衆議院

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第3号 平成14年11月12日(火曜日)

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平成十四年十一月十二日(火曜日)
    午前九時三十分開議
 出席委員
   委員長 久保 哲司君
   理事 栗原 博久君 理事 菅  義偉君
   理事 橘 康太郎君 理事 玉置 一弥君
   理事 細川 律夫君 理事 赤羽 一嘉君
   理事 一川 保夫君
      荒巻 隆三君    岩崎 忠夫君
      小里 貞利君    倉田 雅年君
      実川 幸夫君    砂田 圭佑君
      高木  毅君    谷田 武彦君
      西田  司君    西野あきら君
      林  幹雄君    原田 義昭君
      菱田 嘉明君    福井  照君
      堀之内久男君    松野 博一君
      松宮  勲君    松本 和那君
      阿久津幸彦君    井上 和雄君
      大谷 信盛君    鍵田 節哉君
      今田 保典君    今野  東君
      佐藤謙一郎君    津川 祥吾君
      中村 哲治君    永井 英慈君
      伴野  豊君    平岡 秀夫君
      細野 豪志君    松崎 公昭君
      高木 陽介君    土田 龍司君
      大森  猛君    瀬古由起子君
      原  陽子君    保坂 展人君
    …………………………………
   国土交通大臣       扇  千景君
   法務副大臣        増田 敏男君
   国土交通副大臣      中馬 弘毅君
   国土交通大臣政務官    高木 陽介君
   政府参考人
   (法務省民事局長)    房村 精一君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           恒川 謙司君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局
   長)           河村 博江君
   政府参考人
   (国土交通省住宅局長)  松野  仁君
   参考人
   (都市基盤整備公団理事) 中田 雅資君
   国土交通委員会専門員   福田 秀文君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月十二日
 辞任         補欠選任
  中本 太衛君     荒巻 隆三君
  今田 保典君     松崎 公昭君
  佐藤謙一郎君     今野  東君
  津川 祥吾君     細野 豪志君
  大幡 基夫君     大森  猛君
同日
 辞任         補欠選任
  荒巻 隆三君     中本 太衛君
  今野  東君     佐藤謙一郎君
  細野 豪志君     中村 哲治君
  松崎 公昭君     鍵田 節哉君
  大森  猛君     大幡 基夫君
同日
 辞任         補欠選任
  鍵田 節哉君     今田 保典君
  中村 哲治君     津川 祥吾君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 建物の区分所有等に関する法律及びマンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇号)


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     ――――◇―――――
久保委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、建物の区分所有等に関する法律及びマンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 本案審査のため、明十三日水曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
久保委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 引き続き、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省住宅局長松野仁君、法務省民事局長房村精一君、厚生労働省大臣官房審議官恒川謙司君及び厚生労働省社会・援護局長河村博江君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
久保委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 次に、本案審査のため、本日、参考人として都市基盤整備公団理事中田雅資君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
久保委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
久保委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上和雄君。
井上(和)委員 おはようございます。民主党の井上和雄でございます。
 通常国会では何回か大臣に質問させていただきましたけれども、また今国会でも、ぜひよろしくお願いいたします。
 本日は、建物の区分所有等に関する法律及びマンションの建替え円滑化等に関する法律の一部を改正する法律案について質問させていただきます。国土交通省並びに法務省にお願いいたします。
 四月の通常国会において、本委員会におきまして、マンションの建替えの円滑化法を審議いたしました。その際、区分所有法の建てかえ決議の要件に関して法制審議会で検討中であったということです。したがって、その当時出ていました中間試案というものがありました。その中間試案というのは、例えば、要件としては、マンションの築後三十年とか四十年とか、そういうものがございました。それに基づいて議論をするという、ちょっと議論自体が中途半端な感じの審議で終わったということがあります。
 そういった意味で、やっと法制審議会でも結論が出て、こういう法案が出てきたということで、待ちに待った結論じゃないかと私は思っておりまして、きょうはゆっくりその件に関して議論させていただきたいと思います。
 ちょっと、きのうの質問通告と順番を変えまして、まずこの区分所有法の第六十二条の方、つまり建てかえ決議の要件に関して先に議論させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 ちょっと復習をさせていただきますけれども、中間試案が出たときには、この建てかえ決議の要件、老朽化の場合と、損傷または一部滅失その他の場合というふうに分けてありました。
 老朽化の場合には、甲案、乙案がある。甲案というのが、「建物が新築された日から〔三十年〕〔四十年〕を経過したとき。」乙案というものは、「建物が新築された日から〔三十年〕〔四十年〕を経過したとき。ただし、一定期間の経過ごとに行う修繕の計画及びそれに要する費用として修繕積立金を積み立てておくことをあらかじめ集会で決議し、又は規約で定めていた場合であって、区分所有者に新たに費用の負担を求めることなく当該計画に基づく修繕を行うことができるときを除く。」要するに、修繕の費用をしっかり積み立てていない場合だということだと思うんですね。
 また、損傷、一部滅失の場合の甲案は、「建物の効用の維持又は回復をするのに、現在の建物の価額を超える費用を要するに至ったとき。」乙案が、「現在の建物と同等の建物の建築に要する費用の二分の一を超える費用を要するに至ったとき。」と、割と詳しくあったわけですね。
 それが、最後に出てきたのを見ますと、何か非常に簡潔になって、こういった要件が全部消えて、つまりは、五分の四賛成ができれば決議できるというふうになってしまったわけですね。何でこういうふうになってきたのかということをちょっと法務省の方から御説明していただきたいんです。
房村政府参考人 お答え申し上げます。
 現行法の六十二条では、建てかえ決議の要件といたしまして、「老朽、損傷、一部の滅失その他の事由により、建物の価額その他の事情に照らし、建物がその効用を維持し、又は回復するのに過分の費用を要するに至つたとき」、そういうときに五分の四の多数決で建てかえ決議ができるというぐあいになっております。
 ただ、現実に、ただいま読み上げましたのをお聞きいただいてもわかりますように、なかなかこの過分の費用というのがわかりにくい、そういう指摘がございました。現実に建てかえをするときに、五分の四の多数で決議が成立した後に、反対派の人たちが、この過分の費用の要件を満たしていないということで訴訟を起こすというような事例もございました。そういうことから、区分所有建物の建てかえを円滑に行うためには、この過分の費用の要件が非常に妨げになっている、これを見直すべきである、こういう御指摘を受けたわけであります。そういうことで、法制審議会でも当初から、この過分の費用要件をどういうぐあいにするかということを検討したわけでございます。
 その中で幾つか議論がございまして、中間試案の段階では、この過分の費用要件をできるだけ明確なものにしよう、こういうことで、過分の費用を要するに至る場合というのは、一般的に言えば、建物が老朽化していく、それに伴って建物の価額は下がるのに、維持補修に要する費用は次第に膨らんでいく、こういうことであろうと。したがって、客観的な要件として建築後三十年あるいは四十年というような年数を決めれば、ある程度、過分の費用を要する場合を含みつつ、しかも明確な基準になるのではないか、こういうことが考えられました。そのことから、甲案として、新築された日から三十年あるいは四十年を経過したときと、この年数を経過すれば、後は五分の四の多数決で決めることができますよと、こういう案を考えたわけでございます。
 これに対しまして、単に年数だけでいいのか、マンションによっては維持管理の程度が大分違うのではないか、非常に手入れがいいマンションと相当傷んでしまったマンションを同一に扱っていいのか。そういう意味でいいますと、ここに書きましたように、きちんと修繕の計画を立てて修繕積立金も積み立てている、こういうようなマンションであれば当然維持すべきではないか。そういうことから、このような修繕をきちんと決めているものは除く、三十年、四十年たっていても、そういう修繕計画等を立ててきちんとしているものは除く、こういうことで乙案というものが考えられたわけでございます。
 また、甲案、乙案とは書いてございませんが、当初から、そもそも五分の四という圧倒的多数を要する建てかえ決議であれば、この客観要件というものはなくても十分合理性は担保できるのではないかということから、この客観要件を不要とするという考え方もございました。これは注等に示しているところでございます。
 以上のようなことで、この客観要件については甲案、乙案を示したわけでございます。
 しかし、三十年という年数というのは、非常に明確ではありますが、しかし、三十年たたない間に損傷した場合をどうするのかということが当然問題になるわけでございます。二十年しかたっていないけれども事故等で損傷してしまった、その場合に建てかえが一切できないということでは不都合であろう、こういうことから、損傷、一部の滅失の場合についての基準をあわせて設ける必要があるということで、このイの「損傷、一部の滅失その他の場合」の甲案、乙案というものが出てきました。
 この場合の考え方は現行法の考え方をほぼ維持しておりまして、過分の費用を要するというのをもう少し明確にしようということで、現在の建物の価額と維持補修するのにかかる費用が同じだ、実際の価額と同じぐらいの費用をかけないと補修できないというようなものであれば建てかえた方がいいのではないか、これが甲案の考え方でございます。乙案の方は、そういう現在の建物と同等のものを新築するということを考えた場合の費用の半分程度、維持または回復にかかるだろうという場合は過分の費用だと。
 こういう具体的な姿をお示ししてパブリックコメントをしたわけでございますが、これについていろいろな御意見をいただきました。年数は非常に明確であるという御意見もいただきましたが、同時に、マンションについてはそれぞれ建物ごとに個性があり、維持管理の仕方も違う、年数で一律に切るということに合理性があるのかという御指摘もいただきましたし、老朽化の場合の乙案については、きちんと手入れをしているとおよそ建てかえができないということでは手入れをする意欲をそぐのではないかというような御批判もいただきました。また、損傷、一部の滅失の場合の基準につきましては、年数でやればそういうものが必要になることはわかるけれども、結局、そういう基準をつくると、現行の過分の費用と同じ、不明確であるという問題が生ずるのではないか、こういうような御指摘も受けたところでございます。
 部会でいろいろ議論をいたしまして、そのような問題がいろいろあるのは、やはり客観要件を要求するからではないか、区分所有というのは一つの建物を複数の人たちが共有する状態であるから、一種の運命共同体として団体的な制約をこうむるのはやむを得ないのではないか、そういうことから、建てかえの手続を整備すれば五分の四の多数だけでも建てかえを認めてよいのではないかという意見も非常に強く主張されました。
 特に、政府の規制改革会議等でもそのような考え方が示されたということもありまして、最終的に、部会でその二つの意見が相拮抗いたしまして、部会としてはどちらとも決めかねるということから、三十年の年数要件を付するという案と五分の四だけの多数決でできるという案を、いわば並列した形で部会の案を取りまとめたわけでございます。
 それが法制審の総会にかけられまして、総会の委員の方々が、やはり審議会として法務大臣に答申する以上、できる限り一本化すべきであるということで、総会の場で委員の方々非常に熱心に御議論いただきまして、やはり、さまざまな建物がある中で、三十年という一律の要件を課するということには合理性がないのではないか、また、区分建物のそういう団体的制約を考えれば、そのようなものを五分の四で決めるということでもやむを得ないのではないかという御意見が非常に強くて、最終的に法制審議会総会の答申としては、五分の四の多数決のみで建てかえを可能にする、こういう結論に達したということでございます。
 いささか長うございました。
井上(和)委員 この、マンションを建てかえるか建てかえないかということで私は思うんですけれども、やはり、なるべく建てかえない方がいいと思うんですよ。つまり、直せればあるものを使うというのがやはり二十一世紀の考え方じゃないかなというふうに思うんですね。
 そういう意味で、中間試案の出ていたときの特に損傷の方で、例えば、建て直すのにそんなに費用がかかるならこれはもう建てかえましょう、これはもうしようがないと、ほとんどの人が、直すより、建てかえざるを得ないからやる。つまり、費用の面でも、直すより建てかえた方がいろいろな面から経済効率がいいということで、建てかえるということが結局決まるんじゃないかと思うんですね。
 そういった意味で、私は、やはり、初めに建てかえありきじゃなくて、しっかり修繕積立金を積んで、修繕計画をつくる、そして最終的に、修繕と建てかえの費用を両方きちっと客観的に比べた上で建てかえ決議をするというのが道筋じゃないかなというふうに思っています。
 今回の法案で、そういった建てかえ決議の手続の点も述べてあるんですけれども、ちょっとこれは質問通告していないんですが、修繕の費用に関しては明示しなきゃいけないんですよね。これは、建てかえの費用もちゃんと明示して比べるということになっているんでしょうか。法務省、お願いします。
房村政府参考人 御指摘のとおり、建てかえ決議について集会を開く場合には、その目的となっている事案の要領を通告することになっておりますが、これは建てかえの内容ということになりますので、どのような建物を建てかえる、そして、それにどのような費用がかかるということはもちろん集会の参加者にはあらかじめ通知をする。それと、まさに今御指摘のありましたように、比較する対象として、建物を維持あるいは復旧するとした場合どのくらいの費用がかかるということもあわせて通知をする。そして、そのようなものを踏まえて、集会の一カ月前以上に説明会を開いて十分理解をしていただく。それを踏まえて、住民の方々が十分御議論を尽くして合理的な判断をしていただく。こういうことを考えております。
井上(和)委員 例えば、こういう決議の場合、一番もめるのは、私が思うに、建てかえコスト、または修繕コストというものが本当に客観性を持ったものなのか、恣意的につくられた数字じゃないのかとか、やはりその辺の客観性というのが一番大事だと思うんですね。何かマンション建てかえに絡んで、その費用の数字が正しいか正しくないかということで最高裁まで行ったというケースもあると聞いています。
 では、その客観性というのは、どうやって担保できるんでしょうか。法務省にお伺いします。
房村政府参考人 御指摘のように、訴訟になった事案を見ますと、建てかえる費用あるいは維持復旧をする費用、これの見積もりについて当事者間で相当激しく争われております。そういう意味では、御指摘のように、第三者的なところで何らかの客観的な数字が示されれば、そういう建てかえを検討する人たちにとって非常に有用であろうということは私どもも考えておりますが、そういう意味では、何らかのそういった仕組みができれば、今後、建てかえについては非常に円滑に進むのではないかというぐあいに考えているところでございます。
井上(和)委員 その仕組みは、法務省でつくってもらえるんですか。
房村政府参考人 そういう点では、まさに、建てかえの指針とか、どのような費用がかかるかという非常に専門的知識を要する事柄だろうと思いますが、私どもは、区分所有の法律的な側面は私どもの所管でございますし、それなりのスタッフもおりますが、あいにく、具体的にその費用がどうなるというようなことについては全く能力がないものですから、法務省ではなかなか難しいのではないかと思っているところでございます。
井上(和)委員 それでは、もう大臣の出番だと思うので、お伺いしたいんですけれども。
 前回の円滑化法の審議のときに、当時、たしか佐藤副大臣だったんですけれども、恐らくこれは国土交通省の考えだと思うんですが、例えば佐藤副大臣がこうおっしゃっているんですね。「建てかえの合意形成には一定の年数を必要とする、そんなことを考えますと、築後年数としては三十年を採用することが適当であると私どもは考えております。」と。三沢局長も、「まず一つは、建築後年数というのを客観的に定めていただくということが非常に重要だと思っておりますが、その中で、では建築後年数としてどういう数字がいいのかということでございます。」こういう答弁をされているんですね。だから、かなりこの客観的な要件というのにこだわっていたというわけです。ただ、最終的にこういう結果になったということで。
 今も、では客観的な見積もりをどうやって担保するかという話も出ましたけれども、大臣、もともとは国土交通省は築年数という客観的な要件にかなりこだわっていたのが、最終的にこういうことになったということで、どういうふうにお考えになったのか、それから、さっきの法務省の答弁に関してどういうお考えがあるのか、ちょっと聞かせていただけますか。
松野政府参考人 お答えいたします。
 国土交通省では、マンションの建てかえの円滑化のためには、紛争の種となるような不明確な要件は極力なくすべきであると考えておりました。
 前国会のマンション建替え円滑化法の審議の際には、法制審議会の中間試案で、先ほど御説明が民事局長からございましたが、老朽化の場合の建てかえ決議の要件として、建築後経過年数のみを客観要件とする案も一つの案として示されたことがございます。現行の、費用の過分性という、大変不明確だというふうに指摘された要件に比べて、国民にわかりやすく明快であるとして一定の評価を行ったものでございますが、先ほど民事局長が御説明になったとおりの議論の経過があったと承知しております。
 今回の区分所有法の改正案では、さらに、五分の四という多数決という要件一本に明確化するということでございまして、さらに明確化されるということで合理的なものになったというふうに考えておりまして、マンションの建てかえの円滑化に資するものと評価しているところでございます。
井上(和)委員 では大臣、さっきの法務省の、要するに、そういう入札の見積もりが客観的かどうかということを担保するにはやはり制度が必要なんじゃないかということに関して、ちょっと御感想でも何でも結構ですが、いかがでしょう。
扇国務大臣 さきの通常国会でさんざん皆さん方に御論議をいただき、また御意見もいただいて、あらゆる面で私たちは法制審の答申等を待っておりましたけれども、やっとこういうふうに法務省が決断をしてくださいまして、意見としては、三十年にするのか、あるいは五分の四にするのか、いろいろあるというのは、今局長からお話しになったような事態ですけれども。
 私たちは、より多くの皆さん方が、今井上議員がおっしゃったように、本来は、建て直さないで、メンテナンスをよくして、できる限りあるものを上手に使え、もうおっしゃるとおりなんですね。ですから、私は、基本的にはそういう気持ちはもちろんありますし、多くの居住者の皆さん方も、やはり住めば都ということで、なれているところで、補修しながら、あるいはできる限り積立金を積んで、うまくいくのであれば、一年でも長く使いたいと。私は、当然の御希望であろうと思っております。
 やはり、今後、多くのマンションが建てかえ時期に来ているということを考えれば、きちんと今回法務省が出してくださったことで、初めて円滑化法というものの、両輪が整ったということでございますので、個々の事例ではまだいろいろな御意見があろうと思いますけれども、一応私はマンションの建替え円滑化法というものの、両輪がそろったと思っておりますので、皆さんにできるだけ親切にこのことを周知徹底していきたいと思っております。
井上(和)委員 両輪が出たんですけれども、まだかなり穴だらけだということを当委員会においても御指摘させていただきたいと思っているんですね。
 現実的に、例えば五分の四の賛成を得て建てかえ決議ができるかどうかというのは、かなり難しいのじゃないかなというふうにも私は思っています。だから、では建てかえができないならどうするかというと、これはもう補修ということになるわけですね。
 今回の区分所有等に関する法案では、第十七条ですか、共用部分の変更については、「その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。」これは非常に法文がややこしいんですね。二重否定になっているんですけれども、なるべく二重否定を使わないで法文を書いていただく方が非常に易しいと思うんですけれども。つまりは、大規模な、本当に形状が変わるもの以外は二分の一の単純過半数で決めましょうということですよね。
 では、その「形状又は効用の著しい変更」というものはどういう定義なのかというのは、これはやはりはっきりさせておかなきゃいけないと思うので、ちょっとそこを説明してください。
房村政府参考人 御承知のとおり、共有部分というものにつきましては、廊下、階段等、区分所有者全員が共用にする部分ということが念頭に置かれておりますが、それを変更する場合に、形状または効用を著しく変更する場合に限って四分の三の多数を要求する、それ以外の軽易な場合には過半数で足りるということが今回の内容でございます。
 形状の変更あるいは効用の変更、その著しいものというのは具体的にどんなものかということでございますが、典型例としては、階段室を例えばエレベーター室に変える、これは形状の著しい変更ということになろうかと思います。また、共用部分としての例えば集会室、これを変更いたしまして賃貸店舗にしてしまうというようなことであれば、これは、形状の変更も伴うかもしれませんが、効用として著しい変更があったということになろうかと思います。
 このような著しい変更を要件といたしましたのは、従来の解釈といたしまして、定期的に必要となる大規模修繕、これについて相当の費用を要するものですから、これについては四分の三の決議が必要であるというぐあいに一般に解されていた、それが定期的な修繕を実施する上で非常に妨げとなっている、この定期的修繕を行わなければマンションとしての価値を維持できない、こういうことから、大規模修繕をやりやすくしてほしいという要望が非常に強うございましたので、それを除く趣旨で「形状又は効用の著しい変更」ということを要件としたものでございます。
 したがって、通常の効用を維持するためのいろいろな修繕等は、これには入らないというぐあいに考えているところでございます。
井上(和)委員 つまり、一般的に考えているマンションの大規模修繕、外壁を直したり屋根を直したり、そういうものに関しては二分の一で決められるということですね。
 そこで、国土交通省にお伺いしたいんですが、そういった大規模修繕というのは、つまりは、単純過半数で決議できる大規模修繕というものは、どういうものがあって、具体的にどの程度の費用が一棟当たりかかっているかというのをちょっと教えていただけますでしょうか。
松野政府参考人 お答えいたします。
 大規模修繕は、区分所有法には具体的な表現は定められてはおりませんが、中高層共同住宅標準管理規約におきましては、一定年数の経過ごとに計画的に実施される修繕として、具体的に、代表例として、外壁の塗装工事、屋上防水工事、給排水管工事などとされております。
 マンション管理センターでモデル計算をしておりますが、平均的な姿として、新築の鉄筋コンクリート造八階建て七十五戸のマンションをモデルとして計算いたしますと、一戸当たりの修繕費用は、外壁塗装工事が約五十七万円、屋上防水工事が約十三万円、給排水管工事が約五十万円、これは、全部やりますと戸当たり大体百万円ちょうどかかるというような、そんな感じでございます。
井上(和)委員 先ほど、建てかえ修繕の見積もりの話が出て、見積もりというのはなかなか客観的なものは難しいんだという話をさせていただきましたけれども、この数字も僕はかなりあいまいだと思います。もちろん、マンションもいろいろな形状があるし、築年数なんかにもよりますけれども、現実にはかなりかかっているということを私は聞いております。
 現実に、修繕積立金というのを積み立てていて、大体こういう大規模な修繕、つまり、今おっしゃったような大規模な修繕というのは、修繕積立金の範囲でできるんですか。そしてまた、現在、一般的に修繕積立金というのは、建物の大きさなんかで違ってはいるでしょうけれども、どの程度各マンション積み立てられているのか、もし数字があれば教えてください。
松野政府参考人 お答えいたします。
 先ほど申し上げましたような平均像としてモデル計算がございますが、八階建て七十五戸のマンションをモデルとして積算いたしますと、全体では修繕費用が二億三千六百万円ぐらいになるだろうということでございますが、修繕の積立金が、平均しますと、実態としては一億五千百万円ということでございます。平均的には、一管理組合当たり八千五百万円ぐらい、戸当たりに直しますと不足額は約百十三万円程度になるということで、現在の修繕積立金が必ずしも十分であるとは言えないという状況ではないかと思います。
 このために、マンション管理適正化指針というものを定めておりますが、その中でも、長期修繕計画をしかるべく適正に策定すること、あるいは現在のものを見直していただくということが必要なのではないかということをうたっているところでございます。
井上(和)委員 つまり、恐らく最低だと思うんですよね、百万円以上かかるということですよね。そして、それは修繕積立金では賄えないから別途払わなきゃいかぬということだと思います。では、払えない人はどうするかという問題が当然出てくると思いますね。
 例えば、最近、マンションを買って賃貸に出している人も多いと思います、特に投資目的なんかで。一つの例として、壁が古くなった、外観をちょっときれいにしなきゃいけない、賃貸にするにはきれいにしなきゃ借りる人はいないし、家賃も下がる。ところが、同じマンションに住んでいる高齢者の人は、自分が住んでいるんだから多少汚くたって関係ない、あと十年で死んじゃうんだから、別に古いままでいいよというふうに思うかもしれない。
 ただ、要するに、今回の法律によると、二分の一以上、過半数賛成すれば修繕をするということになるわけですね。
 例えば、これは仮説ですけれども、四十人住んでいるマンションで、高齢者が十九人で、賃貸に出している人が二十一人いて、やはりどうしてもきれいにしなきゃいけないというので、二十一人が賛成して、外壁修理をやろうと。外壁修理というのは約六十万ぐらいですね、恐らくこれは最低だと思うんだけれども。では、年金で、今厚生年金は恐らく二人合わせて月々十五万円ぐらいで、細々生きている方に急に六十万円出せと。当然、払えませんということになる。払わない人はどうなるんですか、修繕決議がされた場合。払えない人に対してどういう取り扱いになるんでしょうか。
房村政府参考人 修繕決議がなされて、その修繕にかかる費用が決まりますと、これは管理に関する費用ということになりますので、マンションの通常の管理費と同じように、区分所有者全員がその持ち分割合に応じて負担するということになります。したがいまして、区分所有者それぞれ支払い義務が生じますので、これを履行しない場合には、民事上の問題としては、裁判上の請求、あるいは強制執行するということになろうかと思います。
井上(和)委員 その後どうなるんですか。詳しく説明してください。
房村政府参考人 その後といいますか、ほかに財産がなければ、最終的には、例えば区分所有権を競売にして、その競売代金の中から払っていただくということになる可能性はございます。
井上(和)委員 つまり、修繕決議が過半数でされて、百万円ぐらいの場合もあるでしょうが、払えなかったらマンションを競売にかけられてしまうということですね。そういうことですね。もう一回言ってください。
房村政府参考人 これは、基本的に、管理費等でも同じでございますが、区分所有者が負っている債務を支払えない場合に最終的に持っているものが競売にかけられるということは、これは修繕費もそうですし、管理費もそうですし、あるいは他の人に債務を売った場合もそうですが、これは、民法の一般原則というか、民事の一般的な考え方としてそうなるということでございます。
井上(和)委員 前回の法案、マンションの建替えの円滑化法案のときには、居住安定ということが大分議論されました。議論の中心は、マンションを建てかえする場合に、要するに反対、つまりお金がないので建てかえに参加できない人をどうするか、これは最も大事な問題だと思います。つまり、こういう大規模修繕にもそういうことが起こり得るんだと私は思うんです。だから、やはり何かの手当てをしなきゃいけないというふうに思うんですけれども、この件に関して国土交通省はどう考えているのか、御答弁をお願いします。
扇国務大臣 マンションでも一戸建てでも、要するに、古くなるというのは、条件は同じでございます。ただ、マンションの場合は、共用という、共同住宅ですから、そういう意味では、きょうも御論議いただいていますように、前回の通常国会で御論議いただきましたように、大変多くの皆さん方の御賛同を得るということが難しい部分も御論議をいただきました。
 今、それぞれお話が出ましたように、どこを修理するためには幾ら、どこを修理するためには幾らと局長がさっき申しました。大体百十万ぐらいから百二十万ぐらいかかるではないかという案が出ておりますけれども、私は、大規模になりますと転出を余儀なくされるということもあり得ると思うんですね。ですから、井上議員はその辺を御懸念なさっていらっしゃって、前の円滑化法のときにも、そのときには何らかの手当てが必要ではないかということを私申し上げましたけれども、マンションの権利を買うということも、これはあろうと思います。
 それから、今法務省からお話ございましたけれども、もしもだめなときには、住まいの権利は持っているけれども、必ずマンションには共用部分、百分の何%か千分の何%という共用部分の所有権がございます、その部分を競売にかけるというふうにさっきおっしゃったので、払えない人は出ていけということではなくて、共用部分、廊下とか階段とかの、何千分の一とか千分の一とか百分の一という部分だけを競売にかけるという意味が、今おっしゃったことでございます。
 私は、むしろ、今大規模でどうしても出ていかなきゃいけないようなことがあるのかどうかということですから、この間も円滑化法の御論議のときに申し上げましたけれども、マンションの管理の適正化に関する指針というのをつくっておりますから、そのときには、消費者そのもののマンションの購入はしないということですけれども、御指摘のように、起こってはいけない実態として、今段階では発生しておりませんけれども、そういうものがあったときには、一戸当たりの不足分というのは、今申しましたように、百十万から百二十万、いわゆる百万前後でございますから、それぞれ無担保で融資を受けることができる、そういう手だてをすることが必要だし、マンションの共用部分のリフォームの融資、そういうものを私たちは十分に対応してこれが可能とし、また、国としてもその制度を積極的に支援していくということで皆さん方に不安を与えないようにしようという、前回から御論議いただいていますし、今もその考え方に変わりはございません。
井上(和)委員 私は、実は法律の専門家じゃないものですから法律のことはよくわからないので、もう一回民事局長に御答弁いただきたいんですが、払えない方の場合は、今大臣がおっしゃるように、共用部分だけを競売にかけるということでよろしいんですか。自分の住んでいるところを競売にかけられるということはないんですか。
房村政府参考人 あるいは私の説明の仕方がちょっと悪くて大臣に誤解を招いたのかもしれませんが、競売にかける場合には、専有部分、共用部分含めて一緒に競売にかけるということでございます。どうも私の説明の仕方が不十分だったようで……。
井上(和)委員 いや、この件に関しては質問通告していないので。別に大臣も、法律の専門家じゃないですから、弁護士じゃないですから。
 つまり、そういう問題がある。現実に、今大臣がおっしゃったような、お金を貸すとか、例えば八十歳の人に、お金を貸しますから、百万円貸しますから修繕してくださいといったって、それはやはり無理ですよ。だからそれは、融資をして、亡くなったらその建物をもらうとか、何かリバースモーゲージみたいなものを考えていかないと、やはり大規模修理というものは進んでいかないと思うわけです。
 実は、日本のマンションが、基本的に修理というのは非常に難しいんだ、そういうことがあるから建てかえざるを得なくなるということがあると思います。
 ちょっと図を使って説明させていただきます、皆さんのお手元にお配りしてありますので。
 例えば、今のマンションというのは、やはり配管が専有部分の中を通っているわけですよね。きのう法務省の方に御説明をお伺いしたら、各住戸の中に、右上の方にマンションの見取り図がありますけれども、こういうふうに赤いところに排水管、給水管があります。つまり、専有部分に共用部分が入っているということですね。きのうのお話だと、この部分、パイプのところだけは共用なんですよという御説明でした。しかし、現実にはパイプを囲んでいる壁がある。壁は専有なんですよね、民事局長。
房村政府参考人 説明は難しいんですけれども、壁として区分所有の仕切りで構造をなしているようなものは共用部分、ただ、その内側、面している表面の部分は専有部分だ、こういうことでございます。
井上(和)委員 つまり、これは上から見た図なんですけれども、パイプがあって、その一番外側は専有部分なわけですよ。つまり、共用部分を取りかえるのに専有部分を壊さなきゃいけないでしょう。そういう構造になっているわけですね。だから、聞くと、現実にこういう排水管のパイプを交換するのは不可能だということを言っている設計者もいました。つまり、もとから日本のマンション自体が、修繕をして長く使おうという設計思想でできていない。
 最近やっと出てきたのが、一部のマンションでは、要するにスケルトン・インフィルといいまして、SIですよね、こちらにある。つまりは、こういう従来型のマンションのように、共用の給水管、排水管が専有部分を走っているということはない。つまり、共用は共用で排水管が別個に走っている。そういうものが今できつつあるんだけれども、現実には、そのマーケットシェアというのは一%以下なんですね。これだったら、排水管、一番壊れやすいのはパイプですから、パイプが壊れてもスムーズにかえられる。そしてまた、今現実に起こっているような、こういうふうに共用部を直すために専有部を壊してやるということもないわけですね。
 例えば、もし、おれは決議に反対したからうちの専有部に入れさせないということになったらどうなるんですか、民事局長。
房村政府参考人 区分所有法におきましては、共用部分の維持管理のために必要があれば専有部分に立ち入れる、こういう規定がございますので、それを用いて入るということになろうかと思います。
井上(和)委員 つまりは、強制的に入ることもできるというわけですね。大臣、日本のマンションの構造というのがもうそういうことなんだと、ぜひ御理解していただきたいと思います。
 今の件で、これはちょっと手元にお配りしていないので見にくいかもしれませんが、これが排水管で、これは天井なんですね。これはコンクリートにもう埋め込まれているわけです。そして、その上をモルタルで固めてある。つまり、もともと交換するという思想でできていない。
 だから、やはりこれを変えていかなければ、今ずっと議論しています、とにかく長く住めるマンションでなるべく修繕していく、そういうものができない。だから、根本的にこれまでのマンションの構造そのものを見直していかなきゃいけないというふうに思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
扇国務大臣 技術は日進月歩でございまして、新しいものは新しい仕様でまた知恵を絞って新しくなっていきますけれども、今問題になっておりますのは、古いマンション、もう建てかえ時期に来ているマンションというお話をしておりますので、そういう意味では、古い形の、あるいは今おっしゃったような、本来はこういう新しい方式をとるべきだ、けれども従来は、こういう難しい、天井に入らなきゃいけないような構造になっているというのは、私は時代の流れだと思うので、いたし方ないと思います。そういうところは、昔は安くお買いになったということもあります、設備が整ってきれいなところはやはり高いわけですから。
 そういう意味では、各マンションが管理組合もつくっておりますし、マンションの管理士というものも皆さんに法案を通していただいて、自分たち素人でわからない部分はマンション管理士に意見を聞くということも法律としてつくっておりますので、そういう意味では、今までの、古いところに問題があるというのは、建築構造そのものに問題がある、個々の皆さん方のせいではない、物の時代的な流れでございます。
 そういう意味では、できるだけ管理組合で御協議いただいて新しい方式に変えるなりなんなり、それは私は、今回、両々相まったと私申しましたけれども、両輪になりましたので、法的にも皆さん方で御協議いただいて、より多くの皆さん、一人二人反対なさるというのはもう当然あると思いますけれども、より長く使うためには、人間も同じでございまして、時々古くなった部品をかえる方もいらっしゃいますので、そういうことで、点検をしていって古い部品をかえて、そして、今住んでいるマンションをより長く使えるように、やはり組合として御協議いただくのが私は一番いいだろう。
 その費用に関しては、先ほども申しましたように、るる御事情があろうと思いますけれども、できる限り積立金というものを増していって、私は、マンションによってより充実した快適な生活が送れるように配慮すべきであろうと思っております。
井上(和)委員 大臣、お言葉なんですが、行政が時代の流れに流されているんじゃ困るんですね。やはり、行政というのは時代を先取りしていかないとだめだと僕は思うんです。
 今、こういう問題点がわかっているわけですよ。問題点がわかっていながら同じようなものをつくり続けている。つまりは、いずれは建てかえればいいんだと、排水管までかえるとは余り考えていないからそういう設計思想になるんじゃないですかね。
扇国務大臣 物によると思います。私もマンションをたくさん知っておりますけれども、いいところもあれば、あるいはおくれて、昔建てて古くなっているものもございますので。
 これは、建築許可を受けるときにみんな出しているわけですから、各地方自治体でこれを許可しますけれども、我々としては、より皆さん方に、こういう問題が起こらないような工法をすべきであるというのは当然のことなので、これはもう専門家がもっと真剣に考えていることだと思います。井上議員がおっしゃったように、より快適な、より今後長もちするような建築の設計法というものをそれぞれが適用し、それぞれが取りかえが可能な、あるいは良質な知恵を出していくべきだと思っております。
井上(和)委員 私は、やはり、専門家だけじゃなくて、大臣にしっかり考えてもらいたいと思います。なぜなら、大臣は日本の建築行政の最高責任者であるからです。
 だから、ぜひ考えていただいて、やはり百年もつ、長くもつものをつくる、そして修繕が容易なものをつくる、常に、スクラップ・アンド・ビルドじゃなくて、本当に社会資本として優良なものをつくっていくというふうにやはり建築行政を転換していかなきゃいけないと思うので、ぜひ、専門家の皆さんとともに、指導していただいて、やっていただきたいとお願いしたいと思います。
扇国務大臣 私、マンションをたくさん知っているんです。それは、両親もマンションに住んでおりましたし、しゅうと、しゅうとめもマンションですし、そのマンションはすべて私が見て選んだマンションでございますから、かなり詳しいと思っております。新旧知っております。
 けれども、マンションの中、いろいろ住む人の心がけによって物すごく違うんですね。ですから、今パイプの話をなさいましたけれども、絶えずパイプが詰まらないように気をつけている個人、少なくとも、マンションだから共用部分は余り関知しないんだというんじゃなくて、それぞれの自分のうちだという、その個人の専門部分のメンテナンスというものも、個人の心がけによって、全体のマンションの耐久年数というのは物すごく変わってくる。そういう意味では、全部依存するのではなくて、マンション組合できちんと個々のメンテナンスのあり方、使い方、ごみの出し方、掃除の仕方までお互いが協力する。
 マンションは共同住宅ですから、そういう意味では、特に組合の規程、それぞれおつくりになっています。定款がございます。ですから、その定款を守って、より共同で、心を合わせて、同じ共同住宅の住民として、より長もちするように、外的なものは当然でございますけれども、内的なものも、マンションに住む心得というものは、定款に書いてあるのをよく組合で論議なさって、私は、ぜひ長もちするようにしていただきたいと思っております。
井上(和)委員 SIは、スケルトン・インフィルというのは、これからのやはり中心になると思うんですけれども、こういう構造を国土交通省として推進する気はあるのでしょうか。
松野政府参考人 委員御指摘のSI住宅でございますが、スケルトン、骨組みと、インフィル、その中の内装等を組み合わせるということでございますが、これは、先ほどから御指摘になっておりますような、寿命の短い部分を簡単に取りかえられるというような概念も含めて、大変重要な考え方だと思います。これまで、国土交通省におきましても、このSI住宅の研究開発を推進してきております。総合技術開発プロジェクトでも、既に研究を進めてきております。
 こうしたマンションの普及促進のため、このスケルトン住宅、SI住宅の指針を既に作成をしております。また、補助事業によりましても、実際の事業を支援するという事業を用意しております。また、住宅金融公庫の融資の基準においても、この耐久性に配慮した優遇措置を用意しております。また、住宅の品確法に基づきましても、住宅の性能表示の中でそういった高い耐久性を持ったものについての表示制度もできておりまして、それに基づく情報提供を行うといったことを今実施しております。
 引き続き、御指摘のようなSI住宅の普及を推進してまいりたいと考えております。
井上(和)委員 時間なので終わらせていただきたいと思いますが、幾つかの問題点を私きょうの質疑の中で指摘させていただきましたので、ぜひ大臣、各問題点を検討していただいて、よりよいマンションができるように、そして快適な居住環境を国民に与えるように、よろしくお願いいたします。
 どうもありがとうございました。
久保委員長 大谷信盛君。
大谷委員 民主党、大谷信盛でございます。
 質問に入らせていただきます前に、一言。
 与党席の方の議員の皆さん、全然おられないんですけれども、この法律というのは二十一世紀の住宅環境を大きく左右する法案でございまして、しっかりと御出席をいただきたいというのを、これは委員長、厳重に抗議をさせていただきますので、よろしくお呼びいただきますようお願い申し上げます。
 時間がもったいないので、質問させていただきます。
 民主党、大谷信盛でございます。
 きょうは、井上和雄議員に引き続き、このマンションの建替え円滑化法、また区分所有法の改正についての議論をさせていただきますが、今、井上議員がテクニカルな部分からたくさん、五分の四で決議がされて、出ていく五分の一の人のこれからの生活というものがどうなるのかという質問を……(発言する者あり)
久保委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
久保委員長 速記を起こしてください。
 続けてください。
大谷委員 それでは質問を続けさせていただきます。
 井上和雄議員の方からテクニカルな質問がいっぱいございましたが、私も視点は同じでございまして、そこの部分を強調して、させていただきたいというふうに思います。また、建物という関係から、少し、アレルギー対策、シックハウス症候群についても後半では質問をさせていただきたいというふうに思っております。
 まずもって、きのう、扇国土交通大臣とは、空港、航空行政について御議論をさせていただきました。一つ誤解があるのかなと思っておるのは、後半の、世界じゅうの人、金、物、情報をこの国に集めていくためのまちづくり、国づくりをしていかなければいけない、そのための空港というものはしっかりと整備をしていかなければいけないという部分については、全く同じものを目指しているんだということはぜひとも御理解をいただきたいというふうに思っております。その手法について、こっちがいい、あっちがいいという議論はこれからいろいろな形でさせていただこうというふうに思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。
 まず最初、扇大臣にお伺いしたいのですが、引き続き井上議員と同じ質問なんですけれども、これ、やはり一番の問題は、全員参加でなく、例えば五分の一、たった一人でも二人でもいい、その方が反対をし、出ていかざるを得なくなった、もしくは、何らかの形で大きなローンを組んでそこに残らざるを得なくなった。もっとひどいのは、例えば、マンションは当時買えたけれども、その後いろいろな人生の紆余曲折を経て、国民基礎年金はおろか、生活保護でもってそこの場に暮らしている人がおられるというようなことだって、これから出てくるというふうに思うんです。
 そんなふうに、ある意味、経済的、財政的余裕、また将来性のない方が反対をして、それでも決議されてしまったような場合、どうなるのか。いろいろな支援のスキームというものがあって、それなりに裁量の中で運営されていくのかというふうに思いますが、まずは、大臣として、そこは、そんな追い出すような法律ではないんだということをしっかりと位置づけていただきたいというふうに思うのですが、どのようにお考えでしょうか。
扇国務大臣 先ほどからの井上議員に続きまして、やはり私は、皆さん思いは同じということで、重ねて大谷議員がこの件についてお尋ねなんだろうと思います。
 住んでいる人が一番不安に思い、なおかつ、そういう生活環境の変化というものに遭遇している皆さん方が中にはたくさんいらっしゃる。今、世の中、マンションだけではなくて、いろいろな方が生活の変化に対応するのに苦慮していらっしゃいますから、そういう意味で、特にマンションというのは共同住宅ですから、多くの皆さんができるのに、自分のところだけ物が言いにくい、そういう環境も必ず皆さん気分的にお持ちだろうと思います。
 けれども、それに対して我々は、できる限りのことをしよう、合意形成する中で、何としても皆さん方のその経済的な負担を軽減する観点、そういうものを考慮していこうということで、いろいろなメニューといいますか、対応をしております。
 中では、国庫補助というものもあるでしょうし、また、住宅金融公庫の融資、あるいは税制によって支援をしていくという方法もあろうと思いますけれども、万一建てかえに参加できず転出を余儀なくされる、そういう方も中には出てくると思います。
 けれども、そういう方には公営住宅の優先入居、これも私たちは大いに御推薦申し上げ、そして御配慮も申し上げる。また、移転料の支払いに対する補助、これも私たちは行おうということで、マンションの建てかえに関する支援措置というものはたくさん用意して、それぞれの皆さん方に選択いただいて、より自分たちに対応できるような御援助をできる限りしていきたいというふうに配慮をしておるところでございます。
大谷委員 わかりました。ぜひとも、絶対に、追い出して建てかえのために泣く人がいないような、そんな法律でやらなければいけないという確認をいただいたものというふうに思います。
 今度は、逆さまの考え方で質問をさせていただきたいというふうに思うんです。
 これで建てかえがどれぐらい進んでいくのか、円滑化されていくのか、非常に重要なポイントだというふうには思うんですが、反対に、例えばマンションが古い、マンションが、昔はいい場所と言われていたけれども、どんどん土地の開発があって、マンションのロケーションが余り市場の中で売れないようなところになってきた。居住者の方もどんどん消えてきた。ワンフロアに半分ぐらいしか住んでいない十階建てのマンションとかというようなものがこれからたくさん出てくるというふうに思うんです。
 そうなると、確かに、暮らしていないけれども、だれか所有者の方がおられて、建てかえだという議論が出たときには、いや、いいですよとか、住んでなくてもおられるかというふうに思うんですが、反対に、住んでいる人は、もういいですよ、建てかえなんかしたくないということで、そのまま、五分の四どころか、建てかえ議論というものが出ずに建物がどんどんどんどん古くなっていってしまうようなこと。
 要するに、この法律ができても、マンションの建てかえができないような、マンションのスラム化したような場所が出てきた場合は、どんなふうにして、これは、住んでいる人、崩れていくマンションに住み続けなければいけない、もしくは出ていってしまう、それで、所有権だけは残るけれども空き家になってしまうというようなことというのは考えられるというふうに思うんですが、そういう古い、建てかえする気がないマンションというものはどんなふうにして再生をしていくのでしょうか。これは局長にお願いしたいと思います。
松野政府参考人 お答えいたします。
 老朽化したマンションで転出者が増加する、空室が目立つといった事例の場合どうかということでございますが、建てかえの経験をされた方のお話では、空き室が多くなったからといって特に難しくなっているということではないということだそうでございます。むしろ、区分所有者が、住んでおられる方が少ないということになりますと、仮住居の確保だとか居住安定措置については負担が軽くなるというようなことがあるんだそうです。そういったことで、空室が多いからといって建てかえが困難であるということではないというふうに認識されているところでございます。
 空室が多い少ないにかかわらず、区分所有者で建てかえの合意形成を図るということが前提でございます。このために、合意形成のためのマニュアルの作成、あるいは今後、地方公共団体の公的機関を中心としました情報提供、相談体制の整備を図るというようなことを含めて、合意形成の促進を図っていきたいというふうに考えております。
大谷委員 わかりました。
 この時点では予測しがたいような状況というのはきっと出てくると思いますので、それは裁量の中なのかもしれませんが、ぜひとも見直しをしていく形で、建てかえ、もしくは修繕、再生というコンセプトを持って直していかなければいけないのかなというふうに思っています。
 重複しますので、どんどん次に質問を進めさせていただきます。
 私は、一番やはり大事なのはガイドラインだというふうに思うんですが、その前にもう少しだけお金の話をさせていただきたいというふうに思うんです。
 老朽化したマンション、ある意味スラム化したマンションの場合、建てかえをするという合意形成ができた、しかしながら、大抵、それだけ古いマンションですと、三十年、三十五年、いわゆるローンはもう終わっている場合がほとんどだというふうには思いますが、また別の部分でローンをしている、例えば子供の教育、学費ローンであったり、また別のところで何か御商売で失敗をしてローンを払い続けている、借金があったりする、そんな人がこの建てかえのときにローンを組もうとしたら、二重ローンになるわけです。
 今でさえ個人でなかなかローンが組めないような貸し渋りの現状の中で、建てかえのために新たにローンをするときに、この古いスラム化したマンション、場所が悪いから資産価値が低い、売れるかどうかわからない、そんなところにお金を貸して、建てかえを支援してくれるような金融機関というのがあるんですかね。その辺の部分の何らかの保証とかがなかったら、建てかえしたくても、今度は二重ローン、ローンが組めないということで、進まないんじゃないかなというような懸念が出てくるのかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
松野政府参考人 マンションの建てかえに当たって、従前のローンが残っているというケースがあるのではないかということでございます。
 一般的には、建てかえが実施される、築後相当年数がたっておりますマンションの場合は、そのマンションにつきましては、区分所有者の多くの方々はローンの返済をほぼ終えているというケースが大部分だと思います。また、土地の持ち分については既に所有しております。必要な資金はマンションの建設費に相当するものだけでございまして、上物の、いわばコストがかかる、そのローンが必要だということでございます。
 それで、土地の持ち分と新築される建物を担保に融資を受けるということは可能であるというふうに考えております。特に住宅金融公庫では、都市居住再生融資という、マンション建てかえの際にも使えます融資制度を用意しております。建設費の八割まで最優遇金利で融資をする。お年寄りの場合は、当面、収入が少ないということで、金利だけ払っていただく、死亡時に一括償還するというような制度も用意しております。
 そもそも全体のコストを安くするということが皆さんの負担も少なくなるということで、その建てかえ事業そのものに対する、調査設計費から始まって上物の共同施設整備費に対する補助などを行ってコストを安くするというようなこと、それから、税制上の特例措置といったものを講じまして、全体としての経済的負担を軽減する、あわせて、先ほど申し上げましたような融資制度も用意しているということでございます。
大谷委員 何が言いたいかというと、リバースモーゲージの話をさせていただきたいわけですけれども、自分自身ローンを組んで、例えばお子様がおられるけれども、そのマンションに将来住む気もないし、もしお母さん、お父さんがお亡くなりになられたら、さらであろうが老朽化しているものであろうが、売って財産としたいというふうに思っている。そんな中で、新しいマンションにしますよということで幾ばくか、住宅金融公庫さんから八割、これは幾らかちょっと後で教えてほしいんですけれども、お借りをして、建てかえた。しかしながら、お亡くなりになられたとして、そのローンが残っている。このローンはリバースモーゲージみたいな考え方で、その息子さんたちには関係なく、持っているマンションの部屋を売ることによって全部きれいに償還できるんですか。
 要するに、親としては、子供に資産を残したいなと思って、マンションを建てかえることに賛成をし、ローンを組んだ。住宅金融公庫さんに助けていただいた。しかしながら、ある時期にお亡くなりになった。子供さんは、全然その地域に戻ってくることもなければ、親の住んでいるマンションに住む気もないし、所有する気もない。売りたいといった場合、こういう場合はどうなるんですかね。リバースモーゲージの発想で、ちゃんと何の不便もなく息子さんには処理ができるわけですか。
松野政府参考人 その際には、死亡時一括償還ということでございますから、償還していただくのが原則でございます。ただし、その相続される方が、別途亡くなられた親の方の金融資産があれば、その中から払っていただくことも可能ですし、あるいは御自分のあれから払うということもあるでしょうが、場合によっては、そういうものがどうしてもないというときには、その資産を処分するということはせざるを得ないということだと思います。
大谷委員 反対のケースの場合はどうなるんですか。ローンを抱えました、それで五分の四で決議したときは、建てかえしよう、こんな形でやろう、どうせやるんだったらすごいものをつくろうじゃないかということで、その親御さんは、将来自分の子供たち、今は遠くに住んでいるけれども、ここが生まれ育った場所だし、マンションを、今一つの部屋を二つにするぐらいの大きさにして、ちょっとお金をかけて子供たちのために残してやろうというつもりで、すごい大きなものを居住者全員でつくったとしますよね。それだけに、さらを買うに等しいぐらいのローンがもしかして必要になってしまった。それで、返していっている。しかしながら、市場価格の中では、なかなかそんな売れるものでもない、また魅力ある場所にないというような場合、売ってもローンが残ってしまったりするわけですよね。
 全然関係なく、親心でやっていただいたんですけれども、その子供さんにしてみたら、ローンがどんと来ちゃうというわけになりますよね。その辺の線引きみたいな、事前の協議みたいなものは何か考えられているんですか。
松野政府参考人 恐らく、そうした、お子さんと一緒に住むような、二戸分のようなかなり大きいものを要望されて、かなり大きな借金をする。本当にそういう借金をされて、一括償還ということで処理される場合に、返せなければ処分する必要があるんですが、通常、二世帯分の大きな住宅を、二戸あるいは一戸で大きなものということであれば、例えば親子で支払っていくというような親子ローンとか、そういった公庫融資制度もございますので、そういったものを活用しながらそういう対応をしていただくということもあるのではないかと思います。お一人だけで巨額な負担というのではなくて、お子さんも一緒になって親子で返していくというようなことがあり得るのではないかと思います。
大谷委員 核家族化しておりますので、実際にいろいろと聞いて回ると、うちの親が何か建てかえでそんなになったっておれは関係ないのでと言っている人も、これからの核家族社会の中で、あってはいけないんですけれども、出てきたりするので、いろいろなものを想定して柔軟に対応していけるようなものになっていかなければ、運用の中でですけれども、いけないというふうに思っています。
 今度、反対に、建物の大きさについて話をさせていただきたいんですが、容積率なんかで、昔は全然今と規制が違いましたので、例えば二五〇%とか三〇〇%の容積率でマンションが建っているようなところというのはたくさんあります。しかしながら、今は二〇〇%になってしまって、新しく今建つマンションは二〇〇%で建っている。
 この三〇〇%の率で建ったマンションが建てかえをするというとき、周りの土地はもう買えないというようなときは、次つくるのが二〇〇%の容積率でつくるんだったら、簡単に言うと三分の一の人はもう絶対に出ていかなければいけない、もしくは、部屋のスペースが今住んでいるものよりか三分の二の大きさになってしまう。もし高くつくれるんだったらそれでいいけれども、そんな場所でなかった場合は、わざわざお金を出して新しいものをつくるのに、狭いところ、また、反対に追い出される人が出てくる。
 これは、五分の四で多数決で決める以前に大もめにもめますし、また、決まってから、ではだれが出ていくの、だれが狭い部屋にするの、だれが今までどおりの部屋をとるのとかということで交渉が進まず、長期化するようなおそれがあるというふうに思うんですが、この場合はどんなふうにして円滑な建てかえ、再生、修繕というものに持っていくんですか。
松野政府参考人 お答えいたします。
 委員御指摘のようなケースがあると思います。着工後に都市計画の容積率規制がかかったということで、現在は容積率規制に適合していない、いわゆる既存不適格というものがございます。その建てかえの場合には、一般的には従前の床面積を下回る規模にならざるを得ないということがありますけれども、一方で、建てかえに際して、ある程度の床を確保したいということがございます。
 この場合の有力な対応策として、空地の整備をしながら市街地環境の整備改善に応じた容積率緩和を行います総合設計制度というのがございます。例えば東京都におきましても、マンションの建てかえというのが大変大きな課題だというふうに認識していただいておりまして、既存不適格マンションの建てかえに際してこの総合設計制度を活用していきたいというふうに表明されております。これによってかなりの容積率をある程度確保できるというふうな運用がされるというふうに考えております。
大谷委員 済みません、僕、ちょっとわかりにくかったのですが、総合設計制度、これは、要は、では、容積率はそのままなんですか。
松野政府参考人 この総合設計制度と申しますのは、いわゆる都市計画で決めました容積率、基準容積率と言っておりますが、これを通常は守らなければいけないんですが、ある程度の敷地の中に、いわば公開空地というような表現をしておりますが、そういった公開空地を用意して、良好な建築計画を前提として計画される場合には、特定行政庁がその計画を見て容積率を大幅に緩和するという許可制度があるわけです。それをこのマンション建てかえについて、東京都は積極的に既存不適格についても対応できるような活用をしていきたいというふうな表明を既にしております。
大谷委員 要は、容積率、マンションの建築許可ということで、自治体さんの方が許可を出す出さないというのを決めるんですけれども、東京都さんはそうかもしれませんが、何らかの形で、全国的に建てかえということで円滑化を図るのであれば、それなりの安全性というもの、また、その地域が目指しているまちづくりを損ねない範囲内で容積率を従前どおりにするとかというような方針なりガイドラインなり何か出さないと、これまたやはり、せっかく法律をつくっても、建てかえ、もしくは進まないのではないかなというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
松野政府参考人 委員御指摘のとおりだと思っております。
 東京都だけでなく、全国の自治体でこういった有効な制度を使ってマンション建てかえを支援するということを今後いわば公共団体に要請していくということにしたいと思います。
大谷委員 まちづくりは、地域の自治体、住民が連携してやっていくものだというふうに思いますので、そことの兼ね合いを踏まえた上で、ぜひとも、古くなったものを新しくかえていくときには、地域に権限があってということで進めていただけたらというふうに思っています。
 ふと今気になったので、もう一つテクニカルなことを教えていただきたいんですけれども。
 僕が地域で目をつぶって自分の地域を思い出しますと、ああ、あそこももう三十五年、あそこは四十年、いわゆる、一棟、二棟、三棟、四棟、五棟、六棟、十棟ぐらい固まったところがあって、それもまとめてかえていけるんだというのが今回の大きな改正の一つの売りになっておるわけでございますが、そんな場合、一棟ずつやるわけではありませんよね。やはり大きさや中身の、福祉施設を入れるだとか商業化するだとか、いろいろな発想でもって多分建てかえされるというふうに思いますので、十棟ぐらいの人がまとめてどおんと、建てかえの間どこかに一年ないし一年半は住まなきゃいけないわけですよね。
 しかしながら、市の中で住民税を納めていますから、十棟ぐらいの人が出ていったら相当な世帯数が抜けるわけでありまして、そうすると、よその市でしばらくおられると、そこで住民税を払わなかったらいけないだとか、小さな話でいうとありますが、要は、こんな大量に、十棟分の人の世帯の仮の住宅を供給できるのかな。自分のところから一時間も離れたところ、全然違う地域に住んでいたら生活に大きな支障があるんですけれども、そんなのは全く考えていないんですか。円滑にそれなりに代替住宅をしばらくの間提供するような御支援というか、何か窓口というか、それはおのおのがやれということなのか。何かもし考えているスキームがあったら教えていただきたいんですが。
    〔委員長退席、赤羽委員長代理着席〕
松野政府参考人 大規模な団地の建てかえをする場合ということでございますが、もちろん、その建てかえ期間中の仮住居の確保ということが大変重要な課題になるかと思います。
 さきの通常国会で成立いたしましたこのマンション建替え円滑化法でも、国土交通大臣が定める基本方針というのを定める予定になっておりますが、その中でも、公共賃貸住宅の活用といったことを、仮住居として活用するということを盛り込むことを考えております。
 今御質問がございましたように、大量に必要なのではないかということがあり得ると。現実には、少しずつ建てかえるケースの方が多いのではないかと思いますが、かなりのニーズがあった場合には、もちろんストックの公営住宅等を活用するということが十分考えられますし、その他に、従前居住者のための賃貸住宅制度、これを建設する場合もございますし、あるいはもう既に建っている民間住宅を借り上げる、そこに入っていただいて、例えばお年寄りの場合は家賃補助をするとか、そういったスキームも用意しております。可能な限りこうした制度をフル活用していきたいというふうに考えております。
大谷委員 わかりました。ぜひとも、これも運営の中で自治体と共同するような形でやっていただけたらというふうに思います。
 もう一つ、本丸の質問をさせていただきたいんですけれども、これは五分の四の多数決だけで決められちゃうわけですよね。
 素人が、自分の家のベランダが外に出ていて、雨水に三十年間さらされて、はげてきて少し鉄骨が出てきたからもうおれのマンションはだめだと言う人もいれば、専門家から見れば、こんなもの、全然外の面の話であって、中身はもうしっかりしていますから全然大丈夫ですよと言う人もおられる。いや、建てかえをぜひともうちにやってほしいと思う業者さんは、ほら見てください、もうこんなにはげているんですよ、このセメントはと言う方もおられる。
 要は、素人にとっては、建てかえの時期に来ているのか、建てかえせずとも修繕で済むのかというようなことは全然わからないわけですね。それだけで、何らかの話でみんな集まって、建てかえしませんか、どうしましょうかということで、五分の四の多数決で、よし、建てかえすることになるというふうに決まってしまっていいのかなというふうに思っているんです。
 何らかの形のガイドライン的なものが必要なのかというふうに思いますが、その辺はいかがお考えでしょうか。
松野政府参考人 これは、やはり建てかえをする際に、そのまま必要な改修をすべきか、あるいは建てかえをすべきかということについては、重要な判断があるんだと思います。そのために、技術的指針というのを今後定めるということを、先ほど申し上げました大臣の基本方針の中でも盛り込んでいきたいと考えております。
 どのぐらいマンションが老朽化しているのかという判定の指標を示す、あるいはある水準のものに改修する、あるいは建てかえをする、その際に、どちらがどういった費用になるのかという積算の方法も、技術的な検討が可能なように、あるいは費用の検討が可能なような技術的な指針を示すといったことを考えております。
大谷委員 その技術的な指針を示すというのは、それは業者さんが見てわかるようなものですか、それとも、素人の我々が見て、ガイドラインを読み、自分のマンションを見て、見比べて、それなりに想定できるような内容のものが主になっているのか、どちらなんですか。どんなガイドラインができていくんですか。
松野政府参考人 基本的な考え方は、管理組合が専門家の協力を得て、しかるべき手順によって建てかえか修繕かの判断を行うための考え方、手順、チェックシートといったものでございますので、全体の考え方は、専門家でなければわからないというものではないものにしたいと考えております。
 構造安全性あるいは防災安全性等、それから整備水準、居住空間としての水準の設定とか、それから老朽化の程度はどう判定するかといったマニュアルみたいなもの、これは非常にわかりやすくつくっていきたいと考えております。それを含めまして、費用の比較もできるようなものを、マニュアルを制定していきたいと考えているわけでございます。
大谷委員 そういうガイドラインがいいと思うんですが、その中に書かれている内容なんですけれども、それは必ずしも建てかえありきではなくて、再生というか修繕というか、補強工事であと例えば五十年もちますよとかというような選択肢も当然含まれているんですよね。建てかえの時期だけの話じゃないですよね。その辺はどうですか。
松野政府参考人 その技術的な指針の中では、先ほど申し上げましたが、老朽度の判定から始まって、それぞれ、建てかえをする場合、修繕をする場合ということを比較して、なおかつ総合的な評価をして比較するということを前提に考えております。したがって、組合員の方々にも十分納得していただけるような内容にしたいというふうに考えております。
大谷委員 次のバッターである阿久津議員の方から中心に議論されることだというふうに思うんですけれども、この法案全部通しますと、円滑化していくんだろうなというふうに思うんですが、目的は、あくまで、いわゆる古くなったマンションに安心、安全をして暮らしていけるということが目的ですから、建てかえだけではなく、再生、修繕というコンセプトをしっかりと持っていなければいけないのではないかなというふうに思っています。
 マンションを建てかえするのは、多分大企業の工務店さんでしょう。しかしながら、修繕また再生ができるのは地域の工務店さんだというふうに思います。ぜひとも、まちづくりをしていく上で、地域のマンションを地域の工務店で直していくというような形が僕は一番美しいのかとも思いますし、また、古くてすばらしい景観の建物が残っていくことだって、まちづくりの中では、自治体さん、その地域の住民さんにとっては、そんな形でうちの町をつくっていきたいなという考え方も出てくるというふうに思いますので、必ずしも建てかえが目的ではないんだということをしっかりと明記できるようなガイドラインであってほしいなというふうに思っています。
 そこで、このガイドラインというのは、一回できました、それで見ます。それで、また建築技術の革新とともに、あるときまでは建てかえせざるを得ないようだったものが、その後、今三十年たったマンションと、あと十年後に三十年たつマンションでは、建築法も違いますしコンセプトも違っていると思いますので、建てかえせずとも、それなりに今の技術革新にあわせて、補修、修繕、再生だけで賄える場合も出てくると思うのです。ですから、ガイドラインもそれなりに変わらなければいけないというふうに思うのですが、その辺の方針みたいなものはどうなんですか。
松野政府参考人 最初に委員御指摘になりましたとおり、これは、この法律そのものが、要するに建てかえの方に強く誘導するという性格のものではございません。大臣の定める基本方針の中でも、建てかえだけではなくて、適切な維持管理が重要なんだということも述べていきたいというふうに考えております。
 五分の四で本当に皆さんが建てかえの決議をされて、そういう意思決定をされたときは、このマンション建替え円滑化法案に従ってスムーズに事業がやっていけるという手続等を定めたものでございますので、そういったことは、建てかえに強く誘導しようとするような考え方でいるわけではございません。
大谷委員 その御答弁を聞いて安心をいたしました。
 次に、法務省さんに質問させていただきたいんですが、私、何を心配しているかというと、せっかくこの法律ができて、その後、いや、私は聞いていなかった、そんなの勝手に決められた、たった二カ月の事前の報告だけで集まって多数決をされてしまったと、必ず多分これは何らかの形でもめごとが起きるというふうに思います。
 例えば、さっきの、建てかえを望む人と、いや、修繕だけでいいじゃないかという人、要するに、何かしなければいけないというところだけ合意しているんですけれども、その手法によって、反対する人。また反対に、これは三棟以上、四棟ぐらいあるような団地を建てかえするときは、五分の四ではあるんですが、一棟につき三分の二賛成があったらいいというわけで、最高で三分の一反対する人がいた場合に、これは大きく結束して、私の所有権を侵害した、憲法違反だと言う方も出てこられるというふうに思います。
 多くのそれなりのトラブルが想定できるんですが、その場合、これは事後規制でございますから、五分の四に決まっている話ですから、それをもう一回戻してというような規定は何もありませんので、司法の場で解決を求めなければいけなくなるというふうに思うのですね。そうした場合、その人たちの言い分が正しいのか正しくないのか、ある程度合意形成の上での瑕疵があったかなかったかということを検査するためのガイドラインも必要になってくる。
 そして、なおかつ、これは裁判が続いている間はなかなか、住んでいるわけですから、工事を進められるとしても、その裁判を起こしている方々は出ていきませんから、工事が結局は進められないという現実問題に直面をいたします。何らかの形で、この場合、訴訟が起きたら期限はいついつまでに裁判所は結論を出すとか、何らかのそういう担保をしておかないと、余計ぐちゃぐちゃの社会問題化を起こすだけじゃないかなというふうに思うのですが、その辺はいかがお考えですか。
    〔赤羽委員長代理退席、委員長着席〕
房村政府参考人 御指摘のように、建てかえ決議が成立しても、なお少数派の方々が、この建てかえ決議は違法であるということで訴訟に訴えるという可能性は、これは否定できないわけでございます。
 ただ、現在の要件でまいりますと、まさに過分の費用という非常に明確性を欠く要件であるだけに、訴訟を誘発しやすかったことも事実でありますし、また、訴訟が係属したときに、裁判所がその判断をするために相当時間がかかるということになりますが、今回の改正によりまして、五分の四の多数決のみということになりましたので、これを充足しているかどうかということは非常に明確でございます。
 また、集会の手続にいたしましても、ただいま御指摘のありましたように、二カ月前にきちんと通知をして、そして一定の事項を通知し、説明会を開くという手順を踏んでいればこの集会が違法とされる可能性はありませんので、そういう意味で、基準は非常に明確になったと考えております。
 したがいまして、訴訟まで持ち込まれること自体、可能性として非常に低くなっていると思いますし、万が一訴訟になった場合においても、裁判所において迅速に判断がなされる、こういうことではないかと思っております。
 現在、司法制度改革が進んでおりまして、裁判の期間についても非常に短縮化の方向に動いております。また、現実に裁判所の努力で大分短くなっておりますので、そういう意味では、このような要件の明確化と相まちまして、今までのように、訴訟が起きてしまうと一体いつになったら解決するのかわからないということで工事が中断してしまうというようなことは避けられるのではないかと考えております。
大谷委員 確かに、瑕疵があったとして訴える根拠というのが非常に少ないので、裁判に持ち込まれたってすぐ解決しちゃいますよということだとは思うんです。そのための改正ではあるんでしょうが、私、だからこそ、合意形成のプロセスに至る、ガイドラインと言っちゃうと何か瑕疵をつくることになっちゃうのかもしれませんけれども、それだけに、合意形成に至るまでの過程を大事にしてくださいね、五分の四の多数決で決まっちゃうんですけれども、なるべく管理組合の役員さんは一生懸命皆さんに合意形成を図るように努力してくださいねというような指導というか、環境を整えるようにするものだというものをどこかに何か持っておいていただきたいなというふうに思っておるんですが、いかがでしょうか。
松野政府参考人 先ほどは、建てかえか修繕かの判断をするための技術指針を定めるということを大臣の基本方針の中で盛り込んでいくと申し上げましたが、もう一つ、委員の御指摘の合意形成の進め方についても、今後指針を定めていきたいと思います。
 建てかえの検討組織の設置あるいは組織運営の考え方、その活動資金の支弁をどこから、どういう資金から支弁するのか、あるいは、先ほど申しました、建てかえの必要性の判断の考え方、修繕かどうかという判断指針の活用方法とか、それから、どういった専門家に協力依頼をしていくのか、あるいは、事業者が参加するということが必要な場合にどういう選定方法をしていくのか、契約方法はどうするのか、それから、区分所有者の方々の意向把握、意見調整の仕方、これについても方法を記述していきたい。それから、建てかえ方針を確認する手続、これについてもマニュアル化をしていきたい。それから、自治体との協議方法、それから、個別事情とか非賛成者への対応をどうしていったらいいかというようなことも含めまして、さまざまなことがございますが、細かいことも含めて、できる限り懇切丁寧にこの指針をつくっていきたいと思います。
大谷委員 ぜひその方向でお願いしたいというふうに思います。
 建物の話ではございませんが、ちょっと自分自身が取り組んでおりますシックハウス症候群対策について、厚生省の方に何件か、この時間をおかりいたしまして質問させていただきたいんですけれども、このアレルギー、シックハウス症候群の対策について、現時点での厚生省の主な取り組みを簡単に教えていただけますでしょうか。
恒川政府参考人 いわゆるシックハウス症候群の対策でございますが、現在、関係省庁でも連携して総合的な対策をやっておりますが、厚生労働省といたしましては、主にその発生メカニズム、また因果関係の解明等の調査研究を中心として、これが結論が出た場合の医療関係者への徹底、また、治療関係のクリーンルームの設置、さらには、いろいろな心配事を持っている方への保健所等を通した相談体制の整備等々を行っているところでございます。
大谷委員 年間二億円を使って五人の学者さんに原因メカニズムの解明等々の研究を行っていただいておったりするわけですけれども、僕は、二億円を五で割ったら四千万円、その四千万円が、十分な資金なのか、それとも全然足りないのか、ちょっと研究的にはわかりませんけれども、ぜひともこれからふやしていっていただきたいというふうに思います。
 その中で、一つ提案があるんですが、NPOさん、例えばシックハウスを考える会という大阪のNPOさんなんかは、自分たちのグループの中で、シックハウスの発生したおうち、そしておうちに住んでいる人、それを改修、改善をし、そこに住んで、どのように体の中に変化が起きたかというような医学調査を自分たちでやっていったりするというふうに聞きますが、そういう団体さんとも連携をしていく。これは財政的、人的支援というものもあるでしょうし、連携して、その調査報告を何らか集まったところで議論できるような場というようなものもつくっていく必要があるというふうに思うんですが、よいメカニズムの解明をしていくための、よい量、よい質を伸ばしていくような施策というものは何か考えておられるんでしょうか。
恒川政府参考人 シックハウス症候群に関して特定非営利活動法人を含むさまざまな民間団体が、さまざまな啓発または相談等々の、また研究もそうでございますが、活動を行っていることは承知しておりまして、大変注意深く注目しておるところでございます。
 政府としましては、先ほど申し上げた関係省庁連絡会議を設置しておるところでございまして、各省庁、また連絡会議としましても、これらの民間団体の方々とさまざまな機会にお会いし、さまざまな意見をいただいているところでございます。そして、これらの民間団体の意見を踏まえつつ、原因分析等々の総合的な対策を取りまとめ、実施をしているところでございます。
 現在のところ、これらの民間団体に対する財政的な支援は行っておりませんが、今後とも、関係省庁と一体となって、必要に応じて民間団体の方々と連携を図りながら、シックハウス対策に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
大谷委員 なかなか原因がわかりませんので、対処法とか難しいのかというふうに思いますが、それだけに、この課題にかかわっている人には、少しでも情報の共有ができ、ともに解決策を見つけていけるような、そんなコーディネーター役をぜひとも厚生労働省さんにはとり行っていただきたいなというふうに思います。
 ことし、初めて保育士さんがシックハウス症候群で労災を認められるということがありました。また、オフィスで働く女性の方が労災を認められたりしています。
 そんな新聞の報道を見ますと、こんなのが出てくるわけですけれども。約二週間後には激しいのどの痛みと三十九度を超す発熱があった、幾つかの病院に通ったが、原因はわからないと言われた、声帯の回りに水膨れが見られるようになりということで、幾つかの病院を回っても、なかなかこれがシックハウス症候群の症状だというふうに言ってもらえない。
 ある意味、クリーンルームを持ったりするような専門的検査のできる専門病院がシックハウスに関しては全国に六カ所あるわけですけれども、これがたった六個なのかというようなところがございますし、何よりも、こうやって幾つかの病院を回ってみたけれどもわからなかったということは、医師の中で、お医者さんの中で、まだまだ一般認識が、知識としてはもちろんお持ちなんでしょうけれども、まさか目の前にそんなシックハウス症候群の方があらわれると思っていないのかどうなのかわかりませんが、少し啓蒙をしていただく役も厚生労働省さんにあるのではないかというふうに思っておるんですが、その辺はいかがお考えですか。
恒川政府参考人 先生今御指摘のとおり、現在のところ、専用のクリーンルームの設備を整備しておるのは一カ所、相模原病院でございます。また、シックハウス症候群の患者への対応を行うことの可能なクリーンルームを整備しているところは盛岡病院等々五カ所ありまして、全体で六カ所でございます。
 今年度におきましては、さらに東京労災病院においてクリーンルームを整備する予定としておりますし、また、都道府県及び指定都市の公的医療機関でクリーンルームを整備する場合の補助金制度を創設したところでございます。このような取り組みによって、シックハウス症候群に関する診療体制の充実を図っているところでございます。もちろん、今後とも体制の整備を図っていきたいというふうに考えております。
 また、シックハウス症候群の診療においては、これらの医療機関とともに、一般の医療機関が果たす役割も重要でありますので、広く医師を初めとする医療従事者の理解を促進するために、さきに触れさせていただきました研究の成果、これが来年の夏ごろ出ますので、これらを踏まえ、シックハウス症候群の病態、診断法、治療法について医療従事者への普及啓発に努めてまいりたいというふうに考えております。
大谷委員 ぜひとも、一般の医療従事者、町のお医者さんに啓蒙を図っていただくような大きな役割を果たしていただきたいというふうに思います。
 それから、あと、ことしの新聞、シックハウス関係で見ておりますと、目立つのが、シックハウス症候群に一種の社会福祉施設や公共施設でなっているところが多いのです。図書館、公民館、小学校、中学校というようなところでシックハウス症候群にかかって、さっき言った保育園ですと、保育士さん四名の方が労災も認められた、また児童四十人も保育園の中ではシックハウス症候群でしばらく学校をお休みになったりしたようなことがあった。ある意味、一般の家ではなくて、それなりに人が出入りし、それなりに何らかの基準があったところなのに、シックハウス症候群がこうやって出てきているという状況なんです。
 学校については文部科学省さんに聞かなければいけないのでしょうけれども、厚生省さんが所管されている社会福祉施設なんかの場所において、何らかの事前の規制をもうちょっと考えられるとか、もしくは、今、出口のところで一回ちょっと怪しいところは点検をしてみようかとか、何かそんなようなお考えとかあるのでしょうか。何よりも文部科学省さんに先立って、厚生労働省さんがこの問題に関しては一番先に先頭を切って進めていただかないとお手本になりませんので、その辺いかがお考えか、ちょっとお聞かせいただけますでしょうか。
河村政府参考人 社会福祉施設につきましては、換気であるとか採光であるとか、入所者の保健衛生上に十分考慮すべきという一般的な基準はございます。
 それに加えまして、シックハウスについてでございますけれども、社会福祉施設におきますシックハウスの具体的な状況につきまして、自治体等を通じまして情報収集に努めておるわけでございます。さらに、今年度及び来年度にかけまして、ホルムアルデヒドやトルエン等のシックハウスの原因物質の室内空気濃度の状況把握、測定等について、早急な実態把握に努めることにいたしておるわけでございます。
大谷委員 何らかの形での点検みたいなものをぜひとも進めていただいて、ほかの公共施設を所管している省庁も意識を高めていただくような、そんな啓蒙活動を目的としたような行動をぜひともとっていただきたいというふうに思います。
 国土交通省さんにお伺いをしたいのですが、公の場でのシックハウス症候群がたくさん出たという報道を見ますと、これは、いわゆるホルムアルデヒドとか、前回のシックハウスに関する建築基準法の一部改正では入っていなかったトルエンなんかがほとんどなんです、全部トルエンなんです。これはやはりどんどんどんどん対象の物質をふやしていかなければいけないのではないのかなというふうに思っておるのです。
 前回の、建築基準法が決まって一年以内に施行ということですから、今検査基準とかつくっておるのかなというふうに思っておるのですけれども、その進捗状況とあわせて、このトルエンに対してもう少し何か考えなければいけないと思うのですが、その辺の対応策みたいなものはお考えなのか、お教えいただけますでしょうか。
松野政府参考人 今後の考え方として、室内空気汚染による健康被害が生ずると認められる化学物質は、最終的には、すべて政令で規制対象に追加していくという方針でございます。
 ただし、今回は、まずホルムアルデヒドとクロルピリホスの規制をするということでございますが、この化学物質については、発生源が特定される、それから発散量と室内濃度との因果関係というのがほぼ明らかになっているということから、建材と換気設備の具体的な基準を定めることができるということで可能となっております。
 一方、トルエン等のVOCにつきましては、ホルムアルデヒドなどと比べまして、発生源となる可能性のある建材あるいは家具、家庭用品というのは極めて多種多様でございます。それらからの発生量と室内濃度との関係もまだ不明確でございます。直ちに具体的な基準を定めることは困難でございますが、関係省庁と連携いたしまして、発生源の特定あるいは発散量と室内濃度との関係につきまして調査を急ぎまして、これらの調査結果が明らかになった段階で、順次、規制対象に追加してまいりたいと考えております。
 ただ、今回はまだ規制対象とならないトルエン等につきましても、ある程度、こういう材料を使ったらトルエンが少なくて望ましいということはあり得るわけでございますので、その辺につきましては、大工さん、工務店さんの方々に向けて、規制の前にガイドラインのようなものを作成してお示しするということはしていきたいと考えております。
大谷委員 ぜひ、建築士さん、大工さんに講習会なんかを開いていただいて、この化学物質、またシックハウス症候群への啓蒙活動みたいなものをしていただけたらというふうに思います。
 私の質問をこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。
久保委員長 阿久津幸彦君。
阿久津委員 民主党の阿久津幸彦でございます。
 建物の区分所有等に関する法律及びマンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律案について、質問をさせていただきます。
 マンションに住む者の日常のルールを定め、マンションの建てかえ決議に至るまでの道筋も示した区分所有法と、マンションの建てかえ決議が行われた後、その実行をいかに円滑に進めるかを定めたマンション建替え円滑化法とは、その性質も目的も異にする法律だと私は考えております。
 したがって、区分所有法は、初めに建てかえありきではなく、居住者が争い事なく、仲よく協力し暮らしていく中で、マンションの長寿命化への道が開かれるような法律でなければなりません。また、高齢者など社会的、経済的弱者の財産権もしっかりと守られる厳格さが求められることは言うまでもありません。その上で、これまでなかなか進まなかったマンション建てかえへの道が円滑に進むことを目指すという観点から、本法律案の質疑に入らせていただきたいと思います。
 まず初めに、先ほど井上議員の質問の中でも触れられておりますが、本法案の中で最も大きな改正点の一つと言えます、建てかえ決議の要件について伺いたいと思います。
 建てかえ決議の要件が最終的に一つにまとまっていく過程で、例えば、老朽化の場合の三十年決議あるいは四十年決議の問題、それから損傷等の場合の甲案、過分費用要件の問題、それから乙案、二分の一要件の問題、これらの案をめぐってさまざまな議論が展開されたというふうに理解しております。
 その議論の中では、対立する意見もあったでしょうし、激しいやりとりもあったと思うのですが、その辺を含めまして、建てかえ決議の要件について法制審等ではどのような議論があったのか、お話をいただきたいと思います。
房村政府参考人 建てかえ決議の要件についてでございますが、先ほども申し上げましたが、現行法の過分の費用要件が非常に明確を欠いて、建てかえの円滑化の妨げとなっているということから、この点についての見直しを審議会としてしたわけでございます。
 その中で、一つは、そもそもそのような客観要件は要らないのではないか、五分の四という非常に高いハードル、通常の過半数に比べますと非常に高いハードルになっておりますので、このような要件だけで十分合理的な結論が得られるのではないかという御意見がまずございました。
 しかし、現行法が、五分の四のみでは足らない、やはり過分の費用というような客観要件が必要であるという立場をとっているということを踏まえまして、できる限りこの客観要件を客観的な明確なものにしていく、こういう考え方も主張されたわけでございます。
 その第一が、御指摘を受けました、新築された日から三十年あるいは四十年、こういう年数要件にしようと。この合理性としては、年数がたてばやはり建物の価値が下がり、逆に維持補修に要する費用はふえていく、したがって過分な費用というものを客観化するという役割を果たせるのではないか、こういうことで主張されたわけでございます。
 これに対しまして、単に年数だけでいいのか、そのときに非常に手入れのいい建物、あえて、きちんとした修繕計画をやって傷んでないものについて、年数が経過したということだけで多数決で決めるということが客観要件の定め方としていいのかという指摘がありまして、それが乙案であります、修繕計画等を立ててきちんと積立金が積み立ててある、こういうような場合には除いてしまう、建てかえを認めない、こういう考え方となったわけでございます。
 以上のような客観要件をベースとした場合に、三十年経過しなくても事故があった場合というのは当然考えられるわけでございます。これを一律にだめとするのは明らかに不合理でありますので、そういう場合に備えた基準が必要であろう、こういうことから、損傷、一部の滅失その他の場合の建てかえを認める要件というものを定めるべきであろうということであります。この場合には、損傷の程度がひどくて、直すよりも建てかえた方がいい、そういう場合にする基準ということになります。
 その基準の定め方として、一つの考え方は、傷んでしまった建物の現在の価値を考えまして、その現在持っている価額以上の復旧費用がかかるようなら建てかえた方がいいのではないか、これが損傷、一部の滅失の甲案の考え方でございます。これに対して、傷んでしまったものの価額を基準にしても仕方がないのではないか、それは、傷む前の状態のものを今つくるとしたときにかかる費用と補修する費用とを比べて、新しくつくり直すものの半分以上補修にかかるようならそれは補修に非常に費用がかかるということだ、こういうことで、過分の費用を、そういう再築する費用の二分の一を超えるというところに線を引くという考え方。この二つの考え方が主張されたわけでございます。
 それぞれ今申し上げたような根拠で考え方が主張されたわけでございますが、これに対する反論といたしましては、先ほども申し上げましたが、年数で一律に切るということについて一体合理性があるのか、建物というのはそもそも相当差がある、きちんとつくられているものもあれば、ひどい手抜き工事というような建物もあるだろう、あるいは、できたものについての維持管理をきちんとしているところと修繕も怠ったようなものとで大分違いがある、そうなると、二十九年目で相当傷んだものは、それでも、この基準で、甲案でいきますと建てかえ決議ができない、きちんとしたものであっても三十年過ぎればすぐできるようになる、これは合理的な基準なのか、こういう批判がございました。
 そのほか、三十年あるいは四十年というような年数を法律に示すことに対しまして、現在、百年マンションというような、マンションをできるだけ長く使うという考え方が次第に主流になっている、そのときに、法律でこのような建てかえ決議、いわば老朽化の指針としての三十年、四十年という年数を法律に定めることはそういう社会の動きに水を差すことにならないか、三十年あるいは四十年たったら老朽建物だということを国が法律で認めることにならないか、そういうことによって、かえって年数のたったマンションの価値が下落するとか、そういう悪影響もあるのではないか、そういうような指摘も審議会の中でも出されましたし、また、一般からいただいた御意見の中にもございました。
 それと、年数に付加してきちんと修繕しているものについては建てかえ決議を認めないという考え方については、それなりの合理性もあるけれども、逆に考えると、きちんと手入れをしていると建てかえができない、要するに、建てかえをしたかったら手入れをするな、こういうことを法律で勧めることにならないのか、こういう御批判もございました。また、修繕積立金とか修繕の計画というのは、どの程度のものをすれば決議ができないことになるのかという基準として明確性を欠くのではないか、こういう御批判もございました。
 それから次に、損傷、一部の滅失の場合の基準につきましては、そもそも基準を明確化するということで作業を始めたのに、このような費用の比較をする基準を設けるということは結局出発点に戻ってしまうのではないか、そもそも、そういう費用の比較ということが非常に困難で明確性を欠き、争いの種になるということからこの見直し作業を始めたのに、そういった費用の比較をする基準を設けるということは、結局は、そもそもその検討の出発点の趣旨に反しないか、こういう御批判がございました。
 それと、一部の滅失の場合の現在の価額と比較するというのと再築の場合の二分の一という比較でいきますと、再築の場合の費用の二分の一を超えるということになると、現在一般に裁判所で採用されている過分の費用の基準よりもかえってきつくなってしまうのではないか、この損傷、一部の滅失の場合の基準の中で甲案と乙案を比較してそういう批判もございました。
 以上のようなことと、それから逆に、五分の四だけということについては、批判としては、現行法で過分の費用を要求しているものを一気になくしてしまうというのはドラスチック過ぎないか、こういう疑問、ちゅうちょの念が示されたということ。それから、先ほどもちょっとありましたが、反対者の保護に欠けることにならないか、このような批判、こういったものもございました。
 一方、その点について、多数決、五分の四の決議だけでいいということについて支持する意見としては、基本的に、建物をどう利用するかということはその建物を所有している人たちが最も的確に判断できるのではないか、また、基本的に、建物をどう利用するかということは私的自治の問題ではないか、五分の四というのは非常に高いハードルであって、それだけの所有者が賛成しているということであれば合理性は担保できるのではないか。また、集会での不合理な決定がされることを防ぐためには、法律で一律に基準を要求するということではなくて、検討の手続をきちんと整備をして合理的な結論が出るようなものにする。そういう意味で、例えば現行法でいきますと、一週間前に通知をして集会を開く、その集会の通知としては、建てかえる建物の内容さえ通知すればいい、そういうことだけにとどまっておりますが、万一このとおりに行いますと、それはなかなか十分な検討ができないだろう。
 そういう意味で、もちろん通常は、建てかえ決議をする場合には事前に同意を得るためさまざまな説得がなされるわけでありますが、法律的にもそれを担保するために集会の二カ月以上前に通知をする、通知の内容としては、比較の対象となる維持修繕する場合の費用、こういったものも最初に通知をさせる、そして、そういうものを踏まえて説明会も開く、このような形で区分所有者の建てかえに関して適切な判断をしていただく、そして、建てかえをするのであれば、その方向での合意、あるいは修繕でいくということであれば、修繕の内容、こういったものを区分所有者に的確に判断していただく、こういう体制を整えることによってその結論の合理性を担保するということの方がより実際的ではないか、こういうような御意見がございました。
 法制審の議論といたしましては、さまざまな今言ったようなことで議論がされまして、最終的には、三十年の年数要件プラス損傷、一部の滅失の場合の現在の建物の価額を超える費用基準というこの案と、五分の四の決議で足りる、この二つの意見に集約されましたが、それ以上部会での議論では一致を見ることができないということから、部会では、それぞれ相当数の委員の支持もあり、それなりの合理性もあるという案だということで、その二つの案を無理に集約することなく掲げまして、そして部会の結論として総会にお送りしたわけでございます。
 法制審の総会の場で総会委員の方から、両論併記ということに至った経過もわかるけれども、やはり法務大臣の諮問機関として法制審議会がその機能を果たすためには、できるだけ結論を一本化すべきである、最後まで一本化の努力をした上でどうしてもまとまらなければ両論併記ということもあり得るが、総会としてやはり一本化の努力をすべきである、こういう御意見が委員の中から出まして、その場で委員の方々は、どちらにするかということを熱心に御議論いただいたわけでございます。
 その中で、最終的には、やはり区分所有建物の一体性、これをみんなで共有している、そういう不可分な関係にあるということから、それなりの団体的制約を受けることはやむを得ないだろう。また、五分の四というのはハードルとして非常に高い、集会等の手続を整備した上でこの五分の四という非常に高い決議要件を課すということであれば、合理性は担保できるのではないか。そういうことで、最終的に、圧倒的多数の委員の方々が、五分の四の決議のみで足りる、こういう御意見になりましたので、最終的な答申といたしましては、五分の四の決議で建てかえができる、こういう結論になったわけでございます。
阿久津委員 今、本当に丁寧に、いろいろな議論を積み上げてこられたことを御報告いただきまして、ありがとうございました。
 私のコメントをちょっと申し上げれば、年数要件について、少なくとも三十年から四十年は建てかえのことを考えないで安心して暮らせるという最低限の年数保証として、その要件はあってもいいのかなというふうに私も思っていたんです。そういうような要件と、やはり先ほどの損傷等の場合の乙案を組み合わせるのが一番合理的かなというふうに、乙案、二分の一要件ですね、というふうに理解していたんですが、私もいろいろな方にヒアリングしましたら、確かに、建てかえ積極派にも消極派にも、年数の数値がひとり歩きしてしまうからか、その年数そのものの合理的根拠を示すのが難しいからか、なかなか御理解が得られにくいんですね。
 そんな中で、日弁連さんが結構思い切った提案で、要するに、年数を思い切り長くして、その上でだめな場合は考えりゃいいじゃないか、その前にだめになってしまった場合は考えりゃいいじゃないかということで、年数要件を五十年以上とする、年数要件を満たしていない建物であっても、経年による劣化が通常より早期に進行したような場合にあっては、その他の事由に該当すると解するみたいな形で提案されているんですけれども、これについて感想をいただけますか。簡単で結構です。
房村政府参考人 そういう考え方も一つあろうかとは思います。ただ、その場合に、実際に適用されますのは、年数を長くすればするほど個別的な事情による建てかえを認めざるを得なくなりますので、現行法の抱える問題が改正後も続くということが非常に多いわけでございます。
 ちなみに、私どもも三十年を考えたときに、三十年が目安で、それより下で建てかえをするということは少ないんだろうと思っていたんですが、実際にその建てかえをした例を調べますと、四分の一は三十年未満でやっているということでございます。
 ですから、そういうことから考えますと、やはりかなり、三十年より下でも、そういう事情で建てかえをしなければならないようなものが相当数あるのではないか。これをまして五十年に延ばすと、それはそちらの、五十年未満で細かい基準を立てたものでやらなければならないものが非常にふえるのではないか。そうしますと、基準の客観化、明確化ということはなかなか達成できないのではないか。こう思っております。
阿久津委員 損傷等の場合の乙案、二分の一要件についてなんですけれども、これは、同等の建物の建築に要する費用の二分の一を超える場合みたいな定義がされているんですけれども、これは、もちろん先ほどの経年との関係もあると思うんですが、中間試案に関するパブリックコメントにおいても、一般の区分所有者に明確に説明しやすい等の理由で賛成が多かったというふうに思うんですけれども、なぜこれは採用されなかったんでしょうか。
房村政府参考人 そういう意味では、再築に要する費用、それから復旧に要する費用ということで、少なくとも現行法よりは明確にはなっていると思うんですが、基本的に、やはり、どの程度の再築をするのか、また、補修の程度をどうするか、それの見積もりをどうするかというようなことに関しましては、どうしても相当の幅がありますし、そういう意味で、最終的に、こういう基準でいくということについては、現行法の抱える問題を完全には除去できない。
 そういう意味で、年数要件を定めるということになればこういうものは不可避ではありますが、結局、逆に言いますと、そういうものが不可避になる年数要件というものの問題がかえってそこで出てくるのではないか、そういうことから、そのくらいであれば、手続を整備して、客観要件をやめてしまって、五分の四でいく、こういう考え方になったわけでございます。
阿久津委員 結果として、五分の四多数決のみが建てかえ決議要件というふうになったわけですけれども、私、正直に言えば、結構驚いたんですね。何の理由もなしに、多数決のみで同じような建てかえができるという制度に切りかえることが現行法との連続性の点で可能なのか。また、多数決のみで建てかえ可能とした場合、区分所有者の財産権は十分に守られているのか。その辺についてお答えいただきたいと思います。
房村政府参考人 現行法との連続性ということでございますが、基本的に、現行法に相当実際の建てかえを円滑に行うために支障となる要件があるということから見直し作業が始まったわけでございますので、種々議論した結果このような結論に達したわけですが、それは、法律改正の範囲としては当然許される範囲だろうというぐあいに考えております。
 それから、五分の四の多数決のみで最終的に所有権を失うというような結果を招くということでございますが、これは、区分所有の関係といいますのは、それぞれ一応独立の所有権とは言われておりますが、実態としては、一つの建物を複数の人で持っている、いわゆる共有の関係でございます。これは、一つの物を複数の人で持つという場合には、一人が単独で一つの物を支配しているということとは大分異なる、どうしても相互に制約をこうむらざるを得ない面がございます。
 現に、民法でも、共有物につきまして、これを変更するには全員の一致でないとできない、こういう規定があります。普通、物を変更するのは所有者が自由にできるわけですが、共有関係にある場合には、それは全員一致でないといかぬ。しかし、そうなると、全員の意見が一致しない場合どうするかという問題が常に出てくるわけです。これに対して、民法では、そういう場合にはもう共有関係を解消してしまう、共有物分割の請求というのがございます。これは、共有者の一人が請求すれば当然分割しなければいけない。さらに、現物で分割できないときにはどうするかというと、これは競売してしまうわけです。そうなりますと、そういう共有のものについては、共有関係で適切に管理できないようなときには、最終的には競売でその持っている所有権を失ってしまう。そういうようなことで、できるだけ個人の自由と物の管理が円滑にいくような仕組みを民法では考えているわけです。
 ところが、区分所有建物の場合、簡単に、意見が違ってうまくいかないから、では区分関係をやめましょうというわけにはいかないわけでございます。これは、その建物が存続する限りは、基本的に、区分建物としてお互いに共同しながらそれを管理していかざるを得ない。建物について、そういう意味で、区分所有建物につきましては、その共有部分の変更についても、全員一致というような民法の原則ではなくて、多数決で決めていく。やはり、多数の人たちで何とか折り合いをつけて円滑に管理をしていくというための工夫がどうしても必要になるわけでございます。
 建物というのは、いずれは建てかえをしなければならない。この場合についても全員一致というようなことを要求しますと、これは実際上できなくなってスラム化してしまう。そういうことから、建てかえについても合理的な建てかえの仕組みを考えざるを得ないということだろうと思います。そういうことがありまして、現行法は、合理的な建てかえの仕組みとして、五分の四の多数と過分の費用というものを考えたわけでございます。これは、やはり民法の所有権の原則からすると、多数決で所有権を失わせるには客観的な要件を定める方がいいだろうということからこういうものをつけたんだろうと思います。ただ、現実にそれをやってみますと、先ほど来るる申し上げておりますように、実際の建てかえに当たっては、かえって円滑な建てかえを妨げる要因になってしまっている。
 要は、合理的な建てかえの決議がなされるような仕組みを確保することでございますので、先ほどから申し上げますような建てかえの手続を整備することによって五分の四の多数の方々が判断をするということであれば、これは非常に合理的な判断ができるのではないか、こういうことから考えたわけでございますので、決して、区分所有者の財産権を一方的に侵害するというようなものではないと考えております。
阿久津委員 御説明のほとんどは非常によくわかるんです。ただ、最後の結論だけが何か唐突に感じてならないんですよね。
 私は、財産の処分の強制は、法理論からも、また高齢者など、社会的、経済的弱者の救済、保護という観点からも、よほど慎重に行われなければいけないと考えております。マンション建てかえ円滑化の推進ということを考慮しても、五分の四多数決に加えて財産処分を強制するだけの何らかの合理的な根拠、要件が必要だというふうに私は考えております。
 総合規制改革会議等でも非常に熱心な議論をされているんですね。どちらかというと、法務省さん側の議論というのは結構慎重であったのかなというふうに思うんですけれども、森ビルなどの業者の代表さんとか、建てかえ積極派の先生方にちょっと妥協し過ぎたのかなという感じを個人的には私は持っております。
 では、次の質問に移らせていただきたいと思います。
 今度は国土交通省さんの方に伺いたいと思うんですけれども、建てかえ決議の要件が五分の四多数決のみとなれば、なおさら重要となるのが六十二条二項及び五項だというふうに思います。要するに、建てかえか復旧か、区分所有者の判断基準となる建物の劣化や損傷について、判定方法及び費用算出方法が法的に統一されないと、多種多様な判定による多種多様な費用が示されることとなり、区分所有者の合理的、客観的判断は生まれないわけでございます。私が知っている限りの例でいうと、本当に多種多様な費用算定が行われていまして、きょう伺った例だと、百五十万円と六百四十五万円という実例を伺いました。五百万円ぐらいの開きが判定の仕方によって出ちゃうんですね。
 そこでお伺いしますけれども、建てかえ決議をする場合の手続を整備する上で、建物の劣化状況や損傷状況に関する評価制度を設けるべきだというふうに考えますが、いかがでしょうか。
松野政府参考人 委員御指摘のとおり、既存マンションにつきまして建てかえをすべきかあるいは改修、修繕をすべきか、これは大変重要な判断だと思います。したがいまして、管理組合が的確かつ主体的に判断できる環境の整備が必要だろうというふうに考えております。
 マンション建替え円滑化法の中にも、国土交通大臣が定める基本的な方針というものは今後定めていくつもりでございますが、この中で、国において建てかえと修繕その他の対応との比較検討のための技術的指針を作成するということを盛り込むつもりでございまして、現在、建てかえか修繕かを判断するための指針を作成中でございます。これは、できる限り管理組合の方々にもわかりやすいものにしていきたいというふうに考えております。
阿久津委員 先ほども大谷議員の質問の中で詳しくお答えいただいておりますので簡単にしたいと思うんですが、技術的指針ももちろん大切だというふうに考えております。建物の劣化状況や損傷状況を統一的に判定し費用算出する評価制度を確立していく中で、さらにもう一歩進めて、その業務を担当する公正な独立機関の設置が私は最終的には必要なのかなというふうに思うんですが、もちろんこの法の中ではまだ現段階では難しいのかもしれないんですが、いかがでしょうか。
松野政府参考人 できる限り専門家の、建築士でありますとかマンション管理士でありますとか、そういった第三者の立場でアドバイスできる人たちを活用していただくということが基本だと思います。
 現段階では、特別に第三者機関を法律的な素地の中で整備するということは考えておりません。
阿久津委員 近い将来、ぜひ御検討いただきたいというふうに考えております。
 ちょっと細かい質問を二つほど法務省さんの方にさせていただきたいと思うんですが、七十条一項に規定されております団地の一括建てかえ制度についてなんですけれども、今回の改正によって各棟三分の二以上で可能とする法的合理性は何なんでしょうか。所有権を侵害するおそれはないのか、お答えいただきたいと思います。
房村政府参考人 今回の改正で団地の一括建てかえ制度というものを設けましたが、これは、団地を建てかえる場合に、一棟ごとに建てかえるという場合ももちろんございましょうが、やはり、団地全体として建てかえをする、例えば低層の住宅が十棟近くある、これを団地全体として建てかえをして高層住宅をつくって緑地を保全しつつ、余剰が出たらそれを売却して、例えば建てかえ資金に充てる、そのことによって団地全体としての良好な住環境を維持しつつ建てかえが円滑にできるようになる、こういうようなことが随分やられているようでございます。
 そういう場合に、現行法でいきますと、例えば十棟ある場合に、その十棟それぞれがいずれも五分の四の建てかえ決議をしないとできない。今のような団地全体としての開発ということになりますと、例えば、たまたま十棟のうち一棟が五分の四に達しないという場合に、個別に一つずつであればそれを切り離して九棟できるのでしょうが、団地全体としてのそういうグランドデザインを描いて再開発をするということになりますと、一棟建てかえができないだけで、結局ほかの九棟の建てかえも、決議は出たけれども実際には建てかえができない、こういうことになってしまう。
 こういうことで、団地として、実際はもう一体の団地を形成して住環境も共通で団地の住民だ、こういう意識で管理組合も団地管理組合が大きな役割を果たしている、こういう実態に合わせて、団地全体として一括して建てかえを何とか可能にするような道はないのかという強い要望を受けたわけでございます。実態としても、やってみたところ、数棟の建物で五分の四に達しなかったために全体の建てかえが不可能になってしまった、こういう実例も私どもも聞きました。そのようなことから、団地全体を一括して建てかえができる制度ということで、今回、団地の建物を全部一括して建てかえるときには、その団地全体の管理組合の五分の四、これで決められるという制度を考えたわけでございます。
 ただ、その場合に、例えば五分の四のみでよいということにいたしますと、十棟のうち八棟で全員が賛成する、残りの二棟が全員反対だ、こういうような場合に可能になってしまう。そうしますと、反対の建物について見ますと、団地は、敷地は全員の共有ではございますが、建物そのものはその区分所有者の共有ですので、その建物について何の権利も持っていない人の意思だけで建てかえが決まってしまうと、これは確かに法理論的にもなかなか説明が困難だ。そういうことで、私どもとして今回考えましたのは、そのような全体で決める場合であっても、やはりそれぞれの建物の区分所有者の意思を無視するわけにはいかないということから、少なくとも、そこの建物について反対者が相当数いるときは、これは一棟でもそういうことがあれば、残念ながら全体の建てかえ計画もあきらめていただこう、こういうことを考えたわけでございます。
 そういう基準として考えられるのは、少なくとも過半数が反対だったらこれはもうだめだろうと思うんですね。ですから、ぎりぎり少なくしますと、それぞれの建物で過半数の賛成があればいいという考え方が一つの考え方だと思うんです。これを五分の四まで上げてしまうと、一棟ごとと全然変わりませんから意味がありませんので、五分の四より相当下であってかつ過半数の上、その範囲内で制度の仕組みを考えるということになります。
 やはり、建物の建てかえという相当重要なことでございますので、そこの所有者の過半数だけでいいというのは、考え方としては、反対の人に対してちょっと酷ではないか。やはり賛成する人が反対する人を相当上回る必要があるだろう。
 また一方、逆に考えますと、一棟だけでも決議が成立しませんと、仮に何十棟ある全体の計画がだめになってしまうわけでございますので、余り少数の人が一棟について反対したということだけで全体がだめになるというのも、これは一括建てかえ決議の制度をつくるそもそもの目的に反するということになるだろう。
 そのようなことを考えまして、一棟ごとのものとしては三分の二、少なくとも賛成者が反対者の倍はいる、このような数字であれば、五分の四に比べれば相当下がっておりますし、その建物だけについて見ましても相当上回った賛成者がいる。あくまで全体としての五分の四の賛成は確保していただいているわけですので、そういうことで考えれば、必ずしも各棟ごとの所有者にとりましても所有権を侵害するということにはならないのではないか。
 このようなことで、五分の四の全体の賛成と各棟ごとの三分の二、こういうことを考えたわけでございます。
阿久津委員 今の説明、全部納得いくんですが、最後の結論の部分だけ。
 だったら、各棟の区分所有者の三分の二まで下げないで、管理規約の改正でさえ四分の三以上の賛成を求めているわけですから、四分の三でいいんじゃないかというふうに私は考えます。これは意見だけ申し上げておきます。
 ちょっと時間が厳しくなりましたので、余ったらもう一回戻りますけれども、細かな質問を一つ飛ばしまして、扇大臣の方に質問させていただきたいと思います。
 高経年マンションについて、建物全体を建てかえる建てかえだけでなく、マンションの構造躯体はそのまま保全しつつ、内部改善や増改築を行う再生という選択肢も与えるべきだとする意見についてどう考えるか。今後の取り組みも含めて、見解をお伺いしたいと思います。
扇国務大臣 先ほどからも議論が続いておりますけれども、あるものをいかに活用し長く使うか、これは貴重なことだろうと思いますし、また、既存のマンションの躯体を生かしてと今阿久津議員がおっしゃいましたけれども、そのとおりだと思います。
 そういう意味では、私たちも、少なくとも、内部の改装とかあるいは増改築等々、再生という意味で、資源の活用方法とかあるいは事業期間の短縮を図りながら再生を果たすということも視野に入れ、それで一定の居住水準、定住水準というものが図られて、安全、快適が図られるのであれば、そんないいことはないと思っております。
 また、一例、これはまた阿久津議員に差し上げますけれども、海外でもマンションが多いものですから、フランスでアラカルトというデモンストレーションをやっていまして、マンションの再生法というので、これは、外壁の外の枠のところに、もう一つベランダ、要するにバルコニーですね、それと居住部分を建て増しするというようなこともやっている例もあるわけでございます。
 そういう意味では、国土交通省も、少なくとも平成九年から、長期耐用都市型集合住宅の建設と再生技術の開発、言葉は長いんですけれども、要するに、いかに再生して既存のマンション対策の一つとしてこういう技術開発等を適用しようかということでございますので、そういう意味では、今阿久津議員がおっしゃったように、最初から建てかえありきではないということで、それぞれの皆さん方の組合なり、あるいは専門家の皆さん方の意見を聞いて選択するということの後に今の法案の趣旨が出てくるわけで、今おっしゃったような、まず最初に、いかに再生できるかということも大きな目標の一つだと認識をしております。
阿久津委員 扇大臣、やはり本当によくヨーロッパの住宅事情等もおわかりであるので、再生という言葉がすんなりとイシューの中に入っていらっしゃるんだというふうに思いました。
 それで、参考までなんですが、横浜市の住宅政策審議会の「分譲マンションに対する施策のあり方について (中間答申)」によれば、これは平成十一年十月の資料なんですけれども、再生についてかなり積極的記述が見られますので、ちょっと紹介をしておこうと思います。
 建てかえは、合意形成や資金確保の点などで困難性が高く、社会資源の有効活用の点でも課題を抱えている。建物更新に当たっては、既存建物を活用する再生を重視する必要がある。過去の建てかえ事例は、阪神・淡路大震災の被災マンションを除くと、多くの余剰容積を利用した等価交換方式によるものがほとんどである。容積率にさほど余裕のないマンションにおいて、建てかえを進めることの困難性は高い。資源の有効活用や建設廃棄物の削減などへの対応も考慮し、高経年マンションの更新手法としては、建てかえから再生への意識転換を普及するとともに、再生事業実施に向けた条件整備も進める必要がある。再生事業は、技術手法や法律的位置づけが未整備であるため、国における検討状況なども踏まえ、条件整備も進めていく必要がある。
 こういうふうに述べております。
 先ほどの扇大臣の答弁で、もう十分おわかりだと思うのですが、建てかえよりもある意味ではさらに進んだ考え方だと思います。未来の考え方、まさに二十一世紀にふさわしい考え方だと思うのですが、この再生ということをぜひ念頭に置いてこれからも国土交通行政をやっていただきたい。
 最後に、住民の意見を聞きながら既存の建物に大胆な手を加えて補修するオープンビルディングの手法を日本で実践しようという国際シンポジウムが昨年の十一月に大阪で開かれました。オープンビルディングの手法というのは、住民の意見を積極的に取り入れて、部屋の内装や建物を単体でとらえるのではなく、まさにまちづくりの一部ととらえることで全体の町並みと調和させ、住民が住みたい町として再生させることを目的とするものです。
 マンション住民の高齢化が進み、建てかえ費用の捻出もままならなくなってきている状況で、このオープンビルディングの手法、ひいては再生ということがもっとクローズアップされてよいのではないかというふうに考えておりますことを最後にお伝えしまして、私の質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。
久保委員長 この際、休憩いたします。
    午前十一時五十九分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時七分開議
久保委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。赤羽一嘉君。
赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。
 まずもちまして、今回の法制審議会の答申を受けまして、区分所有法の改正が、二十年ぶりの大きな改正がこの臨時国会に提出をされ、成立を見ようとしていることを、大変私は高く評価をしたいというふうに思っております。
 これまで一連の、マンション管理適正化法、そして通常国会のマンション建替え円滑化法、そして今回の区分所有法の完成で、いわゆるマンション住民の私的自治の上において、マンションを建てかえるのか、また大規模修繕をするのか、こういったことが正しく運営が図られるというふうな意味合いからも、大変大きな意味があるというふうに思っております。
 今回の区分所有法の改正の中身につきまして何点か、午前中のやりとりも聞きながら、ここはどうなのかなと思うことがございますので、質問を端的にさせていただきたいというふうに思っております。
 まず一つは、団地形式、幾つかの棟がある団地形式の建物の一括建てかえ決議について質問したいと思いますが、これは幾つか建物があるうちの一棟の建てかえについては、この今回の改正においても、一棟の、建てかえをする当該建物の区分所有者の五分の四以上の決議が必要である、そしてその承認をするのに四分の三の賛成が必要だ、こういうことですね。
 それで、これが、すべての建物を一括で建てかえるときには、それぞれの、各棟の区分所有者が三分の二以上――あれ、法務省は来ていないのかな。来ていないですね。要求していますからね。
 では、ちょっと、やり直すというか、もう一回、仕切り直しでやります。局長、よろしいですか。
 質問の部分の最初から繰り返しますが、まず、団地内の建物の一括建てかえ決議について御質問したいと思うんですが、この部分が、結局、法制審議会の答申というか、法制審議会を経過せずにこの区分所有法に盛られたということについて、少し、正直申し上げてひっかかりがある。これは、我が党内の部会でも結構問題が指摘をされました。
 その手続論についてのおかしさをちょっと指摘もされたんですが、本質的に、団地形式の建物で、一棟とか二棟とか、一部の建てかえのときには、その当該建物の五分の四以上の賛成が必要だ、こうですよね。一括で建てかえるときは、それぞれが三分の二以上の賛成があればいいということですね。
 例えば、十棟あるとしますね。全部じゃないけれども、九棟の建物を建てかえるときには、それぞれ、各棟の区分所有者、五分の四以上なんですか、三分の二以上なんですか、それはどういうふうに運用されるんでしょうか。まず、それを聞かせていただけますか。
房村政府参考人 まず最初に、おくれまして大変申しわけございませんでした。
 ただいまの、十棟あるうち九棟建てかえるという場合でございますが、この一括建てかえ決議というのは、団地内の建物すべてを一括して建てかえる場合ということを要件としておりますので、御指摘のような、十棟あるうち九棟建てかえるという場合には、一棟ずつの個別の建てかえ決議の積み重ねによるということになりますので、それぞれが五分の四、そして、その建てかえに対して管理組合の承認が要る、こういう形になります。
赤羽委員 まさに、今の御答弁があったように、どこまでいっても、この区分所有法における基本は、建てかえをする場合は当該建物の区分所有者の五分の四以上の賛成が必要ですよと、これは原則論ですよね。十棟ある棟の九棟を建てかえする場合でも、その原則論どおりのルールになっているんですよ。それが、あと一棟ふえて、全部建てかえるといったときに、突然その原則が崩れるんですね。三分の二でいいということになるわけですよ。そこが、かつ法制審議会を通っていない。私は基本的に区分所有法の改正に賛成で、推進していく立場ですけれども、これはちょっと問題があると思いますよ。明らかに、何でそこだけ原則がねじ曲げられているのか、かつ、法案がつくられるときの答申を得る法制審を通っていない。
 風聞言われているじゃないですか、自民党の部会でそこの部分だけ挿入されたとか。これは私たち政府・与党の立場として、こういうことを言われること自体非常に不愉快だし、どういう背景があったのか、ここは、ちょっと私、少し、納得のいく説明ができるのかどうかわかりませんけれども、実態をよく聞かないと、十棟のうち九棟までの建てかえは五分の四必要で、十棟になると三分の二でよくなるという、ここは余りに筋が通らないと思いますよ。どうなんですか。
房村政府参考人 まず第一に、三分の二か五分の四ということでございますが、十棟を建てかえるときには、十棟全体の区分所有者の五分の四の賛成は、これは不可欠でございます。ただ、その十棟全体の区分所有者の五分の四の人が賛成している場合に、個々の建物については賛成者の割合がばらつきがあることがありますので、そういう場合に、それぞれの棟ごとに五分の四をクリアしていなくてもよろしいというのが、この一括建てかえ決議の基本的な考え方でございます。
 したがいまして、全体として、例えば九棟の建物で、各五分の四ですから、少なくとも全体の五分の四以上の賛成はあるわけですが、十棟一括でやる場合であっても、決して全体が三分の二で済むわけではございませんで、五分の四の全体の賛成は絶対に必要となっております。ただ、個別の棟に見たときに、多少のばらつきがあって、ある棟についてはたまたま三分の二しかないという場合でも、それは全体としての建てかえ決議を有効にするという考え方でございます。
 法制審議会の答申を経ていないものを法案に入れたということについて御質問でございますが、その点について御説明申し上げたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。(赤羽委員「はい」と呼ぶ)
 まず、団地の建てかえにつきましては、やはり団地というのは、それぞれの棟、個別にあるわけではなくて、その敷地を全体として利用して一定の住環境を保っている、そして、通常、管理組合も、団地管理組合として全体の管理を管理組合が行っているということが多いわけでございます。したがいまして、利用者の意識としても、もちろん各棟ごとの意識もございますが、団地全体として、この団地の住人である、こういう意識を持っていることが多いと指摘されております。
 その団地を全体として新しく建てかえていくという場合、多くの場合、従来の低層の住宅の棟がたくさんあるものをまとめまして、ある程度高層化して、全体として空間の有効利用を図るということが通常のように伺っております。
 そういうことから、法制審議会においても、団地の一括建てかえの決議ということを一たん検討の俎上にのせたわけでございます。ただ、その場合に、五分の四の決議のみでいいということになりますと、例えば先ほどの御指摘の、十棟の建物のうち八棟で全員が賛成した、残りの二棟については全員反対である、そういう場合でも、八割の賛成がございますので建てかえができることになってしまう。ところが、そうしますと、団地の全体で、団地の敷地は共有にしております、しかし建物については、それぞれの区分所有者ごとの、建物ごとの所有でございますので、今のような極端な例になりますと、その建物について何らの、建物そのものについては権利を有していない者の意思によってその建物の建てかえが決まってしまうということから、所有権を侵害するのではないか、法理論上難しいのではないか、こういうことが懸念されたわけでございます。
 また、今回の改正で、団地内の建物の建てかえ決議に対する団地管理組合の承認という制度も新たに設けることといたしましたので、団地の建てかえについても、全体のマスタープランをつくって、それに基づいて一棟ごとに建てかえ決議をしていく、それを団地管理組合の承認で実行していく、こういうことの方が現実的ではないか、こういうようなことが考えられましたものですから、法制審議会の中間試案公表の段階で、今回、そういう現実的な方向に検討を絞り込もうということで、中間試案でもその旨を公表いたしまして、それ以後、特に団地の一括建てかえについての検討は行わなかったわけでございます。ただ、中間試案についても、なお一括建てかえ決議について何とかならないのかという御意見ももちろん寄せられました。
 そういうことで、法制審の審議といたしましては、団地管理組合による承認という手続の整備を中心にして審議をいたしまして答申をしたわけでございますが、その答申がなされるころと前後いたしまして、団地管理組合で実際に建てかえを計画した人々から、何とか団地の一括建てかえ決議ができないのか、こういう強い要望が寄せられました。
 私どもも実情を伺ってみましたが、やはり、マスタープランをつくって、個別の建てかえ決議を積み重ねて、管理組合の承認で実行するということについては、すべての棟で五分の四が確保できれば、それは最終的に団地全体のきちんと整合した再開発といいますか、建てかえが可能になるわけでありますが、そのうちの一棟でも五分の四に達しないということになりますと、全体として、複数の棟を集めて一棟にするとか、そういったような計画内容になりますので、現実には、一棟の建物に関して建てかえ決議が成立しないということで、全体の開発計画がだめになってしまう。
 実情で伺ったものは、二十数棟の団地で、十年以上かけて建てかえを計画し、これを数棟の高層の建物に集約するというような案だったようでございますが、全体で決議をしたところ、全体としては八二%の賛成が得られたにもかかわらず、幾つかの棟で五分の四に達しないということから、結局、長年の努力が水泡に帰して建てかえが不可能になってしまった、こういうことをるる説明を受けました。
 その他、私ども、直接ヒアリングをしたり、いろいろ調べてみますと、やはり団地として昭和四十年代ごろ開発されたものが次第に建てかえ時期を迎えておりまして、かなりそういう一括して建てかえをしたいという要望が強い、また、その必要性も強いということを認識したわけでございます。
 そういう意味では、従来にない制度をつくるわけでございますので、本来、諮問機関として法制審議会を置いております法務省とすれば、その法制審議会での慎重な検討を経た上で法案化をして審議をお願いするというのが筋だろうと思っておりますが、そういう私どもの見通しがやや悪かったということもありまして、団地の一括建てかえ決議の必要性あるいはその有用性というようなものについて、法制審がもう答申をするという段階になって、私ども改めて認識をしたものでございますから、その扱いをどうするかということで大分苦慮したわけでございますが、やはり、マンションの円滑化法は既にことしの通常国会で成立している、一日も早い建てかえの円滑化に関する区分所有法の改正が待たれている、また団地についても、そういった意味で非常に一括建てかえの決議の制度を設けることについての必要性が高いとかいうことを考えまして、この際、立法府である国会において国民の代表の議員の先生方に直接この一括建てかえの決議について御審議願うということの方がよろしいのではないかということで、法制審議会の答申には含まれておりません一括建てかえ決議を含みました今回の改正法案をつくって審議をお願いしている、こういう状況でございます。
赤羽委員 御丁寧な説明をいただいたんですが、今の論理ですと、逆に団地内の建物の一部建てかえについては、なぜまた五分の四を各棟求められるんだというような議論も出てきてしまうんじゃないかなと少し腑に落ちない思いをしているというふうに、私はそう思いますし、それが偶然かどうか、たまたまその部分が法制審を通っていないというのも、何となくあらぬ批評の余地を残してしまっているんじゃないかなということは指摘をせざるを得ない。
 午前中の質問で築三十年の部分についても御指摘があって、その説明というのは非常によくわかりましたが、通常国会の答弁で全く正反対の立場で言っていたわけですよ。私の質問に対しては、財産権の保障の観点から問題があるのではないかとか、余りにもドラスチックに変えると既存の区分所有法とは隔たりが大きいのではないか、こういう指摘をしていた法務省が、どこの部会を経てだかとかは言いたくありませんが、この最終案では全く逆の、逆のとは言いませんけれども、どちらもあったかもしれませんが、相当スタンスを変えたなと。
 私は、結果論としては、三十年というのは、先ほど御説明をいただいたように、老朽化イコール三十年みたいなことが出てきてしまうので、そこは回避した方がいいと思いますし、私的自治という意味で、五分の四のハードルというのは物すごく高いハードルだから、それだけで私は十分だと思っているという論に立っていた方ですから、結果としては満足していますが、その過程として、若干腰がふらついているのではないかな、こう指摘せざるを得ない、こう思うわけでございます。それが一つですね。
 それで、ちょっと質問通告とは別なんですが、午前中の質問にあって、もうちょっと野党として突っ込んだ方がよかったんじゃないかなと、こう聞いていた部分があるんです。
 外壁の補修などの大規模修繕の決議要件、緩和されましたね、これは四分の三から二分の一に。そうすると、やはり高齢者の、収入がない入居者、区分所有者というのは、局面としては大変なところが出てくる。大規模修繕といっても数百万になることもあるでしょうし、そういった金額を払えない場合はどうするんですかと。そうしたら局長の答弁では、それは裁判を通して最終的には競売にかかると。出ていかなきゃいけないという局面が出てくるということですね、それは。それを確認だけ、まずしてくれますか。
房村政府参考人 大規模修繕につきましては、基本的にマンションの価値を維持して長く使うということを考えれば、必須、必要不可欠であろうと。これが四分の三の決議が要るということで、マンションを維持管理する上に不都合が生ずるという指摘を受けまして、今回二分の一の普通決議でできるようにしたわけでございます。
 マンションの維持管理の上では、修繕積立金、こういうようなものを積み立てて、それに基づいて計画的に修繕をしていただくということが必要でございますし、また現に大多数のところはそういうことを行っているだろうと思います。そういうものを前提といたしまして、私ども、いざ実行するときの決議が四分の三では余りにもハードルが高い、必要な修繕ができなくなるのではないかということから二分の一ということにしたわけでございます。
 もちろん、修繕をするということになりますと、修繕積立金を使って、通常はそれで間に合うのではないかと思っておりますが、中には例外的に、さらに追加が必要になる、そして、その負担に耐えられないということが起こり得ないとは限りません。もちろん、そういうものについて、低利融資なり、それなりの配慮というものはなされるであろうと思いますが、純粋に民事的に申し上げれば、それは、債務が払えない場合には、最終的には強制執行を受けることがあるということは、民事的な結論としてはそういうことになります。
赤羽委員 私、やはり、建てかえ決議に賛成しないで、結局、建てかえはするけれども賛成しないから外に出るというのは一つの決断であると思うんですが、大規模修繕に経済的につき合えないから、最終的にやはり出ざるを得ないというのは、これはちょっと考えなければいけないんじゃないかなと思うんですね。
 今御答弁にもありましたけれども、修繕積立金の中の金額であるならば、これは二分の一に緩和するということは非常に趣旨に合っていいと思うんですが、その積立修繕金をはるかに超えるような金額の負担が発生するときに、この二分の一というのが適用されることについて、私ちょっとやはりひっかかるんですね、これは。部会のときには気がつかないで通したんですけれども、午前中のやりとりを聞いていて、ここはちょっと、少し知恵を出すような手だてというのは必要なんじゃないですか。積立修繕金の中でなら、この条件緩和というのは僕はいいと思うんだけれども、積立修繕金を超える場合、それほどの大きな負担が出る場合については、これを四分の三から二分の一にするというのはちょっとどうなのかなと私は思うんですが、局長に聞いても別に答弁変わらないと思うので、大臣、この文章はどう感じますか。
扇国務大臣 午前中もお話が出まして、井上議員からも午前中に大規模の建てかえの話で御質問が出ました。そのときの御質問の趣旨で私がお答えしたのを聞いていてくださったのでなお今の疑問が残られたんだろうと思いますけれども、私は、マンションの建てかえそのものがやはり必要不可欠であるという事態に至ったときには、住んでいる皆さん方が、これは、マンションなんて一生に何度もかわるものじゃありませんから、やはり財産として、資産としてきちんとメンテナンスをして持ちたいというのはだれしも同じことですけれども、その時代時代によって、あるいは、不適切という言葉を使っては悪いですけれども、いい建物をつくった時代と、あるいはバブル当時のように、何でもどんどんどんどんつくれつくれと言って、受注が物すごくあって、突貫工事でつくったようなものもなきにしもあらずなんですね。
 先ほど、赤羽議員が冒頭に言っていただきましたように、少なくとも、マンションに関しての区分所有法、もうこれは最初にできてから四十年たっています。そして、この間の通常国会で、マンションの建替えの円滑化法、そして、少なくとも、御一緒に同じ論議をしていただきましたマンションの管理適正化法等々の法案を通していただきまして、今回はこの四十年ぶりの区分所有法ということになりますので、そういう意味では、赤羽議員がおっしゃったように、大型のマンションのときにも、払えない人、それは積み立てているものがあればもう何も言うことないというのはもうおっしゃるとおりでございまして、私どもも、そのつもりで積み立てたものが、自分たちの住んでいるマンションが積み立てた金額よりも大規模に補修しなきゃいけなくて金銭的に欠落が出てきた、それをだれが負担するか、それはやはり、みんなで配分するときに、払えない人はどうするのかというのが今の赤羽議員の原点であろうと思います。
 私は、少なくともマンションを三十年前に、まあ三十年と今話題になっていますから、三十年前に一番働き盛りでマンションを買った人が、三十年後、もう定年になって収入が三十年前のようにない、しかも、ローンは払い切っている、けれども、補修のために、大規模補修で積み立てた金額が足りないから、さっきも井上議員に言ったように、平均しますと大体百万円から百二十万ぐらい不足分が出るのではないかというお話を申し上げましたけれども、私は、それを払い切れない人たちはどうするのかと。
 これがやはり、私たちとしては、その人の、一人の面倒を見るというのではなくて、そういう方々のために少なくとも皆さん方に何かお手助けができないかということで、さっきも申し上げましたけれども、あらゆるところで皆さん方に公的なマンションをあっせんしようだとか、あるいは、少なくとも不足額は何とか融資で賄えるように金融公庫でお手当てしようとか、そして、もしも引っ越しされる場合は引っ越しの費用も持とうとか、あらゆることで我々はその手助けをするということになっています。
 これはやはり、その人の、一人二人、何人かの人の不足分で全体がマンションの価値を下げてしまうということになっては、私はやはりこれも大変なことになると思いますので、今の五分の四という大変高いハードルがあるわけでございますので、ぜひその辺のところは御理解いただいて、私たちにできる限りの、建てかえに参加できない方には公営住宅のあっせん、優先的に入居とか、あるいは今申しました移転料の支払いの補助とか、あらゆる面で面倒を見ながら、住まいを取り上げることがないようになるべく努力していきたいと思っております。
赤羽委員 いや、建てかえの際の建てかえ不参加に対する支援を厚くしようというのはもちろんお願いしたいんですが、この大規模修繕の話に限って言うと、この二分の一に緩和するときに、その運用の中とか、どういう知恵があるのかよくわかりませんが、基本的にはその修繕の費用が修繕積立金の中でおさまるような中でのというような、ちょっとその辺の知恵をぜひ検討していただきたいということでお願いをしたいと思います。
 それで、今のお話にもありました、確かに、なぜこのマンションが、今、築三十年を迎えているマンションはこれだけだ、だからということで一斉にこういう論議があるんだけれども、これはよく考えてみると変な話で、マンションというのは七十年ぐらい大丈夫だという常識だったらこの議論というのは今出ていないわけですよ。ところが、阪神・淡路大震災で物すごくばたばた倒れた。これは、予測を超える大変なダメージのある被害に遭遇したということはもちろんありますが、案外、今大臣の御答弁にもあったように、手抜きとかいいかげんなマンションもあるんだなというのが結構明らかになった。何とか手を打たなければいけない、こういった部分なんだと思うんですね。
 やはりここが一番大事であって、自分の住んでいるマンションというのはどういうマンションなのかというのを、実はわかっていないんだと思うんですよ。幾らで買ったとかローンが幾ら残っているというのはわかっているけれども、自分の住んでいるマンション、午前中指摘されたような、パイプがどうだとかなどというのは、ほとんどそんなことを知らずに買っている。ですから、そういった情報公開とか、自分たちが住んでいるマンションがどのくらい耐震性に強いのかといったことについては、やはり、知る必要もあるし、知らしめる必要もあると思います。それは、自宅であるけれども、このマンションの、何というか、共同住宅という、ある意味では公的な特殊な役割というのがあるわけですから、私、この前の国会で提案したんですけれども、例えば築後三十年を迎えたマンションは耐震診断を受けなければいけない、そういった立法化をやはり考えるべきだと思いますね。
 そこで、何か資産が落ちるからみたいな話になったら、もうすべてこんな話はなしだ、勝手にやれよという感じになるわけで、こういった、共有物だという特殊性があり、まちづくりにも大きなウエートを占めているマンションであるがゆえに、こういった支援措置とか新しい法律をつくっているわけですから、そこに住まれる区分所有者はそれなりのやはり義務も生じるんだと思うんです。
 私、そこで、せっかくあんな耐震診断といういろんなメニューをつくって国土交通省は努力しているんだけれども、余り利用されていないというのは非常に不幸なことであって、やはり三十年たったら耐震診断は受ける、マンションの施工メーカーも売り出すときには性能表示をもっとはっきりさせる、そこで勝負する、逆に、午前中指摘のあったような、すごいいいマンションなんだというようなことが売りにもなると思いますし、そういったことはやはり国土交通省として誘導していくべきだというふうに思うんです。
 その点について御検討いただきたいと思うのですが、御答弁をお願いいたします。
扇国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。もうまさにその辺マンションだらけということで、果たしてそれらのマンションが、一般の皆さん方が、建ち上がってから購入するときに、どういう工事を途中でしたのか、どういう製品なのか、あるいは、品質が果たして保証できるのかどうかということは、買うユーザーの皆さん方には専門知識がございませんし、見た目だけきれいでもこれはわからないわけですから、そういう意味で、十三年、昨年度ですけれども、制定されましたマンションの管理適正化法によって、あらゆるマンションもきちんと管理業者の登録制度をしようということになりましたね。
 ですから、そういう意味で、今おっしゃったように、まして耐震性などというのは一番大事なことですから、マンション管理士という資格も持って、少なくとも今五千二百近い管理士ができています。ですから、そういう人たちが資格を持ってマンション管理士として、全国から見れば五千二百ぐらいは大した数じゃないかもしれませんけれども、五千二百弱の皆さん方がマンション管理士として活躍していただいていますので、それぞれの不安というものはそういう人たちにぶつけていただいて、これを言うと値打ちが下がるから怖いというのではなくて、あえて表に出すことによって、適正な修理をしメンテナンスをすれば価値が上がるという、堂々とした態度をとっていただくことによって、私は、マンション管理士の活躍も、また適正化法を制定した意味もあるわけですから、そういう意味で、堂々と御相談いただき、また、それを活用していただいて、自分のマンションの値打ちというものが下がらないようにするためにも相談していただきたいと思います。
赤羽委員 中古住宅市場を育てようということはよく国土交通省の中でも議論されていることであり、マンションもその例外ではないはずですし、マンションほどまた必要性があるものはない建物だというふうに思っておりますので、ぜひ、どのマンションも耐震診断が受けられるような、モチベーションが起こるような仕組みをつくっていただきたい、こう強く要望して、質問を終わりにします。どうもありがとうございました。
久保委員長 一川保夫君。
一川委員 自由党の一川保夫です。
 まず、扇国土交通大臣に基本的なところをちょっと冒頭にお伺いするわけですけれども。
 先ほど来いろいろと議論されている中に、マンションに関連した法律、近年幾つか整備されてまいりました。去年からことしにかけて、そういう法律が整備されてきておるわけですけれども、特に今回のこの区分所有法とか、また円滑化法、それから先ほどの適正化法ですか、そういったような法律が一応出そろったような格好になっておりますし、必要なところは改正されてきました。
 今のマンションの管理なり建てかえのいろいろな課題というものを考えてみた場合に、現段階でのこの法律の整備ということで、一通りこれで法制度というものは整ったというふうに理解した方がいいのか、いや、まだ検討する課題が残っているんだというふうに認識すべきなのか、そこのところをちょっと正確にわからない面があるんですけれども、恐らく国土交通省なり法務省としては、現段階では法制度が整ったという認識に立っているんだろうとは思います。しかし、時代の流れによって改正みたいなものが当然出てくるはずでございますし、今回の円滑化法にしても、この前制定したばかりの法律を今改正するわけですから、そういう面では、やはりまだまだ課題が残されているのかなという感じもするわけです。
 そういったところについて、大臣としての御認識をちょっとお聞かせ願いたいと思います。
扇国務大臣 一川議員が今聞いていただきましたように、マンションブームといいますか、いっとき大変マンションブームが起きまして、今でもまだそれを引きずっておりますけれども、急激にマンションブームが起きて、今築三十年というマンション、大体現在十二万戸あるんですね、築三十年で見ますと。十年後には、この築三十年というのが、今十二万戸のものが百万戸になると言われているんです。それくらいマンションブームが起き、また、狭くても都心にという就職と住宅の、住勤接近ということでマンションに入る人が多いということで、まあ十年後、少なくとも百万戸になってしまったときには、今先生が御指摘いただきましたように、あらゆるマンションに関する法律というものを整備しておかなければ大変なことになるというのは、この数字を見ただけでも、私、今よりももっと十年後は、百万戸の建てかえが来るということは大変なことになると思っております。
 そういう意味で、一川議員が言ってくださったように、通常国会でもお世話になりました、法人格を有するマンションの建替組合の創設でございますとか、あるいは再建したマンションに関係権利、そういうものを移行させるためのマンションの建替えの円滑化に関する法律案、こういうものもそのために準備して通していただきました。
 ただ、マンションがそれぞれの区分所有になっているものですから、その区分所有をいかに建てかえるときに円滑に持っていくか。そのことで、きちんとした、皆さん方に納得いただけるものを、建てかえる場合に問題が起こらないようにということで、マンションの区分所有者の紛争というものを避けたい、そのために、団地の建てかえ等々手続がまだ未整備である、そういう問題が指摘されていましたので、今までの法案だけではこの問題を解消できない、今回はそういう問題を解消して建てかえを円滑に進めようということで、その措置で今度はマンションの建てかえについての法制度が整備されるということで法務省等々も努力いただいて、これで初めて私は、さっきも冒頭に私、車の両輪と申し上げましたけれども、そういう、マンションに関して必要な法整備はやっとこれで整ったと。
 今、一川議員がおっしゃるように、今後、時代の流れによってまた見直さなきゃいけないときはもちろんあると思います。完全なものでないと思いますけれども、現段階においては、私はこれで車の両輪が整ったというところへ持ってこさせていただいた、そう思っております。
一川委員 都市部を中心として土地利用の高度化というものが進んでまいりまして、こういう居住形態でのマンションというのは当然時代の必要性があってこういうものができてきたわけでございましょう。しかし、今大臣もおっしゃいましたように、多くの方々が区分して所有している、こういう形態でございますので、この建物に何か手を加えるということになれば、その合意形成というのは非常に難しいものがあるなというふうに思います。
 当然、建設直後初めて入る段階では、大体同じような経済力を持ったような方々が恐らく入るんだろうと思いますけれども、しかし、三十年も四十年もたてば、当然ながらそれぞれの家庭は皆大きく変化してまいりますので、高齢化の方もいらっしゃれば、相当所得にも格差が出てくるでしょうし、いろいろな面で価値観が多様化してきているのは間違いないわけでございますので、そういう面での合意形成というのは大変な問題があるなというふうに今思っております。
 そういう中で、今回のこの法律の改正でございますけれども、法務省の方に幾つかちょっとお尋ねしたいわけです。
 現行の区分所有法、改正前の、現在の区分所有法でマンションの建てかえを行おうということでいろいろと努力されてきているケースもあろうと思いますけれども、基本的にどういう問題が一番ネックになったのか。当然、そういうことが一つの動機となって今回の改正につながってきているのだろうと思いますけれども、現行の法律で何が一番欠陥があったのかというところを、もう一回ちょっと整理して、できたら事例も含めて御説明をしていただければありがたい、そのように思います。
房村政府参考人 現在の区分所有法のもとでマンションの建てかえをするという場合に、何が一番ネックになっているかという点で申し上げますと、やはり建てかえ決議の要件が明確を欠くということが一番強く指摘をされております。
 もちろん五分の四という決議要件もかなりハードルが高いわけでございますが、これは数をクリアするかどうかということが非常に明確でございます。それに対しまして、過分の費用を要するかどうかということになりますと、なかなかこれを充足しているかどうかということがはっきりしない。そういうことから、反対の人たちからこの点について訴訟を起こされると裁判所で相当の長期間を要してしまう。
 現実に起きた例といたしましては、平成八年の四月に、建築後二十九年が経過した建物につきまして建てかえ決議がなされました。五分の四の要件はクリアしていたわけでございますが、過分の費用を要する場合でないと反対の方々が訴訟を提起したために、裁判所において、その建物を維持するのにどれだけ費用がかかるのか、現在の建物の価額は幾らか、その費用が建物の価額と比べて過分なものとなっているか、こういうような点を詳細な証拠調べ等をして判断していくということになりまして、最終的に、平成八年の四月の決議でございまして、一審地裁、それから大阪高裁、それから最終的に最高裁で平成十三年に判決が出ましたけれども、その間、五年間訴訟が継続しておりました。これは、決議を前提として売り渡し請求をして反対の人たちの区分所有権を売り渡してもらう、これに対して訴訟が起きたものですから、結局、その間、建てかえは全く進まない、こういうことになってしまっております。
 また、このほか何件かそういう訴訟になったものがございますし、また、そのような点を心配して、反対の人がいる間はなかなか決議まで進めない、決議をして反対の人から訴訟を起こされると非常に難しくなってしまう、何とか全員一致まで持っていかないと実際に建てかえができない、こういうような影響を及ぼしているのではないかと思います。
 現在までマンションで建てかえができておりますものについての調査で申し上げますと、老朽化を理由とするもので六十九件のマンションの建てかえがなされたという調査結果がございますが、この老朽化を理由とした六十九件はすべて全員一致で、多数決で決めたものは一つもございません。ということは、やはり何とか全員一致までいかないとできないということを多くの方々が考えているのではないか。
 ですから、訴訟になった件数そのものはそう多くありませんが、それが背後にあるということから、全員一致ができないともう断念してしまうというものが相当数あるのではないかということを私どもとしては懸念しているところでございます。
一川委員 現在のこの法律に、今の過分の費用云々というような条文が当初考えられたそれなりの理由が当時あったんだろうと思いますけれども、そこのところは、特に何か、当時この法律条文にこういうことをわざと入れたというのは何があったのか、そのあたり、説明できますか。
房村政府参考人 実は、今の過分の費用要件というのは、昭和五十八年に区分所有法を改正したときに入れたわけでございますが、改正前の区分所有法では、建てかえは全員一致を要求していたわけでございます。当時は、区分所有、マンションというものも少ないということから、現実に建てかえが問題になることもない。民法の共有の原則でいきますと、共有物の変更は全員一致ということになりますので、当初、区分所有法をつくった当時は、民法上の原則をそのまま使っていたわけでございます。
 改正時点では、さすがに、現実的な問題として建てかえも考えなければいけないと。これは、全員一致では、やはり実質的に一人でも反対したらできないわけですので、これは無理だろう、そういうことから多数決で決めるということで、多数決も、全員一致を緩和するということで、五分の四という非常に高いハードルを課したわけでございますが、それでもなお、多数決だけで所有権を、最終的に、反対の人は売り渡し請求によって所有権を失いますので、そういうことで、本当に全員一致を緩和するのに多数決だけでいいのかということはいろいろ議論されまして、やはり、所有権を意思に反して取り上げるには、単純な多数決だけではなくて一定の客観的な要件を要求すべきではないか、それは、もうこれ以上建物を維持していくことが不合理だということがはっきりわかるような要件を課そうということで、維持復旧等に過分の費用を要するという要件を入れたというぐあいに承知しております。
一川委員 マンションの建てかえとはちょっと形態は異なりますけれども、いろいろな公共事業等で権利調整を伴うようなもので、ある程度強制力を持たせながら多数決で決めていくというやり方は、いろいろな事業、プロジェクトにあるわけです。ただ、実際、ここで生活している方々の建物を取り壊すようなことになるということであれば、当然いろいろな話し合いの積み重ねの中で、最終的にこういうふうに多数決で決めざるを得ない、そういう事情は私なりにも理解できますし、今回の改正そのものはそれなりの評価をしたいとは思います。
 一方では、この委員会でも議論になりましたように、建てかえに参加したくても参加できない事情を抱えているとか、または、いろいろな都合でなかなか賛同できないという方々のためのいろいろな対策を講ずる中で、そして、ある一定の時間をかけて十分話し合った上でこういう多数決で決めていくということは、それは必要だなという感じが私はいたします。
 ただ、いろいろな心配されるような意見もたくさんあるわけでございますので、そのあたりは特に、弱者と言いましたらおかしいんですけれども、そういう高齢者を中心としたような方々の意向を十分取り入れるような、そういう施策もあわせて講じておかないとまずいなというふうに思いますので、そのあたりはよろしくお願いしたいわけです。
 そこで、こういったときによく話題に出るのは、日本よりも外国の方がマンションの歴史が古いじゃないかと。私も、いろいろな海外へ出たときに、例えば香港のああいう状況とか、また欧米の近代的なマンションもありますけれども、ああいう住宅を見ていると、では、こういった国々はどうやって建てかえするのかなということを素朴に思うわけです。
 今、海外の国々で、何か代表的なマンション建てかえに関するような制度といいますか、法制度があるとすればどういうところなのか、また、今回我が国がこういうマンション建てかえに当たって何か外国のそういった制度を参考にされたのかどうか、そういうことも含めて、ちょっと御説明をお願いしたいと思います。
房村政府参考人 海外におけるマンションの建てかえに関する制度でございますが、まず、最も我が国でも身近なアメリカでございます。これは州によって制度が異なっておりますが、複数の州が準拠しております統一コンドミニアム法というものがございます。ここの中では、区分所有者の八割の合意で区分所有建物の一括売却、そして、その代金を分配する、こういう清算の手続がとられております。我が国では建てかえという形で行っておりますが、アメリカでは区分所有の解消という形で、そういうことを決めております。
 また、イギリスでも、本年五月一日に成立いたしましたコモンホールド法で、区分所有者の八割の賛成による決議のみによって一括売却及び清算の手続をとるということが認められております。
 我が国として最も参考になるのは、この二国の例ではないか、こう思っております。
一川委員 恐らく、それぞれの国々もいろいろな工夫を凝らしての制度を持っているんだろうと思いますけれども、マンションの建てかえということになりますと、建てかえの前に、ちゃんと管理すればもっと長もちするんじゃないかということに当然なるわけです。今築三十年以上たったものが十二万戸もあるということなんで、その当時のいろいろな状況からすると、今日から見れば、若干技術的にも、また、使っているいろいろな資材、材料等一つとっても、今の新しいマンションに比べれば若干落ちる点があるんじゃないかという感じはいたします。
 そこで、実際にマンションを管理している組織としての管理組合のことについて、ちょっと、二、三お尋ねするわけです。
 この合意形成、修繕にしたって何にしたって、建てかえにすればもちろんそうですけれども、合意の形成を図るという面では、この管理組合の日常的な運営というのは大変大きな役割を持つものだというふうに当然思うわけです。そうした場合に、この管理組合なる組織をもっと法的にしっかりと位置づけをした、ある程度公的な力に準ずるような力を有するように法的に位置づけしていくということが当然必要だというふうに思いますけれども、今回のこの法律改正で、改正前と改正後においてこの管理組合の法的な位置づけというのは、ある程度変わってきたのか、それは全然従来と変わっていないというふうに理解していいのか、そのあたりを御説明願いたいと思います。
房村政府参考人 御指摘のように、マンションについて、その管理の中心になるのは管理組合でございます。そういうことから、現行法におきましても、三条において、区分所有者は全員で建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成する、こういうことで、法律上、当然に区分所有者になれば管理組合を構成する、管理組合という名称は使っておりませんが、この団体というのは、通常呼ばれております管理組合でございます。したがって、法律上、当然にその設置が認められている、そういう位置づけをこの法律では与えております。そういった意味で、管理の中心は、やはり管理組合ということになろうかと思います。
 今回、この改正法案では、管理組合の機関として管理者というものが設置されますが、その管理者の権限を拡充いたしまして、例えば、共用部分等について生じた損害賠償金の請求あるいは受領、こういったものは、従来は区分所有者が個々に行わなければいけなかったわけでありますが、これを法律上、当然に代理をしてこの管理者が行えるということにして、管理者ひいては管理組合の権限を拡充しております。
 また、管理組合の意思決定機関である集会に関しまして、その意思決定を容易にするための書面決議の制度であるとか、あるいはITの利用を可能にする。また、建てかえに関しては、管理組合が集会を通じて区分所有者の合意を形成することを期待して種々の手続を設けるというような、管理組合についての改正も行っておりまして、そういう意味では、この改正によりまして今まで以上に管理組合の果たすべき役割は大きくなったのではないか、こう考えております。
一川委員 今説明がございましたように、管理組合の権限的なものも一部拡充されてきておるということなんですけれども、要するに、法律には明文化されていなくても、これまでのいろいろなマンションの管理運営、それから修繕に至るまでのいろいろな合意形成だとか、あるいは建てかえに対するいろいろな話題とかということを考えてみた場合に、こういった管理組合的な組織というのは、今後こういうふうな役割をもっとしっかり思ってやってほしいなというような、管理組合に対する期待といいますか、そういうものは現段階ではどのようにお考えですか。
房村政府参考人 ただいま申し上げましたように、マンションの管理、これについては、主役はやはり管理組合でございます。そしてまた、この管理組合を通じて区分所有者の方々が合意を形成して適切な管理を行っていくということが何よりも期待されているんだろうと思っておりますので、私ども、今回の改正でも、管理組合の役割を果たせるような改正点を織り込んだつもりでございます。こういったものを積極的に活用して、今まで以上に管理の充実を図っていただければというぐあいに考えているところでございます。
一川委員 扇大臣に基本的なところをちょっとお尋ねするわけですけれども、前の法律のときにもちょっとお尋ねしたことがあるんですけれども、マンションの建てかえにおいて、公的に行政機関等がある程度関与していった方がいいんじゃないかなと私は基本的に思っているんです。
 公的関与のことについてまた大臣のお考えを聞くわけですけれども、マンションの建てかえ、一棟のみならず団地化されたマンションの建てかえも含めて、範囲が広くなればなるほど、公的な指導なり、いろいろなものがあってしかるべきだと思います。特に、都市における居住環境を整備していくという大きな課題がマンション建てかえにはあるわけでございます。
 今、小さなマンションでも、相当の数の皆さんがそこで生活されているわけです。普通、一戸建ての住宅であれくらいのというとおかしいが、通常、平均的なマンションの規模の広がりを持つ一戸建ての住宅地域ということを考えてみた場合には、相当公的な力がそこに、当初の段階からいろいろと協力しながらまちづくりを支援しているケースがあるわけですけれども、同じような世帯数が入っているにもかかわらず、一つの建物あるいは団地の中に集中的に生活されているということで、どっちかというと公的な支援というのはちょっと薄いなという感じがする。要するに、戸数の割合からすると、それがもし先ほど言いましたような普通の新興住宅地の平地部の一戸建ての住宅地域であれば、何かちょっとした道路あるいは歩道を整備する、公園を整備する、当然下水道、いろいろなことも含めて、相当いろいろな面で公的な支援が入ってくるわけだけれども、ましてや、そういった町を何か新しくつくりかえるとすれば、それはまたいろいろな都市計画的な事業も含めて仕組まれるケースが多いわけですね。
 そういうことを考えますと、今回のマンションの建てかえということについて、これはまさしく地域社会の一つの改造でございますから、国、地方公共団体等の公的な機関がいろいろな面で応援するということがあってもいいんではないかなというふうに思いますけれども、大臣は、このマンション建てかえにおける公的な関与のあり方ということについては、どのようにお考えでしょうか。
扇国務大臣 先ほども申しましたように、マンションの建てかえ自体、大変な個人の資産の保持だと私は思います。そういう意味で、建てかえる前に、先ほど一川議員がおっしゃいましたように、まず、みずからの居住区分の完全な管理といいますか、メンテナンスといいますか、自分たちの住んでいる、少なくとも、心配り、パイプ一つにしても、掃除をするとか、雨漏りをしないように、人に迷惑をかけないように、水の流れるように、ベランダの穴がふさがらないかとか。まず、そういう一つ一つの個人の自助、自分で自分を助けるという自助というものが大変大事だと思います。
 その次には、マンションで多数住んでいらっしゃいますから、管理組合はお互いの共助だと思います。ともに助けるという、この共助が管理組合であり、マンションには特にこの共助がなくてはならないものだと私は思っております。
 けれども、今おっしゃったように、マンションというものが、先ほども私が申しましたように、最近の傾向として少子高齢社会ということを迎えまして、少なくとも職住近接という意味で、東京都なんかに逆に、一度は郊外に出たけれどもまた都内に回帰するという、それはマンションが狭くてもマンションにしようということで、大変人口もふえていて、先ほど私も申しました、十年後にはこれだけになると言いましたような数字になってしまうんですね。
 けれども、私は、今言ったように、では一方、今おっしゃるように、個々の住宅とマンションとの格差があってはならない、あるいは地方自治体、国も含めて、それが最後の、自助、共助の次の公助になると思います。ですから、公の助けというものが、公助の割合が、マンションが他の一戸住宅等々に比べて少ないんじゃないか、そういう意味では、経済事情とか、先ほども申しましたように、マンションに住んでいる方が、もう三十年前でローンは終わっているけれども、今は年金だけで、建てかえのときにはとてもそれだけの財力がない、しかも一戸当たり平均すると百万円出るお金を今出せと言われてもできないというようなものがあると思いますから、そのときには最後の公助というものが出てくるんだと私は思います。
 ですから、そういう意味で、先ほどもお答えいたしましたけれども、やはりそういう皆さん方、マンションは、個々の職業も、年齢も、老壮青子といいますか、そういう年齢層の幅広い方がマンションに住んでいらっしゃいますので、私たちは、団地の、マンション等の建てかえ時には、参加する皆さん方に区分所有等の経済的な負担を軽減する、そういう観点から、少なくとも国庫補助、住宅金融公庫の融資、あるいは税制等によって公的な支援をしていこう、しかも、建てかえに参加できない方々には、先ほども申しましたけれども、公営住宅の優先入居、そういうものもあっせんし、移転料とかあるいはそういうものに、支払いに対する補助もしていこうということもしております。
 また、大規模の団地の場合には、道路の整備等に関する補助制度も支援していこうということで、たくさんいらっしゃるからこそ道路の補助もできるということ、それから、その団地の近くの駅には少なくともエスカレーターもつくるようにしていかなきゃいけないとか、数が多いからということで必ずしも公助というものが一般の一戸住宅より割を食うということではなくて、団地なればこそ、そういうことが地方自治体としても国としても公助としてできるということでは、それほど、今一川議員がおっしゃったような心配とか差別があるとかということではなくて、人数が多いために、より多くの援助政策が実行できるというふうな面も多々あるということを私は思っております。
 できれば、地方公共団体におきましても、建てかえる場合の相談でございますとかあるいは情報の提供、ソフトの基盤については、あらゆる面で情報を提供できるという面も、団地なればこそ情報がたくさん入るということもあるわけですので、私は、そういう意味でも、ハード、ソフト両面の公助というものを考えていかなければならないと思っています。
一川委員 今、公助ということをおっしゃいましたけれども、私もそういう面では、近年、マンション等について割と公的ないろいろな支援策がとられてきているなという感じは受けております。
 そういう面で、実際にこの建てかえということをそろそろ検討したらどうかというような段階から、要するに、公的機関がいろいろな情報を提供してあげる、それからまた、専門的な、技術的な、そういう力を持ったいろいろな方々がしっかりと客観的に説明してあげるということも、これはやはり役所筋から手助けした方が当然よろしいわけでございますし、先ほど大臣もおっしゃったようないろいろな相談体制を整備していくというようなお話とか、あるいはまた実際に建てかえるということになれば、仮住宅みたいなものが当然必要になってくるわけでございますので、公的な住宅をそういうものに充ててもらうとか、いろいろなやり方もあるだろうというふうに思います。
 公的な機関がそういう具体的ないろいろな支援策を講じているというような何か事例めいたものというのを、最近どういう動きになっているかというところを、ちょっと説明していただけますか。
松野政府参考人 さまざまな助成策、バックアップ体制ということでございます。
 大臣からお答えしましたように、公的住宅への優先入居でありますとかさまざまな助成がございます。それから、今委員が御指摘になりましたような情報提供、相談体制ということで、例えば、マンション管理士あるいは建築士等の専門家や地方公共団体などの公的機関によって情報提供、相談体制を整備し、これらを最大限に利用して、情報提供、アドバイスを実施していくという体制を今つくりつつございます。
 具体の助成、こういったものについては、さきの通常国会で成立させていただきました円滑化法自体が十二月施行ということでございます。したがいまして、その法律に基づく実績というのはまだございませんので、これから助成制度などをどんどんやっていきたいというふうに考えておるところでございます。
一川委員 法律の施行にまだ至っていないということなんですけれども、これからのマンション、集合住宅ということであれば、当然ながら、少子高齢化社会という一つの時代背景を受けて、高齢者向けのいろいろな福祉施設的なもの、あるいはまた少子化社会を解消するためのいろいろな子育て支援的な施設をマンションの一角に併設していくというようなことも含めて、できるだけ公的な支援が入りやすいようないろいろな改造の仕方というのが私はあるような気がするんですけれども、そのあたりに対するお考えは何かございますでしょうか。
扇国務大臣 これもなるべく早くと思っておりますけれども、国土交通省として、マンションの建てかえか修理かを判断するためのマニュアルを早急につくっていきたいと思っております。
 そのマニュアルでは、少なくとも、老朽度の判定というものは、どういうふうな視点から老朽化の判定をするのか、そういうようなことですとか、あるいは建てかえと修繕の費用対効果はどの程度あるのか、修理した方がいいのかあるいは建てかえた方がいいのか、むしろ建てかえてしまった方が安いというものもありますから、そういう費用の算出方法等々を専門家の皆さん方の意見を聞きながら、建てかえと修理、改修の所要の費用あるいは改善効果等の比較、そして建てかえか修理かの総合評価、これもしていくような、こういうマンションの建てかえか修繕かを判断するマニュアルというものを国土交通省としてつくっていこうと思っております。
 それも今後、マンションの皆さん方、これは組合の皆さんにも、またマンションの管理士制度というもの、マンションの管理士が、約五千以上の皆さんがいらっしゃいますので、そういう人たちとも意見を交換しながら、このマニュアルをつくっていくことを急ぎたいと思っております。
一川委員 私の質問もこれで最後にしたいと思います。
 今、建てかえをする一つの判断基準としてのいろいろなマニュアルづくりということを大臣の方からもおっしゃっていただきましたけれども、これはまた非常に大事なことだというふうに思います。ぜひ、いろいろな専門的な方々の意見の中でそういうマニュアルづくりというものを、しかも区分所有者の人は全く素人でございますから、非常にわかりやすいように、そういうものをかみ砕いたマニュアルというのは非常に大事だというふうに思います。
 本来であれば、こういった法律なんかももっとわかりやすくした方がいいんだろうと思いますけれども、これは専門的な分野でございますからどうしようもないのかもしれませんけれども、やはり、それぞれ、建てかえ等について関心のある一般の方々がぱっと目を通してもわかりやすいようなものを用意しておくということが非常に大切なことではないかなというふうに思いますので、ぜひそういう方向でお願いをしたいというふうに思っています。
 若干時間が早いかもしれませんけれども、私の質問はこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。
久保委員長 大森猛君。
大森委員 日本共産党の大森猛でございます。
 約二十年ぶりの区分所有法の大きな改定、いよいよきょうから審議が本格的に始まったわけでありますが、私ども日本共産党は、この審議に当たりまして、「区分所有法(マンション法)改定にあたっての見解と提案」、こういう政策を発表し、先ほど大臣にも、また法務省にもお渡しをしたところでございます。ぜひ御参考にしていただければと思います。
 今も申し上げましたように、この区分所有法は一九八三年以来の改正でありますけれども、それだけに私は、マンション居住者はもとより、広く関係者や専門家など国民的な議論を起こすべきではなかったのか、このことを強く思います。ところが、法制審議会では、当初二年間の審議日程、こういう予定でありましたけれども、これを大幅に半分に短縮して、わずか一年足らずでこれを行う。八三年の改正のときは、法制審議会での審議は約四年間にわたって行われました。このことと比較をしても、余りにもこれは大きな格差があるんじゃないかと思います。この点、結論を急いだ理由は何なのか、まずこのことからお聞きをしたいと思います。
房村政府参考人 法制審議会におきましては、この区分所有法の見直しを昨年の六月から始めたところでございますが、その審議を開始した当初の予定といたしましては、法案を平成十五年の通常国会に提出するということを考えておりました。
 しかし、その後、国交省におきましてマンション建替え円滑化法をこの十四年の通常国会に提出するということを伺いましたし、また、マンションの増加について早急に対応すべき事情があるのではないか、マンションについて建てかえを必要とするものが非常に増加しつつある、こういうこともございました。
 特に、国交省におかれて提出をされたマンション建替え円滑化法は、この区分所有法と相まって全体としてマンションの建てかえを円滑に行う。区分所有法が建てかえ決議までの手続要件を定めます、その建てかえ決議の前提として、実際にマンションの建てかえをいかに円滑に行うかということが、このマンション建替え円滑化法の内容ということになりますので、これは、できるだけ双方がそろって全体としてマンション建てかえの円滑化が適正に進むようにということが要請されるだろう。
 このようなことから、私どもとして、当初十五年の通常国会を予定しておりましたものを、何とか前倒しをしてこの十四年の秋の臨時国会に間に合わせようということで、法制審議会の委員の先生方にもお願いをして、審議期間を集中して行うということで短縮をしたわけでございます。
 また、現実に、本年の通常国会、このマンションの建替え円滑化法の審議に際しまして、私ども法務省も呼ばれて、せっかく建替え円滑化法を急いで成立させるのに、同時に改正すべき区分所有法はどうして遅いんだというような意見も随分ちょうだいいたしました。
 そういった状況を踏まえまして、できるだけ集中した審議を行うということでこの臨時国会に間に合わせるということにしたわけでございます。
大森委員 大変限られた質問時間でありますので、御答弁はぜひ簡潔にお願いをしたいと思います。
 八三年改正のときは、関係団体あるいは専門家に意見を聞いて膨大な量の意見が冊子にまとめられ、公表されました。今回は、ほとんどそういう形跡も見られないわけであります。本当にこれは、もう拙速としか言いようがないこの間の審議の状況ではなかったか。同時に、重大なことは、単に拙速ということだけではない。法制審あるいは区分所有法部会の約一年間にわたる議論、これが、言葉は悪いんですが、いわばこけにされた、そういう改正案になっております。
 これは、今回の改正案の中心点、建てかえについての客観的要件撤廃、この点について、十六回にわたる区分所有法部会での議論の中で、終わりの方を除けば、ほとんど、私は、議事録を見ても、あるいは区分所有法部会の委員の方の話も聞きましたが、ほとんどこういう撤廃するなどという意見は出されていないではないですか。
房村政府参考人 これは、審議会の中でさまざまな意見もございましたが、当初から、この客観要件を廃止した五分の四の多数決だけでいいという御意見も、事務当局からも照会しておりますし、また、委員、幹事の方から、具体的に客観要件を定めることによって合理性を担保することには限界があるのではないか、手続的な整備をして五分の四の決議のみで足りるという考え方もあるのではないかということは、比較的早い段階から意見としては出ております。
大森委員 部会の審議の過程でほとんど出されていないことは、この間の審議で中間試案を出されたが、この中間試案でも、甲案、乙案、この客観的要件を前提とした甲案、乙案しか示されていないじゃないですか。しかも、三十八ページに及ぶ中間試案の補足説明、三十八ページの中で、この客観的要件を撤廃すべきである、このことにただの一言も触れていないわけです。区分所有法部会全体の審議の中で、こういうことは議論にならなかったというのが事実じゃないでしょうか。このことを指摘しておきたい。
 それで、こけにされておるのは部会の審議だけじゃないですね。この中間試案を示してパブリックコメントにかけられました。あるいは関係団体への意見照会もされました。建てかえの客観的要件を前提にした中間試案を示して意見を聞いておきながら、結論は、この客観的要件を撤廃する、そういうものを出してきたわけですね。うどんとラーメンのメニューを見せて注文をとっておきながら、出したのは激辛のカレーというような、全くこれはこけにされたものだと思うんです。
 しかも、パブリックコメントで出された意見でも、あるいは関係団体への意見照会によって出された意見でも、客観的要件を外せ、こういう意見はほとんどなかったんじゃないですか。
 具体的に聞きましょう。意見照会では、法曹界では最高裁、日弁連あるいは大学関係、日本法律家協会などなど、合計百団体を超えて意見照会をしております。そうですね。その中で、建てかえの客観的要件を取り払うべきだと回答を寄せた団体は幾つありましたか。
房村政府参考人 ただいまの意見照会でございますが、本年三月に百七十の関係団体に意見照会を行いまして、ただいま御指摘の法曹団体等を初め、二十九通の意見が寄せられております。
 その中で、多数決のみで建てかえを可能とすべきであるとする意見を出してきたものは三団体でございます。
大森委員 今、法曹界についてお伺いしたんですが、法務省に直接かかわりの深い、そういう法曹界約百団体、こういう法曹界の団体で百団体ぐらい意見照会をしながら、その中で客観的要件を取り外せという回答は皆無でしょう。それは間違いないですね。
房村政府参考人 法曹界からの御意見の中で、客観要件を不要とするものはといいますか、客観要件を不要とする積極的な意見を出したところはございません。
大森委員 私は、それは日本の法曹界のある意味では一つの見識だと思うんですね。
 全部で二百近い団体に出されました。部数にすると、例えば日弁連なんかには数百部出されておりますから、三百部を超える中間試案の送付の結果、客観的要件を外せと回答したのは、先ほど三通とありました。どういう団体ですか。
房村政府参考人 団体といたしましては、建築業それから不動産業関係団体ということになります。
 具体的に申し上げますと、社団法人不動産協会、社団法人日本ビルヂング協会連合会、それから社団法人日本建設業団体連合会でございます。
大森委員 今お聞きになったように、こういう意見照会あるいはパブリックコメントの中で、極めてごく少数しかこの客観的要件を外せという意見はなかった。しかも、その意見は、そうすることが当然利益につながる民間ディベロッパー、そういう関係の団体であるということで、この結論の性格は、私は、ここに端的に示されていると言わなければならないと思います。
 ですから、そういう意味で、皆さんが今回の改正法案を出される過程というのは、極めて異常だと言わなければなりません。意見を求めた試案を、パブリックコメントでも意見照会でも圧倒的に少数意見であったものに変えてしまったわけであります。
 その背景には、私は改めて指摘をしますけれども、例えば、大手ディベロッパーである森ビル社長を先頭に、法制審議会に乗り込んで客観的要件の撤廃を要求する。そのときの専門委員の方の一人は、論文の中で、マンション建てかえの事業規模は延べ数十兆円にも及ぶ、マンション建てかえ制度改正が都市再生にもたらす貢献は絶大なものであると、本当に民間ディベロッパーのねらい、野望をあけすけに語っているわけですね。
 これはもう本当に、居住者を無視した、ゼネコン、ディベロッパーの野望に法務省が、法の理念、法律家としての良心も投げ捨てて屈服してしまったんだと私は法務省に言わざるを得ないと思います。どうですか、法務省。
房村政府参考人 先ほどのこととも関係いたしますが、例えば中間試案におきまして、甲案、乙案ということでは年数要件等をお示ししておりますが、その(注九)では「以下の点については、なお検討するものとする。」ということで、「建替えの決議について、ア及びイの要件を不要とし、建替え決議を会議の目的とする集会を招集しようとする者は、あらかじめ、区分所有者に対し、建替えの合理性を根拠付ける具体的な理由を説明しなければならないとする手続的要件を定めた上で、決議要件を区分所有者及び議決権の五分の四以上の多数とすること。」というものもお示ししているわけでございまして、決して、その審議の過程で全くこの五分の四の決議で決めるということが取り上げられなかったということはございません。
 また、そういうことを踏まえて私どもも審議をしたわけでございますし、また、寄せられた意見も、二十九通来ますが、必ずしもすべてがこの建てかえ決議について触れているわけではございませんので、そういう点で、私どもとしては、そういう寄せられた意見も踏まえ、さらにその後の状況も見つつ、審議をしていただいたということでございます。
大森委員 それはやはり、この間の経過をゆがめて描く、法律関係の方の御答弁としては大変問題のある御答弁だと思うんですね。先ほど言ったように、こういう中間試案の補足説明、三十八ページの中でただの一言も触れられていないということに、これは端的に示されていると思うんです。
 それで、先ほどもお話がありましたが、団地一括建てかえ、その三分の二条項とか、これはもうある日突然出てきたわけですね。この団地一括建てかえについて、法制審ではどのように議論されたのでしょうか。
房村政府参考人 団地の一括建てかえ決議につきまして、法制審議会で、当初、団地全体としてその建物の建てかえをするという一括決議について、これも一応審議の対象といたしました。そして、団地全体の建てかえを容易にするという観点からは、全体で五分の四の多数決で決められるというような議論を法制審でもいたしました。そして、法制審の中で、ただ、団地の一括建てかえの場合には、五分の四の多数決のみで決められることとすると、建物について権利を有しない多数の者によってその建物の建てかえを決めてしまうという法理論的な難点があるのではないか、あるいは、実際に建てかえをする場合には、全体の計画を立てて、個別の建てかえ決議をし、それを承認するという形でする方が現実的ではないか、このようなことから、中間試案の段階でそれ以上一括建てかえ決議について検討をすることをせずに、一棟ごとの建てかえ決議と団地管理組合による承認決議の手続を検討しようということになったわけでございます。
大森委員 いずれにしろ、三分の二などという今回の改定案の中では大変重大な部分について、審議会の委員のメンバーの意思等を一切諮らないままやったということ、それは間違いないことだと思います。この中間試案の中にも、補足説明の中にも、この一括建てかえの問題、三分の二は一切出ていないわけです。ですから、そういう意味では、これは極めて、審議会のメンバーの皆さんは、それは真剣に議論されましたけれども、それを所管する法務省のやり方は、大変欠陥があるやり方と言わなくちゃならない。
 今申し上げたように、違うメニューを持ってきて、そして全く違うものを運んでくるようなそういうやり方といい、この一括建てかえの問題といい、建てかえ要件ではそういう審議が尽くされていない問題といい、これはもう、改めて審議会等々できちんと議論をし直す必要があるんじゃないか。これは副大臣、御答弁をお聞きしたいと思います。
増田副大臣 大森委員のお尋ねにお答え申し上げておきます。それと、私、考え方も多少申し上げます。
 法制審議会におきます審議におきまして、建てかえ決議の要件について、中間試案では、五分の四以上の多数決に年数要件を加えた案が掲げられていたもので、先生のおっしゃるとおりであります。最終的な法務大臣に対する答申では、五分の四以上の多数決のみの案になっております。この点については、中間試案について行った意見照会に対する意見や規制改革会議の委員に対するヒアリングの結果等を踏まえ、法制審議会において慎重な審議をしていただいた結果のことであると考えております。
 また、団地の一括建てかえ決議については、御発言がありましたが、法制審議会の答申には含まれておりませんが、改正法案に盛り込まれております。この点については、もちろん、法制審議会において慎重な議論をしていただいた上で改正法案を提出することが望ましいところであります。団地の一括建てかえの整備が急務と考えられましたことから、同時にまた、円滑化法、区分所有法、これらを考えましたときに、立法府である国会の場におきまして、国民を代表する議員の先生方に直接御審議をいただくのもやむを得ないものと考えております。
 さらに、法制審議会の答申が当初の予定より早まりましたのは、区分所有法案と相まって、マンションの建てかえの円滑化を促進する、マンションの建替えの円滑化等に関する法律が本年の通常国会で成立したこと、マンションの建てかえの円滑化を求める社会的要求が強まってきたためでもあり、法制審議会の委員の方々の努力によるものである、このように考えております。
大森委員 とにかく、違うメニューを示して、違う料理を持ってきた。何のためにパブリックコメントをこれにかけたのか、何のために意見照会したのか、その大前提が崩れているわけですから、これは改めて審議のし直し、改正法案の、改定法案の出し直しというぐらいやらなくちゃいけないということを重ねて申し上げて、次に移りたいと思います。
 次に、建てかえについてでありますけれども、改正案は、マンションの建てかえを円滑化する、そういうことを中心の内容としております。そのために改正案では建てかえの客観的要件が撤廃されたわけですが、なぜそうなったかと聞く前に、今、この間は、共用ゾーンの建てかえは原則全員一致、そして五分の四以上の多数で建てかえ決議ができるようになったわけですね。
 そこで、前回の改定でもありますけれども、改めてなぜこのような客観的要件を明記したのか、これをまずお聞きしたいと思います。
房村政府参考人 五十八年改正におきまして、過分の費用要件プラス五分の四決議で建てかえ決議をするということにした理由ということでございますが、これは五十八年改正前は、マンションの建てかえについては全員一致を要求するということになっておりました。しかし、現実に建てかえを行うのに、全員一致ということではほとんど不可能でございますので、やはりマンション、こういう区分所有建物、実質的には一つの建物を複数の人間が共有しているという関係にございますので、団体的拘束を受けることもやむを得ない。建てかえという建物にとって必然的に生ずる事態を適切に処理するというためには、建てかえのための合理的な制度をつくる必要があるということから、全員一致をやめまして、多数決ということにしたわけでございます。
 その場合に、多数決で行いますと、反対者については売り渡し請求権を認めて、最終的に反対の人の所有権は時価で建てかえをする人たちが買い取る、こういう仕組みにしたわけでございますので、その所有者の意思に反して所有権を失う、こういう事態が生ずることになるわけでございます。
 その点について、当時、団体的拘束の中で、そのようなことでもやむを得ないという考えもあったようでございますが、やはり従来全員一致であったということから、五分の四の多数決のみで売り渡し請求までできるというのはドラスチック過ぎるのではないかということから、所有権を意思に反して売り渡し請求できるというためには、やはり何らかの客観的な要件が必要ではないか、そのようなことから、その建物を維持することがもう合理的ではないと考えられるような要件として、過分の費用を要する場合というものを付加するに至ったというぐあいに理解しております。
大森委員 本人の意思に反して所有権を失うということがあってはならないから客観的要件を設けたということですか。
房村政府参考人 所有権の本質からしますと、単独所有権の場合には、その本人の意思に反してその所有権を失うというのは極めて限られた場合、収用というようなもの、あるいは競売というような、極めて限られた場合でございます。そういうことから、区分所有の所有権についても、本人の意に反して失う場合に単なる多数決で足りるのかという観点から、過分の費用を要する場合に限定するということが、この五十八年改正当時は考えられたというぐあいに理解しております。
大森委員 本人の意思に反して所有権を失う。これはなぜ規制されなければいけないんですか。
房村政府参考人 なぜといいますと、基本的には、財産権保障という基本的な考え方に基づくものであろうと思っておりますが。
大森委員 憲法上の財産権の保障、これとの関係で客観的要件が必要だったということでしょう。
房村政府参考人 客観的要件がない場合に違憲になると考えたかどうかということはわかりません。ただ、そういう問題もあるので、意思に反してその所有権を取得できるようにするためには客観要件があった方がいいであろう、こういう判断からそのような要件を付したということであろうと考えております。
大森委員 つまり、憲法上の要求である財産権の保障、私的所有権の絶対性というところに着目していたわけですね。これは間違いないことだと思います。
 御答弁にもありましたけれども、そういう全員一致ではなかなか難しいということで五分の四にした、しかし、それでもなかなか難しいというようなお話もあるわけなんですが、こういう法律の条文が抽象的だから円滑に建てかえが進まないというわけじゃないと思うんですね。これは、少数者の切り捨て、こういうものが建てかえの進まない一番大きな理由になっている。先ほどの答弁にもあったように、この間、円滑に建てかえが進んだのは全員一致、もう大多数が全員一致であるということでしょう。
 ですから、所有権のこういう大きな変更、今回、この客観的要件を外すということは、憲法の財産の保障権、絶対性にもかかわるこういう大きな変更の問題を、先ほども申し上げた、法案をつくる過程におけるあのような状況、そして今回についても、まだ確定はしておりませんけれども、数回の委員会の審議で大きく変えてしまうということは大変重大な問題があるんじゃないかと思いますが、この点、いかがですか。
房村政府参考人 もちろん、憲法上、財産権が保障されているわけでございますが、しかし、一つのものを複数の人間が所有をするという共有関係になりますと、これは単独の所有権とは異なりまして、さまざまな分野で制約をこうむるということになります。
 民法上の共有につきましても、共有物の変更には全員一致が要求される。単独所有であれば、当然、どうするかということはその所有者の意思にかかるわけでございますが、民法上、共有の場合には、変更に全員一致を要求しております。
 ただ、当然、全員一致しない場合にどうするかということが問題になりますので、その場合に備えて、民法では共有物の分割の請求ができる。共有者のうちの一人から分割の請求がある場合には、その共有物を分割する。その分割に当たりまして、現物を分割することが不可能であれば競売をする。裁判所に申し立てて競売をいたしますと、結局は、その共有者はその共有物に対する所有権を失うわけでございます。
 したがいまして、憲法上財産権が保障されているとはいいますが、一定の、共有物のような、一つのものを複数の人間が共有することによって制約をこうむる場合には、その権利の性質上、場合によれば、今言ったような形で共有物分割の請求に応じて所有権を失うということも当然あり得るわけでございます。
 区分所有につきましては、できるだけ個々の人間の自由な行使を保障するという観点から区分所有権ということで構成はしておりますが、実質は、一つの建物を複数の人間が共有しているということでございます。したがって、一つのものを複数の人間が共有している関係に伴う団体的な制約というのは避けがたく生じます。そういう意味で、民法の共有物とは異なり、区分所有法におきましては、共有部分の変更についても多数決でできるというような変更を加えております。
 また、建物について、建てかえというのは必然的に生ずる事態でありまして、こういうものについてもそれなりに合理的な制度を組み立てる必要があるということでございますので、その合理的な建てかえ決議の要件として、今回、五分の四の特別多数決議、それに伴う決議を手続的な保障を行うということで合理的な判断をしていただくということを行うことは、憲法上の問題は生じないというぐあいに考えております。
大森委員 大変苦しい答弁だと思うんですが、大体、法務省自身が私がさっき言ったようなことをずっと部会でも言ってきたじゃないですか。つい数カ月前まで、私が述べたようなことをあなた方は言っていたわけですよ。
 これは、二十年前の改定の際にもこういうぐあいに言っているんですね。効用増による建てかえは立法過程において都市再開発に当たる民間ディベロッパーからは強く要望された点であったが、強制的制度になじまないものとして削除され、従来どおり区分所有者全員の同意によって実現されるべき任意の方式にとどめられることになったという形で法務省は言っていたわけですね。こういう基本的な立場をつい数カ月前部会の中で言っていたのが法務省だったんです。それで、これが大きくがらりと変更されることになるわけですね。この間、二十年間言い続けてきたことをがらりとみずから変える。
 しかも、これからマンションを買う人、これはまだしも、今までマンションを買った人も全部これが適用される。今、マンションの住民、何人ぐらいですか。一千万人ですよ。一千万人の住民の皆さんの中に、あす、あさって自分の所有権がなくなってしまうことになるかもしれない、そんなことを予測した人は一人としているでしょうか。私は一人もいないと思いますよ。
 それで、建てかえの場合に、既存の建物の取り壊しが当然必要であるわけなんですが、とにかく、少数の反対者の居住の場としての専有部分の所有権を、多数の力で、意思で失ってしまう。しかも、先ほど財産という大臣の御答弁もありましたけれども、財産権の侵害だけじゃない。これは倉庫とか工場じゃないわけですね。一個の人間が家族をつくって、コミュニティーを持ってそこに住む、肉体的あるいは精神的な共同の生活の場、まさに生活の基本の場であるわけですよ。そういうものを、このわずかな審議で、しかも、みずから主張してきたそういう財産権の保障にかかわるような、そういうのを全部崩して一気にこれを変えてしまう。これは余りにも乱暴なやり方と言わなければならないと思います。
 もしこういうものがまかり通るようになれば、少数者の切り捨てをかくも簡単に進めていく、数さえ集めればいいんだというような風潮がどんどん広がっていくことは間違いないと思うんです。これによって争いが少なくなると思ったら大間違いで、むしろ、これがさらに一層拡大することは目に見えているんじゃないかと思います。
 多くのマンションで共通して問題になっているのは、合意の形成、これがなかなかできない、あるいはその背景にある資金の問題なわけですね。
 そこで、私ども、きょうお渡ししましたこの「見解と提案」の中でもいろいろ提案をしているわけなんですが、合意形成を図るためのルールづくり、あるいは建てかえ資金に対する支援制度、これは一定、この間国土交通省もやられてきたわけでありますけれども、それの一層の拡充ということを、これは国土交通省も含めて、御答弁をお願いしたいと思います。
扇国務大臣 きょうも朝からこの審議を進めていただいておりまして、私は、大森議員のおっしゃっている意味はよくわかります。できれば、個人の財産権というもの、これをきちんと確保しようというのは当然のことですけれども、今、少なくとも、築三十年というマンション、おおよそ十二万戸あるわけですね。そして、十年後にはこれが百万戸になるんです。むしろ、これをきちんとふだんの積立金で補修ができればそれにこしたことはありません。けれども、築三十年以上たってこれが財産の価値があるかないかという判断をするときには、むしろ建てかえるべきである、建てかえた方が財産権の確保になるということだってあるわけで、老朽化して建てかえなかったら、個人の財産権がどんどんどんどん目減りするわけですね。
 ですから、そういう意味で私は、今マンションが百年間もてるという建築法があれば、もっと、百年後でもよかったかもしれませんけれども、残念ながら、築三十年で老朽化しているものは少なくとも今十二万戸あり、なおかつ十年後には約百万戸と言われるマンションの建てかえをどうするのかということを私たちが真剣に論議することこそが、共同でお入りになっているマンションの皆さんの財産権をこうやって真剣に論議することが、むしろ皆さん方の財産に資することである、そう思っています。
大森委員 大臣のおっしゃることは本当にそのとおりだと思います。私どもも、建てかえを円滑に進める、それは、必要なときには当然建てかえを円滑に進めるルールが必要だと思います。そういう立場はこの「見解と提案」の中にしっかり書いてありますから、後でゆっくりごらんをいただきたいと思うわけなんですが。
 問題は、そういう合意形成できちんとしたルールがない。あるいは、現実に、これは国土交通省自身の調査でも、今や四割近い世帯が六十歳を超える、こういう中での問題なんだということなんですね。そこをよく見る必要があるのではないかと思います。
 そこで、建てかえか補修か、これが常にこの間問題になってまいりました。こういう点で私どもは、その合意形成を本当に円滑に進めるという提案もこの中にしているわけなんですが、その一つとして、専門家による技術的判断によって、建てかえかそれとも補修かという問題で、公平な調査や情報提供、それをすることができるような第三者機関を設けたらどうかということもこの中で提案をしております。
 基本的に、決めるのはもちろん居住者自身でありますけれども、阪神大震災の際にも、必ずしも建てかえなくても、補修で可能にもかかわらずどんどん建てかえが進んだというのが、もう既にこれは有名な話でありますけれども、その中で、建てかえのみを推進するコンサルタントの役割というのも大変問題になったこともリポートをされております。
 そういう意味では、やはり客観的に公平なそういう情報あるいは調査を行う第三者機関、都道府県ごとぐらいに設けたらどうかというようなことも提案をしておりますけれども、国土交通省、住宅局長ですか、いかがですか。
扇国務大臣 今のお話ですけれども、先ほども私、一川議員の御質問にお答えしたんですけれども、共産党さんの案がどういうものか、後でまた拝見いたしますけれども。
 私たちは、国土交通省として、少なくとも、さっきも申し上げました、マンションの建てかえに、修理かあるいは建てかえでしなければいけないのか、そういうもののマニュアルをつくろうということをさっき私は一川議員の御質問にもお答えしたんですけれども、共産党さん、どういうマニュアルをおつくりになっているのかわかりませんけれども、我々は我々としてこのマニュアルをつくっていこうと。
 そういう意味で、御存じのとおり、昨年ですけれども、マンションの管理適正化法ということで、マンション管理士というものも生まれております。現段階で、全国でマンション管理士というのは大体五千二百人ぐらい今もう既にいらっしゃいます。そういう人たちにぜひ相談をしていただきたい。そして、組合の皆さん方、管理組合というものは各マンションできているものですから、そういう人たちに、このマンション管理士も使いながら、建てかえるのに幾らかかるのか、修理だったら幾らかかるのか、その積算も両方勘案して、そして皆さんで御相談いただきたい。
 また、どの程度老朽化しているというのは素人ではわかりません。ですから、これも専門家に、自分の住んでいるマンションはどの程度の老朽化なのかランクをつけていただいて、どう処置するかということも専門家に判断してもらいたい。
 そういうマニュアルを国土交通省としてはつくって皆さん方に供したいと思っておりますので、各管理組合等々、マンション管理士も含めて、専門家の意見を聞きながら、なるべく多くの皆さんが御納得いただけるようなマニュアルをつくるということを国土交通省で行います。
大森委員 それは、ぜひお願いをしたいと思うんです。
 既にそういう技術指針の案が一部の方には示されているというように伺っているんですが、これは、大変重要なことは、専門家というお話もありましたけれども、やはり何といっても居住者が主人公でありますから、居住者も含めて公開の議論にぜひ付していただきたい、あわせて、そういう居住者の要望なんかも反映するようにしていただきたいということ。
 あわせて、これは今回の六十二条でありますけれども、エレベーターの設置や耐震性の強化、これは「建物が通常有すべき効用の確保を含む。」こうなって、補修費用の見積もりに加算するなら加算するということになっているわけですから、それにふさわしいような助成制度、あわせてこれは設けるべきではないかと思います。
 そのマニュアルを公開の議論に付すということ、居住者の要望を反映するということ、あわせて、こういう通常有すべき効用の確保、それに含まれる例えばエレベーターの設置、耐震性の強化、こういうものについての助成の点、これはちょっと事前の質問通告していませんでしたから、住宅局長からでも御返事いただければ。
扇国務大臣 これは御存じのとおり、建築基準法、これによって、少なくとも公共に用する映画とかあるいは劇場とか、そういうところに対しては、安全性の確保というものが必要であるということになっております。そして、その建築基準法の第十二条、定期の報告制度、これが明記してあります。
 それを今度は、各都道府県もマンションにもそれを課そうということで、人が多く集まるそういうものと、建築基準法の第十二条と同じものをマンションに適用しようということになっていますから、そういう意味では、安全性という、そしてその安全のための定期検査、これを義務づけるということで、これは私は、さっき申しました、うちがつくるマニュアルにもありますように、自分たちのマンションがどの程度にあるかというまず認識を持つということも、建築基準法の適用の範囲を拡大するということで、私は、大いに皆さん方に地方自治体と連絡したいと思っています。
大森委員 ただいまの大臣の御答弁にありました現行の建築基準法に基づく定期調査報告、これをさらに拡充してマンションにも適用するということ、これはぜひやっていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
久保委員長 保坂展人君。
保坂委員 社会民主党の保坂展人です。
 私の方からも、この法案について、ここは見逃せないなという部分について質問をしていきたいと思います。
 まず、管理組合の位置づけなんですが、先ほどからの議論にもありましたとおり、区分所有法で管理組合という明確な定義がないという中で、実際上管理組合がないマンションが存在をしているということなんですけれども、管理組合がないマンションについて、この法案成立後にどのようないわば手当てをしようとされているのか、これは国土交通省に伺います。
松野政府参考人 現在、組合がない団体、団地が、マンションがあるということでございましたが、これについては、いわば区分所有者によりまして管理組合を設置していただくということが基本であるというふうに思いますので、そうしたことは周知をしていくべきことだと思います。
保坂委員 今の質問を法務省の方にも繰り返し聞きたいんですが、ちょっと加えさせていただきます。
 管理組合がないマンションについての周知と同時に、管理組合が、これは、中には意見の相違から例えば分裂をしてしまって、双方が意見の正当性を争って訴訟に持ち込むなどのことも考えられなくはないというふうに思うのですけれども、そういうことについてもどのように考えられているか。
    〔委員長退席、菅(義)委員長代理着席〕
房村政府参考人 管理組合の関係でございますが、建物の区分所有等に関する法律におきましては、その三条で、区分所有者は全員で建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成する、こういうぐあいに定めておりまして、マンションの区分所有者になりますと、当然にその全員で管理のための団体、すなわち管理組合を構成するものとしておりますので、法律上は当然にその団体は構成されるわけでございます。
 多分、委員の御指摘は、そうはいっても実際に活動していないところがあるのではないか、こういう御趣旨ではないかと思いますが、これは確かに、マンションの実態もさまざまでございまして、相当規模のものになれば、まずほとんど管理組合があって何らかの活動をしているということだろうと思いますが、あるいは小規模なもの等については、実質的に管理組合としての活動をほとんどしていないというような場合もあろうかと思います。
 今回、この改正では、管理者の権限を強化するなど、管理組合全体の活動についての改正も行っておりますので、この改正を機に、改めて管理組合の役割等について周知をして、積極的に活動していただきたいと考えております。
 また、分裂のことでございますが、これは実際の問題としてどうなのかということは、ちょっと私も、実情、そういった例は余り聞いたことがないのですが、法律的には、管理組合というのは、この区分所有法によりまして、区分所有者全員で当然に構成するということになっておりますので、二つの管理組合が法律上認められるという事態はないということにはなっております。
保坂委員 続いて、法務省に伺っていきたいと思いますが、今回、いわばインターネットなどの普及を踏まえて、従来の書面に加えて、電磁的な記録によって、例えば議事録を作成したり、あるいは議決も行えるというような改正の内容だと思います。
 基本に立ち返ってちょっとお尋ねをするんですが、集会にかえて書面によって議決をするというのは、今回の法案の場合どういうことを指しているのか、簡単にお答えできますか。
房村政府参考人 従来は、書面決議と申しまして、全区分所有者が書面で合意をした場合には、それを決議とみなす、こういうこととしておりました。
 今回の改正では、全員が書面で合意をする、内容についての合意をするということではなくて、書面で決議をするということについて全員の同意があれば、書面で意見を出していただいて、賛成の者が上回れば決議として成立する、そういう形のものを今回改正内容としてつけ加えたわけでございます。
保坂委員 つまり、反対の方がいても、書面で反対者の意思表示も含めて決議ができるというふうに変わったということだと思うんですが。
 そこで、では、そういった書面で、それで議決をしましょうという、そのもののいわば方針決定というのは、これは集会によらなくてはならないのでしょうか。
房村政府参考人 改正法四十五条で「区分所有者全員の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議をすることができる。」とあるこの承諾の方式については、特に法律上規定しておりませんので、集会の場で承諾をしなければならないということはございません。
保坂委員 そうすると、集会を基本に管理組合が運営をされていくという基本的な理念があると思うんですね。いろいろな場合に、書面や書面に準用して電磁的な記録ということで対応するということはわかるんですけれども、しかし、今おっしゃったように、書面で決議する場合に、反対の方も含めて書面で全部できると。
 そもそも、書面にするか集会にするかということも書面で決めることができる、あるいは電磁的方法で決めることができるんですか。
房村政府参考人 書面で決議をすることができるようにするためには、区分所有者全員の承諾がある場合でございますので、一人でも直接議論をしたいということを思っていらっしゃれば、それは集会を開いて議論をして決めていただくしかない、そういうことでございます。
 したがいまして、十分議論をしたいのに、それを無視されて書面で勝手に決められるというようなことは生じないような仕組みになっております。
保坂委員 最初の答弁を伺っていると、書面で、つまり、集会は一切開かれずに、議論すべきことがされずに進んでいくのではないかという危惧を覚えたので質問をしたんです。今の答弁であれば、何人かでも、あるいは一人でも書面ではなくて集会を開くようにということであれば、これは集会で、これは書面で決める、あるいは電磁的記録で決める、あるいは議論をするということも決定するということですね。確認。
房村政府参考人 おっしゃるとおり、区分所有者全員の承諾があるときに限られております。
保坂委員 では、続けて、十七条の共用部分。ここのところで、四分の三から二分の一に変更されているということと、これまでの、改良を目的とし著しく多額の費用を要しないことという要件が、形状または効用の著しい変更を伴わないものというふうに、いわば簡素化されているというか、ハードルが低くなっているということですが。
 このただし書きのところを質問したいんですが、十七条の「ただし、」以降ですね。「区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。」というふうにあります。これは、具体例に即していえば、区分所有者が百だとすると、その半分までというと五十、この五十のうちの過半というと、いわゆる過半数は、これはどういうふうな意味を指しているのか、ちょっと確かめたいと思うんですが、どうでしょう。
房村政府参考人 原則は、区分所有者全員の四分の三、それから区分所有者の持っております議決権の四分の三、それぞれを満たさないといけない。これは出席者の数ではなくて、総数に対する比率でございます。これに対して、区分所有者のいわば頭数、これが四分の三とあるのを規約で過半数まで下げられる。したがって、規約で過半数まで下げておりますときは、頭数は過半数、そして議決権の四分の三、これを満たせばこの変更ができる、こういうことでございます。
    〔菅(義)委員長代理退席、委員長着席〕
保坂委員 わかりました。
 それでは、ちょっとここで具体的な事例、建てかえのことに入っていく前に、都市基盤整備公団にお願いをして来ていただきましたので、マンション、集合住宅の実態の一つを示すものとしてちょっと具体的なケースで伺いたいと思います。
 三十年か四十年かという議論がこの間されて、そういう年数は結局は撤廃されたということになっています。住宅がもっと長もちするというのは共通の認識になっていると思いますが、三十年どころか、バブル経済のころですから十数年、いわゆる建造されて十数年しかたっていない公団の分譲マンションで手抜き工事が見つかって、これは大規模な改修及び建てかえも一部、これは十棟、二百世帯に及んで、そういった事例が発生しているという話が伝わってきているんですが、本当でしょうか。
中田参考人 十一月二十二日号の週刊朝日、雑誌に掲載されました当公団の分譲住宅につきまして、平成元年の八月から平成二年の三月にかけて入居した団地でございます。
 この団地につきましては、ちょうど譲渡後十年を経過したということに伴いまして、大規模修繕工事の際にその躯体部分に通常で見られないような施工不良が判明いたしました。資産を所有している譲り受け人から成る管理組合と十分協議をして、合意に基づき瑕疵補修工事を実際に行っているところでございます。このような瑕疵のある建物を供給し、譲り受け人の皆様に多大な迷惑をおかけしていることに関しましては、まことに遺憾に思っているところでございます。
 公団としましては、工事中に仮移転が必要な譲り受け人の方々には、できるだけ従前の居住環境に近い公団住宅を提供するなどして、できる限り御不便をおかけしないよう対策を講じております。また、譲り受け人、それから管理組合との密接な連絡を保つために専任の事務所を現地に設置いたしました。早期の補修工事の完成に全力を挙げておるところでございます。一日も早く居住者の居住の安定が図れるよう、最大限努めていく予定でございます。
保坂委員 住んで間もなくして雨漏りが続発をしたり、いろいろ苦情が絶えなかったと。実際にこれは大規模な改修に十年目にして入ってみて、はがしてみたら、本来コンクリートがあるべきところになかったりとか、大きな穴があいていたりとか、工事中の飲み物の缶が出てきたりとか、何だこれはということになったんだということが書かれていますね。
 手抜き工事というのは、およそ、ある確率でといいますか、心得が悪い業者というのがいて、こういうものが初めてではないと思います。しかし、広範囲にわたっていますね。やはりこれだけの、十棟にわたって二百世帯が影響を受けるというぐらいの大きな、トータルに手抜きが発生したというのは、それぞれの業者がそういった工事の実情をいわばお互いに黙認して、また、当時いろいろなチェックシステムが公団にもあったはずですが、それが作動しなかった。これは、そういった一つの業者の手抜きということでは到底説明がつかないと思うんですね。どういうところに原因があったというふうに公団は把握していますか。
中田参考人 お答えします。
 まず最初に、ここで、先ほど御紹介しました施工不良というか、いろいろな意味で通常起こり得ない施工不良ということを申しましたけれども、基本的に、この団地で今先生御指摘の二百世帯について起こっていることは、コンクリートの充てん不足、コンクリートがうまく入っていない、そういう部分があるわけでございます。それから、鉄筋のかぶり厚さが不足している、それから配筋が不良だというふうなこと、これらの瑕疵が判明したということでございます。
 今回このような瑕疵が発生した原因というのは、非常に広範囲に広がっているわけでございますが、現時点では確定的な結論には至っておりません。
 ここで考えられることは、以下の状況で請負者の施工体制が不十分であったというふうに思っております。
 まず一点は、当該団地が景観等に非常に配慮した新しい斬新なつくり方のものであって、非常に複雑な設計内容のものであったというふうなこと。
 それから、当時の建設環境でございますが、建設バブル最盛期で、公共事業の契約不調が多く発生するような戦後最大の建設環境下にあったということで、労務、資材とも非常に逼迫しておりましたし、良質な技術者の確保が極めて困難であったというのが二点目でございます。
 それから三点目ですが、当該団地は都下の西部にありまして、新規の開発地の中にありまして、工事用の実際の搬入路とかいろいろなことの制約が非常に多い立地でありましたし、それから現地は高低差の多い丘陵地での工事であったというふうなことで、施工難度が非常に高い現場であったということが考えられます。
 それからもう一点ですが、そういう状況下で、早期に町を開こうということで急いでやろうということがありましたので、工事を小区分に分けまして、できるだけ手を多くしたといいますか、完成を急いだために、全体には比較的中堅の業者さんによるJV工事が多くなったというふうなことで、結果として現地がふくそうした面もあったというふうなことが挙げられます。
 手抜き談合というふうな言葉で指摘されておりましたけれども、このような工事環境の中でこういうことがあったとすれば、非常に特異なことでございます。徹底的に原因究明をすることにより、そのようなことが二度と起こらないようにしなければならないというふうに考えておるところでございます。
保坂委員 この大規模な施工不全というか手抜きというか、こういうことによって、要するに修繕するために転居しなければいけませんよね。あるいは建てかえももちろんなんですが、こういったことで大幅にその期間住居を移したり、あるいはさまざまな引っ越しの費用だとかがかかってくる。こういうことについては公団の方で、これは入居者の方の責任ではないと、決して安い値段じゃないですね、バブル当時ですから、五千万、六千万という値段で買われたという入居者に負担をかけないということで、しっかり出されているというふうに聞いているのですが、それは必要なことだと思います。
 どのくらいそういった費用はかかっていて、今後かかる予定なのか、率直に言ってください。
中田参考人 これまで居住者や管理組合と協議いたしまして、適宜適切な補修工事を進めてまいっておるところでございますが、瑕疵工事につきましては、基本的には元施工業者の負担で行うこととしております。当該団地におきましても、一つの団地では既に完了しております。管理組合との協議の中で元施工業者はもう嫌だというふうなことがありまして、元施工業者でなくて、公団直接の施工も行っております。
 平成十三年までに公団が支出した金額ですが、補修工事に要した費用が約四十億円、仮移転に要した費用が約三億円でございます。
 この瑕疵に係る公団が支出した費用につきましては、工事請負契約に定めるところにより、補修工事費用の求償を業者に対して行うことと考えております。
保坂委員 公団の分譲というのはこれまで大変信頼があったわけですね。そして、これは都市景観賞というのも受賞されているんですね。当時話題のいわば作品だった。こういったマンションにこれだけの、四十三億円ですか、出費を余儀なくされている。これは、公団だからこれを出すこともできたんだろうと思いますけれども。
 しかし、一点だけちょっと不審に思うのは、施工業者、今、出すのは嫌だという業者もいたというような話も出ましたけれども、責任追及はどうなっているのかと思うんですね。例えば、そういったチェックをする際に、業者を全部立ち会わせたり、しっかりとその責任を各業者は認めているのか。結局、この四十三億円という本来発生しないはずの補修費なり建てかえ費というものを、最終的にどれだけの業者に、どういった会社に、どれだけ要求していくのか。これは大事な問題なので、それだけお答えいただきたいと思います。
中田参考人 この瑕疵に係る公団が支出した費用につきましては、工事請負契約書に定めるところによりまして、工事費用の求償を行うことになりますが、現在、いろいろな意味で、まだ実際の補修内容なり、どこまでのことを瑕疵と認めるか、いろいろなことについて、いろいろな各段階がありまして、ブロックがいろいろ違いますので、まだ明らかになっておりません。ということで、今後の費用につきましては今のところまだ見えていないということでございまして、先ほど申し上げましたのは、十三年度に支出した額ということでございます。
保坂委員 扇大臣に伺いたいのですけれども、これは公団としても、都市景観賞までとった、そういったニュータウンの分譲住宅ですから、まさかいわば構造がそれほどひどいとは、これは公団も本来は被害者の立場なのかなというふうに思うんですね。一番の被害者は入居された方ですね。引っ越さなくてもいいのに引っ越し、そして不便に甘んじているわけですけれども。
 しかし、私は、今の公団の答弁の中に、そういった施工されたことに対する責任追及の決意なり怒りというものがちょっと感じられないんですね。四十三億円かかりました、あとどのくらいかかるかわかりません、段階段階ありますからというような、ちょっとこれは生ぬるいんじゃないかと思いますが、いかがですか。
扇国務大臣 私も、週刊朝日という、朝、新聞の見出しで初めてわかりまして、すぐ公団の総裁を呼びました。そして、私も知らなかったものですから、大体いつこれがわかったんですかということから始まりまして、いつ気がついたんですか、十年目の検査というのはいつから始まったんだ、なぜ言ってこなかったんだと物すごく私も申し上げました。それは、今保坂議員がおっしゃったように、夢を買った住民の皆さん方が一番被害者です。しかも、都市景観賞というしゃれたデザイン。
 今まで私に言わなかったのは、居住者の皆さん方が自分たちの資産が低下するので表に出さないでほしいという話もあったということも、弁明としてではなく、現実の話を総裁から伺いましたけれども、何といっても、公団にとっては初めての事件といいますか大過失でございます。私は、今小さい声で何か弁解がましく言っていましたけれども、少なくとも、公団が被害者とはいうものの、そういう会社に、どの会社に下請したか全部洗いなさいというので、今持っていますけれども、いろいろな面がございますので、はっきりするまであえて公表を控えたいと思っていますのも、そこに公団の天下りがあったかないかも調べております。そして、どれだけの公団の仕事をしていたかも全部出してくださいということで、いかに弁明しようとも、いかにバブル期でもう仕事がいっぱいあって人がなかったからいろいろなところへしたとか、なるべくたくさんの子会社にしようと思って分配したらこんなことになったとか、それは、私は一切弁明は聞かない、通らないということで、今細かいことを、資料を集めております。
 ただ、あえて住民の皆さん方が自分たちの資産価値が下がるから言わないでくださいとおっしゃったことに、たまたま週刊誌が出してしまったから、私、公団の総裁に言ったんです。これ、週刊誌に出なかったら私のところへ言いに来ないんですか、それはおかしいでしょう、公団として、瑕疵は瑕疵ならきちんと報告してくださいということも言いましたけれども、公団として一番住民の皆さんのお気持ちをおもんぱかったという点を配慮しても、許せない部分はたくさんございますので、今後、明快に責任を追及していきたいと思っています。
保坂委員 ぜひお願いをしたいと思います。
 公共住宅というものに対する信頼をこれほど損ねる事態はないんです。そして、もう一つは、特殊法人のあり方がこれだけ厳しく問われているときに、扇大臣がおっしゃるように、本当にこれは公団が全部被害を受けましたということだけに簡単にまとめられるものなのかどうか。これは厳しくチェックしていただいて、その調査の時期等必要でしょうから、しかるべきときに、なるべく早く、まとまれば明らかにしていただくということも要望したいと思っております。
 それでは、公団に、この問題ばかり聞くとちょっとどうかということもありますので、一点だけ。
 多摩ニュータウン諏訪二丁目住宅、長いこと建てかえの議論が十年間近くあった、しかし、結局のところ、建てかえできないという結論に至った。これも新聞報道にあったんですが、簡単に、どういう事情だったのか、どうしてなかなか難しかったのか、これをお答えいただけますか。
中田参考人 諏訪二丁目住宅の建てかえのことだと思いますが、この住宅地は平成二年から管理組合からの相談を受けまして検討を始めて、平成十年、十一年、十二年と三カ年にわたってコーディネート業務を公団で受託いたしまして、建てかえ計画について各種条件整備を進めてまいったところでございます。この過程において公団として分譲住宅事業から撤退という方針が出ましたので、分譲建てかえ事業の事業主体にはなれないということで、団地の組合に対して公団は事業主体になれない旨を説明して、コーディネート業務ということで支援に努めてまいりました。
 この多摩ニュータウン諏訪二丁目の建てかえにつきましては、確認しましたところ、現在、団地の管理組合としては、建てかえに向けて検討は継続されております。中止、凍結はされていないということで、現在も、環境をこういうふうに変えたいということに対して東京都さんあたりにもいろいろな要望を出されているというふうに聞いております。
保坂委員 時間に限りがありますので法案に戻りますけれども、建てかえの際に民間業者に一たん権利を移して、再建した後買い戻す方式もとられていると思います。今日の大変な経済不況の中で、どの開発業者も余り、業績がよくないどころか、株価を一々示すまでもない状況になっております。
 法務省に伺いますが、こうした場合、民間業者に一たん権利を移す、組合が代理をして一たんこれを移す、それで、その工事をしているときに、あるいは移した後に開発業者などが破綻したりしてしまった場合、住宅難民というか、売った方の方はどうなっちゃうんだろうか。これは決して奇抜な仮定の質問ではないと思うんですね、今日の状況では。いかがでしょうか。
房村政府参考人 倒産という事態がどの程度のものかにもよろうかと思いますが、倒産の最も究極的な姿である破産ということになりますと、その破産した業者に土地等の所有権を移転しているということになりますと、これは破産財団に組み込まれるということになります。したがいまして、破産管財人の管理のもとで破産手続が進んでいくということになりますので、これは、所有権を移転するということに伴う危険負担ということになりますので、そういう意味では相当慎重に考えていただく必要があろうかとは思います。
保坂委員 法務省に伺いたいのは、そういう場合に、多数の開発業者に対する債権が、所持者がいるわけですよね。やはりこういった住宅という、なくなればこれはまさに仮住まいに入って、戻るべきところが進まなくなっちゃったというときに、先取り特権等をきちっと付与するということでそういったことを抑止していくということは考えなかったんですか。一般的な債権しかないということになるんですかね。
房村政府参考人 具体的な権利義務関係になりますと、もう少し具体的事実を踏まえませんと何とも言いかねるわけでございますが、基本的に、業者に所有権を移転していてその業者が破産をすれば、それは、その目的財産は破産財団を構成してしまいますので、いろいろな面で大変な事態になるということは、一般論としては言えようかと思います。
 また、具体的な先取り特権であるとか取り戻し権であるとかというものが発生するかどうかというのは、具体的な契約関係、所有権の移転の関係、そういったものと絡みますので、一般論として述べるには余りにも漠然とし過ぎておりますので、今言った程度の答弁でお許し願いたいと思います。
保坂委員 この点も、もう少し議論を深めなければいけないというふうに思っています。
 国土交通省に伺いますが、今後十年間で百万戸近く出てくると言われる三十年以上のマンション、これは、マンション建替え円滑化方策検討委員会で書かれている資料によると、昭和五十年以前の六割程度が容積率基準を超えているという、いわゆる不適格マンションというふうに示されていますけれども、これらの実態の把握はどうなっているのかということ。いかがですか。
松野政府参考人 ただいま議員御指摘の既存不適格マンションでございますが、正確に把握しているわけではございませんが、例えば東京都内の昭和五十年以前に竣工した既存マンションについては、その六割が容積率制限に不適格というふうに推計されております。
保坂委員 それらのマンションの紛争等も総合設計制度を通して運用するというお考えもあるようですけれども、やはりかなりふえてくるんじゃないかということを本日は指摘をしておきたいと思います。
 マンションの建てかえというのは、いずれ、どのような形であれ、やらなければいけないことだというふうに私も思うわけですが、一方で、そのことで、社会的な弱者である高齢者や障害のある方、あるいは病気とか事故で長期治療中だったり、あるいは今日ですと、やはり、会社が倒産してしまって失業してしまったとか、事業がうまくいかなくなって、現在、職を求めて、経済的に非常に困窮されている方なども、老朽化した分譲マンション、建てかえ検討のところに住んでいると思います。
 これは国土交通省に伺いますけれども、これらの方は、当然、一般論としてはマンション建てかえや大規模補修に賛成だと思います。しかし、ありません、負担できませんということでやはり反対する、しかし決議は多数で通ってしまうというときに、いろいろな融資があるというんですけれども、例えば、八十代で分譲マンションに住まわれている方もいらっしゃいますよね、あるいは病気等で働けない、これは融資が全部の方に出るとは限らないでしょう。融資が出ないということがあり得るんではないか。その場合には、一体どういう救済策を考えていらっしゃるんですか。
松野政府参考人 高齢者につきましては、基本的には、公庫融資につきまして死亡時一括償還という制度を用意しております。当面、金利だけ払っていただいて、元金はそのまま据え置くというようなことで、亡くなられたときに精算するというような制度を用意しているわけでございます。
 ただ、すべて、どうしても融資を受けたいということでないケースもあります。もちろん、持ち家でなければいけないということではないケースがあろうかと思います。したがって、その場合には、公営住宅への優先入居でありますとか、あるいは場合によっては、従前居住者用賃貸住宅制度というのがございます。これは、公営住宅と同様に家賃対策補助もできる制度でございます。そういった、持ち家だけに限らない居住対策も制度としては用意してございます。
保坂委員 それでは、扇大臣に最後に伺います。
 今局長がお答えになったことですけれども、これは、経済的に困窮したり、高齢だったり、障害があったり、病気だったり、そういう方が大変困るケースが想定されるわけです。非常にまじめにこのことに取り組むとすれば、何も財産がないのでマンションを売って例えば補修費を出すというようなことすら考えられるわけですね。しかも、老朽化したマンションですから、買い手がつかないということも考えられますよね。
 ですから、社会的な弱者であるところの人たちが、全員同意ではなくて、やはり多数決で、しかも大規模補修だと二分の一で決まっていくという制度ですから、今住宅局長が言った、例えば公共住宅への優先入居などが本当になされるということがないと、これは社会的悲劇を招きかねないと思います。いかがでしょうか。
扇国務大臣 けさからこの委員会でも、各党の御質問の皆さん方がそのことを憂慮して御質問になっております。
 今局長が申し上げましたように、少なくとも基本方針、私たちは、優先的に公団にあっせんする、優先的に入居あっせんする、そういうことはきちんと考えていきたいと思っていますし、当然行うべきだと思っております。
 また、従前居住者用賃貸住宅に係る家賃、そういうものも、仮に行っていただく場合には、それは全部補助をしようということで行っておりますし、また、借りた人が、借家にまた入らなきゃいけない、自分のマンションを持っていながら借家人にならなきゃいけない、そういうような人たちに対しましても、移転の費用とそれに関する補助というものを定めて、これを実施するということを決めておりますので、そういう意味では、皆さん方が、例えば公団のこの部屋へどうぞと言っても、いや、それじゃなくて、私の、自分の知っているところへ行きたいという方があるんですね。ですから、優先的にあっせんすることはもちろんですけれども、御自分の希望で違うところへ、私はここに行きたいのよということをおっしゃる場合は、その家賃も私たちが補助で見ていこうというようなことでございますので、今おっしゃったように、新しくなるのに乗りおくれる人が損をしないように私たちも配慮をしていきたいと思っております。
保坂委員 もう少し議論したいところですが、時間になりました。さらに深めていただきたいということを申し上げて、終わります。どうもありがとうございました。
久保委員長 次回は、明十三日水曜日午前九時四十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時三十七分散会


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