衆議院

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第8号 平成16年3月31日(水曜日)

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平成十六年三月三十一日(水曜日)

    午前十時五分開議

 出席委員

   委員長 赤羽 一嘉君

   理事 今村 雅弘君 理事 衛藤征士郎君

   理事 橘 康太郎君 理事 望月 義夫君

   理事 大谷 信盛君 理事 奥村 展三君

   理事 玉置 一弥君 理事 高木 陽介君

      岩崎 忠夫君    江崎 鐵磨君

      江渡 聡徳君    梶山 弘志君

      河本 三郎君    櫻田 義孝君

      島村 宜伸君    田中 英夫君

      高木  毅君    中馬 弘毅君

      中野 正志君    二階 俊博君

      能勢 和子君    野田  毅君

      古屋 圭司君    保坂  武君

      増田 敏男君    松野 博一君

      村田 吉隆君    森田  一君

      渡辺 博道君    岩國 哲人君

      内山  晃君    岡本 充功君

      下条 みつ君    須藤  浩君

      寺田  学君    中川  治君

      長安  豊君    伴野  豊君

      古本伸一郎君    松崎 哲久君

      松野 信夫君    三日月大造君

      室井 邦彦君    山岡 賢次君

      若井 康彦君    佐藤 茂樹君

      穀田 恵二君    武田 良太君

    …………………………………

   国土交通大臣       石原 伸晃君

   国土交通副大臣      林  幹雄君

   国土交通副大臣      佐藤 泰三君

   国土交通大臣政務官    佐藤 茂樹君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        細野 哲弘君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術審議官)         門松  武君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長)            澤井 英一君

   政府参考人

   (国土交通省土地・水資源局長)          伊藤 鎭樹君

   政府参考人

   (国土交通省都市・地域整備局長)         竹歳  誠君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  佐藤 信秋君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  松野  仁君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  丸山  博君

   政府参考人

   (国土交通省自動車交通局長)           峰久 幸義君

   政府参考人

   (国土交通省海事局長)  鷲頭  誠君

   政府参考人

   (国土交通省港湾局長)  鬼頭 平三君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  石川 裕己君

   政府参考人

   (国土交通省政策統括官) 矢部  哲君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    深谷 憲一君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  小島 敏郎君

   政府参考人

   (環境省環境管理局長)  西尾 哲茂君

   参考人

   (都市基盤整備公団理事) 古屋 雅弘君

   国土交通委員会専門員   飯田 祐弘君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月三十一日

 辞任         補欠選任

  河本 三郎君     江渡 聡徳君

  野田  毅君     田中 英夫君

  和田 隆志君     寺田  学君

  若井 康彦君     須藤  浩君

同日

 辞任         補欠選任

  江渡 聡徳君     河本 三郎君

  田中 英夫君     野田  毅君

  須藤  浩君     内山  晃君

  寺田  学君     和田 隆志君

同日

 辞任         補欠選任

  内山  晃君     若井 康彦君

    ―――――――――――――

三月三十日

 高速道路株式会社法案(内閣提出第一一二号)

 独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法案(内閣提出第一一三号)

 日本道路公団等の民営化に伴う道路関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第一一四号)

 日本道路公団等民営化関係法施行法案(内閣提出第一一五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第五四号)

 油濁損害賠償保障法の一部を改正する法律案(内閣提出第五五号)

 高速道路株式会社法案(内閣提出第一一二号)

 独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法案(内閣提出第一一三号)

 日本道路公団等の民営化に伴う道路関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第一一四号)

 日本道路公団等民営化関係法施行法案(内閣提出第一一五号)

 国土交通行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

赤羽委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律等の一部を改正する法律案及び油濁損害賠償保障法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省総合政策局長澤井英一君、住宅局長松野仁君、海事局長鷲頭誠君、港湾局長鬼頭平三君、政策統括官矢部哲君、資源エネルギー庁資源・燃料部長細野哲弘君、環境省地球環境局長小島敏郎君及び環境省環境管理局長西尾哲茂君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高木毅君。

高木(毅)委員 おはようございます。自由民主党の高木毅でございます。

 きょうは、海洋汚染防止法及び油濁損害賠償保障法の各一部改正について質問をさせていただきます。

 質問に入る前に、先週、六本木ヒルズで起きました、自動回転扉による子供が亡くなった事故があったわけでございますが、その点につきまして、国交省の御対応等、少し質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 この自動回転扉、都市部の商業施設では決して珍しくないものでもありますし、全国でも大型のホテルやあるいはまた大規模複合施設には設置されているところでございまして、それゆえ、決して看過できない問題だというふうに私は思っております。

 いろいろと報道もされておりますけれども、きのうあたりでは、私のつかんだところでは、全国で類似した事故が少なくとも五十二件というふうに言われておりますし、横浜のランドマークタワーでは九件というような報道もされているわけでございますが、実際、表に出ない数字というのはまだまだあるのではないかというふうに思います。

 そうした状況でありますけれども、こうした自動回転扉の種類や、あるいはまた、構造上、多少は違いはあるというふうに思いますが、国土交通省として、この事件、事故が起きてから、全国でこうした類似する事故がどの程度起きたのか、そんな数字をきちっと把握したのか。あるいはまた、こうした扉がどの程度全国に設置されているのか、そういったようなことを調査したのか。この点についてまずお尋ねをいたしますので、よろしくお願いいたします。

松野政府参考人 お答えいたします。

 今回、自動回転ドアで非常に痛ましい事故が発生いたしました。このことはまことに遺憾でございまして、亡くなられた方の御冥福を心からお祈りしたいと思います。

 今回の死亡事故以前には、六本木ヒルズで起こりました類似事故について、今回の事故発生まで報告を受けておりません。したがいまして、これまでは国土交通省としての調査やあるいは指導は行っていなかったわけでございますが、今回の死亡事故が発生した二十六日に、東京都に対しまして事故に関する情報提供を要請し、また同日夜には、森ビル株式会社から事故の概況について報告を聴取しております。また、その際、同社に対しまして、過去の事故事例あるいは点検状況について資料を求めまして、二十八日昼には提出及び報告を受けたところでございます。

 そういった状況でございまして、全国的な状況についてはこれから把握をしていかなければいけないということで、緊急な対応をしようとしているところでございます。

高木(毅)委員 設置状況あるいはまた過去の事故件数等についてまだ十分に把握、掌握をしていないようにも思えましたけれども、しっかりとこうしたことをやっていただきたいと思いますし、何よりも大切なことは再発の防止だというふうに思いますので、ぜひこの点についても国土交通省として御指導いただきたいと思います。

 今も少し御説明いただきましたけれども、今後どうした指導をしていくつもりがあるのか、その点について、いま一度お願いいたします。

松野政府参考人 これまでは、先ほど申し上げましたように、こういったたぐいの事故の発生の報告を受けておりませんでしたから、今回のような自動回転ドアに対する対策というのはとられてきておりませんでしたが、こうした大変重大な死亡事故が発生したということを重く受けとめております。

 今回の事故を契機といたしまして、自動回転ドアを製造している主要メーカー各社に対しまして、速やかに設置実態を把握し、報告していただくこと、それから、当面の事故防止対策として、回転運転の休止あるいは警備員配置等の措置をとっていただくということを既に三月二十九日に要請しております。

 今後、自動回転ドアの事故防止対策を検討するために、経済産業省と共同で、学識経験者あるいは実務関係者等による検討会を設置する予定でございます。第一回を四月の早い時期に開催いたしまして、おおむね三カ月程度で、設計者あるいは管理者が守るべきガイドラインをとりあえず整備するということをやっていきたいと考えております。

高木(毅)委員 万全の体制をとって再発防止に努めていただきますことを改めてお願い申し上げて、この質問は終わらせていただきます。

 それでは、予定されております本来の法案の審議に入らせていただきます。

 海洋汚染防止法、油濁損害賠償保障法は、ともに海洋環境保護を図る法律であって、海は母に例えられるほど、この地球の生態系にとっては必要不可欠なものであるというふうに考えております。地球環境を考えるときに、海の作用なくしては始まらないほど大きな影響を持つものだというふうに思っております。

 そこで、海洋環境の保護は、海に囲まれた島国日本にとって極めて重要な課題であり、これまでも国際的枠組みの中で、船舶におけるさまざまな環境規制、あるいはまた事故被害者に対する補償の仕組み等、随時導入されてきておりますが、今後も引き続き、国際協調のもと、海の環境保護分野へ力を注いでいただきますように、まずはお願いをしておきます。

 それでは、油濁損害賠償保障法について質問をいたしますが、今回の改正では、タンカー事故の補償制度の改正、そして、近年、日本の沿岸各地で起きておりますいわゆる放置座礁船対策の二つの内容が盛り込まれているというふうに思いますが、まず最初に、タンカー事故の補償制度についてお尋ねをいたします。

 タンカー事故と申しますと、思い出されますのは、一九九七年、日本海で発生したナホトカ号の事故でございます。当時、日本海沿岸の幾つもの地域では大変な被害が発生いたしました。地元住民の生活に大きな影響を与えたことは、まだ記憶に新しいところであります。このナホトカ号の船首部分が、私の地元でございます福井県の三国沖に漂着をいたしまして、福井県におきましても、重油汚染の大きな被害に直面をいたしました。

 私自身も、まさに日本海の冬の寒さの中で、かっぱを着て、長靴を履いて、シャベルにバケツといういでたちで、何日も海に入って重油と格闘しておりました。当時の、岩場にべったりとついた油、あるいはまた、砂浜をどんなにどんなに掘り起こしても次から次へと油の塊が出てくるというああいった状況、そしてまた、羽が油で汚れた海鳥、そんなような光景は忘れられるものがないわけでございます。

 当時のまさに沿岸住民の苦労というものは、本当に大変なものでございました。あのような事故は二度と起こしてはなりませんし、万が一起きた場合は、被害地域への対応に万全を期す必要があると私は身を持って感じております。

 タンカー事故では国際的な基金による被害者救済の仕組みがあって、今回の法改正ではその充実が図られるわけでありますが、その議論の前提として、あの九七年に起きたナホトカ号事故、当時の被害規模あるいはまた救済内容について、この場でお聞きをいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。

鷲頭政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、一九九七年一月に発生しましたナホトカ号事故というのは、同船が島根県沖を航行中に、船体の破断によりまして破損タンクから約六千二百トンの重油が流出しまして、島根県から秋田県にかけて、先生の福井県を含む一府九県の海岸において甚大な油濁被害が発生したものでございます。

 このため、国、地方公共団体、漁業者、観光業者等は、油の防除費用、清掃費用、漁業被害、旅館、ホテル等の観光被害につきまして、船舶所有者、保険会社及び基金に補償請求の訴訟を行いましたが、二〇〇二年の十月に、補償総額約二百六十一億円で和解が成立いたしました。

 この補償総額約二百六十一億円につきましては、船舶所有者からまず百十億円が支払われ、国際油濁補償基金からは残る百五十億円が支払われております。

高木(毅)委員 今回の制度改正の中で補償金額をふやすということでございまして、これは、今も二百六十一億円、大変な額でございますけれども、被害者保護の充実を図る観点から非常に望ましいものだというふうに思います。しかし、金額の増額以上に、それにも増して大切なことは、やはり補償金というものが速やかに被害者のもとに渡るということではないかというふうに思います。

 今もお聞きをいたしましたら、二〇〇二年の十月ということでございますから約五年かかっているわけでございますけれども、こういったことでありますからいろいろ手続等難しいんだと思います。いろいろな事例があると思いますが、この五年というのは、まず、一般的に長いのか短いのか。私はやはり非常に時間がかかったというふうに思いますけれども、今回の改正で、そうした被害者を救済する補償というものが速やかに行われるようになったのか。その点についてもあわせてお聞きをいたします。

鷲頭政府参考人 ナホトカ号事故は、先ほども御説明しましたとおり、大変事故の規模が大きかったということ、それから、漁業被害者だけでも八千二百六十人に上る大変多い被害者がおられた、それから、請求の査定作業とか裁判上の和解に至る交渉に大変時間がかかったということで、事故発生から和解まで、先生おっしゃられたとおり、そういう理由で五年半かかったわけでございます。

 私どもも、被害者に対する補償に長期間を要するということは大変問題であるというふうに考えておりまして、この法律ではございませんが、ナホトカ号事故の後、我が国は、基金の総会とか理事会の場において、円滑かつ速やかな補償の実現を要請してまいりました。その結果、査定人や専門家を増加して、査定作業を事故が起こったときに早目にざっとやってしまうということとか、あるいは仮払いを進めることといった改善が行われるようになりました。

 その結果といいますか、具体的には、一九九九年十二月にフランス沖で生じましたエリカ号事故におきましては、ナホトカ号事故の経験を生かしまして、初期段階より査定人を増加するとともに、一部合意に至っていない請求が残っているものの、基金と合意した被害者については仮払い率一〇〇%で補償するといったようなことをやりまして、四年余りたった現在、補償はほぼ終了しているということになっております。

 それから、二〇〇二年の十一月にスペイン沖で生じたプレステージ号という、これも大きな、ナホトカ号の三倍の大きさのタンカーでございますが、これにつきましては、現時点におきまして請求総額とか補償総額というのは確定しておりませんけれども、例えば、被害国の政府が基金に対して、払い過ぎ、後で確定したときにもらった人から返してもらう、それを返してくれないときに政府が銀行保証をつけるというようなことをやりまして基金が早目に仮払いを行うこととして、被害者への支払いの迅速化というのが図られております。

高木(毅)委員 次に、国際条約の締約国と非締約国の関連で一つお尋ねをいたします。

 国際基金による補償金の支払いは、当然、条約の批准が前提となっていると思いますけれども、非締約国のタンカーが事故を起こした場合はどのような対応になるのか、お尋ねをいたします。

鷲頭政府参考人 非締約国のタンカーが我が国の近くで事故を起こしたという場合でございますが、国際基金条約におきましては、被害国、すなわち、日本はメンバーでございますので、日本が本条約に加盟しておれば、事故を起こした船舶所有者の属する国が本条約及び民事責任条約に加盟しているか否かを問わず、基金から補償をされます。

 このため、非締約国のタンカーが事故を起こしまして日本の領海及び排他的経済水域に油濁被害を及ぼした場合には、そのタンカーの船主及び国際油濁補償基金に補償を請求することになっております。仮に船主が賠償しないときには、基金がその分も含めて補償をする、こういうことになっております。

高木(毅)委員 いずれにしても、ナホトカ号といういい教訓があるわけでございますから、今後こうした場合には迅速かつ確実に被害者保護の充実を図っていただくことをお願いして、次に、放置座礁船についてお尋ねをしたいというふうに思います。

 これも、さっき言ったとおり、あちこちで起きているわけでありますけれども、特に二〇〇二年の十二月には、茨城県の日立港沖で北朝鮮籍のチルソン号が座礁するということがございました。座礁船からは油が流出し、油濁防除の必要に迫られ、また、沿岸地域への影響、こうしたことを考えますと、一刻も早い座礁船の撤去が望まれたわけでございますけれども、そうした沿岸住民の思いとは別に、自治体や国の対応はやや遅かったのではないかというふうに考えております。

 その原因、いろいろとあると思いますけれども、費用負担というようなことが大きな原因、理由の一つではなかったかと推察できるわけでございます。油濁防除や撤去というのには当然かなりの費用がかかるわけでございまして、やはりここでも、法改正の議論の前提として、このチルソン号撤去等にかかった費用及び請求先をお聞かせいただきたいというふうに思います。

 あわせて、まだ問題は残っているというふうに私は考えておりますけれども、そういった点があったら教えていただきたいと思います。

 その上で、簡単に、今回の油濁損害賠償保障法の改正案の最大のポイントというべきところも教えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

鷲頭政府参考人 平成十四年の十二月五日に茨城県日立港沖におきまして座礁した北朝鮮のチルソン号というのは、船底が破れまして、燃料油が流出するとともに、船体も放置されたため、燃料油防除対策あるいは船体撤去につきましては、自治体、茨城県でございますが、約五億円という多額の費用を負担する結果になりました。これを受けて、国においてはその二分の一を結果的に補助しているということでございます。

 これらの油防除対策や船体撤去につきましては、本来、船主というのが責任ある対応を行う、自分で撤去して処理をするということが原則でございます。このため、費用の請求相手というのは船主ということになります。しかしながら、この場合、朝鮮ウォルビサン船舶会社という船主だったわけでございますが、この船主が適切な保険に加入しておらず、賠償能力が、資力が不足していたため、何らの対応もとられないという結果になったわけでございます。

 このような事態を踏まえまして、今回、油濁損害賠償保障法の改正をしたわけでございますが、その中で、放置座礁船対策といたしまして、我が国に入港する総トン数百トン以上の外航船に対しまして保険加入の義務づけを図ることとしております。

 また、加入が義務づけられている保険の内容としましては、一つには燃料油による油濁損害の賠償、それから二番目には座礁船舶の撤去の費用といった、その両方を補てんする保険としておりまして、この辺がポイントでございます。

 今回の法改正によりまして船主の賠償資力を確保することで、チルソン号事故のような、船主による責任ある対応がなされていない事態を予防することができるというふうに考えております。

高木(毅)委員 県が五億、国がその半分を負担しているということでありますけれども、これは当然、請求はしている、あるいはまた回収に向けての努力はしているというふうに考えてよろしいんでしょうか。

鷲頭政府参考人 茨城県は今でも、今申し上げました船会社に対して、かかった費用についての請求をいたしております。

高木(毅)委員 そうしたことのないように、今回の法案では、座礁事故を起こした場合に備えて、日本へ入港してくる船舶について保険契約を義務づけるということでございます。

 これから義務づけるわけですからどんどん多くなってくると思うんですけれども、現時点での外国船の保険加入状況というものをまずお聞きしたいというふうに思いますし、今も北朝鮮の船という話がございましたけれども、保険契約の進んでいる率の高い国、あるいはまた低い国というのがあると思います。その著しく低いという国、当然北朝鮮はそうなのかなと推測できますけれども、その点について少しお尋ねをしたいと思います。

鷲頭政府参考人 平成十四年の一年間に我が国の港に入港した外国船舶につきまして、その保険加入の有無を国土交通省において調査いたしましたところ、延べ入港隻数で見ますと、約七三%の船舶が保険に加入しておりました。

 これは、世界の二十五の主要な保険会社で、PI保険と言っておりますが、船舶の事故により第三者に生じた損害を賠償するための保険でございます、そのPI保険への加入状況について調べたものでございます。

 その結果、今先生がお尋ねの低い国、順番に申し上げますと、北朝鮮が二・八%、ロシアが一四・九%、カンボジアが三一・七%ということになっております。

高木(毅)委員 ということは、この法改正、義務づけることになるわけですけれども、仮に北朝鮮がそのままということになると、ほとんどの北朝鮮の船は日本には入ってくることができなくなるというふうに解釈していいわけですか。

鷲頭政府参考人 御指摘のとおりでございまして、今の状況、私どもが調べた時点での状況であれば、保険に入っていない船、仮にこの法律が施行されまして、その後は入ってこれなくなります。

高木(毅)委員 はい、わかりました。

 一部しっかりやっていただけない国もあるかもしれませんけれども、こうした法改正によって、ひとまず日本海、日本の海の汚染防止というものは図られるのではないかなというふうに思うところでございます。

 しかしながら、先ほども少し御説明ございましたけれども、保険にもいろいろな種類があるというふうにも思っております。保険には入っているけれども、いざこうしたときに実際は役に立たなかったというようなことも間々考えられないことではないというふうに思うわけであります。

 その保険内容というものについても細かい規定を設ける必要があるというふうに思いますが、その点についてはどのようになっているのか、お聞かせいただきたいと思います。

鷲頭政府参考人 今回の改正におきましては、保険の内容につきましても、法律上、支払い対象とか保険金額についての要件を課しておりまして、その要件に合致したものだけが適切な保険として認められることになります。

 具体的なお話として申し上げますと、座礁事故や燃料油の油濁事故についてちゃんと保険金が支払われるということになっているかどうか、保険金の支払い対象です、それから、法律上船主が負うべき責任を果たすのに十分な保険金額になっているかどうかということ、これらを保険証書で確認いたしますし、さらに、当該保険会社が、これまでそういうPI保険についての付保実績とか過去における支払いに問題がなかったか、そういうようなことをチェックしたいというふうに考えております。

高木(毅)委員 それからもう一点、義務づけの対象船舶、百トンということを今御説明ございましたけれども、その根拠、なぜ百トンなのか。百トン以上を義務づけることでしっかりと担保できるというふうに考えればいいんでしょうか。お願いいたします。

鷲頭政府参考人 先ほど申しました私どもの平成十四年の調査によりますと、我が国の港に入港する百トン未満の外国船舶というのは延べ入港隻数全体の一・七%にすぎないわけでございまして、義務づけが適用されない船舶の数は極めて限られているというふうに考えておりまして、百トン以上であれば今回の規制は十分な効果が得られるものというふうに考えております。

 さらに、諸外国の制度と比較いたしましても、そもそも、ほとんどタンカー以外の船舶に対する保険の義務づけ制度はなく、類似の制度を導入している数少ない国におきましても、米国は三百トン以上、カナダ、オーストラリアは四百トン以上を対象としておりまして、今回の規制は国際的に見ても厳格なものであるというふうに考えております。

高木(毅)委員 もう私の質問時間も少なくなりました。

 きょうは佐藤副大臣に御出席いただいておりますので、佐藤副大臣は残念ながら海なし県の先生でございますけれども、冒頭私申し上げたとおり、海洋国日本でありますから、海のいろいろな取り組み、特に最近は環境というものが非常に大きな問題になっておるわけでございますので今いろいろと質問させてもらいましたけれども、一つには、事故が起きて、それにどう対応するかというようなこともございますし、それから、もっと広く長く、いわゆる地球環境への影響というようなこともあるわけでございます。

 最後に副大臣に、国土交通行政として、海洋国家日本として海にどういうふうな取り組みをしていくか、そんな思いだとか、あるいはまた決意だとか、そういったのをぜひお聞かせいただいて、私の質問を閉じたいと思います。よろしくお願いいたします。

佐藤(泰)副大臣 委員御指摘のとおり、我が国は四面を海に囲まれまして、海岸線が三万五千キロメートル、また、排他的経済水域の面積が四百五十万平方キロと、まさに海国日本でございます。七月の第三月曜日を海の日として記念するのは、やはり海国日本の意識を国民に広く知っていただきたいと思うためと思うのでございます。

 国土交通省といたしましては、今回の船舶起因の汚染防止対策としまして、海洋環境の保全のための施策のほか、海上交通の安全と振興、海洋状態の把握、解明など、多岐にわたる施策を進めております。海洋に関する取り組みに当たりましては、こうした各種施策を総合的に進めていく必要があると認識しております。

 さらに、近年は、地球上の七割を占める広大なる海洋の問題は国際的に協調して取り組むべきものがありますが、これらの対応が必要になってきております。

 今後とも、海洋国家としての立場を踏まえ、我が国の海はもとより、世界の海への貢献をさまざまな分野において積極的に行っていく所存であります。

高木(毅)委員 どうもありがとうございました。終わります。

赤羽委員長 高木陽介君。

高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。

 本日は、油濁損害賠償保障法の改正案と海洋汚染及び海上災害の防止に関する改正案ということで質問させていただきます。

 今も質問にございましたように、我が国は四方が海に囲まれている、海洋国家である、しかも貿易立国である日本。物流を含めて船舶による交通というのが本当に重要な問題であるにもかかわらず、どうしても、一般の国民の側から見ますと、日常的に船と接する機会がないということで、問題意識が余り高くないのではないかな、そんな気がして仕方がありません。というのも、例えば自動車の問題または鉄道の問題、航空機の問題というと結構身近に感じているんですけれども、船の問題というのは、何か起きないと実感をしない。

 そんな中にあって、今回、タンカーの油濁損害について、先ほど高木毅委員の方から質問等々がありましたナホトカ号の事故、こういうものを経験した日本にとりまして、タンカーの油濁事故というのは本当に国際的な補償制度の充実を図ることが重要である。また、追加基金議定書を踏まえまして一層の補償の充実を図るということで、今回の法改正ということは評価したいと思いますけれども、引き続いて、国際的な枠組みに基づきましてきちんと対応してもらいたいと思います。

 放置座礁船の対策についても、我が国に入港する船舶に対して新たに保険加入を今回義務づけるということで、本当に大切な問題であるというふうに評価しておりますけれども、その上で幾つかの質問をさせていただきたいと思います。

 まず、我が国の沿岸で座礁した無保険船舶で、船主が放置した結果、自治体が船舶の撤去などの費用を負担する、こういう問題が生じてまいりました。船主による責任ある対応を確保するために、我が国に入港する船舶に対して保険加入を義務づける、こういう必要があるというふうに考えておりますし、その上で、問題は、義務づけはいいんですけれども、本当にちゃんと保険に加入しているかどうか。

 そのような実態の中で、先ほど質問の、また答弁の中にもありました北朝鮮船籍、これは保険の加入率が低いということで、二・八%だということですけれども、この法案によって北朝鮮船籍の船舶はどのように扱われていくか。

 また、この法案は国籍に着目して入港を直ちに禁止するものではない、いわゆる船に対してということで認識をしておりますけれども、それでよいのか、まず御答弁をいただきたいと思います。

鷲頭政府参考人 ただいま先生御指摘いただきましたとおり、私どもの調査によれば、北朝鮮の船は二・八%の保険加入率である、こういうことでございます。

 ただ、北朝鮮船舶の保険の加入率というのは低い状況でございますが、今回の改正というのは、座礁事故等が発生した場合に、船舶の撤去、油による被害をカバーするということが円滑に行われるよう保険を義務づけようとするものでございまして、船籍なり特定の国に着目して船舶を排除するというものではございません。

 したがいまして、北朝鮮籍の船も、それ以外の船籍の船につきましても、同様に、保険加入の有無の観点から我が国の港への入港の可否を判断するということになるものでございます。

高木(陽)委員 今御答弁にありましたように、船舶に着目してこの法律というものが適用されますけれども、これはあくまでも油濁損害ですとかまたは海洋汚染、そういった問題で法律というのが構成されております。

 ただ、ちょうど拉致問題がこの数年間話題となっておりまして、特に、六カ国協議が行われ、やはり経済的なさまざまな制裁を行うべきであろう、そういった意見の中で、まず外為法の改正が今国会行われました。また、北朝鮮というふうに名指しはできませんけれども、船舶の入港禁止ということで、この法律とはまた別に、今度は国に特定した形で、今与党の実務者の協議の中では合意をし、自民党、公明党の中でそれぞれ党内手続を行って、今国会にその船舶の入港禁止法案を提出しよう、こういうような段取りとなっております。こういった問題も含めて、これは担当は海事局等々もかかわってくると思いますので、しっかりと対応していただきたい、これは要望でございます。

 その上で、平成十四年の十二月のチルソン号事故、この際に、流出した燃料油または船内に残った油の処理に本当に多額の費用を要しました。これを踏まえますと、今回の放置座礁船の問題というのは、単に座礁後の船舶の撤去の問題だけではなくて、タンカー以外の船舶の燃料油による損害の補償の問題というようにも考えられると思います。

 この法案によりまして加入が義務づけられる保険の内容はどういったものであるのか、また、実際にこういった問題に対応した保険の商品はどういうものがあるのかということでお答え願いたいと思います。

鷲頭政府参考人 先生今御指摘ありましたとおり、チルソン号の事故の場合には、流出した燃料油の処理とか船舶の残存する燃料油の抜き取り、さらに船舶の撤去ということで船主が責任ある対応をなされなかったことによって、自治体が大変な費用を負担するという結果になったわけでございます。

 このような事態を受けまして、この法案では、我が国に入港する総トン数百トン以上の外航船を対象に、燃料油の油濁損害の賠償と、それから船舶の撤去等の費用、その両方をてん補する保険への加入を義務づけることにしております。

 実際の保険商品といたしましては、船主が第三者に対する損害に対して責任を負う場合に保険金が支払われます船主責任保険、いわゆる、先ほども申し上げましたPI保険という保険商品がございますので、我が国に入港する外航船につきましては、この保険に加入していただくことになります。

高木(陽)委員 今、具体的なPI保険の話もございました。ただ、この法律が成立をして、そして施行されて、いよいよこれからどうなるかという問題なんですけれども、現在、北朝鮮が二・八%という状況の中にあって、果たしてこれが実態としてどうなってくるのか。

 北朝鮮の船籍でそういう保険加入率が低い、日本に入港するということで保険に加入していただく。それはそれでいいと思うんですけれども、逆に、先ほどの質問答弁でもあったように、もしそれが加入していなければそれは入港できない。これはこれで、日本の側にとってみて、特に日本海側の港、かなり北朝鮮の船が来て、経済的な問題としてその地域の問題というのも出てくると思うんですね。だから、そこら辺のところもしっかりと踏まえていかないと、これは海事局の仕事ではないんですけれども、やはり政府としてそういった問題も考えていかなければいけないんだろうな、こんなふうにも考えております。

 特に放置座礁船の問題に対して、この法案によって、まず保険の義務づけによりまして制度的な枠組みが確保されたということで、これは評価したいと思います。法律が成立した暁、一番大切なのは、法律というのは、どの法律もそうですけれども、施行したときにそれが実効性あるものなのかどうか。形式的に、じゃ、保険だけ入りました、ところが、いざ、座礁しました、油が漏れました、実態としてはそうはなっていませんでした、こうならないように、こういうところをしっかりとチェックしながらやっていただきたい、このように要望をしておきます。

 次に、油濁事故そのものを防止するための対策として、タンカーのダブルハル規制など、いろいろな取り組みがなされてまいりました。これらは、国際海事機構、IMOですね、条約を策定しまして、各国が協力して行ってまいりました。今回、海洋汚染防止法改正を行うということで、船舶の排気ガス対策について、これが盛り込まれておりますけれども、その背景、どういったものなのか、また、その趣旨はどういうものなのか、これについてお答えを願いたいと思います。

澤井政府参考人 船舶からの汚染の防止に関しましては、御指摘のとおり、これまで、油とか有害物質あるいは汚水、ごみによる汚染を防止するために、海洋汚染防止法によりまして、また、国際的には船舶汚染防止条約、通称MARPOL条約と申しておりますが、その枠組みにより規制を実施してきたところでありますが、今回の法改正によりまして、新たに船舶からの排出ガスについて規制を開始しようというものであります。

 船舶につきましては、諸外国も含めまして、これまで特段の大気汚染防止規制が講じられてきませんでしたけれども、近年、硫黄酸化物等による酸性雨の問題などを初めといたしまして、大気汚染の問題もクローズアップされてきたところであります。また、オゾン層を保護するためのフロン類の規制あるいは船上焼却炉からのダイオキシンの発生の防止といった事項も加えまして、国際海事機関において、船舶からの大気汚染を防止する議定書が採択され、来年の早い時期に発効する見込みになってきたというのが現在の状況であります。

 また、我が国の現状を見ますと、陸域と領海さらに排他的経済水域、この広がりの中で、窒素酸化物及び硫黄酸化物の排出量のうち、船舶からの排出量が窒素酸化物では約三割、硫黄酸化物では約四分の一となっております。

 こうした内外の動向を踏まえまして、今回の法改正は、船舶からの大気汚染を防止するための制度的枠組みができるということがまず最も重要な点と考えております。

 内容的には、窒素酸化物で申しますと、この排出量が三割程度削減された船舶原動機が普及していくこと、それから、船舶の燃料油として、硫黄分濃度が高いものを販売かつ使用できなくなるなどの規制を実施していくということが内容となっております。

高木(陽)委員 冒頭申し上げましたけれども、海の話というのはなかなか実感がわかないというか、例えば自動車の排ガス規制だとか環境問題というのは、この十年、二十年、もっと言いますと、公害問題というのが昭和四十年代かなり問題となったときから、環境庁ができて、今は環境省になって、そういった問題というのはすごくいろいろな対応を行ってきた。国土交通省内の自動車関係だとかそういった問題も、ディーゼル車規制等々を含めて、NOx・PM法だとかいろいろと手を打ってきた。

 一方で、船の話というのは騒ぐ人がいないというか、これは大変だとか、環境問題について、余りにも船というのはエリアが世界各国、世界じゅうを動くわけですから、逆に言ったら、世界の環境問題からいったら船の問題というのは本当に重要であった。

 そういった意味では、今回、そういう法改正、枠組みができてくるということで、これはこれで評価したいんですけれども、本来であればもっと早くやっていかなきゃいけなかったんじゃないか。もっと言いますと、海洋国日本というのがもっと積極的にそういうのを主張し、やっていかないとこれからはいけないんであろうな、こんなふうにもとらえております。

 そういった意味では、今回の法改正、まず一歩前進でございますから、これをまた契機にこういった問題を、国際間の中にあっても日本という国がもっと積極的なアプローチをしながらリーダーシップを発揮していただきたい。きょうはちょっと大臣まだいらっしゃらないので、大臣にも申し上げておきたいなと思うんですけれども、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 時間も大分たってまいりましたので、最後の質問にさせていただきます。

 海事行政の分野におきまして、船舶からの大気汚染の防止または船舶の保安対策、また、放置座礁船対策といった我が国の独自に取り組む課題など、さまざま新しい課題に対応することが必要となってくる。今申し上げたとおりでございます。

 このような状況を踏まえまして、国際海事行政における新しい課題にどのように取り組まれるか。これは局長が答弁するというよりも、やはり政治家としてどう考えておられるか、そういった問題について政治家の立場で、大臣いらっしゃらないので、佐藤副大臣、お答え願いたいと思います。

佐藤(泰)副大臣 国際海事行政を取り巻く新しい課題のうち、船舶の安全対策また排ガス規制等の国際的な枠組み等に基づく分野については、諸外国と協調しつつ、引き続き積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

 また、放置座礁船対策のような我が国独自の新しい取り組みも必要になっておりますので、諸外国の理解と賛同を得られるよう、積極的な働きかけを行ってまいりたいと考えております。

 いずれの場合でも、我が国が国際海事分野におけるリーダーシップを発揮して、積極的に取り組んでいくことが大変重要なことであると認識しております。

高木(陽)委員 最後に、これは要望でございます。

 先ほど申し上げました陸の部分でのさまざまな環境対策を行う場合に、それぞれの当事者である、例えば排ガス規制なんかの場合にはトラック業者ですとか、そういったものに対するさまざまな手当てをしていると思うんですね。今回の法改正によって、保険の加入義務だとか、これは日本の国の場合、我が国のそれぞれの船主を初め、またいろいろと海洋汚染防止法等の、排ガスですね、こういった問題等に、今の現状だと、それぞれ、それほど負担がかからずできると思うんです。しかしながら、今後さまざまな手だてを打ってもらいたいと思いますので、そういったときの当事者である船主を初めとする業者さん、業者という言い方はおかしいかもしれませんね、当事者の方々が無理がないようにしながら、しかも実効性を持てるような形のいろいろな応援対策、ここら辺はもうもちろんそれぞれ当事者の方々とも国土交通省としては話し合いをしながらやってきているとは思いますけれども、今後もそういった配慮を持っていただきながら海洋問題について取り組んでいただきたいと要望申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

赤羽委員長 三日月大造君。

三日月委員 民主党の三日月大造です。

 今回議題となっております海洋汚染及び海上災害の防止そして油濁損害賠償保障法関連の質疑に入ります前に、私も、民主党を代表いたしまして、緊急事態である、先週二十六日に起こりました六本木ヒルズの自動回転ドアの事故についての質疑を、建築を所管いたしますこの国土交通委員会においてさせていただくことをお許しいただきたいというふうに思っています。

 まず冒頭、死亡された溝川涼君の御冥福を心からお祈り申し上げたいと思いますし、御遺族の方々に対し、これまた心からお悔やみを申し上げたいと思います。

 私自身、この六本木ヒルズのあの扉を何度も利用したことがあります。そして、事故後、二十九日に現場を訪れ、現地の設置状況等について確認をさせていただきました。同世代の子供を持つ父親として、この事件を深い悲しみを持って知りましたし、そしてまた一人の国会議員として、この事故を未然に防ぐことができなかっただろうかということについての責任の一端も感じるところであります。

 今回の事件の原因や責任の所在等については、現在捜査が、そして調査が行われております。これを注意深く見守っていく必要があるでしょうし、大切なのは、再発防止に向けた取り組みだと認識をしております。この問題については、与野党を超えて、そしてまた官民を挙げて取り組んでいく必要があると、まず冒頭、強く申し上げておきたい。

 その上で御質問を申し上げます。

 後ほど大臣もいらっしゃいますから、大臣に関する、御見解等をお伺いすることは後に回しまして、先ほどの自民党の高木委員の質問の中にもありましたが、今回、自動回転ドアが事故を引き起こしてしまいました。一体、日本全国で、自動回転ドアというのは何台設置されているんでしょうか。そしてまた、いろいろなタイプがあるということですけれども、どのようなタイプがあって、これを製造する、もしくは輸入をする、関連するメーカーは何社あると国土交通省の方で把握をされているのか、まず冒頭、お聞かせください。

松野政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまお尋ねの自動回転ドアのまず設置台数でございますが、三月二十九日に、自動回転ドアを製造しております主要メーカーに対しまして、設置実態の報告を要請しているところでございます。その報告を待っているところでございますが、現在のところ約三百台が全国で設置されている、大型のものでございますが、設置されているということを把握しております。

 自動回転ドアの種類、タイプにつきましてはいろいろございまして、直径二ないし三メートル程度の小型のものから、今回事故が発生いたしました直径五メートル程度の大型のものまで、さまざまなものがあると認識しております。

 大型の自動回転ドアの国内主要メーカーは四社ということで、中には輸入品もあるというふうに認識しているところでございます。

三日月委員 最終的な、きっちりと国として、どこに何台あるのかというような把握はいつできるのかということについても追加でお聞かせいただきたいと思いますし、この回転ドア、最近大型化し、そして自動化がされてきたということもお伺いをしております。この理由についてお聞かせいただきたいと思います。

松野政府参考人 現在、先ほど申し上げました設置実態の報告については、できる限り速やかに報告していただくということで急いでいるところでございます。

 それから、なぜこれが採用されてきたか。回転ドア自体はかなり古くからございますけれども、自動の回転ドアがここ十年程度で普及してきたということでございます。

 一つには、回転ドアの効果といいますか、漏気、つまり空気が漏れることが少ないということで、冷暖房のコストの抑制に資するということ。もう一つは、高層ビルの場合、階段室というものを、火災が起きたときにその階段室を守るという意味から区画しております。いわばそこは気密の部屋になっておりますので、その部屋とそれ以外の部屋を、ドアが開放されてしまいますと気圧の差が出てまいります、その階段室周りのドアが開閉しにくくなるということが起こり得るわけです。そういうことに対するいわば密閉の効果があるということ。

 それから、大型化してきたことにつきましては、かなりビルが大規模化して、出入りする人間の数も多くなってきているということからドアが大型化してきたということではないかというふうに思います。

三日月委員 そうやって大型化、自動化してきた回転ドアなんですけれども、挟まれたり、そして閉じこめられたり、いろいろな事故の発生も、今マスコミでもいろいろなところで言われてきていますけれども、その発生についてこれまでどのように把握をされているのか、お聞かせください。

松野政府参考人 事故につきましては、今回の重大な事故が起きますまで、我々としては、こういう事故が多発しているということについての報告は受けておりませんでした。したがいまして、これまで、これに対する対策等をとらなかったということがございます。

三日月委員 そもそも自動回転ドア、設置基準や安全基準や使用基準といったものはあったんでしょうか。特に、大きさや速度、重さ、センサーの感知機能、制動距離、そして事故報告をどうするのか。ちなみに、同じような、建物の中にあって、しかも多くの方々が利用する構造物で、そして自動的に動くものとして、エレベーター、エスカレーター、昇降機という名称で建築基準法の三十四条、そして施行令の第百二十九条の三以降、細かな設置基準等々について記されています。

 そもそも自動回転ドアについては基準があったのかないのか。まあ、ないというお答えでしょうけれども、もし、ないまま回転ドア、特に自動回転ドアが設置されてきたのであるならば、今回の事故、建築物の確認検査義務のある国や行政機関の責任についてどのようにお考えなんでしょうか、お答えください。

松野政府参考人 御指摘のとおり、現在の建築基準法では、自動式の回転ドアに関する基準はございません。

 それから、JIS規格等あるいは業界団体の自主基準も今のところは定められていないというふうに把握しております。

 建築物に関する規制という意味で、建築基準法は、従来から、火災とか地震とか、こういった非常事態に対応するということが単体の規制としては主たるものでございました。非常事態ではなくて、日常の建築物の利用あるいは住宅の日常的な利用、これに関する規制というのは、比較的重大な事故が発生してきた、あるいは発生するおそれがあるというものについて限定的に規制をしております。建築物のありとあらゆる部分を規制しているというわけではございません。

 そういった日常的な安全、日常安全と言っておりますが、この観点からの規制はかなり限定されておりまして、そういった重大な事故が起こってきた、あるいはそういう可能性があるということで、エレベーターあるいはエスカレーターそれから階段、これは階段から転げ落ちて死亡するという事故があり得るということで、こういったものについて限定的に規制するということを実施してきておりました。

 回転ドアにつきましては、古くからございますが、これについての事故が多発して大問題であるという認識は持っておりませんで、また、自動式の回転ドアも近年普及してきたということから、それに対する重大な事故が発生しているというような報告もなかったものですから、社会通念上、社会実態からこれを規制する必要というものを感じていなかったわけですが、今回このような重大な事故が発生したということを重く受けとめまして、今後、専門家による検討委員会を設置いたしまして、できるだけ早期に、四月早々に設置いたしまして、三カ月程度で安全対策を講じる中身を決めていきたいというふうに考えております。

三日月委員 我々も、そして皆さんもそうだと思うんですけれども、時に通るのが大人でも怖くなるようなあの自動回転ドア、その安全性について、事前に危険があると思えなかった、日常安全を脅かす存在だということが想定し得なかったことに対して、非常に残念な思いがいたしております。

 最近、あらゆるものがそうなのかもしれませんが、人の流れを多く、そして速くというものを優先し過ぎるが余りに、私たち人間の安全、そういったものについての認識が、そしてまた行政としての基準という歯どめが若干欠けているかのように思います。

 大臣がお見えになりました。今回の事故に関するお気持ち、御見解、そして、先ほど局長の方から答弁がありました、検査、確認の義務のある国や行政機関の責任についてどのようにお考えなのか、改めてお聞かせをいただきたいと思います。

石原国務大臣 私も四歳の子供を持つ親として、今回の事件は本当に痛ましく、亡くなられた坊やに対し、また御遺族の皆様方に対し、心から御冥福をお祈り申し上げたいと思っております。

 ただいま政府参考人の方から御答弁をさせていただきましたように、緊急に対処できる措置として、このようなものが全国で大体今三百数カ所設置されているということでございますが、運転を中止していただき、安全の確保というものに努めておりますし、さらに、早々に、これは経済産業省と共管でございますが、検討会を起こしましてガイドライン等々を早急に整備することとしたい。

 以後このような悲惨な事故が起こらないように、行政としても万全を期してまいりたいと考えております。

三日月委員 現在取り組んでいただいている事柄については後ほどお伺いしようと思っていたんですけれども、今回起こってしまったこの事故について、もう一度重ねてお伺いをいたしますが、基準を設けることができなかった、事故が起こるまでに、手動から自動という非常に大きな技術革新があったこの回転ドアについて基準を設けることができなかった。特に制動距離といったものは、自動になることによってもう格段、数段延びると思うんですけれども、このあたりの現状認識、国土交通省としてどのように、責任は、やはり国としても、そして行政機関としても、今回の事故に対してあるのではないかと思うんですけれども、そのあたりについていかがお考えでしょうか、お聞かせください。

松野政府参考人 先ほども申し上げましたように、回転ドア、かなりこれ自体は歴史が古いわけですが、近年これが自動化されてきた、しかもそれが最近になって大型化してきたということでございます。

 今回の重大な事故が発生するまで自動式回転ドアによる問題があるということが把握できてこなかったこと、これは残念なことでございますが、今後そういった情報をどうやって建築行政サイドで収集していくかということも含めて、また、この事故を踏まえて、今後の対応策、どうした対応策をとっていくべきか、先ほど大臣から申し上げましたように、専門家による検討委員会を設置して早急にまとめてまいりたいというふうに考えております。

三日月委員 再発防止に向けた緊急かつ当面の対策というものと、そして恒久的な今後の対策という両面からの対策が必要だ。先ほどの局長の答弁の中にもありました、四月上旬に検討会を設置して、三カ月以内にガイドライン。

 特に、当面の対応策として、どこが、だれに対して、どのような対応を要請されたのかということと、そして、ガイドラインをつくった後、やはりこの自動回転ドア、何かしらの基準といったものが必要ではないかと考えるんですけれども、そのあたりの御認識についてお聞かせください。

松野政府参考人 事故が発生いたしました二十六日の対応でございますが、私ども住宅局建築指導課から東京都都市計画局市街地建築部に対しまして、これは特定行政庁としてその役割がございますので、事故に関する情報提供を要請しました。また、同日夜に森ビル株式会社から事故の概況について報告を聴取いたしました。その際、同社に対しまして、過去の事故事例あるいは点検状況等について資料の提出を求めまして、二十八日昼に提出及び報告を受けたところでございます。

 先ほど申し上げました専門家による検討委員会によりましてガイドラインをまとめていただく予定でございますが、その中で、建築基準として定めるべきかどうか、その検討結果を踏まえて、法律による対応ということも視野に入れて検討をしていくということになろうかと思います。

三日月委員 ぜひ我々も再発防止に向けてこの国土交通委員会等々でも審議、検討を深めていきたいと思いますので、今後の対策、ともに取り組んでまいる決意を申し上げておきたいというふうに思っています。

 それでは、今回本題となっております海洋汚染及び海上災害の防止、油濁損害賠償保障法についての質問をさせていただきます。

 まず初めに、海洋や大気の環境保全といったものはまさに地球規模の、どの委員からも、そしてどの委員も共通認識としてある地球規模の問題でありますし、広範囲かつ長期の影響を及ぼす汚染の防止、そして、油濁事故を初めとする、起こった場合の大規模な損害賠償については、国際的な枠組みの中での取り組みは極めて重要である。

 今回、国際条約の締結に伴う法改正が行われます。そのことに対して異議を唱えるものでは決してありません。国際的な流れやその中における日本政府の姿勢を改めて確認させていただくとともに、同じやるんだったら実効性のある取り組みを推進していくべきだというような観点から質疑をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、大気の環境保全に関する課題といたしましては、大きく分けて、地球温暖化防止、そしてオゾン層の保護、大気汚染防止、この三つがあるというふうに思っているんですが、条約や議定書など、これら三つの課題についての国際的な取り組みと我が国の法整備はどのようになっているのか、その概略について教えていただきたいと思いますし、今回の法改正がどこに位置づけられているのか、お聞かせください。

小島政府参考人 地球温暖化防止につきましてまずお答えをさせていただきます。

 京都議定書を締結している日本といたしまして、京都議定書の六%削減約束を達成するために、地球温暖化対策推進大綱に基づく各種の対策を進めております。

 京都議定書の対象となっている温室効果ガスは六種類でございまして、それらは、CO2、メタン、一酸化二窒素、HFC、PFC、SF6でございます。また、京都議定書の対象とはなっておりませんが、温室効果を有するオゾン層破壊物質でありますCFCあるいはHCFCなどにつきましては、モントリオール議定書に基づいた規制、国内法で対応しております。また、議員立法でフロン等の回収・破壊法が制定をされているところでございます。

 京都議定書の対象となります温室効果ガスの二〇〇一年度の排出量、これは議定書の基準年に比べて五・二%上回っておりますので、議定書の六%削減の約束達成のためには約一一%の削減が必要な状況でございます。このうち運輸部門からの二〇〇一年度のCO2の排出量は、議定書の基準年である一九九〇年に比べて二二・八%増加をしております。また、一九九五年以降の伸びは緩やかなものとなっておりますが、この分野での対策が急務となっております。

 温暖化につきましては、ことしは、ステップ・バイ・ステップのアプローチに沿いまして、大綱の対策、施策の評価、見直しを行う年でございます。政府として、運輸部門を含め、大綱に定められている対策、施策につきまして、実効性を確保する観点から評価、見直しを行いまして、必要が生じた場合には追加的対策を講じることによって、議定書の六%削減約束を確実に達成できるようにしたいと考えております。

三日月委員 この質問にすべてきっちりとお答えいただこうと思ったら一時間、二時間かかると思いますので、具体的な中身についてお聞かせをいただきたいと思います。

 今回の法改正によって、船舶からの排出ガスの放出規制が実施をされます。窒素酸化物や硫黄酸化物、揮発性有機化合物や特定フロン、特定ハロン、船上焼却等々について規制が加えられるんですけれども、対象船舶はどれくらいで、今回のこの規制によって我が国の大気汚染の環境改善にどの程度寄与するものと見込まれているのか、お聞かせをいただきたいと思います。

澤井政府参考人 今回の規制の中身が、窒素酸化物の削減、硫黄酸化物の削減、それから御指摘のようなフロン、ハロンの放出禁止、あるいはダイオキシン、いろいろございまして、対象となる船舶は、規模等によって、それぞれの項目ごとに違います。

 もっとも、今回の法改正、その前提としての条約議定書の締結の議論の発端となりました窒素酸化物と硫黄酸化物について申し上げますと、窒素酸化物で申し上げますと、これはエンジンの出力で百三十キロワット以上ということになっておりまして、日本について言いますと、この船が約六万五千隻。

 それから、硫黄酸化物については油の規制をいたしますので、これは、一定の硫黄分濃度以下の油を販売し、あるいは使用することというのが決まっておりますので、これは重油を使用する船すべてにかかります。これは相当大きな数字になります。

 そういうことで、規制項目によって対象船舶の数は大分異なってまいります。

三日月委員 規制対象船舶の数がそれぞれまちまちだというのはわかるんですけれども、今回の規制によって、我が国の環境汚染改善に、大気汚染改善に対してどの程度の寄与がなされるのか、お答えいただきたいと思います。

澤井政府参考人 窒素酸化物について申し上げますと、今回の規制が、これは一九九〇年ぐらいから国際的な議論が始まった内容でありますが、国際的な目標の合意といたしまして、船舶原動機からのNOxの排出を三割カットする、こういうことを前提に進んでまいりまして、それに見合う規制水準で合意がなされ、議定書は決まりました。したがって、原動機ごとに見ればNOxの排出量は三割減る。それから硫黄酸化物について言いますと、世界各国で、硫黄分濃度四・五%以下の油をこれから使おうと。

 これが全海域でどのぐらい出るかというデータは、残念ながらございません。

 日本のEEZまでの広がりで見ますと、陸域から出るものと領海及びEEZ合わせたものとを比較しますと、NOxでいいますと、陸域で七割、海で三割であります。それから硫黄酸化物でいいますと、陸域から七五%、海、船舶から二五%であります。

 これは風が全くなければそこに漂うわけでありますが、船から出る三割なり二割五分、四分の一、これが、問題は、特に日本でいいますと、国民の生活している場にどのぐらい寄与するか、これはマクロ的に幾らということはなかなか計算が難しゅうございます。

三日月委員 海上の割合が三割と二割五分だということで、特に広いですから把握も難しいし、そして本土に対する影響力も、いかばかりか、はかりかねるということはわかるんですけれども、それではお伺いをいたします。

 船舶からの排出ガスのうち、今回、窒素酸化物、硫黄酸化物以外の物質で、最近特にディーゼルエンジンが排出するディーゼル排気微粒子の健康への影響も懸念されていますし、特に浮遊粒子状物質に係る環境基準の達成率も低い。何を申し上げたいかというと、港に停泊をする船がもくもくと出す煙、この中に含まれる粒子状物質に対する規制、そういったものの必要性が叫ばれておりまして、東京都など船が停泊する港を持つ自治体では独自の規制を検討されているという動きもありますけれども、これについて国としてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

澤井政府参考人 今御指摘のPM、粒子状物質について先に申し上げますと、これにつきましては、陸上の発生源についてはどのぐらいのものが出ているかという実態把握の方法を初めといたしまして、例えばそれをどのように計測するか、あるいはどういう規制なり対応をとれば削減できるかという知見が確立されておりまして、そういった知見に従って規制がされております。

 ただ、船舶から出るものについては、陸上のそういう発生源と比べますと、特に、どのようにはかるか、あるいはどのような方法によって削減が実効を持ってできるかというあたりの確立されたものがありませんで、環境省初め関係方面で今いろいろな調査研究がなされている段階であります。この辺が確立できませんと、当然でありますけれども、法的効果を伴った規制というところにはなかなかいけないと思っております。

 ただ一方で、先ほどNOx、SOxについて申し上げたようなことで、船舶から出るものが直接国民の生活環境にどのぐらい影響があるかということについてはなかなか把握が難しいわけでありますけれども、PMでなくてNOxで恐縮でありますが、NOxについてあえて試算してみますと、日本の中でも最も船の交通の往来が多いと思われる東京湾の入り口、ここで、濃度を高める方向で最も厳しい風の条件を設定して計算した場合に、恐らく環境基準値の一割程度の寄与をするケースが最大であろう。

 だからこれで決して何もしなくていいということを申し上げているわけではありませんで、深刻ではない、しかし一定の寄与はしているから、これまで、先ほど来議論がありますように、自動車とか工場とか、そういったいろいろな発生源についての規制をし、規制を受けた関係の皆様方が一生懸命削減努力をしてきたという中で、船舶の排ガスは残された未規制分野でありますから、国際約束の中でやっていこうということで今回やるということが一点。

 それから、条例につきましては、一方で、船は国際的に動くという観点からしますと、国際的に統一されたルールでやるということが合理的であるということがまずあると思います。ただ一方で、環境問題あるいは環境の現状というのは地域によってもちろん差があります。そういった観点から独自の規制をしなければいけないという状況もあると思います。

 そういった双方の観点を踏まえまして、その前提として当然そういう独自の規制をしなきゃいかぬとすれば、その合理性や必要性がどこにあるか、どの程度あるかということがしっかり検証されつつあると思うんですけれども、そういった両方を考えて適切に対応すべき問題と考えております。

三日月委員 今回、大気汚染防止法も改正をされて、新たに浮遊粒子状物質や光化学オキシダント、この取り締まり等々についても行われることになっております、今審議されているんですけれども。ぜひ連動した取り組みを船舶についてもやる必要があるということを指摘しておきたいというふうに思っています。

 それと、一方で国土交通省が進めている施策の中に、環境負荷の大きい自動車輸送から、環境負荷を小さくする、かつ大量輸送が可能な鉄道や海運の活用を推進していこうというモーダルシフトというものを行っておられますけれども、そのモーダルシフトの現在の取り組み状況と、今回この船舶の排出ガス規制が加わることによる影響をどのようにお考えになるか、教えていただきたいと思います。

澤井政府参考人 特に物流について申し上げますと御指摘のとおりでありまして、トラックに比べまして船舶はCO2負荷が四分の一ぐらいであるという観点から、いろいろな工夫なり施策を打ちまして、船舶へのシフトを図ろうということをしています。

 今国会で内航海運の活性化のための法案を提出させていただいていますのも、ある意味ではその一環でありますし、また技術的には、スーパーエコシップといったような、より燃費のいい船の開発をしているというようなことも含めて、総合的に対応していきたいと思っております。

三日月委員 限られた時間ですので、二法案のうち、概略だけを私の方は担当いたしまして、後、長安議員、岡本議員の方に法案のより詳しい審議の方を譲りたいと思いますので、油濁損害賠償保障法、この点についてもお伺いしたいと思うんです。

 今回の追加基金の創設といったものの意義は一定理解をいたします。ただ、アメリカは独自の油濁補償制度を制定しておりますし、EUでも踏み込んだ独自の基金構想を持っているというふうにも伺っております。国際的な油濁損害賠償補償制度の将来見通しについてどのようにお考えをされているのか。アメリカなど、現在条約に加盟していない国の国際体制への参加も必要だと考えますが、いかがでしょうか。

 あわせて、事故を起こした船の責任、いろいろなタンカー事故の事例を見ますと、事故は船の年齢の高さによる老朽化が原因であることが多いと伺っております。船舶所有者による賠償について、船舶の大きさによる区分に加えて、船の年齢、船齢を加えるべきだと考えますが、お考えをお聞かせください。

鷲頭政府参考人 先生御指摘のとおり、アメリカでは、油濁基金ではない独自の制度を持っております。ただ、それ以外の国は、油を輸入している国につきましては、基本的にこの基金というものをベースに考えてきております。

 そういう意味では、今まで、石油を少し輸入する人からたくさん輸入する人までが、一つの基金の中でシェアを分担しながら保険を掛けてきた、こういうことでございますが、今回のこの法案というのは、そういう国の中で特にたくさん石油を輸入している国が、大きなタンカーを使って輸入するものですから大きな事故が起こる可能性がある、だけれども、少しの輸入国には余り影響がない、入らなくてもいいというようなことがあるので、追加基金というものをつくって、今回法案でお願いしているような形になってございます。

 そういう意味では、アメリカも参加することが我々としては望ましいと思ってはおりますが、アメリカはアメリカで独自の、自分で処理をするんだ、こういう考え方がございますので、そこはこれから話し合いをしていきながら、アメリカもこの基金に参加した方が得であるという判断をすれば入ってくると思いますし、そこはこれからの油の取引というか輸送実態に応じて決まってくるのではないか、こういうふうに思っております。

 一点目、二点目についてはまとめてお答えをさせていただいたつもりでございます。

 それから、船齢を加味した限度額という形にすべきではないか、こういう御指摘でございますが、ちょっと歴史を申し上げますと、タンカー油濁損害についての船舶所有者の賠償限度額を定める民事責任条約というのは、海上運送に関する船舶所有者の責任についての一般的な条約である船主責任制限条約の特別な条約として位置づけられているわけでございまして、その船舶所有者の責任の制限額というのは、船舶の大きさ、トン数によって定めるというのは、過去からそういう考え方でずっと来たということでございます。それで、国際的にもこれは合意されております。

 ところが、先生御指摘のとおり、船齢によっても事故が起きますが、事故というのは船齢以外にもいろいろな要素で起こることがございますので、なかなか船齢だけを加味して考慮するというようなことにはならなかったわけでございます。

 ところが、近年、ナホトカ号、これは船齢が二十六年でございまして、それから、先ほどもちょっと御説明しましたエリカ号、これは船齢が二十五年でございまして、大変古い船が大きな事故を起こしているというような現実がございますので、船齢だとか、その船のメンテナンスがちゃんとされているかどうか、そういうようなことを加味して、船舶所有者の責任限度額とか保険加入の際の保険料率の設定を変えるべきではないかという議論が、現在、国際機関、国際油濁補償基金総会といった場で議論をされております。

 ただ、現時点で各国の見解が分かれている、いろいろある、こういう状態でございますので、すぐにそういう要素、そのほかの、船齢とかそれ以外の要素を入れるというような状態には持っていけないような状態でございます。

三日月委員 ぜひ、海洋国日本として、そしてまたオイルタンカー保有隻数が最も多い国として、ただ船の大きさだけではない基準を、特に、老朽化されて非常にメンテナンスのずさんな船、それを事故が起こった場合にみんなで、各国がお金を出し合って、石油会社がお金を出し合ってそれの面倒を見ようなんて、ただ都合のいい条約だけではなくて、一定の船舶所有者に対する責任を求めていくような問題提起も日本としてしていただくことを御要望申し上げておきたいと思います。

 最後の質問になりますけれども、船舶からの排出ガス規制も、そしてまた一般船舶への油濁損害賠償保障契約、保険の加入も、そして保障契約のない船の取り締まりも、やはり検査、取り締まりといったものが非常に重要であるというふうに考えています。体制の強化も求められてくるでしょう。今回のこの排出ガス規制、法改正に伴う取り締まり、そして油濁損害賠償の保障契約があるのかないのかという検査、取り締まりは、それぞれ、どこがどのような体制で行うんでしょうか、教えていただきたいと思います。

佐藤大臣政務官 取り締まりの体制いかんという御質問をいただきました。

 国土交通省におきましては、平成九年度にポートステートコントロールを始めるということで、外国船舶監督官の組織を創設いたしまして、当初十四官署四十六名でございましたけれども、漸次その体制の強化を図りまして、平成十六年度におきましては、新たに配置する二官署を含めまして大幅に人員増をいたしまして、二十一名増員をして、四十三官署百二十四名の体制となっております。

 この外国船舶監督官は、外国船舶に立ち入りまして、船舶の安全及び環境保護の観点から従来より実施しているポートステートコントロールとあわせまして、今回の大気汚染防止に係るポートステートコントロールを実施することとなりますけれども、今般充実強化した体制におきまして的確な実施が確保できるもの、そのように国土交通省としては考えております。

三日月委員 もう時間になりました。六本木ヒルズの事故についてもそうですし、油濁事故対策についても、未然防止そして再発防止といった観点が非常に重要だ。そしてまた大気汚染の防止というものについては、取り返しのつかない汚染状況になる前に、やはり実効ある対策が必要であろう。ただ条約締結、それに伴う法改正ということに慢心するのではなくて、より実効的な対策をとっていく必要があるだろうということを申し上げておきたいと思いますし、特に海洋国日本として、さきの自民、公明の両高木委員の方からも御指摘がありましたけれども、少々コストが高くなっても、現在と将来の環境を守るという、そしてまた人間の健康を守るという方針のもと、踏み込んだ基準や規制づくりが必要だ、この問題提起をさせていただいて、お訴えさせていただき、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

赤羽委員長 長安豊君。

長安委員 民主党の長安豊でございます。

 本日は、油濁損害賠償保障法の一部を改正する法律案に関して質問させていただきます。

 私、大学を卒業しましてすぐに商社に入りまして、商社ではタンカーの輸出の商内をしておりました。当時、私が入ってすぐにアメリカの法律を渡されて、これを訳せと言われました。それがオイル・ポリューション・アクト、あの法律でございました。これはエクソン・バルディス号がアラスカで油濁の事故を起こしてしまった、それでアメリカの約二千四百キロもの沿岸が汚染されてしまったという事件に起因するものです。この事故によって多くの方々が被害を受けた。その後、さまざまな国際議論がなされて、MARPOL条約の改正等によってダブルハル、つまり二重船殻構造の強制化がされたという経緯がございます。

 今回、油濁損害賠償保障法の改正ということですけれども、そもそも油濁損害賠償保障法については昨年度も改正がされた。改正の中で、基金の補償額の金額を約五〇%引き上げるということが昨年なされたわけです。一方で、今回改正では、現行の基金とは全く別の追加基金を設定するというものになっております。どうして去年の補償金の引き上げとは別の追加基金を新たにつくるということになったのか、質問させていただきたいと思います。

鷲頭政府参考人 現行の国際基金につきましては、ナホトカ号事故、これが二百六十一億円補償額がございました、エリカ号事故、これが補償額が二百四十億円ほどございまして、こういった巨大事故が発生したことがございまして、去年実は引き上げさせていただいたときは、補償限度額が二百十六億円ということで足りなかったということもございますので、ナホトカ、エリカ号事故に対応できるよう一・五倍に引き上げさせていただいて、昨年十一月から発効をしているところでございます。

 しかし一方、国際基金の場では、エリカ号事故を経験したフランス等の欧州諸国を中心に、この引き上げ額では将来の巨大油濁事故への対処としては不十分であるという議論が提起されまして、また、その議論が行われている最中に、二〇〇二年の十一月にはプレステージ号という巨大タンカーが、ナホトカ号の約三倍の大きさのタンカーがスペイン沖で沈むという事故が起こったということでございます。

 こういう経緯を踏まえて、昨年度のような国際基金の補償限度額自体をさらに引き上げるということも議論がなされたわけですが、一方で、拠出金の増額を望まない発展途上国、そんなにたくさんの石油を輸入していない、そんなに大きなタンカーを使わない国からは、さらなる引き上げについては反対であるという消極的な意見が出されました。

 そういう意味で、一方で、そういう巨大油濁事故の発生に備えて補償限度額の引き上げが直ちに必要と考える国だけが当面加盟して拠出できるという形にして、国際基金とは別に追加基金制度というのを創設する条約を採択することとなったものでございます。

長安委員 ありがとうございました。

 追加基金を創設することによって、これは今お話がございましたように、全参加国が参加するわけではない、より多くの補償を受けたい国だけが追加基金に参加して恩恵を受けるということになるわけですけれども、日本は現在の基金においては最大の拠出国となっておりまして、約二〇%の拠出金を出しているという状況になっている。追加基金に参加するのは恐らく先進国が中心になるかと思いますけれども、そうなった場合、かなり多くの国が参加しない、一部の先進国のみが参加するということが予想されます。その結果として、日本の追加の拠出割合が非常に高まるのではないかと私は危惧をしておるわけです。そうなった場合、実際の拠出を行う日本の石油会社の負担がかなりふえるのではないかと危惧しているところでございますが、いかがでしょうか。

鷲頭政府参考人 先生御指摘のとおり、国際基金におきまして、現在日本は、二〇〇二年十二月末という時点で、基金への拠出全体額の二〇・五三%を拠出する最大の拠出国となっております。

 それで、追加基金、先生おっしゃられたとおり、数少ない国だけでやると日本のシェアがもっと上がってしまうんではないかという懸念は我々も持っておりまして、条約採択会議のときに、追加基金議定書の採択に当たりましては、我が国が主張いたしまして、追加基金へ加盟する国が十分そろうまでの一定期間、加盟国の油の総受取量が十億トン、全体で十二億トンぐらいですから、約八割ぐらいになる日まで、または議定書発効から十年間経過した日のいずれか早い日までの経過措置として、一つの締約国の拠出者の負担の総額を全締約国の二〇%に抑えるといういわゆるキャッピング制度が導入され、それが受け入れられたわけでございます。

 これによりまして、当面、我が国の拠出者が、国際基金の今までの場合と比べて特に負担割合が高くなるというふうには考えておりません。

長安委員 こういう負担がどんどんどんどん高くなるというのは防がなければならないと私は思っております。追加基金をつくることによって日本がかえって損をするということではもとのもくあみになってしまうのかなと思っております。国連のように負担ばかり大きくなるようなことにはならないように、ぜひ心がけていただきたいと思っておる次第でございます。

 今お話がございましたキャッピング制度で拠出は一定割合に抑えられるというお話でございました。しかしながら、追加基金に参加すればかなりの負担増となる可能性が高くなるわけであります。将来にはさらに相当程度の拠出が余儀なくされるのではないかということと、国内の石油会社はどのような立場をとっておられるのか、御意見をいただきたいと思います。

鷲頭政府参考人 おっしゃるとおり、追加基金へ加盟することによりまして油濁事故による被害者への補償限度額が引き上げられるために、追加基金からの補償を要する巨大油濁事故発生時には、拠出義務者である石油会社等の負担が増加することになります。

 それはそのとおりでございますが、仮にこの追加基金に加盟しないこととする場合には、これに匹敵する独自の国内制度をアメリカのように整備することが必要になります。この制度のもとでは、日本の石油会社のオペレートする船の事故だけではなく、ナホトカ号のように近海を通過交通するタンカーの事故によって日本の沿岸の漁民の方々が被害を受けるといった場合の補償、いわゆるもらい事故への補償というのも含んだ形での制度をつくるということが必要になってくるわけでございます。

 石油会社の方は、このようなリスクまで含めてすべて日本国の国内で負担するということよりは、リスクを他の外国の拠出者と分散することができる国際的な制度、この追加基金の制度を望んだというふうに承知しております。

 またさらに、先ほど御説明申し上げましたとおり、キャッピング制度の導入によりまして、追加基金へ加盟しても現行並みの二〇%程度の負担に抑えられるということができるようにすることを石油業界は大変強く望んでおりまして、結果的にこれが実現できたわけでございます。

 こういうことから、石油会社等は、追加基金への加盟について十分なメリットがあるというふうに考えておるものと承知しております。

長安委員 油による汚染というのは環境をかなり破壊してしまう、これは防がなければならないと私は思っております。汚染はさせぬということが大切なのかなと思っておる次第でございます。

 今お話がございましたこの基金制度、恐らく今後も世界で起きるであろう油濁事故に対応するものだ。しかしながら、世界にはさまざまな人があり、国家がある。その中で、恐らく、日本人的な発想でいけば、まじめに被害額だけを請求するということになるかと思いますけれども、例えば国によっては、多額の請求をする、最初は吹っかけて、後で値切り交渉してくるというようなことも少なくないのではないかと私は危惧をしております。

 そういった意味でも、基金の実際の運用に当たってはどのように適切な対応をされていくのか、また、補償を公平にするための確保といいますか、担保はされているのか、お伺いしたい。

鷲頭政府参考人 御指摘の、実際に補償をするときに、ずうずうしく要求する人とまじめに要求する人といるじゃないか、こういう御指摘でございますが、その点につきましては、まず、条約の中にこういう範囲はカバーするんですよということは書いてございまして、そのほかに、国際油濁補償基金の理事会と総会の決定によりまして、補償の対象となる損害の種類とか認められる費用の範囲というものの基準が明確に定められております。

 さらに、それをもっと具体化する形で、事務局がクレームマニュアル、日本語で言いますと請求の手引と言うんだそうですが、そういうものが事務局はできておりまして、それに基づいて査定をしておりますので、いろいろなことを言ってきても、査定するときに査定人がそのマニュアルに基づいてきっちりやるということになりますので、請求得みたいなことは起こらないというふうに考えております。

長安委員 ありがとうございます。

 では、その場合、基金で油濁事故の被害者を救済するということですけれども、この制度があること自体が一般的にどこまで知られているのかということが問題だと思います。

 特に重要なのは、地方等で事故が起こった場合に、中小の零細の事業者さんが被害者になった場合の補償はどうするのか。つまり、こういった被害者の方々は恐らくこういった法律を知らない。その中で、後になって、ああ、こんな補償をもらえたのかということになっては何のためにもならないと思いますので、ぜひこういったことは周知徹底を図ることが必要だと私は思っておりますけれども、そういった方策はとられておりますでしょうか。

鷲頭政府参考人 この基金の補償というのは被害者が請求する民事制度でございますので、被害者が本制度を、やはり存在を知って、理解していないといけないという点では、先生御指摘のとおりでございます。

 国としましては、これまで、ナホトカ号事故時に関係者に対して、補償の手続や対象範囲といったことを定めた、日本語に翻訳した、先ほど申し上げました請求の手引といったような情報を関係者に送付するとともに、油濁損害賠償補償制度に関する説明会を開催するなど、油濁事故の被害者が、制度を活用し、円滑かつ速やかな補償を受けられるよう、周知活動を行ってきているところでございます。

 今後とも、先生の御指摘も踏まえまして、周知活動に一生懸命努めていきたいと思っております。

長安委員 せっかく法改正をするわけですから、ぜひ国民の皆様に周知徹底をお願いしたいと思っておる次第でございます。

 続きまして、放置座礁船についてお話をさせていただきたいと思います。

 放置座礁船の問題というのは、先ほど他の委員の方からもお話がございましたけれども、日本各地で多数発生しておりまして、地元は大きな被害をこうむっている、そういう状況にあるかと思います。これまで、地元の自治体がやむを得ないということで撤去したものが約十八件、そのほかに、現在でもいまだに放置されているものが十件あるとのことであります。

 事故を起こして、他人に迷惑をかけたまま、これを放置したままに置いておくということが許されるのか。これはどう考えても許されないと私は思っております。こんなおかしな話は何とかしなければならない。そういった意味で、今回の放置座礁船の問題の防止策として保険の義務づけを導入するとのことですけれども、これはタンカーについては以前からずっと義務づけられておりました。もっと早い時期にタンカー以外の普通の一般船についてもこのような制度を導入しておくべきではなかったのかと思いますけれども、いかがでしょうか。

鷲頭政府参考人 放置座礁船問題というのは、自治体を初めとする関係者に多大な迷惑をかけるものでございまして、国土交通省としても重大な問題として認識をしておりましたが、従来、地元の自治体が処理に当たっておりまして、そう大きな事故もなかったということもありまして、これまでは、国の制度として対応策を講じるまでの必要性があるとは考えておりませんでした。

 ところが、平成十四年十二月には茨城県でチルソン号という船の座礁事故がありまして、地元自治体がその処理のために多額の費用の支出を余儀なくされることとなりました。

 このため、国土交通省としましては、チルソン号の事故に対応するとともに、事故直後から省内に検討会を設けて具体的対策の検討を鋭意行いまして、今回の法案提出に至ったものでございます。

 当省としては、喫緊の課題への対応としては最大限迅速に対応したと考えております。

 なお、諸外国の例で見ますと、米国、カナダ、オーストラリアにおきましては、タンカー以外の一般船舶に対しまして、油濁損害だけを対象とした保険が義務づけられておりますが、放置座礁船の対応も含めた形で保険を義務づけておりません。そういう意味では、今回の改正案は、諸外国に先駆けた先進的な取り組みを行うものであるというふうに考えております。

長安委員 今お話がございましたように、新しい制度の実施に際して、外国の船舶がしっかりと保険を義務づけるようにしむけなければならないと私は思っております。そのためには、この制度の趣旨や内容を事前に十分に周知することが必要であると私は思っております。外国の当局、海運企業であったり、また貨物の荷主等によく制度を知ってもらうことが必要であると考えますが、御所見、いかがでしょうか。

鷲頭政府参考人 御指摘のとおりでございまして、タンカー以外の一般船舶に対する保険の義務づけ制度は、条約等の国際的枠組みに基づかない我が国独自の規制でございまして、諸外国においては一般的ではないことから、円滑な実施に当たっては、関係者への十分な周知を図るということが不可欠であると考えております。

 具体的な周知の内容としましては、国際海事機関、IMOという国際機関がございますが、そこに通報いたしまして、そこから各加盟国に対しまして回章という形で各国の政府に周知を図るという手段をとろうと思っておりますし、私ども独自には、内外の外航海運企業とか海事関係の代理店、荷主さらには国際PIグループ、船主の責任についての保険を扱っている保険会社のグループでございますが、国際PIグループを初めとする保険会社といった関係者に対しましても、業界団体とか地方支分部局を活用しながら十分な周知を図ってまいりたいと考えております。

長安委員 この法律自体、タンカーに関していいますと、もう条約で世界的な枠組みがある、一方で、これは日本の法律でやるということになっております。そういう意味では、国際法上、国際慣習上問題があるようなものでは、他国や他国企業の理解が得られないと私は思いますけれども、今回のこういった制度は、無害通航権等の国際ルールとの間で整合性がとれているのか、御所見をお伺いしたいと思います。

鷲頭政府参考人 外国船舶の航行につきましては、国際法上、先生今おっしゃられた領海内における無害通航権が認められておりまして、したがって、領海内を通過だけしていく船につきましては、我が国の法令によって保険の義務づけを行うことは困難でございます。

 しかし、今回の改正案は、外国船舶が我が国の港に入るということに着目した規制でございます。

 港というのは、国際法上、内水として位置づけられておりまして、沿岸国の領域主権が認められるというエリアでございますので、領海と異なりまして、外国船舶の無害通航権は認められておりません。

 したがいまして、無保険船に対して入出港を認めないといった規制を行いましても国際法に違反するものとはならず、諸外国の理解を得ることが可能であると考えております。

 同じような趣旨で、米国、カナダ、オーストラリアにおきましても、同様の保険の義務づけの規制をしているという例がございます。

長安委員 今、米国、カナダ、オーストラリアというお話もございました。しかしながら、あくまでもこういった法令を定めている国は限られているというのが現状だと思います。まだまだ一般的になっていないと言えると思います。我が国独自の制度を設けても、その対象は日本の港に入出港する船だけでありますから、例えば日本の近海を通っている船の規制をすることは全くできないわけです。こういった無保険船の規制の効果を真に高めるためには、諸外国が協調していくことが重要だと私考えております。

 日本はこれまで、海運や船舶の分野で国際協調を重視する余り、外国の動きに追従するということが多かったかと私感じております。本件に関しては、必要な制度を積極的に提案して、日本がリーダーシップを持って、世界が日本のこの制度に歩調を合わせるように働きかけていくことが必要ではないかと考えますけれども、御所見いかがでしょうか。

鷲頭政府参考人 今先生おっしゃられたとおり、今の私どもが考えております制度というのは日本に入ってくる船だけでございまして、領海を通航していなくなっちゃう船というのは保険がなくても別に構わないわけでございますし、そういうところでまた事故が起これば手だてがないという意味では、国際協調によって各国ともこういう制度を導入するということは、極めて我々にとっても望ましいものであると考えております。

 こういうことにつきましては具体的に条約がないというのは先ほど申し上げたとおりなんですが、現在、国際海事機関、IMOの場におきまして、一つはバンカー条約という、発効はしておりませんが、採択された条約がございます。これは燃料油による汚染損害の賠償に関するもの、要は、燃料油を流して汚染損害が起きた場合にはそれを賠償するという条約が採択されております、まだ発効はしておりませんが。それからもう一つ、レックリムーバル条約というのが議論がなされております。レックリムーバルというのは、船艇、船体そのものを撤去する費用負担に係る条約でございますが、そういうものが国際海事機関の場において議論されておりますので、国際的にも、私どもの規制について、同じような関心というのは各国とも持っているわけでございます。

 今後は、こういうような議論の場を通じまして我が国の事例を紹介して、この制度が国際的に広がるよう、リーダーシップを持って諸外国への働きかけに努めてまいりたいというふうに考えております。

長安委員 最後に大臣にお伺いしたいと思います。

 放置座礁船の問題というのは、その被害をこうむっている地域にしてみれば、これは非常に深刻な問題であります。保険の義務づけ等の対策を確実に実施して、このような問題の発生を確実に防止することが早急に求められている、そういう状況にあると思います。この問題に取り組む大臣の決意をお伺いしたいと思います。

石原国務大臣 ただいま長安委員が政府参考人と、本条約また法律に関しまして、御議論を聞かせていただきまして、やはり我が国独自の部分についても、これは我が国に影響があることに対して外国籍の船に対してもその問題の認識を深めるということの重要性を強く私も感じさせていただきましたし、放置座礁船問題は、テレビ等々で出ましても、港の真ん前に座礁して、漁業権あるいはその港を出入りする人たちに多大な迷惑をかけ、また、撤去するのに地方自治体に非常に大きな負担をかけているということが、私も、茨城の例、先ほど政府参考人が例に出されましたけれども、問題であると常々考えていたところでもございます。

 これまでも、無保険船の入港規制のための法整備について、実は多くの自治体から何とかしてくれという御要望をいただいていたわけですけれども、今回の改正というものは、やはりそういう地元自治体の切なる希望にかなうためにもなされていかなければならないと認識しているところでもございます。

 さらに、保険の義務づけや無保険船の入港規制は、放置座礁船問題に対する極めて有効な対策であると考えておりますし、今後は、座礁船が無責任に放置される事態を確実に防止できるよう、まだまだ委員の御指摘の中にもいろいろな御示唆がございましたので、そういうものを十分含み込んで、全力で取り組んでまいりたいと考えております。

長安委員 ありがとうございます。放置座礁船の問題、これは真剣に日本も取り組んでいかなければならないと思っております。

 また、先ほど来お話がございました油濁の問題もそうです。昨今、ロシアのサハリン沖でも石油開発がなされております。これはサハリン1、サハリン2とございます。これでも、ロシアから日本へ恐らく原油またLNGが輸送されてくるという頻度が増してくる。そういった中で、いかに事故を防ぐか、また、油による汚染を防ぐかということが重要かと思います。ぜひ、汚染はさせぬという気持ちで取り組んでいただけたらと思っております。

 本日はどうもありがとうございました。

赤羽委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

赤羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。岡本充功君。

岡本(充)委員 民主党の岡本充功でございます。

 本日は、私、午前の質疑に引き続きまして、海洋汚染及び海上災害防止に関する法律等の一部を改正する法律案に対して中心的に質問をさせていただきたいと思っております。

 自動車や陸上における交通手段の多くのものに排出ガス規制があるというふうに認識をしている中で、船舶に排出ガス規制がなかったということ自体、私、今回大変驚いておるところでございます。船舶に排出ガス規制がなかったこれまでの経緯、それはどういったものなのか、御説明願えますでしょうか。

佐藤大臣政務官 岡本委員の質問にお答えをいたします。

 船舶につきましては、ほとんどが海上を航行しておりまして、そういう意味から陸上の生活空間とふだん近接をしておらないこともありまして、生活環境の影響が、ほかの交通機関であるとか発生源に比べて非常に小さいということもございます。そういう点から、諸外国を含めまして、これまで、そういう船舶起因の排出ガスに対する特段の対策というものは講じられてこなかった、そういう経緯がございます。

 しかし、きっかけとしては、北欧などを中心に酸性雨などの問題が非常に深刻化いたしまして、船舶起因の排出ガスが各国の環境に非常に影響を与える、そういうことが大きな問題になりまして、特に一九八〇年代の終わりごろからそういう問題が国際的な議論を巻き起こしまして、そういう議論を踏まえて、一九九七年に、今回の船舶起因の大気汚染の防止に関する条約が採択されまして、そして来年早々にも発効が見込まれるに至っております。

 特に日本の排他的経済水域の中を見ましても、もうこれは午前中からの議論もありましたけれども、排他的経済水域というのは四百五十万平方キロメートルという広い範囲なので、なかなか薄まっていて感じられないんですけれども、しかし、総放出量というものを合わせますと、窒素化合物というのが全体の約三〇%、船舶が出しているものが、また、硫黄酸化物が全体の二五%を占めるにも至っているという状況にもなっておりますので、そういう国際的な条約の流れ、また日本のそういう状況も踏まえまして、我が国としても今回初めて船舶についての排出ガス規制を導入するものとなったわけでございます。

岡本(充)委員 今御説明いただきましたけれども、確かにNOx、SOx規制ということを今回主たる目的、ほかにもありますけれども、これを規制していこうという流れでございますが、今回の海防法の改正で載っています附属書6が対象としていない物質、いわゆるSPMだとか一酸化炭素、二酸化炭素、こういったものに対しては今後どのような規制を行っていく方向なんでしょうか。

澤井政府参考人 今回、条約の対象となっておらず、したがって、今回の法改正によりまして規制対象としていない物質につきましては、例えば一酸化炭素でございますが、これは船舶原動機の燃焼効率が極めて高いということで、その裏返しとして一酸化炭素の排出量が極めて少ないことから、規制の必要はないというふうに判断しております。

 また、粒子状物質につきましては、これは午前中も御質問がございましたけれども、陸上の発生源に比べますと、例えば船舶起因のものについては、計測方法ですとか粒子状物質の有効な削減方法などについていろいろなことが確立されていないというのが現状でありまして、現在、環境省を中心として調査研究がなされている段階であります。こうした環境省等の調査研究と連携して我々も取り組んでいきたいと思っております。

岡本(充)委員 後ほどちょっと地球温暖化の部分でまた触れさせていただきたいと思います。

 今の局長からの答弁によりますと、今後検討していかなければならないものとしてSPM等があるんだという話ではございましたが、実際に大型港湾を抱える自治体での環境基準達成率がSPMや二酸化窒素などでは低いのではないかと思うんですけれども、それについてはいかがでしょうか。

澤井政府参考人 船舶から発生するNOxがどのぐらい陸域の生活環境に影響しているかということは、厳密な意味で数字は把握できないのでありますけれども、これも一つの例として午前中も申し上げましたが、最も日本で船舶がふくそうしているという場所の一つであります東京湾の湾口、ここで、最もふくそうしている一時間をとりまして、しかもこれは風が余り強いと拡散してしまいますので、かえって濃度は薄くなるということで、かなり微風という条件を設定して、どのぐらいNOxが陸域に影響するかという試算をいたしました。そういう最も多いところで、最もある意味では設定条件としては厳しい条件で計算して、環境基準値の一割ぐらいと考えております。

 そういう意味で、全体として深刻な影響はないであろう、数字的にはそう考えております。

岡本(充)委員 今の御説明ですと、東京湾の湾口ということでしたが、私の指摘させていただいているのは港湾内での大気の状況でございます。それについてはデータはお持ちでしょうか。

澤井政府参考人 港湾内、停泊している船舶もありますし、緩やかな速度で走行している船舶もあると思いますが、そこについて船舶起因のものがどのぐらい寄与しているかということについては推計ができておりません。

岡本(充)委員 船舶起因の推計は、恐らく私、同じ市内で他の地域と比較することで十分推測することができるはずだと思います。

 例えば、港湾内での船舶に対して、C重油ではなくA重油を使用するように働きかけるなどの取り組みを行う、そういった御予定はありませんか、どうでしょう。

澤井政府参考人 A重油、C重油の差は、端的にSOxにあらわれると思います。

 現在の環境省で測定しておられる結果を見ますと、SOxにつきましては、測定局で見た場合に、九九%以上がもう環境基準を達成しているという状況にもあります。一方でNOxについては、自動車交通の観測地点を中心に未達成の部分がかなりありますけれども、SOxについてはそういう状況と認識しておりまして、特段、私どもの方でそういった指導をするということは、今のところ考えておりません。

岡本(充)委員 ぜひ私は、NOx、SOxあわせて今回議論になっている中でございますので、大型港湾を抱える自治体での環境基準というのもひとつ考慮に入れていただきたいと思っております。

 時間がないので次へ移りますが、今回の海防法の対象とならない原動機、幾つかあるようになっております。対象となる原動機は、平成十二年一月一日以後に製造された原動機で、かつ出力が百三十キロワットを超える、こういったことになっておりますが、法規制の対象とならない原動機からのSOx、NOxは実際どのくらいの影響を及ぼしているのか。先ほど、NOxで三割、SOxで二五%、こういうふうに言われておりましたけれども、この内訳はいかがでございましょう。

澤井政府参考人 まずSOxにつきましては、今回は使用する油の規制で対応いたしまして、原動機の大きさ等は関係なく、ディーゼルエンジンで使う油をすべて規制いたします。さっきの二五%のうち、どのぐらいの大きさのものがどのぐらいというところまでは、申しわけございませんが、数字を持っておりません。

 NOxにつきまして、御指摘の百三十キロワットを超えるディーゼルエンジンについて、古いエンジンと比べて三割NOxが削減できるような構造にするという国際合意のもとに今回の規制を定めております。

 この百三十キロワットを超えるディーゼルエンジンというのも、常にこういう条約を議論するときに議論になりますのは、もっと小さいものまでやるべきだ、あるいはもっと大きいもので十分だという議論がいろいろあった中で、極力カバレッジを広げるためにという観点から百三十キロワットと決まった経緯がございまして、例えばでございますけれども、車のエンジンでいいますと、出力としては、レクリエーションビークル、RVクラスのものまで船の原動機としては押さえられる。

 NOxの排出量に置きかえていいますと、これによりまして、規制の対象とならない百三十キロを下回る船舶用原動機から排出されますNOxの量は船舶排出量全体の約二割程度と考えられますので、逆に言えば八割はこれで規制ができるということで、規制としても十分実効のあるものと考えております。

岡本(充)委員 今御説明で八割ということでありましたけれども、実際、例えばガソリン使用の原動機も存在していますし、ほかの燃料を使っているものもあるかと私は思います。

 日本がさらに自主規制をしていくといった方向性も検討されていいのではないかと考えるわけなんですけれども、国際条約ではそういう決まりかもしれませんが、日本がさらにそれを上回るような、世界に、日本はこういった基準でやっていくんだということをひとつ示していただくのもいいのではないかと思うんですが、それについてはいかがでしょう。

澤井政府参考人 前提として、私ども、今の百三十キロワット超についてこういう規制をすることで、今の環境の現状を踏まえて十分であろうとまず思っておりますが、仮に原動機についてほかの国と違う厳しい規制をするとなりますと、一つの大きな問題は、これは原動機の構造によって排出量が決まってきますので、エンジンの製作段階で検査をしなければいけない。今回規制対象になっているものはそういう検査をいたします。それによって実効性を一方で担保するわけでありますが、製作段階で検査をするということが必須になります。

 そうすると、日本の規制に合った原動機を日本に来ようとするほかの外国の船にも求めなければいけない。これは、国際的な枠組みといいますか、国際合意をした基準とは違うエンジンをつくらなければいかぬということで、かなりの困難を伴うと思っております。

 前提として、今初めて排ガス規制を始めたということでございますので、まずは今回の条約及び海洋汚染防止法をしっかりと運用していくことが大事だと思っておりますが、仮定の話としてそういう特別の規制をするとすれば、一方でそういう困難な問題もありまして、なかなか難しいのではないかと思っております。

岡本(充)委員 今の局長のお話ですと、原動機から変えていかなきゃならないということでございましたけれども、例えば、出てくる排ガスを、附属する機械を取りつけてNOx、SOxを少しでも減らすような研究というのはなされていないんでしょうか。

澤井政府参考人 条約の中でも、この条約が発効してから五年たった後、そのときの世界各国の環境の現状も踏まえて規制を見直すという条項も実は入っておりますが、今後永久に今の規制でいくという前提にはそういう意味でも我々は立っておりませんで、いろいろな意味での技術的な改良ということはこれからも続けていかなければいけないと考えております。

岡本(充)委員 ぜひそういった前向きなスタンスで、今後排気ガス規制を続けていっていただきたいと思っております。

 続いて、MARPOL条約の問題にちょっと移っていきたいと思いますけれども、船腹量で見た場合、日本に寄港する船の中で、船腹量順で多い国、五カ国ぐらい挙げていただけませんでしょうか。

澤井政府参考人 恐縮でございます、元データは手元にありますが、そういう順番で整理しておりませんので、ざっと多いところを申しますと、あくまでも船籍という意味では、パナマが非常に多うございます。あるいは、韓国、ロシア、カンボジア、そういったところが多いかと思います。

岡本(充)委員 今局長からお話がありました、これは船腹量で見たんでしょうけれども、船の数としてはいかがですか。

澤井政府参考人 申しわけございません、今のは船の数でございます。

 船腹量で申しましても、パナマあるいはノルウェー、シンガポール、香港、中国、こういったところが船腹量では多いと思います。

岡本(充)委員 今御指摘のあった国で、まだこのMARPOL条約に加盟する見通しの立っていない未締結国、こういった国々が入っているように思います。例えばカンボジアだとか中国などは、今のところ発効の見通しが立っていないんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょう。

澤井政府参考人 現在、既に批准をした国が十二でございます。その中には、今申し上げた、ちょっと一つ一つ対照しておりませんが、入っていない国もあると思います。

岡本(充)委員 こういった国々から日本にやってまいります船に対してはどのように検査をしていくことになるんでしょうか。

鷲頭政府参考人 現在、今回の法律改正以前に、船の安全性、船体の堪航性に係るSOLAS条約とか、あるいは海洋汚染防止法の、大気以外の、海に流す設備を義務づけているMARPOL条約という条約がございまして、その条約におきましては、非締約国の船舶が一層有利な取り扱いを受けることのないよう、必要な場合にはこの条約を準用するというふうに規定されております。

 これを受けまして、我が国の場合には、これまでも、国内法、船舶安全法とか海洋汚染防止法で外国船舶に対する監督規定というのを設けておりまして、この条約を体して国内法で、入港する非締約国の船舶に対しても確認を行ってきております。

 今回につきましても、排ガス設備に関しては、同様に外国船舶に対する監督規定を設けまして、入港する非締約国の船舶に対しても同種の確認を行っていくことにしております。

岡本(充)委員 それとあわせまして、もう一つ私お伺いしたいのが、MARPOL条約の附属書の1で、シングルハルタンカーをダブルハル化していく、こういった方向性が打ち出されているんです。今回の油濁損害賠償保障法とも絡みますけれども、ダブルハル化というのは、今どのくらい日本で進んでいるんでしょうか。

鷲頭政府参考人 正確なデータはちょっと持ち合わせておりませんが、今、日本の荷主が使っておりますタンカーというのはほとんどダブルハルになっております。と申しますのは、シングルハルタンカーで事故が起こると損害に対する影響が大変大きいものですから、日本の荷主というのはダブルハルタンカーを使っているというふうに承知しております。

岡本(充)委員 今の御説明ですと、外航のタンカー、内航のタンカー問わず、そういったダブルハル化がほぼ進んでいるというふうに理解してよろしいですか。

鷲頭政府参考人 内航につきましてはまだシングルハルタンカーが残っているというふうに承知しております。ちょっと数字は、申しわけございません、手元にありませんので、どれぐらいとは申し上げられません。

岡本(充)委員 私、内航業を営まれている方は中小企業が多いということを承知しておりまして、内航船舶のいわゆる貸し渡し事業者の本当に苦しい台所事情によって老朽船がふえている。また、今局長の答弁にもありましたけれども、ダブルハル化もなかなか進まないのもその一因じゃないかと私は考えています。それぞれの事業者におけます財務の指標というのはいろいろあるんでしょうけれども、私が調べさせていただきましたら、固定資産の比率及び負債の比率が全産業平均の五倍、トラック事業者の四倍というのが、内航業を営まれている中小企業の現状であるようです。

 ぜひともそういった面で、午前中にも質疑がありましたけれども、老朽船による事故が多うございますので、こういった中小企業への対策も踏まえて、ぜひ対策をとっていっていただきたいと思っております。

 そして続いて、環境への影響ということで、少し違った見方で質問させていただきたいと思います。

 まず、この十七条の中で、重油の中の硫黄の濃度を定めていくというような方向になっております。経済産業省で取り組まれているんだと思いますけれども、今回、四・五%という硫黄濃度を上限とするというふうになっています。日本は、現在のところ大分これより進んでいるというふうに聞いておりますが、こちらについても日本独自の自主規制という方向は考えてみえないのでしょうか。

細野政府参考人 お答え申し上げます。

 エネルギーの利用に伴いまして生じます大気汚染でありますとか、あるいは地球の温暖化など、そういった環境負荷のさらなる低減を図るということは非常に重要な課題であると認識しております。

 経済産業省といたしましても、環境負荷のより少ない石油製品を安定的に供給する、こういう観点から、揮発油等の品質の確保等に関する法律、こういう法律に基づきまして、強制規格の強化に努めてきたところでございます。

 今般、我が国が海洋汚染防止条約附属書の6を批准するに伴いまして、新たに、船舶等の燃料として使用されます重油についても、委員御指摘のとおり、四・五%以下の硫黄分にする、そういう規制について内容を定めました改正法案を提出させていただいているところでございます。

 今回は、条約に基づきまして四・五%という水準を採用させていただきますけれども、先ほど国土交通省の方からも御説明がございましたけれども、今後、もろもろの見直し等の段階で、さらに環境負荷の低減が必要になってくるというようなことはあろうかと思います。そういうような場合には、船舶側での対応とあわせまして、重油の品質のあり方についても、船舶の国際移動性でありますとか、あるいは国際協調の趨勢等を十分に勘案しながら内容の充実等を図ってまいりたいと思っております。

岡本(充)委員 ぜひその見直しの節には、今回対象になっていません火力発電所や鉄鋼炉などの固定された動力源へ供給される重油についても同様に硫黄の濃度についてしっかりとした規制をかけていっていただきたいというふうに思っております。答弁は結構でございます。

 ただ、一つだけ私、要望させていただきたいとすると、NOxとSOxの排出の少ない原動機、先ほどちょっと国土交通省の方からも、原動機自体をまず変えていかなければいけないんだ、こういう御答弁をいただいたんですけれども、こちらについての研究開発、より少ないものを目指して研究開発をされているんだと思いますけれども、それについての研究の現状というのはどうなっているんですか。

澤井政府参考人 民間の原動機メーカーなどで、いろいろな調査研究の一環として継続的に取り組んでおられると承知しております。

岡本(充)委員 国としては、今研究等はなされている現状ではないんでしょうか。

澤井政府参考人 原動機全般についてのいろいろな面での改良ということは一つの政策課題と我々も思っておりまして、一定の国の資金も投入しながら、いろいろな方々と連携してさまざまな取り組みをしているというのが現状でございます。

岡本(充)委員 ぜひこの研究につきましてもしっかり進めていっていただきたいと思っております。

 続いて、十九条の二十三項について少し質問させていただきたいと思います。

 VOC、揮発性有機化合物などの放出抑制ということを目指して今回の規定がつくられていると思いますけれども、環境省として、今回、指定港湾を設ける予定はおありなのでしょうか。

西尾政府参考人 VOCの排出抑制につきましては非常に重要なことでございまして、今回も大気汚染防止法の一部を改正いたしまして、固定発生源から排出するVOCの抑制を図ることとしております。

 しかしながら、港湾等で出まするVOCのシェアと申しますか分量と申しますのは、他のいろいろな施設に対しまして比較的少ないものでございますので、今後のVOC対策の進展を見ながら検討していくべき事柄というふうに思っております。

岡本(充)委員 ということは、現時点では、指定しなければならない港湾は日本に存在しない、こういうふうに認識してよろしいんでしょうか。

西尾政府参考人 現時点では、指定をお願いするというところまで詰めた港湾というのはございません。

岡本(充)委員 このVOCも、さまざまな意味で人体に有害な物質でございますので、今後どういう推移をするかわかりませんけれども、ぜひ必要があるときには措置をとっていただきたいと思っております。

 続いて、ポートステートコントロール、また話がかわりますけれども、こちらについて少しお伺いしたいと思っております。

 この実施件数、昨年や一昨年でも結構でございますが、近いところでは北朝鮮からやってきた万景峰号の例があるのかとは思いますけれども、実際の実施件数、そしてその結果がありましたら、お知らせいただきたいと思います。

鷲頭政府参考人 ポートステートコントロールの実績でございますが、平成十四年に全国で四千三百十一隻を検査いたしまして、そのうち四百五十五隻、一〇・五五%に重大な欠陥があったため、是正を命じました。また、十五年は四千八百六十五隻を検査いたしまして、うち六百四十隻、一三・一六%に重大な欠陥があったため、是正を命じております。

岡本(充)委員 これはいわゆる検査された船というのは、東京MOUに従って検査の施行はなされているのでしょうか。

鷲頭政府参考人 おっしゃるとおりでございまして、東京MOUのどこかの国でPSCをやったらば六カ月間は日本ではやらない、そういうような取り決めでやっておりますので、その中での実績ということでございます。

岡本(充)委員 実際に、そういった意味で、六カ月以内にほかの国で検査はされていないけれども、まだPSCが行われていない船というのは逆に言うと何隻ぐらいあるというか、マスでどのくらいあって、例えば平成十四年四千三百十一、平成十五年が四千八百六十五と言われますけれども、そのさらに大きな分母としては幾らぐらいなんでしょうか。

鷲頭政府参考人 東京MOU全体で何%というのはちょっと申し上げられませんが、日本に入ってくる船というのは大体隻数で一万隻ほどでございます。そのうちの四千八百をやっておりますので、ほかの国がそれまでの比率ではやっていないとは思いますが、東京MOU加盟国は十八カ国ございますので、ほとんどの船はどこかの国でポートステートコントロールを受けているというふうに推察されます。

岡本(充)委員 例えば、私、この東京MOUに加盟していない国で指摘をさせていただくと、北朝鮮が一つあるかと思うんですけれども、北朝鮮の船については、貨物船、貨客船もあるんでしょうけれども、どういうふうなポートステートコントロールが行われているんでしょうか。

鷲頭政府参考人 北朝鮮につきましては東京MOUに入っておりませんが、東京MOUに入っていない船についてはポートステートコントロールをしないということではございません。

 北朝鮮は、SOLAS条約、海洋汚染防止条約に入っておりますので、日本に来たときには、日本がポートステートコントロールをして是正命令を出します。次の港に入って、それが仮にシンガポールだとすると、シンガポールに入ったときに、日本での是正命令というのが各国間に連絡されていますので、ちゃんと是正命令に沿って直したかどうかというのは今度シンガポールの方の検査官がチェックをいたします。そういう仕組みになっております。

岡本(充)委員 そういう仕組みになっているのは大変理解をしましたけれども、そういった中で、北朝鮮から来航する船というのは何隻かあるのかと思いますけれども、特に北朝鮮から来る船についてのPSCの実施状況というのはどのようになっておりますか。

鷲頭政府参考人 北朝鮮から来る船、推計でございますが、百五十隻ございます。これが何回も、千三百回とか千四百回と言われておりますが、入ってきております。それで、ポートステートコントロールという意味では、平成十五年に二百九隻やっております。ですから、推計より多くなっております。推計よりたくさん来ているということじゃないかと思いますが、二百九隻に検査をしておりまして、百二十八隻に重大な欠陥があったということで処分をしております。二〇〇二年、平成十四年は四十隻やっておりまして、二十三隻に重大な欠陥があった、こういうことでございます。

岡本(充)委員 この平成十四年から十五年への伸びというのはどういった背景があったのか。大体類推はつくんですけれども、この実施隻数が五倍近くふえていますけれども、どういった背景があったんでしょうか。

鷲頭政府参考人 一つには、平成十四年の十二月ですか、先ほどから出ておりますチルソン号という船が、ある意味では船が古くて構造基準に合っていない船で来たためにああいう事故を起こしたというようなこともございますし、その時期に合わせてチョンリュー号という船がやはり山口の方で、それも機関故障みたいな形で座礁してしまいまして、そういうようなこともあって、北朝鮮の船に対して、そういう意味では目配りをして立入検査を頻繁にやった、こういうことだと思います。

岡本(充)委員 もう一つ質問なんですけれども、百五十隻の船籍を持つ船がいて、二百九隻検査したという実態はどういう背景があるんでしょう。

鷲頭政府参考人 申しわけございませんが、推計が百五十隻というふうに……(岡本(充)委員「推計とえらく違いますね」と呼ぶ)ええ、実際二百九隻立ち入りしました。済みませんが、ちょっと推計が、もう一回帰ってやり直してみます。申しわけございません。

岡本(充)委員 余りに違う推計で驚いておりますけれども、しっかり現状を把握することも重要だと思いますが、大臣、今のことについて御意見をお述べいただければと思います。――いや、大臣に聞いているんですけれども。

鷲頭政府参考人 ちょっと事実関係だけ。

 百五十隻で、先ほど申しましたように六カ月に一回ポートステートコントロールをやるものですから、年に二回あり得るわけです。ですから、百五十隻掛ける二で三百隻分、一年間にポートステートコントロールをする可能性がある。そういう中で二百九隻をやった、こういうことでございます。

岡本(充)委員 大臣、お願いします。

石原国務大臣 推計値にしろ数字にしろ、適切なものを示すように、これから精査させていただきます。

岡本(充)委員 ぜひよろしくお願いします。

 話題をちょっとかえまして、時間もないので、最後に、地球温暖化対策推進大綱というのを平成十四年三月に政府の方で決められて、内航船のCO2削減目標を三百七十万トン、こういうふうにしておるところでありますけれども、現実的に、この地球温暖化対策推進大綱に基づいて、国土交通省として今どのような進捗状況にあるのか、御説明いただけますでしょうか。

澤井政府参考人 CO2の中の運輸部門について、陸上も含めて若干申し上げたいと思いますが、全体で、運輸部門につきましては、九〇年から九八年度までは二二%増加をしております。九八年度以降、自動車につきましてトップランナー基準方式の導入等、自動車の低燃費基準化の誘導、あるいは二〇〇一年度からは自動車税のグリーン化などを進めた結果、九八年で二二%増に対して二〇〇一年で約二三%増ということで、その間交通量は増加しておりますけれども、CO2の排出量はほぼ横ばいになっております。ただ、依然として、目標であります対九〇年度比一七%増、これが運輸部門の目標でございますが、それを超過している状態でございます。

 これを交通機関別に見ますと、鉄道、バス、タクシー、航空機、船舶などの公共交通機関では、二〇〇一年度の排出量は九〇年度比で約一〇%増、貨物自動車では約一%増、自家用自動車では約五〇%増と、自家用自動車の伸びが大変大きゅうございます。

 こうしたことを踏まえまして、例えば船舶についていいますと、今の船に比べて燃費効率のよいスーパーエコシップの技術開発、これが近い将来の実用化に向けて進められておりますし、これが実用化されますとCO2の大幅な削減も期待されます。

 また、先ほども申し上げましたけれども、内航海運の事業の活性化によりましてモーダルシフトが進みますと、トラックから海運に転換することによりましてCO2の排出削減も期待できるということで、そういった施策に力を入れてまいりたいと考えております。

岡本(充)委員 ぜひ大臣の方からも、この地球温暖化対策推進大綱の中での取り組みについて、決意のほどをちょっとお聞かせいただきたいと思っております。

石原国務大臣 これはもう委員御承知のとおり、地球温暖化ですから、CO2の排出に起因している問題ですけれども、やはりモーダルシフト等々、大量輸送機関に車部門から移動するということで、この問題にハード、ソフト両面から取り組んでいかなければなりませんし、そのことによって京都議定書の、一九九〇年基準に対してのマイナスというような大変厳しい基準ではありますけれども、官民挙げてこの目標達成に努力をしていかなければならないと考えております。

岡本(充)委員 達成はできそうだと大臣は思っていらっしゃいますか。

石原国務大臣 大変厳しい数字ではございますけれども、九〇年代の後半に横ばい状態までなったということは、抑制することができるということを示しているわけですから、これからいかに減らしていくか、こういうことを努力していかなければ、京都議定書の議定国、すなわち、京都で会議をし、しかも日本のイニシアチブによって取り決めたこの議定書の有効性というものを世界に対して誇れないのではないかと思っております。

岡本(充)委員 ぜひ、私も、その大臣の意気込みをもって、この京都議定書で定められました、日本がこの議定書を締結した地でもあります、この議定書をしっかり世界に誇っていくためにも、この数字の達成をぜひ目指していただきたいと思っております。

 最後になりますけれども、このCO2削減の効果、一つだけちょっと数字として教えていただきたいんですが、自動車での運送そして船での運送で、同じ単位輸送量当たりでどのくらいCO2削減になるのか、参考までにその数値を最後に教えてください。

澤井政府参考人 物流に関しまして、トラックで貨物を運ぶ場合のトンキロ当たりのCO2は、船舶の同じトンキロ当たりのCO2と比べますと、四倍程度でございます。

岡本(充)委員 ということでありますので、ぜひ、これだけのCO2削減ができるということですから、内航船舶へのしっかりとした政策的な援助、そしてまた中小企業が多い実情を踏まえたこれからの施策を望みたいと思います。

 これで質問を終わります。

赤羽委員長 穀田恵二君。

穀田委員 私は、初めに六本木ヒルズの事故についてお聞きしたいと思います。

 御遺族の皆さんには心から哀悼の意を表したいと思います。

 先ほども答弁でありましたように、ガイドラインの作成、そして検討する、また、必要とあらば建築基準法の改正、それは至急にやるべきだと私も思っています。

 ただ、問題の所在は、一連の報道にもありますように、効率化を最優先にして安全を軽視したこと、これがあったんじゃないか。だから、きょうの報道でもありますように、ある被害者は、人命より営業優先ではなかったのかということを怒りを込めて述べておられます。しかも、事故が起こってから、安全対策をとらないどころか、事もあろうにセンサーの死角を広げる、もし対策をとっていたら事故は防げたのではないかという思いはだれでも私は共通だと思うんですね。

 そこで、ここに実は企業のあり方が問われている。つまり、企業が安全を最優先するという点でも社会的責任があるんじゃないかと私は痛切に思っています。そして、これを守らせるのが行政の責務ではないか。

 そして、なぜこれを私が言うかといいますと、この間この委員会で議論した、また参議院でも議論になっているわけですが、都市再生という名前で成功した事例としてわざわざ大臣も挙げた場所でもありますから、そこで、基準をつくるということは当然だけれども、私は、こういう建造物にかかわる事故については報告させる、最低限そういう仕組みをつくるということは、また情報公開させるということは必要じゃないかと思うんですが、そこをまず聞きたいと思います。

松野政府参考人 お答えいたします。

 建築物内での事故について、事故が起こったときは一般的には消防部局あるいは警察部局が対応を行うというのが通常だと思います。それが直ちに公共団体の建築行政部局に行くということにはなっていないということでございます。本来、事故原因について建築物の構造あるいは設備の状況といった観点から分析を行う体制を整備するということが御指摘のとおり大変重要なことだと思います。

 ただ、法律上、事故があったときに報告義務というようなことになりますと、どういう場合に報告する義務があるのか、だれが報告する義務があるのか、当然、処罰の対象になるということもございますし、かなりきつい規制の強化ということにもなりかねませんので、これ自体はなかなか難しい問題だと思います。したがって、むしろ実質的にそういった情報がとれるような体制が構築できないのかということを考えていきたいと思います。

 例えば、今回の事故を見ますと、あそこの六本木のビルで三十三件の事故があった。その中には、少なからず、例えば救急車で運ばれた事例があったというふうに聞いております。そうしますと、個々のケースで消防の方に一々その場から報告していただくのは大変な負担になりますので、どうもあそこのビルでは最近事故が多いよとか、そういったことを定期的に受けとめられるような体制をつくっていくということが必要なのではないか、そういった観点から今後ちょっと検討をさせていただきたいというふうに思います。

穀田委員 今お話がありましたように、東京消防庁というのは、たび重なる救急車の搬送があったために、幾つかの事故については把握していたはずなのですね。最初の一件や最初の二件はそれはどうかしれませんが、これだけ七件も八件もあるとなると、これは問題だぜという問題提起自身をしてもらわなくちゃならぬと私は思ったんですね。

 ですから、今の発言で言うと、やはりとても大事な関係だと思って、ある識者は、小さい事故というのは大きな事故の予兆でもある、こう言っていますから、そういうところに、どう防いでいくのかということなしに何か大きな事故が防げるというわけじゃない、そういう角度から物を処していきたいな、そうしてほしいなと私は思っています。

 そこで、森ビルも、きょう午前中お話があったように、気密性の問題、気圧の問題と大体言っていますよ。あそこが言っているから信用しないというんじゃなくて、それはそれであるんでしょう。だけれども、今新しい問題というのは、今までになかった超高層ビルができる、それがさまざまな施設を持っているということからしますと、自動回転ドアだけじゃなくて思いも寄らぬ事故が発生する危険性をはらんでいる。

 そういう角度から、実は、新しい構造物、新しい建造物というものについて、今、そういう目で超高層ビルの安全性問題について、一から安全総点検を行う、そういうぐらいの構えが、私は、これを契機に、今言いましたように小さい事故は大きなということからしまして、ここを一つの起点として、そういう角度で物を見るべきじゃないかなと思うんですが、その辺の見解はいかがでしょうか。

松野政府参考人 今回、専門家の方々に御参加いただいて検討をする会議を設けるつもりでございますが、その中で、自動式回転ドア以外のドアについても何か危険性があるのかどうかというようなことも、もしあれば検討してまいりたいと思いますが、その他のものについて、ドア以外のものについてどうなのかということになると、一般的に、ありませんかというようなことで聞いてみてもなかなか難しい問題だと思います。

 したがって、やはり先ほど申し上げましたような、顕著にあらわれてくる事例を、例えば救急車によって搬送される事例がどうも多いとか、そういった情報をむしろ鋭敏に取り込めるような体制を構築していくということをまず検討していきたいというふうに考えております。

穀田委員 わかりました。

 次に、法案の問題について、一、二点質問します。

 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律について、先ほど来も議論になりましたが、私は、本改正案とPSCとの関係についてお聞きしたいと思います。

 ポートステートコントロールというのは、この配られている資料の中にもありますように、海事関係の国際条約で定められている基準が守られているかどうかということで、各国が、そういう寄港国によって外国船舶への監督ができるわけですけれども、今度の法案に係るところで、PSCの検査内容は広がるのか、そして、PSCは今後その意味でどんな役割が果たせるのか、そういう基本についてお聞きしたい。

鷲頭政府参考人 ただいま先生おっしゃいましたとおり、船舶の安全あるいは海洋環境の保護に関する国際条約、条約要件につきまして、入港時に寄港国として船舶の基準適合性を検査するというものがポートステートコントロールでございまして、今回の海洋汚染防止法の改正で、大気汚染防止設備というものが新しく追加されますので、それの基準適合性につきましても検査対象になることから、ポートステートコントロール業務の検査対象というものは広がります。ただ、ポートステートコントロールというのは一つずつ見るわけではなくて、安全も環境も一緒に見ますので、一回入ったときに追加の大気汚染防止設備も見る、そういう意味で、追加はされますけれども、手間はそんなにはふえない、こういうことだと思います。

穀田委員 今、手間はふえない、こうなっているんですが、ただ、先ほど来問題になっていますように、例えば北朝鮮の船の問題でも、見る角度がふえると、逆に、大気汚染の問題からしますと、先ほどあったように、今まででも二百九隻を調べて百二十八欠陥がある、こういう事態が発見されている。これによって、例えば、さらにこういう不適格な船がふえるというふうに見ていますか、それはどうですか。

鷲頭政府参考人 おかげさまで、ポートステートコントロールというのは大変日本では有名になってまいりまして、日本に入る船、別に北朝鮮に限らず、そういう形で厳しくチェックされるという意識を持っておりまして、そういう意味では、我々も体制整備をしてやっておりますけれども、そういう予告効果もあって、これからどんどんふえていくというふうには余り考えておりません。

穀田委員 わかりました。

 では、次に、船舶からの大気汚染防止に関しては、今まで何の基準もなかったという点では前進なんですが、国際条約批准に伴い、今回の改正でやっと外国船も含めて規制しようというわけですが、規制をいかに守らせるかという点で課題が残されていると思うんですが、四百トン未満のものは検査対象という点ではどうなるんですか。その辺、ちょっとお聞きしたいと思います。

澤井政府参考人 例えばNOx規制で申しますと、エンジンにつきましては百三十キロワット以上、全部、工場でつくる段階で検査をします。これは船の大きさという意味でいうと相当小さいところまでいきます。

 検査にはそういう個別の設備の検査と、それから船舶をまとめてやる船舶検査と両方ございまして、特に外航船につきましては、四百トン以上ということが条約で決まっておりまして、これは、海事関係の条約、いろいろな場面でそういうすそ切りがございます。そのすそ切りのあり方というのは、いろいろな加盟予定国との間の議論で決まってくるものですから、その条約によっていろいろでございますが、このMARPOL条約では大体四百トンというラインで切っておりまして、船舶検査、全体をやるのは四百トン以上ということになっております。

穀田委員 だから、それは大体はなからわかっているんですけれども、四百トン未満のものは、では、実際は、今後そういう規制との関係でいったら、どういう方向で努力しようと思っておられますか。

澤井政府参考人 繰り返しですが、窒素酸化物につきましては、エンジンをきちんとそうやって各国が全部やります。日本もやりますし、日本に来る外国船についてはその外国船の旗国、母国でやります。それでエンジンは押さえられます。それから、例えば油でいいますと、重油の販売の段階ですべて押さえます。これはどの国もそうやります、加盟国につきましては。それで、ほぼ一〇〇%規制ができるだろうというふうに思っております。

 繰り返しですが、四百トンというのは、そういうことをある意味ではまとめて、パスポートとして、外国に行くときに持たせる証書について四百トン以上というふうに御理解をいただきたいと思います。

穀田委員 わかりました。

 では、次に、油濁の方について少し聞きますが、私も実は、九七年一月に、予算委員会でナホトカ号の事故に関連して、当時、橋本総理や古賀大臣でしたが、議論しました。私は、流出事故の際に早期に対応する必要性の問題について問うて、とりわけ日本海側にも油回収船の配備などを検討すべきだと当時提起したのを今でも覚えています。

 ナホトカ号などの事故を教訓として、その取り組みがどうなったか、大枠だけでいいですからお話しください。

鬼頭政府参考人 お答えを申し上げます。

 平成九年一月に発生をいたしましたロシア・タンカーのナホトカ号による大量油流出事故では、日本海沿岸に大変重大な被害をもたらしましたことは、委員今御指摘のとおりでございます。

 このナホトカ号事故では、当時名古屋港に配備をされていました清龍丸、これは通常は航路のしゅんせつ事業に従事をしておりますが、油流出事故等が起きますとその回収に向かうといういわゆる兼用船でございますが、その清龍丸を派遣いたしまして、油回収作業に当たらせたわけでございます。

 この清龍丸による油回収でございますが、一定程度効果はございましたが、現地に到達するまでに、名古屋から関門海峡を越えて日本海に向かう、そういう意味では若干日数を要することになりました。このため、当時の運輸技術審議会におきまして、流出油の防除体制の強化策の検討が行われまして、現地に到達するまでの日数を極力短縮するために、油回収機能を有する、今言いました清龍丸のような兼用船の拡充整備が必要であるという御答申をいただいたわけでございます。

 この答申を踏まえまして、平成十二年度には西日本の海域をカバーする海翔丸を北九州港に配備いたしましたし、また、平成十四年度には日本海の海域をカバーする白山を新潟港に配備したところでございます。

 この三隻によりまして、現在では、油流出事故発生時において、出動からおおむね四十八時間で全国をカバーする体制ができたところでございます。

穀田委員 では、先ほど来問題になっているこの保険との関係で、北朝鮮籍船の問題について最後に少し質問したいと思うんです。

 入っている船の割合は多いのだが、保険の加入の状況は、北朝鮮の場合二・八%と先ほどありました。それで、この法改正によって、例えば報告によりますと年間千三百四十四回入港する北朝鮮の船というのは、加入していなければ当然拒否できる。そうしますと、入港できないということになれば、保険の加入率というのは上がると思いますか、率直に。

鷲頭政府参考人 今回の改正によりまして、保険の義務づけが課されることになりますので、我が国の港へ入港しようと考えるのであれば、保険に加入するものというふうに考えております。

 それで、ちなみに金額をちょっと申し上げますと、百トンぐらいの船、我が国の漁船向けのPI保険によりますと、百トンクラスで年間大体四十万円保険料を払う、こういうようなことになっております。その四十万円というのは高いのか安いのかわかりませんけれども、それぐらいのお金を払えば保険に入れますので、ビジネスとして、日本に来る方が得である、こういうことになれば入ることもありますし、そこはもう経営判断だと思います。

穀田委員 今お話があったように、保険料というのは、あそこの船でいうと大体四十万から百万ぐらいの範囲で推移しているんだと言われています。

 そこで、ただ、問題は、加入するということはあるんでしょうけれども、北朝鮮に限りませんけれども、それぞれ、日本の物価やその他の経済力が違いますから、問題は、保険に入ったといっても、実際起きたときに保険会社に支払い能力があるかどうかというのはまた別なんですよね。ここが問われると思うんですね。ここがいつもややこしい話になってくる。

 私は、今、参考人からるる前段でお話があったように、実際上は入っているのが二・八%ですから、今の段階でいけば、客観的には九七・二%が入れないということになるんですよね。だから、全部加入するとはとても思えない。しかも、四十万という話があって、経済的効果がどうのこうのとある。しかも、それが本質的に、では事故があった場合、払えるかという問題もある。

 ですから、結構、私、これは厳しくやれば、それ自身は入れないという事態になると思うんですけれども、問題は入れるか入れないかだけじゃなくて、肝心な問題は、事故が起きたときに、そういう支払い能力との関係で、保険会社含めて大丈夫かという問題が問われると思うんですね。そこの点についてはいかがでしょうか。

鷲頭政府参考人 御指摘の点につきましては、法律上、保険の内容につきましても、支払い対象とか保険金額についての要件を課しておりまして、それを満たすものだけを保険として認めてあげる、こういう仕組みになっています。

 ちなみに、保険証書によりまして、ちゃんと座礁事故や燃料油の油濁事故について保険金が支払われるような契約になっているかとか、あるいは保険金額がちゃんと法律上船主が負うべき責任を果たす金額になっているかということをチェックいたしますし、おっしゃいました保険会社そのものにつきましても、保険の付保実績、過去、ほかのタンカーとか何かにもちゃんと保険を掛けて、油の世界ではそういうのは各国で認められているのがありますので、そういう会社がどうかとか、あるいは過去支払われなかったというような問題がないかどうか、そういうようなことをチェックして証明を出そう、こういうふうに考えております。

穀田委員 今の話、いろいろ聞きましたけれども、いずれにしても、海の環境を守るという点では、私どもは、極めて重要な二つの法案、前進的な側面があるということで賛成をしたいということを表明して、質問を終わります。

赤羽委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 これより両案について討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

赤羽委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、油濁損害賠償保障法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

赤羽委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

赤羽委員長 次に、国土交通行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として国土交通省大臣官房技術審議官門松武君、総合政策局長澤井英一君、土地・水資源局長伊藤鎭樹君、都市・地域整備局長竹歳誠君、道路局長佐藤信秋君、住宅局長松野仁君、鉄道局長丸山博君、自動車交通局長峰久幸義君、航空局長石川裕己君、政策統括官矢部哲君及び海上保安庁長官深谷憲一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として都市基盤整備公団理事古屋雅弘君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。能勢和子君。

能勢委員 自由民主党の能勢和子でございます。国土委員会での初めての質問でございます。よろしくお願いいたします。

 私は、先般、国土交通省が取り組んでおられます水辺の楽校整備事業完成式に参加いたしまして、改めて、地域に根差した心の通う事業と、自分が出席してみて大変感動いたしたわけであります。

 式典には子供たちも参加しておりましたし、また、そのプロセスにおいて子供たちの意見が反映され、プロジェクトチームにも子供たちも入るということで、そういうことも取り入れられまして、さらに、身近な自然体験や学習の場として、河川等水辺の提供により自然や環境への理解を深めると聞いておりまして、大変この公共事業の意義は大きいと喜んだ次第であります。そして、ハードイメージであります国土交通省事業に、大変優しい、身近な国土交通省の印象を地域の皆様に与えたということであります。

 さて一方、そんな中で、国土交通省の領域も大変広くて、我が国においても、鉄道を初め公共交通機関等のテロ対策や、その未然防止を図るための水際対策が大変重要な問題になってきております。

 そこで、国土交通省として、昨今のこの状況にかんがみ、鉄道等の交通機関や重要施設のテロ対策の一層の強化が求められておりますけれども、大臣といたしまして、これに対する方針、施策をどのようにお考えになっていらっしゃるか、お示しいただきたいと思います。

石原国務大臣 ただいま能勢委員が公共交通機関におけるテロの未然防止のための水際対策の重要性について御意見を御開陳されたわけですけれども、私どもも、実際の警備等々を担当いたします警察関係などとの連携を強化させていただいている昨今でございます。

 具体的に申しますと、鉄道、バスにおける巡回警備の強化、東京駅等々では現在五百人の体制で巡回警備をさせていただいております。船舶における旅客乗船時及び部外者出入時のチェックの強化、これも当然のことでございますし、一方、空の方に目を転じますと、航空における航空会社等による最高レベル、フェーズEという言い方をさせていただいておりますけれども、最高レベルの徹底、空港管理者による警備の徹底等を図らせていただいているところでございます。

 思い起こせば、九・一一のテロ以来、昨今、去る十一日に発生しましたスペイン・マドリッドの鉄道爆破事件や、二月六日のモスクワ地下鉄における爆破事件など、テロ対策の必要性というものは委員御指摘のとおり高まっていると思っております。

 このような情勢を踏まえまして、今月の十七日に、鉄道局長の名前で、各事業者にあてて自主警備の徹底を改めて指示させていただいたところでもございます。また、その他の交通事業者、施設管理者などについても、改めて所管部局よりテロ対策の再点検及び徹底を指示させていただいております。

 今後とも、情勢に対応して、公共交通機関におけるテロ対策を徹底いたしまして、国民の安全確保に全力で努めてまいりたいと考えております。

能勢委員 大臣から、万全の体制というお話がいただけました。私も、東京に参りまして地下鉄を利用するわけでありますが、外国のみならず、日本の例のサリンを思い出して、地下鉄に入るたびに緊張感を持っておるわけであります。再びこうした事故が起こらないために、どうか、危機管理ということについて国民全体の意識が高まるように我々もやっていかなきゃいけない、政府もさることながら、国民にも意識を与えていきたいというふうに考えております。

 また一方、三菱ふそうトラック・バスのリコール問題が起こりました。平成四年の事故から今までに、五十七件ものハブ破損についてクレームがあったということでありますけれども、国交省はこれまでどのように対応してこられたのか、また、今後再発防止に向けてどのように取り組んでいくお考えなのかをお聞かせいただきたいと思います。

峰久政府参考人 まず、これまでの対応ということでございますけれども、国土交通省におきましては、ハブ破損の重要性にかんがみまして、再三にわたって報告の徴収とか立入検査を行い、原因の究明と再発の防止を指示してきました。その際に、整備上の問題というだけではなくて、設計上の問題も含めて、どういう原因があったのかというようなことの事実の報告を求めてきたところでございます。

 その間、三菱自動車におきましては、ハブの破損は、整備不良等によるハブの異常摩耗が原因で発生して、適正な整備と使用を行っていればハブの破損は生じないとの説明を繰り返してきたところでございます。

 国土交通省としましては、平成十四年の横浜の事故以降、再発防止を徹底するという観点から、三菱ふそうによる自主的な点検回収を促進するとともに、ユーザーの方々には的確な点検整備を促進してもらうように努めてきたところでございます。

 それで、最近になりまして、警察による家宅捜査などが行われる中で、国土交通省におきましても、再三、三菱ふそうに対しましてハブ破損の原因調査を求めてきたところでございますけれども、三菱ふそうから、整備不良が唯一の原因ではなくて、設計上の問題があることが明確となったので、自主点検措置にかわってリコールをしたい旨の報告があり、三月二十四日にリコールの届け出が行われたということでございます。

 それで、今後の取り組みはということでございますが、これにつきましては、今回のリコールというのは、ハブの破損は整備の不良が原因だとする従来の三菱ふそうの説明とは異なるものでありまして、また、会社がリコールと判断するまでに長期間を要しており、安全対策上極めて遺憾なことだというふうに思っております。

 現在、リコールに至った事実関係の詳細な把握に努めておりますけれども、問題があれば、法に照らして厳正に対処してまいりたいと思っております。

 それから、国土交通省としましても、今回の事実関係を調べた上で、今後に生かすべきことについては生かして、リコール制度の適切な運用に努めて、同種事案の再発の防止を図っていきたいと思っております。

 以上です。(発言する者あり)

能勢委員 今、本当に残念に思いますのが、メーカーに言われっ放しかという発言が出ましたけれども、その調査権もないのかもわかりませんけれども、再びこうした、回転事故じゃありませんが、このことで何回か起こったことを大変残念に思うわけですね。どうか再発防止に向けて全力で取り組んでいただきたいと思います。

 そして、総論になってしまいますけれども、次に、私は道路関係についてお尋ねしたいと思っておるわけです。

 既に全国二十二カ所で行われたと言われております有料道路の社会実験の取り組みの状況であります。私も実はその社会実験に参加をいたした者でありますが、この社会実験の結果を今後の事業にどう生かすのか、あるいは施策にどのようにして生かしていくのかということをお尋ねしたい。

 実は私も、広島呉道路というところを使っておりまして、大変使うわけでありますけれども、その間、渋滞している一般道路が大変通過もいいというテストもしたんですが、その後、これをどう生かしていくのか、大変関心を持って見ているところでございます。

 よろしくお願いいたします。

佐藤政府参考人 有料道路と一般道路をともに有効に使っていただく、これが大事なことだろうということで、平成十五年度、地方から御提案をいただいて、先生御指摘の社会実験を行っているところでございます。主として通勤時間帯などにおきまして、料金を割り引かせていただくことによりまして、一般道路側の渋滞解消、有料道路の有効利用、こうした点を実験してみておる、こういうことでございます。

 先生御指摘のように、二十二の社会実験を行っております。このうち十四が通勤時間帯に係るものであります。十四の通勤時間帯に係るものを総括して見てみますと、大体五割程度の割引の場合に、有料道路の交通量の変化は一・四倍から二・六倍、こういう形で、置かれている状況によりまして割とばらつきはあります。ただ、いかにもそれぞれ有効に機能していただいている、こういうことかと思います。

 特に、御指摘の広島呉道路、これの結果を見てみますと、並行する国道三十一号が慢性的に渋滞している、こういう状態でございましたので、広島呉道路の料金の方を通勤時間帯につきまして約四割引き下げさせていただいた。この結果、有料道路の方の交通量は二割増加して、国道三十一号の渋滞の方は、最大五割、半分、約一キロになった、二キロが一キロになった、こういう大変効果があることが見られたわけでございます。時間的にも、国道三十一号の所要時間、四割短縮、こういうことであります。

 したがいまして、こうした効果を踏まえながら、実は平成十六年度にも大々的により一層社会実験を進める、それから全国的なネットワークで申し上げますと、高速自動車国道につきましては、ETCを用いた長距離割引、こうしたこともやってみたり、あるいは首都高速では夜間割引、こうしたこともやってみております。

 こうしたことを、その効果の度合いをはかりながら、一層の弾力的な、かつ、多様な料金のあり方というものを考えてまいりたい、実行にできるだけ移していきたい、こんなふうに思っておるところでございます。

能勢委員 ありがとうございました。

 大変高速道路の値段も高くなりまして、そのあたりの検討もお願いしたいと思っています。

 時間が迫ってまいりましたけれども、ちょっと順序を変えますが、次に、尖閣諸島への中国人活動家の上陸問題についてお尋ねしたいと思っております。

 この上陸問題について、我が国の主権的権利を侵害するものでありまして、今後このような事態が起こらないようにするために、海上保安庁としてどのような警備を行うというお考えなのか、お尋ねしたいと思います。

深谷政府参考人 御説明を申し上げます。

 尖閣諸島の警備につきましては、特段の情報等のない通常の場合におきましても、常時、大型巡視船一隻を現場海域に配備いたしまして警戒監視に当たっておるところでございまして、特段の状況がございますれば、例えば、ことしの一月にも中国から船が二隻、一月の十五日でございましたけれども、同様の船が出てきた事案がございました。これにつきましては、私ども事前に情報を把握できたものですから、領海に侵入いたしましたけれども、必要な数の巡視船艇を現場に事前に配備をしまして、領海外へ退去させたということがございました。

 しかし、今般の件につきましては、結果としましては上陸を許してしまったわけでございまして、現時点におきましては、現場におきましては勢力を増強して警戒監視に当たっておりますが、御指摘の今後の対応につきましては、今回の事案の状況、これにつきまして、よく私どもとしましても検証、分析をいたしまして、事前の情報収集のあり方や、あるいはより迅速な対応のあり方など、警戒警備のあり方全般につきまして再点検をしたいというふうに思っておりまして、必要な点、改善すべき点が明らかになれば、その後、速やかに改善を図って、必要な警戒監視に当たって万全を期するよう努力したいと思っています。

能勢委員 国土交通省の領域も大変広くて、いろいろな意味での問題が今、世に関心を持って出ておりますが、ぜひとも万全の体制で国の安全のために頑張っていただきたいと思っています。

 最後になりましたが、国交省が取り扱っていますバリアフリーの問題であります。

 このバリアフリーについて、前回の委員会でも大臣の方にも質問し、お答えいただいておるところでありますけれども、特に、その進捗状況だけでなくて、せっかくできたバリアフリー化の施設が、障害者の視点といいますか、利用者の視点に立って、どうそれを施策に生かしているか。

 例えば、せっかくつくった今のエレベーターなりが本当に障害者が利用しているのかどうか、その利用率なんかをお調べになっているんだろうか、できただけで終わっているんじゃないだろうか。あるいは、どんなところに問題があってそれを利用されていないんだろうかという問題も含めて、工事だけ進んでいって、進捗状況はいいんだ、予算もつくんだといいますけれども、全く使われていないものであれば問題があるんじゃないかということを最後に申し上げまして、私の質問を終わります。

 以上であります。

赤羽委員長 答弁はよろしいですか。答弁はどうされますか。

能勢委員 答弁をいただく時間、よろしいですか。それでは、恐れ入ります、五分ぎりぎりだと思ったから遠慮したんですが、答弁、よろしくお願いします。

澤井政府参考人 利用者の視点に立ったバリアフリー化という観点で幾つか申し上げますと、まず、基準をつくるときに、そういった方々の、高齢者、身体障害者初め関係者の皆さんの意見を聞いてつくるという取り組みを一つしております。

 それから、施設整備だけではなくて、それを使いやすくするという観点から、例えば全国の主要な駅については、平成十四年一月から「らくらくおでかけネット」という、これはかなりアクセスももう百六十万件を超えておりますが、駅のどこがバリアフリー化施設があるか、あるいはどういうところで乗りかえればいいかといったような情報をビジュアルに示したサイトをつくって提供しております。

 それから、十三年度から、心のバリアフリーという言葉を合い言葉にいたしまして、交通バリアフリー教室というのを開催いたしまして、高齢者や身体障害者の方々を介助する体験、あるいは疑似体験ということを通じまして、一般の方々が自分の問題としてバリアフリーの意義を考えて、そうした気持ちを持って行動していくという、いわばすそ野を広げる取り組みをしております。

 実際に一例を申しますと、大江戸線では全駅バリアフリー化がされておりまして、そこについて実際利用された方の声を聞きますと、家族とか駅員の介助が要らないので単独で自由に外出できるようになって大変うれしい、あるいは介助者の費用とかタクシー代などの出費が減って、そのお金が別に回せるようになったとか、さらには就業、仕事の選択肢も広がるのではないか、そういう期待も持てるようになったという、かなりいい声をいただいております。

 ただ、そういうところばかりでないことも十分承知しておりますので、私ども、引き続き御指摘の利用者の立場という観点からさまざまな施策を総合的にやっていきたいと思っております。

能勢委員 どうもありがとうございました。

赤羽委員長 中川治君。

中川(治)委員 民主党・無所属クラブの中川治でございます。

 きょうは三月三十一日でございまして、国土交通委員会も、あした以降については道路公団の法案等で一転して対決モードに変わるようでございますので、三月中に一般質問という機会をいただいて大変喜んでおります。

 きょうは、ひとつ建設的に、十年か十五年ぐらい先の話を、また大阪で取り組んでおります行政の福祉化ということについて国土交通省としても御協力いただきたい、そんな思いでございますので、どうか気楽にお答えをいただいたら結構かと思います。

 まず、私は、いつも大阪十九区の同僚の長安議員、それから私は十八区でございますので、十八と十九であわせて大阪泉州、きょうは民主党・無所属クラブを代表してということではなくて、一般質問でございますので、大阪泉州の民主党の思いということを踏まえて、ひとつ空港の問題について御質問をしたいと思います。

 まず、五分か十分ほど関西国際空港にまつわる大阪泉州の恨み言をひとつお聞きいただきたい、そう思っております。

 関西に新しい空港をつくろうということを最初に話が上ったのが一九六八年であります。今からもう三十六年前になります。そして、一九六八年に、そのときは今の泉州沖じゃなかったんですね、淡路島それから明石沖、それから島根半島の近海湾、中海ですね、ここにつくったらどうか、それから大阪の堺市沖、それから今の泉南よりももう少し南の阪南地区、こういうあたりで新空港をつくったらどうか、こういうことがありました。

 当時は、もう今は亡くなられました玉置和郎先生が中心になって、近畿じゅうを走り回られて、どこに空港をつくったらつくれるかということをお探しになったというふうに私も聞いております。

 そして、二年たちまして、一九七〇年、今から三十四年前に泉州沖の泉南沖、今のちょうど泉州空港の場所であります、ここと神戸沖、二つの候補者が追加になりまして、大体地元では、どうも最後は泉南沖と神戸沖の勝負やな、そんな話があったやに思っております。

 ここからがある意味では恨み節でございますが、当時は、政府はどうしても本格的な国際空港を新たにつくらなければならなかった。御存じのように、今の成田空港はございませんし、それから羽田空港は満杯、そういう状態の中でありました。そして、外国のエアラインからは、要するに約束どおり飛行機が着陸できないじゃないか、契約不履行であるということで違約金も払わなければならないというのが一九七〇年前後の当時の日本の空港の状況であります。

 そして、一九七四年に、こんな状況の中で、初めて運輸省は、当時の航空審議会が関西国際空港は大阪泉州の泉南沖が最適である、こういうことで、大阪空港の廃港、そして無公害空港が前提であるという答申をつくったのであります。

 私も国会図書館に行ったら、さすがにありました。調べてまいりました。これが当時の、後でまた回します、当時のフォード大統領の初めての施政方針演説、この日ですね、八月十三日に泉州沖空港の案が決まった、こういうことでありました。

 この空港、当時は、今でこそ、うちに空港が欲しい、うちに空港が欲しいという世相でございますけれども、一九七〇年代の空港というのは必ずしも歓迎されなかった、いや、むしろ嫌われていたというのが率直なところだと思います。

 千葉県の成田空港、これは三里塚農民が反対運動をしました。そして、全国からこれの反対運動を応援するということで四万人、五万人という支援学生が集まって、農民、学生と警察隊が、四万人対四万人とか、とんでもない衝突、乱闘、そして死者が出る、こういうことであります。年配の方は御記憶に新しいと思います。

 同時に、大阪空港の方は、多分現在と比べればジェット機の騒音が倍以上、非常に大きな騒音が出ました。そういうことで、大気汚染と騒音公害で住民が公害訴訟をやっておりまして、相次いで国が敗北をするということが続いておりました。空港を撤去してくれという周辺十市の市民の運動が非常に盛り上がっていた、こういうことであります。

 ですから、大阪府内の関係自治体からは、一九六八年、初めて大阪、堺あるいは泉南、阪南、こういうところで候補が、名前が出た途端に、大阪府内の関係自治体は全員すべて反対決議を上げたのであります。

 何を申し上げたいかといいますと、大阪泉州がみずから空港を望んだわけではない、むしろ嫌やけれども、国のためにどうしてもつくらせてくれ、こういうことで始まったのが関西国際空港であるということをまず御認識をいただきたいというのが私たちの思いであります。

 どうも最近は、やはり空港を欲しがる自治体が多いものですから、泉州はええ思いしているやないか、何を厚かましいこと言うてんねん、こういう雰囲気がありますので、そうではありませんよということをまずしっかり踏まえていただきたい。

 一九七四年といいますと、大臣はまだ十歳のころでございますので、私はそのとき二十四歳でございまして、空港反対運動をしておりました。難しい過激な運動はやめておこう、ただ、大阪空港へ行きまして、キーンというあの甲高い、今よりも三倍ぐらい甲高い音を録音でとってまいりまして、そしてそれを駅前で流して、皆さんこれが空港や、反対しましょうというようなことをやった覚えがあったんですが、もう時間がなくなってまいります、こんなことをしゃべっていたらあかんわ。そういうことになりました。

 ただ、七四年から、大阪が府議会も含めて空港に賛成しようというのに、これからまだ八年ありました。ですから、一九六八年から七〇年にかけて大阪の各市町村、特に泉州は空港は来ていらんという決議を一斉に上げました。そして七四年が過ぎてから、もう一度、空港は結構ですという決議を上げました。それから、最終的に空港受け入れということになるまでに、例えば運輸省が観測塔を建てる、観測塔を勝手に建てんといてくれ、これも泉州の各自治体はすべての自治体が反対決議を上げました。

 にもかかわらず、何とかつくらせてくれということで最終的にまとまったのが、海上五キロ、陸上ルートを飛行しない、そして周辺地域の整備を一体としてやっていきましょう、こういうことの中で、ようやく、一九八二年秋であります、三点セットということを条件にして関西国際空港の着工、建設ということを大阪府議会もそれから泉州の各自治体も認めたというのが経過であります。

 ここから先がもう一つまたドラマがございます。釣った魚にえさはやらないという悪い男がよくおりますが、一九八二年の七月に大阪府は空港を受け入れましょう、やっと地元がオーケーをしました、こういう話をしたときに、一九八二年十一月二十七日、第一次中曽根内閣が誕生いたしまして、中曽根さんは途端に、公団方式を考え直したい、地元も金を出してくれ、これはひどい話であります。ただ、そのころは泉州としても大阪としても、この空港をきっかけにして関西の復権を図ろう、いろいろな夢をもう描き始めておりましたから、着工するためには受けなしようがない、断腸の思いで受けたわけであります。

 ですから、国の第一種国際空港に自治体が金を出す、経済界が金を出す、今では当たり前かもしれませんけれども、そういうとんでもないことが初めて行われたのも、ある意味ではだまし討ち、我々はそんな思いがしております。

 そういう状況の中で、今度は、空港ができました。そして、一九九〇年には大阪空港を残すということも決まりました。運輸省もそういうことで了解をしました。そういうことに決まりました。

 つまり、公害のない、二十四時間飛行のできる、そして国内線と国際線、これが一つの建物の中で運営できる空港をつくろう、こういう世界で例のない理想的な空港をつくろうというこの目標がいろいろな段階の中で損なわれてきたというのが関西国際空港の現状であります。

 そういう経過も含めて、私は、そういう経過を余り知らされないで、あるいは理解をされないで、どうも、関空、赤字の空港をしょい込んでえらい目に遭うている、そんなふうに思われている方々が多いのは、泉州の立場としては非常に腹が立つわけでございまして、こんな歴史の中で、ある意味では、我々は初めから、一九八二年のときには、本当に公害の全くない、そして二十四時間飛べる、国内線と国際線が有機的に結びついた、世界で一番理想的な空港をつくる、だから、そうしたら賛成しようか、こういうことで賛成した空港、これが今どうなっているのか、そんな思いで、今いろいろな思いを私たちは抱いております。

 大臣、恨み言でございますから、率直にこの三十年間の歴史、私はやはり、国は理不尽やな、ええかげんにせいよという思いがございます。大臣の御感想をお聞かせいただきたいと思います。

石原国務大臣 ただいま委員が、過去の一九六八年にさかのぼって、関西空港ができ上がる歴史、また地元の皆さん方の御苦労、そして時代背景、機材の進展によって騒音が落ちたことによって、今では廃港が決まっていた伊丹にどんどん飛行機が飛び、伊丹を抱える方々はもう伊丹は当然あってしかるべきだ、こういう中で最初から御苦労されていたということを改めて、メモをとらせていただきつつ、認識をさせていただいたところでございます。

 私も関空に立たせていただいて、できてすぐに利用させていただきましたけれども、海上空港、二十四時間、騒音問題が海に逃げるというような利便性を生かして、やはり日本のゲートウエーとして関空にはぜひとも発展していただきたい、初めて利用させていただいたとき以来、このような仕事を仰せつかっている今も、その思いには何ら変更もございません。

 一つ、私、利用させていただいていて感じましたことは、昨今になりまして国内線の連絡が悪くなって、以前は関空から海外へ行った記憶もあるわけですけれども、国内線の利便が著しく低下することによって関空から海外に行くという機会が減ってきた、こんなところにもこの空港の抱える問題があるのではないかと、みずからの経験に照らして感じているところでもございます。

 今後とも最大限の努力で関空を支えるよう頑張らせていただきたいという感想を持たせていただきました。

中川(治)委員 ありがとうございます。

 ぜひ、ある意味では三十年間、陸上ルートを飛ばないというのも飛ぶようになりました。そういうことも含めて、ある意味では手のひらを返され続けてきた泉州に対する優しい気持ちをひとつ持ち続けていただきたい、そう思っております。

 関空にはいろいろな思いがあります。開港したときにもテレビ放送でもありました、実はこの空港、一兆円の借金を抱えているんですよ。当時は利息だけで四百四十億円、要するに一時間六百万円ぐらいの利息を払わないかぬ、そういうふうなことがあったと思います。

 株式会社の方式というのは、今となってはそれも一つの方法かなというふうに私は思っております。というのは、関空は今回関西財界の経営者が社長になりました。こうすることによって、つまり、お役人の天下りが社長を務めていた会社とは雰囲気が全く変わってまいりました。そういう意味では、本来の民間のよさを発揮できる条件が少しできたのかな、そんな思いがしております。ただ、発足当時こういう形で民間にしたことについては、私は、やはり非常に大きな無理があった、そんなふうに思っております。

 一兆円の借金とは一体何か。実は、国会図書館に行って何を調べようかと思いましたのは、私はたしか一九七〇年の末ぐらいまでは空港反対の側だったんです。それが、いや、もう反対するのやめようというふうに思ったのは、先ほどの三点セットということがありましたけれども、公害のない、世界で一番理想的な空港をつくるんだ、そしてそれを海上五キロに、だからこそ海上五キロにつくるんだ、そのためには多分空港の建設費は三倍、五倍の値段がかかる、それでも我々は世界一の理想空港をつくろうと決意したんだ、お金の問題じゃないんだと、大臣か自民党の偉いさんですわ、調べてみたんですが、なかなかないですね。そういうことを聞いて、確かにそれは反対できないなと私は思った覚えがあります。

 まだ御存命かもしれませんから、それを言うたのはおれやという人がいてはったら教えてほしいんですけれども、そういうことから考えたら、この一兆円の借金というのは一体何だったのかなと私は思っております。

 それで、一つ改めて聞きたいんですけれども、要するに、海上五キロに空港をつくるということは、これによって環境対策をやっているわけでありますから、その点で逆にお聞きしたいんですけれども、大阪空港の周辺対策費、それからできれば警備費、警察官の常駐の警備費ですね、これは総額幾らになるでしょうか、今までで。

石川政府参考人 伊丹空港における環境対策費でございますが、昭和四十二年以降、国が公共用飛行場における航空機騒音による障害の防止等に関する法律に基づいて実施してきておりまして、移転補償であるとか住宅防音工事等に係る費用の総額でございますが、昭和四十二年度から平成十四年度までの間の三十六年間で約六千三百八十四億円でございます。最近の五年間で平均しますと、一年当たり約百十三億円でございます。

 それから、空港周辺の警備の問題でございますが、これは他省庁の所管でもございまして、その費用については、私ども、申しわけありませんが、把握はしてございません。

中川(治)委員 累計でざっと七千億、最近少なくて、過去に、十年以上前、あるいはそのころにかなりありますから、ざっと七千億は最低かかっておるということであります。

 成田空港の方の周辺対策費、これはどうですか。

石川政府参考人 成田の住宅防音工事あるいは移転補償等の環境対策費でございますが、これも昭和四十一年に空港公団が発足しているわけでございますが、昭和四十一年の空港公団発足から平成十四年までの間で総額で約二千八百億円でございます。最近の五年間の平均では、一年当たり約百七十六億円でございます。

中川(治)委員 成田には環境対策費ということで百七十一億円、毎年ほぼ、最近でも出ているということであります。

 関西国際空港の場合の環境費は、環境対策はどうですか。

石川政府参考人 関西国際空港の電波障害でありますとか航空機騒音の調査などの環境対策費でございますが、平成六年の関空の開港時から平成十四年度までの総額で申し上げますと、累計で約七十一億円でございます。最近の五年間で平均しますと約八億円ということになります。

中川(治)委員 関空の場合は、環境対策費で、いろいろな対岸のところに建物をつくったり、リアルタイムで今の騒音が確認をできる、そういう施設以外は、実際上はゼロというのが現状ではないのかな、そんなふうに私は思っております。

 成田では毎年百七十億円以上の環境対策費を使っている、しかし、関空ではほぼゼロという状態で来ている。実はこれが一兆円の借金なんですよね、私たちから言わせれば。ですから、その点では、やはりこの一兆円の負担というのは、格安な環境対策費、同時に格安な警備費。成田では今でも毎日千五百人の警察官が警備をしておりますから、この人件費だけで年間大体百億円。水上警察、非常に小ぢんまりした、水上警察という大阪湾全体を警備する、これ以外はほとんど警備費もかかっておりません、環境費もかかっておりません。ですから、私たちからすれば、七千億円ぐらいは国が気持ちよく出せよ、そうすれば関空の経営はもっと楽になるやないか、こういう思いでございます。

 ただ、資金スキームは決まっておりますので、これ以上言っても仕方がないわけでありますけれども、とりあえず、せんだっては羽田空港の関係で関東の都と県が初めてお金を出すという法案に私は賛成をさせていただきました。

 ちなみに、関西の自治体それから民間の企業、関空に今までどれだけお金を出したか、これからどれだけお金を出さないかぬか、御報告をお願いします。

石川政府参考人 関西国際空港につきましては、まず、第一期事業につきましては、平成十五年度までの間の出資額は、国が三千八十四億円、地方公共団体と民間がそれぞれ七百七十一億円でございます。

 それから、関西国際空港の二期事業のうちの用地造成事業につきましては、御案内のとおりで平成十三年の事業スキームの見直しがございます。それに従いまして、国が四千百八十億円、地方公共団体が二千九十億円となる見込みでございます。

 さらに、二期事業のうちの滑走路等の施設の整備、これにつきましても、平成十三年の事業スキームの見直しに従いますと、国が八百四十億円、民間が四百二十億円となる見込みでございます。

 これを合わせますと、実績と見込みを合わせますと、国が八千百四億円、地方公共団体が二千八百六十一億円、民間が一千百九十一億円となる見込みでございます。

中川(治)委員 率直に言いまして、地元負担もこれが限界。御存じのように関西財界も元気であれば出すのかもしれませんが、もうこれ以上出せないという思いもありますので、できる限り関西国際空港の会社の方も肩の荷を減らす、ですから、二期工事の上屋についてももっとダイエットする方法はないか、あるいは経営のあり方、さまざまな知恵を出して、今、さらなる体質改善を図っておると私は思います。どうか、温かい御支援をお願いしたい、そういうふうに思います。

 そして、平成十四年でしたか、扇大臣と塩川大臣、覚書の中で補給金の話が出てまいりました。九十億円ということで、これは出していただいて本当にありがたいという気持ちはあるんですが、先ほどのような経過がございますので、九十億円というのは関空の固定資産税と一緒やないか、公団やったら払わぬでよかったんや、大きな顔するなよという思いが私なんかはございまして、出して当然じゃという思いがあるんです。

 関空は、多分来年ぐらいには単年度黒字ということになってまいります。我々は、今までも何回も手のひらを返されてきましたので、疑っております。単黒になったら九十億円をちょっと削ってくるのと違うか、本当に疑っております。ですから、もう一度、そんなことは絶対ない、三十年間九十億円は間違いない、もう一遍言うてください。

石川政府参考人 関空の会社自体の財務状況につきましては、先生御案内のとおりでございますが、今まで、営業損益は開港以来一貫して黒字、償却前損益も黒字ということでございますが、同時多発テロ等の問題もございまして、お話しのように、平成十四年に九十億円の補給金が決められたものでございます。

 これは、平成十四年の六月に交通政策審議会の空港整備部会において示されました需要予測の伸び率が五〇%まで下振れした場合でも、有利子債務の完済を三十年程度で行うことを想定しておりまして、そのためには、会社の経費の削減三十億を前提として、毎年度九十億円の補給金が三十年間必要となると試算をして、厳しい財政状況にありながらも補給金制度を創設したものでございます。

中川(治)委員 局長、だから、そこからですがな。だから、三十年間九十億円は減ることはないと言うてほしいんです。

石川政府参考人 今申し上げましたように、三十年間ということを試算してございますが、よほどの前提の変更がなければ、これはこのまま私どもとして頑張っていきたいと考えております。

中川(治)委員 ぜひよろしくお願いをいたします。

 もう一つ、最近、ことし下手をすればというか、去年も、関空は大阪空港の離発着回数を下回ってしまいました。十二万回までいったんですけれども、今十万回、ことしの速報値で十万、十・一万回ということでありまして、大阪空港は十一万回ぐらいで、十年ぶりぐらいに逆転をするという現象になってまいりました。これは何かといいますと、結局は国内便が関空から伊丹へどっと移っていったということであります。これについては、今までも同僚議員からも質問がありました。

 これは要するに、利用者のニーズに応じているんだから仕方がないというふうに言われているんですけれども、少し調べてみましたら、これはどうも伊丹の空港のシェアをめぐるJALとANAの争いじゃないのか、その犠牲になっているという嫌いもあるんではないか。ある意味では、これは航空会社同士の競争、そして自由意思で移ったんだから仕方がないということで、本当にこんなことを航空局が航空行政としてほっておくのかどうかということについて、もう時間は余りありませんから、簡単にお答えください。

石川政府参考人 ダイヤの編成につきましては、基本的には航空会社の判断でございますけれども、私どもとしても、関空の乗り継ぎ利便の向上等の観点から、やはり航空会社に対して関空における国内線の維持、拡充ということについては要請をしておりますし、今後とも要請をしてまいりたいと考えております。

中川(治)委員 ぜひ、これは強く要望を出していただきたい。

 といいますのも、成田は八割が関東地方からのお客さんなんです。関空の場合は六割が近畿地方でありまして、それ以外は北海道から沖縄まで、残り四割は全国なんです。まあ、泉州の、憎たらしい言い方をすれば、成田空港こそ関東ローカル空港なんですよ。ですから、国内便が減ってきますと、北海道からなかなか関空を通じて海外へ行けないという人が、要するに全国的に不便をこうむる可能性がある。四月からは関空―高知便がゼロになります。そうすると、高知の人はもっと不便に海外へ行かないかぬようになります。

 こういうことを、自由競争ですさかいにということでほっておくのかという問題を、ぜひしっかりと御指導いただきたい。まあ、恫喝してもらっても結構ですけれども、そういうことをできないものかなというふうに思っております。

 大臣、これ、どないですか、何とかなりませんか。

石原国務大臣 どこの飛行場に何便飛ばすというのはきっと民間エアラインのチョイスなんだと思うんですけれども、先ほど、冒頭お話をさせていただきましたように、関空は二十四時間空港で、海外への利便、飛行機が、関東に住んでいる人間もできた当初は利用するぐらい便利だったんですね。その便利だったのは、羽田から関空に飛んでいって、一時間ぐらい待って海外に行くことができる。今、委員の御指摘のとおり、北海道のお客さんも、ヨーロッパ、アメリカに行くんであるならば、成田に行くか関空に行くしかないわけです。そういう便がなくなると、せっかくの二十四時間空港の持つ意味というものが、もう半減以下になってしまう。

 そういうことを考え合わせますと、今、政府参考人の方から答弁をさせていただきましたように、これからも航空会社に対しては、そういうこともしっかりと要求を私どもとしてもしてまいりたいと考えますし、さらに、やはり関西の皆さん方が、伊丹空港、今、中川委員の冒頭のお話を聞かせていただくと、九〇年に伊丹の存続が決まって、さらに政府参考人の話を聞いておりますと、年間百十億円、補給金よりも大きい対策費が流れている。

 こういうことをやはり冷静に考えて、関空をどうやって育てていくのかということを、泉南の皆様方だけではなくて日本全体で考えるべき、私は、もっと多くの方々の御理解を得る、そしてまた多くの方々の御理解によって関空を育てていく、そういう問題のような気がしてならないわけでございます。

中川(治)委員 一つそういう観点、これは関空と伊丹を航空会社がてんびんにかけられて、自由に選んだらよいというのは確かにそうなのかもしれませんが、空港としては基礎が違うんですね。要するに、関空は株式会社、そして伊丹は国直営、これに今度は神戸市営という神戸市直営の空港というのができてまいります。要するに関西に三つの空港ができる。これは何回か指摘をされているかもしれませんけれども、一つの大都市で国営と市営と株式会社、空港の経営形態が三つとも違うというようなことをやっている町はどこにもないんですね。

 ロンドンの場合はBAA、株式会社で、大体一本で三つの空港を経営している。パリの場合はパリ空港公団が、これもシャルル・ドゴール空港を初めとして三つの空港を経営している。みんなそうですね。ベルリンもBBI、一つの民間会社で四つの空港を経営している。あるいはニューヨークの場合は、ニューヨーク・ニュージャージー港湾局、これがケネディ空港だとかニューアーク空港だとか、これは全部同時、同じ形で経営をしている。日本だけが東京、大阪、全部違うんですね。

 これで果たしていいんだろうか、こんなことで本当の意味で都市における空港整備ということができるんだろうか。そのかわり日本は、国の直営の飛行機についてはどんぶり勘定しているんですね。私、これだったら、都市ごとに空港、関西だったら三つの空港、これでどんぶり勘定せいよ、その方がまだ合理的だし、計画的にいけるんじゃないのかな、そんなふうにも思っております。

 ただ、きょうはもう答弁いただきません。これからの空港のあり方ということについて、多分、変えていかないかぬというふうに思ってはると思いますので、三つの空港、東京でもそうですね、そういうものについての運営のあり方ということについて、ぜひ真剣に御議論をいただきたい。三つの空港を同じ経営主体でなければ本当の意味で役割分担や有機的なつながりというようなことはできない、私はそんなふうに思っております。きょうはもう答弁はいただきませんけれども、ぜひ御提言をしておきたい、そんなふうに思っております。

 もう時間がございませんので、一つだけ、先ほど申し上げました行政の福祉化ということについて、大臣に一問だけお願いをしたいと思います。

 例えば、都市公団の住宅、団地、これが全国に約八十万戸ぐらいあろうかと思います。これの例えば剪定作業だとか団地内のいろいろな軽作業、こういう作業だけでもざっと二百億円ぐらいの仕事になっておるはずです。

 こういうことをなぜ申し上げますかといいますと、大阪では、今お金がないものですから、どんどん福祉の給付金を削ってまいりました。私も府議会時代は削れという急先鋒でもありました。ただ、削るだけではだめで、行政としてできることはできるだけやっていこう。何を始めたかといいますと、例えば庁舎内の清掃、これを知的障害者の皆さんに職場として開放していこうじゃないか。お金は削るけれども仕事を提供しよう、そういうことを始めました。そして、今はもう大阪府庁から大阪市役所も、大阪府立の公立の病院ほとんどがそんな形で、障害者に仕事を出していこうということをやっております。

 ぜひ、私は実は府議時代には福祉の中川だと言われて、あんた、それが何で国土交通委員会なんだ、こういうふうに聞かれましたので、私はいつも言っております。これからの福祉の本場は、主戦場は国土交通委員会なんや、国土交通省がお持ちの施設と土地、それから出している仕事、委託事業、こういうものの中に、障害者雇用、あるいは、大阪でいえば、ホームレスの仕事、母子家庭の仕事、そういう人たちに向ける仕事を創出できる力を持っているのは国土交通省や、だから私は国土交通委員になったんだ、こういうふうに申し上げております。

 それを、あらゆる部局の仕事と、委託事業とか施設をどんどん福祉に活用していこうということを国土交通委員会としても大きなテーマの一つとして、これからぜひ御検討いただけないだろうか。少しでも検討いただいたら非常にありがたいと思いますし、大阪ではそういう受け皿ができております。

 ですから、大阪で一度モデル的に国土交通省としてもやってみようじゃないかということであれば、すぐにでも受け皿を持ってお伺いをいたしますので、ぜひ御協力をいただきたい。そんな思いで、一言だけ大臣の、担当の方には趣旨を御説明させていただいておると思いますので、ぜひ、最後に御答弁いただいたらありがたいと思います。

石原国務大臣 中川委員が大阪の府会時代からこの問題に取り組まれているというお話は聞かせていただいておりましたし、私も、基本的には、方向性としてすばらしいことではないかと思っております。

 ただ、一点、気になりますことは、障害者の雇用就業を行う事業の活性化ということで、障害者基本法に基づいて閣議決定している文言の中に、国の行う契約の原則である競争性、経済性、公平性等の確保に配慮しつつ、官公需における障害者多数雇用事業所等及び障害者雇用率達成への配慮の方法について検討すると言っている。この意味するところは、やはり原則は一般競争入札で、安く、だれでも公平にその事業に参画することができるというこの大原則を守りつつ、委員の御指摘の点にどういうふうに配慮することができるのか。

 もう既に委員御承知のことだと思いますけれども、国営公園で草花の苗を購入したりするときに、障害者就労施設の皆さんのところから購入させていただいたり、国営公園の中でのイベントのところで、障害者就労施設の方々に率先してお土産を販売していただいたり、できる範囲内で国交省も努力しておりますが、今言いました一般競争入札の大原則を守りつつ、委員の御指摘にどうやって対処していくのか、じっくり研究させていただいて、いい御提案だと思いますので、検討させていただきたいと思います。

中川(治)委員 ぜひ検討いただきたいと思います。

 実は、大阪府の方では、私も府議時代から、例えばこんなのがありますね。畳、ふすま、府営住宅を入れかえるときにも、大体一軒当たりふすまの張りかえが五、六枚あるんです。これを一生懸命やっている障害者の人がいてる。そうしたら、随契で仕事を出してしまえということができるかどうか。国の目を盗まぬとこれは無理やで、こういう話もありまして、いろいろ我々も検討しております。ただ、いいことは思い切ってやっていこう、本来なら、国に相談せぬでも地方自治体に任せますわということで、そういうシステムが一番いいんだろうと思うんですけれども、なかなかそういう現状でもございません。

 あるいは、土木事業でも、入札で五億受けたら、一億につき、例えば毎日五人ぐらい釜ケ崎のホームレスの労働者を雇えよというようなことを条件つけられへんやろか、これはだめなんですね、国がだめと言うんです。

 そういうことも含めて、本当の意味で、効率性だけでいいのかということも含めて、もうぼちぼち考え直す時期ではないのかなと私は思っております。ひとつじっくり御検討いただきまして、資料をよこせということやったら、すぐに飛んでまいります。

 どうも、きょうはありがとうございました。

赤羽委員長 古本伸一郎君。

古本委員 民主党の古本伸一郎です。

 本日は、安全と安心という観点から、国土交通行政全般についてお伺いをしたいと思います。事例として三つの観点を交えながら質問申し上げたいと思いますので、よろしくお願いします。

 初めに、安全と安心という言葉について、議論の前提になると思いますので、定義を少し私なりにさせていただきたいと思います。

 国家が法律や規制で国民の生命や財産を守っていく、これは、英語で言えばレギュレーションでしょうし、安全の領域だと思っています。一方、安心の領域は個々人によって大変受けとめが異なると思っていまして、これは、価値基準やいろいろな嗜好によって変わる。そして、この安心の領域まで国家が関与していこうと思うならば、これは、言うならば果てしのないルールあるいは物事で縛っていかなきゃならない。言うならば、安心の領域に官業が、行政が関与していこうと思うと、相当な部分で国民生活に縛りを入れていくということになるんじゃないかという理解をしています。

 例えば、今、牛肉が話題になっていますが、このお肉は安全です、こういった場合であれば、ある一定の基準をクリアしている肉だろう。この和牛は安心ですと、どんな高級な和牛であっても、例えば自然食品を愛する方であれば、もともと国内産の飼料で育っているビーフかどうか、こういうことになるでしょうから、安全と安心のこだわりどころ、行政の関与のしどころというのは、大変な、似て非なる範囲だと思っていますし、このことが実は、後ほどの結論めいた部分で申し上げたいと思っていますが、国家が責任を持って関与をし、そして国民に対して約束をし、守っていく、これは安全であり、安心は、官業をもって余り深入りしない方がいい領域ではないかというふうに思っています。

 その上で、まず一点目の観点に入る前に、前提となる数字について質問したいと思います。

 今、国交省の職員は全体で何人いらっしゃいますでしょうか。

石原国務大臣 およそ六万四千人でございます。

古本委員 ありがとうございます。

 そして、国交省が年間に扱う予算は、一般会計が七兆一千八百余億、それから特別会計が七兆二百余億だと思っています。物すごい職員の数と予算であります。

 恐らく、国交省の職員の皆様方一人一人は志が大変高いと私は思っていますし、日ごろ接していただく方々は、各分野に精通なさっている。何より、霞が関を通れば、夜遅くまで明かりがともっている。多分、我々議員がいろいろな質問をすることに対するいろいろな準備をしていただいている。そんなことをいろいろ考えたりもすると、その貴重なエネルギーとコストが安心の領域まで立ち入ってもし使われているならば、これをぜひ安全の領域に向けていただけないか、そんな思いであります。

 例えばでありますが、先輩方が築いてこられた長年の国交省の中の業務、現在の若い官僚の、これは中央のキャリアの方も地方の方も含めて、その方々の感性から見れば、これはここまでやらなくていいんじゃないかということも、なかなか声に出せないんじゃないか。そして長い年月の間に、省内でステップアップをしていくうちに、若いころの感性は変質していくんじゃないか、そんな気がしてならないわけであります。

 結果、官業が国民生活の中で安心の領域まで相当に立ち入ることによって、実は、我が国の高コスト体質、これは、行政だけではない、全体の高コスト体質のメカニズムの遠因、もしかしたら真因に近いものがあるんじゃないか、そう思っています。

 そこで、事例を申し上げると言った一点目であります。まず、地価公示について伺いたいと思います。

 先日、地価公示がありました。その地価を公示する目的について、幾つかあると思いますが、一、二、教えていただきたいと思います。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 地価公示は、一つは公共用地の取得価格を算定する場合の規準であるとか、そういういわゆる公的な役割のほかに、一般の土地取引に際しての指標としての役割も持っているところでございます。

 御案内のように、土地は一筆ごとに事情が異なるなど個別性が強い、そしてまた、その取引は相対で行われて、特殊な事情があることも多いわけでございます。そのために、実際の取引に関して、その当事者以外が情報を適切に把握するということは限界があるわけでございまして、そういうことについて、取引当事者の間にしばしば情報格差が生じるという現象も生じております。

 このため、当事者双方が共有できる共通の情報を地価公示という形で提供していくことが土地取引の円滑化を図る上で重要だというふうに考えられるわけでございまして、そして、これが有限な資源である土地の有効利用というものにも寄与していくというふうに私どもは考えております。

 地価公示は、確かに国民の安全確保あるいは保障、そういう観点から行うものではございませんが、諸外国でも公的機関が地価に関する情報を提供するということは一般的に行われていることでございます。やり方とか実施機関は異なりますが、例えば米国では個別の取引価格情報を集約して公表しておりますし、また、ドイツでは更地の取引価格の平均等を地区ごとに土地価格地図として公表するというようなことで行って、一般的にそういう形で行われているところでございます。

 以上でございます。

古本委員 ありがとうございます。

 では、その地価公示に要するコストについて、幾らですか。

伊藤政府参考人 地価公示は、毎年度一月一日を基準日として、あらかじめ選定した標準地、現在三万一千八百六十六地点ということで、市町村でいいますと二千十八市町村ということになるわけでございますが、そういうところで標準地を設定して行っておりまして、経費としては約四十七億円ということでございます。

古本委員 ありがとうございます。

 よく、費用対効果ですとか投資した分に見合っているか、こういう言い方があるかもしれませんが、私は、四十七億が高いか安いかという議論はきょうはするつもりはありません。

 費用が、要したコストが見合っているかどうかというのは、恐らく官業の中には、採算を度外視してでもやらなきゃいけないものと、採算をきちっと見ないといけないものがあると思っています。こう言い出すと、公共事業というのはどうだという議論になるんですが、もはや我が国の財政の状況を見れば、私は、中には採算性もきちっと見ていかなきゃいけないものに峻別されるものも新たにふえてきているんではなかろうかというふうに思っています。

 そんな意味で、効果というのはキャッシュだけでははかれないというふうに思っています。例えばいろいろな、今おっしゃった四十七億を投資してやった、国民生活が非常に安全に、あるいは官業でやっていただいてよかったなと思える事業であれば、これは喜んで、国民の皆様の納税をしていただいたお金でそういうことをやっていただいて結構なわけであります。ところが、安心の領域まで立ち入ったという部分がもしあるならば、ここには改廃をする余地があるんじゃないかということを申し上げているんです。

 今、この議事堂が建っている永田町の一番近い地価公示の公示ポイントは、多分永田町の二丁目の十四番というポイントだと思いますが、このポイントは先般の地価公示ですと平米六百万強だったと思います。バブルのピークのときの、このポイントはポイント変更になっていて、ないものですから、近隣のポイントを少しスタッフに調べてもらうと、バブル期のピークに、九〇年と九一年、近場でいくと、赤坂二丁目あたりですと平米当たり二千三百万でした。先日の公示では三百万でした。同じ赤坂同士ですね。永田町のポイントが、十年前のポイントがないものですから。実に十分の一であります。

 国民生活に資するために地価公示をしているならば、一方で地価は下がりました。地価公示を参考にして土地の取引をするという方は多いと思います。これは参考指標です。ところが、この地価公示を信じて買ったけれども下がっちゃった、これはその所轄である国交省、責任とってくれ、そういうもくろみで地価公示を参考にして土地の取引をする人はいないと思いますし、そんなことを言われたって困ると思います。

 したがって、国民の資産という、言うならば土地というかけがえのない、サラリーマンでいけば一生に家は一軒であります。この土地の値段が、公的な機関が示した値段より下がっている。このことについて、見方によれば、実は国民の資産である土地の価格の動向について、一度公示したことについて、現実問題下がっている。そして、それについて肝心かなめの安心という意味では担保し切れていない。これはすなわち、実は地価公示というのは、なかなか安全という私の定義する領域からいくところの業務には当たらない、こう思うわけであります。

 もちろん、先ほどの答弁の中で、安全のためにやっていることではないと言われましたが、土地というのは投機的に売買している人以外は住んでいるわけですから、まさに資産を守るためにあるわけでありますから、そういう意味では、入り口だけ面倒を見て出口で面倒見切れないということであれば、これはいかがなものかと思うわけであります。

 世の中でいろいろなものが取引されています。ゴルフの会員権でも中古車でも何でもいいですが、これは、価格はマーケットが形成するわけであって、公的な機関が何か出すというものではないというふうに思うわけであります。今、評価損が出て、バブル期に買った、機関投資家の方は別にして、泣くに泣けない一般サラリーマン、あるいは商売屋さんでもいいですが、個人土地オーナーに対して責任はどう感じますか。

伊藤政府参考人 地価公示につきましては、そういうことで適正な、先ほど申し上げましたように、当事者双方が市場の動向について共通に共有できる情報を提供するというところに取引の指標としての意義を見出しているところでございますが、そういうことでございますので、私ども、毎年一年に一回、一月一日を基準日としてやっているところでございます。

 そして、今委員御指摘のように、平成三年度を一つのピークにして地価が下落傾向にある。そういう状況の中で、私どもも、国民の方々の意識についてその後の状況についてフォローをしておりますが、ピークからしばらくの間、平成十年ちょっと前までの間の国民の方々の意識で申し上げますと、確かに借金をして買われた方は、やはり含み損があるとか目減りがするという意見もございましたが、全体としては、住宅取得の容易化とかそういうようなことで、この下落というものも必ずしも否定的な形でとらえておらない、そういう方々が多うございました。そういう数字もございます。

 しかしながら、平成十年あたりを一つの境といたしまして、確かに、こういう長引く地価下落の動向というものをプラスとして評価する国民の方の割合が大幅に減少している、この事実は私どもも重く受けとめなければならないと思っているところでございます。

 そういう観点から、私どもが取り組んでおりますのは、市場機能をうまく生かしながら、土地取引の活性化、そういうものを通じて土地の有効利用を実現していく、そういう中で地価というものの下げどまりということを目指して、平成九年に新土地政策大綱というものも閣議決定いたしまして、進めてきているところでございます。

 そういう中で、最近の状況について申し上げますと、先般の平成十六年度の地価公示では、東京都心部ではある程度下げどまりの傾向が強まっている、そういう状況もございます。そして、それはまた名古屋、札幌、福岡等の地方都市部にもそういう影響が出てきております。ただ、地方圏では下落傾向が継続しているという状況がございます。

 そういう中で、最近の土地市場の構造変化というものを見てみますと、やはり利便性、収益性により価格が動くという、いわゆる地価の個別化の状況がございます。そういうことで、一つ新しいそういう土地の利用価値、使用価値を高めるという点では、都市再生というものによって土地の利用価値を高めていく。それからまた、地方都市とか、そういうところの振興という意味では、先般御審議いただきました都市再生法の改正等で、まちづくりということについてはさらにもう一歩踏み込んだ施策も今行われようとしているところでございます。

 それとあわせまして、土地市場機能が適正に機能していくという観点から、情報の提供の整備でございますとか、地籍整備の推進とか、不動産鑑定制度の充実とか、いろいろそういう条件整備のことも取り組んでいるところでございます。それとあわせて、税制面、土地住宅税制、そういうものについても、見直し、拡充、そういうことに鋭意取り組んでいるところでございます。

 以上でございます。

古本委員 ありがとうございます。

 私が申し上げたいのは、今おっしゃられたようなことも確かにそうだと思いますが、国が官業として関与して、五十億近いお金を使ってマーケットプライスを、民でもできることを、示している。その示した値段が下がった、これはそちらに何の責任もないです、それはそのとおり。ただ、バブル期になぜ土地の値段が上がったんですか。これは、もう御案内のとおり、金融機関が担保価値の薄いものも含めまして貸し込んだわけですよ。結果、不良資産となった、焦げついた、銀行は傷んだ、それに公金を注入してその銀行を助けた。

 家庭内の不良債権はどうなるんでしょうか。私は、個々人の御家庭でいえば、一家の大黒柱であるお父さんやお母さんが、大枚はたいて、ローンを組んで、必死な思いで買った土地やマンションが、今、取得価格を割れている、簿価割れしている。売るに売れない、売ると評価損が出ますから。そういう部分に対して、例えば何らかの手を打っていくことができないのか、これこそ安全の領域なんです、だと思うんですね。

 土地・水資源局長の領域は越えているでしょうから、その部分は御答弁は結構ですが、そういう意味で質問しているんです。ですから、本来投入すべきところに、国交省のかけがえのないリソーセスを突っ込んでほしい、こういう思いなわけでありますね。

 例えば、住宅は年間で二十兆のマーケットがあると言われています。関係の部材も入れれば物すごい金額です。家を引っ越せば、エアコンもつけかえれば、思い切って家具も買おうか、こうなるわけです。

 そういう関連の内需の喚起を考えれば大変なことでありまして、特にバブル期の九〇年代に土地を、あるいは建物、マンションを買われただろう、投機目的じゃない、本当に住んでおられる方が、多分今四十歳代の方が多いと思います。この方々が全国で何百万人いるかわかりませんが、こういう方々の潜在的な需要、これは買いかえをしたいんですね。お子さんが大きくなっていくにつれ、一部屋ふやしたい。あるいは、ちょっと大きな部屋に、家にステップアップしたい。そういう部分で、私は、まさに国として、不良債権は家庭にもあるんだという部分をどうお考えになるかということも含めて、きょうは少し土地にこだわって質問したわけであります。

 御所見があればお伺いしたいと思います。

伊藤政府参考人 私の方からは、ちょっと二点申し上げたいと思います。

 まず、今委員御指摘のような観点も含めまして、十六年度の税制改正におきましては、居住用資産の買いかえた場合の損金が出た場合の繰越控除につきましては、内容を拡充していることは御案内のとおりだと思います。

 それからまた、最近の傾向ということでいえば、バブル前の傾向は、土地というのはある意味では上がっていく資産という認識が非常に国民の間にも高かったんだろうと思っています。これは、私どもの意識調査とかいろいろなものでもそういうふうに出てきております。

 そういう状況の中から、最近は、これはやはり一生の買い物で、ひょっとしたら自分の親が苦しんだと同じようなことになるかもしれないということで、情報というものを把握するということについて、非常に前よりも真剣な動きというのは今現実に出てきております。

 そういう状況を一つの例で申し上げますと、私ども、地価公示につきましては、平成十四年から、過去のデータも含めて私どものホームページですべて検索できるようなそういう体制をとったわけでございますが、今、十五年の運用実績状況で申しますと、当該ホームページの延べアクセス件数というのは、十五年全体でいえば一千百七十万八千九百六十二件ということで、月平均で申しますと大体百万件というような状況で、私どもの国土交通省のホームページの中では非常に大きなアクセス件数になってございます。

 そういうことも見ますと、やはりこの地価公示のデータというものは、実際の取引だけでなく、学術研究あるいは将来の生活設計とか、いろいろな形の局面で活用されているのではないかというふうに私どもは推測しているところでございます。

 そういうことを含めまして、地価公示には将来の保証とかそういう性格はございませんが、少なくとも、精度を高めていく、それからまた説明責任をきちっとしていく、情報公開についても、ぜひその公開度を高めていく、そういうようなことについては、私ども、これからも鋭意取り組んでいかなければならない課題だと思っておりまして、そういう気持ちでこれからもやっていきたいというふうに考えておるところでございます。

 以上でございます。

松野政府参考人 お尋ねの中に、バブル期の住宅取得、それが下落した方々がいらっしゃる、それに対する救済策ということがございましたので、住宅の税制の中でそういった場合の対処する制度がございます。

 住みかえがなかなか困難ではないかということでございますが、所有期間が五年を超える居住用財産を買いかえた場合に、今、価格が下落しておりますので、損が出る。その譲渡損失を、当該年度だけではなくてその後三年にわたって、三年以内ですが、繰り越して控除できる制度がございます。この制度を今回の税制改正で三年間延長したところでございます。

 さらに、今回、新たな制度が創設されまして、現在までの、これまでの制度は、買いかえを促進するという制度でございました。したがって、新しく住宅を買うという要件がついておりましたが、必ずしも新しい住宅が買えない、アパートに入らざるを得ないという人もいらっしゃるということで、買いかえの要件を外しまして、新しい制度として、買いかえをしないケースでもその損失を当該年度の後三年間さらに繰越控除できる制度を創設いたしたところでございます。

 そういう制度をぜひ活用していただきたいというふうに思います。

古本委員 いろいろな仕掛けがあることは承知していますし、私はもっと高いところで聞きたいなと思っていまして、もう次の観点に行きますけれども、安全の領域ではないんですよね、地価公示は。官業がそこに携わる限り、日本の高コスト体質は変わらないという提起をしているわけですよ。ですから、ここで税制のいろいろな仕掛けや、ここの先生方はみんな知っているわけで、そこですれ違うところが非常に寂しいなとも思いますし、また機会があれば、ぜひ政府参考人の皆さんとも議論をしたいなと思います。

 もう一点の別の観点でありますが、安全でいうならば、尖閣がさっき質問に出ていましたけれども、これなんかはまさに安全の領域です。もう一二〇%安全の領域であります。こういう分野にもっともっとお金を突っ込めばいいじゃないかと思うわけです。安心の領域に回っている人とお金を再配置すべきなんです。

 そういう意味で、六万四千の職員のリーダーであり、七兆、七兆、合わせて十四兆、十五兆を超える予算を預かる大臣、尖閣の問題に対するリソーセスの重点配置という意味で、何か御決意のようなものがあれば伺いたいと思います。

 国民が望んでいる安全というのはまさにこういう分野であります、官業に期待しているのはこういうところであります。

石原国務大臣 ただいま古本委員御指摘の尖閣列島については、先般不法入国者が上陸するという事態を招いてしまいましたことは、海上保安庁を所管する大臣として遺憾ではございますが、あの警備の状態の中で、千トン級の船を配置して、ともかく安全を第一に上陸を阻止するということに対しての限界性というものもあるということは、私は事実だと思います。

 そういう中で、現在、その千トン級の船を二隻に増強し、警戒監視中でございます。それはなぜかということは、まさに、委員御指摘の安全、日本の固有の領土であります尖閣列島を日本の領土として安全に守る、そういう意味から、不法入国者が上陸できないような体制を今海上保安庁をもって当たらせているところでございます。

 さらに、さまざまな情報というものを入手することが可能でございますが、この情報の真贋を確認し、事前の情報収集によりまして迅速な対応、警戒措置というものをとっていくということは重要ですけれども、インテリジェントな組織をインテリジェントの組織として持たないこの国の限界性ということもこの尖閣列島の問題は如実に示しているような気がいたします。

 そこで、委員の安全という点に言及させていただくならば、日本国としての恒久的な施設なり、そういうものをこの日本の固有の領土に設置するということも日本の領土の安全を確保する上で一つの方法ではないかと思っておりますが、いろいろなことを含めまして、外交上の問題等々ございますので、今現在、この問題につきまして、政府部内でも真剣に、今後どうしていくのか、どうあるべきなのかということを改めて検討させていただいているところでございます。

古本委員 ぜひよろしくお願いをしたいと思います。

 そういうことで、お金を使う、あるいは職員を配置するということであれば、国民は皆もろ手を挙げて支持してくれると私は信じています。

 最後の観点を少し足早に行きたいと思います。ユニットプライスであります。

 きょうは安全という切り口で三つ申し上げたかったその最後でありますが、これは、国交省の社会資本整備重点計画を受けて、この十五年から向こう五年でいわゆる公共工事事業のコストを一五%削減していくという大変すばらしいアイデアであります。平成八年から、当時の公共工事担当関係十六省庁集めた以降のキックオフから数えれば、当時から見ればもう三〇%近い、三割近い削減をしているということも見方によればできると思います。

 そして、今回のユニットプライスの取り組みのポイントは、そもそもの規格見直し、もう一つが事業のスピードアップ、もう一つは将来の維持管理費の縮減という、どれも大変難しい課題でありますが、ぜひ果敢にチャレンジしていただくことをお願いしたいわけであります。

 ところが、もともとのスタートの値段が高かりせば、高かったら、幾ら下げたってもともとが高かった、こういう話も見方によってはできるわけであります。見積もり段階の甘さであります。今、見積もりのシステムについては、きょうはもう時間がなくなりましたのでやれませんが、外部コンサルと言われるところに見積もりを見積もってもらって、結果として、スタート段階から低いんじゃないかなという問題意識は持っていますので、またの機会に、また、今後の四公団の本丸の議論の中で、その部分もあると思っていますので、機会があれば伺いたいと思っています。

 そして、ユニットプライスに関してでありますが、実は国民が安全に過ごすということは、そういうセキュリティーの問題やら国境の問題やら、それは一番最たる例でありますが、実は、働いて、苦労して、汗をかいて納めた税金がむだに使われない国家である、そして、行政なりがそうやって機能してくださっている、これが、何をか言わん、最大の国民にとっての安全な日本であります。日本に住んでよかったと思えるそういう国づくりをぜひお願いしたいというふうに思うわけであります。

 先日、実は本会議で、個人的に尊敬しています自民党の中野先生が、ちょっと今あれですが、個人的になぜ尊敬するかというと、必ず出席なさっていますし、よくやじを出されておられて、実は我が党の若手の中では、やじ将軍と呼ばれていまして、それは非常に的を射たやじをなさっている。

 実は、先日、岩國さんか松野さん、どっちか忘れましたが、質問のときのやじで、民主党は、そう言うけれども、テープカットに来ておるぞ、こうやじられました。私はそのとおりだと思いました。私も一度か二度呼んでいただいてはさみまでいただいてきました。非常にありがたいなと思いました。これは、道路は国家なりです。税を使ってやっていくしかないと思っています。どこの企業が、ある路線を受注してくれ、発注するから受けるかといって、そんなもの受注できる企業はないです。

 そういう意味では、我が党が問うているのは、国民に喜んでもらえる公共工事にしたいということであります。税は、国に住む、言うならば管理費であります。そこのマンションかアパートの管理費が高いからといって、よその国に逃げ出すわけに、引っ越すわけにいかないわけであります。その意味で、ぜひ今後始まるだろう本丸での大変な議論の中で、そういう深意、深い意があるということもお酌み取りいただける中で議論ができるといいなというふうに思っております。

 最後に、そういう意味で、きょうは政府参考人の方もいらっしゃいますので、まことにもって僣越ながら、一点提言をして終わりたいと思います。

 例えばでありますが、このコップ一つが今幾らですか。これまでの常識でいけば、一個仮に二百円です、東急ハンズかどこかわかりませんが、買いに行けば一個二百円です。これを実は、我が国の財政あるいは諸般の事情を考えれば、百円であるべきである、これが原価の世界で言うところの絶対原価と呼ばれるものであります。今このコップが二百円だから、次の工事で何とかして百八十円でこのコップをつくろう、これが相対原価であります。今の原価からの差分の論理であります。これである限り、我が国の公共工事の将来は極めて暗いと思っています。

 我が党は、道路がけしからぬ、あるいは高速道路がけしからぬじゃないんです。必要な道路はぜひ国民の利益に資するものとしてつくっていただきたい、それをやっていただけるのは官業しかないと思っています。その意味で、ぜひ大臣の御所見を問いたいところでしたが、時間オーバーになりましたので、以上、言いっ放しにして終わりにしたいと思います。

 ありがとうございました。

赤羽委員長 高木陽介君。

高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。

 午前中の法案審査に引き続いて午後の一般質疑でも質問させていただきたいと思います。

 時間が限られておりますので、今回は鉄道局の問題について絞って質問をさせていただきたいと思います。

 今国会は、鉄道局は法案もございませんので、鉄道局長はなかなか出る場面もございませんので、しっかりと答弁をいただきたいと思いますが、まず、都市鉄道の現状ということについて質問をさせていただきたいと思います。

 東京圏また大阪圏、名古屋圏、特に通勤の時間帯、通勤ラッシュという問題は、長年これは問題とされておりまして、それについて、この十年、二十年の間で大分解消はされてきたと思われますけれども、ただ、特に東京圏においての混雑率、この実態というものはまだまだ厳しい状況があるのではないか。

 その混雑率の推移についてお答え願いたいのと、その中で、特に平均混雑率が二〇〇%以上の区間というのはどこか、お答え願いたいと思います。

丸山政府参考人 先生御指摘いただきましたとおり、快適に通勤通学するということで、混雑をいかに緩和するかということは非常に重要な課題でございます。

 我々、平成十二年の運輸政策審議会の答申第十九号に基づきまして、混雑率につきましては具体的な目標を掲げております。東京圏につきましては、主要区間の平均混雑率を全体として一五〇%以内にする、それからどんなに込んでいる区間も一八〇%以内にする、こういう目標を掲げておるところでございます。

 そういうこともございまして、東京圏におきます平均混雑率を見ますと、着実に減ってきております。例えば、昭和五十年が二二一%でございましたが、平成七年は一九二、平成十四年は一七三と、平均をとってみれば、着実に減少してきておるところでございます。

 ところが、個別の路線で見ますと、ただいま御指摘いただきましたとおり、二〇〇%を超えている路線がまだございます。具体的には五つございまして、平成十四年度でございますが、京浜東北線の上野―御徒町間で二三〇%、それから中央線快速中野―新宿間二一八%、総武線緩行錦糸町―両国間二一一%、東海道線の川崎―品川で二〇六%、常磐線緩行亀有―綾瀬間二〇三%、この五つが二〇〇%をまだ超えているというところでございます。

高木(陽)委員 何でこんな質問をしたかというと、なかなか国会の審議で首都圏の混雑率というのは話題にならないんですね。どういうことかというと、国会議員の皆さん方、きょう御出席の委員の方々も、地方から来ていて議員宿舎にいて、それでバスで通勤をしたり車で通勤という形になって、これは、都市部の電車に乗っている方というのは、まあ、いらっしゃるとは思うんですけれども、衆議院四百八十人、参議院二百四十七人の約七百人の中において数少ないと思うんです。

 そういった中で、やはり、特に首都圏、三千万人住んでいて、大半の方々が通勤をしている、こういった現状について、今、目標で、一五〇%を目指す、そしてどんなに込んでいても一八〇%。

 ちなみに、鉄道局のホームページ、ちょっと見まして、混雑率のパーセントというのがどんなものかというと、二〇〇%というのは、「体がふれあい相当圧迫感があるが、週刊誌程度なら何とか読める。」と。

 実は、今御指摘のあった二〇〇%を超えている中央線、私、八王子からずっと通勤しておりまして、ドア・ツー・ドアが一時間半、しかも、この混雑した電車にいつも乗っているんですが、二〇〇%を超えますと、正直、本は読めません。週刊誌、折り畳んで何とか読もうと思っても読めません。これが現状です。しかも、大半の方々が短時間じゃなくて一時間以上そういった満員電車に乗っている、こういう現状を何らかの形で解消していかなければいけないと思うんです。

 その混雑解消のために、今までも、例えば複々線化をしたりだとか、本数を何とかふやそう、スピードアップをしよう、いろいろな手を打ってきたと思うんですけれども、今後どういうふうに対応できるのか、お答え願いたいと思います。

丸山政府参考人 混雑の緩和の方法は二つあると思います。一つは、輸送力を増強することによりまして混雑率を解消していくというのが一つでございます。もう一つは、もっとソフトな対策でございまして、一定の時間に集中するものを前後に分散して、オフピーク通勤と言っておりますけれども、この二つの方法があると私どもは思っております。この二つの方法を車の両輪と位置づけて、着実に混雑を解消していこうというのが私どもの今の対応策でございます。

 輸送力をいかに増強するか。ハードの面につきましては、地下高速鉄道整備費補助金、地下鉄補助と言っておりますが、そういう補助金でございますとか、特定都市鉄道整備積立金制度などを活用しまして鉄道整備の推進を図っていきたいということでございます。

 それから、ソフト面につきましては、快適時差通勤推進協議会というものを、私ども、厚生労働省と連携しまして、経済界、労働界、有識者、鉄道事業者、地方公共団体、関係行政機関をあわせまして開催しておりまして、キャンペーン活動でございますとか企業などへの協力を呼びかけておるところでございます。

 毎年、例えば去年だったですか、ウルトラマンが出てきたポスターでございますとかそういうものを使いまして、フレックスタイムなどのオフピーク通勤を官民一体となって広く呼びかけているというところでございます。

 いずれにいたしましても、国土交通省といたしましては、今申し上げましたソフトの対策とハードの対策を車の両輪として、今後も混雑の解消に向けて努力をしていきたいというふうに思っております。

高木(陽)委員 車の両輪ということで、輸送力増強、先ほど私の方も申し上げましたけれども、例えば、そういった複々線みたいな形にして本数をふやしていくという抜本的な改革というのがやはり必要だと思うんです。

 しかしながら、現状、首都圏に新たに土地を買って、鉄道事業者、そしてまた、これは鉄道事業者だけではできません、国だとかまたは都県が力を入れながらやるということも考えなければいけないんでしょうけれども、今の現状、なかなかそういう実態として厳しい。

 ちなみに、中央線の中で三鷹から立川まで、今、連続立体交差の事業をずっとやっておりまして、工事で踏切が、あかずの踏切どうのこうのということで昨年いろいろと問題になりましたけれども、これも当初の計画は複々線化の事業であったと思うんです。しかしながら、予算の関係上なかなか無理だということで、連続立体交差一つで複線一本という形が今の現状だと思います。

 そこで、これは一朝一夕には解決しない問題だと思いますし、ただし、だからといって、このまま放置するわけにもいかない。本当に車の両輪、ソフトの部分も、いろいろと各企業にも協力してもらうという方法も大切でしょうけれども、やはりこれはもっともっと深刻にとらえていかなければいけない問題ではないか。

 どうしても、これは厳しい言い方になりますけれども、役所の幹部の方々というのは、近いところの官舎に住まわれたりだとか、それは本当に通勤時間帯の苦しさというのを肌身に感じていない方々もいらっしゃると思うんです。例えば、課長または課長補佐、または若手の方々は、官舎といってもかなり遠いところに住んでいて、結構通勤の苦しさを知っている。やはり大切なのは、国民の肌で感じる感覚ではないかなと思うんです。

 私も国会議員をやらせていただいていますけれども、通勤をしながら、また議員になる前も新聞記者をやっていましたけれども、通勤のときはそういう体験をずっと積み重ねながら、本当に日本のサラリーマンは我慢強いな、よく怒らないなと思うくらいでありましたし、今もそうであります。そういった問題で、国交省としてもこの問題については、さらに、人ごとではなく真剣にとらえてもらいたいということを申し上げたいと思います。

 時間も限られておりますので、続いて、鉄道駅の転落防止さく、この設置の促進ということについて質問をさせていただきます。

 実は、これも国交省からいただいた資料の中で、プラットホームにおける事故、ホームからの転落やホーム上で列車と接触することにより発生した運転事故による死傷者数というのが平成十四年度は百十一人、そのうち死亡者は三十人、結構あるんだなということを改めて実感しました。

 そこで、ホームのさくをつくっていくかどうかということについて、平成十六年三月現在、三百四十三駅にホームドア、可動式ホームさく、固定式ホームさくのいずれかが設置されている。この設置の促進に関する検討会というものを鉄道局に設置されたそうでありますが、昨年の十二月、その検討結果が取りまとめられたということですけれども、その検討状況、今後どうしていくか、お聞かせ願いたいと思います。

丸山政府参考人 ホームさくの設置につきましては、平成十三年の一月二十六日に新大久保駅で三人の方がお亡くなりになるという非常に痛ましい事故を受けまして、私ども、平成十三年の九月にホーム柵設置促進に関する検討会を開きまして、その結論を昨年の十二月に報告書としていただいたところでございます。

 報告書の中身でございますが、基本的には、ホームドアを設置するということは、事故防止のみならず、例えば障害者の方が車いすで行かれる場合のバリアフリーだとか、そういうことにも寄与するし、設置を進めることは望ましい、むしろ検討を進めていかなければいけないということでございます。

 それから、今からできる都市鉄道はホームドアが最初から設置されているところが多いわけでございますけれども、問題は既存路線へどうやってつけていくかということでございまして、そこの部分につきまして、既存の路線へホームドアをつけるためにはどういうふうにすればいいかというような具体的な方法も報告書の中では取りまとめられておるところでございます。

 私どもといたしましては、この検討会の報告を受けまして、全国の鉄道事業者に、ホームさくの設置可能性の検討を行った上で、その検討結果をこの五月末までに報告するようにという通達をいたしたところでございます。

 この五月末に上がってまいります検討結果を踏まえながら、今後ともホームにおける事故防止とサービス向上に向けた取り組みを進めていきたいというふうに思っているところでございます。

高木(陽)委員 五月には鉄道事業者からいろいろと検討結果を伺うという話ですけれども、その後、具体的な形となるときに、やはり鉄道事業者、民間でありますけれども、なかなか経営的に苦しい中で、安全対策としてやらなければいけないと認識をしながら、できない部分というのが出てくると思うんです。そういった中での予算の面でのいろいろな支援策、こういったものをしっかりと検討していただかないと、やはり絵にかいたもちになってしまうなというふうにも思いますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 最後に、これは、きょうも何回か質問で出たテロ対策の部分でございますが、特に鉄道におけるテロ対策、スペインの列車爆破事件以来、鉄道各駅または新幹線の中ですとか、いろいろな警備体制が強化されていると思います。

 また、いろいろな形で手を打たれていると思うんですけれども、やはり航空機と違って、だれでも乗れるのが新幹線でもあり、そしてまた都市鉄道、地下鉄だとか山手線ですとか、ラッシュ時にテロが起きた場合にどうしようもない、どうしようもないというよりは本当に悲惨な現場になる。だからこそ警備体制をきっちりしなきゃいけないんですが、そんな中で、この現状を今後またどうしていくのか、それをお聞かせ願いたいと思います。

丸山政府参考人 鉄道におきますテロ対策につきましては、平成十三年九月に米国におきまして同時多発テロが発生して以来、警察当局とも連携をいたしまして、累次にわたりまして、自主警備の徹底を指導してきたところでございます。

 また、三月十一日にはスペインで列車のテロがございました。そういうこともございまして、その際にも、全国の鉄道事業者に対しまして、自主警備の一層の徹底、それから警察当局との連携というものを改めて指示をいたしました。また、新幹線を運行している鉄道事業者、それから大都市の大手民鉄につきましては、国土交通省の方へ来ていただきまして、そこで直接、この趣旨の徹底を図ったところでございます。

 それから、自主警備の徹底も非常に大事なことでございますけれども、先ほど先生言われましたように、鉄道はだれでも乗れる、飛行機のように身元のチェックをするわけにいかないという中で、旅客に対して、不審物を発見した場合には直ちに駅員に届けてくださいとか、そういうことを協力要請するということが非常に大切なことでございますので、その点につきましても、駅構内でございますとか車内での放送の頻度を上げる、あるいはポスターを掲示する、それから電光掲示板でもテロップの表示を行うということによりまして、旅客への協力要請も強化をしておるところでございます。

 今後とも、情勢の変化に合わせまして、警察とも連携をいたしまして、テロ対策につきまして再徹底を図るなど、対策を講じていきたいというふうに思っております。

高木(陽)委員 今さまざまな啓発広報活動をやっているというふうなお話がございました。

 ただ、一般の利用者というのはなかなかそこまで意識が働いていない。ただ、そうはいいながらも何となく不安を感じている、そういう状況があると思います。そういった中では、政府広報を初めいろいろな形で、鉄道局だけが一生懸命やるということじゃなくて、テロ対策というのは、これは政府を挙げてやらなければいけない問題でございますので、大臣を含めて内閣の中でしっかりとやっていただきたいということを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

赤羽委員長 穀田恵二君。

穀田委員 私は、三菱自動車の欠陥ハブリコール問題について聞きます。

 三菱側は、この間の二十四日の記者会見で、二〇〇二年六月に立入検査を受けた際に、ハブに摩耗は少なくても亀裂があることを発見したとするサンプル調査の結果を国土交通省の検査官に報告したと述べています。新聞でも、六月二十七日、八日に特別監査を行った国交省に報告を行ったという報道がありますが、このことの報告を受けた事実はありますか。

峰久政府参考人 三月二十四日の会見におきまして、ハブの摩耗と亀裂に関するサンプリング調査の結果を国土交通省に報告したとの三菱ふそうの発言がございますが、具体的にこれがどういう内容なのか、いろいろな報告の内容とか書類といいますか、そういう資料なんかもあると思いますが、その中でどういうことを三菱ふそう側が言われているのかということについて報告を求め、これについて三月二十五日に一応の回答はありましたけれども、これはまだ途中段階のものでございまして、これらについてさらに精査をしている段階でございます。

 それで、今、自主点検、回収からリコールを行うという判断に至った経緯についていろいろ調べておりますので、この中で確認もあわせて行っていきたいというように思っております。

穀田委員 いいかげんにしないとあかんと私は思うんです。冗談じゃないと思うんですよ。

 大体、二十四日にそういう報告があって、少なくとも六月二十七、二十八日は行っているわけでしょう、この検査に。ということは、行っている人を調べれば、どんな報告を受けたかすぐわかるじゃないですか、そんなこと。それをあれだこれだ精査しているなんて、そんなばかな話あるかと私思うんだよね。そう思いませんか。人の命にかかわる問題について、あっちは報告したと言っている、どういう報告書だ、全部報告書は調べたらわかるじゃないか。そんなことがいまだもって精査しないとわからぬなんという話が通用すると思ったら大間違いだと私は思うんだよ。

 そこで、なぜそんなことを言っているかというと、そのときのサンプル調査というのは、新聞報道によれば、脱落は今まで整備不良が原因だと言っていたことが事実と違うということが出ているんですよね、約三割が亀裂を生じていると。整備が行き届いても磨耗が少なくても亀裂が起こる、この二つの事実を報告したと、それは言っているわけですよ。その二つの報告の事実をつかんでいるんですか。

峰久政府参考人 会見の際に言われたのは、亀裂の、今おっしゃられましたように三〇%とか、そういうものについて具体的にそこに報告した、そういう趣旨で言われているものではございません。それで、我々も、そういうふうにそこで報告したというのが、では、どういう内容だったのか、それで我々が何を見たのか、そういうところについてもう少し報告を受けながら精査しているということでございます。

穀田委員 では、報告書をもらったということは認めるんですね。

峰久政府参考人 それは必ずしも報告書であったかどうかについて、まだ明確になっておりません。報告書で、報告としてきちっともらったということについては、まだ確認できておりません。

穀田委員 今のお話を聞いてもわかるように、だれが聞いたかて、相手は報告書を渡したと言っていると、その内容の報告書は今までの報告とは違った重要な問題が入っていたということについて言っているわけですよ。そんなこと新聞に全部出ているんだから、あなた方は、逆に言えば、そういう問題について自分のところで調べて、自分のところで調べたら、そういう三割が違うという報告と、摩耗しなくても起きるという二つの報告書だったということは確認できたんですか。

峰久政府参考人 そこのところは必ずしも明確になっておりませんので、さらにいろいろ報告を求め精査するということでございます。

穀田委員 こんな押し問答をしていてもしようがないんだよね。あなたのところにあるかということを聞いているんですよ。精査するといっても、膨大な資料があるわけじゃないんですよ。その日、六月二十七日、六月二十八日と二日間に決まっているんだよ。報告書もあると決まっているんだよ。その内容が、二つの内容があった報告書としてつかんでいるかと聞いているんですよ。そんなこと、精査するのに何日間かかるんですか。何ぼ書類があるんですか。すぐできるじゃないですか、そんなこと。

峰久政府参考人 六月の監査の際に、そういう報告書としてきちっともらっているかどうかについては確認できておりませんので、そういうことについて、具体的に会見でどういう内容だったかということについてさらに確かめている、こういうことでございます。

穀田委員 よくこういうことが言えるね。六月二十七日、二十八日、行った人を調べればすぐわかることじゃないですか。だれもそう思いませんか、みんな。行った人がだれかわかっているんだから、その人にもらったかもらっていないか聞けばいいんですよ。そして、書類を全部集めて調べればいいんですよ。

 そういうことをしないというところに、まだ精査しているとか、一週間たっているんですよ、一週間。それでもわからないなどというばかげたことがあるかと私は言いたいんですよ。人の命のかかった問題について、なぜ一週間たっても発言できないかということを私は言いたい。

 そこで……(峰久政府参考人「委員長」と呼ぶ)いい、また慌てなさんな、いいって。言っていないんだから、僕は。時間もないんだから、こっちは。

 そこで、先ほどの昼間のそういうほかの質問の中にも、何か、この間、一貫して国土交通省は、あたかもあっち側からうまく乗せられたみたいな、あたかもだまされたみたいな言い方が大体多いんだよね。知らなかったという話が多いんだよね。それは本当にそうかと私は言いたいんです。

 実は、〇二年の五月、私どもの瀬古議員が当委員会で、今まさに問題になっている三菱のリコール問題について、このタイヤ脱落事故はリコールに値する、こう指摘して、よろしいか、整備不良だけではなくハブの強度などにふぐあいがあった可能性もある、メーカーからこれは整備不良ですよと聞いただけで、整備不良ですといって国土交通省は何で断定できるのか、立入検査をしてもっとよく調べろと追及していたわけです。

 そこで、せっかくですから、皆さん、こういう発言をお知らせしたいと思います。「ホイールナットなどの締めつけが適正な方法で行われ、かつ適切な点検整備がなされていればハブの異常摩耗が生じないと考えられること、」「実際に調査した結果におきましても、そのような実態であること」、こう言っているんですね。これはだれだと思いますか、三菱じゃないんですよ。

 もう一つ、きちっと点検を受けている大型自動車については、そういう摩耗というのは起こっていません、これも三菱の発言じゃないんです。

 三つ目、「これが製造上のあるいは設計上のミスで、そして同一型式においてこれがずっと定性的に消耗が発生するというものではないということがはっきりしている以上、」「はっきりしている以上、」こんなことまで言っているんですね、いやに強調して。

 これ、三菱の人が言っているんならわかりまっせ。三菱自動車がこうやって、うちのところのは大丈夫や、摩耗はこうやねんと言うんだったらわかりまっせ。違うんです、これは全部国土交通省の発言なんですよ。これはだれの発言かと今言ったのは、普通、これを聞いたら自動車会社の話じゃないかと思うぐらい自動車会社の代弁をしているんですよね。ここに私は問題があると言っているんですよ。

 しかも、五月に発言して、我々が追及しているときに、実はそれはその年の一月に横浜で事故が起きているんです。そして、それに基づいて、これは大変だとみんな思っているんですね。そうしたら、クレーム台帳というのは当然自動車会社にあるんですね。見に行っているか、見にも行っていない。

 二つ目に、ハブの自主点検を三菱自動車側もやり始めた。ところが、あそこはひどい話で、ユーザーの協力が得られぬというので千台を放置しているんですね。その放置していることについて国土交通省は、けしからぬと一応言って、その事実を知っていて、そういう対処の仕方がまずいということを掌握しているんですよ。

 そして三つ目には、今お話ししたように、サンプルの調査をやっていたという事実が背景にあった。それが同時的に進行していたんです。

 そして、事故が起こったときに警察は何と言ったか。警察は、欠陥車の可能性もある、こう言っているときに、よろしいか、警察は可能性があると言っている、クレーム台帳を見にも行っていない。自主点検をやっている際に、どうも無責任な安全軽視の態度が目立つ、掌握していた。ハブのサンプル調査をやっていた、こういう事実も知っていた。こういうことがありながら、先ほどのような発言をしている。まさに三菱の代弁者と言われても仕方がないんじゃないか、私はそう思うんです。これをみんな明らかにしたら、だれだってそう思いまっせ。

 だから、ここの反省が私は大事じゃないかと思うんです。少なくとも当時、こういう問題を、さまざまあった話を総合してみると、やはり、ぐると言われても仕方がないんじゃないか。先ほど、うのみにするなという話をしていましたけれども、うのみじゃないんですよ。うのみだったら、まだかわいげがある。ぐるになって隠していると言われるぐらい大事な問題じゃないかということを私は言っている。

 したがって、そういう点を、きつい言葉を言いましたけれども、石原大臣に見解を、そういう問題についての反省こそ大事じゃないかということをお伺いしたい。

石原国務大臣 うのみ、ぐるという大変厳しい御叱責をいただいたわけですが、今の委員と政府委員の話を普通に聞いていても、早く、一週間たってまだ報告書があるのかないのか調べていないなど、こちら側も非はあると思いますので、早急に事実関係を精査して、当委員会にも御報告をさせていただきたいと思っております。

穀田委員 これは、早くにこういう問題がわかっていれば、本当にこの事故が防げたんじゃないか。私、先ほどの午前中も言いましたけれども、何を企業の社会的責任の大きな柱と据えるかという問題にあると思うんですね。安全を、命を守る、そういう安全を企業の社会的責任として第一の柱に据えるよう指導を行う、こういう姿勢に欠けているとはっきり言って私は思うから言っているんですよね。

 なぜこの法律ができたかといえば、リコールをやらないような事態が生まれる、そういうときに、おかしいじゃないかと言ったらリコールで命令ができるという法律をつくったわけです。ところが、これをつくってから、では、ついでにちょっと聞いておきますけれども、局長、一回でも、何か発動したことありますか。ちょっと、それだけ言って。

峰久政府参考人 リコールの命令制度自体は、勧告したにもかかわらず、実施しない場合に命令ということでございまして、これについては十四年七月の道路運送車両法の改正により導入されて、一年前の十五年の一月十七日から施行されているところで、これについては命令した例はございません。

 ただ、その前の、改正以前においてのリコール勧告については、一度行っております。

穀田委員 時間がないんだから、聞かない話はいいんだよ。

 要するに、していないということなんだよ。しかも、皆さん、背景を見てください。これは三十年間だまし続けた三菱自動車だったんです。そしてこの問題が起きて、しかもこれほどの事故が起きて、これは大変だとみんな思ったわけです。それを今になってそういう違う事実が出されてきた、おう、自分も聞いたというような話をして、何か自分も被害者みたいな話をしているけれども、違うぜということを私は指摘したんです。

 だから、やはりここの肝心な問題は、三菱側の立場に立つような姿勢じゃなくて、国民の安全を守るという本来の立場にきちっと立ってやるべきだというふうに私は思います。

 そこで、最後に、そういった問題を指摘しますと、例えば、では立入調査というけれども、実際にそういうものを白か黒かを判断する力量があるかどうかということが問われちゃうんですね。要するに、リコール命令したが、それで違っていたというんじゃまずいというのでやられちゃうんですね。それはわかるんですよ。

 だけれども、そういうものを、それじゃ体制的に、相手側の自動車会社なりの、そういうつくる側に立っての今までの経過なんかを調べて、それをチェックできる、それを上回る力量があるかどうかという問題がまた問われちゃうんですね。だから私は、その意味では、相手の言い分をうのみにする事態があっては困るわけで、したがって、それを凌駕するだけの体制もつくらなくちゃならぬということだけは言っておきたいと思うんですね。

 しかし、その場合、国土交通省にはいろいろな研究機関もあるし調査機関もあるんです。したがって、私は、単にリコール対策室に何人いるかというだけじゃない、総合的な対策をとる、そういうことを含めてこの問題について今後当たっていくということが大切だということを最後に指摘をして、その点についての大臣の見解を求めて、私の質問とします。

石原国務大臣 先ほども申しましたが、今回の事案の重要性に立脚して、事実関係の詳細をできる限り早く明らかにし、皆様方に御報告させていただきますとともに、リコール制度の適正な運用に努め、また、今委員の御指摘のとおり、リコール勧告に従わない場合の命令の創設、罰則の強化を行ったけれども、こういうものが実際にうまく運用できるような体制の強化というものもあわせて検討させていただきたいと思います。

穀田委員 終わります。

     ――――◇―――――

赤羽委員長 次に、内閣提出、高速道路株式会社法案、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法案、日本道路公団等の民営化に伴う道路関係法律の整備等に関する法律案及び日本道路公団等民営化関係法施行法案の各案を一括して議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。国土交通大臣石原伸晃君。

    ―――――――――――――

 高速道路株式会社法案

 独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法案

 日本道路公団等の民営化に伴う道路関係法律の整備等に関する法律案

 日本道路公団等民営化関係法施行法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

石原国務大臣 ただいま議題となりました高速道路株式会社法案、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法案、日本道路公団等の民営化に伴う道路関係法律の整備等に関する法律案及び日本道路公団等民営化関係法施行法案の提案理由につきまして御説明申し上げます。

 日本道路公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団及び本州四国連絡橋公団の道路関係四公団につきましては、民間にできることは民間にゆだねるとの原則に基づき、約四十兆円に上る有利子債務を確実に返済し、真に必要な道路を、会社の自主性を尊重しつつ、早期に、できるだけ少ない国民負担のもとで建設すること等を目的として、平成十七年度中に民営化を実施します。

 あわせて、高速国道の整備計画区間のうち未供用区間に係る有料道路事業費を当初の約二十兆円から最大で十兆五千億円程度にほぼ半減するとともに、高速国道に係る有利子債務は、民営化時の総額を上回らないとしました。

 これらの四法案は、道路関係四公団の民営化を実現するため、提出することとしました。

 まず、高速道路株式会社法案の提案理由について御説明申し上げます。

 この法律案は、道路関係四公団を民営化し、高速道路の新設、改築、維持、修繕その他の管理等を効率的に行わせるため、東日本高速道路株式会社、首都高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社、阪神高速道路株式会社及び本州四国連絡高速道路株式会社を設立するものであります。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、会社の事業の範囲として、有料道路事業のほかサービスエリア等の関連事業等を実施できるとしております。

 第二に、各会社が原則として事業範囲とすべき高速道路を定めております。

 第三に、会社は、有料道路事業を営もうとするときは、あらかじめ、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構と、貸付料等を内容とする協定を締結するとしております。

 第四に、政府等は会社の総株主の議決権の三分の一以上の株式を保有するとしております。

 第五に、会社は、代表取締役の選定、事業計画等について、国土交通大臣の認可を受けるとしております。

 次に、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法案の提案理由につきまして御説明申し上げます。

 この法律案は、道路関係四公団の民営化の円滑な実施を図るため、高速道路に係る道路資産の保有及び会社に対する貸し付け、公団から承継した債務その他の高速道路の新設等に係る債務の早期の確実な返済等の業務を行う独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構を設立するものであります。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、機構は、高速道路に係る国民負担の軽減を図るとともに、会社による高速道路に関する事業の円滑な実施を支援することを目的とし、その業務の範囲を定めております。

 第二に、機構は、会社と、全国路線網、地域路線網または一の路線に属する高速道路ごとに、協定を締結し、国土交通大臣の認可を受けて、貸付料、債務返済計画等を記載した業務実施計画を作成するとしております。

 第三に、機構は、会社が建設した道路資産が機構に帰属するときに、会社が建設のために負担した債務を引き受けるとしております。

 第四に、機構が会社に道路資産を貸し付ける際の貸付料の額は、債務の返済に要する費用等を貸付期間内に償うものとしております。

 第五に、機構は、民営化から四十五年後までに承継債務等の返済を完了させ、解散するとしております。

 次に、日本道路公団等の民営化に伴う道路関係法律の整備等に関する法律案の提案理由につきまして御説明申し上げます。

 この法律案は、道路関係四公団の民営化に伴い、道路関係法律について所要の規定の整備等を行うものであります。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、道路整備特別措置法の改正であります。

 従来の公団に対する施行命令方式等を廃止し、会社は、機構と協定を締結し、工事の内容、料金等について国土交通大臣に事業許可を申請して事業を実施できるとしております。

 また、会社が徴収する料金の額は、道路資産の貸付料及び会社の維持管理費を料金徴収期間内に償うものとし、その徴収期間の満了日は、民営化後四十五年を超えないものとしております。

 さらに、会社が建設する高速道路の道路資産は、原則として、工事完了後は機構に帰属し、料金徴収期間満了後は道路管理者に帰属するとしております。

 第二に、道路法及び高速自動車国道法の改正であります。

 それぞれ、自動車専用道路及び高速自動車国道と連結することができる施設として、通行者の利便に供するための休憩所、給油所その他の施設等を追加する等としております。

 次に、日本道路公団等民営化関係法施行法案の提案理由につきまして御説明申し上げます。

 この法律案は、道路関係四公団の民営化等に伴い、さきの三法の施行に関し、所要の経過措置を定めるとともに、関係法律の廃止及び改正を行うものであります。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、会社及び機構の設立に関し、会社の設立委員の任命その他所要の手続を定めております。

 第二に、公団が行っている業務及び公団の権利義務について、会社及び機構への適正かつ円滑な引き継ぎを図るため、所要の措置を定めております。

 第三に、現在公団が行っている道路事業につきまして、その引き継ぎに関する事項を定めております。供用中の高速道路については、当該高速道路を事業範囲とする会社が管理及び料金徴収を行うとし、建設中または調査中の高速道路については、国土交通大臣が会社と協議して、会社が建設を行うべき高速道路を指定できるとしております。

 第四に、日本道路公団法等の五法律を廃止するほか、関係法律について所要の改正を行っております。

 第五に、この法律は、平成十八年三月三十一日までの政令で定める日から施行し、会社及び機構は、この日に成立するとしております。

 以上が、これらの四法案を提案する理由です。

 これらの法律案が速やかに成立いたしますよう、御審議をよろしくお願い申し上げます。

赤羽委員長 これにて各案の趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る四月二日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十九分散会


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