衆議院

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第5号 平成16年3月17日(水曜日)

会議録本文へ
平成十六年三月十七日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 赤羽 一嘉君

   理事 今村 雅弘君 理事 衛藤征士郎君

   理事 橘 康太郎君 理事 望月 義夫君

   理事 大谷 信盛君 理事 奥村 展三君

   理事 玉置 一弥君 理事 高木 陽介君

      岩崎 忠夫君    江崎 鐵磨君

      梶山 弘志君    北村 誠吾君

      小西  理君    河本 三郎君

      櫻田 義孝君    島村 宜伸君

      高木  毅君    中馬 弘毅君

      中野 正志君    二階 俊博君

      能勢 和子君    野田  毅君

      萩生田光一君    古屋 圭司君

      保坂  武君    増田 敏男君

      松野 博一君    村田 吉隆君

      森田  一君    渡辺 博道君

      岩國 哲人君    岡本 充功君

      下条 みつ君    中川  治君

      中野  譲君    長安  豊君

      伴野  豊君    松崎 哲久君

      松野 信夫君    三日月大造君

      室井 邦彦君    山岡 賢次君

      和田 隆志君    若井 康彦君

      佐藤 茂樹君    穀田 恵二君

      武田 良太君

    …………………………………

   国土交通大臣       石原 伸晃君

   国土交通副大臣      林  幹雄君

   国土交通副大臣      佐藤 泰三君

   国土交通大臣政務官    佐藤 茂樹君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  堀内 文隆君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    西川 徹矢君

   政府参考人       

   (国土交通省海事局長)  鷲頭  誠君

   政府参考人       

   (国土交通省港湾局長)  鬼頭 平三君

   政府参考人              

   (国土交通省政策統括官) 矢部  哲君

   政府参考人       

   (海上保安庁長官)    深谷 憲一君

   国土交通委員会専門員   飯田 祐弘君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十七日

 辞任         補欠選任

  梶山 弘志君     小西  理君

  松野 博一君     北村 誠吾君

  古本伸一郎君     中野  譲君

同日

 辞任         補欠選任

  北村 誠吾君     萩生田光一君

  小西  理君     梶山 弘志君

  中野  譲君     古本伸一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  萩生田光一君     松野 博一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律案(内閣提出第五三号)

 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う国土利用計画法及び都市再生特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第一一号)


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     ――――◇―――――

赤羽委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省海事局長鷲頭誠君、港湾局長鬼頭平三君、政策統括官矢部哲君、海上保安庁長官深谷憲一君、内閣官房内閣審議官堀内文隆君及び防衛庁運用局長西川徹矢君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北村誠吾君。

北村(誠)委員 おはようございます。自由民主党の北村誠吾でございます。

 今回、国際テロ対策に関する法案が本国土交通委員会で審議されるに当たりまして、まずは、先日、スペインにおきまして発生をいたしました、鉄道という公共交通機関において痛ましいテロの犠牲者を見ました。私どもは、心から哀悼の意を表したいと存じます。米国同時多発テロ以降、国際社会におけるテロに対する意識、取り組みが大きく変化をしてきていることは御承知のとおりでございます。このスペインのテロ事件は、我が国も、もはや対岸の火事ではなく、差し迫った脅威として、テロ対策に真剣に取り組む必要があることを改めて教えてくれたものと思います。

 昨年の十月から十一月に、アルカイダの関係者が我が国をテロの標的の一つとして言及しており、もはや、過去に我が国で国際テロが発生したことがないということをもって、我が国でのテロの発生の可能性が低いとは言えない。それでもなお、安全と水はただという、例の国民の意識が潜在的に残っているとは言えないでしょうか。その意識の甘さと発想の転換を図る必要がある、そういう観点からこの法律は極めて大事である。

 さて、周囲を海に囲まれた我が国、そして、貿易量の七〇%を国際船舶の航路に頼っており、なおまた、国内の経済活動の維持が海上輸送、海上交通に大きく依存しているという現状を見るとき、さらにまた、臨海部に重要な工業等の施設が多数立地している現状において、海事分野のテロ対策の重要性は極めて高いものがあります。このような中で、船舶と港湾の自己警備の強化を求めるという本法案が提出されたことは極めて意義が高いと思います。

 しかしながら、個人や企業あるいはほとんどすべて地方の港湾管理者、それぞれの分野の方々が危機意識を高め、自己警備を強化するというだけでは国土は守れません。国際テロ対策を実効あるものにするためには、同時に、政府全体、総力を挙げて国の積極的な取り組みが必要であるというふうに存じます。このような認識に基づき、以下、質問をさせていただきます。

 まず第一番目に、今回の法案によって北朝鮮の船の入港をとめることはできるのかできないのか。この法案によって、北朝鮮の船に対して新たに何ができることになるのか、矢部政策統括官にお尋ねをします。わかりやすくお答えをいただければと思います。

矢部政府参考人 お答えを申し上げます。

 先生御承知のとおり、この法律は、大きく分けて二つの内容を含んでおります。一つが、国際航海船舶とそのような船舶が利用する国際港湾に対しまして保安措置の実施を義務づけるというものでございますが、もう一つの大きな内容が、国際航海を行う船舶に対しまして入港規制を行うということでございます。

 この入港規制につきましては、これは、船舶に起因いたしまして、ほかの船舶や港湾施設に対しまして危険を発生させるおそれがある場合に、入港禁止等の危険を防止するための措置をとるものでございます。したがって、これは、たとえ北朝鮮籍の船舶でございましても、この条約が定めます一定の要件、すなわち、条約証書を有する等、条約上義務づけられた要件を満たしている場合は入港禁止とすることはできないわけでございます。

 ただし、北朝鮮の船舶を含めまして、本邦の港へ入港しようとする国際航海の船舶に対しましては、先ほど申しましたように入港規制を行うことになっております。具体的には、事前に船舶の保安情報を通報させまして、保安措置の実施状況、危険のおそれの有無等を厳正に確認してまいる所存でございます。

 その上で、さらに必要がある場合には洋上におきまして立入検査等を行い、さらに、立入検査等に協力しない、あるいは拒否をするといったような場合、それから、立入検査の結果、不法に爆発物が持ち込まれているなど、ほかの船舶や港湾施設に対しまして危険を発生させるおそれがあって、かつほかにとるべき措置がないといったような場合には入港禁止等の措置をとることができることになっているわけでございます。

北村(誠)委員 ただいま御答弁いただいたことは、これから、この法律がきっちりと誕生し、そしてそれの運用の中で極めて大事な事柄になると思いますので、それが実効あるものにするために、格段の努力と精緻な作業をしていただきたいというふうに思います。

 なお、先ほど私、質問の終わりの方でわかりやすくということをちょっと申し上げさせていただきましたが、この法律は、非常に長いとまでは言えませんが、比較的長い名称であります。国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律案ということになっております。今後、私どもが、この法律に親しみ、これの運用ということに目を配るとき、やはり通常、こんな長い法律の場合は略称なりで呼ぶことが多いと思いますが、私は、この際、生意気ですが、私の思いつきで御提案させていただきたいと思うのですけれども、この法律を国際船舶港湾保安法などという呼び方はいかがかなというふうに思います。

 私が漏れ聞くところによると、役所の方でお考えの略称は、国際航海船舶等保安法というふうに呼ぶようになるようなことを漏れ聞いております。理屈っぽくて済みませんが、国際航海船舶、一々、航海するのは船舶に決まっておりますから、国際船舶でよい。そして、私たちがこの法律で目指すところは、陸域、港湾域、この部分での保安ということについて特に力を入れていかなきゃならぬというふうなことを目指して、解釈が間違っているかもしれませんが、私の見方はそういうものでありますから、港湾の部分というのをやはりぜひ入れて呼びならわし、その保安法とするがよいのではないかと思いますが、この点について統括官の御所見があれば聞かせていただきたい。

矢部政府参考人 お答えを申し上げます。

 今先生御指摘のとおり、私どもが考えておりますのは国際航海船舶等保安法ということで、確かに港湾という名前が入っておりません。今先生御指摘のようなお考えもあろうかと思いますので、今後、この略称での呼び方を検討する上で参考にさせていただきたいと思います。

北村(誠)委員 次に、船舶や港湾の保安対策を強化するという場合、国の役割としてはこの法律の中ではどうなるのか。

 法案は、自己警備として、船舶や港湾施設の保安対策の強化を求める、これは重要なことであります。国際テロ対策であるならば、国によるテロ対策も強化すべきではないかというふうに私は考えますが、この方面についてどのようにお考えか、佐藤政務官にお尋ねをします。

佐藤大臣政務官 先ほど来、北村委員の御議論を聞かせていただいておりまして、委員は佐世保だということで、なるほどなと思ったわけですが、海上保安庁もございますし、自衛隊の基地もありますし、また米軍基地もございまして、私も何度か行かせていただいたわけですが、さらには、もう少し西の方に行きますと、対馬なんかの自衛隊の基地から、高精度の望遠鏡で朝鮮半島がくっきり見える、そういうところからの委員のいろいろな問題意識ではないかな、そのように先ほどから拝聴させていただいた次第でございます。

 ただいま御質問のことでございますけれども、大きく三点お答えをさせていただきたいと思うわけでございます。

 一つは、この法案のスキームで国の役割がどうなっているのかということでございますが、委員が御指摘のとおり、国際テロを防止するためには、本法案に基づく船舶所有者等による自己警備はもとよりのことでございますけれども、一つは、国としても、国土交通大臣による保安レベルの設定というものをしっかりとやっております。さらに、海上保安庁によりまして入港規制を行う等、国としても保安体制に万全の役割を果たせるようになっているというのがこの法案の一つの大きなスキームであるということをぜひ御理解いただきたいと思います。

 二点目でございますけれども、この法案以外で、国として今国際テロ対策としてやっていることを二点だけ申し上げますと、一つは、国みずからによるテロ防止対策の強化が重要である、そういう認識から、特に海上からのテロの発生を防止するために、我が国の国土、ほとんど海岸線に原子力発電所があるわけでございますが、海上保安庁によりまして原子力発電所等の警備を強化しているということが二点目でございます。

 三点目に、国際テロの未然防止を図るためには、航空機や船舶を通じて人や物が出入りする国際空港であるとか国際港湾の適切な管理等、しっかりと水際での取り締まりを強化していくということが極めて重要でありまして、政府挙げて、本年一月から、内閣官房を中心に、空港・港湾保安委員会の設置、また、空港・港湾危機管理官の設置といった、そういう体制整備にしっかりと取り組んでいるところでございます。

 国土交通省としましても、本法案に基づきまして、保安措置の義務づけあるいは入港船舶に関する規制を的確に実施するとともに、政府全体で取り組んでいる、今申し上げました水際対策の強化、さらには海上保安庁による海上の治安確保について、引き続き万全を期してまいる所存でございます。

北村(誠)委員 さらにお尋ねします。

 先ほどから申しておりますが、港湾は、島国である日本の窓口であります。海上輸送が国の生命線である。したがって、港湾の保安対策の強化は、個々の港湾施設の管理者の自己警備ということに任せるのでなく、国みずからが、港湾についての情報収集、そして、今政務官のお答えにも一部ありましたけれども、危険度の分析、そういったことを必要な保安対策として行うべきであるというふうに考えます。

 そして、多くの行政機関や事業者などが活動している港湾において保安対策を効率的かつ効果的に実施していくためには、今申された水際対策に関係をしている行政機関で、情報をリアルタイムに交換、共有できるような行政の情報ネットワークシステム、それを整備しなければいけない。また、港湾そのものの出入り口、ゲートでの貨物管理の自動化そして物流の手続など、これらが円滑に進むように、それらがまた、いわゆるワンストップサービスというふうなことで実現され、港湾が国際競争力を高めなければいけないこの時代に、官民がそれぞれ一体となって各分野で情報技術の活用を積極的に進めていくべきであるというふうに考えますけれども、国土交通省としてはどのように取り組んでいくおつもりか。特に港湾局長にお尋ねをいたしたいと思います。

鬼頭政府参考人 お答えを申し上げます。

 お尋ねのありました港湾の保安対策に当たりまして、それぞれの港湾施設を危害から守るためには、今先生、自己警備と申されましたが、その管理者がみずから管理する施設について適切な保安措置を講ずることが基本ではございますが、保安対策の実効性を高めるためには、個々の港湾施設の管理者の保安措置に任せるだけではなくて、国も含め、関係者が連携協力して取り組むことが大変重要であるというふうに考えてございます。

 そういう観点から、港湾局といたしましては、港湾施設の管理者が保安規程を策定するに当たりまして、あらかじめその施設の脆弱性等についての評価を行い、港湾施設の管理者に的確な情報提供を行って、必要な対策が講じられるようにすることとしてございます。

 また、海上保安庁等との間での緊密な情報交換を行うなどによりまして港湾施設の危険度などに関する情報を適時適切に管理者に提供いたしまして、所要の対策を講じるようにしております。

 さらに、先ほど佐藤政務官の御答弁の中にもございましたが、政府において取り組んでおります水際対策の中で、各港に設置されます港湾保安委員会や危機管理官等の活動に協力をいたしまして、国及び地方の関係機関との連携協力体制を整えているところでございます。

 以上申し上げましたとおり、港湾の保安対策につきましては、港湾施設の管理者に任せるだけではなくて、国としても、必要な組織、体制を整えながら、情報収集や危険度の分析など、あらゆる課題について管理者と連携協力して、港湾の保安対策に万全を期してまいりたいというふうに考えてございます。

 さらに、もう一点お尋ねがございました港湾における水際対策につきましては、委員御指摘のとおり、関係する行政機関が大変多く、その緊密な連携と情報の共有が大変重要であるというふうに私どもも認識をしてございます。そういう観点から、先ほど申し上げましたように、政府全体で取り組んでおります水際対策の中で、港湾保安委員会、港湾危機管理官等の活動に協力をし、関係省庁と連携し、保安情報を迅速に伝達、共有して対応できる体制づくりを進めてまいりたいと考えてございます。

 さらに、港湾の保安対策を考えます場合、物流の効率性への影響をいかに最小限に抑えるかということで、委員御指摘の国際競争力という点にもつながってまいりますが、そういったことを考えながら必要な保安水準を確保するということが重要な課題になってまいります。この点におきましては、物流における情報技術の活用が、港湾物流の効率化とともに、保安水準を向上させる上でも大変有効であるというふうに認識をしております。

 このため、官民一体となって関係部局とともに取り組んでおります電子タグなどを活用したコンテナの管理・輸送システム、そういったものの検討や、あるいは港湾物流情報プラットホームの構築など、情報技術を活用した物流セキュリティー強化及びこれに連動した物流の効率化の実現に引き続き取り組んでまいりたいというふうに考えております。

北村(誠)委員 最後の質問でございますが、先ほど来たびたび申しておりますので大変恐縮でありますけれども、先ほど政務官が申されましたように、私も地方議会から参った議員でございます。それで、今回の港湾施設の保安対策について、さきの平成十五年度の補正予算において、港湾施設・区域などのフェンスとかもろもろの施設について、必要な設備の整備については地方公共団体に補助するということにしておったと思います。

 さらに今後、この法律の成立とともに必要となる維持費用、管理費用、それらの負担については、御承知のとおり地方財政は大変厳しく、もう苦しい思いで新しい年度の予算の編成に当たっておるというふうなことの中で、国際テロ対策、国民の安全あるいは国土の保全ということを考えるときには、国、地方一体となって、こういう国際条約に基づく、また、国の生命線にかかわる、あるいは国民の経済活動、福祉全般にわたる影響を持つ貿易、交易、先ほどから言うように、これらの七割余りを担っている港湾、入ってくる船、あるいは出ていく船、東京湾の入り口で仮に大型のタンカーなどが事故を起こしたときに、どういうことが波及し、どんなに大きな被害が出、経済活動も生活も大変な犠牲を強いられるということなどを考えるときに、この法律に期待するところは大きいわけであります。そういう大きな志の裏側に、やはり現実に、日常的にこういう大事な仕事に従事していき、あるいはその仕事が効率的に行われ効果を発揮するということのためには、やはり、港湾管理者がそれぞれの都道府県であってみたり市であってみたりというふうな地域の、地方の実情というものを考えるときに、国はそれらの点に十二分に配慮をして、限られた目標の年次の手前できっちりと国際約束が果たせるように、そして経済活動あるいは国際交易に支障がないように十分の整備をするため、運用を図るため、財政的な支援あるいは確保というものが必要であると思いますが、その点について御説明をいただきたいというふうに思います。

鬼頭政府参考人 お答えを申し上げます。

 国際埠頭施設の保安対策につきましては、今般の改正SOLAS条約が国際海上運送システムの信頼性や安全性の確保を目的としたものでございまして、それが我が国の経済あるいは国民生活にとっても極めて重要であることから、港湾管理者等が行う埠頭保安設備の設置に対して、国としても、今委員の御指摘のありましたように、一定の助成を行うことにしたものでございます。

 また、国際埠頭施設における保安措置の実施に当たりましては、今申し上げましたイニシアルコストに加えまして、当該施設への出入りの管理でありますとか、監視のための人の配置や保安設備の保守点検等に要する費用が必要になってまいります。

 こういった港湾管理者が負担すべき費用につきましても、平成十六年度から、普通交付税の基準財政需要額に算入できるようにすることによって適切に財政措置を講じてまいることとしているところでございます。

北村(誠)委員 質問を終わるに当たりまして、誠意ある御答弁をいただき、ありがとうございます。ぜひこの法案が速やかに可決成立をしまして、これが効果を発揮し、国民生活あるいは我が国の不況脱出の一つの、テロ対策とはいいつつも、活路を見出すことができればというふうに期待をして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

赤羽委員長 下条みつ君。

下条委員 民主党の下条みつでございます。

 本日は、本法律案につきまして、私の方から、御質問と、それから御提案を含めてちょっとお聞きしたいことが何点かございますので、よろしくお願いいたします。

 まず、改正SOLAS条約の本年七月一日の発効に伴う条約締結国の法整備の中身についてお伺いしたいと思います。特にアメリカとヨーロッパ、EUのものがどのような内容になっているか、特色的な部分があればお聞かせいただきたいというふうに思います。お願いします。

矢部政府参考人 お答えを申し上げます。

 米国とEUにおきます国内法化につきまして、その主な内容でございます保安措置の義務づけの対象船舶と、それからもう一つ、入港前通報というものが義務づけられておりますけれども、この二点に関しましてSOLAS条約の内容と比較した場合には、次のようになっております。

 まず、保安措置の義務づけ対象船舶でございますけれども、SOLAS条約では、国際航海に従事するすべての旅客船と、それから貨物船につきましては五百トン以上のもの、これが対象になっております。これに対しまして、米国では、これらの条約対象船舶に加えまして、国際航海、国内航海を問わず、すべての旅客船と百トン以上の貨物船、これが対象になっております。EUにおきましては条約どおりの対象船舶ということになっております。

 それから二点目の、入港に係る規制のための入港前通報の義務づけに関しましては、条約では、入港しようとする船舶に対しましてあらかじめ情報提供を要求することができるという旨の規定をしているにとどまっておりまして、何時間前までに通報しなければならないといったことは何ら規定をされておりません。これに対しまして、米国では入港の九十六時間前までに通報することとなっておりますし、また、EUにおきましては入港の二十四時間前までに通報すること、このようになっております。

下条委員 ありがとうございました。

 本法律案の中身は改正SOLAS条約の条件そのものであるというのをお答えいただいたと思いますけれども、アメリカでは対象となる船舶の条件の幅がほかより広くなっているということだと思います。日本の立地条件などを勘案してみると、他の条約締結国よりも厳しい条件となってもいいんではないかというふうに私は思います。例えば、五百トン以上ではなくて、アメリカ並みに百トン以上の貨物船に対象を広げるなどしてはどうか。

 おっしゃったように、国際航海船舶の入港に係る規制の部分ではすべての船舶に対して事前通報を義務づけている、これは私もわかります。これは、アメリカではそうなっていますけれども、貨物船の対象を百トン以上にしているというところにポイントがあるわけで、これはアメリカでも事前通報はほとんどやっておられるというふうにお聞きしておりますけれども、この事前通報だけでは不十分だから百トン以上になっているんだというふうに私は理解しております。

 例えば、国内航海といっても、沖縄と行き来する便など、ほぼ国際航海に近い形ではないかと思いますし、その点を踏まえて、国土交通省としてどんなお考えがあるか、お聞かせいただきたいと思います。お願いします。

矢部政府参考人 お答えを申し上げます。

 確かに米国では百トン以上の外航船舶が対象となっておるわけでございますけれども、五百トン未満の外航船舶というのはそもそも条約におきまして適用対象となっていないということが一つございます。そして、このような五百トン以下の船舶といいますのは船体の大きさが比較的小さいということで、船のブリッジから見渡しますと船の全体が一目で見渡せる、そういう状況にございまして、かつ乗組員の数も少ないということから、船内に何か異状が発生しているのかどうかといったことは、大きな船に比べますと比較的容易に、監視をし、把握することができる、このような特徴があるわけでございます。この点を勘案いたしまして、我が国といたしましても、自己警備としての保安措置の実施は五百トン以下のものについては義務づける必要はないというふうに考えておるわけでございます。

 しかし、先生御承知のとおり、このような船体の大きさにかかわらず、外国の港に立ち寄るものにつきましては、そういった外国の港におきまして何らかの爆発物や武器のような危険なものが搭載をされたり、あるいはテロリストが侵入したりといったリスクがあることは、これは船の大きさに関係のないことでございますので、条約の保安情報の通報の義務づけというものを根拠にいたしまして、我が国におきましては、このような外航、国際航海に従事する船舶につきましては、船の大小を問わず、すべてのものに対しまして一定の入港規制を行うということで、今回、法案で入港規制の手続を定めております。

 具体的には、海上保安庁長官に対しまして船舶の保安情報の通報を義務づけいたしまして、例えば、出入り口の施錠をしっかりやっていたのかどうかとか、あるいは着岸中に船内にちゃんと留守番を置いておいたのかどうかとか、そのような、通常期待できる保安措置の実施の有無等につきましてあらかじめ確認をいたしまして、必要があればさらに洋上で立ち入って詳しく調べるということでテロの発生の未然防止を図りたい、このように考えております。

 それから、二点目の、米国では内航船も対象にしている、日本も、沖縄のようなところがあるのだから内航船も対象にした方がいいのではないかという御指摘がございました。

 この点でございますけれども、米国では、例えばハワイというのも同じ米国の領土でございますし、アラスカもございます、それから五大湖ということでカナダと接しているというようなこともございまして、内航船と一口にいいましても、日本とはかなり異なる事情があってこのようなお考えがとられたのではないかなというふうに推察をしております。

 一方、我が国を見てみますと、内航船につきましてはそもそも条約上対象になっていないということが一つございますし、また、我が国の国内の事情を考慮いたしますと、武器や危険物等の取り扱いに係るいろいろな規制がしっかりと整備をされておりますし、かつ、警察等治安機関によります適切な取り締まりが実施されているという現状にございますので、危害行為の発生の蓋然性は低いと考えております。

 このような考えから、内航船に対しましては自己警備としての保安措置の実施を法律で義務づける必要はないのではないかというふうに考えた次第でございます。

 また、入港に係る規制につきましても、内航船の場合は外国の港に入るということではございませんので、先ほど申しましたような入港規制も実施する必要はないというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、国土交通省といたしましては、自己警備としての保安措置の義務づけの必要性や入港に係る規制の必要性と、それから国内外の治安水準の悪化の程度とのバランスを考慮した上で、我が国の国内事情に即した現実的かつ妥当性のある対応を行っていきたいと考えております。

下条委員 御丁寧な御説明、ありがとうございます。

 いろいろな考えがあると思いますけれども、私もアメリカにおりましたので、アメリカの中のハワイとかアラスカの部分と日本は違うじゃないか、それも確かにおっしゃっているとおりだと思います。

 ただ、例えば日本の船舶が海上で外国船と積み荷をした場合はどうなのか。そうすると日本船舶がどんどん入ってきちゃうということも出てきますね。ですから、それを、今、即、御省の方に対して御意見を申し上げるつもりはございませんが、今後の課題として、こういう時期でございますので、一つ一つそういうものを積み上げていってアメリカ並みに持っていったらどうかというのが私の意見でございます。ぜひ御検討をお願いしたいと思います。

 次に、今おっしゃった入港前通報義務、これについて、日本では二十四時間前ということですね。ところが、アメリカでは九十六時間前に通報してくださいということになっています。これは確かに、アメリカと比べたら日本は近隣国が距離的に近い、近いから二十四時間でいいじゃないか、こういう話があるかもしれませんが、一方で、船というのは、二十四時間以上前にもう日本を目的として行くことはわかっているわけです。ですから、こういう時期でございますので、準備も受ける側にもあるとしたら、SOLASに沿った二十四時間ではなくて、せめて米国の半分の四十八時間でも七十二時間前でも、もう相手の船は日本に来ることがわかっているわけですから、事前に、おい、日本にきちっと通告してこいということを毅然と申し上げてもいいんではないかというふうに思いますが、御意見はいかがでございましょう。

深谷政府参考人 御説明を申し上げたいと思います。

 御案内のとおり、この法律案におきましては、港湾に危険が及ぶことのないよう、入港前に必要に応じて海上保安官が立入検査なども行いまして、万一危険のおそれがあるというふうな船舶に対しましては、入港禁止を含むいろいろな措置をとることができるというふうになってございます。

 今、先生御指摘の、入港前の事前通報のありようでございますが、それぞれ国によっていろいろな事情があろうかと思いますが、我が国をめぐっての船舶の実際の運航実態、あるいは船サイドについての負担のありよう、こういった点などを十分勘案しまして、必要な場合には今申し上げたような措置が十分とれる、的確に実施できる、そういったために必要な時間がどうであろうかというふうなことを勘案して最終的には決めさせていただこうかというふうに思っております。

 御指摘のように、アメリカでは九十六時間でございますけれども、EUの方では二十四時間というのがとられるというふうに伺っておりますので、そういうことも参考にしながら最終的に決めさせていただきたいと思っております。

下条委員 ぜひ今後は、参考にしていただきながら、徐々に、法案について日本の確固たることを海外の船舶に言えるようにしていただければというふうに思います。

 次に、保安対策義務化予定港湾についてお伺いしたいと思います。

 日本全国に、港湾法上の港湾、つまり、特定重要港湾、重要港湾、地方港湾の合計が千十六あります、約千以上あります。この中には漁港は含まれていない。漁港は本当に数え切れないほどあるんですが、漁港を除いても千以上の港がある。その千十六の中で百十二だけ保安対策を強化しよう、それが保安対策義務化予定港湾ですね。これではちょっと私は、単純に、数字の上ですけれども、抜け道が多いんじゃないかなというふうに思います。

 日本は周りをすべて海に囲まれておりますし、北朝鮮問題いろいろ含めまして、大幅に強化する港湾の数をふやすべきじゃないかというふうに思います。

 また、事前に御省から資料をいただいておりますけれども、これを一べつしたところ、直観的に、日本海側にすごく予定港湾の数が少ない。ほとんど太平洋側、本州、四国の方ではないかと思いますけれども、この辺を踏まえて、もう少し、日本海側含めて、予定港湾の義務化をさせる数をふやしたらいかがか。予算の配分もあるでしょうが、その辺、お考え、いかがでございましょうか。

鬼頭政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいま委員のお話にありましたように、港湾法に基づく港湾が全国で千十六港ございますが、その中で、お話のありました重要港湾、これにつきましては、国際海上輸送網の拠点として、国の利害に重大な関係を有する港湾として位置づけられてございます。

 今回義務づけの対象といたしております港湾につきましては、重要港湾におきまして、国際航海船舶が一定程度以上利用する港湾施設に対して保安措置を義務づけようというものでございます。この義務づけによりまして、先ほど申し上げましたような重要港湾の位置づけから見まして、国際海上輸送ネットワークの信頼性と安全性の確保という改正SOLAS条約の目的は達成できるものというふうに私ども考えてございます。

 ただ、義務づけられていない港湾もございます。こういった港湾の施設につきましては、施設の管理者が自主的に保安措置を講じました場合には保安規程の承認を受けるようなことができることになってございますので、そういったことについてもいろいろお話をしていきたいというふうに思ってございます。

下条委員 ありがとうございます。

 確かに、自主的な申請があればということでしょうが、この不景気のときに御自身でやるところはなかなか少ないんじゃないかというふうに思いますので、これもぜひ今後の課題として、約一割では、特に西、日本海側の部分が非常に重要な指定港湾として手薄になっているのが一目瞭然ではないかと私は思います。余り北朝鮮の話は出したくないですが、ほとんどあちらの方でいろいろな事件が起きているのではないかと私は理解しておりますので、ぜひ今後の検討の課題にのせていただければというふうに思います。

 次に、予定港湾の管理者がすべて地方自治体ではない、つまり埠頭公社などがそれに挙がると思いますけれども、急ピッチでどんどん保安対策が進んでいる中で、事業にも相当費用もかかってくるんじゃないかと思いますけれども、こうした負担に関しての補助みたいなスキームは今どういう形になっているのか、お聞かせいただきたいと思います。

鬼頭政府参考人 保安設備の整備に対する助成の現状についてのお尋ねでございますが、本法案の対象となる国際港湾施設の設置者や管理者といたしましては、今お話のありましたように、港湾管理者、埠頭公社、それと民間の事業者の三者がございます。これらのうち、港湾管理者が行う保安設備の設置につきましては、先般、二月の九日に成立をいたしました平成十五年度の補正予算によりまして、一定の補助をするという財政上の措置を講じたところでございます。

 さらに、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸の各港にございます埠頭公社の所有する施設につきましては、来年度でございますが、平成十六年度の予算で無利子の貸付事業で対応することとしてございます。

 さらに、民間事業者が管理者でございます港湾施設の保安設備につきましては、日本政策投資銀行等による低利融資の制度を平成十六年度に創設いたしまして対応することといたしております。

下条委員 ありがとうございました。

 ぜひ、その温かい民間業者に対する低利融資制度について推し進めていただきたいというふうに思います。

 もう一つだけ今の保安設備について質問したいと思いますけれども、SOLASが七月一日で決まるということですが、例えばそれに対象の港湾とか民間の方とか公社が間に合わなかった場合、その場合のチェックと、それからそのけじめを入れる罰則、この辺はちょっと私お聞きしていないんです。その辺はどういうふうに、やるところはやるけれども、やらないところはずっと延ばして、半年、一年先でもいいぞとなるのか、それとも、きちっとそこの時点でチェック機能が働いて、できないなら罰則を出すぞというようなところまで今お考えなのか、ちょっとお話をお伺いしたいと思います。

鬼頭政府参考人 今ほどもお答えをいたしましたとおり、港湾における治安対策をできるだけ早期に早急に行う必要があるということから、港湾管理者が管理する施設については補正予算で手当てをさせていただきました。そういったものによりまして、早期に整備に着手ができるという状況が整ったわけでございます。

 そういったことで、今回の支援措置等を活用して、港湾管理者におきましては保安設備の整備を早急に進めていただけるものというふうに私ども考えてございます。

 ただ、七月一日に条約が発効いたしますので、その時点でそれぞれの施設の状況についてチェックをいたしますが、その時点で十分できていないところについては承認をできないということもあり得ますので、できるだけそれぞれの管理者の皆さんには早急に整備をしていただくようにお願いしているところでございます。

下条委員 ありがとうございます。

 日本のちょっといいところであり悪いところなのは、マルとバツの間に三角形があることだと私は思うんですよ。そういう意味では、罰則ということは、やはり、この間もちょっと厚生労働省、全く関係ない省の話になりますけれども、例えば年金の問題についても、払わない人がたくさんいるのに、払う人から取ろうとしているシステムがある。例えば本件についても、やる人はきちっとやるでしょう。低利の融資を借りてもやるけれども、やらない人は全然、いいや、怒られなきゃずっと先に延ばしちゃっていいじゃないかというふうになるかもしれない。

 そういう意味では、罰則をきちっと決めることによって、やった人もやらない人も平等な扱いをするべきではないかというふうに思いますので、まだ三月の半ばですけれども、あと三カ月半ぐらいでSOLASがスタートしますので、ぜひ、罰則というそんな厳しいあれではないにしても、注意事項とか指示事項とか、いろいろな意味で強く御省が出していただくことによって、きちっとやった人に対して、本当に、ああ、全く平等にやってくれているんだなという意識を起こさせていただきたいというふうに思いますので、お願いいたします。

 次に、航海船舶の入港に係る規制についてお伺いしたいというふうに思います。

 船舶における人、物の出入りの際におけるチェックの厳密度は一体どの程度のものなのか。飛行機で出入国のときと同じようなレベルでなされているのか、それともそれほどでもないのか。ちょっとお聞きしたいので、お答えいただきたいというふうに思います。

矢部政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいまの先生の御質問は、港におきます乗客の手荷物検査が具体的にどのように行われているのかという御質問だと思いますが、この点につきましては、現在、我が国の港におきまして外航の旅客船が出航する場合には、乗船する旅客につきまして、乗船者が歩いていきます経路におきまして監視を行い、外見等から不審な点が見受けられる場合には、旅客に質問をしたり、あるいは実際に手荷物の中をあけて見る、いわゆる開披検査を行うといったような方法によりまして検査を実施しております。また、博多港、下関港、大阪港、この三つの外航旅客数の非常に多い港につきましては、エックス線検査装置を設置いたしまして、日韓ワールドカップが開催されましたときには、この装置を使用して検査を行ったというふうに聞いております。

 それから、クルーズ船が日本にたくさん立ち寄っておりますけれども、こういったクルーズ船につきましては、これが出航する場合に乗客が乗り込みますので、その際に、エックス線の検査装置やあるいは小型の金属探知機といったようなものを使いまして、乗客が不審なものを持っていないかどうか検査を行っているというふうに聞いております。

下条委員 ありがとうございます。

 今お聞きすると、探知機が置いてあるのは、私のお聞きした博多、下関、大阪、横浜以外はないということでございます。

 やはり、今、バスジャックとかハイジャックとかシージャックが頻繁に行われております。私の方でもいろいろな資料をいただいて、こういうようなチェック機能が働いているとありますけれども、今おっしゃった主要なところ以外はほとんどこういう探知機がなくて、極端な話、ハンドバッグの中を見たり、かばんの中を見ているだけのチェックしか行われていない港も多々あるというふうにお聞きしております。

 確かに、航空機と比べて出入りの便数や人数も極端に低いとは思うんですが、こういう御時世ですので、もう少し厳重なチェック体制をしいていただいてはどうかなという感じが起きておりますので、ぜひ前向きに御検討いただければというふうに思います。

 次に、ポートステートコントロール、立入検査についてお聞きしたいと思いますけれども、我が国の既存のPSCにおいては、一回チェックした六カ月後、六カ月は次のチェックを行わないというルールがあるみたいです。なぜ六カ月もの間、一回チェックした後検査が行われないのか、この辺についてちょっとお聞きかせいただきたいというふうに思います。

鷲頭政府参考人 お尋ねの六カ月ルールに関してでございますが、海上人命安全条約等において船の安全の基準の適合性をチェックするわけでございますが、それは、まず第一義的には旗国が検査等によりチェックをするということになっておりまして、ポートステートコントロールというのはあくまでその旗国の検査を補うというものでございますので、条約上、ポートステートコントロールの実施に当たっては、船舶を不当に抑留し、または船舶の出航を不当に遅延させることのないようあらゆる努力を払うということが規定をされております。

 それからもう一つ、より多くの船舶に対して効果的かつ効率的なポートステートコントロールを実施するためには、各国がばらばらにポートステートコントロールを実施することによって、例えば同じ船が何回もひっかかる、あるいはひっかからない船が存在するというようなことにならないように、検査の実施が同一船舶に偏るという事態を回避する必要がございます。

 このような理由を受けまして、実は、アジア太平洋地域、日本も含めて、東南アジア、オーストラリア、ニュージーランド、太平洋を含む十八カ国、香港も含みますので十八カ国と地域ですが、そこでポートステートコントロールの基本的なルールを定めました覚書というものをつくっております。東京MOUと言っておりますが、その覚書に基づいて各国が協調してポートステートコントロールを実施するという仕組みになってございます。

 その中で、入港した外国船舶に対してある国がポートステートコントロールを実施した結果、国際条約にちゃんと適合していますよということが確認された場合には、ほかの国で次に寄ったときにポートステートコントロールを何回も受けるというような不利益を回避するために少なくとも六カ月の間隔をあけるということが決められておりまして、それに従ってやっているということでございます。

下条委員 ありがとうございました。

 今おっしゃった国際的地域間協力体制十八カ国、東京MOUでございます。ただ、これは今から十一年前、一九九三年の十二月に採択されていると思います。十年間で日本を取り巻く国際状況も大分変化していると思います。例えば、朝鮮半島から、釜山からだと最速で二時間半で船が来てしまう、万景峰でも二十時間で日本に来るわけであります。そういうのを考えたときに、こういう状況下に置かれている日本として、東京MOUのままに六カ月でいいんだよというふうに通すのか。いや、自国の置かれた立場、また、一〇〇%確信ではないですが、アルカイダから指名を受けている国でございますから、そういう意味ではもう少し日本としては毅然として、こういうことを思っているんだということで、東京MOUから離脱しても、若干このサイクルを早くするような方向で、今後強い姿勢で対応していただければというふうに申し上げておきたいと思います。

 ちょっと時間が迫ってきて、いろいろ言いたいことがたくさんあるので次に移りたいと思いますけれども、次は、この法律案の第三条について、国が自己警備レベルを三段階で指示するという部分についてお伺いしたいと思います。

 SOLAS条約で三段階とされているので日本でも三段階というわけですけれども、もっと細かく、五段階は必要なのではないでしょうか。北朝鮮とかイラク問題にかかわり、テロの危険度は随分高まっているというふうに思いますので。アメリカの国土安全保障警報システムの警戒態勢レベルは五段階となっております。これは、お考え、いかがでございましょうか。

矢部政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員御指摘のとおり、この法律におきましては、船舶と港湾施設に関します保安レベルは三段階で定めることを予定しております。

 これは、この法律のもととなりました改正SOLAS条約の審議の際にもいろいろ議論があったわけでございますけれども、最終的には、各国の合意として三段階ということが条約に入ったわけでございます。そして、各国もこの条約に基づきまして三段階で定めることになると考えております。

 今委員から、アメリカは五段階でやっているのではないかというお話がございましたけれども、アメリカも、国の事態認識としては五段階でやっておりますけれども、SOLAS条約を受けました国内法におきましては、五段階のうちの下の三段階をこの条約のレベル1ということにいたしまして、条約を実施する上では三段階で実施しているわけでございます。

 したがいまして、我が国におきましても、条約の規定にのっとりまして三段階でやっていきたいというふうに考えております。

下条委員 ありがとうございます。

 本法律案の第三条でございます、ちょっと読み上げると時間がかかりますので、一、二、三はそれぞれ、危害行為の内容、危害行為が行われるおそれがある地域、危害行為が行われるおそれの程度ということになっておりますけれども、私は、すべてのレベルを判断する中で最重要要素というのは情報の確実性ではないかというふうに思っております。そういう意味では、情報について裏づけがとれて、どの程度の確実性があるかということが、情報にとって、また判断にとって一番必要ではないかと思います。

 この第三条の条項に確実性というのを入れたらどうかというふうに御提案したいと思いますけれども、御意見はいかがでございましょうか。

矢部政府参考人 お答えを申し上げます。

 この保安レベルの指標の設定というのは、実は極めて難しい点がございます。条約上も、こういった要素を考慮して、三段階で定めますということだけを規定しておりまして、具体的にどのようにやるかということにつきましては、今回、条約も初めての試みということもございますので、各国の判断に任されているという状況でございます。

 したがいまして、我が国といたしましても、治安情報をたくさん持っております警察や外務省、防衛庁等と連携をとりまして十分に情報を集め、そして各国の状況を見きわめながら慎重に指標を設定していきたいというふうに考えております。もちろん、確実な情報に基づいて判断することになると思いますけれども、そういった諸般の情勢を慎重に考慮してこの第三条の規定を実施していきたい、このように考えております。

下条委員 ありがとうございます。ぜひ、今後そういう部分について入れていっていただくように御検討いただければというふうに思います。

 さらに一歩踏み込んで、航海、港湾分野に限らず、政府が国全体の警戒態勢レベルを決定して警告を発するシステムを構築していくべきだと私は考えております、ちょっと話は違いますけれども。

 先ほど申し上げたアメリカの国土安全保障警報システムがそれに相当するものだと思いますけれども、それは、条約があろうと、国として政府が、連邦や州、地方行政、国民に対してテロ攻撃の危険性の情報を知らせるということでございます。私も海外にずっとおりましたので、緑色、青、黄色、オレンジ、赤というふうに順番で五段階で国民や連邦・州政府に対してきちっと明示していくということが今一番必要なんじゃないかというふうに思います。

 日本の方では、空港に対する警戒態勢、フェーズ1、2、Eというのはありますし、それはあると思いますけれども、この点について政府として、国家レベル全体として危機管理体制についての確立はどういうふうにお考えか、お聞きしたいと思います。

堀内政府参考人 お答えをいたします。

 国内の警戒につきましては、関係省庁が情勢に応じて必要な措置をとっているということでございます。

 政府といたしましては、関係省庁が各種のテロ対策を実施するに当たり、必要に応じ会議を開催するなどして、情勢に対する認識の共有を図っております。そして、関係省庁の措置が斉一的かつ効果的に行われるように努めてきているところでございます。

 国内の警戒レベルを段階分けする制度につきましては、議員、今お話しになりましたように、米国あるいはフランス等に存在するものと承知をしておりますけれども、我が国としてもこのような諸外国の制度に関する研究を行ってまいりたいというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、今後とも、政府が一体となって、斉一的かつ効果的なテロ対策を講じることができるように努めてまいりたいというふうに考えております。

下条委員 ありがとうございます。

 物は起きてからでは遅いと思います。そういう意味では、いろいろな議論はあるかもしれませんが、スペインなんかの問題でもああいうことがどんどん出てきておりますし、それによって政府が転覆するぐらいの動きが出ております。そういう意味では、政府全体として、毅然としてこういうふうに国としてやるんだということを、県そして行政府、国民に対して明示していくことがこれからの責務ではないかというふうに思いますので、アメリカをすべて見習えとは言いませんが、小泉総理もアメリカがお好きでございますし、ぜひ、その中で前向きにこのレベルについて御検討いただきながら、国家全体として考えていただきたいというふうに思います。

 それでは、時間があと少しになってまいりました。いろいろ述べてまいりましたけれども、本法律案のように、海上テロ対策、今後ますます重要になってくると私は考えております。

 アメリカの例を先ほどから挙げていますが、私は会社員をしていたときにアメリカにおりまして、簡単に言えば、湾岸戦争にちょうどぶち当たりました。自分はロサンゼルスにいまして、ニューヨークにもいましたけれども、ロサンゼルスのときにあの暴動があった。また、九・一一テロでは、私が人事拝命を受けて行く予定だったニューヨーク・トレードセンターの南棟の七十九階には私の仲間が五人ほどおりまして、アメリカのスタッフを入れると百人ぐらいいたと思いますが、全員死亡しております。

 いろんな意味で、私自身がたまたまかすめて、こうやって命をキープして生きてきたという前提に、亡くなった人たち、そしてこういう悲劇を起こさないためにも、これから日本の中でもナショナルサポート、国がやはりいろいろなことごとに対してきちっと明示と補助をしていき、それに対して、私が先ほど申し上げたとおり、この日本はちょっと甘いところは、物事の三角形が多いと思います。やはりバツをきちっと入れるということ。バツというのは、罰則の罰でもありますし、マル・バツのバツでもありますけれども、その辺をぜひ事前に防衛として入れていっていただきたいというふうに考えています。

 その中で、石原大臣は少林寺拳法数段というお話をお聞きしております。少林寺は私も大学のときにちょっとかじりましたけれども、あれは攻めるのではなくて、相手が攻めてきたところの防衛によって、関節わざとかひじを入れたりするわけですね。

 そういう意味で、特に、そういう大臣が今おなりになっているわけですから、大臣の所信として、こういうふうな罰則、そしてまた確固たる姿勢が今後必要だと思いますけれども、それについて、大臣の今までの御経験を踏まえた御決意を最後にお聞きしたいというふうに思います。お願いいたします。

石原国務大臣 ただいま下条委員が、御自身の御経験の中で、テロ等々に対する保安レベルの強化、国としてこの条約からさらに進んだ保安レベルというものを構築して、国民にテロ情報を絶えず発していくという貴重な御提言、また、これは欧米にはある話でございますけれども、罰則等々を入れることによってこの制度を充実していくというような御提言を拝聴させていただいてまいりました。

 その中で、委員も御指摘されておりますように、九・一一の米国同時多発テロの後、最近ですと二月六日のモスクワの地下鉄のテロ、さらには三月十一日のマドリッドにおきますスペイン国鉄の爆発テロ等々、テロ対策というものは大変重要であるし、本当に忘れたころやってくる、こういうことを痛感もし、また、委員もそのような危機感に立って御質問をされたと私も拝聴させていただいてまいりました。

 政府といたしましても、そういうものが入ってこない水際での対策の強化というものが本条約の御審議の中で浮き彫りになってきたし、私としても、この水際対策というものをより一層強化していかなければならないと痛感しているところでございます。

 国土交通省は大変広い役所でございまして、輸送機関の安全の確保、あるいは空港、港湾といったような管理、また海上保安庁もございますので、海上の治安確保のため等々、これまでも対策あるいは政策を立案して行ってまいりましたが、委員の御指摘を十分に踏まえまして、海上テロ対策あるいは水際対策というものをこれからも強力に推進させていただきたいと考えております。

 国際航海船舶や港湾施設の保安の確保及び入港規制の的確な実施というものがこの法案でうたわれておりますが、こういうものはもとよりのこと、政府全体で取り組んでおります水際対策、先ほど御紹介させていただきましたけれども、海上保安庁における海上の治安の維持というものについてもこれからもさらに一層推進させていただきますし、委員の御提言は、政府参考人の答弁にありましたように、研究させていただきたいと考えております。

下条委員 ありがとうございます。大臣と私も同世代でございますので、若い発想で、清新の意気で日本のためにぜひ御検討いただきたいと思います。

 ありがとうございました。

赤羽委員長 室井邦彦君。

室井委員 民主党の室井邦彦でございます。

 各委員の先生方の御質問を聞いておりまして、多少重複するところがあろうかと思いますけれども、どうか参考人の皆さん方におかれましては、御理解を賜りましてお答えいただくようにお願いを申し上げる次第であります。

 また、先般あのような、スペインで起きましたテロの事件でございますけれども、私も、新幹線を使い上京している立場の者からしてみれば、非常に不安を感ずるものであります。特にこのような法案に関しましても、しっかりと質問をさせていただきながら、また、丁寧な、理解あるお答えをいただきたくお願い申し上げまして、早速質問に入らせていただきます。

 今回の法案の改正、SOLAS条約に基づく海上人命安全条約、国際航海を行う船舶や港湾施設、自己警備としての保安措置を義務づける法案改正ということであるわけでありますけれども、我が国の商船隊、商船は、少数人数の船員による運航体制が図られており、かつ効率的な運航を図るため、鋭意努力をされておるわけであります。今回義務づけられる保安措置も効果的かつ効率的なものであるべきと考えておるわけでありますけれども、このような観点から、今回の法案についての必要な点を二、三、今から質問させていただきます。

 今回のまず一点は、法案は、IMO、国際海事機関におけるSOLAS条約の議定書の改定を受けたものであるということでありますけれども、このSOLAS条約の締約国は現在どのくらいの国数になるか、まずお答えをお願いしたいと思います。

 また、あわせて、締約国の船だけが安全措置を実施していたのでは国際協調によるテロ防止の効果は全く薄れてしまうわけでありますが、同条約を締約していない国の船は、実際にどのように取り扱われるのか。

 以上、お答えをお願いいたします。

矢部政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず初めに、SOLAS条約の締約国でございますけれども、本年二月二十九日現在で、百四十六カ国の政府と一つの準加盟国、これは香港でございますが、締約国になっております。なお、我が国は、一九八〇年五月の条約発効時からこの条約の締約国になっております。

 また、二点目に、この条約に入っていない、いわゆる非締約国の船舶の取り扱いについて御質問がございました。

 この条約は一九七四年に作成されたわけでございますけれども、この条約の中に非締約国の取り扱いというのが決められております。すなわち、条約作成当時は、できる限り早期に新しい条約に入るように、それを促進する意味で、非締約国の船舶につきましてもこの条約を適用するということが決められておりまして、その旨の規定が条約の第一条の締約国の一般的義務の中に規定をされているわけでございます。

 したがいまして、今回御提案しております法律案におきましては、我が国の港湾に入港いたします非締約国の船舶に対しましても例外なく適用することにしております。先生御指摘のとおり、非締約国の船舶をこの法律案の適用対象外といたしますと規制の実効効果が減じてしまうという事態を招くことになりますので、我が国の方針は、条約の趣旨にも沿ったものになっております。

室井委員 今の御答弁で百四十六カ国ということでありました。多少安堵するところであります。

 今現在、不況が長期に続き、やはり船会社も非常に経営の状況というものは厳しいものがある、このように思っております。そういう観点から、二つ目の質問といたしまして、改正のSOLAS条約の内容には、保安措置の実施を初め、船舶所有者また港湾施設の管理者に新たな義務を義務づける、この部分が非常に多いわけであります。IMOにおける条約改正協議の過程の中で、これらの関係者の意見、希望が十分に聞かれているかどうか、また、反映されているかどうか、この点をお伺いしたいと思います。

 あわせて、改正された条約の内容について、これらの関係者はどのように受けとめられているのか。つまり、必要かつ十分な内容と考えておるのかどうか。そのあたりからひとつお答えをいただきたいと思います。

矢部政府参考人 お答えを申し上げます。

 今回の条約の改正の内容につきまして、海運事業者あるいは港湾管理者等の意見が十分に反映されているのかどうかという点についてまず御質問がございましたが、この点につきましては、今回の条約、非常に短期間、すなわち、採択までわずか一年余りの審議を経て採択をされたものでございます。この一年余りの間に数回審議が行われましたが、そういった国際会議に臨むに当たりまして、通常、我が国としての対処方針というものを決めて会議に臨むわけでございますが、この対処方針を取りまとめるに際しまして、海運事業者あるいは港湾管理者等の、この条約の実施によって影響を受けますいろいろな関係者の皆様方から意見をいただきまして会議にまず対応したということでございますし、実際にIMOにおきます会議の場にも海運事業者の皆様あるいは港湾管理者の代表の皆様にも参加をいただきまして、十分、会議の議論にこういった関係者の皆様の意見が反映される機会を確保してきたものと認識しております。

 また、この条約の内容につきまして関係者の皆様方がどういう受けとめ方をしているかという点につきましては、一応、この改正された条約の内容につきましては、あらゆる締約国の海運事業者や港湾管理者がこれに基づきまして統一的に保安対策を行うという必要が生じて作成されたわけでございますので、現在、我が国の海運事業者や港湾管理者の皆様も、海上テロ対策のために必要かつ十分な内容であるというふうに受けとめて、保安措置を講じる予定であると聞いております。

室井委員 御丁寧な御説明、ありがとうございます。

 今後も引き続き、地元の現場は現場なりの思いと意見があるようでございます、どうか十分に意見をお聞きになりまして、また、現場のそれぞれの皆さん方の御意見も尊重していただきまして、鋭意努力をしていただきたく思う次第であります。

 続きまして、安全の確保に対しまして、いろいろと多少の出費はやむを得ないな、このように思っております。そういう中で、港湾に関しては多くの国の支援のメニュー、制度というものがあるようでありますけれども、船に関しては全くそのようなものがない、このようなことを聞いておるわけであります。

 この法案によれば、国際航海船舶に船舶警報通報装置の設置を義務づける、このようなことになっております。実際、それがどのようなものであるのか、また、費用面でもどのくらいのものであるのか。国際航海船舶に対しましても大きな負担になっているのではないのか、このような心配もあるわけでありますけれども、ぜひ御説明をお願いしたいと思います。

矢部政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、船舶警報通報装置の内容でございますけれども、これは、衛星通信等を利用いたしまして、船舶が危害行為を受け、危険な状態になった場合に、その事実を海上保安庁に伝達するための設備でございます。

 ただ、この装置には特徴がございまして、例えばテロリストが船舶に侵入した場合等に使用されますので、従来の船舶の通信機器には要求されていない機能が加わっております。

 船内にこの警報を発信したという事実がわからないようにする、すなわちテロリストに、通報したことが悟られないように、光も音も出ないようにこっそり通報する、こういうことが要件になっております。

 それからもう一つ、この設置の仕方につきましては、船橋、いわゆるブリッジですね、船の運転席のところに必ず一つ通報発信装置を置くということと、それと別の場所にもう一カ所置きなさいということになっております。この点が、従来のいわゆる一般的な通信装置とは違う特徴でございます。

 それからもう一つ、費用面で船主にとって負担にならないのかどうかというお尋ねがございましたけれども、これは現在いろいろな会社が開発を進めておりますし、既に製品となっておるものもございますけれども、我々が調査したところでは、二十万円から三十数万円程度のものになろうと思っております。

 ただ、現在既に設置しております設備に追加としてこの機能を加えるのか、あるいは、最初からほかの通信装置の中に組み込んで、大きな装置の中の一機能として加えるのかによりましていろいろと価格は変わってきますけれども、先ほど言いました、この通報装置の機能だけを取り出して考えますと二十万から三、四十万程度かなというふうに思っておりまして、費用の面でもそれほど大きな負担にはならないというふうに認識をしております。

室井委員 今お聞きをいたしまして、そのくらいの程度であれば、このような思いでありますけれども、どうかよろしく御指導のほど、お願いを申し上げます。

 引き続きまして、この警報通報装置でありますけれども、細かな話になるわけでありますけれども、この法律の施行日の前に建造され、また建造に着手された国際航海船舶については、船舶警報通報装置の設置について附則で経過措置を設けてある、このような内容のものが書かれているわけでありますけれども、少しわかりやすくこの部分の御説明をお願いしたいと思います。

 また、警報装置は船舶の最後の命綱と言っても過言ではありません。最初からこのようなものを義務づけるという必要があったのではなかったのか、このようにも感じるわけでありますけれども、御所見をお願い申し上げます。

矢部政府参考人 お答えを申し上げます。

 この船舶警報装置の設置につきましては、先生御指摘のとおり、この法律が施行される日以降に建造に着手される船舶につきましては、これは最初からこの装置を設置していただくということになっております。

 一方、この法律の施行前に建造に着手された船舶、現存船と言っておりますが、現存船につきましては、本法附則第二条におきまして経過措置を設けているところでございます。

 この経過措置を設けました理由について御説明申し上げますと、これは、現存船に対しまして新しい設備の設置を直ちに義務づける、こういうことにいたしますと、この設備の設置だけのために、ドックの手配等、工事の手配が必要になりますし、また、その工事のために船舶の運航を一時的に停止させることが必要になります。これは船舶所有者にとりまして大変大きな負担になるということでございます。

 したがいまして、こういう海事関係の構造や設備の改造あるいは新たな設置といったことがかかわってきます基準を作成する場合におきましては、一般的に、条約が発効いたしまして最初に行われる定期的な検査がございますけれども、その検査の時期に合わせてそういう追加で要求された新しい設備の設置を義務づけることができるように、猶予期間を設けるということが一般的になっているわけでございます。今回の御提案を申し上げております法案におきましても、附則におきまして、このような国際条約の内容を取り入れているわけでございます。

 そして、この経過措置の具体的な内容について御説明を申し上げますと、旅客船とタンカーにつきましては、この条約の発効日であります十六年七月一日以降の最初の法律に基づきます定期的な検査、あるいは臨時の検査というのもございますけれども、そういう検査の時期までに設置する。それから、それ以外の船舶につきましては二年間の猶予期間が設けられておりまして、平成十八年七月一日以降の最初の定期的な検査あるいは臨時の検査の時期までにそれぞれ設置しなければならないということになっております。

 したがいまして、この経過措置につきましては、我が国といたしましては条約どおり法案に取り入れておりまして、我が国の海運事業者のみが不利益をこうむらないように、条約と同じ取り扱いをしているということでございます。

室井委員 関連で引き続き、この法案によりまして、国際航海の船舶に船舶保安管理者が乗り込んでいる必要がある、保安管理者が必要である、このようなことでありますけれども、乗組員とは別に管理者が乗り込む必要があるということになるかどうか、この点もあわせて御説明をお願い申し上げます。

鷲頭政府参考人 お尋ねの点でございますが、改正SOLAS条約におきましては、必ずしも専任の船舶保安管理者を乗り込ませる必要はなく、既存の乗組員である、例えば船長とか一等航海士が兼務することも可能でございます。

 本法案におきましても、「船舶保安管理者を選任しなければならない。」ということで、同様に既存の乗組員の中から選任するということもできるようになっております。

室井委員 引き続き関連いたしまして、例えば日本の船会社は、日本船について今後どの程度の人数の船舶保安管理者を養成する必要があるのかということと、また、こうした船舶保安管理者の養成は七月の一日の条項の発効まで間に合うのかどうか、この点もお聞かせをいただければ、お願いいたします。

鷲頭政府参考人 まず、必要な人数ということでございますが、日本船舶が適用対象になるわけでございまして、船舶安全法の規定に基づく検査等の実績から考えますと、約二百隻程度が保安管理者を選任する必要があるだろうというふうに予測しているところでございます。

 船舶保安管理者は、そういう意味では、これらの二百隻の各一隻ごとに一名を選任する必要がございますけれども、これに加えまして、休暇とか病気といったことによって下船をする場合がございますので、それに備えて予備の要員も養成しておく必要があるということを勘案しますと、私どもは、当面、少なくとも四百名程度の人数を養成することが必要であるというふうに考えております。

 一方、船舶保安管理者の養成につきましては、独立行政法人海技大学校において講習を実施するということになっておりますが、御指摘のとおり、ことしの七月一日の条約発効まで期間が短いということでございますので、昨年の九月より、海技大学校において前倒しで実は講習を実施してきております。

 それで、各会社から、船に乗り組んで将来保安管理者になる候補者が海技大学校に申し込みをして講習を受けるわけですが、その数が既に九百名程度の人数が受講されておるという状況でございまして、したがって、ことし七月一日の条約発効には十分対応できるものと考えております。

 なお、この法律案の附則におきまして、本法施行前に海技大学校において行いました船舶保安管理者の講習を修了した者については、本法に基づく講習を修了したものとみなす旨の経過規定を置いておりますので、事前に講習を受けた人であっても、法律が施行されれば保安管理者としての資格が生じる、こういうことになるわけでございます。

室井委員 非常に船舶保安管理者というものは重要な立場であるということも認識をしております。どのような内容のものをいろいろと指導されておるのか、聞かせていただければありがたいと思いますけれども、時間がございませんので、それは次の機会でまた質問させていただきたいと思います。

 続きまして、船舶に関する国の検査は、今まででも、船舶の安全性に基づく検査や海上火災の防止に関する法律に基づく検査など、数多くさまざまなものがあるわけであります。先ほど費用については少しお聞きをいたしましたけれども、今回の法案に基づく検査が加わることによって、さらに船主にとって大きな負担とならないのか、お尋ねをいたします。

 また、本年の七月一日の条約発効まで、検査を受ける際に、運航スケジュールなどに影響が出ないように、敏速な検査の実施など、国としても最大の御協力、また、配慮すべきである、このように考えておりますけれども、この点の国土省の御所見をぜひ聞かせてください。

矢部政府参考人 お答えを申し上げます。

 この条約に基づきます検査を受けるためにわざわざ船をドックに入れるということになりますと、これは大変な費用がかかることになるわけでございますけれども、この法律に基づきます検査は、国際条約に基づきまして船舶保安規程というものを定めますけれども、この規程に定められた保安措置等が船舶の上で適確に実施されているかどうかということを船上において確認するためのものでございます。

 したがいまして、船舶が港に停泊しているときなど、通常の運航を妨げないで検査を行うことができます。先ほども言いましたように、この検査のためだけに特にドックに入れるという必要がないわけでございまして、こういうことを考えますと、船主の方にとってはそれほど大きな負担にはならないのではないかというふうに考えております。

 また、七月一日の条約発効日がもう迫っているわけでございます。この間に必要な検査を受けなければならないわけでございますが、船舶の運航スケジュールに合わせて検査が受けられるように、受検者の利便に十分配慮した対策を講じることにしております。

 具体的に御説明をいたしますと、まず、条約が発効する七月一日以前であっても検査が受検できるように配慮がされております。これは附則の第四条第四項に具体的に書かれておりますけれども、この法律が成立いたしますと、速やかにこの検査の部分だけは実施できるということになっております。

 それから、船舶、国際航海をするわけで、海外に行っている場合がございますけれども、海外におきましても、検査の要望がある場合には、日本から検査官等が海外に出張いたしまして検査をすることにしておりますし、また、休日も、要望があれば検査に対応するということにしているところでございます。

室井委員 お聞きしておりますと、大変な作業であるなという思いがするわけであります。

 国際の港湾の施設の質問に移りますけれども、保安計画の国による承認は実際だれが行うのかということがまず一点と、国際航海船舶の場合は、定期的な検査を行う際に、多様なテロに応じた新たな保安措置の実施を指示することが可能であるわけでありますけれども、港湾施設については定期検査の仕組みというものがありません。

 こういう観点から、テロの防止をするための取り組みがおくれるというか、このようなおそれがあるのではないのか、このように私は思うわけであります。国際港湾施設の保安計画に関して定期的に今後チェックをする必要があるのではないか、このように思うわけでありますけれども、お考えをお聞かせください。

鬼頭政府参考人 ただいま、二点お尋ねがございました。

 一点目の国際港湾施設の保安規程に対する国による承認の事務についてでございますが、国土交通大臣が行うことになっておりますが、実際には、特に重要な施設については本省の担当職員が現地に出かけていってチェックをする。それ以外の施設については地方整備局等の地方支分部局の職員が実施をすることになるというふうに考えてございます。

 また、二点目の、定期的なチェックの仕組みが必要ではないかという点についてでございますが、港湾施設につきましては、国際航海に従事しているために直ちに立入検査ができないような船舶とは違いまして、保安の確保のために必要な措置が適確に講じられているかどうかについて随時立入検査を行うことが可能でございますので、そういった意味で、定期検査の仕組みを設けなくとも、必要に応じ報告の徴収や立入検査を行い、必要な措置が講じられていない場合は、改善勧告を発することなどにより必要な保安措置を実施させることができるというふうに考えてございます。

 また、施設の管理者が策定をいたします保安計画と申しますか保安規程につきましては、国が当該の施設について行いました保安評価を踏まえて定めなければならないことになってございますので、御指摘のような新しい態様のテロへの対応が必要になりました場合におきましては、必要に応じて保安評価を見直して、施設等の管理者にこれを踏まえて保安規程の変更を求めるということの対応になるというふうに考えてございます。

室井委員 ありがとうございます。

 時間も参りましたので、はしょって、あと二問ほど質問をさせていただきます。

 この法律では、テロの危険性などから判断いたしまして、自己警備のレベルを国土交通省が指示するということになっておるわけであります。テロのおそれなど、保安に関する情報を国土交通省はどのように入手しようとしておるのか、お聞かせください。

矢部政府参考人 お答えを申し上げます。

 先生御指摘のように、今回の法律案におきましては、海上交通システムの信頼性の確保という交通政策上の目的から、国土交通大臣が、国際航海船舶と国際港湾施設において講ずべき自己警備のレベルを国際海上運送保安指標として設定することになっております。

 しかしながら、国土交通大臣がこの保安指標の設定を行うに当たりましては、危害行為を行う可能性がある組織の勢力や、あるいは国際的なテロの動向など、国土交通省以外の機関が有している情報を十分に考慮して判断することが必要となります。

 国土交通省は、日ごろからいろいろな関係行政機関と密接に連携をとり、関係する治安情報をいただいているところでございますけれども、今回の法律案におきましても、国土交通大臣は関係行政機関の長の意見を聞くことができることとしておりますし、また、逆に、関係行政機関の長も自発的に国土交通大臣に対して意見を述べることができるという規定を置いております。

 したがいまして、国土交通省といたしましても、このような法律の規定を生かしまして、治安関係機関あるいは外交当局などと適切に意見を交換しながら保安指標の設定を行っていく所存でございます。

室井委員 この港湾に対する部分でありますけれども、義務化対象予定の港湾、日本全国にどのくらいあるのか、ちょっとお聞かせ願えませんですか。義務化対象予定の国内の港湾です。

鬼頭政府参考人 全国で千余ある港湾法に基づく港湾のうち、今回の法律に基づいて義務化すべき港湾施設のある港湾としては、百十二港を今のところ見込んでおります。

室井委員 ありがとうございます。

 時間も参りましたので、最後の質問を大臣にお願い申し上げたく思います。

 政府機関による保安情報の提供など、テロ対策、また、先ほど申し上げたように、日本の国内で、スペインで起きたようなテロ、アメリカで起きたような事件を起こしてはならない、犠牲者を国内で出してはいけない、このような思いでございますが、そういう観点から、テロ対策の効果的な実施には、やはり関係の各省庁の絶大な連携が不可欠だ、このように思っておるわけでありまして、今後、的確な運用に向けた国土交通大臣のさらなる決意を最後にお伺いいたします。

石原国務大臣 室井委員の御議論を伺わせていただいてまいりまして、かなりきめ細かく法案の重要な点について御言及があったと思います。

 そんな中で、これからこの法案を実際に運用していく中で、関係省庁との連絡というものは大変密にしていかなければならないということは言うまでもないと思っております。

 すなわち、船舶及び港湾における保安レベルをどういうふうに設定するのかというような基礎的な情報は、やはり、警察関係から必要な情報を得る、あるいは対外的には外務省から情報を得る、こういうことが不可欠でございますし、また、船舶や港湾施設に義務づける保安措置の内容についても、警察機関等々が保有しております保安に関する知見を生かして判断する必要がある、これは当然のことだとは思っております。

 このため、これからも、委員の御指摘を十分に踏まえて適切な運用を図るとともに、関係省庁と密な連絡をとらせていただきまして法案の的確な運用というものを図らせていただきたいと考えております。

室井委員 ありがとうございます。

 これで質問を終わらせていただきますけれども、国土交通省の関係者の皆さん方には、さらなる努力、精進を積み重ねていただきますことを要望いたします。

 ありがとうございました。

赤羽委員長 若井康彦君。

若井委員 民主党の若井康彦です。

 同僚の下条委員、室井委員から、この法案の具体的な内容についてはいろいろ質問をさせていただきましたので、私は、日本の海の安全、あるいはその安全保障、そうしたものの中におけるSOLAS条約、あるいは今回のこの法案の位置づけですとか整合性、補完性等について、確認の意味も含めて御質問をさせていただきたいと思います。

 昨今、大変に都市化が進んだということもありますけれども、国内における国民の海への関心あるいは理解というようなものは、どちらかというと低くなってきているのではないかというふうに私は考えております。

 私自身は、東京湾の一番奥のあたりで、遠浅の海を眺めながら育ったわけですけれども、かつて、芥川賞作家の石原慎太郎氏の作品等も大変読ませていただきながら、日本の海の世界というものを教えていただいてきたわけです。

 推察いたしますに、石原大臣、物心ついたときにはもしかすると既に海の上にいたというような体験を重ねてこられたのではないかというふうに推察いたしますけれども、日本の海というものに大変造詣が深い、そうした大臣が、日本の海の今の事情、これまでの変化というものをどのように感じておられるのか。最近では、テロ事案の発生等の危険というようなものもございますけれども、我が国の海岸、これらの守りというものがますますこれから重要になる。大臣はどのようにお考えになっておられるか、所見をお願い申し上げたいと思います。

    〔委員長退席、橘委員長代理着席〕

石原国務大臣 ただいま、若井委員が東京湾の遠浅を見て育ったというお話がございましたが、私も、三浦半島の小さな町で、遠浅の海岸の近くで育ちまして、海というものは身近な存在であったと思います。

 そんな中で、昨今のテロ、日本でも、九・一一の後、原発施設というものが全部海に隣接するところにございますので、海上保安庁が警備艇を出して日夜たゆまぬ警備を続けていく。四方を海に囲まれている日本にありましては、テロの流入というものは、海か空か、このどちらかからしかないわけでございます。

 こういうものに対する警備、警戒、水際での防止、こういうものの重要性は高まっております中で、やはり、島国でありまして、さまざまなものを、原油にいたしますと九割近くを中近東の国々から輸入する、私どもの生活に必要なものも、すべてと言っていいくらい海を通じて私どもの地に届いてくる、言葉をかえますと、海上の治安の確保の重要性というものは、日に日に高まっているような気がいたします。

 そんな中で、今回御審議いただいている法案の話も、やはり、これらの世界の諸状況の変化に対応して、水際でのさまざまな危機の防止というものをより強度なものにしていかなければならないということが中心にこれまでの審議の中でも御議論をされてきたことだと思っております。

 きょうは海上保安庁の長官も委員会に出席をさせていただいておりますが、海上保安庁も、先ほど原発の一例を出させていただきましたけれども、テロに備えた哨戒活動や、原発に限らず重点施設の警備、あるいは外国船への立入検査、また、記憶に新しいところですけれども、不審船への対策等々、海上の治安の維持ということに万全を期して取り組んでまいりますが、世の中の変化、また、さまざまな日本への海上航路を使ってのアクセスというものがいろいろな方法で多岐にわたり、またそこに犯罪、テロ、あるいは治安を脅かす、そういう要素もたくさんある。

 島国に暮らす私どもとして、やはりこれらの問題にこれまで以上に国民の皆様方と危機感を持って取り組んでいかなければなりませんし、これまで国土交通省として行っている行動につきましては、より一層の強化を図っていかなければならないものと考えているところでございます。

若井委員 どうもありがとうございます。

 今回の法律案ですけれども、改正SOLAS条約、これに対応するということになっておりますが、九・一一以前にIMOが最も問題にしていたのは、このテロの問題も含んでいますけれども、海上における海賊の問題ということだったというふうに私は記憶をしています。

 それが、今回の条約改正、そしてそれに対応する法案、ここに至るという経緯ですね、今回のこの法案が国際航海船舶及び国際港湾施設の保安という点に重点を置いておるわけですけれども、ここに至る経緯あるいは背景といったものがどんなところにあるのか、この点について国土交通省から御説明がいただければと思います。

矢部政府参考人 お答えを申し上げます。

 今回のこの法案のもとになっておりますSOLAS条約の改正でございますけれども、これは、平成十三年九月十一日の米国におきます同時多発テロを契機といたしまして、米国がIMOの場におきまして、国際海上輸送分野においても国際テロを防止するための国際的な取り組みが必要である、こういう提案を行いまして、これに基づきまして、IMOといたしまして条約の作成をすることを決定し、その後検討が進められたものでございます。

 通常、IMOの場におきましては、このような新しい条約をつくるということになりますと、議論に長い場合には数年の期間を要するのが通例でございますけれども、この議案の重要性にかんがみまして、本件につきましては早急に対策を実施しようということで、約一年程度の短期間で検討結果が取りまとめられまして、平成十四年十二月にロンドンのIMOの場で条約締約国の政府間会議が開催されまして、今回の改正が全会一致で採択されたわけでございます。

 この改正は、改正の手続に基づきまして、本年七月一日に発効することが既に決定をしております。したがいまして、現在、各国とも、この条約の国内法化を含む条約発効に向けた準備を進めているところであると認識をしております。

若井委員 今の御説明によりましても、このSOLAS条約、大変に短い期間に批准をされるということで、ある意味でいうと、緊急避難といいますか緊急対応という性格の強い、そうした条約あるいは法案だというふうに思うわけですが、相変わらず、日本全体の海域については、テロの危険も含めて、さまざまな意味で安全を保っていくための方策が重要であるというふうに私は考えるわけですけれども、その中において、このSOLAS条約、これを改めて位置づけ直すという意味でお尋ねをしたいと思います。

 全体とするとこれまで比較的平穏だったのかもしれませんけれども、これからの時代、我が国の海域全体の問題、これを、どのような体系によってこの安全保障を確保していくのか、そこら辺の全体としての考え方について教えていただければと思います。

矢部政府参考人 お答えを申し上げます。

 今回、この条約が作成をされたわけでございますけれども、この法律案におきましては、危害行為という言葉でテロのような行為を規定しておりますが、この内容は、一つは、船舶または港湾に対しまして、直接外部から行われる行為でございます。例を申し上げますと、船舶を乗っ取って爆破をさせるような行為がこれに該当するわけでございます。もう一つは、船舶や港湾に対して直接には損傷等は生じさせませんけれども、テロ行為の原因となるような行為として、例えば、テロリストの侵入でございますとか、あるいは武器弾薬等の不法な積み込み、こういったものが想定されるわけでございます。

 したがって、このような危害行為の防止を図るために、この条約におきましては二つのことを義務づけているわけでございまして、一つは、国際航海船舶や国際港湾施設の所有者等に、物の積み込みやあるいは人の出入りの管理といった保安措置の実施を義務づけるというのが一つの内容でございます。またもう一つは、外国の、海外から日本の港に入ってくる船舶に対しまして、海上保安庁が入港規制を行って、こういった危害行為の発生を未然に防止する、こういう二つの方法によって、海上において想定されますテロ行為の防止を図ろうというのが基本的な考え方でございます。

若井委員 今の海上テロの具体的な想定というような問題については、先ほど、この危害行為の内容について同僚の委員がお尋ねをして、理解をさせていただいておりますが、我が国の海域全体の安全保障を、例えばシーレーンの防御というようなことから考えると、どのような考え方でそれに対処をしておられるのか。その辺について、内閣官房の方からお考えを聞かせていただきたいと思います。

堀内政府参考人 お答えをいたします。

 四面を海に囲まれ、資源の大部分を海外に依存する我が国といたしましては、国及び国民の平和と安全を維持するため、シーレーンの防御、すなわち海外と我が国とを結ぶ海上交通の安全を確保することは、死活的に重要な問題であるというふうに考えております。

 このため、我が国といたしましては、我が国に対する武力攻撃が発生した場合において、我が国周辺海域における海上交通の安全を確保できるよう、適切な海上防衛力を整備することはもとより、外交努力等も含めた総合的な対応に努めているところでございます。

 いずれにいたしましても、政府としては、国及び国民の生命財産に重大な影響を与えるさまざまな事態に迅速かつ的確に対処できるよう平素から取り組んでいるところでありまして、こうした観点から、海上交通の安全の確保にも万全を期してまいりたいというふうに考えております。

若井委員 今のお答えの中で、それとの関連でこのSOLAS条約を読むとすると、どこのところが接点になり、どこが整合をしているのか、その辺についてのお考えをお聞かせいただければと思います。

矢部政府参考人 お答えを申し上げます。

 必ずしも正確な御答弁になっているかどうかわかりませんけれども、いずれにしましても、海を通じて日本に入ってくる、危害行為といいますかテロ、テロリスト等につきましては、まず、船舶について保安措置を実施させ、そして、港におきます保安措置と連携をとってこれを防止するというのがこの条約の考え方でございます。

 したがって、この条約は、日本におきます水際対策に対して一定の効果を発揮するというふうに理解をしております。

若井委員 どうもありがとうございます。

 それでは、ちょっと視点を変えて御質問を申し上げたいと思うんです。

 私たちの日本という国は大変に長い海岸線を持っており、この海岸線をすべて均等に防衛する、あるいはその安全保障を図っていくということは、なかなか現実的には難しい問題だというふうに思うわけですが、この非常に広い、長い海岸線、これを国際テロから守るためにはどんな方策が考えられるのか。海上保安庁あるいは防衛庁、海上における適切な警備を実施するというこの取り組み、その現状や今後のあり方についての考え方を教えていただきたい。お互いに、相互の協力という点も大変重要だと思いますけれども、その辺についてはいかがでしょうか。

    〔橘委員長代理退席、委員長着席〕

深谷政府参考人 御説明申し上げます。

 先生御指摘のとおり、我が国は四方を海に囲まれ、かつ、大変長い海岸線を持っております。アメリカに比べましても、海岸線だけ比べますと約一・七倍ぐらいの長さがあると言われておりますけれども、そうした海岸線を抱える我が国におきますところの海上における治安の維持、これは、私どもも、当然のことながら、大変大事なことであると深く認識をしております。

 海上における治安の維持、これにつきましては、第一義的には海上保安庁がきちっと対応をしていかなければならないものというふうに認識をしておりまして、当庁におきましては、日本の秩序あるいは安全、こういったものを害する外国からのいろいろな活動があり得るわけですが、こういうものに対しましては、日本の領海内における日本の主権の維持あるいは国民の安全の確保、こういうことのために領海警備も実施をいたしております。

 また、平成十三年の九月、アメリカにおきますいわゆる九・一一の米国同時多発テロが発生いたしましたが、海上保安庁におきましては、その発生以降、庁内に国際テロ警備本部というものを設置しておりまして、全庁的な体制でテロに取り組んでおります。当然、こういったことにつきましては、いろいろな意味での情報の収集が大事でございます。

 一方で、巡視船艇あるいは航空機、こういったものによります臨海部での例えば原子力発電所あるいはエネルギー関連施設、こういった我が国にとりましての重要施設につきましての警備、こういったことにつきましても遺漏のないよう取り組んでいる最中でございます。

 また、既にこの場でもお話が出ましたけれども、水際対策、これも大変大事だということで、内閣を中心に、既に五大港に港湾危機管理官あるいは港湾保安委員会というのが設置されております。当庁におきましても、港湾危機管理官、それぞれ五大港を担当しております保安部長がこの危機管理官に当たるというふうなことを含めて、積極的にこの仕組みに参加をいたしまして、関係省庁との連携を深めて、水際対策に万全を期したいというふうに考えておりますし、今申し上げた五大港以外にも、順次、港の危機管理担当官あるいは港湾保安委員会というものを置いていこうということにいたしておるところでございます。

 先生御指摘の関係省庁との連携、今申し上げたこと、あるいは、具体的に御指摘の防衛庁さん、こういったところとの協力関係、これも大変大事であるというふうに私ども認識しておりまして、これまでも不審船、工作船対策というものもありまして、情報の共有あるいは訓練等によって連携を図ってきておるところでございます。今後とも、防衛庁等も含めまして、関係機関との連携というものを一層強化して、海上における治安の維持に万全を期していきたいと考えておるところでございます。

西川政府参考人 防衛庁の方から、先生の御質問に対する御答弁を申し上げます。

 先ほど、海上保安庁長官の方から、海上におきます人命、財産の保護あるいは治安の維持等については、海上保安庁が第一義的に担当し、そして、海上保安庁によっては対処が不可能または著しく困難であるという場合に自衛隊が出る、こういう形の大きなスキームができておりますが、これを踏まえまして、当方で平生からやっております基本的な活動といいますのが警戒監視活動になっています。

 大きくカテゴリーに分けますと、一つは、海上自衛隊の哨戒機を使って、P3Cと申しますが、これを使って、現在、北海道の周辺海域、日本海、東シナ海、これをそれぞれ一日に一回の割合で、海上における船舶などの状況を警戒監視するために運用しております。

 それから、二つ目のカテゴリーとしては、主要海峡で、陸上自衛隊の沿岸監視隊あるいは海上自衛隊の警備所というものがございますが、ここで二十四時間体制で警戒監視活動を行っている。

 それから、三つ目といたしましては、特に主要海峡とされます対馬海峡とそれから宗谷海峡、これは冬の氷結期は除きますが、そうでないときには常時艦船を配置して、警戒監視をしているところでございます。

 それから、先生特に御指摘のテロ対策ということでございますが、この重要性も、我々は非常に政府の重大な責任であるということを念頭に置きまして、常時これは情勢に応じた改善を図る必要がある、そのための不断の検討が必要である、こういうことを念頭に置きまして、海上保安庁との間におきましても従来からいろいろな協議等を行ってきております。

 とりわけ、平成十一年の三月に発生いたしました能登半島沖での不審船事案、これを契機といたしまして、不審船事案あるいはテロが発生した場合の対応というものにおける連携の強化を図るという形で、いろいろな施策を打ってまいったところでございます。

 ちょっと具体的なものは、少し省略させていただきますが、例えば、通信訓練等は年間約二百回以上やっておりますし、あるいは射撃の訓練を過去にもやったこともございますし、連携した追跡訓練とか、こういうこともやっております。これは、実は、平成十一年に共同対処マニュアルというものをつくりましたので、こういうもの等をベースにして行っているというところでございます。

 それから、もう一点、実際の場面におきまして、非常に、反省、教訓から得た点で、現在対応しておりますものとしましては、十三年の十二月に発生しました九州南西海域で起きました不審船事案、いわゆる船が爆破して沈んだものでございますが、これにつきまして、政府の検証結果を踏まえまして、いわゆる対処態勢を早期につくるという形で、不確実であってもいいから、早い段階で、とにかく防衛庁、それから海上保安庁、内閣官房の間で情報の共有を図る。その上で、それが工作船の可能性が強いという場合にありましては、これは政府の方針といたしまして、早い段階から実は海上自衛隊の船も出す。これはまだ海上警備行動とかに移る前にです。もし海上警備行動等に移った場合には速やかに移れるように、そういう連携の大きな枠組みを準備していただきまして、不測の事態に備えておるということでございます。

 この連携の重要さについては十二分に、我々も重要なことであると考えておりますので、今後とも海上保安庁等関係諸機関との連携のための具体的な施策を図っていきたい、このように考えております。

 以上でございます。

若井委員 今お話のありました警戒監視活動、これと今般のこの法案におきます国際航海船舶の入港に係る規制ですが、この間の具体的な接点、そうしたものをさらに詰めていただいて、運用が円滑に行われるように努力をさらに重ねていただきたいと御要望をさせていただきたいと思います。

 ちょっと問題をかえますけれども、先ほど海岸線が三万キロ以上あるこの日本というお話をちょっと申し上げました。国際テロを未然に防ぐという観点から考えますと、先ほど対象は百十二とおっしゃいましたか、港湾そのものを守ることは大事だと思うんですが、これが港湾に及ばないというために、例えば、東京湾であれば東京湾の湾口であるとか、伊勢湾であれば伊勢湾の湾口、あるいは瀬戸内海全域、いろいろあると思うんですけれども、そうした一種の重要な海域みたいな、そういう単位でこれを国際テロから守るという意味で、湾口における警備を適切に行うということが重要ではないかというふうに思いますけれども、その辺についてはいかがでしょうか。

深谷政府参考人 ただいま、湾口におきます点につきましての御指摘をいただきました。

 私どもといたしましても、湾口の重要性、こういうものは、航行安全の話も含めまして、御指摘のようなテロの問題を含めまして、大変重要なことであろうというふうに認識をしております。

 したがいまして、これまでも、巡視船あるいは航空機によります監視警戒、これにつきましては、そういうことを念頭に置きながら運用をしてまいったところでございます。

 今御審議いただいているこの法案におきましては、港湾に危険が及ぶことのないように、そういうことで、船が入港する前に必要な対処を講ずるという仕組みをつくらせていただこうということでございますが、そのために、具体的には、船に対して事前に入港通報をしてくださいというふうなことを求め、必要に応じては洋上で海上保安官が立入検査などを行いまして、危険のおそれがある船につきましては、入港禁止を含む強制措置、これができるという仕組みをつくらせていただきたいということで御審議をいただいているところでございます。

 そういう基本的な考え方の中でも、御指摘の湾口の問題も私どもとしても認識をいたしておりまして、東京湾、伊勢湾あるいは瀬戸内海海域、こういったところは、港湾施設等がたくさん存在いたしますし、一方で、船が交通がふくそうしております。そうしたことから、この法案におきましても、そういうものにつきましてはこれを一つの港とみなして、船舶がこうした海域に入域する前に今申し上げたような措置がとれるようにというふうなことで考えさせていただいております。

 いずれにいたしましても、湾口における警備の重要性、こういったものを認識しながら、今後ともその運用、対応に努めてまいりたい、かように考えております。

若井委員 国際テロという観点から考えますと、先ほど百十二の港湾というお話がございましたが、最もテロの標的になりやすい港湾ですとか、あるいは、場合によってはこの百十二の港湾の中で最も守らなければいけない、非常に難しい選別になるかもしれませんけれども、実際のところは、この百十二の国際港湾すべてが等し並みにテロの対象になるというふうには現実的には考えにくいと私は思います。

 そういう意味で、これらの港湾であって、それを守る意味での重要度といいますか、そうしたものの高低があってしかるべきではないかというふうに思います。また、それに対して実施すべき保安措置についても軽重があってもよいのではないか。ある意味でいうと、めり張りのついた、そうした効果的な対策を講じるべきではないかというふうに考えるわけです。

 現在、既に平成十五年度補正予算はつくられておりますけれども、今後、このような観点から、事業のめり張りをつけるというような対策を考えられる余地はないのでしょうか、その辺についてお伺いをしたいと思います。

鬼頭政府参考人 お答えをいたします。

 先ほどもお答えをいたしましたが、今回のこの法律案では、港湾法上、千余ある港の中から、国際海上輸送ネットワークの拠点などとして国の利害に重大な関係を有する港湾として位置づけられている重要港湾を対象といたしまして、その重要港湾にあって、国際航海船舶が一定以上利用する港湾施設について保安措置を義務づけようというものでございます。

 今委員お話のありましたように、対象となる港湾施設のある港湾は百十二港今のところ見込んでございまして、これらの港湾施設に保安対策を義務づけることによって、国際海上ネットワークの信頼性、安全性についてはとりあえず確保できるというふうに思っておりまして、改正SOLAS条約の目的は達成できるだろうというふうには思ってございます。

 ただ、今委員の御指摘のありましたように、重要度に応じためり張りのついた効果的な対策をすべきではないかという御指摘でございますが、港湾における保安対策、当然、保安措置を着実に実施することが必要であることはもちろんでございますが、今年度の補正予算で対応させていただきます保安設備の整備に当たりましても、効果的な予算配分をいたしまして、それに基づいてきちっと整備をするということが極めて重要だろうというふうに私どもも認識をしてございます。

 したがいまして、それぞれの港における港湾施設につきまして、一律に同じ保安措置を義務づけるのではなくて、個別港湾ごとに、その利用状況や機能、例えば、国際的な海上コンテナターミナル、コンテナを取り扱う施設が多数ある港でありますとか、あるいは木材とか穀物とか、そういうばら貨物を扱うターミナルといいますか施設とは全く対応が違う部分もないわけではございませんので、そういった利用状況や機能などを十分調査いたしまして、その上で、保安の確保に必要な保安設備を個別具体に検討いたしまして、個々の施設に応じ、適切な保安設備の水準とすることによりまして、効果的な予算配分を行い、港湾における保安対策に万全を期してまいりたいというふうに思っております。

若井委員 重ねてお尋ねをいたしますけれども、この百十二の港湾施設については、既に事業費が想定をされております。今、一般的な御説明をいただきましたけれども、具体的にはどのような形でめり張りをつけ、どのような形で例えば対策に優劣をつけているのか、その辺について、もう少しお聞かせいただければありがたいのですけれども。

鬼頭政府参考人 先ほど御説明をいたしましたように、それぞれの施設ごとに利用状況、機能というものをある意味でカテゴリー化をいたしまして、それに応じてどんな保安措置をすべきかということをある程度私どもなりに考えまして、それを港湾管理者さんの方と御相談をいたしまして、それに対応した施設整備をしていただくというようなことで予算の配分をさせていただいております。

若井委員 今お聞きしたのは、今おっしゃられたカテゴリーの具体的な内容について教えていただければ、私たちとしても、それらの予算についてチェックをするというか、検討する材料になると思うんですけれども、そうした具体的な資料はおありでしょうか。今は無理だとしても、後ほどそうした資料があれば見せていただければと思います。

鬼頭政府参考人 今、手元にちょっと持ち合わせておりませんが、そこで取り扱われる貨物、あるいは背後圏の大きさでありますとか、あるいは国際航海船舶が利用をいたします頻度でありますとか、そういったものをベースにカテゴリー化をしているということでございます。

若井委員 それでは、その資料については後ほどいただければというふうにお願いを申し上げておきます。

 SOLAS条約の外側といいますか、周辺の環境についてお話をいろいろ賜りましたけれども、日本の海域の総合的な安全性、そうしたものを確保する上で、この条約が、そしてこの法案が有効のうちに機能するよう私としても祈りますと同時に、皆様のこれからのさらなる御努力をお願いしたいと思います。

 私の質問は以上で終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。

赤羽委員長 高木陽介君。

高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。

 本日は、国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律案ということで質問をさせていただきます。

 国際テロ組織の活動が活発化している中にありまして、国際的な協調に基づきまして、取り組みがおくれてきたこの国際海事分野、テロ防止対策ということは本当に必要なことであり、まさにタイミングとしてはいい時期であろう。さらに、SOLAS条約、七月一日に発効するということで、それに基づく今回の法律案でございます。

 そこで、今、日本の取り巻かれている状況、これを考えてみますと、どうしても北朝鮮問題というのを念頭に置かざるを得ないんだろう、そんなふうにも思います。

 特に六カ国協議、評価は分かれるところでございますが、拉致問題も解決していない、こういう状況下にありまして、特に北朝鮮との関係、外為法も改正をされまして、さらには、北朝鮮を念頭に置いたというか、特定船舶の入港禁止法案も与党の中で今論議が進められている、こういう状況の中にあります。

 まず、お伺いしたいのは、北朝鮮籍船、年間どれぐらい日本に来ているのか。その上で、今回の法案によって北朝鮮籍船はどのように取り扱われるのか。また、この法案によって入港を直ちに禁止することはできないとは思うんですけれども、そこのところを矢部政策統括官にお伺いしたいと思います。

矢部政府参考人 お答えを申し上げます。

 我が国の港に入港する北朝鮮船籍の船舶の数でございますけれども、速報値ではございますが、平成十五年中に、港則法上のいわゆる特定港というものがございますが、ここに入港いたしました隻数は延べ九百九十一隻ということになっておりまして、一昨年の、平成十四年の千三百四十四隻に比べますと若干減少している状況にございます。

 次に、この法案によって北朝鮮の船舶がどのように取り扱われるのかという点でございますけれども、この法律は、船舶に起因してほかの船舶や港湾施設に対して危険を発生させるおそれがある場合に、入港禁止等の危険を防止するための措置をとるものでございまして、北朝鮮船籍であるということだけをもって入港禁止にすることはできないわけでございます。有効な条約証書を有している等条約の要件を満足している場合には、入港禁止はできないということでございます。

 一方、北朝鮮籍船を含めて、本邦の港へ入港しようとするいわゆる国際航海船舶に対しましては、先生御承知のとおり、この法律に基づきまして、事前に、船舶の保安に関する情報等を通報させまして、それに基づきまして一定の審査をし、必要があればさらに追加情報を求める、さらに必要があれば立入検査を行うといったことによりまして安全性の確認をすることになりますが、この立入検査を拒否したり、あるいは、立入検査を行った結果、不法に爆発物等の危険物が持ち込まれているとか、ほかの船や港湾施設に対して危険を発生させるような何らかの原因が発見されました場合などにおきましては、入港禁止等危険を防止するための措置をとることができることになっております。

高木(陽)委員 今、統括官からお話があったように、この法律だけで北朝鮮をどうのこうのという形はできない。ただ、その要件に適合した場合にはさまざまな形での対応ができるということでございますので、これは今、議員立法を目指して与党の方でやっておりますので、この部分はしっかりと私どもも取り組んでまいりたい、このようにも思います。

 その上で、我が国の港に入港する外国船舶、これを利用したテロ行為を未然に防止する。これらの外国船舶においては、平素からの保安措置、これが適確に実施されているかどうか。外国船舶に対する監督、いわゆるPSC、この重要性がますます増大してくると思います。

 条約の発効直後は、保安措置の実施に関するPSCを特に集中的に実施する必要があると思うんですけれども、本法案に基づきまして、PSCの実施については、国交省としてどのように考えているのか、お伺いしたいと思います。

鷲頭政府参考人 お答えいたします。

 国土交通省におきましては、従来より、船舶の安全確保あるいは海洋環境保護の観点から、外国船舶監督官による外国船舶の監督、いわゆるポートステートコントロールというものを積極的に実施しているところではございます。改正SOLAS条約及び本法律の施行後は、保安に関する設備、措置などにつきましても、国際条約に定める基準に適合しているか否かをポートステートコントロールにおいて確認することとしております。

 特に、条約発効直後におきましては、今先生御指摘されましたとおり、外国船舶において保安に関する設備、措置等が国際条約どおりに確実に実施されているか否かについて、重点を置いてポートステートコントロールを実施したいと考えております。

 また、これら保安に関する取り組みは、近隣諸国と協力して実施することによりましてさらに効果が期待されるということから、我が国を含むアジア太平洋地域の十八の国と地域が参加しておりますポートステートコントロールの国際的連携でございます東京MOUにおきまして、条約発効直後における保安に関するポートステートコントロールの重点実施を決定したところでございます。

 具体的には、ことしの二月にバヌアツで開催されましたポートステートコントロール委員会におきまして、一つは、四月一日から六月三十日までの間は、保安措置が講じられていない船舶に対して注意喚起を行うということ、それから二番目に、条約が発効する七月一日以降九月三十日までの間、保安に関するポートステートコントロールを重点的に実施するということが決められたわけでございまして、国土交通省といたしましては、積極的にこれらの取り組みを行うことによりまして、我が国の港に入港する外国船舶を利用したテロ行為の未然防止に万全を期していきたいと考えております。

高木(陽)委員 今、海事局長からPSCの取り組み方について御答弁いただきましたけれども、大体PSCが注目された、一般の方々がこのポートステートコントロールという言葉を知ったというのは、やはり万景峰号の入港のとき、連日報道をされる中で注目を受けたと思うんですね。あのときに運輸局、北陸でしたね、運輸局のメンバー、または海上保安庁等々人を出して、余り人がいないというか足りないということで、全国各地から応援部隊が入った。

 大臣、これは質問じゃないんですけれども、そういったことを考えると、やはり人は本当に必要だろう。今行革の流れで、人をいつも減らしていくという流れですけれども、やはり必要なところには必要な人を配置していかなければ、本当に法案が成立をして、いよいよそれを具体的にテロ対策ということも含めてやっていこうという考え方の中で、仏つくって魂入れずじゃないですけれども、そういう部分でも、これは財務省との話し合いともなると思うんですけれども、しっかりと人員の件も今後御検討いただきたいと思います。これは答弁は結構でございます。

 続きまして、これは内閣官房にお伺いしたいと思うんですけれども、今回の法案で、条約に従って国際航海船舶の所有者が講ずべき自己警備のレベルを国が指示することとなっています。

 これはアメリカの場合、交通分野に限らず、テロの危険性、セキュリティーレベルを政府が示して、国民に警戒を呼びかけ、対処を呼びかけている。五段階ですか、これは九・一一でさらに厳しくなった形ですけれども、今回の法律だけではなくて、これは国交省の問題だけではなくて、政府全体として、アメリカと同様に、テロのおそれの程度、これに応じまして国全体にわたる警戒及び対処について保安レベルを設定したらどうか。広く国民に示す仕組みを政府全体として設けたらどうか。

 これは、スペインでもテロが起きまして、国民の関心というのは結構テロに対してはかなり敏感になっている。そういった部分では、そういったレベルを提示して、逆に、情報がない中で警備が厳しくなっても警戒感が高まらないというのもありますので、その辺のところをどのようにお考えか、内閣官房にお伺いしたいと思います。

堀内政府参考人 お答えをいたします。

 政府といたしましては、関係省庁が各種のテロ対策を実施するに当たりまして、必要に応じ会議を開催するなどして情勢に対する認識の共有等を図っております。そして、関係省庁の措置が斉一的かつ効果的に行われるよう努めているところでございます。

 国内の警戒レベルを段階分けする制度につきましては、米国、フランス等に存在するものと承知をしているところでありまして、我が国といたしましても、このような諸外国の制度に関する研究を行いながら、関係省庁が一体となって斉一的かつ効果的なテロ対策を講じることができるように努めてまいりたいというふうに考えております。

 また、政府といたしましては、引き続きテロ関連情報の収集、分析に努め、国民の安全を確保するために、可能な限り必要な情報の提供にも努めてまいりたいというふうに考えております。

高木(陽)委員 必要な情報、これはなかなか手のうちをさらしてしまうということで難しい問題かもしれませんけれども、やはり情報を公開することによって相手の方も、テロリストを含めて、ああ、こんなに警戒されているのかと、こういう部分で抑止力にもなると思うんですね。そういった部分では、レベルを設定してというところまでいかないまでも、その点をしっかりと御検討いただきたいと思います。

 続きまして、国際条約に基づきまして、今回海事分野の保安対策について、国際的な協調のもと、適宜今後も見直しを行う必要があると思います。

 今回のですべて完璧だとは思いませんし、そのようなときにおきまして、日本の果たす役割、四方が海に囲まれているこの日本でございますから、海事分野においてはある意味ではリーダーシップを発揮していかなければいけないのかな、そのようにも思います。

 そういった意味で、我が国が積極的に議論を進めていく、こういうことを期待しますけれども、それについてどのようにお考えか、お伺いしたいと思います。

矢部政府参考人 お答えを申し上げます。

 今回の船舶所有者等によります自己警備の義務づけというこの条約の内容は、国際海上輸送分野の保安対策として国際協調に基づいて実施するというこれまでにない新しい取り組みでございます。したがいまして、まず、関係各国はこの条約の内容を適正に実施するということに全力を挙げるべきだと考えておりますし、また、我が国もそのようにしていきたいと思っております。

 今後の見直しにつきましては、何分今回のこの対策、新しいものでございますから、今後各国はこれを実施してまいりますけれども、その各国の実施の状況、それから国際的なテロをめぐる状況の変化というものもあると思いますし、あるいは技術革新もどんどん進んでおりますので、通信設備等新しい機器も出てくることもございます。そういったもろもろの環境条件の変化等を踏まえまして、今後とも、この海事分野の保安対策の強化も含めまして、必要な改善策についてはIMOの場で国際的に議論が進められていくものというふうに認識をしております。

 このIMOにおきまして、いろいろな海事分野の対策について何十年にもわたりましていろいろな議論がなされ、いろいろな条約が作成されております。我が国は、これまでも造船、海運の主要国といたしまして、このような議論のリーダーシップをとってきたわけでございますけれども、この新しい保安の分野につきましては、これまでのところはアメリカがどちらかというとリーダーシップを発揮しておりますが、我が国もこの分野におきましてもこれからいろいろ知見を蓄えまして、できる限りのリーダーシップを発揮して、国際的な検討の場に臨んでまいりたい、このように考えております。

高木(陽)委員 今統括官の方からもお話がございましたけれども、日本がこれからリーダーシップを発揮していくことによって、逆に日本のテロに対する保安対策というのも進むでしょうし、まさに国際テロという場合には、日本だけが安全だ、そういうのはあり得ないわけで、そういう部分では、米国というのはかなり敏感なんだろうな、このようにも思いますし、今後国交省を中心に政府を挙げてそれに取り組んでいただきたいと御要望を申し上げたいと思います。

 時間もやってまいりましたので、最後の質問として、今回の制度の特色としては、船舶と港湾施設について同様の保安措置を義務づけ、総合的にテロ防止の効果を上げようとしています。

 国交省の組織としては、海事局、港湾局、海上保安庁、ここの三部局が関係をしていると思いますけれども、このため、省内の横の連携ですね、今までも連携をしっかりととってきたとは思うんですけれども、まさにここの情報が速やかにお互いに交換できる、そういったことだけではなくて、あらゆる対策についてしっかりと連携をとっていくことが必要だと思います。

 そうしないと、やはりそのすき間から本当に水が漏れてくる、このようにも考えますけれども、この法律が成立した後、いよいよ執行の段階になりますけれども、そういった連携のことを含めまして、石原国土交通大臣、どのようにお考えか、お聞かせ願いたいと思います。

石原国務大臣 高木委員は、この国土交通省の中の海事局、港湾局、海上保安庁という三つの部局の連携のあるべき姿について御言及されておりますが、同僚議員の質問の中には、前段は他省庁との話もあって、まさに一つだけの組織としてはうまく運用面がいかないという趣旨では、同じ視点をついているんだと思っております。

 もう私が申すまでもありませんけれども、海事局と港湾局が協力して、船舶や港湾の先ほど来御議論のある保安レベルを設定する。この保安レベルを設定する情報はやはり警察関係からいただく。さらに、船舶や港湾施設が講ずべき保安措置を定める際には、海上保安庁の持っている知識というものを有効活用していくことも言うまでもないと思っておりますし、海上保安庁が収集いたしました船舶保安情報を生かして海事局が先ほど来委員が御指摘されておりますPSCの実施をするなど、関係部局のありようは離れることが絶対できないものだと思っております。

 このような海事分野を横断的に所掌いたします国土交通省の特色をうまく生かしていって、一体となり、さらに関係する省庁との連絡も密にして、このSOLAS条約の適正なる運用というものに心がけていきたい、こんなふうに考えております。

高木(陽)委員 今大臣の方から、横の連携、またさらには省庁を超えた連携のお話も出ました。

 こういったテロに対しての保安対策ということで、今回の法律、一歩前進だと思うんです。しかし、先ほどから何度か申し上げているように、一歩前進ですけれども、では、これで全部大丈夫なのかというと、そうでもないわけですから、この点については、本当に日々検討を重ねながら、さらなる追加措置というか、国民の安全を守る、そういう視点からさらなる検討をお願い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

赤羽委員長 穀田恵二君。

穀田委員 私は、国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律、この条文に則して若干まず最初にお聞きしたいと思います。

 この法案は、〇一年九月のアメリカでの同時多発テロを受けて、海上での保安対策の強化を目指したSOLAS条約の法制化だ、端的に言ってそういうことだと思うんです。海上でのテロ対策全般を対象にした法案ではないと思いますが、本法案は、どのような保安対策、テロ対策を目的にしているのか、まず最初にお聞きしたいと思います。

矢部政府参考人 お答えを申し上げます。

 二つございまして、一つは、直接船舶あるいは港湾施設に対して危害を与える危害行為でございます。したがいまして、これは、爆発物を持ち込んで直接船舶を爆破する、あるいは港湾施設に危害を与える、こういったものが想定されると思います。

 二つ目は、直接船舶あるいは港湾施設に危害は加えませんけれども、間接的にテロ行為につながるようなものを危害行為として考えておりまして、これは、船舶にテロリストが侵入するとか、あるいは武器弾薬が不法に積み込まれる、こういった行為を想定しております。

穀田委員 今、最初に船舶と港湾という話がありましたけれども、この法案によって船舶と港湾施設について保安対策がこれまでとどのように変わるのか、これも端的でいいです。

矢部政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、船舶につきましては、先ほど来議論になっております海上保安庁に通報いたします船舶警報装置の設置が義務づけられます。それから、保安の責任者というものをあらかじめ選任をしていくということが義務づけられますし、また、船上で講ずべき保安措置につきまして、あらかじめ計画をつくってこれを実施するということが義務づけられます。

 港湾施設につきましてもほぼ同様でございますけれども、設備につきましては、港湾施設の保安を確保するためのフェンスあるいは照明、監視装置といった設備の義務づけがございまして、あと、保安計画をつくり実施するということと責任者を選任しておくということは、船と同じでございます。

穀田委員 今、フェンス等いろいろな港湾でいうと施設をつくるわけですが、問題は、例えば港湾の保安体制に関して、SOLAS条約に基づく海事分野の保安強化は当然世界共通でなければならないと思うんですね、それによってチェックをお互いにするわけですから。各国のそういう世界的スタンダードといいますか、基準といいますか、どうなっているのか。

 そして、その際、日本と外国の港では同じものだと言えるのかどうか。特に日本に向けて出港してきた、相手国、当然その港を出てきますよね。その出てきたときに、世界的基準を守っているという保証はあるのかどうか、それをどうやって担保するのか。

 そういう点が、日本の港湾をこういうふうに改善し、対策を打つということはわかるんですが、それがSOLAS条約に基づいて世界的にはどうなっていくのかというあたりについて、今言った点をお答えいただければと思います。

矢部政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいまの御質問は、世界の港湾施設につきまして、基準が完全に統一されないのではないかという御質問だったと思いますけれども、この条約は、先ほど申しましたように、保安対策を講ずる上での基本的な枠組みを決めておりまして、その枠組みに基づいて、かつ、具体的に実施すべき保安措置の内容も、できる範囲きめ細かく、条約に添付しております強制コードに記載をされております。

 各レベルに応じてどういう対策をとるかということがある程度細かく定められておりまして、その範囲で国際的な基準の統一というものが図られるわけでございまして、世界のそれぞれの港がどのようなレベルで対策をとっているかということにつきましては、それぞれの港湾の保安評価というものを行って、要するに危険の評価を行いまして、それに基づいて対策をとるということでございますから、必ずしも外から見た場合に、物理的にといいますか、全く同じことをやるということにはならないわけでございますが、各港湾のある国が責任を持って保安対策が十分にとられているかどうかということを評価して国が承認をするということになっております。

 そして、この承認をされた港につきましては、国際海事機関、IMOの場に、どの港が国としてきちっと評価をしたかということが通報されまして、そのIMOを通じて世界の各国にすべての情報が行き渡ることになりますから、日本に入ってくる船がどの港を経由してきたかということがわかれば、安全な港に寄ってきたのか、あるいは安全でない港も経由してきているのかということがわかります。

 したがいまして、その入港に際しましては、そういった前の寄港地に関する情報をあらかじめ保安情報として入手いたしまして、まず判断をし、必要があればさらなる質問や立入検査を行って、入港規制をして、日本に入ってくる船舶についての保安面からの安全性をチェックする、こういうことになるわけでございます。

穀田委員 最後の方はいいんですよ。そうじゃなくて、前の方だけで、後ろは全然、ちょっと違う問題なんですよね、それは質問していないんですけれども。

 そこで、法案の第四章にある国際航海船舶の入港に係る規制について聞きたいと思うんです。

 現行の海上保安庁法には、すべての船舶を対象にした同趣旨の条文があります。例えば海上保安庁法の第十七条と十八条では、所管する法令の励行や犯罪の予防、海上安全の確保のために必要があるときには、立入検査を行うことができる。また、人命への危害などの犯罪や爆発などの危険な事態の発生が認められる場合には、停船や出港停止などさまざまな強制措置をとることができるようになっています。

 本法案による入港に係る規制は、現行法に比べて何がどう変わるのか、この点は大事だと思うので、明らかにしていただきたいと思います。

深谷政府参考人 御説明を申し上げます。

 今先生御指摘のように、海上保安庁法では、一般的に、海上保安官が不審な船舶を発見した場合、そういったような場合には、今御指摘の同法十七条により船舶に立入検査を行いまして、犯罪が行われることが明らかというふうなことが認められるような場合、もうちょっと具体的に申し上げますと、海上保安庁法十八条では、海上における犯罪がまさに行われようとするのを認めた場合、あるいは人の生命ですとか身体あるいは財産、こういったことに危険あるいは損害が及ぶおそれがあって、それが急を要する、こういうふうなときに、これを防止するために同条の規定に基づいて船舶に航路の変更をさせるなどの措置がとれるというふうになってございます。

 一方で、今先生御指摘の第四章でございますけれども、ここにおきます措置は、SOLAS条約の改正を受けまして、外国から我が国の港に入港しようとする船舶を網羅的に審査し、危険な船舶が我が国に入港することを防止する仕組みを設けようというものでございます。

 そのため、具体的には、入港船舶による事前入港通報制度、これを新たに設けまして、例えば保安措置を適確に講じていないために危険を生じさせるおそれがあるかどうか、この有無を確認するための立入検査権限といったものを第四章に規定しておりまして、したがいまして、立入検査等を忌避した船舶につきましては、入港も禁止ができるというふうなこと。また、危険のおそれが認められるなど一定の場合につきましては、船舶に対する入港禁止等の強制措置をとることができることとされているような差がございます。

穀田委員 いろいろありましたけれども、要するに一連のプロセスが入ってきたということなんですよね、それをちょっと言ってほしかったんですけれども。

 次に、二つ目の大きな問題として、この埠頭施設での保安施設の整備費について、負担問題について一言だけ、一つだけ質問したいと思うんです。

 これは結構巨額な費用がかかるんですよね。それで、今年度補正予算では事業費が四百十五億円、そのうち国費が二百三十二億円となっています。ただ、昨年の夏ごろは総額一千億円という金額もいろいろ取りざたされていました。これは、実際やるのは六十八の港なんですけれども、特に私、聞きますと、県とか市でやっている場合はいいんですけれども、単独で市でやる場合はとても大変だということで、例えば小樽では、SOLAS関連で小樽港の保安施設設備で実質的に一億八千万の負担が生まれる。あわせて、維持費等のランニングコストなどで一億円近くかかるんじゃないかと心配されている模様で、議会でも議論になっています。

 小樽の港は小樽市だけが管理者で、すべて小樽の負担になるわけですよね。それで、そもそもこの小樽市は、国の地方交付税の削減でこれ以上切り詰められない事態に追い込まれて、問題になっています。その中で出費がふえるのというのは、実は北海道の意見書がありますように、突然これが出てきたという問題を指摘していまして、それは、意見書があることは当局も御存じだと思うんですが、非常に苦悩している。

 だから、もともと国の全額負担で、テロ対策ですから、ある意味では全額でやってくれるんだろうと思っていた節もあるわけです。したがって、こういう実情を十分に考えて、こうした小さい自治体に対しては特別の財源手当てを含めた措置を考えるべきではないかと思うんですが、その点、いかがでしょうか。

鬼頭政府参考人 港湾施設の保安設備の設置につきましては、今委員からお話のありましたように、今年度の補正予算において手当てをさせていただきました。その手当てに対して、当然港湾管理者の負担分も出てまいりますが、それにつきましては後ほど地方交付税で対応するようなことになってございますし、さらに、維持、運営のコストにつきましても十六年度から普通交付税の基準財政需要額に算入をするというような形で、我々としてはできる限りの財源措置を講じたつもりでございます。

穀田委員 それは、確かにそういうことを言っているんですけれども、補正予算で措置するという後にでも、実は北海道の道議会は、やはりきちんとしたことをやってほしいとわざわざ言っているんですよね。

 あわせて、私は、今問題になっている小樽の点について最後に一言だけ言わせていただこうと思うんですけれども、小樽港というのは市の有力な観光資源であり、市民の財産です。地元にお聞きしますと、第三埠頭が対象となると言われています。

 ここの第三埠頭というのは、大体ロシア船が八割ぐらい入ってくる。そして、近辺全体は都市計画の計画もあって、それに対する影響もどうなるかと考えているということもあるそうです。しかも、ここがフェンスで囲まれたり監視カメラで監視されることになれば、貴重な財産や資源の維持に支障を来すんじゃないかという心配も出ている模様です。したがって、そうならないような調和のとれた保安施設となるような工夫もこれは大事だと思うんですね。

 ですから、港々、それからそれぞれの地方自治体の財政やそれの負担の状況、こういったものを加味しながらやらないと本物にならぬと思うんですね。こういう点は、とりわけテロ対策ということで大事な問題ですから、なおかつ、そういうことも配慮してやることが私は必要じゃないかと思うんです。その点だけお聞きして、私の質問を終わります。

鬼頭政府参考人 先ほど御答弁をいたしました地方の負担分については、交付税の措置ではなくて、起債の措置が認められているということですので、おわびをして訂正させていただきたいというふうに思います。

 それと、今委員のお話のありました利用に障害が出るのではないかという御指摘につきましてでございますが、今回設置をいたしますフェンスにつきましては、港全体を囲うということではなくて、国際航海船舶が一定程度以上利用する埠頭において必要最小限の区域を限定してフェンスを設けるということでございます。

 したがいまして、今回、この法律におきまして義務づけることとしております保安対策につきまして、港湾の保安を確保するとともに、あわせて、当該港湾を安全に利用していただくという観点で必要最小限のものだというふうに私どもは考えておる次第でございます。

穀田委員 今お話ししたように、やはり実際の実情というのをよく考えてこれはやらないとだめだ。

 財政の方も、先ほど言おうと思ったんですけれども、みずから訂正されましたのでいいですけれども、現実はなかなか厳しいんですよね。

 だから、それなりの出費というのは、突然これは来ているわけですから、現実は。しかも、今お話があったけれども、小樽港の場合は第三埠頭なんですよ。現実、私はわかっているわけですから、そういう点もよく考慮してやっていただきたいということで、終わります。

赤羽委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

赤羽委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

赤羽委員長 次に、内閣提出、国の補助金等の整理及び合理化等に伴う国土利用計画法及び都市再生特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。国土交通大臣石原伸晃君。

    ―――――――――――――

 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う国土利用計画法及び都市再生特別措置法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

石原国務大臣 ただいま議題となりました国の補助金等の整理及び合理化等に伴う国土利用計画法及び都市再生特別措置法の一部を改正する法律案の提案理由につきまして御説明申し上げます。

 地方にできることは地方にとの原則のもと、国及び地方公共団体を通じた財政改革のための国の補助金等の整理及び合理化等を行い、地方の自由度や裁量を拡大するための三位一体の改革を推進する必要があります。

 また、稚内から石垣までを合い言葉に国を挙げて取り組んでいる全国都市再生を一層推進するため、民間活力が十分でない都市を含む全国の都市において、地域の実情に応じた都市の再生を効果的に進めていく必要があります。

 これらの必要性を踏まえ、国土利用計画法に基づく交付金制度を廃止するとともに、地域の実情を熟知した市町村のまちづくりに関する権限の拡充とあわせて市町村の自主性、裁量性の高い財政支援制度を創設する等の全国都市再生のための基本的な枠組みを構築しようとするものであります。

 このような趣旨から、このたびこの法律案を提案することとした次第であります。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、三位一体の改革に基づく法施行事務費の一般財源化の一環として土地利用基本計画の作成等に要する経費の財源に充てるための交付金制度を廃止するとともに、同じく三位一体の改革の趣旨に沿って地方の自主性、裁量性を大幅に拡大した都市の再生のための交付金制度を創設することとしております。

 第二に、市町村へまちづくりに関する権限をできる限り一体化するため、都道府県が決定することとされている都市計画を市町村が決定できることとするとともに、都道府県が行うこととされている国道または都道府県道に関する事業についても、市町村が行うことができることとしております。

 第三に、行政とNPO法人等の民間まちづくり主体との協働により都市の再生を推進するため、NPO法人等が実施する事業等を都市再生整備計画に位置づけ、支援することができることとしております。

 その他、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案を提案する理由であります。

 この法律案が速やかに成立いたしますよう、御審議をよろしくお願い申し上げます。

赤羽委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、来る十九日金曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る十九日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四分散会


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