衆議院

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第16号 平成15年4月16日(水曜日)

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平成十五年四月十六日(水曜日)
    午前九時十分開議
 出席委員
   委員長 河合 正智君
   理事 栗原 博久君 理事 菅  義偉君
  理事 田野瀬良太郎君 理事 橘 康太郎君
   理事 今田 保典君 理事 玉置 一弥君
   理事 赤羽 一嘉君 理事 一川 保夫君
      岩崎 忠夫君    倉田 雅年君
      実川 幸夫君    砂田 圭佑君
      高木  毅君    谷田 武彦君
      中本 太衛君    西田  司君
      西野あきら君    林  幹雄君
      原田 義昭君    菱田 嘉明君
      福井  照君    堀之内久男君
      松野 博一君    松宮  勲君
      松本 和那君    森岡 正宏君
      森田  一君    山本 公一君
      阿久津幸彦君    井上 和雄君
      岩國 哲人君    大谷 信盛君
      川内 博史君    佐藤謙一郎君
      津川 祥吾君    伴野  豊君
      高木 陽介君    土田 龍司君
      大森  猛君    瀬古由起子君
      原  陽子君    日森 文尋君
      金子善次郎君
    …………………………………
   国土交通大臣       扇  千景君
   国土交通副大臣      中馬 弘毅君
   国土交通大臣政務官    高木 陽介君
   政府参考人
   (金融庁監督局長)    五味 廣文君
   政府参考人
   (財務省大臣官房審議官) 村瀬 吉彦君
   政府参考人
   (林野庁次長)      松本 有幸君
   政府参考人
   (国土交通省住宅局長)  松野  仁君
   政府参考人
   (住宅金融公庫理事)   松田 広光君
   政府参考人
   (住宅金融公庫理事)   吉井 一弥君
   政府参考人
   (住宅金融公庫理事)   井上  順君
   参考人
   (全国銀行協会会長)   寺西 正司君
   参考人
   (東京大学空間情報科学研
   究センター教授)     八田 達夫君
   参考人
   (東洋大学経済学部教授) 松原  聡君
   参考人
   (和歌山大学経済学部教授
   )            大泉 英次君
   国土交通委員会専門員   福田 秀文君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十六日
 辞任         補欠選任
  菱田 嘉明君     森岡 正宏君
  永井 英慈君     井上 和雄君
  二階 俊博君     金子善次郎君
同日
 辞任         補欠選任
  森岡 正宏君     菱田 嘉明君
  井上 和雄君     永井 英慈君
  金子善次郎君     二階 俊博君
    ―――――――――――――
四月十六日
 独立行政法人都市再生機構法案(内閣提出第四五号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 住宅金融公庫法及び住宅融資保険法の一部を改正する法律案(内閣提出第四四号)


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     ――――◇―――――
河合委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、住宅金融公庫法及び住宅融資保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案審査のため、参考人として、全国銀行協会会長寺西正司君、東京大学空間情報科学研究センター教授八田達夫君、東洋大学経済学部教授松原聡君及び和歌山大学経済学部教授大泉英次君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 議事の順序でございますが、寺西参考人、八田参考人、松原参考人、大泉参考人の順で、それぞれ十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。
 なお、参考人及び質疑者におかれましては、御発言の際は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず寺西参考人にお願いいたします。
寺西参考人 ただいま御紹介をいただきましたUFJ銀行の寺西でございます。
 衆議院の国土交通委員会に参考人としてお招きをいただきまして、意見を申し述べる機会をちょうだいしましたことをまずお礼を申し上げたい、このように思います。
 本日は、住宅金融公庫法及び住宅融資保険法の一部を改正する法律案の御審議に際しまして、民間金融機関の経営に携わる者として、考えるところを申し述べさせていただきます。
 今般の法改正により、住宅金融公庫は、民間金融機関が実行する住宅ローンの証券化支援事業を開始することになるわけでございます。私ども民間金融機関といたしましては、これまでもお客様の利便性に資する住宅ローンを提供する努力を重ねてまいりましたが、本制度が広く活用されることにより、民間金融機関を通じて、超長期固定金利型の住宅ローンが安定的かつ継続的に提供できるインフラ整備がなされるものと前向きに受けとめているところでございます。
 それでは、まず、私どもから見ました我が国の住宅ローン市場の現状及び特徴を簡単に御説明させていただきます。
 我が国の住宅ローン市場の特徴といたしましては、まず、住宅金融公庫の貸出残高シェアが非常に高いことが挙げられよう、このように思います。この水準は、ピーク時の平成六年度末には四五%程度に達し、以降減少してきておりますが、現在もなお三五%を超える高率で推移しております。これは、財政投融資によります資金調達等を背景といたしました長期、固定、低利という民間金融機関では実現し得ない融資条件等の結果と考えられます。
 このように、住宅ローン市場におきまして住宅金融公庫がメーンプレーヤーである一方で、私ども民間金融機関といたしましても、近年、住宅ローンに特に積極的に取り組んでおり、段階的に縮小される住宅金融公庫の融資業務を円滑に代替すべく努力を続けているところでございます。こうした取り組みは、特に住宅金融公庫廃止決定以降、一段と加速しており、行財政改革が民間の活性化を促している好事例だ、このように考えております。
 その具体例を申し上げますと、まず、従来、住宅金融公庫の独壇場でございました超長期固定金利型の住宅ローンを取り扱う民間金融機関の増加が挙げられようと思います。ちなみに、私どもUFJ銀行につきましても、昨年四月より、お客様のニーズにこたえるべく、最長三十年まで全期間固定金利の住宅ローンを商品のラインナップに加えたところでございます。
 また、金利面以外でも、休業補償保険を付保したタイプなど、民間金融機関の住宅ローン商品の多様化は進んでおりますし、各所で行っております住宅ローンセンターの設置あるいは休日相談会の開催、インターネットによりますローンシミュレーション等々の各種情報の提供、あるいは審査期間の大幅な短縮などによりまして、お客様の利便性の向上に一層の工夫を凝らしているところでございます。
 こうした取り組みの結果として、民間金融機関の住宅ローンは順調に増加し、足元では、新規の住宅ローンに占めます民間金融機関のプレゼンスは相当程度高まっております。
 ただし、超長期のスワップマーケットが未発達な現状、金利リスク管理に限界があるため、民間金融機関が超長期固定金利型の住宅ローンを大規模かつ安定的に供給することは依然難しい状況にございます。
 さて、ここで、これまでの住宅金融公庫改革の流れを簡単に振り返ってみますと、平成十二年十二月一日に閣議決定された行政改革大綱の中で、「すべての特殊法人等の事業及び組織の全般について、内外の社会経済情勢の変化を踏まえた抜本的見直しを行う。」という特殊法人等改革全体の基本方針が示されたことが端緒であります。
 その後、行政改革推進事務局によりまして、さらに具体的な検討が進められた結果、住宅金融公庫は、平成十三年六月に公表されました特殊法人等の事業見直しの中間取りまとめの中で、「民間金融機関において類似の事業が行われている場合には、廃止も含め事業の見直しを検討する。」「特殊法人等の貸付以外の手法によって民間金融機関を補完する手法がないかどうか検討する。」という条項の対象法人とされました。
 さらに、同年十一月には、小泉首相の指示のもと、日本道路公団等々と並んで、国からの財政支出が大きく、国民の関心も高い、いわゆる先行七法人として、他の特殊法人に先駆けて改革されることになりました。
 この結論を受けまして、平成十三年十二月には、特殊法人等整理合理化計画が閣議決定され、先生方御高承のとおり、住宅金融公庫は、組織については五年以内に廃止の上、独立行政法人化し、業務については、平成十四年度より融資業務を段階的に縮小、一方で、民間金融機関の住宅ローンの証券化支援事業を新たに開始することが決められたわけでございます。
 こうした改革の流れの背景には、まず、我が国の持ち家住宅ストックが量的にも質的にも充足されつつあり、公的金融機関によります住宅供給の下支えの意義が薄まってきているという事情があろうかと思います。
 また、先ほど申し上げました先行七法人のキーワードでございます国からの財政支出の大きさにつきましても、住宅金融公庫につきましては、足元十年間の実績で、一般会計からの補給金、すなわち国民負担が五兆円にも達する状況にあります。これは、住宅金融公庫が、長期、固定、低利というお客様にとって有利な融資条件を市場原理のらち外で継続維持して、住宅金融市場におきます貸し出し面でのメーンプレーヤーであり続けたことのいわば代償と考えられます。
 以上申し上げました住宅ローン市場の現状、内包する問題点及び改革の方向性を踏まえた上で、お手元にお配りしております一枚紙をもとに、私どもが考えます住宅金融市場におきます公的部門のあり方について申し述べさせていただきます。この一枚紙でございます。
 一番上に、これまで住宅金融公庫が住宅ローン市場で担ってこられた機能、役割を分解整理しております。大きくは資金そのものの提供と金利の設定に分けられ、金利につきましてはさらに、長期固定金利の実現と低利の実現に分解することができます。
 真ん中の箱が現状でございまして、今申し上げました機能のすべてを住宅金融公庫が一体的に担っておられるわけであります。先ほど申し上げましたように、さまざまな問題点にかんがみ、今後は、下段の箱のように、官と民によります有機的な役割分担が重要ではないかと考えております。
 すなわち、資金の提供自体は民間の金融機関にゆだね、住宅金融公庫は大規模災害後の特別融資等のごく例外的なケース以外は原則撤退とし、金利の設定のうち、長期固定金利の領域につきましては、証券化市場や超長期スワップマーケットが未発達な現状を踏まえまして、民間と住宅金融公庫の協調により証券化市場を育成し、実現していく必要があろう、このように考えております。
 なお、金利機能のうち、低利の実現という役割につきましては、我が国におけます持ち家住宅ストックの充実ぶりにかんがみ、今後は基本的に市場原理にゆだねるのが妥当であると考えますが、景気対策あるいは社会的弱者対応など、政策誘導が必要な分野が依然残ることも否めません。ただし、こうした領域に対しては、従来のように住宅金融公庫が直接的に低利を実現するのではなく、税制措置あるいは利子補給等の手当て、つまり民間融資と税財政措置との組み合わせによりまして、実質的な低利を実現する仕組みを構築していくことが適切であろうと存じます。
 このような官民の役割分担の再構築が実現すれば、市場メカニズムの適切な機能発揮によります金融・資本市場の活性化にもつながるとともに、結果的に行政財政構造改革への寄与も大いに期待できるのではないかと考えます。
 今般の法制改正につきましては、まさに、お手元資料下段の中央に丸印をつけておりますように、証券化市場の育成を通じて、官と民とが協調して長期固定金利のあるべき姿を実現していくという位置づけにあろうと存じます。
 これまで、私どもを含め、民間でも住宅ローンの証券化の取り組みを独自に行ってまいりましたが、個々の金融機関のみの組成では、商品の標準化は困難でございますし、投資家の広がりも限定的と言わざるを得ない状況にございます。こうした観点も含めまして、証券化市場の円滑な育成のために、牽引車としての公的部門によります関与が望まれるところであり、住宅金融公庫が当面証券化支援事業を担っていく意義はあるのではないか、このように存じております。また、民間でできるものは民間にゆだねるとの行政改革の本旨にも沿った流れの法改正であると考えます。
 私どもといたしましても、具体的な証券化ローンのスキームづくり等にこれまで積極的に参画したところであり、今後も整々と準備を進めてまいりたい、このように考えております。
 以上、法改正の御審議に際しまして、住宅金融市場の今後のあり方に関する考え方を述べさせていただきました。
 私どもといたしましては、今後とも、お客様の利便性に資する住宅ローンの提供に向け、あらゆる努力を続けてまいる所存でございます。
 意見陳述を終わるに際し、一点要望を申し上げれば、官民の役割分担によりまして、市場原理が最大限に生かされた住宅金融市場を実現し、行政改革の趣旨を貫徹するためにも、特殊法人等整理合理化計画で定められた、住宅金融公庫によります直接貸し出しの縮小が計画性を持って実行されることを強く希望いたします。そのようなステップをアクションプランとして御明示いただければ、民間金融機関の取り組みはさらに活発化すると存じます。
 先生方におかれましては、今後とも御指導、御鞭撻を賜りたく、よろしくお願いいたします。
 以上で私の意見陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
河合委員長 ありがとうございました。
 次に、八田参考人にお願いいたします。
八田参考人 本日は、住宅金融公庫法及び住宅融資保険法の一部を改正する法律案に関して意見を述べさせていただく機会をお与えくださり、ありがとうございました。
 お手元に配付してあります資料をもとに、私の意見を述べさせていただきたいと思います。
 一昨年の十月末から昨年の四月までの間、政府で、市場機能を積極的に活用した住宅金融のあり方に関する懇談会ということが開かれまして、この資料の一番最後にその委員のお名前が書いてありますが、民間の金融機関及び消費者団体、さらには大学の先生等の委員の方がお集まりになって、今回の法律の基本的なスキームを考えたグループがあります。私はその懇談会の座長をさせていただきましたので、そのときの検討の結果を中心にお話し申し上げたいと思います。
 基本的には、今回の改正の理由というのは、金融公庫の従来のあり方が、今寺西委員がおっしゃったように、随分役割が変わってきたということがあって、従来型の直接融資を減らしていこうということが基本的にございます。そして、それを改組して新しくそれをよみがえらせる方法としては、実は証券化支援機関というものが新しい状況には必要なんだということです。
 では、住宅ローンの証券化支援機関というのはそもそも何か、そのことについてお話ししたいと思います。
 この資料の第一ページでございますが、非常に多くの方が、長期の固定金利、しかも低利の金利の住宅ローンを望んでいらっしゃる。これはさまざまなアンケート調査なんかで明らかであります。そして、民間の金融機関が一部あるとはいえ、ここの資料で示しましたように十年を超える長期固定の金利のローンというのが一・七%にしかすぎないというわけで、非常に民間としてはこういうものを出しにくいという状況が基本的にございます。
 それはなぜかというと、超長期の固定融資を安定的に行うにはリスクをプールする必要がある。したがって、規模の経済があるわけで、非常に大量の住宅ローンを集めてプールすることが役に立つわけで、個々の銀行ではなかなかそれがやりにくいという事情がございます。
 それでは、そもそも住宅ローンにまつわるリスクというのはどういうものかというのが二ページに書いてあります。
 基本的には三つありまして、第一は信用リスクです。これは、住宅ローンを借りた人が返済できなくなってしまうリスクです。これは個々の住宅ローンに対しては大変大きなリスクですが、これは、数が多く集まれば集まるほどリスクが相殺されて安定的なものになります。
 それから、二番目の金利変動リスク。これは超長期の融資ですから、その資金調達を短期の融資ですると、その場その場で変わってくる利子に対して固定された金利でしか返済が行われてこない、利子が戻ってこないということで、そこで逆ざやが発生するということがございます。このリスクがある。
 それから三番目に、ある意味では住宅金融に特徴的なリスクでありますが、期限前償還リスクというのがある。もともと高い金利で住宅ローンを借りたけれども、利子が安くなったから安い金利のホームローン、住宅ローンに借りかえましょう、それで前の長期の融資を返してしまう。それが、借りた方にとっては都合がいいわけですけれども、貸した方にとってはたまらない。ちょうど金利が低くてどこにも貸しようがないときにお金が戻ってくる。この問題がございます。これは非常に大きな問題で、結局、住宅金融公庫は、従来の直接融資に対してこの期限前償還リスクが起きたときのリスクの負担を国の直接的な補給に求めた、それで大変な赤字になってきたわけです。
 したがって、こういう三つのリスクがある。これに対して、証券化するということはどういうふうにそのリスクを緩和できるのかということでございますが、そもそも住宅ローンの証券化というのはどういうことかと申しますと、四ページに記載しておりますが、左側が住宅ローンの債務者、これは我々、住宅を借りるときの借り手でございます。そしてその次に、銀行や、それから下にはモーゲージバンカーというのがありますが、一般的な銀行だけでなく、住宅ローンに特化するような金融会社ができる。そういうところが住宅ローンを消費者に貸す。
 従来だと銀行がそのまま資金を調達したわけですが、今度は銀行が、真ん中の証券化市場、これが証券化支援機関の役割ですが、今度の金融公庫がやるところ、アメリカでは例えばファニーメイがやっているようなことですが、ここに個々の住宅ローンを買ってもらう。そして、基本的には、代金を銀行が証券化機関から受け取る。これは、証券化支援機関はたくさんの住宅ローンを買い取って、それをまとめて証券化して、非常に均一的な金融商品に仕立てて、そしてそれを資本市場に売り出すというわけであります。
 これをやりますと、資本市場としては、個々の住宅ローンに対する不安を、別に不確実性に対して直面する必要がありませんで、非常に標準化された証券に対して投資するということになる。したがって、リスクが大幅にプールされているということになります。これは、ある意味では、外国に対して売っても、売ることができるような、そういう資本市場になります。
 こういうことをやろうというのが今回のもくろみでして、特に、この真ん中の証券化支援機関というものに従来の金融公庫を生き返らせていこう、そういうことが目的であります。
 これの利便というのはそれぞれから見てどういうことかというのが五ページにありますが、まず、銀行から見た場合には、リスクを今まで負担していたのが、ある意味で、この証券化機関に売ることができますから、最終的なリスクは投資家が負担することになりますし、その投資家の負担するリスクも、プールされることでかなり緩和される。それが次の「投資家からみた効用」ということですが、基本的には、リスクがプールされて、リスク管理が非常に容易になるということです。統計的な手法なんかが使いやすくなるわけです。
 それから、投資した方にとっては、個々の住宅ローンを買うのと違いますから、これは換金性がある。いつでも売り買いできる。流動性がございます。
 最後に、例えば年金ファンドのような長期の投資をしたいところにとっては、こういう証券は大変ぐあいがいいものですし、それから、何しろ流動性がございますから、短期の投資家にとっても都合がいい。だから、これは非常に多様な投資家に対して役に立つ証券である。
 アメリカでは、こういう機能をファニーメイというところで、まあ、あと二、三ございますが、ファニーメイが中心になってやっておりますが、そこのモーゲージバックトセキュリティー、こういう証券というのは、国債を上回る金額で、大きな市場を形成しております。
 さて、この六ページの左側に書いておりますのは、今申し上げましたファニーメイがやっているようなことで、リスクをどう負担しているかということなんですが、先ほど申しました信用リスク、これに関しては、基本的には、利子率を多少高くして、そしてこの支援機関が負担するということです。したがって、もう投資家はそれ以上の負担はしなくて済む。
 しかし、例えば大災害が起きるといったときには、信用リスクがもともとの想定したものよりも超えることがある。その場合には、政府によって、基金を用意しておいて、そこから非常に異常な事態のときには信用リスクを負担する、そういう役割がございます。
 したがって、アメリカでもここが半官半民でできているということ、それから日本でもこれを官の関与のもとにやろうとしていることには、一つは、立ち上げるときに非常に大きな規模の経済があるから一つにまとめた方がいいということがありますし、もう一つは、通常では予測できないような大きな問題が起きたときに、信用リスクに関して、投資家には負担をかけないで、政府が保証してやろうということがございます。
 しかし、期限前償還リスクなんかは、これは投資家が全部負担する。したがって、早く返済されると、投資家の証券の最終的な期間も短くなるということであります。そして、それに対するリスク管理は投資家自身がやるということになります。
 七ページにございますが、これを公的機関が、どこかがやればいいわけで、何も住宅金融公庫がやる必要はないんですが、たまたま住宅金融公庫というのは今までのさまざまな融資に関するデータがございまして、大体どういう返済のリスクがあるというようなことに関する細々としたデータがございます。したがって、そのエキスパーティーズが使えるだろうということがあります。
 それから二番目に、今まで、住宅金融公庫から借りますと、中間検査とかそれから完了検査とかいうことがありまして、住宅の質が担保されたわけですが、そういう経験が生かされて、これからも債権担保の観点から住宅の質や耐久性をきちんと維持することができるということがあると思います。
 以上、述べましたように、寺西さんがおっしゃったような、従来型の金融公庫のあり方というのは全く終わりにして、そのかわりに民間が融資をする、ホームローンをする、出す、住宅ローンを出す世の中で、どうしても必要な支援機関というものに金融公庫を変えていこうということは大変意義のあることだと思います。
 以上でございます。(拍手)
河合委員長 ありがとうございました。
 次に、松原参考人にお願いいたします。
松原参考人 東洋大学の松原でございます。
 申し上げたいことが大きく分けて二つございまして、一つは、この法律案にかかわって、住宅ローンに関する基本的な私の考え方をお話しさせていただきたいと思います。
 それからもう一点は、この法律案に則して、幾つかの疑問点、お願いしたい項目がございますので、それをお話しするという形でお話しさせていただきます。
 お手元に、私のホッチキスでとめた二枚紙、A4縦の資料がございますので、それに沿ってお話しさせていただきます。
 まず、住宅ローンに関する基本的な私の考え方でありますが、住宅ローンは、基本的に民間の金融機関が担うべき業務である、まずこの原則であります。
 しかし、従来、民間の金融機関では提供できなかった長期固定の住宅ローンを、住宅金融公庫が提供してきたことにより、国民の住宅取得が促進された、この歴史的な経緯はきちんと評価しなければいけないと考えております。
 その一方で、その住宅金融公庫のローンがマーケットにおいてシェアが大変大きかった、オーバープレゼンスだったということが、結果的に民間の住宅ローンマーケットが十分に育たなかったというのも事実である。プラス面とマイナス面があっただろう、こういうことであります。
 そして、現状を見ますと、これは既にお二人の参考人から御指摘があったように、住宅の量的不足は基本的には解消した。一世帯当たりの住宅保有率がもう一を超えておりますし、質の面においても、ヨーロッパ並みの大きさは確保できているという状況、そして、国民の不動産取得率七割という状況をかんがみますと、政府が国民の住宅取得を促進しなければいけない、そこにかかわっていかなければいけない、そういう政策目的自体が見直されるべき時期に今来ているだろう、こういうことであります。
 ここで、私がお二人の今までお話しになった参考人ともしかしたらスタンスが違いますのは、ただ単に住宅金融公庫を通した直接融資を見直せということではなくて、長期固定、超長期、固定、低利のローンの提供のために政府がかかわる、そのこと自体もやはり本当に必要なのかどうかを検討すべきだという立場でございます。
 それから二番目でございますが、政府の証券化支援業務、本法律案で規定されているそのような業務がなければ、民間は本当に長期固定金利の住宅ローンを提供できないのか、ここをもう一度しっかりと検討すべき必要があると思っておりまして、寺西参考人からは、既にUFJ銀行では三十年という商品を出しているということであります。
 超長期の金利スワップが本当に今できているかどうかは問題ではありますけれども、金利スワップなどの金融技術の向上も当然勘案しなければならない。また、住宅ローン証券化市場自体がもちろんまだ日本では未成熟でありますが、しかし、民間金融機関は最近の経済情勢の中で長期固定金利の住宅ローンの比重を、これは変動金利に対する比重を高めている。ということは、事実上、そのような証券化市場がなくても資金調達できているのではないかという疑問があるわけであります。
 三番目でございます。長期固定の住宅ローンを提供する場合に、これは今までは住宅金融公庫がやってきた、今度は証券化支援業務を通してやっていこう、こういうことでありますが、そういう超長期の商品を提供するときに、本当に、住宅金融公庫がいわば財投債で資金を集めて提供した方が経済的に見て合理的なのか、それとも、新しいこういうマーケットをつくって、政府がかかわってやっていった方が合理的なのか、表面的にはどっちが金利がいいんだ、こういう話になってくるわけだと思いますが、そのあたりの検証も不足しているのではないか。本当に国民に対して超長期の固定のローンの提供が必要だとしたら、もしかしたら住宅金融公庫をなくさない方がいいのかもしれない。そのあたりの検証が本当にできているのかという疑問がございます。
 それから、四番目でありますが、国民全体に対する住宅取得支援は、先ほど申し上げましたように、基本的には必要性を失った、政府がそこにかかわる必要性は失ったと私は考えておりまして、民間でできることは民間でという構造改革の本旨からすれば、住宅金融公庫の改革は、形式的に公庫を廃止して、長期固定のローンを維持すべく証券化支援業務を独立行政法人で継続するということではなくて、そういった業務自体から政府の関与を減らす、そのことが、民間でできることは民間でということになるのではないかと私は考えているわけであります。
 その上で、政府がなすべき住宅取得支援とは何かというと、やはり、民間の金融機関の融通が困難な、例えば低所得者層などに対象を限定すべきであると私は考えておりまして、さらに、その際も、金融公庫のような、あるいは今後できる独立行政法人のようなものを通した直接融資が必要なのか、それとも、税制等によって、ローン減税などによって対応すべきかは慎重に検討すべきだ、こういう立場に立っております。
 以上のような視点に立った上で、今回出てまいりました法律案についての、具体的な、私が感じた問題点についてお話しさせていただきたいと思います。
 まず、第一番目であります。
 今回のスキームができ上がりますと、銀行などの民間の金融機関は、住宅ローンについて、住宅金融公庫の証券化支援業務によるローンと、それから銀行独自のローンの二種類を当面提供することになる。もちろん、商品自体は物すごくいっぱいありますけれども、大きく分けるとこの二つになる。
 そうなると、住宅ローンを受ける側に対して、1の方の公庫の支援化業務によるローンを提供するのか、銀行が独自に持っている商品を提供するのかという判断を、銀行の窓口にその判断がゆだねられるのか。特に、1の方の資金枠、これは公庫の証券がどれだけ売れるか、今次は二千億円でありますけれども、そちらの枠が限られているとすると、1の方をどうやって選別するのか。1が外れたものに対して、2を提供するのか。このあたりのスキームをしっかり検討していただきたい。
 私が懸念するのは、相当条件が違う二つの金融商品は、やはりローンを受ける側にとってはどちらになるかは大変大きな選択になりますから、そこが不利益がないような形で本当に実施されるかどうかの担保が必要だということであります。
 さらに言えば、住宅金融公庫の直接融資が廃止されるまでは、そこに公庫の直接融資がかかわるわけでありますから、そうなりますと、住宅ローンのマーケットに三つの異なる商品が出てくる。支援化業務のローンと、それから銀行の独自ローン、それから金融公庫の直接融資、こういう三つのローンの商品が同じマーケットの上に上手に共存して乗れるのか。そのことに、国民の間に何らかの利益、不利益が生じないのか。
 私の直観でありますけれども、恐らく、公庫の直接融資は二%台前半ぐらいだろう。そして、証券化支援業務ですとそれよりは恐らくプラスになる、もしかしたら三%近くになるだろう。そして、銀行の直接のローンが四%前後だとすると、マーケットに二%、三%、四%という三つの住宅ローンの商品が出てくる。これが上手にうまく機能できるのかというところは、やはりこの法律のスキームの中でしっかり担保していただきたい、こういうことであります。
 それから、三番目でありますが、我が国では住宅ローンの証券化のマーケット、市場はほとんど育ってこなかった。このため、市場がある程度機能するまでの間、政府が証券化支援策を行うことは一概には否定できない。そういうスキームで今回の法律案が出てきたわけであります。しかし、この支援制度が長期に存続するようなものであれば、未来永劫、日本では本来の住宅ローンの証券化マーケットは形成されないことになる。
 そうすると、銀行などの金融機関は、住宅ローンに関しては、みずからの責任で資金を集め、融資して、そして回収するという本来の金融業務から離れて、証券化支援ローンのサービサーフィーを稼ぐだけの機能を果たすことになりかねない。これは銀行の本来の金融機能を十分に発揮させることにはならないのではないか。その意味で、私は、この証券化支援スキームの時限を明確にすべきだ、このように考えているわけであります。
 先ほど申し上げましたように、例えばこのスキームで提供できる長期固定金利が三%ぐらい、銀行が独自にやるのが四%だとしますと、この三%が将来的に規模が物すごく大きく、大量に提供されるということになると、銀行は住宅ローンにみずから資金を集めて提供するという道が閉ざされるのではないか、こういう危惧を抱いているので、こういう政府の支援スキームの時限を本法律案で明確に規定すべきだと思っております。
 それから、四番目でありますが、現在の住宅金融公庫の直接融資では、年収による金利格差が設けられております。要するに、年収一千二百万とか、給与所得者ですと一千四百万ぐらいですか、そこで条件が変わる。要するに、政府が住宅を支援する以上は、無条件に富裕層に対して支援するわけではないという理念がある、こう見ているわけでありますが、それが、今回の証券化支援業務に関しましては、基本的には年収による制限が外されているわけでありまして、本当にそれでよろしいのかというところをやはり本法律案においてしっかりと議論すべきだと思っております。
 そして、最後でございますが、日本政府の国民の住宅取得支援をどう行うのかという議論が必要だということは最初に申し上げました。しかし、現実には、この新しい制度とともに、既に都市基盤整備公団がございますし、都道府県には住宅供給公社がございます。それから、税制上の住宅ローン減税等がございますので、政府が国民の住宅取得を支援するということであれば、やはり、その全体、自治体がやるもの、賃貸になりましたけれども、都市基盤整備公団がやるもの、それからローン税制、こういう地方を含めた政府の政策全体の整合性の中で本法律案は議論すべきだ、このように思っているわけでございます。
 以上です。(拍手)
河合委員長 ありがとうございました。
 次に、大泉参考人にお願いいたします。
大泉参考人 大泉でございます。
 本法案の審議に際しまして、私の意見を申し述べる機会を得ましたこと、深く感謝いたします。
 最初に、本法律案に対する私の意見を申し述べる上で、私の基本的な考え方を申し上げたいと思います。
 住宅金融公庫は、第一に、中そして低所得階層の住宅取得者に対しまして負担可能な資金調達手段を提供するという役割、そして第二に、住宅ストックの質の向上を促す、そういう公共政策上の役割を担っております。
 そこで、この役割を進めていく、そのために公庫が従来行ってまいりました融資業務と今回の法律案におけます証券化支援業務と比較した場合に、公共政策上の目的を達成する上でそれらがどう有効であるのか、こういう観点に立った検討が大切であるというふうに考えております。
 このような観点から、三つの問題について私の考え方を述べたいと思います。
 第一は、証券化支援業務におけますリスク管理の問題でございます。
 本法律案における証券化支援スキームを拝見いたしますと、超長期で固定金利の住宅ローンが持っている信用リスク、これを専ら公庫が負担する仕組みになっております。
 そもそも、証券化は、住宅ローンが持っているリスクを資本市場に転嫁して分散する、そういう金融手法であると思います。分散すべきリスクを専ら公庫が負担するということは、これはこれで、公庫にとっては大きな問題を生み出すと思われます。すなわち、今日のデフレ不況であるとか、あるいは金融市場の顕著な不安定という状況の中では、公庫が負担せねばならない信用リスクというものは相当に大きなものになるというふうに予想されます。
 本法律案では、証券化支援業務を経理する特別勘定と、それを賄う基金が設置される。今後のマクロ経済や証券化市場の変動によるリスクの高まり次第では、基金の積み増しであるとか、さらにはそのための公的資金の投入が求められる可能性も懸念されるわけでございます。
 他方で、住宅ローンの繰り上げ償還リスク、期限前償還リスクでございます、これも市場の投資家にとりましては正確な予測であるとか管理が難しい問題を持っておりまして、証券化商品の流通には困難をもたらす要因でございます。
 証券化手法だけでは、民間金融機関による固定金利住宅ローンの安定供給を確保するには難しい、十分対処できないというふうな事態になってまいりますと、民間の金融機関に対する利子補給の措置が必要になるということも予想されるわけでございます。
 今日、公庫に対する多額の補給金が強く問題視されておりますけれども、こういう証券化支援業務が持っている問題点、リスクというものを考えますと、公庫融資業務というものをこれが効率的に代替するというふうに言えるのかどうかという懸念を感じます。
 こうした可能性を回避するためには、民間金融機関のリスクの負担能力、そして証券化技術の開発努力、それは今日、商業用不動産証券化の分野でも進められておるところなんですけれども、そういうものをより活用するスキームというものを考えるべきではないかと思います。
 第二は、証券化住宅融資と、住宅資金を需要する国民との対応関係でございます。
 証券化という手法では、多数の住宅ローン債権が一括されまして金融商品化されます。一括するためには、個々の債権が一定の融資基準あるいは信用力基準をクリアしたものでなければなりません。これに適合しない住宅融資は証券化のスキームに乗り得ないわけです。したがって、証券化に基づく住宅融資というものは、住宅取得を希望する人たちの資金需要すべてをそもそもカバーし得るものではございません。
 証券化スキームに乗らない住宅融資で問題になりますのは、それが、特に支払い能力にリスクを抱えた資金需要者、例えば、低所得階層であるとか、あるいは近年急増しております単身世帯、あるいはシングルペアレント世帯などのような、そういう需要者に対してどう対応していくのかということでございます。
 民間金融機関といたしましては、借り手の持っているリスクの大きさに応じて、金利の割り増しであるとか、あるいは融資の拒絶というふうな対応をとらざるを得ないことがございます。こういう問題に公共政策としてどう対処するのかということが重要な課題になるということでございます。公共的な観点に立った住宅融資政策が求められるというふうに思っております。
 第三は、証券化支援業務が住宅ストックの質の向上を誘導する役割をどう果たし得るのかという問題でございます。
 本法律案の証券化支援スキームでは、公庫が買い取る住宅ローン債権につきましては、公庫基準に適合した住宅が対象となると想定されております。そういう点では、この点は一定程度担保されておるというふうに言えるかと思いますけれども、私は、公庫の住宅基準とそれに基づく融資政策というものは、住宅ストックの質の向上を有効に推進するという観点からは、現在の住宅基準も画一的なものではなくて、あるいは大都市、あるいは地方都市というふうに、地域の実情に応じた多様化というものを図っていく必要があると考えておりまして、こういう課題は、多数の住宅ローン債権を均一の基準に基づいて金融商品化していく、そういうスキームでは対応できない課題であるというふうに考えております。
 以上に申し上げましたところから、私の結論といたしまして、証券化支援業務で期待される公共政策上の効果というものは、公庫融資業務のそれを十分に代替し得るものではないというふうに考えております。
 もとより、公庫融資がいたずらに肥大化していくということではなくて、適正な規模で行われなければならないことは当然でございますけれども、現在の流れのように、公庫融資業務を段階的に縮小、廃止ということ、その見返りに証券化支援業務がある、そういう意味では、証券化支援業務と融資業務とをいわば二者択一の関係で考えるというふうなこともあろうかと思いますけれども、そうではなくて、両者はそういうあれかこれかの二者択一の関係ではないというふうに考えるべきだと思っております。
 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)
河合委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
河合委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菅義偉君。
菅(義)委員 自由民主党の菅でございます。
 参考人の皆さんには、お忙しい中をありがとうございます。
 今回の法案というのは、まさに特殊法人の整理合理化計画の一環としてでありますけれども、国民の約八割の人が、住宅金融公庫に対して、それを利用したいという要望を持っておるわけであります。そのことは、やはり、長期、低利、固定、そして選別をしないという今日までの公庫の果たしてきた役割、そうしたものを担保にした上の改革でなければならないというふうに実は私は思っておるわけであります。
 そこで、八田参考人にお尋ねをしたいと思います。
 証券化支援事業、このあり方懇の中で、今御説明をいただいた上でありますけれども、住宅ローン証券市場ですか、これというのは大体どれぐらいかかってできるものなのか、お尋ねしたいと思います。
八田参考人 米国では非常に長い期間がかかって、それで日本でできるだけ早く、五年ぐらいにやろうとしているわけですが、よく聞かれるのは、米国で三十年もかかってできたものがそんなに短期にできるのかということを言われるわけです。
 しかし、恐らく、米国のいろいろな担当者にも聞いたんですが、米国でもこういう業務が非常に急速に始まったのは一九八〇年以降なんですが、これは基本的には、コンピューターの発達がもろもろの住宅ローンをプールして証券化することに役に立った、あるいはファイナンスの技術が非常に進んでいる、そういうことが背景にございます。
 したがって、私は、日本でアメリカと同じような時間をかける必要は全くないと思いまして、しかも、こういうことの経験が向こうに豊富にございますから、それを活用して、五年ぐらいをめどにできるんじゃないかと思っています。
菅(義)委員 さらに八田参考人にお尋ねします。
 民間のいわゆる金融機関がさまざまな住宅ローン分野に進出をして、いろいろな魅力ある、多様な商品を今構えておるわけでありますけれども、経済情勢、必ずしも今のような低金利の時代が続くということもあり得ないですよね。そういう情勢に変化があった場合、にもかかわらず民間による住宅ローン供給というのが、証券の今の支援策で安定的なものが続くかどうか、これについてお尋ねしたいと思います。
八田参考人 ちょっとよく聞き取れませんでしたので、申しわけありません。
菅(義)委員 今、民間でいろいろな住宅ローンの商品がありますけれども、金融情勢というものは必ずしも今のような低金利時代がずっと続くということはないですよね。それについて、今度の証券の支援策をやるわけでありますけれども、民間の金融機関による住宅ローンの供給の見通し、これについてお尋ねしたい。
八田参考人 わかりました。
 ある意味では、民間が超長期の住宅ローンを提供するときに、割と今はいい時期なんですね、金利が低いですから。後で期限前償還リスクというようなことが起きる可能性も比較的少ない。ところが、高い金利のときには期限前償還リスクというのは非常に起きやすいと思います。したがって、今、次第に、ある程度超長期のものが民間でも出ているというのは、今の金利の情勢も反映していると思います。
 しかし、長い目で見て、先ほど申し上げたようなプールが必要だということなんですが、リスクに関してさまざまなプールが必要なんですが、もし民間で直接される場合も、どうしても信用リスクに関してはどこかで負担してもらいたいということがある。そうすると、先ほど申し上げましたような、買い取り型の支援機関のほかに保証型の支援機関というものが考えられます。
 そういうことをやると、これは後でもし必要なら詳しく申し上げますが、民間の金融機関が独自に出す証券も、何らかの支援機関が信用リスクに対しての代金を取った上で保証してくれることによって活発化するということはあると思うんです。したがって、最終的には、今度も、買い取り型におくれて保証型もやるわけですけれども、そういうものの拡大が必要なんではないかと思っています。
菅(義)委員 併設をやれば乗り切れる、そういう考え方であろうと思います。
 そこで、今度は寺西参考人にお尋ねをしたいと思いますが、きょうの新聞に載っていましたけれども、国民の銀行に対しての信頼感というのは道半ばである、こういう新聞報道がありました。
 果たしてこれは、銀行の果たす役割がだんだん大きくなるにつれて、国民が望んでいるような住宅ローンを安定的に供給し切れるかどうだろうか、これは非常に大きな不安を皆さん持っていると思うんですよね。特に、従来というのは企業向け貸し付けが優先されてきていた、ここに来て住宅ローンも多くなってきていますけれども、この経済情勢において、貸し付け量というものをきちっとした形で確保できるのかなという不安がありますが、これについてはどうお考えでしょうか。
寺西参考人 私ども民間金融機関の立場から申し上げますと、住宅ローンと申すのは、従来から民間の金融機関のある意味で重要な貸出商品であったという歴史的な背景もございます。
 ただ、今御議論になっております超長期の固定型の金利のローンといったものにつきましては、三十五年というような長い期間管理が必要な分野であったというようなことから、ALMの問題等もあって、我々がなかなか取り組みが十分できなかった側面もございます。
 ただ、現在、十分なインフラといったものの体制も整えてきておりますし、またリテールといったものがそれぞれの銀行におきまして非常に重要な戦略分野になってきているということでもございます。そういった意味で、今後もこの分野に戦略的に経営資源を配分していくという方向にあろうと我々は思っております。
 そういった環境の中で、こういう証券化スキームといったものが整備されていくということになりますと、我々の持っております、ALMというんでしょうか、金利ヘッジの不安といったもの、制約もなくなるわけでございますので、さらに積極的な取り組みが可能になろう、こういうふうに思っております。
 我々としましては、十分にお客様のニーズにこたえられるように、また引き続き努力を重ねてまいりたいと思っておりまして、やれるというふうに思っております。
菅(義)委員 これは、実はきのうのこの委員会の審議の中で、与野党ともあったわけですけれども、選別融資ですね。特に、与党も野党も、国会議員は貸してくれないじゃないかという、実はそういう議論もあったわけでありますけれども、選別がないようにするのがある意味では当然のことであると思いますが、これについてはどのような融資審査を行っていくのか、お尋ねしたいと思います。
寺西参考人 私どもの住宅ローンの審査というのを少しお話しさせていただきたいと思いますが、住宅ローンのお申し込みにつきましては、お客様全体の置かれる状況などを総合的に勘案しながら、リスクモデルを活用した審査によりまして、できるだけ幅広くお客様の住宅購入ニーズに対応できるような取り組みを行っているところでございます。
 そういった意味で、先生御指摘の選別といったものがどういう意味を持っているかわかりませんけれども、私ども、そういう住宅のリスクモデルをつくってやっておりますし、お客様の本人確認それから担保評価以外は、できるだけ自動化システムというんでしょうか、コンピューターによって自動的な審査を行っておりまして、期間も一日から三日ぐらいで審査ができるような体制でやられています。
 ぜひ、そういう意味で、我々のいろいろな工夫とそういうスピードといったものとでお客様の利便性にこたえてまいりたい、こういうふうに思っているところでございます。
 以上でございます。
菅(義)委員 さらに、もう一点お尋ねをしておきたいんですけれども、この厳しい経済情勢の中で、失業などによって住宅ローンの返済が困難な人もかなり出ているわけでありますけれども、こうした人たちに対して民間の金融機関でどんな、返済相談や返済条件の変更とか、そういう窓口とかいうものは現実的にどうして対応されているのかお尋ねをしたいと思います。
寺西参考人 銀行界全体としましては、住宅ローンだけではなくて、個人向けローンも含めて、御利用されているお客様を対象にして、全国の銀行協会に銀行よろず相談所といったものが設置されておりまして、そのよろず相談所でいろいろなカウンセリングをやらせていただいているという体制が整ってございます。
 個別個別で申し上げますと、私どもの銀行では、お客様の事情といったものをできるだけきっちりとお聞きして、きめ細かく対応しておりますし、ケース・バイ・ケースで、お客様の御相談に応じながら、御返済プランの変更等々が行われているということでございます。
 以上でございます。
菅(義)委員 さらにもう一点、先ほど松原参考人の陳述の中にもありましたけれども、いわゆる証券化支援業務での貸し出しをする人と、いわゆる従来の銀行のお客様というんですか、所得の高い人、そういう二つが出るんじゃないかなという懸念をされましたけれども、これについてはどうお考えですか。
寺西参考人 我々のところで、今松原先生がおっしゃった、三つローンができるんだろうという、公庫が直接貸し出すもの、それから証券化ローン、それから民間のローンという、これが三つ、消費者というんでしょうか、借り入れの希望の方の前に並ぶということは、これはあり得るのではないかな、こういうふうに思っております。
 私ども、将来を考えますと、これは冒頭陳述で申し上げましたけれども、公庫の直貸し、直接貸し出しというのは、大規模災害等の特別なケースを除いて、やはりこれはマーケットからなくなってくるんだろう。証券化ローンにつきましても、ある意味で、証券化マーケットが逐次育成されていく過程の中で、民間に徐々に振りかわっていくというふうに思っておりまして、最後、やはりこの分野は民間がきっちりやっていくということになろうかな、こういうふうに思っておるところでございます。
菅(義)委員 八田参考人にお尋ねをしますけれども、先ほど、公庫というのは今までさまざまなストックを持っている、公庫のそうした蓄積を活用していくべきである、こういう話をされましたけれども、これについてもう少し具体的にお話しいただけますか。
八田参考人 一つには、この証券化支援機関の非常に重要な役割は、リスク管理をするということだと思います。
 先ほど申し上げました信用リスクに関しても、全く何も料金は取らないというわけじゃなくて、ちゃんと利子に上乗せして基本的に信用リスクを負担できるようにする、デフォルトがあった場合にそれがちゃんと負担できるようにする、そういうことをやる。そうすると、それがどの程度の上乗せをすればいいのかというようなことをチェックする場合に、過去のデータの蓄積が役に立つというわけです。
 なお、具体的に言えば、まあ余計なことかもしれませんけれども、私は、その情報はできるだけ、プライバシーにかかわらない限り公開されていくべきものだと思います。そういう知見というのは公開されていくべきだと思います。少なくとも、従来、膨大な量の情報を持っておりますから、リスク管理には大変役に立つと思います。
菅(義)委員 松原参考人にお尋ねをいたしたいと思います。
 証券化支援業務の必要性は認めながらも、できるだけ早い機会にこれはやめるべきであるという先ほどの御意見でありましたけれども、どのような状況のときにやめられると、具体的にちょっと御説明いただけますか。
松原参考人 どのような状況というよりは、基本的にこういう分野は民間の金融機関が担うべきだという考えに立っておりますので、いろいろな金利情勢等はありますけれども、何年以内ということを法律の中で明記することで、そこに向けて、そういう住宅ローンの証券化のマーケットを民間が主体的に形成していくとか、あるいは、民間の金融機関が主体的に、今寺西参考人がおっしゃったように、みずからが直接融資するという形に持っていくためにも、その期限は設定すべきで、非常にざっくり言うと、例えば五年とか、最大でも十年ぐらいの期限をつけないと、未来永劫、本来民間がなすべき住宅金融ローンのマーケットが公的な関与によって乱され続けるという懸念を私は抱いているということでございます。
菅(義)委員 もう一点お尋ねしますけれども、住宅取得支援というのは、政府がなすべき支援というのは、民間の金融機関の融資が困難な低所得者に限定をすべきである、そういう先ほどのお話でありますけれども、その場合の公庫の役割というのはどのように考えていらっしゃいますか。(松原参考人「公庫ですか」と呼ぶ)ええ、今の住宅金融公庫のようなものを通じてということでありましたが、それについてちょっと具体的に。
松原参考人 私は、基本的には、公庫といったような法人組織による直接融資ではなくて、税制による支援等を中心にすべきだと考えておりまして、ただ、その際に問題になるのは、最初から所得税等を払っていない層に対してはその税制措置での支援はできないことになりますけれども、しかし、基本的には、住宅取得をなさるような方は所得税は払っているという前提に立てば、私は、直接的な法人による融資よりは、税制による措置で代替できる、このように考えております。
菅(義)委員 以上で終わりますけれども、参考人の皆さんの意見を参考にしながら、これから審議をしてまいりたいと思います。ありがとうございました。
河合委員長 玉置一弥君。
玉置委員 おはようございます。民主党の玉置一弥でございます。
 きょうは、大変お忙しい中、皆さん方に参考人としておいでをいただきました。お礼を申し上げたいと思います。
 私ども、今回の法律改正によって、日本の住宅事情がどういうふうに変化をしていくのか、あるいは、新規に住宅を取得される方について、これからより利便性が確保できるのかどうか、この辺を今いろいろ論議しているところでございます。
 まず、そういう観点から、今回の法律改正によって、住宅公庫の性格が、そのものも変わってまいりますけれども、住宅取得そのものについてどの程度、例えば今までは公庫が確かに超長期の安定した資金を供給されたというのもありますけれども、その面から見ると、バブルの前後というか、特に前ですね、昭和五十年代から六十年代初めにかけましては、住宅に対する資金供給というのは非常に民間の金融機関では少なかった。それを公庫がカバーしてきた。いわゆるバブル崩壊以降、金余り現象のときに、逆に安定した個人の住宅需要に対して資金供給をされてきたという一つの歴史があるわけですけれども、私が自分自身の家を建てるときに、民間の金融機関でさんざん苦労してお金を借りた経験がございます。
 今、公庫融資がやはりある程度民間との競合のときの一つの支えになってきたのではないか、こういうふうに考えますと、果たして、今回の証券化支援といいますか、この方向だけでこれからの住宅資金供給が確保できるのかどうか、この辺のことをそれぞれ各参考人の方にお聞きしたいと思います。
 それでは、寺西さんからよろしくお願いします。
寺西参考人 少し具体的に私どもの数字でお答えした方がおわかりいただけると思っておりまして、少し数字を述べてみたいと思います。
 私どもの住宅ローンの残高というのは、今ざっと言うと六兆円ございます。年間の取り組みをどれぐらいやっているかということをお話しさせていただきますと、二〇〇〇年度でざっくり言いまして約九千億、二〇〇一年度で一兆円、この三月末の年度では一兆二千億ぐらいの年間の取り組みをやらせていただいているということでございますので、一つの銀行として非常に大きなビジネスになっているというふうに御理解が賜れるんじゃないかなと思っております。
 今先生の御質問で、将来にわたってやれるのか、こういう御懸念でございましょうが、私ども、二〇〇七年度には、ぜひこの六兆円の残高を十兆円にしたいというような大きな目標を立てておりまして、そのために人、物、金を配置しているということでございますので、我々としたら、非常に根幹分野として力を入れて今後もやってまいりたい、かように考えているところであります。
 以上でございます。
八田参考人 海外で、特にアメリカの例で見ますと、やはりこの政府の、まあ半官半民ですが、証券化支援機関を置いた、軸にして民間の融資をやるという体制が非常にうまく機能していると思います。
 それで、従来型の日本の金融公庫の問題は、いろいろあるかもしれませんが、私は、何といっても、期限前償還リスクを政府が負担しなきゃいけなかった。そして、今度のように低金利が長く続くと、その欠陥が非常にあからさまに出てきた。このシステムは、とにかく長い目で続けていくわけにいかないわけですね。これを、基本的には、今度は投資家のリスクとして落として、そして、そのリスクがあることを承知の上で利子に上乗せして、最初から証券化を行うという形になります。
 それから、先ほど、そんなことして、投資家はリスク負担ができないんじゃないかという大泉先生の御指摘がありましたが、実は、アメリカでは、まず利子が上乗せされて期限前償還リスクがある程度カバーされているということのほかに、デリバティブを使いまして、仕組み債というものですけれども、その期限前償還リスク自体をまた負担してくれる商品が出てまいります。そういうことがこういう標準化された証券があると可能なわけですが、もともとの住宅ローンだけの場合には、そういうものがなかなか利用しにくいということがある。
 したがって、このスキームにすることによって、外国の経験に照らしてみると、やはり従来の日本の直接金融のやり方の重大な欠陥が正されるんではないかというふうに思っております。
松原参考人 私は、今のような長期固定のシステムがこれから先、住宅金融公庫を廃止してきちんと維持できるかどうかという御質問に対して、難しいと思っております。
 というのは、よくこういう住宅金融公庫のローンとか証券化支援業務のローンのときに、長期、固定、低利という言い方をしますが、私は、それは基本的に間違いだと思っていまして、長期で上限固定ということだと思うんですね。長期であって低利かどうかは、これはそのときに相対的に金利が高いか低いかだけでありまして、長期で上限が固定されているだけの話です。
 八田参考人から今お話ありましたように、現在のような低金利の時代には、その長期上限固定の際の一番大きなリスクは、期限前の償還のリスクでありますから、金利自体が低水準の場合にはそのリスクは余り発生しない。ですから、今の状態を、現状をベースにしますと、証券化支援業務というのは非常にうまくいって住宅金融公庫の融資を代替する可能性はある。もちろん個別行がサービサー料金をどのぐらい取るかによって違ってきますけれども、まあ代替できるだろう。
 ただ、最大の問題は、相対的に金利が高い時代に証券化支援業務が本当に来るか。要するに、金利が高くなると、今八田参考人からのお話があったように、投資家がそのリスクを全部負うわけですから、そこで本当に潤沢な資金が確保できるかどうかというのは私は疑問だと思っているわけです。
 逆に、今までそれがうまくいってきたのは、相対的に金利が高い時代の長期上限固定のリスクは、全部補給金等によって税金で賄ってきたから維持できてきただけの話でありますから、その税金のかわりに投資家のリスクにかえていくということになると、金利が高くなったときには、このようなスキームで潤沢な資金がきちんと集まって提供できるかというと、私はちょっと疑問だと思っております。
 そのような意味で、金利の動向次第で、本当にこのスキームがしっかり金融公庫の直接融資に代替できるかどうかは、私は疑問だという立場でございます。
大泉参考人 お答えいたします。
 今後とも民間の住宅融資というのは傾向的には伸びていくというふうに考えておりますが、やはり、先ほど申し上げましたような公共政策の観点から見た場合に、例えば特に中あるいは低所得層に対する融資というものを考えていくとか、あるいは住宅ストックの質の向上を図るという観点から見た場合に、その機能が公庫融資にかわって民間融資で十全にカバーできるのだというふうな理解はしておりません。
 一つここで申し上げますのは、特に低所得層に対する融資という点では、やはり限界を持っているというふうに思っております。現在は、超低金利でございまして、超金余りでございますので、民間銀行の方も、金融機関も非常に熱心に住宅ローンを取り組んでおられますけれども、現在の超低金利はやはり異常な状態でございますので、いずれ金利状況が正常な方向に向かっていくとなった場合に、そういう場合にやはり融資スタイルというものも変化せざるを得ないというふうに考えております。
 やはりそれは証券化支援スキームということとは別に、じゃ、今後とも発展していく民間住宅融資に対して、こういう公共政策上の目標に沿ったような形で機能できるような規制あるいは誘導というふうな仕組みも考えていかないといけないんじゃないか。公庫の融資を維持するといったことと並んで考えていかないといけないんじゃないか。今後とも民間融資が非常に傾向的には意義を拡大していくだけに、そういうことが必要なんじゃないかというふうに考えております。
玉置委員 それでは、八田参考人にお聞きします。
 現在の証券市場というか債券市場ですね、債券市場のボリュームからいきますと、今回の住宅関係の証券化ということについて、アメリカではそれこそ二十年以上かかって形成されてきたわけでございますが、日本が五年ぐらいで見通しがつくかというのは、非常に心配を私はしているわけですね。
 というのは、やはり先ほどのお話にありましたように、この低金利の長期にわたることが逆に大変なリスクになって、逆ざやとか、将来を見越して証券としてのメリットが非常に少ないのではないかというようなことも考えるわけです。
 この辺からいきまして、公庫そのものの業務を五年ぐらいである程度めどをつけようというのが今回の法律なんですけれども、先ほども五年ぐらいでとおっしゃいましたけれども、五年ぐらいで証券市場、債券の市場がある程度、住宅ローンの証券によって独立するぐらいの市場が形成されるかどうか、私は無理だと思うんですが、どういうふうに、先ほど五年ぐらいとおっしゃいましたけれども、これは一つの、要するに実現の目標なのか、あるいは大体こういうことで可能性があるという方なのか、その辺を含めてお聞きしたいと思います。
八田参考人 基本的には目標だと思います。
 しかし、先ほど申し上げましたように、長い時間かかってアメリカで形成された裏には、やはり技術進歩ということが決定的にあると思います。これは、技術進歩ができて初めてこういうことが可能になりました。
 それから、先ほど、例えば低金利だとそういうことが魅力にならないんじゃないかということをおっしゃいましたが、やはり投資する方は低金利であるからこそ魅力的な投資先を求めているわけですから、こういう証券が市場に出回ってくるということは、大変ないい投資機会が出てくるということだと思います。
 先ほど、期限前償還リスクに関して、そういうものがあるとなかなか投資できないんじゃないかということをおっしゃられて、そして、それに対して私、今度それをまた保証するような金融商品が出てくるから大丈夫だと申し上げたのですが、それは基本的には、アメリカでは結構金利が高かった時代に起きていますから、八〇年前後に起きていますから、これは金利が日本のような低いときに証券化がうまくいくというわけじゃなくて、金利が相当高いときでもきちんとうまくアメリカでは機能しております。期限前償還リスクに対する相殺措置ということも市場がちゃんとつくり出して対処しているということを考えますと、どうもこれがうまくいかない理由がないんではないか。特に今、投資する機会を新しくつくるということは、市場が本当に求めていることではないか、そういうふうに思っております。
玉置委員 松原参考人にお聞きします。
 三つのローンが市場に併存するというお話ですけれども、それとともに、私たち、このままいきますと、個人投資家よりもいわゆる機関投資家が市場を押さえてしまって、期待したほどの資金が本当に集まるのかなということをちょっと思うわけですね。それから、市場形成という面から見ても、やはり個人投資家に対して誘導策をとるということが必要だと思うんですが、その面から見て、本来の、これからの住宅ローンに対する証券市場というものがどういう形で育成されていくのかということについてお聞きしたいと思います。
松原参考人 これは、機関投資家及び個人の投資家というものが持っている資金がどこに流れていくかという問題に最終的には帰結すると思っております。
 株式に流れるのか、外貨預金に流れるのか、投資信託に流れるのか、あるいは郵貯に流れるのか、こういう問題でありまして、やはりそれはマーケットの中での住宅の投資にかかわる部分がほかの投資先分野に比べて魅力的かどうかというその一点しかないと思いまして、それは金利とかあるいは先ほど言いましたリスクがどこまで担保されるかとか、それがほかの国債等の運用と比べてどうか。そこは、申しわけないんですけれども、常識的にはそのマーケットメカニズムで資金がどう動くかに依存するだけで、そこに特段の資金誘導策というのを政策的につくるのはちょっと難しいのではないか、こう思っております。
玉置委員 寺西参考人にお聞きします。
 今の低金利の状況から見て、逆ざや現象というのがリスクの中でかなり大きいと思いますが、これについて証券化支援との組み合わせでどの程度カバーできるかということ。
 それから、個人融資の保証について、先ほどのローンが三つ存在するというような話もありますし、いわゆる貸し方ですね、いろいろな審査をされますけれども、そういう中での選別をかなり、片や競争相手がいなくなっていくわけですから、民間金融機関として、選別についてどういうふうにお考えになっているかということ。
 いわゆる選別基準といいますか、あるいは量的なものとか、あるいは貸す相手の資格とか、そういうものが流動的になるのか、あるいは固定的にずっとされるのか。その辺もどういうふうに、我々は逆に、果たして将来とも融資が確保されるかという保証をどこかで取りつけないといけないということなので、そういう意味での選別基準といいますか、その辺についてお聞きしたいと思います。
寺西参考人 まず、期限前返済の問題でございますが、これは八田先生がおっしゃったように、やはり金利の状況によって物すごく大きく変わってくるということだろうと思っておりまして、現状、私どものケースから見ると、今のような低金利のところではさほど激しく起こっているということはないように判断をいたしております。そういうことで、金利状態を見ながらということで、いろいろなことが起こってくるのではないかなというふうに思います。
 後段の融資の選別ということで、今お話を紹介しましたが、一つ先ほど申し上げましたように、リスクモデルで幅広くお客様にローンが行き渡るようにいろいろな工夫をやっているということを申し上げました。
 私ども、例えば具体的に申し上げますと、じゃ、職業で何かルールを決めているかといったことは全くございません。それから、唯一私どもがやっておりますのは、住宅ローンの適合の中で、年収が二百万円以上の方というふうに決めておるわけでありますが、住宅を求められる方と返済のこと、住宅の価格を考えますと、民間としては、この辺はぎりぎりの水準ではなかろうかなというふうに思ってございます。
 もう一歩あれですけれども、例えば具体的に申し上げますと、サラ金からお金を借りている人にはどうなんだということについてお話ししますと、サラ金から御融資をいただいているからといって我々の融資基準からはねるということはございません。
 ただ、どうでしょう。多重債務の懸念があるかどうかということは、やはり貸し出しの、お金を融資する者として当然我々の判断の材料に入りますけれども、我々としましては、そういう適合性のところではかなりバーを引き下げているというふうに認識をいたしておるところでございます。
 以上でございます。
玉置委員 ありがとうございました。終わります。
河合委員長 赤羽一嘉君。
赤羽委員 おはようございます。公明党の赤羽一嘉でございます。
 本日は、四名の参考人の皆様方におかれましては、大変御多忙の中にもかかわりませず本委員会に足をお運びいただきまして、また大変貴重な御意見を賜りましたこと、心から感謝を申し上げたいと思います。
 私、限られた時間でございますが、まず最初に、住宅金融公庫がこれまで果たしてきた住宅取得支援についての評価についてお聞きしたいと思うんです。
 先ほどのお話にもございましたし、全銀協から出ている「住宅金融市場の改革について」なんかを読ませていただきますと、やはり住宅金融公庫の先ほどお話がありましたようなあの融資シェアは突出しているといった、現実としてはそうですね。民間金融機関では実現し得ない、長期、固定、低利の貸し出し条件というのは、ある意味では非常に、これは官業ゆえの特典だ、こういう御指摘もあって、これは実は全国民の負担による一部国民への見えざる所得移転だ、そういう評価をされているわけですね。
 私は、マクロ的に言うと、それは非常にそういうことなんだろうなと思いますが、しかし、こういったことが本当にネガティブなものだけなのかな、住宅金融公庫の評価というのは、結局、国民に大変な負担を強いてきた、いわゆる国家的な赤字財政をつくってきたというマイナスの評価しかされないのかというと、ちょっと疑問があるんですね。
 私は、政治家になるまでの十年間、三井物産の社員で、UFJの皆さんと同じような状況の中だったと思うんですけれども、何か私の認識で見ますと、私は持ち家ではないんですけれども、私たちの世代というのは、大体、持ち家の人間は住宅金融公庫を当然のように利用して、それに加えて民間金融機関の融資も受けて、それで住宅を取得している。その彼らが、私は四十四歳なんですけれども、我々の世代というのは非常に不幸な世代で、バブルのときに家を買って、その買った家の資産価値が資産デフレを起こして今三分の一ぐらいになっている。しかし、住宅ローンは当然デフレにならないわけですから、そのまま払い続けている。
 ですから、住宅金融公庫という、ある意味では非常に特殊な、低利で固定で長期のローンを受けて取得した我々の世代が今、多分、家計においての何が一番圧迫を受けているかというと、私は住宅ローンの返済が一番費用負担感が大きいんだというふうに思っているんです。
 ですから、私は、住宅金融公庫があったからこそ家も買えたんだけれども、そういった有利な条件で買えたにもかかわらず、現状は、そういった有利な条件で買ったにもかかわらず、その住宅ローンというのは今は非常に我々の世代の家計に占める割合が大きいんだということで、ですから、逆に言うと、民間金融機関だけの貸し出しであれば、本当にこんなに住宅取得が進んだのかどうかということも非常に疑問もありますということをちょっと最初に確認をしておきたいんです。
 先ほど寺西参考人、住宅ローン残高は、UFJの銀行で六兆円ですか、本年度、ここ数年は約一兆円規模だということですが、これは単体としてのローン貸し出し、融資なのか、住宅金融公庫とのセットでのパターンなのか、こういうことはどうなんですか。ちょっと基本的なことで申しわけないんですが、確認しておきます。
寺西参考人 細かな数字を持っておりませんけれども、その中に住宅金融公庫と併用になっている部分というのはございます。
赤羽委員 例えば、UFJの行員さんの中で持ち家の方というのはかなり多いと思うんですが、住宅金融公庫を利用されているその方たちの割合というのはどうなんですか。
寺西参考人 細かな数字は持っておらないですが、私ども職員については、ある意味で住宅の貸出制度というのが職員の福利厚生の観点から別途ございますので、一義的にはそれが職員向けの貸し出しになっているということでございます。それと、職員によっては公庫の借り入れを併設している者も、それはいると思います。
赤羽委員 ですから、住宅という一生の買い物をするときに、いわゆる市場金利よりも安いものがないと、なかなか買えないという現実はやはりあったんじゃないですか。つまり、質問がちょっとあれだったんだけれども、銀行員の人は社内優遇レートですよ、私に言わせれば。そういうものを受けた、まさに官業の特典と同じようなものを銀行員は受けられるから受けてあったのであって、僕ら商社マンは、そういうものはなかったから住宅金融公庫をセットしなければ買えなかったわけです。政治家は、そういったものすら、どこからも相手にされないから家が買えないという状況があるわけですね。
 ですから、私は、本当にマクロ的な意味で、確かに財政的な意味では赤字をつくってきたという批判はあるけれども、本当にこういうことを、そこをスクエアにしちゃって住宅政策が今後どうなのかなということを非常に懸念しているということをまず一つ表明をしておきたいと思います。
 二つ目に、証券化支援業務についてちょっとお伺いをしたいんですが、先ほど八田先生から、大変丁寧なわかりやすい、時間があればもうちょっと聞かせていただきたいなということがあったんですが、その中で、八田先生はアメリカの例を引かれて、この証券化市場のバックアップとなる資本マーケットですか、投資家にとっては非常にメリットがあるんだということも御説明があったわけであります。私は、今の日本のこういった経済状況の中で、確かに個人の貯蓄というものは膨大な金額があるとはいいながら、本当に投資家マインドをくすぐるような話になるのか。
 先ほど松原先生の御指摘にあったように、低金利時代の今だったらこういったものが形成される可能性はあるけれども、高金利になると投資家へのリスクが大きくなって潤沢な資金を集めることができないんではないかという御指摘もありました。日本の現状、なかなか投資家マインドというのは、僕はアメリカと比べると相当低いのではないかと思うのですが、こんな現状で、しっかりしたこういった市場が形成される、育成することの道筋が金利が高くなってもしっかりしたものが出てくるのかどうか、もう一度改めて御答弁いただければと思います。
八田参考人 まず、現在は非常にいいタイミングだと思います。
 例えば、よく、インフレターゲットをやるというときに、長期国債を日銀はもっと買い取るべきだという話がございます。そうするとマネーが市中に流れる。しかし、そうしても、もうそれで買うものはないんじゃないかとよく言われるわけですね。長期国債を日銀に売った人はキャッシュを手に入れるわけですが、キャッシュでもってあと何を買うんだということがよく言われます。
 しかし、そこにこういう住宅証券があると、それはきちんとした金利を生むわけですから、本当にうってつけの投資材料なんです。今のように金余りの時代には、これは非常に有効な投資対象だと思います。
 そういうタイミングでこの市場ができた後、金利が高くなったときどうなるかということですけれども、それはもちろんほかの投資対象との金利の差によります。したがって、ほかの金利が上がればこっちの金利も上がる、そういうことでありますから、そのときには、非常に金利が高いときには、確かに住宅を建てるために住宅ローンを借りる人は高い金利に直面するということで、住宅がどっちかというと抑えられる。ところが、低金利のときには非常に住宅の建設が進む、そういうふうになるだろうなと思います。
 これは、アメリカの経験で見てもそういうことがありまして、アメリカでは、低金利のときに本当に住宅建設が進んで、高金利のときには住宅よりはほかのものに回っていくということがありますが、それは資源が余っているときになるべく住宅をつくった。住宅なんというのは、すぐ食べるものではありませんから、長い期間要るものですから、資源が余っているときに使って、ほかの産業界で資源を使いたいときには住宅はちょっと差し控える、これは当然のことだろうと思います。
赤羽委員 この点について、松原先生、何かコメントがございますれば。
松原参考人 こういう資金の流れを見るときに、例えば、今八田参考人が、余った資金が住宅ローンの方に回る、こういうお話でしたけれども、しかし、資金循環全体で考えていくと、住宅ローンのマーケット自体が大きくふえない限りは、今までは郵貯等の資金が財投債を通して住宅ローンに流れていた、こういうわけですから、その部分が縮小して、そうすると、逆に住宅ローンに投資家が流れる部分、郵貯等の資金の行き先がマクロ的にはなくなっていく、財投債のマーケットが縮小していくというわけですから。そう単純に、私は、資金のいろいろな一国的な流れが低金利時代だと上手に住宅に流れてというような形にはならないのではないかと思っております。
 それからもう一つは、住宅ローンマーケットの今後について、少しきょうの議論を通じて違和感を覚えますのは、楽観的過ぎるのではないか。少子高齢化かつ住宅取得率が非常に上がっていく中で、住宅メーカー等はすべて今後の先行きは小さいと見ているわけです。だから、マーケット全体を見て、それに対する資金の供給がどうなのかといった視点をもう少し入れないと、この制度が具体的にスタートしてどう動いていくかというのは、そう簡単には結論を出せないのではないかと思っております。
赤羽委員 この点について八田先生も反論はおありかと思いますが、ずっとやっていると参考人質疑になりませんので、別の観点に行かせていただきます。
 今回、要するに、住宅金融公庫が果たしてきた役割をこの証券化支援業務で十分代替ができるようになるのか、結局はこういったことについてどうなのか。私なんかも、まだチャンスがあれば家を買いたいなと思っている人間ですけれども、今後買えるチャンスがあるのかどうかということについて懸念を持っている国民というのは大変多いと思うんですが、その点については、八田先生、どのような御見解を持たれますでしょうか。
八田参考人 私は、従来型のと比べてはるかに買えるチャンスが広がると思います。
 とにかく、従来型は破綻しているわけです。期限前償還リスクに対して政府が補給金を出さなきゃいけないシステムで、これは続けられないわけです。そこでストップして、後は何もつくらなかったら、これは大変なことになると思います。
 だから、私は、このスキームというのは民間の活力を最大限に利用するスキームだと思いますし、そして、たまたまリスクのプールには大規模な統合が役に立つということで、それを利用してやるということですから、これは今後の住宅ローンを続けていくために必要不可欠なものだと思っております。
赤羽委員 それとあと、日本の住宅政策の中で、住宅の質の向上とかバリアフリー化を進めていきたいということで、国土交通省もいろいろ工夫を凝らして、法制度を整えたりとかそういった政策を進める具体的なことをやっているんですが、住宅金融公庫なんかの場合も、バリアフリー化の場合は優遇のレートを出すというようなことも実際は行われていまして、これでもまだまだ不十分ではあると思うんです。
 さらに、長命住宅というか、アメリカ並みの築五十年、六十年できるような住宅をつくっていく、そういった政策誘導をしていくべきだというふうな思いが私なんかもしておるんですけれども、そういった中で、この証券化の話というのは、先ほどちょっとそれに八田先生の中でもお触れになられましたが、その点についてもう一度八田先生から。
八田参考人 実は、この点について役所と私とかなり意見が違いまして、私は住宅宅地分科会の一応会長をやっているので、審議会の担当なんですけれども、いつもお役所とは違う意見なんですね。
 まず、住宅の質に関することですが、住宅を購入する人が望む質というのは、やはり安全であって、そして耐震性があってということですね。こういう質を我々は自分でチェックするということはできないですよ、何も知りませんから。そうすると、これを公的に建築基準法をきちんと守っているかどうかをだれかにチェックしてもらいたい。
 ところが、今、金融公庫の融資を得ないでつくられた普通の住宅は、だれもチェックしてくれないんです。全くのざる法なんです。アメリカではこれが、例えばカリフォルニアだと、建築されるまでに十回ぐらい、十回以上だと思いましたが、担当の人に聞きましたけれども、中間検査が入る、抜き打ちで入る。だから、質に関して非常に安全ですから、持ち主は安心できるわけですね。
 これが、普通の住宅に日本は担保されていなくて、金融公庫の住宅にはきちんとそれがされていた。これは非常に重要なことで、今度の証券化支援業務の中でも、証券化の買い取りの基準としてそういうチェックをやりますよということが入りますから、それは重要なことだと思います。
 ところが、今度は、バリアフリーを強制することにいかほどの意味があるか。バリアフリーを自分はしたくないという人に対して、バリアフリーに対して優遇するということにどんな意味があるだろうか。私は全くないと思うんですね。役所はあると言うんですね。
 バリアフリーというのは、例えばデパートをバリアフリーにする、駅をバリアフリーにする、公共機関をバリアフリーにすることに官が補助金を出したりいろいろ規制をしたりすることは非常に意味があると思いますが、自分の家をするかしないかは全く自分の勝手だと思うんですね。それはまた、補助金を得ていいものをつくれば後で高く売れますから、全く個人に対する補助金なんですね。私は、そういうことはすべきではないというふうに思っています。
 ですから、従来金融公庫がやってきたことでも、非常に大切な質の向上の面、特に個人が望むことをきちんと担保してやったということの面と、全く不必要なことがあったと思いますが、今度も多少不必要なところも続くんだと思います、買い取り条件のところで。だけれども、私は長期的にはそれは廃止していくべきだと思います。
赤羽委員 この本法とは少しずれますが、今の御発言に絡んで、日本で中古住宅市場というのが形成されていない。大体、中古住宅というのは、売りに出ると、築十年以上というのは建物はもうゼロというか、土地がどんな地形でどちらを向いているかだけみたいな話で、ちょっとおかしいんじゃないかなと。同じ築十年でも、もうこれは本当にピンからキリ、今まさに御指摘のあったような話なんですが、中古住宅市場を形成するために、育成するために必要なことについて、ちょっと筋がずれるかもしれませんが、コメントをいただけたらと思います。
八田参考人 中古住宅、アメリカで家を買うといったら大体中古住宅です。しかも、それも標準化されています。コロニアルとかジョージアンとか、大体タイプがわかって、どこにどんな部屋があるかがわかる。一人一人が特殊なものをつくらないで、標準化されているということがございます。
 日本では、中古住宅の市場というのは非常に少ないということがある。その理由は二つあると思います。
 戦前は、中古住宅の市場というのはある程度あった。それは非常に標準的な日本家屋だった。戦後は、過渡期にあったわけですね。非常に戦後の混乱の時代から、新しいスタイルに変わってきた。所得も低かった。したがって、だれも自分の家が二十年後、三十年後の生活水準に合うような家だと思っていないから、最小限の家をつくって、とにかく土地だけ購入するということをやった、そういう側面がございます。
 もう一つ、非常に重要な側面は、建築基準法に基づいてきちんとした中間検査をしていないものだから、皆が人のつくった家の質に関して安心感がない、そのことがあったと思います。
 今は、建設省の住宅局が大変努力して、そういう質が公開されるような制度をつくっております。住宅の品確法というものを中心としてつくっております。
 そういうことになると、例えば、この証券化業務でつくられたものは一定の品質が保証されますから、それがそういうところに情報が登録される。そうすると、後で中古で買うときも、ああ、これはきちんと一定の中間検査が入ったものだということがわかる。そうなりますと、今回のような証券化のスキームの中に品質の確保を入れたということは、中古市場を育てていく上で、品確法と相まって非常に役に立つんだ、そういうふうに思っております。
赤羽委員 もう時間も来ましたので終わりにしますが、やはり、今回の住宅金融公庫を廃止して民間にゆだねるときに、一番不安に思っているのは、率直に申し上げまして、今の日本の金融機関は顧客第一主義なのかどうかということ、そこに非常に国民は不信を持っていると私は思います。貸し渋り、貸しはがしの実態というのは、国民の皆さんというのは非常に実態としてわかります。その背景というのはあるということの反論はあるかもしれませんが、本当の意味での顧客第一主義というものを、ぜひ寺西全銀協会長は全銀協の皆さんに本当に徹底していただきたいということを要望いたしまして、終わりにしたいと思います。
 そのことについて、何かコメントがあれば。
寺西参考人 お客様の接点でしか銀行の収益は生まれないということでありまして、我々の経営を支えていたものは、本当に消費者の、預金者の方々、それから会員の、我々のお客様でございますので、肝に銘じて経営をやってまいりたいと思います。
赤羽委員 ありがとうございました。終わります。
河合委員長 一川保夫君。
一川委員 私は、自由党の一川保夫と申します。
 本日は、参考人の皆様方、御苦労さんでございます。
 今までの質問とちょっと重複しない観点で端的にお聞きしますけれども、住宅金融公庫法の第一条「目的」に、こういった住宅の建設なり購入に対する資金について、銀行なり一般の金融機関で融通することが非常に困難なものについて公庫が対応するのだというような趣旨のことをうたってありますね。
 そういうことからすると、今日までの公庫の実績を見てみますと、この目的からすると、ちょっとやり過ぎたんじゃないかというような感じも私は受けております。先ほど来いろいろな議論がある中で、今日の我が国の経済社会のいろいろな背景、これからの一つの経済見通しということを考えてみた場合に、私自身は、もうこの際、できるだけ公的な関与を撤退して民間にゆだねていくという基本的な流れをもっと明確にすべきだというふうなスタンスに立っているわけです。
 それぞれ四人の参考人の方にお伺いするわけですけれども、こういった政府系の公的機関が依然としてこういう業務を持ちながら今後続けていくということについて、それぞれ皆さん方はどういうお考えをお持ちなのか、端的にお聞かせ願いたいと思います。
 業務内容の変更なり、あるいはこういったことを継続する機関なりという、いろいろな条件があろうかと思いますけれども、こういう住宅金融公庫というような政府機関を、独立行政法人化するとは言っておりますけれども、こういう姿で残していくということについての、そういう政府の考え方に対するそれぞれ四人の参考人のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
寺西参考人 我々の考え方を冒頭陳述で申し上げましたけれども、一つ、住宅金融公庫は、組織としては十八年度中に廃止される、業務としては、融資業務を段階的に縮小する一方で、今議論になっている証券化支援事業を開始するということでございます。
 証券化支援の業務といったものにつきましては、ある意味で、今我が国におきまして、住宅ローン証券化市場といったものが発達していないわけで、こういったものの標準化とか活性化に本当に役に立つ施策ではないか、こういうふうに思っております。
 こういったものをバックグラウンドとして、民間金融機関によります超長期の固定金利型の住宅ローンの安定供給といったものが可能になる、ベースができるという意味で、我々は評価をしたい、こういうふうに思っておるところでありまして、我々自身も、昨年来、民間金融機関として、住宅金融公庫と共同しながら、こういったものの立ち上げに、具体的な検討に参加してきているということでございます。
 一方で、融資業務でございますけれども、段階的に縮小、こういうふうに言われておるわけでありますが、まだ具体的なものは何も示されていないということでございまして、我々としましたら、民間による代替状況というものもチェックいただきながら、最終的には、大規模災害後の特別対策みたいな特殊ケースを除いて、融資業務といったものは原則行わない方向性にすべきではなかろうかというのが我々の考え方でございます。
 そのためにも、今後、まだ四年あるわけでございますが、融資業務の段階的縮小のためのアクションプランといったものをつくって、それを公開する、そしてその着実な実行をやっていくということが必要ではなかろうかというのが私どもの思いでございます。
 以上でございます。
八田参考人 私も、直接融資は、基本的になくしていく方向に行くべきだと思います、災害とかそういうときは別ですけれども。そして、この証券化支援制度に代替していくというのが望ましい姿だと思います。
 しかし、この証券化のためには、とにかくどこかが証券化する組織として、マーケットで自動的に、出なさいよといってすぐ簡単に出るものではないと私は思います。それは大規模なリスクプールということがどうしても必要ですから、一種の独占的な状況ができるかどうかということなんで、少なくとも当初においては政府が関与する、そして標準化する、そして万一のための保険的な機能を果たすということが必要だと思っております。
 以上です。
松原参考人 直接融資に関しては、今の撤退の基本的な方針というのは正しいと私は思っておりまして、ただ、寺西参考人がおっしゃったように、期限内にしっかりとそれが実現するような措置をより明確にとるべきだ、このように思っております。
 それから証券化支援業務に関してでありますけれども、これはもちろん、現在の住宅金融公庫による直接融資に比べますと、政府の補給金が入るわけではありません。当然条件が悪くなるのは当たり前ですけれども、マーケットメカニズムに乗ったものであることは間違いないわけです。しかし、民間の金融機関の側からすると、証券化支援ローンに関しましては全くのサービサーですから、窓口でサービサーのフィーを取るだけの存在になっていくわけです。
 そのような面からすると、証券化支援業務というのも非常にパブリックの色彩が強い。金利変動リスクは投資家が負いますけれども、やはり新しくできる独立行政法人が親方日の丸でお金を集めて、それを各銀行に枠を渡していって、極端な物の言い方をすれば、各銀行はその枠の中で手数料を稼ぐだけの存在だ。これはやはり、本来の民間でできることは民間でという趣旨からするとおかしいと私は思っておりまして、できれば過渡的な措置として可及的速やかに終わるべき、政府はそこから撤退すべきスキームだ、こう思っております。
大泉参考人 私も、一川先生の御指摘のように、八〇年代、九〇年代の公庫融資の増大というのは、これは専ら住宅投資を促進するための手段として、やや過剰投資というふうな意味合いを持ってきたというふうに思っております。
 翻って、では、今後の公的融資の役割は、民間金融機関では対応不可能な融資に限るというふうな中身をどう考えるかということなんですね。先ほど来、大災害等の特殊なケースに限ってというふうなお話がございましたけれども、この面で必要なセーフティーネットというのはもう少し幅が広いんじゃないだろうかというのが一つございます。もう一つは、先ほど来出ておりますストックの質的向上という面での役割ですね。この二つの点に関して、公的な融資というものは大いに意味があるというふうに思っております。
一川委員 では、松原参考人にお聞きするんですけれども、先ほどちょっとコメントがあったと思いますけれども、今、少子高齢化社会にもう突入しておりまして、なおかつ、間もなく我が国の人口がピークを迎えてくる。そういう大きな時代背景の中で、これからマーケットそのものが相当厳しい状況下に置かれてくるという中で、こういう住宅ローンの世界にどう影響してくるかというところが非常に、しっかりと見定めないと大変だというような御趣旨のお話があったような気がするんです。
 私も当然そう思いますし、そういう意味で、先生の方から見られて、これからの我が国の一つの方向として、マーケットがどういう方向になっていくというふうに考えておられるか、そのあたりをちょっとコメントいただきたいと思います。
松原参考人 住宅のマーケットというのは幾つかの規定要因があると思うんです。
 御指摘があったように、少子高齢化の状況、それから二〇〇六年前後から人口自体が減少していくという中で、やはりマーケット自体がこれから先、少なくとも大きく伸びるという存在ではないだろうということが一点であります。
 それからもう一点は、これから先、今のような日本の経済状況とか社会状況を見ましたときに、三十五年の長期ローンというものが住宅をつくろうという側からしてみて本当にニーズがあるのかという疑問がございます。それは、三十五年間にわたってみずからの収入が間違いなく確保できるというめどがない限り、三十五年の固定ローンというのは借りる側にとってアトラクティブではないわけです。
 今は、ある人に言わせれば、そういうのを平気で頼めるのはもう公務員しかないみたいな話になってきますから、そのような状況を勘案したときに、少なくとも、住宅金融公庫が今まで提供してきたような住宅供給システムを超長期固定というような形で何とか代替させていかなければいけないというような政策目的自体、社会とか経済のシステム転換の中で、やはり抜本的に見直していかなければいけない、こう私は考えております。
一川委員 八田参考人にお聞きするわけですけれども、先ほど松原参考人からもちょっとそういうお話があったと思うんですけれども、我が国の住宅政策に対する施策というのは、幾つかいろいろな地方公共団体の対応なり特殊法人等でも対応しているというようなお話がありました。
 先ほどちょっとお話ししましたように、住宅建設の融資に対する政府系のこういう業務と地方公共団体が対応する業務というのは、どういうふうにあった方がいいかなという何かお考えをお持ちですか、これからの地方分権といういろいろな流れの中で。
八田参考人 まず、地方の住宅供給公社というのが財政的にどこも非常にまずい状況になっている、これも基本的には縮小していくべきものだと思います。
 ただし、地方の場合には、老人に対する住宅をどうするか、あるいは福祉型の住宅をどうするか、そういうところに公共政策の役割があり得ると思います。また、組織があり住宅がある以上、それをそういうところに活用していくというのが地方の供給公社のこれからの改革の方向ではないかと思います。
 ただし、金融公庫の方はそれとはまたちょっと違いまして、私は、これは純粋に、市場の機能を十分に生かすために活用すべきだと思っております。
一川委員 では、寺西参考人にお聞きするわけですけれども、こういった住宅ローンに対する民間の金融機関の対応は、最近徐々にそのシェアが広がってきておるという中で、先ほど来のいろいろな議論の中でも、これから民間の金融機関に対する期待度が大きいわけです。
 今、民間の金融機関において、住宅ローンという、この住宅政策について何か新たな取り組みの状況みたいなものが、近年、特にこのあたりに力を入れているというような何か考え方がございましたら教えていただきたいんです。
寺西参考人 我々ができることというのは、やはり一番大きいのは利便性の向上ということではなかろうかと思っております。
 例えば、休日の住宅ローンの相談会といったようなものも催させていただいておりますし、あるいはインターネットで、例えば今、住宅を借り入れしたらどういう返済になるんだろうかというようなことも自動的にシミュレーションできるようなものも提示させていただいているとか、それから、お客様も、申し込まれて、二週間も三週間もかかって返事が来てということではなかなか今の時代にそぐわないということで、審査制度そのものも抜本的に変えて、我々でいきますと、最長で三日ぐらい、一日から三日ぐらいで返事ができる、そういうような試みもやらせていただいております。
 また、ローンそのものの商品性についてもいろいろと見直させていただいて、お客様の方のニーズに合うような展開を考えてきているということで、先ほど申し上げましたけれども、我々民間金融機関にとって非常に大きなマーケットである、それから、将来にわたって戦略的なマーケットでもあるという位置づけでございますので、そういう意味からしますと、経営資源と申しましょうか、人員も含めてでございますけれども、集中的に張って対応していくマーケットだろうというふうに思って、そういう着実な動きをやっているということでございます。
 以上でございます。
一川委員 寺西参考人にもう一度お伺いするんですけれども、先ほどのお話の中にもございましたけれども、こういった公庫がこれからの業務を段階的に縮小していく、そして独立行政法人に移行していくという一つの流れの中で、具体的なアクションプログラムが明確になっていない、それを早急に明確にして、公開をしてほしいというような趣旨のお話があったと思うんですけれども、具体的に、アクションプログラムのその中身というものはどういうことを期待しておられるんですか。
寺西参考人 縮小ということだけが言われているわけでございまして、これから四年ございますわけですけれども、では、最終的にはどういう形になるのか、それに行く過程で、年度ごとにはどういうふうになっていくのかといったことを、例えば、公庫が直接貸し出しをゼロにするために、その四年間というのはどういうふうに進んでいったら一番いいんだろうかということをやはり示すべきではなかろうかというのが我々の思いであります。
 そうしますと、それを見ながら民間は、我々が代替をしないといけないわけですから、どれぐらい業務が拡大していくのか、どれぐらい人間を張ったらいいのか、どれだけ支店を出したらいいのかといったことがはっきりしていく。そういうことによって、さらに民間がそういったものに代替する力を示していける、こういうことではなかろうかと思っておるので、ぜひ、そういうあらかたの方向感というものでございましょうか、そういったものを示していただければ、それが民間の力になるというふうに我々は思っているわけでございます。
 以上でございます。
一川委員 以上で私の質問を終わらせていただきます。
 御苦労さまでございました。
河合委員長 瀬古由起子君。
瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。
 きょうは、参考人の皆さん、御苦労さまでございます。
 では、最初に寺西参考人にお伺いしたいと思います。
 きょうも最初の冒頭の発言の中で要望が述べられていますし、また、全国の銀行協会で住宅金融市場の改革を発表されたときに、公庫の融資業務の廃止といいますか、融資業務は原則行わないと明確にしてもらいたい、こういう要望をされていると思うんですね。
 民間金融機関がこの長期、低利、固定の融資業務に踏み込んだ場合に、なかなかうまくいかないということもあり得るだろうと私は思うわけです。そういう場合には、この法案そのものは私たちは反対なんですが、これを踏み込んだ場合に、例えば民間金融機関がうまく機能しないという場合には、公庫がやはり融資を行わざるを得ない、こういう問題が出てくるんじゃないかと思うんですが、その点いかがでしょうか。
寺西参考人 まずもって、住宅ローンの位置づけということを先ほどお話ししましたけれども、やはり我々にとって非常に重要なマーケットであった、過去もあった、それから今後もあり続けるというお話をさせていただきました。
 なぜ住宅金融公庫はそれだけ大きなプレゼンスになったのかということが一つあるわけでございますけれども、それは、ここまで議論されておりますように、三十五年という長期、固定、低利のローンが提供できたということでございます。それは、議論のもとには、ある意味で国民負担を前提としてそういったものが成り立ったということである、こういうふうに思っておるわけであります。
 そういった意味で、我々としましたら、今議論されております証券化市場といったものが整備されると、我々が、三十五年というのでしょうか、長期の固定のローンをやるに際して、非常に障害になっていたリスクのヘッジをすることが具体的に可能になってまいりますので、ここの大きな障害は一つ取り除かれるのかな、こう思っております。
 そうしますと、我々の大きなマーケットで、将来もこれにかけて経営資源を投入しようというマーケットの中で障害が取り除かれていくということであれば、当然、我々がそこに経営資源を配備しているわけですから、きっちりとしたものができ上がっていくというふうに、我々もそれをやる責務があるとも思っておりますし、それは可能であろうというふうに思って、そういうことを御提案させていただいているということでございます。
 以上でございます。
瀬古委員 ある意味では、証券市場がどうなっていくかという問題もありますし、まだ日本はそういう点でアメリカのような状態ではありませんので、ある意味では、うまくいかない場合の対応、いかなくなったときにはもう何ともしようがないという事態では困るわけで、そういう点で、住宅金融公庫、これは独立行政法人なんですが、一定の役割がこの中に、今回、法案の附則の中に一点入っているという意味は私はあると思うんです。
 とりわけ不安だと思うのは、国民の皆さんが不安だというのはやはり民間金融機関への信頼の問題だと思うんですが、今でも不良債権の処理という形で、先ほども出ておりましたけれども、厳しい貸し渋り、貸しはがしというのがかなり指摘をされているわけですね。住宅ローンでも、実際にアンケートなども見ましても、金融機関はかなり厳しい選別融資が行われて、金融機関からはねられた、もちろん低所得者に何が何でも貸せというわけじゃないですが、とりわけ、商売の方だとか女性だという理由でなかなか難しい、こういう選別もされているという実態も出されております。
 今後、金融情勢がどうなっていくかというのはありますが、例えば、高金利になった場合に、リスク回避のために、融資の選別というのはやはり強くなるということも当然あり得るんじゃないかと思うんですが、その点は、ないと言える保証は何かありますでしょうか。
寺西参考人 冒頭先生から申されました、金融機関に対する信頼が欠如しているからだというのはもう身にしみて感じておりまして、これを回復していくのが今の金融、特に証券業務を預かっているものの経営者の務めだろう、こう思っております。その背後にある不良債権の問題についても、我々は二年間で健康体にしようということもお約束させていただきまして、いろいろなところで最大限の努力をしてきておるということでございますので、ぜひ御理解をいただきたいと思っております。
 高金利になったときに、では、何が起こるのかというようなことでございますけれども、逆に、高金利になれば長期固定金利型のローンといったものが、高金利になるぞと皆さんが思ったときにそういったものの需要が物すごく出てくると私どもは思っておりますので、そういうために今こういう新しい枠組みをきっちりとつくり上げておくということが非常に大事なんじゃなかろうかな、こう思っております。
 私どももそのために、微力でございますけれども、今まで、半年にわたって住宅金融公庫さんと具体的な話もさせていただいておりますし、ぜひそういったものをこれからも整々と推し進めたいな、こういうふうに思っているところでございます。
 以上でございます。
瀬古委員 では、大泉参考人にお聞きいたします。
 今回の改正による公庫の支援業務というのは、私は、やはりリスクは公庫、独立行政法人の組織が引き受ける、そうすると民間金融機関にとってはかなり有利な、至れり尽くせりと言うとちょっとあれなんですけれども、かなり有利なやり方が持ち込まれると思います。
 今、寺西参考人に対して聞いた懸念なんですが、つまり、リスク回避のために高金利を押しつけられることはないだろうかとか、選別融資の強化が行われるおそれ、こういうものについてどのように考えていらっしゃいますでしょうか。
大泉参考人 民間金融機関でございますから、一方で社会の公器でございますけれども、やはり採算性とかあるいはリスク回避ということでいえば、言葉はともかく、選別あるいは融資の制限あるいは割り増し金利というふうな対応はあるんじゃないだろうかと思っております。そういう懸念を持っております。
 従来、金融公庫自体が、公庫融資は民間の住宅融資に比べて相対的に低所得層に対して融資を行ってきたということを強調しているわけですね。もし仮に、その公庫融資が次第に縮小あるいは廃止というふうになりましたらば、では、それにかわって民間融資がその機能を代替できるような仕組みを考えていかなきゃならないと思います。
 それは銀行自身の努力でもあるわけでしょうけれども、同時に、例えば今日証券化市場とか住宅ローン債権市場が高度に発展しているアメリカでもやはりこういう融資の選別が問題になっておりまして、そういうものに対処するために、いわゆる地域再投資法というような法律がございまして実施されてもいますね。そういうような融資差別、選別に対する監視であるとか誘導のシステムというものも考えていかないといけないんじゃないかというふうに考えております。
瀬古委員 今アメリカの例をお話しされたんですが、今回の制度は、アメリカのモデルといいますか、かなりそれを持ち込んだというように言われておりますが、今大泉参考人が言われた選別的なそういう融資がアメリカでどういうように行われているのか。また、具体的に、実際には金融情勢次第ではアメリカの場合にはかなり国民負担という形でツケが回ってきたというふうに指摘もされています。その点は先生の方はどのように考えていらっしゃいますでしょうか。
    〔委員長退席、赤羽委員長代理着席〕
大泉参考人 まず、融資の選別ということに関しましては、アメリカの場合には、一つのアメリカ社会の問題点として、いわゆるマイノリティーであるとかあるいは低所得層が広範にございますので、そういう形でもって融資の選別、差別が非常に深刻化していることが一方でございます。
 それともう一つ、アメリカにおいて民間市場に大きく依拠した格好の住宅ローン市場が非常に発展している、高度に発展しているということなんですけれども、その一方で、やはり市場の変動リスクというものに対する対応という点でも、これはこれで力を入れているところでございます。例えば、証券化に対する債務の保証、保険機能というものをアメリカの連邦住宅庁など政府機関が担っているんですけれども、そういうものに対するいわゆる信用リスクの深刻化の中で、連邦住宅庁などが行っている代位弁済というふうなものも相当の規模に上っているといったことがございます。
 ですから、市場に依拠したローンの仕組みということを考えていく場合には、リスク管理という点では相当しっかりしなきゃならないし、やはりそれ相当のコストというものをアメリカ自身もかけているということだと思います。
瀬古委員 八田参考人にお伺いしたいと思うんです。
 投資家へのリスクの分散という問題があるんですが、例えば投資家といっても、大半は機関投資家、民間金融機関などが多いと思うんですが、そういうところだと思うんですね。そうすると、一般の投資家とは違って、かなり情報はしっかり持っていらっしゃる。そうすると、金利の動静というか金融情勢によっては、その債権を買わないというか、違うものに振り向ける。有利なものにどんどん投資家というのはかえますから、そういう面では、最終的には金融情勢によってはかなり公庫が抱えちゃうといいますか、そういう公庫の独立行政法人なんですが、こういうところが自分のところで抱えて、最終的には国民の負担という形になってこないかどうか。この点はいかがでしょうか。
八田参考人 従来、金融公庫というのは、不況のときには景気対策だから貸さなきゃいけないといって随分無理して貸し出す。景気のいいときにも、今度は、普通なら金利が高いわけですけれども、安定的な住宅供給を続けなきゃいけないといってちゃんと貸し出していた。
 私は、好況時に安定的に貸すんだというのはむちゃくちゃだと思うんですね。要するに、好況時には住宅市場はうんと縮むべきだと思うんです。民間の企業が例えば投資のために建設業者を必要としている、そのときに何で住宅をわざわざ建てる必要があるのかということです。
 今おっしゃった、金利が高くなったときには民間の投資家は有利なものに買いかえていくだろうということもおっしゃるとおりで、だから、この住宅の証券も当然金利が高くならなきゃいけないわけですね。それと競争するために高くならないといけない。それだけ金利が高くても、例えば地価が上がる、住宅の価格が上がるから買いたいと思う人は、ローンを組んで買えばいい。
 しかし、基本的には、金利の高いときには住宅の市場というのは従来に比べたら縮小すべきだと思います。そこで金融公庫が直接供給なんてことをしたらとんでもない話で、それこそ、後で期限前償還リスクで政府の負担がおっしゃるとおりふえてしまうといいますか、そこでぐっと我慢で、貸し出すべきでないと思います。
瀬古委員 では、松原参考人にお伺いしたいと思うんです。
 参考人のお話の中では、例えば、政府が国民の住宅取得を促進するという政策目的が見直されるべきだということなんですが、では、住宅ローンを民間に担わせるということになりますと、もう政府は住宅政策を持たなくていいのか。ある意味では、心配しているのは、今までの住宅政策が市場任せにならないかという点で、その点がどうかということです。
 とりわけ、私はこの住宅金融公庫がまだ必要だと思うのは、もちろんいろいろ改革しなきゃならないと思うんですが、やはり今まで借りているといいますかこの公庫を利用している人たちが、例えば四百万以下が二〇%ぐらい、六百万以下が四一%、合わせて六百万以下の方が六割を占めているという点でいいますと、低所得の方がかなり公庫を借りているという状況も一定あると思うんですね。
 そういう意味では、まだ公庫の果たす役割が重要だし、また現在、誘導居住水準をまだ満たしていないというのが五割ぐらいありまして、そういう点ではまだ住宅の質的な向上というものも必要だというふうに思うんですね。もちろん、住宅政策でいえば、公共住宅がどんどん縮小している中で、無理してみんな家を買わざるを得ない、つくらざるを得ないということがあるんです。
 そういう意味では、やはり住宅政策というものをきちっと持つという点でいうと、この今回のスキームは、結局そういうものを放棄してしまうということにならないのかどうか、その点、いかがでしょうか。
    〔赤羽委員長代理退席、委員長着席〕
松原参考人 私は、政府の今までの住宅政策を私自身がどうとらえてきたかというと、やはり、高度成長期を中心に都市部等の住宅需要が物すごくふえた。しかし、その段階では、民間の金融機関は主として企業への融資を中心としていて、なかなか個人の二十年、三十年というローンに回すべき資金がなかった。資金自体が逼迫していました。それから、例えば住都公団的に言えば、大規模な宅地開発をするような民間のディベロッパーがそろっていなかった。そのような時期においては、国民に対して、民間では資金も供給できない、それから一種の団地みたいなものも供給できないという段階においては、住都公団も住宅金融公庫も、それから地方の都道府県の住宅供給公社も、非常に役割を果たしてきたということは間違いないと私は思うんですね。
 それが現状においていかなる役割を果たすべきかというところはしっかりと再検討すべきだというのは、当初ずっとお話ししてきたわけです。
 その点からいきますと、今の住宅金融公庫その他の融資は、おっしゃるように八百万円以下が大宗を占めておりますけれども、しかし、年収に事実上上限がなくて、物すごく年収があっても、二・八%だと思うんですが、その金利でお金が借りられる。かつ、その制度を維持するために、毎年四千億円以上の補給金等を政府が税金としてつぎ込んでいるわけです。
 ですから、その意味で、私の考え方は、やはり抜本的なところでしっかり組織自体を全部見直すべきだ。そこから先は、もしかしたら先生と意見が近いかもしれませんけれども、四百万とか六百万といったような低所得の方で本当に民間の金融機関が融通が困難とするような層に対して、では、政府はこれから先どういう住宅政策をなすべきかというのは、これからしっかり議論すべきだ。しかし、少なくとも、住宅金融公庫といったような組織を通したりするよりは、その他の、減税とか、先ほど申し上げました地方、地域での住宅取得促進政策等々を抜本から見直した上でなすべきだ、こう考えております。
 政策的な必要は、そういう低所得者については恐らく必要だろう、こういうことです。だからといって、住宅金融公庫を残せという議論には恐らく私はくみすることができませんけれども、政策の必要性は私は感じています。
瀬古委員 ありがとうございました。
河合委員長 原陽子君。
原委員 社会民主党の原陽子です。
 きょうは、貴重な御意見、どうもありがとうございます。よろしくお願いします。
 きのうの質疑の状況を聞いていて、幾つか疑問に思った点があったので、四人の方に御質問をさせていただきたいと思います。
 昨日、質疑の中で、どなたかの御質問に、政府として、今回の法改正を住宅政策の転換であると考えてはいないということをおっしゃっておりました。
 そうでないとすると、今回の法改正は二つの側面を持っていることになると私は思っております。その一つが政府関係金融機関、これは九つある政府関係の金融機関の改革という側面と、もう一つが特殊法人改革という側面であると思います。
 そこで、まず最初に、四人の方に御質問をさせていただきたいんですけれども、政府関係金融機関の改革という観点からいいますと、小泉改革で言う先行七法人の中でこれが初めての金融機関の改革になってくると思います。そうした意味でとても重要な意味を持ってくると思っていますので、この先行七法人として取り組む意味というものをどのように考えていらっしゃるかという点と、今回の法改正は民業圧迫などという指摘がされてきたことへの解決策になっていくのか、また、どのような問題点が残っているのかという点をまず四人の参考人の方それぞれにお尋ねをしたいと思います。
寺西参考人 今お尋ねの件、政府系金融機関のあり方としてどうとらえたらいいのかということでございますが、個人的な考え方として申し述べさせていただきますと、昨年の十二月に経済財政諮問会議が取りまとめました政策金融改革についての前提となった政策金融の抜本的改革に関する基本方針というのがございますが、その中で、政策金融の活動領域につきましては、公益性、金融リスク評価等の困難性の二点から整理されるべき、こういう書き方になっております。
 非常にわかりづらいので、私流に理解しておるところは、公益性というのは政策面での重要性の大小というようなことだろうと思いますし、金融リスク評価の困難性という点でというのは、民間でかわることができるのか、こういうことではないかなと私なりに思っておるんですけれども、そういったところから判断すべきだという判断材料が示されているということであります。
 そういう意味で、住宅分野におきます公共性につきましては、我が国の住宅の質あるいは量の充実が進む中で、災害復旧という特殊な例外を除いて、政策金融の関与する領域が徐々に狭まってきている、縮小している、こういうふうに我々は認識をしております。
 一方で、金融リスク評価等の困難性、民間で代替可能なのかということにつきましては、証券化市場が未発達な現状を考えますと、まだ政策金融の果たすべき役割といったものが残っているということではないかと思っておるんです。それをやるべきところが、今議論になっている証券化市場といったものをどうやってつくるかという議論であろうと思っております。
 住宅金融分野に関しましては、経済財政諮問会議の基本方針であります基本的に民間へゆだねるということでありますし、それと同時に、証券化などによりまして市場化を強力に進めるとされている部分に当てはまると私は理解をしておりまして、今回の法改正といったものはまさにこれに該当するのではないかなと思っております。
 今後、あわせて、段階的に縮小というふうな方向感が出ております融資業務につきまして、どのように改革を進めていくのか、具体的な行動計画が示されて、公庫改革が着実に進展されるといったものをぜひ期待したいというふうに私は考えております。
 以上でございます。
八田参考人 まず、政府がどういうときに市場に介入すべきかということですけれども、基本的には、市場が失敗する場合だと思うんです。市場が失敗する場合というのは、例えば公害が発生する場合なんというのは、市場に任せておいたら垂れ流ししますから、だめだ。それから、橋や道路のような公共財も、民間に勝手につくれといっても、つくれるわけがない。
 この場合、金融の場合には、結局、規模の経済だと思うんです。ある程度のまとまりがないとできないというときに、政府が介入する根拠があると思うんです。
 それで、郵便貯金なんというのは、ある意味では、昔はほかの金融機関がないわけですから、全国のネットワークというものが郵便貯金で初めてできたわけで、例えば、私は大学に入ったのが昭和三十六年ですけれども、そのときには親から仕送りを銀行でやってもらったんですけれども、みんなから冷やかされて、銀行を使っている人なんてだれもいなかったんですね。みんな郵便だったわけですよ。だから、消費者が普通に銀行に行くというようになったのは、その後のことになるわけですね。したがって、今のように銀行が使われるようになったときに、郵便貯金の役割が昔から変化するというのは当然のことだと思います。
 それで、住宅金融について言えば、従来型の、最終的には住宅ローンを郵便貯金の預金者が負担するというのは、要するに、リスクの観点からも、機関の観点からも全くのミスマッチで、これを投資家に対してきちんと整理整とんして証券化して提供してやるというのは、リスク管理を合理的にやる一番の近道だと思います。
 その意味で、今回の政策転換というのは、いつかはしなきゃいけないことだった、そしてまた、それができるようになったというのは、結局はファイナンスの技術とコンピューターが発展してこういうことが技術的に可能になったということだと思います。
 だから、私は、全般的な政府系金融機関の改革ということを位置づけるときに、それ自体の背景に、そういう技術の進歩だとか、それから金融機関自体が大きくなって昔のような規模の経済を郵便局に求める必要がなくなった、そういうことがあるんだと思います。
 以上です。
松原参考人 住宅金融公庫とか政府系金融機関の問題を含めて、今回の改革の基本的なスタート点というのは、私は、やはり官民の役割分担の議論だったと思うんですね。どこまでが政府がかかわるべきか、どこまでが民間でいいか。官民の役割分担は、民間でできることは民間でと、小泉さんが出る前から、これは既に政府が閣議決定しているわけでありまして、ですから、今回の住宅金融公庫の改革についても、官民役割分担の議論の一環としてやるべきだと私はずっと考えてまいりました。
 その意味で、今回の法律案が、官民役割分担の議論ではなくて、当面、住宅金融公庫を廃止するかどうか、廃止するというところで議論されているところを、私は、スキームとしてはおかしい、こう思っているわけです。
 具体的にどういうことかというと、現在、住宅金融公庫のマーケット、融資残が七十兆円ぐらいだとしますと、そういうところに、政府は、長期固定ということで今まで政策的にそういうマーケットをキープしてきた、こういうことだと思います。それを、やはり本来は、住宅金融公庫という組織をどうするかではなくて、そういう七十兆円というマーケットから、官民の役割分担の趣旨からして、政府が引くのか引かないのかというところで議論すべきだったと思うわけです。
 今回の改革案は、七十兆のマーケットから基本的に政府は引かない、住宅ローンの証券化支援業務を通して、民間ではできないから政府がそこに出ていくんだということですから、そういう意味で、住宅政策に基本的な変更がないというのはまさにそのとおりで、逆に、その点に対して私は基本的に反対だという立場であります。
 ただ、繰り返しになりますけれども、先ほど先生から御質問あったんですが、では、ゼロでいいのかという話はちょっと別で、例えば住宅金融公庫が年収五百万以下しか融資しないということを今まで厳格に守っていれば、四百万掛ける例えば五だとしたら二千万が融資の最大額ですから、こんな大きな問題にもならなかったかもしれない。それから、毎年毎年四千億みたいなお金をつぎ込んで、場合によっては非常な富裕層の支援にしてくるような、そういうこともなかったかもしれない。
 ですから、私は、そういう住宅政策として、今七十兆あるような長期固定というそのローン提供に政府がかかわるべきかどうかというところで見るべきで、かかわるという今回の法律案のスキームに対しては反対で、そうすると、公庫自体がなくなっても全く同じような機能を、ごめんなさい、全く同じというのは言い過ぎです、相当似たような機能を新しくできる独立行政法人が担うということになると、結局、官民の役割分担の見直しには今回の改革はつながらない。
 それから、先行七法人の議論ですけれども、これは、政府系金融機関の中で何で住宅金融公庫が選ばれたのかということについての合理的な根拠は恐らくないような気がしていまして、抵抗が強いところからやっていくぞみたいな、モニュメント的な意味合いでなっちゃっただけのような気もしておりまして、そのことに恐らく経済的な合理的な根拠はない。ただ、先行でやる以上は、次に続くもののモデルになりますから、相当慎重にしっかりした改革を示さなければいけないとは思っております。
大泉参考人 政府系金融機関という場合に、これまで二つの役割があったと思うんです。
 一つは、特に産業金融という面、こちらの方は、日本が高度成長を経て今日に至って、こういう面での公的金融機関の役割というものは既に終わっているというふうに思っております。
 ただ、もう一つの側面、つまり、住宅融資を含めた個人金融であるとか、あるいは中小企業金融というふうな面での公的金融機関の役割というものは、今日も非常に大きいし、国民の支持も得ているというふうに思っております。
 そういう意味で、今回、国民の方から見ても非常に不安あるいは批判が大きいこういう公庫の廃止というところがまずぽっと出てくるというのは、これは非常に問題を感じております。そういうふうに思っております。
原委員 ありがとうございます。
 次に、八田参考人、松原参考人、大泉参考人にお尋ねをいたします。
 先ほどからアメリカのモデルをお話しされていたと思います。アメリカで成功したやり方が必ずしも日本でうまくやっていけるかということは、まだわからないというか、どうかなというふうに思うところもあります。
 例えば、ドイツやフランスではまだ住宅への直接融資の政策が行われている中で、日本とアメリカと欧米の住宅政策の比較検証のようなものについてどのようにお考えになっておられるのか、三人の方にお伺いいたします。
八田参考人 住宅政策一般のことか、それとも、住宅金融のことか、それはどうでしょうか。(原委員「済みません、金融のことです」と呼ぶ)はい、わかりました。
 それでは申しますと、ある意味では、直接金融を例えば日本が続けていたとして、今のような低金利にならなかったらば、恐らく、現在我々が直面しているような問題は起きなかっただろうと思います。かなり非効率で、リスクがきちんとヘッジされていない仕組みではありますが、それはそれなりにシステムとして動き続けたのではないかと思います。恐らくドイツとかフランスもそういう状況なのではないかと思います。しかし、これだけ低金利になって期限前償還が非常に大規模に出てきて、要するにこのシステムというのは根本的に欠陥があるんだということが日本ではわかったということなのではないかと思います。
 それから、アメリカのシステムは、今の証券化支援業務の体制が非常に力を持ち出したのは現実的に言って八〇年代以降ですから、その前は例のセービング・アンド・ローンズ・アソシエーション、貯蓄組合というような小規模なものが全国各地でやっていたわけです。そして、それに対してある程度の政府の支援もあったわけですが、それも結局はリスクの管理の仕方がうまくいかなかったためにつぶれてしまった。そして、セービング・アンド・ローンズ・アソシエーションというアメリカの住宅金融の基幹的な部分がつぶれて今の体制になったということだと思います。
 したがって、今のアメリカの体制が、こういう証券化支援業務を通じてリスクヘッジをきちんとした仕組みに持っていくというのが基本的には長続きする方法だと思うんですが、それにどこの国がどういうタイミングで気がつくかということの違いが現在の政策の違いに反映しているんだと思います。
松原参考人 私は、こういう官民の役割分担の視点からいきますと、このような公的金融の各国政府の取り組みというのは、これは、郵貯的なもの、ドイツでは自治体銀行等がありますが、必ずあるわけです。ただ、問題はそのウエートであると思っておりまして、例えば郵貯が三分の一を占めている、それから住宅金融公庫が七十兆円の残を持っているというのは、これはどう考えてもオーバープレゼンスである、こういう視点に立っております。
 それから、諸外国の例との比較で私は注意しなければいけないと思っておりますのは、やはり、日本の資金の動きが証券中心で動いてきたのか、それとも預貯金で動いてきたのかという差をもう少ししっかり見なければいけないと思っておりまして、アメリカの場合には、証券に依存する率がもともと住宅金融に限らず多かったわけでありますから、このような制度が比較的うまくいった原因があると思います。
 しかし、繰り返しになりますが、日本の七十兆円の住宅金融公庫の残は、主として郵便貯金を、厚生年金等を原資としているわけですから、そういう七十兆円を預貯金から証券の方にシフトさせていくということに関しては、そう簡単にアメリカのようにスムーズにいくかどうかということについては私は疑問を持っている、こういうことであります。
 それから、八田参考人が基本的な欠陥ということをおっしゃいまして、この基本的欠陥というのは、要するに、長期固定であれば別に、長期固定のどこが基本的欠陥かというと、繰り上げ返済が自由であるところが最大の欠陥なわけであります。金利が低い場合には、その欠陥が表に出ない。逆に、今住宅金融公庫が非常に大きな問題を抱えちゃったのは、金利の低下局面で、高い部分の繰り上げ償還で大変な財政的な困難になったわけです。
 私が繰り返し申し上げたいのは、そういう基本的な欠陥というのをやはり新しい証券化支援業務も抱え込んでいるんだ。とりわけ、高金利の時代のときに本当にこのスキームがきっちりと機能するのか。それだけのリスクに対して、日本の比較的証券に向きにくい投資環境の中で、そういう高金利リスクに対する、高金利のときの、今言った基本的欠陥がもろに出る高金利の状況の中で、潤沢な資金が集められるのかという具体的な問題は、とりわけ日本で強く出てくる可能性がある、こう考えています。
大泉参考人 住宅金融のシステムの中で、公と民の役割分担というお話は、これは先ほど先生お話しのように、それぞれ、やはり住宅政策全般との関連で歴史的に決まってきたと思います。
 確かに、住宅金融の分野では、全体的に、金融の自由化あるいは証券市場中心で資金を集めて運用していくというふうな方向に行っていることは共通の傾向なんですけれども、ただ、他方で、そのように住宅金融の分野でも自由化が進んだとしても、欧米といいましても、住宅制度あるいは政策システム全体で見れば、やはりヨーロッパとアメリカは違うということだと思います。ヨーロッパの場合には、もっと公的な関与というものが、公営住宅とか社会住宅とか、あるいは民間借家に対する政策だとかというふうな形でもって相当整理されてきているわけです。
 日本の場合には、既に住宅の量そのものは満たっている、住宅の不足は解消している状況なんだけれども、ストックの質の改善をこれからやっていかなきゃならないということですよね。そうした場合に、基本的な問題点というのは、日本の場合には、ヨーロッパと違って、公的な関与というものが十分でない形でもって、いわば自力でもってどんどん量をふやしてきたというとがめが今来ているんだというふうに思っているんです。
 そういう意味では、これからの住宅政策を考える場合でも、アメリカのようなやり方もあるかもしれないけれども、やはりヨーロッパのやり方というものをもっと真剣に学ぶ必要があるし、そういうことの中で日本の住宅政策というもののあり方を考えていくという視点がやはり要るんじゃないだろうか。
 具体的にそれが住宅金融の分野でどう問題になるかということにつきましては、冒頭に私が申し上げたような、やはりどういう所得階層に公的融資をとか、あるいはストックの質の向上のためにどういう基準でやったらいいのかというふうな問題があるんだ、課題があるんだというふうに申し上げたいと思います。
原委員 終わります。ありがとうございました。
河合委員長 金子善次郎君。
金子(善)委員 保守新党の金子善次郎でございます。
 参考人の皆様には大変御苦労さまでございます。
 最初に、寺西会長さんの方にお伺いしたいと思います。
 今、大変な不況の中で、リストラ等によりまして失業されたということで、住宅ローンの返済が大変困難になっている方がふえているというようなこともよく耳にするところであります。現在、銀行、民間金融機関の方で、こうした住宅ローンの返済についての相談とか、あるいはその他のいろいろなことがあるのではないかというふうに思います。返済条件の変更等も要請としては来ているのではないかと思うんですが、そういうことにつきまして、民間金融機関全体としてどんな方向で対応を現在なさっているのか、その点につきましてまず御質問をしたいと思います。
寺西参考人 先般の回答と重なりますが、銀行界全体としてローンについてどうやっているかということをまずお話しいたします。
 我々のところは、全国に銀行協会、いわば支部というふうにお考えいただいたらいいと思うんですが、ございまして、そこに銀行よろず相談所というのを設けておりまして、ここで、カウンセリングサービスと称しておりますけれども、ローン、例えばほかのローンも含めてでございます、住宅ローンもでございますが、返済に困ったとかいうようなことも含めまして、相談をさせていただきながら、お客様の問題解決を支援させていただいているというところでございます。
 これは全体の動きでございまして、個別の銀行で申し上げますと、やはり制度としてそういったことをやるんじゃなくて、実際にはケース・バイ・ケースで、お客様が支店においでになっていろいろな御相談をお受けしているということでございまして、それによって、返済が非常に難しくなるというようなことに際しましては、返済プランの御変更といったことを御相談に応じながら検討し、やらせていただいているところでございます。
 以上でございます。
金子(善)委員 ただいま、窓口にお客さんが来れば相談に応ずるというのは当然のことだと思うんですが、会長さんの実感として、どの程度、どういうような、そうした今大変な状況にある、現実にバブルの時代に高額な住宅を取得した方々もたくさんいらっしゃるわけでございます。そうしたときにローンを組んで、この問題というのは非常に長期にわたった問題というふうに我々は見ているわけですけれども、その点について、実感としてどの程度、そうした方々の要請に応じた弾力的な対応をされている。相談に応じている、これは窓口でいろいろお話を聞けば当然そうだということになると思うんですが、どんな実感を持っておられるか、まずそこをお聞きしておきたいと思ったわけなんです。
寺西参考人 具体的に我々がリスケジューリングをやった数字、今持ち合わせていないんですが、例えば住宅ローンで延滞が起きる、例えば決められた金利だとか返済が滞るというふうなことの数字とか、また、結局それがだめでデフォルトが起こるというようなことを、ずっと数字を追っていきますと、では、近時、物すごくそれが急増しているかというと、決してそうではないということでございまして、その辺の数字はある意味で安定しているということでございます。
 ただ、そこは、皆さんがやはり自分の住む家というのは最優先でいろいろなことをされているという裏腹のところもあろうと思っておりますので、その数字の裏に、今先生がおっしゃったようなことは当然我々も頭の中に入れながら運営していかなくちゃいけないな、こういうふうに思っているところでございます。
金子(善)委員 できるだけ、現実に今の経済状態を考えますと、それぞれローンを抱えている方々は大変な状況にあることもこれは現実の姿でございますので、民間金融機関として、それぞれの体力の問題もおありだとは思いますけれども、そうした弾力的な取り扱いということをぜひともお願い申し上げておきたい、このように要望いたしておきたいと思います。
 そこででございますけれども、きょうずっといろいろなお話があったわけでございますけれども、実態面についてお聞きしたいと思います。
 民間金融機関として、住宅金融公庫そのものを廃止して、独立行政法人化、しかも融資業務については、これから民間金融機関の動向を踏まえた上で最終的に結論を出していく、これが政府の基本的な立場になっているわけでございますけれども、実態面でお聞きしたいということを申し上げましたのは、確かに住宅ローンへの取り組みを強化しているということは我々も承知をしているわけでございますが、その場合に、変動金利のもの、あるいは五年以内の短期固定金利というようなものが中心で、十年を超えるというようなものは、商品としてはあってもほとんど使われていないんではないかというようなことも耳にするわけでございます。
 やはりいろいろな御意見がおありだと思いますけれども、基本的には、住宅金融公庫がこれまで評価されているものは、長期固定金利というようなことでの根強いニーズがあった、これが実態じゃないかと思うんですが、この辺、どういうふうな状況か、寺西会長さんにお伺いしたいと思います。
寺西参考人 具体的にお答えを申し上げますと、私どもの銀行の住宅ローンの取り組みを見ていますと、新規の取り組みベースで申し上げますと、昨年の上半期のケースしか持っていないんですが、固定と変動の割合というのは八対二でございます。ですから、固定が八で変動が二ということでございます。
 固定金利商品のうち大半は、先生が今御指摘いただきましたように、固定の特約期間が二年とかあるいは三年の短期固定型というのが大半でございまして、やはり当面は低金利の状態が続くというような見通しを持っておられるお客様が大半でございます。そうしますと、足元の返済負担を軽減するというような観点からしますと、どうしてもそういうローンが選択されているのかなというのが今我々も思っているところでございます。
 一方で、先生が今おっしゃいました長期固定金利型のローンというのもニーズというのは潜在的にも大きいんではないかと思っておりますし、特に金利が上昇局面に入る過程ではかなりの需要が顕在化するということになろうというふうに思っております。
 そういった観点からしますと、今議論されておられます証券化支援ローンといったものができるということによって、証券化市場ができて、我々がそういったリスクをヘッジできるようになれば、こういう長期固定の住宅ローンを安定的に、また継続的に提供することができるということで、我々としても非常に期待をしておりますし、仕組みが円滑に立ち上がるように我々自身の努力も重ねていきたいな、こう思っておるところでございます。
 以上でございます。
金子(善)委員 そこでお伺いしたいと思いますけれども、今度、住宅金融公庫存続時代から、先行的に証券化支援業務というものが始まる、これは民間金融機関の御要望も踏まえた上での制度づくりだというふうに承知しているわけでございますが、要は、そういうものに対して、民間金融機関全体としてどういう姿勢で臨まれるのか。御要望があったということを踏まえて制度化するということであれば、当然積極的に取り組まれるということだと思いますけれども、その辺、会長とされまして、その決意はどういうふうなことでおありなのか、その辺についてお伺いしたいと思います。
寺西参考人 具体的に申し上げますと、私ども民間金融機関は、この新しい証券化スキームの検討が始まったところで、既にもう過去半年にわたりまして、住宅金融公庫さんと協力しながらスキームの検討をやらせていただいているということでございまして、それを見ていただいても、我々の意気込みというんでしょうか、取り組みの基本的な姿勢がおわかりいただけると思っておりまして、これがスムーズにスタートできるように民間金融機関として力を入れてまいりたい、こういうふうに思っております。
 以上でございます。
金子(善)委員 松原先生にお伺いしたいと思います。
 住宅金融公庫、我々非常に、これが廃止になって融資業務から撤退するという場合に、一つ大きな心配をしておりますのは、これから、融資業務を廃止するということではなくて、民間金融機関の動向を踏まえて最終的に決断するということでございますけれども、いわゆる災害時、災害の問題とか、どういう災害が我が国にこれから襲ってくるかもわからない、台風やらいろいろ地震の問題とか心配される面があるわけでございます。
 そうした要はセーフティーネットとしての公庫の役割、先ほど先生のお話にもございましたので、いわゆる公的住宅融資というものは否定される立場ではなくて、余りにも過大になっているんじゃないかということが問題だということを言われたわけでございますが、そのいわゆるセーフティーネットの問題と、もう一つは、これもこれまで取り上げられておりましたが、クオリティー、質の誘導、こういう面で、我々が実態的に承知しておりますのは、公庫融資とかという場合に、いろいろ条件つけられてこうだというようなことをよく聞くわけでございますけれども、民間にすべてこれから任せるというふうなことで大丈夫なのかどうか、その辺について先生のお考えを聞きたいと思います。
松原参考人 まず、災害等のセーフティーネットでありますけれども、私は、いつ起きるかわからない災害のために、大きな組織をそのために維持するという必然性はないと思っております。
 例えば、災害が起きたときに、この前の阪神大震災であれば、関西地区の金融機関に対して条件を非常に緩めた特別融資枠を政府が与える、これは中小企業のときにもやっているわけですから、そういうような臨機応変の措置で代替できるはずでありまして、そこに組織を置く必然性はない、こう思っております。やるべきであるけれども、組織は必要ない。
 それから、もう一点の、住宅の質の確保の問題であります。
 住宅金融公庫の融資を受けるために、今まで高い品質の住宅が提供されてきたのはもう間違いないわけであります。しかし、私は、それを公的な組織で必ず担わなければいけないのかというと、そこは疑問に思っておりまして、民間の住宅の品質管理機構とかそういうものを住宅ローンを借りる側が使うのは、これは自分の家を建てるわけですから当たり前でありますし、それから融資する側ですね、今までは住宅金融公庫融資に乗っちゃうような場合が多いわけですから、銀行は余りそこは真剣じゃなかったんですが、融資した商品が欠陥商品であれば担保価値がなくなるわけですから、融資側も当然そういうチェックを入れるようになる。それを公的に担う必要はなくて、もしそこに公的な関与が必要だとすると、民間のそのような品質検査機構に、団体に対して、政府が一定の基準のオーソライズを与える、そういうことでもう十分で、それはマーケットメカニズムで、借りる側も貸す側も、当然それは品質については注意しなければいけないし、それで十分可能だと思っております。基準づくり自体は政府がやらなければいけないと思います。
金子(善)委員 次に、大泉先生にお伺いしたいと思います。
 いわゆる選別融資という言葉が適当かどうかはよくわかりませんけれども、民間金融機関の場合は明らかに、現状においては、この公庫と比較すれば当然選別融資がなされているということをよく耳にするわけでございますけれども、実際のところ、この選別融資というものはなくなっていくんだろうかということが非常に懸念されるところでございますけれども、その点について、先生のお考えはどうでしょうか。
大泉参考人 信用リスクの問題は、非常に絶えず起こり得ます。特に、これから日本が、現在のようなデフレ不況がいつまで続くかということは別にしても、やはり長期的に見て、経済の変動というのは、あるいは成長のテンポの鈍化というものは避けられないことでございますので、あらゆるリスクが高まるという点ではリスク社会だし、信用リスクの管理の問題も非常に難しい問題だと思います。
 ですから、そういうふうな高まっていくリスクを、個別の個人とか、あるいは個別の企業、金融機関が管理するというのには、やはりおのずと限界がありますので、そういうものを共同で管理する、あるいはシェアする、そういう仕組みを設計していかないといけないというふうに思っているんですね。
 ですから、特に今問題にされております住宅分野でのいわゆる選別融資というふうな問題をどう民間金融機関において回避するかということに関しても、これは再三申し上げていますように、民間銀行自身の御努力ということはあるんですけれども、やはり、それを社会的に、あるいは地域の中で監視あるいは誘導していくようなシステム、先ほど申しましたけれども、アメリカの地域再投資法みたいなものをモデルに考えて検討していくということは非常に大事な課題ではないかなというふうに考えております。
金子(善)委員 次に、八田先生にお伺いしたいと思います。
 この証券化支援事業に関連してでございますけれども、利用者の返済負担、これが、住宅ローンの貸付金利というものが恐らく証券化されるというようなつながりからいえば、市場の金利にこれから影響を大きく受けるという制度になっていくんだろうと思われるわけでございますが、利用者の返済負担というものが非常に急激に大きくなっていくというようなことというものは、そのおそれがないのかどうか。それにつきまして、制度論としてお聞きしておきたいと思います。
八田参考人 当初においては、今金利が低いですから、住宅金融公庫からこの支援機関の証券化になって金利が急激に上がるということはないと思います。もちろん、そのリスクに対する正当な対価というものが上乗せされるわけですけれども、急激に上がるということはない。
 ただし、おっしゃるように、市場の金利が高くなったとき、それが反映されるということはあると思います。そして、私は、それが当然であるし、そのときに住宅の金融が縮小すべきだと思っております。金利が高いということは、もうその資金の需要家が競って欲しいときですから、そのときに住宅金融を無理やりふやす必要はないと思います。
 それから、一つだけ、先ほどから議論になっております選別融資の問題でございますが、これは、支援機関が買い取るときの買い取り条件をつけることで、選別融資を減らすことは幾らでもできます。幾らでもできるわけで、例えば女性に対する差別をしないなんというのは当然そこに入れることはできますが、もし、これをどんな低所得者に対しても差別しちゃいけないということも可能ですけれども、それは、もちろんその分デフォルトがふえるわけですから、全体の負担が大きくなって、金利をその分上乗せしなきゃいけないということになると思います。したがって、どこで手を打つかということは政策的な問題だと思いますが、今のスキームで不必要な選別融資をなくすことは十分可能です。
金子(善)委員 時間が参りましたので、どうもありがとうございました。
河合委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、参考人の方々に一言申し上げます。
 本日は、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。大変ありがとうございました。(拍手)
 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時十五分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三分開議
河合委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 午前に引き続き、内閣提出、住宅金融公庫法及び住宅融資保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省住宅局長松野仁君、金融庁監督局長五味廣文君、財務省大臣官房審議官村瀬吉彦君、林野庁次長松本有幸君、住宅金融公庫理事松田広光君、住宅金融公庫理事吉井一弥君及び住宅金融公庫理事井上順君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
河合委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
河合委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大谷信盛君。
大谷委員 大谷信盛でございます。
 引き続きまして、住宅政策、住宅金融にかかわる質問をさせていただきたいというふうに思います。
 今回、住宅金融公庫の役割というものが一体何なのかということが、多分議論をされている中心にあるのだというふうに思いますが、私の今までの議論の観察、そして、唐突に出てきた民営化、民にできるものはすべて民に任すというこの議論というものは、何か政治目的が先にあって、本来の住宅政策というものが欠落をしてしまっているのではないかというふうに私は感じています。
 一つ大臣にお聞きをしたいんですが、これは、住宅金融公庫の今までの機能というものをタイミング的に今縮小していくべきなのかとか、もしくは、総理が、民営化、民間に任していくという大きな方向の中で目玉に挙げたときに、いや、今の住宅政策があって、住宅状況の中ではこのままの役割を継続していくべきですよとか、そういうやりとりは、閣議または閣僚同士の間であったんでしょうか。それをどんなふうに踏まえて、今回、この縮小というような方向で役割を変えていくようになったんでしょうか。まず、そこら辺から教えていただけたらと思います。
扇国務大臣 私は、今の大谷議員の御推察はかなり的確に当たっていると思います。何が当たっているかといいますと、小泉内閣の大前提というものがあって、私自身もこのことを言われましたときに、道路四公団も含めてでございますけれども、すべてを民営化するということに時間がかかるのではないかということが一点。
 それから、特に住宅金融公庫に関しましては、今現実に、戦後今日まで、住宅事情、住宅を建てた戸数のうちの三割を住宅金融公庫によって皆さんが夢を買ってくだすって、今日の夢と希望を与えられたという大きな住宅金融公庫の役割、そういうものから考えて、今現実にまだ返済しつつある人の不安、それから、これから金融公庫を利用してマイホームを取得しようとした人たちの行き先はどうなるのか。
 そういう不安を私は、これは閣議ではありません、直接総理と一対一でその問題を取り上げまして、余りにも急で、不安を与えてはならないという前提で処理させていただきたい、ですから、昨年、すぐにはできない、準備が要る、特に、現実に国民に不安を与えないというその手続をとらせていただくまで考えさせていただきたいし、住宅金融公庫の事情も私は探りたいと思いますからというやりとりをしたことは事実でございます。
 また、すぐ私は、道路四公団も、それから住宅金融公庫も、去年の夏、全公団の総裁に集まっていただいて、それぞれの公団のあり方、今の現状、そして、これをどういうふうにするかという各公団の総裁の意見を全部順次聴取して、その中で私は方向性というものを見出していこうと。
 公団自身の努力と公団自身の行き先と、いかに国民に不安を与えない解決方法があるかということを探ってきた上での法案提出でございます。
大谷委員 大臣が私と同じような心配をしていたということを知って、非常に安心をいたしました。総理の政治的目的のために我が国の住宅政策というものがねじ曲げられては決していけないというふうに議員として思っておりますし、大臣には、ぜひそこのところの御考慮を続けていただいて、しっかりと本筋の政策論で頑張っていただきたいというふうに思います。
 その住宅政策なんですが、今回議論されている、住宅ローンを証券化できるというスキームは住宅金融の部分に入るというふうに思うんですが、住宅金融をどうしていくのかという考えの上には、こんな住宅政策でもってこんな住宅事情を我が国につくっていくんだという政策が上に、先にあるべきだというふうに思います。そのときの整合性というものがどうなっているのかということがこの法案の議論の中では一番のポイントではないかというふうに思っておるんですが、その政策を先にお伺いしたいというふうに思うんです。
 第八期住宅建設五カ年計画、平成十三年から平成十七年までのものが今ちょうど機能をしている最中でありまして、これの途中経過状況というものも知りたいです。そしてもう一つが、中では、広さというものが四つの目玉の柱の中で挙げられておりまして、もちろん、バリアフリーも大事であり、環境も大事であり、健康も大事なんですけれども、四人家族で二十八坪とか、一人家族で大体十うん坪とかというような数値目標を挙げて、平成二十七年ぐらいまでには達成していこうということなんですけれども、これは、現実、どんな手法で達成をさせようとしているのかということを教えていただけますでしょうか。
松野政府参考人 お答えいたします。
 第八期住宅建設五カ年計画におきまして、その中の一つとして、委員御指摘のとおり、広さの目標というものを掲げております。
 翻ってみますと、我が国の住宅事情、戸数面では既に五千万戸ということで、世帯数を一〇%以上上回っているという状況です。戸数の面では既に充足しているわけですが、床面積という観点からしますと、全体平均は戸当たり九十二平米でございます。その中身を見ますと、三大都市圏の借家につきましては、まだまだ四十一平米という全体平均に比べて二分の一以下の水準ということで、大変立ちおくれております。
 このために、この第八期住宅建設五カ年計画の中におきましても、広さの目標というのを設定しております。今お話しになりましたとおり、最終的に、平成二十七年度、つまり二〇一五年という中長期的目標を設定しておりますが、それまでに、全国で、誘導居住水準という望ましい水準の方の数字でございます。
 例を挙げますと、四人家族の場合、共同住宅、マンション型の場合に九十一平米、戸建て住宅の場合に四人家族で百二十三平米、こういうような目標がございます。これを三分の二は達成していきたいということで、その途中年次の二十二年で半数の達成を目標にしたいということでございます。
 住宅市場というのは、公共事業と違いまして、建てる主体がほとんどが民間でございます。そういうことから、公が直接関与するということができないものですから、市場の適切な誘導というのがぜひ必要ということでございまして、住宅取得資金の贈与というような特例措置、あるいはローン減税、それから公庫の融資、さまざまな優遇措置を講じておりますが、こういった税制あるいは融資、それから、市場を補完するという意味で特優賃あるいは公団による優良な賃貸住宅の供給、こういったことによって全体としての水準アップを果たしていきたいというふうに考えております。
大谷委員 その施策はどれぐらいきいているんですか。
松野政府参考人 住宅に関するデータは、御存じのとおり、住宅統計調査ということで五年置きということですので、ここ一、二年のということではすぐに出てまいりません。その時点ごとに計測するというやり方をとっておりますので、今、ここ一、二年どうかというのはちょっと申し上げられない段階でございます。
大谷委員 中長期計画の目標でございますから、それはそのとおりでございますが、何か具体的な例が欲しいというふうに思っています。
 例えば、ローン減税をしたからこれぐらい受注がふえたとか、それを受けて建てる人たちはやはり広目のおうちをつくっているとか、そういう具体的なもので示していくようにしなかったら、何か、言っているだけで終わってしまうんではないかというふうに危惧をしておるんです。
 なかなか政策評価というものは、民間がやると局長もおっしゃいましたけれども、そのとおりでございますので、施主様が個人で、家が広いのが好きな人がいたら狭いのが好きな人もおられるでしょうから、なかなか一概には政府が広い家をつくらなきゃいけないというわけにはいかないんだというふうに思いますが、何か具体的な目玉的な広さを広げるための施策というのが僕はあってしかるべきだというふうに思っていますので、ぜひとも、釈迦に説法かもしれませんが、何か目玉になるようなものを考えられるような努力もしていただけたらというふうに思います。大臣、何かございますか。
扇国務大臣 今局長が言いましたように、少なくとも住宅ローン減税等々、承継税制あるいは生前贈与の税制、先日も税制を通していただきましたけれども、私は先日も申し上げましたように、現実的にどうだという大谷議員のお話でございますけれども、今現実に、第二次ベビーブーマーの人たちが一千万人おります。
 そういう人たちに今度の減税というものがきく、彼らが、平成二十年までに、私たちの計算では、一千万人の第二次ベビーブーマーの人たちが、要するに百万世帯の人たちが子供を一人前にして部屋を欲しくなるということで、昭和四十六年から昭和四十九年、今二十七歳から三十一歳が第二次ベビーブーマーの人たちですけれども、その人たちが少なくとも一千万人いるものですから、平成二十年までに百万世帯が持ち家志向になるという、ああ、そこにもいらっしゃいますか、そうなると思うんですね。
 持ち家志向になりますので、今のこの第二次ベビーブーマーの人たちの平均年収というのが大体四百七十六万でございます。四百七十六万の平均年収でございますと、大体貯蓄しているのが百万だそうでございます。ですから、住宅をつくる場合に、二千万円というのがせいぜいローンで借りられる限度なんですね。けれども、それを親から三千五百万まで贈与できるようにしようということも目安にしておりますので、例えば例を挙げれば、そういう人たちに希望が与えられるような税制というものを今回皆さんに御了承いただいて通していただいたというのも、そういう意味でございます。
大谷委員 さすが大臣。
 結局、目玉というのは、ターゲティングをどこにするか、そのときの手法は何にするかということを具体化していこうということだと思うんですね。
 ただ、津川議員、三十一歳で第二次ベビーブーマー時代ですけれども、貯蓄は何かたくさんおありだそうですけれども、今の話ですと、親がお金を持っている人ということにターゲティングが狭まるわけですから、その辺も御考慮をいただいて、ぜひ頑張っていただけたらというふうに思っております。
 住宅政策で、これは五カ年の中の話をどうやって現実的に実行していくんだという質問を今させていただいたんですけれども、もう一つは、この第八次が終わってからどうしていくんだ、もしくは、この第八次の底流に流れている、広さであったりバリアフリー以外のところでどんな住宅をつくっていくんだ。それは豊かな住宅に決まっているだろう、住環境の水準を上げるんだと言うんですけれども、どうなったら上がるのか、どうなったら豊かないい住宅に日本の皆さんが暮らしていると言えるのかという、その辺の尺度というか政策というか、根底にあるものが何なのかということを知りたいんです。今回、ちょっと住宅政策の根幹みたいなものが議論の中に欠落しているというふうに思いますので、再度確認をさせていただけたらと思っております。
扇国務大臣 先ほど、大まかな目標に関しては局長がお答えいたしましたけれども、もう一度、細部にわたって何が目標かというあえての御質問でございます。
 私たちは、一昨日から議論しておりますように、要するに、今の住まいというものは、一応渡っているけれども、まだ住まいによってゆとりを感じるというところまでいっていないというのが、先ほど局長が言った床面積の狭さでございます。ですから、もう少しゆとりのある、あるいは人間性というものがお互いに尊重できるような床面積というものを確保していきたい、それが、さっき局長が言った床面積の希望のことでございます。
 それから、具体的には、今国民のニーズというものが多様化している。核家族社会になったり、あるいはお年寄り夫婦だけになったりというような、こういう国民の住居に対するニーズというものが多様化しておりますので、その多様化したものにたえ得るような良質な住宅のストックが必要である。それはみんな違うんですね。若い世帯は狭くても二人一緒にいればいいとか、お年寄りは、いや、バリアフリーが必要でありますとか、それぞれの多様化したニーズが必要なので、それにたえ得るようなものにしなければいけない。
 それから、一昨日もお話しになりました少子高齢化社会に対応できる。子供が少なくて年寄りばかりだけれども、段差をなくすとか廊下を広げるとかというような老人が住みやすいうちにしなければいけないとか、あるいは、少なくとも消費者が安心して住宅の売買ができる。このうちは狭くなったけれども、次にかわれるというような、そういうことが外国並みに、大谷議員も外国のことをよく御存じでしょうから、彼らはその年代によって自由に選ぶんですね、学校とか職業とかあるいは家族とか。そういうふうになっていってもいいのではないか。そういう意味で、そういうことをしやすいような環境をつくるということが大事だと私は思っています。
 そのためには、先ほど申しましたような住宅の取得資金の贈与に係る特例措置の税制、これも大事でございましたけれども、金融面での持ち家の取得の支援とか公共賃貸住宅の供給、これが大きな問題でございます。
 二つ目には、先ほど申しましたような住宅のバリアフリー化の推進、それから住宅と保育所等の社会福祉施設との一体的な整備を進める。これは一番社会的に社会構造として必要なことだろうと思いますので、これが二つ目の大事なことでございます。
 三つ目には、御存じのように、職住近接。なるべく住まいと職業とが近くにあって、家庭団らんの時間が持てるようにというのが大きな三つ目の問題でございます。
 四つ目には、住宅の性能表示の制度ということによって、中古住宅とかあるいはリフォームの市場の整備。きのう、おとといも言いましたように、今までは、外国に比べて住宅の品質保持というものが日本はおくれているということも、これはある意味で大変重要なことですので、その四つが特に重要性としては私たちは推進したいと思っています。
大谷委員 もうちょっとで、大臣の決め言葉でございます、ライフステージに合った多様な住宅を供給するという言葉が出てきそうで出てこなかったなと思っておりますけれども、全くおっしゃるとおりでございまして、もう一歩突っ込んで話していただいたら私と同じような思いまで出てきたのかなと思っているんです。それは何かといいますと、今話していることというのは、みんなハードの話なんですよ。家が広い方がいい、家がシックハウスからフリーな方がいい、家がお年寄り用の方がいい、家が子供の多い世帯向けの方がいいと、家が中心になっているんですね。
 今大臣が言いかけてとまったのが、ライフステージに合った家を供給できる。すなわちは、一生のうちにマイホームというのは一回で終わってしまうような固定概念が、今、日本の中にあるわけですね。そうじゃない。それはやはり、若いとき、高齢者になったとき、子供がまだ子育てで手がかかるとき、子供が手が離れて夫婦で改めてもう一度生活を楽しめるとき、一生のうちに三回、四回家が住みかえられる、マイホームがかえられる、そういうのが日本の豊かな住宅事情であり、あるべき姿だというふうに私は思っています。八期の中では全くそれが入っていません。もし九期というものをつくるのであればぜひとも入れていただきたいし、そういうライフステージに合ったソフトの部分での豊かさというものを追求するようにしていただきたいというふうに思っているんです。
 その中で何が必要かというと、まず、住宅がこの国では高いです。井上議員が一度御質問させていただきましたが、年収の五倍が我が国の住宅の平均値段です。アメリカの場合ですと二倍から三倍。要するに、住宅がどうしたら安くなるのか。
 そしてもう一つが、ローンの組みやすさというものがあるというふうに思うんです。前までは、土地を、担保を持っていたらローンが組めるか組めないか。今は、その人の支払い能力がどうか。ここにやはりプラスして、中古住宅の評価というものもしっかりとして、つくる家、買おうとしている中古住宅の評価もできて初めてローンが組みやすくなるんですね。後で議論させていただきますが、今回のローンの証券化というものを公庫さんがおやりになる。アメリカのファニーメイとか、そういう役割を担わせようというふうに思っているのかもしれませんけれども、それでローンが組みやすくなるのかという議論を後でさせていただきたいんです。
 どうですか、安くする、ローンを組みやすくする、それから中古住宅の評価、要するに、お金をもっと借りやすくするということにこれは帰結するわけですけれども、そんな施策もこれから取り上げていこうとしているのか、今までしてきたのか、その辺のところを教えていただけますか。
松野政府参考人 確かに委員御指摘になったとおり、ライフスタイルに応じて住宅を取得する、現在、我々の世代では、どちらかというと一生同じところに住むというパターンが多いかと思います。したがいまして、その時々に応じて必要な住宅に住む、年をとってきて夫婦お二人だけになったときに、そんなに大きなうちに住む必要はないかもしれない。むしろ、都心で、便利なところに住んだ方がいいかもしれない。病院等も整備されている。
 そういったときに、売買とか、それから賃貸で貸しやすくするとか、そういった住宅市場全体の循環をもっとよくしていく必要があるということで、先日から御指摘いただいておりますとおり、中古住宅市場の整備とか、我が国では、中古となると格段に値段が下がってしまうというような実態がございますけれども、これをもう少し、しっかりした評価のできるような中古住宅市場にしていかなければいけない。
 つまり、経年だけで値段が決まるのではなくて、どういう維持管理をしているかというのを的確に見て、それらしい評価を受けられるような市場にしていかないと、なかなか中古住宅に出そうという人もいないでしょうし、循環がうまくいかないということだと思います。
 そういった意味で、今後そうしたことを整備していきますが、あわせて、今回証券化支援事業を開始しますが、とりあえず新築住宅というものを対象にスタートするということでございます。これは、やはり新築住宅の評価手法が確立しております。つまり、公庫は既に財投機関債ということでやり始めております。これが一定の評価を受けて、トリプルAの評価を受けてうまくスタートしているわけですが、これに、将来は、中古市場がしっかりした市場になって評価手法が確立してくれば、中古住宅もその対象にしていって、全体のいわば住宅金融の世界も幅広くなっていくということを将来検討してまいりたいというふうに考えております。
大谷委員 ぜひ豊かな住宅政策の施策というものを具体的にこれからも進めていただきたいと思いますし、中古の方の評価基準というものもお考えいただき、進めていただいておるようでございますので、引き続き、今私が御提案させていただいたようなライフステージに合った住宅の住みかえという、もっとソフトの部分を大事にした目的も達成できるような形でお進めいただけたらというふうに思いますし、機会があるごとに議論をさせていただきたいというふうに思っております。
 ちょっとテクニカルな、この法案の証券化支援事業のことについてお聞きいたします。
 買い取り型とそれから保証型があるんですが、先ほど、午前中の参考人の方からは買い取り型に力を入れるべきだという御意見もございましたが、これは、一体どっちをどうしようと思っているんですか。
 ファニーメイやフレディーマックというようなアメリカの似たようなGSE、政府の支援機関ですと、買い取りと保証と両方やっておるんですが、やはり買い取りの方がもうかっていますね。公庫さんがこれからこの役を担っていくということは、アメリカのいわゆるファニーメイなんかになろうというわけですけれども、あの組織は、政府に保証はされていますけれども、ニューヨークの株式証券で上場に上げられている会社でございまして、民間のれっきとした会社でございます。私は、公庫がなり得るのかなというふうに思っているのがまず一つなんです。その辺はどうなんですか。いわゆる保証型を中心に商売をやっているジニーメイの方を目指すべきではないのかなというふうに思っているんですが、一体どっちを優先していこうと思っているんですか。
松野政府参考人 御指摘のとおり、証券化支援業務には、買い取り型と保証型がございます。今回の法改正でも、その両方のタイプを業務として実施できるような法改正をいたしたいと思っております。
 午前中の参考人質疑の中でも、八田先生が研究会の報告として御説明になりましたが、買い取り型と保証型があるけれども、我が国のように証券化市場が全く未整備な状況から育成していく段階は、買い取り型をまずスタートすべきだという御指摘をいただきました。
 これはどういうことかというと、公庫のような一つの公的な機関、これが買い取って、それで証券化をするというときに、一つの機関が一定の債券を、一つの定型化された商品を定期的に出す、安定的な供給をするということが、まず第一に投資家の安心感を得ていくだろう。というのは、いつでも売買できるような市場にだんだんなっていくということです。
 いろいろな主体がいろいろなタイプのものを出しますと、そういう意味では、いわば一つの市場性が乏しいということになってしまいますので、とりあえず育成する段階は、まず買い取り型からスタートしたらどうかというようなことの御指摘を受けまして、法改正の暁には、実質的には十五年度、今年度から、買い取り型からスタートするということでございます。ただし、十六年以降には保証型も実施していきたいと考えております。
 どういうことになるかということでございますが、みずから証券化を行えるようなノウハウ、能力を有するようなかなり規模の大きな大手の金融機関は、みずから証券化する、それで公庫に保証してもらうという保証型を選択する可能性があります。ところが、ノンバンクとか地域の金融機関になりますと、その地域の偏りがあるというようなこともございまして、それはむしろ、一つの機関である公庫に全国的に買っていただいていろいろなばらつきを全国レベルでプールいたしますと、一定の評価が得られる安定した平均的な姿の債券が発行できますので、そういう場合は買い取り型を選択することになるのではないかということで、それぞれのタイプをうまく使い分けていくことになるのではないかというふうに思います。
大谷委員 市場をしっかりと見、形成する段階においては公庫が買い取り型でやるんだということは、僕はそうなんだろうなと納得ができるんですが、その後、市場を拡大し、なおかつ市場を多様化させて活性化させていくときには公庫さんでは限界があって、SPC、いわゆる特定会社と呼ばれているところがやらなかったら、いろいろな多様な商品が出てこないというふうに思うんですね。いわゆる官が主導する市場だと、ここまではすぐできるけれども、そこからは発展性がないんじゃないかという懸念を持っています。
 アメリカの例を見てみますと、そこのところは、やはり官主導ではなくて明らかに民間主導ですから、金利リスクであったり期限前償還リスクというようなものにもなるべく耐えられるような多種多様な商品ができている。要は、これはハイリスクですけれどもいっぱいもうかります、これはローリスクにしてありますけれども余りもうかりませんとかというふうに、投資家さんに合わせたような多様な商品が向こうはできているわけですよ。
 そういうところまで考えたら、公庫さんがファニーメイになり切れるのかな、やはり民間の方がそんなリスクも背負って多様な商品を出していく、そこでマーケットが拡大すると思っているので、時限を区切る必要はないですが、ある意味、そういう将来展望も踏まえた上での役割で、初期型は買い取りで一定の既成の商品を出していくと言っているというふうに理解しておいていいんですね。
松野政府参考人 そこは、ファニーメイは確かに株式会社ではございますが、トップは大統領の任命ということ、それから暗黙の国の保証があるということでございまして、通常の株式会社ではございません。いわば公的機関に準ずる機関として、その信用力を背景にして証券化支援業務をしている、それによって相対的に低利な金利が実現をして、国民がいわばその恩恵を受ける、こういうスタイルになっております。
 それから、まだ規模が小さいものですから、委員の御指摘のような、さまざまなタイプの商品が出るところまでにいっておりません。これは、我が国の市場もだんだん大きくなりまして、第一次に買い取った機関がいろいろ工夫をして、アメリカではCMOと言っておりますが、債権のいわば一部特徴のある部分を切り取るようないろいろな加工をすることでさまざまな商品を出すというようなところまでやっております。いずれ我が国の市場もそういった市場になるかと思いますが、やはり公庫が、公的信用を背景にして、そうした比較的低利な住宅ローンを実現するということには当面かなりの意味があるということで、直ちに民間がすべて証券化支援の機関になればいいというものではないんではないかというふうに思います。
大谷委員 初期の段階では、ぜひとも、将来展望を踏まえた上での役割をこのローンの証券化の中で担っていただきたいというふうに思いますし、しっかりと静観させていただき、物を言うべきときには言わせていただこうというふうに思っております。
 もとに戻りますけれども、このローンの証券化というものも、ローンが組みやすくなるというような、安定的に国民に住宅ローンが提供できるというような、そんな視点から出てきたものであるという自負でこれからも頑張っていただきたい。総理が、政治的目的のために民営化しなければだめなんだというようなことも踏まえて、生き残りのためにやっている事業じゃないんだということにしっかりと自信を持って、時には総理にも、大臣を通じて、しっかりと姿勢を正すようなことをしていただくというような自負心でもって頑張っていただきたいというふうに思います。
 ありがとうございました。
河合委員長 津川祥吾君。
津川委員 民主党の津川祥吾でございます。
 大谷委員に引き続きまして質問させていただきます。
 今、大谷委員も最初と最後にもおっしゃいましたが、今回の住宅金融公庫の改革は、どうも突然出てきた感じがする。もちろん、住宅金融公庫そのものがやや肥大化しているのではないかという議論があったのも事実であります。また、民間にできることは民間に任せるというようなことも、小泉総理がおっしゃる前から私どもとしても言っておりましたし、あるいは民間活力の導入なんというのは、私の記憶する限りでも、たしか中曽根さんもさんざんおっしゃっていたと思いますし、小泉さんの専売特許じゃないはずなんです。
 その中から、いろいろと議論がある中で、なぜ住宅金融公庫が先に来たか。やはりこれは総理が、今、大谷さんはおっしゃいませんでしたが、郵政事業の民営化というのはさんざんおっしゃっていました。その中から出てくるのは、手紙をどうこうするというのもありますが、もう一つは、やはり財投の問題。財投の問題の中で避けて通れないのがこの住宅金融公庫の問題。恐らく、そういう流れでここに行き着いたんではないかというふうに私は考えております。財投資金を使って民業を圧迫するのはけしからぬ、こういう流れじゃないかというふうに思うんです。
 実際、特に近年、肥大化して民業圧迫の面があったのではないかというのはきょうの委員会でもいろいろと指摘をされているところですが、では、いっそのこと民間にやらせたらどうかといっても、その流れの中で、しかし、民間では長期固定というのはなかなか難しい。長期固定を実現するために、アメリカなどの例に倣って、今回提案されたような証券化というようなものが出されてきたというふうに思っております。
 証券化の議論も、実は私どもの中でも議論しておりました。ローンの証券化あるいは不動産の証券化、こういったものをいろいろ議論しましたが、実は、私どものこれまでの議論の中では、まだ少し早いのではないかというのが私どもの認識でした。ただ、いつかはやらなければならないというふうに思いますから、それをこういったスキームで今議論するということは全くむだではないというふうに思っています。
 民間にゆだねたことのメリットが何になるかという話ですが、例えば、社会全体としては仕事がふえる、それからコストが下がるというメリットが当然得られなければならない。住宅ローンの利子が若干上がったとしても、これまでの国がやっていた利子補給の分が減るわけですから、全体として、国民が負担するコスト、あるいはローンをする借りる側のコストが減るという形になれば、これは一つのメリットだというふうに思います。
 そこで伺うんですが、証券化により長期固定金利というものを実現した場合には、実は、低利というのはなかなか実現が難しいんじゃないかというふうに思います。いろいろなコストがかかる分が、当然、金利に上乗せをされるという形になろうかと思いますが、どの程度の金利になるというふうに予測されているか、お答えをいただければと思います。
松野政府参考人 金利でございますが、民間でできることは民間でという基本的な考え方のもとに今回の改革が行われるわけですが、少なくとも公庫の長期固定の今までの融資を代替していく、これを民間のローンで代替していくという方法はないだろうかというところからきております。したがいまして、ほぼ同等条件のものが実現できないだろうかというところでございます。
 試算をしてみますと、現在、この二月時点の試算がございますが、例えば公庫の金利が、当初十年間二・三%、十一年目以降が三・五%ということでございますが、これは、全体が一定の金利だったらどのぐらいになるかという評価を一方でしてみますと、同じ金利がずっと、三十年ちょっと続くと仮定しますと二・七一%ぐらいになるという計算になります。これを、現在は保証料を外で〇・二%取っておりますけれども、今回の証券化支援事業では全体を金利の中で調整いたしますので、それを含むといたしますと二・九一という評価になります、二月時点のものが。
 最近、公庫が既に実施しております、みずからの直接融資の財源を財投に依存しないで証券化市場から調達する、これを始めておりますが、これの利回りが、市場の評価で一・四%ちょっとになっております。これに、将来の民間ローンの利率がどうなるか、最終利率がどうなるかということですが、この一・四に、公庫の経費として保証料、今申し上げました〇・二を含んで〇・九%ぐらいだろうというふうに言われております。そうすると、合わせて二・三%ぐらいになります。それに、最終的に金融機関がサービシングフィーというものをいただくことになるわけです。これが〇・五%以上ではないかと言われておりますが、恐らく、競争によって〇・五%ちょっとという水準に収れんしていくのではないかというふうな予測がされております。したがいまして、二・八から九%の水準になるのではないかということを言われております。
 したがいまして、現在の公庫融資と遜色のない水準のものが出せるというふうになると思っております。
津川委員 今伺った話ですと、確かにサービサーフィー、手数料を負担して大体同じぐらいになるという話なんですが、私はまずそれについて言うと、そう簡単に競争が発生するかどうかは非常に疑問だという点が一つ。それからもう一つ、やはり長期固定そのものに係るリスクというのが当然あるわけです。それは最終的には投資家が負担する形になると思いますが、投資家がそれを負担するんですから、当然、それは最終的には金利に返ってこなきゃおかしいわけですよ。投資家は慈善事業でやっているわけじゃないんですから。それはこの金利に入らなきゃいけないと思うんです。
 それで、もう少し具体的に伺いますが、市場金利が例えば変動した場合、上昇した場合なんかのシナリオをどのように描いているか。今のリスクももう少し考えなければいけないと思いますし、それは、考えればもう少し上がる形になるんじゃないですか。そうでもないですか。
    〔委員長退席、田野瀬委員長代理着席〕
松野政府参考人 金利が上がる局面、どうなのかということですが、二つの可能性といいますか、二種類のことがあり得ると思います。
 一たん長期固定で証券を証券化市場で出して、投資家がそのリスクをとるというけれども、それはどうなるのかという一つの御質問だと思うんですが、これは、実は証券化市場では、金利のリスクと、それから繰り上げ償還のリスクをとってもらうことになっています。投資家は、公庫の今までのデータを見ながら、今の金利水準だとちょっとこの辺が変動したときにこれぐらいの繰り上げ償還があるなというようなことを見込んで既に今も評価されています。これが、先ほど言いましたような一・四%の利回りという評価になっています。ですから、それは織り込み済みの評価がされているということです。
 もう一つは、これからだんだん高金利になっていったときに、証券化の利率、表面利率、消費者が借りるときの利率はどうなるかという意味もあろうかと思いますが、それはその時点で、金利が全体的に上がったときには調達できる利回りも高くなりますから相対的に高くなりますが、やはり米国のファニーメイと同様に、法的信用力を背景として発行される証券でございますから、相対的にほかよりは低利というものが実現するということで、金利が高くなる傾向のときはやはり高くなる、しかし、その中では相対的なものが実現するということであろうと思います。
津川委員 本当にそうなるかどうか。私、ちょっと違うんじゃないかと思うんですが、それはこれから実際始めてみればすぐわかることですから、それは様子を見ることにして。
 ただ、今、相対的に低いという話をされました。これから五年間という中で、実は午前中にも参考人の中で指摘がありまして、私も昨日通告をさせていただいた点ですが、この五年間の、民間の金融機関と、残る公庫の直接融資、それから民間にやっていただく証券化ローン、その三つが併存する中、今、民間でやっていただく証券化ローンと公庫による直接融資は大体同じぐらいだという話がありましたが、民間とは明らかに違うわけですね。この場合、借りる側はどういう行動をとればいいのか、これはどういうすみ分けになるのか、ちょっとお答えいただけますか。
松野政府参考人 当面、公庫が廃止するまでの間、御指摘がありましたとおり、直接融資が残ります。当然、独立行政法人設置の際に、直接融資を独立行政法人がやるかどうか判断されるわけですが、当面、共存するということになります、証券化支援事業によるローンと公庫の直接融資。これは、公庫の今までの直接融資を証券化支援事業によって代替していこうという思想がありますので、その間はやはり共存するということになります。
 一つは、やはり、消費者、国民にとって非常に危険な状況にならないかどうか。つまり、証券化支援事業でどのぐらい本当に出るのかということを見ながら段階的に縮小していかないと、一方的に縮小しておいて、金利が上昇場面になったときに一気に長期固定のニーズがふえてくる。そのときに、証券化支援事業の方ではこれだけしか出せない、市場が消化できないという事態になって抽せん制にでもなったらこれはえらいことですから、そこはやはりある程度の余裕を見ながら、直接融資は段階的に縮小するといっても、国民が被害を受けないような、そういうある程度の余裕を見ながらの段階的縮小を図っていく。
 今の局面では、確かに、長期的に低利状態が続くだろうと皆さん思っておられるものですから、国民の皆さんも、短期の固定の非常に金利の低いものに割合傾いているという場面だと思います。しかし、これがちょっと金利が上に振れ始めたときは、大いに場面が違ってくるというふうに思います。
津川委員 公庫の理事にも来ていただいていますが、今の政府の方針でいくと、とりあえず民間に行っていただいて、そっちがどんどんうまく回っていけばそちらにどんどんシフトしていく、そういうような話だと思うんですが、民間に行っていただいた方が、あなた、だめですよと言われた、それで公庫に来た、そうしたら公庫の基準では大丈夫だというふうになった場合に、これはどうするのか。では公庫が直接やりますよとするのか、それとも、民間に、あなたの基準でもこれはできるはずだから証券化ローンでやってあげてください、こういう指示を指導するのか、これはどういう形になるんでしょうか。
吉井政府参考人 融資選別の御質問かと思います。
 当然、証券化支援事業におきましても、融資基準と申しますか、公庫の立場からいえば買い取り基準というようなものも設けられますので、融資をお受けになりたい方に無条件にすべての方に融資するということにはなりませんけれども、午前中の参考人さんの御発言にもございましたが、証券化支援事業の場合には信用リスクを公庫が負担する仕組みとなりますので、基本的に、証券化支援事業の中で融資選別が行われることはないと思っております。
 具体的には、各個別の民間金融機関の方々と基本的な協約等を結ぶことになるわけですが、その際に、合理的な理由のない融資選別は行わないことというような条項を設けまして、問題があった場合には当然いろいろな指導をするし、最悪の場合には契約の解除まで至ることもあり得るというふうに思っております。
津川委員 済みません、今の点、もう一回お願いしたいんですが、つまり、実際にそういう人があった場合、それで公庫に来られた場合、それは、要するに差し戻しをするのか。つまり、民間にもう一回行ってやってもらってくださいというふうにするのか、公庫でやるのか、どっちなんですか。これは一般のユーザーからすれば、公庫に行った方が早いわけですよ。どうなんですか。
吉井政府参考人 お尋ねの、タイミングと申しますか、公庫の直接融資がどの状態になっているかということも関係すると思いますが、先生の先ほどのお話のように、民間の融資基準には合わないけれども公庫の融資基準で、正直申しまして、公庫の方はかなりきめ細かくいろいろな審査をしておりますので、民間では断られた場合でも私どもだったらお貸しできるということもあるかと思いますが、そのような方があった場合には、私の方でお貸しすることは当然あり得ると思っております。
津川委員 局長、大臣も、今にこにこされていますが、それなら公庫に行けばいいじゃないですか。これから五年間で民間の方が広がるとは余り思えないですよ、今のお話を伺っていたら。一般の方からすれば、民間の金融機関に借りた方が有利だということになれば、それはそちらに行くかもしれません。基本的には同じぐらい、私は同じじゃないと思います、ちょっと不利だと思うんですが、それでもなおかつだんだんそちら側にシフトしていこうというときに、公庫に来ていただければ公庫の方が融資することもあるかもしれないという話があれば、五年間でシフトするとは私はとても思えません。
 それで、やはりすみ分けはもう少し具体的にした方がいいと思います。本当に五年間でできるのかという質問もいろいろありました。五年間でできるというお答えもありましたが、これは五年にこだわる必要はないと思うんですよ、五年後に、もう五年やろうという判断もあるのかもしれませんが。
 午前中の銀行の方の話でも、アクションプログラムをつくって、公表して実行してもらいたいという話でした。つまり、今の話だけ聞いていると、本当にこれがどんどんシフトしていくのかどうかよくわからない。
 私は、例えば年間所得が低い方、六百万以下の方とかそういった方は公庫がやりますよ、それ以上の方はもうやりませんよ、そういう割り方をするとか、あるいは、バリアフリー的な、誘導的水準をクリアするものに関してはしばらくの間公庫がやりますよ、こういうようなすみ分けをすれば、これは民間に行かざるを得ないという方は当然出てくると思います。そういうすみ分けはしないのか。午前中あったんですが、五年間どういうふうに具体的にやっていくかといった計画、アクションプログラムといったものを今つくる予定はあるのかどうか、お伺いいたします。
松野政府参考人 アクションプログラムをつくったらどうかという御意見が午前中の参考人質疑であったかと思います。これは、民間銀行サイドからすると、公庫がどのぐらい業務を減らすということをはっきりさせてもらえば仕事をしやすくなるという論理でございます。
 しかし、我々から見ますと、最終的にやはり国民にとってこれはいいことかどうか、被害を受けないのかどうかというところで判断をしないといかぬということで、我々としても、公庫と一緒になって、また、民間と協力して、証券化支援事業ができるだけ伸びるように努力をしたいと思っているんです。わざわざ、直接融資を残したいからそういうことをサボるとか、そういうことはしたくない。支援事業を伸ばしていきたいと思っています。しかしながら、本当に現実にどうなるのかということを見きわめながらやらないと、国民が最終的には迷惑をこうむるということになってはいけないというのが基本にあると思います。
 したがって、そこは、プログラムを先に示せと言われても、我々としては、そのことを考えると、実態をよく見ながらやっていくしかないというのが現実だと思います。
津川委員 やはり、その答弁で終わるなら、五年間で完全にシフトするということはあり得ないと言ってもいいんじゃないかなというふうに思うんですね。
 ちょっとそこについて、計画はつくって、それであとは実態を見ながら調整していくというふうにやったっていいと思いますから、今の答弁は全く納得いきませんが、いずれにしても、結果的に、例えばすべて民間に移行することができたというふうになった場合のことでちょっとお話をさせていただきます。
 仮にそうなったとしても、住宅政策に直接かかわることですから、国が関係ないということにはならないはずなんですね。国の役割というのは当然残ると思います。ただ、残念ながら、今回の議論の中で、住宅政策としての議論がなかなか出ずに、純粋に住金の話だけで終わってしまっていますから、住宅政策がどうなっていくのかというところがなかなか議論として進んでいない。
 それで、一つ質問を飛ばしますが、今後いろいろな住宅政策を推進していこうという中で、公庫のようなものを使わないということになるのかどうなのか。五年後、予定どおりすべて民間にシフトした場合、もう公庫の直接融資はゼロになるということを今想定して考えているということでよろしいですか。
松野政府参考人 最終的に独立行政法人設置の際に、直接融資、今やっておりますのを引き継いでやることになるのかどうか、これはその時点で判断するということでございますが、公庫が担ってきた住宅政策上のいろいろな政策推進機能がございました、それから、セーフティーネットという意味では災害のときの対応等々がございます。これが、五年たった時点においてどういうふうに証券化支援事業が機能しているのか、担っていけていない部分があるかどうかということを判断して、住宅政策上、まだこの部分は残すべきだということがあればそれは残すという議論になるのではないかということで、それはその時点で議論をされて最終的な判断がされるというふうに考えております。
津川委員 必要性として、例えば所得の少ない方に対しての融資が民間ができるかどうか、それも五年後になってみないとわからない、そういうことになるでしょう。
 ただ、バリアフリー住宅を普及促進するというのは、どう考えても民間の方は考えない話ですよ。この証券化ローンの中にも当然入り込まないはずです。ということは、普通の融資が、通常の融資そのものがローンで組めれば、このバリアフリー推進というものは、今回の公庫による政策誘導というのはなくなるということでいいですか。
松野政府参考人 今も、公庫のいわば義務づけになっております基礎基準というのがございますが、これの中には、当然、すべての人がバリアフリーにしなければいけないということではありませんので、義務づけにはなっておりません。つまり、基礎基準には入っておりません。
 証券化支援業務もこの基礎基準は守っていただくという前提ですから、バリアフリーを証券化支援事業の中で義務づけるということはいたしません。したがって、今御指摘のとおり、バリアフリーがこの証券化支援事業によって推進されるということではないと思います。
津川委員 いや、それはそのとおりでいいんですけれども、そうじゃなくて、基礎的水準の話はいいんですよ。そうじゃなくて、誘導的水準の部分に関してはどうなるんですか。それを残すなら直接融資は残さなきゃいけないという話に最初からなるわけですよ。それはどうなんですか。
松野政府参考人 そこのところは、バリアフリーも、公庫が今までの基礎基準では入れていませんが、一番低い基準金利の要件にして優遇をしているものですから、急速に普及をしてきていることは事実なんです。
 この辺はむしろ、そういう実態で、世の中がもうバリアフリーというのが当たり前だと思ってやるようになるかどうかということを最終的にその時点で見きわめて、これは自然に市場の中で選択されて普及していくんだというふうに考えれば、それはその時点で、あえて直接融資で推進していく必要はないという判断もあるでしょうし、その時点でのやはり議論にかかってくると思います。
    〔田野瀬委員長代理退席、委員長着席〕
津川委員 バリアフリー住宅をそんなに言うならバリアフリー住宅の定義を私は本当はちょっと言いたいところなんですが、時間がないのでそれはやめます。
 政策誘導で私は実はぜひ入れていただきたいのが、国産木材住宅、国産材を利用した木材住宅の促進というのをぜひやっていただきたいんです。
 きょうは林野庁の次長も来ていただいていますからぜひ熱弁を振るっていただきたいんですが、私は農林水産委員もやっていまして、今ちょうど林業政策の法案が一つかかっていますけれども、日本の森というのは大変な状況になっています。その中で、林業をしっかり立て直していく、そして森をしっかり守っていくという中の一つの重要なものが、やはり木材価格をある程度上昇させなきゃいけない、それをうまく活用していかなきゃいけない。その中で、まず第一に考えられるのは住宅なんです。
 そこがあるにもかかわらず、国土交通委員会の中での住宅政策の中でなかなか国産木材を利用した住宅の促進というものが出てこないというのは私は非常に不満でありまして、私は族議員じゃありませんが、次長に来ていただいていますので、ちょっと熱弁を振るっていただければと思います。
松本政府参考人 国産材を利用した住宅の普及ということでございますが、私ども林野庁といたしましては、先生今御指摘のとおりでございまして、我が国の林業の活性化と森林の適正な整備を図っていく上で、我が国の森林から供給される木材の利用促進、特に木材需要の大宗を占める住宅分野における利用を図ることが重要であるというふうに私ども考えております。
 このため、林野庁といたしましては、これまで、木材関係の業者と大工、工務店との連携によりまして、地域材利用の家づくりを進めるということ、あるいはリフォームやマンションの内装等において地域材の利用推進をする、それから、住宅に使われた場合の木材の自然素材としてのよさについて消費者に普及を図っていくというようなことに取り組んできたわけでございます。
 そして、本年度、十五年度からは、先ほど申し上げました、関係者が一体となってということでございますが、森林の所有者から木材の関係業者、それから設計者、住宅生産者、こういった関係者が一体となって取り組む形の、いわゆる顔の見える木材での家づくりということにつきまして、消費者が納得する家づくりという点を重視する形で実施することとしておりまして、これらによりまして地域材等の利用促進を図ることとしているわけでございます。
 また、地方財政措置といたしまして、地域材を利用した住宅建設の促進に対する特別交付税措置が講じられておりまして、これをもとに、各県におきまして、例えば六十万円の補助金を交付するとか住宅一棟分の柱材を無償で提供するとか利子補給、こういったことが行われているわけでございます。
 私どもとしましては、今後とも、木材住宅振興室も国土交通省にございますけれども、よく連携をして、住宅分野において、我が国の森林から供給される木材が利用促進されるように積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
津川委員 ありがとうございます。
 木材は、軽くて丈夫で使いやすい素材なんです。それで、断熱性、調湿性、湿気を調整する性質もありますし、衝撃吸収性にもすぐれている。人の健康にも優しい。加工時に必要なエネルギー消費量も少ない。再利用が可能で、炭素を長時間貯蔵することができて、バイオマスエネルギー源としても使うことができる。それから、木材を使えばシックハウス症候群対策にもなるという話です。
 大臣は、きのうたしかちらっとおっしゃいました、火に弱いんじゃないかと。ところが、木造住宅も、ある程度の太さを持つ角材というのは火に強いんです。こういった研究も国土交通省さんの中でしっかりされているはずですから、ぜひこれはもう少し前面に出してやっていただきたい。地産地消という意味もありますから、ぜひやっていただきたい。
 それから、最後にもう一つ、どうしても申し上げたいのが、やはり中古住宅市場の形成というのがどうしても必要なんです。大谷議員も先ほどちらっとおっしゃっていましたが、その実現のために解決しなければならない問題点は何であるか、どういう認識をしているかをお答えいただければと思います。
松野政府参考人 中古住宅市場の育成、その観点でございますが、幾つかあろうかと思います。
 やはり、中古の住宅を十把一からげに経過年数だけで評価するということではなくて、その維持管理の仕方を含めて適切な評価がされなければ、皆さん、努力して維持管理をするということもなくなってしまいます。したがいまして、それは価格に反映されるようにしたいということで、住宅性能表示制度を、昨年の末、十二月から中古住宅にも拡大するということにいたしまして、的確な性能表示ができるようにしたということでございます。
 それから、中古を安心して買えるということですね。
 今申し上げました適切な維持管理だけではなくて、構造躯体等の安全性のチェック、こうしたものも含めて、消費者の方が安心して買える市場にするとしっかりした市場になっていくだろうということで、それも含めまして、維持管理だけではなくて、もともとの構造躯体の、この住宅はどういうものなのかという評価をしていただくということをあわせて性能表示制度の中でしていくということ。それから、価格査定マニュアルの中で、従来、経過年数だけで評価していたようなマニュアルを改めていただきまして、宅建業者の方々にも適切な評価をしていただくということにしました。
 それから、消費者の方々にとっては相場感というのがよくわからないということで、三十六万件の仲介物件が登録されております不動産流通機構のホームページにおきまして、沿線別の中古住宅の平均取引価格といいますか、平均像としてどんなものになっているかをお示しするということを通じまして、消費者の方々が、まあこんなものかという安心感を持って取引に参加できる、そういうさまざまな整備を進めてきておるところでございます。
津川委員 私は、今、問題点は何かと聞いたんです。今の政策が進めばそれでうまくいくというんだったら、そのこと自体が問題です。品確法は、価格とは直接関係ありません。
 それから、価格査定マニュアルを公表するとおっしゃいましたが、価格査定マニュアルは、今のところ、取引事例比較法を使っていますね。ということは、現状の築十五年で上物の価格がゼロになるという不動産鑑定の影響というのは避けられないんですよ。市場取引価格もそのとおりです。
 それから、このマニュアルそのもので、もし見ていただけばすぐわかりますが、この基本となっているのが標準建築費単価ですけれども、これは個々のものじゃないですね。この建物にどのくらいかかったかというのは全然関係ない話、この地域で幾らかです。ですから、その建物がどんなによくても評価されないんですよ。これは問題です。これでは中古住宅市場というのは、私は、まあ少しずつ進むかもしれませんが、これでオーケーだと思われては大変な問題だと思います。これを直していくというのが今の問題だと思います。
 それで、例えば施工業者の方にそれをしっかりやっていただく。例えばメンテナンスですとかリフォーム、これを、新築したところが、これからの間、私が有料で契約をします、こういったメンテナンスをしっかりします、リフォームもしっかりします、それをやるかわりに、例えば三十五年後の価格がこのぐらいになる、そのぐらいを保証できます、そういう価格査定マニュアル、それを個々につくるということ。それから、この建物はこういう工法でやった、こういう形状でやった、それは施工した側はわかるわけですから、そういった形のものをやらせることの方が私は重要だと思います。
 最後にちょっと言いますが、住宅政策の中で大臣が何度かおっしゃったのが、田舎に行って、庭つき一戸建て、広いものになってよかったけれども、ちょっと時間がかかってもったいないから都心に帰ってきた、ちょっと狭くなっている、それを広くすればなおいいという話ですが、私は、それは逆だと思います。
 職住接近というのは、東京に職がどんどん集まっているのがまず問題。そうじゃなくて、都市の再生よりも、都市の再生も結構ですが、地方の再生の方が私は今重要だと思います。そういった意味で、地方にしっかりと職がある、また、そのすばらしい環境の中で、職の近くで住んで生活することができる、こういった形のものを実現するというのが本来なければならない、グランドデザインの中に書き込まれなきゃいけないと私は思います。残念ながらそれがないので、私は、住宅政策としてはまだ問題があるんじゃないのかというふうに思います。
 済みません、ちょっと井上議員の時間をとりましたが、またよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
河合委員長 井上和雄君。
井上(和)委員 ひとつ、昨日に引き続き、よろしくお願いいたします。
 午前中の八田先生のお話にもありましたけれども、とにかく、住宅ローンというのは非常にリスクの多い、リスクを内在したものなんだという話がありました。金利が下がれば繰り延べ償還になっちゃうし、金利が上がっていけば今度は逆ざやになるし、今のように非常に不景気な状況では、信用リスクで返せない人がふえちゃう。
 この証券化というのは、一つは、そういうリスクを投資家に見てもらおうということで始まってきたと思います。そういうことを考えると、これまでは、つまり、非常に大きなリスクというものを住宅金融公庫が全部背負ってきたという話になるわけですね。それが一体どの程度の負担になっているのか、国の財政であれ、公庫自体の借金という形か、きょうは、ちょっとその辺のお話をお聞きしたいと思っています。
 今、公庫の、毎年の国からもらう補給金額とか、これは損失金というのもあるんでしょうか、ちょっとそれがどのくらいなのか、教えていただけますか。
松田政府参考人 特別損失金についてのお尋ねと思いますが、これは、国の財政負担の平準化、それから公庫の安定的な事業運営を図るために、住宅金融公庫法に基づきまして、補給金必要額の一部が後年度に繰り延べられたものでございまして、この繰り延べ分は、国から後年度に交付金として補給されるものでございます。十四年度末の残高は三千四百十四億円でございます。十五年度には国から交付金として百五十八億円を受け入れますことから、十五年度末は三千二百五十六億円の予定でございます。
 次に、補給金でございますが、住宅金融公庫におきましては、政策目的に沿いまして長期固定の低利融資を行いますために、調達金利と貸付金利の金利差などの経費を補てんするため国から受け入れているものでございまして、十五年度は、前年度比二百七十三億円減の三千四百八十六億円でございます。
井上(和)委員 そうしますと、損失金が三千二百五十六億円、これは恐らく運営経費、人件費なども含んでいるんだと思うんです。それにプラスアルファして補給金、先ほど言ったような、ローンそのものに係るリスクを負担しているということで、三千四百八十六億円ですか。トータルになりますと六千七百億円ぐらいが毎年国から公庫に出ている、国が負担しているということですか。
松野政府参考人 今、合わせて六千数百億円とおっしゃいましたが、実は、特別損失金の方は、過去に起きました繰り上げ償還に基づきます補てん額を後年度に繰り延べるという、これは額が既に確定している額でございまして、そのうち、ことしは百五十八億円をいただいたということで、残っているのが三千二百五十六億円でございます。これは、これから何年かにわたっていただくことになっております。
 もう一つの三千四百八十六億円というのは、かつて高金利のときに国民の皆さんに低金利でお貸しをしたそのときの逆ざやが、今負担として、義務的経費として毎年国からいただいているものです。したがいまして、今いただいていますのは、その当時そういう政策判断をした結果として、義務的経費として出しているものでございまして、公庫が例えば赤字経営をやっているその補てんをしているとか、そういう性格のものではございません。
井上(和)委員 いずれにしても、損失金というのは三千二百五十六億円あるから、これはいずれ返さなきゃいけないということですね。それ以外に、先ほどの政策的な意味での三千四百八十六億円は補給金という形で受け取っているということでよろしいわけですね。
 そうしますと、現在、公庫が約七十兆円のローン残高があるわけですね。これを持ち続けるということは、当然いろいろな意味でのリスクを引き続き負担していくということになりますから、補給金に関してはずっと出ていくということでいいんですか。
松野政府参考人 約七十兆円に上ります融資残高、まだございます。それで、これは、独立行政法人にもしなるときにも、この融資残高、債権は引き継ぐことになっております。これは、これまでと同様の適切な管理をするということになっております。
 したがいまして、いわば過去の融資の結果としての逆ざやになっている毎年の国からの補給金、これはしばらく続く感じでございまして、逓減しておりますので何年かで解消するとは思いますが、独立行政法人になってもしばらくいただくという可能性はあると思います。
井上(和)委員 そうしますと、最初に申し上げましたように、逆に金利が上がっていけば上がっていくでこれはまたいろいろな問題が出てくるというわけですね。つまりは、今低金利で貸しているわけですから、金利が上がれば今度は調達金利が上がっちゃうということにもなるわけですね。
松野政府参考人 今は三千四百億円になっておりますが、もうちょっと前は四千数百億円だったんです。これが、低金利時代に入ってきまして、高金利で貸した部分が、もちろん返ってきますが、新しく低金利の財投資金をお借りすることができて総資金コストが下がってきているということから少しずつ逓減してきているということでございまして、したがって、順調にいけば何年かのうちにこれは解消していく性格のものだということでございます。
井上(和)委員 いずれにしても、金利が下がれば繰り延べということになってきますし、また、逆ざやということも出てきますから、これはやはり相当長期にわたって国として負担していくということになると思うんですけれどもね。
 今、七十兆円のローンを証券化することによって、そのリスクを投資家の方に持ってもらうということは可能なんでしょうか。
松野政府参考人 これは、つまり、今、証券化市場というのが、我が国の場合、まだ始まったばかりで非常に小さい規模です。消化能力にもまだ限界がありまして、累積、公庫が財投機関債として発行しております八千数百億が今の実態でございます。
 それで、七十兆円に上ります融資残高、この債権を市場に出したらどうかという御議論はしょっちゅう私どもに言われるんですけれども、これはやはりかなり問題がありまして、というのは、一つは、そういう証券化市場がまだ未成熟な段階で大量に出すことによっていわば消化不良を起こすわけです。そうすると、資金コストが非常に高くなるわけですね。ということで、いわば本来ならば何年かたって必ずいただけたはずの元利金回収金が減ってくるということで、これは国民の税金で負担をしなきゃいけない事態になるということが起こります。したがいまして、これは慎重に検討しなければいけないのと、まだまだこれから、証券化支援事業による新しい資金調達をするのに証券化市場に出さなければいけないのに、かつてのものを出すことによって、いわば新しい資金需要の方がクラウディングアウトしてしまうという現象が起きますので、これは慎重に判断すべきことだと思います。
扇国務大臣 今の御議論を聞いていまして、根本的に、井上議員が御指摘になっている中で我々も大いに論議しなきゃいけない点は、財投というもののあり方なんですね。
 そして、今の住宅ローンの、御議論になっていますように、高い金利で借りたときの財投、三十年間で返す、そういうことで財投から借りているわけですね。今、低金利になったから、みんな返したい返したいといって返してくるわけです。そのお金を財投に返すと言ったら、三十年のローンをつけて、三十年の高金利の金利もつけて返せ、こう言うんですね。お金があっても、三十年先の分まで、財投の入ってくるはずだった金が困るからと言う。こんなことで財投を借りていたのではとてもやっていけないといいますか、市場原理とすれば、高い金利で借りたものが低金利になったら借りかえて返すというのは当たり前。その金を財投は受け取らないと言うんです、三十年間の金利を上乗せしたら受け取ってやると。
 こういうこと自体は、私はぜひ御論議していただいて、今の七十兆というものを市場に出したらどうかとおっしゃいましたけれども、そういう財投のあり方自体も国会で御論議いただくと、大変わかりやすく、なおかつ財投のあり方というものを今後議論する参考になると私は思います。
井上(和)委員 まさしく、先ほど津川議員が、郵貯のあり方、そういうお話をされましたから、今大臣がおっしゃった点も、そういったかなり大枠の、財投のあり方に関連している問題だと思います。だから、それを何とかしなきゃいけないというふうに我々は思っていますので、頑張ってやりますから。
 とにかく当面は、今、国民負担が生じ得る七十兆円のローンの残高をどういうふうにしていくのか。松野局長のお話だと、いや、証券化しても結局国民負担が生じるんだと。そしてまた、将来の資金調達ということを優先せざるを得ないから、クラウディングアウトを避けなきゃいけないから、できない。そうすると、またもとの話になりますけれども、毎年数千億円の国民負担が続いていくということになるわけですね。だから、やはりこれらを今後本当に真剣に議論し続けていかなきゃいけない。既にもうローンを貸し出しちゃっているわけですからね。将来的にどうしようもなくなったら、では金利を上げるかという話が出てくるかなということも、私は、もしかしたらそういう事態が起こるかな、今、保険の金利の見直しも出ていますから、そういうことがある可能性があると思っています。
 損失金に関しては、これは独立行政法人になるとなくなるというふうに考えていいんですか。それとも、やはりこれは出るんですか。
松野政府参考人 先ほどからお話に出ております、過去の七十兆円の融資残高を独立行政法人へ引き継ぐ、その償還に伴う逆ざやについては、依然として、公庫と同様に、まだ残っているとすればいただかなければいけない。ただし、新しい証券化支援事業で融資をするその新しい事業に関しては、基本的に国費が必要な制度にはなっておりませんで、国費は要らない、投入する必要のない仕組みとして考えております。
井上(和)委員 今、独立行政法人になってもローンは引き継ぐんだということで、現在借りている方は特に心配する必要はないんだ、これはやはり一つ大事な点だと思います。
 証券化自体の話にちょっと戻らせていただくんですけれども、民間銀行が基本的に今住宅ローンで利益を上げているわけですね。私、昨日も申し上げましたように、幾つかの銀行は本当に収益の柱としてかなり今住宅ローンをやっている。中心は短期の固定と、あとは変動金利だということです。
 長期の固定をやる、民間銀行に関してのインセンティブというんですか、メリットというのはどういうものがあるんでしょうか。
吉井政府参考人 先生ただいまおっしゃいましたように、民間銀行は、最近、住宅ローンに大変力を入れてございますが、その大半は短期の固定金利制か、あるいは変動金利のものが多うございます。それは基本的には、今後の金利情勢いかんによってはリスクが顕在化する可能性もあるのではないかと思っております。
 一方、きょう午前中の参考人の陳述にも出ておりましたが、国民の中では長期固定金利の住宅ローンに対する根強い需要がございますので、証券化支援事業により長期固定金利の住宅ローンの供給を図りまして、いわば銀行といたしましても、長期にわたり安定した手数料、フィーを取るというようなことも十分魅力的なことなのではないかと思っております。
 寺西参考人が再三力強く表明されておりましたが、これまで、金融機関等と公庫との中で証券化支援事業の仕組み等を協議する中で大変前向きな御検討もいろいろいただいておりますので、そういうふうなメリットもいろいろあるということをお考えの上での態度だと思っております。
井上(和)委員 つまり、買い取り型の場合は、要するに手数料を稼ぐということでしかないんだという話は午前中にも参考人の方がおっしゃっていました。だから、基本的に、やはり収益の柱としては短期の固定金利というふうになるのかなと。ただ、公庫が買い上げるから、長期固定も顧客が欲しいと言うからやろうというふうなことが営業政策になるんじゃないかと私は思っているんです。
 それで、今回の買い取り型で、長期固定をどの程度の金額、初年度でやるんでしょうか、この話は出ていないと思うんですけれども。
松野政府参考人 これはなかなか難しい話なのでございますが、ことしは、今年度もし法改正が通していただければ、開始をするとして、予算上一万戸ということを想定しております。これは年度後半にしか開始できないということがございます。その後はもっとどんどん伸ばしていきたいというふうには考えておりますが、まだ実際にどのぐらいカバーできるかということは予測できかねます。
 ただし、長期的に考えますと、公庫のような長期固定のローンがどのぐらいのニーズがあるか、それに代替をするということを考えますと、ピーク時が、公庫の需要というのが最高で十兆円ぐらいございました。ですから、十兆円までいかないにしても、将来これが大きくなって、そのかなりの部分が証券化支援によるものとしてカバーされるならば、それに近い数字のところまでいく可能性があるのではないかというふうには考えております。
井上(和)委員 先ほど大谷議員の質問に出ていたんですけれども、なるべく民間でできるものは民間でやるという方が筋だと思うんですけれども、政策的にやはり保証型をなるべく伸ばすというふうな政策でやる必要があると思うんですが、いかがでしょうか。
松野政府参考人 どちらがいいかというのもなかなか難しい問題ですが、先ほどの御質問にもお答えしたところでございますけれども、買い取り型は、やはり地域の中小の金融機関が融資したローンの債権、これは地域的な偏りがあるとか、そういった債権としての一般的な平均像でない部分がありますので、そういった各地のものを公庫が買い取ることによって、一定の均一な性質のものにいわば加工できるといいますか、大数の法則によって一つのものになり得るわけです。
 一方、かなり全国的な規模を展開しているような大手の金融機関があったとしますと、そこの金融機関が融資をした債権については、その金融機関がいわばそのノウハウとかあるいは証券化する力をみずから持っているとすれば、それをみずからの力で民間の証券化市場で証券化する、それを公庫が保証するという保証型を選ぶということで、どちらを幾らという目標というよりは、むしろ、どういうふうに選択をされるのかという結果として決まるものではないかと思います。
井上(和)委員 では、最後にお聞きしますけれども、アメリカの場合ですと、金融機関でなくて、何というんですか、モーゲージのオリジネーターでしょうかね、やはりどこの金利が安いよというようなことを、顧客から相談を受けて、金融機関を決めて、それで金融機関に取り次ぐというようなサービス事業をやっています。日本の場合はこういうのを少し育成した方がいいと思うんですが、どうでしょうか。
松野政府参考人 今おっしゃいました話は、モーゲージブローカーという職業がアメリカの場合ございまして、これは非常に小さな、夫婦だけで経営しているとか、そういう個人商店的な経営で、いろいろなモーゲージバンカーの利率を見ながら、顧客にここがいいですよというようなお勧めをして手数料をいただく職業があります。
 我が国でも、証券化市場がかなり大きくなってきますと、自然発生的に、多分、その辺のブローカーの一つのプレーヤーとして、この世界のプレーヤーとして出現してくるのではないかというふうには思います。
井上(和)委員 以上で質問を終わります。
河合委員長 一川保夫君。
一川委員 では、引き続き質問をさせていただきます。
 午前中の参考人の意見を参考にさせていただいて質問をさせていただきたいと思いますけれども、まず最初に、民間金融機関を通じてのいろいろな住宅ローンというのは、近年徐々にその割合をふやしてきているというのはいろいろなデータに出ております。しかし、公庫融資のシェアというのも依然として三分の一以上を占めているわけですけれども、しかし、最近、民間金融機関がそれなりにいろいろな対策を講じているのかもしれませんけれども、いろいろなシェアが伸びてきているというふうな形になってきております。
 きょう午前中のお話の中にも、今回こういう証券化支援業務というものがスタートした場合でも、住宅に関するいろいろな融資関係のメニューが何となくふえてくるだけで、そういった市場においてそれがどういうふうな推移を示していくかということは非常に見通しがはっきりしない面があるようなことも言っている参考人もいるし、あるいは銀行協会の会長さんは、行く行くは民間サイドが主体的にそういったものをすべて受けとめていくんだというふうな意気込みを示しておられました。
 確かに、こういった証券化支援業務に係るローン、それから銀行独自のそういうローン、それとまた、依然としてまだしばらく残っております公庫融資業務、こういったようなものがありますね。そのほかにも、例えば地方公共団体サイドのそういった融資業務もあるのかもしれません。
 そういったことを考えますと、民間金融機関のいろいろな住宅ローンというか、住宅建設、住宅購入に対するいろいろな融資業務というものを、国土交通省としては、できるだけ民間にこれからはゆだねていくんだという姿勢であれば、もっと民間サイドの金融機関が積極的に対応しやすいような環境づくりをしていくべきじゃないかというふうに思いますし、そういう面で民間のサイドもいろいろな努力はされているんだろうと思いますけれども、近年の民間金融機関のこういった住宅ローンに対する取り組み状況といいますか、そういうものから見て、今後の見通しみたいなもの、あるいは民間サイドが抱えている現状での課題、そういったようなものを国土交通省としてはどのように考えているか御説明をお願いしたい、そのように思います。
扇国務大臣 先日来から話題に出ていますように、皆さんでも参考人をお呼びになったようでございますけれども、近年、民間の金融機関というものも、大体景気が低迷しておりますので、少なくとも、比較的収入が安定しているというところへ目を移しているというのは事実でございます。
 先日も私申し上げましたように、住宅金融公庫のローンの返済者というのは本当にまじめでございまして、今のように不良債権で倒産することもないし、みんな、ローンを借りている人たち、本当にまじめに返しているんですね。そういう意味で、民間の皆さん方が、安定した収入を得られるということに目をつけて、また、私たちも、今回は民間が住宅ローンの金融公庫にかわってということを発表したものですから、この発表した当時、大体二社しか民間のあれがなかったというのが、今、少なくとも十の金融機関がこの住宅ローンについて手を出しております。手を出しているというか、参加して、住宅ローンの供給を図るように、今十社になっております。まだ十社じゃないかとおっしゃるかもしれませんけれども、これは私は、この期間の中で、二社だったのが十社になったということは大変大きいと思っております。
 ただ、民間の金融機関においては、私もこれをずっと見ているんですけれども、十年を超える固定金利の住宅ローンの商品の提供、平成十三年度は二・七%程度でごく一部でした。けれども、それが、短期の金融、いわゆる預貯金ですとかを貸付原資とする民間の金融機関においては、長期固定金利の資源を大変大量かつ安定的に調達することが困難だということによりまして、このために、私どもは、公庫が有する信用力、今までこんなに金融公庫を信用していただいたということを背景にして証券化の仕組みを導入して、そしてその証券化の仕組みを導入することによって、市場から、固定で、そして長期の金利というものの資金を大量に調達できるではないかということで、私たちは、これは最初に発表したときには、この証券化というものを発表しておりますが、それはまだ手がついていなかったんですけれども、この証券化というものの仕組みを取り入れて、そして長期固定金利を民間住宅ローンに拡大していこうということで取り入れたわけです。
 今おっしゃったように、将来とも、このような証券化によってさまざまな金融機関のより新規参入が促進され、また競争力が出てくるというふうに私は思っておりますし、こういう金融の競争的な市場の中で、業務の効率化ですとか、あるいは今後、よりコストの縮減というものが図られることが期待できる、そして最終的には、私たちは、そのメリットが金利につながって、低利の住宅ローンというものが可能になるということを期待して、この証券化というものも提案させていただいた次第でございます。
一川委員 そこで、先ほど、津川さんだったかどなたかの質問のやりとりにもあったかもしれませんけれども、これから公庫業務の縮小を段階的に図っていくという中で、これも午前中の意見の中にあった話で、先ほど御答弁もされておりましたけれども、アクションプログラムといいますか、よりもうちょっと具体的なそういう計画の内容を公にしてほしいというような趣旨の意見が午前中ございました。
 これは、民間サイドが、どの段階で、どの程度のものを目標にして、どれだけの努力をすればいいか、どういった対策をとればいいかという一つの目標がないとなかなかやりづらいという面が確かにあるのかもしれませんし、そういういろいろな経営方針を固めていくためにも、今回の住宅金融公庫の業務縮小に絡んだアクションプログラムをもっと明確にできないかというようなお話がございました。
 先ほどのお話を聞いておりますと、これからのいろいろな実態を見ながらその時点で判断するんだというような趣旨の御答弁だったようにお聞きしましたけれども、どうもそのあたりがちょっと、聞いていても、もう少し見通しを、正確に描けるかどうかは別にしまして、あらかじめ何か一つのガイドライン的な方向づけをするということは、本当に積極的にこれから徐々に民間サイドにシフトしていくということであれば、そういう環境づくりをもう少し整備してあげた方がいいんではないかというふうに思います。先ほど、局長の答弁では、実態を見ながらその時点で判断するんだということになると、何かこう、ずるずると物事が進んでしまうというような感じがしますけれども、そのあたりはいかがですか。
松野政府参考人 午前中の参考人質疑で、アクションプログラムのようなものを示してほしいという銀行サイドのお話がございました。
 大変お気持ちはよくわかるのですが、先ほども御説明申し上げましたとおり、やはり最終的にこの長期固定のローンを、今は確かに銀行の短期固定あるいは変動金利を皆さんが結構選択されているという事態になっております。したがいまして、公庫の長期固定の実績が減少しております。
 しかしながら、その数字だけで判断していいかどうかというのは、私ども住宅政策の責任者としては、一方で大変難しい問題だと思っております。結局、国民の皆さんが、例えば、この一年以内、あるいは一年たってからでも結構ですが、金利が上昇局面になったときは、いきなり長期固定のニーズが急上昇するという事態があり得るわけです。
 したがいまして、そのような事態を考えますと、計画的にといいますか、機械的に減らしておいていいものではないというふうに考えております。実際上、公庫の実績が一応減少しておりますので、それを見ながら減少はさせていきたいとは思いますけれども、ある程度の余裕を見て確保しておかないと、国民の側から見るとちょっと安心できないという状況があり得るということもございますので、そのあたりは、毎年の概算要求の段階から考慮しながらやっていきたいというふうに思います。
一川委員 特殊法人民営化を図るというのが我々自由党の基本的な考え方なんですけれども、このあたりの今の説明を聞いておりましても、確かにそういう懸念はあることはありますけれども、基本的に、今まで、公庫融資業務をこれから段階的に民間にゆだねていくということの、もうちょっと具体的なそういう条件を整えていくというような姿勢がどうも見えてこないのではないか。何となく、その段階でまだそういうもののニーズがあれば残していくんだというようなニュアンスにとれるわけですけれども、一つの政策の方向づけをしっかりとやっていくという態度がちょっと弱いなという感じを率直に受けております。
 このあたり、これからも機会があればまたあれしたいと思いますけれども、時間の関係がありますから、次に移らせていただきます。
 最近、公庫融資を受けた住宅の、賃貸に係るいろいろなトラブルがあるというふうにお聞きしております。公庫融資はそういった賃貸住宅等に対しても対象に当然しているわけですけれども、そういう場合に、いろいろな基準等を設けて一つのルールを守るということには当然なっていると思いますけれども、いろいろな、敷金の問題なり礼金の問題なり、また更新料等のそういった問題について、近年、いろいろな面で経済が低迷しているという一つの背景があるのかもしれませんけれども、いろいろなトラブルが発生してきているというふうにお聞きするわけです。こういった現状とそういった周知徹底、いろいろな改善策等についてどういう対応をしているのか、そのあたりをお聞きしたいと思います。
井上政府参考人 公庫融資を受けて建設いたしました住宅を賃貸する場合の条件でございますが、家賃につきましては、建設費あるいは借入金の利息等を参酌して公庫が計算した家賃額以下にしてほしいという規制が一つございます。それ以外に、敷金につきましては家賃の三カ月未満、それから、礼金とか更新料については徴求してはいけないというふうな規定がございまして、このことにつきましては、当公庫と、それから公庫から借り入れをした家主さんとの間の金銭消費貸借抵当権設定契約、つまり、契約書の中に、遵守すべき事項だというふうなことでうたってあるものでございます。
 このこと自体を一般的にどのような形で周知しているかというふうなことでございますけれども、公庫に借り入れを申し込まれる前の段階では、公庫の「賃貸住宅融資の御案内」というパンフレットがございますけれども、その中に大きく、公庫融資を借りて賃貸住宅を建てるとこのような条件がありますよというふうなことで周知しておりますし、公庫融資の手続をなさる間には、「賃貸経営のための道しるべ」という冊子を個別にすべて配付しておりますが、その中にも大きく、このような条件を守ってくださいというふうなことで記してございます。そして、既に公庫から融資を借りて住宅を建てて返済中の方に対しましては、毎年一回、「賃貸住宅経営上の注意」というふうなリーフレットを送付いたしまして、その中に、こういった条件違反していませんかというふうな注意喚起をしているところでございます。
 また、こういったことの違反が見つかった場合の是正措置でございますけれども、基本的には、私どもの方から家主さんの方に、こういったことは公庫の融資の条件に違反するから是正してくださいと、例えば、取り過ぎた敷金は返してくださいとか、そういったことで是正を申し入れますし、どうしてもそういったことがだめだとおっしゃる方に対しましては、先ほど申し上げました契約書の条項に基づきまして、お貸しした金額全額を一度にお返しいただくというふうなことも考えなければならぬというふうに考えております。
一川委員 もともと貸し出しをするときの条件というのは当然あるわけでございますし、今御説明にあったような考え方で、しっかりとしたそういう指導を徹底していただきたいというふうにお願いをしておきたい、そのように思っております。
 それで、最後に確認のためにお聞きするわけですけれども、住宅建設五カ年計画というものがございます。これは、さきにここで審議されました社会資本重点計画からは外れている長期計画でございますけれども、こういった長期計画的なものを一本化するという一つの大きな基本的な考え方があったわけですけれども、住宅建設の長期計画はその中には入れていない。これは、今後、何かの機会のときにはこれを一本化するという意思があるのかなしかということ。
 それから、私は、住宅建設というのは、一時期みたいに大きな住宅団地をつくるというようなプロジェクトはだんだん減っていくというふうに思います。そういう点では、ほかのいろいろな社会資本と整合性を保って歩調を合わせていくという必要性は徐々に減ってきているとは思いますけれども、しかし、国土交通省の所管する長期計画を一本化していくという一つの考え方からすると、この住宅建設の長期計画というのは今後どういう扱いになっていくのか。今回、たまたまちょっと計画期間がずれていたから外したということなのか、今後タイミングを見て統合していくということになるのか、そういった長期計画における住宅建設のこれからの位置づけみたいなものを御説明をお聞きしたいと思います。
松野政府参考人 住宅建設五カ年計画と社会資本重点計画の関係でございますが、社会資本重点計画の方は、どちらかというと公共事業の事業計画、さまざまな五カ年計画を一本化するということでございましたが、住宅建設五カ年計画は、やはり住宅という財の性格が少し公共事業と異なっておりまして、大部分が個人とか民間の法人によって建設されるということでございまして、住宅市場という民間市場を前提としたものでございます。したがいまして、緊急整備計画というような公共事業の性格とかなり違った部分を持っておりまして、住宅政策の基本法的な部分も持っております。
 したがいまして、今回一度にこれを廃止して一本化するというにはちょっとなじまない部分があるということで、この部分につきましては、以前は住宅宅地審議会と言っておりましたが、今は分科会と言っておりますが、改めて、今後の住宅政策の五カ年計画のあり方も含めて議論をいただいているところでございます。
 ただ、今回の重点計画の一本化には参加しなかったところではございますけれども、横軸の評価ですね、例えばバリアフリーというような観点からいろいろな、鉄道の駅のバリアフリーとか、さまざまな切り口がございます。その中では、住宅についてはバリアフリーはどういうことになるというようなアウトカム指標としての記述は参加をしていくというふうに考えております。
 今回も、できる限りアウトカム指標への移行をするというのが社会資本重点計画のねらいでございますので、改めて、住宅建設五カ年計画を策定する際にもそうした流れに沿って検討をしたいと思っておりますし、一本化することが可能になるのかどうか、その辺も含めて検討をしてみたいというふうに思います。
一川委員 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
河合委員長 大森猛君。
大森委員 日本共産党の大森猛でございます。
 具体的な質問に入る前に、一点大臣にお聞きをしたいと思います。
 きのうまで当委員会の所属でありました松浪健四郎衆議院議員が、暴力団組員が実質的に経営する建設会社に秘書給与を肩がわりさせていたことが明らかになりました。暴力団対策法では、暴力団への資金源の根絶ということを目的にしている。その暴力団から二百七十五万円を受けていた。しかも、それだけにとどまらないで、指名手配を受けていたその組員の依頼を受けて捜査状況を大阪府警に照会していたという重大なことまで明らかになりました。これは、犯罪者の逃亡を手助けするという極めて犯罪的な行為と言わなければならない。御本人は事実関係を認めて、未熟であった、猛省しているというような言葉で済まされようとしておりますけれども、私は、こうした事実というのは、国会議員と絶対に両立するものではないということを強く感ずるものであります。
 同じ政党に所属され、かつ建設会社所管省庁国交省の大臣でもあります扇大臣のこの点での御見解を率直にお聞かせいただけたらと思います。
扇国務大臣 今、大森議員から、私たち同僚でございまして、今は同じ政党でございますけれども、新進党という政党がございまして、当時、小沢一郎先生が党首でいらした新進党の平成八年の当選でございました、十月の選挙で。
 私もきのうまで全然知りませんで、きのうの朝刊をここへ来るときに車の中で見まして、何これというので、初めてきのうの朝知ったわけで、平成八年のことを全然私ども今まで知らなかったというのが現実でございますし、きのうたまたまここの席に座っていらして、いらっしゃらなくなったんですけれども、結局、私もこれもよくわかりません、細かいことはきのう聞く時間ありませんでしたけれども、きのう御本人から両院議員総会で御説明があったのは、平成八年十月に当選して、九年のことだそうでございますけれども、一年間、あなたの選挙といいますか議員としてを手伝いたいと申し出があって、自分は受けてしまったという弁明を聞きました。御本人は、当選した当時、全くわからなくて、御好意だと思ったという話もございました。
 私もかばうつもりはありませんけれども、もう立派な議員で、二回当選していらっしゃるんですから、対処の仕方というものも私は御本人が一番心得ていらっしゃるだろうと思うんです、議運も国対もしていらっしゃいますから。
 ただ、そういう意味で、私は、当選当時支援すると言われたことに、その人の身元も、今まさに大森議員が暴力団とおっしゃいましたけれども、その当時は暴力団ということも知らなかったということで受けたということで、私も、もし自分がそうならどうかなという反省も含めて、当選当時というのは、私自身も、だれを見分けるという目は持っていなかったんだろうと思いますけれども、平成八年だったら、もっとそのときに早く私は、まして、指名手配ですか、今おっしゃいましたけれども、これも私も全然わかりませんけれども、本当に指名手配者だったのか。あるいは、今建築会社とおっしゃいましたけれども、どういう建築会社だったかもまだ私どもの前には明らかにされておりません。これは順次明らかになってくると思いますので、明らかになった時点で、我々も、あってはならないことがあったとすれば厳しい決断というものを御本人もされるであろうし、私たちも、同僚だからかばうとかなんとかじゃなくて、政治家として、世間にきちんと理解ができる、国民あるいは選挙民が納得できるような説明あるいは解釈というものがあろうと思います。
 今の段階で、大森議員がおっしゃったように、暴力団であり、あるいは建築会社からというようなことも、私もマスコミでしか、現段階では、きのうのきょうでございまして、本人が今おりませんのでよくわかりませんけれども、その事情がきちんと明快になるということをもって、私たちは改めて党内で検討していきたいと思っております。
大森委員 御本人はもちろん、ぜひ同僚としても厳しい対処をしていただきたいということを申し上げて、具体的な質問に入りたいと思います。
 昨日来の審議を聞いておりまして、住宅金融公庫融資が果たしてきた役割、それが大変大きいということもよくわかりました。同時に、大臣が何度も繰り返して言われていた長期、低利、固定、こういう特徴、それがとりわけ中低所得者に住宅を提供するという面での役割を果たしてきた、その辺の状況もよくわかったつもりであります。
 しかし、きのう来の議論を聞いておりまして、私どもが、この融資業務が民間に移行した際、懸念すること、その懸念は、解消するどころか、ますます懸念が拡大される。最大、この間の特徴であった低利、長期、固定、こういう特徴が侵食されてしまうことになるのではないか。あるいは、女性や障害者や自営業者らに対する選別融資、これはやはりますます拡大することになるんじゃないかという懸念が非常に、逆に拡大するというのが率直な私の印象であります。
 きょうは、極めて限られた時間でありますので、それとも関連しながらも、特に住宅ローンの返済困難者、この問題に絞って幾つか質問をするつもりであります。
 特にこの数年、住宅ローンで破綻される、あるいは滞納者がふえているというやに伺っておりますけれども、最初に、滞納の状況ですが、延滞債権件数、金額、延滞率、これが、九七年、平成九年度以降どういうぐあいに変化しているのか、また、公庫住宅融資保証協会の代位弁済の件数、金額は、同じく九七年以降五年間でどういう変化をしているのか、お聞かせいただきたいと思います。
井上政府参考人 公庫の延滞状況についてのお尋ねでございます。
 まず、私どものとらまえております延滞債権というのは、六カ月以上延滞した方の総元金でございますけれども、平成九年度で申し上げますと、一万八千五百二十五件、金額にして二千七百十一億、延滞率は〇・三七%でございます。平成十三年度、三万七千九百二件の五千七百五十四億、延滞率としては〇・七九%でございます。
 また、公庫住宅融資保証協会の代位弁済でございますが、これも、平成九年度は九千七百十五件の千四百四十七億円、平成十三年度、一万七千九百五十件の二千七百一億円となってございます。
大森委員 今お話にありましたように、延滞件数、金額、延滞率、代位弁済の件数、金額、いずれも、五年間で二倍あるいはそれ以上に激増という状況であります。大臣もたびたび、この利用者は大変まじめであるとおっしゃっているわけで、私もそう思うわけでありますけれども、このまじめな利用者が、今、こういう返済困難に陥っている状況がそこに示されていると思います。
 そこで、九八年十月に閣議決定で、住宅金融公庫の融資に関し緊急に講ずべき対策について等によって、住宅ローン返済困難者のための返済方法の特例措置が講じられておりますけれども、これらの措置の適用件数は、その後どのようになっているでしょうか。
井上政府参考人 平成十年度に閣議決定していただいた件でございますが、平成十年度は、適用は二千四百七十二件でございます。これは、実施したのが平成十年度の十二月から四カ月間でこういった件数になってございます。平成十四年度、これは二月までの実数でございますけれども、二万二千二百二十件行っております。
大森委員 翌十一年度と比較しても、この特例措置の適用件数が二・五倍になっている。事態は非常に深刻になっているということだと思うんです。
 そういう特例措置を適用しても、なおかつ家を最後は手放さざるを得ないという方もふえているんじゃないかと思いますが、これはどういう状況でしょうか。
井上政府参考人 私ども、住宅が家族団らんの場でございますので、極力住宅を手放さないで済むような形での返済困難者対策というふうなことで、先ほど申し上げましたようなことをやっておるわけでございますが、最終的に競売あるいは任意売却で住宅を売らざるを得なくなった方の実数でございますけれども、平成十四年度、これも二月までの件数でございますが、約二万二千件でございます。
大森委員 二万二千件が、さまざまな思いで大変な苦労をして手に入れたそういうマイホームを手放さざるを得ない。本当に断腸の思いがすると思うわけなんです。
 この間のそういう困難者の激増、この五年間でいずれも二倍あるいはそれ以上になっているというような事態に今日立ち至っているわけなんですが、こういうことの原因について、率直に、大臣は、原因はどこにあるとお考えでしょうか。
扇国務大臣 これはもう経済と密着な関係がございます。経済の停滞、それによる失業率、そういうものが私はリンクしているものだと思っております。
大森委員 本人の真剣な努力にもかかわらず、客観的なそういう経済的事情によって、リストラされ返済が滞るという事態に立ち至った方がもう圧倒的だと思うんですね。そういう意味で、私は、政治の責任、こういう点では極めて大きいと思います。
 この間の、先ほど公団からは、できるだけ手放さないで済むような対策ということで御答弁がありました。そのこと自体、極めて重要でありますけれども、現実に今二万人以上の方が家を手放しているということで、対応の仕方として、短期、中期、長期、いろいろ、対策のマニュアルといいますか、それはとられているようでありますけれども、そういう現在の対応策で本当に大丈夫だろうかという辺はいかがでしょうか。
松野政府参考人 住宅ローン返済困難者の方々に対する措置につきましては、平成十年十二月から実施をしております。その返済相談の結果を踏まえながら、返済条件の大幅な変更等の措置をとってきております。
 その後、昨年十二月、平成十四年十二月の経済対策閣僚会議決定の改革加速プログラムというのがございますが、この中で措置されたものがございます。それは、返済期間の延長期間、これまでは最長十年延長するということでございましたが、さらに十五年延長という措置をとりました。それから、元金を据え置きする措置、一定の方々にこれを適用しておりましたが、これまでは、リストラ等によりまして収入の減少が三〇%以上の方に限定をしておりましたが、収入減少割合二〇%以上の方も対象にするという要件緩和をいたしました。さらに、この適用期限の延長そのものも実施してきたところでございます。
大森委員 公庫の方からいただいた延滞者への対応についてのマニュアル的なメモで見ますと、当初の短期延滞、一、二カ月の段階あるいは中期の三―五カ月の段階の対応という中で、例えば今の特例措置などの紹介をきちんともっと早期に行うとか、そういう意味での現在の対応について改善すべき点はないのかという点はいかがですか。
井上政府参考人 返済困難者に対するこういった制度の周知措置についてでございますけれども、私どもとしては、考えられる限りのことはとっているつもりでございます。
 一つは、今おっしゃったような、延滞者に対する、ある意味では督促も行うわけでございますが、その中でも、ダイレクトメールとして、こういった制度がございますよというふうなことは周知しておりますし、それぞれ、住宅金融機関あるいは公庫支店の相談窓口では、それなりのパンフレットを置きまして相談に応じております。
 また、地方公共団体の広報紙などにつきましても、公庫においてはこういうふうなことを行っていますということ、あるいは公庫のインターネットホームページ、新聞広告等、私どもの考えられるあらゆるすべをもってその周知徹底を図っているつもりでございます。
大森委員 融資業務が民間に移行するという点で私どもが心配していることのもう一つは、実はこの点なんですね。
 現在の公庫の対応、決して十分とは言えないけれども、それなりに一定の努力はされている。この五年間でも相談件数が二十三万、五年前と比べて約四倍ふえているという中で、一定の対応をされていると思うんです。
 国交省にお聞きしますけれども、こういう返済困難者に対する対応が、この公庫、民間に移行した場合、どうそれが十分なものとして保証されるのか。少なくとも、現在の公庫がとっているような態度、それは基本的に引き継がれていくのかどうか、その点はいかがでしょうか。
松野政府参考人 例えば、証券化支援事業で長期固定ローンを出す、そのときに、今とっているような返済困難者対策がとれるのかということかと思います。
 特に、最初に買い取り型の証券化支援事業を開始いたしますが、これにつきましては、一たん、民間の銀行ローンではございますが、債権を公庫が買い取ります。買い取った後は、現在の公庫が財投機関債で実施しておりますスキームと同じものを使いますので、信託銀行に信託するとかいうことをやっておりますが、この信託したものの中でも困難者対策を実は実施しております。それは、公庫が債権を買い取って、いわば支配権を持っているというようなことで可能なわけでございます。
 したがいまして、ある程度この買い取り型のスタイルの中では、全く同じとは言い切れませんが、同様の措置がとれる可能性がある、とることが可能だというふうに考えております。
大森委員 この間、きのう来の議論の中で、私は、一番欠けているのは、基本的な考え方として、住宅は人権、住まいは福祉、そういう立場での議論といいますか、非常に欠けているんじゃないかという印象も持ちました。
 そこで、先ほど公庫の方からは、できるだけ家を手放さないということを一つの基本にした返済困難者への対応をしているというお考えが示されましたけれども、国交大臣としても、今後少なくとも五年間続く公庫の融資業務の中で、こういう立場をきちんと貫くということを言明していただきたいと思います。
扇国務大臣 今、大森議員がおっしゃるように、私たちは、もともと住宅金融公庫というものは、民営化するというときからそのことを一番大事に思っています。
 ただ、今までまじめに払っていらっしゃる方と払えなくなった人との不公平感というものはあってはならないと思いますから、本当に失業して出なきゃいけないぐらい困っている方の実情というものを、まじめに一生懸命無理してでも払い続けている人との不公平さがないということも、私は人権という意味では大きな大事なことだと思います。
 そういう意味では、払えない人のために何か手助けができることはないかというので、住宅金融公庫あるいは国交省両方で力を合わせて対策をとっているところでございますので、今後五年間の間にそういう人たちが少しでも少なくなり、一たん自分たちの夢がかなったそういう人たちのために、それが持続できるようにということであらゆる税制等々で、まして景気がよくなるようにという基本的なことも小泉内閣として頑張っていくということで、より皆さん方に安心していただけるような対策を種々とっていきたいと思っています。
大森委員 時間が参りましたので終了しますが、住宅金融公庫、住宅宅地債券マンション修繕コースというのが現在あります。これは引き続き、どういう形になるにしろ、きちんと承継していくということを要望しまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
河合委員長 原陽子君。
原委員 社会民主党の原陽子です。よろしくお願いします。
 まず、ずっとこの間の議論を聞いてまいりまして、やはり、今回の法改正がなぜこのタイミングで出てきたのかということがはっきりわからないというか、どの改革をなさりたいのかということがいま一つ明確ではないのではないかというふうに私個人は感じております。午前中の参考人質疑の中にも、今回、先行七法人としてこの法改正が出てきた理由は特にない、経済的とか合理的根拠は特にないと考えているというような参考人の方からのお話があったりしました。
 今回のこの提案が、特殊法人の改革なのか、政府関係金融機関の改革なのか、または財政投融資の改革なのか、どの改革なのか。また、どれかの改革でなければ小泉内閣の改革にはならなく、何も変わらないということになってしまっていると思います。
 その点で、まず一点目、国土交通省にお伺いをしたい点なんですが、果たして今回のこの提案、どの改革として考えておられるのか、それとも、特殊法人の整理合理化計画に組み込まれたから、とりあえず漠然と出してこられているのか、まず、出だしのところの御説明をいただきたいと思います。
松野政府参考人 お答えいたします。
 住宅金融公庫につきましては、平成十三年十二月に閣議決定されました特殊法人等整理合理化計画におきまして、今行っております直接融資業務については、平成十四年度から段階的に縮小するとともに、利子補給を前提としないことを原則とする。また、民間金融機関による長期固定金利の住宅ローンの供給を支援する証券化支援事業については公庫が先行的に行うとともに、五年以内に公庫を廃止し、当該事業、つまり、証券化支援事業を行う新たな独立行政法人を設置する。その際、民間金融機関が円滑に業務を実施しているかどうかを勘案して、融資業務の取り扱い、つまり、今の直接融資業務の取り扱いを最終決定するということとされました。
 これを受けまして、平成十四年度から段階的に縮小を図ってきております。また、あわせて、利子補給を前提としない金利体系に改めてきております。
 また、今回の法改正によりまして、公庫の業務に証券化支援事業を追加するということを行いますが、あわせて改正法の附則の中で、平成十九年三月三十一日までに、整理合理化計画に定められましたとおり、公庫を廃止して新たな独立行政法人を設立するために必要な法的措置を講ずる、これは二段階になるということではございます。
 このように、一連の、附則まで含めて今回の改革を考えますと、組織改革、それから財政改革、財政投融資改革、それぞれ関連する内容を含んでいると考えているところでございまして、引き続き、こういった観点から着実に公庫改革に取り組んでまいりたいと考えております。
原委員 今、それぞれの改革に関連があるという御答弁だったので、ちょっと細かくお聞きをしたいと思います。
 まず、組織改革という点から何をするのかということ、特殊法人改革の観点から何をするのかということをお聞きしたいんですが、これは行く行くは新しくできる独立行政法人になっていくわけです。今ある住宅金融公庫の役員の一覧の名簿を事前にいただきましたら、やはり天下りの方がいらっしゃいまして、きょう参考人で来ていらっしゃる方の中にも天下りの方がいらっしゃるわけですが、この新しくできる独立行政法人に関しては、国土交通省やほかの省庁から天下りはさせないというか、天下りをしないというようなお考えを改革という観点からお持ちであるかどうか、御答弁をお願いします。
松野政府参考人 組織改革という観点からは、まずは、住宅金融公庫が廃止をされて独立行政法人という組織にかわるということがございます。融資業務につきましては段階的に縮小するということ。それから、これまで財投機関債というものも発行しております。こういったノウハウを活用すること。それから、既に民間金融機関との間でシステムを構築しております、こういったものを最大限活用しながら、既存の組織、人員をフルに活用するということで、新たな業務を開始するといって組織を肥大化させるようなことを考えているわけではございません。
 また一方、特殊法人等整理合理化計画におきまして設立するとされております証券化支援業務を行う独立行政法人は、弾力的かつ効率的な業務運営を行う必要があるということでございます。それに加えまして、その業務は、関係省庁との円滑な連携が必要でございます、かつ、公的な性格を有するなどの特殊性もございます。したがいまして、役員は、高い能力、識見及び経験を有し、当該法人の業務の着実な遂行に当たることができる者であるということが求められると考えております。
 いわゆる天下り問題に関する国民の問題意識の高まりを踏まえまして、特殊法人等整理合理化計画の中におきましても、独立行政法人は、役員について、退職公務員及び独立行政法人の退職者の状況を公表する旨決定されたところでございます。そういった意味で、広く国民のチェックを受けるということになっております。
 国土交通省といたしましても、この趣旨を踏まえつつ、適材適所という観点で、幅広い分野から法人の役員としてふさわしい人材を求めていくという考えでございます。
原委員 そうしましたら、今度は財政投融資改革という点から、国土交通省にもう一点御質問させていただきます。
 この観点から、現在の借り入れは減っていくのか、また、減らしていくのであれば、どのように現在の借り入れているものを減らしていくのかということの御説明をお願いします。
松野政府参考人 年間三千数百億円を補給金という形で一般会計から支払われている状態が今の公庫の状態でございますが、これは、何度も申し上げておりますが、かつて高金利時代に、低金利で国民の皆さんに住宅ローンを供給するということから低利融資をした。その結果として、公庫が返済する高金利と国民の方々から返ってくる金利の逆ざや、これが今も残っているということから一般会計をいただいているということでございまして、決して、公庫が漫然と赤字経営をしたそのツケを今いただいているというわけではございません。これは、政策的なそうした判断の結果としての義務的経費を国費で相償っている、支出しているということでございます。
 これは、各年度の戻ってくる資金と、返すべき財投資金への返済とのいわばギャップを埋めるという形で計算されます。したがいまして、低金利で順調に推移すれば、何年か後には解消していくという性格のものでございます。ただし、各年度でどのぐらいの公庫の新規需要があるかとか、そういった状況によって結果として計算が出てまいりますので、いつごろ明確にゼロになるということは、まだはっきりしたことは申し上げられない状況でございます。
原委員 次に、きょう、財務省さんと金融庁にも来ていただいているんですが、今回は、政府全体として、政府関係金融機関が占めていた市場を民間銀行に開放していくという方向を目指しているのだと思います。その場合、開放された市場を民間の今ある銀行は受けとめる実力があるのかどうかという点で、政府関係金融機関も今は補助金や財投なしではやっていけないのと同じように、民間銀行も、資本増強や破綻処理の名目で公的資金を注入されている状態にあります。
 まず金融庁にお聞きをしたいのですが、金融庁として、民間銀行をこれからどのような方向に導いていこうとしているのか御答弁をいただきたいんですが、現在、民間金融機関が公的資金を注入された総額は、何年からで幾らかという点も加えて、まず御説明をいただきたいと思います。
五味政府参考人 まず、公的資金のお話でございますが、預金者保護のために金銭贈与がなされました金額が、平成四年度から平成十四年度まで、合計で十八・七兆円。次に、破綻金融機関からの資産の買い取りでございますが、これが同じく六・四兆円。そして資本増強、これが同じく十・四兆円となっております。
 どのような方向に民間金融機関を導くのかというお話でございますが、現在、民間金融機関は不良債権の処理に全力を挙げておりますが、こうした不良債権処理の原資を賄うためにも収益性の高い経営を目指す必要があるということでございまして、新しいビジネスモデルを開発すべく、いろいろな努力をしております。
 民間金融機関におきましては、例えば、今話題になっております住宅ローンにつきまして、これは収益性の高い分野であるというふうに位置づけまして、既に積極的な取り組みを行っております。長期固定ローンの提供など、顧客ニーズに合った商品開発ということが着々となされておりまして、こうした意味で、開放された市場を受けとめる実力というのは、現在の日本の民間金融機関に十分備わっているというふうに考えられます。
 そこで、こうした民間金融機関を金融庁としてどのような方向に導くのかというお尋ねでございますが、金融庁といたしましては、今申し上げましたように、銀行が、それぞれの経営判断に基づいて適切なリスク管理を行いながら、顧客のさまざまなニーズに合致した商品というのを設計し、さらに提供していく、こういうことが非常に重要だと考えております。
 そのために、さまざまな経済主体間に立って資金仲介機能を担うという非常に重要な役割を担っております銀行部門の健全性というものを強化していく、これが非常に重要だと考えております。こうした健全性の強化によりまして、より強固な金融システムを構築していく、こうした方向で行政を行っております。
 このような観点を踏まえまして、昨年十月三十日に、平成十六年度に不良債権問題を終結させるという目標の達成に向けて、金融再生プログラムを取りまとめたところでございます。金融庁といたしましては、今後とも引き続きこのプログラムを着実に実施してまいりたいというふうに考えております。
 以上でございます。
原委員 続きまして財務省にお伺いをしたいんですが、財務省としては、政府関係金融機関についてどのような方向を目指していくのか、どう健全性というものを取り戻していこうとお考えになられているのか、お尋ねをいたします。
村瀬政府参考人 お答えいたします。
 政府系金融機関全体の改革につきましては、御案内のとおり、一昨年十二月の特殊法人等整理合理化計画におきまして、中長期的な財政支出の縮減、効率化の視点あるいは財政投融資改革との関連等も踏まえまして、民にできることは民にゆだねるという原則のもとに規模の縮減等の事業見直しを行うこととされまして、また、公的金融の対象分野あるいは規模、組織の見直しを行うために、経済財政諮問会議において検討を開始するということになったわけでございます。
 これを受けまして、同会議におきまして一年間議論されまして、昨年の十二月に、現在大変厳しい経済金融情勢であるということを踏まえました三段階の改革の道筋と、今後の政策金融のあるべき姿というものが示されたところでございます。
 政府といたしましては、この諮問会議の結論を踏まえまして、経済情勢を見きわめつつさらに検討を進めるということと同時に、先ほど出てまいりました整理合理化計画の着実な実行等の措置を講ずることといたしております。
 そんな中で、財務省といたしましても、政策金融につきましては、官民の適切な役割分担のもとに、効率性の向上、透明性の確保あるいはリスク管理の徹底ということなどを図っていくことが必要であるというふうに考えております。
 十五年度予算におきましても、例えば、前年度に二百二十億円の予算を計上しておりました、国民生活金融公庫の赤字を補てんするいわゆる収支差補給金を全廃するといったような、一つの例でございますが、そういった見直し措置を講じているところでございまして、今後とも、政府系金融機関の改革に適切に対応していきたいというふうに考えております。
原委員 それでは、最後に国土交通省にお伺いしたいんです。
 国土交通省は、主務省庁として、こうした大きな改革の構図の中で、この住宅金融公庫の改革をどうとらえているのかという点、あと残された課題は何であるかという点も含めての御説明をいただきたいと思います。
松野政府参考人 財政投融資改革という観点から現在の考え方はどうかということでございますが、財政投融資改革の観点から、財政融資資金のみに依存しないという意味で、公庫の直接融資の原資を証券化市場から調達するということで、財投機関債というのを既に発行しております。累積八千五百億円に上ります。こうしたことを既に実施しているということ。
 それからさらに、今回の法改正によりまして、証券化支援事業によって民間のローンを買い取り、それを証券化市場で資金調達するということで、一般的な長期固定のローンを、だんだん資金調達の方向を変えていくというようなことで財政投融資改革を進めていくということでございます。
 また、今後の残された課題はどうかということでございますが、もちろん、今回提案させていただいております証券化支援事業がうまく機能するということが最大の当面の課題でございます。それとあわせて、五年経過した時点での独立行政法人設置の際に、どういう民間のローンが、特に長期固定のローンがどういう状況になっているかということを見て、また、政策的課題がそれで果たせるのかどうかということを見て独立行政法人の業務のあり方を判断するということが課題として残っているというふうに思います。
原委員 ありがとうございます。
 今回、小泉改革の中でいう先行七法人の中ではこれが初めての金融機関であり、この最初の法改正は、大切な意味というか、重要な意味を持ってくると私は思っております。
 廃止することに関しては、私は廃止すべきではないという考えを持っているのですが、とにかく初めての金融機関の改革になっていくわけです。先ほど、残された課題も何点か挙げていただいたんですが、大切な意味を持っているという意味では、今後も慎重に議論をぜひ進めていっていただきたいということを最後に要望させていただいて、質問を終わります。ありがとうございました。
河合委員長 次回は、来る十八日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時三十五分散会


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