衆議院

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第32号 平成15年7月23日(水曜日)

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平成十五年七月二十三日(水曜日)
    午前九時三十五分開議
 出席委員
   委員長 河合 正智君
   理事 栗原 博久君 理事 菅  義偉君
  理事 田野瀬良太郎君 理事 橘 康太郎君
   理事 今田 保典君 理事 玉置 一弥君
   理事 赤羽 一嘉君 理事 一川 保夫君
      岩崎 忠夫君    倉田 雅年君
      実川 幸夫君    高木  毅君
      谷田 武彦君    中本 太衛君
      西田  司君    林  幹雄君
      菱田 嘉明君    福井  照君
      堀之内久男君    松野 博一君
      松宮  勲君    松本 和那君
      森田  一君    山本 公一君
      渡辺 喜美君    阿久津幸彦君
      岩國 哲人君    大谷 信盛君
      加藤 公一君    佐藤謙一郎君
      永井 英慈君    伴野  豊君
      高木 陽介君    土田 龍司君
      大森  猛君    瀬古由起子君
      菅野 哲雄君    原  陽子君
      二階 俊博君    後藤 茂之君
    …………………………………
   議員           今田 保典君
   議員           伴野  豊君
   議員           細川 律夫君
   議員           菅野 哲雄君
   国土交通大臣       扇  千景君
   国土交通大臣政務官    高木 陽介君
   政府参考人
   (国土交通省総合政策局長
   )            澤井 英一君
   政府参考人
   (国土交通省鉄道局長)  丸山  博君
   政府参考人
   (国土交通省自動車交通局
   長)           峰久 幸義君
   政府参考人
   (国土交通省政策統括官) 鷲頭  誠君
   国土交通委員会専門員   福田 秀文君
    ―――――――――――――
委員の異動
七月二十三日
 辞任         補欠選任
  津川 祥吾君     加藤 公一君
  日森 文尋君     菅野 哲雄君
同日
 辞任         補欠選任
  加藤 公一君     津川 祥吾君
  菅野 哲雄君     日森 文尋君
    ―――――――――――――
七月二十二日
 複合一貫輸送の推進に関する法律案(細川律夫君外三名提出、衆法第四七号)
同月十八日
 国土交通省の地方整備局等の機構拡充及び職員増員に関する請願(仙谷由人君紹介)(第四三六六号)
 同(仙谷由人君紹介)(第四四〇四号)
 同(中川智子君紹介)(第四四〇五号)
 同(仙谷由人君紹介)(第四四二九号)
 同(仙谷由人君紹介)(第四四四八号)
 同(坂本剛二君紹介)(第四四六一号)
 同(武正公一君紹介)(第四四六二号)
 同(岩國哲人君紹介)(第四四七六号)
 気象事業の整備拡充に関する請願(中川智子君紹介)(第四四〇三号)
 働くルールを確立させ、建設労働者の雇用を守り、公共事業の生活・環境重視への転換に関する請願(佐藤観樹君紹介)(第四四二八号)
 高速道路利用料金の引き下げに関する請願(鮫島宗明君紹介)(第四四六〇号)
 同(岩國哲人君紹介)(第四四七七号)
同月二十三日
 働くルールを確立させ、建設労働者の雇用を守り、公共事業の生活・環境重視への転換に関する請願(今田保典君紹介)(第四四九五号)
 同(中山義活君紹介)(第四四九六号)
 同(樋高剛君紹介)(第四五七一号)
 同(中山義活君紹介)(第四六二六号)
 同(永井英慈君紹介)(第四六二七号)
 同(松本剛明君紹介)(第四六二八号)
 同(宮腰光寛君紹介)(第四六八四号)
 国土交通省の地方整備局等の機構拡充及び職員増員に関する請願(鹿野道彦君紹介)(第四四九七号)
 同(中山義活君紹介)(第四四九八号)
 同(吉田公一君紹介)(第四四九九号)
 同(蓮実進君紹介)(第四五七二号)
 同(三井辨雄君紹介)(第四五七三号)
 同(大谷信盛君紹介)(第四六三〇号)
 同(川内博史君紹介)(第四六三一号)
 同(三井辨雄君紹介)(第四六三二号)
 同(大谷信盛君紹介)(第四六八五号)
 同(今田保典君紹介)(第四六八六号)
 同(今野東君紹介)(第四六八七号)
 同(宮腰光寛君紹介)(第四六八八号)
 気象事業の整備拡充に関する請願(永井英慈君紹介)(第四六二五号)
 海洋環境を守り、防災に優れた社会資本の整備、国民本位の港湾・空港行政に関する請願(永井英慈君紹介)(第四六二九号)
 窒素酸化物と粒子状物質を除去する後付装置の研究開発・実用化に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第四六八九号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 交通基本法案(細川律夫君外四名提出、第百五十四回国会衆法第二九号)


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     ――――◇―――――
河合委員長 これより会議を開きます。
 第百五十四回国会、細川律夫君外四名提出、交通基本法案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省総合政策局長澤井英一君、鉄道局長丸山博君、自動車交通局長峰久幸義君及び政策統括官鷲頭誠君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
河合委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
河合委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。玉置一弥君。
玉置委員 おはようございます。
 きょうは、私どもの提案の交通基本法の審議をしていただくということで、皆様方に感謝を申し上げたいというふうに思います。
 この問題は、三年前の交通バリアフリー法案の審議の際、移動する権利の根拠といいますか、これをどこに求めるかというお話がその論議の中で出てまいりまして、政府からも、その根拠といいますか、保障すべき通行権といいますか、こういうものをどういう形で担保していくか、再三論議が行われていたわけであります。いろいろな国々の、いわゆる障害者あるいは移動困難者、こういう人たちに対して、どういうことを根拠にしてこの交通バリアフリーなりあるいはその利便性確保というものが進められてきたのか、こういう歴史をずっと見てみました。そういう中から、移動する権利をやはり明確にした方がいいのではないか、こういうことで私たちのこの提案というふうになったわけであります。
 それで、まず提案者にお伺いをしたいんですが、要するに、アメリカとかフランスとかいうふうに障害者に対して基本法的法律がぴちっと規定をされている、あるいはイギリスのように運輸法そのものに規定をされているとか、いろいろな方法があるんですが、基本法としてやはり明確にこうやって打ち出してきたというのは、どういう理由でこういう法案をつくらなければいけないと思われたのか、そこをまずお聞きしたいというふうに思います。
細川議員 玉置委員の御指摘は、この法律の基本のいわば中核になっております、移動する、移動に関する権利というものをどう明確にして法律構成ができているのかという御指摘だろうと思います。
 この移動に関する権利というものは、前々からいろいろな人から、ぜひ法律ではっきり規定をしてほしい、こういう要請がございました。今玉置委員からお話がありました交通バリアフリー法、この法案を提案して審議がされましたときには、私ども民主党の方では、移動する自由を確保する、こういう表現で、自由権として権利性を主張しておりましたけれども、当時、政府案にはそういう規定がございませんでした。したがって、この本法案におきましては、そういう経過も踏まえまして、移動に関する権利というものを、生存権と自由権、その両面から明らかにいたしたところでございます。
 特に生存権の規定によりまして、憲法二十五条に規定をされております「健康で文化的な最低限度の生活」の中に移動する権利も含まれているということを確認することによって、国としてこの権利を保障しなければならないということを明らかにしているところでございます。
 つまり、この移動に関する権利の規定によりまして、国及び地方公共団体は、移動に関する権利が侵害されることのないような施策を講じる義務が生じるわけでありまして、本法案が成立すれば、さまざまな形でこの権利を侵害される人たちが救済されるということになりまして、必ず国民の福利の向上に寄与するものだというように考えております。
玉置委員 それでは政府の方にお聞きしますが、こういう論議をしている中で、移動の権利を国が保障するということになれば、いろいろな面で強制力を持たされて予算的措置をしていかなければいけない、こういうことが当時あったと思います。そして、そのときはまだ国民的コンセンサスが得られていないからということでスタートしたわけでありますけれども、これだけいろいろな地域でバリアフリーが進展をしてまいりますし、そういう国民の意識そのものが大きく変わってきていると思うのですが、今、もう一度、移動の権利について国がどういうふうに考えておられるかということをお聞きしたいと思います。
鷲頭政府参考人 お尋ねの点でございますが、まず、私どもとしては、交通サービスにつきましては、利用者ニーズに的確に対応して、高水準のサービスをより多くの国民に効率よく提供していくということが基本的に求められていることだと考えております。
 適切な交通サービスを実現するために、私どもは、基本的な交通インフラについては公的主体が効率的にその整備を図る、それから、個々の交通サービスにつきましてはその地域の利用者ニーズを踏まえた民間企業がその創意工夫や企業努力を最大限発揮して適切なサービスを提供するというやり方が望ましいと考えておりまして、そういう線に沿いまして国土交通省としても規制緩和などに取り組んできたところでございます。
 また、こういう枠組みの中では解決しがたい、例えば過疎地域における生活交通の問題や今先生お話がございましたバリアフリーの問題などにつきましては、国や地方公共団体などが交通事業者に助成措置を講ずることなどによりまして政策的に支援を行っていく、こういう手法をとってきたわけでございます。
 移動の権利を保障するというお尋ねの点でございますが、この枠組みを大きく転換いたしまして、公的部門が交通サービスの水準について基本的に責任を負うということになります。
 したがいまして、国民が国に対してその権利を行使した場合、国は交通サービスを提供する責任を負うことになるということでございまして、その実現のためには、交通事業に対する国の関与権限をもっともっと強化するということ、あるいは財政支出の大幅な増大あるいは非効率化を招くといったようないろいろな問題が生じてくるわけでございまして、こういうさまざまな問題点を十分理解して、是認した上で、移動権を保障するということについての国民のコンセンサスというものは、まだ得られていないというふうに考えております。
玉置委員 提案者にお聞きをします。
 今お話がございましたように、国民のコンセンサスがまだ得られていないということでございますが、同じような環境権とかプライバシーとか、要するに、条文には書かれていないけれども、世間で一般的にある程度確立した権利というのがあるわけです。そういう面で見ると、この移動する権利というものがぼつぼつその域に達してきているのではないかというふうに思います。
 そういう関係から見ると、憲法に書かれております第二十五条、第二十二条等の権利を追認しているというふうに考えられるわけですけれども、この辺を根拠に、それからもう一つ、先ほどもお話がございましたように、過疎地の生活交通、それと例えばいわゆる移動困難者の移動する権利、お互いを見ながら、こういうものがこの基本法でどういうふうに考えられているのかということをお聞きしたいと思います。
細川議員 玉置委員の今の質問にはいろいろな、たくさん内容がございますが、まず、移動に関する権利がどういうような根拠によって認められるのか。先ほど政府の方の答弁では、まだ国民的なコンセンサスが得られていない、こういうことでありましたけれども、本法案におきます第二条の移動に関する権利というものは決して新しい権利の規定ではなくて、今玉置委員が御指摘になりましたように、憲法二十五条それから憲法第二十二条に保障されている移動に関する権利というものを確認したものだというふうに考えております。
 本法の第二条一項は、憲法第二十五条第一項で保障されている生存権にこの移動する権利が含まれておりまして、いわゆる私たちの日常的な、通学だとかあるいは病院への通院あるいは施設への通所、それから日用品を買い物したり、そういう人々が生活する上で移動は欠かせないものであって、移動手段がなければ二十五条で規定をする生存権、最低限度の生活を営むことができない、こういうことでございます。
 そして第二項の方は、憲法二十二条の第一項で保障されている居住、移転の自由にこの移動の自由が含まれていることを明らかにしたものでございます。
 したがって、先ほど政府の方ではまだまだコンセンサスが得られていないというようなことを言われておりましたけれども、そもそもこの権利は憲法上認められているものでありまして、コンセンサスがあるかどうか、熟しているかどうかということは、これはもう議論の意味がないものでありまして、既にもう幅広く権利としては認められているというふうに私どもは考えております。
 そこで、先ほどもう一つ質問がございましたいわゆる過疎の地域の交通の問題、あるいは高齢者あるいは障害者の移動の保障はどうなるのか、この法案ではどうなるのか、こういう質問でございます。
 過疎地などの交通に関しては第十五条で規定しておりますし、それから高齢者、障害者などの移動に関しての規定については第十六条で規定をいたしておるところでございます。
 まず、第十五条で、過疎地などの交通についてはこういうふうに規定しております。「国は、交通条件に恵まれない地域の住民が日常生活及び社会生活を営むに当たり安全で円滑で快適に移動することができるようにするため、当該地域における交通施設の整備の促進及び輸送サービスの提供の確保その他必要な措置を講ずる」と定めておりまして、日常生活あるいは社会生活に必要な、そういうものに対しては国の責任で必要な措置を講ずる、こういうことでございます。
 十六条については、こういうふうに規定しております。「移動制約者の移動に係る身体の負担の軽減に配慮された交通施設の整備及び輸送サービスの提供の促進その他必要な措置を講ずる」、こういうふうに定めておりまして、特に、移動制約者については、個別の輸送サービスの提供も想定をしているというところでございます。
 一律に鉄道やバスの路線の廃止に歯どめがかかるというまでにはいきませんけれども、この法案が成立いたしますと、利用者それから自治体、事業者間、これで合意形成を図る努力が積極的になされる、こういうことになりまして、国の支援も含めて、利用者の立場に立った問題の解決が実現をされるものと考えております。そのようになっております。
 以上でございます。
玉置委員 今お聞きになったように、いわゆる過疎地、交通条件に恵まれない地域の住民に対する施策と、それから移動制約者に対する交通の施策、こういうものがこの法案に規定をされております。
 交通バリアフリー法案のときには、これは、鉄道は鉄道、それからハートビル法は建物、それからSTS、町の中のコミュニティーの自動車、こういうようなものに関してはまた新たに法案をつくられるということで、みんな個別法になっているわけでございまして、なかなか進展していかないという心配がございます。
 そこで、澤井局長にお聞きをしたいと思いますが、こういう論議をずっとしていく中で、やはり交通バリアフリーそのものがかなり定着をしてきたというふうに思います。しかし、私たちから見ると、この法的根拠、確実に推し進めていく法的根拠というのがまだまだ不明なんです。
 しかし、新しい手法として、当事者参加によるユニバーサルデザインとか、それから、利用者そのものが意見を言うことが、いかに過剰品質にならず、またアイデアがあって安いものができていくかということで、かなり勉強になったというふうにお聞きをしております。
 そして、いわゆるユニバーサルデザイン、今までは障害者用の施設は全部障害者だけが使うんだという話でありましたものが、この当時から、特定の人だけの利用でなくて、一般の人も利用するということで、かなり利用効果が大きい、そのために思い切ったお金がかけられる、こういうこともこのころから一般的に採用されてきたということでございます。
 国土交通省として、これらのバリアフリーの検討の中で、一つは、この移動する権利をどういうような形で根拠づけて、これから政策の中で推進をされていくのかということと、それから、今申し上げたような手法が定着をして、バリアフリーだけでなくて、国土交通だけではなく各省にわたる行政サービスの手法として用いられるようになりました。その辺の評価をどういうふうにされているのかということをお聞きしたいと思います。
澤井政府参考人 まず、ユニバーサルデザインでございますけれども、御承知のとおり、障害の有無ですとか年齢などにかかわらず、多様な人々が利用しやすいように生活環境をデザインするということで、これを各種施設の整備に反映させていくということが非常に重要であるというふうにまず基本的に考えております。
 ただ一方で、こうした施設を利用される方々による施設のデザインに関するニーズというのも、それぞれのお立場からさまざまなものがあると認識しております。
 例えば、歩道と車道との境界におきましては、段差がない方が車いすを使われる方には利用しやすい。一方で、視覚障害者の方から見ると、段差がないと歩道と車道の境界が認知できない、こういった問題もございます。
 このように、異なるニーズを同時に満たすデザインの追求ということの側面があると思っておりまして、そのためにはいろいろな工夫を積み重ねていくことが基本的に重要だろうと思っております。移動に制約を伴う方々はもとより、先生御指摘のように、すべての人々にとって使いやすい施設の整備という、ある意味では難しい面もある課題に、私ども、今後ともその前進に努力していきたいというのが基本的な考え方でございます。
 私どもでは、こうした施策をさまざまな利用者の視点に立って進めていくという観点から、交通バリアフリー法に基づく公共交通機関や道路のバリアフリー化、ハートビル法によります建物のバリアフリー化、また官庁施設に係るバリアフリー化などに関連していろいろな基準をつくっているわけでありますが、この基準類の策定に当たりましては、原案策定の段階から利用者の代表の方々にも参画いただくとともに、必要に応じましてパブリックコメントも行いまして、幅広い利用者の方々のさまざまな御意見が最大限反映されるように対応しているところであります。
 例えば、公共交通機関旅客施設の基準の策定につきましては、パブリックコメントを通じてさまざまな利用者からいただいた御意見をもとにいたしまして、例えば同一プラットホームの上で番線が違う場合に、案内放送は常にそれぞれ同じ音声ですが、番線によって異なる音声でやるということを定着させることによって視覚障害者の方の便宜に供するというようなことでありますとか、そういった点を初めといたしまして、幾つかの点で先ほどのガイドラインの原案に修正を加えるというようなこともしております。
 今後とも、幅広い利用者の声に耳を傾けながら、着実に施策を進めていきたいというふうに考えております。
玉置委員 それぞれ、各市町村で基本計画をつくっていただいて推し進めていくということになっておりますが、この進捗状況と、それから、例えば前回、五千人以上の鉄道駅につきましてこの十年間で推進をしようということでスタートしたわけでございますが、このバリアフリー化についてどういうふうに行われているのか、状況を簡単に御報告いただきたいと思います。
澤井政府参考人 バリアフリー化の実際の進捗状況、それから法律に基づきます市町村基本構想の策定状況について御説明申し上げます。
 まず、円滑化基準達成状況でありますが、平成十四年三月末、去年三月末時点におきますバリアフリー化の進捗状況は、例えば鉄軌道駅の移動円滑化基準達成率は三三%、バスターミナルにつきましては六八%、低床バスの導入率は九%でございます。十四年三月とちょっと古いのでありますが、現在、十五年三月末、ことし三月末の達成率を集計中でございまして、まだ結果は出ておりませんが、各鉄道事業者等による積極的な取り組みによりまして着実に進捗しているというふうに見込んでおります。
 また、市町村が駅などの旅客施設を中心に駅前広場や道路などを一体としてバリアフリー化していくための基本構想につきましては、本年六月末時点で、策定済み市町村が八十七となっております。平成十四年三月末、昨年三月末時点ではこれは十五でございましたので、昨年三月からことしの三月までに相当の進展が見られたというふうに見ております。さらに、現在作成中の自治体が三十五、今後策定予定のところが約四百四十ございます。
 今後とも、交通事業者によるバリアフリー化のための施設整備に対する補助、あるいは市町村による基本構想の策定の推進のための支援に積極的に取り組んでいきたいと考えております。
玉置委員 予算の厳しい折でございますが、身近な公共事業ということで、ぜひまた各鉄道あるいはバス事業者あるいは市町村に対して御支援をいただいて、できるだけ早い時期にこのバリアフリーの体系ができ上がるようにお願いしたいということ。
 それから、あと二年すると見直しの時期になると思いますが、そのときには、いわゆるバリアフリーの本当の利便性を確保するというのはやはりSTS、町の中の自動車だというふうに思います。今は移送ボランティアの方が、免許証の問題とか事業認可の問題とかで、いろいろなところでトラブっているわけでございまして、この辺も解決をしていかなければいけない、こういうふうに思うわけで、ぜひまた皆さん方のお知恵をおかりしたいというふうに思います。
 問題はかわりまして、JR東日本の労働組合について鉄道局長に再確認ということで、かわられた早々でございますので、こういうことをぜひ気にしていただいて御指導いただきたいということをちょっと申し上げたいと思います。
 先日の七月十六日に、自由党の西村眞悟委員が内閣委員会の中で質問いたしましたのと同じ内容でございますが、以前に国土交通委員会の中でも、正常な労使関係確保という意味と交通安全を期すという意味から、異常な関係にあるのではないかということを国土交通大臣に問いまして、ゆゆしき問題であるという発言をいただいたのでございますが、その後もいろいろと事件がございまして、また新たに警察のいわゆるガサ入れというか、そういうものもありましたし、まだ継続しているということなんです。
 私たちから見ると、こういう問題は、やはり組合員全体の意思を本当に代表しているのかということと、交通安全という面からとりまして、企業の中でこういう対立というものがあった場合に、それぞれの職場の個人的な連携というのはとれないんじゃないかということもございまして、早くおさまってほしいという気持ちがございます。
 そして警察庁の方は、やはり以前からこういういわゆる革マル派というレッテルを張られたJR東の組合の役員の人たちに対して異常な警戒をしているということもございまして、再三続く事件に対して、もう一度、国土交通省としてどういう認識を持たれて、これからどういう対応をされていくのかということを、まだかわられた早々でございますが、今までお聞きになっている内容から推測をしてお答えいただきたいというふうに思います。
丸山政府参考人 御答弁申し上げます。
 御指摘ございましたように、昨年の十一月に東労組の組合員が逮捕されまして、あるいはこの六月にはJR総連関係の家宅捜索がございました。それで、先生も今御指摘になりましたけれども、いわゆる革マル派というのがかなり浸透してきている、そのことによって組織内の対立でございますとかがあって、連携して仕事をする上で差しさわりが出る、そうすると安全で正常な鉄道業務運営ができないんじゃないか、こういうお尋ねであろうかと思います。
 国土交通省にとりまして、安全の確保というのは最大の眼目でございまして、従来から、安全で安定的な鉄道輸送の観点ということから適切な取り組みを行ってきたところでございます。
 JR東日本に対しましては、今後、仮に鉄道輸送の安全にかかわる問題が出てくるということがございましたら、安全で安定的な鉄道輸送の確保の観点から適切に対処してまいりたいというふうに思っております。
玉置委員 労働組合というのはもともと組合員のためにつくられた組織であります。しかし、労働組合そのものは、企業本体がおかしくなると、当然、そこに働く人たちの職場がなくなるということでございます。そして、企業そのものは旅客運送を事業とされております。という面で、特に、正常な労使関係で安全な運行が確保できるということがやはり国民にとって一番理想だと思うんで、ぜひまたそういう面で御指導いただきたいというふうに思います。
 きょうは交通基本法でございますから、ちょっと離れましたけれども、私どもの交通基本法、実に二、三年はゆっくり抱いていただいて今ごろ審議ということになったわけですが、本当を言いますと、こういう論議をお互いにやりながら、私たちの考えている法的根拠をやはり背景にして、これを足がかりにして、着実にこういう交通施策が進展していくということが非常に大事だというふうに思います。
 先ほど澤井局長の方から、いろいろな根拠を法律的につくっていくというのはわかるんですけれども、では、つくっていくけれども、ほかのもので方針が、今、例えば予算上の措置が圧縮されていくということであれば、当然、交通バリアフリーの進展というものはおくれていくわけですし、こういう移動制約者の人たちの利便性というものがなかなか確保できないということになるわけで、私たちから見ると、やはり法的根拠がフランスやアメリカのようにぴちっと明確にされて、そしてそれをもとにやらなければいけない。
 やらなければいけないということは、何も予算を必ずつけろという話ではないわけです。絶えず頭の中にそういうことが、例えば、欧米の子供たちはいろいろな面で、いわゆる人権というものが小さい子供のうちから教育されているというのがあります。それが、物の考え方の中に即ごく自然に生きてくるというのが、若干日本人とは考え方の違いに出ているわけですね。
 こういうことを考えていきますと、やはりこういう基本法的なものがなければ、なかなか物事はうまく真っすぐ進まない、こういうふうに思いますので、今回の審議を中心に、またこれからの物の考え方をこの基本法として受け入れていただいて進めていかれますことを心から念願いたしまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
河合委員長 一川保夫君。
一川委員 自由党の一川でございます。
 党を代表しまして、交通基本法案につきまして御質問をさせていただきたいと思います。
 この法案を見させていただいても、今日抱えているいろいろな交通運輸関係の課題めいたものにチャレンジしようとする一つの意欲も見受けられますし、そういう面では、提出者に対して心から敬意を表したい、そのように思っております。
 何で、こんな最後の最後の段階でこういう審議をするのかなんという、ちょっと寂しい面もございますけれども、私がこの法案を見させていただいて、幾つかの点について質問をさせていただきたい、そのように思っております。
 今この法案の提出の理由の中にもうかがえますように、最近の交通運輸部門のいろいろな規制が緩和されるなり撤廃されてきたという一つの経過がある中で、本来、これからの新しい時代に向けて配慮すべきような安全性の問題とかいろいろな環境の問題、社会的に弱者と言われている皆さん方に対する配慮とかいろいろな面のことが、市場原理が表に出てくることによって、だんだんそういう面の配慮が欠けてくるのではないかという面の懸念が当然あるんだろうと思います。
 私自身もそういう面では、今日、日本が抱えている経済不況という大きな背景の中で、産業そのものも活力を持たせなければならないし、生活そのものにもゆとりを持って充足度を向上させなければならないという中で、交通というものは大変重要な役割を担っているというふうに思います。
 都会に住んでいる皆さん方も、やはり一時期、地方の方に出かけてリフレッシュしたいということは当然ございますし、それからまた、ずっと過疎地域に住んでいる皆さん方も、都会の皆さん方に来ていただいて、いろいろな面で交流をしながら元気を取り戻したいということも当然あるわけでございますし、そういう面では、産業面それから生活面、両面において、交通手段というのはしっかりとやはりこれから整備、なおかつ利用されていかなければならないなというふうに思っているわけです。
 まず提案者の方にお聞きしたいのは、今日のこういった交通運輸分野における、いろいろな課題がたくさんあろうかと思いますけれども、基本的にこの法案を出された一つの動機には当然なっているわけですけれども、その課題と、こういった課題を今後こういう方向で解決したいんだというような基本的な考え方をまずお示し願いたいと思います。
伴野議員 一川委員御指摘のように、交通運輸分野においてさまざまな課題がございます。課題につきましては、視点によってさまざまな指摘、表現の仕方があろうかと思いますけれども、規制と緩和という点で見た場合に、昨今の規制改革によって交通運輸部門の規制はかなり撤廃されてきたのではないか。交通運輸の分野も、多くは市場原理にゆだねるというふうになってまいりました。
 しかしながら、先ほど委員の御指摘のように、市場原理ばかりで本当にいいのかどうか。例えば、安全の問題、環境の負荷の低減、生活交通の維持、とりわけバリアフリーなど、市場原理では解決できない点も多く出てまいりますし、そして、今日的な課題の中で、規制がどんどん緩和されていく一方の中で、場合によっては規制をあえて強めていかなきゃいけない部分もあろうかと思います。
 しかし、そういった中で、十分な指針が今あるのか、十分なベクトルがあるのかというところで、我々が考えた一つの方向性としての法案が今回の交通基本法でございます。
 その中で、とりわけ移動に関する権利を明確にすることによりまして、利用者の立場に立った施策を進める基礎を築いております。
 また一方で、経済のグローバル化と申しますか国際化によりまして、国際交通機関の重要性がますます増大する中で、日本の国際競争力を確保する必要が出てまいっております。したがいまして、国際的な拠点整備に集中的な投資を行うなど、より戦略的に実施すべく、日本の国際競争力を確保するために今回の基本法を提出させていただいたわけでございます。
 以上です。
一川委員 ありがとうございました。
 この法案の第十六条に、「移動制約者に配慮された交通施設の整備」という条文がございます。この移動制約者という言葉も余り今まで聞かなかった言葉でございますけれども、しかし、内容的にはまさしくここに指摘しているとおりでございますけれども、高齢者なり障害者等の移動ということについて今十分な配慮がされているかといったときには、なかなかそこまで行き届いていないというのが確かに現状でございます。
 そこで、この移動に関する権利というのは、先ほども議論がございましたけれども、これは憲法の二十五条等に基づく一つの権利だというふうにお話がございました。まさしく、文化的で最低限度の生活を送ろうと思えば、生活上も仕事の上でも、当然ながら移動ということが伴いますから、そういうことが保障されておくことは大事なことだというふうに私も思いますが、では、現状ではこういった移動に関する権利と称するものがどの程度充足されているというふうに認識されているのか。場所によっても人によっても全然考え方が違うとは思いますけれども、我が国の現在のいろいろな交通運輸の現状から見て、トータル的に、皆さん方がおっしゃっているこの移動に関する権利なるものが今どの程度充足されているといいますか、どういう段階にあるのかなというところの御認識を説明していただきたいと思います。
伴野議員 委員の御指摘の現状認識ということでございますが、私は個人的には、これはハードの面からとソフトの面から見ていかなければならないと思っているわけでございます。
 例えば、先ほど委員御指摘の移動制約者というこの言葉の使い方が本当に妥当かどうかというのは、個人的には非常に悩むところでございまして、使う側がいいと思って使っていても、それを受け手側として非常に不愉快に思われる言葉というのは、それも一つのバリアフリーだと私は思っておりますので、そういった面からも、いろいろ現状を認識して、改善していかなければならない点はあろうかと思います。
 例えば、今回移動に関する権利というものをその中核内容として本案を提出させていただいたわけでございますが、本案の第二条におきまして、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営むために必要な移動を保障される権利を有する。 何人も、公共の福祉に反しない限り、移動の自由を有する。」とし、社会権、自由権の両面から、具体的な権利として規定をしております。
 そこで、お尋ねの件に関しまして、社会権、自由権の立場からお答えをいたしますと、自由権的な側面で申し上げれば、現在のところ、国による制約は基本的には存在し得ないものと認識しております。
 一方、社会権的な面で申し上げますと、例えば、公共交通機関のバリアフリー化は急ピッチで整備が進められると認識しておりますが、まだまだ十分であるとは言えない状況と考えております。また、過疎地域の公共交通機関の廃止により、日々の生活に困るケースも発生しております。また、高齢者の方々への配慮等々、まだまだ社会権的な側面では不十分な面が散在していると認識しております。
 以上です。
一川委員 今ほど御説明がありましたように、確かに、いろいろな地域でも、またいろいろな部門でも、その整備の度合いなりそういう面での充足度というのは異なっているというふうにも思っております。
 しかし、こういう考え方の中で、全国ある程度のレベルに達するように、目標を持って整備していくということは非常に重要な課題でもありますし、これからの我々がしっかりとまた取り組むべき問題だというふうに思っております。
 そこで、そういうことにも関連しますけれども、国土交通行政全般の中でよく言われる中に、国土の均衡ある発展とかそういうことが常に言われております。そういうときには、全国、いろいろな面で俗に言う過疎地域、交通条件に恵まれていない、そういう地域を今後どうやって整備していくか。現状では非常に経済効率の悪いところ、人の住んでいる密度も小さい、要するに過疎地域ですけれども、高齢化率も高い、では、そうかといって、そういったところはいろいろな面の資源がないかといったら、そうでもないと私は思うんです。やはり国土の均衡ある発展を図る上では、将来的には貴重な資源をたくさん持っているところもたくさんあるわけです、そういうことでは、国土全体をある程度の利便性を確保しておくということが重要なことだというふうに思うわけです。
 ただ、一方では、ちょっと最近の傾向としましては、逆に、余り利便性のない、人のいないようなところへわざと訪ねていきたがる、そういう旅行者もいらっしゃいますし、また、それを一つの地域の特性としてPRしておるところもございます。そういう面では、一概に、無理やりどこでも交通施設を整備すればいいというものでは当然ないわけでございますけれども、特に交通条件に恵まれていないこういった地域の最低限の利便性というものを確保するということは、基本的には非常に重要な課題だと私は思っております。
 皆さんが提案されたこの法案の十八条ですか、これはどういうことをねらっているかわかりませんけれども、「交通に係る投資の重点化」というような言い方もございます。
 これは、これまで我が国の取り組んできたような経済効率という問題とか、経済効果とか、そういうことだけに視点を置いた重点化では私はないんじゃないかな。ある面では、ある程度必要性というものを重要視した中での重点化ということであれば、現状では交通条件に恵まれていない、経済効果からするとやや劣るというような地域に対しても、要するに公的な政策としてそれをしっかりと重点的に支えていきたいという理念が入っているような気もするわけですけれども、こういう問題についてはどのように基本的にお考えですか。
細川議員 委員の御指摘は、特に、地域におきまして交通条件に恵まれていない、そういうところの利便性をどう確保するのか、こういうことが要点だろうと思います。
 そこで、そういうことにつきましては、私どもの法案では、まず、第二条におきまして移動に関する権利というものを保障いたしまして、次に、第十五条におきまして交通条件に恵まれない地域における交通施設の整備の促進について定めているところでございます。
 十五条におきましては、国がそのような地域における交通施設の整備の促進及び輸送サービスの提供の確保その他必要な措置を講ずる、こういうことにいたしております。いわゆるナショナルミニマムの考え方に基づきまして、国の責任において交通条件の恵まれない地域の公共交通機関の確保を行うべきだ、こういうことで規定をいたしております。
 ただ、具体的な公共交通の確保のどういう策があるか、こういうことにつきましては、いろいろ、それぞれの地域地域におきまして実情が違うわけでありますから、最もその地域に適した方策を確保する、こういうことが必要であるというふうに考えております。
 そこで、二十三条におきましては、地方公共団体の施策としてこれを規定いたしておるところでございます。具体的には、コミュニティーバスのような方式がいいのか、あるいはタクシーの輸送に補助を行うのがいいのかとか、いろいろございますけれども、それぞれの自治体が創意工夫によりまして公共交通手段を確保してもらうことが必要だというふうに考えております。
一川委員 ちょっと時間の関係もございますので次の話題に移らせていただきますけれども、こういった交通整備、交通機関の整備ということをいろいろと突き詰めて考えていった場合に、いつもちょっと何となくぶち当たる壁が、国と地方の役割分担とか、公と官、民と官の役割分担みたいなところをどうしていくかというところが非常に悩ましいところだと思うんです。
 まず、政府の方にお伺いするわけですけれども、行政改革なり、こういった地方分権というものを進めていくという重要な現状の中で、こういった交通整備ということについての国と地方の役割分担ということについては、基本的にどのようにお考えでしょうか。
鷲頭政府参考人 お尋ねの点でございますが、国と地方との関係という観点で申し上げますと、交通体系の整備を含む社会資本整備につきましては、地方がみずからの知恵と工夫で、個性を生かしながら、各地域の課題の解消に向けて、自立的な取り組みが進められるよう、地方と国の新しい関係を構築していく必要があるというふうに考えておりまして、地方分権の推進という観点に立ちまして、政策の基本を個性ある地域の発展というところに置く必要があるというふうに考えております。
 このような考え方に基づきまして、ことしの三月に成立いたしました社会資本整備重点計画法の基本理念のところにも、地方公共団体の自主性及び自立性の尊重といったようなことが掲げられているところでございます。
 また、具体的には、市町村、都道府県といった範囲を超えた広域的な連携というのも重要であると考えておりまして、全国十ブロックで地方ブロック戦略会議というものを実施してきておりまして、各地方ブロックが抱える課題やニーズについて議論をし、率直に意見を交換する取り組みというものも進めております。これらの場で出ました意見などにつきましては今後の国土交通行政の展開に的確に反映させ、今後とも、国と地方の適切な役割分担のもとで、計画的、効率的な交通体系の整備ということの推進に努めていきたいというふうに考えております。
一川委員 民主党の提案者の方にちょっとお聞きするわけですけれども、交通運輸施設をいろいろな面で整備したり運営管理していく面で、相当のコストが当然いろいろとかかるわけですね。
 それで、先ほど私もちょっと触れましたように、いろいろな面で交通条件に恵まれないような地域をこれからある程度のレベルに押し上げていこうとすれば、なおさらのこと、そういうコストもかかりますし、また、いろいろな先ほどありましたような移動制約者等に対する対策等を講じていこうとすれば、それまたコストのかかるお話でございますけれども、こういうコストに対して、だれがどういうふうにこれを負担していくかということが大きな課題ですね。そのあたりに対する基本的なお考えを、民主党さんの提案者の方からひとつ御説明願いたいと思うんですけれども。
伴野議員 課題につきましては一川委員御指摘のとおりでございまして、一つの規制緩和の方向性としまして、市場原理にゆだねられるものはできるだけ市場原理にゆだねていくという方向性があるわけでございますが、しかし、先ほどもお答えしましたように、バリアフリーの面あるいは環境の面、安全性の面、それだけではなかなか割り切れない部分もございます。
 しかし一方で、では、それを事業者に全部負担させて事が成立するのか、経営が成り立ち得るのかというのも、これもはてなマークがつくわけでございまして、例えば、障害をお持ちの方が平等に社会参加をするような部分には、これは広く国民のコスト負担として、最低限の公共交通機関の確保を行えるよう広く国民でコスト負担をしていくという考え方が今回の基本法の中にも盛り込まれています。
 また一方で、では、国と地方でどういう負担をしていくかというわけでございますが、今までのように、何かそういうナショナルミニマム的なもの、シビルミニマム的なものを考えると、すべてそれは中央で画一的にルールあるいは事業の仕方を決めてくるようなところがあったわけでございますが、そういうようなところを地域で選択させる、地域主権の考え方もこの交通基本法の中でも取り入れさせていただいております。
 例えば、過疎地域のバスの問題なんかは、このままではどんどん料金も高くなる一方でございまして、そうすれば利用者の方もどんどん乗らなくなる、非常に悪循環を招くわけでございまして、このようなところには広く国民、社会で負担をしていくという考え方が取り入れられてしかるべきだと思っております。
 以上です。
一川委員 時間が参りましたのでこれで終わらせていただきますけれども、この法案の内容は、私は、そういう面では今後の交通運輸の分野における重要な課題を指摘された中身を含んだ法案だというふうに思いますので、できるだけ時間をかけて審議されるように要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。
河合委員長 大森猛君。
大森委員 日本共産党の大森猛でございます。
 法案提出者に、今なぜ交通基本法案なのかという基本的な点について伺います。これまでの質問と若干重複する面もあるかもわかりませんが、今なぜ交通基本法案かというのは、同時に、法案の本質的、中心的な提起である交通権、移動する権利の必要性や背景、あるいはその要因というものは何かということになるわけであります。
 私ども日本共産党はどう考えるか。こういう背景、要因については、いろいろ当然あるわけでありますけれども、この間の極端なモータリゼーションの推進あるいは開発優先のまちづくり、こういう中で、生活環境あるいは町壊しがどんどん進み、歩行者の締め出し、あるいは障害者、高齢者等交通弱者が移動する権利が侵害をされる、困難が生ずる、こういうのが一つ大きなものとして当然指摘されると思います。
 同時に、やはり、今も議論ありましたけれども、歴代自民党政府の臨調行革あるいは構造改革などの規制緩和、民営化、市場原理至上主義、こういうものが国民の足を奪う、あるいは交通運輸労働者の生活と交通の安全性がこの面から脅かされるということも大きいということを指摘しなくてはならないと思います。
 とりわけ、この間の相次ぐ規制緩和、これによって、例えば需給調整廃止による地方ローカル線やバス路線の廃止、全国各地で移動する権利が侵害される、さらには、運賃や参入規制、営業区域等の規制緩和で、タクシー、トラックなどで生活と安全が脅かされる、こういう面があると思います。特に、最近の一連のトラック多重事故などを見ても、交通権の重要な構成である安全性、これが損なわれる、こういう事態にまで立ち至っていると思います。
 規制緩和あるいは市場原理至上主義、こういうものと交通権とは、本来、両立し得ないのではないか。少なくとも、交通権を今後真に確立する上で、今日まで行われてきた規制緩和あるいは市場原理至上の施策については見直すべきものもあるのではないかと私ども考えるわけなんですが、この点で、提出者の御見解をお示しいただきたいと思います。
細川議員 今、大森委員の方から御指摘がございました。今、交通運輸部門におきましては、規制緩和がほぼ終了するというか、経済的な規制というのはほぼ撤廃をされました。交通運輸の分野で、多くは市場原理にゆだねられるということになりました。
 では、市場原理にゆだねられたときに、それですべて問題が解決したかというと、逆に、市場原理によって、自由競争によって、かえっていろいろな問題が浮き彫りにされてきております。それは、やはり安全の問題、それから、例えば環境負荷の低減の問題、あるいはまた、しばしば御指摘のありますように、生活交通の維持、バリアフリー、こういうものが市場原理では解決できない。
 そういうものを、では一体どうすればいいのか。これはまた別の指導原理によって政策を立案しなければいけないのではないかということでこの法案を提案いたしまして、特に移動に関する権利、こういうものを中心にいたしまして法案を作成いたしたところでございます。
 そういう意味で、バリアフリーの政策あるいは生活交通の維持それから移動する権利を認めて、国が移動に関する権利を保障することによって利用者の立場に立った交通政策が進められる、こういうことがこの法案の、とりわけ交通に関する権利を中核にして法案を提案したところでございます。
大森委員 規制緩和等によって、今、移動する権利等がどのように損なわれているかという点で、具体的にちょっと政府にお聞きをしたいと思うのです。
 交通権の一つ、中心的な権利として、安全に移動する権利、これは逆に言えば、安全な交通移動を侵害されないという権利だと思うわけなんですが、その意味で、交通事故というのは重大な国民の権利の侵害、このように考えられます。
 交通事故防止対策は、政府や事業者などの重大な責務と言えるわけですが、この六月下旬以降、高速道路での大型トラックによる重大事故が相次ぎました。六月二十三日の東名高速での事故は、渋滞車列にトラックが追突、炎上し、四人が死亡、十三人が重軽傷を負っております。
 四月一日以降、ほとんど連日のようにこういうトラックによる事故が起こっておるわけですが、今回の事故の特徴は、大型トラックが渋滞や停車中の列に追突し、多重衝突事故となったということだけじゃなくて、積載した危険物等が爆発、炎上し、被害を大きくしております。こうした事故が、運転手の長時間運転等による蓄積疲労、睡眠不足など、過労運転が常態化しているもとで引き起こされております。
 その背景には、規制緩和政策や長期の景気低迷のもと、運送事業者の増加による競争激化、荷主による運賃・料金のダンピングの強要など、不公正取引が横行しているんじゃないか。それが労働者にしわ寄せされていることが、これまで、これは私どもの方の指摘だけじゃなくて、広く指摘されていると思います。
 そこで、国土交通省として、今回のこういう相次いだ重大な多重事故の要因、背景をどのように認識されているのか、お伺いをしたいと思います。
峰久政府参考人 トラックの事故が続発しているという要因、背景についての認識いかんということでございます。
 御指摘のとおり、最近、大型トラックによる事故が続発しております。その直接的な原因については警察の方で捜査中でありまして、明らかになっておりませんが、いずれにしましても、一たん事故が起こりますと非常に大きな被害を及ぼすということで、トラック輸送の安全、それを確保することが極めて重要な課題であるというふうに思っております。
 このため、本年四月から施行しました改正自動車運送事業法では、営業区域規制の廃止等の規制緩和の一方で、元請、下請関係の適正化を図るなどの社会的規制を強化するということ、あわせて、行政処分基準の強化とか監査組織の強化、こういうことで監査の効率化を図っているところでございます。
 今後とも、警察でありますとか厚生労働省あるいはその他の関係機関と緊密な連携をとって安全を徹底してまいりたいと思っております。
 さらに、事業者自身も、自主的な安全対策ということで、優良な営業所を認定、公表するというようなシステムを取り入れようとしておりますし、さらに、九月からは、スピードリミッターを導入しようということでございます。
 こういうことで、ハード、ソフトを含めまして、大型トラックの安全対策の強化に取り組んでまいりたいと思っております。
 以上でございます。
大森委員 今も答弁にありましたけれども、トラック事業に関する物流二法を改定して、四月一日から営業区域規制を廃止するなど、一層の規制緩和が実施をされました。国内産業の空洞化の加速とも相まって、一層、今後、荷主による物流コストの削減要請あるいは無理な運行時間の押しつけ等が拡大し、その結果として、労働者の賃金低下、長時間労働など労働条件の悪化を招いて、トラックによる重大事故を誘発する危険が増大するのではないかという危惧は、だれしも今持っているわけであります。こういう事態の中で起こっているんだという認識がやはり重要ではないかと思うんですね。
 七月三日付の朝日新聞の「過労を「満載」 事故招く一因」という特集記事では、「安全や環境にコストをかけなければいけないのはわかっているが、後回しになっているのが実態だ」という業界関係者のコメントを紹介して、さらに、「国土交通省では「規制緩和が遠因」との意見も出てきた。 「規制緩和には反対しないが、廃止はやりすぎだった。これだけ事故が相次ぐと、見直しの必要もあるのではないか」と国交省幹部は話す。」こういう報道になっているわけです。
 ですから、今、こういう事故に直面して、国交省として、こういうやみくもな規制緩和が重大多重事故の要因にあるのではないか、見直しも必要ではないかという認識あるいは検討、これが現段階では必要になっているのではないかと思いますが、いかがですか。重ねてお聞きします。
峰久政府参考人 重大事故の多発と規制緩和の関係についてのお尋ねでございます。
 トラック事業に係る規制につきましては、先ほど申し上げましたが、トラック事業をめぐる経済的、社会的な情勢の変化を踏まえまして、経済的規制は緩和するという一方、社会的な規制あるいは事後チェック体制を強化する、こういうことによりまして、すべての事業者が公正で平等な条件で競争できる市場の形成を図る、こういうことを目的に改正されたということでございます。
 具体的には、より自由なサービス競争を行える環境を整備するということで、営業区域規制や運賃・料金の事前届け出制を廃止する、そういう一方で、下請事業者による輸送の安全確保を元請事業者が阻害するような行為は禁止するとか、あるいは長期間運行する場合には点呼を強化するとか、こういったことの安全規制の強化を図っております。
 あわせて、事業者の運行管理を徹底するという意味で、先ほど申しましたが、地方運輸局の監査組織の見直しあるいは処分基準の強化を図っております。
 そういうことで、最近の大型トラックによる事故につきましても、死亡事故の第一当事者となった事業者に対してはすべて監査を行って、違反に対しては厳正に処分を行うということにしております。
 国土交通省としましては、こうした施策の実施によりまして不適切な事業者に対する取り締まりが強化されることで、トラック事業者の輸送の安全確保状況が改善されていくというふうに考えております。
大森委員 るる述べられましたけれども、しかし、なおかつ事故は多重事故が相次ぐような現状の中で、こういうこの間の一連の規制緩和が事故に影響をしていないと、国交省、政府としてはまだ断定はできないと思うんですね。これは実態をもっともっときちんと調査する必要がある。その上での判断が必要だと思うんです。
 そこで、政府としてこの問題に真剣に対処する上できちんとした調査を行うべきだという点から、幾つか要請をしたいと思うんです。
 ことし四月一日から、営業区域規制の廃止、運賃等の事前届け出制の廃止が実施されたわけですけれども、その対策として、お話のあった、一回の運行時間を、六日間、百四十四時間までとする運行規制が実施になりました。こういう規制がどれだけ、どのように遵守されているのか、これが一つ。運行期間の実施状況、それの労働者に及ぼす影響などの実態、これについてきちんと調査をしていただきたい。
 それからもう一つは、休憩時間の取り扱い。これも、これまでにもいろいろ議論になってまいりましたけれども、車両に装備された簡易ベッドでの睡眠等を休息期間と扱うことは過労運転に重要な影響が出てくるんじゃないか、こういう指摘もされておるわけです。ですから、一般的には望ましくないというようなことも述べておられますけれども、その休息期間扱いにされている簡易ベッドでの睡眠等について、これらに関する実態についてきちんと調査していただきたい、それが二つ目であります。
 それから三つ目は、荷主、特に大企業の荷主による不当な運賃等の値引き要請、協賛金要請などの不公正取引、無理な入荷時間指定など、運送事業者への安全運送に支障を来す発注、安全性を無視した入札制度導入、こういうものが運送事業者とその労働者に過酷な負担を強いて、過労運転を助長するものとなっているんじゃないか。あるとすれば、これは放置できない状況だと思います。今、運送事業者が荷主と直接取引をする、契約をするというのが圧倒的に多数であるわけですから、荷主と運送事業者、あるいはその労働者との関係について、取引の状況について、今申し上げたような点に着目して、ぜひ実態を調べていただきたいと思います。
 この三つの点、これはぜひ国交省として調査に当たっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
峰久政府参考人 幾つかございましたが、最初の、営業規制の廃止に伴います運行期間規制の遵守状況、運転者の労働時間への影響について調査すべきだという御指摘でございます。
 本年四月の改正法の施行におきましては、営業区域規制を廃止しましたのに伴いまして、安全対策の強化を図るということで輸送安全規則を改正しまして、長期間運行する場合の点呼の強化などとともに、運転者の勤務時間、乗務時間の基準を改正して、新たに総運行期間を制限することとしたものでございます。
 運転者の勤務時間、乗務時間の基準の遵守ということは、過労運転の防止あるいは輸送の安全を図る上で最も重要なことであるということから、厚生労働省と一層連携をしつつ、事業者に対する監査の充実強化を図りまして、運行期間の規制を含めまして基準の遵守状況をチェックして、その結果、違反が判明した場合には厳正な対応をしていくこととしております。
 それから、二つ目の、簡易ベッド等の問題、休息扱いの問題でございます。
 これにつきましては、基本的には、十分な休息をとるという見地からは一般的には適当でないということも前に述べておりますけれども、実際には、勤務終了後の休息をどのようにとるか、こういうことにつきましては、各事業者の運行の実態に応じて労使が十分協議した上で決めるのが適当であるというふうに考えております。
 また、厚生労働省のいわゆる改善基準、その告示を、我々の貨物自動車運送事業法に基づく運転者の勤務時間、乗務時間に関する基準として告示しておりますけれども、休息のとり方と運転者の過労運転との関係につきましては、労働時間全体のあり方の問題として厚生労働省において対応されるものであると考えております。国土交通省といたしましても、厚生労働省と緊密な連携を図ってまいりたいと考えております。
 それから、三番目の、荷主からの不当な要求が過労運転につながるのではないかというようなお尋ねでございます。
 これにつきましては、トラック事業の輸送の安全確保等を図るためには、輸送コストに見合う適正な運賃の収受が行われて、過積載の運行でありますとか過労運転の防止を図ることが非常に重要だと思っております。このためには、トラック事業者のみずからの努力に加えまして、荷主の理解と協力を得て良好な関係を築くことが重要であるというふうに考えております。
 こういう観点から、これまでも国土交通省としましては、運送取引実態の調査でありますとか重大事故の実態調査を適宜実施しております。あるいは、荷主が無理な発注条件を強要することのないよう要請も行ってきております。そういう意味で、荷主等への理解と協力を得るような努力も行ってきておるところではあります。
 なお、この点につきましては、貨物運送事業の分野におきまして、荷主の優越的地位の乱用行為、こういうものにつきましては、今国会で下請法改正における審議が行われましたが、この中で、独占禁止法に基づく特定の不公正な取引の指定などの措置を講ずる旨の附帯決議が行われております。国土交通省としましては、本決議を踏まえまして、公正取引委員会と具体的な方策について調整を行ってまいる所存でございます。
 以上でございます。
大森委員 これまで荷主団体等には、中央段階でも地方レベルでも、厚生労働省、警察あるいは国交省と連名で再三いろいろな形で要請しても、なおかつこういう不公正な取引だとか交通安全を阻害するような取引の実態が生じているというのが今の現状だと思うんですね。ですから、一歩踏み込んだ、対策として実効性のある、そういう措置をとる上でも、もし不公正な取引があり、そしてそれが交通安全を阻害する大きな要因になっているということであれば、交通安全をきちんと担保すべき国交省の責任として、こういう調査を行い、必要があれば公正取引委員会にも提起するというぐらいの一歩踏み込んだ調査をみずから行う必要があるのではないかと思うんですね。
 実際、例えば農水省等では、中央卸売市場の取引実態について農水省自身がこれを調査して、公正取引委員会がこれを受けて措置するというような事例もこれまであるわけですね。ですから、交通安全に第一義的にその責任を負う国土交通省として、こういう取引の実態、不当性がないのかどうかきちんと明らかにするという点で、ぜひみずからの責任でこれを調査するということを改めて要請したいと思いますが、重ねて御答弁をお願いしたいと思います。
峰久政府参考人 先ほども御答弁申し上げましたが、監査体制などを強化しまして、あるいは監査の効率化を図っていくという形で、その過程でいろいろな条件についての調査はもちろん行っておりますので、そういうものを通じまして、他の機関とも調整しながらその辺のことについて図っていきたいと思っております。
 なお、独禁法の関係、公取に対する関係につきましては、先ほど申し上げましたとおり、附帯決議に基づいて、具体的な方策について調整してまいりたいと思っております。
大森委員 時間が参りましたので、提出者にもこの点をお伺いする予定だったんですが、これで終了したいと思います。
 ありがとうございました。
河合委員長 原陽子君。
原委員 社会民主党の原陽子です。よろしくお願いします。
 私は、この交通基本法案に関しまして、提出者の方に限りまして御質問させていただきたいと思います。
 まず、基本的なことについてお伺いをしたいのですが、今回この法案を提出するに当たりまして、これまでの国の交通政策の視点に欠けているものがあったとしたら、それは何であったとお考えになられているか、御説明をお願いします。
菅野議員 原委員の質問に、少し長くなりますが、お答えしたいと思います。
 交通の公共性を維持するために一定の社会的な規制は必要であり、基本的人権に係る部分は、国、地方公共団体が最終的な責任を持つべきであると考えるものであります。それにもかかわらず、運輸省が主に担ってきたこれまでの交通政策は、モータリゼーションの進展に対して、事実上、無為無策であったと言わなければなりません。適切なマイカーとの役割分担という点からいえば、積極的に公共交通を活用しようという立場から、政策転換がなされてしかるべきだったと思っております。
 旧省庁でいえば、運輸省、建設省、国土庁、警察庁、自治省、経済企画庁など、各省ごとに交通問題を担当する省庁が分かれていたこともあって、ハードとソフトの連携が不十分であったと思っております。陸海空の交通整備についても、道路、鉄道、港湾、空港など、縦割り行政によってばらばらに計画され、非効率な整備が進められてきたと思っています。各交通モードの連携が不十分だったと私は思っております。
 例えば、バス停の移動についても運輸省の許可が必要と言われたことに象徴されたように、中央集権的な交通行政によって、地域の交通問題に対する地方公共団体や地域住民の意見が適正に反映されたかといえば、反映されていなかったというふうに申し上げなければならないと思います。
 各事業法による規制行政によって交通事業者中心の交通政策となり、施設整備やサービスの提供に利用者や乗客の意向の反映がなされにくかったと考えております。マイカーの所有者や健常者中心に施設や道路などがつくられた結果、特に弱い立場にある人たち、高齢者、障害者、子供、移動困難者には利用しにくい町や交通であったと思っております。
 近年の需給調整規制廃止に見られる規制緩和政策によって、地方において、バス、鉄道、航路、航空路の不採算路線が廃止されておりますが、高齢者や学生の移動手段の確保や生活交通の確保を図る施策が必要であると考えております。同時に、需給調整の廃止等を背景とした競争の激化は、事故の増加など安全上の問題を引き起こしており、安全面の必要な対策の強化が求められております。
 このようなことを勘案して今後の交通政策が遂行されるべきであり、二十一世紀は、本格的な高齢社会の到来と地球環境問題への対応が大きな課題となっており、公共交通を基盤に置いた、人と地球に優しい総合交通体系の確立が求められております。移動する権利の確立、利用者の立場に立った施策の推進、むだな事業をなくした総合的な交通体系の構築、環境に優しい交通政策の推進、生活交通の確保のために、本交通基本法案の成立は、私どもは不可欠であると考えているところであります。
原委員 ありがとうございます。
 続きまして、条文に沿って幾つか御質問をさせていただきたいと思います。
 この法案の中の第一章の基本理念に基づいて国が交通基本計画を定めるということを義務づけておりますが、まず第一点目に、この計画は、第五次全国総合開発計画、いわゆる五全総と呼ばれるものに優先するものと考えてよろしいのかどうか、答弁をお願いいたします。
菅野議員 一九九八年三月に、五番目の全総である「二十一世紀の国土のグランドデザイン 地域の自立の促進と美しい国土の創造」、これが閣議決定されております。五全総では、交通分野について、全国主要都市間で、日帰り可能な交通圏である全国一日交通圏、四つの国土軸と連携軸の形成などが目指されております。現行の全国総合開発計画は、今後どのように国土計画を進めていくのかを提示する国土計画の道しるべのようなものとして、他の長期計画の上位にあります。
 一方、本法案第十四条三項で、「基本計画は、国土の総合的な利用、開発及び保全に関する国の計画との調和が保たれたものでなければならない。」としており、同条第四項で、計画の案を作成した場合は「閣議の決定を求めなければならない。」としております。
 したがって、政府が交通基本計画を決定する際には、各計画との調和が図られるよう調整されるだけでなく、各種計画にもまた交通基本計画との調和のための見直しが図られることが期待されております。
 なお、全総方式自体が今の社会経済状況や財政状況にふさわしいのか、疑問を持っているものであります。
 以上です。
原委員 ありがとうございます。
 次に、都市再生特別措置法との関係について、一点御質問させていただきたいと思います。
 第十八条には「交通に係る投資の重点化等」を規定していますが、真に必要性がある交通施策の必要性は何を基準に判断されるのかお尋ねをしたいんですけれども、必要性の対象が地域であり、地域住民の意向でなければ、都市再生と相まって、地域の意見が反映されない公共事業に、ひとりよがりな公共事業につながりかねないという危惧を持っておるのですが、地域の意向を無視した新たな開発の口実にならないためにどのような歯どめが考えられるとお考えか、答弁をお願いいたします。
菅野議員 私どもは、計画の推進については地域住民の意向が十分反映されるべきと基本的に考えております。
 第十八条の「交通に係る投資の重点化等」は、第四条の「交通体系の総合的整備」を具体化するための規定であり、この必要性の判断に当たっては、第四条の「交通に係る需要の動向、交通施設に関する費用効果分析及び収支の見通しその他交通に係る社会的経済的条件」が考慮されなければならないし、各交通モードの特性に応じた適切な役割分担及び有機的かつ効率的な連携の上に立った総合的な整備が前提であります。
 また、第八条で、国の交通に関する施策の策定、実施に当たって、「国民の参加を積極的に求めなければならない。」と規定するとともに、第十四条で、交通基本計画の案の作成に関し、広く国民の意見を聞くことを義務づけております。さらに、第九条で、地方公共団体の交通に関する施策の策定、実施に当たって、「地域住民の参加を積極的に求めなければならない。」と規定しております。地域の意向が十分に反映されるような仕組みとしているところであります。
 したがって、地域の意向を無視した新たな開発の口実となるのではないか、あるいは官僚主導の野方図な公共事業を進めるのではないかという御懸念は当たらないと考えております。
原委員 次に、地方公共団体の責務についてお伺いしたいんですけれども、先ほど一川議員の方からも、国と地方の役割分担について政府の方に質問があったと思います。政府の方でも適切な役割分担という表現を使っておったのですが、この「適切な役割分担」という記述は非常にあいまいさが残ると思うんです。解釈の幅が生じることが心配されると思います。
 これは地方分権の議論にも及んでくるとは思うのですが、地方公共団体の当事者性というものがしっかりと確保されない限り、現在の力がそのまま交通政策に反映されてしまうのではないかと思うのですが、この法案の中での地方公共団体の責務については、地方公共団体の当事者性の確保がしっかりと保障された役割分担であるというふうに理解をしてよろしいのでしょうか。
菅野議員 お答えいたします。
 これまでの交通政策が中央集権的であったことの反省に立っております。本法案では、地方公共団体を交通政策の当事者と位置づけ、「地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務」を第九条で規定したところであります。「国との適切な役割分担」という規定によって、地域の交通問題については国が不必要な関与をすべきでないという地方分権の理念を示しております。
 地方公共団体は、国の施策に準じた施策及びその他、その地方公共団体の区域の自然的、経済的、社会的諸条件に応じた交通に関し、必要な施策を総合的かつ計画的な推進を図りつつ実施することになり、地域の交通問題は、当然、地方の自主的な取り組みにゆだねられるべきと考えております。
 今後、地方公共団体における自主的、主体的な交通政策の企画立案機能の向上、交通のまちづくりなど、連携が期待されており、また、国の持っている地方交通行政の権限の移譲を進めることで、地域交通に対する自治体の決定権の拡大や、住民、利用者の声を交通政策に反映させることが求められておると考えております。また、地域間交通やネットワークの形成の観点から、地方公共団体同士の連携協力や国との連携協力が求められていると思っております。
原委員 次に、第七条の「国際交通機関等の整備」の部分に書かれている記述の中で御質問させていただきたいんですが、この中で、「我が国経済の国際競争力の維持及び強化が図られることを旨として、」云々と書かれていますが、この記述というのは、環境への負荷や地域住民の意向に優先をしてしまうということになっていくのでしょうか。御説明をお願いします。
菅野議員 お答えいたします。
 この第七条は、外航海運及び国際航空の中核的拠点となるべき施設の整備を規定したものであり、本来のハブ空港やハブ港湾の整備に重点化されることが期待されるものであります。もちろん、個別具体的な整備の推進に際しては、需要の動向、費用効果分析、収支の見通し、その他社会的、経済的条件、環境影響評価などが十分に考慮されるとともに、住民参加や情報公開が行われるべきことは当然であると思っております。
 本法案の第五条においては、交通による環境への負荷についてはできる限りその低減が図られなければならない旨を規定しており、また、第九条においては、地方公共団体の交通に関する施策の策定、実施に当たって地域住民の参加を積極的に求めなければならないと規定して、地域の意向が十分に反映されることを期待しております。
 本法案第七条による国際交通機関等の整備は、決して、環境への負荷の低減や地域住民の意向に優先してこれを行うという趣旨ではないと考えております。
原委員 最後に一点だけお伺いをさせていただいて質問を終わりたいと思うんですが、横断的、体系的な総合的交通政策を推進するためには、縦割りに今なっている交通整備財源の一本化が必要ではないかというふうに考えているのですが、その点をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
菅野議員 お答えいたします。
 本法案によって、交通に関する施策は総合的かつ計画的に推進されることになり、縦割りを排した横断的な交通体系の整備が求められていると思っております。
 総合交通政策の推進の観点から、揮発油税、航空機燃料税を含む交通基盤整備に関する財源についても、現行の税源のあり方や財政規模、環境への負荷に対する税負担のあり方、使途のあり方などを含めて、総合的かつ抜本的に見直さなければならないと思っております。
 道路特別会計や空港整備特別会計、港湾整備特別会計等を一元化した総合交通特別会計、仮称でありますが、それを創設し、予算における交通モード間のシェアを抜本的に見直すことが期待されていると思っております。
 以上です。
原委員 ありがとうございます。
 この基本法が本当に国民の求めるものとなるように期待をさせていただいて、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
河合委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時七分散会


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