第24号 平成16年5月26日(水曜日)
平成十六年五月二十六日(水曜日)午前九時三十分開議
出席委員
委員長 赤羽 一嘉君
理事 今村 雅弘君 理事 衛藤征士郎君
理事 橘 康太郎君 理事 望月 義夫君
理事 大谷 信盛君 理事 奥村 展三君
理事 玉置 一弥君 理事 高木 陽介君
石田 真敏君 岩崎 忠夫君
江崎 鐵磨君 江渡 聡徳君
大島 理森君 加藤 勝信君
梶山 弘志君 木村 勉君
城内 実君 櫻田 義孝君
高木 毅君 谷 公一君
谷川 弥一君 谷本 龍哉君
中馬 弘毅君 寺田 稔君
中野 正志君 永岡 洋治君
葉梨 康弘君 蓮実 進君
古屋 圭司君 保坂 武君
松野 博一君 森田 一君
岩國 哲人君 岡本 充功君
下条 みつ君 中川 治君
中根 康浩君 長安 豊君
伴野 豊君 古本伸一郎君
本多 平直君 松崎 哲久君
松野 信夫君 三日月大造君
村井 宗明君 室井 邦彦君
和田 隆志君 若井 康彦君
佐藤 茂樹君 穀田 恵二君
武田 良太君
…………………………………
国土交通大臣 石原 伸晃君
国土交通副大臣 佐藤 泰三君
国土交通大臣政務官 佐藤 茂樹君
政府参考人
(公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長) 山木 康孝君
政府参考人
(外務省大臣官房領事移住部長) 鹿取 克章君
政府参考人
(国土交通省総合政策局長) 澤井 英一君
政府参考人
(国土交通省総合政策局観光部長) 金澤 悟君
政府参考人
(国土交通省海事局長) 鷲頭 誠君
政府参考人
(国土交通省政策統括官) 矢部 哲君
国土交通委員会専門員 飯田 祐弘君
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委員の異動
五月二十六日
辞任 補欠選任
江藤 拓君 谷川 弥一君
大島 理森君 江渡 聡徳君
島村 宜伸君 谷 公一君
二階 俊博君 谷本 龍哉君
保坂 武君 永岡 洋治君
渡辺 博道君 蓮実 進君
岩國 哲人君 中根 康浩君
山岡 賢次君 本多 平直君
同日
辞任 補欠選任
江渡 聡徳君 大島 理森君
谷 公一君 木村 勉君
谷川 弥一君 城内 実君
谷本 龍哉君 二階 俊博君
永岡 洋治君 加藤 勝信君
蓮実 進君 渡辺 博道君
中根 康浩君 岩國 哲人君
本多 平直君 村井 宗明君
同日
辞任 補欠選任
加藤 勝信君 保坂 武君
木村 勉君 島村 宜伸君
城内 実君 江藤 拓君
村井 宗明君 山岡 賢次君
―――――――――――――
五月二十六日
気象事業の整備拡充に関する請願(達増拓也君紹介)(第二四七三号)
同(照屋寛徳君紹介)(第二四七四号)
同(大野松茂君紹介)(第二四九三号)
同(若泉征三君紹介)(第二四九四号)
同(松原仁君紹介)(第二五五一号)
同(山岡賢次君紹介)(第二五五二号)
同(村井宗明君紹介)(第二五七三号)
同(山本喜代宏君紹介)(第二五七四号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
旅行業法の一部を改正する法律案(内閣提出第八〇号)(参議院送付)
海上運送事業の活性化のための船員法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八一号)(参議院送付)
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○赤羽委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、参議院送付、旅行業法の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省総合政策局長澤井英一君、総合政策局観光部長金澤悟君及び外務省大臣官房領事移住部長鹿取克章君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○赤羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○赤羽委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高木毅君。
○高木(毅)委員 おはようございます。自由民主党の高木毅でございます。
きょうは、旅行業法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。
今申し上げたとおり、旅行業法というと非常にいかめしい響きの言葉になりますけれども、それを旅行というふうにとらえますと、非常に響きのいい、さわりのいい、イメージのいい言葉になると私は思います。あこがれだとか、あるいはロマンだとか、そういったようなものも想像させる言葉ではございます。旅という言葉ならば、さらにそういう感が強いのではないかというふうに思います。
私たち議員にとっては、この旅行、地方視察ぐらいが関の山かもしれませんけれども、家族で行く旅行だとか、あるいはまた親しい友人と行く旅行というのは、本当に楽しいものだなという思いがございますし、そしてまた、旅行には多くの効能があります。例えば、見聞を広めて人間性を高める、あるいはまた心身のリフレッシュ、そういうような効果もあるわけでございます。
ぜひここで、大臣にずばりお聞きをしたいと思いますけれども、大臣にとって、旅あるいは旅行というものは何なのか。端的にお答えいただきたいと思いますが、大臣は偉大なる作家をお父さんにお持ちでございますから、ぜひ叙情的にお答えいただければ大変ありがたいと思います。よろしくお願いいたします。
○石原国務大臣 高木委員の質問は、旅行業法の審議で、一番しょっぱなから難しい質問が回ってきたなという印象を持たせていただきました。
私にとりまして、非常に旅行、旅というものを考えさせられた海外旅行が一九七〇年代にございまして、それはネパールのカトマンズに行ったときでございますけれども、そのとき、ある寺院を回っておりましたら、階段を虚無僧の格好をした方が上っていらっしゃるのを見まして、ああ、ネパールというのは日本人に似ている人が多いけれども、お坊さんまで同じなんだ、こんなふうに思ったわけでございます。
そうしましたら、実はその人は、私どもが日本人の仲間で行っておりまして日本語をしゃべっておりましたら、日本の方ですか、こういうふうにその虚無僧が声をかけてまいりまして、自分は、とあるところの跡取りの、寺の息子なんだけれども、やはり、寺を預かるに当たっては、仏陀が歩いた道を歩いてみようということで、インドからネパールとバスで旅を続けている。そのとき、非常に印象を持ちまして、旅というのは一体どういう意味があるんだろうと思って、広辞苑を引いたことを覚えております。
そうしますと、「たべ」、食するの食べだと思うんですけれども、「たべ」というのが語源だそうでございまして、やはり委員が御指摘のとおり、その地域を歩かれて、異なる文化を食する、あるいは異なるものを食べる。しかし、その根底にあるのは、旅姿の僧侶が体験したであろう歴史をたどる、あるいは伝統をたどる、また自然をたどる。しかも、それは自分の足をもってすることによって、自分を確立していく上のその僧にとっての旅であった、こんなことを感じさせていただいたことを今でも鮮烈に覚えております。
旅行というものが、今は一人の僧侶の話をさせていただきましたけれども、人それぞれにとって、またさまざまな価値を持っている。仲間と旅する楽しさ、あるいは、家族で旅行する、家族のはぐくみ、また、それによりまして、ちょっと話をかえて国内産業という方に目を転じますと、大変雇用や産業としてのすそ野の広い分野である。
旅というものは、その仕事に従事する人、あるいは旅をする人によって、本当に持つ意味が違う。そして、持つ意味が違う中で、いろいろな波及効果のあるものである。こんなふうに、大ざっぱではございますが、感じるところでございます。
○高木(毅)委員 旅は食べだということ、文化を食べる、あるいはまたおいしいものを食べるということでございますけれども、私の選挙区にも、若狭湾でございますので、おいしいものはいっぱいございますし、また、小浜というところは小京都と言われておりまして非常に文化も高いところでございます。それにまた、あわせて申し上げるならば、高速道路もございませんし、新幹線もございませんので、そういったこともあわせて、私の地元にぜひ大臣、お越しいただきたいとお願いをする次第でございます。
今度は、ビジット・ジャパン・キャンペーンにつきまして、大臣は初代の観光立国担当大臣に御就任されておりますので、そうした立場での石原大臣にお尋ねをしたいというふうに思います。
去年、平成十五年一月の小泉総理の施政方針演説の中で、二〇一〇年には訪日外国人旅行者を倍増の一千万人にするということを表明いたしました。
そして、九月に石原大臣が観光立国担当大臣に任命されました。そして、いわゆるビジット・ジャパン・キャンペーン、「ようこそジャパン」が始まりまして、平成十六年度には三十二億円の予算が計上されました。これは、前年比六〇%増だということでございます。そして、さまざまな施策が展開をされておるわけでございます。
ここで、少し現在の状況というものを確認しておきたいと思いますけれども、二〇〇二年の数字ではございますけれども、現在、海外へ行く人が一千六百五十二万人、その人たちが海外で使うお金が二百六十四億ドル。一方、日本に来てくれる方が五百二十四万人、日本で海外旅行者が使ってくれるお金が三十五億ドルということだそうでございまして、人数で言うならば三分の一、国際旅行収支で言うならば約二百三十億ドルの赤字となっているわけでございます。
また、アジア諸国の外国人旅行者受け入れランキングでも、九〇年には五位だったものが、二〇〇二年には八位へ後退する。そして、韓国にも抜かれてしまっております。
そこで、こうした現状をこのビジット・ジャパン・キャンペーンによって打開しなければならないわけでございますけれども、まだこのキャンペーン、始まったばかりではございますが、大臣として、現在、その手ごたえをどう感じていらっしゃるのか。そして、成果は上がりつつあるのか。あるいは、果たして目標の二〇一〇年には一千万人が訪れてくれるようになるのか。ぜひ、大臣のこの目標達成に向けての意気込み、決意、そういったものも含めてお尋ねをしたいと思います。
○石原国務大臣 ただいま高木委員が御指摘されましたように、海外に行かれる方は一千五百万人を超えておりますが、おいでいただける方は五百万人、こういうところに大きな差がある。旅行収支のマイナスについても、委員の御開陳の中にございましたとおりでございます。
昨年四月のビジット・ジャパン・キャンペーンの開始以来、月々の訪日外国人の方々の数字が発表されるたびに、GDP速報と同じぐらいわくわくもし、またどきどきもし、数値を見守ってまいりましたが、十五年度で見ますと、ビジット・ジャパン・キャンペーンの取り組みということも若干ではございますけれども影響したのかなと言われる、いい数字が出たのではないかと思っております。ワールドカップのときは本当に多くの方々がサッカーを御観覧においでになりましたけれども、そのときを三万人程度上回る過去最高を十五年度では記録させていただきました。
私もこれまで、中国語、韓国語、英語によるプロモーションビデオ、また、総理も英語によるプロモーションビデオ等々を、大リーグで、あるいはCNNでコマーシャル等々で放映をさせていただきましたし、成田、羽田におきます入管手続の簡素化、あるいは中国、韓国からの修学旅行生等々のビザの免除、あるいは、中国では観光旅行客のビザの発給地対象の拡大等々も総理の指示で現在検討が進んでいるところでございます。
一つ感じますことは、私も、海外なんかへ行きますと、日本の情報を見ようと思うと、どうしてもCNNとかBBCをつけるわけですね。そうしますと、そのコマーシャルの中で、その地域の旅行地の宣伝みたいな、ああ、行ってみたいなというようなところが映るわけでございます。日本の場合はまだまだ、CNNで総理のコマーシャルを流させていただいたり、大リーグ等々でやらせていただいておりますけれども、そのボリュームは、やはり海外の国が発するCMの発信量から比べたら十分の一とか二十分の一とか、その程度ではないかと思っております。
コマーシャルにはお金がかかりますけれども、高木委員の御出身地は本当にすばらしいところであると聞いておりますし、福井へは、私も曹洞宗でございますので、お寺等々も訪ねさせていただいたり、たまに訪ねる、すばらしいところだと思っておりますので、やはりそれを知らしめるということがなかなかなされていないんじゃないか。その知らしめるということにこれから全力を尽くして、いいところはたくさんあるわけでございますので、小浜の小京都ということもどんどん宣伝していく、こういうことに努めて、海外からのお客様を一千万人台にするという大きな目標に向かって推進してまいりたいと考えているところでございます。
○高木(毅)委員 我がふるさとにエールを送っていただきまして、本当にありがとうございます。
もう一点、VJC、ビジット・ジャパン・キャンペーン、VJCと呼んでいるようでございますけれども、VJCについて質問をさせていただきます。
今も少し内容等についてもお話をいただきましたけれども、これまで重点地域として中国、韓国、香港、台湾の四地域、それに米国だったわけでありますけれども、ことしからヨーロッパの三カ国、英独仏を加えて八地域になりました。当然それらの国・地域の人々は、それぞれ日本の魅力というものを違うもので感じるというふうに思います。いわゆる日本の価値というものは、国ごとだとかあるいは国民ごとによって当然違ってくるというふうに私は思います。
例えば、私なりに考えますと、アジアの人々にとっては、家電とか、あるいはディズニーランドだとかそういうテーマパークに魅力を感じるのではないかと思いますし、最近ではゴルフとか温泉なども興味を示しているというようなことも聞いたことがあります。
また、西欧の人々には、ちょうど大臣おっしゃっていただきましたけれども、いわゆる禅ですね、そういったようなもの、それから、今はやりでありますけれども、武士道、そういったようなものにも大きな魅力を感じて日本というものを好きになってくれるということがあるんではないかなというふうに思います。
また、私なりに思うと、とっぴなところでは、最近日本で百円ショップというのが非常にはやっておりまして、いわゆる百均でございますけれども、こういったようなものも、アメリカの方が来られて、これが一ドルかと、日本人がこれが一個百円かと同じように驚いて、そういったものにもやはり魅力を感じてくれるというふうにも思うわけでございまして、この百均なんかも、ある意味、大きな観光資源になり得るんではないかなというふうに思っております。
言うならば、キャンペーンをするに当たって、地域によってきめ細かく変化をつけて対応していかないと、その実を上げることはできないではないかということであります。
今もビデオの話が出ておりまして、ここにも小泉総理が富士山の前でビデオに出ている写真を持ってきておりますけれども、ただ言葉をかえるだけではなくて、アピールすべきものを適切に紹介していくということで魅力を感じてもらうことが大切だというふうに思います。先ほどもお話がございましたけれども、現在、取り組んでいただいているのか、あるいはまた、これからそういうふうに展開をしていっていただけるのか、その点についてお聞きをしたいというふうに思います。
○澤井政府参考人 国ごとに日本のどういうところに魅力を感じるかということをきっちり踏まえてキャンペーンを展開すべきということについては、私どももそれが全く基本的に大事なことだと思っております。
昨年四月からビジット・ジャパン・キャンペーンを始めましたけれども、その始めるに当たりまして御指摘のような重点五市場について事前調査をいたしまして、その事前調査を通じて各市場における嗜好とか市場の特性の把握ということを行いました。先生も今いろいろな国のことをおっしゃいました。そのとおりでございまして、例えば台湾とか香港の方は、日本の四季、季節、特に雪がないので珍しいということがかなり特色としてありまして、そういうことを踏まえて、例えば雪を売りにして北海道に台湾とか香港の旅行関係者の方をお招きして、そこで地元の旅行商品を売るというようなことをやって、かなり目に見える効果を上げるというような経験もこの一年でいたしました。
そういうことも含めまして、一般的には、VJCの進め方としては、先ほど大臣からも御答弁ありましたように、ビデオで呼びかける、あるいはトップセールスをする、いろいろなメディアを使ってPRをする、それから旅行関係者を招いて商談会などをやるということをいろいろな手法を使ってやっておりますけれども、幾つか具体的に申し上げますと、例えば韓国につきましては、昨年の羽田―金浦間のチャーター便の就航に合わせまして、石原大臣が韓国に行かれてトップセールスを直接行いました。
香港、台湾については、先ほど言ったような北海道でのかなり大きな旅行商談会をやって、それによって台湾旅行社によって三千本以上のツアーが組まれて、十万人以上の人が来るということが今見込まれております。また、香港につきましても、二千本以上のツアーが組まれて、六万人から七万人ぐらいの人が来るんじゃないかということが見込まれております。
アメリカにつきましては、日本の文化や自然を体験してもらうために、アメリカのツアーオペレーターをお招きして、新規ツアーの造成のお手伝いをしたというようなこともやっております。
それから、中国につきましては、ことしの一月に上海で日中文化観光交流展、これは全国の自治体が六十八、あとまた民間の関係者も出まして、かなりいろいろなところの団体が出て、それと連携してビジット・ジャパン・キャンペーン事業ということでやりまして、そこで魅力をPRし、商談会をやった。この結果、今年度に約四百五十本、お客様にして一万人分ぐらいの新たなツアーの造成が現在検討されているというようなことを聞いております。
十六年度には、英国、ドイツ、フランスが新たにビジット・ジャパン・キャンペーンの重点市場に追加されますので、同じように、やはりそれぞれの国の市場をしっかりとリサーチいたしまして、それに焦点を当てた事業展開をしていきたいと思っております。
○高木(毅)委員 もう時間がほとんどなくなってしまいましたけれども、法改正について一点だけお聞きをしたいというふうに思います。
今回の法改正、いろいろなテーマがあると思いますけれども、私はやはりオーダーメード型の旅行に消費者保護を義務づけたということが一番のポイントだというふうに思っております。
私は今まで、パッケージ旅行であろうとオーダーメード旅行であろうと、消費者は保護されている、何かトラブルがあればそれは旅行社が責任を持って対応していただけるものだというふうに思っていたんでありますし、多分旅行社もそのように対応していたんだというふうに思うんでありますけれども、一つには、にもかかわらず、今なぜこういうような法改正が必要になったのかということであります。
というのは、旅行する方の中には、若い人なんかは特に、自己完結型で責任をとるとか、あるいはトラブルがあっても仕方がないんだ、安ければいいんだ、言うならば、この法改正はそうした人たちにとってはありがた迷惑のようなことになりはしないかというふうに一つ思うわけですね。
それからもう一点は、旅行業者の方には、いろいろな仕事がふえるわけでありますから、言うならば、新規参入等、いわゆる規制緩和に逆行するんではないかなというような嫌いも、私、心配も持っているわけであります。
以上、消費者保護を訴えながら、逆に必要ない人にまで、要するに代金が上がったりして消費者の負担が高く、多くなるということ、それに対する心配。それから、旅行業界にとって、新規参入などの妨げになる、規制緩和に逆行するんではないかという、その二つの点についてどのように考えていらっしゃるのか、お願いをしたいと思います。
○澤井政府参考人 御指摘の企画旅行に関する改正は、旅行ニーズが非常に多様化してきた、特に体験型とか学習型とかいろいろなパターンが出てきて、実態として旅行会社もそういうことに対応し始めているということを踏まえてのものであります。
特に、従来の画一的と言われる主催旅行の中でも、中で二日目はこういうコース、こういうコース、こういうコース、五つぐらいありますよ、お好きなところへ行っていいですよというようなことで、従来の画一型旅行の中でも個別ニーズに対応しようという動きも出ています。
それから、現実に、既製の主催旅行ではないけれども、実態上旅行会社がみずからの計算で商品を売るような企画手配旅行というようなものも出てきていまして、実はその辺の区分があいまいになってきて、旅行者から見ると、旅程管理がちゃんとついているのか、行った先で代替手配なんかしてもらえるのかどうかというのがあいまいになってトラブルがふえてきたというのが大きな背景であります。
これによって旅程管理が義務づけられる、それがありがた迷惑ではないかというお話なんですが、旅程管理を添乗員をつけてやってもらうと、その費用は確かにおんぶされます。ただ、旅程管理というのは添乗員が必須要件ではありませんで、例えば行った先の旅行会社の営業所がそれをやるということであれば、ほとんどコストは変わりません。それは旅行者が選べます。
したがって、添乗員がいた方がいい人は若干のお金を払ってやるということも可能だし、そういう費用を払いたくないから、電話なんかできちんとやってくれということも大丈夫です。したがって、負担増を余儀なくされるということはないと思っています。
規制緩和につきましては、最初に言ったような実態がありまして、ある意味では、消費者の保護をきちんとやるための必要最小限の規制だということと我々は思っています。現に、この仕組みをつくる議論をするときに、旅行業界の代表の方も、むしろそういうふうにきちっとしてもらった方が全体として旅行の商品価値も上がるから歓迎だというような議論も経て、このような改正を提案したということでございます。
○高木(毅)委員 大臣、どうもありがとうございました。ぜひ目標に向けて頑張っていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。以上で質問を終わります。
○赤羽委員長 松崎哲久君。
○松崎(哲)委員 民主党の松崎哲久でございます。
今、高木委員の質疑、答弁を伺っていますと、若干別のといいますか、逆方向の観点からの質問になると思いますので、よろしくお願い申し上げます。
今回のこの旅行業法の一部改正でございますが、提案理由の説明によりますと、旅行需要の多様化に対応する、こういう言い方をしていますね。要するに、旅行需要というのは消費者の好みという、私どもの考えからすれば、旅行需要というのはどちらかというと上から見たような感じだと思いますが、私どもの立場でいえば、消費者の立場で、消費者の好みが多様化しているということだと思いますが、それに応じて新たに企画旅行という形の旅行を設けるという趣旨は時宜に即したことだと基本的に考えております。
しかしながら、この改正法案の中身を子細に検討させていただきますと、今、澤井総合政策局長は、必要最小限の規制をする、こうおっしゃったんですが、その必要を満たしていないのではないかというような点が若干ございます。その点につきまして、その真意を伺いつつ、さらなる御検討をお願いしたい、こういうことでございます。
最初は大臣に御質問させていただきたいのですが、先ほど高木委員の質問に対しまして文学的な御答弁をなさっていましたのを拝聴いたしました。
まず、私の考えるところによりますと、旅行というものは、消費者にとってはかなり高額の商品であると同時に、一回性のものだというふうに認識をさせていただいております。つまり、機会を失ったら取り返しのつかない大切な商品なんだということでございます。
もちろん、簡単なものもございます、料金的にも高額ではないものもございますが、例えば新婚旅行ということを考えていただければ、もうこれは一番典型的なケースだと思いますけれども、何十万の費用をかけて、そしてこれは一回しかないわけですね、一回である方がいいわけです。あるいは他の旅行でも、何年も貯金をして一生懸命旅行の費用を出して、さらには仕事についている方は、その仕事を調整して、時間を捻出して、それで休暇をとって行くというかけがえのない商品なんだというふうに考えるわけです。
失敗があったときに、後で金銭的に補償すれば済むというようなものではないわけです。高額なものであっても、後でクレームがついたら、取りかえたり、場合によれば返却すれば済むというような商品もあるわけでございますけれども、旅行というものは一回性だというところに特に特徴があるというふうに考えております。
もちろん、国土交通省さんでもその御認識があるので、旅行業法でいろいろな規制をかけているということはわかっております。その観点で今回の改正を見直したときに、その趣旨が果たして貫かれているのかなと思う部分があるので、後で質問をずっと繰り広げていきたいと思いますが、まず、旅行というのは単なる物ではないんだ、そういう商品だということを、大臣、御認識がございますかどうか伺わせていただきたいと思います。
○石原国務大臣 今の松崎委員の、機会を失ったら取り返しのつかない一回性のものである、大変的確な御表現でありますし、そう言われてみましたら、旅行へ行きまして、雨ばっかりだったら何てついていないんだろうと思いますし、ましてや、食べたものにあたったりしたらもう二度と来ない、本当に一回だけ、そのとき訪ねるところによって満足もし、不満足もする。そういう意味では、本当に委員の御指摘のとおり、普通我々が買い物をするような物ではなくて、形のないものであるということを改めて感じております。
そういう中で、旅行という形のないものをどうやって消費者の皆さん方に満足していただけるようにしていくのか、こういうことにやはり今回の法律案の目的というものはあると思いますし、また、こういうことによりまして満足度を高めていく努力というものはこれからも怠ってはいけない、こんなふうに考えております。
○松崎(哲)委員 大臣には後で、最後でまた伺いたいと思うんですが、今大臣がおっしゃった、天気が雨だったらというのは、これは不可抗力の部分ですからしようがない。食あたりしたらもう大変だ。これはホテルの業者の問題とかそういうことになると思うんですが、実は、私の質問で取り上げさせていただきたいのは、旅程管理業務の業務を行う者、いわゆる添乗員について、特に添乗員の研修について伺わせていただきたいと思っているんです。
今回の改正は、いわゆる添乗員の研修について指定制から登録制に変えるというようなことで承知をいたしておりますが、これが十四年三月の公益法人に対する行政の関与の在り方の改革実施計画というものの中で旅程管理研修の登録化というのが打ち出された結果であるというのは承知いたしておるわけでございますが、これを登録制にしたという目的とポイントについて政府参考人から伺えればというふうに思います。
○澤井政府参考人 端的に申しますと、水準以上の研修ができる研修機関に幅広く研修という市場に参加していただいて、競争によってより質を高めていきたい、また、そのように今回の改正を運用していきたいということでございます。
若干申し上げますと、現行法においては、主催旅行に参加する旅行者に同行して添乗する格好で旅程管理業務を行う、そういう者について、特に旅行業者が選任する者のうち主任の者につきまして、専門的な業務知識とか資質の確保を通じ、旅行地における臨機応変な措置の実行を可能ならしめる、それによって旅行者の保護に万全を期する観点から、国土交通大臣の指定する者が実施する旅程管理研修の修了を現行法は義務づけているということです。
これまで、国土交通大臣の指定につきましては、端的に言えば国土交通省の総合的判断という中で行われてきたんですが、まず、今回の改正では、法律レベルで、この研修における必須科目を旅行業法とか旅行業約款に関する科目、それから旅程管理業務に関する科目ということの二つだということを法律で定めまして、これを教授する講師について求められる資格や経験も法律で決めて、この法律で決められた明確な基準を満たす者は登録して研修事業に新規参入できるということにしたというのが一点です。
これによりまして、一定以上の研修実施能力を有する民間の自由な参入が可能となりますので、先ほど言いましたように、競争が行われてより質が高まるということを我々は意図しているということでございます。
○松崎(哲)委員 例えば、専門学校の中にトラベル専門学校だとか、そういう専修学校等々もございますから、そういうところは当然この登録機関になり得ると私も思います。
しかしながら、今、科目について参考人の方からお話があったんですけれども、では、何時間ぐらいの研修を想定しているのかというようなことについて、要するに今現在の指定機関、例えばJATAというところでの研修の例を拝見しているんですけれども、国内に関しては三日間、海外であればプラス二日間ということで、計五日。それから、時間的には、国内であれば二十時間プラステスト一時間というような、研修と言う割には極めて簡単、簡略なんじゃないかなという印象を持ちます。一方で、その料金は必ずしもお安くもないように思います。
ですから、目的の水準以上の研修ができるところ、それは確かにあると思います。そこが競争によって幅広くいい研修をしてもらうんだという趣旨はもっともだと思いますし、そのとおりで結構だと思うんですが、果たして、その国が考える研修というのはどの程度のもの、現行行われているものをもう少し充実してほしいという趣旨なのか、今程度と同水準のものが行われれば、それは登録機関として遜色ないものだ、問題がないんだというふうにお考えになっているか、その辺の御認識をいただきたいと思うんですが。
○澤井政府参考人 現在、現行法のもとで行われております研修につきましても、国と指定を受けた研修機関の間で、旅程管理研修協議会という場がありますので、その場を通じましていろいろな意見交換などをし、そういったことを踏まえて、研修内容についても適宜見直しをしてきたという経緯がございます。一定の水準は確保できていると思っております。
例えば、御指摘の例でいえば、海外旅行まで含めた旅程管理をする場合の研修については合計で三十六時間、五日、それから、国内だけの旅程管理ということであれば二十二時間ということで、科目とか何かも、語学なんかも含めて決まっているという実態がございます。
今回の改正につきましては、先ほど言いましたが、登録でより参入をふやして競争させていこうということなんですが、法律でまず科目と講師の要件を決めたと申しました。あわせまして、その法改正を受けて、従来はなかったんですけれども、国土交通省令において、登録講習科目ごとの講習時間とか、あるいは講習の頻度とか、講習受講の資格者とか、修了試験の実施義務などにつきまして、一方では、一定の水準が維持されなきゃいけないという観点、一方では、登録にした趣旨を踏まえて、ある程度の弾力性を持たせながら、競争を促すという双方の観点を踏まえて省令の整備をしていきたいと思っています。
なお、改正案では、この省令の基準に違反した場合には業務改善命令などもかけられる仕組みにしてございます。そういうことによりまして、結局、例えば研修生、この人にとってはこの科目は不必要だというような場合にはそれはもう省くとか、あるいはかなり人気のある研修になってきたので少し料金を下げるとかいうようなことも競争の中でしやすくしたい。
いずれにしましても、この法律を成立いただければ、その施行までの間に、今言いました研修内容に関する省令の基準も定めますので、現在の研修の実態も改めて踏まえまして、水準以上の研修が適切な競争の中で行われるように省令内容についてもきちんと吟味し、検討していきたいと思っております。
○松崎(哲)委員 先ほど私、国内で二十時間と申しましたが、二十時間とテスト一時間、一時間で、局長は二十二時間、こうおっしゃったわけです。私のさっきの質問は、今の現行で行われている研修で同程度のものでいいのか、もう少し強化していくのかということだけ、ちょっともう一度お願いしたいんですが。
○澤井政府参考人 国と研修機関でいろいろ議論しながら、見直すべきところも見直してきたという経過もございますので、基本的には今のままでも一定の水準はあると思っていますが、よりよい、質の高い研修が導入できるように、新規参入の方の研修も含めて、省令内容等の検討を通じてそういうことを目指していきたいと思っております。
○松崎(哲)委員 現行の制度でいいますと、この研修を受けて、さらに実務経験を積むことになっておりますね。この実務経験というのは、現行ではどういう規定でございましょうか、省令で定められていると思いますが。
○澤井政府参考人 先ほど申し上げました研修に加えまして、御指摘の実務経験の要件を課しております。これも、かつて定められていた基準をいろいろな実態を踏まえて見直した結果、現在に至っているという前提で申し上げますと、二通りありまして、研修と前後すること一年以内という、かなり接近した実務経験であれば一回でいい。それから、研修後、少し長い間かけて実務経験を踏むということであれば、五年に三回以上というのが現在の基準でございます。
○松崎(哲)委員 大臣、省令までご存じないと思いますので、ここちょっと聞いて、後で伺いますけれども、もう一回繰り返しますけれども、今政府参考人がおっしゃったのは、研修があって、それに実務経験がついていると、実務経験がどのぐらいですかと私質問しましたら、一年間に一回経験があればいい、こういうことなんですよ。まあ、五年に三回ですけれどもね。
一年間に一回というのは、要するに一日添乗の業務につけばこれは経験があったということにみなされている。私は、ちょっと普通の感覚では、これは違うと思うんですよ。一日、旅行についていって、果たして十分な実務経験があると言えるかどうか、非常に疑問だと思うんですね。極論すれば、研修を受けて、主任、既に研修を済ませた者について一日乗って帰ってくれば、二日目からは自分が主任になれるということですから、これはちょっと本当に大丈夫かなというふうに思います。
それで、私は、念のため、ちょっと局長に伺っておきますが、今後この改正法になって、今これは現行法の省令ですから、改正された場合にこの辺の基準を見直されるお考えはございますか。
○澤井政府参考人 実は、現行の基準は、平成八年に、それまでは過去十年以内に三回以上というところだったのを、もっと近い経験にすべきだということで、直近の前後一年、あるいは五年以内に三回以上というふうに直した経緯がまずあります。それによってより重い基準になったと思っています。
これは御承知とは思うんですが、この実務経験に行く場合には、それとは別にきちんとした主任、旅程管理業務の主任者がいなきゃいけないんですね。だから、企業にとっては、旅行会社にとってはその限りでは一定の負担になる。ただ、一方で、きちんと実務経験も踏ませなければいけない。両方の要請を調和させて、これは義務づけですから、義務づけという格好ではこの水準だろうということで、関係方面とも話しながら、実態も踏まえて決めてきたということですので、今のような一年以内一回とか、五年以内三回以上とか、そういうことで直ちに不十分だというふうには考えておりません。
ただ、個々の旅行会社の方針として、主任でなくてもきちんとできる人をいっぱいそろえて、それをお客様への売りにしようというようなことは、これは全く自由ですし、まさに旅行会社間の競争の問題だと思っています。繰り返しですけれども、義務づけですから、必要最小限のものという考えで、逆に言えば、これは絶対やっておかなきゃいかぬということでございます。
○松崎(哲)委員 例えば、国内旅行に関していいますと、研修は三日間なわけですね。その三日間で、四日目にどこか箱根か近場に行って帰ってきて、五日目からはもう一人前の主任になれる。主任になれるというのは、一つの、これから企画旅行、今までは主催旅行、この旅程管理については全責任を負う添乗員一人いればいいわけですから、そうすると、その一人が、要するに入社して五日目からできるということですよ。
普通の民間企業に就職して、一カ月ぐらい研修して、それから社内でずっと研修して一人前にだんだんなっていくということから考えれば、五日目にはもう主任で、旅程管理全部に責任を持つ立場に立つというのは、いかにも安易なといいますか、促成栽培のような感じがするんですよ。
ですから、せっかく、業法の改正ですから、これについては必要最小限なんだ、義務づけるのはこの程度だとおっしゃるんですが、しかしながら、この辺については、今回の法改正にはもちろん間に合わないとは思うんですが、関係の業界団体等と御検討いただいた上で、ぜひ、さらなる検討をお願いしたいと考えているんです。
その趣旨は、やはり何といいましても旅行の印象を決めるのは添乗員さんなんですね。何事もなく、つつがなく旅程が進んでいけば添乗員さんは要らないかもしれないけれども、そこでトラブルが起こったとき、オーバーブッキングがあったとかいろいろな問題が起きた、あるいは道中で事故があってルートを変更しなきゃいけない、いろいろなときに、そういうトラブルがあったときに、それでも次善の策、三善の策を考えて、新しいルートを見つけてまた対応していくというのは、ベテランの添乗員さんの臨機応変の処置がいいかどうかというのは非常に大きな印象を与えると思うんですね。
それも先ほど大臣に、冒頭に伺いました。旅行というのは一回性のもので取り返しがつかない、旅行が失敗したから後で料金を返却すればいいというような性質の商品じゃないんじゃないんですかということを伺って、大臣もそのとおりだと御答弁いただいたと思うんです。やはり旅行の印象を決める、むしろ、企画そのものよりも、例えば一週間の旅行、二週間の旅行、その間で実際にどういうことが起こったか。小さなトラブルは常にあると思います。でも、大きなトラブルが起こったときにどういうふうに対応できるかというのは、消費者、つまり我々にとって大変重要な要素だと思います。
それで、規制改革というのはもちろん小泉内閣の大方針でありますし、また、平成十二年十二月の行政改革大綱、資格付与等の事務事業の見直しの観点でこの改正が行われてきた、こういう経緯がある。わかりますけれども、業者に対する規制緩和というのは、一方で消費者の福利に反する、逆行するということがあり得るんだということをぜひ御認識をいただきたいと思います。
私どもはそういう立場で、業者に対して規制緩和をして、参入して競争が行われる、それは確かにいい商品を提供することにはつながると思います。一方で、どこかの水準でやはり消費者が安心して商品を買うことができる、この際であれば旅行に参加することができるということは大変重要なことだと思いますので、改正のこの部分というのはやや逆行しているんじゃないかということについて、大臣、御所見をいただきたいと思うんです。
○澤井政府参考人 旅程管理と添乗員との関係の制度的な仕組みだけについて、ちょっと一言申し上げたいと思うんです。
旅程管理責任というのは、あくまでも添乗員というよりは旅行会社、組織体としての旅行会社にございます。それを果たすやり方として、添乗員をつけて、その添乗員が全部やるというやり方もあれば、組織体として、そういう能力を持った人はつけないけれども、きちんと行った先、行った先の、例えばその旅行会社の営業所、支店のようなところが連絡をちゃんともらっていて、お客さんから連絡があればすぐに対応できる体制をとっておくということでもいいわけです。
それをさらに延長しますと、添乗員で旅程管理をやるつもりの人が一人ついていたけれども、いろいろなことがあって手が足りなくなったというときには、旅程管理責任を果たすために、旅行会社としては、むしろ組織体として力を補充してやるということは必要なんですね。そういうことはきちんとやらないかぬという制度になっておりますということが一点。
それから、先生も御指摘のように、今回のように法律をかなり大きく改正させていただくという機会をとらえて、今までの運用実態も踏まえて、この点に限らず、いろいろなところを見直すべきいい機会だと思っておりますので、そういう対応はしたいと思っております。
○松崎(哲)委員 今、局長の御説明はよくわかりました。それは、もちろん旅程管理そのものは企画の段階での会社の方であって、ただ、やはり旅行というのは常に出先出先でいろいろなトラブルが起こるわけですから、そのときの対応については、ベテランの添乗員さんが乗っていてきちんと対応できたかどうかというのは、消費者、旅行者の方の印象にも大きくなるわけです。
もちろん、いい添乗員をつけない会社というのは長期的には淘汰されていくかもしれない、営業成績が上がらないかもしれない。そこで問題なんですよ。だから、この商品が取り返しがつくものであれば、そういう旅行会社というのはある意味で競争力を失っていく、それはもちろんわかるんです。ただし、旅行というのはあくまでも一回性のものだから、新婚旅行は原則として一生に一回しかないわけです。ですから、その一回のときにその旅行会社を選択したということが影響があるものですから、旅行という特殊な商品については、やはり入念な対応が必要じゃないかということを考えております。
その点について、大臣、御所見をいただければと思います。
○石原国務大臣 これは、添乗員の方が気がきく人か気がきかない人かということに一義的にはかかってくるんだと思うんですけれども、やはり委員御指摘のとおり、質の高い研修の実施環境というものを整備していくことを通じて、添乗員の皆さん方が、どんなに気のきかない者でも、オーバーブッキングで泊まるところがないとか乗る飛行機がないというようなことに対してどういうふうに対応できるのかといった現地での対応能力の向上を通じまして、旅行者の方の保護というものを図っていくように努めたいと考えております。
○松崎(哲)委員 ありがとうございました。
もう一点、ちょっと重要な問題、今までの問題と離れるんですけれども、お聞きしたいことがございます。
それは、つまり、平成十年のフランスにおけるサッカーのワールドカップ大会の際に、現地での切符が手配できなかった、入場券が手配できなかったために、旅行がキャンセルになったり、行ってみたけれども現地で観戦ができなかったということで、非常に社会問題にもなりました。
その辺について、国土交通省、当時はまだ運輸省だったかもしれませんが、当然改善がされていると思うんです。ことしはアテネでオリンピックもございます。現地での入場券等の手配、例えばオリンピックだけじゃなくて音楽祭だとか観劇だとか、そういうことの現地での切符の手配ということを含めて行われる旅行というのが特に企画旅行というようになってきた場合にたくさん出てくると思うんですが、こういう際に、要するに平成十年の失敗を繰り返さないような、どのような対策がなされているかということについて伺いたいと思います。
特に、アテネ・オリンピックというのは今大車輪で会場を整備していますけれども、間に合わないかもしれないということをみんな不安に思っているわけですから、安心できるような御答弁をいただけたらと思うんですが、よろしくお願いします。
○金澤政府参考人 お答え申し上げます。
平成十年のワールドカップ・フランス大会の際に、今松崎委員御指摘のとおり、多くの旅行業者がみずから主催したツアーに必要な枚数の入場券が確保できないという事態が発生いたしました。
その原因は、一つは、主催者側の入場券の流通経路の情報公開が十分でなかった。どのルートで流しているか十分に情報公開がされなかった。それからもう一つ、主催者が販売業務を委託した、FIFAが販売業務を委託した公認代理店の中に極めて不適切な業務を行った者があったということが二つ目の理由でありました。さらに、主催した日本の旅行業者の側の問題につきましても、入場券の入手の確保について十分な社内の体制をとっていないところがあったというようなことが、当時、問題の発生に当たって私ども観光部が解析した原因でございました。
こういう事態を踏まえまして、当時、運輸省でございましたが、観光部におきましては、旅行業者に対しまして、大規模な海外イベントについて主催旅行を実施するような場合には、必ず入場券の流通経路等についての情報を的確に把握して、これを確実に確保するということに努めなさい。二番目には、募集をしました後には、入場券の入手先と十分連絡調整をして、確実に入場が果たされるようにすることを徹底しなさい。三点目には、主催旅行を募集するときに、必ず表示事項、あるいは広告基準のガイドラインというのがございますが、そうしたものを守った適正な表示をするということを強力に指導いたしました。
こうした当時の指導を受けまして、その後、各旅行会社におかれましては、それぞれ工夫をされまして具体的な再発防止策が講じられたということでございます。
今、松崎委員お話しのとおり、本年はアテネのオリンピックがございます。この対応につきましては、ワールドカップの場合と異なりまして、実は入場券はすべて日本オリンピック委員会、ここが一括して国内の業者に供給するという仕組みになっております。したがって、現在のところ、我が国の大手の旅行業者六社が、アテネの方の大会組織委員会と日本のオリンピック委員会、この三者協定を結びまして、公式旅行代理店として、入場券の購入の権利あるいは国内における販売権を確保しておりますので、今御心配のようなワールドカップ・フランス大会のときに発生したような事件は発生しないというふうに私ども考えておりますが、今後なお指導をしてまいりたい、このように思っております。
○松崎(哲)委員 入場券については日本のオリンピック委員会だということなのでそれは大丈夫だと思うのですが、入場券があっても大会そのものが若干不安があるようなので、その点につきましては、募集の仕方等々については関係会社の方で十分に御注意があるというふうに思いまして、私の質問、これで終わらせていただきまして、質問者を交代させていただきます。
どうもありがとうございました。
○赤羽委員長 下条みつ君。
○下条委員 民主党の下条みつでございます。
きょうは、松崎委員に引き続き、旅行業法について幾つか質問させていただきたいと思います。
今松崎委員の方から幾つかありましたので、重なるといけないので、私は業務取扱管理者の資格についてちょっとお伺いしたいというふうに思います。
といいますのは、旅行業務取扱主任者の資格というのは、一度取得すれば永久資格であるというふうにお聞きしています。この世はまさに乱世で、何十年前にその資格を取った後、いろいろなことが動いている。例えば、昔だったらテロなんかないわけで、昔だったら飛行機がビルにぶつかるということもちょっとあり得ないという中で、刻々と物が変わっている中で、一方で、旅行業というのは商品が何と命であります、人の命であるという中で、一度取った資格は九十、百歳になってもそのまま継続していいものか。
ただ、恐らく局長はこうおっしゃると思います。第十一条の二の六に、「旅行業協会が実施する研修を受けさせること等により、旅行業務取扱管理者の職務に関し必要な知識及び能力の向上を図るよう努めなければならない。」これは「努めなければならない。」としかないんですね。私は、これはとても十分じゃないというふうに思います。
再チェックを抜き打ちにやったり、例えば車の運転だって七十過ぎたら何回もやらされるわけですから、人の命を、それも一人、二人じゃなくて何百人も何千人も右から左に動かす仕事が、果たして一回資格を取っただけで後はチェックしなくていいのかというところに私はちょっと疑問を、クエスチョンを持っています。
そういう意味では、例えば今後、今後ですよ、今までのことじゃなくて今後どうするかですから、特にこの旅行業法については私どもの政党も賛成でございますから、これからどうインプルーブメントしていくかという話だと思いますので、その辺を含めて、努力目標ではなく、今後はこういうふうに資格については抜き打ちにチェックを入れていきたい、こういう法案もあるよ、こういう方法もあるよ、そういう前向きなお考えが何かあればお聞かせいただきたいというふうに思います。
○澤井政府参考人 御指摘の管理者、従来の取扱主任者を旅行業務取扱管理者ということで、業務と責任の範囲を広げて、より旅行者の保護の万全を期そうという趣旨でございます。
こういうふうに業務を拡大したことにあわせまして、職務に関し必要な知識、能力の向上を図るよう努めなければいけないという御指摘の規定を今回入れたということで、そういう規定を通じまして管理者について資質の維持向上を図ってほしいということで、これは、関係方面とも議論しまして、こういうことをきちんと書いていただければ、そういう対応を我々もちゃんとやっていくというような議論も経て、入れたということを一たん御理解賜りたいと思うんです。
今後運用していく中で、もちろん、いろいろ改善すべき点があればさらにまたいろいろな議論を経た上で、法律、政令あるいは省令といったいろいろなレベル、あるいは運用の方針といったレベルで必要な事項は明確にしていく場面もあるとは思います。当面、この改正法の効果ということをまずは見きわめたいと思っております。
○下条委員 ぜひ、見きわめることを進めていただきたいというふうに思います。
ただ、もう一度申しますけれども、永久資格というのは物すごく怖いものだと思います。例えば法律とか会計事務は、ある意味で人の命とは、間接的には関係するでしょうけれども、旅行業というのはそのまま右から左に命を動かす仕事であるという意味では、資格面について、一回取れば永久資格ではなく、チェック機能をある意味で抜き打ち的にしていくような法案をこれからぜひ、今、見きわめながらとおっしゃっていましたけれども、前向きに考えていただければというふうに思います。
次に、営業保証制度及び弁済業務保証制度について御質問させていただきたいと思います。
今回の法案で、弁済の対象から運輸機関と宿泊機関を外して旅行者のみにするというふうに改正された、こういうふうにお聞きしております。言いにくいですが、この理由というのは、弁済業務保証制度そのもののシステムを何とかして維持したいという業界もしくは協会の思惑であると私は思っています。
そこで、先日、御省の方から弁済業務保証金準備金の六年間の推移をちょうだいしました。金利低下による運用益の減少とか不景気、値下げ等による旅行会社の倒産の増加、特に平成十年では、四季の旅社とかジェットツアー、太陽トラベルなどの大型の倒産があった。これによって弁済準備金の取り崩しがどんどん続いた。それで、それが原因で随分減ってきて、日本旅行業協会、JATAというのですか、準備金の残が増減あって十六億円、そして全国旅行業協会、ANTAの準備金は、平成九年十億円あったものが十四年には約半分の五億円まで減ってきてしまっている。
これは実際の数字です、御省から出していただいた数字です。現行のままでは近い将来このシステムは当然ながら吹っ飛んでしまうということではないかという内容になっています。
このシステムの破綻については、御省のレクでも、非常に厳しい方向なんじゃないかなというお考えをお聞きしております。それは私もわかります。
また、あともう一つ、御省から出していただいた資料で、過去の弁済の内容をちょっとお聞きさせていただきます。
認めた弁済の認証金の全体の中で、旅行者、消費者対事業者の認証金の比率は、平成十三年には四対六であった。それがもう翌年の十四年には三対七になってきてしまった。つまり、全体の六、七割を占めている事業者に対する弁済を一気にゼロにしてしまう、こういう法改正であると私は理解しています。そのとおりだと思うんですね。それは、さっき言ったように内容が非常に厳しくなっているから、弁済が多くなっている、七割、六割を占めている事業者の部分の弁済をカットしてしまう、こういうふうな法改正だと私は思います。
しかし、御省のレクからお聞きしたところによると、いろいろ数年かけて事業者と話し合ってきた、問題ないとおっしゃっております。ただ、例えば宿泊機関については、確かに協会のクーポンという互助制度があってリスクはカバーできる、そういうお答えが返ってくると思います。
しかし、運輸機関についてはそのカバーが全然ない、こういうふうにもお聞きしております。だから、今まで六、七割カバーして、運輸機関についてのカバーは一切ない状態の法改正をするというふうに私は理解しております。つまり、運輸機関に何かあったときは、そのリスクは運輸機関が全部しょう。バスでも車でも飛行機でも船、全部しょうんだぞ、おまえたちがというような法改正だと私は理解しています。
ということは、私が例えば運輸機関の、まあ、社長になることは僕は能力ないからできないけれども、例えば上の方の人間になったとしたら、この法改正でもし自分の方が全部リスクをかぶらなきゃいけないような法改正に変わるんであれば、つまり弁済の対象に入っていないということであった場合は、当然私は何をするかといったら、それは旅行業者の選別をしていきます。つまり、第一種、第二種、第三種ありますけれども、でかい旅行業者に僕はどんどん頼みますよ。いろいろな関係、お互いにギブテーがあります。小さい旅行業者は全部カットしていきます。どうなるかわからない。
そうなってきますと、私は、小規模、中小規模の旅行業者がどんどん取引が減って、ますます経営悪化になっていくような気がしております。私の気持ちだけかもしれません。
そうなると、そこに何が発生するかというと、経営形態が悪くなればますます倒産がふえて、今御省が守ろうとしているその準備金の残高を減らすべく保証金の発生する件数がふえてくる、こういうふうに思います。
そこで、この辺の、はっきり言いまして私も随分数字をいただいております。私も運用専門で何十年もやってきました。だから中身もわかりますが、果たして運輸機関にそれだけカットしていれば、必ず航空会社、バス会社は、今言いましたように上の方のでかい会社しか頼まなくなっちゃう。そこで倒産がふえると私は見込んでおりますけれども、この辺の御見解はいかがでございましょう。
○澤井政府参考人 実は前提として、まずこの営業保証金それからまたプールしてやっております弁済業務保証金、できるだけまず旅行者に対する債務不履行に充てたいという気持ちがもともとありまして、制度ができたころは運送、宿泊機関も旅行者も全く同じ順位だったんですが、数年前に法改正をして、旅行者の方が優先する、優先的にまずそちらに弁済業務保証金あるいは営業保証金を充当するということは決まったんですけれども、どうしても旅行会社の経営状態なんかについての情報が旅行者は素人だということで遅いものですから、先ほどおっしゃいましたような運送、宿泊機関対旅行者の認証額の比率がそうなっている理由の一つがそういうところにもあると考えております。
今回、あくまでもそういう旅行者の保護をより向上させたいという観点で幾つかの改正をしているわけですが、この保証金についての改正もその一つであります。
このまま放置しますと弁済業務保証金のシステムが維持できないという以上に、逆に営業保証金自身を額を上げないといかぬというところにまず皆さんの議論が多くされまして、額を上げるということは、結局旅行費用に転嫁されますので、旅行者にとっての旅行費用も高くなるという出口が一つあって、それをどう考えるかという議論をしたわけです。
御承知と思いますけれども、旅行業者には一種、二種、三種とありまして、特に今仰せの大きいところへ集まるという旅行業者、これは一種でありますが、この議論はそういう関係者も入った懇談会で議論をしているわけですが、この議論に入っている団体の中で、一番小規模な三種の業者も六割ぐらいがカバーできている団体が入って議論をしているということなんです。
したがって、そういうところもいろいろなことを総合判断して、仰せのような点もあるいはあるのかもしれませんが、議論の詳細、ちょっとここで資料がないんであれですけれども、弁済業務保証金あるいは営業保証金の弁済範囲を消費者だけに限定するということについて、いろいろないわばアセスメントをした上で、しかもそのアセスメントには中小旅行業者の代表者も入ってやって、こうなったということでございます。
そういう経緯でこういう提案をしている、あくまでも旅行者の保護あるいは旅行コストの増嵩を防ぐという観点だということで御理解を賜りたいと思います。
○下条委員 ありがとうございます。
これはもう私の見込み、将来に対する見込みと、局長が、そういう中小の方を入れて、その六割が第三種、六割が賛成しているとおっしゃっている中での平行線の議論だと思いますけれども、私は単純に一、二、三という意味で、自分が運輸機関であれば、やはりリスクが少ないところに物を頼むようになっちゃうぞということの危惧があったものですから、そういう質問をさせていただきました。
ただ、法案というのは、どんどん法案の改正があるように、ぜひここで御提言しておきたいのは、今後、恐らく運輸機関については、自分がカバーされないとしたらでかいところに頼んでいくと私は思っています。したがってその、六割の人が賛成、四割の人は反対なわけです、そこには行かなくなっていきます。そうなってくると私は、恐らく最終的には、このシステムを保持していきたい、つまり事業者を外して、三割、四割の認証部分の、基金を維持していきたい思惑が倒産によってまた変わってきちゃうということだけ現在の時点では御指摘させていただいて、まあ、これはまた法案ができたってどんどん改正することもあるわけですから、いい方向に行けばいいわけで、今後の話として、私の方はそういう気持ちを持って御提言させていただくことだけを申し上げておきたいというふうに思います。
次に、時間も限りあるんで次に参りたいと思いますけれども、今回の改正というのは、理由のところに、旅行者の利便の増進を図るということが一番最終ページに書いてあります。
これは、この原点として私はこの話を進めていきたいと思うんですけれども、この業界の制度の一つである全額前払い制度、全額前払いしますね、旅行が始まる前に前払い、業界保護の発想に私は縛られていると思っています。そして、このような前払い、商品後もらい、先に前々に払って商品は後もらいするという取引形態というのは、商い取引としては特殊な形のものだと私は思います。
もし支払い後に会社が倒産してしまうと、支払いをした方は商品、旅行を受け取ることができずに丸損してしまう。そのために弁償制度があるとおっしゃると思いますけれども、例えば前払い金が経営力がない会社の運転資金の一部にされてしまうこともあったり、また悪質な危ない業者を生かしてしまうようなこともあるんじゃないかと私は思います。
この事態を遠くから眺めているような監督姿勢というのは、またちょっといろいろ今後問題が出てくると私は思っています。ですから、この部分に何らかの、私の意見なんですが、工夫が必要じゃないかというふうに思います。
例えば、前払い制度という特殊なこの制度を抱えている業界として、さっきの旅行者の利便の増進を図るという理由の観点から、例えば旅行代金の何割かを一たん銀行に預ける。それを、銀行の口座というのは政府と国交省の特殊口座を保管口座にするというような形にしておいて、旅行が完全に施行された後、初めて残りの保管されているお金をきちっと旅行業者に払っていく。こうすれば、今言ったような前払い、後もらいの、リスクだけ買っていく旅行者から少し変えて守っていけるんではないかというふうに思います。
例えば、一部でボンド保証制度というのが今ありますね。少しだけ積み上げる。ただ、これも基本的なものとちょっと目がそらされていると思うんですよ。要するに、この商い取引の基本は、旅行者だけが常に全額前払いにして、あと吹っ飛んだら一部しか戻ってこないという、この制度に甘んじているというところに問題が僕はあると思うんです。
そういう意味では、その何割かを、全額ではないです、何割かをきちっと国の方が保管して、その業者がきちっとその旅行を施行した後、その口座から旅行業者の方に振り分けていくというようなことの発想もいいんではないかと私は思っておりますが、これは取引形態の根本になる話だと思うんですが、こういうふうにやっていけば、特別なこの業界の前払い、後もらいのシステムについてある程度、少しずつ、これこそ本当に旅行者をもし局長が保護するというんであれば、自分がもし、例えば御子息とかお嬢さんが新婚旅行に行って、吹っ飛んじゃった、金戻ってこない、お父さんと言ったときに、いや、ちゃんと自分が指示して、うちの口座にあるから、おまえ、ほとんどカバーできるよというふうな効果も出てくると思います。
こういう非常に何百万人も旅行している時代でございます。これの御所見をいただきたいと思います。お願いします。
○澤井政府参考人 まさに旅行業界、前払い、後もらいという取引慣行があるという前提で、これは先生既に御質問の中で御指摘ですので繰り返しですけれども、そのために営業保証金制度あるいはその特殊形としての弁済業務保証金制度というもので、倒産あるいは場合によると夜逃げというようなケースも残念ながらありますけれども、そういうことに伴う旅行者に対する債務不履行にそれを補てんするという仕組みが入っている。
もともと、これも御承知のとおりと思うんですが、旅行業、営業の自由という中で、旅行者を保護するために最低限どういう制限あるいは負担を課すべきかという観点から常に吟味して、過度な制限にならぬようにということも必要だと思います。
そういう議論を経て、今は営業保証金というものを、その旅行業を開始するときの登録、旅行業として登録したいというときの要件にしているということでございますので、やはり私どもとしては、この制度の先ほどのような問題もカバーして、今度のように弁済範囲を限定するというような改善も加えながら、この制度を基本に、今後もしっかり運用していきたいというふうに思います。
また、この機会をおかりしてで恐縮ですが、前の前の御質問で、取扱主任者、何もしなくていいのかというお話がありました。
一つは、制度の御説明を忘れたんですが、広く旅行業者に対する業務改善規定がございまして、その中で、旅行者の利便とか安全を著しく損ねた場合にいろいろな命令ができるという中の一つに、現行法でいえば旅行業務取扱主任者の解任を命令するという規定がございますので、そういったものが、そういう規定の出番がないのが一番望ましいんですが、御指摘のようなケースが出ればそういう規定も活用する場面もあるかと思います。
○下条委員 御丁寧に説明ありがとうございました。
ただ、私が言っているのは、またこれも局長との話の接点になると思うんですけれども、僕の場合、ちょっと、システムそのもの、この商い取引そのものの形態の部分についての一部を国が挟んでいったらどうかと。営業保証金というのは、確かに、七十億あれば七千万で、そのうちの五分の一を協会に預けてしまえば、あとはそれを委託するだけで、五分の一で済むわけですよね。ですが、逆に言えばそれは、今ここで議論してもちょっと時間がないのであれですけれども、少な過ぎると僕は思います、今までの旅行のいろいろな対応、これからのいろいろな問題を含めていったときに。
そういうときに、さっきのこの法案の一番最後に理由として、旅行者の保護ということであるのであれば、もう少し金のことについて、私の気持ちとしては、一時保管して、商いと一緒で、例えば、局長はそういうものを買ったことないと思うんですけれども、通販だってそうですよ、後払いです、何でも。全部商品見て、確認して、それで、僕もちょっとひっかかって買っちゃったことがあるんですけれども、腹が全然減ってないですけれども腹筋のやつを買いました、全然使っていなくて腹が出てしまっているんですけれども。それと同じように、旅行のこの商品だけは、金だけは払うけれども、もらえる実態は後だというところの部分に何かギャランティーを、ギャランティーという言葉は小泉総理が好きですけれども、ああいうギャランティーを入れるような形ができたらどうかなという形態の部分の御提言なので。
ただ、今おっしゃったように、ここのところしばらくは、営業保証金その他を含めて旅行者保護の形態ができているので、これでしばらく見ていきたいというお気持ちはわかりますけれども、私はあくまでも、この法案の改正に賛成でございます立場で、さらにもう少し踏み込んだ意味で御提言させていただいたというふうに思います。
次に、今まさに局長がおっしゃっていただいた禁止行為、業務の行政処分についての御質問をさせていただきたいと思います。
今まさにそういうのがあるとおっしゃっていたんですが、その部分というのは、第十二条に定められた各種の義務、第十三条、第十四条の各種禁止行為などについては、それぞれ罰則、第十八条の三の業務改善命令、第十九条の業務の停止または登録の取り消しという行政処分を科すことができる、この部分のお話をなさったと思うんですね。ところが、私がお聞きしたところによると、過去これらの行政処分が実際に科せられた実績はないというお話であります。
私は、今回の改正で第十三条の第三項四号の追加の部分がありますけれども、これに違反した場合は罰則がなく、しかし行政処分を科すことになっている。しかし、過去実際に行政処分は一回もない業界なんですね、これは御省からお聞きしたヒアリングのレクの中で出てきていますけれども。僕は、一回もないというのはすごい業界だな、すばらしい業界だと逆に思いますけれども、本当にそうなんでしょうか。
私は、前回ちょっと国交省に御質問させていただいた中にも、法案は何ぼでもいいんです、例えば、罰則も何億円でもいい。問題は、それが、その法案を生でその業界に浸透させていかなければ、法案というのは完全にもう絵にかいたもちになってしまうと私は思います。
そういう意味では、今までどおりの、これはまたさっきの話、お出しになっていただいたので言いますけれども、さっきのように、今までどおりの監視や今までどおりのやり方で、また行政処分がなければ、これは幾ら法案をつくったって、私はそんなに、すばらしい業界だとは思いますよ、ただ、それだけに限っていないんではないかなというふうに私は思うんですが、この辺の御所見をいただきたいと思います。
○澤井政府参考人 行政処分がないというのは、厳密に言いますと、過去数年、わかる範囲でないということで、旅行業法の施行以来全くないということではないということと私は理解しております。
なおかつ、今回、禁止行為の中に、従来の典型的な禁止行為は、旅行業法の、例えば取引条件の説明でうそをついたとか、旅行業法固有の違法行為に加えて、今回、禁止行為として加えたもとのところでは、他法令違反がまずありまして、そこに、他法令違反ではないけれども、業界の信用を落とすような、あるいは旅行者の保護に欠けるような行為も加えようということで、あえて加えたわけです。
昨今そういうことが目立つということもありまして加えたということで、旅行業界ももちろんそういうことは十分承知でございます。したがって、私ども今回の改正の趣旨を十分に生かして、きちんとその辺も徹底していきたいと思っています。
なお、これも法律、制度の説明で恐縮ですが、禁止行為、十三条の一項の旅行業法の固有の違法行為、さっきのうその取引条件を説明した、これは業務改善命令とあわせて違反自体で罰則がかかります、今の禁止行為については他法令違反だと。
それから、今回の追加した禁止行為もそれにある意味では準ずるものだということで、まず他法令違反について旅行業法で直罰をかけるというのは、これは理屈としてちょっとおかしいので、他法令違反だけれども旅行業の信用にかかわるということで、業務改善命令のような旅行業法の中の処分をまずかけて、その処分に従わない場合、処分というのは、例えば、営業の停止とか、場合によると旅行業の登録の取り消しというのがあります。そういうことをされてもなおかつ実態上業を行っていた、そういう違反状態。それから、業務取扱主任者を解任せよという命令をした、しかし解任せずに仕事をしていた。そういう場合には、今度は旅行業法固有の処分に違反したということで、旅行業法上の罰則もかけられるということが今の仕組みでございます。
○下条委員 御丁寧に御説明ありがとうございます。
ただ、確かに、過去においてという意味の、僕もちょっと誇張はあったかもしれませんが、ただ、数年間行政処分がないということでございますので。
ただ、局長、私はこの法案、すばらしい法案だと思います。ですから、我々も賛成する予定でございます。ただ、問題は、何回も言いますけれども、法案はよくても、それを施行する部分のハウツーが今まで少しちょっと甘いんじゃないかという意味の御提言をさせていただいたんです。
その理由というのは、先ほどから何回も申し上げておりますけれども、これは、旅行業というのは人間の命を吹っ飛ばすわけですよ、成田から中国、大阪の関空から南極というふうに、命を右から左にぼんぼん飛ばす。この部分の問題というのは、何かミスがあったときに、そのうち大きな悲劇が出てくる。そのとき、申しわけないとか、回転ドアの方だとか三菱の方だというわけにいかないわけですよ。物すごい数の者が、犠牲者が出てくる。
そういう意味では、この法案はすばらしいと思います、賛成でございます。そのハウツードゥー、下におろしていく、浸透部分の部分が少し何か甘さがあるんじゃないかなという意味で御提言させていただきました。御検討をよろしくお願いします。
それで、ちょっと時間もあるので最後にしたいと思いますけれども、最後に、この旅行業についてとそれから自己責任についてちょっと御質問したいと思います。
国内外問わず旅行者は自己責任をしっかり認識する必要が今出てきているという話でございます。今回のこの法の改正において、消費者保護という部分で重点を置かれるとともに、自己責任の認識が薄くなってきているというおそれもないとも言えない。
そこで、旅行者に対してきちっとした情報提供がリスク管理として必要になってくる。
何が私は言いたいかというと、要は、外の国から見ると、この日本というのは本当に全くわきがあいちゃっているんですよ。いつ何が起きてもいい。その典型なのは、この間の、新潟でアルカイダが潜伏していた、このアルカイダが潜伏していた期間、何にも日本は存じ上げないで、それが僕の選挙区の隣の選挙区の新潟にいたわけです。それで携帯で連絡をとったり、どこか出ていったり、国内を動いたり、動いていた。
私は何を言いたいかというと、これだけテロや危険性が世界じゅうに充満した中で、今、日本が位置した中で、旅行者と旅行業協会、また、これは海外だと外務省になります、国内だと国家公安と警察庁になると思いますけれども、この辺の、守秘義務はもちろんありますけれども、特定の旅行者に限らず、多くの動きをしている部分について吸い上げて、リスク管理を守秘義務の中で行っていったらどうかなというふうに私は思っています。つまり、データの連絡のし合いを義務づけていったらどうかなというふうに私は考えています。
ついては、アメリカなんか、私はいましたが、向こうは物すごい量でそういうのを吸い取っていますけれども、日本はどうしてもやはり今まで、大きなそういう部分について、日本はまだねらわれていません、本当は今過程かもしれない。こういうことは言いたくないが、過程かもしれない。その中で、そういう不穏な動きがある部分のデータの統括管理を、国交省を含めて、警察庁、外務省、国家公安委員会等を含めて全体で連絡をとりながら、国内から海外、海外から国内、国内同士の動きを守秘義務をもとに管理していくシステムは今後どういうふうにお考えになっているかを、最後に、恐縮でございます、石原大臣に御所見だけお伺いさせていただければというふうに思います。
○澤井政府参考人 現実に、議員御指摘のような旅行会社とか宿泊機関が不審な旅行者の日本滞在など不穏な動きを察知した場合の対応について、これは内々警察に通報したという事例もございます。
ただ、議員の今の御提案につきましては、旅行社とかそういう旅行関係者だけに限定してというよりはむしろ、やはり、広く我が国全体として国際テロ対策の観点からどうするか、その中でそれぞれ役割を果たすべき人はどういう役割を果たすかという全体の観点からアプローチすべきだろう。私ども、その中で必要な役割があるとなれば、きちんと対応したいということに尽きると思います。
○下条委員 時間ですので、最後にちょっと大臣の方から御所見をいただければと思います。お願いします。
○石原国務大臣 ただいま政府参考人からお話をさせていただきましたように、委員のお話を聞かせていただいておりますと、旅行業者等々との観点のみならず、もう少し幅広い観点から、人の移動がある以上はテロの対象であるし、また、国内においてもテロというものに対しての万全の準備を図れということでございますので、きょうお話が出ました、きょうは警察庁も外務省も来ておりませんが、関係省庁と連絡を密にとって、旅行者の方々から通報もできるようにしなきゃなりませんし、そういう意識も植えつけていかなければならないということにも取り組ませていただければと考えております。
○下条委員 ぜひ、御徹底よろしくお願いします。
時間が参りましたので、以上です。ありがとうございました。
○赤羽委員長 三日月大造君。
○三日月委員 おはようございます。引き続き、民主党の三日月大造です。
同僚議員とあわせて、今回議題となっております旅行業法改正について審議をしてまいりたいと思います。
同僚の松崎委員と下条委員の方から、質の管理や旅行者保護の観点、そして一部自己責任についてどのように考えるんだというような話がありましたので、私の方からは若干ちょっと総括的な質問、そして、あわせて、今回創設されました企画旅行というようなものについての詳しい中身についてお伺いをしたいと思います。
まず初めに、せっかく大臣、お越しいただいておりますので、今回、先ほども高木委員の方からありました、観光立国、ビジット・ジャパン・キャンペーンだと、国を挙げて今やっております。石原大臣は観光立国担当大臣ですかになられておりますし、おとといですか、二十四日の日にはまたまた観光立国推進戦略会議と、何かネーミングといろいろな会議、そんなものばかりがたくさん生まれてきているようにも一部感じますけれども、二〇〇二年の段階で五百二十四万人である訪日外国人旅行者を二〇一〇年に倍増するんだ、一体できるんでしょうか。
先ほど大臣は、日々のデータに手ごたえも感じ、わくわくどきどきしながら見ていますというような御答弁がありましたけれども、実際、二〇一〇年までの間に、具体的に年次ごとにどれだけ訪日外国人旅行者をこの国に招き入れるんだというような具体的な計画と戦略についてお伺いをしたいと思います。
○石原国務大臣 観光立国行動計画というものを決めさせていただきまして、具体的な措置内容、担当省庁、実施時期を明示しつつ、地方自治体、さらには民間企業、団体等、一丸になって今取り組ませていただいております。
観光立国行動計画については、毎年、実施すべき事項を追加させていただいております。例えば十六年度、今年度でいいますと、ビジット・ジャパン・キャンペーンの対象地域の見直し、ヨーロッパの国々を入れるというようなものでございます。あるいは、観光立国の推進に、ためになる、ここの委員会でも御議論をいただきましたまちづくり交付金を利用した地域の再生、景観法の議論の中で御議論いただきました良好な景観の確保、そういう結果の把握に努めながら、順番順番に実施することにさせていただいております。
また、観光立国行動計画自体にも、さまざまな各層の方々からの御意見、あるいは外国の方々の意見の聴取というものも行わせていただいておりますし、実施施策の評価と再検討、月並みな言葉で言いますとプラン・ドゥー・シー、そういうことも行わせていただきながら、毎年見直しを行うことによって効果的な施策を実施していく。
委員の御指摘は、二〇一〇年までのアプローチ、今二〇〇四年、五、六、七、八、九と六年間あるわけですけれども、そこに段階的な何万人ずつというものはないんです。というのは、地政学的に言いましても、やはりアジアの方々に来ていただかないことには、五百万人が一千万人にというのはなかなかなりません。ボリューム論からいって、なりません。
そこで、やはり一番大きな問題になっているのは、韓国の修学旅行生のビザを免除させていただきましたり、また金浦と羽田の間の国際チャーターをやらせていただいておりますけれども、そういうものを利用した方々へのビザの免除等々、また、特に中国では、今、上海、北京、広東ですか、この三地域からの観光旅行の方々にしかビザを出しておりませんが、これも総理の指示をいただきまして、法務、外務、ビザの担当のところに今検討させているところでございますけれども、ビザを多く出すようにする。そうしますと、これは中国の側のお話でございますが、二〇一〇年の訪日観光客は、中国が要望している十地域になりますと、それだけで、中国だけで四百万人ということになるわけでございます。こういう地域がそのほかにもアジアの中にあるわけでございますから、こういうものを積み重ねて一千万。
また、地政学的に遠いとはいいつつ、ヨーロッパからも、先ほど高木委員のお話の中にありましたように、魅力を発信すれば幾らでも観光資源というものはあるという認識のもとにPRを努めることによって、遠い海外の国々の人たちにも来ていただく、そういうもののトータルで一千万人を目指しているということでございます。
○三日月委員 ありがとうございました。
非常に旅行というのは難しいものだと思うんです。PRを打ったからといって、商品をつくったからといって必ず動いていただけるものではないとは思うんですけれども、大臣がおっしゃいましたプラン・ドゥー・シー、そのプランの部分を明確にしなければ、幾ら呼びかけたって、幾ら会議を開いたって呼びかけ倒れに終わってしまいますよという問題提起なんです。
年次ごとの数字がないとおっしゃいましたけれども、今最後におっしゃいました地域ごとの数字ぐらいは、では、アジア地域から大体何年でどれぐらい、ヨーロッパからは何年でどれぐらい、こういうものは普通の企業だったら必ずやはり、一定、二〇一〇年に倍増するんだという大きな計画があるならば、中期計画、短期計画というのはつくって私は当然だと思いますので、このあたりのこれから細かな計画づくりを、推進戦略会議もつくられたことですから、ぜひお願いをしたいと御要望申し上げておきたいと思います。
あわせて、せっかくですから大臣にお伺いしたいと思うんですけれども、今これだけ日本人は海外にたくさん旅行で行かれています。でも、外国からの訪日外国人旅行者はなかなか伸び悩んでおります。日本の観光地、私はすばらしいところがたくさんあると思っているんですけれども、なかなか外国人の方々が訪れていただけない障害、バリア、これを克服するための課題というものはどのように認識をされているのか、お答えをいただきたいと思います。
○石原国務大臣 三日月委員が言われるところのバリアは、いろいろなものがあると思うんですね。例えばアジアの人たちに対する私たちの心というものの中にもきっとバリアがまだあるんだと思うんですね。やはりアジアの方々がこれだけ日本に来ているということをまた日本の方々はそんなに知りませんし、そういう方々が来ていただかないと、地政学的な意味からもなかなか外国の訪日観光客というものはふえない。
しかし、そういう言葉の問題あるいは心の問題、さらには親切な表示、韓国語で書いてある、中国語で書いてあるというものもまだまだ少ない、こういうものをやはり一つ一つ克服していくことが重要だと思っております。
それとあわせて、ビザの取得の軽減ということも、最終的にはノービザということですけれども、大切だと思っております。
そこで、先ほどもお話をさせていただきました観光立国行動計画の中でビジット・ジャパンというもののキャンペーンを今展開しております。あるいは、外国の方からよく言われるのは日本の宿泊料の問題ですけれども、一泊五千円以下の安い宿泊施設が相当数入った外国人旅行者向けの宿泊情報提供予約サイトの運用というものも開始させていただいております。
あるいは、案内表示、外国語表記のルール化、こういうものを進めておりまして、四月からは東京メトロの方でナンバリングもさせていただきました。
あるいは、言葉のバリアフリーということが非常に重要だと思うんですけれども、外国人対応可能な観光案内所やそういう人材の育成、それとビザの取得の免除あるいは軽減、こういうものの積み重ねによって、ああ、行ってみたけれども、思っていたより言葉も通じたし、好きなところにもすぐ行けたし、そして自分の国にない、いろいろな魅力を見つけることができた、こういうものを積み重ねていく。
まだまだ行動計画策定以来一年もたっていない段階で、三日月委員には不十分に映るかもしれませんけれども、積み重ねが大事であるという認識のもとにこの訪日観光客の倍増計画を進めてまいりたいと考えております。
○三日月委員 ありがとうございました。
本当にハード、ソフト両面でやるべきことがたくさんありますし、官民挙げてこれは取り組まなければいけない課題だと思います。本当にお金もたくさんかかるんだろうなということを思うんですけれども、そのあたりの御意見をぜひ観光大国や地域の大使の方々に伺おうということで、二月にそういう大使の方々から御意見を伺う懇談会を持たれて、そういった中でも、今大臣が御指摘になったビザの問題や案内表示の問題、国内のさまざまな交通や宿泊のコスト高の問題、指摘をされております。
私は、日本を訪れてくださる観光客をふやすための方策は、とにかく日本の魅力を海外でいかに発信していくか、そして海外から日本に来る商品をいかに海外でつくっていただけるのか、そして海外から日本に来るときのビザなんですけれども、このバリアをいかに取り払っていくか、このあたりに、多くの問題があると思うんですけれども、この三つの課題が取り急ぎ、短期的に海外からの旅行者をふやすに当たっての大きな課題ではないかと思うんです。
ぜひ、一点お伺いをします。
訪日ビザの発給、大臣の御答弁の中にもありました。これまでさまざまなビザ免除やビザ手数料の免除がなされてきました。韓国は修学旅行生ビザも免除になっておりますし、中国は、今の北京、上海、広東から加えて五地域を訪日団体観光ビザ発給可能地域にしていくんだというようなお話もありましたけれども、例えば台湾をどうするのかというような問題もありますし、韓国との行き来は修学旅行生だけでいいのかというような課題もあります。今後の訪日外国人旅行者をふやすに当たっては、ビザの免除、これが不可欠ではないかと思うんですが、まず国交省さんの方からお考えをお伺いしたいと思います。
○澤井政府参考人 ビザの取得の負担の軽減等については、具体的には今先生仰せのとおりでありまして、そのベースとして、何度も申し上げます、昨年七月に決まりました観光立国行動計画の中でも、アジアを中心とした国々について、良好な公安、治安の維持に配慮しつつ、ビザ取得にかかる負担をできる限り軽減するということ、それから中国については、訪日団体観光旅行に参加できる対象地域が限られており、その発給地域の拡大に関する検討を進めるということが最初からこの計画に位置づけられております。
私どもといたしましても、訪日観光増加の観点から非常に重要と考えておりまして、まず当面は、現在進んでおります中国の団体観光ビザの発給対象地域の問題についてできるだけ早く結論を出すということが重要と考えておりまし、また、今後とも、この立国行動計画の精神に従って関係省庁ともいろいろと議論をさせていただきたいと思っております。
○三日月委員 外務省の方がこの主管省になると思うんですけれども、お考え等お聞かせいただけますでしょうか。
○鹿取政府参考人 お答えいたします。
外務省といたしましても、各国との友好関係増進等の観点から、観光客の訪日というのは極めて重要と考えております。アジア諸国との関係におきましても、外務省は、人的交流の促進の観点から、今まで累次にわたり査証手続の簡素化等進めてまいっております。
今もお話が出ましたけれども、韓国については、本年三月一日から修学旅行生に対する査証免除を実施しております。また、韓国につきましては、恒久的な査証免除について議論がございまして、昨年の日韓首脳共同宣言を踏まえまして、現在、日韓両国は、早期に査証免除を実現すべく、お互いに努力しているところでございます。
また、中国につきましては、今お話が出ましたように、団体観光客の対象地域拡大につきまして中国側と鋭意折衝中でございます。また、例えば香港につきましては、本年の四月一日から短期滞在査証の免除を実施しております。
また、例えばそのほかのASEANの学生に対して査証手数料を免除する等、また中国の修学旅行生に対しても査証手数料を免除する等、いろいろな措置をとっております。
外務省としては、査証の問題につきましては、もちろん治安の問題についても配慮する必要がございますけれども、引き続き人的交流の促進等の観点から、また努力してまいりたいと考えております。
○三日月委員 不法滞在やその治安の問題、いろいろあると思うんですけれども、訪日外国人旅行者をふやそうと思ったら、このビザというのが非常に大きなバリアになっておりますので、ぜひ外務省の方にも御理解をいただいて、このバリアの撤廃というか、緩和に御努力いただきたいということを御要請申し上げておきたいと思います。
あわせて、平成十五年に二十億円の予算が計上されて、今年度は三十二億円の予算でこの観光立国を進めていこう、ビジット・ジャパン・キャンペーンをやっていこうということになっております。
ただ、この予算の使い方をいろいろちょっと検証してみたいと思うんですけれども、PRの仕方は難しいです。しかし、例えば昨年度は国内の新聞広告で「ようこそジャパン」の新聞広告を流した。たくさんのお金をかけていろいろやられたんだろうなと思いながら、余り効果はないんだろうなと。小泉総理大臣のビデオも見させていただきました。伝統文化、最先端テクノロジー、ぜひ日本に見に来てくださいと言われていますけれども、具体的にどうやって見に行けるのか、よくわからない。
そして「ようこそジャパン」の観光バッジ。これ、たくさんつくられたんだろうと思います。結構いいバッジなんです。参考人はつけられていますけれども、観光立国担当大臣の石原大臣はつけていらっしゃらない。
少なくとも旅行業の議論をするときぐらいはこういうものを、国でつくったものなんですから、ぜひ国としてつけてキャンペーンを盛り上げるというようなこともやはり必要だと思いますし、国の玄関口である例えば港とか空港とか鉄道の駅、ここにいる社員の方々や担当の方々がこういったものをつけているかというと、つけていないんです。やはりせっかくお金をかけてつくったもの、打った広告なんですから、それが実際の商品に結びついたり、今何か課長は一生懸命つけられていますけれども、ぜひ効果的なお金の使い方、税金の使い方をしなければ、私は本当に絵にかいたもちになるんではないかというような問題提起をしておきたいと思います。
海外への日本のPRに対して、特に、これだけ情報量を持っていて、これだけ人的ネットワークを持っている国内の旅行会社が海外からお客さんを連れてくるということにもっと一生懸命になってもらわないと、これはなかなか外国人旅行者も入ってこられないと思いますので、ぜひこのあたりがやる気になっていただける、商品化に積極的になっていただけるような国の施策を要請しておきたいと思います。
さて、法案の中身に入ってまいります。
今回の法改正は、旅行業法等検討懇談会、これは平成十四年八月に設置をされまして、以降五回、ワーキングループ八回を含めまして、非常に積極的に、これまた官民挙げて、労使を挙げていろいろな検討がなされてこられまして、ことしの二月に報告書、今後の新しい旅行業のあり方について、旅行者のニーズの多様化にこたえた高付加価値な旅行業をつくっていこうというような報告書が出されました。
この中で、これまでもありました、旅行会社があらかじめ旅行計画を立てて包括的に料金を設定できるという主催旅行、それに、旅行会社が旅行者のニーズを具体的に聞きながら、旅行者にも参画をしていただきながら旅行商品をつくるというオーダーメード型の旅行、いわゆる企画手配旅行、これを統合して、企画旅行というような新たな旅行を法律上位置づけられました。
当然、旅行業約款もこの法改正の後に変更がなされていくと思うんですけれども、その旅行業約款の改正の方向性と、この懇談会の報告書において、旅行会社の責任範囲の拡充という観点から、また、付加価値を上げようという観点から、いざというときに、死亡が起こったとき、そして入院のとき、通院のとき、この特別補償を引き上げる、海外だったら二千万円を二千五百万円、国内だったら一千万円を一千五百万円に引き上げよう。そして、今までは入院しかだめだったけれども通院も認めようというような新たな補償制度の創設でありますとか、旅程保証の制度も拡充をしていこうというようなことが懇談会の報告書には盛り込まれていますけれども、今後の旅行業約款の改定の考え方についてお聞かせください。
○金澤政府参考人 お答え申し上げます。
旅行事業者が旅行者を募集するためにあらかじめ作成したり、あるいは今委員も御指摘のとおり、旅行者からの個別の依頼を受けて相互に企画しながら作成していくタイプの旅行商品、これは第三者の提供している運送サービスをただ代理手配するといったこととは異なりまして、その旅行社が企画あるいは作成主体として関与いたしますものですから、その提供するサービスについて果たすべき責任がより重いものというふうに私ども考えております。
そうした考え方に基づきまして、従来から、国土交通大臣が標準旅行業約款というものを、委員御指摘のとおり定めております。この約款においては、特別補償制度といたしまして、旅行者が旅行中に遭遇したさまざまな事件や事故によって死亡、障害などの事態に至りました場合の死亡・後遺障害補償金でありますとか入院見舞金の支払いをすべき趣旨、さらには先ほどの議論に出ておりましたけれども、旅程保証制度として、契約内容どおりのサービスが提供されなかった場合に変更補償金を払うといったこと、それぞれ約款の中に定めているところでございます。
今般の改正をお認めいただきましたならば、今御指摘にございましたように、旅行業者が非常に企画に関与して作成するタイプの企画旅行という分野を明確に法律上位置づけることになります。これにあわせまして、旅行業者が果たすべき責任の範囲、これを拡大いたします。さらに、旅行者の一層の保護を図るという観点から、特別補償制度については、通院補償金制度を創設する、あるいは死亡・後遺障害補償金を御指摘のとおり増額する。あるいは旅程保証制度についても、支払いの対象となる項目の追加、拡充等を行うべし、こういった議論が出ておりまして、私ども、それぞれ必要な政省令の改正に伴いまして、そうした方向で補償内容の充実を図っていくということで検討しているところでございます。
今委員御指摘のとおり、こうした内容は、関係の業界の方々についてはかなり認識も深まっておりますが、まだまだ消費者の皆様にもこうした改定の方向について十分に周知を図ることが極めて大切と私ども考えておりますので、今後、旅行業協会などの協力もいただきながら、御指摘のとおり、積極的に周知を図っていきたい、このように考えております。
○三日月委員 ありがとうございました。
次の質問の答弁までしていただきまして、どうもありがとうございます。
私は、いざというときの特別補償を拡充するとか、もしくは旅行に行ったときの行程を管理する、それも保証する、旅程保証ですね、これも拡充することは、消費者保護の観点からいっていいと思うんです、賛成です。
しかし、今の主催旅行だって、先ほども御答弁の中にありましたように、行って泊まって、その交通とホテルだけは指定されているけれども、あとは自由行動です。かなりお客様の、旅行者の方の自由度が高まる商品が出てきています。ましてや今回、企画旅行という概念で幅広く、企画手配旅行、包括料金特約の企画手配旅行まで含めた形で企画旅行だ。その企画旅行全体に、そういったいざというときの補償もしろ、そして旅程保証もしろということを今回義務づけるわけですよね。そうすると、旅行者の自己責任って何なのかなと。
例えば遊泳禁止のところで泳ぎました、もしくは自由行動時間のいろいろな行動で負傷しました、けがをしました、病院に行きました、入院しました、どこまでを旅行会社が責任をとらなければいけないのかということについて、私は、一定の線引きが必要なのではないか。旅行者の自己責任や旅行会社の免責といったものも一定保証すべきではないかというふうに考えますけれども、お考え、いかがでしょうか。
○金澤政府参考人 委員の御質問の自己責任とこの新しい今回の旅行業法改正の問題は、非常に深遠な部分、非常に問題の深い部分がございます。これは御指摘のとおりであります。
私ども、今回の改正の基本的な考え方としては、新しく、今御質問にありました企画旅行というジャンルを設定いたしまして、旅行者保護の観点を充実させる。したがって、旅行業者においては旅程管理、これをしっかりしてもらうということで、今まではそこが明確に義務づけられていなかったようなオーダーメード型の商品についても、これは旅程管理義務を実施してもらうという内容となっております。
旅行事業者が作成して売る、そういう商品につきましては、既に旅行業者が日程、旅程を提示いたしまして、それぞれ提供されますホテルの部屋あるいは航空輸送、さまざまなサービスを一般に事前に購入しております。したがって、自由な時間について、旅行会社との間でも、一般的に旅行者の方はそこの間は自由な時間で商品の企画の中には具体的なサービスはありませんということも含めた全体的なサービスを提供しているというのが通例と考えておりまして、したがって、旅行者とのトラブルを解消するという面では、そうした一定の時間だけを旅程管理の対象から外すといったことは適当ではないのではないかというふうに私どもは考えております。また、同じように、旅行参加中の時間によって、特別補償制度や旅程保証制度上の取り扱いに差をつけるということも、これまた現段階では適当でないというふうに考えております。
ですから、委員おっしゃるように、旅行者の自由を十分に尊重して、自己責任でもちろん旅行を楽しんでいく部分というものは旅行ということについてはございますけれども、今申し上げた今回の旅程管理上の義務を実施しなければならないという場合については、基本的には自由な時間が今回は発生しないものというふうに私どもは考えておりますので、旅程管理の義務づけを行ったとしても、今御心配になるような過重な旅行社への負担ということにはならないというふうに私どもは考えておるものでございます。
○三日月委員 ありがとうございました。
いや、過重な負担にはならないというふうな御見解がありましたけれども、しかし、かなり自由度の高い、そして期間も長い商品が多い企画手配旅行、オーダーメード型の旅行についても、企画旅行という概念で旅程保証と特別補償をしなければならないんだということにする以上、これまで以上の保証を旅行会社には義務づけられるわけなんです。
このあたり、これから省令や約款改定をされていくと思いますので、ぜひ考慮をしていただきたいと思いますし、先ほど一部御答弁もありましたけれども、このことを余り旅行者、消費者は知らないんです。旅行会社の商品を買ったら、いざというときに、もし死んでしまったら二千万円もらえるとか、こういう補償があること、そしてまた、旅程管理の、何かキャンセルがあったとき、トラブルがあったときに、ホテルの交換や、そういうことをしてもらえることぐらいはわかっているかもしれないですけれども、まだまだ消費者に知られていない。
あるアンケートによりますと、こういう特別補償制度や旅程保証制度があるということを知っていますかという問いに対して、八割の方が御存じないというふうなデータもありますので、ぜひここに対しては官民を挙げてPRをすべきですし、旅行者保護の観点からいくと、こういう保証のない商品や会社との差別化を私はきっちりと図るべきだということを申し上げておきたいと思います。
時間がなくなりましたので、最後に一点。
今、電子商取引、インターネットによる旅行商品の販売というのが非常に多くなってきています。二〇〇七年には、今の二兆七千億円の市場規模が十二兆三千億円、旅行だけでも一〇%から一五%に拡大するだろうということが予想されていますけれども、このガイドラインですね、今後の規制というか、消費者保護の観点、不安だったら利用しなければいいと言ってしまえばそれまでですけれども、しかし、これだけ市場規模の拡大が予想される電子商取引に対する今後の取り組みの考え方についてお聞かせください。
○赤羽委員長 質疑の持ち時間が終了していますので、端的に御答弁をお願いします。
○金澤政府参考人 わかりました。
御指摘のとおり、旅行商品というのは大変インターネットとの親和性の高い商品だということで、現段階、私どものデータでも、インターネットユーザーのうちの八〇%以上の方が旅行商品、旅行関連サイトをごらんになったとかいうデータもございます。ですから、今後、電子商取引の市場規模の拡大につれ、こうした旅行商品の商取引も極めて急速に拡大するものと我々は考えております。
したがって、そうしたことから、委員御懸念のネット取引をめぐるトラブルというのは、これは旅行商品に限らず、さまざま発生しておりますので、私どもとしては、日本旅行業協会におきまして、インターネット利用の旅行取引に関するガイドラインというものを策定いたしました。これを今後旅行業協会を通じ、あるいはその他の傘下会員の皆さんに対して周知徹底していきたいというふうに考えておるところでございます。
○三日月委員 ありがとうございました。
やると決めたら国を挙げてしっかりやりましょうということと、一定のルールを決めて今後の旅行業の発展に向けて努力をしてまいりましょうということを呼びかけまして、時間が過ぎてしまったことをおわび申し上げて、私の質疑を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○赤羽委員長 高木陽介君。
○高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。
本日は、旅行業法の一部を改正する法律案ということで質問させていただきますが、政府を挙げてビジット・ジャパン・キャンペーンを展開される中で、さまざまな手だてを打ってきている。そういった中にありまして、旅行者をふやしていくという、旅行業自体がしっかりとしていかなければいけないということで、今回の改正案、これがそれにプラスになるかどうか、なっていただかなければいけないんですけれども、そのつもりで今回の改正を出されたと思います。
今回のこの法案について、改正によりまして、旅行者のニーズの多様化、体験型、滞在型旅行などに対応し、新たな旅行契約の態様として、従来の画一的な主催旅行に加え、旅行会社がアドバイスをしながら旅行計画を作成するオーダーメード型旅行を含め、企画旅行契約を設定する、このようにあります。
ただいまも、ほかの委員の方々からもこの企画旅行について御質問もございましたけれども、この新たな形態、企画旅行なんですが、それまでの主催旅行と、オーダーメード型旅行、これは今まで、全体の旅行に占める割合は一体どれぐらいだったのか、その実態をお聞かせ願いたいとともに、今回、企画旅行という形態にしたことによりまして、この意義、これがどのようにプラスになっていくのか、この点についてまず最初にお伺いをしたいと思います。
○澤井政府参考人 まず、従来の主催旅行といわゆるオーダーメード型旅行の比率でございますが、平成十四年の販売額ベースで見ますと、従来の主催旅行につきましては、海外旅行の四二%、国内旅行の三三%でございます。また、いわゆるオーダーメード型旅行、徐々にふえておりますが、十四年の同じく販売額ベースで、海外旅行の一三%、国内旅行の一六%を占めております。
ベースには旅行ニーズの多様化、個別化ということがございまして、例えば、先ほども申し上げたわけでございますけれども、主催旅行の中でも、最初から最後まで一本線ではなくて、途中で幾つかのオプションがあって旅行者のニーズによってそれを選ぶことができるというようなものもふえていますし、また、最初から最後まで旅行会社と相談して手づくりでやるというものもあります。その辺の実は境界線がかなり入り組んできている。
今、法律上は行った先の旅程管理は義務づけられていないけれども、今言ったオーダーメード型旅行について、実態上、その旅行に一緒に行った添乗員がきちんと旅程管理をするというようなケースもあるものですから、旅行者から見るとその辺の区分が非常にあいまいにある意味ではなっておりまして、それをめぐるトラブルもかなり出てきている。
そういう実態を踏まえまして、関係方面とも十分議論した上で、その両者、いずれも、旅行会社のみずからの計算でいろいろな仕入れた素材を組み合わせて売るという意味では共通でございますので、これを一本の企画旅行ということにして、行った先の旅程管理もきちっとするという体制にしようということでございます。
○高木(陽)委員 基本的に、旅行者にとってプラスになるような形にしていっていただきたいと思いますが、その上で、今回、旅行業者が「旅行者の保護に欠け、又は旅行業の信用を失墜させる」行為を行うことを新たに禁止しておりますけれども、この「旅行業の信用を失墜させる」または「旅行者の保護に欠け、」こういう法律の文章はいいんですけれども、具体的にはどのような行為が禁止行為として想定をされているのか、お聞かせ願いたいと思います。
○澤井政府参考人 これは、今回追加する規定であります。従来、この類似の規定としては、旅行業法ではなくて他の法令に違反している、国内旅行であれば日本国内の法令に違反している、あるいは海外旅行であれば行った先の国の法令に違反している、そういうことをあっせんしたりすることを禁止していました。
今回、案として追加しておりますのは、法令違反ではないけれども、そういうことを助長したり何かすることが旅行者の保護に欠けるあるいは旅行業界の信用を落とすというようなたぐいのもので、例えばということで例を二つほど申しますと、旅行地における土産物店などの販売事業者と通謀いたしまして、販売事業者から特別のマージンを旅行会社が得て、旅行者を、旅行する人を希望もしない数多くの土産物店に案内して余り質のよくない土産物の購入を勧めるとか、あるいは、旅行者から例えばパスポートとかチケットを預かることがよくあります、これはきちんと保管しなきゃいけないんですが、そういう必要な注意を怠るというようなことが想定されます。
○高木(陽)委員 今お話しいただいたような禁止行為、この禁止行為を行った旅行業者等については、罰則の対象がないのではないか。当該規定の実効性、これはどのように担保するか。だめですよと言っても、やはりやる人はいるわけで、ここら辺のところはどうなのかということをお聞かせ願いたいと思います。
○澤井政府参考人 結論的には、間接的に罰則も及びます。
まずは、こういった行為を行った業者に対しては、旅行業法の規定に基づきまして、業務改善命令あるいは業務の停止命令、さらには旅行業の登録の取り消しといった行政上の不利益処分を科すことができます。
罰則に関しましては、こうした旅行業法上の命令に違反した場合、あるいは旅行業法上登録が取り消されて旅行業ができなくなったのに実態上続けている、そういった場合には罰則も及ぶということでございます。
○高木(陽)委員 限られた時間の中でビジット・ジャパン・キャンペーンについてもお伺いをしたいと思いますが、これは以前、当委員会の一般質疑でも質問させていただきました。
VJCの場合に、訪日の外国人を一千万人にする、その目標は二〇一〇年、あと残すところというのは六年、実質は五年になりますか、そういった中で、現在努力はされているんですけれども、今のペース、訪日の外国人のふえ方から見ますとちょっと心もとないなという気もしておりまして、現実問題、本当に一千万人海外から日本に来るのか、こういった点についてお伺いをしたいと思います。
○澤井政府参考人 二〇一〇年度末まで、今から七年あるとまず私ども思っております。
今から七年先までのことを客観的に見通すということは非常に難しいと思っておりますが、例えば昨年、しばしば申し上げますとおり、年度の前半に大変な落ち込みがございました。しかし、年度後半、これは八月以降を平均しますと一一%近い対前年の伸びでございます。
そういったことで、ここにビジット・ジャパン・キャンペーンを初めとする観光立国行動計画のいろいろな政策の効果も少しずつ出てきているなと思っておりますが、そういったことを考えますと、少なくとも、今これはとても到達不可能ですということを言うのはもちろん適当でないし、そうでないと思っていますし、要はいろいろな政策を点検しながら、いい、より効果の高い政策をどんどんやっていくということで、ぜひこれは実現したいし、できると思っております。
○高木(陽)委員 昨年の状況、特にSARS等がございましたりして、前半は落ち込む中で後半の伸びが一一%になった、これはこれですごく評価をしたいと思いますし、年間八%程度ふやしていかないと一千万人いかないのではないかな、そう考えますと、常時それぐらいのハイペースでふやしていかないといけない。そのための手だて、これは今までさまざまな手だてを打ってきておりますけれども、しっかりとチェックをしながらやっていく、これをぜひともお願いを申し上げたいと思います。
その上で、このVJC、ビジット・ジャパン・キャンペーンの中で、特定の地域または国を決めて、そこに集中的にアプローチをして来てもらおうということで、当初は五カ国・地域、中国、韓国、台湾、香港、アメリカ、それに加えまして、今度はヨーロッパ、フランス、ドイツ、イギリスですか、これが加わって八カ国・地域。
ちなみに、二〇〇二年の訪日の人数を見ますと、韓国が百二十七万、台湾八十七万、中国四十五万、香港二十九万、アメリカが七十三万、それに加えこの三国、英国二十一万九千、ドイツが九万三千、フランスが八万七千、当初の五カ国・地域だと六九・二%だったのが、このヨーロッパ三国を入れると七六・九%訪日外国人の中の割合を占めている。
こういった中で、そこに集中的にやるのは結構なんですけれども、やはり最終的に網羅的になってしまいますと散漫になるだろうなというところで、この中で最も今後訪日客の増加が期待できる、これはどこであるか、ここをちょっとお聞かせ願いたいと思います。
〔委員長退席、望月委員長代理着席〕
○澤井政府参考人 先生今触れられましたように、例えば韓国、大変二〇〇三年度もふえました。
一つ申し上げたいことは、一たんふえればそれが、ビジット・ジャパン・キャンペーンを初めとする各種施策を講じなくてもその水準が維持できるだろうということは私ども思っていないということです。
一たんふえたところについて、リピーターをふやすことも含めて、そういった水準を維持し、さらに向上していくということは一方で大事だと思いますが、今のレベルからより高い、一けたも上のようなことも含めて伸びるということが期待できるという意味では中国だと思いますし、また、中国自身は、今までの傾向を見ましても、一九九八年の八百万人台が二〇〇二年には五年で倍になっているということで大変大きく伸びていますから、その伸びを、これは中国から世界各国に出ていかれる方の数ですから、そういった倍にもなる勢いのものを我が国でもできるだけたくさん受けとめさせていただくということはもちろん大事だと思います。
それからまた、お触れになりましたように、ヨーロッパの三国については、これまでVJCを展開していなかった中でそういう数字だ。これから効果的なビジット・ジャパン・キャンペーンを展開することによって一段とふやしたい。網羅的という意味では決してなくて、それぞれの国の特性も踏まえて、きちんとやっていきたいという意味でございます。
○高木(陽)委員 中国は人口も多いですから期待できると思うんですが、特に今、中国の訪日観光客の問題点として挙げられるのがビザの問題ですね、これは先ほども質問に、三日月委員ですか、出ていたと思いますけれども。
これは現在、団体客ということで、団体旅行ということで、北京、上海、広東、二市一省、これをさらに拡大していこう、こういうような動きが今までもなされてまいりました。これについては、政府、関係各省連携をとりながら中国との話し合いをされているというふうに伺っておりますが、この現状及び今後の見通しについて、どのような状況なのかお聞かせください。
○澤井政府参考人 これまで、ビザの取り扱いの場所の拡大も含めて、北京、上海、広東省の二市一省で実施されているところに加えて、一市四省の拡大というテーマで、まずことしの三月には総理から、中国人訪日団体観光旅行の査証発給対象地域の拡大について、外務省を中心に関係省庁が連携を図りつつ、中国政府と十分協議の上、早急に結論を出すべしという指示が出ております。これを受けまして、現在、在中国日本大使館で既に中国側と協議を開始して、精力的に今調整をしているところでございます。
私どもの省といたしましては、観光立国行動計画の中でも、中国の団体観光旅行の対象地域の拡大の検討ということがきちんと位置づけられておりますので、それも踏まえまして、外務省、警察庁等関係省庁と十分に連携、調整して、できるだけ早くこれが実現するように私どもなりに努力していきたいと思っております。
○高木(陽)委員 できるだけ早くやっていただきたいと思いますが、やはり観光シーズン、特に秋ですか、そういったところを視野に入れながら、その前までにはっきり決着をつけていただきたいなと思います。
国交省の方は努力されているんですが、関係省庁の中で、例えばよく聞く話の中で、これも以前一般質疑のときにも指摘をさせていただきましたが、中国からの団体旅行者、このビザの発給がなかなか進まないのは犯罪者が多いからだ、こういった指摘もございます。
これは、きょう警察庁を呼ぼうかなと思ったんですが、時間も限られておりますので、資料だけ取り寄せまして、例えば、来日外国人の刑法犯の検挙人員というのが平成十五年の段階では八千七百二十五人いる中で、中国、これが多いんですね、四千五百五十四人。しかし、短期滞在者というのは二百四十一人、三%。しかし、この短期滞在者というのはすべて旅行者かというと、そうでもないんですね。観光のほか、保養、スポーツ、親族の訪問、見学、講習または会合への参加、業務連絡その他これらに類似する数をいうということで、全体から比べても三%以下。
そうなりますと、今ビザの問題で交渉しているのは団体旅行ですから、こういった部分ではもっともっと拡大していいんじゃないか。犯罪が多い、どうのこうのといういろいろな御批判もありますけれども、そういったものとはやはりきっちりと立て分けて考えなければいけない。
これは国交省に言っても仕方がないんですよね。警察庁に言わなきゃいけない。ここら辺のところは、石原大臣、閣議等含めてしっかりと主張もしていただきながら、中国人観光客をふやしていくという、国を挙げてのビジット・ジャパン・キャンペーンでございますので、力を入れていただきたい。
時間も参りまして、最後に、現在中国からの訪日団体観光旅行者の数というのは、ビザ発給対象地域の総人口に対してどれぐらいの割合になるのか。また、対象地域を中国政府側の希望に沿って拡大した場合に、当該対象地域の総人口を考えますと、訪日団体観光旅行者数はどの程度増加するか、ここら辺の予測の数字をお聞かせ願いたいと思います。
○澤井政府参考人 このシステムが始まりましてからだんだんふえてきておりまして、例えば平成十三年は一万六千八百人弱だったものが、平成十四年には三万三千五百人弱までふえております。平成十五年につきましては、SARSの影響等もございまして、一時期、中国側がそうした外国向けツアーを自粛したこともありまして伸び悩んだんですけれども、それでも十四年の九割を超える三万一千人というレベルになっています。
今の対象地域であります二市一省の総人口は一億一千万人弱でございます。計算しますと、〇・〇何%というオーダーだと思います。この拡大の俎上に上っております一市四省の人口は二億六千万人強でございまして、この二つを合わせました拡大後の対象地域の総人口は、現在の三・四倍ということだと思います。
ただ、地域によっていろいろな事情が異なりますので、総人口の比率で旅行者の数がどうということを直ちには言えないと思うんですけれども、拡大が実現すれば、私ども、本当に一人でも多くの方に日本に来ていただきたい、そのために努力をしたいと思っております。
○高木(陽)委員 総人口、これが三・四倍になるということですね。今局長が言われたように、人口がふえた分だけ丸々全部連動するとは限りませんけれども、地域の事情等もありますが、やはりそれだけ多くなればなるほど可能性がふえるということで、これは早急にやらなければいけない。
これは、関係の省庁、しっかりと連携をとっていただく、そのために大臣にもしっかりと頑張っていただくことはもちろんなんですけれども、やはりこの問題というのは私たち国会の側も認識をしていかなければいけない。公明党も、マニフェストの中で、政府の方針と同じように、訪日の外国人客を一千万人にしようということで掲げさせていただいておりますし、この問題については、今後も、この委員会等を通じながらも、しっかりと論議をしながら応援をしていきたいということを表明いたしまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
ありがとうございました。
○望月委員長代理 穀田恵二君。
○穀田委員 旅行業法について聞きます。
旅行業法というのは、消費者である旅行者の保護を旅行会社に義務づけている、これが肝心の精神ですよね。ですから、前提といいますか、基本ということになっているので、そこの精神と旅行者保護というのはどういうものかということについて、簡単にまずお聞きしておきたいと思います。
○澤井政府参考人 御指摘のとおり、旅行情報なり旅行に関するいろいろな仕組みのプロである旅行業者対、そうした知識が多くの場合少ない個人の旅行者との関係の、情報の非対称性のようなことがベースにあって、そういったものを補って、きちんと安心して旅行に行っていただけるようにするために、旅行業法の中で規定を幾つか設けているということでございます。
一つが、各営業所において、旅行者に対する、旅行する人に対する取引条件説明あるいは旅行者からの苦情にきちんと対応する、そういったことの管理監督事務を行うために、現行法上、国家試験に合格した旅行業務取扱主任者という者を置いているということが一点です。
それから、旅行会社が主催する旅行につきましては、事故とかオーバーブッキングなどにきちんと対応する行程管理の責任を負わせるというのが二つ目でございます。
それから、三つ目に、今とも関連しまして、旅行会社が主催する旅行に添乗員が参加して、その方が旅程管理業務をやる場合には、指定した研修機関が実施する研修を受けなければいけない、そういった人を置かなければいけない。
それから、こういったことを一連に担保するために、取引の公正、旅行者の安全や利便を害する者に対し、業務改善命令あるいは営業停止命令、登録の取り消しといった不利益処分を行うことができるようにしてあるということと、それから、別途、旅行業者の債務の不履行あるいは倒産に備えまして、営業保証金の供託を義務づけている、この辺が消費者保護の主たる規定でございます。
○穀田委員 今ありましたように、根本的に、そういう業としているプロと、それを受ける側の消費者としての素人、こういうことから当然トラブルが起こってはならないし、業界の責任というものをしっかり据えておくというのが考え方の基本だと思うんですね。
最近、旅行会社が、名勝をめぐる企画に参加するパッケージ旅行だけじゃなくて、先ほど来ずっと説明がございましたように、オーダーメード型の旅行がふえている。これも、今回の法案で消費者保護の対象に広げることになるということに、先ほどあったと思うんです。
ただ、先ほどもあったように、そこで、旅行する者の側にとってみると、オーダーメード型旅行というのはどういう区分なのか、これをわからせるのが大変なんですね。
つまり、今でも、先ほどありましたように、情報量の差があり、プロであり、素人だ、そういうものがあってということで、わざわざ言わなければならないぐらいになっているわけです。しかも、今回見てみますと、旅行会社がアドバイスしながら旅行計画を作成すると説明があるわけですね。
例えば、では、自分で飛行機だとか宿だとか指定して、旅行会社には予約だけ頼む、ある意味での仲介と言っていいと思うんですね、そういうものはどうなるのか。
こういう点、旅行者の側から見ると、先ほど来、参考人が、ある意味で区分があいまいだ、こう説明していましたように、自分が契約した旅行商品が保護の対象になるのかどうか判断が困難だと思う。こういう点で、どうしてわからせるのかというのは、単に、周知しますとか、徹底しますというんじゃなくて、物の考え方なんですね。オーダーメードといってしまうとそういうものも含めてあるんじゃないかということもありますから、その辺どのようにお考えなのか、お聞かせください。
○澤井政府参考人 先ほど、区分があいまいになってきたと申し上げましたのは、今度、結果的に、企画旅行として一本化された二つのものであります。
主催旅行の中にも、いろいろなオプションが選べるような、そういうものが含まれたような商品が出てきた。一方で、御指摘の企画手配旅行として従来の規制の対象にはなっていなかったものについても、旅行会社が事実上、旅程管理をするようなものも出てきた。どっちだろうというあたりのあいまいさでございます。
今回は、そういったものも含めて、明確に、法律上、旅程管理をするということにしまして、その企画旅行と、そういうことを一切しない、先生仰せの、切符をかわりにとってくるとかそういう単純手配、この二つになりますので、この区分で、旅行をしようとする方が迷われるということは多分ないと思います。
ただ、制度的にも、この辺は、旅行会社と旅行をしようとする人が取引をする前に、書面を交付しながら、この旅行はこのタイプの旅行ですよということをきちんと言うという仕組みが法律上担保されておりますので、そういったことを通じて明確になると思いますし、また、その辺は、あいまいになって、そんなはずじゃなかったというようなことが後で起こらないように、きちんと私どもも周知を図りたいと思っております。
○穀田委員 これも、迷われることはない、こう言うんですが、例えば、実際にどんな手続があって、どういう保証があってというのを知らない方というのは圧倒的に多いんですよね。それで物事が起きているわけだから、入り口のところでこういう迷いが生じるというだけじゃなくて、本来の持っている会社がどういう点まで責任を負うのかということの関係もあるから、わざわざ私は言っているわけですね。
現場で何が起こっているかということの関係も少し言ってみたいと思うんです。
例えば、旅行業者として登録していない仲介業者の問題があります。昨年十二月八日の日経新聞に、「留学仲介 トラブル急増 登録義務なく 行政の監視手薄」という記事が報道されています。
海外の語学学校への留学やホームステイなどをあっせんする仲介業者は、旅行会社とは違って、監督官庁や自治体などへの登録なしで、どうも営業ができる感じです。留学などのあっせんのサービスは、旅行会社が実はパックツアーで提供するタイプもあるんです。一方、仲介業者が現地の語学学校やホームステイ先を紹介することもできる、こうなっています。
関東在住の二十歳代の女性は、語学留学の手続を仲介業者に依頼し、費用を支払った。後日業者から突然、留学できなくなったと連絡してきたが、費用は返金されない。業者に支払ったお金が留学先に渡っていなかったなどなど、詐欺まがいのトラブルも頻発している、こんなふうな一連の記事が載っています。
こうした仲介業者は旅行業者でないため旅行業法の対象にならないが、こうした業者と旅行会社が提携して企画を組むケースがあると言われているんですね。だから、旅行業者としての注意は必要だと思うんですね。仲介業者は、これは自分のところの範疇ではない、こう言うに決まっているんですから、問題は、それとかかわって旅行業者としての注意はどうしたら喚起できるか、このあたりについては私は大事だと思うんですが、いかがでしょうか。
〔望月委員長代理退席、委員長着席〕
○金澤政府参考人 委員御指摘のとおり、九〇年代の後半から留学をめぐるトラブルが急増しているという記事が昨年の十二月に日経新聞に載っておったところでございます。
留学あっせんと申しますのは、旅行会社みずからが留学を主催旅行としてあっせんするいわゆるホームステイツアーのようなもの、こういったものと、それからもう一つは、あっせん業者と旅行会社が提携して実施をする、留学の部分は留学あっせん業者がやるけれども、旅行の部分を旅行業者がやる、そういう二つのケースが大きく分かれてございます。
国土交通省におきましては、いずれのケースについても旅行業者が関与をいたしますものですから、旅行者の保護にできる限り万全を期したいということから、従来より現地情報の把握や参加者への情報の提供ということを求め、あるいは確実にその留学、あるいは研修ツアーといったこともあるのですが、それが行われるための措置を実施すること、並びにホームステイの受け入れ団体を適正に選ぶ、さらには正確な情報を記載したパンフレットの作成、あるいはトラブルが発生した場合の確定的な連絡体制の周知徹底、こうしたことを旅行業者の方に繰り返し指導してきております。
また、こうした事態を受けて、JATA、日本旅行業協会におきましても、ホームステイツアーの取り扱いのガイドラインといったことを定めまして、関係する旅行業者の適正な運営を促しておるところでございます。
○穀田委員 ガイドラインもお話がありましたけれども、こんな例もあるんですね。昨年夏には、ある中堅仲介業者が突然営業を停止し、社長が会社の資金を持ち逃げしたために、顧客が支払った留学費用が返還されないというトラブルも起こっています。被害者の人数は約四十人で、総額は約千二百万円。顧客の一人は、事前に振り込んでいた約百三十万円のうち航空券分を旅行業協会から弁済してもらったが、残る八十万円は結局返らなかった。要するに、仲介業者については保証制度もないという事態です。
倒産したりした仲介業者に旅行業者がかんでいた場合、消費者が支払った費用はどうなるのか、こういう現実のトラブルがあるわけですから、その辺についてはどうなっているんでしょうね。
○金澤政府参考人 今御指摘のケースは、旅行業者が留学あっせん業者と提携をいたしまして実施する場合に当たったためにそのようなことになったということでございまして、つまり、旅行事業者が全体的な主催旅行として留学あっせんを実施する場合には、すべての旅行代金、ホームステイ等の料金や現地のサービスに対する対価もすべて一括して払うことになりますので、その場合には、今おっしゃったように、業者が倒産したり債務不履行によって旅行者に債権が生じた場合には、これをすべて弁済業務保証金制度で補てんすることになります。
しかし、一方で手配だけを依頼された場合、今委員の御指摘のようなケースだと思うんですが、そうした場合には、留学あっせん部分まで弁済業務保証金でカバーするということは現在されていないということでございまして、旅行業者が受けた航空券、あるいは旅行にかかわる契約に関する部分のみ補てん対象ということになっておるものでございます。
○穀田委員 いや、それは知っているんですよ。せやから、どうすんねんと言っているんですよ。
そんな二つの違いはなかなか、さっきも言いましたように、もともと弁済だとか債務の負担だとかという問題については八割の人が知らないという実態があって、しかも仕掛けがどうなっているかということについて、こういう違いがありますよなんということをわからないことがあるから言っているので、それについてどないやと言ったら、支払われないことになりますと。支払われていないから問題にしているわけで、ちょっと違うなと思うんですね。
旅行会社ではないんですよ。こうした仲介業者に対する監督指導もその意味では必要ではないかと私は考える。
それで、留学生だということで、私は文部省にも聞いたんです。そうしたら、いや、業者まで掌握していないと。経済産業省はどうかというと、いや、うちとも違うと言って、呼ぼうと思ったら、関係ない関係ないと、お互いに関係ないと言い合う。ここに穴があるんじゃないかと言っているんですよね。しかも、先ほども一番最初に澤井総合政策局長が言ったように、なかなか相手の情報がそういう問題は少ない。しかも断られたときに、これはどないなっているのかということで大変になる、そういう消費者なんですね。だから、そういう穴をうまく抜けないようにする必要があるんじゃないかという角度から物を言っているんですね。
旅行業者というような会社は登録制だけれども、未登録の事業者も頻繁にトラブルを起こしている事実もあります。例えば日本旅行業協会のホームページを見ますと、この間の五月二十四日付で、株式会社リトルスターによる被害発生についてという注意が出ていました。三月二十六日には、御注意、ANAタウンハウジング株式会社についてというのが出ています。いわゆるアウトサイダーだという違法の業者だと思います。
消費者保護という点を私はこの問題についてずっと指摘して、何とかしなくちゃならぬという問題を一つ一つ言っているわけですけれども、こうした事業者に対する対策も重要ではないか。国交省としてどのような対策をとっていますか。
○金澤政府参考人 まず法的には、旅行業法におきましては、無登録で旅行業を営んだ者には百万円以下の罰金という規定がございまして、これによって無登録営業を防ぐ担保としておるところでございます。
しかし、一方、今委員御指摘のとおり、最近旅行業の登録を受けずに旅行業を営んだり広告宣伝をして、代金だけ収受してそのまま消えてしまうといったケースも出ておるということで、旅行者が多大な損害をこうむったケースもございますので、私どもといたしましては、こういった行為を見過ごすことのないように、まずこうした場合の情報の入手をした場合に、直ちに旅行業者、これは業界を通じて連携してやることも多いのですが、一般消費者に対しても注意を喚起するということをしておりますし、また、直ちに警察等の捜査機関にも通報をいたしまして、詐欺罪あるいは旅行業違反における立件といったことを含めた迅速な排除に努めるように対応しております。
この点について、従来以上に、今委員御指摘のとおり、今後取り組んでまいりたいというふうに考えております。
○穀田委員 そういうトラブルが起きている事態についてよく見ていただいて、きちんと対処をしてほしいと思います。
では、最後に二つだけ質問したいと思うんです。
一つは、営業保証金制度、弁済保証金制度について聞きます。
今回の改正で、旅行業者が供託した営業保証金及び弁済業務保証金による弁済の対象から運送機関、宿泊機関などが除外され、旅行者のみに限定される。この法改正の趣旨は何ですか。
○金澤政府参考人 御指摘のとおり、今回の法改正において、営業保証金、弁済業務保証金の対象から運輸、宿泊機関を除外するということでございますが、これは、先ほども澤井局長から御答弁申し上げましたとおり、いわば旅行者にとって、運輸、宿泊機関はプロとプロ、BツーBの関係にあります。そういったところから、そうした方々は、みずから、みずからの商売相手である旅行業者の資力等、信用情報も十分に把握した上でビジネスをしておるということから、今般、そうした事業者を除外して、より手厚く消費者である旅行者に弁済保証金が充当されるようにしたいという考えで、この制度を取り入れているところでございます。
○穀田委員 ただ、確かに、プロ対プロという話があって、旅行会社が倒産したりして運送機関や宿泊機関に多額の弁済をするという、積み立てたお金が目減りして、消費者の分が少なくなるおそれがあったわけですね。そういう意味では、消費者に弁済するものを手厚くすることは必要だと思うんです。
しかし、バス会社や旅館にも中小零細なところがあるわけで、こうした運送、宿泊業者などに対する手当てはどのように考えているのかということだけお聞きしておきたいと思います。
○金澤政府参考人 ただいま委員も仰せられましたとおり、交通業者の中には中小零細な企業がいるということも事実でございます。しかし、旅行業としては、あくまで消費者である旅行者の方々の保護を一義的に考えて、今般こうした御提案を申し上げておりまして、先ほども議論に出ておりましたとおり、中小零細な事業者である方々であっても、ふだん、旅行業界とビジネスの関係に入る場合には、当然、そうした旅行業界に関する情報、旅行業者の情報も十分に、交通業界の方では、あるいは宿泊業界の方でも認識しつつビジネスしていただくということが一つ。
それから、これも澤井局長が御答弁申し上げましたとおり、ANTA、全国旅行業協会におきましては、クーポンというものもつくっております。こういったものを活用して、零細な宿泊事業者の方々は取りっぱぐれのないように、このクーポンの普及に一層努めていきたいというふうに考えております。
○穀田委員 終わります。
○赤羽委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○赤羽委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
旅行業法の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○赤羽委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○赤羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
〔報告書は附録に掲載〕
―――――――――――――
○赤羽委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午後零時三分休憩
――――◇―――――
午後一時二分開議
○赤羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
内閣提出、参議院送付、海上運送事業の活性化のための船員法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省海事局長鷲頭誠君、政策統括官矢部哲君及び公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長山木康孝君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○赤羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○赤羽委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。寺田稔君。
○寺田(稔)委員 自由民主党の寺田稔でございます。
本日は、二十分の時間をいただきまして、海上運送事業の活性化のための船員法等の改正案につきまして御質問をさせていただきたいと思います。
内航海運の活性化の問題、これは、物流システムの効率化、高度化に資するのみならず、京都議定書で定められました六%のCO2削減、環境保全にも資する施策であります。そして、陸上運送から海上輸送への転換、モーダルシフトを進めるためにもぜひとも必要な施策であるというふうに理解をしております。そして、この内航海運業の発展、振興は、ただ単に業としての業界の発展ということのみならず、我が国の物流システムの効率化そして省力化を通じまして、我が国の産業競争力全体の向上にも資する施策でございます。
そういったような観点から、本日、私は、内航海運業法関連につきまして主として質問をさせていただきたいと思います。今回の法律改正、多くの法律が束ねられておりまして非常に分厚い中身となっておりますが、主として産業政策の観点、お聞きをしたいと思います。
まず第一に、この法律の第一条で定められておりますところの目的規定でございます。これが今回、公共の福祉概念が新たに挿入をされております。現行法によりますと、「内航海運業の健全な発達を図り、もつて内航運送の円滑な運営に資することを目的とする。」という現行法の規定に対しまして、今回出されておりますところの改正案では、「内航運送の円滑かつ適確な運営を確保することにより、内航海運業の健全な発達を図り、もつて公共の福祉を増進することを目的とする。」というふうな定め方であります。
ここで、公共の福祉とは一体何を意味しているのか。そしてまた、公共の福祉という、これは最高裁判例もございますが、非常に大きなバスケットクローズ、包括的な概念を導入されたことによって、いかに国民の利益、国民のメリットの向上に資するのか、具体的にお答えをいただきたいと思います。
○鷲頭政府参考人 お答え申し上げます。
先生おっしゃられましたとおり、昭和三十九年の内航海運業法制定時におきましては、内航海運業界が大変零細だったということでこれが大きな社会問題になっておりましたので、それを解消するために積極的な企業対策を行うということが法の主目的でございました。
今回の改正におきましては、不特定多数の荷主を顧客とする船舶を運航する内航海運事業者について、例えば、内航運送約款を作成、届け出させるといったことを義務づけることによりまして荷主の利益を保護するということを一つ目的としてございます。また、運航管理制度とか安全確保命令制度の導入によりまして、海上交通の安全とか、あるいは環境に対する配慮ということも目的としているところでございます。
そういうことによって、海洋汚染が防止されるとか、物資の安定的、効率的な輸送が確保されるといった意味で広く国民全体の利益に配慮するということとしたものでございまして、今回、目的規定に「公共の福祉」という文言を追加させていただいたものでございます。
○寺田(稔)委員 今、真っ先に荷主の利益保護というお答えございましたが、これは御承知のように、荷主の系列化によって、荷主、ユーザー側の優越的な地位が高まるという懸念があるわけでございます。
非常に零細な業者が多い内航海運業におきまして、余り荷主の利益の保護ということを大上段に言われても困るわけでございまして、実は、今回の改正の一つの大きな眼目に参入規制の緩和がございます。これは、許可制から登録制に改める、そして意欲のある新規参入事業者を促していく。そのこと自体はもちろん必要なことでございますし、重要な施策でありますが、それと同時に、基準船腹量につきましても、いわゆる三隻要件が一隻に緩和をされている。しかし、そのことによってますます零細業者がふえて、荷主企業の優越的地位が強まる懸念が非常にあるわけでございます。そういったような懸念に対していかにおこたえになるのか、御所見をお伺いしたいと思います。
○鷲頭政府参考人 お答え申し上げます。
内航海運事業というのは船を自分で持たないと商売ができないということで、小さなものでも数億円もする大変高額な投資というものを前提に考えるわけでございますので、今先生がおっしゃられたような形での規制緩和なりハードルを下げるということをしても、やはり入ってくる人というのは、長期用船契約が確実であるとか、そういう前提での参入というものが考えられるわけでございまして、零細事業者が普通の一般のビジネスのようにぱらぱらとたくさん参入してくるということは余り想定されないだろうというふうに考えております。
それと、今先生がおっしゃられました、いろいろな事業区分の廃止とか、三隻を一隻にする、そういうようなことによりまして、実は、現状で零細企業と言われております一杯船主につきましては、そういうことによって直接荷主と契約ができるという状態になりましたので、意欲のある人たちが、零細事業者が、船舶管理会社などを設立することによって事業を共同化するということが予想されるわけでございまして、むしろ、荷主企業の優越的地位が強まるというよりは、対等な立場での商売ができるということになるというふうに考えております。
○寺田(稔)委員 私が聞く前に先にお答えになりましたけれども、次に実は聞こうと思っておったのが、例のオペレーターとオーナーの事業区分の廃止の問題です。
これは、今言われるように、共同化によって優越的地位が改まるというふうな楽観的な見方もありますが、実際、地元の業者に聞きますと逆なんですね。すなわち、個々の業者が荷主と直接契約をすることによって、むしろ、金融機関と一緒です、優越的な地位にある荷主側の大企業、これはもうみずからに有利な運送約款を持っております、それを押しつけられてしまうという懸念は十分あるわけでございますので、その点は十分に念頭に置いて施策を展開していただきたいというふうに思うわけであります。
次に、これとの関連で、平成十年より、内航海運業のいわばセーフティーネットとして、内航海運暫定措置事業が実施をされてきております。これは、セーフティーネットの必要性から見ても、また、ともすれば過当競争に陥りがちな業界特性からしましても、当然継続をすべき事業であるというふうに考えております。
特に、自由化が進みます中でこういったようなセーフティーネットを整えるということは、これはもう金融の例を引くまでもなく、当然の時代の流れでございますが、この事業の継続につきまして大臣の御所見と決意をお伺いいたしたいと思います。
○石原国務大臣 ただいま寺田委員が御指摘になりました暫定措置事業は、委員がおっしゃるように一種のセーフティーネットとしての機能を有しまして、内航海運の活性化とさらには船腹需給の適正化等々を図って内航海運の構造改革を進めるための事業として平成十年から実施し、それなりの成果を上げてきたと私は思っております。
そして、委員御指摘のとおり、これからもセーフティーネットとしての機能をしっかりと引き継いで、円滑かつ着実に内航海運の構造改革というものに努めてまいらなければならないと考えております。
○寺田(稔)委員 やはり、まさに今大臣が言われましたように、大事なことは、業界の活性化とそして業としての安定性の両立を図りながら、内航海運業を長い目で見て安定させていく、そして産業競争力を向上させていく、このことがぜひとも必要であることを改めて申し上げておきたいというふうに思います。
次に、業界全体の活性化のためには、業としての新規参入とともに、やはり若い船員たち、若年船員の確保が、老齢化しております現在の船員の人口構成から見ましてもぜひとも必要でありますが、国として一体どのような施策でもって若年船員の確保をなされようとしているのか、御所見をお伺いしたいと思います。
○鷲頭政府参考人 内航は大変船員さんが高齢化しているということで、先生のおっしゃるとおり、若年船員の確保というのが大きな課題でございます。
私ども、そのような観点から、海員学校の学生などに海の魅力を伝えるために、内航船への乗船体験というものを行っております。それから、平成十五年度から、試行的に、若年者を雇用して乗船させる事業者に対して助成を行うトライアル雇用というものも始めております。それから、若者が乗組員の一員としてすぐ活躍できるよう、内航船員を養成している海員学校におきまして、実際の船舶のエンジンを分解して整備するというような実習を行うなど、実践的な教育訓練にも取り組んでおります。
こういうことに加えまして、今回の法律改正において、現在では非常にあいまいになっていた労働時間につきまして、上限を設ける等によって、過度の長時間労働の是正を図ることとしております。
もう一つ、現状では、内航船員というのは、転職をする場合には転籍を繰り返しながらやっているということで、なかなか上級資格が取れないというような問題点がございますので、今回の法律においては、船員職業安定法を改正いたしまして常用雇用型の派遣事業を導入することによりまして、一カ所にちゃんと所属しながら、訓練も積んで、あちこち需要に応じて派遣するというようなことをしておりますし、無料の船員職業紹介事業も実施できるように盛り込んでいるところでございます。
○寺田(稔)委員 トライアル雇用も結構なんですけれども、トライアルしても居つかないと意味がないわけですね。ちゃんと、まさに船員として常用雇用化していく、そのために強力に施策を展開していただきたい。また、若年雇用をふやして船員構成の若返りを図りますとともに、全体としての地域振興、また若年雇用増にぜひともつなげていただきたいというふうに思うわけであります。
次に、効率的な物流システムの確立と業界のさらなる発展のためには、三年前に閣議決定されました物流大綱にもありますように、内航海運船舶の大型化、高度化がぜひとも必要であります。いわゆる次世代内航船、スーパーエコシップの開発状況につきまして御説明をいただきたいと思います。
○鷲頭政府参考人 御説明申し上げます。
おっしゃるとおり、今後の内航海運を見据えたときに、内航貨物船の大型化、高速化というものを、環境面への配慮とか経済性への配慮ということをしながら進めていかなきゃならないという意味で、スーパーエコシップというのは一つの大きな柱になるものだと考えております。
このスーパーエコシップというのは、NOx、SOx及びCO2の大幅な低減をする。例えば、NOxでありますと十分の一、SOxですと五分の二、CO2ですと四分の三になるということとあわせて、貨物積載量を増加する。プロペラシャフトが要らなくなるものですから、その分貨物スペースに使えるといったようなこともございまして、二〇%ほど増加することができるという次世代の内航船の開発を進めております。
これは平成十三年度から開始しておりまして、これまでに、まず、抵抗の少ない新船型の開発、これによって燃費の向上とか環境負荷が低減されますし、高効率、省スペースの電気推進システムの開発、これによりまして環境負荷が低減されますし、減った分の貨物積載量が増大をいたします。
こういう新しい技術を採用して、それをタンカーだとか貨物船だとかコンテナ船だとか、そういうものにしたときの最適な船の概念設計、そういうものをこれまで要素ごとに開発してまいりまして、今後は、平成十七年度、実海域で運航試験に向けて実証船の建造が開始されるという予定になっております。
また、これらの普及を図っていくために、新技術の成果を踏まえた、例えば船員の乗り組み体制だとか各種設備の安全基準等の見直しだとか、そういうこともあわせて環境整備を行いまして、総合的に対応していきたいというふうに考えております。
○寺田(稔)委員 今局長がお答えになりましたこのスーパーエコシップ、環境負荷の低減に資するのみならず、船員にとりましても船内環境の改善につながる、また経済効率性も上がっていく、そして省力化も図られるというふうなことでございます。ぜひとも強力に推進をしていただきたい。
かつては旧運輸省の内部機関、船技研がこの開発主体だったわけですけれども、独法化をされております。決して独法任せにすることなく、ちゃんと開発状況につきましてはフォローをしていただきたいし、独法に対しましても、十分開発についてはマンデートを与えまして、必要な指揮監督をしていただきたいというふうに思う次第であります。
次に、技術的にやはり重要な点といたしまして、高度船舶安全管理システムの問題というのがあります。これは、最新鋭のITを活用いたしまして、船舶の推進機関等の状態を陸上から遠隔監視できますとともに、機関部のトラブルを未然防止できる、そして、安全性が飛躍的に向上するのみならず、各種管理事務を合理化することによって、大幅な効率性の向上とコストダウンが図られる施策でございます。
この高度船舶安全管理システムにつきましての現在の開発状況を御説明いただきたいと思います。
○鷲頭政府参考人 ただいま先生が御説明されました高度船舶安全管理システムというものの研究開発の状況について御説明申し上げます。
ちょっとその前に、今、船の推進機関が故障に至る場合に、それ以前に、温度とか圧力とか振動など何らかの異常な兆候が生じるというのが通例でございまして、そういう異常を事前に検知する、あるいは陸側から検知することによって船の故障の未然防止とか事故の防止に結びつくというものでございます。
この高度船舶安全管理システムは、ITを活用して、船舶の推進機関、エンジン、補機、そういったものの状態を常時陸においてモニタリングして、船と陸との間で通信を経由して遠隔的に監視、診断することによって船舶の安全な運航と効率的な管理を行おうというものでございます。
こういうことによって、機関トラブルの未然防止とか故障時の迅速かつ適切な対応が可能となりますし、輸送の安全性とか輸送効率が上がるということで、一石二鳥、三鳥のものでございます。
この研究開発は平成十三年度から十六年度まで四カ年計画で実施しておりまして、平成十五年度までに要素的技術の開発というのは終了をしております。平成十六年度は、本プロジェクトの最終年度として、システム全体の総合実証実験を行いまして、実際の船を使ってやるわけでございますが、それで平成十七年度以降の実用化、普及に向けて取り組んでまいりたいと考えております。
○寺田(稔)委員 ぜひとも、そのような最新鋭のIT技術を使うことによりまして船舶の安全性を高めるとともに、効率化を図っていく。やはり、この業界の新たな発展のためには、そういうイノベーションを伴った技術的なブレークスルー、これがぜひとも必要なんです。これはスーパーエコシップについてもそうでございます。また、今の安全航行管理システムについてもそうであります。
そして、これはもう時間の関係であえて質問はいたしませんが、環境負荷低減のためのさまざまな技術がございます。そういう、我が国が環境関連の最前線の、世界に誇れるイノベーションと技術、これを開花させまして船舶分野におきましても適用していく。特に技術関連のものにつきましては、モーダルシフトの促進のためにもぜひとも必要なわけでございます。
そして、全体のパイが広がることによって、業界のさらなる発展と物流の効率化、さらには我が国の産業競争力全体の底上げが図られるということでございますので、ぜひともこれらの施策、まさにこの三つの施策を三位一体として進めていただくことによってこの内航海運業のさらなる発展を図っていただくことを切にお願い申し上げまして、私からの質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○赤羽委員長 伴野豊君。
○伴野委員 民主党の伴野豊でございます。
本日は、議題に上がっております海上運送事業の活性化のための船員法等の一部を改正する法律案につきまして、時間の許す限り質問をさせていただきたいと思います。
大臣もいらっしゃっていますので、後ほど御決意を賜れればと思うわけでございますが、大臣の名字、石原さんといいますと、海のイメージといいますかマリンブルーといいますか、勝手にこちらは想像してしまっているんですけれども、それはそれとして、本題に入らせていただきたいと思います。
これは参院送付でございますので、その議論も踏まえて、具体的にチェックしたいところを時間の許す限り質問させていただきたいと思うわけでございますけれども、まず一点、今回の法案の方向性、それから、この業界を取り巻く環境、労働者の皆さん方の日ごろの御苦労、それを認識した上でお話をさせていただきたいわけでございます。また、この三月決算におきましても、中国を中心とした需要の急増や、あるいは欧米における景気も回復基調というようなこともあり、世界的な船不足の中で、いわゆる海運大手三社というものが非常に、過去最高の利益を更新した。そういった背景の中でいろいろ質問させていただきたいわけでございます。
会社が潤って、そこで働いていらっしゃる勤労者の方にしわ寄せが行ったり、あるいはユーザーへしわが寄ることによって会社だけが繁栄するというようなことはあってはならないことでありますし、激しい競争の中で、競争力はついたけれども、それらの仕組みのしわ寄せは全部現場に行ってしまったということにならないようにチェックをしていきたいわけでございます。
まず、今回、内航海運業法の改正によりまして、許可制から登録制になっております。これは非常に新規参入しやすい体制になるわけでございますけれども、一方で、とんでもない業者さんが入ってくる可能性もないわけではない。そういうようなのをどのように具体的にチェックされていくのか。場合によっては強化していただくこともあるのかもしれない。また、今回の改正によって、こんなような事業者さんが新規に入ってくる可能性はこんな部分であるんだよというようなことが今の想定の中でございましたらお答えいただければ。
○鷲頭政府参考人 今回の法改正によりまして許可制から登録制になるわけでございますが、新しい制度での許可条件というのは、総トン数百トンまたは長さ三十メートルを超える船舶を一隻以上有することが登録の条件であるということでございます。登録に際しては、資金計画、船員配乗計画を提出させることとしておりまして、これらを通して事業の安定性や適正な事業運営をチェックいたします。
具体的には、資金計画上、最低賃金などを遵守した船員の雇用になっているかとか、関係法令を遵守した船舶の検査に関する費用が適切に見積もられているかどうかとか、あるいは、船員配乗計画では船員関係法令に違反していないかどうかということを登録の際にチェックいたしまして、これらに反している場合には登録を拒否するということになっておりますので、こういう形でチェックをさせていただきたい、こう思っております。
どのような事業者が参入してくるかということですが、一つは、条件が緩くなることによって、比較的小規模な荷主が、例えば自社の輸送部門というのを独立させて、自分のところの物を運ぶだけでなくてほかの一般の貨物も扱うようにするというような内航業者としての登録だとか、あるいは、先ほど来お話が出ておりますモーダルシフトの進展に伴って、ローロー船のようなものを運航してトラックから荷物をとってくる、そういうような事業者が新規参入してくるのではないかというふうに考えております。
○伴野委員 そのあたりのところは、競争力を持ちつつも、かつ、不穏当なといいますか、おかしな業者さんのチェックというものは今後ともきっちりとやっていっていただきたい、そう思うわけでございます。
今、一つの仮定の中でお話をさせていただきたいと思いますが、多分経営者の立場からしますと、イニシアルコストは常々抑えたい、しかし、急にお仕事が来たら、それに対応してやはり利益を上げたいと思うのが経営者でございますね。そうすると、今いる陣容で少し無理を聞いてもらおうか、あるいは、それでなかなか無理だから、例えばほかの会社さんで余っていらっしゃる方あるいはプールしていらっしゃる方からおかりしてこうか、そんなようなことがやりやすくなれば、そういう需給に対しての急な対応というのができやすくなる。
そういうようなことで今回も改正されていくんだと思うわけでございますけれども、そうした中で一番やはり心配してしまうのが、今いる人員のところに過剰な負担がかかってしまわないか。今国会におきましても、いわゆる内部告発というようなものに対するそれなりのルールが法案として出たわけでございますけれども、やはり、自分のところの会社にいて、あるいは自分がずっとお世話になったところで、急に言われたら、やはり無理してでも聞いていこうか、自分の健康を害しても聞いていこうかという非常に人情あふれる船乗りさんが多いと聞いております。だから、限界だ、こんなことをやられたらもう本当に病気になってしまうということを言いたいんだけれども、なかなか言えない現状が今後考えられないわけでもない。そうしたときに、やはりチェック機能というのは非常に重要になってくるわけでございます。
一方で、余りチェックが厳し過ぎても、競争力あるいは弾力性ある運用といったときに、非常に縛りがきつくなってしまいますと、またこれも硬直性を持ってしまう。だから非常に難しいんですが、ただ、やはりポイントはそこだと思うんですね。
現在、そのチェックのあり方として、船員労務官さんによる是正措置として、文書指導、文書勧告、氏名公表、是正命令、罰則と五段階あるわけでございます。ここを本当にきっちりとやっていただきたいと思うわけでございますが、現状と今後の見通しをお聞かせいただければ。
○鷲頭政府参考人 先生ただいま御指摘いただきました五段階の是正措置というのは、今回の船員法改正に合わせて船員労務官の監査手法の見直しを行った結果、今度法律の改正によって新たに導入しようという仕組みが、その氏名公表を含む五段階の是正措置でございます。
現在の監査の結果行っている是正措置としては、一つは、船員法の違反が発生するおそれがあると認めた場合に文書で行う勧告、違反事実を確認した場合に文書で行う戒告、それから、戒告をしたにもかかわらず是正をしない場合の是正命令、それでも違反した場合の罰則、その四段階になっておりまして、平成十五年の実績といたしましては、八千四百三十件の監査を実施して、三百八十七件の勧告、百七十六件の戒告を行ったということでございます。
この中間段階として、先ほど先生もおっしゃいました氏名の公表というのを今度新たに設けまして、公表されることによっての抑止力というものも使いながら、違反の程度に応じて段階的に是正を図っていきたいというふうに考えております。
○伴野委員 外航海運の方には、PSCというシステムといいますか、チェックをする機能、これはハードを中心にして、そうはいってもやはりハードとソフトは一体なわけでございまして、こういうチェック機能がある。これは内航海運に今後適用していく可能性というのはあるかなしか、その方向性だけ、もしお考えがあれば。
○鷲頭政府参考人 ポートステートコントロールというのは外国船に対するハードのチェックということでございまして、内航船につきましては、船舶の定期検査で船舶検査官がチェックをしております。
それからあと、労働条件、労働環境とか、そういうものにつきましては、船員労務官というのが全国で百三十四名おりまして、船員労務官が司法警察員として、船員法上の問題等につきまして適宜立入検査して状況をチェックしている、こういうことでございます。
○伴野委員 いずれにしましても、現場の勤労者のところにだけしわ寄せの行かないようなシステムにぜひともしていただきたいと思うわけでございます。
続きまして、これは参議院でもまれて衆議院に来ているわけでございます。その中で、参議院の方でもいろいろ附帯決議がついております。その中から幾つか、具体的にどんなお考えを持っているか、ここで確認をさせていただければと思っております。
一つとして、「内航貨物船の定員規制に関し、一日八時間、週平均四十時間という労働時間規制の原則を前提とした「標準定員」が確保されるよう特段の配慮」をするということが書かれておりますが、今後どんな取り組みを今の時点ではお考えか、お答えいただければ。
○鷲頭政府参考人 船舶の作業、船内で行われる作業というのは、荷役作業とか保守整備作業、航海当直、さまざまなものがございまして、個々の船舶によってその業務量が随分違ってきております。
そこで、船舶の運航形態や種類の別に応じて、航海当直体制の実施を含めて船内のすべての作業量に基づいた標準定員というものを定めることにしておりまして、これに満たない人員しか乗り組ませていない船舶につきましては他の船舶と比べて労働時間規制が守られていないおそれが高い、こういうことになりますので、船員労務官によりまして頻繁な監査を実施することによって労働時間規制を担保することとしております。
附帯決議で言っておられます標準定員という考え方につきまして、これは今回の法改正の施行に合わせてこの考え方を導入して、この標準定員があるかどうかということをチェックすることによって労働時間規制なりなんなりが守られているかということをチェックすることにしたい、こう思っております。
○伴野委員 また、先ほど来、船員労務官さんの充実というお話も出てきているわけでございますが、その点もちょっと確認させていただきたいんです。
附帯決議の中に「船員法等の実効性が一層確保されるよう、情報照会システム及びポイント付加制の実用化を急ぐ」「船員労務監査業務の充実を」図り云々というのがあるわけでございますが、このあたりも、一層何か具体的な方法を今お考えであればお聞かせください。
○鷲頭政府参考人 船員労務官というのは、現在、全国六十二カ所の事務所に百三十四名配置されております。こういう体制で監査業務を効率的に行うために、全国の船員労務官が行いました監査情報を一元的に管理する船員労務監査情報照会システムというものの充実に努めております。
これが附帯決議にも書かれているわけでございますが、平成十五年二月末に、各船舶に対し、監査結果に応じてポイントを付加しまして、蓄積されたポイントに基づいて、監査の重点を置くべき船舶の選別とか、あるいは分類を行うというポイント制を試行的に導入しておりまして、こういう形での監査業務の重点化を図ってきているところでございます。
これまで約一年間そのポイント制についてやってきたわけでございますので、この実績を踏まえて、ポイントの付加方法、ポイントに応じた監査手法、処分方法について見直しを行って、今回の船員法改正の施行に合わせて本格運用を開始する予定でございます。
○伴野委員 時間が許せば大臣にもいろいろ御決意を賜りたいと思ったわけでございますけれども、時間が来ておりまして、次のバッターに交代したいと思いますが、昔、船乗りの人に聞いたことがあります。船乗りというのは、しっかりと事前に、船を出す前に、そのときの天候なんかを予期しつつチャートに航路をしっかり書き込んで、しっかり書き込んだならば、今度はそこの船に乗り込んだ人間が一致団結して、その航路を外さず真っすぐに進むんだというようなことを聞いた覚えがあります。
大臣におかれましても、ゆめゆめ迂回航路がないよう、真っすぐお進みいただきますよう、よろしくお願いいたします。
以上でございます。
○赤羽委員長 松野信夫君。
○松野(信)委員 民主党の松野信夫でございます。
私の方からは、引き続いて、内航海運組合総連合会、特に、この組合が行っております内航海運暫定措置事業、これについて御質問をさせていただきたいと思います。
従来はいわゆるスクラップ・アンド・ビルドの方式で船腹調整事業というのが行われていたわけですが、平成十年の五月にこの事業を廃止して、内航海運暫定措置事業が始まったわけであります。要するに、これは、総連合会の方が新たな船舶の建造者からトン当たり幾らというふうに決めて納付金を受領し、逆に船を解撤するという者には交付金を交付するというようなやり方であります。
恐らくこれは一種のソフトランディングのような手法かなというふうにも思いますが、この事業の趣旨、理由、これはどんなものでしょうか。
○鷲頭政府参考人 お答え申し上げます。
平成十年五月以前にやられておりました船腹調整事業というのは、船舶を建造する場合に、その建造船腹量に相当する一定割合の船舶を解撤するための制度でございまして、昭和四十一年より内航総連が主体となって実施してきた制度であります。
当時は、船舶を建造するために一定割合のスクラップを用意しなければ建造ができなかった、こういうことでございまして、このスクラップを確保するために船舶の売買が行われた結果、自然発生的にそのスクラップの権利が、引き当て資格、こう申しておりますが、発生しておりました。
しかし、船舶の建造には引き当て資格の確保が必要であることから、船舶の自由な建造が制限され、意欲的な事業者の事業規模の拡大や新規参入が進まず、内航海運業の活性化の支障となっていたことなどから、平成十年五月にこれは廃止されました。
船腹調整事業の廃止に当たりまして、この引き当て資格を急に無価値化すると、過去において引き当て資格を手当てした事業者との間で著しい不公平が生ずるため、事実上無価値化することによる経済的影響を考慮しまして、先生がおっしゃられましたソフトランディングを図るために、保有船舶を解撤した者に対して一定の交付金を交付して、船舶建造者から納付金を納付させるということを内容とする内航海運暫定措置事業を内航総連の事業として開始したものであります。
この制度は、公平の観点から、原則として、船腹調整事業を廃止した平成十年度に同事業により承認された船舶が船齢十五年となって交付金受給資格がなくなり、かつ、金融機関への返済が終了するまで実施することとしております。
○松野(信)委員 この暫定事業そのものについては理解はできるんですけれども、ただ、中身を見てみますと必ずしも余りうまくいっていない。私が調査したところでも、内航総連合会の方で、既に、商工中金から三百五十億円、民間金融機関から百八十億円借りている。さらに、鉄道建設・運輸施設整備機構から五百三十億円借りる。これには政府が保証をつけるという形で、合計しますと一千百億円近い借金を抱えているということであります。また、中身を見ますと、商工中金や民間金融機関からの返済は何とかしているようですけれども、鉄道建設機構の方には全然返済がされていない。こういう実情。
船を解撤した人には交付金を払うというふうになっているんですが、現実に交付金が交付されているのを私の方でちょっと調査しましたら、平成十三年度まではどうにか何とか支払いがなされている。平成十四年度以降は交付金が交付できない。こういう状況になっているわけで、交付金がもらえないで泣いている零細の運送業者というのは大変多くいるわけです。
こういう借金状態、何でこんなふうなひどい状況になったのか。この点についてどういうふうに理由を認識しておられますか。
○鷲頭政府参考人 お答え申し上げます。
収支の状況をまず申し上げますと、当事業が開始されて以来、今までに交付金の交付決定額というのは約千二百億円ございまして、利払い等の利子が三百億円という意味で、合わせて、出の方が千五百億円の規模になっております。
ところが、船をつくる人からの納付金というのは三百億円しかなくて、民間の金融機関等から調達できたお金が九百億円、合わせて千二百億円ということでございますので、その千五百億円と千二百億円の差額の三百億円というのがいわゆる未払いの状態になっております。
これはひとえに、景気低迷等によって、船舶をつくる人あるいは解撤する人とのバランスによってこういう状態になったわけでございますが、政府におきましては、こういう未払い交付金を早期に処理して暫定措置事業が円滑に実施されるように、平成十六年度予算において百六十億円、政府保証を増額するということにしておりますし、それからまた、昨年秋から内航海運市場も上向き始めておりまして、建造納付金収入が交付金を上回るというような兆しも見えてきております。
○松野(信)委員 どうも、余りちゃんとした借金体制を解消する理由になっていない。そもそも、新しく造船する建造者から高額に建造納付金を取っているわけですね。これが一体どうなんだろうか。
実際にこれから船をつくろうという人からいろいろ事情を聞いてみますと、船をつくるのに実際もちろん金がかかる。それプラス、ある意味では何の役にも立たないけれども、納付金というのを総連合会にトン当たり五万とか六万とか納めなきゃいけない。そうすると、千トンあたりの船をつくるのに約一億円ぐらいの船の納付金というのを納めなきゃいけない。これが全額返ってくるかというと、必ずしも全額返ってくるわけじゃないから、どうも預かり金とは違う。解撤の交付金というのと建造のときの納付金との差額は、大体トン当たりで、今で、一般貨物二万五千円ぐらいある。私もこれを調べてみますと、政府の平成十六年度の予算の概要の説明を見ますと、平成十六年度からこの差額をトン当たり三万円とするというふうに、政府の方が指導して差額を設けるような形になっているんです。
こういうような状況では、まじめに船をつくろうという方の建造意欲というか、そういうものをそぐことになるのではないか、建造意欲を減退させるのではないかというふうにも思いますが、いかがですか。
○鷲頭政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、船腹調整事業廃止の時点で、ソフトランディングさせるために、交付金を払い、納付金をいただくということで、そういうルールで始まった制度でございますので、納付金部分だけをなくしてしまうと、この制度全体が壊れてしまう。
したがって、そういうことになると、例えば民間の金融機関への返済ができなくなるとかいうようなことで制度全体がおかしくなってしまうと、内航海運、今までの船腹調整事業から自由なマーケットに移行するためのどうしても乗り越えなければならない一つの壁でございますので、この制度というものは崩すわけにはいかないということでございます。
それで、高過ぎるのではないか、こういう御指摘もございましたが、建造納付金の額というのは、従来の船腹調整事業での引き当て資格の市場より低い額に設定されておりまして、先ほど先生もおっしゃられたとおり年々逓減してくるものでございますので、その意味では、船舶建造に大きな支障になっているというふうには考えておりません。
先ほども申し上げましたとおり、現に、ある程度、二割ほどもうトン数が減ってきておりますので、マーケットが引き締まったということで、景気の回復も相まって、昨年秋から船舶建造が活発に行われているというところでございます。
○松野(信)委員 建造意欲を減退するような高額な建造納付金、確かに、暫定措置事業を何とか維持しなきゃならないという趣旨はわかりますけれども、これが余り長く続いているようだと、本当に船をつくろうという人の意欲をこれはもう完全に減退することになるのではないかと思います。
それからもう一つ、内航海運組合総連合会の財政状況を全般的に見ても、非常に悪い。先ほども申し上げたように、未払いの交付金を約三百億円ぐらい抱えているわけであります。本来ならば、トン当たり、より高い建造納付金を徴収し、解撤のときに払う交付金の方がトン当たり二万五千とか三万円の割合で差を設けているわけですから、そんなに財政が悪化するはずはないんですけれども、どうもお金が足りないということで、これまた総連合会の方では、これから交付金を受けようとする事業者には、自己資本分の二〇%、合計四十億円の拠出を求めるようなことも決めているようでありますが、どうも、この総連合会、私もいろいろ調べましたけれども、経営状況というのが必ずしも透明性が担保されていない。ホームページあたり見ましても、財政状況についての記載が余り出ていないんですね。
それで、仕方なし、私の方で少し調べましたけれども、例えばこの暫定措置事業についての運用の実績、これはちょっと手に入れたんですが、平成十年度で事務費に八億六千万も金を使っているんです。平成十五年度、さすがに少し下げていますが、六億七千万も年間事務費を使っているんです。何でこんなに使っているか、ちょっと理解に苦しむお金の使い方をしているというふうに言わざるを得ないです。
さすがに国の方もこれを認識しておられるのかなと思いますけれども、平成十五年十二月二十日付で、平成十六年度予算案の概要のところで注意をしていますね。内航海運暫定措置事業に係る事務費の大幅な削減を図ることというふうに国交省の海事局の方で指導されていらっしゃるようです。それくらい、どうもこの総連合会の経理というか、その点については問題がある。
特にこういう経費に多額のお金をかけ過ぎているのではないか。やはり皆さんの総連合だから、経営自体は非常に透明性を保ってやってもらわなきゃいけないと思いますので、その辺を国交省の方でもしっかり指導していただきたいというふうに考えますが、いかがですか。
○鷲頭政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、基本的に、入るお金と出るお金が景気の状況で大変差があるということで、この暫定措置事業というのは大変苦しい状況にあるのはおっしゃるとおりでございます。
そういう中で、内航総連におきましても、事務局経費の削減とか、できることを一生懸命やってもらうということで、私どもお願いをしているところでございます。
収支状況なんかにつきましては、毎年、理事会、総会で承認をいただく。私ども、報告をいただいておりますし、組合員に対しましては、ホームページ等を利用して公表していただいております。それからまた、借入金をするわけで、市中銀行からもそういう意味では定期的なチェックを受けている、こういうことでございます。
私ども、内航総連に対しては、暫定措置事業は大変重要な事業であるということでございますので、政府保証をつけるなどの支援をこれからもしていくということと、暫定事業がむだなく効率的かつ透明な手続に基づいて実施されるように、運営経費の節減とか組合員へのきめ細かな情報提供の実施をやってくださいということを指導していきたいというふうに考えております。
○松野(信)委員 この暫定措置事業については組合内部の方からも本当に大丈夫かという声も上がっているようですので、国交省の方としてもしっかり指導していただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。
ありがとうございました。
○赤羽委員長 室井邦彦君。
○室井委員 民主党の室井でございます。
海上運送事業の活性化のための船員法等の一部を改正する法律案についてのお伺いをいたしますが、先般の小泉首相の訪朝に関しての私の所見を少し述べさせていただきたいと思います。
御案内のとおり、五名の拉致家族の方々が帰国をされたわけでありますけれども、喜ばしいことではある。しかし、その代償であったかどうか、この場では議論をする必要はございませんけれども、十人の不明者の安否の問題、また、核、ミサイルの問題、具体的な解明もないままに人道支援ということになったわけでありますけれども、飢えや病の方々にこのような人道支援が行き渡るのか。これは行き渡らない。むしろ金正日体制の維持強化に使われてしまうということは明白なわけであります。二十五万トンの米、そしてまた医療費の一千万ドル、このような人道支援の約束を果たしたことは、全く、私にとっても不可解な、理解のできないことであります。
さらに、経済制裁も行わないという約束までして帰ってきたという、本当に信じられない、外為法の改正や特定船舶の入港禁止法案といった圧力の効力が明らかになってきた中、もとのもくあみに戻ってしまったというような残念な思いがしてならないわけであります。
また、日朝交渉にありましたように、本当に弱腰外交という表現、さらに、このような外交をしておりますと、この日本の国がテロのえじきになっていくんじゃないのかな、このような思いもしているわけであります。
さらに、私は非常に不愉快な、いまだにこの記憶が残っておるわけでありますけれども、金正男さん、この男は、法律上、不法入国者は六十日間の束縛を受けなければならないということでありながら、日本の政府は三日間で返してしまった。このようなことももうまるっきり弱腰外政、非常に腹立たしい思いであります。
こういう思いから、特に、こうなった以上、一日も早く特定船舶入港禁止法案の成立をしていかなくてはならない。また、経済制裁の観点からではなく、安全保障上の問題として入港禁止に踏み込むべきであると強く主張させていただきまして、同じく海上に関する本題の法案に質問を移りたいと思います。
大臣にお尋ねいたしますが、国内貨物輸送に占める内航海運の割合を今後四二%から四四%へ引き上げるということでありまして、モーダルシフトの観点からも大いに推進すべきと考えております。
現在、モーダルシフトの取り組み状況はどのようになっておるか、お聞かせを願います。
○石原国務大臣 ただいま室井委員が御指摘されましたように、政府としては、二〇〇一年が大体四二%でございますので、二〇一〇年に内航海運の占める割合を四四%にさせていただきたいと努力させております。これは、CO2換算ベースでいきますと、削減効果がおよそ三百七十万トンあると言われております。これは地球温暖化対策の重要な手段の一つであると認識しております。
ところで、そのモーダルシフトの目標達成に向けてアクションプランを、昨年でございますか、策定させていただきました。このプランに基づきまして、輸送サービスの向上や荷主さんなどの意識の向上に今取り組ませていただいております。
具体的な例を二、三御説明させていただきたいと思うんですけれども、内航海運への参入規制の緩和や、先ほども御議論のありましたスーパーエコシップの開発等々、内航海運の活性化、あるいはモーダルシフトの実証実験の推進、そして、モーダルシフトのうまくいっている優良事例の公表、さらには、港と道路のアクセスというものも重要でありますので、このアクセスの改善等々、ハードとソフトの両面からモーダルシフトというものに取り組ませていただいているところでございます。
詳細、もう少し数字が欲しければ、政府参考人の方から御答弁をさせていただきたいと思います。
○室井委員 今回は海上輸送に限ってではありますが、もっと速いテンポでモーダルシフトが進行してもよいと思っておるわけであります。
これに関するデータや、聞くところによりますと、現状、モーダルシフトがなかなか進まないとのことでありますけれども、そのネック、その問題点はいかがなものなのか。そしてまた、場合によってはその原因を法改正により早急に対応する必要があるのではないか、このように思うわけでありますけれども、お聞かせを願いたいと思います。
〔委員長退席、望月委員長代理着席〕
○矢部政府参考人 お答えを申し上げます。
ただいまの、モーダルシフトがなかなか進まないというお尋ねでございましたけれども、私ども、先ほど大臣が申しましたアクションプログラムを策定します際に、事業者等に対しましてヒアリングを行いまして、モーダルシフトの阻害要因の調査を行ったところでございます。
それによりますと、海運の関係では、港までの輸送や港におきます積みかえ、こういったことが必要になりますので、それに伴うコストやあるいは全体の輸送時間が増加するといったことがございますし、また、海運の利用について荷主さんが余りよく使い方を知らないといった、荷主さんに対する情報が不足しているといったようなこともございます。そのほか、荒天等によりまして船が運休をする、あるいは場合によっては荷傷みがするといったようなことについての不安もあるといったことが指摘をされているところでございます。
このため、現在いろいろな施策を実施しておりますけれども、現在実施中の施策の評価やあるいは見直しを図りまして、モーダルシフトの阻害要因の解消に向けてさらに努力してまいりたい、このように考えております。
○室井委員 くどいようでありますけれども、もう一点モーダルシフトに関してお尋ねをいたします。
海上のモーダルシフトの推進に伴い、陸上輸送業界とのあつれきといいますか、生じるのではないかという心配をするわけでありますが、その点いかがでしょうか。
○矢部政府参考人 ただいまの、陸上の輸送業界とのあつれきが生じるのではないかというお尋ねがございました。
国土交通省といたしましては、海運、鉄道、トラックなどのさまざまな輸送機関の役割分担につきましては、多様な輸送モード間の競争と相互の連携、それから、利用者の自由な選択を通じてこれが行われるということが基本であると考えております。
そういう基本に立ってそのための環境整備に努めているわけでございますが、そのような中で、モーダルシフトは、企業が、今申しましたような原則のもとで、輸送機関を自由に選択するということを前提に推進しているわけでございます。したがいまして、関係企業の意思に反してモーダルシフトが推進されているものではないという認識をしているところでございます。
○室井委員 モーダルシフトに関しては、環境面から見ましてもかなりメリットがあると申しますか、複合的にもメリットがある、私はこのように思っておるわけであります。今後大いにこの推進に努めていただきたい、このような私の思いを申し上げて、次の質問に移ります。
次に、カボタージュ規制についてお伺いをしたいと思います。
APECやWTOの一部において海運自由化論議があるわけでありますけれども、一方、内航海運業者は、緩和に対してでありますけれども反対である、このようなことを聞いております。外国人の船員が乗船する外国籍船の問題でありますから、国内業者の経営上の問題だけではなく、安全保障にもかかわる大切な議論であると思います。まず、政府としてどのような御見解を持っておられるのか、ぜひお聞かせください。
○鷲頭政府参考人 お答え申し上げます。
外国船舶による国内輸送、先生がおっしゃいましたカボタージュを基本的に禁止することは、国際慣行上確立していることでございます。
それで、先生がおっしゃられましたAPECの運輸ワーキンググループにおきましては、現在、海運自由化に向けた政策提言というものを採択しようと検討しております。その中に最初はカボタージュの自由化の話も入っていたんですが、やはり反対が多くて、その対象から外れております。したがって、現在、その政策提言の案の中には入っておりません。
それから、WTOにおきましてもカボタージュを海運自由化の対象とするかどうかという点の議論はございますが、今のところ、意見の一致というのはございません。しかし、我が国を初めとするほとんどの国はカボタージュを海運自由化の対象から外すべきであるという主張をしておりますので、カボタージュを自由化する国というのは大変少数でございます。
カボタージュを外国船社に一方的かつ全面的に開放いたしますと、先生がおっしゃいましたとおり内航海運事業に大変大きな影響を与えるおそれがございますので、我が国の国民生活上必要な物資、旅客の安定的な海上輸送手段を確保するという観点から、引き続きカボタージュ規制というものは必要であるというふうに考えておりますし、政府のスタンスでございます。
○室井委員 今後とも、このような業者のため、また海運の安全保障のためにも、ぜひこの予定、また政策を推し進めていただきたい、このようなお願いを申し上げておきます。
次に、政府参考人の方に二、三御質問をしたいと思います。
船員職業安定法の改正について、まず、陸上労働分野におけるいわゆる一般派遣に当たる登録型派遣事業や有料の職業紹介事業の制度化については今回見送られるようであります。なぜそのようになったのか、理由をぜひお聞かせいただきたい。お願いいたします。
○鷲頭政府参考人 お答え申し上げます。
まず派遣事業の関係でございますが、登録型の派遣事業というのは、派遣する期間のみ派遣元が労働者を期間雇用するという形態でございまして、陸上におきましては、例えば、パソコンの操作といったようにだれでもできるような職種によっては、自分の働きたいときだけ短期間だけ就労するといった労働者側のニーズというものがございます。
陸における登録型の派遣事業というのはこういうニーズに対応して設けられたものでございますが、船員につきましては船舶の種類ごとに一定程度以上の経験が求められるということで、陸のようにだれでもやりたいというような職場ではないために、必ずしも需要の変化に柔軟に対応できるような、派遣ができるというような状況になっておりません。それから、働く側の船員においても、何か時間があるときにちょっとアルバイト的に働いてみたいというような短期間だけ就労するというニーズはなくて、むしろ船員は常用雇用を求めているということでございます。
したがって、船員の場合には、派遣元において船員を常用雇用して、その常用雇用した中で船員に対し技能向上を行い、体系的に教育訓練を受けさせる機会を確保した上で、あっちのニーズ、こっちのニーズに対応するというような形で行うのが最も適切であると考えて、今回は船員については登録型の派遣事業は入れなかったものでございます。
それから職業紹介についてでございますが、職業紹介につきましても、船員という職種は大変特殊でございまして、職員、部員というランク分けがございまして、甲板、機関といったような分野分けということで大変細かく仕事が区分されているということから、一般の陸の職業紹介のように求人と求職をただマッチングしておけばいいというものじゃなくて、大変きめ細かな、船員の希望などを適切に聞いて対応していかなきゃならない専門的知識が必要であるとともに、中立公平な態度が求められるということでございます。
そういうことから、地方運輸局が中心となって船員職業紹介を引き続き実施していくことが船員の労働の保護を図るという観点でも適切ではないか、こういうふうに思っております。
ただ、内航における若年船員の確保というのが大変強く求められているということで、今回の改正におきまして、学校に無料職業紹介事業を開放するということは改正に入れておりますが、民間企業に有料での職業紹介事業を導入するという点につきましては、労使で一年以上検討してきておりますが、労使ともそのニーズはないということもございまして、今回の改正においてはその制度化は見送ることとしたものでございます。
○室井委員 続いて、船員派遣についてであります。
派遣元事業主との雇用関係終了後に派遣船員が派遣先に雇用されることを禁ずる旨の契約をしてはならないということであります。しかし、これは引き抜き等の争議の火種となりかねない、このように思うわけでありますけれども、いかがでありますか。
また、陸上における派遣事業では、以前、そういったたぐいの争議が頻繁に発生したようであります。今は、引き抜きの希望がある場合と申しますか、有料職業紹介という形態に切りかえ、解決をしているようであります。
このように、陸上労働者の派遣と同様に有料職業紹介という方法もとれるのではないのかというふうに思うわけでありますけれども、この二点、ぜひお考えをお聞かせください。
○鷲頭政府参考人 派遣期間が終了した後に派遣船員が派遣先に雇用されることを禁ずる旨の契約を派遣元事業主が派遣船員または派遣先との間で締結してはいけないということは今回の法律の中に書かれておりますし、陸についても同じでございます。これは、そういう縛りを入れるということは派遣船員の職業選択の自由を侵すということになるのでこういう規定が入っているわけでございまして、陸上におきましても同様に禁止されております。
したがいまして、どういうことかというと、派遣期間終了後に派遣船員が派遣先に雇用されるということは、原則として自由でございます。この結果、派遣元から派遣先に、先生おっしゃられたような引き抜きということが行われることもあり得るわけでございまして、可能性としては御指摘のとおりでございます。
この場合に、それまで派遣元で習得された技術とか経験に係る対価を回収するという観点から、有料職業紹介者として派遣元が同時に行うという形態も考えられるところでございます。それは、先生がおっしゃるとおり、陸の方ではそういうことになっているようでございますが、しかし、船員の職業紹介というのは、先ほどもちょっと御説明申し上げましたとおり、大変その職種が、職員、部員、甲板、機関といったように細かく区分されておりますので求人と求職のマッチングが極めて難しい分野でございまして、陸と同列にはちょっと論じられないだろうということで、その専門的知識など、中立公平な立場から地方運輸局がやっているわけでございます。
そういう意味で、有料でやるよりは、船員の分野におきましては船員職業紹介を地方運輸局が今までどおり中心となってやっていくことが適切であり、今回の改正においては有料職業紹介事業の制度化は見送るということにさせていただきましたし、労使ともそういう御判断でございました。
○室井委員 時間もございませんので、はしょって御質問をさせていただきます。
次に、船員派遣事業の許可基準はどのようなものなのかということと、さらに、非常に厳しいものであるというふうに仄聞をしているわけでありますが、このような状況で実際の運営に支障を来さないのかどうか、ぜひお伺いをしたい。よろしくお願いします。
○鷲頭政府参考人 派遣事業の許可基準のお話でございますが、今までというか現在は、需給に応じて必要な船員を移動させる場合には、一々その船員を転籍させるということによって対応してまいりましたが、今回、派遣事業というのを制度化する一方で船員の労働保護を図る、それを両立させながら適正な移動を実現する、それが結果的に雇用の安定につながるということでこの制度改正を行わせていただいたわけでございます。
そういう観点から、船員派遣事業を行おうとする者は適切な雇用管理を実施する能力が必要でございまして、そうした能力のない事業者にまで事業の実施を認めるということは、船員の労働保護の観点から大きな弊害が生ずるというおそれがございます。
したがって、船員派遣事業につきましては、これを許可制として、具体的に必要な事前チェックを行い、派遣船員の雇用管理を適正に行いつつ的確な事業の運営を行うことができると認められる者のみ事業の実施を認めることといたしました。そういう意味で厳しいという面があるのかもしれません。
これは逆に言うと、余りノーズロに認めることによって船員の労働環境なり労働保護を図れないということとの両立でそういうところに落ちついたということでございまして、労使双方で協議をしてこういう形になったわけでございます。
実際、運営が円滑に進むように、これからも関係者と協議しながら、先生の御指摘につきましてはしっかりと対応していきたいというふうに考えております。
○室井委員 あと三点ほど質問の予定をしておりましたけれども、時間がございません。この一点で質問を終わらせていただきますが、今回認められる、先ほど鷲頭海事局長もおっしゃいましたけれども、学校法人の職業紹介の取り組みとは別に、無料紹介ということであるならば、民間企業も含め、さらに門戸を広げて紹介を行えるようにしてもいいのではないのかというふうに私は思うわけでありますけれども、この点を一点御質問したいと思います。
また、そのことにより、就職難の、今現在大変なときでありますけれども、若者にとっても、海運業界に今こそ目を向けさせるというか、このような工夫も取り入れることができるのではないか、このように私は思っておりますが、この二点お答えをいただきたい。お願いいたします。
○鷲頭政府参考人 まず第一点目の、民間が無料で紹介をするというのは、なかなか、民間はビジネスでやるということになりますので、無料であるとどれぐらいの人が手を挙げてくれるかというようなこともございますので、とりあえずは、私どもがやっております運輸局の職業紹介を中心にやっていきたいというふうに考えております。
それで、若者にこの業界に目を向けさせるということでございますが、これは先生のおっしゃるとおりでございまして、従来より、船員労務官の監査とか安全衛生に関する啓蒙活動などを通じて労働環境の改善を促進し、魅力ある職場になるよう努めてまいりました。
また、内航船員を養成する海員学校とか乗船実習を行う航海訓練所におきまして、学生の即戦力化のために教育内容を実践的なものに見直し、見る・学ぶという教育から、さわる・できるという教育へ転換してきております。
今回の船員法改正におきましても、適正な労働条件、労働環境を確保するために、時間外労働をさせることができる範囲がこれまであいまいだったものを、労使協定を締結しなければならないこととして範囲を明確にし、時間外労働について適切に手当が支払われるようにするとともに、一日十四時間、週七十二時間を超える労働を禁止することによって、過度の長時間労働の是正を図ることとしております。
それからまた、先ほども申しましたとおり、需給に応じて転籍を繰り返している船員にとって教育訓練が十分に受けることができないというような状況にかんがみ、船員職業安定法を改正いたしまして常用雇用型の派遣事業を導入することによって、雇用の安定を図り、教育訓練等の実施が可能となるようにいたします。
さらに、学校において無料の船員職業紹介事業を実施することにより、内航海運に係る情報を学生に積極的に提供して、若年船員の内航への就職意欲を高めることとしております。
以上でございます。
○室井委員 ありがとうございました。
以上で質問を終わります。
○望月委員長代理 和田隆志君。
○和田委員 民主党の和田隆志でございます。
既に同僚委員の方からいろいろな質問が出ておりますので、できるだけ重複を避けながら御質問したいと思います。
私の方でも、今、三本の法律改正案が出ておりますが、その中で、海運事業の活性化のために内航海運業法という法律の改正案が出されております。その辺を中心に質疑させていただければと思います。
石原大臣には後で総括的にいろいろ伺いたいと思いますので、最初はぜひ事務方の方でいろいろ内容を御答弁いただければと思います。
まず、今回の法律の改正趣旨として幾つか挙がっておりますが、そんな中でも、まずこのような改正をするときに、オーソドックスな思考回路としましては、現状認識がいかなるものか、その中にどういう問題点があるのか、そして、その問題点を解決するためにどういう法律改正を行うのか、こういった思考回路をとるのが一般的だと思いますけれども、その最初の大前提のところをお伺いしたいと思います。
いろいろと資料をいただいております中に、「海上運送事業をめぐる近年の厳しい経営環境等に対応」するということを書かれておられますが、この「厳しい」というのは、いろいろとイメージはわくんですが、もう少し掘り下げていろいろと教えていただいた中で具体策を検討すべきだと思います。これについて、海事局長、御答弁いただけますでしょうか。
○鷲頭政府参考人 それでは、内航海運業をめぐる近年の経営環境について、具体的なデータで、内航運送業、オペレーター、それからオーナー、貸し渡し業ごとにちょっと御説明をさせていただきます。
平成十四年度決算によりますと、内航運送業、オペレーターでございますが、一社平均、売上高で二十八億五千万円、対前年度比で一一二%、経常利益が三千九百五十万円、対前年度比で一一一七・九%ということで、増収増益になっております。
それから、オーナー、内航船舶貸し渡し業の方でございますが、一社平均、売上高で三億二千万円、これは対前年度比九四%、経常利益は五百万円、対前年度比七四・二%ということで、こちらの方は減収減益となっております。
それからまた、負債比率というものをちょっと見てみますと、他業種の平均は一九六・七%ということでございますが、内航海運事業者は著しく高くて、内航運送業が三六五%、内航船舶貸し渡し業が一二一二・三%ということになっております。
以上申し上げましたとおり、内航海運事業者は、建造船価といいますか、船をつくるわけですが、建造船価が大変高くて、償却期間が長い船舶を建造して事業を行うということのために負債比率が他産業に比べて大変高く、ある意味では借金体質を抱えた業界ということであります。
それから、内航船舶貸し渡し業者の経営状況は特に厳しいものがありますが、これは、景気低迷の影響から輸送量が減少しているということと、あとは、荷主企業がいろいろな合理化の中で物流経費も削減しているというようなことが背景にあると思われます。
内航運送事業者、内航船舶貸し渡し業者とも、昨年秋には運賃、用船料が上向き出しております。経済全体が多少上向いているということに沿っているんだろうと思います。経営状況は改善に向かっているものと思われますけれども、運賃水準というのは、まだ数年前の二、三割減という状態でございます。
○和田委員 今御答弁いただいたところを私なりに、事前にもお伺いしておりますので、理解したところを述べますと、海上運送業では大きく二大類型がある、運送事業と船を貸し渡す業とある。そんな中でも、運送業の方は、景気が底を打ってきたのでだんだんと業績回復が見られているけれども、船を持ちながら、それを貸して業を営む人たちについては、初期投資も相当多額に上っているがために借金体質に陥っている、それがためにまだ業況回復が大幅におくれている、こういうふうな状況だと認識します。
そうであれば、今回の法改正の一つの内容としまして、この二つの事業区分をなくして一括化してしまう、そういうふうな内容が盛り込まれております。この趣旨との関係で、現状がどのように変わっていくというふうに推測されるんでしょうか。
○鷲頭政府参考人 現在の内航海運業法におきましては、オーナーが荷主と直接運送契約を結ぶことができないことになっております。そういう理由から、荷主系列のオペレーターによる業界のある意味での系列化というものが進んでおりまして、自由な事業展開が難しいという面もございますし、内航海運業界の閉鎖性の一因であるという指摘もございます。
現状、そういう問題点というのが、ある意味では大きくなってきているわけでございますので、今後は、オペレーター、オーナーといった事業区分にとらわれず、意欲のある事業者の規模拡大など、経営の自由度を高めて、活力ある事業展開を促進することによって内航海運業界の活性化を図っていくということで今回の改正をさせていただくものでございます。
具体的には、事業区分を廃止することによりまして、意欲あるオーナーが直接荷主と運送契約を結ぶことができることとなりまして、荷主側にとっては選択肢がふえるということになりますし、オーナーにとっては、そういうチャンスを利用して意欲的な事業の展開、拡大を図ることができるということになると思います。
○和田委員 これも御答弁いただいたところを総括しますと、今まで二つの区分に分かれていたがために、それぞれの自分の業の付加価値の部分を大いに発揮するだけの市場規模や、それから取引相手を見渡すその幅がなかったのではないか。そういったところを広げるために、事業としては、一連性のものでもあり、一括としてこれから業として定義していこうというふうに感じられるように思います。
そうであれば、今この区分を一括にするというところまである程度頭が進んで、その次に、今まで許可制にしていたものを登録制に変えていくということが今回の改正趣旨に盛り込まれております。これはさかのぼって調べてみますと、実は昭和四十一年までは登録制で、その当時、過当競争を防ぐという趣旨、いろいろありましたけれども、そういったことを含めながら、今回の改正とは逆に登録制から許可制に改められている。
今般、その許可制を大もとの登録制にまた戻されるという改正が行われるわけなんですが、先ほど来同僚委員の質問に出ていますとおり、これの参入規制を緩和するということは、一つには、参入を自由化する、それによって新規参入を促進して競争を促進するんだということになるのかなと思って今まで事務当局の方々とやりとりしましたが、今までの質疑を聞いておりますと、どちらかというと、実態上はもう既に参入すると想定される方々はすべて業として営んでおられて、昭和四十一年当時に登録制のもとに登録しておられた方が既存の業者としてあった後に、許可制としてこの二十数年推移して、実はその中でも、現実、既得権としては許可されておられたのを追認しているようにも思えるのです。
それはそれとしまして、これから先、この改正を行うことによって新規参入が、どの程度、どのような層で起こると見込まれているんでしょうか。
○鷲頭政府参考人 先ほども御答弁申し上げましたとおり、内航海運というのは普通のその辺のビジネスと違って、かなり高価な船舶を購入しないと、それから、購入してもその先ちゃんと用船してくれる、使ってくれる荷主がいないと参入ができない、そういう自信がないと参入しない、こう思われます。
先ほども申し上げましたとおり、今自分の会社に小規模な物流部門を持っている、そういうところを、今回許可基準というか、登録になることによって三隻が一隻持っていればいい、こういうことになりますので、簡単に入れるということになるので、小さな自社の物流部門を独立して内航海運業者にさせるとか、あるいはモーダルシフトでトラックから荷物をある程度持ってくる可能性がある事業者がローロー船などをつくって参入してくるということが考えられると思います。
○和田委員 今のお話をお聞きしていますと、新規参入を主眼に置いた改正というよりは、今既に業として営んでおられる方々の分布を見渡して、その方々がもっと広い範囲で創意工夫を凝らす中で競争促進が行われて海運事業というのが活性化するというふうに理解したくなるんですが、そういう理解でよろしいでしょうか。
○鷲頭政府参考人 新規参入ももちろんございますけれども、今先生がおっしゃられたとおり、いわゆるオーナーと言われている皆さんは大体一隻持って貸し渡しをしているわけですが、そういう皆様が例えば船舶管理会社などをつくって、実際に荷主さんを見つけてきて共同してビジネスを開拓していく、そういう可能性というか、そういう方向というのはこの法律改正によって大きく出てくる分野だと思っております。
○和田委員 実は非常に重要な御答弁をいただいたと思っています。
どの分野にもあることなんですが、参入規制を緩和していく中で、既存の業者がどの程度きちっと立ち行けるのかという観点も必要ですし、そうかといって、その既存の業者がまさにその地に安住してはいけないということで、それから先、新しい刺激剤も必要だ。どちらの観点も必要だと思うのですが、この内航海運業につきましては、私も瀬戸内で育った人間として見ていまして、実際相当多数の業者さんが業として営んでおられる。これ以上過当競争をしてもらったのでは共倒れになる可能性が非常に高いのではないかというふうに思うだけに、今回の改正によって直ちに業として新規参入が次々に起こるということが本当にこの業界にとって今必要なのかどうなのかということについてはちょっと疑問を持っておりました。
そういった意味で、今回の法改正によって、直ちにそちらの方ではなくて、既存の業界の中で、もっと創意工夫を凝らしたサービスの提供なりコスト低減なりが図られるものというふうに認識できるような気がしますので、次に進ませていただきたいと思います。
それから、今、内航海運事業として健全化していくためには、最初のお話によりますと、まず、実入りとなる運賃や用船料について今の段階ではかなり低く抑えられている現状があるというふうな御説明が何回も出てまいりました。
そんな中で、実際にこの業界がピラミッド化しているというような表現がたくさん使われております。これを私なりに今までお聞きしたところで理解するのは、荷主として幾つかの大きな業者が日本全国にいらっしゃって、それに一つ系列化された運送事業者があって、その運送事業者が、全国数多くあります船を持たれている方々から貸し渡しを受けていらっしゃる。その中で、最初の交渉として、荷主と運送事業者との間での交渉の力関係は荷主の方が相当力が強くて運送事業者が相対的に力が弱い。そこを、今回運送事業者と貸し渡し業者とが全部一体の業として取り組まれるようになりますので、もう少し大きな力を持てる。そういうふうになれば、今まで、交渉上、有利、不利が働いておった力関係がもう少し改善の方向に向かうのではないか。そのように解釈しますが、それでよろしいでしょうか。
○鷲頭政府参考人 先生おっしゃるとおりでございまして、今、オーナーの皆さんは、荷主と直接契約ができないということで系列下で船を貸し渡して仕事をしているわけですが、意欲のある事業者さんが幾つか集まって船舶管理会社のようなものをつくって荷主さんを見つけてきて、それまでの他の系列の人と張り合うというのですか、そういうようなことによってビジネスチャンスを広げていくということは大いにありますし、まさにそういうことを私どもはこの法律改正で期待しているところでございます。
○和田委員 それでは、運賃と用船料をもう少しきちっとした形態に整えていくために、今までのお話は、事業を営まれている方々との関係で適正化すべき方向を目指しておられたような内容でした。これからは登録制になってまいりますので、どちらかというと、全体が事後チェック型になっていく行政の中でどのような対処策を講じるかということになるんだと思いますが、もう既に、この業界も含みながら、全体の日本の事業規制として、いわゆる下請企業に対する非常に困難な条件が多々あった中で、親企業と下請企業の間をもう少し改善しようとする取り組みも行われております。
そんな中で、昨年の通常国会でしたけれども、私も政府の中におりまして少しだけ携わらせていただいたんですが、下請代金支払遅延防止法、この改正案が提案されまして、可決、成立いたしました。
そんな中で、この衆議院においても附帯決議がつけられておりますが、この内容について、きょう公正取引委員会にもいらっしゃっていただいておりますが、ちょっと簡単にお述べいただいてよろしいでしょうか。
○山木政府参考人 お答えいたします。
昨年の衆議院におきまして、下請代金支払遅延等防止法の改正がなされたわけでございますけれども、その際に、「荷主の優越的地位の濫用行為の防止を図る観点から、独占禁止法に基づく特定の不公正な取引方法の指定など所要の措置を講ずること。」という附帯決議がなされたわけでございます。
この決議を踏まえまして、公正取引委員会では、荷主と元請事業者、これは下請代金防止法の対象ではないということもございまして、ことしの三月に、「特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法」という形のいわばルールを策定いたしまして、ことしの四月から施行しているところでございます。下請法によりまして対象になります元請運送事業者と下請事業者、対象にならないものはこの特殊指定のルールによって、下請取引ないしは荷主との取引の公正化に努めているところでございます。
○和田委員 昨年来そういうふうに取り組みを続けておられることには評価をさせていただきたいと思います。実際にことしの四月から施行されておりますので、これから、実際困られた方々が、これはちょっと不公正なんじゃないかということで公正取引委員会の門戸をたたかれる場合が生じるんだと思います。
今、内航海運事業についての周辺の方々の御意見を少し聞いてまいりました。実際にこういったものをつくっていただいたことには非常に評価の声が高うございます。しかし、今までの行政、私もおりましたけれども、やはり自分が困っていることをどこの役所に言っていったらいいのか、また、それを教えてもらうためにどこに行ったらいいのかといったところから、普通の方々にとって、一般の方々にとっては相当敷居が高いのも事実かと思います。事実、これを決めていかれる中でも、この業界の方から、公正取引委員会のみではなくて、いろいろな窓口を設けてほしいというような陳情もあったかと思います。
ただ、当然ながら、法制度上、公正取引委員会のやるべきことはやるべきこととして守っていただくということになったんですけれども、実際にこれから先の運用としましては、この業界においても、親企業と下請企業、すなわち荷主企業と運送事業者、そんな関係の中で、ここまでやられたらたまらぬなというようなことがありましたら、ぜひ公正取引委員会の門戸を気軽にたたいていただけるような、そのような広報と雰囲気づくりに努めていただきたいと思っております。
次に進みます。
これまでは、内航海運事業の健全化を目指して、実際に実入りの部分をどうやってふやしていくかということを中心にお伺いしてまいりました。先ほど来同僚委員の質問にもたくさん出てきますけれども、もう一つは、最初に御説明いただいた、この業界をめぐる問題点としての借金体質をどのように改善していくか、そういったテーマの中でのお話に移らせていただきたいと思います。
先ほど来たびたび事業の名前としては出てまいります暫定措置事業というものがございますが、これについて、どの程度今実際に内航海運事業者が借金を抱えることになっているのかということを中心にヒアリングを行ってまいりました。
今までの質疑の中では、その集合体である内航総連の方が交付金を交付する、そして船をつくる人から納付金を徴収する。そういった仕組みの中で、実際に船を解撤する、要するに壊してしまう、鉄くずにするということについて交付金をもらうことになっているけれども、なかなか交付金がおりない現状がこの数年間で高まってきてしまった。一方で、船をつくるときには、実際に納付金もプラスアルファのコストとして考えなければいけない。
そんな中で、内航海運事業者というのは普通でも相当厳しい状況に置かれておる。つまり、事業の特性として初期投資は相当たくさんかかっていくのにもかかわらず、実際の運賃の回収は細々と、しかも、先ほどお述べになっていただきましたとおり、今までの慣習からすれば適正運賃はきっちり取れていないといった環境の中で資金繰りをつけてきたわけなんです。
そういった意味で、この暫定措置事業というものを最初に考えるときにどの程度見渡せたかにもよるんですけれども、近年、未交付の状態が続いておって、これから先、これがどの程度解消されることになるのか、そんなことを中心にちょっと御説明いただけますでしょうか。
〔望月委員長代理退席、委員長着席〕
○鷲頭政府参考人 暫定措置事業につきましては、先ほどもちょっと御説明させていただきましたとおり、今までの交付金の交付決定額が千二百億円ございまして、利子等の利払いが三百億円、合わせて千五百億円支出している、こういう状態でございます。ところが、納付金の方は、建造が少なかったということもあって三百億円しかなくて、民間金融機関からも九百億円しか借りられなかったというようなこともございまして、収入が千二百億円。その差額の三百億円という部分が、ある意味では未払いの交付金という状態になっております。
それで、暫定措置事業というのは平成十年に始めた事業でございまして、これを途中でやめちゃいますと、結局、その前、退出するときに交付金をもらった人ともらえなくなる人との不公平、あるいは、建造するときに、前は納付金を払った人と今度は払わなくていいという人との不公平、そういうことをいろいろ勘案しながら、徐々にソフトランディングしていこうということでできた暫定措置事業でございますから、これを今の時点でやめちゃうということは絶対できないと思っております。
ただ、これに対して、今までずっと退出が多くて、船腹量で二割ほど減ってきておりまして、そういう意味では、景気がよくなってきたということも相まって、船舶の建造が去年の後半ぐらいからどんどんと出てきております。そういう建造納付金が入ってくればこの事業というのはうまく回っていくわけでございますし、その間のつなぎとして私どもが十六年度で百六十億円新規に政府保証をさせていただいたというようなことで、私どもも協力しながら、基本的には納付金をふやして何とかこの事業を回していくということになると考えております。
○和田委員 暫定事業として立ち行くことになるかならないかという観点からすれば、先ほどお述べになりましたとおり、これから建造が進んでいけば何とかとんとんにおさまっていくのかなということは、希望的な観測としてはあるんだと思います。
ただ、いろいろな施策とのバランスで考えてみた場合に、本当に国土交通省さんが、この内航海運事業の中で、古いものを早く更新して新しいものにかえていくことも必要でしょうし、そんな中で内航海運事業者の経営の健全性を担保するといったことも必要でしょう。本当に前から続けてきているこの事業ではございますが、これで十分なのかどうかというのは、またこれから先、ぜひ御検討いただきたいと思うんです。
というのは、少し前にも述べましたけれども、私の行政経験の中でも、やはり構造不況の業種に入ると思います。それらに共通していますのが、本当に投資額が莫大で、しかも初期に必要なものにもかかわらず、それから先の事業収入がかなり長期化してしまう、もしくはペイできるかどうかの、例えばその期間の金利リスクを全部かぶるだとか、そういったところを全部業種としてひっかぶった上で今まで続けてきておられるんだと思います。
そうだとすれば、これから政府の施策のあり方として、そういったところのリスクをカバーしてあげるような施策も打っていった方がいいのではないかと思うんですね。
いろいろ申し述べてきましたけれども、今、一つの構造不況業種としての内航海運事業を取り上げさせていただきながらの検討にはなりますけれども、こういった事業について、一つは、収入源を確保するために競争環境を整えてあげること、もしくは、今度は資金繰りを助けてあげるために、例えば、短期的には立ち行かないんだけれども長期的に必ず回収できるという見込みをどこかで確保しながら公的資金をつぎ込んであげること、こういったことをもっと幅広く検討してもいいのではないかなというふうにこの法案の検討において感じた次第でございます。
こういった点、いろいろお聞きいただきまして、石原国土交通大臣にお伺いしたいと思いますが、この内航海運事業の現状、将来見込み、そして今回打たれる施策によって生じるであろう効果、そしてまた、さらに今申し上げたようなところをプラスアルファの施策として考えていただけないだろうかということに対する御所見をいただければと思います。
○石原国務大臣 内航海運の運営というものが厳しい、また、施策を打ち出していってもなかなか交付金の全額が払えないといったような納付金との相関関係の問題等々があるということは、和田委員の御質疑の中で明白になってきたんだと思います。
その一方で、国内貨物の四割、そして基礎物資であります、例えば鉄鋼、石油、セメントといったようなものの物資の輸送の八割は、実はこの内航海運で担っている。こういうもののボリュームは、モーダルシフトの件からいっても減ることはない。
そうしますと、では施策として何があるのかというと、委員が今の御質疑に入る前の前段でお話をされていた、いわゆる内航海運業者が適切な賃金をいかに受け取ることができるのか。すなわち、委員は支払い遅延のお話をされましたけれども、支払い遅延のほかにも、支給額の減額とか、あるいは一方的な代金の設定といったものが、荷主の側の優越的地位の乱用によって起こってもいたし方ないと言われる現状がある。
こういうものをやはり公正取引委員会という公正な取引を管轄するセクションが、また、地方でいきますと、いきなり公取に物を言いに行きづらいということがあると思うんですね、業者の側も。そうしますと、出先は運輸局になりますから、運輸局から公取に、何というんでしょうか、不公正な取引行為の情報が入ったらしっかりと上げてそういうものをただしていく。さらには、今後段でお話しになられた暫定措置事業でございますか、こういうものについても引き続いて円滑かつ着実な実施に努める。
そこから先は、構造不況業種であるから、個人補償、ある意味では広い意味での個人補償まで踏み入れることができるのかできないのかという議論がやはり残るんだと思うんですね。これはこの業種に限らず、農業にもきっとありますし、もう少し広くいいますと、地震で壊れた建物の補償を政府ができないのかできるのかといったような、個人補償の話は非常に重要な問題ですけれども、非常にすそ野が広い。
ここについて踏み込むんであるならば、委員は大蔵行政に携わってきた方でありますので、私の側からお願いするのも変でございますけれども、そこの一線をどうやって越えるのか。きっと、あるときここは越えざるを得ないときが来ると思うんですね、農業一つとってみましても。そういうことを国会の議論の中で、国会で決められたことは国家の意思でありますので、そういうものをこういうような場を使って審議の内容を深めていく。
まだ問題の提起が行われているにすぎない、そしてまた、行政の側としては、今できるツールをもって最高の改正案を出させていただいておりますけれども、委員が御指摘されたような問題はあることもまた認識しておりますので、そういうものに対する回答策は、国権の最高機関である立法府の責任として打ち出していく必要性が私もあるのではないかと感じております。
○和田委員 ありがとうございます。
個人補償が可能な分野は非常に限られていると私も思いますので、一言で言いまして、民間にできることは民間にと橋渡しをさせていただく今の政治、行政の中で、民ができるような環境を早く整えてあげることに、議論を通じて早くそれを実現できるように頑張ってまいれればと思います。
終わります。ありがとうございました。
○赤羽委員長 高木陽介君。
○高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。
内閣提出で本委員会に付託をされました十八本の法律案もいよいよこの法律をもちまして終わるということで、大臣初め委員各位の皆様方、本当に御苦労さまでございます。私も毎回質問をさせていただきまして、本日も、午前に引き続きダブルヘッダーということで質問させていただきたいと思います。
まず船員法の一部を改正する法律案ということで、内航海運の現状についていろいろと見てみますと、まず、国内貨物輸送の四割を内航海運が担っておりまして、とりわけ、鉄鋼、セメントを初めとする産業基礎物資、これの輸送の八割を支える基幹的輸送モードになっている、そのような状況であります。四方を海に囲まれました我が国におきまして、経済活動または国民生活におきまして、内航海運というものは必要不可欠な役割を果たしていると思います。
また、内航海運は、営業用のトラックと比較をいたしましても二酸化炭素の排出量が五分の一であるということで、環境保全の面ですぐれた輸送特性を持っている。さらに、京都議定書を受けての環境への負荷が小さい内航海運の重要性、今後もさらに増していくであろうな、このように考えております。
しかしながら、この内航海運の業界というのは、バブル経済が崩壊以降は、長引く景気の低迷または経済のグローバル化の進展に伴う企業の国際競争の激化、こういったことによりまして、荷主産業界からの物流コスト低減の要請、こういうなかなか厳しい状況を受けて、経営環境、これを見ますと、本当に大変な状況にあると思います。
このような中にあって、荷主企業を頂点として、オペレーターやオーナーから成るピラミッド型の市場構造や、参入障壁が高い閉鎖的な市場環境、これは内航海運業の活性化を阻害してきた面があると思われます。そのような古い体質を改めて内航海運の活性化を図ることは、これから内航海運が、日本経済の発展、また輸送面から支えていく上で大変重要であり、今回の規制緩和を実現する改正の主眼もここにあると考えられます。
そこで、まず質問をさせていただきたいのは、今回の内航海運業法の改正により内航海運業に係る規制の緩和が進むことで、内航海運業の活性化、これはどのように効果があるか、そのことをまず最初にお伺いをしたいと思います。
○鷲頭政府参考人 先生御指摘のとおり、内航海運業というのは我が国物流の基幹的な輸送モードでありまして、環境にも優しいという意味で、その重要性はますます高まっているところでございます。
今、内航海運業界におきましては、荷主と直接運送契約を結ぶことができない船舶貸し渡し業者、オーナーの中には、荷主と直接運送契約の締結も視野に入れて事業の共同化を行うなどの意欲的な動きが出てきているところでございます。
それからまた、原則三隻以上の船舶使用が参入の基準とされておりますので、この基準を満たすことができないで、やる気はあるんだけれども新規参入が難しいという人も見られます。
このように、現行の内航海運業法におきましては、事業区分や許可制に基づく参入基準などが定められているため、意欲ある事業者の創意工夫による事業展開が制約されているというのが現状でございまして、今回、運送業者と船舶貸し渡し業者の事業区分の廃止とか、あるいは新規参入の許可制から登録制への緩和などを行って、意欲ある事業者の事業展開の多様化、円滑化及び新規参入を促して、競争の促進による内航海運の活性化を図ることができると考えております。
○高木(陽)委員 今の答弁にございましたように、参入規制の緩和等で活性化が図られるということでありますので、これはしっかりやっていただきたいと思います。
その上で、内航海運の現状として、バブル経済の崩壊以降、長引く不況の中で、主要貨物である鉄鋼、石油、セメント、これらの動きが悪い上に、船腹量も過剰状態が続いていたことから、長期にわたって運賃、用船料が低下してきたという事実があると思います。
昨年の後半あたりからは、景気の持ち直しとともに、運賃、用船料も底を打って、上向き始めているようでありますけれども、このように内航海運業が完全には回復し切っていない、こういった時期に規制緩和を行って、新規事業の参入、これを促す場合に、せっかく上向き出した運賃、用船料がまた低下して、競争が激化して、内航海運業が混乱する、こういった懸念はないのかということ、これはどうでしょうか。
○鷲頭政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、今般の事業区分の廃止とか参入規制の緩和によりまして、意欲ある事業者の事業展開の多様化、円滑化、新規参入が促されるということで、競争が促進し、内航海運の活性化が図られるということを原則として考えているわけでございますが、この結果、内航海運の競争力が向上して、ある意味ではトラックから荷物を持ってくる等、内航海運市場、マーケットが拡大されることとなりますので、今回の規制緩和により、今までのパイをみんなで、新規参入者も分け合うということではなくて、パイが大きくなったところをみんなで分けるという意味で、混乱するということにはならない、こう思っております。
また、景気の回復や船腹量の減少に伴いまして、先ほど先生もおっしゃいましたが、継続的に低下していた運賃、用船料も昨年後半には下げどまってきておりまして、現在、徐々に上向きつつございます。
それから、内航総連におきましては、過剰船腹の解消等を図るため暫定措置事業というのを実施しておりまして、ここ数年、船腹量も約二割減少いたしまして、過剰状態も解消されつつあります。
こういうことからも、今回の規制緩和によって内航海運業界が混乱することはないと考えております。
○高木(陽)委員 利用者の方から見ますと、運賃が安くなる、物流コストが安くなるということはいいことであって、ただし、先ほどから申し上げていますように、事業者の側から見ますと、これによって体力がどんどん落ちていく。今海事局長のお話がありましたように、従来のパイを新規参入で分け合うのではなくて、パイ自体がふえていく、こういった視点の中でさらに活性化されるであろうと。それは大いに期待したいところでございますけれども、やはり、法改正がなされ、規制緩和がなされる中にありまして、こういった部分というのはしっかりと見守りながらもバックアップしていく、こういう視点も必要ではないかと思うので、指摘をさせていただきたいと思います。
もう一つ、内航海運の活性化のためには、事業規制の緩和、これだけではなくて、船員に関する社会的規制も見直すべき、このようにも考えておりますけれども、今法改正における社会的規制についての取り組み、これについてお伺いをしたいと思います。
○鷲頭政府参考人 先生おっしゃられましたとおり、内航海運活性化のためには、技術革新の進展とか経済社会情勢の変化に対応した安全運航の確保とか船員の労働保護を前提とした社会的規制の見直しを行うことも必要でございます。
今回の法改正におきましては、船員の労働時間規制の弾力化などのための船員法の改正と、船員派遣事業の制度を制度化するための船員職業安定法の改正を盛り込んでおります。
○高木(陽)委員 続きまして、内航海運の活性化というのは、モーダルシフトの促進、また、我が国の産業競争力の向上、これに大いに寄与することだと思うんですね。その上で、そのための取り組みを進めるということは非常に重要でございますけれども、このような事業規制の緩和、または船員の社会的規制の見直し、こういうものを通じた競争促進のほかに、例えば新技術の開発などの船舶のハード面からの取り組み、こういったさまざまな取り組みもあわせて行う必要もあると思うんです。この取り組みについて、状況はどうなっているのか伺いたいと思います。
○鷲頭政府参考人 私ども、新技術の開発など、さまざまな取り組みをあわせて行ってきております。
昨年十二月に交通政策審議会から答申をいただきまして、その答申に沿ってやっているわけですが、具体的には、今回の法律改正のほかに、一つは、先ほどもちょっと御説明申し上げましたスーパーエコシップの技術開発を行っております。
それからもう一つは、鉄道・運輸機構というところの船舶共有建造制度という制度がございますが、その中で、モーダルシフトに資するローロー船とか、CO2の排出量が一般の船舶と比較して大幅に削減されるような船舶を事業者の皆さんが共有建造制度を使って利用する場合に、機構に対して支払う船舶使用料の一部を免除するというようなことによって、環境に優しい効率的な船の建造の促進を図るというようなこともしております。
それから、近海の区域、まあ遠い方の区域で、そのうち沿岸に近い一定区域を限定近海区域というふうに新たに設定いたしまして、そういう区域における船舶職員の配乗基準の軽減等、船員の乗り組み体制の見直しといったようなことに取り組んでいるところでございます。
○高木(陽)委員 今、スーパーエコシップの話等もございました。努力されていると思うんです。
ただ、私もこの国土交通委員会に所属し、また、海運関係のいろいろな勉強をさせていただく中で感じるのは、先ほどから申し上げていますように、重要な運送手段である海運なんですけれども、多くの人たちがなかなか理解していない。もう少し言いますと、トラックですとか鉄道ですとかは、一般の国民の方々というのは身近にあるわけですね。ただし、船というのは、港のある町、都市に住んでいる方々は見る機会は多いですけれども、そうじゃない方はなかなか実感しない。
しかしながら、これは先ほどから何度か申し上げていますように、重要な輸送手段である。こういった中での例えば技術の問題等々も含めて、多くの方々、多くの国民にも理解をもっと深めていただきながら、そしてまた、そういうような手段がたくさんあるんですよといったこともしっかりと伝えていかなければいけないのかな、このようにも思います。
さらに質問を続けさせていただきますが、今回の改正というのは、内航海運事業の参入規制の緩和のみならず、労働時間の規制などの社会的規制の見直しを通じて海運の活性化を図ろうとする。しかしながら、海運を支える船員の労働実態、これを見ますと、長時間労働というのが常態化していると伺っております。
このような状況において規制を緩和すると、さらに船員の労働環境が悪化するのではないかとの危惧もあると思うんですけれども、今回の船員関係の法改正において、船員の長時間労働を是正するためにどのような措置を盛り込んでいるか、これを伺いたいと思います。
○鷲頭政府参考人 ちょっとデータで申し上げますと、平成十四年に行いました実態調査によりますと、労働時間が一日八時間以内におさまっている船員というのは全体の三二%にすぎず、残りの六八%の船員が八時間を超える労働をしております。また、そのうち三六%の船員が十時間を超える労働を行っており、一日十四時間を超える長時間労働を行っていた船員も四%存在しております。
こういう船員の過度な長時間労働というのは是正すべきであると考えておりまして、今回の改正にはそのための措置を盛り込んでおります。
具体的には、時間外労働を行わせるためには、原則として労使間で協定を締結しなければならないこととするとともに、一日十四時間、最大でも週七十二時間という総労働時間の上限を設定することとしており、これらの規定によりまして、過度の長時間労働は是正されていくと考えております。
○高木(陽)委員 今回の法改正で労働時間の規制が見直されて船員の長時間労働が是正されていく、こういうことであると思いますけれども、法律を改正しても、実際にその法律が守られなければ船員の労働環境の改善は図られないということですね。
これはどこの会社でもそうなんですけれども、どうしても、法律で決められていながら、その労働時間というのが結構守られていないという実態が多々あると思います。実は、かく言う私も議員になる前は新聞記者をやっておりまして、大臣も記者をやっておられたと思いますが、マスコミの方々の労働時間というのは、八時間なんか守られていないわけですね。長時間は打ち切る。これは霞が関の官僚の方も大半がそうではないかなと思うんです。
ところが、実態と違う形というのが多々あるので、そういった中で、今回、法改正による実効性をどのように担保していくのか、これを伺いたいと思います。
○鷲頭政府参考人 今回の改正におきまして、船員法に基づく監査業務を行っております船員労務官の権限を強化いたします。それで、航海の安全の確保のため緊急の必要があるときは、即時に船舶の航行停止命令などを船員労務官が行うことができるということとしております。例えば、必要な定員が乗り組んでいない船舶を船員労務官が現認したときには、明らかに、長時間労働を行うなど安全上問題があるため、この権限の発動の対象となります。
船員労務官は、現在、全国六十二カ所の事務所に百三十四名が配置されておりますが、監査業務の効率化を図るため、全国の船員労務官が行った監査情報を一元的に管理する船員労務監査情報照会システムを充実するとともに、監査時の指摘事項の多い船舶や前回の監査から長期間間隔があいている船舶に対する重点的な監査等を行うこととしております。
こういうような形で、事後チェック体制により担保をしていきたいと思っております。
○高木(陽)委員 最後の質問に移らせていただきますが、四方を海に囲まれております我が国におきまして、内航海運、また海運全体、この活性化は不可欠であると先ほどから申し上げてまいりました。その意味で、海運を支える船員の確保、これはすごく重要であると考えるんですけれども、その対策についてどのように考えているか、最後に大臣の方にお伺いをしたいと思います。
○石原国務大臣 ただいま高木委員が労働時間に触れまして、労働時間が非常に長くて、それが海員の確保あるいは若年者の魅力ある職場になっているのかという疑義を呈されたと思うんですけれども、やはりこれから、若い方々にとって魅力ある職場になっていないこの内航海運の職場をどう変えていくのか、それがひいては、委員御指摘の、優秀なる船員の皆さんの確保ということにつながるのではないかと考えております。
どんなことかと申しますと、具体的には、海員学校の学生に対する乗船体験や実践的な船員教育の実施に加えまして、今度の法改正によって、労働環境の改善、雇用の安定を図り、魅力ある職場にしていく、こういうことに努めない限り、今船員の方の六割が四十五歳以上だということでございまして、どうも運輸関係はこういう傾向が強いような気がいたしますので、こういうものの是正に努めてまいりたいと考えております。
○高木(陽)委員 きょうは海運関係の法案の質疑ということでございましたけれども、国土交通省、旧運輸省で、陸海空、そういった輸送事業について全般を取り扱っている役所でございます。そういった意味から考えますと、日本の人、物の流れについて責任を負っている。しかも、建設省と一緒になりまして、そのインフラの部分、これの方もしっかりと担うようになったということで、今後さらに、この物流を含めた輸送関係の問題についてトータルに考える。どうしても今まで、海は海、陸は陸、空は空、こういうような形で別個にとらえがちであった部分でございますけれども、こういった問題を含めまして、日本の経済の活性化に大きく役立つ物流の問題でございますので、しっかりと取り組んでいただきたいということを申し上げまして、十八本目、最後の閣法の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○赤羽委員長 穀田恵二君。
○穀田委員 今までずっと議論されてきましたように、内航海運業というのはとても大切な業界です。今後一層その役割が重要になってくるということはるるありました。そこで私は、もう少し内容の中身の問題について突っ込んでみたいと思うんです。
この内航海運業で実際の船舶運航に当たる事業者であるオーナーの構成を見ると、圧倒的に、九七%中小零細業者が占めていまして、零細企業性の極めて強い業界です。
これまで、経営基盤の弱い零細事業者の乱立による船腹過剰で過当競争に陥りやすい業界構造だったため、先ほど来あったように、船腹調整事業や許可制などの規制で業界秩序の維持を図ってきたわけです。この事業は九八年に廃止され、暫定事業に切りかえられている。今回の法改正では、参入基準を許可制から登録制に改めるなど、さらに規制を緩和しようというものです。
そこで、今回の規制緩和で、役割が一層重要となるこの業界の秩序がどのように守られるのか、まず聞いておきたいと思います。
○鷲頭政府参考人 今回の改正は、先ほど先生もおっしゃいましたとおり、参入規制を許可制から登録制に緩和いたしまして、船舶を三隻以上所有していなければ参入が認められなかったのを、一隻以上所有していれば参入を認めることとする、あるいは、オペレーターとオーナーの事業区分を廃止して、オーナーも直接荷主と運送契約を結ぶことができるようにすること等を内容とするものでございます。
その結果、規制緩和によりまして、新規参入の促進や、意欲ある事業者の事業展開の多様化、円滑化が図られることになります。この結果、内航海運の活性化が図られ競争力が向上することにより、内航海運市場の拡大に資することとなると考えておりますし、内航海運業界の閉鎖性が緩和され、内航海運業界の健全な競争秩序が形成されていくものと考えております。
○穀田委員 一般的に言って、市場を活性化することは否定しない。しかし、おっしゃるようにこれで全部うまくいくんだみたいな話は、私はちょっとそうならないと、はっきり言っておきたいと思うんです。
特に九〇年代半ばから相次ぐ規制緩和が行われ、実際に何が起こったかというと、中小企業者の倒産、廃業、そして、この間でいいますと労働者のリストラ、失業。国民の生活自体はずっと悪くなっているというのが今の現実です。
それで、先ほど大臣が、個人支援という問題でありましたし、そういう一連の初期投資がたくさんかかる、その割には中間でずっと長期にわたって金が入ってくる事態はなかなかよくならない、個人補償という問題も、大臣でさえも、その枠組みのところに踏み込んでいく状態が来るかもしれないということを言っていましたけれども、そういうふうにして、危険な一面をある意味では認識されておられる。私は、多くのオーナーたちが、用船料が引き下げられて、このままでは経営が成り立たない事態に直面している、こう発言していることも聞いています。
ここで確認しておきたい。
先ほど、去年ぐらいから用船料が上がっている、こう言いますけれども、九〇年代半ばから、運送料、用船料はどのように推移しているか、お聞きしましょう。
○鷲頭政府参考人 日銀が調査しております企業向けサービス価格推移というものによりますと、景気の低迷だとか船腹過剰という状況から、平成七年との比較のデータでございますが、平成七年を一〇〇としたときの内航海運の運賃水準は、平成十六年一月時点で、貨物船で八四・八、タンカーで七三・七と、この数年で一五%から二五%低下しております。
また、用船料につきましては、これは業界紙の調べでございますが、平成十四年度の用船料の水準は、平成九年度と比較して、貨物船で三%、タンカーで一七%低下しております。
○穀田委員 今あったように、九五年ぐらいに比較してタンカーで二七%ぐらい落ちている。さらに用船料でいいますと、九五年と比較をして八三%、貨物船は九七%。こう来ましたけれども、信金中央金庫の月報によれば、貨物船定期用船料の水準が九一年のピーク時から比べると三〇%程度減少しているという報告もあるんですね。だから、相当落ち込んでいるということがあるんです。
昨年四月、内航船の船主団体で構成される内航船船主連絡協議会が、元請のオペレーターに対して用船料の適正化を要望しています。それによれば、用船料が十年間で四〇%下落し、船の運営が採算割れに追い込まれたということを言っているんですね。そのときに、船主協議会は、もし用船料適正化の要望が受け入れられなければ停船も辞さない覚悟で要求した、ここまで言っています。
だから、こういう経営実態に直面しているということを、長い経過で見ますと、単に、先ほどあったようにツールの問題について何か変えなくちゃならぬというだけじゃなくて、今まで起こってきた事態について、これ自身を改善するということが必要だというのがおわかりいただけると思うんですね。
そこで、先ほど新しい問題について、少し展望を含めて大臣は、展望といいますか将来の問題についても少し言ってはりましたが、私は、その前にやることがあるんじゃないか。例えば今の実態を、先ほど私が言いましたように、単に数字上の七とか三とか減っているというだけじゃなくて、ひどい実態があるということの、別な月報と、さらには船主自体の話を交えてお話ししました。
現行法には、標準運賃、標準貸し渡し料制度、用船料ですね、その制度があり、国土交通大臣が設定できることになっているんです。標準運賃や標準貸し渡し料は今は設定されていない。これまで設定されたことはありますか。
○鷲頭政府参考人 内航海運業法の制定直後、当時の内航海運業界の危機的な状況を背景として標準運賃の設定が強く要請されたことから、運輸審議会への諮問、答申を経て、昭和四十一年、標準運賃を告示しました。その後、諸経費の高騰を踏まえ昭和四十六年に数字が変更されておりまして、昭和五十年に廃止をされておりまして、以降、現在まで設定はされておりません。
標準貸し渡し料については、先生おっしゃられたとおり、これまで設定された実績はございません。
○穀田委員 今お話があったように、結局、七五年まで設定されていたが、それ以後はない。そして、用船料は過去一回も設定されていない。つまり、わざわざ法律に設定できると書きながら、運賃は一回、今はない。用船料は一回も設定されていないんですよ。何のための法律かと言いたいと思うんです。私は、こういう点から、行政としての怠慢ではないかと思っています。
業界や関係者がこぞって運賃や用船料の適正化を求め、要望が上がっている中で、しかも国会でも附帯決議を上げて指摘されてきたにもかかわらず、この規定すら廃止するというのはおかしい。なぜ廃止するのか。一体どうやって運賃、用船料の適正化を図るつもりなのか、お聞きしたいと思います。
○鷲頭政府参考人 お答えいたします。
運賃、用船料の適正化につきましては、マーケットの中において、荷主とオペレーター、あるいはオペレーターとオーナーが互いに公平な立場で自由な商取引を行う、そういう中で運賃、用船料が決まってくるものであるというふうに認識をしております。
国土交通省といたしましては、不公正な取引が行われないように、もし不公正な取引が行われているような実態があれば公正取引委員会にその情報提供をする等、いわゆる公正にビジネスが行われているということについての担保をしていきたいと思っております。
○穀田委員 そういうことを一方で言っておいて、将来のツールなんて話をしているからかみ合わないんですよ。そんなの、自由な競争だと。それはそうなんです。
だけれども、では、皆さん、オーナーの経営の実態は何かということで、これまた信金中金の月報に実は出ているんですけれども、船舶の経費というのはどういうところで占められているかといいますと、船員費、減価償却で約七割を占める。船員費、修繕費、船主店費、減価償却費、これが大体中心ですけれども、七割がそれで占められているんですね。
そのときに用船料が三〇%も引き下げられれば、どこへ行くと思いますか。荷主の側はそんな形でがんとやっている実態がありながら、自由な競争だなんと言っていたら、これは太刀打ちできないんですよ。そうしたらどこに圧迫をするかといったら、当然船員費のコストを削減するしかなくなる。そうすると、これが派遣船員によるコスト削減につながり、実際には、先ほどみんなが言っているように、結局労働強化になってしまう。こういう経過を知りながら平気でそういうことを言っているということ自体が、本当に今の現状について打開しようと思っていないなということを私は言いたいし、この法律にわざわざ「公共の福祉を増進する」などと書いたこと自体が、およそそうならないということを改めて指摘しておきたいと思っています。
そこで、では、何でこういう引き下げが起こるかという問題です。先ほどもありましたように、荷主の圧力だということが出てきました。やはり、物流コストの削減を、はっきり言えば身勝手に推し進めているということに私は起因していると思うんです。この削減要求を拒もうと思ったら、さっき言ったように取引停止も覚悟しなければならないというのがピラミッドの関係だし、そして、強い圧力のもとで受けているオーナーの側なんだということはもう既に明らかになってきました。
ここで、先ほども同僚議員も質問していましたが、もう少し私は突っ込んで、今回、荷主と船主が直接契約できるようにするようだが、こうした荷主によるコスト削減圧力に対してはどのような対応ができるのか、もう一度公正取引委員会に聞いておきたいと思います。
○山木政府参考人 お答えいたします。
荷主と物流業者との取引につきましては、基本的に取引の合意によって運賃等が形成されるものでございますけれども、運賃等につきまして不当に買いたたくという行為がございますれば、先ほど御説明いたしました特殊指定のルールに基づきまして、独占禁止法に違反するということでございます。
この場合には、通常支払われる対価に比べて著しく低い代金を不当に定めるということでございまして、著しく低い額を不当に定める、やり方が問題である、そういう行為が対象になるわけでございます。
○穀田委員 その後ろの方も大事なんですね。前の方はそのとおりなんです。後ろの方にこう書いているんです。もう時間がないから言っておくけれども、「取引実態を踏まえ、供給に要する費用、実勢運賃等の状況を勘案しつつ、迅速かつ実効性のある規制について検討していく。」これでいいですよね。はいと言ってくれればいいです。(山木政府参考人「はい」と呼ぶ)
だから、ここなんですよ。問題は、このときに、今お話があった不公正な取引の方法の告示についてということで、公正取引委員会は二月二十七日に告示しています。そういうものをやるときに、公聴会における意見というのを聞いているんですよね。やっているんですよ。
その中でありますように、今私が後段で述べた「供給に要する費用、実勢運賃等の状況を勘案しつつ、」とあるけれども、その通常支払われる代金には消費税や社会保険料、賃金等の不可欠な社会的コストが当然含まれていると思うが、その点はどうですか。
○山木政府参考人 不当に低いということにつきましては、その判断に当たりましては、コストそれから実勢運賃の状況等を総合的に判断するわけでございます。コストの中にもいろいろございますので、先生おっしゃるようなコストも含めて、総合的にコストの状況を見るということになろうかと思います。
いずれにいたしましても、実態を踏まえまして私どもとしては対応させていただきたいと考えております。
○穀田委員 ここは大事でして、その公聴会における意見ということで、今お話がありましたように、私がやったのは、買いたたきの規定における通常支払われる代金というものについては消費税だとか社会保険料だとか賃金等だとか、必要不可欠な社会コストが含まれることを明確にし、そういうものも含めて勘案してやるということが大事なんです。
では、最後ですけれども、国交省として独自の対策がどうなっているか、改めて聞きたい。
適正な運賃そして用船料を考えるときに、最低限の指標として船員費をきちんと確保することが最も重要だと私は考えます。下請振興法の振興基準には次のように書いています。労務費等の要素を考慮した合理的な算定方式に基づき、中小企業の適正な利益を含み、労働時間短縮等労働条件の改善が可能となるよう、下請と親事業者が協議して決定するとある。
ですから、今まで聞いた議論でおわかりのように、国交省として通達できちんと示すことによってこういう問題について保障していくということが大事だと思うんです。そこをどうお考えなのかだけ最後お聞きして、質問を終わりたいと思います。
○鷲頭政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、市場の中において、荷主とオペレーター、あるいはオペレーターとオーナーが公平な立場で自由な商取引を行う、そういう環境をつくるというのが私どもの使命だと思っておりまして、そういう意味では、先生の御質問に対するお答えとしては、例えば、荷主懇談会といったような場がございますので、そういうところを活用して、不公正な取引がなされないように荷主企業等に要請するといったような形により、その適正化を図ってまいりたいと考えております。
○穀田委員 公平な立場になるようというのは、なかなかならないといって認めているんじゃないですか。ヒエラルキー、こうなっている。しかも荷主が圧倒的に強いと。だから、そういう問題をきちんと通達して下知せなあかんよと言っているわけじゃないですか。そういうことでないと守られない実態なんですよ。
だって、この間ずっと下がっているんですよ。そのときに、大臣おっしゃるように、個人補償などという遠い先の話をしているんじゃなくて、現実の用船料その他について下がってきている、それから労働者の賃金についても下がってくるような事態、こういうものがあるということについて、きちんと歯どめをかけながらやることによって初めて展望できるんだということを言っているんです。
そういう力の差があるということをお互いに認めながらやっているわけですから、そこは心してやってくれなければ、そういう程度の話ではだめですよということだけ私は言っておきたいと思います。
終わります。
○赤羽委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○赤羽委員長 これより討論に入ります。
討論の申し出がありますので、これを許します。穀田恵二君。
○穀田委員 日本共産党を代表して、反対討論を行います。
反対理由の第一は、運賃、用船料の適正化の保証のないまま、標準運賃、標準貸し渡し料制度を廃止するなど規制緩和することは、中小内航海運事業者の経営を一層脅かし、内航海運の振興に逆行するものであるからです。
中小事業者の経営を守るために今求められているのは、大企業である荷主の過度のコスト削減要請など、身勝手な行動を規制することです。ことし四月から内航海運事業にも適用された改正下請二法及び独占禁止法の特殊指定を活用し、荷主などの不公正取引を規制することが求められています。
しかし、本法案は、標準運賃制度などを廃止し、事業参入を許可制から登録制にするなど、一連の規制や制度を廃止するものであります。これでは、中小零細企業を犠牲にする荷主などの身勝手な企業行動を野放しにすることにしかなりません。
第二の理由は、労働力の流動化の名のもとで、労働者派遣事業の対象を船員まで広げて、雇用不安を拡大し、労働条件を悪化させるからであります。
戦前、賃金をピンはねする人貸し業が横行し、その苦い教訓から、企業が労働者を直接雇用することが原則になりました。この観点から、船員供給事業も原則禁止とされました。船員派遣事業は、本来違法である船員供給事業の一形態です。これを解禁することが、船員の権利と労働条件の向上に役立つはずがありません。
以上、反対する理由を申し上げまして、討論とします。
○赤羽委員長 これにて討論は終局いたしました。
―――――――――――――
○赤羽委員長 これより採決に入ります。
海上運送事業の活性化のための船員法等の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○赤羽委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
―――――――――――――
○赤羽委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、衛藤征士郎君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者より趣旨の説明を聴取いたします。望月義夫君。
○望月委員 ただいま議題となりました海上運送事業の活性化のための船員法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
案文はお手元に配付してありますが、その内容につきましては、既に質疑の過程において委員各位におかれましては十分御承知のところでありますので、この際、案文の朗読をもって趣旨の説明にかえることといたします。
海上運送事業の活性化のための船員法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺憾なきを期すべきである。
一 基幹的輸送モードである内航海運の活性化を図るとともにその一層の健全化に資するため、内航海運暫定措置事業を今後とも継続して円滑かつ着実に実施すること。
二 内航海運における船員の労働条件及び労働環境の維持・向上並びに航行の安全の確保を図りつつ、内航海運業の健全化を促進するため、運賃・用船料の適正化に係る環境整備に努めること。特に、荷主の優越的地位の濫用を防止するため、公正取引委員会と国土交通省との間で積極的な連携を図ること。
三 船員の恒常的な長時間労働を是正するため、船員労働の特殊性等を踏まえつつ、船員の「労働時間」の定義及び船舶の安全航行の確保のための、いわゆる「安全臨時労働」の内容について、それぞれ明確化を図るとともに、最長労働時間での労働が常態化することのないよう、関係当事者の意見を十分聴取して四週間又は一カ月当たりの労働時間の上限を設定すること。
四 雇入契約の届出を受けた際には、航行の安全を確保するための措置や船員に対する労働条件の明示が確実になされているかどうかなどについて十分な確認を行うこと。
五 内航貨物船の定員規制に関し、一日八時間、週平均四十時間という労働時間規制の原則を前提とした「標準定員」が確保されるよう特段の配慮を行うこと。
六 船員法等が確実に遵守されるよう、情報照会システムの活用及びポイント付加制の本格運用を急ぐことなど船員労務監査業務の充実を図ること。
また、船員の労働条件・労働環境に関する事後チェック体制の確立と実行を図ること。
七 常用雇用型船員派遣事業の導入に当たっては、派遣船員の同意を前提としつつ適正な運営が行われるよう、事業の許可及び就業に際してのチェックを厳正に実施すること。
以上であります。
委員各位の御賛同をよろしくお願いいたします。
○赤羽委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○赤羽委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
この際、国土交通大臣から発言を求められておりますので、これを許します。国土交通大臣石原伸晃君。
○石原国務大臣 海上運送事業の活性化のための船員法等の一部を改正する法律案につきましては、本委員会におかれまして熱心な御討議をいただき、ただいま可決されましたことを深く感謝申し上げます。
今後、審議中における委員各位の御高見や、ただいまの附帯決議において提起されました内航海運暫定措置事業の円滑かつ着実な実施、船員の労働環境の改善等につきましては、その趣旨を十分尊重してまいる所存でございます。
ここに、委員長初め理事、委員各位の御指導、御協力に対し深く感謝の意を表し、ごあいさつといたします。
どうもありがとうございました。
―――――――――――――
○赤羽委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○赤羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
〔報告書は附録に掲載〕
―――――――――――――
○赤羽委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後三時四十一分散会