衆議院

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第4号 平成18年3月8日(水曜日)

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平成十八年三月八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 林  幹雄君

   理事 衛藤征士郎君 理事 中野 正志君

   理事 望月 義夫君 理事 吉田六左エ門君

   理事 渡辺 具能君 理事 長妻  昭君

   理事 三日月大造君 理事 高木 陽介君

      新井 悦二君    石田 真敏君

      遠藤 宣彦君    小里 泰弘君

      越智 隆雄君    近江屋信広君

      大塚 高司君    鍵田忠兵衛君

      金子善次郎君    亀岡 偉民君

      北村 茂男君    後藤 茂之君

      坂本 剛二君    清水清一朗君

      島村 宜伸君    杉田 元司君

      鈴木 淳司君    薗浦健太郎君

      田村 憲久君    高市 早苗君

      長島 忠美君    西銘恒三郎君

      葉梨 康弘君    福田 良彦君

      松本 文明君    盛山 正仁君

      安井潤一郎君    渡部  篤君

      小宮山泰子君    古賀 一成君

      下条 みつ君    高木 義明君

      土肥 隆一君    長安  豊君

      鉢呂 吉雄君    馬淵 澄夫君

      森本 哲生君    伊藤  渉君

      斉藤 鉄夫君    穀田 恵二君

      日森 文尋君    糸川 正晃君

    …………………………………

   国土交通大臣       北側 一雄君

   国土交通副大臣      松村 龍二君

   国土交通大臣政務官    石田 真敏君

   国土交通大臣政務官    後藤 茂之君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    縄田  修君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    矢代 隆義君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (国土交通省都市・地域整備局長)         柴田 高博君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  谷口 博昭君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  梅田 春実君

   政府参考人

   (国土交通省航空・鉄道事故調査委員会事務局長)  福本 秀爾君

   参考人

   (東京大学大学院工学系研究科教授)        河内 啓二君

   参考人

   (立教大学文学部心理学科教授)          芳賀  繁君

   参考人

   (鉄道安全推進会議事務局長)

   (弁護士)        佐藤 健宗君

   参考人

   (全日本空輸株式会社代表取締役副社長)      大前  傑君

   参考人

   (関西大学商学部教授)  安部 誠治君

   参考人

   (全日本交通運輸産業労働組合協議会顧問)

   (明治大学商学部教授)  戸崎  肇君

   国土交通委員会専門員   亀井 為幸君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月八日

 辞任         補欠選任

  高市 早苗君     越智 隆雄君

  盛山 正仁君     近江屋信広君

  若宮 健嗣君     安井潤一郎君

  亀井 静香君     糸川 正晃君

同日

 辞任         補欠選任

  越智 隆雄君     福田 良彦君

  近江屋信広君     盛山 正仁君

  安井潤一郎君     清水清一朗君

  糸川 正晃君     亀井 静香君

同日

 辞任         補欠選任

  清水清一朗君     渡部  篤君

  福田 良彦君     新井 悦二君

同日

 辞任         補欠選任

  新井 悦二君     高市 早苗君

  渡部  篤君     若宮 健嗣君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 運輸の安全性の向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一一号)


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     ――――◇―――――

林委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、運輸の安全性の向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省都市・地域整備局長柴田高博君、道路局長谷口博昭君、鉄道局長梅田春実君、航空・鉄道事故調査委員会事務局長福本秀爾君、警察庁刑事局長縄田修君、警察庁交通局長矢代隆義君及び法務省刑事局長大林宏君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

林委員長 これより質疑に入ります。

 午前は、特に踏切安全対策について質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。薗浦健太郎君。

薗浦委員 おはようございます。自由民主党の薗浦健太郎でございます。

 質問に入る前に、あの竹ノ塚の事故からあと一週間で一年になります。改めて、被害に遭われた方々に心から追悼の念をささげるとともに、安全対策に対する決意を新たにして、質問に入りたいと思います。

 それで、間もなくあの事故から一年になります。この一年の間、国土交通省として踏切事故対策にどのような取り組みをされてきたのか、まずお伺いをしたい、このように思います。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 国土交通省といたしましては、あかずの踏切を初めといたしました踏切への対策を重要施策の一つとしております。抜本対策によります踏切の除去と速効対策によります踏切交通の円滑化を車の両輪といたしまして、対策のスピードアップに努めてございます。

 抜本対策の主軸でございます連続立体交差事業でございますが、従来、都市内の交通混雑の観点から、自動車交通の多い幹線道路の踏切を対象としてきたところでございますが、竹ノ塚駅周辺の踏切のように、歩行者交通の多い生活道路の踏切にも支援できますよう、来年度より新たに制度改正を図っていくことといたしてございます。

 東武伊勢崎線竹ノ塚駅周辺地区におきましては、二カ所のあかずの踏切が存在しておりまして、平成十六年六月に東京都が策定いたしました踏切対策基本方針におきましても、鉄道立体化の検討対象区間として位置づけられておりました。

 当該地区におきます昨年三月十五日の踏切事故の発生を受けまして、まず緊急の対策といたしまして、当該踏切を含む竹ノ塚駅付近の踏切二カ所を自動化するとともに、自転車対応の斜路、エレベーターつきの歩道橋の設置、そして踏切の拡幅などを順次実施してきておりまして、今月末を目途にその整備を終えることといたしてございます。

 さらに、昨年の事故の後、立体交差化の検討を急ぎますよう東京都に対し要請し、昨年六月には、東京都、足立区、東武鉄道等に国土交通省も参画する形で、竹ノ塚駅付近道路・鉄道立体化検討会を発足させ、立体交差の形式や駅周辺のまちづくりについて検討を行っているところでございます。

 国土交通省といたしましては、都内でも有数のあかずの踏切が存在する当該地区への対策は緊急性が極めて高い重要なものであると認識しておりまして、東京都、足立区に対しまして引き続き検討会の場を通じて技術的助言をするなど、立体交差化の具体化に向けた検討が進むよう適切に支援してまいりたいと考えております。

薗浦委員 ぜひ急いでやっていただきたいというふうに思います。そもそも、道路と鉄路が交差する踏切というものは、あったよりない方が事故のことを考えればいいものですから、ぜひともそういう観点から立体交差化をどんどん進めていただきたいというふうに思います。

 法律の個別の具体的な内容をこれからお伺いしたいと思いますが、改良が必要な、いわゆる改良すべき踏切道というものについて、国土交通大臣がその指定をすることになっております。この指定期間が今度五年間延長されるということでございますけれども、平成十三年度からの五年間で、どのぐらいの踏切が指定されて、またどのぐらいの効果を上げ、実績を上げている、その辺がどういうふうになっているのかをお伺いしたいと思います。

谷口政府参考人 お答えいたします。

 これまで、踏切道改良促進法においては、交通事故の防止と交通の円滑化のために、改良すべき踏切道を指定し、立体交差化、構造改良、または保安設備の整備を行うこととしております。

 踏切道改良促進法制定時の昭和三十六年度から平成十七年度までの間に踏切道改良促進法に基づき指定した箇所は、立体交差化約二千三百カ所、構造改良約四千百カ所、保安設備の整備約二万七千八百カ所となっております。平成十三年度から平成十七年度までの五カ年間に踏切道改良促進法に基づき新規に指定した箇所は、立体交差化約百九十カ所、構造改良約百九十カ所、保安設備の整備約二百十カ所となっております。

 平成十二年度までに指定した継続箇所も含め、法指定箇所で、平成十三年度以降五カ年間で対策が完了する箇所は、立体交差化約百カ所、構造改良約百六十カ所、保安設備の整備約二百五十カ所となる予定でございます。

 このように踏切対策を進め、平成十三年度以降、交通遮断量の著しく多い、いわゆるボトルネック踏切を約三十カ所、そのうち、あかずの踏切を約十五カ所除去する予定でございます。

薗浦委員 ありがとうございます。

 その踏切の指定とか、ここにはこういうものが必要だというものは、地元の意思という、地域地域によっての事情が当然出てくるというふうに思うんですけれども、その踏切の指定に当たっては、当然、地元の自治体でありますとか、その地域の方々の意見が最大限に尊重されてしかるべきだというふうに私は思うんですけれども、これまで、地元の意見というのはどのような形で吸い上げてこられて、またどういうふうな指定をされていたのか、そして、今後はどのようなスキームを考えていらっしゃるのかということをお伺いできればと思います。

谷口政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、地元の実態、意向を踏まえるということが重要だと認識をしておる次第でございます。

 現在、踏切は全国で約三万六千カ所ございますが、全国の道路管理者及び鉄道事業者の協力を得まして、全国すべての踏切を対象に踏切の交通実態の総点検を実施させていただいております。また、あわせて、国土交通省のホームページで要望を収集し、インターネットで要望のあった箇所については総点検に反映をさせていただくこととさせていただいております。

 今後、こうした総点検を踏まえまして、あかずの踏切などの緊急に対策が必要な踏切について、地元地方公共団体等の意見を含む地域の実情を踏まえた五カ年の整備計画を道路管理者及び鉄道事業者の協力を得て策定していただき、これらの中から踏切道改良促進法に基づく指定を行うこととさせていただいております。

薗浦委員 ありがとうございました。

 ぜひとも、地域に合った改良を進めていくという意味でも、地元の意見というものをこれからどんどん聞いていただきたいというふうに思います。

 その一方で、私も都市部の選挙区なんですけれども、非常に改良が必要だと思われる踏切が、安全の面からしても、それから車の渋滞の面からしても必要だと思われる踏切が多々残っておると思うんですけれども、地域の事情によっては、例えば周辺の家屋が立ち退かなければならないですとか、道路の問題ですとか、さまざまな諸事情を抱えて、その地域だけでは解決が困難な場合もあろうかと思います。

 そうした場合に、やはり国交省さんの方で、ここはこうしなきゃならないからというような強力な指導もしくは対策に対する勧告が必要になってくる場合もあろうかと思うんですけれども、そういう場合に、地域、地方任せにするんではなくて、国土交通省が指導する必要があると私は思うんですけれども、その辺の見解はいかがなものでございましょうか。

谷口政府参考人 お答えいたします。

 先ほどの竹ノ塚の踏切事故につきましても、国交省も強く関与させていただくというような措置をとらせていただいておるところでございます。

 今回の法改正においては、新たに勧告制度、報告制度ということで、地域の実態に応じて適切に国土交通大臣が勧告なり報告を求められるような規定を盛り込んだ、明示させていただいたということでございます。

薗浦委員 ぜひとも地域を助けるような指導もしくは勧告を行っていただきたいと思うんですけれども、その勧告制度によって、強制力というんですか、その辺はいかがなものですか。勧告すれば、ある程度国交省が介入して強力な指導を行えるというふうに理解をしてよろしいんでしょうか。

谷口政府参考人 お答えいたします。

 鉄道事業者、道路管理者、また地元の協力を得て、今回新たに盛り込ませていただきます勧告制度、報告制度を活用して、しっかりとした対応ができるのではないかと思っております。

薗浦委員 ぜひとも国土交通省さんで見られて、ここは強力な対策が必要だというところに関しては主導的にやっていただきますように、ここでお願いを申し上げておきます。

 次に、この法律で新たに歩道橋と歩行者等立体横断施設というものが中に加わりました。この歩道橋を改良方法にお加えになった理由というのはどういうものがございますか。

梅田政府参考人 今回の法改正において歩行者等立体横断施設の整備を追加いたしました。

 これは、歩行者やあるいは自転車向けの有効な対策といたしまして、従来から、踏切内の歩行者の通行帯、歩道の部分ですね、この拡幅を図るということのほかに、今回、踏切道の近傍において横断歩道橋等を設置することによりまして、歩行者あるいは自転車が安全かつ円滑に通行できるようにしたいということでございます。そうすることによりまして、通行する歩行者あるいは自転車の数を減らすことができますし、また自動車とのふくそうも減少させることができるということになるかと思います。

 今回、国土交通大臣が踏切道の指定に当たりまして定める改良の方法の中に歩行者等の立体横断施設の整備を追加いたしまして、歩行者あるいは自転車向けの有効な対策が必要な踏切道につきましても、国土交通大臣が改良することが必要と認める踏切道として指定をするということができるようにしたものでございます。

 指定しました踏切道につきましては、鉄道事業者あるいは道路管理者がともに協議いたしまして、その計画をつくりまして、大臣に提出いたすということになります。この計画に従いまして踏切道の改良を実施しなければならないということになるかと思います。

 これによりまして、歩行者、自転車の安全性あるいは円滑な交通を確保するということが着実に実施されることになりますので、この実施についてはしっかり取り組んでまいりたいというふうに考えております。

薗浦委員 歩道橋を加えるとなると、今、都市部においては道路からどんどん歩道橋が撤去されているという現状もありまして、これはやはり交通弱者、いわゆる足の弱い方でありますとかそういう交通弱者の方々にも使えるような歩道橋というものを当然整備していく必要があろうかと思うんですけれども、そのバリアフリーの観点は、これはいかがなっておるのでございましょうか。

梅田政府参考人 御指摘のように、バリアフリーの観点は極めて重要でございますので、この立体横断歩道橋等の整備に当たりましては、例えばこれは個々の場所によって中身は区々いろいろ変わってくると思いますけれども、エレベーターあるいは場合によりましてはエスカレーター等を設置するなど、高齢者、障害者の方にも配慮しつつ、その歩行者の安全かつ円滑な移動ができるような対策、これは着実に実施してまいりたいと思います。

 個々に、どこにどういうものをつくるかということにつきましては、先ほど申しましたように、道路管理者あるいは鉄道事業者がともに相談しながら、地元の意見もよく聞いて計画をつくっていくことになろうかと思います。

薗浦委員 ありがとうございました。ぜひよろしくお願いをしたいと思います。

 さて、今回、改正で無利子貸付制度というものが創設をされる予定になっております。立体交差というのは当然非常にお金がかかるものですから、こういう地方の自治体が財政事情が大変厳しいという状況においてはこの無利子貸付制度いうものは非常に有効なんじゃないかというふうに思われますけれども、具体的にどういう申請をして、どういう事業に対して行われるのか、また、その運用の方法がどうなっているのかということをお聞かせ願えますでしょうか。

柴田政府参考人 無利子貸付制度でございますが、連続立体交差事業は、道路交通の安全確保と円滑化の観点から、道路整備の一環として実施いたしておりますが、高架の下の受益等の受益に応じまして鉄道事業者にも事業費の一部の負担を求めております。

 今無利子貸し付けの対象先でございますが、これにつきましては、今後連続立体交差事業によりますあかずの踏切等の踏切対策を国としてもさらに推進していくことといたしておりまして、鉄道事業者の方の負担が増大するということが見込まれるのではないかと思っております。

 このため、連続立体交差事業によります踏切対策をさらに積極的に促進する観点から、鉄道事業者の積極的な参画を得ますインセンティブとして、鉄道事業者の負担に対しまして長期無利子貸付金を貸し付ける無利子貸付制度の創設を図ることといたしております。

 そこで、どういうところでこういうものを使うかということでございますが、先ほど御答弁いたしましたように、昨年三月の東武伊勢崎線竹ノ塚駅付近におきます踏切事故を踏まえまして、国土交通省といたしましては、あかずの踏切など特に緊急の対策が必要な踏切を対象といたしまして踏切対策を重点的に実施し、推進することといたしてございます。

 抜本対策による緊急的な対策が必要な踏切は、あかずの踏切、自動車交通の著しい踏切、歩行者交通の著しい踏切といたしまして、約千四百カ所を見込んでございます。

 当該無利子貸付制度は、これらの緊急的な対策が必要な踏切の解消を図る連続立体交差事業を対象とするものでございまして、例えば具体的には、大都市において複数の事業箇所を有する鉄道や、相対的に資金力の弱い地方の鉄道などに関する連続立体交差事業を対象事業として想定いたしております。

薗浦委員 たしか鉄道事業者の負担というのは総事業費の一割程度だったというふうに思うんですけれども、残りを国と地方自治体が折半をしておったと思うんですが、地方の財政事情を考えると、地方自治体に対してもある程度のインセンティブがないとなかなかこの立体交差事業というのは進まないと思うんですけれども、その辺の御見解はいかがでございましょうか。

柴田政府参考人 ただいまの鉄道事業者に対します支援でございますが、今御指摘のように、地方公共団体に対しましても制度的な支援、人的な支援、それから資金的な支援というものが必要になろうかと思っておりまして、来年度の事業といたしまして、地方公共団体の体制と資金の両面を支援する立てかえ施行制度について、これまで鉄道事業者のみが立てかえ施行を公共団体の部分についてもやることになっておったわけでございますが、それを特別目的会社、第三セクターなどに拡大する、これらによりまして地方公共団体の体制と資金の両面を支援するような制度も用意していきたいというぐあいに考えております。

薗浦委員 ぜひとも、その地方自治体の実情も考えて、いろいろな制度を運用できるように使っていただきたいというふうに思います。

 もう時間がないので、これは最後にちょっと大臣にできればお伺いをしたいと思っておるんですけれども、以前、鉄道は当然運輸省であった、道路は建設省であったということで、国土交通省として今一緒になったわけですけれども、以前に比べると当然、立体交差とかいろいろな踏切改良というものは進めやすくなったかと思うんですけれども、その現状とこれからの御決意を最後にできればお伺いして終わりたいというふうに思います。

北側国務大臣 おっしゃっているとおり、今も答弁をしている局の鉄道局、道路局、都市局と、それぞれの局長が答弁をさせていただいたわけでございますが、旧運輸、旧建設の両方の所管の局が本当に一緒になってこの踏切道の改善にしっかり全力を挙げて取り組みをさせていただきたい。この踏切道の問題もそういう意味では省庁再編統合の大きなメリットを出すべき場面だというふうに考えておりまして、特に昨年、大きな踏切での事故があったわけでございます。それも踏まえまして、しっかり取り組みをさせていただきたいと考えております。

薗浦委員 ありがとうございました。終わります。

林委員長 杉田元司君。

杉田委員 自民党の杉田元司でございます。

 薗浦委員と踏切道の改良促進につきまして多少重なる部分がございますけれども、せっかくの機会でございますので、重ねて質問させていただき、なお一層詳しい御答弁をお願いさせていただきたいと思います。

 最初にまず、道路と鉄道、これは都市交通の主体をなすものであります。その交差部における踏切では慢性的な交通渋滞を引き起こし、踏切の事故件数は鉄道事故の約半数、四百十件を占めております。二〇〇四年には二百八十五名の死傷者を出し、日本の踏切道の数は、昭和三十五年にはおよそ七万一千カ所でありましたが、立体交差化、統廃合等によって二〇〇四年にはおよそ三万六千カ所となりました。約半分に減ったわけであります。ちなみに、外国においては踏切はほとんどなく、東京二十三区の踏切の数はフランスのパリの五十倍というように聞き及んでおります。

 そこで、昭和三十六年施行の踏切道改良促進法は、モータリゼーションの進展に伴って交通事故が多発した、あるいはそれを契機に事故防止、交通の円滑化を目的として制定され、これまでに五年ごとに指定期間の延長が図られてまいりました。今回の法改正、その五年の延長の法改正の眼目、一番重要な部分につきまして、まず最初にお伺いをいたします。

梅田政府参考人 今回の踏切道改良促進法の趣旨でございますが、先生御指摘のとおり、平成十六年度におきまして、減少は続けてまいりましたものの、踏切事故の件数は鉄道事故の約半数を占めておりまして、死傷者の数も二百八十五人ということで多うございます。

 また、ピーク時一時間当たりの遮断時間が四十分以上のいわゆるあかずの踏切というものも、遮断時間が特に長い、あるいは踏切利用者のいらいら感によって無理な横断がある、あるいは踏切の通過時に自動車や歩行者とのふくそうが見られる、こういうような状況でございまして、こうした中で、御指摘のように、昨年の三月でございますが、東武鉄道伊勢崎線の竹ノ塚駅付近で四名の死傷者を出す事故が発生するということでございまして、私ども、その安全性の向上に向けた対策が急がれる状況にあるというふうに認識しているところでございます。

 今後、大都市部におきましては、道路交通網はさらに錯綜し、交通量の伸び、あるいは都市化がさらに進展していくだろうというふうに予想されます。踏切道の立体交差化あるいは拡幅を中心とした構造の改良の必要性はますます重要になってまいります。とりわけあかずの踏切につきましては、その抜本対策というのが大事でございますが、この立体交差化が行われるまでの間にはかなりの時間と予算が必要でございます。そのためにも、まず速効的かつ総合的な対策を講ずることが必要であろうというふうに考えております。

 こういうことから、今回、法律の期限が切れます踏切道改良促進法の指定期間を平成十八年度以降五年間延長すると同時に、引き続き踏切保安設備の整備の補助も続けながら、今回、先ほど申しました歩行者等立体横断施設の整備をその計画の一つとして、改良の方法の一つとして追加することにしておりまして、抜本対策が行われる間、速効対策としても使えるこういう対策も打ちたいというふうに考えているところでございます。

 また、今回、踏切道の改良を実施しない場合の鉄道事業者、道路管理者に対する勧告制度の創設、さらには改良の実施の状況に対する報告徴収制度の創設、あるいは連続立体交差事業に係る無利子貸付制度の創設、こういうものを盛り込みまして、踏切対策の充実強化、あかずの踏切を初めとした踏切道の改良を一層促進してまいりたいというのが今回の法の趣旨でございます。

杉田委員 ぜひお願いをいたしたいと思います。

 次に、踏切道、この対策は、自動車交通量の多い大都市周辺ばかりではなくて、地方においても、歩道が狭い踏切、あるいは中心市街地など駅の周辺は大変歩行者が多い踏切道があります。全国を見渡すとさまざまな課題があり、踏切全体の約九割以上で歩道が未整備となっているのが現状であります。

 これらに的確な対応を講じていくためには、大都市、地方を含めた全国的な踏切道の実態をしっかりと把握する必要があると考えておりますが、全国的な踏切道の実態把握に向けた取り組みはいかがなものでありましょうか。お伺いをいたします。

谷口政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、自動車だけでなく歩行者に注目した、きちっとした対策が重要だという認識を持っておる次第でございます。地方部には数多く存在すると思われます歩道が狭隘な踏切や歩行者交通の著しい踏切も緊急に対策が必要な踏切と考えておりまして、現在の総点検も踏まえまして、歩道が狭隘な踏切等の緊急対策が必要な踏切箇所を抽出させていただこうと考えております。

 こうした踏切内の歩道拡幅等の速効対策の取り組みを強化させていただきまして、平成十八年度から五カ年間ですべて対策をとるべく取り組ませていただくように考えておるところでございます。

杉田委員 今まで地方の実情というものは余り認められるケースが少なかったというような気がしてなりません。

 そこで、このような実態の把握に当たりましては、ぜひ地域の実情というもの、あるいは要望を十分に踏まえて行う必要があろうと思いますけれども、その対応につきましての御所見をお伺いいたします。

谷口政府参考人 お答えいたします。

 現在、踏切交通実態総点検を実施させていただいておりますが、そうした総点検を踏まえまして、地域の事情や要望を熟知していると思われます道路管理者と鉄道事業者に地域の実情に合わせた五カ年の整備計画を策定していただくこととしておりまして、その整備計画を踏まえまして、歩道拡幅等の速効対策と連続立体交差等の抜本対策、この二つの対策、両輪によりまして、総合的な対策を緊急的かつ重点的に推進させていただこうと考えております。

杉田委員 あかずの踏切、御答弁ありましたけれども、これは九割以上が東京、大阪、名古屋といった大都市圏に集中をしております。しかし、大都市圏のみでなくて、地方においても緊急を要する踏切というものは数多くございます。

 そんな中で、地元の要望の強い踏切道、歩道が狭い踏切道を初めといたしまして地方の踏切に対する対策というもの、これからさらにどのようなお考えをお持ちになって進めていかれるおつもりか、お伺いをいたします。

谷口政府参考人 お答えいたします。

 先ほどの答弁と重なる部分があるかもわかりませんが、委員御指摘のとおり、あかずの踏切と言われます、ピーク時間に四十分以上遮断されている踏切というのが大都市に多うございます。しかしながら、地方におきましても、歩行者交通の多い踏切、また、踏切の中の歩道の幅員が狭い、狭隘な踏切が多いということでございまして、そうした地方部にも多く存在する歩道が狭隘な踏切等の緊急対策が必要な箇所につきましても、しっかりとした、速効対策が中心になろうかと思いますが、対策をとらせていただくべく、今、鉄道事業者と道路管理者が協力のもとに計画を策定させていただくということでございます。

杉田委員 ぜひ、地方におきましては、その速効対策というものを重点的に取り組みをお願い申し上げたいと思います。

 また、鉄道というのは、中心市街地、市街地という全体を分断しているという今まで傾向がありました。また、駅の北口あるいは南側、あるいは東側とか西側といって、特に駅を中心としても地域の格差というものが生じているという実態は否めないところであります。

 そこで、これからの、今後の踏切道の対策は、交通事故防止だけでなくて、中心市街地の活性化、あるいは町に機能を集中させるコンパクトシティーといった視点も持って対応していく必要があろうかと思いますけれども、このような視点から、抜本的な対策はいかがお取り組みをいただけるものなのか、お伺いいたします。

柴田政府参考人 日本の都市は、鉄道の駅を中心に発展したところが多く、御指摘のように、鉄道によりまして中心市街地が分断され、活性化の障害となっているところが見られます。連続立体交差事業は、鉄道を連続的に高架化または地下化することによりまして、都市交通の円滑化というものに加えまして、線路で分断された市街地が一体化することによりまして、都市活動の活性化に寄与するものでございます。御指摘のとおりでございます。

 さらに、駅周辺では、連続立体交差事業と一体となりまして、土地区画整理事業などによりまして、駅前広場、商業業務施設などの整備が行われ、中心市街地の活性化に相乗的な効果を上げております都市もございます。連続立体交差事業は、多くは中心市街地で実施され、都市が大きく変貌するきっかけになるものでもあり、国土交通省といたしましては、引き続き、連続立体交差事業及び関連する周辺まちづくりにつきまして、事業の促進が図られますよう適切に支援してまいりたいと考えております。

杉田委員 連続立体交差事業、御答弁ありましたけれども、東京都内では、道路にかかる歩道橋、これは、実は歩道橋の下がごみの捨て場になったり、あるいは生活困窮者の住まいになったり、あるいは子供たちが、少子化の中で通学する子供たちが大変少なくなった、あるいは、町の景観からいっても、さびついた歩道橋あるいは腐りかけた歩道橋で事故を起こしやすいなどなどの理由があって、たしか都内ではもう歩道橋を取り外そうという市民の要望が出ておると思います。ぜひ、この連続立体につきましては、そのようなことも踏まえながら今後の対策を、検討を十分にしていただきたい、御要望をさせていただきます。

 また、先ほども質問の中にありました、薗浦委員の中にありましたけれども、バリアフリー。私も、今回の質問をさせていただくに当たりまして、踏切道のところに立たせていただき、その状況をつぶさに見せていただきました。

 まず、地方におきましてもそうでありますが、大型が二台すれ違うときには、ほとんど、歩行者というのはその通過を待ってから踏切を渡る。子供たちが非常に追いやられた状況の中に踏切道の中ではある。まして車いすの方にとりましては渡れる状況ではないということもつぶさに見せていただいてまいりました。

 そんな中で、弱者対策、高齢者、あるいは障害者、あるいは通学時の子供たち、こういうことを踏まえまして、この踏切道対策をどのようにとっていかれるものなのか、お示しを、御所見をお伺いいたしたいと思います。

梅田政府参考人 先生御指摘のように、踏切道に入るまでは歩道があるけれども、踏切道に入ったら歩道がないというような踏切もございます。

 私ども、この踏切内の歩行者の通行できる、いわゆる歩道の部分をできるだけ早く拡幅をするというのが、歩行者、子供、あるいはお年寄り、障害者の方はもちろんでございますけれども、一般の方々、普通の方々にとりましても必要な施策であるというふうに考えておりますし、また、大都市で普及しております、大都市だけじゃなく都市で普及しております自転車の通路を通すためにも必要なことだろうというふうに思っておりまして、こういう点については、構造改良の中で、指定された計画として実施してまいってきておるわけでございますが、これについてもできるだけ急いでやる必要があろうかと思っております。

 しかしながら、抜本的にやはり立体交差化を図っていくというのが、つまり踏切そのものをなくしていくというのが大切でございまして、先ほども申しましたように、これにつきましては、予算あるいは時間とも多々かかる部分もございます。したがいまして、私どもといたしましては、歩行者あるいは自転車などが通れるような立体的な横断施設を今回の計画の改良の方法の一つとして追加して、速効的にカバーをしていきたいというところでございます。

 具体的にその踏切においてどういう改良の方法をとるかにつきましては、鉄道事業者、道路管理者、あるいは地元の方々、自治体等含めまして相談をしていただきまして、計画をつくっていただいて、その踏切にとって一番効果的な方法で整備されていければいいと思っておりまして、その際には、エレベーターあるいはエスカレーター等、必要な設備につきましても整備してまいるように指導してまいりたいというふうに考えているところでございます。

杉田委員 ぜひ検討を重ねた上での対策を講じていただきたいと思います。

 最後に、大臣にお伺いをさせていただきます。

 私、この質問に立ちまして、調べた二点、まずお聞きをいただきたいと思います。

 踏切待ちによる待ち時間、この経済損失は年間約一兆五千億に上ると言われております。これは試算であります。また、もう一点でありますけれども、全国におけます踏切でのCO2の排出量を吸収するには、東京・山手線の内側の面積の約十倍の森林を必要とするということだそうでございます。

 こうしたことを考えましても、踏切道の対策については、今回の法改正によりまして、国土交通大臣が、先ほども出ておりました勧告制度あるいは報告制度等々、こうしたものが盛り込まれるわけでありますけれども、まさにこれからしっかりと、今回の改正を活用していただきまして改良の迅速化を図るべきだと思っております。

 最後に大臣の御所見をお伺いいたしまして、質問を終わらせていただきます。

北側国務大臣 今委員の方からおっしゃっていただきましたように、渋滞による経済損失、またCO2の排出による環境面への悪影響、そして何よりも安全面。特にこの安全面では、鉄道事故の半分が踏切の中での事故であること、そして死傷者の数が大変多いわけですね。平成十六年度でも二百八十五名の死傷者、そのうち半分がお亡くなりになられているという重大事故がやはり起こっているわけでございます。そういう安全面の確保という観点からも、この踏切道の改善というのは極めて緊急を要する事業であるというふうに考えているところでございます。

 今回の法改正によりまして、新たに勧告並びに報告徴収ということが、鉄道事業者やまた道路管理者に対して国の方からできるようになるわけでございます。こうした制度面の充実強化がなされていくわけでございますが、そうしたことも含めまして、しっかりと迅速に、早くこうした踏切道の改良が進みますように全力を挙げて取り組みをさせていただきたい。国交省の中のさまざまな事業の中でも極めて重要性が強い事業であるというふうに考えているところでございます。

杉田委員 大変前向きな、積極的な御答弁をありがとうございました。

 以上で終わります。

林委員長 長妻昭君。

長妻委員 おはようございます。民主党の長妻昭でございます。

 間もなく足立区の竹ノ塚の踏切の死傷事故から一年たとうとしております。今週月曜日に私も踏切に行ってまいりまして、お花を手向けて、お悔やみ、御冥福をお祈り申し上げてまいりました。

 今、改良されたとはいえ、踏切が鳴り始めてから閉まるまで十一秒間、その長さが三十メートル以上ということで、これは猛ダッシュしないと踏切に取り残されてしまう、片方の踏切はもうちょっと遅く閉まるわけでありますけれども。そういうことで、非常に怖い踏切だなといまだにそういう感想を自動化の後も持っております。

 このあかずの踏切の資料、一ページ目に、ピーク時一時間当たり五十四分以上閉まっている踏切が日本に四十七ある、国交省の調べでございまして、それをピックアップしまして、ピーク時一時間当たり六十分閉まっているというのが北区の東北本線の根岸という踏切でございまして、これだけ、あかずの踏切という定義はピーク時一時間四十分以上閉まっている踏切だということで、日本全国六百十一カ所あるということでございます。

 国交省によると、都内の踏切は二十三区で約七百カ所、都内では一千二百カ所。国交省によると、パリやロンドンは踏切が二十カ所以内だと。二十世紀の負の遺産だということも言われております。

 先ほども話に出ましたけれども、これも国交省に確認をいたしますと、一年間の踏切による経済損失が一兆五千億円に上る、平成十六年度は踏切事故で百四十四人のとうとい命が失われた。平成十六年度末には三万五千六百十二カ所日本じゅうに踏切があるということで、先ほど大臣からも決意がございましたけれども、非常に重点として解消をしていただきたいということでございます。

 その意味で、今回、五カ年の指定というのが今月末切れるわけでありまして、それを延長するという法案が今審議されているわけでありますけれども、今後の五カ年計画というのを今国交省は作成中でございます。あかずの踏切が六百カ所、自動車交通の著しい踏切五百カ所、歩行者交通の著しい踏切三百カ所、歩道が狭い踏切七百カ所、以上の箇所を自治体の協力も得てピックアップして五カ年計画を策定する、こういうことで鋭意作業中だと聞いておりますけれども、三月末までに、今申し上げた箇所の具体的な五カ年計画、これを我々にお見せいただけないでしょうか。

北側国務大臣 今委員の方からおっしゃっていただきましたように、踏切道の改良というのは、経済面、また環境面、そして何よりも安全確保という面からも極めて緊急を要する事業であるというふうに考えております。国交省のさまざまな事業の中でも非常に優先度の高い事業であるというふうに認識をしておるところでございます。

 今この法案では、この踏切道の時限措置が平成十七年度で切れるわけでございまして、これを新たに五カ年延ばしていただく、こういうお願いをさせていただいている法案が内容の一つでございますが、この五カ年の整備計画をつくりますのは、道路管理者並びに鉄道事業者がこの整備計画をつくっていくことになるわけでございます。したがって、今、踏切交通実態について総点検を実施しているところでございますが、その結果を踏まえてこの五カ年の整備計画を今年度中を目途に策定していただきたいということで強くお願いをさせていただいているところでございます。取りまとめ次第、これは当然公表させていただきたいと考えております。

長妻委員 今申し上げました五カ年計画、トータルすると二千百カ所、そこを鉄道管理者あるいは自治体等に取りまとめをお願いしている、三月末をめどというようなお話がございましたが、自治体によっては非常に計画が遅い、こういう自治体もかなりございまして、これは国の直轄事業ではないんでありますけれども、これをかなり促進させるように国からも強い働きかけをする必要があるような自治体も私は数多くあると思っておりますので、国からも強い働きかけをそういう自治体にはするというようなお答えもいただければと思うんですが。

北側国務大臣 この踏切道の改良については、各自治体におかれても、当然その地域の実情を一番よく知っておるのが自治体でございますので、その重要性はよく認識していらっしゃると思うんですね。それがなかなか計画がつくれないというのは、恐らく何らかの理由があるというふうに思います。

 その辺の理由についてしっかりと把握をし、また協議させていただきたいというふうに考えておりまして、そうしたこともしっかり協議をさせていただきながら、各自治体に対して早期に計画をつくっていただくように督励をしていきたいというふうに考えております。

長妻委員 その趣旨で多分、今回、法案の中に新たに勧告制度というのが盛り込まれた。つまり、計画が指定されても正当な理由なく未着工など進まない、これに関しては勧告をするということでございます。

 この資料の二ページ、三ページ、四ページに、計画が指定されたけれども未着工のリストというのをいただいておりまして、立体交差化事業では、十カ所も計画をしたのに未着工だというのがある。東松山桶川線の二ツ家というんですか、埼玉県の踏切など。そして、構造改良の事業では、二十七カ所も計画が指定されていながら未着工。あるいは、保安設備整備事業に関しては、二十八カ所も指定されていてもまだ未着工ということでございますけれども、この中で正当な理由がなく計画が進んでいないものというのは何カ所それぞれございますか。

北側国務大臣 これは、平成十三年から十六年に指定をされた箇所について、まだ未着工であるというところについて御指摘をちょうだいいたしました。現在、それぞれの道路管理者等と鋭意調整を図っているところでございます。

 これはそれぞれ理由があるというふうに考えておるところでございまして……(長妻委員「正当な理由がない」と呼ぶ)正当な理由がないというものは報告を受けておらないところでございます。

 ちなみに、保安設備整備のところが大変数が多くなっておりますが、これはごらんになっていただいたらわかりますとおり、四ページ目ですか、JR西日本の、これはすべて福知山線のエリアのところの保安設備の整備でございまして、これは現時点ではすべて完了いたしまして、残りは、これについては七件ということになっているところでございます。

長妻委員 いや、ですから、今申し上げた箇所の中で、正当な理由がなく着工されていないものというのは把握されていないということですか。

北側国務大臣 現時点で、まだ未着工のところについて、正当の理由がないというものについては認識をしておりません。そのようなものがあるとは認識をしておりません。それぞれ理由があるというふうに考えております。

 ただ、しっかりと調整をしていく必要があると。早急にこうした箇所について改善ができるように進めてまいりたいというふうに考えております。

長妻委員 私が聞きましたのは、今回の改正法案で勧告制度を入れたのは、正当な理由なく計画が進んでいないところがあるから勧告制度を入れたというふうに聞いているわけでございますけれども、では、これはもう全部問題ないということで、今大臣、答弁ございましたけれども、勧告制度をそうしたら何で入れるのか、非常に理解に苦しむわけでございますが、ぜひきっちりと整理をしていただきたいと思います。

 そして、次に、耐震偽装の問題をちょっと触れざるを得ないので申し上げたいと思いますが、札幌でも偽装の案件が出たということでございます。

 そして、新宿の偽装マンション、当初これは〇・八五という耐震の強度でありましたけれども、別のもう一つの計算方式をすると、これが一・二になった。つまり、許容応力度等の計算では〇・八五のマンションが限界耐力計算では一・二以上になったということで、二つの計算方式があったということで、これは今大問題であります。(発言する者あり)

 今、質問するなという、公明党から御指摘がありましたけれども、これは緊急な問題でありますので、きのうわかったわけでありますので、何で質問しちゃいけないのか、理解に苦しむわけでございますけれども。

 これは、許容応力度計算で計算をすると避難、取り壊し物件、つまり、姉歯偽装物件で、十一ページをごらんいただきますと、この十八物件が許容応力度計算という方式では〇・五以下なので避難勧告やあるいは使用禁止命令などが出たということでございますが、この物件というのは、もう一つの計算方式である限界耐力計算、これはしていないわけですね。

 この限界耐力計算は法律でも二〇〇〇年に認められた計算方式でございますけれども、ひょっとすると、この十一ページの物件も、限界耐力計算で計算をし直せば〇・五以上になる。当然、非破壊検査なども併用するというのは言うまでもありませんけれども、別のもう一つの認められた限界耐力計算ですれば、この〇・五以下の物件も〇・五以上になったとすれば、それは取り壊さないで耐震補強等で措置できる、こういう可能性も出てくるわけでございますか。

北側国務大臣 まず、建築基準法において、従来一番使っております保有水平耐力という計算のほかに、今委員のおっしゃった限界耐力計算によってもいい、これは選択ができるということでございます。限界耐力計算で計算をして基準に合致すれば、建築基準法上の最低基準はクリアできるということになっているところでございます。

 それぞれの詳しい内容については省かせていただきたいと思いますけれども、今後、この偽装物件について建てかえるべきなのか、もしくは耐震改修で対応できるのか、その判断に当たって、例えば、今委員のおっしゃったように、限界耐力計算によって安全性の検証を行いまして、その結果に基づき判断をすることは、これは可能でございます。

 しかしながら、保有水平耐力で計算をして、耐震強度の指標、Qu/Qunが〇・五未満のものにつきましては、〇・五未満のものについて耐震改修をしようとしますと、大幅なコストがかかるだけではなくて、利用上の制約が大きくなること、また外観が損なわれるという問題もありまして、特に、特にですよ、マンションの場合は特にそうだと思うんですが、耐震改修という選択肢はとり得ない場合がほとんどであるというふうに考えているところでございます。

 これについて疑義が生じるような場合には、専門家から成る違反是正計画支援委員会がございますので、技術的な助言を行っていきたいというふうに考えているところでございます。

 そして、もう一つ申し上げたいのは、今回の支援スキーム、これは危険な分譲マンションの場合でございますが、その要件というのは、この保有水平耐力で計算したQu/Qun、耐震強度が五〇%未満であることだけではなくて、耐震改修による対応が困難、また建築基準法九条に基づきまして取り壊しの命令を受けた、こういうすべての要件を満たすことが前提であるというふうに考えております。

長妻委員 私は、今回、国交省の対応というのは非常に不可解なんです。一つの許容応力度計算、つまり保有水平耐力の比率ですけれども、それだけで計算をした。しかし、外部から指摘をされて、私は慌ててこの六ページのような通達を国交省は出したと認識しているんです。

 つまり、限界耐力計算でもいいんですよ、こっちで計算をしてもいいんですというのを、非常に遅くて、先月、二月十五日に出しておられるということでございまして、取り壊す取り壊さないというのは、中に住んでいる住人の方にとってはもう天と地ほどの差がある話でございまして、そういう意味では、もう一つの限界耐力計算で再計算し直して仮に〇・五以上であれば、今まで国交省は〇・五以下は取り壊しだ、こういうふうに言っておられたわけですけれども、仮にもう一つの計算方法で〇・五以上になればまたいろいろな対応というのがあると思うんでございますが、限界耐力の計算でこの取り壊し物件をもう一回再計算するというおつもりはございませんか。

北側国務大臣 今回のこうした対応に当たりましては、国と地方公共団体との間で、使用制限、また取り壊し等の命令を行う目安については、耐震強度の指標、Qu/Qun、保有水平耐力による基準を用いて〇・五とすることを申し合わせたわけでございます。国と地方公共団体で、緊急性があるという観点からもその指標を使うと。これが通常使われている指標でございます。

 今回の偽装物件、特に〇・五以下になったような場合というのは、設計時の地震力が大幅に低減されておりまして、通常の既存不適格建築物では満たしていると考えられる一次設計でさえ満たしていないという重大性があるわけでございまして、中規模の地震に対して損傷しないという安全性も確保されていない。こういう重大性を勘案しまして、その緊急性から、保有水平耐力が必要保有水平耐力の半分に満たないものを使用制限、取り壊し等の命令の目安としたものでございます。

 ちなみに、この限界耐力計算というのは検証に非常に時間を要します。また、当然コストもかかる、専門性も高いわけでございます。また、〇・五未満のものにつきましては、先ほど答弁をさせていただきましたように、大幅なコストがかかるだけでなくて、利用上の制約が大きくなったり外観が損なわれる等の問題もあって、耐震改修という選択肢はとり得ないのがほとんどであるというふうに認識をしております。

長妻委員 私は、今のお話というのは非常に説得力に欠ける話だと思っています。国と地方で申し合わせたからこの一つだけ、つまり保有水平耐力の比率、これは許容応力度等計算ですけれども、この一つの方式で〇・五以下、これでいくんだと申し合わせた、限界耐力計算というのは時間を要するしコストがかかるからだめなんだと。国交省の方に聞いたら、コストといっても、マンション一棟で限界耐力計算をし直しても百五十万円ぐらいだということでございまして、中に住んでいる住民の方にとっては、壊すか壊さないかというのは天と地ほどの大きな問題でございます。何かかたくなに一つの方式以外はもう認めない、これは私は本当に理解できないわけです。

 それでは、十ページにございますけれども、〇・八、〇・九、これは保有水平耐力の比率でございます。〇・六以上で一以下のものというのが二十六物件、姉歯偽造物件でありますけれども、では、この物件をこの前わかった新宿のマンションのように限界耐力計算でし直せば、一以上になる可能性も私はあると思っておるんですが、これは計算し直すおつもりはないんですか。

 つまり、こういう方々は、自分のマンションは偽装だ、そして基準を満たしていないという烙印を押されているわけですけれども、そうであれば、もう一つの計算方式の限界耐力計算でし直すということぐらいはしてもいいと思うんですが、大臣、どうですか。

北側国務大臣 私、限界耐力計算がだめだと言っているわけじゃないんです。例えば地方公共団体だとか住民の方々が、限界耐力計算でもう一度計算してみよう、そういう判断があるならば当然それはそれでよろしいわけです。実際に限界耐力計算でやってみたら耐震改修による対応が十分である、できるということであれば、それはもちろんそれで構わないわけです。そうしたことを排除しているわけでは決してありません。〇・五以上のものについても同様でございます。

長妻委員 いや、排除していると思いますよ。だって、保有水平耐力比、もう一つの限界耐力計算じゃなくて保有水平耐力比で〇・五以下が避難だ、こういうふうに決めたわけですよね。もう一つの限界耐力計算で、避難するしないというのは、そちらの計算方式ではそれは入っていないわけでありますので、これは、一方の方式で〇・五だというふうに区切って壊す壊さないを決めるというのは大変問題だと思いますので、ぜひ検証をして整理をしていただきたい。

 これは重大な問題です、日本の国にとって。また、第二、第三の姉歯が出てまいりましたので、非常に整理がなされていないというふうに思っておりますので、ぜひ大臣、省内に御指示をいただいて、きちっと議論をいただきたいと思います。

 以上です。

林委員長 長安豊君。

長安委員 長安豊でございます。

 本日、運輸の安全性の向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律案の審議に入らせていただくわけでございますけれども、この中で、踏切道改良促進法の部分につきまして重点的に質疑をさせていただきたいと思う次第でございます。

 私、国会議員になる前は鉄道関連の仕事をしておりましたので、特にこの踏切道、鉄道に関する問題については関心を持っておりました。実際、踏切道で起こった事故の後に、当該車両の下に潜って、どういう状況になったかというのもこの目で拝見させていただきました。そういう状況を思い出しても、やはり鉄道の事故というのはまさに痛ましいものであります。そういった事故をいかに防いでいくか、それが求められているわけでございます。

 後段では竹ノ塚の事故についてもお話しさせていただきますけれども、まず総論という形で、踏切道対策については、現在までどのような戦略及び工程で政府として取り組んでこられたのか。これまで進めてこられましたこの踏切対策の取り組み及び成果について、さまざまな観点、例えば、踏切の事故数の減少、渋滞の改善、環境負荷の低減、歩行者の利便等さまざまな要素はあると思いますけれども、そういった観点から、成果についても詳細にお答えを賜りたいと思います。

谷口政府参考人 お答えいたします。

 踏切道改良促進法が制定されました昭和三十六年には、踏切道は約七万カ所を超えておりまして、踏切事故は約五千五百件にも上っておりました。踏切事故の防止と交通の円滑化に寄与するために、昭和三十六年に踏切道改良促進法が成立しました。この促進法に基づきまして、立体交差化や構造の改良、または保安設備の整備を進めてきておるところでございます。また、あわせて、踏切の統廃合や道路網の体系的な整備による迂回路の整備などの踏切対策を総合的に推進してきているところでございます。

 その結果、踏切数は、平成十六年度末現在で、昭和三十六年のおおよそ半数の約三万六千カ所に減少してきております。また、踏切事故につきましては、平成十六年度には約四百十件までに減少してきているということでございまして、昭和三十六年に比べまして十分の一以下になったところでございます。そのほか、踏切待ちによって発生するCO2、NOX等の環境負荷の削減や、鉄道による地域の分断の解消、歩行者の利便性の向上等で大きな成果が上がったのではないかと認識しております。

 しかし、踏切事故は、鉄道運転事故の約半数を占めておるということでございますし、また、ピーク一時間当たりの遮断時間が約四十分以上となるいわゆるあかずの踏切が約六百カ所も存在するということで、都市部を中心に国民生活に大きな障害となってきており、引き続き、今回法改正をお願いしているわけでございますが、踏切対策を積極的に法制度の改正のもとに推進していく必要があると考えておるところでございます。

長安委員 今回、この法律が改正されようとしているわけでございますけれども、前回の、現在の法律というのは平成十三年から十七年までの五カ年間でございますけれども、この五カ年のうちの踏切に対する取り組み状況はいかがでございましょうか。

谷口政府参考人 お答えします。

 踏切道改良促進法におきましては、交通事故の防止と交通の円滑化のために、改良すべき踏切道を指定し、立体交差化、構造改良、保安設備の整備を行うこととしております。

 平成十三年度から平成十七年度までの五カ年間に踏切道改良促進法に基づき新規に指定した箇所は、立体交差化約百九十カ所、構造改良約百九十カ所、保安設備の整備約二百十カ所となっております。また、これらの指定箇所及び平成十二年度以前からの継続箇所のうち、平成十三年度以降五カ年間で対策が完了する箇所数は、立体交差化約百カ所、構造改良約百六十カ所、保安設備の整備約二百五十カ所となっております。

 これらによりまして、平成十三年度以降、交通遮断量の著しく多いいわゆるボトルネック踏切を約三十カ所、そのうち、あかずの踏切箇所を約十五カ所除去するというような予定でございます。

長安委員 ありがとうございました。今、この五年間の進捗状況のお話があったわけでございます。

 一方で、昭和三十六年から平成十六年までの踏切道数、これは一種から四種まで分けたデータもいただいております。四種というのはつまり遮断機も警報機も全くない踏切でございまして、実は、私、踏切に関心といいますか問題だという認識を持っておりましたけれども、現在でも遮断機や警報機すらないものが四千カ所もいまだにあるということには驚いたわけでございます。こういったところは緊急に対応しなければならないのではないかと思っておるわけでございます。

 今、この五年間で指定され、また改良された踏切についてのお話がございました。この中で私少し疑問がございますのが、例えば保安設備、これは平成十六年度末のデータでいきますと、保安設備整備の指定は百五十二カ所に対して、竣工は百二十四カ所になっております。工事中箇所はゼロ。つまり、約三十件が工事もされていないということでございます。こういった点、指定はしたけれども、手がつけられていない、あるいは全く取り組みがなされていないというものがあるということに関して、どのようなお考えをお持ちでしょうか。

梅田政府参考人 平成十三年度から十六年度までに踏切道改良促進法に基づく指定を行った件数は四百七十七件でございます。指定した後、期間が短い、これは踏切道という指定をするだけですから、それから今度は、具体的な計画を鉄道の事業者と道路管理者が地元の意見を聞きながら作成をするという工程が入るわけです。したがいまして、指定後の期間が短い箇所を中心に、平成十六年度時点で六十五カ所について改良工事に着手していないという状況でございました。

 先ほど大臣の方からも申しましたように、約一年もたっておりますから、そのうち、賢い踏切、いわゆる警報時間を短くするという制御装置のついたもの、福知山線二十一カ所済みましたので、現時点ではこれは四十四カ所に減ってきておるところでございます。

 これらにつきましては、いずれも具体の計画の作成を今やっている最中でございます。これは、地元はもちろんでございますけれども、地権者の方々、あるいは地元の御商売をされている方々、いろいろおられますから、そういうような方々、地元の意見をよく聞きながら調整をしていかなければなりません。時間がかかるのはやむを得ない部分もございます。したがいまして、私どもとしては、鋭意、現在行われているものというふうに考えております。

 したがいまして、現時点で、例えば技術上できないとか、あるいは地震とかなんとかあって、天災、不可抗力でできないとか、そういうようなところがあるとは私ども聞いておりません。協議が鋭意進んでいるというふうに考えているところでございます。

 しかしながら、なお、指定後、サボるわけではありませんけれども、熱意をなくすというようなことになっては困ります。我々としては、速やかに実施していただかないといけないと思っておりますし、また、予算とか、あるいは事業者でいいますと経営とか、いろいろ問題があろうかと思います。そういうようなことを考えますと、やはり指定はして、改良をやっているという点につきましてどういう進捗状況であるか、あるいは、もし進捗をしないことについて理由がないのかあるのか、こういうのを問い合わせして、そして必要なら勧告をする、こういう制度を今回の法律でお願いしているわけでございます。

 したがいまして、現在そういう法律はございませんから、極端な議論をいたしますと、そういうことを聞くということは、我々鉄道行政の中で、聞くことは可能でありますけれども、わざわざそれを聞くというようなことは普通はしないというのが一般的だろうと思います。したがいまして、我々といたしましては、こういうような今回の法律の改正を踏まえて、できるだけ早く、指定されたものにつきましても速やかに全部ができるように努力してまいりたいというふうに考えているところでございます。

長安委員 今の御説明をお伺いしますと、要は、平成十三年から十七年に指定したもので、十六年、十七年に指定したものに関しては、時間的にもまだ余りたっていないから、鋭意協議中だけれども、できていないものがあるからという御説明だと了解いたします。

 それで、現在、よくマスコミ等でも報道されます、先ほども質疑の中で出てまいりました、あかずの踏切あるいはボトルネック踏切というものが話題になりますけれども、直近のデータで何カ所ずつあると御認識されておりますでしょうか。

柴田政府参考人 あかずの踏切につきましては、ピーク時間帯一時間当たりの遮断時間が四十分以上の踏切でございますが、現時点で六百カ所、それから自動車の交通量が著しく多いという踏切が五百カ所、これら合わせまして千百カ所をいわゆるボトルネック踏切というぐあいに呼んでおります。

長安委員 本法は五年ごとに改正されているわけでございます。前回、平成十三年度に改正されたわけでございますけれども、そのときの附帯決議、全国に存在する約一千カ所の交通遮断量の著しく多いいわゆるボトルネック踏切を、今後十年間で半減することを目標にすると書かれております。この当時、約千カ所あったわけでございますけれども、これの取り組みについては現在どうなっておるでしょうか。

柴田政府参考人 前回、平成十三年度の踏切道改良促進法改正時の衆議院の国土交通委員会では二項目の附帯決議をいただきましたし、参議院の国土交通委員会では五項目の附帯決議がなされました。

 この中では、今委員御指摘のように、全国に存在する約千カ所のボトルネック踏切につきましては、「十年間で半減することを目標に、当面五年間着実に実施できるよう努めること。」というぐあいにされております。

 この対策でございますが、ボトルネック踏切につきましては、連続立体交差事業等によります踏切の抜本的な解消や、警報時間の制御装置の設置によります遮断時間短縮といった対策を進めるとともに、迂回路となります道路立体交差化の整備など道路網の体系的な整備による踏切交通の転換等を進めてまいりました。

 これらの対策によりまして、平成十一年調査においてボトルネック踏切であるとされておりました約千カ所のうち、平成十六年調査時点で引き続きボトルネック踏切となっている踏切は、約三百二十カ所減少いたしまして六百八十カ所となってございます。

 しかしながら、先ほど申しましたが、現時点、平成十六年度の調査では約千百カ所がボトルネック踏切となってございますが、これは、その後の郊外への通勤範囲の拡大等に伴う鉄道運行の増強や道路交通量の増大などによりまして、新たにボトルネック踏切に該当するものとなった踏切も多数出てきたという状況でございます。

 今後、さらなる対策の強化が必要と認識しておりまして、抜本対策、速効対策の両輪によります各種の取り組みをこれまで以上にスピードアップしまして、ボトルネック踏切の解消を進めていきたいというぐあいに考えております。

長安委員 今お話ございました、千カ所のボトルネック踏切を十年間で半減するというのがこの附帯決議でございました。この中で、この五年間の取り組みという意味では、三百二十カ所、ボトルネック踏切の解消をされたということでございます。一方で、先ほどのお話ですけれども、現在まだ千百カ所もボトルネック踏切があると。三百二十カ所については確かに対策は打ったけれども、住民の方々にとってみたら、いまだに千カ所以上のボトルネック踏切が存在している。

 今の御説明では、確かに、今まで予想できなかったところに新たにボトルネック踏切が生まれてしまったから数が減らなかったというか、ふえたわけでございますけれども、果たしてこの附帯決議の趣旨というのはそういう趣旨であったか。全国にある千カ所のボトルネック踏切を半分に減らすように努力する、つまり、ふえる分も含めて半分の五百にするというのが趣旨であったはずです。そういった意味では、この附帯決議が本当の意味で真摯に守られてきたのかというのは疑問であるわけでございます。

 何とかこのボトルネック踏切を減らすべく、今後も国土交通省として御尽力賜りたいと思う次第でございますけれども、これは見通しできるかわかりませんけれども、今後、さまざまなIT技術も進んでおります、そういう中にあって交通のシミュレーションというのも容易になってきた、そういう中にあって、例えば半減をするのにあと何年ぐらいかかればできそうだというものがもし見通せるのであれば、御答弁賜りたいと思います。

柴田政府参考人 ボトルネック踏切の解消につきましてあと何年でということでございますが、あと何年ということをここで直ちにお話しすることはできないわけでございますが、先ほどから御答弁申し上げておりますように、連続立体事業だとか交差事業でございますとか、道路の立体交差事業等によりまして踏切を解消するという抜本的な対策、それからまた、歩道を拡幅するだとか踏切の精度を上げるといったような速効的な対策、これらをあわせまして、できるだけ一日も早く効果が上がっていくようにしていきたいと考えてございます。

 また、連続立体交差事業等につきましては、事業の進展がさらに進捗できますように、無利子貸付制度あるいは立てかえ施行制度というものも来年度予算でお願いいたしているところでもございますし、それから事業の重点化も、ボトルネック踏切事業等に今後重点化を進めることによりまして、スピードアップを進めていきたいというぐあいに考えております。

長安委員 今まで、踏切に対してはさまざまな対策がとってこられた。しかしながら、このボトルネックに関しては、半減という目標、いついつまでにと言うのはなかなか難しい、期限を切るのは難しいというのも、今の御説明でも十分わかるわけでございます。

 大臣、ここでぜひお伺いしたい。

 やはりボトルネック踏切というのは、経済的にも損失が多い、また、国民の皆さんにとっても生活の利便性を損なっているというわけでございます。そういう意味で、この踏切対策に対する今後の取り組みの基本的な考え方、また大臣の御決意というものをお伺いしたいと思います。

北側国務大臣 今委員の方からおっしゃったように、この踏切対策というのは極めて重要性がある、また緊急性があるというふうに考えております。優先度の高い事業として、しっかり取り組みをさせていただきたいと思っております。

 現在、踏切交通実態について総点検を実施しております。それをもとにして、これから五カ年の整備計画を道路管理者また鉄道事業者の方でつくっていただくわけでございますが、緊急対策をしなければいけない踏切二千百カ所、この二千百カ所について、しっかりとスピードアップをさせていただきたいというふうに思っております。

 まず、抜本対策をすべき箇所につきましては、連立事業等でございますけれども、これまでの、確かに連立事業というのは費用もコストも時間もかかるわけでございますけれども、このスピードを二倍にしていきたい、踏切の除却ペースを二倍にしていくということを目標に進めていきたいというふうに考えておりますし、また、歩道拡幅等の速効対策をすべきところについては、この五年間ですべて対策をしていくということで進めさせていただきたいと思っております。

 いずれにしましても、スピードアップをすることが大事だと思いますので、しっかりと取り組みをさせていただきたいと考えております。

長安委員 今大臣から御決意をいただいたわけでございます。

 政策評価という意味では、確かに今までボトルネック踏切に対して国としても取り組んでこられたけれども、実際は、ボトルネック踏切の日本国内における数というのは減っていない。少量ではございますけれども増加しているという現状を考えると、やはりスピードアップを図っていかないといけないわけでございます。まさに国が取り組んできたことというのは、結果だけを見ると、何もやっていないじゃないかと言われてもしようがないわけです。確かに三百二十カ所やったけれども、実際はふえているわけです。これはやはり何とかスピードアップを図っていただいて、目に見える形で、国民が、ああ、国のおかげでこれだけ踏切がよくなったと思えるような、実感が持てるように取り組んでいただきたいと思う次第でございます。

 先ほど同僚の委員の方からお話もございました、竹ノ塚駅の踏切事故から約一年が過ぎようとしているわけでございます。この事故について、まず概要をお伺いしたいのと、事故後の鉄道事業者に対する国土交通省、国としての指導状況、また緊急対策の概要等についてお伺いしたいと思います。

梅田政府参考人 昨年三月の十五日、東武鉄道伊勢崎線竹ノ塚駅構内の踏切におきまして、列車接近中に踏切保安係が遮断機を上昇させたことによりまして踏切の通行者が列車にはねられ、二名が死亡、二名が負傷するという痛ましい踏切障害事故が発生いたしました。亡くなられた方々には哀悼の意を表しますとともに、おけがをされた方々の回復を願っているところでございます。

 私ども国土交通省といたしましては、事故発生後、直ちに関東運輸局の職員を現地に派遣いたしまして、調査を行いました。また、東武鉄道に対しまして、事故の原因究明、再発防止の指示をいたしました。あわせまして、全国の手動踏切を有する鉄道事業者に対しまして、踏切保安係による踏切遮断機の確実な操作の徹底について指示をしたところでございます。

 東武鉄道といたしましては、事故後の緊急対策といたしまして、当該踏切を含む竹ノ塚駅付近の踏切二カ所における歩道の拡幅を六月に行いまして、それから九月に、同駅の自由通路のバリアフリー化のために駅西口へのエレベーターの設置を行いました。現在、年度内完成を目指しまして、横断歩道橋の設置工事を進めているところでございます。

長安委員 今お話はございませんでした、この踏切自身は、手動の踏切だったものを自動化したということも入っておるわけでございますよね。

 この踏切の事故を考えたときに、確かにこの踏切の保安係員の方が、ある意味、操作を誤ったといいますか、安全規程に従わずに踏切を上げてしまったということが一義的な原因であるわけですけれども、一方で、こういった手動の踏切を放置したということは否定できないわけでございます。そういう意味では、こういった竹ノ塚踏切のような手動踏切に対して抜本的な対策、改良の対策というものを打っていかなければいけないのではないかと思いますが、その辺の御所見はいかがでしょうか。

梅田政府参考人 竹ノ塚の駅構内の、先ほど申しました十七年三月における踏切事故の時点で、全国の第一種踏切道約三万五百カ所のうち、手動式の踏切道は五十九カ所ございました。そのうち、竹ノ塚の踏切のような、先ほどから言っていますピーク時一時間に四十分以上踏切が閉じてしまう、いわゆるあかずの踏切は六カ所ございました。現在のところは、先生御指摘のとおり、竹ノ塚駅の構内を含めまして三カ所自動化されておりまして、現在、手動の踏切は五十六カ所になっております。そのうち、あかずの踏切につきましては、東京に二カ所、名古屋に一カ所ございます。

 手動式の踏切につきましても、このあかずの踏切以外の踏切につきまして、一番多いのは、JR貨物が持っております二十九カ所の踏切でございます。そのほか、例えばメーカーの踏切であるとか、いろいろございます。こういう踏切につきましては、一日一回しか通らないとか、あるいは、メーカーなどにつきましては出荷のときにしか使わないとかいうようなケースがございまして、具体的にどういうふうにしてやるかといいますと、係員が踏切のところまで乗っていきまして、列車からおりて踏切を遮断して、列車が通ったらもう一回踏切をあけに来るというようなやり方をしております。こういうのがほとんどでございまして、竹ノ塚のような問題になっているのは先ほど言った三カ所でございます。

 先ほど言いましたように、したがいまして、一般的に考えますと、各事業者において定められたマニュアルどおり確実に操作をすれば問題はないわけでございますけれども、こういう手動につきましては、やはり人がやるものでございますから、もう一度注意喚起を促す通達を出したところでございます。

 私どもといたしましては、残りましたあかずの踏切の三カ所につきましても、歩道橋の設置等線路の横断手段の確保等の取り組みとあわせまして、自動化を図ると同時に、抜本的な改良に努めるように事業者を指導しているところでございます。

長安委員 今お話しいただきまして、マニュアルどおりに行われることが重要だというお話がございましたけれども、人間というのは誤りをするものでございます。つまり、ヒューマンエラーというのはなかなか防げないわけでございます。安全規程で二重、三重の安全策が講じられても、当然、ヒューマンエラーというのは発生してしまうわけでございます。

 一方で、今回この法律が改正されるわけでございますけれども、今の竹ノ塚の踏切の対策を見ますと、要は手動から自動にかえた、これでまず抜本的な改良はなされたわけでございますけれども、このような踏切を、例えば手動のものを自動にかえなさいということで、この法律では指定できないんですね。つまり、指定もできないから、当然勧告もできない、鉄道事業者任せになってしまうわけでございます。

 そういう意味では、こういった踏切に対しても、国がもう少しリーダーシップを発揮して、改良をできるように、本来この法律の中に入れるべきではなかったのかという疑問を私は持っているわけでございます。やはり自動化することによって、先ほどの竹ノ塚の踏切の問題も恐らく大部分が解消されていくわけでございますから、法律の中にないという状況であっても、ぜひ国土交通省としては、鉄道事業者と鋭意御相談といいますか協議していただきまして、手動の踏切の中でも特に交通量の多いものに関しては緊急で取り組むようにしていただきたいと思う次第でございます。

 一方で、この竹ノ塚の踏切事故に関しましては、航空・鉄道事故調査委員会の調査対象とはなりませんでした。これは、事故調が調査に入る基準というものが、ある意味しゃくし定規になっているのではないかという気がいたします。

 今回の踏切に関しても、もし車が入っていれば、一人や二人のけが人、死傷者で済むような事故ではありません。それを考えたときに、可能性ということを考えるとかなり危険な可能性をはらんだ事故であったと私は考えているわけでありますけれども、そういう意味では、事故調が入って客観的、専門的な調査分析というものが必要な事案であったのではないかと考えておりますけれども、御所見はいかがでしょうか。

梅田政府参考人 航空・鉄道事故調査委員会が調査を行う事故というものにつきましては、同委員会の設置法に基づく省令に規定されております。具体的に申しますと、今の、列車衝突事故、脱線事故、火災事故、踏切障害事故などなどでございます。踏切障害事故等につきましては、乗客、乗務員等に死亡が生じたもの、五人以上の死傷を生じたもの、特に異例と認められるもの、こういうものにつきましては事故調査の対象になるというふうに規定されているところでございます。

 今回は四名の死傷者の事故でございまして、大変痛ましい事故ではございました。法令の定める調査対象には、先ほど申しましたように該当しておりません。また、先ほど申しましたように、事故の原因というのは踏切保安係の運転取り扱いの誤りであるということがほぼ明白でありました。したがいまして、事故調査といいますのは事故原因を究明して再発の防止を図るということの調査でございますから、原因が明らかで再発策が比較的とりやすい事故であろうかと思います、したがって、事故調の調査対象にならなかったのではないかというふうに推測しているところでございます。

 私ども国土交通省といたしましては、事故発生後に関東運輸局の職員を派遣して、現地調査を行いました。また、関係者からもヒアリングを行いました。また、私自身も二度ほど、その後でございますが現場を視察し、事業者からも直接話を聞いたところでございます。したがいまして、そういう知見の中で、今回の事故原因は比較的明白であるというふうに思ったところでございました。

 こういう調査の結果を踏まえまして、三月の十七日でございますが、先ほど言いましたように、東武鉄道に対しまして事故原因の究明あるいは再発防止を指示いたしました。また、先ほど申しましたように、踏切遮断機の確実な操作の徹底について指示をして、再発防止を図っているところでございます。

 その後、東武鉄道におきましては、この指示に基づきまして、みずからの原因究明の結果と再発防止策を取りまとめて、私ども国へ報告しているところでございます。私ども、当然、この報告を受けまして、その内容が適切かどうか審査いたしました。また、足らないところ等については質問をいたしまして、ただして、そして必要な指導をしたところでございます。

 私どもといたしましては、今回のような事故調査の対象にならないような事故につきましても、必要に応じまして、独自に、原因究明と再発防止が必要であるというようなものにつきましては調査をしてまいります。私どもの目的は再発防止でございますので、この再発防止にとって必要な調査というのはやってきておりますし、今後もやっていきたいというふうに考えているところでございます。

長安委員 今、鉄道局長から御答弁いただきました、再発防止が一番重要だというお話がございました。ただ、私が申し上げたいのは、再発防止が一番重要なんじゃなくて、未然に事故を防ぐことが一番重要なわけでございます。

 今のお話でいきますと、要は、国交省さんの考えとしては、この法律では手動のものを自動にしろなんという指定もできないし、ただ単に、保安員の方が単純なミスを犯したから事故が起こってしまったと。確かに、事故なんというのは、基本的には単純なミスが積み重なって起こることが大半なんですよ。こういった危険な踏切をいち早く改良して、例えば自動化するというようなことがなされていなかったということが実はこの事故のそもそもの原因じゃないかということは、私が考えてこの事故に関して感じることです。

 そういう意味では、客観的にこの事故を分析しないといけないと思うんですね。今のお話は、あくまでも国交省さんの内部で、現行法令が、踏切改良促進法ですか、これしかないから、この範囲内では、それはもう保安員の方の責任ですよ、次はしないように安全基準をしっかりしてもらって、ルールを守ってもらえばいいんですよと。それは再発防止にはなるかもしれないけれども、未然には防げないです。

 未然に防ぐためには、こういった踏切をなくさないといけないんじゃないかというのを、本来、事故調が国交省の傘下じゃなくて独立した機関であって、分析し、こういった法整備が必要じゃないかという提言をするのが国のあるべき姿ではないでしょうか。

 私は、この事故調の問題については、十日にも審議が行われるわけでございますので、これぐらいにさせていただきますけれども、まずは事故を未然に防ぐという観点から、今後、事故調の組織のあり方も考えていかなければならないと思うわけでございます。

 先ほど、踏切道の指定のされたものの実績も一番最初のところでお伺いいたしました。指定されたもののうちで、当然、一〇〇%が達成されているわけじゃない。それは、先ほども局長からお話しいただいたように、十六年、十七年、つまり、五カ年の終わりの方で指定されたものは時間が足りないからだというお話です。

 一方で、この法律は、昭和三十六年から五年ごとに繰り返し繰り返し延長されてきたわけです。そのごとに五カ年を指定してきたわけです。同じ法律をただその年度を変えるだけで何度も何度も改正していくというこの手間は、果たして有効なのかという気がいたします。おまけに、この五年というのは、あくまでも五年の間に改良しなければならない踏切を指定しますよというだけなんですよね。

 それであれば、法律の趣旨自体を変えて、指定されたものに関しては指定されてから五年以内に改良しなさいという条文にしてやれば、もうこの法律を改正する必要はなくなるんじゃないですか。そういった考え方もあっていいのではないかと思うわけですけれども、御所見を賜れますでしょうか。

梅田政府参考人 先ほど申しましたように、指定をした後、具体的な整備計画を鉄道事業者とそれから道路管理者が相談をしながら、協議しながらつくっていくというのが現在のシステムであります。

 御承知のとおり、一番いいのは踏切をなくすことですね。そのためには立体交差化をすることです。これは一番望ましいことだと思います。しかしながら、実際に、問題となっているような踏切につきましては非常に長い時間がかかります。

 なぜ長い時間がかかるかというと、これは釈迦に説法かもしれませんが、やはりそこの地域に住んでいる方々の御意見を踏まえながらやらないといけません。地面を買うということも必要なことになります。土地を確保するということも必要になりますし、また、その地域で御商売されている方々もたくさんおられます。人の流れが変われば商売のやり方も変わってまいります。そういうことを考えますと、よくよく意見を聞きながら計画をつくっていくということが大切なことでございます。

 したがいまして、指定をして何年以内にやり上げてしまえというようなのは、理想的ではありますけれども、現実に動かそうとした場合にはなかなか困難を伴うと思います。

 また、都会においては、連続立体交差事業、一カ所当たり平均的には四、五百億、もっとかかるところはたくさんありますけれども、と言われております。これを支出していくということになりますと、地方公共団体あるいは道路管理者等の負担というのはかなりのものになってまいります。一挙にやるということは、実際問題としてなかなか現在のような状況では難しい部分もございます。鉄道事業者の負担も大変でございます。そういうことを考えますと、やはりある程度時間がかかるという部分はやむを得ない部分があるかと思います。

 しかしながら、先ほど大臣が申しましたように、そうした部分も、事業者のしりをたたいて、国土交通省が主導的にスピードアップを図っていくというような施策によって、できるだけ早く抜本的な対策を講じていくということだろうと思います。

 そういう意味で、私ども、この法律は時限法になっておりますが、五年ごとにその施策をチェックしながら、そのときそのときの時代に応じて施策を展開していくというのは非常に意味のあることだろうというふうに評価しているところでございます。

長安委員 ちょっと議論がかみ合っていないような気がいたします。要は、私が申し上げたいのは、立体交差事業を五年でやれと指定したら、五年でできるわけないじゃないですかと今お話しですけれども、当然そうです。だからこそ、指定をしてから五年と言いましたけれども、当然、守れないものもあるのであれば、例えば指定準備期間を最初に設けるのかわかりませんけれども、めどが見えた時点で五年という指定をつけてやればいいわけです。

 要は何かといいますと、同じ法律を五年ごとに更新していかないといけないというような、小泉総理は小さな政府というのをおっしゃっておりますけれども、これはまた五年後、同じように、我々は国土交通委員会でレクを受けて質疑をしないといけないわけですよね。それは果たして効率のいい政府と言えるのかという気がいたします。

 そういう意味で、指定の仕方は、先ほどもお話がありましたように、それは法制局と御相談いただいて、テクニカルな部分で幾らでも実効性のある法律に変えられると思います。それを変えるということで、次回の、平成二十三年ですか、変えるときにはそういった取り組みも検討していただきたいなと思っておるわけでございます。

 今回のこの改正案の中では、歩行者等の立体横断施設の整備というのが新たに追加されたわけでございますけれども、この追加された理由というのをお伺いしたいと思います。

梅田政府参考人 今回、歩行者等立体横断施設の整備をメニューとして追加いたしました。これは、歩行者あるいは自転車の方々の事故防止、あるいは交通の円滑な確保という観点からの有効な対策として考えたものであります。

 踏切内の歩行者の通行帯、歩道ですね、これが拡幅されるということは現在の構造改良の中でもやっておりますけれども、こういうことと相まちまして、歩行者が安全、円滑に通行できるように、こういう立体的な横断施設の整備を図るというようなことをメニューにしたものでございます。そういたしますと、踏切道におきまして、通行する歩行者等の数が減ります、また自転車等の数も減りますし、自動車とのふくそうも減るということで、円滑に流れていくということになります。

 私ども、この整備を改良のメニューの一つとして追加したわけでありますけれども、この整備につきましては、今後、鉄道事業者あるいは道路管理者の間で、個別具体的な踏切におきまして、一番適切な場合には採用されていく方法だろうというふうに考えております。

 この横断歩道橋等の整備によりまして、このメニューをふやすということによりまして、より一層速効的な対策が展開できるというふうに期待しておりますので、今後とも、歩行者、自転車の安全性の確保のために、こうした施策の展開を図っていきたいというふうに考えているところでございます。

長安委員 今、速効的な対策だというお話がございましたけれども、一番適切なというお話がございました。本来、踏切というのは立体化されて、除却、つまり踏切がなくなるのが一番安全なわけでございます。そういう意味では、立体交差というものは時間がかかるから、中長期的には立体交差だけれども、緊急に安全性を上げるという意味では、歩行者の立体横断施設というのをつくるのがいいという御説明だと理解いたします。

 私も、昨日も国土交通省の役人の方々とお話をさせていただきましたけれども、先ほど大臣のお話から、緊急対策を要する踏切が今のところ二千百カ所あるというお話がございましたけれども、今局長からお話のあった立体横断施設の整備というのは、その中でどの程度が対象になるというお考えでしょうか。

谷口政府参考人 お答えいたします。

 平成十六年度のデータで見ますと、前後の道路には歩道が整備されているにもかかわらず、踏切において、前後と比べて歩道幅員が一メートル以上狭いものや、歩道が全くないものが約一千二百カ所存在しております。また、自転車、歩行者の通行数が多く、緊急に対策が必要と思われる踏切は、全国に約七百カ所あるものと認識をしております。

 現在、全国の道路管理者及び鉄道事業者の協力のもとに、すべての踏切、三万六千カ所でございますが、その踏切を対象に踏切交通実態総点検を実施させていただいております。この総点検の結果を踏まえ、道路管理者と鉄道事業者に策定していただく五カ年の整備計画において、今お尋ねの歩行者等立体横断施設の整備対象が明らかになってくるというものと考えておりまして、年度末を目標にさせていただいているということでございますので、現時点で、まだ幾らというようなことをはっきり申し上げる段階ではございません。

長安委員 ありがとうございました。

 今回、この法案では、踏切の改良に従わない場合、勧告をするとか、あるいは、改良の報告徴収制度というものを追加するということが書かれておりますけれども、その理由をお伺いしたいと思います。

 また、鉄道事業者あるいは道路管理者がこの勧告に従わない場合、どのような対応が想定されているのか、御説明いただきたいと思います。

梅田政府参考人 踏切道改良促進法は、大臣が改良が必要と認めた踏切道を指定いたしまして、立体交差化計画等の作成、提出、その実施を鉄道事業者、道路管理者に義務づけている制度であります。

 しかしながら、これまでも、計画が作成されましても、実際の改良実施に着手していないというケースがございましたし、また、これからも、いろいろと踏切道をめぐります状況を考えますと、改良の実施が速やかに行われないということもあり得るというふうに思っております。

 そういったことを踏まえまして、今回の改正におきましては、鉄道事業者、道路管理者に対しまして、改良を実施すべき旨の勧告ができるという規定を規定いたしますとともに、実施状況についても報告徴収ができるという規定を設けまして、踏切道の確実な改良の実施を図るというのが今回の制度を設ける趣旨でございます。

 今回の改正におきまして、こうした場合、鉄道事業者や道路管理者が勧告に従わないという場合におきましては、鉄道事業法または道路法に基づきまして、国土交通大臣は鉄道事業者に対しては事業改善命令、道路管理者に対しては必要な処分の指示等を行うことができるように、法律上、明定いたしております。

 こうした措置によりまして、一層確実な実施が図れるものというふうに思っているところでございます。

長安委員 ありがとうございました。

 最後に、今回の踏切道の改正案で関心が持たれているといいますか、今後指定されていくというような踏切というのは、やはり、遮断時間が長い、あるいは交通量が多い、また人の通行が多い、こういった踏切が中心になると思います。

 一方で、私の地元のような地方では、当てはまる踏切はないのかなという不安を持っております。地方では、逆に、交通量は少ないけれども、中途半端なといいますか、車が通れるけれども、また人も通れる、ただ、車が通った横を雨のときに傘を差して通ると車に傘が当たるような踏切というのも多々あるわけです。この踏切を渡らないと駅に行けないというようなところも私の地元ではございます。こういったところをいかに改良していくかということも重要なわけです。交通量の多いところでも、交通量の少ないところでも、人一人の命の重さというのは同じはずなんですね。

 一方で、こういった地方の踏切を改良しようとすると、大臣の指定を受けるわけでもない、また、鉄道事業者もなかなかコスト負担というのが重い。そういう中にあって地方自治体もなかなか、後ろ向き、インセンティブが働かないという状況であります。

 こういった地方の踏切に対する取り組みも含めて、大臣の御所見を賜りまして、私の質疑を終わらせていただきたいと思います。

北側国務大臣 これは、抜本的には、道路と鉄道とかが交差をしない、やはり連立事業をしていくことが一番いいわけでございますけれども、そうはいっても、これには費用もコストもかかる。やはり優先順位というもので、急ぐべきところからやっていくということにならざるを得ないというふうに思っております。

 ただ、決してそういう都市部だけを念頭に置いているわけじゃございませんで、例えば歩道が狭い踏切というのがございます。これは当然、地方にもたくさんあるわけでございますが、こういう歩道が狭い踏切だとか、それから歩行者交通の著しい踏切というのは、やはり地方都市なんかに行きましたらあるわけでございます。

 そうしたところについては、やはり緊急に安全確保を図っていかないといけないというふうに考えているところでございまして、先ほど申し上げましたように今総点検をやっておりますが、こういう歩道が狭い踏切、また歩行者交通の著しい踏切で、なかなか抜本対策までいかない、連立事業までいかないというふうなものにつきましては、この十八年度からの五カ年間ですべて対策はとっていくというふうに考えているところでございます。

長安委員 今、ちょっと大臣から歩道の狭い踏切というお話がございました。これはただ、国土交通省さんの考えとしては、進入路よりも歩道が狭くなっている踏切というのがお考えだと思います。ただ、地方の場合はそうじゃなくて、進入路も狭いし中も狭い、そういうのがやはり危ない踏切だと私は同様に思うわけであります。そういったものにも柔軟に対応していただいて、抜本的にこの踏切の改良、最後は除却になればいいわけでございますけれども、全力で取り組んでいただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

林委員長 森本哲生君。

森本委員 民主党・無所属クラブの森本でございます。

 本日議題となっております運輸の安全性の向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律案につきまして、去る二月二十八日の衆議院本会議で行いました私の質疑の追加というようなことでよろしくお願いをいたします。

 先ほど長妻理事も触れられましたが、今週月曜日に、長妻理事と三日月理事とともに、三月の十五日、四名の方が死傷された竹ノ塚駅の踏切事故の現場周辺の視察に行ってまいりました。

 事故現場は複々線化となっております。私は、犠牲者の方々が立っておられた遮断機の前、つまり外側の上り線側に立ってみましたが、目の前を、時速九十キロ以上であろうと思うんですけれども、通過する列車のスピードに大変驚く思いでございました。列車は踏切通過直前に竹ノ塚駅駅舎の屋根下を通るわけでございますが、このときに、一瞬ではありますが陰になって、やはり歩行者からは視界に入りづらくなって危険回避がおくれた、その結果、痛ましい事故を招いてしまったのだというふうに思います。二度とこういう事故を繰り返してはなりませんが、政治の責任の大きさも同時に痛感したところでございます。

 事故から既に一年がたとうといたしておりまして、今や踏切の遮断の開閉は既に自動化されておりますし、踏切支障報知装置や線路別の列車接近方向灯が設置されるなど、事故現場はかなり改善がされてきております。事故発生の踏切道には今年度内に歩道橋も設置するというようなことで、工事が急ピッチで進められておりました。

 さて、今回の法律案のスキームは、踏切道の改良促進法の一部改正が行われて、連続立体交差事業に係る無利子貸付制度も創設をされているということでございます。

 過日の視察の際には、東武鉄道の鉄道事業本部から担当責任の方がお越しをいただいて、意見交換をさせていただきました。立体交差事業のスケジュールは確定的になっているかというお尋ねをいたしましたところ、まだ未定であるというような答えが返ってまいりました。また、無利子貸付制度が導入されたらすぐに借り入れを行う考えがあるかということも担当者にお尋ねをさせていただいたところ、現時点では何とも言えない、そういうようなお返事でございました。制度がどのようなものかよく見きわめたいという、鉄道事業者としての最終判断もまだできかねているというような印象を受けたのが正直な気持ちでございます。

 事故のあった竹ノ塚第三十七号の踏切は、将来的には立体交差化をするということが究極の目的でありますが、これについては、現在、東武鉄道と東京メトロ、足立区、東京都、国土交通省が中心になって、竹ノ塚駅付近道路・鉄道立体化検討会が立ち上げられたことによりまして、鋭意検討がなされているものと認識をいたしております。

 そこで、大臣にお尋ねをいたしますが、平成十八年度予算案では、踏切道対策の予算が三千七百七億円、うち連続立体交差事業が事業費ベースで千七百六十七億円となっておるわけでございまして、まず、年度予算としてこれが妥当なものであるかどうか。

 さらには、先ほど長安議員も質問されましたので、ここのところは簡単で結構でございますけれども、ボトルネック踏切対策として、どのような基準で全国約千三百カ所の速効対策、約千四百カ所の抜本対策を区分しているのかということ。抜本対策が完遂するには、これも今議論ありましたが、どのぐらいの期間、十年、二十年置いておるのか、今もう急ピッチで、スピードアップでというような回答でございましたけれども、そのことについてもお尋ねをさせていただきますので、ダブるところは省略していただいて結構でございます。

 そしてまた、ちなみに、竹ノ塚駅の第三十七号の踏切は、三十八号は少し拡幅をしておるようでございますが、事故後、歩道が拡幅されたと報告を受けておりましたが、実際見てみますと、それは踏切道の外側に向けて拡幅したものではなく、内側に、つまり車道の方を単に狭くしたということがわかりました。自動車事故もあることを総合的に考えると、これで緊急対策、踏切対策と言えるのかという疑問も同時に持ったわけでございますので、この点についてもお伺いをさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

北側国務大臣 この竹ノ塚駅のすぐそばの踏切での事故、もう早いもので一年たつわけでございますが、私も昨年、事故後、またその後、二度現場に行かせていただいております。また、足立区の区長、地元の住民の方々等々とも何度か国土交通省で私も入りまして協議もさせていただき、連続立体交差事業に向けて、国土交通省もしっかり入らせていただいて協議会をやっていこうということで決めさせていただいたわけでございます。

 その後、何度も協議をさせていただき、当面の対策として今委員のおっしゃっていただいたさまざまな取り組みをさせていただき、これはほぼ年度末に終わるかと思いますが、連続立体交差事業についても、鋭意、関係者の方々と精力的に論議を進めさせていただきたいというふうに考えているところでございます。

 この予算につきましては、今委員のおっしゃっていただいた数字でございますが、国土交通省全体の予算自体は減っているわけですね。そういう中で、この踏切道対策、さらには連続立体交差事業につきましては、前年度以上の数字を確保させていただいております。これは、この事業というのが極めて重要性がある、優先順位が高いというふうに私ども判断しているからでございまして、ぜひ、もっとつけばいいんですけれども、精いっぱい取り組みを予算面においてもさせていただいているんだということも御理解をお願いしたいと思っているところでございます。

 また、今回の改正におきまして、無利子貸付制度も創設をさせていただきますし、また自治体の方がなかなか出せないというふうなこともよくあるんですね。そういうことで、資金面、それから地方公共団体の体制面も支援をしていこうということで、立てかえ施行制度について、竹ノ塚の問題でいえば東武ですけれども、鉄道事業者に限定されていた立てかえ施行者の対象を、特別目的会社や第三セクターなどに拡大するなどの充実も図らせていただいているところでございます。

 こうした制度の拡充だとか予算の確保によりまして、連立事業を初めとする踏切対策をしっかりと推進させていただきたいと思っております。

 今の竹ノ塚の件につきましては、都市局長の方から答弁をさせていただきます。

柴田政府参考人 竹ノ塚の踏切の関係でございます。

 これにつきましては、緊急的な対策につきまして事故発生後直ちに取り組んでまいりまして、踏切の自動化だとか歩道の拡幅だというものに取り組んでまいりまして、今年度いっぱい、今月中に緊急対策が終わるということにいたしているわけでございます。

 それはそれといたしまして、抜本的な対策ということも必要であるというぐあいに考えてございまして、委員の方からも御指摘ございましたけれども、現在、東京都の方も、この地区につきましては、踏切事故の発生を受けまして、東京都に対しまして国の方も立体交差化の検討を急ぐように指示、要請をいたしたところでございまして、委員の方から御指摘のございますように、昨年六月に東京都、足立区、東武鉄道等に国土交通省も参画する形で竹ノ塚駅付近道路・鉄道立体化検討会が発足したところでございまして、現在、立体交差の形式や駅周辺のまちづくりについて検討を行ってございます。

森本委員 ありがとうございました。

 さらに、これは局長になろうかと思うんですけれども、竹ノ塚駅の付近道路と鉄道立体化の検討会の今後の議論の方向性とか、国土交通省としてどのような政策ビジョンと展望を持って対応されていくおつもりなのか、とりわけ竹ノ塚の踏切事故は全国的に大きな問題提起をいたしましたので、そういった意味から、簡単で結構でございますので、よろしくお願いいたします。

柴田政府参考人 先ほど御答弁いたしました検討会でございますが、これは六月に立ち上がってございます。その下に幹事会をつくりまして、幹事会で立体化に係る技術的な課題等について整理、検討を行ってございます。また、あわせて行うべき周辺地区におけるまちづくりの方向性、こういうものをどうやったらいいのかということについて検討を行ってございます。

 現在までこの幹事会を二回行っております。今後さらに、この検討会、幹事会を詰めていきまして、できるだけ早く結論が出る方向に行くものと考えてございますが、国土交通省といたしましても、東京都、足立区に対しまして、この検討会等の場を通じまして技術的助言等をしておるわけでございますが、これらによりまして、立体交差化の具体化に向けた検討が進むよう適切に支援してまいりたいというぐあいに考えてございます。あくまでも、東京都、足立区、地元の検討会、これらに対して支援をしていきたいというように考えております。

森本委員 先ほどの速効対策と抜本対策、これは通告はしておらないんですけれども、年数的なことが、このまま十八年度予算ベースでいくと大体どのぐらいになっていくか、その辺もお答えはできませんか。

柴田政府参考人 先ほど、速効対策と抜本対策、それぞれどういう基準かというお話がございました。

 二千百カ所、緊急対策踏切を確定いたしている、公表いたしているわけでございますが、まず、あかずの踏切として約六百カ所、自動車交通の著しい踏切として約五百カ所、歩行者交通の著しい踏切として約三百カ所、それから歩道が狭隘な踏切として約七百カ所、これで合わせまして二千百カ所でございまして、これらにつきまして、地域の実情に合わせた五カ年の整備計画等がこれから策定されていくわけでございます。

 それで、先ほども大臣の方から御答弁申し上げましたが、速効対策といたしまして、このあかずの踏切の六百カ所と歩道が狭隘な踏切の七百カ所、千三百カ所を対象に歩道拡幅等をやってまいりますが、五年ですべての対策を終えたいというように考えてございます。

 また、あかずの踏切部分につきましては、抜本対策と速効対策、両方あるわけでございますが、あかずの踏切六百カ所と自動車交通の著しい踏切五百カ所、歩行者交通の著しい踏切三百カ所、これらにつきましては、千四百カ所の抜本対策をやっていこうと考えておるわけでございまして、連立事業等によりまして踏切除去をやっていくわけでございますが、この踏切の除去のペースを、今後、現在のペースの二倍にふやして、できるだけスピーディーに進めていきたいというぐあいに考えてございます。

森本委員 質問が悪かったかわかりません、先ほどその回答は私も聞いておりましたので。

 全国的にこの踏切の改良、いわゆる改善が大体どのぐらいの程度で、何年間ぐらい、十年、二十年かかると思うんですけれども、どの程度でできるかというようなことを、また後で結構でございますので資料でいただけたら、もうこの点については終わりますので、ちょっとダブったような格好で申しわけなかったと思っております。

 今回の法律案でございますけれども、大臣、鉄道営業法の一部改正が含まれておるんですけれども、無通告で恐縮なんですけれども、この鉄道営業法の条文はお目通しにはなっていられますか。続いて、私、今回のこの質問をするに当たりまして、恐らく全文は読んでいただいておらないと思うんですが、ちょっとこれはどうかなというところを指摘だけさせていただきます。事業法とは別に営業法が定められておりますので、気になったわけです。

 明治三十三年制定の法律ということもあって、条文内容が現代に適合しないというふうに思うところがありました。例えば、第十五条二項で「乗車券ヲ有スル者ハ列車中座席ノ存在スル場合ニ限リ乗車スルコトヲ得」と。これは、客貨混合列車が今はございませんので無意味な規定であろうかというふうに思わさせていただいておりますのと、さらに、禁煙の場所でたばこを吸ったり、女性用待合室に無断で入ったら科料を科すとの規定や、伝染病患者や重病人の乗車については社会防衛という観点から規律されているなど、道徳レベルで語られるべき事柄を法律で強制しようとするような、背景には国家主義的な政策、思想がうかがえるようなものが、実はたまたまこういうのを秘書と話をしておって見つけたんです。

 鉄道を初め各輸送モードが果たす今日的役割を踏まえてみますと、この法に限らず、総合的な見直しというものも、そういう時期に来ているというような感じがいたしました。その第一義的な責任は立法府に身を置く我々にあることは間違いありませんが、今後の問題提起として少しさせていただきますので、よろしくお願いを申し上げます。

 また、きょうの午後の参考人質疑でも時間をいただいておりますので、午後につないでいくという趣旨で、踏切対策の論点から議論を進めさせていただきたいというふうに思っておりますので、お許しをいただきたいと存じます。

 本法律案は、航空・鉄道事故調査委員会の機能強化が柱となっておるわけです。本日は、委員会が行う事故調査、再発防止策、事故の一般予防を目的として行われる警察、検察行政との関係について少し触れさせていただきます。

 現在、JR福知山線の列車脱線事故がそうであったと思いますが、事故現場の検証については、まず警察が事故調査委員会に対して鑑定委託を行われるという認識をいたしております。まず、一九七二年に警察庁と当時の運輸省との間で覚書が交わされておるわけでございますが、七五年には、犯罪捜査と事故調査の実施に関する細目が警察庁と当時の航空事故調査委員会との間で交わされたということでございます。現在もこれは有効な規範として機能をしているというふうに私は理解をしておるんですけれども、警察と事故調査委員会が対等な立場でそれぞれ権限を適正に行使されているのかどうか、国土交通省と警察庁にお尋ねをさせていただきます。

林委員長 申し合わせの時間が過ぎておりますので、答弁は簡潔にお願いいたします。

福本政府参考人 お答えいたします。

 事故調査につきましては、事故原因の究明を目的としてございます。一方、警察の司法捜査とは目的が明確に区別されておるところでございます。

 しかしながら、事故が発生いたしました場合、事故調査と司法捜査が競合する場合がございます。それぞれの業務が円滑に実施されますよう、必要な協力及び調整を図るため、委員が御指摘いただきましたような覚書及び細目を警察庁との間で取り交わしているところでございます。

 航空・鉄道事故調査委員会として改組されました平成十三年十月以降も、その覚書、細目によりまして、事故調査を支障なく的確に実施をいたしておるところでございます。今後につきましても、この覚書等の趣旨に沿いまして、的確に実施を図ってまいりたいと考えております。

縄田政府参考人 警察といたしましても、委員御指摘の、先ほども答弁ございましたけれども、覚書及び細目に基づきまして、航空・鉄道事故調査委員会との間で互いに協力して活動の調整を図っておるところでありまして、円滑な連携が図られているものと承知をいたしております。

 今後とも、連携を密にしまして支障のないように努めてまいりたい、こういうふうに思っております。

森本委員 委員長、大変失礼しました。ちょっと前の方の質問で随分時間が食われてしまって、私の時間がかなり狭まったようでございます。また午後の参考人のところでさせていただきます。よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

林委員長 伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉です。

 ここまでの質問と重なるところもあるかと思いますが、よろしくお願いしたいと思います。

 まず、踏切の対策、これはきちっと数字を見ていかないとこの進捗が把握できない、このように思います。平成十三年三月の法改正では、平成十八年三月までの五カ年で、ホームページなどを見せていただきますと、第三種、第四種踏切を約二割削減して四千八百カ所に削減、また、平成二十二年度までにボトルネック踏切約千カ所のうち約半分を立体交差化などで改良、このようなことが書かれておりました。この平成十三年の改正時、この五年間の目標の達成度についてまずお伺いしたいと思います。

梅田政府参考人 踏切道改良促進法におきましては、交通事故の防止と交通の円滑化のため、改良すべき踏切道を指定し、立体交差化、構造の改良または保安設備の整備を行うということにしております。

 平成十三年度から十七年度までの五年間に、踏切道改良促進法に基づき新規に指定した箇所は、立体交差化百九十カ所、構造改良百九十カ所、保安設備の整備二百十カ所でございます。十二年度までに指定した継続箇所も含め、法指定箇所で、平成十三年度以降五年間で対策が完了する数は、立体交差化約百カ所、構造改良約百六十カ所、保安設備の整備約二百五十カ所でございます。

 先生御指摘の平成十三年の法改正時の附帯決議におきまして、いわゆるボトルネック踏切が今後十年間で半減するということを目標に、当面五年間、着実に実施できるよう努めることとされております。

 十六年度の調査では、ボトルネック踏切となっておりました踏切は千百カ所でございますが、十一年調査データでボトルネック踏切であった箇所千カ所につきましては、十七年度見込みで三十カ所を除去するなど、踏切道の抜本的な解消に努めるとともに、警報時間制御装置約九十カ所設置するなど、踏切遮断時間の節減に努めてきたところでございます。

 また、迂回路の整備などを行いまして、平成十六年度調査データで、ボトルネック踏切とされていました千カ所は、現在六百八十カ所ということで、三百二十カ所の削減はやってきておりますけれども、先ほども言いましたように、十六年度調査の部分以外に若干またふえまして、現時点ではボトルネック踏切は千百カ所ぐらいになっているところでございます。

 また、一種化への目標につきましては、平成十二年度における遮断機のない踏切道五千九百二十八カ所に対しまして、平成十七年度における目標は四千八百カ所となっているところでございます。これで約千百減らすことになるわけでございますけれども、この目標に対しまして、現在のところ、まだ一年ございますけれども、七百六十四カ所減らしてきておりまして、引き続き遮断機のない踏切道を減少させる努力をして、できるだけ千百に近づけるように努めたいというふうに考えているところでございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 これは前回の特別会でもお話しさせていただきましたが、鉄道事故の約五割が踏切での事故ということで、冒頭からずっと言われているとおり、踏切の解消が鉄道事故の解消にもつながる。そんな意味で、踏切事故の要因と、特にあかずの踏切での事故の発生状況についてお伺いしたいと思います。

梅田政府参考人 鉄道事故、踏切事故の要因で一番多いのは、直前の横断でございます。これが大体半分ぐらいございまして、やはり踏切が閉まりかけて駆け込むというのが一番事故原因として多うございます。

 それから、あかずの踏切でしたか。(伊藤(渉)委員「ええ。あかずの踏切での事故の発生状況」と呼ぶ)あかずの踏切につきましては、ちょっと済みません、手持ちでいきますと、全体の踏切事故二十三件ございます。あかずの踏切は、御承知のとおり六百十一カ所ございますので、全体の事故の約六%ぐらいを占めているということでございます。六百十一カ所というのは、全体の踏切でいいますと二%ですから、そういう意味では事故率は高いというふうに考えます。

伊藤(渉)委員 これはちょっと大臣にお伺いしたいと思います。

 このあかずの踏切対策は、道路交通の円滑化のみならず、事故防止という観点からも非常に重要である。一方で、残されている踏切は、これもずっと議論がされているとおり、いずれも抜本対策には個別具体的なさまざまな問題点、理由があるとも聞いております。であれば、行政としての対策もいよいよきめ細かさを要求されることとなっていくと思いますけれども、今後の踏切対策、スピードアップも二倍にしていくということもおっしゃっておりましたので、大臣のその点についての御所見をお伺いしたいと思います。

北側国務大臣 やはり、この踏切対策というものは、根本的には踏切をなくしてしまう、連続立体交差事業をしっかり進めていくことが大事だと思います。

 ところが、この連立事業というのは、私が言うまでもなく、委員よく御存じですけれども、非常にコストがかかります、また、時間もかかります。関係者の御理解、御協力を得るのも非常に大変な苦労が要るわけでございます。ただ、今申し上げましたように、連立事業が最も根本的な対策になるわけでございまして、この連立事業をこれまでよりも二倍のペースでしっかりと進めさせていただきたいと思っているところでございます。

 そのために、今回、無利子貸付制度を創設したり、また、地方公共団体に対する立てかえ制度についても充実をさせていただくなど、さまざま制度の充実をさせていただいておりますし、また、国といたしましても、交通事業者または道路管理者等ともよく協議をさせていただいて、この連立事業が早く進むように、しっかり取り組みをさせていただきたいと思っているところでございます。

伊藤(渉)委員 今答弁の中でも一部触れていただきましたけれども、二倍のペースで速効対策及び抜本対策を進めていくということで、このペースを二倍にするための具体的な対策について、もう一度御答弁いただきたいと思います。

柴田政府参考人 ただいま大臣の方から御答弁いたしましたが、私の方から改めて細かく御説明させていただきたいと思っております。

 この二倍の目標を達成、実現するためには、一つは連続立体交差事業の補助対象を拡充することというのがございます。また、施行者である自治体の体制の支援を強化するということも必要でございます。それから、鉄道事業者の負担を軽減すること、こういうことも必要でございます。

 そういうことでございまして、今回の法改正及び平成十八年度の予算措置におきまして、次のような制度の創設、拡充を図ることにいたしてございます。

 一つが、対象でございますが、自動車交通のみならず、歩行者交通の著しい生活道路の踏切を対象とした対象事業の拡充でございます。従来は、都市内の混雑緩和の観点から、自動車交通の多い幹線道路の踏切を対象にしてきたところでございますが、竹ノ塚駅周辺の踏切のように、歩行者交通の多い生活道路の踏切も支援できるよう、制度を拡充いたします。

 二つ目は、立てかえ施行制度の拡充でございます。現在、地方公共団体にかわりまして、鉄道事業者、軌道事業者に立てかえ施行の対象が限定されてございますが、特別目的会社、第三セクター等に拡大していきます。

 三つ目は、無利子貸付制度の創設でございます。鉄道事業者の積極的な参画を得るインセンティブといたしまして、事業者の負担に対し、長期無利子資金を貸し付ける無利子貸付制度を創設します。

 これらの制度の拡充や必要な予算の優先的な確保、緊急対策踏切への重点化、これらによりまして、連続立体交差事業を初めといたしました踏切除却、踏切対策のスピードアップに努めてまいります。

伊藤(渉)委員 その中で、立体交差事業等、歩道拡幅も入ると思いますけれども、先ほども申し上げたとおり、事業ごとに具体的な個別の問題がありまして、ケース・バイ・ケースの対応となるというのが現実だと思います。したがって、なかなか協議が進まない案件もたくさんあると聞いております。

 今回の法改正の中で、先ほどから勧告制度の話も出ておりますけれども、どのような対応をするという想定のもとで今回の改正を提案されているのか、その辺の趣旨について御説明いただきたいと思います。

梅田政府参考人 委員御指摘のとおり、立体交差事業というのは、個別具体的な問題によりましてなかなか協議が進まないというケースもございます。また、これから、こういう踏切道をめぐります環境状況はいろいろございますので、場合によっては改良の実施が速やかに行われないというようなことも予想できるところでございます。

 今回の改正におきましては、これまでの協議の状況あるいは改良の状況、こういうところにつきまして報告できる旨の規定を設けております。また、鉄道事業者あるいは道路管理者に対しまして改良を実施すべき旨の勧告ができるという規定も設けております。

 私ども、この法律が通りましたら、こうした規定に基づきまして今まで進められております計画の進捗、協議、こういう状況を調べながら、必要な指導をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

伊藤(渉)委員 これも前回の特別会でも御質問させていただいた内容ですけれども、連続立体交差事業の費用負担のあり方について質問させていただいたところ、今後も引き続き時代のニーズに適合したスキームとなるよう、費用負担のあり方を含めて検討していきたいと考えている、このような御答弁をいただきましたので、現在の状況について御説明いただきたいと思います。

柴田政府参考人 連続立体交差事業は、道路交通の円滑化や市街地の分断要素の解消を図る観点から、平面に敷設されております既設の鉄道を高架化または地下化する事業でございまして、都道府県等を施行者とした都市計画事業として実施されております。

 この事業によりまして、当該鉄道を保有する鉄道事業者にも相応の受益が生じるわけでございます。具体的には、一つは、鉄道の高架化によりまして高架の下に新たに創出される用地を貸し付けることにより生じる受益、高架下の貸付益。二つ目は、踏切が除却されまして踏切の維持管理費用が不要になることによる受益、踏切除却益。三つ目は、踏切事故が解消されることにより生じる受益、踏切事故解消益。こういうものが発生いたします。

 このため、都市におけます道路と鉄道との連続立体交差化に関する要綱及び細目要綱に基づきまして、高架施設費のうち、鉄道既設分の事業費につきまして、これは地域ごとに受益が違ってまいりますので地域ごとに定める率、現在五%の地域もあれば一番高いところで一四%の地域がございますが、鉄道事業者が負担をしていただきまして、それ以外を都市計画事業者が負担いたしておるわけでございます。

 当該の負担割合につきましては平成四年度より適用しているものでございまして、特に高架下の貸付益につきましてはその後の社会経済情勢の変化等を踏まえた検討が必要というぐあいに考えてございまして、現在、これらにつきまして検討、調査中でございます。

伊藤(渉)委員 あと、今回の改正の中で、歩行者等立体横断施設の整備、こういうものがございます。

 先ほども述べたように、これから先の踏切の除却というのは、非常にニーズがさまざまある。そういった、本来であれば、さまざまな全国的なニーズをやはり集約して、最も効果的なものに大切な税金を投入していくというような趣旨であるべきだろうと私は考えております。

 そんな意味で、立体横断施設、こういった施設に対するニーズ、あるいは、そういったところがはっきりしなければ、ねらいというようなものがどの程度あるのか。また、ちょっと具体的ですが、この立体施設は上空のみならず地下道の建設という形でも考えているのか。この二点について御答弁いただきたいと思います。

梅田政府参考人 歩行者等の立体横断施設の整備を、今回、踏切道の改良の方法の一つとして追加したところでございます。これは、歩行者やあるいは自転車の利用者の方々に対する交通の安全、あるいは円滑な交通の確保という観点から有効な対策として入れたものでございます。

 本来であれば、踏切内の歩行者通行帯あるいは歩道、こういうところを拡幅するということも大変重要なことでございますが、この構造改良という部分はなかなか時間もかかるという部分もございます。したがいまして、今回こういう歩行者等立体横断施設という措置をとりまして、本来であれば抜本的にやっていただきたいところにつきましても、それは一方で進めながら、速効的に、総合的に、いわゆる対策の一つとして行うものでございまして、歩行者の数の減少あるいは自転車の数の減少等を通じまして自動車交通のふくそうの減少にも資するというふうに考えているところでございます。

 この立体横断施設につきましては、上空をオーバーするものというのが一般的でございますけれども、先生御指摘のように、地下を横断するということもこの中のメニューの一つというふうに理解しているところでございます。

伊藤(渉)委員 最後の質問に入ります。

 踏切の渋滞緩和策ということでさまざまな議論がある中で、踏切における一たん停止の廃止の議論なんかもあると聞いております。

 私は踏切のない新幹線の免許は持っておりまして新幹線の運転もしていたことがありますけれども、確かに、運転士の側から見ると踏切というのはやはり非常に怖いわけでございます。そんな意味で、一たん停止の廃止というのはいかがかなという意見の持ち主でございますが、渋滞の緩和や環境への影響を低減するという観点から、道交法の三十三条の一項のただし書き、すなわち「信号機の表示する信号に従うときは、踏切の直前で停止しないで進行することができる。」というのがございまして、踏切の立地状況を十分に考慮に入れ、安全対策を十分講じるならば、極めて例外的なケースとして渋滞緩和の一助になるのではないかと考える一人でございます。

 このようなただし書きにある踏切の拡充について、今どのようなお考え、状況にあるか、最後に御答弁いただきたいと思います。

梅田政府参考人 御指摘の踏切における車の一たん停止措置の問題でございます。

 先生御指摘のとおり、道交法の三十三条一項のただし書きがございまして、踏切信号機の設置された踏切道については一たん停止義務が免除されます。しかしながら、先ほどもちょっと申しましたように、踏切事故のうち、直前横断等、いわば自動車の運転者のマナー違反が原因となっているものが過半数を占めている状況でございます。したがいまして、踏切信号機の設置について十分な安全対策を講じた上で設置するというような必要があろうかと思います。

 個別的に設置の必要性あるいは効果、こういうことにつきましては、個々のケースにおきまして道路交通の現状だとかあるいは列車の運行状況、こういうものを十分勘案しながら、公安委員会とも協議、調整を行いまして、必要な安全対策を講じた上で対処するよう、私ども、鉄道事業者を指導してきておりますし、これからもそうした指導をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。

 これで終了いたします。

林委員長 穀田恵二君。

穀田委員 私は昨年の四月の六日、東武伊勢崎線の竹ノ塚近くの踏切事故について質問をしました。その際に、二〇〇一年から、都や区、東武鉄道による立体交差化の協議がなされてきたが進まない、そして、事故が起こるまで放置してきた事業者や自治体の関係者の責任は重い、あわせて、国交省がイニシアチブをとってこれを進めるべきだということを提起しました。その際に、連続立体交差化事業の要件が合わずに、国の補助金が出ないということをあわせて指摘しました。

 それについて緩和するとのことですが、どう変わって、どういう判断をしているのか、そこをまずお聞きしたいと思います。

柴田政府参考人 国土交通省といたしましては、あかずの踏切を初めとしました踏切への対策を重要施策の一つといたしまして、抜本対策によります踏切の除却と速効対策による踏切交通の円滑化を車の両輪として、対策のスピードアップに努めております。

 今御指摘の、抜本対策の主軸でございます連続立体交差事業につきましては、従来は、都市内の混雑緩和の観点から、自動車交通の多い幹線道路の踏切を対象としてまいりましたが、竹ノ塚駅周辺の踏切のように、歩行者交通の多い生活道路の踏切、こういうところにも支援できるよう、来年度より新たに制度改正を図ることといたしてございます。

穀田委員 制度改正はわかっているんです。

 問題は、今それをする上で、つまり、要件に合わなかったんだという、いわば要件問題について、どういう趣旨でやるのかということを聞いているんです。もう一度。

柴田政府参考人 これまで、都市計画道路でございますとこの歩行者の観点の部分も入ったわけでございますが、今回、制度改正をすることによりまして、歩行者交通の多い生活道路も対象にするとはっきり制度としてやることによりまして、その辺が明確に対象となるということでございます。

穀田委員 要するに、要件もそういう形で緩和しつつ、財政当局もうんと言ったということですわね。

 そこで、今回の改正では、鉄道事業者及び道路管理者に対する勧告制度を創設する、それで、強制力を持って踏切道の改良に取り組むことができるということが中心ポイントですよね。しかし実際には、鉄道事業者や道路管理者である自治体などがいかに真剣に踏切道の改良に取り組むかにかかっているわけです。ところが、なかなか実際は、鉄道事業者が消極的であったり、自治体の側も予算の関係もあったりして大変なことがあるわけですね。

 そこで、きょうは具体的な話をちょっとお聞きしたいと思うんです。

 昨年の十二月二十日に、私ども日本共産党の近畿ブロックが、鉄道や踏切危険箇所における安全対策について、近畿整備局だとか、さらにはJR西日本に申し入れしました。

 その中で、まず第一の問題は、歩道の拡幅を求めますと、JRは、踏切の統廃合と一体でなければできないという回答をする例があるんですね。

 まず、国交省にこの点を確認したいんです。

 二〇〇一年十月の踏切道の拡幅に係る指針、これでは、緊急を要するところについては統廃合をしないでも拡幅できるとなっています。これは間違いないか、そして、この考え方について説明されたい。

梅田政府参考人 踏切道におきましては、踏切事故の防止あるいは道路交通の円滑化のために、立体交差化あるいは統廃合等によりその除却に努めてきているところでございます。

 一方におきましては、踏切道において前後の道路と幅員差が生じるなど、交通の安全上危険となっている狭小な踏切道の改良につきましては、道路管理者と鉄道事業者の協議を早期に進めるために、踏切道の拡幅に係る指針、これは平成十三年のことでございますが、定めております。

 この指針におきましては、具体的には、踏切道に歩道がない、あるいは歩道が狭小である、こういうときには歩道を整備する、また、踏切に交差する道路に対しまして踏切道の方が狭いというような場合でございますが、その場合には、道路の拡幅を行うということで、踏切道の統廃合を行わずに実施するという指針でございまして、その旨、鉄道事業者あるいは道路管理者に対しまして周知の徹底を図ってきているところでございます。

穀田委員 その周知の徹底をよく図ってほしいと思うんですよね。

 大体、JRは、この点を指摘すると、確かに、統廃合でなければ絶対だめですよという言い方はしないんですよ。確かにしないんです。ところが、一方で踏切の数を減らしていくのが大原則だという回答もして、実際、地域によっては統廃合を大前提にしているところもあると感じているんですね。だから、なかなか彼らも、うまいと言ったら言い方は悪いけれども、そういう原則をしっかり徹底するということをして、現場で何が起こっているかについてよく見ていただきたいと思っています。

 二つ目に、近江八幡市に日吉野踏切というのがあります。この踏切は非常に狭く、小学校の登下校時には父母が付き添わなければならないほど、危険だと言われています。白線が引いてあるだけで、歩道が確保されていない。そこで、議会でもたびたび取り上げられ、当面の対策として、とりあえず児童が通れるスペースを確保してほしいという切実な話だけれども、JRがなかなか了解しない。

 こういう踏切は直ちに拡幅すべきだし、立体交差がすぐできないんだったら、歩道橋をつけるというか、緊急に対策をとるべきではないか。こういうことについての国交省としての指導はどうなんですかね。

梅田政府参考人 先生御指摘の踏切は、東海道線と近江八幡市の市道が交差する踏切でございます。近江八幡市からJR西日本に対しまして、朝夕のラッシュ時に自動車とそれから通学する児童が踏切道の中で混雑している、したがって、踏切内の歩道整備をお願いしたいという要望がなされております。

 それで、この踏切道におきましては、御指摘のとおり、歩道が整備されておりません。近江八幡市におきましては、踏切と交差する道路の歩道整備にあわせて、踏切道内にも歩道を整備したいという意向を持っているというふうに認識しております。私どもといたしましては、JR西日本に対しまして、近江八幡市とよく連携をして、踏切道内についても歩道の整備が図れるように指導してまいりたいというふうに考えております。

穀田委員 では三つ目に、昨年九月、京都府綴喜郡井手町で、軽トラックが踏切内に進入し、運転手が死亡する事故が起きています。

 この踏切には赤外線探知装置が設置されていなかった。こういう踏切はほかにないのかどうか。これはたくさんあるはずなんですね。点検して、もちろん時間はかかるわけですが、すべての踏切に障害物検知装置を設置するように指導すべきではないか、こういう点についての考え方を聞きたいと思います。

梅田政府参考人 御指摘の事故は、JR西日本の奈良線山城多賀駅構内の多賀道踏切において発生した事故でございました。当該踏切におきましては、踏切支障報知装置として、非常押しボタン式のものは設置されておりましたけれども、自動的に支障物を検知して列車に知らせる障害物検知装置というものは設置されておりませんでした。

 それで、踏切道につきましては、列車の本数あるいは速度、自動車の交通量あるいは通行制限などなど、いろいろ踏切道によって区々異なっております。したがって、一律には障害物の検知装置の設置を義務づけてはいないところでございます。

 しかし、踏切事故の防止という観点に立ちますと、有効な対策の一つであるというふうにも考えておりますから、個々の踏切道の状況を勘案して、その設置の効果の高いところから優先的、重点的に整備の促進が図られるよう、鉄道事業者を今後とも指導していきたいというふうに考えております。

穀田委員 これは、後でも議論になるわけですが、ヒューマンエラーだとかヒヤリ・ハット、そういう考え方のあれがありまして、私は、一度起きた事故のところなんかはやはり重点的な問題だ、諸条件はわかるんですよね、そういう立場で努力していただきたいと思うんです。

 法案についてもう一度質問をしますと、今回の改正では、先ほど言いましたように、鉄道事業者及び道路管理者に対する勧告制度を創設している。勧告を受けても踏切道の改良を実施しない場合には、鉄道事業法による事業改善命令、または道路法による指示等ができるようになる。この場合、正当な理由がなく踏切道の改良を実施していないと認めるときに勧告できるわけだけれども、正当な理由というのは何かということについてお聞きしたい。

梅田政府参考人 改正後の法律第六条第一項及び第二項の中の「正当な理由」の具体的な内容についてでございます。

 正当な理由、いろいろなケースがあろうかと思いますので、すべてを網羅して言うわけにはまいりませんけれども、一つは、例えば、天災等の不可抗力によりまして鉄道施設が非常に甚大な被害を受ける、その結果、鉄道事業者の経営も非常に悪化して、被害の回復にもかなり時間がかかるというようなときには、やはり報告を求めて直ちにやれというのはちょっと酷だろうというふうに思います。

 また、こういうことは最近では余りないかもしれませんけれども、技術的に見て、どんなに検討してもなかなか難しいというようなケースもあり得ると思います。そういうようなこともやはり正当な理由の一つではないだろうかと思います。

 これは、やはり個別に判断をしていく話だろうと考えております。

穀田委員 最後に一つだけ聞きます。あさって、もう一遍質問しますけれども、その前段で一つだけ、JR西日本の伯備線事故について。

 ことし一月二十四日、JR西日本の伯備線で、保線作業中の作業員三名の方が亡くなる事故が起こりました。私どもは、心から冥福をお祈りしたいんですけれども。十日の委員会で質問はしますが、まず、事故の概要及び事故原因についてだけ報告していただけますか。

梅田政府参考人 JR西日本の伯備線の事故についての概要でございます。

 本年一月二十四日十三時十八分ごろ、JR西日本伯備線におきまして、これは根雨駅と武庫駅の間でございますが、これを走行中の下り特急列車が、保線作業中の保守要員、これはJR西日本の社員でございますが、四人と接触して三人が亡くなる痛ましい事故でございました。

 JR西日本によりますと、当日は、列車の遅延によりまして、これは単線の区間、当該の単線区間でございますけれども、これを走行する上り列車と下り列車の順序が変更されました。にもかかわらず、列車の見張り員が列車の来る方向と反対側の方向を見張っていたというふうに聞いております。

 事故原因につきましては、なお現在、詳細調査をしておるところでございますけれども、JR西日本は、今後の作業時におきましては、原則として、関係する信号機を赤にいたしまして作業区間には列車を進入させない、いわゆる線路閉鎖工事という手続をとりまして作業をするということにしたと聞いております。

 私どもといたしましては、事故後、中国運輸局から職員二人を現地に派遣いたしまして、事故現場の現地調査等を行うと同時に、JR西日本に対しまして、文書により、原因究明と再発防止について警告を行ったところでございます。今後とも、同様の事故が発生しないよう、引き続きJR西日本をしっかり指導してまいりたいと思っております。

穀田委員 終わります。

林委員長 日森文尋君。

日森委員 五年前に引き続いて、続きの質問をさせていただきたいと思います。

 踏切事故は今、減少傾向にあるわけですが、しかし、依然として事故が起きているわけです。これは、直接、例えば列車の側に重大な支障があれば大変な死傷者が出るわけで、私どもとしても、踏切を改良してともかく踏切事故をなくしていくということについては、これは一緒ですが、積極的に進めていきたいと思っているんです。

 それで、五年前、こだわっているわけじゃありませんが、第七次の踏切事故防止総合対策、内閣府の所管になっていますが、ここで改めてお聞きしたいんですが、具体的な数値目標を示しました。先ほども御答弁の中に少し示されていましたが、平成十三年から十七年の五年間で、例えば連続立体交差は三百二十キロメートル工事をする、そのうち百キロメートルはこの五年間に完成したい。それから、単独立体交差についても、二百八十カ所で事業を行って、このうち百六十カ所は完成させたい。それから、道路が新設されたり改良されたりすることに伴う単独立体交差、これは四百カ所で事業を行って、二百十カ所は完成したいということです。

 それから、踏切道、先ほど来いろいろな方から御意見が出ていますが、これの幅員を拡幅するという工事についても、千二百カ所、これを五年間でやるんだということが出ていました。これは御答弁でありましたけれども、保安設備、遮断機及び警報機ですね、これは六百カ所、きちんとつけていこうという数値目標を示してきました。もちろん、財政状況によっていろいろあるから、弾力的に実施をしていくんだというただし書きがついていますが。

 最初に、この目標値といいますか、これについて、どの程度この五年間で達成することができたのかということについてお聞きをしたいと思います。

谷口政府参考人 お答えいたします。

 委員のお話にございましたが、平成十三年の四月に交通対策本部において決定されました第七次踏切事故防止総合対策は、平成十三年度以降の五カ年間に、踏切道の立体交差化、構造改良、保安設備の整備、交通規制、統廃合等の措置を総合的に実施することとされたものでありまして、これに基づき、関係省庁において踏切事故対策を推進してきているところでございます。

 平成十三年から十六年度までの実績値でございますが、連続立体交差事業につきましては約四十キロメートルを完成、単独立体交差につきましては約九十カ所完成、歩道拡幅等の構造改良を約八百四十カ所完成、踏切保安設備、遮断機でございますが、それを約三百二十カ所設置というような状況になっております。

日森委員 いずれも数値目標を下回っている。例えば連続立体交差でいえば半分以下、平成十七年度末までにとても目標に達しそうもないし、単独もそうですし、それから、幅員の拡幅、保安設備等々についても目標値を大幅に下回っているという結果になっているわけです。

 なぜこんな結果になってしまったのか。意気込んで我々も、五年前も、頑張れ、我々も頑張るから一緒に安全対策をやろうじゃないかという決意を申し上げたと思うんですが、残念ながら、結果はそうなっていない。この原因について、なぜ目標値が達成できなかったのか、お答えいただきたいと思うんです。

谷口政府参考人 いろいろな要因があるかと思いますが、今、踏切総点検ということをさせていただいております。道路管理者、鉄道事業者が協力して、また地方の声を反映してというようなことでございまして、こうした実態に合っているということを踏まえまして、しっかりと対応させていただきたいと思っておる次第でございます。

日森委員 今回は、ちょっとこれは質問通告ないんですが、そういう数値目標はまたおつくりになって、この五年間、これから先の五年間ですね、そして実施をしていくというお考えなんでしょうか。

谷口政府参考人 お答えします。

 そうした目標を掲げて、また今回新たに法改正でお願いしております勧告制度、報告徴収制度等を強化しながら、また事業者に対する支援措置等もあわせてお願いしているところでございまして、あわせて、総合的に、強力に、関係機関等の協力も得ながら実施をさせていただきたいと考えておるところでございます。

日森委員 指定をしていくということですから、確かにそういうことになると思うんですが。

 前回の改正のときに、指定を迅速化しようということになっていまして、そういうことも含めて、都道府県知事の申し出制度というのがつくられました。先日、話を聞いたら、一件もなかったという話が、それはちょっと正確かどうかわかりませんが、せっかく都道府県知事の申し出制度をつくったけれども、余りなかったんだという結論を聞いているんですよ。実際に、だから、これは制度が生かされていないのか、あるいは別な形で、そういう申し出とか、ここの踏切を直してほしいとかいうことが、例えば踏切道調整連絡会議というのがありまして、ここなどが具体的にそういう申し出と同じようなことを行っているのか、ちょっとその辺の総括についてお聞きをしたいと思います。

梅田政府参考人 先生御指摘の知事からの申し出制度に基づく実績は、先生御指摘のとおり、ありません。申し出というのは、自発的に知事から行うものでございますので、私ども、この制度があることによって、ある意味では知事さんの、自治体からの意見を聴取する機会を設けているということもございますし、また、先生御指摘のような具体的な調整の場もございますので、そういう面で、制度は制度として残しながら、実際は別のそういう場を通じて地元の意見を聞きながら指定をやっているというのが実態でございます。

日森委員 つまり、ほとんど意味がなかったと。知事の申し出制度というのをせっかくつくったけれども、この五年間、余り意味がなかったということだと思うんですよ。そういう意味では、これから目標値をつくったり、実際に事業を進めていくに当たって、ここはしっかり総括をして、本当に住民の利便性に供するような、そういう指定のあり方というのをぜひ考えていただきたいと思っています。

 最後になりますけれども、先ほどもちょっとお答えがありました。連続立体交差の問題なんですが、その助成制度について先ほどお答えがあって、ちょっと思い出したら、五年前と同じ答弁でした。高架下を利用するから少しもうけが出るだろうとかいうことがあって、なかなか助成をかさ上げすることができないということで、何か五年前の答弁を聞いているようで、国土交通省も大分成長したというふうに思ったんですが。

 その連続立体交差等々の支援について拡充を検討するという御答弁を、当時の安富さんでしたかね、局長、ちょっと忘れましたが、聞いたという御答弁をいただいているんですが、そういう連続立体交差に対する助成措置、あるいは、特に今必要な保安設備に対する助成措置、例えば、中小の鉄道事業者などは、つくるときは助成が受けられるけれども、メンテナンスになると全部それをやっていかなきゃいかぬというようなことがあって、大変厳しい経営状況の中でさらに出費が重なるということで、本当はどんどん保安設備などをつけなきゃいけないけれども、なかなか腰が重いというようなことも聞いています。

 この辺について、国土交通省としてどのような措置をとられるのか、改めてお聞きをして、質問を終わりたいと思います。

梅田政府参考人 地方における、いわゆる四種踏切というのがございます。四種踏切というのは、踏切の遮断機も踏切の警報機もついていない踏切でございます。これは昭和三十五年、大分前でございますが、六万二千カ所ございました。一種化を図ったりあるいは踏切道の統廃合等を行いまして、現在は五万八千カ所減少いたしまして約四千カ所、十分の一になっている状況でございます。

 この四種踏切につきましても、私どもできるだけ一種踏切化、つまり遮断機をつけるというようなことをやっていきたいというふうに考えておりまして、事故防止効果が高いところから優先的、重点的に整備を行っておりますが、御指摘のように、地方に行きますと、鉄道事業、なかなか経営が厳しゅうございます。

 したがいまして、私どもの現在の補助の仕組みは、国が最大二分の一、地方が三分の一、合わせて全体の費用の六分の五を税金で補助するというような仕組みでございまして、極めて厚い制度でございますが、私ども、この制度を利用して、さらに一種化の促進を図ってまいりますが、ちょっとメンテナンスのところまでは、現実のところ、なかなか手が回らないと思います。

日森委員 ありがとうございました。

林委員長 糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 我が国では、一年間に八百件を超える鉄道事故が発生しておるわけでございます。そのうち約半数の四百件が踏切事故でございます。

 この踏切事故は、昨年三月の東武鉄道伊勢崎線の事故に見られるように、一度発生すると悲惨な結果になってしまうということ。都市部におきましては、あかずの踏切が社会問題化しておりまして、道路交通の円滑化の観点からも、その対策を強力に進めていくことが重要な課題であるというふうに思っております。

 一方、地方部では、踏切遮断機の整備など、安全対策を進めていく必要があるのではないかなというふうに考えておりまして、踏切が抱える課題は地域においてさまざまである、その状況に応じた対策を重点的に進めていくことが重要であるというふうに考えております。

 そこで、踏切対策についてお尋ねいたしますが、地方において、踏切遮断機もない、それから警報機もない踏切について、踏切遮断機の整備を促進していくべきではないのかなというふうに思いますが、国土交通省の見解と、それから、踏切対策に関して、今予算の推移というのはどのようになっているのか、お答えいただけますでしょうか。

梅田政府参考人 地方におけます踏切遮断機もあるいは踏切警報機もついていない、いわゆる第四種の踏切は、先ほど申しましたけれども、昭和三十五年度に六万二千件あった。これが現在のところは、十六年度末で五万八千件減りまして四千件、十分の一以下になったというのが現状でございます。

 この第四種の踏切につきましては、事故防止効果が高いというところから、できるだけ重点的、優先的に一種化を図っていきたいということで取り組んできておりまして、近年でも毎年着実に減らしてきているところでございます。

 私どもといたしましては、この法律に基づきまして、経営の厳しい事業者に対しまして、設置費用の六分の五を、国が二分の一、地方が三分の一という補助制度を設けておりますので、これを最大限に活用していきたいというふうに思っておりますし、また、今回、勧告制度、報告制度というのをつくっていただくことになりましたので、こういう制度も活用しながら一種化を進めていきたいというふうに考えております。

 なお、踏切道改良促進法に基づく国の予算は、十八年度二億円を予定しております。

糸川委員 まあ予算が多いか少ないかというのはあれなんですが、ぜひ踏切の一種化というのをしっかりと取り組んでいただければなというふうに思います。

 都市部においてあかずの踏切等の踏切対策を今後具体的にどのように進めていくのか、大臣の御見解をお聞かせいただけますでしょうか。

北側国務大臣 現在、踏切交通実態の総点検を実施しておりまして、道路管理者そして鉄道事業者に対しまして、年度内を目途に、これから五カ年の整備計画を策定していただきたいということでございます。

 その計画に基づきまして重点的に対策を進めていきたいというふうに考えておりますが、連続立体交差事業のような抜本対策につきましては、これまでのスピードを二倍にしていきたいというふうに考えております。そのための無利子貸付制度等、制度の充実も今図らせていただいているところでございます。

 また、そういう抜本対策がすぐにできないというふうなところにつきましては、この五年の間に速効対策、これは歩道の拡幅等、こういった速効対策をこの五年の間にしっかりと進めていく、やらせていただくというふうに考えているところでございます。

糸川委員 このあかずの踏切は緊急自動車の通行なんかの妨げにもなっておるわけでございます。これは歩行者が気をつければいいという問題ではなくて、それだけではなくて、緊急車というのは人命も伴っておりますので、ぜひそういう対策、例えば、では電車をそのときはとめようとか、何かそういうことで早いうちにあかずの踏切対策をしていただいて、その中でまた整備もあわせて進めていただければなというふうに思います。

 終わります。ありがとうございました。

林委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、運輸の安全性の向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、まず東京大学大学院工学系研究科教授河内啓二君、立教大学文学部心理学科教授芳賀繁君及び鉄道安全推進会議事務局長・弁護士佐藤健宗君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、河内参考人、芳賀参考人、佐藤参考人の順で、それぞれ十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないこととなっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 なお、参考人及び質疑者におかれましては、御発言の際は着席のままで結構でございます。

 それでは、まず河内参考人にお願いいたします。

河内参考人 河内でございます。よろしくお願いいたします。

 私は、航空工学の分野で教育と研究に携わってまいりました。本日は、事故防止の視点から意見を述べさせていただきます。

 昨今の公共交通の事故に関しまして、国土交通省内にヒューマンエラーに関する委員会が設けられまして、私はそこにオブザーバーとして参加をいたしました。これまで私は自分の専門分野の中で仕事をしてまいりましたけれども、この委員会を通じて、他の交通分野の方々、あるいはここにいらっしゃる芳賀先生のようにヒューマンエラーの専門家の方と親しく議論をする機会を得ました。このような議論を通じまして、私は以下のようなことに気がつきました。

 まず最初に申し上げておかなければいけないのは、残念ながら、ヒューマンエラーに対する対策に決め手はないということです。これは、人間という非常に複雑なものに対して考えるものであるのでやむを得ないことではありますけれども、これだけをやっておけばヒューマンエラーはまず防止できる、そういう決め手は見当たらないのです。

 しかし、そうはいっても、比較的順調に作動している組織あるいは事故率の低い組織というものには、各分野共通で次の二点の特色がございます。

 まず第一点は、組織のトップが安全部門に直結していること、そして、繰り返し安全に関してそのメンバーに注意を喚起していることであります。

 公共交通の責任者という方は、まず普通の人であるならば、安全が第一であるということは十分常識として認識されております。しかし、経営のトップがこのことを余り口に出して言わずに、各メンバーが常識としてやはり持っていると思って、これを省略して、他の目標、例えば組織の効率化とか利益とかそういうものだけを指示いたしますと、組織が過剰反応をして、思わぬ結果になるという事例が各分野共通に見られます。

 もう一つは、ボトムアップの問題でありまして、作業の現場において自主的に行う安全活動が非常に大事だという点です。

 これは、例えば自動車交通におきまして、民間を巻き込んだ安全活動が非常に効果を生んでいるということは、皆様よく御存じのとおりであります。同じように、産業事故防止の現場におきまして、ある作業をするときに、責任者が一方的に危険箇所を指示するという手法よりは、事前に作業者が議論をし合って、危険箇所を提示し合って、その不足分を指示者あるいは責任者が指摘する、そういう形の方が効果が高いという事例も報告されております。

 もう一つは、現場からの意見が必ず組織の責任者に届くという点も大事であります。これは、他の分野の方々は風通しのよい組織という言葉を使って表現されておりました。

 以上が、私が委員会におきまして各分野共通に行われている特色であると感じました。

 次に、社会の変化や若い人たちの気質について少し申し上げます。

 私は、職業柄若い人たちと接する機会が多いのですが、やはり若い人たちを取り巻く環境や若い人たちの気質は我々の世代とは大分変わってきております。これは、私が年をとったということだけなのかもしれませんが、若い人たちの中に見られるよい点は、同僚に優しいという点がありますし、それから、自分の夢を大事にして、そこへ努力するという点もございます。しかし、与えられた課題を繰り返し正確に行う、少々環境が変わってもそれにうまく適合して、繰り返し責任を持って行うという耐久力については少し衰えてきているのではないかと思います。

 したがって、このような変化は、芸術家やスポーツ選手あるいは研究者といった分野にとっては好ましいことですが、交通安全の分野というのには少し厳しいものに状況がなりつつあります。

 そういう環境の中で、私が見ますところ、唯一の希望はコンピューターを利用した情報技術の応用であります。多くの情報を幅広く集めて、それを迅速に処理して、危険を前もって予知して、訓練によってそれを避ける、こういう手法は非常に魅力的であります。

 しかし、この分野におきましても幾つか問題がありまして、まず第一に、情報を出す側と情報を集める側に強い信頼関係がなければなりませんし、両者に安全に対する使命感が共有されていなければうまく機能いたしません。せっかく集めた情報が有益なものでなかったり、あるいは、そもそも情報が集まらなかったりすることがございます。

 もう一つ大事な点は、これは我々アカデミアの問題でもありますが、集めた情報を解析する技術がまだ発展途上であるということです。従来の方法は、いろいろな事例をたくさん集めてそれに共通な危険点を抽出するという、いわば研究者の名人芸に頼っていたところがございますが、こういう事例研究では、研究者ごとに抽出点が異なって説得力に普遍性がありません。どうしても、危険性を定量化して、危険度を数値であらわして、その数値に見合って注意力を発揮する、そういう訓練が必要であります。しかし、その技術が、人間という複雑なものを対象にしている以上、今のところまだ未発達であるということになります。

 そういうわけで、私は、今回の安全システムの改正案について、大きな期待と若干の不安を持って見守っております。

 以上で私の意見陳述を終わります。御清聴、ありがとうございました。(拍手)

林委員長 ありがとうございました。

 次に、芳賀参考人にお願いいたします。

芳賀参考人 まず、配付資料がありますのでごらんください。

 その二枚目に、こういうふうに大きな字で両国国技館の住所が書いてあるのをごらんいただきたいと思うんですけれども、この住所を見て、なるほど、両国国技館というのは確かに国技館にふさわしい場所にあるものだなと思った方は、字を読み間違えておられます。横綱一丁目ではなくて横網一丁目なんですね。

 それから、その下の写真を見てください。左側の、銀行のキャッシュカードのドアなんですけれども、縦に長い棒がついていると大抵の人は引いてあけようとします。しかし、ここには押せと書いてあります。観察していると、ほとんどの人は一たん引いて、あかないものだから次に押してあけます。右側は吉野家の、牛どん屋さんのドアですけれども、これはだれもが押してあけたくなるんですが、引けと書いてあります。

 何が言いたいかというと、ミスをしやすいデザインとか条件がそろっていると、だれもがミスをするということです。

 一枚目の資料に戻ってください。

 したがって、ヒューマンエラーによる事故を防ぐにはシステムを改善して、つまり、注意しなさいとか、ここではこういう形をしているけれども、これは引くんじゃなくて押すんですよということを幾ら注意しても人はミスをします、システム全体を改善することでエラーの確率を少しでも下げる対策が必要だということです。

 もう一つ、人間の行動が事故に結びつく問題として大きなものが、違反とかあるいは意図的な不安全行動です。

 例えば、東武伊勢崎線竹ノ塚踏切の踏切保安係は、逮捕され、起訴されましたけれども、彼に決して悪意や犯意があったわけではありません。違反も条件が整えばだれもが犯すものです。さらに、違反とか意図的な不安全行動が危険なのは、せっかくのヒューマンエラー対策を無効にしてしまうことです。列車が来ることを忘れて踏切を上げようとしても上がらないような鎖錠装置が踏切にはついていたにもかかわらず、それを自分から解除して踏切を上げてしまったわけですね。違反とエラーが同時に起きるときに多くの大事故が発生しています。

 ヒューマンファクターズ、つまり、どういうところで違反をしやすいのか、どういうところで人はミスをしやすいのかということをよく分析することで、エラーと違反の芽を摘み、エラーが事故につながらない対策、事故の被害を最小限にとどめる対策が重要だということになります。

 しかし、あらゆるところにエラーの可能性、違反の可能性があります。すべてのリスクをゼロにする対策をすべて打つということは、財政的にも労力的にも不可能なわけですね。しかし、事故が起きてからでは遅い、人の命が失われてからはもう戻ってこないわけですから、そのためのリスクアセスメント、リスクマネジメントの体制が必要だということになります。

 プロアクティブな対策、すなわち未然防止のために、さまざまなトラブル情報を集める、あるいはどこでどういう事故が起きやすいかを事前によく分析する体制が必要だ。そして、万一不幸にして事故が発生してしまった場合には、それを徹底的に調査して、情報を、その類似の事故だけではなくて、そこで集まってきたさまざまなリスクファクターを安全性向上に活用する、そういう仕組みが必要だと考えます。

 しかし、先ほど申しましたように、安全対策にかかるコストは無尽蔵にかけていいというわけにはいきません。公共輸送機関であっても、事業体としての経済性や効率性ということを十分に考えながら経営を行わなければ、かえって危険なことになります。例えば、鉄道を徹底的に安全にした結果、鉄道の運賃が五倍に上がったら、利用者はよりリスクの高い道路交通にシフトして、日本社会全体のリスクは上がってしまうということになりかねないわけです。

 そこで、各事業者が効果的なリスクマネジメントの仕組みをつくり、しっかりそれを機能させるということが必要で、法律案もそれをサポートするものであればいいと思っています。

 そのリスクマネジメントの仕組みがしっかり機能するためには、まず第一に、トップマネジメントが安全運行に責任を持ち、深く関与すること。そして、そのトップマネジメントの代理人として、ゼネラルリスクマネジャーという言葉も、あるいはセーフティーマネジャーという言葉を使ってもいいかと思うんですが、この法案では安全統括管理者でしたか、そういう会社のリスクマネジメントに全責任を持つしっかりとした人が中にいる、その人を中心に安全を図るということが必要です。

 安全というのはなかなかやる気が出にくい努力目標です。努力をした結果がすぐに結果にストレートに結びつくとは限りません。一生懸命安全に努力している人が事故を起こしてしまったり、いいかげんな仕事の仕方をしている人が案外事故に遭わなかったりするものです。

 日常業務の中では、日々の売り上げとか効率化、あるいは定時に列車や飛行機を運行するということに意識が向きやすく、そちらは、どちらかというと努力をするとかなりストレートに結果に結びつくので、目標としてもモチベーションが高まりやすいわけです。しかし、安全ということに対してもっとモチベーションが上がるような対策、仕組みをつくってあげなければ、したがって、せっかくの安全対策が効率性を増進する対策に変化してしまうということがあるわけです。これを説明すると一時間以上かかってしまうのでやめますけれども。

 一番わかりやすい例は、例えば、曲がりくねって細い見通しの悪い道路が危険だからといって、真っすぐに広い道路に改良したときどうなるか。ドライバーが十分な安全モチベーションを持っていなければ、その道路をより速い速度で不注意な運転をするだけで終わってしまうということになりかねません。したがって、各事業者のトップから第一線までが安全に対してより高いモチベーションを持って仕事をする、そういう仕組みをつくらなくてはいけないと思います。

 各事業者が安全輸送というのを最高位の経営目標に掲げ、その達成に向けて経営トップが深く関与すること。そして、安全統括管理者が積極的に安全性向上に挑戦していくということですね。それから、現場第一線とトップマネジメントのコミュニケーションを活性化し、安全のために経営者、管理者、労働者が一体となって知恵を絞り、汗をかくこと。結果として起きるエラーを罰するだけではなく、個人や組織や事業者の安全努力を褒める、顕彰する、報酬を与える。そういう仕組みをつくり継続的に続けることで、安全を最優先に考える組織風土、すなわち安全文化が醸成されるものだと考えています。

 今審議中の法案が、それを一歩でも先に進めサポートするものであるというふうに私は信じております。

 ありがとうございました。(拍手)

林委員長 ありがとうございました。

 次に、佐藤参考人にお願いいたします。

佐藤参考人 佐藤でございます。

 本日、私に参考人として意見を陳述する機会を与えてくださったことにまず感謝を申し上げます。

 私は、いささかの御縁がございまして、平成三年五月に起きました信楽高原鉄道の列車正面衝突事故の遺族から弁護士として依頼を受ける機会がございました。その後、信楽事故の御遺族とともに鉄道安全推進会議、TASKという民間団体を立ち上げ、鉄道の安全と鉄道分野を初めとする事故調査制度の拡充を求めて、ささやかではございますが活動してまいりました。現在はその事務局長を務めております。本日は、そのような経験から私なりの意見を申し上げたいと思います。

 今回の法律改正の中心は、輸送の安全の確保を関連各法の目的として追加するとともに、運輸分野において安全管理規程の策定や安全統括管理者の選任を義務づけるもので、安全の重要性をこれまで訴え続けてまいった私どもといたしましては、まことにありがたいことであると考えております。

 ところで、問題は、先ほど芳賀先生も御指摘になったように、これらの規程や管理者によっていかに日常的な安全対策、事故防止対策が実施されるかにかかっているというふうに思われます。私の意見から申し上げますと、安全を強調するだけではなかなか現場にその重要性は浸透せず、現場で発生したヒューマンエラーやインシデントを把握し、それを適切に分析し、再び現場にフィードバックして事故を未然に防止することが必要になってくると考えております。

 鉄道以外の原子力や航空などの分野では、ヒューマンエラーやインシデント、つまりヒヤリ・ハットなどの事例を現場から出させて、そこからシステムの欠陥や危険性を事前に予見して安全対策を実施するという取り組みが既に行われています。しかしながら、この点では鉄道はまだまだおくれていると言わざるを得ないというふうに思います。鉄道事故等報告規則でも、事故を報告することになっておりますので、被害は発生しなかったけれどもシステムの欠陥を予見するヒヤリ・ハットなどは報告の対象とされておりません。

 詳しくは申し上げられませんが、私がかかわりました信楽の事故でも、事故の前に少なくとも三回のインシデントが発生しており、それが適切に報告され以後の安全に生かされておれば事故は起こらなかったと思いますと、非常に残念であります。

 次に、事故調査制度の問題に移りたいと思います。

 事故調査というのは大変重要な問題であります。大きな事故が起きましたとき、社会は衝撃を受け、運輸機関の信頼性は損なわれ、負傷者、遺族らの被害者も大きく傷つきます。それらの回復のために、事故が発生するに至った直接的なメカニズム、原因や、その背景にあるさまざまな要因を含めて徹底的に解明をし、二度と事故や被害を起こさないようにするために事故調査が行われなければなりません。先ほど芳賀先生が強調なさったとおりであります。

 このたびの改正案では、事故調査委員会の所掌事務に、事故に伴って発生した被害の原因を究明するための調査を追加するとされています。これは、被害軽減要因、つまりサバイバルアスペクツと言われるものを調査対象に加えるものであると理解しておりますが、このような考え方は既に海外では常識となっており、大変望ましいことであるというふうに私も考えております。また、被害軽減要因を調査対象とすることは、遺族や負傷者の回復を支援することからも重要であります。

 私は、JR西日本福知山線の事故の遺族や負傷者の皆さんからも相談をお伺いしておりますが、いまだにほとんどの御遺族が、自分の亡くなった家族が何両目のどこら辺に乗っていたのか、座っていたのか、立っていたのかということもわからないままで、その情報を渇望しておられるという現実を目の当たりにしております。家族の最期を知ることは遺族の立ち直りの第一歩だと痛感させられることであり、今回の法改正を通じてそのような分野の事実も明らかにされることを切望する次第です。

 さらに、事故調査と被害者支援との関係について申し上げておきたいと思います。

 事故で最も深く傷つくのは被害者、つまり遺族や負傷者であり、被害者は事故調査の結果に最も深い関心を寄せる人たちであります。ある意味では、被害者が発生しなければ国の事故調査機関による事故調査は必要がないものであり、事故調査は遺族ら被害者のために、その悲しみを二度と繰り返さないためになされるものであると言っても過言ではないと考えております。

 このような考え方から、アメリカのNTSB、つまり国家運輸安全委員会には一九九六年から家族支援局という部局が設置され、事故調査に関する情報の提供や精神的ケアなど、さまざまな面から事故被害者に対する支援が実際に行われております。我が国において、犯罪被害者基本法に基づいて、我が国のあらゆる面において被害者の権利擁護のための見直しと施策の検討が進められておりますが、航空・鉄道事故調査委員会の所掌事務の一つに被害者支援という項目をつけ加えることが望ましいと考えるところであります。

 ところで、かねてから私どもは事故調査機関は独立したものでなければならないと申し上げてまいりました。独立しているということの意味でございますが、監督官庁からも捜査機関からも独立しているということを意味すると考えます。なぜ独立が必要かといいますと、事故調査の目的は徹底的に原因を明らかにすることにあるわけです。したがいまして、どの機関とも利害関係がなく、中立公平に調査活動を遂げ、監督官庁の監督行政もその調査の対象にできなければなりません。

 そして、刑事責任の追及との関係では、責任追及を恐れてなかなか関係者が本当の事実を述べないという現実や、刑事責任の追及はあくまでも個人の刑事責任の追及が目的ですから、それだけでは、組織に内在する問題点、マネジメントの問題点やヒューマンファクターを含めた事故のすべての要因を洗い出すことはなかなか困難であるという現実があると指摘されておりますので、やはり捜査機関からの独立も必要であるわけです。

 調査機関の独立性に関しましては、実際にも海外では、アメリカのNTSBを初め、カナダ、オランダ、北欧諸国などでは、事故調査は独立した機関によって行われるべきであるという考え方が大きな潮流になりつつあります。さらに、これらの国は、独立した調査機関の国際的な連絡組織としてITSA、国際運輸安全連合を組織し、活発に情報交換を行っております。この点からしますと、我が国において、航空・鉄道事故調査委員会の体制、機能をより拡充するとともに、国土交通省から内閣府に移し、国家行政組織法上三条の委員会にすることが望ましいのではないかと考えております。

 なお、私は、たまたま先週、オランダの事故調査制度を視察に行ってまいっておりました。オランダにいる間に国会から参考人にというふうな依頼を受けたわけでございますが、現在、オランダはITSAの議長国でもありますが、一九九九年に全運輸分野にわたる運輸事故調査委員会を設立しました。さらに、その組織の拡充を行い、二〇〇五年には、都市災害、工場災害さらには環境衛生災害などあらゆる重大な事故調査を調査対象とする事故調査委員会として改組されており、事故調査による安全の実現に向けた意気込みに大変感銘を受けました。オランダ事故調査委員会のファン・フォーレンホーフェン委員長の、独立した事故調査は市民の権利であり社会の義務であるという言葉を聞かされてきましたが、大変感銘を受け、示唆的でありました。

 なお、お手元に配付させていただきました資料は、平成十三年にこの国会で航空事故調査委員会設置法を改正し航空・鉄道事故調査委員会に改組する法律が審議されました際、私どもの考えをまとめて国土交通省及び当時の国土交通委員会の先生方にお配りいたしましたものに、近時の被害者支援の必要性や安全祈念施設などの考え方もつけ加えたものでございます。僣越とは思いますが、今後の先生方の御議論の参考につけ加えていただければまことに幸甚でございます。

 私の意見陳述は以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)

林委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

林委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。葉梨康弘君。

葉梨委員 どうもこんにちは。参考人のお三人の皆さん、大変きょうは貴重なお話をありがとうございました。自民党の葉梨康弘でございます。十五分しか時間がございませんので、それほど突っ込んで質問することはできないかもわからないんですけれども。

 実は私、きょうも午前中、前職がJRであったという方もいろいろと質問されたんですが、私の前職はお巡りさんでございまして、平成三年にちょうど信楽鉄道の事故が起こりましたときには、同じ近畿管内の兵庫県の捜査第二課長をやっておりました。そして、御巣鷹山の事故、旧聞に属しますけれども、御巣鷹山の事故が起きたときはちょうど岩手県警で捜査第二課長をやっていたということで、この手の事件の捜査というのは大規模特殊事件捜査というふうに警察では申しますけれども、その難しさというのもいろいろと見聞きしたという経験をもとに御質問させていただきたいと思います。

 警察に入りましたのは、私、昭和五十七年に警察庁というところに入庁したんですが、その前年、昭和五十六年ですけれども、官庁訪問でいろいろなところを回っておりました。ただ、そのときは、まだ私自身も警視庁と警察庁というものの区別は全然つかなかったんです。警察庁というのは何をやるところですかということを人事の担当の方に聞いたんですが、これはまず芳賀先生にお尋ねしたいんですが、そこで渡されたのが一冊の本で、後に安全保障室長になられました佐々淳行さんの「危機管理のノウハウ」という本でした。

 それをぱらぱらめくってみましたら、安全な航空会社はどういうところに乗るんだ、事故を起こしたところに乗れと。事故を起こした後というのは、ちょうど芳賀先生の御指摘でいうと違反ですね、この違反の部分はみんなが気をつけるようになるから、極小化するはずである。それから、事故を起こした航空会社であれば、まずコストの面では、安全に対するコストを事故が起こる前よりも日本の場合は特にかけるようになるはずである。そして、事故を起こした航空会社ということであれば、そこのトップはしっかりと事故のことについて部下に徹底するはずである。以上の理由から、事故を起こした直後の航空会社の飛行機に乗るのが最も安全であるというような記述があったのを覚えているんですが、最近どうもその記述のとおりになっておりません。

 例えばJALの事故、どんどん頻発をいたします。またか、またか、またか。JRについても、消防隊員の事故があったかと思えば、尼崎の事故、そして伯備線の事故という形で、これも、またか、またか、またか。

 なぜ今の日本がこういうふうになってしまったのか。これは単純に、効率性重視それからもうけ重視というだけでは割り切れない問題があるんじゃないかというふうに思うんですけれども、芳賀先生から御見解をお願いしたいと思います。

芳賀参考人 事故を起こした直後は気をつけるから安全だというのは、そう単純なものではありません。特に、今は、一つのヒューマンエラーだけでは簡単に事故に結びつかないようなさまざまなシステムになっています。巨大システムですね。航空にしても、鉄道にしても、船舶にしてもそうだと思います。

 したがって、いろいろな仕組みで多重に事故が歯どめをされているわけですけれども、そこが不幸にしてどんどん外れていく。特に問題なのは、オーガニゼーショナルファクターというふうに呼ばれています組織要因です。この組織の安全管理体制、あるいは事前に危険なところに手を打つ体制ができていない。あるいは、そういうところができていない組織というのは、往々にして安全文化が育っていないから、第一線の人たちにも安全を第一に考えて行動するということが十分浸透していないことが多いわけです。

 その組織風土をどうやったら改善できるのか。こうしたら組織が安全になる、安全第一に考える組織になるという処方せんは、残念ながら今のところそう簡単なものではなく、まだこれからさまざまな試行錯誤や研究をしながらやっていかなければならないと思っています。私もそれはぜひ一生懸命研究していきたいと思っているんですが。

 したがって、組織の安全というもの、組織的ファクターをどうやったら取り除き改善するかということについては、さまざまな仮説や意見、こうすればいいという意見がありますけれども、まだこれからということになっていますね。でも、少なくとも私が申し上げたように、トップマネジメントが安全をまず第一に考えているんだということをきっちりと表明して全社の目標にすることから始め、長い時間をかけて組織の安全文化を改善していくことが必要だと思います。

 したがって、先月事故が起きたから今月は安全になるというほど、短期間に組織が変わるというふうには私は思っていません。

葉梨委員 ありがとうございました。

 戦後すぐの時期と比べますと、やはり、当時というのはどちらかといえば気の緩みという形で、組織的なファクターよりも気の緩み、個人の気の緩みの問題、これが事故に結びつくことが非常に多かったものが、今も芳賀先生のおっしゃるとおり、組織的な要因というのが出てきている。そこで、それをどう取り除くかというのが極めて大きな問題だなということを私も感じております。

 そこで、先ほど事件捜査の話で申し上げましたので、佐藤弁護士に、ちょうど信楽の事故の弁護士も務められたということですから、お詳しいと思いますのでお聞きしたいと思います。

 大規模特殊事件の捜査というのは大変難しい。何が難しいかということなんですけれども、三つぐらい私は聞いたことがあります。

 一つは、佐藤先生からもお話がありましたけれども、やはり事件の事実の解明というのは極めて難しいという問題。

 これは、当然のことながら、事故ですから、もうぐちゃぐちゃになってしまいます。そして、その中で、だれがどこに乗っていたのか、だれがどういう状況だったのか、あるいはどういう原因で、どれぐらいのスピードが出たのかということの解明自体も確かに難しいということがございます。しかしながら、特に御巣鷹山の事故の捜査、これは業務上過失の捜査ということなんですけれども、さらにもっと大きな問題が二つございます。

 一つは、過失の認定の話です。すなわち、パイロットであるとかあるいは運転士であるとか、これについて何らかの刑事事件が訴追されるということは、これは当然の話としても、それ以上、つまり、その上司あるいは社長といったところにどの程度の業務上過失の責任が立つかという問題、これの捜査というのは大変難しかったような気がいたします。

 それからもう一つは、同じような話ですけれども、だれが責任をとるか。特にこの手のものの場合はなかなか、ここをだれが責任をとるというのが社内の規程上明記されていないというようなことがあって、いろいろな形での押しつけ合いが起こったということも聞いております。

 私、この法律が非常に助けになるというのは、事故というのは絶対に起こってほしくはないんですけれども、例えば事故が起こった後の刑事事件の捜査ということを考えたときに、決してトカゲのしっぽ切りに終わらせることなく、トップマネジメントの方々にはしっかり責任をとっていただく、そして責任だけじゃなくてどういう過失があるかというのも、あらかじめ安全規程ということを整備しておくことによって非常に立証がしやすくなる、そういうような感じを持ったんですけれども、佐藤先生からその点について御見解をお願いしたいと思います。

佐藤参考人 過失の認定が大変難しいというお話ですが、私も同様に考えております。

 最近、日本におきましては、巨大事故でも、二十一年前の御巣鷹山の事故、それから中華航空の事故、十二年前だったと思います。それから六年前のちょうどこの日に起きた、当時営団だった日比谷線の中目黒の事故、これはいずれも日本の戦後に残るような大事故ですが、いずれも被告人特定に至らずに起訴できないという結果に終わっております。

 一つには、システムがどんどん巨大化をしてくる中で、特定の個人の決定的な過失をなかなか特定できないということがその背景にあるだろうというふうに思います。

 次に、人間工学とか安全工学の立場からすれば、人間というのは失敗をして当然だという話が先ほど芳賀先生からございましたが、だれでも犯すような小さなミスが、システムの穴を通ってあっという間に大事故に結びついてしまう。そこから、すべての被害を小さな過失と結びつけて、その小さな過失を犯した人だけを処罰するのも難しいというふうなこともあるだろうと思います。

 それから、先ほど葉梨先生の御指摘にありました、上司や管理職の過失はどうなるのかということですけれども、過去の火災などでは例外的に社長や責任者の責任は問われておりますけれども、運輸事故では、これまでなかなか難しいという現実がございます。

 この点、私、いろいろ研究をしてまいりまして、アメリカはそもそも業務上過失致死傷罪という罪名が基本的にはございません。したがいまして、刑事で処するのは故意犯か故意犯に比すべき重過失のみだという扱いがなされているというふうに聞いております。したがいまして、航空事故とか鉄道事故では、オペレーターとか中間管理職、それから社長が刑事責任に問われることはまずない。

 それから、ヨーロッパは、イギリスも含めまして、日本と同じような過失の処罰規定を持っておりますけれども、ほとんどの国が過失犯を処罰することにだんだんと消極的になってきているという傾向を見受けることができます。例えば、ドイツで百一人が死んだエシュデの事故、ICE、ドイツの新幹線の事故がございますが、そこで公訴棄却になりました。それから、ザルツブルクのケーブルカーでも全員無罪になっておりまして、日本とか、大分そこらあたりが違うんじゃないかというふうに思っております。

葉梨委員 ありがとうございました。

 いろいろとお聞きしたいことはあるんですけれども、十五分ということで、あと二分ぐらいになってしまいましたが、この質疑でぜひちょっと議事録に残しておきたいので、私も一つ申し上げておきたいと思うんです。

 今、佐藤先生からも過失のお話、非常に難しいという話がございましたが、確実にこの安全規程というのをしっかりと整備していくことによって、過失の認定ですとか、あるいは責任の所在というのは非常に捜査の面ではやりやすくなる。ということはどういうことかというと、事故は起こってほしくないんですけれども、その防止策として必ずこれをやることは、何かあったときには必ずトップに責任がかかってきますよということをやはりトップの方々にもしっかりと徹底をしていく、そのことによって事故防止を図っていくということは、私は大変必要だというふうに思います。

 あと一分ですけれども、これも議事録に残すために、私の経験から一言申し上げたいというふうに思います。佐藤先生から三条機関の内閣府という話がございましたけれども、これは、内閣府のあり方と、それから警察組織、これは地方組織でありますけれども、のあり方で考えますと、どうも現状においては、目指すところは一緒なんですけれども、八条機関で特別な機関、これは証券取引等監視委員会と一緒ですけれども、そして地方に手足のある国土交通省という方が、今の日本の現状としては、事故調査という面では合っているのかなというふうに思っています。

 最後に、河内先生に一言お聞きしたいと思います。

 これは、制度をどういうふうにつくったらいいかという話もそうなんですけれども、やはりこの安全というものは非常に、先ほどもお話がありましたとおり、モチベーションが持ちづらいものである。警察においても、刑事警察よりも警備警察。やって当たり前、安全で当たり前の方がモチベーションが非常に置きづらい、盛り上げづらいという話もございます。

 そこで、この教育訓練の徹底ということが絶対に必要になってくると思うんですけれども、それについて、河内先生から、何かいいお知恵があれば一言伺いたいと思います。

河内参考人 今、先ほど申し上げましたように、私が一番早急にやりたいことは、事前に一つ一つの作業がどれくらいの確率で危険度を含んでいるかということを定量的に明らかにして、教育あるいは事前の訓練でそこに注意力を集中する、あるいは注意力のレベルをそれぞれに分けて訓練をする、そういうことが大事だろうと考えております。

葉梨委員 ありがとうございました。

 以上で質疑を終わらせていただきます。

林委員長 三日月大造君。

三日月委員 民主党の三日月大造です。

 本日は、本当にお忙しい中、参考人の先生方には当委員会にお越しをいただきまして、また、御指導、御協力いただきまして、ありがとうございます。

 公共交通機関の悲しい事故でお亡くなりになる方が大変多くいらっしゃって、その方々に改めて御冥福をお祈りし、またお見舞いを申し上げたいと思います。

 特に、昨年四月二十五日に起こりましたJR福知山線脱線事故、本当に多くの方々がお亡くなりになられましたし、また、今なお治療等でお苦しみの方々もいらっしゃいます。一日も早い御回復をお祈り申し上げながら、私は、もともと鉄道員をしておりました、JR西日本で電車の運転士もしておりました。ぜひ専門家の先生方のお知恵もおかりしながら、委員各位の衆知も集めながら、まずは、事故のない、事故によって犠牲になる方がない国づくりを目指していきたいと思います。

 とはいえ、芳賀先生が冒頭にも御指摘いただきましたけれども、残念ながら人間が関係している以上エラーというのは起こるんだ、そのエラーというものが事故に結びつかない対策をいかにとっていくのかということが大切なんだ。ならば、後ほど先生方の御見解をお伺いしますが、そうやって起きてしまったエラーだとかインシデントだとかアクシデント、事故ですね、トラブルも含めて、そういったものをいかに国の中で、運輸機関、各事業者の中で教訓化するのかということが私は大切だと思うのです。そういった観点から何点か質問をさせていただきます。

 お手元に、一枚、資料を配らせていただきました。先生方だけではなくて委員の皆様方のところにもお配りをしています。これは、我々野党の方から、今法案の審議に際して、より安全な運輸機関をつくるために、より安全な運輸機関を持つ国をつくるために、このような修正が必要ではないかということで示した修正案です。安全というものに与党も野党もないと思っていますから、当然、いろいろなハードルはあるものの、与党の皆様方にも御理解をいただけるものと確信の上、提出をさせていただきましたが、現時点、理事会で提出をさせていただいた段階では、残念ながらその理解は得られませんでした。

 この大きな柱は、やはり航空・鉄道事故というものが、運輸の事故というものが、これまでのようにメカニカルな部分を超えて、やはりヒューマンな部分に絡んできているということ、その解明に当たっては、組織、社会、芳賀先生もそして佐藤先生もおっしゃいましたソーシャルなファクター、オーガニゼーショナルなファクターというものの解析がもう不可欠なんだということを踏まえて、国土交通省から省庁横断的な内閣府に移管をしていくべきではないだろうか。

 そして、佐藤先生からは国際的な機関の御紹介もありました。後ほどゆっくりとお伺いしたいと思うんですけれども、航空、鉄道だけではなくて自動車においても、例えばヒューマンな事故、メカニカルな事故という点ではかなり共通して知見が得られる、経験が得られることはあると思うんですね。そういったものを水平展開していくこと。加えて、国際的な機関が蓄積をしているさまざまな経験というものを、オランダではどうでした、日本ではこうですね、特に日本のような科学技術の進んだ国においては、そういう経験を国際的にシェアしていくという責任が私はあるというふうに思っています。

 そういった修正案に対する御見解も伺いながら、私は、事故調査、事故調査委員会のあり方について、四点お伺いをしたいと思います。

 準備の都合もあるでしょうから、冒頭に申し上げます。芳賀先生と佐藤先生にお伺いをいたします。事故調のあり方について、一点目は機能、体制面で事故調査委員会のあり方について、二点目は調査する範囲、三点目は独立性、事故調査委員会の権限という観点、そして四点目に情報公開、被害に遭われた方々に対する支援という四点にわたって、今のこの国の事故調査のあり方、事故調査委員会のあり方が果たしてどうなんだという検証や、それぞれ先生方のお考えをお聞かせいただきたいと思うんです。

 まず、一点目。

 芳賀先生のお書きになった「失敗のメカニズム」、これを読ませていただきました。本当におもしろくて、人間行動のいろいろな細かいところ、奥深いところを表現されているなと思いました。この中に、先ほど申し上げた、エラーが起きても事故にならない対策の必要性でありますとか、あとは、ヒューマンエラーをもっともっと踏み込んで、広く、ソーシャルな部分、オーガニゼーショナルなファクターでエラーや事故というものを読み解いていくことが必要なんだ、それを教訓として生かすことが必要なんだという非常に示唆に富んだ表現をいただいています。

 まず、今の事故調査委員会が、先生が御指摘になっているヒューマンエラーを分析するに足り得る組織になっているのか、また、単なるヒューマンエラーからもっと踏み込んで、組織の問題だとか風土の問題だとか、そういったことについて検証、調査する組織になり得ているのかということについての御所見を芳賀先生にまずお伺いしたいと思います。

芳賀参考人 なっていないと思います。だけれども、できるかというと、簡単ではありません。日本に一体何人専門家がいるのか。私を高給で雇ってくださるなら、大学をやめてもいいですけれども。

 つまり、この分野というのはまだ新しく、特に日本では、大学にヒューマンファクター学部があるわけではありませんので、実際にはかなりの、大学を出た後、心理学や人間工学その他の関連することを勉強した後でいろいろなことについて経験を積まなくてはならない上に、鉄道や航空といった巨大な技術システムについての知識も熟知する必要がありますので、物足りないことは確かではありますけれども、では、ほかに任せるところがあるかというと、それまた難しいのではないか。今回の法案の中では第三者機関に一部を委託することができると書いてありますが、それはかなりの進歩かなと思うんですね。

 ついでに申し上げますと、事故調査委員の中に垣本由紀子先生という、私が尊敬する、最もヒューマンファクターに対しては経験と知見の豊富な方だと思います。そういう方もいらっしゃいますし、まあ、今のところは、もう少し長い経験とそれから人員の拡充、予算などでの配慮があって、もう少しだんだんよくなっていく。

 こういうヒューマンファクター面や組織のファクター面についての経験もまだ乏しいわけですけれども、では、ほかで経験のある組織があるのか、人材がたくさんいるかというと、それが必ずしもそうではないという点から考えると、少しずつ育てていくと言うとちょっとおこがましいんですけれども、そういう形かなと思っています。

三日月委員 同じ質問を佐藤先生の方に。

 御提出いただきました資料、「「運輸安全基本法」・利用者の立場からの要綱案」の中にもかなりの部分触れられていますけれども、他国の事例と比較しまして、そして、鉄道、航空だけではなくて、ちょっと幅広いモードの経験、知見を生かしていくといった観点からも御所見をお伺いできれば幸いです。

佐藤参考人 佐藤です。

 まず、ヒューマンファクターの関係でいいますと、アメリカのNTSBには、鉄道とか航空の専門家のほかにヒューマンファクターを専門とする調査官が何人もいまして、鉄道、航空その他船舶などの事故調査に当たって、ヒューマンファクターとか組織のマネジメントの観点から十分な調査をしようとしております。それと比べると、日本の事故調にはまだまだそういう分野の専門家も少ないでしょうし、過去の事故調査報告書を見ましても、そういう観点から十分な調査がなされたとは言いがたい現状にあるというふうに思います。

 それから、運輸の分野のお話ですけれども、先ほど私の冒頭の意見陳述でも触れましたけれども、アメリカ、カナダ、それからオランダ、北欧、さらにニュージーランドのような国では、事故調査は特定の分野ではなくて、鉄道の調査の経験とか手法を、ほかの航空であり、船舶であり、例えばパイプラインなんかにも生かしていくということで、多くのモードにわたる、多くのモードと統合した事故調査機関にしていこうという動きが顕著であるというふうに私は認識をしております。

三日月委員 芳賀先生は現状をお示しいただいたと思うんです。もちろん、そういうヒューマンエラーについての分析は必要なんだけれども、専門家がなかなかいないし、また、今の事故調査委員会の中にそういう機能が備わっていないと。とはいえ、その必要性については認め、だんだん育てていければいいと。

 佐藤先生については、諸外国の先進事例も引き合いに出されながら、やはりヒューマンエラー、そういうものについての調査分析ができる陣容を事故調として確保していくべきだという、目指すべき姿を御提示いただいたと思うんです。

 芳賀先生にちょっと踏み外してお聞きしたいんですけれども、そんなにいらっしゃらないものなんですか、先生のような、エラーというもの、人間の犯すエラーというものを研究し、それをさまざまな角度から提言される方々というのは。なぜアメリカのNTSBではできて、日本の事故調査委員会ではできないんですか。

芳賀参考人 一つは、NTSBの十分な歴史があるということだと思いますね。

 もう一つは、そもそも労働市場というか、人材の流動性の問題があると思うんですね。NTSBで活躍した人が大学に行き、あるいは大学からNTSBに行き、そして運輸省に入ったり、あるいはFAA、航空局に行って活躍する、そういう形での人事の流動がもう少しあればいいと思うんですけれども、日本の場合はなかなかそうはいかないものですから、一つの機関に長く所属している。ですから、そこに若くていい人材を持ってきて、育つのを待つということにせざるを得ない部分があるんじゃないかなと思います。

三日月委員 今、非常に示唆のある御指摘をいただいたと思うんです。

 日本は、そういう事故だとかトラブルだとかアクシデント、インシデントというものをその場当たりで調査研究してしまっていて、例えば、その実績の蓄積ができていないんじゃないだろうか。また、そういうことを調査研究する機関を整備することによって、例えば大学の研究機関や何かとも人材のやりとりをする。あそこに行って失敗を学ぼう、経験を学ぼう、それを例えば論文にしよう、本にしようといったような研究領域というものがまだまだつくられてきていない、認められてきていないという現状があるというふうに、今のお話を伺って受けとめました。

 また、長い目で取り組んでいかなければいけない改革もあるんだと思います。

 芳賀先生と佐藤先生にお伺いしたいのですけれども、二つ目に申し上げました、調査する範囲なんです。

 大きな被害を伴う事故だけではなくて、事前の芽、トラブルだとかインシデントの部分の摘み取りとその調査、そして対策を施すことというのが極めて重要なんだという御指摘、もっともだと思うんです。今の事故調査委員会がそういう組織たり得ているのかどうなのか、また、それを補うためにどういった対策が必要だとお思いになるのか、御両者、先生にお伺いしたいと思います。

芳賀参考人 小さなトラブルについて分析して、リスクアセスメント、つまり、どこで大きな事故が起きる可能性があるかということをしっかりとつかまえ、そこに事前に手を打つことは非常に重要なことですが、それを事故調査委員会がやるべきなのか事業者単位でやるべきなのかについては、難しい、簡単には決められないと思います。

 むしろ、私は、事業者単位でやることを国が支援する、あるいは、仕組みをつくって機能させるということを国はサポートするなり義務づけるべきであって、事故調査委員会にインシデントレポートを集め、リスクアセスメントをするということになると、これはまた大変な作業量と仕事になりますし、細かい仕事のやり方まで、各事業者の、例えば、あそこの何とか駅のホームの車掌さんが見るディスプレーが見にくいからどうのこうのという話まで一体事故調査委員会がやれるのかというと、むしろ事業者にそれを任せて、事業者がそこでリスクをきっちりと把握して事前に安全投資をしていくのをサポートする、その形の方が望ましいのではないかなと私は思っております。

佐藤参考人 私も、発想としては芳賀参考人と同じような発想を持っております。

 ハインリッヒの法則といいまして、一つの大事故の背景には二十九の小事故があって、その背景には三百の、事故には至らないけれどもインシデント、危険な事象がある。それに対応するように、三段階の調査があっていいのではないか。一つは、事業者単位での事業者内部での調査、それから事業者を監督する監督官庁レベルでの調査、そして一定のレベルの事故または事故に至りかねない非常に危険な事象について事故調査委員会による調査、それを部門ごとに有機的にかみ合わせることによって、事故調査委員会に過重な負担をしないようにしながら、現場でのインシデントを安全に生かしていくということができるのではないかというふうに思います。

三日月委員 私も芳賀先生、佐藤先生と同感で、すべてのあらゆるインシデントを国の公的な機関で、例えばレポートの報告を求め調査をするということは非現実的だと思います。それは芳賀先生が冒頭に御指摘いただいたと思うんですけれども、幾らあってもお金が足りないという話だと思うんですね。

 私は、四段階でこういうものをやはり把握して調査していくべきであると思っていまして、まずは職場、そして事業者、それぞれのモード単位ですね、航空なら航空、鉄道なら鉄道、その上で、やはり重大事故につながるようなことについては、大きな事故の芽をはらんでいるようなインシデントについては、モード横断的に、省庁横断的に、例えば事例を蓄積するであるとか、とられていない対策について事前に事故を未然に防ぐための勧告をするということがあった方がいいんじゃないかというふうに思っています。

 三点目にお伺いをいたします。独立性、権限の観点から、先ほど葉梨委員の方からもお考えの陳述がありましたけれども、これはまず佐藤先生の方からお伺いをしたいと思います。

 御提出いただいた運輸安全基本法の提案の中には、特にやはり監督官庁である国土交通省から切り離して、調査できる組織をまずつくるべきではないかという御指摘、先生が御提示いただいたものには及ばないんですけれども、我々も第一歩として考えは同じであります。

 食品の安全を管理する食品安全委員会というのが内閣府に設置をされて、例えば、厚生労働省と農水省をまたがるさまざまな科学的な調査やその知見の集積、分析をしていただく組織として、今それぞれの専門家の方々に御尽力をいただいておりますけれども、運輸の安全についてもこういった組織をつくっていく必要があるんじゃないかなと思うんです。

 特に、ヒューマンファクターというもの、ヒューマンエラーというものを分析しようと思えば、労働、勤務、そういった観点からの分析は欠かせません。そういう面では、厚生労働省。サバイバルアスペクツという点でいけば、さまざまな車両の性能基準だとか強度基準、経済産業省。救命救助という観点では、例えば消防庁、警察庁等々。やはり省庁横断的な調査や独立性というものを担保する必要があるというふうに思うんですけれども、そのあたりの御見解について、まず佐藤先生の方からお聞かせいただきたいと思います。

佐藤参考人 この点につきましては、現在、NTSBがすべての省庁から独立して、大統領直属で上院に対して責任をとるという位置づけになっておりますが、なぜそうなったのかということが参考になるのではないかというふうに思われます。

 NTSBが一番最初に発足した当時は運輸省の中に置かれておりましたが、一九七五年に運輸省から外に出されて、現在の立場になりました。どうしてそういうふうになったのかということを私は関心を持ちまして、過去二度ほどNTSBに行っておりますが、その際、詳しくインタビューをしてみました。

 そのとき教えてもらったことなんですけれども、運輸省の担当者というのは、どうしても監督官庁としての職務を熱心に行いますから、規制を守っていたかどうかというような観点から事故調査を行おうとする。しかしながら、そもそもその規制が適切な規制であったのか、規制に関係する法令が妥当適切であったのか、そして規制側とその規制を受ける事業者側とのコミュニケーションがどうであったのかどうかということを、規制当局から一歩離れた目から、規制のあり方も含めて事故調査をしなければ事故の全容というのは明らかにならない、こういう議論がNTSBの中でずっと行われて、最終的には運輸省から独立させたと。

 現在、ITSAに加盟しているような国の事故調査機関はいずれも運輸省から独立していますけれども、同じような発想で独立をしているというふうに聞いております。

三日月委員 同じ質問を、芳賀先生。

芳賀参考人 理想論としては独立させた方がいいと思います。

 ただし、二つ危惧がありまして、やはり先ほど言いましたように、航空や鉄道の技術システムに対しての十分な知識が必要だということを考えると、国土交通省として、行政的に、あるいは現場に近いレベルで、航空や鉄道のことについてさまざまな経験を積んでいる人が調査委員会の中に入るということが、むしろ深い、いい調査ができるという要因になるのではないかなと。また、そこで調査した人が国土交通省の別のセクションで、それこそモード横断的に、そのときの経験、事故調査の経験がさまざまな行政への役に立つということもあるかと思います。

 もちろん、先ほど言いましたように、監督したこと、あるいは行政的に問題がなかったのかということについての問題はあるかもしれませんが、今のところ、それについては、事故調査委員が独立性を保っているということを担保されているので、そんなに心配することはないのではないかと考えています。

 もう一つの心配は、これは確かな情報ではないので、この場でそういう発言をしていいのかどうかわからないんですが、NTSBの勧告が十分実施されていないという情報を私はある人から漏れ聞いたことがあります。それはなぜかというと、監督官庁から独立しているがために、その勧告した事柄が必ずしも行政に十分反映されない面もあるというふうに聞いています。

 しかし、いい面、悪い面、両方あると思いますので、今後、多角的に判断して方向性を出していけばいいかなと。差し当たっては、国土交通省の中でしっかりとした組織、中でと言うとちょっと語弊がありますね、今の形でもう少し育てていくことが第一歩かなと私は考えています。

三日月委員 一足飛びにいろいろな組織も、また研究や経験の蓄積もできないと思っています。それぞれ一長一短があるんだろうと思います。ただ、両先生とも、まず独立性というものの確保については必要だろうという御認識をお示しいただいたと思うんですね。

 私も、独立性という観点から、今の事故調査委員会がどうなっているのかという検証をいろいろとさせていただいているんですけれども、例えば、委員十名の下に、事故が頻発したことによって今四十一名調査官の方がいらっしゃるんです。そのうち、やはり事故調査委員会は独立性を保っているんですから、ちゃんとそれぞれの機関、出向者も含めて、部門横断的に調査官が集められているんですよねということを問うたところ、三十六名出向者の方がいらっしゃるんですね。

 もちろん、それぞれ専門的な領域ですから、航空のこと、鉄道のこと、踏み込んで細かいところまでわかった人が対応するということについての必要性は一定認めつつ、加えること、事故が起こったときに、ではどうやって行っているんですかという調査をしたところ、事故の報告を受けた国土交通省、それぞれの航空局、鉄道局が事故調査委員会の派遣を決めて、それぞれ条文に照らし合わせて、事故調査委員会の委員に出動をお願いする。結果、行かれる時間は、それぞれ事故によっても違うんですけれども、やはり翌日になっていたり、現場の保全という面でかなり問題があるんじゃないんでしょうかという指摘を私はさせていただいているんです。

 では、この区間、この時間、どなたが現場に行かれているんですかと聞くと、それぞれ地方の運輸局の方々が対応いただいていると。もちろん、その部分も、ある一定の専門性だとかということについての理解はするんですけれども、独立性の確保という面から問題があるのではないかというふうに我々は考えています。後ほどまとめて御所見を伺えればと思います。

 一点、先ほどの委員からも御指摘がありましたけれども、ファクツ、事実を事故調査の中でいかに聞き出すのか、その事実に基づく対策をいかに講じるのかという点でいけば、刑事責任の追及と事故の調査、犯罪の捜査という面と事故の調査というものは相反する場面も多くあると思うんです。今の事故調査のあり方や、この犯罪の捜査と事故の調査というものの関係について、芳賀先生、佐藤先生、どのようにお考えでしょうか。

芳賀参考人 捜査と調査は別物で、基本的には相入れないことが多いと思います。したがって、事故調査ができるだけ捜査から離れて独立的に行われることはとても大事なことだと思いますし、事故調査委員会の報告書が刑事責任を追及するための証拠として使われるようなことは決してあってはならないと私は考えています。

三日月委員 ありがとうございます。

 佐藤先生はいかがでしょうか。

佐藤参考人 まず、両方とも非常に重要だということを申し上げたいと思います。事故に遭われた被害者の方、遺族の方が、いろいろな感情をお持ちですけれども、事故を起こした方に対して何らかの処罰がなされる、そういうことを求めるのは当然だろうというふうに思います。しかしながら、安全性を保つための事故調査、すべて事実を明らかにして、そこから安全のために教訓を導き出していくという事故調査も同じく重要である。両方ともしっかりなされなければならないというのが私が考える大前提です。

 そのためには、事故調査が警察、検察が行う捜査に劣後するようなことがあってはいけないだろう。その関係では、現在の事故調が発足をした、昭和四十八年でしたか、そのときに警察庁と当時の運輸省の間で結ばれた覚書は多少見直すべき点もあるのではないかというような気がしております。

三日月委員 最後の質問にさせていただきますが、四点目の、情報公開、被害に遭われた方々への、家族への支援という観点ですね。

 一点目は、九月六日に出されましたJR福知山線の事故に関する中間経過報告、あれを芳賀先生やなんかもお読みになられたと思うんですけれども、非常に難解な文章で、一体どういった部分に問題があるとつかんでいるのか、事実として把握しているのかということの検証が難しいように思えましたし、そう指摘される方は多いです。今の事故調査委員会の情報公開のあり方についての御所見。

 佐藤先生からは、冒頭の陳述及び資料でもお触れいただいておりますけれども、被害に遭われた家族への支援といったものをこの事故調査委員会の機能の一部に将来的にはやはり加えていく必要があるのではないだろうか、そういう心の部分を加えていく必要性についての御認識をお伺いしたいと思います。

芳賀参考人 情報公開が十分でないと思いますが、それもやはり捜査と調査が十分に分離できていないところに根があるように思います。ここのところをきっちりと整理しなければ、情報公開したくてもできないという状況が続くのではないでしょうか。

佐藤参考人 まず、被害者の関係でいいますと、アメリカのNTSBなどでは、被害者、遺族がだれにも邪魔されないで悲嘆に、悲しみに暮れることができる環境を提供するというところまでNTSBが一定の関与をするんだというふうに法律上決められています。そういうことが参考になるんじゃないかというふうに思います。

 それから、情報公開との関係でいいますと、報告書が読みづらいということについては、アメリカやヨーロッパでは、専門のエディター、つまり、易しくて明らかな文章を書くエディターを置いて、報告書のレベルを高める努力をしているということが参考になるんじゃないかということと、事故調査委員会が集めて明らかにした証拠や報告書を刑事処罰に使わないということを明確にしないと、なかなかここらあたりは難しいのではないかというふうな気がしています。

三日月委員 非常に貴重な御示唆を本当にありがとうございました。

 以上で終わります。

林委員長 斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。

 きょうは、大変貴重なお話をありがとうございました。早速質問をさせていただきます。

 まず、河内参考人にお伺いいたします。

 お話しいただいた最後に、今回の法改正に対して非常に大きな期待と若干の不安がある、このようにお述べになりました。この期待の部分、特にまた若干の不安の部分について、まずお伺いさせていただきたいと思います。

河内参考人 先ほども申しましたけれども、情報を集める側と情報を出す側の一体感が果たしてつくれるのかどうか、あるいは、それを技術解析して、定量的に事前に事故を予測できるのか、そういう点にまだまだやることがあって、システムはできましたけれども、それの運用上にはまだかなり道があると私は思っております。

斉藤(鉄)委員 大きな期待の方はいかがでございましょうか。

河内参考人 大きな期待は、やはり現実の若い人たちや社会環境が変わってきて、安全が脅かされている、それに対応して、トータルのシステムとして安全を守る、そういうところが徐々に変わってきているというところは私は望ましいことだと思っていますし、私が感じる限りでは、そういう点ではある程度目配りのきいた案をつくっていただいているのではないかと思います。

斉藤(鉄)委員 先ほど最初にお答えいただきました若干の不安の中で、情報の出し手、受け取り手、その情報のやりとりがきちんといくのかどうか若干の不安がある、そういうお答えでございましたが、ここで先生がおっしゃる情報の出し手というのはどういう意味でしょうか。また、受け取り手というのはどういう意味でしょうか。ここをもう少しわかりやすく教えていただければと思います。

河内参考人 出し手と受け取り手にはいろいろなレベルがございます。会社の中でもそういうシステムがあって、それぞれの現場の作業者から危ない点を安全運行の部門に匿名で提出して、それはそれで機能しております。

 しかし、現在、それを会社の外へ出していろいろな会社で共有したいというシステムができ上がりつつありますが、会社の壁を越えるときにまだ問題点があります。それから、今回のシステムでは、さらに、国土交通省さんがそういう情報をなるべく把握して事前に手を打ちたいという御希望があるようですが、やはりそこにももう一段階のハードルがあるように思います。

 ですから、いろいろなレベルで、現在うまく機能しているのは会社の内部では比較的機能をしていて、これも最初は非常な対立がありましたけれども、双方の信頼関係が徐々に形成されて、今のところ情報の質はかなりよいものが集まっているように私は思いますが、それは、会社の外へは絶対出さないという条件と、それから匿名性を必ず守るという条件のもとで信頼関係ができております。

斉藤(鉄)委員 ありがとうございました。

 この点について、もう一段質問させていただきます。

 今回の法案について、その部分について若干の不安がある、残る。これに対しては、会社間の壁もしくはお役所の壁等についての、その存在を意識した運営、運用が必要であるということ、こういうふうに理解をさせていただきましたが、今回の法律が通ったといたしまして、先生のその不安を取り除くために、もう一段、こういう政策なり手段なり方法が必要なのではないかということがございましたら、教えていただければと思います。

河内参考人 それは大変難しい問題で、こうすれば両者の信頼感ができるとか、こうすれば安全に対する使命感が共有できるとかいうことは、決め手はございません。両者が長いことかかって徐々に構築していくもので、すぐに完成できるものとは思っておりませんし、それから先ほど申し上げた調査と処罰の関係、これをきちっと分離できることが望ましいと思っております。

斉藤(鉄)委員 それから、大変幼稚な質問かもしれませんが、お三方に、それぞれ安全性の専門家でいらっしゃいますので、単純な質問をさせていただきます。

 新幹線については本当に事故が少ない、我々もそういうイメージを持っております。なぜ新幹線は事故が少ないのか、このことについて、それぞれの御専門からお考えを聞かせていただければと思います。

河内参考人 最初のシステムデザインが非常によかったことがあります。例えば、踏切を全部なくして、それから中央制御室ですべてモニターできる、そういう今までの鉄道事故の反省の上に立ってシステムができております。

 しかし、この間、新潟の地震で脱線という紙一重のトラブルが起きました。ですから、航空機は死傷事故を出しております、それに比べて新幹線は、今まで一人も事故を出していない点では新幹線の方に信頼感があると私は思いますが、やはり安全という点ではまだまだやることはあります。

 御質問の点に関しては、最初のシステムデザインがよかったのだと考えております。

芳賀参考人 まさしくシステムとその運用だと思いますけれども、私は必ずしも楽観していません。いつか事故が起きるのではないかと不安は持っています。

 あらゆる交通機関、飛行機にしても新幹線にしても列車にしても船舶にしても、絶対に安全ということはないのでありまして、リスクは常にあります。三百キロであれだけのものが走っていて、リスクがないわけがありません。したがって、そのリスクが常にあるということを常に認識しながら、いかにそれをうまく事故に結びつけないようにオペレートするかということが一番大事なことで、今のところそれがうまくいっているということだと私は思っています。

佐藤参考人 私もこれまでのお二人の参考人と同じで、最初のシステムデザインと、その後の関係者の皆さんの、新幹線で事故を起こさない、新幹線でみんなでやっていくという安全に向けたプロ意識の結晶だったというふうに思います。

 しかしながら、新幹線では、既に一人の死傷者の方が出る事故は起きております。何年前かちょっと正確には忘れましたが、三島駅で、高校生の人が閉まりかけたドアに手をかけて、残念ながらその現状を車掌も十分確認ができず、列車のとまるランプもなぜか作動せずにそのまま発車をしてしまって、振り落とされて高校生が亡くなるという死亡事故が起きております。それから、少し前にはトンネルのコンクリートの剥落事故も相次ぎまして、決していつまでも楽観はできないだろうというふうにも思っております。

斉藤(鉄)委員 ありがとうございました。

 芳賀参考人にお伺いいたします。

 原子力安全ということとよく比較をされます。航空・鉄道事故調査委員会がこちらにはありますけれども、原子力の方には原子力安全委員会がございます。

 実は、七年前に東海村でジェー・シー・オー事故という、バケツで核物質を運んで事故が起きたという事故でございますが、直後、私、科学技術庁の政務次官になりまして、現地の対策本部長で収拾に当たりました。そういう意味で、原子力安全ということについては私もこれまで努力をしてきたつもりですが、原子力安全では多重防護とフェールセーフという二大原則によって設計する、このように言われております。

 ジェー・シー・オー事故は、この多重防護を一気にバケツで通貫するという信じられないことが実際起きたわけですけれども、原子力安全のこの多重防護とフェールセーフの考え方、これは非常にわかりやすいわけですが、運輸事故安全対策ということとの比較で教えていただきたい。つまり、多重防護、フェールセーフという考え方をこの運輸事故ということについても適用できるんでしょうかという質問になろうかと思います。

芳賀参考人 もちろん多重防護、フェールセーフは重要な原則で、そのことが、航空にしても鉄道にしてもさまざまな側面で利用されています。航空でしたらパイロットが見るディスプレー装置が多重になっていますし、コンピューターで運航する場合にはコンピューターシステムも多重になっています。鉄道についてもさまざまな点で、踏切の遮断機の動作、あるいは信号のシステムにしても、すべてフェールセーフな設計になっています。それに加えて、人間のミスをバックアップする仕組み、それから、フールプルーフやフォールトトレラントといったさまざまな安全技術は使われているんです。

 その上で、今、原子力も同じですけれども、それが少なくとも前提条件として、その中でヒューマンエラーが起きる。ヒューマンエラーというのは、システムがその中で働く人に要求しているパフォーマンスの水準ですね、つまり、システム設計の基盤というかシステム設計の前提としての人間行動がうまくできない、失敗するということでありまして、そのヒューマンエラーや意図的な不安全行動、違反といったものをどうするのか、また、そのことに対するシステムのほころびをどう見つけて事前に手を打っていくのかという組織的な問題、ここが今議論になっているんだと思います。

 したがって、多重防護とフェールセーフはもうあって当たり前のことであり、原子力についても輸送機関についても同じことです。唯一、医療に関して、ちょっと余計なことを言うかもしれませんが、これは必ずしも当たり前になっていないという感じはしますけれども。要するに、少なくとも航空や鉄道に関しては、多重防護、フェールセーフの原則はもう当然のものとして、そこから一歩上の安全を今目指しているんだと私は認識しています。

斉藤(鉄)委員 ありがとうございました。

 佐藤参考人にお伺いいたします。

 事故調査委員会の独立性ということをおっしゃいました。現在、この事故調査委員会の委員は、国会同意人事ということで、ある意味でその独立性ということがオーソライズをされておりまして、その上で国交省とよく情報等を共有して事故調査に当たるということで、私は、必ずしも現在その独立性が非常に少ないとは思っておりませんけれども、やはり今のシステムでは不都合なんだ、足らないんだという御意見かと思いますが、この点についてもう一度お伺いいたします。

佐藤参考人 必ずしも、具体的に出た報告書の中で現在の独立性の不足が明らかになっているというわけではないんですけれども、監督官庁としての監督のあり方、それから監督のための諸法令のあり方なども含めて、事業者と監督官庁と一体になってつくるべき安全にどこにほころびがあったのかということを外から調査をして調べた方がよりよい調査ができるのではないか、そういうふうな考えから、私は独立性を先ほど強調させていただきました。

 そして、実際に、この分野での先進諸外国では、運輸省からも独立させるというあたりについて随分いろいろな議論があって、結果的には独立させているということを申し上げたつもりでございます。

斉藤(鉄)委員 最後に芳賀先生に。

 先生の御本、いろいろ読ませていただきまして、大変参考になりました。ありがとうございました。

 その中で、人間はなぜミスをするかという対談がございまして、その中で、反省しない人は同じミスを繰り返すと。ある意味で非常によくすっと入ることなんですが、最後にこのことをもう一度教えていただければと思います。

芳賀参考人 失敗したときに、どこにその原因を帰属させるかという心理学の問題から発しています。

 つまり、何が悪かったのかと。例えば車で追突事故をしたときに、あの車がいきなり自分の目の前に入ってきたから悪いんだというふうに、原因を他者に帰属する人は自分の運転ぶりは変えないわけですね。しかし、いや、自分ももう少しゆっくり運転しておけばよかった、もう少し車間距離をとっておけばよかったと反省する人はそういった事故を繰り返さないわけです。非常に幼稚な例で申しわけないんですけれども。

 そのように、反省するということは、要するに、原因が何だったのかということをきちんと知るということ、そして自分にも問題があったということを素直に認めることから、次のエラー、次の事故が防げるのではないでしょうか。

斉藤(鉄)委員 ありがとうございました。

林委員長 穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 ちょうどきょうは、先ほど佐藤弁護士からお話がありましたが、二〇〇〇年の三月八日に営団地下鉄日比谷線の脱線事故がありまして、当時、事故調査検討会が事故調査に初めて出動した日でもある。そういう日にこういう議論をできるというのは、何か意義深いものがあると私も考えます。

 そこで、河内先生と芳賀先生にまずお聞きしたいんです。お二人は、ヒューマンエラー事故防止対策検討委員会、また航空輸送安全対策委員会等のアドバイザーでもあります。

 そこで、先ほど、ヒヤリ・ハットの情報報告について、芳賀先生は、三つに分類して、事業所その他の三つのところが掌握すべきだとありました。

 ただ、JR西日本が、例えば、安全性向上計画の中にわざわざ事故の芽等の報告対応の是正の項目を設けて、これまでの減点主義を改めることがなければなかなかだめだ、こう書いているんですね。つまり、事業所の中で処理するというだけでは、なかなかそういう問題について成功しないんじゃないかと率直に言って思います。したがいまして、これらヒヤリ・ハットを初めとした安全のために、確実に実施させるためには、国の責任としての義務づけ、制度化というのを後押しする必要があると私は考えます。

 現状では、JRなどは、責任事故1、責任事故2、ヒヤリ・ハットなど会社独自の報告制度を持っているようですけれども、実は国交省は件数すら把握できない状態です。どのように報告させ、どのように活用するかなど検討の余地はありますけれども、私は、この問題は今改めて改善すべき時期に来ているのではないかなと思っています。

 先ほどの先生の御意見を踏まえて、河内先生と芳賀先生、お二人に御見解をお聞きしたいと思います。

河内参考人 ヒヤリ・ハットの問題はかなり難しい点がございます。

 一つは、先ほど申しました情報の出し手が信頼して情報を出さないと、ろくな情報が集まらないという問題がございます。したがって、義務的にこれを報告せよといった場合は、かなりそこを考慮した報告にならざるを得ないかと心配をいたします。だから、情報の出し手が、ここまで出してもこの人たちは安心だというその枠を広げていくことが重要だろうと思います。

 航空宇宙の分野では既に会社を超えたヒヤリ・ハットの体制が、これは国交省の外に自主団体としてございます。そこで抽象化された情報は共有化される方向に行っておりまして、アメリカでもこういう情報はあります。現在それを国際的に統合しようとする動きもありまして、既に、会社を超えてそういう体験を共有しようという動きはかなり盛んになっております。

芳賀参考人 先ほど、集める仕組みをつくることを義務化するのと、情報自体を国が集めるのが混同されているような気がしたんですけれども、集める仕組みを事業者に義務づけることと、国自体がその情報を収集するということは全然別であって、ヒヤリ・ハットを国が集める、先ほど河内先生がおっしゃったように、容易に隠せるんですね。

 つまり、脱線してしまったとか、列車や飛行機がおくれたという外から見える事象ではなくて、ヒヤリ・ハットというのは、もうちょっとで間違いそうになったとか、管制官の言っていることを聞き違えて行きかけたというようなレベルまで含めて報告してもらう方がいいわけでありまして、その場合には、報告を義務づけることはかえってマイナスで、情報が出てこない。非常に重要な事故のおそれがある、その情報が活用されれば事故を未然に防止できたかもしれない情報を確実に集めるには、むしろマイナスの方が大きいのではないかと私は考えています。

穀田委員 今お話ありましたように、私は、その仕組みというものと国自体という問題について、それは分けて議論するべきだと思っています。

 それは私の意見をるる述べる必要はないので、では芳賀参考人にお聞きしたいんですけれども、私のいただいた資料では、芳賀参考人は、「効率偏重がヒューマンエラーを生む」というふうにエコノミスト誌上で述べられております。「市場経済のなかでは、安全か効率かの二者択一を迫ることは現実的ではない。しかし、日々の経営や業務のなかではどうしても効率性の側にバランスが偏る傾向がある。」こう指摘されております。私も実はそのとおりだと思うんですが、あわせて、今やこの問題はちょっと極端な形に傾斜しているのが実態じゃないかと思っています。

 先ほど先生のお話にあったように、余りそのところに財源があるわけじゃないし、し過ぎればということがありましたけれども、例えば、JR西日本の「中長期要員効率化計画の概要について」というのがあるんですが、あそこにあります効率化計画とは、要するに、人員を〇四年度から〇九年度にわたって五千人減らす計画なんですね。だから、割と事業者のところにおける効率化というのは、人員削減と同義語みたいになっているほど事態は深刻であります。

 さらに、JR西日本の場合は、CD七百などという計画がありまして、修繕費についても減らそうということで、五年間ぐらいで今一千億円使っているものを七百億円に減らす、こういうことによって、コストダウンにより利益を確保できる体質、筋肉質にしていくんだ、こう誇ってしまうわけですね。

 さらに、JALも、私、一度国会でもここで取り上げたんですけれども、安全というのが第一になかなか来ないんですね。「いかなる環境においても利益の生み出せる事業構造」とわざわざ書いていまして、人件費の効率化と、ここもこうなんですね。

 つまり、組織の安全文化という問題が問われているわけですが、今や事態は極めて深刻になっていると私は考えていまして、その辺のお考えについてお聞きしたいと思います。

芳賀参考人 個々の事業者の経営計画について私が今云々できるだけの資料も知識も持ち合わせないんですけれども、マーケットエコノミーの中に日本があり、かつ、公共輸送機関の事業体もマーケットエコノミーの中で生き残る、しのぎを削って事業をするということが前提である、そういう経済システムである限り、効率化の努力ということが悪だとは私は思いません。効率化の努力をすることで安全への投資の原資も初めて生み出されるわけです。

 公共輸送機関は特に、安くて、安全で、かつ便利なサービスを社会に提供するということがとても大事なことですよね。ですので、そういう点でも、効率化の努力をいかに安全と両立させるかということは大事です。大事ですけれども、もちろん、さっき私も書きましたし、きょうの資料の最後にも書いたとおり、どうしても努力とその成果というのが見えやすいのが効率性であり、見えにくいのが安全性でありますので、安全ということについて決して手抜きをしないような中で、マーケットエコノミー、市場経済を何とか維持していく、そういう選択をしたと私は思っています。

 ですので、そこをいかにうまくやっていくか、これがリスクマネジメントなのではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

穀田委員 よくわかります。その共存というかバランスというのが実際大事なんですけれども、ただ、私、現実の実態を見まして、なかなかこれはえらいこっちゃなと、この間の事態は。そのいわば破綻がああいう形で事故につながっているんじゃないかなと私自身は思っているんです。

 といいますのは、何せJRなどでいいますと、例のATSの設置が計画されていて随分おくれる。今度、新しい車両を走らすためには一気につけるということができたわけですから、それは一体全体何だったんだ、こういう憤りに似た気持ちが起こる方々の声を聞きましたものですから、つい、そういう点の具体的な話になってしまいました。

 では最後に、佐藤参考人に聞きたいと思います。

 先ほどるる独立性の問題が問題になっています。一定の方々の中に同意人事だからという話があるんですが、あれは何の役にも立ちませんで、同意人事というのが圧倒的に多くて、何もそれが独立性の担保になるわけでは決してなくて、国会の同意人事の中でも、例えば質問を受ける方もあれば受けない方もいたりして、そんなに大した実体はないのが現実です。

 そこで、事故被害者にとっても独立性が必要だという点について一度佐藤先生にお聞きしたいのと、もう一点だけ、いわゆる三条委員会にすべきだということについて言いますと、もちろん、先ほど各参考人からもありましたように、一定の段階を踏んだり経験を踏まえたり、理想ということもあるんでしょうけれども、現実性がないという批判があるけれども、どうお考えなのか。その二点についてお伺いしたいと思います。

佐藤参考人 被害者と事故調査の独立性という観点なんですけれども、独立した調査というのは、どこの国家機関、監督官庁など、それから捜査機関などとも関係がなく、独立をして、いろいろな監督官庁の行政機能そのものも調査対象に含める、そのことによって、事故が発生をしたメカニズムをすべて明らかにするということを意味するわけです。

 私が考えますのは、被害者にとっても、その事故調査によってすべて明らかにされた、そして、どこかの省庁とか関係者の影響を受けているわけではなくて、本当に事故調査が信用できるものであるということが被害者の回復にも役立つのではないかという気がしております。

 それから、三条機関の問題でありますけれども、現在、運輸分野の三条機関としては海難審判庁がございます。ただ、海難審判庁には、海難事故の原因を究明するという役割と、もう一つ、懲戒的な機能をあわせ持つという立場にありますので、そう簡単ではございませんけれども、海難審判庁の懲戒機能をどうするかというふうな議論とあわせて今後の運輸分野の事故調査制度のあり方を議論することは、ヒントになるんじゃないかというふうに考えております。

穀田委員 最後に一点だけ。

 先ほど覚書の見直しというのがありましたけれども、必要じゃないかと。どの辺を特に思いますか。

佐藤参考人 今手元にちょっと覚書の正確なものを持っていないので、多少うろ覚えの発言になりますけれども、一つは、捜査機関が事故調査委員会に鑑定を依頼したときには、事故調査機関は鑑定に応じることができる、そういう覚書の項目がありまして、その結果、事故調査報告書が刑事裁判の証拠に使われているというのが一つ。

 それと、いろいろな条文を細かに読んでいきますと、どうしても警察が先に捜査をして、事故調査委員会はその後をついていくというようなことになるような条文になっている、そういう印象を受けておるわけでございます。

穀田委員 どうもありがとうございました。

林委員長 日森文尋君。

日森委員 社民党の日森文尋でございます。

 きょうは三人の先生方、大変御苦労さまです。お疲れのところ大変恐縮なんですが、幾つかお尋ねをしたいと思います。

 ちょっと具体的な事例になって恐縮なんですが、ずっとわだかまりがあるものですから、最初に佐藤先生にお伺いしたいんです。

 JR福知山線で脱線転覆事故がありました。百七名の方が亡くなって、数百名の方がけがをされた、大変悲惨な事故であったわけです。

 一つは、明らかになっていることは、運転士さん、お亡くなりになったんですが、彼のいわばヒューマンミスといいますか、七十キロで進入すべきカーブを百二十キロ超で進入してしまったということが一点あるわけです。それから、カーブが特別急だというわけではないんですが、以前からちょっと改善をしてというか改良して、以前のカーブよりもカーブがきつくなったということも一つ挙げられていますし、それから、車両が衝突するのは前後で衝突するということを想定しているので、脱線転覆してマンションの壁に横から激突をする、ぺしゃんこになってしまったということは想定していなくて、あれはステンレス製の電車でしたかね、それで被害が大きくなったという問題。これは先ほど河内さんの意見にもありましたけれども、ATSであって、例えばATS―Pとかいう最新型のものをつけていれば、ある意味では防げたのではないかという幾つかの問題点が指摘をされました。

 こういう事故が起きた背景について、これはさまざまあると思うんですが、私鉄との競争に勝つんだということで、大変過密なダイヤが組まれていた。とまる駅を一つ追加してもトータルな時間は変わらないような、そういう過密ダイヤがあったということ。それから、これは指摘がありましたけれども、運転士さんが何かミスを犯すと日勤教育という懲罰的な研修が行われていて、これが一つ大きなプレッシャーになったのではないかという問題もありました。

 その背景には、今度、法律では、その目的に安全ということを明確にしなきゃいかぬという一歩前進する法案の中身があるんですが、JR西日本は安全などということを一切書いていなくて、ともかく利益確保が第一というようなことが背景にあって、実はそういう背景があって、ヒューマンミスであるとか、安全対策の経費を、安全コストを削ってしまうというようなことが生まれてきたのではないかというふうに私は思ったわけです。

 そういう意味からいうと、ほかにもこういう事例はあると思うんです。それで、例えば、これで佐藤先生に御意見をいただくと事故調査委員会に予断を与えるということになるので、このこと自体にお答えいただけるんだったら結構なんですが、NTSBなんかの場合、こういうときはどこまで権限を持って、仮にこういう事故を起こした会社があったとしたら、アメリカでも例があると思うんですが、どこまで権限を持って、どのようなところまで踏み込んだ勧告なりなんなりをしていくのか。調査の中身について、もし御存じのことがあったらお聞かせいただきたいと思っています。

佐藤参考人 私が知る限り、最近のNTSBの事故調査では、事業体における安全文化とかマネジメントにおける責任ということを調査の項目に挙げているという印象を受けます。

 ちょっと正確な年は忘れましたが、ワシントン郊外のシャディーグローブという場所で起きた、向こうで言う地下鉄の事故で、雪が降っているときに非常に滑りやすい、スリップをするという運転士からの報告があったにもかかわらず、定時運行を輸送指令が強く指示をした結果、最終的にターミナル駅で、雪の結果、滑って衝突事故が起きたという件では、現場から危険ではないかという通報に対して、あくまでも定時運行を盾にとって、危険性、通報はあったにもかかわらず厳しい指示をした会社の姿勢に対して、この企業に安全文化が欠けているというようなところまで踏み込んで、厳しい報告書を書いているという記憶がございます。

日森委員 例えば、私はちょっと定かではないんですが、NTSBの場合、安全文化を欠くような経営体質があるとかいう場合は、そこまで踏み込んだ勧告をした例があるというようなことも聞いているんですが、それは先生の方では、そういうことはないんでしょうかね。

佐藤参考人 あるというふうに私は聞いております。

 特に、事故の原因との関係で、企業や事業体の安全文化の欠如を後づける証拠をとることができる場合には、なぜその安全文化の欠如が事故を招いたのか、そして、どのように安全文化を確立していかなければいけないのかというふうなことを、多少具体的なところに踏み込んでですけれども、報告書に書き、そして事業体に勧告しているという例がございます。

日森委員 このNTSBが、先生のきょういただいた資料の中でも触れられていますが、これが基礎になって、カナダであるとかオランダであるとか、さまざまな国々で独立をした事故調査機関が生まれてきたという資料をいただきました。

 そこで、ちょっと特殊だと思ったのは、ちょっと突っ込んだ話、突っ込んだというか、もう少し詳しくお聞きしたいと思うんですが、オランダ、先ほど先生がお話しになりまして、ここは、すべての交通モード、プラス原発であるとか、さまざまなものに対する事故調査の権限を持っていると。これは、NTSBなどと比べてももっと広範囲な調査権といいますか、というのを持っているわけですね。

 これは、先ほどオランダに行かれたという話も聞きましたので、どういう経過でこういうすべての分野にわたる事故調査機関が生まれたのかということについて、教えていただきたいと思うんです。

佐藤参考人 もともと、NTSBとは別に、フィンランド、スウェーデンには、運輸の分野だけではなくて、それ以外の、原発であるとか都市災害などを含んだ非常に広範囲な事故を対象にする事故調査委員会がありました。

 オランダは、最初は、鉄道事故、航空事故というふうにそれぞれの分野に分かれた事故調査委員会がございまして、それがNTSBのような、統合して、より強力な調査委員会を設けようということで、九九年に各運輸分野のものがまとまって運輸事故調査委員会になりました。

 その後、大きな火災事故や、倉庫における花火が爆発する、大爆発が起きるというような事故があった結果、交通事故、運輸分野の事故の調査の知見をほかの分野の事故にも生かすことができると。そして、事故調査委員会がそれをまとめて調査することによって、政府の規制権限のあり方、法令のつくり方などを含めて、安全の観点から調査をし、勧告することができるという議論のもとに現在のものができたというふうに教えていただきました。

日森委員 私も、そういう形が望ましい、いや、将来は、この国の航空・鉄道事故調査委員会もそういう形で発展はしていくべきではないかという思いがあるんです。

 ちょっと先生ばかりで申しわけないんですが、例えば、鉄道事故の教訓を航空事故の調査に生かす、そういうことで、すべての交通モード、あるいはそれプラスアルファで事故調査を行うという機関が生まれたということなんですが、具体的には、逆に言うと、いや、鉄道と航空は違うじゃないか、全く違うモードであるから、同じような形で事故調査はできないという意見も一方であると思うんですね。

 しかし、そうではなくて、国際的にはこういう形の事故調査委員会が生まれ、しかも、しっかりと活動しているということですから、これは、どういう格好でそれぞれの知見をお互いに教訓化して生かしているのかということについて、先生御存じの範囲で結構なんですが、お聞かせいただけたらありがたいと思うんです。

佐藤参考人 私も同じ疑問を持っていたことがございます。鉄道と航空がどうして一つの事故調査機関の中に入れるのか、鉄道の専門知識、航空の専門知識、全然別ではないかという質問をしました。

 そうすると、NTSBの担当者とかオランダの担当者が言うには、もちろん技術的には鉄道工学、航空工学は違う、しかしながら、そのもう一つ向こうにあるヒューマンファクターの要素、それから組織のマネジメントの要素、これはむしろ非常に重なる部分の方が大きいと。両方のメリット、デメリットを考えたときに、一つの事故調査委員会の中で調査をした方がお互い得られるものが非常に大きい、さらに、調査の方法、報告書の作成、勧告を出してそれをフォローする体制、そういうメリットを考えたときに、統合化してやっていくメリットの方がはるかに大きい、そういう実感を持っているという説明を聞いております。

日森委員 芳賀先生にお聞かせいただきたいんですが、先ほど、私の勉強不足で、ああそうなのかなと思ったんですが、NTSBが勧告を出す、しかし勧告を受ける企業の側がどうもそれを実践しない例もあるやに聞いているということを伺ったんですが、実際、そういう場合、何が不足をしているのか。

 NTSBの勧告を聞かない場合も、これは全く処罰の対象にも何にもならないで、それをそのまま受け流していてよろしいという制度になっているから問題なのか、それとも、そこをしっかりチェックする機関が、例えば行政になるのかもしれません、足りないのかということについては、先生どんなふうにお考えなんでしょうか。

芳賀参考人 済みません。よく知りません。佐藤先生か、あるいはこの後いらっしゃる安部先生がその辺詳しいのではないかと思います。ごめんなさい。

 ちょっと発言してよろしいですか。

 先ほど、福知山線事故について直接的、間接的なさまざまな要因を推定なさっていて、私もそのかなりの部分はそうかもしれないなと思っているんですけれども、仮にそうだとして、それが明らかになったとして、では何が今後の安全に役に立つのか。JR西日本の社長を逮捕して起訴して処罰することでいいのかというと、私はむしろ、カーブのつけかえをしたときにあそこにリスクがふえた、あるいは、列車を増発し速度アップをしたときにあそこの線区でのリスクがふえた、ATSをグレードアップする必要があったのではないか、その辺のことが社内できちんと議論されて、投資が事前に、事故が起きる前に行われるような組織体制、社内体制をつくることの方がずっと再発防止に役に立つのではないかと思うんですね。

 そういう点で、今回、安全マネジメントの仕組みを事業者に義務づけ、その責任者をきちんと選び、はっきりその体制を報告させるということが、とても今回の事故の教訓としていい方向に進んでいる法案ではないかというふうに私は思いました。

日森委員 ありがとうございます。

 そのNTSBの勧告と企業の関係、佐藤先生は何か御存じでしょうか。

佐藤参考人 私が聞く限りは、芳賀参考人と少し意見を異にしまして、NTSBの勧告部門の担当者からインタビューしたところによりますと、これまでNTSBが何千という勧告を出して、その八割は既に実現をされている。そして、まだ達成されていない勧告についても、最も重要なものについては重要勧告のリストをつくって、それを日々掲げて、一人ずつ実践されるように努力をしている。NTSBの勧告システムは、強制力はないけれども、社会の監視、それからNTSBに対する信頼というものに基づいて、うまくいっているというように教えてもらっております。

日森委員 ありがとうございました。

林委員長 糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 参考人の皆様におかれましては、御多忙の中、本委員会にお越しくださいまして、また、貴重な御意見をちょうだいいたしまして、ありがとうございます。

 まず、佐藤先生にお尋ねをしたいんですが、信楽高原鉄道事故が起きたとき、事故調査委員会等々から、今、弁護士として活動されている中で、欲しい情報というのはすべて集まったんでしょうか。それとも、集まらなかったり集まりにくかったりしたならば、どんな情報が集まりにくかったのか、教えていただけますでしょうか。

佐藤参考人 信楽事故が起きた平成三年当時は、まだ航空・鉄道事故調査委員会はございませんでした。当時、運輸省の鉄道局の方が信号システムに関する検討会をつくって少し調査をした、運輸省の側はそういうことでございました。

 欲しい調査は、当初はなかなか手に入りませんでした。結果的にはどういうルートで入ったかといいますと、信楽の担当者三人が起訴されて、その刑事裁判が行われます。そして、刑事裁判が行われただけでは被害者側は何も証拠にアクセスはできません。その一方で、被害者側が民事裁判を起こして、民事裁判の裁判所から刑事裁判の裁判所に対して、民事裁判の立証のために刑事裁判で現在使われている証拠がぜひ必要ですから貸していただけませんかと、これは法律用語で証拠の送付嘱託と申しますが、そういう手続を行いまして、刑事裁判の関係当事者、検察官、被告人、弁護人、裁判所に特に異議がなかったので、特に重要な情報を刑事裁判所から民事裁判所に送ってもらって情報をとることができました。

 それは当時、綱渡りの方法でございまして、しかも、警察が本来集めた情報全体から見ると、かなり少ない割合しかとれなかった。

 もう一点申し上げますと、それは民事裁判を行っている原告だからこそ裁判所を通じて得られたわけで、信楽の裁判を教訓にして安全を考えようという一般の研究者、鉄道事業者は、同じ方法では、当時、情報をとることはできないということでございます。

糸川委員 欲しい情報というのは、具体的にどんなものなのかというのはお答えいただけますか。それは難しいところですか。

佐藤参考人 民事裁判を行っておりますから、民事裁判の被告であるJR西日本と信楽高原鉄道の民事責任を立証するための証拠が直接的には欲しかったわけですが、しかしながら、事故の被害者、遺族の立場からすると、どうして事故が起きたのか、その背景も含めて、そして自分の家族がなぜ死ななければならなかったのか、死んでから、事故が起きてからどうやって運ばれたのかということまで、すべてを知りたいのが被害者、御遺族の感情だと思いますから、欲しい情報は一部しか見ることができなかったというふうに言えると思います。

糸川委員 私も今の考えに同感でございまして、ただ、今はシステムとして変わっているのかどうかという点に関しては、どのようにお考えでしょうか。

佐藤参考人 刑事裁判の記録を取り寄せるのに当時は送付嘱託という制度で行いましたが、現在は、犯罪被害者保護関連二法に基づきまして、被害者は刑事裁判の証拠を閲覧できるという、大きく制度が変わった点がございます。したがいまして、必ずしも民事裁判を起こして民事裁判所と刑事裁判所でやりとりをしなくても、被害者であれば原則として刑事裁判で出された証拠を閲覧することができます。

 それから、鉄道分野の事故調査委員会ができましたので、事故調査報告書を見ることができる。

 その二点が、当時と比べて変わった点でございます。

糸川委員 ありがとうございました。

 今、列車というのは構造上だんだん複雑化されているのかなと。それから航空機にしましてもどんどん複雑、複雑というのは、コンピューターを入れることによって、例えば使用説明書というんでしょうか、マニュアルというんでしょうかね、そういうものが複雑化されていると思うんですけれども、そういうものがエラーを招いているのかどうか。これがヒューマンエラーを招くそのきっかけになっているのかどうか。使用説明書という、マニュアルですよね、そこがきっかけに、難しい、理解しにくいということが思い込みを何か招いてしまうとか、そういうことからヒューマンエラーというものが起きているのかどうか。これは河内先生と芳賀先生にお尋ねしたいんですが、お答えいただけますでしょうか。

河内参考人 お答えします。

 その点は大変悩ましい問題で、安全のためにいろいろシステムを複雑にすると、それが原因で新しいタイプの事故が起こることは事実です。しかし、難しいのは、その新しいタイプの安全システムを入れたおかげでどれだけの事故が防げたかというのは、証明することが非常に難しい。

 したがいまして、新しいタイプの事故が起こるたびに新しいシステムのせいになって、新しいシステムはどんどん悪い方向へ行っているのではないかと言われますが、実はそうではなくて、統計的には事故が減ってきております。したがいまして、複雑なシステムにしたために新しいタイプの事故は起きるけれども、それによって防げたはずの事故もかなりあったのだろうと私は思っております。

 ただ、御指摘のように、余り複雑過ぎると、そこからヒューマンエラーが起きますので、それをいかに簡単にするかということも一方で努力をしております。表示装置を統合化したり、あるいは非常に図形を使ったり、いろいろな努力が行われておりますが、何しろ相手は人間という複雑怪奇なものですので、必ずしも決め手が今のところないということになります。

芳賀参考人 システムが複雑になり、それを理解する、あるいはマニュアル化されてヒューマンエラーの要因になるかというと、ヒューマンエラーの定義によるんですけれども、意図的な違反とか省略というような形の、そういうタイプの違反や不安全行動、これは広い意味ではヒューマンエラーなんですけれども、いわゆる意図しないうっかりミスではないタイプの行動の要因となると思います。

 つまり、システムを理解していないことによって、ここを省略しても大丈夫なんじゃないかと思ってしまう。あるいは、さまざまにやらなきゃいけない手順があって、その本質的な意味を十分理解していないがためにマニュアル違反を安易にしてしまうという要因になるわけですね。

 したがって、作業のやり方とか禁止事項を教えるだけではなくて、システムの仕組みから理解をしてもらって、そのマニュアルの成り立ちを十分に教えるということが違反の防止に役に立つというふうに私は思っています。

糸川委員 私も、例えばパソコンなんか買ってきても、使用説明書なんというのは最後まで読む人はほとんどいないと思うんですね。何かトラブルが起きたら、それを解決するために読む。だけれども、それまでは思い込みの中で、こうすれば大丈夫だろうという過去の連続性というんでしょうかね、そういうところから使用説明書を読まないことも多々あるのかなと。例えば携帯電話なんかもそうだと思うんですけれども、新しい機能があってもそれを知らない。

 そういうことが例えば電車や航空機や船の中であるのではないかなと思うんですけれども、河内先生、再度、そこについて、例えば訓練上抜けてしまうということがあるのか、これは学問的な部分からでも構いませんが、抜けているんじゃないかなと思うところとか、これだけのことを覚えさせるのはちょっと難しいんじゃないかなというところがもしあれば、教えていただければなと思います。

河内参考人 その御質問は大変難しい御質問で、実際の航空会社がどういうトレーニングを行っているか、あるいはマニュアルがどれくらい大部のものか、何が書いてあるのかということを全部調べないとちょっとお答えできないので、私は今それだけの知識がないので、申しわけありませんが。

糸川委員 ありがとうございます。

 今、例えば欲しい情報がどんどん集まってくれば、それを解析することによってヒューマンエラーというのは防げてくるんだろうというふうに今までの質問の中でわかってくるんですが、その中で、例えば軽微なヒヤリ・ハットのようなものを会社側に報告するとか、そういうことを行ったときに、例えば、それは問題だねという形でペナルティーがあるとか、厳重注意が怖いから報告しなかったとか、そういうことが起きてくるのかな、それが一つの情報の上がりにくい部分だと思うんです。

 ただ、どこかで個人責任というんでしょうか、そういう責任を追及しなきゃいけないというその線引きというのが非常に難しいと思うんですけれども、そういう環境をつくるという点では、芳賀先生、どのようにしていったら環境というのはうまくつくれるんでしょうか。

芳賀参考人 確かに難しい問題ですけれども、意図しないで一生懸命やっている中でのミスというのは必ず起きることであり、起きることが必ずしも悪ではないと考えるべきだと思います。そのことをしっかりとトップから第一線までがよく認識し、決して一生懸命やっている人がうっかりミスをしたという理由で罰せられたりしないということ、しかし、手抜きをしたり、意図的な違反行為や不安全行動をしたときはきちんとそれに対応するという、その二つの原則が大事だと私は思っています。

糸川委員 それでは、きょう、私の質問は最後なものですからお三方に聞きたいんですが、ヒューマンエラー対策というのは、教育とか訓練とかそういったものである程度減らせてくる、それから社内体質なんかで減らせてくるというふうに聞いていますが、これは各先生方に、再度になってしまうかもしれませんが、ヒューマンエラー対策というのはどのようにしたら向上できるのか、それぞれお答えいただけませんでしょうか。

河内参考人 冒頭にお話ししましたように、比較的安全に強い組織といいますのは、先ほど申しましたトップダウンとボトムアップの二つの面ですぐれた面が共通的にあるように思います。したがいまして、そういう組織をできるだけつくるというところが大事だろうと思います。

芳賀参考人 エラーも違反もミスも、確率は下げることができますが、ゼロにはできません。確率を下げるための対策を常に探して打っていくこと、そして、万一起きてしまったエラーが事故に結びつかないような対策をできるだけとること、そして、そのための社内の体制、マネジメント、どこにそういったほころびがあるかというのをきちんと探して事前に手を打っていく、そういう仕組みをうまく回していく、常に回していくということが大事なことだと思っています。

佐藤参考人 もう時間もございませんから短く言いますと、安全は最後は人ではないかと。トップマネジメントが事故を起こさない、安全を大切にする、そういう決意を持って、組織の可能な限り隅々までそういう思想、哲学を行き渡らせることが最後の頼りになるんじゃないかというふうに私は思っています。

糸川委員 ありがとうございました。終わります。

林委員長 これにて三名の参考人の方々に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言申し上げます。

 本日は、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 午後三時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後三時十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時三十一分開議

林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 内閣提出、運輸の安全性の向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律案の審査のため、参考人として、全日本空輸株式会社代表取締役副社長大前傑君、関西大学商学部教授安部誠治君及び全日本交通運輸産業労働組合協議会顧問・明治大学商学部教授戸崎肇君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、大前参考人、安部参考人、戸崎参考人の順で、それぞれ十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 なお、参考人及び質疑者におかれましては、御発言の際は着席のままで結構でございます。

 それでは、まず大前参考人にお願いいたします。

大前参考人 全日空の大前でございます。

 私は、全日空で運航、整備、客室、空港というオペレーション部門を統括すると同時に、安全に関するANAグループの最高機関でございますグループ総合安全推進委員会の委員長を務めております。

 本日は、運輸の安全性の向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律案としての航空法の改正案につきまして、航空会社の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。

 今回の法改正は、昨年、公共交通機関の事故やインシデントが続いたことを受けまして、国土交通省の主導のもとに、各界の有識者や輸送事業者が集まり、輸送の安全確保を図るには何をなすべきかについてさまざまな論議が行われ、その論議の結果を踏まえまして提出された大変重要な法案であると承知しております。

 私も、今般の法改正の方針を取りまとめた航空輸送安全対策委員会のオブザーバーとして参加させていただきましたが、空の安全を担う航空運送事業者の一員として、本法案が提出されましたことを厳粛に受けとめるとともに、これからの実行に向けて身の引き締まる思いでございます。

 安全管理体制を中核とする本法案には賛成であることをまず申し上げたいと思います。安全管理体制につきましては、まさに現在、弊社でも検討しているところでありまして、方向性も同じでございます。

 弊社は、日ごろから、安全は経営の基盤であり、社会への責務であるとのグループ安全理念を掲げ、安全運航の堅持に取り組んでおります。安全に係る規程として安全マニュアルを制定し、安全マネジメントシステムの考え方を先んじて取り入れるとともに、実際に各生産部門がこれらをしっかり運用しているかどうか、内部監査で点検し、改善すべき点があれば是正していく仕組みにしております。

 また、安全を推進していく体制として、各生産部門から独立したグループ総合安全推進委員会や総合安全推進室を設置しまして、当該部署にて安全に係るグループの方針及び社内の方針の決定や、各部門の取り組みに対する助言、勧告、国内外の事故の事例の紹介、安全にかかわる情報を提供する冊子を発行するなど安全推進活動を行っております。

 安全に係るふぐあいの多くはヒューマンエラーがかかわっていることから、約二十年前に運航乗務員に対してヒューマンファクターズ訓練を導入したのを皮切りに、現在では、整備、客室、空港部門でもヒューマンファクターズ訓練を実施しております。

 安全に関する機材面の強化については、空中衝突防止装置や強化型地上接近警報装置などの安全にかかわる新しい装置や、技術革新の進んだ新しい機体の導入などを積極的に行ってまいりました。

 こうした安全に関する仕組みや取り組みを実効あるものにし、お客様に御満足いただけるような安全や安心を提供し続けるためには、実際に運航に携わるグループ全従業員の安全に対する意識をより一層高めていかなければならないと考えております。

 これには、社員一人一人が安全に関する約束事を守る、決められたことを守ることの大切さを徹底して共有し、自然に守れるようになる、守れなければ恥ずかしいという風土をつくることだと思います。万が一社員が約束を守れなかった場合でも、正直に報告できるような風通しのよい職場をつくっていかなければならないと考えております。

 また、経営トップと現業の従業員とのコミュニケーションも極めて大切なことだと認識しております。

 弊社では、社長、副社長及び関係する各本部長との間で運航に関する情報を共有化し、ふぐあい事象に対する早期対策、改善報告を行うことを目的にしましてOR会と称するものを設置しまして、毎週火曜日、早朝、羽田で開催しております。OR会とは、オペレーションレポートを略したものでございます。また、ダイレクトトークや安全トップキャラバンと称して、社長を初めとする経営幹部が、みずから現場に出かけて対話をすることも行っております。コミュニケーションをする機会を持つことでさまざまな問題の共有化が図られたり、自分の発信した情報がきちんと伝わることなどで個々の意識も高まっていくものと思います。

 このような取り組みにもかかわらず、昨年はANAグループにおきましても安全に係るふぐあいが発生しており、改めて安全に対する取り組みには終わりがないんだということを痛感いたしました。

 先ほど、安全マネジメントシステムの考え方を取り入れた安全マニュアルのことをお話ししましたが、安全マネジメントシステムは、今回の法改正における安全管理体制に相当し、安全マニュアルは、安全管理規程に相当するものだと考えております。

 安全マニュアルの制定から五年近く経過しましたが、制定した当時の安全マネジメントシステムと現在の欧米のマネジメントシステムとを比べながら、改善すべき点や補強すべき点がないか、今年度の安全に関する重要課題として取り上げ、現在検討を進めているところでございます。

 したがいまして、今回、安全管理体制が法制化されることにより、私どもが目指してきたものと同等のものが法制化されることとなり、グループ全体の安全性向上に一段と寄与していけるものと期待しております。

 航空の法改正は、大きく、安全管理体制、安全情報、外部委託の三つに分かれますので、それぞれについて述べさせていただきます。

 安全管理体制については、その具体的な要件についてはこれから決まっていくものと理解しておりますが、航空会社はその規模や組織体制などそれぞれの特性があることから、その特性に応じた仕組みの構築ができるようになることを強く期待しております。

 安全情報の報告につきましては、事故、インシデントを未然に防いでいくために、パイロットや整備士などの現業の従業員からの報告が不可欠であると理解しております。

 先ほどお話ししました社内の安全マネジメントの検討の中でも、個別のふぐあいについて相当の再発防止対策はできているものの、集めた情報を分析して、不安全要素を見つけ出し、それを排除する予防対策を行っていく活動は、今後さらに充実していく必要があると認識しております。

 安全情報の報告で最も重要なことは、集まった情報を分析、評価して、いかに効果のある予防対策を行っていけるかであり、ぜひ、集められた情報を有効に利用して、空の安全に寄与していけるような仕組みにすることが必要であろうと考えております。

 外部への整備の委託に関しましては、近年、整備業務の海外委託が増加していることから、一部には安全性や信頼性に懸念を持たれている向きがあるというふうに承知しております。

 海外整備会社への委託では、委託先の整備能力を事前に審査し、弊社の技術水準や整備品質の要件を満足していることの確認を行った上で、国の許可を得て、認定事業所と言われる事業者に委託しております。また、受領に際しては、現地に派遣している弊社の検査員が、発注仕様どおりの整備が実施されていることを検査しております。

 これらにより十分な品質が確保できていると考えておりますが、認定事業所が必須条件になれば、法に基づく国の審査等が明確に規定されることとなり、より安定した品質の確保が可能になるものと考えます。

 整備業務の外注化は、多様なリソースを最大限に活用することで十分な安全を確保していく施策であるというふうに考えております。

 今回の法制化への対応によって、ANAグループにより有効な管理体制が構築でき、今後も一層、航空輸送サービスの利用者である国民の信頼が得られるよう、経営トップからフロントラインまで、グループ全体が一丸となって取り組んでまいりたいと考えております。

 これにて私の陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

林委員長 ありがとうございました。

 次に、安部参考人にお願いいたします。

安部参考人 関西大学の安部でございます。

 大学の方では、鉄道を初めとした公共交通機関の安全マネジメントを勉強しております。その立場から、今回の御提案に関しまして御意見を述べさせていただきます。

 まず第一点目に、今回の法改正全般でございますが、いずれも運輸の安全の向上に役立つ提案だと受けとめておりまして、基本的に賛成でございます。その立場から、さらに幾つか申し上げたいというふうに思います。

 まず、賛成と申し上げたわけでありますが、特に三点につきまして今回の提案は非常に有効ではないかというふうに思っております。

 まず第一点目ですが、各事業法の第一条に、法の目的として、輸送の安全の確保が挿入されたことでございます。

 これは実は、例えば鉄道事業法を拝見いたしますと、従前は「鉄道等の利用者の利益を保護するとともに、」ということで、鉄道等の利用者の利益の保護ということでうたわれておるわけですが、利益の保護という場合はこれは安全を含むものとして従前は考えられていたように思います。

 今回、ここから、利用者の利益という場合に、安全をさらに取り出して、別に安全の確保ということをうたったわけであります。これは私は大変大きな意味があるというふうに思いまして、単に利用者の保護だけではなくて、安全ということを一段と重視したというあらわれであります。こういうものを各事業法の目的一条に付するということは、事業者のみならず行政各機関についても安全を重視しようということの一つの大きな指針なり目標ができるわけでございますから、これは大変すばらしいことではないかというふうに理解をしております。

 それから、それに関しまして、さらに、事業者の安全努力義務ということ、これは言ってみれば当たり前のことなのですが、これも盛られたということで、この二点で交通機関の安全をさらに高めていこうというあらわれが法的にもここに確認をされたということで、大きな意味があるんじゃないかというふうに思っております。

 二つ目でございますが、輸送の安全にかかわる情報の報告及び公表について必要な規定が追加をされたということでございます。

 情報公開というのは非常に重要でございまして、国民利用者が交通機関の安全性を評価するときに、こういったものが提供されますと、その判断材料になります。これも時代の流れに沿う大変適当な施策ではないかというふうに思っております。

 第三番目ですが、航空・鉄道事故調査委員会の目的と役割の中に、被害の軽減に寄与をするということが新たにつけ加えられました。

 これは、私たちの間では、サバイバルファクターの評価という、重視ということで言っております。つまり、大変残念なことなんですが、幾ら努力をしても重大事故を根絶することはほぼ不可能であります。もちろん、ゼロに近づける努力をしていく必要があるんですが、根絶できない場合、不幸にして事故が起こった場合、それをなるべく被害を軽減するという観点から、サバイバルファクターの研究というのは非常に重要でございまして、このことが事故調の新しい役割の一つに追加されたということでございまして、これも大変私は評価をしたいというふうに思っております。

 一方で、幾つか、今回提案されました法案の内容をさらにより高めていくために、要望なり問題点について少し卑見を述べさせていただきます。

 まず、時間的な制約がございますので、すべての条文について触れることができませんので、事故調関係とそれから鉄道事業法関係の二カ所につきまして意見を述べさせていただきます。

 まず、事故調関係でございますが、今回、被害の軽減ということで、いわゆるサバイバルファクターの点が追加されました。これに加えまして、もう一つ、私は被害者対応を入れていくことが必要ではないかというふうに思っております。

 委員の先生方御存じだと思うんですが、アメリカのNTSBの中には、被害者、遺族を対応するセクションが設けてございます。昨年起こりましたJRの福知山線事故の後も、加害企業のJRが被害者の対応をするということで、随分望ましくない場面がそこには見られたわけでありますので、私はこの際、事故調がこの被害者対応をするために役割を果たしたらどうかというふうに考えております。今回の提案の中にはこれは入っておりませんので、ぜひ委員会としても今後の課題として御検討願いたいというふうに思っております。

 それから、二つ目でございますが、調査機能の充実という点で、今回国土交通省が努力をされて、昨年度と比べると事故調のスタッフの拡充等、予算の拡充等やられたわけですが、まだまだ不十分だというふうに思っております。例えば、アメリカのNTSBではございますが、これの年間予算は日本円に直しますと約九十億円程度になります。もちろん、発生する航空事故の件数が違いますので、単純な比較はできないのですが、そういう規模でございます。

 これはNTSBの関係者がよく言っていることなんですが、NTSBの予算というのはアメリカ国民一人当たりにするとわずか二十四セントの負担でしかない、つまり三十円程度だということになります。三十円程度でアメリカの運輸機関の安全性が向上するわけだから、アメリカ国民はお買い得なことをしているという言い方をNTSB関係者はしております。

 ちなみに、お隣のカナダの国民一人頭の事故調査委員会の予算の負担額は、カナダ・ドルで〇・八六ドル、日本円で約九十円という額になっています。御承知のように、日本の場合は一人頭一円にもいかないというのが今の現状でございます。

 ちなみに、私たちは消防という社会を守る大変重要な装置を持っているわけですが、これは先生方御承知のように各自治体の予算でございますが、消防予算というのは、市民一人当たりに割りますと一年間約一万円ぐらいの費用負担になります。一万円の費用負担から比べますと、事故調の費用、年間一円というのは余りにも少ないんじゃないかということで、私はぜひお願いしたいのは、年間十円ぐらいにしていただけないだろうかと。こうしますと、かなり充実した事故調査ができるのではないかというふうに思っております。

 それから、あと、これは将来的な課題になりますが、ぜひ、将来的には事故調を国土交通省から独立させていただきたいというふうに考えております。

 実は、アメリカのNTSBは、発足以来三十年近くたっているんですが、約一万二千件の勧告を出しておりますが、この一万二千件の勧告のうちの半分がアメリカの運輸省に対してのものであります。運輸の安全というのは、場合によっては運輸行政の瑕疵がその原因になる場合もございますので、やはり私は、アメリカのNTSBや世界の事故調査機関のように、運輸行政の不備も問題提起できるような組織に独立をさせるべきではないかというふうに考えております。

 以上が、事故調査機関にかかわる部分でございます。

 続きまして、鉄道事業法関係につきまして、二点ばかり意見を述べさせていただきます。

 一つは、今回の御提案で、安全統括管理者とそれから運転管理者というものが設けられることになりました。これはこれで私はすばらしいことだというふうに思っておりまして、事故学、安全学では、社長ないし副社長が安全問題に関心を持って、そこで絶えず安全に配慮することが事業者の安全性を高めるという一つの常識ができ上がっております。安全統括管理者が社長ないし副社長ということで、トップの方がこういう役割につきますと、その企業の安全性に対する取り組みは随分違ったものになるのではないかというふうに思っております。

 ただ、危惧をしておりますのは、鉄道を見ますと、我が国は百八十程度の鉄道事業者がいるわけですが、JRや大手民鉄を除きまして、特に地方の中小鉄道会社は体力がございません。せっかくこういう法律をつくったとしても、名前だけこの管理者を設けて、実態が機能しない可能性が非常に強いわけであります。

 ですので、せっかくこういう制度を設けていただいたわけでありますから、実を上げるために、国の指導も引き続き必要ではないか。それから、場合によっては、財政的な支援を行うことによって、中小事業者含めて、こういう制度が有効に機能するような措置をとっていくことが必要じゃないかというふうに思っております。

 最後に、関連して申し上げたいのは、私は安全の問題を勉強しておりまして、最近の状況に非常に危機感を持っていることがございます。

 これは、どの事業者もコスト競争が激しくなっておりまして、事業者のレベルで、特にメンテナンスの外注が進んでおります。事業者の本体で、鉄道会社、航空会社で、実は、いろいろなメンテナンスの外注などを行うことによって、本体部分で技術力を持った社員がいなくなりつつあります。長い目で見ると、これは事業者の安全性を阻害するものではないかというふうに思っておりまして、こういったことについて、私たちはもう少し目を向けていく必要があるのではないかというふうに思っております。これが、将来的には非常に安全に対する脅威になっていくんじゃないかということを感じておりまして、ぜひこの委員会の先生方も御留意いただきたいというふうに思っております。

 以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)

林委員長 ありがとうございました。

 次に、戸崎参考人にお願いいたします。

戸崎参考人 明治大学の戸崎です。きょうは、このような場で発言させていただいて、非常に光栄に思っています。

 私も、十年弱でありますが、実際に交通産業で働いておりました。そういう経験もありまして、この産業の研究に入ったわけですが、きょうは特に役割分担ということで、現在労働者の方々といろいろな機会を接してお話をさせていただいておりますので、そうした観点も入れながらお話をさせていただきたいと思います。

 まず、このように安全に対する取り組みに関して非常に積極的に法令をつくっていただいたことに対して感謝いたしたいと思います。したがいまして、基本的なラインとしては賛成いたします。

 その上で、まず若干総論を述べた上で、個々の論点について二、三指摘させていただきたいと思います。

 まず第一に、やはり安全というのは、直接は労働者の方々が担うものであります。したがって、労働者の方々が実際に安全に対して十分に顧慮しながら働けるような環境をつくることがまず第一だと思われます。

 これまで規制緩和がずっと行われてまいりました。私も規制緩和というのはやはり必要だと思います。やはり、努力をする者が報われ、新しい創造的な仕事ができるというのは非常にすばらしいと思います。

 ただし、その中でやはりこぼれ落ちていくものがあると思われます。

 実は、きのう、タクシーの方で、いろいろな大会がありまして、その中で審議会の、タクシーの委員会の委員長をされている方ともお話をしました。やはり、安全に対する投資というのを把握するのは難しい。激しい競争になりますと、安全に対する投資というのがどうしても十分に払われないという事態があります。実際に、そういったことで、さまざまな事故が規制緩和以降起こっております。やはり、こういったものに対しては、適正な競争とは何なのかということをもう一度考え直す必要があるのではないかというふうに考えます。

 そうなりますと、単に値段が安いということも、確かに消費者利便には、向上に資しますが、やはり最終的にはお客様が、利用者が安全になるようにというのが今回の法令の趣旨ですから、そういったことにかんがみれば、やはり安全に対するコスト、その中には、当然ながら、労働者の環境改善というのも含まれてくると思います。

 現状ではそういったものがなかなか考慮されずに、世間でもよく報道されますように、非常に厳しい環境の中でどうしても居眠り運転とか、あるいは消費者の、ただ安いというところだけに意識が行ってしまって、本来の意味での安全対策が十分にならないという例は、先ほどの御指摘のように、関西のJRの事故なんかでも十分見られるのではないかというふうに考えます。

 そうした際に、やはりきちんと規制緩和の後のチェック体制を十分にし、そして迅速な見直し、ルールの構築、今回の条文も条文の性格上仕方ございませんけれども、やはりある明確な基準を、破ればすぐに安全対策上の措置が講じられるようなルールの構築、わかりやすい体制というのをつくるべきであろうというふうに考えます。

 これが冒頭の議論であります。

 内容に入りますと、安全監視体制の充実ということが今回大きくうたわれています。これは非常にすばらしいことだと思います。しかし、若干危惧いたしますのは、果たしてそれに見合うような人材がどこまで十分に確保できるのかということであります。

 もちろん、こうした体制がこれに伴って補充されれば非常にありがたいと思いますけれども、一方でさまざまな、国家レベルでもリストラが進んでいく中で、あるいはこれだけ市場が複雑になっていく中で、情報が複雑になっていく中で、果たして中央で一元的に管理できるのか。中央の方は非常に優秀ですけれども、ただし非常に御多忙な中で、あるいは、交通というのは非常に地域特性が複雑なものですから、ある程度やはり地域を細かく見ていくような体制が必要ではないかというふうに考えております。

 もちろんこの点では地域協議会とか、これまでもさまざまな対策はとられておりますけれども、一層こうした地域協議会などを通じた交通行政に関しては分権化が進められ、適切な中央と地方との役割分担というのが交通分野においても求められるというふうにまず考えます。

 次に、やはり安全審査の能力の向上ということが図られております。

 やはり、機械が非常に高度化しています。安全に対する要因というのは非常に複雑化していますので、そうした面で、これまで以上に安全に対する審査というものが十全たる機能を果たすように、専門家の養成というのが図られていくべきだと思います。

 次に、情報公開のことであります。

 情報は非常に大切です。しかしながら、我々はやはり情報ということを、いろいろ労働者の方々も御協議されていますけれども、では、一体どういった情報を公開すればいいのか。単に過去のデータを流しただけでも、なかなか利用者あるいは一般の国民というものは、それから具体的に、では、何が安全で、何が安全でないのかということを判断するのは難しいと思います。特に、このようなインターネットが普及している中で、果たして国民がどれだけ情報を効果的に利用しているかというと、やはり非常に難しい。ですから、情報の洪水の中で、やはり適切に情報を見せていくような形でないと、この情報の公開というのは絵にかいたもちにすぎなくなるのではないかという危惧があります。

 ですから、これこそはまさに今後の検討課題として、情報というのをどのように国民にわかりやすく、利用者にわかりやすく提示していくかということを細則の中できちんとしていっていただきたいと思います。

 次に、これも参考意見でありますけれども、中に運輸審議会、現在では国土交通審議会というものの付託の事項がございます。皆さん、非常に頑張っておられますけれども、ただし、余りにもやはり兼任が多く、十分な議論ができていないのではないかということが危惧されます。

 したがいまして、各種委員会におきましては、今回も、安全対策の中で、重要な意見の提示というものをする重要な機関でありますから、この点は、やはり委員の重任をなるべく避け、そして、わかりやすい形の委員選考、そして、その実質的な議論を深めるという形をしていただければありがたいなというふうに考えます。

 最後に、安全統括管理者、運航管理者の位置づけですが、これは論点の中にもありましたように、今の交通産業というものは既に、かなりの程度、安全体制というのを構築していますので、それとの整合性をどのように図っていくかということを今後提示していただければ、あるいは、我々も頑張って講じていただきたいと思います。

 いかんせん、ともすれば見落としがちな、実際の現場の労働者の方々の努力というものが十全に機能するような環境が、最終的には安全確保ではやはり重要だと思われますので、その点に関して考慮していただくような形で本法案というのが、より包括的に、つまり、交通産業というのは、鉄道、航空だけではなくて、すべての産業が一体となったものですから、非常に苦しい、置かれているタクシーやあるいはバスなども含めた形で、今後、こうした法案というのが横断的に進められていくことを願う次第であります。

 以上です。(拍手)

林委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

林委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中野正志君。

中野(正)委員 自民党の中野正志でございます。

 三人の参考人の皆様、本日はありがとうございます。

 まずは、大前参考人にお伺いをいたします。今、いろいろ、全日空さんとしての現実の安全管理体制について御説明がございました。

 実は、質問する前に、ついぞ先般、ニューズウィーク二〇〇六年二月八日号、もちろん日本版でございますけれども、私はよくわかりませんので。危なくない航空会社ランキング、世界二百八十四社、安全度で選んだ世界のトップ二十五。全日空、ほかの会社のことは言いませんが、八十九・一点で十二位でございました。ちなみに、トップ、ルフトハンザ航空一位、第二位、ブリティッシュミッドランド航空、第三位、ブリティッシュ・エアウェイズ、それぞれに、九十二・二、九十一・九、九十一・七。学生時代のことでいえば、特待生組ということになろうかと思いますが、全日空さんは八十九・一でありますから、限りなく特待生に近い優等生、こういうことの評価かなと率直に喜んでおりますし、ぜひ、ナンバーファイブ、あるいはナンバーワンを目指してこれから頑張っていただきたいな。

 ちなみに、安全項目の評価方法で見ますと、機体年齢六・八点、機種編成八・七点、それから、安全指数が〇・九三三。これはもう少し努力すれば、間違いなくトップスリー、トップワンになれるのではないか、実はこんな期待を持ちながら質問をさせていただくのであります。

 先ほど来お話がございました、安全管理体制の問題で、教育訓練だ、経営と現場の意思疎通の問題、いわゆる社内での安全情報の共有化、あるいはリスクマネジメントの実践だ、たくさんありますけれども、今、ヨーロッパ、アメリカでは、午後の議論でもありましたけれども、安全にトラブルなき世界はあり得ない、むしろ、どう頑張っても人はミスをするものだという前提で対策を考えている。ある人がミスをする前に、別の人がその兆候に気づくような仕組みをつくって、トラブルを未然に防止する体制をつくることが必要だ。もしトラブルが生じても、ミスをした人を責めるのではなくして、ミスを見逃したシステムの問題点を洗い出す、そして改善をしていく、こういうことが大事だということであります。

 先ほど大前参考人は、今回の法改正を機に、欧米の先進の事例も学びながら、航空会社の、安全が最優先という安全管理体制再構築に向けて重要課題なのだというお話でありましたけれども、ステップアップしたこの再構築策、御披瀝をいただけませんか。

大前参考人 一言、お答えさせていただきます。

 お話しする前に、我が社では、昭和四十六年の七月三十日、雫石で大変な事故を起こしました。以来、三十五年たちました。いまだもって、雫石の山の中で、線香のにおいが、お花が消えることがありません。事故の持っている怖さ、つらさというものを、改めて、私も日々感じている次第でございます。その中で、我々が感じておりましたのは、もう二度と事故を起こしてはならないんだ、これが社会に対する責任だということで、安全に関する対策はやれることはすべてやろうじゃないかということでやってまいりました。

 しかし、三十五年の歳月が安全だから、これからの将来を保証するものでも何でもない、それはもう過去の話で、今何が起こってもおかしくない、そういう意味で、いつも、安全に関しては謙虚に誠実であるべきだ、これを非常に大切にしないと、安全というものはいつ崩れるかもしれないという気持ちでおります。そういう中で、我々は、いろいろな安全に関する仕組みを日々いいものにしていこうというふうに努力しているとあえて申し上げたいと思います。

 先ほど申し上げた安全管理体制についても、一番新しい仕組みを入れていこうじゃないか、考え方を入れていこうとか、それから、やはり、ヒューマンで、ヒューマンというのは決してなくなることはない、残念ながらなくなることはない、減らすことはできても、ゼロにすることはできない。今先生がおっしゃったように、早く気づいて、事故に至らない、大きなことにならない前に、それを未然に防いでいくとか、いろいろな仕組みの中で、それを、その影響を減らしていくとか、いろいろな取り組みがあります。そういうことをあらゆるところでやっていくことが極めて重要だ。そういう意味では、安全に関しては、万全な体制はないんだということを、改めて、いつも、日々思うことが、大切にすることが安全を担保していくだろうと思っています。

 先生もおっしゃられたように、安全というのはトップがしっかり位置づけなきゃだめだ、やはり、安全がすべてに優先するんだということを、全従業員、グループ員が認識して、日々の仕事の中でそれをつくっていくということが私は極めて重要だ、そういう観点でいろいろな安全に対する取り組みをしているということをお話しさせていただきます。

中野(正)委員 ありがとうございます。

 先ほど御説明の中で、大前参考人、整備のお話がございました。その中で、漏れ伝わりますと、三分の一は自社で整備をする、三分の一はグループ関連で整備をする、それから、残り三分の一は海外外注、これはやめるべきだという差別論も先ほどもありましたけれども、技術能力を共有するということは、よっぽど技術に自信がないとできないと思うんですね。大前さんは、どちらかというと社内的には整備畑出身、こういった方針はどういった考え方からの経営判断だったのか、御披瀝いただけませんか。短くていいです。

大前参考人 今言われますように、今の全日空グループの整備の体制というのは、自社の体制、グループ側による体制、それから外注会社による整備という三つのジャンルでやっております。これは、どこにお願いしても同じレベルの安全が担保できるという保証がなければこの仕組みは成り立ちませんので、それがすべての前提にあるということを申し上げたいと思います。

 簡単にということなので、それがなければ整備は委託できない。先ほど申し上げたように、安全なくして我々の事業は存在し得ないので、どこにお願いするにしても、安全が担保できることが整備においての最低限の必要な事項だと思っています。

 そういう意味で、そういう体制をつくる中で、自社の体制がその中心にあることが極めて重要で、自社員がそういうことをしっかり経験し、物事を見詰めることができる力をそこでつくることが極めて大事だと思っています。

中野(正)委員 最後ですけれども、航空・鉄道事故調査委員会について、今、国交省から内閣府に移管すべきという議論もありましたし、参考人からも話が出ました。

 私は、現実、国土交通大臣から独立して調査の際の権限行使に当たっておりますし、去年もことしもそうでありますけれども、円滑な事故調査にはやはり国交省との密接な連携というのが十分必要だ、不可欠だ。今、現実は、連絡体制は十分に確立されております。ただ、一点、当局の監視の厳しさ、これはもっともっと厳しい方がいい、早いうちにトラブルの芽を摘める。

 そういう意味では、今回の法改正でも、航空会社、鉄道会社等に対する監督、監査の強化、あるいは体制の強化、専門担当職員の能力向上、こういうことで、私は、現実、今の事故調査委員会でいいと考えておりますけれども、事業会社ということではなくして航空関係者ということで、大前参考人、いかがお考えになられますか。短くて結構です。

大前参考人 一事業者として見たところをお話しさせていただきます。

 まず、現在の事故調が行っているいろいろな事故調査のあり方について、我々は、公明正大であるし、科学的にしっかりした事実に基づいて調査をしていただいているというふうに感じております。

 これは事故調査の目的が事故を再発防止するという観点から極めて重要なので、ここがしっかり担保されることが極めて重要だろう。そういう意味では、今の体制については十分機能しているというふうに理解しております。

中野(正)委員 大前参考人、ありがとうございました。

 ちなみに、確かに、アメリカは一元的、しかし、イギリスあるいはドイツは各モードごとの事故調ということになっておるようであります。

 続きまして、戸崎参考人にお伺いをいたしますが、御本人がお話しされましたように、かつて航空関係、中身は日本航空にお勤めだったようであります。

 中身はいろいろ言いませんけれども、今回、次期社長も最優先課題に安全確保を掲げ、記者会見のときに現新町社長も安全という言葉を繰り返しました。また、中期経営計画の発表もありました。いろいろお考えになられて、このことで日本航空が改革実行できるや否や、戸崎参考人の御所見をお伺いしておきたいと思います。

戸崎参考人 本来の役割ではないかもしれませんけれども若干述べさせていただくと、本当に今回は危機に直面していると思われます。

 これまでの内紛と言われるものとの違いは、テレビ等でもお話をさせていただきましたけれども、派閥を超えた世代間の交代であると私は聞いておりますし、その後、いろいろな方とお話をしてそのように伺いました。したがって、これが本当の真実であろうと思います。

 ただし、今回、正直に言えば、少し中途半端な形で決着がついたように思われます。したがって、今回を乗り越えて本当にどこまでこれが収拾できるかというのは、もちろん、今回のこれから始まる労使間の協約において賃金カットがうまくいくかということと、これをとにかく収拾したいという意向がいかにうまく働くか。

 ただ、最後に申し上げたいのは、現場はもう余り関係ないです。つまり、取締役の顔というのはほとんど知らない人が多いので。現場としては、もうとにかくおさめて早く次の体制に行きたいということですから、余りマスコミに振り回されることなく、現場が早く集中してできるような環境をつくることが唯一だと思います。

 以上です。

中野(正)委員 まさにそのとおりでいいと思います。やはり改革実行でありますから、役員だけでできるわけではない、社員も労働組合もまさに今日的な日本航空に対する世間さんの厳しい現実をしっかりと受けとめて、それで全社一丸となってぶつかっていくのでなければならない。

 今、賃金の問題が出ました。けさの新聞を見ますと、JAL労組だけは一〇%カットを受け入れるという形でありました。しかし、これまでのトラブルは、ほかの八つの組合が言うように、給与などのトラブルではないんですね。まさにヒューマンエラーの流れは、ほとんどマインドの問題だ。どうも八つの組合は危機意識がまだまだ足りないのではないかな。世間で言えば、四百七十億円の赤字を抱えて二兆円の長期債務を何としても払っていかなければならない、こんな時期ですから、一〇%の賃金カットなどということは当然な話だと私は思うんですね。

 甘ったれるな労働組合という気持ちもあるのでありますけれども、戸崎参考人、いかが感じられますか。

戸崎参考人 続きまして私が適任かどうかわかりませんけれども。

 ただし、一言だけ申し上げると、確かに、パイロットの皆さんとかスチュワーデスの皆さんは実際に空を飛んでおります。したがいまして、それだけの危険な労働の中で働いているがゆえにどうしても賃金の方に関心が行ってしまう、待遇の上で関心が行ってしまうということはいたし方ない面もあるかと思います。

 とはいいながら、会社がつぶれてしまうということは非常にゆゆしき事態ですし、ここが一番、安全と経営のバランスをいかに労使一体となって協議していくのかということにかかわってくると思います。

 簡単ですが、申しわけありません。

中野(正)委員 時間ですからこれ以上申し上げませんが、私たちが聞いている限りでは、国際線パイロットは三千万円以上の報酬をもらっている人たちがたくさんいる。そのパイロットの組合が今回の新しい改革に反対だということであってはどうにもならぬな、ちょっと考え直さぬと、そんな気持ちも、正直、吐露しておきます。

 ありがとうございました。

林委員長 森本哲生君。

森本委員 民主党・無所属クラブの森本哲生でございます。きょうはよろしくお願いいたします。

 きょうは、大変お忙しい中御出席をいただきまして、心より感謝申し上げます。また、今は、大変熱の入った、大変示唆に富んだ意見陳述を拝聴いたしまして、本当に心より厚く御礼を申し上げる次第でございます。

 まず大前参考人にお伺いをさせていただきます。

 御社の第五十六期の第一・四半期の決算報告書を見せていただいておりましたらインタビューが、大前参考人のインタビューを見せていただいておりました。そして、きょうも今紹介をその中でいただいておりましたが、御社の場合は社長直属の組織として総合安全推進委員会が置かれて、全社的な方針というようなこともお伺いをしました。また、別に総合安全推進室が置かれまして、その中に安全推進部ということで、きょう、今もお話しいただいたわけでございます。

 つまり、内部監査を徹底しているということでございますが、幾つかの部門ごとに詳細なマニュアルを作成しておられて、そのことが、例えば組織が生み出す構造的な過失といいますか、ヒューマンエラーというようなことにもあるんですけれども、そこのところは、事故はなかなか全面的に一〇〇%は回避できないというような認識も持たれておると思うんですけれども、いろいろな部分で、組織観と人間観というものの中でどう基本的に認識されておるのかということを一点お聞かせいただきたいのと、そして、最近の、例えば事故とか、冷やりとされた重大事故に結びついていくんじゃなかったかなと思うようなことをどう解決されたかというようなことを、そこのところはなかったのなら結構でございますけれども、もしそれがございましたら、例を出されてちょっと教えていただきたいと思うんです。

 以上でございます。

    〔委員長退席、渡辺(具)委員長代理着席〕

大前参考人 それでは、御質問にお答えしたいと思います。

 一番目の問題については的確なお答えができるかどうかわかりませんけれども、我々、先ほど申し上げたように、安全を担保するためには確かな仕組みをつくらなきゃいけない、その仕組みに基づいて業務が部門ごとに行われる、その業務は手順書なりルールに従ってしっかり行われているということですね。安全マニュアルがあってトータル的な管理はしていますけれども、一つ一つのヒューマンエラーをどう防ぐかということに関しては、各仕事ごとにおけるルールをしっかり守るだとか、それから、そこの中でうっかりぽっかりとかいろいろな要素が入りますけれども、そういうものをいかになくすかということなのでございます。

 そのためには、先ほど申し上げたように、ヒューマンエラーが本当にゼロであってほしいという思いは、我々は強く思っておりますけれども、やはり人間である以上、ゼロというのはほとんどあり得ないんだろうな。だから、少なくともそれを発生を減らす。それで、あしく起きたときに、いかに早くそれに気づいて、重大なことに結びつかないかということをしっかり認識するための研修なり訓練というものが極めて重要だろうと思っています。それによって自分たちの間違ったことに気づく、それに早く気づくということがその対策としては極めて重要と、そのための教育をしたいなと思ってしております。

 もう一つは、一人が一人ずつふぐあいを経験しているのでは、とてもじゃないけれども事業として成り立たないので、他人の経験をみずからの経験として役立てるという意味において、しっかり自分の経験を顕在化して、それを共通の財産にすることによって、お互いに、こういうことをしたら間違えますよ、こういうことをしたらとんでもないことが起きますよということを絶えず共通の財産として仕事の中で役立てるといういろいろな仕組みの中で、組織と個人が有機的に結びついて仕事をすることが極めて大事だと思っておりますし、それをしっかり徹底しているということが実態でございます。

 それから二点目の御質問で、うっかりぽっかりのちょっと事例をということでございますので、昨年も他社においていろいろなことがありまして、我々も三月の時点で、他人の話じゃないぞ、自分たちの問題として、真剣にいつでも起こり得る問題として取り組もうということで、三月以降、規定を守ろうとかいろいろなことを徹底的にやってまいりました。しかし、残念ながら、先ほど申し上げたように、昨年はいろいろなふぐあいを発生しました。多くは、うっかりぽっかりによるヒューマンエラーでございました。

 それで、具体的事例というのはちょっと時間がかかるので……(森本委員「結構です」と呼ぶ)はい、申しわけありませんけれども。いつも、起きたことに関して、何が原因で、どういうことでそういうことが起きてきたのか、それに対してどうしたら防げるかということは、すべての事例について検証して対策を講じるということは、万全の体制でやっているという気持ちでおります。

森本委員 風通しとか、やはりトップの認識、そして組織力ということで随分うまくやっていただいておるんだろうなというようなことを推察させていただくんですが、それでは、安部参考人によろしくお願いいたします。

 本来ならば、これは整備の部分で大前参考人が得意な部分というふうに、整備から上がられたということで聞いておりますので、あえて安部参考人に御質問させていただいてちょっと恐縮なんですけれども、例えば全日空グループにおいても、自分のところの整備、今もお話ありましたけれども、グループ側の会社の整備とか、海外委託の整備委託というものがありまして、国内の新規参入の会社からの整備を受任するということも行われておるということなんですけれども、ですから、アウトソーシングは、安全の最前線である整備部門でも決して例外ではないということを認識しています。

 安全管理が究極的には私法上の委任契約のレベルにとどまってしまうのではないかということが危惧されるわけです。本法律案では、安全管理規程を作成して、安全統括管理者の選任を義務化するということなのですが、アウトソーシングが相当程度進んでいる現状にこのスキームがなじむのかという問題があると思うんです。

 確かに、今回の法律スキームでは、航空機の整備を、受託者に対して業務改善命令や許可の取り消しというような、国が直接に指導監督をするということにはなっておるわけです。安全統括管理を実質的に、包括的な意味で外部委託することもあり得るわけでございますので、この顕在化、無意味な問題では、そういうものがどういうふうに関連していくのかということについて、もし所見があればお伺いしたいんですが。

安部参考人 大前参考人がお隣におられますので大変申し上げにくいんですが、私は、やはり特に海外にアウトソーシングをどんどん進めていくのは問題だというふうに思っておりまして、今御指摘がありましたように、日本の技術力の整備力が海外の品質保証まで及ぶかということ、それから、今御指摘の法的な問題もありまして、そこにちょっと無理があるのじゃないかというふうに思っております。

 やはり私は、外注を進めるのであれば国内にとどめて、せいぜい下請のレベルでとどめておくべきじゃないか。海外まで外注を進めていくのは、長い目で見ると、まず品質の担保という点で問題があると同時に、結局、その部分が自社内で抱える整備員の数を減らすということになりますから、長い目で見ますと、自社内の技術力の後退につながるというふうに思っておりまして、長期的に見ますと望ましいことではないというふうに理解をしております。

 以上でございます。

森本委員 ありがとうございます。

 それでは、戸崎参考人によろしくお願いいたします。

 アメリカのパンナム航空の例でございますけれども、日本でも大幅な規制改革による航空業界の競争激化が本格化をしておるわけですし、例えば燃料価格は随分高騰をしている。そして、コスト原価の管理が非常に厳しい経営状況になっておるというのは周知のとおりでございますが、経営コストの関係で、安全管理には影響があったのかなかったのか。ここ十年ぐらいの業界の安全管理への取り組みに評価をどのように学者としての立場で、そして、さらにできましたら、鉄道その他の輸送モードについてもお答えをいただきたいと存じます。

戸崎参考人 では、所見を述べさせていただきます。

 交通産業というのは、かなり外的な要因に左右されやすいというところがあります。今御指摘のように、燃料コストも同じですし、いろいろな国際的な事変によってかなり経済変動が激しくなる。したがいまして、交通産業は経済変動によってその景気が大きく左右されるということがあり、それをどのようにリスクヘッジするかということが航空経営の一番難しい点であり、そうはいいながらも、一つの事例としては、サウスウエスト航空というアメリカで非常に成功している航空会社がある。そういった事例を見ると、これをどのように対比的に評価するのかということがポイントになると思います。

 実際には、やはり今のように外的な変化によって経営環境が厳しくなると、どうしても安全に対する目配りが小さくなってしまうということがあろうかと思われます。規制緩和というのも同時にあり、悪いように働いた結果として、九八年などにはアメリカでは事故が多発し、それが今言ったような競争激化と有機的な関係があった、連関的な関係があったと言われております。

 かようなことを見ると、やはり外的な変化があると、なかなかそれに経営が対応しづらく、そして、その結果として事故に結びついていく、安全対策がおろそかになっていくということがあります。経済原理としては、確かに、事故が起きれば、航空会社なりあるいは鉄道にしても壊滅的な経営の損失をこうむるので、絶対に安全に対するコストは減らさないという議論がありますけれども、現実はそうなっておりませんので、この点に関しては、やはり厳密な管理というのが必要になってくるというふうに思われます。

 一つ、先ほどの他の産業ということもありますけれども、今回の福知山線の事故にしても、やはり底辺には、消費者というものが、とにかく安くて便利だということ、これをとにかく徹底的に追求した結果、事業者がそれに応じざるを得なかったという側面もあり、これをもって単純に事業者が完全に悪いというふうに言えないと思います。

 したがって、最終的に何が言いたいかといいますと、やはり安全というものに対する社会的な認識が非常に弱い。よって、冒頭にも申し上げましたように、安全に対する支払いというのをしない。いざ競争が激しくなったら、やはり目に見えないところの安全というものが最終的に、最初にないがしろにされてしまうということがあり、そうした点において、全モード的に、規制緩和に伴う状況に関して、あるいは燃料などに伴って、安全に対する支払いというのを適切に行わせるようなシステムが必要であると考えます。

 以上です。

森本委員 ありがとうございました。

 それでは、大前参考人、済みません。これはもう全日空さんではやられておることにつながるんじゃないかなというふうな気がするんですけれども、今回の法律案が義務づけようとする安全統括管理者、細目は国土交通省令にゆだねるというふうになっておりまして、現時点ではまだ不明なところがございます。

 会社的に安全管理を志向するという御社の企業風土をさらによいものにしていくために、安全統括管理者には社内でどのような役割を期待されているのかという点と、安全統括管理者が置かれることによって、これまでの安全マニュアルの全体像が、そして体系が変わることになるのかならないのか、その辺についてお答えいただけませんでしょうか。

大前参考人 お答えいたします。

 まず、最高責任者が決まることによって、その期待度がどうなるかということでしょうけれども、現実には、グループ合わせて相当の数のグループ員がおりますので、やはり社長の確かな安全に関する宣言を具体的に転がすためには、それを取りまとめる責任者というのが必ず私は必要だと思っています。そういう意味で、その責任者のもとに安全活動が粛々と行われるということが極めて重要なので、そういう意味では、今回の法律によって明確に位置づけが決まるということは、私は極めていい結果に結びつくんだろうなという理解をしております。

 それから、二点目の……(森本委員「それでは」と呼ぶ)よろしいでしょうか。

森本委員 ありがとうございます。

 それでは、本法律案は、事故と重大アクシデントに並んで、安全上のトラブルも国への報告義務が課されることに実はなります。ですから、重大インシデントの範囲も同時に見直されることになっております。

 重ねて、大前参考人、えらい申しわけないです、恐縮ですけれども、トラブルには、限りなく重大インシデントに近いものからいろいろなレベルがあると思いますが、これは前段とも重なってしまうと思うんですけれども、これが今回から報告対象になることについて、どのような認識をお持ちでございましょうか。

大前参考人 実態からまず申し上げますと、まず、事故が起きたら、もう当然、報告レベルじゃなくて、しっかりした調査をするということが必要ですので。

 重大インシデント並びにトラブルを今現在どう扱っているかということですけれども、我々は、事業を遂行する上で、先ほど申し上げたように、機材のふぐあいだとかヒューマンによって起こしてはならないことが起きているというのが現実にあります。それで、これをいかに減らすことができるかということが我々の安全に対する日々の取り組みのかなめでございます。

 そのためには、起きたことをしっかり顕在化して、それに対して対策を立てていくというのが極めて重要ですので、このためには、行政にもしっかり我々の怠ったことを報告していくということを行っていますので、現在の実態と、これによって大きく変わることはないというふうに理解しています。ただし、どこをどうするかというその細かな詰めは、これからまた詰めていく必要があるんだろうと思っています。

森本委員 ありがとうございました。

 それでは、ちょっと急ぎますが、安部参考人と戸崎参考人、よろしくお願いします。

 本会議、二十八日もこのことは既に申し上げたんですけれども、本法律案は、鉄道事業法を初め、さまざまな輸送モードに係る事業者法が改正の対象となっております。

 立法事実論として、まず立法目的は正当であるとは思いますが、安全管理規程の作成、届け出、情報公開の徹底、それから立入検査の受忍など、さまざまな義務がつけられるという事業者側は、本法案のスキームに従って安全管理の体制を強いられるという実は側面もあるというふうに思っておるんです。それで、経営組織の大小、経営体力の強弱によって安全格差が生じてしまうのではないかという心配もしておるわけでございます。

 この点についてどうお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

安部参考人 お答えいたします。

 冒頭に申し上げましたとおり、御指摘のとおり、例えば鉄道でいいますと百八十近くの事業者がございまして、やはり中小になりますと、とてもこれだけのものを体力的にこなせないような状況がございます。あるいは、タクシー会社もそうでございますし、トラックについてもそうでございますから、大手の体力のあるところは十分こうしたことにこたえる体力はあると思うんですが、そこをどういうふうな工夫をしてすべての事業者にこういったものを徹底していくかというのは、一工夫の要るところじゃないかというふうに思います。

 ですから、場合によっては、どういうものが今度省令でなされてくるかわからないんですが、例えば、そういう一つの共通するソフトのようなものをつくって、自社でそういうものをつくる余裕がないところについてはそれを提供していくとか、あるいは、そういう管理者に当たる者に対して例えば各運輸局レベルで勉強会というかセミナーのようなものを開いて、それは行政の方の負担で開いて、そういうものを促進していくとか、幾つかのそういう手だてが必要ではないかというふうに思っております。

戸崎参考人 それでは、私見を述べさせていただきます。

 まず、特に中小零細に関しては、確かに負担能力がないというところがありますけれども、それは、社会的な背景というのは二つあります。

 一つは、やはり、過当競争の中で本当にこれだけの事業者が必要なのかどうかということをまず見直すべきだというふうに考えます。もちろん、そういうことを言えば、需給調整規制のもう一度復活ということを念頭に置くわけですが、ただし、従来とは違った形で、本当に優良な業者だけが残れるような需給調整のあり方というのを考えていく。その背景としては、やはり、先ほど来問題になっておりますように、安全に対するコストというのが十分に賄えるような運賃体系に戻すような仕組みをすべきだというふうに考えます。

 それで、あと一点、安全に対しても環境に対しても、これは我々にとっては社会的価値ですので、最終的にその社会的な価値を保障するためには、ある程度やはり国が最悪の場合には財源を保障するような体制というのが求められるのではないかと考えます。

 以上です。

森本委員 ありがとうございます。

 それでは、もう一度お二人にお伺いをさせていただきますが、事故とかインシデントの背景になっているヒューマンエラーをどう認識するかという問題でございます。

 午前中も申し上げたんですけれども、竹ノ塚駅の踏切のあの死傷事故現場の視察に行ってまいりまして、一年になるわけでございますが、現場は既に、踏切の改良とか、いろいろなことが急ピッチで進められております。一方、事故原因の究明も実効性のあるものとして行われなければなりません。

 先日、踏切保安係の男性元社員の刑事事件の判決が出ましたので、少し紹介させていただくんですが、踏切保安係が置かれていた状況について事実認定をした部分でございますが、本件踏切がいわゆるあかずの踏切、踏切保安係は、長時間にわたって待たされている通行人等から罵声を浴びせられたり、時には詰所のドアをけられたりするなど、さまざまの精神的重圧を受けていたこと、東武鉄道によってかかる踏切保安係の精神的重圧が解消されるような対策はとられておらなかったという事実が認められるということでございます。

 このように判示をしていきますと、東武鉄道の調査報告などもあわせてかんがみますと、踏切保安係の男性元社員がとった行動は、本人が自分の行為に伴うリスクを認識しながら意図的に行う不安全行動に分類されるのだというふうに思っています。このような直近当事者だけの刑事責任を追及するようでよいのかという議論が、時間があれば後でまたさせていただきますが。

 うっかりミスと不安全行動を正確に認識して、安全経営にどうフィードバックをするかという観点から、本法律案がどこまで評価できる内容になっておるのか、あくまでも主観的な御意見として結構でございますので、よろしくお願いします。

安部参考人 鉄道事故の大半は現在でも踏切で起こっておりますから、今回で関連して踏切の方の改正も提案されておりまして、立体交差化ということが究極的に踏切の安全対策になると思いますので、計画的にそちらの方は進めていくということで、今回の、今御指摘の事案につきましては、私はやはり刑事責任を問うのは無理があるんじゃないかと。

 つまり、立体交差化がおくれていたことによって、そういう踏切の、その任務についていた者が善意と思い込みによってあるエラーを起こしてしまうわけですから、善意でエラーを起こさないような仕組みをつくってやることが究極の安全につながっていくんじゃないかというふうにとらえております。

戸崎参考人 本件に関しては、まず、我々みんなが交通事故を起こす可能性があるということです。だれもが犯し得る環境があり、その中でたまたまある複合的な要因でその人が起こしてしまった、ということは、その人だけを責めても何ら事態の解決にはならない。

 先ほど御紹介いただきましたように、私は、航空事故が起こってすぐ会社に入社して、その後、会社の安全対策をずっと見てきました。やはりマンネリ化というのは起こります。だから、マンネリ化が起こらないようにどうするかということに対して、絶えず意識啓蒙を行っていくような体制、つまり、今回に関しても、安全対策の基準をつくって、その後、どれをこういうふうに一年ごと二年ごとに見直していくような体制をつくるか、これが第一点であります。

 もう一つだけ申し上げておくと、やはり調査の中で、今言ったような視点を指摘できるような調査委員というものをその中に含めて、社会的な調査、産業的な調査という観点から、単なる技術に偏重することのない総合的な調査をすべきだというふうに考えています。

 以上です。

森本委員 どうもありがとうございます。

 それでは、大前参考人、よろしくお願いします。

 もちろん、運航の安全はサービスを行う事業主体が最終責任を負うことになりますが、国も一定の責任の義務を負うことが当然と考えております。航空管制を筆頭に航空時刻の設定、それから周波数の割り当てとか、運航、保安整備に関して何から何まで国の許認可というイメージが強いわけなんですけれども、安全運航を実現するために、民間サイドから提言といいましょうか、航空行政に反映させるために具体的に何か取り組んでおられることがありましたら、お聞かせいただけないでしょうか。

    〔渡辺(具)委員長代理退席、委員長着席〕

大前参考人 申しわけないんですけれども、ちょっと具体的にこの場でお話しすることはできないんですけれども。国に対する要望は、毎年、一つの、定航協という団体がありまして、国に対してこういうことをしていただきたいということをしっかりまとめていますので、またその場でお話しできればと思います。

森本委員 ありがとうございます。

 それでは、少しまた、安部、戸崎、お二人にお伺いさせていただきたいんですけれども、この法律案が余りにも官から見た安全策という印象が強いという感じがするんです。民間事業の皆さんにさまざまな法律上の義務づけを行う一方で、政府自身もどこに責任があるのか、少し、法律の運用では政府が免責されるというような、いわゆる責任逃れのような、そういう印象も何かあるんです。その点についていかがでしょう。ちょっと言いにくいかもわかりませんけれども。

安部参考人 その点は私も実は感じておりまして、その点で一番最近、この五年程度の動きの中で、国の安全に対する責任という点で感じておりますのは、規制緩和ということでいろいろな基準が緩められてきて、かつまた事業者が自主基準を設ければ安全が担保できるような仕組みになっております。私は、安全に関しては、ある最低基準というのは国が守ってそれを担保すべきではないかというふうに考えておりまして、その点で、今回の法律の改正等につきましては、その点については見直しがされていないということで、その点については不満を持っております。

 以上でございます。

戸崎参考人 今の件ですが、やはり冒頭に申し上げたように、きちんと政策発動のルールを明確化して、その点に関する裁量の余地を最小限にとどめることが必要だと思います。

 一つの例としては、先般来出ていますタクシーの件で緊急調整措置がなかなかとられない。一見するとどうしても裁量的に見えてしまうようなことがあったら、やはりそれは行政の対応のおくれとしてみなされると思いますので、そういうことがなきように、透明なルールのもとに迅速に安全対策が発動され、監視されるような体制がこれに盛り込まれるべきだと思います。

 以上です。

森本委員 時間がもう数分でございますので急ぎますが、安部参考人、よろしくお願いします。

 一番お聞きしたかったところなんですけれども、事故調査と刑事手続の関係でございますけれども、最近は学術会議とか人間工学的な視点も入れて事故調査のあり方を具体的に言及、いろいろ議論をされております。再発防止と刑罰権の発動としての一般予防効果と正確に比較衡量できるのかという問題でございます。

 いずれにしましても、警察の捜査権限と事故調査の権限が対等なものでは、紳士協定ということのきょうは返事をいただいておるんですけれども、そこで具体的な改革工程、プロセスをどうするのかというようなことを少し御高説をいただければ、短い時間で恐縮なんですけれども、終わりにさせていただきます。

安部参考人 大変難しい問題なのですが、私は、事故調査と刑事捜査というのは分けるべきだというふうに考えておりまして、再発防止のためには、刑事捜査はやめて、再発防止の観点から事故調査活動をする方が望ましいというふうに考えております。

 ただし、これは欧米で生まれた考え方でございますから、日本の国内にそれを取り入れたときにいろいろな、例えば被害者の方々の遺族感情の問題等々、微妙な問題があると思います。ですから、それをするに当たっては、幾つかやはり条件が必要ではないかというふうに考えております。

 それから、そういう刑事免責をする場合に当たっては、鉄道事業者の方が、ある事故が起こったときに、その賠償をどうするかという問題も実は絡んできますから、これについては保険制度の整備のあり方等いろいろな複雑な問題がかかわってくると思います。

 時間が十分いただければ少し申し上げたいのですが、もう参っておるようでございますので、望ましいのは、私は、刑事捜査はやめて、免責をした形で、犯罪絡みは別でございますが、将来的には我が国でも、再発防止の点から、事故調査活動のみをやった方がより望ましいというふうに考えております。

森本委員 終わります。ありがとうございました。

林委員長 高木陽介君。

高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。

 参考人のお三方には、お忙しい中をわざわざ本委員会まで足を運んでいただきまして、また貴重な御意見をお話しいただきまして、本当にありがとうございました。

 参考人の先ほど陳述していただきました意見に沿いまして、さらにお伺いをしたいと思うんですが、まず安部参考人にお伺いしたいと思うんです。

 今回の法案について、お三方とも基本的には賛成だというふうに意見表明もしていただきまして、その上で、さらにそれを高めていくための要望ということで、安部参考人が三点についてお話しいただいたと思います。

 その中で、特に被害者の対応を事故調がやっていくべきであろう、また米国のNTSBではそういうセクションもある、こういうお話をいただきましたが、米国の場合はどこまで被害者対応をしているのか、また、もし日本でやる場合、特に昨年、福知山線の事故のときに、テレビを初めとするメディアが、西日本がおわびをしに行ったその状況というのをいつも報道されて、それを見て、被害者の対応、その心情を考えた場合に、そう簡単にはいかないんじゃないかとも思うんですが、この点についてお願いいたします。

安部参考人 アメリカのNTSBが被害者の対応を始めるようになったのは七、八年前からでございます。そのためにアメリカのNTSBの中に一つの局を設けまして対応するようになっているわけですが、つまり、例えば航空機事故等が起こりますと、遺族が現場に参ります。参りまして、そこで、例えば、遠くの地でしたら、ホテルの予約をどうするかとか、こういったさまざまな問題が起こります。それから、死亡事故ということになりますと、遺族はパニック状態に陥りますから、例えばカウンセリングの対応も必要じゃないかというふうに思います。こういったことをNTSBは、ある重大事故が起こったときに専門の係員を派遣して遺族対応に当たらせるということによって、かなり初期段階で遺族に対するケアがなされているわけであります。

 翻って、我が国の場合を見ますと、例えば昨年の福知山線の事故の場合ですが、事故が起こりまして、近くの体育館で御遺体が安置をされます。そこにJR西日本の社員の方が遺族対応をされるわけですが、これもやはりいろいろな行き違い、遺族の方は遺族の方の思いがあります、社員の方は十分そういうことに対応しておりませんから、対応の仕方も粗相があるわけでありまして、そこで非常にぎすぎすした関係が生まれる、遺族はそのことでなお悪感情を持つというようなことが起こります。

 ですから、私は、この場合は加害企業と言ってもよろしいと思うんですが、加害企業がそういう遺族ケアをして、御遺体の処理だとかこういった遺族のお世話をするのはやはり無理があるんじゃなかろうかというふうに思いまして、これをどこがやるかということで、適当なところでいえば、やはり私は事故調の中にもう一条追加して入れていただいて、事故調にスタッフをもう少し増員をしていただいて、そういう大規模な災害が起こったら、そこから行った職員が御遺族の対応をする、そこが窓口となって事業者側にも連絡等をして、しかるべき措置をとっていくということが遺族のケアという点では望ましい方向ではないかというふうに理解をしております。

 以上でございます。

高木(陽)委員 続いて、大前参考人にお伺いしたいんです。

 全日空、先ほどのお話の中にも出てまいりましたが、雫石の事故以来、こういった安全の部分では全社挙げて取り組んできた、そういう流れの中で、冒頭の意見陳述の中で、二十年前からヒューマンファクターズ訓練というものをしてきた、こういうお話がございました。まさに、この前の参考人質疑のときには、ヒューマンエラー、これは絶対になくならない、こういう前提に立ってリスク管理をしていかなければいけないというようなお話があったんですけれども、そういった中で、ヒューマンファクターズ訓練というのはやはり重要だと思うんですね。

 この訓練のあり方、また具体的内容について、どういう形でやって、社内で見ていてどういう効果があるのかというところ、そのことをお聞かせ願いたいと思うんです。

大前参考人 お答えします。

 先ほど申し上げたように、二十年前から、まず乗員の訓練から始めまして、客室それから整備部門で実際にヒューマン訓練をしております。今の御質問の、それをどういう尺度で評価して効果を見ているかというのは、これは極めて難しいことで、我々もまだ結論を持ち得ていないというのが現状です。

 ただ、今御指摘いただいたことは極めて大切なことだと思っていまして、最近、乗員の世界にも、今やっています訓練が、スレット・アンド・エラー・マネジメントという訓練をしています。要は、操縦しているときに、いろいろな要素があって、例えば、ウエザーだとか飛行機だとか、CAさんだとかお客さんとか、いつでも不安全要素がそこから発生し得る。それをいかに心の準備をして、しっかりそこを見抜けるか、その不安全要素をエラーにいかに結びつけないかという訓練をしているんですね。そういう意味では、訓練そのものを絶えず進化させている中でエラーを減らしているということが一点。

 それから、エラーをするときに、だれでも起こしやすいエラーというのがありまして、潜在的に起こしやすいリスクを状況から外すということ、リスクをヘッジさせる、取ってしまうということが極めて重要ですね。我々はマニュアルで仕事をしていますので、マニュアルの中で、読みやすいだとか勘違いしないことだとかいろいろなことで、だれでも陥りやすい問題を可能な限り除去するとか、そういうリスクを減らしていくということも、その両面からヒューマンを減らすために必要だと思っております。

高木(陽)委員 その上で、さらに大前参考人に伺いたいのは、安全情報について、特にインシデント等のそういういろいろな問題が起きたときに、その情報の分析、評価、これが重要であるというお話をされたと思うんですが、その上で予防対策をとっていくんだということですね。

 問題は、分析の仕方ですよね。いろいろな小さなインシデント等が集まってきました、さあそれが、原因はいろいろあるでしょう。そこの分析の仕方というのは、これはまさに社内でもやらなきゃいけないんですけれども、逆に第三者にそういうのをしっかりとやらせていくシステムというのも必要なんじゃないかなとも思うんですが、その点はいかがでしょうか。

大前参考人 御指摘いただいたことを大いに参考にさせていただきたいと思っています。

 ただ、分析するというのは極めて難しくて、本来であれば、根源的な部分はしっかり原因をつかんでやればいいんですけれども、現象的な面で原因づけしてしまうとか理由づけしてしまうというのがあって、何かあったときの分析というのは極めて難しいんだということに我々は絶えず頭を悩ませているということです。今の御意見は参考にちょっと持ち帰らせていただきます。

高木(陽)委員 何でもかんでも外部でやればいいということではないんですけれども、やはり安全という問題は、絶えずあらゆる角度からチェックをしていくというのが一番必要なんであろうな、こんなふうにも思っているので、ちょっと意見を申し上げさせていただきました。

 続いて、安部参考人にまたお伺いしたいんですが、先ほども質問が出てきましたけれども、事故調と警察捜査の関係ですね。

 私も実は、新聞記者、社会部の記者をやっていまして、警察の取材というのを何度も何度もやってきて、そのときにやはり、捜査上の秘密、もっと言えば、立件をしなければいけないということで、裁判で訴訟にたえ得るだけの証拠集めをし、逆にそれが事前に出てしまうと手を打たれてしまう、こういった考え方が警察にはあると思うんですけれども、そういった中での、先ほどは事故調と警察捜査を分けるべきだという御意見でした。

 しかしながら、今、日本の現状で、原因、そして責任、過失、こういった問題をとらえていくときに、そんな簡単にはいかないなと。幾つかの条件があるということで、また賠償の問題等もお話しされましたけれども、もう少しそこをお聞かせ願えればと思うんですが。

安部参考人 先生御指摘のように、非常にこれは微妙な問題がございますのですが、警察が立件をした場合、膨大な証拠を集めるわけです。その場合には、法令違反と予見可能性というようなことが立件の大きな柱になってくると思うんですが、運輸の事故というのは実は法令が想定していないところで起こるわけであります。

 例えば、昨年の福知山線の事故のように、あの運転士の暴走なんというのは、法令はどこにも想定していないわけですね、予想外で起こってしまうわけです。そうすると、責任が問えないという問題が起こって、高い捜査能力を発揮して警察がいろいろな証拠を集めても、このことが結局お蔵入りになってしまって、運輸の再発防止のための予見として使えないという非常に残念な事態になるわけです。

 これがいかにも残念で、ですから、警察捜査が再発防止に役立っているかというと、私は随分限界があるというふうに思っておりますので、やはり再発防止、運輸の安全性のためには、警察捜査とは別の枠組みをつくっていく必要があるだろうというふうに思っております。

 その際、先ほども申し上げましたように、それをつくっていくためには、やはり幾つもの超えるべき障害があるんじゃないかというふうに思っております。

 その一つが、やはり現行の、責任を問うというのをどのレベルで見るのか。これは、やはり遺族感情の問題がございますし、もろもろのいろいろな、世論の成熟という問題もあるのではないかというふうに思いまして、そのレベルの問題。

 それからあとは、そうなった場合に、では、責任をどこで負うのかという場合、責任ということになると、大変残念なんですが、最後はお金、賠償で往々にして決着がついていく、刑事事件を問わないとすれば。そうしますと、事業者の側がそういったものに応じていけるようにするためには、やはり保険制度といったものの整備も必要ではないかというふうに感じているところでございます。

 いずれにしましても、運輸の再発防止をしていくための条件づけとしては、そこをどういう議論をして乗り越えていくかというのが大きな課題として残っているというふうに感じておりまして、実は、法律の専門家等を含めまして、今、そういう議論がこの一、二年、急速に起こってまいっております。

高木(陽)委員 時間が限られているので、最後に戸崎参考人にお伺いしたいんですが、参考人が、規制緩和、この流れは認めながらも、適正な競争が必要であると。この適正な競争というのはどんなものかというのは難しいと思うんですね。

 これは、安部参考人もお話があったんですけれども、外注をしてしまうと、逆に外注が整備なんかで多くなってくると、自社の整備の能力が衰えてくる、こういうような指摘もございました。

 もう一つの角度でいうと、経営が安定していないとそれだけのお金をかけられない、安全に対してコストをかけていくことができない、しかし、逆に、そこを無視していくとまた経営自体も不安定になってくる。難しい関係だと思うんですね。

 こういった部分での適正な競争というのはどういうふうに考えたらいいのかというのを、戸崎参考人にお伺いしたいと思うんです。

戸崎参考人 ありがとうございます。

 まず前提となるのは、市場はすぐに変わっていくということです。ですから、規制緩和が、最初に想定した状況では起こり得ないことが、当然見えなかったところと、あとは、後の事態の変化によって変わってくるというところはあると思います。

 見えなかったところというのは、やはり安全に対する投資というのが思ったよりもなされなかったという状況があり、例えば、需給調整規制を外せば、経営者は、適切な判断ではなく、実際に供給をふやし過ぎてしまったというところがある。

 したがって、私が申し上げたいのは、規制緩和というのは、すべてを想定することは無理だし、実際に環境は変わってくるものですから、それに伴って適切なタイミングで見直していくことが必要であろう。したがって、その見直しのタイミングというのをきちんとスケジュール化をして、そして、だれもがある基準に達したときには見直すような透明なシステムをつくっていくこと。すなわち、適正というのは、これは理想論ではあるけれども、大抵そういったものを目指していかなきゃいけないということでお話をさせていただきました。

 以上です。

高木(陽)委員 時間が参りました。

 今最後に戸崎参考人もお話があったように、適正に見直していくことが必要だという。今回の法案も、今まで、事故が起きてきた、その中での運輸の安全ということで、事故が起きるたびにやはりチェックをしながら、そしてよりよいものにしてきていると思うんです。

 そういった意味で、きょうお三方の参考人も基本的にはこの法案に賛成だという御意見を賜ったと思うんですが、やはりこれで完璧だとは思いません。やはり理想は高く求めながらも、ただ現実は、先ほどから申し上げているように、さっきの警察の捜査と事故調の問題もそうですけれども、なかなか現実にはそう簡単にはいかない部分がある。そういったものを今後も委員会としてもしっかりとチェックしながら、さらによりよいものをつくっていくということ、こういうことを確認していきたいと思います。

 以上で質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。

林委員長 穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 まず、戸崎参考人と安部参考人に共通してお聞きしたいのは、規制緩和と事後チェックシステムの強化、構築の関係についてです。

 私は、耐震強度偽装問題や鉄道事故にかかわるさまざまな問題を通じて、規制緩和というのは非常に大きな弊害をもたらしているという現実を見ています。

 先ほど来皆さんからお話があったように、アメリカの場合などや欧米の場合などでは、一定の規制緩和は行うけれども、事後チェックシステムを非常に強くしている。例えば事故調査委員会でも、けた違いのそういう体制をとっています。ところが日本の場合には、勧告も建議も出されていますが、その割合たるや微々たるものでして、その意味での実効的な権限その他を踏まえますと、非常に私はお粗末だと考えています。

 ですから、大前提としてお聞きしたいのは、規制緩和と事後チェックのシステムというものの関係についてお二方から簡単にお話しいただければと思います。

安部参考人 規制緩和をするということは民間の事業者の自由裁量を拡大するということでありますので、その場合には、民間の事業者、私は、最近のこの間、国がやってこられた規制緩和というのは性善説に立っておられるんじゃないかというふうに思いまして、やはり民間の事業者の方すべてが性善説、性善な方であればよろしいんですが、そうもいかないということですから、しかるべく事後チェックの体制をきちっと制度的に構築して、サンプル検査等を強化することによって、ある基準等について守れない事業者が発生した場合にはそれを適切に排除していくという仕組みをつくる必要があろうというふうに思っております。

 それから、規制緩和、特に運輸の現場ですと、私は、タクシー等での規制緩和というのは、規制緩和を適用していい分野と適用してはまずい分野があるというふうに考えております。装置産業のような、通信産業のような分野で規制緩和をやりますと非常に成功すると思うんですが、タクシーのような労働集約産業でやってしまいますと過当競争を生み出す弊害が目につくんではないかというふうに思っておりまして、規制緩和を一律に適用するんじゃなくて、適用すべき分野とやはり適用してはまずい分野というのを分けて、きめ細やかな規制緩和政策ということをとっていくべきじゃないか。

 その点で、国の方も少しこの間の規制緩和の検証作業をされる必要があるんではないかというふうに理解をしております。

 以上でございます。

戸崎参考人 先ほどの見解とダブりますけれども、やはり規制緩和を行うときの前提条件が変わる、あるいは前提条件が見えないということから、事後チェックというのは必ず必要だと思います。

 一般的な主張では、規制というのはすべて悪いような社会的な風潮になっておりますけれども、今安部参考人がおっしゃられたように、やはり規制をしないと社会的なサービスが供給されないということが交通分野においては多々あります。例えばバスとかそういったところを見た場合に、やはり必要な規制は残していくべきだろうということがあろうかと思われます。

 最後に、労働者の観点に立てば、やはり実験にはしてはいけない。実際にこうした過当な競争の中で生活が成り立たなくなっている人を目の前にして、見直しが四年もおくれているということは、やはりこれは責任とみなされてもいいんではないかというふうに私見として考えております。

 以上です。

穀田委員 私は、再三この委員会で、安全まで規制緩和してはならぬという立場で発言をしてきました。

 戸崎さんにお聞きします。

 戸崎さんは、経済的規制と社会的規制は不可分なもの、よって両者は余りにもきれいさっぱりと峻別することは問題であろう、さらに、社会的規制、特に安全規制を行うには、それには必要な財源が求められる、その一方で、価格競争が過激化すれば、安全に投資する余裕などなくなってしまうのもいたし方ない面がある、こう言っています。

 ただ、私は、先ほどの前半部分の参考人質疑でもお話をしたのですが、現実は、極めて実態はひどいと。例えば、私が問題にしましたJR西日本は、支社長の方針として、稼ぐ、これが第一に来ていまして、安全は二の次でした。しかも、守るとしている安全の項の中でも、安全を記載した欄にはコスト削減ばかり論じるという現実でした。

 したがって、そこには必要な財源さえも削るという、今ぎりぎりのもうけというところを考えた場合に、そこまで踏み込んでくるという実態があるんじゃないでしょうか。その辺はいかがお考えでしょうか。

戸崎参考人 確かにそのとおりだと思います。

 何よりも問題なのは、交通というのが特殊なものである背景には、やはり直接安全問題に対してかかわってくるものであるということで、ほかの商品とは違ってくると思われます。一たん安全に対するコストが損なわれれば直接もうそれは死に至るということを考えると、より厳密な安全管理というのが必要になってくる。

 今御紹介いただいたように、そのためには、単に名目的に安全というものをとらえても無理であって、実質的にそれは台数規制なり何らかの、直接的にやはり需給調整規制などの経済的規制を行っていかなければいけないというのが私の持論でありまして、そうしたことから考えて、もう一度、今回安全というものを議論されるのは、やはりこれは交通という非常に直接的に人命にかかわる問題だからこそ、こうしたものが重要であるというふうに考えております。

 以上です。

穀田委員 戸崎さんは日航に一時おいでになったと聞きましたので、その問題について少し聞きたいと思います。

 日航は、安全アドバイザリーグループということで提言が出されています。その中には、その安全の動機づけの項でこのように言っています。

 安全の動機づけには何が必要なのだろうか。みずからの仕事にプライドを持つことが基本であり、職場における明るい雰囲気と良好な人間関係も大切である。努力と成果が報いられる処遇、人事が行われなければならない。間違っても組合人事や情実人事が行われてはならないし、不公平な人事査定、ボーナス査定は従業員の仕事の意欲を、ひいては安全意欲をそぐことになると指摘しています。

 日航に九つある組合のうち八つの組合が、この項を見ながら、してはならぬこととして提起しているのは、JALの労務政策にあると批判をしているんですね。

 この文章全体の中には、労使に和解と共生の文化を求めているということもあります。そういう今までかかわってこられた方として、安全確保と労務政策についてどうお考えでしょうか。

戸崎参考人 まことに述べにくい立場ではございますが、あえて申しますと、やはりここに一番の問題点があろうかと思います。

 交通産業というのはどうしても現場に出て厳しい環境の中で作業をするものですから、いかんせん、やはり非常に厳しい、待遇というものに対する要求意識が出てこざるを得ないという背景があります。さらに、専門職が多いものですから、なかなかお互いの疎通が図りにくくて、そうしたところが組合の分裂ということにもつながりかねないというところが難しい背景であり、そこにどのようにして融和の精神を持ち込むかということが大事になってこようと思われます。

 そういったことに伴いますと、やはり本当の危機感を持って、いかにお互いが共有意識を持つのか。

 若干出過ぎた議論かもしれませんけれども、今御紹介された安全改革案というのは非常にそういった意味では抽象的過ぎて、余り安全対策としてはどうかということ、並びに、先ほど来の議論からいうと、そうした安全改革推進のための会議というものの独立性を考えると、もう少しやはりそれは独立した機関によってなされるべきものであったんではないかという私見になります。

 以上です。

穀田委員 そこで、今度の法律との関係で、トップがこうすればというのが随分議論に出るんですね。私、ほんまかいなと思うんですね。というのは、どこかの社長は一生懸命現場へ行って写真ばかり撮っているというのが随分出まして、私、一度質問したことがあるんですけれども。

 安部さんにちょっとこの点はお聞きしたいんですけれども、JRの福知山線事故に関係して安部さんはこう言っておられます。新型ATSの導入計画は数年前からあったのに、それは数年間放置されていた、しかし、事故後は世論の厳しい批判に遭遇し、JR西日本はわずか一カ月の間に設置工事を完了させた、このように短期間で設置できるのなら、なぜ何年も放置していたのか、しかも、その費用はJR西日本の財務力からすれば微々たるものにすぎなかったと論及しています。私も同感です。同時に私は、早く設置しておれば多くの犠牲者は出なかったのにとの悔しい思いがします。

 そこで、JRの体質問題なんです。安全性向上計画、今実行しているんですね。トップが旗を振っているわけです。だけれども、先般伯備線で触車事故が起きています。支社長はその際、人間はミスするものとの認識に立ったことはなかった、こう言っています。さらに、マニュアルどおり対応していれば事故は起きなかった、こう言っています。

 トップが旗を振っているんだということだけに済まない、現場から物を見るということが大事だと思うんですが、安全観の依然としたゆがみを感じるのですが、いかがでしょうか。

安部参考人 私たちの社会、大変に失礼な言い方で申しわけないんですが、私たちの社会というのは、やはり一歩一歩でしか改善、改革されていかないというふうに私は認識しております。ですから、今回、高木委員が言われましたように、私は、欲を申せばもっと申し上げたいことがあるんですが、これまでの法律体系よりも一歩前進しているというふうに思っておりまして、それで賛成をしておるわけであります。

 JR西日本の問題でいいますと、事故前というのは、実は技術系の方というのは発言力はありませんで、安全の重要な問題が実は、私の調べたところでは、ほとんど役員会で議論されないような状況にあったわけです。安全学で一つの常識として言われますのは、トップになるべく近い人たちが、安全の重要性を運輸企業の場合は認識をして、それで役員会で絶えず議論するような、そういう風土をつくり上げれば随分安全性のパフォーマンスが上がっていくということが実証されておりまして、いかんせんJR西日本の場合はそれがなかったということでございます。

 その後、今山崎さんという副社長が、当時副社長に抜てきされて、今度社長になられたんですが、技術畑の方ですね、少しJR西日本の考え方を変えようというふうに努力をされているわけです。まだ不十分ですが、私は一応そういう形でそういう方向に動きつつあるのではないかというふうに見ておりますので、トップがかわったからといってそれがすぐ現場にどう伝わるのかということで、なかなか微妙な問題、すぐにはなかなかいかないんじゃないか。ただ、やはり生まれ変わっていただかなければいけませんから、私はこれからも批判を続けようというふうに思っております。

 もう一つ、トップと働いている方たちの意思疎通、フラットな関係、安全をめぐるフラットな関係というのも非常に重要でありまして、トップの認識と職場が非常にフラットであるという、この二つが運輸事業者の組織としては必要な要件だというふうに思っておりまして、これがJR西日本の中でどういうふうに今後構築されていくかというのに私は注目しておるところでございます。

穀田委員 私、フラットという問題でいいますと、個人と個人というのは、社長と社員というのはなかなかそうはならぬと、この間言いましたように。それで、やはりそういうときは、労働者の代表である組合というのが大事なんだということを一つ私としては思っております。

 そこで、前の航空法の改正の際に、附帯決議がついたんですね。航空運送事業者の持ち株会社の経営、財務状況の健全性を確保し、航空の安全と公共性の維持が図られるよう、持ち株会社に対する適切な指導監督に努めることと、こうなっているんですね。これは、今大事なことでして、持ち株会社や投資ファンドなどへの航空法や鉄道事業法の適用をどう考えるか。一言で、安部さんに。最後、大前さんに聞きますので。

安部参考人 持ち株会社は企業の戦略として採用されるものですから、私は、こういう形態をとることが、実際のある経営判断の中で採択されますから、このことが直接、運輸の安全に大きなというか直接的な関連をしないと思います。この持ち株会社そのものよりも、むしろ実際の運行の現場に携わっている実務をやっている会社、例えばJALを例にしますと、JALの持ち株会社ではなくてJALのインターナショナルの方ですね、実際の運航をしている、ここの実際の組織のあり方と安全パフォーマンスというのがより問題ではないかというふうに思っております。

穀田委員 そこは、もっと、非常に重要な問題があると私は思っています。

 最後に、大前参考人に聞きます。

 やはり、現在は、重大事故やインシデントに至らないヒヤリ・ハットなどの情報を収集、分析することが事故再発防止に極めて有効であるということは各方面から出されています。相次ぐ航空機の事故を受けて、航空輸送安全対策委員会が八月、国の情報収集、それから分析のあり方を制度面を含めて検討することとして、自発的報告者への配慮の検討などを提言しています。

 議論の経過について、実際に参加された参考人に考えを最後に聞きたいと思います。

大前参考人 お答えします。

 事故とかインシデントにとって極めて重要なのは、やはり一つの不幸な出来事があったときに、それを一人じゃなくて、多くの人たちが共有する、一社だけでなくて多くの会社が共有して、それに対して的確な対策を早期に講じて、お客様の御不幸をなくす、けがとか亡くなることを防ぐということが目的ですので、そのために報告が極めて重要ですから、その報告の目的がしっかり達成できれば、やはり、そのためにいろいろな諸条件を乗り越えていかなければいけないと思いますので、そのための整備というのは、これから細かいことを決める上でまた検討していったらよろしいかなと思っております。

穀田委員 ありがとうございます。

林委員長 日森文尋君。

日森委員 社民党の日森文尋でございます。

 お三方とも大変お疲れのところ、御苦労さまでございます。

 やや重複するところもあるかもしれませんが、最初に戸崎先生にお伺いしたいと思うんです。

 先生、最初に、安全は労働者が担うというふうにおっしゃいました。私もまさにそのとおりだと思っています。そして、そのためには、安全を担い得る環境づくりが第一なんだというふうにもおっしゃいました。それは労働条件も含めてそうだと思うんですが、環境づくりということについて、もう少し具体的に先生の思いみたいなことを語っていただけたらと思うんです。

戸崎参考人 何よりも、これは生活権の保障です。やはり、最低限の生活保障というのはなされなければ、当然、安全に対する配慮もなされないし、モラルの低下にもつながります。実際には、過当競争によってそうした最低限の生活ができないようなところがありますので、まずなすべきは、今のように安全に対する配慮がなし得るような、十分な生活保障というものがなし得るような、そのような運賃体系に引き戻すことであろうというふうに考えます。これが、何よりも、やはり労働者の環境保全につながると思います。

 以上です。

日森委員 ところが、先ほどから出ているように、この間の規制緩和というのは、そういう状態を、いわばぶち壊してしまったと言っても過言ではないと思うんです。競争の激化、それから価格競争まで引き起こしていくというふうなことがありました。

 そこで、先ほども出ていましたが、戸崎先生、適正な競争が必要なんだというふうにおっしゃいました。現在、経済的な規制は取っ払う、しかし、社会的規制はある程度きちんとしていかないといけない。これは、例えば先生の言葉で言うと、独占禁止法とかいうのですね、そういう社会的規制の最たるものだというふうにおっしゃっていたわけです。しかし、それも過ぎると、経済的な規制緩和にも逆に歯どめがかかってしまって、十分な経済活動ができなくなる。この辺が大変難しいところで、どういうバランスをとっていったら適正な競争ができるのかというのが、なかなか難しい面だと思っているんです。

 そこら辺は先生、どんなふうに御説明いただけるんでしょうか。

戸崎参考人 先ほどの質疑応答にもありましたが、やはりどんどん市場というのは変化していきます。したがって、今は適正な競争であっても、情報の機器の発達や新たな商売のやり方によってすぐにその適正が適正でなくなってくるということにおいては、安全だけではなくて、市場においても常にその市場監視機能を持っておかなきゃいけない、私はそれがなかなか難しいのではないかと思います。

 したがって、そういうことを言えば、先ほどの議論とかかわってきますけれども、実際にその競争条件の中に身を置いている方々の意見というものがきちんと議論されるように、例えば審議会の中で明確に意見が反映できるようなメンバー構成にするとか、地域協議会の中で本当にこうした意見というものが反映され、市場の動向というものが常に反映され、それに対して速やかに措置が投じられるような構成が必要であると思います。

 以上です。

日森委員 そういう意味では、戸崎先生が先ほどからお触れになっているタクシー、ハイ・タクの労働者の問題というのはかなり深刻な問題で、四年以上前に規制緩和があって、いわば参入自由になった。しかし、それは事後チェックはきっちりしましょうということで緊急調整措置などもあったわけですが、抜かずの伝家の宝刀で一回も使ったことがないということで、大変私も不満に思っているんですが、じゃ、事後チェック体制できるんですか。タクシーの例でいうと、全国八千社ありますよ。この四年間で新規だけで一千社。これ、今の体制で本当に厳格な事後チェックができるんですかというふうに国土交通省に聞いたことがあるんです。余り自信なさそうでした。

 そうすると、規制は緩和した、しかしルールを守らない人たちがたくさんいらっしゃる、残念ながら。この方々に事後チェックできっちりとした厳格な対応をするんだと言っても、実はそこに手がないような状況があるわけですよ。

 そういう意味では、大変私は、結局、規制緩和しっ放しの野放しの状態が今現在続いていて、それは本当に大量輸送機関、タクシーは大量ではないですけれども、公共交通などについてこれが本当に正しいやり方なのかどうなのか改めて検証する必要がある、先ほど先生方おっしゃっていますが、私も全く同感なんですが、改めてちょっと御意見を、戸崎先生それから安部先生、お聞かせいただけたらありがたいと思っています。

戸崎参考人 まず最初に、なかなか、今のように事業者が多いですから、当初申し上げたように、監視体制を分権化して、地域に密着した形でより細かい監視を行っていくのが一つです。

 もう一つは、やはり業界側からの規制が必要であろう。やはり、自分たちがそうした事態を変えていくということがなければ、いかに行政が有効に機能しようとも、自分たちの業界のことですから、自助努力というのは必要になってくる。そうした中で、やはり業界の中でみずからの地位向上のために自主規制をし、そして不適切なものを排除していくような運動も一つは必要であろう。

 ただし、その中で落ちこぼれていくような、あるいは漏れていくような方たちに、どのような地方分権の中で網をかぶせていくかというのが、私の事後チェック体制のイメージです。

 以上です。

安部参考人 規制緩和の場合、私はこの十数年間の日本経済の情勢を見ていまして、デフレ下の規制緩和というのが非常にマイナスの影響を与えているというふうに理解をしております。つまり、デフレ下ですから、運賃・料金は上げられない。一方では、例えば鉄道や航空ですと輸送量というのがほぼ横ばいないし微増、微減なんですが、バスとタクシーについては大変な落ち込みをしております。一九七〇年を一〇〇とすると、タクシーは現在五五まで落ちております。一方で、タクシーの供給台数は一九七〇年に比べて四〇%ふえておりまして、完全な需給のミスマッチが起こっております。

 この中で、結局は過当競争と言っていいような状況が、特に局地的に大阪や仙台等ではあらわれておるわけでありまして、このことがドライバーの年収なんかを下げて非常に社会問題化しているんじゃないかというふうに思います。

 私は、国土交通省の方に申し上げたいのは、やはり規制緩和というのは、航空や鉄道のような装置産業とタクシーやバスのような労働集約産業とで、しかも市場が縮小しているような産業に一律に適用するのには大きな問題があろうというふうに思っておりますので、やはりここは検証をしっかりして、速やかな見直しをやる必要があるんじゃないかというふうに理解をしております。

 以上でございます。

日森委員 ありがとうございます。

 引き続き安部先生にちょっとお伺いしたいんですが、先ほど、安全統括管理者等々を置くということについては一定の前進だ、私は全くそう思いますが、しかし、JRとか大手私鉄はともかく、中小の私鉄あるいは三セクになるとこれは大変な状況だと思うんですよ。

 先生も御心配なさっていて、国土交通省の資料を見せていただくと、ほとんど赤字ですね、ほとんど赤字です。ほくほく線ですか、幾つか黒字のところがあるんですが、ほんの微々たるもので、全部赤字で、しかし、地域の足をしっかり守ろうということで頑張っているという状況なんですよ。そこも実効ある安全統括管理者がいて、きちんとやろうとすると、物すごい負担がふえる。例えば、安全に対する設備投資については近代化補助という形で一定の国の支援がありますけれども、しかし、それだけで十分かどうかというと、今度の制度でいうと、なかなかそれだけで十分だとは言えないと思うんですよ。

 具体的に、先生がおっしゃった国の支援も必要じゃないかということの具体的な中身について、もう少し詳しく教えていただきたいと思うんです。

安部参考人 御指摘のように、今のままですと特に鉄道の中小については、名前だけ管理者に任命しておけ、運輸局に届けておけというような実態になりかねないような状況じゃないかというふうに思います。

 今御指摘のありましたように、非常に中小の事業者は大変でございまして、ただ、一方で、最近は自治体が地域の鉄道を盛り上げていこうという動きも進んでおりまして、これは国交省の方で地方鉄道再生のシナリオというのを鉄道局長のもとでつくられて、それを契機に少し地方的にそういうことが動き始めたんですけれども、これは大変いい傾向だというふうに思っております。

 今、各地域の方で見ておりますと、自治体がもう少し、従来は自治体の公共交通対策というとバスに視点が行っておったんですが、地方鉄道についても見ていこうという動きが出ておりまして、それを私はやや期待しております。

 国はそういう動きをバックアップして、近代化と安全投資は言うまでもなく、鉄道というのは単に人を運ぶだけではなくて、環境的にも非常にすぐれたものですし、幾つかの社会的なまちづくりの手段にもなりますし、幾つかの機能を持っておりますから、そういうことを評価して、国としても援助、補助をしていくような仕組みをつくっていく必要があるんじゃないかというふうに思いまして、それを少し知恵を絞りながらそういう新しい制度構築をしていく時期に来ているんじゃないかというふうに理解をしております。

 以上でございます。

日森委員 全く同感でして、なかなか国土交通省はかたくて、営業面での支援はできませんというところからなかなか前進しないんですが。

 しかし、中小でいえば京福電鉄が正面衝突事故をやりまして、私もすぐ行ったんですよ。すぐでもないんですが、行ったんですよ。結局あれは廃線になるんじゃないかと言われていたんですが、各自治体がとても廃線にしてもらっちゃ困るということで、いわば再生してきた経過があるわけですよね。そういうことで、本当に足として確保するのと同時に、安全な大量輸送機関として再生していくためには、どうしても先生がおっしゃったようないろいろな工夫を凝らしながら新たな支援措置をつくっていくことが必要じゃないかというふうに私も痛感をいたしました。

 ちょっと最後の方になると思うんですが、大前さんにお聞きしたいと思うんです。

 全日空は大変安全問題に努力をされていると思うんです。特に、先ほど大前さんがおっしゃったとおり、空中衝突防止装置と言いましたかね、とか、新しい機種を入れる、それから、異常接近警告何とかとか、ちょっと聞き漏らしましたが、そういう安全設備にお金を使わなきゃいけないし、さまざま、企業経営にとっても苦しい大変なところもあると思うんですよ。これはもう一言というか、どんな考え方でおやりになるかだけで結構なんですが、全日空の場合、その設備面も含めた安全コストというのは全体の収支の中でどういうふうにお考えになって設定をされておられるのか、ちょっとその考え方だけ最後にお聞きをしたいと思います。

大前参考人 お答えします。

 定量的にどのぐらいコストをかけるかというのは極めて難しくて、先ほど申し上げたように、安全がなければ我々の企業の、生存するといいますか、生きていく基盤がないということにおいて、安全をすべてに最優先してやっていこうじゃないかという価値観を持って進めていますので、その中でどれが安全でどれが違うかという科目でちょっと考えられないので、現業部門のオペレーションはすべて、安全に携わっているものがすべて安全にかかわるコストだというふうに理解してやっていきたいと思っているし、やっているつもりなんです。

日森委員 どうもありがとうございました。

林委員長 糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 参考人の皆様におかれましては、御多忙の中、当委員会におきまして貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございます。

 さて、大前参考人に一番最初にお聞きしたいんですけれども、まず、そもそも、先ほどから安全、安全というふうにおっしゃられておるわけでございますが、この安全というのは、企業にとって安全とは何なんでしょうか。

大前参考人 安全という言葉というよりも、やはり事故だとかふぐあいだとかインシデントを起こさせない、これを限りなくゼロにするということが私は安全なる状態だというふうに考えていますので、抽象的な、安全でどうだというよりも、そういうふうに、そういうものを、その潜在的な可能性を限りなくゼロにしていく状態が安全な状態だろうというふうに考えております。

糸川委員 では、安部さん、同じ質問で、安全とはどういうものか。

安部参考人 私は、安全というのは、運輸企業の場合は、よって立つ基盤であると同時に、消費者に提供すべき最大の品質であるというふうに理解をしております。

糸川委員 私も航空機によく乗るわけでございますが、そのときに思うことは、命に危険がないかどうか。それが、私なんか利用者の立場からすれば、そこに究極は求めていくのかなと。落ちれば、墜落すれば命にかかわる問題になってくる。ですから、非常にそういう乗り物に関しての安全というのは命にかかわってくるのかなと。

 そこで、今できる限りミスをなくしていこうということで皆さん取り組まれておるわけでございますが、例えば、今回、大前さんは全日空の安全推進委員会の委員長という立場でいらっしゃるわけでございまして、ヒューマンエラーをなくすために今どのように取り組まれていらっしゃるのか。

 例えば、失敗した後、その報告をどなたかにして、そういう体制づくりというものができているのかどうか、どういうふうにしたらいいのか、お答えいただけますでしょうか。

大前参考人 先ほど申し上げたように、まず、ヒューマンエラーをなくすためには、しっかりした訓練で、人間は間違えやすいものだということをしっかり認識した上で誠実に仕事に取り組めるということをしっかり認識してもらう、また、そういうことが皆さんが雰囲気として当然のごとく感じられる風土をつくるということが私は極めて重要だと思っています。

 次に、やはり、そのヒューマンエラーを起こしたときに、自分が起こしたことをしっかり報告して、次の再発防止のために各人が行動をとれる、そういう繰り返しの中でやっていく必要があると思っています。

 そのために、そういう制度をしっかり確立するだとか、いろいろな制度面だとか仕組みを整備していくことが極めて重要だろうというふうに考えております。

糸川委員 ミスが起きたとき、社内全体で恐らくそういうミスの共有化をされているのではないかなと思うんですけれども、どの程度の、小さなミスにしても、例えばそれが重要なことにつながっているかもしれない。ですから、そういうことをどの程度の問題まで、例えば経営者側からしたら情報が上がっているのかどうか。

 先ほども、この前の参考人の方々からも、経営者とそれから労働者の側と、安全に対する認識の上で、要は考え方が少しずれているんじゃないか、そういう御意見もあったものですから、ぜひ、どういうふうに取り組んでいらっしゃるのか、再度お聞かせいただければなと思うんですけれども。

大前参考人 お答えします。

 先ほど申し上げたように、安全に関する情報、いろいろなふぐあいに対する不安全情報というのは、上から下まで共有しないことには意味がないんですね。

 上がしっかり知るということは、やはり決断も早いですし、迅速に行動ができるという意味でやはり極めて重要なことだと思っていますので、当社では、毎週、経営トップから現場の責任者が集まって一週間の出来事を洗いざらいざっくばらんに情報交換するという場を設けまして、そういうものを報告する。個別事例でも、やはり、各部門の責任者の判断で、これは極めて重要だと思うものは直接社長に、トップに報告するということを実際にやっておりますので、相当の部分での現場の出来事が経営トップと現場の責任者、まさに現場の働いている皆さんと共有できているというふうに考えています。

 完全かというとそうでもないでしょうけれども、それについては完全になるように頑張ってまいりたいというふうに考えています。

糸川委員 その得た情報というのを御社だけが自分たちの情報として持っているだけではなくて、航空業界全体の安全ということを考えていただければ、ぜひそういうものも他社とも共有していただければ、さらに安全というものが追求できるのかなと思うんですが。

 戸崎参考人にお伺いしますが、今、大前参考人はこういう下からの情報が上がってくるんだというふうにおっしゃっていますが、以前日本航空にお勤めであったということからも、そういう情報というのは上げやすいんでしょうか、それとも上げにくいのか。

 例えば、ミスに対して寛容であってはいけないのかもしれませんけれども、厳罰であっても言えない、そういう環境というのがあるのかなと思うんですけれども、その辺についてお答えいただけますでしょうか。

戸崎参考人 やはり風通しのよさというのはかなり左右されると思います。

 それと、もう一つは、しっかり、組織の簡素化だと思います。

 先ほど持ち株会社と事業会社の関係もありましたけれども、私見を言えば、そうした屋上屋を重ねるような組織における情報管理体制というのはやはり難しいだろうということがあります。ですから、やはり情報が完全に上まで上がっていくためには、いかにスリムな組織であるのか。

 風通しがいいということは、本当にどのようなコミュニケーションをとっていくのかということが求められると思います。実際にやはりミスをすれば、それに対してそれ相応の罰をやれるというならば、それは難しいですし、やはりそれに対する本当の労働者保護対策というのが求められるのではないか。まさにそういったところで情報の共有化が図られているのは労働組合でありますから、そういったところを経営と共有するということは重要であろうと思います。

 以上です。

糸川委員 私もそう思っていまして、今回の改正でいろいろ報告がどんどん情報として上がってくるようになってくるわけですけれども、その中で、航空業界全体として、どんな軽微なものでも、例えば国に情報が上がってくれば他社と共有できると思うわけですね。航空業界全体としていろいろな情報が共有できる。ただ、その中でまた行政の側から厳しい厳罰な処分が事業者に対して与えられれば、上がってこないのかなと。それは、経営者と労働者、それから国と事業者、そういうような立場と似ているのかなというふうに感じるわけでございます。

 安部参考人にお伺いしますが、安部さんは、ヒューマンエラーが起こり得ることを前提とし、隠さず報告した上で事故防止を図る体制を構築するとお書きになられているわけでございますが、これはどうしたらできるのか、お答えいただけますでしょうか。

安部参考人 全日空さんは、インシデントの報告制度を日本の運輸企業の中で比較的早く導入された企業なんですが、例えば、アメリカでは全米の航空インシデントをNASAに集中するシステムができておりまして、毎月二千件から三千件の報告が上がってきているそうであります。その中で、専門の調査官がエッセンスを得まして、これは教訓化できるというものを逆にリポートとして全米の航空会社、航空関係者に発するわけでありまして、非常に事故防止の有効なシステムになっております。

 私は、このたびこういう形で国への報告制度ができたわけですが、問題はその活用でありまして、これは、お宝が上がってくるわけでありますから、ある共通事項を集約して、これをその現場に返していくシステムをつくれないかなというふうに思っておりまして、そういう工夫が要るのではないかと思います。

 やはり、ある事業所の企業内でやりますと、どうしても社員の方は労務管理にそれが使われるということを恐れます。ですから、私は、やはり、アメリカのようなシステム、あるいは外国でやっていますように第三者機関がそういうものをやって、分析をして、現場に返すという方がよろしいんじゃないか、次のステップとしてそういう制度の構築が必要じゃないかというふうに理解をしております。

糸川委員 わかりました。ありがとうございます。

 今回のこの改正案が出たわけでございますけれども、その中で、恐らく、各参考人の方々が、それぞれここは抜けているんじゃないかなと思われるところもあるのかなと。ない場合もあるかもしれませんけれども、もしあるのであればどの点なのか、もう少しここだけ充実したらいいんじゃないかな、もしくは、こういうことはしない方がいいんじゃないかなということがございましたら、参考までにお聞かせいただけませんでしょうか。各人でお願いします。

林委員長 全員ですか。

糸川委員 はい。それぞれお願いします。

大前参考人 今回の改正案の大きな柱が三つございますね。これは本当に、安全を高めていく上で極めて重要な法案だと私は思っています。法案ができれば、事業者としてますます責任が重くなると思っています。そういう意味では、この法律が本当に生きた法律になるためのやはり努力をしなきゃいけないでしょうし、ただ、また、具体的には、申しわけありませんけれども、運用に当たってはいろいろな細かい詰めも必要でしょうから、これは行政としっかり相談しながら進めていけばよろしいのではないかなというふうに思っております。

安部参考人 運輸の安全性を向上させるための手法として、再発防止のための事故調査をしっかりやるということと、先進国の方ではインシデントの分析をきちっとやるということが、この十年間の大きな流れになっております。

 その点で、今回インシデントの報告を国が求めるようになったことは大きな前進ですので、これを活用して現場に返す、これをどういう仕組みをつくるかというのが大きな、今回そこまで踏み込まれておりませんので、ぜひそれを御検討いただきたいということ。もう一点は、先ほど申し上げたんですが、ぜひ事故調の中に遺族対応、被害者対応の仕事を新しくつけ加えていただきたい。この二点を御要望したいと思います。

戸崎参考人 細かい点はお配りしたメモにあるとおりですが、再度強調すれば、これは、やはり予防と対処の関係だと思われます。

 今回は、対処の形でこのような安全に対する事後の方策として非常にすばらしいものが出ましたから、これの本当に予防になるような上では、きょうも議論にしていただきましたように、果たして適正な競争の中で安全性が担保されるかということを見直すべく適正なルールの見直しというものを、また別の文脈になるかもしれませんけれども、この法案の前提としてぜひ見直していただきたいということであります。

 以上です。

糸川委員 ありがとうございます。

 最後に、今、いろいろこれからまた議論されるのかもしれませんが、事故調を国交省から独立させてどこかの所管にするというような話があるわけでございますが、それが本当にいいのかどうか、各参考人の御所見を伺って、終わりたいと思います。

大前参考人 お答えします。

 先ほどもちょっとお答えしましたように、事業者として、どこに置くかということじゃなくて、やはり事故調査の目的が事故の再発防止ですから、いかに適正、確かな原因が究明できるかというところが最大のポイントです。その意味では、公明で正大にしっかりした公平性を持った調査が行われて、それがしっかり事業者に反映できるということが極めて重要だろうと思っていますので、今の調査そのもののあり方について、私は特に大きな問題はないというふうに認識しております。

 以上でございます。

安部参考人 私は、国土交通省から独立をさせた方が望ましいというふうに思っております。それは、事故調査というのは、運輸事業者に責任がある場合、車両製造メーカー等のメーカーに責任がある場合、あるいは運輸行政に瑕疵があった場合と幾つかの要因があるというふうに思います。

 ですから、どの領域にもタブーなく切り込めて、あらゆる組織から独立した第三者機関が純粋に事故原因の究明という観点から行った方が望ましいというふうに考えております。

戸崎参考人 実質的な面から、本当の意味での人的な独立性と調査権の独立性が保障されていれば、私はどちらであっても構わないと思います。

 つまり、形骸的に新しい組織をつくっても、それはまた屋上屋を重ねるだけであり、やはりそうした問題性が過去あったように思われますので、やはり本当につくるのであれば、本当の意味での独立性を保障する、担保するようなルールがきちんとそれに伴わなければならないというふうに考えます。

 以上です。

糸川委員 貴重な御意見、ありがとうございました。終わります。

林委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言申し上げます。

 本日は、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 次回は、来る十日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四十六分散会


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