衆議院

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第4号 平成17年3月18日(金曜日)

会議録本文へ
平成十七年三月十八日(金曜日)

    午前十時一分開議

 出席委員

   委員長 橘 康太郎君

   理事 衛藤征士郎君 理事 萩山 教嚴君

   理事 望月 義夫君 理事 山口 泰明君

   理事 阿久津幸彦君 理事 金田 誠一君

   理事 土肥 隆一君 理事 赤羽 一嘉君

      岩崎 忠夫君    江崎 鐵磨君

      木村 隆秀君    岸田 文雄君

      河本 三郎君    佐藤  勉君

      櫻田 義孝君    菅原 一秀君

      高木  毅君    竹下  亘君

      武田 良太君    谷  公一君

      中馬 弘毅君    中野 正志君

      二階 俊博君    葉梨 康弘君

      林  幹雄君    古川 禎久君

      保坂  武君    松島みどり君

      森田  一君    菅  直人君

      下条 みつ君    高木 義明君

      玉置 一弥君    樽井 良和君

      中川  治君    長安  豊君

      伴野  豊君    松崎 哲久君

      三日月大造君    室井 邦彦君

      和田 隆志君    若井 康彦君

      若泉 征三君    石田 祝稔君

      佐藤 茂樹君    穀田 恵二君

    …………………………………

   国土交通大臣       北側 一雄君

   国土交通大臣政務官    中野 正志君

   国土交通大臣政務官    岩崎 忠夫君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房長) 峰久 幸義君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長)            丸山  博君

   国土交通委員会専門員   亀井 為幸君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十八日

 辞任         補欠選任

  江藤  拓君     谷  公一君

  河本 三郎君     佐藤  勉君

  寺田  稔君     岸田 文雄君

  二階 俊博君     竹下  亘君

  松野 博一君     松島みどり君

  谷口 隆義君     石田 祝稔君

同日

 辞任         補欠選任

  岸田 文雄君     寺田  稔君

  佐藤  勉君     河本 三郎君

  竹下  亘君     二階 俊博君

  谷  公一君     江藤  拓君

  松島みどり君     松野 博一君

  石田 祝稔君     谷口 隆義君

    ―――――――――――――

三月十八日

 公共工事の品質確保の促進に関する法律案(古賀誠君外七名提出、第百六十一回国会衆法第三号)

は委員会の許可を得て撤回された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 公共工事の品質確保の促進に関する法律案(古賀誠君外七名提出、第百六十一回国会衆法第三号)の撤回許可に関する件

 国土交通行政の基本施策に関する件

 公共工事の品質確保の促進に関する法律案起草の件

 半島振興法の一部を改正する法律案起草の件

 公共工事の品質確保の促進に関する件


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     ――――◇―――――

橘委員長 これより会議を開きます。

 国土交通行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、新潟県中越地震による被害状況等調査のため、去る三月九日、新潟県に視察を行いましたので、参加委員より報告を聴取いたします。衛藤征士郎君。

衛藤(征)委員 去る九日に、新潟県中越地震による被害状況等調査を行いました。

 この際、視察委員を代表して、その概要を私から御報告申し上げます。

 当日の視察委員は、委員長橘康太郎君、理事萩山教嚴君、土肥隆一君、赤羽一嘉君、委員樽井良和君、穀田恵二君、そして私、衛藤征士郎の七名であります。

 御承知のように、新潟県中越地震は、昨年の十月二十三日午後五時五十六分ごろに、新潟県中越地方を震源とするマグニチュード六・八の地震が発生したものであり、新潟県川口町では阪神・淡路大震災以来の最大震度七が、小千谷市、山古志村等では最大震度六強が観測されました。

 本震から二カ月以上たった昨年の十二月二十八日に震度五弱の余震が起きる等の活発な余震活動は、地域住民に大きな不安を与え、地震によるショック、避難生活のストレス及び過労等が原因となり、多数の人的被害が生じました。

 また、土砂災害や雪害による家屋の全半壊といった住家被害、関越道や国道十七号を初めとした道路の損壊、上越新幹線の脱線、下水道、公園等の都市施設の損壊及びライフラインの供給停止等により、住民の生活や地域経済に甚大な被害が生じました。

 被害状況は、二月二十三日現在で、人的被害が、死者四十名、負傷者四千六百六十一名、住家被害が、全壊二千八百二棟、半壊一万一千九百七十一棟、一部損壊九万四千百三十棟となっており、本震発生後四カ月を経過した現在も、山古志村等の七百二十世帯、二千二百七十九名に対し避難指示が出されております。

 今回の視察は、被災された方々の生活の安定と再建が一日も早く図られるよう支援策等を検討するために、被災現地に赴き、被害状況並びに復旧事業の進捗状況について調査することが必要であるとの考えに基づき実施したものであります。

 それでは、調査の概要について御報告を申し上げます。

 視察委員は、新潟県長岡市に到着した後、国土交通省及び新潟県から、芋川河道閉塞対策、道路の復旧状況と復旧方針及び雪害の状況について説明を聴取いたしました。委員からは、地震発生時からの人的支援の状況、復旧のために必要とする費用の総額及び復旧作業への国の迅速な対応と支援に対する評価について発言があり、意見交換がなされました。

 引き続き、妙見堰管理支所の庁舎周辺破損及び鉄塔倒壊等の被災箇所を視察いたしました。

 その後、新潟県、小千谷市、山古志村及び川口町の関係者と、雪害対策の現状及び特別交付税等の地方財政措置と国土交通省の補助金のあり方等について意見交換を行った後、それぞれの被災地に赴きました。

 まず、小千谷市では、仮設住宅を訪問し、耐雪性と耐寒性に配慮した仮設住宅の仕様及び除雪作業の状況等について意見交換を行いました。

 仮設住宅については、最も早いもので昨年の十一月二十四日から入居が始まっておりますが、小千谷市では十七カ所八百七十戸、県全体で六十四カ所三千四百六十戸が用意され、入居配置をコミュニティー単位とすること等により、集落自治の維持及び地域社会の再生と復興に配慮しているところでありました。

 次に、山古志村では、屋根雪対策及び村の復旧と復興に向けた取り組みについて説明を聴取し、今後の融雪対策等について意見交換を行いました。

 今回の地震では、山古志村を中心として約三千八百カ所の地すべりが発生し、道路が寸断されたこと等により、地震発生直後には被災地全体で六十一の集落が孤立し、緊急輸送路の確保や生活道路の復旧の優先的な取り組みがなされてきました。

 しかし、山古志村の全村民がヘリコプターで離村してから、いまだに帰村できない状況が続いております。村民からは、早急な自宅での居住や自宅の修理等を希望する声が多く、村では住宅の倒壊やアクセス道路の雪崩を防止するため、自衛隊等の協力のもと六回の屋根雪の除雪作業を行っております。私どもの現地視察中にも余震があり、約三メートルもの積雪の融雪期において、融雪水が地震によるクラックにしみ込むこと等による二次災害を防止するための緊急措置及び早急な復旧工事を実施する必要性を実感いたしました。

 次に、川口町では、住宅倒壊等被災状況及び消流雪用水導入事業を視察いたしました。

 雪国の住家は頑強と言われておりますが、川口町を初め震度六弱以上を観測した地域では、多数の家屋が倒壊しておりますとともに、十九年ぶりの記録的な豪雪による倒壊家屋が県全体で百四十二棟あり、今後も増加する危険性が高まっている等、家屋被害は深刻であります。県及び市町村は豪雪対策本部を設置し、雪崩等の危険箇所の点検、生活道路の除排雪及び雪おろし作業時の事故防止等の対策を行っております。また、川口町の市街地を流れ、雪捨て場となる中小河川に消流雪用水導入施設が整備されておりまして、円滑な除雪作業ができるように運用されておりました。

 今回の視察を通じまして、全国有数の地すべり多発地域直近で地震が発生したことにより、中山間地での斜面災害が甚大であったこと及び記録的な豪雪となった被災地の融雪期を控え、早急に二次災害の防止を図ることが必要であることから、家屋、建築物の迅速な雪害対策、公共施設の復旧と復興のための迅速な取り組み及び被災した住民と市町村の負担軽減に資するため、国からの地震災害関連の補助金と雪害対策の補助金等の活用策を検討する必要性を実感いたしました。

 最後に、私どもの調査に御協力をいただきました関係者の皆様方に感謝の意を表しまして、報告といたします。

 以上であります。

    ―――――――――――――

橘委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として国土交通省大臣官房長峰久幸義君及び総合政策局長丸山博君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

橘委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

橘委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。萩山教嚴君。

萩山委員 皆さんおはようございます。

 この委員会に、今、公共工事の品質確保の促進に関する法律案が議員立法で提出されております。それを受けて、国土交通省はこの対応について今後どうなされるのか、お伺いいたしたいと存じます。

 我が国は、かつて経験したことのない少子高齢化を迎えております。将来にわたって、国民が安全で、そしてまた安心して生活できる国土づくりを進めなければなりません。加えて、我が国は諸外国と比べて地震や台風も非常に多い国であります。毎年のように災害が発生しております。今も衛藤筆頭理事からの御報告がございました。こうした日本の国に対して、公共工事は、災害復旧とあわせて、どのように国民の生命財産を守る社会資本を整備していくのか。公共工事についての品質を確実に確保していくということは必要不可欠であります。

 一方、現在の公共事業を取り巻く状況というのは極めて厳しいものがあります。建設投資は官民ともに大幅に減少いたしておりますのは事実であります。現況はピーク時の六割を切ったとも言われております。

 このような状況の中で、いわゆるダンピングがなされたり、非常に低い価格で入札が横行いたしております。都道府県発注の工事は、一割以上がいわゆる低入札となっておることも当局は御存じだろうと思います。加えて、最低制限価格を事前に公表している多くの自治体もまた、最低制限価格と同じ価格で多くの者が入札し、だれに落札するのかわからずに、くじ引きをするといったナンセンスなことも行われております。

 このような状況の中で、発注者がきちんと監督や検査を行っていれば一定の品質は確保されるのでしょうか。驚くことに、地方公共団体では技術者を全く抱えていないという業者もいるわけであります。技術力を持っているか否かということは審査の対象にもなることでありましょうし、入札を行うケースもまた、しないまま行われていることが多いと聞かされております。このような状態を放置するということは、まことに我が国にとって不幸なことであります。

 低入札がこのまま横行すれば、手抜き工事、下請への不当なしわ寄せ、あるいは下請に対して金を払わない、こういった現況が出てくる。あるいはまた、くじ引きで、技術力がなくても運が強ければよいというような、運否天賦に任せるような入札工事が行われたのでは、とてもじゃないが、公共事業は、国家の財産としてきちっとした価格でもって立派な工事をすることはできないと私たちは思います。

 将来、我々は、公共工事の品質確保を怠った場合、安心して車も運転できないし、河川の堤防が決壊、はんらんしたら、それこそ大変なことになります。国民の生命財産を守るためにも、今度出された議員立法は大変すばらしいものだと私は考えております。このことについて、当局はどのようにお考えになっているのかもお聞きしなきゃなりません。

 また、公共工事の品質確保のためにも、技術の研さんに励み、技術者の導入、そしてまた技術者がこの会社を将来発展させるというような因果関係を持っておるわけでありますから、私たちは、そういった仕組みをもっと国土交通省が指導し、監督していく必要があるのではないか。また、最近、大手建設業者、世界に通用するような技術力を持っているわけであります。その技術力を存分に発揮できる場を提供していくことも、これまた欠かせない事実であります。

 そこで、国土交通省にお尋ねいたしますが、国土交通省は発注者の中でも先覚者としての立場にあり、各省庁にまたがってこの分野での中心的な役割を担っておられます。公共工事の品質確保に向けてさまざまな施策が取り組まれておりますけれども、現在の取り組み状況について、時間がございませんので端的にお答え願えれば幸いかと存じます。

    〔委員長退席、望月委員長代理着席〕

峰久政府参考人 御指摘ありましたように、公共工事は、長年にわたって、国民生活でありますとかあるいは社会経済活動の基盤となるものでございます。その品質確保は極めて重要だというふうに思っております。

 その際、発注者による監督検査の適切な実施に加えまして、入札、契約の段階で地域の中小を初めとした建設業者の方々の品質確保に対するまじめな努力、こういうものが適切に評価されることが重要だと思います。あわせて、建設業界におかれまして技術力が目覚ましく発展していっている、こういうことを踏まえまして、技術提案の活用などを通じて企業の技術力が遺憾なく発揮できるようにすることが重要だと思っております。

 国土交通省におきましては、ペーパーカンパニー等の不良不適格業者を排除し、工事の内容や規模に応じた適切な技術力を持つ企業を選定するため、企業あるいは配置予定の技術者につきまして、過去の工事の施工経験、工事成績について審査しているところでございます。

 また、民間のすぐれた技術力を活用するため、価格と品質両面にすぐれた調達を行うことができる総合評価制度を積極的に行っているところでございます。

 今後とも、透明性、公正性を確保しつつ、またコスト縮減とあわせまして、品質確保に積極的に取り組んでまいりたいと思います。

    〔望月委員長代理退席、委員長着席〕

萩山委員 大変ありがとうございました。

 次に移らせていただきますが、一番心配しているのは地方公共団体の発注なのであります。先ほども申しましたとおり、地方公共団体というのは、とりわけ市町村が多いわけであります。発注体制が極めて脆弱であります。公共工事の品質が確保されているかどうかということを懸念いたしておりますが、入札、契約の公正性や透明性の確保が本当に図られているのかということは、私たちは疑問を抱かなくてはなりません。

 繰り返しになりますが、地方公共団体においては、入札に参加する者がしっかりとした技術力を持っているのかどうかということも懸念の材料であります。あるいはまた、そういうところからくじ引きが横行しているのではないかなというふうに見られます。その結果、技術力の乏しい業者やペーパーカンパニーで業者が工事を落札し、一括丸投げということになっておるわけでありますけれども、そういったことは近年は見られなくなってきたであろうと思いますが、いまだに横行していることを聞かされております。

 下請いじめ、これはあってはなりません。零細企業、中小企業によって育てられ、そしてささやかに生活している零細企業に資金をカットしたり、あるいは下請の資金の支払いを延期したり、あるいはしなかったり、経済的な苦しみを味わっているのがほとんどの零細企業ではないかなというふうに言っても過言ではありません。

 こうした状況を打開するために、今度の議員立法の法案が提出されたものと私は思います。どうぞ、国土交通省におかれましては、各官庁の公共事業のすべての兄貴分として、ここはしっかり腹に据えて、立派な入札行政、公共事業が推進されんことを私は希望いたしておるものであります。

 公共団体の現状を踏まえて、品質確保、入札、契約、国土交通省は今後どのようにお取り組みになっていくのか。最後の質問として、ここにお願いを申し上げておきたいと存じます。

丸山政府参考人 萩山先生から、地方公共団体の発注についての懸念の質問をいただきました。

 公共工事の発注の三分の二強は地方公共団体が占めております。一方で、小規模な市町村などには全く技術系の職員がいないというようなところもございまして、適切な企業評価が行われていない、発注が非常に心配だ、こういうことがあるということは私ども承知しております。

 高い技術を持った業者が評価されて、それが地方でも育成されていくということは、品質を確保するという観点からも大事でございますし、なおかつ地方の活性化にもつながることでございますので、そういう意味でも、地方公共団体の入札契約制度を改善して、適切な企業評価をやっていくということが非常に重要であると私ども思っております。

 そこで、国土交通省としましては、評価がひとりでできないような小さいところは、外部の機関の活用も図って企業評価をして、それで発注するというようなことを、総務省と連携いたしまして地方公共団体に要請を行っておるところでございます。また、工事成績のデータベースをつくるということで、これを皆さんに利用していただいて、発注、企業評価をしやすくするというようなことも行っております。それから、国、地方を通じまして、発注者間の協力連携を強めるということも非常に大事なことだと思っておりまして、そこも積極的にやっておるところでございます。

 今申し上げましたようなことを通じまして、地方公共団体におきましても公共工事の品質確保が図られるように、入札契約制度の改善に努めてまいりたいというふうに思っております。

萩山委員 ありがとうございました。

 受注者の中で、まじめに努力してこつこつとやっている業者がどうかひとつ報われるような行政をしていただきたい、これが最後の私のこの法案に対するお願いでございます。御清聴ありがとうございました。

橘委員長 玉置一弥君。

玉置委員 昨年来、公共事業の品質確保についての法案をつくる上に当たりまして、いろいろな方々の御協力をいただいて、ようやくまとまってまいりました。そういう中で、今までの問題点、たくさん我々は危惧するところがあるわけですが、その一部を確認したいというふうに思います。

 公共事業そのものは、全体として、だんだん額的にも減ってまいっております。片方では、社会資本整備、そして地域経済対策あるいはある意味での景気対策ということで、まだまだ必要な部分があるかと思いますが、そういう取り合いになってきている業者間の状況を見ておりましても、この法案に盛り込まれておりますように、果たして価格だけの競争が行き過ぎて品質が守られているかどうかという心配も出てきております。

 そういうことを踏まえて、いろいろな項目を各党とともに詰めてまいりました。その中で、特に今業界の中でいろいろな話が聞こえてまいりますのは、公共事業は、まず第一次の支払い側、いわゆる国や地方公共団体あるいは各省になりますが、そういう人たちがたしか現金で払っているはずなんですけれども、末端に行くと全部手形になっているというようなことがありまして、ほとんどそうなんですが、これに対して、本来、行政からの指導というのはなかったのかどうかというのと、今現在どういう状況に置かれているのかというのをまずお聞きしたいと思います。

丸山政府参考人 元請業者から下請業者に対する代金の支払いについて、どういうことを国土交通省としてしているかということでございますが、私ども、資金需要が逼迫いたします八月と十二月に通達を出しまして、元請業者から下請業者に対する支払いが適切に行われるように指導をしておるところでございます。

 それから、毎年、下請代金の支払いの実態調査を行っております。元請業者のうち五千社を対象といたしまして、今先生お話しになりましたような支払いまでの期間、支払いの方法でございますとか、それから手形の期間などにつきまして実態調査を行っておるところでございます。

 平成十六年度に行いました実態調査の一端をお話しいたしますと、元請業者が発注者から支払いを受けてから下請業者に支払うまでの期間、一カ月以内が望ましいというふうに私ども申し上げているわけでございますが、九四・三%は一カ月以内に支払っているということでございます。

 それから、下請業者に労務費相当分は現金で払え、こういうことを言っているわけでございますが、全額現金で支払っている割合が九三・三%、それから、手形の期間は最長でも百二十日以内にしなさい、こういうことを言っているわけでございますが、下請業者への手形の期間が百二十日以内である割合は九四・五%となっておるところでございます。

玉置委員 今、数字を聞いてびっくりしたんですが、我々が聞いているのと全然違うんですね。業界ではほとんど一〇〇%、労務費といわず、受注額の大部分が手形である。それも下へ行くほど日数が長くなって、百八十日というのは当たり前で、例えば検収が終わって支払いがされるまで二カ月あるというのが普通だという話を聞いているんですね。

 ですから、調査で聞き取りだけだと思うんですけれども、私は、品質確保というのは発注者の責任だと思うんですね。発注者が品質を確保して値段を決めて、そしてちゃんとしたところに行っているかどうか、ちゃんとした技術者が対応しているかどうかということを確認する、これは民間の企業では当たり前でございまして、私も発注業務を長年やったことがありますけれども、どういう業者を使うかというのは、単なる価格だけではなくて、そこの技術力と、そして最終的には補修、保全を含めた体力、こういう確認をしていかなければいけないんですが、今丸山局長から答弁ございました数字は、我々が想像しているのとははるかに違うんです。

 実態の調査を実際にやられて、まあ本来でありますと下請代金遅延防止法とかいろいろな法律はあるのですし、発注者が品質確保のために、いわゆる抜き取り検査的なものも必要だと思うんですけれども、そういう今の法律に絡めた行為と、それから品質確保のための抜き取り検査についてはどういう状況でやられているのか、もしわかればお答えいただきたいと思います。

丸山政府参考人 実態調査が甘いのではないか、こういうお尋ねであろうかと思いますが、どういう形でやっているかと申しますと、毎年七月の上旬に、五千社に対しまして実態調査票を発送いたします。そのうち、私はまじめにやっていますという業者四百社に対しまして、今度は、我々は反面調査と言っておりますが、四百社に対しまして下請各三社から、本当に、元請が言っているように、あなた払ってもらっていますか、こういう調査を実施しておりまして、そのうち三百社については立入調査を実施しているということでございます。

 単に聞き取りだけではなくて、下請の方から、ある意味で裏をとっているということを御理解いただければと思います。

玉置委員 裏は私もとってきましたけれども、全然違うんですね。というのは、まともに答えていないのを、またそれも、こんな数字を当たり前として出してくる行政自体が非常に怠慢だと思うんですね。

 ある意味で、私たちから見ると公共事業というのは、一〇〇%現金で払っておられて、おまけに四〇%は前受け金で払う、そして残り六〇はまたそれもキャッシュで払うということなんですけれども、実際、二次下請、三次下請あるいは建設資材とかに支払われているのは、ほとんど現金がないんですね。その実態を把握していないこと自体、国土交通省並びに各公共団体の問題じゃないかと思うんですが、これはもう一回再調査していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

丸山政府参考人 私ども、実態調査を毎年やらせていただいておるわけでございますが、今先生の御指摘も踏まえまして、より実態調査が適切になるように努めてまいりたいと思っております。

玉置委員 この品質確保法案の三条の六項というところに「公共工事の品質確保に当たっては、公共工事の発注者及び受注者が各々の対等な立場における合意に基づいて公正な契約を締結し、信義に従って誠実にこれを履行するように配慮されなければならない。」こういう項目がありまして、この精神からいきますと、対等の立場なんですよね。対等な立場というのは、現金でもらったものを二百日の手形で渡すというのは、これは対等じゃないと思うんですよね。下請保護という法律は結構ありまして、そういう精神からいくと全く逸脱をしている。これが建設業界ではまだ残っているわけですね、横行しているんです。

 もしこういう法律が今回成立して、やりますと、これに違反することになるんですね。だから、違反する業者は公共事業に対する受注はできないということを、やはり行政の立場としてはっきりと態度を示していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

丸山政府参考人 玉置先生から御指摘いただきましたけれども、建設業の健全な発達を図るという意味で、元請と下請が対等なパートナーシップで関係を確立するということが非常に大事であるということは、私どもも認識しております。

 そこで、私ども、先生から今、不十分ではないかと御指摘をいただいたところではございますが、下請代金の支払い状況についての実態調査でございますとか、それから下請代金の支払いの適正化についての指導を行ってきたところでございます。今後とも、このような措置を使いまして、下請、元請関係の適正化を図ることはもとよりでございますが、さらに、最近、下請セーフティーネット債務保証事業というものもつくりました。この活用も積極的に図ってまいりたいというふうに思っております。

 それから、十七年度の予算案におきましては、先ほど申し上げました実態調査につきましてデータベースを構築いたしました。このデータベースを使うことによりまして、例えば指導履歴でございますとかそういう情報が蓄積されて、効果的に皆さんが使うようになって、指導も効果的に行えるということを私ども期待しております。

 いずれにいたしましても、建設業というのは元請と下請が一体となって、協力して生産活動を行って初めてうまくいくということでございまして、下請、元請関係の適正化というのは一つの大きな課題であるというふうに思っております。そういう意味でも、下請代金の支払いの適正化に今後とも引き続き努めていきたいというふうに思っております。

玉置委員 今回はこういう、要するにどこがどういう仕事をするか、実際に工順表といいますか工程表といいますか、それをもっと的確に把握するということをある程度示唆したような法律にもなるわけです。ある面でいきますと、丸投げ禁止とか、それから暴力団の介入、いわゆる窓口として飛び込んできて、ここだけよこせとか、あるいは全額受けてやるからおまえらはこの仕事をしろとか、関西ではよくあるんですけれども、そういうことのないように配慮していこうという法律にもなるわけですね。ある意味では非常に期待をされているわけです。

 ですから、この法案ができまして、後はやはり我々もフォローしていきたいと思うんですが、まず、そのスタート時点に当たりまして、先ほど言われたような支払い状況が決して正しいと私は認識をしておりませんので、再調査をしていただいて、スタートして後、一年後とか二年後にもう一回調査をして比較をしたい、こういうふうに思うので、改めて、ことし八月なりあるいは十二月にやられる予定かと思いますが、ちょっと早めていただいて、調査をぜひお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。

丸山政府参考人 実態調査につきましては毎年七月から作業を始めておるわけでございますが、今の先生の御指摘を踏まえて、前倒しでできるかどうかも含めまして、検討させていただきたいと思っております。

玉置委員 終わります。ありがとうございました。

橘委員長 阿久津幸彦君。

阿久津委員 民主党の阿久津幸彦でございます。

 公共工事のあり方全般について質問をさせていただきたいと思います。

 さて、昨年末、臨時国会の終了間際、与党から議員立法という形で、公共工事の品質確保の促進に関する法律案の提案を受けました。政府が課徴金引き上げを柱とする独占禁止法改正案の提出を決めた直後でもあり、野党の立場にある私ども民主党としては、当初、その提案に対して警戒感を抱いたのは事実です。

 しかし、価格のみの競争から技術や品質を含めた競争への転換は世界的な流れであります。実際に、八〇年代から九〇年代にかけて米国が、九〇年代後半からEUがその改革に着手し、競争的交渉方式を導入することで、公共調達における最も価値の高い調達の追求において大きな進歩を遂げることに成功しています。そこで、民主党としても、与党提案の検討に短期間ながら集中的に取り組ませていただきました。

 与党原案を検討させていただく中で、幾つかの懸念を抱きました。例えば、技術提案を受け入れる際、発注者が意図的な業者の選別等に悪用するおそれはないのか、結果的に発注者と受注者の癒着による官製談合を助長しないか、あるいは、技術評価を通じ不良不適格業者が確実に排除される一方、結果として実質的な参入規制が働き、まじめな中小零細企業まで排除されてしまうおそれはないのか、また、そもそも地方自治体による円滑な実施は見込めるのか、技術審査及び評価を確実に行える能力を市町村は備えているのかなどの点であります。

 これらの懸念の解消に向けて、私どもは、官製談合防止の明確化、情報公開の徹底、技術提案審査の際の第三者機関の設置、事業者選定過程等への不服がある場合の苦情処理機関の設置、公共工事における下請、孫請企業への支払いの担保、発注者側の責任の明確化と中間検査など検査の充実、それらの十五項目について与党側に提案し、折衝を重ねてまいりました。その結果、多くの前向きな回答をいただき、私どもの抱いていた懸念も、運用面でのチェックを今後も協議機関を通じて行っていく作業は残されたものの、現時点ではほぼ解消された次第であります。

 一方、私どもは、品確法の研究、協議を重ねる中で、公共工事のあり方全般について、さまざまな改善の必要性を改めて痛感いたしました。そこで、我が党内に公共工事のあり方検討のためのワーキングチームを設置するとともに、よりよい公共工事の実現に向け、品確法の基本方針策定協議と一緒に、公共工事のあり方全般についても今後も与野党で真摯な協議を続けていくことを合意させていただいた次第です。

 そこで、公共工事のあり方全般について、改めて大臣に伺いたいと思います。質問通告はしていないんですけれども、本質的な事項ですので、伺いたいと思います。

 公共工事はだれのために、何の目的であるのか。国土交通大臣に対して大変僣越ではありますが、お伺いしたいと思います。

北側国務大臣 公共工事はだれのためか。これはもちろん国民のため、また将来の世代の国民のために行う社会資本整備がまさしく公共工事であると思います。安全、安心の確保をしていく、また、私どもの生活、また社会経済活動のまさしく基盤をつくるのが社会資本整備でございまして、そのための事業がこの公共事業でございます。あくまでも国民のため、将来の世代のため、その一点を忘れてはならないと思っております。

阿久津委員 私も、第一義的には、納税者である国民のために、公共の財産を築くために公共工事はあるんだというふうに考えております。

 しかし一方で、公共工事にはそのほかにも多様な側面があると言われております。例えば、郷土愛から、できるだけ多くの高額な公共工事を地元に持ってきたい、あるいは、公共工事を含む土木建設関連企業約六十万社、就労者数約六百万人をできるだけ守りたい、公共工事をたくさん行うことで景気対策を図りたい。本質的には納税者である国民のための公共工事であるわけなんですけれども、国土交通分野になれてくればくるほど、こういうことをどうも忘れてしまう傾向にあるのではないかということを私も含めて反省している次第です。

 そこで、国民のための公共工事ということを考えれば、不良不適切業者による手抜き工事、手抜き欠陥工事などは断じて許すことができないし、ペーパーカンパニーによる上下斜めへの丸投げなども許すことができない。

 また、価格とともに、技術力をしっかりと評価し、技術力を競い合うような環境づくりが必要であることは言うまでもないことです。ただし、技術力は価格と違ってなかなか見えにくい一面があると思います。

 だから、間違っても談合、特に発注者と受注者による癒着から成る官製談合には目を光らせなくてはならないというふうに考えますが、談合、特に官製談合の防止に向けてどのような改革が必要と考えるのか、官製談合防止に向けての大臣の決意も込めてお答えいただきたいと思います。

北側国務大臣 いわゆる官製談合、これはあってはならないことであるというふうに思っております。

 価格だけではなくて技術や品質も重視していく必要があるという、その方向性自体は私は大切な方向性であると思います。それは国民にとっても大事な視点であると思います。

 しかしながら一方で、技術、品質という要素を重視していくということは、今委員もおっしゃったように、価格だけですと基準が明確なんですね。ところが、技術や品質というのは、だれがそれを判断するのか、どういう基準で判断するのか、そうしたことが非常に重要になってくるわけでございまして、逆に言いますと、ますます透明性、情報公開、さらには公正らしさというものが求められていくというふうに思うわけでございます。

 技術、品質を重視することは大切、しかし一方で、なお一層、情報公開の徹底、透明性の確保に努めてまいることが重要であるというふうに考えております。

阿久津委員 私も、情報公開の徹底が、談合、特に官製談合の防止に向けて一番大切な事項だというふうに考えております。

 また、入契法では、情報公開のほかにも、第三者機関の有効活用とか、入札における苦情処理についても言及されておりまして、それらをきっちりと実務的にも守っていかなくてはならないというふうに思うんですが、果たして実態面はどうなのか。苦情処理や第三者機関の有効利用について、どのようにお考えでしょうか。

丸山政府参考人 ただいま大臣の方から申し上げましたように、情報公開を徹底して透明化を図るということが非常に大事だということで、私ども、さまざまな情報を各発注者に公表するように入札契約適正化法で求めておるところでございます。

 それで、具体的にどういうことをしておるかということでございますが……(阿久津委員「簡潔で結構です」と呼ぶ)はい。総務省と連携いたしまして、全発注者の公表の状況を実施いたしまして、その調査結果を活用いたしまして、公表を行っていない団体に対して厳しい指導を行っているということでございます。

阿久津委員 一方、先ほど私指摘もしたんですけれども、発注者、特に市町村の技術力向上をしっかりとやっておかないと、結局、市町村が技術力を自分で評価できないために、結果的に官製談合を誘発してしまうということにもつながると思うんですが、国土交通省として、発注者、特に市町村の技術力向上に向けてどのような取り組みをされているのか、お話しいただきたいと思います。

峰久政府参考人 御指摘がありましたように、公共団体、特に市町村の検査体制強化、あるいは技術の評価能力を高めるということは非常に重要でございます。

 今、国土交通省で、各地方公共団体も含めました工事の経験、あるいは我が国土交通省における事業を行った後の工事の成績をとっておりますが、こういうものについてのデータベース化をやっておりまして、こういうデータベース化と同時に総合評価方式もいろいろやっておりますけれども、その事例集を作成する、国土交通省としてはこういう取り組みをやっていることを公共団体にも紹介しているところでございます。

 それから、特に工事監督検査の充実が図られますように、公共団体のことにつきましては、総務省と連名で外部機関の適切な活用等について要請しております。その際、所管の補助金を工事の監督検査の外部委託費として活用できるということも添えまして、外部機関の適切な活用を図るようにと言ってきております。

 いずれにしましても、先ほどのようなデータベースの供用等、発注者間の協力連携を特に行うことによりまして、公共団体の支援に努めてまいりたいと思っております。

阿久津委員 データベース化ももちろん大事なんですけれども、会計法でも指摘されている検査監督が、私は現状として市町村は不十分なんではないかというふうに思っているんですね。特に中間検査をもっともっと確実に行えば、いわゆる手抜き工事みたいなものは事前に防げるというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

峰久政府参考人 御指摘のようなことだろうと思うんですけれども、それに際しまして、先ほどもちょっと申しましたが、検査監督等について外部機関をできるだけ活用するようにということでございまして、そういうことについての指導をしてまいりたいと思います。そういうことで、徐々にではありますけれども検査体制の充実を図っていきたいと思っております。

阿久津委員 市町村自身の技術力向上についても、引き続きぜひ御指導をよろしくお願いしたいというふうに思います。

 それから、先ほど玉置委員の方から下請業者についての話がございましたが、ちょっと大臣の方にも改めてそこのところを確認したいと思います。

 公共工事の下請、孫請に対する対価の支払い、あるいは建設労働者に対する賃金の支払い等が適切に行われるために、国土交通省としてどのように取り組むのか、お答えいただけないでしょうか。

北側国務大臣 こういう建設事業というのは、これはもう官民問わず、元請業者の方々と、そして数多くの下請業者の方々の共同でその事業ができる、成功するものでございます。そういう意味で、元請、下請関係の適正化というのは極めて重要なことである。特に、今委員のおっしゃった、下請代金の支払いがきちんとなされているのかどうかということは非常に大事な要素であると思っております。

 これまでも国土交通省、さまざまな取り組み、先ほども答弁を局長の方からしておりましたが、実態調査等をやってきております。先ほども玉置委員の御指摘もございましたが、改めてその辺の実態調査のあり方も、今までも工夫しているつもりではございますが、さらに、その実態調査の仕方につきましても、またその時期等につきましてもよく検討して、本当にその実態ができるだけ正確にわかるようにしてまいりたいというふうに思っております。

阿久津委員 大臣、この問題は、国土交通省が把握している以上に、実態面はもっともっと深刻だと思うんです。ぜひ、そこのところをよく御理解いただきまして、しっかりとした御指導をお願いしたいというふうに改めてお願いしておきます。

 最後に一点だけ、どうしても気になっている問題についてお答えいただきたいと思うんですが、公共工事のあり方について勉強していく中で、予定価格制度というものについて不思議な違和感を私は抱かざるを得ませんでした。予定価格制度というのは、日本にいる限りは余りに当たり前だというふうに思っていたんですけれども、海外、特に欧米諸国を見ると、予定価格制度、価格帯で若干使っているところはあるようですけれども、予定価格制度をきっちりとした形で定めている国はほとんどないというふうに聞いております。

 そこで、財務省との関係もありますのでお答えにくいというのは重々承知しながら、すぐれた技術提案の活用を進める上で、公共工事の予定価格のあり方についてどのように考えるのか、北側大臣からお答えいただきたいと思います。

北側国務大臣 いい仕事をしていただく必要がある、すばらしい技術を持ったお仕事をしていただく必要がある、そういう意味で品質等を重視していく必要があるということでございまして、そういう意味では、予定価格のあり方につきましても、そうした価格と品質の両面で適切に審査ができるような予定価格を作成することが必要だというふうに思っております。

 幾ら品質にすぐれた提案を行っても、予定価格を少しでも上回っていれば落札できないということだと、民間企業からすぐれた技術提案を得られないということになってしまいます。そういう意味で、透明性とか公正性、これはあくまで確保することが大前提でございますけれども、技術提案の内容について品質と価格の両面で適切に審査した上で、すぐれた提案が採用できるように予定価格を作成する方法の導入が必要ではないかというふうに考えております。

阿久津委員 おっしゃることはわかるんですけれども、私は、本当にフェアな技術的な競争をしていけば、その結果として価格もついてくるのかなと。それによって入札価格が安くなることもあるし、高くなることもあるし。ぜひ、これは今結論を出すという問題ではございませんけれども、この予定価格の問題もタブーとせずに、これからも国土交通委員会の場を通じて議論していただくことをお願い申し上げまして、私からの質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

橘委員長 穀田恵二君。

穀田委員 公共工事の品質確保が必要なことは当然です。現在、入札契約適正化法、公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針などで公共工事の品質確保のための努力は行われています。問題は、その運用にある。それと、品質を低下させる実態、手抜き工事などが発生する要因にメスを入れることが必要だと私は考えます。

 背景の一つに、建設業界の特徴である重層的な構造があります。大手ゼネコンなど元請が下請、孫請労働者等に負担を強いている業界の実態が公然と語られています。元請が下請等にコスト削減を要請し、下請は仕事を確保するために原価割れしてでも受注したり、低コストを補うために孫請にさらに低コストで発注させたり、原材料費や労務費を削ったり、どんどん下にしわ寄せしていく。そして、直接工事を施工する事業者は採算がとれず、作業する労働者は賃金や労働条件が適正に確保されない。このことの改善は急務だ、実際に工事を行う現場での実態に着目して改善をすることが品質確保の重要なポイントだと私は考えます。

 そこで、現状を確かめたい。公共工事設計労務単価は九七年以降どうなっているか、お答えいただきたいと思います。

丸山政府参考人 一九九七年以降の調査対象である五十職種の平均単価、一九九七年度は二万三千二百九十五円でございました。三年後の二〇〇〇年が二万二百二十九円、二〇〇三年が一万八千三百五十六円。二〇〇三年につきましては、対前年度比でマイナス三・九%ということになっております。

穀田委員 労務単価がどんどん下がり続けている、大変な実態です。

 実はそれだけではないんです。実際に支払われている賃金はさらに低い。厚生労働省が発表している屋外労働者職種別賃金調査によると、建設労働者の賃金の推移は、規模が五人から九十九人のところで、一日一人平均現金給与額は一万三千円台を連続していまして、これも下がっています。この比率を考えますと、公共工事設計労務単価の六割から七割で推移している。一万三千円台ですから、当然そうなります。労働組合の調査でも、労務単価の七割から八割だという結果が出ています。そして、平均収入で四十歳代で三百七十八万円という結果も出ています。

 毎年下がり続け、仕事もなくなるような状況に今直面している。直接工事作業に携わる労働者が生活にも事欠く賃金では、いい仕事ができません。ここにきちんとしたメスを入れなければ、本質的な品質確保にはならない。

 そこで、私は今度議論になる公共工事品質確保法提案者に、直接公共工事を施工する事業者の対価及び作業に従事する労働者の賃金、労働時間等の労働条件を適正に確保することの修正提案を行いました。ところが、直接的に発注者に対して労働条件に係る新たな適正義務を課することとなり、発注者にとって過大な責務となってしまうという拒否回答がありました。

 政府は、この点、同じような見解を持っているのか、確かめたいと思います。

峰久政府参考人 発注者として、いろいろな制度的な中で、元請の方とどういう形で対応していくかということについては、当然いろいろ発注者としての責務はあろうと思いますが、元請、下請の関係につきましては、先ほど御答弁がありましたような建設業法あるいはいろいろな賃金の関係の法令に基づいて行われるものである。発注者としても、違法な行為等がありましたら、当然発注者としての指名停止等の措置をやりますけれども、基本的に元請、下請関係は建設業法、あるいは単価の問題等につきましては厚生労働省も含めまして対応すべき問題だというふうに考えております。

穀田委員 全く答えていない、わかっていないと思います。

 つまり私が言っているのは、こういう入札制度にかかわって、いつも結果的に一番、要するにさかのぼって下の方から見ようという提案を私はしているわけですね。それが、今までもこれらの品質確保や入札にかかわる議論のときに必ず附帯決議にまでされた内容を私は入れようと提案した。ところが、発注者にとって過大な責務となってしまうという見解の表明があった。その点いかがかと私は尋ねたんです。

 この予定されている法案にもあるんですが、少し直っていまして、「請負契約の当事者」という書き方をしているんです。だけれども、下請、孫請や労働者への責任が明記されているわけじゃないんです。「各々の対等な立場における」と案文上書かれていても、対等な立場に立てないからこの問題が常に生じてきたわけですね。しかも、発注者は、およそ公共事業として税金で賄われるものであって、末端できちんと適正にやられることに対して責務を果たすのは当たり前だということを私は見解として述べておきたいと思います。

 そこで、全建総連など建設関係労働組合を初め公共事業にかかわる労働者団体などが、全国で、公契約法、条例の制定を目指して運動しています。公契約法は、国や自治体が公共工事や委託事業を民間業者に発注する場合、この事業に働く労働者の賃金を適切に確保させる制度です。

 なぜこれが大事かということは、今述べたとおりです。不景気や不況のもとでの低価格競争、コスト削減が末端の事業者や労働者にしわ寄せされる、賃金や労働条件を削られることで、技術を持っている技能労働者もやめていく、若年労働者の確保や育成もままならない、こういう事態を放置して、品質が確保できるはずはありません。欧米諸国では既に当たり前の制度で、ILOでも一九四九年に公契約における労働条項に関する条約が採択されていまして、今、地方自治体でも意見書がどんどん採択されています。

 大臣に聞きたい。公契約法を政府としても検討すべき時期に来ているのではないでしょうか。

北側国務大臣 このお話は以前から、相当昔からあった議論だというふうに聞いております。我が国では、公契約における労働条項に関する条約、これは現在批准をしておりません。なぜ批准をしておらないかといいますと、民間部門における賃金等の労働条件については、公共工事に係るものであるか否かにかかわらず、その基準が労働基準法等の労働法規で定められておりまして、その範囲内で当事者間の自主的な取り決めにゆだねられているという考え方によるものというふうに認識をしているところでございます。

 建設産業が健全な発展を遂げて、良質な住宅・社会資本整備を担っていくためには、建設労働者の雇用労働条件の改善を図ることが私も当然重要であると認識をしております。今後とも、建設業法等に基づく制度をしっかり運用しながら、また、厚生労働省ともよく連携をとりながら、建設労働者の一層の雇用労働条件の改善に努めてまいりたいと考えております。

穀田委員 ですから、私は一番最初に、労務単価と実際の払われている現状というものを提起したわけですね。そういう現状にあるということが公契約のいわば必要な問題だ、しかも、今の品質確保にとって決定的だということを私は言いたかったわけです。

 私は、今言ったように、末端の業者や労働者への不利益を是正することによって品質を確保する、さかのぼってきちっとやるということが大事だと思うんです。その修正提案が受け入れられなかったことは極めて残念です。この点を抜きにして品質確保がどれほど前進するのか疑問です。なぜなら、コスト削減要請が強まっている今日において、元請による下請や労働者へのしわ寄せが強まって、工事の質の低下が懸念されるからです。

 もう一点、高度な技術提案を求めた場合には予定価格を特別に定める規定を設けている十四条は、大手受注者が有利な高額価格を設定できる可能性があり、賛成できません。

 以上の態度を申し述べて、質問を終わります。

     ――――◇―――――

橘委員長 この際、お諮りいたします。

 第百六十一回国会、古賀誠君外七名提出、公共工事の品質確保の促進に関する法律案につきまして、提出者全員から撤回の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

橘委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

橘委員長 引き続き、国土交通行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 まず、公共工事の品質確保の促進に関する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、理事会等での御協議を願い、お手元に配付してありますとおりの草案が作成されました。

 本起草案の趣旨及び内容につきまして、委員長から御説明申し上げます。

 公共工事は、目的物が使用されて初めてその品質を確認できること、その品質は受注者の技術的能力に負うところが大きいこと等の特性を有しており、調達時点で品質を確認できる物品の購入とは異なることから、公共工事の発注者は、工事の内容に応じて適切な技術的能力を有する者の競争により、契約の相手方を選定する必要があります。

 また、公共工事の品質確保のためには、公共工事を実施する民間企業から、技術提案を求めること等を通じて、その能力を積極的に活用していくことが必要であります。

 本起草案は、こうした認識に基づき、公共工事の品質確保に関し、基本理念を定め、国等の責務を明らかにするとともに、その促進に関する基本的事項を定めようとするもので、以下その主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、公共工事の品質確保に関し、経済性に配慮しつつ価格以外の多様な要素をも考慮し、価格と品質が総合的に優れた内容の契約がなされることにより、公共工事の品質が確保されなければならないこと等の基本理念を定めることとしております。

 第二に、国及び地方公共団体並びに公共工事の発注者及び受注者の責務について規定しております。

 第三に、政府は、公共工事の品質確保の促進に関する施策を総合的に推進するための基本方針を定めるとともに、各省各庁の長、地方公共団体の長等は、基本方針に定めるところに従い、必要な措置を講ずるよう努めなければならないこととしております。

 第四に、発注者は、競争参加者の技術的能力を審査しなければならないこととしております。

 第五に、発注者は、競争参加者から技術提案を求めるよう努め、これを適切に審査し、評価しなければならないこととし、この場合には、中立かつ公正な審査及び評価が行われるよう必要な措置を講ずるものとするほか、技術提案についての改善、高度な技術等の提案を求めた場合における予定価格等について規定しております。

 第六に、発注者は、みずから発注関係事務を適切に実施することが困難であると認めるときは、発注関係事務を適切に実施することができる者の活用に努めなければならないこととし、その者が行う発注関係事務の公正性を確保するために必要な措置を講ずるものとするほか、国及び都道府県は、発注者を支援するため、必要な措置を講ずるよう努めなければならないこととしております。

 その他、附則において、政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、この法律の施行の状況等について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとしております。

 以上が、本起草案の趣旨及び主な内容であります。

 なお、本起草案は、昨年十一月二日に自由民主党及び公明党から提出されました公共工事の品質確保の促進に関する法律案について、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三会派が修正協議を重ねた結果、まとめられたものであることを申し添えます。

    ―――――――――――――

 公共工事の品質確保の促進に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

橘委員長 これより採決いたします。

 公共工事の品質確保の促進に関する法律案起草の件につきましては、お手元に配付してあります草案を本委員会の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

橘委員長 起立多数。よって、そのように決しました。

 なお、ただいま決定いたしました本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

橘委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

橘委員長 この際、岸田文雄君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三会派共同提案による公共工事の品質確保の促進に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。岸田文雄君。

岸田委員 ただいま議題となりました公共工事の品質確保の促進に関する件につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文はお手元に配付してありますが、その内容につきましては、案文の朗読をもって趣旨の説明にかえることといたします。

    公共工事の品質確保の促進に関する件(案)

  政府は、公共工事の品質確保の促進に関する法律の施行に当たっては、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

 一 公共工事の入札契約に関し、不良不適格業者の排除の徹底を図ること。

 二 公共工事の入札及び契約の過程等に関して学識経験者等の第三者の意見を適切に反映する方策を講じるとともに、当事者の苦情に適切に対応するため、法的整備を含む検討を行うこと。

 三 発注者による競争参加資格の設定に当たっては、新規参入企業の競争への参加が阻害されないよう配慮すること。

 四 入札に参加しようとする建設業者が適切に評価されるよう、入札参加希望者登録制度における格付け及び経営事項審査制度の適切な運用に努めること。

 五 施工体制の適正化を図るため、工程表及び施工体制台帳の発注者に対する提示が徹底されるよう努めること。

 六 技術提案制度の運用に当たっては、発注者の自主性が尊重され、工事の内容に応じた適切な判断がなされるよう配慮すること。

 七 体制が整っていない地方公共団体においても、技術提案に関する審査及び評価を適切に行うことができるよう配慮すること。

 八 技術提案の審査の結果を踏まえて予定価格を定める場合においては、学識経験者の意見も踏まえ、適切に定めること。

 九 適正な施工体制の確保、下請代金の適正な支払の確保等の観点から、施工体制台帳の活用、営業所への立入調査等により、施工の範囲や条件が明確な契約が締結され、下請代金の適正な支払が確保されるなど、元請企業と下請企業の関係の適正化に努めること。

  右決議する。

以上であります。

 委員各位の御賛同をよろしくお願いいたします。(拍手)

橘委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

橘委員長 起立総員。よって、本件は本委員会の決議とするに決しました。

 この際、ただいまの決議につきまして、北側国土交通大臣から発言を求められておりますので、これを許します。国土交通大臣北側一雄君。

北側国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、関係省庁との連携を図りつつ、公共工事の品質確保の促進に努力してまいる所存でございます。

橘委員長 お諮りいたします。

 ただいまの決議についての議長に対する報告及び関係当局への参考送付の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

橘委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

橘委員長 次に、半島振興法の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、理事会等での御協議を願い、お手元に配付してありますとおりの草案が作成されました。

 本起草案の趣旨及び内容につきまして、委員長から御説明申し上げます。

 半島振興法は、三方を海に囲まれ、幹線交通体系から遠く離れ、平地に恵まれず、水資源が乏しいなど国土資源の利用の面における制約から、産業基盤、交通基盤等の整備の面で他の地域に比較して低位にある半島地域の振興を図るため、昭和六十年六月、建設委員長提案により時限立法として制定されました。制定以来、二度の改正を経て、現在二十年が経過しようとしております。

 この間、本法に基づき二十三の地域が半島振興対策実施地域に指定され、半島振興計画に基づく各種の施策が講じられてきたことにより、各分野で着実に成果を上げてまいりました。

 しかしながら、半島地域は依然として、社会生活基盤の整備が十分に進んでいない地域や所得水準が低位な地域がある等の問題を抱えております。

 その一方で、半島地域は、豊かな自然環境や農林水産資源に恵まれるとともに、すぐれた古典芸能や伝統文化を継承するなど、地域の特性を生かした発展に向けての大きな可能性を秘めております。

 地域住民の主体的な取り組みに基づき、半島地域の抱えている諸課題を解決し、豊かな地域資源を活用して地域の発展を図っていくためには、引き続き半島振興計画のもとで、広域的、総合的な施策を講じ、半島地域の自立的発展に向けた支援を行っていくことが必要であります。

 このような観点から、本案は、現行の半島振興法の有効期限をさらに十年間延長して平成二十七年三月三十一日までとするとともに、半島振興計画の内容を拡充するほか、半島振興対策実施地域に係る農林水産業の振興、地域間交流の促進等に関する規定を整備する等この地域の振興のため必要な措置を講ずるものであります。

 以上が、本起草案の趣旨及び主な内容であります。

    ―――――――――――――

 半島振興法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

橘委員長 この際、本起草案につきまして、衆議院規則第四十八条の二の規定により、内閣の意見を聴取いたします。国土交通大臣北側一雄君。

北側国務大臣 本法律案の御提案に当たり、委員長及び委員各位の御見識に深く敬意を表するものでございます。

 政府といたしましては、半島地域の社会経済情勢にかんがみ、本法律案については特に異存はございません。

 この法律案が可決された暁には、関係省庁と連携を図りつつ、その適正な運用に努め、半島地域の一層の振興を期してまいる所存でございます。

橘委員長 これより採決いたします。

 半島振興法の一部を改正する法律案起草の件につきましては、お手元に配付してあります草案を本委員会の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

橘委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

 なお、ただいま決定いたしました本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

橘委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時二十二分散会


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