衆議院

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第16号 平成16年4月21日(水曜日)

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平成十六年四月二十一日(水曜日)

    午前九時五分開議

 出席委員

   委員長 赤羽 一嘉君

   理事 今村 雅弘君 理事 衛藤征士郎君

   理事 橘 康太郎君 理事 望月 義夫君

   理事 大谷 信盛君 理事 奥村 展三君

   理事 玉置 一弥君 理事 高木 陽介君

      石田 真敏君    岩崎 忠夫君

      江崎 鐵磨君    江藤  拓君

      梶山 弘志君    城内  実君

      櫻田 義孝君    島村 宜伸君

      高木  毅君    谷  公一君

      中馬 弘毅君    中野 正志君

      二階 俊博君    葉梨 康弘君

      古屋 圭司君    保坂  武君

      増田 敏男君    松野 博一君

      森田  一君    渡辺 博道君

      岩國 哲人君    岡島 一正君

      岡本 充功君    菊田まきこ君

      下条 みつ君    樽井 良和君

      樽床 伸二君    津川 祥吾君

      中川  治君    中村 哲治君

      長安  豊君    古本伸一郎君

      松崎 哲久君    松野 信夫君

      三日月大造君    若井 康彦君

      佐藤 茂樹君    穀田 恵二君

      武田 良太君

    …………………………………

   議員           岩國 哲人君

   議員           大谷 信盛君

   議員           津川 祥吾君

   国土交通大臣       石原 伸晃君

   国土交通副大臣      林  幹雄君

   国土交通大臣政務官    佐藤 茂樹君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 米村 敏朗君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  佐藤 信秋君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  丸山  博君

   国土交通委員会専門員   飯田 祐弘君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十一日

 辞任         補欠選任

  江藤  拓君     城内  実君

  島村 宜伸君     谷  公一君

  室井 邦彦君     樽井 良和君

  山岡 賢次君     樽床 伸二君

  和田 隆志君     菊田まきこ君

同日

 辞任         補欠選任

  城内  実君     江藤  拓君

  谷  公一君     島村 宜伸君

  菊田まきこ君     中村 哲治君

  樽井 良和君     岡島 一正君

  樽床 伸二君     津川 祥吾君

同日

 辞任         補欠選任

  岡島 一正君     室井 邦彦君

  津川 祥吾君     山岡 賢次君

  中村 哲治君     和田 隆志君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 高速道路株式会社法案(内閣提出第一一二号)

 独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法案(内閣提出第一一三号)

 日本道路公団等の民営化に伴う道路関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第一一四号)

 日本道路公団等民営化関係法施行法案(内閣提出第一一五号)

 高速道路事業改革基本法案(岩國哲人君外四名提出、衆法第三六号)

 派遣委員からの報告聴取


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     ――――◇―――――

赤羽委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、高速道路株式会社法案、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法案、日本道路公団等の民営化に伴う道路関係法律の整備等に関する法律案、日本道路公団等民営化関係法施行法案及び岩國哲人君外四名提出、高速道路事業改革基本法案の各案を一括して議題といたします。

 この際、各案審査のため、去る十九日、滋賀県及び大分県に委員を派遣いたしましたので、派遣委員からそれぞれ報告を聴取いたします。

 まず、第一班の滋賀県の派遣委員を代表いたしまして、便宜私からその概要の御報告を申し上げます。

 派遣委員は、団長として私、赤羽一嘉と、理事望月義夫君、奥村展三君、委員石田真敏君、高木毅君、森田一君、岩國哲人君、古本伸一郎君、三日月大造君、山名靖英君及び石井郁子君の十一名であります。

 当日は、まず、第二名神草津ジャンクションの工事現場を視察した後、大津市内の琵琶湖ホテルにおいて、いわゆる地方公聴会を開催いたしました。

 会議においては、まず、大阪大学社会経済研究所教授小野善康君、大津市長目片信君、滋賀県商工会議所連合会会長高橋宗治郎君、立命館大学経営学部教授土居靖範君の四名の陳述者から意見を聴取いたしました。

 その主な意見内容につきまして、簡単に申し上げます。

 まず、小野陳述者からは、高速道路事業の改革には、経済効率性の観点からの検討が必要であること。高速道路による便益は全国民に及ぶと考えられるため、税金でも通行料でも負担は同じであり、通行料による受益者負担制度はむしろ消費税より逆進的な制度であること。また、今後は、道路を有効活用する観点から、混雑調整が可能となるような料金設定を検討すべきである旨の意見が述べられました。

 次に、目片陳述者からは、政府提出の道路関係四公団改革関係四法案については、民営化後の各会社において主体性を持った経営判断がなされ、建設管理の効率化が可能となる点を初め、日本道路公団の三分割により、地方公共団体や市民との合意形成がより円滑に行えること等の理由から高く評価でき、賛同するものである。また、四法案の成立後は、整備計画区間の全線開通にぜひとも取り組むべきである旨の意見が述べられました。

 次に、高橋陳述者からは、二十一世紀の国際社会において、我が国が経済的に優位に立つためには、物流の時間短縮が不可欠であり、関西国際空港や神戸港及び大阪港と先端産業の生産地である内陸部を接続する高速道路の整備が推進されるような制度設計が必要であること。また、地方分権時代に入り、各地域が特徴ある発展を遂げていくためには、地域間の横断的な道路整備が必要不可欠である旨の意見が述べられました。

 次に、土居陳述者からは、町壊しにつながる道路やだれにも利用されない道路は建設すべきでなく、今後の道路行政は、幅広い歩道の設置やバリアフリー化の推進、危険な交差点の改善等身近な生活道路整備に軸足を移すべきであること。また、既存の道路を有効活用する交通需要マネジメントを推進するとともに、人と環境に優しい路面電車の導入を積極的に図るべきである旨の意見が述べられました。

 次いで、各委員から、意見陳述者に対し、これまでの有料道路事業に対する評価、近畿地方の道路の整備状況に係る認識、むだな道路と有用な道路との区別基準、道路資産を民間会社が保有することの是非、高速道路を三年以内に無料化する施策に対する評価、道路関係四公団の民営化と国鉄の民営化との比較、国土交通省の高速自動車国道の評価手法に対する見解等について質疑が行われ、滞りなくすべての議事が終了いたした次第であります。

 なお、会議の内容の詳細は、速記により記録した議事録によって御承知願いたいと存じます。

 以上をもって第一班の報告を終わりますが、今回の会議の開催につきましては、地元関係者を初め多数の関係者の御協力により極めて円滑に行うことができ、深く感謝の意を表する次第であります。

 以上、御報告申し上げます。

 次に、第二班衛藤征士郎君。

衛藤(征)委員 第二班の大分県の派遣委員を代表いたしまして、私からその概要の御報告を申し上げます。

 派遣委員は、団長として私、衛藤征士郎と、理事今村雅弘君、玉置一弥君、高木陽介君、委員江藤拓君、葉梨康弘君、松野博一君、渡辺博道君、古賀一成君、松崎哲久君及び松野信夫君の十一名であります。

 当日は、まず、日出バイパス及び別府湾サービスエリアを視察した後、大分市内の大分東洋ホテルにおきまして、いわゆる地方公聴会を開催いたしました。

 会議においては、まず、元九州大学経済学部教授矢田俊文君、宮崎県知事安藤忠恕君、大分県商工会議所連合会会長安藤昭三君、中津市長新貝正勝君の四名の陳述者から意見を聴取いたしました。

 その主な意見内容につきまして、簡単に申し上げます。

 まず、矢田陳述者からは、高速道路の整備は国土計画及び地域計画の骨格であり、今後もその整備は必要である。これまでの公団方式による整備は限界に達しており、その改革案として、政府案が、新会社及び保有・債務返済機構方式を提案し、国民負担の最小化を基本原則として早期の累積債務の返済方式を導入したことは評価できる旨の意見が述べられました。

 次に、安藤忠恕陳述者からは、高速道路は、国土形成の骨格であり、最も基本的なインフラであることから、そのネットワーク化は地方経済を活性化する上で不可欠であり、いわゆるむだな高速道路というものはない。とりわけ、九州においては、東九州自動車道なくして九州地方のネットワークは完成しない。政府案は、必要な高速道路を確実に早くつくる仕組みのよりどころとして、その早期成立を期待する旨の意見が述べられました。

 次に、安藤昭三陳述者からは、高速道路は地域の自立的発展と国際競争力の確保の根源として最も優先的に整備されるべきインフラである。また、観光立国の推進、市町村合併の円滑な実施等の観点から、高速道路網の早期整備が望まれている。政府案は、コスト縮減、効率的な運営を実現することにより、高速道路の早期建設を可能とするものとして期待できる旨の意見が述べられました。

 次に、新貝陳述者からは、九州北部は、近年、自動車産業を初めとする産業が集積し、新北九州空港の開港を間近に控えるなど、高速道路への需要が高まっている。しかしながら、高速道路のないことが地域の経済発展のネックとなっている。このように、同地域においては、高速道路の必要性が極めて高いことを理解していただきたい旨の意見が述べられました。

 次いで、各委員から意見陳述者に対し、地域の視点からの政府案のメリット及びデメリット、日本道路公団の地域分割方法に対する意見、新会社による高速道路の建設に対する国の関与のあり方、地方の厳しい財政事情の中で新直轄方式を選択した理由、公団の債務返済に道路特定財源を充てることの是非、政府案の作成過程での国と地方との意見交換の状況、高速道路の料金無料化による経済効果、四十五年以内での債務返済見通し等について質疑が行われ、滞りなくすべての議事が終了いたした次第であります。

 なお、会議の内容の詳細は、速記により記録した議事録によって御承知願いたいと存じます。議事録ができましたならば、本委員会議録に参考として掲載されますようお取り計らいをお願いいたします。

 以上をもって第二班の報告を終わりますが、今回の会議の開催につきましては、地元関係者を初め、多数の関係者の御協力により極めて円滑に行うことができ、深く感謝の意を表する次第であります。

 以上、御報告申し上げます。

赤羽委員長 以上で派遣委員からの報告は終わりました。

 お諮りいたします。

 ただいま報告のありました第一班及び第二班の現地における会議の記録は、本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔会議の記録は本号(その二)に掲載〕

    ―――――――――――――

赤羽委員長 引き続き、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省道路局長佐藤信秋君、鉄道局長丸山博君及び警察庁長官官房審議官米村敏朗君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡本充功君。

岡本(充)委員 民主党の岡本でございます。

 本日は、道路公団の民営化に関連します法案、大変国民の皆様方の関心の高い法案でございますが、この法案の審議に先立ちまして、私ども、多くの国民の皆様方から御要請の高い日本歯科医師連盟の政府の閣僚等への政治資金収受の確認をしていきたいと思っております。

 大変申しわけありませんが、それぞれ、大臣、副大臣、政務官の方に御答弁いただきたいと思っております。

 日本歯科医師連盟、この連盟からの政治資金の提供、二〇〇〇年から二〇〇四年にかけまして、各年の受領年月日そして金額等について、それぞれ、今おわかりでしたら御答弁願いたいと思いますが、よろしくお願いします。

石原国務大臣 手元に政治資金の報告書を持っておりませんので、詳細はわかりませんが、私は、政治資金、パーティー券購入等々ございまして、いずれも政治資金規正法にのっとって適正に処理をさせていただいているところでございます。

林副大臣 私も、手元にございませんが、全くないものと記憶しています。

佐藤大臣政務官 私は、資金提供を受けるなどのかかわりは一切ございません。

岡本(充)委員 今、御確認させていただきますと、大臣の方は資金提供が寄附やパーティーを含めてあったということでございますけれども、その金額と受領年月日について、今後、きっちりとしたデータをもとにお答えいただけるかどうかを御確認させていただきたいと思います。

石原国務大臣 この点につきましては、委員会は違いますけれども、予算委員会で、そのときは質問通告がございましたので、もう既に国会答弁をさせていただいております。

岡本(充)委員 私もこの金額についてはそれぞれ伺っておりますが、そのほかの供応それから供与について、あるかないかについてはいかがでしょうか。

石原国務大臣 政治資金等はすべて政治資金規正法にのっとって適正に処理をさせていただいております。

岡本(充)委員 今、大臣の御答弁で、供応その他の、パーティー券、寄附以外の供与、供応はないということで、民主党として御理解させていただいてよろしいでしょうか。

石原国務大臣 もう何度も申しておりますように、政治資金等は政治資金規正法にのっとって適正に処理をさせていただいているものと承知しております。

岡本(充)委員 今の御答弁をもとに、私どもももう一度確認をさせていただきます。

 続きまして、この道路公団民営化関連法案に関しての質疑に移らせていただきたいと思いますが、まず最初に、今回の、テロの危険性が高いと言われている中で、多くの国民の皆様方が御心配されております、例えば高速道路におきますテロ対策、こういったものはどのようになっているのか、御答弁願えますでしょうか。

佐藤政府参考人 高速道路のテロ対策としてどのような取り組みを行っておるのか、こういう御質問でございました。

 具体的に申し上げますと、従来から実施しております、一日当たり、高速自動車国道の場合には六回から十回ぐらいパトロールをしております。これに加えて、テロ対策という観点からもう少し強化する必要があるだろう、こういう観点から、まず利用者が集まりまして不審物等が設置される可能性が高い、これはサービスエリアとかパーキングエリアが相当するわけでございますが、こういうところで、売店などが設置されております場合には、一日三回以上の徒歩による点検を実施しております。従来はやっておりませんでした。それから、トイレのみの場合、一日一回以上の徒歩による点検を実施している、こういうことであります。また、高速バスのバス停につきましては、一日一回以上の徒歩による点検を実施している。さらに、防衛関連施設に近接している区間等につきましては、低速による道路パトロールを実施している。こうした形でテロ対策をやっておるわけでございます。

 また、利用者に対しましては、不審物や不審者の発見の通報を呼びかける、これはビラなどで利用者にそうした注意喚起をお願いしているわけでございます。テロ発生防止等の観点から、サービスエリア、パーキングエリアに設置されているごみ箱につきましては、利用者の皆様に多少御不便をおかけすることにもなるかもしれませんが、ゴールデンウイークより当面の間、ごみ箱の集約、撤去を行う、こういう予定にしておりまして、詳細につきましては、JHにおいてただいま検討中でございます。

 さらに、不審物等の発見情報などがあった場合には、日本道路公団におきましては、直ちに緊急テロ対策本部を設置しまして、適切な情報収集と、その情報に応じて、また臨時点検、こうしたことを実施している、こういうことでございます。

岡本(充)委員 今、サービスエリア、パーキングエリアについての対策はお聞かせいただきましたけれども、例えば構造物自体、例えば橋脚、トンネル等においては、その警備はどのようになっておるでしょうか。

佐藤政府参考人 そういう意味では、橋梁であるとかトンネルであるとかの点検も大事なことだ、こういうことでございまして、臨時点検でいろいろ点検させていただくその内容としましては、今申し上げましたような本線上のパトロールの強化、あるいは休憩施設の歩いての点検など以外に、橋梁の下回り点検ということで、橋梁の下部に何か不審物がないかとか、あるいはまた、トンネルにおきましては、坑口でおりまして、そして不審物があるのかないのか、こうした点検もやっているところでございます。

岡本(充)委員 ぜひ、ゴールデンウイークになると人出も多くなりますので、渋滞している道路の上についても、サービスエリア、パーキングエリアと並んで警備の方を徹底していただきたいと思っております。

 続いて、同様に、テロ関連ということで、鉄道に対するテロの対策の現状について御報告願えればと思っております。

丸山政府参考人 ただいま道路局長の方からもお話がございましたけれども、鉄道につきましても、一つは、自主警備の徹底を行っておるということでございます。

 自主警備と申しますのは、例えば車内や駅の構内を巡回する。それから、駅構内におきましては、防犯カメラをつけておりますので、それによりまして監視を強化するという形で、巡回警備を強化する。あるいは、駅だけではなくて、車両基地でございますとか沿線につきまして管理を強化するということで、沿線につきましては、歩いてちゃんと見て回るとか、あるいは、車両基地につきましては、不審な者が出入りしないようにちゃんとチェックするというようなことを徹底しております。

 これにつきましては、平成十三年九月の米国におきます同時多発テロ以来、随時徹底を図ってきたところでございますけれども、三月十一日にスペインで列車テロ事件がございました。そのとき、三月十七日には、全国の鉄道事業者に対しまして、自主警備の一層の徹底、それから警察当局との協力を改めて指示いたしました。さらに、新幹線を運行する事業者それから大手の民鉄など主要な事業者につきましては、私どもの国土交通省に直接お越しいただきまして、その徹底を図ったところでございます。

 また、人質事件を踏まえまして、四月九日には改めて徹底をお願いしたということでございます。

 二つ目は、これも道路局長からもお話がございましたが、旅客への協力要請ということでございます。旅客へ、不審物を発見した場合には、速やかに車掌なりガードマンにお知らせください、それから、ポスターを掲示することによりまして、不審な荷物につきまして、旅客の方でも気をつけていただくということをやっております。特に、車内放送でございますとか駅の放送につきましては、サリン事件のときとほぼ同様の回数行うようにしております。また、ポスター、テロップなどにつきまして、旅客への協力もお願いをしておるというところでございます。

 今後とも、情勢の変化に合わせまして、警察御当局とも協力しながら、テロ対策について一層の徹底を図っていきたいというふうに思っております。

岡本(充)委員 今の御説明、私もよく新幹線に乗るわけでありまして、車内での呼びかけや駅構内での呼びかけ等は確かにあるとは思いますが、線路の沿線を歩いて見て回っているという御報告がありましたけれども、私、新幹線が速いからということもあるかもしれませんが、点検している姿というのを見かけたことがないんですが、どのようになっているんですか。

丸山政府参考人 営業施設的には、歩いて回るということはできませんので、営業が終わった後見て回るということでございます。

 特に、車両基地につきましては、終夜点灯しておりまして、出入りにつきましては厳密にチェックをしておるところでございます。

岡本(充)委員 もう一つ、道路と同じなんですけれども、橋脚やトンネルに対する警備というのはどのように行われているんでしょうか。

丸山政府参考人 これも先ほど道路局長の方からお話がございましたけれども、警察の方とも協力いたしまして、車両基地などと同様に、橋梁でございますとか、そういう構造物につきましてもチェックをしておるところでございます。

岡本(充)委員 本日は警察庁からも御出席賜っておりますので、警察庁としての取り組みもぜひお聞かせいただければと思っております。

米村政府参考人 お尋ねの警戒警備につきましては、先ほど来御説明を申し上げておりますけれども、もともと、米国における同時多発テロ以降、重要施設等に対する警戒警備を警察としても継続して行っているところであります。

 去る三月十一日に発生いたしましたマドリッドでの列車爆破テロ、これにつきまして、私ども、これはイスラム過激派のテロの可能性が高いということで、当初からそういう認識のもとに鉄道事業者等の方に自主警備をお願いする。同時に、警察といたしましても、駅構内その他につきまして、警察官をさらに増強いたしまして、警備犬を使った警戒、あるいは積極的な職務質問、あるいは列車警乗等をやっております。

 今お尋ねの沿線警戒ということで、トンネルとかあるいは橋梁とか、そういった箇所でございますけれども、私どもの方も、そういったテロが起これば重大な被害が生ずるという箇所につきましては、管轄する警察署が警察車両を適宜配置いたしまして、赤色灯を点灯して駐留警戒をする、いわば見せるという形で警備をやるというようなことをやっております。

 また、道路につきましても、先ほど来御説明申し上げておりますけれども、管理者等と連携をとりながら、高速道路警察隊のパトロールを強化する等の措置をとっているということでございます。

 他方、やはり国民の方から情報を得るということが極めて大切でありまして、この点について、事業者の方等とも連携しながら、呼びかけをしてやっている。

 現実に大変不審物件があるといったような情報もいただいておりまして、その都度現場でこれを検索して、結果としては全く問題がないという状態で推移をしておりますが、もう一方、これは極めて遺憾なことでありますけれども、極めて悪質と思われる爆破予告電話通報等もございまして、これにつきましては、場合によって、悪質なものにつきましては事件的に措置をするということも視野に入れて対応するということでやっております。

 いずれにいたしましても、国民の方からの協力を得ながら、事業者等の方と連携をとりながら、警戒警備を徹底して継続してまいりたいというふうに考えております。

 以上でございます。

岡本(充)委員 確かに今おっしゃられましたとおり、住民の皆様方、また国民の皆様方からの情報提供も大変重要だと思っております。そういった中で、ぜひパトロールというのをしっかり行っていただいて、私も、先ほどもちょっとお話しさせていただいたとおり、ずっと見ているわけではありませんけれども、確かに、木が茂ったような、橋脚が川沿いなんかは木が茂っている、正直言って、あそこをパトカーで通るだけでは恐らく見えないんじゃないかと思うんですね。それから、橋が長くて、堤防から見ていたんじゃ一体何が付着しているかわからないというようなこともあると思います。双眼鏡を使って見るとか、実際におりてチェックをするなどといった、きめ細かなテロ対策をぜひお願いしたいと思います。

 続いて、私、質問が幾つかあるんですが、大臣が御退席されるということですので、ちょっと順番がいろいろおかしくなるかもしれませんが、質問させていただきます。

 高速道路の民営会社が新設または改築を行うべき高速道路をどのように指定していくか、こういったことが日本道路公団等民営化関係法施行法案の三十条というところに載っておるわけですけれども、この中で、結局、事業会社と協議が調わなかったとき、改築もしくは新築をするというときに、事業会社から断られた場合は、国土交通大臣はこの問題について社会資本整備審議会というところに意見を聞くということになっております。

 この社会資本整備審議会というのは、一体どのくらいの頻度で開かれて、大体どのくらいの会議時間をこれまで費やしている、そういった会議なんでしょうか。

佐藤政府参考人 社会資本整備審議会自体は、年に二回程度、重要な案件が、御説明すべき案件がある都度開かせていただいています。

 特に、国土交通省一体になりまして三年でございますが、この間に、例えば社会資本整備重点計画とかを国会にも昨年お願い申し上げたりしたわけでございますが、そういう機会に社会資本整備審議会に御説明申し上げて、御意見を伺っている、重要なポイントに応じて、こういう形でございます。

 特にどういうときに開催しなければいけないとか、してはいけないとか、こういう規定があるわけじゃございませんので、その必要に応じて、会長と御相談申し上げながら、適宜開かせていただいている、こういう実態でございます。

岡本(充)委員 大体それはどのぐらいの時間の会議が多いんでしょうか、平均すると。

佐藤政府参考人 問題の内容によるわけではございますが、たくさんお忙しい有識者の皆様がお集まりいただく、こういうこともございますので、一時間半から二時間、場合によりましては二時間半、こんなふうな形で開いていただいているのが実態でございます。

岡本(充)委員 事業会社との協議が調わなかった場合に、社会資本整備審議会に諮るということになっておるわけですけれども、年に二回、それからその会議時間が二時間ということであっては、とてもこれについての真剣な、十分な討論ができるとは私には思い得ないんですけれども、そういった意味で、この場合には、適宜開く回数をふやす、もしくは審議時間を長くするといったような対応をとる予定なんでしょうか。

佐藤政府参考人 この場合、この件でといいますか、高速道路の事業の継続についてお諮り申し上げる、こういう状況が本当に必要かどうか、そういう事態が来るかどうか、こういう問題ももちろんあるわけでございます。そういう意味では、会社発足後六カ月内外に基本的なそういう振り分けはきちっと決めていただく、こういうことになるわけでありますので、何度も何度も開くという必要もまたなかろうかとは思っております。

 状況に応じてではございますが、社会資本整備審議会の中にそうした専門的に御審議いただくという場も必要になるかもしれません。そこは状況に応じて運用させていただく、こういうことだと思いますが、もちろん、先生御指摘のように、形だけやればいい、こういうことではないと思いますので、状況に応じては、しっかりと専門的にお諮り申し上げる、こういうこともまたあろうかと思います。そこは、あらかじめ予定行動として決めるのではなくて、状況に応じて考えさせていただくというのが大事なことだと思っております。

岡本(充)委員 今図らずも局長の方から形だけにならないようにと言われましたけれども、私もそれを大変心配しておりまして、委員の選任は、国土交通大臣が選任し、指名して、なおかつ今回の審議会に諮った内容を聞いた上で、決定をするのも大臣だということなんですね。

 高速道路の整備に関して、事業会社との意見が調わなかったときの最終決定権は、そういった意味で、大臣にあると考えてよろしいんでしょうか。

佐藤政府参考人 社会資本整備審議会の御意見を拝聴した上で、大臣が、指定するしないを決めさせていただく、こういうことであるわけであります。

岡本(充)委員 最終決定をするのは、そういった意味では、審議会の意見を聞いた上で、大臣が決定する。そういった枠組みであるとすると、大変多くの国民の皆さんが心配されている、政治の恣意的な関与が排除し切れないんじゃないかという指摘もまた当たるのではないかと思うんですけれども、大臣、それについてはどのようにお考えでしょうか。

石原国務大臣 ただいま政府参考人が答弁いたしましたように、それをやらない正当な理由があるときには、国土交通大臣は、その会社に対して仕掛かり品の建設をやれということはできないんです。完全にそこは縛ってあるんです。できないんです。

 さらに、今委員の御指摘されましたようなこと、建設拒否の理由や審議会の意見というものは、これはいずれも公表いたします。また、どういう審議があったのか、前段で委員が御議論されました審議会の充実度みたいなもの、プロセスというものも、公にすることによりまして、委員の御懸念というものを払拭するような枠組みになっております。

岡本(充)委員 ただ、今回の道路公団の民営化推進委員会の答申、意見も、実際に政治に反映されたかどうかということについては、それぞれの委員の御意見もあるでしょうけれども、実際に十分反映されていない部分があったということはこの前の参考人聴取でもあったわけでありまして、審議会の意見が公表され、なおかつ、その過程も公表されても、最終的に決定権が国土交通相、大臣にある、会社にはないというところは、恣意的な関与を排除し切れないというふうに私は思っているわけなんですけれども、もう一度、大臣、その点を確認させてください。

石原国務大臣 そもそも論で恐縮なんですけれども、これまでの道路の建設というものは、一方的な命令のもとに道路公団が、施行命令を大臣が出したら、嫌だろうが嫌じゃなかろうが、コストがかかろうがかかるまいが、つくらなきゃいけなかった。こういう枠組みを壊すということが今回のこの民営化法案の基本でございますので、その基本をいかに担保するかということについては、会社の実質的拒否権という形で、私どももかなり考えてこういう仕組みをつくらせていただいたところでございます。

岡本(充)委員 実質的拒否権と言われますけれども、法案の案文上、最終的な決定は審議会の意見を聞いた上で大臣というふうになっているということだけは事実だと思います。

 ちょっと順番がいろいろ行き来して申しわけありませんが、私、今回のこの道路民営化法案の中で非常に重要なポイントの一つが、債務の返済が確実にできるのかどうか、この問題だと思っております。

 この一つの大きな先例となるのが、先般私どもの三日月委員も指摘されておりましたけれども、国鉄の民営化、このスキームがどのようにワークして、それで実際に国民の負担がどれだけ軽減されたのか、この部分をやはり参考にせざるを得ないと私は思っておるんですけれども、国鉄の民営化、借金が昭和六十二年の段階でどれだけあったものが最終的に国民負担が幾らになったのか、御答弁いただけますか。数字で結構です。

丸山政府参考人 昭和六十二年の国鉄の改革時、長期債務は三十七・一兆円でございました。このうち清算事業団が二十五・五兆円を承継いたしまして、残りの十一・六兆円につきましては、JRなど新事業体が継承したところでございます。

 当時、清算事業団が承継いたしました二十五・五兆円につきましては、あくまでも試算でございますが、土地の売却収入七・七兆円、株式売却収入一・二兆円、それから新幹線保有機構からの債権収入二・九兆円を除きました十三・八兆円が国民負担だという試算でございました。

 しかし、その後、実際上は、地価高騰問題などが起こりまして、土地処分が思うように進まなかった、見合わせざるを得なかったということ、それから、売ろうと思ったときにはバブルが崩壊いたしまして、土地需要が低迷し、地価が下落した、それから株式市場も低迷いたしまして、株式上場のおくれ等がございまして、結果的に、清算事業団の土地や株式の処分が思いどおりにいかなかったということで、平成十年に事業団の債務の総額は二十八・三兆円になりまして、このうち二十四兆円を国の一般会計で承継をする、国民負担となったということでございます。

岡本(充)委員 今御指摘ありましたように、むしろ予定より国民負担がふえてしまったというような結末に終わったのが国鉄の民営化の事業だった。確かに、おっしゃるとおり、幾つかの推測が難しかった要因があったのかもしれませんけれども、今回の道路民営化法案も、国鉄は十五年先のことを見通すのがこれほど難しかった中で、実際に、今回は四十五年というのが債務返済の予定になっております。

 この間にはいろいろ経済の動向も含めて紆余曲折が予想される中で、債務返済がうまくいかない、こういった可能性は否定できないと私は思っておるわけでございますけれども、もし、債務完済が四十五年でうまくいかなかった場合にはどういうふうにする御予定なんでしょうか。

佐藤政府参考人 そういう意味では、あらかじめ会社と機構と協定を結んで、貸付料で債務を返済しながら建設もやっていく、こういうスキームで、仕組みであるわけでありますが、まず大事なことは、その最初の段階でお互いにしっかりと十分な、あえて申し上げれば、常識的なといいますか、妥当であろうなというふうに国民的にも思っていただけるような範囲の協定をきちっと結んで、そしてそこを出発点にする。それは可能であるということを、私どもといたしましては、委員会にもケースとしてお示ししてはいるわけであります。

 そこで行われた協定に基づいてしっかりとした企業努力、経営努力をやっていただく、こういうことでございますが、また恐らく御指摘は、そうはいっても、四十五年という長い間、いろいろな変動があり得るではないかということかと思います。

 大規模な地震が起きたり、あるいはまた経済の状況変化といったこともある可能性はあるわけでございまして、絶対あり得ないとこれは否定できないわけでありますから、そうした点についての弾力的な、適時適切な見直しといいますか、お互いの努力といったものがその途中途中においても続けられる必要があるであろう。

 ここの部分につきましては、国も、大きな枠組みについては国がしっかりと責任を持ちながら、両方の、機構と会社のそれぞれの運営が十分努力がなされているかどうか、こうした点も見ながら、三者それぞれの役割分担でそうした変動にも弾力的に対応できる、こんなことが大事なことかと思っております。

岡本(充)委員 今局長が言われた弾力的な運用ということは、この年限を変更することもあり得るというふうにとらえてよろしいのでしょうか。

佐藤政府参考人 返済の期間につきましては、四十五年以内、こういうふうに規定をしていただくということになっておるわけでございますから、できるだけ十分な努力をして、余剰が出るような状態といいますか、十分な余裕が出るような状態であれば、それは料金の水準の引き下げに回すのか、返済する期間を短くするのか、あるいはまた、その他いろいろな使い道を考えるのか、余裕が出た場合のいろいろな今後の考え方というのはあると思われますし、いずれにしましても、その時点時点で適切な対応を図っていくということが大事なことだと思っております。

岡本(充)委員 そういういい方向での誤算が起これば、それは確かに、料金の引き下げだ、返済期間の短縮だという非常にハッピーな、ハッピーエンドが待っているわけでありますけれども、その逆の場合、予期せぬ経済変動、もしくは今おっしゃられたように、自然災害等で大きな損害が起きて債務が膨らんだということを想定すれば、返済年限は延びるということでしょうか。

佐藤政府参考人 四十五年以内、こういうふうにお願いを申し上げておるわけでありますから、どういう大規模な変動があるのか、現時点であれこれと予測しがたい部分があるわけでありますが、いずれにしましても、そのときに適時適切な対応を図ることによって、この四十五年以内という点については守っていっていただく。

 多分、二十年後、三十年後となりますと、そのときの社会経済情勢、あるいはまたいろいろな、執行状況がどういうふうになっているか、今の段階であれこれと確定的なことを申し上げるわけにいかないわけでありますが、ただし、大事なことは、四十五年以内に返済をする、これを大前提にして必要な手だてをその途中段階で行っていく、国民の御理解をいただきながらいろいろな手だてを行っていく、こういうことが大事なことだと思っております。

岡本(充)委員 今の答弁にありましたいろいろな手だての中に、恐らくそういう返済のスキームの変更というのもあり得るのかなというふうに理解させていただいてよろしいですね。

佐藤政府参考人 先生御指摘の返済スキームというのが、期間の問題、こういうお話でありましたら、四十五年以内ということを目指すわけでありますので、それを変えると今の段階で私が申し上げるのは不適当だと思っております。四十五年以内に返済できる、するということを前提にしてさまざまな手だてを講ずるということだと思っております。

岡本(充)委員 今の御説明、大変、いつまでいっても平行線をたどると思いますので、そういった意味で、ちょっと幾つか債務返済の問題について伺いたいのですけれども、今回、債務を返済するためにいろいろ工夫をされている。例えば、新規の建設コストを下げるだとか、管理費を下げるだとか、こういったことを挙げていらっしゃるわけです。例えば、管理費のコストを三割削減するんだ、こういったお話を伺っておりますけれども、三割というこの数字については、どういった根拠から三割というのが出てきたんでしょうか。

佐藤政府参考人 昨年の三月二十五日に政府・与党申し合わせを行っていただいて、その中で管理費の削減努力、そういう意味では、当時、十四年度に比べて十七年度二四・五%、こういうことをお出しさせていただいたところであるわけであります。二四・五%、二四%強、さらにこれをもう一層の努力で、技術開発も含めて、あと五、六%でございますから、公団の職員一同勉強しながら、その後三割まではとにかく何とかして下げるんだ、こういうふうに決意し、またそうした目標に向かって現在営々と努力をしている、こういう状態であるということを申し上げたいと思います。

岡本(充)委員 同様に、政府・与党の申し合わせで、例えば建設コストも六・五兆円の削減というふうになっているんですけれども、さらに目標を高めて、先ほどの三割も四割に、この六・五兆円の建設事業費の削減も七兆円を目指して、こういうような方向性というのは検討をされる余地はないんでしょうか。

佐藤政府参考人 管理費につきましては、今申し上げましたように昨年の三月時点でおおむねこの四公団二四%強の削減、さらにそれをもう一歩踏み込んで、いろいろな技術開発もするんだ、こういう大前提で三割を目指すということにしたわけでございます。

 一方で、建設費の方も、同じ昨年の三月二十五日に、おおむね二割の削減を目指す。これを具体的に路線や区間に張りつけて、約半年後、九カ月後でございますが十二月の二十二日に、具体的に積み上げたものを路線別に、これで実行しますと出させていただいたわけでございます。

 次に、先生御指摘の、さらに建設費の方は二・五兆円の有料道路事業対象から外すといいますか、削減、コスト縮減を含めて、そして管理費の方もさらにできないか、こういう御議論で申し上げれば、管理費の方はとにかく血のにじむような努力をしていただくということが大前提でございますので、とにかく三割は達成していただきたいということを、私どもとしては公団及び会社が発足すれば会社に要請する、こういう形になろうかと思います。これは努力してください、こういう意味です。

 それから、建設費の方は、いずれにしましても、有料道路の事業の対象としては、公団と会社合わせて今まで二十兆円だったものが、高速自動車国道の場合二十兆円だったものを十・五兆円までが有料道路事業の対象とする、以内、これが限度といいますか、逆に言うとそれ以上にはしませんよということでありますから、またこの二・五兆円の縮減については現在営々といろいろな点を検討させていただいている、こういう状態であります。

 可能であればさらに縮減というものを目指す、これは当たり前のことでありますが、そもそも大変厳しいミッションをあえて言えば出させていただいている、こういうことでありますので、まずはその第一歩といいますか、第二歩目、三歩目になるわけでございますが、の達成を何よりもまず優先して実施してほしい、こう思っております。

岡本(充)委員 さらに縮減を目指すという決意だけお聞かせいただければありがたかったわけでありまして、その決意はしっかり承りました。

 そういった中で、岩國委員から提出されております高速道路の今回の債務返済に関するスキーム、こちらの方に関して、債務返済に向けての決意、そしてまたそれができるんだということをぜひこの場で御表明いただければと思っております。特に、どういったところをポイントとしてこのたび債務返済を可能としたのか、その点についてお答えいただければと思っております。よろしくお願いします。

岩國議員 ただいま民主党の高速道路事業改革基本法案について御質問いただきましたけれども、無料化した場合の債務返済は、今までの債務は国が承継することになっていますから、基本的には税で返済するということを基本点に考えております。

 しかし、そういった債務返済のほかに、管理費用、補修費用というものもありますから、そういった出ていくものをカバーするためには税金以外に二つの方法。

 一つは、パーキングエリア、サービスエリア、こういったものをもっと積極的に活用する。今以上に、三倍、四倍の活用は十分可能だと思いますから、その事業を拡大することによる収益増加というものをそれに充当することがまずできます。

 それからもう一つは、一定期間、一部の路線については通行料金を徴収するということを考えております。これは、不要な混雑状態というものを十分解消できるめどがつくまでは、例えば東京あるいは大阪のようなことを想定しているわけですけれども、一定期間、一部路線の通行料金の収入、それも返済あるいは道路の管理、補修費用に充てるということはできます。

 いずれにしましても、民主党の基本法案では、内閣総理大臣を本部長といたします事業改革推進本部というところで返済計画を十分に練って、金利も含めたいろいろなパターンを考えております。

 政府の提出しました試算表というのを見ましたけれども、政府のものは、景気の変動を受ける通行量、通行量というのは当然景気の変動を受けるわけですから。民主党の場合には、景気変動のリスクゼロ、通行料金がゼロですから。そういった点では試算表のつくり方ははるかに易しい、そのように思っております。

岡本(充)委員 まさに今おっしゃられたとおり、景気の変動というのが大きなファクターになってくる、債務返済の大きなかぎの一つだと私も考えております。

 そういった意味で、今回の無料にしてなおかつ一部通行料をいただく中ではありますけれども、債務を返済していこう、より国民の負担を少しでも少なくする方向を目指そう、こういった案になっていると私は理解しておりまして、この法案についてさらにこの委員会でも討議がなされることを希望させていただきます。

 その中で、今言われました通行量の需要予測、この中で一つ私取り上げたいのが、本四公団の問題でございます。

 実際に、本四公団の債務返済の見通しというのは、政府案では、やはり通行量を一つ大きなポイントにして試算をしております。今、全体の景気予想を踏まえ、通行量予想を踏まえた試算というのは政府からいただいておりますけれども、本四公団、本四橋にかかわる、今度は新しい会社ができた後の通行量についての予測、これについてはどのように考えていらっしゃるんでしょうか。

佐藤政府参考人 とりあえず、その前提となります四国の全体の交通量の予測についてまず申し上げたいと思います。全国的にはもう既にお出ししてあるわけでございますが、四国地方全体、これがどうなるかということをまず申し上げたいと思います。

 これは、現状からのトレンドで申し上げても、傾向としてはこういうことかなということで予測しております。

 例えば、平成三十二年、二〇二〇年ごろでございますが、乗用車についてはこれまでも増加傾向が続いております。したがいまして、そこのトレンドあるいは人口等をベースにして予測しておるわけでございますが、全体としては乗用車は現状より一六%程度ふえるであろう。それで、四国の場合、貨物の方は多少漸減傾向にあります、減少傾向にあります。したがいまして、その辺も考えますと、大体一〇%弱、九・八%ぐらいというような予測をしておりまして、合計で申し上げますと、現状に比べて、例えば二〇二〇年で申し上げれば大体七%程度の増加になるのではないか。これをベースに本四の場合の交通量予測もやっておるわけでございます。

岡本(充)委員 自家用車の通行がふえる要因というのは、四国の人口が増加する、こういうことなのか、観光が振興するということなのか、そこの点が一点伺いたいのと、今の話ですと、自家用車が一六%ふえて貨物が九%ということは、今自家用と貨物は半々で本四橋を利用している、こういう認識でしょうか。

佐藤政府参考人 ただいま申し上げましたのは、二〇二〇年ごろをピークにして全体の交通量が推移するであろう、こういう前提で二〇二〇年ごろのそれぞれの伸びを申し上げたわけでございます。

 その中で申し上げますと、乗用、貨物の別でございますが、これにつきましては、おおむね二〇二〇年ごろの推計値、こういう観点で申し上げますと、乗用の方が大体二百四億台キロ、貨物の方は八十九億台キロ、こういう形でございますので、おおむね二対一ぐらいで乗用の方が多い、こういうような予測をしておるわけであります。

岡本(充)委員 そうすると、先ほどの一六%ふえて九%減って、差し引き七%ふえる、こういう計算は台数的には成り立たないことになるんじゃないかと思いますけれども、ちょっと質問がまだ続くんでその部分をおいておいて、この自家用車の増加という四国においてふえるという予測、日本全体の車もふえるから四国もふえるのではないか。例えば東京の増と四国の増を同じパーセントで見ているとすると、それは大きな誤算につながると私は思っている。都市部とそれからいわゆる四国のような地方、都市また地方においての増減は違う試算があるべきだと思うんですけれども、同じ二〇二〇年をピークと言うのはいかがなものでしょうか。

佐藤政府参考人 そういう意味では、全国及び各ブロック、それぞれ地域の特徴をできるだけ反映しながら予測をさせていただいているということでありまして、全国で申し上げますと、今の伸び率というような観点から申し上げれば、二〇二〇年で申し上げますと、乗用の場合には……(岡本(充)委員「四国を聞いているんです」と呼ぶ)全国に対しての四国、こういう形になるわけでありますので、乗用の場合には、一九九九年を一〇〇としますと、二〇二〇年ごろは全国は二二%増ぐらい、これは中位推計でございますが、二二%増ぐらい。これに対しまして、先生御指摘の四国という面で申し上げると一六・六%、約一七%ということでございますので、残念ながら若干全国の伸びよりは四国の場合には少ないか。

 それぞれ地域に応じてこうした……(岡本(充)委員「ピークも一緒なんですね」と呼ぶ)二〇二〇年、二〇三〇年、十年単位で申し上げると、それぞれ、四国はこのケースで申し上げたら二〇二〇年がピーク、そして、全国はもう少し、乗用の方はもうちょっと下げどまって、それほど下がらないか、二〇三〇年も一二二が一二三ぐらい、こういう予測をしておりますので、四国の場合、若干全国より下がっていくか。そういう意味で、乗用の場合、二〇二〇年が四国はピーク、全国は二〇三〇年がピーク、そんなふうな予測を現在はしているところでございます。

岡本(充)委員 では、もう一つ、貨物の話をさせていただくと、今モーダルシフトを進めていく中で、貨物の減が七%というのは、これはモーダルシフトの目標ということを平成十三年七月の閣議決定したときの新総合物流施策大綱で、平成二十二年までに五〇%を超えるものを目標としているわけなんですけれども、これと照らし合わせても、この七%減で十分達成が可能ということになるんでしょうか。

佐藤政府参考人 先ほど申し上げましたのは、二〇二〇年には、乗用車は一九九九年に比べて、四国の場合一六・六%、一一六・六。それで、貨物の方は九〇・二。全部合計いたしますと一〇七・一だ、こういうことでありますので、四国の場合、貨物の大型化の影響あるいはまた集約配送の影響、そうした点もあろうかと思いますが、一九九九年に比べて二〇二〇年は約一割減少する、そういう予測をさせていただいているところであります。

岡本(充)委員 二〇二〇年はわかりましたけれども、この政府の閣議決定の目標と整合性がとれる、その数値となっているのでしょうか。

佐藤政府参考人 そういう意味では、できるだけそうした目標に近づける。個別に考えた場合、四国でどれだけとかブロックでどれだけ、こういうことではございませんので、そこはまた努力目標としてできるだけ整合性を図るということを常に心がける必要があろうかとは思っております。

岡本(充)委員 目標は達成したが、貨物の量が激減して収入が大きく減っていた、こういったことが起こるのではないかと私は懸念しているわけなんですね。

 大臣、今の私の指摘、誤っているでしょうか。ちょっと御意見をお聞かせください。

石原国務大臣 モーダルシフトは地域というよりも全国での目標を設定しているんだと思うんですね。そんな中で、四国の特性というのは、多分フェリーみたいなものの依存度がきっとモーダルシフトですと高まるんだと思うんですけれども、そういうもので、委員の言われるように、そういうところで減少したら、それをこの需要見通しに、交通の需要推計にもう一回当てはめていく、こういうことをやはり小まめにやっていかないと、委員の御懸念にお答えすることにはならないんだと思います。そこはやろうと思っています。

岡本(充)委員 今大臣の御指摘がありましたとおり、見直しをやはりしていかなければいけない。それで、場合によっては下方修正があり得ると思うんですね。

 現状の数値でも少し指摘させていただきますと、今有利子債務の残高が、今回債務切り離しが行われた関係上、二・二兆円残っているという御報告を受けております。それで、今現在の金利が、先般委員会に御提出いただいた試算表では、今現在が二%を若干切る、おおよそ二%の金利設定になっている中で、本州四国連絡道路、平成十四年の収益が八百五十三億円、管理費が二百十六億円、そして、そうすると二・二兆円に対する金利が二%、一・九六か一・九七%でしたので、二%とあらあら推計させていただくと四百四十億円、これだけのお金がかかってくるわけでありまして、実際に八百五十三億円の収益でこの債務を返済していくのは難しい。

 そういった中で、今回、国と地方とで出資金という形でこの有利子債務を少しずつ無利子の債務に置きかえていこう、こういった枠組みが実は用意されているわけでありますけれども、この今のスキームの認識で正しいんでしょうか、数字として。

佐藤政府参考人 そういう意味では、有利子債務一・三四兆円を十五年度に一般会計の方につけかえさせていただいて、そして、残り分についても毎年八百億円を二十年間国と地方で出資して置きかえさせていっていただく、こういうことにしたわけでございます。

 先生御指摘の収入と支出の関係につきましては、おおむねそういうことかと思います。今、正確にデータを見た上で申し上げたいと思います。

岡本(充)委員 今回のこのスキームは、それぞれの会社ごとに機構の経理を区分して、各会社の経営努力が明確化されているものではないように私はちょっと認識しておるわけでありますけれども、とはいっても、この本四の会社における収支の状況は、今お話しさせていただいたとおり、大変厳しいものがあって、この通行量予測が少しでも下回ると、つまり料金を下げて弾性値を〇・三と試算されている政府の案で、とおりにいけば結構でございますけれども、料金収入を一割下げる、そうするとおおよそ収入が八百五十三億円から八十五億円減る、こういったことになりますと、七百七十億円弱になる可能性がある。

 この七百七十億円になった上に、今の管理費、若干は圧縮できたとしても、この二百十六億円、それに今回の有利子債務の利息、これを合わせるとほとんどもう返済ができないのが実情で、実質は平成三十四年までかけて有利子債務を無利子債務に切りかえていく、こういった形をとっていくというスキームに見えるわけなんですね。

 先ほど、ちょっと国鉄のときにも伺いましたけれども、国鉄も最終的には有利子負債を無利子に借りかえて、最後は税金で、チャラにしたと言ったら言葉は悪いですけれども、税金でその出資金はなかったものにしてしまったというスキームだったと私は認識しています。

 今回も無利子にしていって、最後は、返済できないから、この債務については国民負担ということが起こらないということをはっきり、私が懸念していることはあり得ないということをはっきりお約束いただきたいと思っております。

佐藤政府参考人 そういう意味では、二、三点申し上げるべきかとは思います。

 先生御指摘のように、本四公団の場合には、有利子の負債、十四年度末で二・二兆円、これを、毎年八百億円の国と地方による出資を引き続き継続させていただきながら、できるだけ無利子の出資金に切りかえさせていただく、これによりまして経営の安定を図る、こういうことであります。

 もう一点は、先ほど来のお話の平均一割引き下げというのは、とにかく、何はともあれ、高速自動車国道については平均一割の引き下げ。これは、平均をどういう形でやるかというのはいろいろ工夫をする必要があると思いますが、例えば夜間の割引とか通勤時間帯の割引とかいろいろな形の、ちゃんと国民にわかりやすいようなもの、こういうことが必要かなと思って、今いろいろ検討をしているところであります。

 そういう意味では、本四公団、本四架橋の場合は昨年の七月から、これまでの割引、基本料金に対する割引がそれまで二割引きであったものをさらに一割引き下げて、基本の料金を三割引きにして、これはETCをお使いいただくとまた割引の割合がもう少し大きくなる。基本的にはそういうことでありますけれども、これを一年間試験してみているわけであります。今これは試験してみている最中であります。できれば、そうした場合の弾性値が一・〇に近ければ私ども大変ありがたいのでございますが、結果的には、今のところそこまで来ていない。

 したがいまして、そういうことをもろもろ考えながら、最終的に機構の解散、これは四十五年以内に機構は解散するわけでございますから、その時点で、本四の場合には出資等について、現状では必ずしも全部返し得るという予測になってはおりません、私ども自身も。そこは解散に至る時点でどうした処理をするか、これを十分検討する必要があるとは思っております。

岡本(充)委員 今、私の懸念どおり、その出資金、返ってこない可能性は十分ある。国民の新たな負担になる可能性があると、私は大変懸念をしておる。

 そういった中で、ぜひ、もう一度確認をしておきたい。

 今回の、今のスキームの中で、きっちりとした、本四橋にかかわる私の指摘した数値が正しいかどうかを再度御確認の上御提示いただきたいということをお願いするのと、そして、もう一度確認をしておきたいんですけれども、今回のスキームを通じて、政府の関与というのが少しでも少なくなると大臣おっしゃいましたけれども、最終的に国民の負担が、四十五年たったところで、借金が返せませんでしたから、もう一度その部分、出資金を例えばなくしてくださいとか、それから、残った借金をまた何かにつけかえる、もしくは今回の国鉄のスキームのように、理財局の方で今処理してみえるとは思いますけれども、こういった形にならないということを、最後に、しっかりとした決意を大臣からお述べいただいて、私の質問を終わりたいと思っております。

石原国務大臣 本四に関してだけでございましょうか。(岡本(充)委員「はい」と呼ぶ)

 本四については、弾性値がそれこそ一・〇になれば、料金を下げた分交通量で賄えるわけですけれども、そうではないという事実はございます。ただ、弾性値が当初予定したものよりは小さくなっていて、今のところ、県境の横断面での交通量の比率で見ると、順調に返している。

 しかしながら、将来それが今のまま推移するかどうかということは、だれも断定的なことは言えない。そんなときに、委員が御指摘のとおり、新たな負担が発生しないようにさまざまな適切な処理というものを、交通量の変化をやはりビビッドにとらえて見ていくということは忘れてはならない点だと思っております。

岡本(充)委員 質問を終わります。ありがとうございました。

赤羽委員長 樽床伸二君。

樽床委員 ありがとうございます。

 懐かしい国土交通委員会で質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 まず、大臣、今回の法案は、法案の名前がすべてではありませんが、四つの法案が今かかっております。そのうちの二つの法案は、法案の名前の中に民営化という言葉が入っております。

 元来、民営化ということは一体、大臣、どういうことなんでしょうか。

石原国務大臣 これは、特殊法人改革におきまして、思い出していただきますと、特殊法人は原則廃止か民営化ということを総理がおっしゃいました。そこで、これまでの民営化論議というのは、個々の法人に着目して、民間法人たり得るものを民間法人化していくという特殊法人改革のやり方を昭和四十二年以来やってきたわけですけれども、今回は全法人の事業の見直し、すなわち特殊法人としてその事業を継続する必要があるのかないのか、そしてその仕組み、さらには子会社を含む事業実施の方法にさかのぼって、厳しい事業見直しをまず行ったわけであります。

 この事業見直しをやった結果、特殊法人としての組織形態について、廃止か民営化の見直しを行う。さらに、やはり公的なセクターとして独立行政法人というエージェンシーを設けて、民間ではたり得ないことをやりますけれども、しかし、その独立行政法人は、これまでの特殊法人とは違いまして、三年から五年ごとの中期目標を立てて、中期目標が達成されていないとき、あるいは中期目標の状況判断において、その法人を存続するかさせないかということも三年から五年において検討していくという形で整理をしてきたわけでございます。

 そんな中で、委員御指摘の民営化ということでございますが、これは、やはり同じく平成十三年十二月十九日に閣議決定されました特殊法人等整理合理化計画の中で、企業的経営による方が事業をより効率的に継続実施できる法人を原則として民営化する、ここで民営化という言葉の意味を再定義させていただいたところでございます。

 道路関係四公団について申しますと、委員御指摘のとおり、日本道路公団等の民営化に伴う道路関係法律の整備等に関する法律案の中で民営化という言葉を、さらに、日本道路公団等民営化関係法施行法案の中で民営化という言葉を使わせていただいておりますけれども、道路関係四公団はこの条件に該当するために、民間にできることは民間にという方針のもと、先ほどの言葉の民営化というカテゴリーのところに整理をさせていただいたわけでございます。

樽床委員 私が聞いておりますのは、民営化という概念は一体何なのか。

 私に言わせると、民営化というのはコストを意識するということと自己責任、つまり、つぶれることもあるというのが元来民営。要するに、民営化というのは企業にするということですから、民間企業はコスト意識を持ってちゃんとやる、そしてうまくいかなかったらつぶれることもある。

 民間企業はずっと永続するということはあり得ないわけでありますので、ということは、民営化ということは、そういうコスト意識と、つぶれることもある、自己責任だ、こういうことを前提にして道路公団を民営化するんだということなんですか。

石原国務大臣 ただいま樽床委員が御指摘されました民営化という言葉の根底にある概念は、私もまさにそのとおりだと思っております。

樽床委員 そうであるならば、実は私は何年か前に、たまたまでありますが、我が党の国土交通の関係の仕事をさせていただいておりましたときに、ちょうど道路公団民営化のことにつきまして、当時の扇大臣、それから石原大臣はほかの役所の大臣をされておられましたけれども、一緒に国会で議論をさせていただきました。

 元来、我々の議員としての立場は、法案としていろいろなことが出てくる、いろいろなことが検討される、それは必要であるけれども、国会の場できちっと議論をしていくというのが本旨である、このように思っておりますので、過去のことといろいろ相違をしていた、また、してきたという点について、これは私の一方的な認識かもわかりませんが、ちょっと質問させていただきます。

 実は、平成十四年の二月の二十七日に私が質問をさせていただきましたときに、これはちょっと議事録を引っ張ってきたんですが、当時の扇大臣はこのようにおっしゃっているんですね。

 諸井委員会の当時の中間報告を受けまして、「上下一体という答えをあり方懇談会で」、つまり諸井委員会のことでありますが、「総理に提出した。ですから、道路公団のためにも、私は何としても上下一体でなければならない。上下分離を言う人は何らかの意図を持っている人であるとしか私は思えないぐらいに思っております。」このように当時の大臣はおっしゃっているわけであります。

 また、同じ日に、「上下一体というのは収入と支出を一緒にするということでございますので、それでなければ民間という言葉を使うには値しないという結論を国土交通省としては出しております。」このように実は扇大臣がおっしゃっているわけであります。

 そのときは石原大臣はよその大臣をされておられまして、いろいろ議論がありましたけれども、私は、コスト意識ということから考えると、上下分離なのか上下一体なのかということは大変大きな問題だと思っております。

 この点について、この扇大臣の見解から今日まで、なぜこういうふうに変わってきたんでしょうか。ちょっと大臣、大臣がかわったから変わりましたということでも結構なんですが、そこら辺、であるならば、今の石原大臣になられて、どこできっちりとしたそこの変更の形、手続というのがあったのか、お聞かせいただきたいと思います。

石原国務大臣 この点は、やはり今回の議論の私は根本のような気がいたします。

 すなわち、私は上下一体の民営化というものを否定はしませんけれども、国民のコンセンサスとして、道路が原則無料で国家国民のものであるというものを飛び越えて、プライベートなもの、すなわち個人の、民間会社のものであるという考えが国民のコンセンサスとなった暁には、上下一体という議論もなされてくると思います。

 しかし、それは個人の会社が道路を資産として所有するわけですから、その考えの根底には永久有料というものを念頭に置いている。

 すなわち、資産を持ってそこで商売をするわけですから、そこの料金に利潤を乗せて会社のなりわいとするということは、永久有料。すなわち、三十年、四十年、五十年たって債務の返済が終わったとしても、その会社の所有物であるということは、料金を取り続ける。そういうものを国民の皆さん方が果たして喜ぶのか喜ばれないのか、こういう議論がこれまでなされてきたんだと思います。さまざまな場で私はなされてきたんだと思います。

 そこで、委員が今御指摘になりましたのは、いわゆる高速自動車国道の整備のあり方検討委員会、通称諸井委員会の中で、建設、管理の実施主体、資産、債務の保有主体について、今申しましたように、別々にするもの、あるいは一体にするもの、さまざまなケースの検討を行って、民営化のメリットを最大限に発揮するという観点から、今委員御指摘のように、上下一体で民営化して株式会社とすべしという審議会としての中間報告はなされたわけであります。

 その中間報告にのっとって、扇大臣が御発言をされたものと私は承知しております。

 その後、平成十三年の十二月十九日、先ほど、前段で民営化とはという御質問がありました。その民営化のカテゴライズをする中で基本になりました特殊法人等整理合理化計画が閣議決定をされたわけであります。

 これに基づいて、今度は第三者機関であるところの民営化委員会、総理の諮問機関でございますけれども、そこの議論を経て、平成十四年十二月六日に意見書が総理に提出されました。

 ここの中で示唆していたものは、永久有料であり、上下一体、すなわち、道路資産は個人に帰することができるというものでございました。

 この意見を基本的に尊重するという方針を閣議決定させていただきまして、政府において検討を行いまして、基本的枠組みというたたき台を提示させていただいた上で、都道府県の知事さんあるいは有識者の方々等々にお諮りをいたしまして、平成十五年の十二月二十二日に政府・与党協議会で基本的枠組みというものを決定したわけであります。

 これがプロセスで、上下一体という考え方から、上下分離の現在の民営化法四法案の根幹にありますスキームを決定した経緯でございます。

 これを踏まえまして、今回の民営化法案では、債務返済期間中の高速道路の保有というものは独法であるところの機構が行うとし、高速道路の整備、管理等は民営化会社が行うという整理をさせていただいたわけでございまして、これは、高速道路の民営化を行っている先進国の状況を私も見てまいりましたけれども、いわゆる所有権と営業権を分けて、営業権を持った会社が民間会社として行っていく。

 これは、例を出させていただきましたけれども、今では笑い話になっておりますが、バブルのときに日本の有名な実業家がエンパイアステートビルを買いに行って、エンパイアステートビルを買ったけれども、それは所有権であって営業権ではなくて、そのビルにどういうテナントが入ってどういう商売をするのかということを全く差配できずにその投資というものが失敗に終わった。

 こういう例もあることでございますので、今回の整理、そしてこういう結果に至ることは何ら矛盾をしない、議論が深化してきたんだと認識しております。

樽床委員 どうも中途半端なような気がしておりまして、民営化でしょう、民営化なんですよね。今のお話を聞いていると、要は、我々は、近いうちに無料化しよう、こう言っておるわけですが、四十五年先には無料化しますと政府は今回おっしゃっているわけなんですね。

 民営化というか無料化に向けての一途中形態をちょっとこんな形でやりますというようにしか聞こえない、私はそう聞こえるわけであります。

 それは、もともと民営化ということについてきちっと、原理原則を外しているからではないかというふうに思えてならぬわけであります。現実対応はいろいろあるにしても、現実対応は現実対応していっているから、何か全体がすっきりしたものじゃなくて、ぐちゃぐちゃぐちゃとなって、わけのわからぬものになってしまっているというような気がいたしております。

 実は、今私は扇大臣の当時の答えを言いました。答弁を読み上げましたけれども、そのときに、たしか石原大臣と合同審査会で一緒にやったのかなというふうに思っておりますが、この後に一回一緒にやったことがあります。

 たしか、日にちを言うのも別に大したことではないのかもわかりませんが、平成十四年の四月の十八日、内閣委員会で国土交通と合同審査がありまして、そのときに石原大臣は、当時は別の大臣をされておりましたけれども、固定資産税の問題が上下分離、上下一体の話で重要だ、このように私に対してお答えになっておられるわけであります。

 それについては今は全然発言がなかったんですが、どうなったんですか。

石原国務大臣 ただいま樽床委員が御指摘なされましたのは、平成十四年の内閣委員会での私の委員に対する御答弁をめぐってのお話だと思うんですけれども、先ほど、私は、上下一体の民営化というものを否定するものではない、しかし、そういう考えを推進される方がマジョリティーにはなっていないというお話をさせていただきましたが、そこでやはり関係してくるのが地方税であるところの固定資産税であると私は今でも思っております。

 と申しますのは、民間企業が資産を保有して、その資産を利用して収益を出す。そのときには、その所有物に対して固定資産税を各地方自治体が課税するというのは、当然の行為だと思います。

 しかし、今回の、樽床委員御指摘のとおり、ちょっと言葉を忘れてしまいましたが、中途半端であるというような御趣旨で委員が御指摘されましたように、今回は四十兆円に上る債務があります。この債務をより早く的確に返済するという大義が民営化の目的として一番最初にあるわけです。

 そんなときに、上下一体で株式会社が資産を保有したときに、幾ら政府として固定資産税は非課税なんだと言っても、それは、株式会社であり、しかも資産を持ち、その資産から利潤を得るわけですから、地方自治体が固定資産税を収受するということを言うことは、これまた自然なことでございます。

 そうしますと、固定資産税収入として、地方自治体の税として、返済すべき利潤が地方に移譲されてしまう、そういうことがいいのか悪いのか、こういうものを考え合わせたときに、やはりすっきりとこの四十兆円という債務を返していくという道を選ぶべきであると考えておりましたので、そういう発言をしたのではないかと思います。

樽床委員 今、社会が非常に複雑になってきておりまして、昔のように、社会全体の、概念的な話をしますが、社会というのは見えないわけですから、概念的に言うと非常に複雑な社会の構造になってきております。複雑であればあるほど、私は、基本というか、原理原則、基本に立ち返らなければならぬ、そうしなければ全部がぐちゃぐちゃになってしまうというふうに思っております。

 でありますと、やはりこの公団の問題は、要するに、民営化という原理原則をどこまで追求するのかという、ここをいいかげんにして物をしていくと、これは結局、始めたものの、何かおかしなことになってしまうということになるのではないか、私はこう思えてならないわけです。

 だから、民営化という、コスト、それから自己責任だという民営化の前提で、それでも民営化するんだ、そして、一つの要請としては借金を返していかないかぬ、そこに税金の問題がある。それは私は、それが枝葉とは、言い過ぎるとまた後で怒られるかもわかりませんが、民営化という基本の中で、固定資産税の問題は、方針を決めたらその中で何か手を考えるという発想方法もあるのではないか、このように思っておりますが、これは法律的に、どんなことがあっても固定資産税の問題は、民間、民営化ということであるならば乗り切れないんですか、上下一体であるならば。どうなんですか。

佐藤政府参考人 民営化といいますか、上下一体の、資産を保有して民間会社が運営する場合に、固定資産税がどうしてもかかるものかどうか、こういう御質問かと思います。

 現実問題といたしましては、民間会社が資産を保有して、所有して、そして運営するということであれば、課税に例外を設けるわけにはいかないというのが税務当局の理解である、このように承知しております。

樽床委員 実務的にはそうなんでしょうが、この道路公団の民営化というのは、現内閣の最優先テーマの一つなんですよ。この国会でも、年金と道路しか重要法案がないとすら与党の皆さん方がおっしゃっているわけでありまして、それほど重要な、小泉内閣としては、まさにこれは生命線の大きな法案、大きなテーマ。

 であるならば、国土交通省としては、どうですか、税務当局はそうおっしゃっていると、税務当局をねじ伏せても、民営化という前提にするとこれはかくかくしかじかと、そういう知恵を出し合えというのは、これはできないんですか。

石原国務大臣 今、樽床委員の御指摘の点というものは、民営化委員会でもかなり論点になったところなんです。

 税務当局の話を聞かせてもらいますと、有料道路に対する固定資産税については、償還期間が決まっておりますので、料金徴収の期間が定まっている。その期間が過ぎれば無料になるという前提があるわけですね、建前として。徴収する料金の水準が、建設費などから算定して、収益事業ではなり得ていないという料金水準の設定というものがあるから、従来から公共に供するものとして非課税であるという理屈が固定資産税の世界にあるわけです。

 こういう理屈があるにもかかわらず、東京では、ある市長さんが中央高速に固定資産税をかける、そういう訴訟も起こりました。

 今委員が言うとおり、国土交通省がこれはもう非課税なんじゃいと言って、非課税という枠組みを通して事業を上下一体で仮に行ったとすると、もう既に公共に供するものとして非課税であるという解釈があるにもかかわらず課税をするという自治体が出たわけですから、今度はより、民間会社であるのに何で固定資産税を払わないんだ、JRだって払っているじゃないか、必ずこういう議論が起こるわけであります。

 そういうものに対して、そこで裁判等々がきっと行われることになると思うんですけれども、そういうものによって返済すべき財源が流出することが望ましいのか望ましくないのかということで、かなり民営化推進委員会の中でもこの点については議論がありました。

 そのときの結論は、十五年の八月ぐらいだったと思うんですけれども、やっぱりそうだな、ピンどめとしてはそういうものになったんですが、最終的な答申は、その税務当局の議論がよそに行ってしまいまして、上下一体というものが出てきたという経緯がございます。

樽床委員 税務当局の意見というのはいろいろ、理屈はわかるんです。それは、役人さんは法律に基づいて物事をされなければならぬ、こういう大前提があるわけでありまして、そういう法律に恐らくなっておるんでしょう。ですから、税務当局はそういう判断をし、そういう助言をするわけであります。

 ただ、大臣、大臣もバッジがついているわけでありまして、我々は立法府、大臣は一方で立法府の方であります。我々も立法府の者であります。要するに、我々は法律をつくる側にいるわけでありまして、そうであるならば、この民営化の法案と一緒に、政府の政治決断で、総理の決断でこれを例外にする法律をつくって、通ってしまえばそれはそれでなるということは不可能ですか。そういう決断ができなかったんですか。

石原国務大臣 それは、固定資産税の理屈からいって、不公正であるという批判の方が私は高まるのではないか。

 すなわち、民間会社が所有する資産に対して、高速道路事業だけは例外である。では、民鉄事業、これも公共交通である、あるいはトラック事業のターミナル、こういうものが何で非課税でないのかと言われたときに立っていられるのか。すなわち、不公平であるという批判に何と答えることができるのかという問題が私はあると思います。

樽床委員 私は、一緒に、ワンセットで議論をして、別々に独立したものとして考えればいろいろあるかもわかりませんが、民営化のときにワンセットでその税金の問題をどうするのかということを議論するならば、国民の皆さん方の理解は得られるであろうというふうに思っております。

 かけ声はいいんですが、政治的なリーダーシップがちょっと不足しているのではないかということをこの点では大変強く思いますし、残念に思っております。

 そういう中で、今回の法案で、固定資産税、これはどうなんですか。十年間非課税であるという措置がこの法案の中にあるというふうに認識をしておりますが、それで間違いないんでしょうか。

佐藤政府参考人 御指摘のとおりでございまして、基本的には非課税の該当要件を明確にさせていただいたということでありますので、十年間課税することができない、こういうふうに附則で書き加えさせていただいているところでございます。

樽床委員 その非課税にした理屈は、先ほど大臣がおっしゃったことなんでしょう。そういうふうに判断をしますが、何で十年なんですか。なぜ十年なんですか。四十五年後に無料化すると言っているのに何で十年なんですか。これをちょっと教えてください。

佐藤政府参考人 そこのところが、今固定資産税の御議論をいただいているわけでございますが、法人税の方もいろいろ議論がありまして、法人税の方も課税は、料金収入、貸付料、この部分で申し上げると、基本原則の部分は課税されない、こうはなっているわけでございます。

 基本的に、その場合に、この会社は料金収入から利潤をもうけない、逆に言いますと利潤を乗っけないということなものですから、料金収入から管理費を引いて貸付料を出していただく。この貸付料は、あらかじめ機構と協定を結ぶということで、毎年度の納付額といいますか貸付料、リース料をあらかじめ決めていただくわけであります。

 一つ考えられ得ますのは、いつも極端なことばかり考えておってもしようがないのでありますが、毎年、毎年度約定した協定よりもはるかに料金収入が上がるか、管理費を下げる努力をして、毎年一割、二割、極端に申し上げれば、二兆六千億円の四公団の現在の料金収入があるわけでありますが、それに対して管理費を引いて、言ってみれば貸付料を払う。この管理費の引き方あるいは料金収入の見方、いろいろあろうかと思います。

 そして、結果として、例えば、何千億も利潤が出るとか、管理費を節減したり料金収入が上がっていくという状態が十年間続いたようなときに、ここの部分が先ほど来の税務当局との関係から申し上げますとなかなか厳しいところでありまして、この会社がちゃんとした営業、企業努力をするというインセンティブという面でいえば、大いに頑張って、その枠の中で管理費を節減してください、料金収入を上げる努力をしてください、こうなるわけでありますが、恒常的に、例えば十年間大変収益が、本体の貸付料といいますか、払った以外に収益が余り過ぎるというか上がり過ぎる、こういう状況になったときに、これまた税法の方で、国の資産を貸したときに、借りたところが常にたくさんの利益が出るんであれば、これは課税せざるを得ないんじゃないかという一方の御議論がございます。

 そういう意味では、本来、事柄として非課税のはずである、しかしながら、そういう実態の運用上そういうこともあり得るかというような議論もこれありで、そういう意味では、税全体の問題としては、十年間よく様子を見ながら次なる展開を考えよう、今の前提が崩れない限りは非課税を続ける、こういうふうにお決めいただいているものと理解しております。

樽床委員 局長、話が大変高尚で、ちょっと私もどこまでついていっているかわかりませんが、石原大臣、今の話は、結局、十年間の説明が私もよくわからぬのですが、十年後に石原大臣が大臣をされているかどうかというのは、首を横に振っておられますが、甚だ疑問でありますけれども、十年後に、これはどういうことなんですか、十年後に一回物事を見直しますということなんですか。これはどうなんですか。だから、ちょっと十年という理屈がよくわからぬわけです。

石原国務大臣 さっき、上下一体の話を私は否定するものではないと申しましたのは、そういうことなんですね。ですから、十年後に見直しをするという規定を附則の中に書かせていただいておりますのは、そういう議論がこれから十年間の間に、高速道路は個人の会社が持ってもいいじゃないかということで、永久有料でいいじゃないかという意見が国民の大多数になれば、そういうことはあるかもしれない。そのときは固定資産税は課税されることになる。(発言する者あり)

 しかし、私は、基本論は、やはり高速道路は原則無料であり、国家国民の財産である。ですから、上下分離、すなわち営業権を民営化するということで、今回の民営化法案のスキームが一番望ましいものである。意見を否定するものではない。すなわち、道路民営化推進委員会の意見は上下一体論でありまして、そういう意見を基本的に尊重しているわけですから、その意見を排除する形ではなく、十年後に見直しを行う、その見直しの中にはすべてのものが入っていると御理解いただきたいと思います。

樽床委員 ちょっと今不規則発言がいろいろ私の周辺から出ましたけれども、ということは、これは十年後に、状況を見て、もろもろ根底から考え直してもいい、そのときの状況で、十年後の状況で。

 こういうことであるのか。それとも、いや、これは、そういうことだけ二つちょっとまとめて言いますが、それと、たしか平成十四年十二月六日の民営化推進委員会の意見書、これに、機構は発足後十年をめどに要するに解散するというふうに意見書で出ておるわけですね。

 ということは、十年後で全部解散するというのが平成十四年十二月六日の民営化委員会の意見書の中に書いてある。これが私はどこへ飛んでいったのかなというふうに思っておりましたが、政府の案では四十五年後に解散する、こういう話ですよね、この法案でいくと。

 それで、委員会の意見書では十年後に解散しなさいよと言っていたんですが、法案になったら四十五年になって出てきた。四十五年後には無料化します、こういうふうにおっしゃっておる。今の意見を聞くと、そういうことが何かいろいろ苦しんで、十年後に一回見直して、もう一遍根底から考え直してもいいというふうにも聞こえたんですが、そこら辺、トータルでどうなんですか。

石原国務大臣 ちょっとこれまでの議論をもう一回整理させていただきたいと思うんですけれども、会社が道路資産や債務を保有する、すなわち上下一体にするということについては、一昨年の民営化委員会の議論を踏まえると大きな問題があるんです。

 と申しますのは、民営化委員会の議論の中で、通常の民間会社が背負い切れる債務というものは、大体営業キャッシュフローの十倍程度だろう、どこの会社を見ても、日本の優良企業を見てもそうなんです。

 そうしますと、十年後に仮に大きな見直しがあって、そのときの意見が、上下一体、個人の会社も道路資産を持っていいという、これは仮ですけれども、結論になったとしますと、十年後にすべての資産と債務を会社が買い取るという形になりますね。

 そうしますと、その時点の債務を営業キャッシュフローの十倍、すなわち民間会社として成り立つようにしますと、十年間に返済可能な債務額というものを返していったとしても、民営化委員会の試算の中で、最低でも八兆円、最悪ですと十兆円ぐらいの債務削減、すなわち、民間企業としてのデッドの部分を切り離す必要が生じるということが民営化委員会の議論の中で明らかになったわけであります。

 先ほど来御議論いただいている固定資産税の課税の問題も生じて、私が考えるには、やはり債務の確実な返済という最優先課題に反するという実態が生じてくる。

 それでも民営化委員会の方々は、十年後に機構を解散して上下一体にしろということを言われた答申を出されましたので、そこの部分と、料金に利潤を乗せるという二点だけを実は私どもは採用しなかったという経緯がございます。

 そして、委員がただいま御指摘になりました平成十四年十二月六日の民営化委員会から提出された意見の後、先ほどもお話ししましたけれども、この答申というものを基本的に尊重するという閣議決定をさせていただいて、政府・与党で検討を行わせていただいて、今御議論いただいている道路資産の帰属というものについては、新会社は十年目を目途にさまざまな見直しを行う、そして、道路資産の買い取りということをしないで、債務完済まで機構が道路資産を保有するという案を採用したわけです。

 すなわち、新たなデッドの部分を切り離してやる案と、両方、政府・与党にも民営化委員会がお示しされておりますので、出したわけです、我々も。

 私も含めてそうですけれども、知事さんあるいは有識者のいろいろな方にお話を伺いましたけれども、それはやはり現実問題としては厳しいんじゃないか、会社による道路資産の保有ということについて支持する意見がなくて、四十三の自治体から明確にそれはちょっとだめじゃないかという意見をいただいたわけです。

 このような複数案を提示して、各方面の意見を伺った上で、昨年の十二月二十二日の政府・与党協議会で先ほどお話をさせていただきました基本的枠組みを決定して、現在御審議をいただいている四法案を作成し、三月九日に閣議決定をして、当委員会に御審議をいただいているという経緯がある。こんな中で固定資産税の議論と上下一体の議論をやってきたという事実がございます。

樽床委員 大臣の時間もあるようでございますので。

 実は大臣、もうややこし過ぎてわけわからぬのですわ、正直言いまして。道路という、車に乗ったら走る、非常にわかりやすいものがある。それについてのあり方が、もうややこしくて、何か専門用語がぼんぼん出てきて、もうわけがわからぬ。こういうことで本当にいいのか。私は、このギャップが必ずどこかで行き詰まるというふうに思いますよ。

 それは結局、民営化というのは、先ほどの原理原則からいくと上下一体なんですよ、民営化をするんだったら。そうでなかったら、我々のように無料化なんですよ。

 何で無料化かというのは、無料化を否定されるというのは、政府は自分を否定するのと一緒でして、高速道路をつくったときに、無料になりますと、初めはそれで始めたんですから、我が国は。東京オリンピックを目指して、高速道路をどんどんつくっていく。これは何年後には無料になります、どんどん値段が減っていくんですと言って始めて、それがまだ実は本則では生きておるわけでしょう。

 だから、四十五年後にもう一遍昔に決めた最初に戻りますとおっしゃっているわけでして、ですから、中途半端なんですね。上下分離をするから中途半端になる。上下一体できなければ、これは民営化する必要もないというぐらいに私は思っているんですが、大臣、どうなんですか。

石原国務大臣 その点も実はすごく議論のあった点なんです。原理原則というものは、やはりこういうときは非常に重要だという認識を持っておりますが、さっき言いましたように、所有権と営業権、日本人は、どちらかといいますと、土地神話というものがあったのと同じように、土地に対するあるいは固定資産に対する執着というものが欧米に比べても高いんだと思うんです。そんな中で、資産を持つか持たないかということとは別に、営業権を持つという民営化もあるんじゃないかというのが今回の民営化の一つのきっかけなんですね。

 それは、フランスでもイタリアでも、営業権、すなわち、資産を保有しないで営業権だけを持っている民営化というものが高速道路の民営化の先進国であった。それを採用した。

 ただそれは、普通の民営化ということ、あるいは高速道路は無料の方がいいという方の方が圧倒的に多いわけですから、そういうことを考え合わせると、委員御指摘のとおり、わかりにくいという御批判を招いている事実は私も素直に認めさせていただきますけれども、やはり、営業権を持った会社の民営化というもの、すなわち、固定資産と切り離れた民間会社というものもあるんだということを今回の四公団の民営化ではお示しをさせていただいたと思っております。

 それと、先ほど日野市長が高速道路に固定資産税を課税するということで、訴訟は現実には起きていないということを訂正させていただきたいと思います。

樽床委員 この法案、私どもは対案を出してやらせていただいておりますが、一言で言うと、こういうややこしくてわからないものは、大概うまくいかないというのが大体世の常なんですよ。難しいことは言いませんけれども、大体、頭ひねくり回して、一時間も二時間も、ううんと考えて何とか理解できるなというものは、うまくいったためしがない、はっきり言いまして。そうすると、これは、早晩そういう壁に突き当たる可能性が大きいというふうに私は思う。

 歯を食いしばってでも民営化するんだったら、すべての資産も、全部ひっかぶってやるぐらいの決意がない。決意が中途半端ですよ、この案そのものが。こういうことを申し上げておきたい。これは強く申し上げておきます。

 一点だけ申し上げますが、先ほどの話で、こちら、私どもの委員からの話で、建設コストのことについて、建設コストを削減する、こういう話でありました。

 いろいろ説明もありましたが、その説明も、その根拠は、いろいろ実は努力目標のような発言をされておられたと思いますが、これは、もう大臣の時間もありませんので、帰られる前に一言だけ大臣にお聞きしたいんですが、なぜ今までできなくてこれからできるんですか。今までできなかった。半分にするわけでしょう。もう激減になるんですよ。これだけのことが今までできなくて、何でこれからできるんですか。それ、ちょっとお答えください。

石原国務大臣 ちょっと禅問答になって恐縮なんですけれども、今までできなかったから民営化という荒療治をして今回やる。それだけ切迫しているし、それだけむだが多かったということで、そういう意味では、当初二十兆円かかると言われていたものを、有料道路事業では、新直轄の三兆円がありますので、十兆五千億にする。ですから、公団方式のもとではできないから、委員は原理原則ではなくてややこしいという御批判をちょうだいしていますけれども、こういうことをやるということをやったからこそできるんだろうと思っておりますし、やらなければいけないんだと思っております。

樽床委員 まだまだ一時間も二時間もしたいんですが、約束ですので、大臣どうぞ、参議院の本会議があるようでございますので。

 我が党の岩國提出者にお聞きしますが、今の議論を聞いておられまして、結局、どうですか。政府の案は、昔言い始めた、昔の原点に四十五年後に返ります、こういうことなんです。今から四十五年後に返ります。

 つまり、高速道路は初めはお金を取ってつくります。でも、そのうち、近いうちに無料に、高速道路はただになりますということで我が国は高速道路の建設を始めたわけです。それで、今になって、やってきたけれども、借金がたくさんたまった、どうしようもない。だから、一番最初スタートしたときの目標は今から四十五年後なんです、こうおっしゃっている、四十五年後には無料にしますと。その経過措置として、債務を減らすためにいろいろな複雑なことをやりましょう、こうおっしゃっているわけです。

 岩國提出者の方では、そういうような議論に対してどういうふうにお聞きになられましたか。

岩國議員 今、大変興味深く、石原大臣と樽床委員との質疑を伺わせていただきました。

 私もああいう経済の世界に三十年おりましたから、やはり複雑な話というのはうまくいかない、これはマーケットの原理です。二番目に、複雑な話というのは投資家を惑わすことが多い。これは政治家として避けなければならないことなんです。

 やはりわかりやすい、高速道路というのは走ればいい、子供たちでもすぐにわかるような、そういうイメージに返すことですね。あれを千二百十三の関所で囲ってみたり、やれ、料金制は昼と夜と変えるとか、ちょこまかちょこまかやること、そういうことはやめて、オープンに明るく、日本の国土の中で一番お金をかけたのはあの高速道路なんです。高速道路の近辺には一万円札がぎっしりと埋まっているわけです、行って掘ったって出てきませんけれども。日本で一番付加価値の高い、一番おいしい部分をなぜ若い人の職場として開放しないのか、そういう声が高まってきています。

 だから、わかりやすく使う、わかりやすくつくる、そういう原理原則に返るためには、私は自民党の原則が一番いいと思っています。今までそう思ってきました。今でも私はそう思っています。高速道路は無料で使わせる。国民はそれを信用し、自民党に三十年間投票してきました。今ここで急に、これからまた四十五年、それはないでしょうということですね。これは、単に自民党が信用されないということだけで済む問題じゃないんです。政党、政治家が信用されないということなんです。

 だから、我々民主党としても、自民党が掲げてきたともしびというのは消してはならない、そういう決意で我々はあえて、いろいろな、受益者負担の原則がああだこうだという話はいっぱいあります。聞いてきました。しかし、自民党が最初から掲げた、国民全体が受益者だ、高速道路は無料でつくる、そのために三十年間我慢してください、プール制度も我慢してください。我慢に我慢を重ねてきた日本国民を私はだましてはならないと思うんです。

 人をだましてお金を集めた人は詐欺師と呼ばれて刑務所に入ります。人をだまして票を集めた人は先生と呼ばれてここへ入っているじゃないですか。私は、そういう政治はやってはならない、それが我々民主党の基本的な概念なんです。

 それから、上下分離、上下一体、これもうんと聞いてきました。

 私は、今まで日本の会社にも勤務しました。外国の会社にも働きました。しかし、上下分離の会社に勤めたことは一遍もありません。アメリカで十年、ヨーロッパで十年、日本で十年、そういう世界のお金の顔を見て、世界のお金の心を読んできて、お金というのは、そういう資産も債務も持たないおかしな会社には投資する人はいません。だからこそ、石原大臣も小泉総理も、政府保証というものをつけなければお金が集まらないということをよく知っておられるんです。これは民営会社じゃないんです。国策会社にしかすぎないんです。

 そういう、政府が保証しなければお金を集められない会社というのは、自立した経営のできる会社ですか。自立した事業方針ができますか。そういう会社を上場させる取引所は世界のどこにありますか。

 私は東京証券取引所に聞きました。上場できる、そういう前提で審議されているのは、これは大きな間違いを前提としているだけなんです。上場できない民間会社を我々今国会がここでつくることを認める、こんな恥ずかしいことはないと私は思っています。

樽床委員 要は、これまで日本政府というのは一時の例外を除いて自民党ということであったわけでありますが、それを私は別に否定も何もしません。事実であります。そのこれまでやってこられたことをよりまじめにやろうというのが岩國議員の出された法案だ、こういう御主張であったわけであります。

 問題は、一つお聞きしますが、岩國議員の提案の法案では、その財源をどこに求めよう、こういうことであるのか、ちょっと簡単にお聞かせいただきたいと思います。

岩國議員 先ほども岡本委員の方からも、そういった償還計画についての質問がありましたけれども、これは今までの資産も債務も国が承継することになりますから、当然、これは国の借金として税金で返済していきます。

 しかし、税金だけではなくて収入も高速道路の事業には伴ってくるわけです。収入というのは二つの収入です。

 一つは、こうしたパーキングエリア、サービスエリア、そういったものを今まで以上に数多くし、しかもアクセスをふやすことになりますから、これは大変有望な事業になるだろうと思います。残念ながら、これは道路事業ではなくて、飲んだり食べたりですから飲食部門です。取引所に上場されるとすれば、運輸交通部門ではなくて、これは飲食サービス部門で上場されるでしょう。社名ももちろん、日本道路株式会社ではなくて日本フード株式会社、そのようにこの法案は変えなければおかしいんです、社名を詐称することになりますから。これが一つの収入源です。

 二番目の収入源は、一定期間、一定部分の路線について、今までと同じように通行料をいただく。なぜか。それは、急激な今までの仕組みの変更が混雑、交通渋滞等を招いてはならない。一定期間の間に、そういった関連した地域の交通体系を整備することによって、お客さんに迷惑をかけない、その一定期間の間、一定路線については通行料金をいただく。その通行料金も、最初の、五年になるか七年になるか八年になるか、その期間は収入として計上することができます。

 通行料金の収入と、それからパーキングエリア、サービスエリアの業務を拡大、発展することによって収入が得られる、それを返済に充当していこう、こういうふうに考えております。

 特に、この委員の皆さんに、違いの点でいいますと、金利というリスクがあるんです。先ほども何度もここで金利リスクというものが言われていました。ですから、民主党案についても、金利というリスクには耐えていかなければならないんですけれども、この政府案の金利というのは今四%あるいは五%で試算がなされておりますけれども、これは単なるイメージ図、これが今までの八%、一〇%になった場合には、手をこまねいて、あえて通行料金の全額、あるいは全額でも足りないかもしれません。民主党案は、通行料金がゼロですから、そういう税金で早目早目に返済していく。高金利の波が、津波が押し寄せてくるときには、先手を打って、早目に国民の負担を小さくするということが可能な手が我々の案には残されております。政府案にはその手は禁じられております。

    〔委員長退席、今村委員長代理着席〕

樽床委員 ちょっと整理して、簡単にお答えいただきたいんですが、要は、税金で賄う部分と、いろいろ上手な営業をして利益を上げる部分と両方で財源に充てます、こういう話ですが、どっちが主ですか。

岩國議員 主はあくまでも税金です。

樽床委員 その姿勢が私は大事だと思うんですね。

 国の借金がこれだけふえて、要は、四十兆円ちょっとしか税収がないのに八十兆円以上の予算を組んでいるわけでしょう。これははっきり言ったらむちゃくちゃな予算ですよ。

 それは、いいことしか言わない政治の体質にあるわけですよ。現状を正直に言って、これは負担してもらわなきゃならなければ、ごめんなさい、申しわけないですが負担してくださいという姿勢を政治が持たなければ、これはどこまでいっても何も解決しませんよ、この道路の問題だけじゃなくて。

 ですから、そういうようなことを考えると、我が岩國議員の案は、税金を上げる、もしくは税金を上げたくなかったら減らすものは減らすということを明確にしているというふうに理解してよろしいんでしょうか。

岩國議員 もちろん、我々も、税金はどんどん野放しで使っていこうというつもりは全くありません。今の財政事情は、我々政治家以上に国民の皆さんが痛切に感じているんですから、税金は少なくしなきゃならぬ。ですから、今まで以上に優先順位を厳しく選別し、また効率的な管理、補修というものを心がけていかなきゃならないことは言うまでもないことです。

 ですから、民間会社に丸投げするのではなくて、国が責任を持って、管理も補修も建設もきちっとやっていく。返済も、そういうマーケット任せ、通行量任せ、景気任せ、あなた任せではなくて、自分たちできちっと返済できるような、税金というかたい返済計画でこの借金をできるだけ早く繰り上げ償還してしまう、それが国民負担を最小にする最善の道だと私は思っています。

樽床委員 そういう前提で最後に一点お聞かせいただきたいんですが、今、年金法案もよそのところでやっていますけれども、消費税のことが、実は与野党の意見が違うわけであります。

 私は、消費税の話を言い出すと、これは政治家としては非常につらい、しかし、言わないのは無責任だと思っているんですよ。要るものは要るとはっきり言って、これは国民に信を問わなきゃならぬ、このように思いますが、消費税の話じゃなくて、道路特定財源は今のいろいろな話の中でどう位置づけられているんですか。

岩國議員 道路特定財源については、最終的には高速道路事業改革推進本部、これは内閣総理大臣が本部長という中で、予算の中での組み替え、あるいは道路特定財源のあり方を決めていくわけですけれども、今現在の考えは、この道路特定財源を直ちに廃止する考えはありません。料率を上げる考えもありません。

 今まで、道路特定財源という名のもとに徴収され、それがほかの目的に使われておった、この辺に非常に不信感がありますから、道路のものは道路で使う、そうすることによって返済計画にこの道路特定財源という収入も使っていきたい、そのように考えております。

 繰り返すようですけれども、道路特定財源のあり方については、新しい交通体系、そして無料という形で高速道路を開放した場合にどういう経済効果があるか、そういったこととも絡めて、道路特定財源の将来のあり方というものはこの推進本部で決定したい、そのように思っております。

樽床委員 特定財源が、今使われているものが道路ということの考え方が非常に広まってきた、要するにはっきり言ったら、どんどん解釈が広がっていっているのでそれを厳密にして、この償還に充てましょう、こういうことでいいんですか、今の考え方は。

岩國議員 樽床委員の御理解で正しいと思います。

樽床委員 そういうことも踏まえて特定財源をどうするかというのは、これはかなり大きなテーマでありますから、私は、特定財源も、これも実は何十年も前にできた法律に基づいて、それが五年か何年か知りませんが、順番に臨時措置法がずっと、永久に、四十年も五十年も続いている、何が臨時なんだ、こう思います。それだったら、正直に、臨時じゃなくてきちっとした法律にすればいいわけでありまして、そういうごまかしをやめる、すべてのことについてごまかしをやめて、批判は批判で受けながらきちっと前を向いて進んでいく、こういう政治を実行する、そのために今回このような法案を出された、このように認識をいたしております。

 その思いにのっとって、岩國議員が提出された法案が成立をするように我々も一生懸命頑張りたいな、このように思っておりますことを申し添えて私の質問を終わります。

 以上です。

今村委員長代理 中野正志君。

中野(正)委員 自由民主党の中野正志でございます。

 実は私は、先週の金曜日に民主党さんに対して質疑ができるのではないかと思っておったのでありますけれども、対案を出しておきながらなぜか突然の審議拒否、しかも厚生労働委員会にはバリケードまでつくったというのでありますから、学園騒動を見るのか、あるいは学芸会もどきの国会寸劇を見るのかわかりませんけれども、大変残念に感じたところであります。

 どうせ審議拒否をされるのなら、腹をくくってずっと審議拒否をしていただいた方がいい、そうも感じるぐらいの大変不快な念を持たせていただきました。

 それはともかくとして、きょうは岩國議員に御質問を申し上げたいと思います。

 本論に入ります前に、きのうの四月二十日、読売新聞に「民主党 トップダウン」という記事が掲載をされました。

 岩國議員には前もってお話を申し上げておりましたけれども、それによりますと、民主党の政策決定は、党内の正規の機関の十分な議論を経ずに、政策がトップダウンの形で決まることも少なくない、こう書いてあります。その例として、衆議院選挙の政権公約、いわゆるマニフェストに掲げた高速道路無料化案はその典型だ、しかもこの案は、きのう参考人でお出かけをいただいた山崎養世さんだった、こういうことであります。

 それを聞いた菅代表は、無料化こそ本当の構造改革だと信じられまして、周りから、いや、安直な政策変更は国民の皆さんの信頼を失うよ、そういうふうな翻意を促す声をよそにして、結果的には民主党の政策の目玉としてこの衆議院選を戦われたわけであります。

 ちなみに、民主党は、この衆議院選挙の終盤で、菅内閣のいわゆる閣僚名簿を発表いたしました。いろいろマスコミで、ユニークに喧伝をされた極もあったのでありますけれども、そのときの国土交通大臣はこの山崎養世さんでありました。そして、選挙が終わりましたら、次の内閣では佐藤謙一郎衆議院議員でありました。そして、しばらくたって十二月の十一日になりましたら岩國哲人さんが国土交通大臣だと。

 わずか一カ月半やそこらでくるくるくると大臣が三人もかわる、これはさすがうちの自民党でもやったことがないな、そんな気持ちで実はいるのでありますけれども、これでは、次の内閣では岩國さんではなくてだれがNC国土交通大臣になるのだ、こう考えざるを得なくなってしまう。まさに、大変失礼な言葉でありますけれども、国民をおちょくった人事なのではないですか。

 今回、岩國さんが提出者にはなっておりますけれども、この三代のNC国交大臣、だれが今回のプランをつくられたのですか、こうも実は疑いたくなるぐらいであります。

 私たちは、やはり政治というのは、言葉、動作、いわゆる言動に責任を持つ、それが最も大事でありますし、政権公約でありますから、政権を奪わない限り、できるものもある、できないものもある。しかし、せめて党内の次の内閣の選任というのは、一〇〇%菅代表はできるはずなんですよ。にもかかわらず、それすら実現しないようでは、民主党の行ってきたことは結果的に何も信用できない、これを今回の法案の前段で申し上げたいと思うのであります。

 まず、岩國委員、いかようにお考えになられますか、わずか一カ月半で三人の大臣ですから。

岩國議員 他党のそういった党内のポストについて大変関心を払っていただいているようですけれども、この三カ月の間、一カ月の間とおっしゃいますけれども、佐藤代議士は、あれは去年、選挙の前の国土交通大臣を党内でやっていただいておりました。ですから、少し順序が違うんじゃないかと思います。

 選挙期間中、外部の方をということで、菅代表の発想でああいう発表をされましたけれども、いろいろ考えた末、私の方がやはりよくできるだろう、こういうことで、党内のコンセンサスを踏まえた上でそういう発表がされたわけです。

 例えば、この道路民営化についても、小泉さんは、今まで一人の国土交通大臣でずっとやってこられたかどうか、お考えになったらよくおわかりのことです。我々は、この部屋で、少なくとも、一人の国土交通大臣とこの道路公団民営化をずっとやってきたという記憶はありません。途中で国土交通大臣はかわっております。それは、議事録を見ていただいてもはっきりしていると思います。

 次にリーダーと言われる方が、これは中野先生もよく御承知のことで釈迦に説法だと思いますけれども、中野先生がお仕えになった三塚先生にしても、ほかのリーダーの方もそうですけれども、人の意見をよく聞かれる方であります、内部の方も外部の方も。特に、最近の小泉総理は、党内の意見よりも国民の意見の方を聞く、だから自民党もぶっつぶすんだと、これが大変国民にアピールして、支持率八〇%。今、時代はそういうふうに変わってきていると思います。

 党内の意見だけ聞かないで党外の人の意見も聞く、これは、与党、野党問わず、私は必要な政治姿勢ではないか、そのように思います。

 現に、この山崎さんの意見を聞いて、高速道路無料化が始まったというふうにおっしゃいましたけれども、党内では、山崎さんの意見で民主党がやったというふうに思っている人は非常に少ないんです。今から二年前の四月に、私や横路さんや七十四人の国会議員が署名をして、既に高速道路無料化というのは鳩山代表に上げてあるんです。時間が少しかかり過ぎました。しかし、外部の人も言うんならという最後の決断にそれは使われたかもしれません。

 私が大変お世話になりました竹下登元総理大臣、人の意見をよく聞いておられました。しかし、一度も、外部の人の意見を聞いたからこうするんだということはおっしゃらなかったんです。いつも自民党の内部の人の意見を聞いたかのようにしてやっておられました。これもまた私はリーダーとしての一つのスタイルではないかと思います。

 人それぞれに生まれ、生い立ちが違いますから、そういう、党の中で自分の存在感を際立たせるために、外部の人の意見を聞いて、内部の人には余り人材がおらないと思わせることによって存在感を浮き立たせようとする人も、それは中にはあるかもしれません。しかし、竹下さんのように、中に十分に人材はいなくても、人材がいるかのごとく思わせる人も、これもまた一つのリーダーのあり方じゃないでしょうか。

 率直にと言われましたから、中野先生、私も率直にお答えいたしました。

中野(正)委員 岩國さんらしい答弁だと思います。

 ちなみに、どうあれ、そのわずか短い間のそういった大臣更迭劇、選出劇とでもいうのでありましょうか。この記事によると、鹿野道彦NC農水担当、菅さんから農業関係とか農村回りの説明を受けたのは、二月に入ってからだったという。次の内閣閣僚の一人はこう言った、民主党の悪いところは、積み上げてきた議論が頭越しに一瞬で翻されることだと述べている。

 そういう意味では、今の岩國委員の話ではありませんけれども、民主党の菅代表は人の言うことは聞かない、非常に非民主的で独善的だと。

 まず、そう言われたくなかったら、選挙で言った、民間人あるいは知事をネクストキャビネットでちゃんと大臣として遇するべきだと私は思います。これ以上申し上げません。

 質問に入ります。

 十三日の参考人質疑では、正直、高速道路無料化案につきましても、野党側の参考人の方々から賛同の声はありませんでした。きのうは、お二人ですか、お話がございました。もちろん、ロジスティックのコスト、料金値下げ、これはもう道路のみならず、港湾だって空港だってそうであるということは、私どもも十二分に承知はいたしております。しかし、現実性を持たない。後で数字を申し上げますけれども、いずれにしても、この野党推薦の参考人からも賛同する声はなかったということに対して、十三日ですね、岩國委員はどんなお気持ちを持たれたかなと。

 それから、申し上げましたように、民主党がこの衆議院選挙で有力な武器として使われたのであります。あのときは、国民の皆様は非常に興味を持たれました。しかし、今、マスコミが、民主党さんが対案を出したからといって、全然大々的にも取り上げてくださらない。国民の皆さんも、もう白け切って、年金の話題は出ますけれども、高速道路の話は出ません。いかが感想をお持ちになりますか、お伺いをしておきたいと思います。

岩國議員 この高速道路無料化というのは、年金の問題に比べてはるかにわかりやすいんですね。無料にするかしないか、それだけですから。新聞も、何回も繰り返し繰り返し、年金のようにああだこうだというふうなことを説明する必要もない。ですから、これはもう十分に国民の皆さんに知れ渡っていて、そして、知れ渡っているからこそ、自民党の皆さんもここでの審議に関心を持っておられると思います。

 それから、先ほどの参考人、参考人をどなたに来ていただくか、私自身も個人的にお願いして来ていただいた方もいらっしゃいます。それは、私がお願いした、民主党のお願いだから、民主党寄りのことをしてくださいということを私は一遍も言ったことはありません。

 事前にいろいろなところで意見を調べて、この方はもともと自民党寄りの方ですよと私に注意された方がありました。私は、それでも構わないからここへ来ていただこうと。そういう今までの参考人の方とはちょっと違った感覚、違った仕事の立場から、目線から、新しい感覚をおっしゃっていただけるんじゃなかろうかと。もちろん、バランスをとるために、民主党の方も、我々の出している法案に理解を示していただく方もお願いもしましたけれども、理解をされない方にも来ていただいた、それは事実でございます。

 したがって、民主党がお願いした参考人だから、その参考人からさえも応援してもらえないんじゃないか、それは、我々、最初からもう計算の上です。

 無料化に反対される方は日本のどこかにいらっしゃるということは、それは今でも知っております。しかし、自民党が今まで無料化、無料化を掲げてこられた。それを今でも期待しておられる、信じておられる方、それは、我々の法案をもっともっとPRすれば、関心は高まり、期待は高まり、そして賛成者が得られる、そのように思っております。

中野(正)委員 その我々の法案でありますけれども、私もずっと読ませていただきました。端的に言えば、数字が全く出てこない、一カ所、二カ所ぐらい出ましたでしょうか。そういう意味では、改革先送り、政府丸投げ法案とあえて批判をいたしますけれども、実はそんな感じを持ちました。

 この民主党の基本法というのは、無料化という、確かにキャッチフレーズはあります。しかし、具体的な枠組みというのは政府で今後検討するということになっているのであります。さすれば、私たちが今政府案を基にして議論していることと、はなからもう議論が合わない、これをまず言っておきたいと思います。

 一つには、やはり債務返済をどうするのかということについて、民主党のどなたかが、数字こそすべてだと言った人もおりますけれども、その言をかりれば、債務返済をどうするのだ。二つ目、課金は、具体的にどの路線について、いつまでどの程度の課金とするのか。これは後者が質問いたしますから、お答えいただかなくていいです。三つ目、今後の高速道路の整備、管理、これは責任を持ってやれるんですか。四つ目、一般道路事業や地方が行う道路事業への影響、これはどうなるんだ。そういうふうな、正直、具体的な中身が全く見えてきません。

 そういう意味では、私は、率直に言いますと、無責任でありますし、政権を担いたい、こう標榜される政党の提案だとはとても思えない。ぜひ、考え方を数値を入れてお示しいただきたいと思うのであります。

岩國議員 我々は、数字はもう既に示しております。数字というのは二つだけ、三という数字とゼロという数字。通行料はゼロ、時期はいつか、三年後、この二つさえあれば我々の法案は全部説明できるんです。一番基本的なことはそうでしょう。

 通行料金を幾らにするか、一割下げるとか、二割下げるとか、その辺もあいまいなままに政府案は提示されてきております。債務はいつ返済されるか、それも四十五年以内。しかも、通行料金は景気任せ、人任せ、車任せ、払うべき金利は金利任せ、要するに、入ってくる方も出ていく方も数字がはっきりとわからないんです。

 ですから、数字がないとおっしゃっていますけれども、数字は、ゼロという数字ははっきりと出しています。通行料金は幾らにするんですか、七割でも六割でも五割でもない、はっきり最初からゼロ。そして、いつからやるんですか、三年後に。もうこれだけ、一番わかりやすい三とゼロ。野球のスコアボードのように、小学生でもすぐわかる。一番わかりやすい数字はちゃんと我々投げ出して、基本法案はやっています。

中野(正)委員 岩國議員は三とゼロなんだそうでございますけれども、そんなことで国民の皆様は納得はされない。もちろん、私たちも全く納得しない。結果的に全部先延ばしじゃないですか、三年後まで。三年後に道路特定財源から幾ら、あるいは何々から幾ら、こういう数字だろうと思うのでありますけれども、私たちの今の案からいたしますと、全く数字に具体性がない。

 ちなみに申し上げますけれども、民主党はマニフェスト、去年の数字で申し上げますけれども、今、日本全体の道路予算は九兆円だ。そのうち二兆円を道路公団の債務返済と道路の維持管理に回します、二兆円。三兆円、道路特定財源から一般財源に回します。これで五兆円になりますね。あとは、御存じのように地方政府分、地方自治体分が四兆円ありますから、それでもう道路財源九兆円はパアであります。

 今の三とゼロということであれば、このマニフェストからいたしましても、全く理由がつきません。まして、去年のマニフェスト、これはしようがありませんけれども、選挙では私たちも一方通行の議論を聞くだけでありました。ゼロだということであれば、道路混雑解消、これを解消させるための新しい道路もつくれない。バリアフリーの道路もつくれない。あるいは、一部今地下鉄建設になんか振り向けていますけれども、それもできない。あかずの踏切、これもだめ。電線の地中化もだめ。だめだめだめなんですよ、九兆円の去年の民主党のマニフェストからすれば。

 そうしますと、今の岩國さんのお話ですと、結果的には、道路財源は一般財源化するという民主党のあのマニフェスト、ほごにされたという理解でよろしいんですね。

    〔今村委員長代理退席、委員長着席〕

岩國議員 まず、債務返済スキームについて少し詳しくお話しした方がいいと思うんです。

 民主党案は、三年以内に高速道路原則無料化する、これが三とゼロ、先ほど申し上げましたけれども、それを明記しているところです。民主党のマニフェストを忠実に実現するためのものは全然変えておりません。民主党が政権を獲得すれば、この方針に従って政府予算を作成し、政府丸投げというような批判もいただいておりますけれども、我々は政府をまだ持っておりませんから、丸投げしようにも丸投げするところはありません。

 無料化した場合に、債務返済、これについては、現在の道路関係四公団の債務を主に国が承継することになりますから、基本的には税により返済することになります。具体的には、内閣に設置される本部の定める推進計画でその債務の返済方法を定めることにしております。

 この点を先送りというふうにおっしゃるんでしょうけれども、我々は、政権獲得を三年後と、それは既に、三年後がずるずると三年たったらまた三年後というのではなくて、三年後というところにちゃんと仕切りはつくってありますから、これは先送りというのではない。政府が提案していらっしゃる四十五年以内に債務返済とかそういったことに比べれば、はるかに具体的に手が届くようなところの三年後という約束、この約束は、大変私は重いものであり、また明快なものであると思います。

 それから、高速道路の円滑な交通の確保のための有料区間をどこにどの期間設定するか。これは、債務返済のパターンもいろいろ考えられるものでありますけれども、債務の償還と高速道路の補修、管理費用の財源は、道路特定財源の国分と、パーキングエリアそれからサービスエリアの事業収入から捻出することを想定しておりますが、課金による、通行料金による収入もこれに充てることができると考えております。

 政府の試算による通行料金の収入、これで、我々は、それが政府の正しい試算であれば、その試算を前提とすることもやぶさかではありません。民主党がやったから通行料金の収入が急に三年目からふえる、そういうことではありません。そういった政府が設定をしております金利コスト、四%、五%も、首都高あるいは阪神道路公団、そういうところの収入予測というのも、今までの実績も踏まえて、我々はそういったことの返済計画をつくっておるところであります。

 課金につきましては、民主党はマニフェストで高速道路三年以内原則無料化を掲げておりますけれども、地方では、高速道路が整備されていても、有料とされていることから十分に利用されておらず、並行して走るバイパスが渋滞しているような状態を解消し、地域の人たちが利用できる道路にすることで地域の活性化や日本経済の再生を行うものです。

 したがいまして、首都圏や阪神圏などでは、高速道路を無料開放することにより、かえって交通渋滞を招き、高速道路の機能を十分に果たすことができない場合も想定されます。

 したがいまして、このような区間につきましては、一定の通行料金を徴収することにより交通渋滞を緩和し、高速道路の機能を十分に発揮させるため徴収するものがこの法律で規定する課金の制度であります。

 特定財源等につきましては、津川代議士の方から答弁していただきます。

津川議員 お答えをいたします。

 昨年私どもが民主党のマニフェストで掲げた道路特定財源の一般財源化についてお答えをさせていただきます。

 御指摘のとおり、民主党は、昨年の総選挙、マニフェストの中で、道路特定財源の一般財源化ということを公約に掲げております。

 その以前から、一般財源化ということについては党内で議論をし、提案をさせていただいたところでございますが、その実現につきましては、私どもが国会に提出をいたしております公共事業コントロール法案というものの中で、特定財源の一般財源化については、この法案とは別に、別途措置をしているところでございます。

 ちなみに、道路特定財源を一般財源化したときに暫定税率が本則に戻る、それで税収も大幅に減るのではないか、先生が御指摘をされたいのは、要は税金で借金を返すということになると、例えば新たな高速道路の建設ですとか、あるいはその他の道路事業というものの予算が大幅に圧縮されるのではないか、そういった御懸念であろうかと思います。

 この一般財源化につきましては、民主党の考え方といたしましては、まず、揮発油税については現在の暫定税率を本則とするということを考えております。ただし、重量税などについては本来の本則に戻すという考え方を考えておりまして、必ずしもこれを一般財源化することによって税収そのものが大幅に減るということは考えておりません。

 また、今岩國議員の方からもお話がございましたが、高速道路の建設ということと一般道路の建設というものを今まで別々にやってきたことによるロスというものも大変多くあるわけでありまして、そういったものを一体にして計算をし直すということによって、大幅に今までの計算されていたコストと計算を変えることができるであろうと考えます。

 それからもう一つは、今政府の方から法案が出ている中にも、高速道路の建設を二十兆を十兆円に減らすというような話もございますが、当然のことながら、工法の見直しですとか、あるいはルートの変更ですとか、そういったこともやっていかなければならないと思います。

 ただし、一般的なお話とさせていただきますと、例えば今、日本の道路事業費が非常に大きいというような批判がございます。それに対して、政府としては、まだまだ日本は欧米諸国に比べて道路の整備がおくれているという話であります。逆に申し上げますと、この道路整備がある程度完了してまいりますと、今までと同じような事業費というものは必ずしもかかってこないというような議論にもなってこようかと思います。

 いずれにいたしましても、数字をという話でございましたが、仮にいろいろな、さまざまな仮定を置いて計算することはもちろん可能でありますが、そういった要素、今後私どもが、民主党が政権をとった後にどうするかということには、必ずしも、今の段階で、仮定をすべて置いて出すという数字に余り意味はないのではないかというふうに考えております。

中野(正)委員 お二人の委員の答弁で、結果的には数字が何も出てこない。三年後、政権をとったらそのときにはっきりさせるんです。

 よく私は岩國さんの原稿を読ませていただいて、岩國さんは語彙の表現の達人だ、本当にすぐれた人だと正直思っております。

 しかし、この法案を見る限り、さっき申し上げましたように、三年後、無料化というキャッチフレーズが躍った政府丸投げ法案。それから、債務の返済をどうするのか、一切御説明ありません。そういう意味では先送り法案であります。また、高速道路の建設、管理のめども全く示されない、そういう意味では無責任法案であります。あと、これから議論したいと思いますけれども、何か、税金で公団職員を雇うようになる、あるいはリストラもその後引き続きやられるようでありますけれども、どうあれ、行革逆行法案だ。

 私は、あえて率直に、岩國流の語彙の表現をかりれば、そういうふうにこの法案を申し上げたいと思うのであります。

 ちなみに今、道路特定財源はちゃんと一般財源化するのだみたいな話でありますけれども、数字が示されない限り、そんなのは机上の空論というのであります。机上の空論であります。私は率直にそう思います。

 ちなみに私、数字で出しますから、数字で出してくださいますか、津川さん。

 まず、平成十五年度、道路特定財源、国分で三・二五兆円あります。それから、地方分で二・二五兆円あります。言ってみれば五兆五千億円であります。これは財源面から見た数字でありますよ。そして、一般財源として地方分が三・四七兆円であります。

 これを今度、国費の関係だけで、事業実施の面からだけ数字を申し上げますよ。国直轄事業で国費一・五兆円だけなんであります、いかにも巨大な数字に間違えられておるかもしれませんけれども。それから、国庫補助事業、国費として一・六兆円であります。あとは地方の単独事業で三・七一兆円ということになるのであります。直轄には当然、裏負担ということで地方政府負担分、これが〇・六兆円。それから、国庫補助事業の方は一・三兆円、地方政府分。

 こうありますけれども、この数字から見ると、どんな形にしようと、道路特定財源を一般財源化するなんというのは、一兆円ぐらいとか五千億円ぐらいだということであれば数字のつじつまは合うかもしれませんけれども、全く合いませんよ。違いますか。

 まあ、いいです。答弁は要りません。いずれにしても、そんなことであります。もう答弁できないんですから、しようがないですね。

 続いて申し上げますけれども、政府案は、御存じのとおり、いずれにしても受益者負担という考え方に立っておるわけであります。もしかして民主党さんのこの案が通ったとして、高速道路の債務返済の考え方というのは、さっきから聞いていますけれども、結局、高速道路利用者のほか、高速道路を使わない人、高速道路がない地域の人にも結果的に負担を拡大するということになるわけですけれども、税の公平、公正の原則からいたしますと、これは問題だと思うのであります。

 それからもう一つは、首都圏あるいは阪神間の高速道路の利用者、これは何年か先、ずっと先になるようでありますけれども、料金も負担するということになりますと、二重負担ということになって、これまた不公平ということになるんじゃありませんか。これだけはお答えください。

岩國議員 二番目の、二重負担ではないかということについてですけれども、これは現在とどこが変わるんでしょうか。

 私は、今の首都高それから阪神、そういったところの料金をさらに上げるならともかく、今の料金をそのまま維持して一定期間後にそれを廃止していきたい、そういう考えでおりますから、仮に二重負担で不公平だという声があるとすれば、現に民主党の中の国会議員からもそういう声が出ております。だからこそマニフェストのときには、ずっと有料制を続けるかのごとくその説明はされましたけれども、マニフェストをある意味では修正し、その点においては不公平感を和らげる方向で我々の法案というのは改良されております。

 それから、高速道路が永久にできない地域も、それは日本としては結果的にあるかもしれません。そういう地域において、結果的に、受益者であるというのは、ハンドルを握る人だけが受益者ではなくて国民全体が受益者だ。現に我々がお手本としてきた民主主義のアメリカ、イギリス、ドイツ、そういったような先進国、経済的な先進国、政治的な先進国の中で、なぜ車に乗る人からだけ取ろうとしないんでしょうか。それは、高速道路というものが有形無形に多くの国民の生活を支え、経済を支え、受益者というのは国民全体である、きのうの参考人の御意見でもそれははっきりと言われておりました。

 そういう国民全体が受益者だという考え方に立って自民党は無料化を早く実現すると言ってこられたんじゃないんですか。それとも、無料化というのが不公平であるならば、不公平を実現するために一生懸命努力してこられたんでしょうか。

 私は、自民党は国民政党である以上、国民全体が受益者だという考え方、哲学に基づいて、我々も同じような哲学を持ち、その哲学を共有する仲間として私は議論させていただきたい、むしろそのように思っております。

中野(正)委員 とにかく岩國委員、この三十分の議論だけで三とゼロは確かに出てきました。あとの数字は全然出てこない、全然出てきません。

 しかし、政府案に対して、岩國委員はいろいろ御提案も申されました。政府通貨の発行にまで言及されました。また、きのうは民主党推薦の山崎さんですか、あの方は、一括、もう国債で処理しろ、こういうお話もございました。

 そんなことで、まず私たち政府・与党として、この四十兆円の処理をいかにするか、これが大事だからこそ、先ほど来、またずっとここしばらく、石原国土大臣が何十回も民主党の議員の人たちに答弁をしてきております。債務処理、どうするか、これをひとつ岩國委員、代表としてどうお答えされますか。

岩國議員 中野委員から大変貴重な御質問をたくさんちょうだいいたしまして感謝しておりますけれども、これは一番大事なところだろうと思います。

 民主党は、国が債務を承継し、国の責任においてということは、予算の中で債務を処理していく。なぜなら、四十五年後に有料化制を廃止して、四十五年かかって債務を返済するというのは、四十五年間マーケットの金利リスクというものに耐えていかなきゃならぬ。通行料収入を上回って、今まで四十兆円の通行料を受け取って、三十兆円金利に払ってきたんです。これをこれからも四十五年間同じようなパターンで続けるのか。そうであってはならない。できるだけ早く税金で繰り上げ償還していかないと、四十五年の中には金利の津波のような八%、一〇%の高金利のときに手をこまねいて、そのまま通行量任せ、人任せ、景気任せで、それではとても足りないわけです。責任を持って処理しようというのであれば、私は、国会も政府も、ここは腹をくくって、税金で処理していく、しかも前倒しで。

 私は、政府紙幣ということも議論もいたしました。昨日の参考人の秋田県知事も、国債でもって一括返済してしまったらどうなんだ、そういう意見も言われました。山崎さんも似たような意見で、繰り上げて償還すること、これが国民のそういう負担を最小限にすることなんです。

 先ほど、行政改革といっても、先延ばしと。本当の行政改革は、人を減らすことではありません。行政コストを下げることなんです、税金負担を含めて。税負担をどうやったら最小限にできるか、それを、私は、与党も野党も今が知恵の出しどころだ、そのように思っております。

中野(正)委員 後段の一部については、岩國委員のとおりであります。当然、長期債務でありますから、借りかえができるのなら、もう公団だって借りかえ、あるいは、今度の債務返済機構だって、それは借りかえできるということならする。

 しかし、現実的に、残念でありますけれども、きのう山崎さんやら秋田県の知事から言われたことというのは、できない。有利子債務三十八兆円のうち、民間借り入れだけで八兆円、政府保証債で二・五兆円、あるいは簡保資金で十二兆円。結局、有利子債務の六割というのは債権者が政府以外でありますから、繰り上げ償還の強制、これはできない現実があります。

 しかも、山崎さん、大変威勢のいい話をされましたけれども、例えば平成十六年度の国債発行計画では、三十年国債の発行予定額、わずか二兆円なんです。これが三十八兆円の規模になる。しかも三十年を超える期間の国債だ。それを二・五%やそこらで発行するなどというのは、もうとてもとてもできる話じゃない。これは、どうしたって大幅な利息をつけざるを得ない。それを全然しんしゃくしないで、数字で踊らされても困るなという、正直、現実、きのうは篤と感じさせていただいたところであります。

 ちなみに、今度は、最後の質問になるのでありましょうか、民主党は、政府案にあるこの会社、民間企業の、民間会社としての体をなしていない、大分に批判をされました。

 しかし、つらつら考えてみますと、今、私たちの日本の社会で、法人税、地方税を納めております企業というのは、わずか三十数%。あとの六十数%は赤字であります。スタートとんとんということであれば、私はこれは、優良とは言いませんけれども、先の見通しは大変にいい企業だと実は感じております。

 私も、国会議員でなくて、社長、ぜひ頼むと言われたら、私は喜んでやらせていただきたいぐらいであります。

 問題は、会社設立後の経営力だと思うのでありますね。経営力なんですよ。これは、JR各社を見るとおり、あるいはJR各社の関連事業者を見るとおり、私はそうだと思うのであります。

 ちらっとお話を聞いたのでありますけれども、今、日本道路公団、広告料収入はほとんど入っておらない。もちろん営業活動もしていないのでありますから当然であります。JRは幾ら入っていると思いますか。各社トータルで一千数百億円なんであります。これを、道路公団各社にいい形で営業努力してもらったら、大変な広告料収入がまず出てきます。民間企業でありますから、それは出てきます。

 それから、民主党の幹事長岡田さんの御実家、ジャスコ、イオン、こういうところと提携しながら、それこそ岩國さんもおっしゃいましたけれども、SAもいろいろ多くつくりまして、こういう提携した大きなスーパーマーケットとやっていったら、まだまだ収益が上がってくる。あるいは、猪瀬さんがおっしゃいましたように、ネットワークビジネスだって、やりようではどんどん出てくる。あるいはまた、このごろ、はやっておりますけれども、何で高速道路におふろがないのかな、スーパー銭湯みたいなところをどんと一つつくっただけで、もうあんなたくさんの愛好者が出てくる。

 ですから、せっかくあるこの道路という貴重な資産、そして二兆六千億円のキャッシュフロー、実質六千億円でありますけれども、これを、コスト削減をしながら、それでいて、どんどん新しい収益を生み出す事業がやれるということであれば、私は、この新しい民間会社というのは、本当にいい形で育っていく、それぐらいのむしろ温かい目で見守ってあげた方がいい。また、必ずそう育つはずだ。

 もう、正直民主党では、ごめんなさいね、知恵があればいい、これはお励ましですよ。しかし、独立行政法人のままの方がいいとか、あるいは今のままでいいとかという議論をされた方もおりますけれども、とにかく、今回はこういう形の政府・与党案に御賛同いただいて、高速道路からの収入も、もうとにかくどんどん出す、出させていただく。また、こういったビジネスでも新しい収益をどんどん確保していく。その中で、債務返済をできるだけ短い期間でやって、あとは、もう前段でそれはお互いの共通認識でありましょうけれども、国民負担がゼロになればそれは大変幸いなことであります。

 しかし、やはり先ほど来この辺からもお話が出ておりますように、新しい有料道路をいかに建設するかとか、地方道の整備をどうするかとか、踏切解消とか電線地中化とかバリアフリーとか、いろいろありますから、そういったところにも目配りしながら、なるほど、国土交通行政、政治というのは違うもんだい、そういうふうに国民の皆さんからむしろ評価してもらえるような私たちでなければならないと思っておるわけであります。

 岩國さんにその感想をお聞きいたしたいと思います。

岩國議員 大変迫力と意欲に満ちた御質問というか御提言をいただいて、私も、聞いているうちに、それほどいろいろとやること、できることがあるならば、中野さんのような方が社長になられるんだったら、ちょっと考えないでもありませんでしたけれども、しかし、私は、この民営会社にはいろいろな問題があるということをこの質疑を通じて明らかにしました。

 まず、社名が間違っているということ。次に、上場できない民間会社になってしまうということ。それから、借金するときにも、乳母日傘で、政府保証という、人に保証してもらわなきゃいけないような会社であるということ。まだまだ七つ八つ、たくさんあります。

 私は、中野議員さんがそういうところの社長になられることを、友人としてお勧めできません。中野さんが不幸にして野に下られたときに、私は手紙をお書きしたことがあります。あなたのような人は、一日も早く国会へ帰ってきてほしい、私は今でもその気持ちでおります。こういういいかげんな、そして問題を全部先送りにして、そして収入は景気任せ、車任せ、人任せ、支払いは金利のリスク任せ、こういう危険な会社の社長になられることを、私は友人としてお勧めできないというのが私の感想であります。

中野(正)委員 岩國さんとは友達ではありますけれども、党派は今違いますから、こういう議論になるのではあります。いずれにしても、認識の違いがあります。当然ながら、政策の違いもあります。

 ただ、率直に私はあえて最後に申し上げますけれども、とにかく、先ほど言いましたように、先送りであり、また、政府に丸投げする法案であることは間違いない。ただ、選挙で、参議院選挙も控えておりますけれども、私たち民主党は高速道路基本法案を出した、しかし、結果的に与党につぶされた、その既成事実が欲しいだけなのかなという実は悪い受けとめ方をさせていただきます。

 とにかく、さっきから言っておりますように、何ら具体の数字も示されない、そういう意味では、選挙目当ての法案にしかならない。このことで最後の批判をさせていただきまして、ちょうど四十五分間でございます。質問を終了いたします。

 ありがとうございました。

赤羽委員長 高木毅君。

高木(毅)委員 自民党の高木毅でございます。

 中野委員に引き続きまして、民主党提出の高速道路事業改革基本法案、そして時間があれば一部政府にもお尋ねをしたいというふうに思います。

 まず、今、中野委員がいろいろと法案の名前をつけておりました。丸投げだとかあるいは先送りだとかいうふうに言っておりましたけれども、私も、基本法というのに名をかりた具体性に欠けた先送り法案だというふうにまずは指摘をしておきたいというふうに思います。

 先ほど来、樽床委員との議論もございましたし、今も中野委員との議論もございましたので、例えば債務返済等につきましても、そこそこは私も理解はできましたけれども、ただ、十四日に提出されたこの法案を拝見しても、あるいはまた、趣旨説明をお聞きしても、そんなことが全く書いていないわけであります。またあわせて、無料化についても、いろいろと今議論で明らかになってはきましたけれども、当然そういったようなこともこの法案には記されていないわけであります。

 まず、これは通告してございませんが、ひとつお聞きしたいのは、政府はしっかりとした、私なりに、具体的なことを示した法案を出してきた。それに対して、今岩國先生のお話をお聞きしていますと、かなり、納得したわけではありませんけれども、そこそこ具体的な話も出てくるわけでありますけれども、にもかかわらず、なぜこの時点で基本法というものの形で出してきたのかということを非常に疑問に今感じましたので、通告してございませんけれども、ひとつお聞きしたいと思います。

 それから、先送りだという話をさせていただいておりますけれども、十三条で、いわゆる本部、高速道路事業改革推進本部というのを設置する、そしてその中で高速道路事業改革推進計画をつくるんだというようなことが書いてあって、その中で、八つ項目があったというふうに思いますけれども、そういったことを決めていくんだということなんでありますけれども、ここでお聞きしたいのは、本部長は総理であるということなんであります。

 その中で、国会の関与についてお聞きしたいのであります。

 いわゆる国民の代表である国会の関与でございますけれども、本部長は、国会に対して報告と、その要旨を公表するということになっているわけであります、法案におきまして。これでそのいわゆる国会の意見というものをどのように反映させるのかということ。基本法であるから、すなわち余り具体性がないとおっしゃるのならば、三年後はこういった本部でいろいろなことを決めるんだ、だったら、その本部で決める計画に対して、国民の代表である国会がどう関与できるのかという点。これは非常にリンクしている問題だと思いますので、この二点についてまずお聞きをしたいと思います。

岩國議員 高木委員の御質問にお答えしたいと思います。

 まず、この基本法案ということを考えましたのは、我々がそうした、二年前でしたか、交通基本法案というのを提示し、これは残念ながら廃案となっております。

 この高速道路無料化という政策を我々が党として正式にマニフェストとして採用し、この高速道路の使い方、つくり方だけではなくて使い方も含めて、そしてこの交通基本法との整合性ということを考えていく上で、この段階では、高速道路の無料化法案ではなくて、高速道路事業の改革をねらいとした基本法案ということにとどまらざるを得ないし、またとどめたい、それが我々の考え方です。

 これが三年後になってもまだ基本法案か。そんなことはございません。その推進本部というものを、政権交代後ですよ、内閣総理大臣のもとに直ちに動けるような推進事業本部が、渋滞に対する対処、あるいは建設の順位、それからそういった一定期間どこにその課金を調整するのか、多くの問題を抱えてこれは仕事をやっていかなきゃなりませんから、これを基本法案の段階から全部盛り込まなければこれは法案として一人前じゃないということには私はならないと思います。

 国民の皆さんにお示しするのは、三年後に高速道路無料化、そして返済は税金で責任を持って返していきます、国民全体の皆さんが受益者であるという認識の上に立って、高速道路網の整備、建設、維持管理を図っていきますという基本的なメッセージがこの基本法案には十分込められている、私はそのように思っております。

 また、国会の関与につきましては、当然、本部長たる内閣総理大臣は、すべての事業についてこれは予算化していかなきゃいけません、収入も支出の方も。当然、この国土交通委員会にかけられることになるでしょう。あるいは、予算委員会にかけられることになるでしょう。本会議で議論されることになるでしょう。

 私は、国会の関与というのは、総理大臣を本部長にすることによって十分担保されますし、また、当然ですけれども、その他の省庁の置かれている推進本部にしましても、あるいは本部機構にしましても、すべてそれぞれの所管委員会で十分議論がなされる、国会の関与は十分担保されている、そのように思っております。

高木(毅)委員 それでは次に、どうしてもこれもクリアにしておきたい問題がございますので、ひとつお聞きしたいと思います。

 すなわち九三四二、整備計画路線についてでありますが、趣旨説明にこういう文言があります。自民党は、二〇〇二年に高速道路を無料化するという約束を守れなかったと。もちろん、私も約束を守ることは大切だというふうに思っております。

 それでは、昨年の十二月に国幹会議というのがございまして、この整備路線九三四二について、これを整備するということは民主党の議員も賛成をしているわけであります。言うならば、国民に一つの約束だというふうにとられるかというふうに思います。

 端的にお聞きいたしますけれども、民主党は、この九三四二、残されました二千キロというものをしっかりと整備すると。政府案とすれば、今までのやり方、あるいはまた新直轄という格好で、原則やるというようなことかなと思いますけれども、その点について、民主党は、はっきりと、この九三四二というものをやるのかやらないのかということをぜひこの時点で国民に対して明らかにしていただきたいというふうに思います。

津川議員 お答えをいたします。

 現行の整備計画にございます九三四二でございますが、私ども民主党の考え方といたしましては、残りの約二千キロにつきまして、すべて、全線フル規格の高速道路としてつくるということに関しては見直しをするべきではないかということを考えております。これは、フル規格の高速道路ではなくて、いわゆる高規格幹線道路に見直しをする部分が当然あってもいいのではないかというような考え方。

 あるいは、政府案の中にも、今の段階でございますが、直轄でやるというような部分がございます。これについては、言ってみれば税金を投入するということになるわけでありますが、高速道路に関する税金の投入の仕方ということを、九三四二は九三四二だからすべて税金でやるんだ、あるいは一一五二〇を全部税金でやるんだという話になりますと、結局はほかの道路財源について予算が非常に逼迫をしてくるということになろうかと思います。

 ですから、そういったことにつきまして、例えば九三四二をすべてフル規格でやる、あるいはそれ以上のことについてもすべてフル規格でやるんだということになりますと、例えば一般国道、自専道、こういったものが今計画されているものが逆にできなくなるというようなことになろうかと思います。

 こういったところをセットにした上で見直しをしていくということでありますので、我が民主党といたしましては、九三四二をすべてフル規格の高速道路としては今の段階では整備するというふうには考えておりません。見直しをするということで考えております。

高木(毅)委員 確認をしたいと思いますけれども、九三四二をフル規格ではつくらないということですか。それとも、フル規格じゃない形ならば、一部いろいろスペックを変えてでもそれはつくるというふうに解釈すればいいんですか。

津川議員 今の段階では、フル規格でつくるということは考えておりません。

 しかし、その中で、例えば九三四二で高規格幹線道路がすべて終了かというと、またこれも、私どもとして必ずしもそれで考えているわけではありません。それ以外の部分で必要な部分も当然あろうかと思いますが、九三四二まで決めたから、これについては、もうとにかく決めたとおりフル規格の高速道路にするということについては見直しをするということでありますので、別の形でこういったものを整備していくということは当然考えられるかと思います。

高木(毅)委員 正直申し上げて、しっかりと理解できなかったということだけ話をして、次の質問に移りたいと思います。

 この法案というのは、もう言うまでもなく無料化ということが、もちろん先ほど基本法の話がございましたけれども、無料化というようなことを出したものじゃないというお話でございますけれども、当然国民は、政府は民営化で、野党というか民主党は無料化だと認識しているというふうに思うんであります。

 先ほど、数字はゼロか三かだという話がございました。

 その中で、第七条には「原則として料金を徴収しない」という部分があります。この辺、「原則として」というのをなぜ書いてあるのかということですね。もしこれを書くのであれば、先ほどいろいろ、阪神だとか首都だとかいう話もございましたけれども、これも、基本法だからと言えばそれまででありますけれども、やはり非常に大事な部分でありますから、この「原則として」という部分がどういうことなのかということはしっかりと国民に明らかにしなければならないというふうに思います。

 それとあわせて、課金の話も先ほど一部出ておりましたけれども、法案では課金の内容、あるいはまた趣旨説明でも何ら説明はないわけでありますので、私が最初思ったのは、通行料のようなものもあり得る。あるいはまた、新たに、今あるような自動車税だとかそういったような税金があるわけでありますけれども、そんなような新税のようなものを国民すべてにかけるのではないかとさえも思ったわけであります。

 そのあたりをもう一度、やはり国民に対してクリアにすべきだというふうに思いますので、ここでいま一度、原則としての無料という点と、それから課金という点、端的に国民に対してはっきりと示していただきたいと思います。

岩國議員 私自身も、この課金という言葉には、もう少し優しい言い方はないかなと思っておりますけれども、はっきり言って、これは通行料というふうに理解していただいていいと思います。

 通行料以外に何か新しい新税を設けるとか、そういったようなことを今現在、我々、考えているわけじゃなくて、またいろいろな御意見がそれから出てくるかもしれません。高速を無料にした結果、こういう問題が出てくる、こういう問題が出てくる、こういう問題が出てくる、そのときに対応できる幅広い言葉として、通行料ではなくて課金という言葉にとどめているのはこの基本法の制約である、そのように理解しております。

 それから、一定期間、一部ということですけれども、「原則として」という問題ですね。

 原則としてというのは、原則全部無料化、ただし一部の路線というのは、今念頭にありますのは、またそういう意見が出ておりますのは、東京、首都圏とそれから阪神、場合によっては中部、名古屋もそういう必要があるのではないかという意見も聞いてはおります。しかし、そうした点について、一定期間、一部路線というものについてこの基本法の段階から書き込むということよりは、皆さんの御意見、あるいは一般のユーザーの方の御意見も伺って、どの期間、どの路線についてということはこれから策定していく方が私は適切だ、そのように思っております。

高木(毅)委員 先ほど、民主党の樽床委員は、今国会はいわゆる年金とそれからこの道路だという話が出ました。それだけ重要な法案だということであります。すなわち、国民もそういうふうに見ているわけであります。

 ただ単純に、さっきも申し上げましたけれども、政府は民営化で、民主党は無料化だというふうに見ているわけでありますから、私はやはり、いわゆる参議院の選挙もこれあるわけでもございますので、先ほど中野委員は、無料化を出したけれども政府につぶされたんだというようなことで終わるなという話がございましたけれども、ぜひこうした、一部だとか原則だとか地域限定だとかどの路線だとか、そういったようなことも含めてしっかりと国民にはっきりさせて、そしてこの議論というものを進めていくべきではなかったかなというふうに思うことを指摘していきたいと思います。

 それから、一点だけ政府にぜひお聞きしたいことがございます。

 もう時間はございませんけれども、実は、債務の返済とかこれからの整備について非常に大事な要素になります通行料であります。

 その通行料の徴収について一点お聞きしたいのでありますけれども、実は、私の同僚議員がこういう光景を目撃したというわけですね。オートバイがだっと高速道路を走っていて、それが、料金所の手前でみんながぱっとオートバイからおりて、トラックにばっとオートバイを載せて、そして、人は、ライダーは料金所の横を通っていって、要するにトラックに載せて一台だけ料金を払っていく。外でバイクをおろして、またみんながそれに乗っていく、そういう光景があったというのですね。

 いわゆる料金徴収を免れる、そういうような実態があるということ、これはぜひ御認識いただきたいと思います。

 それから、一点お聞きすると、フリーウェイクラブというのが世の中にあるというようなことで、それこそ、本来ならば無料化されているはずなんだからというような紙を持って、さっとそれを提示することによって通過していく、そういうようなやからもいるというふうにもお聞きをいたしておりますけれども、その辺の実態についてどのように把握していらっしゃるのか、あるいはまた、その対応策というようなものをしっかりとやっていただいているのか、ぜひこの点について政府に一点お聞きしたいと思います。

佐藤政府参考人 現在、高速道路におきます不正通行、今先生御指摘の点は実は私自身は初めて伺ったんですが、いろいろな形のものがあるのはあります。料金所を強行突破される、それから無料通行宣言、これはフリーウェイクラブというような形で、無料通行宣言を行って強行通行する、あるいは車種の格下げの強要、本当は大型車ですが小型車にしろとか、そういうような強要というようなことで、いろいろな形の不正通行がある。今先生の御指摘の形もそういう不正通行の一つだと思います。

 全体で申し上げますと、四つの公団で年間四十万台が何らかの形のこういう不正通行をしておられる、こういうことであります。

 十四年の七月から、厳正な料金徴収ということで、料金所において複数人対応ということで、不正通行をされる方の多いところは一人ではなくて複数で、ぜひお払いくださいというような形であるとか、特別体制の配置をするとか、防犯カメラなどの装備を強化するとか、あるいはまた不払い料金に対して督促行為を強化し、強制徴収の実施及び公表、こうしたようなことを行って、少しでも不正通行がないように、こういうような努力をしてきているところであります。

 今般の法案におきまして、抜本的な対策といたしまして、料金所を通る際には車両は一時停止して、料金の徴収を確実に行うために有料道路事業者が定める通行方法に違反した者に対しては刑事罰として三十万円以下の罰金、こういうことを初めて科すことをお願い申し上げているところでございまして、そういう意味では、厳正な運用にこれ努めさせていただきましたら、四十万台というような不正通行は減らすことが可能になるのじゃないかというふうに考えております。

高木(毅)委員 時間がないところ申しわけございませんが、先ほどのオートバイの例、局長も初めてお聞きになったということでございますので、ぜひその実態というもの、料金所ではすぐに把握できると思いますから、しっかりと把握をしていただいて、徴収を免れるというようなことのないようにさらにしっかり対応いただきますようにお願いをいたしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

赤羽委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時九分開議

赤羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。長安豊君。

長安委員 民主党の長安豊でございます。

 お昼休み明けで、皆さん一番この季節は眠いお時間かと思いますけれども、皆様居眠りがないように、活発な質疑をさせていただけたらと思っておる次第でございます。

 さて、先日来、道路公団民営化法案につきましてさまざまな質疑が行われております。今回のこの道路公団民営化法案というのは、民にできることは民へといったお題目から行革論でくくられておりますけれども、私はそのような単純なものではないと思っております。これから我が国の国土開発をどのように考えるか、また、その中で交通網をどう設計するのか、そしてまた、その一つのパーツとしての道路、中でも高速道路ネットワークをどう位置づけるのかという大変重要な問題であります。

 今回の民営化法案の議論の中では、高速道路整備計画区間である九三四二キロ、これが前提とされて、その枠の中の道路をどうつくるかが議論されてまいりました。しかしながら、これから十年、二十年、そして五十年先を展望する本質的な議論はほとんどされてこなかったと私は認識しております。

 これから五十年の国土設計を考えずに、ただ単に四十五年でお金を返す、借金を返すことだけを考えるのは無意味である。借金は返したけれども、国土が荒廃してしまって我々国民が不幸になるのでは何の意味もないと私は思っておるわけです。

 このことを政府だけの責任にして批判するつもりは私全くございません。きょうこの場で、これからの国家百年を見据えた国土開発と道路ネットワークの整備に関する大臣の御所見をお伺いしたいと思っております。特に、その大きな大計の中に今回の民営化の歴史的意義をどうとらえ、位置づけられているのか、お伺いしたいと思います。

石原国務大臣 長安委員の御指摘のとおり、今回の道路公団民営化の発端は、特殊法人の整理合理化計画、御同僚の樽床委員の御質問の中で御説明させていただきましたように、そこにこの問題のスタートがあるということは事実でございます。

 そんな中で、委員御指摘のとおり、行革論とは別に、これからの道路ネットワーク、これは地方あるいは大都市問わず、日本にとってどういう道路の整備というものが必要なのかということを忘れてはならないと私も考えております。

 そこで、一つのキーワードは、やはり外に向かっては、国際競争力の確保をどういうふうに行っていくのか。あるいは、拡大してきた大都市の環境というものをどう考えるのか。また、過疎の地域にあっては、拠点病院とのアクセス、あるいは、拠点空港、拠点港湾と高速道路のネットワーク、日本はずたずただと思います。

 先日も大井の埠頭を見てまいりましたけれども、一番取扱高の大きい埠頭でありながら、御承知のように、湾岸線がございますけれども、一般道の方がなくて渋滞が著しい。こういうものも、どうあるべきかということをしっかりと考えていく必要があるのではないかと思っております。

 そして、国土政策というのは、これももう再三再四議論をさせていただいておりますが、均衡ある発展ということでありましたけれども、これからは、やはり各地域の特性というものを十分生かしていただき、また、そこに暮らす方々の知恵と工夫によって、地域の活性化に地域の方々が主体的に取り組む。そして、その地域づくりを支える道路ネットワークの整備というものがどうあるべきかということを忘れてはならないと考えております。

 そんな中で、限られた財政事情でございますので、選択と集中の考えのもとに、身のほどに合った道路、すなわち、むだな道路をつくらないで、本当に地域にとって必要な道路の整備を、客観的な基準、すなわち厳格な外部評価を参考にしてコストの削減を図るとともに、必要なものは、整備のスピードというものも勘案して行っていく必要があるのではないかと考えております。

 そして、今回の道路公団の民営化でございますけれども、これはやはり、現行の公団方式の弊害点についてはもうこの委員会でもかなり御議論が深まったと思いますけれども、償還主義や全国プール制という仕組みが、ある意味ではプールでありますので、採算性の合わないところ、すなわち過疎の地域にも同じものを同じような手法でつくっていく。国土の均衡ある発展という意味では機能していた。

 しかし、ある時期有効だった方式に過度に依存していたことにどういうことが起こっているかというと、不採算路線の安易な建設や四十兆円の債務の発生、あるいは安易な料金の引き上げという形で利用者に返ってきていたということがあるんだと思います。

 ますます少子高齢化社会、そして二〇〇七年以降は日本の人口が減少に転ずるというだれも経験したことのない時期に、くどいようですけれども、選択と集中を物の考え方の基本に置いて、地域の皆様方の知恵とそして創意工夫によって、本当に必要なものを本当に必要な形でつくっていくという政策転換を図っていく必要があるのではないかと思っております。

 そんな中でのこの有料道路制度、すなわち道路公団を民間会社にするということは、総理の言葉でありますけれども、戦後初の有料道路制度の抜本改革、こういうふうに私なりに位置づけさせていただいております。

    〔委員長退席、高木(陽)委員長代理着席〕

長安委員 ありがとうございました。

 今回の道路公団の民営化法案につきましては、民営化、債務の返済というポイントばかりに目が行ってしまって、実際、肝心の道路をこれからどのようにつくっていくのか、また、どう変えていくのかということの議論が余りなされていないと思います。

 今回のこの債務の返済のスケジュールについても、四十五年という数字が出てきました。今の我々の生活を見たときに、四十五年前どうだったろうか、それを思い出さなければならないと私は思っております。情報一つとってみても、四十五年前は、郵便あるいは紙でしか、物理的に移動ということしかできなかった。今はもう電波で飛んで情報がやってくる。そういう時代になっているわけです。今の交通を考えたときに、タイヤを履いてアスファルトの上を移動するというこの交通体系自体が四十五年後も続いているのだろうかということも考えなければならないと私は思っております。

 昨日来の議論でも、この民営化会社が上場できる、できないという議論もございました。確かに、今のままいけば、SA、PAというものは商売を独占できるわけですから、上場できるかもしれません。しかしながら、今の交通体系が崩れてしまった時点で、この上場というのは絵にかいたもちになってしまうのではないかと私は思っておる次第です。

 そこで、この四十五年という数字がいかに出てきたのか。つまり、ただ単に債務の償還を机上の計算で、数字合わせで出てきただけなのか。四十五年後に開放するというこの合理性について御意見をお伺いしたいと思います。

佐藤政府参考人 経緯を若干触れさせていただきながら申し上げたいと思います。

 平成十三年の十二月でございましたが、閣議決定がされました特殊法人等整理合理化計画。ここで、現行料金を前提とする償還期間は、五十年を上限として、コスト引き下げ効果などを反映させてその短縮を目指す、こうされたところであります。

 民営化に当たりまして、債務の返済期限を少しでも短縮する、こういう観点から、路線ごとの厳格な評価の実施や、有料道路事業の対象となる事業費の大幅な削減、あるいは、高速国道に係る有利子債務を民営化時点からは拡大させない、非拡大、さらに、建設に関する会社と国との対等な立場で協議手続、こうしたことを入れまして、さまざまな歯どめ策も措置する。

 こうしたことを前提にして、約四十兆円の債務の返済を民営化後四十五年以内に短縮する、これを確実に担保する、こういう観点から法律上も明記させていただいた、こういうことであります。

 なお、もう少し申し上げますと、道路は、本来、無料自由通行が原則の、極めて公共性が高い、私有になじまない国民の共有財産でありますし、有料道路制度は、無料通行原則の例外として、受益者負担を求めて早期に整備する、このための特別措置であるわけであります。

 そういう観点からは、債務を償還するまでの四十五年間、これは、時間短縮や定時性の確保、安全性の確保等のメリットを受ける利用者に御負担をお願いして、債務が完済された後は無料化する。こういうことで、合理性を持った枠組みかなというふうに理解しております。

長安委員 高速道路というものは、借金の返済を行うためのお金を生み出す道具ではない。国民生活あるいは経済を豊かにするための大切なインフラなんだ。その観点を我々は忘れてはならないと思います。そのつくり方、使い方を、民営化や借金返済という狭い観点でだけとらえてはいけない、私はそう考えておるわけです。

 民主党の無料化案についても、受益者負担の原則の観点から反対する意見も多々ございます。しかしながら、先ほど来多くの方がおっしゃっております、受益者とは何か。単に高速道路に乗って運転をする方だけが受益者なのか。いや違う。国民みんなが、商品を運んでくる、その商品を製造されている方、あるいは漁師の方、農家の方、この方皆さんが受益者なんだ、そういう観点も私は必要だと思っておるわけです。個人が車を持っているか、あるいは車で高速を走っているか、そういった問題は、本質をとらえた議論ではないと私は思っております。

 また、数字の議論も先ほどございました。やはり自民党の中野先生はよくお勉強されているなというのを私は感心いたしました。特定財源でやはり五千億から一兆円ぐらいじゃないと、そんな、幾ら無料化案といっても出せないというお話がございました。

 先ほど私も岩國さんと昼食時にお話をさせていただきましたら、いやいや、違うよ、民主党の無料化案も一兆円ぐらいを想定しているんだというお話がございました。それであれば、中野先生とのお話も整合性がつくのかなと思っておる次第でございます。

 道路ネットワークの整備は国家的な課題だというのを今申し上げました。その計画、建設において国が責任を持つことは当然であることは明らかです。

 また、今回の法案では、これまでの整備計画に基づいて建設中、調査中の区間について、会社に拒否権が与えられると言われております。しかしながら、その拒否権を、拒否したことの正当性を判断するのは社会資本整備審議会ということになっております。この審議会が拒否の正当性を見きわめる。果たしてこれが本当の拒否権なのか。ただ単に異議を申し立てる権利だけを与えられているにすぎないと私は思っております。

 もしそうであるならば、拒否権を本当に民営化会社が持っているということであるならば、社会資本整備審議会は要らないと私は思うわけです。逆に、社会資本整備審議会が判断するのであれば、ではこの順番に高速道路をつくりなさいというようなプライオリティーは社会資本整備審議会が事前にもう決めちゃえばいいんじゃないですか。民営化会社が後から決めて、やはりできませんと言って、社会資本整備審議会が出てくるというのはおかしいと私は思うわけです。

 社会資本整備審議会がどういった議論をしていくのか、また、どういった判断基準でその拒否権を正当か正当でないと見きわめるのか、この判断の基準を明らかにしていただきたいと思います。

佐藤政府参考人 会社が、現在調査中あるいは事業中の路線、区間が前提でありますので、全く新しく、新たに計画、調査に取り組む、これは本質的には会社の申請主義、申請しない限りはまないたにものらないということになろうかと思います。

 そうしますと、現在公団が調査したり事業を進めている、これを、公団が振りかわりました民営化会社が継続して事業をやるかどうか、こういう議論であります。

 そういう意味ではかなりの情報が、あるいはまた、既にかなりの部分が建設が終わっておる、供用はしていない、こういう状態の区間がイメージとしては対象になるわけであります。

 そういう意味では、それなりに会社も、十分なコスト、あるいは、どのぐらい供用したら乗りそうかというような情報が、全く真っさらに改めて検討するんじゃなくて、かなりの検討経過を踏まえている、こういうことが大前提ではございます。

 そこで、高速道路の建設が、それでもなおかつ、会社がこれ以上は継続できませんというようなことを判断して手を上げるとすれば、その場合には、今申し上げたような情報を十分に会社なり、そしゃくした上で、わかりやすくは、今の道路公団が三つの地域会社に分かれるわけでありますから、その会社が所管する区域の建設が、ここはなかなか難しいです、できません、こういうような申し立てがあり得る、こういう前提であります。この場合には、会社は毎年度の総収入の見通しから管理費を引いて機構に貸付料を支払う、こういう形になるわけでありますから、そういう意味では、その会社として払い得る貸付料、もらい得る収入、そして支払わなきゃいけない管理費、それぞれを十分勉強しながら、どのぐらいまでは建設できそうか、こういう選択をするんだろうと思います。

 したがいまして、会社が建設をするかしないか判断する区間が何十区間あるか、それぞれ会社によってちょっと変わってくるとは思いますが、その一つ一つの区間について、ちゃんと建設できるかどうかという以前に、一つは、その当該会社の会社全体の収入見通し、管理費見通し、そして払い得る貸付料、こういうものが出てこようかと思います。

 したがいまして、会社の判断という面でいえば、トータルの貸付料がどのぐらいになりそうか、収入はどうか、全体の議論、これが一つあると思います。もう一つは、今度はそれぞれ個別の区間について、建設費の見通しなり収入の見通しなり、この二つをミクロとマクロの両面から会社は押さえることになるんだろうと思います。

 その場合に、非常に難しいですよ、全体としてはうちの会社はこのぐらい建設はできますが、ここまでは無理です、こういう申し立てが来るわけでございます。そういう意味では、社会資本審議会の方も、もしも仮にそういう申し立てが来れば、トータルの収入、貸付料、管理費の見通し、それから個別区間、ここはできませんよというそこの建設費なり、これはまだ途中のものが多いわけですから、残った建設費、言ってみれば残事業費、こういう形になろうかと思いますが、といったようなことをそれぞれ、会社の申し立てどおりに近いか、あるいはどこかに間違いがあるか、そうしたことを個別具体に判断していく、こういう形になろうかと思います。

 あらかじめの基準として、BバイCが幾つとか、採算がこのぐらいはオーケーかどうかとかいう議論よりは、むしろそうした個別区間の評価、それから特に大事なことは会社全体としての評価、これを客観的に公正に審議会の方でその場合は御審議いただく、こういうことが大事なことで、もう一点は、それをプロセスも含めて明快に情報公開して、多くの皆様の御批判をいただきながら進める、こういうことだと思っております。

長安委員 今までの議論を聞いておりまして、この拒否権というものの議論ですが、今局長からお話がございましたように、拒否権が発動は可能だというのが現実味を持って御説明いただきました。

 逆に今のは少し意地悪な質問だったわけで、私の考えは、実は拒否権が発動されないのではないかという疑念を今度持っておるわけです。つまり、今回のスキームでは、民営化会社の最終利益の源泉というのは、本業の高速道路収入からとるんじゃない、関連事業からとるんだということになっております。

 この関連事業をする場合、もし私が経営者でしたら、どんどんどんどん幅を広げたい、奥行きを広げたい。そうしたら、道路をどんどんどんどん持っている方が有利になるんですね。拒否なんかする必要ないわけですよ。料金設定をどうするか、通行料収入を見て機構と話し合って決めていく。べらぼうな、月々三十万しか収入のないところに、リース料一千万です、あり得ないです。その程度のリース料になってくるわけですね。

 そういう状況で拒否をするところは私はあり得ないと思っているわけです。実はこれは、拒否権をつけたけれども、計画された道路をすべてつくるという仕組みなんじゃないでしょうか。

佐藤政府参考人 そこで、先ほど申し上げましたように、会社は、自分の区域の、調査中、建設中の区間を建設引き続きやります、こうしますと、その区間に関する貸付料は、料金収入トータルで、会社トータルの料金収入で、管理費引いて貸付料を支払わなければならない、こうなります。

 そういう意味では、会社としては、どんどんたくさんそのまま建設します、こうした場合に、場合によっては、トータル四十五年では、貸付料、これだけお払いし切れない、こういうことが十分また、条件のセットの仕方によってはあり得る、こういう議論だと思っております。

 そういう意味では、会社も、それから機構の方も、そこの辺のアセスを事前に十分やりながら、お互いによくよく話し合って最終的な協定を決める、こういうまた手続があるわけでございますので、国と会社が協議し、複数の協議制ですから、この地域の会社がだめならほかの地域の会社どうですか、こういうやりとりをしながら、社会資本整備審議会に最終的には、万一お話が合わない場合にはお諮りする。しかしながら、また一方で、会社と機構は協定を最終的にきちっと結ぶ、こういうことがありますので、そういう意味では、二重のチェック、三重のチェックで、みんなでしっかりした協定を結ぶべく努力する、こういうことになろうかと思っております。

長安委員 今お話がございましたように、会社と機構の方が、将来のことを見きわめながら、恐らく需要予測をもとに料金収入を試算してやっていくんだと思いますけれども、この需要予測でやっていくということ自体が、今まで需要は外れるということが大半であった、なかなか精度の高い需要予測というのはできない。これは技術的にできないということは私もわかっております。しかしながら、だからといって、民営化したからできるのかというと、それは疑問であります。ここは一番、お役所的に言いますと、鉛筆のなめやすいところなのではないかと私は思っておるわけです。

 そういった中で、道路というものを責任を持って整備していっていただくということは、国民にとってはプラスになると私は思っております。しかしながら、国が責任を持ってやるのと民営化会社がやるのとでは全く違う。民営化会社に建設させるという虚構を組むがゆえに矛盾が生じてくると私は危惧しております。

 建設をするしないにかかわらず、民営化会社になった時点で民営化会社が求めるのは、自社の利益になるかどうかということです。そういった意味でも、建設の是非というものを民営化会社にゆだねるということは、建設決定の基準において民間会社の採算性を最優先するということにほかなりません。高速道路整備のプライオリティーを考える上で大きな問題をはらんでいると私は考えるわけですけれども、局長、御意見いかがでしょうか。

佐藤政府参考人 高速道路の整備の必要性について、単に採算性の観点からだけ判断するのではいかぬのではないか、こういう御質問だったかと思います。まさしく先生御指摘のとおりだと私どもも思っております。

 一時、三年前になるでしょうか、要は、採算のとれない厳しい道路は必要ないのではないか、こんな御議論もあったところでございました。民営化推進委員会の中でも当初はいろいろな御意見ありましたが、最終的には、ここが大事なところだと思いますが、中村先生が基準をお出しになられて、一番大事なことは、まず、ベース、入り口は、BバイC、費用対便益が一を上回るかどうか、こういう部分をきっちりとまず整理しなさい、次に採算性、それからその他の外部効果、こういう形で、プライオリティーといいますか、総合的な評価というものを、この三つの要因を基礎にしてしっかりと計算して出すべきである、こんな御提案を民営化推進委員会の中でもなさって、そして委員会の委員の皆様も、それはもっともだ、そのとおりである、こういうふうに採用されて、民営化推進委員会の意見そのものにもそこが入っておるわけでございます。

 ということは、先生御指摘のように、単に採算性だけで必要性を判断するんではなくて、むしろ大前提としては、ここにはまたそれなりの議論はあるところではございますが、民営化推進委員会も、また私どもも、国民全体から見て、国民経済的に見て費用対便益が一を超える、こういうことが大事なことなんであるというふうに思っておるところでございます。

 そういう意味では、昨年年末に国幹会議を開いていただいたわけでございますが、これにつきましても、七十区間について全部、これは世界で初めてだと思いますけれども、あらゆるデータを公表させていただいて、予測交通量も含めて、費用対便益、採算性、それからその他の外部効果、十六種類に分けて、これを全部、七十区間すべてに適用させていただいてオープンな御議論をお願いした、こういうことでございまして、まさしく先生のおっしゃるように、採算のみで必要性を決める、これはおかしいだろう、こういうふうに思っているところでございます。

長安委員 今後の建設のプライオリティーに関しましては三つの要素があるんだ、費用対便益、採算性、外部効果、この三つでというお話がございました。

 しかしながら、一方で、先ほどお話がございました建設の拒否権ですね、民営化会社が拒否をした場合に、社会資本整備審議会の方が行司役として入ってくる。今お話がございましたその三つの要素が明確であるならば、そこで社会資本整備審議会が入ってきてどうのこうのできると私は思いません。それであれば、国幹会議なりあるいは社会資本整備審議会なり、事前に、この三つの要素をもとに、どの路線をどの順番でつくるんだということを決めておいてもいいんじゃないか。逆に、今回の民営化法案だけでは政治の介入する余地があるんじゃないかと私は危惧しておるわけです。その辺、大臣、御意見いかがでしょうか。

石原国務大臣 長安委員の御指摘は多分こういうことだと思うんですけれども、政治が過度に関与をして、必要のないところから必要のあるところよりもできてきたという歴史があるんじゃないか、そしてまた、そのようなことを今度の民営化の後、起こらせてはいけない、そのために委員御指摘の考え方もあるのではないかという質問だと私は理解させていただいたんです。

 そこはやはり、政府参考人から答弁をさせていただきましたように、まずBバイCで見る、一を下回るものはつくらない、さらに、有料であります限りは採算性の問題、もう一つは外部効果、拠点病院の話あるいは代替道路の話、いろいろこれまでさせてきていただきましたけれども、その評価基準で順位づけを仕掛かり品について、いわゆる七十路線二千キロについてはさせていただいたわけです。ここは、民営化委員会の中でも、あるいは政府・与党の中でも共通のコンセンサスになっております。

 それを見ますと、指標化されていますので、順位が大体ついているんですね。ですから、原則論は順位の高いところからつくっていく。ただ、一点難しいところは、通る町村が都市計画をかけていたり、用地を買収するという約束が最初にできていたり、そういう個々の差というものがどうしても、仕掛かり品でありますので、あります。そういうものはある程度考慮をして、原則的には優先順位は点数の高いところからつくっていくというふうに改めさせていただきまして、政治的力のある人のところだけが最初にできるということがないように今回は仕組ませていただいたところでございます。

長安委員 ありがとうございました。

 これまでの委員会での答弁では、基本的には、肝心なところは会社と機構がこれから話し合って決めます、あるいは独自で決めることだというようなお話もございました。これ、実際に民営化したら、その会社自体がどのような経営がなされるのかということが、全くと言っていいほど明らかになっていないと私は思っております。

 例えば民間企業ですと、これからつくります、仲間の方に出資してくださいというときに、いや、これからどういう経営をしていくかは会社ができたら決めるから、みんなで話し合って決めよう、そんなことあり得ないんですね。通常であれば、こういう経営計画があるから、その時点で出資してくれという話になると思います。

 今回の民営化会社自体は、間接的ではありますけれども、我々の税金が入っていくわけです、資本金として。つまり、我々国民一人一人が株主になると言っても過言ではないと私は思っております。その中で、今までの議論では余りにも抽象的な議論が多過ぎて、私は少し不安に思っておる次第でございます。

 そういった意味でも、この民営化会社のトップマネジメントの、人事であったり、また経営方針、経営計画などは、いつ、だれが、どのように決めることになっているのか、御意見いただきたいと思います。

佐藤政府参考人 会社の経営方針なり経営の具体的な内容なりということはどうなるのか、だれが決めるのかというお尋ねだったかと思います。

 そういう意味では、最初に各会社、これは六つの会社ができるわけでございますが、この設立時の役員は会社の創立総会において選任される。しかしながら、各会社の社長そのものは、取締役会で選任されて国土交通大臣が認可する、こういうことが予定されているわけでございます。

 そうすると、次に大事なことは設立委員になるわけでございますが、創立総会を招集する、これが設立委員の役割になるわけでありまして、これは国土交通大臣が任命させていただく。

 そして、創立総会の決議を行う株式の引受人としての権利、これは、先生御指摘のように、国と、それから会社によっては地方公共団体が行使する、こういう形になるわけであります。

 しかる後に、会社の経営方針あるいは具体的な経営のあり方、これは、今般の民営化の趣旨を踏まえて会社の経営陣が定める、こういうことになろうかと思います。

 そのときに大事なことは、その枠組みは、今御審議いただいている法律の中で、関連事業、例えばサービスエリア、パーキングエリアの事業は会社の事業として、これは認可も届け出も要らない、その他の関連事業をする場合には届け出で足りる、こうした自主性を持った上で、なおかつ会社の方は機構と協定を結んでいく、こういう形の大枠は決まっておるわけでございますので、この法律の御審議の中でお決めいただく、こういうことになるわけでございます、大枠は。

 したがいまして、その中でどういう力を発揮されるかという点については、会社の創立後、いろいろ御議論いただいて、それぞれ自主的に工夫を凝らしていただくということが大事なことだと思っております。

長安委員 この民営化会社のトップの人事については、基本的に、国土交通省からの天下りではなくて、民間の改革意欲に富んだ方を軸に検討されていくということでいいという了解でよろしいでしょうか。

佐藤政府参考人 ただいま申し上げましたように、会社の創立総会においていろいろお決めいただいて、国土交通大臣が社長の人事は認可する、こういう形になるわけでございますが、では、この民営化会社の社長は民間の人が望ましいのではないか、こういう御指摘でありました。

 創立総会で、手順は先ほど申し上げましたような手順でございます、そして、今回、民営化、こういう形でございますので、民間企業の経営センスの導入、今般の公団民営化、この趣旨を十分に踏まえて、民営化会社の経営を託すにふさわしい人物が望ましいということだと考えております。

 具体の人選に当たりましては、民間人の活用も含めて、適性のある適格な方にとにかくなっていただく、こういうことが大事だと思いますので、そういう意味で広い範囲の御検討がなされるもの、こういうふうに考えております。

長安委員 ぜひ民間からそういった経営者を起用していただきたいと私は思っておる次第でございます。

 先々週ですか、返済計画についての債務返済の表が提出されました。これはあくまでもイメージですよという局長の強調もございました。確かに私はイメージであるべきだと思っております。あの四十五年のスキームで四十五年間かけて返さなければならない、私はおかしいと思います。もっと前倒しできる、三十五年あるいは四十年で返せるように我々は努力していかなければならないと思っているわけです。

 そこで、この新会社の、民営化会社の管理費の削減などの経営努力によって、当然、有料道路事業によって得られた収入を払ってもなおまだ会社として剰余金が残ってくる、こういった場合、債務の繰り上げ償還のためにこの剰余金を使うことは可能なのでしょうか。

佐藤政府参考人 全体の構造で申し上げますと、料金収入の見通しとそれから管理費と、その差額をとにかく貸付料としてということを一たん会社と機構で協定を結ぶということになっておるわけでございます。先生の御指摘は、ここの管理費の部分が縮減できたらその分はどういうふうに使われるか、こういう御指摘かと思います。

 そういう意味では、料金収入の見通しが当初の協定よりも成績よくどんどん伸びれば余剰も出てくる、管理費を節減すればまたそこの余剰も出てくる、こういうことであるわけであります。基本的には、会社の努力によって、貸付料を支払ってもなお剰余金が出るのであれば、会社がその使途を自由に定める、こういうことになろうかと思います。ここが、会社が企業努力する、経営努力するインセンティブ、こういう御議論かと思います。

 ただし、この貸付料の額が、常に、会社の努力によらずに、場合によっては、経済全体がどんどん上向いて、交通量がどんどんふえて料金収入が予定よりもどんどんふえました、あるいはまた貸付料においても、同じように何らかの要因で、常に大幅に管理費が削減できる、こういうような状態があった場合には、ここは基本的にはそれぞれ、逆の場合もあるわけですから、会社と機構が、協定を、このままでいいのか、それとも見直すか、こんな御議論もやりながら、健全な経営と弾力的な対応ということを両立させながらやっていく、こういう問題だと思っております。

長安委員 今の御説明ですと、定期的に見直す段階でリース料自体もいじることもあるというお話だと思うんです。

 では逆に、民営化会社の方が関連事業で商売をしていく、これで主に利益を求めていくわけですけれども、ここでもざっくざっくとお金がもうかり出した、これも債務の返済に使いたい、そういう場合は可能なのでしょうか。

佐藤政府参考人 関連事業の方で随分と会社が利益を上げることが可能になった場合にどうそれを処理するか、こういうお尋ねでありました。

 この場合には、会社が関連事業を、いわゆる民営化会社として、汗をかいて、そして開拓する、こういうことが大前提だと思います。そういう意味では、剰余金が出てくるのであれば、それを運転資金を確保するために内部留保するであるとかサービスエリアやパーキングエリアの事業の新展開をさらにするとか、あるいはまた、既に抱えている債務を、自分のサービスエリア事業を展開することによって生じている債務なんかを早目に返すとかいうようなことが出てこようかと思います。

 そしてなおかつ、それこそ、それで利益が十分出るのであれば、ここの部分は、むしろ上場が期待されるような会社の企業努力が反映されるべき部分、こういうことだと思いますので、基本的には、先ほど申し上げた貸付料、料金収入から管理費を引いて貸付料を支払う、ここの部分の取り扱いとは、もちろんそれも会社の方で自由に処分はできるわけですが、長い間の経過の中では、本当にそれが妥当かどうかという検証を機構と会社の間で、料金収入、貸付料の方はそういうチェックを常にお互いにする。関連事業の方は、むしろ会社の企業努力をできるだけその会社の業績として素直に反映する、こういうことだろうと思っておりまして、会社が余剰がたくさん出るから、それでは貸付料の方をもっとふやしてもいいですよ、こういう形を想定しているものでは基本的にはございません。

長安委員 ちょっと私の認識とは違うんですけれども、会社が上場していくに当たって、当然、将来のリスクというのをいかに低減していくかということは大切なわけですね。

 昨日の参考人質疑等でもあったように、この民営化会社が抱えているのは、リース料が当然あって、これが果たしてこのままの金額でいくのか。これは、機構がどれだけ金利のリスクにさらされるかによって、リース料も上がってくる可能性も当然出てくる。そのリスクを低減するためには、私は、関連事業でもうかったものも債務の返済に充てる。つまり、例えばリース料を上げるという形でいくのか、もう一括で、例えば五千億もうかりましたので、五千億返済しますというようなことがあってもいいんじゃないか。そうした方が、逆に、上場しようとしたときに投資家サイドからの信頼感を得られるんじゃないかと私は思っております。

 そこで、新会社のうち、これは先ほど六社というお話がございました、この六社のうちで当然差が出てくると私は思っております。一部のところは、通行量もなかなか上がらない、関連事業も、やってみたものの鳴かず飛ばず、そういう状況になっている会社もあるかと思えば、一方では、交通量はふえる、また、やれば当たる、そういう会社も出てくる。そうしたら、一社だけが上場するというようなことが可能性としてはあると私は思うんですね。

 例えば上場した場合に、当然国あるいは地方公共団体がその株式を保有しているわけですから、その株式を売却する、その売却益を債務の返済に充てる、そういったことは可能なんでしょうか。

佐藤政府参考人 先生の御指摘は、六社のうちの成績のいいところが多分一番最初に、どこかは別にして、上場するであろうと。上場する場合に、その上場益は国や公共団体がどう使うのか、こういう御指摘かと思います。

 御指摘のように、最初は、国、地方公共団体が株を持っているわけでございますので、その株が売却される場合には、売却益が出れば、それは出資者である国と地方公共団体に帰属する、こういう形になるわけであります。

 その場合に、では、具体的にそれをどういうふうに使うかという点については、道路事業の債務の返済に充てる、今までの債務を少しでも早くというので、機構を通じて債務の返済に充てる、こういうことも含めて、売却時の、それぞれの売却益の出方にもよるかもしれませんが、各出資者がそれをどうするかを検討していただく、こういう問題だと思っております。

長安委員 今お話がございましたように、繰り上げの債務の償還をするためには、これは逆に言いますと、機構の中でそれぞれの民営化会社の債務がこれだけですよという線引きがきっちりされていないとそういった議論ができないと思うんですね。そういった、債務の線引きといいますか会計上の分別管理といいますか、されていることが必要と私は今申し上げましたけれども、こういった会計管理の基準であったり、また、こういう会計の情報公開についてはどのように考えておられますでしょうか。

佐藤政府参考人 機構と会社がそれぞれ協定を結んで適切に執行する、こういう形になるわけでありますが、首都、阪神、本四に係る会社につきましては、それぞれの機構の債務はそれぞれの会社ごとに分別管理される。そして、法律上は、高速自動車国道と、それと一体となるネットワークの一般有料道路、これは一緒に機構で一体的に管理して、高速国道に係る基本的な料金水準とか債務の返済期間をそろえる、こうされているところではあるわけであります。

 しかしながら、それぞれの会社、道路公団の場合には三社に分かれる、こういう形になるわけでありますから、その三社に分かれた各会社ごとの料金収入の見通し、それから管理費、あわせて貸付料、これをそれぞれ四十五年分を設定するわけでありますので、そういう意味では会社ごとにみずからが支払うべき債務総額も自動的に決まってくる、こういう問題であるわけであります。

 したがいまして、これは来年度も各会社決算が明らかになってまいりますので、そういう意味では、どれだけちゃんと返すことができているか、これもそれぞれ明確になるわけでありますし、機構細部の、会社ごとの残高あるいはトータルした場合の残高、それも全部把握できる、こういう形になるわけであります。そして、この機構の財務諸表はきちっと公開する、こういうことになっております。

 そういう意味では、会社と機構の毎年度のやりとりも含めて、毎年度、これだけ報告します、はい、いただきました、そして、機構で全体を財務諸表として明確にするという作業を通じて国民の前にすべて明らかになる、こういう問題であると思っております。

長安委員 今のお話ですと、債務は分別管理されるから、明確に情報公開もされて各会社の債務の償還が行われていく。ということは、逆に言いますと、一社だけがずば抜けて早く上場もしちゃう、あるいは債務を自分の会社の分の償還をしちゃうということもあり得るという了解でよろしいですね。

佐藤政府参考人 そこの部分が考え方としてはあり得るわけでございますが、高速自動車国道と、それとネットワークを形成する一般有料道路、これは最終的には、あらかじめ各会社ごとに、新設し管理する部分を大臣が指定するわけでありますが、それぞれの返済期間、ですから、道路公団の場合でいえば三社に分かれますけれども、その返済期間あるいは基本的な料金の水準、これは統一しておかないと、例えば三つの会社のうちの一つだけがあっという間に無料にしてもいいような状況になりかねない、それでいいのか、こういうお話だと思います。

 そういう意味では、一体として返済期間はそろえる、こういうことにしておりますので、余りにも跛行性が出てきた場合は、それぞれまた会社と機構と、国もよく相談しながら、それがそろい得るようにその時点で必要な調整は行う、こういうことになろうかとは思います。しかしながら、現在想定しておりますのは、それほど極端な違いというものが出てこないというふうに考えてセットをすることになるんだろう、こう思っているところであります。

長安委員 ちょっと理解ができなかったので、もうちょっと踏み込んでお伺いさせていただきたいんですけれども、債務が、例えば四十兆を六つに割るのであれば、単純計算しますと六兆ずつぐらいになるわけですね、それを返していく。一社は当然経営努力もする、一社が約六兆円と今申し上げました、簡単に六兆円としましょう、経営努力をする、当然、コスト削減で、どんどんもうかるようになっていく。一社は経営努力を、しないとは言いませんけれども、努力が足りない、なかなか債務が、当初の計画どおりいっているけれども、頑張っているところの方までは追いつかない、そういう差が出てくる。

 そうしたら、そこで私が一番危惧しておりますのは、六兆ずつ割っていたのに、あなた、頑張りますね、では八兆いけるでしょうと乗せたら、そこの経営者の経営意欲が失われてしまうということなんですよ。その辺は明確になっているのかどうかということをお伺いしたいんですけれども。

佐藤政府参考人 そういう意味では先ほどの御質問にまた戻るような話になるわけでありますが、高速道路の運営、つまり料金収入から管理費を引いて貸付料、この貸付料の部分は年度ごとに固定しておいて、そして、本来、これを変えなければ、四十五年間、貸付料をその額だけきちっと払っていただけば償還も返済も機構の方ではそれができる、返済もできる、こうなるわけでありますから、問題は、貸付料に足りない、各会社によって、とても払えませんというような状態が出てきたときにどうするか。あるいは、先ほどのお話の、余剰が出てくる、余剰が出てきた部分は、もっと貸付料をふやして早く返済する方向に回すか。

 ここは、協定の変更をお互いにするかどうか、こういう問題でありますので、その状況をきっちり踏まえながら、会社と機構と、調整役としては国がよくよく、一般監督の範囲で、よしよしというか、頑張ってください、こういう話になるのかどうか、これはそういう議論なわけでありますね。

 それからもう一方で、関連事業の方は、今度は、先ほど申し上げましたように、企業業績が大変いいという会社は自分の会社の分を貸付料の債務の返済には基本的には充てないのだろう。したがって、その会社が営業成績がよければ、そこの社員も一生懸命頑張っている、こういうことだから、そこの成果を債務の返済に取り上げる、こういう形には基本的にはしない、こういうことでありましょう。

 そうだとすると、想定した貸付料をきちっと納めていただけば四十五年以内で機構の方では債務がきちっと返せる、こういう状態になると思われますので、そこの部分の変更が必要かどうかというのは、今度は、前の前の問いに戻るんですが、貸付料を払い得る余剰がもっとふえてきた、こういう場合にどんなふうに会社と機構が協定を変更するのかしないのか、こういう議論になろうかと思っております。

長安委員 ここで押し問答をしてもしようがないと思いますけれども、今のお話を聞いていますと、会社は分けたが、いつまでもプール制が残っていくのかなというようなニュアンスもちょっと酌み取れないわけでもございませんので、この辺は、今回の法案の議論、今後の議論、また、先ほど大臣からもお話がございました、十年後変えていくという議論もございました、その中でしっかりと債務返済をしていく。しかしながら、早く返せるというような仕組みづくりを私はもう一度見直した方がいいのかなと思っておる次第でございます。

 これは結局、結果が見えるのは四十五年後ということになります。四十五年後ですと私もやっと八十になっておりまして、そのころに何とか見きわめて、あのとき間違っていたなとならないように、これからの政治生活の中で頑張っていきたいと思っておる次第でございます。

 それと、先週の火曜日の参考人の指摘の中でもございました。コスト削減は、経営計画に書いたらそのまま実行できるというものじゃございません。会社のトップリーダーから現場までがしっかりと意識改革が実現されて初めてこれは達成できるものだと私は思っております。そもそも、民営化したらコストが削減できるのでしたら、世の中の民間企業は全部、コストが削減されて、大もうけになっているわけですね。現実には、例えばトヨタのような、コストを切り詰めるだけ切り詰めていいものをつくる、そうやって利益を上げていくような立派な会社もあれば、言葉が適切かどうかわかりませんけれども、鳴かず飛ばずといいますか、そういう会社もある。大切なのは、利益を上げる、そのためにコストを極限まで下げる、これが必要なんだ、このシンプルな論理を理解することではないかと私は思っているわけです。

 これまでのこの委員会の答弁の中で、管理費を三割削減ということが何度も言われております。これは、この三割削減というものを、だれが、どの時点で、だれに対して約束したものなのか、また、今後、この約束をいつの時点で検証して、達成されなかった場合の責任はだれが負うのか、お伺いしたいと思います。

佐藤政府参考人 平成十五年の三月の二十五日でございました、道路関係四公団が策定、公表したコスト削減計画がございます。この中で、管理費につきましては、料金収受業務等の管理業務の人件費、間接費のカットであるとか路面や各種施設の清掃頻度の見直しであるとか、あるいはまた、宿舎費、借り上げ費、事務経費等のカットであるとかを行うこととして、平成十七年度までに四公団総額二千百億円、約二五%の管理費のカット、こういうものを目標として打ち出したところであります。

 これをベースにいたしまして、その後さらなる検討を加えて、平成十五年の十二月二十二日でございましたが、政府・与党申し合わせしていただいたその際に、管理費につきましては、新しい契約方式の採用であるとか、新しい技術開発などによって一層の業務の合理化、効率化を図る、こういうことによりまして平成十七年度までにおおむね三割のコスト縮減を図る、こういう目標をさらに掲げていただいたところであります。

 これを掲げる上では、公団が既に三月に、二五%ぐらいはそれぞれが努力して管理費カットします。そこでさらなる、入札契約のあり方であるとかあるいは技術開発であるとか、これも含めてあと五%ぐらいは何とか上乗せして三割目標にしてくださいね、わかりました、みんなで頑張ります、こういうことを政府・与党で申し合わせをしていただき、また、国土交通省と関係公団もその努力をしよう、こういうふうに目標を定めたところであるわけであります。

 したがいまして、そういう意味では、十七年度に向けて一層の努力をしながら、首尾よく達成できるように努めてまいりたいと思っております。

長安委員 検証の方法と責任の所在というところはいかがですか。

佐藤政府参考人 今申し上げましたように、十四年度に比べて十七年度にはと、こういう議論でございます。これは明確なわけでありますね、そうすると十七年度どうなるかということでありますから。

 そしてまた責任の所在。これは個人個人の責任ではもちろんないわけでありますし、そういう努力をそれぞれ今までやってきた、こういう経緯から申し上げて、各公団と国土交通省共同で達成すべき目標、こういうふうに考えております。

長安委員 この新会社の健全な経営と成長を確保するためには、関連事業がとりわけ重要になってくるわけです。関連事業をするに当たって、今まで手をつけたような事業をどんどんどんどん始めていくわけですね。これは日本のバブルのときに、多くの企業が、多角化という名のもとにいろいろな、本業ではない分野に手を出して広げていった。こういう分野は、成長の期待が高い反面、リスクも当然高くなる、ハイリスク・ハイリターンになるというのは当然言うまでもありません。

 そういった中で、民営化会社の関連事業、新規事業は、届け出制であり、基本的に自由だと大臣も何度も答弁されていたと思いますけれども、会社の自己責任で事業展開するという認識でよいのかということと、もう一点、関連事業の中には、相応のリスクを伴って、先ほど言いましたようにバラ色の業績が出てくるとは限らない、赤字ばかり出るということもある。そうなった場合、この民営化会社が倒産するというリスクもあるのかどうかについて大臣から御意見をいただければと思います。

石原国務大臣 この点については再三再四御答弁させていただいておりますが、道路事業に支障のない範囲で、新会社が関連事業について、ただ届けるだけで好きなことをやっていただいて結構だと思っております。

 それともう一点は、責任の問題、倒産するかということなんですが、理屈の上では民間会社だからありますが、当面は特殊会社ですので、特殊会社である間は倒産はないということになります。

 関連事業云々といいましても、本業が、先ほど、道路事業に差しさわりのない範囲でという前振りをつけましたのは、道路事業の方を独占的に管理させるという仕事でありますので、そこのところがおろそかになってもらっては困る。そういうところがこの会社のマネージングの難しい点ではあるんですけれども、経営者の方は、当然、SA、PA等の資産は持っていますけれども、そこに付随している道路を利用するのが第一義であるわけですから、そこで好循環、通行量がふえてSA、PAがよくなる、SA、PAがよくなって交通量がふえるという好循環をつくる、その趣旨を経営者の方は当然理解していただいているものだと思っております。

 そして、そういう、今委員の御懸念のようなものが起こらないために監督規定というものを設けておりますし、どんどんどんどん赤字が積み重なって倒産に至るような事態を未然に防ぐ歯どめみたいなものは法案の中でしっかりと用意させていただいております。御関心がございましたら、政府参考人から、どういう歯どめがあるのかというような話はさせていただきたいと思います。

長安委員 ありがとうございます。

 民営化会社、いかに社員一人一人が頑張っていくか、これによって業績がどんどん変わっていくと私は思っております。

 私の地元には、以前も大臣と質疑をさせていただきました関西国際空港がございます。この関西国際空港も、この九月でやっと建設後十年がたつわけであります。

 この経営を見たときに、今お話がございました特殊会社という形で関空も運営されてきたわけです。しかしながら、民営化会社のような形をとっているけれども、内部をのぞいてみると国交省からの天下りの方も多い。そういった中で、社員一人一人の方が経営に対する、頑張ろうという気持ちがなかなかなかったんじゃないか、少なかったんじゃないかと私は感じているわけです。

 一方で、最近になって経営者の方もかわられて、やっと、経営を立て直そうということでさまざまな改善策が打たれているわけです。

 そういった意味でも、ただ単に看板だけをかけかえて公団から民営化会社にするというのではなくて、この中の社員の方一人一人が、また経営者も含めた一人一人の方がいかに頑張っていくような仕組みをつくっていくか、また指導していくかということが重要であるということを申し上げまして、私の質疑を終わらせていただきます。

 本日はどうもありがとうございました。

高木(陽)委員長代理 津川祥吾君。

津川委員 民主党の津川祥吾でございます。

 この法案につきまして、民主党の各委員も、また与党の各委員の先生方もさまざま質問をされてこられました。

 この間、議論がされて、若干積み残されたかなと思われる部分と、もう少し議論を深めたいというような部分について、ちょっと技術的なところが多くなりますが、その辺について主に質問させていただきます。

 若干、質問通告させていただいたものと順序等が変わるかもしれませんが、その辺は局長の答弁でも構いませんので、お答えをいただければと思います。

 まず、細かい話に入る前に、二点だけ少し確認をさせていただきたいと思います。

 まず一点目なんですが、一昨年の末、十二月に出た民営化推進委員会の最終意見と今回の法案との一致点と相違点ということを簡単に、そして、その相違点については、なぜ変えたかということについて御説明をいただければと思います。

    〔高木(陽)委員長代理退席、望月委員長代理着席〕

佐藤政府参考人 一昨年の十二月六日でございましたが、民営化推進委員会の意見が出されて、今回の基本的な骨組み、枠組みとその意見とどういうふうに違うか、それからまた、どういうふうに一致しているか、違ったら違う理由、こういうお話と思います。

 まず、今般の民営化におきましては、民営化委員会の意見を基本的に尊重する、こういうことで、七点ほど基本的に同じものを挙げさせていただきたいと思います。

 まず一つは、整備計画区間のうち未供用区間につきましては、費用便益分析などを厳しく実施しまして、抜本的見直し区間を設定した。次に二つ目に、コスト縮減などによりまして、有料道路事業費を、これは高速自動車国道の場合でございますが、ほぼ半減した。さらに三番目、債務は民営化時点の債務総額を上回らず、民営化後四十五年以内に完済する。上回らない、これは高速自動車国道でありますが、言ってみれば、債務総額を極力抑えて、そして四十五年以内に完済する。さらに、競争原理を導入するために日本道路公団を三分割する。そして、一方的命令の枠組みを廃止して会社の自主性を最大限尊重する枠組み。さらに、六つ目でございますが、民営化までに平均で一割を超える高速自動車国道の料金の引き下げ。七番目に、将来株式上場を目指す。こうした点につきましては民営化委員会の意見書のほとんどを実現している、こういうふうに考えております。

 しかしながら、会社による道路資産の保有それから料金への利潤の上乗せ、この二点につきましては採用を見送っておる、こういうことであります。

 まず、会社による道路資産の保有は、機構が所有して債務も返済する、こういうことにしたわけであります。

 理由は三点ほど挙げさせていただきたいと思います。

 国民の共有財産、こういう高速道路についての公共的性格から私有にはなじまないのではないか。

 それから、完全に私有化するということは、それから先いつまで料金を取るか、こういう形も会社の判断ということになりますので、これは必然的に永久有料、こういうことになろうか。これについては地方公共団体でも支持する意見がない、多くの国民が言ってみれば反対である、こういうことかと思います。

 それから三つ目に、民営化先進国のイタリアやフランスも含めまして、完全私有化して永久有料にする、こういう国はございませんというようなことも参考にしながら、ここの道路資産の保有、会社が資産を持つという形はとらない、こういうことにしたわけであります。

 二点目に、料金への利潤の上乗せでございますが、ここは料金に利潤は含まない、こういうふうにさせていただいたわけであります。

 これも、国民共有の財産である高速道路から、民間企業の利潤獲得の道具としてこれを使うということはなじまないのではないか。

 それから、利用者の負担を抑える、これも大事なことであるし、さらに、債務の早期返済を優先すべきであろう。

 あるいはまた、地方公共団体、そういう意味では多くの国民も利潤の上乗せについては否定的である。

 こういうことでございまして、以上二点につきましては採用をしておらない、こういうことであります。

津川委員 まず、資産を保有しないという点について、これは評価は二つあると思うんですね。

 本当に民営化をしてその民営化の成果を出そうとすれば、それはやはり上下一体であろうという話が一つ。それから、そうではなくて、道路であるから、国民の資産として、その部分についてはやはり国が持つべきであろうという考え方。最終的には無料化をするということから考えても上下分離の方がいいんじゃないかというような判断であろうかと思います。

 最終的に無料化をするということに関しては私どもと考え方が基本的に一緒であります。そういったことについては、四十五年後なのか、もっと早い方がいいのかという、あとは技術論の違いなんだと思います。そういった意味では、ある程度評価をする。つまり、民営化推進委員会と変わった部分について評価できないこともないと思います。

 ただ、私どもがかつて、小泉総理が民営化をおっしゃる前にこれは何度もこの委員会の中で申し上げましたが、民主党の中で道路公団の問題を取り上げたときに、どうもこのままではよくない、民営化という方針もとれるんじゃないかという研究をした中で、官が完全に管理をするよりも、民営化会社が通行料金を取って管理をしたとしても、それでもなおかつ負担が少なくなるんじゃないか、こういうような民営化の効果が期待できるなら、それも民営化として一つあり得る話じゃないだろうか。それは相当コストの削減もしなきゃいけないでしょうし、工夫もしなきゃいけない。それを求めるんであるならば上下一体でなければならない、こういうかつての私どもの一つの結論がありました。

 ただし、そうすると、当然のことながら、最終的には永久有料ということになりますので、それが国民的にはなかなか理解されないだろう。やはり国民との約束の中で一番大きいものは、最終的に無料化をされるということだと思います。そこについてはやはり変えられないということがまず私どもの考え方の一つ。そこについては一致をするところだと思います。

 もう一点でありますけれども、今回の政府の民営化法案の中で、従来の公団方式とこれは何が異なってくるのかということになろうかと思いますが、その辺のことについて御説明いただけますでしょうか。

佐藤政府参考人 従来の公団方式とどう違うか、こういうお尋ねであります。

 もともと、この四公団の民営化の原点といいますか、幾つかあろうかと思いますが、三つに集約して申し上げさせていただきたいと思います。

 最初は、債務の確実な返済を図ることということでありまして、いつまでもずるずると建設が続いて債務がふえていく、累増していく、こういう状態がおかしいではないか、こういう御指摘があったかと思います。

 それから二番目に、真に必要な道路について、会社の自主性を尊重しながら、できるだけ少ない国民負担、国民負担はこの場合には税、こういうことになろうかと思いますが、少ない国民負担のもとでつくること。

 それから三点目に、民間ノウハウの発揮によりまして、多様で弾力的な料金設定であるとか、要は使いやすい高速道路にしていただく、あるいはまた、サービスエリアやパーキングエリアや関連情報を活用して多様なサービスを提供し、多くの利用者に満足のいくような、そういう意味でのサービスレベルを上げる、こういう問題があったかと思います。

 こういう意味では、従来の公団方式、国から一方的に施行命令が出される、こうした形のもとで、経営努力の有無、これが公団の業績としては反映されない。その結果として、コストが高い、高コスト体質ではないか、あるいはまた、料金制度が硬直的であって、サービスエリア、パーキングエリア等の顧客サービスも画一的でサービス不足、こういうような御批判であるとか、あるいはまた、不採算路線の建設の歯どめがないのではないか、また、ファミリー企業との不透明な関係、こういったようなことが指摘されてきた。したがいまして、先ほど申し上げましたような原点をセットして、そして民営化を図る、こういうことであったわけであります。

 そういう意味ではどこが改善か、こうなりますと、これも二、三点申し上げたいと思いますが、従来の国からの一方的命令の仕組み、これは改めて、仕掛かり中路線についても、ついてもであります、調査中、建設中の路線についても複数の協議制ということで、各会社が本当にやるかどうか、これを実質的には拒否も含めて協議制にした。それから、新規着手路線に係るものは申請方式、こういうことでありますので、それぞれ会社が本当に実施するかどうか、こういう自主的な判断を求めることにしたということでありまして、会社の自主性尊重、これが大きく変わってくるというのが一点であります。

 次に、建設費や管理費の縮減などの経営努力の程度が業績に反映される仕組み、こういうことでございまして、そういう意味では、料金収入から管理費を引いて貸付料、こういう形の中で、それぞれ会社としての努力、料金収入をふやし管理費を減らす、こういう努力もまたお願いするということにしたわけでございます。

 それから、サービスエリア、パーキングエリアの事業につきましては、これは現在は二つの財団で実施しておりますが、これは会社に譲渡していただく。そして道路区域からも除外して、サービスエリア、パーキングエリアの事業展開を会社として自主的に濶達にやっていただく、さらに、関連事業の自由な展開を可能とする、こうした仕組みを導入させていただいた、こういうことであります。

 そういう意味では、公団から会社に変わるという点で申し上げれば、コスト意識を向上し、それから顧客本位のサービス水準の向上、こうしたものが特に期待できるものと思っております。

津川委員 コスト意識を強くしていただいてサービスを向上させる、利用者の利便性を向上させるということはまさにあろうかと思いますが、大きく言うと今の三つで、債務を確実に償還するということと、今後の必要路線については国民負担を最小にする、それから民間のノウハウという話だと思います。

 この裏返しでちょっと質問しますけれども、これは、今までの公団方式では債務は確実に償還できない、あるいは国民負担を最小にできないということでよろしいですか。

佐藤政府参考人 いろいろな努力をそれぞれ公団もこれまでやってきていただいているものと理解しております。それからまた、そういう意味では、政府の中でもいろいろな改革努力というものを公団にも要請し、やれることは指導もしてきた、こういうことだと思っております。

 しかしながら、先ほどの、いわゆるコストの高い体質ではないかとか、サービスエリア、パーキングエリアのサービス、顧客サービスという面で不足しているところが多いんじゃないかとかいうような御指摘が続いてきたのも事実でございますし、また、ファミリー企業の問題で申し上げれば、高速自動車国道の路線が延びていく、そうしたらそこにまた新たな会社ができるというような形でのファミリー企業が新しくできる。あるいはまた、できたファミリー企業に、天下りといいますか、公団の職員が行く、こうしたことが指摘されてきたのも、これもなかなか、従来、直すべきではないかというようなことでいろいろやってきたわけでありますが、公団という組織形態、あるいはまた、これは政府の中でも、そういう意味では、組織形態をそのままにしておいてどこまでできたかな、こういう問題ではなかっただろうか。

 民営化、こういう荒療治をするということになって初めて、そういう、前に向いた改革といいますか、本当に努力を必死になってやらなきゃいけない、こういうことがようやくできるようになってきた、そんなふうに理解しています。

津川委員 違うと思います。今までも努力をされてきたんです。今、初めて何か前向きなという話をされましたけれども、今までも前向きな努力をされていましたよ、公団の方々は。国土交通省もされてきたと思いますけれども。

 それを別のスキームでさらに加速する、そういう認識かもしれませんが、ファミリー企業の話は結構です。いや、いいという話じゃないんですが、その質問をしたんじゃなくて、民営化によって債務を確実に償還することができるんだ、あるいは国民負担を最小にすることができるんだというのが一番目、二番目に理由として来たものですから、それは今までのやり方では確実に償還することができないんですか、あるいは国民負担を最小にすることが約束できないんですかという質問であります。

佐藤政府参考人 そういう意味では、これは政府の中の取り組みという問題もあるかもしれませんが、累積債務がふえる、こういう状態を、本当に、とにかく民営化後、高速自動車国道については債務がこれ以上ふえないようにする、漸減させていく、こういうふうに決め得るというのは、やはり民営化という荒療治を基礎にして、言ってみれば、後で何とかなるだろうという形での運営というものを、公団の方式、これを国土交通省あるいは政府の中でどんなふうにやっていくかという点について、そこまでの荒療治をセットするというのが非常に難しかった、こういう問題はあろうかと思います。

 それがなぜそうなるかという点で申し上げれば、今度は、会社になる場合には、会社の自主性、こういう観点から、調査中、継続中の路線についても、一たん会社は、それを引き続き継続するかどうか、こういう判断までしながら今後の仕掛かり中の路線をどうするかを考え、それからまた、新しく建設する部分は自主的に本当に申請主義で考える、こういうことであります。そういう仕組みを用意して初めて高速自動車国道についてこれ以上債務をふやさないというような荒療治、こういうものも、要は、今既に着手している部分については現場が動いているわけでありますから、一日でも早くという圧力もまたあるわけでございますが、そういう世の中の期待に対して、そうは言ってもという形で申し上げ得るとすれば、こうした会社に変わるんだから、自主性を、自主的な判断もあるので、そういう意味で、しっかりした堅実経営といいますか、そういう部分も両立させながらいくんですよ、こういう御提案を申し上げて初めて世の中からも御理解いただけるという形で、債務が累増せずに、そして確実な返済、さらに国民負担を最小にする、こうしたことが御了解いただけるといいますか御理解いただけるようになった、こういうふうになるものというふうに理解しております。

津川委員 大分回りくどい言い方をしていただいたんですが、大臣、ちょっと確認をさせていただきます。

 局長からすればそういった表現になるのかもしれませんが、要は、今までの約束が守れなかったということだと思うんです。首都高あるいは名神ですとか東名を最初につくり始めたときは、二十八年で償還するとか三十年で償還するとか、そういう話をしたわけですね。そういう、三十年後に無料開放されますよという国民との約束が結局守られてこなかったということだと思うんです。何でそうなのかということについて今局長の答弁の中にあったのは、後で何とかなるだろうと思ったからだという話だと思うんですが、要するに、うまくいかなかったら別のスキームを考えればいいというような話なんだと思います。まあ、そこまではっきり政府が思っていたかは別として、結果的にそうなってきたというのは事実ですね。

 それから、やはり国民が一番ある意味不思議に思い、不審に思っているのが、政府がそうやって約束をしてきたけれども約束を守ってくれない。いろいろな約束がありますけれども、状況によっては約束守れないことも当然あり得るわけです。特に政治に携わる者からすれば、現実が動いているわけですから、状況、状況によって変えていかなきゃいけないというのは、ある意味当たり前のようにも感じますが、しかし国民に対しては、変わったなら変わったということをしっかりちゃんと説明しなきゃいけないと思います。

 しかも、今までみたいに三十年後に無料化になりますよというのが、三十年たったら、あとまた四十五年後ですよという話が出てくるような、そういう話ですから。しかも、通行料金が下がっていくどころか、上がっていくという話ですから。こういったことについてはやはり責任を持って説明しなきゃいけないと思います。

 これまでも、公団方式で確実に償還できるという説明をされてきたわけです。この民営化の話が出る前は、確実にこの委員会の中でもしてきたわけです。例えば、私は本四の担当をしましたけれども、本四公団のあの債務の償還ですらできる、できるとおっしゃったのです。明らかにこれはおかしいという話をさせていただく中で、昨年度ですか、債務をちょっと分けるというような話になってきたと思いますが、そういう説明を、変わったのなら変わったということを説明しなきゃいけない。

 石原大臣に、今約束をしていただいてどうこうということではないんですが、今回新たに全く別のスキームにして、今から四十五年後ですという約束をするという以上は、なぜ今まで守られてこなかったかということについてやはり説明をしなきゃいけないし、その原因が今回排除されているということを説明していただかなければならないと思います。その点について御説明をいただければと思います。どちらでも構いません。

石原国務大臣 これはいつだったかちょっと忘れましたけれども、やはり御同僚と意見の交換をさせていただいたときに、もうあんたらの償還計画は破綻しているじゃないか、そういう厳しい御叱責をたしか当委員会でいただいた記憶がございます。そのとき私は、破綻しているとは私は申しませんけれども、破綻するおそれの蓋然性が高まったから今回の改革に着手させていただいたんですよ、そんなことを言わせていただいたことを覚えております。

 では、なぜそうなってしまったのか。今のお答えで私の立場というものはある程度言いあらわせたと思うのですけれども、やはり大きな問題は、プール制と償還主義というものが物をうまいぐあいに先送りしていった。そして、公団という組織がみずから努力をして、普通の企業であったならば、交通量の少ないところに全国と同じような四車のすごい高速道路をつくろうとは思わないで、どうしても必要なら二車にするとか追い越し車線を入れて一・五にするとかと考えるのですが、そういうことをやっても公団側の言ってみるならば業績に反映されないし、逆にだれからも評価をされないというところにやはり公団の大きな問題があったんだと思います。

 ちょっと歴史的な話をさせていただきますと、高速道路の整備なんというものは、基本的に考えれば、すべての路線が連結して全国を網羅した交通網がいいに決まっているということは、これはだれも共通認識だと思うのです。では、まずどこからつくろうという話になって、一番需要があると思われる名神、東名ができたわけですけれども、事業選択にやはり時間的な差異がありますし、建設コストも日本の場合は非常に、橋梁部分とトンネルが二五%を占める、あるいは山間部に行けばトンネルが多くなって工事が難しくなるといったような、かかったコストによって料金の差が生じる。山間部のトンネルばかり抜いているところは、交通量も少ないのに交通料金を高くするということは、当時の感覚からはできなかった。そういうことを考えて、昭和四十七、八年だったと思うんですけれども、プール制、すなわちもうかっているところのお金をもうかっていないところの建設に充てるというものが採用された。

 当時どのぐらいできているのかと調べてみましたら、大体四千キロぐらいの長さですね。四千キロの長さでありますから、委員がおっしゃられたように、最初二十八年で、三十年で返せる、それでやめておけば返せるというのはだれでも割り算すれば出る数字ですから、なっていた。

 しかし、当時の時代背景を思い出しますと、オイルショックを挟んで、まだ七、八%の高度成長が来るだろうというような状況の中で、もっともっとつくれるんじゃないか、さらにつくらないとネットワーク論からいったらまだ十分じゃないということがあって対象区間がどんどん追加されていって、これに伴って料金がどんどん高くなる。あるいは、委員が御指摘されましたように料金の徴収期間を延ばしていった。それで最終的に、平成十一年の最新計画で九三四二ですか、九千キロメートルぐらいの整備があって、料金徴収期間というものは平成五十六年ということになったわけです。

 このような状況の中で、またさらに料金徴収期間が長くなるんじゃないかとか、本当に債務が返せるのかというような疑問を、いや、大丈夫なんだと言える自信がなくなった。

 そこで、ちょうど整理合理化計画、先ほど樽床委員との議論の中で御説明させていただきました特殊法人の改革論というのが出てきたんですね。これまでの特殊法人の改革論というのは、組織形態を変えていくということと、二つあるのだったら、同じような仕事をしているのなら一つにして数を減らそうという議論で昭和四十二年以来やってきたんですけれども、事業を全部洗ってみよう、ですから、当然、道路公団のやっている事業というものも洗ったわけですね。

 そうすると、さっき言ったような公団側の動機づけがないわけですから、一方的につくれと言われたものを最高にお金をかけて最高なものをつくっていたわけですから、そういうところにこれはやはりむだがある、でも、このむだを少し小さくすることによってもっとコストを下げることができるけれども、何で今のままではできないんだということで民営化議論が始まった。

 今回は、やはり委員の御指摘にありますようなプール制や償還主義の弊害を解消するということを一つのポイントに置いて仕組ませていただいているのであります。

津川委員 別に私は、プール制と償還主義が悪いとは今は言っていないです。かつては言いました。

 確かに、それが問題だという議論の仕方もできますが、プール制と償還主義だけだったら、実は必ずしも悪くない。問題は、そのプールがどんどんふえていく、大きくなっていくということですね。その償還期限もそれに合わせてどんどん長くすることができてしまう。最初から数えてそれが三十年が五十年になるというならまだしも、全く新しいスタートラインをつくってそこからまた何十年という話ですから、これは説明からいくと幾らでも延びてしまうという話になるので、そのやり方は幾ら何でもまずい。

 今回のやり方で国民ともう一度約束をするわけですけれども、この四十五年ということ、四十五年以内でもいいかもしれませんが、四十五年というのを、これはもう絶対変えない、こういうことでよろしいんですか。

佐藤政府参考人 今回の法律におきましては、機構の方は四十五年で解散、料金の徴収期間も四十五年以内でございますので、そういう意味ではこれはもう変えない、こういうふうに思っていただいてよろしいと思います。

津川委員 これは法律に書いているからもう変わらないんだという話だと思うんですが、今までも、三十年、二十八年というのは全部閣議決定ですね。閣議決定と法律だったら法律の方が重いとか、そういう言い方はできるかもしれませんが、それは口約束と紙に書いた約束だという違いのようなものであって、確かに違いはありますけれども、約束であることに違いない。

 そういう意味で、逆に言うと、状況が変わりましたから変えられますという話にもなるわけですよ。法律だって変えようと思えば変えられるわけです。本当に四十五年に絶対こだわるのであるならば、そういうスキームを多分つくるべきだと思います。

 それから、四十五年を前倒しにすることができるかということに関しては、これまでの質疑の中ではそういうことも議論の中であり得るかもしれないという話がありましたけれども、多分私はないと思うんです。

 それは保有機構の方から考えれば、早めたら早めるだけ自分のところは解散しちゃうわけですし、株式会社の方から見れば、早めれば早めるだけ自分の業務内容は一気に小さくなっちゃうわけですよ。そういうことから考えれば、なるべく四十五年でやろうと考えると思うんですね。もちろん、最後、四十四年になるかもしれない、四十三年になるかもしれませんけれども、これを三十年にしよう、二十年にしようというインセンティブは働かないと思います。

 それで、リース料についていろいろな方が質問されています。これについてもう一度伺いますけれども、初めに四十五年ありきという話であれば、四十五年で今の債務、有利子の部分で多少膨らむ部分もありますが、それをどう割り算するかという話だと思います。

 それに対して先ほど局長が話されたのは、道路事業収入から管理費を引いたものがリース料だと。それはたまたま四十五年ということでいいんですか。それとも、そっちが原則で、四十五年はそれは多少前後してもおかしくないということなのか。四十五年を決まりにしてリース料を変更するというふうに考えるのか。どちらが決められた数字なのか、それをお答えいただけますでしょうか。

    〔望月委員長代理退席、委員長着席〕

佐藤政府参考人 そういう意味では、法律上は四十五年以内を料金の徴収期間、こうした上で、本当にこの四十兆円の債務が建設しながらできるかどうか、こういうことを、現時点ではイメージとして、大丈夫、返済しながら建設もできますということをお示ししているわけであります。これはまあいろいろな前提を置かせていただいたわけでありますけれども。

 そして、本当にどうするかという議論で申し上げると、新規建設の部分につきましては、仕掛かり途中のものについては、どれだけそれぞれの地域会社が継続して建設するのか、こういう議論になるわけでありますから、そういう意味では、四十五年以内に貸付料を返していったら、それが機構の中で管理して、返済可能、もちろん、そういう数字で協定を結んでいただく、こういうことになるわけでありますが、その場合に、では、四十五年ぴったりなのか、四十三年になるのか。

 例えば、私どもがお示ししていますのは、新規に建設をしない、仕掛かり品も途中でもうやめます、こういう前提で申し上げれば三十五年ぐらいで返し得るということなわけでありますから、そういう意味では、最終的には、それぞれの発足した会社がどれだけの事業を行うかということにも依存するわけではあります。

 ただし、いずれにしても可能であるということを返済イメージとして出させていただいた、こういうことであります。

津川委員 一番冒頭に、冒頭というか二番目ですが、言っていただいた、民営化をしたら国民負担が最小になるという話をしました。国民負担というのは何かと質問しようと思ったんですが、先ほど局長から、これは税金だというお話がありました。税金の負担を減らすという発想からなら、償還の前倒しは逆じゃないですか。通行料金でずっとやっていれば税金使わないんですから、そっちの方が国民負担少ないですよ。

 私はそれは違うと思います。確かにそういう言い方で、例えば国鉄の改革のときにもありました。最終的にその赤字を国民負担にするのかという議論があった。それは、要するに税金を使うのかという話ですね。ただ、それはそういう使い方もできますし、小泉総理は税金を投入しないというような言い方で、国民負担をなくすんだという言い方をしている。

 そうじゃなくて、受益者の議論もありますけれども、要するに、通行料金というものも基本的には国民負担だ。だれがどのように負担するかという違いはありますけれども、これは総額で見るべきだと思うんですね。総額で見たときには、この国民負担をいかにして圧縮するかといえば、今の債務と、それから、仕掛かりも含めて、これからつくる部分も含めて、新直轄も含めていいと思いますが、その必要とされるべき高速道路網の建設費、これまでの債務も含めて、その全体をいかにして早く償還するか。なぜ早くかというと、これは要するに有利子債務をいかに早く圧縮するかという話です。

 そういうことからすると、そのスキームがこの中に入っていなければ、国民負担が少なくなるという話は説明ができないはずです。建設費が小さくなるという話をされるかもしれませんが、その前に、国民負担というのは税金でいいんですか。償還を前倒しにしたら国民負担ふえますよ。それでいいですか。

石原国務大臣 国民負担というのは、これは非常にさまざまな理解があると私は思うんですね。

 まず言えるべきことは、総理がおっしゃっているとおり、本四を除いて新たな税金投入を行わない、これが念頭にありますので、政府参考人は税という言い方をしたんだと思っております。そして、債務の確実な返済と、先ほどお話をさせていただきました、中村教授のつくった客観基準に合わせてBバイCが一以上で、点数の高いものから順番につくっていく、すなわち、必要な道路をつくるという仕組みを今回は御提示させていただいているわけです。

 それで、もう委員はコストの話をされましたからダブりますけれども、恐縮なんですけれども、二十兆円、有料道路でかかると言われていた事業費を、新直轄ありますけれども、十兆五千億と半減する。これもある意味では負担の軽減だと思いますし、管理コストも、公団の側が二五%できるというので、もう二割ぐらい増して三割削減しろと。そうしますと、管理費が減ればリース料として返せるものがふえるわけですから、負担が減る。さらに、建設・管理コストの削減を初めとするさまざまな措置を今回の法案の中には盛り込ませていただいたわけです。

 それともう一つ、これもよく出ていますけれども、料金の弾力化ということで、平均一割。

 国民負担を少なくするということを、今言ったようなもの全体であらわしていると御理解いただきたいと思います。

津川委員 建設費が圧縮されることが国民負担が少なくなるというのは、それはまさにそのとおりだと思います。ですから、先ほど局長がおっしゃったように、これは税だということではなくて、全体的に見た、通行料も含めた国民全体の負担というふうに考えるべきだと思いますし、そういった意味では建設費が圧縮されるという部分はまさにそのとおりですが、債務償還を早めないという意味で、四十五年は四十五年で結構なんですが、それを本当はもっと早めるというスキームがあって、有利子債務を早期に圧縮するということがあれば国民負担を減らすということになりますけども、それはこの中に入っていないと思うんですね。もしそれをやるならば、要は、税を早目に投入するとか、そういう話をしない限り、それはできない。

 これが、四十五年が五十五年、六十五年になるのと比べれば少なくなるかもしれませんが、今まで三十年とか四十年とか言っていた、五十年と言っていたときもあります。そういったときから比べれば若干短くなったという発想はできるかもしれませんけれども、そんなには、国民負担が減るというのは言い方としては間違っていると思います。

 それで、あと、競争原理が働くからというような言い方もされたんですね。競争原理を働かせるために三分割するという話ですけれども、競争原理はどういうふうに働くのか。なかなか働きにくいと思うんですね。

 一つの路線、例えば、東名を管理する会社と中央道を管理する会社があって、それを競争するとか、中国と山陽を別の会社がやるというのは、これはまあ競争原理が働くかもしれないなと思いますけれども、東と西と中があって、東の仕掛かりを東が嫌がったときに西と交渉しますと。そのときに、東が、少し私のところで頑張りますよという、その程度の話しかなくて、基本的には競争原理が働くような話ではないと思いますね、少なくとも、この今の政府案の分け方の中では。

 これは民営化推進委員会の中でも分割をせいという話だったんですけれども、それは言ってみれば上下一体の分割ですから、上下一体でそれぞれ別の会社ですから、早目に上場するとか、早目に料金を下げるとか、そういう競争が発生をするということはあり得ると思いますけれども、今の話でいくと、少なくとも、日本道路公団に係る三社の部分に関しては一律で同時に償還させるというような発想だと思いますから、これは競争のしようがない。

 それどころか、先ほどもお話がちょっとありましたけれども、どこか頑張った会社があると、むしろそこを抑えなきゃいけないという話になるんです。東の収益が上がった、それを会社の利益にするには、最長五年間はいいけれども、リース料の見直しをするという話ですから、リース料が多分高くなるでしょう。そうなると、早目にそこの部分の償還は済んじゃうわけです。

 それで、そこだけ先に無料化できるかというと、しないという話ですから、そうすると、その利益がどこに飛んでいくのかよくわからない。コストを上げるしかないと思うんですけれども、つまり、利益を出さないようにするしかないと思うんです。あるいは、そうじゃなければ、例えば東でどんどん償還が済んだら西の分も担当するよという話になればそれはいいと思います。そういうふうに考えるのか。

 つまり、西の負担も東がするようなことがあり得るのか。それとも、それぞれのお財布で、ここの債務はこのぐらいあって、リースでこのぐらい返ってきたということで、それを最後の面を合わせるような努力をするのか。最後の面を合わせるような努力をするということは、経営努力をしないということを意味する。もちろん、それは四十五年以上にはならないようにはしなきゃいけないでしょうけれども、早めないようにしなきゃいけないわけです。

 その辺はどちらなんですか。これはお財布は一緒にしてしまって、あちらの債務をこちらの会社が持つということはあり得るのかどうか、それをお答えいただきたいと思います。

佐藤政府参考人 二点のお話があったかと思います。

 一つは、分割してどういう競争をするのか。もう一つは、それぞれ予定した成果といいますか、予定すべき成果に対して、よりよく達成するところとそうでないところと差ができてきたときに、その処理についてはどんなふうに処理するのか。こういう二点だったかと思います。

 最初の、分割してどういう競争をするか、こういう議論でありますが、これは幾つかのことが考えられ得る。逆に申し上げますと、できるだけ切磋琢磨していただくということだと思っております。

 つまり、管理の水準でいえば、管理水準を一定に保ちながらどれだけの節約努力をするかというのは、これは会社間の競争という部分、あるいは参考にしちゃうという部分が出てこようかと思います。

 それから、建設費についても同じ問題が出てこようかと思います。より先鋭、先導的に、新しい技術開発なり、あるいはまた入札契約方式においても、最も妥当なといいますか、建設コストの縮減を図り得るようないろいろな方式の試みというのもそれぞれの会社によってやりながら、横に並べてといいますか、参考にし合いながら切磋琢磨していただく、こういうことが大事なことだと思います。

 サービスレベルという問題でいえば、インターチェンジの数が少ない、こういうような問題について、インターチェンジを安く、これは地元とも相談しながら、例えばスマートインターというようなことを私どもはこの十六年度、実験しよう、こういうふうに申し上げております。こうしたことをベースにしながら、インターチェンジが安い費用でより多くできて、使う皆様がふえていく、こういうような努力も、これは地元と一緒になっての問題になるわけであります、一方的に会社が行うべき問題ではないかもしれません。地元の取りつけ道路の協議であるとかいろいろな問題があるわけでありますが、そういうことを含めて、サービス水準をそれぞれの会社ごとにできるだけ努力して切磋琢磨していただく。

 あるいはまた渋滞などに対する対応についても、それぞれいろいろな試みをやっていただきながら、参考にし合う、競争し合う、こういうことを期待しているわけであります。

 次に、最終的にアンバランスが出てきたときにどうするか、こういう御議論でありました。

 できるだけの企業努力をしていただくとともに、基本的には、料金の収入から管理費を引いたものを貸付料として、こういうことでありまして、剰余金がよほど出てくれば別でありますが、その大小が、企業努力の範囲、こういうことであれば、その部分を召し上げて返済に回す、これもなかなか難しいところがあろうかと思います。ですから、そこは程度の問題だとは思います。

 そういう意味では、きちっと経営していっていただけるのであれば、おおむね、料金によって返済する期限も大体そろうもの、こういうふうに期待しております。

 ただし、この場合に一番考えられ得るのは、経営成績が悪い。いい場合には、そんなに、要するに貸付料をそのまま払っていけば所定の返済ができるわけでありますから、そして、それが順調であれば、多少のことはあるかもしれませんが、そこは、会社と機構それから国も入っての協定の、どういうふうにするか、こういう御議論かと思いますが、一番多分厳しいのは、努力しても努力しても貸付料が、払う部分が足りない、こっちの方が厳しい問題かと思います。

 その場合にはやはり経営責任はおとりいただく必要はあるんだろう、経営陣に。ここがやはり公団による経営と大分違ってくるところだと思うのであります。常に期待されるといいますか、払うべき貸付料と実績とがガラス張りで、国民のもとにいつも開示されている、そして会社はそこに向かって努力する、しかも、そのやりとりは毎年毎年公表される、こういうことでありますから、その努力をしていただいて、結果、芳しくなければ経営責任もおとりいただく、こういうようなことを繰り返しながら適正な経営をしていっていただく、こういう問題だと思っております。

津川委員 いや、悪いときの話をしているんじゃなくて、よかったときです。ほかが予定どおりで、一つだけよかったときに、差額が出てしまって、つまり収益がふえたり、あるいはコストが下がったり、そういう努力をされて、それは多少その会社が持っていただいてもいいけれども、五年したら見直しをするわけですよね。そうしたら、その差額分リース料が上がるわけですよ。そうしたら、そこの部分の返済金額は早目に償還されるわけですよ。その差をどうするのかという話です。

 東だけ先に無料開放するんですか、それとも、そうじゃなくて西の債務についても持っていただくのか。それはどっちなんですか。

佐藤政府参考人 今度は、何か一社だけ良好な会社が出てきたときはどうするんだ、こういう御議論でありました。

 ここの部分は、それほど大きな剰余が出てくるような形になったときにまた考える必要があるかとは思いますが、基本的には返済の期間そのものはそろえよう、こういうことにしておりますので、そういう意味では、ほかの部分も一緒にお返しするのが一年早まるとかというような形で、返済期間は逆に言うと料金徴収期間でもあるわけですから、料金徴収期間は一緒にしていただく。

 大変成績のいいところが出てくれば、その力をどういうふうに使うか、それぞれその時点で、国、会社、機構が相談しながらということであるとは思っております。

津川委員 はっきりとはその辺はわからないという話なのかもしれませんが、会社が、コストを下げたり営業努力をして収益を上げようとするインセンティブを働かせようとするならば、その分は基本的に会社の実入りになるということが絶対必要だと思います。それは五年後にはすぐ解消されてしまうとか、下手したら来年解消されてしまうというようなやり方では、なかなかやらない。

 例えば建設会社の話で申し上げますと、VEとかよく言いますけれども、VEをやると、その利益分の半分は収益に上乗せをしていい。だけれども、その次に同じような工事があるときはそれをもとにして試算されますから、一生懸命努力したのに一回だけかというようなことになるわけですね。だから、今回もほとんど同じような話だと思います。

 ですから、早目に償還しても無料化の時期をそろえるというのであるならば、早目に償還したところの方がそれだけ多く実入りがあるんだ、早目に償還すれば、残りは、例えば多少は料金を下げていただくとか、そういう差はあるにしても、基本的にそこはその会社の利益として半分とか七割とかもらえますよということであればこれは努力が出てくると思いますけれども、今の話でいうと、なかなかそれが出てこないんだろうと思います。一番最後のところの調整だけの話ですから。そうすると、やはり四十五年、何とかぎりぎりまでやろうかなというふうにしかならないと思うんですね。何とかコストを下げようという努力はなかなか出てこない。

 それから、残念ながら、それでそのままうまくいけばいいんですけれども、早めようという努力がある一方で、不確定要素で長引いてしまえばもとに戻るかもしれませんが、四十五年でいこうという努力をしているときに、何か別の不確定要素があってこれが長引いてしまうという可能性の方がむしろ危険性として出てくるだろうと思います。

 そのときにどうするかという話なんですけれども、国民と四十五年という約束をするならば、では、例えばうまくいかなくなりそうなときに、やはりここは税金を入れるべきだと思うんです。約束を守るという意味ですよ。それは私どもとしては、四十五年という約束をするよりももっと早い約束をした方がいいだろうと思っていますが、四十五年という約束をするなら税金を投入するべき。ただし、税金は投入しないというのが小泉総理の方針だという話です。石原大臣も今そうおっしゃったけれども、私は、ここは変えるべきだと思います。

 今そういう計算ができたから四十五年でいいやということではないと思うんです。これは極力なるべく早目に償還をする、それがまさに全体の国民負担を減らすということになりますから、そのためにどこかで税金がちゃんと投入されるという仕組みが私は必要だと思います。もちろん、野方図に入れちゃいけませんけれども、なぜこれを入れるのかということ。当然その努力をしていただくにしても、そこのスキームはどこかに多分必要だと思います。

 それからもう一つ、新会社が建設を拒否したときに、審議会で正当性がないと判断されると建設しなきゃいけないということになると思うんですが、拒否をするということは、多分これをやると償還期間四十五年で約束できませんというようなときに判断をすると思うんですね。民間会社だからこそするのに、それを審議会が否定するというのもいかがなものかなと思いますが、仮にそれでやって、審議会が言ったのが正しければいいんですけれども、会社が言った方が正しかった場合、責任はだれがとるのか。この会社の経営者の責任じゃ多分ないと思うんですね。このときに責任はだれがとるというふうにお考えか、一応確認だけしておきます。

石原国務大臣 今の津川委員の御質問は、いわゆる二千キロの仕掛かり品の中で、会社と協議をして会社が断って、その理由が社会資本整備審議会のところに当たって、社会資本整備審議会が正当な理由であると認めた場合は、これはさっきも議論したんですけれども、国土交通大臣はやらせることができません。

 では、何でそういう仕組みが一つあるかというと、経営判断として、本当はできるんだけれども、わがままで、これはやらないと言う人が出ないとも限らぬということで、こういう一つ公共的な機関をかませているわけです。

 これは、収用とかそういうことですごい公共的なことの判断をしていますから、第三者と言ってもいいと思います。その第三者の判断が出た以上は国土交通大臣はやれと言うことができないことで、会社側の実質的な拒否権というものを担保させていただいているわけであります。

 国と会社が協議する際には、債務の確実な返済が可能かどうかということについては、当然、国もチェックいたします。せっかくつくった会社がつぶれちゃうようなことを無理強いしたら、何のための民営化だということでございますので。それでありますので、会社の側も、民間会社でありますから十分に検討する。債務が返済できなくなるような路線の整備というものを国が強要できないように、両方のサイドからアプローチして、そういうものを排除する仕組みになっております。

津川委員 いや、ですから、会社が嫌だと言ったけれども、結局やらなきゃいけないことになったときに、会社としては、私はわがままで嫌ですとは言わないわけで、それは自分たちの経営判断の中で、これはできませんという言い方をするんでしょう。それを審議会が、いや、彼らはできるという判断をした。結果的に会社が言っていた予想の方が正しかった場合にだれが責任をとるかというと、これは審議会が責任をとるというわけにいかないから、国が責任をとるしかないわけですよ。会社は一応拒否しているわけですからね。当然、今申し上げましたけれども、税金を投入しなきゃいけない理由が幾つかこの中に入っているということをぜひ御認識をしていただきたいと思います。

 先ほど樽床委員の方から、十年の見直しというのがありました。私はこの見直しは、ある意味正しいと思うんです。法律の見直し規定というのは、基本的には、全く新しい規制をかけたときとか、あるいは目標をつくったときに、目標が達成できたかどうかを見ながら規制のあり方とか目標の設定のあり方を見直すというのが見直し規定だと思うんですが、これはそういう意味ではあり得ない話ですよね。もうスキームとしてつくって、契約なりについては五年でそれぞれ会社と機構の方でやっていただくというわけですから。十年の見直し規定というのは、私が見ると、これは、税金をやはり入れるべきかどうかという話をするか、あるいは四十五を五十五にするかというような話だと思うんです。ここのところの趣旨は、ある意味あって当然だと思うんですが、ただ、やはり国民との約束をしっかり守ろうということであれば、今の段階から適切な税の投入というのはあり得るべきだ。

 それはなぜかというと、今の通行料金で建設をしているというやり方は、かつては税金も入れていましたけれども、税金入れずに通行料金だけにした途端に、これは二重にお金を取っているという状況があります。これをやはり早く解消しなきゃいけない。そのために、ある一定の部分、合理的な部分については税金を投入して早目に償還を進めて、国民全体の負担を減らしていくという努力がまず間違いなく必要だと思います。

 それから、国民との約束という意味で一点だけ申し上げますが、ちょうど一年前にまさにこの場で本四公団の話をさせていただいたときに、あのときの国民との約束は、四十五年ではなくて四十二年ですね。本四公団について四十二年で償還をします。起算は平成十五年です。平成十五年から四十二年後に償還が済むという約束で、当然、その後は、出資金をそれぞれの自治体、国も含めて自治体にお返しするというお話をされていたはずなんです。それが、一年たったら、いつの間にか三年延びているんです。だから、こういうやり方はするべきじゃないと思うんです。

 四十五で約束をするというのであるならば、これは本当に確実にやる。前倒しは結構ですよ。四十五ということであるならば、やはりそれを確実にやるためには、場合によっては税金を入れるということを確実にどこかで考えなきゃいけないということが一つ。

 それから、これはいわゆる九三四二の中の話になると思いますが、そもそも論で申し上げますけれども、石原大臣、いいですか、最後に一つだけ。高速道路はどういう高速道路が必要かという話について、先ほど、中村さんの示された、BバイCですとか収益性とか外部効果という話をされました。これは、まさに有料道路方式の中でいう場合には収益性という話も出てくるんですが、有料道路制じゃない場合には収益性という話は多分なかなか出てこないんですね。BバイCと外部効果だけになる。これはこれでいいんですけれども、大体、高速道路でBバイCが一以下になるというのはよっぽどの例であって、普通は、プラスというか、一以上になる。それですべての道路を考えていいかというと、私は必ずしもそうじゃないと思うんです。それは高速道路だけじゃないんですけれども、高規格幹線道路も含めて考えたときに、私は速度で考えるべきだと思います。

 政治家の必要以上な関与をやめるべきだというのが一つあります。もう一方で、政治家が責任を持って路線を決めなきゃいけないというのがあります。それは、路線をこことこことここをつくるという話ではなくて、どういうものをつくるかという物差しをしっかりと示すということだと思うんですね。それは、BバイCとか外部効果というようなものよりも、東京から例えば名古屋まで、東京から大阪まで、自動車を使って何キロ以上の速度を確保できるかどうか、私はこれを評定速度と呼んでいますけれども、それが確保できるかどうかで建設するかしないかということを判断するべきだと思います。

 それは地方の道路においては、一般道路の制限速度を上げたり、あるいは規格を若干よくするということでそれが担保されることもあるでしょう。都市においては、渋滞を解消するために環状線をつくるということでそれが担保されるということもあると思います。ですから、そういった一つの軸で都市の部分も地方の部分も同じように説明できるようなものじゃなければ、なかなか説明しやすい指標というのは出てこないと思います。

 この評定速度というものを使って高速道路なり道路の必要性を判断するということについて、あるいは、今のBバイCと外部効果以外にどういうものがあるかということについて大臣の所見を伺っておきたいと思います。

石原国務大臣 津川理論を聞かせていただきましたが、BバイCの中に、指標として実際に評価できるものとして、走行時間短縮便益というものを入れております。これは、その高速道路ができることによってどれだけA地点からB地点に行く時間が短縮されるかということでございますので、ある意味では津川委員のおっしゃられた走行速度の平均値、キロと時間という違いはありますけれども、同じ指標を含んでいると私は考えております。

津川委員 今おっしゃったのは、いわゆる時間短縮効果の話です。時間短縮効果は、今早かったら、もっと早くなるという話をするんです。今、東名高速道路があって、そこでびゅんびゅん飛ばせるのに、さらにもう一本つくる、さらにもう一本つくる、そうするともっと早くなるということになれば効果があるという話になっちゃう。要するに青天井になっちゃうんです。

 そうじゃなくて、東京、大阪、名古屋に関しては、例えば評定速度で八十キロ以上を担保することを国の責務とする、あるいは、人口十万人以上の都市と都市の間を結ぶ、ここを例えば六十キロ以上を担保することを国の責務とする、それ以上については例えば地方で整備していただくとか、そういうやり方をしないと、道路を整備するのか、新幹線を整備するのか、空港を整備するのか、ここの差がなかなかつけられないということにもなります。

 ですから、時間短縮効果という考え方ではなくて、一定の指標、これも時代と時と状況によって変えてもいいかもしれませんが、ここについては何キロ以上について最低限担保するべきだ、だから例えば首都高の中央環状は必要だとか、地方であってもこういった道路の整備が必要だということが同じ土俵で議論できるようになると思いますから、ぜひそういったことも御検討をいただきたいと思います。

 ちょっと時間が終わりましたので、これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

赤羽委員長 穀田恵二君。

穀田委員 きょうは、高速道路建設における社会的便益の判断について質問します。

 まず、高速自動車国道の事業評価手法によると、ステップ1として「事業としての必要性の検証」の項で、事業の完成によって生じる社会的便益が費用を上回るか否かを検証することによって継続するか否かを判断するとしています。これは文書に書いています。さらに、費用対便益の基本的考え方として、交通量の推計、便益の推計、いわゆる走行時間短縮便益、さらには走行経費減少便益、交通事故減少便益などを算定基準としています。

 この道路建設を続けるかどうかを判断するステップ1、いわゆる費用対便益の中で、例えば自然や、それから景観や、まちづくりにもたらすマイナス影響などについてはどこで評価するんでしょうか。それをまずお聞きしたいと思います。

佐藤政府参考人 先生のお尋ねは、自然や景観や環境にもたらす、あえて申し上げれば悪影響と思ってよろしいんでしょうか、マイナスの効果についてどこでどう評価するか、こういうお尋ねだと理解してよろしいでしょうか。

 そこで、私どもは、費用便益あるいはまた外部効果を計算したりする上では、特に外部効果、こういう面で申し上げますと、貴重な自然や環境への悪影響、これは幾つかの項目でとらえ得ることができるかと思います。しかしながら、大事なことは、費用便益の中の計算には、残念ながら、定量的、明示的には入れることが現時点ではまだできておりません。世界的にも非常に難しいという部分がございますので、そういう意味では、そういうマイナスの効果をできるだけあらかじめゼロに近づける、あるいはまたミチゲーションというような形でさらにその復元を図る、こういうことかと思っております。

 したがって、環境影響評価法に基づきまして、自然環境であるとかあるいは景観についても、環境アセスメントを実施する中で、必要に応じて、構造物の形式、デザイン、あるいはのり面の緑化、こうした環境の保全措置を講ずるという形でそのマイナス影響を小さくしていくということにしております。

 また、自然や景観、環境についてマイナスの影響がありそうだ、こういうことが考えられる場合には、必要に応じて、専門家等から成る委員会を開催して意見を伺う、あるいはまた、対策を講ずる上で、学識経験者その他の皆様の十分な御意見をいただきながらマイナスの影響を極力小さくする、こういう形であらかじめのアセスをやっておる、こういうことでございます。

穀田委員 大臣、今の話は大体打ち合わせ済みだと思うんですけれども、副大臣もこちらを見ていますけれども、苦しい話ですよね。これはつくる側にしてみましたら極力小さくするという話であって、どんな判断しているかを見ますと、明示的、定量的には得られないと。つくる方のプラスの方は定量的、明示的にわんさわんさやって、マイナスの方は、なるべくゼロにする、復元する、出そうな場合は意見を伺う、これでは、本当に情けないと言うしかないと私は思います。

 それは、まず判断する段階で、マイナスの効果について結局は評価していないということの宣言なんですね。それはそのとおりだと思うんです。初めにプラス効果だけで実際上は事業の継続を判断し、結果、建設を進めるという結果になるのは当たり前で、これでは、残念ながら、私が今後問題にしようとしている自然や景観や、それから環境という問題について、それを守るということに十分な効果を発揮しないということは明らかだと思うんです。というのは、壊れたものはもとへ戻らないものもあるわけなんですね。そういう意味からいっても指摘しておきたいと思います。考え方はわかりました。

 次に、公団民営化に伴う事業費の地方自治体負担への影響について、淀川左岸線を例にして聞きたいと思います。

 ことしに入って、阪神高速道路公団が、有料道路方式では採算がとれないとして、阪神高速淀川左岸線二期、大和川線を地方自治体の直轄に方針転換することになっています。このため、大阪市では、事業費負担が大幅に増額することをめぐって困惑が広がっています。議会でも議論になっていまして、淀川左岸線二期事業、大阪市の中ですけれども、残事業が九百六十億円で、当初、阪神高速道路公団による事業であれば、大阪市の負担額は六十億円と計上されていました。ところが、直轄として一般街路事業に変更した場合は、交付金などを受けても最終的に負担が三百八十億円に大幅増額となり、六倍以上の負担がかかっていることになるそうです。

 大阪市は、二〇〇四年度当初予算で調査検討費四百万円のみを計上し、負担増に応じるかの決定については当面先送りしています。

 ここの線は、実は、スーパー堤防等を建設してその地下を走らせる計画で、建設費の四〇%が用地買収にかかっていると聞いています。莫大な費用をつぎ込まざるを得なかった結果、採算がとれなくなり、地方自治体で面倒見てもらう、有料では無理だから税金で建設する、これでは筋が通らぬと私は思うんです。有料で採算がとれることを前提に計画されたはずで、建設の根拠が根本から崩れ出した。こういう路線は一たん凍結して、中止を含めた見直しを、こういう問題だからこそ決断すべきじゃないか。

 きのう、参考人の質疑を聞いていまして思ったんですね。データを見直して、勇気を持って、そういうことについて、間違っているときはそういう決断をする必要があるということを知事もおっしゃっていましたけれども、もちろん、これは阪神の問題だと言わずに、その辺はいかがお考えか、お聞きしておきたいと思います。

佐藤政府参考人 先生御指摘の阪神高速の淀川左岸線の二期、これは平成十三年の八月に、大阪圏の新たな環状道路を構成する路線として、都市再生プロジェクトとして都市再生本部で決定された路線であります。

 阪神高速道路公団の民営化後の債務返済、こうしたことは会社になってから十分また検討をしていただくわけでありますが、債務返済を確実にするためということもございまして、事業区分を見直すべきではないか、こういうことで公団の方でいろいろ検討いたしました。

 公団の事業からこの二期の部分を除外したい、こういう公団の検討結果がございます。これにつきまして、この見直しによって、先ほど先生御指摘のように、それぞれの、国あるいは大阪府、大阪市等の負担が変わってくる、こういう問題はございます。

 例えば、九百六十億円、約一千億円の縮減、こういうふうに考えますと、阪神公団の場合、高速道路事業としては二五%が大阪府と大阪市と国との出資で、こういうことにしておりますので、そういう意味では、わかりやすく一千億でいえば、二百五十億の半分、百二十五億が国であり、それから大阪府と大阪市がそのまた残りの半分を負担する、出資する、こういうことであったわけであります。

 これをいわゆる街路事業として行う、こういうことになりますと、国と大阪市が負担する、こういうことでありますから、わかりやすく申し上げて一千億かかるとすれば、五百五十億円と四百五十億円のそれぞれの負担になる、こういうことであります。

 今先生のお話は、有料道路事業であれば急いで緊急に整備する、こういうものが、有料道路事業としては難しい、こういうことであるならば、一たん事業を凍結して、本当にどうするかということを考え直すべきではないか、こういう御指摘でございました。

 これにつきましては、もちろん都市再生の大事なプロジェクト、こういう観点から申し上げますと、大阪市、大阪府のそういう面での骨組みをきちっとする努力、こういうことが大前提であるわけでございます。そういう意味では、あえてこれだけの負担を大阪市あるいは大阪府民がどういうふうにお考えになるかという問題もあろうかと思いますが、逆に申し上げれば、こうした事情を公開し、オープンにしながら、御意見を伺いながら、プロジェクトとしてきちっとやっていくということも一つの考え方だと思っております。

穀田委員 参考人、前半の部分は言っているわけですから、後半の方だけ言っていただければ。わかって話をしているわけでしょう、何ぼかかるかというのは。それは違うというのであれば違うと言ってくれたらいいわけで、そこはちょっと時間の都合もありまして、それは当然でしょう。

 それで、私、オープンにしながらというのは、それは当然なんですよ。問題は、再生プロの大事な仕事だから、事業だからという話じゃなくて、こういうことがもしまかり通れば都市部の高速道路はほとんどが国と地方の直轄になってしまう危険性があるよ、そういう問題として物を見る必要があるんじゃないか。

 高速道路建設の大もとで、採算性が無視されて計画した路線は採算が合わなければ税金でつくる、国も地方も採算性のない道路に税金をつぎ込む、こういうやり方をいよいよやめるべき時期に来ているということを強く指摘しておきたいと思います。

 その一つの例として、京都の話に行きたいと思います。

 八七年に閣議決定された四全総で一万四千キロの高速道路の建設を打ち出したことは御承知のとおりです。近畿圏では、四全総と歩調を合わせて、すばるプランとして同じ年に策定され、京都高速道路はそれに呼応してつくられたものです。

 今、阪神高速道路計画が実際に進行していまして、既に、新十条通、油小路線では事業が着手されて、総事業費は計画された時点で約四千億円と言われていた、結構大きな計画なんですね。この計画が、阪神道路公団が引き続き有料高速道路としてやっていくかどうか、今の話からしても私は疑問だ、金の面からいって。

 そこで、新十条通は六百四十八億円、油小路千六十億円の事業費ということだが、ここは説明はいいですから、総事業費として幾らかかるのか、その一点だけちょっと教えてください。

佐藤政府参考人 先生のお尋ねは、久世橋線、堀川線、西大路線を入れて、こういう趣旨だと思ってよろしいですか。(穀田委員「総事業費、全部」と呼ぶ)

 そういう意味では、合計で四千六百億円が見込まれております。

穀田委員 四千六百億円近くかかる。相当な金だということがおわかりいただけると思うんです。

 そこで、こういうパンフレットまでできていまして、この間も、私、参考人質疑しましたときに、大体、なぜ京都市内に高速道路を持ち込もうとしているのか、その理屈、理由をちょっと言ってくれませんか。

佐藤政府参考人 この京都の都市高速道路、昭和六十一年と平成五年にかけて都市計画決定されています。

 その理由としては、混雑区間を解消するため、こういうことでありまして、一般の平面道路に比べて、高速道路、約二倍以上の交通容量を持ちます、こういう問題と、それからスピード、こういう面からいきますと、規格の高い都市高速ネットワークが京都の市内でも必要であろう、種々配慮して都市計画が決められている、こういうふうに考えております。

穀田委員 京都市は、当時、一等最初に高速道路を持ち込む一番目の理由はそれじゃなかったんです。それは、私は京都に住んでいますからよく知っています。最初の理由は、京阪神間の一体感を強め、活力を引き出す、これが目的だったんです。それが第一の理由だったんです。そして、京都の経済界も、当初から、高速道路計画を南部開発のばねにするということを言い続けてきたんです。その次に、実は渋滞の解消、こういう話をしてきたんですね。二番目の方から言っていただくのもいいんですけれども、当時そういうことだったんです。

 では、本当にそうか。この間、いろいろ問題になりまして、非常にローカルな話に皆さんお思いかもしれませんが、五条通りが込むから、こう来るわけです。それには高速道路を入れさせなといって、混雑は解消するのかと。一見、確かに容量がふえるという話なんだけれども、それとこれとは全然無関係なんですよ、だれが考えたって。

 例えば一番問題になるのは、京都の渋滞というのは、この間も新聞に出まして、市バスが、京都駅から嵐山へ行こうと思ったら七時間半かかったというんですね。それぐらい渋滞になるんです。確かになるんです。これはひどい話なんです。五条通りが一番込むというのもこの間話がありまして、事実なんです。

 だけれども、それでは、今度計画されている路線は何か。それは、例えば西大路線の北端に建設される西大路五条のランプなんですね。まさに五条にぼかんと出るんですよ。その間は込まないんです、五条に出るところに道がぼんと出るわけだから、込んでいるところにまた車が来るから、これは込むのは決まっているんですよ。そんなあほなこと言っても仕方ない話なんです、だれが見たってそれは混雑の解消だということにならないんです。

 では、どうして渋滞を解消するかといったら、それは、京都市の方々でも、京都の経済界の方も、このごろは、もう車の乗り入れの総量を規制する以外にない。ここなんですよ。本当に渋滞解消しようと思ったら、高速道路を中に入れて、出口のところに、一番込んでいるところにどおんと入れる、そんなことが通用する理論自身が間違っているんですよ。だから、それは京都市内の総量の乗り入れ規制以外にない。

 そして、パーク・アンド・ライド方式と例えばLRT、新型の路面電車ですけれども、これを組み合わせることが私はベストだと思っているんです。それは、単に私だけじゃなくて、京都市の方々や経済界の方々もそういった問題を新しい提起として始めていることも紹介しておきたいと思うんです。

 それでもう一つ、では、先ほど、一番最初のところで環境アセスメントという話も局長はされました。そこで大臣にも少しお聞きしておきたいんですけれども、こういう京都市内のど真ん中に高速道路を持ってくるということは、京都は盆地です、環境悪化になると思わないかということを率直にお聞きしたいと思うんです。

石原国務大臣 ちょっと工法がどういうものなのかわかりませんので、仮に京都の五条と交わるところの上に高架を持ってくれば、それは景観を破壊することになると思いますが、地下であるならばそんなに景観は破壊しないんじゃないかと思います。

穀田委員 いや、質問の景観は飛ばしたんです。環境の話をしたんです。

 景観、せっかくおっしゃっていただいたから、では一言だけ言っておきますと、工法、地下だというふうに今おっしゃいましたね。それは確かに地下も考えているんですよ。それは莫大な金がまたかかるんですよ。

 それで、では、その出口がどこに来るかというと、多分大臣もこれはわかっていると思うんですね。京都のちょうど駅をおりましてちょっと西へ行ったところに堀川線というのがあるんですけれども、そこに西本願寺があるんです。西本願寺のど真ん前に入り口が来るんですよ、高速自動車道の地下をつくった場合。本当にこれ、地下、今は金かかるから、これ自身ができるかどうかという問題はありますよ。だけれども、前に来るんですよ。そこの前に三十五メートルの換気塔ができるということで、これ自身でいえばもう台なしなんですよ、それはだれが考えたって。きのうも参考人の佐藤さんがおっしゃっていましたけれども、そこへ入れるのは反対だ、同時に、京都の駅ビルはどないやという話をされていました。

 その意見はともかくとしても、つまり西本願寺のど真ん前に来るというふうなやり方が、およそそういうものとしては考えられないということだけ指摘をしまして、局長に、今大臣に質問した環境悪化はどうかという話をお聞きしておきたいと思うんです。

佐藤政府参考人 先生の御指摘は、京都都市高速の堀川と西大路に入れる路線、これの、景観上は地下にする、しかしながら出入り口の排ガス等がどうか、こういう御指摘かと思います。

 これは、都市計画を決めていただく段階で環境アセスを行って、そういう面での環境上の障害はない、こういうふうにアセスの結果を出させていただいて都市計画を通していただいた、こういうふうに理解しております。

 しかしながら、先ほど先生のお話の、換気塔を建てるとすれば三十五メートル、そういう高さがいいかどうか、この点についても、いろいろ景観を検討する上で、有識者にお集まりいただきながら議論をしてきている、こういうふうに聞いているところでございます。

穀田委員 アセスメントは確かに行われているんです。この間、どんなふうな話をしているかといいますと、アセスメントでは、交通量は五万台から十万台にふえると予測していて、それで環境がよくなると言っているんですよ。だから、いかがなものかと普通の人は思います。

 そして、当時、私は説明会にも出させていただきましたが、もちろんそういう意味で、言っている話を全部局長や参考人が聞いているとは思わないわけだけれども、当時何を言っていたかというと、完成するのは何年も後で、そのころには車の性能はずっとよくなっている、電気自動車も普及しているから大丈夫だ、こんな話をしているんですよ。これは、私、聞いているんです。だから、この程度の話で、アセスメントをやった、それから説明したなどということを言っているのはおよそ理に合わないということだけは言っておきたい。しかも、大気汚染の状況を調べる自動車排気ガス測定局六カ所のうち、三カ所が国の環境基準を超えているわけなんです。

 そこで一番最初に戻るわけですが、意見を伺う審議会をつくる、こう来ましたよね。そこで聞いているんですよ、その中でどんな意見が出ているかと。わざわざ審議会も意見も出ましたので。それを調べてみると、こう言っているんですね。市が走行車両を減らすといいながら高速道路建設を進め、走行車両がふえるという事態になるではないか、政策は矛盾している、こういう意見が出ているんですね。三分の一はこういう意見がありました。

 しかも、先ほど排気塔の景観上の問題がありましたけれども、道路が二つ交差をする、例えば上下という意味ですね、二重という意味ですね。この点では既に結論が出ていまして、皆さんも御承知のとおり、高速道路を含めたそういう高架道路が二重になっているところでいいますと、九五年の西淀川公害地裁判決、それから同じく国道四十三号線の最高裁判決、九八年の川崎公害地裁の判決、二〇〇〇年の尼崎公害地裁判決など、すべて住民側が勝訴しています。そのときに、車が多く通るのに環境がよくなるという言い分は、常識からいっても司法の判断からいっても通用しない時代になっているということをぜひ見ていただきたいと思うんです。

 そこで、これは大きな論ですから、インナーシティー、つまり都市の中核的な内部のところに高速道路を入れるというのは世界的に見たら常識ではないんじゃないかということについて大臣の所見をお伺いしたいと思います。

佐藤政府参考人 事実に基づいた事業に関係するお話でありますので、一言私の方から言わせていただきます。

 先生御指摘の先ほどの訴訟関係、いろいろ事実関係があるわけでございますが、内容によって違うわけでございますが、いずれも高架の道路、こういうことではあるわけでございます。そういう点で、先ほど来の堀川線あるいは西大路線、計画そのものは地下構造、こういうことなものですから、状況がまたそれなりに違う部分はあろうかと思います。

 先生御指摘の、都市の中心部に高速道路を入れる、こうしたことは世界の流れからいっておかしいんではないか、こういう御指摘ございました。

 そういう面で申し上げれば、世界的にという議論でいえば、必ずしも、都市の中の渋滞解消のために高速道路あるいは専用道路が計画あるいは事業されていない、こういうことではないということも事実であるわけであります。特に地下構造で申し上げると、結構、従来できなかったようなことも地下構造として事業実施している、これは世界じゅうにもあるわけでございます。

 問題は、その場合にも、景観上あるいは環境上十分か、こういうことを十分アセスしながらやっておるかという議論になるわけでありまして、そういう意味では、景観にしろ環境のガスの面にしろ、十分御説明申し上げながらやってきている、こういうことであるわけでありますが、さらに御理解いただくような努力ということが必要かと思っております。

穀田委員 参考人にも、まさか京都の問題でこれを一つ一つ聞くのは大変な話で、申しわけないとは思っているんです。でも、そういう京都みたいなところに持ってくるのがいいのかという大きな立場で物を考えてほしいから言っているんです。

 先ほど言いましたように、地下の話がありますけれども、油小路は実は高架なんですよね。それだったら、それを全部地下にするのか、今さら、つくったものを。それはできないわけで、何か物を小さく見せようという話を私はしているんじゃなくて、現実は高架のものもあるんですよ、出てきているわけですから。たまたま地下へ行っている話であって、残りの二つのつくっていないものは。だけれども、それも、本当にこれ、こんな大きな金かけてできるかという話になって、先ほど大阪の話をしましたけれども、そういう負担になってくるとなればそれはとても無理な話になってくるんで、それ自身も無理だということは言っておきたいと思います。

 あわせて、もう時間が来ましたので、残念ですけれども、奈良の平城京のところも通そうという話があるんですよね。これも私はいかがなものかと思うんですよ。やはり京都や奈良、こういう古都、先ほど、大きな都市部の中では、インナーシティーで潜り込んでいる例は地下はありますという話はありましたけれども、私は寡聞にして、歴史都市でそういうものを持ってきたという例は余り知りません。ドイツなんかでも、逆に、周りはありますけれども、中の都市の、しかも地図からいって京都のど真ん中に二本持ってきて、それをこうやるなどという例は聞いたことが私はありません。そこで、奈良へも持ってくるなどという話も私はいかがなものかと思う。

 ですから、一言だけ言っておきますと、最後ですが、なぜ、私、こんなことを言ったかというと、自然や環境や、そして景観というものを一つの配慮の基準にするということを、ゼロにするとか、それから復元するとかじゃなくて、これは壊すことになるということがあらかじめわかっているものをやるべきじゃないということを言っているわけですよ。評価基準というのは何か客観的なものであるかのようにえらく言い張っていますけれども、私は決してそんなことはない。それはつくるということを前提に組み立てられている議論だということを私は言いたかったわけです。

 ですから、マイナス要因もあるんだということも指摘し、こうしたマイナス要因についても基準に加えず、いわゆるプラス要因だけで物事をはかるようなやり方というのは、結局、むだな道路をつくり続ける論拠にもなりかねないということだけ指摘して、時間ですので、質問を終わります。

赤羽委員長 高木陽介君。

高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。

 本日は、民主党の法案について質問させていただきたいと思います。

 今回の民主党の法律案、具体的に法案を全部読ませていただきましたけれども、具体的なスキームが余りはっきりしていないのかな。逆に言うと、評価しようがないのかなというのが正直な実感でございました。

 この法案を読みながら感じたのは、今、厚生労働委員会でも論議されている年金の民主党の対案と似ているなと。具体的な数字が出ていない。また、基本法という形ですので大枠ですけれども、その大枠さえもスキームというふうに言うに値するかどうか、こういう実感をいたしました。

 あえて評価をさせていただきますと、先ほど、自民党の中野委員そして高木毅委員も評価をされておりましたけれども、まず第一に、財源構成が全く不明な、建設、管理に目の渡っていない無責任法案ではないかな。

 第二に、課金制度を導入するということも言われておりますけれども、無料化というふうに言っておきながら課金をしていく、これが混在しているということで、例えば高速道路を使わない、九割の人は使っておりませんので、そういう人たちの負担を考えますと第一の不公平がある。

 二番目として、大都市部では課金をするというようなお話がございましたが、税金で払っている人もいる半面、課金をしなければいけないという二重払いとなるということで、双子の不公平の法案ではないかな。

 三点目としては、三年後というふうに先ほど岩國提出者の方からもありましたけれども、いつ無料になるのか。その課金をした都市部はいつ無料になるのか。そういった路線、区間、そういったものが不明である。結局、無料化も数字合わせの思わせぶりの法案ではないかな。

 四点目は、債務返済について、これは先ほどからも指摘をされておりましたけれども、これから検討する、一年後に検討するということですから、先送り法案であるな。

 また、一万一千人の公団の職員、これをどうしていくかという問題について、税金で運営されるんでしょうか、管理法人が受け入れるというようなことをにおわせておりますので、行革に逆行する法案であるな。このように、さまざまな指摘をさせていただきたいと思います。

 その上で、時間が三十分しかございませんので、具体的な部分で質問させていただき、端的にお答えをいただきたいと思います。

 まず、高速道路の無料化によりまして、現在の四公団合計の料金収入二兆六千億円、これがなくなる。このような状況で、まず四十兆円の債務返済、供用済みの高速道路の管理、必要な高速道路の整備の財源をどのように確保していくのか。そういった高速道路の今後の整備の財源をどうするか。具体的な説明を伺いたいと思います。

岩國議員 高木陽介議員の質問にお答えしたいと思います。

 まず最初に、高速道路を無料化すれば現在の四公団の収入はなくなりますけれども、債務返済その他の財源をどこから持ってくるのかということでありますけれども、民主党がマニフェストで掲げました高速道路原則無料化を実現した場合には高速道路収入がなくなるということについては御指摘のとおりです。

 ですから、午前中の質問にも私ははっきりとお答えしました。通行料収入の見通し、これはすべてゼロで並べて、これより確実な、これよりわかりやすい収支見通しはないわけです。それに比べて、民営化法案についていろいろな比較の形容詞をお使いになりましたけれども、そういった景気任せ、人任せ、車任せ、気分任せの通行料金収入というものを試算として提案せざるを得ない政府の法案こそ、すべて問題の先送り、無料化実現の約束の先送り、そして行革コストを下げない、行革の先送り、おっしゃった形容詞は全部倍にしてお返ししたい、そういうつもりでおります。

 ですから、債務の返済それから高速道路の管理、真に必要な高速道路の整備は、我々の通行料金無料化によっても十分可能であると考えております。

 まず、どこからそういった財源が出てくるのか。一つは経済の活性化です。アメリカ、ドイツ、イギリス、流通コストを下げ、ライフスタイルを変え、そして、車が動き、人が動き、物が動いて経済、景気が悪くなった国を私は見たことがありません。今はそういう経済の活性化というものを期待すること、そうすることによって一般税収の増加を期待すること、これが第一です。車が動いて、人が動いて、物が動いて税収が下がるということはまず考えられない。

 二番目にSA、PAの活用。これは政府案でもそういったことの活用を十分に考えられておられますけれども、そういった千二百十三の関所をなくしてしまえば、それだけのアクセスがふえる、しかも無料でそれだけのアクセスがふえる。また、インターチェンジの数もふやしていく。そういうことによって、高速道路という大きな人の流れ、金の流れ、物の流れの沿線に、それだけの商業あるいは工業の立地拠点ができる、雇用の場が広がっていく、これも経済の活性化の一つの要因です。そういった雇用対策という観点からも大きな効果が期待できる、そのように私は考えております。

 それから、一定期間ではありますけれども、一部の路線からの通行料金の徴収は、これは継続して行います。もちろん、渋滞の解消に十分なめどがついた段階でできるだけ早く、二重払いというふうにおっしゃいましたけれども、二重払いという不公平感は是正をしていかなければならないと我々も考えているところは御指摘のとおりであります。

 二重払いということを言いますけれども、日本の今の高速道路の利用者というのは、実際は、二重払いじゃなくて三重払いになっているんですね。まず税金を払っている。その上に道路特定財源を払っている。そして、車に乗ったら今度は料金を払っている。一度払いではなくて二度払い、三度払い。この三度払いをせめて二度払いぐらいに是正していきたい。さらには、一定期間たったら今度は一度払いにしていきたい。これが、受益者は国民全体である、そして、そういう不公平感を是正していく、当然、政治が目指すべき方向ではないか、私はそのように思います。

高木(陽)委員 イメージ同士のぶつかり合いというのはよくあると思うんですけれども、そういった部分では余り不毛な議論はしたくないと思うんですね。

 今お話のありました政府案、景気頼み、人頼み、こういう言い方をされましたけれども、逆にこの言葉をお返ししますと、経済が活性化して税収がふえる、それによって借金が返せる、こういう言い方も、逆に景気頼み、こういう部分にも当てはまるのではないか。

 ただ、今指摘をされた、景気が回復するための、活性化するための要因として無料化だとかそういうこと、それはそれで一つの考え方だと思います。

 しかし、現実の問題として、午前中の質疑でもありましたけれども、道路に九兆円かけているというお話がございました。しかし、現実の問題、その三分の二は地方で使っているわけです。国費として使っているのは三・六兆円。そのうち、地方に補助事業または臨時の交付金等々、これが一・五兆円。そうしますと、純粋、直轄で使えるのが二・一兆円しかありません。そのうち、現在は直轄の国道の事業等々は一・五兆円使っておりますし、そのほか有料道路の国費として二千億。さらに、電柱の地中化ですとか、そういった事業を四千億円でやっております。

 そうなりますと、二・一兆の国費というのは全部使っているわけですね。逆にどこからそれをひねり出せるのか。正直、では、一年後というふうになる、三年後というふうになる、その段階で、財政が急に好転をして十兆、二十兆というふうに税収がふえるかどうか。やはりふえないと思います。

 そういった現状の中にあって、今地方で道路をつくっている。現実問題、きのうの、各知事も来た参考人、また、地方公聴会でもそうでありました。そういったところでの地方の軒下の道路もつくらなければいけない、生活道路をつくらなければいけない。これにも税金が投入されている。一方、国道も幹線道路としての維持補修も必要である。そういった中で、では、この高速道路の借金四十兆を返すだけではなくて、さらに新たな建設ができるのかどうかという質問なんです。どういうふうに思われますか。

岩國議員 先ほど高木委員の御発言の中に、借金減らしは景気ダウンにつながるんじゃないかという、私の聞き違いでなければそのようにおっしゃっていたと思うのでありますけれども……(高木(陽)委員「いや、景気ダウンじゃなくて景気頼み。景気頼みでそれを返そうとしていると」と呼ぶ)景気頼みですか。

 ですから、政府の試算の中にも、一・五%の成長率とかあるいは〇・五%というのを当然見込んでいらっしゃると思いますけれども、そういった税収の増というものは、当然できるだけ早く債務の返済に充てる。返済に充てることによって、毎年毎年二兆円近い金利の返済に税金がむだに使われているということは、私は、国民負担の軽減という点からいえば急がなければならないことだ、そのように思っております。

 それから、高速道路を一般国道として無料開放した場合に、例えば東名高速に並行して走っております二四六、これはほとんど満杯の状態。その横にもう一回、では二四八でもつくってみようか、そういうふうな必要はもうこれからなくなるわけです。高速道路があって、しかも、日本のどこかの地域に同じような国道をつくっておるじゃないか。これは、重複投資、重複建設、そういった重複工事が必要なくなる。なぜなら、一晩にして高速道路が一般国道として使えるということになれば、一般国道を建設するそれだけの予算は別のところに回せるということにもなります。

 二兆一千億円その他の御質問につきましては、午前中の質問とも関連がありますので、津川議員の方から答弁させていただきます。

津川議員 お答えをいたしますが、質問といたしましては、一般財源化をするにしても、今の道路特定財源というものを一つの財源とした場合には、償還もしながら新規建設をしていくということはなかなか難しいのではないか、こういった御質問であったかと思います。

 まず、私どもとしては、一般財源化をするということと、そこから使うというような言い方はもちろんできますが、今の財源の中だけで考えるのではないということはまず御理解をいただきたいと思います。

 それから、私どもがまず最初に考えたのは、例えばこの償還期限を何年ということを定めることを優先にしたのではなくて、道路は本来無料であって、管理費、建設費、そういったものについては税で充てるという本来の形にまず戻そうということから議論を出発させております。さはさりながら、では、今のこの四十兆円の借金、あるいはこれからつくる部分について、どんどん借金をして、百年かかるか二百年かかるかわかりません、こういう話では余りにも無責任ではないかという話ではあろうかとは思います。

 今、公団の方が発表している数字でありますけれども、債務がおおむね四十兆円であるとか、あるいは道路財源、今、財務省の方からの数字でありますけれども、三兆円というような話がありました。この三兆円をそのままもちろん高速道路の借金返済に入れるというわけではありません。一兆円を入れるという話でも必ずしもありません。そうではなくて、これをまず一般財源化した上で、今の事業量については仮に確保をしたとしても、コストを削減すれば、こういったところからそれなりの財源を捻出することができるのではないかということがまず一つ。

 もう一つは、国の考え方と若干違いますのは、国は四十五年という決め方をしております。私ども、もちろん多少の試算はしておりますけれども、別に四十五年というふうに置く必要は必ずしもなかろうというふうに思っております。また、こういったものが前後をすることで、計算の仕方は随分大きく変わってまいります。

 あるいは建設コストの削減につきましても、私も建設現場にいた人間でありますから、道路建設についてはよくわかっているつもりですけれども、例えば建設の時期が偏る、これを通年に並べるだけで、恐らく、間違いなく一割ぐらいは削減できるだろう、これは現場の、ある意味、常識であります。

 あるいは、高速道路ができなくてAダッシュという形でつくられている部分があります。これも今税金が使われているわけであります。こういった部分についても、これは税金で、高速道路についてはこちらだというやり方をしますと、言ってみれば二重投資になるという考え方をしております。

 ですから、こういったことを総合的に見直していけば債務の償還というのは十分に可能である。当然のことながら、必要な部分についても、建設については当然コストの削減はしなければならないと思いますけれども、可能であるという計算をしておるところでございます。

高木(陽)委員 コストの削減含めて、今の御説明、すごく抽象論なんですね。問題は、今あるお金、いわゆる税収ですね、税金で返すんだったら税金で返すで結構でしょう。それを幾ら、どれだけ使っていくのか、こういった問題を問いかけているわけです。

 では、今の質問からちょっと関連しまして、具体的な数字、これはやはり必要であるなと思うんですね。例えば、その根拠も含めて、一、返すとした場合に、先ほどの話だと国債借りかえというようなニュアンスもちょっとあったと思うんですけれども、将来の金利をどう見ているのか。または税金による負担額は幾らか。または、課金による収入を返済に充てるというふうにもさっきちらっと言われたと思うんですけれども、これはやるのかどうか。また、課金の対象路線、期間、課金の額の水準、課金した場合の交通量をどう見込んでいるか。課金による収入額をどう見込んでいるか。こういう具体的な数字が提示されて初めて、これはいい案だな、これは実現可能性があるんだなとか、そういう判断ができると思うんですね。

 どうしても、無料にしますよ、借金は税金で返しますよ、これはこれで考え方としてあると思います。しかしながら、これが実現性があるのかどうかという、こういう論議をこの国会の中で、国民の代表であるこの国会、この国土交通委員会の中で論議をしなければいけないのではないかなということで、あえて質問させていただきます。

岩國議員 数字がないないとおっしゃいますけれども、私は、午前中、申し上げました。一番大切な数字は既に明確にしてあります。政府の案にはそれさえもないんです。

 三年後というものに相当する数字がどこにありますか。四十五年という、ただ希望的観測しかないんです。通行料金の収入はどうなりますかと、私は政府側に何度も何度も各路線ごとの資料を要求しました。いろいろな前提を置いてできるでしょう。民主党が高木さんにお答えできるように、私はそれを求めたんです。しかし、その将来の通行料の見通しさえも出てこないんです。各路線ごとの収支さえも出てこないんです。

 政府が出せないものを、なぜ我々野党の立場で出さなきゃいけないんですか。まず政府が出してみて、我々は政府の対案として出していますから。政府自身が今まで事業をやりながら、その路線の見積もりさえも出せない。出していただければ、私どもは、それを分析して我々の試算をお示しすることはやぶさかではありません。

高木(陽)委員 厚生労働委員会でもこのような論議があったような気がいたします。数字が出てこないといった場合に、政府が出さないんだと。そうではなくて、やはり大切なことは、国民が利用するわけですね。ある意味で言うと、私たち、国民の代表としてこの法律案を、政府・与党案、そして民主党案とを対決しながら、では、どちらがいいんでしょうか、こういう判断を最終的にしなければいけない。

 そういったときに、ある意味で言うと、政府案というのは過去二年間にわたって、民営化推進委員会の中で、公開の場で、さまざまな角度から議論されてきました。一方、民主党は民主党の中でやってきたと思います、この無料化案について。しかしながら、多くの国民はその途中経過というのは知らないわけですね。

 無料化、その考え方はいいと思います。しかしながら、どうすればできるかというその過程について、これはやはり提示する、法案として出すからには責務があるのではないか、これを申し上げたいと思います。

 さらに、課金の話を先ほどからちょっと申し上げましたけれども、午前中から岩國提出者は、数字は明確に出している、三とゼロであると。実際問題、この法案を読ませていただきますと、第三条に料金を徴収しないというのが書いてありまして、第五条のところに、施行後三年以内、三年と明確に出ていますね。さらに、第七条では原則として料金を徴収しない、いわゆるゼロですね。第十一条、これは推進本部ですか、これをつくって、施行後一年をめどとして、前章に定める高速道路事業の計画をつくれ、こういうようなことで数字は出ていますけれども、三とゼロ。

 すごくシンプルなんですけれども、あえてこれは、いつも岩國委員がこの委員会で結構言葉をいろいろとおもしろおかしく言っておられますので、私もちょっとそれに倣いまして、この三という数字は、今何も決められない、さんざん、悲惨という「さん」であろう。法案の中身は具体的なものがないということでゼロであろう。こういう意味での三とゼロというふうにあえて申し上げたいと思います。

 ちょっとまた質問通告したのに戻りまして、一般財源化、道路特定財源の問題、これは先ほど津川提出者が答弁で言われましたけれども、そもそもマニフェスト、いわゆる政権の公約、国民に対する約束の中で、道路特定財源を一般財源化する、こういうことを言われた。しかし、午前中の質問でも道路特定財源は残すようなニュアンスも言われておりますけれども、一体どちらなのか。

 やはり国民が、そのマニフェスト、政権の公約を判断して一票を投じているわけでございますから、そういった意味では、その問題については明確にしなければいけないと思いますけれども、その点についてお答え願いたいと思います。

津川議員 残しません。

高木(陽)委員 残しませんね。

 では、残さないとした場合に、一般財源化されますね。それはそれでいいでしょう。そうなりますと暫定税率の問題も出てきますね。特定財源、午前中、民主党の樽床委員の方からも質問がありました。それで暫定税率の問題もちょっと触れられた、このようにも思いますけれども、もしこれが一般財源化した場合には、この暫定税率、これは本則に戻した場合にそれだけの収入が減るわけですね。

 そういった収入がさらに減る。景気で税収がふえるという見方もしていますけれども、いわゆる本則に戻した場合に半分になってしまう現実の中で、どういうふうにこの債務の償還をしていくのか、さらには新しい道路をつくっていくのか、これについてお答え願いたいと思います。

津川議員 お答えをいたします。

 午前中にも若干説明をさせていただきましたが、一般財源化をするときに本則に戻すことになるのではないかという話、それも当然一つの議論かと思います。

 私どもが公共事業コントロール法案の中で措置をしているものは、揮発油税に関しましては暫定税率を本則とするという考え方をとっております。重量税については暫定税率を本則に戻すという考え方をとります。

 つまり、揮発油税でございますから、仮に、車をどんどん使っていただいて走っていただく、高速道路を無料化したら混雑するのではないかというような御批判があろうかと思いますが、要はそれは、高速道路を無料化すれば車がどんどん走るということを認識していただけると思いますが、そういうことに関して、この揮発油税の部分に関しての税率は今の暫定税率を本則としてそのまま残すという形になりますので、この部分は税収がアップするということにつながろうかというふうに考えております。

高木(陽)委員 どうもなかなか理解しがたいなというふうにも思いますが、時間が限られておりますので、質問通告をいっぱいしておりましたので、次の質問をさせていただきたいと思います。

 参考人質疑でも申し上げましたが、ETCの問題。これは政府としてもETCの普及を促進しながら、ETCが導入されればされるほど、さまざまな割引の仕方だとか多様性が出てきた。また渋滞緩和にも役立ってきた。ETCレーンを拡充するとともに、利用者がETC車載器を購入するような促進策、こういうのも実施されてまいりました。

 高速道路が無料化されますと料金所がなくなるわけですから、まずは二百万人以上いるETCの利用者、つけたわけです、お金をかけて。民主党の議員の中にもいらっしゃると思いますよ、ETCをつけて走っている人。または支持者の方にもいると思います。さあ、このETC、つけてまだ一年目、二年目、三年目。いよいよ専用レーンがふえてきた、ああ、これは便利になってきたな。このやさきにこれがなくなるわけです。

 どうしますか、これ。いわゆる、つけた人はつけた損だな、損したな、こういうふうに思っていただくんですか。ここら辺の利用者に対する説明をどうするか、お答え願いたいと思います。

岩國議員 ETCについては、私どもの考え方は以下のとおりです。

 これは、無料化を行った後でも課金の制度が残る区間も一定期間、一定路線について存在するということ、したがって、その区間についてはETCの利用によってスムーズな料金徴収が行われるというメリットはこれからも継続して存在します。また、無料開放された地域の方々でも、ETCは、高速道路の料金徴収だけではなく駐車場などの料金精算でも利用できるシステムであることから、決してむだになるということはないと考えます。

 なお、ETC搭載費用以上に、高速道路を無料開放した場合の高速道路料金分の便益ははるかに大きいことも申し添えておきます。

高木(陽)委員 課金をするからETCは残しておいてもいい、それはそうかもしれませんけれども、でも、基本は無料でしょう。

 先ほどの答弁にもありましたように、課金をする、一方で課金されない人がいる。これは二重の不公平だと私は申し上げました。岩國提出者の方は、今まで三重だったのを二重ぐらいにしてみたいな言い方をされましたけれども、これも早急に、民主党の考え方でいきますと無料化になるわけですから、そうしますと、これはやはり無用の長物になるわけですね。

 そういった部分について、今一生懸命、一生懸命というか、つけている。例えば民主党の議員の方にも、これを促進すべきだ、こういうふうに主張された方もいらっしゃるわけですね。党内でのそういった整合性というものもどうなっているのかなというふうに疑問を持ちますが、これは答弁は結構でございます。

 あと、民主党案の公団職員の問題。これは国有化されるわけですね。そうなりますと、道路公団はなくなるわけです。政府案だと株式会社に移行しますから、職員というのはそのまま、いろいろと変わるかもしれませんけれども、抱えている。一万一千人いるわけです。さあ、この人たちをどうするんですか、国有化されて。

 それについて、この法案によると管理法人をつくる。でも、雇用対策のための管理法人をつくるというのは、それは理解されるでしょうか。そこら辺の管理法人のあり方、どういうふうに考えているか、お聞かせ願いたいと思います。

岩國議員 再雇用対策については、例えば千二百十三の料金所は撤廃される、千二百十三の料金所に使われているお金が千二百億円。

 例えばの案ですけれども、千二百億、千二百の老人ホームに毎年一億円、そしてそういうところで働いていただく。こういった雇用対策も選択肢の一つとしては考えられるところであります。朝から夜まで排気ガスの中に囲まれて仕事をする方がいいのか、それとも、朝から夜までお年寄りの笑顔に囲まれて仕事をする方がいいのか、答えは明らかです。私は、税金の使い方というのはこういう発想の転換が必要じゃないかと思うのです。料金所で働く方がいいのか、老人ホーム、これからますます充実していかなければならない、そういうところにこそ新しい雇用の場というのは開けるのじゃないか、そのように思います。

 それに限っているわけではありませんけれども、一万二千人という料金所職員の皆さんの再雇用対策というものについては民主党としても最重点で考えていきたい、そういうふうに思っております。

高木(陽)委員 ちょっと先取りして質問しちゃったかなと思ったんですけれども、その管理法人、国有化した場合には国が管理すればいいわけです。全国に地方整備局があって道路事務所があって、それが直轄国道を管理しているわけですね。国有化されるわけですから、国がしっかりと各地方整備局で管理をすれば、これは本当にむだが省けるわけですね。それをわざわざ別の管理法人をなぜつくらなければいけないのかなと思ったのは、一万一千人の職員の雇用のためかなとは思ったんですね。

 しかし、ここを考えますと、やはり本当に行革をしていくんだという流れの中で、特殊法人改革の流れの中でこの道路公団問題というのも取り上げられてきた。そう考えますと、こうやって管理法人というのをつくって、果たしてそれが効率化されているのかどうか。この点についてどうお考えか、お聞かせ願いたいと思います。

岩國議員 物事の考え方として、今ある雇用の場を守らなければならないから今の有料制を守らなければならない、したがって、二重三重の負担というものを利用者に押しつけなければならないというのは、私は本末転倒だと思うんです。

 国民全体の経済をいかに活性させるのか、そして、高速道路という日本で一番付加価値の高いこの高速道路近辺、これを新しい仕事の場として、雇用の場として開放すること、これを急がなければ、日本の経済が危なくなってくると思います。

 経済を支えていき、活性化させる。その中でこそ雇用の場というものが広がっていくわけでありますから、今ある料金所の皆さんに、いつまでも料金所で働いてください、そのためには料金所は撤廃しません、そのために有料制を残します、そのためにはこの仕組みしかありませんというのは、私は本末転倒だと思います。

 それから、管理、修理等につきましても、高速道路の維持管理は、管理主体がどのようになろうとも、国としてやらなければならない必要な行為でありまして、そのための高速道路管理法人を新たに設置することと我々の考えではしております。

 高速道路については国土交通省が直接維持管理を行うことも考えられますけれども、国土交通省が直接維持管理を行うよりも、高速道路という高規格の道路を専門に維持管理する法人を設立する方が維持管理の効率的な運営ができる、そのような考えから高速道路管理法人を設立することとしたものであります。

高木(陽)委員 なかなか、三十分の時間帯ですから、論議がかみ合わない部分も多々あったなと思いました。

 正直申し上げまして、だれもが、道路は無料になった方がいい、これは思っていると思うんです。思っていると思うんです。参考人の質疑でもいろいろと出ていました、道路というのは公共財である、公物である。本当にそういった考え方の中から考えると、やはり道路はしっかりとつくらなければいけないと思いますし、維持管理もしっかりとやっていかなければいけない、このようにだれもが考えていると思いますし、私もそう思います。

 しかしながら、今回の道路公団の民営化問題で大きな問題となったのは、四十兆の債務をどうするのか。九三四二がすべて正しい、こういう考え方には立ちませんが、やはりネットワークとして完成させなければいけない残る高速道路をどうやってつくるのか、こういった問題。さらに、今回の道路公団の民営化、さらには、推進委員会でずっと論議されてきた、ファミリー企業の問題ですとかコスト意識のなさですとか公団の体質、そういった問題はやはり一つ一つ解決しなければいけないと思います。

 そういった中でやはり一番大きな問題は、限られた財政の中で、その四十兆の債務を国が引き受けながら、しかも新たな道路をつくれるかどうか、この一点が重要な問題であろうと思うんです。それができた上でただになるんだったら、それはそれで、皆さん、与野党超えて賛成をするんじゃないかと思うんですが、実際問題、民主党の案でいきますと、本当に四十兆返せるんですか、道路をつくれるんですか。逆に、借金を税金で返す、一方、高速道路もつくっていく。では、地方の道路はどうなるんですか。

 そういった問題を明確にしない限りはやはり民主党案には賛成しかねる、このことを主張させていただきまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

赤羽委員長 次回は、来る二十三日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十三分散会

     ――――◇―――――

  〔本号(その一)参照〕

    ―――――――――――――

   派遣委員の滋賀県における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成十六年四月十九日(月)

二、場所

   琵琶湖ホテル

三、意見を聴取した問題

   高速道路株式会社法案(内閣提出)、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法案(内閣提出)、日本道路公団等の民営化に伴う道路関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)、日本道路公団等民営化関係法施行法案(内閣提出)及び高速道路事業改革基本法案(岩國哲人君外四名提出)について

四、出席者

 (1) 派遣委員

      座長 赤羽 一嘉君

         石田 真敏君   高木  毅君

         望月 義夫君   森田  一君

         岩國 哲人君   奥村 展三君

         古本伸一郎君   三日月大造君

         山名 靖英君   石井 郁子君

 (2) 意見陳述者

      大阪大学社会経済研究所教授          小野 善康君

      大津市長        目片  信君

      滋賀県商工会議所連合会会長          高橋宗治郎君

      立命館大学経営学部教授 土居 靖範君

 (3) その他の出席者

      国土交通委員会専門員  飯田 祐弘君

      国土交通省大臣官房総括審議官         梅田 春実君

      国土交通省道路局次長  榊  正剛君

      国土交通省道路局有料道路課長         金井 道夫君

     ――――◇―――――

    午後一時開議

赤羽座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院国土交通委員長であり、今回の派遣委員団団長の赤羽一嘉でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

 この際、派遣委員団を代表して一言ごあいさつを申し上げさせていただきます。

 本日は、今回の地方公聴会の開催が急な決定であったにもかかわりませず、四名の意見陳述人の皆様におかれましては、貴重なお時間をちょうだいし、御参加いただきましたことを、高いところからでございますが、まず、心から御礼を申し上げる次第でございます。本当にありがとうございます。

 また、本日の会議の開催の受け入れに関しまして御協力をいただきました地元関係者の皆様、そして数多くの傍聴人の皆様方に対しましても、この場をおかりいたしまして、心から感謝を申し上げる次第でございます。

 皆様御承知のとおり、現在開会中の通常国会におきまして、当国土交通委員会では、いわゆる道路公団民営化関連法案、閣法といたしまして高速道路株式会社法案、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法案、日本道路公団等の民営化に伴う道路関係法律の整備等に関する法律案、日本道路公団等民営化関係法施行法案及び衆法としての高速道路事業改革基本法案の審査を行っているところでございます。

 当委員会といたしましては、各案の審査に当たり、国民各界各層の皆様方から幅広い御意見を賜るべく、本日、当大津市におきましてこのような会議を設定させていただいたところでございます。

 御意見をいただきます四名の皆様方におかれましては、大変限られた時間で恐縮でございますが、それぞれのお立場からぜひとも忌憚のない御意見をいただきますよう、どうかよろしくお願い申し上げます。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。

 会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。

 なお、この会議におきましては、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと思います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、意見陳述者の方々からそれぞれ十分程度意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。

 まず、派遣委員は、自由民主党の望月義夫君、石田真敏君、高木毅君、森田一君、民主党・無所属クラブの奥村展三君、岩國哲人君、古本伸一郎君、三日月大造君、公明党の山名靖英君、日本共産党の石井郁子君、以上でございます。

 次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。

 大阪大学社会経済研究所教授小野善康君、大津市長目片信君、滋賀県商工会議所連合会会長高橋宗治郎君、立命館大学経営学部教授土居靖範君、以上四名の方々でございます。

 それでは、まず小野善康君に御意見をお述べいただきたいと存じます。

小野善康君 ただいま御紹介にあずかりました小野でございます。

 十分間の時間をいただいて、考えていることをお話ししようと思います。

 まず、今回の高速道路事業の民営化というものの背景というか考え方というのは、次のようなものだと思います。

 それは、費用便益意識が本質的に非常に欠如している非効率な特殊法人が意味のない道路をどんどんつくった、特に最近、そういうことが多いというふうに言われている。それから、経営が非常に非効率であるので、借入金をためていて、これを返せない状態、あるいは返すのが難しい状態になっていて、税金を投入しなければならないというおそれがある。

 そういうことであるので、今回の改革によって効率化を図って、そういう問題をいかに解決するかの道筋をつけようということだと思います。具体的には二つの問題が主に言われているだろう。

 一つは、既存の借入金をいかにして返済するか。それは簡単に言えば、税金投入をなるべく避けるようにしてほしい。言い方を変えると国民負担の最小化であり、あるいは回避である。ですから、具体的に道筋をつけて、四十年とか五十年とかいうアイデアが出ていましたけれども、高速道路収入によって全部返すように、そういう計画をつくったんだということ。

 それからもう一つは、新規建設に関して、道路を計画されたとおりにどんどんつくるというのは効率上よくないのではないか。それをちゃんとチェックできるように、特に民間の経営の立場から考えれば、むだな道路はつくらなくなるのではないか。簡単にサマリーすれば、こういう二つのポイントだと思います。

 私は、効率の悪い経営があったりしたら、それを効率化することを考えるという方向は全く正しいと思います。問題は、純粋に効率性という立場から見てこういうやり方が本当にいいのだろうかということについて、実は甚だ疑問があるのではないかということを申し上げたいと思います。ですから、そのことを十分に理解された上で、今後もし経営形態が変わったとしても、そういうことを注意してちゃんとやっていただきたいということであります。

 今の点を、負担、効率及び料金設定という三つの点に分けてお話しさせていただこうと思います。

 まず第一ですが、負担の面です。

 私は、今回、非常に気を使って税金投入を避けようとされていて、計画の上では、いわゆる高速道路収入で何とかするにはどうしたらいいかということに随分苦労されているようなんですが、結論を言えば、負担は税金でも通行料でも一緒だ。そのいわば道筋をつけるためにこれだけ努力するというのはどういうことなのか、実はよくわからないというのが正直な気持ちであります。

 なぜ同じかというと、税金で払おうが通行料で払おうが、道路事業が抱えた負債額は全く変わらないわけです。しかも、いずれの方法でも国民から金を取るには違いないわけで、その同じ額を借金の返済に使うということですから、それは両方とも同じじゃないか。要するに、極端な言い方をすれば、右のポケットから払うと負担は少なくて、左のポケットから払うと負担は大きいという議論に聞こえてしまう。そういうことを私が申し上げると、論理的には、要するに同じ額をどうせ国民から取って払うわけですから、これは同じだというふうに同意してくださる方がいらっしゃるかもしれません。

 次に出てくる議論は、受益者負担という発想であります。受益者が払うのは、ある意味負担ではない。税金はそういうこととは関係なく払うのであるから、当然通行料で払う方がいいのではないか、こういうふうに言う反論があると思うんですけれども、私は、その本質を考えてみると、いや、逆にまだ税金の方がいいぐらいだ、こう思ってしまう。

 理由を申し上げます。

 それは、道路のようなものの場合、それで受益しない国民というのはほとんどいない。全員が受益していると言ってもいい。そういうふうに申し上げると、高速道路なんか私は使ったことがないという方が、まずここの方はいらっしゃらないと思いますが、ひょっとしてそういう方がいらっしゃるかもしれない。そうすると、私が伺いたいのは、では宅配便を使ったことはないかというふうになる。宅配便も使ったことがないという人がもしいたら、では生鮮食料品、野菜や刺身を食べたことはないかという質問が出てくる。というように、すべてのものについて通行料というのはかかってくるわけです。

 さらに始末が悪いのは、同じ製品において通行料が占める割合の高い製品というのは一体何かといったら、それは生鮮食料品とか刺身とかそういうものであって、決して、例えばダイヤモンドの値段に通行料が大きな割合を占めるということはあり得ないわけです。

 つまり、簡単に言えば、通行料で取るということは、非常に逆進的な税金を集めて、それで返すというのと同じだ。ですから、消費税の方がまだいい。消費税はすべてのもので同率だ。もう少し言えば所得税の方がいいかもしれない、所得税は累進的なものですから。

 一見、税金を取られて自分は損だ、こう国民の方が思われるとしても、実はよくよく計算してみたら、今申し上げたようなことだということだと思います。

 次に、効率性の概念から申し上げます。

 民間の経営手法を入れると効率性が上がるということを前提にされていると思うんですが、特に不況の場合に、民間企業の採算性、赤字か黒字かということと、国の、国民経済の効率性というのは全く違うわけです。そのことが全くわからずに、民間企業の経営形態をそのまま導入すればいいんだ、どうもそういうふうに聞こえてしまう。

 これは簡単に言えば、例えば道路建設のことを考えてみると次のように考えられる。

 道路建設を今一生懸命やっている。民間企業の場合、その道路建設に賃金を払う。特に建設費の七割から八割ぐらいが人件費だと言われていますから、大きな人件費を払って、それを超す料金収入がない限りは赤字になってしまう。だからつくらない方がいいというのが民営化の考えだと思うのですが、では道路建設をやめたらどういうことが起こるかというと、その人たちは失業するわけです。すなわち働けないという状況になってしまう。そういうふうに短絡的に言うと、いや、そんなことはない、もしやめても、そのやめた人は別の職に就職するだろうという意見が出てくると思うんです。それは当然ありますけれども、そうすると、ほかの失業者が得るべきジョブオポチュニティー、雇用機会を奪っていることになる。

 要するに、そもそも雇用機会が少ないという状況で今成り立っていて、地方経済、関西の経済は特にひどいんですが、そういう場合に仕事をなくすということは、そのまま、何もその人を使わない、あるいはそれと同等の労働力を使わないということに結びついてしまう。そのことを理解された上で、効率性の面から民間のいわゆる人件費を含んだ効率性の概念でやると、これは過少の投資になってしまう、せっかくの労働力が生かされないということになってしまうということを申し上げたい。

 三番目は料金設定の問題であります。

 料金設定については、こういう値段をつけたらいかにして借金が返せるかということで議論されていると思うんですが、私は、これは効率性の立場から見て本質的に間違っているのではないかと思います。

 道路のようなものの場合に、道路は社会資本ですから、なるべく国民に使ってもらえば使ってもらうほど効率がいいわけです。だから、常に存在している道路について、込んでいないのならただにしてしまえばいい。というのは、それによって、より多くの人がその道路を使うことができる。でも、込み出したら、それは道路として機能を果たさなくなってくるわけですね、だんだん動けなくなって。そうすると、それは、せっかくある社会資本である道路を活用していないことになるので、それなら料金を課して、通行量をその形で制限して、特に必要な人だけに通っていただく、そういう形で既存の社会資本を使っていただくというのが一番いい方法である。

 ですから、無料化という問題でいうときに、私の印象では、無料化は、将来お金を返すのに収入が足りなくなるという見方とか、あるいは、逆の話ですが、無料化するとあなたの負担は減りますよという、そういう形で説明されることが多いように見受けられるんですが、そういうことは全く関係ない。先ほど申し上げたように、負担も同じだし、収益をとるとかとらないということは関係ないわけで、混雑をいかに調整して、その道路を最も有効に使ってもらうにはどうしたらいいかという発想からプライシングすべきである。そうなると、今申し上げたような混雑税の考え方、すいていたらただでもいいからどんどん走っていただくというのがいいのではないか。

 もうほぼ時間なので、あと、ほかのことは少し簡単に言わせていただきますが、一つだけ申し上げると、今回のような制度改革がもし行われて、民間企業がやることによって、例えば個々のサービスエリアやパーキングエリアなんかの民間の普通の製品と同じようなものについて競争原理を入れるという発想はいいと思うんですけれども、何でもかんでも民間企業と同じようにやって、利益が出たら大成功、利益がなかったら違うというのは、そもそも道路という特殊な財についての理解がまるで違っているのではないかということを、純粋に効率性の面から申し上げることができると思います。

 以上です。(拍手)

赤羽座長 ありがとうございました。

 次に、目片信君にお願いいたします。

目片信君 ただいま御紹介いただきました大津市長の目片信でございます。

 このたびは、道路関係四公団の民営化関係法案に関し、衆議院国土交通委員会の地方公聴会を我が市で開催いただきますとともに、不肖私に意見を述べる機会を与えていただきましたことについて、赤羽委員長を初め関係の皆さん方に厚く御礼を申し上げます。

 私は、本年一月の大津市長選挙におきまして、多くの市民の皆さんの信託を受け、当選の栄に浴することができました。このことにつきましては、私が公約として掲げた「改革と継続」及び「決断と実行」という市政運営の大きな柱が、市民の皆さん方の共感を得たものと自負しております。

 このため、政府及び与党の皆さんが進めておられる、官から民へ並びに国から地方へという我が国の構造改革の方向につきましても深く賛意を表するものであり、この構造改革の成果を本市のまちづくりに生かしていきたいと考えているところでございます。

 私は、この構造改革の意味するところを次のように理解しております。

 すなわち、二十一世紀の行政運営に当たっては、我が国の民間企業が厳しい国際競争に打ちかっていくような効率性の追求や創意工夫が大事であること。また、各種事業の構想や計画の段階からその費用対効果を十分に検討し、選択と集中による政策運営を行うことが重要であること。さらに、各種事業の計画や実施に当たっては、市民、国民のニーズや意見に十分配慮するとともに、我が国の隅々において住民のための幅広い行政を総合的に進めている市町村長の意見にしっかり耳を傾けることであると受けとめております。

 こうした観点から道路関係四公団の民営化に関する内閣提出四法案を拝読いたしますと、民営化後の各株式会社において、より主体性を持った経営判断、将来における採算性を念頭に置いた建設と管理の効率化、サービスエリア等の積極的活用などが可能となり、民間企業の経営にも携わった者として、経済原則に立った組織運営が実現できるものと期待をいたしております。

 また、日本道路公団が大きく三分割されることについては、おのおのの地域において、地方公共団体や市民との合意形成がより円滑に行えるようになると期待をいたしております。

 さらに、国土開発幹線自動車道の整備計画区間を全線開通させることを否定されていないことについては、その実現を多くの国民や多くの市町村長等がひとしく念願しているところであり、高く評価できるものと考えております。

 以上のような考え方から、私としては、内閣提出の四法案に賛同するものであります。

 なお、この四法案については、長年にわたって各種各様の議論の末に今国会に提出されたものであり、その間、我が国の高速道路行政が歩みをとめていたことはまことに遺憾と考えております。このため、四法案の早期成立を図っていただき、国民の利益や国民の声にこたえる高速道路ネットワークの建設と管理に邁進していただくよう強くお願いを申し上げるものでございます。

 そこで、四法案成立後の高速道路行政のあり方につきまして、いささか御意見を申し上げます。

 それは、最初に述べましたように、改革と同時に継続も重要であるという点であり、過去から継続されてきた政府・与党の国民に対する約束を果たすため、国土開発幹線自動車道の整備計画区間の全線開通がぜひとも必要であるということでございます。

 新直轄方式による道路を含め、我が国の全土にわたり高速道路のネットワークを形成することは、国の行財政構造改革との整合を図りつつも、国土計画の根幹をなす重要課題であり、真に総合的な交通体系の確立及び過密過疎問題の解消並びに我が国の将来にわたる繁栄のために必要不可欠な公共事業であります。

 その場合、高速道路の延伸を待ち焦がれておられる地域もさることながら、戦後の高度成長や安定成長を支えてきた東海道ベルト地帯において、一日たりとも欠かすことのできない円滑な交通流動にたえ得る高速道路ネットワークの充実を図ることも、忘れられてはならない重要政策と言えるからであります。

 この点から、将来における高速道路ネットワークの整備に関連し、先般、抜本的見直し区間という概念が極めて唐突に提案されたことにつきましては、驚きを禁じ得ません。私は、国土開発幹線自動車道の整備計画区間については、ひとしく計画の効率化や合理化の検討を行うべきものと考えています。

 例えば、第二名神高速道路において、大津市から城陽市までの間及び八幡市から高槻市までの間が抜本的見直し区間に指定されましたが、この区間は、既に平成五年に当時の建設大臣から施行命令が出されており、東海道ベルト地帯が今後とも我が国の経済的繁栄を先導し、関西圏や中京圏の市民、国民が豊かな交通基盤を享受していくとともに、いつ起こるとも知れない大規模地震等の際の緊急復興活動に確実に対応できる代替ルートの確保という危機管理の意味からも、ぜひとも必要な高速道路であります。

 次に、この地域の足元に目を向けていただくため、私たち大津市民が住まいをし、関西圏の中核都市としてもろもろの企業が活動している大津市の実情を紹介させていただきます。

 大津市は、国土交通委員会の皆様がごらんになったとおり、琵琶湖と比叡山系等の山並みに包まれた山紫水明の地であり、世界文化遺産の延暦寺を擁し、昨年十月、法律に基づき古都に指定されるなど、歴史的環境にも恵まれた都市であります。また、東海道ベルト地帯と日本海地方との結節点に当たり、古くから交通の要衝として大きな役割を担ってきました。

 こうした立地条件のもと、本市は戦後一貫して成長を続け、人口増加率は常に県庁所在地の中でトップレベルの水準を維持してきました。その結果、人口は昨年七月に三十万人を突破し、今も増加を続けております。また、国立社会保障・人口問題研究所による人口の将来推計を見ますと、間もなく我が国の総人口が減少に転ずる中にあって、平成四十二年においても人口の伸びが予想される、全国的にも数少ない都市の一つであります。

 私は、この人口推計どおりに本市が今後とも成長を続けていくための最も大きな課題は、道路交通問題の解決にあると考えております。本市を横断する国道一号は、ナンバーワン国道にもかかわらず大津市内のみが二車線のままであり、滋賀県庁付近において一日当たり四万四千台の自動車が通行するため、慢性的な交通渋滞に悩まされております。

 また、琵琶湖の西岸を走る国道百六十一号についても、日本道路公団にバイパスとして湖西道路を整備いただいたものの、全線を通過する料金が八百三十円と割高なため、通行車両が余り転換せず、本市の北部副都心である琵琶湖大橋付近の堅田市街地等において、国道の慢性的な交通渋滞に悩まされております。

 さらに、我が国最初の高速道路としての名神高速道路につきましては、皆様がテレビ、ラジオ等でよく見聞きされているとおり、お盆前後や年末年始において車が動かなくなり、その他の期間においても一日当たり十万台前後という交通量によって交通渋滞の発生に悩まされ、自動車による到達時間の確実性についても不安を感じている現状であります。

 このような交通渋滞等の問題は、まさに全国津々浦々に共通する課題でもあり、今後とも、高速道路や幹線道路の整備を確実に推進するため、いわゆる道路特定財源の確保と活用についてはぜひとも堅持し続けていただきたいと考えております。

 また、それぞれの地域において、交通状況等に対応した総合的な渋滞対策を進めるため、時には発想の転換を行い、例えば、日本道路公団が管理されている湖西道路を直轄国道化することにより本市の北部副都心における国道百六十一号の混雑を緩和するような方策についても積極的に取り組んでいただきたいと存じます。

 最後に、繰り返しになりますが、第二名神高速道路につきましても、環境アセスメントの段階から、計画の推進さらには用地交渉に至るまで、全面的に協力してきた滋賀県や大津市の職員の労苦にも御配慮いただき、大津市民等が待望して久しいその早期全線開通に向け、衆議院議員の皆様を初め国土交通省や民営化後の株式会社等の皆様が着工へのステップを開始していただくことを切にお願いして、大津市長としての私の意見陳述を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

赤羽座長 ありがとうございました。

 次に、高橋宗治郎君にお願いいたします。

高橋宗治郎君 ただいま御指名いただきました高橋でございます。

 経済界の立場から、法案をめぐる経済的な背景等につきまして発言をさせていただきます。

 なお、最後に少しだけ当地域の事情も例として申し述べさせていただきますので、御了承いただきたいと存じます。

 まず、高速道路の整備についてでございます。

 一つは、御高承のとおり、二十一世紀の日本の産業、殊に製造業は、東アジアとの関係が従来以上に緊密な関係に入ることは確実でございます。東アジア、すなわち日本、中国を中心とした地域でございますが、これは自由貿易協定が予想以上に早く成立し、域内では、貿易、生産のための物流は格別の増加が見込まれるわけでございます。

 生産面で見てみますと、域内での適地生産という方式が発達いたしますでしょう。これは、あらゆる部品を含めまして効率のよい場所で生産する、そして、製品の組み立てもまた効率のよいところで行うという方式でございます。特に、先端技術を要する製品は軽く小型というのが多いわけで、貨物航空機による輸送が容易でございますので、適地生産に向いていると考えております。

 一方、販売面で見てみますと、中国の十三億人という大きなマーケットを日本が手に入れるかどうかは、国際競争上で重大な課題であると考えております。

 中国のマーケットには日本は先進国の中で一番地理的には近いところにある利点を有しているわけでございますけれども、問題は、輸送の所要時間の競争でございます。これは、社会的な日本国内のいろいろな施設によって左右される問題でございます。したがって、貿易立国でございます日本としては、二十一世紀も引き続いて経済的に優位に立つためには、物流の時間短縮が絶対に必要でございます。

 具体的に申しますならば、日本国内の物流、すなわち国際空港と先端産業が多い内陸部の生産地の間の問題、そして、貿易港と内陸部の生産地との間の所要時間をできる限り短縮することが要請されるわけでございます。

 この点につきまして国内の現状を見てみますと、かなり高速道路が整備されていることは事実でございますが、内陸部の生産地につきましては、かなりのばらつきが多いように見受けられるわけでございます。今後、この観点で整備が可能な制度となりますような法改正をお願いいたしたいと存じます。

 二つ目に、地方分権時代への対応でございます。

 従来は、どちらかと申しますと、東京とか大阪、名古屋等の行政や経済的な中心地より周辺部への道路網整備を行う、こういう観点であったように考えております。言うならば、中心地からの放射線状の道路でありました。今後、地方分権時代に入りまして、各地がそれぞれの特徴を発揮して発展していくためには、周辺部同士の横断的な道路網という観点が必要であろうと考えております。

 近畿の例で申しますならば、第二名神道路は、今、三重県から滋賀県南部まででございまして、それ以上西に向かっての計画はストップであると承っておるわけでございます。これが計画どおり西に向かって進みまして、滋賀から京都、大阪北部、兵庫につながり、さらには中国自動車道と接続するということになりましたならば理想的でございますし、地方分権時代に向かいまして、国家百年の計に合致するのではないか、このように考えておりますので、ぜひ当初案のとおり実現していただきたいということを思っております。

 次に、高速道路の民営化について申し上げたいと存じます。

 従来の高速道路の整備は不効率だということで、国家的な観点から、どういう組織で今後進めるのがよいかを検討され、民営化という方向が出てきたと認識いたしております。

 なぜ従来の方式は不効率であったのか。これは、当然のことでございますけれども、バブル崩壊後の長期不況対策として、公共工事、特に道路整備が行われたことに起因すると考えております。これは不況対策としては大きい効果があったことは認めるわけでございますけれども、例えて言いますならば、これは特効薬でございます。特効薬は、長く使用すれば必ず副作用が出てまいります。現在、財政の大赤字となり、膨大な国家の債務を抱えるようになってきたということはそのあらわれでございまして、まさに限界に達しております。

 幸い、御高承のとおり、昨年後半から日本の経済も回復に向かっております。したがって、今こそ原点にさかのぼっていただきまして、不況対策ではなく、本来の国家施策として、改めて高速道路網の実現に努めていただきたいと存じます。

 そこで、一部の方でございますけれども、過去の計画を一切中止する、こういった案もあったやに承っておりますけれども、この考え方は余りにも短絡であり、今後は、本当に必要な道路に限定して完成をしていただきたいと存じます。この意味で、民営化はまさに望ましい決定であると考えております。

 ただ、不効率な道路の中でも、国家的な見地から見ますと必要なものもあるはずでございますので、これは別途歯どめを事前にかけていただいた上で、税金でお願いをいたしたい、このように存じます。

 最後に、地元のためにちょっとだけ発言をさせていただきたいと思います。

 これは、一番最初に申し上げました東アジアとの関係も地元に当てはめて申し述べてみたいと存じます。

 滋賀県は、県内の総生産高の四九%が製造業でございます。しかも内陸型、すなわち先端技術を中心とした製造業県でございます。近畿地区の中でも指折りの工業地帯になっております。今後、政府研究機関の見込みによりましても、人口が増加する、数少ない県の一つとなっております。

 ところで、第二名神高速道路が県南部でストップし、西に進まないと伺っておりますが、実は、当初申し上げましたとおり、東アジア、中国との関係では、どうしても今後、関西空港とのアクセスが効率的であることが絶対の条件となっております。

 そこで、ぜひ第二名神の西に向かっての延長を要望いたしたいと存じます。どうしても全線完成が無理でございますならば、せめて大阪北部まで延ばしていただければ、関空から北上いたします近畿自動車道にわずかの整備で接続することも可能でございます。これは決して地元のエゴで申しているわけではございませんので、日本の製造業、近畿の経済発展のためにも、ぜひお願いをいたしたいと存じます。

 以上、貴重な時間をちょうだいいたしまして御清聴いただきまして、まことにありがとうございました。(拍手)

赤羽座長 ありがとうございました。

 次に、土居靖範君にお願いいたします。

土居靖範君 私は、高速道路だけではなく、一般道路も含んだ道路整備全体について、そのあり方を申し上げたいと思います。

 私自体は、国民生活の向上のために必要な道路整備は十分に今後も進められなければならないという立場ですけれども、道路づくりの最低の基準としまして、その道路が町壊しにつながるとか、あるいはでき上がっても利用されないといったものは建設をやめるべきではないかということを前提にしています。

 日本は、戦後、巨額の国家投資等で道路整備が進んできています。量的なストック自体は十分に達成しているという形で認識しています。ですけれども、質的な面ではまだまだ不十分だと考えています。

 その質的な面で弱いという点は、これまで幹線道路一辺倒の道路整備が行われて、生活道路は極めて未整備のままに放置されてきたということが指摘されます。具体的なメルクマールは、歩道整備の著しいおくれ、あるいは、国道にいたしましても幅員が極めて狭い、こういった点が特徴になります。

 それで、今後は、身近な生活道路整備に軸足を移すべきではないか。

 具体的な生活道路整備に関しましてはここでは三点とりあえず申し上げますけれども、まず、幅の広い歩道を設置し、拡大していく、あるいは、段差の解消等道路のバリアフリー化を急ぐ。二点目は、危険な交差点の改善、具体的には分離信号の導入とか右折、左折レーンの設置、信号の系統化等があります。それから三点目は、狭い国道、府道などの現道の拡幅、待避所の設置、坂道に登坂車線の設置など、こういった点の整備が急がれるべきではないかと思います。

 こういった整備に関しましては、地域の零細な土木建設業者の仕事起こしのためにもなると考えています。そういう形で、ぜひ地域的に見直して、もっと身近なところから整備していくといったことが必要ではないかということがまず一点です。

 次に、今後の道路整備のあり方に関しまして、都市部、とりわけ京都に絞って御意見を申し上げたいと思います。

 京都高速道路、現在着々と進んでおります。お手元の資料の四ページのところに、路線としましては五つありまして、新十条通線と油小路線、これが着々と進んでいます。

 これが完成しますとどうなるかということを考えてみますと、この二つの線あるいは残る三つの線、そういうものが完成した暁には、京都都市部において大量の自動車が流入することが予想されます。そして交通事故を増大させて、大気汚染、道路渋滞にまみれた、魅力のない、不健康な京都を生み出すということは、目に見えてわかると思います。京都市内に自動車が雪崩のように流入して、京都の交通改善は絶望的になると思います。

 こういった政策は、これまで、先進国及び発展途上国も今なおとり続けていますけれども、自動車の需要の増大に追随して道路建設を続けてきている、こういった政策です。ですけれども、この政策の破綻は、もう既に先進国のさまざまな道路改善の例によってわかっておりますけれども、何ら効果をもたらさない、逆に最悪をもたらすということは、明らかにされているとおりでございます。

 世界的な都市の交通政策は、国土交通省も既にもう取り入れていますけれども、TDMという交通需要マネジメント政策、こういう形で、都市においてはもう既に、道路を新たに建設するのではなくて既存の道路を十分に活用する、使い分けをする、あるいは、自動車社会の行き詰まりから、都市の中心市街地にはできるだけ車を入れない、そして人々がその都市の中で安心して住み続けられる、こういったまちづくりが新しいトレンドになってきているわけです。

 そういった点で、京都において今進められています京都高速道路をやめて、それにかわる、人と環境に優しい新しい路面電車、これはLRTという形で言っていますけれども、日本語では新型路面電車とか次世代型路面電車、こういったものを導入する。そして、それが都市内を網の目のごとく覆って、水平に動くエレベーター的な機能で人々が行きたいところに自由に移動できる、こういったまちづくりが必要ではないかと思います。

 このLRTの利点に関してはここでは申し上げませんけれども、お手元の資料のところに挙げているとおりで、ヨーロッパ、アメリカにおいても、従来の路面電車にかわる新しい、人と環境に優しい路面電車が台頭してきていることは御承知のとおりです。

 京都は観光都市でもあります。そして、今後の新しい発展は、そういった車にまみれた都市ではなくて、観光客、地元住民が生き生きとそれを利用して移動できるようなまちづくりが必要ではないかということで、ここでは非常に限定したお話になりますけれども、道路づくりにおいても、現在の計画を見直して、町壊しになるような道路はやめる、あるいは必要のない道路はやめる、そういった決断が必要ではないかと思います。

 以上です。(拍手)

赤羽座長 ありがとうございました。

 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

赤羽座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森田一君。

森田委員 ただいま御紹介いただきました自由民主党の森田一でございます。

 それでは、最初に小野意見陳述人に対して御質問申し上げます。

 小野先生は、ただいま大変歯切れのいい、また、御著書と同じように、他の人はめったに述べないような御意見を述べていただいて、大変敬服をいたしております。

 そこでお伺いするわけでございますが、私は、いわゆる一九四〇年体制ということにつきまして非常に関心を持っております。すなわち、昭和十三年の国家総動員法を初めとする四十本になんなんとする法律によりまして、国の統制が大いに強化されたものでございます。このときは、戦争を効率的に遂行するために、物資の統制を初めサービスや雇用あるいは賃金に至るまで国の統制がなされて、また、いろいろな等級づけがなされたのでございます。例えばお酒の特級、一級、二級というような等級づけもこのときになされたわけでございます。

 しかし、戦後、財閥解体とか農地解放とか、あるいは労働組合の結成など、占領行政下において多くの改革がなされたわけでございますが、この一九四〇年体制につきましては、恐らく、占領軍が間接統治をするという関係だろうと思いますが、内務省の解体以外は余り手をつけられなかったわけであります。

 そこで、この問題でございますが、私は、我が国が工業国家時代から情報化時代に移っておると考えておるものでございます。情報化時代に至りますと、工業化時代のように、例えば経済産業省、昔の通産省が、こういう方向でこういうふうにリードしていこうというようなことで産業界をリードするというのには向かない時代、それが非常に難しくなる時代であるというふうに思っておるわけでございます。

 そういう意味で、小野先生の言われる今回の道路公団の改革につきまして、確かに、国鉄の改革、国鉄からJRへというものとはちょっと色合いが違うという点については私も全く同感でございますが、同時に、私が考えております一九四〇年体制からの脱皮という意味におきまして、いわゆる小泉内閣の官から民へということに意義があると考えておるものでございます。

 そのような官から民へということの中で今回の道路改革の問題も位置づけられるべきであるというふうに考えておるものでございますが、この点について小野意見陳述人の御意見をお伺いしたいと思います。

小野善康君 私はそもそもの基本の発想は、全く官から民へです。だから、先ほど、全く効率性の面から言うんだ、社会政策面で言っているわけではないということは申し上げたとおりです。

 その上で道路の場合について言えば、道路というのは非常に特殊な製品で、つくるためには大変な費用がかかる、できたらあとは維持費だけである、そういうものなんですね。そういう製品について、今の官から民への背景となっている新古典派経済学という分野から見ても、そういう製品のことを自然独占と呼んでいて、全く民営化というか、民の採算性でやったらかえって効率が悪くなるということが証明されているんです。その理由はちゃんと、もちろん時間があれば御説明できますが。

 そういう特殊な製品について、経済学用語を使って恐縮ですが、いわゆる限界費用に同じ値段をつける、マージナルコストプライシングというのがあるんですが、そういう意味で言って道路というのは非常に特殊なもので、ですから、ほとんど費用がないからゼロでいいんだと。しかし、混雑が始まったら費用が発生しているから、それは料金をつけるべきだ、こういうことで言っているわけです。

 ですから、先ほどの一九四〇年体制というのを改革するためにという御意見は一般論としては全くそのとおりで、しかし、道路については違うのではないかということです。ですから、民ができるならば絶対に民にやってほしい。しかし、民だとまずいものの一つであるということを申し上げたかったわけです。

森田委員 よくわかりました。

 それでは、次に高橋意見陳述人にお伺いします。

 私は子供のときに敗戦を迎えまして、これから戦後復興に向かって我が国はどういうふうに進んでいくんだろうかということをいろいろ子供なりに考えておったわけでございますが、できれば、東京が政治及び経済の都市として、そして関西圏がこれまた一方の経済の都市として、日本の国土づくりというのはいわば二眼レフのように、関東と近畿という両方の目玉を持った国土づくりがなされればいいなと子供心に思っておったわけでございます。

 その後、推移を見ておりますと、いろいろな結果でございますが、結果的には東京一極集中ということが大いに進んで、特に情報化時代ということにおきましては、東京にほとんどすべての情報が集中するというようなことになっておりまして、各会社、企業等も東京に本社をできるだけ置くというような傾向になってきておるわけでございます。

 先ほど、こちらの名神道路の問題につきまして、あるいはその他の近畿関係の道路につきまして、高橋陳述人の方から国際競争力という観点からお述べになったわけでございますが、そもそも、かつて言われておりました関西復権というか、私の子供心に抱いておった二眼レフ構想というのはもうあきらめた方がいいか、もう唱えない方がいいのか。まず、こういう問題について御意見をお伺いしたいと思います。

 この点につきましては、また小野先生の方にも後ほど同じ質問をいたしたいと思います。

高橋宗治郎君 お答えいたします。

 日本が戦後、荒廃に帰した中から、経済的な復興をやらにゃいかぬということで、昭和三十五年あたりから高度成長に入ったわけでございます。このときは、何か見本がないとだめだ、欧米を目標に立てて、しかもその目標に向かって全員、日本の国じゅうが一つになって、だっと行く必要がある。そういうことから、やはり、官庁、行政中心というか、先導型でだっとやってきたわけですね。これは確かに成功いたしました。

 ところが、成功したわけでございますが、昭和五十七年、八年ぐらいになりまして、もう日本のそういう成長してきた産業がかなり成熟化してまいりました。ということは、いろいろな設備も償却の範囲内で新規の設備ができる、こういうような時代に変わってまいりまして、戦後の経済は五十七、八年ごろが大きな境目である。

 それまでは一極集中型で、国民全部が集中してやってきた。ところが、それを過ぎましたら、欧米に追いついてしまった、見本がない、こういう時代でございます。その見本のない時代に我々がさらに発展していこうとしたら、どうすればいいか。これは、私はやはり、一極集中ではだめだろう、お互いに競い合うという状態でないとだめであろう、こういうふうに考えます。

 そうなると、関西圏、東海圏、場合によっては九州、北海道とそれぞれが競い合う。私は、関西復興ということだけじゃなくて、むしろ、一極集中でなく大いに競い合う、この中からいろいろなモデルが出てくるのではないか。今までは欧米のモデルで来ましたけれども、我々が競い合う中にいろいろなモデルが出てきて、その中から日本の成長が出てくるのではないか、このように考えたわけでございます。

 したがって、道路も、横断的にそういう各極につながる、お互いがやっていくという考え方でないと、先ほど申しましたように、とにかく東京に集中、東京から放射線状に見ているとか、大阪から放射線状に見ているだけではだめなので、横断的にやる必要があるのではないか、このように考えておる次第でございます。

森田委員 それでは、同様の問題につきまして、小野意見陳述人の方からよろしくお願いします。

小野善康君 私は、今二眼レフ構想という言葉は非常に興味深く伺ったんですが、それのアナロジーで申し上げたら、複眼レフというか全眼レフというか、日本国じゅうということだと。

 そうすると、日本国じゅう東京のようになった方がいいのかということをもしかしたら思われるかもしれないんですが、各地域で特色があっていいと思う。一方で、人がいっぱいいてそういう活力を望む地域がある、もう一方で、人は少ないけれども豊かな自然の中で暮らせる。

 そういう意味で、これまでのように生産性とかいう競い方ではなくて生活水準で競うんだという意味でいえば、全部が同じように、例えばローカルなGDPという意味で、東京に勝ったとか負けたとかいう発想から脱皮して、生活水準で競い合うというのがいいのではないか。それはしかし、ひょっとしたら、各地方自治体をリードしている方々は皆さんそういうふうに考えていらっしゃるんじゃないかというふうに思います。

 それはいわゆる複眼という意味での私の感想ですが、一つ別の面でつけ加えたいのは、今の構造改革のいい側面はいっぱいあると思うんですけれども、悪い側面は、一つの地域が勝って一つの地域が負けるというのは、その負けた地域が悪いのであるという発想がどうもある。しかも、競争することによって、その負けた地域は反省してよくなるんだと。

 実は、こういう発想は経済学では別にないのでありまして、経済学というのは、有能な人には働く機会、生活の機会がある。それから、能力の低い人には、やはりその人に合った働く機会があって、生活の機会があるという形が前提になって議論が構成されている。

 ところが、それを履き違えて、負けたところはもう、例えば失業してどうしようもなくなってもこれは仕方ないんだ、下手に救うとよくない、自己啓発の機会が消えるというような意見が時々見受けられる。それは、実は、背景となっている経済学でもそういうことは決して出てこない。そのことを頭に入れた上で構造改革もやっていただきたいというふうに思います。

 以上です。

森田委員 再び小野意見陳述人にお伺いします。

 私は二十三年間大蔵省におりまして、大部分が主計局で、予算を担当しておったわけでございます。予算を担当しておる者の実感といたしますと、先ほど、経済学的には例えば有料道路収入と税金というのは同じことだと、それはそれでわからぬでもないんです。しかし、実務者、実務の観点からいきますと、税金を取るというのは、消費税も含めまして、所得税もそうですが、これは大変なことでございまして、税金でもって高速道路をつくっておったならば、今の延伸の何分の一かはわかりませんけれども、戦後の復興に寄与するだけの高速道路はとてもできなかったというのが私の実感でございます。

 したがいまして、有料道路方式によって、日本は西ドイツあるいはアメリカ等々におくれて高速道路の整備に踏み切ったわけでございますから、そういう中にありましては、有料道路方式というのを考えたということは私は極めて正しかったというふうに実感をいたしておるわけでございます。

 予算をやる立場におきましても、それと同じだけ主計局で道路関係の予算をつけろと言われても、特定財源が仮にありましてもとても不可能だったな、すべてを直轄でやった場合にはとても今までの建設はできていないなという感じでございますが、その辺につきましてはいかがでございましょうか。

小野善康君 私は、今回においても、それから著書等においても、私の立場として申し上げるべきことは、経済学的に見てどうであるかということをはっきり示すことだと自覚しております。

 政治的なコストとして税金を取ることは、国民を説得しなければいけない、あるいは財務省への風当たりとか政権への風当たりとか、そういうことがあるんだということはもちろんあると思います。ですから、経済的にはこうである、しかし、皆さんどうでしょうかという説明が十分なされた上で、それでも高速道路がいいんだと言うのであればいいんですが、今回の道路のことにつきましても、これによって国民負担は減るとかふえるとかいう議論が出てくる。これは全然違うのではないか。だから、違った理由でそういうことを言うのは、とてもじゃないけれどもおかしいのではないのか。

 それからもう一点は、税金を取るのは大変だと言いながら、不況になった後、どんどん減税をやっているわけです。しかも、それははっきり言って、直接名前を言うのもちょっと恐縮ですが、しかし、一番いい例としていつも言わせていただくのは、公明党の主導での例の地域振興券なんというのがありましたけれども、一方でああいう政策を平気でやる。それから、二十何万かの減税とかいうのを平気でやっておいて、それで後で税金を取るのは大変であると言うのは違うんじゃないか。

 だから、その辺のバランスをやはりちゃんと説明するということと、政治的コストがあることを認める。その上で、これは財務省のせいではないと思うんですけれども、そういう安易なばらまきで人気をとるようなことはやはり控えていただきたい。

 それで、では、道路をつくることは高速道路料金でいいんですが、ほかのことについても、国債を発行したりして、その場の、いわば国民からの増税という圧力を避けることによって、結局、後ではやはり来るわけですよね。その国債分をやらなきゃいけない。

 だから、やはりもっと、このお金というのはこういうために使われて、しかもそのお金は所得としてあなた方に行くんですよという説明をしっかりした上で今のような御意見があるんだったら私はいいと思いますけれども、それがちょっと足りなかったんじゃないでしょうかということです。

森田委員 それでは、目片意見陳述人にお伺いをいたします。

 今回の道路改革の前には、私自身も、実は、高速道路だけじゃなくて道路全般について陳情を受けることが大変多いわけでございますが、そういう意味におきまして、高速道路も含めて道路の要請というのは依然として強いというふうに私は認識しております。しかし、また他方では、猪瀬さんを初めとして、余りに採算を無視した道路がつくられ過ぎるのではないかということが主張されまして、そういう批判が今回の改革の背景にあったわけでございます。

 私自身は近畿の方について余り状況を詳しく存じませんでしたので、実は、当地域の高速道路あるいは道路については、かなり山場を越しておるというか、ある程度まで進展していて、それほど大きな問題はないんじゃないかなと思っておりましたが、先ほど、目片陳述人あるいは高橋陳述人からお伺いしていると、そうでもないなということを感じておるわけでございます。その点について、再度よろしくお願いします。

目片信君 私が申し上げたかったことは、現在の名神高速道路、一日にして十万台通過をいただいておりまして、あわせて、国道一号線の現在の状況から申し上げて、先ほども申し上げましたけれども、逢坂山を通行する車が四万五千台等々考えまして、この周辺はまさに交通渋滞、加えて、もう慢性的に引き起こしているのが現実でございます。

 したがって、私は、第二名神を、大津から城陽に至りますまで、あるいはまた八幡から高槻に至りますまで、ぜひとも早期に御決定を、いわゆる施行命令が出ておるわけでありますから、今の委員会の皆さん方からすぐにでも取り上げていただいて着工いただくことが、まさに、現在の名神を含めて一般道路が緩和される、こういうふうに認識をいたしているものでございます。

 したがって、もう既にそれに向かって、滋賀県も大津市も、職員を動員しながら、地域の皆さん方の説明等々に奔走してきた、その労苦をやはり評価いただきながら取り組んでいただきたい。そのことが、先ほど高橋さんからもお話がございましたけれども、競争に勝つんだ。まさに私どもの滋賀県の位置づけは、申し上げておりますように、交通の要衝と言われながらも、道路予算的にも大変厳しいものがございまして、全国四十七都道府県の四十四、五番か四十二、三番に位置しておりまして、本当に残念なことながら、地方道も十分な整備がなかなか行き届かないというのが現実でございます。

 したがって、今の高速道路につきましては、もう待ち焦がれているというのが現実でございます。その背景は、今申し上げたとおりでございます。

森田委員 それでは再度、これは経済学的な話とは全然違うのでございますが、道路公団の改革に当たりまして、小野陳述人にお伺いします。

 実は、先ほど申し上げたような話だけじゃなくて、道路施設協会を初めとするいろいろな系統会社が複雑多岐に絡まっておりまして、そこの方は大きな利益を上げておったわけですね。そんなようなこととか、いろいろな問題がございまして、そしてこの改革ののろしが上がったわけでございますが、こういう問題については、経済的にいえば特に述べることはないというような御観点なんでしょうか、何かコメントされることはあるんでしょうか。

小野善康君 今おっしゃったことは、例えばサービスエリア、パーキングエリアにどういう業者が入るかとかいうことも関連があるんじゃないかと思いますけれども、その辺については、私の考えでは、民間の企業で十分だというか、かえってその方が効率がいいだろうと思います。

 表に出ているのは、なるべく道路をつくるなとか、それから、今ある借金をどう返すかということが一番出ていますけれども、その中で、癒着とか天下りとか、それを避けるために構造を変えるんだということについては私は逆に大賛成であります。ただ、そのことよりも、むだな道路をつくるなというスローガンばかりが表に出ている、そこが気になるのであります。

森田委員 終わります。

赤羽座長 石田真敏君。

石田(真)委員 自由民主党の石田と申します。よろしくお願いをいたします。

 まず、皆さん方にお伺いをしたい共通の質問ということでお願いしたいんですが、先ほど小野先生のお話にもございましたけれども、今の議論にもございましたが、むだな道路をつくらせないという議論がよく出るわけでございます。むだな道路はつくるべきではないんですが、これは言葉が走って中身がなかなかよくわからないというのが現実でございます。

 そういう中で、高速道路網の予定路線ということで一万四千キロというのを予定しておりますけれども、そういう中でいきますと、一つの基準として、一時間以内に高速道路にアクセスできる、そういうことがやはりシビルミニマムなんじゃないかというような判断基準、これは基準の一つですけれども、そういうことが示されているわけです。

 同時に、今回の政府案、これは有料道路方式と新直轄方式、これを策定するに当たっても、採算性とかあるいは費用対効果、外部経済効果というような基準に基づいて新直轄方式の採用路線というようなことで一応予定をしておるわけです。

 こういうようなことを考えていく中で、今現在、一般的にいろいろむだな道路ということについて言われますけれども、それぞれの意見陳述人は、どのような基準を設定すれば、むだな道路ということと有効な道路ということの選定ができるのか、そのあたりについてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

小野善康君 これは、概念的に言うのはともかく、現実は大変難しい問題だと思うんですが、少なくとも、高速道路事業が黒字になる、そういうものでは絶対はかれないものだということは、先ほど申し述べたとおりです。

 今おっしゃった、一時間以内ですべての国民がアクセスできるという基準も一つの基準になると思うんですが、非常に人口密度の低いようなところでそういうことでやると、やはりむだということも言えるかもしれない。

 私は、今の御質問についてそのまま直接答えるほどのベネフィットについての評価基準を持ち合わせていないんですが、ただ、一つ申し上げたいことは、先ほど来言っていることと共通していまして、むだな道路というのは、同じベネフィットであっても時代によって変わる。それはコストが全然違うんだ。今現在のような日本の経済活動レベルが落ちているというときこそ、社会的に見たら最も安い費用でいろいろな社会資本整備ができるんだ。それは、要するに働いていない人がいっぱいいるからという意味なんですけれども、そういう基準で言うと、今こそやるべきじゃないかと思います。

 それで、コスト・ベネフィットというのを非常に乱用されると、例えば、今回第二名神というのが何か話題になっている、それが見直しの区間ということになっている。しかし、では、代替のものというので見ると、途中、既存の道路とちょこちょこ重なりながら行く。そこで渋滞するのはほとんど目に見えているわけですね。渋滞するということは、もう既にそれはむだな道路ではない。つまり、ある設備に十分使われているわけで、しかも足りないといういわば現象を示している。にもかかわらず、コスト・ベネフィットの計算からいうとこういうところがむだであるという結論が出てしまうところに、そういう単純なコスト・ベネフィットの計算化あるいは効率化という発想が危険であるということをほとんどあらわしているんじゃないかというぐらいに思います。

目片信君 むだの議論が言われておるのですが、それはそれぞれのお立場によって多少温度差があるように思っております。

 強いて申し上げるならば、規格なり構造がどうであるのかという部分がむだな部分というふうに言われるところもあると思います。私は、先ほど来申し上げておりますように、高速道路の果たす役割というのは極めて大きいというふうに思いますし、かつ、国土の均衡ある発展なんというようなことを言うときに、やはりそれは整備をいただいてこそ、これからのいわゆる経済あるいはまた国民のニーズにおこたえいただける部分というふうに思っておりますから、まず、むだという部分は、今申し上げた規格なり構造を検討いただければ解決できる、こういうふうに思っております。

高橋宗治郎君 私は、今の先生のお話で、これはだれが決めるかによって随分違ってくるんじゃないか、こんなふうに思うわけでございます。個々に言い出したらこれは収拾つかないだろう、こう思います。

 私は、殊に高速道路の場合、やはりまず国家戦略があって、そこからおりてきてこれは国にとって大事であるかどうか、小さい、細い道のことは別としまして、高速道路の場合はやはり国家戦略の確立が大事かなと。そう考えますと、本当に日本に経済的な国家戦略があるのかな。今まさに世界が自由貿易だと日本は言っていますけれども、ブロック的な経済に移りつつある。この中で日本はどう生きていくか、こういうようなところから高速道路が必要であるかないかを御判断いただけたら幸いだ、このように思う次第でございます。

土居靖範君 むだな道路というのは、やはり、公害を出すとか景観破壊につながるというのは、むだな道路になると思います。

 以上です。

石田(真)委員 ありがとうございました。

 それぞれ御意見をお聞かせいただいたわけですが、では、それを踏まえて、今、整備計画というのが九千三百四十二キロ、一応計画をされておりまして、そのうちで直轄方式ということで六百九十九ですか、それから有料道路方式が千三百余り、両方で二千キロぐらいの整備をこれからやっていこうかということの中で今回のこの議論が起こっておるわけです。

 今、むだな道路についてのそれぞれの御判断をいただいたわけですけれども、それを踏まえて、この残り区間の整備についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。四人の皆さん、どうぞお願いいたします。

小野善康君 実は、具体的に個々の直轄道路がどこの路線であって、その経済的背景はどうであるかというのを存じ上げていないものですから、個々についてお答えするのは私の能力をはるかに超えているんですけれども、先ほど来申し上げておるように、第二名神のようなものが見直しの対象になるという結論が出てくるような、そういう評価の形式が背景にあるとすれば、それはやはり最初から考え直していただきたいというふうに思わざるを得ないということであります。

 それから、ベネフィットを考えるのは非常に難しくて私にはできないと申し上げたんですが、これは要するに、もうちょっと申し上げれば、公共財ということですべての人がどのぐらいこの道路から恩恵を得るかということを実は情報で計算して、それからコストとということをやらなきゃいけないわけですね。それは、理論的にはできても現実には非常に難しい。その意味で言うと、非常に大ざっぱに言えば、どのぐらいつけたときに走るかということで、ある程度わかるんじゃないかというぐらいしか、残念ながら申し上げることはできません。

目片信君 ただいまの御質問でございますが、いわゆる六百何キロの部分が新直轄方式という、まさに、有料道路で採算が合わないけれども、やはりその地域の期待にこたえ、そしてニーズにこたえていこうとするならば道路は必要だというところに新直轄方式で取り組んでいただくことについては、これは正直申し上げて、地方の立場で言えば大歓迎でございますし、ぜひともそういう方針で取り組みをいただきたい、こういうふうに思っております。

高橋宗治郎君 先ほど申しましたように、私は民営化は賛成をいたします。

 しかし、実はこれは民間会社にしてしまうということで申し上げているのではなくて、先ほどからもお話に出ましたように、道路をつくるべきかどうかという基準というのは非常に難しい。それならば何を基準にするかということになりましたら、次善、三善かもしれませんけれども、民営化ではないか、このように思うわけでございます。だから、民営化が目的ではなくて、目安だ、私はこのように思います。

土居靖範君 基本的には、市街地を通って公害を出すような道路はそこから除外すべきではないかと思います。

石田(真)委員 ありがとうございました。

 それでは、今回の高速道路の民営化論議、民営化推進委員会でありましたね、そこでの議論とそれから今回の案、この中で、民営化委員会の意見が採用されなかったことが二つあるわけなんです。一つは、道路等の資産部分とそれから運営部分と、上下一体あるいは分離の議論というのがあります。それからもう一つは、料金に利潤を含めるか含めないかという問題があったわけなんですね。

 これは私が思うのに、両方とも、今後とも高速道路というのを国民の財産としてずっと維持するのか、そうじゃなくて、もうそれは民営化ですから、一つの会社なりにJRのように渡してしまって、そしてその中で、効率性といいますか採算性といいますか、そういうものだけを追求していけばいいんだ、こういう考え方の違いが根本にあるのではないかというふうに私は思うわけなんです。

 四人の意見陳述人の方は、この上下一体あるいは分離、あるいは有料の料金に利潤性を含める、そのことによって考えられる高速道路の資産というのは国民の共有財産なのか、いや、それをも民間会社に移譲することによってでも民営化を図るべきなのか。このあたりについてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。四人の皆さんにお願いします。

小野善康君 まず、国民の財産であるということは、つまり、国が持っているということが効率性を落として、それで、民営化して民間の企業が持っていることが効率性を上げるというような感じで今の民営化委員会に関する議論が出ていると思うんですが、私は、効率性の部分から見ても、民営化してそのまま利潤をつけるというのが望ましくないということを先ほど申し上げました。それを論証しろと言われたらすぐにできますけれども、今はちょっとおいておきますが、道路はそういうものである。

 ですから、利潤を含めるという話になってくると、最初に申し上げた自然独占的限界費用原理ということですけれども、それで言うと、こういうようなものの場合、利潤がそもそも生まれてくるようなプライシングをすることが効率性から反するというふうに思いますので、もちろん、国民の財産であって、かつプライシングはそこの企業がもうかるようにではないんだというふうに思います。

 その意味で言うと、多分、私が拝見した限りでは、上下一体か分離かとか、利潤を含めるか含めないかというのは、すべて、その新たな民営化した企業がやっていけるかどうか、それから、どんな形で税金がかかってくるかどうかに関連してくることだと思うので、そのことがどちらがいいかということについては、私のような見方からすると余り意味がないというふうに思ってしまいます。

目片信君 今のお尋ねでございますが、私は国民の共有財産というふうに思っております。したがって、利潤を追求するのではなく、今、国の方で法案の中で御議論いただいている方向の中で進めてもらうことが望ましい。

 国民のいわゆる共有財産という認識、そしてまた、民間が高速道路を完全に私物化してそれが利潤を追求するというようなことは好ましくないという建前から、そういうふうな考え方をしております。

高橋宗治郎君 私は、先生の御質問に対して、まことに失礼でございますけれども、正直なところを申しまして、この委員会の委員がお互いに何を言っているのかということがわからない状態でございます。これもえらい失礼な言い方でございますけれども、我々のところへおりてこない。マスコミを通じてちょっと知らされる範囲でございますが、どちらの言っているのがどうなんだということが全然わからないということでございますので、できましたら、これはちょっと御質問とは違うお答えなんですけれども、もう少し中身のPRといいますか、そういうものをして国民のあれをとっていただいたらいかがか、このように思います。

赤羽座長 今の件ですが、道路公団民営化推進委員会にはホームページがございまして、すべての議事録が閲覧できることになっております。大変膨大な資料でございますが、一応、念のため付言させていただきます。

高橋宗治郎君 ホームページを見ておられないので、申しわけございません。

赤羽座長 いや、急に決まったことですし、大変お忙しいと思いますので、そういう時間もないかもしれませんが。

土居靖範君 私は、基本的には、道路公団は維持管理に徹して、民営化すべきではないと考えています。

石田(真)委員 ありがとうございました。

 それでは、時間も押し詰まってまいりましたので、小野意見陳述人にお伺いをさせていただきたいんですが、先ほど御説明をいただいた中で、負担の概念ということで、通行料でも税金でも同じだというお話がございました。しかし、現実に今四十兆円というような債務があるということで、この返済をどうしていくかということで、先ほど来から御質問をさせていただいたあたりの意見にもいろいろな反映がされて、問題が出ているわけですが、この返済についてはどのようにしていけばいいというふうにお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。

小野善康君 先ほどちょっと、政治的なことについて私は専門外であるので、感想しか述べることができないということを申し上げたんですが、そういうのを考えないで純粋に経済学的に言えば、税金で返せばいいと思います。一回で返すということはもちろん大変なことでしょうけれども、徐々に返していけばいいと思います。

 その際、もちろん、国民に説明しなければいけないわけですね。その説明する際の資料、どのぐらい大変なのかということをまたあえて無視して申し上げれば、理想を言えば、各人に、あなたからは幾ら取りますよ、合計で四十兆になりますということをもし示した場合には、先ほど申し上げたようなことが必ず表に出てきて、結局、刺身からいっぱい取るか、それとも、そうじゃなくて累進的な所得税から取るかということが出てきて、そうすると、いっぱい取られる人はおれは損だと言って、少なくなった人はこっちがいいと多分言い合うことになるでしょう。その結果として国民経済的に見てどちらが望ましいかと言ったら、私は、日用品に対して大きな税金をかけるような制度でない方がいいんじゃないか。そういうふうに説明した上で税金を取るというふうにする必要があると思います。

石田(真)委員 それでは、小野意見陳述人にもう一点、最後の質問ですが、いただいたペーパーの最後、「結論」の二番目に「道路網全体の建設方針は「国の効率性」の視点から。」というふうに書いておられます。このあたりをもう少し詳しく御説明いただけたらありがたい。具体的にお願いします。

小野善康君 ここで申し上げた国の効率性というのは、人件費のことを主に頭に置いて書いております。

 それで、国の効率性という意味では、現時点においては、人件費は、社会的に見たらもっと人を使った方がいいんだという状況なので、逆に残った部分をもっとどんどん進めればいいじゃないかと。景気は徐々に回復しつつあると私は思います。そうなった際に、さあみんなで動こうというときに全部そろっているということであれば、そのときは、せっかく皆さんが働いているのに道路建設なんかに人を回したらかえって困るということであります。

 だから、民間の効率性という意味で言えば、今はまさに道路建設には不利な時期、お金も取れないしという状況でありますから、それでコストも、相対的に言うと自分の収入に比べたら高い。だから、そういう際に、国の効率性という意味で言えば、民間で最も非効率な時期にやるべきという結論が出てくる。そういう意味で「国の効率性」と書かせていただきました。

石田(真)委員 どうもありがとうございました。

赤羽座長 奥村展三君。

奥村委員 民主党の奥村展三でございます。

 きょうは、陳述人の皆さん方には、大変お忙しいところ、こうして時間をお割きいただきまして、ありがとうございます。

 特に私は地元ということで、赤羽委員長初め各委員の先生方、国交省の皆さん、関係の皆さんもこうして滋賀にお集まりをいただけたということ、本当に感謝を申し上げる次第でございます。そしてまた、その上に、こうしてお聞きできる機会を与えていただいたことにも重ねて感謝を申し上げたいというように思います。

 まず、今、前段で道路のいろいろな話があり、当然でありますけれども、道路は国民の共有の財産であるというお話が多々出てまいりました。私も当然であるというように思うんですが、どうも今回、この委員会がスタートし、以前からマスコミやいろいろな報道を見ておりますと、民営化ありきで物が進んできたのではないかなという感じを私はしております。

 やはり、今お話のありましたように、四十兆円の債務、正式に我々が民主党で試算をいたしますと四十四兆七千億という借金になるんです。これを四十五年間で返していく、そして無料化にする、これが基本なんですけれども、やはり道路というのは無料であって、国民の共有財産である、そういうもので一般道路なんかはしっかり税金でつくってきたわけです。

 高速道路は、御案内のとおり、特に名神は、栗東から、昭和三十八、九年、高度成長の前に完成をしていただいた。そのおかげで、この周辺もいろいろ経済的に潤ってきて、人の流れもできてきたわけであります。そういう恩恵を我々は受けているわけなんですけれども、そういうことを考えますと、やはり税金で道路はつくられるべきである。しかし、当時は、日本の経済的に考えるとそこまで手が届かないということで、世界銀行からお借りをして、そしていずれは、やはり路線ごとの利用者がその路線の建設費用を払ったら無料にするということが基本にあるわけです。

 しかし、名神や東名、四千八百億、約五千億ぐらいのお金でこれができてきた流れがあるんですけれども、料金収入をずっと考えてみますと、七兆円からの収入があるわけですね。考えてみたら、もう折れて曲がって、ひっくり返っているようなものなんですよ。だから、そういう、受益者負担だということ、あるいは、小野先生がおっしゃいましたけれども、効率化ということを考えてみると、確かに利便はあり、経済効果もあり、その恩恵は受けている。しかし、名神を使っている人間は、それだけもう何回も道路をつくるぐらいの費用を負担してきている、受益者負担をしてきている、そういうことがあるわけですね。

 そんなことで、国民の平等、あるいはいろいろなこと、公正ということを考えてみますと、私はそれだけでいいのかなと。むだな道路をつくらないというのが今回の基本なんですけれども、そういうことも考えてみると、先ほどのお話のように、本当は一体どれがむだで、どれがいいんだということ、これは地域地域によってみんな違うんですよ。

 先ほど目片市長が、滋賀県は交通の要衝であると言われた。しかし、国道一号は、現況のままで考えてみれば、どうしても名神や第二名神を早く完成してもらわなければ困るという地域の皆さんの切実な思いがある。しかし、これが、借金があるが上に、世界一高い高速料を払って、そしてまだその負担をしながら、経済効果やあるいは生活基盤を求めていかなければならない。本当にそれでいいんだろうか、日本国土の均衡ある発展や国民の公正、平等、いろいろなことを考えたら、そういうことがあっていいんだろうかなという思いをいたします。

 先ほどのお話のように、六百九十九キロが直轄方式になりましたけれども、しかし、あれを、むだを省くといって公団や国交省の皆さんが考え出されていったら、二十兆円が十・五兆円になり、七兆何ぼになって、どんどん減ってきたわけですね。こんなにうまいこといくのかな、そうしたら何で今までやらなかったのということを言いたいわけなんです。

 そういうようなことを考えますと、今日までのこの道路公団民営化というのは、どうも、債務の四十兆円、これの肩がわりを民間会社にさせて、そして国民に負担を、民営化というわけですから永久に、これは四十五年先までお金を払っていかなければならないんですが、そういうことを考えますと、ちょっと私自身は、大変不合理な民営化だなというように思っております。

 それで、小野先生にまずお聞きをしたいんですが、先ほど、受益者は国民全体だという意見をいただきました。これは我々と同じ考えなんですが、アメリカもイギリスも、そしてまたドイツのように、高速道路を抜本的に全部改めて、全部無料なんですよね。だから、物すごく経済的にも、あらゆる国民が共有しながらそういう流れをつくり出しているんです。

 私の隣の岩國先生はいつもこのことをおっしゃっているんですけれども、今高速道路の中に、関所と言われる料金所が千二百十三あるんですね。これを撤廃して無料化にしていくことによって物流のコストを下げていくとか、あるいはまた、ライフスタイルが変わっていくわけですから、そういうものについて先生のお考えをまずお聞きしたいというように思います。

小野善康君 先ほど、初めの十分間でお話しさせていただいたことなんですが、公正という面、だれが負担しているかという面で料金を考えるのは私は間違いだと思うんですね。それをやるならば、ほかの税金や補助金方式もあるし、それから年金のような全然別のことで幾らでも調整ができる。高速道路料金を何かすることによって非常に公正になるという程度は非常に低いんじゃないかと思うんですね。だから、そこだけでそういう公正のことを考える意味は余りない。

 しかし、結論から言うと、今おっしゃったことに似てくるんですけれども、せっかくある社会資本である道路、しかも、お金をかけて日本の道路はもう随分よくなっている、それをちゃんと使ってもらうということ、それだけの目的、つまりこれは効率性なんですけれども、そのためにどうしたらいいかというふうに考えるべきである。

 例えば、ある路線についてはただにした、そうすると車がいっぱい走ったということは、それは明らかにより多くのベネフィットを生み出しているからいいんだ。しかし、込んでいるところでただにしたら、例えば大阪の阪神高速道をただにします、そうしたら、ただでさえめちゃくちゃ込んでいるのに、もっと込むわけですね。そうすると、そこは駐車場状態になるわけで、道路として機能を果たさない。それはやはりまずいわけです。

 ですから、それは公正の面ではなくて、純粋にその社会資本がうまく使われるかどうか、そういう面でぜひとも御議論いただきたい。

 ついでに申し上げると、アメリカについてもそうだと思いますが、私はイギリスの方によく行っていたものですから、イギリスの経験でいうと、ロンドンの空港まで友人に迎えに来てもらって、ちょっと田舎のエセックス州のコルチェスターという町まで何度も迎えに来ていただいたことがあるんですが、帰り、やはりむちゃくちゃ込むんですね。ただなんですけれども、むちゃくちゃ込んで大変な時間がかかるわけです。あれを見ると、効率性という意味でいえば、私はあの路線は有料道路にすべきで、ちゃんとお金をもっと取るべきだと。お金を少し払っていたような、私が払っていないもので、友人が全部やってくれるので、そのことについてはちょっと記憶が定かじゃないんですが、少なくとも、もし払っているとしても安過ぎると思うんです。

 だから、その意味で、欧米はほとんどがただだからそれが一番いいんだということにはならないと私は思います。

 イギリスは、田舎の方の道路だと、すいていて、非常に整備されていて、ほとんどただだ。これはしかし、ただでもそういうふうに使えるぐらい道路が整備されているということであると思います。ですから、逆に多過ぎるんじゃないかという点も、そういう意味ではあるかもしれないということです。

 以上です。

奥村委員 ありがとうございました。

 今、使い方ということの効率性を小野先生からお話しいただきました。

 高橋陳述人にお伺いをしたいんですが、先ほど、国家戦略がないというお話をなされたんですけれども、それに絡めて申しわけないんですが、やはりそういうことをいろいろ基本に考えますと、経済的にいろいろ推し進めていく上で、今の小野先生がおっしゃった使い方、結局、つくり方じゃなくて使い方なんですよね。そこのところについて何か御意見がありましたらお願いをしたいと思います。

高橋宗治郎君 私、一番最初に東アジアとの関係を申しましたが、要するに、時間をお金で買うという考え方ですね。高速道路もやはりそういうことじゃないかと私は思うんです。

 これは、確かにただにしていただければ、それは個人としてはありがたいんです。ただ、それでは今の財政上、新規に必要な道路ができるだろうか、本当にできるのか、こう考えますと、やはりみんながそれなりの負担をして新規に必要な道路をつくっていく、そして時間をお金で買う。要するに、通行料ということじゃなくて、あれは時間を買ったんだ、このように考えるべきだと私は思います。

 ですから、先生がおっしゃっている使い方の中にその御返事が入るかどうかわからぬですけれども、私はやはりそういう考え方で使っていったらどうかというふうに思います。

奥村委員 ありがとうございました。

 それでは、今いろいろとお聞きをいたしたわけですが、まず、目片陳述人に一つお伺いをいたしたいんです。

 先ほど、一号線あるいは一六一を例に滋賀県の交通網のお話をなされたわけなんですが、それに絡めて、実は大津から城陽、八幡から高槻とのあれが凍結ということになりましたね。昨年の十二月二十五日、我が党は、右隣におられる岩國先生が代表で出ていただいたんですが、これは愚痴を言うつもりはないんですけれども、後でお聞きしたんですが、わずか四十五分で決まっているんですよ。日本の幹線道路を決めて、いろいろ、ああだこうだと議論していかなければならないのに、そんなことで日本のことがわかるかといって、岩國さん、大分おしかりをしておられたんですけれども。

 そういうことを考えますと、ちょっと民営化の話とは離れますが、先ほど目片陳述人がおっしゃった道路網の整備ということについて、こんな状況で、もう一度ちょっとそこの点を聞かせていただきたいと思うんです。

目片信君 委員も御承知のとおりでありますけれども、今の第一名神、そして、土山から入ってきております第二名神、草津のインターチェンジ、いわゆるあそこでリンクするわけですが、そこからの作戦が、今私どもがお願いを申し上げております大津―城陽、そして八幡―高槻という構想なんです。

 京滋バイパスがいっときよりも交通量がふえました。これは、天王山トンネルに向かって、あそこのところで接続をいただいたために、今の第一名神がいわゆる京滋バイパスのかわりをしている、そういう現在の実態でございます。

 しかし、これだけの道路網を擁しても、現在もなお渋滞が続いている。加えて、先ほどから申し上げておりますように、国道一号線しかり、あるいは百六十一号線しかり、本当にもう渋滞が慢性的に起きている。したがって、私どもは何としても、いわゆる新直轄方式ででも取り扱いをいただいてあの湖西バイパスを早く完成をいただきたい。これがひいては湖西路のいわゆる交通アクセスであり、緊急時に大変役立つ道路になるというふうに思っております。

 したがって、今の一号線も、委員のところもそうでありますけれども、本当にどうにもならない。これは、先ほどちょっと申し上げましたけれども、滋賀県の道路予算が本当に下位にランクされております関係ばかりではないと思いますけれども、本当にその辺の整備がおくれている。したがって、今の第二名神のその以西につきましても、大津からの部分につきましても、まさに枚方から大阪へ行くルートが第一名神の渋滞解消に、緩和につながる。それがひいては物流の促進につながり、経済の維持発展につながっていく、こういう認識でございますから、何としてもこの法案が成立することを待ち望んでいるというのが実態でございます。

奥村委員 ありがとうございました。

 この法案が通ってしまいますと永久に有料化ですから、凍結もやむを得ないことになってきますので、やはり我々が言っております無料化のことにまた御賛同いただきたいというように思います。

 今と同じ関係でございますけれども、経済効果の方から、今、目片陳述人がおっしゃいましたけれども、確かに経済界でいろいろ御苦労いただいていますが、滋賀県の交通の要衝であるわけですが、一六一だとか一号だとか八号だとか第二名神。ということは、今申し上げました十二月二十五日の国幹会議で、開発インターでというようなお願いを地元がしておられた甲南町のインターが今度できるわけですね。甲賀土山のインターができ、甲南ができ、信楽ができ、そして草津ジャンクション、こういう形に滋賀県ではなってくるわけなんです。そしてまた、既存の名神も、栗東が栗東東、ちょうど石部境の国道一号の接点のあそこらにインターができるわけなんです。

 交通の要衝でありますから、第二名神と名神はそういう状況になって、一方では非常によくなっていくわけなんですけれども、ちょっとその点で、経済的にお考えのことがあればお聞かせいただけませんか。

赤羽座長 今の閣法の場合、四十五年後に無料化ですので、永久に有料化というのは正確でございません。

高橋宗治郎君 今先生がおっしゃっているのは経済効果の問題ですね。

 実は、一番最初に申しましたように、滋賀県は、今、先端技術を中心とした工業地帯に入っておるわけですね。これはもう先ほど御説明したので重複したらいけませんけれども、近畿の中でもそういう工業地帯としては指折りの中に入っておるわけです。先ほどから関西の復興とか復活とか言いますけれども、こういうことも全部含めて発展していかないと滋賀県はだめだろう。

 私は、せっかく第二名神を三重県から滋賀の南部まで持ってきていただいたんですが、そこでストップしたら、我々に言わせたら画竜点睛を欠く、こういう感じですね。せっかく今まで投資していただいたものが、みんなとは言いませんが、かなり死んでしまうんじゃないか、このように心配しております。だから、それを少し延ばしていただくことによってフルに経済的な効果が出てくる、このように考えております。

奥村委員 ありがとうございました。

 先ほどは失礼いたしました。永久にではなくて四十五年先であります。

 そういうことを考えますと、四人の陳述人の皆さん方にお伺いをいたしたいわけですが、私どもは、四月の十四日、先週ですが、少し長い名前でありますけれども、高速道路事業改革基本法というものを提出いたしました。これは、今の政府・与党から出ております民営化法についての対案として出させていただきました。

 しかし、読んでいただいたらおわかりのように、我々も、マニフェストに掲げましたので即無料化と言っているわけではなくて、やはり段階的に、三年だとかあるいは十年先だとか、そういう形をきちっとベースに置きながら無料化というものを、決まったからすぐあすから無料化だ、そんな、今までのランニングコストやらいろいろなことがありますからうまくいきませんので、当然であります、償還もしていかなければなりませんから。そういう法案を出させていただきました。

 このことについて、急なことでしたから目を通していただける時間がなかったかもわかりませんが、お一人ずつ御意見を賜りたいというように思います。

小野善康君 何度も同じことを申し上げて恐縮ですけれども、無料化かどうかということは、そもそも、国民が道路を使うのに、これは国民のものだからただだとか、そういうそもそも論とは別として、要するに、社会資本がせっかくあるんだから、最も皆さんに使ってもらえるようにするにはどうしたらいいだろうか、その一点で料金を決められればいいと思うので、何年先になったらただになりますよとか、もしすごく込んでいるような場所だったら、何百年先であってもやはり有料化にしないとまずいと思うんですね。そういう視点で、無料化かあるいは有料化か、有料化なら幾らぐらいかという計算をしていただきたい。

 もう一つは、これも何度も話題になっていましたけれども、それによって得たお金で返すというと、いかにも、走っている人は払っているけれども、そうでない人は払っていない、税金だとみんなに行く、こう見えるんですが、その実は、先ほど来申し上げているような、繰り返しませんけれども、皆さんに結局負担が行っているんだぞということをはっきりした上で国民にちゃんと判断していただく。ところが、そこがわかっていなくて、私は高速道路を使わないから払わない、では賛成というような短絡的な判断が出るとしたら、それはやはりそういう誤解を解かなければいけないんじゃないか、こういうふうに思います。

目片信君 私は、無料化、ただほどいいものはないわけでありますが、今、小野先生がおっしゃったように、今の私が見ている高速道路、ここで無料なんというようなことをすれば、もう高速道路じゃなくて、一般国道よりももっと悲惨なことになるんじゃないか。したがって、もう御承知のとおりでありますが、東名、名神ではとてもそれは不可能に近い、無料化の場合は。

 だから、むしろおやりいただくのなら、私ども、湖西バイパスが公団で八百三十円でございますから、あれを先にやっていただいて、その成果を見てから何とかまた民主党案にも近づきたいなとは思いますが、現状ではとても無理。

 それと、一点。アメリカ云々、フランス云々がございますが、私は、高速道路にかかる費用の違い、例えば、アメリカみたいに砂漠だったら盛り土したらいい。しなくても、そのまま舗装すればフリーウエーになるんですよ。だけれども、日本は御承知のとおり山あり谷あり川ありで、こんなもの比較にならない費用がかかるわけでございますから、なおさら無料化というのはちょっと乗る話じゃないなと。

 いや、これは受益者負担でいいと私は思います。申しわけございません。

高橋宗治郎君 私はそれについては先ほど申し上げましたので、ちょっとダブることになりますけれども、それは、長期的には道路というのは無料であってほしいなという思いはございます。しかし、もしこれを今実行されたら、本当に新規に高速道路ができるんだろうか、また、今走っている高速道路の補修ができるんだろうか、こう考えますと、ちょっとすぐには賛成しにくいな、こんな思いでございます。

 しかし、長期的には、やはり目標を持つということは大事でございますので、それはまた話が別か、このように思っております。

土居靖範君 先ほども申し上げましたけれども、私自体は、道路関係の四公団の民営化に基本的に反対しております。

 以上です。

奥村委員 それぞれのお話がありました。ありがとうございます。

 確かに、いきなり無料化というのは皆さんも戸惑いがあるかもわかりません。しかし、これだけの借金をし、これだけになってきたということは、やはりシステムが間違っていた。確かに、国民の要求があり、それをどんどんやって、そのツケがこんな形になって、なぜ民営化をしなければならないかというそもそも論の根本を忘れて、民営化した方が借金や償還の計画が立つ。そして、この会社は利潤を求めないということをはっきり言っているんですよね、民営化の場合は。だから、そこらを考えてみますと、やはり我々もまたもっともっと議論していかなければならないなというような思いをいたしております。

 ファミリー企業の問題もお聞きしようと思いましたけれども、サービスエリア、パーキングエリア、いろいろ考えてみましても、やはり総売り上げの二十何%をピンはねして、ファミリー企業、今八十六社ぐらいありますが、先ほどもおっしゃいましたように、全部もうけているわけです。

 だから、それの還元というよりも、やはりそこで効率よくもっと高速道路を利用いただく、そして安く高速道路の料金を取っていく、今のシステムの中でですよ、まだこの法律がどうのじゃないときに。そういうように考えていかなければならないというように思っております。

 本当にきょうは、わずかな時間でございましたけれども、貴重な時間、こうしてお話し合いをさせていただいたことに感謝申し上げまして、私は終わります。

 ありがとうございました。

赤羽座長 三日月大造君。

三日月委員 民主党の三日月大造でございます。

 四名の意見陳述人の皆様方、本当にお忙しい中、長時間にわたりましてありがとうございます。

 そしてまた、本日は、多くの傍聴者の方々にお越しいただいております。本当に、東京、国会だけで議論するだけではなくて、こういう大きな問題ですので、ぜひ皆様方にも生に見ていただきながら、迫力ある議論が展開できればというふうに思っています。

 委員各位の皆様方、関係者の皆様方は、ようこそ滋賀へお越しいただきました。国土交通委員会の中で、奥村委員ともども滋賀出身、最大派閥ということで、今回御配慮をいただきました。伸び行く滋賀、そして変わり行く滋賀において、生活にとって本当に身近で、そして将来にとっても非常に大切なこの高速道路の問題を、限られた時間ではありますけれども、きちんと、そして中身のある議論ができればというふうに思いますので、ぜひよろしくお願いしたいというふうに思います。

 きょうは、雨の中、そして車の中からではありますけれども、第二名神の草津ジャンクションの工事現場を視察させていただきました。まさに、国家にとって大動脈である高速道路の工事現場に、半ば感嘆をしながら、そして驚きを持って見せていただいたところでありますけれども、せっかく奥村委員の議論の中で料金の話が出ましたので、若干質問の順番を変更させていただいて、より踏み込んでお伺いができればというふうに思うんです。

 小野先生の方は、高速道路というのは受益者負担、その受益者というのは、単に高速道路利用者だけではなくて、高速道路でもって運ばれる、生鮮食料品もそうですけれども、あらゆるものを利用される方が受益者なんだという観点から述べられていますし、つくるだけではなくて、利用しやすい、そういった観点から料金を見直すべきだというふうにおっしゃいました。まさに同感です。

 もっと私が同感だったのは、料金収入で債務返済というものを考えるのではなくて、むしろ、公平性の観点からいけば税金の方が債務返済にとっては望ましいのではないかというふうに聞き取れましたが、その部分のより踏み込んだ御見解、私たち民主党は、高速道路は無料化にしましょう、債務の返済は税金で行いましょうということを明確に打ち出しておりますので、より踏み込んで御評価をいただければというふうに思います。

 そして高橋陳述人の方には、ぜひお伺いしたいんですけれども、もちろん無料化の方がありがたい、経済にとっても本当にその方が望ましいだろう。先ほどは時間をお金で買うというようなお話がございましたが、今回は、お金で買わなくても無料で買えるんです。そのあたりについて、では、無料になったときに、ネットワークをつくるための新規建設が本当にできるんだろうか。

 私たち民主党の案では、当面は採算性も含めて見直す、検討するということを言っておりますが、新規建設に対しても税金を投入するということを明確に打ち出させていただいております。高速道路は国民共通の財産でありますから、この部分に税金を投入するのはむしろ当たり前だ。一部の方が高い料金で、東名の利用者、名神の利用者が北海道の高速道路をつくるというのは、むしろこの方がおかしいのではないかというふうな観点から、税金を投入して新規建設するということを明確に打ち出しております。ぜひ、踏み込んで御評価をいただければというふうに思っています。

 目片陳述人の方には、今回、昨年の十月ですか、先ほど話題になりました湖西道路、料金を半額にして実験をなさっております。このときの結果が、いろいろな区間がございますが、総じて三五%以上の利用増なんですね。料金に対する価格弾力性が非常に大きくて、むしろ、国道百六十一号線、これは渋滞に非常に悩まされているんですけれども、こういった渋滞緩和にも一定の寄与があったのではないかというように私は見受けるんです。この部分も踏まえまして、将来は本当に無料になればいいね、でも、一つの目標としてということではなくて、民主党の案に賛同いただければ三年後には無料になるわけですから、この部分、もうちょっと踏み込んで御評価いただければというふうに思っています。

 三名の方々、よろしくお願いいたします。

小野善康君 私は、お金をどのように、今までの借金はどういう財源でやるべきかということについて、先ほど申し上げたとおりなんですけれども、利益を得ることができればできるほど、それがまさにその道路のいわば便益をあらわしているんだから、それを最大にするようにすべきだというのが多分民営化の発想だと思うんですけれども、利益を最も得るのは実は独占価格で、しかも道路というものは、余り細かいことは申し上げられませんが、非常に独占価格に本質的になりやすいもの。先ほど、自然独占という概念を使うんだと申し上げましたけれども、そういうものなわけですね。

 ですから、道路でないほかの多くの財は民間に任せて競争させてというので十分いいんですけれども、道路のようなものの場合には、それを任すことは、かえって、公平性じゃなくて効率性の面から望ましくないんだ。では、効率性というのは一体何だというと、あるものを使うということについて、そのものをつくる、あるいはそのものを維持するようなもののコストを超えてベネフィットがあるかということなんですね。

 さて、では道路の場合はどうかというと、もうできちゃった道路について言えば、維持管理費だけなんですね。ですから、あえて値段をつけるとすれば、いわゆる維持管理費の値段ならつけていいだろうということなんです。そのもとでプライシングができていれば実は最も効率がいいというのが教科書的な答えなんですね。

 それで、現実的な話として申し上げたのは、もう繰り返しませんが、受益者というのはこういう人たちがいるだろう。それで、ではプライシングをして、その値段が、いわゆる完全競争的なというか、最も効率いい値段だとすれば、道路についてはほとんどただのはずだ。それも、先ほどの混雑という問題は別としてですよ。だから、それだとすると、それは決して効率のいいものではないんだ。

 その意味でいえば、初めの建設費の部分について、固定的にばかっとかかる部分については税金で取った方がよっぽど公平である。しかも、その税金の取り方は、要するに、所得の高い人から多目に、低い人から少な目にという形になっていく、こういうことを申し上げたわけなんです。ですから、その意味で、税金でやった方がかえって公平であるというふうに私は思います。

 それで、何度も申し上げますけれども、だから無料化というのは、皆さんおっしゃっていましたけれども、東名、名神なんかを無料化したらどういうことになるかというのはもう目に見えているわけで、ぎゅうぎゅうに込まないならば私は無料化でいいと思うんですけれども、必ず込む。込んだら、それを主張した方に、どうしてくれるんだと言って、かえって利用者に怒られてしまうのではないかとさえ思います。

 以上です。

高橋宗治郎君 それではお答えします。

 私は、個人的にはそれは無料がありがたいと申しましたけれども、現実の問題として果たして無料でやっていけるのか。それは先ほどから申し上げたとおりでございます。

 もし、これは税金でというふうに今お話しでございますが、日本の今の財政を見ましたら、税金は半分ぐらいしか入っておりませんね。あと半分が国の借金になるわけです。これはまた将来の国民の子孫に負担がかかっていくわけですね。料金を取ってもそれは子孫の方に負担がかかる、四十何年もかかる、こうおっしゃるんですけれども、そうしたら、どちらの方がいいのか。先ほどから申しておりますように、やはりある程度、時間をお金で買うという考え方で納得して支払ってもらう人の方にその返済を充てるという方が私は公平だ。税金でということが、将来の税金は今より軽くなるとは思えないです、だんだん重くなる可能性もあるわけですから、そうした場合に、やはり利用者からいただくという方が公平ではないか、このように考えます。

 経営もそうなんですけれども、やはり物事は、目先の利益と長期的な利益とは相反することが多うございます。しかし、やはり企業としては長期的な方を重点に置くというのが建前でございますし、そういう意味での民営化だ。必ずしも、民営化してもうけようということじゃなくて、どこに基準を設けるか、それがうまく効率化に合っているかどうか、これの目安のために民営化になる、こういうふうに私は思います。

 ちょっとお答えになったかどうかわかりませんが、以上でございます。

目片信君 湖西バイパスのお話をということでございますが、試験的に試行されて、料金半額で三五%以上ふえた、これをどう思うかということですが、私は、ある意味では、先ほどからお願い申し上げておりますように、あの道路が完成しておればもっと利用が多くなる。志賀町の木戸の辺からおりるんですが、もうあそこから先は、そんな工事費もかかる路線ではありません。ぜひともこれは新直轄方式でお願いしたい。

 私の認識に誤りがあれば御指摘いただきたいんですけれども、公団で施行いただきますということは、早く完成します。早く完成するけれども、料金がついてきます。新直轄方式で仮にやっていただければ、時間はかかるけれども、まさに国道の代替バイパスですから、無料であります。

 こういうことから申し上げますと、私は、若干時間がかかってもぜひ新直轄方式でやっていただければ、もうあとわずかなんです、もうあと本当にわずかの区間でございますから、あの高島から今の志賀町の木戸のところまで接続すれば、本当に利用者はふえると思います。したがって、八百三十円が高いという感覚はなくなると思うんです。ですから、効果としてはあるわけでありますから、ぜひ、今の促進に向かって努力いただければというふうに思っております。

三日月委員 ありがとうございました。

 特に高速道路を無料にしたときの混雑について、非常に御懸念、心配される声が多いようにも思います。こればかりは、精緻な調査をする必要もありますし、この調査自体が非常に難しいということもありますので、一〇〇%はかり知ることはなかなかできないんですけれども、我々としては、インターチェンジを今よりも二倍、三倍とふやすことによって、乗りおりが、今であれば、乗ったら次のインターチェンジ、十キロ先、二十キロ先までおりられない。そうすると、その間、高速道路に缶詰ということになりますけれども、今よりも一般道との乗りおりが非常にスムーズになりますので、そういった面でも渋滞を緩和することができるというように試算しておりますので、ぜひ御理解をいただいて、御賛同賜れればと思います。

 せっかくの機会ですので、ちょっと次の質問に入らせていただきたいと思うんですけれども、小野陳述人と土居陳述人そして高橋陳述人、三名の方々にお伺いをしたいと思います。今回の民営化案に対する改めましての評価をお伺いしたいと思っています。

 先ほど小野陳述人の方からは、効率性という観点から料金を無料にすることについての是非についてお話を伺いましたし、同じ理由で、効率性の観点から今回の民営化案に対しては疑問を持っていらっしゃるというような表現をなさいました。その効率性といった物の考え方が、若干、料金の面でも使われ、そして民営化というところでも使われておってわかりにくいので、ぜひ、ちょっとこの部分に着目をして御説明いただきたいと思っています。

 それと、土居陳述人には、民営化には反対だということを一貫しておっしゃっています。この部分、その理由も含めて、もう少し踏み込んでお話をいただければと思います。

 私は、十七年前に国鉄改革によって民営化をされたJRに八年間勤めておりました。十七年たって、非常によかった面と、例えば、地方ローカル線の問題でありますとか整備新幹線の問題でありますとか、新たな課題もこれまたありで、いろいろな評価がなされております。ぜひ、国鉄改革、国鉄、JRといったものとの比較という意味で小野陳述人と土居陳述人にはお答えいただければ幸いでございます。道路と鉄道、もちろん違うといった観点もおありかと思いますので、お願いをしたい。

 高橋陳述人の方には、この民営化案が成立した後に誕生する民間会社についてどのようにお考えになるか。

 といいますのも、今回、この民営化四法案で成立をする会社というのは、資産も債務も持たない会社なんです。そして、新規建設を決める決めない。最終的には社会資本整備審議会で会社の拒否に対する正当な理由かどうかの判断が下される。そういう意味では政治の関与が免れない。もっと言えば、料金というものが、幾ら債務の返済に使うんだと言われながらも、四十五年後には無料になるんです。こういう民間会社が、これまで長年、銀行業というお立場でいろいろな会社を見てこられたと思うんですけれども、果たしてあり得るのか、上場見通しなんてあるのかどうかといった観点から、新しく生まれる新会社についての御評価を賜りたいと思います。お願いいたします。

小野善康君 二つ御質問をいただいたと思うんですが、まず、効率性という言葉を私はいろいろ使っているけれども、使い方で違いがあるのかということに関連してお答えすると、全く同じ意味で、私は、民営化案についての効率性はかえって落ちるということも申し上げているし、社会資本の使われ方の効率がかえって悪くなるんじゃないかということも申し上げているわけです。

 そこの効率化という意味は、要するに、日本にある資源、これは労働力もそうだし、社会資本もそうですし、そういうものがまずフルに使われるということが前提になる。せっかくあるのにむだになっているようなもの、使われないようなものがあったら、その方がいいということはもう絶対あり得ないというのは、常識的に考えてもおわかりになると思う。

 その意味で、民営化した場合に、ではどういうことが起こるかというと、コストが高いからどんどんやめていくというようなことが、ローカル線についてはJRでも実は起こっているわけですね。同じような意味で、コストをこれだけ下げるためには、では第二名神はやめようとか、先ほどの琵琶湖周辺の道路についても、これはつながれば明らかにネットワークでよくなるにもかかわらず、やめるとかいう発想が出てくる。それは、要するに、道路のようなものについて、民営化の発想、単純な利潤発想をそのまま適用すると、さっき申し上げたような意味で、効率性から反することをやるのが最もよくなると。

 典型的に言うと、例えば独占的な行動というのは、実は、利益を一番追求するような企業があって独占力を持っているとすれば、それは独占価格をつけた方がよくて、そうすると、その企業はもうかっているからいい企業だ、存続すべきだという話になるかというと、経済学的に見たら、実は、もっとその製品をいっぱいつくって、いっぱい使われるような状況をつくった方が世の中のためになるということがちゃんと出てくるわけですね。

 ですから、民営化にほうることによって、かつてのアダム・スミスの議論のように、神の見えざる手で、市場のメカニズムですべてよくなるという前提条件が山のようにあるわけです。道路はその前提条件に外れるものの一つであるという意味合いで申し上げているというわけです。

 それから、二番目の、国鉄との違いはどうであるかという点でいうと、二点申し上げたい。

 まず、国鉄改革をやった時期は、今のような時期じゃなくて景気のいい時期であった、景気がちょうど上がってきた時期ですね。ああいう時期にむだな労働力が、むだかどうかはわかりませんが、人が余っているというふうな状況で解放する。すなわち解雇してしまうわけですけれども、では、それがまずいかといったら、その人たちが、ほかで人手不足で、外国人まで入れようというような時期にちょうど重なったわけですから、どんどん吸収されるわけです。これは大変効率がいいわけです。ですから、まず時期がすごくよかった。

 では、今、ほかのそういう公共事業について同じことをやったらどういうことが起こるかといえば、ほかに吸収されないから問題なわけですね。だから、最初に申し上げましたけれども、道路をつくっているのを今やめた、では、その人たちは吸収されるかといったら、されない。あるいは、されたとしても、そうしたら、ほかの人たちの雇用機会を奪っている、ただそれだけのことになってしまう。その意味で、国鉄はまず時期がよかったということ。

 それからもう一つは、国鉄の場合は、ネットワークがほぼ完了した段階で、あとはランニング費用ということから収益性でやることができた。だから、負債は全部別に切り離してやりましたね。それだったらまだいいんです。それは、先ほどの自然独占的な、最初の大きな固定費用がかかるかどうかという問題なんですけれども、それがもう既に終わっているという段階なんです。今回の場合は、新たな道路をやめるという話で第二名神みたいな話が出てくるようなことですので、その点も違う。

 だから、本質的にはそれほど違わないけれども、タイミング、時期が決定的に違うので、今それをやるのはまずいんじゃないかというのが、結局、私の結論です。

土居靖範君 私は、新規に高速道路を建設することをやめるということが条件とか、あるいは公団ファミリーに対するメスを入れてその利益を還元させるとか、そういったことは一定条件にあるわけですけれども、基本的には、今後、公団自体はもう新たにつくりませんから、これまでの道路の維持と管理に徹するということです。

 それで、今話題になっています第二名神の建設促進のお話ですけれども、これはやはり社会的に、今後は、環境問題とか考えると、鉄道貨物の方にシフトさせるのが基本的な解決だと思います。そういうことをせずに、道路だけでそれを賄おうとすることは間違いではないかと思うわけです。ですから、そういった物流の方のシフトを、鉄道貨物に一部でもシフトしていく、そうして混雑を減らすということですね。

 そういう点で、国鉄の分割・民営化、いろいろな評価がありますから、ここではもうそんなに総合的にはできませんけれども、やはり貨物輸送自体をああいう形で、全国一本になっているわけですけれども、現実には旅客鉄道会社から線路を借りて夜しか走れないという形とか、さまざまな桎梏が分割・民営化の中で行われているという点はやはり大きな問題ではなかったかと思います。

 道路と鉄道は、やはりサービスの対象が違うと考えています。鉄道の方は旅客輸送が、分割・民営化に関しましては、そういうサービスレベルなんかかなり上がっているということは評価できるでしょうし、さまざまな点であったと思いますけれども、貨物輸送の点では評価はできないと思います。

 以上です。

高橋宗治郎君 私は、先ほど申しましたように、民営化案について詳細を知らないでこんなところに出てきて申しわけないんですけれども、私の感じますところでは、完全な民間会社にしようということではないのではないか、このように理解しております。

 といいますのは、完全な民間会社でしたら、もう完璧に利益追求をどんどんやっていって利益を上げていって、最後は上場しよう、こういうことなんでございましょうけれども、これはむしろ、目的は、効率的でない道路を今後もどんどんつくっていこうとするのではないか。それをいかにストップをかけるか、こういう問題だろうと思うんですね。

 だから、先ほども申しましたように、利益が目的じゃなくて、要するに、効率化しているかしていないか、あるいはできるのかできないのか、この辺を、民間の経営のそういう指標を導入して、それを当てはめていこう、要するに、むだな道路をやめていこう、こういうことだろうと思うわけです。したがって、先ほど先生が、過去の私の経験でとおっしゃいましたけれども、民間の企業とはちょっと違うのではないか、このように考えております。

 いずれにしても、先ほど申しましたように、あくまでもこれは目安に使うということで導入されるということが望ましいと思います。

三日月委員 ありがとうございました。

 もう時間がありませんので、最後に一言ずつで結構なんで……

赤羽座長 時間がもう経過していますので、ぜひ御協力をお願いします。

三日月委員 申しわけございません。

 では、また後ほど、別の機会に質問させていただきます。どうもありがとうございました。

赤羽座長 山名靖英君。

山名委員 公明党の山名靖英と申します。

 大変長時間にわたりまして、いろいろなお話を四人の皆様にお聞かせいただきました。それぞれの立場でお話をいただきまして、今回の道路問題の本質といいますか、理解できた部分も、またわかりにくい部分もあったと思います。

 私からは、もう既にそれぞれの委員の皆さんからの御質問が出まして、ほとんど言い尽くされている感じでありますが、まず、そもそも論の部分から、頭の整理をする意味から、自分自身に言い聞かせるつもりで何点かのお話をし、質問に移りたいと思います。

 今回の道路公団民営化については、小泉総理が持論として発表になった。そして、みずからの手でいわゆる道路改革の推進委員会というものをおつくりになって、またその委員会もいろいろな意見が交錯をして、途中で委員長がおやめになったり、数人の委員が脱会をされたり、すっきりした従来の審議会といいますか、そういう体をなさずに、今回解散したわけでございます。それほどこの道路問題というのは複雑多岐であり、いろいろな利害が交錯し、総論賛成、各論反対、こういったことは通例のことであります。

 あの猪瀬さんがみずからの著書の中で、アメリカは権力の象徴は戦争であり、軍需産業だ、日本の場合の権力の象徴は道路だ、こういうふうにおっしゃっております。果たして、我が国の権力の象徴が道路であるかどうか、これは相当議論を要する、このように思っておりますけれども、それは、とりもなおさず、道路という存在がいかに国民的な、また地域住民にとって必要不可欠なものであるかというあかしだと思っております。やはり、人間、動物でいえば、地方道路といいますか、生活道路は毛細血管であり、高速道路は動脈、静脈、まさに高規格幹線道路であって、それぞれの役割を果たしていると思います。

 先ほど土居先生から、生活道路への取り組み、整備がおくれている、バリアフリー化を含めていろいろな提言がございました。私はまことにそのとおりだと思っておりますし、何よりも地域住民の皆さんにとって、生活道路が外からの進入によって侵される、みずからの動きが封殺をされるということは大変な悲劇であろうかと思いますし、また、生活道路の持つ役割というものをいま一度見直して、先生のおっしゃったようなバリアフリー化等を含めた整備というものは一方で急がなければならないと思います。

 とはいうものの、生活道路に力を入れなきゃいけないから高速道路建設は待ったという論理には私はちょっと賛成しかねる。やはり役割が違うと思っておりますし、また、道路というのは、本来、持つ上でネットワークがなければ全く意味がない。どこかでずたずたに寸断されて、それ以上行きようがない、それぞれの交接点で大渋滞を引き起こし、本来の道路の持つ役割が損なわれるということは、道路の持つネットワーク性という本来の役割からいえば、やはり考えていかなきゃならない、こういう課題だと思っています。

 ところで、今回、先ほどもございましたように、九千三百四十二キロの道路計画決定区間が既に決められたわけでありまして、未供用の区間がまだ二千キロあるわけですね。今後は、新組織によって、自主的な判断といいますか、そういうものを尊重していこう、こういうことになりまして、基本原則として、民営化委員会の提言がありましたけれども、それを踏まえて厳格な評価基準を設けて、そのもとに抜本的な見直しを行おう、こういうようになったわけです。

 それは、その背景に、先ほどお話が出ましたように、やはり、余りにも肥大化した道路公団の権益といいますか、ファミリー企業の権益というか、あるいは天下りとか退職金の問題だとかいろいろな、国民的な視線から見て余りにもかけ離れた実態、こういうところからの今回の抜本的見直しの提言があったかと思います。

 それで、この評価基準の問題については、ステップ一の必要性から、ステップ二の適格性、それからステップ三の評価の総合化、そしてステップ四に至ってのいわゆる整備手法といいますか、要するに、公団にするのか新直轄方式にするのか、こういうことを最終的に決めよう、こういう流れをつくったわけです。そして、この評価の指標として、先ほどからも出ましたように、費用対効果、BバイCということもありますが、費用対便益比、あるいは採算性の問題、加えて、外部的な要因、外部効果、こういったものを最終的に総合的に検討して一つの方向性をつくろう、こういうふうな基準が設けられたわけでございます。御承知のとおりです。

 そこで、質問の第一点は、小野先生及び土居先生にお聞きをしたいと思いますが、今回の民営化委員会の提言による評価基準、総合的な評価に基づく流れ、評価基準に対する評価についてまずお伺いしたいと思います。

小野善康君 それについては、今まで申し上げたことと繰り返しが多くなると思うんですけれども、コストとベネフィットをしっかり考えて、ベネフィットのある方をつくることにしようというその態度、考え方は、私はそのとおりで、正しいと思うんです。問題は、多くの場合、人件費が大きな部分を占めるわけで、現在のような状況で人件費を入れるということは、余りというより、全く意味がないんじゃないかということをずっと続けて申し上げているわけです。

 ですから、本当の社会的なコストは一体何であって、その社会的なコストの中には、例えば、公害とか環境を傷めるとかいう問題は当然入ってきていいと思うんです。それはコストでいいと思うんですけれども、同時に、仕事をつくるというのはベネフィットとしてあるわけですから、それはコストではないというような発想ですね。本当に社会的、日本国として見てのコストと日本国として見てのベネフィットがあるか、そういう計算になっているかというと、それはなっていないんじゃないかと思うものですから、そのことをちゃんと意識した上でそういうふうにしていただきたい。

 二番目に、そういうことをやっていろいろな生産活動をするのが民間企業であるから、民営化によってそれを任そうという発想は、先ほど来何度も申し上げているように、道路については本質的に向かない財であるというふうに思うものですから、精神は正しいんだけれども、やり方が違うんじゃないかと思う。

 大きな問題はそこなんです。もう一回申し上げますけれども、サービスエリアとかパーキングエリアとか、あるいはその維持管理、そういうものについて見れば、要するに、コストは幾らかけてもいいからやればいいんだとか、あるいは、独占的にその権利を持っている主体が全部利益を得るんだとかいうのはとんでもないことでありますから、そういうのをやめさせるためにいわば補助的に民営化の手法を使うというのは何の問題もないと私は思います。

 そういうことで、単純に、余りに安易にコスト・ベネフィットというものを使い過ぎているんじゃないかという懸念を持っているということであります。

土居靖範君 今後、新たに道路をつくらないということを前提にした評価が必要ではないかということで、しつこく言っていますけれども、やはりその維持管理だけに限定してかなり小さな企業体にしていく、そして、さまざまな今までの利害関係のところもちゃんと整理していくという形で、評価自体はこれまでの評価とは違うわけですから、かなり評価ができるのではないかと思います。

 そういう形で、以前に対する評価に関してはちょっとコメントできません。

 以上です。

山名委員 総合的な評価のもとに、これから公団の新会社にするのか、あるいは直轄方式にするのかということなんですが、先ほどのお話の中で、目片市長、いわゆる地震対策、災害対策という視点をお述べになりました。これは私は極めて大事な視点だと思うんですね。かつて阪神・淡路大震災のときに、高速道路を含めた道路がずたずたになって、まさに道路の役割が問われた。こういうときに、これからの道路づくりに、災害対策、地震対策、避難あるいは輸送、こういったものの確保ルート、こういう視点は私は大事だと。今回のこの評価基準の中にはそこまで言っていないわけですね。そういう基準はありません。だから、そういう点ではいい提言ではないかと思うんです。

 ちょっと道路問題と筋が外れるかもわかりませんが、現実、滋賀・大津における、私も京都ですから花折断層とかいろいろ抱えていまして、深刻な気持ちを持っているんですが、この予測等、どういうふうなものがあるのか、ちょっと教えていただけませんか。

目片信君 地震の関係ですね。もう御承知のとおりであろうと思いますが、いわゆる琵琶湖西岸断層帯が、ここ三十年以内に震度五から七の予測が学会で発表されております。したがって、琵琶湖西岸ですから、今まさに私がお願い申し上げております湖西バイパス、あの一帯を含めて地震帯が走っている、こういうことでございます。

山名委員 そういう点では、災害対策ということを考えたときに、道路の持つ機能性、こういったものもやはり今後の方向づけの中できちっと押さえなきゃならない、こういうことを私は確信いたした次第です。

 ところで、高橋さんにお聞きしたいと思うんですが、今、京滋バイパスが延伸されまして大山崎ジャンクションまで行っているわけで、そこの部分で大変渋滞している。それまではそうでもなかったんですけれども、今、かなり交通量もふえておるようでございます。

 今回のいわゆる抜本的見直し区間にこの第二名神の特に八幡―高槻間、大津―城陽間が入ったのは、京滋バイパスができたからもういいじゃないか、何でここに三本要るんだというものは厳然とあるわけです。したがって、そうじゃない、京滋バイパス、それが第一名神につながった、もう一本、第二名神として、極めて大事な第三のルートというのはどうしても必要なんだと。

 先ほども、大津―城陽、八幡―高槻間、新直轄方式でもいいから何とかというお話がございました。具体論から言えば、ここのところの問題がこれからのせめぎ合いなんです。だから、それは今後の交通量等を勘案しながらしっかり検討しましょうということなんでしょうけれども、ここで、地元の皆さんの立場として、どうしてもこの第三のルートが必要なんだという根拠、これをもう声高にきょうはひとつPRしていただきたいと思います。

 高橋さん、後で市長にお願いします。

高橋宗治郎君 今の件でお答えいたしたいと思います。

 現状は、京滋バイパスが山崎で名神につながっているからそれでいいんじゃないかということを言われるわけでございます。しかし、先ほどから申しておりますように、滋賀にとっては、関空、関西国際空港にいかにアクセスするかというのが一番の問題なんですね。

 そうしますと、今の場合、第一の名神であろうが京滋バイパスであろうが、淀川の向こうからぐっと回り込んで、そして近畿自動車道から入って関空へ行く、非常に大回りでございます。私の申し上げているのは、第二名神で延ばしていただければ、大阪の北部で、淀川より東側で近畿自動車道に延ばせば、時間的には本当に速くなる。私、どれぐらいの節約になるか、はかったことがないのでわかりませんけれども、かなり時間的な節約になるだろう、このように思います。

 私は、外国との関係をいいましたら、二十分、三十分の差が国際競争上の大きな問題だ、このように必ずなる、このように認識いたしておりますので、その面でメリットが出てくるというふうに考えております。

 以上です。

目片信君 私が必要と申し上げておりますのは、御案内のとおり、名古屋から入ってきまして、土山、そして草津のジャンクションまで現在はもう施工中であります、先ほど委員の皆さん方も御見学をいただいたそうでありますが。これは、第一名神が、関ケ原を含めて米原の、いわゆる冬場の大変積雪の多い時期に物流が停滞をいたします。したがって、名古屋から来る第二名神の草津インターチェンジで仮にそれが西行き、大阪行きに乗ったと仮定すれば、それはそれで解決が一歩前進したかのように見えるんですけれども、事実は、三重県から入ってくる皆さん方の車が増加をいたしまして、そして今の第一名神の草津のジャンクションから、西行き、東行きに分かれてくる。三重県の場合は名阪が走っておりまして、それはそれなりの効果があるんですけれども、私どもがお願いしている、信楽から入ってくる第二名神、すなわち大津から城陽、八幡から高槻というものは今まさにその需要が物すごく期待をされておりますから、交通量、経済効果を含めて必要な道路であるという認識をいたしております。

 したがって、私どもは、このことについて、県も市も公団の皆さんともどもに一生懸命努力をしてきた、そういう経緯がございまして、先ほど奥村委員から、四十五分で何か見直しに入ったよという指摘をいただきまして、唖然としているのが現状でございます。

山名委員 先ほど、税方式による補てんによって無料化という提案も民主党さんの方からありました。

 冒頭でしたか、小野先生から、公明党の地域振興券の問題で若干苦言というか、あれは苦言ではないですね、ちょっと方向が違うんでしょうけれども、話が出ました。国民というのは増税はかなわない、減税は賛成、当然なんですね。私は、別にきょう、地域振興券の話をする必要はないわけですけれども、少なくともあのときに、経済効果としては〇・一%GDPを押し上げたという効果もあるぐらい、ただ、額が少なかったものですから、一過性に終わってしまったわけです。

 そういう点から考えても、税方式で今の高速道路の維持管理、そうすると、恐らく新規はまず見込めない、そしてそれが四十五年後。いよいよ景気が出口を出て、これからまたよくなろうというやさきの論議としては、今、タイミング的にはまだこれは早過ぎる、時期尚早だと私は思っております。

 いずれにしても、冒頭申しましたように、道路の持つ機動性、機能性あるいは公益性、公共財としてのあり方、こういったものを今後ともしっかり論議しながら、やはりどこまでも国民の視点というものを忘れてはいけない、単に採算性だけで論議してどうのこうのという、こういったことは避けなきゃならないと私は思っている次第です。

 時間がありませんので、最後に、土居先生も京都でございまして、私も京都なんで、ちらっとLRT、路面電車。

 実は、京都が全国で一番最初に路面電車をつくって、一番早くなくしてしまったんですね。この路面電車論議については、これからいろいろとやらなきゃいけないと思います。私は全く無視はしないという気持ちなんですが、先生の論議は、もう道路よりも鉄路、電車、こういうことで、加えて、高速道路は町壊しだ、特に景観壊しだというお話が主流だと思うんですね。

 しかし、京都の実情からいいますと、滋賀方面から流れてくる車、それから南部から流れてくる車、これが相当市内に流入して、もう本当にパニック状態になっている。だから、ある意味では、名神のほかにも、うまく市内を通過させるルートは最低必要だと私は思っているんです。必ずしもそれが町壊しになるのか、こういう点ではいささか疑問に思っておりまして、そういう点で、最後に、京都の道路行政のあり方について土居先生からお伺いをして、終わらせていただきたいと思います。

土居靖範君 都市の問題ですから、余り地域間の問題でなくてお話ししているんですけれども、やはり京都自体は歴史都市ですから、そういう意味では景観問題が大きくなりますし、かなり市街化しているところの中に二階建ての高架の高速道路が入ってくるという形で、堀川、油小路なんかは、南部の方は京都でないという御意見かもしれないんですけれども、これも伏見の方は京都市になっていますから、やはりそういう意味では、京都駅から北だけが京都ではないです。

 それと、この資料の四ページにありますように、西大路通りなんですけれども、これは地下トンネルが西大路通りの松原の方に出ていくだけの道路です、堀川は一車線入ってくる道路ですけれども。もしこの西大路通りに高速道路の出口ができますと、今でも西大路通りは非常に混雑していまして、立命館に行く学生なんか、バスが全然来ない。渋滞で非常に通学なんかの権利も奪われているような形になるところに、さらにそういう道路が都市内にどっと入ってくるということになると、渋滞が激化するということはわかっているわけです。

 おっしゃるように、高速道路自体が通過交通を排除する。ヨーロッパの高速道路、アウトバーンにしても、都市内には入ってこず、都市間の高速で、外周道路で、そこで車が必要な地域におりてくるということですから、やはりおっしゃるように、物流の点では京都市の郊外部にトラックターミナルを配置していく。そういう形で、大型のトラックはそこで荷物を積みかえてもらって、本当に局地的な、小さな必要なトラックだけに入ってもらうとか、さまざまな工夫をすることは必要なわけです。

 そういう形で、そういう町壊しの高速道路ではなくて、物流ターミナルの整備とか、それから、人は高齢化していきますから、先ほどおっしゃったようなバリアフリーですね、バスのステップだけでも非常にバリアになっているわけですから、低床式のLRTが、今後の、二十一世紀の新しい都市交通の主役ではないかと考えています。

 以上です。

山名委員 四人の方から、それぞれのお立場でいろいろなお話を聞かせていただきました。今後とも、ぜひとも皆さんの御要望といいますか、立場で、いろいろな日本の行政、特に道路行政についても一段と御指導賜りますことをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

赤羽座長 石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 本日は、それぞれのお立場からの意見陳述をいただきまして、ありがとうございます。

 大津市、近畿でこの公聴会が開かれていることもございまして、私は、まず大都市部の高速道路問題について触れてみたいと思います。

 私自身も大阪に住んでおりまして、大阪でも新たな高速道路建設が進められております。阪神高速大和川線、淀川左岸線、あるいは京都から近畿自動車道につなぐ第二京阪自動車道などがございます。

 地元の住民の方々は排気ガスによる環境悪化などを心配されておりまして、高速道路のふたかけ方式などの提案、建設そのものの凍結を求めていろいろな運動が進められているところでございます。国道四十三号線と二階建ての阪神高速大阪西宮線に関しては、西淀川や尼崎の住民の方々が提訴した大気汚染公害裁判では、国や阪神高速道路公団の共同加害行為責任を認める判決が出されております。周知のところでございますけれども、こうして見ますと、大都市部の高速道路建設計画そのものを見直す時期に来ているのではないかと私は考えるわけでございます。

 土居陳述人のお話にもございましたけれども、京都市内に高速道路を走らせる計画がございます。さらには、奈良の平城京を地下方式で高速道路を走らせる京奈和自動車道大和北道路も計画されています。ユネスコの世界遺産に指定された、日本、世界の共有財産で、政府や国を挙げて守らなければいけない地域だというふうに思うわけでございます。

 こういうところでの高速道路計画というのは、私は、こうした地域に全く相入れないものだ、そういう発想だというふうに常々思ってまいりました。そういう点で、土居陳述人の、京都市内には高速道路は要らないという御意見には全く同感でございます。

 そこでお伺いをいたしますけれども、世界遺産である京都の歴史的な町並みを守る、住民の生活、環境、景観を守る上で、陳述人の先ほどのお話がございましたけれども、道路供給一辺倒の自動車追随政策から、自動車交通量そのものを抑制して交通全体を合理的に管理する、先ほどはそれを交通需要マネジメント、TDMという政策を提唱しておられました。この点について、もう少し詳しくお話を伺えればというふうに思うんです。外国の例などがあると思うんですけれども、その辺も具体的にお教えいただきたいと思います。

土居靖範君 TDMというのは、混雑時に都心に入ってくる車をできるだけ減らすということで、誤解のないように。いつも、二十四時間都心の中に車を全く入れないということでは物流活動とかが困りますから、一定のすみ分けは必要です。

 朝のラッシュ時間帯に通勤の車がどっと都心に入ってくると、非常に渋滞が起こりますよね。時間が過ぎれば一定またすいてきますね。そういった形がありますし、観光地でしたら、観光シーズンに全国から京都なんかにどっとマイカーで入ってくる。そういう形で嵐山とかいろいろなところが非常に困っているわけですけれども、混雑時にはできるだけマイカーを入れないという手法で、今世界的には、シンガポールとかヨーロッパ、EUの各国でとられているロードプライシングというのが大きな脚光を浴びているんです。

 これはイギリスのロンドンも採用しましたけれども、一定の時間帯にその地域内に入るマイカーには料金を取るという形です。シンガポールが歴史的にも古くやっています。朝の一定の時間帯に入ってくる車は百五十円とかそういうのを取って、払いたくない人はその時間外にちょっと避けてもらうとか、あるいは地下鉄とかバスに乗ってもらう。東京都の方も、ロードプライシング、道路付加税というのをやろうとしています。

 あと、日本でも進んでおるのは、パーク・アンド・ライド方式ということで、都心までマイカーで来なくて、郊外に、公共交通の駅とかでマイカーを置いてもらって単身乗りかえてもらう。そういう形で、車一台一台、一人一人乗らずにやるやり方。

 相乗り方式なんかもあります。アメリカでは、相乗りした車は高速道路を優先的に走らせるとか、さまざまなやり方をやっていますし、この地元の大津市でもコミュニティーバスを都市内に走らせて、周辺部分でマイカーへ乗りかえてもらうとか、いろいろな手法は、地域地域によって違うと思いますが、できると思います。

 以上です。

石井(郁)委員 続けてもう一点お伺いいたします。

 前にもお話がございましたけれども、近代的路面電車と言われているLRTのことなんですが、人と環境に優しいLRT、この導入を中心としたまちづくりというのは、私も、大変夢があって、共感が持てるわけであります。資料もございましたけれども、日本各地でも今この導入の動きが広がっているとお聞きしたところであります。

 それで、このLRT導入をどういった都市が具体的に進めているのか、また、LRTの導入を中心としたまちづくりというものをそうした都市が進めるに当たっては、どういった問題が障害になっていたり、また推進する上での問題点、そしてまた、改善する上ではどういうことをいろいろ工夫していらっしゃるのか、その点もお聞かせください。

土居靖範君 今御指摘の資料自体は、最新の資料が日経新聞のを掲げておりますけれども、形自体は、路面電車という形で走っているところは、近代化した低床式の車両なんかを入れることによってかなりLRTに変えることができると思います。

 ですから、そんなに難しい問題ではなくて、これまでの路面電車を運行している事業者、そういうところでは、車両なんかを新たに買いかえるとか、駅の段差自体をバリアフリー化にして車いすでも乗れることにするとか、さまざまな仕組みは要るわけですけれども、そんなに難しくはないわけですけれども、新たに新型路面電車のLRTを導入するというのは非常に難しい問題があるんです。

 現実には何が難しいかといいますと、財源問題です。やはり日本の場合は、こういった鉄道事業者は独立採算制をとるということと、あと、自前でその線路部分を手当てするといいますか、社会的なインフラの道路と違いまして、事業者が自分でレールを敷いて架線を引く、そしてそれを何十年かけて運賃で回収していく、こういった問題がありますから、なかなか、地下鉄ほど高くはないんですけれども、現実には財源の問題があります。

 それから、道路の使い方で、今これほど自動車化社会になっていますから、この路面電車に一車線を、二車線なり三車線ある道路の一つでも明け渡すということはかなり抵抗があるわけですね。感情的な抵抗なんです。今でさえ渋滞しているところに、さらに一車線なくなってしまう、そこに路面電車、LRTが走るということで、物すごく心理的な抵抗があるということは事実です。車利用者は、やはり以前の、十九世紀の産物を復活するのかということもあったり、感情的な問題ですね。それから、地元の商店街にしても、車で来る人はもっとお金をたくさんくれるということで反対する。

 こういったことがありますから、やはり、環境問題とか、人に優しい乗り物だということをかなり啓蒙していく必要があると思いますけれども、基本的には、従来の日本の交通に関する基本的な法律を抜本的に変える必要があると思います。そういう点では、交通基本法を制定して、その中で公共交通の位置づけを抜本的に見直すべきではないかと思います。

 以上です。

石井(郁)委員 ありがとうございます。

 今、建設費のことを触れられましたけれども、この新聞資料によりますと、大都市で一キロ当たり十億から三十億円、一方で地下鉄の場合は三百億から四百億円だ、だから地下鉄の十分の一以下だというようなことも言われておりまして、その辺も大変注目をされているんじゃないかというふうに思いますが、いろいろ難しい問題もあるということもわかりました。

 さて、今問題の道路公団改革というところを次に質問させていただきますが、これはそれぞれの陳述人の方にお伺いしたいと思います。

 高速道路行政、また道路公団問題に対して国民は大変関心を持っているわけで、その関心はどういうことかといいますと、第一に、むだな道路建設にストップがかかるのかどうか。第二には、四十兆円にも及ぶ債務を税金の投入や通行料金の値上げなどの国民負担なしに返済できるのかどうか。第三に、高速道路建設に係る政官財の癒着がこれまであった大型ゼネコンやファミリー企業などのぼろもうけにメスを入れることができるのかということがあったかというふうに私は思います。

 私ども日本共産党は、かねてから、むだな高速道路の建設は中止して建設計画を見直すこと、また、債務を新たな国民負担なしに計画的に返済する、段階的に無料化に向かう、また、政官財の癒着の温床になっている天下り禁止、ファミリー企業をなくすことを柱とする改革提案などを行ってきたところでございます。

 それで、今回の道路公団改革というのは、そういう意味では、国民の関心事とかけ離れたところで公団という組織を少しいじり回す、中身はこれまでと余り変わらないという感じがしているわけでございます。

 そこで陳述人の皆様方にお伺いするわけでございますけれども、もう既に触れられてもおりますけれども、今度の道路公団改革でこれまでとどこがどう変わるのか、端的に、実感を込めてお聞かせいただければというふうに思います。何が期待できるだろうか、あるいは、最も危惧されるのはどういう点なのかということも率直にお聞かせいただければというふうに思います。よろしくお願いいたします。

小野善康君 まず、今回の改革で何がというのは、私は心配することがかなりありまして、それは、今の御趣旨とちょうど反対なんですけれども、何しろやめることがいいんだというふうになってしまうんじゃないか。

 それから、収益を上げればいいということであると、いわゆる独占価格的な意味でプライシングをしていくのではないか、そのことが、実はいわゆる効率とかけ離れるということが私は最も危惧するところでありまして、そのことを注意した上で、先ほどおっしゃっていましたけれども、いわゆるファミリー企業の問題とかそういうのを解決するというのであれば私は大変いい、そういうふうに思います。

 それから、先ほどの御説明で二つ気になったことは、一つは、返済を税金の投入なしに、あるいは高速料金を上げることなしに、国民負担をふやさずにとおっしゃったんですが、最初に申し上げたように、どうせ同じ額を結局は返さなきゃいけないわけですから、どんな方法をとったとしても、結局同じ額は国民から流れていくわけです。ですから、先ほども別の方がおっしゃったような気がしますが、要するにそれを、例えば、税方式だと負担が大きいと感じるけれども料金方式だと感じない、こうおっしゃるけれども、現実を見れば、あなたは税方式で百円払いました、それから通行料で百円払いました、はい、通行料の方が負担がないですかなんということはあり得ないと思うんですね。ですから、そういう意味で御説明されると、何かちょっと違うんじゃないかという違和感を持つ。

 それから、高速道路というむだをやめた方がいいとおっしゃったんですけれども、私は、これは勝手な想像で恐縮ですが、共産党の方なんかは、例えば失業がふえて仕事ができない人が多くなるなんということは決していいとは思わないと思うんです。それで、では、高速道路をやめて失業者がふえるのはいいんでしょうかというふうに私は思ってしまう。

 もちろん、高速道路がいいだけではなくて、ほかのもっといい事業があるんだ、先ほど都市内の交通のことをおっしゃった、そういうのがあるんだというのであれば、私は別に高速道路に固執するわけではないので、そういうのをどんどん出していただきたいというふうに希望いたします。

目片信君 今回の民営化案は、従来は国からのいわば押しつけというのか、上意下達によって取り組みをされてきたという部分から申し上げれば、いわゆる新規建設につきましても会社の自主性を尊重して取り組みをいただくということでありますから、むしろ、むだがなくなってスリムな、そしてまた国民の負担が少なくて済む、そういう可能性を秘めた部分だというふうに認識いたしておりまして、私たち地方としては大いに歓迎をいたしたい、このように思います。

 会社の自主性でありますけれども、採算性の範囲内で当然実施されることは言うまでもございませんし、また、道路公団の債務については機構が三社の債務を一括して管理するということですから、一定のリスクの分散ができて、そして地方の声がダイレクトに届くであろう、こういうことから、実は期待をいたしておるところでございます。

高橋宗治郎君 先ほどからも何遍か申し上げておりますが、少なくとも今度の問題は、高速道路を含めて道路行政の効率化ということだと思います。その効率化をするのにどういう方法がいいのかというのを今御検討いただいているので、私が最終的にどれがいいということは申し上げにくいのでございますけれども、少なくとも、民間会社にすれば効率化するというのはちょっとまた短絡だと思うんです。あくまでも、民間の考え方を導入していただいて、効率化ということがどうすればうまくいくか、ここにポイントを置いて改正していただければ幸いだ、このように思います。

土居靖範君 私は、基本的にはもう新たに高速道路は必要ないという見解なんですけれども、そういう事業を、地域の零細な土木事業者の仕事起こしという点で、高速道路ではなくて一般の生活道路の整備の方がもっと効果があると思うんです。ただ、一件当たりの金額自体は小さいわけですけれども、件数として成果とみなしていけば、さまざまなところでそういった改善、改良をすることによる効果は高いと思いますから、ゼネコンには魅力はないかもしれないんですけれども、地域の零細な土木建設業者に与える効果は非常に大きいと思います。地域おこしのためにも、高速道路ではなくて生活道路の建設の方にシフトしていくという形です。

 私は、そういうことで、結論的には、公団の民営化に関しては反対ですし、期待は全くしておりません。

石井(郁)委員 我が党も高速道路一般を決して否定はしておりませんで、あくまでも、むだな高速道路ということが修飾詞としてついているわけでございまして、そこは改めてちょっと述べておきたいというふうに思います。

 本当に、道路問題もまさに国家百年の計にかかわる重大な問題だと思いますので、多くの皆さん方の御意見もしっかりいただきながら、国会の方がきちんと議論をしていくことが大事だというふうに思っております。

 きょうはどうもありがとうございました。

赤羽座長 これにて委員からの質疑は終了いたしました。

 最後に、委員派遣団を代表させていただきまして、一言ごあいさつを申し上げさせていただきます。

 まず、意見陳述人の皆様方におかれましては、本日は、大変御多忙の中にもかかわりませず、長時間にわたりましてまことに貴重な御意見を賜りましたことを、心から御礼申し上げる次第でございます。本当にありがとうございました。本日拝聴させていただきましたそれぞれの御意見につきまして、当委員会の審査に資するところ極めて大なるものであり、今後の審査の大変重要な参考とさせていただく所存でございます。改めまして、厚く御礼を申し上げる次第でございます。

 また、本日の会議開催のために格段の御協力をいただきました関係者の皆様に対しましても、心から感謝を申し上げる次第でございます。本日の地方公聴会、最後まで無事終了させていただくことができましたのも、ひとえに皆様方の御貢献のたまものであるわけでございまして、改めまして感謝を申し上げる次第でございます。本当にお世話になりました。ありがとうございます。

 最後に、本日、大変お足元の悪い中、御参加をいただきました数多くの傍聴人の皆様に対しましても心から感謝を申し上げさせていただきたいと思います。

 道路公団民営化関連の法案につきましての結論はいずれになるにせよ、将来の世代の批判に耐えられるようなしっかりとした議論を進めてまいりますことを本日御参加の皆様の前にお誓い申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後三時五十八分散会

    ―――――――――――――

   派遣委員の大分県における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成十六年四月十九日(月)

二、場所

   大分東洋ホテル

三、意見を聴取した問題

   高速道路株式会社法案(内閣提出)、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法案(内閣提出)、日本道路公団等の民営化に伴う道路関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)、日本道路公団等民営化関係法施行法案(内閣提出)及び高速道路事業改革基本法案(岩國哲人君外四名提出)について

四、出席者

 (1) 派遣委員

      座長 衛藤征士郎君

         今村 雅弘君   江藤  拓君

         葉梨 康弘君   松野 博一君

         渡辺 博道君   古賀 一成君

         玉置 一弥君   松崎 哲久君

         松野 信夫君   高木 陽介君

 (2) 意見陳述者

      元九州大学経済学部教授 矢田 俊文君

      宮崎県知事       安藤 忠恕君

      大分県商工会議所連合会会長          安藤 昭三君

      中津市長        新貝 正勝君

 (3) その他の出席者

      国土交通省大臣官房総括審議官         柴田 高博君

      国土交通省道路局長   佐藤 信秋君

      国土交通省道路局路政課長           林部 史明君

     ――――◇―――――

    午後一時開議

衛藤座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院国土交通委員会派遣委員団団長の衛藤征士郎でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。

 皆様御承知のとおり、当委員会では、高速道路株式会社法案、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法案、日本道路公団等の民営化に伴う道路関係法律の整備等に関する法律案、日本道路公団等民営化関係法施行法案及び高速道路事業改革基本法案の審査を行っているところでございます。

 当委員会といたしましては、各案の審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、当大分市におきましてこのような会議を開催しているところでございます。

 御意見をお述べいただく皆様方におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席をいただき、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただくようお願いいたします。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。

 会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。

 なお、この会議におきましては、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと思います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、意見陳述者の方々からそれぞれ十分程度意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。

 まず、派遣委員は、自由民主党の今村雅弘君、江藤拓君、葉梨康弘君、松野博一君、渡辺博道君、民主党・無所属クラブの玉置一弥君、古賀一成君、松崎哲久君、松野信夫君、公明党の高木陽介君、以上でございます。

 次に、各界を代表して御意見をお述べいただく方々を御紹介させていただきます。

 元九州大学経済学部教授矢田俊文君、宮崎県知事安藤忠恕君、大分県商工会議所連合会会長安藤昭三君、中津市長新貝正勝君、以上四名の方々でございます。

 それでは、矢田俊文君から御意見をお述べいただきたいと存じます。

矢田俊文君 十分間ということで、きょう、意見の陳述の機会をいただきまして、大変ありがとうございます。

 目の前にありますカラー刷りの六枚の資料で、十分間ということで説明させていただきます。メーンは前の三枚だけでございます。あとは参考ということで御理解いただければと思っております。

 いきなり二ページ目に入りますが、これは、一昨年十月十八日に、道路関係四公団民営化推進委員会「一日委員会in福岡」での私の意見の要旨でございます。

 くどく説明することはございませんが、基本的には、高速道路というのは一国における均衡ある発展と地域の着実な成長のために大変積極的な役割を果たしたということでございます。今後とも国土計画、地域計画の骨格である。しかし、現時点においては、現在の高速道路公団方式による整備というのは限界に達している。その点では、民営化推進委員会の議論というのは大変ポジティブに評価できる。にもかかわらず、四番目、しかし高速道路というのは依然として骨格のものであって、債務の返済だけの議論に終始することは困難である。厳しい国際競争に勝ち抜くため、国土が一体となってやっていくためには、高速道路の計画というのを見直しながら進めていく必要がある。その場合、よく言われる進捗率や採算性という収支問題だけでなく、日本の一国をどういう形でデザインしていくかという視点から真剣に高速道路の整備を位置づける必要がある。そのためには、今までのような高速道路の道路公団方式そのものが既にデッドロックになっていますので、改めて根本から整備方式について再検討する必要があるという見解を述べました。

 以降、私は、民営化には全くかかわっておりませんけれども、基本的にこの大きな流れの線で進んでいるものと理解しております。

 きょうは、このうちの三番目の民営化推進委員会の議論を踏まえた新しい方式が提案されておりますので、それについて意見を陳述したいと思っております。

 一ページ目に戻っていただきたいと思います。

 今度の四公団民営化というものの大量な資料をいただきまして、一枚に集約するとこういう形になるのかなということで、四角はすべて組織でありますが、この中で黒いのは今進めていくにつきましての考え方を整理したもので、青い字がそのメリットといいますか効果、どういう意味を持っているか、赤いところは、なお残る課題というものをどう考えていくかという形で、効果を四点、課題を五点整理しております。

 スキームについてるる私が話すことはないと思いますけれども、効果のところの一番目、明らかに四十兆円、それに利子を加え、さらに今後発生するであろう管理その他を加えまして、四十兆円プラス利子ということで、相当額の九十兆円近い額というものを返済するという、貸付機関にする返済につきまして、既存については三十五年、新規は四十五年ということで、かなり明確になり、その返済システムにつきましてきちんとビルトインされているということであります。

 しかし、これが三十五年、四十五年という非常に長い間にこのとおり粛々と進んでいくかどうかということは、これからの重要な課題であろうと思っております。

 といいますのは、国の責任において進めていくといいながら、一方で、経済情勢、社会情勢によって、これが成功するかどうか、なかなか予測がつきませんけれども、一つは、市場メカニズムというのが大きく二つの因子がかかわっておりまして、一つは、収入を決めていく交通量そのものが市場に左右される、しかも、それぞれの道路あるいは会社における交通量ということがかなり厳密に必要でありますので、こちらでいうと、右から二つ目の列のp掛けるqという、このqが交通量と考えておりますが、これは計画どおりいくかどうかというのは市場に依存せざるを得ない。

 それから、想定される利子につきましては、一定の利子率の動向を考えておりますが、これも市場動向によって決まっておりますので、利子率と交通量という問題は、当然、このスキームどおりにうまくいくかどうかというのは課題として残っておりますので、この図式にありますように、右から二つ目、それぞれの会社が料金収入を確保して、それがp掛けるqでありますが、あるいは兼業収入も入れまして、それからコスト、管理費を引いて、消費税を含めて引いて、残った額、Ptと書いてありますが、これを原資にして返していくというスキームになっております。

 その辺のところの整合性というのが、提案するそのものが問題というよりも、今後の三十年、四十年という市場動向に大きく左右されるので、相当ケアしていかなくちゃならない、これが課題一であります。

 効果の二番目として、組織を、これにありますように、別会社、株式会社ということで六つの株式会社にいたしました。したがいまして、株式会社の経営責任というのは独自に発生いたします。そして、安定して貸付返還するというこの量も、自動的にといいますか、利子率の問題はありますが、決まってまいります。したがって、予見された貸付料を払うための合理化努力をそれぞれの組織がせざるを得ないということから、当然、経営視点というのが重視されてまいります。

 コスト節約、いわゆる管理費を含めた、ここでいくとCtの節約と、それから収入増大、価格でいくのか交通量でいくのか、あるいは兼業収入でいくのか、p掛けるqを最大にする最適なものは何なのか、これは路線によって違ってくるはずなんですが、少なくとも会社ごとにpqを最大にしなくてはならないということから見て、そういう点では収入増大についてかなり経営努力が必要だろう。これは、現行方式よりもはるかに追い込んでいくシステムかと思っております。

 もう一つは、課題二のところで、これが十分確保できないところと確保できるというところの、いわゆる六つの会社がございまして、これは路線ではなく会社ごとの収支ということで、そしてまた一国全体ではなくということでありますので、そこのところが、赤字路線というものを負担しながら黒字路線でやっていくという、ここの経営をどうやっていくかという問題が残ると思います。

 一番右側の方の効果の三番目でありますが、現在、上の方に緑で書いてありますが、整備計画九千三百四十二キロのうち、供用が七千三百四十三、残りが千九百九十九。これを、九千三百四十二を実現するというのが一応国の責務になっておりますし、地域の要求が非常に強いわけでありますが、そのうち、非常に収支バランスが厳しいところにつきましては、一番下にあります六百九十九キロは新直轄方式ということでしております。

 そして、今後プラスアルファ、新直轄に変えていく、いわゆる国費を導入してつくるということにつきましては、そういうことになっておりますが、上の方、したがって千九百九十九から六百九十九、さらにマイナスアルファという、したがって千三百マイナスアルファ、これが、今後建設するかどうかということを会社の判断、そしてそれに対する国の認可というシステムになっておりますので、どの程度このアルファというのがふえていくのか、あるいは千三百をすべて会社でやってこれがうまくいくのかとなると、アルファという未知数がどう動くのか、一応三兆円ということで歯どめがなっておりますが、現実的には非常に厳しいところが残っているのが多いので、ここのところは課題三、どれだけ建設できるのか。極端に言うと、現在の資産の債務を返すのに目いっぱいで、とても株式会社として新しい負債の返還というのは、見通しが立たなければゼロでありますし、非常に順調にいけば、すべて千三百、会社がやって、四十五年で返還というスキームになっておりますが、これも市場動向によって大変違ってきますので、この問題が最後まで次第にこのアルファの値をめぐって政治的駆け引きの問題になっていく可能性がありますので、そういう点では課題が残るかな。

 今、効果の四で、現在黒字路線による赤字路線の負担の問題と、それから新直轄方式によって非常に厳しいところを進めるということによって、かなり地方路線が悲観的な流れがありましたけれども、地方路線の建設の可能性がかなり出てきているということであります。しかし、このアルファの値をめぐって、次第に新直轄方式に流し込んでいくと、相当部分いわゆる税金の投入によるということになりますので、このアルファの値が大きな課題になってくるかなというのが基本的な考え方であります。

 ところで、私の考え方は、これは恐らく収支バランスの問題で、圧倒的にマスコミその他は、収支バランスの問題としていわゆるツケをどうするのかという問題がありますが、この議論は、もう一つは国土をどうデザインしていくのかという問題とバランスで最後までいくと思いますので、明らかにこの四十兆円プラスアルファ、十・五兆円、五十兆円プラス利子という、合わせて九十兆円以上の返済というのをどうするかという大きな課題と同時に、一方で、残った高速道路を進めることによって国土全体の一体化と地域の活性化を進めていくということが問題になると思います。

 その辺につきましては、時間もあれですが、三ページ目で、一言で終わらせていただきたいと思っておりますが、私も国土審議会の委員として五年ないし六年やっておる。国土政策を専門にしておりますが、今後の国土政策の基本は、自立ブロック圏域をつくって、それが結合していく、そういう国土の姿ということが現在審議中の基本枠として提起されつつあり、五月に中間報告が出る予定であります。

 そのためには、各ブロックごとに高速道路のネットワークをつくるということが基本で、上の方は地方圏、下の方は大都市圏のイメージでありますが、中核都市圏、中心都市圏を一体化して進めていく。この路線でいきますと、東九州あるいは東北の日本海側あるいは北関東というところが非常に重要な路線選択になると私は思っておりますので、国土をどうデザインするか、そのためのプライオリティーをどうつけるかというところでこれからの議論が必要かと思っております。

 時間になりましたので、以上で終わります。(拍手)

衛藤座長 ありがとうございました。

 次に、安藤忠恕君にお願いいたします。

安藤忠恕君 まず、本日のように意見を述べる機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。

 きょうは隣の町、大分市でございますが、宮崎の隣でございますが、東京出張と同じような時間拘束で参っております。そういう関係でございまして、大分市におり立つのも私は四十年ぶりでございます。隣でありながら遠い県という状態でございます。

 実は、先月の十三日にも、衛藤座長さんのお世話もございましたし、国会議員の先生方の御配慮もございましたが、佐伯市で石原国土交通大臣、近藤道路公団総裁に直接要望させていただきました。また、このように再びこういう機会を設けていただきまして、まことにありがたく思っているところでございます。

 きょうは、地方の実情につきましてお話をさせていただきたいと思います。

 本日は佐藤道路局長さんもおいでいただいているようでございますが、宮崎県内の新直轄方式というその区間につきまして、十五年度に引き続きまして、十六年度予算を決定していただきました。宮崎県選出の国会議員の先生方はもちろんでございますが、国会議員の皆さん方あるいは石原大臣、佐藤道路局長さんを初め関係者の皆さん方に厚くお礼を申し上げたいと存じています。

 まず、今回の政府案関連につきましてでございますが、私の立場を明らかにさせていただきたいと存じます。

 まず、必要な道路を確実に、そして早くつくっていく仕組みのよりどころであるというふうに私は認識いたしております。一日も早くこの法案が成立しますことをお願いいたします。

 言うまでもございませんが、高速道路は、先ほど矢田先生の方からもお話がございましたが、国土形成の骨格であると同時に、国土の均衡ある形成にとりまして最も基本的なインフラとしまして、必要不可欠なものでございます。

 しかしながら、民営化の議論以降、特に今回の法案が提出されましてから、中央のマスコミの皆さん方の中では、むだな道路をつくる仕組みが温存されるというような報道がございます。本当にそうかなと思うところでございます。狭い国土であり、しかも経済大国と言われる我が国におきまして、そういう論調が国内にあるということは、非常に情けなく思うところでございます。

 現在、我が国では、約七千三百キロの高速道路が開通いたしております。お手元に「九州の高速交通網の現状」という資料をお届けいたしております。この中の二ページに当たりますが、国際比較といいましょうか、そういうデータを盛り込んでおりますが、人口当たり、自動車台数当たりを見ましても、欧米諸国には及ばないことがこのデータでおわかりいただけると思います。

 九州関係、三ページでございますが、人口、面積、GDPが同じ程度のオランダと、よくいろいろな面で比較されることがございます。オランダの高速道路が、ここにありますように、二千二百三十五キロに対しまして、九州はわずか九百四キロしかございません。特に、隣の国の中国では、次のページにありますように、一九八七年まで高速道路はなかったわけでございますが、わずか十七年前のことでございます、あっという間に追い越されてしまいまして、現在約三万キロに達して、日本の約三倍でございます。これからのアジアとの連携、競争の時代におきまして、日本の高速道路はこれでいいのかなと大変危惧をいたしているところでございます。

 また、むだの象徴のように言われておりますが、本四架橋とか東京湾アクアライン、北海道の高速道路ですが、これは、単独採算による高い料金とか、ネットワークにつながっていないことによるものではないかと思っております。ネットワークの形成に当たってのハードがむだという評価ではないと思っておるところでございます。むしろ、そのつくり方、使われ方といったソフトの面の課題ではないかと思っております。

 この点、政府の方でも、国土交通省を中心としまして、工夫していただきたいと思っております。いずれにしましても、ネットワークとしてむだと証明された例はないと私は認識をいたしているところでございます。

 さらに、このネットワークに関しましてですが、日本の高速道路整備は背骨から肋骨へ移行したと言われておりますが、これにも私は疑問を呈するところでございます。

 資料の五ページをごらんいただきたいと思うんですが、東北地方、中部、中国、四国、九州のそれぞれの断面で背骨路線を比較して見たところでございます。

 九州以外では、ごらんのとおり、計画ベースで三本から四本ございます。完成ベースでは二本から三本ができておるようでございます。

 アジアの玄関口でございます九州ではどうでしょうか。計画で二本しかなくて、縦貫道のみしか今のところ開通しておりませんが、むだどころではなくて、東九州自動車道を完成せずして背骨ができたと言うなかれと言いたいところでございます。

 よく見ていただきますと、こちらの方にパネルもございますが、ごらんください。東九州の方がまさしく背骨に似ていると私は思っておるところでございます。少し猫背になった感じの、長崎の方が顔かなという感じがするんですが、そういうふうに私は九州を見ているところでございます。

 高速道路の空白地帯となっておりまして、九州の東西格差が著しく進行しております。西九州では、既に全線開通しております九州縦貫自動車道でございますが、今年度におきましては全線四車線化いたします。さらに、一部では六車線区間もございます。さらに、御承知のとおり、先月は九州新幹線、一部ではございますが、開通いたしまして、福岡までの全線開業を前倒しするという話もございます。

 一方、東九州の宮崎でございますが、高速道路の供用率は、九州の平均六七%に対しまして、本県、宮崎県は三七%で、九州最下位でございます。特に、宮崎県内の東九州自動車道の供用率は、暫定二車線で計画されておりますが、まだ一七%どまりでございます。横断道延岡線に至りましては、一ミリも供用がないという状態でございます。国土交通委員会の先生方には、ぜひ、この宮崎の実情をしっかり御認識していただくと非常にありがたいと存じます。

 ここで、先ほどのむだの議論で最も重要な点を紹介させていただきたいと思います。それは、先日の参考人招致で筑波大学の石田先生が指摘されたところでございますが、今回の一連の過程におきまして、国土交通省はあらゆるデータや議論のプロセスを公開されました。しかるに、中央のマスコミにおかれましては、そのデータに基づいた定量的かつ具体的な、むだであるという反論がないような気がいたします。むだ、むだと、単なる単語の羅列にとどまっているんじゃないかという私は認識でございます。これまでデータの公開を要求してきたにもかかわりませず、いざデータが出ますと、すれ違いの主張しか行われないのは、私はフェアな態度ではないというふうに思うわけでございます。皆さん、いかがでございましょうか。

 行政も変わりつつございます。情報公開が本格化いたしております。マスコミの皆様も、しっかり取り組まれた上で、行政や世論と本質的、実質的な議論を行うべき時代になっているのではないでしょうか。とにかく、国道十号線を宮崎から大分まで一度走っていただきますとありがたいなと実は思っておるところでございます。

 今回、いろいろ出されましたデータの中で、BバイCという言葉がよく出てまいります。最近では、公共事業の実施に当たりまして、費用対便益を検討することは当然になっております。しかし、この場合の便益につきましては、交通量が多いほど大きな値になる計算方法でございまして、大都市部に有利に評価されるようになっております。いかなる地方に住んでおろうとも、一人一人が国から受ける便益は同じであるべきではないでしょうか。

 また、資料の七、八ページにございますが、高速道路が整備されますと、交通量に伴った効果のほかに、物流拠点の連携強化とか企業進出、観光、農林水産業の活性化、あるいは救急医療、災害時の代替ルートなど、多面的、広域的に効果が広がってまいります。財政が厳しい宮崎県におきましては、必要に迫られまして、防災救急ヘリをこの秋から導入せざるを得ない状況でございます。こういった効果につきまして、難しい面もございますが、ぜひ定量化して便益に取り組んでいただきたい、そういうふうにお願いしたいところでございます。

 宮崎県は、東京のように交通量は多くございません。交通量が少ないところは道路をつくらない、だから田舎には人は住むなという評価にはつながらないんではないかと思っておるわけでございます。

 先日、民主党の皆さん方の方から、高速道路事業改革基本法案が提出されました。高速道路原則無料化が目玉のようでございます。無料か有料かと問われますと、それは無料がいいに決まっております。しかし、ちょっと待っていただきたいというのが私の思いでございます。有料か無料が選択できるところはまだ幸せな方でございます。宮崎県のように選択の余地もないところがあることを、ぜひ忘れないでいただきたいと思うところでございます。

 きょう、先生おいでいただいていますが、長崎県や佐賀県のように、高速自動車道を一〇〇%完成しているところでは、一〇〇%無料化の恩恵にあずかります。しかし、無料化によりまして、我が宮崎県民が待ち望んでおります東九州道が切り捨てられたり、あるいはおくれるのであれば、宮崎県としては、この案には断固反対するしかございません。

 そもそも、国におかれましては、税金だけではなくて、お金が足りないということから、借金で高速道をつくられ、料金収入で返していくシステムをつくられたはずです。今年度、地方交付税を相当削られまして、地方は大変な予算編成でございましたが、債務を税金で返せるほど国の財政事情はよくなったのかなと一方で思うわけでございます。民営化推進委員会の猪瀬直樹さんと田中一昭さんも言っておられましたが、高速道路無料化案は評価できないと発言されているはずでございます。

 政府案におかれましては、四十五年間といたしまして、必要な道路をつくりつつ債務の返済を行えば、このくらいの期間が私は妥当かなと思っておるわけでございます。法律に四十五年を明記されることは、従前からしますと画期的なことではないかと考えます。

 私は、知事に就任いたしましてから、宮崎県の財政が厳しい状況を実感いたしたところでございます。しかしながら、宮崎県におきます、あすにつながる道でございます高速道路の早期整備は、本県みんなの悲願でございます。県政の最重要課題でありますので、県費を負担してでも早く高速道路をつくってほしいという願いでございます。そこで、新直轄方式をお願いいたしたところでございます。現在、道路公団で進めていただいている区間もございます。とにかく、早く完成していただきたいというふうに思います。

 ちなみに、民主党の皆さん方から参考人として推薦されました構想日本代表でございます加藤秀樹さんでさえも、第二東名より宮崎に金を回した方がよいと、宮崎での必要性を認めていただいたところでございます。本当にありがたいことでございます。

 宮崎の高速道路がおくれている理由の一つに、宮崎県人はおとなしい、人がよ過ぎるという説がございます。しかし、先ほどの佐伯市でもお願いいたしましたが、もう人のよさも限界だ、我慢できないという状態でございます。

 本県の男性、女性を見ますと、非常に力強い女性軍がたくさんおります。ことしは、大女性応援団をつくりましてお願いに参上したいというふうに思っているところでございます。女性シンポジウムのパネリストもおるんですが、道路関係、いろいろシンポジウムを開催しております。それから、道路関係で若おかみの会とか、あるいは県北の女性軍の応援団もつくっておりますので、先生方のところに強力な女性軍を伴ってお願いに上がりますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 先ほど皆さんに、国道十号を走ってみていただけませんかとお願いいたしました。実は、私は、知事に就任しまして九カ月でございますが、まだ大分県境までこの十号線を走っておりません。なぜならでございますが、十号線を走りますと一日つぶれてしまうということでございます。これでは知事の仕事が十分できないなというふうに思っているわけでございます。どうか、私の知事としての仕事が効率的にできるように、東九州自動車道の早期の完成をお願いいたしたいと存じます。これは、私の個人的なお願いでもございます。

 以上、申し上げましたように、地方の実情、特に本県の実情を十分御理解いただきまして、高速道路の整備促進につながるよう政府案の早期成立をお願いいたします。

 ありがとうございました。(拍手)

衛藤座長 ありがとうございました。

 次に、安藤昭三君にお願いいたします。

安藤昭三君 大分県商工会議所連合会の会長の安藤でございます。

 大変御公務多端の中に、衆議院の国土交通委員会の先生方、わざわざ当地においでをいただきまして、高速道路の実情につきましてこうやって公聴会を開いていただいたことに対しまして、まず心から御礼を申し上げたいと存じます。

 今、矢田先生また宮崎の安藤知事さんからもお話がございましたわけでありますが、申すまでもなく、高速道路は国土発展の骨格でございまして、地域の自立的発展と産業競争力の根源として、最も優先的に整備されるべき基礎的なインフラである。生活面、経済活動面、あるいはまた最近振興が言われております観光の面、あらゆる面において道路への依存度が高い九州におきまして、緊急かつ計画的な整備促進が必要不可欠であります。

 お手元に、こういう大分商工会議所の封筒に入りました計表をお配りいたしました。それに若干の統計がついております。

 今さっき宮崎の知事さんからのお話がございましたけれども、道路への依存度、これは陸上輸送のうち自動車の占める割合でありますが、首都圏で、旅客で五〇%、貨物で八五%、これに対して九州では、旅客で九二%、貨物で九九%、大分では、旅客で九七%、貨物で九九%になっておりまして、ほとんどが自動車交通に依存しているという実情であります。

 さらに、我が国の産業におきましては、グローバル化が喫緊の課題でありますけれども、地域産業の競争力強化、とりわけアジアに近い九州におきましては、中国、韓国を初めとするアジア諸国との競争が差し迫った課題になっております。これらの近隣諸国におきましては、非常な勢いで高速道路を初めとする社会資本の整備が進んでおりまして、特に中国においては近年目覚ましい勢いで高速道路が進んでおる。同時に、それが安い。これに安価な賃金コストを武器としました製品がどんどんと流入しまして、依然として大きな脅威になっておりますことは先生方御承知のとおりでございます。

 こういう状況からも、空港、港湾などの交流拠点の整備とあわせまして、これらと一体的に高速道路を整備して、インフラコストの点においても中国に負けないようにしていただきたい。これは極めて重要なことではないかと思います。

 例えば、次の紙に大分県内におきます港湾の取扱量の推移が出ておりますが、高速道路に近接しますところの大分港、ここでは貨物の取扱量の伸びが高速道路から離れた位置にある港よりも年々大きくなっている。

 そこに、下に津久見港とか佐伯港というのがあります。津久見は最近高速道路がつきましたわけでありますが、それは平成十二年までの統計でありますので、津久見に高速道路が延長されましたのは平成十三年でございます。したがいまして、そこまでのところは、大分港はどんどんとふえておりますが、あとの二つはほとんど横ばい、もしくはダウンという形であります。

 次に、最近の市町村合併、こういう問題もあるわけでありますが、この受け皿づくりでもやはり交通インフラ、特に高速道路が大事ではないか。

 一例を挙げますと、県南の佐伯市は九つの市町村が一緒になりまして新佐伯市ということになるわけでありますが、その中心になる町が佐伯と蒲江という町でありますけれども、これが今は車で行きますと三十五分か四十分かかっちゃう。高速道路ができたら恐らく十分で行っちゃう、こういうようなことでありますから、こういう意味で、市町村の合併の点から見ましても、これは非常な便益性が向上されるというふうに思われます。

 次に、九州におきますところの高速道路ネットワークの整備状況を見ますと、計画総延長は千五百キロに対しまして、約六割に当たる九百キロメートルの供用にとどまっておりまして、特に問題の東九州自動車道は、全長四百三十六キロのうち供用区間がわずか百二十九キロと三割弱しか整備されていない、最もおくれていることは先ほど宮崎の知事さんからお話のあったとおりでありまして、十号線で宮崎まで行きますと、これは約二百キロということでありましたが、四時間五十分かかる。同じ距離の東京―静岡間はわずか一時間五十分、二倍以上の時間がかかるという不便さであります。これは、不便なだけでなくて、東九州の発展にとって非常に大きな制約になっているということでありまして、この点におきましても高速道路の整備が喫緊の課題であると思います。

 それから、先生方よく御承知のように、この三月十三日に新八代と鹿児島の間を九州新幹線が走ったわけでありますが、西九州におきましては既に一応九州縦貫道路ができております。これに加えて、新幹線が部分開業、恐らく八年先には全線開業ということが見られているわけでありますが、残念ながら、東九州と西九州では、東九州ではまだ高速道路が三割弱、こういうことでありますから、最も大切な二十一世紀の交通体系におきまして、西側との格差が非常に大きくなっております。

 東側ではまだ高速道路もできていない、こういうことでありますので、次の四の一の表を見ていただきますと、そこに人口の伸び、これが東九州、この東九州というのは、鹿児島県では大隅半島が東に入りまして、福岡県では遠賀川から東というところを東九州に入れたという数字になりますが、それと西九州、こういう形でありますけれども、これで見まして、ごらんのように、人口は西九州が伸びておるのに対して東九州はほぼ横ばい、また、農業出荷額、製造品出荷額等、さらに商品販売額等でも東側の劣勢が非常にはっきりしておるというわけであります。

 高速道路のインターから三十分以内のところでは市町村の人口が増加するという統計が四の二に出ておりますが、そこにございますように、昭和五十五年から平成十二年までの間に、人口の増加率が三十分圏内では八十一万人、三十分圏の外ではマイナス二十四万人、こういう数字になっております。

 御承知のように、東九州地域には数多くの空港もありますし、重要港湾もございます。そして、大分市、中津市あるいは県北の苅田、小倉、さらに南の延岡等には大きな工業の集積もあるわけでありますが、特にこの苅田市の周辺では日産自動車の生産体制増強、さらに中津ではダイハツ車体の操業開始、こういうことで、近年、自動車工業の進展が非常に目をみはるようなことがあるわけであります。さらに、東芝大分工場における国内最大のLSIの量産開始とか、キヤノンの大分工場でデジタルカメラの新規大型工場がくわ入れをする等々、非常に活発な動きがあるわけであります。

 こういう点から見ましても、この工業集積のあるところになぜ高速道路が通らないのかという問題があると思います。

 次に、最近言われておりますような観光立国の観点でありますが、東九州地域には山海の美しい自然環境、あるいは湯布院やシーガイアに代表されるような有数のリゾート地、魅力ある観光資源が豊富にありますし、別府などにはアジアの近隣諸国、韓国、台湾、中国から多くの外国人来訪客が訪れて、我が国の目指す国際交流とか観光立国の実現の一翼を担っておりますことは、御承知のとおりであります。

 東九州には、このほかにも歴史的、文化的遺産が数多く存在する。宇佐八幡とか国東の仏教遺跡とか、あるいは先般国宝に指定されました臼杵の石仏、そのほか豊富で良質な食材など、非常に豊かな資源が注目されるところであります。

 このように、すばらしいポテンシャリティーを有する東九州地域ではございますけれども、まちづくりやものづくりを進めていく上で、やはり高速交通体系がないということが、時間的制約がありまして、必ずというほど問題になるわけであります。それがネックだ、こう言われるわけでありまして、このポテンシャリティーを十分に発揮するためには、何としてもこの間に、観光面の移動で、高速道路をつくる、そして波及効果のすそ野が広いと言われる観光によって地域活性化を進めていかなければならないと考えております。

 第五に、高速道路は、御承知のように、全線が整備されまして、ネットワークが完成されまして初めてその機能が最大限に発揮される。企業進出もそうでありましょうし、企業誘致、また観光ルートも行きどまりではなかなかうまくいかない。そのほか、災害時の代替路、あるいは救命救急活動、こういう点から見ましても波及効果は極めて大きいわけであります。

 このことは、九州では既に縦貫道とそれから長崎―大分間の横断道路が一応開通しておりますが、この結果が明らかにそれを示していると思います。

 高速道路が整備されますと、他の都市や地域との交流が容易になる、雇用機会が増加する、ショッピング、文化施設などの都市機能の恩恵に浴するということでありまして、例えば大分市の二時間圏域の人口というのは、現在の百六十万人から三百七十万人にまで、恐らく高速道路が全通した場合には増加するだろうという推計がございます。資料の六にそれが出ております。

 地方の高速道路につきましては、採算性重視の点から、もう要らないんじゃないかという意見も一部にありますが、生活の利便性の向上とか交流機会の拡大といった観点、あるいは企業立地や物流の効率化など、地域経済の観点からその必要性を議論するべきだと思います。

 また、既に日本では基本的な骨格道路は整備されているという説もありますが、これは東京のような大都市居住圏に住まわれる方の発想でありまして、国土の開発と発展になお一層の努力が不可欠なことを軽視していると言わざるを得ないと思います。

 高速道路の必要性は、採算性だけでなくて、地域の生活とか緊急医療その他まで含めた全般にわたりまして、我々の子孫の代まで見据えた国土のグランドデザインに基づいて判断していただきたいということを特にお願いを申し上げたいと思います。

 なお、現在検討中の法案につきましては、高速道路建設会社と債務返済・保有機構、これに分かれ、会社は産業競争力の根源となる高速道路の建設、整備、これを着実に進めることになっていると思います。また、会社がこれから道路を建設するに当たりまして、民間経営の自主性、サービスエリアや関連事業などに事業の拡大も認められるということで、より効率的、質の高いサービスが期待できるのではないかと思います。

 議論のポイントの一つになりましたコストの縮減という観点は、今後の道路整備を考える上に必要不可欠であると思います。民間の経営ノウハウを生かしました事業手法とかコスト縮減策、また、着工優先順位の検討とか柔軟な料金体系の検討など、効率的、機能的に高速道路を整備していくことが私ども地方にとりましても非常に重要なテーマであると認識しております。

 私どもの加入しております九州・山口経済連合会では、知事会と御一緒に九州戦略会議というのをつくっておりまして、社会資本整備の効果を最大限に高めるため、九州の一体的発展に資する低コストで機能的な社会資本の整備のあり方について委員会で検討することにしております。これらの検討と相まちまして、今後一層、社会資本の整備につきまして先生方にお願いを申し上げたいと思います。

 本日御列席の先生方には、今まで申し上げました事情を御勘案いただきまして、ぜひとも東九州高速道路の整備につきまして着実に道がつくことを切にお願いを申し上げまして、私の陳述を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

衛藤座長 ありがとうございました。

 次に、新貝正勝君にお願いいたします。

新貝正勝君 中津市長の新貝正勝でございます。

 本日の衆議院国土交通委員会地方公聴会におきまして意見陳述の機会を与えていただきましたことに対して、まことにありがとうございます。

 地方自治体の首長といたしまして、また東九州自動車道大分県北促進期成会会長の立場で意見を述べさせていただきます。

 ほかの方々は立派な資料を用意してございましたが、私は一枚紙で大変申しわけないというふうに思っております。よろしくお願いいたします。

 さて、中津市は、大分県の北西端に位置をいたしております。人口は六万七千人でございます。しかしながら、大分県の中では、大分市、別府市に次ぐ第三の都市でございます。先ほど宮崎県知事さんの資料の一枚目には、大分県で三番目の市なんですけれども、やはり高速道路がない、こういうことでございます。東は宇佐市、それから西は山国川を挟んで福岡県に接しております。南の方は下毛郡の四カ町村、そして北は周防灘に接する地方都市でございます。

 さて、この中津市でございますけれども、中津市からちょっと南の方に行きますと本耶馬渓というところがございまして、菊池寛の有名な小説であります「恩讐の彼方に」に出てきます下毛郡本耶馬渓町山国川中流、そこに青の洞門がございます。中津市からは約十四キロのところでございます。

 皆さんよく御存じのように、江戸で人をあやめた禅海和尚が、その罪を悔いて仏門に入り、諸国遍歴の旅の途中、耶馬渓の地を訪れました。そのとき、鎖渡しの難所で、人馬が川に落ちて多くの人が亡くなることを知りましたこの禅海和尚が、トンネル開削の一大決意をして、四十八歳のときに一人決然とのみにつちを振るい事業に取りかかり、約三十年の歳月をかけて長さ三百四十二メートルの洞門が完成をいたしました。

 土木技術のない江戸時代に禅海和尚が一人でこのような一大事業をなし遂げ、今でいうトンネルがつながり、道として人と物が安全に行き交うことができるようになったわけでございます。

 今の時代から見れば、まさに住民が待ち望んでいた一大プロジェクトの道路事業そのものであります。私たちの住む身近なところでこんなすばらしい道路の事例があったことをまず皆様方に御紹介をいたしまして、本日の本題に入りたいと思います。

 お手元に一枚紙の図面を配付いたしております。中津市及びその周辺でございますけれども、中津市の福岡県側、豊前市、それから南の方の大分市側、宇佐市等では、日産、日産は今苅田にございます。それからトヨタ、トヨタは福岡県宮田町にございます。それから三菱自動車、これは岡山の水島にございます。こういった、トヨタ、日産、三菱を中心とする自動車の下請企業が実は多数存在しておるんです。余り知られていないことかもしれませんが、中津近郷近在に多くの下請企業が多数存在しております。さらには、TOTOの会社もございます。またNECの子会社もございますし、最近では大分の方に東芝、さらにはキヤノンが増設を始めておりますが、その子会社等も立地をしておるわけでございます。

 こうした中で、中津市及び県北地域で、画期的なことでございますけれども、この中津にダイハツ車体が群馬県前橋市から全面移転をすることになりました。最新鋭の工場をこの中津市につくるということになりまして、このダイハツ車体の工場建設は順調に進んでおります。八月には試験操業、本年度末には月産一万台、年産十二万台で操業を開始するということになっております。

 自動車産業はすそ野が広く、関連企業も操業に合わせて既に進出をいたしております。今後もさらなる企業立地が見込まれ、この地域の工業の振興や、それに伴う雇用の拡大が図られます。さらには、地場産業や商業にもよい影響をもたらすものと確信をいたしておるところでございます。

 このため、中津市では、ダイハツ車体進出に伴いますインフラ整備といたしまして、現在、国、県とともに力を合わせて、海上輸送の拠点となります重要港湾中津港の整備、そして、陸上輸送の幹線道路として東九州自動車道や地域高規格道路、中津日田道路の建設を重点事業として位置づけて取り組んでおるところでございます。

 ここに、この絵の中に中津港というところがございます。まさにこの中津港がもう既にほとんど整備されているところでございます。しかしながら、この絵で見ておわかりのように、この青いところ、これは東九州自動車道、それから中津日田道路。中津日田道路は県の事業でございますけれども、現在、全く自動車道がないわけであります。ここに問題があるわけでございます。

 このように産業基盤の拡充が図られれば、中津港は、ダイハツの車の輸出、それから本州からの製品や部品が搬入されるなど、九州の玄関になる。さらには、中国や韓国などアジアの玄関として、その重要性が増してくるわけでございます。

 このトヨタ、日産、ダイハツを中心とする自動車産業は、今、福岡県知事さんが百万台構想ということで取り組んでおるところでございます。もう既に九十万台ぐらいにはほぼ近づきつつあります。あと、ダイハツ車体がさらに十二万台、二、三年後には増設をされますので、そうなりますと、百万台はもう間近、目前であるという状況でございます。

 このように、多くの自動車産業を中心とする産業がこの県北地域には既に存在をしている。そして、道路の開通を今か今かというふうに待ち望んでおるというのが実情でございます。また、隣の県の福岡県北九州市、そこには、この図でありますように、新北九州空港が今着々と整備の段階でございます。平成十八年三月にはこれが開港する予定になっております。

 このように、当地域におきましては、空港、港湾は既に着々と整備され、自動車生産を中心とする企業群が生産体制を整えつつあります。先ほども申し上げましたように、大分中心部では東芝、キヤノンもさらなる工場増設を行おうとしている状況であります。しかしながら、問題は、これらを結ぶ高速道路、高規格道路がないという現状でございます。

 中津から北九州への国道十号線、先ほど宮崎県知事さんも国道十号線に触れられましたけれども、この国道十号線、常に車がひしめき合っております。私も、ついおととい、ここを日中ずっと見て回りました。常に車がひしめき合っている。この地域におきましては、高速道路に対する強いニーズがあります。需要があるのです。人が通らない、あるいは、クマばかり通っておる、そんなことではないのです。既に需要がある、そして多くの生産がなされている、にもかかわらず、物流の中心となる高速道路がないために、そのことが経済発展のネックになっているんです。これを何とか解決していただくことが喫緊の課題であるというふうに思っております。

 また、この東九州自動車道、中津日田高規格道路、これが完成しますと、循環型の高速道路のネットワークが完成をするわけでございます。

 大分県県北地域の実情を申し述べましたが、高速道路はネットワーク化されることが必要であります。そのことが、高速道路が高度に使用される基ともなります。そういった意味から、東九州自動車道の全線開通を強く願うものであります。

 私は、約三十年ほど前、米国で二年間過ごす機会がございました。当時、既に米国は国土の隅々に至るまで高速道路が走っておりました。私は、そこに米国の発展の原動力を見た思いがいたしたわけでございます。

 禅海和尚が約三十年かけてトンネルを掘りましたけれども、これが当時二年で掘ることができたら、村民の苦痛ももっと早く解消できたことと思います。

 この県北地域におきましては、道路さえできればということを、企業はもとより市町村民挙げて切望しております。高速道路に対する大きなニーズがあり、高速道路建設によって経済が大きく飛躍するということを肌で感じておるからでございます。先般、ダイハツ工業の社長さんも、東九州自動車道の早期完成が自分たちにとっても必要なんだということを年頭のあいさつの中で述べておられました。私は、そのとおりだというふうに思っております。

 また、今後、この中津・下毛地域は合併ということも起こります。この合併を行うに当たりましても、その地域の連帯を深めて、そしていい行政をしていくためには、こういった高速道路体系、ネットワーク化された体系というものが必要だというふうに思っております。どうか、そういった意味におきまして、私たちは、この合併を成功させて、新市の未来を担う子供たちへ誇りある地域を継承させていくことが今を生きる私たちの使命であるというふうに思っております。

 これからは、活力のある地域づくり、魅力あるまちづくりを築いていくためにも、東九州自動車道の一日も早い着手と早期の全線開通をぜひお願いをいたします。また、中津日田高規格道路の整備によってネットワーク化が図られることを切にお願いをいたしたい次第でございます。

 本日御列席の先生方には、本自動車道建設にかける私たち地方自治体の悲願を御賢察いただきまして、地方においても需要があるんだ、本当の意味での需要があるんだというこの切実な願いをどうか御認識をいただきまして、高速道路を着実に進展させる道筋をつけていただきたいということをお願い申し上げまして、私の意見陳述にかえさせていただきたいというふうに思います。

 どうも、大変ありがとうございました。(拍手)

衛藤座長 ありがとうございました。

 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

衛藤座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。今村雅弘君。

今村委員 本日は、皆様方、大変貴重な御意見ありがとうございました。特に皆様方は、この地域の暮らしと発展を担っておられる方々でありまして、皆様方の思いを今、本当に切実に、また重く受けとめさせていただいたところでございます。

 実は私も、この職につく前はJR九州というところでいろいろお世話になっておりまして、この地域が交通基盤ということがなかなか進んでいないということを常に感じておった者の一人でございます。

 例えば、延岡市なんかは、恐らく今東京から行く上で、時間的距離でいきますと、十万人以上の都市では一番遠いところに位置するんじゃないかという感じもいたしておりますし、また、こちらに見える江藤議員のお父様からは、いつもこう言われていたんです。JRの特急に乗ると墓石が見える、その墓石の戒名が読めるぞということを言われて、いかに遅いかということで、私たちは、そのたびごとに本当に背筋からすっと冷や汗が出る思いをいたしておったわけでございます。

 そうした中で、今回のこの道路公団の関係の法案が出まして、新しい改革に向かって今進もうとしているわけでございます。

 特にきょうは、時間も余りございませんが、皆様方から二、三点お伺いしたいと思います。

 特におくれたといいますか、整備がおくれたという意味でございますが、地域の視点から見て、今回のこの四法案、こういったものに対して、これは大変すばらしいじゃないか、しかしこれはちょっと困る、心配だというのをできれば一点ずつ、皆様方から、絞って一点ずつお伺いしたいと思います。

 特に、この法案は小泉改革の鳴り物入りということで進んできたわけでございますが、どちらかというと、民営化の検討委員会の議論がマスコミ等でもジャーナリスチックに取り上げられてきましたが、昨今、審議の段階になってくると、比較的そういう取り上げ方が少なくて、そういう意味では、おおむねこの法案は方向としては評価をされているんじゃないかというふうに思いますが、皆様方の地域から見た視点で、いかがでしょうか。

 そういった点をまず矢田先生の方からひとつお願いいたします。

矢田俊文君 今までの委員会の最大の論点というのは、膨大な債務をどう返済するかということであります。そのところからいきますと、かなり採算性の有利なところだけが光が当たって、それ以外のところはほとんど希望がないという理解をしておりましたが、今回のものは二つの点で多少希望が出ている。

 一つは、非常に難しいところは新直轄方式ということで、国が直接やっていく、特に宮崎県と大分県境については直轄するというところ。もう一つは、会社、全部で五つですが、国土全体では三つに分割されていて、多少収支バランスのいいところでの収入でもって返済すると同時に、新しい、収支バランスの厳しいところも抱え込んでいくという、会社の中における黒字と赤字、それから、既存のかなり優位な路線の黒字によるこれから厳しいところの建設という形で、非常に厳しい国土計画全体、地方の活性化にとって切り捨てられるのではないかという話と累積債務をどうするかという話、二律背反のところをぎりぎりのところを詰めて、かなりの展望を持たせていただいたというところで評価しております。

 以上です。

今村委員 心配な点はありませんか。

矢田俊文君 現実的に、特に、新直轄方式でもなく既存でもない新しい部分、千三百キロマイナスアルファというのが現実的につくられていくんであろうか。ここのところは事態の推移を見ないと非常に厳しいという感じなので、一応スキームとしては、可能性ですが、非常に厳しければつくらない判断が出てくるであろうというところのせめぎ合いは、非常に大きな課題として残ると思っております。

 以上です。

安藤忠恕君 まず、法律に四十五年間の償還期間を入れられたということ、これは本当に画期的ではないかなというふうに思っているところでございます。それとやはり、矢田先生の方から言われましたが、新直轄方式の採用、非常にこれはうれしく思っております。

 ただ、あと交付税が非常に厳しくなっておりますので、地方行政の責任者としましては、地方への交付税のあり方、これが影響してくるとどうかなという感じもするんですが、財政面の手当てを十分お願いしたいというのがございます。

 それから、本県は日南から南の方、鹿児島に通じる部分、それから横断自動車道の部分が基本計画になっておりますが、この基本計画部分も含められております一万一千五百二十キロ、これの早期の整備完成の方向をさらに強力に出していただくと非常にありがたいというふうに思っております。

 以上でございます。

安藤昭三君 さっき矢田先生からお話がありましたように、やはり膨大な債務の返済をどうするかということと採算性を重視するということが今回の民営化法案の最初のころは非常に中心的な議題として議論されましたので、そういう点から見ますと、どうも東九州は走行車数が少ないじゃないかというようなことで、あるいは相当棚上げになりはせぬかという心配があったわけでありますが、昨年の暮れに新直轄方式、新しい方式でおやりいただける蒲江―北川間というのが出てまいりまして、今安藤知事からも言われましたが、広瀬知事と安藤知事のお話でほっと胸をなでおろしたということであります。もちろん、これについては県の御当局の方ではいろいろおやりになるでしょうが、地方の負担もあるだろうと思いますが、ある程度の負担はこれはもうしようがないだろうということも我々としても覚悟する。

 それから、もう一つ問題は、先ほど新貝市長から言われましたけれども、当地域としましては、北九州と大分の間、宇佐まで一車線の自動車道路が行っている。北の方は小倉と豊津の間が一応整備路線には入っているけれども、まだほとんど着工していないというような感じ。あと、椎田に自動車専用道路がありますが、そこのところが、やはり私は本格的な高速道路があそこにできるようにやる、それがこの方式でできるのかなという点が若干心配であります。

新貝正勝君 私は、今回の法案というのは非常にリーズナブルな法案じゃないかなという印象を持っております。必要な道路はできるだけ負担の少ない形でつくる、それから四十兆円の債務の確実な返済、こういったことを実現し得る、そういった意味で、リーズナブルな法案だなというふうに思っております。

 ただ、今後、やはりこのやり方、会社がある程度の自発性を持てるようになっているわけですから、そういった中で勇気を持っていろいろなことにチャレンジをし、やっていただく、そういったことが必要だと思います。

 懸念といえば、日本道路公団でも最初のころは随分よかったんです。全然問題なかった。私たちが若いころは、本当に道路公団というのは立派なところで、今のように批判を受けるようなことはありませんでした。やはり、長年にわたるあかといいますか、そういうものが蓄積していく。

 ですから、国会議論の中でもありましたけれども、不断の監視、点検がやはり必要だと思うんです。そういった仕組みを今後どうやっていくか、そのことがやはり懸念といいますか、今後の重要な点だというふうに思います。

 どんなにいい組織をつくっても、それが惰性で流れればやはり同じようなことになっていく。したがって、今後、そういった点を、常に新しい視点で、国民的サイドに立ったやり方が行われることを期待いたしております。

今村委員 ありがとうございました。

 それで、今回のこの改革の法案の関係で、いわゆる分割方式といいますか、つまり三つの東日本、中日本、あるいは西日本という道路をつくる会社、あるいは債務と資産を持つ機構でありますとか、そういったものを分けてつくろうとしているわけでございます。これは国鉄の民営・分割とある意味では似ておりまして、これが委員会の中でも大変議論にもなっているところでございます。

 その点で、この国鉄の民営・分割も、当初のもくろみでは、総収入の一%程度の経常利益を上げるということで、各社の経営が大体一緒になるようにということでつくったはずでございますが、その後、金利が安くなって、これによって膨大な債務をしょってもらった本州三社は非常に楽になったし、逆に、経営安定基金を積んでいた北海道、四国、九州は金利の安で大変収入が減るということで、経営格差ができたわけでございます。そして、かてて加えて、これを調整しようとしても、本州三社はいわゆる民営ということで上場をいたしたわけでありまして、そうなってくると、やはり株主の意向を尊重しなきゃいけないということで、この仕組みを変えるということはなかなか難しいことになってしまったわけでございます。

 そういった反省点に立って、今回もいろいろな議論が交わされているわけでございますが、皆様方は、この分割の仕組みと、そして、いい意味での建設を進め国土を整備していくというこの仕組みの調整、これについてやはり御注文なり御意見等があるかと思いますが、それがあれば伺いたいと思います。

 まず、矢田先生、ひとつ。

矢田俊文君 私、経済地理という空間経済を専門にして国土構造、国土政策をやっておりますが、この数年間、いわゆるネットワークものの分割が続いております。もともと電力がそうでありますし、それから国鉄、NTT、そして恐らく道路公団も、高速道路もそうなるんだろうと思いますが、地方から見ますと、それぞれの分野における収支バランスを非常に重視してやっておりますが、受けとめる側から見ると、それぞれの会社の境目がめちゃくちゃというと変ですが、それぞれ勝手にやっております。

 これは、今、私も九州に来て二十年ですが、九州財界というものが電力を中心にして行われていますし、銀行を中心にして行われています。いわゆるエリア産業といいますか、そういうときに、電力の場合は、福岡に軸がありますと、現場に近いので、いわゆる路線の建設とか新駅の建設とか、あるいはいろいろなサービスのつかみ方は非常に現場サイドの意思決定を行います。国鉄のときは東京サイドでありますので、遠ければ遠いほど、悪意はないんだけれども、非常に現場の意向が反映しにくい。そういう点では、電力でありJRであるというのが、ある面では地域財界というのか、地方の需要をうまくつくってサービスをやってきた効果はあると思いますし、そこにいわゆる技術者及び管理者のかなりすぐれた方が定着してくるということで、地域経済を担うのに非常に重要な役割をしてきたと思うのです。

 私は、そういう点ではNTTや高速道路というのもそういう方向かなといいますと、もう一つのパターンとして東西分割論ということになります。恐らく、それ自体の収支バランスでいくと、そうならざるを得ないのかなと思っています。九州だけで縦貫道で東九州を抱え込めというのは非常に難しいんだろうというところなんですが、にもかかわらず、いわゆる地域におけるブロック経済の再編という視点とこういったネットワーク産業の分割の方法論については、どこかで整合性を持っていただきたい。

 遠ければ遠いほど現場感覚が落ちていきますので、恐らく、四国をどう整備するか、九州を整備するか、山陰を整備するかという意思決定のときに大阪で行われるという問題は、やはり日本の持っている東京で地方の将来を決めてしまうということと余り変わらないので、その辺では、ブロックごとの見解をどうきちんと反映させるかというシステムをどう導入するかということを一考いただけないかと思っております。

 以上でございます。

安藤忠恕君 直接の御質問のお答えになるかわかりませんが、民営化の考え方が出ましたことは非常に私はいいことじゃないかと思います。反面、先ほどの私の意見の中にも触れさせていただきましたが、田舎にあっても日本国の発展の一翼を担っておるんだということを御認識いただいて、民営会社、民間会社に対する御指導をお願いしたいと実は思っておるわけでございます。

 国民がどこにいましても、国から受けるサービスの質は同じだ、それも御配慮いただきたいということ。それから、国土の均衡ある発展策という視点からも、十分国の立場からチェックをしていただきますと非常にありがたいと思います。

 ただ、国民に対するサービスの向上とかコスト縮減からしまして、優先度をお考えになるでしょうが、経営面だけでの優先度につきましては、十分監視といいましょうか、御指導をいただきたい、そういうふうに思っておるところでございます。

安藤昭三君 民営化のメリットというのは、JRの民営化の場合にはかなりはっきり出てきたというふうに言われるわけでありますが、確かにそうなんですけれども、やはり、交通インフラというようなものの整備の場合には、完全な民営化ということはあり得ないんじゃないかという意見ですね。何らかの形の公の介入というのはどこかに出てくるということだと思います。

 例えば、今さっき今村先生からお話がございましたようなJRの場合でありますけれども、なるほど本州三社は非常にいい成績でありますけれども、三島はずっと赤字であるということで、しかも金利が非常に下がってしまいましたから、結局それは普通の運用ではいかないので、鉄道整備公団の方で裏から支えているというのが現状だろうと思いますね。

 やはり、そういうようなことはどうしても出てくる。この道路公団の六分割と申しますか、これがどういう形で結実していくのか、どの会社が大体地域的に非常にプロフィッタブルなのかということは、ちょっと私ども素人だからよくわかりません。恐らく、大荷物になるのは、この本州四国道路公団というのは、これはそういうことでございましょうから、いずれどこかに吸収するということが既に何となく路線に入っておりますから、その辺は現実的にごらんになっていらっしゃるんだろうというふうに思いますが、これの中で、やはり私は、そのうちに差が出てくるかもしれない、そうなったときにはどういう問題が出てくるか、やはり後ろの方というか、どこかで国とか公が介入しなきゃいけない時期が来るのではないかなという感じもいたします。

 それから、まだ建設も進めるわけでございますから、そういう面からまいりますと、料金のプール制という問題、これもそれぞれの会社の中では残るのではないかというふうにも考えられるわけでありますが、そういうことにつきましては、国が積極的に関与するかどうかは別問題として、やはり何かタッチしておくということが必要なんではないかという感じがいたします。

 以上でございます。

新貝正勝君 分割をした方がいいのかどうかというような御質問でございますけれども、これは、これまでの議論の中で、こういうふうに分割というやり方を選択したんだと思うんですね。それから、民営化ということで、民営化による、今までのような硬直したやり方ではない方式をとろうということから、こういう議論になってきたんだと思います。だから、私は、それはそれでいいと思うんです。

 したがって、問題は、これを一刻も早く国会で通していただいて、そして新しい体制を早くつくっていただく、そして、国土の有効なる道路網というものを建設していただきたい、それが切なる願いでございます。

 以上でございます。

今村委員 ありがとうございました。

衛藤座長 江藤拓君。

江藤委員 宮崎県の江藤拓でございます。

 きょうは、私よりも先輩の議員もお越しでありまして、本来でありましたら、その先輩方にこの質疑はやっていただくわけでありますが、先ほど地図でも示されましたように、私は、高速道路で一番おくれております宮崎県県北の選出の国会議員でありますので、きょうは特にお許しをいただきまして、御質問をさせていただきます。

 大変参考になるお話を聞かせていただきまして、先生方、本当にありがとうございました。

 矢田先生は、非常に経済学者らしい、学問的な分析をしていただきまして、非常に参考になりました。

 知事におかれましては、宮崎県民の熱い、熱望する気持ちをお言葉に乗せていただいて、きょうは後ろの方には延岡の市長もお見えでありますけれども、県民の気持ちを非常に鋭く、正確に代弁していただいたというふうに思います。

 それから、安藤会頭におかれましては、やはり非常に経済人らしい、商工業全般、そして観光にわたる幅広い分析をしていただきまして、ありがとうございました。

 そして、市長におかれましては、同じ県北でもこうも違うのか、宮崎県県北と大分県北では大分違うなという感想を持ちましたけれども、しかし、もうちょっと頑張れば大変な経済効果が生まれるということがあれば、これは非常に、私は投資効率という言葉は実は余り使いたくありません。宮崎県にとっては非常にタブーの言葉ではありますけれども、市長の地元におかれましては、これはぜひやるべき事業だということが非常によく理解ができまして、ありがとうございました。

 それでは、順番にいろいろお尋ねさせていただきますが、与えられた時間が二十分しかございませんので、ちゃんと最後までできるかわかりませんけれども、最初に矢田先生にお伺いをいたします。

 私、いろいろ先生の御本等も読ませていただいたこともあるわけではありますけれども、今回の民営化に当たりまして、よくJRの話が出ますが、あれは基本的に、国民の税金を二十四兆円投入したことによって、ある程度身軽にしてから民営化した。それがなければとても民営化できなかった。先日の猪瀬参考人のお話をかりれば、瀕死の重病人という言葉を使っておりました。しかし、この道路公団に至っては、まだ飲み薬ぐらいで何とかなるというような状態のもとでの民営化の法案であります。

 正直申しまして、私もまだ一年生でありますけれども、ただただ一直線に民営化ということであれば、私も自民党議員であっても賛成しかねるという部分もあったわけでありますが、先輩方の大変な英知をいただきまして、新直轄を含めて非常な工夫がなされておりますので、私はすばらしい案になったというふうに今は思っております。

 先生にぜひお尋ねしたいのは、これから将来的には株式を公開していくということもこの法案の中には盛り込まれておるわけでありますけれども、先ほど会頭から御指摘ありましたように、ある程度は国の関与というものは、これはやはり必要であろうというふうに私も思っております。しかし、その新しい民営化会社が新しい路線を建設する場合におきまして、採算性が悪いということであれば、これは拒否できるということですね。諮問委員会にかけて、それでさらに協議するという二段階にはなっておりますけれども、拒否権を与えられているということが非常に画期的といえば画期的なことだろうと思います。

 しかし、先ほどから先輩からもお話がありましたように、西日本は非常に条件的に厳しい場所であります。そういう中で、利益も出ない西日本の民営化会社が、新会社として、民間会社として新規路線をつくっていくということが果たして可能なのかどうか。このことは、正直言って非常に危惧される部分があると思います。

 先生の空間経済のお立場から考えられて、今、非常にその線引きもあいまいででたらめだという厳しい御指摘もあったわけでありますけれども、今の枠組みの中で分割・民営化された場合におきまして、西日本が民営化会社独自としてつくっていくことが可能なのかどうかということと、それから、三分の一以上の株式を持つ国という組織が、どの程度この民間会社に対して関与していくことが適正であるか。この二点について、先生に御意見を伺いたいと思います。

矢田俊文君 非常に難しい御質問で、一つは、三つの会社につきまして、境目がはっきりしておりません。現時点でわかりません。それぞれの路線のデータについて、私は入手しておりません。したがって、この三社でどこが厳しいのか厳しくないのか、どの程度厳しいのか、全くわかりません。

 したがって、今のような話について明確に答える立場ではございませんが、九州の東九州自動車道でいきますと、かなりの、日出から佐伯あるいは西都―宮崎間というのはもう供用しておりますし、一部分、一般国道自動車道で開通しておりますが、最も厳しい蒲江―北川のところが新直轄で、最後、門川と西都及び小倉―豊津、佐伯―蒲江というところが残っております。これが先生の御質問のある、西日本株式会社に渡ったときに実現するのかという、物すごくシビアな問題だと思っております。

 いわゆる西日本株式会社が、どこかでかなり余裕が出てきて、そして、十分計算して四十五年で返却可能なんだという判断をしない限りは、建設にいかないんだろう。しかし、きょうのような、地域の実情は非常に強くて、つくれ、つくれといったときにどういう処理をするのかというのが、私は最大の問題だと思っています。この六百九十九プラスアルファのアルファをどんどん拡大することによって、いわゆる一般の道路特定財源の枠を広げることによってやっていくという可能性はかなりあると思っています、政治の力学、地域の要望からいくと。

 そうすると、ある面ではもとのもくあみというところがあって、いわゆる民営会社がつくるんではなくて国が直轄でつくるということになると、今のスキームと大分精神が違ってくるのかなという、非常に私は、その辺は厳しい選択をこの十五年間、動き出してから、するかどうかというところが非常に厳しい選択だと思っていますので、それ以上会社の内容について、私は全く資料を持っておりませんので、恐らくこの十数年間、ここのせめぎ合いというのは、きょうの議論と同じことが会社が発足しても起きるんだろうと思っています。それで、アルファを拡大すればするほど、民営化議論というのがある面では弱くなってくるというふうに思っております。

 以上でございます。

江藤委員 ありがとうございました。

 ということであれば、せんだって私も委員会の席で質問させていただきましたけれども、ぜひこの新直轄の部分につきましては、この九州エリア、特に東九州自動車道その他につきましては、政治の配慮が十分なされるべきだという経済学者としてのお立場の御指摘もあったというふうに御理解をさせていただきたいと思います。

 それでは、安藤知事にお尋ねをいたします。

 宮崎県、財政は非常に厳しゅうございます。まだ知事に御就任されてほんの数カ月しかならないわけでありますが、十五年、十六年を比べましても、一般歳入は約三百億円、宮崎県は減っております。そしてまた、地方交付税だけを見ても百億円という減額がなされておるわけであります。

 そういう中で、やはり地元負担が全くない、地財措置等その他があって、地元の負担は非常に、後進地域の減免措置ということで配慮はなされておりますけれども、これは、今後の政権がこのまま自民党政権で保たれるという保証も正直ありませんし、いずれ政権がかわればどうなるかわからない、先の長い話ですから。こういうことを考えれば、やはりできれば負担が全くない方法を地方自治体としては選びたいというのが正直なところだろうと思います。

 そういう中で、一千八百億円、大体宮崎県で予定しているところをつくりますとお金がかかってくるわけでありまして、一〇%と見ましても百八十億。そういうような試算がなされている中で、宮崎県は、知事の御指導の中、今財政再建に取り組んでおられます。いわゆる直接的な投資については二〇%以上カットするという厳しいせめぎ合いの中での御判断であったわけでありますけれども、先ほどのお話に加えまして、やはりそういう状況の中にあっても新直轄を選んだ県のリーダーとしてのお覚悟、その判断に至る経緯等をもう少し掘り下げてお話しいただければと思います。

安藤忠恕君 本県の財政状況をよく御理解いただきまして非常にありがたく思っております。

 おっしゃるとおり、地方はどこも厳しいようでございますが、本県、特に三カ年間の財政立て直し計画を策定しなければならないような財政状況ではありましたが、長年、東九州自動車道の完成を悲願としておりました。

 そこで、先ほども触れましたが、新直轄方式というものを出していただきまして、さて、これはどういうものだろうか、有料道路方式でいくとなかなか厳しいなという思いはありました。しかし、その裏には、先ほど今村先生の方にお答えしましたように、国としてのやはり責務があるんじゃないかということは思いながらも、民間会社になりますと経営面が出てくるなということで、非常に心配をいたしておりました。

 そういうところで、新直轄方式、ありがたい。そこで、厳しい財政状況ではありながらも、宮崎県の負担はどのくらいになるかということをまず算出いたしまして、ここ数年の対応はそれだったら可能だろうということで、しかも、一日も早く着工、完成をお願いするならば新直轄方式の方がいい、そういう選択でお願いをいたしたところでございます。

 先ほどの交付税関係の話、これは将来に向かっての心配事をちょっと披瀝をいたしたところでございます。

 とにかく、東九州自動車道は、宮崎県のみならず、東九州、九州全域のあすへの道だと私は思っております。先ほども言いましたが、アジアからの最初の玄関口は九州だということを思っておりますと、日本の国力を上げるためには九州の産業が元気にならないといけない、そのためにはネットワークの整備、完成が必要だ。そうしますと、東九州は当然必要になってくるということでございまして、長くなりましたが、一日も早く着工できる方式はということで新直轄方式をお願いいたしたところでございます。

江藤委員 ありがとうございました。宮崎県民も同じ気持ちでおります。

 先ほど、知事は車で来なかったとおっしゃいましたけれども、私は実は車で参りました。朝六時に出まして、ようやく空港に着いたのが十時ちょっと過ぎという非常に厳しい状況の中、この間、石原大臣も宮崎空港から電車で来ていただいたんですけれども、途中で行き違いで、何といいましても日豊線は単線ですから、行き違いのたびに、三分間停車します、五分間停車しますと。そういう実情を知っていただいて、宮崎県が、いわゆる利便性の向上ということを目指しているんではなくて、これから行われるであろう厳しい三位一体の改革、そして推し進められる市町村合併の波の中で、宮崎県、そしてこの東九州軸がいかに生き残っていくか、存続をかけたものであるというふうに理解をさせていただきたいと思っております。

 そして、さらに知事にお伺いをしたいんですが、今九三四二ばかりが非常に話題になっております。九三四二につきましては、公団方式、新直轄方式で、一部路線については根本的な見直しをするということになっておりますけれども、ある程度のめどがついたということは言えるかもしれません。

 しかし、我々にとりまして、そして熊本県民にとりまして、隣の熊本にとりまして、非常に問題になっているのは、やはり九州横断道路ということになるわけでありますが、これはまだ基本計画のままであります。

 これは一万一千五百二十キロ、しかし、よく考えてみますと、これは一九八七年にいわゆる国土開発幹線自動車道建設法というものが制定されまして、これは与野党全会一致で一万一千五百二十キロをつくるという法律をつくりまして、この法律に基づいて今この計画が進められてきているはずのものであります。この当時は、当然、民主党はまだ党として存在しなかったわけではありますけれども、しかし、在籍されている議員の先生方は当然たくさんおられるわけでありまして、これはやはり国が責任を持ってやるべきものが一万一千五百二十キロだと思っております。

 宮崎県にとりましてどれだけの経済効果が期待され、そして熊本との経済ネットワークづくりの上でもいかに重要かということについて、知事の御見識を少し、もう時間もありませんので、お披瀝をいただけたらと思います。

安藤忠恕君 先ほどから我々陳述人の方からも意見が出ましたし、先生方のお話、御認識も全く同じだと思いますが、高速道路は、ネットワークが整備されてからその機能を発揮するというふうに思っております。

 実情につきましては、本県におきましては、先ほども申し上げましたが、日南市から南の方の鹿児島へはまだ基本計画区間でございます。それから、延岡から熊本に出ます横断道路はやはり基本計画区間でございますが、幸い、熊本県側から宮崎県境の矢部までは新直轄方式で選定されたようでございますから、これもその延長上、新直轄方式ということで御選定になるのかな。県としてはそれを希望したいなという気もありますが、いずれにしましても、基本計画の区間が非常に多いということもございますが、東九州自動車道を一日も早く整備をしていただきたいということでございます。

 経済効果等につきまして期待する面は当然ございます。道路の機能としては基本でございまして、それに波及する経済効果が非常に期待されるわけでございますが、卑近な例を申し上げますと、ダイエーホークスが宮崎でキャンプを張ってくれるようになりました。大分県からのお客さんは数少なかったようでございますが、福岡県からはバスの借り上げで、高速道を通りましてかなり来ていただきまして、西武とジャイアンツとダイエーで、昨年の見学者を上回る方が見えました。これはまさしく道路の好影響だ、好効果だというふうに思っておるところでございます。

 それから、物流につきましても、大分県にきょうはお邪魔いたしておりまして、先ほど安藤会頭のお話をお聞きしますと、港の貨物量の取扱量は私が想像した以上に多うございますから、これは大変なライバルという思いではおりますが、東九州横断自動車道が完成しますと、宮崎の港もアジアの海上からの玄関口になれる、物流の拠点にもなる、そういう期待感を持っております。

 経済効果につきましても、十分期待といいましょうか、願望の一つでございますので、基本計画区間の整備区間への格上げもあわせてお願いしたい、そういうふうに思っております。

江藤委員 それでは、若干民主党案についてお尋ねをさせていただきたいと思います。それぞれ一言ずつコメントをいただきたいと思います。

 四十兆円の債務につきましては、道路特定財源を充てようというものが大体の骨子になっているようであります。年間一兆三千億程度を返済に充てるということであります。皆様方よく御存じのとおり、道路特定財源といいましても、大体国費ベース、特会ベースでいうと三兆四千億ぐらいがあるわけですが、これは国が使えるお金という理解をしていただければと思います。

 その中での道路歳出というと三兆一千億程度になるわけでありますけれども、今この内訳を見ますと、大体半分弱ぐらいが地方への補助金ということで、一兆五千億ほどが使われております。そして、直接国がつくるということになると一兆六千億ぐらいになるわけでありますけれども、これは今まで国内の均衡ある発展という意味で、いわゆる国土の開発のために非常に大きな役割を果たしてきたことは御存じのとおりでありますけれども、もしこれが民主党案のような形になりますと、非常に財政的に道路特定財源がタイトになるということは、これはもう明白であります。

 そして、特に一兆三千億円、これは返済に充てられてしまうわけでありますけれども、どのようなことでも同じですけれども、受益者負担、やはり高速道路に乗る選択もあります。しかし、乗らなくてもそこに行くことも、時間はかかるけれども可能だというのが今の体制であるわけであります。車に乗って高速道路に乗るというのもその人の判断でありますから、受益者、その高速道路を使ったことによって時間が短縮され、距離を時間で克服した人はある程度の対価を払うというものは、広く国民にも理解をしていただけている制度だろうと私は思っております。

 そうなりますと、これから、まだ委員会での議論を民主党の先生方と深めておりませんので、まだお話を伺っておりませんから、私が断言的なことはもちろん言えませんけれども、地方への補助一兆五千億、これをばっさり切らないと多分帳じりが合わないんじゃないかなという気がいたします、後で反論が先生方からあるかもしれませんけれども。

 そういった場合に、高速道路だけではもちろんだめなわけでありまして、高速道路につながる国道、それから県道、それから地方道、いろいろな道路の整備が一体的になされてこそ、高速道路もその機能を発揮するわけであります。

 そういうような観点から、この道路特定財源の今後の取り扱い方、今までどおりの扱いにして、いわゆる高速道路とは切り離して使うことが正しいのか、それとも、民主党案のように、返済の財源として充てることの方がいわゆる東九州軸に住む人間として理解しやすいことなのか、そのことについて一言ずつ、ちょっと時間がなくなってしまいましたので、コメントをお願いしたいと思います。

矢田俊文君 民主党案につきましては、一、二日前にいただいて読んでまいりましたので、つまびらかに理解しているわけじゃありませんが、基本的に二点だけ。

 私は、これはもう国民の選択の問題、政策というのは国民の選択の問題で、正しいかどうかというのは政策をやればやるほどわからない話ですが、現在の提案されている問題につきましても、学者として、効果と課題については客観的に話をする、賛成、反対ということではなくてという形で議論させていただきたいと思っております。

 依然として、四十兆円プラス、新規がないとしても、債務そして通常の管理費というのがありますので、相当程度の、七十兆円近い返還というのがあるんだと理解しております、民主党案であっても。それを道路特定財源を中心にして四十年ほどやりますと、計算の仕方ですが、一兆八千億ぐらい毎年振り込んでいかなくてはならないというところから、一つは、新しい路線の建設についてはかなり厳しいかな。ということは、もうここで遮断機がおりて、あとは粛々と返すよという話が一つ。

 それからもう一つは、今江藤先生言われましたように、道路財源そのものが、私も椎葉に何回か行っておりますが、一車線の国道ですが、一車線というより、とにかく往復一車線ですから、すれ違いが不可能なところだけででき上がっている国道、こういうものを相当程度時間をかけて改良していかないと。ということになりますと、一般国道、地方道含めまして、やはりこういうものまで切り捨てることはできないんだろうと思いますので、その辺の、いわゆる同じパイの分け合いをめぐってどう国民が選択するかという問題になりますと、かなりしわ寄せはその二点にいくのかなと理解しております。

安藤昭三君 地方の立場からいえば、現状のような道路特定財源をしばらく続けていただかなきゃいけないんじゃないかという感じを持っております。

 民主党さんの案をそんなに詳しく読んだわけではないので、多少あれかと思いますが、高速道路の無料化とそれから道路特定財源の一般財源化、この二つを言っておられるわけでありますが、現状からいいますと、この二つを両立するとかなり大規模な財源不足が出るんじゃないかというのが私の印象であります。

 簡単ですが、以上です。

江藤委員 ありがとうございました。

衛藤座長 古賀一成君。

古賀(一)委員 民主党の古賀一成でございます。

 きょうは、福岡の私の地元、久留米の方から参りました。高速道路、縦貫道なかりせば恐らく三時間半ぐらいかかったんでしょうけれども、きょうは思いのほか早うございまして、一時間二十分で、ここには十一時二十分ごろ着いたわけでございます。

 実は、自己紹介しておきますと、私もかつて建設省道路局におりまして、本当にあまねく我が国の道路のひどさ、あるいは欧米先進諸国の道路制度を見てきた男でございまして、きょうはそういう面で、地元のあるいは日本の現実も踏まえながら、今度の法案のよしあしでも非常に重要なテーマだと私は思っておりまして、ぜひとも忌憚のない御意見をいただきたいと思います。

 時間も大変短うございますから、ごく限られた形になりますけれども、その前にちょっとお伺いしたいことがあるんです。

 私も国会議員になりまして十四年ぐらいたちますけれども、かつてと違いまして、中央政府の政策をつくる人たち、きょうは佐藤局長ほか皆さんお見えですけれども、それと地方自治体あるいは経済界、そういう人たちのコミュニケーションというのが本当に行われているんだろうか。最近は公務員の倫理規程というのがありまして、やたら難しくて、最近では地方の本当の声を聞く暇がない、この数年、知事さんと腹を割って話したことがない、こういう話を地方側からもあるいは中央官庁の皆さんからも聞くんですね。

 この道路公団問題、これは地方にとっては大変重要な法案だと思うんですけれども、これについて、皆様の実感として、知事さんと市長さんにお聞きしたいんですけれども、いわゆる地方の声というものを、この法案ができるプロセスにおいて、しっかり聞いてもらったという実感をまずお持ちかどうかを、簡単でようございますから、お二人にお聞きしたいと思います。

安藤忠恕君 先ほどの御質問、江藤先生の方からございましたが、特定財源の取り扱いとかいうことを含めまして、国土交通省の皆さん方とは意見を十分私は交換いたしている、そういう認識でございます。

 先ほども御質問の中にございましたが、あと安藤会頭も言われましたが、道路特定財源の使途につきまして、私は高速道が、宮崎県はあすへの道ということで非常に重要な位置づけにしておりますが、矢田先生も言われましたように、一般道路への影響というのをやはりちょっと危惧をいたしているところでもございます。

 意見交換は県内ではもちろん十分やっております。政府の方とは、私はもう十分意見は聞いていただいているような、実はそういう意識を持っております。

新貝正勝君 実は、私はまだ市長になってから五カ月でございまして、中央の方々とお話をする機会がまだ限られてございます。

 ただ、どうもやはり私たちの地方の実情というものがなかなか伝わりにくい、そういう感じを受けております。私たちの切実な願い、どうしてわかってもらえないかな、こういうふうな気持ちがいたしておるところでございます。これは、私どもの努力も足りないという点は反省をいたしておりますけれども、やはりざっくばらんに物が言える、そういう関係をもっとつくっていただけたら、そういった意味では、倫理法とかああいうのがかなり厳しくなり過ぎまして、難しくなった点は非常に残念でございます。

 何とかこれがもう少し、お互いに腹蔵なく話し合えるような、そういう環境をぜひつくっていただけたらというふうに思っております。

古賀(一)委員 私も、総理大臣にも、この前国土交通委員会に来ていただいた折に質問しました。その後も石原大臣にも質問しましたけれども、どうもやはり、法案をつくるに際して、僕自身は、総理大臣と大臣そのものが本当に十分なネゴシエーションをしているんだろうかと思わざるを得ないような感じを受けたわけです。

 先ほど申し上げましたように、地方の声というものが、きょうは公聴会ですよ、これは法案を審議し通すに当たり、今後の審議に役に立てようということでやっているんですけれども、これよりも、本当はそれ以前に、法律をつくるときに、もう忌憚のない意見が、本当に地方の声が聞ける、そういうシステムが今の政治体質からどんどん薄らいでいるというか、僕はそこに危機感を覚えましてちょっと今聞いたような次第でございます。

 それでは、本題に移りたいと思います。

 まず、矢田教授にお伺いしたいと思います。

 道路公団、デッドロックといいますか、今の制度はもうデッドロックに乗り上げているというお話が先ほどございました。

 そこで、もう一回確認をしたいんですけれども、今の道路公団システムあるいは有料道路制度、これまでの制度ですね、これゆえのデッドロックというものはどういうふうに先生はお考えなのでありましょうかという点をお聞きしたいと思います。

矢田俊文君 なかなか厳しい御意見で、片方で全国総合開発計画一万四千キロ、そしてそれを具体化する形で全国国幹道路の整備というのが決められている。それを粛々と、特に高速道路につきましては原則日本道路公団でやっていくというスキームの中で、きょうありますように、地方の声、均衡ある発展という形で政治の方から非常に強く地方からありますと、その力にこたえればこたえるほど累積債務を返せなくなってきているというところが最大の、そのシステムが動くと雪だるま式に返せないまま、地方の発展という一ワードで、そして政治的ないろいろな要求の中でやってくると、次の世代に返せないことが明確なのにつくらざるを得ないというスキームがこの数十年続いてきたというところから、こういう反撃といいますか、当然それを何とかしようという反撃が出てきたんだと思いますし、真剣に考えて、次世代に債務を残さない形で国土計画をどうするかという議論があったと思いますので、意見の微妙な違いは別にいたしまして、基本的にこの審議は大変意味のある、遅過ぎるほどだと思いますが、意味のある議論だと理解しております。

古賀(一)委員 それで、実は小泉総理も、いわゆる有料道路の、道路公団による高速道路建設、残事業二十兆円が七・五兆円に減るというプロセスの中で、建設費の削減、コストを下げろというものが当初四兆円、そしてあと、いろいろ引き算があるんですけれども、先ほど来出ております、新直轄が引き受けるから三兆円、そして、追加的にもっと削減しろ、二・五兆円、こういう引き算の中で七・五兆円に減る、こうなっているんですね、それはそれでいいんですけれども。

 ただ、よくよく考えると、道路公団を今度なくすわけです。いわゆる株式会社というものに渡すということに私自身はまた大変懸念を持っておりまして、一見、それを見るとよさそうに聞こえるんですが、でも、建設コストを削減する、つまり、盛り土をもっと下げろとか、そういったことは、私自身は道路公団でもできる話じゃないんだろうか。そっちのプロセスを省略して、民営化というのに一気に行く、民営化しなければそれができないという一つの虚構があるんじゃないか。うまくいけば、それは日本のためにはいいわけでありますけれども、どうしても気になるのは、民営化して、株式会社にして、三分割して、新線建設も担うし、とりわけ、民間会社なんですよ、要するに金利、交通量の減少、新線建設の任務も負う、こういうのを依然しょっている中で、民間会社では道路公団よりも厳しくなるんじゃないか。今のところは四十五年で償還する、あるいは料金も今より一割カットすると言っているけれども、実際そういうことになるんだろうかという懸念を、私自身あるいは民主党も持っているわけですよ。

 そこで、民営化という手法について、それぞれ、懸念といいますか、そういうものをお感じでないだろうかということを、正直なところを、では知事さん、それから、商工会議所の安藤さんも先ほどそれらしきことをおっしゃいましたので、お二人にちょっとコメントをお聞きしたいと思います。

安藤忠恕君 正直言いますと、民営化されまして、不安がなくはないわけでございます。特に、今からのインフラ整備を必要とする本県におきましては、高速道路が民営化会社の対象とするならば、先ほどからお願いしておりますように、東九州と横断道でございます。方式が新直轄方式という部分は選定されましたが、残りの部分がどのように裁断されるのかというのが、やはり不安な点はございます。

 いずれにしましても、民営化につきましては、私はそう批判的じゃございませんが、サービスの向上とかコスト縮減が図られると思います。それと、各種規制がかなり撤廃された向きもあるんじゃないかと思いますので、誠実な対応を実は期待いたしておるところでございます。

安藤昭三君 民営化が必ずうまくいくかということになると、不安がないと言えばうそになるだろうと思いますね。

 これは、例えばJRの場合でも、中央三社はうまくいっているというふうになると思いますが、三島は必ずしもうまくいっていないんじゃないかというのが実情ではないかと思うんですね。それは、こういうゼロ金利のような事態が来たときには、これはもう経営安定基金が物を言わなくなってきている。これは余り表面に出ておりませんけれども、そういう問題が既に露呈している。ですから、ああいうところではなかなか自社でもって新線の開発はできないと思いますね。ですから、JR九州でも、恐らく、新幹線をつくるときは、下の方は公共事業でつくってもらって、上を走らせているということだろうと思うんですね。

 そういうような事態が既にあるということでありまして、例えば、道路公団の分割・民営化の案というもの、これがもし、本州四国はだめでしょうけれども、上の五つが全く採算がとれて、経営的にまことに満足がいくということであれば、逆に道路が余りできないかもしれない。もし住民の満足するような形でどんどん高速道路ができるのであれば、この会社は、あるいはまたどんどん大きく赤字になるかもしれない。そういうようなあれは、いずれにせよ、はらんでいるだろうと思うんですね。

 ただ、今までやってまいりました道路公団の方式ですと、やはり債務がどんどん膨張して、それで返済ができなくなる、採算性にも問題があるというので、どういうようなことから変えようということで、これだけの賢人の方が集まって、こういう案をつくられたわけですから、この案が今のところ、とにかくワーカブルな案であることも間違いないので、そのワーカブルな案をやっていけば、その先は試行錯誤でいくということ以外に実際はないんじゃないかと思っています。

古賀(一)委員 そういう面では、民営化でシステムが変わったから、今までの流れは何かが変わるだろう、変わってほしい、そういう期待があることはわかりました。しかし、その先には、本当に大丈夫だろうかという懸念も残る、実態としては私はそうだろうと思うんですよ。金利の問題あるいは交通量の減少の問題、新線建設を本当に採算性できちんと説明して、つくらぬものはつくらないということでやれるのか。そういうものについて私どもも大変懸念を持っておりまして、それは共有をしているということはわかったわけであります。

 そこで、せっかく民主党案への言及がございましたので、私の方からもアピールをさせていただきたいと思います。まだ新聞も、イラクの問題とか年金問題で、余り我々の高速道路案を詳しく評価していただいておらぬ段階でありますので、一回説明をさせていただきたいと思うんです。

 まず最初に、高速道路ができて以来、日本は世界一の料金を取ってきた、国民の皆さんもなれてきたということで、何か選挙目当ての突拍子もない案を人気取りのために持ってきたように驚かせたかもしれませんけれども、これは原点を申し上げますと、もう御承知のとおり、道路法には道路無料の原則という原則は、はっきりと条文に、一番最初、道路法ができたときからございます。

 その中に、道路無料の原則の例外として、道路整備特別措置法そして道路公団法ということで、例外として、あの貧乏な時代に、小さかったガソリン税を充てるのは一般道路でもういっぱいだという中に、やはり高速道路も手をつけなきゃならぬということで、東名、名神、いわば日本の、我々に貯金がなかったころ、世銀から借金してでも高速道路をつくったものでございます。

 それがここまで、戦後、あるいは有料道路制度ができて、公団ができて、七千三百キロ、こういう時代、そして一般道路もある程度、まだ残っていることは十分認めます、その中に、やはりそろそろ原則というものを考えていいんじゃないだろうか。アメリカのインターステートハイウエーももちろん無料でございます。ドイツのアウトバーンもそうであります。イギリスのモーターウエーもそうでありまして、世界各国が基幹施設としての道路、高速道路はとりわけ、いわゆる基幹道路として無料という原則で打ち立ててきたんですね。

 我々は、その原則に一回戻ると。株式会社にする、これまで苦労してきたこの国家資産ともいうべき道路を三分割して民間会社にくれてやる、それが四十五年で本当に無料になればいいけれども、本当にそうだろうか。それならば、やはり原点に戻る一つの我々の案というものを国民の皆さんに示すべきじゃないか、こういう思いもありまして、無料化案を実は出したわけで、まだ十分なる理解は得ていないと思いますが、無料化は原則であり、欧米でも常識だ。

 必要な道路は、やはり困難はそれぞれ、今度の民間会社でもあるように、無料化しても、我々のシステムでも、新線建設はなかなか厳しいものがありますけれども、否定するものではありません。必要なものをつくろう。そして、全国一元化した高速道路の管理法人的なものをつくって、やはり全国のシステムとして維持する。こういうことと、無料化することによって、ランプウエーあるいはインターチェンジも非常に小ぶりなもの、余り交通量がない、一般国道が近くにある、ここに出口だけつくろうとか、あと三キロ先の県道もあれも使えるじゃないか、あそこに入り口をつくろうという、割と簡便に、安く、無料化すれば料金徴収が要りませんから、できるじゃないか。そのときに、農業あるいは工業立地、場合によっては不動産業あるいは建設業まで含む地域の抜本的な活性化になるんじゃないか、こういう思いで出したわけであります。

 原点は無料道路、そしてそれだけの、無料化ということによって地域経済活性化に大変資すると我々信じておりますけれども、そういった意味での期待というものも私は当然あってしかるべきじゃないかと思うのでありますが、ひとつ会頭さんに、経済界代表としての御感想を求めたいと思います。

安藤昭三君 確かに、先生おっしゃるように、海外へ行きますと、特に先進国で、有料道路というか、高速道路でお金を取るところは非常に少ない。イタリーか何かで取っているだろうと思いますけれども、あとはドイツ、アメリカ、イギリスも、走ってもお金を取っているところは少ないんで、私も、いつの日か日本は高速も無料化するだろうというひそかな期待は持っておるわけであります。

 ただ、数字的に現実の問題を見てみますと、やはり無料化すれば二兆円というような料金収入がなくなってくるというふうに言われておりますし、これによって高速道路の管理費その他をどういうふうにするのかということについては、かなり金額が大き過ぎるなという感じがいたしますし、また、先ほど申しましたように、特定財源を一般財源化するということとあわせるということは、これは相当財政的には大きな負担になり過ぎるんではないかというふうに思います。

 今度の政府の案ですと、四十五年先には一応これは無料になる、無料で開放される。四十五年は少し長過ぎるなという感じはいたしますけれども、無料化というのはまだやや、残念ながら、日本の場合は少し先の目標ではないかなというのが私の印象であります。

古賀(一)委員 それでは、民主党案ではないんですけれども、私自身は、民主党案の出すタイミング、出し方もちょっと強烈だったかなと思っておりますけれども、いわゆる道路財源を投入して、当面この十年、料金を半減させる、そして四十兆円を長期国債あるいは短期国債にうまく組み合わせながら振りかえて、今非常に低金利ですから、そういう仕組みで、将来は無料化をもちろん目指すのでありますけれども、例えば、分割・民営化、そういうことではなくて、全国の公団システムを残し、建設コストは今後横断道なり地方分については極力下げさせる、そして料金を下げていく。公団をあくまで残す、民営化はしない。

 我々の案は、民営化はしないということなんですけれども、そういうドラスチックに、あしたから無料化、来年から無料化じゃなしに、我々は三年後と言っているんですけれども、その中間段階にそれを目指した途中の案を持っていくことについて、何か御感想ありますでしょうか。知事、いかがでございましょうか。

安藤忠恕君 私は、国土形成の基本的な社会資本の整備というのは国の責任でやるべきだというふうに思っております。これは原則論ということで私も考えるわけでございます。その中には、もちろん道路もあると思います。

 本当に残念でしようがない、今さら言ってもしようがないんですが、経済大国がこういう論議を今しなくちゃいけないのかというのは情けないなと実は思っているわけでございます。国の方で私は十分整備すべき問題だというふうに実は思っております。

 現実論から今論議されているんではないかというふうに思うわけでございますが、やはり、現実がなかなか宮崎県は厳しい状況でございますので、今法案として出されておりますのは、現実対応だからやむを得ないのかなというのが本音のところではございます。

古賀(一)委員 では最後に、実はきょう、この大分の地ともう一つ、滋賀県で公聴会が開かれているんですね。実は栗東という町は、名神ができたときに、もう一番最初、高速道路を手に入れた小さな町なんです。当時の町長が、高速道路ができたということで、工業団地をつくり、企業誘致に走り回って、税収から人口から高校進学率まで、もう本当に驚くべきほどのスピードで上がった、いわゆる高速道路を利用したモデル町と言ってもいいぐらいの町だったんですね。

 ところが、当初の予定路線は七千六百キロ、東九州縦貫は入っていませんけれども、いわゆる九州縦貫から東名、名神まで七千六百キロというような仕組みの中で、ただ、東名、名神が先だろうと言って、ずっと地方は待たされてきたわけですよね。だから、その間、高速道路を使う便益はなかった。そのうちに、今度、金がないからインターは地元で負担しろ。その次に、そろそろ国の財政も道路公団もなっておらぬ、もうつくらないという、いわば脅迫といったら失礼ですけれども、そういう声が漏れ聞こえて、今回、新直轄で救ってあげよう、しかし地元負担金は出せよ、こういうシナリオになってきたんです。

 私自身は、やはり国家全体の、株式会社によって、単一路線主義で、これからつくる路線二千キロが採算合うかどうかじゃなしに、もっと大きい長期的な国家的発想でやはり高速道路を論議すべきだろうということを痛切に思い、地方の方は、そこで後発の不便だけじゃなしに、今度は新直轄になっても地元負担があるというようなハンディを負います。

 冒頭申し上げましたように、国の方も地方の声をもっと聞いてほしいし、皆さんもぜひ折に触れ強烈な発信をしていただきたい、我々民主党にもぜひ御意見をいただきたい、お願い申し上げまして、終わります。

衛藤座長 松野信夫君。

松野(信)委員 民主党の松野信夫でございます。

 私の方の選挙区は熊本でございまして、きょうも熊本の方から参っております。

 まず最初に、矢田陳述人の方に御質問させていただきたいと思いますが、先生の方も御指摘されましたように、今回の道路公団の民営化のスキーム、四十兆円の借金をどうきちんと返済をしていくかというのは非常に大きな問題でございます。

 それで、四十五年で返済をする、こういうふうに法律にうたっているわけですが、正直、本当に四十五年でちゃんと返済ができるかなというところが非常に心配な点が強いのではないだろうか、こういうふうに思っております。四十五年先となると、もうどれだけの人がこの中でも生きているかなというぐらい長いわけでありまして、しかも、非常に不確定要素が強いというふうに言わざるを得ないかなという気がしております。

 国土交通省の出していただいている返済のスキームを見ましても、今大体二兆六千億ぐらい料金収入があるんですけれども、これが二兆七千、八千、三兆ぐらいに伸びるというようなことをベースにしているところもあるんですが、本当にそれだけ売り上げが伸びるだろうか。一方では人口が減っていく、二〇〇六年をピークにして人口がどんどん減っていくということがありますし、また九州でいいますと、九州新幹線、この間、新八代と鹿児島中央駅ができましたけれども、また八年後には、これは福岡からもう一体のものとしてでき上がる、いずれ長崎の方にも新幹線をというような話もありますので、そうすると、かなり鉄道に食われる部分も出てくるのかな。

 そういうようなことも考えますと、四十五年で借金返済というのが本当にできるだろうかというふうに率直に思っているんですが、その点、先生の方はどういうふうに見ていらっしゃるでしょうか。

矢田俊文君 一番厳しい質問だと思っております。

 数字的には四十兆円プラス利子及び管理費ということで、九十兆円ぐらいが少なくとも返せるという、したがって四十五年でゼロという形で現在試算しておりますが、なかなかこれは市場メカニズムの関係でしか処理できない。

 一つは、交通量の増減をどう見るかという、これは、おっしゃったように、人口の減少の問題もありますし、同時に、生活スタイルが相当変わってきますので、依然として地方において車依存というのがよりふえてくるというプラス要因もあると思います。それから利子率の計算、最大四%で計算していることが適当かどうかという、いわゆる変数のやり方によってはこれがうまくいかない場合もあるということは十分考えられるスキームだと私は思っております。

 もう一点、先ほど古賀先生から指摘されましたいわゆる道路公団方式か株式会社方式かという話は、私は経営学専門ではありませんが、経営学関係とつき合っておりますと、基本的には、やはり親方日の丸に対して相当小ぶりの組織をつくって、自己責任体制をはっきりさせるかどうか。

 これは私も大学人として、法人化するかどうかという問題は、法人化が決まったときに、全く先生の意識が変わっております。非常に危機感に燃えております。かといって、経営がうまくいけるかどうか、これはまた経営者としての能力は別でありますが、やはりそれなりの単位を明確にして、その中で相当数、利益といいますか収支バランスをとっていく。それで初めて今の公団職員を含めまして相当の経営努力の方向に、トップがだれになるかという問題は最も重要ですが、一般職員がどういう形で対応するか、余りにも霞が関が遠い形で公団の職員がやっていますと余り変わらないという意識がありますので、私は、この株式会社の経営のやり方ももう一つの大きなファクターだと思っております。

 市場の動向と会社経営のやり方、この辺のバランスの中でしか結果が出てこないと思いますので、四十五年、大丈夫ですということも言えませんし、全然インチキですというわけにも私の立場としては言えません。

松野(信)委員 矢田さんにもう一問させていただきたいと思いますが、国土基盤整備というのはやはり総合戦略を持って進めなきゃならないというような御指摘もありました。私も全く同感であります。国全体としてこの総合交通体系、どういうふうにとらえていくか、やはり国が全体としてやらなきゃならない。道路はどうする、高速道路はどうする、あるいは鉄道、船、飛行機、こういうものの総合的な戦略をきちんと立てなきゃならないだろう、こういうふうに思っております。

 そうした中で見ますと、そういう戦略をしっかり立てるのは、何といってもやはり国が責任を持ってやらなければならない、国が行うべき分野ではないかな。そこを今回、高速道路については大まかには三分割、地域的に三分割をするというふうに、民間にある意味では任せる形になるわけですけれども、そうだとすると、本当にこの国全体の総合戦略ができるんだろうか。民間だと、どうしても採算性というのを重視せざるを得ないだろうと思いますので、本当にこの総合戦略が民間に任せて大丈夫だろうか、こういう気もしているんですが、この点は、先生、いかがでしょうか。

矢田俊文君 私は、高速道路を含めまして、おっしゃったとおり、交通体系、ある種の哲学で、はっきりプライオリティーをつけていただきたい。一つは、地方からの声というのが全く平板で届いて、皆平均でつけていくか平均で切るかという発想がこの二、三十年続いていると思っております。それは、政治家あるいは地方の要求をどういう哲学で体系化するかということがなかなかできていないんだと私は思っています。

 もう一つは、飛行機であり、鉄道であり、高速道路では、縦割りの部門がますますしっかりでき上がりまして、そこの調整の能力もかなり失ってきていると思いますので、そこがまたイーブンになるようにつくられていくというところから国土体系が必要だと幾ら言ってもなかなか、問題は、お金のないところで効率を上げるにはプライオリティー、何を優先して何をおくらすかという問題が最大の政治課題だと思っておりますが、そこのところが、官庁の縦割りとそれから地方間の横並び主義、そして大きなデザインなしというところからこういう問題が次から次へ出てきているんだと思っていますので、マクロ的な御意見は全く賛成であります。

松野(信)委員 ありがとうございました。

 では、続いて安藤忠恕県知事さんの方に御質問させていただきたいと思います。

 私も、先ほども申し上げたように、熊本の方なんで、九州の西側ということで、新幹線あり、九州縦貫自動車道路ありということで、九州の中では恵まれている方かなという気もしております。

 確かに、おっしゃるとおり、九州の東側については本当に、高速道路を含めて、道路の整備がおくれているという点は御指摘のとおりだろうというふうに思うんですが、何でこういうような状態になったのか。西と東と余りにこれだけ違いが出てきた原因について、これは感想めいたところでも結構ですけれども、何かありましたら。

安藤忠恕君 私は、経済至上主義で戦後の日本の産業復興がまずあったからだろうというふうには思っておりますが、宮崎県内の社会構造とか歴史を考えてみますと、簡単に言いますと、人口が少ないということもございましたし、大きな城下町もなかったということも、その後の、明治維新後の経済効果といいましょうか、産業構造も影響しますが、経済投資といいますか、そのあたりが私は影響してきているというふうには思っております。

 それから、地理的な問題もございますし、人口は今百十六万余りありますが、分散しているということも宮崎のインフラの整備に影響してきたのかな、現状をつくり出してきたのかなというふうには思っております。

 ただ、国際化という言葉もありますように、何度も申し上げますが、日本の国力からしますと本当に情けない話を今しているんだなというような感じが実はするわけでございまして、もうとっくに、経済大国であれば、こういう論議は今の時期にはないんじゃないかなという思いを持っているところでございます。

松野(信)委員 もう一問、安藤知事さんの方にお願いしたいと思います。

 宮崎は私も時々行かせていただいております。ただ、もう率直に申し上げると、九州自動車道を通っていきますと、えびのを過ぎるとめっきり車の通行が少ないというのも率直な現実かなというふうに思っております。

 道路を整備しなきゃならない、それは全くそのとおりなんですが、道路をただつくればいいというものでなくて、やはり、これをいかに活用して人を呼び込むか、そういうデザインを地域地域で立てていかないと、道路はつくったわ人は余り通らないわというのではどうしようもないと思うんですね。

 昔、宮崎は、青島あたり、新婚旅行のメッカで人がよく集まっていたようにも思いますが、残念ながら、あの辺、ホテルが少しさびついちゃっているような印象も受けるので、やはり道路を利用する、活用する、デザインをしっかりお願いしたいと思いますが、その辺はいかがでしょうか。

安藤忠恕君 デザインという表現をなさいまして、ありがとうございます。

 やはり人の交流でいきますと、宮崎においでいただく受け皿づくり、魅力づくりだろうというふうに思っております。今私が宮崎県をどうするかということで県民の皆さん方に訴え回っていますのは、もう一回元気を出そうよ、宮崎に埋もれている宝をもう一回見つけ出して、発掘しよう、自分たちで努力することと魅力づけについて、今おっしゃるように、県外からその魅力を求めておいでになる、そういうものをつくろう、とにかく頑張ろうということを今言っているところでございます。

 青島あたりのことをお話しいただきましたが、宮崎は観光県だと言っておられましたが、それは昭和四十年代のことでございまして、今の観光はまた違ってきているようでございます。安全、安心とリゾートを売ろうということで、今、県内頑張っているわけでございますが、とにかく、今の時期での宮崎への人の交流のためにはどうしたらいいかということを一生懸命考えているところでございます。

 それから、産業の強化をやろうということで、今話をしているところでございます。ただ、宮崎の場合、スポーツを産業に大いに活用していこうということで、スポーツランド宮崎、スポーツ王国をつくろうということをやっております。この辺は、施設整備も進んでまいりましたし、我々が期待する方向に今進んでいるというような気が実はしております。スポーツ関係での交流が今非常にふえておるところでございます。

 とにかく、デザインをぴしっとやって、受け皿づくりをやらないといけないというふうに思っておるところでございます。ありがとうございます。

松野(信)委員 ありがとうございました。

 では次に、安藤昭三さん、連合会の会長さんの方にお尋ねしたいと思います。

 中国あたりでは、高速道路が確かにかなり整備をされていて、それで、外国との取引あたりも各県とか市とかで積極的に行っておられるようなんですね。その点、高速道路を初め道路整備網をきちんと整えた上で、例えば外国との貿易、特に、九州ですとアジアとの取引あたりが大きな取引としては考えられるかと思うんですけれども、そういう道路整備を整えた上で、これを活用しての外国との取引あたりは、何かお考えになっていらっしゃるんでしょうか。

安藤昭三君 中国との取引は、先生よく御承知のように、昨年ぐらいから非常な勢いでブームになってきておりますね。

 一昔前の問題といたしましては、この中国の非常に安い労働コストが日本の中小企業に対する大きな脅威になってきた。これは現在でも脅威だと私は思います。しかし、そのときにも議論がありましたのは、賃金の差だけではない、インフラコストがあっちはみんな安いんだ、滞船料も安いし、飛行機のランディングコストも安いし、高速道路はほとんどただである、電力も安い。これは、すべてがやはり日中の間のコストの差だということが、私もそのとき、実は日本商工会議所の視察団で向こうを見てまいりまして、そういうことを実感として持ってまいりました。したがって、やはり高速道路を整備して、またそれを安くするということは、そのワン・オブ・ゼムだろうと思うんですね。

 ただ、ここ半年と申しますか一年弱の間を見てみますと、中国経済の非常に大きな成長は、昨年九・七%成長いたしましたが、これに対して日本の国内、特に大分県でもそうでございますが、例えば鉄鋼でございますね、あるいは電気機械、そういうものが、これは北九州もそうだと思いますけれども、非常な勢いで中国へ出ていって、それが日本の景気を非常に大きく持ち上げている。対米、対中輸出が日本の今の景気回復のあれだ、こういうのが今の現状だと思います。

 大分から物が出ていくのは、実は大分港から出ていきまして、ただ、大分港まで持ってくるものは、例えば杵築にキヤノンの工場がございますけれども、これは今地方道を通ってきているというようなことでございますので、やはりそういう意味からいきますと、全体に日本の国際競争力、特に九州でも国際競争力をつくる場合には、先生御指摘のように、高速道路が発達しているということは非常にいいことではないかというふうに考えております。

松野(信)委員 それでは最後に、中津市長の新貝さんの方に御質問をさせていただきたいと思います。

 中津程度の市というのも熊本の方にありまして、市長さんや議会関係者ともいろいろお話を聞くんですが、もちろん、それは高速道路があればあったでいいけれども、現実には地元の生活道路をもう少し何とかしてほしい、曲がりくねっていたり、あるいは狭かったり、使い勝手が悪いということで、むしろ生活道路を何とかしてほしいというような声の方が強い場合もあるんですけれども、その辺、中津の方はいかがでしょうか。

新貝正勝君 生活道路も非常によくありません。ですから、私は、今回の私の選挙に当たりまして、公約の一つとしたのが生活道路それから通学路の改善であります。地方といいますか郡部に行きますと、全く道路が狭い、それから昔のとおり舗装もされていない、そういった道路が多々ございます。ですから、私は今、そういった生活に重点を置いた政策を進めよう、こういうふうな気持ちでおるところでございます。

 他方で、この高速道路、これはまた別の意味を持っているんですね。非常にマクロ的な、非常に重要な意義を持っております。たとえ地域の生活道路をよくしたとしても、全体的な経済を飛躍させるためには、この高速道路の重要性というものはそれにまさるすごい効果を持つものであるというふうに認識をいたしております。

松野(信)委員 ありがとうございました。

 私の質問はこれで終わりたいと思います。

衛藤座長 高木陽介君。

高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。

 陳述人の皆様方には、御多忙のところ、地方公聴会ということで御出席をいただきまして、本当にありがとうございます。最後の質問となりますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 まず、今回の道路公団民営化の法案について、これまでも当委員会でいろいろと議論を尽くしてまいりましたし、また、国会の方では参考人の聴取というのをもう既にやりまして、あすもまたやる予定となっております。

 そのような中にありまして、これまでずっと、この二年間にわたる道路公団民営化の論議という問題、そもそも論からちょっとお話を申し上げますと、昭和三十年代の初め、これはもう陳述人の皆様方も、また、きょう御参列の皆様方も御存じだと思いますけれども、本来、道路は国がつくるべきであろうとだれもが思っている中で、日本の財政状況が厳しい中で、この公団方式をとって、そして借金をしながら高速道路をつくってくれと。当初のころは、そういう形の中で名神、東名ができてきて、そういう中で、またはプール制という形をとってきた。

 そこそこ効果はあったと思いますけれども、やはりここに来て、債務、いわゆる借金が四十兆円もある、これをどうしていくんだ、こういった問題がクローズアップされる中、または公団自体の運営のあり方、これについてもかなり批判が出てきたというところで、この民営化論議というのがかなり高まってきたと思うんです。

 そんな中で、この二年間の論議、特に民営化委員会が発足してからの論議、これは、委員会自体はしっかりと議論をしてきたとは思うんですけれども、どうもメディアの報道等を見ますと、道路をつくる、つくらない、こういう話に何か矮小化されてしまった。道路をつくることが何か悪いことみたいな形で、族議員という言葉も出てきたりだとか、それが何か道路公団問題とリンクして議論が進んできたな、こんなふうに思いました。

 ただし、やはり地方の現場の声というのは、そういった道路公団の大きな問題以上に、地域の問題としての道路の必要性、これを切実に皆様方が思っておられるなということを、今までのお話をお伺いしても、かなり実感をいたしました。

 その上で、今回のこの道路公団問題、端的に言いますと、四十兆の債務をしっかり返済できますか、さらに、九三四二を初めとする整備計画の道路をしっかりつくりますか、これをどうやって整合性を持たせてやっていきますか、こういう問題であると思うんです。

 その上で、今回、皆様方の陳述、四人の方々の意見をお伺いしますと、おおむね今回の道路公団の民営化の法案、政府案は評価をされているのかな、こんなふうに思いました。もし意見が違えば後でお伺いしたいと思うんです。

 ただし、やはりこの四十兆の債務が果たして返せるのかどうかというふうなところになりますと、例えば、矢田先生はなかなか難しい問題だというふうに何度かお話をされておりましたし、実際問題、参考人質疑を国会でやったときも、今まで債務をしっかり返すといいながら返せなかった、今までできなかったことをこれからやるといってもできるわけないじゃないか、こういう意見を述べられる方もいらっしゃいましたし、だからこそ、こういった公団を民営化するという形をとることによって債務を返済させていくんだ、こういうような意見もございました。

 政府案として見れば、後者の意見だと思うんですけれども、そういった中で、これはやってみなければわからないなというのが結構多くの人たちの実感かなと思うんですね。

 これは矢田陳述人にお伺いしたいと思うんですが、先ほど矢田先生が、市場によってかなり左右される、または金利動向によっても左右してくる、こういうような意見を述べられておりますけれども、やはりいろいろなデータを駆使して今回この法律案をつくってきて、四十五年で返済をするというスキームをつくったと思うんです。

 そういった中で、やってみなければわからない部分はあるんですけれども、可能性として、これはかなり返済できるのではないかな、その可能性がかなりしっかりしているなというふうに思って与党としてはこれを賛成する立場なんですけれども、その点いかがかなということをもう一度お伺いしたいと思います。

矢田俊文君 私は社会科学をやって、社会科学の当たらなさというのは皆さんかなり御存じだと思います。世界戦争が起きただけで変わります。したがって、これから四十五年、自然科学のように、数式幾らやったって、全く違ったファクターで動いていますので、四十五年前というと第二次大戦後ですから、できますなどという方がうそだと思います。

 しかし、現在、行政としてあるいは政府として、ぎりぎりの予見の中で、先ほど先生のおっしゃったように、国土の骨格をしっかりつくっていくんだという話と四十兆円を返していくんだという話を、片方を捨てれば割と回答ははっきりしていると思う。民営化の片方の意見というのは、もうつくるのはやめようという形で捨てていけば、恐らく回答はそれほど難しくはない、もっと短期間でできるんだと思います。

 片方で、国土の骨格をつくり、地方を活性化するという仕事と、そして債務を返済するという仕事ですので、私はそこは非常に厳しいと思いますが、問題は、むしろスキームではなくて、スキームを動かすような今後のやり方、株式会社が、本当に貸し付けを返済しながらコストダウンを徹底的にやって、副収入を確保して、交通量を確保するだけの戦略を、マーケティングをやるというふうに動けるかどうかというところがポイントだと思っていますので、むしろ法律ができたからいくよというよりも、ここの真ん中にある株式会社がちゃんと生き生きと動くのか、相変わらず同じように物事を転嫁させていくのかで大分違っていると思いますので、そこのやり方について今後かなり厳しく議論した方がいいと思っております。

高木(陽)委員 そういう制度ができたから、それを生かしていくのはやはり人間だと思うんですね。そういった中では、先ほど新貝中津市長のお話で、不断の監視が必要というような御意見があったと思うんです。まさに、これこそ国民注視の中で民営化論議がなされてきて、民営化の推進委員会も公開を原則としてやってきた。こういう中でさまざまな目に見える改革というのがなされてきた。

 国会の中で、この委員会での総理に対する質問で、例として挙げたのが、二百五十万円の電話を、こんなにかかっているという、ここからまず始まったという話がありました。これも公開することによって、大分これはおかしいんじゃないか、ごく当たり前な感覚というのがそこに注入されてきた。この二年間の論議はむだではなかったし、これは一歩前進、もっと言えば二歩も三歩も前進しているなと思うんですね。

 ですから、これからの問題、先ほど中津市長からお話のあった、監視していく、いわゆる公開を原則としながら、これは一部の人間だけがチェックをするのではなくて、やはり道路を必要としている地域の人も、またはもうできてしまった人も、または債務を返済していくという利用者も、これがみんなで監視をできる体制、公開をしていく体制というのが必要であろうなというふうにも感じております。

 さらに、矢田先生にもう一つお伺いしたいのは、先生のつくられたこの図で、課題と効果をずっと挙げられた中で、課題の二で、路線ではなく会社ごとの収支になった、これは黒字路線による赤字路線の負担をするのではないか。これは、今までの全体のプール制から見ると、会社という形で三つに分かれて、これが縮小はされるということなんですけれども、逆に、これをもし路線ごとまでに縮小をするというか、きちっと詰めてしまった場合に、これは正直、九州の道路というのはできないのではないかな、こんなふうにも思ってしまうんですね。

 逆に、それぐらいの余裕を持たせることによって、新直轄という新しい方式をつくりますけれども、でも、その中で余裕を持ちながら、例えば東九州の自動車道もつくっていこうという流れになるのではないかなというふうに考えるんですが、この点、僕は知恵を出したなというふうに判断しているんですけれども、この課題、もう一回お話をお伺いできればと思います。

矢田俊文君 原則、私もそう思います。路線でいくと結局はできないものはできない。ただし、路線ごとの収支努力をしっかりさせて、ぎりぎり努力した上で会社ごとに返していくということをやらないと、また第二の親方日の丸になりますので、そこはかなり路線ごとの収支はきちんと出した方がいいのかと思っています。

高木(陽)委員 はい、わかりました。

 もう一つ、矢田先生にお伺いしたいのは、先生がグランドデザインの必要性をずっとおっしゃっておられるのと、あともう一つは、自立したブロック圏の形成ということをおっしゃっておられて、そういうことから考えると、今現在計画をされている九州における道路のインフラ、整備計画、まだできていませんけれども、これができればある程度このグランドデザイン、そして自立したブロック圏というのが形成、もちろん、いろいろな要素はほかにもあると思いますけれども、物流ですとかそういった観点からのインフラというのは、これでよしとできるかどうか、それとも、もう少し変えていった方がいいのではないか、ここら辺のところはどうでしょうか。

矢田俊文君 非常に関係者がおられる前で言いにくいんですが、私は東九州自動車道を一本しっかりつくれば十分だと思っています。

高木(陽)委員 わかりました。

 では、この問題について、お三方の、いわゆる地元の方の御意見ということで、今までこの九三四二という形でつくられてきて、絵ができてきました。それが九州の場合、特に東九州の場合にはなかなか手がつかなかった。ここに来て、民営化という形をとりながらも、新直轄方式ができて、いよいよつくられていこうとしておりますけれども、逆に言いますと、本当にこれさえできればいいのか、今の整備計画がきちっと、いわゆる東西の部分、これもできていけばいいのか、それとも、もう少し違う角度が必要なのかということを宮崎県知事からよろしくお願いしたいと思います。

安藤忠恕君 私は、東九州自動車道は当然でございますが、やはり横断自動車道も九州の産業の活性化からしますと絶対必要だと思いますし、それはとりもなおさず国力のアップの一翼を担うということでございますので、絶対必要だというふうに思っております。

安藤昭三君 東九州自動車道は、これはもうもちろん必要で、特に何となく議論がきょうは大分から南と申しますか、今できていない大分―宮崎間というところになっているわけですけれども、産業集積その他から見ますと、やはり北九州と大分の間が、これが飛び飛びというか、ほとんど一車線の自動車道路しかないというところが、やはり非常に大きな問題ではないかと思っております。

 それと、これは高速道路ではございませんが、高規格道路として現在の国道五十七号線に沿って中九州横断道路、これは熊本へ行く道路でありますけれども、これが少しずつ進んでおりますけれども、いずれこれは整備しなければ、やはり循環的な形の産業及び観光、これは観光としては非常に大きなものでありますので、漸次整備を進めていただきたい。

 以上です。

新貝正勝君 私は、ネットワーク化、この重要性というものをやはりもっと認識すべきだろうと思うんです。

 ITの世界ではネットワーク化というのが進んでまいりまして、もうインターネットその他、あるいは社内のイントラネット等々、それが進むことによって非常に発展をしてきているわけです。そうすると、ある意味での通信量は増大します。もう飛躍的に増大します。道路も全く同じだと思うんです。ネットワーク化が進むことによって交通量も飛躍的に発展をしていく。単に単線があるだけではない、そこが次ともつながる、どんどんつながって、そのことが交通量の飛躍的増大に結びつくというふうに思っております。

 そういった意味では、東九州自動車道、もちろんこれは一番大切ですけれども、東西にわたるネットワークをつくっていく、そのことが一番重要だというふうに思っております。

高木(陽)委員 今、新貝市長の方からもネットワーク、ネットワークというお話が何度も出てまいりましたけれども、そういうネットワークという考え方からいいますと、もちろん高規格幹線道路である高速道路、このネットワークというのが九州全域、さらにこれがいわゆる本州、全国と結びついている、これはもちろん重要なことだと思うんですけれども、その中にあって、一般道とのネットワークもしっかり必要ではないか。

 もちろん、インターからおりて、その先がもう全く道路として成り立たないというか、例えば物流としてトラックがかなり活躍する場合に、おりてきたはいいけれども、しっかり走れないですとか、こういった問題もあると思うんですね。

 ただし、今後、新直轄という新しい考え方の中で、もちろん新会社がつくっていっていただければいいんですけれども、新直轄も加わっていく中で、財政負担が各自治体にもかぶってくる。もちろん、一般道のネットワークもしっかりしていかなきゃいけない。これの兼ね合いとして、現実問題、今の苦しい地方財政の中で、一般道というのがどこまでやっていけるのか、これもやはり国の補助金の体制、これをもっと充実させなければいけないのか、もっと違う形にした方がいいのか、この点について安藤知事からお伺いをできればと思います。

安藤忠恕君 道路特定財源の維持確保というのは必要ですということでございます。

 おっしゃるとおり、本県は高速自動車道を前面に出しておりますが、一般の山間町村にとりましては一般生活道路につきましてもまだ不十分でございますので、やはり道路の整備のための財源確保という仕組みはさらに拡充していただきたい、そういうふうに思っております。

安藤昭三君 当然のことながら、高速道路にアクセスするところの一般道路、これが整備されておりませんとやはり産業的にも非常に問題があるということでございます。

 そういう例が幾つかあるわけでありますけれども、具体的な例はともかくといたしまして、これは県財政としてはなかなか負担の重いところだろうと思います。やはり産業立地、あるいは、今度は他県との物流というような面から見ましても、その辺の重要性ということは欠くことはできないだろうと思っています。

新貝正勝君 道路特定財源のお話につきましては、宮崎知事の方からお話がございましたので、私からは申し上げませんけれども、一般道路もこれは非常に重要でございます。

 それから、やはりもっと道路のつくり方、これを柔軟に考える必要があるのかなということを実は思っております。

 私、先ほど日田高規格道路の話をいたしました。これは中津港から日田までを全線高規格道路にしよう、こういう考えでございますが、私は今ちょっと県の方にお話をしているのは、中津市に入ってきてからはむしろ一般道路の方が役に立つ、そういうふうに思っているんです。そうすれば、安くて、しかも幅広い道路ができる、多くの人が非常に有用に活用できる。

 私は、何が何でも全線を全部高い仕様でつくる必要はないんじゃないか、そういった柔軟性を持つことによって道路の財源というものを有効に活用していく、そういった努力も必要ではないかというふうに思っております。

高木(陽)委員 実は、この道路公団民営化法案の審議をする前に、都市再生法の審議が衆議院の国土交通委員会で行われました。そのときに、大分の臼杵の市長さんが来られて参考人質疑でお話をされたときに、すごく印象に残っていたのは、道路がなかった、これからつくってもらおうと思っているんですけれどもという話の前提の中で、逆になかったことによって町並みがしっかり残っているという、これは都市再生という、新しいまちづくり交付金の話ですとか、まちづくりをどうしていくかという話の法案の審議でございましたから、逆に過去の町並みが残っている、これはこれでプラスになっている、こういう話が実は出てきたんです。だからといって、臼杵の市長さんは道路が要らないという話じゃなくて、それはそれで欲しいんです、必要なんです、こういうふうには主張されていたんですけれども。

 どうも、今回は道路の話でこうやって地方公聴会をやっているわけでございますけれども、町をつくっていく、また町を活性化していく、またその地域をよくしていく、よくするというこの価値観も人によって違うと思うんですけれども、そういった観点からいうと、例えば人の交流、物流が必要だ、それが経済の活性化につながる、町の活性化につながる、そうなんですが、果たして道路だけなんだろうか、こういう観点というのも必要なんではないのかな。

 九州のこの地域、大分そして宮崎、東側というのはなかなか交通部分ではほかの地域と比べたらおくれていた部分もあると思いますし、そういった部分での、もちろん高速道路もそうですけれども、例えば中津なんかは港がある。海運というかこういった観点、または空の観点、または鉄道の観点、やはり交通体系を全部勘案して道路というのも位置づけていかなければいけないなと思うんですが、この点について、もう時間も大分限られておりますので、四人の皆様方に、そういう全体の交通体系の中で道路をどう位置づけるのかというお話を、ちょっと大ざっぱな質問になりますが、お伺いできればということで、矢田先生からお願いできればと思います。

矢田俊文君 一言で言えば、ボトムアップ的な、しかもNGO、住民を巻き込んだ本当のまちづくり計画というのは、ボトムアップ的にしっかり全国でつくられて、それとこういうトップダウン的な道路計画の整合性をきちんととれるかどうかというところが問題なんで、ボトムアップが非常に弱いんだと私は思っていますので、その辺を、先ほど臼杵市長さんの話では、かなり大きな問題だと。一概にあれかこれかではなくて、そこの整合性をどうとるかということがこれから不可欠だと思っています。

安藤忠恕君 私は、交通体系の整備というのは総合的には必要でございます。それは、地方分権を目指す日本であれば、まず生きていかないといけません、自立をしなさいということがございます、そのためには、どうしても強い産業をつくっていかなければなりません。そういう意味から、私は、地方分権につながる交通網の整備、必要性を感じているところでございます。

安藤昭三君 おっしゃるように、まちづくりというのは、これは交通体系だけではない、確かに。その町の本当にやる気のある人たちをいかにして掘り起こしてやるかということで、これは名前を出すとぐあいが悪いんですけれども、大分県には古くからある非常に大きな温泉町があるんですが、それが寂れて、その横の山の中にあった町が非常ににぎわっておる、こういう事態は、これは全く人の問題なんですね。

 そういう例がありますから、これはおっしゃるとおりでありますが、ただ、交通体系が非常に大きな要素であることも、これもまた間違いないわけでありまして、これからの観光開発というのは循環型の観光開発になるということでございますので、特に、先ほども申し上げましたけれども、西九州は新幹線と高速道路が通る、東九州は、目に見えるところの高速体系は東九州自動車道しかない、こういうことをぜひひとつ御理解いただきたいと思います。

新貝正勝君 まちづくりにおきます道路の役割、これも非常に重要でございます。

 ただ、まちづくり、私のところは城下町の歴史を持っております。それで、先ほどのようなお話が実は発生したわけでございます。金谷地区というところ、これは下級武士の城下町なんです。今でも非常に細い、狭い道並み、これが残っているわけです。全国でも三つぐらいしかもう残っていない。しかし、住む人からすれば非常に不便。それから、救急車も来られないとか、消防車も来られない、何とか広くしてほしい、こういう要望があったわけでございます。

 しかし、歴史を保存する、またそういった町並みを残していく、そういったことが今新たに価値が創造されてきております。したがって、私は、その中に大きな道を通すのはやめよう、今までの都市計画ではそういうものがあったわけでございますが、そういうのをやめて、新たな構想でまちづくりをしていこうというふうに今考えております。

 それと同時に、先ほど来ありますように、この町に来るには、やはりどうしても高速道路を主体とする交通網体系というものが必要でございます。そういったことから、両者相まってやっていくということが重要であろうというふうに思っております。

高木(陽)委員 私は、東京生まれの東京育ちでございまして、なかなか地方の交通の問題というのが、正直、実感しない部分がありました。

 逆に、東京は東京で、交通渋滞の問題で道路をつくってくれ、環状道路がないということでいつも渋滞をしている、踏切でいつも渋滞をしている、それによっての経済のマイナス効果が大きい、だから道路を早くつくれ。道路はあるんですけれども、それ以上につくれ、こういう都会の問題が一方ではある。さらに、こういう大分、宮崎、東九州の場合には、西九州と比べても、新幹線もない、高速道路もない、ではどうしたらいいんだろうか、こういう本当に現実の問題に直面しながら、もう何十年もやってこられた、こういう現実もあると思うんです。

 そういった中で、今回の民営化の法案、これは、政府案を私たち与党もしっかりと成立させて、大きな問題である債務の四十兆、これを返済するとともに、国民にお約束をしている九三四二というものをしっかりと整備していく、そのネットワークをつくることによって、まず地域も活性化してもらうだけではなくて、日本全体が活性化していく起爆剤になっていかなければいけないな、このようにも考えております。

 正直、私たち公明党の方も、全国に三千五百人の議員がおりまして、現場の声というものをしっかりと、地域、そして県会、そして国会と連携をとりながらやらせていただいておりますので、大分、宮崎の声、これを国会でも反映できるように努力をさせていただくということをお約束させていただいて、質問を終わらせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

衛藤座長 以上で委員からの質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 意見陳述者の皆様方におかれましては、御多忙の中、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。

 本日拝聴させていただきました御意見は、当委員会の審査に資するところ極めて大なるものがあると存じます。ここに厚く御礼を申し上げます。

 また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして、心から感謝、御礼を申し上げ、ごあいさつといたします。本日はどうもありがとうございました。

 これにて散会いたします。

    午後三時五十五分散会


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