生きとした暮らしの実現、競争力のある経済社会の維持、発展、安全の確保、美しく良好な環境の保全と創造、多様性のある地域の形成を目標に推進しております。特に、我が国全体として構造改革の推進が求められる中、制度、政策の抜本的な改革を推進し、地方の知恵と工夫により自立を目指す個性ある地域の発展を政策の基本方針として取り組んでまいります。
 ただ、公共事業の長期計画について、国土交通省となったメリットを生かして総合性を最大限発揮するため、横断的政策テーマを設定した上で一本化し、事業分野別の計画から、社会資本整備の重点化、集中化のための計画へ転換をいたします。また、国庫補助負担金制度の改革、コスト構造の改革、徹底した事業評価の実施に取り組みます。道路特定財源につきましては、今後の道路整備の必要性や受益者負担という性格等を踏まえ、関係機関と十分な調整を行い、来年度予算編成過程を通じて検討を進めてまいります。
 交通政策につきましても、利用者重視のマーケットの実現に向けて、利用者利便の向上、事後チェックの体制充実を図るとともに、地域における生活交通の確保に取り組む等、公共交通サービスの改善を利用者とともに推進します。さらに、次世代の未来型交通システムの開発を推進するとともに、燃料電池車の普及など、環境に配慮した交通政策に意欲的に取り組んでまいります。
 特殊法人等の改革につきましても、特殊法人等整理合理化計画を踏まえて、強力かつ着実に取り組むこととしております。今国会におきましては、特殊法人等改革に係る九法案を提出いたしております。
 我が国の経済環境が厳しさを増している中、デフレを解消し、民需の自律的拡大を実現することが緊急かつ重要な課題です。このため、土地の流動化、有効利用、都市の魅力の向上により、地価下落に歯どめをかけることを目指します。また、都市再生を通じた民間需要の創出、観光交流を通じた地域経済の活性化、新市場、新産業の創出、構造改革特区の推進、規制改革等による民需の拡大を図ります。さらに、建設産業の再編を進めるとともに、中小企業や雇用セーフティーネットの充実を進めます。
 都市の再生につきましては、民間都市開発の誘導、支援により民間の資金や能力を都市に振り向け、新たな需要を喚起していくことが重要です。こうした取り組みを通じて、魅力ある都市生活の実現を図るとともに、国際競争力ある都市づくり、安全な都市の形成、都市環境の改善などを推進してまいります。
 また、今国会には、マンション等の建てかえを一層円滑に進めるため、建物の区分所有等に関する法律及びマンションの建替えの円滑化等に関する法律の改正案を提出いたしております。
 訪日外国人の旅行者の倍増、休暇の取得促進、分散化、国民ニーズの多様化にこたえられる地域の多様な資源を活用した魅力ある観光交流空間づくりのための施策を推進し、観光交流を通じた経済の活性化により、元気な日本の再生を図ります。
 昨年十二月の九州南西海域の工作船事案につきましては、事案の全容解明に向け全力で捜査を進め、日朝交渉の場で事実関係の解明と再発防止を強く求めていく必要があると考えております。さらに、引き続き海上の危機管理に的確に対応できるよう運用態勢、装備の充実等に万全を期してまいります。また、昨年の米国同時多発テロ事件や世界各地で続発するテロ事件等を踏まえ、ハイジャック対策、航空機・海上テロ対策、国内重要施設の警戒警備等、引き続き各種テロ対策を推進いたします。
 以上、国土交通行政の推進について私の考えを申し述べました。国民の皆様の期待にこたえ、一層の御理解をいただけるよう、国民との対話と情報の一層の公開を重視しつつ、かつ、厳正な綱紀の保持になお一層努めつつ、諸課題に全力で取り組んでまいる所存でございます。
 今後とも、委員長を初め、委員各位におかれましても、御指導をよろしくお願い申し上げます。ありがとう存じました。(拍手)
久保委員長 国土交通副大臣中馬弘毅君。
中馬副大臣 国土交通副大臣に就任いたしました中馬弘毅でございます。よろしくお願い申し上げます。
 主に災害対策関係施策、国土関係施策及び社会資本整備関係施策を総括してまいります。
 委員長を初め委員各位の御指導、御鞭撻を心からお願い申し上げます。(拍手)
久保委員長 国土交通副大臣吉村剛太郎君。
吉村副大臣 国土交通副大臣の吉村剛太郎でございます。よろしくお願い申し上げます。
 主に安全危機管理関係施策、交通関係施策及び北海道開発関係施策を総括しております。
 委員長を初め委員各位の御指導、御鞭撻をよろしくお願い申し上げます。(拍手)
久保委員長 国土交通大臣政務官高木陽介君。
高木大臣政務官 扇大臣とともども国土交通大臣政務官に拝命を受けました高木陽介でございます。
 主に安全危機管理関係施策及び交通関係施策、特に航空関係事務を命ぜられております。
 引き続きよろしくお願い申し上げます。(拍手)
久保委員長 国土交通大臣政務官岩城光英君。
岩城大臣政務官 大臣政務官の岩城光英であります。
 主に災害対策関係施策及び社会資本整備関係施策、特に公共事業の適正な執行の確保に関する事務を命ぜられております。
 御指導、御鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。(拍手)
久保委員長 国土交通大臣政務官鶴保庸介君。
鶴保大臣政務官 大臣政務官を拝命いたしました鶴保庸介でございます。
 主に国土関係施策、北海道開発関係施策、特に研究学園都市の推進及び土地対策の総合的な推進に関する事務を命ぜられております。
 若輩ですが、どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。(拍手)
     ――――◇―――――
久保委員長 国土交通行政の基本施策に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として国土交通省大臣官房長安富正文君、大臣官房官庁営繕部長春田浩司君、総合政策局長三沢真君、都市・地域整備局長澤井英一君、河川局長鈴木藤一郎君、道路局長佐藤信秋君、鉄道局長石川裕己君、自動車交通局長丸山博君、港湾局長金澤寛君、航空局長洞駿君、内閣府道路関係四公団民営化推進委員会事務局長坂野泰治君、厚生労働省労働基準局安全衛生部長大石明君及び環境省総合環境政策局環境保健部長南川秀樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
久保委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 引き続き、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、参考人として首都高速道路公団理事長橋本鋼太郎君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
久保委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
久保委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。栗原博久君。
栗原委員 では、質問させていただきます。
 先ほど、扇国土交通大臣から大変国土交通行政に対しての果敢なる所信を賜りまして、意を強くしているわけであります。また、大臣は、大変ソフトな面もございますが、大変しんの強いお方でありますので、これから、公共事業あるいはまた道路公団など多くの課題の中で、必ず我々の意を体して、その実現に向かって邁進していただけるものと確信しながら質問させていただきたいと思っています。
 まあ、しかしながら、公共事業等につきまして、国民から強い期待があるにもかかわらず、また反面、公共事業に対する風当たりも強いことは実は承知をしているわけでありますが、財政が逼迫する中におきまして、いかに多くの国民の要望にこたえるかということで、その予算等について御努力されている大臣並びに役所の方々に対しましても実は敬意を表しながら、ぜひ国民の要望にこたえる予算措置を願いたいということもまたあわせてお願いしたいと思っております。
 私は、公共事業というものは、国民一人一人がこの国で暮らすことに喜びを分かち合える、そういう国土をつくることであると実は思っておるわけでありまして、そのための社会資本整備である、あるいは、もう一つは、やはり公共事業等につきましては、富の再配分であると思っております。中央、東京に集中する富を地方に、産業等、雇用等の格差のあるところに、その富を分配することも公共事業の役目であるわけでありまして、それによって地方の振興が図られると私は実は思っておるわけであります。
 この点につきまして、大臣からもいろいろ所信がございましたけれども、今小泉政権のもとで構造改革が、改革、改革ということで進められておりますが、公共事業等を含むその政策の中において、大臣は、今後どのように我が国の国土交通行政を推進されるかということについて、まずもってお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。
扇国務大臣 引き続きまた栗原議員には理事として我々を指導していただきますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
 また、今おっしゃいましたように、公共工事というものの何たるかということを、私たちはもう一度原点に戻って考えなければいけない時期に来ていると思います。
 二十世紀、我々の多くの先輩、多くの先人のおかげで、あの大変苦しい中から立ち上がっていただいて、公共工事、それあったればこそ社会資本の整備ができて、今日の我々の生活があるというのは原点だろうと思います。私たちは、その先人あるいは先輩に、日本を再建してくだすった、また、再建どころか、追いつけ追い越せから経済大国、そして先進国の仲間入りをしたということも、公共工事の資する役割の大きさというものを改めて痛感して、感謝しなければいけないと思います。
 けれども、二十一世紀に入って、今までの、ただつくって、そして大きくしてということから半歩あるいは一歩下がって、今の世界的な現状を見るときに、ただつくってそして利便性を図るということではなくて、世界的にも環境、そしてバリアフリーという、特に日本は世界一の長寿国でございますから、老齢社会を迎えるに当たって、二十一世紀は大きな公共工事からもう一歩下がって、環境とバリアフリーを加味した公共工事に転換していかなければいけない。そうしなければ、二十一世紀の日本は、冷たい箱物だけで心がないと言われるような日本になってはならないということを考えております。
 ただ、今までの公共工事の社会資本整備というものが、今の日本は世界水準の那辺にあるのか、世界水準から見れば、日本の社会資本整備というのはまだまだ完備されているとは言いがたいというのが私は現状であろうと思います。
 多くを申しませんけれども、社会資本整備一つとってみても、周りを見渡して、東京では神宮の森というのがありますけれども、あれは、百年前は一本の木もありませんでした。けれども、今、百年たって初めて神宮の森というあのすばらしい環境ができている。
 話は違いますけれども、例えばことしは赤穂浪士の討ち入り三百年です。三百年前には、パリの地下は全部下水道を完備しておりました。それほど日本はおくれていたわけでございます。社会資本整備そのものも百年おくれてスタートしている。ですから、今の社会資本整備で果たして日本人が世界水準として満足できるかどうかということも我々は改めて考えて。
 ただ、今、苦しい財政事情の中で、公共工事のむだをなくそうという話で、いろいろなところから御注意を受けております。そういう意味で、談合があったり丸投げがあってはいけないということで、先生にも御協力いただいて、一昨年に公共工事の入札と契約に関する適正化法という法律をつくりました。今起こっております事件はこの法律の施行前の話とはいいながら、連日いろいろな事件が起こりますので、我々は、この入札に関する適正化法の完全な適用を各市町村、自治体に完全に行き届くように改めて指示を出し、そしてみずからの身を正すということも含めて、私たちは指導しているところでございます。
 また、一方、公共工事のむだということを私たちは頭に置きながら、先生も御努力いただいて今までつくってまいりました長期計画、これは十本ございます。けれども、本年、十四年度で切れるものが八本ございます。十五年度が一本。これは農林水産省と共管ですけれども、この一本を含めた九本を、今までの長期計画は旧建設省、旧運輸省ということで立てた長期計画でございますが、交通行政とか河川行政というものを一体にしようということで、この九本を改めて一本の長期計画というものにまとめて効率化を図り、コストダウンを図って、私たちは二十一世紀に備えていきたいということで、転換することも今計画して、本年度じゅうに一本の法案にできるかということを念頭に置いております。
 それから、最後に一つ。
 私たちは、官から民へ、中央から地方へという、この小泉内閣の方針に従って、個性ある地域の発展ということで、今三つを具体的に私たちはしております。
 その一つは、まず全国一律の画一的な、どこを切っても金太郎あめという計画ではなくて、それぞれの地域が個性あるものにしてほしいということで、画一的な施策の規格というもの、基準、これをローカルルールに変更していこう、それぞれのローカルでローカル方式に、画一的な基準を転換していくということが第一でございます。
 二つ目には、これまで官が主導してまいりました事業計画の策定プロセスというものを、私たちは少なくとも住民参加型の計画決定に転換していこう、これも住民の皆さんの創意工夫を取り上げていこうという、二つ目の大きな転換でございます。
 その次には、少なくとも、国、地方がそれぞれの事業をばらばらに行うのではなくて、ブロックごとに、地域の主導による地域の部局の運営をしていきたいということで、一県だけではなくて、東北ブロックなら東北ブロックで、公共工事の順位、そして予算の配分も決めていただきたいということをしておりますので、そういう意味では、広域ブロックによる地域の活性化を図っていくように長期計画の転換もしているということ。
 以上が、少し長くなりましたけれども、冒頭の公共工事に対する重要性と、地方への権限移譲でございます。
栗原委員 大臣から濃密な御答弁をいただきまして、まことにありがとうございました。
 大臣、それで、今大臣から、小泉政権は中央から地方へというようなお言葉がありましたけれども、地方の方がそれを見ますと、どうもそういう流れがむしろとまっているんじゃなかろうか、そういう指摘が、これは各都道府県知事さんもそうですし、各市町村の方々もおっしゃっているんですね。
 今回、平成十四年度の公共事業関係予算を見ますると、財政が逼迫しているということで約一〇%のマイナスである。公共事業全体で、十三年度では約九兆五千億が、今年度は八兆五千億ということでございます。
 きょうの新聞を見ますると、道路公団で本四橋のことについても記載されておりました。四国の方々は、念願の橋をつくっていただいたと。これは四国の方々のためだけではないんです。今、我が国は技術立国でございますから、橋をつくる技術は世界に冠たる技術であるわけでありまして、橋をつくることによって我が国の土木技術のレベルを世界に知らしめる。むだというのではなくて、今後も橋をつくらなければ、日本が今まで蓄積してまいったそういう技術を失うことになるわけですね。要するに、私は、公共事業ということと同時に、また、我が国の高度な技術を失わないためにも、今後ともこのような事業というものは必要であるということを大臣に御認識していただければと実は思っておるわけであります。
 また、地方の皆さんから、最近の一〇%の減額の中で、地方への配分予算が少なくなったというような指摘も大変聞かれます。例えば、東京都におきましては、マッカーサー道路、約一・四キロのところに千六百億かけてつくるわけですから、一キロ一千億以上かかる。それと、今の外環状の高速道路も、一キロ一千億かかると言われております。しかし、私どもの地元、皆地元を抱えているわけですけれども、例えば私のところへ参りますと、この前もヨーロッパで洪水が起きましたが、私ども地方では中小河川がたくさんあるわけで、いつ何どき河川はんらんが起きるかわからない。そういうところは五十億か百億投ずれば住民が安心して生活できる、そういう河川がたくさんあるんですね。例えば、私どもの方は才歩川とか布施谷川、わずかの金でこの住民の方々の命が保障されるわけなんです。そういう事業に目を向けていただきたいということをまずお願いしたいと思います。
 そして、もう一つは、我が国の経済を支えているのは、私は公共事業も大きな支えであると思う。しかし、最近は、雇用の面で、そこに働く方々の所得がアップしないから、景気の回復にも貢献していないと思うんですよ。公共事業の見直しもあるけれども、もう少しこの辺にやはり、そこに働く方々の人件費が上がる、そしてそこにいる方々がそれを消費して内需を起こす、そういう方法のためにも、今、公共事業適正化法、いろいろ法律ができておりますが、そこで実際に働く方々のところに富が配分できるような発注方法も私はぜひひとつお願いしたいと思うのであります。
 特に、今デフレ経済でございますから、このデフレ経済を解消するには、何といっても私は補正予算を組んでいただきたいと思うんですよ。そうなりますと、やはり公共事業等について、五兆円ぐらいは補正予算を組んでいただきたいというのが私の願望でございますが、こういうデフレ経済、そして我が国の経済を支える中で、公共事業のあり方というものについて、ひとつ御返答賜れれば大変ありがたいと思います。
扇国務大臣 地方の予算獲得からデフレ対策まで幅広い御質問でございますので、どれからお答えしていいかと思いますけれども。
 中央から地方への地方分権ということは、先ほど私がお答えしましたように、あらゆる手だてを打っております。
 私は、国土交通省になりましたときに、去年一月から四月にかけて、全国を十のブロックに分けて全国を歩いてまいりました。そして、一つの県だけではなくて、ブロックごとの知事さんあるいは政令指定都市の市長さん、財界、全部で懇談会を立ち上げております。北海道は北海道で一つ、東北は東北で一つ、そういうブロックごとに集まっていただいて、懇談会をつくって、その懇談会で、今先生がおっしゃいました、予算はここへ自分たちで考えたい、公共工事もここを先にやりたい、その優先順位も地方の懇談会でしていただきたい。一県の知事さんだけではなくて、ブロックの知事さんが集まって、その権限も、そして工事も予算もという、そういうものを立ち上げてございますので、私は、そういう意味で、地方の皆さん方の知恵をぜひ出していただきたいというのは先ほど申し上げましたとおりでございます。私は、そういうことが今後より効率的に、よりコストダウンができるいい公共工事ができていくと思っておりますので、それは立ち上げておりますので、期待しておるところでございます。
 なおかつ、今の公共工事のいろいろなお話でございますけれども、御存じのとおり、戦後、一時、ピークのときには建設業界は六十万業者と言われました。今五十八万業者になっておりますけれども、そこで六百万という従業員がいます。不良債権処理をしたら、一番影響を受けるのは国土交通省関係のゼネコンであり、建設業だと言われております。そういう意味で、不良債権処理をすることによって、我々の関係しております建設業界、ゼネコン業界が、自分たちの会社のものが不良債権に回された、では本体も危ないんじゃないかと、今おっしゃるようなデフレスパイラルに陥るということを私は大変気にしておりますし、また懸念をしておりますので、そうならないように、スパイラルを何とかとめたいということで、我々も、セーフティーネットというものがなければ、不良債権処理とセーフティーネット両輪でなければ中小企業が倒れるだけだということで、国土交通省もできる限りのセーフティーネットを出しております。細かいことは、また御質問があれば、どういうセーフティーネットかを申し上げたいと思いますけれども。
 今、四国の橋梁のお話が出ました。私は、橋梁も掘削も世界一の技術を日本は持っていると思います。
 それは、先生もごらんになったと思いますけれども、私も、韓国へ行きましたときに韓国の大臣から言われました。扇さん、あの韓国の橋は日本の、個人の名前は出しませんけれども、こういう会社があの韓国の立派な橋をつくってくれたんだ、あの橋は韓国の中で一番立派な橋なんだよ、けれども、新聞を見ていたら、あの橋をつくってくれる会社が危ないと日本の新聞に書いてあるけれども、扇さん、大丈夫ですかと、こうお聞きになるんですね。
 それほど、橋梁技術にしろ掘削技術にしろ、私は世界一の技術を持っていると思いますので、今御心配になりましたような、デフレ、会社が倒産、今三万人の自殺者も出るという時代に、その技術者が技術をなくすということがあってはならないということです。
 本四は政治的判断で、確かに今考えれば三本要らないじゃないかと、私もしょっちゅう怒られます。けれども、四国の懇談会を開きましたときに、四県の知事さんが私におっしゃいました。扇さん、四国は四県あるけれども、これが北海道のように四国県として一つの県だったら、北海道と同じように四国開発庁というのをつくってくれたでしょうね、四国四県になっているから四国開発庁というのが別途つくられなかったけれども、これが一県だったら、北海道と同じように開発庁ができて、四国はもっと早くよくなっていたんじゃないでしょうかという、四県の知事さんが一つになって公共工事の優先順位を決めようという姿勢も見せてくださいました。
 ですから、そういう意味で、確かに、三本の橋をつくるよりも、両端二本つくって、真ん中の分で四国一周高速道路をつくった方がいいと、私も一年生のときに自民党で怒られましたけれども、今考えればそれも一つの案であったなとは思いますけれども、それよりも何よりも、今おっしゃった技術の喪失というものをなくすために、会社が倒産することによってあらゆる技術を喪失しないように、私は、民間の工夫も入れて、国もその件に関しては真剣にサポートしていく必要があると思っております。
栗原委員 では、私はこれで終わりますが、大臣、よろしくひとつお願いいたします。
久保委員長 赤羽一嘉君。
赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。どうかよろしくお願いいたします。
 まず初めに、今回の内閣改造におきまして、扇大臣におかれましては、再任されましたことを、まず心からお喜びを申し上げたいと思います。
 私のような若輩の者が大臣の仕事ぶりを評価するというのは大変僣越でございますが、通常国会を通してずっとお話を聞かせていただく中で、やはり率直に言って、国民がどう思っているかということを大臣みずから代弁して御発言をいただいているということは大変評価すべきだというふうに思っております。
 羽田空港と成田空港の問題にしても、役所の考え方でいえば、成田空港の過去何十年の歴史を考えると、積み木崩しのようなことは言えないという感じだと思いますが、言ってみると、日本国民の大半が、東京国際空港がなぜあんな遠くに、あのような不便なところに、まして暫定滑走路を敷かなければいけないのかというような不満というのは、これは皆さんがそう思っていることで、だれもこれまで言い出せなかったようなことを大臣みずから言われるということは、まさに政治家のリーダーシップを大いに発揮されている、大変すばらしいことだと私は思いますし、伊丹空港の問題についての御発言も、私の理解している範囲では大変すばらしい発言だと思います。
 これ以上このことについて言うと、航空局の現場がまたいろいろあると思いますので、きょうは、大変すばらしい御発言だということで、感想だけを述べさせていただきます。
 きょうは二十分でございますので、質問につきましては、二つ質問させていただきたいと思います。
 一つは、大臣のごあいさつ、また御発言の中にもよくありますが、二十一世紀は環境とバリアフリーの時代だ、まさにこれから国土交通省が行っていく社会資本整備も、常にこの環境とバリアフリーを意識して行っていくということは大変重要なことであるというふうに私は思いますし、公共事業イコールむだ遣い、不要論というか、非常に不本意なバッシングに遭っているような状況の中で、私は、今こそ新しい、本当に必要な公共事業のあり方というものを、大いに国土交通省、また大臣みずから御発信いただいていくということが非常に大事なのではないかというふうに思っております。
 その象徴の中で、具体的に国民の目にわかるような形で大いに取り組んでいくことがすごく大事だと思うので、これは細かい話は結構でございますので、ぜひお願いをしたいと思うのです。
 実は、先月末に、経済諮問会議から「改革加速のための総合対応策」というものが発表されまして、その中に「民間投資・消費を誘発する都市再生の促進」の項目というのがございます。それを見ておりますと、非常に興味深いというか、例えばバリアフリーのまちづくりの計画が出ていまして、一日の利用者五千人以上の鉄道駅の段差解消、エレベーターとかエスカレーターをつけていくのを二〇〇五年度までに六〇%にふやそう、二〇〇〇年度の約二倍にしよう、こういうことが書かれてあるんですが、これは言ってみれば、これまでの国土交通省のバリアフリー施策の中の話でありまして、別にこれを取り上げて改革加速のためのとか、特段の民間需要を今喚起するような話じゃちょっとないなと。ネタはいいんだけれども、喚起させるためには、これを二〇〇五年度ではなくて来年度中にやるとか、六〇%の目標を八〇%に引き上げるとか、そういったものがあるならば非常にわかりやすい話であって、私は、ここを少し強調して前倒しにするなりボリュームを上げない限り、今の竹中大臣の出されたこの内容というのは余り効果が出ないのではないかと大変心配もしております。
 このバリアフリーのまちづくりの施策を前倒しにするとか、また、我が党が言っておるんですが、省庁とか官公庁の、まずこれは全国一律に、一遍にやった方がいいと思うんですが、屋上緑化というものを具体的に進める。この屋上緑化について、先日、我が党の神崎代表ともどもに、国土交通省の屋上と墨田区役所に行ってまいりました。
 国土交通省の屋上、大臣も上がられたことがあると思いますが、あそこへ行って本当に改めて驚いたのは、屋上緑化がされている地表は、夏場の十時から三時までの平均の温度が二十八・七度ぐらい、そして、緑化されていない地べたのところの表面温度が五十七・七度と、三十度ぐらい違う。屋上緑化されるまでは、屋上の喫茶室が幾ら冷房をかけても冷房がきかなかったけれども、今は寒いぐらいになっている、こういうふうな話をされて、それなりの効果というのはあるんだなと。
 二十一世紀のあるべき公共事業ということで、私は、屋上緑化の推進というのは一つの大変象徴的な施策、国民の皆さんがよくわかる施策であると思いますし、こういったことを推進するというのは環境省ではなかなかできない、国土交通省が音頭をとってこそ初めてできるということでありますので、これまでなかったことの予算を新しく上積みするというのは、大変難しいことはよくよく承知しておりますが、ぜひこれからの公共事業、公共事業イコール何かむだ遣いというようなことを払拭するためにも、この点について、余り細かい話じゃなくて結構でございますので、大臣の御抱負を聞かせていただきたいと思います。
扇国務大臣 赤羽議員に屋上緑化の話をしていただいて、私は大変ありがたいと思っています。
 我々は、ここをしたここをしたという宣伝を今までいたしませんでしたけれども、着実に屋上緑化を促進をしております、また推進もしております。また民間を指導もしております。そして、新たな都市づくりでやるところはすべて屋上緑化を、むしろ義務づけるというほど厳しい指導も私たちはしております。
 今赤羽議員がおっしゃいましたように、霞が関地区だけで見ましても、皆さん方は余りお気にしていらっしゃらないかもしれませんけれども、我々はこの緑化運動というものを進めておりまして、東京ドームのグラウンドの一・五倍に相当する二万一千四百平方メートル、約六千五百坪を屋上緑化しております。
 そして、霞が関では、今言っていただいた国土交通省の屋上はもとよりのことでございますけれども、平成十三年度に中央合同庁舎第一号館、これは農林水産省ですけれども、これもいたしました。そして第五号館、厚生労働省、環境省の屋上ももちろんでございます。それから合同庁舎第三号館、これは国土交通省、今おっしゃっていただいたとおりでございます。四号館の内閣府あるいは法制局、金融庁の屋上の緑化も行っております。
 今おっしゃいましたように、緑化することによって冷房のきき方、省エネに大変役立っているということも実証されておりますので、これは地方自治体にも今後どんどん波及していくものと思っておりますので、また、新しいビルは必ずという、そういう義務づけも指導していきたいと思っております。
 また、今お話がございましたバリアフリーですけれども、そこに書いてあります一日乗降客五千人という条件があるのですけれども、私は全国区でございますからいろいろなところへ参りまして、特に、五千人に達しなくても、例えば温泉とか療養地の駅というのは必ずお年寄りが多いものですから、五千人に達しなくても、そういう療養地、温泉地の僻地でもできればということを私は今頼んでおります。何か、駅のエスカレーターをつくる場所がないということで、駅舎を全部改築しなければいけないなんという条件もありまして助けてほしいという話も来ておりますけれども。
 先日の敬老の日で、百歳以上が一万八千人近くという高齢者社会でございますので、そのことも含めて私たちは、今までは上りだけしかエスカレーターがついていないところがたくさんございました。けれども、お年寄りに聞きますと、下りの方がむしろ上りよりつらいんだとおっしゃって、下りも必ず並行してつけるということも今指導しておりますので、今おっしゃいましたように、今後、環境あるいはバリアフリー等々、今までの公共工事の至らなかった点を加味するようにするというのが二十一世紀型であろうと思って推進に努力している、そういうことでございます。
赤羽委員 今御答弁いただきましたように、やはり目に見えるものを、役に立つものをつくっていくというのは公共事業無用論を払拭する最大の手法だと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 東京の墨田区の区役所の屋上に行きますと、屋上緑化の各企業からのコンペみたいな展示場になっているんですね。屋上緑化というのはおもしろいなと思ったのは、確たる技術が確立しているわけじゃなくて、いろいろな企業がジョイントで試行錯誤をしている。これは恐らく大変な需要喚起にもなると思いますし、地球温暖化には当然効果があるというふうにも思っておりますので、ぜひ、四十七都道府県の県庁所在地は、今年度中とは言わないまでも、来年度中に全部やれと通達ぐらい出して、言うことを聞かないところについてはしっかり予算査定もするというぐらいの厳しい、というか、役に立つことをやることは大胆にぜひやっていただきたい、こう思うのが一つでございます。
 もう一つは、観光政策について御質問をさせていただきたいと思います。
 観光業といいますと、国土交通省のいろいろな刷り物にも、経済効果は二十二・六兆円ある、雇用も百九十三・七万人の雇用が期待されるとか、また世界じゅうの、例えば国際観光到着数、どのくらい人が各国を動いているかというと、約七億人、その観光収入は五十二兆円とか、また、観光産業自体の規模というのは世界のGDPの一〇・七%、日本円にしますと約四百二十兆円で、これがまだ年率三・六%の成長をしていく、大変可能性を秘めた、期待をされる観光産業なんだということの位置づけがある。
 世界じゅうでもう大変な人が観光をしている、マーケットも現実にある、このような話はあるんですが、ではそのために日本の観光業をどうしていくのかという話になりますと、大臣の御答弁にもありますが、手法というか政策の中でいきますと、余り具体策がないんですね。別に責めているわけじゃなくて、現状としては、観光業に力を入れます、どう力を入れていくのかということは余りなかなかない。なかなか国の金とかを入れるツールがないというのが現状だというふうに思うんです。
 やっていることというと、休日、三連休法とか休みをふやすとか、金のかからない方法を出すというようなことは、これは非常に効果はあって否定はしないんですが、もう少し何とか具体的な手だてが立てられないのかなというのが非常に私の問題意識でございまして、残りの時間をそれに費やしたいと思うのです。
 一つは、新ウェルカムプラン21、外国人の観光客の数を八百万人にしよう、こういうふうにスローガンがされておりますが、ちょっと振り返ってみると、これまでの日本の観光行政というのは、かつてテン・ミリオン計画、要するに日本人の海外旅行を振興していこうというのがついこの前まであったはずなんですね。それまでは、とにかく外国に出ていってもらおうということを一生懸命サポートしていた。それが今、逆にインバウンドというか、外国人の観光旅行客の誘致数をふやしていこう、新ウェルカムプランをつくっていこう、こうやられているんですが、そもそもこのアウトバウンドからインバウンドに政策を転換した、まずそもそも論のところからちょっと確認をしたいのですが、御答弁をいただければというふうに思います。
扇国務大臣 私たちは、ことしはワールドカップという、韓国と共催でしたけれども、世界じゅうからお客様をお迎えし、四十万人近い外国からのお客様をお迎えしたというのを経験いたしましたし、また、間もなくは、愛知万博という、お客様を迎える行事もございます。
 けれども、平常において外国人が日本になぜ来てくださらないんだろう。日本から外国へ行く人は年間千七百万人、入ってくる人は約四百万人という、四分の一しかお客様を迎えることができないということは、どこに原因があるのかということも我々は反省しながら、まず外国から一番最初に着く玄関口から考えていかなければいけないと思うんですね。
 今赤羽議員が御指摘のように、私も本当に恥ずかしいと思うんですけれども、先進国の中で、あるいは日本がODAで援助している途上国に至っても、国際空港で一本しか滑走路がないという空港におり立ったことは皆さんないと思うんですね。お客様を迎える第一歩の玄関口が、成田一つとってみても、日本の玄関口だといいながら、二十五年間一本の滑走路でしかお迎えできなかった。しかも、二十三カ国が成田に着陸のウエーティングをしながら、これを満たすことができなかったという情けなさ。そして、着陸料は、アメリカもあるいはフランスも、隣の韓国もなおさらですけれども、着陸料は三十万円台、二十八万円台です。イギリスに至っては、ヒースローは七万八千円です。ところが、成田は九十万を超える。関空も、一本の滑走路で、着陸料は九十万を超える。これではお客様の来ようがない。
 しかも、成田に着いて、都内のホテルに行くのに、タクシーにお乗りになったら、込むし、二万ちょっと出ます。なおかつ、それにプラスアルファ、高速代が少なくとも千六百五十円取られます。これでは、外国のお客様が初めて日本円を払うときに、何で空港からホテルへ行くだけで二万円以上の金を払うのか、なおかつ千六百五十円、外国ではフリーウエーじゃないかということで、まずお腹立ちでございます。そのようなことで、我々はお客様を迎える用意が果たしてありやなしやということから考えれば、外国人の皆さん方に大変不自由をおかけしている。
 しかも、成田の暫定滑走路が、既定の距離ができなくて暫定なものですから、アジアから来る飛行機を大量に迎え入れています。そうしますと、例を挙げれば、韓国から成田まで二時間、成田から都内に行くのに一時間半。これでは、アメリカに行くのもハワイに行くのも、日本人でさえ成田へ行かないで大阪から韓国へ行って、そして韓国からハワイへ行った方が近い、そんな声まで出る現状でございますし、ホテル代も高い、今申し上げた通行料も高いということで、あらゆる面で、外国のお客様、いいところは日本はいっぱいあるとおっしゃるんですね、けれどもそれがリンクしてないとおっしゃるんです。
 ですから、京都がいい、奈良がいい、あるいは鎌倉がいい、北海道の雪も見たいとおっしゃいますけれども、その観光ルートというものの説明がきちんとされてないということで、ことしのワールドカップサッカーの経験も生かしながら、各観光の案内のルートをきちんとお教えしよう、しかもルートによっては割引しようと。
 ワールドカップで一つのICカードに両国の通貨を入れることもやりました。日本に来て、両替しないでカードでお買い物ができたり電車に乗れるということも二十一世紀には進めていきたい。あらゆるサービス、流通、物価高あるいは時間高、そういうものを解消していくのがお客様を迎える条件だと思っております。
赤羽委員 コストが高いということと、来たいきなりのサービスも悪いというのもあると思うんですが、私は二つ考えなきゃいけないと思います。
 今、ルートのメニューをつくる云々というお話が大臣からございました。これについては、かつて一九九七年に外客誘致法という法律ができて、近畿なら近畿で、何とかの道とかいろいろメニューがつくられたんですね。あれはやはり検証してみる必要があると思うんですが、五年たった今、どれだけなのか。やはりあれは、私の知っている限りでは、旅行客の立場というよりも行政、上からの立場のメニューで、ほとんどうまくいってないんじゃないかな。ですから、どこまで行ったって、当然ですが、消費者というか、お客さんの行ってみたいという視点でどういったメニューをつくっていくかということをどうオーガナイズするか。これは旅行関係団体だけだとなかなか難しいと思うんですね、広域的な話ですから。
 ですから、私は、一つは、例えば近畿なら近畿運輸局、各地の運輸局、今名前が変わったかもしれないけれども、そこにそれなりのエキスパートを配置して、その人が音頭をとって、JNTOといったところも機能させながらどうオーガナイズしていくかということがすごく大事だと思っているのが一つ。
 もう一つは、この夏ちょっと災害対策の委員会の特別視察でスイスの雪害のことでユングフラウヨッホのところに行ったんですが、物すごく思ったのは、日本人の中年の女性の観光というのは物すごいんですね。あそこはびっくりしたことに、日本人の大阪の方なんですが、四十五歳ぐらいの方が、日本人が六人集まって、日本人の観光客のためのガイドセンターをボランティアみたいな形で開いているんです。
 あの村は五千人もいないところに六人の日本人がそんなセンターをつくっているということは驚異的であって、こっちから行く受け入れはすごくできているんですが、逆に、向こうのスイスの人が日本というのをどれだけ知っているか。中国と韓国と日本の区別なんかつかないような雰囲気であって、成田空港に着く人はいいと思うんだけれども、そこに来させる努力というのもやはり相当真剣に考えないと、ウェルカムプラン21も年間九%ぐらいずつふやしていかなければ目標年度には達成しないわけですし、きょうはちょっと時間がなくて、また次回に譲りたいと思いますが、かけ声だけだとなかなかふえない。自然増を期待するだけじゃなくて、もう少しいろいろな仕掛けをしていく必要が私はあると思うんです。
 その意味で、多分、ビジット・ジャパン・キャンペーンと名づけて三十億円の予算要求もされていると思うし、三十億円というのは随分清水の舞台から飛びおりるような形で概算要求されていると思うけれども、これは各国から見ても、韓国、香港、オーストラリア、イングランド、カナダ、ほとんど百億円以上観光公社に予算がついていて、そういった意味ではまさにまだまだ足りないと思いますが、何とか我々も頑張りますので、この観光、予算をしっかりとって、それを有効に、上からの施策じゃなくて、下からのいろいろなアイデアをとって、本当に国策としてぜひ取り組んでいただきたい。
 細かい話はまた次回の委員会で、チャンスがあればやりとりをさせていただきたいと思いますが、重ねてになると思いますが、そういった面も踏まえて観光政策に対する御決意をいただいて、終わりにしたいと思います。
    〔委員長退席、栗原委員長代理着席〕
扇国務大臣 私たちは、二十一世紀の第三次産業の基幹産業としての観光という位置づけは大変重いものだと思っております。そういう意味で、近隣の諸国もあらゆる面で観光に力を入れておりますので、我々は第三次産業の基幹産業とする観光というものに力を入れて頑張っていきたいと思いますので、今るるお話ありましたように、またいろいろなお知恵を我々にもいただきたいということをお願い申し上げて、お答えにしたいと思います。
赤羽委員 どうもありがとうございました。
栗原委員長代理 次に、佐藤謙一郎君。
佐藤(謙)委員 おはようございます。民主党・無所属クラブの佐藤謙一郎でございます。
 私は、全国の公共事業の評価をして百カ所ぐらい回ってきたわけでありますけれども、公共事業に対する批判が大変大きい。中には、市民の方の誤解ですとか、あるいは、現場に行くと、この公共事業は推進しなければいけないなというものもあるんですけれども、しかし、その批判の大きさを考えると、この原因というのは何なんだろうかと。
 最初に質問通告を申し上げた、その原因を何と考えるかという質問は、きょうは、質問項目が多いので割愛させていただきますけれども、私は三つに絞って議論を進めていきたいと思います。
 一つは、実施主体の方々に、環境に対する無理解があるんじゃないのか。二つ目には、安全というものに対する鈍感さ。そして三つ目に、民主的手続の不備。これは、制度の問題もあれば、あるいは国土交通省の姿勢の問題もあるわけですけれども。
 その中で、安全への鈍感さというのは、きょうは時間がないので、問題提起だけにさせていただきます。
 例えば、全国を走り回りますと、静岡空港、我々が毎日のように使っている東海道新幹線の真上に滑走路をつくる。安全だと、安全神話というものを振りかざしていますけれども、そうした立地の問題ですとか。あるいは群馬県の八ツ場ダム。これは草津温泉から流れてくる吾妻川の水をためるわけですけれども、大変酸性度の強い水を、毎日何十トンという石灰をぶち込んで中和して、千葉や埼玉あるいは東京へ飲料水として調達しようとする、そうしたダムのあり方。
 それから、茨城県の、これは国土交通省の所管ではないんですけれども、ふじみ湖という湖が産業廃棄物の最終処分場になろうとしています。これは採石場跡地にわき水がわいて、本当に見事な湖を、石で埋めて、そしてその上に遮水シートを張って最終処分場にする。これは不等沈下で必ず事故が起きると専門家が言っているわけであります。ドイツでは水源の上に処分場をつくるなんということはとんでもないことといって規制されているものが、現実に進められようとしている現実。
    〔栗原委員長代理退席、委員長着席〕
 あるいは小豆島。あの「二十四の瞳」で有名になっている小豆島の内海ダム。これは、私は行って実はびっくりしたのは、つくられる予定の堰堤の直下に、六、七十メートルのところに人家が百軒ぐらいある。これを見て、災害時の危険性というものから考えると、本当にこういう計画がなぜできてしまうんだろうか。災害でダムが崩壊したのは、世界でたった一件だというのがよりどころのようでありますけれども、ダムの下に住む一部の住民を見殺しにするような、そういう計画じゃないか。ダムを建設する場合に、流域住民の十分な安全確保というものが日本の場合義務づけられていないんじゃないか、この辺はひとつ大臣も、よく徹底して安全確保というものに力を尽くしていただきたいというふうに思うわけであります。
 扇大臣が環境に対して非常に御理解をしてくださっていることに心から敬意を表するわけでありますし、大臣は事あるごとに、私たちは環境というものを考えなくては物事ができない時代になったとか、あるいは、あらゆる点で環境が二十一世紀になくてはならない価値なんだということを言っていただいております。私は、そうした大臣の姿勢に心から敬意を表するところでありますけれども、果たして、実際に公共事業をやっている主体の方々に、その考えが十分伝わっているんだろうかと。
 一例を挙げますと、十月の初めに私は日高山脈を横断する広域幹線道路計画を見てまいりました。既に、日高山脈は、狩勝峠、日勝峠、そして天馬街道と黄金道路という四つの道路で横断されている。そこにさらにもう一つ横断道路ができようとしている。百一キロメートルの道道と、それから一部開発道路、そういう計画であります。
 そこの地元の方に、私はそれとなく水を向けて、この道路はトンネルが非常に多いので東京のゼネコンが仕事をするのであなた方には本当に何のメリットもないんじゃないかと、こう申し上げましたら、いやいや、毎日どっかで崩落が起こってくれる、その崩落を管理するだけで孫、子の代まで食いっぱぐれがないと言われました。つまり、そういうことが現実にあって、そういう話が伝わって、公共事業というのは本当に必要なんだろうかという、どんどんそういう話だけが伝わっていくわけですね。なるほど、私が行ったときには、災害復旧工事といって、七カ所ののり面にべたべたとそういう工事が進められていたわけでありますけれども。
 ここでひとつ大臣によくお聞きいただきたいのは、このときに道の副知事と議論をさせていただきました。非常に率直な副知事で、特定政策評価というのを今やっていて、もうこの道路は必要ないんじゃないかという流れが今できつつあるところなんですけれども、そうした副知事に私が、日高山脈というのはこれはすごく重要な自然の価値があるんだけれども、その価値がどういう価値があるものなのか副知事御存じですか、こう申し上げたら、残念ながら、その価値について何も知りませんという答えが返ってきて、十月十二日の北海道新聞にはそれが大きく出てしまう。
 つまり、国会では、国土交通省とか環境省とか、それぞれの価値を大切にしている役所が対等な立場で議論をして一つの答えを出していく。ところが、地方自治体、先ほど地方の皆さんの知恵を出してほしい、そういうお話がありましたけれども、地方分権になっていくと、どうも、地方自治体というのは、大統領制、市長や知事があって、その中に開発部局と環境部局がある、今までは開発先行で、環境保全という部署は非常に肩身の狭い思いをしていて、なかなか発言する機会がなかった。そこから、悪意ではないんでしょうけれども、副知事が、これはまさに日本で最大の原始的な自然環境というものを持っていて、世界遺産登録しようという運動があるような、そういう自然環境を知らないで、開発を進めるかどうかだけを、その是非の議論をしているということ。そういうことを考えると、地方分権を前に、この一例から、大臣はどんなことをお感じ取りになられるかということが一点。
 もう一つ。これはきのう国土交通省の担当の方に、全国の公共事業で今いろいろと市民グループとのあつれきがある、そういう事例というのをリストとして出してくれないか、それは膨大なものになるかもしれないから、とりわけ環境関係でいろいろと問題があって工事がストップしたり、そこで地方整備局とのいろいろなやりとりがあったりというようなものがあったら見せてくれと言ったら、一切そういうものはつくっておりませんということなんですね。
 これは環境省が全国自然保護問題事例マップということで、全国にこれだけ公共事業と希少野生動植物の調整事業が今あるんですということを我々に見せてくれている。環境を重視するのであれば、こうしたリストはすぐにでもつくって、そして、その分析を始めていっていただかないと環境問題というのは看板倒れで終わってしまうんじゃないかと思いますが、この辺について、大臣の御見解をお伺いいたします。
扇国務大臣 久しぶりに佐藤議員にお目にかかって、貴重な御質問をいただきましたけれども、私は大変難しい問題だと思います。
 それは、我々は、より快適で、より安全で、より利便性のある生活を送りたいという願望がございます。けれども、それをすることによって、一種の環境破壊をするのではないかと。私は裏表にあると思うんですね。そこで、どこで調和をとるか。
 地元の要望では、これもしてほしい、あれもしてほしいとおっしゃるけれども、なぜ私どもがそういう環境省のような表を出せないかというと、うちは環境面だけではなくて、利水、治水、全体を加味したものを総合的に勘案しなければならない。国土交通省は、環境省とそこが違うんです。
 我々は、生命財産を安全に守るということで、治水面で配慮しなければならない、あるいは飲み水の安全性を確保し、なおかつ生活に困窮しないように、あるいは産業に水が足りないということがないようにということで利水も図らなければいけない。そういう総合的な調整を図るために、我々はもっと大きな目で、地域全体、あるいは川一つとってみても県はまたがります。そういう意味で、一つのことで物事を判断できないというのが国土交通省の大きな役目でございますので、今おっしゃいました問題は、私、冒頭に難しいと申しましたのは、地元の要望と、ある一点から見れば、それを遂行することによって環境破壊をするのではないかという、そういう懸念が多々あることも事実でございます。
 御存じのとおり、愛知万博一つとってみても、オオタカの生息があるということで計画を縮小したということもございます。あらゆる面でそういうことは両省で話し合いもしながら、なおかつ国土交通省として、全体的な総合計画のもとに我々は公共工事を進めますので、一枚の紙でお示しすることができないというのはそういう意味であるということも佐藤議員に御理解いただけると思っております。
佐藤(謙)委員 それはそのとおりで、国土交通省の役割というのは、環境省と同じであれば環境省が要らなくなるわけでありますから。
 その中で、価値観というものがどんどん変わっている。私が今おります横浜というところ、昭和三十九年の東京オリンピック以降、高度経済成長の中で、公的に最大の環境破壊は何かというと学校づくりだったんですね。高校百校計画というのがあって、それこそ谷を埋め、山を削って、大変な勢いで高校や中学校、小学校をつくった。しかし、それは、そのときは環境よりも教育だろうということで、ほとんど環境破壊に対する批判というのはなかったわけでありますけれども、時代とともに価値が変わっていくということを、国土交通省の若い職員の方々は非常によく勉強されていて、それが前向きであること、僕はわかるんですけれども、先ほど申し上げましたように、地方自治体になかなかそうした扇大臣の考え方、あるいは中央で議論をしているそうしたものがなかなか伝わらないというもどかしさをきょうは申し上げたんですが。
 全国で、環境面に限らず、どういう問題で住民と争いが起きているか、公共事業をめぐってどういう問題があるのかということは、これは一ページでお示しできないというお話ですが、十ページでも百ページでも千ページでも、やはりそうした分析というのは必要ではないかなというふうに考えます。
 そこで、次に移らせていただきます。
 住民参加の問題。これは、大臣が、とりわけ圏央道や川辺川の現場に行かれる、こういうことをされるというのは大変おつらい一面があろうかと思いますけれども、よくやってくださったなと評価をするわけであります。
 ただ、ここに、私が尊敬しております新潟大学の大熊孝先生という方が公明新聞に連載をしているこういう一文があるので、ちょっと読ませていただきますが、大熊孝先生という方は、河川工学の専門家の方で、見試し、江戸時代から、例えば、川から新たな用水を取水しなくちゃいけない、そして今度既存の用水と利害が対立した場合、数年間お互いに様子を見合おう、様子を見合いながら、不都合があれば軌道修正していこうということで、お上が口を出さないで、その地域の住民同士がお互いに話し合って折り合いをつけていくという、見試しという発想がこれから大事なんじゃないかなということを主張している方なんですけれども、この方がこういうことを書いておられます。ちょっと長くなりますが、読ませていただきます。
 近代的技術が導入されてからは、事業規模が大きくなり、
特にこれは治水、利水、ダムの問題なんですけれども、
 専門家と住民との知識格差が開き、専門家主導で決定・実行されてきました。それがつい最近まであまり問題にならなかったのは、少しの費用で大きな効果があげられたため、いちいち住民の意見を聞くまでもなかったからと考えられます。
  しかし、近年になると、治水安全度を少し高めようとするだけで、莫大な費用がかかり、環境破壊まで考慮すると、その費用に対する効果はかなり小さく、その政策決定を専門家だけに任すのは問題であり、住民の意見を聞く必要がでてきたのではないかと考えられます。
というふうに言われて、私は、これは的確な分析ではないかなというふうに思っているわけであります。
 実は今、ダムの建設をめぐるいろいろな反対運動の方々と議論をしますと、やはり一番中心にある疑念というのは、基本高水流量の設定というところなんですね。この基本高水流量の設定というのは、この間の河川法の改正で、河川整備基本方針の策定というものが決まります。これは、全国のバランスを考えた中で、長期的に河川整備をすべき、そういう必要なダムの規模をそこで定める。その基本方針の中で基本高水流量の設定というのが行われるんですが、国土交通省と住民との間の一番大きな開きは、この基本高水流量の設定をめぐって、その流量によってダムが必要か必要でないかという、その違いが出てくるんですね。ダムがもうつくられそうもない、例えば多摩川水系なんかは、基本高水流量に比べて現実の流量というのを非常に低く設定していますから、これはリーズナブルだということになるわけですけれども、どうしてもダムをつくりたいという地域では、この流量の設定が高いところに来てしまう。
 大熊先生もこういうふうに書いておられます。九七年の河川法改正では、基本高水などを決める河川整備基本方針について、河川審議会などで地域住民と無関係に決められてしまう。そして、それを具体化する河川整備計画には住民の意見を入れるという一歩前進はあったわけだけれども、この大熊先生も含めて、私は、河川整備計画、つまり今後二、三十年間のダムの設置場所や規模を定めるその計画以前に、河川整備基本方針の策定にも住民の意思を入れていかなければ、これは全国でまだまだいろいろなところ、今まだ二百五十のダムが建設中でありますけれども、不幸なことに住民とのトラブルというのがふえていくんではないかなということを懸念するんですが、こうした住民参加の中で、基本方針の策定にまで及んだ、そうした住民参加をお考えでないかどうかお聞かせください。
扇国務大臣 あらゆる公共事業のお話ですけれども、特に河川に集中して御質問がございました。
 私は、公共工事というものを、先ほどもお答えをしていたところでございますけれども、我々は平成十二年、私が建設大臣になって初めてこの公共工事の入札と契約の適正化の推進に関する法律というものをつくって、その中にきちんと住民の意見を聞く、そして事前、あるいは事後評価、この評価制度というものを全部法案に明記いたしました。そして、この委員会の皆さん方の御賛成で平成十二年に通していただいて、なおかつ、今おっしゃったように、今まで既に計画されたもの、その計画されて実行しつつあるものも事業見直しをしろということであれば事業見直しをする、そういう姿勢もとっております。私は、十四年度から、一切新規ダムを中止ということで、今、一切新規ダムの許可をいたしておりませんし、その計画もございません。なおかつ、先ほど申しましたように、利水、治水両面でダムを建設したけれども、川下において工場ができてこれだけの水量が要るということでダムの計画をしたけれども、利水の需要がなくなった、不況とともに工場が来ない等々で利水の需要もなくなったというところは事業見直しをするということも事実行っております。
 公共事業の見直しに関しては、第三者機関というものを設置すると法律に書いてございます。その第三者機関、事業評価監視委員会というものを各地域で設定して、そこできちんと、必要かどうかという判断も監視委員会でするという。私は、その大変公正な第三者委員会も、今の先生の論文が何年に掲載された論文か私わかりませんけれども、そういう御意見もあるからこそ法案をつくって事業監視委員会をつくったというのも事実でございます。そういう意味では、地元の地方公共団体と十分な調整をするということが明記してございまして、また、評価委員会もそういう意味の評価委員会でございますので、今までいろいろなことで評価委員会にかかって、現実に工事を中止したものも、二百三十事業中止したという事実もございますので、そういう意味では、事業を縮小したり、そして中止したりという決定も私はその時期に応じてなされるべきだと思うので、なるべく地元の御意見を聞きながら、中止するものは中止する、縮小するものは縮小する、そういうふうにしていくのは、当然その時期に見直すという姿勢の方が大事であろうと思っております。
佐藤(謙)委員 政策評価については、今行われているものについては、いろいろと私も議論するところでありますけれども、今の大臣の姿勢に私は賛成するわけですけれども、私がきょう申し上げたのは、そういう政策評価の問題ではなくて、一歩踏み込んだ河川法のそうした河川整備基本方針の策定にまで、つまり、上流部分にまで住民参加というものを担保していくことが、これからの市民とのいろいろなあつれきを回避して公共事業というのを理解させていく一番いい道ではないかなというふうに考えて申し上げたんです。
 例えば、この基本方針の策定は、社会資本審議会の河川分科会、水委員会というところで概要決まるわけですけれども、この委員長が水資源開発公団の総裁なんですね。つまり、こういう仕組み自身が、本当に住民の側に立った、そうした長期の水事業や治水の計画をつくるもとになる方針を決めるところなのかという疑念が出てきますので、その辺はお含みをいただきたいと思いますし、例えば、流域委員会というのが今盛んに設置されております。もともと百九ある水系、流域の中で、現在まだ十五しかできていない。そのうち、公募によって一般市民が参加を果たしているのは淀川と紀の川と九頭竜川、この三流域委員会だけなんですね。これを見ても、仕組みとしてはなるほど大臣の言われるとおりだけれども、運用面でまだまだそうしたものができ上がっていないということを御指摘させていただいて、次に移りたいと思います。
 次は、行政事件訴訟法の改正、これは土地収用法改正のときに論議があったわけでありますけれども、全国で土地収用法の事業認定の取り消し訴訟が行われています。現実には、大変象徴的なのは、川辺川、それから徳山ダム、そして岡山県の苫田ダム、この三つが収用され、あるいは収用にかかっているわけでありますけれども、この住民の方々が取り消し訴訟を提起してダム事業の是非を裁判で争っているけれども、その間もダム事業の工事は休むことなく進行していくということなんですね。これは、司法改革推進本部が来年、再来年にそうした全体の法律の枠組みをまとめるということで、そこに市民グループも積極的に意見を言っているようでありますけれども、ドイツあたりでは、こうした事業認定の取り消し訴訟があった場合には、まずとめる、執行停止の原則というのを採用しているんですけれども、日本の場合は、取り消し訴訟を展開してもどんどん工事が進められていく。
 ここで一つ矛盾があるのは、挙証責任。つまり、土地収用に必要な公益性というのを認定するのが事業認定ですから、その挙証責任はあくまでも起業者、大概の場合は国土交通省にあるわけですけれども、積極的に裁判に応じていないという現実があるんですね。つまり、裁判を長引かせば長引かせるほど現実の工事は進んで、もう完成しちゃえばしめたものという発想があって、原告が準備書面等を出さざるを得ない、そして国土交通省は最小限程度の書面で応じて、今月はだめだ、来月はだめだといって引き延ばしを図る。そういうサボタージュが市民に非常に怒りと反感を買っているように私は聞きました。
 行政事件訴訟法の改正も含めて、こうした裁判のサボタージュを、もしもあるとすれば調べていただきたいんですが、それがフェアじゃないということで、どうか行政的に指導をしていただきたいと思いますし、こうした執行不停止の原則を執行停止の原則にしていく、ネガとポジの問題が今大きく日本ではいろいろな方面で問題になっておりますけれども、この辺について大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
扇国務大臣 国に対する訴訟は法務省の所管ですから、私がそのことに答えることは不適当だと思いますし、また越権行為だと思いますので、訴訟に関しての、法務省関係のことは、私は避けたいと思いますけれども、訴訟されたものに対する国土交通省の協力が余りないというお考えに対しては、どの程度どの事業でどうという、今手元にないものですから、どの程度国土交通省が引き延ばししているのか、あるいはどうなのかということは、再度私も検討して、よく聞いてみたいと思いますけれども、国に対する訴訟に関しては、私はお答えを避けたいと思います。
佐藤(謙)委員 これは法務省の問題ですからそういうお答えは十分承知しておりましたけれども、ここで問題提起をさせていただきたいなと思います。
 それと、挙証責任はあくまでも国土交通省にあるわけですから、そういうことにしっかりと、丁寧に、誠実に対応することが、公共事業というものを一般の国民にゆがめて伝えない一つの道であろうと僕は思っておりますので、その辺はぜひとも実態を調査していただきたい。特に、苫田ダムですとか徳山ダム、川辺川ダム、これから問題が起きてくると思いますので、よろしくお願いいたします。
 それから、ダムの問題が続いて恐縮ですけれども、ダム中止後の住民補償制度というのが、今、日本にはありません。実は私が公共事業に飛び込むきっかけは、あるダムに水没する人がいて、その方に会いに行く、そうすると、何千万、億という単位の補償金がもらえる。だけれども、その補償金をもらえるのに、判をつかずに年間百万円か二百万円の野菜をつくる収入を選んでいる人間のその気持ちというのは一体何なんだろうか。背筋を伸ばして、絶対これはダムに応じない。その人はたまたま自己主張であったのかもしれませんけれども、飛び込んでいくうちに、その地方の方々の異議申し立て権というのが今の日本というのは非常に弱いんじゃないか、よし、こういう人たちの声を中央に少しでも届けることができればということで、私は今全国を飛び回っているわけであります。
 確かに、二百三十に上る見直し、これは国土交通省としてよくやっていただけたと思います。大変いろいろとおつらい、それぞれ積極的に推進している方々を説得して中止をした。これは確かにいいことかもしれませんけれども、しかし、何十年もの間国家プロジェクトによって人生を翻弄された住民に対して、御苦労さまとか、申しわけありませんでした、そういう言葉は一切聞かれないわけです。
 ここで、鳥取県の三朝町の中部ダムの例がよく引き合いに出されるわけですけれども、ここは、一九七三年度に予備調査が開始されて、そして実施計画の調査採択が一九九三年、こうした中部ダムを、二〇〇〇年、つまりおととしの四月に片山知事は中止を表明されました。
 この中止をしたときに、片山知事はどういうことを言われたか。その翌年、去年の話ですけれども、旧中部ダム予定地域振興計画の合意調印式でこういうことを言われているんです。今日までの長い間の御苦労を考えると、振興計画に何らかの慰謝料が含まれるべきだという考え方は理解できた。しかし、行政として、できることとできないこと、なじむこととなじまないことがある。そこで、直接の補償、慰謝料はできないが、長い間に生じたいろいろなゆがみを是正していくため、例えば住宅の改善の支援や地域の振興のための交付金を施策化した。また、ダムはできなかったけれども本当にいい町になった、ダムはできなくてよかった、こう言われるような村づくりを県としても皆さんと一緒に取り組みたい、こういうふうに言われているわけです。
 私も、川辺川ダムですとか、全国を走り回りますと、畑を取り上げられる、自分の大事な子供を、農業高校にやらそうとしていたけれども、大阪の工業高校にそれじゃといって進学させた。後になって、畑は返す、ダムはつくらない、だから勝手にまたもとに戻せ、人生の設計をやり直せ、そういう言い方をしても、一度定められた人生の方向というのを容易に変えることはできないわけでありますから、そうしたことに対する何か生活再建策というものがあっていいんではないかなと私は思うんです。
 生活再建策、ありました。これはことしの七月二十九日に中止になりました新潟県の清津川ダムの中止の事例であります。
 この新潟県の清津川ダム、これは生活再建構想。これは何かというと、清津川ダム対策協議会といって、ダムを推進する人たちが、清津川の希望の里として、こんなにすばらしい、ディズニーランドのようなバラ色の町の構想図を描いているんですね。私たちはこれを自分たちでつくったといって私たちに誇らしげに示されたんですけれども。国土交通省の実施計画調査中事業費というのを見ますと、平成十一年度のそのリストの中に、清津川ダム生活再建構想整備イメージ図作成業務委託、千八百九十万円と書いてある。つまり、地元の協議会がバラ色の再建策をつくったと主張していたのに、裏を見ると、これは国土交通省がお金を出しているんですよね。
 つまり、こういうようなことをやっていれば、仮に百歩譲って清津川ダムというのが本当に必要なダムかもしれないとしても、何だ、こういううそをついている、国土交通省は信用できないということになってしまいかねないと思います。
 そういうことを考えて、清津川の場合も、今、県、市、村と住民との協議会というのが始まりました。県は責任を感じているというふうに言っておられますので、三俣集落というところでありますが、そこにかかった長年の労苦、北陸整備局の事業評価監視委員会でも、極めて憂慮されるという言葉で三俣集落の方々に頭を下げておられますし、きのうお目にかかった国土交通省の若手の官僚の方々も、この問題は頑張ります、生活再建をやるやらないじゃなくて、何とかその処理をいい形にしたい。
 計画浮上から三十六年。こうした生活再建に対する、見直しだけは進んだけれども、つくらなくなったから、後は今まで三十年四十年その影におびえていた人たちは勝手に人生設計を始めてくださいじゃない、温かみのある再建策を国土交通省としてお考えになれないものか、御検討をお願いしたいと思います。
扇国務大臣 今、一つの例を佐藤議員が挙げられましたけれども、私たちは、その一つの例のみならず、先ほど申しましたように、二百三十事業というものを中止するに当たりましても、事業認定する手続と同じ逆の手続で、各地方の懇談会に全部諮って、この二百三十のために九十日で三百回の委員会を開いていただいて、中止するということの徹底と、御意見を聞いて中止できたというのが事実でございます。たとえ国土交通大臣であろうと、一刀両断に、これは中止というような乱暴なことをしたわけではありません。事業認定と同じ手続を逆にとっていって、地元の皆さんに全部諮って、日にちをかけてこの二百三十の中止に至ったという、手続だけはきちんとしてくださいということで、私たちは、一刀両断に全部中止して、今まで御苦労いただいた皆さん方を無視するという態度をとったのではないということだけは佐藤議員にぜひ御理解をいただきたいと思います。
 少なくとも我々は、中止するところの地元の皆さん方、地方公共団体と十分な意見交換をして、そして調整を図って、必要に応じて、中止するという事業の代替措置、これも我々は検討して、事業の縮小等を含めて、いろいろな地元の要望も聞きながら、代替地等々その代替措置のあり方というものを私たちは参考にしながら、それは個別に、今一つの例だけ挙げられましたけれども、それぞれの地域で異なるものですから、それぞれの地域のそれぞれの御意見を聞きながらその地域との調整を図っているというのが事実でございます。
 そういう意味では、今後も御示唆があれば御意見も承りますし、我々は、その地域地域の特性に応じた調整の仕方を懇切丁寧にやっていくということを指示して中止に至っております。
佐藤(謙)委員 一刀両断にやったということは僕は申し上げていなくて、そうした中止を決められた手続論も私は評価をしておりますので、そうではなくて、中止をした後のフォローに、扇大臣のカラーといいますか温かみをしっかりと、行政だけではなかなか醸し出せない温かさを、何か制度や法律につなげていけるものはないだろうかということを僕は申し上げました。
 そこで、もう一つ。
 個人の生活再建策については今の議論のとおりでありますけれども、今度は、地方自治体、地方公共団体に対して、補助金適正化法という法律があって、今全国にいろいろな公共事業があるけれども、地方自治体の長が、あるいは幹部が、私に耳元で、この公共事業はもう本当はやりたくないんだと、負担金も多いしなかなかつらいんだけれども、これをやめると言ったら、それじゃ補助金適正化法に従って補助金を返さなくちゃいけない。例えば、諫早干拓事業、これは国土交通省の管轄じゃありませんけれども、二千四百九十億円。今長崎県知事がこの事業をやめると言ったら、そのうち六百億円か七百億円返さなくちゃいけない。とてもそれはできないというところで、実は公共事業というものが健全にとまるという仕組みができていないと考えるわけです。
 現実には、熊本県の羊角湾の干拓事業、これも農水省の関係、あるいは、ついこの間中止が決まった中海の本庄工区の干拓、こうしたものについては国土交通省の公共事業とは若干仕組みが違います。これは土地改良法の負担金という問題がありますので。どういうことになっているかというと、補助金の適正化法というものでは、これは返すということにはなっていないわけですけれども、結果として土地改良法の本旨に反するということで、国と県の合意に基づいて、例えば羊角湾の場合、熊本県が国に二十一億円を三年で返還をする、そういう仕組みになっているわけです。
 ところが、今度、国土交通省の二百三十件については補助金の返還を求めていない。これは僕は非常にいいことだと思います。全国の地方自治体、本当にこの公共事業が必要でないと思うんだったら手を挙げてください、挙げて、そしてそれをある一定の手続でよく審査した上で、なるほど、この公共事業は前に進まなくてもいいなと思ったときには、国にその補助金の負担部分を返さなくて済むという仕組みがあると、これは健全な公共事業の再評価の流れを促進できるものではないかなと私は考えております。
 これは平成十年の地方分権推進計画の規定に基づいて、こうした補助金の返還は求めていないということでありますけれども、一つ、清津川ダムは平成十三年度以降、つまりことしの七月二十九日に中止が決まりましたので、これは二百三十件の外にあります。この清津川ダムがどういう扱いになるのか。さらには、これから中止になるであろう長野県の、田中康夫さんが脱ダム宣言で中止ということを決められた浅川ダム、下諏訪ダム。浅川ダムは五〇%の進捗率があるわけですけれども、この辺についての大臣の対応を、どういうふうにされるのかをお聞かせいただければと思います。
扇国務大臣 今、国土交通省が二百三十事業を中止したことに関して、返還を求めないことを評価していただいたのはありがたいことだと思っています。
 ただ、それだけでは済みませんで、我々は、あらゆる事業、これを中止する場合に関しましても、学識経験者はもとよりのこと、それを構成された委員会できちんと審議をしていただいて、その再評価を通じて、補助事業等に、責めに帰するべき理由がないというような判断が出るわけでございますので、私どもがするわけではなくて、委員会でそういう判断をされた場合には、交付決定後に生じた事情の変更により事業を中止すると認められる場合においては、既に執行した分については補助金等の返還を求めることはないというのが現実でございますので、二百三十事業に関してもいたしませんでした。
 ただ、今御質問がございました長野県の浅川ダム等々でございますけれども、これは、私のところにまだきちんと、国土交通省には完全に御報告が現段階では来ていないんですね。ですから、私もちょっとよくわからないんですけれども、お話を聞きますと、正式に事業中止の報告を聞いていないんですけれども、地元では、ことしの六月の議会ではこれを宣言なすったということでございまして、それは新聞かテレビでちらっと委員会が映りました。それを私は拝見したんですけれども、県の公共事業の評価監視委員会にも諮って、そして最終決定をしますという御答弁をしていらっしゃいました。けれども、最終的に県の公共事業の評価監視委員会に諮られたのか諮られないのか、私はまだそこまで、答弁だけしか聞いておりませんので、先生もし御存じでしたら教えていただきたいんですけれども。
 私は、最終の県の判断というものがその委員会でなされて、国土交通省に何らかの御通達なり御返事があるんだろうと思って、今、現段階ではまだそこまで至っていないということで、県がどういう判断をされるのか、委員会で知事が言明していらっしゃいますので、事業評価委員会にかけられるということでございますので、待っていたいと思っております。
佐藤(謙)委員 ぜひとも、地方自治体に多くの過大な負担を押しつけるようなことのないような、そういう取り組みをしていただければというふうに思います。
 では、もう時間がなくなりましたので、最後に一つだけ要望させていただきます。
 長期計画の一本化の問題、これは私ども民主党も、公共事業基本法というものを、過般、国会に提出をしております。私ども、十六本の公共事業長期計画を一括すべきだという主張と、それは国会の承認も含めた、国会関与というものを柱にしているところでありますが、どうやら、今の扇大臣の指揮のもとで長期計画の一本化は既に決まっていて、ただ、後は事業費の総額を書かないという仕組みなんだそうです。成果目標、アウトカムというものを前面に出していこうということで、例えば、空港だと離発着何万回とか、水害の危険面積をどれだけ減らすか、あるいはそうした問題について共管の省庁との調整の御苦労があったり、あるいは地方からいろいろと困ったというようなお声があって、なかなかそうすんなりとはいかない作業だと思います。
 質問じゃないと申し上げましたけれども、我々は十六本を一括でやっていこう、そういう考え方。それを今度、国土交通のは八本あるいは九本ということでありますけれども、十六本一括ということをなぜお考えにならないのか、それから国会関与についてどうお考えなのか、この二点だけちょっとお聞かせいただいて、私の質問は終わりたいと思います。
扇国務大臣 佐藤議員はよくおわかりになっていると思いますけれども、行革で国土交通省という、四省庁統合という、とてつもないことができたわけでございます。旧運輸、旧建設で今まで背中合わせで縄張り争いをしていたと言っても過言ではないような事業の計画をし、なおかつ、道路に関しては旧建設、あるいは、港湾、空港に関しては旧運輸ということで、お互いに一歩も引かないというぐらいな縄張り争いをしていた巨大二大省が一緒になって国土交通省になりました。そして、昨年一年間はこの両省の壁を取るということを最大限の目標に掲げて、幹部があるいは率先し、なおかつ下の皆さんも、お互いに今まで顔を知らなかったわけですから、それが、やあこんにちはと言ってあいさつをするところから始まった四省庁の統合でございますので、私は、少なくとも省庁の壁を外すという一年間努力をし、ことしはその二年目の実を上げる年であると認識をし、この長期計画の一本化ということを図ってきたわけでございます。
 御存じのとおりに、今までの五計とか長期計画は、必ず予算が伴って、明記してございます。その予算をとる、ちょっと語弊があるかもしれませんけれども、一般的にわかりやすく言わせていただくと、予算をとるための五カ年じゃないか、五カ年同じ予算がとれるという、予算獲得のための長期計画化していないかということも含めて、私は一本にしたい、しかも金額は明記しないということを言っているんです。
 私は全部一緒になすったらと言うんですけれども、今の九本にするのでも、来年度の、十五年度の治水まで入れて九本です。しかも、それは国土交通省単独じゃなくて、農林水産省とか、共管する役所もあるんですけれども、それを巻き込んでの一本化でございます。今でもまだもめている分がございまして、これは警察のことなんですけれども、警察に関するところは、やはりこれはうちは別にしていただきたいなんと言っておりますけれども。
 私は、予算を長期にきちんと枠組みを組んでおりますので、それを前倒しにして全部ぶった切って一緒にするよ、いわゆるスクランブルするよということになれば、まだその計画の途上にあるものもございますので、全部を一本にという御意見はわからないではありませんけれども、やがては国土交通省として省庁の壁を取って実を上げるためには、一本化することによって、より集中度あるいはスピードアップ、そしてコスト削減、この三つが一体になって、国民の皆さんに、国土交通省は四省庁統合してよかったなというような実が上がるのが来年度の予算のときに見ていただけると思いますので、いい御意見でございますので、今後もなるべく長期計画を一本化するということに努力していきたいと思っています。
佐藤(謙)委員 どうもありがとうございました。
 時間になりましたので、国会関与については後でお聞かせいただければと思います。どうもありがとうございました。
久保委員長 津川祥吾君。
津川委員 民主党の津川祥吾でございます。どうぞよろしくお願いいたします。佐藤委員に引き続きまして質問させていただきます。
 私は、先ほど大臣がお述べになりました発言に関しまして若干質問をさせていただきます。扇大臣は大臣の中でも特にベテランの大臣でもいらっしゃいますし、きょうもそうですが、答弁もまさに御自身のお言葉で答えられることが大変多いと思っておりますが、ただ、今回のこの発言というものはちょっとわかりにくい部分がございまして、まずちょっと一点、内容について質問をさせていただきます。
 この一ページ目にございましたけれども、交通政策についてという部分で、利用者重視のマーケットの実現に向けてこういったことをしますということを書いておりますが、私、これをきのうも何度も読んだのですが、利用者重視のマーケットの実現という言葉の意味がよくわからないんですが、ちょっとこれは御説明いただけますでしょうか。
扇国務大臣 今、津川議員がおっしゃいましたように、交通というのはまさにユーザーがあっての話でございます。そういう意味からすれば、今の私が申しましたマーケットの実現ということ、それは少なくとも利用者重視ということですけれども、どういう利用者かということになりますと、それは、手続の簡素化とかあるいは規制の緩和とか、あらゆる面にあるわけでございます。
 例えば、新車の購入登録、そういうときに、まず保管場所の証明が要りますね、車庫をどこに持っていますかという。それから、税金の納付の手続も要ります。そして、一回の手続で終わるワンストップサービス化。証明をもらうのに、今は両方に行かなきゃできないんですね、車庫証明とそれから税金と。今例えば品川にいらしても、両方の建物に行くんです。それをワンストップにしようではないか、何で両方の建物に行かなきゃいけないんですか、そういうものはワンストップにしてできるじゃないですかと私も申していることも、それも一つでございます。
 あるいは、公共交通につきましても、皆さん方、地域とか利用者とともに考えるシステムづくりを進めるという、例えば、地方の運輸局が皆さん方とともに、交通事業者だけではなくて、地元の自治体でございますとかあるいは市町村、そういう利用者の意見を聞きながら、公共交通のサービスを改善する、そして、過疎地においても、高齢者社会に対応できるように、地域の実情に応じた生活の交通を確保していきたいというようなことも地方から声が出てくるわけです。これも、利用するユーザーの利点に基づいた交通体系をつくるという、大きな転換でございます。
 そしてまた、世界に開かれた未来型の交通システムの構築というのは、これはもう当然国土交通省としては考えなければなりません。従来の交通システムのみならず、私たちは、ワールドカップサッカー、先ほどもちらっと申しましたけれども、世界初の、対応型のICカードということで、世界から来るお客様に、例えば、韓国に行ってウォンを持っているけれども、ウォンは日本で両替する場所がほとんど制限されます。そして、小銭は両替できません。けれども、それをICカードに入れれば、韓国と日本とを旅行する人たちが、お金を交換しないで、そのICカードチップ一つで、この間のサッカーのときには、北海道は車にも乗れる、電車にも乗れる、買い物もICカードでできるという、これは世界初でございますけれども、余り皆さん御存じないんですけれども、国土交通省が初の試みでできました。
 これも新たな、国民の皆さん方の共通の利便性を考えたことですので、一つ一つ、陸海空でございますので、これを御説明申し上げていると切りがありませんけれども、利用者重視のマーケットというのは、そういう意味の実現をしていくという意味でございます。
津川委員 済みません、ちょっと私の能力ではなかなか理解できないんですが。
 少し具体的に、一つ質問します。
 交通政策について過去の大臣の所信をちょっと調べ直しましたが、大体この脈絡でおっしゃっているのが規制緩和の話だと思います。公共交通機関参入規制の緩和、こういったようなところがあるけれども、それによって地方の切り捨てにならないようにという流れだと思います。
 流れだと思いますが、先ほどのお話の中にも、どなたかがおっしゃったかと思いますが、地方の中で、例えばバス会社がある。都市部の参入規制が緩和をされて競争が激化して、これに勝っていくためには、赤字の不採算路線、ローカル路線を廃止していかなきゃいけない。自治体は廃止しないでくれ、しないでくれと言うけれども、マーケットの原理からいくと、これは廃止しなきゃいけない。それを、マーケットの原理ではなくて、その路線を維持しようということであれば、わかるんです。ただ利用者重視のマーケットの実現と言われると、どっちなんだろうということがちょっとわかりませんでしたので、確認をさせていただきました。
 恐らく問題意識としてはもちろん大臣もお持ちだと思いますが、この短い文章の中で、その両方を表現されるという形で、結局こういう形の表現になったのかもしれませんが、非常にわかりにくい言葉が幾つかあるのが今回若干気になったのが一つ。
 そしてもう一つが、国土交通行政の当面の諸課題についての考え方を述べられているのに、なぜ高速道路政策について一言も触れられていないのか、ちょっとそれをお答えいただけますか。
扇国務大臣 高速道路行政というのは、国幹会議において、一万一千五百二十、九三四二、既に決まっております。それをそのとおりするかしないかというのは、第三者委員会と言われておりますけれども、御存じのとおり道路関係四公団民営化委員会で今論議されておりますので、国土交通省としては、国幹会議で決められることは、総理大臣がトップですから、それで国会議員の皆さん方も国幹会議にお出になって決まったことですから、その基本方針は厳然としてあるんです。ただ、それを、今の経済状況の中で、果たしてどこまで実行できるのか。あるいは、経済状況で、今までの事業を見直して、ここは六車線ですよと、例えば名神高速道路、六車線で走るところを、今度は四車線に減らしてでもやっていくのかと、その問題が別途あるわけでございます。
 ですから、せっかく総理の直属で第三者委員会が、四公団の民営化推進委員会が十二月には答申を出すとおっしゃったのが、総理が十一月に前倒ししなさいよと言われて、まさに十一月の終わりにはこの答申を総理にお出しになるわけでございますから、我々は我々として、国土交通省の基本政策が変わったわけではありません。それを今の状況に見合わせてどのように変更しながら実行できるかという、その計算をするのが国土交通省の役でございまして、私たちは道路公団等々四公団の民営化について、国土交通省の意見は、委員会を設置して、既に総理にお渡ししてありますけれども、新たに委員会をおつくりになっておりますから、それはそれでどういう答申をお出しになるのか見守っているというところで、国土交通省の基本政策には何ら変更は現段階ではございません。
津川委員 これまでの方針が変わっていないというのはわかるんですが、ただ、まさにそれが国民的な関心事であり、議論をされている最中で、議論を向こうでしているんだから向こうでしてくださいということではなくて、やはり重要なものであることで、しかも国民の大きな関心が集まっていることであることに違いはないと思います。本来であれば、当委員会にも民営化推進委員会の委員長にでも来ていただいて、中間整理が出た後の御説明はないわけですから、最終意見が出されてから、ではどうしましょうかという議論を始めるのじゃなくて、現状こういうところまでできています、一応中間整理でこうなりましたと、そこにこだわるわけではありませんが、現状ここまで来ているということもぜひ御説明をいただきたいというふうに思います。いずれにしても、この問題は大変重要な政策でもありますし、小泉内閣の中でも最重要課題だと言っているんですから、ぜひともこれは本来であれば触れていただいてよかったのではないかなと思います。
 坂野さんに来ていただいていると思いますが、道路関係四公団民営化推進委員会の事務局長にお越しをいただきましたので、現時点でどういう審議の状況であるのか、論点はどういったところまで整理をされているのかということをちょっと御報告いただければと思います。
坂野政府参考人 道路関係四公団民営化推進委員会は、御承知のとおり、ことしの六月の二十日に初会合を開きまして、現在まで二十八回の会合を重ねております。
 その間、ただいま御指摘がございましたように、八月三十日には中間整理を決定し公表して、改革のスキームのイメージを皆様方にお示しをしたということになっておるわけでございます。
 その中間整理の公表後、九月以降、この中間整理にも示しておりますけれども、今後、まださまざまな検討課題がある、そういうことから、残された課題及び中間整理で示しました改革のスキームそれ自体についても再検討するということで、議論を重ねておるわけでございます。
 スキームの再検討のほか、例えば具体的に残された課題としては、新会社が建設する路線の基準あるいは建設のスキーム、あるいは国と地方及び新会社の間の関係、例えば契約、そういうものについてどうするか。それから、貸付料のスキームを中間整理では提示をしておりますが、その貸付料の設定の考え方、あるいは地域分割等の考え方。それから、新会社による関連事業あるいはコスト削減の道筋、そういうものも検討しておるわけでございますが、そのほかに、例えば日本道路公団が実施をしております一般有料道路の事業の処理あるいは本四連絡橋公団の債務処理の方法などについても論議をいたしております。
 それで、多くの問題は実は改革のスキームにかかわる問題でございまして、まだ現段階で具体的に方針あるいは内容が確定をしておるというものが少ないわけでございますが、部分的には方向づけをすることができる問題も出てきておりまして、例えば、先ほど申し上げた一般有料道路事業については、これをネットワーク型とバイパス型に区分をして、ネットワーク型については高速道路と一体として扱ってはどうか。あるいは、本四連絡橋公団の債務の処理については、これは昨日でございますけれども、料金の大幅な引き下げとそれから債務の処理、これを同時に進めることにして、その処理については、本四架橋の公団が現在収受しておりますまさに通行料金、国からの出資金あるいは地方の出資金、それから道路料金の活用及び所要の債務カットによってこれを処理するということではどうだろうか。その場合の所要の債務カットについては、国の道路財源をもって充てることとしてはどうか。
 そのような方向づけはぼつぼつ始まっておるわけでございますけれども、繰り返して申し上げますが、なお全体の改革のスキームにかかわる問題が多うございまして、個々の問題について現段階でまだ確定的なことを申し上げる段階には至っておりません。
 そこで、委員会設置法上、十二月末日までに意見を提出するということになっておるわけでございますから、残された時間、そう多くはございません。その間、委員会、例えば週に二回ぐらい開催するというペースで、ハイペースでこれからも審議を重ねたいと思っておりますが、あわせて、この審議と並行して、九月の下旬から全国五カ所で一日委員会を開かせていただいて、全国各地の皆様の御意見も伺って、的確な意見をまとめたい、そんなつもりでこれからも審議を進めていく、そういう予定になっておるわけでございます。
津川委員 済みません、最終意見は十二月上旬でよろしいですか、十一月中ですか。どっちですか。
坂野政府参考人 意見の提出は、設置法上、十二月末日までに提出すべきことということにされておりますので、まだ確定的に何日に提出できるということは決まっておるわけではございませんが、十二月中に出すということは至上命題であります。したがって、私ども事務局としては、十二月の末日までに設置法上出すということになっておりますけれども、例えば十二月三十一日に出すというようなことはまずあり得ないということから、十二月、ある程度早い時期をめどに審議を進めていただくようにお願いをしておるわけでございます。
津川委員 先ほど、総理からは十一月中という指示もあったそうでありますが、十二月の上旬だとすれば今国会中であります。あと一カ月もしないうちに最終的な意見が出てくる。最終的にどうなるかはまだ確定されていないという話で、まさにそのとおりかもしれませんが、少なくとも、今、相当オープンに議論されていますから、私もチェックさせていただいていますが、その中を見る限りでは、相当やはりこれまでの高速道路行政を見直す必要があるという最終意見が出てくる可能性が高い。
 そうであれば、それが出てきてからどうしようか、例えば当然国幹会議は招集をしていただくのかと思いますが、それ以前にでも、この委員会、民営化推進委員会では取り上げられないようなことでもたくさん問題があるわけですから、漏れている部分に関してはやはり政治の責任として議論を進めていくことは随分必要だと思います。
 ちょっと、今回の委員会の中では、恐らく、相当時間を詰めてやっていらっしゃるようなので、なかなか難しいかなと思うんですが、まさに今の段階では、これまでの計画どおり進められているわけですけれども、その現在の高速道路行政の中で私一点ちょっと問題点を指摘したいと思うんです。
 ハイウェイカードの偽造の問題について質問させていただきますが、ことしの八月の報道で、阪神高速道路で、ハイウェイカード五万円の、額面五万八千円ですが、売上高よりも、それを使われた利用額の方が七億円多かった、恐らくこれは偽造だろうという報道です。これは大変な問題だと思うんですが、この実態とその他ハイカにかかわる偽造事件について現状の報告をお願いいたします。
佐藤政府参考人 偽造ハイウェイカードにつきましての御質問でございますが、平成十一年五月に都内と名古屋のチケットショップで偽造の五万円券が初めて確認されました。公団では、直ちに料金機械の対策を講じるとともに、善意の第三者への被害を防止するため、各料金所におけるポスター掲示やチケット商組合への情報提供による注意喚起などの対策を講じてきたところであります。
 また、偽造防止の強化策として、一万円以上の高額券について、カード表面にホログラムと透かし印刷を施した新型のカードを平成十一年八月から発売し、平成十三年四月からは旧型の高額券を新型に交換することで新型の利用に限定しているところであります。
 しかしながら、その後ということでございますが、偽造事件が起きている。どれだけ偽造されて使われているかこの実態そのものはなかなかわからないところがございますので、確認された事実としまして二、三申し上げますと、これまで偽造有価証券行使罪あるいは不正電磁的記録カード所持罪等による逮捕者が累計で七十九名に上るということでございます。
 また、偽造の件数につきましては、警察による検挙者とは別に、料金所、チケット商等から各公団に持ち込まれたカード枚数で把握した数字として、ホログラムなどを施した新型カードを発売した平成十一年八月以降昨年度末までの累計で発見されたものが一万六千枚に達しています。このうち、新型のカードの偽造も平成十三年以降発生しておりまして、約六千枚が確認されている、こういう状態でございます。
津川委員 これは、NTTのテレホンカードのときは、高額のものを発売しない、使えないという形にしたと思うんですが、阪高は一応そういう形にしたそうですが、日本道路公団もありますよね、日本道路公団もホログラム入りのもので偽造カードが出回っている。
 インターネットで、ホームページに書いているところによると、三万円のものが九種類図柄がある、五万円のものが三十二種類ある、同じ図柄のもので気になる方は取りかえてくださいというんです。取りかえてくれたら、本物であれば、残額分を再発行いたしますというんです。つまり、このまま使っちゃうとわからないという話ですよ。確認するのに一、二週間かかる。その図柄は何かというと、ホームページにいろいろ出ていまして、私も持っていました、同じやつ。これは、私のは違うと思いますけれども、私のはサービスエリアで買いましたから本物だと思いますが。
 これだけ多くのものが出回っていて、なおかつ、阪高では七億円使われているかもしれないという状況であるにもかかわらず、対応をとらないんですよ。これは何で放置するんですか。
佐藤政府参考人 そこで、現在いろいろ検討しておりますが、平成十四年の八月に、社会資本整備審議会の中間答申及び有料道路政策研究会の中間取りまとめにおきましても、こうした偽造が社会問題化しているということから、ハイウェイカード、それから回数券につきまして、ETCに集約化を図る、できるだけ速やかに集約化を図る、こういう方向で今検討を進めているところでございます。
津川委員 いや、まさかそうだとは思っていなかったんですが、そうだというならわかりましたが。
 ただ、それにしても、五万円のものをそのまま放置するのはやはり余りにも問題だと思うんです。これは例えば、電話のときと違って料金が高いから、すべて千円にするわけにはいかないということはあるかもしれませんが、例えば、一万円券を五枚買えば五千円券がついてくる、ちょっと割引率悪くなっちゃいますが、例えばそういうことにすれば今の割引率と全く同じです。五千円で買うとおまけが五百円、今は二百円ですか、これを五百円つくようにすれば、一万円のを五枚買って五千円のを一枚もらうと、ちょうど五万八千円分使えるようになるんです。だから、今のものをそのまま配るだけで対応できるんですよ。別にそんなお金かける必要ないんです。ETCの機械を買っていただく必要もないんです。だから、これはすぐやっていただきたいと思います。
 済みません、時間がないので、ちょっと次に行きますが、例えばこのハイウエーカードの問題も、今の高速道路の問題としてすぐやっていただきたい。ETCにまさに今移行する期間だから、どうしようかということではなくて、この交通行政の政策的な空白をつくらないでいただきたいというお願いです。
 それからもう一つが、先ほどもちょっと触れていただきまして、大体、民営化推進委員会の中では議論が少し進んだというような表現ですが、私は全くこれは違うと思うんですが、一般有料道路の現状について、民営化推進委員会ではバイパス型とネットワーク型に分けるという話でしたが、そんな単純な話じゃないはずなんです。それぞれの道路を、一般の有料道路は相当地域的な、特別な意味合いがある道路でありますから、二種類に分類するようなものではない。それから、高速道路とは全く質の違うものも多くありますから、これを高速道路と同じようなスキームで処理をするというのも私は間違いを犯すだろうと思っております。
 何度か質問しながら、いつも最後に質問を持ってきて時間がなくなってしまったので、今回ちょっと早目に取り上げますが、局長に具体的にお話をお伺いしたいんですが、東海四バイパス、この問題です。これを、今どういう状況なのか、状況としてはそんなによくないと思っております。このことについては前にお話をさせていただきましたが、御回答をいただければと思います。
佐藤政府参考人 お答え申し上げます。
 藤枝、掛川、磐田、浜名、静岡県内の国道一号のいわゆる東海四バイパスについての御質問でございますが、これの現状がいかがか、こういうお話でありました。
 東海四バイパス全体を合計いたしますと、平成十三年度、単年度の収支状況は、収入六十一億円に対して、管理費と金利などの費用は三十六億円でありまして、償還準備金繰入額が二十五億円であります。
 個別に申し上げますと、藤枝バイパスは、収入二十四億円に対し、管理費と金利の費用が十三億円、償還準備金の繰入額が十一億円。掛川バイパスにつきましては、収入八億円に対して、管理費と金利等の費用が五億円、償還準備金繰入額が三億円であります。磐田バイパスにつきましては、収入十二億円に対して、管理費と金利等の費用が八億円、償還準備金繰入額が四億円であります。浜名バイパスは、収入十七億円に対しまして、管理費と金利等の費用が十億ということで、償還準備金繰入額が七億円であります。
津川委員 償還率という見方をすると、どれもマイナスです。償還期限がそれぞれの路線で決まっていますが、例えば平成二十年とか三十年ですね、あと十年以内ぐらいに、大体の路線が無料開放時を迎えるわけですが、現状のままでいくと、その四路線で、これは計算は幾つかありますが、大体三百億円ぐらい損失補てん引当金の取り崩しが必要なんですよ。
 これからどんどん交通量がふえるということを前提によく話をされるんですが、この路線に関しては、例えば両側はもう既に無料道路ですから、無料道路に両側をつながれたここだけが有料のところで、つまり、ほかがつながればさらに交通量がふえるということは想定できない。その路線で、このままの計画どおりでいって、大体三百億円弱、十数年後ぐらいにはどこかからお金を持ってこなきゃいけない。引当金を使うか、あるいは、民営化推進委員会がどう議論するかわかりませんが、無料開放するというのであれば、国なり地方が、これは直轄国道でありますから、半分ずつですか、払う、あるいは高速道路と一緒にするなら、高速道路の売り上げからこれは入れなきゃいけないわけですが、どこかから入れなきゃいけない。
 それで、どこかから十年後なり十数年後に入れるぐらいなら、これは大臣にお伺いしますが、この間もお伺いしましたが、これはまさに政治的な判断として、十年後、十数年後にうまくいかなかったら少しどこかからお金を入れますという計画ではなくて、どうせ入れるなら、まさに今この経済の厳しい状況のときに入れて無料開放を前倒しするべきではないか。これは民営化推進委員会では当然判断のできないことだと思います。これはまさに政治がするべき判断だと思います。
 いずれにしろ、これは入れなきゃいけないわけですから、これを入れて、国内の物流コストの低減ですとか、安全な交通の確保ですとか、これは新しい道路をつくるという話ではなくて、今あるものの無料開放を早めるというだけの話です。しかも、本来要らないお金をここでつぎ込もうというのではなくて、このままでいっても三百億円ぐらいかかってしまうかもしれないものを今やってしまおうという話でありますから、これは前倒しをぜひ検討するべきではないかと思いますが、大臣の御意見をいただきたいと思います。
扇国務大臣 時間がないので、先ほどのETCに関するハイカのことも言いたかったんですけれども、我慢します。
 それから、今の、地方の道路、例えばこの東海の四バイパス、ただにしたらどうだ。だれでもただにしたいんです。私は、高速道路は本来はただであるべきだ、外国のようなハイウエーであるべきだと思っています。ただし、これをただにするためには、償還するのはどうするかという、これがなければ、何でもただにすればいいということにはならないんですね。
 しかも、なおかつ、これをただにするためには、あなた、三百億弱と今おっしゃいましたけれども、二百八十四億です。そして、準備金を百十五億入れるとしても、少なくとも現段階では、地方自治体が三分の一負担です。そうしますと、今、静岡県が、少なくとも百五十億円要るんです。静岡県、百五十億円を負担しますか。私は、静岡県で百五十億円負担するということを決議していただいてから無料開放ということを言っていただきたい。
 でなければ、それを全部、百五十億円も国がしろというのであれば、東名第二はできなくなるということにも影響しますので、私は、地方自治体でそういうところをきちんと、ここだけはただにしてくれとおっしゃって、その地方自治団体が、百五十億負担しますよ、自分たちが持ってもいいからただにしてほしいというのだったら、私は考える余地があると思いますけれども、何でもただにしてくれと言われても、できない部分があるということだけは御理解いただきたいと思います。
津川委員 別に、何でもただにしろと言っているわけじゃありませんし、東海四バイパスだけただにしろと言っているのでもなくて、一般有料道路に関してはそういう事情がたくさんありますから、ぜひそこを検討していただきたいということであります。
 済みません、時間が超過しました。終わります。ありがとうございました。
久保委員長 一川保夫君。
一川委員 自由党の一川保夫でございます。
 では、引き続き、ちょっとこういう時間帯で恐縮ですけれども、質問させていただきます。
 先ほどの大臣の発言の内容も参考にしながら、最近政府が発表されている重要施策の基本的な考え方なり、また、いろいろな審議会等を通じてのいろいろな報告等がなされておりますけれども、そういうものを踏まえて、国土交通大臣に今の時点でちょっと確認しておきたいようなことを幾つか質問したい、そのように思っております。
 まず第一番に、公共事業に関連した話題でございますけれども、十月三十日に政府が発表しました総合デフレ対策というものがございます。これは、いろいろな方々がいろいろな批判もしておりますし、中には評価している方も当然いらっしゃるわけでしょうけれども、このデフレ対策というのは日本の経済を健全な姿に、活力のある姿に持っていこうとする一つの大きな期待があるわけでございますけれども、この対策の中で、国土交通省に関するような施策というものはどういうふうに絡んできておるのかというところがちょっと見えてこないんじゃないかなという感じを私は素直に受けました。
 今、いろいろな面で、景気をより刺激するような施策があっていいんじゃないかということとか、国土交通省の所管に入っておりますけれども、建設業界という大きな基幹産業があるわけですけれども、こういう基幹産業に対してどういうようなてこ入れをしていくのかというようなことも含めて、今回のデフレ対策の中では、いろいろな産業なり企業の再生の問題とか、あるいはまたいろいろなセーフティーネットの対策なり規制緩和なり、そういう雇用対策も含めたもろもろのものが一通り入ってはおりますけれども、より前向きな、力強い、国土交通省にふさわしいような施策というのはこのデフレ対策の中にはどうも余り入っていないような感じがするわけですけれども、扇大臣としては、今回のこの対策についての基本的なお考えをお聞かせ願いたいな、そのように思います。
扇国務大臣 一川議員に先ほども聞いていただいたと思いますけれども、不良債権処理とこのセーフティーネットが両輪であると私先ほども申しました。私は、今回もあらゆる面で不良債権処理については、セーフティーネットがなければ一番影響を受けるのが国土交通関係のゼネコンであり建設業界であるということは、先ほども申しましたとおりでございます。そのために、我々としては、何としてもあらゆる面で土地を流動化さすというのは大きな経済の活性化の要因の一つでございます。
 それから、雇用の問題あるいは倒産防止、そして住宅政策、そういう大きな柱が何本かございますけれども、一つ一つ言っていると時間がなくなるので一川議員に失礼ですけれども、大ざっぱに言わせていただきますと、私たちは建設業界の再生とそして中小、中堅企業の少なくともセーフティーネット、これは必要であるということは、一つはこれだけの不況になって住宅金融公庫のローンの返済の困窮者、もうたくさん出ています。返済できないという方も一般の皆さん方の中には大勢いらっしゃいます。そういうものも含めて私たちは取り除いていきたいということで、今度総理を筆頭にいたしまして、産業再生・雇用対策戦略本部というのが設置されました。
 そこで、今度決定されたその中で、我々は不良債権処理とともに、セーフティーネットの一つとして、需要喚起のために両輪となって、実体経済あるいはマインドということで、これを発信していこうということで、まず不動産市場の活性化、これを図っていきたいということで、不動産を証券化して、そしてこれをより多くの皆さん方に利用していただこうということで、民間投資を誘発するという都市再生の進捗状況などを踏まえて、これを位置づけていきたいということで、J―REITというものも、私たちは、これは細かく言うと時間がありませんからまた御質問いただければいいんですけれども、一般の皆さん方も一口十万か二十万から、主婦でも参加できる証券化というものをしていこうというJ―REITというものも新たに考えております。
 それから、土地の流動化を図るというためには、土地税制というものを何としても緩和していかなければいけない。しかも、今、一川議員もおっしゃいましたけれども、住宅政策というものと土地流動化というものを一体になって考えるということで、土地というのは都市再生プロジェクトの中で推進をし、そして特区というものをつくって、規制を外して土地の再生を図っていこうということで、あらゆる面で土地の流動化というものをしていこうということで、税制を直すということで、この間も政府与党連絡会議で、政府税調、自民党の税調等々に、生前贈与の枠を、今の新築のみ五百五十万という枠を、今の第二ベビーブーマーと言われた人たちが三十歳から三十五歳、四十代近くなっていますので、今までは新築のみが五百五十万で認められておりました税制を、今回は中古も、そして増築もリフォームも含めて全部、少なくとも二千万か三千万にこれを生前贈与で引き上げていただく、千四百兆と言われる個人資産の中の半分以上は六十歳以上の老人が持っているといいますので、子供たちと一緒に住むことによって、一部屋ふやすなりあるいは子供の勉強部屋をつくりたいと思っている今の第二ベビーブーマーの皆さん方にこれを適用するために税制を変えてほしいと、政府税調、自民党税調にもこの税制改革だけはぜひ認めてほしいということで私は申し上げました。
 この税制に関しては、十五年度の通常国会で税制は論議するよと総理がおっしゃいましたので、もしもそのときに税制を十五年度通常国会で審議するにしても、これが通ったときには一月にさかのぼって適用するよというぐらいな発信をしていただくと大きなセーフティーネットの要因になるし活性化になるのではないかということで、住宅の税制についても、少なくとも私は、これを利用していただきたいし通していただきたいということも切にお願いもし、まだ見えていない税制に関しても、私はどうしてもこれを入れていただきたいということを言っております。
 十万戸、あるいは増改築するということに関しては、少なくとも二十六万人の雇用がふえるということも計算されております。そういう意味では、贈与を、私が今申しましたように枠を五百五十万から三千万と、これは私は五年間の時限でもいいと思うんです、そうしますと二兆円の経済効果があるという計算も既にできておりますので、そういうこともセーフティーネットの中でるる考えながら、なおかつ国土交通省としてでき得ることはやっていこうということで考えておりますので、参考にしていただければと思います。
    〔委員長退席、赤羽委員長代理着席〕
一川委員 その問題に関連するわけですけれども、大臣もこのあいさつの中で、建設産業の再編を進めていきたいという趣旨の発言もされておりますけれども、先ほどちょっと触れましたように、この建設業界、建設業界というのは一般のゼネコンさんをイメージするわけですけれども、それ以外にもこれに関連した、測量業界だとかコンサルタント業界だとか、建設業に関連する業種というのがいろいろとあると思いますけれども、今、御案内のとおり大変経営環境が厳しい。それはそれで一つの時代の流れですからやむを得ないという面はあるわけですけれども、そうかといって、じゃ、この産業界に就業している労働者というのは六百万人余り、また企業の数も五十数万社あるというふうな統計もございますように、大変な基幹産業だというふうに私は思います。
 こういった業界を成り行きに任せておけばいいというものでは私はないと思いますし、やはりしっかりとしたあるべき姿、新しい時代に向けての業界に体質改善を図っていくということがある面では非常に大事なわけでして、そういうことも含めた建設業界の再編成だというふうに私は理解するわけですけれども、大臣としては、この建設業界という、こういう世界で今頑張っておられる皆さん方、いろいろな技術力なり経営センスのある、そういう企業はしっかりと残していくということも大事なことだと思いますけれども、そういうことに対する大臣の見解をお伺いしたい、そのように思います。
扇国務大臣 一川議員が御指摘のように、私は、不良債権処理を行ったときに一番影響が出てくるのが国土交通関係の業界であるということを申し上げております。そういう意味で、建設業界、五十八万業者と言われますけれども、これも多種多様でございまして、何万通りあると言ってもいいと思います。
 なぜおかしくなったかというと、例えば例を挙げますと、一つの会社、Aという会社が、本来はマンション専門の会社であった。ところが、マンション専門会社でありながら建築にも手を伸ばした。そうして、今考えると、この新しく手を出した建築部門に関してすごく負債を負っている。本来は、マンション業だけで着実にいっていればこの不良債権処理の仲間に入らなかったんだけれども、横に手を出した建設業で不良債権処理の対象になっているというような会社もなきにしもあらず。
 その場合には、本来のマンション業だけ考えれば、これは不良債権でなくて健全な会社であるということであれば、その手を出した建設部門を切りなさい、そして、この切った部分の建設業部門は、他の立派な建設業、本来の建設業だけやっている会社に持っていってくださいと、そういう業界の指導を、それぞれの専門専門の、他にない専門を持っているところに返るべきであるということで、技術の保持そして専門的な業者の保全ということから、私たちはなるべくそういう指導をしていって、本来の姿に戻っていただいて健全にしていただきたいということも業界再編の一つの手段でございますので、そういう指導もしながら、これは民民の話ですから、命令もできませんし、何もできませんけれども、そういう指導は国土交通省としてはしているというのを一例に挙げさせていただきます。
    〔赤羽委員長代理退席、委員長着席〕
一川委員 一方で、この建設業界は、御案内のとおり、政治とお金の問題で常に話題に出てくる業界でもありますし、そういう面ではしっかりと反省すべき面もたくさんあるわけでございますけれども、先ほど触れましたように、こういう分野で働いている方々が非常に多いものですから、そういう面では、健全な姿に立ち直らせていく、そういういろいろな指導といいますか、いろいろな情報提供なりそういうことが非常に大事なことではないかなというふうに思いますので、ぜひ引き続きよろしくお願いをしたいと思います。
 そこで、次にまた、今国会は何のために開いたかという一つの話題の中に、補正予算の話題も常につきまとっているわけですけれども、扇大臣としては、この臨時国会で補正予算を本来組むべきであったかないかということを聞いても仕方ないわけですけれども、しかし、現実問題、我々がいろいろな地方でいろいろな話を聞く限りは、要するに、景気刺激型の補正予算、公共事業を中心とした従来型の補正という中身でなくて、やはり新しいいろいろなニーズに応じた補正予算というのがあってよかったのではないかという意見が非常に多いわけでございます。
 一方では、今国土交通省が所管している社会資本の整備も、やはり新しい時代に向けてのいろいろな社会資本の整備というものを計画的に促進するということも、また一方では非常に大事な課題でもございますので、その結果として景気刺激策として有効に働くものであれば、私は補正予算というものがあっていいというふうに思いますけれども、扇大臣としては、この補正予算の編成ということについての基本的なお考えはどのように持っていらっしゃいますか。
扇国務大臣 今、公共工事がむだだとか、公共工事にかかわるためにたとえ補正予算を組んでも使うべきでないとか、いろいろなことが言われますけれども、今の経済状況を考えますときに、総理がこの間の党首討論でも、またきょうもありますけれども、経済状況を見ながら大胆かつ柔軟に対応すると絶えずおっしゃっています。大胆かつ柔軟に対応するということは、頭の中にあるということ。なおかつ、ことしの税収入がどの程度欠陥が出るかということも勘案して、十一月でございますから、本年度の税収見込みというものがわかりますので、そのときに、税収見込みが落ち込んだときには、再度考えなければならないということも明言されておりますので、きょうも党首討論でどのような御論議を野党の党首がおっしゃるかわかりませんけれども、私は、そういう意味では、小泉総理は必ずしも硬直ではない、柔軟かつ大胆に対応するということこそ政治の力だと思っています。
 政治が今の時期をどう判断するかということが、日本が希望の持てる国であるというか、この国難ともいうべき経済難を活性化させるためには、私はあってしかるべきだということも含めて対応していくべきだと。
 ただ、この国会に出すことは間に合わなかったけれども、今年度末の来年度予算の編成までには、こういう方針でいこうということで、ことしの一月の通常国会冒頭に、十三年度の補正を通していただきました。これも野党の皆さんの御協力ですけれども、そういうことも実例としてあるわけですから、私は考え得る大きな要因の一つだと思っております。
一川委員 柔軟かつ大胆というその考え方は間違ってはいないと思いますけれども、要はどういう中身でどういうタイミングで決断されるかということに尽きるわけでして、より効果的な判断というのが求められるわけでございますので、国土交通大臣としてのアドバイスを、総理大臣に間違いのないアドバイスをぜひよろしくお願いしておきたいと思います。
 そこで、先ほど佐藤委員もちょっと触れられましたけれども、私も、最近の公共事業のいろいろな点検、見直しの作業というのは大変大事な意味を持っているというふうに思っております。
 国土交通省も、扇大臣になられてから、そのあたりを割と大胆に見直しをかけているという印象は持っておりますけれども、片や、長野県の脱ダム宣言以来、ああいうふうに、地方のいろいろな自主的な動きなり、そういう地方の自立的な動きというのが一方であるわけでして、そういうことに関連してくるわけですけれども、先ほどの話題のように、大規模な公共事業を事業途中で中止した場合の扱いの法制度なりルールといったものが十分定まってはいないんではないかなというところを気にするわけです。
 中止した後のいろいろなアフターケアの問題を先ほど佐藤さんもおっしゃいまして、全く同感でございますけれども、基本的に、大規模な事業を中止する場合の決断ができないという中に、ルールが明確になっていないということも一つの要因ではないかと思います。
 そういう場合に、先ほどの話題のように、例えば、大きな事業を中止した場合の国庫負担金なり補助金を返還するルールといいますか、そういうものをどういうふうにするかということとか、あるいは、業者と契約している工事を契約解除する。契約解除をすれば損害賠償という問題に当然なってくるわけでして、これについての何か的確なガイドライン的なものがないんではないかなというふうに思うわけです。
 今、長野県の例の浅川ダム等で、マスコミ等でいろいろと報道されていますけれども、私は、これは当事者間の話し合いでいろいろなものを詰めていくしかないわけでございますけれども、国土交通省としましても、やはりこういう国庫負担金なり補助金の返還に対する基本的なルール、それからまた、業者との契約解除を行った場合の損害賠償に対するいろいろな基本的なルールといいますか、ガイドライン的なものをしっかりと早急に詰めて、いろいろと指導していく、そういう段階にあるのではないかというふうに考えるわけですけれども、大臣はどのようにお考えでしょうか。
扇国務大臣 大事なところを一川議員からお尋ねでございますけれども、これは請負業者との契約の話で、私どもが口を出せない、出すべきではないということもありますけれども、ここに私は一つ持っておりますのは、損害賠償等々について、公共工事をしますとき、当事者間の契約上の問題というものがございまして、公共工事については、契約関係の明確化、適正化の観点から、ひな形として公共工事標準請負契約約款というものを作成してございます。ここに私は持っておりますけれども、後でもしあれでしたら関係者からいただいていただいて結構ですけれども、この約款を作成して、発注者にその実施の勧告をしております。これを結んでおりますと、この約款の中で第四十八条というところがございまして、これは、公共工事の請負契約を施工途中に発注者が一方的に解除した場合において、発注者は請負業者に及ぼした損害を賠償しなければならない、こうなっているんですね。
 ですから、やはり皆さん方が公共工事の契約をしていただくときには、こういう公共工事の標準請負契約約款というものがございますので、これを締結していただくことによって、今申しましたこの四十八条できちんと整理されるのではないかと私は思っておりますけれども、基本的には、先ほど申しましたように発注者と請負業者との間の話でございますから、私が口を挟むことではありませんけれども、こういうものをきちんとしていただいていくと、そういうことがうまくお互いに処理できるのではないかと思いますので、ぜひ、こういう締結をしていただきたいと思っております。
一川委員 発注者側と請負業者との契約というのは当然対等なわけですけれども、現実問題、甲乙の関係というのは、その順番どおり、何となく業者側は弱い立場にあるというような感じもいたしますけれども、私は、やはりそういう面で一つのガイドライン的なものがあってもよろしいんではないかなと。
 今、長野県の場合などでも、いろいろとお聞きする限りでは、請負業者側からの申し出を待っているというような言い方だと思うんですね。それに対して、発注者側はそれの中身を検討して決めたいという言い方だと思いますけれども、その一つのガイドラインというか、一つの目安みたいなものがはっきりしていない。もう施工済みのものについての損害賠償というのはするのが当たり前だと思うわけなんですけれども、全体契約の中のそういうものに対する一種の損害賠償みたいなものをどう見るかというところが非常に見解の分かれるところだろうというふうに思いますが、そういった面で一つの課題ではないかというふうに思いますので、ぜひ、よろしく御指導をお願いしたいと思います。
 それからまた、私も、これからこういう公共事業を途中で住民の意向等を踏まえて中止するというケースが出てくる可能性というのはあるわけでございますので、いろいろな補助金等の扱いについては、やはりできるだけ地方の自主性なり自律性というものを尊重する中で考慮していく必要があるんではないかな、そのように思っております。全く目的外に使ってしまったとか怠慢な行為があるとすれば、それは返還でございましょうけれども、まじめに対応している限りは、私は、やはりそういう自主性を尊重していくということが大変大切ではないかなというふうに思いますので、そのあたりの対応方についてもよろしく御配慮をお願いしておきたい、そのように思っております。
 それからもう一つ。前にも私、質問に出したことがあるんですけれども、最近、市町村の合併問題というのは、当然ながら、ちまたで大変な、場所によっては騒動ぐらいになっているわけですけれども、いろいろな総務省からの、期限が迫っているというようなこともあるらしくて、大変な話題でございます。
 そのときに、前に私が指摘したのは、余りにも地方、市町村、自治体の財政面が一つの判断基準で物事が議論されているケースが多過ぎる。今合併するとこれだけ財源が豊かになるとか、過去の借金がこれだけ少なくなるとかという話題で市町村合併を議論する方が多いわけですけれども、そういうことじゃなくて、やはりその地域の歴史、文化なり、いろいろな、自然的なものも踏まえた、本当に住みやすい地域を将来つくっていくためにはどうするかという観点での判断が余り議論されていないんではないかなということをちょっと心配するわけです。
 そこで、国土交通省の前身であった旧建設省、旧国土庁という役所は、かつてから、住みやすい地域をつくるために何をどうすればいいかということをいろいろと勉強してきた官庁であるというふうに私は思います。地域づくり、ふるさとづくりとか、地域の特性を生かした、そういう定住圏をつくるにはどうしたらいいかというようなことも含めて、いろいろな制度でいろいろな勉強をし、その成果があるはずだと思うんですね。
 そういうことを考えますと、今回のこの市町村合併問題のいろいろな話題が出ている折に、国土交通省といいますか、県の段階へいけば土木部とかそういうサイドから、合併に当たってはこういうことも考慮すべきだぞということを下敷きとして、合併問題を直接議論している総務部とか企画部とかというサイドに対して、やはりしっかりと意見を言うべきじゃないか。そういうものを参考にした上で、各市町村の首長も合併問題について判断を下していくということをしないと、何か将来にとんでもない間違いを起こすんじゃないかという危険性もあるんじゃないかなというふうに私は思うわけですけれども、大臣はそのあたり、どのようにお考えでしょうか。
扇国務大臣 私は、一川議員と一緒にこの地方分権の勉強をした経緯もございます。三千三百の地方自治団体を一千にしようではないかという案も一緒に勉強した記憶がございますし、今でもその考え方に私は変わっておりません。少なくとも、地方分権するときに、それぞれの地方の市町村の行財政の基盤を強化しなければならないというのは当然のことで、二つが一緒になって一つになったから減るというんじゃなくて、一足す二は三か四になるという効果がなければ市町村合併の本来の姿がないと私は思っております。
 今おっしゃったように、国土交通省関係だけとってみても、流域下水道事業とかあらゆる面で国土交通省関係の、合併するということの継続事業がございます。なおかつ、地方のバスの補助金も、その地方だけ補助金が出て、こっちと一緒になったらこれは補助金がなくなるという、これも問題ですね。
 そういう意味で、国土交通省関係、これを一つずつ例を挙げるとたくさんございますので、時間が申しわけないので今挙げませんけれども、そういう特例というものが合併することによって不利にならないようにということは、私たちは総務省ともよく意見を交わしていかなければなりませんし、少なくとも、地方公共団体との関係の明確化、国と地方の関係の明確化というものも、きちんと整理していかなければいけないと私は思っております。今申しましたそれによっての不利がないようにということで、地方公共団体と地方整備局が、私たちは持っていますので、定期的な会議を行って、合併したときにはこの事業はどうなるということを、地方整備局等々と絶えず連絡をとっていただきたいということも私は今指導しておりますし、少なくとも、我々は今後ローカルルールの導入、国が決めたルールをそこに適用するのではなくて、合併した地域でのローカルルールをきちんとつくっていただきたい。これも新しい考え方で、ローカルルールというものの重視あるいは変更等々をしていただきたい。
 あらゆる面でこの地方分権ということと合併問題ということの、利点がなければ合併するわけないんですから、その利点をいかに国土交通省関係で生かしていくかということを私たちは詰めておりますので、その効果が市町村内にとどまることではなくて、私は少なくとも、国庫補助負担事業等々、原則として今後は廃止すべきだなんという話もございますので、その点は、合併することによるプラス面をより助長していくような指導もしていきたいと思っております。
一川委員 もうこういう時間ですから、私の質問はこれでやめさせていただきますけれども、国土交通省の前の、さっき言った旧建設省時代などでは、活力のある地域づくりを目指して、もういろいろなことをやってきておるんです。
 その中では、今大臣がおっしゃったように、ハード的なそういう施設のつながりというのは、それはもちろん大事なことですけれども、面的な広がり、あるいは歴史的なもの、文化的なもの、そういうものを全体を空間をとらまえて、この地域は将来どうあるべきだということも含めて、建設省時代から引き続き今日もやっていると思いますけれども、そういうことが勉強されてきた官庁でございますので、その成果を市町村合併の段階にぜひ生かしていただきたい。
 それだけでもちろん判断するわけじゃありませんけれども、当然財政基盤というものは大事なものでございますけれども、財政基盤だけで判断するんじゃなくて、やはりその地域の広がりという中で、できるだけ国土保全ということも念頭に入れながら、景観だとか自然環境ということも含めたそういう幅広い観点での合併問題、間違いのないような方向に行くように、国土交通省としてもぜひ指導方をよろしくお願いしておきたいということを申し上げまして、私の質問を、若干持ち時間は早目でございますけれども、やめさせていただきます。
 ありがとうございました。
久保委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時三十分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時五分開議
久保委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。今田保典君。
今田委員 民主党の今田保典でございます。
 環境対策の高まりの中で、ディーゼル車問題が大きく現在クローズアップされております。昨年の通常国会で改正されました自動車NOx・PM法、このほど施行されました。また、東京都のディーゼル車規制条例とされる環境確保条例も来年の十月から実施される予定でございます。こうした状況を踏まえまして、ディーゼル車をめぐる問題、とりわけ大きな反響を呼んでおるわけでありますが、東京都のディーゼル車規制条例への対応を中心にして、これから質問をさせていただきます。
 まず最初に、東京都のディーゼル車規制条例に対する基本的な認識をお伺いしたいと思います。
 東京都の条例に対しては、必要性は理解しても、余りにも強引過ぎはしないのかという業者の意見がいまだに多く寄せられております。自動車NOx・PM法との整合性を含めて、東京都の条例に対する大臣の基本的な認識をお聞かせいただければ大変ありがたい、このように思います。
扇国務大臣 今おっしゃいましたように、きょうも朝から環境の問題が大変議題になりました。
 今、今田議員がおっしゃいますように、東京都も新たにPM規制を実施するということで、来年の十月からということをおっしゃっていますけれども、私は、現段階において、東京都は東京都なりの判断はあろうと思いまして、大変車が集中し、なおかつ東京は一四%の車がただ通過するだけ、ごみだけ置いていく、公害だけ置いていくと言っても過言ではないような東京都の状況であれば、周りの道路整備がおくれているということも、東京にそれだけ過大な空気の汚染というものを残しているということで、東京都は東京都なりの御判断をされたということも私は高く評価しておりますし、また、我々国も、東京都と一緒に、東京都知事と一緒に話し合って、連携をともにしながら、新たな、日本の二十一世紀型の環境のあり方はどうあるべきかということで対応をしていきたいと思います。
 今、昨年法案が通ってというお話をしてくださいましたのでもう既に御存じだと思いますけれども、日本の大気汚染のみならず地球の温暖化等々地球規模にわたる大きな課題でございますので、この点に関しては、私たちはもっと真剣にしなきゃいけないということで、私も、先日、幕張の商用車のモーターショーを見てまいりました。本当にDPFの各企業の取り組みたるや大変な努力でございまして、私は、そういう意味でも、日本がDPFの装置の開発というのは世界一じゃないかと思うくらい皆さんが真剣に取り組んでおりましたので、今、今田議員がおっしゃいましたように、東京都のみならず日本全国、あるいは大きく言えば地球規模での対策の重要性というものを十分認識して対応していきたいと思っております。
今田委員 そこで確認したいんですが、国と地方自治体のディーゼル車規制があるわけでありますけれども、何といっても東京都の規制条例が大きなインパクトを与えているわけであります。
 そこでちょっとお聞きしたいんですが、東京都の条例の対象ですが、まずは、都内の登録ディーゼル車の車両、トラック、バス、それぞれ幾らあるのか、また、東京都以外のところから東京都に流入しておるわけでありますが、これについてのトラック、バス等々のディーゼル車の、毎日どのぐらい東京都に入っているのか、この点についてお聞きいたしたいのですが。
丸山政府参考人 ただいま、東京都内のトラック、バスの登録台数、それから流入車についてお尋ねがございました。
 まず、平成十四年三月末の数字でございますが、都内で登録されておりますディーゼルトラック、バスの台数は、トラックが約三十九万台、バスが一万三千台、合わせて四十万三千台でございます。
 流入してくるものは非常に見るのが難しいのでございますが、環境省が平成十年に、一日、ある一点をとりましてナンバーを確認したところ、トラックのうち三六・八%は都外から流入していたということでございます。バスについては数字がございません。
今田委員 今ほどお話がありましたように、膨大な数なんですよね。
 そこで、疑問に感じている点をお尋ねしたいのですが、東京都の条例の対象は、先ほど言ったように大変膨大な車両の数になるわけです。それらをどのようにして規制の実効性を確保していくのかという問題が残るわけであります。
 東京都は、円滑で効果的な実施のため全庁を挙げて施策を展開する、こういうふうに言っておりますけれども、それは東京都の独自の規制でありますので、すべて東京都に責任を任せるのか、あるいは、そうではなくて、国としてもどのように関与していくのかという問題があるわけであります。監視と取り締まり役ということになるわけですけれども、そういったものに対しての関与はどのように行うのかという問題があるわけですが、この点についてお知らせをいただきたいと思います。
丸山政府参考人 ただいま、都の条例の実効性をどうやって確保していくのか、それに国がどのように関与するのかというお尋ねがございました。
 都の条例の規制の実効性の確保につきましては、基本的には東京都において確保されるものであるというふうに認識をしております。具体的には、東京都におきましては、自動車Gメンと呼ばれる自動車公害監察員が、自動車のターミナルでございますとか路上において監視、取り締まりを行うというふうに聞いております。
今田委員 そうすると、今のお話を聞きますと、あくまでも東京都が中心にやっていくのだから、国では関与しない、こういう理解でいいんですか。
丸山政府参考人 東京都の条例についてはそうでございますけれども、NOx・PM法におきまして、車種規制というものを国で行っておりますので、そこの部分につきましては、私どもは車検という制度を持っておりますので、その車検の中で車検証をチェックする、つまり、一定の基準に合わない使用過程車については車検証を交付しないという形でNOx・PM法の実効の担保を図っていきたいというふうに考えています。
今田委員 そこで、このディーゼル車規制は、国や地方自治体が今のディーゼル車はよしということで来たわけでございますよね。その基準を半ば強引に変更する、こういうことになるわけです。環境対策という大義名分があるわけでありますので、当然だと思いますけれども、そういう基準変更によってそれぞれの立場の皆さんに生じる費用については、まず第一義的には国や地方自治体が負担するべきではないのかという声が、現在のところ、それぞれのところから上がってきておるわけであります。
 そこで、それぞれの自治体、あるいは国もそうなんですが、助成措置を今講じておりますけれども、この基準変更を、先ほど言ったように、いわば強引に行うといいますか、環境改善のために行うんだよということであれば、国や地方自治体がもう少し手厚い助成を行ってしかるべきではないのかな、こういうふうに感じるわけであります。
 御案内のように、トラック業、バス業、今非常に規制緩和で体力的にも弱っている中で、こういった費用を出さざるを得ないということになれば企業そのものがおかしくなるということで、大変心配しているわけですよね。この点について、どうなんでしょうかね。お尋ねします。
扇国務大臣 きのうまではディーゼル車でばんばん走っていて、来年の十月からとは言われながら、もうだめよと、こう言われたときに、果たして、新しい車種にかえるときは別ですけれども、今まで走っていたものをどうするかというのは、私は、業者あるいはディーゼル車を使用していた人たちにとっては大変な重荷になるというのはよくわかっておりますし、東京都のなさることに関して、私がどうこう言えることではありませんけれども、先ほど申しましたように、環境という問題からすれば、私が見てまいりましたディーゼル車、このDPFの装置というのを先日の幕張のモーターショーで見まして、すばらしい装置がたくさん並んでおりましたけれども、今のディーゼル車にDPFを後づけする場合は幾らかかるんですかという金額も見てまいりました。それで、後づけの装置をつけるというものに関しては、十トントラックの例でございますけれども、その機械によって各社いろいろ違いますけれども、着装費用も含めて、後づけであれば十トントラックで大体八十万円程度と。また、新たに最新の規制の適合車の新車を買うということになった場合には、十トンのトラックで大体千二百万円前後というお話が出ておりました。
 私は、DPFですばらしいものと先ほど申しましたけれども、あらゆる種類を、各社がやっていますので、見てまいりました。八十万円前後と言ったけれども、これはもう少したったらもっと安くならないんですかと言ったら、それはもう御存じのとおり、たくさん売れれば廉価になるというのは当然のことだ、そういうふうに業者の方はおっしゃっていましたけれども、少なくとも国土交通省としてやはり対応ができないかということで、このDPFの装置に関しましては地方自治体と連携をいたしまして、そして、この装置を着装するというときには金額の二分の一を補助しようということで話し合い、また、最新の排出ガスの規制の適合車に買いかえるという業者に対しましては、自動車の取得税というものを二・三%軽減するということも考えておりますので、この環境に適合する車にそれぞれが努力して、お互いに協力し、国としてできることはしていきたい、そして、一日も早くこの公害というものの排除あるいは環境の保全というものを期していきたいと思っております。
今田委員 その問題については、ちょっと後でまた触れます。
 次に、新しいディーゼルエンジンの開発についてお尋ねをしたいと思います。
 ディーゼルエンジンはエネルギー効率では最もいいわけでありまして、また経済性にもすぐれたエンジンであります。高馬力を必要とするトラックやバスはディーゼルエンジンの独壇場であったわけでございます。今のところ、それにかわる実用的なエンジンというのはありません。また、二酸化炭素が最も少ない優秀なエンジンである、こういうことでありますが、問題点となるのは炭素酸化物の粒子状物質の問題でありまして、さらに、ディーゼルエンジンはCO2では優等生、しかしPMでは落第生、こういうことになっておるわけであります。その落第生と言われているPMを何とか改善すれば、ディーゼルエンジンは自動車のエンジンとしては最高のものではないかというふうにも言われておるわけでございます。
 そこで、新しいディーゼルエンジンの開発について、これまでいろいろ問題にはなってきたんですが、その開発の状況、その後どうなっているのか。どうも、私から言わせれば、もっと国として本腰を入れて開発を行うべきではないのかなというふうに感じておるんですが、この開発の状況について、ちょっとお知らせをいただきたいと思います。
丸山政府参考人 ただいま新しいディーゼルエンジンの開発につきまして御質問がございました。
 先生御指摘のとおり、ディーゼルエンジンは、粒子状物質でございますとかNOxという点につきましては大気汚染問題の主たる原因になっているという意味で、落第生と言ってもいいということでございます。
 ただ、一方、これも御指摘ございましたが、燃費が非常にいい、それから出力も高い、それから二酸化炭素の排出量が少ない、こういう意味では非常に優等生なわけでございまして、いずれにいたしましても、我が国経済を支えるためには、ディーゼルエンジンというものが不可欠であるということでございまして、今申し上げましたような問題がないようなディーゼル車をいかに開発していくかというものは大変重要な問題であるというふうに認識しております。
 したがいまして、私ども、大型ディーゼルエンジンに代替可能な次世代の、公害の少ない、大出力のエンジン、私どもではスーパークリーンディーゼルというふうに申しておりますけれども、このようなスーパークリーンディーゼル車を初めとします次世代の低公害車の開発を促進するために、次世代低公害車開発促進プロジェクトを立ち上げたところでございます。
 具体的に申し上げますと、平成十四年度から十六年度までの三カ年におきまして、交通安全環境研究所という私どもの独立行政法人がございますが、そこを中核的な研究機関といたしまして、産学官協同いたしまして、次世代の低公害車の開発、試作を行う、さらに、安全環境基準を策定しまして、次世代の低公害車の実用化、普及促進を図ることというふうにいたしております。
 ちなみに、毎年ほぼ十億かけて三十億の、三年間で三十億になるわけでございますが、このうち半分の五億は道路特定財源からいただいております。
今田委員 今ほど取り組んでいる内容についてお知らせをいただいたわけでありますが、いわゆるスーパークリーンディーゼルといいますか、そういったものを開発されつつある。これは実際実用化されるのは、見通しとしてはいつごろなのか。もしその見通しがあればちょっとお知らせいただきたいんですが。
丸山政府参考人 この三カ年間で、まだ終わっておりませんので、間違いなくできるというところまでは申し上げられないところでございますが、排出ガス、今の、新長期規制という規制が十五年から行われます、それの十分の一、PMは新長期規制の二分の一以下のスーパークリーンディーゼルを開発すべく現在努力いたしております。
 それから、ちょっと先ほど数字の間違いがございましたので訂正させていただきますと、毎年十五億で、道路からそのうち五億をいただいているということでございます。
今田委員 そこで、先ほど大臣もちょっとお触れになっておったようでありますが、DPFの問題なんですけれども、十トン車で八十万ほどする、こういうことでありまして、しかし、実際は十トン車というのは余り数多くないんですよね。もっと大きい車がいっぱいあるんですよ。そうすると百二十万ぐらいかかるらしいんですね。そうなりますと、先ほど言ったように、たとえ二分の一助成をもらうとしても、六十万ほど企業側が自分で負担しなきゃならぬ、こういう問題が出てくるわけでありまして、さらに、まだこのDPFに対しての技術的な課題というようなものが多いというふうにも聞いておりますし、また装置としての信頼性についてもまだ十分に信頼はされていないというようなお話もお聞きしておるわけであります。
 そこで、経費の問題なんですが、先ほど言ったように、トラック、バスは今、規制緩和で非常に大変な時期にあるわけでありまして、彼らが、彼らといいますか、企業側から言わせれば、国の方針でそういうふうになっているわけだから、もう少し助成金をふやしてもいいのではないか、むしろ負担をゼロに近いものにしていただくべきではないのかというような声も大きくあるわけでありまして、これをもう一度見直すつもりがあるのかどうか、ちょっとお聞きしたいんですが。
丸山政府参考人 DPFなどの、いわゆる粒子状の物質を低減させる装置の助成につきましてお尋ねがございました。
 現在、NOx・PM法の対象地域内のトラック、バスにつきまして、先ほど大臣からもお話がございましたが、地方自治体と連携いたしまして、二分の一補助をいたしております。予算額で申しますと、この制度が立ち上がりました平成十三年度は一億でございました。これが今年度は、さらにこれに加えまして天然ガス自動車などのバス、トラックにつきましても補助をするということで、二十七倍の二十七億円の予算を確保したところでございます。
 来年度につきましては、全体としまして三十八億円の予算で、さらに事業者負担が軽減されるよう、たくさんのDPFなりが導入されるように努力していきたいというふうに思っております。
 二分の一ということで、さらにもっと、ほとんど負担がなくなるようにすべきではないかというお尋ねがございましたが、基本的には事業者の私的な財産がふえるものであるという整理で、二分の一が限界ということで私ども今考えております。
今田委員 今ほどありましたが、二分の一というのはいかにも大変なんですな、正直言って。一台や二台でないわけですので、数多く持っている企業というか運送会社は相当な負担ということになるわけでありますので、もう一度見直しの検討をむしろお願いしたい、こういうことで申し上げておきたいと思います。
 そこで、DPFをつければいいという車両については、そういったことでよろしゅうございますが、ただ、さらに古いディーゼル車があるわけですよね。そういったものはDPFをつけても対応できないというものがあるわけであります。当然そういった車については、新しい車に代替をさせることになります。
 その場合の、本来ならばその古い車でも十分走れるんですけれども、そういう対応ができないということなものですから、やむを得ず代替をしなきゃならぬということなわけでございまして、そのことに対しての助成もある程度考えてみる必要があるのではないかというような声もあるわけであります。しかし、最新の技術による超低PM車となりますと、かなり高価なものになるだろう。このような車両を購入した場合、これを奨励する意味からして、もう少し優遇措置を講じてもいいのではないかという話もあるわけでありますが、この点について御検討されておるのかどうか、お聞きしたいと思います。
丸山政府参考人 年式の古いディーゼル車でございますとか、それから新たにPMの非常に少ない車を購入する場合の助成についてのお尋ねがございました。
 御指摘のとおり、NOx・PM法が施行されまして、対象地域内の古いディーゼル車は、一定の使用期間が過ぎますと新しい車両への代替をしなければいけないということでございます。
 国土交通省といたしましては、車両代替等の費用をなるべく軽減するという観点から、最新の排出ガス規制車へ代替いたします場合には、自動車取得税を二・三%から一・二%、これは早く買えば買うほど軽減率をふやすということで優遇措置をいたしております。それから、中小企業金融公庫でございますとか政策投資銀行の低利融資制度を通じまして各種の支援措置を講じておるところでございます。
 それから、低PM車の導入につきましてでございますが、現在、支援の対象になっておりませんけれども、平成十五年度から、自動車取得税の軽減措置、これは二・二%を考えておりますが、十五年度に要求をいたしております。それから、先ほど申し上げました中小企業金融公庫等の低金利融資につきましても、超低PM車が対象となるよう要求をしておるところでございます。
今田委員 そこで、東京都の条例に対応する場合ですけれども、先ほど言ったように、東京都に入る車両は近隣だけではないわけですね。全国から来るわけでありますよ。そこで、近隣の県とか市ではある一定の助成金は設けられておりますけれども、そのほかに愛知県とか大阪とか兵庫県で助成は出しておりますけれども、それ以外のところについては、私の知る範囲内では助成はやっていない。そういう県あるいは市からそういう車が東京都に入るというのが数多くあるわけですよね。
 そういったことを考えますと、このままでは大きな混乱も生じるのではないかというような思いがするんですが、こういった方々への先ほど言ったDPFを中心とした助成について、国土交通省としてはどう考えているのかというものについてお尋ねをしたいと思います。
丸山政府参考人 先ほど御説明申し上げましたように、一点ではかったものでございますけれども、三六%強の車が東京都に流入してきておるということでございます。それは隣の県のものもございますし、またずっと遠くから来ておるものもありまして、そこの区別はちょっとなかなかしにくいところでございます。
 現在の私どもの助成は、NOx・PM法の対象地域内のトラック・バス事業者を対象にしておりまして、御指摘のとおり、DPF装置に対する助成のない地域から来るものについては助成がされておりません。
 私どもといたしましては、今までのところ、先ほど申し上げましたように、平成十三年度に助成制度を一億円で立ち上げたわけでございます。それを今年度予算では二十七億円、来年度予算では三十八億円ということで予算をどんどん倍増させておるわけでございまして、とりあえず、一番問題の多いNOx・PM法の対象地域内の事業者の車が早く代替されるように、予算措置を講じて、事業者の負担が軽減されるようにやっていきたいというふうに思っております。
今田委員 時間になりましたので、最後に、今ディーゼル車が使用しております燃料関係についてちょっとお尋ねしたいんです。
 現在、五〇〇ppmの軽油を使用しているわけであります。この高硫黄軽油のままでは、エンジンにしてもDPFにしても、開発には限界があると思うんです。そこで、早急に世界の標準の五〇ppmに早く転換すべきではないかというふうに思うんです。これについては以前からいろいろ政府としても取り組んでいるようでありますが、十六年度末までには何とか実現したい、こういうことで今日まで努力をされているようであります。
 しかし、そうはいっても、その開発された燃料が余りにも今の燃料よりも高過ぎるということでは何にもならないわけでありますので、その価格の上昇を最小限に抑えなければ何の意味もないというような感じもするわけでありますが、それらについて、もし、非常に高い水準でやらざるを得ない、こういう場合に優遇措置というものを考えておるのかどうか、これについてお尋ねをしたいと思います。
丸山政府参考人 五〇ppmの低硫黄軽油の開発状況とそれに対する優遇措置についてのお尋ねがございました。
 五〇ppmの低硫黄軽油につきましては、当初、平成十六年末までに販売が義務づけられるということでございました。ただ、石油連盟の方では、これを一年九カ月早めまして来年四月から全国の大部分のスタンドで供給できるようにするというふうにしていただいておるところでございまして、これは、東京都の条例が十月でございますが、それよりも早く低硫黄軽油が入ってきて、全国的に早急に普及するというふうに考えております。
 それから価格でございますけれども、現在の五〇〇ppmの軽油との価格差は一円程度でございまして、今申し上げましたように、来年の四月からほとんどのところで供給が始まるということで、新たに税制などの優遇措置を講じる必要はないのではないかというふうに考えております。
今田委員 最後の部分ですね。とにかく余り高くならないようにやってもらわぬとこれまた大変なことなんで、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
 そのことをお願いして、質問を終わります。ありがとうございました。
久保委員長 瀬古由起子さん。
瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。
 まず最初に、東京大気汚染裁判に関連して伺います。
 十月二十九日、東京地方裁判所は、一九九六年五月に提訴した東京大気汚染公害裁判第一次訴訟で、道路公害について国や東京都などの道路設置管理者に責任があるとして総額七千九百二十万円の賠償を命じました。これで、西淀川第二次から第四次の訴訟判決、川崎の二次から四次訴訟判決、尼崎判決、そして私が住んでおります名古屋の南部判決に続き、五たび道路設置管理者の責任が問われたことになります。
 そこで、国土交通大臣にお伺いしたいわけですけれども、この判決の最大の特徴は、公害健康被害補償法の未認定患者にも賠償を命じたことです。
 大臣は既に御存じのことと思いますけれども、公害健康被害補償法は、一九七二年の四日市公害訴訟判決などを受け、七四年に施行されたものです。ところが、大気汚染が改善されたとして、八七年に大気汚染と呼吸器疾患との関連が認められた第一種地域が全面指定解除され、八八年三月以降は新たな認定患者はいないとされてまいりました。
 今回の判決は、公害病の認定、非認定区別なく、居住地と病症の関係で因果関係を判断したことです。それだけに、国の新規認定打ち切りは時期尚早だったとも言えると思います。
 判決後、石原東京都知事が都の責任に言及しなかったことに原告らは怒りを新たにしておりますけれども、その知事でさえ、解決の手っ取り早い手だては、国が排ガス規制を強化し被害者救済を考えることと、判決当日の緊急記者会見で語っています。また、トヨタ自動車など各メーカーは、東京大気汚染公害裁判原告団と確認書を交わして、自動車から排ガスの健康被害に与えている影響を認めて、行政が新たな救済制度を制定する場合、社会的要請を踏まえて総合的に対応を判断するとしております。
 大臣は、道路設置管理者などによる新たな救済制度を確立するために尽力をするそのお気持ちはいかがでしょうか。もちろん、これは環境大臣などにも御相談していただくということは当然ですし、政府を挙げて今この裁判に関連して新たな救済制度を確立すべきだと私は思うんですけれども、大臣のお考えを伺いたいと思います。
扇国務大臣 今瀬古議員がおっしゃいました今回の判決、私は、道路行政という面からすれば大変重いものだと認識しております。それは、五十メートルという、これも大きな問題でございますし、また、今おっしゃいましたように、今後の道路行政そのものにそれを予見して道路行政をしなさいと言われますともっと厳しくなるということは、瀬古議員もおわかりだろうと思います。
 そういう意味で大変重要な判決でありますけれども、国土交通行政に及ぼす影響、また、今後の対応策にとっては大変難しい判決であるというふうに認識しておりまして、瀬古議員も今環境大臣に聞くべきだということで、公健法であれば当然環境大臣がお答えになることで、私が公健法に関してどうこう言うのはこれも越権行為だとは思いますけれども、あえてお尋ねでございますので、国土交通省としての対応策、今後の対応あるいは道交法に対してもどうするんだというような御質問であろうと思いますので、国土交通省としてはどういうことを考えているかということに関しますと、今回は、自動車の生産者に対するものは外れました、けれども、私は、少なくとも発生源である自動車単体の対策というものも考えなきゃいけないということで、この間も、今も先生にお答え申し上げましたように、モーターショーを見に行って、これは商業用車のみならず、低公害の車をどうするかという、DPF等々もこの間も勉強に行ってまいりましたけれども、車自体の、発生源である自動車単体の整備ということも私は今後大きな問題になってくると思います。今回、たまたま裁判では言われません、責任も問われませんでしたけれども、これは二十一世紀の問題として私は今後大きな問題になってくると思います。
 また、交通機関というものから考えますと、私たちは、公共交通機関というものに関して、今までとにかく、速く、そしてなるべく短時間で目的地へ行くということで鉄道とか海運というものが少し落ち込んでおりますけれども、国土交通省としては、改めて海運や鉄道輸送、公害が少ないそういうものへ転換可能なものはなるべくそっちへ行ってもらうということも私は今後の大きな要因になろうと思っております。
 また、今お話のありましたように、環状道路でありますとかバイパス、そういうもので渋滞を解消しネットワークを効率よくして、なるべく渋滞を緩和していくということも私は大きな問題だと思いますので、今までも取り組んでまいりましたけれども、私は、このボトルネック解消というものもこの要因の一つですので、渋滞を緩和しボトルネックをなくすというような諸施策に関して、国土交通省としては対応していかなければならないと思っております。
瀬古委員 道路行政のあり方については、私は、また改めてその点は国の責任も含めてお聞きしたいと思っています。
 とりあえず、きょうは、新たな患者さん、もうそういう認定患者はいないというところでそういう人が今回認められたという点では、未認定の患者への賠償を命じたという点では、今引き続きこういう被害者が発生している状況があるんですね。こういう人たちは本当に待っておれないという状況があるので、私は、ぜひ、道路管理者としても、被害者の救済という点でも、今自動車メーカーなども、もし行政がそういうことをやるならそれに対して考えたいというふうに言っているものですから、そういう点では一定の救済制度というのは政府を挙げてやらなきゃならないという面もあるので、それは全く国土交通省としても関係ないというわけではないので、今回の判決をきちっと踏まえて、内閣として御相談していただけないかということなんですが、いかがでしょうか。
扇国務大臣 御存じのとおり、今回の判決に関しては、今までの総体的な観点から、二〇%は少なくとも道路としての責任であろう、こういう判決の内容でございます。では、あとの八〇%は何なのかということは明快ではございませんし、この二〇%は少なくとも国土行政、交通行政から来ているということ、これも医学的には判明しておりません。
 そういう意味で、国としてという瀬古先生のお話でございますので、これは、国土交通省単独ではなくて、法務省、環境省、関連の省庁ともども国としての対応を今後お互いに検討していこうということで、救済に向けての姿勢は何ら変わるところありませんけれども、国としての対応となると三省でお互いに意見交換をして対応していきたいと思っております。
瀬古委員 ぜひ、救済制度を内閣としてもきちんと制度として確立できるように御努力いただきたいと思います。
 次に参ります。
 トンネルじん肺の問題なんですが、日本では、一九六〇年にじん肺法が制定されてから四十二年、いまだに毎年一万人以上がじん肺として診断されて、千人近い労働者が療養を要するとして診断されています。そして、千人以上の療養者が死亡しております。
 大臣にお聞きしたいんですけれども、じん肺になった被害者や家族の苦しみがどんなものであるか、事前に実はパンフレットを大臣にお渡しするようにお願いしたんですけれども、渡っておりますでしょうか。
 この中で、幾つかの御紹介したいものがございますけれども、石川請求団の遺族の方で、畑中一枝さんという方が、一番最後の……(扇国務大臣「何ページですか」と呼ぶ)十ページに書かれております。その途中の文書なんですが、
  主人がじん肺のために亡くなったのは平成八年六月です。治る見込みのない病気、徐々に進行して死を待つだけの病気、息をする事も眠る事さえ許されぬ苦しみは、じん肺に侵された者でなければ解りません。あんなに苦しんで一円もいらない酸素(空気)が身の廻りにいっぱいあるのに、それさえ胸一杯吸う事も出来ず、水から揚がった金魚のようにハァハァあえぎながら、短い一生を終えた主人は一体なんだったんだろう。
  其の分道路は良くなり、ゼネコンも成長し、一生懸命働いて不治の病で死んで行った主人は本当に可哀想です。私たち家族も一生此の主人の死を忘れる事は出来ません。
  主人は「大成建設」ばかりでした。ところが大成建設は「加害責任があるとは思わないし、謝罪するつもりもない」などと私たち原告の必死の願いをも聞き入れるだけの温かい気持ちが無いのでしょうか。
  怒り、くやしさ、情けなさが一度にこみあげ、こんな冷たい会社のために働いて死んだのか、と思うと主人の過去を泥靴で踏み付けられたような気分です。
  どうして「じん肺に対する配慮が足らず、皆さんに苦労をかけ申し訳ない」と言っていただけないのか!!
こういう文書が出て、家族の悲痛な声が、これは「全国トンネルじん肺補償請求団家族の会 じん肺のない21世紀に 妻たちの告発」という中でいっぱい出てきております。
 道路はよくなってゼネコンも成長したけれども、踏みつけにされてじん肺で死んでいった、苦しんで亡くなった被害者やその家族に、加害責任があるとは思わない、謝罪するつもりはないといって必死の願いも聞き入れようとしないゼネコンのこのような姿勢、大臣はどのようにお考えになるでしょうか。
扇国務大臣 今、瀬古議員が事例をお読みになって、私の手元にもこの「妻たちの告発」というものをお届けいただきました。
 私は、今までこれを知らなかったものですから、先ほどちらっと拝見させていただいて、我々が今日の文明、そして、今日の生活の向上あるいは社会資本整備を享受し、あるいは、私たちがその中で暮らしている中に、陰で努力し、また、その中で苦しみながら自分たちの命にかえて今日の我々の生活をつくってくださった、そういう皆さんがあることは、本当に私はありがたいと思いますし、私は、この人たちがもっともっと世間に認知され、そして、その貴重な経験の中から我々が今後どう対策をとっていくかということもこの中に貴重な資料が入っていると思いますので、貴重なものを私に教えていただいたので、まずそのことに対してお礼と、そして、こういう御遺族の皆さん方には心からの敬意とお見舞いを申し上げたいと思います。
 もともと、日本は掘削技術、先ほども申しました、橋梁、掘削に関しては世界一の技術を誇っていると私は思いますけれども、被害者の皆さん方の声を聞きますと、まだ人間の手で、そして、じん肺が起こるというような中で仕事をしていただいた。今はどんどんどんどん開発して機械がするようになりましたけれども、こういう犠牲者の貴重な経験と、そして、その犠牲の中での我々の今後の対策というものを探っていく上で大きな勉強になり、また対策の基礎にさせていただきたいというふうに考えております。
瀬古委員 大臣、ところが、じん肺発生の中で大きな比重を占めているトンネル建設というものは、国土建設の一環であり、公共事業であるわけですね。じん肺は労働現場で発生する職業病でありながら、現在は、残念ながらまだ効果的なこれという治療法が存在しません。
 それで、労働者の健康を守るための唯一の手段として、粉じんの暴露をコントロールすることでその予防と発生、根絶は実は可能だということはWHOなどの研究機関が明らかにしています。
 その予防や発生、そして根絶の責任は、当然、その当時作業をさせていた、もちろん下請が中心になってやっていたんですが、元請のゼネコンにも私はあると思うし、やはりその業者を束ねて指導している政府や自治体、こういうところにも私は責任があるんじゃないかと思うんですが、その点、いかがでしょうか。
扇国務大臣 今も私、手元に今までのトンネルの訴訟についてというものがございまして、今までどういう訴訟が起こったのかなというのを参考に見せていただいておりますけれども、今まではすべて和解で、企業が補償をして支払って、そして和解しているという、この表を今目にしているところでございます。
 今おっしゃったように、少なくとも工事の工法、粉じんを出さない、あるいは少なくする、そして、人体に影響がないような、単純なことで言えば、水をまいたり、あるいは換気装置をつけたり、それはあらゆることを企業の方もやっていらっしゃるんだろうと思いますけれども、企業は企業としての努力をするのは当然ですけれども、私は、こういう被害が本来はあってはならないと、当然のことだけれども考えております。
 このために、少なくとも被雇用者の安全というものと、あるいはその企業の安全管理体制、これは厳しく問われるところであろうと私は思いますので、私はこの裁判の内容はまだ詳しくわかりませんけれども、すべて和解していらっしゃるということですけれども、お金で済む問題ではない。なおかつ、今後二度とこういうことを起こさないための企業の努力、どういうことをするかということも、私は、被雇用者の安全管理の責任を負っている企業、また、その事業主体が国土交通省の関連のある事業主体でございますから、これも我々は喚起をしなきゃいけませんし、また、労働者のことですから、これは厚生労働省が当然関係しておりますから、うちだけの問題ではないと思いますけれども、少なくとも、ずい道等建設工事における粉じん対策に関するガイドラインというものができています。それはもう瀬古先生御存じだろうと思います。
 ですから、私は、少なくとも、契約時に、このガイドラインを契約図書に明記するという、その仕様書というものを義務づけておりますから、このガイドラインに基づく対策というものを仕様書の中に明記するということは、私は大事なことだと思っています。
 その必要な費用というのをこのガイドラインに基づいて計上する、そして、その計上した費用に関しては、土木工事の積算基準を改定したということになっていますので、私は、この改定した基準の中でその金額等々も明示していただいて、二度とこういうことが起こらないように、この改定内容というものを、地方公共団体あるいは受注者、そういうものに徹底して説明会を開催しておりますので、少なくとも徹底を図っていきたい、そう思っております。
瀬古委員 仕様書の問題は、また後で御質問したいと思うんです。
 きょうは、厚労省にも来ていただいております。それで、ガイドラインのことについてお聞きしたいんですけれども、この労働省のガイドライン、昔は労働省だったわけですが、ずい道等建設工事における粉じん対策に関するガイドライン、これに基づいて十分な対策をやはり講ずるべきだという、和解が成立した裁判の中で裁判所はそういうことを政府にも求めているわけなんですけれども、厚労省としてはどのような対策を講じていらっしゃいますでしょうか。
大石政府参考人 お話のありましたガイドラインにつきまして、やはりこれに基づいて関係者がきちっとやっていただく必要があるというふうに考えております。
 私どもといたしましても、まずその周知が非常に重要だということで、中央段階で、数回にわたって、発注者あるいは事業者に向けた説明会というのも実施いたしておりますし、また地方段階におきましても、都道府県の労働局あるいは監督署におきまして、臨検監督あるいは集団指導といった形で、その普及あるいは指導に努めているところでございます。
 いずれにいたしましても、ガイドラインの一層の普及といったものに今後とも努めてまいりたいというふうに考えております。
瀬古委員 平成十三年の労働環境調査というのを厚労省からいただきました。それで、じん肺の職場でこのガイドラインがどのように徹底されているかというのをアンケート調査でやられたそうなんですね。それを見させていただきますと、これは過去三回ぐらいやっていらっしゃるんですけれども、一番新しいのがこの二〇〇一年なんですが、このときに、このガイドラインの徹底のための基準というのがございまして、この基準を守っているという事業所が、事業所というか工事現場が三分の二、守っていないというところが三分の一なんですね。とりわけ、粉じんの濃度が、大変これが問題になってくるわけなんですけれども、今、一立方メートルに対して三ミリグラムの対応ということになっているんですけれども、三ミリグラム以下を守っているところが三分の二、守っていないところが三分の一。
 これは自主的なアンケート調査なので、自分で守っていますとか守っていないとか言うわけで、守っていないなんて言う事業所は余りないだろうなと思ったら、実際には守っていないというところが三分の一もあるんですね。そうすると、もう推して知るべしということで。
 この三ミリグラムという基準も、世界的な基準からいって大変問題のある基準なんです。大体、国際的な機関で決めているのは、その三分の一ぐらいなんですよね。大変甘い基準なんです、ガイドラインの基準というのは。それでも、守っていないというところは三分の一ある。コンクリートの吹きつけ位置の付近は、大体今でも三分の二は守られていないとアンケートでは報告されております。十年前は、大体六割が五ミリグラム以上ということで、大半のところは守っていない。それも、五十ミリグラム以上が四%もあるという大変ひどい状況で、じん肺の病気が出てくるというのは、こういうときにひどい状態だったのが今ずうっと出てくるわけですね。
 ですから、私は、今大丈夫といっても、過去、恐るべき数値が、実際にこのアンケートを見ても、十年前でも六割が守られていない、そうすると、もっと前はもっと守られていないということになって、これからどんどんじん肺の患者さんが出てくる可能性は十分あると思うんですね。ですから、今でもこのような、三分の一がまだ守っていないと自分で自主的に出しているぐらいですから、私はやはり問題だと思うんです。
 そこで、厚労省にお聞きしたいんですけれども、鉱山などの場合は粉じん測定を事業者に義務づけているんですが、実は、トンネルの場合には義務づけされていないんですね。ですから、ガイドラインで、まあやってくださいよという形で言っている程度で、それに違反しても全然罰則も何もないんです。
 鉱山でも、確かに炭鉱なんかありますから、今はもうほとんどそこで働く人はいらっしゃらないんですが、そこでも、それから隧道、トンネル工事でも、実際には工事の中身は一緒なんですね。むしろ、そこに含まれているじん肺を起こすそういう物質などでいうと、トンネル工事の方が危険だとも言われているんですね。炭鉱の中だと、炭素というかそういうもので、まだましだ。どっちも問題ですけれども、まだましだ。むしろトンネルの方が危険だというんですね。ところが、トンネル工事はそれの測定の義務づけが全然されていない。鉱山や炭鉱の場合はされている。
 これは、私は問題じゃないかと思うんですね。実際には現場は同じような状況なんで、私はきちっと義務づけをするべきだというふうに思うんですが、その点、厚労省、いかがでしょうか。
大石政府参考人 先ほど来、お話し申し上げておりますガイドラインは、一昨年の十二月に策定させていただいたものでございますけれども、現在は、このガイドラインに基づきまして、実質的なレベルアップというんでしょうか、そういったものが図られることがまず重要ではないかというふうに思っております。
 特に、トンネル工事の場合というのは、その作業環境が日々変化をするとか、あるいは規模でありますとか工法でありますとかが非常に種々でありますので、その作業環境の良否というものを客観的に定める基準というものがなかなか設けにくいというのも実際のところでございます。そういったところでは、法的規制による場合よりも、むしろガイドラインによってより高いレベルの指導をすることによって実質的な改善を図っていくということも、現段階では重要なのではないかというふうに考えているところでございます。
 ただ、いずれにいたしましても、トンネル工事の場合でも、当然のことながら、技術革新はあるわけでございますし、それは安全衛生技術におきましても同様でございます。そういったところについては、十分そういった技術の進歩といったものに注目して、今後とも適切な対応ができるように注意を払ってまいりたいというふうに思っております。
瀬古委員 なぜこの測定を義務づけられないのか、それは日々状況が変わるからだというんだけれども、実際には世界の流れはきちんと義務づけてやっているんですよ。基準も出しているんです。一九八二年には、もう日本産業衛生学会は国に粉じんの許容濃度というのを勧告しております。それには、一・五二ミリグラムですから、今の基準の半分ですよね。実際に吸い込む粒子の小さい吸入性粉じんの場合は、〇・三八ミリグラム。大変厳しいものを提案しているんですね。
 なぜ義務化しないのか。義務化すれば、例えばそれは労働安全衛生法の規則を改正するということになりますと、これは罰則を伴うんですね。今、日本のトンネル現場で、測定をきちっと義務づけて、そしてこれがきちっと規則に違反していないかどうかということを見れば、かなり厳しい状況があるだろう。今トンネル現場ではほとんど営業停止になってしまうんじゃないかと言われているわけですね。
 そういう意味では、この三ミリグラムというのも、世界の水準からいっても、日本の学会からいっても、こんな甘い基準ではだめだと言っているのに、それもさらに義務づけもしないで、ガイドラインで、まあやってくださいよと。そして、アンケートをやったら、平気で三分の一は守られていない。こんなひどいやり方はないと私は思うんですね。
 本当にじん肺をなくすというなら、きちっと義務づけして、そして、それを守れないところにはきちっと厳しく指導なり勧告なり、これは法令が改正されますと営業停止になるわけですから、そういうところまでやらないと、このしり抜けのような基準を守っていただきたい、より甘い基準で守ってくださいと言っているわけで、私はこれでは全然だめだと思うんです。
 そこで、国土交通省にお伺いしたいと思うんですが、国土交通省は、今、一応このガイドラインを使って、仕事をしているところを調査もされているというように思うのですけれども、実際には、ちゃんと基準を守るということを、今義務づけされていない中でどういうように判断できているんでしょうか。いかがですか。
安富政府参考人 トンネル工事における粉じんの防止対策につきましては、先ほど来出ております厚生労働省におけるガイドライン、これに基づきまして、二点我々として対応しております。
 先ほど大臣の方からもお話がございましたように、一つは、土木工事共通仕様書の改定でございます。土木工事共通仕様書は、いわゆる発注者としての技術的仕様を取りまとめて、いわゆる契約図書の一部という形で事業者の方に出しているものでございますが、この改定内容としまして、平成十三年度版の改定に当たりまして、適用すべき諸基準の中で、ずい道等建設工事における粉じん対策に関するガイドラインというものを位置づけまして、粉じん濃度の測定を義務づけ、粉じん濃度目標レベルに達していない場合、その改善のための措置を義務づけたというところでございます。
 それから、二点目でございますが、これは経済的側面からこの徹底を図るということで、土木工事積算基準の見直しということでこのガイドラインを位置づけております。
 具体的には、ガイドラインに基づく設計を行う際に、工事発注時に必要な費用を計上するよう平成十三年度から積算基準を改定しております。例えば、呼吸用の保護具、そういうものにつきましても共通仮設費に別途計上したり、あるいは走行路の簡易舗装、換気装置、あるいは集じん装置というものについても、必要に応じ別途計上するよう土木工事の積算基準に位置づけたところでございます。
 さらに、ガイドラインの遵守につきましては、粉じん濃度を半月以内ごとに一回定期的に測定するように規定をしておりまして、測定結果につきましても、関係労働者が閲覧できるようにしているところでございます。
瀬古委員 一応、国土交通省がガイドラインを位置づけられていらっしゃるということはわかるんですね。
 ところが、大変大きな問題があります。その中に、労働者の労働時間なんですが、労基法違反前提の拘束十一時間、実労十時間、こういうもともと二時間の時間延長を前提とする労務費、労働時間の積算基準が組まれているんですね。こういう積算基準で、わざわざ労働者を拘束十一時間やってもいいよ、実労十時間だといって、こういうような積算基準を今なお使っていらっしゃるわけですよ。実際には、じん肺は労働者の粉じんの暴露時間を少なくするというのが一番の根絶につながるんですね。それはぜひ改善していただきたいと思うんですが、その辺いかがでしょうか。
安富政府参考人 今の労働時間の二時間具体的に積算基準でプラスしているという件でございますが、土木工事積算基準における労働時間というのはあくまで実態調査を反映して定められたものでございまして、実際の施工をこれでやれというものではございません。したがいまして、具体的な労働時間については、労働基準法に基づきまして、使用者と労働者がお互いに取り決めを決めて、法を遵守して施工されるということでございまして、実際上、この土木工事積算基準に定められているのは、あくまで実態がこういう形になっているということから定められているものでございます。
 ただ、我々として、昨年度それから今年度にかけて、積算基準のもとになる労働時間の実態調査を実施しております。
 今後、これらの調査結果をもとにしまして、積算基準の改定が必要かどうかも含めて検討してまいりたいと思っております。
瀬古委員 ぜひ、実態が十時間も働いているから十時間で積算するなんということはもうやめてもらいたいと思うんです。むしろ、八時間よりも六時間にするとか七時間にするとか、暴露時間をどうやって少なくするかということを考えなきゃならないと思うんですね、今のこういう職場の状況を考えれば。もう実態が十時間だから十時間で積算するなどというのは、今検討なさっているみたいですから、ぜひ改善方をお願いしたいと思います。
 それから、じん肺有所見者に合併した肺がん、これが今労災補償給付をされていないんですが、法定合併症として労災補償給付を行うべきだと思うんですが、その点、いかがでしょうか。
大石政府参考人 じん肺有所見者に合併した肺がんにつきましては、現在、じん肺法施行規則第一条の合併症に原発性肺がんというものを加えるように準備を進めているところでございます。ここで、施行規則第一条に加えられますと、労働基準法施行規則の規定から、原発性肺がんも労災補償の対象となるということでございます。
瀬古委員 最後に大臣にお聞きしたいと思います。
 裁判の今までの経過、それからこの病気の特徴といいますか、物すごくひどい職場で実際には働いていらっしゃって、発病がもっと後で、十年、二十年後に出てくる。出たときにはもう会社がなかったり、実際には、隧道工事というのは転々と職場を、作業所が違うわけですね。そういう点では、この補償というのは、どうやってこういう人たちを補償していくかという大変難しい問題もあるわけです。そういう意味では、裁判をやるといっても、高齢になってからこの病気は出てきて、それで裁判をやる、それでまた和解で、ようやく和解が幾つかできているんですけれども、こういうやり方では本当にこの人たちは救えないと思うんですね、実際には。
 そういう点では、ぜひ、裁判によらない、トンネルじん肺被害者を補償して救済する解決のシステムというものが必要じゃないかという点で、ゼネコンなども、もし行政が音頭をとれば救済の基金といったものも考えたいと言っているゼネコンもあります。そういう意味では、ゼネコンも、うちだけのせいじゃない、幾つかのゼネコンが合同して責任を負わなきゃならないというものがありますから、じん肺にふさわしい救済の仕方という点では、基金制度などをぜひ検討すべきじゃないかと思うんですが、その点、いかがでしょうか。
扇国務大臣 今も私、瀬古議員がせっかく下すった「妻たちの告発」を、委員会中でしたけれども、余りにも何か胸打たれるものがあって、読ませていただいておりました。
 今日の我々の生活の中で、こういう知られざるところで苦しみながら、日本の高度成長期に協力していただいた皆さんの中にこういうじん肺患者というものがたくさん出ているという現実に対して、少なくとも我々は、基本的にじん肺問題というものに関して、安全衛生管理、そして工法の日進月歩といいますけれども、もっとこういう被害の人たちが起きないようなトンネル工事の工法等々、私は新たなものを導入すべきであると思います。
 今基金制度の話が瀬古議員から出ましたけれども、これはもともと、基金というのを、今お話がありましたように、我々が音頭をとってつくれということではなくて、被害者の皆さん方がそれぞれの事業者にこういう基金を積んでくださいとおっしゃっているようでございますので、そういう意味では、私は、基金の創設に関して国としてどうこうしろということは、これは事業者のことですから言えませんけれども、今のるるの御審議の中で、私は、じん肺患者の皆さん方がそういう御要望があるのであれば、事業者は前向きに、なおかつ真剣に対処するべきであると思っておりますので、きょうは貴重な御意見をいただいたと思っております。
瀬古委員 ありがとうございました。
 生きているうちに補償してほしいという切実な願いをぜひ検討していただいて、その事業所の指導責任を持っている監督省庁としての役割をぜひ果たしていただきたいと思います。
 以上、終わります。ありがとうございました。
久保委員長 原陽子さん。
原委員 社会民主党の原陽子です。よろしくお願いいたします。
 冒頭、私も東京の大気汚染公害裁判について、前の瀬古議員と重なるところもあるかと思いますが、まずは扇大臣に御質問をさせていただきたいと思います。
 今回、この裁判の判決を受けて、石原都知事が控訴しないということを明言なさいました。この政治決断は、テレビで多くの方々が見て、政治家がはっきりと判断をすれば物事が変わるということを多くの国民が実感したのではないかと思います。ぜひここで、この判決を受けての扇大臣の判断はいかがなものかということを、冒頭お伺いしたいと思います。
扇国務大臣 先ほどの瀬古議員と同じ御質問がございましたので、聞いていらっしゃるので同じ答えをしては申しわけないと思いますけれども、同じ質問ですので、当然同じ答えになって、党が違えば答えも違うというのでは、かえって失礼だと思いますけれども。
 東京都の石原都知事がお話しになっておりましたけれども、テレビでは格好よくおっしゃいまして、私は、それはそれで東京都知事の見識だと思います。一方、国に対してということは、私は、先ほども瀬古議員に申し上げましたように、国土交通省単省ではなくて、法務省、環境省、全部関係する省庁が合同で答えを出さなければならないことだと思っております。
 我々は、先ほども瀬古議員に申し上げたのです。今度の判決では、五十メートルということで区切りましたけれども、その中で因果関係があると言われたのは二〇%なんですね。あとは、医学的には保証されていないのです。そういうことから考えれば、今後の国土交通行政というものに大変影響が大きいということで、大変重く受けとめなければならないというのは、先ほど申し上げたとおりでございますから、そういう意味において、今後の国土交通行政あるいは交通施策、そういうものに対しての影響は大変大きいということと、政府としては、国土交通省単独ではなくて、法務省、環境省とともに検討していきたいと思っております。
原委員 国として判断をこれからしなくてはならないということです。
 きょうは、実は、環境副大臣にも来ていただいておりますので、ぜひ環境副大臣からも御見解を伺いたいと思うんです。実は、原告団と一緒に環境省と国土交通省に申し入れに行ったときに、公明党からも議員の方が御出席なされていたので、公明党出身の環境副大臣としての御見解をお伺いできればと思います。
弘友副大臣 私どもとして、今回の判決につきましては、道路設置管理の瑕疵による損害賠償というのは認められた、一方、国の自動車排出ガスの規制責任、そしてまた、差しとめ請求というのは認められなかったわけでございます。そういう中で、控訴をするか否かにつきましては、今扇大臣も御答弁がございましたように、自動車の排ガスと健康影響との因果関係、そういうものについて判決内容を十分に検討させていただいて、国土交通省、また法務省等関係機関とも協議の上で対応をしてまいりたい、このように思っております。
 いずれにいたしましても、環境省としましては、この大都市における大気汚染防止というのは大変重要なことだと認識をしておりますし、一層関係機関と協議させていただきながら対応してまいりたい、このように思っております。
原委員 引き続き、大臣と副大臣にお聞きをしたいんですが、石原都知事が記者会見で、総理、国土交通大臣、環境大臣への面会と要望書提出の意向を明らかにしたと聞いています。その要望書というものは受け取ったのか、受け取ったとすればどのような内容であったのか、また、申し入れがあればどのような姿勢で面会を受けるのかということをお二人からお聞きしたいと思います。
扇国務大臣 記者会見で、お目にかかって何とかということは人づてに、記者会見は私見ておりませんけれども、聞いておりますけれども、国土交通省にはまだ届いておりません。けれども、私は、この問題だけではなくてあらゆる面で東京都知事と連携しながら施策を練っておりますので、いつでもおいでになって、いつでも話し合う余地はもちろんございますし、その他の問題も多々、国と地方自治体、東京都と連携しなければいけないことがたくさんございます。
 私は先ほども瀬古議員に申し上げましたけれども、何よりも、東京都を通過しております車の一四%は、ただ東京を通過するだけなんです。そして公害を残して通過しているというのは、道路行政が達成されていないという基本的なことがございますし、東京都の都市計画も、現段階では五五%しか達成できていません。四五%が未達成という東京都の都市計画そのもの自体が達成することによってこういう渋滞の劣悪な状況も緩和されると私は思っておりますので、総合的な施策というものを東京都知事と話し合うのは、私は大変楽しみにしております。
弘友副大臣 石原都知事からの要望書につきましては、十一月一日に都の事務方から受け取っておりまして、その内容につきましては、国が責任を認めて控訴しないこと、それにまた自動車排ガス対策の強化、そしてまた被害者救済制度の創設等を求めるといった内容のものでございます。
 私も記者会見を拝見しておりませんけれども、環境大臣との面会の意向が示されたということでございますけれども、今のところそういう申し込みはございませんので、そういう申し込みがあった段階でしかるべく対応をさせていただきたい、このように思っております。
原委員 ありがとうございます。
 次は、この裁判の被告になっている首都高速道路公団と今回の原告側が交わした文書についてお伺いをさせていただきたいと思います。
 実は、この首都高速道路公団と交わされた文書と、あと、原告団は各自動車会社と確認書、文書を交わしておりまして、実は本日、これを皆さんに参考資料としてお配りさせていただきたかったんですが、ちょっと同意がいただけなかったもので、首都高速道路公団と原告団が交わしているこの文書を、済みませんが、全部読み上げさせていただきたいと思います。
 一、首都高速道路公団(以下、公団という)は、公団が設置・管理する高速道路の周辺に健康を害した人々が存在することを認める。
 二、公団は、関係機関と協議し、公害防止・環境対策に一層の努力をする。
 三、公団は、関係機関と被害救済制度の可能性について真しに協議する。
           平成十四年十月二十九日
   首都高速道路公団総務部調査役 青柳克己
         企画調整室調査役 国分芳夫
        計画部第一計画課長 石井信隆
    東京大気汚染公害裁判原告団 小澤廣子
         同 弁護団弁護士 久保博道
         同  実行委員会 鈴木久夫
こうした文書があります。
 きょうは首都高速道路公団の理事長にも来ていただいておりまして、この文書の中で書かれている三番目は、原告が最も強く望んでいる被害者救済方法の一つになると思います。この文書にあるとおり、公団は、関係機関と救済制度について真摯に協議をしていくという、この交換された文書というものは間違いがないかということをまず確認させていただきたいと思います。
橋本参考人 ただいまお尋ねがございました本メモにつきまして、これは、原告団の申し入れについてお話をお伺いしている中で、そのやりとりの一部を原告代理人が整理したメモ、それに対して公団の出席者が一部署名したものでございます。
 本メモに記載されております被害者救済制度につきましては、その前提となる大気汚染とぜんそくの因果関係につきまして、引き続き国の調査研究が行われている状況であると承知しており、公団といたしましては、制度の必要性等について検討が必要となった場合には、その時点でできる限りの範囲で真摯に対応していきたい、そういう趣旨でお答えしたものでございます。
 いずれにいたしましても、公団としては、道路に係る環境対策につきまして、今後とも真摯に努力してまいりたいと考えております。
原委員 これも、どのように交わされた文書なのかということを私もこの久保弁護士さんの方にお聞きをしましたら、判決の当日に公団内の会議室で、先ほど御答弁にもあったように、一方的に原告側の方から署名してくれといった文書ではなくて、一時間半くらいいろいろなやりとりをして、そしてお互いが共有というか、できるものとして、この文書を久保弁護士が清書をして、そして公団の方が直筆で、公団の中でもちゃんと責任のあるお立場の方が署名をした文書であるわけで、これが持つ責任というものは、やはりそれなりに大きな責任があると私思いますので、ぜひ、特にこの救済制度の可能性についての責任といいましょうか、この文書に対する責任というところで、もう少し積極的な御答弁をいただきたいと思うのですが、もう一度御答弁いただいてよろしいでしょうか。
橋本参考人 先ほども御答弁申し上げましたとおり、これは、原告団の申し入れについて公団の出席者の一部が署名した、そういう事実は認めております。しかし、これについて、公団の公式文書、そういう性格のものではないと私は考えております。
 しかし、そこに書いてある趣旨としての被害者救済制度、そういうものが今後検討される段階となれば、道路管理者の一員ではございますが、真摯に対応してまいりたい、そういう趣旨を書きあらわしたものと考えております。
原委員 今御答弁の中に、公式ではないということがあったんですが、私、ちょっとこれは無責任だと思います。
 先ほど、一部の方が署名、一部の方が署名ということを繰り返されておりますが、原告側は五十名ほどでそちらの会議室にお伺いをしてこうした文書の取り交わしをやったのですが、そのときに八人、公団の方からは御出席なされていた、八名の方が。原告側としては八名全員の方に署名をお願いしたのですが、代表者だけでいいでしょうということで、主にやりとりの中で発言をなさった青柳さん、国分さん、石井さん、この三名の方から直筆で署名をとったという経緯で書かれているんです。
 お三方とも、やはり直筆で、目の前でこうしたサインを交わしているわけですから、これを公式のものではないと言ってしまうのはちょっと無責任だと思いますし、そうなると理事長にも監督責任というものが問われてしまうのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
橋本参考人 メモに書かれている内容の問題でございますが、そこに書いてありますとおり、被害者救済制度について、国を初めとする関係機関において議論が行われることになれば、公団としてもできる範囲で真摯に対応する、そういうことについては、公団もそのように考えております。そういうつもりで答弁したものでございます。
原委員 済みません、しつこくて。もう一度確認させてください。
 この取り交わされた文書はどういう性質のものなのか。どういう性質のものなのかをもう一度お願いします。(発言する者あり)公式なものじゃないという性質のものなのでしょうか。
橋本参考人 本メモは、原告団の申し入れについてお話をお伺いする中で、そのやりとりの一部を原告代理人が整理し、それについて公団の出席者の一部が署名したものでございます。
原委員 済みません。私の聞き方が悪いのか、何か同じ答弁ばかり繰り返されてしまっていて、ちょっとやはり納得いかないんですが……(発言する者あり)メモというか、文書として交換したものです。実際に判決が出た日の夕方五時前後に公団側に行って、公団内の会議室で一時間半くらいやりとりをして、その中で交わした文書なわけで、メモではなくて、しっかりと責任のあるお三方がちゃんと署名をサインなさっているんですよね、直筆で。やはりこれの持つ責任というものをもうちょっと理事長もしっかりと考えていただきたいと思います。
 理事長の理解としては、では、これは公式なものでないということで理解なさっているんでしょうか。
橋本参考人 文書の性格について、公式文書の性格ではないと申し上げておりますが、内容については、先ほど申し上げましたとおり、救済制度の検討が必要となった段階では、公団としても、道路管理者の一員という立場ではありますけれども、できる限りの範囲内において真摯に対応する、そういう意味でございまして、公団の職員も、その良心と常識の範囲で署名をしたものと考えておりますし、私もその趣旨は大変重要で意義のあるものと考えております。
原委員 それならば、その良心と、何でしたか、署名なさった皆さんの良心を私は信じたいと思いますし、交わされた文書のこの内容については、公式なものではないにしても、この内容については、ぜひ協議をして本当に真摯に受けとめていただきたいと思います。
 余りこればかりやっていても、時間がないのですが、引き続き救済制度のことについてお伺いをします。
 先ほど環境副大臣からお話がありまして、都の方から要望書が上がってきていて、その中にも救済制度についての要望があったということをお聞きしました。本当はお配りしたかったこの参考資料なんですが、この中にも、トヨタ自動車、三菱自動車、日野自動車も、当社は、行政が新たな救済制度を制定する場合、社会的要請も踏まえて総合的に対応を判断しますと。すべて十月の二十九日付で、これは確認書と書かれています、確認書を原告団の方と交わしています。いすゞ自動車も、被害者救済制度については、これが制定される時点において検討しますと文書を交わしています。
 この判決が出た翌日と翌々日、原告団は、国土交通省と環境省に行って救済制度の要望をしました。私も同行させていただいて、生の声を聞きました。やはり今一番後ろ向きな声を出しているというか、後ろ向きなことを言っているのは国だけのように私は思います。瀬古議員からも質問がありましたが、やはり私も、政府として新たな制度の必要性について早急に検討すべきではないかと思っています。
 先ほどこの質問については瀬古議員が扇大臣に御質問をなさったので、では、私は環境副大臣にこの救済制度について御質問させていただきたいと思います。
弘友副大臣 ぜんそくを発症した方々のお苦しみ等につきましては、本当に胸の痛む思いというのはある。ただ、国が法律に基づいて被害補償制度を検討する際には、大気汚染とぜんそくとの因果関係を裏づける科学的知見というのはやはり前提となると思うんですね。何もなくて、そういう被害者の方がいらっしゃるからということじゃなくて、やはり科学的知見というのは、それを結びつけるものが必要じゃないかというふうに考えております。
 今のところ、環境省といたしましては、大気汚染と健康影響についていろいろな各種調査研究を進めております。これまでに得られました調査結果等から見られる範囲内におきましては、現在、我が国の大気汚染はぜんそく等の疾病の主たる原因をなすものとは考えられない、現在の調査の中では、というふうに考えております。
 今そういう段階でありますので、御指摘のような新たな被害者救済制度の創設は現在要否を判断できる状況ではない、一層調査研究を進めていって、やはりそういう科学的知見をはっきりさせていかなければいけないというふうに考えております。
原委員 先ほど扇大臣は、この救済制度に関しては、国交省が担当ではもちろんないのですが、内閣として検討してほしいという瀬古議員からの質問に対して、国土交通省と環境省と法務省でお互い検討をしていこうと。本来であれば、環境省からそうした前向きの答弁があっていいはずだと思うのです。そのように扇大臣は検討をしていこうという御答弁をなさったのですが、環境省としてどうですか。検討をするのか、していくおつもりはないのか、ここのところでお答えをいただきたいと思います。
弘友副大臣 被害者救済度について検討していくという、私、先ほどちょっといなかったのであれなんですが、そういうことでございますか。
原委員 被害者の救済制度について、これから検討していくおつもりなのか、検討していくお考えはないのか、環境省としてどちらでしょうか。
弘友副大臣 ですから、国が法律に基づいて被害者救済制度というのをつくる場合は、やはり何らかの科学的知見というのが明らかにならなければ非常に難しい部分がありますので、そこら辺を今から調査研究を一層進めてまいりたいというふうに考えております。
原委員 私が欲しい答弁は、被害者救済制度を検討するのか、していくおつもりはないのかということで――いや、私は副大臣に聞いているので、ぜひここは副大臣にお願いをしたいです。
弘友副大臣 ですから、当然そういう被害者救済制度について、国土交通省、それぞれの関係省庁とやはり連絡を深めながら、加えて言いますと、この判決後に、十月三十一日には関係省庁の局長で連絡会議というのを開催しておりまして、本年末から明年一月を目途にそれぞれの施策というのを点検、検討する。ですから、被害者救済制度だけじゃなくて、あらゆるいろいろなことにつきまして、関係省庁と連携を密にしながら、都における大気汚染の防止について一層努めてまいりたい、こういう考えでございます。
原委員 私の質問はクリアじゃないのでしょうか。
 今の副大臣の御答弁を聞いておりますと、今のところ、因果関係がはっきりしていないので、救済制度について検討するつもりはないというように私は理解してしまうのですが、この理解でよろしいのでしょうか。
弘友副大臣 ですから、検討するつもりではないということではございませんで、制度を設置する場合には科学的知見が必要なんだと。ですから、検討する前提として、そういう科学的知見を積み重ねながら、言ってみればそれが検討していく段階かもしれませんけれども、そういうことだというふうに考えております。ただ、今設置をしますよということじゃなくて、だから、そういう科学的知見がなければ、やはり被害者救済制度というのは、それは基準がないわけですから、どういう因果関係でとかいうことがわかりませんので、科学的知見というのはやはり必要なんじゃないかなというふうに考えております。
原委員 まさに今回国の方が出している理由そのものだと思うんですが、損害賠償や差しとめの前提となる因果関係を認定し得る知見がないとして国は請求を棄却しているということが言われていますよね。でも、因果関係というか、環境省は国立の環境研究所なども持っていますし、ずっと環境保健のサーベイランス調査ですか、疫学調査も、これは年間一億の予算をかけて平成八年から大気汚染にかかわるこうした調査をやってきているわけじゃないですか、たくさんのお金をかけて。今回の請求を棄却している理由も、立証責任というものをまた原告側に求めていることになっているわけで、因果関係をはっきりさせなさいということを原告側に求めること自体も私はおかしいと思っています。
 確かに、平成十六年からでしたか、調査を行うということをおっしゃっていたと思うんですが、因果関係がはっきりすればということを副大臣はおっしゃったので、それならば前倒しで効率のよい調査をすべきだと私は思いますし――済みません、先ほどのは平成十七年度からですね。済みません、間違えました。十七年度から、総合調査でしたか、行うということも聞いていますので、それを本当に前倒しで調査を行うべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
南川政府参考人 まず因果関係の問題につきましては、環境省としては、原告の方々に立証責任を求めるのではなくて、むしろ環境省としてサーベイランスを含め各種の調査をやっております。そういったものをすべて公表しておりますけれども、その中で明確な因果関係が出てこないということを申しております。これにつきましては、引き続き鋭意調査をしまして、私どもとしてしっかりした調査結果を出していきたいというふうに考えております。決して原告にそういった立証責任を無理に負わせるということではございません。
 それから、調査の件でございますが、主要幹線沿道の局地的汚染の健康影響評価につきましては、窒素酸化物のみならず、いわゆるPM二・五という小さな粒子状物質を含む、そういった汚染物質の個人暴露量の調査方法をきちんと把握する、それから、ぜんそくなどの呼吸器系疾患について、従来の自己記入方式の質問票による簡単な把握方法に加えまして、検査データに基づく客観的な健康指標の確立というものが必要でございます。これまでにそういった手法の確立を進めてきております。
 この結果を踏まえまして、本年度から、詳細設計などの本調査に必要な事項を検討するための試行調査を開始しております。平成十七年度から実施予定でございます本調査につきまして、いつまとまるのか、結果が出るのはなかなか難しゅうございますけれども、できるだけ早期に結果が得られるように鋭意努力をしていきたいというふうに考えております。
原委員 その調査を前倒しで行うおつもりはありますか。
南川政府参考人 鋭意検討はいたします。ただ、拙速で余り明確でないデータということでも逆に信用を落とします。きちんとした信用あるデータがいかに早く得られるか、十分検討はいたしたいと思います。
原委員 鋭意努力となるべく早目に結果はまとめるという御答弁だったんですが、それでも、どれぐらいの期間かとかいう目安というものは今のところ考えていらっしゃらないでしょうか。
南川政府参考人 この問題、かなり技術的な困難が多うございます。例えば、NOx、PMなどの大気汚染物質の暴露量を正確に把握しなきゃいかぬ。それから、健康影響に関する多くの因子、例えばアレルギー因子とか、たばことか、ハウスダストとか、そういったこともきちんと考慮しなきゃいかぬ。また、病気にかかった時期あるいは人数がきちんと把握できる必要があるということで、いろいろ実は難しい点がたくさんございます。
 私どもも鋭意努力いたしますけれども、科学的にできること、できないことがございまして、それを十分知見のある方々にも相談して示していきたいというふうに考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
原委員 この救済制度については、今でも既にぜんそくで苦しんでいる方々がいて、きっと亡くなっていく方々もいらっしゃる。そうした方々の苦しみというものをやはり環境省としてしっかりと真摯に受けとめて、ぜひ早目に救済制度というものの検討に入っていただきたいんですが、その前にはまず因果関係がはっきりしないとなかなか検討に入れないということなのですが。
 東京都も救済制度については要望していますし、先ほどの交換されたこの文書の中でも、被害者救済制度の可能性については公団も真摯に協議をするとおっしゃっていますし、各自動車会社も総合的に対応を判断しますというような確認をなさっているわけですから、私は、できれば、調査結果を待たずに、今苦しんでいる方々を思い切ってここで、えいやっと救うような救済制度の検討を、これはもう答弁を求めませんが、御決断をお願いしたいと思います。できればぜひお願いします。
 もう時間がないので、最後に一つだけ、これは扇国土交通大臣にお聞きをしたいところなんです。
 今回、東京都は控訴をしないということをおっしゃったのですが、道路が公害の発生源であるとしたら、道路整備が大気汚染の解決のためにむしろ必要であるとおっしゃっていて、道路をつくって渋滞が緩和すれば環境がよくなるというようなことを多分都知事はおっしゃっているんだと思います。
 一つ疑問に思うことは、都市再生特別措置法、ありますよね、都市再生に基づいて、例えば都心にビルがたくさん建って人々が集まるようになれば、都心における交通の需要の高まりは当然予測されることだと思います。
 しかし、今外環道とか、道路を東京の外につくって車を東京を通らないで流すという渋滞の解消策と、都心に交通が集まるようになってくる都市再生というこの政策には私は矛盾があるように思うのですが、そのあたりの大臣の御見解を最後にお聞きして、質問を終わりたいと思います。
扇国務大臣 原議員の一連の論議を聞いておりまして、私は、御本人自体が先ほども、これはメモですよということをおっしゃって、それが公式かと言われると、メモはメモで、公式ではないと言う。御本人がメモと認められたものを公式と認めろというのは、これは今後、ぜひ御質問の中で、メモと言わないで、公式文書でしょうというふうに言っていただくとわかりいいと思います。それが一点。
 それから、今、外環道ができたら少し公害がなくなるのではないかというお話、それは当然のことでございまして、先ほどからも、私、瀬古議員に申し上げました。東京はこれだけ交通渋滞をしております。そして、一四%が東京を素通りしているんですね。そうすると、車が通って、公害だけ残して、東京の人たちはその公害の空気を吸って。一四%は、東京に用事があるんじゃなくて、ただ素通りしているんです。
 そのためにこういうことも起こっているということから考えれば、私は、道路行政というものは、すべからくネットワークというものを勘案してつくるべきであるというのは基本的なことで、今おっしゃった外環道だって、これは美濃部さんのときにできていればとっくに解消しているんです。もっと安くできているんです。だけれども、美濃部さんが、一人でも反対したらつくらないと言ったためにこれが滞ってしまったということも、原議員がお生まれになる前の話でございますから、改めてそのことを申し上げて、少しでもこのボトルネックをなくそうということと、私たちは、都市再生も含めて、近住、勤めるところと住まうところを近いところにしようと。
 今、皆さん方、郊外に行きましたけれども、みんな東京に帰ってきています。何で帰ってきているか。それは、東京都から通勤が一時間半なり二時間かかって、家庭環境が壊される、働くために家庭環境が壊されたら何にもならないと。この往復の三時間なり四時間というものを縮小しようといって、狭いけれども我慢してということで都内への回帰というので、東京都の住民がふえています。
 それは、そういうことを解消しようというので、一時はドーナツ現象で東京都の周りに居住を持ったんですけれども、やはり住まいと職場が近い方がより家庭的だということで、家庭環境のためにも東京都に回帰し出しているというのが現実でございますので、その回帰した人たちが、狭いところで、なお環境の悪いところに集まったら困るというので、都市再生というもので改めて都市再生を特区もつくってやっていこう、総理直属の都市再生本部というのをつくって、都市のあり方の根本を考えようと。
 それから、都市の中で、今後、国際的にどうかといいますと、東京都内でもたくさんビルが建っていますけれども、どれを見ても光ファイバーが入っていない。光ファイバーが入らない新しいビルなんというのは、国際的にだれも借りません。改めて国際的な都市をつくっていくための必要な特区、高さ制限、規制をすべて解除していって、そして、より公害の少ない、住みやすい東京にしなければならない、都市にしなければならないということで、あらゆることで関連がありますので、どこまでお話ししていいかわかりませんけれども、一助にしていただければいいと思います。
原委員 わかりました。
 先ほどのところなんですが、メモはメモ、公式ではないということを大臣はおっしゃいまして、その御答弁はよくわかります。
 それを聞いて、後ろで手をたたいていらっしゃった橋本理事の態度、私は非常にひどいと思います。このメモ、メモはメモでも構いませんが、このメモを意味のあるものにするかどうかはあなたの気持ち次第なんじゃないでしょうか。これが公式なものではなくて、メモはメモだということに対して、拍手をなさって、ああよかったよかった、そんなに重みのあるものじゃないというような態度で喜んでいるあなたの態度を私はひどいと思います。
 以上で質問を終わります。
久保委員長 松浪健四郎君。
松浪(健四郎)委員 保守党の松浪健四郎でございます。
 この四日、関西国際空港の周辺は大変な強い風でありました。空港の対岸にありますりんくうタウンの広場で、大変な強い風の中で、夢サーキット実現総会というのが大阪青年会議所の皆さんの主催で行われました。それほど多くの皆さん方、一般の皆さん方が興味を持たれなかったかもしれませんけれども、何としてもりんくうタウンや関空を活性化させたい、関西に元気を取り戻したい、こういう思いが伝わってまいりました。
 そして、できることは何でもやろう、そういう姿勢が地域社会の皆さんの中にある、こういうふうに思っております。そして、りんくうタウンでアウトレットが大きくなって、たくさんの皆様方が平日をも含めてりんくうタウンにお見えになられます。だんだん活力がわいてきたな、こういうような印象を受けて、自治体も、そして地域住民も一生懸命関空を含むりんくうタウンの活性化に御尽力されているということに私も敬意を表したい、こういうふうに思っております。
 そこで、まずお尋ねしたいのは、新聞を見ますと、関空をめぐるニュースは連日報道されております。そして、メディアも、またいろいろな団体も、また国もそうであるかもしれませんけれども、何となく、空港行政がダッチロールしておるんじゃないのか、こういうような印象を持ったりもするものであります。
 二百七十億円の第三者割り当て増資を実施すると関空会社が発表されました。国が百八十億円、大阪府などの地方自治体が八十七億二千五百万円、そして民間企業などが二億七千五百万円を引き受けるということでありまして、この調達資金は二期島の造成工事などに充てられるということであります。
 こうして株式会社として一生懸命関空会社が努力をしておるわけでありますけれども、この第三者割り当て増資を実施して、本当に関空がうまいこといくんだろうか、これも私の心配事でありますけれども、いずれにいたしましても、関空会社は苦悩が続いておるというのが現実であります。
 そこで、まず、我々は、国としても国際拠点空港の整備の基本的な考え方をいま一度明確にする必要があるのではないのか、このことをお尋ねしたいのと同時に、関空の利用促進を図るためには、関空会社や地元による国際旅行拡充のための努力がなされておりますし、それは必要だというふうに考えますけれども、これまでの取り組み状況がどうなっているのか、このことをあわせてお尋ねしたいと思います。
洞政府参考人 先生お尋ねの第二点目の、利用促進についてのこれまでの活動の状況について、私の方からお答え申し上げます。
 関西国際空港株式会社では、平成十年からこれまで、地元自治体や経済界などとともにトップセールスによる関空のPRを進めてきておりますけれども、特に、本年の九月からは、地元の自治体、経済界が一体となって関西国際空港のエアポートプロモーションを実施しておりまして、海外へのいろいろなミッションの派遣による関空の利用促進でありますとか、関空の観光PRの実施でありますとか、交流事業などの機会の活用によるプロモーション活動の実施であるとか、あるいは国内向けの関空キャンペーンの実施等、いろいろな活動が行われているところでございます。
 これらの活動等によりまして、効果が少しずつ出てきておりまして、最近では、例えば中国の西南航空という航空会社がこの七月から成都との間で週二便、あるいはアラブ首長国連邦のドバイにございますエミレーツ航空というのが週四便この十月一日から入ってくるとか、この成果というのは目に見えてきております。
 また、関空会社の方でも、ただ、いらっしゃいいらっしゃいと言うだけではなくて、増便していただいたら、その増便分の飛行機について半分にする、例えばジャンボですと、八十万のところを、ふえた分は四十万にするとか、そういうふうなインセンティブ措置、経営等に照らして思い切ったことというのはなかなか、不十分な部分はまだございますけれども、そういういろいろなインセンティブ措置等々、あるいはお客様サービスの充実であるとか、地味ではございますけれども、そういったものに腐心をして努力しているところでございまして、今後とも、関西国際空港におきましては、施設の整備だけではなくて、その有効活用を図っていくという観点から、関係者、自治体、経済界、それから我々国はもちろんでございますけれども、その協力を仰ぎながら、一生懸命頑張っていきたいと考えております。
 それから、国際拠点空港の整備につきましては、多分大臣の方からまた補足があると思いますけれども、近隣諸国では、特に東アジア等におきましては、その国の玄関口である国際空港の整備が急ピッチで進んでおります。特に、例えば仁川、インチョン等においては、発着回数は関空よりも少ない十一万五千回ということでございますけれども、四千メーター級の滑走路が二本、さらにあと二本の計画があるというようなことで、これは国威をかけてといいますか、これからの国の百年、二百年を見据えて空港整備というのは行われているわけでございまして、我が国としても、正直申し上げまして、これまで国際拠点空港の整備というのは立ちおくれておりまして、今、しゃかりきになってそこのところを追いつこうとして頑張っているわけでございます。成田、中部、関空、恥ずかしくないような整備をきちっと行っていく覚悟でございます。
松浪(健四郎)委員 十月の十一日に第十一回空港整備部会が開催されました。そこでは国土交通省が提示した三空港一体の上下分離案について関係当事者の意見聴取を行ったわけですけれども、その結果、成田は単独民営化、中部は開港直前で参加の判断ができないという意見があって、部会長が、従来の上下分離案は関係者の合意が得られないという結論を出され、今後、各空港別に民営化の道を検討することになられたというようでございますけれども、関空は、国として提示した上下分離案が成立しないというのであるならば、それにかわる道筋を国として示すべきで、そしてその場合、関空については、国際競争力の強化に向けて、立地政策に由来する過大な立地コストを国の責任において解消すべきであるというような主張をされました。私は、まさに正論だ、こういうふうに思っておるわけです。
 そこでお尋ねしますけれども、今後の関西国際空港の発展についての展望、これをいかにお持ちであるのか、お尋ねしたいと思います。
扇国務大臣 松浪議員から冒頭に基本的なお話がございましたので、本来は私から答えるべきだったと思いますけれども、洞局長から詳細な答弁がございましたけれども、本来、我々は、行政官として物を言うなれば、諸外国の例をもちましても、皆さん方から税金をいただいて公共工事というものをやっている以上は、空港、道路、鉄道、そういう三原則、かてて加えて国際港湾、そういうものは、いただいた税金で、公共工事できちんと土台をつくって、その上で民営化を図る、さあどうぞお使いください、私はそれが本来の公共のあり方であると認識をしております。
 そうできなかったのは、るる、日本の経済状況等々で、どうかして早くしたい、そして一日も早く利便性を図りたいということで、いろいろな知恵をお出しになった、関西国際空港もその一つだと思います。
 あのときに、地方自治体それから事業者、そして国、そして関西の経済界等々、あらゆるところが三位一体となって、三分の一ずつの負担で関西国際空港を一日も早く立地してくれという、その要望でああいう第三セクターのような様式になっておりますけれども、私は、今申しました原則、諸外国に対して国際的にこれは整備しなければならないというものは、本来は国がきちんと責任を持って仕上げて、あと民営で、皆さんでどうぞ活用してくださいという基本姿勢があってしかるべきだと。そのもとがねじれている部分に関しては私は今申しませんけれども、基本的にはそういう考え方で、私は、国というもののあり方からすれば、多くの皆さんに税金を納めていただいて、基本的なものはそうするべきであったというふうに考えているのが一点でございます。
 そして、重ねて、関西国際空港、何のために二十四時間オープンにしたんでしょうか。世界じゅうにあるから、日本に類がないからというので、日本で初めて二十四時間オープンの関空をつくったんです。
 ところが、あの橋、飛行機に乗るのに、あれを渡らなきゃ行けないんです。それなのに、渡るだけで千七百三十円取るんですね。それで往復なんですよ。片道で乗りに行った人は領収書をもらえない。そんなばかなことをしたのは、日本の国の省の縦割り、旧建設省、旧運輸省の縄張りで、あんなむだな橋の料金を取るようになったのも一つの私は大きな要因だと思っています。
 きょうも午前中に空港の話がありました。世界じゅうを皆さん方も飛んでいらっしゃる、またODAの援助をしている国にも我々は飛んで行きます。けれども、その援助している途上国でさえ、おり立った飛行場で、国際と名のつく飛行場で、一本しか滑走路がないのは国際空港じゃありません。どこへ行っても二本以上の滑走路を持っています。先進国に入って、経済大国だと言われた日本が、なぜ二十五年間成田も一本しか滑走路がないのか、関空も二十四時間だといって大見え切ってオープンしてなぜ二期工事をできないのか。そういうことを考えたら、私は、先ほど局長が言いましたように、日本の周りの国、韓国、中国、シンガポール、マレーシア、どこを見ても、空港に関しては一番日本が途上国であります。
 こういう状況は私は解消しなければならないと思っておりますけれども、財政難ですから、財政難のときはしないよというのではなくて、集中的にどこをこうしなければ国際的に追いつけない、おくれていく。今、成田だけでも二十三カ国ウエーティングしていますよ。関空もそうです。けれども、でき上がったころにはどこからも外国から来てくれません。みんな近隣諸国にとられます。そういうことでは、我々は、二十一世紀の日本の国の、今後の国民生活を考えた上で、産業の空洞化、経済の空洞化、ましてや物流の空洞化というものを阻止するためには、何としても、資金の調達は、苦しいながらも、約束は約束として完成させなければならない、まずそれが観光面でもあらゆる面での玄関口だ、第一歩だと認識しております。
松浪(健四郎)委員 大臣から関空の応援歌を聞かせていただいたというふうな気がしております。御礼を申し上げたいと思います。
 次に、高速道路についてお尋ねをしたい、こういうふうに思います。
 私たちは民営化推進委員会の内容は新聞を通じてしか知る由もないわけでありますけれども、どうも、高速道路の必要性というのを採算性のみで判断しているような嫌いがなかろうか。もちろん、採算性チェックというのは重要でありますけれども、会社や投資家のための改革ではなくて、これは国家国民のための改革とすべきである、こういうふうに思います。
 そして、民営化推進委員会の一部の委員の方の声には、新組織は新規建設を行うべきでない、このような主張もあられます。昨年の経緯、また総理の発言に照らしても、これは閣議決定違反の主張ではないのか、こういうふうにも思ったりいたします。それで地方の高速道路の必要性を理解した議論がされているのかどうか、これらについても疑問でありますし、一部には知事の立場をやゆするかのような発言があることは極めて遺憾であります。そして、一日委員会も、開きっ放しというのではなくて、そこで出された意見を尊重すべきではないのか、こう思います。
 地方経済の活性化のためにも、必要な高速道路は早期整備が必要である。もちろん、大臣は恐らく財政難だ、こういうふうにおっしゃるかもわかりませんけれども、いずれにしましても、現在の民営化推進委員会の審議内容は過度に採算面のみに偏っている、こういう印象を受けます。
 地方の声にも十分耳を傾け、必要な高速道路は早急に整備すべきだ、このように私は考えますが、大臣の見解はいかがなものでありましょうか。
扇国務大臣 これも先ほど議題になりまして、松浪議員はまだ御出席ではございませんでしたので、重なるところがあるかもしれませんけれども、私は、冒頭に申しましたように、道路、空港、港湾、新幹線等々は、基本的には国がきちんと下地をつくって、でき上がって、さあ民間がお使いください、そして活力を上げてもうけてください、もうかったものはいただきますと。私は本来、そのつもりでございますし、国土交通省としては、国幹会議において一万一千五百二十キロ、九三四二、これは、決めたとおり、私たちはまだ変更しておりません、国幹会議も開かれておりませんから。
 ただ、きのうの新聞でしたかきょうの新聞でしたか、あの委員会の内容が一面に出ておりまして、私も気にはしておりますけれども、国土交通省としては、この第三者委員会ができます前に、本四公団を別にして、三公団を統合するという案を既に総理にお出しいたしました。私は、本四の重荷が余りにも多過ぎるから、あとの三公団は統合するけれども、本四だけは別途、これはもう仕事ができ上がっていますから、別途してくださいということで、私は答案を出しましたけれども、総理が四本一緒にしちゃえということで、改めて今検討されておりますので、まだ正式な答申が出ておりませんから、その内容に関して私が今公に発言することは控えざるを得ないという状況ですけれども、一つだけ、松浪議員に私は認識していただきたい。
 新聞紙上でしかわかりませんけれども、私が危惧している面がございます。中に旧国鉄の方もいらっしゃいます。国鉄が民営化したときの経験者も中に入っていらっしゃるから、おわかりだと思うんですけれども。旧国鉄は十八名、役員がいたんですね。あの旧国鉄を分割いたしました。そして、この国鉄を民営化したために、今、全部のJRで役員と名のつく人が百三十人いるんです。JR東海だけで三十一人いるんです。分割すれば分割するほど役職はふえるんです。しかも、上下分離したらそれが倍になります。そういうことを平気で議論しているということに関しては、私は個人的には大変心配をしております。
 それでなくても、役員の人数を減らせ、そしてリストラをして効率を上げろと言われているときに、この旧国鉄と今のJRの関係を考えてみても、旧国鉄が十八人の役員だったものが、今少なくとも百六十人の役員になっている。こういう事例を見ても、分ければ分けるほど役員の数がふえるということをどう考えるんだろうかと。
 そういうことも私は心配をしながら、今の委員会の結果を見守っているという状況でございますけれども、より国民の皆さんが納得できる答案を出していただきたいと思いますし、答案が出るまでにも、国土交通省としては今の一一五二〇というものを達成するにも、六車線のところは四車線にできないか、四車線のところは二車線にできないか。しかも、あのインターチェンジのトランペット状という広大な土地を、今度ETCにしたら、あんなトランペットじゃなくてダイヤモンドでいいんです。だから、ETCを導入すれば工事計画も変更できて廉価になる、コストダウンにもなるということで、国土交通省としては着々とその工事の見直しも今進めているところでございますので、その連携というものは今後図りたいと思いますけれども、基本的な国土交通省の考え方というものはぜひ御認識賜って、御協力いただければありがたいと思います。
松浪(健四郎)委員 るるお伺いいたしましたけれども、国際化に的確に対応するためにも、高速ネットワークの早期整備が重要である、私はこういうふうに考えるものであります。
 ほかにも質問の通告をさせていただきましたけれども、時間が参りましたのでこれで終わらせていただきたい、こういうふうに思います。どうもありがとうございました。
久保委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時十五分散会


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