衆議院

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第23号 平成16年5月21日(金曜日)

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平成十六年五月二十一日(金曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 赤羽 一嘉君

   理事 今村 雅弘君 理事 衛藤征士郎君

   理事 橘 康太郎君 理事 望月 義夫君

   理事 大谷 信盛君 理事 奥村 展三君

   理事 玉置 一弥君 理事 高木 陽介君

      石田 真敏君    岩崎 忠夫君

      江崎 鐵磨君    江崎洋一郎君

      江藤  拓君    大島 理森君

      梶山 弘志君    木村  勉君

      櫻田 義孝君    島村 宜伸君

      高木  毅君    谷  公一君

      中馬 弘毅君    寺田  稔君

      中西 一善君    中野 正志君

      西田  猛君    西村 康稔君

      葉梨 康弘君    古屋 圭司君

      保坂  武君    松野 博一君

      森田  一君    山際大志郎君

      渡辺 博道君    岩國 哲人君

      岡本 充功君    小宮山泰子君

      近藤 洋介君    下条 みつ君

      中川  治君    長安  豊君

      伴野  豊君    古本伸一郎君

      松崎 哲久君    松野 信夫君

      三日月大造君    室井 邦彦君

      山岡 賢次君    和田 隆志君

      若井 康彦君    佐藤 茂樹君

      穀田 恵二君    武田 良太君

      御法川信英君

    …………………………………

   国土交通大臣       石原 伸晃君

   国土交通副大臣      林  幹雄君

   国土交通副大臣      佐藤 泰三君

   総務大臣政務官      松本  純君

   財務大臣政務官      七条  明君

   国土交通大臣政務官    佐藤 茂樹君

   政府参考人

   (総務省自治税務局長)  板倉 敏和君

   政府参考人

   (消防庁次長)      東尾  正君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   佐々木豊成君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    西江  章君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長)            澤井 英一君

   政府参考人

   (国土交通省土地・水資源局長)          伊藤 鎭樹君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  松野  仁君

   政府参考人

   (国土交通省自動車交通局長)           峰久 幸義君

   国土交通委員会専門員   飯田 祐弘君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十一日

 辞任         補欠選任

  石田 真敏君     木村  勉君

  江藤  拓君     山際大志郎君

  高木  毅君     西村 康稔君

  寺田  稔君     中西 一善君

  二階 俊博君     江崎洋一郎君

  古屋 圭司君     谷  公一君

  下条 みつ君     小宮山泰子君

  長安  豊君     近藤 洋介君

  武田 良太君     御法川信英君

同日

 辞任         補欠選任

  江崎洋一郎君     西田  猛君

  木村  勉君     石田 真敏君

  谷  公一君     古屋 圭司君

  中西 一善君     寺田  稔君

  西村 康稔君     高木  毅君

  山際大志郎君     江藤  拓君

  小宮山泰子君     下条 みつ君

  近藤 洋介君     長安  豊君

  御法川信英君     武田 良太君

同日

 辞任         補欠選任

  西田  猛君     二階 俊博君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七八号)(参議院送付)

 不動産取引の円滑化のための地価公示法及び不動産の鑑定評価に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七九号)(参議院送付)

 旅行業法の一部を改正する法律案(内閣提出第八〇号)(参議院送付)

 海上運送事業の活性化のための船員法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八一号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

赤羽委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省住宅局長松野仁君及び消防庁次長東尾正君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。葉梨康弘君。

葉梨委員 おはようございます。自由民主党の葉梨康弘です。

 本日は、建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法の一部を改正する法律案についてお尋ね申し上げたいと思います。

 まず、地下室マンション、その容積率不算入措置に関する規定の見直しについてお尋ねをしたいと思います。

 実は、五月十三日に参議院で政府参考人から答弁がございまして、平成十年、十二年、十四年の三年間で、東京都及び十三政令指定市で調査したところ、斜面地マンションに係る紛争が二十一件、うち横浜が八割、東京二件、川崎一件という傾向をもとに、地下室マンションについては首都圏の大変土地の高い大都市に集中しているというようなお答えがございました。

 ただ、多分これは紛争事案ということで言われたんだというふうに理解しておりますけれども、紛争事案は、確かに、大変土地が高く、かつ周りの住民の意識も高い地域に集中している、そういうことかもわからないんですけれども、紛争事案の分布が地下室マンションの実際の分布と一致するかどうかというのは、私、実は疑問に思っております。

 というのは、私、茨城県の取手市に住んでおりまして、きょうも六時三十三分の常磐線の快速で東京に一時間半かけて参りました。ただ、私も実は地下室マンションの住人なんでございます。役所はちょっと限界も感じた、やはりこれから政治を志すためには地元に住まなきゃいけない、そういうことで、平成十年、マンションを物色いたしましたところ、私の地元、取手でございます、当時の私の貯金でも買えるかなということで、安いマンションが出て、三LDKを購入いたしました。契約をしたところ、その部屋は四一二号室。四階だとばかり思って契約に立ち会ったら、二階なんですと言うんです。それが私と地下室マンションとの最初の出会いでございました。

 最初に、マイホームを買いまして、マイホームをやはり汚くしちゃいけない、だからベランダでたばこは吸いなさいといってずっと蛍族をしておりまして、余りわびしいものですから、三年前にたばこをやめました。ですから、きょうは、族議員じゃなくて、元蛍族議員ということで質問をさせていただきます。

 実は、その取手市の周り、私が歩いて十分ぐらいのところに地下室マンションというのは三つほどあります。こういった坂の多い地形というところで建っているわけなんですけれども、これらのマンションというのは、実は、首都圏の土地が高いということだけじゃなくて、私どもの取手の場合は、子供のいる若い世帯向けの値ごろの物件として供給されています。そして、少子高齢化、人口減が進んでおる私どもの取手市でも、人口増のためには明るい材料になっています。このような地域は、多分紛争になっていないだけで、まだまだたくさんあるように思われます。

 ですから、地下室マンションの分布について、首都圏の大変土地の高い大都市に集中している、これはちょっと一概には言えないように思いますし、実際、いろいろと条例制定に当たって法の趣旨というのを徹底されることになると思いますけれども、条例制定に当たって、各都道府県や自治体がそういう頭で右倣えで一律に条例をつくっていくというようなことになりますと、実態となかなかそごが生じてくる場合もあろうかと思います。

 そこで、条例事項になったということの趣旨を踏まえて、地域ごとの実態や必要性をよく調べた上できめ細かな対応をなされるように法の趣旨の徹底をお願いしたい。御見解をお願いしたいと思います。

松野政府参考人 住宅の地下室につきましては、周辺の市街地環境に与える影響が比較的少ないということで、平成六年の建築基準法改正によりまして、住宅全体の三分の一までを容積率カウントしないということにしたわけでございます。

 この改正の結果、都市部におきまして、マンションの地下に、例えば住民共用の集会室あるいは多目的ルーム、トランクルームというようなものを設けるということで、緩やかな傾斜地において、傾斜を利用して地下一階に住戸を設けるなど、土地の有効利用によるゆとりある住生活の実現を図るために、この容積不算入措置を積極的に活用する事例が見られるようになってきました。

 しかしながら、五年ほど前から、横浜、川崎などの大都市の一部におきまして、低層住宅地のいわゆる斜面地、これも急斜面でございますが、盛り土をして地盤面をかさ上げし、地下の部分をふやすというような、非常に極端な形で住宅地下室の容積の不算入措置を利用するマンションが建設されまして、斜面の下側から見ますとあたかも中高層建築物のような外観となるような、住環境の悪化を招くということで紛争に至っているような事例も見られているところでございます。

 このような状況を踏まえまして、この法案では、周辺の環境あるいは景観を悪化させるおそれがあるという場合、必要な場合に、住宅地下室の容積不算入措置の適用についての地盤面の規定がございますが、この法に定める地盤面とは別に、地方公共団体の条例でそれを定めることができる、結果として住宅地下室の範囲を制限することができるということにしました。

 この条例を制定していただくに当たっては、御指摘のとおり、地域によって、その傾斜地の状況、あるいは周辺がどういう町であるかというような地域ごとの実態、必要性を十分踏まえて定める必要があると考えております。

 本法案では、政令においてこの技術的な基準を定めるということにしております。この技術的な助言によりまして本制度の趣旨の周知徹底を図りまして、この制度が適切に活用されるように努めてまいりたいと考えております。

葉梨委員 ありがとうございました。ただ、まことに申しわけないんですが、質疑の時間、二十分しかないので、最後の五分の一だけ読んでいただければ十分でございます。ほかにも問いがございますので、よろしくお願い申し上げます。

 地下室マンションのあとのもう一つの問題は、横浜みたいなところでもそうなんですけれども、建てかえ時の問題があります。つまり、容積率というのが、事実上は不算入措置がなくなりますとぐっと少なくなります。何十年か後に建てかえをしなければいけないというふうになったときに、容積率が狭くなると減床を余儀なくされてしまう。そうなると、建てかえというのに今でもマンションの住人は同意をするのが非常に難しいんですけれども、減床するということになるとますます同意をしなくなってしまう可能性がございます。そうすると、良好な環境を守るためにこういったような措置をとったわけなんでしょうけれども、何十年かすると、横浜あるいは川崎でも、すばらしい斜面に、本当に老朽化して防災上も問題のあるマンションが建てかえがないままに建ってしまうという危険性も全くないわけではない。

 ですから、その条例をつくるに当たって、今後、建てかえへの対応ということにも一定の配慮しながら法の運用というのをしていく必要があると思います。そういう理解でよろしければ、本当に短く御答弁をお願いしたいと思います。

松野政府参考人 御指摘のような、条例の定め方によっては既存不適格建築物になって、容積の不適格、既存不適格になるというケースが出てくるわけです。したがいまして、そのために、全国一律に決めるというようなことではなくて、適切な、周辺に対する環境の影響のないような形で建設されるものまで不適格になるような定め方をしないように、その地域の実情に応じた設定の仕方が可能なような決め方をしていただく。そのための技術基準も示し、あるいは技術的な助言もしてまいりたい。

 将来、既存不適格になるマンションが出てきたときには、それの建てかえにつきましては、容積の不適格ということがございますので、容積率の緩和を許可をとって可能とする総合設計制度、あるいは、今回提案しております、一敷地扱いによる緑地を含めた全体の容積率の取り扱いができるような制度も提案してございます。

 こういった制度を活用して建てかえの際には対応できるようなことも考えてまいりたいと思います。

葉梨委員 今、地下室マンションに住んでいます蛍族にも余り不安を与えないということを御答弁いただきました。ありがとうございました。

 次に、既存不適格建築物に関する規制の合理化、改修の促進についてお伺いをしたいと思います。

 今申し上げました私の住んでいる取手市は、市制施行は昭和四十五年ですが、人口は四万三百七十二人でした。これが、五十年には五万三千人、五十三年には六万人と、昭和五十六年の耐震基準以前に人口が極めて急増しております。ただ、その取手市も、今、平成七年の八万四千をピークに人口が八万人と減少して、子供たちが独立して都心に回帰して、御老人たちが残されるという事態が発生しております。

 実は、昨年の一月から二月に、私の町内で連続放火事件が八件発生いたしました。私も今でも地元の消防の分団員をやっておりますけれども、週に二回、十二時までずっと夜回りをして、これで、今の町内でも、本当に、当時建った住宅というのが、極めて防災上も危ない住宅がたくさん残されているという実態をかいま見ました。

 これらの地域というのは、いわゆるミニ開発、悪い言葉で言えば乱開発という形で建ったものが多くて、下水道や生活インフラも未整備だし、道路にも消防自動車が入れない。住居も既存不適格。ですから、このような状況を何とか解消しなきゃいけない。これは、私の言葉で、古いニュータウン、オールドニュータウン症候群、オールドニュータウンシンドロームというような言葉で言って、何とかみんなで改善していきましょうということを町でも話をしております。

 そのためには、行政の取り組みもさることながら、やはり今は、どっちかというと御老人はもうあきらめているんです。二世帯住宅をつくるにも、家は狭くてなかなかあれだし、子供たちも帰ってこない。でも、そういう住民を勇気づけていくということが絶対必要だというふうに思います。

 その意味で、私、今回の改正については、ほかの諸制度、防災街区整備事業あるいは消防法の改正、耐震改修補助などとあわせて、これは総合的な運用やPRを図ることで、極めてこれらの住民を勇気づけるかぎになるんじゃないかというような印象を持っています。

 そこで、消防庁にお尋ねいたします。

 今回審議されている消防法の改正、これは、住宅用の火災警報機の設置が個々の住宅に義務づけられる。適用時期は条例にゆだねられ、あるいは、罰則はないとはいえ、消防が初めて個々の住宅に対して指導ができる画期的な法律だと思います。

 そして、今、参議院が通って衆議院で審議されているということですけれども、こういった改正によって、個々の住宅の防火防災意識、これを普及するために大変重要な施策がとられる。このときに、今回の建築基準法の改正、すなわち、既存の不適格住宅についても増改築がやりやすくなる、改修がやりやすくなる、そういうような規制緩和の状況、あるいは、いろいろな耐震の補助もある、そういった状況について、総合的にあわせていろいろと指導したり周知したりする。そのためにも、消防部局に対して、今回の建築基準法の改正についていろいろと徹底をしていただきたいと思うんですけれども、消防庁からお答えをお願いしたいと思います。

東尾政府参考人 ただいま御指摘の住宅火災の問題でございますけれども、平成十五年は、六十一年以来十七年ぶりに千人を超える火災死者が出るということから、ただいま御指摘の消防法改正案を提案しております。

 その具体的な方策といたしまして、地域の消防団や婦人防火クラブ、自主防災組織などの団体を活用しながら、幅広く、きめ細かな周知を図ることはもとよりでございますけれども、ただいま委員御指摘のとおり、住宅防火対策は、建築行政と極めて密接な関連がございます。

 私どもといたしましても、国土交通省と一緒に住宅防火対策推進協議会というものをつくっておりまして、この中で今回の建築基準法の改正との連携を、建築部局との間で十分話し合いをして、消防機関も建築基準法の改正についても取り組めるように努力してまいります。

葉梨委員 この建築基準法の改正についても非常にPRが大事であるということが参議院の質疑でも言われております。ただし、PRといっても、よくあります、行政がパンフレットを配って、置いておいてもなかなか見てくれない。そうじゃなくて、やはり、今回みたいに消防法の改正で、ある程度設備が義務づけになる、そういう機会をとらえて、ぜひとも、増改築やりやすくなったよ、いろいろな補助制度もあるよということがだんだんと住民に浸透してくること、これが非常に大切なことではないかというような感じを持っております。

 そこで、実は参議院の話なんですが、まちづくり、それから、この法律の議論では、個別対策、その関連の質疑がございました。ただ、まちづくりを考える上でも、そして、個別対策、個別の増改築を考える上でも、やはり、先ほど申し上げました、住民の意欲、発意、これは非常に重要でございます。そして、ちょっと先ほど申し上げましたけれども、例えば、住民があきらめてしまっている、あるいは、だれかがやってくれると思っていたんでは、オールドニュータウンシンドローム、これを解消することは絶対できないだろうというふうに思っています。

 ただ、そのためのいろいろな施策が今とられております。平成十五年の防災街区事業、これは、相当柔軟に補助金が運用できるようになった、やわらかなものだと思います。あるいは、耐震改修の補助金が極めて拡充されました。これらの施策も相まって、今あきらめかけている住民をエンカレッジする、そういう方向で行政も向かっていかなきゃいけないんじゃないか。その御所見と、さらに、今消防庁からもお答えがございましたけれども、今回の消防法の改正は、実は画期的な改正でございます。今述べたような個別的PRの大きなチャンス、お互いの法改正の効果をさらに増していくという意味からも、石原大臣には麻生大臣とまた連携をとっていただきたいとお願いしたいと思います。その意味で、石原大臣から御所見をお願いいたします。

石原国務大臣 葉梨委員がオールドニュータウンシンドロームという造語をつくられておられますが、そういう地域というものは私も多々目にすることがございます。

 委員御指摘のとおり、古く開発された住宅地というものは街路も十分整備されておりませんで、住んでいらっしゃった方の子供さんたちが抜けて高齢者の方ばかりで、安全面や環境面の課題を抱えていて、そんな中で葉梨委員が、消防団の、地元の住民として、まちづくり、そして町を守るという機運を高めていらっしゃるということは非常に重要なポイントではないかと思っております。

 今回の法改正によりましても、住宅の改修をしやすくするなど、既存不適格なものについても取り組ませていただいているわけですけれども、各地域にふさわしい方法が選択されまして、目に見えて成果が上がった、そういうまちづくり協議会やワークショップなど、住民ベースの取り組みというものを行政の側としても支援していかなければならないということを、委員のお話を聞かせていただいておりまして痛感したところでもございます。

 また、委員が大変お褒めになっていらっしゃいます消防法の改正、警報装置を各家庭に設置するということでございますけれども、こういうことによりましてこの普及活動というものがなされると認識しております。

 委員御指摘のとおり、麻生総務大臣にもこういう話があったということは十分話させていただき、総務省との連携を強め、高齢者の方々が自分の生活の基盤として育った町を安心で安全であると言い続けられるように意識を高めていく努力をさせていただければと考えております。

葉梨委員 ありがとうございました。

 この種まちづくりの施策については、単に、やみくもに予算をばらまけばいいというものではないだろうと思います。それでは、かえって住民をスポイルしてしまいます。ただ、やる気のある人だけにお金をつけるということであると、今申し上げたような御老人だけの世帯はどうしたらいいんだというような形になってしまいます。

 やはり私たちの立場として、私もしっかり頑張っていきたいと思うんですけれども、いかに勇気づけていくか。インセンティブを与えて、勇気づけて、一緒に考えていくか、そういう姿勢が必要だと思います。

 その意味で、また国、地方一体となって取り組んでいただくことをお願い申し上げまして、私の質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。

赤羽委員長 松崎哲久君。

松崎(哲)委員 民主党の松崎哲久でございます。

 私は、今回の建築基準法改正につきまして民主党で三人質問させていただきますので、地下室マンションに限ってお話を伺おうと思ったんですが、ただいま葉梨委員の方から、私の質問の半分程度は踏まえましたので、多少質問を変える部分があるかもわかりません、深める部分もあるかもわかりませんので、通告いたしましたこととダブった部分についてはお答えいただかなくて結構でございます。そういうことでお願いをいたします。

 まず、大臣に最初に伺いたいと思っておりますが、今回、地下室マンション、特に斜面地のマンションに問題が出ているわけでございますけれども、本委員会の答弁でも、大臣は、お生まれお育ちになりました逗子を非常に愛されていて、その景観等々につきまして誇りを持っていらっしゃるということがわかるような御答弁を再三されているわけでございます。

 例えば逗子の海岸沿いと、それから中の方とあると思いますが、いずれにしても、生成的には海岸段丘によってできている逗子の美しい景観が、いわゆる斜面地マンション、斜面地の地下室マンションが建っていくというようなことについてどのようにお感じになっているか。あるいは、リビエラのような景観になっていいんだというような御答弁があるのかもわかりませんけれども、まず、大臣にその辺を伺いたいと思います。

石原国務大臣 先日、景観法の審議で、藤沢市の片瀬のあたりの商業地域の問題を御指摘させていただきましたが、湘南地方は今非常に、委員御指摘の、平成六年の建築基準法の改正を契機とした斜面地マンションの建築というものが、横浜ほど大きな社会問題にはなっておりませんけれども、数件起こっております。これは逗子という一つの市に限らず、鎌倉市は条例でかなり厳しく規制をしておりますので問題は起こっていないんですが、そこから総理の選挙区になります横須賀の方にかけても問題が生じていると認識をしております。

 眺望が損なわれている例も私も見てまいりました。鎌倉ではどんなことをしているかと申しますと、平成十四年に条例を定めまして、傾斜地マンションに歯どめをかけております。御指摘の逗子でも、住民の皆さんから市への、マンション開発を抑制してほしいという反対運動が起こっておるんですけれども、まだ条例の制定というところには至っておりません。

 こういう条例で有名なのが、神奈川県の真鶴半島でやはりマンションができて、これは一番の問題になりましたのは水が少ないということで、大量に水を使うマンションができるとその地域全体の水量が足りなくなるということもあったわけでございますけれども、神奈川県では、やはり風光明媚なものを守るために町が規制しているという例もあるわけでございます。

 そういうことを見ますと、やはり不算入措置というものは、土地が狭い都市部の制約のもとで、住宅地の環境というものを損なわない範囲で住宅の床面積を確保するための措置なんだという、法律の持つ原点、こういうものを再認識していかなければならないと思っております。

 そう考えますと、そういうものが違う方に利用されて、私も、横浜市の問題になっている傾斜地マンションというのは、二、三カ所、本牧の方のところでちょっと見たんですけれども、やはり想定外の結果、しかし、こういう問題が起こってしまったということは、予防的に取り組んでいかなければならない、こんなふうに考えております。

松崎(哲)委員 今大変重要な御答弁を実はいただいたと思いますけれども、これから少し具体例をお聞きしながら、大臣の御答弁を参照させていただいて次の質問に進めさせていただきたい、こう思っております。

 まず、紛争が起きている地下室マンションの実態です。それは、先ほど葉梨委員に対する御答弁で二十一という数字が出ております。具体的に横浜、川崎ということはわかっておりますが、今、大臣の御答弁の中で一部ありましたけれども、その他、横浜、川崎でないところでは具体的にどういうところなのかということを御答弁いただければと思います。

松野政府参考人 先ほど御質問でも出ましたが、現在のところ二十一件の紛争があるということでございます。調査をした東京と、それから十三政令市の地域内ですが、建築確認、全体三十七万件ございました。この中で紛争に至っているものが二十一件ということでございます。

 横浜、川崎以外での事例を申し上げますと、東京の文京区の第一種低層住居専用地域でのマンション、これは地上三階地下二階という例でございます。それから練馬区での、これも第一種低層住居専用地域、地上三階地下一階という事例でございます。

松崎(哲)委員 横浜市につきましては、テレビ、新聞報道等でも非常に紹介をされているわけですけれども、横浜市はそれに対して条例をつくった、これが六月に施行される、こういうことでございます。

 同様の他の都市の条例の制定の状況と申しますか、その辺はどのようになっておりますでしょうか。

松野政府参考人 横浜市におきましては、今回の私どもの法律の内容とは別に、先立って、本年三月、お話のありましたように、建築基準法第五十条に基づく条例でございます。この例では、総階数を規制するという、一般的には例えば五階以下にするというような内容で、六月一日から施行される。それから川崎市におきましては、同様に建築物の総階数を五階以下にするということと、それ以外にも、自主的な条例の内容ですが、盛り土等の制限をする内容、あるいは横浜市では、建築物の総階数を、見かけ上の地上の階数、これを四階以下にするという制限を条例の内容とするというふうに聞いております。

松崎(哲)委員 先ほどの大臣の御答弁の中に、平成六年の改正が違うふうに利用されてというお言葉がございました。想定外の結果になったというような御答弁もございました。

 そこで、原点に立ち返ってというふうに今考えてみたいんですけれども、そもそもこの改正のポイントというのは、地下室にアトリエをつくるとか、あるいは書斎をつくるとか、そういうような有効利用の仕方ということを主に考えて改正されたんではないか、こう思うわけですね。ところが、実際にはこれが地下室マンションという形、特に斜面地マンションという形でなってきているわけですけれども、これはそもそも共同住宅、マンションということを想定していなかったんではないかというふうに思われる。ですから、大臣が想定外の結果というような御答弁になったんではないかと思うんですね。

 それに対して、実は、平成十四年六月二十六日、本委員会におきまして、共産党さんの御質問に対しまして当時の三沢局長の「対象として念頭に置いていたところでございます。」という御答弁があるんですけれども、先ほどの大臣の認識とちょっと違うのではないかと思う。むしろ想定していなかったということをお認めいただいて、そのために今回のこの改正があるのではないかというふうに、私は、当時、十四年も議員ではありませんでした、むしろこの改正というのがそういう御指摘に基づいて、いい方向に行っているのではないかと思うんですが、そうしますと、この十四年の六月二十六日の御答弁というのがちょっと違和感を感じるんですが、いかがでございましょうか。

松野政府参考人 お尋ねの答弁は多分これではないかと思うんですが、御質問の中で、地下室の容積率不算入について共同住宅で使われることを想定していたかという御質問に対して、共同住宅にもこの容積率不算入が可能だというふうに念頭に置いていたということではないかと思います。

 したがって、今回問題となっております、本当の急斜面での、わざわざ盛り土をするとか擁壁をわざわざつける、地盤面をかさ上げするというような、そこまで想定していたという意味ではないというふうに思います。

松崎(哲)委員 念のため伺いましただけでございまして、今の局長のそういうような御認識であれば、まさに法の抜け穴的に斜面地マンションをつくってしまったということに対して今度は行政がどういうふうに対応していくかということですから、それは共産党瀬古委員の質問なわけですけれども、それに対してではなくて、むしろ実際の現状から起こってきた問題について政府としてきちんと対応していくということで、むしろ、いい対応をしているんだというふうに感じるわけでございます。

 ただし、法律で想定外の事態が起きたということでございますから、これはやはり法律で、今回のこの改正というのは条例で定めることができるというふうにする改正なわけですが、むしろ法律の方で、本法でその辺を制限するような形で改正するという方法もあったと思うんですが、これはいかがでございましょうか。要するに、法の想定外のところで起きたことを、各自治体に条例を制定させる、そういう負担をかけるのではなくて、むしろ原点に立ち返って、法できちんとその点について規制をするというようなやり方の方がしかるべきじゃないかと思うんですが、いかがでございましょうか。

松野政府参考人 法律で一律に規制しようとしますと、想定されることとして、例えば地盤面をかなり低いところに、容積不算入の地盤面を低く設定するというようなことになろうかと思いますが、本来地下室の容積不算入は、先ほども申し上げましたが、いろいろな地下室としての、例えば日曜大工の部屋だとか多目的利用、トランクルーム、あるいはピアノを十分に練習できるような部屋が欲しいとか、そういった潤いのある豊かな住生活を実現するために導入したものでございます。

 通常の傾斜地では、普通の平たんな平面よりは地面がうまく掘りやすい、これは創意工夫で、周辺に余り迷惑をかけない形でそういう豊かな住生活が実現できるのではないかということで、通常の斜面の、想定した規定として、今の三メーターごとに地盤面を設定するというようなことを考えていたわけですが、国がそういった形で一律に規制してしまいますと、もう既にそういった適切な利用をしている斜面利用も既存不適格の扱いにしてしまって、これは将来大きな問題になってしまうということがあり得るわけです。

 したがって、大都市の地価が高いところでわざわざ物すごい工事コストをかけてやっている事例、それを念頭に置いて、その周辺の市や町の状況はどうかというようなことを見ながらできる制度にした方がいいということで、地方公共団体の判断で地域を見定めながらできる、この条例の仕組みがベストだという判断をしたわけでございます。

松崎(哲)委員 そういう意味で、地盤面を新たにつくったり、あるいは斜面地に見かけ、上の方から見れば三階だけれども反対側から見れば七階になるみたいな、こういうような建設の仕方というのはもちろんコストがかかるわけですから、必要がないところではあえてやらないというふうには思うんですね。

 ただし、斜面地というのは、横浜や川崎の事例というのはよく出ておりますけれども、その他の市区町村でも幾らでもあるわけでございますから、そういう建設コストが高いところにあえて今つくろうとしないというのは最近の、昨今の事情でありまして、やはりどんどん市街地が郊外に延びていって、そうすると、そういうような多少建設コストが高いところでもマンションを建設しようというようなインセンティブが働くときには、やはり今後はまた起こり得る。今たまたまこの数年というのは、あるいは十年近くというのはそういう状況にないから起きていないのであって、今後は起こるかもしれないわけですね。

 そうすると、条例にゆだねるというのは、地方の事情、地域の事情というのはその公共団体が一番的確にわかっているというのは全くそのとおりでございますから、それはそれでいいようには思うんですが、まず業者というのは、法律の本来の想定とは違うようなことを抜け目なく検討して、経済行為として別にそういうこと自体はさして責められることではないわけですけれども、その場合には必ず第一番目のケースについては起きてしまうわけですね。

 条例というのは、そのケースが起きてからそれに対応する対策としてつくられるわけですから、そうすると遡及効はないわけですから、必ず一番目のケースでは紛争マンションになってしまうということがありますので、その一番目の問題を防ぐためには、本法で原則禁止しておいて、そうではない、需要がそういうところへ延びてきた場合には緩めることができるというようなやり方がやはり考えられると思うんです。

 先ほど申し上げました、この十年あるいは数年というのはそういう問題は広がっていないけれども、今後は起こり得るということについて御認識をいただければと思うんですが。

松野政府参考人 今先生がおっしゃったような、全国的には一律禁止しておいて、公共団体の条例でいわば可能な地域をむしろ逆に、裏返しのやり方ですが、定めるという方法はどうかということでございます。

 一つは、極めて大都市で、住環境が割合よくて地価が高いところであえて工事を工事費をかけてやるという事例が出てきているということで、全国的な建築行政の現場からすると非常に小さい部分です。したがいまして、全面的に制限をしておいて各地域で緩和したらどうかということになると、大部分が緩和の条例をつくらなければいけないというようなことになります。

 したがいまして、むしろ、今回のような問題が発生する可能性が極めて高いところで、その状況を見ながら、斜面の状況あるいは町の状況、周辺を見ながらやっていただくのがベストだろうと思います。

 先生御指摘のように、確かに、問題が起こってから条例を決めるというようなことになってはやはり問題が発生するということでございますので、この法改正が成立いたしますれば、この改正の趣旨の周知徹底を図りまして、事前に適切な条例が定められるように私どもも努力してまいりたいと思います。

松崎(哲)委員 ちょっと私の誤解かもわかりませんけれども、今回の法改正というのは、私、規制という言葉を使っているんですけれども、禁止するんじゃなくて、地盤面の設定の仕方についてのことでございますよね。ですから、禁止ということじゃないと思うんですけれども、ちょっと、私、誤解かもしれません。

松野政府参考人 今の用語としては禁止というのは不正確でございまして、先生の御指摘のように、ある程度の制限をして、可能なところでいわばそれを緩和するというやり方はどうかという御指摘だったと思います。そのことは、私の言葉遣いがちょっと悪かったと思います。

 それから、先ほどの答弁の中で、川崎市と横浜市の条例の事例で、横須賀市のことを私が横浜市というふうに言ったと指摘がありまして、そこは訂正させていただきたいと思います。

松崎(哲)委員 地下室マンションのお話でございますけれども、結局は六年の改正のときの想定外のことが起こってきたということですから、これに対してはやはり行政としてもきちんと対応する策を今回改正として入れたということですから、この姿勢そのものは当然評価されてしかるべきというふうに思っております。

 本法でどっちにするかということは、ある意味技術的なことでございますので、これは今の局長の御答弁、特にコストがかかるところでは、かかることをあえてしないだろうということは実際そのとおりだと思います。ただ、十分に将来起こり得ることについて対応ができるような形を持っていていただきたいということを要望させていただきたいと思います。

 次に、自動回転ドアの問題に移らせていただきたいんですけれども、森ビルのあの事故でございます。

 本委員会でも何度か質疑がございまして、既に御答弁をいただいております。これにつきまして、またしばらく時間がたちましたので、このガイドラインをつくるというような方向だと思いますが、現状どうなっているかということを伺わせていただきたいと思います。

 その前提といたしまして、新聞報道によると、国交省さんの方で、こういう事例、問題の把握ということにつきまして、平成十一年には十五件、十二年で二十二件、十三年で四十件、十四年で二十六件、十五年で五十八件、計百六十一件起きているということを把握されているというふうに承知しているんですが、これはいつ時点で把握されたものかということから御答弁をいただければと思います。

松野政府参考人 まず、自動回転ドアの事故防止についての取り組みの状況でございますが、六本木ヒルズにおきまして大変痛ましい事故が発生いたしたわけでございます。

 このような重大事故が発生したことを重く受けとめまして、直ちに、三月二十九日には、国土交通省及び経済産業省より、関係団体、主要メーカー各社に対しまして、設置実態の報告、当面の事故防止対策を要請いたしました。四月一日には、全国の都道府県に対し、大型の自動回転ドアを設置している建築物所有者への注意喚起、現地での使用状況等の点検、確認を行い、国土交通省に報告するよう求めたところでございます。

 さらに、国土交通省と経済産業省の共同で自動回転ドアの事故防止対策に関する検討会を設置いたしまして、第一回を四月八日に、第二回を五月七日に開催しまして、おおむね三カ月程度で、設計者あるいは管理者が守るべきガイドラインを整備することとしたところでございます。

 今後、六月中に検討会をさらに二回開催いたしまして、六月末を目途に、自動回転ドアの事故防止対策のガイドラインを整備する予定でございます。その普及により事故防止に努めてまいりたいと考えております。

 事故の数の報告でございますが、これは、公共団体に対して調査を求めて、四月十六日までに報告していただくようにお願いをした、その集計結果でございます。

松崎(哲)委員 いずれにいたしましても、これは事故が起こってからということでございます。

 やはり自動回転ドアというのは、私も事故前に実は何度かというか、もっと前に通ったことがあって、これは危ないなというふうに思った経験がございます。恐らく本委員会の委員の皆さんも、また役所の皆さんもそういうお気持ちを抱くことがあったのではないかというふうに思うんですが、やはりそのときに、問題の把握といいますか、結局は、自動回転ドアについて、経済産業省も含めまして何も規制がなかったということが、あの事故の結果、明らかになったわけでございます。ですから、結局、その情報を収集するのも、収集が終わりましたのが四月十六日というお答えでしたから、そういう意味では後手後手であったということでございます。

 それで、この問題が起きて以降、実は業界の方では、業界というのはビルの方ですね、すぐ使用を中止されたところがあります。さらには、これを撤去するというような動きもあると聞いておりますけれども、この辺のことについては把握をされておられるんでしょうか。

松野政府参考人 これは、先ほど申し上げましたように、三月二十九日に、国土交通省それから経済産業省より、関係団体あるいはメーカー各社に対しまして、設置実態の報告を求めると同時に、当面の事故防止対策を要請いたしまして、回転ドアを休止するか、あるいは動かす場合に警備員を必ず配置してほしいというようなことを求めた結果、全国的にそういう状態に今なってきているということでございまして、さらにその後どうなっているかということについて把握しているというわけではございません。

松崎(哲)委員 先ほど、私自身が通るときに危ないというふうに感じたということを申しました。手動式の小さい回転ドアの場合には、自分で、回るスピードとかを、調節すると言うと変ですけれども、自分で押しながら入るわけですから、それほど、これ危ないなと思ったわけではないんですけれども、あの自動回転ドアというのは、回っているというか、中に入っているときに急に速度が変わるような印象もございますし、実に非常に危険だなというふうに思ったわけです。これは危険だからといって、私は、周りに普通のドアがある場合にはそちらを使っていたというような個人的な経験としてあるわけですが、実はそのことを私は自分で非常に反省いたしました、ああいう事故が起こってから。

 自分自身は危ないというふうに感じてそれを使わないようにしていたという自分の行動があるわけですけれども、これは一市民としては、防衛策としてはそういうことしかなかったわけでございますけれども、昨年当選しまして、特にまたこの国土交通委員を拝命してからも、自分はそういう危険があるということをある意味で認識していたにもかかわらず、そのことを自分の中だけで解決していて、指摘をするとか、あるいは国土交通省さんの方に伺ってみるとかすることをしなかった、そういう意味で不作為であった、不作為の責任があるなということを実は非常に自分自身で痛感しております。

 政治家というのは、これはもとをただせば護民官なわけですね。ですから、護民官の立場として、国民の方々に対して、自分がわかったこと、自分が危ないというふうに感じたら、それを今は何とかすることができる立場にある。できる立場にあるにもかかわらず、また、こういう形で質問させていただく機会とかがあるにもかかわらずしなかったということは、私自身、当選して数カ月の間に起きた事故でございますから、そういう意味では、これからの議員活動をしていく上で非常に自戒をして、今後こういうことがないように、行政がわからなければそれは政治が指摘する。それが、地元から何万という票をいただいて、代表として国会に議席をいただいている立場として、私自身もやはり自戒をしていかなければいけないというふうに考えました。

 それはやはり行政のお立場としても同じだと思うんですね。こういう問題が起こり得るというのはつかさつかさの方々が一番よく御承知だと思いますので、そういう意味では、私どもも自戒してまいりますが、行政の衝に携わる方としては、ぜひそのような認識を共通して、常に事に当たっていただきたいと御要望いたします。

 大臣、御所見があればですけれども、なければ局長でも結構でございます。

松野政府参考人 今先生が御指摘になりましたことは私どもも大変痛切に反省しているところでございまして、六本木ヒルズのあの事故が、過去、オープンしてからほぼ一年で三十三件の事故があったということで、なぜこれが我々の方に伝わってきていなかったのかということが反省点としてございます。

 それで、一つは、例えば救急車で運ばれるような事例が少なからずあったというふうに聞いております。通常、事故が起こったときに救急車が駆けつけるようなときに、現場に駆けつけるのは消防サイドの救急車あるいは警察というようなことで、建築行政サイドに連絡があって駆けつけるというような体制には今はないわけですから、知ることができなかったということがございます。

 少なくともそういった情報が、毎回毎回連絡をいただくというのは救急車の消防サイドも過重な負担になるかもしれませんけれども、定期的に例えば情報を入れて、どうもあのビルでは事故が多いとか、けが人が多いとか、そういった情報でも何とかとることができないかというようなこと、あるいは、今回提案しておりますビルの定期報告制度というのがございますが、その中でこういった事故についても何か報告していただくことができないか、そういったこともあわせて検討させていただいております。

松崎(哲)委員 事故等についての情報収集の仕組みについての整備ということをぜひお願いしたいということを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

赤羽委員長 下条みつ君。

下条委員 民主党の下条みつでございます。

 本法案について、若干の時間の中で幾つか質問させていただきたいと思います。よろしくお願いします。

 まず、建築基準法の改正前の第十条の保安上危険な建築物に対する措置の部分についてちょっと御質問させていただきたいと思います。

 現行の建築基準法第十条というのは、既存不適格建築物のうち、著しく保安上危険または衛生上有害なものに関して、特定行政庁が所有者等に対して保安上必要な措置を命ずることができるとされています。御省から出していただいた資料をもとにしてちょっとお話しさせていただきますけれども、近年、この規定に基づく命令の発動件数がほとんどないというのが実情だと思います。そちらから出していただいたものでいきますと、平成十年が六件、十一年八件、十二年が四件。十三年が、これはまた特別でして、広島県の芸予地震被害を受けた近接地における建設物に対して四十九件の発動命令が出ている。十四年に関してはたったの二件しか発動が出ていない。局長、これが現状ですよね。

 それで、私が何を言いたいかというと、耐震性に関する既存不適格建築物、これは住宅で千四百万戸、非住宅で百二十四万棟もある。これはそちらから出していただいた資料ですけれども、それなのにもかかわらず命令発動が毎年二件とか五件とか、そういうことでずっと通してきているこの建築基準法第十条なんですが、私に言わせてもらうと、確かに法律はすばらしいと思います。ただ、現時点でそれだけ不適格の建築物が何千万とある中で、なぜこんなに発動が少ないのかというのに、私はちょっとクエスチョンを持っております。

 そこで、絵にかいたもちとは言いませんが、現状、この第十条の命令の発動に至るまでの保安上危険、衛生上有害というものを、だれが、いつ、どうやって今までチェックしてきたかをちょっとお答えいただきたいと思います。お願いします。

松野政府参考人 御指摘のように、十条命令はそれほど多数発動されているわけではございません。

 その命令を行うに当たっては、まず、どういう場合かということですが、一つは、特定行政庁によるパトロール、住民からの通報、災害発生時の被害報告、あるいは防火規定に関する消防サイドの情報提供ということで危険性が懸念される建築物を把握するということがございまして、必要に応じまして、基準法第十二条三項、現在の第三項ですが、この規定に基づいて、詳細な報告を求めるという規定がございます。その上で、著しく保安上危険または衛生上有害であるか否かを判断し、命令を行っているということでございます。

 こういった、外面から見ても著しく保安上危険または衛生上有害となるという極めて限定した表現になっておりますので、なかなか命令に至るケースも少ない。それから、ほうっておけばこういう状態になるのではないかというものも、今のところ特に規定がなくて、立入検査もできないということでございますので、今回、この改正案では、放置すればそういう状態になるのではないかという段階で、立入検査をした結果ですが、予防的に改修していただくというような勧告、あるいは場合によっては命令ということまでできる制度を導入しようということでございます。

下条委員 ちょっと改正の部分を明確にもう一度お聞きしたいと思うんですけれども、要は、局長、数字の世界で僕も生きてきましたので、何千万戸ある中で発動命令が二件ぐらいだと、やはり何か、チェック機能とか検査方法とか、パトロールだけで一体わかるのかなというところが問題になっていると私は思っています。

 今法案については民主党としても賛成でございますので、法案そのものについての改正は僕は悪いと思わないんです、いい方向に進んでいる。ただ、物事は百点ではないと思いますが。問題は、それを遂行する生の生き物に法案を変えていくために息を吹き込むことが一番必要である。文章上の問題じゃないというふうに思います。

 そういう意味では、今度の十条の第一項に、今おっしゃった検査をした後に「相当の猶予期限を付けて、」「勧告することができる。」というふうにありますけれども、相当の猶予期間を、例えば私が建物をオーナーで受けた、これは三カ月なのか、十年なのか、十五年なのか。それは物によって違うとおっしゃるかもしれませんが、これは「相当の」しか載っていないですね、条項上は。

 そこで、これは一体どの程度の猶予期間を建築者に、建築を持っている方に与えていくのか。そのことについてちょっとお聞かせいただきたいというふうに思います。

松野政府参考人 御指摘のとおり、勧告、命令を行う場合に「相当の猶予期限を付けて、」ということでございます。

 それで、もちろん個別のケースごとに判断しなければいけない、命令権限を持ちます公共団体の個別の事案ごとの判断というふうに思いますが、通常は、改修をしていただくというその改修の内容に応じまして、一般的に必要となる設計の期間あるいは工事の手配に要する期間、こういうものを考慮して定めるというふうに考えております。

 そういった意味で、それぞれ特定行政庁の御意見も聞きながらガイドラインを整備して示していきたいと考えておりますけれども、参考になる事例としては、違反建築物に対する命令、これも「相当の猶予期限を付けて、」ということでございます。これは実際はどうなっているかといいますと、大体、今申し上げました必要となる期間などを考慮して、一、二カ月程度というのが普通という実態でございます。

下条委員 大変いいお答えをいただきましてありがとうございます。

 法案上は、適当な、相当な猶予期間しか載っておりませんので、私は、例えば五年とか十年であったとしたらこれは大変なことだ、その間にいろいろな事故や地震や防災上のものが起きたらだれが責任をとるのかなと思っておりましたので、今のお答えでいくと一、二カ月のうちに動き出してもらわなきゃいかぬぞということだと思うんですね。

 けれども、私は、今おっしゃった中で、設計とかその他の準備期間ということに対して、行政庁の方にお任せすることもあるとおっしゃっておりましたけれども、そこの部分をもう少し監督省庁として明確に、この部分の、例えば、よく前もここで危険度のフェーズ1、2、3、僕はアメリカにおりましたので、アメリカではきちっとしているのですね、その区分けが。例えば、国交省さんで、この程度のものはともかく三カ月でやれ、この程度は半年かかるだろう。これだったら、幾ら何だって、今でかい建物を建てることでさえ相当な期間かからずできるわけですから、きちっと区切って、それに対して違反をしたらそれについてきちっと罰則を入れるというふうにやっていかないと、五、六人赤信号で渡ったから私もいいじゃないか、だれも怒られないやということであれば、僕が一番嫌いな、正直者がばかを見るような、そういう法案に少しずつ近づいちゃうんじゃないかなというふうに思います。

 というのは、最初に申し上げた検査の発動の件数も、これは、きょうは先ほどまで小学生がいましたけれども、小学生が見たって莫大に少ないわけですね。ということは、何かそこにミスがあるんじゃないかと思いますので、そこら辺を含めてきちっと期限を切った形で対応をこれからもしていただきたいし、明確に法案上載っけていっていただきたい、今後の課題としてお願いしたいというふうに思います。

 時間の限りがありますので次に移りたいと思いますが、次は、第十二条の報告と検査の部分についてお聞きしたいと思います。

 二〇〇一年九月に歌舞伎町でああいうビル火災がありまして、四十数名の非常にとうとい命が亡くなった。御冥福をお祈りしたいと思いますが、この火災は、はっきり言うといろいろなミスが露呈した、それは国の方も新宿区の方も、そして持ち主も含めていろいろなミスがあからさまになった事故だったのじゃないかと私は思います。そういう意味では、火災となった雑居ビルは、まず、建築確認を受けた時点の用途をその後無断で変更した、そして、防火戸の状況などを含む定期報告書を一度も提出していない。

 また、このビルに限らず、私がちょっと御省から報告率の推移というのをいただいております。特殊建築物の定期報告書の報告率ですか、これは、過去十年、五〇%台です。ということは、定期報告は百件中四十数件が過去十年間において全く行われていないというふうに判断していいわけですね。

 そこで、私としては、こういう歌舞伎町のような、これは一件二件の話じゃないと思いますけれども、事例を見たときに、一つは、言いにくいですけれども、自治体の管理のずさんさもあるのじゃないかな。私はかなりあると思います。

 この事例で、その部分を含めて、局長、なぜこんなに報告率が低いのか、また、このままでいいのかというところにまず私は疑問を持っております。報告率について、何でこんなに低いのでしょうか。お答えいただけたらというふうに思います。

松野政府参考人 現在、確かに五〇%台の定期報告率ということでございます。

 なぜ低いかということですけれども、この定期報告制度に関する建築物の所有者の方々の認識が十分でないということがあるかと思います。それから、定期報告がなされているかどうかを、例えばテナントとして入るときに利用者として知って、それを、ああ、このビルは定期報告が出ていてちゃんとした管理をされているというようなことが判断できる仕組みで今まではなかったというところにも一つの原因があるのではないかということでございます。

 そういうことから、今回、定期報告が一向に出てこないケースについても立入検査をしていきたいということ。それから、定期報告についても閲覧できる制度にしたい。つまり、テナントとして入りたい方が、このビルはどうなんだろう、定期報告が本当に出ているんだろうかということも見られるようにして、ビルの所有者からすると、市場の中でそういう評価をされるということになれば定期報告に対する認識が高まってくるということも考えられますので、そういった改正を今回御提案申し上げているということでございます。

下条委員 ありがとうございます。

 今、一連の発動率の低さ、そして定期報告率の低さについて、やはり私は非常に危惧をしております。

 この辺の、ちょっと中途なんですが、石原大臣にぜひ、もし御所見があれば、発動率が、住宅が千何百万戸あって一件とか二件しかない。また報告率も、今おっしゃったように、入る人が見ればいいじゃないか、そういう発想で果たしてリーダーとしてお受けになるのか。それとも、もう少し官で、閲覧をするよりも前に、むしろ持っている人間に責任があるというふうに私は思いますので、御指導としてどんな御意見があるか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

石原国務大臣 二点について下条委員が御指摘をされていたのだと思います。

 措置命令ができることになっているけれども、実態面としては数件しかない、この問題点。これにつきましては、要件が厳格であるためにそこに至らないという政府参考人の説明がありましたが、今回の法律案でこれを是正していくということが重要だと思っております。

 そして二点目は、私も大変重要な御指摘だと思ったんですが、これは政府参考人側の答弁としては、報告書等々が利用者サイドに見えることによって所有者等々の啓蒙を行うということですけれども、委員の御指摘はもう少しダイレクトに、そういうものを所有している人間の意識が変わらなければならない。すなわち、建築基準法は建物の安心、安全というものをつかさどっているわけでございますけれども、そういう意識を持っているオーナーさんというのが実は少ない、そこはオーナーの側の自己責任である、そういうものが実は日本の社会ではまだまだ行き届いていないという御指摘だと聞かせていただきました。その点についてはどうするということをまだお話をさせていただいておりませんけれども、やはりそういうものの啓蒙という、ダイレクトの部分というものが改めて必要であるということをこの歌舞伎町の事件は物語っているいい例であります。

 そういうことを下条委員が御指摘いただいたものだと強く感じたところでございます。

下条委員 大臣、ありがとうございます。

 ぜひ持ち主、所有者の方に、もう少し、五割ぐらいでいいのか、もうちょっと上げていくように何か施策をしていかなきゃいけないというふうに思われますので、ぜひ前向きに今後も御検討いただいて、我々の子供たちとか親戚が、いつそのビルに入って、不手際なビルのことによって御自身の親族を失うかもしれない、そう置きかえていただくと非常に身近な問題になるんじゃないかなというふうに思いますので、ぜひ今後とも御検討いただければというふうに思います。

 次に、今まで話した中の付随に少しかかわってくるかもしれませんが、今回、法案の第九十八条から百五条の間に罰則部分の改正というのが入っております。これは、さっきおっしゃったように、是正命令に違反したり、定期報告の未報告の罰則を強化する。罰金を大幅に上げていくということも非常にすばらしいことだ。つまり、やらなきゃ払えよということだと思いますけれども、問題は、違反をどうやって厳しくチェックしていくかと再三再四私は申し上げておりますけれども、一方で、この罰則の部分について、例えば定期報告をしない人たちに対する罰則、これは百件あるうち五十何件しかないですけれども、局長、定期報告しない人とか、そういう人たちというのはちゃんとお金は徴求されているんですか、罰則金として。その辺は、もし具体的な数字等があればちょっとお話しいただければというふうに思います。

    〔委員長退席、望月委員長代理着席〕

松野政府参考人 罰金は払ってもらうという、最終的にはそういういわば刑事罰としてでございますが、何件幾らで確定したというデータは、実は私どもとしては、今の段階では把握しておりません。

下条委員 ちょっと残念な回答だと思います、局長。

 つまり、何件、報告をしていない人に罰則金をもらっているかもらっていないかが、監督である御省の、それも一番の局長さんが知らないぞ。把握して、まあ、今お手元にないかもしれない、それはあるかもしれません。ただ、こういう話を進めていくことは先にレクでさせていただいておるわけです。ですから、その中で、罰金の部分についての徴求率というのは、税収が低い中でこれだけあるわけですから、それは今後の課題として十分把握していって、貴重な税金になるわけですね、これは罰金ですから。

 そういう意味では、その辺の把握そして徴求に対するハウツー、なぜ取れなかったか。今回いろいろな問題が、年金の問題も出ていますけれども、追っかけが少し弱いんじゃないか。シカトしておけば何年かだれも言ってこねえだよというふうになるんであれば、どんどん悪徳業者が違法建築をふやし、そして御省の通告が、紙っぺら一枚が二回ぐらいしか来ないよという状態であれば、どんどんどんどん危険な建物がふえていくということにつながっていきかねないというふうに思います。

 私が言いたいのは、罰金は一億でも百万でも五十万でも一兆でもいいんです、そんなものは。要するに、罰金を払わせるハウツーを御省がそれぞれの行政庁とか御省自身の指示でもってきちっと下に浸透する、ピラミッドの血液循環をよくして、そのピラミッドの法案の息を吹き込まないと、僕は法案というのは字だけで終わってしまう、頭でっかちのものになってしまうというふうに思うんですね。これが、僕がきょう、短い時間ですけれども、最初の段階から詰めていった理由なんです。

 何回も申し上げます、今回の改正は私どもは賛成でございます。しかし、同じようなことが起こるんであれば、見かけ上のものをきれいに変えていっても、私は生き物の法案になってこないというふうに思いますので、あえてちょっと耳に痛いような言い方をさせていただきましたが、御検討を進めていただきたいというふうに思います。

 次に、時間があと五分しかないものですから急がせていただきたいと思うんですが、罰金が終わって、今度は、不適格とされた既存の改修をやっていきなさいよという指令が出るわけですね、局長。そうすると、今度、是正勧告や命令が強化されると、次の段階が、実際にその勧告に従わなきゃいけないという問題が出てきます。そこで、勧告や命令を受けた側の改修などにかかる費用というのが今度は問題になってくる。持ち主に費用がかかってきちゃう。

 私は金融機関にいたので、この部分は非常に自分でも気にかかるところなんですけれども、先日、それについて、何か御省としてカバーリング、サポートするシステムありますかという質問をさせていただきましたら、ここに今、耐震診断及び耐震改修に係る支援制度の概要、これはすごくすばらしいものだと思います、僕は。優遇税制もありますし、補助も入っている。これはいいな、この制度は非常にすばらしい制度だと思います。

 ただ、問題は、ここに防火が入っていないんですね。耐震の方は、補助、融資、優遇制度がある。防火の方は何一つ入っていない。そこで、私どもの方から御省の関連の方に御質問させていただきました。そうしたら、防火はちょっとと思いますという反応が返ってきた。ところが、局長、地震と火事はどっちが多いですか。

 私も、二年ほど前に自分の住んでいるアパートの隣の家が全焼しました。私自身も命からがら、燃えてしまえばいいという人も中にはいたかもしれませんが、友人や消防団の連中が私を起こしに来てくれまして、本当にこうやって立っているのはありがたいなというふうに思っています。

 そういう意味では、局長、耐震だけで果たしていいんでしょうか。私は、もっと多くある防火の方についての、改修命令を受けたことに対して何の補助もなければ、結局は、簡単に言えば、オーナーさんは、補助がないからできねえや、もうちょっと待っていりゃ、そのうち監査の人が来たときには死んだふりすりゃいいじゃねえかというふうになったとしたら、私としては、この法案はもう全くもって現実と乖離しているなと。

 ただし、この関東というのは、嫌な言い方ですけれども、前に関東大震災があったり、耐震もこれは非常に重要です。これは僕もすごくわかります。ただ、この部分についてよりも、むしろ防火、特にこの間の、まさにさっき大臣のおっしゃった新宿の歌舞伎町でのああいう防火を中心にした事故が毎日毎日起きている。これについてぜひ、御回答はまだなかったんですが、優遇税制を含めて補助支援システムを設けてもらいたいという私の希望でございますけれども、いかがでありますか。

松野政府参考人 確かに耐震改修については、住宅それから非住宅についても補助制度を用意してございます。

 例えば、それ以外の防火避難関係ですけれども、住宅につきましては、実はリフォームに関する住宅金融公庫の融資、これは耐震改修に限らず防火の改修も使える共通の制度になっております。それから、住宅ローン減税もリフォームの費用の残高一%の控除ができますけれども、これも耐震改修もできますし、リフォームということで防火避難改修もそれは使える制度になっております。

 ただ、非住宅につきましては、今申し上げました金融公庫とか住宅ローン減税は使えないということです。今ある制度としては、日本政策投資銀行につきまして、建築物の長寿命化の観点からの改修に対して適用できる融資制度というのがありまして、これは使える制度として整備されております。

 それからもう一つ、ストック・ライフサイクル・マネジメント事業というものもございます。それからエコビル整備事業というものもございまして、これは、本来、防火避難改修のための制度ということではないんですが、それにも一応使える制度にはなっているということでございます。

 ただ、こうしたことがまだ一般的に広く知られて使われていないのではないかという反省点もございますので、こういったことも含めて私ども努力してまいりたいというふうに考えております。

下条委員 ありがとうございます。

 今御自身でおっしゃったとおりでございまして、防火の部分はやはり薄いと思います。エコにしろ何にしろ、それはいろいろな名称があって、そこから金を引っ張ることは、これは金融マンですから私もわかります。ただ、是正勧告とか勧告を受けた方々がそれを優先にしなくちゃいけないわけですね、自分の事業の中で。そのときに、耐震の方は優先順位の非常に高いものが幾つかそろっている。それに対して防火の方が少なければ、どうしてもこれは後手後手になってしまう。これがやはり歌舞伎町のああいう事件の幾つかの要因の一つに近い形になっているんじゃないかと私は思います。

 そういう意味では、ぜひ、今、これからも検討するとおっしゃっていただきましたけれども、財政が非常に厳しい中ですけれども、結局、国民の命を守ることにつながります。ですから、特に非住宅について、今後、税制を含めた御検討をいただければというふうに思いますので、これを最後にお願い申し上げまして、私の時間が参りましたので、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

望月委員長代理 中川治君。

中川(治)委員 民主党の中川治でございます。

 建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図る法案、こういうことで出されているものについては、私も基本的に賛成でございます。

 しかし、大阪にはけったいなやつがおりまして、国の方でこういうことを一生懸命検討しているかと思えば、例えば法善寺横丁でも、二回も火災が起こっているのに、肩が触れ合う道でないと風情がないといって法の抜け穴を一生懸命探す。私はこれは賛成でございますけれども、そういうのも一つの地域の生き方、一つの方法かな、そういうものがあってもよいというふうにも思います。

 あるいは、私の地元、これはあえてどこの行政とは言いませんけれども、例えば、地域の中に三メートルもないような道がある。しかも、側溝、溝をふたもせぬとあけてある。ふたをしましょうかというような話をしたら、いや、中川君、何言うてんねん、いつ落ちるかわからぬ溝があるから車がゆっくり走るんや。これをふたしてしもうたら、よその車がどっと入ってきて、近所のおばんが死んでまう。だから道は狭い方がええ、ふたはせぬほうがええんや。そんな八メートルの道をつくってしもうたら、だれもだんじり引かぬようになる。そんなことをポリシーにして生きていこうという町もある。

 私は、それも含めて地域の選択だというふうに思いますし、そういう独自性をさらに大いに発揮できるようなまちづくり、あるいは温かい国の視点というものが大事かな、そんなふうに思います。これは一つ間違いますと、法の抜け穴を探して幾らでもやりたい放題やるということにもつながりますので、そういうことばかりは言っておられませんけれども、私はそんな思いがしております。

 さて、この法案の中で、密集市街地の整備促進についてということでテーマがございます。関係組合への税制面での特例措置をやっていこう等、大いに私は賛成でございます。私は、議員の時代から、密集市街地の再開発、これをどう進めていくか。大阪でもたくさんの地域が対象にあったと思います、こういうものを進めていく上で、公営住宅との関係とか、いろいろなテーマでずっとやっておりましたので、この法案、これ幸いと少しひっかけて、そういうことも含めて質問をさせていただきたい、そんなふうに思っております。

 まず、住宅の密集市街地です、改善すべき地域、大阪府内ではどの程度あるんでしょうか。

松野政府参考人 お答えいたします。

 都市再生本部の第三次決定というのが平成十三年十二月にございました。この中で、特に大火の可能性が高い危険な市街地、これは全国で約八千ヘクタールということでございますが、これを重点的に対象として整備する、今後十年間で最低限の安全性を確保するということになっております。

 国土交通省では、平成十五年に改めて全国調査を実施いたしまして、地震時において大規模な火災の可能性があり、重点的に改善すべき密集市街地、これを重点密集市街地として公表いたしました。大阪府内におきましてはこれが二千二百九十五ヘクタールの地域ということで、これは重点密集市街地が存在しているところでございます。

 この二千二百九十五ヘクタールのうちの二千百三十三ヘクタールにつきましては、既に密集市街地の整備、改善に係る事業を実施しております。また、この地区以外に、従来から事業を実施してきている地区がございます。そういった地区を含めますと、現在、大阪府におきましては十八地区、二千七百七十三ヘクタールの地区において事業を実施しているという状況でございます。

中川(治)委員 大阪でも七市十八地区、二千七百七十三ヘクタールで事業を実施中、こういうことなんですけれども、事業の実施主体というのは市町村なんですね。非常に財政難ということもありまして、これから市町村はどんどん財政難に突入をしてまいりますから、ある意味では本当に実現可能なのかという思いがいたしております。

 この辺について国の方はどういう見通しを持っておられるか、ごく簡単で結構でございます、お答えいただけましたら。

松野政府参考人 二千七百七十三ヘクタール、大阪府下で事業を実施しておりますが、御指摘のように、公共団体の財政状況が大変厳しいという状況でございます。したがって、密集市街地の中で、我々としては、目標が、一つは最低限の安全性を確保するということで、不燃化、目標として通常よく言われておりますのは、燃えない、不燃領域と言っていますが、不燃領域を全体の四〇%に持っていくということが、安全のサイドにとってはそれが一つの目標でございます。

 これは当然、道路整備だとか、そういったことによる部分の面積ももちろん入ってまいりますが、一つは建物の不燃化ということも大変重要でございまして、これは、むしろ個々の建築、建てかえというような行為を規制誘導で持っていくべき性格だというふうに基本的には思っておりますが、大阪府下でも、守口市が既に準防火地域を新たに指定するといったことで、少なくとも最低限準耐火建築物にするというようなことで不燃化の促進をしていくということでございます。

 もう一つは、やはり環境整備ということもございます。これにつきましては、細街路の整備とか、こういったことで進めていかなければいけない。これにつきましては、財政状況が大変厳しいことではございますが、先ほどの規制誘導措置を有効に活用しながら、また、事業面でも各公共団体の積極的な取り組みをしていただきたい。我々も精いっぱいこれを支援してまいりたいというふうに考えているところでございます。

中川(治)委員 国で指定されている住宅密集地域、重点密集市街地というんですか、そういう地域もあります。ただ、もっと小さなエリアでは、再開発が必要なところはまだまだたくさん大阪でもあるというふうに私は思っております。

 大体、こういうことをやるときに、力のない自治体は、今まででしたら、公団頼み、都市公団来てください、そしてしんどいところを手伝ってください、こういうことだったんですが、都市公団もこのごろは、七月からは民営化というようなことも含めて形が変わっていきますので、どうも運営の方も変わってまいります。そういうことも含めて、私は、密集市街地の再開発に当たって、特にこれからの大きな課題であります公営住宅、府営住宅、県営住宅あるいは市町村営の公営住宅、あるいは公団住宅の建てかえ事業というものをもう少しあわせて、ミックスして活用していくということを積極的にやらないと、こういう事業を一気に進めていくということは難しいんではないのかな、こんなふうに思っております。

 例えば大阪の関係でも、ほとんどこれは駅前にある地域でございまして、大体、地元で絵をかきますと駅前全体をどうするかということなんですけれども、私は、もっと思い切って、数キロ離れた公営住宅あるいは公団住宅、その賃貸住宅ですね、そういう建てかえ対象になっているものとセットで開発に活用していくというふうな発想をしなければならないのではないか。

 これは、例えば再開発するときにでも、代替地が欲しいという方がおられます。片っ方で、公営住宅を、四階、五階建てを一定高層化しますと土地が余ってくる。そうすると、少し離れているけれどもそこに代替地を提供する、そういうもので大いに結構という方も私はおられると思いますし、そういうことも含めた合わせわざを、近隣に限らずに、行政区内であれば大いにやったらどうかというふうなことを思っております。

 逆に、そういうことをすると同時に、駅前の再開発ビルに、一定、公団住宅、公営住宅、建てかえ分をそちらの方へ誘致するということも場合によってはありかな。こういう手法を思い切ってやらないと都市部ではなかなか進まないのではないのかなというふうに私は思っておりますけれども、これも御意見をお伺いしたいと思います。

松野政府参考人 御指摘のように、密集市街地整備と公営住宅、公団住宅の建てかえ、建てかえに限らずですけれども、組み合わせるということは、大変有効な手段ではないかと思います。

 そのほかにも、例えば、密集市街地の整備の際に、従前居住者用住宅の整備という補助制度がございます。これは、公営住宅と同様に、所得に応じて、公営住宅並みの家賃で入っていただける制度がございます。

 そういったものも活用していただけるだろうと思いますし、具体的に大阪府の寝屋川市の例でいいますと、種地を活用しまして受け皿となる公営住宅を整備する、木造賃貸アパートの共同建てかえ事業による転出者を特定入居させる、こういった組み合わせもございます。御指摘のような方法があるのではないかと思います。

 公営住宅の建てかえと密集市街地の整備、改善と連携して、うまくタイミングを合わせて実施していくとか、あるいは、公団住宅も、建てかえをするときに仮にもし余剰地が出たとすれば、密集市街地の整備に伴う受け皿住宅の整備地として利用するといったこともあり得るのではないかと思います。

 御指摘のようなことは、非常にアイデアとしては、これは利用すべき手段として考えられるのではないかと思っております。

中川(治)委員 こういうことをぜひ進めていただきたい。また後で触れたいと思います。

 それに関しまして、お手元に資料を配付させていただきました。表紙はぺらっと破って捨てていただいたらいいんですけれども、配付をいたしました資料は、これは全国の公共住宅、要するに公営住宅、府県営、市町村住宅、それから公団の賃貸住宅、これの年度ごとの建設戸数を棒グラフにしたものでございまして、長い棒がその年度に建設をした総戸数、短い棒はその建設戸数の中に含まれている建てかえ分の戸数ということで、表とグラフをつけておきました。

 これで見ていただきましたら非常にわかるかと思うんですけれども、公営住宅の耐用年度というのは大体一応七十年ということになっておりまして、その半分の三十五年を超えますと建てかえ対象、建てかえようかということで、そのころに大体、傷んでくるのも三十五年、あるいは間取りが古くなってくるのも三十五年ということで、三十五年ぐらいで建てかえる、こういうことになっております。

 ところで、これは大阪府でもそうなんですけれども、私は府会議員時代にしつこくこれを言っておりました。都道府県だとか市町村が行っている公営住宅の建てかえ事業、現在の事業ですけれども、これは昭和三十年代に建設されたものを建てかえるという計画で今四苦八苦というのが現状であります。大体、この二、三年か四、五年の間で、三十年代に建てた住宅がほとんど終わっていく。そして、昭和四十年以降の公営住宅というのが現在は実は大半が手つかずで、建てかえの計画もない、こういうことになっております。

 特に耐震という関係でいえば、建築基準法、昭和五十六年ですから一九八一年、この表では、何年前ということがわかりやすくするように西暦で書いておりますけれども、昭和五十六年以前、つまり一九八〇年以前に建築された公営住宅がかなり膨大な数であります。これについての耐震診断は大丈夫なのか、そういう思いがいたしております。

 そこでお聞きをいたしますけれども、阪神・淡路大震災で、公営住宅でも被害に遭った住宅がたくさんあったと思いますけれども、どの程度倒壊あるいは半壊等の被害があったのか、わかる範囲で結構でございますから、お知らせいただきましたらと思います。

松野政府参考人 阪神・淡路大震災において公営住宅の被災状況ということでございますが、兵庫県の調べによりますと、全壊等の被害を受け滅失した戸数が千八百四十六戸ということでございます。これは、兵庫県全体の管理戸数九万二千五百三十四戸のうちの一・九九%、約二%という数字でございます。

中川(治)委員 何年ぐらいに建った住宅が倒壊したかということについては、詳しいデータというか、なかなかデータが複雑なので一言で言えないというふうに、事前にお聞きしたときにも聞きました。

 いずれにせよ、一九八一年以前の建築基準法で建てられた公営住宅、これについてはやはりしっかりチェックをしていただきたいというふうに思いますし、同時に、この表を見ていただきたいんですけれども、一九六五年、昭和四十年であります、それから昭和五十五年、一九八〇年まで、実はこの一九六五年から一九八〇年までに建設された公営住宅というのが百三万戸あります。全国二百八十万の公営住宅のうちの百三万戸。これがほとんど建てかえということにはなっておりません。昭和四十年といいますのは、先ほども言いましたように一九六五年、ですから、もう築後四十年たっているんですけれども、全国の都道府県は建てかえの計画を持っていないということであります。ですから、今後十年間でこの百三万戸はすべて三十五年ラインを超える、要するに建てかえの対象住宅に入っていくわけであります。

 私はついでにお聞きをしておきたいんですけれども、国土交通省住宅局の皆さんはこの百三万戸をどうするつもりなんだろうか。どうも、一番大量に建設されたこの時期のものについては、手をつけるにしては余りにも大き過ぎるということで、都道府県にも戸惑いがあります、やるかやらないか。そういう意味で、国土交通省の方にもしっかりその方針がないんではないかなという心配がございまして、一度住宅局長にお聞きをしたい、こんなふうに思っておりましたので、御意見をお伺いしたいと思います。

松野政府参考人 昭和四十年度から五十五年度までに建設された公営住宅は大体百万戸ではないかという御指摘がございました。全国で今なお管理されているもので数えますと百十七万戸になります。それから、三十年以前に建設された公営住宅も、管理されている、残っているものが今二十一万戸ある、こういう状況でございます。

 既存公営住宅につきましては、ストックの有効利用を図っていかなければいけないということで、三十五年というお話がございましたが、これは建てかえ事業の要件として耐用年数の半分ということで、三十五年になると対象になり得るということでございます。すべてがもう建てかえなければいけないということではなくて、物によっては改修をしながら使えるものがございますので、こういった全体的な視点で考えていきたいということでございます。

 老朽度の度合いが強く、改善等の対応で十分でないものについては建てかえるということでございますが、基本的には、できるだけ改修などをしながら管理していくということが適切なのではないかと思います。

 現在、公営住宅の事業主体にお願いしておりますのは、公営住宅のストック総合活用計画というものを策定していただくということで、既存ストックにつきましては、建てかえを行うものと改善を行うもの、それから、そのまま維持管理していけるものというふうに区分した上で、優先順位を勘案しながら計画的に事業を実施していく、こういうことを計画として立てていただくということをお願いしております。

 こうした事業主体の取り組みに対して、私どもも必要な補助を行うこととして支援をしております。特に、全面的な改善、トータルリモデルと言っておりますが、これにつきましても補助要件の緩和を行うということで、なお一層こうしたリモデル、改善が円滑に実施できるよう配慮しているところでございます。

中川(治)委員 さらにしつこく言いますけれども、局長、頑張っていきたい、こういうことなんですけれども、予算は減っているんですよね。国土交通省全体の公共事業の予算が減っています。それはそれで、見直しをされるんですから結構です。下水とか道路は五%ぐらいしか減っていないんですけれども、公共住宅については一七%とか一五%という勢いでどんどん落ちているんです。ですから、予算を組もうと思っておりますと言うたって、実際のところは、この公共公営住宅の、これ見てくださいよ、このえんじ色のものは建てかえ戸数ですよ。これはずっと減っているんですよね。これは二〇〇二年ですけれども、まだどんどんと減っているんです。一年間で二万戸、決算ベースでいけば二万戸ないと思います。ということは、百三万戸とか百十万戸を十五年間で建てるんですね。毎年二万戸ということは、五十五年かかるということなんですよ。五十五年かかるということは、一九八〇年に建てた住宅は五十五年かかったら何ぼですか、八十年ですよ、八十年たたないと建てかえできないんです。

 そういう状態になっているときに、今の答弁じゃだめですよ。思い切った対策を講じないと、こんなのできないんです。ただ、人口が減る、いろいろなことがあるんですよ。ですから、公営住宅のあり方全体をどうするかということも含めて、今一定の決断をすべきときではないのかな、私はそんなふうに思っております。

 特に大阪では、千里ニュータウンそれから泉北ニュータウン、要するに、これは大阪府が全国で初めて企業局を立ち上げて、山を削って、そして全国から人々を迎え入れるための新しい町をつくろうといって、このニュータウン方式を全国で最初にやったのが大阪府なんです。この結果、千里、泉北に十万戸ずつ大量の住宅部分が残りまして、ここが今、大量の高齢者社会になりつつあります。

 これをどのようにしてつくりかえるか。そういうことを考えたときに、やはり今のやり方のままではだめではないのかな、そんなふうに思っております。木造密集住宅群、駅周辺にある木造密集住宅も、それから公営住宅を中心としたニュータウン、これも同じような、都市を支えるために、あるいは都市に働きに来た人たちの居住地であった、かつてウサギ小屋というふうに欧米からやゆされた住宅街であります。しかし、四十年ほど前にそこに人が住み、全国から赤の他人が集まって人が住んで、そこで子供ができ、孫ができ、今は町ができているんでありますから、私はこれを新しいふるさとにつくりかえていくという事業を本当の意味で考えないかぬ、そういうことも考えております。それが本当の意味での都市再生ではないのかな、そんな思いがいたしております。

 だから、こういう議論はまた改めて、公営住宅をどうしていくかということについては議論したいと思いますけれども、先ほどの密集市街地整備で、私は、公営住宅の建てかえとセットでやっていくということをやるべきだというふうに申し上げました。局長の方からも、非常に有効な手法だと思う、こういうふうにおっしゃったんですけれども、ぜひそういうことこそ、通達であるとかいろいろな内部文書で、やってもいいんですよと。要するに、地元で必要に応じて大いに絵をかいてください、そしてそれに対してできるだけこたえますよと。

 公団住宅がどういう対応になるのかわかりませんけれども、公団住宅の建てかえが必要なものも、私たち地元では、これはもう建てかえだろうというようなものがいっぱいあります。ただ、これも民営化ということになってきますと、本当の意味で、三枚目を見てください、公団の方はもっと心配です。もっと傷みが私は激しいというふうに思っております。これはまたこれで一度独自に調べて、このままで民営化でやるのかという議論をまたしたいと思いますけれども、これでは済まない、そんなふうに思っております。

 ですから、住宅密集地域のそういう再開発のときにも、少々離れた住宅も含めて、公営住宅も含めて、建てかえ対象ということで府県と市町村の話がつけば国として大いに協力しますよという姿勢をぜひ出していただかないと、こういうことは進まないんですね。そんなのあかんやろ、やってくれへんやろと市町村の担当者はまず思いますから。ぜひそういう積極的な姿勢を示していただきたいということを改めてもう一度申し上げたいと思いますけれども、御答弁、お願いを。

松野政府参考人 密集市街地整備の中で、公営住宅の建てかえ、あるいは公団の建てかえ、こういった部門といわば連携してまちづくりをしていく、大変重要なことでございますが、市町村でも、そこまで思い切った発想、あるいは、公団、今御指摘のように、なかなかやってくれないではないかというようなお考えのところもあるかと思います。

 実は国土交通省では、昨年十月から公共団体と共同で防災街区整備事業等推進会議という会議を設置いたしまして、この問題、どうやったらうまくまちづくりができるか、再生ができるかというところで話し合いを進めてきております。そういった連携方策を含めて、いろいろな制度の活用について議論していきたいと思います。

 また、都市基盤整備公団もこの七月一日から都市再生機構というものに衣がえされるわけですが、密集市街地整備というのが都市再生の大きな課題の一つでございまして、都市再生機構がこれにしっかり取り組んでいくということが一つの使命でございます。したがって、現在の都市基盤整備公団がそういうことをやってくれないのではないかということではなくて、むしろそういったことに積極的に取り組んでいくということが使命だということで、新たに設置される機構としても取り組んでいくべきだというふうに考えております。

中川(治)委員 ぜひ公営住宅については、この二つのグラフ、大臣も念頭に入れておいていただきたいと思います。

 そして、一九六五から一九八〇、六五以降のこの大きな波については、全国どこの都道府県も、今、どうするのかという方針を持っていない。そして、これをこのまま放置しておきますと、七十年たったって建てかえのできないコンクリートスラムができ上がるということでございます。こういうことについて、都市部では、特にこの建てかえ等の事業を通じて、新しい、本当の意味での人間らしいまちづくりをやっていくことができるのではないのか。そういうテーマでこれからもやっていきたいと思いますし、ぜひそういうことをお願いしたいということで、最後に大臣の、御感想で結構でございますので、お聞きをして、終わりたいと思います。

石原国務大臣 公団、公営住宅の建てかえの問題は、大阪に限らず、私の住んでいる家のすぐ横でも起こっておりまして、現に建てかえがスムーズに行われたところもありますが、暮らしている方の高齢化というものは本当にかなり高いものでございまして、その地域の平均値をとりますと、平均年齢がぐっと高くなってしまう。

 こういう問題等々ある中で、そして予算も、委員の御指摘のとおり限られたものではございますが、引き続いて必要な支援というものをしてまいりたいと考えております。

望月委員長代理 高木陽介君。

高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。

 本日は、建築基準法等の一部改正案、質問させていただきたいと思います。

 まず、我が国の総世帯数四千四百万世帯に対しまして、約五千万戸の住宅が存在する。量的な住宅不足というのは解消しているんですけれども、例えば中心市街地において、既存の建築物、この床がいわゆる余っているですとか、また、都市に多数存在しておりますので、我が国の建築物に関する状況というのは、フローの時代からストックの時代への転換点であるというふうに考えられると思います。

 また、少子高齢社会が進展しておりますので、例えば二〇一〇年代の半ばには総世帯数が減少に転じていく。こういう世代構造の変化に伴いますと、住宅の新規需要の低下が見込まれる一方で、環境問題の対応の必要性の高まりを背景として、例えば建築物の長寿化を図るべきという時代の要請もある。こういうことから、やはりストックの時代であると考えられます。

 この建築物のストックを見ますと、建てかえにはまだちょっと早い、ただ、一定の改修が必要な建築物、これは全ストックの四割を占めていると言われておりますし、今後のリフォーム市場の拡大ということを考えますと、我が国の経済の活性化の観点からも大いに期待されるところでもあると思います。

 その上で、東京や大阪などの大都市においては、あいているスペースが多い業務ビル、これを住宅に転用していくですとか、また、地方都市においても、空き店舗などを転用して、地域固有の文化的な資源、その活用など新たなニーズに対応していくといった取り組みがされているというふうにも伺っております。

 このようなストックの時代に、建築物の改修や適切な維持管理が重要となってまいりますけれども、建築物のストックの中には、そもそも現行の最低基準に適合していない古い建物、これが膨大な数で存在しておりますし、また、そうした建築物には、竣工後に建築規制が強化され、場合によって現行基準に不適合になってしまった、こういうような建物も数多くあると思います。

 このいわゆる既存不適格建築物だけではなくて、竣工時点から最低基準を満たさない違反建築物もやはりあるということで、こうした最低基準にも満たない建築物のストックの安全性の確保については、特に、これは先ほどからの御質問でもありましたけれども、地震災害を初めとする災害、事故等の切迫性の高まりを考えますと、適切な改修や維持管理、これが進められるよう早急な対応を講じなければならない、このように考えております。

 そこで、この建築物の安全性の確保に関して、ストック対策についてどのようにお考えなのか、まず局長にお尋ねしたいと思います。

松野政府参考人 建築物ストックの現状でございますが、御指摘のございました耐震のことで考えますと、耐震基準につきましては、全住宅四千四百万戸の約三割、千四百万戸程度、それから、非住宅建築物三百四十万棟の四割程度の約百二十万棟、これが既存不適格ではないかと推計しております。また、防火避難基準を満たさない三階建て以上の建築物も約十万棟残っているのではないかと推計しております。

 この既存不適格建築物は、このまま放置いたしますと、仮に平成七年の阪神・淡路大震災の規模の地震が発生したとすれば、再び大きな被害の発生が予想されるというところでございます。

 現行の既存不適格建築物制度は、規制強化時に既に存在する、または工事中の建築物に対しては新基準への適合を求めない。ただし、増改築をする場合には直ちにすべての最新の基準に合わせるという原則でございます。

 しかしながら、ストックの有効活用が進められる中、即座にすべての基準への適合を求めます今のルール、これでは増改築が先送りされてしまうということが間々起こります。結果として、問題のある建築物が多く残ってしまうということが懸念されます。

 そこで、今回の改正では、増改築をする際に全体計画を立てていただいて、段階的に改修をする、そういった一定の合理化をする。あるいは、放置すれば大変危険な状態になるのではないか、そういうおそれのある既存不適格建築物については、これを前もって予防的に特定行政庁が勧告する、もしこれに従わないというケースには是正命令まで行うことができる制度を創設するといった改正を行っていきたいと考えております。

 もう一つは、ストックの法令遵守の徹底ということで定期報告制度がございますが、この定期報告制度がなされていない場合にも、現在は認められておりませんが、立入検査をできるような監督権限の強化も図る。

 それから、法人罰でございますが、命にかかわるような違反がある、特に多数の者が利用する建築物にそういった違反がある際に、その違反是正命令に反するという場合には最高で罰金を一億円に引き上げるというようなことによって法令遵守を徹底させる、こういったことを措置させていただこうとしているわけでございます。

    〔望月委員長代理退席、委員長着席〕

高木(陽)委員 今いろいろな対応策をお話しいただきましたけれども、例えば阪神・淡路大震災で倒壊した建物、そのうち九四%が耐震基準を満たしていなかった、こういうデータもありますし、また、東京でも、平成十三年九月一日に、新宿歌舞伎町で雑居ビルの火災があって四十四人が亡くなるだとか、これも防火避難に関する最低基準を満たしていない。こういった問題等々、これは最終的には命にかかわる問題でございますから、この点についてはしっかりと指導していっていただきたい、このようにも思います。

 次に、建築物のストック対策に関連し、消費者とのトラブル、これもあると思うんです。これについてお伺いしたいと思います。

 今回の法案で、予算面において耐震改修補助制度の充実、こういったことをやっていますけれども、それ以外に、老朽住宅に住むお年寄りは地震への備えなど不安を持っているわけですね。私たちも持っているんですけれども、特にそういう高齢者に対して、いわゆる点検商法などと呼ばれる悪質な商法が横行していると言われておりますし、中には、国交省のパンフレットを使っていたずらに住宅所有者の不安をあおる、高額な補強金物を販売したりする、こういうトラブルも発生しているというふうに聞いております。

 今回の改正を契機に、耐震性の向上を国民の意識に根づかせていく、これはこれで重要でありますし、国民に信頼される形で耐震改修を進めること、これを進めていかなければならないと思います。しかしながら、今指摘させていただきましたように、耐震補強をめぐる消費者のトラブルについて国交省は実態を把握しているのかどうか。また、このようなトラブル防止のために、高齢者または消費者保護の観点からどのような対策を講じているかということについてお伺いをしたいと思います。

松野政府参考人 耐震補強に関するトラブルの全体を把握することはなかなか困難ではございますが、住宅の改修に関する相談が平成十三年には全国の消費生活センターに約九千件寄せられているということで、数多くございます。その中には耐震補強に関するものがかなり含まれているということが報告されております。

 相談内容としては、いわゆる点検商法と呼ばれる悪質な営業行為でございまして、地方公共団体や、今お話がございました国の機関と紛らわしい名称あるいはパンフレットを使用するとか、そういったことで営業している。それから、各住宅を訪問して、かなりいいかげんな耐震診断を行って、技術的根拠もないまま危険であると伝え、所有者の不安をあおって高額な補強工事を行ったり補強金物を販売したりするといったトラブルが報告されております。

 これに対応することでございますが、国土交通省といたしましては、広報を通じまして住宅の所有者等に対する注意喚起を行う。地方公共団体等における耐震診断、改修に関する相談窓口を設置していただく。それから、技術者の育成、工務店等の関係団体と連携した促進体制の整備の支援。耐震診断、改修のための技術指針の公表、普及などに取り組んできております。

 公共団体でも、これを受けまして、現在、すべての都道府県において相談窓口の設置がなされているところでございまして、今後とも、こうしたことで住宅の所有者が安心して耐震診断、改修を依頼できるような環境づくりを進めてまいりたいと考えております。

高木(陽)委員 消費者というのは、住宅の情報、特に耐震の情報というか、どこで安全なのか、どこで安全じゃないのかというのはなかなか素人としてはわかりづらい。だから、そこにつけ込むというところがあると思うんですね。そういった部分での、先ほど窓口だとかありましたけれども、一般の人たちがすぐに確認できるようなシステム、またはそれをしっかりと普及していくシステム、これもしっかりと今後促進していただきたいということを要望したいと思います。

 次に、マンション対策との関連についてちょっとお尋ねをしたいと思いますが、二年前、マンション建替え円滑化法、この制定に当たりまして、公明党も、マンションのデータベースを充実させていくべきだ、こういう重要性を指摘させていただきました。

 例えば、東京都におきまして、建物の共用部分の性能と管理の両面で一定水準を確保している分譲マンション、これを登録表示する優良マンション登録表示制度、これは平成十五年の四月からスタートさせ、データベース化を積極的に進めておりますけれども、今回、建築基準法の改正によりまして、定期報告、これがきちんとされるようになって、その情報公開が進めば、定期報告の対象となっているマンションについてもストック情報が蓄積されていくわけですね。これはマンション対策の視点からも大きな意義があると思うんです。

 そこでお尋ねをしたいと思いますが、建築基準法の定期報告の結果を活用することによりましてマンションのデータベースを充実させていくべきではないかと考えますけれども、これはどのようにお考えか、お伺いをしたいと思います。

松野政府参考人 平成十四年十二月に、マンションの建替えの円滑化等に関する基本的な方針というものを定めたわけでございますが、国及び地方公共団体が取り組むべき事項として、マンションのデータベースの整備というのを掲げております。地方公共団体に対しまして、データベースの整備をお願いしているところでございます。

 現在の整備状況でございますが、マンション建てかえ事業の認可を所管いたしますのが、都道府県のほかに政令市、中核市及び特例市がございますが、こういった公共団体では、全国的に平均いたしますと五八%、それから、老朽マンションの特に多い三大都市圏では六七%の公共団体が作成済みという報告を受けているところでございます。さらに、今後作成予定というふうに回答のあった公共団体を含めますと、全国、三大都市圏ともに八三%になるということでございます。

 御指摘のとおり、データベースを作成する上で、今回提案申し上げました基準法における定期報告制度の充実ですが、閲覧ができるような制度になるということで、これは、例えばマンションの建築年月日、増改築の経緯それから基準法への適合状況、こういったことがこの閲覧によって容易に把握することができるということで、これは極めて有効であるというふうに思います。

 特に、建築基準法サイドとそれからマンション建てかえの窓口の公共団体の中でうまく連携をとっていただいて、定期報告結果の閲覧制度を活用していただけるように働きかけてまいりたいと考えております。

高木(陽)委員 次に、斜面地のマンションについてお伺いしたいと思いますが、先ほど葉梨委員も御質問され、住民であるというお話もございましたけれども、斜面地のマンション、実は、新聞、テレビ等でも話題となりまして、その横浜の居住者の方が私のところにもいろいろと相談に参りました。

 その当時は、やはり法的にはどうしようもない部分もございまして、今回改正に当たるわけですけれども、マンションのそういう地形の利用、容積率等の緩和等々で地下室住宅ということでつくるのはいいんですけれども、逆にそれが悪用といった部分までいくんではないかなと思われるところも多々あったと思うんですね。

 低層住居専用地域の閑静な住宅街に住んでいる、そういう価値があるということでそこに住み始めた。ところが、目の前に十階建てのマンションができてしまった。これはこれでいつもトラブルのもとなんですけれども、今回の改正によりまして本当に斜面地のマンション問題というのは鎮静化するのかどうか。素朴な質問でございますけれども、この点についてお伺いをしたいと思います。

松野政府参考人 問題となっておりますのは、五年ほど前から横浜、川崎など大都市で、しかも低層住宅地の非常に環境のいいところの傾斜地、特に急斜面、これを利用いたしまして、盛り土をあえてする、あるいは地盤面をかさ上げするということで地下部分をふやすという非常に極端な形で地下室の容積不算入措置を利用するということで、下から見ますと巨大な中高層建築物のような外観になるということで、住環境の悪化を招くといった事例があるということです。

 今回、基準法改正で、地方公共団体の条例で、特に地盤面の中でも容積不算入することのできる地盤面、これを条例で決められるということでございます。

 これを、例えばですが、敷地のかなり低い位置に定めるということをしますと、それ以下でなければ不算入措置が受けられないということで、実際に相当低いところに地下室を本当に設けなければいけないということになりまして、これも、不算入措置が容易に受けられないというかなりの制限になります。

 こういった結果として地下室に係る容積率緩和が適用されないケースが出てくるということで、現在のメリットが相当減少するという結果に、その場所はなります。その結果として、斜面地に建築されるマンションは減少するのではないかというふうに考えております。

高木(陽)委員 時間も参りましたので、最後の質問にさせていただきますが、今回の改正で導入される特例容積率適用地区制度、これは、従来、商業地域で認められていた、容積の移転が可能となる特例容積率適用区域、これを商業地以外に認めようというもので、これはこれでさまざまなメリットはあると思うんですけれども、防災という観点はいいんですが、それとは別の、この制度の活用の仕方によりまして、周辺の空き地等、未利用容積を集めて、これを使って大規模なマンションを建設することも可能だと思うんですね。

 この制度の導入による大規模マンション等の建設によりまして、周辺との紛争、さっきは地下室のマンションでしたけれども、今度は特例容積率適用地区制度、こういう新たな制度の中で大規模マンションができた場合、周辺地区との紛争を懸念されると思いますけれども、どういうふうに対応しようとしているのか、最後にお伺いをしたいと思います。

松野政府参考人 特例容積率適用地区制度でございますが、都市計画の手続によって定められるということでございます。その特例容積率の指定を行う際には、複数の敷地に適用される特例容積率の総量の範囲内で、高低差をつけるといいますか、そういうことでございます。

 しかも、特例容積率を利用して建築される建築物も、通常の斜線制限あるいは日影規制、こういった形態規制を適用するということにしておりますので、通常の建築物と比べて、採光でありますとか通風、日照といった面で市街地環境への影響が大きくなるということはないと思います。

 それから、もし市街地環境確保の観点から必要な場合は、高さ制限も今回の制度では決めることができるという制度にしてございます。

 こういったことも可能な制度でございますので、周辺との紛争が起きるような運用がなされないようなことになるというふうに我々としては考えております。

高木(陽)委員 終わります。

赤羽委員長 穀田恵二君。

穀田委員 建築基準法の条文というのは、実際に暮らす者にとって余り関係ないところでつくられていることもあり、突然隣にマンションが建ったりすることによって、あれあれと思うことが結構多いんですね。だから、実際にも建築基準法というのは、一人一人の住民にとっての暮らしや、家をつくる場合、また住環境などに密接にかかわる問題、本来はそうなんですね。したがって、私は、こういう問題について、一番国民にわかりやすくというのが大事だなと常々思っているんです。

 そこで、きょうは特例容積率適用地区について聞きたいと思うんです。

 これは、二〇〇〇年の法改正で都市計画の商業地域に創設された特例容積率適用区域の対象範囲を拡大するということだけれども、もとになった特例容積率適用区域というのはどういう制度なのか、わかりやすく、簡潔にお答えいただきたいと思います。

松野政府参考人 平成十二年に創設されました特例容積率適用区域は、商業地域の中で、適正な配置及び規模の公共施設を備えていて、高度利用を図るべきと認められる区域を都市計画で定める。この区域において一定の要件を満たす場合に、建築行政を行っている地方公共団体である特定行政庁が指定するところによりまして、複数の敷地の間で容積の移転を行うことができる、こういう制度でございます。

穀田委員 これ、一回聞いてすぐわかるという人はなかなかいないと思うんだけれども、要するに、容積を目いっぱいに使わないで、余った部分を相手に分けることができる、こういうことですよね、簡単に言って。与えられた方は、容積率の上限を超えて少し高いものを建てることができる、一言で言えば、容積飛ばしと言われている制度なんですね。

 そこで、基本的なことを少しお聞きしたい。

 そもそも、容積率を定めて建築物の建築を制限しているのはなぜか、これが一つです。それから二つ目に、今回の特例容積率適用区域というのは、いわば容積率での制限を超えてもよいという特例を設けるものだと思うが、この制度を二〇〇〇年に導入した理由は何か。そして三つ目が、これを用途地域の商業地域にのみ限定した理屈は何か。この三つについて、まず、基本的な問題ですので、お聞きしたい。

松野政府参考人 まず、容積率規制のねらいということでございますけれども、これは、土地利用が適切に図られるように、用途地域の指定とあわせて建築物の床面積を制限するということですが、それは、一つは、建築物を利用する人あるいは車、これによる発生交通量と道路等の公共施設とのバランスをとるということ、それから、その土地柄に応じて、採光、通風等の市街地環境の確保を目的として行われるというものでございました。

 こうした観点から、それぞれの地域ごとに適用される具体的な容積率の制限につきましては、その地域の状況を勘案しまして、建築基準法の中に定められたメニューの中から選択して、都市計画で決定されるということでございます。

 二点目に、十二年の当時に導入した理由でございますけれども、道路、鉄道あるいは下水道が十分に整備されている都心におきましては、土地の一層の有効・高度利用を推進するという必要があるケースがございます。未利用の容積を他の敷地で有効に活用できる制度として、平成十二年に導入されたものでございます。

 当時の趣旨としては、土地の有効・高度利用のニーズの高い商業地域において指定できるというふうにしたものでございます。

穀田委員 そのときの答弁を見ますと今お話しのとおりなんですね。ただ、ちょっと言っているのは、「基本的な、建築行為は自由であるという建築行為の自由度を生かしながら、」という実は文言があるんですね。それが基本的精神といいますか、今の建築のあり方に対する国土交通省の考え方を多少物語っていると思うんですが、それはそれでさておいて、今度の制度は、今お話があったように、土地の一層の有効・高度利用を推進するためにということです。

 制度が導入されて三年以上たつわけですが、これまでの実績はどうか。実際の容積率を移転したところは何件か、それはどこか。そして、容積率移転はないが、全国でこの区域を指定したところ、つまり自治体はあるのか。この点についてお答えいただきたいと思います。

松野政府参考人 まず、この平成十二年の制度の指定実績でございますが、現在のところ、東京駅周辺の区域百十二・九ヘクタールでございますが、この区域において一件指定されております。この中で特例敷地の指定をされているものが、一つのケースというのは二つの敷地があるという意味ですが、あと何カ所かこの区域の中で指定の予定があるというふうには聞いております。

穀田委員 今聞いたように、三年たってわずか一件なんですね。他に、全国でも、私、いただきましたけれども、東京駅の八重洲と丸の内というところでそれを使っているというだけの一件にしかすぎない。要するに、いろいろあるけれども、この制度が、大企業やディベロッパーだけが、わずか一件だけが興味を示したにすぎないということが結果としてある。やはりこの制度は間違っているということの証明だと私は思うんです。

 大体、先ほどありましたように、そもそも容積率によって用途規制をするという都市計画法や建築基準法の精神と相反する制度だと私は結論づけていいと考えています。なぜかというと、こんな特例制度をつくっていたら、容積率規制そのものが意味がなくなるということに発展しかねないと思います。

 そこで、都市計画区域の用途地域のうち、第一種、第二種低層住居専用地域、工業専用地域を除くすべての地域に対象を広げるということが今度の改正です。東京二十三区では、都市計画地域に占める割合は七七%という。商業地域でわずか一カ所しかなかった、いわば一部大規模のディベロッパーしか活用しなかった問題のあるこの不要な制度を、災害対策の名前で対象地域を拡大して継続させるやり方そのものがおかしいのと違うか。いかがですか。

松野政府参考人 平成十二年の当時は、商業地域における一層高度利用を図るべき場所の土地利用を可能にするということが一つの目的でございましたが、今回は、この特例容積率の制度を使って、むしろ防災空地を確保する、緑地を確保する、あるいは伝統的な建築物をそのまま確保したいというケースに、逆にですが、利用可能な容積を他の敷地で活用していただいて、いわばそこの確保を可能にするというための制度ということでございます。

 そうすると、そうした目的というのは商業地域に限らないわけでございまして、そういった意味でこの特例容積率のような容積移転が可能な制度を、一定の用途地域を除きますが、ほとんどの用途地域でその適用が可能だという制度に衣がえをするということでございます。

穀田委員 私は、防災活用をするということにこういうことで可能だということについて否定するつもりはありません。しかし、そのことが本当にそういうふうに誘導されるのかなということについては、今後また、もう少し事実を見て検討したいと思っています。つまり、当初の高度の活用という内容から少し内容が違ってきたということが結論づけられると思うんです。

 そこで、今政府参考人は伝統的な景観の問題についても一言言われたので、では、その問題についても聞きましょう。

 先日景観法の審議が行われまして、私は京都の問題を再三再四取り上げました。京都の景観や町並みが高層マンション乱立で壊されている実態について、資料もお示しして紹介しました。その際、高層マンションの業者というのは、都市計画法、建築基準法には違反しないと言って建設を強行してきたことも事例として私は紹介させていただきました。商業地域だということで容積率一律四〇〇%以上に規制緩和されたことが主な原因となってこの事態が進みました。こんな制度が住宅地にまで拡充され、指定されたら、身勝手なマンション開発業者は、法に違反しないなどと、一層やりたい放題するのは目に見えている。

 景観法の審議の際に、参考人が一様に都市計画法や建築基準法での規制を訴えられたことは記憶に新しいところです。私は、景観保全などに取り組もうとしている一方で、容積率を緩和する制度を広げるという発想が理解できません。この制度は景観や町並み保全の取り組みに支障を来すのではないかと逆に指摘したいと思うんですが、いかがですか。

松野政府参考人 これは、先ほども言いましたように、かなりの用途地域に拡大する、単なる商業地域の一層の高度利用ということだけではなくて、防災空地あるいは緑地をそのまま保全したい、あるいは伝統的な建物をそのまま保存して、余った容積をほかの敷地で活用する、こういったことができるようにするということでございますが、その際に、一つは、例えば住居系の用途地域ですと、周辺に対する影響が出ないように、斜線制限とか日影規制は一切緩和しないで、そのまま適用されます。それから、どうしても高さ制限で町並みの高さを確保したいという場合には高さ制限ができる制度として衣がえをするということが今回の改正内容でございますし、また、本当に必要な場合は、先日審議していただきました景観計画あるいは景観地区を定めるといったことで色彩やデザインの規制をあわせて行うということも可能でございます。

 決してこの制度が景観保全と矛盾するものではないというふうに考えております。

穀田委員 それは検証を待ちたいと思うんですが、当時の二〇〇〇年の建設委員会の答弁でも、こういうような制度もこの容積率適用区域制度とあわせて活用するということで、高さ制限とこの問題について言っているんですね。だけれども、そういう一連の容積率の緩和が何をもたらしたかという事実を前回私は指摘したんです。これは必ず、そういうものとして抜け穴もさまざま来る可能性もあり、そう簡単に政府参考人がおっしゃるような事態になるというふうにはどうかということについてだけは言っておきたいと思います。

 そこで、災害対策の問題についてもあわせて触れておきたいと思うんです。

 個人住宅などの耐震診断、補強をめぐる支援のあり方について聞きます。

 阪神・淡路大震災では、犠牲者の圧倒的多数は住宅の倒壊による圧死や窒息死でした。したがって、住宅の耐震化が重要なことは言うまでもありません。住宅の耐震化を進める上で、工事費用の負担を軽減することがかぎです。

 国交省の密集市街地整備促進事業による住宅耐震化工事に対する補助制度が二〇〇二年からできています。この補助制度の導入実績と住民からの申請実績はどうなっているか、お答えください。

松野政府参考人 特に戸建ての住宅につきましては、御指摘のとおり、十四年度に補助制度ができました。ただし、この十四年度の補助制度は対象地域が極めて限定されていたということがございまして、そういった意味で実績がまだ出ていなかったという状況がございました。

 こういったことを踏まえまして、今年度の十六年度予算においては、補助対象地域を、おおむね一般的な市街地でも補助対象になり得るような拡大をいたしたところでございます。地方公共団体が必要とすれば、申請が出てくれば対応できるような金額も確保しているところでございまして、今後この制度の普及を図って耐震改修を推進してまいりたいと考えております。

穀田委員 だから、指摘しているように、私は申請の話もしたんですが、大阪市、横浜市で申請は一件、実際は実績がほとんどない、こういうことですね。だから、よく物を考えてやらなくちゃならぬというんですよ。せっかくいいものをつくったとしても、こういうものがどう実行されるのかということが、出てくるということの証明だと私は思っています。

 なぜこんなに少ないかといいますと、今ありましたように、補助要件が限定過ぎるということだと思うんです。そこで、対象地域の話がありましたけれども、補助対象地域として認定されても、この地域の中で補助されるのは、耐震診断の結果、耐震性なしと診断された住宅のうち、倒壊することにより道路閉鎖のおそれがあるとして耐震改修の勧告を受けた住宅に限定されているというわけですね。つまり、都市計画道路に面した住宅しか対象にならなかった。

 これは、最後にここだけ大臣にちょっとお聞きしたいと思うんです。つまり、大臣も一貫しておっしゃっていまして、こういう密集市街地の改善ということをお話しされています。自動車の入らない道路、人が歩くしかできない道路が入り組み、こういう住宅密集しているのが事実上対象にならないということなんです。だけれども、大臣も御存じだとは思うんですが、阪神大震災の教訓というのは、まさにそういうところで事態が起きているんですね。何も表の、道路に面しているところで起きているわけじゃないんです。それだけじゃないんです。道路のところも起きるし、中でも起きるんです。

 また京都のことを出して失礼ですけれども、知らないという方がいらっしゃるかもしれませんけれども、路地がありまして、道路に面しているのはほんのちょっとなんですね。中はこうなっているんですね。だから、面しているところはここだけだが、中の方はコの字やロの字になっていて、そこがいわば密集地になったり、消防自動車も入らないし、そこが一番大変なんですよね。

 だから、人の命は同じだ、そういう意味でいうと、道路閉鎖のおそれがあるなどという要件はこの際きっちりなくしてそういった問題について対応するということが求められているんじゃないでしょうか。そういうものを含めた改善方が必要だということについて御意見だけ大臣に、事実はいいですから、もう私はわかっていますから、お聞きして、終わりたいと思うんです。

石原国務大臣 今回の改正でおおむね、委員も御指摘されましたような一般的な市街地にもこの補助が拡大していくということは政府参考人から御答弁させていただいたとおりでございまして、そういうものを広く広報し、こういう制度を利用していただいて、委員の御懸念の事態のようなことに至らないようにさせていただきたいと考えております。

穀田委員 終わります。

赤羽委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。穀田恵二君。

穀田委員 私は、日本共産党を代表して、反対討論を行います。

 本法案には、地下室マンションの規制や既存不適格建築物の増改築対策など、評価できるものも含まれています。しかし、二以上の敷地の間で容積率を移転することができるとした特定容積率適用地域の拡大や一団地認定制度には賛成できません。

 反対の理由は、特定容積率適用地域の拡大や一団地認定制度は住居系の地域にも高層建築物の建築を可能とするもので、居住環境の破壊を進めることになるからです。

 本法案では、従来の商業地域に限定していた特例容積率適用地域を、第一種、第二種低層住居専用地域、工業専用地域を除くすべての地域に広げます。一団地認定制度によって、一つの建物にも空地や低層住居の未利用容積を移転することができるようになります。

 これらによって、住居系の地域にも二倍近い容積の建築物が建てられることになります。これでは、住居系の用途地域を指定する意味がなくなります。そればかりか、この制度によって、容積を売り買いの対象とする投機的な事態を招くことも否定できません。

 最後に、健康的な住環境を守ることは建築基準法の基本的な目的であることを改めて強調して、反対討論とします。

赤羽委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 これより採決に入ります。

 建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

赤羽委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、衛藤征士郎外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。松崎哲久君。

松崎(哲)委員 ただいま議題となりました建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文はお手元に配付してありますが、その内容につきましては、既に質疑の過程において委員各位におかれまして十分御承知のところでありますので、この際、案文の朗読をもって趣旨の説明にかえることといたします。

    建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺憾なきを期すべきである。

 一 増改築等による建築物の安全性の向上を図るため、事業者等に対し既存不適格建築物に係る本法の措置について周知徹底を図るとともに、住宅所有者等のための総合的な相談体制の整備・充実に努めること。また、耐震診断・耐震改修等に係る補助・融資・税制上の支援措置の普及・充実及び既存建築物に係る耐震・免震技術等の研究開発に積極的に努めること。

 二 著しく危険又は有害となるおそれがある既存不適格建築物に対する勧告及び是正命令制度については、適切な運用が行われるよう、勧告及び是正命令に係るガイドラインを策定するとともに、特定行政庁に対し必要な助言、援助等を行うこと。

 三 不特定又は多数の者が利用する建築物に係る定期報告制度については、多くの建築物について報告がなされていない現状にかんがみ、報告率を上げるため、本制度の周知徹底を図るとともに、定期報告の対象建築物に係る台帳の整備、未報告物件に係る督促等の推進に努めること。

   また、定期報告を怠っている悪質な所有者等に関する情報の公表制度等を早急に検討すること。

 四 違反建築物については、既存建築物に係る違反是正作業マニュアルの活用、消防・警察部局やNPO等との連携強化、罰則の厳格な適用等によりその是正を強力に推進すること。

 五 特例容積率適用地区制度及び一団地の総合的設計制度については、地域住民の意見の反映や良好な市街地環境の確保に配慮しつつ、適切な運用が図られるよう努めること。

 六 自動回転扉等については、安全基準及び管理体制を早急に整備し、事故の防止に努めること。また建築物の事故についての情報収集システムを早急に構築し、事故情報を建築物の安全対策に的確に反映すること。

以上であります。

 委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。

赤羽委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

赤羽委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、国土交通大臣から発言を求められておりますので、これを許します。国土交通大臣石原伸晃君。

石原国務大臣 建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案につきましては、本委員会におかれまして熱心な御討議をいただき、ただいま可決されましたことに深く感謝を申し上げます。

 今後、審議中における委員各位の御高見や、ただいまの附帯決議の定期報告制度の周知徹底等の趣旨を十分に尊重してまいる所存でございます。

 ここに、委員長初め理事の皆様方、また委員の皆様方の御指導、御協力に対し、深く感謝の意を表し、ごあいさつとさせていただきます。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

赤羽委員長 この際、休憩いたします。

    午後零時十分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十五分開議

赤羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、不動産取引の円滑化のための地価公示法及び不動産の鑑定評価に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省総合政策局長澤井英一君、土地・水資源局長伊藤鎭樹君、自動車交通局長峰久幸義君、総務省自治税務局長板倉敏和君、財務省主計局次長佐々木豊成君及び国税庁課税部長西江章君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。江藤拓君。

江藤委員 自由民主党の江藤拓でございます。

 それでは、まず最初に、地価公示価格改定について御質問いたします。

 日本経済は、土地神話の崩壊とともに、長い長い大不況のトンネルの中にずっとあったわけでありますけれども、ようやく最近になりまして、この不況からの脱出ができるような、そういうめどが立ってきたというふうに聞いております。

 内閣府が発表したGDP速報についても、前年度比GDPで一・四%増ということでありますから、これは年率五・六%ということであります。私のような田舎者は、そういう実感が全くないわけでありまして、正直申しまして、これは日本のことなのかな、中国の数字の間違いじゃないかなと思ったりするようなのが正直な実感であります。

 ともあれ、二〇〇三年度の成長率はこれで三・二%ということで、大変結構なことでありますけれども、これは、ITブームがありました二〇〇〇年のあの水準を超えるということで、九六年以来の高水準ということであります。

 三月に公示されました平成十六年の地価公示につきましても、東京や、また地方の札幌や名古屋など、一部の大都市圏では下げどまりの傾向が強まっている。国土交通省も、地価の動向には変化の兆しが見られているというふうに判断をされているようであります。

 一方、地方では、私の宮崎・延岡なんかもそうなんですけれども、商店街はどんどんシャッターが閉まってしまいましてシャッター通りと化し、そして住宅地は、地方においてはいまだに地価公示価格、これは下落傾向の幅が広がる一方であります。

 何とか都会の景気回復のこの波を地方にも呼び込みたいものだというふうに強く願うものでありますけれども、今回の法改正が、地方の土地取引の活性化、そして地価の下げどまりに大いに資するものであってほしいものだというふうに思っております。

 今回の改正でのポイントは、その方法論というわけではなくて、地価公示の対象を都市計画区域外にも広げるということが一つの大きなポイントだと思いますけれども、これが果たして具体的にどのように経済効果的な面で効果が見込まれるのか。それがまた、特に地方都市におきまして、どのような地価下げどまりの効果を生むことが期待できるのか。このことについて大臣から御所見をお伺いしたいと思います。

石原国務大臣 ことしの地価公示を見ますと、東京の都心等で地価動向の変化の兆しが見られますし、大阪を除きまして、地方都市等々でも下げどまり感が非常に強まってきたと思っております。こういう動きを確実にいたしまして、ただいま委員が御指摘のとおり、地方も含めまして、資産デフレを克服するために、国民の皆さん方の生活や企業活動に不可欠な土地という資産について、税制を含めまして、今後の政策のあり方をそろそろ再構築すべきときに来ていると私は常々思っております。

 土地基本法を制定して十年たちまして、その中で資産デフレを経験し、多くの国民の皆様方が所有される資産というものの価値を減らしてきた。これまでどういう政策を打ってきたかということでございますけれども、当たり前のことですが、土地への需要の拡大と土地市場の効率化の両面から実は施策を展開してきたわけでございます。

 そんな中で、北は稚内から南は石垣まで、各土地の都市再生あるいは地域の再生、まちづくりへの取り組みの支援、あるいは住宅ローン減税等々の住宅税制、あるいは取引や土地利用にかかわる、午前中の御審議でもいただきましたような規制の緩和、さらには不動産の証券化という新しい手法による流動化等々に取り組んできたところでございます。

 中長期的な視点に立ちまして、これからそろそろ土地税制についても議論を深めてまいりたい。そんなとき、この法律案を提示させていただきまして、公示地価を広い範囲で見ていっていただく、地方部での不動産取引の信頼性を高め、さらに不動産取引の一層の円滑化が図られると考えているところでございます。

江藤委員 ありがとうございました。

 ほかの施策とあわせて、まちづくり交付金その他も使いながら、ぜひ地方のことにも目を向けていただきたいということをお願いします。

 それでは、少し具体的なことについてお教えをいただきたいことがありますので、よろしくお願いいたします。

 最近、マスコミ等の論調を見ていますと、地価公示価格そのもの自体が実体経済を全く反映していない、そういうものはむだじゃないかというような議論も幾らか見られるようなこともあります。しかしながら、私としては、やはり買い急ぐ人も売り急ぐ人も関係ない、いわゆるニュートラルな立場で公的な機関が取引のある程度の水準を公的に示すということは非常に有効なことだろうというふうに思っています。

 特に田舎におきましては、取引の事例が非常に少ないということであります。当然、不動産鑑定士の皆さん方が実際の業務をやる上で、取引のデータをもとに公示価格を算定するわけでありますけれども、地方については数が少ないわけでありますから、これは多少のでこぼこがあっても、また地方においては特に仕方がない、そういうふうに私は思っております。

 今回ちょっとお伺いしたいのは、インターチェンジ周辺についてもこの公示価格の対象として標準地を新しく設定しようということもお考えだというふうに聞いておりますけれども、私の田舎の宮崎県は、これから高速道路ができます。もう大体インターチェンジの場所も決まり、大体いつごろには供用開始できるか、そういう見込みも立っております。

 そういう場合には、当然、先行的にその土地を取得したいという人も出てきますでしょうし、インターチェンジができればそこの土地は、農地といえども、また農地法の三条によって転用許可がおりればですけれども、これまた影響を受けてくるわけですから、このことについて将来的なことを見越した上で、この標準地、将来の公共事業によって値上がりが見込まれる場所、例えば私の日向なんかもそうなんですけれども、今、鉄道高架事業をやっています。今までは、海側は土地は値段が高い、しかし、鉄道からこっち側はやっぱり安いわけですね。高架されればそういうことも是正されるわけですから、そうなると、極めて明らかに近未来的にその資産の価値が平準化されるということであれば、行政として前もってそこら辺に手を入れるのか、それともやはり、実体経済だから、実体経済の上で取引がなされた上でそういうことをするのか、局長から御答弁をお願いします。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正で、都市計画区域内外を通じて土地取引が相当程度見込まれる地域に公示地点を置くことができるように措置するわけでございますが、その配置につきましては、一方で、具体的な公示地点の設定ということにつきましては、データの継続性とかそういうこともありますし、また、土地の利用状況が安定している地域に置くということを原則といたしておりますので、今委員お尋ねの公共事業計画段階のものについて、どの時点で、どのタイミングで地価公示の標準地を置くかということは、先ほど申し上げましたようなデータの継続性あるいは利用状況等を総合的に判断して考えていくということになると思っております、一般論的な答えになって申しわけございませんが。

江藤委員 それでは、供用を開始されて実際にディーリングが行われてからということでよろしいですね。もううなずいてくれれば結構です、時間がないので。

伊藤政府参考人 ちょっと持って回った言い方になって大変申しわけないわけでございますが、土地取引が相当程度行われ、あるいは行われる見込みがある区域というのを対象にするということでございますので、必ずしも供用開始後ということではございませんが、まずはこの要件に該当するような状況をにらみながら設定していくということでございます。

 以上でございます。

江藤委員 もう御答弁は求めませんけれども、この間の近藤総裁の御答弁の中でも、やはり道路公団民営化の中で、インターチェンジの周りにいろいろショッピングエリアとかそういうものを総合的に開発をして、そしてそこで収益を得るということであれば、宮崎なんか、みんな農地ですよ、インターチェンジの周りは。農地転用して、そしてやることになるんでしょうけれども、そのときになって慌てないようなお考えをぜひ前もって考えていただきたいと思う。御答弁は結構であります。

 では、次に、二十分しかありませんので、地価公示価格は国の制度、これはもう当たり前のことでありますけれども、具体的な業務はこれは不動産鑑定士の皆さん方がやっているわけでありまして、この間伺った話によりますと、資格オタクと言われるような方々を除けば、大体二人に一人の人が公示価格の算定に携わっていらっしゃるということであります。

 この公示価格というのは大変実は大事で、公的には課税評価、固定資産税であるとか相続税であるとか、それの算定の基準となっていく数字でありますので、これは公的な要素が非常に強い。それでまた、公用地の収得のときの、そのときの値段であるとか補償金であるとか、そういうものもこれによって決まるということであれば、これから不動産鑑定士の皆さん方が担っていく役割、これはもう、半分、民と官の間に立って、大変大きな役割を果たされていくことになると思います。そういう意味では、公平性の確保とか説明責任を果たすということもまた大事になってくるということはもちろん言うまでもないことだと思っています。

 また、今回の改正の中では、不動産鑑定士の業務を、不動産の鑑定評価、そういうもので今までは一応法律上は限定されておったわけでありますけれども、これを今度は、市場の調査とか分析、そして総合的なプロジェクトのコンサルティング、そういう方向にまで広げていく、これを法律上追加する、業務上追加するということになっています。

 しかし、よく話を聞いてみますと、現実にはこのような業務は、不動産鑑定士の皆さん方はもうやっている。また、もっと言えば、ほかの業態の人たち、宅建の人とかいろいろな資格を持った人たちが、時には行政書士もそうかもしれません、こういうことを実際やっているわけですね。

 そういう状況の中にあって、こういう任意の業務を含めて法律の中にかちっと位置づけなきゃならない、それはどうしてかということと、その目的、そこを局長の方からお聞かせいただきたいと思います。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今般新たに位置づける業務につきましては、不動産鑑定士等がその専門性を生かすことができるものでございます。委員御指摘のように、これまでも、いわゆる任意業務として、不動産鑑定士等がその名称を用いて行っているものでございます。

 また、その業務量は、私どもの持っておるデータでいきますと、不動産鑑定士等の本来の業務である不動産鑑定評価の業務に匹敵するような量の実績がございます。

 しかしながら、現在の不動産鑑定評価法には、これらのいわゆる任意業務につきまして何ら位置づけがございませんので、守秘義務の規定でございますとか監督の規定というものがこれらについては及ばないということになっているわけでございます。

 しかし、依頼者の立場で見ますと、依頼者は、これが本来業務であるか任意業務であるかということで不動産鑑定士に依頼するというよりは、不動産鑑定士という資格を信頼して相談するものでございますので、これらの業務についても、その信用を確保するということが重要な課題であったわけでございます。

 このため、今般の改正によりまして、これらのいわゆる任意業務につきまして、法律上の位置づけを明確にし、守秘義務や監督の規定を及ぼすことで、不動産鑑定士等の名称を用いて行う業務全般についての信頼性の確保を図ろうとするものでございます。

 以上でございます。

江藤委員 ありがとうございました。

 ありていに言えば、不動産鑑定士の方々の仕事の内容が依頼者にわかりやすく、そしてまた国からも、守秘義務を課したり、そういうある程度縛りをきちっとかけるという理解でよろしいですか。――よろしいということですので、では、続けさせていただきます。

 不動産鑑定士の任務は、限りある土地、土地というものは有限でありますので、さまざまなポテンシャルを秘めているわけであります。そういう有価財を有効に活用するのが、まさに今回新たに業務を拡大されてコンサルティング業務をやるということであれば、不動産鑑定士の皆さん方の双肩にかかっているというふうに思うわけでありますけれども、どうもこの間ちょっとお役所の方のブリーフィングを聞いたところによりますと、ほとんどの方々が独立されていて、従業員は一人か二人というような業態のところがほとんどだというような御説明をいただきました。

 しかし、我々は、この委員会におきまして、景観三法ということで、トータルとしてのまちづくりであるとか、そういうものについて、皆さん方と一緒にずっと議論を重ねてまいりました。そういうことであれば、土地は単体に利用するということではなくて、ある程度まとまったスケールで、全体としての調和をとりながら土地の有効活用ということを考えていくということがますますこれからは重要になってくるものだと思います。

 そうなってきますと、プロジェクトはどんどん巨大化していく。そして、そうなれば、もしかしたら、不動産鑑定士さんが今持っておられる知識や能力、それを超える部分、例えばランドスケープであるとか、そういうもっと広い見地に立った知識が必要になってくるかもしれない。

 今回、きちっと法律で、また、今も御指摘あったように、改定されて、位置づけられるわけですから、このような零細な業態が多い業界の中にあって、本当に、大規模化や業務の複雑化に時代のニーズに合った形できちっと対応していけるものなのかどうか、ちょっと自分としては不安だなということを思いますが、御所見を局長の方からお願いいたします。

伊藤政府参考人 今回位置づける業務を中心にいたしまして、不動産の評価の専門能力が生かせるそういうニーズといたしまして、今後とも伸びが見込まれる分野といたしましては、今、不動産証券化あるいは減損会計の導入等を背景としたそういう不動産の評価、あるいは、土壌汚染地の評価等、他の専門分野の協力を必要とするそういうような評価、あるいは、物件や市場の調査、不動産の評価をきっかけとして、不動産の利活用、投資等について相談を受け、アドバイスを行うことなどが考えられるわけでございます。

 こういう業務を行っていきますには、例えば、土壌汚染地を評価するには、地質調査会社等の他の専門家との連携も必要になります。それからまた、減損会計でございますとか不動産証券化というような話になりますと、大量の不動産を迅速に評価するための体制というものも要るわけでございますし、そういう意味で、個人事務所による対応には限界があるということも御指摘のとおりでございます。

 このような観点から、先般、さきの国土審議会の不動産鑑定評価部会におきましても、不動産鑑定業界の現状を踏まえて、同業あるいは他業種との協同、連携を図ることが今後の一つの方向との御提言もいただいたところでございます。

 私どもといたしましては、今回の法改正を一つの契機といたしまして、不動産鑑定評価部会の提言について、業界でも真摯に受けとめていただいて、業務体制の整備のための取り組みが進み、不動産鑑定業界が社会から期待される、そういう役割を果たしていくということを期待しているところでございます。

 以上でございます。

江藤委員 ありがとうございました。

 ADR法とかいろいろあるわけですから、いろいろな業界の相互参入、協力によって、よりよいまちづくり、不動産の有効活用が図られるように、御指導の方よろしくお願いします。

 時間がなくなりましたので急ぎ足になりますけれども、最後に、不動産鑑定評価法の改正のもう一つのポイントは、試験制度の改正にあるということはもう言うまでもないわけであります。

 国では大きな改革が今先行して進んでいまして、御存じのように、近年の司法試験の合格者、千人程度ですけれども、二十二年にはこれを三千人、三倍にしよう。会計士の試験なんかでいくと、これを五万人規模に全体の数字として拡大しよう、合格者にしても六倍にふやそうというような流れが全体としてあります。しかし、数が必要であることも、これは重要なことかもしれませんけれども、質の確保、これが何といっても一番重要なことだと思います。

 今回の法改正を見させていただきますと、今までは、一回、一次試験に通りまして、不動産鑑定士補になって、それから現実に資格をいただくまで全体で四年もかかってしまう。大変長い時間を要するということで、これが、ある意味、この業界を目指す人を減らしていた。また、その間、非常に身分も不確実で、また、収入も不安定だ、時間もかかる。

 そういうことをかんがみた上で、頑張れば一年三カ月で不動産鑑定士という最終的な資格まで到達できるというこの改正自体は、私は非常にいい改正だと高く評価するものであります。ありますが、実務経験というものが、ほかの資格と違って、不動産鑑定では物すごく大事だということは、私なんかが言うまでもないことだと思います。

 今回、その実務経験というものが、若干軽視されているんじゃないか。この要件が省かれているということにつきましては、やはり、依頼者の方々、そして、業界の方々も少し不安を感じていらっしゃる部分があるのではないかと思いますが、このことについて、御所見を局長からお願いいたします。

伊藤政府参考人 今回の改正によりまして、不動産鑑定士の制度につきましては、実務経験の要件というのを外すわけでございます。

 その理由でございますが、私ども、いろいろと今現行の旧体制での実務補習をやっている不動産鑑定士の卵の方々とか、そういう方々の意見なんかも率直に聞いておりますと、それから、やはり実務経験ということでございますが、それぞれが二年間に体験する実務内容に差がありますといいますか、ばらつきがございまして、その結果、実際の実務補習を行う段階でカリキュラムの適切なレベル設定が難しいというような問題もございました。それで、そんなことが原因で、現行の実務補習が必ずしも期待する機能を果たせていないとの問題点も指摘されているところでございます。

 このような実情を踏まえまして、今回の改正では、まず、専門的学識とその応用能力を確認する試験を短答式、論文式の二段階で行う。それで、この二段階で行うことによって資質のある方々を的確に選抜する。その上で、新たに、従来の実務補習を実務修習という形に再編整理するということにしております。そして、この実務修習につきましては、実地演習を大幅に拡充することによりまして、実務能力の修得課程というものを強化するということにしております。そして、その強化された形で実務修習を修了した方については、修了の状況について、最終的に国土交通大臣が確認して資格を付与する、そういう制度にしたところでございます。

 そういうことでございますので、不動産鑑定士に求められる実務能力の維持向上ということについては、むしろ、体系的といいますか、短期集中養成型、そういう形で実際に確保できるというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

江藤委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。

赤羽委員長 古本伸一郎君。

古本委員 私からは、議題となっております、不動産取引の円滑化のための地価公示法及び不動産の鑑定評価に関する法律の一部を改正する法律案のうち、後ほど同僚議員の方から地価公示につきましては御質問させていただきますので、不動産の鑑定評価法の改正にかかわる部分を中心に、質問をさせていただきたいと思います。

 我が党は、基本的に、この法案につきましては賛成の立場であります。しかしながら、依然として議論のまだまだ深めるべき余地があるというふうに理解しておりますので、そういった観点から質問を申し上げたいと思います。

 まず、不動産鑑定法、この改正に当たりまして、なぜ、今この時期に、この法を改正しなきゃならないのか、そこら辺の、だれのために、あるいは何のためにという観点から、まず大臣に、大きな部分でお答えをいただきたいと思います。

石原国務大臣 これは、やはり、不動産市場の構造変化ということが根底にあるんだと思います。バブルの崩壊以前までは、土地は必ず右肩上がりで上がっていくというものがあったわけですけれども、それが国民の皆さん方に定着をしていた。しかし、やはり需要と供給の関係で地価が形成される以上は、国民の皆さん方の間に、不動産取引や投資をする際にどういうリスクがあるんだろうか、あるいは、利便性や収益性といった利用価値に見合った価格、こういうものは一体どういうものなんだろうか、ともかく持っていれば右肩上がりに上がる、そういうものじゃないだろう、こういうふうに、地価構造の変化によって、国民の皆さん方の土地に対する御関心というものも大きく変わってきたんだと思います。

 もとより、不動産鑑定士という皆様方は、そういう国民の皆さん方が安心して投資等々を行うことができるようなための情報の提供を求められておりますし、それが土地市場の活性化やあるいは円滑取引というものにも沿うという考え方に沿っているということは言うまでもないと思っております。

 そこで、今回の改正でございますけれども、今回の改正では、資格取得制度の改善を行う、そういうことによりまして、鑑定士の皆様方の質の向上を図っていきたいと考えております。

 利用者たる国民の皆さん方の視点に立ちまして、本業である鑑定業務のほかにも、もう既にコンサルティング業務を行っているわけですけれども、こういう部分には守秘義務等々もかかってきていなかったんですが、守秘義務や大臣の監督権限が及ぶことにして、業としての不動産鑑定士というものをしっかりと整理させていただく。そして、ニーズの高まったこの分野に将来にわたりまして優秀な人材を確保して、業務の適正な遂行を図っていこうというのが今般の改正のポイントである、こんなふうに考えております。

古本委員 ありがとうございます。

 今、大臣からいただいたお話はごもっともだと思いますし、そうなればいいなと思うんですが、残念ながら、不動産の取引件数というのはバブル期以降減っているんですね。調べますと、ちょうど二十年前、年間の土地取引件数は二百二十万件でありました。十年前、百八十万件であります。直近のデータ、〇二年が百六十万件。これはすなわち約三〇%減であります。六十万件ほどの減であります。

 一方、今議題となっております、不動産の価格をきちっと評価していくという意味では、不動産鑑定士が、国で認められたいわゆる公的な立場にあるわけですが、公的といいますか、公的試験をくぐってのいわゆるエキスパートであるわけですが、実は、不動産鑑定士は、八四年、四千六十九名でした。これが〇四年には六千六百九十六名、要するに一六〇%増なわけですね。

 ですから、国民生活の利便を上げていくために、あるいは安心した土地取引を図っていくために、自分が買う土地建物が安いか高いか、いい買い物をしているかどうか、何か変なものをつかまされていないか、これは国民財産的な観点からいけば大変大事なことであります。その意味では、不動産の取引件数が下がっている中で、不動産の価格を評価するプロフェッショナルである不動産鑑定士の数はふえているわけです。

 したがいまして、現在、不動産鑑定士の資格試験は、不動産鑑定士補の研修期間も経て、都合四年を経ないとその資格が得られないという法に今なっています。これを改正して、途中、なるほど実務研修は受けるかもしれませんが、最短でいけば二年近くでその資格が取れるようになるわけですね。

 申し上げたいことは、業界全体の合意は得ているんでしょうか。今、不動産鑑定士さんといったら何かすごいプレミアムがついているんですけれども、取引の件数が減っている、一方で鑑定士さんがふえている、一方で今回そのハードルを下げる、御所見をお伺いしたいと思います。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、確かに、不動産取引件数ということで見ますと、例えば平成元年を一〇〇とした場合、指数で平成十五年は全国平均で七一という形で取引件数は減っているということは御指摘のとおりでございます。

 ただ、このような、この十年で構造変化として起こってきておりますことの一つは、不動産取引というものが、ただ単に通常の不動産取引に加えまして、証券化とか、そういう新しい形での取引も出てきているわけでございます。そういう意味で、全体として、不動産鑑定士の役割といいますか仕事というものは、私どもは、今後とも重要な役割を果たしていくというふうに考えているところでございます。

 そういう中で、委員の御指摘にございましたように、不動産鑑定士は、例えば昭和五十九年でございますと約四千人であったものが、平成十六年では六千六百人とふえているということはそのとおりでございますが、ただ、その年代構成というものを申し上げますと、約六千六百人のうち、五十代が千七百人、六十代が千百人、七十代が九百八十一人、八十代が三百七十三人ということで、資格を持っておられる方と実際に実働でやっている方との間には若干のギャップもあるわけでございます。

 私どもは、今回の改正によりまして、量をふやすということよりは、むしろ、質を確保して円滑な世代交代を図っていく、そういうところに重点を置いて今回の改正をお願いしているところでございます。

 以上でございます。

古本委員 ただいま政府参考人の方から説明をいただきました。

 例えば、質を上げていくですとか、その業務の範囲が不動産、土地取引にかかわるいろいろなコンサルティング業務、これまで、かつてもやっていたでしょうし、今後やっていく上で、政府としてのお墨つきをつけていこう、監督をしていこう、こういうことだと思うんです。

 土地を、あるいは建物でもいいんですが、不動産の取引をする現場という意味では、これも政府の各省庁の方が質問取りに来てくださるときに話をするんですが、現場にいる方々がそもそも不動産を買ったことがないんですね。私は、決して人事院に言って、上げろと言っているわけじゃありません、要するに、実態を経験なさっていない方が、なかなか、土地の取引やら登記やら、そういう現場のことを議論しているということが、まずもって、ぜひ実体験をしていただきたいなと思うんです。

 何を申し上げたいかというと、土地を買ったりマンションを買ったり、これは一般の御家庭でいけば、サラリーマン、一生に家一軒です。そのためにみんな汗して頑張っているわけです。その一生に家一軒を買ったのが、事もあろうか、簿価割れしちゃって、塩漬けになって、バブル期に取得したマンションやら一戸建てが売るに売れないという大変気の毒な世代が一九九〇年代前後におるわけですね。今後も出るかもしれない。今、首都圏はもう既に反転していますから、特にこの二十三区内、また、第二、第三のそういうケースがあるかもしれない。

 申し上げたいのは、今回の法案の趣旨にも書いておられます、土地取引のねらいが、実は、取得をするという目的よりも、買ってから、いかにその土地建物を高度に利用して利益を生み出すか、要するに、付加価値をいかに生み出すかということが不動産取引の今ポイントになっているんですね。

 ますます、外から見て、南垂れで、東南の角地で、地形がいいからと買ったら、実は何か下にあんこがつまっていたとか、あるいは、買ってみたら、実はいろいろな不動産的な価値が低かった。要するに、その土地を利用していく上でのプロの目がまさに求められているんですよ。そういう意味では、すそ野を広げていくというのはそのとおりなんです。

 では、そこで質問なんです。

 今、不動産鑑定士の鑑定報酬手数料、鑑定報酬料、これは政府でお決めになっていますか、それとも業界に一任されていますか。

伊藤政府参考人 報酬につきましては、基本的に、こういう自由経済の世界でございますので、それぞれの鑑定士さんの判断で基本的にお決めになっていることだと思っております。行政が何か関与しているということではございません。

古本委員 実は、今、不動産鑑定士の資格のある方は全国に六千名いると言いました。その中で、最大大手と言われている日本不動産研究所という、通称不動研と呼ばれる機関があります。

 ここの基本鑑定報酬額の一覧表によれば、評価額四千万の物件で、宅地建物鑑定評価の報酬額は約二十九万です、今丸めて申し上げていますが。一方で、区分所有権、ですからマンション等だと思いますが、になると六十四万になります。一回の鑑定評価ですよ。

 これは正式な鑑定評価ですから、もちろん簡易な評価だとか口頭での相談等々もあると思いますが、ちなみに、口頭の相談で一件当たり五万以上と書いています。どうですかね、今度銀座でいいマンションが出ているんですけれども、これを買っていいですかねと相談しただけで、電話一本で五万円です。

 したがって、一般の市民、国民は、本当に自分が買う不動産が高いか安いか、あるいは自分が売ろうとしているこの値段が市中で今最高の値で売ろうとしてもらっているかどうか、それを調べようにも、国のお墨つきの資格試験である不動産鑑定士資格を持っている人に正式なものをもらおうとするとそれだけの手数料がかかるんですね。ちなみに、この不動産研究所のレートをもとに、例えば信託銀行の不動産部等々、世間で言われるきちっとした厳格な評価をなさっている機関にゆだねると、大体それに準じたレートになっているわけです。

 申し上げたいことは、より身近な国民生活のサービス向上、わけても土地建物、マンションという、サラリーマン世帯にとって、これはサラリーマン以外もそうです、御商売屋さんでもそうです、一生に大体家一軒か二軒です。その価格をつかさどる行政、国交省として、せっかくこの鑑定士にかかわる法律をなぶるのであれば、あわせてこの部分についてもどういうお考えをお持ちか、御所見をお伺いしたいと思います。

伊藤政府参考人 繰り返しに若干なることをお許しいただいて御答弁をさせていただきますが、基本的に、不動産鑑定士等の業務に関する報酬につきましては、行政が直接的に関与することはふさわしくないと考えております。

 ただ、私ども、実態はどうなっているのかということについて関係者に聞いてみますと、一般的には、まさに報酬額というのを事前に依頼者に十分に御説明して、説明を行った上でそれぞれ行っているということで、サービスの対価と報酬という関係でこの関係が成り立っているのかなというふうに承知しているところでございます。

 以上でございます。

古本委員 今、ちなみに不動産鑑定士の資格者の資格登録状況の全国の数字があるんですが、六千六百九十六名のうち、まあ、首都圏、阪神圏、中部圏に集中しているんですが、二十名を切っている県が、不動産鑑定士という職業の資格を持っている方ですよ、しかも業として開いていませんので、ただ資格を持っているという人ベースで見て二十名を切っているのが、秋田、山形、福井、鳥取、島根、高知、佐賀です。さらに、これをざっと見て、不動産鑑定士の業として営んでいる人になればもっと減ると思うんですね。

 一方、宅地建物取引主任者という資格といいますか、国交省が所管なさっている制度、資格があると思うのですが、この宅地建物取引主任者の数は、同様に二十年前と十年前そして現在を定点で見ますと、二十年前は三十三万人強、十年前は五十四万弱、それで現在七十万人を超えているんですね。これは単純に言って倍増です。

 したがいまして、身近な町の不動産の相談相手となると、不動産鑑定士とおつき合いしていますなんて、委員の中でもそんなマニアな人は余りいない、まずは宅地建物取引主任者なわけですね。一方で、では、その宅地建物取引主任者が不動産の価格を評価する、そういう資格になっているか、そうじゃないですね、流通の段階で絡んでいるわけでありますので。

 申し上げたいのは、鑑定評価の額が実際高いかどうか、確かに割高だと思います。一般家庭にとってみれば、大枚はたかないと評価してもらえない。一方で、宅建業者と俗に言われる業者の方々は全国で多いわけですね。このそれぞれの業務の所管をなさっている国交省として、何かいい方法はないのでしょうか。これは、国民的な不動産の取引の機会という意味では、今後、日本経済が反転して上向いていく過程において大変重要な要素でありますので、少しその辺の御所見もお伺いをしたいと思います。

伊藤政府参考人 昨年国土交通省で行った調査によりますと、約八割の国民の方が、不動産取引について難しそうだとか、わかりにくいとか、何となく不安というような感想が回答として返ってきております。

 一般の国民にとって住宅取得等の不動産取引は大きな買い物でございますし、このような中で、取引に際しては、できる限り多くの情報を入手したいというのが国民の方々の率直な思いだと思っております。これにこたえる観点からも、今委員御指摘がございましたけれども、宅建業者、不動産鑑定士とも、それぞれの立場で依頼者の信頼にこたえていくということがまずは大切なことだと思っております。

 また、必要に応じて、お互いに連携協力しながら、国民、社会経済のニーズに的確に対応することも望まれるところでございます。

 そういう観点で申し上げますと、不動産取引には、不動産鑑定士を含め、多くの専門家がかかわることが多いわけでございます。御指摘のように、国民に身近でまず相談を受ける宅建業者が、こうした専門家のコーディネーター役として、不動産取引の全体的な流れをわかりやすく説明して、必要に応じ他の専門家を紹介していくというような適切な助言を行っていくということは極めて有効な対応の方策だというふうに思っておりますし、私どももそういうことを期待しているところでございます。

 このことにつきましては、宅建業界に対してもそういう私どもの考え方は周知を図っているところでございます。

 以上でございます。

古本委員 参考人から話はいただきましたが、今いろいろ数字を挙げましたが、私は、不動産鑑定士という職業がもっと身近になればいいと思うんですよ。それと、不動産鑑定といいますか、土地建物の適正な価格をより国民が知る機会を得るという意味では、今回の法改正自体は大変いいことだと思うんですね。ただ、現実には、依然として手数料も含めて高いということはただいま指摘したとおりであります。

 したがって、マーケットにゆだねるといいますか業界にゆだねるということではなくて、例えばこの法改正にあわせて、本来であれば何かそういう指針のようなものを示してもいいのじゃないかという、これは規制改革の三カ年計画にむしろ逆行する感のあることをあえて申し上げているんですが、そうでもしないとなかなか身近な評価にはならないと思うんですね。

 ちなみに、手元にデータがあるんですが、年間の不動産鑑定、価格評価及び賃料評価に伴う、要するに市場規模の一番直近のデータがある平成十四年データでいきますと、年間で約六百六十二億円のマーケットなんですね、不動産鑑定マーケットというのは。この六百六十二億円のうち、個人による発注というのは四・三%です、平成十四年実績で。九五%以上が国、公共団体、公社、公庫などの公的機関並びに民間の一部法人ということになります。ですから、公的な仕事がそのうち約六割を占めています。

 これは、何をか言わん、よもや公的な機関が行う鑑定評価がお手盛りの言い値で発注しているようなことにならないかしらと、こういう懸念を払拭する意味でも、公明正大なレーティングを行った方が、どうも鑑定評価をとったらえらいお金を取られるねということにならなくて、ロットで業界としても稼げるようになると思うんですよ。安心して鑑定評価を安くとれるようになれば、業界としてもロットで稼げるようになるんじゃなかろうかと例えば思ったりするわけであります。

 参考人は御存じかどうか、大臣に、御存じかどうか、あえて申し上げますと、先ほど申し上げた日本不動産研究所会長最終公務職歴は建設省計画局長、理事長は内閣官房内閣内政審議室長、これはホームページに出ています。

 大臣、思わず苦笑いという場面ですが、これはなかなか、不動産研究所という組織はマニアックな世界です。玄人しか知らない。でも、世の中の不動産鑑定士のレーティングというのはここを目安にしているのは、これは冷厳な事実ですよ。あげくの果てに、八十キロを超える出張のときはグリーン車でお願いしますまで書いているんですよ。いや、本当に大きなお世話ですよ。いい仕事をしてくれれば、一等でもグリーンでも払いますよ。

 要するに、今回を機に、ぜひあわせてやっていただいて、国民に親しまれる不動産鑑定士の世界になればいいと思うんですね。

 ちなみに、弁護士は今、日弁連登録ベースで一万九千余名です。約二万人近いんです、弁護士は。先ほど、政府参考人から、国民の実に八割が不動産の売買に何らかの形で経験というかタッチしたと言われました。係争経験が国民の八割ありますか。余りお世話になりたくないですよね。同僚議員は弁護士が多いですから、今失言かもしれませんが、要するに身近な不動産鑑定士になっていただきたい。

 そういう意味からいくと、せっかく二年で取れるようになる、では、若い、大学を出た、あるいは高校を出た方々が不動産鑑定士目指して一念発起しよう、これは結構なこと。でも、実際の国民生活ベースで見ると、なかなかその報酬等々から見れば身近にはなっていないわけですね。

 ですから、いろいろ申し上げましたが、ぜひそういう観点で今後とも、今回のことを一つのきっかけに議論を深めていただきたいというふうに思うんですね。

 最後に、少しそういう意味では大き目の質問を大臣にお願いをして終わりにしたいと思うんです。

 今まで申し上げたことで、もし大臣のアドリブでの御感想もあれば、あわせてお伺いできればうれしいですが、やはり土地という、国民にとって、我が国のかけがえのない財産、これはふえも減りもしない、この財産をいかに付加価値を高めて利用していくかということは、これは国の大きな役割だと私は思っています。

 先日、不動産登記に関する電子化、これについて決算行政監視委員会で質問を申し上げてまいりました。これは実は、登記に関しては、要するに所有権の保全ということで法務省ですね。土地の地価の公示並びに取引を監視監督するのは、これは国交省。そして、その土地をフローさす段階において、取得や売却やそれぞれに発生する登録免許税初め諸税は財務省。これを、本気で、e―Japanも含めまして、日本を便利な国にして土地をもっとフローさせて景気をよくしていこうというような腹づもりがあるのであれば、ぜひ省庁横断的な取り組みをしていただきたいと思うんですね。その一環のほんのワン・オブ・ゼム、本当に、その一つとしてこの不動産鑑定の改正の目的もあるということであれば、私はすっと腹に落ちるんですね。

 ぜひ、そういう意味で、我が国の土地行政のリーダーシップを今とっておられる国交大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

石原国務大臣 ただいまの古本委員のお話を聞かせていただきまして、鑑定市場の規模が意外に小さいので、私もこの数字を調べていなかったんですが、ちょっと愕然といたしました。

 その一方で、個別の事案、四千万円等々で、部分所有の方が高いという理由もちょっとよくわからないんですが、ちょっと私も、昔、五、六年前に見た資料で恐縮で、間違っていたら後で訂正させていただきます。たしか、評価価格が高い方が鑑定料が高かったような記憶があるんですね。そういうことも、何を言わんや、一つの問題ではないかと、何年か前にこの問題を扱ったときに思ったことを今思い出しております。

 もちろん、民民の話でございますので、行政がどこまで関与すべきかすべきでないか、規制緩和の観点からあるわけですけれども、この評価の市場規模が小さくて、その一方で、専門家、若い人を育成していこうというわけですから、その人たちが働く場を整備していくということは必要なことだと思います。

 そこで、重要になってくるのは、きっと、収益還元価格でできる限りその土地の値段、建物のものを評価していく、これはもちろん、テナントがある、あるいはアパートだったら入居者がいる、その賃料があれば、収益還元価格で実勢価値みたいなものが出てくるわけですけれども、何も建っていない更地等々もあるわけです。しかし、そういうものに、これだけ技術が発達しているわけでございますから、ここにどれだけのものが建つということは用途地域等々でわかるわけですから、それに対してこの価格は幾らなのかというものを、だれでもがその情報に接し得る、これは住宅もきっと同じだと思いますし、マンションも一緒だと思います。そういうことによって今回の改革が生かされるのではないか、その点につきましても研究をさせていただきたいと思っております。

古本委員 ありがとうございました。終わります。

赤羽委員長 松野信夫君。

松野(信)委員 民主党の松野信夫でございます。

 私の方からは、公示法、いわゆる地価公示法について質問させていただきたいと思います。

 日本に一物四価ありということがかねてから言われておりまして、本来、不動産、土地の値段というものは、物の値段ですから一つであるべきだろう、こう思うわけですけれども、現実には、日本には不動産、四つないし五つある、こう言われているわけです。

 一つずつ指摘しますと、今度法案審議しております地価公示法に基づいて地価公示制度というのがあります。この法案は、正常な価格という指摘をしている。それから、国土利用計画法、これは都道府県知事がやりますが、基準地価制度というものがあって、この法律の中では、標準価格という名称を言っています。それから、これは市町村長がやっていて、地方税法での固定資産評価基準、この法律の中では適正な時価、こういう表現。そして、国税局長がやっております相続税法ですが、これは路線価でありまして、これは時価というふうな言い方をしているわけです。

 つまり、四つも法律があって、それぞれ時価というのを打ち出しているわけで、これとは別に、実際に不動産で流通する、いわゆる売買のときの時価というのも含めれば、五つも出てくる、これが実態であります。

 そういうような実態について、財務省が平成十四年度に予算執行調査というのを行っております。これによりますと、国土交通省の地価調査経費というのに予算が正しく執行されているかどうかというのを財務省の方でチェックしているわけです。

 これを見ますと、調査地点や調査手法の連携が不十分だ、そして、公的地価調査相互の役割分担のあり方と調査手法の効率化が必要だ、こういう指摘があるわけでございます。

 具体的に見ますと、地価公示法による地価公示で、大体全国三万一千カ所程度、一年間に四十七億円かけている、こういうような実態であります。そういう実態と財務省からの批判を受けて、この点をどのように受けとめておられるのか、まず最初にお聞きしたいと思います。

伊藤政府参考人 公的土地評価につきましては、従来から関係省庁、国土交通省が事務局のような形になりまして、総務省、財務省、国税庁で構成する公的土地評価研究会というものがございまして、ここを通じまして、土地評価に関する情報交換等を行いながら進めているところでございます。その実施に当たりましては、むだのないよう調整しながら評価を進めるということでございますし、また、地価公示を基準として評価額のバランスもとるようにやってきているところでございます。

 そこを具体的に申し上げますと、例えば、相続税評価につきましては、地価公示等の地点をすべて活用した上で、さらに国税庁で独自の地点を評価しておられます。

 また、固定資産税評価につきましても、地価公示等の地点をできる限り活用し、その上で各市町村で独自の地点を評価されるという形になってございます。

 そういう中で、今委員御指摘のように、平成十四年でございますが、財務省から、予算執行調査におきまして、公的地価調査相互の役割分担のあり方及び調査方法等を再検討し、さらなる効率化策を探るべきとの指摘を受けたわけでございます。

 この指摘を受けまして、現在、公的土地評価研究会の枠組みを活用いたしまして、調査地点の情報の集約とそれを踏まえた検証、いわゆるむだなところがないかとか、そういうことについての検証に向けた検討というのを関係省庁で連携しながら進めているところでございます。

 以上でございます。

松野(信)委員 今御答弁いただきましたけれども、各省庁、できるだけ効率化を図らなきゃいけないということで検討はしているということですが、現実には、どうも非効率のまま現在に至っているのではないか、こういうふうに言わざるを得ないかと思います。

 例えば、これは総務省さんの方にお聞きしようと思いますが、市町村長さんたちがやっている固定資産評価基準、これは地方税法に基づいているわけですが、これでは標準の宅地として大体四十五万カ所やっておられる。そのうち、地価公示やあるいは県知事がやっている地価調査との重複地点が三万カ所ある、市町村が独自に不動産鑑定評価を行っている地点が四十二万カ所、そういうふうに聞いておりまして、大体一地点で約六万円ぐらい費用がかかっているということでありますので、推計で二百五十億円ぐらいお金がかかっている。

 これは、一応三年ごとに地価公示をもとにして算定しているというふうになっているわけで、市町村がやっていて、特別交付税交付金で後から補てんされるということになっているようですけれども、御承知のように、特別交付税交付金もだんだんと削減する方向で大変厳しい状況だ、将来ともこれが国の負担で維持されるかどうかもいささか不透明ではないかな、そうすると、市町村の負担もこれまた大変厳しいものになるのではないか、やはり効率性をもっともっと考えなきゃならない、このように思いますが、総務省の方はいかがでしょうか。

板倉政府参考人 固定資産税の評価についての御質問でございます。

 御承知のとおり、固定資産税におきましては、土地基本法の第十六条の趣旨などに基づきまして、平成六年度から、いわゆる宅地につきまして、地価公示価格等を活用して、その七割を目途に評価の均衡化と適正化を図るということで進めてまいっております。

 そういう状況でございますが、今御指摘ございましたとおり、全体としては約四十五万地点程度の地価の鑑定を行うということでございますが、これはあくまで、固定資産税を課税する上で適正な地価を算定するために、市町村それぞれが、それぐらいの評価地点が必要だということでなされているというふうに理解をしております。

 一方、地価公示の地点は、今御指摘ございましたとおり約三万地点強というふうに聞いておりますが、これらにつきましては、できるだけ市町村が固定資産の評価をする場合に活用をしておるわけでございまして、ここのそういう意味での二重のといいましょうか、むだといいましょうか、そういうものは極力なくすように努力をしてまいってきている、こういうふうに御理解をいただければと思います。

松野(信)委員 今御答弁いただいたように、できるだけむだをなくすということでお願いをしたいと思います。

 続いて、これは財務省の方になりますか、路線価の関係ですけれども、これは相続税法に基づいて時価を出すというふうになっているわけで、私が聞いているところでは、全国で四十七万カ所、大体三十二億円ぐらい毎年かかっているということで、路線価を出しているわけです。

 しかし、一方では、市町村長がやっている固定資産評価というものがあり、また国交省がやっている地価公示というものもあり、それでまた路線価というのを何で出さなければいけないんだろうか、これもやはりいささか非効率ではないだろうか、こういうふうにも考えられますが、この点はいかがでしょうか。

西江政府参考人 お答えさせていただきます。

 先ほど、国土交通省からも御答弁ございましたように、従来から、関係省庁で構成します公的土地評価研究会を通じまして、土地評価に関する情報交換を行いながら、評価の適正化、効率化を図っているところでございます。

 路線価等の評定の実施に当たりましては、課税の適正化、効率化という観点から、地価公示価格、都道府県地価調査価格のすべてを路線価等の評定の基礎として活用する、評価時点を地価公示と同じ一月一日に合わせる、相続税等の課税の対象は全国の民有地すべてでございますので、そのうち、市街地的形態を形成する地域とそうでない地域に区分をいたしまして、それぞれの地域で国税当局独自に標準地を設け、鑑定評価額や地価事情精通者の意見価格をも参考にしながら、的確に地価動向を反映させ、精度の高い評定を実施するよう努めております。その実施に当たりまして、他の公的土地評価で選定している標準地と重複させないこととしております。

 また、市街地でない地域の土地につきましては、固定資産税評価額を活用し、これに一定の倍率を乗じて評価することとするなど、他の公的土地評価をも十分活用して効率化に努めているところでございます。

 今後とも、公的土地評価研究会におきまして、関係省庁の連絡を密にして、より一層の効率化になるよう、緊密な連携を図ってまいりたいと考えております。

松野(信)委員 地価の問題を質問しますと、いつも、関係省庁とよく連絡をとりながら重複がないように効率化を図ります、こういうようなお話もいただくし、あるいは、それぞれ法律の制度、趣旨、目的が違うから、それぞれ法律の趣旨に従ってやっております、こういう答弁をいただくのですけれども、しかし、翻って考えてみますと、その制度、趣旨、目的の観点から、それぞればらばらに物の値段が出てくるというのはおかしなわけであって、物の値段、特に国民の重要な財産である不動産というものはやはり値段はしっかり、だれが見ても一定の値段であって、それに税金がそれぞれかかってくる。例えば、固定資産税がかかってくるなら、それは固定資産税の趣旨、目的に従って掛け率、パーセンテージをそれぞれ考察すればいいし、あるいは相続税、贈与税、そういうものをかけようというのであれば、やはりパーセンテージを考慮していけば十分対応できるのではないかな。

 幾つも幾つも、時価とかあるいは適正な時価とか言われるものが四つもあるというのは、これはちょっと国民からはなかなか理解が得られにくいのではないか、こういうふうに思いますし、また、先ほど申し上げたように、たくさんの箇所でやって、それぞれ費用もかけて、トータル、合わせますと三百五十億円、もし数字が違っているというならば御指摘いただきたいですが、三百五十億円かけてやっているわけですね。これだけの費用をかけるのであれば、もっと上手な、効率性のいい、しかも統一性のとれたやり方があるのではないかな、このように思います。

 先ほど、国交省さんの答弁の中で、公的土地評価研究会、こういうものが、各省庁集まっていただいて検討をしている、これに国税とか総務省さんも入っているというようなお話ですが、どうもそれは、単なる研究会にとどまっているものなのか、具体的にどのような検討を行っているのか、その点、御答弁いただけますか。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 公的土地評価研究会につきましては、平成元年に制定されました土地基本法におきまして、地価公示、相続税評価、固定資産税評価等の公的土地評価については「相互の均衡と適正化が図られるように努めるものとする。」そういう規定が設けられたわけでございます。この考え方に基づいて、関係省庁で公的土地評価研究会というものを設けまして、相互の均衡と適正化について連携を密にしながら取り組んでいるところでございます。

 そういう中で、相続税の評価額については平成四年分の評価から公示価格の八割、あるいは固定資産税評価額は平成六年度の評価がえから公示価格の七割を目標とするということで、相互の均衡、適正化が図られることとなったところでもございます。

 また、公的土地研究会の現在取り組んでおります問題につきましては、先ほど財務省の調査も出まして、さらなる効率化という財務省からの指摘もございますので、現在、先ほど検討しているというふうにお答えしたわけでございますが、その検討状況について申しますと、この公的評価研究会の場を活用して検討していくということで、そのベースになる各地点の情報とかそういうものを電算化して、電子データとしてまず整えて、それをベースにして分析を図っていこうというようなことで、そういうこともこの公的土地研究会で行っているところでございます。

 以上でございます。

松野(信)委員 どうも余りスピーディーな検討が行われているようには聞こえません。

 この平成十四年度の財務省での予算執行調査によると、なかなか厳しく批判がなされていると思います。調査手法の連携が不十分で効率化が必要だ、こういうふうに言っているわけですから、私は、終局的には土地の値段、時価というものはやはり一元化していく、一本化するという方向で検討をすべきだと思いますが、公的土地評価研究会というのはそういう方向を目指しているんでしょうか。いかがですか。

伊藤政府参考人 公的土地研究会でやっておりますことは、先ほども申し上げましたように、土地基本法第十六条で一本化ということではなくて相互の均衡と適正化が図られるようにするということになっておりまして、そういう枠組みの中でやっておるわけでございます。

 それで、先ほど財務省調査でさらなる効率化という点で、今後取り組んでいかなければならない課題はどういうことかということで私ども認識しておりますのは、先ほど来関係の政府参考人の方からも御答弁がございましたように、既に地点の重複ということについては相当程度ないような、そういうところになっているわけでございますが、さらに、近接の地点なんかの分析も通して、この地点についてはこちらの調査で代替できるのではないかとか、そういうことで、さらなる効率化がどういう形で進められるのかということをこれから検討していこうということでございます。

 以上でございます。

松野(信)委員 どうも、さらなる検討と言っているようではとてもとても話にならぬなというふうに言わざるを得ないかと思います。率直に言って、地価公示法の公示価格の目的から見ても、一体現状はどうなんだろうかというふうに言わざるを得ないです。

 公示価格、地価公示制度というのは、第一条のところにも書いてありますけれども、大きく言うと二つの目的が出ているわけです。一つは、不動産取引価格に対して指標を与える、一つの目安を示しますということなんですが、しかし、現実の不動産の売買、不動産業者あたりが入っての不動産の売買の実態を見てまいりますと、こういう地価公示の価格をベースに売買の値段を決めているというようなことはほとんどないです。これはお調べになれば大体すぐわかるし、先ほど同僚の古本委員の質問にも少しそういう点が入っていたと思いますけれども、現実の不動産の取引というのは、ある意味では地価公示法の地価とは関係ないところでなされている、こう言って過言ではないと思います。

 この点について、例えば不動産業者にでもアンケートでもとるなりなんなりして調べればこれはすぐわかると思いますが、そういうようなことでもされたことはありますか。

伊藤政府参考人 私どもが平成十四年に、委員御指摘のように、地価に関する情報というのは地価公示とかそういう公的な情報だけではなくて、例えば不動産会社の情報、友人知人の情報あるいは関係のコンサルタントから得た情報とかいろいろなものがあるわけでございます。そういう情報の中で、実際に価格を、取引に際して最も役立った情報はどうですかということで、どれか一つを選んでくださいという形でアンケートしてみました。

 結果といたしましては、地価公示等のいわゆるそういう価格が一番高い評価の割合といいますか、最も役立った価格の情報源ということを回答された方の割合は他の情報に比べて全体としては一番高い形になっておりました。そういうことはございます。

 それからもう一つ、公示価格がどういう形で使われるかということで一つ申し上げたいと思いますが、公示価格に関する情報、これは地価公示法に基づきまして官報に掲載し、市町村の事務所でも閲覧、縦覧できるという形になってございますが、私どもとしては、それに加えまして、地価公示というものを活用していただくという観点から国土交通省のホームページでも公示価格を検索できるようにしてございます。このホームページの延べアクセス件数でございますけれども、平成十五年度の実績で月平均大体百万件という形になってございまして、いろいろな方にいろいろな形で土地取引における目安として活用されているのではないかと思っております。

 なお、ちょっと長くなって恐縮なのでございますけれども、確かに公示価格についていろいろな御指摘があることは私どもも承知しているところでございます。

 ただ、公示価格と申しますのは、特殊な事情や動機がない場合に通常成立する、そういう価格を見きわめようということでございますので、個別の取引については、対象土地の条件や売り急ぎあるいは買い進みといった取引事情等が価格に反映される、そういう面もございますので、公示価格に比べ、高い場合も低い場合もあると思っておりますけれども、一つの帯といいますか、基準といいますか、そういう収束していく中に公示価格というのはあるというふうに私どもとしては思っているところでございます。

 以上でございます。

松野(信)委員 どういうアンケートをされたのかよく知りませんけれども、実際は、不動産業者に聞いてみれば、もう皆さん公示価格にはよらないということを言われるし、あるいはもういろいろな不動産の雑誌をごらんになってもはっきりしていますけれども、要するに、公示価格はもう依拠できない、でたらめだというような記事がよく載っていますよ。現に裁判などが行われて、間違っているというような判決も既に出ております。この点だけ指摘しておきます。

 それから、地価公示の目的というものはもう一つあって、これは、公共の事業の用に供する土地の適正な補償金の額の算定に資する、いわゆる補償金の算定に地価公示というのが資する、こういうふうに言われているんですが、これも実際の具体的な公共事業の場合には、また別途土地家屋調査士さんあたりにお願いをして、また別途補償算定をしているんですよ。つまり二重に算定をすることになっているわけで、そういう点から見ても、この地価公示制度、せっかく二つの目的を立てておりながら、現実には必ずしも即していない、この点を指摘しておきたいと思います。

 例えば、たまたま神奈川県藤沢市のホームページを開いてみたんですけれども、これは主には固定資産評価の説明をしているところですが、このホームページの中にも、「一つの土地に異なる価格があることは一般にわかりにくく、以前より公的な機関の評価については、一元化が検討されてきた」という、わざわざ藤沢市のホームページにも載っているほどであります。

 それで、もう私の意見になりますが、やはりこういうばらばらの公的な評価というのがあるのではなくて、一つの機関、公的な機関が日本全国の土地についてはしっかりとした評価をして時価を明らかにする。その上に立って、例えば総務省さんなら総務省さんで固定資産の方を一定の率を掛けて出してくる、あるいは相続税はまた一定の率でいくというような形でいった方が非常に効率的だし、公平ではないか。これで特に総務省サイドあるいは国税当局サイドも支障はないのではないかと思いますが、それぞれいかがですか。

板倉政府参考人 今おっしゃいましたように、例えば地価公示が今よりも大幅に拡充をされまして、地価公示地点がさらに多くなる、こういう場合には、これを活用いたしまして固定資産税評価の効率化に資するということは十分考えられることでございます。

 また、今御指摘がございましたように、精度を落とすことがなく全国の、例えば民有地一筆ごとに地価公示の評価を行うとか、あるいは全国的な路線価が示されるということでありますならば、それを基礎といたしまして固定資産評価を行うというようなことは考えられることだというふうに私は考えております。

 ただし、その場合におきまして、固定資産の評価は直ちに税額に直結するというようなことがございますし、また、評価について納税者に対する説明責任も負わなければいけない、こういうような幾つか問題がといいましょうか課題があるということも御指摘をさせていただきたいと思います。

 以上でございます。

西江政府参考人 相続税等の適正、公平な課税を確保するためには、精度の高い路線価等の評定を行い、これを維持する必要がございます。

 したがいまして、高い評価精度を維持した上で、仮に国土交通省におきまして全国の民有地すべての価格を毎年お示ししていただくということであれば、国税当局としてそれを活用することについては特に支障はないと考えております。

 ただし、借地権割合の評定とか個別の土地について減価要因を土地評価に反映することが必要でありますことから、こうした評価作業をどうするかという問題は残ろうかと思います。

松野(信)委員 今、総務省さん、財務省さん、国税の方から、特に支障はないというふうなお話もありました。

 こういうような提案は、何もきのうきょうに始まったことではなくて、以前からいろいろ学者、研究者、マスコミ等もしておりましたし、また、国会の方でも審議されてきたところであります。

 ちょっと指摘しますと、これは平成十一年三月三十日の参議院の国土・環境委員会で、当時、公明党の弘友和夫委員がこういうふうな指摘をしております。「最初から地価は国土庁なら国土庁が調べて、税金であればそれに税率を変えて掛ければいいんであって、わざわざ別々に調査をやる必要はない」と。

 これに対して、当時の関谷勝嗣建設大臣、こう答えています。

 先生の理屈が通っているようでもあるし、さりとて私の知識では、やはり相続税というものの考え方、固定資産税、確かに八割、七割やるんですから公示価格があれば足りるといえば足りるんだろうと思いますがと、この程度の答弁でありました。

 要するに、公示価格が絶対必要だし、それぞれの法律に従っての調査、評価が必要だというふうにも大臣は言っていないわけです。

 ぜひこの点、最後に石原大臣の方にお尋ねしたいと思いますが、石原大臣の御所見、ばらばら省庁でやるんではない、どこかできっちり一本化をして、そこの方で正確な、できるだけ正確な土地の時価評価というものを出して、あとは税務当局その他の関係機関はそれに従っていく、こういう方が非常にすっきりしているのではないかと思いますので、大臣のお考えをお願いします。

石原国務大臣 結論から申しますと、私も松野委員のお考え方に賛成であります。

 課税当局であるところの国税庁と総務省の見解を聞いていますと、自分たちは課税をしているわけだから、納税者の方々にしっかりと説明責任もあるし、文句を言われたときにはちゃんと調べているということを言わなきゃならない。それで、ほかのところの資料が、ほかのところというのは国土交通省の公示地価がもっと件数も多くなり、なってくればいいけれども、そうじゃなければ自分たちでやりますよというふうに政府参考人は答弁しているのかなと、もし違ったら恐縮なんですが、私はそういうふうに聞こえたわけであります。

 これ、長い歴史がある議論で、私もずっとやってきた一人なんですけれども、バブルの以前は、実勢価格というのが大体東京でいうと公示地価の二割アップ、今はどういうことを言われているかというと、公示地価の一割減が実勢価格だろう、そんなものが平均だろう、こういうふうに言われているわけですね。

 それで、例えば相続税の路線価の方からいいますと、以前は七割だった。二割高いものの七割だった。今は一割低いものの八割であったから、当然相続税収というのは上がっているんですね。

 冷静になって考えますと、相続税というのは明治三十八年の日露戦争の戦費調達で始まって、アングロサクソンの国では今やめようという方向にある。

 バブルのときどういうことが起こったかというと、千代田区で見ると、相続があった人の五四%が相続税を払っている。これは極めて異常なんですね。固定資産税にしても、大体二割から三割の評価だったものが、一物一価だ、一元化だということで七割まで上げていく。そうしますと、急に下落局面になって、固定資産税だけ上がる。

 東京の都心五区、都心七区と言ってもいいんですが、そこじゃ大きな、本当に暴動が起こりかねないぐらいな大きな騒ぎになって、負担調整措置というものを二段階、三段階、要するに、一段階の調整でもできなくて二段階、三段階にやって、何とか納税者の方々の理解を、まだ得ているかどうかということは別にして、得られる水準まで持ってきた。

 そろそろ、やはり委員の御指摘のとおり、地価の動きと税額の動きが反対になるということも経験し、さらに、この公示地価、今年度で一つ大きな潮目というか、転換点に来ておりますので、今委員が御指摘されました議論を研究しているだけじゃなくて、どうすれば課税当局である国税庁、総務省も納得していただける公示地価にできるのかという議論を深めてまいりたい、こんなふうに考えております。

松野(信)委員 ぜひその方向でお願いしたいと思います。

 質問を終わります。

赤羽委員長 岡本充功君。

岡本(充)委員 民主党の岡本でございます。

 本日は、不動産鑑定士の今後の資格のあり方について変えていく、こういった法律、そしてまた、地価公示の問題、同僚議員がこれまで質問してまいりました。

 こういった問題を引き続いて、私はひとつ質問させていただきたいと思っておりますし、今の松野委員の質問にもありました、大変石原大臣から前向きな御答弁をいただけたと思っております。これは本当に長年の課題であった問題でありますから、一朝一夕にすぐにということではないんでしょうが、そういった決意をもとに、どういった取り組みを具体的に行っていかれる御所見かをまず大臣にお聞かせ願えればと思います。

石原国務大臣 今の点は、御同僚の松野議員と政府参考人とのやりとりを聞いて、率直に思ったことを申し述べたことでございまして、これから具体的にどういうプロセスで、委員も多分一元化論に立っての御質疑だと思うんですけれども、そういうものをやっていくのか。

 一つ、ポイントは、やはり財務省と総務省の肩を持つわけではございませんが、課税当局でありますので、説明責任と、納税者の方々の質問に対してこれが適正であると言い切れるだけの信頼性と確実性をいかに持つか。そして、相続税路線価にしても固定資産税評価額にしても、公示地価よりもポイントを多くしなければならないというのは、これは当然だと思うんですね。そこの相関関係をどうするのか。

 これは与野党関係なく、我が党の中にもこういう考えを持っている人間が大勢いらっしゃいますし、真剣に、国土交通委員会の場をおかりいたしましたり、さまざまな場をおかりいたしましたりして、この問題は、ぜひ、きょうこういう話になりましたので、私も議論に加わらせていただきたい。

 それは、たまたま今国土交通大臣としてこの問題でお答えをさせていただいておりますし、法律案として、公示地価のポイントをふやし、公示地価の利用をもっとよりスムーズにしていこうという法律案を出させていただいておりますので、少し考えさせていただいて、またどういうことがあり得るか、国土交通委員会の場で御説明をさせていただく機会をちょうだいできれば、こんなふうに考えております。

岡本(充)委員 大臣から、地価の評価に対しての一元化に向けた取り組みを積極的に行っていただけるというふうな理解をしてよろしいんでしょうか。ある意味、リーダーシップを発揮して、この問題、国土交通省の中の、また内閣において、もちろん総理大臣が内閣のトップになるわけなんですけれども、そういった中での議論を踏まえてでも、石原大臣のイニシアチブというか、国土交通大臣としての所管をする範囲内でございますけれども、そういった取り組みを行っていっていただける、こういうふうに私は理解してよろしいんでしょうか。

石原国務大臣 先ほども課税当局の肩を持つわけじゃないという話でさせていただきましたように、やはり課税する側にとりましては、それが自分たちでしっかりと確信を持ってこれであるというものを持っているということは、課税当局にとって非常に重要なポイントではあると思うんです。ですから、そこのところは、やはり省庁、財務省、総務省ございますので、話をさせていただく。

 国土交通委員会でこの公示地価のお話をさせていただき、公示地価から今の御議論になっておりますので、国土交通省としてどんなことが考えられるのかということは整理をして、機会があればお示しさせていただきたい、こんなふうに考えております。

岡本(充)委員 きょう、総務省とそして課税当局であります財務省の方から、それぞれ、政治的な立場をお持ちの責任のある方に本日は御出席いただいておる。

 実は、これまでの議論というか、この前の同僚議員の議論の中で、地価の評価のあり方、その一元化を目指していこうではないかという取り組みで、総務省は自治税務局長さん、そして国税庁は課税部長さんがそれぞれ御出席いただいた上で御答弁いただいた。

 そういった中で、一元化に向けて、それぞれの、例えば総務省さんでしたら固定資産税評価額、国税庁さんでしたら路線価が今の課税の根拠になっている重要な価格であるのはわかるんですが、その価格の評価を、地価公示をもちろんもとに、算定根拠の一つとして、これを取り入れながら出していらっしゃる数字ではありましょうけれども、ポイントがダブっていたり、また同じような仕組みを焼き写しであったりというような中で、整理統合していこう、こういうような話。

 そして今、石原国土交通大臣からのお話、聞いていただきましたでしょうけれども、国土交通省の中でまた議論をされるなり、そしてまた、この委員会で機会があれば、一元化に向けてのそういった議論をしていきたいという御趣旨の御発言をいただいたわけでございます。

 もちろん、国土交通委員会だけで議論すればいい問題ではないかもしれませんけれども、それぞれお立場を踏まえて、この問題に対しての御所見を伺いたいと思います。

松本大臣政務官 御質問に御答弁をさせていただきますが、大臣から御答弁の中にもありましたように、路線価につきましては、固定資産税評価の趣旨、目的に沿った形で全国的なものが示されるというようなものであれば、これは一元化に向けて考えを進めていくということはできることだと私は思います。

 しかし、今の現状を考えてみますと、固定資産税評価と相続税評価、これが、それぞれ目的と性格が違うという点がありますので、特に、固定資産税の場合には納税者に対する説明責任を十分果たせる内容になり得るかどうかということが私どもの立場としては大変重要なポイントでありまして、さらに、一時期に、一定期間の間に大量評価をするということに支障のない仕組みを進めることができるかといったようなことがポイントになろうと思っております。

 特に、固定資産税でいいますれば、一億七千万筆もの課税対象者がいる中で、その皆さんに御理解をいただくということで、四十五万ポイントの中で、皆さんがさらにその説明を各市町村からされて理解ができるような材料が提供できるかということが大きなポイントになってこようかと思っております。

 その足並みがそろうということができるのであれば、この一元化ということはできようかと考えておりますが、今現在の状況では、大臣の御説明のとおり、今後また議論を進めていかなければならない状況にあるのではないかと認識をしているところであります。

七条大臣政務官 財務省としての見解も含めて、相続税の評価というのが我が方の関係でございます。

 今先生が言われましたように、公的土地評価というものについては四つある。四つの中で財務省がやるべきこと、総務省がやるべきこと、あるいは国土交通省や都道府県がやるということを一元化する、これは一つの考え方として、これから前向きに検討していかなければならないものだと私も思っておりますし、先ほどから石原大臣がおっしゃられた問題の中でこれからどうするか。

 ただ、私の方は、今の制度の中でいうならば、いわゆる課税当局でありますし、税をいただくということの中で、公平性、効率ということを考えていきますと、毎年毎年実施をしなければならない、そして、毎年でも特に一月一日にやったときの評価と、あるいは都道府県の方でおやりをいただいた評価の七月一日にやる評価と、半年ごとの評価を一緒になってうまく、できるだけ信憑性の多いものにしていくということをやらなければいけないというふうに考えなきゃならなくなってまいります。

 ですから、今の時点で申し上げるならば、これは慎重にやらざるを得ないですし、当然どこかでそれらをきちっとまたよその省庁とやるときになりましたときには、独自で我が省がそれをやるとなると、また大きな負担が感じる予算を別でつくらなきゃならないことも出てまいりますから、これはこれなりに慎重に考えていかなければならないことと考えておるところでございます。

岡本(充)委員 前向きに、今七条政務官の答弁、前向きに取り組んでいくという理解でよろしいわけですよね、最初に前向きに取り組んでみえると。そして、松本政務官がおっしゃられましたとおり、総務省としてもこれは前向きにとらえていくと、今うなずかれておりますけれども、そういう取り組みだと。

 そういうことであれば、政府部内で、これは前向きに検討する、この検討だけでまた何年もかかるようではまずいわけでありまして、今回のこの審議を機に、政府部内でこの地価の評価、土地の評価のあり方を本気になって進めていただきたい。それは、大きな意味合いとしては、ちょっと後ほどにも述べますけれども、実勢取引価格との乖離の問題を含めて検討することにもつながってくると私は思っております。

 そういった意味で、私は、この問題は国民の多くの要求もあると思っておりますし、政府のいわゆる今財政難の折、コスト削減というような方向性にも合致するものだと思っております。そういった観点で、ぜひ一刻も早い促進、この対策を打っていっていただきたいと思うわけでございますが、もし御答弁があれば。

七条大臣政務官 今、前向きにというような話をしたつもりでありますけれども、これをもし今先生御指摘のようにやるとなった場合のことを考えてみますと、私どもは課税当局でございますから、精度の高い路線価等々の評定を実施して、適正、公正な課税をしなければならない。当然のことながら、国税当局においては、鑑定標準地の数をふやしたりしなければならなくなったりします関係で、今のままの制度でやれば、これは人員の手当て等々、あるいは予算の拡充が必要だということになりますから、かなり慎重になってやらざるを得ないところがありますし、総務省さんやあるいは国土交通省とどういう形でこれからしていくかということを詰めていかなければなりませんから、私どものところでは慎重にやらざるを得ない、今の制度では慎重にやらざるを得ないということを申し上げたつもりでございます。

岡本(充)委員 いや、余り時間がないのでこれだけやるわけにいかないんですけれども、ちょっと聞いていただきたいんですけれども、今の、適正な評価をしなきゃいけない、地価公示だって適正な価格で公示されているわけですよ。これが適正じゃないわけじゃないんです。公示地価が適正じゃなければ、それは路線価は適正にしなきゃいけないから慎重にしなきゃいけないという話になる。それはおかしい。

 それから、人数をふやさなきゃいけないと言われますけれども、現時点でもう既に、今の人数で四十七万地点、平成十四年度で調査されている。この調査と、では、固定資産税評価額の調査地点が四十五万地点ある。この地点とが、ダブっているんだか、ダブっていないんだか、もうダブっているところもあるでしょう、いないところもあるでしょう。しかし、それぞれが別個にやる必要はなくて、それぞれ公正な地価評価をしているはずなんです。その目的、税の目的に合うような要するに弾力値を用いてはいるでしょうけれども、実際のところは、すべてがその目的に見合った公正な価格、しかも実勢価格にある意味パラレルに変動していかなければならない数値なんですよ。

 そういう意味において、もう既にどれもが適正な数値であるならば、それぞれの相関関係を決めていただいて、今でも公示地価の七割だ、八割だと言ってみえますけれども、そういうふうに決めていただいて、何乗を掛ければいいのかということだけ決めればいいことだということ、これは別にコストもかからないですし、人員もかからないことですし、ですから、七条政務官がおっしゃることは、慎重になるという必要はないということを私は強くお話をさせていただきます。

 時間がないので、次に行きます。

 実は、私、実勢価格の話をさせていただこうときょう思ったんですけれども、一点だけ、先ほどの古本委員の質問の中で、ちょっとあれっと思ったことがありまして、実は、今回の質問に当たって、土地・水資源局の方から御説明を受ける中で、不動産鑑定士の標準報酬、基本報酬というものは世の中には存在しない、こういうふうに言われていた中で、実際ホームページにはこういう数字があったと古本委員が指摘されたんですけれども、国土交通省は、全くこういうものが存在しないというふうにこれまで認識をされていたのかどうか、そこだけは教えてください。

伊藤政府参考人 先ほども御答弁させていただきましたように、報酬額につきましては、基本的には行政がかかわっているものではございません。また、ホームページに出ていたというのは、不動産研究所の報酬体系ということだったんだろうと思うんでございますけれども、個々の鑑定業者の方々がそれぞれの判断で基本的には報酬額というものを決めておられるということだと思っております。

岡本(充)委員 それは知っていたんですね。そういう個々の会社が決めているということは知っていたわけですよね。

伊藤政府参考人 個々の会社が、個々の会社といいますか、個々の鑑定業者さんが本来それぞれの考え方で決めておられるものだと思っております。ただ、私どもとして、その個々の鑑定業者さんがどういう報酬額でやっておられるかということについて、体系について網羅的にお聞きしてあったということは、報酬体系について何か具体的にお聞きしたということはございません。

岡本(充)委員 今のはちょっとよくわからない。では、国土交通省としては、今、実勢でどういうふうな基準を持って不動産鑑定士さんがその報酬価格を決めているかを承知していなかったということですか。

伊藤政府参考人 承知していないということについていえば、といいますよりも、そもそもこれは、基本的に自由競争で、それぞれの鑑定業者の方々が決めていかれる性格のものでございますから、そういうものに行政が特にかかわるということは考えていないということでございます。

岡本(充)委員 いや、かかわるじゃないんです、承知していたのか、知らなかったのか、どういうふうな実勢価格になっているか知らなかったのか、知っていたのか、どっちなんでしょう。

伊藤政府参考人 基本的に、そういう報酬額について、各鑑定業者の方々から個別の鑑定業者の方々が設定されておられる報酬額について私どもが報告を受けるとか、そういうことにはなっていないということでございます。ただ、もちろん、インターネット等で、ある鑑定業者さんがホームページでそういうことを出しておられるとか、そういうことがあれば、そのインターネットを見た職員がいるということはそれはあるかもしれませんが、行政として何か鑑定業者の方から個別の料金体系について報告を受ける、そういう形にはなっていないということでございます。

岡本(充)委員 いや、私の質問をちょっと一部訂正させていただくと、これは、古本委員の、ホームページに載っていたわけではないそうでございますので、そこはちょっと訂正させていただきます。

 ただ、それぞれの不動産鑑定士さんがどういうふうな市場の中で、先ほど大臣が、マーケットの大きさを初めて私も知りましたと言われましたけれども、その今の現状を、それぞれ自由競争ですからということではなくて、こういう制度をつくり、法をつくるという中で、省庁としてもそれは把握しておいていただいた方がよかったのではないかという意味を込めて私は質問をさせていただいているわけでございまして、古本委員の質問の御趣旨は、そういった中である意味規制をかけていくべきだという意味もあったというふうに私も承知はしております。しかし、この問題、私も何遍も問い合わせをする中で答えが出てこなかった部分でございますので、一度しっかりとした御返答をまたいただきたいと思っております。

 さて、そういった中で、最後ですけれども、実勢価格の問題、ちょっと取り上げさせていただきます。

 今、世の中の不動産取引、不動産業者に行くと、例えば、売りたい、買いたいというときに出てくる価格というのは、先ほどからもうくどいようでございますが、公示価格でその価格を提示されるということはない、ほとんどないわけですね。私が例えば、私は不動産を実は持っていませんけれども、もし売りたいと思ったとしても、公示価格が幾らでしょうということを調べて、もしくは不動産鑑定士さんに鑑定評価書を出してもらって売りに出すわけではない。実は、実際の取引の価格をもとに不動産業者さんと相談をする中で、あなたの物件なら幾らぐらいでしょうかとか、こういうような形で売り値を出したり、また物件を探すときも不動産業者さんを通じて、こんなあたりではないでしょうかという形で物件を探しています。

 これが現実の中で、実は、不動産の業者の間では、レインズという不動産の取引の情報を相互に交換する不動産流通機構の愛称だそうですけれども、こういった組織を通じて今、不動産の情報のネットワークが構築されている中でございます。

 このレインズにおきます主な一つの目的、今お話ししましたとおり情報の共有化というところにあるんだと思いますが、このサーバーには今、実際のところ不動産業者さんしかアクセスができないような状態になっています。このレインズの今の現状の中で、一般の購入希望者が見られる情報はどういった情報になっているのか、その部分をまずお聞かせ願えますか。

    〔委員長退席、今村委員長代理着席〕

澤井政府参考人 既に御承知とは思いますが、レインズは、多数の売却希望情報をシステムに載っけて、多数の買いたいという情報を持っている業者がそれを見ることによって、後ろにいる買い希望者に迅速に成約に持っていく、売り希望者にとってもそれで早く済むということで、できるだけ多数のものを載っけたい。その前提として、レインズという指定流通機構及びそれを検索する宅建業者には守秘義務がかかっておりまして、それ以外には情報が漏れないということで、かなり個人情報の中でも、土地の所在、それでどのぐらいの値段で売りたいと思っているというような、そういう情報でございますので、それが一般の人に出ると、やはりそれなら使うのをやめようということは十分予想されますので、そういう意味で守秘義務の中で使っているというのが今、基本的にはレインズの仕組みです。

 その中で、レインズの成果として、成約情報の中で、ある一定の地域について、例えばこの三カ月でこのぐらいの成約があった、例えばマンションでいいますとワンルームタイプあるいは二DKタイプ等のタイプに分けて、このぐらいの成約があって、その平均価格は平米当たりこのぐらいですというものについては、今公表をしております。

岡本(充)委員 私がレインズのホームページで見たところ、要するに例えば県単位で一平米当たり幾らで取引された、そのぐらいの非常に大ざっぱな数字しか出ていない。自分の住んでいる地域が、自分の住んでいる町村が、自分の住んでいる区が、その中での町が今どのくらいの実勢価格かというところまで公表することが、果たして守秘義務、プライバシーにかかわってくるのか。要するに、売買成約、だれが売ったか買ったかまでは特定できないわけである中で、例えば行政区、もっと小さな町村、町ですね、何々区何々町というような地域でこのくらいの物件で売買が成立していますよということを示すことが守秘義務に当たるということなんでしょうか。

澤井政府参考人 できるだけ個別性の高い情報が見る人にとって有益であるということは御指摘のとおりだと思っております。

 現在は、今仰せのとおり、大都市では市区町村単位、地方に行きますと県単位というレベルでやっておりますけれども、そういう情報に対する消費者の利便のために、一方で個人情報の保護ということにも留意しながら、よりきめ細かい公表の仕方がないかということについて、関係者とは協議をしてまいりたいと思っております。

 あわせて、この情報は広く広告を打ってもらっていいという売却希望情報については、別途、任意のインターネットシステムが立ち上がっております。これは業界関係者の皆さんの大変な御努力で不動産ジャパンというものが立ち上がっておりまして、これは売却希望価格でありますけれども、個々の価格については、多少の売り急ぎ価格であるか、あるいは自然体価格であるか、いろいろなものがあります。現にそういうものを見て値段の相場観をつくって買い取りの検討をする消費者も相当多いというデータもございますので、それも大いに御活用いただけるのではないかと思っております。

岡本(充)委員 今の不動産ジャパンというのは、不動産流通近代化センターのことでしょうか。

澤井政府参考人 従来から流通の大手、中小の四つの団体がそれぞれやっていたものを昨年十月に統合したものでありまして、構成団体としては、全宅連あるいは不動産流通経営協会、それから全日本不動産協会、日本住宅建設産業協会、この四団体でございます。

岡本(充)委員 不動産ジャパンというのは、たしかホームページの名前だったと私は思っていたんですが、一つの団体として不動産ジャパンという団体があるというふうな認識でよろしかったですか。

澤井政府参考人 今四つ申し上げました団体の情報システムを統合したサイトをつくった、そのサイトの名前です。

岡本(充)委員 私もホームページの名前だと思っておりました。

 それで、もとの本題に戻るわけですけれども、そういった中で、今のレインズの問題ですけれども、情報を多くの皆さん方が知りたいと思っている中で、では、その情報が機密性が高いと言われているのであれば、今実際に不動産会社に行って、このレインズのサーバーにつながるコンピューターがあって、この中でいい物件ありませんかねと言って、要するに購買者がそれをさわって探すことも別に可能なわけですよね、実際の現状の中では、不動産会社の端末のところで、例えばこの地区内で、家では見られないかもしれないけれども、不動産会社に行けば見られる、そういった現状じゃないですか。

澤井政府参考人 店頭で実際にどのように活用されているかは、私も実際に見たことがないので申しわけないんですが、基本は、宅建業者が見て、必要な情報を買い取り希望者に提示するということと承知しております。特に直接インターネットでだれでも見られるとなりますと、買いたいと思うそういう動機がない人も、いろいろな意味で見て、逆にその情報を悪用するということをむしろ心配しております。

岡本(充)委員 いや、私は、もし不動産取引の売り希望、買い希望が守秘義務を持って守らなければいけないようなものであるならば、それはそれできちっと規制をかけるべきです。つまりは、不動産業者さんの店頭で、不動産業者さんがほかの電話の応対をしている間に、では、ちょっと見ていていいですかと言ってかちゃかちゃと見ていられるようなことが、現実にどういう運用をしているかどうかわからないと言われますけれども、そういうような現状があるとすれば、もしあるのであれば、それは守秘義務に対して大きな脅威になりますし、その守秘義務ということ以上に、売買の成約をすることで不動産取引の流通の弾力化を図っていくというような目的があるのであれば、この売りたい、買いたいという情報をもっと広く知らしめるべきだというふうに考えております。

 そういった中で、ちょっと時間がないので、最後に大臣に一言だけお願いしたいんですけれども、不動産の売買の希望を広く、多くの国民の皆様方に知っていただいて、より不動産市場を活性化していく。かつては余り加熱し過ぎてはいけないと言われた不動産業界だったかもしれませんけれども、今の現状の中で、今度は不動産取引、ある意味、希望される方に対して情報を、しかも正確な情報をオープンにしていく、そういう目的を持った取り組みを行っていく必要性を感じてみえるかどうか、その点を踏まえて最後に御答弁いただければと思っております。

石原国務大臣 政府参考人から御答弁させていただきましたように、不動産に関係する団体等々も不動産ジャパンというサイトをつくって、ただいま岡本委員が御指摘のような、流通情報を広く国民の皆様方の目に示すような画期的な動きも起こってまいりました。

 個人情報の保護の観点と兼ね合いはございますけれども、できる限り多くの情報を国民の皆様方が共有することによりまして、個人の住宅に関して申しますと一生に一度、二度の大きな買い物でございますので、多くの方々が不利益をこうむらないような、そういう透明性の高い情報の閲覧ができるものをつくっていくという努力を進めさせていただきたいと考えております。

岡本(充)委員 ありがとうございました。

今村委員長代理 高木陽介君。

高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。

 本日は二回目の質問となりますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 最初に、地価の動向についてお伺いをしたいと思うんですが、最近、一部に明るい兆しが出てきていますけれども、やはりバブルが崩壊してから、全国平均で見れば地価は十三年連続で下落している。

 この下落、バブル崩壊直後の下落の傾向と最近の下落の傾向、これは少々特徴や要因は異なると思うんですね。

 バブル崩壊直後というのは、経済の基礎的条件を超えて高騰した地価が利用価値を反映した価格へ収れんする、いわゆる異様に高くなり過ぎたということで起きたものではないか。

 近年は、大体平成十年以降になりますか、地価下落は、悪化した企業の経営の改善、産業構造の変化、九〇年代に急速に進んだ国際化、情報化、社会経済の変化、そういったものによりまして土地の需要構造も変わってきた、こういうことが背景にあるのではないかと考えられています。

 そこで、まずお伺いしたいのは、バブル期以降、これまで土地政策として、いわゆる政府としてとってきた諸政策の評価を踏まえまして、今後の土地市場の活性化をさせるための方策、これをどのように考えているか、まず大臣にお伺いしたいと思います。

石原国務大臣 大変基本的な問題でございますので、私から御答弁をさせていただきたいと思いますけれども、やはりバブル期の地価高騰について、当時の政府としては、この抑制を図るために、金融面での蛇口を絞る、あるいは税制、短期の売買に際しての譲渡益課税の強化を図る、さらには土地取引規制などの総合的な政策を実施いたしました。これらの施策の結果、異常な地価高騰の抑制に一定の効果があったということは事実だと思います。

 しかし、その一方で、バブル発生とその後の崩壊というものが、個人が所有されている資産価値の減少、あるいは企業のバランスシートの悪化、土地利用の混乱などなど、長期にわたりまして日本の経済社会に対して深刻な影響を与えたということもまた事実だと私は思っております。

 このような中、先ほど来お話をさせていただいておりますように、ことしの公示地価を見ますと、地価動向に変化の兆しが見られる。私は、ある意味で潮目に差しかかっているように思っております。こうした動きを確実にして、この資産デフレというものを克服していくために、国民生活や企業活動に不可欠な土地、大変日本は狭小な国土の中での土地というものでございますけれども、その資産について、税制を含めまして今後の政策のあり方を、私は、再構築する、また再構築をしてもいいときに来たんだと確信をしております。

 これまで、土地への需要の拡大と土地市場の効率化の両面にわたって施策を展開してきたことは、もう専門家であられるところの高木委員は御承知のことだと思いますが、具体的に、若干御説明をさせていただきますと、都市再生やまちづくりへの取り組みの支援、あるいは土地税制、住宅税制の見直し、これはローン控除等々でございます。あるいは規制の緩和、また、新しいところでは不動産の証券化等々の推進に取り組んでまいりました。

 これからは、やはり北は稚内から南は石垣まで、各地方都市の再生の推進や証券化の市場の拡大、こういうものに取り組ませていただきまして、中長期的な視点から、あるべき税制、土地税制についても、今バブル以前の水準に全部戻ったからこれでいいんだという意見が一方にあるんですけれども、私は、これから十年後、二十年後の税制のあり方というのは今のままでは決していいと思いませんので、そういうところまで踏み込んだ議論を深めてまいりたい、こんなふうに考えております。

高木(陽)委員 今、最後に大臣、土地税制のことをずっと触れられました。ようやく経済の明るい兆しが見えてきた、デフレからようやく脱却、まだしていませんけれども、していこうとするこの段階にありまして、もう一押しやっていかなければいけない。

 そんな中にありまして、昨年もそうですけれども、税制改正、いつもやるたびに、この土地税制が俎上に上って、なかなかこれが、前進はしているんですけれども、一気に活性化にまで至っていない現状がある中で、今力強いお言葉もございましたので、今後もしっかり努力をしていただきたいということを御要望申し上げたいと思います。

 その上で、地価公示の問題で、国民が取引をする際に、信頼できる地価に関する情報、これは限られているわけですね。このような中で、地価公示というのは一つ重要な役割を担っている。

 その中で、今回、都市計画区域外でも都市的な土地利用が進んで取引が見られるようになっているところで、地価の動向を把握しよう、これ自体は評価できるんですけれども、今後とも、必要とされる地域で地価公示をしっかりやっていただく。これとともに、一方で地点がふえていくわけですね。これはどうかなとも思うんです。

 というのは、全国的に見ますと、土地の取引件数はまだ減っているわけですから、効率化というものも図っていかなければいけない。都市計画区域外を対象区域にしていく中で、公示地点の配置について、今度は都市計画区域内、または区域外でも、調整して地点がふえないように、ふえればふえるほどそれだけ効率化にならないわけですから、この点についてどのようにお考えか、お聞かせ願いたいと思います。

伊藤政府参考人 今般、都市計画区域外を地価公示の対象にしていくということを改正をお願いしておるわけでございますが、委員御指摘のとおり、地点をむやみに、今地価公示、三万一千余の地点を標準地としてやっておりますが、この地点を区域を拡大することによって無制限にふやしていくということは考えておりませんで、私どもとしては、効率的に地点を配置することが必要だというふうに認識しております。

 また、そのやり方と具体的な地点の配置につきましては、従来の地価公示との連続性にも配慮しながら、極力、既存地点を集約、再編することで、全体として効率的な地点配置を目指したいと思っております。また、先ほども申しましたように、従来の地価公示との経年変化という連続性の問題もございますので、その配置につきましては、順次計画的に、ある一定の期間をかけてやっていきたいというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

高木(陽)委員 もう一点、地価公示についてお伺いをしたいんですが、せっかく提供した情報を、これも国民に活用されて生きていく、利用されない情報は意味がないわけですから。

 この地価公示について、先ほどからいろいろと御指摘もありました、その実勢を反映していないのではないかと。もう一つ、そういった観点の中で、活用してもらうために、公示価格への信頼というものが必要になるわけですね。

 そこで、適正な評価に努めるものはもちろん、その評価の過程、これが重要になってくるのではないかなと考えます。土地の値段というのはなぜこういう値段になるのかというのはなかなか素人にはわからない部分なんですけれども、地価公示を取引の指標として国民に活用してもらうためには、今回の改正による対象区域の見直しも重要ですけれども、その価格を信頼してもらえるように、評価に用いた基礎的情報、こういったものを公表していくなどの取り組みも必要ではないかと考えますけれども、この点についてはどのようにお考えか、お願いしたいと思います。

伊藤政府参考人 地価公示を活用していただくためには、公示価格に対する国民の理解と信頼が重要であると私どもも認識しております。また、地価公示をめぐるさまざまな御指摘等もあるということは承知しておりまして、私どもはこれを真摯に受けとめて、改善すべき点は改善するという考え方で基本的に取り組んでいきたいと考えているところでございます。

 そういう観点で、地価公示の実際の評価のやり方ということで申しますと、公示価格の評価、判定に当たりましては、できるだけ多くの取引事例等を収集した上で、実際のデータをもとに、取引事例比較法、収益還元法等の不動産鑑定評価の手法を用いて行っております。そういうことで、市場の実勢をできるだけ反映するように努力しているところでございます。

 しかしながら、結果だけということではなくて、委員今御指摘のように、そのような結果を出した説明責任を果たしていくということは、またこれはこれで大変重要なことだと思っております。

 そのような観点から、説明責任を果たし、透明性を高める観点から、平成十四年から私ども始めておりますが、公示価格の判定の基礎となった鑑定評価書の記載事項について、その一部を国土交通省の窓口で閲覧できるような、そういう措置も講じたところでございます。

 また、これらに加えまして、本年三月十九日に、これは規制改革・民間開放推進三カ年計画ということで閣議決定がなされてございますが、そこでは、地価公示制度のもとで基礎的情報として収集された取引価格情報というものについても、個人情報等の保護に対する国民意識にも配慮しながら、そういうことに十分配慮をするという前提でそういう情報も提供していく、そういうことについて平成十七年度には試行ができるよう取り組んでいくことといたしているところでございます。

 このような形で、私どもといたしましては、今後とも、このような取り組みを通じまして、地価公示への信頼を高めていくよう引き続き努力してまいりたいと考えております。

 以上でございます。

高木(陽)委員 とにかく利用しやすいように、利用する人たちの側に立った観点というのをしっかりと認識してやっていただきたい、このように要望したいと思います。

 続きまして、不動産鑑定評価法の改正の方で質問をさせていただきたいと思いますが、市場の構造変化の中で、不動産証券化に伴う評価など不動産の評価については一層の正確さが求められていると思います。

 そのために、不動産の評価のプロである不動産鑑定士、これから、商業、業務ビルの収益力を踏まえた評価などいろいろな専門能力を要求される仕事になってくるわけですね。また、これから、これは午前中にも申し上げましたストックの時代ということで、中古住宅を流通させていく、マンションの建てかえを進める、こういった場面でも鑑定士の方々の活動というのが展開されるであろう。

 そのような中で、今回、試験制度を変えていく、簡素合理化をするということであります。簡素合理化する、これは司法制度改革の方でも、法科大学院の制度を導入しまして司法試験合格者をふやしていこう、こういう流れの中でありますけれども、志望者のすそ野を広げる、こういう意味では一つの大きな目的があるんだろう。

 ただ、背景として、現在の不動産鑑定士の年代構成、五十代が突出していて、二十代、三十代、若い方々が少ない。そうなりますと、若い世代が少ないというのはだんだんと先細りになる、こういうことにもなります。そういった意味で今回のすそ野を広げるという観点は観点でいいと思うんですが、もう一つ、今の時代は男女共同参画社会ということで、女性の進出、これが大きなかぎになると思うんですね。

 鑑定士に占める女性の割合というのは一体どれぐらいあるのか、まずお聞かせ願いたいと思います。

伊藤政府参考人 現在の不動産鑑定士の中で女性の占める割合ということでございますが、平成十五年一月時点でのデータということで申し上げさせていただきますと、五十代以上、四千三百三十一人の鑑定士の方がおられるわけですが、四千三百三十一人中四十一人で〇・九%ということでございます。それから四十代が、千人中四十七人ということで四・七%でございます。それから三十代の方、千七十二人おられるわけですが、百四十六人ということで一三・六%。二十歳代が、百一人中二十人ということで一九・八%。したがって、全体で申し上げますと、不動産鑑定士総数六千六百九十六人中女性は二百八十二人ということで、パーセントの割合としては四・二%ということになります。

 以上でございます。

高木(陽)委員 全体を見ますと四・二%。五十代以上の方々、これは仕方がないのかなという気もしますが、何で女性が少ないんだろうな、別に男性でなければいけないということもないんですが。そういった意味では、今回の改正で女性の参入ができるのかどうか、またどのような意義があるか、こういう点について、どう考えているかお聞かせ願いたいと思います。

伊藤政府参考人 まず最初に、今回の制度のことでちょっと一言申し上げさせていただきますが、国土審議会の不動産鑑定評価部会でも指摘されたところでございますが、現行の不動産鑑定士試験の体系は複雑で、資格取得までに、仮に資質や努力、能力というものがあったとしても、それに関係なく、最短でも四年程度を要するということで、この間、社会的地位が不安定な時期が長く、また時間的、経済的負担感も大きいというようなことが指摘されてございます。

 そういう前提で申し上げますが、不動産鑑定士を目指す方の大学の出身学部というのは、多くの方の場合、法律、経済、商学といった社会科学系の学部が多いわけでございますが、これらの学部では学生全体に対して女性の割合が三〇%ぐらいということになっているわけです。最近でも、しかしながら、直近の不動産鑑定士試験の第二次試験の合格者に占める女性の割合というのは一〇%というようなことで、相対的には低い数字になってございます。

 他の国家資格と比較しましても、弁護士、公認会計士、税理士等では女性の割合が一割程度でございますが、不動産鑑定士の場合、女性の割合は、先ほど申し上げましたように四%ほどにとどまっております。

 それで、こういうことについての原因とか要因とか、これはいろいろなことがあるとは思いますが、そういう例で、平成十四年に日本不動産鑑定協会が鑑定士を目指す実務補習生に自由記載という形でアンケート調査を行っておるわけでございますけれども、そういう中でも、例えば地方在住で子供の世話をしながら鑑定士を目指すことは極めて難しいというような女性の方の意見というのもあったわけでございます。

 こういうような実態を踏まえますと、現行の制度は、家庭で出産、子育て等の役割を背負いつつ、資格取得でキャリアアップを目指そうというような女性にとって、参入の意欲をそぎ、進出を阻害する要因の一つになっているのではないかと考えているところでございます。

 今回の改正では、従来負担感が重いとされていた実務能力の修得の課程を短期集中で行うということにして、資格取得までにかかる期間を短縮するということにいたしたわけでございます。このことにより、結果的に女性にとってもより参入しやすい、そういう制度になるのではないかというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

高木(陽)委員 時間も参りました。

 今、女性の問題にちょっと触れましたけれども、実務研修を短縮されて集中的にやる、これはこれでいいと思うんですけれども、先ほども申し上げました、プロとしての目ききができなければいけないということですので、そこら辺のところの兼ね合い、これもしっかりと矛盾しないようにやっていただきたいということを御要望申し上げるとともに、きょうは地価公示と、そしてもう一つは鑑定評価法の改正ということで、不動産鑑定士の資格試験のことで触れましたけれども、土地問題全体、これはやはり大きなおもしとしてまだ日本の経済にのしかかっている問題であると思います。

 先ほど大臣もお答えいただきましたように、土地税制を含めて、今後の土地問題、積極的に、国土交通省としても、政府を挙げて取り組んでいただく、こういうことを要望申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

今村委員長代理 穀田恵二君。

穀田委員 初めに、昨日、三菱自動車のクラッチ欠陥を八年間放置していたという事実が明らかになったことに関連して聞きます。

 私は、一昨日もこの三菱のハブ欠陥事件についてお尋ねをしました。そのとき、国交省がどう言ったかといいますと、この問題で、現行制度の中でできる限りの対応をしてきたと答弁しました。

 きょうは、そういうものだったかということで、政治家としての大臣に直接お聞きしたいと思います。

 私は、第一に、タイヤの脱輪事故について、当時の省当局者が、事実上、三菱側と同じ立場に立って答弁していた事実をずっと明らかにしてきました。

 そして、二つ目に、リコール命令をするにふさわしい三菱側の過失を見つけるチャンスがありながら、逃した不十分さについて指摘をしました。例えば、原因不明の十三件のハブ問題に関する故障の後追いをしなかった点、さらには、クレーム台帳を直接点検しなかった点、さらに、運送会社からの、ハブに欠陥があるのではという文書を担当官に回さなかった等々指摘をしたところです。

 そして、第三に、法改正に伴うリコールの命令権限を持ちながら、こう言っているんですね。「リコール隠しのような行為は極めて社会的に大きなダメージを受けて、企業の存立さえも危うくするような、経済的には引き合わない」、間はちょっと略しますが、こういうような認識が非常に浸透した、こう言って答弁しているんですね。何を言っているかというと、要するに、そういうことは割に合わなくなった事態になっているから大丈夫だ、こういうことまで言っていたわけですね。だから、肝心の命令権限を持ちながら、やるべきことをやろうとしなかった。

 こういう、大体、私がいろいろ、あっちこっち言いましたけれども、三つぐらいの筋に分けて言ってきたわけですやんか。そういう一貫して指摘してきたことを、私は政府参考人にずっと聞いてきましたけれども、大臣もお聞き及びだと思うんですね。

 したがって、以上の点を踏まえても、大臣は、先ほど述べました、できる限りの対応はしてきたというふうに言い切れますでしょうか。お答えいただきたい。

石原国務大臣 ただいま穀田委員が御指摘されました、いわゆる三菱自動車のリコール隠しの問題は、基本的には、安全対策を最優先とすべき自動車メーカーが、これ今回が初めてではございません、平成十二年度に引き続きまして虚偽報告を行った、悪質な、私は、反社会的と言ってもいいぐらいな行為であり、極めて遺憾でありますし、何でこんなことを放置してくるような社内体質であったのかと半ばあきれております。

 その一方で、国土交通省は、再三御答弁を政府参考人からさせていただいておりますように、現行の制度あるいは体制の中でできる限りのことはやってきたとは思いますが、結果としては、委員が御指摘のとおり、だまされていたと思われても仕方がないような事実があったということは事実ではないかと思っております。私は、リコール制度の運用について、これからも不断の改善を行っていく必要性というものを、率直に申しまして痛感しているところでございます。

 何を変えればだまされないのか、また、何を変えればもっとこういう問題を早期に露見させることができるのか、早急に改善すべき点を洗い出すように、事務方にもう既に強く指示を出させていただいているところでございます。

 それで、今事務方が何をやっているのか聞かせていただきましたが、ふぐあい情報の収集と分析の充実強化、技術的検証体制の強化、リコール業務体制の強化など、各般にわたりまして改善策というものを検討しておるということで、まだ詳細が詰まっておりませんのでこの場で明らかにすることはできませんが、今後、早急に取りまとめて、リコール制度の運用に万全を期し、ましてや、今度の件ではまた新たな死亡者のことも確認されておりますので、安全、安心という観点からも万全を期する所存でございます。

穀田委員 だまされた事実は認めると言われまして、当時のリコール隠し事件で、大臣は、当時、見抜けなかったということに関しては、大変申しわけないという謝罪の言葉があったんですね。今度、私は、いろいろ政府参考人に聞きましたけれども、遺憾だという言葉はあったけれども、申しわけなかったという言葉は一度もなかったですよ。それだけは指摘しておきたいと思うんです。

 同時に、今、だまされぬよう改善のと言いましたけれども、私どもは、当時、そういうことについて危険だとわざわざ指摘したんですよね。そういうことでだまされちゃならぬということにもやはり、国民なりまた議会の指摘にも耳を傾けるべきであるということを申し述べておきたいと思うんです。

 一昨日、政府参考人が、現行制度の中でできる限りの対応をしてきたという発言と、遺憾だという程度の発言を、遺族の皆さんの前で一度、それでしゃべってみたらどうだと私は思います。それで絶対に納得できないということだけは、多くの国民の心持ちだということについて見る必要があると思います。

 安全という問題についての心がけの一番大事なことは、そういう人たちの死に追いやられた悔しい思いやそういった思いに対して真摯にこたえるという姿勢がまず大事だということを私は申しておきたいと思うんです。

 もちろん、大臣はそういう点について既に御承知かとは思いますけれども、あえて私は、政治家としてそういう立場に立っていただくことによって、事務方が一昨日述べたような点では、およそ、幾ら具体的な改善策を、それはもちろん必要ですよ、それをるる述べたからといって、根本精神を注入するといいますか、そういうことが必要だということを申し述べておきたいと思います。

 次に、不動産鑑定士補について聞きます。

 不動産鑑定士の資格取得制度を簡素化することについて、一点だけお聞きします。この簡素化により不動産鑑定士補制度はどうなるのか、現在もいる方々についてはどういう措置を講じるのか、お聞きします。

伊藤政府参考人 不動産鑑定士補の制度でありますが、今回の改正により不動産鑑定士補の資格制度は廃止されます。しかしながら、廃止の時点で不動産鑑定士補の地位を有する方については、その地位を保ち、不動産鑑定士補としてこれまでどおり不動産鑑定等の業務を行うことができるよう経過措置で措置しているところでございます。

 また、旧第二次試験合格者は、今回簡素合理化によって新たに衣がえする新試験の合格者とみなすことといたしておりますので、不動産鑑定士補は、不動産鑑定士を目指す際に新試験の受験は免除され、実務修習から始めればよいということになります。そしてまた、その実務修習を修了すれば不動産鑑定士の資格が付与されることになります。

 なお、以上のほか、旧制度下で既に一年間の実務補習というものを修了している、そういう不動産鑑定士補の方につきましては、新制度移行後も旧三次試験を三回実施することといたしております。そして、これに合格すれば、新制度での実務修習を受けることなく、不動産鑑定士の資格を付与することも可能となっているわけでございます。

 このように、今回の新制度への移行に当たりましては、不動産鑑定士補の地位の保全ということについて必要な経過措置を十分に講じているところでございます。

 以上でございます。

穀田委員 わかりました。

 では次に、地価公示法について一点だけ。地価公示の対象地域を都市計画区域外の地域にも広げるということについて聞きます。

 都市計画の区域外の開発というのは、今までも随分問題になってきました。開発自体による自然環境破壊の問題や、さらには中心市街地など既成市街地の空洞化、そしてまちづくりへの影響などさまざまな問題がこれまでも起こってきました。

 今回、地価公示の対象地域を拡大しますね。それによって都市計画区域外の開発を事実上促進したり加速するということになりはしないか、その点を危惧しています。地価公示の役割との関係を含めて答弁をお願いしたい。

伊藤政府参考人 今回の改正は、都市計画区域外の開発行為を促進したり抑制したり、そういうことを目的とするというものではございませんで、都市計画区域外であっても、既に相当程度都市的な土地利用が行われているか、または行われつつある地域について地価公示を行い、取引価格の目安を示すことで適正な地価の形成を図る、そういうことを目的としたものでございます。

 したがって、今回の改正により、直接、土地利用に影響を与えて、郊外部の乱開発が進むといった問題は生じないというふうに考えているところでございます。

 むしろ、都市計画区域内外の土地価格の情報が広く提供されるということになりますので、広域的な観点からの地価の比較ということも可能になるわけでございます。そういう意味では、全体として、適正あるいは合理的なと申しましょうか、そういう土地取引の促進ということにはつながるというふうに思っておりますし、そういうことを通じて適正な土地利用の実現にも資することになるのではないかというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

    〔今村委員長代理退席、委員長着席〕

穀田委員 次に、地価公示法にかかわって、公示地価を算定の根拠とする相続税問題について少し聞きます。

 私が住んでいます京都を初め、全国に三百五十件ほどの重要文化財に指定されている民家があります。いわゆる重文民家と言います。現在もお住まいになられて、先祖代々貴重な住居を維持しておられます。このうち百六十件ほどが相続税がかかわってくるそうです。こうした方々が毎年全国重文民家の集いというのを開いて、文部科学省や財務省に要望書を出しています。

 皆さんはこう述べておられます。文化財の保護、保存という国家的事業に貢献することを常に心がけていますが、実情は大変厳しく、多くの会員の方々が日常の維持、保存に関して辛苦を重ね、保存修理等の大規模維持事業に伴う物心両面の負担には到底耐えがたいほどの極限状況に置かれていますと訴えています。

 京都にも例えば二条陣屋というのがありまして、重要文化財ですが、この御主人の話を聞きました。通称小川家住宅とも言うんですが、一六七〇年に創建されて、江戸時代に大名の上洛の際に陣屋として、宿舎ですね、利用されてきた建物です。戦前、一九四四年に国宝に指定され、一九五〇年に国指定の重要文化財に指定されました。全国で二番目だそうです。

 財務省に聞きます。個人所有の重文民家の相続税に関して、どのような評価をされているか。

西江政府参考人 お答えさせていただきます。

 相続税等における財産の価額は、相続税法二十二条におきまして、財産取得のときにおける時価によることとされております。

 重要文化財に指定されている民家及びその敷地につきましては、文化財保護法により現状変更等について厳しい制限が課せられていますことから、その使用収益制限を考慮し、それが重要文化財でないものとして評価した価額から、その価額に六〇%を乗じて計算した金額を控除した金額、すなわち、通常の評価額の四割相当額によって評価をいたしております。(発言する者あり)

穀田委員 今、不規則発言がどこからか聞こえまして、四割も取っているのかというのがありましたが、平たく言えば六〇%減免していると。何も優遇しているというわけじゃないというふうにいつも財務当局は言うわけですが、事実上六〇%減免してあげるということで、全体として助けてあげている。それ自体は貴重なんです。

 だけれども、全く深刻でして、例えば、こういう事実もぜひ見ていただきたいんですけれども、二条陣屋は約四百坪ありまして、現在の評価だけでも相続税は二千万円ほどかかると言われています。例えば、一千坪ある重文民家の方々は代々、いろいろ代はかわりますから、年金で暮らしている、細々とやっているということで、相続税が払えないというのは、結構いらっしゃるんですね。

 しかも、二条陣屋というのは今大改修時期に入っていて、こういう古い、一六七〇年代なんかにつくられた建物というのは幾らそれを直すのにかかるかといいますと、大体一億五千万円かかると言われているんですね。もちろん国庫補助はあるんですよ。八〇%の国庫補助があって、それ以外に京都府から三百万円の補助があるんです。しかし、残り二千七百万円が自己負担になるわけですね。(発言する者あり)

 そして、日常の細々とした修理、管理、維持、気遣いなどは大変とおっしゃっておられました。しかし、こういう方々の心意気というのがありまして、重要文化財の番人として頑張っているということがその方々のお話です。だから、この役割を認めるべきではないかと私は思っているところです。

 したがって、先ほどの財務省の話はバブルの時代の通達のものでして、今もお話があったように、そんなものただにせいやというぐらいの声が大臣経験者からも出るぐらい当たり前の話でして、昨今の不況や景気低迷の中で、相続税算定の基礎となる地価公示価格も実勢価格よりも高いとの指摘もあるわけです。したがって、支援のあり方もさまざまな見直しの状況にあると考えています。

 そこで、重文民家の方々は、相続税の軽減措置として、先ほどの、不規則発言でただというような話がありましたけれども、九〇%までせめて控除をしてほしいと希望されていますが、財務省としての検討を要望したいんですが、いかがでしょうか。

西江政府参考人 財産の評価というのは、通常、売買実例等を参考に評価を行っているところでありますけれども、重要文化財民家等のように売買実例が把握できない場合には、その財産にかかる制限の程度を踏まえて、他の使用収益制限がある財産の評価とのバランスを考慮して減額割合を定めているところでありまして、実態に即した適正な評価に努めているところであります。

 御指摘の重要文化財民家等に係る評価通達というのは、これは昭和六十年に定めたものでありますけれども、通達制定当時と比較いたしますと、他に類似する個人所有文化財である民家、登録有形文化財でありますとか伝統的建造物とか、いろいろありますけれども、そうしたものも含めた指定件数が増加する傾向にございます。また、他に類似する使用収益制限のある財産の評価の動向、その後の状況変化ということもございます。そうしたことから、文化財建造物及びその敷地の評価のあり方について、現在検討を進めているところでございます。

 いずれにしても、文化財の種類に応じた法的規制の程度、利用上の制約等を考慮して、実態に即した適正な評価に努めてまいりたいと考えております。

穀田委員 最後に一言、大臣、政府は観光立国などといって、日本の歴史、伝統文化のよさを大いに諸外国に広めようと言っているわけですよね。まさに、日本のよさをこうした重文民家の方々が懸命に支えていただいている。だから、それを担当している大臣として、政府として挙げてこうした方々を支援、援助すべきだと思います。

 その点、大臣、政府全体に働きかけていただくことを要望したいんですが、いかがでしょうか。

石原国務大臣 ただいまの議論は財務大臣にしっかりと伝えさせていただきたいと思います。

穀田委員 終わります。

赤羽委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 不動産取引の円滑化のための地価公示法及び不動産の鑑定評価に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

赤羽委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、衛藤征士郎外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。岡本充功君。

岡本(充)委員 ただいま議題となりました不動産取引の円滑化のための地価公示法及び不動産の鑑定評価に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文はお手元に配付してありますが、その内容につきましては、既に質疑の過程において委員各位におかれましては十分御承知のところでありますので、この際、案文の朗読をもって趣旨の説明にかえることといたします。

    不動産取引の円滑化のための地価公示法及び不動産の鑑定評価に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺憾なきを期すべきである。

 一 公示価格は、一般の土地の取引に対して指標を与えるとともに、公的土地評価の根幹となる価格であることにかんがみ、公示価格への国民の信頼を高めるため、一層の公正性及び透明性を確保するとともに、路線価及び固定資産税評価との均衡が図られるよう、鋭意努めること。

 二 不動産鑑定士等の鑑定評価等業務については、依頼者や社会からの信頼を高めるため、その業務が適正に行われるよう指導監督すること。

   また、不動産鑑定士等以外の者が行うコンサルティング等の業務についても、国民の利益を保護する観点から、その業務が適正に行われるよう対処すること。

 三 新たな不動産鑑定士資格取得制度の実施に当たっては、資格の取得を目指す者の裾野を広げつつ、優秀な人材が確保されるよう適切な運営に努めること。また、実務修習について、期間や費用負担が修習生にとって過度の負担となることのないよう配慮しつつ、修習の充実を図ること。

 四 不動産鑑定士等の団体が行う研修については、多様化・高度化している不動産鑑定評価等の業務のニーズに対応する高度な専門能力の維持・向上が図られるよう、研修内容、研修レベル等について適切に指導すること。

 五 地価の個別化の進行等による不動産市場の変化に伴い、実際の不動産取引価格に関する情報の提供が求められていることにかんがみ、取引価格情報を提供する仕組みの構築を含め、地価公示のあり方についての検討を行うこと。

以上であります。

 委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。

赤羽委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

赤羽委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、国土交通大臣から発言を求められておりますので、これを許します。国土交通大臣石原伸晃君。

石原国務大臣 不動産取引の円滑化のための地価公示法及び不動産の鑑定評価に関する法律の一部を改正する法律案につきましては、本委員会におかれまして熱心な御討議をいただき、ただいま全会一致をもって可決されましたことに深く感謝を申し上げます。

 今後、審議中における委員各位の御高見や、ただいまの附帯決議の不動産鑑定士資格取得制度の適切な運営等の趣旨を十分に尊重してまいる所存でございます。

 ここに、委員長を初め理事の皆様方、また、委員の皆様方の御指導、御協力に対し、深く感謝の意を表し、ごあいさつとさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

赤羽委員長 次に、内閣提出、参議院送付、旅行業法の一部を改正する法律案及び海上運送事業の活性化のための船員法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。国土交通大臣石原伸晃君。

    ―――――――――――――

 旅行業法の一部を改正する法律案

 海上運送事業の活性化のための船員法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

石原国務大臣 ただいま議題となりました旅行業法の一部を改正する法律案及び海上運送事業の活性化のための船員法等の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申し上げます。

 まず、旅行業法の一部を改正する法律案について申し上げます。

 平成十四年三月に閣議決定した公益法人に対する行政の関与の在り方の改革実施計画におきましては、政府全体として公益法人に係る改革に取り組んでいる中、旅行業法につきましても、所要の見直しを行うとしたところでございます。

 また、近年、旅行需要がますます多様化、高度化する中で、旅行者の依頼に応じて、旅行業者がみずからの知見や取引関係を利用し、旅行者の個別の希望に対応しながら旅行計画を作成する旅行形態が増加するとともに、苦情や紛争も、旅行計画の作成から旅程管理に至るまで、幅広く生じるようになってきています。このため、旅行者の保護の充実を図ることが重要な課題となっています。

 これらを踏まえ、旅行需要に柔軟かつ機敏に対応し、また、旅行が計画どおり円滑に実施されるよう措置を講ずることにより、旅行者の利便を増進していく必要があります。

 このような趣旨から、このたびこの法律案を提出することとした次第です。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、旅程管理研修について、国が指定した法人が実施する制度を、国により登録された法人が実施する制度に改めることとしております。

 第二に、旅行業務取扱主任者の名称を旅行業務取扱管理者に変更し、旅行に関する計画の作成等に対する管理及び監督に関する事務を追加することとしています。

 第三に、新たな旅行契約の態様として、あらかじめまたは旅行者からの依頼により、旅行に関する計画を作成するとともに、運送または宿泊のサービスの提供に係る契約を自己の計算において締結する企画旅行契約を設定し、この企画旅行の実施について旅程管理業務を講ずることとしております。

 第四に、旅行業者と取引した者の債権を保全するための営業保証金及び弁済業務保証金について、旅行者に限定した還付を行うこととし、旅行者の保護の充実を図ることとしております。

 次に、海上運送事業の活性化のための船員法等の一部を改正する法律案について申し上げます。

 内航海運は我が国国内貨物輸送の約四割、とりわけ鉄鋼、石油、セメント等の産業基礎物資輸送の八割前後を占める我が国物流の基幹的輸送モードでありますが、企業の国際競争の激化等を受けた物流効率化、高度化の要請が高まってきているとともに、京都議定書等を受けた環境保全への社会的要請も高まっており、モーダルシフトを担う内航海運の活性化が強く求められているところであります。

 また、良質な輸送サービスの提供には優良な船員の安定的確保が必要であり、海上労働力の適正かつ円滑な移動等を図る必要があります。

 このような状況を踏まえ、航行の安全の確保及び船員の労働保護を図りつつ、内航海運を初めとする海上運送事業の活性化を図るため、このたびこの法律案を提案することとした次第です。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、内航海運業に係る参入規制の許可制から登録制への緩和、内航運送業と内航船舶貸し渡し業の事業区分の廃止等の規制の緩和を行うこととする一方で、運航の安全の確保等の観点から、運送を行う内航海運業者に対する運航管理規程の作成及び届け出の義務づけ等を行うこととしております。

 第二に、自己の常時雇用する船員について船員派遣事業を行おうとする者は、国土交通大臣の許可を受けることにより、これを行うことができることとするとともに、学校等の施設の長は、国土交通大臣に届け出て、当該学校等の学生生徒等について、無料の船員職業紹介事業を行うことができることとしております。

 第三に、船舶所有者が労働組合等との協定により海員に時間外労働をさせることができることとする等労働時間規制の見直しを行うこととしております。

 その他、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、旅行業法の一部を改正する法律案及び海上運送事業の活性化のための船員法等の一部を改正する法律案を提案する理由です。

 これらの法律案が速やかに成立いたしますよう、御審議をよろしくお願い申し上げます。

赤羽委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る二十六日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時一分散会


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