衆議院

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第6号 平成16年3月19日(金曜日)

会議録本文へ
平成十六年三月十九日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 赤羽 一嘉君

   理事 今村 雅弘君 理事 衛藤征士郎君

   理事 橘 康太郎君 理事 望月 義夫君

   理事 大谷 信盛君 理事 奥村 展三君

   理事 玉置 一弥君 理事 高木 陽介君

      岩崎 忠夫君    宇野  治君

      江崎 鐵磨君    梶山 弘志君

      北川 知克君    河本 三郎君

      櫻田 義孝君    高木  毅君

      谷  公一君    谷本 龍哉君

      中馬 弘毅君    中野 正志君

      能勢 和子君    野田  毅君

      古屋 圭司君    保坂  武君

      増田 敏男君    松野 博一君

      村田 吉隆君    森田  一君

      渡辺 博道君    岩國 哲人君

      岡本 充功君    下条 みつ君

      中川  治君    長安  豊君

      伴野  豊君    古本伸一郎君

      松木 謙公君    松崎 哲久君

      松野 信夫君    三日月大造君

      室井 邦彦君    山岡 賢次君

      和田 隆志君    若井 康彦君

      佐藤 茂樹君    穀田 恵二君

      武田 良太君

    …………………………………

   国土交通大臣       石原 伸晃君

   国土交通副大臣      林  幹雄君

   国土交通大臣政務官    佐藤 茂樹君

   政府参考人

   (都市再生本部事務局次長)  和泉 洋人君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  瀧野 欣彌君

   政府参考人

   (国土交通省土地・水資源局長)  伊藤 鎭樹君

   政府参考人

   (国土交通省都市・地域整備局長)  竹歳  誠君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  佐藤 信秋君

   参考人

   (早稲田大学教授)    伊藤  滋君

   参考人

   (千葉大学客員教授)   原  昭夫君

   参考人

   (大分県臼杵市長)    後藤 國利君

   国土交通委員会専門員   飯田 祐弘君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十九日

 辞任         補欠選任

  河本 三郎君     北川 知克君

  島村 宜伸君     宇野  治君

  二階 俊博君     谷本 龍哉君

  岡本 充功君     松木 謙公君

同日

 辞任         補欠選任

  宇野  治君     谷  公一君

  北川 知克君     河本 三郎君

  谷本 龍哉君     二階 俊博君

  松木 謙公君     岡本 充功君

同日

 辞任         補欠選任

  谷  公一君     島村 宜伸君

    ―――――――――――――

三月十九日

 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第五四号)

 油濁損害賠償保障法の一部を改正する法律案(内閣提出第五五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う国土利用計画法及び都市再生特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第一一号)


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     ――――◇―――――

赤羽委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、国の補助金等の整理及び合理化等に伴う国土利用計画法及び都市再生特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省土地・水資源局長伊藤鎭樹君、都市・地域整備局長竹歳誠君、道路局長佐藤信秋君、都市再生本部事務局次長和泉洋人君及び総務省自治財政局長瀧野欣彌君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩崎忠夫君。

岩崎委員 おはようございます。自由民主党の岩崎忠夫でございます。

 平成十三年五月、内閣に都市再生本部が設置されて以来、稚内から石垣までを合い言葉に全国都市再生が進められてきておりますが、その中で地方都市再生にはどのように取り組んでこられたのか、まずお伺いをしたいと思います。

 言うまでもなく、地方都市には民間活力が十分ではありません。民間活力を導入しての都市再生の試みにはおのずから限界があるのが実情であります。すなわち、地方都市にありましては、現行法による民間投資を促進するような都市再生の枠組みでは十分でないのが実情なのであります。

 そこで、これまでの都市再生の取り組みの中で地方都市の再生を今後どのように進めていったらよいと考えるのか、林国土交通副大臣にお尋ねをしたいと思います。

林副大臣 都市再生の取り組みの中で地方都市の再生にどのように取り組むかということでございます。

 現在の都市再生特別措置法は、知ってのとおり、民間の都市開発事業のポテンシャルの高い大都市における都市再生の推進に対して、特に有効なものと考えております。

 一方、地方の中小都市には、中心市街地活性化などいろいろな問題を抱えておりますけれども、そういったものを地域の実情を熟知した市町村が創意工夫をして、責任を持って全国都市再生を進めていくことが必要であるというふうに思っておりまして、今後は、まちづくりに意欲的に取り組む市町村を支援していくことが重要だろうというふうに考えております。

岩崎委員 まさに副大臣の御答弁されたとおりでありまして、今回の改正法律はまさに地方都市再生のための改正法だ、このように積極的に受けとめて取り組んでいただくようお願い申し上げたいと思います。

 これまでの全国都市再生の取り組み、そして国と地方の三位一体改革の過程で、まちづくり交付金が生まれました。これまでにない、使い勝手のよい補助金であります。

 私は、このまちづくり交付金は、一九七四年ニクソン政権下の新連邦主義のもとで創設されましたコミュニティー・ディベロプメント・ブロックグラント、都市開発総合補助金にも比肩し得る総合補助金であると高く評価をいたしております。

 ちなみに、コミュニティー・ディベロプメント・ブロックグラントは、都市問題の解決はその特性に応じた各都市の自主的な判断を必要とするのであって、連邦が補助するに当たっての介入は最小限度とし、地方団体の自主性、裁量を一層拡大すべきであるという考え方に立った一括補助金であります。全米各都市で策定された都市開発計画に基づく計画事業に対し、補助金の交付は毎年度一定の算式により交付されるものであります。

 このまちづくり交付金は、国と地方の三位一体改革の過程で生まれたものでありますが、私は、まちづくり交付金は三位一体改革の最大のヒットではないかと考えております。

 私は、三位一体改革における国庫補助負担金が、ややもすれば単に地方の自由度を拡大すればよいと受け取られている向きがありますが、そうではなく、国と地方の役割分担及び責任の所在を明確にした上で、国、地方を通じた行財政の効率化が図られるような改革として行われるべきであると考えております。

 そうした点から見ましても、このまちづくり交付金は国庫補助負担金改革の優等生ではないか。まちづくりという広いくくりで面的に一体として市町村に権限を一本化し、画一的な要件を定めることなく市町村の創意工夫を生かし、国、地方を通じた行財政の効率化に役立つ、無理、むだのない画期的な補助金に仕上がったと高く評価するものであります。

 そこで、林国土交通副大臣がまちづくり交付金の国庫補助負担金改革における意義についてどのように受けとめておられるのか、お伺いしたいと思います。

林副大臣 ただいま岩崎先生から、まちづくり交付金に対して大変御理解のある、そして力強い御意見をいただきまして、ありがたく存じております。

 国庫補助負担金改革における考え方はということでございますけれども、現在、政府としては、地方でできることは地方でを基本に国庫補助負担金の改革を進めているところでございます。公共事業関係の国庫補助金につきましては、これは単に廃止、縮減ということだけではなくて、地方公共団体の自主性、裁量性を高めることが大事だし、国として取り組むべき課題については、機動的、重点的に財政支援することが必要と考えているところでございます。

 まちづくり交付金は、地方の自主性、裁量性を大幅に向上させるとともに、手続を簡素化して、計画の一括採択あるいは事後評価を重視するなど、いわゆるNPM、ニュー・パブリック・マネジメントを導入するなど、地方にとって使い勝手のよい制度としておりまして、国庫補助負担金改革の趣旨に沿ったものであると考えております。

岩崎委員 どうもありがとうございました。

 これから、国庫補助負担金について、マイナス思考でなく、これを積極的に、前向きに取り上げるような、そうした改革を今後とも進めていただきたい、お願いをしたいと思います。

 次に、まちづくり交付金の国土政策上の意義についてお尋ねをしたいと思います。

 近年、国土計画なり社会資本整備の指導理念が、国土の均衡ある発展から、特色のある、個性ある地域の発展に移ってきているようであります。

 私は、まちづくり交付金が個性ある地域の発展の理念を象徴するような補助金となるのではないかと期待をいたしているのであります。とりわけ、まちづくり交付金の使途は、計画に位置づけられれば、福祉、文化、産業、商業施設など、どのような施設にどのように充てても自由だとのことであります。

 そこで、このまちづくり交付金による地域特性を生かした個性あるまちづくり、多様性のある地域の形成はどのように進められるのか、お伺いをしたいと思います。

林副大臣 現在、全国の市町村は、例えば中心市街地の再生、駅周辺の拠点整備、歴史的な町並み、水辺の再生、観光の振興等々さまざまな課題を抱えておるわけでありまして、それぞれの地域の歴史や文化などを生かしてまちづくりを進めていくためには、先生が提案しているように、ハード整備以外の施策や行政以外の方々との連携を含めた総合的な取り組みが必要となります。

 そこで、まちづくり交付金は、ソフト施策も対象とするとともに、NPOなどの実施する事業や市町村からの提案に基づく事業も対象としているところでございまして、まちづくりの目標を盛り込んだ総合的な計画である都市再生整備計画の実現を図るための財政支援措置でありまして、地域特性を生かした個性あるまちづくりの実現に極めて有効的なものであると考えております。

岩崎委員 ただいまお答え賜りましたように、各都市、地域の多様な取り組みが、多様な個性のある活力のある地域をつくっていくことにつながるよう、取り組みをよろしくお願い申し上げたいと思います。

 去る二月二十七日、内閣に置かれました地域再生本部が、地域再生推進のためのプログラムを決定いたしました。

 その中で、地域主導による各種施策の一元的な推進を図るため、関係府省の支援策の連携、集中を図ることとし、まちづくり交付金の積極的な活用を図ることが提案されました。

 言うまでもなく、地域再生には、地域産業の再生、活性化を図り、地域雇用を確保することが不可欠であります。とりわけ、地方都市が元気でなければ地方は元気になりません。地方の都市を元気にすることが日本を元気にし、国民の気持ちを明るくすることにつながるわけであります。その意味でも、都市の顔であります中心市街地の活性化と都市再生を図ることが地域再生の中でもとりわけ大事なことであります。

 地域再生を国策として進めるに当たって、都市再生とまちづくり交付金をどのように考え、位置づけようとされておられるのか、林国土交通副大臣にお伺いをしたいと思います。

林副大臣 地域再生は、地域がみずから考え、行動する、国はこれを支援するということを基本として、政府一丸となって推進しているところでございます。

 お話のように、去る二月二十七日に、地域再生本部によりまして、地域再生推進のためのプログラムが決定されました。地域主導による資源の有効活用策として、まちづくりに関する市町村の権限の一本化、そしてまちづくり交付金の創設がこの中に位置づけられたところでございます。

 特に、まちづくり交付金は、地域の自主性、裁量性を高めた全く新たな財政支援措置でありまして、まちづくりに意欲的に取り組む市町村における地域再生にとって大きな役割を果たすものというふうに考えているところでございます。

岩崎委員 どうもありがとうございました。

 改正法律案では、市町村は都市再生整備計画を作成できると一般的に規定され、とりわけ地域要件は付されておりません。しかし、都市再生整備計画はまちづくり交付金に連動し、まちづくり交付金は、公共公益施設の整備の状況その他の事項を基礎として国土交通省令で定めるところにより、交付金を交付することができると規定されております。

 まちづくり交付金には地方の市町村がこぞって期待をいたしておりますが、地方の市町村は、一体自分の町が手を挙げて大丈夫だろうかと思案をしていることもこれまた事実であります。

 そこでお伺いします。

 まちづくり交付金に連動した都市整備計画はどの市町村が作成しても構わないものなのか、あるいは、どういう地域で作成することを予定しておられるのか。そして、まちづくり交付金はどういう地域、どういう都市整備計画であったら採択され、交付されるのか。まちづくり交付金の交付算定基準ないし算式は具体的にどうなっているのか、お伺いをしたいと思います。

竹歳政府参考人 お答えいたします。

 まず、まちづくり交付金に関する交付の要件でございますが、この交付金につきましては、従来の補助金と全く異なっておりまして、日本全国、都市の規模に関係なく、稚内から石垣まで全国どの市町村でも、市町村の判断でその市町村の中に区域を設定して計画をつくっていただく、このような仕組みになっております。

 そして、この計画に基づきましてまちづくりの交付金の申請が国土交通省に出された場合には、国土交通省といたしましては、計画に定められた目標の内容でございますとか、それから計画に記載された事業が目標達成にどのような形で役立つのか、計画の実現可能性等を見させていただきまして、交付金を交付して支援すべきものかどうかを判断することになります。

 また、この交付金は、従来の補助金のように個別施設に関する詳細な審査を行いません。対象区域におきます都市基盤施設の整備状況等を勘案して大臣が定める基準に基づいて算定を行うものでございます。今後詳細は詰めてまいりますが、平均的に申し上げますと、全体事業の総額の四割程度が交付金として交付されるということになると思います。

岩崎委員 どうもありがとうございました。

 竹歳局長の答弁、全国の市町村、とりわけ地方の市町村は大いに期待をして、中身で勝負しよう、この意欲を買っていただきたい、こういう気持ちになるだろう、大いに自信をつけられたものと思います。

 本来、都市計画はまちづくりの基本であります。その都市のまちづくりの姿を描くこと、すなわち都市計画は、その都市自身の判断と責任で行われるのが筋であります。

 しかしながら、広域的、根幹的な都市施設や市街地開発事業に係る都市計画は、現在、都道府県の権限とされております。将来、市町村の行財政基盤が十分に拡充した折には、都市計画は市町村の責任で行うことになると思われますが、今回、都市計画の決定、国県道の事業実施権限など、まちづくりに関する権限をできる限り事業を実施しようとする市町村に一本化しようとした点は高く評価したいと思います。

 そこで、今回の権限移譲により、まちづくりは具体的にどういうように改善されるのか、そのメリットは何か、お伺いをしたいと思います。

 また、用途地域の変更に係る都市計画権限については都市計画決定の要請制度の創設にとどめておられますが、都市再生を進めるためには、そうした地域地区に関する都市計画権限も市町村に一本として移譲した方がまちづくりがうまくいく場合もあるのではないかと思われますが、あわせてお伺いしたいと思います。

竹歳政府参考人 お答えいたします。

 まちづくりにつきましては、基本的には身の回りの市町村、それから市町村を超える広域的な調整は都道府県が行う、このような形になっているわけでございます。

 今回、市町村へ一本化することによってどのようなメリットがあるのかというお尋ねでございます。

 具体的には、例えば、駅周辺や中心市街地におきまして、県道も含めてバリアフリー化をしたいとか電線の地中化を進めたい、このような場合に、今までですと県道の歩道拡幅にあわせてしかできないとか、そういうような限界があったと思いますが、今回一本化することによって、市町村のリーダーシップのもとで、このような歩道拡幅とか電線類の地中化事業をあわせて、一体的かつタイミングよくできるようになると考えております。

 二番目に、地域地区に関する都市計画の件でございますけれども、広域的な観点から調整が必要なものは都道府県が行いますが、現在でもその多くについては市町村が決定するということにされております。今回、先ほど御指摘がございましたように、要請制度を新たに設けまして、さらにこれを一歩進めたということでございます。

 また、この都道府県と市町村の用途地域等の権限配分につきましては、地方分権の改革推進会議におきましてフォローアップをするというふうなことになっておりまして、このような状況を見きわめながら今後とも検討してまいりたい、このように考えております。

岩崎委員 どうもありがとうございました。

 近年、NPOがまちづくりの分野でも大きな役割を果たしつつあります。まちづくりは住民、NPOとの協働作業として行われることが事業成果を上げる上で欠かせないとの認識が高まっております。

 今回、都市再生整備計画の内容に、必要に応じ市町村が経費の一部を負担して推進するNPOの事業を記載することができるとされておりますが、都市再生整備事業にNPOとの連携をどのように組み込もうとされておられるのか、お伺いをしたいと思います。

竹歳政府参考人 お答えいたします。

 現在、全国には約一万五千のNPOがございます。そして、その四割の約五千七百のNPOがまちづくりの推進を図る活動を行っておられまして、まちづくりに関する計画策定への参画でございますとか、行政への提案、町の情報発信など、熱心な活動を行っているNPOもたくさんございます。そういう意味で、まちづくりの担い手としてのNPOの役割は大変大きなものがあると思います。

 このため、今回、都市再生整備計画におきましては、NPOの同意を得て、NPOの実施するまちづくりのための事業等を位置づけ、市町村がこのNPOを財政的に支援するというときには、交付金でこれも対象にするというようなことにしているわけでございます。

 このように、計画策定段階からNPOに参加していただくことによって、後々、公共公益施設の維持管理とかボランティア活動とか、たくさんされているわけでございまして、こういう形で都市の再生が効果的に進むものと考えるわけでございます。

岩崎委員 今回のまちづくり交付金の中で、都市再生へのNPOの取り組みを積極的に取り組もうとされている点、高く評価したいと思います。

 このまちづくり交付金によります都市再生のすぐれた点は、計画における明確な目標設定であります。目標、指標などにより、目に見える明確な事業評価を可能とすることだろうと思われます。評価がわかりやすいことにより、事業評価も容易に行われ、むだのない公共事業、ニーズに合った必要な公共事業の施行がなされることが期待されます。

 国土交通省の成果重視の施策展開にも合致すると思いますが、事業評価の面から見ました制度運営のメリットについてお伺いをしたいと思います。

竹歳政府参考人 先生御指摘のとおり、まちづくりの目標をきっちり明確にするということが、その過程におきまして、目標達成に向けて関係者の意識も一体化が醸成されるという効果が期待できます。

 また、できるだけ目標を定量化することによりまして、この計画の進捗状況を的確に把握することが容易になりますし、事業の効率的な実施につながるものと期待しております。

 また、目標の達成状況を住民に対して極めてわかりやすい形で示すということが可能になりますので、住民自身によるチェック機能の発揮も期待でき、地域が自主的に取り組む、こういう事業の推進に役立つものと考えております。

岩崎委員 ありがとうございました。

 事業評価をきちんとすることにより、事業成果を大いに高めていただきたいと望みたいと思います。

 地方の市町村では、都市再生の必要は感じておりましても、どうしたら都市再生ができるのか、民間活力をどう使ったらよいのか、事業に結びつくような構想力、企画力が十分でないところが多いかと思われます。

 今回の法改正によりまして、独立行政法人都市再生機構は、市町村の委託に基づき、都市再生整備計画の作成に関する調査等を行うことができることとされましたことは、この意味で歓迎をしたいと思います。

 そこで、都市再生に関するコーディネート業務の支援を行うとのことでありますが、具体的にどういう業務をどの範囲までしてもらえるのか、お伺いをしたいと思います。

竹歳政府参考人 地方におきまして都市再生を進めるということになりますと、多数の関係者の方がいらっしゃって、複雑な利害調整が必要になることがございます。また、関係行政機関との調整とか、さまざまな面で市町村が事業を的確に実施していく、このためには、人材の面でいろいろ支援を必要とするという場合も多いと考えられます。

 このため、市町村への人材面の支援を目的として、実は、まちづくり専門家のデータベース等も、今、一生懸命充実、作成しようとしているところでございますが、さらに、都市再生機構によるコーディネート業務ということで、今回の法案の中で、地方都市を支援していくことができることとしているわけでございます。

 具体的には、計画の作成支援でございますとか、関係権利者の調整、関係行政機関との調整など、市町村が求めて、それに応じて、都市再生機構が縁の下の力持ちとして御支援する、このようになっておるわけでございます。

岩崎委員 地方都市が安心して都市再生に取り組めるよう、都市再生機構の積極的な支援を期待いたしたいと思います。

 これまでまちづくり交付金について種々の角度から質問をしてまいりましたが、今後、三位一体改革を進めるに際しては、まちづくり交付金の使用が積極的に活用されなければならないと考えております。

 まちづくり交付金の抜本的増額、拡大が必要だと思われますが、国庫補助負担金改革全体が四兆円だといたしますれば、まちづくり交付金は少なくとも今後は四倍増以上を期待してよいかと思いますが、その点、お伺いをしたいと思います。

 一方で、これまで日本経済の原動力となっておりました地方経済と中小企業は景気回復から取り残され、我が国経済は大都市と地方の二極分化現象が目立ってきております。

 最近の国土交通行政をとりましても、大都市への公共投資配分やプロジェクトが大変多く、地方が少ない状況にあります。そこに都市再生のためのまちづくり交付金が登場をいたしました。地方都市再生とまちづくり交付金にかける地方の熱い期待がいやが上にも高まっているゆえんであります。

 そこで、このまちづくり交付金は地方都市ないし地方に重点配分することが必要だと思われますが、林国土交通副大臣の決意のほどをお伺いしたいと思います。

林副大臣 まちづくり交付金につきまして大変な御理解をいただいておりまして、そういう意味では心から感謝を申し上げたいと存じます。

 これにつきましては、今回新たに創設するものでございまして、これから、言ってみればスタートするわけでございます。まずは、その着実な運用を図っていきたいというふうに考えておりますし、今後につきましては、このまちづくり交付金に対する市町村のニーズあるいは効果を確認しながら、必要な額を確保していきたいというふうに考えておるところでございます。

 また、このまちづくり交付金は意欲ある市町村の取り組みを支援するためのものでありまして、特に、民間活力が十分でない、先生御指摘の地方において積極的に活用されることを期待しておりまして、活用されれば、それに応じて、どんどんと、先生方の御理解をいただきながら額を確保していきたいというふうに考えておるところでございます。

岩崎委員 ありがとうございました。

 副大臣の温かい、強いお気持ち、ありがたくちょうだいしたいと思います。地方都市の再生はまさにこのまちづくり交付金にかかっている、こういうように地方は期待しておりますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 ありがとうございました。質問を終わります。

赤羽委員長 松野博一君。

松野(博)委員 自由民主党の松野博一でございます。

 引き続き、本法案の改正について質問させていただきたいと思いますが、岩崎委員の方から、改正点に関しては、もう総括的にポイントをついた質問をしていただきましたので、私は、私自身生活をしておりますのもいわゆる地方都市でございますし、地方都市の再生に対する個人的な思いをお話しさせていただきながら、疑問点をお聞きしていきたいというふうに思います。

 今回の改正のキャッチフレーズは、先ほど質問の中にありましたとおり、稚内から石垣までということでございまして、このキャッチフレーズからも、今回の改正が主に地方都市の再生に焦点を当てているということがうかがえます。

 私は、常々、今の日本というのは、東京とそれ以外と二つしかない、二つの地域しかないのではないかというふうに考えております。これは、東京が経済的、政治的、また情報発信の面でもスーパーパワーとなっていること、そして、地域間の特色、格差がなく、地域がどこに行っても同じだというような状況になっていることが原因であるかというふうに思います。

 東京は景気回復の兆しも見えますけれども、地方経済というのは相変わらず冷え切ったままであります。地方の活性化というのがまさに急務であり、そして、この都市再生というのが重要な手法であるというふうに認識をしております。

 地方の中でも、特に農村、漁村、山村、こういった地域は、もちろん生活インフラの整備でありますとか利便性の向上等の問題を抱えておりますけれども、しかし、長年の歴史の中で培ったアイデンティティーが残っている地域であります。

 一方で、地方都市は、全国どこの地方都市の駅前に行っても、同じ風景が並ぶ、画一的な、没個性的な町並みというふうになっております。

 地域の歴史や文化に根差した魅力的なまちづくりがなされていないところが現在の地方都市の経済的な落ち込みの一つの原因ではないかというふうに考えておるわけでありますけれども、今回、本法案の改正によりまして、地域資源を生かしたまちづくりを考えるに当たりまして、なぜこれまで地方都市が画一的でアイデンティティーを持たない町となってしまったのか、その原因を分析することもまた重要ではないかというふうに考えております。

 今までの法制度の問題、行政指導、またその時代時代の経済合理性等あると思いますけれども、この地方都市の現状に関して、こうなってしまった原因がどこにあるのか、どう分析をされているのかについてお考えをお聞きしたいというふうに思います。

    〔委員長退席、高木(陽)委員長代理着席〕

竹歳政府参考人 お答えいたします。

 なぜ日本の都市がこのように画一的、没個性的な町になってしまったのかということについてのお尋ねでございます。

 今先生も御指摘されましたように、この問題の原因を一つに特定するのは難しいことではないかと思います。ただ、我が国の都市は戦災を受けて焼け野原になった、そこから今の都市づくりが始まっていると思いますが、そういう中で、例えば、駅前広場がないのでバスが入れないとか、道路が混雑していてどうにもならない、また、あかずの踏切があるというようないろいろな都市に共通の課題があって、その共通の課題を一生懸命解決しようとしてきた、共通の課題ですので共通の手法がとられてきた、こういうことが一つ大きな原因ではないかと思います。

 また、急速な都市化の中で、次から次へと新しいものをつくらなくてはいけないというので、古いものを大事にしなかったという面もあると思いますし、やはり効率第一主義で、早く、安く、余裕なく問題を解決しなくちゃいけないというようなことで、短期間に同じような投資が行われてきたというのが、現在の駅前、例えばこのような画一的、没個性的な町になってきた大きな原因ではないかと思います。

 しかしながら、時代は大きく変わっているわけでございまして、例えば、国土交通省におきましては、昨年、美しい国づくり政策大綱というふうなことを定めました。ここでは例えば、景観というのは今後特別なものではないんだ、標準仕様として地域地域に合った個性あるまちづくりを進めなくてはいけないというようなことをうたっておりまして、今後このまちづくり交付金等も活用しながら、個性あるまちづくりに進んでいきたいと考えているわけでございます。

松野(博)委員 今回、市町村が都市再生整備計画を作成するに当たっては、国の都市再生基本方針にのっとってつくっていかなければいけないわけでありますけれども、今、過去の地方都市計画に対する反省のお話もございました。

 そのことも踏まえて考えますと、やはり、効果的な地方都市再生を進めるに当たっては、まさにこのまちづくりのバイブルともいうべき国の都市再生基本方針自体の改正も考えなければいけないというふうに考えておりますし、その改正の方向性も非常に重要な観点であるというふうに考えておりますけれども、改正に関してどのようなお考えをお持ちかについてお聞きをしたいというふうに思います。

和泉政府参考人 お答え申し上げます。

 都市再生基本方針に関する改定の御質問でございました。

 従来の都市再生基本方針には、都市再生の意義及び目標に関する事項、あるいは都市の再生のために政府が重点的に実施すべき施策に関する事項、あるいは都市再生緊急整備地域を指定する基準に関する事項、こういった事項等三点を定めておりました。

 今回の改正は、まさに委員御指摘のように、地域がみずから創意工夫を生かして取り組む都市活動を支援することを目的とした全国都市再生の今日までの成果を踏まえ、それをさらに促進するために行うものでございます。

 したがって、市町村が地域の個性を生かした全国都市再生を円滑に進めるための都市再生整備計画を定めるに当たっての基本的な事項として、まさに市町村の自主性の尊重、地域特性の反映、あるいは地域の資源を活用した創意工夫を最大限に発揮するなど、あるいは民間との協働、地域の積極的参加など、今回の措置の趣旨を明確化する事項を都市再生基本方針に新たに盛り込むことを見込んでおります。

 本法案が成立した暁には、これらの趣旨を踏まえながら、関係各方面と十分に協議し、内容を固めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

松野(博)委員 今回、まちづくり交付金に当たって、計画作成時に目標を明確に設定をして、計画終了時に達成状況に関する事後評価を求めて、それをチェックして公表していくということであります。公共事業の効果的な実施を考えたときに、現在の求められている方向性にのっとったものだというふうに考えております。可能な限りその指標を数値化していくことを求めるというふうにお聞きをしております。

 一方で、事業の採択に当たりまして、国が目標を評価したり事業の成果を指標化するということは、評価する側の視点の選択肢が狭かったり、センスが画一的であったりすると、先ほど指摘をさせていただきましたとおり、今と同じような現状、全国どこに行っても同じような町並みが並ぶという地方都市のありようを繰り返してしまう危険性があるのではないかというふうに考えております。

 まちづくりのコンセプトに、例えばスローライフですとか、自然との共生であるとか、ゆとりといったものを掲げる市町村があらわれてきております。都市再生事業の目標や事後の評価の指標が、例えば商店街の買い物客の増加であるとか、駅前通りの通行量がどれだけふえたかというような尺度で、今挙げたような新しい地域のまちづくりのニーズにこたえることはできません。

 そこで、事業の採択に当たって、事業目標に地域住民が選択をした多様な価値観を認めていくことも重要なことだと思いますし、事後の評価の指標に例えば住民の満足度といったような新たな尺度を織り込んでいくことが必要かと考えますけれども、お考えをお聞かせください。

竹歳政府参考人 先生御指摘のとおり、このまちづくり交付金というのは、市町村の自主性、創意工夫を最大限生かしていこうというものでございますから、その事前の評価、事後の評価においてもその精神がきっちり生かされなくてはいけません。したがいまして、評価する視点の選択肢をあらかじめ国が設定したり、その範囲を狭めることはしないで、地域によって選択された多様な価値観を認めていきたい、このように考えております。

 したがいまして、町の活性化を目標とした買い物客の増加というような指標だけではなく、先生御提案のようなスローライフの実現というような住民満足度とか、そういうものも組み合わせていく必要があると思います。このようなものはなかなか定量化しにくい問題ではございますけれども、しにくいからといって努力を怠るわけにはいかないわけでございまして、こういう点も含めて創意工夫が生かせるような仕組みにしてまいりたい、このように考えております。

松野(博)委員 ぜひ、今の多様化した価値観を認め得る指標をつくっていっていただきたいというふうに考えております。

 都市再生のためには、ハードの整備でなく、その整備したハードをどのように活用していくかというソフト施策が重要であるというのは、先ほど岩崎委員の質問の中にもありましたし、その質問の答えとして、まちづくり交付金はそのようなソフト施策にも活用できるというお答えをいただきまして、これは望まれるべき方向ではないかというふうに考えております。

 そこで、今回、まちづくり交付金の交付対象として、各種の社会実験等も一定の範囲で想定をしているというふうにお聞きをしております。現在、まちづくりに対する住民のニーズは、単なるハード政策、ハード施策だけでなく、各種の町のシステムや機能が含まれているんではないかというふうに考えています。例えば治安の悪化が問題点となっている地域の再生事業で、警備に対して一定のまちづくり交付金を充てるというようなことが可能であるのかどうかお聞かせをいただきたいというふうに思います。

竹歳政府参考人 まちづくり交付金は、ハードのみならず、ソフトも対象としているわけでございます。そこで、今御提案の例えば防犯のためのまちづくりのためにどのようなことができるかということでございます。

 経常的な警備員の費用というようなことはなかなかこの交付金の対象にはならないと思いますが、社会実験といたしまして、街灯の整備とか、町並みの見通しをよくして犯罪を防いでいこう、そういうものとあわせて、例えば警備員を配置する、そういうことについてどういうものが一番いいだろうかというようなことを実験的に行うということは、期間を限定してこの交付金の中でも対応していける、このように考えております。

松野(博)委員 最後の質問にしたいと思いますけれども、三位一体の行政改革という議論の中で、対立構造として国と地方という構図でとらえられていることが多いわけでありますけれども、地方といっても、県からの意見と市町村からの意見がこの三位一体改革に関して対立をしている点も多くあります。構図的には、国対県対市町村というとらえ方の方が実態に即しているのではないかというふうに考えます。

 今回の都市再生、まちづくりの観点から、市町村の裁量性、自主性を高めるには、国の関与だけでなく都道府県の関与についても考慮して制度を考える必要があるというふうに思います。

 例えば、都市計画の権限が市町村に移されても、都道府県の同意が前提であるわけでありまして、実際の現場の運用においては、力関係からいって都道府県の権限がかなり強く反映をされることが予想されますけれども、その辺のバランスを国土交通省はどう整理しているのか、お考えをお聞かせください。

竹歳政府参考人 今回の計画、また、まちづくり交付金につきましては、市町村主導でいこうということでございまして、国だけではなくて都道府県の関与もできるだけ小さい形になっております。

 ただ、現在の法律体系の中で都道府県が権限を持っているものについて、一定期間、市町村に移譲できるということにしておりますけれども、それについてはやはり一定の同意が必要だということでございますが、最小限の関与という仕組みとさせていただいているところでございます。

松野(博)委員 以上で質問を終わります。

高木(陽)委員長代理 岩國哲人君。

岩國委員 おはようございます。けさは、石原大臣の御出席をいただいて、この国土交通委員会における質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、この法案に関連いたしまして、石原大臣のイメージされている都市再生の理想都市は、どういうところを頭に置いておられるのか。

 これは決して個人的な趣味でお伺いしているのではなくて、こういう都市再生という大切な法案、また各方面から非常に期待の大きい法案について、その責任者である石原大臣自身が、この法案を提出しながら、どういう都市再生、あるいはどこをお手本としてイメージしておられるのか、その点についてまず最初にお伺いしたいと思います。

石原国務大臣 都市再生で、私、ぜひこういう町になってもらいたいというような町としては、やはり震災から十年たった神戸がございます。震災の直後、また整備が行われて町並みが新しく変わった途中、あるいは現在と見ておりますけれども、そんな中で、そこに暮らす方々のさまざまな生活の変化、そういうものに町が変化し、また暮らす人たちに対して町が新しい機能としてその人たちを包み込んでいく、こんなものを一つ、再生といいましても災害からの再生ではございますけれども、頭に思い描いております。

 それともう一つ、住宅街で気にしておりますところは、逗子市の小坪にあります住宅街ですけれども、そこは、電柱を地中化いたしまして区画を広くとっていて、塀はなるべく少なくしようとしているような試みもなされております。こんなようなものは、そのほか関西でもあるいは神奈川県でも二、三カ所見てまいりましたけれども、この住宅環境というものも、欧米と比べまして、どちらかというと密集、集積がなされている中にあって、さまざまな取り組みが市町村等々を中心に行われている。

 もう一つ、非常に関心を持ちましたところは、相続税等々で切り売りになって町が乱開発されていく中で、多分市の条例だと思いますけれども、これは総理のお地元でございますけれども、ある地域で、五十坪以下の宅地の造成というものを認めないというような試み。さらには鎌倉市等々で、景観を阻害するようなものに対して建設を抑制する、これは高さ制限もあるわけでございます。

 そのようなものをこの都市再生ということでは一つの参考に、あるいは目指すべきものとして考えておりますが、そのほかいろいろな地域、私もできる限り足を運ばせていただいて、見ておりまして、なるほどなというものは本当に数多くございますので、また議論の中で御紹介させていただければと思っております。

岩國委員 大臣がイメージしておられるごく一端をお述べいただいたと思いますけれども、確かに、この都市再生について、また、まちづくり交付金についての期待というのはございますけれども、神戸の例を挙げられましたけれども、ちょっとその辺は、今度の法案のイメージと関連がそうあるかなと実は率直に思っております。

 神戸のような例をと言われますと、災害があるまでこれは待たなきゃいけないということになりますし、また、この法案の趣旨説明が行われましたときには、稚内から石垣まで、こういうキャッチフレーズからいいますと、どちらかといえば、潜在的な能力を持ちながら、どうしても経済的な地盤が弱い、そういうところを底上げしてやろうという法案ではないかという期待が非常に多いものですから、その点は審議の過程で、また大臣が思いつかれるところ、特に、大臣も外国をいろいろ見ていらっしゃると思いますけれども、例えば、外国の都市の例を挙げるならば、こういうところをお手本にしたいなと国土交通大臣として思われるようなところはどういうところだったのか、都市づくりあるいは都市の再生ということについてどこをお手本にしたいと思っておられるのか、ぜひ、もう一度御説明いただきたいと思います。

石原国務大臣 欧米の都市の形成過程と日本の都市の形成過程は大きく生い立ちが違うんだと思います。

 そして、人口の集積とモータリゼーションの発展に伴って、例えば委員も御勤務されたことがありますロンドン等々を見ますと、大体一九六〇年代に環状道路等々の計画ができて、日本も大体東京オリンピックの前後に計画がなされて、環状道路の整備がロンドンは一〇〇%、その一方で我が東京は二三%。ロンドンなどはグリーンベルトで中心市街地を覆い尽くしている、覆い尽くしているというか取り囲んでいる。

 そういうものを見ますと、日本では、今東京二十三区で見ますと、緑化率というものが年々減少傾向にございますし、その一方で環状道路等々の整備もまだ成りませんし、防災の観点からもグリーンベルトというものが果たす役割というものは大変大きいわけですけれども、そういうものも、環状道路に建つ建物の防火性を高めることに対して助成措置を講じて代替しようとしている。そういう意味でいきますと、欧米の方が生活権ということを、生活権というのは生活する環境をそこの住民が享受するということでございますけれども、大変欧米の方が高いのではないか。

 その一方で、日本の地方都市を歩かせていただきますと、これはやはり東京に限った問題であるということも明らかになるわけであります。

 大阪等々では通勤時間が大体平均で三十分というようなこともありますし、郊外のベッドタウンから中心市街地への通勤という形態も、東京よりは、かなり差がございますし、先日お訪ねをさせていただいた宮崎県は、県庁、市役所に勤めている方の平均通勤時間は大体二十分とお聞きいたしましたし、三十代で平均七十坪の一戸建てを購入することが可能である。そういう中で、都市というものを、暮らす人たちが職住が近接する形で、またゆとりを持てる中で生活をされている。

 そういう中で、今回はこの法律案を提案させていただいたわけですけれども、これは、各地域地域で、先ほど神戸の例を出しましたけれども、神戸、町全体のグランドデザインというイメージではなくて、例えば、そこで被災をされた商店街が今立ち直ろうと努力をされていて、そんなときにこのまちづくり助成金制度も活用されて、人間と車が共生し、さらにはさまざまなスペースを住民の皆様方の創意工夫によっていかようにも使っていただける。そして、その後は、できる限り、すべてを定量的に評価するということは難しいと思うんですけれども、そういうものを使って事後評価をさせていただく。

 そういうことを積み重ねていくことで、まだまだこれだけでは欧米の都市というものと日本の都市の相違というものは埋まりはしませんけれども、暮らす方々にとっては、こういうツールを使っていただいて、自分たちの居住空間というものを、住空間あるいは生活空間、都市という中での広い意味での空間をよりエンジョイ、また、より快適なものにしていく、そういうものにこういう制度を役立てていただきたい、そんな思いでございます。

岩國委員 ありがとうございました。

 ヨーロッパ、日本、各地方の自治体が随分たくさん、戦後、まちづくりのお手本ということで出かけました。その報告書なんかを見ますと、非常に混乱もあるわけですね。これがまちづくりと言われて見てきた町と、あるいはこれがまちづくりと言われて書いてきた報告書。大ざっぱに言って、私の限られた経験ですけれども、ヨーロッパ型とアメリカ型とでは全然違うと思うんです。

 アメリカ型というのは、土地が広いから、どんどんどんどん町の外へ外へとショッピングセンターをつくり上げて、それが一つの町を形成し、人口もふやしている。一方、ヨーロッパ型というのは、町の中へ中へと、古くからある教会だとか町並みを大切にし、人口を中心部へ吸い寄せようという。これが、アメリカへ行って、ヨーロッパへ行って、アメリカもヨーロッパも一緒だと思い込んで、ごっちゃの報告書が各地方自治体でつくられている。だから、混乱しているところがあると思います。

 こういう機会に、日本型というのはあり得ると私は思いますけれども、ヨーロッパ型のよさもあるでしょうし、アメリカ型が必要な都市もあるでしょう。その辺は、国土交通省としても今まで各地方自治体を指導してこられたはずだと思いますけれども、いまだにアメリカ型をやっているのかヨーロッパ型をやっているのか、あるいはどっちも中途半端で、日本型というのはあいまい型なのか。

 要するに、そこの辺をこの機会に、まちづくりという以上は、大臣の見解あるいはそういった信念、お考えも大切ですけれども、国土交通省として意思統一を図っていただいて、まちづくりとは一体どういうものをまちづくりというのかということをもう一回私は勉強していただきたい。大変不遜な言い方ですけれども、そう感じた次第です。

 それから、緑が失われるということについての危機感を石原大臣は触れられました。

 確かに、全国各地に緑区だとか青葉区だとか、私の選挙区は青葉区、緑区で、私はその名前にほれてそこへ住むことにいたしました。選挙もやりました。今でも私はその名前を誇りに思っておりますけれども、全国各地の青葉とか緑だとかいう名前がついている町だとか区ほど、緑の減少率が一番大きいんです。横浜で一番緑が、この十年間でどんどんなくなっていったのは緑区というところです。もう緑区とは言えないぐらいのところまで来ているんですね。

 ですから、例えば、中野委員の、青葉で有名な青葉城のあるところ、仙台というところは非常に十年間よく頑張っておられるんです。だめなのは横浜の方で、緑区、青葉区、この辺がどんどん減少している。そのうち名前も変更しなきゃいけないんじゃないかという危機感を私は地元では言っておりますけれども、そういう緑だとか青葉という名前をつけたところほど減少率がきつかったということについても、今までの地方自治体の意識が少し薄かった。また、国土交通省としても、法案を出すときにはしょっちゅうしょっちゅう緑を大切に、まちづくりを、環境をとおっしゃっているけれども、実態としてそのようないい意味の指導ということは、私は欠けておったんじゃないか、そのようにさえ思います。

 この法案を契機にして、私は、そういったきめ細かい点についても、もうそろそろ緑区というお名前をおやめになってはどうでしょうかという助言ができるぐらいの指導理念というものを持っていただきたいと思います。

 また、個性的なまちづくりということがよく言われ、この法案もそれを目指しているわけですけれども、個性的なまちづくりというのは、決して博物館みたいな、生活感のない都市をあちこちにつくろうということではなくて、まさに日本の活力がそこにあらわれているような、生活感にみなぎったそういう都市をつくっていかなきゃならないと思うんです。

 暮らしを大切にする、先ほど大臣がおっしゃった、通勤距離がもっと、いい都市でありながら通勤時間もきっちりと短縮できるようなところ、住みやすいという点からです。

 私も市長をしておりましたけれども、私は医職住ということをキャッチフレーズにしておりました。出雲市もいつまでも出雲大社だけを売り物にしているわけにはいきませんから、医者の医、仕事の場を守る職業の職、それから住環境のいいところ。

 住民のニーズというものも時代によって変わってきますから、やはり高齢者都市では医療機関の充実ということも、これもある意味ではまちづくりの大切な根幹になるんじゃないかと思います。あるいは、職業の場、これは経済産業省の主管かもしれませんけれども、そういった企業誘致ということも、これからのまちづくりというときに、ただ眺めて格好がいいとか、観光客が来て、きれいな都市ですねと褒めていただく、そういうまちづくりではなくて、やはり高齢者時代にもふさわしい医療機関の充実、あるいは周辺市町村が医療機関を利用しやすいような交通インフラ、そういうことも私は、もっともっといろいろなこれからの実践段階では入れていただきたいということを要望しますけれども、ここで石原大臣に、国土交通省の考えるまちづくりと、それから総務省が今進めようとしている市町村合併との整合性についてお伺いしたいと思います。

 国土交通省は、個性的なまちづくりということを今打ち出そうとしています。一方、総務省は、個性を失えというわけではありませんけれども、市町村合併というのは明らかに個性化ではなくて、グローバル化といいますか、だんだん個性を失わせる方向にこれは行かざるを得ない。この辺の整合性はどうなのか。これは、時代が違っているならともかく、全く同じ時点に、右足で行こうとするのと左足で行こうとするのと、一見ちぐはぐな印象を受けるわけです。

 この点について大臣のお考えはどうか、お伺いしたいと思います。大臣のお考えを今お伺いしている。

    〔高木(陽)委員長代理退席、委員長着席〕

石原国務大臣 ただいまの視点は、私も常日ごろから、町村合併でいつも疑問に思っている点でございます。

 個別の都市の名前を出して御関係者の方がいらっしゃったら大変恐縮なんですが、先日合併いたしました静岡市、これは清水と静岡が一緒になって、私もよく訪ねさせていただくんですが、町が変わったという感覚は、外から行った者はないんですね。町村合併をすることによって今どういうことが起こっているかというと、やはり両方の過去の町の生い立ち、すなわち、天領であったところと、漁業で栄えたところによって、歴史を暮らす方々が各おのおの誇りに思っていらっしゃることによって、一つになったといっても、一つのものをここに新しく町をつくっていこうという意識はなかなか追いついてこない。

 特に議員の方々の対抗意識というものもまだまだある。そうしますと、では、議場を一体どこに持ってこようかですとか、あるいは役所のブランチをどこに持っていこうか等々で、両市役所の方々も非常に苦労される。それが、町村合併をして、七十万という政令指定都市に匹敵するような町ができて、町としての力はつくということなんですけれども、文化の二つ違うものを強制的に一つにして、強制的というか合意のもとに一つにしても、新しい形の町というものはなかなか一体感を持ってつくるのが難しい。

 あるいは、もう既に合併した福島県のあのいわき市、私、初当選で最初に訪ねさせていただいたんですが、そのとき感じましたことは、あそこもかなり広域に合併しましたので、かなり地域地域にへそがあったわけですね。それを広域的に一緒にしていわき市という市にして、いわきという駅を中心にしたわけですけれども、そこが本当の市のへそ、中心になり得ない。

 そういうところに委員が御指摘の、美しい町、環境に優しい町ということをお題目とは言いませんけれども言ってまいってきております国土交通省と、市政レベルの権限とそして財政力をつけるために合併を進める総務省との、まちづくりの間にやっていることによって、現実問題としては、まだそこまで、町の機能が有機的に統合するというような結果をもってあらわれていないというところはたくさんあるんだと思います。

 そして、もう一つの問題はやはり、各都道府県に行きましても、県庁所在地への一極集中がなされて、二番目、三番目の町がなかなか県によっては育っていないし、ない。そんな中で郡部の小さいものが一緒になりますと、面積は大変広域になりますけれども、一つの、委員が御指摘されている、イメージされる町としての機能性あるいは一体感、あるいは特色みたいなものが出てこなくて没個性になっている。こういうものをどうハーモナイズしていくということがこれからの国土交通行政に課せられた使命でありまして、環境に優しく住民の方々が住みやすいとか、お題目ではなくて、実際にその人たち、そこに暮らす方々がデザインをするものに援助をしていくという形で今回のまちづくり助成金も仕組ませていただいているところでございます。

岩國委員 例えば、今度の法案のサブタイトルであります稚内から石垣まで、稚内を調べてみました。稚内は、たしか来年、市町村合併なんですね。それから、石垣も調べてみました。これも合併の協議会が今進みつつある。

 稚内から石垣まで市町村合併の話が進んでいるときに、市町村合併でどれぐらいの規模になって、どれだけの財政余力があって、どれだけの事業規模ができるだろうか。雲をつかむとは言いませんけれども、まだそれが策定されておらないときに、ことしからこの法案が実行されるということになりますと、総務省の指導に従ってまじめに一生懸命市町村合併に努力しているようなところ、そういうところが結果として不利な立場に置かれてしまう。

 それまでに市町村合併を進めないで、どんどんこの法案をつくってまちづくりをやって、そのまちづくりが結果的にいい方向に出たとすれば、また出なきゃいかぬわけですけれども、市町村合併をやらないで、ああいう単体できらきら輝くようなその方がいいんじゃないか。総務省がやっている市町村合併のように、何もやみくもに一緒になって個性をなくして、しかも、その間にどこか近所のあの町が、あの市の方がどんどん事業が進んでいるというようなことがあっては、私は、行政の上で不公平になると思うんです。

 先ほど岩崎委員もおっしゃいましたけれども、こういった採択の段階で、いろいろな意味で不公平や、それから密室談合的なことがあってはならないのは当然ですけれども、国の政策が今重点として市町村合併をやれと言っておきながら、市町村合併に一生懸命取り組んでいるところは、このまちづくり交付金の申請の方は具体的な提案が出せないために二年、三年おくれて、よその自治体におくれをとる。こういう足並みがばらばらになるという点を懸念いたしますけれども、実施段階としてどういうようなお考えを持っておられますか。

竹歳政府参考人 お答えいたします。

 冒頭、岩崎先生の御質問にもお答えいたしましたが、このまちづくり交付金というのは、一つの市町村で一つというようなことではございませんで、例えば合併して大きくなったら、その中で昔の、合併する前のそれぞれの拠点がある、そこがこの交付金の対象区域になるということも十分あると思います。

 それから、先生御懸念の、今、合併に忙しくてなかなか財政の見通しも立たない、そういう中で、この交付金に手を挙げるのがおくれてしまうのではないかというような御懸念がございました。実は、いろいろ合併を予定されているようなところでも準備をされているということで、その点も御懸念は当たらないのではないかなというような感じがいたします。

岩國委員 ちょうど三年前に都市再生本部というものが設置されましたね。この都市再生本部を設置された目的は、石原大臣、何だったんでしょうか。

石原国務大臣 これはたしか、小泉内閣が誕生いたしましてすぐだったような記憶がございますが、総理大臣を本部長に、都市の再生、念頭にありましたのは、大きな都市が当初は念頭にあったような気がいたしますけれども、その本部が設置されました。

 やはり都市政策、都市環境の向上というものに対して、内閣挙げての施策というものが実はばらばらであった、そういうこともありまして、総理大臣を長にする新しい組織をつくり、この少子高齢化社会、あるいは大都会でいいますと国際化への対応、またインターネット普及に伴う情報化対応、こういうものを政府が一丸となって推進する必要がある、こんな観点に立ってこの本部が設立されたと記憶をしております。

岩國委員 確かに、戦後の復興期、それから高度成長期を中心に各市町村のインフラ整備が進んだ。しかし、そのどの都市をとってみても、都市が年をとってきて、人も年をとってきている。人も都市も両方年をとってしまっている。だからこそ、今こそリフォームということは非常に合理性があると思いますし、私も賛成でございますけれども、この都市再生本部というものを三年間やってみて、その活動実績はどうだったのか。そして、都市再生本部をつくってよかったなと思われるような成功例を五つぐらい挙げてみてください。

 どうもだめだったなと思われる、失敗例というと失礼ですけれども、所期の目的はかなり離れておったなというものもあわせてお示しください。

和泉政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま大臣から答弁いたしましたとおり、この本部は、大臣から答弁した目的に従いまして、国家的視点からの大都市圏における都市再生プロジェクトを実施する、こういった柱も一点。もう一点は、主として大都市開発地域において、民間の活力を通じて民間都市開発投資を活性化するという観点。三点目は、まさにきょうの議事の中身でございますが、稚内から石垣までというキャッチフレーズのもとに、全国の都市において地域の資源を生かした都市再生を進めていく。こういった三本柱で進めてまいりました。

 ただいま委員御指摘の、うまくいっているもの五点並びに失敗したもの五点という御指摘でございますが、率直に言って、都市再生本部ができてまだ三年弱でございますので、失敗したものというのはなかなか挙げにくいわけでございますが、幾つか御紹介いたします。

 まず、経済活動が増大して効果が上がったという観点について言いますと、例えば、全国都市再生の一環としまして、臼杵市で歴史的なたたずまいを継承したまちづくりをしてきましたが、この結果としまして、観光客数が平成十二年、四十五万人と統計に出ておりましたが、これが十四年には五十八万人と約三割ふえたといった結果が一つ出ております。観光客だけで都市再生を評価できるわけではございませんが、一点、定量的な意味で御報告申し上げます。

 また、都市再生本部ができる以前から関係者の営々たる努力のもとで完成したものでございますが、昨年の四月にオープンをしました例えば東京の六本木ヒルズ、こういったものについてその経済的な効果というものを見ますると、建設投資だけで二千九百億円、加えて、これがオープンして以降、半年間で約二千六百万人の方が訪れて、この六本木ヒルズの場所のみならず、周辺の市街地においてさまざまな活動をしておられる、こういった経済的な側面がございます。

 また、安全性の向上という観点から何か定量的にうまくいったものがないかという観点で申し上げますると、全国都市再生の一環で、東大阪市、大阪というのは犯罪率が極めて高い地域らしいのでございますが、この東大阪市で防犯まちづくりというテーマで都市再生に取り組みまして、関係者、NPO等が防犯ボランティアの組織をつくりまして、その結果としまして、特にモデル地区として実施しました島之内地区内の犯罪件数でございますが、平成十四年は前年比三四%の増でございましたが、こういった活動の結果、平成十五年は前年比二二%の減といった数字も出ております。

 さらに加えて、利便性とか効率性の観点でうまくいった事例、手前みそでございますが、これは都市再生プロジェクトの中で、国際交流・物流機能の強化という観点から、港湾の手続の電子情報化をしております。これはまだ道半ばでございますが、現在の目標では、平成十七年度までに、現在三日から四日かかっております手続を二日で済ませる、こういった観点で国交省の港湾局の方で今鋭意努力中でございます。

 さらに環境面、ただいま盛んに環境という言葉が出てまいりましたが、環境負荷の低減という観点では、大都市圏のごみゼロ都市というプロジェクトを進めてまいりました。この目標としまして、現在既に各地でリサイクル施設がつくられておりますけれども、特に首都圏につきまして、国全体の産業廃棄物の最終処分量を平成十年度の比較で半減するという目標が、平成二十二年度という目標を掲げておりますが、東京圏におきましては臨海部に徹底的にリサイクル施設をつくるということを通じまして、五年前倒しで十七年度にそれを実現する。

 こういったことが比較的この三年間で定量的に御説明できる中身でございます。

 また、失敗の事例でございますが、率直に言って、まだ本部ができて三年弱でございますので、本部が関与したもので失敗したということはないわけでございますが、ただ、一般論としまして、都市再生の一環として位置づけられる例えば再開発事業、こういったものについては、委員御指摘のように、最近の環境の変化、地価の下落とかキーテナントの撤退あるいは関係地権者の合意形成の困難、こういったことを通じて、過去に採択はされたが、この際、再開発事業の中止を決めたというものが、十五年度で四地区あるという状況でございます。

 今後とも、こういった状況を踏まえながら、的確な都市再生に努めてまいりたいと考えております。

岩國委員 そういった都市再生本部の活動実績、それから取り組まれた事例を今御説明いただきましたけれども、成功例として取り上げられた臼杵市ですか、あるいは東京の中でいえば六本木ヒルズの人のにぎわい、これは新聞等でも詳しく報道されておりますけれども、実際にそういった都市再生本部が成功例として挙げられたその中に、例えば今国会で景観緑法案も提出しておられるわけです。

 緑がどの程度減少したのか。成功したけれども、緑はみんな減っておるよと。六本木ヒルズで、私もテレ朝通りに何年も住んでおりましたから、あのころはまだ緑が少しはありました。最近行ってみると緑が全然ない。森ビルがふえるたびに緑が減るというのは、これは少しおかしいんじゃないかと思うんです。

 だから、再生本部の中で成功例として見ていらっしゃるのは、人はふえたけれども緑が減ったというのでは、私は必ずしもいい例ではないと思うんですね。

 緑法案を出しておきながら、人のふえるような話ばかりでは、私はこれはまちづくりとは言えないと思いますから、もう一度その点についてよく吟味をして、人がふえたような話ばかり、臼杵市やあるいは六本木ヒルズから聞いているけれども、一方では緑の保全はどうだったのかという裏づけもこれからとって説明していただきたいし、これからのまちづくり交付金についても同じような指導方針で私は臨むべきではないかと思います。

 それから、三年弱だから今のところは失敗例はございませんということですけれども、そうすると、もうちょっとすると失敗例が出てくるのか。野球でいえば三回の裏まではエラーがなかったけれどもという話でしょう。今は、不良債権という言葉は使ってはなりませんけれども、そういう扱ったケースの中でも、これはどうにもなりそうにないという点はないのかということをお伺いしたわけですけれども、今のところは顕著な失敗例はないということであれば、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 まちづくり交付金について、先ほどから関心も高いというそちらの方の御答弁もありましたけれども、具体的にどこの自治体が、うちがやりたい、あるいは合併の話を進めながらでさえも、合併の方に手を挙げながら左手でこっちのまちづくり交付金にも手を挙げている、そういうケースもあるというお話ですけれども、具体的にどの程度の関心の高さがあるのか。

 現場の方に聞きますと、毎日電話が鳴りっ放しだという話も聞きますけれども、具体的にどういうところが、我々が少しイメージできるように、一番熱心に質問してきている、そして成熟度の高い構想を持っているところは具体的にどういう都市ですか。

竹歳政府参考人 お答えいたします。

 まちづくり交付金について、どれくらいの数の市町村が関心を持っておられるかというお尋ねでございます。

 平成十六年度の予算案、現在参議院で審議中でございますし、また本法案についても現在御審議中でございますので、正式に問い合わせをするということはなかなか難しいわけでございますが、そうはいってもたくさんの問い合わせがあるということでございます。

 地方整備局を通じてそのようなお問い合わせの数を調べましたところ、今までのところ二百六十から七十の市町村がぜひこれに取り組みたい、その二百六十から七十の市町村のうち、その同じ中で複数もございますので、地区としては三百四十から五十の地区というような把握をしております。それから、来年度には間に合わないけれども、十七年度、十八年度にやりたいから、今のうちから準備をしたい、どういう仕組みになっているんだというようなお問い合わせもございます。

 例えば、神奈川県について見ますと、伊勢原市、横須賀市、厚木、川崎、横浜など十四市二十五地区、また島根県では松江市、平田市など四市町がこのような関心を示されてきております。

 それから、稚内から石垣まで、さらに松山、「坂の上の雲」というようなテーマで取り組んでおられるところ、これらのところも大変強い関心をお示しになっておられますし、具体的に計画づくりに取り組んでおられるというところでございます。

岩國委員 今度の国土交通省関連の法案、非常にたくさんございますけれども、中には非常に厳しい対応を各自治体に迫るものもあったり、中には将来的な希望を育てるような法案もあったり、石原大臣が関係していらっしゃる、今度の、今国会中に提出される、既に提出された、あるいはこれから提出されるであろう各法案の中で、一番人気のあるメニュー、人気のある政策というのはどこですか。これですか。

石原国務大臣 個人的には道路公団等四公団の民営化法案と申したいところでございますが、民主党の皆様方は政策を変更されて無料化と申しておりますので、大多数の方が政策として御関心を持ち、また今回の国土交通省予算案の中で新規なものとして、ボリュームもあり、これは使い勝手がよさそうだな、よし、これをちょっと使ってみて地域のために役立てようということで言うならばこのまちづくり交付金。

 さらには、観光等々で町おこし、村おこしをしようという方々にとりましては、景観法に関しましても、これはある意味での規制強化ではございますけれども、画一的な町ではない、自然をそのまま表現できるような町にもう一度リニューアルしていく上で、過剰看板や屋外広告物を撤去した形で、昔の形を取り戻すという意味で、景観三法も大変御関心があられますし、御利用いただきたい法案の一つだと思っております。

岩國委員 非常に関心も強いし期待も高いという法案のようですけれども、当然、これは採択をめぐって、嫌な言葉ですけれども、いわゆる議員の口ききだとか圧力だとか、あるいは密室談合での採択だとか、こんなことは、採択されなかった自治体の方が、事実だろうと事実でないと、こんなことをよく言って歩くことが多いんですね。

 したがって、今回の場合には、全く違う、透明性の非常に高い、そして公明正大に行われるんだ、行いたいという具体的な準備というか心構えというものについて聞かせていただけませんか。

竹歳政府参考人 お答えいたします。

 まちづくり交付金の採択に当たりましては、できるだけ明確な採択基準を作成いたします。これを事前に皆様方にお示しして、それに基づいて評価をして、判定の結果を明示する等、客観的で透明性が確保された制度運用に努めていきたいと考えております。

 また、まちづくりというのは、技術的な要素も多々ございますので、すべて客観的な指標であらわすということは難しい面もありますが、計画の公表や事後評価の公表、さらには採択事例をデータベース化して皆様にごらんいただけるということで、うちの町がこっちの計画よりいいのになぜ落ちたんだろうとかいうようなことが直ちにわかるような、そういうような透明性の確保にも努めてまいりたい、このように考えております。

岩國委員 今程度の説明だと、どうも納得できたと私は思えないんですね。恐らく、今までのどの法案についても、類似案件についても、今のような御答弁をずっと続けてこられたんじゃないかと思うんです。

 今回だけはどういう点が違うよと、例えば申請のフォームについて具体的に、各自治体の、今はやりの言葉で言いますとマニフェスト、三年後にはどうしてみせます、五年後にはどうしてみせます、そういった各自治体のマニフェストについてどの程度責任をとらせるのか。通信簿のつけ方は一年ごとなのか三年ごとなのか、あるいは各学期ごとなのか。その辺のところまで、今までとは全く違うスタイルでやってみたい、そういう皆さんが一番期待し、そして地方自治体も期待しておられる法案だけに、今までと違った行政スタイルをこんなふうにやってみせます、情報の公開についてはこんなふうにやります、それから密室談合は一切いたしません、そこでの採択記録は全部公開しますとか、もっとはっきり、はきはきと物が言えませんか。

竹歳政府参考人 採択事例のデータベース化とか、はきはき申し上げたつもりでございましたが、やはり今までも、公共事業に当たりましては、費用便益分析をきっちりして、なぜこちらの方が優先されて自分は後回しになったのかとか、はっきりわかるように努力をしてきたつもりでございます。

 ただ、今回のこのまちづくり交付金については、さらにそれを一歩進めて、事後評価をきちっと住民の方にもお示しする、そういう中でこのまちづくり、例えば三年から五年の計画をつくってこういう目標を達成しよう、我々はこういう問題があるんだ、だから三年、五年でこういう解決をしよう、それをまた事後的にきちっとみんなで評価するというようなことで、今まで以上にこの評価ということに重点を置いたまちづくりに取り組んでいきたい、このように考えているわけでございます。

岩國委員 私は、あえてきょう質問で取り上げましたのは、昨日、これを担当しておられる現場の方に、具体的にどういうフォームを考えているのか。フォームは大体一カ月後ぐらいをめどに考えますと。

 大体、法案を出して、しかもいろんなところから問い合わせも多いのであれば、もうそろそろそういうフォームの原案ぐらいつくって、こういう方向で対応していこうじゃないかということを私はやるべきじゃないかと思います。法案が通ってからゆっくり考えようというのでは、ここでの答弁と実際につくって各自治体に説明されるその説明とがかなり食い違っても、我々としてはチェックのしようがないわけです。

 ですから、その点において、ぜひ、公明正大に、それから情報公開は徹底的に、そしてすべての採択に当たっての議論というものは外部にも情報は公開されるようにしていただきたい、そのように思います。

 次に、まちづくり交付金は、いわゆる補助金が形を変えたものであって、三位一体と呼ぶのはおかしいのではないか、あるいは三位一体の名前をかりた補助金の拡張解釈あるいは単なるリフォームではないか、こういう意見がいろいろな方面からも出てきております。

 このまちづくり交付金というのは、従来の補助金とは違う全く新しい制度だということは、この条文の中のどこに一番明確にあらわれていますか。

竹歳政府参考人 条文で申し上げますと、四十七条三項というところがあります。また、四十七条自体が交付金という名称で書いてあるわけでございますけれども、四十七条三項というのは何かと申しますと、交付金を充てて行う事業に要する費用については、道路法その他の法令の規定に基づく国の負担または補助は行わないと明確に書いてありまして、交付金という見出しのもとで個別の施設の補助金は適用しないということがはっきり書いてあります。

 したがいまして、看板のかけかえではないかとか名前を変えただけではないかというような御批判がございますが、実は法律上この交付金というものの性格がきちっと明示されているわけでございます。

岩國委員 四十七条三項というのは、今度の制度全体の性格をあらわしているというよりも、既にほかの事業で、あるいはほかの制度で補助金という性格のものを受け取っているときには、二度取り、三度取りはだめですよ、こういう条例がここに書き込まれている、こういう説明を聞いたんですけれども、これは違うんですか。

竹歳政府参考人 御指摘のとおり、二重取り、三重取りができないという意味もあわせて持っておりますが、ここにきちっと道路法を適用しないということで、例えば道路ですと、補助は二分の一以内と法律に書いてありますけれども、この交付金を使えば二分の一以上充当しても法律違反にならない、こういう意味もございます。

岩國委員 それでは、これは補助金とは違う性格のものとは言えないんじゃないですか。このまちづくり交付金という名前だけれども、まちづくり補助金を受け取ったら電力法のあの補助金はだめですよと、これもニッカ、サントリーのように、二度取り、三度取りの補助金を否定しているだけであって、みずからの制度を補助金ではないと明示的に否定していることにならないと私は思うんですね。その点はどうなんですか。

竹歳政府参考人 冒頭申し上げましたように、まずこの四十七条の見出しが交付金の交付と書いてあるわけでございまして、名前からしてこれは補助金ではないということでございます。

岩國委員 今のこれは問題ですよ。そういう、我々こんなにたくさんの国会議員がおって、その前で、交付金と書いてあるから交付金だ、補助金と書いていないから補助金でない、そんないいかげんな説明はありますか。

 委員の皆さん、あけて読んでみてください、この四十七条の第三項というのを。自分の目で読んでいただいて、これが本当にこの今回の補助金等の整理合理化ということにつながる交付金という新しい制度だということは、この二行の文章から読み取れますか。

竹歳政府参考人 四十七条、見出しのところだけを若干強調し過ぎたかもしれませんが、二項をごらんいただきますと、この都市再生整備計画を一項でつくると書いてございまして、それに基づく事業等の実施に要する経費に充てるために、公共公益施設の整備の状況その他の事項を基礎として、その予算の範囲内で、交付金を交付するということでございます。

 したがいまして、この都市再生整備計画に道路でございますとか公園、それから文化交流施設、福祉施設、いろいろな幅広い施設がこの計画に盛り込まれてきます。これに対して交付金というものがぽんと渡されます。四割を一応目安にしているわけでございますけれども、十の事業に対して四の交付金が交付されます。そうすると、今申し上げました計画のいろいろな施設について、その四のお金を自由に使ってくださいということでございます。

 補助金は、御案内のとおり、施設ごとに、これについては三分の一、これについては二分の一とか、るる決まっているわけでございまして、そういう仕組みでないということで、従来の補助金とは全く違うというのは、まさにそういう計画に基づいたものについては、一括して採択して、それについて交付金を自由に充当していただく、こういう仕組みになっているという意味で補助金とは違うと申し上げているわけでございます。

岩國委員 いいですか。この四十七条に出てくる交付金を全部補助金と書きかえて読んでみてもすらすらとそのまま読めるんですね。つまり、補助金同士のバッティング、二度取りはだめですよということなら、これは全部交付金を補助金と書きかえて条例を出してみても同じことなんです。

 逆に、この四十七条三項で、ほかの補助金とも合わせても結構です、交付金というのは、補助金を超える上の段階で、あの補助金、この補助金と抱き合わせでもいいですよ、それが交付金だということになれば、ああ、これは補助金じゃないなということが余計はっきりするんです。

 言っていることはおわかりですか。ここのところのこれを補助金と書きかえて読んでみてください。この補助金は同じレベルの補助金と一緒に取ってはならない、これはよくわかります。交付金だから、ほかの補助金を取り込んでもよろしい、二つでも三つでも五つでも。これなら、ああ、今までと世の中は変わってきたなということがはっきりするんですけれども、これを条文上、もう少し明確にする必要があると私は思うんです。

 運用上は、皆さんのお考えを私はよく理解しているつもりです。補助金の二度取り、三度取りは許さない、全く新しい事業にこれをつぎ込んでいくんだということは理解しておりますけれども、せっかく、補助金の時代よ、さようなら、交付金の時代よ、こんにちはというぐらいの意気込みで、日本で一番たくさんの補助金を今まで使ってきた国土交通省が心を入れかえて交付金の時代の門戸を開くというんだったら、条文の上でももう少しはっきり読めるように、もっと自信を持って、誤解のないようなものを打ち出すべきじゃないですか。

 所感があれば、大臣、おっしゃってください。

石原国務大臣 補助金というのはやはり全部ひもがついていて、補助率も全部一つ一つ一緒だと思うんです。それで、事業間のやりくりということはできなかった。交付金というものはそれができるんだということで、それができるというふうに書いてある。

 委員の御指摘は、そこまでやったんであるならば、これは補助金ではなくて交付金だということがもっとよりわかるようにしろ、そういうお話を今されていたと思いますので、その点には十分留意させていただきたいと思います。

岩國委員 大臣のそういうお考えを受けて、条文修正、どこかされますか。それをぜひ御検討いただきたいということを、これは理事会でもぜひ御検討いただきたいと思います。要望しておいて、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 確かに、交付金あるいは補助金という制度があるからこそ、地方自治体は知恵を出すという面があるんです。金がなければ知恵を出せ、こう言われますけれども、大体のところ、みんな、金があるから知恵を出す。ふるさと創生金なんかは、私は、その効果というのは、お金が目の前にあるから初めて知恵が出てきたという地方自治体もたくさんあっただろうと思うんです。

 ですから、そういったひもつきでない、今までの補助金のようにひもがついていて、だめだったらすぐ引っ込められるというんではなくて、交付金というもう少し自由に使える新しい財布ができたということは、地方に知恵を出させる非常に大きなインパクトを持ちますから、それはお金の金額だけではなくて、そういう目覚まし効果、知恵を出させる効果というものに非常に大きいところがある。だからこそ、交付金の時代というものをもっともっと明確に、条文でも、それからいろいろな広報活動もしていただきたいと私は思います。

 次に、最後の質問に移らせていただきますけれども、このまちづくり交付金を活用して都市再生に取り組んだとしても、高速道路やインターチェンジのあるところとないところでは、これは経済効果は全然違ってくるんですね。あるいは、成功率も非常にこれは違ってくるだろうと思うんです。

 全国の自治体が三千百七十七、これは一月現在ですけれども、その中で、高速道路もある、インターチェンジもあります、だからまちづくりはこれだけいただいたお金が二倍、三倍の効果を持ってきますと言えるところが幾つあるのか。わずかそのうちの二割の六百六十四にしかすぎないわけです。

 次に、高速道路はある、インターチェンジはないけれども高速道路は走っている、こういう寂しいところもあるんですね。自分の市町村にインターチェンジはないけれども、眺めとしては、高速道路を眺めて、ああ、うちにもやっと高速道路が通ったと心を慰めている、そういう市町村もあります。しかし、これは経済の活性化にはちょっと遠いんですね。インターチェンジがない、そういうところが三百六十九。

 高速道路もないし、インターチェンジもないというところが二千百四十四。高速道路もあってインターチェンジもあるところが六百六十四。高速道路もない、インターチェンジもない、全く寂しい、そういうモータリゼーションの時代、人の流れからもう隔離されたようなところ、これが二千百四十四もあるわけです。

 そういう人の流れ、物の流れ、物流社会から、交流社会から、隔離というとおかしいんですけれども、そういう離れた存在のところが二千百四十四もあって、そして、そういうところも対象にお金を投下していくとなると、これは投資効率というのは非常に悪いだろうと私は思うんです。

 今後、このまちづくり制度というのを毎年毎年続けていく以上は、当然、高速道路をどれだけふやすか、インターチェンジの数をどれだけふやすか、とりわけ高速道路が走っていてもインターチェンジもないようなところに、インターチェンジというものについて、大臣の大変お好きな道路行政改革の観点の中からもう少し整合性のあるようなお話はできませんか。

佐藤政府参考人 先生御指摘のように、高速道路が通っていない市町村が二千百四十四、通っている市町村千三十三の中で、インターチェンジのある市町村が六百六十四、三百六十九の市町村が通過するだけ、こういう形になっております。

 先生御指摘の今のお話で申し上げますと、まず一つは、高速道路の延伸を図る必要があるんだろうというのが一点あるんだと思いますが、もう一つは、既に通っているんであれば、インターチェンジを追加するということがもっと努力できないのか、こういうお話かと思います。

 インターチェンジの追加につきましては、いろいろな方策を考えてまいりました。当初は、請願インターという形でやっておったんでございますが、これではなかなか進まないということで、開発インターチェンジ制度というのをつくってみました。それから、現在では、地域活性化インターチェンジということで、一部有料道路事業等も活用してインターチェンジの追加を図る、こういうこともやっております。

 しかしながら、これから大幅にふやしていこう、こうなると、もう少し抜本的なことをやる必要があるだろうということで、二点申し上げますと、一点は、スマートインターチェンジということで、サービスエリア、パーキングエリアなどが設置されているところに、ETCを活用してインターチェンジをつくったら、経費の方も建設費も少なくて済みますが、さらには管理費も、ETC専用であればかなり少ない額で済む、こういうことで十六年度から実験してみよう、こういうことで考えております。

 もう一つは、言ってみれば、事業区分というものをどう考えるか、こういう問題がございまして、従来は取りつく道路の側でどこまでできるかというと、できるだけは有料道路の方にお願いするという形でやってまいったんでございますが、これでは、なかなか有料道路の採算も厳しい、こういうこともありまして、追加インターチェンジをつくるのが難しい。そういう意味で、県道あるいは国道の側で、言ってみれば、逆に高速道路を迎えに行く、これは事業区分の問題でございますが、こうした点につきましても、現在、検討を進めておるところでございます。

 いずれにいたしましても、インターチェンジの追加がよりやりやすくなるような形で、大臣の御指示によって、早く倍増を目指せ、こういう御指示もいただいておりますので、その努力をしておるところでございます。

岩國委員 都市再生、私も、地方都市の市長をしておりましたから、そういった地方の都市がどれだけ苦しいか、よくわかっているつもりです。

 東京の所得の七割しかないところで、東京のガソリンの一割高いガソリンを買わなきゃいかぬ。言ってみれば、七十円の所得で百十円のものを買うということは五割高のガソリンを使って走らなきゃいかぬということです。その上、七十円の所得で高速道路の料金も払わなきゃいかぬ。だから、地方の都市へ行けば行くほど、高速道路の料金を払うだけの体力がないから、結局、道路が車を運ばないで、道路が楽をしておるわけです。人間が苦労して、道路が楽をしている、これを道楽行政と言うんです、道路ばかりつくって。

 私は、究極の都市の活性化というのは、地方都市の再生は、高速道路の無料化だと思います。道路をしっかりとつくる、人も物も無料でやってくる、だから仙台も出雲も東京と同じ物が同じ物価で買える、これこそは、私は、地方都市の再生に一番有力な政策ではないかと思うんです。

 もちろん、この制度を私は否定するものではありません。こういう制度も必要でしょう。しかし、大きな基盤整備をしないで、ちょこまかちょこまか、地方都市のできのいいところだけに限られた財源を割り当てるという発想から、もっともっと私は、大きく超えていかなきゃいかぬという御意見だけを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

赤羽委員長 若井康彦君。

若井委員 民主党の若井康彦です。

 私も、長い間、全国各地を歩き回りながら、こうした全国の自治体のまちづくりのお手伝いをしてきた、そういう立場から、今回のこの都市再生措置法の改正、そして、その中におけるまちづくり交付金、これをつくるということについては大変に関心を持って、きょうは幾つか質問をさせていただきたいと考えております。

 この法律、都市再生整備特別措置法というのは、私の認識をしておりますところでは、数年前から、都市におけるさまざまな都市開発事業を経済の柱の一つとして位置づけていきたい、そうした意味でこの特別措置法がつくられたというふうに認識をしておるわけですけれども、その中に、いわば非常にやんわりとしたといいますか、漠然とした、このまちづくりという名前が入ってきたということに私は大変に関心を持っておるわけです。

 国土交通省の方でも、これまで国土開発あるいは地域振興と、非常にある意味ではかたい言葉の中でお仕事をされてきたわけですけれども、近年、こうしたまちづくりというようなコンセプトを盛んにお使いになるようになった。そうした、ある意味での時代の背景ですとか、あるいはそうした理由、国土交通省としてどのように位置づけてこうした言葉を使っておられるのか、このあたりについて、まず大臣にお伺いをしたいと思います。

石原国務大臣 若井委員は、これまでの御経歴の中で、都市プランナーとしてさまざまなまちづくりに携われていらっしゃったからこそ、このまちづくりという言葉に大変御関心を持たれたんだと思うんです。

 これまでの岩國委員との御議論の中でもお話をさせていただきましたけれども、やはり、これまでの国土交通省の行政というものは、どちらかというと、補助金でこういうふうにしなさい、ああいうふうにしなさい、全部お金のしっぽまでひもがついていて、一つの、点でしかまちづくりに協力をしていなかった。

 しかし、地域に暮らす人たちによって、自分たちの町をどういうふうにしたい、言ってみるならば、国土交通省がこの洋服がいいからこの既製服を着なさいというのではなくて、自分たちで裁断して自分たちで縫製してオーダーメードの洋服をつくってください、市町村と住民と、NPOも含めてだと思うんですけれども、連携をとりながら、これまでの国土交通省というのは基盤を整備するとか社会資本を整備するというかたいハードの部分ばかりではございましたけれども、ソフトを組み合わせて、地域の方々に自分たちの地域をアレンジメントしてもらう、そういう意味で、まちづくり、しかも平仮名でまちづくりという言葉を使わせていただいたわけでございます。

 ハードの言葉だけの基盤整備といいますと、基盤整備にはこうこうこういう工法を使ってこれだけのことを最低でもやりなさいというような形で、その補助率は何分の一ですとか、全部細かくなっていたわけでございますけれども、そういうものを改めまして、さまざまな主体が手を携えて進めていくということで、その目的意識、その地域の方々が目指しているところの目的意識をできるだけ的確に伝える、そういう意味で、皆さん方のまちづくりなんだという意味で、まちづくりというふうに今回は取りまとめさせていただいたところでございます。

若井委員 長い間、戦後、今おっしゃられたような基盤整備というようなものを中心にこの地域政策を進められてこられた。それが、ある意味でいうと、時代の壁にぶつかっているといいますか、大きな曲がり角の中でどのような方向へ今かじを切っていかなければならないかということが問われている。

 そこで、今の大臣の言葉で言いますと、オーダーメードというふうにおっしゃいましたけれども、地域それぞれが持っている固有性とかポテンシャリティーといいますか、そうしたものをどうやってもう一度うまくくみ上げていけるのか。ナショナルミニマム、シビルミニマム、ある意味では非常に画一的なこれまでの地域政策というものが限界にぶち当たっているということを今国土交通省の方でももしかするとお考えになられていて、そうした一つのきっかけとして、このまちづくりというキーワードにさまざまな意味を込められているかというふうに私は考えておりますけれども、その具体的な一つのきっかけとしてこのまちづくり交付金というものが生かせていけるというふうに、できれば、さらに工夫をしていただければというふうに私は考えております。

 それで、次に、このまちづくり交付金でございますけれども、これについては、かつて平成十三年度に、都市再生本部が都市再生プロジェクトの基本的考え方という中で、二つに大きくその目標を分けて書かれていたと思うんです。

 これについて私の方から読ませていただきますと、都市再生の取り組みの第一に、大都市圏を、豊かで快適、かつ、経済活力に満ちあふれた都市に再生するということが書いてあるわけですけれども、第二にはっきりとこういうふうに書いてあるわけです。地方都市については、人と自然との共生、豊かで快適な生活を実現するためのまちづくり、市街地の中心部の再生等々、ある意味でいうと、こうした課題に的を絞って都市の再生に取り組むということになっておるわけです。

 実は、これまでの都市再生整備特別措置法の中には、具体的な内容として、大都市圏については非常に詳しく規定がされておったわけですけれども、地方都市の部分についてはほとんど具体的な条文がなかったというのが現実だと思います。

 私は、ですから、今回のこの措置法の一部改正というのは、この都市再生の取り組みに書かれております第二の地方都市の部分について具体的な政策を打ちたいということの表明だというふうに読ませていただいておるわけですけれども、いかがでしょうか。

竹歳政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、これまでの都市再生というのは、主として大都市圏における民間活力をどう生かしていくかという観点から、規制緩和、税制、金融などの措置を講じてきました。

 それで、今、地方都市についてはそう最初に明記してあったのに具体的な施策がなかったのではないかというような御指摘でございますが、まさにそれを今回の都市再生特別措置法の一部改正ということで充実し、地方都市においては民間活力というものがそれほど大きくないということで交付金という新しい仕組みを取り入れたということでございます。

若井委員 そういうお答えをいただいた上で、少し話を深められればと思うんですけれども、今全国に一億三千万人ぐらいの日本人が住んでいる。そのうちの半分が大都市圏、そして残りの半分の半分、四分の一がこうしたいわゆる地方都市に住んでいるというふうに私は認識をしておるわけです。

 稚内から石垣までというこの言葉、盛んに総理は口にしておられますけれども、石垣までというところはなかなかニュアンスがあって、実は、国土全体からいえば、その先に竹富町があったり与那国町があったりするわけですが、それを一応外してあるということは、恐らくこの法案自体がねらっているのは、先ほど申し上げた全国の大都市圏を外した地方都市であるというふうに認識をしてもよろしいでしょうか。

竹歳政府参考人 この稚内から石垣までというのは一つのシンボル的なキャッチフレーズでございまして、北は北海道から南は沖縄までというのを具体的な市としてあらわしたものでございます。

 したがいまして、その先にある町、冒頭御答弁申し上げましたように全国の市町村が対象ということでございまして、特に特定の町村を外すということでは一切ございません。

若井委員 私自身考えますに、先ほどの日本全体の四分の一の方が暮らしておられる地方都市、そこを、ある意味でいえば安住の地にしていただける、それぞれの方々がここで言う超高齢化社会になっても一生食っていけるんだという場所にできるというふうに変えていくということが、私はこの法案の本当のねらいではないかと思うわけですし、そういう意味で、その他の町村についてこの法律で対応しなければいけないかどうかというところは、もう少ししっかり、厳密に分けて考えられた方がいいのではないかというふうに思います。

 そこで、関連してお尋ねをしますけれども、実は、三年前に都市再生本部ができて以来、いろいろその流れを見てまいりますと、最初に、巨大都市における都市再生プロジェクトというものについて、今幾つですか、十八ぐらい御提案になっている。そしてその後、都市再生緊急整備地域、県庁所在地クラスのものを五十三地域指定されたわけですけれども、今回の地方中小都市について、新しいまちづくり交付金の対象だということをむしろきっちり規定された方がいいのではないかということを申し上げたい。

 それに関して、ちょっと通告とは順番が逆になりますけれども、一つお聞きしたいと思いますのは、実は、今回のこの三位一体改革の中で、こうした全国の中小の都市というのは非常に財政状況が悪化しております。ですから、結論から言いますと、今回のこのまちづくり交付金、恐らく事業の四割程度の交付になるというふうに考えていますけれども、その六割を自主的な財源で手当てするということが現実的には非常に難しくなっているんじゃないかというふうに思います。

 ある意味でいうと、絵にかいたもちになってしまいかねないこのまちづくり交付金を、先ほど申し上げたように、地方の中小の都市がしっかりと実効のあるものとして生かせるような、そうしたバックアップをしていかなきゃいけない。その点について、何か具体的なお考えがあればお聞かせ願いたいと思います。

竹歳政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、地方財政、現在大変厳しい状況にあるわけでございます。

 まちづくりにつきましては、まず第一に、市町村自身が身の丈に合ったまちづくりをみずから進めていくというような自主的な取り組み、これに対して国として支援策を講じていこうとしているものでございます。

 したがって、交付金以外の部分につきましては、市町村の負担となるべきものではありますが、地方財政措置につきましては現在総務省と調整を図っているところでございます。

若井委員 ちなみに、このまちづくり交付金について総務省の方ではどのようなバックアップといいますか支援体制を考えておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。

瀧野政府参考人 まちづくり交付金に対します地方財政措置でございますが、地方財政、御指摘のとおり非常に厳しい状況にございます。

 我々、全般的に地方財政に対してさまざまな支援措置を講じようという方針でございます。特に、地方債につきましていろいろな弾力的な措置を図る中で、地方団体の一般財源の負担を軽減していこうという方向でございます。

 まちづくり交付金の裏負担につきましては、今御指摘のとおり、五分の二が交付金の対象になりますので、五分の三の地方負担が生じるわけでございますけれども、そこのところにつきましては、一般単独事業債という起債が既に地方債計画の中に大枠として設定されておりますので、充当率が七五%程度のものでございますけれども、そういったものを活用することも含めまして、十分国土交通省と相談していきたいというふうに考えております。

若井委員 一般単独事業債を充当するということだけでは、私はこのまちづくり交付金が生かせるというふうにはとても考えられないわけですけれども、逆に言いますと、まちづくり交付金が、ある意味でいうともう少し財政的に余裕のある地域、ありていに言えば大都市圏の自治体というところにやはり還流をしてしまうのではないかということを大変に危惧しております。

 そういう意味で、先ほど都市再生プロジェクトの流れについても申し上げたわけですけれども、大都市圏においてはもう既にこの都市再生プロジェクトなりあるいは緊急整備地域での事業その他さまざまな事業が先行しているわけですから、まちづくり交付金については、できれば地方圏、あるいは先ほど申し上げた中小都市に優先的に使えるような、ある意味でのインセンティブですとか歯どめについてもう少し検討していく必要があるのではないかということを申し上げたい。

 これから、後ほど申し上げたいと思うんですけれども、事業の採択基準の中で、例えばその地方都市ならではの個性的なシナリオであるとか、そうしたソフト事業のシェアを変えるとか、あるいはもう少し一般的に言えば評価基準についてそうした内容を盛り込むとか、工夫をしていただきたいというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

竹歳政府参考人 お答えいたします。

 まず最初に、地方の財政が非常に厳しいので財政的に余裕のある大都市の市町村しか手を挙げないんじゃないか、したがって、この交付金が大都市に流れてしまうのではないかという御懸念がございました。

 これにつきましては、先ほど岩國先生の御答弁で申し上げましたように、既に三百数十の町や村、市から、これは大都市圏だけではございませんで、手を挙げていこうという意向が我々に伝えられているわけです。その中では、既に我々も、大体四割ぐらいしか交付金は出ませんよ、あとは地方で財政手当てをしていただかなくてはいけないということも申し上げた上で、そのような御希望が出ております。

 それから、インセンティブを与えるために何か工夫ができないかということでございます。

 これについては、現在、これといったインセンティブを考えているわけではございませんが、実は、この評価をしていくときにどういうプロセスでいくかと申しますと、まず、それぞれの町や村が抱えている問題、それをきっちりお示し、計画に書いていただこうと思います。例えばこういう問題がある、こういう問題があるという、それに対して、この交付金でこういう改善をしたいということで、実は、その事実の部分がかなり重要になってくるんではないかと思います。

 これを、各市町村から出てきましたいろいろな要望につきまして、やはり、問題の深刻さの程度、こういうところも我々としては十分重視しながら、この採択というものにも努めていきたいと考えているわけでございます。

若井委員 国交省のメンバーの皆さんだけではなくて、今の問題点の深刻性の程度の判断というようなものについては、例えば、第三者の入っている機関とか、そうしたものを大いに活用していただいて、より客観的な判断が盛り込まれるように期待をさせていただきたいと思います。

 実は、ちょっと話がかわりますけれども、都市再生整備特別措置法の枠外で、この類似の事業を国土交通省の方ではこの間進めてこられたということを私は地方でお聞きをしておりますが、このまちづくり総合支援事業は、まちづくり交付金ができる段階で廃止をされるというふうにお聞きをしております。

 このまちづくり総合支援事業、それが、まちづくり交付金にうまくその体験が生かされるというような意味で活用していったらどうかというふうに私は思うんですけれども、この数年間行われてきたまちづくり総合支援事業というものの概要あるいは経緯とか、どのような事業を進めておられたのか、そして、それをどのように改善をすれば、例えばこのまちづくり交付金、より有効な運用ができるのか、その辺について御説明がいただければというふうに思います。

竹歳政府参考人 御指摘のように、補助金をできるだけ使い勝手のよいものにしようということで、国土交通省ではさまざまな分野で統合補助金化ということを進めてまいりました。

 この統合補助金につきましては、大きく言うと二つタイプがございまして、一つは事業ごと、例えば、一つの県の河川について統合補助金を使って、その中を自由に箇所づけができるようにしようというものと、それから、横型と申しまして、各種の事業をくし刺しにして、使いやすい補助金をやろうという二つのタイプがございました。

 そして、この横型補助金の代表例として、まちづくり総合支援事業というものを我々は取り組んでまいりました。十五年度で申しますと、七百三十億円という国費で、五百五十六地区という各市町村でこのようなまちづくり総合支援事業を進めてまいりました。このまちづくり総合支援事業は、今までの個別の補助金に比べますと大変使い勝手がいいということで、各市町村で好評でございました。

 ただ、地方分権の改革推進会議で、この統合補助金、国土交通省がいろいろやっているようだけれども、使い勝手はどうかという調査をされたところ、この横型の補助金につきましても、やはりもう少し使いやすいものにならないだろうか、事業間の流用とかそういうものがなかなか大変だ、手続も大変だというような各地方公共団体からのお話もございましたので、今回、思い切って補助金とは違う交付金という形で、このまちづくり交付金というのを都市再生特別措置法の中で位置づけたということでございます。

 思想としては、地区地区、その地域地域の個性を生かしていくような、助成措置でございますけれども、補助金という枠がやはりございましたので、それを一歩乗り越えて、このまちづくり交付金という形で、より使い勝手のよいものに改善しようということにしたものでございます。

若井委員 今の総論的な御説明は大変によくわかったわけですけれども、例えば、これは国費で七百三十億円ですかね、ですと、総事業費で恐らく千五百億円とかその程度の事業になるかと思うんですが、一件について三億円ぐらいの規模、それで、具体的にはどのようなまちづくりが行われてきたのか。そして、それに対して、今回この交付金で考えておられる事業というのは、それに類似をしたようなものであるのか、あるいは全く違ったものなのか。あるいは、先ほど手続上の煩雑さを改善したとおっしゃいましたけれども、具体的には何が問題で、何をどのように変えられたのか。その二点について、もう少し御説明がいただければと思います。

竹歳政府参考人 まず、手続的な面について申し上げますと、今までですと、統合補助金とはいえ、それぞれの道路、公園、下水道というような別々の補助金を一括して採択するという仕組みでございましたから、それぞれの、道路なら道路の補助率とか、それから補助採択基準でございますとか、そういうものが全部法律とかで決まっていたわけです。

 今回、まちづくり交付金にいたしますと、そういう個別の法律は適用しないということになるわけでございますので、そこら辺が自由に、四割という交付金の範囲内でいろいろな分野に充当できる。

 例えば、こういうことが考えられると思います。その年に十の仕事をするということで、四の交付金を受けていた。ところが、用地買収がまとまらなくて八しか使えなくなってしまったというと、実は、四はもらい過ぎになるわけです、今までの制度だと。そうすると、それを返さなくちゃいけないということになるわけでございますけれども、今回のまちづくり交付金ですと、それを別のところにも充てていいし、それから、年度をまたがって、じゃ、ことし四差し上げたんだから、来年は四のところを二にしましょうというようなことで、煩雑な事務手続なしに、そういう地区地区のいろいろな用地の状況とかに応じまして、自由度が高まるということがございます。

 それから、まちづくり総合支援事業でもかなりいろいろなことをやってきたつもりでございますが、そうはいっても、やはり国土交通省以外の所管の施設になりますと、福祉、文化等々なかなか踏み込めない点があるし、それから、先ほどから御指摘いただいておりますように、ソフトの部分、これについてかなり明確に打ち出した。また、法律上も、NPOに対する計画づくり、そういうところに助成も、市町村がやる場合には国も応援するよというような、さまざまな改善を積み重ねて、そういう意味で、補助金から抜け出した新しい交付金ということを申し上げているわけでございます。

若井委員 今お話がありましたけれども、このまちづくり総合支援事業においては、恐らくそれは補助の対象あるいは交付の対象をこのまちづくり事業計画という計画の内容に対して行っていたというふうに聞いておりますが、このまちづくり事業計画というものの内容あるいは輪郭というようなものはどのようなものなのか。そして、今回、このまちづくり交付金に変えた場合に、それをどのような内容として住民の方あるいは市町村の方々に御提示をしようとしておられるのか。その辺について、もし既に案をつくっておられるのでしたら、それを皆さんに御提示していただきたい。私たちもそれに基づいて審議をさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

竹歳政府参考人 具体的な案につきましては、現在、いろいろなフォーマットも含めて、また評価事項等も含めて検討中でございますので、今お出しできるという状況にはないわけでございます。

 そして、冒頭御指摘のございました計画ということでございますが、この計画につきましては、その地域地域の、やはり道路が非常に人気が高かったと思いますけれども、そういう公共公益基盤施設を重視したものではなかったかと思います。

 これからは、先ほども申し上げましたように、事後評価を中心としてやる。今までのまちづくり総合支援事業も補助金でございまして、費用対効果分析等々はもちろんそれぞれの補助対象施設ごとに行ってきたわけでございますけれども、やはりそれらを一括して進めることによってこの町がどれだけ活性するのか、高齢者の方がどれだけ安心して住んでいただけるのかというようなところが、このまちづくり交付金で行う計画の大きな違いになってくると思います。

 今まではもちろん事前のいろいろな評価もやっておりましたけれども、やはりこれからは、この町をどうするんだということを市町村とその地元の方々が一緒に知恵を出し合って計画をつくり、それに対して交付金が交付されるということになるということでございます。

若井委員 今、私の手元にまちづくり総合支援事業の補助金の交付要綱というのがあるんですけれども、枚数にして十五枚、それぞれの事業について非常に詳しく規定をしておられます。こうした交付要綱について、今おっしゃられたような例えば住民の団体とか、そうしたところが対応できるというふうにお考えでしょうか。

竹歳政府参考人 今お手元にお持ちの交付要綱、かなり厚いものだということで、これで本当に住民の皆さんにわかっていただけるんだろうかというような御懸念でございますが、一方で、やはり客観的により詳しく情報公開をしてほしいという要望もございます。それ自体は大変分厚いものになっておりますけれども、少しなれていただければ、書いてあることは住民の方でも十分御理解いただけるものではないかと思っております。

若井委員 そこで、私は、今回のまちづくり交付金制度の一番の問題点が明らかになってくるのではないかというふうに思うんですけれども、そもそも、地域で住民の方々がまちづくりを考える場合に、このように役所がつくったフォーマットに従って物事を考えるわけじゃないわけですね。

 そうした、ある意味でいうと、住民が持っているモチーフあるいは地域が持っているそうした必要性みたいなものを、どのような形で具体的な形をつくっていくかということ自体が一種のまちづくりなのだ。それを実現するプロセスはさまざまあるわけですけれども、それに従って、例えば市町村が、そして市町村ができないことは国が、国ができないことをだれがバックアップするかわかりませんけれども、そうした流れを逆転してつくっていくということが大事だと思うんです。

 そもそもこのまちづくり交付金というのはそうした発想から生まれたものではないかというふうに思いますけれども、御感想はいかがでしょうか。

竹歳政府参考人 お答えいたします。

 地域地域の課題にどう取り組んでいくのか、そのための応援をするのがこのまちづくり交付金でございます。もちろん、そのようなマニュアルに従ってモチーフが決まるわけではなくて、モチーフが決まった後、実際上、交付のいろいろな手続をするときにはどういう書類が必要かというようなことを見ていただくのがマニュアルだと思います。

 例えば、千葉の八街というところの御婦人方のボランティアがどういうまちづくりに取り組んだか。実は、これは昨年のある新聞社の論文の中で国土交通大臣賞をとられた方々の計画なんですけれども、御婦人方は何を考えていたかというと、自分たちは年をとってきた、そして町の中を巡回するバスがぜひ欲しいというようなことで市長さんに働きかけられて、巡回バスの運動ということをまず始められました。

 巡回バスの運動を始められているうちに、近くの駅は区画整理が済んで非常にいい町になった。ところが、自分の町は北口がない。北口の方にもたくさん人が住んでいるのに北口がない。市長さんのところに御相談に行ったら、やはり町がにぎやかにならないと、なかなかJRも駅をつくってくれないよというようなことで、では、町をにぎやかにするにはどうしたらいいんだろうかということで御相談が始まった。

 そうしているうちに、やはり今後の高齢化社会の中で、若い子供たちと一緒に交流するような場も必要だ、高齢者が安心して時を過ごせる場所も必要だ、また、子供を持った女性が安心して仕事に行って、帰りに保育所で子供を連れて帰るというような、駅の周りを何かもっと使いやすいものにできないだろうかというようなことで、初めは巡回バスという非常に身近な問題からスタートするわけでございますけれども、それがだんだん市との対話を通じて大きな計画になっていくという経験をつづられたのが、実は国土交通大臣賞を受賞されたわけです。

 我々は、このまちづくり交付金、都市再生整備計画というのは非常にかたい名前でございますけれども、まさに期待しているのは、そういう地域の人々が身近に感じている問題をくみ上げて行政に働きかけ、そしてプランをつくる、そういう中で何が必要なんだろうかというようなことでこの計画が進めばいいのではないかと非常に期待しているわけでございます。

若井委員 今の局長のお話は、まさにこれから世の中が必要としているまちづくり計画の内容だというふうに私も同感です。

 それでは、お聞きしたいと思いますが、今回のまちづくり交付金のベースになる都市再生整備計画ですね、その具体的な内容がこの条文の中にもあると思うんですけれども、それと今のお話との関係について御説明を願えればと思います。

竹歳政府参考人 この計画におきましては、まず地域の課題でございます。そしてそれに対してどういう事業、ハード、ソフトあわせたどういう取り組みをしていくのか、そしてそれはどういう効果が期待されるのかというようなことを計画に書いていただく。その中で、これとこれはぜひ国の支援を欲しい、こっちとこっちは我々住民だけでやるよ、それから、これは民間の方にお願いしようというような幅広いものになるのではないかと思います。

 交付金につきましては、まさに地域の方々がつくられた計画の中から、これとこれはぜひ国として助成してほしいというものをお出しいただいて、それを我々で検討させていただくというプロセスをとることになります。

若井委員 今おっしゃられた都市再生整備計画の目標を達成するための事業ということで、今国土交通省で定められておられるのは、例えば、公共公益施設の整備に関する事業であるとか市街地再開発事業、防災街区整備事業、土地区画整理事業、住宅施設の整備に関する事業、その他省令で定める事業というようなことになっております。先ほど局長が御説明をされた、いわゆるまちづくり計画をつくるという内容とは、大分現実にはかけ離れているのではないかというふうに私どもは思っておりますけれども、その辺はいかがでしょうか。

竹歳政府参考人 お答えいたします。

 これは先ほど岩國先生からも御指摘のあった点とよく似るわけでございますが、実は、今お読みになられたものの次に「前号の事業と一体となってその効果を増大させるために必要な事務又は事業に関する事項」というのがございまして、私がるる熱心に御説明したのは、法律にしてしまうと、こんな何か味もそっけもないような条文になってしまうわけでございますけれども、気持ちはこの条文に盛り込まれているということで、ここで実はソフトの部分を読んでいくということでございます。

若井委員 それでは、お聞きいたしますが、このまちづくり交付金の中で、今局長が御説明をされた「一体となってその効果を増大させるために必要な事務又は事業」というところに、交付をされたお金のどのぐらいを使ってもいいか、ちょっとその辺についてのお考えがあれば、ぜひお聞かせ願いたい。

竹歳政府参考人 このまちづくり交付金というのは、公共事業の予算でございます。したがいまして、ソフトの部分がどこまで大きくなれるかということになるわけでございます。我々は、今これを約一〇%程度を考えているわけです。いろいろな公共公益施設の計画がある、それをサポートする、またそれを豊かにするような部分、ソフトの部分は一〇%ぐらいということです。

 ただ、一〇%と申しましても、十億の事業ですと一億円でございます。先ほど御紹介した八街の御婦人方はまさに手弁当でやっておられたようなことでございまして、この一億円ということをうまく活用すると、そういうNPOの活動とか、いろいろなことも十分支援できる額ではないかな、このように考えております。

若井委員 大変心強い御回答をいただいたとは思うんですけれども、今の八街の例に即して、例えば申し上げますと、具体的な形になって上がってくる事業の前に、その奥様方の活動というようなもの、あるいは計画を策定するために費やしている時間というようなものは、恐らく、今おっしゃられた都市再生整備計画が形になる前に行われる内容であって、今の事業の対象にはならないのではないかということを私は大変に危惧をしております。

 それで、先ほどからまちづくりについていろいろお話をさせていただいておりますけれども、実は、地方中小都市などにおいてまちづくりというのは、最終的に道路をつくる、広場をつくる、施設をつくるという段階は、もうほとんど事業は半ばを過ぎているというふうに言ってもいいんだと私は思います。

 それぞれの方々がモチーフを持ち寄って新しい計画をつくる、新しい社会環境をつくっていくということを通じて、ある意味でいうと町自身が再生をするのであって、物になるという段階はもうほとんどそういう意味では道半ばを過ぎているというふうに言うべきだと思うんですけれども、その点について、このまちづくり交付金あるいは都市再生計画というのはどのように位置づけておられるのか、その辺についてもお考えをお聞きしておきたいと思います。

竹歳政府参考人 大変専門的な御質問なわけでございますが、確かに、御指摘のとおり、計画というものは形ができてしまえば道半ばというのは、まさにそのとおりだと思います。

 ただ、この交付金の事業について申し上げますと、やはり地元で、形になる前のいろいろな活動、そういう中で計画をつくっていただくということが大事ではないかと思います。一遍ある程度の形ができて、交付金の申請ということになりましたら、実はその中では、そのNPOの活動の計画をさらに詳細にするような、そういうものについても交付対象とすることができます。

 さらに、実は、この都市再生整備計画の策定自体について助成の対象にするということにはなっていないわけでございますけれども、やはり国の支援がどうしても計画づくりに必要だというような市町村から求めがあった場合には、国土交通省の直轄調査費というものが確保されておりまして、そういう調査費なども活用して、財政的に弱いところ、そういうところは支援をしていくことができるのではないかと思います。

若井委員 今、世界的な趨勢、例えばイギリスあるいはEU、まちづくりの支援制度というようなものが非常に充実をしている。確かに、道路をつくったり施設を建てたりする分について言えば、公共事業を投入すればそれで事足れりということになるかもしれませんけれども、一つまちづくり自身が前へ進むということから考えると、こうしたまちづくりの支援、そしてその第一歩であります、ひもつきでない計画を策定していくという、そのプロセスが一番大事なんじゃないか。

 NPOに対する支援というようなお話もありましたけれども、物ができてから、その運用、それに当たるNPOに支援をするのではなくて、物づくりに至るプロセスを持っている、そうしたNPOであるとか、そうした活動に対して、どのようにしたら支援ができるかということが一番今回のこのまちづくり交付金の要諦じゃないかというふうに私は考えておるわけでして、その点についてさらに御検討いただければというふうに思うんですけれども、よろしくお願い申し上げます。

 ちなみに、お伺いしたいんですが、先ほど、都市再生本部の和泉事務局長、おられますでしょうか、都市再生本部のこれまでの事業の内容についていろいろ御説明いただきましたが、都市再生本部というところには、今申し上げましたような、ある意味でいいますと社会計画といいますか、そういうソフトウエアを担当しておられるスタッフの方というのはいらっしゃるんでしょうか。

赤羽委員長 若井さんに申し上げますが、政府委員の要求として出ておりませんので、今本席にはいらっしゃいません。

若井委員 わかりました。では、後ほどまたいろいろ教えていただければと思います。

 今回のこのまちづくり交付金、都市再生整備計画については、国土交通省が直轄でこれを行われるというふうに考えていいわけですね。

竹歳政府参考人 まちづくり交付金については、国土交通省の所管でございます。

若井委員 それでは重ねて、このまちづくりという事業がすぐれてソフトウエアを大事にすべき領域の問題であって、国土交通省の中にもそれではそういうスタッフを充実していただくということを強く申し上げておきたいというふうに思います。

 それでは次に、都市再生整備計画をどのように評価するか。先ほど採択基準の話がございましたけれども、いろいろなモチーフ、まちづくりのテーマというものが出てきた場合に、それをどうやって是非を判断するのかについてお聞きしたいと思います。

 先ほど、「坂の上の雲」というような、雲をつかむようなモチーフのまちづくり計画があるというふうにお話がありましたけれども、住民の側から出てくるまちづくりのモチーフというのは、往々にしてそういうものだと私も思います。

 例えば、現在ですと、私たちは、かつて非常にこの地域にたくさんいた蛍をどうやってよみがえらせるのか、そうした町に住みたいなというような話、あるいは、もう少しまちづくりに即して言えば、町の道路に水路があって、そこにコイが泳いでいるような町に住みたいというようなところから、まちづくりというテーマが膨らんでいく。

 確かに、蛍が十匹が千匹になって十万匹になる、それにあわせて観光客が十万人になったら評価をするというふうに考えたらよいのか。ある意味でいうと、いろいろなまちづくりのテーマが出てくるわけですけれども、それをどのように判断して採択の基準にしていかれるのか、もう一度教えていただければと思います。

竹歳政府参考人 お答えいたします。

 この都市再生のテーマというのは、市町村のそれぞれの個性でございますとか、抱えている問題等によってそれぞれ異なってまいりますので、百の計画があれば百通りの個性がある、まさにそういうものを今求められている時代だと思います。

 そういう中で、では、どういうような形で判断していくのかということでございます。

 これにつきましては、先ほどからお答え申し上げておりますように、まず現状の把握、それからそれをどのように変えていくかという計画の目標の妥当性、または計画の効果とか効率性、実現可能性、このようなさまざまな角度からこの計画の評価については行ってまいりたい。もちろん、具体の手法については、現在、その評価方法については検討中ですし、やはり新しい仕組みでモデルのない取り組みを行おうとしているわけでございますので、いろいろな経験を積む中でいろいろな手法についても改善をしていきたいと思います。

 先ほど、「坂の上の雲」でとめたので誤解を生じたかもしれませんが、「坂の上の雲」ミュージアム構想というので、松山全体、文化の薫りのある松山、子規がいた、それから日露戦争のいろいろな思い出があるというようなところ、町全体を司馬遼太郎さんの「坂の上の雲」というあれを使ってやろうというようなテーマで、これは、今観光立国というようなことも言われているわけでございまして、交流人口をぜひふやしたいというようなお気持ちからもこういうことが進められておると思います。

 それから、先ほど、蛍の話がございました。ともすると、このまちづくり交付金、商店街の活性化とか、買い物客がふえたかどうかとか、そういうふうなことだけで判断されるのではないかというような御懸念があるわけでございますけれども、我々といたしましては、歴史、文化のまちづくりとか、また森や水をテーマにしたまちづくり、こういうものも幅広く取り上げてまいりたい、このように考えているわけでございます。

若井委員 基本的には、今のところ、採択の基準については検討中である、試行錯誤の中で固めていきたいというお答えだったというふうに思うんですけれども、すべての市町村あるいはまちづくりを志す方々にとっては、その一点がこのまちづくり交付金についてのアクセスの目標になってくるわけですので、早い段階で、もう少し具体的な形で採択の基準あるいは交付の要綱というようなものを明らかにしていただいた上で、もう一度審議をさせていただければというふうに希望しておきたいと思います。

 それから、話は、もう一つ、この法律の最後のところにございます、今回、都市再生機構がまちづくり交付金に関する業務の一つの委託の受け皿という形での法文が入っておりますけれども、この内容について少しお聞きをしたいと思います。

 先ほどのまちづくり総合支援事業ですか、あれに関しましてもそうですけれども、ともすると、計画づくり、その流れがパターン化をしていくという経過が常にあると思います。

 まず、それなりにすぐれた計画が出てくる、それに従って、それを一つのモデルとして計画を策定する、それを採択の基準としていく、あるいは交付の要綱の骨格にしていくというようなことが往々にして起きると思うんですけれども、今回の都市再生プロジェクト、まちづくり交付金についても、これが非常にある意味でいうとソフィスティケートされた公共事業になっていく。その中で、専門機関といいますか、そこに丸投げになっていって、結局は金太郎あめのような計画になってしまうのではないかという危惧を私は抱いておるわけですけれども、都市再生機構が、まちづくり交付金を生かしていくという中で積極的な役割を果たせるとすると、どのような形を想定されておられるのか、その辺についてお聞きをしたいと思います。

竹歳政府参考人 お答えいたします。

 地方の都市再生を考える上で計画づくりというのが非常に重要だということは、先生先ほどから御指摘のとおりだと思います。ただ、地方の中小都市に参りますと、必ずしも人材が育っていないとか、それから、そういう大きなプロジェクトがそういう小さいところで何回もあるわけではございませんので、ノウハウが蓄積していないというような問題があります。したがって、いい計画をつくるにはどういう応援をしていくのかというのが非常に重要だと思います。

 そこで、二つ、我々は考えております。

 一つは、まず、民間にいらっしゃるいろいろなプロフェッショナルな専門家の方々を、こういうまちづくりのデータバンクというような形で登録する。今実は、都市計画家協会というところがこういう作業を積み重ねておられまして、今のリストはどうも東日本ばかりに偏っているようでございますけれども、全国をカバーするような専門家のデータベースをつくる。そうすると、それに各地の方々が、どういう分野が得意なのかということもわかるわけですから、そういうことにアクセスして、我々のまちづくりを応援してくれないだろうかというようなことが直接できるような仕組みを一つ考えたらどうかと思います。

 それから、今御質問がございました都市再生機構の活用でございますが、御案内のとおり、都市再生機構というのは、現在、都市公団と地域公団、両部門合わせまして、四千七百人の体制でございます。これらの職員は、土木、建築、都市計画などのいわゆるエンジニアだけではなくて、企業誘致とか施設立地のノウハウとか事業のマネジメントなどなど、さまざまな分野の専門家から成るチーム力を発揮してまちづくりを進めております。

 例えば、両公団合わせますと、技術士が約百三十人、土地区画整理士が二百九十人、再開発プランナーが百十人、建築士が約六百六十人、もちろん複数の資格を持っておられる方もいらっしゃるわけでございますけれども、このような非常な専門家集団だということで、こういう人材をぜひ地方のそれぞれのまちづくりでも活用できるようにしたらいいのではないかということで、今回の法案にも盛り込ませていただいているところでございます。

若井委員 まちづくりというものは、非常に開かれた世界として、これから市民の活力、あるいは今ありました都市再生機構にいらっしゃるスタッフの方々も含めて、力を発揮していけるような、そういう仕組みを広くつくっていくことが大事だと思いますし、そのこと自身が私はまちづくりそのものだというふうに考えています。まちづくりのための公共事業が、公共事業を目的としたものではなく、そうしたものを活性化する上で寄与するというような形になってほしいものだというふうに願っております。

 今おっしゃられました、専門家や市民によってこれをサポートしていくというお話でしたけれども、先ほどの事業の採択を判断するというそうしたところにも、採択をした事業を具体化するというだけでなく、第三者としての審査機関といいますか、そうしたものをつくっていくということも、まちづくり交付金を開かれたまちづくりの道具にしていく上では有用な役割を果たせるのではないかというふうに御提案をさせていただきたいと思います。

 いずれにいたしましても、非常に厳しい財政状況の中で、地方の中小都市、これを活性化していく。四分の一住まわれておられる日本人の方々がそこで自立をすることが日本の経済の立て直しの上でも非常に大きな役割を果たすというふうに私は思いますし、また、国際観光の振興といいますけれども、大都市をいかに国際化しても、それ自身が観光資源であるとは私はとても思えない。こうしたまちづくり交付金等によって個性的な、多様なまちづくりを大いに進めていただけるように、制度的な部分については充実をしていただく。また、私たちも各地域においてそうした主体が活性化をするように働いていきたいということを申し上げて、時間になりましたので質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

赤羽委員長 高木陽介君。

高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。午前中最後の質問ということで、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 法案の質問をする前に、まず都市再生ということで、その現状についての質問をさせていただきたいと思います。

 まず、まちづくりと申しましても、その主体というのは三千ある自治体、さらには、そこに住んでおられる住民の方々が、生活が向上するか、またはその地域の経済が活性化するか、そういった視点、まさに主体者がしっかり取り組まなければいけない問題なんですが、もっと言いますと暮らしていてよかったなと、その上で、平成十四年度に都市再生法が施行されて以来、さまざまな都市再生に関する施策が推進されてきたと思います。主体は自治体であるんですけれども、現在の財政状況等を考えますと、自治体だけですべてをやっていくということはなかなか不可能である。だからこそ、この都市再生法ができて、そしてまた国がしっかりと応援をしていく、こういうシステムになったんだと思うんです。

 その上で、国土交通省では、都市再生に関する現状をどういうふうに認識しておられるのか。また、これまでどのように取り組んできたか。その取り組み状況や、また政策、事業の進捗状況というのはどうなっているのかということ、そしてさらに、それがどう評価されているかということについて最初にお伺いをしたいと思います。

竹歳政府参考人 お答え申し上げます。

 都市再生、平成十四年度の都市再生法の施行以来さまざまな取り組みをしているわけでございますが、まず一つは、何と申しましても二十世紀の負の遺産。例えば、一遍大地震が起きて大火が発生すると、特に危険な地域というのが全国で八千ヘクタールあるとか、東京、大阪はそれぞれ二千ヘクタールある、道路も混んでいる、そういうような負の遺産をまず解消したいというのが都市の再生の一つの目標だったと思います。

 それから二つ目は、やはり日本全体が国際社会の中で競争して生き残っていく、そのためには国際競争力をつける、そういうようなてこ入れが必要ではないか、このような大きな観点から取り組んできております。

 そこで、大きく三本の柱でございますが、今まで取り組んできたプロジェクトとしては十六ございまして、例えば、東京、川崎における広域防災拠点、先ほど申し上げましたような、一たん大地震が起きたときのいろいろな防災拠点をつくらなくちゃいけない。これは国営公園と都とが共同してやっているわけでございますけれども、これについても十九年には一部開園をするんだというようなことで、早く安心して暮らせる都市にしたいというプロジェクトがございます。

 また、大都市圏における環状道路、それから羽田の空港、環境問題等々、十六の国家的プロジェクトについて今選定をして推進しているところでございます。

 それから二番目に、特に大都市、地方においても政令都市というような大都市において、民間の活力を活用してまちづくりを進め、また経済の活性化も進めようということで、都市再生緊急整備地域というのが既に五十三地域、六千ヘクタール余り指定されております。そういう中で、次々と民間のプロジェクトが立ち上がっておりまして、例えば民間都市再生事業について申しますと、七つ立ち上がっております。

 先日、都営南青山一丁目団地建てかえプロジェクトという起工式が行われましたが、これは、従来都心にあった公営住宅を、都営住宅と賃貸住宅、それからグループホームと図書館と保育所というような、都市に住み、働き、暮らす、そういうような一つのモデルとなるようなプロジェクトが行われておりまして、これについては金融的な支援も行われるというようなことで、一定の成果が上がっていると思います。

 三番目が、実は全国の都市を対象とした全国都市再生ということでございます。これにつきましては、各地からいろいろなアイデアを募集いたしまして、六百四十四件応募があって、そのうち百七十一件が全国都市再生モデル調査、先導的な都市再生活動として選定されたところでございます。

 ただ、これについては、それぞれの地域の自主的な取り組みということで今回お諮りをしておりますが、全国の都市再生、これをより強力に進めるために、まちづくり交付金というような財政支援措置と、それから権限を市町村に集中するというような枠組みによりまして、さらに全国の都市再生を推進していきたい、このように考えているわけでございます。

高木(陽)委員 今、竹歳局長が最後、全国の都市再生に取り組みたいということで、具体的に六百四十四の中から百七十一がそのモデルになったというふうにお話がございました。

 ただ、どうしてもイメージとして、都市再生という言葉を聞きますと、これは一般の方々もそうだと思うんですけれども、例えば六本木ヒルズですとか汐留ですとか、そういったイメージがかなりあるんだろう。しかしながら、モデル地域百七十一、これはこれでどんどん進めていかなければいけないんですが、やはり全国三千の市町村がある中で、それぞれ見てみますと、なかなかそう簡単には都市再生、まちづくりというのはうまくいっていないなと。

 実際問題、同じ東京で見てみますと、二十三区内というのは結構、もう少し言いますと、山手線の中ですね、または湾岸地域、こういったところは都市再生という形でどんどんいろいろな発展をしているんですが、その一方で、私の地元の多摩地域、石原大臣も山の手になりますけれども、もう少し都心に近いですけれども、そういった山手線を外れますと、まちづくり、都市再生というのがかなりおくれているというか、なかなか手つかず、または、考えてはいるんですけれども、どうしたらいいんだろう、そういうような状況になっているんじゃないかなとも思うんです。

 そういった中で、先ほどの最後の全国都市再生を推進する必要があるというお話もございましたけれども、国交省として、今回この法案を出すんですけれども、具体的にどういうふうな姿勢で臨もうとしているのか、それをちょっとお伺いしたいと思います。

竹歳政府参考人 日本の都市には主部人口でいいますと八割の人が都市に住んでいらっしゃるわけでございまして、これは東京、大阪の巨大都市だけではなくて、地方の中小都市も含めて都市に八割の方々が住んで、暮らして、働いていらっしゃるわけです。

 ただ、今御指摘のあったように、実は、東京といっても港、中央、千代田の三区ぐらいが大変にぎやかなので、東京都内でも二十三区、さらに多摩に行けばなかなかそれほどの活気はないということがございました。また、これがさらに地方都市に行けば、駅前のシャッター通り、中心市街地についていろいろ調べましたら、地方では九割の地区で駅前の中心市街地が寂れてきているというような問題がございます。

 また、高齢化社会ということで、今は自動車が運転できる、しかしながら、一人になって自動車が運転できなくなる、そうしたら、こういう駅から離れたところに住んでいて、あしたの晩御飯の支度もどうしようかというような新しい問題もいろいろ出てきていると思います。

 そういうことで、今回のこの全国都市再生というところでは、そういう皆様が身近に感じておられるいろいろな問題について応援をしていこうということでございますけれども、この中心市街地の活性化とかこういう取り組みは、やはり地域の意欲だけでできるというものでもございません。短期間にかなりの額の投資も必要となるということで、国としてもこれを支援していきたいということでございます。

 そういう意味で、国土交通省といたしましては、このような地域の意欲ある取り組み、個性的な取り組みを推進する、こういう観点から、今回まちづくり交付金の創設それから都市計画、道路整備に関する市町村の権限の拡充を内容とする本法律案を提出させていただいたわけでございます。

高木(陽)委員 ただいまの局長の答弁にありましたまちづくり交付金、これは今までの質問でも皆さん取り上げられましたけれども、注目されるまちづくり交付金でございますが、地方の自主性、裁量性を高めたい、こういった観点から導入するということでございます。今までの補助金というのは国が事前に関与する、これが大丈夫なのかということでいろいろとチェックをされておりましたけれども、このまちづくり交付金の場合には、事後的な評価を重視する、このようにうたっておりますけれども、具体的に、この交付金の事後評価、どういうふうにやっていくつもりなのか、その点をお伺いしたいと思います。

竹歳政府参考人 従来の補助金につきましては、道路なら道路、公園なら公園と、施設ごとに事前の費用便益分析などをやってきたわけでございますが、今回のまちづくり交付金は、それぞれ施設の費用便益だけではなくて、いろいろな事業の組み合わせがどのように町を活性化させ、みんなが安心して暮らせるようになるかということになります。

 例えば、古都の風格を醸し出すまちづくりというようなことをうたっておられるところがございますが、こういうところでは、定住人口の増大だけではなくて交流人口の増大というような定量的にわかる、そういうことを進めようとされているわけでございます。

 そして、こういう目標が事前に明らかにされるわけでございますので、事業の終了後において、本当にそれがどこまで達成できたんだろうか、計画と違って、何が問題で計画が達成できなかったんだろうかというようなことで、広く情報公開されて、透明な手続の中でまちづくり交付金というものを運用していきたい、このように考えているわけでございます。

高木(陽)委員 貴重な税金を使うわけでありますから、この事後評価をきっちりやらないと本当にむだ遣いになってしまいますので、その点はしっかりやっていただきたいと思います。

 その上で、この交付金が注目をされているんですが、もう一つの大きな柱である、市町村が自分自身の頭で考えるというか決めるというまちづくりの権限の一体化、これもやはり重要な柱であると思います。その上で、市町村のまちづくりに関する権限の拡充、具体的にどういう権限で拡充していくか、この点もお伺いをしたいと思います。

竹歳政府参考人 お答えいたします。

 現在、まちづくりに関する法律的な権限というのは、身の回りは市町村、広域的な調整が必要なものは都道府県というような大きな枠組みができているわけでございます。今回のまちづくり交付金、都市再生整備計画の運用は、ハード、ソフトを一体的に進めよう、それからスピーディーに、短期間に成果を出すにはどうしたらいいかというようないろいろな工夫をしているところでございます。

 したがいまして、都市計画について、一般的には都道府県が持っているような大規模な都市施設でございますとか市街地開発事業についても市町村へ移譲する。また、都道府県が管理する国道、都道府県道の新設、改築を実施する権限も、市町村へ一定期間を限って移譲するというようなスピーディーな取り組みができるようにしたいと考えているわけです。

 したがって、例えば、ある町が快適な歩行空間、道路景観を整備したい、それから道路や駅前をバリアフリー化したい。このバリアフリー化というのも大変我々真剣に取り組んでいるわけでございますが、このバリアフリー工事、電線類の地中化の問題等々、都道府県道で普通ですと市町村がいじれないというところ、協議に時間がかかる、それを一定期間市町村に権限を移譲して、そういうものを一体的に、バリアフリーとか電線類の地中化をタイミングよく機動的に進められる、このように権限を移譲することによって進めたい、このように考えているわけです。

高木(陽)委員 今もお話のございました例えば都道府県道、都道府県が管理する国道等々の問題も含めて、本当に一体化してやればスピーディーにできる。まさにそのとおりなんですが、なかなか現場は、自治体によってはそこまでしっかり考えられない方々もたくさんいらっしゃるんじゃないか。

 実際問題、それぞれの自治体、やる気のある、また能力のあるそういったところは結構なんでございますが、やはり現実問題、自分のところであっぷあっぷしていて、自分のところの例えばまちづくりであり、例えば駅前の再開発等々でもあるんですけれども、どうしても財政的な問題も含めて、知恵が回らないというか、そういう現状があるなというのを多々実感することもございました。

 そういった意味では、やはり国土交通省、現場でいえばそれぞれの地方整備局等、そういったところがしっかり、アドバイザーというか知恵を出してあげる、そこで連携をとってあげる、そういったことも必要なんじゃないか。あと、これは各市町村、今回のこの法案注目していますし、またこの交付金または権限の問題についても、それぞれ勉強もされていると思うんですけれども、さらなる広報といったものも必要なんじゃないか。これは答弁結構でございます、そういったことを国交省としてもしっかりやっていただきたいなと要望申し上げたいと思います。

 もう一つ、冒頭に申し上げました、まちづくりの主体というのは自治体であり、さらにそこに住む住民である。住民が参加をし、さらにはまちづくりに関してNPO等が大きな役割を担う、そういう認識を、この法案にもありますけれども、そういった中で、行政とNPOの連携または協働、そういったものを具体的にどのようにしていくのか、この点をお伺いしたいと思います。

竹歳政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、全国には約一万五千のNPO法人が認証を受けておられまして、そのうち一番多いのは保健、医療、福祉、福祉関連の方が八千五百、それから社会教育が約七千、三番目にまちづくりの推進というNPOの法人が認証されております。

 例えば、三島では、さっき蛍のお話がございましたけれども、NPOが主体となって、河川の清掃、蛍の幼虫の放流、花の植栽等を行って、水辺の自然環境を再生していくというようないろいろなまちづくりの活動をされておりまして、こういう方々を巻き込んでまちづくりを進めていくというのが非常に重要だと思います。

 これを制度的にもバックアップしていくということが今回の法案の一つのねらいでございまして、市町村が都市再生整備計画の中で、まちづくりの推進を図るこういうようなNPO法人でございますとか公益法人、こういう人たちの賛成も得て、こういう方々が実施する事業を位置づけて、それでそういう方々に市町村が財政的な支援もするということになれば、国もそれを支援するというような枠組みで応援をしていきたいなと思います。

 やはり計画段階からこういうNPO法人の方々の参画をいただくということが、将来の維持管理等々に、それから町を愛して、町に住む人が町を大事にするというような意味からも、非常に大事なことではないかと考えております。

高木(陽)委員 今NPOのお話をいただきましたけれども、いろいろな知恵を結集するということが必要ではないかなと思うんですね。行政だけでまちづくりをやりますと、どうしてもかたい雰囲気になってしまうというか、やはり住んでいる人、また、そこで生活をしている人、その人たちの感性、こういったものをしっかり生かしたまちづくりを行っていきたい、また、いただきたいというふうに思います。

 最後に、石原大臣にお伺いしたいと思いますが、先ほど民主党の委員の方とのまちづくりのあり方みたいな議論がございましたけれども、今回の法案については、多くの人たちが期待をし、また、それをどう使うか、これから本当に知恵の出しどころだと思うんです。そういった中で、この特例また支援措置を使いながら、どのようなまちづくりを大臣として期待をしておられるか、最後にお伺いをしたいと思います。

石原国務大臣 高木委員の御議論を拝聴させていただきまして、まちづくり交付金があり、さらに、市町村への権限の一体化が非常に重要であるという御指摘があったわけですけれども、やはりその根本は、各地域に住む人たちが、各地域の特性、ニーズに合わせた、自分たちの考えるまちづくりということをやっていただかなければならないんだと思います。ですから、画一的に、こういうスタンダードがあって、こういうスタンダードにのっとってまちづくりをやってほしいという気持ちは実は持っておりません。

 その一方で、やはり国土の均衡ある発展ということが都市政策あるいは国土政策の中心であったことによって、没個性の町がたくさん出てしまった。画一的な、どこを切っても金太郎あめみたいな町が多くなってしまいましたけれども、やはり、歴史的な成り立ちも違いますし、住んでいる方も違うというような話を先ほどさせていただきましたけれども、そういう方々の自由な創意工夫と発想によりまして、自分たちの町を自分たちの力でもう一回再生していく、そういうものにこのまちづくり交付金制度が役に立っていただければと思っております。

高木(陽)委員 しっかりこの法案を成立させるとともに、このまちづくりというものにしっかりと取り組んでいただきたいということを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

赤羽委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十一分開議

赤羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、国の補助金等の整理及び合理化等に伴う国土利用計画法及び都市再生特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、早稲田大学教授伊藤滋君、千葉大学客員教授原昭夫君及び大分県臼杵市長後藤國利君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、伊藤参考人、原参考人、後藤参考人の順で、それぞれ十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 なお、参考人及び質疑者におかれましては、御発言の際は着席のままで結構でございます。

 それでは、まず伊藤参考人にお願いいたします。

伊藤参考人 伊藤でございます。

 それでは、これから都市再生特別措置法の一部改正法律案に関する私の所見を申し上げたいと思います。

 お手元にメモがございますが、十個項目が書いてございます。これは簡単に申し上げます。

 まず、都市づくりの現在の世界的な流れは、コンパクトな都市をつくる、まとまりのいい都市をつくるということ、これは先進諸国共通の言葉でございます。多分、二十一世紀もこの言葉が使われるのではないか。コンパクトという後ろには、英語で言うサステーナブル、これも世界共通の言葉で、サステーナブルな都市というのがついてまいります。

 それから二番目です。これは国内的問題ですが、今回の都市づくりについて、地方都市が雇用をつくり出す。雇用をつくり出すということは極めて重要で、そういうことに貢献すべき都市再生特別措置法の一部改正ではないかと私は思っております。したがって、何らかの形で地方都市でこの法律が動いたときに、いろいろな、多様な雇用がつくられるということです。

 それから三番目。これもかなり国際的でございますが、最近、国土交通省の方で、これも御審議中だと思いますが、景観三法というのが出てまいりました。日本は、美しい都市をつくるということで、先進諸国の中で、やはりきちっとほかの国とも比較できるようにしなければならないと私は考えております。

 以上三つはそもそもの前置きでございますが、四番目で、私は前から、都市づくりは市町村がやるべきものであって、ちょっと言葉が過ぎるかもしれませんが、県庁というのは、市町村が表に出て、県庁は後ろからそれを支える、そういうことでなければならないと思っております。

 市町村の首長、きょう臼杵の市長さんもおいででございますが、市町村の皆様方が現在一番関心がある話題は、都市の中心部が非常に人口が減って、空き店舗が多くて、駐車場が多くて、そういう町が今全国的に広がってきているわけでございます。そこに何らかの形で人口を回帰させる、もう一回人口をもとへ戻したい。

 私は、この五番目の項目は、まさに国全体の基本的方針として、もっと強く位置づけられるべきだと思っているんです。都市の中心部がだめになっているために美しい都市ができないという、この三と五は行ったり来たりの堂々めぐりになっているのではないかと思っております。

 そういう都市の中心部をどうするかというときに、新しいまちづくりの分野が出てきているのではないかと私は思います。実は、この法律は、都市再生本部に係る法律の一部でございます。都市再生本部の基本方針の中でも、まちづくりは、高齢化、環境に優しい、そして安心、安全で美しい、こういうまちづくりをやらなければいけないというふうに言っております。

 狭い意味の都市計画からいいますと、高齢化というのは直接的には関係がございませんし、安心、安全、この安心というのは、私は犯罪のことを特に意識しながら安心と書きました。犯罪問題というのも都市計画に直接的には関係しませんが、しかし、現在の都市の中で、都市計画はこの領域をやるんだ、都市計画法に基づいてこの領域をやる、もうそういう時代は過ぎていると思うんですね。すべての仕事が都市の中で、都市計画も、住宅行政も、社会福祉の問題も、警察も、全部絡み合ってきております。絡み合ってきている中から極めて重要な課題が抽出されてくる、それを市長さんがつかまえてくる、こういうことになっているのではないかと思います。

 そういう点で、私は、この新しいまちづくり分野に、せっかくの交付金をこれから市長さんの方にどんとお渡しになるわけですから、こういうまちづくりの分野に積極的にお使いいただくということをやっていただきたいと思っております。それは、五番目の、都市の中心部を結果としてよりよくするということにもつながってくるのではないかと思っています。

 そのことについて非常に重要なことは、都市は常に点検をしておかねばならない。都市は点検をしておく。これは、市長さんやお役人の方は点検していると申されておりますが、実はこの点検作業というのは、市役所の人だけじゃなくて、住民の人たちあるいは専門家によっても常にあらゆる角度から点検しておく。その点検の結果をきちっと記録し、議論をする。これからそういうまちづくりの姿勢を明らかにしていく必要があると思います。

 何を言っているかといいますと、ここに負の遺産の解消と書いてあります。負の遺産の解消というのは、率直に言いまして、これまでつくってきた公共事業が本当に市民のためによかったか、国のためによかったのか、美しい都市づくりに貢献しているのか、こういうことをもう一回点検する時期に来たのではないかと思っております。

 負の遺産の解消というのは、都市再生本部スタートのときの非常に大きい都市再生基本方針の柱でございます。そういう点で、特に地方都市においても、今までの公共事業について総点検をして、もしかすると、例えば、美しくあるべき市街化調整区域の中に突然ごみ焼き場がつくられたなんというのは、美しい田園都市景観にとってはマイナスの要素でございますから、これは当面必要だったかもしれないけれども、今の時代になりますと、明らかに公的な負の遺産になるわけですね。

 こういう施設がいっぱいございます。こういうことをぜひ点検していただくというのも、まさに今度の都市交付金がそれを助けてくれる、そういう可能性を含めていると私は思っております。

 それから、今度の法律で私は非常に重要だと思っておりますのは、事後評価でございます。これは、率直に申しまして、交付金を皆様方の市にお渡しするときには、当然のことですが、事前評価は当然いたします。国なり県なり市なりの方が集まって事前評価します。ところが、今までの補助金は事後評価をほとんどされなかったわけです。今回は、事前評価し、事後評価をするわけですから、こういう形で国民の税金というのがきちっと位置づけられてくる。マイナスはマイナス、プラスはプラスで明らかになってくる。これは大変大事なことではないかと思います。

 あと二、三分ほどあると思いますので、ちょっとジョークを申しますと、事前評価しかなかった補助金行政というのは日本の大学の入学試験と全く同じだったわけですね。入ってしまえばあとは知ったこっちゃないというのが大学の現状で、日本の現状なんです。そうではなくて、大学へ入るならどんどん入ってきなさい、問題は、ちゃんと能力を持って卒業できるかどうか、そういうふうにこれから大学が変わろうとしております。そういう点で文部科学行政と国土交通行政が歩みを一つにして動いていかれるということになれば、これは国家にとって大変いいことではないかと思っている次第でございます。事後評価というのは大変重要な仕事でございます。

 九番目です。しかしながら、率直に申し上げまして、市が六百ぐらいございましょうか、すべての市の職員の皆様方に企画力、実行力があるかというとこれは大変大問題でございまして、新しい交付金をきちっとこなせるだけの能力のある職員も必ずしも多いと私は思っておりません。例えば人口五万の都市なんかでは、多分、都市計画課という課もないかもしれませんね。ですから、そこで企画力、実行力を強化するためにどうしたらいいかということです。

 これのために、私は、十番目で、専門家の存在が極めて重要になってくると思います。専門家が市役所の職員の後ろをきちっと支える。そして、その担当の市役所の職員にいろいろな情報を提供し、議論し、判断に対しての方向を示す。こういうことをしない限りは交付金というのはきちっと使われないと思うんですね。まさに交付金というのは、知恵を必要とする国の税金だと思っております。知恵と、新しいビジョンに対してビジョンを実現するという姿勢、知恵と姿勢、これを要求する国の税金だと私は思っております。

 そういう点で、この九番目の、市役所の中での職員をどういうふうにして企画力と実行力を強化できるか、これが最大のこれからの問題ではないかと思っております。

 最後に、十番目で、そういう市役所の職員を支えるということの重要な後ろ盾は、まさに専門家と住民との協働によってこの交付金をいい形で使おう、新しい意味で、十番目は、市役所と専門家と住民、この三者が一体になって、省庁に非常に広くまたがっている都市のまちづくり問題を解いていく、そういうことをやる。それに一番ふさわしいお金が実はこの交付金じゃないか、そういうふうに考えている次第でございます。

 以上で、私の説明を終わらせていただきます。(拍手)

赤羽委員長 ありがとうございました。

 次に、原参考人にお願いいたします。

原参考人 原でございます。

 それでは、引き続きまして、今度の都市再生法の改正、それに絡むまちづくり、市民参加、そうしたことを幾つか所見を述べさせていただきたいと思います。

 その前に、若干自己紹介的なことをさせていただきますと、私は、現在は大学の教員をしておりまして、まちづくり、都市計画、環境、そうしたことを講じたり勉強しておりますが、実は一昨年までは、自治体職員としてずっと三十数年働いてきたわけであります。

 ちょっと申し上げさせていただきますと、一番最初は、東京生まれでございましたこともあって、東京都庁で土地利用、都市計画、そういう仕事を始め、それから、沖縄県が日本に復帰をしたのを機会に、まちづくり技術者として、当時人口四万人の名護市役所でまちづくり担当者として、企画担当者として働きました。その後、世田谷へ戻って世田谷区でずっとまちづくりをしてきたということでありまして、自治体のまちづくり、あるいはそれに絡む諸問題、お金のことなどは、大変苦労、喜びを感じながら仕事をしてまいったということであります。

 きょうは、ですから、そういう自治体におった、あるいは住民としておったという立場から、今回の改正について若干意見を述べさせていただければと思います。

 きょう、お手元に、手書きで大変汚い字ですが、四項目ほどお話ししようと思いましたものを配らせていただいております。

 都市再生、ともすると、大変大規模開発で、高層の事務所ビルを立ち上げる、そこに海外から来るビジネスマンが走り回る、そんな姿がややイメージとして強くなっておりますが、実はそうではなくて、本当の都市再生、環境再生、地域再生というのは、やはり地域の生活者の生活再生でありたい、それに結びつく生活環境の改善及び生活の向上というのを図るのがもろもろのこういう法律の目的でなくてはならないと思っております。

 その生活という中で、特に生活環境、物的な基盤整備というところで今回の都市再生法が役立ってくれればと願うものでありますが、基本的に、住む人に対して居住の問題、それから、そこで働く、今伊藤参考人からも出た雇用の問題、そうしたものをもろもろすべて含んで生活再生、生活の質の向上ということがなされることが必要であろうと思います。

 そうしますと、従来のような大規模クリアランス、スクラップ・アンド・ビルド、そういうものではなくて、恐らく保全とか修復とか、今まであるものの用途の転換とか使いかえとか、そういう、今までは余り手法としては磨かれてこなかったこともしっかり踏まえて、生活の質をつなぎながら、磨きながら向上させていくということがねらいとなるべきではないだろうかと思っております。

 二番目ですが、そういうことで地域が大事であるということであると、やはりそこでのまちづくり主体としては、地域自治体、基礎自治体、そうしたところがしっかりコアになって、そこに総合力、技術力、そうしたものをすべて集中させながら、権限、人材、お金、そうしたものがそこでの裁量に基づいてかなり使えるということを保証していくようなものでありたいと思います。

 ここでまちづくり力というような言葉を使いましたが、人々がみずからの環境をみずからの意思と将来の展望に従って力を発揮して協働してつくり上げていく。そういう地域社会づくりをするために、基礎自治体がコーディネーターになり、リーダーになり、そこで基盤整備をしっかりさまざまな主体と協働しながらやっていく、そういうことでまちづくりが進めばと思っております。そして、そのまちづくり事業や活動に市民がしっかりかかわることによって、地域のコミュニティーとか地域社会のさまざまな、今やや分断されたり、なくなってしまっているものをもう一度回復する、そういう手伝いになるような法律にぜひなっていただきたいと思います。

 現在、市町村をめぐる課題は、御承知のとおり、かなりいろいろなことがあります。分権とか、それから市町村合併、そういうものがありますが、そういうことを通して、地方主権といいますか、その拡充ということが力づけられるような事業になっていきたいものだと思います。

 その基礎自治体がみずからプランをしてさまざまな事業を束ねていくということで、今回の改正で、従来の行政の縦割り、国がやる、都道府県がやる、市町村がやるという縦割りをやや超えるようなことが少し述べられていることは評価をしたいと思っているところであります。

 例えば、国道、県道、市町村道というものが従来それぞれの主体の都合によってばらばらにつくられてきて、結果的に環境基盤づくりとしてはややそごが生じたというようなこともなかったわけではない。それを、今回、市町村がイニシアチブをとることによって、市町村の、地域の道路ネットワークとして、交通ネットワークとしてしっかりもう一度組み立てていくということができるようになりたい。

 それにあわせて、例えば河川沿いの、河川敷の道路などがありますが、これは国が管理をするというようなことだと、今まで、国の道路と河川と市町村の道路というのは全くばらばらに整備をされて、せっかく線的な、リニアな基盤であるにもかかわらずそれがばらばらであった。よそから来る人は大変わかりにくい、使いにくいというようなことが生じていた。それをぜひ、歩行、自転車、そういうものをもう一度地域の交通手段としてしっかり考えるのであるならば、そういうものをしっかり市町村がリードして、例えばサインの統一のシステムをつくるだとか、要らない看板を取って美しい町につながるようなことを市町村がやっていくことができるかもしれません。そういうことを保証するような制度、枠組みになればと思っております。

 あるいは、自治体が基盤になりたいと言いましたが、時には隣接する自治体がそれぞれ手を合わせて、そういう線的な施設というのは自治体をまたいで整備されることが多いわけですから、それが隣接自治体としっかり協議が進めば今度の交付金が少しプッシュアップできるというようなこともあると、自治体同士のつながりということも力を増すことになるかもしれません。そうしたことを通して市民参加を促すというようなことをぜひ今度の事業の中でやっていければと願っております。地方に力をということを申し上げたいわけであります。

 それで、基盤の整備をするだけではなくて、例えば道路整備というのは、交通管理者というのがありまして、道路管理者と交通管理者というのは主体が違って、大変地方、地域ではその整備が、場合によってはそごを来すというようなことも多い。せっかく歩行者道路をつくりたいと思っても交通管理者からイエスが出ないというようなこともあったりするので、今度の物的整備を促すこの制度が地域に主体を与えるということであれば、交通管理者その他さまざまな主体との協議というのももう少し緩やかにやれるような、そういう促しがあってもいいのではないかと考えます。

 三番目で、今回の主たる内容であるまちづくり交付金について少し所見を述べます。

 これも、今申し上げたように、地域の独自性、個性、そうしたものが発揮できるような、その場だけの、あるいは短期間だけの問題解消ということではなくて、長期間に使い得る地域ストックづくりに資するようなことを促すようなものでありたい。

 今回の目玉の一つとしては、かなり総合的、複合的なことが市町村主体でできる、自由な組み合わせができるということがやや保証されつつありますが、それをさらに広げて、さまざまな複合が、今気がつかないようないろいろな複合が出てくることを期待して、そういう複合のいろいろな仕組みを支えるようなものになっていきたいと思います。

 さらに、建設をする、箱をつくるというだけではなくて、建設に向かうさまざまな準備、例えば、いろいろまちづくり協議会というのをつくる、その支援ですとか、場合によっては建設のための設計コンペティションというようなことをやることができれば、そういう準備の、さまざまな啓発事業というようなことに対してもお金が出るような、そんな幅広いシステム支援というようなことも考えられたらいいなと思っております。

 さらに、この交付金でありますが、当然市町村もある負担をしなきゃいけないわけですが、優先的に起債措置をこのまちづくり交付金を得る場合にやっていただくとか、あるいは、もし市民が、ある施設をつくるときに市民債を組むというような動きがあれば、その市民債を組む、市民参加というのを促すということを評価して少し交付金のアップをする、そんなインセンティブをとるようなこともあると、住民がみずからの町にもっと目を向けるという機会になるかもしれません。

 それから、手続の問題ですが、私は自治体におりまして、補助金行政というものの中でどっぷりいろいろ事務を担当しておりました。補助金の申請からさまざまな都道府県協議、国の協議、それから年度の末には、ちょうど今ごろの時期ですが、会計検査ということで、大変そういうのに翻弄されるということが市町村の建設事業の実態でもありました。

 そういうことをしないで、なるべく市町村の、パワーが少ないと先ほど伊藤参考人が言われましたが、パワーが少ないまちづくり職員、技術職員がパワーが発揮できるようにするためにも、手続をできるだけ簡単にするということも考えていきたいと思います。

 最後、四番目ですが、この制度そのものの目標として、短期的な景気浮揚とかそういうことではなくて、持続的な地域ストックをしっかりつくっていく。環境型、循環型の社会ということが求められている今、それを支えるような制度になっていく必要があるだろう。だとすると、都市再生事業全体のポリシー、ビジョンというものもこの事業主体としては考えたいところであります。

 これは市町村が独自に考えろということかもしれませんが、せっかくこの事業に対して国費を、税金を原資とした国費を投入するわけですから、これを長期的に各地に投資することで大変さわやかな地域社会ができる。

 例えば、屋上緑化は必ず義務づけるとか、そういうことをみんなでやるとか、徹底したバリアフリーをこの事業でつくる施設はやるだとか、あるいは建物の省エネ化とか環境共生型の施設をつくるとか、それが安心、安全のまちづくりにつながっていく、美しいまちづくりにつながっていく、そういうことを基本ポリシーとして幾つか筋を通すことが大事なことではないのかと考えます。

 単なる財政措置にとどまらないで、新しい時代の地域づくりに新しいポリシー、これを通して新しい地域の環境ができる、地域社会ができる、そんなことも期待したいところであります。そして、それを通して、あるいはそれを担当する者が、人材、技術力を磨いていく、地域にまちづくりパワーがしっかりできていく。さらに、それがまちづくり学習というような広がりを持って、人々がもっと地域社会やら環境に目を向けて責任を持つ、そんな機会になるような制度になっていけたらなと感じております。

 以上で、最初の所見を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

赤羽委員長 ありがとうございました。

 次に、後藤参考人にお願いいたします。

後藤参考人 大分県臼杵市長の後藤國利でございます。

 まちづくりの現場を預かる市長の立場から参考意見を述べさせていただきたいと思います。

 皆さんのお手元に資料を配付させていただきましたけれども、一ページ目は臼杵市の位置を示す地図であります。二ページ目は、臼杵市というところなんですけれども、戦国時代、江戸時代、そのころからずっと昔どおりの町割りが残っているという特殊な町であります。

 この町の持つそういう特性を生かしながら、臼杵の臼杵らしさ、それから日本らしさというのを育て守っていこうというようなことでさまざまな施策をやっておりますけれども、それが、ページが入っていませんけれども、その次のページにある地図であります。

 まちづくり、さまざまな事業を行っておりますが、これがこれまでの補助事業あるいは県の事業、県の事業で足りないところは市の事業というようなことでやっておりますので、点と線の事業、この点と線の事業をいかに面の事業にするかというのが大きな課題であります。点と線をつないで面にする、そういう意味では、今度の交付金は面的な配慮がなされた初めての事業であるということで、大変大きな評価をさせていただいているところであります。

 その点の整備をどんなことをしたかということを示すのが、次のページの写真であります。

 そして、その次の、三ページというところから後なんですが、これからお話ししますことを補強するような写真をということでそろえてまいりました。

 臼杵市なんですけれども、東九州の大分県の南の方に位置する、約三万六千の小さな町です。二年前にようやく東九州自動車道が届きましたけれども、いまだに交通過疎地の一つであります。南隣の宮崎県の都城市に用事があって行こうとしますと、一たん臼杵から北の方に行きまして、別府から大分自動車道を通って、福岡県を通って、佐賀県鳥栖から九州自動車道で熊本県と鹿児島県を経由して宮崎県に入らなきゃいけない、こういうようなところであります。

 こういうような交通が不便であるということが悪いことだけかというと必ずしもそうではありませんで、そのおかげで古い町がそのまま残ったというような利点もあるわけです。

 こういうところなんですが、近くの別府市に立命館アジア太平洋大学というのが開設されまして、内外から優秀な学生が集まるようになりました。これらの人たちと一緒に交流をしながら世界的な視野で町を考えようということで、さきに国土交通省事業で始まりました全国都市再生モデル調査というのを活用させていただきまして、市内でいろいろな試みをいたしました。

 市内に残る江戸時代の屋敷に合宿をして、交流セミナーというのを行いました。その屋敷では、ふろは五右衛門ぶろ、かまどは昔のままのおくどさんで、もちろん畳に布団です。昔ながらの町並みで、市民と一緒にいろいろな祭りのための作業等もやってもらいました。

 ここに参加した外国人の学生、複数の学生から、こんな意見をいただきました。

 私は学ぶため日本にやってきて、自分は、今、日本に来ているという実感を得たいと思うんだけれども、どうしても実感を得られなかった。それで困っていたけれども、京都に行っても東京に行っても、日本探しをしても日本を実感できなかった。ところが、この町に来て、ここで時間を過ごしてみて、初めて日本に来ているということが実感できました、そういうようなことでした。

 我が国には、今、五百万人の観光客が訪れているということであります。これは、我が国から出かける千六百万人の三分の一にしかすぎません。この五百万人という数は世界で見ると三十五番目ということで、この順位はだんだん下がっている、情けないことだというふうに伺いました。

 私たちが外国に旅行するときに、その国に残されている自然というものを見たいというのは当然なんですけれども、同時に、都市の魅力にも触れたいというふうに思います。外国の都市に期待するのは、ただ生活の利便性とか国際的な雰囲気とかいうことではなくて、その国らしさを味わうことだということに違いないと思います。

 我が国の魅力が薄れた原因は、恐らく、日本らしさを失って、国際化を追いかけたからではないでしょうか。日本らしさの喪失だけではありません。全国どこの地方都市に行っても似たような近代的な建物だらけで、今どこに来ているのかというのがよくわからないような状況であります。その土地らしさ、その町らしさを感じることも少なくなってきていると思います。

 戦後の我が国は、廃墟の中から立ち上がって、スクラップ・アンド・ビルドが最高の手法、こういうふうに信じてきました。伝統的な建造物を壊してしまうこともちゅうちょすることは余りありませんでした。それは建物だけじゃなくて、風情や心といったものまでも同じようなところであります。

 余りにも急ぎ過ぎて、そして追いつき追い越せということばかり考えて、時間を短くしようと考えたために、ゆっくり、ゆったり過ぎていく時間と仲よくする、そういうような気持ちまで失われてしまったんじゃないだろうか。

 もうこのあたりで立ちどまって、日本らしさを取り戻さなければいけないというふうに思う次第であります。今が、そのらしさを取り戻す最後のチャンスだと思います。今取り戻さなかったら、永遠に取り戻すことができないんじゃないかというふうに思います。

 そのためには制度の転換が必要でありまして、これまで、一つ一つの事業に限られて、そして、あるいは組み合わせでないと事業を認めないとか、そういったような形で補助金でもって縛られたいろいろな仕事をしてきて、そういったことが国を壊してきた一つの原因でもあると思いますが、これからは、計画の統一性、それから、それが本当にうまく活用されるのかという事後の評価、こういったようなことが大変必要になろうかというふうに思う次第であります。

 今回の交付金についてなんですけれども、目標設定と事後の評価をするということでありますが、これは当然のことだと思います。臼杵市では、全国に先駆けまして、平成十年からバランスシートをつくっています。そして、資産内容の変化を情報開示しながら、これを事業評価という形で市民に評価してもらって、それによって事業を選択するということで大きな効果を上げております。目標設定とその追跡調査というのは、これは欠くべからざることだと思います。

 もう一つ申し上げたいのは、地方のまちづくり能力であります。

 先ほど伊藤先生からも、五万人以下だめといったような話でしたけれども、うちは三万五千であります。そういうような御心配をあちこちでいただくんですが、地方都市の中には、日本らしさ、その町らしさというものを再生するためのまちづくりに強い意欲を持って、また高い能力を持っているというところも、決して多いとは言いませんが、少なくないとも言えませんけれども、幾らかあると思います。そういうようなところをモデルにして、そして、そういったような動きを広げていくというのがこれからのやり方ではないかというふうに思うわけであります。

 臼杵では、日本らしさ、臼杵らしさのまちづくりを続けております。そして、それによって中心市街地の活性化も相当できてきました。ほとんどのところで中心市街地ができないという中で一体どうしてここはできたんだというようなことで、たくさんの視察もいただくようになりました。

 これまでは、そういうような事業を行うために複数の事業を組み合わせながらやっていたんですけれども、今回の交付金ということによって面的な整備が、かなり考えるゆとりが生まれました。

 ちょうど臼杵の町の中心にお城があったんですが、これまでは、戦後に建ったところの商業ビルなんかでそれが隠されていましたから、お城から町も見えなかった、町からもお城が見えなかった。今、それを街路整備事業で取り除いたら、こんな町だったのかという驚きが返ってきたような、そんなところです。

 この交付金が成立いたしましたら、これを生かしながら、日本らしい町だな、昔からのものが残っているな、昔の日本がどうだったかというのはあそこに行けばわかるよというような、そんな町をつくっていきたいと思っております。

 この交付金には大いに期待しているということを申し上げまして、終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

赤羽委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。梶山弘志君。

梶山委員 自由民主党の梶山弘志でございます。

 三人の参考人の方々のそれぞれのお立場、そして御経験に基づく貴重な御意見をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございました。

 都市の再生の問題、これは、東京という大都市から地方都市に至るまでそれぞれの地域が抱えている問題であり、また、その解決方法は千差万別、それぞれの地域の数だけあると思っております。そして、今までのシステムの中では、なかなか地域の能力というものが発揮できなかった、隠れている能力が私もあったと思っております。そして、その眠っている能力を呼び起こすためのまちづくり交付金というのは、新しい制度であると感じております。

 町に関しても、住民の側から見るまちづくりのあり方、そして経済の面から見るまちづくりのあり方、さまざまな見方があると思っております。また、大都市における経済面でのまちづくりのあり方、地方都市における経済面でのまちづくりのあり方、そのように多様な見方があるわけであります。

 平成十四年に施行されました都市再生特別措置法、そしてこれを改正して、新たに、今申しましたまちづくり交付金制度を創設したわけであります。ここに至るまでの、都市再生本部、そしてこの法律というものは、大都市を中心として、例えば選択と集中と言われるような言葉に代表されるように、緊急経済対策的な役割、また民間を通じての都市開発、投資促進というような目的を持ってこの政策が行われてきたわけでありますが、ここに至るまで、一定の役割を果たしたことはだれもが認めるところであると思います。

 それについて、過不足があるかないか、また、その全体の評価、総括というものを、都市再生戦略チーム座長である伊藤参考人にお伺いしたいと思います。

伊藤参考人 ただいま梶山先生から御質問ございましたが、御意見のとおりでございます。

 今からもう三年以上前になりますが、日本の特に金融事情がどうだったかといいますと、もう破滅的状況でございまして、不良資産は物すごく地価の下落でふえておりまして、失業率も急速に、今までの二、三%から五%ぐらいに上がったんです。そういう状況が約三年前、ちょうど、私よく言うんですが、橋本内閣が変わるころ、あのころに起きました。

 もうなりふり構わず、この状況を脱するためにはどうしたらいいかという議論がありまして、その結果として生まれたのが、私、率直に言って、都市再生本部の設立だったと思っております。亀井政調会長が当時非常にその分野について神経使いまして、亀井政調会長の御性格もございまして、単純明快に東京へ切り込もうという、私から見ると、その前後で自民党、大都会で負けていましたから、自民党の失地回復を大都会でやるんじゃないかと外から見ていたんですけれども、表向きはやはりそういう危機的状況だったんですね。

 そのために何をやるかというのは、基本的に言うと、地価をあるところでとめなきゃいけない。特に象徴的な、皇居の周りとか東京駅の周り、極めてシンボリックなところで地価の下落をとめなきゃいけないんです。とめるためにはどうしたらいいかというと、土地の取引をふやさないとだめなんです。これは自明の理なんですね。土地の取引が多くなると、土地の値段というのは底を打ちます。それで必ず上がってくるんですね。

 この土地の取引をどういうふうにしたらいいかというと、それは、その土地に魅力を持たせなければいけない、企業から見て。魅力を持たせるというのは、ぶっちゃけて言いますと、東京、大阪の中心部では容積率をふやせと、もう完璧にきょうの参考人の議論と全く反対のことをやらざるを得なかったんですね。一種の緊急措置でございました。ですから、まさに緊急整備地域というのがこの都市再生特別措置法から大都会について出たわけなんですけれども、まさに緊急措置でした。

 おかげさまで、緊急措置で都心部の土地利用についてかなり思い切った容積率の撤廃とか、そういうことを認めたということと、それから、国際経済情勢の変化がちょうど一致しまして、御存じのように、東京では数多くの超高層ビルがつくられるようになりまして、三年前から現在までで、土地取引に伴うビル建設は多分三兆円ぐらいの規模になっているんではないか。相当の経済刺激効果がありました。

 しかし、それはあくまでも緊急措置でございまして、本来、やはり都市再生といったときには、先ほど、私を初めとして三人の参考人が言ったように、先進国日本として、二十世紀にやってきたことを点検し二十一世紀の展望を開くとなったときに、経済は成長したけれども住宅と都市は極めてお寒い状況であるということは、これはだれにとっても明らかだったわけです。

 特に、これもちょっと言い過ぎかもしれませんが、地方は豊かになりましたけれども、地方都市はほとんどよくなりませんでした。地方は豊かになりました。しかし、地方都市はよくなりませんでした。それに対して思い切った投資をするということは、やはり地方の人たちが自分の町について関心を持ち、自分の町について誇りを持つということで、そこで、東京や大阪へ行かないで自分の都市の中で知恵を働かそうと。知恵の結果が雇用を生み出すんです。そういうふうにあるべきであったわけですね。

 皆様、外国旅行をされて帰ってこられると、がっくりしてお帰りになると思いますね。率直に言いますと、私、よく悪口言うんですけれども、水戸と宇都宮の駅前広場ぐらい惨たんたる広場はないと。人口は大体三十万以上ですね。ところが、ドイツとかフランスとかイタリアの人口三十万の都市に行きますと、教会と市役所と商工会議所とを従えて、まことに美しい都市の心臓部があるんですよ。それを見て僕たちは、美しいとカメラで写真を撮るんですね。ですが、そんな写真撮るようなところ、水戸の駅前、宇都宮の駅前、前橋もそうですね、駅前にあるかというと、ない。まず、それから直さなきゃいけないのです。

 やはり、世界のそれなりの人たちが来て東京を見たときに、都市が美しくなきゃ観光に来ないんですよ。それで、僕、非常に例外的な事例が臼杵市だと思っているんです。臼杵市は、外国の人に胸張って見せられる町並みがあるんですよ。フグだけじゃないんです。ちゃんとした町並みがあるんです。これは専門家が太鼓判を押すから間違いないんです。

 だから、そういうところがあるのに、大部分の都市は本当に貧弱な貧相な町になった。これを直さなきゃいけない。それが、全国都市再生の緊急措置の稚内から石垣までなんですね。

 稚内から石垣というのは、地方にお金行くかもしれないけれども、それは都市に入れてくれという悲痛な叫びなんですね。地方に入れるということの中に、都市に入れてくれよと。じゃないと、国道のバイパス沿いに駐車台数二千台のショッピングセンターができたり、いろいろなつまらない店をいっぱいつくって、都市はますます醜くなり、田園は荒れちゃったわけですね。あれは都市に金を入れていないからです。まさに都市の中心部に金を入れていない、そういうことです。

梶山委員 その水戸の茨城の私は選挙区なんでありますが。

 今回のまちづくり交付金の意義なんですけれども、今まで全国一律の価値観をみんな持たされてきた。大きさであるとか速さであるとか効率性、または金額の多寡、そういったものを、これからそれぞれの価値観を持っていこう、場合によっては、午前中の質疑でも出ましたけれども、スロータウン構想というようなものもあり、ゆっくりとした時間も都会の人にとっては魅力ですよ、そして、手間暇をかけることも、合理性はないけれども、それも子供たちの教育になりますよ、そして、歴史のあるものを大事にすることが、やはり脈々と続いている日本の文化というものを意識することになりますよ、そういったものが今回の都市再生の本旨であると私は思っております。

 ただ、この問題というのは、ずっと右肩上がりの成長のときからそれぞれの都市が内包をしてきた問題でありました。しかし、その経済成長が、すべてを包み込んで経済成長しているんだからいいんだろうということで来てしまったような気がいたします。そして、経済成長がとまって、今どうしようということで、十数年来の懸案としてそれぞれの市町村でやっているわけであります。きょう、後藤市長お見えになっている臼杵市は数少ない成功例でありますが、全国の数多くの市町村が試行錯誤をいまだに繰り返しているというのが現状であります。

 これまでの制度の問題、また役所の関与のぐあい、そしてテーマの選択、いろいろな問題点があろうかと思うんですが、今までこういった市町村の取り組みというものが大方失敗に終わってきた原因というものはどの辺にあるとそれぞれの参考人の皆様、お考えでしょうか。

原参考人 自治体で働いてきた立場からまた申し上げますと、さまざまな原因があろうかと思います。今回それを直そうとされているわけですが、やはり一番は、地域の基礎自治体に、いろいろな権限、お金を使う判断の幅が大変狭かった。すべて、国庫補助金の基準ですとかそういうものに従わざるを得ないのでやらなかったという制度的なことが一つあったかと思います。

 結果としてなかなか地域の自治体で総合的にまちづくりを考える人材が育たなかったというのは、先ほどの話題になりますが、それは自治体が悪いというよりも、やはり縦割りで、日がなそういう仕事をせざるを得なかった、総合的に仕事をする経験というのが大変少なかったということも一因であろうかと思います。

 ですから、今度の仕事を通して、ぜひそういうことも促すような、あるいは幅広く環境学習というようなチャンスも、できるならば、例えば地元に大学、工業高校があるのであればそれとの連携もできることを許すような、そんなことになればと願っております。

後藤参考人 二つ申し上げたいと思います。

 一つは、最近の都市再生等に伴うところの制度、提案型になっていまして、余り時間のない中で提案をするようにということが求められるわけであります。この提案をするということが、それも余り時間かけないで早く提案しなさい、こういうふうになりますと、その提案、企画競争というのは、コンサルタントに頼むんじゃなくて、オリジナルな企画力を常日ごろからどれだけ持っているかということが一番大事なことになるので、このオリジナルな企画力競争に勝ったところを育てるという今のやり方は大変すばらしいと思います。

 それともう一つ、今梶山先生の御質問の中にありました、高度成長のときにはどんどんやれたけれども今はどうだ、こういうことでございますけれども、臼杵市は、先ほどの説明でも申し上げましたような、東九州にあるリアス式の海岸のところです。魚釣りの名所でもあります。魚釣りの人が多いんです。

 魚釣りをする人に聞きますと、魚釣りの一番いい時間というのは引きの三分という時間なんだそうです。上げの三分、引きの三分と言いますけれども、引き潮が始まってちょうど二時間ぐらいしたときに一番よく食うんですね。上げ潮のときには、波止場、はそで待っていて、お魚が寄ってきて釣れるんですが、大した魚は釣れません。引き潮のときに瀬に行って釣りますと大物のいい魚が釣れる。一番釣りどきは、引き潮のときなんです。

 事業もそんなものだと思います。これから、釣り師の腕がいいか悪いかというのが試される時代なんで、だれでも、どんな素人でも何でもそこそこの魚が釣れるということじゃなくて、本当に腕のいい釣り師が大きな魚を釣る、そういうような時代だと思います。

伊藤参考人 法律に従って役人が動くということが明治以来ずっとやられていたわけです。自分の所管する法律解釈の中でいろいろな仕事を処理してきたんです。ですから、法律を厳密に解釈したり自由に解釈したりというのも、これも役人がやっていたんですね。しかし、別な法律とのつながりは関係なかったんですよ。そこに僕は問題があると思うんですね。

 ですから、都市再生本部が常に言っている省庁連携というのは、法律を複数の人間が同時に見る、三人が三つの法律を一つずつ所管するんじゃなくて、三つの法律を三人がお互いに見合ってそれで議論する、そういうことをやると随分違ってくると思います。

梶山委員 今、小泉総理が、民間でできることは民間で、地方でできることは地方でと言っておりますけれども、地方においても、できるだけ住民参加でこれまでの行政で行っていたものをやりたいということで、今それぞれの地方でそういった取り組みが行われております。

 今回の制度、NPOも参加をでき、また、これをNPO法人等の民間まちづくり主体との協働という形で取り入れています。NPOが町に対する一つの行動を行っていることを認定するのは簡単だと思うんですけれども、大きなまちづくり、町のイメージを変えていくような取り組みという形で特定のNPOが入っていくことは、コンセンサスを得るためにはなかなか難しいのかなという気がいたしております。

 現状、臼杵市でこういったNPOが入ったような取り組みがあったのか否か。そして、これから後藤市長がイメージしているこの制度の活用方法として、NPOがどのように入っていければいい制度になるというような思いをお持ちになっているか、お聞かせいただきたいと思います。

後藤参考人 都会においては、NPOを活用というのは大変有意義なことであろうかと思いますし、また、NPOがお金を集めるというようなこともかなりの程度できるんではなかろうかと思います。ところが、地方都市においてNPOがお金を持つということは、まず余り期待できないと思っております。

 それで、地域を活性化させるためにどうすべきかということにつきましては、私は、やはり、お酒をつくるときに一番最初のこうじをつくるのをどうするかということになりますと、これは行政がやらなければ、民間にそういう基礎的ないろいろなものを整備するということまで丸投げしても、NPOと言おうが何と言おうが、民間もそんなことはちょっと無理だと思います。

 そうではなくて、今度それをさらにお酒にうまく発酵させるとき、この発酵させるときにいろいろな、NPOを初め民間の人の知恵と活力と能力が必要になってくるわけで、活用してそれで実際に効果を上げるときに、NPOを初め民間の方々の力をいかに引き出すかということがかぎなんだろうと思って、いろいろな試みをやっております。

梶山委員 あと何問かお聞きしたいんですが、ちょうど時間がなくなってまいりました。

 今回の制度は事後評価の制度も入っているということでありますが、これは役所が事後評価するということではなくて、私は、まちづくりは後世の世代の評価にたえ得るかどうかということが一番のポイントだと思っております。

 そういった観点から、この制度の運用、また、それにかかわる人たちが意識を高めていくことが大事なことであると思っておりますし、私も地域住民の一人としてそういったことを意識しながらまちづくりに取り組んでいきたいと思っております。

 以上、感想を述べまして、質問を終わります。ありがとうございました。

赤羽委員長 伴野豊君。

伴野委員 民主党の伴野豊でございます。

 本日は、まちづくり、都市計画で著名なお二人の先生方と市長さんにお越しいただきまして、学生時代から都市計画をかじっております私としましては、久しぶりにけいこをつけていただける、そんなような気持ちでわくわくしてやってまいりました。どうぞよろしくお願いいたします。

 我が民主党でございますけれども、今政府のお出しいただいている地方行財政改革、いわゆる三位一体改革につきましては甚だ不十分であるという評価をしておりまして、それに関する関連法案に対しましても余り芳しい評価をしていないわけでございますが、本日案件となっております本件につきましては、非常に前向きな公共事業あるいはまちづくりのとらえ方ではないか、百の地域があれば百の手法とまちづくりがあるんではないかという観点から評価しているものでございます。難産でありながらも何とか産み落として、産婆さんとしての一翼を担いたい、そんな覚悟も持っているわけでございますが、いろいろまた御示唆をいただければと思うわけでございます。

 そして、本案がうまくいくか否かというのは、私は二点だと思っております。

 一つは人材の育成。つまりは、先ほどの伊藤先生のお言葉をおかりしますれば、市役所のいわゆる企画力、実行力、専門家と住民との協働という言葉になるのかもしれませんし、また、原先生のお言葉をおかりすれば、まちづくり力ということになるのかもしれません。また、臼杵市長のお言葉をかりれば、幾らかあるというその力かもしれません。

 私は、それを私なりに地域力と呼んでおりまして、地域がみずからのことは自分の力でやる。そういった観点で、やはり今後は、地域の人材育成、とりわけマネジメント力、さらにはトータルコーディネート力、さらにはタフネゴシエーターとしての力、さまざまな意見を一つの意見としてまとめ上げていく、場合によっては法律の力、技術力、伝統文化、歴史を評価する力、あるいはさまざまな方々と言葉を交わして意見をまとめていく人間性あふれる人材がまさに必要になってくる。こういった人材がその地域にいるか否か、あるいはそういった人を中心にしてできるかどうかというのが、本案の成功が今後も期待できるかどうか、一つのポイントであろうかと思っております。

 では、そのすぐれた人材がどういう基準でやったらいいんだというその一つの指標が、今話題になっている事後評価であろうかと思います。私自身もプロジェクト評価というのをいろいろやってきたわけでございますが、例えば、美しい町というのを数量化しろ、定量化しろと言っても、これは甚だ難しゅうございます。にぎわいのある町だったら少しは定量化できるのかなというふうに思うわけでございますが、こういった数量化、定量化できないことをいかに評価を客観的に行うか、それによって交付金を算定していくというようなシステムができるのかどうか、この二点にかかわっているんじゃないか、そんなふうに思っております。

 そういった観点で、ぜひともお二人の先生とお一人の市長さんに、例えば大学において、私自身もそうだったんですけれども、都市計画を学んできた人間、お医者さんに例えますと、病理学は学んでいるんだけれども臨床経験の少ないお医者さんのようなところがありまして、学生さんにももっと今回のまちづくり法案の中に、ケーススタディーとして、あるいは研究論文としてどんどんどんどん入ってきていただいて、そして実際に自分も体験していただく。さらには、臼杵市長さんの御地元ではどうやっていらっしゃるのかぜひお聞きしたいんですけれども、そこに市役所の方もどんどん入ってきて、住民の方々もどんどん入ってきていただいて、御自身もそういった評価の能力を高めていく。そういったことがこれから必要ではないかと思いますが、こういった観点から、伊藤先生、原先生、後藤市長それぞれから、今言った人材育成と事後評価のあり方につきまして御意見を賜れれば、そんなふうに思っております。

伊藤参考人 簡単に申し上げます。

 今伴野先生おっしゃった点は本当にそのとおりだと思いますが、一つ私、前から思っておりますことは、市町村がまちづくりの主体である、これは間違いないんです。絶対県庁ではないんです。なぜなら、住民との直接の対話ができますし、住民と触れる直接の仕事ができます。しかし片一方で、極めて住民と市役所の力が強過ぎますと、そこで思い切った客観的発言ができなくなる危険性もあるんですよ。ですから、よく市長さんが県庁の方に、部長に来ていただいたり課長に来ていただくとか、極端なのは国から、よくありますね。あれは、客観的発言を彼らができるから入れているわけですね。そういう問題が常に起きてくるわけなんです。

 しかし、市の職員と市の住民との中でうまくそういう県とか国という行政組織の介入なしにやっていくためには、やはり新しい専門の知恵を入れなきゃいけないと私は思っています。それは、よく町に御用聞きに来るコンサルタントでもないし、設計事務所でもないんです。私は、そこに新しい専門家というものが生まれてくるべきだと思うし、そういう人たちがもう皆さんの町でそろそろ入り出していると思うんです。

 それはどういう人かといいますと、実は私、NPOで日本都市計画家協会というのをつくっているんです。そこに非常に有能な御年配の方が集まってきています。もう大きい設計事務所を終わったとか、大きいお役所を終わった人もいます、あるいは大きい企業でディベロプメントをやった方もいる、みんなもう五十五から六十の方。こういう人たちが、やはり次の後半の人生の中でまちづくりを本音でやりたい、今までは組織の中にいたから言えなかった、だけれども今度は本音でやりたい、給料はほとんど要らないというんですよ、もう非常に経験を積んでいますからね。

 例えばそういう人たちの中の何人かを市長さんが、一年間でもいいんです、一年間嘱託で、ここからが難しいんです、月給幾らにするかなんですけれども、医者だと嘱託で月給何百万なんですね。弁護士でも多分百万なんです。だから百万と言いたいんですけれども、そんな金もなきゃ十何万でもいいんですよ。嘱託でお雇いになって客観的な議論をしていただく、その地元の市役所の若い有能な人たちと。それで客観的なコメントを市長さんや助役さんにする、やはりそういうことが必要になってくるかと思うんですね。それによって、いろいろな地域の縁を引きずっている市長さん、市役所の人たちも明るい道筋を見出す、こういう専門家が生まれてくるかなと思っています。

 まずは、そういう第一段階で発言を終わらせていただきます。

原参考人 二つ御質問をいただきました。

 初めの、人材育成というのをどう考えるかということでありますが、私の経験をちょっと述べさせていただくと、私は先ほどのイントロ部分で、沖縄の名護市役所というところで働いたと申し上げました。全く当時、地縁も血縁もないところで、四万人の役場でしたが、そこへ行かせていただいて、まちづくり技術者として働くことができた。それは、地元が復帰をしてまちづくりをやっていこうという、一生懸命みんなで坂を上っていこうという気力、意欲があった。そういう時代に恵まれたということもありますが、いわゆる総合的にいろいろみんながこの地域をどうしようかというのを考えている。それは役場職員だけではなくて、地元の人々、学校の先生、そういう人々とかかわることができたのが大変、今思うとよかったことだと思います。

 ただ、残念ながら、今の多くの役場を見ると、やはり個別の事業を、あるいは省庁の事業を縦割りでやらざるを得ない、そういうことでなかなか総合的な目を仕事を通して鍛えるという機会がそがれてしまっている、大変忙しいし。だけれども、税務の担当、福祉の担当、住民票を出している人々であっても、やはりまちづくりを考えることがあれば、あるいはその種があれば大いにやれる、それは沖縄の経験であります。

 そういうことで、いろいろないわば事務系という人たちとも一緒に仕事をすることがありましたが、彼らの中にも大変そういう地域を考える力がある。ただ、実践する機会が、大変残念ながら、仕事の中でない。それは仕事のつくり方に問題があったのかもしれません。だから、今度の仕事の中で、ぜひできるだけそういうトータルな可能性を引き出すような仕事づくり、人づくりができたらなと思います。

 先ほど、人口が少ない役場は人材が育っていないというようなことがありましたが、そんなことはありません。機会、経験がなかったのです。確かに残念な、いろいろ、汚職だとかそういうことがしょっちゅう新聞で出る。自治体に働いた者としてはじくじたる思いをするニュースも随分ありますが、だけれども、そういう機会をしっかりつくっていって、それで地域づくりをみんなで、市民とともに、専門家とともにやっていくということは、必ずやその人的ストック、人的パワーを地域に蓄えることになると思います。

 文化人類学者の宮本常一が、地域には地の人と旅の人、二つが必要だと言いました。残念ながら、小さな地域はなかなか外へ出たり外で研さんするという機会がないのは事実です。だから、地の人が地の人だけで固まっているというのは、これからの地域づくりではうまくいかないだろう。そこにさわやかな旅の人が行って一緒に仕事をするということがこれからの地域づくりには求められているのだろうと思います。両方をしっかりやること。

 まちづくりは人づくりなどとよく言いますが、それは私は大変おこがましい発言じゃないか。人なんというのはそう簡単につくれるものではなくて、だったらどうするか。地の人が町をつくる人になっちゃう、まちづくりの人になろうというのをちょっと言ったり書いたりしていますが、まちづくり人になろうじゃないかと。それは技術的な仕事をやっている者だけではなくて、先ほど言った税務の人も住民票を出している人もやはりまちづくりの一角にかかわれる機会はあるわけですから、そういう人がまちづくりの人になっちゃうということが、今回の仕事を通して、役場の中でもそういう意識改革の機会となるといいのではないかと思います。

 二番目の御質問、評価についてであります。

 これは残念ながら、いろいろ日本の今までの事業というのは、とにかくつくればいい、お金をもらってきたら勝ちというようなことで、その後かなりがんがん会計検査というようなことも、財務上のいろいろ検査はありますが、それが果たして人々に豊かさやらおもしろさをもたらしたかというような評価まではとても至らなかったのは事実であります。

 ぜひ今度の仕事が、そういう結果を評価して、それが本当にうまくいったのかどうか、あるいは社会実験というようなこともこのプログラムに入れて、それがどんなふうに運んだらうまくいくのかどうかというようなことを、やはりぜひ今回のプロセスの中で引き出したいところだと思います。

 そして、それが、仕事を受ける一つの自治体の成果だけにとどまらないで、ぜひ、A村でうまくいったことは残りのB村、C村にもしっかり、こんなことをやったらこんなぐあいでうまくいくというような評価の公開、公表というバトンタッチをしていく、そういうことが必要であろうと思いますし、同じ仕事をどこでもばらばら公平にやるという今までのやり方ではなくて、一つずつを乗り越えながら、評価しながら、批判をしながら仕事のメニューが広がっていくといいのではないか。

 これはかつて建設省が、地域住宅計画、HOPE計画と呼んだ計画がありますが、これなどはかなり、あるところでやった成果を知らせ合う、毎年その事業が終わると地域住宅シンポジウムというようなことをやって、例えば地域の工法、地域の材料、そういうものを使って地域の公営住宅をつくるということをかなり続けてきました。あれは住宅部門でありましたけれども、それをさらに広げて、地域づくりのコンクールと言わないまでも、みんなで知らせ合うエキシビションができるといいのかな。評価というのは、ただ財務上の検査にとどまらないで、そんなものになったらいいと思っております。

 以上です。

後藤参考人 私が市長になるに当たりまして一番大きな影響を受けたのが、この真ん前にお座りの岩國哲人先生であります。岩國先生が市長をやっていらっしゃるころのいろいろなものを読んだり、いろいろなことをしながら、これだと思ったのが、市役所は市民のお役に立つ所という言葉であります。市と役と所というのは、市役所は市民のお役に立つ所というこの言葉をずっと、忘れることなくというよりも、いつもいつも私は市政の方針にし続けておりまして、今でも一番大きな柱です。

 市民のお役に立つ所というところを外さなければ、先生は市民でありますし、市民のお役に立つようにどうしたらいいかということを専一に市役所職員一丸となってやっていく体制をつくるということをすれば、能力は当然上がりますし、心配することは余りないのかな。小さな自治体ではありますけれども、能力は相当高まったということだけではなくて、いつも、市民がどう思うだろうか、これは市民のお役に立つだろうかというようなことを絶えずチェックしながら行動するようになったことが、企画力とかいろいろなことが上がってきたこと、また、何か問題があると市民のところにすぐ出かけていく、そして市民に聞いてみる、これが一番大きな柱といいますか、一番効果の上がる方法であります。

 それと、先ほどの事後評価、評価ということですけれども、評価ということは事前に目標設定というようなものがあるわけでして、その目標設定とその後の評価にどれだけのずれが出てきたかということを評価するわけですけれども、その目標設定の前にあるのはイマジネーションだと思います。

 何をどういうふうにしていくかというイマジネーションをしっかりつくって、そしてそれを実現するための目標設定をするということなんですけれども、ともすると、国もそうですけれども、地方でも、企画とかいろいろなことをやりますと、イメージなしに、こんなものをつくってみたらどうだろうか、そういうような目標設定をしてしまいます。そういう目標設定をしていると、その後の事後評価自体があやふやなものになってしまいますし、ぶれてきます。

 そうではなくて、何をしたいか、どうするかというイメージをどういうふうにつくっていくか。そのイマジネーション、どういうふうにイメージするかというので、臼杵市役所ではそのあたりのところを、ブレークスルーという方法を使いながら市役所の職員と市民と一緒になっていろいろイメージづくりをやるんですけれども、そのイメージづくりをどういうふうにやっていくかという根本の部分をおろそかにすると最後の評価もうまくいかないのかなと思います。

 以上です。

伴野委員 お三方から貴重な御意見をいただきました。ありがとうございます。

 最後に、時間が間もなく来ますので、一言だけ御意見をいただければと思うわけでございますが、今回の人材育成や、あるいは事業を評価する手法が確立しないとなった場合には、これはかなり、昔、はやった市町村の丸投げというようなことが起こり、独立行政法人都市再生機構、例えばそんなところにぽんと全部丸投げして、昔あったような何とかアセスメントではありませんが、市町の名前を変えれば全部同じ報告書というようなことが出てこないことを祈っているわけでございますが、しかし、今言った人材育成と評価手法が確立されないと、その嫌いもある。一方で、クオリティーコントロールもしっかりしていかなきゃいけない。

 そうした場合、この法案が通った以降、国は市町村に対してどの程度の関与でいいのか、一言ずつ、時間がございませんので、御意見をいただければ。

伊藤参考人 私は、それについては、きちっとした透明性のある調査項目をつくりまして、それを専門家がお伺いして地元の市役所の皆様と議論をする、そういう形になるのではないかと思っております。

原参考人 それは、目的を明らかにする、それからプロセスを公開していく、結果、到達点を示す、それを住民にしっかり全プロセスを示していく、それが大事だろうと思います。

 以上です。

後藤参考人 私にはよくわかりません。とにかく、現場で、その中でいかに対応するかということでございますから、皆さんでぜひいい案をお考えになっていただきたいと思います。

伴野委員 時間が参りましたので、ありがとうございました。

赤羽委員長 高木陽介君。

高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。

 本日は、参考人の皆様方には、貴重な御意見を述べていただきまして、ありがとうございました。

 今回の法案について、お三方とも評価をしていただいているかなと。その上で、その中核となっていくものはいずれは自治体であるというような御意見をずっとお三方とも述べられていたと思うんですけれども、その中で、特に伊藤先生の方は、市町村がまちづくりの責任者である、原先生の方も、都市再生とは地域の生活者の生活再生である、後藤市長は、首長として、市の責任者として、そういった問題をずっと取り組んできている、そういう観点で、ただ、ここで一つちょっと気になることが、自治体という一つの固まりはあるんですけれども、やはりそこの根源的な主体者というのは、一人一人の住民であると思うんですね。

 そのときに、今価値観が多様化しているときに、それぞれが、こういった町が自分の理想なんだ、こういった生活環境が理想なんだという、これはそれぞれの価値観によって大分変わってくるだろうなと。住民の意識によって、住民も、例えば何万人かの人口があった場合に、それがすべて同じになるということはないわけですね。

 そういったときの、価値観の多様化の時代にあってのまちづくりというのをどういうふうにとらえていけばいいのか、その点についてお三方にお伺いをしたいと思います。

伊藤参考人 既に、今の高木先生の、価値観の多様化をある目標に合わせていく、目標をつくってそこへまとめていくという一つの仕組みとして、市町村の都市計画に関する基本方針でしたか、いわゆる都市マスタープランというのがありまして、これは大部分の都市が今つくっております。

 しかし、問題は、まさにつくるプロセスが問題でして、そのつくり方が物すごく、もう千差万別で、率直に言うと、先ほど伴野先生がおっしゃった、コンサルタントに丸投げをしている市役所もございますね。それから、あるところでは住民参加を徹底しまして、おまけにアンケートもやるし、集会もやるし、手間暇を物すごくかけてやっているのもあります。まさに玉石混交なんですね。ただ、共通は、都市マスタープランというところで、多様な価値観を持つ市民が、ある合意をつくったらこういう姿になるというのをつくっていることは事実なんです。

 問題は、御質問の趣旨を僕はこういうふうに受け取ったんです。都市マスタープランをつくったはよかったけれども、実は、まさに事後評価をしていないんです。事前評価をしてつくった、しかし、事後評価を市民とか専門家というところがやっていないんです。マスタープランをつくったら、もうあと十年ぐらいはこのままいけばいいやという形になってしまいました。固定化してしまう。僕は、事後評価をする中で、もう一度、市民の多様な価値観が事後評価のプロセスで都市マスタープランというのを変えていく、そういう弾力性を持っていいと思っているんです。それがやられていないんです。

 ですから、お答えとしては、マスタープランをメンテナンス、常にダイナミックに維持管理する中で、それぞれの皆様方の意見をそこにうまく反映していくということをやっていくべきじゃないかと思っております。

 以上です。

原参考人 大変今の御質問は、現代都市の悩む難しい課題の最たるものであろうと思います。

 さまざまな価値観、ライフスタイルを持つ人が住むから、都市が意味があり、おもしろいわけですが、それをどうするかというのは大変悩みの種の一つです。

 だけれども、やはり地域に一緒に住み合って一緒にいい環境をつくっていくということは、やはりみんなでやらなきゃいけないわけで、合意形成と申しましょうか、合意をどうつくるかというのはとても難しい。それは、学校で学んだりすることだけでは決して生まれてこない。

 では、どうすればいいかというと、環境づくりのプロセスの中にさまざまな人々が入る機会を保障していくということが大事だろうと思います。住民参加といいますが、今、もう少しそれを進めて市民参画というような呼び方をしていますが、大変ばらばらに、住んでいる人たちがばらばらのままに勝手に都市を利用する、使い捨てをする、そういう時代を超えて、都市をしっかりはぐくんでいく、それに水をやっていくというような気風をつくらないと、二十一世紀の都市はもたないと思います。

 そこで、合意形成をどうするか。譲り合う、時には我慢し合う社会をどうつくるかというのは、やはり経験づくりの訓練が必要だと思います。私たちの社会は、残念ながら、そういう経験、訓練をほとんどしないで、みんながばらばらに住み合って勝手に使い合う、そういう社会になってしまった。一番闘うべきは、我々の中にある無関心だと思います。それをぜひもう一度やる。それは学習ではだめで、やはり経験が必要です。

 世田谷区の例をちょっと引かせていただくと、例えば、都立の清掃工場の煙突を建てかえる機会があった。建てかえを東京都に任せればそれで終わったわけですが、煙突が古いというので、その煙突のカラーデザインを、では公募してみようということで公募をしまして、全国から千四十の案が出てきた。たかだか煙突一本だからといってそういう投げかけをしなければ、恐らくただの赤白のしましまの煙突で終わったろうけれども、みんながそういうことをやったことで事業者も動かし、実際にその煙突ができてもう十年ぐらいたちますが、そういうことが起こる。

 そういうことが起こると、なるほど、私たちが少し何かアクションをすれば変わっていくんだな、変わる力が起こるんだなということを気がつく人がふえるかもしれない。そういう、かもしれないを少しずつふやしていくことが大事だろうと思います。その小さな成果を公開していって、こんなことをこんな努力でやったら少し広がっていったよということを積み上げていくことが、合意形成、ばらばらに人々が住むのを少しつなぐことになるかもしれません。

 ですから、今度のこの事業の中でも、できるだけ住み手が参画できるような、そういうことにも少しお金と時間が行くようなことになっていただきたいと思っております。

 以上です。

後藤参考人 私は市長という立場ですから、選挙を経て市長になりました。市長になりたい、その思いを市民に訴えて、そして市長になりました。訴えた内容というのは、財政を再建しなければいけないから財政を再建します、そして、市の文化を磨き上げたい、それが私の願いであり、そういうようなことで市民の皆さんに選んでいただきました。

 そういった中で、市民のお役に立つ市役所というようなことを柱に置きながら、いかに合意形成を図っていくか、そしていかに実行していくかということでありますけれども、合意形成をしていくというのは、皆さん方の意見を聞いて、そして、皆さん方の御意見のとおりにしますというようなことだけでなくて、こういうふうに思うんだけれどもどうですかというような形で皆さんに思いを打ち明け、諮りながら前に進めていく。

 確かに、価値観が多様化しておりますから、中には猛烈に反発してくださる方々もおられます。そして、後になって評価してもらったり、さまざまでありますけれども、そのときそのときに、さまざまな反発があったり意見の違いがあったりすると思いますけれども、そういうことをよく勘案しながら、選ばれた者としてやらなければいけないことをしっかりやる責任を持っているというように思っております。

高木(陽)委員 三人の参考人の方々のそれぞれの、価値観の多様化にどう対応していくかという御意見、参考になります。

 今、後藤市長のお話にあった、選挙で選ばれたという、これは大きな民主主義の原則だと思うんですね。

 例えば私の地元である八王子市というのは人口五十三万人おりまして、先ほど原先生が言われた、地の人と旅の人という話があったと思うんですけれども、もともと地の人が十六万人しかいなくて、三十数万人が旅の人というか外から来た人。そうなってくると、なかなか合意形成というのは難しいのかなと思う反面、選挙で、こういった町をつくる、こういった政策でこの市を運営していく、こういうのは一つの選択であると思うんです。

 そんな中で、一つの例として、例えば反対のための反対をする人というのも結構おりまして、その地域、今ちょうど圏央道という環状の道路、これは首都圏を結ぶ重要な道路であると思うんですけれども、これについてこの二十年間ずっと反対運動が続いていて、選挙でそれぞれ争点になる、これは市でも都でも、そして国でも。選挙で推進をする方々が選ばれているにもかかわらず、反対のために一坪地主をやりながら、それも、住んでいる人がやっていればまだ納得するんですけれども、よそから来て、その住民たちが進めようとするまちづくりに反対するような、ためにする運動が多々ある。こういった問題も本当に何とかしなければいけないというふうに頭を悩ませております。

 これはお答えをいただくということじゃなくて、こういうことがあるということも御認識いただきたいと思うんです。

 その上で、事後評価の話も先ほど出ました。事後評価について、国の方は税金を投入するわけですからしっかりとチェックをしなければいけないという意識、その一方で、それを使う当事者である市町村、自治体の方も、それはちゃんとチェックしなきゃいけないでしょう。さらには、住民がどう感ずるかというのが大切だという御意見もありました。また、専門家からも見るべきであると。

 ただし、国、また、当事者である自治体または住民、専門家、この四者がそれぞれ同じ評価になればいいんでしょうけれども、これまた評価が分かれる場合もありますね。そういったときにどうしたらいいのか。この点について、また三人の参考人の方の御意見を伺いたいと思います。

伊藤参考人 評価が分かれるというのは現代社会の常でございまして、あらゆるところで意見が違うというのがまさに民主主義なんですね。

 私は、こういうプロジェクトで事後評価して、いろいろの人がチェックして評価が分かれたとき、一番最後は、その市にとってもう一つ大きい、プロジェクトを含む市全域にとって、このプロジェクトが例えば市民の健康な生活に貢献しているかとか、あるいは市の雇用問題について貢献したかとか、もう一つ上位の観点からそのプロジェクトを考えることによって多様な評価の総まとめをするということにした方がいいんじゃないかと思うんですね。

 例えば、ちょっと先ほど言うのを忘れたんですが、事後評価の中に、民主党の方からの御質問にあったように、美しさとか、そういうのは評価しにくいわけですね。美しさをよくしたといってもそうでないといいながら、しかし、その仕事をした結果として、マスメディアがその都市をどういうふうに取り上げたかというようなことの頻度が多くなれば、それはそれとして、美しくする仕事というのはその都市にとって貢献しているわけですね、外側に。

 何かそういう材料も出てくるかとは思っていまして、ちょっと別な観点で大きい視点からいろいろな意見をまとめていくということは必要ではないかと思っております。

原参考人 これは評価が分かれるというのは当然であります、それぞれ住んでいる場所が違い、キャリアが違い、働いている経験が違い、都市で暮らす目的が違うわけですから。それをどう束ねて総合的な環境をつくっていくかということが、まさしく都市づくりに求められていることだろうと思います。

 あらゆる人の注文を御用聞きのように聞くというのが決して住民参加ではなくて、そういうプロセスで譲ったり学んだりするということも、こういう事業を通して、やはり我々が市民になっていくために学んでいかなきゃいけないことだと思います。

 そこで、そういうふうに意見が違うわけで、ある条件、ある考えでまとめていくわけですから、それが違ってしまってというか、当初の思いや目的とこれは違うじゃないかと言う人が出てきても、プロセスを完全に情報公開して、計画者として、あるいは役場としては、こういう判断材料でこういう判断をしてこういう方向に進むんだということをちゃんと明記してプロジェクトを仕上げていくということが、次につながる大事なことだろうと思います。

 それが閉じてしまって、いつ、だれのためにやったかわからない、どんなお金が来たかわからないでやっちゃうブラックボックスがふえることで不信を生むわけで、やはり、プロセスを公開して判断の基準を明確にしていく、その積み重ねが次のステップを生むのではないかと思います。

 以上です。

後藤参考人 伊藤先生の御意見と全く同じであります。

 評価は確かに分かれるんでしょうが、評価が分かれたときに、その分かれた評価の内容をつまびらかにしながら、その上位目的は一体何なんだというようなことをよく検討し、話し合うことによってかなり合意形成ができる部分があるんじゃないだろうかと思いますし、それで合意形成ができない部分については、これはもうしようがありませんので、それを責任ある者がどう判断するかということで、その判断によって方向を決めるしかないのではないかと思っております。

高木(陽)委員 後藤市長の陳述でおもしろいなと思ったのは、交通不便で古い町が残ったという言い方をされて、マイナスの部分がプラスに逆にとらえられる、こういう発想の転換というのは必要だなと思うんですね。

 その上で、日本らしさ、またはその町らしさということで、臼杵らしさというんですか、お話をずっと聞いていて、何か、古い形が残っているのが臼杵らしさなのかなというふうにもちらっと思ったんですけれども、そこのところはどういうのが臼杵らしさというふうにとらえられているか、ちょっとお伺いしたいと思うんです。

後藤参考人 臼杵らしさはどんなものかと言われますと、臼杵の歴史等をいろいろここで詳しくお話しするわけにはいきませんが、南蛮貿易が盛んであったところという歴史もありまして、また、オランダの船が一番最初に着いた、リーフデ号が着いたところが臼杵だというようなこともあります。

 そして、江戸時代、ずっと続いて稲葉さんという方が治めまして、その方が岐阜から来られた方だったので、岐阜の堅実な気風というか、そういうようなものが脈々と残っているとか、いろいろなことがあります。

 そんな中で、実は日銀総裁を二人出しているという小さな町であります。

 小さな町だけれども、教育の熱心だったところとかいろいろなことがあるので、そういったようなことをしっかり守り続けるというようなことと、町の風情でありますけれども、実は駅前開発もなかった、そして戦災に遭わなかった、バブルのときも無縁だった、これは大変ありがたいことだと思っておりまして、さっきのようなお話になりました。

高木(陽)委員 時間もなくなってまいりましたけれども、最後に伊藤先生にお伺いしたいんです。

 伊藤先生のお話の最初のときに、前置きという言い方でお話のあった、二番目の雇用創出の部分なんですが、具体的な部分で、まちづくりというのがどういう雇用創出になってくるのか。どうしても私たち議員、政治家というのは即物的にイメージをしようとしますので、その点だけお伺いしたいと思います。

伊藤参考人 即物的にお答えします。

 一つ、今回、ハードだけじゃなくてソフトもと書いてありましたね。ソフトもというのは、人件費一〇〇%、国の税金を使っていいということなんです。ハードというと、鉄とセメントと砂利等を買って、それから建設機械を雇い入れて、全部のお上の税金の半分ぐらいはそっちに行くから、残りの五〇%が人件費だということです。ですから、非常にこれはみんながいいというようなことで人件費一〇〇%だったら、これはまさに土建業よりは雇用促進になるわけです、鉄というのは東京へ調達しちゃいますから。

 そのきわめつきをちょっと、自己宣伝になるんですが申し上げますと、地籍調査なんです。地籍調査は、日本は極めて恥ずかしいんです。OECD諸国の中へ行って、地籍調査がこれだけいいかげんな国はないんですよ。韓国もきちっとしています。要するに、市街地の中で五百分の一の公図がきちっとしているのが、韓国はしている、日本はしていません。

 今、地籍調査をするというので、国交省が多分来年度百億ぐらいの金をつける。これは人件費一〇〇%です。それをもし地元の土地家屋調査士さんが、測量士さんより主体じゃないかと思うのですが、引き受けられますと、そこで単純作業が労働力として、地籍調査を完遂するというので雇用につながりますね。

 例えば民民境界です。民民境界を確定するといったら、これはもう金と時間がべらぼうにかかりますけれども、そこに血気立った若者が来るより、わけ知りのお父さんが来て、まあまあまあというのを十回繰り返した方が解決に近いんですよね。これはまさに、経験という価値を雇用にかえているわけです。そういう話が幾つかあるんですね。

 ですから、まさに雇用というところにぜひこの交付金を、これ、ハードとソフトと言っていますから、ハードをつくったら必ずソフトで、メンテナンスをする、調査をする、そしてそれの事後評価までするとか、そういうことを全部、市民の中のそれぞれの能力がある人にやってもらうということ自体が雇用になるんじゃないかと思います。

 都市計画で今一番重要なのは、雇用を確定するためのお金だということが私の考えでございます。

高木(陽)委員 どうもありがとうございました。

赤羽委員長 穀田恵二君。

穀田委員 私、日本共産党の穀田恵二です。

 お三方、貴重な御意見を本当にありがとうございました。

 私は、お三方にそれぞれお聞きしたいと思います。

 私は京都に住んでいまして、特に九〇年代、民間活力の導入ということと規制緩和が叫ばれて、京都が大きく変貌しました。特に高層マンション、さらにビルの乱立など、乱開発が進行しましたし、その結果、京都のすぐれた自然と景観が台なしになって、町壊し、それから住民追い出しの結果がもたらされたわけです。

 後藤参考人もお話あったように、私に言わせれば京都らしさが随分失われたと思っているんですが、それがバブルの時代でした。ところが、今また、九九年からこの三、四年ほど、高層マンションのラッシュが大規模に行われていまして、住民の側は、まちづくりのために、地区協定やまちづくり憲章などをつくって対抗をしています。しかし、そこには金もうけの論理が、ある意味じゃ優先し、住民の暮らしの視点が欠けているという事態が進行しているのもまた紛れもない事実であります。

 したがって、私は、民間の活力の活用とまちづくりの主体者たる住民の意思の尊重という関連をどういうふうにして調整していくのかということは、ある意味で必要だと思うんですね。その辺の御意見を、大きな角度からお三方にお話しいただければと思っておるところです。

伊藤参考人 少し長目にしゃべることをお許しいただければと思います。

 京都は、世界の京都でございます。これは極めて重要でございまして、政治自体がどうであろうと、京都は世界の中の京都であって、この価値を絶対に損ねちゃいけないのに損ねてきたわけです。ですから、私は、率直に、京都法という法律をつくってでも、京都の町中と西陣ぐらいは守らなきゃいけないと思っているんです。

 これは、先進諸国の礼儀として常識でございます。戦災に遭ったドイツでも、町の中をきちっと昔のように直して、高い建物を建てないという都市が大部分です、フランクフルトは別として。フランクフルトは、アメリカに占領されたから、ちょっと東京型になったんですが。南フランスもイタリアも全部、町中は高さ規制をし、必ず文化財をチェックし、日本でいうと、文化庁の指示があったものについては都市計画事業はできないというぐらいになっているんですね。

 もし日本が観光で立国をするということであるならば、率直に言って、普通の外国の観光客にとって一番行きたいところは京都なんです。その次が東京なんです。はっきりしているんですね。ところが、どうして京都がそうなったかということは、基本的に国政に係る問題がございまして、京都の町家さんの呉服屋なら呉服屋のお父さんが死にます、すると相続税がかかります。相続税がかかると、これは正田邸のように、建物を壊した更地の方が高い値段で売れるわけですね。相続税はかなり高いですから、現状の古い建物を維持していた形では相続税を払えないという例が多いようでございます。

 ですから、これはまさに、相続税をどうするかという問題が京都の町家をどう残すかということにかかわってくるわけでして、呉服屋さんなら呉服屋さんを経営されている方も、お父さんが死んで子供が相続するとなったときには、どうしても相続税支払いのために更地にすると、そこにマンション屋が入ってくるということなんですね。この循環が今京都市の町中をむしばんでいるわけなんです。

 私は、したがって、景観三法だけではなくて、景観三法は、金沢とか会津若松とか、あるいは臼杵とか、こういう美しい中規模の都市を守るためには極めて重要なんですけれども、京都問題だけは、全く別の体系で、まさに京都を守ろうと。絶対にあそこの、例えば、三条から五条で、烏丸大通りからこっちの鴨川の中はもう五階以上はつくらせない、それで全部木造だ。木造でも、このごろ、不燃化、防火性能が高くなっていますから、防火性能の高い木造でいいわけです。それぐらいの決断をやはり京都市民にやってもらいたいんです。これは幾ら東京の連中が言ってもだめなんですね。だから、ぜひお願いしたい。

 これは、私が都市再生本部で真っ向から京都問題を、特別の法律としてあの都心部を守ると。そのためには、相続税の問題にまで言及して、相続税の繰り延べをやればいいわけですから。それで、なおかつ交付金を、あの町家を守るために町家の改修に徹底して使う。それぐらいのことをしませんと、日本は本当に、誇るべき都市がなくなります。

 以上が私の返事です。

原参考人 京都の問題、これは先般の市長選挙でもこれが争点の一つになって、京都の将来の環境をどうするかということが問われたと聞いておりますが、事ほどさように、これは難しい大事な問題であろうと思います。

 まちづくり技術者として考えることがあるとすれば、一つは、京都というのはもともと一条、二条という、ああいう条立てで道をつくり、枠組みをしっかりつくってきた。その中に戸建ての魅力的な町並みを隣接させてつくってきた。そういう街区単位で町並みができてきたというのが、戦後、特に建築基準法で、敷地単位で物は勝手に建てられるということになって、街区を支えていたルールがとれちゃったということがとても大きかったと思います。

 いま一度、大きな枠組みが京都は将来も変わらない、維持するとするならば、街区単位で、住宅を中心とした形態をどうしていこうかという独自のルールをやはりしっかりつくる必要があると思います。それは建築基準法でも改正がされて、四十条でしたか、自治体で条例をつくれるということになってきているので、そういう動きをしっかりとらまえて、市が中心となって、ボリューム、高さだとか間口だとか、そういうこと。それから、素材を決める。素材の中に色だとかそういうことも少しコントロールをしっかりして、都市計画法でいうならば地区計画をしっかりかけて、街区全体でボリューム、形態、そういうものがコントロールできるようなことを考えていかないと、個別の、マンション反対ということでは、モグラたたきのように、解決にはならないと思います。

 そういうルールができても、やはり職能としての建築家というのがしっかりやっていかない今の日本では、とにかくやれる限りボリューム、容積率を使い切るということがオーナーの命令であり、建築家の職能としてはそれをやるというような、そんな職業に残念ながらなってきてしまっていますが、もう一度、建築家というのも、街区で考えるということをしっかりルールとしてわきまえて、街区単位でのコード、ルールをつくりながら、自分がもし設計するのであればそれに従ってやっていくという、地区計画と、それから、そのルールを守る仕組みをしっかりつくるということが大事なのではないかと思います。

 以上です。

後藤参考人 民間活力に任せてなかなかうまくいかないというのは、それはそのとおりだろうと思います。先ほど伊藤先生がおっしゃったように、もうちょっとほかのことを考えなきゃいけないということが随分あるんだろうと思います。

 人はパンのみにて生きるにあらずという言葉がございますが、人はお金のみにて生きるにあらずということではないだろうかと思うんです。ともするとお金万能ということになりまして、すべてお金で考えるという嫌いがあります。建築等につきましても、とにかく入札、一番安いところに落とさなきゃおかしい、こう信じて疑っていません。そしてそれは、工事もさることながら、設計も同じことなんです。設計も、できるだけたくさんの方々に入札参加させて、そして入札して、一番最低価格を入れた人のところにさせろというんです。こんなばかなこと、実際はあり得ないと思います。それが入札の公正だというふうに信じて疑われておりませんが、そのあたりのところを、一体何のためにやっているんだ、ただお金さえ残せばいいのかということをしっかりお考えいただきたいというふうに思います。

 それと、京都の場合は相続税が問題だというようなことでございましたけれども、小さな地方都市に住んでいる者の立場から考えますと、相続税ではなくて相続です。相続がありまして、長男が家を守っています、そうすると、家を離れて何も守っていなかった兄弟が、相続、私にも権利があるはずだ、あれを売ってくれと。これは、みんなそれで困っています。それで、町にあった古い建物、それからいろいろな田畑、それが分割されたり、何も広いままがいいわけじゃありませんけれども、ほんの猫の額ほどのものまでみんなで分けよう、だから売ろう、分けるためにはお金にしなきゃいけないみたいな、そんなことになってしまって、税金だけじゃなくて相続ということ自体がいかに災いをなしているかということも含めてお考えいただけるとありがたいと思います。

 以上です。

穀田委員 逆に京都をどうするかというのを賜れた気がしまして、本当にありがとうございます。それから、哲学もお話しいただけたし、そしてまちづくりの今後の方向性についても、街区の問題あるいはルールの問題も提起していただきまして、ありがとうございました。

 それで、私としては、まちづくりの主体者というのは、やはり住んで何ぼのものだ、住んでいる人たちが主体だということを言いたかったわけです。

 そこで二つ目の問題は、今度の法案は、実は、先ほど伊藤参考人もお話ありましたように、今までの箱物一辺倒のやり方というのはいかがなものかという、いわば公共事業のやり方に対する反省というのがずっとあると思うんですね。ただ、都市再生基本方針というのを書いていまして、この都市再生基本方針は、御承知のとおり、読みますと、特措法に基づいて、都市の再生に関する施策の重点的かつ計画的な推進を図るために云々と書いているんです。それで、その基本的な方針等については内閣総理大臣が作成し、閣議決定を経て定めるものである、こう書いているわけなんですね。やはりここに実は回路がきついものがあるというのが第一点なんですね。だから、ここがいいのかということが一つある。

 二つ目に、第四十六条第一項関係で、公共公益施設の整備に関する事業等を内容とする都市再生整備計画を作成できる、こうしているんです。これは皆さん御専門の方に釈迦に説法ですが、公益公共施設というのは、やはり道路や水道、公園などを前提とした計画づくりという面が否めないんですね、残念ながら、その辺ではこの体系全体が。私は、それをどう突破するかが大事だろうと思っているんです。

 したがって、二つ目に言いたいのは、市町村や住民主体のまちづくりを、例えば原参考人もおっしゃいましたように、まちづくり協議会の支援などというのが、ある意味で大事じゃないか。そういう点からしまして、もう少し発想を地につけるといいますか、皆さんのお話でいえば、住民なり生活者、そういうところに視点を当ててというのを今後の基本に据えるんだということを私は皆さんからどうしても御意見をお聞きして、私はそうだと思っているものですから、お三方にもお聞きしたいと思っています。

伊藤参考人 実は、都市再生本部に何らかの形でかかわっておりまして、本部ができてよかったと思っています。それは、省庁連携を可能にできるのは都市再生本部決定しかないんです。

 都市犯罪というのを都市再生本部で取り上げました。これは大阪の津田委員の意見を受けて、都市再生本部が都市犯罪を取り上げた、防犯問題を。これがもし国交省だったら、絶対そんなのは重点には置かなかったんですよ。都市防犯、都市犯罪を都市再生本部が取り上げたから、国交省と警察と文科省が協働して、都市の中の犯罪をどうするか。これは青少年非行の問題もあるし、外国人犯罪の問題もあるしということで、建物の設計の仕方から教育の仕方から、全部にかかわってきたわけです。

 ですから、私は、本部というのは横軸に、皆様がずっと発言している縦割り法律ではなく、横軸に新しい行政の方向性を見出すという点では非常に有効な組織ではないかと思っているんです。常に私は、学校の教師として都市再生本部の行政の専門家に、省庁連携の強烈な仕組みが組み立てられない限りは都市再生本部の方針というのは信用しないと言っております。

 ですから、ちょっと時間をとっちゃいますけれども、私は、新しい、都市再生本部は総理大臣が決めますから、むしろ大統領型、ロシアとか中国とかアメリカとか、大統領型の新しい行政のスタイルが少し見えてきているのかなという気もします。しかし、縦割りの省の中で法律を抱えている国交省と例えば文科省が協議をするよりは、ずっと都市再生本部の決定という方が省庁連携の効率はよくなっていると思っているんです。これが一点でございます。

 それから、第二点の御質問をもう一回端的にお伺いしたいんですが。

穀田委員 まちづくり協議会の支援など、そういう住民主体のまちづくりが大事じゃないかと。

伊藤参考人 それは当然です。

 例えば雇用を守るためにNPOをつくるというのは、これはまさに、役所と住民が、ある一つの仕事を協働してやろうというときの当然の結果なんですね。ですから、そういう点では、この法律にも書いていますけれども、NPOをつくるということですが、悪いNPOも出ていますけれども、これはもっと積極的にNPOを支えていくという方針をつくっていかなきゃいけないと思います。

 私もNPOをやっていますけれども、お金がなくてぴいぴいしています。本当にお金がないんです。ですから、そういう点もうまく市長さんなんかが選択的にいいNPOをサポートしていただくということが必要です。

 それから、公共公益の問題です。公益という意味のところに、例えばこの法律に、高齢者を優遇する住宅とありましたね。賃貸住宅あるいは住宅地区改良事業、こういう問題はまさに公益的施設なんですね。ですから、例えば高齢者のグループホームを町中でやろう、これも公益的施設なんですよ。そうすると何が起きるかというと、国交省と厚生労働省との間の省庁連携によって、中心市街地の空き店舗があるようなところに、例えばHOPE計画に基づいて三階建て、四階建ての木造の建物をつくって、その一部に、厚生労働省が所管している高齢者とか身障者ケア用のデイケアセンターをつくるとか、こういうのはまさに現代的公益施設なんです。

 それから、防犯体制もそうなんですよ。例えば、専門の警察官ではなくて、嘱託警察官と私は言っているんですが、そういう嘱託警察官を雇って町中を歩くというのも、まさにこれはソフトな公益的施設なんです。

 こういうものを入れていかないと町はよくならないんですよ。だから、今までの通常の公園とか上下水ではない、まさにそれが新しい都市づくりという項目で私のメモの中へ入れたところなんです。

原参考人 市町村の住民主体のまちづくりの方向がどうかというお尋ねでありました。

 先ほど何回か申し上げていますが、今度の仕事のあらゆるプロセスにできるだけ参画のプログラムを入れていく、住民の方々がかかわらざるを得ないようにしていくということが大事だろうと思います。

 確かに、市民参加というのはとても面倒だし、先ほどの、意見調整、合意形成というのでくたびれることもありますが、やはり我々が都市に手入れをしないでほったらかしてきちゃったのが今我々の目の前にある都市の姿なわけで、それを住民の方々が自分たちでしっかりかかわるというチャンスをしっかりつくるのが大事だろう。

 私たちは、マイカーを毎日曜日洗ったり、それから家のリフォームというのは一生懸命やりますが、その一つの外側は全くただ使うだけ、手入れをしない、そういうことが続いてしまったので、そこで、それに目を向けるために参画のプログラムをつくるのと、それから、できれば恒常的なまちづくり協議会なりコミュニティーリーグというようなものをつくって、そういう仕組みをつくって対応するというのが大事だろうと思います。

 それから、進め方としては、今度の趣旨の一つでありますが、環境を総体で、一体で考えていく。例えば、区画整理事業というのを私も担当したことがありますが、道路をつくって換地というのをやるともう息切れしてそれでおしまいで、建つ建物については町並み形成というようなことがほとんど考えられない。あとは地主の方が資力とプログラムに応じて建ててくださいということで、せっかく一斉に建つ基盤をつくりながら、できた環境というのが大変ばらばらになっちゃうということがある。だから、区画整理事業と景観形成事業と生け垣づくり事業等というようなさまざまなものをそこにかぶせて、よい町並みをつくっていくというようなことは、今までだってできたはずです。

 あるいは、都市計画道路を抜いたときに、道路事業としてだけやるから、道路はつくったけれども周りに建つ商店や住宅がばらばらというようなことがある。都市計画道路をつくるならば、必ず沿道にルール、デザインコードを入れていって、それに従ってセットバックをしたりしてつくっていく、そういうことが一緒にやられる必要があると思います。

 ぜひ、今度のこの法律は、少し総合化をしっかりしていく、それから市民の参加をしっかり促す仕組みをつくる、それをぜひ入れていっていただきたいと思います。

 以上です。

後藤参考人 住民主体ということはまさにそのとおりだろうと思います。

 住民の皆さんのお考えになる部分で、私心といいますか、私的ないろいろな要望という部分と、公共的ないろいろな願いというようなものがあろうと思います。ただ一人の利害だけじゃなくて、たくさんの方々の共通する利害ということで、それが公益につながると思われますので、公益という言葉は大変重いというように思います。

穀田委員 ありがとうございました。

赤羽委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、三名の参考人の皆様方に一言申し上げさせていただきます。

 本日は、御多用中のところ、わざわざ本委員会に御足労いただき、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表し、厚く御礼を申し上げますとともに、本日賜りました貴重な御意見をしっかり受けとめ、今後の委員会審議に生かしてまいりますよう努めてまいります。

 本日は、本当にありがとうございました。

 次回は、来る二十三日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十一分散会


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