衆議院

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第4号 平成14年11月13日(水曜日)

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平成十四年十一月十三日(水曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 久保 哲司君
   理事 栗原 博久君 理事 菅  義偉君
   理事 橘 康太郎君 理事 玉置 一弥君
   理事 細川 律夫君 理事 赤羽 一嘉君
   理事 一川 保夫君
      岩崎 忠夫君    小里 貞利君
      倉田 雅年君    小西  理君
      実川 幸夫君    砂田 圭佑君
      高木  毅君    谷田 武彦君
      西田  司君    西野あきら君
      林  幹雄君    原田 義昭君
      菱田 嘉明君    福井  照君
      堀之内久男君    松野 博一君
      松宮  勲君    松本 和那君
      山本 公一君    阿久津幸彦君
      井上 和雄君    大谷 信盛君
      今田 保典君    佐藤謙一郎君
      齋藤  淳君    武正 公一君
      津川 祥吾君    永井 英慈君
      伴野  豊君    平岡 秀夫君
      前原 誠司君    高木 陽介君
      土田 龍司君    大幡 基夫君
      瀬古由起子君    原  陽子君
      日森 文尋君    松浪健四郎君
    …………………………………
   国土交通大臣       扇  千景君
   法務副大臣        増田 敏男君
   国土交通副大臣      中馬 弘毅君
   環境副大臣        弘友 和夫君
   国土交通大臣政務官    高木 陽介君
   政府参考人
   (総務省自治行政局長)  芳山 達郎君
   政府参考人
   (公正取引委員会事務総局
   審査局長)        鈴木 孝之君
   政府参考人
   (法務省民事局長)    房村 精一君
   政府参考人
   (国土交通省総合政策局長
   )            三沢  真君
   政府参考人       
   (国土交通省都市・地域整
   備局長)         澤井 英一君
   政府参考人
   (国土交通省住宅局長)  松野  仁君
   参考人
   (千葉大学法経学部教授) 丸山 英気君
   参考人
   (ハウズィングケースワー
   カー・マンション管理士) 千代崎一夫君
   参考人
   (全国マンション管理組合
   連合会会長)       穐山 精吾君
   参考人
   (都市基盤整備公団理事) 中臣敬治郎君
   国土交通委員会専門員   福田 秀文君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月十三日
 辞任         補欠選任
  中本 太衛君     小西  理君
  大谷 信盛君     武正 公一君
  今田 保典君     齋藤  淳君
  保坂 展人君     日森 文尋君
  二階 俊博君     松浪健四郎君
同日
 辞任         補欠選任
  小西  理君     中本 太衛君
  齋藤  淳君     今田 保典君
  武正 公一君     大谷 信盛君
  日森 文尋君     保坂 展人君
  松浪健四郎君     二階 俊博君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 連合審査会開会に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 建物の区分所有等に関する法律及びマンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇号)


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     ――――◇―――――
久保委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、建物の区分所有等に関する法律及びマンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案審査のため、参考人として、千葉大学法経学部教授丸山英気君、ハウズィングケースワーカー・マンション管理士千代崎一夫君及び全国マンション管理組合連合会会長穐山精吾君、以上三名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いをいたします。
 次に、議事の順序でございますが、丸山参考人、千代崎参考人、穐山参考人の順で、それぞれ十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。
 なお、参考人及び質疑者におかれましては、御発言の際は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず丸山参考人にお願いをいたします。
丸山参考人 発言の機会を与えられましたことに感謝いたします。それで、私の意見を簡単に述べたいと思います。
 区分所有という制度ですけれども、これは、世界的に見て、第二次世界大戦以降、急激に発展した制度であります。我が国においてもこのことは妥当いたしまして、昭和四十年代から発展して、今日でもその勢いはとまらない状態でございます。
 区分所有がなぜ盛んになったかということですけれども、一つは、大都市の居住者にとって、所有権が与えられて安定した住居が得られるということであります。大都市は、一般には借家でありますけれども、借家の場合には、家賃の値上げとか、あるいは解約といったものの危険があるわけですけれども、区分所有の場合にはそういうことがないわけです。また、小さな資金で住居を得られるということが、企業とかあるいは社会全体にとって大変便利な制度だということになります。こういう点から、ヨーロッパなどでは、借家の対抗的な制度として区分所有が位置づけられます。
 しかし、区分所有というのはいいことだけではなくて、共同的な部分の維持管理とか、あるいは最終的な建てかえとか区分所有関係の解消のときに困難な問題が出てまいります。
 日本では、明治二十九年につくられた民法で一カ条あったんですけれども、ほとんど使われませんでした。昭和三十七年にドイツ法とかフランス法を参考にしてこの法律ができたわけであります。区分所有の骨格ができ上がったということになります。区分所有の成立要件とか、敷地との関係とか、あるいは共用部分の費用の負担などが主要な内容であります。しかし、この法律は、規約の変更なんかに全員一致が要求されるように、民法に忠実な規定というふうになっていたわけです。
 そこで、昭和五十八年に至りまして、現実の課題がたくさん出てきたものですから、これを改正いたしました。二つありまして、一つは、専有部分と敷地の関係を一体化するという措置です。二番目は、管理制度を充実していくということで、団体の認知とか、多数決制の採用、義務違反者に対する措置とか、建てかえ制度の導入といったことが含まれます。この改正によって、広範な多数決原理が採用されて、いわゆる団体的な拘束が強化されたということになります。
 区分所有という制度は、私は、二つの核があるというふうに考えています。一つは専有部分の所有権であって、制度の個別的な要素というふうに言えるだろうと思います。他の一つは、集会の参加、規約の改正等々、制度への団体的な参加ということで、団体的要素と言われるものだろうと思います。昭和五十八年法は、この団体的要素が非常に増大したということになります。本来は、この団体的要素というのは管理に関してでありまして、所有権に関しては及ばないということであります。
 しかし、今回の建てかえの規定はそれを超えまして、所有権へも団体的な拘束を及ぼしたというふうに言えるだろうと思います。我が母法でありますところのドイツ法とかフランス法が三十七年法の段階にとどまっているのと比較しますと、相当先へ進んだといいますか、そこから離脱したということが言えると思います。
 今回の改正法の点検でありますけれども、共用部分の変更とか、あるいは管理者、管理組合法人の代理権、当事者適格といったことは妥当であり、何の問題もありません。
 規約の適正化でありますけれども、等価交換方式とかそういったものから生ずる規約の不適正な条項を一般条項によって是正しようということですけれども、これは大変重要な意味を持つというふうに考えています。今回の管理に関するものの中では最も重要な改正だろうと考えています。この結果、従来の不適正な規約が、かなり訴訟によって解消されるだろうということが予想されます。
 管理組合の法人化、規約、議事録等々のIT化というのも何の問題もありません。復旧についての規定も問題はありません。
 これに対して、建てかえの決議に関しては相当の問題がありそうであります。
 まず、一棟の建てかえ決議でありますけれども、中間試案では、老朽化とそれ以外の要件を異にして規定いたしました。そして、要綱案では客観的な要件が削除されたわけです。なぜ削除されたかというのは、外から見てみますとなかなかわからないところがあります。要するに、ここでは特別多数決だけによって建てかえができるという制度が出てきたということになります。これを考えてみると、居住の安定というようなことがそがれる可能性がないとは言えない。場合によっては、区分所有というのは借家よりも弱い制度になってきてしまう。賃借権の物権化という言い方がありますけれども、それになぞって言いますと、所有権の債権化というようなことが言えるのではないかというふうに思います。
 ドイツなんかでは三十七年法からの離脱が見られますけれども、先週、ドイツで学会に招待されて集まりましたけれども、多数決制度の採用には専門家はかなり否定的であります。私の考え方では、せめて、建築後三十年という要件は象徴的な意味で残した方がよかったのではないかというふうに考えています。将来的には、今回見送られた区分所有関係の解消という制度とともに、区分所有法の外に位置づけたらどうだろうかというふうに考えています。
 次は、団地内の建物の建てかえの承認であります。
 団地内の建物の建てかえは、法制審議会の結論に加えて、一括建てかえという新たな制度をつくったわけです。一括建てかえの制度によって、さらに従来の部分建てかえの要件も緩和されたというふうに考えています。これは、影響を受ける棟の四分の三の同意でいいというようなところに見られます。これをどう考えるかということであります。
 団地の建てかえが極めて困難であり、かつ、建てかえの必要が高い団地が存するということはもう否定できないわけです。そして、区分所有関係の解消という制度が法制審で見送られたということと相まって、この措置は理解できるというふうに考えています。団地の建てかえが客観的に必要であるときに、現行法ないし法制審の要綱ではやや無理ということであります。
 こういうことで、部分建てかえということと、一括建てかえという制度が出てきたわけでありますけれども、部分建てかえでは、建てかえする棟の区分所有者、議決権の五分の四の特別多数決と、団地管理組合の議決権の各四分の三の決議と、特別な影響を受ける棟の四分の三以上の議決権を有する区分所有者の建てかえ賛成によって建てかえができるということになります。一括建てかえでは、団地管理組合の区分所有者及び議決権の五分の四以上の決議があり、かつ、各棟の区分所有者及び議決権の三分の二以上の賛成があれば建てかえができる、こういうふうになるわけです。
 ここでは、一棟建てかえよりもさらに多数決制、しかも、ここでは、議決権だけということもあるし、区分所有者及び議決権のときもあるということで、この整理が十分なされているかどうかは検討を要すると思っています。特別多数決によってなされていく。団地が大きくなればなるほど、個々の区分所有者の意思のウエートの反映は小さくなるということになります。これは、団地制度の欠点ということになります。そもそも団地というのは、自治とかそういったことからしますと、やや無理がある制度です。したがって、この領域は、建替え円滑化法の活躍する場だろうというふうに考えていますし、そうならなければならないと思います。
 それとともに、団地区分所有者に本来属すべき容積の配分のルールが何らかの形で示唆されるべきだろうと考えています。本来、建てかえの可能性のあるのは団地であります。しかし、現実にできるかどうかは、区分所有者の意思と経済状況によって決まるだろうと思います。特に、後者の経済状況ですね。この団地の建てかえ制度は、先ほど言いました私の考えでの、所有権の債権化というのがより一層顕著だというふうに考えます。
 最後に、立法過程について、一、二、申し上げておきたいと思います。
 立法過程を見ていますと、区分所有という制度に関する議論がほとんどない形で、必要性による立法がなされている。これでよいかどうか。要するに、団地というような制度について、詰めた議論がどこかでされるべきだったろうというふうに考えます。
 二番目は、法制審議会の機能ですけれども、特に、一括建てかえというようなものが突如あらわれたということを見てまいりますと、この法制審議会の機能というのが、議員立法の活性化とともに少し変わってきたのではないかというふうに思います。
 最後に、条文のあり方ですけれども、団地の規定というのは、準用規定が多くて大変わかりにくい規定であるということが五十八年法のときに批判されましたけれども、さらにそのことが言えるのではないかと思っています。この法律が、素人が運用するという側面が強いものですから、一考されるべき余地があったのではないかというふうに考えています。
 以上です。(拍手)
久保委員長 ありがとうございました。
 次に、千代崎参考人にお願いをいたします。
千代崎参考人 千代崎と申します。
 東京の板橋区に住んでおります。ハウズィングケースワーカーと名乗って、住宅のことについては何でも相談に乗るという住宅のコンサルタント事務所を開いております。本日は、国土交通委員会で発言させていただくことを大変感謝しております。
 昨年マンション管理士の試験を受けて、ことし合格、登録をしたマンション管理士でございます。六月に参議院で、参考人として出席した最初のマンション管理士であるとすれば大変光栄に思いますというふうに述べました。続いて衆議院でも同じような発言の機会があるということは、大変うれしく思っております。どうもありがとうございました。
 私は、マンションで実際の業務で感じていることをお話しして、法案審議の参考になればと思います。
 事務所を開いて十年間、ボランティアとの中間のようなものもありますけれども、大体、業務としてさまざまなマンションからの相談を受けております。主には、建物の診断をして、長期営繕計画をつくり、必要なら工事企画を行い、工事中は監理も行っております。その他、マンションの管理組合の立ち上げや規約の整備、ペット問題、管理会社への不満などさまざまな相談に乗っております。また、管理組合の顧問も幾つかのマンションではしています。そして、そういうことで、直接マンション住民と接している実務を仕事にしています。そういった業務から見た本を出版しましたので、ごらんになっていただければ幸いです。
 マンションは、部位ごとに修繕がかなりできます。部位ごとに修繕や改良ができれば、総体的にも長もちさせることができます。
 長もちさせるということは、危険、不便、不衛生なことを我慢して使うということとは違います。安全で、安心で、快適に使えてこそ、長く使おうかな、こういう思いも出てくるものだと思います。狭小という問題以外は、ほとんど直接的に解決できると思っております。
 今度の区分所有法改正は、マンションの建替えの円滑化に関する法律と対をなして、建てかえの合意、合意後の進展を図ろうというものだと思います。
 耐用年数を含む客観的な要件を法律で入れないと、建築後数年でも、五分の四以上の決議で建てかえが上げられれば、反対者がいても建てかえができることになります。一方で、三十年というふうに入れますと、あるいは四十年というふうに入れてもいいんですけれども、その十年前の築二十年ころからは手入れが少なくなると思います。大規模修繕もままならなくなると思います。私は、どちらも矛盾しているのではないかなと思っております。
 マンションの寿命ということを人間の場合で当てはめて考えてみますと、人間の寿命は、遺伝子、栄養状態、体の鍛錬、病原菌との接触、医療、介護、事故などさまざまな要因があり、決して寿命が最初から何年と決まっているものではありません。例えば、寿命を八十歳と決めて、そこまでは生きていなければならない、あるいは、八十歳を過ぎたら生きてはいけないとはだれも言いません。
 マンションもそれと同じだと思います。長くもつマンションもあるし、短期間で建てかえが必要になるマンションもあると思います。また、同じ遺伝子でも、維持管理への努力次第では長もちするマンションが出てくるのは当然のことです。
 どちらがよいのかということを考えることが問題だと思います。やはり、長く使うことがよい、こういう風潮を育てることが必要だと思います。そのためには、どんなことがあるだろうかと考えてみました。
 終局の年限を決めるのではなく、例えば、二十五年を経たマンションを使用しているのに対して、維持管理への助成を制度化していただきたい。こういうのがよいと思います。人間でいえば、年金のようなものです。長く使ってくれて御苦労さまということで、引き続き維持管理をしましょう、お願いしますという形で、老朽化マンションへの援助と考えてもらってもよいと思います。
 既存の制度でいえば、公庫のマンション共用部リフォームローンを全国のどこでももっと使いやすくということ、東京都での利子補給制度を、公庫だけでなく、民間から借りた場合にも適用してほしい、足立区での共用部工事への助成、板橋区や浦安市でのバリアフリーへの助成制度、神戸市でのエレベーター設置助成制度など、部位ごとへの支援策も含めて、さらに充実した制度を全国で広げるために法律化していただきたいと思います。
 長く使うことと建てかえということがどのぐらいの比重を持って御論議されているかどうかということは、私にはよくわかりません。ただ、今国会に向けて十一月に出された衆議院調査局国土交通調査室の建物の区分所有に関する法律及びマンションの建替え等に関する法律の一部を改正する法律案という冊子を見ますと、何となくわかる気がします。
 これがそうですけれども、二十五ページから始まる「3 本法律案の論点等」という中で、二十七ページには「(4)建替え実施への支援等」という項目があり、幾つかの論議すべきことが割と具体的に挙げられております。
 同じく二十七ページには「6 建物の長寿命化に関する検討」がありますが、いわば抽象的であります。そもそも、順番すら違うのではないかなと思っています。
 以下、法案にできるだけ沿って、強く考えていることを中心としてお話しいたします。
 全体的には、区分所有法は住民の方が直接見ることが多いので、そのときに解説が必要でないような表現にしていただきたい。
 例えば、「共用部分の変更」というところでは、もともと今でも大規模修繕は共用部分の変更ではない、したがって過半数で進めてもよいという解釈で工事を行っているマンションは数多くあります。今回の法案でも、まだわかりにくい表現になっています。大規模修繕は共用部分の変更に入るのか入らないのかというそのものがわかりにくいので、もっと適切な表現にしてほしいと思います。
 「規約の適正化」というところでは、規約の不公平は、もともと、管理システムの設計ということが、将来を見越し、責任を持ってやられていないことが原因だと思います。規約設定はその中でどうしていくかということです。
 建築の設計をだれがしたということと同じで、規約の設定はだれがしたのか、公序良俗に反する規約設定をだれがしたのかをわかるようにして、規約設定をした人の責任も問えるようにしていただきたい、こういうふうに思っております。
 具体的に言えば、標準管理規約どおりにすると管理費や積立金の負担が大きく変わってしまう例もあり、是正は並大抵ではありません。しかし、規約というものは立場が変わっても不公平と感じないようなものでないと困ると言うと、ほとんどの方にはわかっていただけます。本来はどうあるべきなのかという方向の共通認識には立ってもらえます。裁判まで行かなくても公平、不公平を判断する機関を設置することはできないかなというふうに思います。
 「建替え決議」については、今回、条件は緩和していますが、阪神大震災で被害のあった芦屋の二百十四戸のマンションで、十五戸に対して強制執行まで現実に行われたという矛盾をさらに拡大しないかという不安感があります。通常の建てかえは時間を長くとることが可能ですので、慎重過ぎるほど慎重でもいいと思います。建てかえ要件を判定する建築も含めた判断の組織を設置していただきたい、こういうふうに思っております。
 最後に、長生きマンションへの積極的検討をということを考えております。
 四十年ほど前の「ローズマリーの赤ちゃん」の撮影場所は、ニューヨークのダコタハウスというマンションでした。いかにも古ぼけたマンションという設定で、ロケの現場となりました。後にジョン・レノンが住んで、ニクソン大統領が入りたいと言って断られたことでも話題になりました。このマンションは築百年以上ですが、人気は高いです。中がそのままなわけはありませんが、改装しながら使っているわけです。日本では、残念ながら、百年以上を経たマンションはありません。
 こういったマンションをつくるのは、新しくつくるマンションをそうするということではなく、今あるマンションで長く住むことがよいという、長もちをさせる工夫を十分した後でこそ、建てかえへの支援策が生きてくるのではないかなと思っております。
 最近思っていることをスローガン風に言うと、次のとおりです。どんなマンションでも五十年、さらに頑張って百年は使いましょう、元気です三十年マンションというキャンペーンを張ったらいいのではないか。仕事では、長生きマンションへのプログラムを一緒にデザインしましょう、こういうふうに言っております。
 以上で私の意見といたします。どうもありがとうございました。(拍手)
久保委員長 ありがとうございました。
 次に、穐山参考人にお願いをいたします。
穐山参考人 穐山です。本日は、衆議院国土交通委員会で再び発言の機会を得られましたことを感謝しております。
 さきの国会における衆議院国土交通委員会で、マンション建替え円滑化法の審議に当たりまして、区分所有法の改正を含めて発言させていただきました。かつ、議員の皆様には真摯な審議をいただきましたことを、この場をおかりしてお礼を申し上げる次第でございます。
 全国の大都市を中心に都市型住宅としての分譲マンションが飛躍的に増大し、その居住者は人口の一割にも達しようとしているということは御承知のことと思います。この分譲マンションは集合住宅という居住形態であるため、区分所有者は管理組合を組織して共通のルールによる運営と維持管理を行っていますが、そこには常に合意形成という民主主義の基本が適用されているわけでございます。
 近年、分譲マンションの管理組合運営や維持管理あるいは建てかえに関して問題が多発し、これらが社会問題化しておりましたが、このような状況を受けて、マンション管理適正化法やマンション建替え円滑化法等が整備されたところでございます。
 一方、分譲マンションの管理の基本となる区分所有法の改正につきましては、早期の見直し、改正を要望してきたところですが、昭和五十八年の改正以来十九年ぶりの改正ということであります。この間、分譲マンションに関する紛争が絶えず、私どもからすれば、見直し、改正は遅きに失したという感がいたします。今後は、社会経済情勢の推移に合わせ、マンション問題の状況把握に努められ、適時的確な見直し、改正に当たられますことをお願いする次第でございます。
 また、法制審議会区分所有法部会での見直し、検討について、多くの検討項目に十分な時間がかけられたとは思えず、見送られた項目もあることは残念なことだと思っております。
 今回の区分所有法の改正に当たり、全管連としまして、昨年、法務大臣及び法制審議会に意見書を提出しており、その後の改正要綱試案のパブリックコメントに対しても意見を述べたところでありますが、この機会に全管連として若干の意見を述べさせていただきます。
 本来、法律は国民のためにあるべきものです。今回の改正に当たりまして、区分所有者である私どもに意見開陳の場をいただけたことには感謝いたしておりますが、十分に意見の反映がされたとは思われず、残念と言わざるを得ないところもございます。
 他方、特に強く希望いたしました共用部分の変更、規約の適正化、原告適格性、団地の建てかえ等につきましては、一部に不満もありますが、相当部分で反映されたところであります。
 しかし、検討の中で、建てかえの客観要件につきましては、五〇%ルールの採用を希望したところであり、改正要綱試案においても、損傷、一部滅失の乙案で二分の一を超える費用が明示され、パブリックコメントでも賛成意見が多くありましたが、実現しておりません。この客観要件は老朽化にも適用できるものであり、判定機関として第三者機関を設置することも意見として申し述べたところでございます。
 また、団地の一括建てかえにつきまして、建てかえ決議は、建てかえに参加する者ができるだけ多くなるということが肝要であります。そのための合意形成には、建てかえに参加できる機運醸成が建てかえ成功のポイントと理解しておるところでございます。したがって、一括建てかえの決議を五分の四とし、ただし書きにおいて各建物ごとに三分の二以上となっておりますが、実際には、ある建物で三分の一近くの反対があれば建てかえ遂行には厳しいものがあり、現実には賛成者を五分の四に限りなく近くする努力が必要である。したがいまして、実質的には四分の三程度は考慮することになると思われます。
 次に、全管連は、建物の老朽化に対する更新手段として、再生を提案しております。これは、構造躯体を保全しつつ増改築や設備等の更新を行うもので、環境も配慮した建物の長命化であり、区分所有者にとっては有効な選択肢の一つと言えます。かつ、建てかえに至る際の区分所有者の判断としては、長命化の努力をした後であるということであれば、十分納得できるものと思います。
 さらに、建てかえに関して、初動期の建てかえ検討や調査はだれが行うのか、費用はどこから出すのか、だれが負担するのか等の不明確な点があり、これらを管理組合の業務として明確にする必要があります。
 同様に、建てかえ決議から建替組合が設立されるまでの間の区分所有建物等の管理について、建物が除却されるまで管理組合の管理か、建替組合が成立すれば以後は建替組合なのか、また、訴訟が起きたとき、係争期間中はだれが管理するのかといった不明確な点があります。これらを明確にしておく必要があると思います。
 さらに、建替組合が成立し、実際に事業が開始されたときに、業者等が倒産したことにより工事が停止することが考えられます。このような場合の工事の継続の担保や権利関係の保障等の裏づけが必要ではないかというふうに思っております。
 以上、簡単でございますが、全管連として意見を述べさせていただきました。ありがとうございました。(拍手)
久保委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
久保委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菅義偉君。
菅(義)委員 おはようございます。自由民主党の菅でございます。
 参考人の皆さんには、お忙しい中をお越しいただきましてありがとうございます。早速質問をいたします。
 阪神・淡路の大震災があって、マンションも多くの被害に遭った。しかし、結果としてなかなか建てかえがうまくいっていない。建てかえできたのは、ほとんど等価交換方式の物件であったわけであります。現状のこの区分所有法というのはまさに今の時代にそぐわない。この改正というのを私も強く求めてきた立場に立って質問させていただきたいと思います。
 まず最初に、丸山参考人についてであります。
 三月のこの中間試案の中では、築後三十年経過という客観的要件がついたわけですけれども、今回の改正案は五分の四と。先ほどの参考人の陳述の中で、象徴的にもこの三十年というのはつけておいた方がいいんじゃないかなという発言がございました。これについて、私も非常に迷ったのでありますけれども、実は私もマンションの居住者でありまして、三十年という客観的なものがついてしまいますと、三十年たてばやはりこのマンションは不適格だとかそういうふうに見られるんじゃないかなという思いも物すごく強いわけでありますので、これについて、丸山参考人の、象徴的というのを、私ちょっと、どういうことを意味しているのかなというふうに先ほど思ったんですが、質問したいと思います。
丸山参考人 象徴的という意味は、理性的に考えますと、三十年以前で取り壊すというようなことは普通はあり得ないんですけれども、先ほど私が申しましたように、区分所有というのは二つの核があるわけです。所有というのと、ある種の議決権みたいなところがあるわけですね。そういったものを大事にしないと、今まではマンションが普及したわけですけれども、非常に弱い制度だというふうに考えられてしまうんですね。つまり建てかえられてしまう。本当はいたいんだけれども建てかえられてしまうというのが多数出て不満が出てくると、せっかく順調に発展した制度がだめになってしまうのではないかという危惧をするわけです。
 特に、私は先週もドイツへ行ってちょっと見てきたんですけれども、ドイツの連中なんかは、建てかえという発想はまるっきりないんですね。特別多数決でさえ危惧をしているということを考えると、要するに戸建てに非常に近い発想で見ているんです。
 そういうことを居住者たちが考えているときに、建てかえは確かに必要であると私は考えているんです。建てかえ以外に方法はないというものもあると思うんですけれども、やはりそういう、象徴的な形というのは残しておいて、余り不合理な形で建てかえしませんよという形でおくべきだったのではないかというのが私の真意です。
 以上です。
菅(義)委員 重ねて丸山参考人にお尋ねしますけれども、参考人は、区分所有法については大変な権威でありまして、特にヨーロッパとか海外のこの法律についても精通をしているわけでありますけれども、海外というのは非常に長くマンションを使用しているわけですが、さりとて、海外でもこの建てかえる時期というのは当然あるというふうに思いますが、そういうときはどのような形で建てかえが行われているのか、その辺のことをお知らせいただければありがたいと思います。
丸山参考人 建てかえという発想がもともとないんですね。
 つまり、私が先日も行ってみたところは、一八〇〇年ぐらいに建てられた木造の高層住宅なんですね。それを使いつつ修繕されて、まあ私は改修と言っているんですけれども、一部分を残して全面的にやるんですけれども、取り壊して新たにつくるという発想はないんです。その中心部分あるいはその一部分を残しつつ生かすという方法なんですね。
 そうすると、彼らの発想の中に、建てかえようという発想がまるっきりないんです。それが私にはよくわからないんですけれども。あるいは日本人の思考の方がやや、こういう住宅についてはおかしいのかもしれませんけれども。とにかく、幾ら聞いても、そういう発想についての答えがないんですね。それを私は非常に危惧して、余り建てかえというのは頻繁になされるということは、国富をむだに使うということもありますし、やはり居住の安定というものを損なうという意識が彼らには非常に強い。
 もう一回言いますと、戸建てに非常に近い発想を彼らは持っているということなんだろうと思います。要するに、自分のものなんだから、そう簡単に、人が建てかえろと言ったって、嫌だよと。だから全員一致なんですね、現状の法制は。だから、それはもうほとんど不可能なことです。もちろん、ぶっ壊れちゃったような場合に、保険がかかっていれば、これは過半数で建てかえができるんですけれども、そういうことがない限りは彼らの発想にはないということ。
 それと同じような制度ですから、同じような形で発展していくということが大事だというふうに考える視点からすると、まあせめて象徴的な形で三十年という形で、維持しつつ、というふうに考えたわけです。
 私は、建てかえのきかないというマンションが現実に存在することは全く否定していません。だから、ある程度時限立法をつくって、昭和四十年代ぐらいのぐあいの悪いマンションだけをうまくやっていけば、あとは、まあまあ三十年、もっともつだろうと思うんです。だから、恒久的な法律でそういうことをやることが妥当であったかどうかということについてはやや疑問を持っているという意味です。
菅(義)委員 穐山参考人にお尋ねしますけれども、まさにマンション管理の全国の責任者として大変な御努力をされて、現場に一番精通をしていらっしゃると思いますが、同じ質問でありますが、今度客観的要件を取って、五分の四以上の決議にした、これについてはどう思われますか。
穐山参考人 私どもはもともと、客観要件に三十年ないし四十年というのは、マンションの維持管理にそごを来す、意欲を失ってしまうということが一つと、現実に三十五年というローンもあるじゃないですか、ローンが払い切らないうちに建てかえというのもおかしいじゃないですかということ、あるいは社会的風潮として、マンションというのは三十年もてばいいんだというふうになってしまうんではないか、あるいは三十年もてばいいマンションをつくればいいというふうになってしまうんではないか、こういうようなことから、三十年マンションというものにつきましては、あるいは四十年というものにつきましてのこの客観要件については、私どもは無理があるということで反対をしてきた次第でございます。
 それにかえまして、客観的な要件として、先ほどのような意見を述べさせていただきましたが、米国で使われております五〇%ルール、こういったもので区分所有者が客観的に判断できるものがあればいいんじゃないかということでございます。
 したがいまして、もう一つは、区分所有者がしっかりとした判断が下せるような手続、きちんと状況の把握、それを説明する。どの程度の費用がかかるのか、長期修繕計画はどうなっているのか、積立金はどうなっているか、こういったものとの比較がちゃんとできて判断できるような手続をきちんとしていただけるようにすれば、場合によっては五分の四決議だけでもまあいいのかなというような理解はしたわけでございます。
 しかし、第一義的には、やはり客観要件としては五〇%ルールを採用していただきたかったということでございます。
 以上です。
菅(義)委員 千代崎参考人にお尋ねします。同じ質問でありますけれども。
 参考人は長く使うということに陳述の要点があったというふうに思いますが、とはいえ、やはり建てかえ時期というのは必ず来るわけでありますね。そのときには今回のこの要件についてはどう思われますか。
千代崎参考人 私自身は、現行のものでもそんなに変わらなくできるのかなというふうには思っております。そういう、ほぼ同じ形で推移できればいいなと、六月に参議院で述べたとき以来また考えてきまして、結局は年数を入れるのも入れないのも矛盾しているなと思って、今みたいな形での維持管理のための助成制度をかわりに設けていただけないかなと思う意見でございます。
菅(義)委員 穐山参考人にお尋ねしますけれども、まさにこの法律が成立をすると、私はやはり建てかえに拍車がかかるというふうに思いますが、その中で管理組合がやはりよっぽどしっかりしなきゃならない、管理組合の責任というのは物すごく実は重くなると思います。
 ただ、現実的に、参考人もいろいろな座談会あるいはそういうところで言っておられますけれども、管理組合が総会を開いても、委任状だけで終わってしまうとか、そういう組合があるということですけれども、管理組合の活性化策というんですかね、こういう法律ができた、あるいは円滑化法ができていますから、それに対応する管理組合のあり方みたいなものを教えていただければありがたいと思います。
穐山参考人 管理組合の重要性というのは、今御指摘がございましたように、建てかえということになりますと、だれがそれを推進していくのかということで、非常に大きな問題であるということでございます。
 現実には、管理組合は共用部分の維持管理をしていくということでございますので、建てかえということの業務は入らないというふうに理解されておりまして、この点につきましても、先ほど意見を再三述べさせてもらいましたように、建てかえに関する調査、研究、検討、こういったものについて、いわゆる初動的なものについては管理組合の業務にすべきであるというふうに申し上げたいということでございます。
 それと、今御指摘がございましたように、活性化ということにつきましては、やはり区分所有者がもう少し自分たちの財産の管理ということについて目覚めていただかなければならないというふうに思っておりまして、一つは管理について管理会社に丸投げをしている、みずから管理についての意識的な計画とか、そういったようなものをつくった上でしっかりとやっていくということが現在はなかなかないものですから、そういった点で非常に難しい部分があろうかと思います。
 しかし、建てかえにつきましては、これまでの経験から見ましても、どの管理組合も、集会を開きますと非常に多くの人が集まります。やはり自分の財産をどうするということになりますとある程度の関心を示すということでございますので、これはやはり一般的な維持管理についても皆さんにそういうふうな意識を持っていただかなければいけないんじゃないか。何といっても、管理組合の活性化というのは、みずからがみずからの財産を守るという意識をしっかり持っていただくということが必要じゃなかろうかな、こういうふうに思っております。
 以上です。
菅(義)委員 終わります。
久保委員長 玉置一弥君。
玉置委員 民主党の玉置一弥と申します。
 きょうは、参考人の皆さん方、大変お忙しい中を御参加いただきましてありがとうございます。
 私ども、今出ております法律につきまして、これから十年後ぐらいからかなり大きなこの法律の効果が出てくるような気を持っているわけでございますが、日本の住宅事情からいいまして、都市部は高層化というものがますます進んでまいりますし、住居の高品質化といいますか、こういう面からもやはり建てかえの要素、あるいは改築そして再生、こういう方向にかなり向かっていくのではないかというふうに思います。
 そういう中で、法律的に、一つは手続の問題がございまして、まずこの改正案が出される前に皆さん方のところにいろいろな意見聴取というものがあったかと思いますが、私どもは、特に、学者やあるいは住民参加というような形でパブリックコメントを必ず行政の側にやってほしいというお話をしておりまして、少しでも実務的にタッチされた方、あるいは将来を見据えた考えを、あるいは研究をされている方々の御意見をいただいて、より適正な法律をつくりたい、こういう気持ちがございます。
 そういう意味で、それぞれの皆さん方に、順次、行政の方からの働きかけ、改善に対してどういうお話があったかということをまずお伺いをいたしたいと思います。
丸山参考人 行政の方から特に働きかけというのはございませんでしたけれども、日ごろいろいろと研究を一緒にしているものですから、そこのところの意思疎通はかなり図れているというふうに考えています。
千代崎参考人 私は、民間の本当に小さな事務所ですので、特別に働きかけはありませんでした。
穐山参考人 私は全管連という一つの団体を組織しておりますので、私どもに対して、パブリックコメントに対する意見を出してもらいたいという接触はいただいております。
玉置委員 こういう中身からいきますと、一つは、管理主体の責任という面で、先ほどの穐山参考人の陳述の中にもございましたように、まず建てかえを決定するあるいは改築を決定する、その主体をどこに置くかというのと、責任ですね。この辺について、現行法とこの円滑化法改正案とを見て、どういうふうに変化していくととらえられているか、その辺をちょっとお聞きしたいと思います。穐山参考人。
穐山参考人 これまでの区分所有法では、建てかえにつきましては、ごく簡単といいますか、建てかえの条文についてはそんなに詳しいものではありませんでしたので、今回それを十分に検討いただいて、特に団地の建てかえということにつきましては具体的に条文化していただいたというふうに思っておりまして、この点については感謝しているわけでございます。
 ただ、マンションというものは、最近では百年マンションというような言われ方もしておりますし、最近のマンションはしっかりしたものが建っておりますので、十分な寿命はある、もつものというふうに理解しております。ただ、三十年、四十年前の古いマンションは、機能的に劣る、狭小であるというようなことから建てかえというものが出てきているわけでございますけれども、物理的に建物そのものにつきますと、まだまだ十分耐えられるものであるだろうと思います。
 したがいまして、私どもが申し上げておりますのは、建てかえに至る前に十分な修繕をしていくということが一つ。もう一つは、再生という形で、先ほど丸山参考人の方からもお話がございましたように、ヨーロッパの方では建てかえるということではなくて、手入れをして、改築なり、そういう形でやっていくということでございますので、そういったものも選択肢としてあるべきじゃないかということ。それから、もう一つは建てかえでございますが、そのほかには、先ほど同じく丸山参考人からお話がありましたように、区分所有関係の解消、つまり、お互いに区分所有関係をなくしてしまうということですが、こういう選択肢も将来的にはやはりあっていいんじゃなかろうかな、こういうふうに思っております。
 以上です。
玉置委員 丸山参考人にお伺いします。
 先ほどから、管理方式ですけれども、修繕とかあるいは建てかえとかいう面で見た場合に、ヨーロッパ型とアメリカ型とに分かれているということを、丸山参考人がいつもおっしゃっておりますけれども、この辺から見て、日本の管理方式はどちらのタイプに属するのかということと、それから、建てかえについてどちらの方がより信頼性があるかという面についてお伺いしたいと思います。
丸山参考人 日本はアメリカ型だろうと思うんですね。しかし、実は、法律の方はむしろヨーロッパ型につくられていまして、そこのところにいろいろと無理があるわけです。今回の区分所有法の管理に関する検討でも、その問題をもう少しはっきりさせろという意見が出てきたわけですけれども、それは残念ながら実現しませんでした。
 しかし、管理法でしたか、マンション管理士というのが出てまいりまして、それが場合によっては能力を発揮するような時代が来れば、ヨーロッパ型に近づいていく可能性が出てくるのではないかというふうに私は考えているわけです。そういう点では、管理士というものが両方の溝を埋める機能を果たしていくことを、私自身は期待しているわけです。
 建てかえに関連いたしますと、いずれも、建てかえというのは大変なことでありますから、どちらの方式がより建てかえがしやすいかということは言えないのではないかと思うんですね。
 建てかえというのは、そもそも再開発の一種ですから、プロだって難しいわけです。もう何十年もかかってやっと都市再開発をするという、ある種それとほとんど変わらない内容を持つわけですから、そういう点からしますと、区分所有者自身が建てかえをするというようなことは、私は、ある意味では非現実的だと考えているんです。
 そういう点で、区分所有関係の解消という制度があれば、これはまたプロがそこに参加していくことができますから合理的だというふうに考えられますけれども、それは今回の改正では見送られたわけで、そうなると、共同建てかえしかない。そうすると、円滑化法なんかで後ろからプッシュをしながら、区分所有者自身で一生懸命頑張っていく、こういうことにならざるを得ない。
 ただ、その場合には、区分所有者だけでの建てかえというのは、恐らく不可能だろうと思うんですね。専門家の関与がどうしても必要にならざるを得ないということを考えているわけです。ただ、それを前提とすれば、合意ということが大事ですから、それについてくさびを打ち込んだという意味で、私はそれなりに評価をしているわけです。
玉置委員 棟の多数ある団地の再生といいますか、そういう意味で、都市再生と建てかえが同時に行われると思うんですが、この中で、各棟の比率と全体の比率がありますけれども、私どもからすると、ほとんどの人が賛成をするというのはなかなか難しいだろうというふうに思うんですよね。ですから、各棟と全体との比率を今回の法律は定めていますけれども、実際にこのとおりいくのかということと、逆に、ではその間に居住地をどこかへ移動させなければいけないということがありまして、同じ出るなら、もうそのまま出てしまおうかという方がおられたときに、では、その残った区分所有権、これが同時に売却になる可能性がありますよね。それを扱うところが、これは管理組合になりますか事業主体になりますか、ということがあると思うんです。
 そういう面から考えますと、多数あるところの団地を再生させるというところが非常に難しいのではないかというふうに思うんですが、いかがでございましょうか、丸山参考人。
丸山参考人 全くそのとおりだと思います。
 私は、先ほどもちょっと申しましたけれども、建てかえの現実性があるところは団地に限られるのではないかと考えておるんです。つまり、容積率がかなり余裕があるというところが多いわけですし。しかし、さらに突き詰めますと、経済的な問題で、建てかえて果たして余剰床が売れるかどうかということが問題になるだろうと思うんですね。そう考えると、残念ながら、郊外の団地のすべてが建てかえが可能だというふうには到底考えられないわけです。やりたいんだけれども、しかし、財政的にといいますか、その上でできないということは、私は幾らでも出てくると思うんですね。
 そういう意味で、建てかえの規定が整序され、私自身は、一部についてはこういう特別多数決でいいだろうかどうかということについては疑問を持っているんですけれども、しかし、どうしても建てかえなきゃいけないという団地があることは、これは否定できないんですね。だから、そこに何とか糸口を与えるということができたということは、大変評価をしているんです。しかし、現実にできるかどうかは、これはどちらかというと、経済問題だろうと私は思うんですね。その余剰床が売れないとするならば、これはどんなに希望してもできないわけですね。そう考えてくると、私は、建てかえがそう容易にできるというふうには楽観しているわけではないんです。
 しかし、こういう糸口をつけるということは大変重要なことだったというふうに考えて、その点では評価しているというふうに考えています。
玉置委員 穐山参考人にお伺いします。
 都市部は、どちらかといいますと容積率がかなりぎりぎりのところがあって、建てかえをやると、部屋を広げたら部屋数は減少せざるを得ないというようなことがあると思うんですね。それと、それぞれのマンションが生き残るために、例えば高齢化のための部屋を設けるとかバリアフリー化、あるいは、もっと何か奇抜なアイデアを売り物にしてやっていくとかいうことしかないのではないかというふうに思うんですが、そういう意味では、再生というものがかなり主体になってくるだろうというふうに思います。そういう再生という面から考えた場合に、今回の法律はこの再生をどういうふうに位置づけているかということについてお伺いしたいと思います。
穐山参考人 再生につきましては、法律に具体的になかったとしても、やってできなくはないということでございますが、やはり財産ということでございますので、例えば二戸を一戸にするとか、そういうようなこととか、いろいろありますので、そうしますと、やはり法的な整備も多少必要になってくるんじゃなかろうかなというふうに思っております。
 それから、既存不適格の建物につきましては、今回の改正案では、同一敷地、同一居住性、これにつきましては外しましたので、隣地、例えば隣に土地があればということでしょう、あるいは、二つのマンションが敷地を一つにしてということも考えられるんじゃなかろうかと思いますが、そういったいろいろな手は考えられるようになったというふうに思っております。
 それと、バリアフリーというものを考えていきますと、やはりプラスアルファの費用がかかる。再生あるいは建てかえの場合にそういう負担がということになると、これは行政等の支援もやはり必要ではなかろうかということでございます。
 それと、最後でございますが、郊外型団地の場合の建てかえは、今御指摘がございましたように、非常に建てかえ自体が難しいものではなかろうか。特に余剰床をつくったりしますと、果たして売れるのかどうかという問題も出てまいります。また、戻り入居というものの問題も出てくるのではなかろうかと思います。
 したがいまして、こういったものをできるだけ少なくするということになりますと、いかに魅力のあるマンションなのか、団地なのかということが必要になってくると思いますので、例えば同一敷地内にケアハウスがあるとか、あるいは図書館があるとかあるいは託児施設があるとか、小さな子供からお年寄りまでが利用できるような施設、こういったものをマンションの敷地、団地の敷地の中に地方自治体と提携してやるというようなことも考えていかなければ、郊外型団地というものは、ただの建てかえ、自分たちの建物だけではなかなか難しいのではなかろうかな、かように思っております。
玉置委員 ありがとうございました。
久保委員長 赤羽一嘉君。
赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。
 三名の参考人の皆様におかれましては、大変お忙しい中にもかかわりませず御足労いただき、また貴重な御意見を賜りましたことを、心から感謝申し上げたいと思います。
 私は公明党の国土交通部会長を務めておりますが、我が党はかねてより、このマンション問題というのは、民間住宅でありながら、まちづくりという観点からはその存在自体が大変公的な側面も含んでいる、このマンションにかかわる法整備を進めていかなければいけないということで長年取り組み、また、マンション管理適正化法という法律の中で、マンションというこの言葉自体を法律用語に定義もさせていただき、管理の重要性をその法律の中に盛り込みました。また、阪神・淡路大震災のあの経験の中で、なかなか現実のものとしてあり得なかったマンションの建てかえというものが一挙に大量に出たわけでございまして、私自身も実は神戸市の東灘区のマンションで被災をした被災者の一人でございまして、その体験からも、法整備の重要性というものを感じながら、マンション建替え円滑化法、そして今回の区分所有法の二十年ぶりの大きな改正になったわけでございます。そういった意味で、きょう、この場で三名の皆様と議論を交わすことができるということは大変感慨深いものだということをまずコメントさせていただきたいと思います。
 今、最初に参考人の皆様の陳述を聞かせていただいて、率直に言って少し私と感覚が違うところがあるなというのを申し上げたいと思うんです。
 建てかえ決議の要件について、築三十年云々というのが落ちたということに関してのコメントがございました。しかし、私は考えるに、阪神大震災のときに大変な被害を受けて、もう大きなダメージを受けたマンションですら、建てかえをするのか大規模修繕にするのかと大変な議論があったわけです。マンションがあれだけ明確に壊れていながら、なかなか建てかえに踏み切れない。これは、経済的な問題もありますし、いろいろな難しいハードルが大きい中で、なかなか建てかえというのは踏ん切れないわけですね。
 そして、日本人の場合、恐らく住宅とかマンションというのは一生の買い物、三十年、四十年のローンを組んで、まさか一生涯のうちに建てかえるということを想定してマンションを買った人なんというのは、多分かなり少数派だというふうに私は思っております。ですから、基本的には、少しぐらいの老朽化であれば、建てかえようなんという気持ちにならない。先ほどからお話がありますように、できればリフォームして、なるべく今のまま快適なものにしていきたい、こう考える人が大半だと思うんですね。
 しかし、その中で、老朽化がひど過ぎる、建てかえなければいけないと思う人が五分の四以上いるということは、私は、マンションというのは私的な存在ですし、穐山さんの中にも書いてありましたが、私的自治である区分所有法というのが憲法そのもので、であるがゆえに、私は、居住の皆さんたちが、五分の四以上の方々が自分たちで建てかえを選択したい、こう思われるということは、それなりの要件を満たしている。
 実はきのうのこの委員会でもやりとりがありました。他の政党の方が、五分の四というと、字面を見ていますと二割の人が、五分の一以下の人が追い出されるというようなことを懸念されると。その懸念というのは確かにあると思いますが、現実問題として、阪神大震災の経験なんかを通しますと、五分の四の賛成というのは極めてハードルが高い話であって、逆に、老朽化で五分の四以上の人が建てかえなければいけないと感じているのに建てかえができないということの方がある意味では民主的なのかなということを、私は率直に言って疑問に感じるわけなんですね。
 ですから、そういった意味で、私は神戸市の当局なんかと話をしますと、震災ということもあったので、区分所有者が見つからないとか、どこに行っているかわからないということで、あのときはまだ全員の賛成が必要だったのですが、それが五分の四になって、結果として四分の三ぐらいにならないと実際の建てかえは進まないというような意見もあり、法制審の中での意見もあったというふうに聞いております。
 ちょっと繰り返して恐縮ですが、そういった意味で、五分の四という今回の区分所有法の改正というのは、現実の問題として、心配されるような弱者を追い出すようなことには、私はつながらないのではないか。築三十年というものが入りますと、私の思いでは、千代崎参考人も言われましたが、マンションというのは七十年、八十年、百年、当然そうあるべきであって、阪神大震災というのは想像を超える大被害でありましたが、案外もろいマンションが多かったということ自体が問題であるのであって、そこにはまたちょっと別の意見もあるので後ほど述べますが、三十年イコール老朽化みたいな形で走ることの方がマイナスが大きいのではないか。
 そういった意味で、建てかえ決議の要件に築三十年とか四十年というものが入ることが非常に逆の、マイナスの影響が大きいのではないか、私はそう思っているのですが、この点について、まず、丸山先生、御意見を端的にいただければと思います。よろしくお願いいたします。
丸山参考人 私も、五分の四がそう簡単にできるというふうには思っていないということについては全く同感であります。
 三十年が老朽化かといいますと、それはそうじゃないと思うんです。その時点からは建てかえができるという体制になるということだけだと思うんですね。
 それで、私が心配しますのは、マンションは大きなものもありますし、小さなものもあるわけです。小さなものの場合には比較的話がまとまりやすいということになりますと、そういうところでは三十年たたなくてもどんどん移り変わっていく。さらに、区分所有法は何もマンションだけではありませんので、そういった全体のバランスをとる必要があるという意味では、私は、象徴的と先ほど申した意味は、実際問題として余り変わらないということなんですね。そういう意味で、ただ所有権を尊重するという意味で残した方がよかったということで、客観的な要件の三十年があるのと、それがないのとで違うかと言われますと、私は、理性的な住民であれば、そんなに違わないと思うんです。
 ただ、ある意味では、小さなマンションなんかは比較的まとまりやすいですから、そういうところでの問題、あるいはマンションと言うかどうかは別として、業務用の区分所有ビルなんかでの問題を考慮に入れると、そういったものも残した方がよかったかなというふうに考える、そういう趣旨でございます。
赤羽委員 丸山先生にちょっともう一点、別のことを聞きたいんですけれども。
 団地内の建物の一括建てかえというのが今回区分所有法に盛られました。一括でかえる場合は、各棟五分の四以上の賛成じゃなくて、全体が五分の四であって、各棟三分の二以上の決議でオーケーになったわけですね。
 私は冒頭に言ったこととちょっと逆のことを言うようでありますが、本来、団地内の建物の一部建てかえについては、それぞれの棟の五分の四というのが求められているわけです。
 きのうもちょっと法務省と議論したんですが、十棟ある棟で、例えば九棟かえるといったときはそれぞれ五分の四の決議が必要だ、これは原則論なんですね。ところが、十棟全部かえるということになると三分の二でよくなる。これは原則を相当外しているんじゃないか。おまけに、ここは法制審議会にかかっていないということで、おかしいんではないかということを民事局長に話をしたんですが、それなりの理由の答弁があって、私は納得できなかったんだけれども、ここについて、法律家の御専門としてはどのような御見解があるのでしょうか。
丸山参考人 法制審議会の答申後この法案ができるまでの間に、どういう経緯があってこのようなものが入ったかどうかは、私はほとんど知らないんです。そして、正直言いますと、昨日ないし一昨日に初めてこの法案を見たんですね。そういう動きがあることは若干聞いてはいましたけれども、正確に情報を見たのはきのうないしおとといなんです。
 それで、委員御指摘のように、団地の中の一棟ずつを建てかえていく場合と一括建てかえの場合でかなり要件が違うじゃないか、こういうことについては、全くそのとおりだと思うんですね。そして、全体を一括建てかえの場合には全体の五分の四があって、あとは、個別には三分の二でいいという、その三分の二という数字がどこから出てきたのかということについても私はよくわからないんですね。
 従来の区分所有法では、四分の三とか五分の四とか過半数という数字はあったんですけれども、三分の二というのは、私もやはりやや唐突だと思うんですね。考えてみると、この一括建てかえということにした場合には、より建てかえやすくするという発想がきっとあったんではないかと思うんですね。そういう場合にはできるだけ一括建てかえをしやすくしてやろう、そしてその後の、円滑化法のしりを押してくれることによって、何とかうまくいくんじゃないかというような予想があったのではないかというふうに考えているわけです。
 ですから、私に三分の二をどうかと言われますと、やはりわからないんですね、正直なところわからないんです。私は、やはり団地という制度は非常にきつい制度で、難しい制度なんです。おまえどうすると言われますと、結論が出ないんです。ですから、それはそれで私は尊重したいと思っております。
赤羽委員 わかりました。
 続きまして、千代崎参考人と穐山参考人にそれぞれお聞きしたいんです。
 私は、建物の長命化というのは大事で、マンションというのはやはり百年くらいは――百年くらいはといきなり大きく出たような話になるんだけれども、七十年、八十年、百年ともって当たり前。何か、築三十年が老朽化みたいな雰囲気があること自体が間違っている。
 ですので、私はこの委員会でいつも言っておるんですが、耐震診断というのは結構いろいろ助成金、補助制度があるんですが、現実に使われていないんですよ。たしか私は穐山さんにうちの部会で聞いたことがあったんじゃないか。やったらどうですかと言ったら、いや、やったら資産価値が下がることしかないから余りやりたくないと、大変正直な御答弁をいただいたんです。しかし、やはりマンションというのは公的な側面もあるということでこういった法律もでき、国の支援もしているわけですから、ある意味ではその裏側に、やらなければいけない、果たさなければいけないところというのも出てくると思うんですね。
 そういった意味で、これは何年でもいいんですが、先ほど千代崎さんは二十五年と言われていましたが、例えば築三十年を経過したマンションについては耐震診断を受けるべきだ、こういったことの制度化は必要なんじゃないか、こういう提案を私はしたんです。それは何でかというと、明らかになってしまうことはあるかもしれないが、このマンションは、耐震では物すごくいいんだ、非常に環境にも優しいとか、バリアフリーも進んでいるとか、性能診断なども明らかになった方が、これから二十一世紀の社会におけるマンションとしてはふさわしいのではないか。
 私は実は自分がマンションの区分所有者じゃないのでこういう気軽なことを言っているのかもしれませんが。せっかく耐震診断に対する補助事業があってもなかなか使われていないということにかんがみて、私は、築三十年は耐震診断とか性能診断を受けるべきだ、こういった制度化ということを提案しているところなんですが、そのことについて御見解をいただければと思います。
千代崎参考人 私は、耐震診断を受けた方がいいというふうにいつも言っております。そういうふうに言いますと、受けて悪かったら直すお金がないから受けない、こう言う専門家も多々おります。
 ただ、私自身はそのときによく例えて、先ほども人間に例えましたけれども、マンションで耐震に問題があるというのは、例えば自分が心臓が悪いというのがわかるということだと。その後、今度、ペースメーカーを入れるお金はないけれども、心臓に負担のかかることはなるべくやらない、激しい運動はしないとか、余りびっくりするようなことをやらないとか、こういうことでその人も寿命が長くなる、こういうことがあると思いますね。自分は心臓が弱いんだという自覚をするということが私は大切だと思います、ですから受けた方がいいですと、こういうふうに言っております。
 ただ、この間、私は国の制度はまだ使ったことがないんですけれども、阪神・淡路大震災直後に、例えば板橋区の制度、これは東京都もほとんど共通ですけれども、どの団体から受けたら助成が出るかというのは決まっておるんですね。板橋の場合だと四団体。そのうちの二団体は、うちは民間のマンションはやりませんというふうに断る。あとの二団体というのは、建築士事務所協会の東京と板橋なんですね。
 そうすると、東京に電話しますと、板橋を紹介しますと。つまり一団体しか指定していないということです。板橋に電話しますと、今度は順番でやっておりますと。つまり競争原理が働かないわけです。ここに、当時ですと五十万円の助成をしてもらっても全く意味がない。よそに頼んで実際お金を払った方が、五十万円をいただいてやるより安い。
 現実に板橋区からは、千代崎さん、あそこのマンション、耐震診断という打診があったけれども、助成を使っていただけないでしょうかと。いや、年数から外れているんですよと言ったら、いや、国道にも面しているし、十四階建てで高いので、区長が特別に認めたというところに適用できそうなので、ぜひ使っていただきたいという話がありましたけれども、現実には、五十万円では安過ぎて話にならなかったということです。
 私自身は仕事で二つほど耐震診断をやっておりますけれども、片一方は第三次診断までやりましてオーケー、耐震補強は、百三十八世帯の建物で五十万円で済みました。片一方は五十世帯ぐらいの建物ですけれども、耐震補強をやりますと千二百万ぐらいかかる、こういうことが出ました。それでも建て直すよりは絶対安いです。やはり耐震診断、耐震補強ということが建物の長命化ということに役立つことは間違いないです。
 どうもありがとうございました。
穐山参考人 阪神・淡路大震災の後には耐震診断についての問い合わせが非常に多かったんですが、実際に耐震診断をやったのは少ない、あるいは耐震工事をやったのも少ないということです。
 それは、今もお話がありましたように、耐震診断料が非常に高い。戸当たり数万円から十万円近くかかる。もう一つは、まず古いマンションは耐震診断をしなくとも新しい基準には合っていないということでございますので、補強をしなければいけないことはもう事実なんでございます。ところが、現実にその費用を負担する能力が区分所有者にはなかなかない、相当の費用がかかる。
 そういうようなことから、結局、耐震診断をするということは、はっきりとうちのマンションはだめだよということを認識した上で補強をしなければいけないという、そこまでの腹をくくらないとできないということでございますので、非常にやりにくい部分があった。
 それから、行政が一部補助という形でスタートさせましたが、費用的には限られた予算ということで、多くのマンションが申し込んでも無理がある。例えば団地のように数百戸というようなところが申し込んだら、もう全然、おたくはもうだめですというふうになってしまいますので、耐震診断を受けるべきだという今の御意見は十分わかりますが、そういった面でもっともっと制度を充実していただくことと、それから、やはり支援、補助を考えていただかないと難しいのじゃなかろうかな。これは、やはり再生に通ずるとは思っております。
 以上です。
赤羽委員 どうもありがとうございました。
 質疑時間が終了しましたのでこれで終わりにしますが、大規模修繕にいたしましても、建てかえにつきましても、区分所有者に対する経済的な支援というのを考えなければなかなか現実のものでないという問題意識があるということだけ発言させていただきまして、終わりにさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
久保委員長 一川保夫君。
一川委員 自由党の一川保夫と申します。
 参考人の皆さん方、大変御苦労さまでございます。
 まず、三人の参考人の方に基本的な考え方だけ確認したいわけですけれども、今、マンションを取り巻く法制度が、ここ一、二年、いろいろと整備されてまいっておりますけれども、今回のこの法律の改正も含めまして、今のマンションが抱える課題、現状を見たときに、こういった法制度というものが現段階ではとりあえずこれで大体そろったというふうな認識を持たれているのか、いやいや、まだまだいろいろな課題があるから法制度的にはもっと完備すべきところが残っているというふうに思われるのか、そのあたりを、ちょっと基本的なところをそれぞれの先生方から教えていただきたい、そのように思います。
丸山参考人 この一、二年の間にマンションに関する法律が急速に整備されたということは、大変ありがたいことだと思っていますし、マンションにとって追い風になっているというふうに思います。
 先ほど申しましたように、マンションのあり方がどうなのかということに関して、必ずしも一致していないんですね。ですから、法制審議会なんかでもいろいろ議論するんですけれども、結局議論がすれ違いになるということは、そもそもマンションとは一体どういうものなのかというような議論をどこかでする必要があるような気がするんですね。そうすると、もう少し法律が必要なのか、あるいは、こういうところはこう変えていった方がいいのかというようなことが出てくると思うのですけれども、そこのところが、必要に応じて改正されていくということですので、ある種のタコ足的なことになってまいりまして、必要性があるかどうかということに関しては分かれてきてしまうというところがあって、一回、そういう委員会なりなんなりをつくって、基本的なあり方みたいなものを議論した方がいいのではないかという感じを持っています。そうすれば、さらに法律が必要なのか、あるいは評価はどうなのかということが出てきそうな感じがいたします。そういうふうに考えています。
千代崎参考人 私自身は、建物の建築というよりは、住宅ということからの検討といいますか、例えば、住宅基本法というようなものでマンションを見直していく、こういう形ではぜひとも必要だと思います。
穐山参考人 この法律、マンションに関する法律は三つということになりまして、相当程度充実はしてきたということでございますが、私どもは前々から、区分所有法、建替え法、業者法、管理組合法、この四つが必要だというふうに申し上げてきたわけでございます。マンション管理適正化法が業者法と管理組合法を合わせたようなものと言えるのかもしれません。ただし、現実にこの適正化法は、マンション業者の登録制度、あるいはマンション管理士、あるいは管理業団体の指定とか啓発指導団体の指定、そして、実際にマンションの管理については適正化指針という指針で出しておるだけでございまして、本来、マンション管理組合というものはこういうものであって、このような業務を行うべきだというものはございませんので、そういう意味からしますと、まだ不十分なところがあるというふうに思っている次第です。
 以上です。
一川委員 それでは、ちょっと丸山先生に。
 私の印象としては、マンションというのは、一時期、日本の高度成長期にかけて、一種のマンションブームみたいなものがあったような気がするんですね。それは、本当に家族が居住するためのマンションとか、あるいはどこかリゾート地域に休暇のときに行くというためのマンションだとか、あるいは一種の値上がりを期待してというか、そういう投資型のマンションみたいなもので、必ずしも自分たちはそこに住むという必然性はないんだけれどもマンションを抱えてしまうというようなケースがあったような気がするんですね。
 それが最近、ある程度経済が低成長期下に入って、少子高齢化社会の中で、マンションを持っている本来の目的がだんだん所有者にとって変わってきているというような感じを受けるわけですけれども、最近のマンション所有者の一種の動向といいますか、そのあたりがどういうふうな変化を来してきているかというところを、先生なりにどういうふうにお考えでしょうか。
丸山参考人 マンション、確かにおっしゃるように、ある時期には投資型のものもありまして、必ずしも住んでいないということですけれども、だんだんと居住型に変わってきた。そういうところでは二世代目の人たちも出てきて、随分都市住宅として定着したんだろうというふうに思うんですね。
 ところが、もう一つの問題は、都心回帰といいますか、住宅がだんだんと都心の方に集まりつつあるという感じがあるわけですね。私なんかもそうですけれども、ある年齢になってくると、郊外に一戸建てを持っていても、庭なんかの手入れがなかなか難しい。そうすると、やはり都心に行って、そして、小さなものでもいいからそこで過ごしたいということになりますと、都心の高層マンションみたいなものが大変魅力的になってくるということがあると思うんですね。そういう点で、先ほど言いました郊外の団地あるいは郊外の戸建てといったようなものと都心のマンションといったものがだんだんと色分けされてきて、都心の方に集中していく可能性があるのではないのかという住宅問題の基本問題があるように私は思うんですね。
 そういう点では、マンション自体は都心にどんどん建っていくと思うんですけれども、建てかえみたいなものについてはいろいろ問題があって、都市の中でも、だんだん都市がコンパクトになっていくというような傾向で、集中が進んでくるのではないかという気がするわけですね。そういうところでマンションをどう考えるのか。平面的な形で、ただマンション政策一般ということではなくて、どこの場所にあって、どういうレベルのマンションであるのか、あるいはどういう目的のマンションであるかによって政策の目的はかなり違ってくるのではないかという気がするんですね。そういうことをこれからやるべきではないかというふうに考えています。
一川委員 では、穐山参考人にお尋ねします。
 今ほどの話にもちょっと関連しますけれども、マンションを所有している方、そこで生活されている方の価値観が非常に多様化してまいりまして、最初、何十年か前に入居する段階では、ほぼ経済力も似通った方々が入ったんだろうと思いますけれども、三十年も経過すれば入っている方々の環境が大幅に変化しておりますので、そういう中で、合意形成を取りつけながらマンションを管理し、また今回みたいに建てかえの話を持ち出すということは大変なことだろうとは思います。最近、マンションの管理だとか、あるいは今回みたいな建てかえの話題に対して、だんだん非協力的な方々がふえてきたのではないかというような見方をする方もおられますけれども、穐山さんはそのあたりをどのようにお考えでしょうか。
穐山参考人 バブルの時代には、等価交換ということで余剰床がたっぷりできまして、費用負担なしに広くていいものが手に入るということで、そのときには建てかえというのが一つのブームのような形にもなった時期がございましたが、バブルがはじけますと、右肩下がりの地価ということでございまして、非常に厳しい状況になってきたということがございます。
 一方で、マンションそのものの高齢化と同時に居住者の高齢化というのがございまして、高齢者にとっては、もう自分たち夫婦だけならばそんなに広い部屋は必要ない、そういうようなことから建てかえに反対するという部分もございます。ただし、機能的にはバリアフリーではないというものがありまして、不便をある程度は我慢しなきゃいけない、そういうものはございます。
 ただ、最近では、建てかえにつきましては、おっしゃられましたとおりでございまして、考え方が大分違ってきている。結局、相当の建てかえに対する魅力というものがない限りはなかなか難しいんじゃなかろうか。
 私どもが考えておりますのは、下手をすると古いマンションは老人ホームになってしまうということを心配しております。建てかえをしない、もう自分はここでいいということになれば、若い人たち、ファミリー世代がそこへは来なくなる可能性があります。狭いということで、それから、子供たちを遊ばせたりあるいは看視をする、そういうような部分で非常に難しい部分もあるとか、そういう面からして、機能的にも落ちるということからして、ファミリー世代が来ないとなりますと、まさしく老人ホーム化してしまう。
 そういうこともありますので、先ほどもちょっと申し上げましたように、付加価値をつけた、小さな子供からお年寄りまでが利用できるような施設、そういったものを付加してやっていかないと無理なんじゃなかろうかな、そういう形で、やはりマンション居住者の考え方も変わってきているんじゃなかろうか、そういうふうに思っております。
 以上です。
一川委員 では、最後に千代崎先生にお伺いしますけれども、今のお話のように、大変価値観が多様化してきておる中で、こういう建てかえということの合意形成すら大変なことなんでしょうけれども、先ほど、管理等に対して助成の制度をしっかりすべきだとかというお話にもちょっと触れられましたけれども、私は、管理それから建てかえについても、相当の数の居住者が集中的に住んでおられるマンションというものについて、もっと公的にしっかりとした支援制度があってもいいんじゃないかという考え方を持っているわけです。
 千代崎さんはいろいろな悩み事で相談を受けられておるということなんだけれども、マンションの建てかえなり管理について、公的にどういった支援の制度があった方がいいというお考えなんでしょうか。そのあたり、ちょっと簡潔にお願いしたいと思います。
千代崎参考人 私は、先ほど述べましたように、マンション年金といいますか、例えば、二十五年ぐらいたちましたら、もっと長く使うための維持管理の費用、これを制度化できないだろうかというふうに思っております。
 例えば、マンションが一戸ありますと、管理費、これは計算しやすいように一万円とします。もっと高いところも安いところもあります。それから、例えば十年間たって、内装をちょっといじろうかなと。百二十万円かかったとすると、これも月に直すと一万円ということになります。それから、今度は共用部の修繕で考えますと、大規模修繕をやりまして、あるいは途中でポンプの交換などを考えていますと、やはり十年間で大体百二十万円。これも月に直せば一万円ということです。そうすると、小さいマンションを持っていて、年収が下がっても、月に三万円ぐらいずつそこにお金がかかっていくということになります。
 例えば、自主管理をやっていれば管理費が少し安いとか、そういうことはあるかもしれませんけれども、そこは工夫で乗り切っていただくことにして、それから内装については、自分のものだから多少汚くても住んでいるという覚悟があればいい。そうすると、雨が漏ったり、それから、外に対して外壁が落ちてしまうというような、共用部分の問題については何とかならないだろうかと。そこに対して、例えば一月に五千円ぐらいずつでも、マンション養老年金というのかマンション年金というのかわかりませんけれども、そういう具体的な費用を助成していっていただく。こういうことがあれば、マンションを長もちさせるということが機運としても出てくるし、それは先ほど言いました、長もちさせるということは不便とか非衛生なところを我慢しているのではない、こういう観点とも合致するということになるのではないかと思います。
一川委員 ありがとうございました。
 終わります。
久保委員長 瀬古由起子さん。
瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。
 三人の参考人の先生方、大変御苦労さまでございます。
 実はこの区分所有法の審議に当たりまして、私たち日本共産党は、昨日ですが、この法案への見解及び提案を発表させていただきました。審議をより豊かにして、そして私たちが提案させていただいた、マンション居住者の立場に立った、国民の立場に立った法の審議をぜひしたいというふうに私たちも考えています。その点でも、きょうは三人の先生方の御意見を十分聞かせていただきたいというふうに思います。
 そこで、まず三人の参考人の方にお伺いしたいと思うんです。今回の区分所有法の改正は、一九八三年の大改正以降の大変長い期間を置いた上での改正でございます。それで、その一九八三年のころには、関係団体だとか専門家とか、さまざまな意見が寄せられて、まとめられた。
 ところが、先ほどからちょっと指摘がございましたように、今回の法制審議会では、当面二年間議論をやるという予定が半分に短縮されて、そして法制審議会の区分所有部会の議論では、今回の改正案の中心点である客観的要件が撤廃されるという問題は、議事録も見させていただいてもほとんど審議された形跡がございません。これは中間試案の中でも明らかになっているわけですが、パブリックコメントを見ましても、こうした客観的要件を外せなどという意見もほとんどないんですね。
 きのうの委員会の審議の中でも、一体だれがこんなこと要求したんだと言ったら、不動産会社だとかそういうところが三件ぐらいあっただけだと。それで一気に、こういう法制審議会で審議された内容もある意味ではこけにしたような形で決める、こういうやり方が果たしていいんだろうかという率直な根本的な疑問を私は持っているんですが、その点、三人の参考人の皆さんの御感想をまず伺いたいと思います。
丸山参考人 私も最初に述べましたように、法制審議会の機能も相当変わってきたというふうに考えています。
 ただ、その内容なんですけれども、特に、新たに入ってきた一括建てかえの問題というのは、問題があることは専門家は前からよく知っていることです。しかし、法制審議会の方では団地に関してはほとんど議論がなされていないんですね。八三年のときもほとんど議論がされていないんです。ですから、よくわからない制度なんですね。
 私は、実は書いたんですけれども、よくわからない制度、そして、それをガラガラポンするときにはさらに非常に困難があるんですね。それは、私法と公法が両方ミックスしている問題があるものですから。
 ですから、そういう点で、事態が早く進み過ぎたのか、あるいは法制審の議論の仕方が間違ったのか、そこはよくわかりませんけれども、とにかく客観的にそういうことをやる必要があったというふうに私は理解しています。ただ、法制審がそこに十分ついていけなかったということは、私は否定できないと思っています。
千代崎参考人 私自身、先ほど述べましたけれども、客観性という、年数なりなんなりというものを入れるかどうかという、そういう入れた方がいいのか入れない方がいいのかというところで考えて、結論が出なかったんです、自分としては。
 それで、ではそれのかわりになるものは何かということで、維持管理のための助成制度ということと、それから、三十年たってもまだ元気なマンション、元気な管理組合がたくさんあるということをきちんと示すことが必要ではないかな、こういうふうに思いましたので、ここに述べたことです。
穐山参考人 私は、先ほどの意見表明でも申し上げましたように、客観的要件としては、五〇%ルールの採用ということでございまして、五分の四決議だけというのには賛成しかねる部分であったということでございます。
 これまでも、私自身が区分所有法部会の委員としていろいろ発言させていただいたわけでございますけれども、一つ感じましたことは、委員の中に技術者がおいでになれば、建てかえについてもう少しいろいろとした意見も出たのではなかろうかなということを感じました。
 パブリックコメントにしましても、私が申し上げましたように、客観要件については、三十年、四十年はまず反対が多かったということ。そして、五〇%ルールにかわるものとして出ておりましたのが二分の一を超える費用という、これについては賛成意見が多かったということ。そういうことで、私の方としましては、そういったものを採用していただければということでございました。
 ただ、十数名の委員さんの中の一人でございますので、なかなか主張も通らないという部分もございまして、残念だなというふうに思っております。
 以上です。
瀬古委員 穐山参考人にお伺いしたいと思うんですが、この管理組合連合会の声明文の中にも、これは財産権を保障している憲法二十九条の問題ですね、マンションを持っていらっしゃる方の財産権をいろいろな決議で奪ってしまうことになりはしないかという点で、例えば、この客観的な要件の問題なども、もともとこういう憲法上の議論から盛り込まれた経過が実際にはあるわけですね。そういう点では、今回の法案の提案の中での重要な改正点でありますこうした客観的要件の問題だとか、一括建てかえの三分の二以上の、こういう変更の問題についての、憲法上の立場から、どのようにお考えでしょうか。
穐山参考人 区分所有権という一つの法律が特別法の形でできているわけでございますので、もともと、民法の共有の部分では、共有というものは全員の合意でないとだめだというものを、特別法として新たに別の法律にした段階で、ある程度の抑制的な、制限的所有権といいますか、そういうものになってきているんだなということは、丸山参考人から先ほどお話がございましたように、ある程度は理解できる部分ではあるかなと思ってはおります。それを踏み台にしまして多数決決議というものができたんだというふうに思いますので、これは尊重いたします。
 ただ、社会情勢的にそういうふうにあるのかもしれませんが、特別多数決決議のハードルがどんどん低くなっていくという部分には、いささか問題があるんじゃなかろうかなというふうに思っております。
 以上です。
瀬古委員 三人の参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、建てかえの場合に参加できない方々というのは当然出ていらっしゃいます。そういう場合の支援措置という問題はどのように考えていらっしゃるでしょうか。
 今、いろいろな支援措置もあるというんですけれども、もちろんマンション建替え円滑化法などでも公的な住宅へのあっせんやいろいろな問題も一定はあるというんですが、実際にそのような参加できない人たちの援助、助成、こういうものが具体的に現在機能しているでしょうか、それが本当に保証されていくでしょうか。その点、お伺いいたします。
丸山参考人 その問題は、神戸のときにもあったわけです。借金があって抵当権がたくさんついていて、帰れない人があったわけですけれども、建てかえの場合には、その問題が常に残ってこざるを得ないというふうに思います。
 ですから、これは区分所有法制度の中でやるというのがなかなか難しいと思います。制度をゆがめることになると思うので、もっと別の、社会保障制度みたいなものと連動する必要があるというふうに私は考えています。
千代崎参考人 私自身も同じように考えておりまして、現実に、例えば都内ですと、都営住宅、あるいは高齢者向けのバリアフリーになっている公営住宅、入るとなると、数百倍の競争になってしまう。こういう中に、民間マンション建てかえをやるから、ここに入ってもいいですよ、こういう制度はとてもとれないのではないかなというふうに思っております。ですので、本当に難しいなというふうに思います。
 もし考えられるとしたら、その建てかえたマンションの一室を、公営住宅だと公営住宅法によりますので、その自治体なりの区民住宅とか都民住宅とかいう形にして、家賃を払っていただく。その方が亡くなれば、それは自治体の財産あるいは国の財産になるということで考えていくということがあり得るのかなというふうには思っております。
穐山参考人 建てかえにつきましては、阪神・淡路大震災を除きまして、これまでに七十例程度ですか、非常に数が少ない。しかも、そのうちほとんどが等価交換方式、費用がかからないで済むというものが多かったということで、行政からの支援というものはそんなに必要なくというような状況でなかったのかなと思います。
 ただ、今後は、そういったことはなかなか難しいものですから、やはり行政がある程度の支援をしていかないと、建てかえというものは非常に難しいんじゃなかろうかなというふうに思います。
 特に、大規模団地を抱える地方自治体にとっては、これは県単位ですね、その大きさで見たとしても、数百戸の建てかえを一括でやるというようなときに、果たして仮住居が確保できるのかどうかという問題もございます。
 御提案をさせていただきたいと思いますのは、行政が持つ土地ですね。広い土地がもしあれば、仮住居を建てるところとして、そういうものを一時的に提供する制度とか、そういうものもやはり考慮していただかないと、現実に建てかえについての事業が進まない部分があるんじゃなかろうかなというふうに思っております。
 以上です。
瀬古委員 建物の長寿化については、皆さんが強調されていらっしゃいますし、私たちも本当にその立場で頑張らなきゃならないなと思っているんですが、先ほど、診断制度だとかそういう面でのもっと助成措置をきちっとやらなきゃならないという問題もありました。
 それから、個別にも、例えば資金的にもなかなか十分でない、こういう人たちについての公的な支援、そういうものについても一定踏み込むことも必要じゃないかと私は思っているんですが、政府は個人の財産への援助はできないという見解をとっておりますが、その点、千代崎さんに最後伺いたいんですけれども、そういう個人への支援という問題についてはどういうふうに行政としてやればいいかというのを、具体的な現場からの知恵を聞かせていただきたいと思います。
千代崎参考人 うまい知恵があるかどうかわかりませんけれども、日ごろ考えていることを。
 例えば戸建て住宅でいいますと、耐震診断をやってもやはり五万から十万円かかる。行政によってはそれを出しているところもたくさんあります。あるいは、どうしても自分で診断できない人は、ボランティアだけれども建築士を派遣しますよ、こういう制度を持っているところもあります。
 戸建ての場合、例えば、前面道路が六メーターあったとする、そこに二階建ての住宅が倒れれば、もう消防車は通れなくなる、そうすると、個人の財産ではあっても、町で考える必要がある。町というのは現実にいえば基礎自治体であり、都道府県であるかもしれません。やはりここが支援するということは、個人の財産ということじゃなくて、町全体にとって支援する意味がある、こういうふうに思っています。戸建てについてもそうなんですから、集合住宅で合意が形成しにくいというのはどなたが考えてもわかるわけで、その合意形成のためにも支援する、こういうこともやはり必要なのではないかなと思います。
 それから、個人への支援というふうに考えても、例えば支援がなくてそのマンションに住めなくなった人がいたとすれば、生活の基礎である住宅がなくなることになれば、生活保護ということになったとすると余計にお金がかかるわけですから、全体の予算をうまく効果的に配分するという意味でも、生活の基礎である住宅をその人がうまく活用することで全体の生活が成っていく、このことに対する支援というのは矛盾しないというふうに思います。
瀬古委員 どうもありがとうございました。
久保委員長 日森文尋君。
日森委員 社民党の日森文尋でございます。
 三人の参考人の先生方、大変御苦労さまでございます。
 最初に、ざくっとした質問で大変恐縮なんですが、今度の法律案が成立したと仮定をして、マンションの建てかえはかなり進むんでしょうか、うまくいくんでしょうかという感想を、大変恐縮なんですが、お三方にそれぞれお聞きをしたいと思います。
丸山参考人 先ほど申し上げましたように、これは、一つは区分所有者の意思です。もう一つは経済情勢ですね。ですから、少なくとも現状よりもよくなるだろうということは確かですけれども、大幅に進むかどうかはよくわかりません。
千代崎参考人 これだけでは進まないというふうに思います。
    〔委員長退席、赤羽委員長代理着席〕
穐山参考人 私どもの団体の中には、団地型の会員が相当多い、しかも、三十年、四十年たっているところがたくさんございまして、既に現在建てかえについての調査研究、検討をしているところが幾つかございますので、中には、この法律が改正されて団地の建てかえという条文が入ることについては待っているという部分もございますので、そういう面では、すぐ建てかえることができるとは思いません、大体十年ぐらいかかると思いますが、検討の段階では、これから幾つかそういうものに入っていくところはあるということでございます。
日森委員 穐山さんにお伺いしたいんですが、先ほど来管理組合の役割がこれからますます大きくなるということをずっとおっしゃっておりましたし、それについてなかなか明快な法的根拠もないということについての御不満も当然おありになると思うんです。区分所有法では管理組合という言葉すら出てこないということになっていますので、私ども大変問題が多いんじゃないかという気はしているんですが、四つの法律が全部セットになれば一番すばらしいというふうに先ほどおっしゃいましたけれども、穐山先生が今お考えになっている管理組合のあるべき姿、法律じゃなくて結構ですが、ちょっとお示しいただけたらありがたいと思います。
穐山参考人 まず一つは人材だろうと思うんですが、人材といっても、実際には現在の区分所有法では管理者というものはだれでもなれるということになっておりますので、いい人がいれば外部から導入するということも考えられると思いますが、普通では、区分所有者であるみずからが役員を選出して管理をしていくということですが、資質があろうがなかろうが、これが大体持ち回りということでやりますので、そういう面ではマンション管理の運営あるいは維持管理は沈滞する部分が非常にあるということで、この辺を変えなきゃ活性化しないんじゃなかろうかなということ。
 もう一つは、先ほど御指摘がございましたように、ほとんどが管理組合という名前を使っているのに法律ではそれがない、適正化法で初めてそれを認めてくれているということで、こういうものをきちんとしていただければ意識的にもやはり違ってくるんじゃなかろうかなというものです。先ほどちょっと管理組合法というようなことを申し上げましたが、そういうものできちんとしていただければ、やはり皆さんも意識が違ってきて、そして管理にもきちんとやっていくという一つの機運ができるんじゃなかろうかなというふうに思っております。
 以上です。
日森委員 千代崎先生にちょっとお伺いしたいんですが、今と同じことで、一つはお考えをお聞きしたいということと、現在でも一割ぐらいは管理組合がないという実態もあるようなんですが、そんなことも踏まえて、管理組合のあるべき姿といいますか、これについて先生のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
千代崎参考人 私自身もマンションの顧問を三カ所ほどやっておりまして、規約の改正のお手伝いとかそういうところから始めております。理事さんが原則持ち回りというのが多いと思います。その中でも、持ち回りだから嫌々という形が多い。
 こういう中で、私自身が理事会に出席させていただいて言うのは、やはり、ことし一年理事になって得したという運営をしましょうよと。もしかすると、自分の住戸内のリフォームのうまい情報とか、例えば安い方法とか、新しい情報とか、そういうのも含めてですけれども、そういうのが得られるということ。それから、多数が住んでいるマンションの建物の維持、それから、当然、コミュニティーもやらざるを得ないので、コミュニティーを形成していく。このことを、やはりやってよかったな、こういうふうに思える理事会運営をしましょう、こういうふうに言います。それで、一年たってどうでしたかと聞いてみますと、大抵は、最初は嫌だったけれども、それから、毎回出るのは大変だったけれども、役に立ったな、よかったねという印象が多いですね。
 こういうことで、建物としての財産とコミュニティーをつくっていく管理組合、こういうことが両方で発展していくのかな、こういうふうに思っております。
    〔赤羽委員長代理退席、委員長着席〕
日森委員 建てかえがこれで進むかどうかということはいろいろ判断があると思うんですが、逆に言うと、建てかえるぐらいだったら買いかえてしまえとか、今かなり格安なマンションがたくさん出ているとかいうことがあるので、なかなか難しい面もあると思うんです。
 そこで、もう一度千代崎先生なんですが、これから人口が減っていくんじゃないですか、そうすると、かなり中古のストックが生まれてくることも当然予想されると。そうすると、むしろ、それを改修したりあるいは修繕をして、そこにしっかり住んでもらうということのニーズの方がかなり大きくなるんじゃないかという気もしているんですよ。どれぐらいストックが生まれるかというのは、なかなか計算できない話なので難しいんですが。
 そういう意味で、ぜひ、中古のストックみたいなところに手を加えて、しかもバリアフリー化もできるわけですし、特に高齢者などは、先ほどおっしゃったとおり、そんなに広いところは要りませんよという話もあるわけですから、むしろそこにきちんと支援措置みたいなものをつくっていく方が、先ほど言いました住宅基本法の条件を満たしていくとかいうことにとってもいいのではないかという気はしているんですよ。その辺はどうでしょうか、お考えとして。
千代崎参考人 本当にそのとおりだと思っています。
 先ほど、部位ごとの修繕とか改修はかなりいろいろなことができますと、こういうふうに申し上げました。ただ、修繕のときというのは余りデザインに気を配らない、こういうことがありますので、機能だけを満たせればいいということじゃなくて、やはりその後も二十年、三十年快適に住んでいくという観点でやっていけば、住み心地やそれから機能も保証できる、こういうリフォームは可能です。
 それから、一つ心配なのはエレベーターですね。階段室タイプですと階段の中間階にしかエレベーターはとまらない。とまるのは、かなり安くするというのが国の後押しもありましてできました。ただ、都営住宅ではつけてほしい、公団住宅は家賃にはね返るので住民が反対する、こんな矛盾もあります。
 それから、中間階にしかエレベーターがとまりませんと、車いす対応にはなりません。そうすると、その場合に、例えば一階のベランダ側に通路をつくって段差解消機をつければ、階段室タイプでも少なくとも一階だけは車いす対応になるとか、こんな工夫もあります。
 それから、公団で一時スケルトン方式で随分住宅をつくって、その後少しグレードアップをして売ろうというときにやったのが、階段を上っていって両側に部屋があるのを、階段を一度落としまして、階段の踊り場部分を玄関にする、こういう方法をとりましてやった二戸一というのがあります。こういう方法ですと、エレベーターの設置というところも可能になりますので、うまくいくのではないかな。
 それから、私自身は、例えば団地全体で考えれば、十棟あるうちの二棟ぐらいを建てかえをして、そこは、少し高層になるけれども、エレベーター対応でバリアフリーになる。そうすると、同じ団地の中で住みかえが可能。今はまだ元気があって五階に住んでもいいよという人がいれば、それはそこに住んでいただく。こういうような、社会的に融通し合っていく、こんなことをすれば、さらにそこで住んでいくということが、しかも建物を直しながら住んでいく、こういうことが可能になるのではないかなと思います。
日森委員 あと二分ほどありますが、これで終わりたいと思います。ありがとうございました。
久保委員長 松浪健四郎君。
松浪(健四郎)委員 保守党の松浪健四郎でございます。
 お三方の参考人の皆さんにおかれましては、長時間にわたって有益な御意見をいただいておりますことに感謝を申し上げたいと思います。私は最後の質問者でございますので、あとしばらく時間をいただきたいと思います。
 かつて、私はニューヨークで生活をしたことがあります。マンハッタンのアパートに住んでおりましたけれども、おおむねそれはマンション形式でありました。古いマンションがずっと並んでおりましたけれども、古いのにもかかわらず高い、そしてなかなか入居できないというような名立たるマンションもあれば、そこに住んでいる人はほとんどサブレントで、持ち主がよくわからないで、そして安いんだけれどもだんだんとスラム化していっているというようなマンションも散見できたわけでありますけれども、恐らく日本もやがてそういう形になっていくんだろう、こういうふうに私は思います。
 そして、千代崎参考人のお話を聞いていて感銘を受けたんですけれども、やはりできるだけ長く使っていく、そしてそれが、価値観が多様化しておりますけれども、価値を下げない、こういう形が理想的なんだという思いも私はしたわけですが、これらは押しなべてマンションの管理にある、こういうふうに思うわけであります。
 そこで、極めて素朴な質問でありますけれども、お三方に、マンション管理の適正化のためにはどのような方策が必要であるとお考えであるか、お尋ねしたいと思います。
丸山参考人 マンションの管理については、私の考えは、管理組合方式だけに固執するということはやや無理があるというふうに考えています。多様な人たちの多様な管理方式が必要になってくるだろうと思うんですね。さっき言いましたヨーロッパ型の管理者方式みたいなものも入ってくる必要がある。あるいは、管理組合方式であるならば、さまざまな専門家を近くに置くようなことで管理の適正化を図るということが必要だろうと思います。
千代崎参考人 私自身は、先ほど言いましたように、住宅という権利の問題という根本のところが大切なのだろうというふうに思っております。
 というのは、例えば私たちは小中で家庭科というのを習います。衣食住というのを習って、では、住というところの教育はどういうふうにやられているかといいますと、ほかの衣食に比べてかなり薄いものにならざるを得ません。というのは、例えばエンゲル係数というのもあります。それから、栄養状態を客観的に見ることもできます。しかし、例えば自分の家の間取りを調べてきなさいという宿題を出して、授業で、あなたの家は居住水準以下ですねとか、こういう授業はできないわけですね。そうすると、どんな住宅が適正なのかという教育はほとんどやられていないということになります。
 ですので、私自身は、当面は、行政その他の窓口あるいは私自身みたいなマンション管理士という新しい資格のもとで経験を積んだ者がマンションからの相談をきちんと受ける、そういう機会をふやしていただく、そういう窓口をつくっていただく、こういうことのほかに、住まいとはそもそもどうあるべきなのかということを、やはり教育の分野でもやっていただく、それから、権利という、社会というところの分野でもやっていただく、こういうことが、マンションで住んでいくということに結果的には大きな力になるのではないかなというふうに思います。
穐山参考人 私は、やはりマンションをできるだけ長く、いい状況で生活をしていくということになりますと、管理組合がしっかりしなきゃいけないということだと思います。そして、長期修繕計画、さらに修繕積立金、こういったものをやはりきちんと定めまして、それに従って修繕、維持管理をきちんとしていく、これをやることによってマンションは相当もつものであるというふうに理解しているわけでございます。
 ただ、これをきちんと運営していくためには、またもとへ戻って人材ということになるわけですけれども、やはり管理組合の人材が大きな要素であるということで、外部からの人の活用ということも含めてやっていかなきゃいけないんじゃなかろうかなというふうに思っております。
 以上です。
松浪(健四郎)委員 私も分譲マンションに住んでいる者でありますけれども、先ほどのお話をお伺いしていて、思い当たる節がたくさんございます。
 マンション管理の適正化のために大規模修繕の決議要件が緩和された場合、これによって適正な管理が行われる、こういうふうにお考えであるか、これも丸山参考人から順次お尋ねしたいと思います。
丸山参考人 恐らく御質問の趣旨は、共用部分の変更になるかどうかということに関連して、多額の費用のものは除くというふうに現行法がなっていますので、そこのところがはっきりしなかったということで、通常の大規模修繕などは過半数でできるという趣旨の問題だろうと思いますけれども、これは私は、ある意味では、法律論としては余り問題がなかったわけですけれども、現場でいろいろと問題があったということで、こういうふうに変えて、大変よかったというふうに思っています。
 こういう点からしますと、現場の管理組合はやりやすくなったということで、反対者がいても説得できるということで、その点では大変重要な改正だろうと思っています。
千代崎参考人 先ほどの発言でも述べましたけれども、今まででも過半数というのでやっていた。だけれども、こういう表現になったので、さらにやりやすくなったというふうに思います。私自身はもっとわかりやすく書いていただきたいなというふうに思っております。
穐山参考人 今お話がございましたように、共用部分の変更ということがどうして大規模修繕なのかというのがなかなか皆さん普通には理解できない部分がございますが、法律ではそういうことになるんだろうと思います。
 今回、過半数決議で大規模修繕等はできるんだという解釈になるということはありがたいことだと思っております。ただ、どの程度のものまでがそうなのかというのがなかなか解釈に難しい部分がございまして、私どもとしましては、ある程度レベルアップさせる、つまり、昔の水準だったものを今の水準にまで持っていきたいというようなものは、これは過半数決議でできるんじゃなかろうかなと。効用増とかそういうような形で、極端に変更するものでない限り、例えば新たにエレベーターをつけようかというものは、これはやはり四分の三以上の決議じゃなかろうかな、こういうふうに思ったりもしているんですが、今回の改正で、松浪先生がおっしゃいましたように、改修工事、大規模修繕というものはある程度やりやすくなるというふうに私どもは思っております。
 以上です。
松浪(健四郎)委員 ありがとうございました。
 次に、外壁の修繕をするのにタイルを張ろう、一部タイルは張られてあるんですけれども、全部張ろうじゃないかというような意見が出て、なかなかまとまらないでとんざしているというのが、私の住んでいるところでの問題点であるわけですけれども、それはさておいて、本改正案では、管理規約の適正化が挙げられていますけれども、今まではどのような問題があったのか、また、この改正によってどのように変わるとお考えでいらっしゃるか。これも三人の参考人に順次お尋ねしたいと思います。
丸山参考人 その問題は、典型的なものは、土地所有者が等価交換をした場合に出てまいります。土地所有者の持ち分は、持ち分といいますか土地の所有権ないし建物の大きさは三分の一にもかかわらず、五一%の議決権を持つなんという形が典型的であります。これは、管理会社が一部所有しているような場合の管理費については安くするなんということがしばしばありまして、そういった場合に、とりわけ前者の場合は、持ち分というのは、ある意味では所有権そのものでありますので、規約の問題ではありませんので、全員一致を要するわけでありまして、いかんともしがたい問題であったわけです。後から入ってきた一般の区分所有者の嘆きというのはあったんですけれども、どういうふうに解しても、やはり所有権をかえるという意味では全員一致が必要であって、手がつけられない問題であったわけです。
 今回新しく適正化の条文が入ってまいりましたけれども、どこまでそれが是正できるかというのはまだわからない、裁判所がどう判断するかわからないんですけれども、少なくともきっかけはつくったということで、そういったものを変更していく、これがきっかけで改正されていくということを期待しているわけです。
千代崎参考人 私も、全体的には、マンションのさまざまな問題を現状の時点で公平に解決していくために改正がなされる、こういう方向で進んでいるというふうには思います。
 ただ、私自身は、先ほど申し上げました建てかえについては、かなり準備をしながらできることなので、手続のことだけが拙速にならないように、法的な問題を整備していただきたい、こういうふうに思っています。
穐山参考人 規約の適正化につきましては、私ども一番大きく取り上げた部分でございます。非常に問題が多い。これまでにも裁判例が実に多い。マンション問題での紛争で何が多いかというと、この規約によるものが非常に多いということです。
 例えば原始規約、一番最初、分譲された段階で、規約が分譲者の方から出されます。購入者はほとんどめくら判で押してしまいます。後でよく読んでみたら不都合な条文が入っていた、こういうケースが非常に多いということです。
 具体的に申し上げますと、例えば管理費は、分譲会社ないしは等価交換の元地主、こういう人たちの負担が低くなっている、あるいは、決算の結果赤字が出たら補てんしますとか、あるいは特別に駐車場を自分だけが使えるようにするとか、それこそもう本当に数限りないほどいろいろございました。これがそもそも後々に紛争を起こす問題点ということでございますので、私どもは、この原始規約については、区分所有者自分たちがみずからの手でつくるべきだということを申し上げまして、原始規約については、一定期間経過すればもうそれで有効性がなくなるというような形で、自分たちでつくるべきという主張をしてきたわけでございますが、最終的には、規約の適正化、公平化ということで、そういう条文で遡及適用するということでございますので、これである程度は今後はよくなるんじゃなかろうかなというふうに思っております。
 以上です。
松浪(健四郎)委員 時間が参りましたので、これで終わります。三方の参考人、本当にありがとうございました。
久保委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、参考人の方々に一言申し上げます。
 本日は、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。まことにありがとうございました。(拍手)
 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時二十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時四十分開議
久保委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 午前に引き続き、内閣提出、建物の区分所有等に関する法律及びマンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省総合政策局長三沢真君、都市・地域整備局長澤井英一君、住宅局長松野仁君、総務省自治行政局長芳山達郎君、公正取引委員会事務総局審査局長鈴木孝之君及び法務省民事局長房村精一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
久保委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 引き続き、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、参考人として都市基盤整備公団理事中臣敬治郎君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
久保委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
久保委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。細川律夫君。
細川委員 民主党の細川律夫でございます。
 私の方からは、マンションをめぐります問題についてお伺いをいたします。
 私は、議員になる前から弁護士をいたしておりまして、マンションの建設に伴う近隣住民の反対運動、こういう事件にもかかわってまいりました。平家とかあるいは二階建ての多い低層住宅の地域にいきなり中高層のマンションが建設をされますと、近所の住民は大変でございます。日照の問題とかあるいは風害の問題、あるいは工事期間の騒音とか安全、あるいは電波障害とか、もろもろの被害が周辺の住民に及びます。そして、マンション紛争と言われるものが起こるわけでございます。また、単に近所の被害だけではなくて、最近では、江東区などでは、マンションの建設ラッシュのために学校とかあるいは保育所が追いつかないというような、そんな社会問題も生じているわけでございます。
 私がかかわった事件などにおきましては、こういう紛争が起こりますとどういうところでそれを調整するかといいますと、これは役所の中で、確認申請を許可する過程の中で業者と話し合いをいたしまして、近隣住民の意見も入れて解決をするケースが多かったわけでございます。しかし最近では、建築確認が民間でも行えるようになりましたし、役所が関与するのは開発の許可そのものに限られている。そればかりか、来年の一月からは総合設計によりますいわゆる確認型が導入されるということになりますと、さらに簡単に高層マンションが建てられるということになりますので、被害を受ける近隣住民の意向がますます無視される可能性があるというふうに言わざるを得ないと思います。
 そうしますと、高層マンションが建つことによって近隣の住民が被害を受ける、そういうときの意見の調整といいますか、そういうのをどういうふうにすればいいのか。今、近郊の都市ではあちらこちらでマンション紛争も起こっておりますけれども、そういうのは現状でいいのかどうか、あるいは、これに対しての積極的な打開策があるのかどうか、これについてまずお聞きをいたします。
松野政府参考人 お答えいたします。
 高層マンションの建設につきましては、当然都市計画で定められたルールに適合させなければいけないわけでございますが、それにさらに加えて、施主あるいは事業者に対して近隣住民との意見調整を義務づけるというようなことは、調整に要する多大なコストの増大を招くということでございますので、できるだけそうしたことにはならないように、むしろ都市計画のルール、まちづくりのルールを事前に充実していくことが重要ではないかと思います。
 建築規制として建築物の高さ制限等を行うという必要がある場合には、あらかじめ住民の理解と協力のもとに、例えば地区計画、高度地区等の都市計画で建築物の規制を前もって定めておくということが可能でございまして、またそれが必要ではないかと思います。
 このような規制が住民の主体的活動あるいはNPOの発意によって行われますよう、前国会におきます建築基準法等の一部改正では、都市計画の提案制度の創設等を盛り込んでいるところでございまして、今後、こうした制度の活用を図っていければというふうに考えております。
細川委員 マンションの建設に伴う紛争につきましてはいろいろなパターンがありますけれども、先ほども申し上げましたように、一番多いケースというのは、低層住宅が並んでいる、その地域にいきなり中高層のマンションがぽんと建つ、こういうケースの中で一番紛争が起こっております。これは、住宅政策と同時に、都市計画の問題でもあろうかと思います。
 特に、こういう問題は都市近郊型の都市に多いわけでありまして、低層住宅が並ぶところにぽつんと高層住宅が建つ、そしてまたこちらにも建つ、低層のところに高層がぽつんぽつんと建つ、そういうところが多くなってきております。これは先ほども申し上げましたように、生活権が侵害されたり、あるいは環境の侵害ということになるわけでございますし、さらには、都市の景観そのものも損なうのではないかということで、大変問題だというふうに思います。
 そこで大臣にお聞きをいたしますけれども、低層住宅が並んでいるところにぽつんぽつんと高層住宅が建っている、そういう実情に対して大臣はどういうふうにお考えなのか、あるいは感想を持っておられるのか、お聞きをいたします。
扇国務大臣 今細川議員がおっしゃいましたように、我々は都市づくりというものをどう考えるかという、原点であろうと思います。
 景観というものは日本は大変おくれておりますし、諸外国に比べてまちづくり、そして景観というものを重視しないで、ただ個人の自由意思で、規制をしていないということもございます。
 先生も御存じのとおり、パリに行きますと、シャンゼリゼ通りのあの高さは本当にみんなそろっております。また、ある一定のところへ行きますと、イタリーもそうですけれども、ミラノでは全部、町の壁の色まで規制されております。そういう意味で、景観を重視するということでは規制があり、そして少なくともまちづくりの中には、外国ではほとんど電柱というものがありません。けれども、日本は道路も狭い中に電柱がある。電柱の地中化も随分私ども努力しておりますけれども、なかなか徹底できていないということも含めて、全体的な景観がどうあるべきか。その原点がなければ、低層だ、中層だ、高層だといっても、これは始まらない話でございます。
 都市計画も含め、あるいは地区計画も含めて、それぞれの建築許可をしますときに、御存じのとおり、今先生がおっしゃった低層地域というのを何を指しておっしゃっているのか私もよくわかりませんけれども、都市計画の中では、低層住宅というのは第一種住宅地ということで規制をしまして、そこは十メートル以上は建てられないという、今、それを低層地域とおっしゃったのかもわかりませんけれども、低層地域では、マンションも三階、十メートル以上はできないというふうに規制ができています。今先生の御指摘で、ぽつんと高いのができるというのは、それは第二種の地区ではないかと思います。けれども、第二種の中でも十五メーターということで、これも超高層というわけにはまいりません。
 けれども、我々は、今日の状況を考えますときに、全体的な都市計画あるいはグランドデザインがないということが、この景観の悪さ、そして、外人が日本に来てくだすって、日本はきれいな町でしたかと言うと、いや、きれいとは思わない、ただ、京都とか奈良へ行くとやはりきれいだなというのがありますから、公園のなさとか道路の狭さ、電柱の地中化、そして町並みの高さ制限、そして景観を考えた――もうそこらじゅうに看板ができています。けれども、外国によっては、公園のベンチにも一切広告禁止です。そういうことが日本では規制ができていないことによって景観が損なわれているという部分もございますので、できればそれぞれの町、それぞれの都市の条例で、この通りはこうしようとかというふうに、きちんと都市づくり、地域づくりというものが確立されて、みんなが協力する、今はばらばらだけれども、建て直すごとにずうっとみんなそろえていくということも、私は一つの景観保持の大きな要件であろうと思っています。
 戦後、今日まで、これだけ、東京都自身も、あるいはこの間の阪神・淡路大震災も、壊滅状態になっても都市づくりの基本を示し得なかったことが、いつまでたっても景観の損なわれている大きな理由だと思いますので、一つずつ我々は、歴史と文化と、そしてその景観を、また環境を加味した都市づくり、まちづくりというものを推し立てていきたいと思っています。
細川委員 今大臣の言われました都市づくり、まちづくり、住宅とかあるいは都市の政策、そういう中でどうまちづくりをしていくかという、そこに大事なのは、住民にとってどういう町がいいのか、環境にとってどういうのがいいのかということだろうと思うんですけれども、その中で、ではマンションというものはどういうふうにまちづくりあるいは住宅政策の中で位置づけられているのかということが問題ではないかというふうに思います。どうもこのマンションの位置づけ、住宅政策あるいは都市づくりの中でマンションとはどういうふうに位置づけられているのかというのが、ちょっとはっきりしないんではないかというように私は思っております。
 そこで、それでは国の方でどういうふうに考えているのかについて参考になるのが、住宅宅地審議会というのがございますね、そこから出された答申というのがございます。平成十二年六月二十一日にこの住宅宅地審議会から、「二十一世紀の豊かな生活を支える住宅・宅地政策について」ということで答申が出されました。その答申の中では、残念ながらマンションについての記述が少ない、ごくごく少ないわけでありまして、ちょっとマンション政策、位置づけ、こういうものがよくわからないというふうに私は思います。
 その答申の中で、一つはこういうことが書かれております。住宅宅地政策の現状と課題という中で、今までは住宅すごろくと言われていた、最初は賃貸というか借家であった、そしてある程度たつと、多少余裕ができるとマンションを買った、子供がちょっと大きくなって、今度は一戸建ての土地つきの住宅を買う、これが大体一般的な形であったのではないかと、これは、この答申の中に書かれているんです。そういうことでありましたから、住宅というものに高い質を求め、その質の維持を図るというようなインセンティブは乏しかった、こういうことが書かれているわけなんです。そしてまた、中古市場なども未発達だったと、こういうふうにこの答申には書かれております。
 したがって、ここから読み取れるのは、これからはマンションの質を維持して、修繕によって耐用年数を長くしていくのがいいだろう、こういうことだろうと思います。そういうことが一つ書かれている。
 それから、もう一つ書かれておりますのは、今言ったような方向で、スケルトン住宅などの整備に続いて、今度の法律の改正案と密接に関係のありますマンションストックの新たな更新・維持管理方策というのが書かれてある。それくらいしか書かれていないんです。あとは、マンションの登録の構築というようなことしか書かれていない。
 そうしますと、この答申の中では、マンションという建築様式というものが我が国の住宅に占める位置づけ、これが一体どうなのかということがきちんと述べられていないということでございます。わかるのは、書かれているのは、住宅すごろくのような、マンションというのは単なる経過点ではなくて、マンションを一つの住宅ストックとして位置づけるというところまでは書いてある。しかし、では今後、マンションというものをふやしていくのか、あるいはまた高齢者用のマンションを積極的に建設すべきであるのか、こういうような政策判断なのかはされていない。ということになりますと、では今後一切、マンションがどういうふうに建っていくのか、どういうふうな数になっていくかとかいうようなことはすべて市場原理に任されるのか、こういうことになるのではないかというふうに思います。
 そこでお聞きをしますけれども、マンションというものを住宅政策の中で一体どういうような位置づけにとらえているのか、そしてそのマンションというものの今後の帰趨については市場原理に全部任せていくのか、そういう立場でいいのかどうか、そこのあたりをちょっとお聞きしたいと思います。
中馬副大臣 細川先生は弁護士活動を通じて、またそれ以外につきましても、マンションの問題に対しまして非常に熱心に取り組んでおられますことに、心から敬意を表する次第でございます。
 住宅政策におけるマンションのとらえ方についてのお尋ねがありましたが、振り返りますと、戦後は本当に住宅も貧しかった、不足していた、そういったことから、公的に、それぞれの自治体が、あるいはまた住宅公団が、量的な不足を解消するために、いわゆる集合住宅、これを大量に、画一的につくっていったことは御承知のとおりでございます。これが一つは日本人のライフスタイルまでも変えていった点ももちろんあります。そして、それが、それまでの二DKではどうもという形で少し高級なものが出始めて、それをマンションと称し始めた。本来のマンションという言葉は英語では違うんですけれども。ともかく、そういうのが現実でございまして、現在では全国で四百万戸、そしてまた我が国の人口の約一割に相当する一千万人が居住する、そうした居住形態ということになってきていることも、これまた事実でございますけれども、先ほどお話がありました、すごろくの上がりとして、マンションに入って、そしてもう一つ上のランクといえばそれが一戸住宅だという持ち家志向というのは、一時はありましたけれども、今では逆にそうでもなくなってきているんですね。
 郊外に住んではいたけれども、自分がもう年をとって運転ができなくなって買い物ができなくなったらもう仕方ないし、逆に都心に戻って、少しゆとりがあるから、それがために高級マンションを買って都心に住んだ方が都市生活を享受できる。お芝居を見、そしてまた音楽会に行き、そして有名なレストランで食事する。郊外の少し緑が多いところに住むよりもその方がいいというような志向にもなってきて、最近、都市回帰ということも始まっております。しかし、また逆に、地方に、緑が多いところに老後は住みたいという方もいらっしゃいましょう。
 ですから、これを何か政府が、あるいは公的な形で、マンションがいいとか、あるいはこうした方がいいということではなくて、やはりそれぞれのところにお任せする。それは市場原理という言葉は私は不適当だと思いますけれども、それぞれのライフスタイルや好みやあるいはまた所得要件に応じて自分たちが自由に選択する、そうした選択の幅を広げることの方が私は必要なことだと思っています。
 ただ、今お話がありました、低層住宅地域にぽんとマンションが建つといったこと、これを野方図に認めておくのかということでございますが、これも、今の憲法の中で、自分の所有権のところに何を建ててもいいじゃないか、建築基準法の範囲ならいいじゃないかといったような主張が逆に通っていることを私は残念に思っています。
 これはもう少し自治体が関与した形で、あるいは市民が市民意識を持って、自治意識を持って、自分たちのところにそういうものは建てさせないとか、そういう首長を選ぶとか、そのような形で、はっきりとした都市計画の中で住居の位置づけをしていくのが私はこれからの自治体のあり方、地方分権を言われておりますが、そのような市民意識の持ち方ではないかと思っています。
 しかしながら、マンションにつきましては、一戸建てと異なりまして多数の世帯が集まって住むという特性から、マンションのストックの適切な維持管理、それから建てかえに対する支援、これはやはり公的な役割だと認識をいたしております。これを受けまして、前回及び前々回の国会におきましても、マンション管理適正化の推進に関する法律及びマンションの建替えの円滑化等に関する法律、この二法、これは民主党も賛成していただきましたけれども、二法を制定したところでありまして、今後ともこれらの制度の普及促進に努めてまいりたいと思っております。
細川委員 副大臣の方からのお答えは、結局はそれぞれの個人の嗜好に合った住宅を求めていく。それはいわば市場原理に任せるということではないかというふうに思います。
 私自身も、マンションがどういうふうに建っていくか、あるいは戸数がふえていくか、あるいはどういうマンションができていくか、ある面で市場原理というものは、これは否定するものではありませんし、公的な関与というものが市場をゆがめる危険性もありますので、そういう点も理解もするわけです。
 しかし、競争になじむものとそうでないものというのもまたあるわけでありまして、これまでの委員会の質疑の中でも、弱者の問題、これは競争の原理の枠外にあるわけでございます。住宅はやはり生活に必要なまさに重要な要素でありますし、居住する権利というものをみんな持っているわけでありまして、今ここで検討しておりますこの法案につきましても、費用の負担に耐えられないような人々、人たちを常に念頭に置かなければいけないんじゃないかというふうに思っております。
 そこで、今副大臣もお答えになりました都市計画、これも非常に大事なことだろうというふうに思います。これは、少なくとも公的なセクターが何らかの社会的な規制をして、その枠の中でやっていかないと、乱開発とか、あるいは他人の権利の侵害ということが続発してくるだろうというふうに思います。先ほどもちょっと指摘しましたように、マンションの紛争などというものは、都市計画そのものが問題になっている側面が非常に大きいというふうに思います。
 そこで、ちょっと私お聞きしたいんですけれども、実は私の地元でありますけれども、地元に大きな町ができるようになるんです。この町というのは越谷レイクタウン事業というんですけれども、越谷は都心から二十キロくらいのところなんですけれども、広さが二百二十六ヘクタール、これは元農地だったんですが、これを全部つぶして二百二十六ヘクタールの町ができます。そして、これは土地区画整理の手法によりまして水辺都市というものをつくるんですけれども、JRの新駅ができたりいたしまして、最終的に十数年後には、今は全く何もないところなんですけれども、そこに二万二千五百人が生活をするというような大変大きな都市というか町ができるんです。私が思いますのは、こういう大変大きな町ができる、そうしますと、こういうところこそ、まちづくりに都市と住宅の理念のようなものが具体化されなければいけないというふうに私は考えるわけなんです。
 そうしますと、ここで質問ですけれども、こういうような本当に大きな町をつくる場合に、国土交通省あるいは都市基盤整備公団というものは、一戸建てあるいは集合住宅、それぞれ計画的に配置はするような検討はしているとは思うんですけれども、このまちづくりの理念というものは一体どういうものに基づいて町をつくるのか、まずそこをお聞きいたしたいと思います。
三沢政府参考人 今先生からお話がございました越谷レイクタウン事業でございますけれども、これは都市基盤整備公団の宅地事業として実施するというものでございます。
 それで、公団の宅地事業全般をめぐる情勢で申し上げますと、先生御承知のとおり、いわゆる大都市の縁辺部でのいわゆる宅地需給の逼迫感というのはかなり緩和しているというのも事実でございまして、こういう経済社会の変化を背景にして、昨年の特殊法人の整理合理化計画の中でも見直しが求められているところでございます。
 その見直しの考え方でございますけれども、継続中の事業については、従来、宅地事業はややもすれば量の供給といいますか、そういうところにウエートが置かれていた、そういう住宅の従来の大量供給という役割から、むしろ需要に対応していい宅地ストックをつくっていくという役割への転換を図っていく、そういう見直しを行っていくという方向でございます。その中で、まさに先生御指摘のように、いろいろな地域のまちづくりの課題、あるいは、特に自然環境との共生とか、あるいは少子高齢化に対応したまちづくり、そういった地域のまちづくりの課題にも配慮するという方向で転換を図っていくということにされております。
 この中で、特に越谷レイクタウン地区について申し上げますと、これは、首都圏の基本計画の中で春日部・越谷業務核都市の一角として、JR新駅等の整備とあわせて業務機能とそれから商業機能の集積が求められている、こういう地域でございます。
 そういう地域の中で、そういう商業・業務機能とそれから居住機能がうまく調和した、まさに質のいい良好なまちづくりを進めていくということは大変大事だというふうに考えておりまして、そういう考え方に基づきまして公団を指導してまいりたいというふうに考えております。
 なお、公団からさらに補足をいたします。
細川委員 今答弁がありましたのは、これまではいわゆる住宅宅地の大量供給、それが、これからは変わって、いい宅地を供給するという方向転換になったんだ、こういうことであります。その上に、自然環境とか、少子高齢社会に対応するような点なんかも考えてと、こういうふうにおっしゃったんですけれども、そういう理念的なところはわかりますけれども、では、一体それが、本当にいい住宅として、具体的にどういうようなことがされていくのか、そこのあたりをちょっと聞かせていただけますか。
中臣参考人 お答えいたします。
 越谷レイクタウン事業は、埼玉県及び地元の越谷市から強い要請を受けまして、当公団が実施している事業でございます。
 この事業は、土地区画整理事業と、地域の安全性を確保する総合治水対策としての大規模な調節池整備を一体的に進める事業でございまして、土地区画整理事業につきましては、平成十一年十二月に国土交通大臣の認可を得、調節池整備につきましても、当公団の直接施行事業として既に事業に着手しているところでございます。
 事業の推進に当たりましては、国の指導を受けまして、需要に対応した計画の見直しを行い、地域のまちづくり課題に配慮した、二十一世紀にふさわしい親水文化創造都市の形成を目指しているところでございます。
 具体的には、業務核都市の一翼を担う新たな拠点形成を図るために、JR武蔵野線に設置される新駅を中心に、商業、業務、サービス等の機能集積を図る広域センターを計画するとともに、地区内に確保する調節池につきましては、親水空間として活用して、水辺空間と住環境の調和を図る計画としているところでございます。
 当公団としましては、当地区の交通の利便性を生かし、また、水と緑の良好な環境を最大限に活用しながら、良質な宅地ストックの形成に努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
細川委員 今お聞きをしましたけれども、私がずっとこれまで質問をして、お話ししているのは、マンションの位置づけ、いわゆる高層住宅なんかが一体どうなるのか、理想的なまちづくりのためには、マンション、高層住宅なんかはこういうところには入ってくるのか、入ってこないのか、こういう議論をずっとやっておるんですよ。
 この二百二十六ヘクタールもあるこんなでかい町、三万人近い、本当の町ができるんですから、そういう町が一体どういう町になるのか。その中で、マンションというものの位置づけを聞いているんです。マンションなんかつくらないということなら、それはそれでもいいんですけれども、一体どういうことなのか。そこをちょっと話してください。
中臣参考人 お答えいたします。
 先生御指摘の住宅計画でございますが、当地区は、新駅に近接した住宅地につきましては、主に中高層の集合住宅を想定しております。その他は、水と緑のネットワークを生かしながら、良質な戸建て住宅の立地を想定しております。
 以上でございます。
細川委員 こういう全く何にもないところに宅地を供給して新しい町をつくるわけですから、これが国土交通省あるいは日本が考えている理想的なそういう町なんだというのをつくらないと、私は意味がないと思うんですよ。ぜひそういう心構えで、ひとついいまちづくりをしていただきたいというふうに思います。
 そこで、次に移りますが、最近は、地価が安くなったということで、マンションなどについても、先ほど副大臣の方からもお話がありましたように、都心回帰の現象が進んでおります。一方、少子化や何かによりましてマンション需要そのものも低下しつつあって、地域によっては供給過剰もささやかれておりまして、高度成長期からバブル期までのマンションの建設ラッシュということとはちょっとまた違った展開が見られるだろうというふうに思います。
 そこで、お聞きをいたしますが、冒頭で申し上げましたように、マンションの紛争がいろいろございます。したがって、マンション紛争が多い、こういう現状は、むしろこういうときこそ規制を強くいたしまして、まちづくりを考える好機ではないかというふうに私は考えております。
 先ほどもお話がありました都市計画の視点とか、あるいは生活権、あるいは環境権、そういう視点からも、特に大都市近郊型のマンションにありましては、容積率を下げるとか、あるいは、高度とか日影規制、こういうものの見直しというものをいたしまして、規制強化ということも考えたらいいのではないかというようなことも思いますけれども。
 この点は、それぞれ自治体の取り組みということにもなろうかと思いますけれども、しかし、全体の趨勢としては、現状はどうなのか。規制の方向なのか、それとも緩和の方向なのか。また、住宅政策として、そういった規制強化、あるいは開発抑制といいますか、そういうことについて国の方はどういうふうに考えているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
澤井政府参考人 土地利用規制のありようにつきましては、御指摘のような郊外型のマンションを抑制するか否かということも含めまして、土地利用の現状なり、あるいは将来の見通しを勘案して、住民参加のもとでさまざまな利害を調整し、地域が選択して、あらかじめルールとして都市計画を定めておく、そういうことだと考えております。
 こうした中で、今日、例えば用途地域の見直しに合わせて容積率を落としたり、あるいは、地区計画などを活用して、一般に定められている容積率を強化するといったような事例も見受けられます。
 ただ、趨勢として強化の方向かどうかということにつきましては、容積率をアップして開発のインセンティブを与えて優良な開発を誘導するという動きも一方でありまして、緩和、強化、さまざまだと思っております。
細川委員 それで、私がお聞きしたのは、緩和をする方向も今ある、あるいは規制する自治体もある。国の方は一体こういうことについてどのように考えておるのかということについては、どうでしょうか。
澤井政府参考人 国といたしましては、地域がそれぞれの実情に応じて現状、将来を見通してどうするかということを考えて、それをあらかじめルール化するのに必要な制度的な道具立てをそろえるというのが基本的な国の役割だと考えておりまして、ある土地について強化すべきだというようなことを国が申し上げる筋のものではないと思っております。
細川委員 そろそろ時間も来たようですので、私の方はこれで終わりたいと思いますけれども、今、国の方のお考えもお聞きをしました。地方分権が進んでおりますので、それぞれの自治体が考えていかなければいけないということであろうかと思いますけれども、一方で、国の方での法律というものもありますから、その中で自治体がそれぞれの自治体に応じていい町づくりができるような御指導もひとつお願いをしたいというふうに思います。
 私の質問はこれで終わります。どうもありがとうございました。
久保委員長 平岡秀夫君。
平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。
 きょうは、建物区分所有法等の改正についての質疑ということでございますけれども、最初に若干時間をいただいて、昨日、公正取引委員会の方で排除勧告が出ました道路公団の談合事件について、ちょっと質問させていただきたいと思います。
 といいますのも、さきの通常国会で、私は官製談合防止法の民主党案の提案者として官製談合防止法の審議を行ったという経緯がございます。そのときは、与党案の官製談合防止法、正確に言いますと入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律案というものが成立いたしました。そして、この法律が来年の一月六日から施行されるということであるんですけれども、そうした法案を我々も提案し審議してきたという経緯から、この問題をちょっと取り上げさせていただきたいというふうに思っている次第であります。
 特に私の方からきょう質問したいのは、発注者側、道路公団の方の問題点について絞って質問してみたいというふうに思っています。
 皆さんも御承知のように、昨日、公正取引委員会が日本道路公団の発注する道路保全工事に関して排除勧告そして警告というものを行っていますけれども、その内容についてはちょっと時間がありませんので紹介していただくことは避けまして、その際、あわせて、公正取引委員会は道路公団に対しても改善の要請を行ったということになっているようであります。
 そこで、質問ですけれども、公正取引委員会は発注者である日本道路公団にどのような問題があったという認識のもとに改善の要請を行っているのか、御答弁いただきたいと思います。
鈴木政府参考人 お答え申し上げます。
 公正取引委員会の本件に関します審査の過程におきまして、日本道路公団による道路保全土木工事の発注に関連しまして、道路公団に次のような行為が認められました。
 第一に、多数の入札物件において、株式の持ち合い関係または役員の兼任関係があることによりお互いに競争機能の発揮が期待しがたい事業者のみを公募型指名競争入札の参加者として指名していたこと。第二に、競争入札制度の導入に際して、公団のいわゆるファミリー企業などと称される一部の事業者にのみ一般への公告前に公募型指名競争入札に関する技術審査基準等の内部情報を伝えるなど、入札におきまして、これらの事業者のみを利する差別的な行為を行っていたこと。第三に、一部の道路保全土木工事の公募型指名競争入札において、その参加者に対し、当該工事の受注について発注者としての意向を示していたこと。このような行為が認められましたので、改善方を要請したわけでございます。
平岡委員 官製談合防止法によりますと、入札談合等関与行為というのがあれば、公正取引委員会の方で、これは道路公団も含めてですけれども、各省各庁の長等に対し、この等の中には道路公団の総裁も入るわけでありますけれども、改善措置を求めることができるということになっているわけでありますけれども、今御指摘された事実関係の中で第一番目のところ、関係のある事業者によって公募型指名競争入札の参加者が占められているといったような事実関係についていうと、官製談合防止法、来年の一月六日から施行されるわけでありますけれども、この法律に基づいて改善措置を講ずべきことを求めることができるという対象になるんでしょうか、どうでしょうか。
鈴木政府参考人 先生御指摘の入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律では、入札談合等関与行為として三つの類型を定めております。
 これらはいずれも事業者間の入札談合につきまして、これを行わせたり、あるいはあらかじめ特定の者を契約の相手方となるよう意向を示したり、さらに、秘密の情報を教示して入札談合等を行いやすくするということでございますので、ただいま御質問いただきました第一の点はこの三つの類型の中にはまだ当たらないものでございます。
平岡委員 そうしますと、来年の一月六日に官製談合防止法が施行されますと、公正取引委員会は、いろいろな調査をした結果として、今回のような、先ほど指摘された第一のような事実関係が判明したというときには、改善措置を今回のように要請するということはしないんでしょうか、それとも、するんでしょうか。どうでしょうか。
鈴木政府参考人 ただいまの点につきましては、法律に基づいての改善要請ということではありませんで、従来から公正取引委員会で行っている事実上の改善要請を行うことでは可能と理解しておりますので、その点につきましては、今回と同じように要請はさせていただくことになります。
平岡委員 まさに、この前の通常国会では、入札談合等関与行為というものをどの範囲でとらえるかということで非常に与野党の間で論議があったわけでありまして、今、公正取引委員会の方からも答えていただいたように、本来であれば、今回のようなケースの場合、公正取引委員会の方から改善の要請をしなければいけないというようなことが官製談合防止法の世界では対象になっていない、そういう問題がこの与党案で成立した官製談合防止法の中にはあるんですよね。
 ちょっと大臣に、道路公団を監督する官庁の責任者として、そうした行為が対象になっていないということについて、私はやはり対象になるように、公正取引委員会が改善措置要求ができる対象の行為になるようにすべきではないかというふうに思っているんですけれども、大臣の所感はいかがでしょうか。
扇国務大臣 今、平岡議員がおっしゃっておりますことは、御存じのとおり、与党三党そして民主党も賛成して成立した官製談合の法律でございまして、その内容に関して、私は、適用範囲というものは少なくともこの法案を成立させた時点で皆さんで御論議いただいたと。今平岡議員がおっしゃいました、その内容の適用範囲を超えるということに関しては、これは成立した法案で、皆さん方がお出しになったわけですから、その内容について私が論評するということは、それは逆で、おかしいと思って、その論評は差し控えます。
 そもそもあってはならないということ自体は当然のことでございまして、私も昨日びっくりいたしまして、公取からの、総裁も来ましたし、また国土交通省も公取に呼ばれまして、その事実に関しての聴取をされました。そういう意味で、公取からの御判断が出て初めて私はこれを知ったわけです。
 一昨年、これはもう自民党から共産党まで御賛同いただいた入札と契約に関する適正化法、入契法ですけれども、この中にきちんと書いてあるわけですね。何かあったときに、談合なんかあったときには、少なくとも公正取引委員会に連絡しなければいけないこととか、あらゆる面で入札と契約に関する状況を監視します第三者の機関である入札監視委員会というものを設けなければならないとしてあるわけですから、私は、なぜこれが実行されなかったのか。
 そしてまた、今公取からもお返事がございましたけれども、来年の一月からしか官製談合法が施行されないということですけれども、私は、施行される施行されない以前の、姿勢の問題だと思っておりますので、きのうも各公団に、どの業者にどれだけどうなったのかという事態を全部調査して報告するようにということを、きのう委員会が終わりました後で理事会部屋を借りまして、いたしましたところですから、その報告を待ちたいと思っておりますけれども、あってはならないことは言うまでもありません。
平岡委員 確かに法律案は与党、野党とかということでやりましたので、政府は直接関係していないことは私もよく承知しているんですけれども、政府として、みずから、例えば公共事業の発注なんかについてどういう姿勢であるべきかということについては、やはりそれなりの考え方があっていいんじゃないかという意味で質問しました。
 それで、後半の方で扇大臣がいみじくも、官製談合防止法が施行されていようがいなかろうが、やるべきことはきちっとやるんだというふうに言われたので、私も大変心強い発言だと思っておるんですけれども、それでは、一つ聞かせていただきたいというのが実はございます。
 実は、この官製談合防止法の第四条に、先ほど言いましたように、入札談合等関与行為によって国等に、これは道路公団も含めてですけれども、損害が生じているかどうかの調査、そして、損害が生じている場合には、その実行行為を行った者に対する責任の所在、そして賠償額の算定、そして、その職員に故意または重過失がある場合には、損害賠償の請求をしなければならないという規定があるんですよ。
 この規定というのは、この官製談合防止法が創設的につくった規定ではなくて、もともと、そういうことがあったらちゃんと損害賠償請求をしていかなければいけないということが法制度の世界の中にはあるんだけれども、何ら行われてきていないということを踏まえてこの仕組みがつくられているんですね。
 そう考えてみますと、一月六日に施行されていなかろうが、現時点において道路公団の発注者側にそうした問題があったとするならば、やはり、損害の調査、責任の追及、そして損害賠償請求ということをきちっとやっていかなきゃいけないというふうには私は思うんですけれども、大臣、どうでしょう。
扇国務大臣 今おっしゃった中で、一つだけ大事なことは、談合に伴って少なくとも工事の落札価格、そういうものが左右されたかされなかったのかという事実も私は大変大事なことだと思います。談合によってより高どまりの金額であったというのであれば、これは私は問題になると思うんですけれども、談合によって落札した価格が予定価格よりも超えていないということになれば、これは法的に何ら賠償を求めるとかそういうことができないんですね。
 けれども、一方、一般論として考えても、私が先ほど申しましたように、全会一致で通していただいた入契法、この入契法の中には、適正指針において、談合金の授受がある場合など損害額の認定が可能な場合には、民法等に基づいて、その不正行為の結果としてこうむった損害額の賠償の請求に努めるようと明記してあるわけでございますから、今回の官製談合法の施行前であっても、この入契法の法律に基づいて、もしも談合金の授受があったという場合には、私は厳正に対処できるというふうに考えておりますので、この官製談合法の施行前であってもできます。
 ただ、そこで、談合しても金品の授受がなかった場合、そういう場合に関しては、一般的には、損害額を算定するために必要な客観的な適正価格の算定が困難だということだけは先生もおわかりいただけるのではないかと思っておりますので、発注者からの損害賠償の請求が行われた事例としては多くはないというふうに私も承知していますけれども、法律の中できちんと適正に、この入契法が各市町村までも徹底するようにというのを今省を挙げてやっているところでございます。
平岡委員 大臣の見解には、私は非常に異論があるのでありますけれども、公正取引委員会が来ておられるので聞こうと思うんですけれども、官製談合防止法の第四条における損害賠償請求の対象になる損害額ですね、これは大臣は今何か、談合金の授受があった場合にはその談合金なんだというふうな、そういう……(扇国務大臣「入契法の話です、官製談合法ではありません」と呼ぶ)私が聞いているのは、損害賠償請求というものが官製談合防止法の中にあるんですよ、それは、先ほど言いましたように、もともとこの官製談合防止法で創設されたものではなくて、もともと民法を含めた一般法の世界の中で損害賠償請求というのが成り立ち得ることを今まで怠ってきた、それに対してちゃんとやりなさいということを言ったのがこの官製談合防止法なんですよ。
 そういう意味でいくと、これは公正取引委員会の方に確認したいと思いますけれども、談合防止法の第四条に基づく調査で行われている損害賠償の対象となる損害額というものは、そうした談合金に限るものではないということをちょっと答弁しておいていただきたいと思います。
鈴木政府参考人 ただいまの御指摘につきましては、官製談合防止法の施行後に考えられることでございますが、入札談合によりまして生じます損害というものは、一般的に申しまして、競争がある、つまり談合が行われなかったらあり得たであろう競争価格と、入札談合によって引き上げられた価格の差額ということになりますが、これはまたケース・バイ・ケースで判断されることでございます。
平岡委員 大臣が突然談合金の話をされたので、突然の質問だったから公正取引委員会も整理がされていなかったのではないかと思いますけれども。
 今の答弁を聞かれましたか。今の答弁は、入札の談合がなかったら行われていたであろうその契約金額と、入札の談合があったことによって行われた契約との間に差額があったら、別にこれは談合金じゃないんですよ、あったら、それは損害として考えられる可能性があるということを今答弁されたんですよ。
 そういう認識に立って、先ほど大臣がいみじくも言われた、官製談合防止法が施行されていなくてもやるべきことはきちっとやるということについて、きちっとやっていただきたいというふうに思います。
 この問題について、もう締めなきゃいけないので、最後に。
 こういう事件を道路公団が起こしたということで、私は新聞で見たぐらいでありますけれども、大臣は厳正な処分を業者に対してはするんだということを言われていますけれども、道路公団に対して大臣としてはどのような対応をとっていくかということについて、再発の防止も含めて、大臣の所見を伺いたいと思います。
扇国務大臣 これは道路公団のみならず各公団全部ですけれども、今論議されておりますように、その子会社、孫会社にどれだけ役人が天下りしているのか、そしてその子会社、孫会社はいわゆる公団からどれだけの金額の受注をしているのか。年間の受注量が五〇%を超える場合は、通常の民間業者に比べて、私はおかしいと思います。そういう意味で、今回は、道路公団のみならず各公団全部に、子会社、孫会社を含めたものを、それから余剰金がどれだけあるのか、これも全部今指令を出しました。
 そういう意味で、私は、第三者委員会、民営化推進委員会ですけれども、そこで四公団等、あるべきことを今言われておりますけれども、道路四公団のみならず各公団全部でこの姿勢を正して、そして談合があるなしにかかわらず、いわゆる子会社、孫会社に対する姿勢も明快にしていくべきだ、そしてそれを情報公開すべきであるということを今申し渡してあります。
平岡委員 再発の防止についてよろしく努力していただきたいというふうに思います。
 それでは、本題の建物区分所有法の話に移っていきたいと思います。
 今回の建物区分所有法の改正の中身を見ますと、いろいろなものがあるんですけれども、一つは、建てかえ決議というものについて要件緩和をするということが法律案の中にあるんです。私、それ自体は、諸事情の中で、ある程度やむを得ないものなのかなというふうには思っているんですけれども、ただ、要件が緩和されますと、逆に、建てかえに反対をする人たち、あるいは建てかえをすると困ってしまう人たち、こういう人たちが出てくる可能性がより高くなってくるというようなこともあろうかと思うんですね。
 それで、そうした人たちが余り生じてこないためには、先ほどの参考人の千代崎さんとかあるいは穐山さんも、修繕というものをやはりしっかりとやっていくということが、いざ建てかえというときにやはり反対の人が少ない、あるいは反対をしないで済むような状態になるというような、そんな話もちょっとありました。ありましたので、やはり修繕ということをしっかりと我々は法律の中あるいは制度の中に位置づけていかなければいけないというふうに私は思っているんです。
 そこで、ちょっと聞きたいんですけれども、この建物区分所有法の中で修繕という言葉はどこか出ているんですか、あるいは修繕という概念はこの建物区分所有法の中でどういう概念としてとらえられているのか、まずそれをお聞きいたしたいと思います。
房村政府参考人 建物区分所有法の中で修繕という言葉が出てくるかどうかということでございますが、これは、今回改正をお願いしております六十二条、これの五項になりますが、これは建てかえ決議のための集会に先立って通知をしなければならない、その通知事項を定めているわけですが、その中に、三号といたしまして、「建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容」、それから四号といたしまして、「建物につき修繕積立金として積み立てられている金額」、こういう言葉が出てまいります。それ以外に修繕という言葉をこの区分所有法においては特に使用しておりませんが、位置づけといたしましては、その区分所有建物に対する管理、これの代表的な行為が修繕であるというぐあいに理解されております。
 したがいまして、管理組合がその管理の中心になりますが、そこがこの修繕等について当然やっていただく。これはもう管理という言葉から当然修繕が含まれるという考え方に立っておりますので、特に修繕という言葉を用いてはおりませんが、考え方としてはその管理の代表的な例だろうと思います。
 今回、建てかえ決議に際しましてこの修繕計画あるいは修繕積立金ということを通知事項にいたしましたのは、御指摘のように、そのマンションを建てかえるかどうかというときには十分な検討をしていただく必要があるだろう。その建てかえの検討に当たっては、どのような建物を建てるかということはもちろん重要でございますが、同時に、現在の建物の状況がどうなっているのか、これを維持復旧するためにどのような費用がかかるのか、そして、現在の建物についてどのような修繕計画が樹立され、そのための積立金がどうなっているのか、こういうようなことは当然その判断の要素として非常に重要なことであろう。こういうことから、今回の改正に当たりまして、通知事項としてそういうものを入れたということでございますので、区分所有法としては非常に重要な事柄であるというぐあいには考えているわけでございます。
平岡委員 これまで修繕という言葉そのものが建物区分所有法の中になかったということで、これは一体どこに入るのかということでいろいろ聞いてみたら、三十条の管理とか使用とかに関する規約のところで、ここにこういうふうに入るんですよということで、この規約に基づいて長期修繕計画がつくられたり、あるいは修繕を前提として修繕積立金というものが存在していたりするというようなのが今までの法体系であったというふうに私としては理解しているんですけれども。
 それでは、この修繕積立金というものについて言うと、これはせんだっての委員会の質疑の中でも出ていましたけれども、今どのような状況にあって、その状況を踏まえて、どのような評価を国土交通省としてしておられるのか、この点について答えていただきたいと思います。
松野政府参考人 お答えいたします。
 中高層共同住宅標準管理規約というのがございますが、管理組合の業務としては長期修繕計画の作成が位置づけられております。さらに、修繕積立金を積み立てることが規定されておりますので、修繕積立金制度が多くの管理組合に普及し、定着しているものと考えられます。平成十一年度に実施いたしましたマンション総合調査の結果によりますと、平成七年以降に完成しましたマンションにおける一戸当たりの修繕積立金の徴収月額は、平均五千五百九十五円となっております。
 それで、標準的なモデルで想定した計算がございますが、例えば八階建て七十五戸の標準的なマンションをモデルとしますと、築後三十年以内に必要となる修繕費用を修繕積立金算出システムというようなシステムで計算いたしますと、一管理組合の修繕費用が約二億三千六百万円になるということでございます。マンション総合調査に基づきまして算出される一管理組合当たりの修繕積立金が一億五千百万円程度ということでございますので、不足額が一管理組合当たり約八千五百万円、これを戸当たりに直しますと百十三万円程度の不足額になるということで、現在、必ずしも十分であるということは言えない状況でございます。
 このために、今後は、その修繕計画の策定あるいは見直しを実施するとともに、適切な修繕積立金の徴収をしていくべきであろうと思います。また、実際に不足している場合には、そのリフォームを行う場合に、それに対応しますような住宅金融公庫のマンション共用部分リフォーム融資というのがございます。そういう制度があるということも周知を図ってまいりたいと考えております。
平岡委員 ちょっと質問していないことも答弁されたので。まあいいですけれども。
 それで、この建物区分所有法の対象になっている建物について言うと、やはり専有部分を所有する区分所有者と、それから共用部分についての共有という、そういう構成で成り立っている建物ですよね。となると、やはりある程度大きなもので、当然修繕も必要になる、当然建てかえも必要になるということを前提としてこの制度を考えていかなければいけない。
 そうなったときに、やはり修繕をするときにちゃんと対応できるための修繕積立金というものが法制度の中できっちりとできておって、先ほど答弁の中に、今、修繕積立金、決して十分ではないと思っていますと。決して十分でないと思っているといって、それで済む話じゃないので、やはりどういうものであるべきかということについて法律の中できちっと位置づけておかなければいけないんじゃないかというふうに思うんですね。
 そこで、大臣にお聞かせ願いたいと思うんですけれども、この修繕積立金について、建物区分所有を含めて、法制度の中できっちりと位置づけていく、そして社会的な混乱が生じないようなものとして制度の中で構築していくということについて、どのようにお考えになるでしょうか。
扇国務大臣 マンションを買うときには管理を買えという逸話があるくらい、管理というものがあってマンションの資産価値が維持される、これはもうちまたでは皆さん御存じのことでございます。また、築三十年と平岡議員が今おっしゃいましたけれども、今回築三十年という一応のあれを決めてありますけれども、三十年でも、管理が行き届いたマンションと行き届かないマンションでは天と地ほどの差があると言っても過言ではないくらい管理というものが大事であるというのは住んでいる皆さんが実感していらっしゃいます。
 そして、今回も、適時適切に大規模の修繕を行うという必要から、マンションの修繕積立金というものを、これは先ほど法律にきちんととおっしゃいましたけれども、中高層の共同住宅の標準管理規約というものがございまして、その中で修繕積立金についてちゃんと規定してございます。
 ですから、あるべき管理規約のモデルとして私たちはこれを策定したわけでございますから、そういう意味では、マンションの皆さん方がこの規定をきちんと組合でしていただきたいと思いますし、マンション建替え円滑化法、またそれに伴って、マンションの管理適正化法でマンション管理士というものも皆さんに既に通していただいていますので、組合の皆さん方が悩むことはマンション管理士に相談していただくとか、あらゆる手だてで。
 私は、今回の法案を出させていただきまして、これですべてマンションに関する関連の法案がやっと全部、両輪そろって動き出すというところに来ていると思いますので、先ほど局長が平成十一年度マンション総合調査をしたと言いましたけれども、その数字のほかに、マンションの修繕積立金制度についての考え方というものをマンションの区分所有者から回答をしていただきました。その中で、必要な費用は積み立てておくとしたものが八〇%ございました。そういう意味では、皆さん方に修繕積立金の重要性について広く認識していただいて、それぞれが努力をしていらっしゃる。
 建てかえるときに一人大体百十万から百二十万不足だという件に関しては問題があろうと思いますけれども、積み立てる金額によってそれぞれマンションの補修の仕方というものにも知恵が出てくると思いますので、私は、これは法律に書くというより、管理適正化法の中で明記してあるということは改めて申し上げておきたいと思います。
平岡委員 マンションについてはいろいろな法律がありますから、その中に明記してあると言われましたけれども、どういうものであるべきかということについては何ら明記はしていないわけでありますから、果たしてそれでいいのかという問題もあります。
 その問題はさておいても、建物区分所有法の対象となっている建物について言えば、別にマンションだけじゃなくてそれ以外にもたくさんあるわけですよね。そういうものについてもやはり修繕とか建てかえとかいう問題が起こって、それが場合によっては社会問題化するということもあるわけでありますから、そういうものに対応して、建物区分所有法の中に、この修繕とか建てかえを前提とした、それを円滑に進めるための準備金なりといったようなものを法律上位置づける必要があるんではないかというのが私の質問の趣旨なんです。これについては、法務省には聞かないと言いましたけれども、まあ、大臣がああいう答弁をされたんで、法務省に一度、いかがなものでしょうかということで、ちょっと答弁していただきたいと思います。
房村政府参考人 ただいま御指摘のように、区分所有建物にはさまざまなものがございます。基本的にマンション等については管理組合において修繕積立金をきちっと積み立てているところが圧倒的多数だと思っておりますし、これはマンションの維持管理の観点からすると非常に望ましいことだというぐあいに考えております。
 御指摘のように、区分所有建物は必ずしもマンションに限られているわけではありません。商業用の建物もございますし、あるいは非常に小規模の、極端に言えば二つしか専有部分がないようなものも区分所有建物として適用対象になっております。したがいまして、その区分所有建物の構造にいたしましても、材質にしても、管理状況にいたしましても、また、それを所有しております区分所有者の方々の意識あるいは経済状況等、これはさまざまでございますので、そういうものすべてを対象としております区分所有法の中においてこの修繕積立金のあり方を規定してしまうのは相当ではないのではないか。やはりそこはその区分所有者の自治にゆだねて、規約等を活用していただいて、適正な管理をしていただく、また、そのために標準管理約款においてもこれを決めているというぐあいに理解しております。
平岡委員 ちょっと関連するので、次の質問にとりあえず移ってみたいと思います。
 先ほど言いましたように、マンションというのは、修繕もあれば建てかえもある。修繕については、修繕積立金という言葉が今回初めて法律の中に入った、こういうことで、ある程度意識の中にはあるということなんでしょうけれども、もっとお金がかかるのは建てかえですよね。
 建てかえのためにその資金を用意するという視点に立ったときに、じゃ、建てかえ積立金というのは今どんな状態になっているかというのを国土交通省で把握していたら教えていただきたいと思います。
松野政府参考人 お答えいたします。
 御質問のような建てかえ積立金といった形での積み立ての状況は私ども了知しておりませんが、一般に、マンションにおきまして修繕積立金を建てかえに要する費用として使用するということについて、管理組合の総会において取り決めを行って、区分所有者の了解を得た上で建てかえに充当するということにより対応しているものと認識しております。
平岡委員 先ほどちょっと、建てかえのための費用というのが非常にかかるから、建てかえについても積立金というようなことできちんとやっていかなきゃいけないんじゃないかというお話をしましたけれども、今のお話だと、要するに修繕準備金の中に入っているようなものだというような、そういう答弁だったんですけれども、逆に言うと、今回の法案、ちょっと先ほど民事局長が、六十二条の第五項の四号、修繕積立金という言葉でここで出てきましたということを言われたんですけれども、じゃ、この修繕積立金の中には、建てかえ積立金というふうに変わり得るものがあったときには、この中に入るんですか、入らないんですか。
房村政府参考人 今回の法案で、修繕積立金ということで積み立てられた金額を明らかにしていただくということですが、これは規約で修繕積立金として積み立てられているということでございますが、実態といたしまして、建てかえ決議がなされた場合には、先ほど国土交通省の局長の方から御説明がありましたように、管理組合においてこの修繕積立金を建てかえ資金に転換して用いるということが通常行われている扱いでございますので、そういう意味で、名目は修繕積立金ということでございますが、その管理組合の総員の意思によりましてこれを建てかえに使うということは現に行われているわけでありますし、法律的には何の差し支えもないことでございます。
平岡委員 今、建てかえ決議が行われたら修繕積立金が建てかえ積立金になっていくんだというような答弁がありましたけれども、実態はそうじゃないでしょう。ある程度きたときに、十年ぐらいたてばこれは建てかえになるかもしらぬ、修繕かもしらぬ、だから、どっちにも使えるようなものとして建てかえ積立金的に積み立てていくんじゃないですか。その時点から、修繕積立金じゃなくて、建てかえ積立金というものに変質するんじゃないんですか。(扇国務大臣「違うよ、それは」と呼ぶ)違いますか。じゃ、違うということで答弁してください。
扇国務大臣 修繕積立金というものを積み立てて、いかに自分たちの財産であるマンションの共有部分も含めた品質保持をするかということが修繕積立金の最初の目的でございます。
 建てかえるというのをおっしゃいましたけれども、建てかえるには、修繕費用の方が建てかえ費用よりも高いということになった場合に、じゃ、建てかえましょうかと、第二段階に来るものですから、最初から建てかえを目的にするということで積み立てているのではないということだけは――各マンションの組合の皆さん、最初は自分のマンションが六十年もつと思っているわけですから、鉄筋コンクリートで。それが、改めて今、戦後今日までのマンションを例にとると、六十年もつと思ったけれども、大体三十年ぐらいで修繕しなきゃいけないというものが出てきているということで、この三十年という数字が出てきているわけです、平均しますとね。
 ですから、先ほどからお話がございましたように、十二万戸あるというマンション、そして一千万人が住んでいるという、このマンションの皆さん方は、自分が入ったときから、建てかえする、自分の生きている間に建てかえがあると思っていない方も大勢いらっしゃいます。ですから、まず、この修繕費でいかに品質保持をするかということの限度がどこに来るかということでこの使用法が決まるんであって、最初から、入ったときから建てかえ準備金というものはありません。
平岡委員 だれもマンションをつくったときから建てかえ準備金をつくれと言っているわけじゃなくて、あるときから建てかえを想定した積み立てというようなことも起こり得るんじゃないでしょうかと。そうした制度というのがこの建物区分所有法を初めとした法制度の中に用意されているのか、考えられているのかということを私は聞いているんです。
扇国務大臣 それは考えられておりません。
平岡委員 それじゃ、建てかえをするときに、自己資金はどうするんですか。
扇国務大臣 積立金を積むかどうかということは、あくまでも私的自治にゆだねられるというのが原則でございます。それは、経済状況あるいは生活状況、全部個々に違うものですから。最初からその組合で、築後三十年たったら建てかえるためにしましょうねと、その自治でお決めになるのは、それは自由ですよ、各マンションに管理組合ができるわけですから。けれども、通常のマンションでは、建てかえ積立金というのは、総体的に見て、今の十三万戸のマンションの中にはほとんどないと言ってもいい。
 また、建てかえに関して、制度として法律的に定めてしまうということに関しては、マンションの区分所有者の自由な裁量を逆に阻害するということで。これは一斉に積立金の金額が上がるわけですから、それは大変な。また、建てかえるのにどれだけの費用がかかるかわからないのに、それを三十年後を想定してどれだけ積み立てたらいいか。世の中の経済も変わっています、物価も変わっています。それを、今の自由裁量以外に、私たちが規制で決めろということは、今の段階では言えません。
平岡委員 例えば、建てかえ積立金を積むかどうかというのは、全くそのマンションに住んでおられる人たちの自由である、区分所有者の自由であるというんだったら、これは結局、建てかえのときに出ていかなければならなくなったような人についても、それはもう自由にします、全く自由で、好きなようにやってください、何ら政府としてはそれに対応したいろいろな政策はとりませんというんならいいですよ。だけれども、自己資金を準備するということについて何らやらないでおいて、いざ出るときになったときには政府としてはいろいろやりますというんじゃ、やはりおかしいんじゃないですかね。
 やはり、先ほどいいましたように、この建物区分所有法の対象となっている建物についていえば、修繕とか建てかえとかということがいずれ起こってくる、その問題のときにどのようにして対応していくのかということを、当然あることだから制度の中にやはり組み込んで仕組みをつくっておかなければいけないというふうに私は思う。
 だから、先ほど言いましたように、修繕積立金というものもちゃんと法律上の枠組みの中ではっきりさせ、そして、最初から建てかえ積立金ということじゃないにしても、建てかえなければいけないというような状態が生じてくるという可能性があるときには建てかえに備えた積み立てもしていくというような形で、ちゃんと法律の中でしっかりとした仕組みをつくっていくということが必要ではないかということを私は申し上げたいというわけであります。
 首を振っておられて、大臣とやってもらちが明かないのでもうやめます。
 次の質問に移りたいと思います。
 先ほど言いましたように、建てかえ決議による混乱をできるだけ回避するという意味からいきますと、マンションの建てかえによってそこから出ていかなければならないような状態に至った人たちに対してどのような政策をとっていくかという問題があるわけであります。
 せんだってのマンション建替え円滑化法の中で議論されましたけれども、従前居住者用住宅というようなものをマンション建てかえについても利用できるようにしていこうというようなことが示されております。これについては、今基本方針はできたというふうにこの資料の中で見ました。これに伴って必要な予算補助でいろいろやっているということを聞きましたけれども、具体的にはどういう人が入居できるかというような基準というのは、既にできたんでしょうか。
松野政府参考人 お答えいたします。
 マンション建てかえにかかります都市再生住宅、つまり従前居住者用住宅でございますが、これはマンション建てかえ事業に限りませんが、都市再生に資する市街地再開発事業等の施行に伴い住宅に困窮する者の居住安定を図るという目的でこの事業を位置づけているわけでございまして、このマンション建てかえ事業につきましては、法の制定に合わせまして今年度より新たに対象としたところでございます。
 従前居住者の範囲といたしましては、建てかえ後の建物の家賃負担が困難な賃借人で住宅に困窮する者、あるいは建てかえに参加しない区分所有者が所有する住戸の賃借人で住宅に困窮する者、あるいは建てかえに参加できない高齢者等の区分所有者で住宅に困窮する者、こういった人たちを対象にと考えております。
平岡委員 今言われたような人たちというのは、この前のマンション建替え円滑化法の中でいろいろ議論して登場してきた人たちであるわけでありますけれども、今回、建物区分所有法の中で、建てかえ決議がされるとそれに反対しているような人たちに対しては買い取り請求が行われる、そういう法律的な枠組みになっているわけですよね。
 この建物区分所有法の建てかえ決議があった際に、買い取り請求を受ける人たちについても、この従前居住者用住宅の利用対象者として認められるのかどうか、そこを確認願いたいと思います。
扇国務大臣 今のお話のように、マンションの建てかえに関して住宅に困窮するという人が出てくる、そういう意味では居住の安定化を図るということが大前提でございますから、私は極めて重要なことであろうと思いますし、昨日からもこの問題を随分議論させていただきました。
 平成十四年度から、マンション建替え円滑化法、今委員がお話しのように、この円滑化法でのマンション建てかえ事業に伴って住宅に困窮する者については都市再生住宅制度による従前居住者用住宅への入居を可能とする措置、これを円滑化法で既に通していただきました。
 マンション建替え円滑化法に基づいて建てかえを行う場合には、御指摘の区分所有法に基づいて売り渡し請求を受けた人についても、自力で住宅を取得できない人たち、いわゆる住宅困窮者に関しては、この従前居住者用住宅への入居を可能とするということで、完全に皆さん方に不安を与えないようにするということを図っているところでございます。
平岡委員 今回の法案については、その辺がちょっとはっきりとしていなかったので確認の意味で質問させていただきました。
 それで、もう一つ、問題は、やはり建てかえということになりますと、高齢者の方々などは将来自分がどのぐらい長い間住むことになるのか、あるいは収入がそれにたえ得るのかといったような問題があるということで、昨年の十月から住宅金融公庫の都市居住再生融資という中に高齢者に対する特例措置というのができたというふうに聞いています。これについていいますと、制度が発足して一年ちょっとたっているわけでありますけれども、その利用状況というのは今どんな状況になっているんでしょう。
松野政府参考人 御質問の都市居住再生融資のうちの高齢者に対する特例措置でございますが、これはマンション建てかえに際しまして、経済的負担に対する不安が高齢者にあるという場合に、住宅金融公庫におきまして高齢者の方にお貸しした資金を当面月々の返済、利子のみ返済をしていただく、元本は死亡時に一括して返済をしていただく、いわゆる死亡時一括償還制度というものでございます。標準的には、この方式をとりますと、元利ともに償還する元利均等償還の場合の約四割程度に返済金が軽減されるという大変大きな効果が出るものでございます。
 それで、この実績でございますが、まだ正式には、このマンション建てかえ事業がこの十二月から施行するということでございますが、任意の建てかえもこの対象になっておりますので、今のところこれまでに、任意のマンション建てかえの中で一戸その申し込みが予定されておるところでございます。
平岡委員 一戸しかまだ申し込みが予定されていないというような状況だということでちょっとびっくりするんであります。
 もともとこの制度というのはアメリカにあるリバースモーゲージといったようなものを参考につくられたんだろうと思うんですけれども、アメリカでは今どんな状況になっており、そして、これからの日本におけるこの融資制度の利用の見通しというのはどのように立っているのか、教えていただきたいと思います。
松野政府参考人 アメリカでは、いわゆるリバースモーゲージと申しまして、みずからの住宅を担保にしまして、その住宅に居住し続けながら年金あるいは一時金の形で資金を受け取る制度でございます。米国では、連邦住宅都市開発省の試験的プログラムとして一九八九年にスタートしております。
 全米リバースモーゲージセンターの資料によりますと、一九九九年十月現在の契約件数が、累計で五万五千件であるというふうに承知しております。我が国では、まだ一般的には普及しておりません。一部自治体でそういった考え方を導入しているところはあるわけですけれども、一般的な制度としてはまだ普及しているというような状況にはございません。
平岡委員 先ほど申し上げましたように、高齢者の方々が建てかえに際して非常に困った状況に陥るということがないように、さまざまな制度のあり方をいろいろ検討していただきたいということをお願いしておきたいというふうに思います。
 最後の質問にしようと思いますけれども、税制の関係なんです。
 実は、せんだっていただいたいろいろな資料の中に、マンション建替え円滑化法に基づいて、例えば、買い取り請求を受けた人に対してはこういう税の特例がありますよとか、いろいろなことが書いてあったんですけれども、今回の建物区分所有法に基づいて、例えば建てかえ請求をした人については、特に税の特例のようなものがないような気がするんですけれども、やはり建てかえを円滑化するという意味からいくと、そういう建物区分所有法に基づいて買い取り請求をするような人たちに対しても、同様に税の特例というものを設けていく必要があるのではないかというふうに思うんですけれども、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
松野政府参考人 マンション建てかえに参加する区分所有者の方々の経済的負担を軽減するという観点から、さまざまな税制が用意されております。
 再開発と同様でございますが、いわゆる権利変換という、従前従後、権利が移行する方がおられます。その譲渡所得課税につきましては、従前の資産の譲渡がなかったものとみなす措置、あるいは、登録免許税につきましては、従前資産価額相当分の非課税措置、それから、建てかえに参加せず転出……(平岡委員「権利変換はいいですから。権利変換ではなく、買い取り請求」と呼ぶ)建てかえに参加せず転出される方につきましては、やむを得ない事情により組合に買い取られて転出する場合の千五百万特別控除を用意しておるところでございます。
平岡委員 今のはマンション建替え円滑化法の話で、こういうのがあるという話ですね。
 建物区分所有法に基づく買い取り請求の場合はどうなっていますか。
房村政府参考人 区分所有法そのものについて、特段税制上の特別の措置はございません。基本的に、建替え円滑化法に乗るのは、建物区分所有法に基づく建てかえ決議があって、その後に円滑化法が来ますので、区分所有法による建てかえの大部分はそちらで税の軽減措置等も受けられることになるということだと思っております。
平岡委員 法制的にいうと、ちょっと変なような気がするんですけれども。
 建物区分所有法に基づいて売り渡し請求を受けた人というのは、当然理屈の上では存在するわけですから、そういう人に対して何らの措置がなくて、そういう人たちは多分、いずれ建替組合というのができたら、そっちの方で売り渡し請求を受けるでしょう、あるいは買い取り請求をするでしょう、そのときに適用になればいいんじゃないですかというのが今の答弁の骨子だったような気がするんですけれども、制度的には何かおかしな気がするんですよ。細かい話になるかもしれませんからそれぐらいでやめておきますけれども。
 いずれにしても、今回の建物区分所有法において建てかえ決議の要件が緩和された。それによって、その建てかえに乗れない人あるいは建てかえによって住宅に困窮してしまう人、そういう人たちが出てくるわけでありますから、やはりそういう人たちに対するいろいろな手当てというか配慮というのは、十分に検討していただきたいというふうに思います。
 時間が参りましたので、私の質問はこれで終わります。
久保委員長 武正公一君。
武正委員 民主党・無所属クラブの武正公一でございます。区分所有法について質問をさせていただきます。
 まず、先ほど平岡委員も冒頭指摘をさせていただきましたが、前国会、私も官製談合防止法案の法案提出者として臨みました。当委員会の委員長の久保委員長も、公明党の担当者として精力的に法案成立に臨まれたことも承知をしております。ただ、民主党案と与党案との差というものは歴然としておりまして、それを附帯決議に盛り込んだところでございます。
 法改正をやはりしなければならないということを改めて先ほどの質疑で認識したわけでございますが、公取さんからは、一月六日に法が施行されても法的措置はとれないという答弁があったわけでございますが、いわゆる民主党案である、入札談合を行わせ、助長、談合のおそれがあることを知りながらといった部分をやはり改正しなければ、あるいはまた、損害額、公取の意見、あるいは会計検査院等もやはり絡めていかなければといったことを考えるわけでございますが、法改正の必要があるというふうに大臣として御認識をされているのかどうか、御見解を賜りたいと思います。
扇国務大臣 先ほど平岡議員と論議しているのをお聞きいただいたと思いますけれども、現段階では、私は、与党とか野党とかということではなくて、この法案、官製談合法案を通したときには、与党三党の法案に民主党も賛成していただいて通ったということで、それを改正するか改正しないかは、出した皆さん方の改めての態度であろうと。これは政府から出したわけではございませんから。皆さん方の議員立法という形をとっておりますので。
 私は、今それを改正するというよりも、私に課せられた一番の大事なことは、きのうのようなものがなぜ起こって、そしてどうして知られなかったのか。少なくとも、そういう談合があってはならない、また丸投げもあってはならないということが入契法に明記してあるわけですから、その入契法の施行以後、こういう関連の事件が起こるのは許せないと言ってありますので、改めてこの根っこを考えなければ、改正するといっても、どこをどう改正すれば二度とこのような事件が起こらないかという原因を探らなければわかりませんので、現段階では、道路公団のみならず各公団に、情報を上げるようにと私は言ってありますので、それが上がってきた段階で考えるべきこと、第一段階が今の状況でございます。
武正委員 であるならば、公募型指名競争入札、これは談合を防止するための一つの入札方法ですよという答弁も、国交省さんから随分出されました。しかし、この公募型指名競争入札を装った、内部情報を伝えるなど構造的な談合が露呈したわけでございます。
 加えて、入契法、入契法というふうにお話をされますが、それであるならば、入札適正化法第十五条に、一般競争入札を原則とすべきというふうに法改正すべきと考えます。このことも既に前通常国会で民主党案としても提示をしておりますが、政府が出された入契法の法改正については、どのようにお考えでしょうか。
扇国務大臣 入契法は昨年の四月から施行されました。そして、その中に、談合及び丸投げに関して、公取に届けなければならないという義務も明記してあります。それと、先ほども私は平岡議員にお答えしましたけれども、第三者委員会の入札監視委員会をきちんと設置するということも明記されております。
 そして、今、一般入札にすべきではないかということですが、私も公団の総裁を呼んで言いました。けれども、どうしても随意になるということです。
 私、今これの実情をちょっと話させていただきますと、例えば高速道路をつくりますね。そのときに、かさ上げをします。そして、一般道路をトンネルでするということで、かさ上げした部分は下に空間ができるじゃないですかということを言っているのですが、一般競争入札にしても、道路というのは、緊急工事をするときに、その緊急に対応できる会社でなければ、結局工事ができなくなる、こうおっしゃるんですね。それらのメンテナンスを図る場合に、道路の近くに資材倉庫を持っているようなところがどうしても入札に入ってくるので、一般にしても、結局随契と同じような形の会社ばかりが入札してしまうということですが、私は、今言ったように、高速道路は土盛りするわけですから、高速道路をごらんになったらわかりますけれども、その下を駐車場にしているところもありますから、ああいうところを利用して、公団自体が資材をきちんとそこに保管すれば、民間が倉庫をつくらなくたって、道路の補修にその資材を使って、一般入札にできるではないですかということも今指導しているところでございますので、それらのことに関して法律を変えるということは、去年の四月から施行してまだ一年半しかたっておりませんので、そこで今法律を変えるということよりも、まず現状把握がもっと大事である。まだ入契法は市町村まで徹底されておりません。全国の各知事さん、政令指定都市には私たちは国土交通省に十の懇談会をつくって指導しておりますけれども、全国の市町村三千三百にいくまでにはまだ時間がかかっているという状況でございますので、今それを改正するという段階には至っておりません。
武正委員 この区分所有法の論議は、マンション建替え円滑化法の改正も政府として提出をされております。つい通常国会で法律を通しながら、すぐ改正というようなことをされている提出者としての答弁とは到底信じられません。
 また、入契法でございますが、入契法の論議のときに既に、発注者が談合行為をするいわゆる官製談合、これが抜けているじゃないかということで、それをやはり課題として議員立法で出したのでございます。みずから談合を認めるというのはできないのかもしれませんが、政府が当初からそれに手をつければ、何も議員立法で出す必要はなかったわけでございます。
 ということで、今の御答弁では到底納得ができないし、まして、公団がこう言っているから、一般競争入札――私は原則と言ったのでありまして、原則ということも、先ほどのような御答弁で、公団の総裁の例をお引きになられるというのは、今現在民営化論議をされている、その所管大臣の答弁としては到底納得ができないのでございます。
 さて、区分所有法の方に移らせていただきますが、法務副大臣におかれましては、これは、中間試案のとき、三十年、四十年という両案記載があったわけですが、これがなくなった理由。そしてまた、これはあわせてお聞きをいたしますが、第十六回の審議会から、委員の皆さんから、年数を入れると合理性に欠ける、いや何かそういう年数を入れるべきだという発言があると、いや合理性に欠ける、年数を入れるべきだと言うと、合理性に欠けると、そういったことで、当初三十年といった最後の一つの落としどころが、結局法案になったときには削除されたわけでございますが、やはり、これは合理性に欠けるというふうにお考えになるのか。
 あわせて法務副大臣に……(扇国務大臣「まず私から言います。ちょっと一言」と呼ぶ)
扇国務大臣 今、武正議員がおっしゃいました、この間マンション法の法案を通したのに、すぐにまた追加してというふうにおっしゃいましたけれども、これは全然違います。
 きょう初めて論議に御参加になったからおっしゃっていますけれども、私は、マンションの管理、保持、そしてマンションの建てかえを含めて、これは車の両輪であるということをきのうからお答えしております。出したものが不足だったからということではありません。両輪だということを申しておりますので、出したものをまた出すという御質問に関しては、私は疑義がありますし、それはおかしいです。きのうも、私は、やっと車の両輪がそろいましたよと申し上げているんですから、この間出したのにまた重ねて出すということではなくて、法務省の審議がおくれたから一緒に出せなかったということでございますから、それは間違えないようにしていただきたいと思います。
増田副大臣 私へのお尋ねでございますが、武正先生の問いにお答えをしていきたいと思います。
 二つあったと思いますが、まず一つは、中間試案において築後三十年、四十年という要件があったがなくなった、理由はどうだという点が一点だと思います。
 こちらからお答えをしていきますが、法制審議会建物区分所有法部会が本年三月に取りまとめた中間試案では、建てかえ決議の要件として、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数決を得ることのほか、建物が新築された日から三十年または四十年を経過したことなどを要件に付加した案をお示しをして、一般からの意見等をお聞きをしております。その後、寄せられた意見や総合規制改革会議の委員等から行ったヒアリングの結果等も踏まえ、さらに部会において検討したところ、五分の四以上の多数決のみで建てかえができるものとする意見と、中間試案でお示しをいたしました、多数決に加えて築後三十年の経過等を必要とする案とが有力に主張され、結局、意見の一致を見ることができなかったため、同部会が本年八月に取りまとめた改正要綱案では両論が併記されたものとなっておりました。
 これを受けて、本年九月の法制審議会総会では、この両案のどちらが適当であるかという点について検討が加えられましたが、築後三十年の経過等を必要とする案につきましては、構造や管理の状況がさまざまな建物に築後三十年という基準を一律に適用するのは合理的でないこと、築後三十年を経過するまでの間に建てかえの必要性が生ずる場合についても建てかえが実施できるような要件を別に定める必要があるが、そのような要件を明確化の要請を満たしつつ定めることは困難であることなどの理由から、大多数の委員はこの案に反対し、五分の四以上の多数決のみで建てかえを認めるべきであるという意見でした。
 そこで、法制審議会総会では、五分の四以上の多数決のみで建てかえができるものとする案に一本化する形で要綱を決定し、法務大臣に対して答申をいたしました。改正法案はこの要綱に基づきまして立案されたものですので、中間試案でお示しした築後三十年または四十年の年数要件は削られております。
 それから、重ねてということで、合理性という関係をお尋ねになりましたが、建てかえ決議の客観的要件を年数要件とすることについての合理性に欠けるという意見があったことについてどう考えるかというお尋ねでございました。
 法制審議会の審議の中で、一定の、築後三十年が経過したことを、あるいは四十年が経過したことを建てかえ決議の要件とする案につきましては、基準として明確であり、建てかえの必要性のあるマンションの相当部分をカバーできるのではないか、当該年数が建てかえを検討するきっかけになるのではないかなどのメリットは指摘されていたところであります。
 しかしながら、この案につきまして、委員御指摘のように、区分所有建物の物理的構造や管理の状況等が建物ごとにさまざまでありまして、老朽化の進行の度合いは個々の建物で著しく異なる場合がありますことから、すべての区分所有建物について、一定の築後年数の経過という形式的基準を一律に適用することの合理性を説明することは困難であるという意見もあり、法制審議会で慎重に御審議をいただいた結果、この意見が大勢を占め、一定の築後年数が経過したことを建てかえ決議の要件とする案は答申に採用されなかったわけであります。法務省としても、この法制審議会の結論を尊重しまして今回の法案を作成したものであります。
 そこで、二番目のお尋ねは、副大臣に問うというのは、おまえはどう思うかというのが入っていますか。(武正委員「はい。とにかく手短にお願いします」と呼ぶ)それでは、それも簡明に申し上げます。(武正委員「それを聞きたかった」と呼ぶ)そうですか。
 今から足かけ約三年前に、私は有珠山噴火の現地対策本部長、現地の責任者で有珠山に参りました。噴火と地震はつきものですから、ちょうどそのときに震度五前後の大きな揺れが参りまして、棚にあるものが全部倒れました。びしびしという音がしまして、私はたまげて、すぐ伊達市の市長に、市長さん、この建物は耐震基準に合っていますかと。私は消防団長を長いことやっていましたので、合っていますかと聞きましたら、いや、耐震基準は昭和五十六年ですから、その前の建物ですから合っておりません、そうですかと。後で気づいたんですが、建物にはひびが入っておりました。
 あした噴火するというときでしたから、会議はその四階で続行していったんですけれども、今になって思うと、私は、現在三十年ぐらいたっているのが十二万戸あるというふうに聞いているんですが、やがて十年もたったら今度は九十万戸か百万戸近くになるというふうに聞いております。これを考えると、耐震基準に合った建物というのは、これはほとんど難しいんじゃないか。こういう理解で、私も、副大臣に問うと言われれば、私もそのような観点から大変苦慮した中でこの法案を提出する方に賛成したわけです。
 そこで……(武正委員「いや、もう、ちょっと時間が限られておりますから」と呼ぶ)いやいや、あと、簡明に申し上げますから。この答弁、これから簡明に申しますから……(武正委員「質問権を遮らないでいただきたいと思いますので」と呼ぶ)そうですか。よろしいですか。はい、わかりました。以上です。
武正委員 ちょっとお時間も限られておりますので、国土副大臣に本当はお聞きしたかったんですが、もう今法務副大臣のですべて意を尽くされたというふうに思いますが、ただ、四月の段階で、国土副大臣は、やはり三十年にすべきと。きのうも我々の同僚委員からありましたけれども、そういった指摘があったわけでございまして、この合理性ということで、国土大臣にもお聞きしたいんですが、ちょっと時間の関係で、次に移らせていただきます。
 建てかえか修繕かの判断、評価、調整すべきはだれか、人や組織はどのように考えるかということで、先ほど国土副大臣にお聞きできなかった分もございますので、これは法務副大臣も御用意いただいていると思うんですが、国土副大臣の方にちょっとお答えをいただけますでしょうか。
中馬副大臣 先ほどの、年数のことはもう法務副大臣の方からお答えいただきましたからあえて申しませんが、しかし、三十年とかいった特定の年数をしますと、その年数を過ぎたものはすべて老朽マンションだというようなことにもつながりますので、こういったことを避けたわけでもございます。
 それから、建てかえか修繕かという話でございますが、この判断は、あくまでやはり、これは、すぐれて集合住宅といいますのは、そこの住民の一つの共同体だと思います。そうしますと、やはりその方々が、いろいろな茶飲み話等で、もう建てかえなきゃいけないなとか、あるいは、もうちょっともつんじゃないの、そういったところから私は話が始まっていくんじゃないかと思います。
 そうした中で、もちろん素人でございましょうから、そのときに、ではどうする、どういうことで判断するかといったときのことで、基本的な方針を決めさせていただいておりますし、また、技術的な指針を作成することも今回は皆様方にも御報告申し上げている次第でもございます。
 しかし、そういったことも含めて、マンション管理士等の制度も認めました。こういった方々に御相談いただくと同時に、それぞれの自治体の方がかなり相談の窓口を開いております。ほとんどのところはそうした自治体に相談ができる形をとっておりますから、それに基づいて、その管理組合の方々が建てかえか修繕かということを最終的には御決断なさるのではないか、このように思っております。
武正委員 ちょっと、先ほど大臣からのお話があって、法務省が遅くなったという御指摘でございますが、いろいろ調べてまいりますと、逆に法務省はもうちょっとゆっくりやりたかったんじゃないかな。きょうもきのうも随分御論議がありますが、まだまだ論議を尽くしていないといったところなんですが、逆に国交省さんの方からせかされたというような印象、あるいはそういった意見もあるということをつけ加えさせていただきます。
 さて、今マンション管理士さんというお話でしたが、今はまだ七千人合格の四千人登録ということでございます。関西のマンション管理士協会が管理組合に入札制度の導入を働きかけているということなんですが、ただ、原始規約に、管理業務を委託する管理会社をあらかじめ指定し、その変更をできないという規定を織り込んでいる例も多くて、あるいは、元地権者が四分の一以上を超える議決権を持っている場合、永久に是正できない、管理規約の変更は、集会で、議決権及び区分所有者の四分の三ではなくて、議決権または区分所有者の四分の三というふうに改正すべきであろうという意見もマンション管理組合からも出されていることをまず申し上げまして、そういった意味では、マンション管理士さん以外にも、これは、マンション適正化法でも、マンション管理センターあるいは高層住宅管理業協会のほかにも、例えばNPO法人、あるいは、これは前国会でも大臣から御答弁あった建築士さん、一級建築士さん三十万人もいるよといったことも含めて、まだまだそういった対象者、広げていくべきではないかと考えるんですが、国土副大臣、いかがでしょうか。
    〔委員長退席、菅(義)委員長代理着席〕
中馬副大臣 先ほど申しましたように、マンションの建てかえにつきましては、その合意形成や事業採算をとる上で、法律、建築、不動産、金融、税制など、広範囲にわたる専門的な知識が必要であります。そういうことで、マンション管理士等にもそのような役割をもちろん担っていただくわけでございますけれども、先ほど申しましたように、やはり地方公共団体がかなり、都市計画も含めて、その機能を果たしておりますし、そこが主とした苦情処理機関としての役割を持ってもらえるものと期待をしております。
武正委員 ハワイにあるコンドミニアム事業者、ユーザーから成る組織がありまして、きのうも第三者機関という同僚議員からの問題提起もありましたが、コンドミニアム問題検討委員会というのは参考になるのかな。ディベロッパー、管理組合理事長、管理会社、弁護士、研究者、政府代表者。定期的に開催し、苦情処理なども受けている。
 マン管センター、高層住宅管理業協会の苦情処理機関としての適正性、これはまだまだ論議をしっかり深めなきゃいけないというふうに考えておるところでございます。
 さて、次でございますが、次の区分所有法の件も、ちょっと時間がかなり制約がございまして、次に移らせていただきます。御了承ください。
 先ほど副大臣から自治体の窓口についてのお話があったんですが、四月時点、お聞きしたんですが、現在幾つになっておるかお答えいただけますか。
中馬副大臣 マンション管理センターもありますが、それはほんの限られた場所でございますから、先ほど申しましたように、地方公共団体がその役割を担っております。
 その窓口の設置状況でいいますと、都道府県では、四十七都道府県があることは御承知のとおりでございますが、そのうちの四十五団体がこのような窓口を正式に開いております。しかし、それ以外の、これは茨城と長野が正式な形になっておりませんが、これにつきましては、もちろん、建築部ですとか、そこらあたりがちゃんとした対応はしてくれることになっております。
 政令市はすべて、十二団体、一〇〇%設置をいたしております。中核市におきましても、三十団体のうち二十四団体、そして、特例市におきましても、三十七団体のうち三十一団体がこの窓口を設置いたしております。
武正委員 市町村はいかがですか。
中馬副大臣 市町村で、マンションの問題がいろいろと問題になることはほとんどないと思います。そういうことで、その場合におきましては、特にこうした窓口は設置いたしておりませんが、少なくとも、市町村に相談に行けば、それなりの応対はしてくれる、そしてまた専門的なことはこうした都道府県の方にまで上げてでも対応してもらえるものと考えております。
武正委員 市町村は問題ないというのは、ちょっと認識が違うと思います。
 特例市以下と言ったらあれですけれども、その規模の市町村でももう問題は山積しておりまして、やはりこれは、今おまとめの方針の中でも行政努力規定ということを設けておりますので、特例市以外の市町村への指導というのは欠かせない。そしてまた、行政だけで、もちろん人的に足りないということは申すまでもありませんので、その意味で、NPOを含めたさまざまな関係団体の協力が必要だというふうに指摘をさせていただきます。
 さて、国土大臣にお伺いをしたいんですが、京都議定書批准も踏まえて、国交省さんとして、建築廃材の減量化、リサイクル、あるいはヒートアイランド対策等、この京都議定書批准を踏まえての対応をお聞きをさせていただきます。
扇国務大臣 これは、マンションのみならず、地球的規模の問題になっているのは、今京都議定書というお言葉をお使いになったので、そのとおりだと思います。
 我々都市に住む者、また地方でもおおむねそういうことができてきております。住宅とかあるいは建築物などの民生部門のエネルギーの消費量は、我が国のエネルギーの消費量の二六%を占めております。そういう意味で、今おっしゃった環境という点からも、二酸化炭素の排出の抑制によって地球温暖化対策を進める上でも、都市の主要な居住形式であるマンションについて対策を講じるというのは大変大事な問題である。
 先ほどもおっしゃいましたように、築三十年が十二万戸、十年後には百万戸ということですから、これも含めて大事な対策であると思っていますし、また、私たちの国の平均気温は、ここ百年ぐらいで約一度上昇しているというのも、これも、気象庁が所管でございますから、きちんと数字が出ております。平均は一度ですけれども、大都市は二、三度上昇しているという現状でございますので、ヒートアイランド現象というものが重要な課題になっているのは事実でございます。
 このため、エネルギーの使用の合理化に関する法律、これは省エネ法でございますけれども、それに基づいて省エネ基準というものをつくっております。そして、住宅金融公庫の融資基準におきます省エネ対応の住宅への優遇措置、これを行っております。そして、住宅性能表示制度における性能表示事項として、省エネルギー対策の等級設定、これもいたしております。そして、市街地住宅の整備に関する補助事業とあわせた省エネルギー型住宅への上乗せの補助、これも行っております。省エネの施策を講じて、私たちは、モデル的、また先進的な取り組みについては、環境共生住宅市街地モデル事業、ちょっと名前が長うございますけれども、そういうもので屋上の緑化などに対する補助、それらを地球温暖化対策とヒートアイランド現象の対策として実行しているところでございます。
    〔菅(義)委員長代理退席、委員長着席〕
武正委員 京都議定書批准、そして、いよいよロシアが批准ということで、来年には発効ということでございますので、今お話しの御趣旨を踏まえて、であるからこそ、マンションはでき得れば建てかえもせずに長く使えるようにすべきであろうというふうに思うわけでございます。
 さて、環境副大臣、お待たせをいたしました。ここでお答えいただいて、お引き取りをいただきたいと思うんですが、ヒートアイランドの報告書を出されておりますが、ヒートアイランド対策の基本的な考え方をお聞かせいただけますか。
弘友副大臣 ヒートアイランド現象、今論議がございましたように、都市化の進行に伴いまして、一つは人工排熱の増加、そしてまた緑地等の面積の減少、そして建物増加による太陽熱の吸収率の増加等が原因となって生ずるものでありますけれども、今扇大臣がお答えのように、過去百年間に日本では平均気温が一度上昇している、東京ではヒートアイランド現象等がありまして平均気温三度上昇しているというのですね。この二十年間でも、七月から九月の三十度を超えた延べ時間数というのは、東京、名古屋で約二倍、仙台では約三倍に時間数が増加している。環境省としては、ヒートアイランド現象というのは生活環境を保全する上で極めて重要な課題であると認識をしているわけでございます。
 この対策といたしましては、建物における省エネルギーの推進によって人工排熱を低減する、二番目には、緑化等の推進、屋上緑化等もございますけれども、その推進によって地表面の改善を図る、三番目は、よく風の道、水の道と言われておりますけれども、そういうことを増進するような都市形態を創出するということが大事だというふうに考えております。
 本年九月には、ヒートアイランド問題について総合的な施策の推進を図るために、環境省と国土交通省が事務方になりまして、あと経済産業省及び内閣官房から成るヒートアイランド対策関係府省連絡会議というのを設置したところでございます。今後、この連絡会議の場を活用いたしまして、効果的な対策を積み重ねることによって政府としてのヒートアイランド問題への取り組みを促進してまいりたい。
 なお、この間も、環境省といたしましては、各施策の効果予測、そしてヒートアイランド対策に資する工法などの推進に努めてまいりたい、このように考えております。
武正委員 どうもありがとうございました。どうぞ、お引き取りいただいて結構でございます。
 法務副大臣にお伺いいたしますが、先ほど、ヒートアイランド対策で屋上の緑化ということがよく出てくるんですが、これは第十七条、新設の「その形状又は効用の著しい変更」に当たるのかどうか。これは当たるか当たらないかでちょっとお答えをいただきたいんですが。
増田副大臣 簡明にお答え申し上げます。
 やり方によって当たることもあるし、やり方によって当たらないこともあります。
 そこで、こう言うと恐縮なんですが、一般論として申し上げます。屋上全面に、簡単にもとに戻せるような工事を実施した場合、こういうような場合には共用部分の著しい変更には当たらない、したがって二分の一の賛成で、過半数の賛成でというふうに理解をいたしております。もし固定されて簡単に戻せないという場合には特別議決になります。四分の三です。
 以上です。
武正委員 一体だれがそれを判断するのかといったところもありますし、固定か、容易か、これについてもやはりあいまいな表現だなといったところが言われる理由かなと思いますが。
 さて、先ほど大臣からは、京都議定書批准、やがて発効も踏まえての国交省のお取り組みがありましたが、既に前通常国会でも御指摘をさせていただきました外断熱、これは山岡淳一郎さんという方が書かれました「外断熱は日本のマンションをどこまで変えるか」という本でございますが、前通常国会では外断熱はまだまだというような趣旨の御答弁があったんですが、京都議定書の発効も間近という中で、この外断熱を義務づけてもよいのではないかというふうに考えますが、御所見を伺います。
扇国務大臣 外断熱工法は内断熱工法に比べて、外気の温度変化というものに対して、その躯体が保護されているために、劣化しにくいという特性があるというのはもう御存じのとおりでございます。しかし、施工が複雑である、あるいは建築コストが割高である、そういう側面があるわけでございますので、その問題点をどうクリアするか。
 また、このほかに、省エネルギー性能の面で、外断熱工法というものは冷暖房の終了時に効果が継続しやすいというようなメリットもございますけれども、逆に、冷暖房の開始時には短時間で効果が上がりにくい、比例するわけでございますので、そういうデメリットもこれまたございます。このようなそれぞれの工法の特性について都市基盤整備公団も同様の認識を持っているものと私も聞いております。
 それぞれの工法のメリット、デメリットというものを、一概にどちらの工法がいいとは言いにくいという現段階でございますので、私は、今武正議員がおっしゃるような、義務づけるということにはまだ早々ではないかと思っております。
武正委員 私は、コストが一〇%高くてもやはり百年住宅を目指す、あるいはまた、先ほど言われました省エネ、そしてまた解体、再建築ということを要しない工法というようなこと、あるいはシックハウス対策、カビを除去する、こういったことを考えると、効用の方が多いということをやはりもう認めるべきではないか。まして、京都議定書は発効するといったことでございますし、産構審あるいは地球温暖化対策推進大綱もそれぞれ住宅の省エネ、省エネというふうに相次いでうたっている国交省さんでございますので、外断熱はもはや今行うべきというふうに考えるところでございます。
 さて、先ほど修繕積立金のお話がございました。前国会でも、私は建てかえ積立金を設けたらどうかと。そうしましたら、国土副大臣は、いや、それはできないよと。その趣旨のお話がこれまでも繰り返されてまいりましたが、国土大臣、いかがでしょうか。やはり、きのうも御説明があったように、修繕積立金は、平均的に見ますと七十五戸で約三百万必要だと。大規模修繕三百万。しかしながら、建てかえの平均額は一千五百万から二千万が一番多い。今の法案では、二カ月前に連絡して、一カ月前に説明会やって、それでどうだと。こんなことで判断ができるんでしょうか、時間的余裕も見て。この差額の千二百万円をその場で用意できるんでしょうか。やはり、建てかえ積立金なるものなのか、あるいは修繕積立金にどのような形で工夫を凝らしていくのか。それを当初から考えていかなければ、この法案はやはり絵にかいたもちになるんではないかというふうに考えますが、大臣の御所見を伺います。
中馬副大臣 先ほど平岡委員と大臣とで大分議論がありまして、大臣もはっきりおっしゃっておられましたから私の方から答弁いたしますが、今の修繕積立金も、平均で一戸当たり月々五、六千円だということを聞いております。それからすれば、確かに大規模修繕のときには足らないことがあろうかと思います。しかし、多くの方々が、最近はともかくとして、そのマンションをお買いになったときには、これは本当に五十年、六十年、ちゃんと使っていけば、孫子にも場合によっては相続できるといったようなお考えでお買いになったんじゃないかと思います。三十年使ったらすぐ建てかえるということを前提にはされていなかったと私は思います。例えば、そうであったとしても、そのときの経済状況がどうなっているのか、そのときのマンション価格がどうなっているのか、自分がそのとき生きているのか死んでいるのかも含めて、このことの金額をあらかじめ想定して積み立てるということは非常に不可能だと思います。
 しかし、それでもやろうというところは、あくまでこれは先ほど言いましたように集合住宅でありますし、一つの共同体でありますから、その話し合いの中で、私的な自治にゆだねられるといいましょうか、その方々がお決めになって、では、我々としても、このマンションはどうも三十年たったら壊れそうだから月々十万円ずつ積み立てましょうかとか、そういうことをお決めになるのはあくまで管理組合を構成する住民の方々の御意思だと思います。そういうことをあえて申させていただきます。
武正委員 今パブコメを求めておられて、もう締め切られた国土交通省の方針には、初動時に、建てかえなのかどうなのか、やはりそういう見きわめに関しての情報提供等あるいは説明会等ということを明記されているんですね。しかしながら、今回の区分所有法は二カ月前、国土交通省さんの指針、方針の初動時と余りにも差があるわけでございます。
 さて、私は、本法案には、午前中の参考人からもございましたが、再生を第一義に置く、これをやはり明記すべきというふうに考えるんですけれども、法務副大臣、いかがでしょうか。
増田副大臣 最近の百年マンションという言葉にあらわれていますように、できる限り長期間にわたり建物が利用できるよう適切な維持管理に努めるべきであるという考え方も一般的になっているところであります。
 改正法案は、区分所有建物の建てかえ決議の要件の見直しを行っておりますが、これは個別の事情を離れて一律に建てかえを推進しようとするものではなく、あくまでも各区分所有者、各建物の実情に応じて、建てかえるか計画的に修繕を行い建物の維持をするかについて、十分な情報が得られた上で自主的に判断すべきことを当然の前提としているものであります。
 このように、改正法案におきましては、十分な配慮に基づき、建てかえの要否が判断されるよう手当てがされておりますので、委員御指摘のような規定をあえて置くまでの必要はないものと考えております。
武正委員 私が再生と言ったのは、先ほどの国土交通大臣の省エネあるいは京都議定書、地球温暖化対策といったことも踏まえての発言でございまして、これは国土交通省にお聞きをしたいところでございますが、時間も限られております。
 そしてまた、十分論議ができるという今のお話でございましたが、あえて重ねて申しますが、二カ月前に連絡が来る、修繕なのか建てかえなのか、その費用の差額はこうだよと二カ月前に来る、一カ月前に説明会、さあどうだ、千二百万、千五百万用意しろ、こんなことは健全な日本のマンション市場あるいはまた国民のストックの育成保護には到底寄与しないのではないかと言わざるを得ません。
 最後でございますが、きのうもあった縦配管、これについて国土大臣にお答えをいただきたいと思います。
 マンション管理センターでは、この縦配管、防火区画の壁を貫通している、寿命三十年、ジョイント部分のシールが劣化し、水漏れを起こすが、一般の長期修繕計画にそのことがほとんど書かれていない、書くべきであろう、また、やはり縦配管を置くべきスペースはエレベーターホール近くの共有部分として、これを義務づけるべきではないかと考えるんですが、最後、大臣に御所見をお伺いいたします。
    〔委員長退席、赤羽委員長代理着席〕
中馬副大臣 縦配管は共有部分に設置するよう義務づけるべきとの御指摘でございますが、マンションの的確な維持管理には、計画的な診断、修繕などが行いやすいものとして建設することが有効でもございます。
 最近の傾向でもございますが、内部をかなり自由に、内装を変えるといったようなこともございます。そういったことで、国土交通省といたしましても、スケルトン・インフィル住宅、SI住宅と申しますが、躯体をしっかりとしたものにして、内部はかなり自由に変更ができる形でございますが、この技術開発に取り組んでおります。
 こういったようなことも含めて、今後は縦配管の、共有部分でそれが設置できるように持っていくことを私たちも願っているような次第でもございます。そのことの前提としまして、SI住宅の普及ということを前面に出して国土交通省としても取り組んでいる次第でございます。
    〔赤羽委員長代理退席、委員長着席〕
武正委員 以上で終わります。ありがとうございました。
久保委員長 一川保夫君。
一川委員 まず冒頭に扇大臣に見解をお伺いするわけですけれども、今、マンションの管理なり建てかえの話題が集中的にいろいろな質疑がされているわけですけれども、このマンションの今後のあり方みたいなところを、若干見解をお伺いしたいと思うんです。
 都市型のこういう居住形態としての集合住宅のマンションというのは、当然時代のいろいろな要請を受けて、そういう必要性があって、今日こういう集合住宅が都市部を中心にたくさんあるわけです。しかし、今、都市再生ということが、これは小泉政権の大きな重要政策の一つにも掲げられているというふうに言われておりますけれども、都市を再生するということは、要するに、今都市は非常に問題を抱えておるという問題意識の中で再生を図ろうということだろうと思うんです。
 今日、マンションの建てかえをせざるを得ない状況に今来ておるというようなことも踏まえますと、我が国の住宅政策の中で、今後ともこういうマンションというようなスタイルで都市部の住宅というものを積極的に推し進めていくということになるのか、いや、それはほどほどにしておきたいということになるのか、そのあたりが、どうも住宅政策としての位置づけが余り見えてこないようなところがあるわけです。これは民間サイドにそのあたりをお任せするということかもしれませんけれども、当然ニーズがあってのことでございますから、経済的なことを考えれば、できるだけ職場に近いところに安いものがあれば、皆さん手を出すということになろうかと思います。
 しかし、きのうもちょっと議論しましたけれども、我が国のマンションというのは、一種のブームの中にあって、必ずしもそこに本当に家族そろって生活をするために抱えたマンションだけではないというふうにも思うわけですね。何となくリゾート地域にマンションを持っている方もいらっしゃいますし、ある時期、子供さんの教育のために都心部に小規模のマンションを構えている方もいらっしゃいます。最近また新たなニーズでもって、都心部に小規模なマンションを希望する方もふえてきておるというふうにお聞きしますけれども、時代の変遷で、利用形態なりマンションを取得する目的が変わってきているように思います。
 そういうことを考えますと、今日の日本の少子高齢化という一つの社会現象、それから経済がいろいろな面で低迷してきている、こういう中にあって、片や都市の再生を図りたいということがあるわけですけれども、このマンションという住宅形式、こういったものを今後政府の住宅政策の中、あるいは都市計画、都市政策の中でどのように位置づけしようとしておられるのか、扇大臣のお考えをお聞きしたい、そのように思います。
扇国務大臣 衣食住と申しますけれども、大体衣食は足りて、やはり日本人に一番不足しているもの、いまだに不満あるいは希望が達成されていないものは住だと思います。そして住に関しては、核家族化が進んで、だんだん両親は一緒に住まなくなって、両親の持っているうちに若い夫婦は住まないということも、これも日本の現象としてあります。
 そして、住に対する願望というのは、土地が狭く、限られた中で、どうしても一戸建てが欲しいというのは最終的な夢であろうと思いますけれども、このごろは、一戸建てに住んでも、両親は一緒に住まないから、子供が生まれたら預けるところがないから、託児所を完備しようということも社会現象としてあります。そして、限られた土地で住を満足させるためには空間を利用しなきゃいけないということでマンションというものがあるというのも一つの日本の都市の形成の象徴であろうと私は思います。
 今、私、手元にマンションがどの程度ふえてきたかというものを持っております。ちなみに、昭和五十七年にはマンションというのは十二万戸だったんですね。そして、平成二年のデータで見ましても、これは十六万戸です。それが、今、平成十三年度末で、マンションのストックというものは四百六万戸なんです。そして、それに一千八十万人が居住している。この現状を見ますときに、需要と供給という面から見ますと、私はやはりまだマンションを希望する人が多くなっているんだなと。
 一時は一戸建てブームで、都市から離れて、中核衛星都市にみんな一戸建てを買って行ったんですけれども、今勤めているところと住まいが離れて通勤時間のむだがあって家族団らんができないというようなことで、狭くてもマンションということで都市回帰というものも起こっております。
 ちなみに、千代田区をとってみても、居住がふえています。人口がふえたのは何十年ぶりだといっていました。それは、マンションが建ったからでございまして、やはり、少ない土地の中で職住近接ということになりますと、私は、マンションの需要というものはまだまだあるんだなと思っております。
 ただ、そこにおいては、今回のマンションのこの法律を皆さんに御審議いただいているのも、これだけマンションの数がふえたということから見ましたら、いかにこの法案の中身を御審議いただくことが大事なことであるかということに私は比例してくると思いますので、私は、住宅という大前提を一川議員が御質問になりましたので、住ということに関しては、マンションというものは今後もやはり伸び続けるであろうということを予測せざるを得ないと思っております。
一川委員 今のお話の中で触れられましたように、ニーズが非常にまだまだ強くあるという御認識は、それは間違っていないかもしれませんけれども、私は、今日、マンションの建てかえの議論の中で、建てかえするに当たってのエネルギーたるものは大変なものがあるような気もしますし、また、いろいろな面で格差が生じている中で合意形成を図っていくというのは大変難しい面も当然あるわけです。
 そういうことを考えますと、できるだけ長もちするマンションをつくっていくことは非常に大切なことでございますけれども、マンションというのは、我々田舎にいる人間にとっては一つのあこがれでもありますけれども、これから心豊かに人間らしい生活を送る上で、マンションという住居形態が果たしていいのかどうかということを考えてみた場合に、高齢化社会を迎える中で、高齢者の方々が超高層マンションに入ること自体が相当精神的にプレッシャーがかかりますから、そういうこととか、あるいは子供さんの子育て、教育ということを考えた場合にも、高層のマンションというのは、私は、やはり人間形成の上で私は必ずしもいいとは言えないような気がします。
 そういうことを考えますと、やはりトータルとして、都市部であっても、マンションの施策というのは、これまでのいろいろな問題点を反省しながら進めていくことが非常に大切ではないかと思いますけれども、そのあたり、もう一度大臣の見解をお願いします。
扇国務大臣 日本の現状の展望を一川議員がおっしゃいました。私はそのとおりだと思います。そして、一種のあこがれもありますけれども、今、東京都のこの現状一つとってみても、例に挙げましても、東京都の都市計画というのは昭和二十二年にできていますけれども、戦後今日までかかってまだ五五%しか達成できていません。四五%は都市計画自体が未達成です。ということは、密集地があったり道路が狭かったり、きょうも冒頭に景観という話が出たんですけれども、景観一つとってみても、都市計画の道路が、まだ四五%達成できていない。狭い道路にひしめいているという現状でございますので、私は今回、小泉総理のもとに都市再生本部というものをつくって、そしてこのマンションも高いものが建って、そしてこの密集地を整理できたら、あいた空間には公園をつくる、緑を多くする、そして保育所もつくる、お年寄りのための設備も入れる、そういう条件を整えて都市再生ということに取り組んでいるというのが事実でございますので、今一川議員がおっしゃいましたように、我々は二十一世紀の都市づくりと居住環境というものをセットで重視した計画というものをつくっていくということが大事だと思いますので、そういう意味で、マンションをつくって高くなった、下にできた空間にはあらゆる設備を整えて、環境を整えるということを私はセットでいくべきだと思っています。
一川委員 私自身も、これまでのマンションという形態でのいろいろな問題点なり課題というのは、最近こういう議論を踏まえまして整理されつつあるわけでございますので、そういう反省の上に立ったこれからの都市部の住宅政策というものは当然あってしかるべきだし、その辺のところに十分留意した政策を実行していただきたいというふうに思っております。
 それで、次に、これはどなたが答弁かわかりませんけれども、国土交通省にお聞きしますけれども、きょうの参考人のいろいろなお話を聞いておりましても、マンションを管理している段階でも、ある人の説明では、いや、アメリカ方式とヨーロッパ方式があるとか、日本はどっちかというとアメリカ方式だとか、ヨーロッパ方式は管理をプロの方に委託するということらしいですけれども、最近、日本でもマンション管理士という制度ができて、何となくプロらしき人にそれを委託するというか判断を仰ぐみたいなところが出てきましたから、アメリカ方式とヨーロッパ方式の併用型になりつつあるとか、いろいろな分析をされておりました。それからまた、マンションを管理する管理組合がうまく機能しているところと、ほとんど機能していないようなところと、二分化されつつあるというお話もございました。
 そういうことをいろいろとお聞きすると、これはまた実態というのは大変な問題だなというふうに感ずるわけですけれども、そこで国土交通省にお聞きするわけだけれども、今新しくつくっている、今現在でき上がったばかりのマンションとか今工事中のマンションも含めて、あるいはこれから管理を新しくスタートするようなマンションに対して、国土交通省あるいは各行政機関を通じて新たな指導というか、そういったことを最近何かやっているのかいないのか、そのあたりを、ちょっと状況を御報告願いたいと思います。
松野政府参考人 お答えいたします。
 マンションの新築あるいは管理組合の活動開始に当たりまして、将来にいわば備えるといいますか、やはりいいものをつくってできるだけ長く使うということが重要なことだと思います。したがいまして、そのための配慮、最初から改修のしやすい設計をするとかあるいは適正な維持管理をするということは大変重要だと思います。したがいまして、できるだけ長もちするマンションを供給されるように、例えば住宅金融公庫の融資基準におきましては、耐久性に配慮する基準をつくっております。
 それから、住宅品確法に基づきます住宅性能表示制度におきまして、劣化をおくらせる対策をどうとっているか、あるいは維持管理のしやすさ等について表示をしてその情報提供を行う制度ができております。それから、先ほどから話題になっておりますが、高い耐久性を持った構造躯体と、中の内装等を変えていける、可変性のあるものとで構成されますスケルトン・インフィル、SI住宅、こういったものの技術開発を行うといった施策にも取り組んでおります。
 また、維持管理の面では、長期修繕計画を作成する、あるいは長期的な修繕の実施を指導するといったこと、それから、委員御指摘になりましたとおり、マンション管理士を育成し活用するといった、マンション管理適正化法に基づくような施策にも取り組んできているところでございます。
 今後とも、耐久性の高いマンションの普及等の施策を推進いたしますとともに、維持管理の適正化にも努めてまいりたいと思います。
一川委員 次に、昨日もちょっと議論しましたけれども、マンション建替えの円滑化法というのはまだ施行されておりませんけれども、昨日の大臣のお話によりますと、マンションを建てかえするかしないかというようなものの判断の参考になるような、マニュアル的なものをこれからちゃんと整理して公表したいというようなお話がございました。
 円滑化法の第四条に、基本方針を大臣が定めて公表するという規定がございます。それを受けて、専門的な方々の見解も入れながら、いろいろな基準めいたものを出されるんだろうと思います。これは、建てかえに関する技術的な、判断的な基準も当然あるわけでございましょうし、また、古いマンションの資産を評価する、そういう基準といいますか、基本的な考え方をいろいろとお示しになるのかもしれませんけれども、現在、第四条の基本方針等を受けまして、こういったマニュアルづくり的なものというのはどの程度進んできているのか、また、いつの段階でそういうものを公表されようとしているのか、そのあたりの御説明をお願いしたいと思います。
松野政府参考人 今委員がお話しになりました大臣の基本方針に基づきまして、その中にも、建てかえか修繕かを判断するための指針を作成するということを記述しておりますが、実際の指針につきましては今策定中でございます。最終的にはこの十二月までにその成果を出したいというふうに考えております。
一川委員 最後の質問にさせていただきたいと思うんです。
 これは副大臣の答弁か、どなたかわかりませんけれども、要するに、地方公共団体等がマンションの状況をいろいろと調査されて、危険あるいは危険的なマンションについては建てかえを勧告するというような、そういう一つのルートもあるわけでございますけれども、私は、昨日も言いましたように、こういったマンションのいろいろな建てかえ等について、公的な支援というのはいろいろな面でやはりもっともっと手厚くした方がいいだろうというふうに思います。
 それは、全く私的財産のところに公的な力で手をつけるということについての限界は当然あるわけでございますけれども、公的なものをできるだけふやしていくという中で支援をしていくということは、円滑に物事を運ぶという面では非常に大事なことではないかなというふうに思います。その一方ではまた、通常の都市再開発事業的な発想でいえば、場合によってはある程度の強制力を働かせていかないと公的な仕事というのは進んでいかないということもまたあるわけですね。そこのところの兼ね合いが非常に難しいところがあるわけでございますけれども、そういったことについての国土交通省としてのお考えを確認しておきたいと思います。
中馬副大臣 委員まさに御指摘のとおりでございまして、市町村からの建てかえ勧告を受けたマンションでございますが、マンション建替え円滑化法に基づきまして建てかえられるマンションにつきましては、勧告を受けたか受けないにかかわりませず、優良建築物等整備事業によりまして、調査設計費それから従前建物の除却費それから補償の費用、建設にかかる費用等に対する補助が受けられるように措置をいたしております。この補助制度は、今御指摘がありましたように、市街地再開発事業に対する補助制度とほぼ同等の内容といたしております。
 また、勧告を受けたマンションにつきましては、特に居住者の居住の安定を確保するために、公営住宅などへの公共賃貸住宅に転出する場合に、本法において、公募によらず特定入居ということで入居できる措置を講じることといたしております。
 以上でございます。
一川委員 以上で終わります。ありがとうございました。
久保委員長 瀬古由起子さん。
瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。
 私は、実はホームレス問題にも取り組んでおります。テントを回り、公園を回って温かいお茶や食べ物を配ったりしながら相談も受けているのですが、時々、この前までマンションに住んでいたという人がいて、びっくりすることがあります。この日本では、この寒空の中で、一冬で実は何百人の人が凍死、餓死で亡くなっているという状況なんですね。
 大臣にお聞きしたいと思うんですが、憲法にも健康で文化的な生活という国民の生存権というものがうたわれて、国連の人権宣言にも、また、日本政府が批准しております国際人権規約など、数々の居住の権利の宣言には、住まいは人権といった立場が明確になっていると思います。この立場に当然大臣も立って住宅政策に取り組んでおられると思うんですが、その点の所見を伺いたいと思います。
扇国務大臣 住まいについて、瀬古議員いつも熱心に御討議いただいております。
 今の憲法に関する問題でございますけれども、日本憲法において、今瀬古議員がおっしゃいますように、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」おっしゃるとおりでございます。また、今おっしゃいました国際人権規約、これも、すべての者に相当な食料、衣類及び住居を内容とする相当な生活水準についての権利を認めるということで、今瀬古議員がお示しになったとおり、最低限という条件がついておりますので、我々はそれを守っていかなきゃいけないと思います。
 我が国の今現在の居住というものに関しましては、いわゆるマンションも含めてですけれども、住居の戸数に関しましては既に充足しているというのが現状でございますけれども、全国の一戸当たりの平均の床面積、これが九十二平米なんですね。それに対して、三大都市圏の借家世帯は、一戸当たりの平均の床面積が四十一平米、二分の一以下なんですね、都市の場合は。
 そういう意味では、これが満足し得る居住かどうかということになりますと、私は、まだ遠く及ばないところであろうと思います。このような居住事情や今後の社会情勢にかんがみまして、国民の一人一人が、年齢とかあるいは世帯構成等、もう大変変わってきております、老齢社会ですから。けれども、それぞれのライフスタイルに応じてゆとりのある豊かな居住をするということへの少しでもお手伝いをし、また、指針も示していかなきゃいけないというのが住宅政策の基本であろうと思っております。
瀬古委員 最低限といっても、全く住宅がない人たちが二万人ぐらいいらっしゃるので、この点は今後私も問題にしたいと思っていますけれども、きょうはマンション問題についてお聞きしたいと思います。
 国土交通省の統計では、築後三十年を経過したマンションの状況を見ますと、空き家の住戸が一一%、賃貸住戸が二四%、そして六十歳以上のみの住戸が三五%になっております。どのマンションもいずれは建てかえをしなければならない以上、必要となったときにはスムーズに建てかえが進む仕組みを整備するというのは私は当然だというふうに思います。
 しかし、同時に、さまざまな事情があって建てかえに踏み切れない人や、やむなくマンションを明け渡さざるを得ない人たちへの補償を検討するということも大変重要だと思っております。移転費や仮住まい費、商売を営んできた人は営業補償が十分補償されなければ転居もできないわけですし、また、マンションは長い間住んできたので出たくない、本当はここで長年住んでいたい、この地域で暮らしていきたい、こういう方もたくさんいらっしゃいます。結果として建てかえにはなかなか参加できないが、その地域に住み続けることができるようにするには、その人への援助や補償、こういうものをきちっとしなきゃならない。この点、今どのようにされているでしょうか、今後どのようにされようとしているでしょうか。
松野政府参考人 お答えいたします。
 マンションも、他の住宅と同様、個人の私的財産でございます。したがいまして、その建てかえ費用は基本的にはその所有者において負担すべきものではございますが、マンションの建てかえというのは、やはり多数の方々が共同して住んでおられる、あるいは区分所有されておられるということから、大変難しい問題を抱えております。したがいまして、その建てかえを円滑に推進するため、区分所有者の方々等の経済的負担をできるだけ軽減するという必要があろうかと思います。そのために、国庫補助あるいは住宅金融公庫融資等により支援を行うこととしております。
 具体的には、優良建築物等整備事業というのがございます。これを活用いたしまして、調査設計計画費、あるいは従前建物の除却費、新しい建物の共同施設整備費のようなものに対する補助を行いますほか、従前居住者に対します移転費用、つまり引っ越しの費用でありますとか、仮住居の費用、さらには営業補償等も実施できるというような制度として用意をしておるところでございます。
瀬古委員 今御説明ございました優良建築物等の整備事業の実績はどういったものでございますか。
松野政府参考人 この優良建築物整備事業は、いわゆる集合住宅として優良なものを助成するという制度でございます。したがいまして、マンション建てかえのためだけにつくった制度ではございませんで、この制度をマンション建てかえ事業にも今後使っていくということでございまして、実際のこの法律に基づきますマンション建てかえ事業には、法律の施行に伴って今後実績が出てくるというふうに考えております。
瀬古委員 私が資料をいただいたところによりますと、実際にはこの五年間で九十二件です。平成十年度はわずか二件、一番多いときで平成七年度が六十三件なんですが、どんどん減ってきている。実際には余り活用されていない。これからどんどんふえるかどうかわからない。そういう点では、非常に使いにくいといいますか、実際には、こうした建てかえについてのいろいろな措置を行う上で一定の改善が必要ではないか。例えば、補助要件の緩和だとか、それから援助費用の引き上げだとか地域の拡大、こういったものなども私は考えるべきではないかと思うんですが、その点、いかがでしょうか。
松野政府参考人 優良建築物整備事業につきましては、現在の制度が余り使われていないというふうに御指摘ではございますが、昨今の経済状況もございまして、補助対象の件数が少し減っているというようなことを御指摘になったのではないかと思います。
 また、これから建てかえ事業を実施するに際して、現在のいわば採択基準で今のところ十分ではないかというふうに考えております。
瀬古委員 年間で二件とか一件とかで十分などととても言えないものなんですが。
 先ほど質疑の中にも出ておりましたように、リバースモーゲージ、お年寄りの皆さんが一たんお金を借りて、そして最後亡くなったときに住宅などで返す方式、これはどのように進んでおりますか。
松野政府参考人 まだ現在のところ、先ほどもお答えしましたとおりでございますが、我が国で米国のような一般的な普及の状況にあるというわけではございません。
瀬古委員 聞きましたらたった一件という話なんですが、国土交通省がすごい、建てかえについていろいろやっていますと言う割には、全国で一件とか二件とか、何かお寒い状況なんですね。
 私は、建てかえという問題、まだ全体的な建てかえの基礎数そのものが少ないという面もありますが、やはり建てかえについての困難な条件はかなりあると思うんですよね。そういう点では、きょうの参考人質疑の中でも明らかになったように、何とか建てかえしないで長寿化する、本当に大事に大事に修繕しながらそこに住み続けられるということを最大限援助する制度がやはり必要だと私は思うんです。
 今お話がありましたように、マンション全体の修繕についても、例えば、きょう参考人の方が言われておりましたが、二十五年間頑張ってやったら、御苦労さん、それこそもうあと五年、あと十年やれるような、長もちすればするほど援助ができる、こういうやはり長寿化のための施策というのはもっと必要じゃないかというふうに思うんですが、その点、いかがでしょうか。
松野政府参考人 長もちすればするほど、適切な維持管理をして長もちをするということは大変いいことだと思うんですが、そのための助成制度といいますか、あるといえば、例えば公庫の共用部分のリフォーム融資というのがございます。もし可能ならばそういったものも使っていただくということがあり得ると思います。そうした措置を含めて、維持管理の適正な推進といいますか、そういったことを進めてまいりたいと思います。
瀬古委員 マンションの場合は戸数が多いわけですから、もしそれが修繕されないで、そして放置されるということになると大変な事態になるんです。
 私の知っているところでも、古くなったマンションでお年寄りがたくさんいらっしゃるんですが、とても建てかえる力もない、そして修繕する力もなくなって、だんだん若い人たちが出ていって、このままいったらもうスラム化しちゃうというか、そういうひどい状況になってきているというところも出てきております。そういう場合には、マンションの場合は、きちっとした修繕、そして維持をしていかなければ、逆に地域そのものが壊れていくという問題があるんですね。
 一戸建ての場合ももちろんいろいろな援助をするということは必要ですが、きょうも参考人の方のお話がありましたが、一戸建ての場合だって、まちづくりというように考えた場合に、ここに公園をつくる、ここに道路をつくるという場合には、住宅をつくるための援助なんかもいろいろするんだと。
 だからマンションだって、そのマンションを援助することがある意味では町全体を維持するという点では、行政的な財政措置としてはむしろ安上がりになるという面もあるんだ。まちづくり全体で考えていきますと、例えばマンションの中にある一定の共通の空間などもうんと活用すれば、地域の中のまちづくりの一環としてそこが利用できる。そういう点で、マンションというのは、確かにいろいろな区分所有があって難しい問題はあるけれども、ある意味では活用して、それを応援して、そしてまちづくり全体で考えていくと、かなりそこが本当に快適なまちづくりの一角として位置づけられる、こういう考え方が必要だと私は思うんです。
 そういう意味で、先ほど言われたように、例えば、どうしてもお金が用意できない、建てかえに参加できないという人たちでも、何とかそこを改修する、修繕する、維持するということで援助をすればそこに住み続けられるということも十分あると思うんですね。
 そういう意味では、個人的な私的財産だからというのがいつもそこに出てくるわけですが、私は、マンションの場合にはある意味では公共的な意味も十分持っているというふうに思うんですね。その点で、やはり個人的な財政的な支援措置なども、もちろんマンション管理組合全体への支援措置とあわせて必要なんですけれども、もっと充実すべきだと思うんです。
 先ほど、法的な整備という問題も出ておりましたけれども、建てかえについてはいろいろな法律や制度をがんがんつくるけれども、もっと長もちさせる、もっと長寿化させる、もっとそこに住み続けられるようにするための施策は、私は、私的財産ということだけで言えない、やはり援助措置はもっと拡充すべきだと思うんですが、その点いかがでしょうか。
松野政府参考人 やはり、メンテナンスの問題になりますと、一戸建ての通常の住宅の場合は自己責任におきましてメンテナンスしていただいているわけです。したがいまして、集合住宅、マンションも、原則はやはり自助努力だろうということでございます。したがいまして、全く援助をしていないというわけではなく、先ほど申し上げましたように、共用部分のリフォームというようなことに関しましては住宅金融公庫の融資で助成をしているという現状でございます。
瀬古委員 そこがやはり今何とか突破しなきゃならない問題だと私は思うんですよね。融資といったって、結局返さなきゃならない。本当にそういう高齢者が大変たくさん占めているところでそういうことができるのかという点で、もうそういう借りられないところは放置するということになってしまう。
 それから、これはマンションの建替え円滑化法の中でも出てきたんですけれども、例えば、出ていかざるを得なくなった人たちには公的な住宅の保証、こういうものもやらなきゃならないということになっていますけれども、実際に私、見たら、公的住宅などはもう本当に深刻なんです。東京では公営住宅の申し込みの倍率は十四・七倍、大阪は九・九倍、愛知は四・一倍。これは全体で九・九倍とか四・一倍なんです。実は、例えば私の住んでいる名古屋市などは、市だけでとりますと十八・五倍です。ある団地では二百七十五倍なんですね。こういうところにはとても、公営住宅へ転居するということもできないわけです。
 さっき、午前中の参考人質疑でも出てきたように、例えば建てかえするにしても、大規模団地なんかは公的な一定の住宅をつくらなければ限界があってできないというお話も出ておりました。今、公営住宅はもうほとんど地方自治体はつくらないという状態なんですね。せいぜい改築する程度なんですね。国土交通省としては、公営住宅についての建設はとりわけこういう困難な状況があるので、思い切った措置がぜひ必要じゃないかと私は思うんですが、いかがでしょうか。
松野政府参考人 委員御指摘のような、建てかえのときに一挙にそういった大きな需要が出てくるということが起きます。したがって、公営住宅、もともと大都市では大変倍率が高いということもございまして、公営住宅だけで対応するということはなかなか難しいだろうと思います。したがいまして、建てかえ事業につきましては、公営住宅への優先入居というのがありますけれども、それ以外に、従前居住者用賃貸住宅という制度を設けておりまして、大きな団地でそういう需要が一挙に出たときにも、公営住宅ではなかなか対応できないケースがありますので、そういったことを建設することもできますし、あるいは民間の賃貸住宅を借り上げる、その期間だけでも借り上げるという措置も可能なようにそういった制度を用意したところでございます。
瀬古委員 今回の改正案では、原始管理規約の適正さの確保、駐車場の専用使用権の設定などマンション紛争の原因中の大きな分野について、私は論議が極めて不十分だったというふうに思います。
 第三十条第三項の関係で、区分所有者の利害の衡平という規定が入りました。これはこの間のマンション居住者の要望でありまして、一歩前進だと思います。
 そこで確認したいんですけれども、これはあくまでもこれに反する規約は無効であるという効力規定というふうに考えていいでしょうか。
 もう一点は、今、原始規約は全くノーチェックという状況でございます。標準管理規約などを既に作成しているんですから、この機会に原始管理規約などをチェックできるシステムを検討すべきではないかと思うんですが、その点、いかがでしょうか。
房村政府参考人 改正法の三十条三項の規定、効力規定かどうかという点についてお尋ねでございますので、その点についてまずお答えいたします。
 改正法案が新設いたします規約の適正化に関する規定は、規約の公平さを判断する際の考慮要素を具体的に列挙した上で、それらの諸要素を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように規約を定めなければならないと規定しておりまして、著しく公平に反する内容の規約については、本規定に基づいて効力が否定される場合があると考えておりますので、訓示規定ではなくて効力規定である、こう考えております。
松野政府参考人 原始規約には問題が多いということでございます。それから、これをチェックするシステムがないかということでございますが、管理規約は、マンション管理のいわば最高自治規範でございますので、区分所有法にのっとりまして、中高層共同住宅標準管理規約というものがございますので、これを参考にしながら、当該マンションの実態を勘案しつつ、適切なものを作成する必要があると考えております。
 いわゆる原始管理規約というのは、分譲時にあらかじめ分譲業者が作成しているものでございまして、定めている事項の中には分譲業者と例えば個々の区分所有者との間で不公平な取り扱いがなされているというような事例もあると聞いております。必ずしも適正な管理規約となっていないものが中にはあるとお聞きしておりますが、今回の区分所有法の改正を受けまして、適正な管理規約にするということがいわば可能だと思います。それは四分の三以上の同意で、総会等で正しい姿に区分所有者間の合意をもって改正していくという必要があろうかと思います。そのことにつきまして、私どもも、そういうことが可能だということを周知してまいりたいと思います。
瀬古委員 また、各地でトラブルを引き起こしてきた分譲業者による駐車場の専用使用権の設定それから販売、こういうものを、法改正するなどして、禁止すべきだと思うんですが、いかがでしょうか。
松野政府参考人 今御指摘のような駐車場の専用使用権ということにつきましては、関係者が十分に了解した上で管理規約に定められるという場合もあり得るわけでございまして、一律に事前にその設定を禁止するということは困難かと思います。したがいまして、そのマンションの事情を考慮しながら、そのマンションにふさわしい適切な管理規約を定めるということがやはり最も重要でございまして、その重要性について周知を図ってまいりたいと考えております。
瀬古委員 最後の質問になると思います。
 最後に、大臣にお聞きしたいと思うんですが、マンションというのは一生に一度の大きい買い物で、そして後何十年もローンを払わなきゃならない、そういう点では、消費者保護という点で、それを一番図らなきゃならない問題だと思っています。
 昨日、大臣には私たちのこの「区分所有法改定にあたっての見解と提案」というのをお渡しして、その中にも述べさせていただいているんですけれども、とりわけ、居住者間に不公平をもたらす規約や、マンションの価格を安く見せるために、後で大規模修繕で困難になることを知りながら異常に低く設定された修繕積立金の問題、こういう分譲が後を絶ちません。国土交通省も、標準管理規約を作成して業界を指導するなど一定の努力をされていますけれども、アメリカのカリフォルニア州では、州の不動産局による事前審査、それから情報開示、パブリックレポートとして発表して消費者保護を図っています。
 敷地や共用部分が正しく確保されているかとか、管理規約案の内容が適切か、建物にふさわしい長期修繕計画がつくられているか、その計画に見合った修繕積立金になっているかなどを自治体が審査する、そして分譲業者への指導と購入者への情報開示を行うことなどを内容としたマンションの分譲審査制度をぜひ検討すべきだというふうに私たちは考えています。そうして分譲時の消費者保護を図るべきではないかと提案しているんですけれども、その点、御検討いただけるでしょうか。
扇国務大臣 昨日からもこの話が出ておりまして、きょうもこの話が出ましたけれども、住宅の性能に関しましては、でき上がってから買って、どこがどう悪いのかいいのかという判定が素人にはなかなかこれはつきにくいもので、見た目だけきれいだったらいいんじゃないかと思って高いものを買って、しばらくしていると欠陥が見えてきたなんということもなきにしもあらずということで、住宅の品質の確保の促進に関する法律というものができておりまして、マンションを含む住宅の性能表示のための共通ルールを設けておりますので、住宅性能表示制度、これを我々は運用して、今瀬古議員がおっしゃいましたような、何とかそういうことのないようにしていきたい。
 また一方では、管理規約につきましても、宅地建物取引業法に基づいて、購入者がマンションを購入する際には、管理規約の内容について、宅地建物取引業者に対して説明の義務を課すということで、素人の皆さんがお求めになるときにきちんと説明をしなさいということも義務化しております。
 また、既に購入されてしまったマンションに関しましても、その管理規約につきまして、マンション管理適正化法に基づいて策定されましたマンション管理適正化指針におきまして、我々は、中高層共同住宅標準管理規約に即して適正な改正が行われるように、これを周知し、徹底を図るということにしております。
 また、数字を挙げますと、これは住宅の性能表示制度でございますけれども、これを施行しまして、少なくとも現在では、マンション、共同住宅は四万六千七百六十戸ですけれども、十三年度におきます分譲共同住宅等の着工戸数のおおむね二割に相当する方が、この指定住宅性能評価機関、これの基準を守っていただいて、二割程度の皆さん方が見直しているというところでもございますので、なおこの徹底を図っていきたいと思っています。
瀬古委員 時間が参りました。
 今の大臣の、いろいろな徹底を図るといっても、現状はまだトラブルがいっぱい続出している状況ですから、私は、やはり新たな審査制度といったものの検討をきちっと、ぜひやっていただきたいと思います。
 引き続き議論をもっとしたいと思っております。この委員会でも十分な、マンション居住者の願いに沿った審議が重ねて行われることを求めて、質問を終わります。ありがとうございました。
久保委員長 原陽子さん。
原委員 社会民主党の原陽子です。
 きょう最後の質疑ですので、もうしばらくよろしくお願いをしたいと思います。
 今回審議になっておりますマンション建替え円滑化法は、さきの通常国会で審議したばかりで、まだ施行さえもされていません。十二月十八日に施行の予定だということですが、今回のこの改正案は一体いつ施行されることになるのか、まずお伺いをしたいと思います。
松野政府参考人 マンション建替え円滑化法は、委員御指摘のとおり、去る六月十九日に公布されて、十二月十八日までに施行できるよう、現在鋭意準備を進めております。
 また、このお願いしております改正法案につきましては、附則第一条におきまして、公布の日から起算して六カ月を超えない範囲内において政令で定める日から施行すると規定しております。この国会において成立させていただければ、公布の手続を経た後、六カ月以内の準備期間を置いて施行されることとなるわけでございます。
原委員 それで、今回の改正なんですけれども、私、これは本当に、マイナーな改正とは言えないと思っています。
 隣地を買い増して建てかえ事業を可能とするような大々的な改正が今回含まれていまして、前の通常国会で審議したばかりの円滑化法が施行される前に、またこうした一部改正が提案された理由というものは、先ほどもあったかと思いますが、その理由をまずお聞かせ願いたいと思います。
松野政府参考人 まずは、前国会におきましてマンション建替え円滑化法を成立させていただいたわけでございますが、これは、相当の年数を経過するマンションがこれから急増するという事態を迎えまして、その建てかえを円滑に進める制度をできる限り早く構築する必要があるということから、現在の区分所有法による建てかえ決議を前提として、それを受けて事業ができる制度を早急につくるという必要があって制定させていただいたものでございます。
 今回の区分所有法につきましては、さらに、敷地の同一性要件を緩和するとか、団地一括建てかえの制度を導入するといったことを改正内容としておりますが、これらを受けた建替え円滑化法の改正もあわせて必要でございますから、それに合わせて改正するということでございまして、特段無理なことをやろうとしているということではございませんで、自然な流れということだと考えております。
原委員 今、自然な流れという御答弁だったんですが、それでもやはり、余り細かな改正をちょこちょことやっていくのもどうかと思いますし、今回は、区分所有法の改正にあわせて改正するということなんですが、その区分所有法の改正と合っていないところで、やはり隣地を買い増しして建てかえ事業を可能とするという、結構大々的な改正が含まれていると思うんです。
 そうであるならば、マンション建替え円滑化法の審議のときに全項目そろってからしっかりと総合的な審議をすべきだったのだとも思いますし、先ほども、また改正するのはなぜかという、どなたかの委員の方からの質問に対して、たしか大臣が、区分法の方の、法務省の審議がおくれたからというような御答弁をなさったと思うのですが、それならば、なぜ区分所有法の方の改正を待たずにまず先にマンションの建替えの円滑化法を行って、そしてまた今回改正するのか、なぜ待たなかったのかというところをお聞きしたいと思います。
松野政府参考人 先ほども御説明いたしましたとおり、マンションの建てかえの必要性というのが迫っております。したがいまして、できるだけ早くこの建てかえ事業を、今の区分所有法の建てかえ決議を受けた事業をやろうとしているマンションもあるわけですから、これはできるだけ早く成立させる必要があるということで、前国会でお願いをして、成立させていただいたわけです。その後、所要の区分所有法の改正というのが一つの課題になって、今回この改正法案として出てきたわけですが、当然それに伴って建替え円滑化法の方も所要の改正が必要になります。したがって、それに合わせて改正を行うということでございます。
原委員 そこの部分の、区分所有法の改正に伴って円滑化法の改正も必要なところがあるからするということはわかるんですが、それとは別に、私は、そんな、ごっちゃまぜにした中でそうした大々的な改正が含まれていくことはどうかなというふうに思っております。
 今回、マンションの建替え円滑化法の十一条、それは「事業計画の縦覧及び意見書の処理」の内容なんですが、そこの十一条によれば、「マンション又はその敷地について権利を有する者」しか意見を言うことができないことになっています。しかし、建てかえ事業に組み込まれる隣接施行敷地の住民だけではなくて、隣接地住民や周辺住民が意見を言い、その意見を取り入れるための制度も私は必要だと思っています。これは、国土交通省ではなく、総務省さんにお聞きをしたいんですが、地方自治の観点から市町村がそのような条例をつくっていくことは可能かどうかということをまずお答えいただきたいと思います。
芳山政府参考人 法律と条例とのお尋ねでございますけれども、一般論としましては、地方自治法十四条の規定に基づきまして、地方団体は、法令に違反しない限りにおきまして、地域における事務等に関し条例を制定することができるということになっております。
 ただ、マンション建替え円滑化法との関係で御指摘のような条例を市町村が制定することができますかどうかということにつきましては、この法律の所管省であります国土交通省で判断されるべきものというぐあいに考えております。
原委員 では、例えばで聞きたいんですが、法律に書かれていない、法律の外の部分について、自治体が自治事務として条例を定めていくということは可能でしょうか、自治事務の観点から。
芳山政府参考人 ただいま申し上げましたように、法律と条例の関係でございまして、これは憲法ないしは自治法に書いてございますけれども、これまでの判決でも、それぞれの趣旨、目的、内容、効果等を比較しながら相互に矛盾抵触することがないかどうかという観点から、所管省であります国土交通省で判断されるというぐあいに考えております。
原委員 それでは、国土交通省さんにお聞きをしますが、先ほどからもちょっと触れている部分なんですが、今回の法改正で、私が最も深刻だなと考えるところは、建てかえ決議の際に隣の敷地を買い増してマンション建てかえが可能になる点、私は、この辺が非常に深刻というか、やはり大きな改正になってくる点だと考えています。
 これによって空き地が確保できれば、総合設計制度が利用できてしまうと思います。そうすると、一たんは用途地域指定で高さ制限が厳しくなった土地で、本来、より低くしなければならなかったマンションの容積率が緩和をされ、より高い建物が建つことが予想をされると思います。せっかく用途地域を前提とした町並みで住環境を選択したつもりが、住民にとっては裏切られたような気持ちになることも起こると思います。
 こういう状況が起こったときに、住民たちにどのような防衛手段があるかということを教えていただきたいと思います。
松野政府参考人 隣の敷地を買い増してマンション建設がさらに、建てかえがやりやすくなるということはあり得るかと思います。その際に、当然総合設計制度を使うということもあり得ようかと思います。それが現在のその場所の用途地域あるいはその他の都市計画の規制に適合しているものであれば、通常それに沿って総合設計の許可あるいは建築確認がされるものでございまして、それが自分が期待していたものと違う、裏切られたというふうにおっしゃいましたが、もしそうであるならば、事前にそのような町並みをつくるというルールをつくっておくべきでございまして、その場所の住民の人たちの提案制度も前国会で創設させていただきましたが、そういったものを活用しながら、事前のルールを充実させていただくということが重要なんではないかと思います。
原委員 ありがとうございます。
 引き続き、先ほどもちょっと議論にあったと思いますが、都市計画法とのことで少しお聞きをしたいと思います。
 まず御説明をいただきたい部分があるんですが、都市計画法に基づく高度地区や高度利用地区というのはどのような制度かということを、まず簡単に御説明いただきたいと思います。
澤井政府参考人 高度地区及び高度利用地区についてでありますが、まず高度地区につきましては、大別して二つであります。
 一つは、建物の高さの最高限度を制限するものでありまして、これは、良好な居住環境を維持する場合等に使われます。一方で、市街地の中心商業地などで高度利用を図ることが適当だという場合に、建物の高さの最低限度を定めるという高度地区もございます。つまり、その最低限度以下の高さの建物は建てられないということであります。
 もう一つの高度利用地区につきましては幾つかの要件がございまして、敷地内に空地を通常以上に確保するために建物のセットバックをしたりあるいは通常より厳しい建ぺい率を定める、また、小規模な建物、ペンシルビルを代表といたしまして、そういった建物の建築を抑制するために建築面積の最低限度を定める、それ以下の面積の敷地では建物を建てられない、こういうことでありますが、これら、通常よりも厳しい制限を一方でかけまして、それとの見合いで、高度利用を積極的に実現するために容積率を緩和する、こういったことをセットで決めるのが高度利用地区であります。
原委員 都市計画決定に基づく高度地区の設定というのは、住民の提案によって成立させることが実は難しいということが指摘をされてきていました。町並みを守ろうとするこうした住民の方々、先ほど、住民が力をつけてそうしたルールをつくるということだったんですが、でも実際はそうした住民がルールをつくるのは難しいという苦労の実態を国土交通省として把握はしてきておりましたでしょうか。
澤井政府参考人 先ほど来仰せの高度地区そのものについてどのような事案があるかということは具体的に必ずしも承知しておりませんが、今日、さきの通常国会でもしばしば議論になりましたように、地区計画の策定件数が急激に伸びている、あるいは町づくりNPOの設立数が非常にふえているということに代表されますように、住民の皆様方を含めて、身の回りの町をどうしようかということに対する関心は大変高まっているというベースがあると思っております。そうした中で、具体的に、時間をかけて都市計画の決定に向けて取り組んでいるという事例も数多くあると承知しております。
 我々といたしましては、こうした住民参加のもとで定められた都市計画について全国から情報を収集して、いい例をまた全国に御紹介するということも大変重要な役割と考えておりまして、例えばまちづくり月間というような機会をとらえて、そうした取り組み事例の紹介、あるいは検証などを行っております。
 例えば、よく例として申し上げさせていただいておりますけれども、所沢市の閑静な住宅地であります松が丘地区というところがありまして、ここでは、良好な住環境を保全するために定められていた建築協定というのがまずベースにございます。ただこれは、有効期間に制限がございます。十年、最大二十年という制限がございまして、こうした住環境を永続的に守るために、これを都市計画の一つである地区計画に切りかえようということを、住民の皆様方の発意で、長く見ると足かけ二十年、その地区計画に切りかえる直前でも五年ぐらいをかけて、精力的に住民の皆様方が一生懸命合意形成を図られた。
 これはそういう制限がかかりますから、そういう制限は嫌だという土地所有者の方も必ずいます。一方で、そういうことをやりたいという方もいます。そうしたいろいろな意見を調整してそういうルールを決めて、一たんそういうルールが決まれば、そのルールに従って高さも一定の制限のものしか建たないということになるわけでありまして、そういう取り組みがあるということを申し上げたいと思います。
原委員 二点確認をさせていただきたいんですが、さきの通常国会で改正された都市計画法によって、住民やNPOの提案でも地区計画や高度利用地区の設定が可能になったということで間違いがないかという点と、高度地区や高度利用地区に指定すれば、総合設計制度による影響はないという解釈でよろしいかという、この二点を再度御確認させてください。
澤井政府参考人 高度利用地区あるいは高度地区につきましては、内容は先ほど申し上げたとおりでありますが、さきの通常国会で改正されました都市計画法で創設された提案制度による提案が可能であります。提案がされた場合には、都市計画決定権者は、提案についての適否の判断の内容を明らかにしながら、提案を踏まえた都市計画の決定をするかどうかを判断するということになります。
 さらに加えますと、提案に当たっては、提案をもとに都市計画が定められますと土地利用規制がかかります。都市計画制限と言っていますが、それによって提案者以外の他人の土地の財産権を制約する可能性もございますので、提案の要件として、責任ある提案をしていただくという趣旨から、土地所有者などの三分の二以上の同意を得ることを要件としているということで法律を整備していただいたわけであります。
 なお、こうした三分の二以上の同意を得る過程を通じまして、提案に係る都市計画についても十分な合意形成が逆に図られていくということも期待しているわけでございます。
松野政府参考人 もう一つのお尋ねでございますが、高度利用地区あるいは高度地区に指定すれば総合設計による影響はないという解釈で間違いはないかということでございますが、総合設計制度というのは、敷地の中に一定以上の公開空地を持つという、いわば優良な建築計画であるからこそ容積率の緩和をする制度でございます。したがいまして、建築基準法では、高度地区あるいは高度利用地区双方とも、建築物の高さとか容積率について、都市計画において定められた内容に適合するものでなければならないという表現になっております。
 定められた内容の中に、総合設計を適用した建築物については例外的に扱うということを都市計画の内容として記述しているケースがあります。その場合は、一般的な高さ制限や容積率の制限を突破することができますが、その例外の規定を設けている場合を除きまして、高度地区あるいは高度利用地区の制限内容に従うということになります。
原委員 こうした高度地区や高度利用地区による町並み防衛策といいますか、こうした取り組みというのは、町並みを守ろうとか、マンション紛争を未然に防ぐ一つの手段だとは思いますが、こうした仕組みをすべて理解している住民の方、もしくは地方議員の方というのはすごく少ないと思います。
 都市計画法の第三条によると、「国及び地方公共団体は、都市の住民に対し、都市計画に関する知識の普及及び情報の提供に努めなければならない。」としっかりと書いてあります。
 これまで都市計画月間でしたか、そういうものもなさっているということなんですが、計画法の第三条にしっかりとその周知徹底に努めなければならないと書かれてあることに対して、そうした周知徹底というものを今後どのようになさっていくのか、お願いします。
澤井政府参考人 例えば、先ほど申し上げました、何年もかけて地区計画をおつくりになった住民の皆様というのは、ベースとしてどういう都市計画が決まっているかということも十分に御承知だと思うんです。ただ、地域によって、そういう取り組みをやっているところばかりではありませんので、実態はさまざまだと思うんです。
 最近の一番代表的な例でいいますと、情報化の成果を活用しまして、市役所のホームページに都市計画のかなり詳細な情報を載っけまして、例えば、自分の住所をクリックすると、その近くの都市計画の内容がきちんとわかるようになっている。用途地域は何で、容積率はどのぐらいで、建ぺい率はどのぐらいで、例えばそこには地区計画がかかっていますと。疑問があれば、そのホームページにアクセスをして、質問をして答えるという取り組みを始めた公共団体も幾つか出てきております。
 そういったことを代表といたしまして、御指摘のような、住民の皆様方に都市計画を、これは身の回りの生活環境を支える極めて重要な制度インフラですから、もっともっと日常的なものとして、いわばふだん着として都市計画というものを知っていただき、また活用いただくというふうに、我々もしていきたいと思っています。いろいろな工夫をこれからもしていきたいと思います。
原委員 最後に、二問、大臣に、質問通告をしていなかったのですが、午前中の参考人質疑の中で思ったことで御見解をお伺いしたいと思うんです。
 まず一つ目は、午前中の質疑の中で、この法案は建てかえを促進する制度になっている、しかし長生きマンションをデザインしましょうということをおっしゃっていた参考人の方もいらっしゃって、新築や既存のマンションの耐久性を向上させる技術を集積して業界に普及させるような政策を、本当は建てかえの前にそうした政策を国としてとっていくべきだと思っています。資源を大切にして、耐久性のある長生きマンションを大切にする企業やマンション住民が評価されるべき時代になってくると思いますので、このことに対する大臣の御見解をひとつお伺いしたい。
 あともう一つが、これも参考人質疑の中であった話なんですが、区分所有法、今回の改正になっているものに関して、非常に条文のあり方がわかりにくい、住民の方が直接見ることが多いので、そのときに解説が必要でないような表現にしていただきたいというようなことをおっしゃっておりました。
 今も政府参考人の方から答弁がありましたが、区分所有法とか都市計画法とか、建築基準法も含めて、住まいづくり、まちづくりといったすべての人にかかわる法律というものは、私も自分なりに一生懸命勉強しているつもりなんですが、すべてを理解するのは非常に難しいし、読みにくい部分もたくさんあります。町並みを守るためには、本当に住民一人一人がこうした制度をしっかりと理解して、力をつけて、自分たちでルールをつくっていくことが大切になってくるんだなということも思います。
 本当に多くの人にまちづくりとか住まいといったものに興味、関心を持ってもらうために、国としてもこうした制度をわかりやすく伝えていくという工夫が必要だと思うのですが、その辺は大臣はどうお考えになられるか、この二点について大臣の見解をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
扇国務大臣 午前中の参考人でどういう御意見があったのか、私は参議院の本会議に出ておりましたので聞いておりませんけれども、原議員が今おっしゃるように、周知徹底し、わかりやすく、そしてみんなが納得できる、これが理想的な形でございますから、そうあるべきだと思いますけれども、往々にして基準変更とか法改正とかがたびたびございますから、一々素人にはどこがどう変わったのかというのがなかなかわかりにくい。原議員がわかりにくいとおっしゃるように、私自身もわかりにくいところがございます、専門家じゃございませんから。
 専門家の皆さん方も、法改正のたびに勉強して、多くの皆さんの相談に乗っていらっしゃいますので、そういうことも含めて、すばらしい都市とすばらしい居住環境を維持するという原則に立って、ぜひ専門家を御利用になったり、あるいは、皆さん方にマンションの管理適正化法を通していただきましたけれども、これによって管理業者というのを登録制度にしております。数字でいえば、平成十四年十月、ついこの間、先月ですけれども、二千九十七社できております。また、この法律によって、マンションの管理士制度というものを通していただきましたけれども、マンションの管理士というものも五千百十三人、これも先月の末の数字でございます。
 ですから、このように、十三年に制定した法律でも既にこれだけの人数の人たちが準備できているということでございますので、わかりにくいところはいつでも聞いていただいて、また、住宅相談の一一〇番的なものがございます。これも宣伝が行き届いていないのなら国土交通省の宣伝不足でもございますけれども、そういうことも含めて、私は、わからないところはわからないと言っていただいたり、また、マンションには管理組合ができておりますし、管理組合の規定に、マンションに入るときに入会することと明記してございます。個々のマンションの大きさによって管理組合も大きいの、小さいのがございますが、それぞれのところで管理組合の皆さん方の意見を統一して、マンション管理士に管理組合で問い合わすということも法律のときに申し上げましたので、ぜひそういうものを利用していただいて、より多くの皆さんに理解していただき、より多くのトラブルを避けて、みんなが快適な住まいをするように努めることは当然のことだと思っております。
原委員 大臣のよくおっしゃるグランドデザインというものが、住民参加でみんながまちづくりというものを身近に感じていけるために、いろいろな情報をわかりやすく伝えていく工夫を国土交通省としてもぜひ今後も努力をしていただきたいということを要望させていただいて、質問を終わります。ありがとうございました。
久保委員長 以上で本日の質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
久保委員長 この際、連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。
 ただいま審査中の本案に対し、法務委員会から連合審査会開会の申し入れがありましたが、これを受諾するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
久保委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 また、連合審査会において、政府参考人及び参考人から説明または意見を聴取する必要が生じました場合には、その取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
久保委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 なお、連合審査会は、来る十五日金曜日開会の予定であります。
 次回は、来る十五日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時十四分散会


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