衆議院

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第5号 平成18年3月10日(金曜日)

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平成十八年三月十日(金曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 林  幹雄君

   理事 衛藤征士郎君 理事 中野 正志君

   理事 望月 義夫君 理事 吉田六左エ門君

   理事 渡辺 具能君 理事 長妻  昭君

   理事 三日月大造君 理事 高木 陽介君

      新井 悦二君    石田 真敏君

      浮島 敏男君    遠藤 宣彦君

      小里 泰弘君    大塚 高司君

      大塚  拓君    鍵田忠兵衛君

      金子善次郎君    亀岡 偉民君

      北村 茂男君    後藤 茂之君

      坂本 剛二君    清水清一朗君

      島村 宜伸君    杉田 元司君

      鈴木 淳司君    薗浦健太郎君

      田中 和徳君    田中 良生君

      田村 憲久君    高市 早苗君

      土井  亨君    永岡 桂子君

      長島 忠美君    西銘恒三郎君

      葉梨 康弘君    萩生田光一君

      馬渡 龍治君    松本 文明君

      盛山 正仁君    山本  拓君

      山本ともひろ君    若宮 健嗣君

      小宮山泰子君    古賀 一成君

      下条 みつ君    神風 英男君

      高木 義明君    土肥 隆一君

      長安  豊君    鉢呂 吉雄君

      細川 律夫君    馬淵 澄夫君

      森本 哲生君    伊藤  渉君

      斉藤 鉄夫君    穀田 恵二君

      日森 文尋君    糸川 正晃君

    …………………………………

   国土交通大臣       北側 一雄君

   国土交通副大臣      松村 龍二君

   法務大臣政務官      三ッ林隆志君

   国土交通大臣政務官    石田 真敏君

   国土交通大臣政務官    後藤 茂之君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 三浦  守君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局次長)      下村 和生君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           松井 一實君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       小野  晃君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房長) 春田  謙君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長)            竹歳  誠君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  梅田 春実君

   政府参考人

   (国土交通省自動車交通局長)           宿利 正史君

   政府参考人

   (国土交通省海事局長)  星野 茂夫君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  岩崎 貞二君

   政府参考人

   (国土交通省政策統括官) 杉山 篤史君

   政府参考人

   (国土交通省航空・鉄道事故調査委員会事務局長)  福本 秀爾君

   政府参考人

   (高等海難審判庁長官)  上野 延之君

   国土交通委員会専門員   亀井 為幸君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十日

 辞任         補欠選任

  鍵田忠兵衛君     新井 悦二君

  亀岡 偉民君     大塚  拓君

  北村 茂男君     浮島 敏男君

  杉田 元司君     永岡 桂子君

  鈴木 淳司君     萩生田光一君

  田村 憲久君     馬渡 龍治君

  高市 早苗君     山本  拓君

  盛山 正仁君     田中 良生君

  吉田六左エ門君    田中 和徳君

  若宮 健嗣君     山本ともひろ君

  小宮山泰子君     神風 英男君

  土肥 隆一君     細川 律夫君

  亀井 静香君     糸川 正晃君

同日

 辞任         補欠選任

  新井 悦二君     鍵田忠兵衛君

  浮島 敏男君     北村 茂男君

  大塚  拓君     清水清一朗君

  田中 和徳君     吉田六左エ門君

  田中 良生君     土井  亨君

  永岡 桂子君     杉田 元司君

  萩生田光一君     鈴木 淳司君

  馬渡 龍治君     田村 憲久君

  山本  拓君     高市 早苗君

  山本ともひろ君    若宮 健嗣君

  神風 英男君     小宮山泰子君

  細川 律夫君     土肥 隆一君

  糸川 正晃君     亀井 静香君

同日

 辞任         補欠選任

  清水清一朗君     亀岡 偉民君

  土井  亨君     盛山 正仁君

    ―――――――――――――

三月九日

 独立行政法人に係る改革を推進するための国土交通省関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第一〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 運輸の安全性の向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一一号)

 独立行政法人に係る改革を推進するための国土交通省関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第一〇号)


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     ――――◇―――――

林委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、運輸の安全性の向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省大臣官房長春田謙君、総合政策局長竹歳誠君、鉄道局長梅田春実君、自動車交通局長宿利正史君、海事局長星野茂夫君、航空局長岩崎貞二君、政策統括官杉山篤史君、航空・鉄道事故調査委員会事務局長福本秀爾君、高等海難審判庁長官上野延之君、法務省大臣官房審議官三浦守君、文部科学省科学技術・学術政策局次長下村和生君、厚生労働省大臣官房審議官松井一實君及び厚生労働省労働基準局安全衛生部長小野晃君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

林委員長 午前は、特に事故原因究明対策について質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。盛山正仁君。

盛山委員 おはようございます。自由民主党の盛山正仁でございます。

 国土交通行政、運輸行政の要諦は、何といっても安全でございます。安全を二の次にして何のサービスも行政もない、そのように考えております。

 残念ながら、特に昨年、鉄道の関係の事故がございました。また、昨今、航空その他についても事故が頻発しております。物によっては大変大きな惨事にもなっておりますし、物によりましては大惨事に至る直前のところで何とかとまった、そういうような状況でございます。そういうタイミングで今回のこの法律の改正というのは、大変時宜にかなったものだと思っております。

 この事故の調査、原因究明という関係では、事故に対する処分というのも大事な要素であると思っておりますが、それとあわせまして、今後どのようにして未然に事故を回避していくのか、どのようにして運輸の関係者、交通の関係者に、なぜこういうような事故に至ったのか、そしてそれを今後防いでいくためにはどうすればいいのか、そういうことを明らかにしていくということが肝心ではないかと思います。

 今回の案では、航空・鉄道事故調査委員会の所掌事務に、いわゆるサバイバルファクターに関します調査、提言機能を追加するということになっております。航空や鉄道事故による乗客等の死傷率を今後減らしていくために、では具体的にどのように調査や提言を行っていくのか、お尋ねしたいと思います。

福本政府参考人 お答えいたします。

 昨今、航空、鉄道分野におきまして、委員今御指摘いただきましたように、事故、トラブルが相次いで発生いたしてございます。公共交通システムそのものへの国民の信頼が揺らぎかねない大変ゆゆしき状況となってございます。特に、JR福知山線列車脱線事故におきましては、近年例を見ない人的被害が生じてございまして、当委員会といたしましても、事故の背後要因、被害の発生、拡大原因も視野に入れました全容の早期解明に努めておるところでございます。

 今後、公共交通機関のさらなる効率化、高速化、大量輸送化ということに伴いまして、今、一たび事故が発生いたしますれば甚大な被害が発生するという危険性がますます高まっていくものと予測がされるところでございます。さらに、依然として後を絶たないヒューマンエラーの問題、あるいは自然災害等に起因する事故というものにつきましては、従来の予防型の対策のみでは限界があることも事実でございます。

 このため、事故の原因究明及び再発防止に加えて、事故に伴う被害の発生、拡大原因を究明いたしまして、万が一事故が発生いたしました場合の被害を可能な限り軽減するための提言を行うということも、当委員会に期待される極めて重要な役割と考えておるところでございます。具体的には、航空機、車両の耐衝撃性あるいは耐火性、火に強いということでございます、さらには、座席あるいはシートベルト等車内設備の安全性、事故直後の乗務員の救命救急活動等につきまして調査、提言を行っていくこととしておるところでございます。

盛山委員 ありがとうございました。

 今回の改正では、海難審判庁についての改正もございます。

 海難事故というのは、多分、晴れた、澄み切った海ではまず起こりようがないものと思われますが、海は、海象はさまざまでございます。夜のこともあれば、暴風雨で先が見えないこともあるでしょう。そういう中で、海難事故の原因究明をするというのは大変難しいことではないかと思いますが、今回の改正では、関係行政機関に対しまして、海難審判庁が海難防止施策に係る提言をすることができるというふうになっております。具体的には、どのような形で安全の向上、海難事故を防いでいくための提言をされるのか、伺いたいと思います。

上野政府参考人 海難審判庁の行政機関に対する提言について御説明を申し上げます。

 海難審判においては、個々の事件における発生原因を究明し、海技従事者に過失があると認められた場合には懲戒を行い、また、それ以外の当事者において是正すべき点があると認めた場合には勧告を行っております。

 他方、海難審判を行っている中で、幾つかの事例に共通して見られる危険要因が浮かび上がってくることがあります。これらの要因については、個々の事件の当事者に是正を求めるという性質のものではなく、総合的な分析を行った上で必要があると認めたならば、行政機関に対し制度の改善や運用の改善を働きかけていくことが適当と考えられます。今回の提言規定の追加はこのような趣旨に基づくものであり、その積極的な活用により、海上交通の安全向上に寄与したいと考えております。

 提言の内容については、十八年度から新設される首席海難防止調査官が中心となって、これまでの海難審判庁における調査、裁決の内容を十分に分析した上で導き出したいと考えていますが、例えば、台風などの荒天時における衝突、座礁の予防措置は現状で問題はないのか、あるいは操船中の居眠り対策は十分にとられているのかなどといった分野が検討の対象と考えております。

盛山委員 ありがとうございました。

 今回の改正では、事故調査委員会が外部に対してアウトソーシングという形で調査研究を依頼できるというふうになっております。事故調査委員会をしっかりと体制を強化するというのも一つの手でありましょうが、現在、小さな政府を目指している、その流れの中では、外部に頼むところは外部に頼むという形でアウトソーシングを行うというのも、これも大変時宜にかなったやり方だと考えております。

 では、どのような部分、どのような範囲で、あるいはどのようなところへアウトソーシングを行うというふうに考えているのか、お聞かせいただきたいと思います。

福本政府参考人 お答えいたします。

 今日の航空機、鉄道車両等の機能、構造、航空機及び鉄道の運行システム等は大変高度化をいたしてございまして、利用者利便の向上に寄与する一方で、一たび事故が発生いたしました場合の事故原因を大変複雑化させる要因となっております。また、JR福知山線列車脱線事故を一つの契機といたしまして、事故の背後要因も視野に入れた多角的な見地からの原因究明という要請も強まっておるところでございまして、このため、事故等調査において求められる知識あるいは経験というものが、従来にも増して大変広範かつ高度なものとなっておるところでございます。

 こうした事態に対処していくためには、委員会内部の組織体制の強化に努めているところではございますが、今後の事故調査を円滑かつ的確に実施をしていくためには、外部機関の専門的な知見をさらに積極的に活用するということも有効な手段ではないかと考えておるところでございます。

 委託いたします調査研究といたしましては、航空・鉄道事故調査委員会内部の人員あるいは資機材のみでは十分な調査を行うことができないもの、あるいは外部機関に委託することによって調査の正確性の向上が期待できるもの、こういったものを想定いたしておるところでございまして、具体的には、模擬装置いわゆるシミュレーター等を使用いたしました試験研究でございましたり、関係物件の測定あるいは解析調査、こういったものを想定をいたしておるところでございます。

盛山委員 ありがとうございました。

 一昨日の参考人の質疑でも出ておりましたけれども、この事故調の調査、公正に、そして第三者的な立場でしっかりと判断するというのはなかなか難しいことだろうとは思いますが、みんなが期待しているところであります。

 どのようにして公正中立にやっていくのか。そのあたりの独立性というんでしょうか、中立性、そこについてどのように図っていくのか、お尋ねしたいと思います。

福本政府参考人 お答えいたします。

 事故調査は科学的かつ公正な見地から行うことが必要でございますので、委員会の独立性というものは十分に確保されなければならない、こういうぐあいに考えております。このため、航空・鉄道事故調査委員会設置法におきまして、「委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行なう。」と規定されてございまして、国土交通大臣に対しまして、独立して調査の際の権限行使に当たっておるところでございます。

 また、これらの委員の任命につきましても、科学的かつ公正な判断を行うことができると認められる者のうちから国会の同意を得て選任されるということで、当委員会の独立性、公正性については十分確保がなされておる、こういうぐあいに考えておるところでございます。

盛山委員 ありがとうございました。独立性についてはわかりました。

 一昨日の参考人の議論で一つのポイントになりましたのは、この事故調査委員会をどこに設置するのか。国土交通省に設置をするのか、あるいは内閣府その他全く別のところに設置をするのか、そういったことが議論になったかと思います。事故調査委員会をしっかりしたものにして、どのような形で調査をするのかという思いは皆さん同じだと思いますが、その具体的な手段、やり方のところでいろいろ御意見が分かれているのかなと私には感じられました。

 事故調査委員会、例えば地方まで出先をつくってしっかりとした組織をつくる、それはそれで大変いい調査もできようかと思いますが、現在、多分六十人程度の定員であろうかと思います。今の小さな政府を目指すというあり方、そしてどこまで行政の肥大化を許すのか、こういうことを考えますと、国土交通省に置きまして、国土交通省とも連携をとりながら、そして先ほど御答弁がありましたように独立性をしっかりと保持しながらやっていくという方が私はいいのではないかと思われます。

 そこら辺につきまして、どのように考えているのか、お伺いしたいと思います。

福本政府参考人 お答え申し上げます。

 航空・鉄道事故調査委員会は、あくまでも航空、鉄道事故の原因を科学的に究明し、その成果を運輸安全行政に活用することによって再発防止を図るために設けられた機関、こういうことでございます。

 また、委員会は事故調査につきまして国土交通大臣の指揮監督を受けるものではなく、また、委員の任命につきましても両院の同意を得た上で行うというぐあいにされておりまして、その公正中立性は十分確保されておるというぐあいに考えております。

 一方で、事故調査を円滑かつ的確に実施してまいるためにはやはり国土交通省との緊密な協力を図ることが不可欠でございまして、例えば、昨年十二月に羽越線で特急列車が脱線をいたしてございますが、その際、私ども、気象庁の全面的な協力を得まして、気象庁の職員を新たに事故調査官に発令するとともに、気象災害に係ります現地調査あるいは新たな観測機器の設置、詳細な気象データの入手等々を得まして、この事故調査を迅速かつ的確に実施をさせていただいておる、こういうことでございます。

 委員会におきまして、事故調査の公正中立性については問題なく行われてございまして、その証左といたしましては、委員会は事故防止のため講ずべき施策について国土交通大臣に勧告等を行ってございますが、これまでに既に勧告を三件、建議を十八件、トータル二十一件の勧告、建議を出してございます。そういう意味でも、十分独立してその職責を全うしておるものと理解をいたしております。

 したがいまして、当委員会は今後も引き続き国土交通省に置くということが最もふさわしいものではないかと考えております。

盛山委員 ありがとうございました。

 今の御答弁にも出てまいりましたJRの羽越線の関係でもございますけれども、冬のああいう雪の時期というようなことで、なかなか大変な事故調査であったんじゃないかと思いますが、他方、復旧に約一カ月を要する、こういうようなことだったかと思います。

 事故の調査も重要であるというふうにはもちろん考えておりますけれども、あわせまして、やはり利用者の利便ということも考えていただきたいと思います。事故の調査とそして復旧ということにつきまして、どのように考えているのか、御答弁いただきたいと思います。

梅田政府参考人 昨年十二月の二十五日にJR東日本の羽越線砂越駅と北余目駅間で発生しました列車脱線事故につきましては、五名の方が亡くなられ、三十二名の方が重軽傷を負われました。まず、亡くなった方々に対しまして哀悼の意を表するとともに、おけがをされた方々の一刻も早い御回復をお祈りする次第でございます。

 今回の事故原因につきましては、現在、航空・鉄道事故調査委員会が科学的、客観的な観点から調査を進めているところでございますが、今後明らかにされるものと考えております。私ども国土交通省といたしましては、事故発生の翌日、JR東日本に対し、原因究明に係る関係機関への全面的な協力と、みずから調査を行い必要な措置を講ずるよう指示したところでございます。

 JR東日本におきましては、羽越線の運行再開に当たって、利用者が安心して列車に乗っていただけるよう、事故区間における風速計の増設や、風速計と連動した列車を停車させる特殊信号発光機の新設、徐行、それから気象情報に基づく早期警戒、運転規制の実施など、安全対策の検討とその実施に時間を要しまして、本年一月十九日に運行再開に至ったものと聞いております。

 国土交通省といたしましては、今後とも、公共交通機関としての利便性の確保に配慮しつつ、引き続き原因究明と再発防止の徹底を図り、利用者が安心して鉄道を利用できるよう輸送の安全の確保に万全を期してまいる所存でございます。

盛山委員 ありがとうございました。

 最後に松村副大臣に、今回の改正による委員会の機能強化をぜひお願いしたいと思います。人の点でもそうでございますし、また、本当に適切な専門家がちゃんとそろうかということもそうでございます。ぜひお願いしたいと思います。

 そのあたりにつきましての御答弁を最後にちょうだいしたいと思います。

松村副大臣 お答えいたします。

 公共交通機関の安全性の向上につきましては、昨年来、JR福知山線列車脱線事故、また羽越線の事故等、また、航空分野におきます各種トラブルなどが続発しておりまして、国民の信頼回復が喫緊の課題となっております。

 このため、航空・鉄道事故調査委員会については、委員会の所掌事務として、航空、鉄道事故に伴う被害を軽減するための調査、提言を追加するとともに、調査研究の実施の事務の一部を外部機関に委託できる等の機能強化を図るとともに、事故調査官の資質の向上を図るなど事故調査体制の充実強化に努めることとしておりまして、事故を招いた背景及び事故に伴う被害の発生状況等さまざまな観点から調査を進め、事故及び被害の原因究明と再発防止に全力で取り組む所存であります。

 海難審判庁につきましては、今回の改正によりまして、理事官の海難調査結果や審判の裁決を有効に活用し、関係行政機関に対する制度や運用の改善に向けた提言機能を有することになりました。これによりまして、事故調査がより的確に実施されるとともに、より効果的な事故防止施策の展開が可能となるものでありまして、ひいては海上交通の安全向上に多大な貢献ができるものと確信いたしております。

 いずれにいたしましても、公共交通の安全確保は重要であり、今後とも、事故原因の究明と事故の再発防止について最大限の努力をしてまいりたいと思っております。

盛山委員 ありがとうございました。これで質問を終わります。

林委員長 鍵田忠兵衛君。

鍵田委員 皆さん、おはようございます。自民党の鍵田忠兵衛でございます。

 当選をさせていただいて、もう約半年になります。国土交通委員会に配属になった中で初めての質問でございます。自民党の理事の皆様方にいろいろと御配慮いただいたことにまずは御礼を申し上げながら、質問に入らせていただきたいと思います。

 さて、今の日本、この日本というのは、高度成長期そしてバブル期と、経済成長を続けてまいりました。しかし、バブル崩壊という危機的状況から、現在は、デフレスパイラルの脱却を目指し、また同時に、財政再建、行政改革を推進するという非常に難しいかじ取りをしておるわけでございます。

 経済成長に大きく寄与したのは、考えてみると、高速道路であったり、そしてまた新幹線を含む鉄道網、そして航空産業の発展、こういったものや海上輸送の効率化等々が挙げられると思うわけであります。その中で、例えば自動車の交通事故、これは日常的な中に危険があることは多くの国民も理解をしておられます。いっとき、交通戦争だと、一万人以上の方が交通事故で亡くなられた。そういった中で、ただ、話が鉄道や飛行機そしてまた船舶となった場合、むしろこれらの大事故については、これまでの国民の関心も薄れてきていたように思うわけであります。そして、何より大切な安全面のチェックということが忘れ去られていたような気がしてなりません。

 しかし、最近のJR福知山線列車脱線事故を初めとして、大規模な事故が相次いで発生している状況を見ると、やはりその危機管理、または安全面のチェックなど、国がしっかりとした指針を示さなければならないのではないかと思っておるわけでございます。

 そこで、航空・鉄道事故調査委員会、いわゆる事故調について何点か質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、事故調査を迅速かつ的確に実施するには、適正な人員配分や、また十分な予算措置が必要であると考えておりますが、現状どのようになっているのか、まずお聞かせいただきたいと思います。

福本政府参考人 お答えいたします。

 航空・鉄道事故調査委員会におきます人員につきましては、これまで平成十五年度に次席鉄道事故調査官一名が増員されまして、現在、事務局は四十一名体制になってございます。おかげさまで、平成十八年度におきましては、新たに次席鉄道事故調査官一名、鉄道事故調査官六名を増員するほか、新たに企画調整課を新設いただきまして増員六名ということで、トータル五十四名の体制をとっていただけるというぐあいになってございます。

 また、予算措置につきましては、平成十三年度以降、毎年おおむね一億円の予算が認められてございまして、平成十七年四月の福知山線列車脱線事故におきましては、十七年度の補正予算において、必要な予算額四千六百万円が追加措置をされておるところでございます。平成十八年度におきましては、当初予算として一億五千万円を計上させていただいておりまして、今後につきましても、必要な額の確保、さらに人員の確保に努めてまいりたいと考えております。

鍵田委員 ありがとうございます。

 続いて、重大事故発生時においては、やはり現場は、被害に遭われた方など、パニック状態もしくは大変な混乱、そして情報が錯綜しておると予想されるわけであります。あの福知山線の事故もそうでした。非常に情報が錯綜しておったように感じられます。そういった中で事故調査を的確に実施するためには、事故現場における物件の収集、保全等々が、やはり迅速な初動調査が不可欠と思っております。

 そこで、そのためにどのような取り組みを行っておられるか、お聞かせ願いたいと思います。

福本政府参考人 お答えいたします。

 重大事故が発生いたしました場合、委員御指摘のとおり、事実の調査あるいは物件の収集等を含めまして、初動の調査というものが極めて重要でございます。私どもの職員、事故調査官を直ちに派遣いたしまして調査に当たらせておるわけでございますが、やはり、いかんせん重大事故の場合には人員が不足する、こういうような状況にもございます。

 そこで、米国のNTSBという組織では、外部の実務専門家を非常勤の調査官という形で機動的に任用いたしまして初動調査に参画させる、いわゆるパーティー方式と呼ばれてございますが、そういうものが導入されておりますので、我が国においてもそういうパーティー方式の導入ということについて早急に検討を進めてまいりたい、こういうぐあいに考えております。

 さらに、事故が発生いたしました場合、上越新幹線の事故、羽越線の事故もそうでございましたが、どうしても公共交通機関がなかなか利用できない、こういうような場合もございます。そういう場合に備えまして、国土交通省で持っておられますヘリコプター、あるいは海上保安庁にございます航空機等を使わせていただきまして、迅速に初動調査の事故現場に到達できる体制を組みたい、こういうぐあいに考えておるところでございます。

鍵田委員 ありがとうございます。今おっしゃったパーティー方式の導入等々、いろいろとこれからどうぞ御検討いただきたいと思います。

 さて、事故原因を究明するには、しっかりとした専門知識や、また経験のある方でなければならないと思っております。一昨日の委員会においてもいろいろと意見が出ておったわけでありますが、事故原因というのは、やはり利害関係が複雑に絡み合い、また社会的な関心がどうしても大きくなってまいります。

 そこで、第三者的な立場で、公正な判断のもと調査を行うことが重要になってくるわけでありますが、事故調の委員、この委員については、公正中立、そして特定の分野に偏っていてはいけないと思うのでありますが、どのように適格な委員を選任されておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。

福本政府参考人 お答えいたします。

 事故等調査につきましては、科学的かつ公正な見地から行うことが極めて重要でございます。委員会の独立性はさらに十分に確保していく、こういうことも必要であるわけでございます。

 このため、航空・鉄道事故調査委員会設置法におきまして、「委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行なう。」と規定をされてございまして、国土交通大臣も含めまして、他の行政機関等から独立して調査の際の権限行使に当たっておるというところでございます。

 さらに、委員の任命につきましても、航空事故等及び鉄道事故等の原因を究明するための調査につきましては、航空及び鉄道に関するさまざまな分野につきまして、専門的な知識あるいは経験が必要でございますことから、科学的かつ公正な判断を行うことができると認められる者を、国会の同意をいただきまして任命させていただいておる、こういうことでございます。

 具体的には、平成十三年十月、航空事故調査委員会から航空・鉄道事故調査委員会に変わりましたときに、新たに、鉄道分野につきましては、土木工学、電気工学、車両工学、鉄道の運転が専門である委員四名の方々を任命させていただきました。さらには、航空分野につきまして、航空の操縦が専門である委員一名を任命させていただいたということで、適材適所という形で委員を任命させていただいておるところでございます。

鍵田委員 ありがとうございます。適材適所、本当にそれが大事なことであると思っております。

 さて、事故調査において、いろいろな角度から見た、つまり多角的な観点から原因を究明することが再発防止のためには必要なことになると思っておりますが、どうも見ていると、この事故調の行っている調査というのは、例えばレールが変形してしまったり、そしてまた、ボルトが外れていた、ブレーキ系統の異常があったとか、原因究明の方向性が技術的、ハード的な側面に偏っていると思えてならないのであります。

 やはり、ヒューマンエラー、また事故に至る背景など、原因究明はもっと総合的なものであるべきであると考えておりますが、どうお考えになっておられるか、お聞かせください。

福本政府参考人 お答えいたします。

 当委員会の事故調査におきましては、不確かな情報に基づく憶測あるいは予断を排しまして、客観的な事実情報に基づく科学的な解析を行うことといたしてございます。そういうことで、調査の初期段階におきましては、客観性の高い情報が比較的速やかに得られるハード面の調査が先行するということがございます。委員御指摘のように、福知山線の事故につきましても、私ども経過報告というものを出させていただきましたが、やはりそういうハード面の調査が先行をいたしたところでございます。

 しかしながら、もとより事故調査におきましてはハード、ソフトの両面から多角的に行ってまいることが重要でございまして、当委員会におきましては、例えば福知山線の脱線事故に関しまして、ヒューマンファクターに関する調査を担当する調査官を新たに採用するなどいたしまして、ソフト面についても鋭意調査を進めておるところでございます。

 加えまして、今回の改正によりまして、事業者の有する書類あるいは帳簿、こういったものに対する調査権限が明確に規定されることとなりますので、ソフト的な調査がさらに円滑化されるのではないかと期待をいたしておるところでございます。

鍵田委員 ありがとうございます。本当にそのソフト面、非常に大事だと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 今回の改正で、事故調からの調査または研究の委託を受けた者に対して守秘義務を課すことになっておりますが、守秘義務を課すことによってどのような効果が期待されるのでしょうか。

 また、一方では、事故調査の成果を広く一般公表することによって再発防止が図られていくものと考えられておりますが、この情報公開ということが十分に行われているのかどうか、お聞かせをいただきたいと思います。

福本政府参考人 お答えいたします。

 調査研究の受託者に課されます守秘義務は、事故の関係者の利益の確保と、私ども航空・鉄道事故調査委員会の公正円滑な業務の遂行を図る上で、極めて重要な意味を有しておると考えております。

 委員会が事故調査におきまして調査いたします内容につきましては、事故自体についての情報だけではなく、会社の経営内容でございましたり、あるいは企業秘密に係る情報、こういったものも含まれる、加えまして、死亡者の死因でございましたり、負傷者の医学的所見等の個人情報に係るものも多くございますので、委員会が調査研究の実施に関する事務を外部に委託いたします場合において、これらの情報の秘匿性を確保する必要性が高くなっておるところでございます。

 このため、今般、調査研究の受託者に対しまして守秘義務を課すということによりまして、調査情報の秘匿性に関する関係者の信頼が高まる、こういうことによりまして、関係者の協力を基礎といたします事故調査業務の円滑化が図られるのではないかと期待をいたしておるところでございます。

 情報公開につきましては、委員会は、事故調査の結果を踏まえまして調査報告書を作成いたします。それを国土交通大臣に提出いたしますとともに、広く一般に公表をいたしておるところでございます。このために、報告書につきましては、報道機関へ発表いたしましたり、あるいは私どものホームページに報告書の内容そのものを掲載いたしましたり、あるいは関係行政機関等へ送付したりいたしておるところでございますが、今後とも情報公開に努めてまいる所存でございます。

鍵田委員 福本事務局長、どうもありがとうございました。

 続きまして、海難審判法、これについて質問をさせていただきたいと思います。先ほどの質問と同じような趣旨になってしまいますが、大切なことでありますので、質問をさせていただきます。

 海難事故、いわゆる海難の調査も、事故調と同様に幅広い知識を持った専門家が参加して行うべきであると思っておりますが、海難審判庁における調査や審判はどのような職員がこれを行っておられるのでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。

上野政府参考人 海難に関する調査を実施しております職員についてお答えします。

 海難審判庁において調査、審判に当たります審判官や理事官の大半は、民間の船会社で船長や機関長の経験を有した、あるいは海上保安庁や航海訓練所などでの実務を積んだ航海技術や機関の専門家であります。

 さらに、海難審判庁におきましては、ヒューマンファクターや気象、海象など、事故の背景要因を含めた分析に必要となる知識を得るため、それぞれの分野の専門家を参審員として登録しております。そして、個別の事件の性格に応じて、これらの参審員の先生方に審判官と全く同じ立場で審判に参加いただいております。これら幅広い専門的知識を柔軟に活用し、海難の原因の総合的な究明を行っているところであります。

 今後とも、必要に応じ、新たな分野の専門家を審判官や理事官及び参審員として追加するなど、体制の充実に努めたいと考えております。

鍵田委員 上野長官、ありがとうございました。

 最後に、北側大臣にお尋ねをさせていただきたいと思います。

 先般、三月一日でございますが、予算委員会の分科会において鉄道事業法の質問をさせていただいたわけでありますが、今回は、海難審判法についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 海難審判庁は、これまでの調査や海難審判によって明らかにされた海難の原因など、情報をどのように海難の発生防止に活用されているのでしょうか。今回のこの法律改正、これによって海難審判庁の知見の活用のされ方は変わるのでしょうか。その辺のところをお聞かせいただきたいと思います。

北側国務大臣 海難審判庁は、さまざまな海難事故について審判、裁決をしているわけでございますが、このことをやはり他の同種の海難の再発防止に寄与させていく必要があるというふうに考えておりますし、それは大変重要なことと考えております。

 これまでも、「海難分析集」という本があるんですが、海難の原因や実態について詳細な分析を行いまして、海難につながったさまざまな要因を明らかにするとともに、個々の海難事例から得られた教訓や海難防止対策について具体的な提言を行っております。こうした「海難分析集」の刊行だけではなくて、海難防止活動、講習会等を開催したり、例えば平成十七年度、今年度では、これは十二月までの数字ですが、全国で六十二回実施しているだとか、こうした情報の提供を関係者また関係機関にこれまでもしてきたところでございます。

 今後とも、しっかりと海難防止についての情報の広報に努めてまいりたいと考えております。

 今回の法律改正で、さらにこうした再発防止に寄与していくという機能を強化していこうということで、海難審判庁が有しております知見をもとに関係行政機関に対して提言を行うことができる、こういう機能を追加いたしまして、海難の背景となっている共通の要因について、必要な場合には制度や運用の改善等を働きかけていく、こうした機能についても持たせるようにぜひさせていただきたいというふうに考えておるところでございます。

 今後とも、海事関係者に対する広報啓発活動を引き続き実施いたしまして、海難事故の防止にしっかり効果を上げていきたいというふうに考えております。

鍵田委員 北側大臣、ありがとうございました。

 いずれにいたしましても、国民の生命にかかわる重要な案件でありますから、しっかりと運用をしていただくようよろしくお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

林委員長 細川律夫君。

細川委員 民主党の細川でございます。よろしくお願いをいたします。

 昨今、社会全体が非常に不安になってきているような、そんな気がいたします。水害とか震災、あるいはことしの冬は雪害被害が甚大でございました。また、犯罪では、幼児をねらった凶悪犯も多いし、またお年寄りをねらった詐欺罪とか、そういうものもふえております。自殺者も高どまりでございますし、ホームレスも多い。

 そうした社会不安の高まりの中で、交通の安全に対する信頼までも大きく崩れているというふうにも思います。昨年、二つ鉄道事故がございました。また、事故にはなりませんでしたけれども、航空のさまざまなインシデントや、あるいはトラブルもありました。自動車事故につきましても、死者数は減ってはおりますけれども、しかし、事故数そのものは高どまりでございます。

 安心、安全な社会を築くというのが政府の中でも最も本質的な大事なところでございます。しっかりとこの点は国の方でもやっていかなければいけないと思います。したがって、交通運輸の安全につきましても、こういうところで、この場でしっかりと議論をすることが重要でございますし、また、国民の期待や関心も多いことと思われます。

 そこで、私は、特に事故調査のあり方について、きょうは何点かお伺いをしたいというふうに思っております。

 既に事故調査委員会ができておりますけれども、この沿革を見ますと、当初は航空機だけでございましたけれども、その後、九一年の信楽高原鉄道の事故をきっかけに、鉄道事故についても独立の調査機関をつくるべきだというような声が出まして、私も当時、運輸省にそういう要請もしたことでございました。そのときは実現しませんでしたけれども、二〇〇〇年の営団の日比谷線の事故をきっかけに、鉄道事故も対象になる、こういう法改正が行われたのでございます。

 その二〇〇一年の法律の改正のときにも大きな問題となりましたのが、調査機関の独立性の問題でございます。

 この委員会は、法律上、設置法の第四条では独立を担保されておりますけれども、この任命者は国土交通大臣であり、法律上も国土交通省のもとに置かれております。そもそも国土交通省は、交通事業者に対して許認可を行い、あるいは事業の振興も図る、そしてまた、日ごろの安全性などについては指導監督をされております。こういう官庁が、原因究明とかあるいは再発防止という、客観性あるいは独立性を要求される事故調査の権能を持っていていいのだろうかというような疑問が持たれるわけでございます。仮に、真に独立して調査を行ったとしても、国民はどうも割り切れないものを感じるのではないかというふうに思います。

 さらに、昨年の尼崎の列車事故などは、運転士だけじゃなくて会社全体の労務管理のあり方が問われるような問題でありますから、これは厚生労働省の所掌事務に関する調査も多い。さらには、電車の製造基準の認可は経済産業省、あるいは犠牲者の死因などは警察庁とか厚労省、あるいは救助、救命は消防庁、こういうふうにいろいろと分かれているところでありますから、私は、国土交通省に置かれている現状では、十分な調査ができるかどうか、大変疑問を持っております。

 二〇〇一年の改正のときにも、この委員会を、八条委員会から三条委員会、非常に独立の強い委員会にしたらどうかとか、そういうような主張もしたところでございました。

 しかし、三条委員会にしなくても、同様の権限を持つ食品安全委員会とか原子力委員会、あるいは原子力安全委員会というのは内閣府に置いているところでございますから、いろいろな関係各省から独立を確保するために、事故調査委員会も同じように内閣府に移管をしたらどうか、こういうことをまず大臣にお聞きしたいと思います。

 大臣の所管であるから聞きにくいところでございますけれども、国土交通省から内閣府の方に移管したらどうかという私の質問でございます。

北側国務大臣 今の細川委員の御質問は、かねてからこういう御主張また議論があるわけでございます。今後もしっかりよく研究をしていきたいというふうに思っておりますが、この航空・鉄道事故調査委員会がどこに位置づけられているかにかかわらず、例えば航空当局、鉄道当局との連携協力というのは不可欠でございます。

 一つの事故があった、また重大なトラブルがあった、そういう場合に事故調が出ていくわけでございますけれども、その際、事故調は当然、航空局なり鉄道局なり、そういう直接所管している役所との密接な連携協力なしに事故調査が円滑にできるかというと、これは期待できないわけでございまして、どこに置かれようとも、鉄道局や航空局との密接な連携協力というのはなければならないというふうに思っているところでございます。

 例えば、昨年末のあの羽越線の事故、突風が原因ではないかと言われているわけでございますが、当然これは、気象庁の全面的な協力なしには事故原因の分析というのはできないわけでございます。また、かつて日航機同士のニアミスなんというのもあったんですけれども、そのときも当然、レーダー記録等の的確な証拠資料の提出というのは不可欠です。等々、航空・鉄道事故調査委員会が調査に入る場面というのは、航空当局、鉄道当局との密接な連携協力が必要である。

 もう一つは、確かに国土交通省の中にあるわけでございますが、例えば委員の任命についても、これは両議院の同意事項になっておるわけですね。国会の同意人事事項になっておるわけでございます。

 先ほど委員の方からもおっしゃっていただきましたように、委員会の設置法では、独立して職権を行うというふうに規定をされているところでもございまして、また、事故調査委員会は、独立機関としての立場から事故防止対策についての提言を行っております。国土交通大臣に対しまして、事故防止のため講ずべき施策について、国土交通大臣の対応が必要な勧告をやっているわけでございまして、これまでも、航空については三件勧告をちょうだいしております。建議についてもできるわけでございますが、これについては、航空で十六件、鉄道で二件。合わせて二十一件の勧告並びに建議をちょうだいしているところでございます。

 委員の御主張は今後もしっかりと検討していきたいと思いますが、ただ、連携協力が必要であること、独立性というのは担保されているということで、ぜひ御理解をお願いしたいと思っているところでございます。

細川委員 確かに事故調査のときには連携あるいは協力というようなことが必要かと思いますので、大臣の言われることもわかりますが、ぜひ検討の方はお願いをしたいと思います。

 次に、事故調査の範囲について伺います。

 今、事故調査委員会の調査の対象となるのは航空機事故と鉄道事故、この二つでございます。しかし、自動車事故あるいは船舶の事故、これについては対象になっていないところでございます。私は、アメリカのNTSBのような、何もかもすべて一緒に一つの委員会が調査をするというのを申し上げるつもりは現在のところありませんけれども、しかし、自動車事故あるいは船舶の事故、こういうことについて問題点がないのかどうか、これは検討しなければいけないというふうに思っております。

 まず、自動車事故でございます。

 自動車事故については、警察が刑事事件として捜査を行い、財団法人の交通事故総合分析センターで交通事故防止と交通事故による被害の軽減を図る、こういうことになっております。しかし、私は、警察と分析センター、いずれも、原因究明、再発防止のための調査になっていないのではないかというふうに思います。

 まず、刑事事件としての捜査というのは、あくまでも特定の個人の過失などの犯罪を立証するのが目的でございます。そして、道交法で規定をされております分析センター、これは民法の三十四条の法人でございますから、調査上の権限がない、いわば民間の研究機関といった位置づけであります。

 したがって、警察、そしてこの分析センター、いずれも本格的な事故の調査機関とは言えないというふうに思います。特に分析センターなどは、受託収入に一部自動車メーカーから収入を得ているというような現状もありますので、決して中立的な、独立な機関ではないというふうにも思います。

 運転手そのものの過失だけが原因だ、こういうような事故ならば余り問題にはなりませんけれども、しかし、自動車交通の重大な事故で、事業者の運行管理あるいは労働環境といった問題が原因になっている事故、あるいは車両そのものに原因の可能性があると推察される事故、また道路環境が事故の発生を助長しているというように考えられる事故、こういう事故などについては、警察の捜査とは独立した機関で、ある程度強制力を持った調査が行われるべきであるというふうに思います。

 例えば、一昨年問題になりました三菱自動車によるリコール隠し、あれなども、もししっかりした調査機関があれば、もっと早い時期に認知できたのではないかというふうにも思います。

 こういう点について、大臣はどのようにお考えでしょうか。

北側国務大臣 自動車事故というのは、年間で九十万件以上ございます。御承知のとおり、航空、鉄道の事故件数とは全く比較にならない多くの事故が発生をしておりまして、すべての事故について警察が二十四時間体制で現場検証を行ったり、また、全国組織が警察にはございますので、すべての事故の発生原因を当然調査しているところでございます。そうした調査結果につきましては、今委員のおっしゃった交通事故総合分析センターの方に情報が集約をされているところでございます。

 問題は、自動車の事故のうち、先ほど委員の方から幾つか御指摘ございましたが、車両構造に起因する事故につきましては、警察なり交通事故総合分析センターから国土交通省の方へ情報提供がなされます。国土交通省では、さらに原因調査を進めまして、道路運送車両の保安基準の改正だとかリコール改善対策に反映をしてきているということでございます。

 特に問題なのは、やはり事業用自動車の事故でございますが、これは社会的な影響も大きく、年間約六万件を超えているわけでございます。これにつきましては、国土交通省におきまして、自動車運送事業を所管する立場でございますので、利用者利便の確保を図るのはもちろんのこと、輸送の安全を確保するために監査等を実施しております。

 監査を実施する組織として、全国組織が運輸局また運輸支局という形で国交省の中にはあるわけでございまして、事業用自動車の事故の情報について、警察から漏れなく情報を入手することで、事故を引き起こした事業者への処分を実施するなど、トラック、バス、タクシーといった各事業形態に応じて事故の再発防止を行っているところでございます。

 これまで、こういうことで警察とよく連携をとりながらやってきておりまして、長年のノウハウも蓄積をされているというふうに考えております。さらにこれとは別に何か組織をつくってというよりも、むしろ、今の警察との連携だとか、また自動車交通局の方で持つ権限だとか、そういうものをさらに充実していくだとか、そうした方向で検討をしていった方がいいのではないかというふうに考えているところでございます。

細川委員 自動車交通の事故、数はたくさんありますけれども、その中でも、とりわけ重大事故と言われる事故については、大臣からいろいろございましたけれども、ぜひ検討をしていただきたい、重ねてお願いを申し上げます。

 次は、海難についてお伺いをいたします。

 海難の方についても事故調査委員会の調査の対象にはなっていないわけですが、今回、海難審判庁は、海難の再発防止に関して、国土交通大臣または関係行政機関の長に意見を述べることができるという法改正によりまして、従来からあった海難に関する事故調査権限をさらに海難審判庁に付与したものと考えられます。

 今までの海難審判庁は、審判において海難の原因究明、再発防止ということが規定をされておりますけれども、懲戒と言われる行政処分を決定するという、この準司法的な機能がいわば本来の目的でございまして、したがって、純粋な事故調査機関にはなっていないところでございます。

 私も、事故調査に関する意義を否定するわけではございませんけれども、将来的には、行政目的のいわゆる審判、それと再発防止に向けての事故の調査、これはやはり分離をされるのが望ましいというふうに思っております。将来的な視点も含めまして、船舶の事故調査のあり方についてお伺いをいたします。

北側国務大臣 海難審判法というのは、昭和二十二年に制定をされました。戦前からの経緯、沿革ももちろんあるわけでございますが、この法律自体は昭和二十二年に制定されまして、六十年近くたってきたわけでございます。

 そういう意味では、海難審判庁におきましても、本当に実績を積んできて、またさまざま改善もしてきて、海難事故、年間七百件から八百件ぐらいあるわけでございますが、こうした事故調査を効率的に処理をしていくノウハウといいますか、そういうものは持っているというふうに思っているところでございます。今委員のおっしゃったように、原因究明だけではなくて懲戒という機能もあわせ持っているわけでございます。

 この海難審判というのは、やはりほかの陸や空の事故等と少し違うところがあると。大体事故の半分ぐらいが船同士の衝突であるだとか、それから一番大きいのが、物証が得られにくい。現場を見ている人が少ないわけですね。物証が得られにくいという場合が多い。

 それから、航空、鉄道の場合はシステム全体を検証していく必要があるんですけれども、やはり船の場合は船長の判断に安全がゆだねられている度合いが高いだとか、さまざまな特性があるわけでございまして、現に、審判の際は事故の両当事者の意見を聞きながら原因を究明していく、こういう仕組みをとらせていただいておりまして、これにはやはり、そうした特性に応じた審判制度をつくっているわけで、大きなメリットがあるのではないかというふうに考えているところでございます。

 今回、法律の改正をさせていただきまして、理事官、いわゆる検察官ですね、理事官の調査だとか、審判を通じて得られた知見というものをさらに再発防止に向けて生かしていこうということで、関係行政機関に対して提言できる旨の規定を追加する等の改正をお願いさせていただいているところでございます。

 今後、今委員の方から御指摘のあった点も含めまして、国際的な動向も留意しながら、引き続き海難調査のあり方について検討してまいりたいというふうに考えております。

細川委員 今、外国の例なども参考に研究していきたいという大臣の答弁でございましたけれども、やはり、何か裁判所の中に、捜査当局と、それから判決をする、そういうのが一緒に一つの組織の中に入っているというような、そんな感じもします。そういう意味では、やはり調査と審判というのはしっかり分けるというのが一番大事なことじゃないかというふうに思いますので、ぜひ検討をよろしくお願いいたします。

 それから次に、今度の事故調査委員会法の改正でございますが、内容を見ますと、「被害の軽減に寄与する」ということを目的の中に追加しております。そして、「被害の軽減のため講ずべき施策について勧告・建議すること」も所掌事務に追加がされました。

 今までの条文ではこういうことになかなか対応できなかったんでしょうか。どういう不都合があって、今回こういうような改正がされたのか。これまでの所掌事務でも何とか対応ができたというふうにも思われますけれども、あえてこの改正をする理由、そして具体的にどういう施策が考えられるのか、これらについてお伺いをいたします。

福本政府参考人 お答えいたします。

 昨今、航空、鉄道分野におきまして、事故、トラブルが相次いで発生をいたしてございまして、公共交通システムそのものへの国民の信頼が揺らぎかねない状況となってございます。

 特に、委員も御指摘のとおり、JR福知山線の列車脱線事故におきましては、近年例を見ない多数の人的被害が生じたことでございます。そういう意味で、当委員会におきましても、事故の背後要因あるいは被害の発生、拡大原因というものも視野に入れた全容の早期解明に努めておるというところでございます。

 今後でございますが、公共交通機関のさらなる効率化、高速化、あるいは大量輸送化というものに伴いまして、不幸にも一たび事故が発生いたしますれば甚大な被害が発生するという危険性がますます高まっているというぐあいに考えてございます。また、依然として後を絶たないヒューマンエラーの問題とか、あるいは自然災害等に起因いたします事故につきましても、従来の事故を予防するという対策だけでは、やはり限界があるのではないかというのも事実でございます。

 こういうことで、事故の原因究明及び再発防止というものに加えまして、新たに、事故に伴う被害の発生、拡大原因を究明いたしまして、事故が発生した場合の被害を可能な限り軽減するための提言を行ってまいるということも、委員会に期待される極めて重要な役割だと認識をいたしてございます。先日の参考人の御意見の中でも、ぜひやれ、こういうような御意見もちょうだいしたところでございます。

 こういうことを踏まえまして、航空交通及び鉄道交通の安全性の一層の向上を図るために、事故の防止に加えまして被害の軽減といったことも当委員会の新たな目的として位置づけまして、委員会の調査、提言機能を強化するための所要の改正を行おう、こういうものでございます。

 具体的には、やはり当該列車あるいは航空機の耐衝撃性でございましたり、耐火性、燃えないというようなもの、あるいはシートベルト、その他、車内のあるいは機内の各種装置の安全性といいますか、網棚でございましたり、つり革でございましたり、そういったものがかえって被害の拡大につながっておるというようなことがないだろうか、こういったようなことも検討したい。さらには、事故が発生いたしました場合の、キャビンアテンダントでありましたり車掌さんでありましたり、そういう方々の避難誘導といったものが適切に行われたかどうか、こういったことも私どもとしてぜひ調査し、必要があれば関係機関への提言をしてまいりたい、こういうぐあいに考えておるところでございます。

細川委員 ちょっとよくわからないところがありましたが。

 それでは、尼崎の福知山線の事故の調査については、先ほどお答えになったようなことは調査できなかったというようなことですか。できないということですか。

福本政府参考人 調査できないということではございませんが、やはり全体が事故防止、そういう観念でこの設置法が貫かれておるようなことでございますので、今般、福知山線もそうでございますが、被害の軽減ということが、これからこういう社会においてはますます必要になってまいりますので、改めて追加をさせていただいたということでございます。

 そういうことで、現在、福知山線につきましては、そういう被害原因、ヒューマンファクターあるいはサバイバルファクターといったものについても調査を実施いたしておるところでございます。

細川委員 それでは、これまでの法律の内容でもできないことはないけれども、目的とかあるいは所掌事務を追加して、さらに明確化して力を入れていきたい、こういうことでよろしいですね。――はい、わかりました。

 次に、この事故調査に関しまして、列車事故あるいは航空機事故が起こりますと、機長や運転士などが刑事上の責任を追及される、そういう警察の捜査、それから事故原因などを調べる事故調査委員会の事故調査、この二つが一つの事故にかかわっていくわけですけれども、その関係についてお伺いをしたいと思います。

 我が国の現状を見ますと、犯罪者に対する責任追及を目的とした警察の捜査と事故の再発防止を目的とした事故調査、この二つを比べますと、建前上は事故調査が優先的に位置づけられているというようになっていると思います。しかしながら、警察の持つ人的資源や機動性にかんがみますれば、初動捜査については警察に多くの部分をゆだねるしかないものだと思います。また、前に運輸省と警察庁の覚書も交わされておりますけれども、この覚書の内容などを見ますと、実態としては犯罪捜査優先というような声も聞くところでございます。

 私は、公益性という立場から見ますと、個人の責任を求める刑事司法、それ以上にやはり再発防止の目的の調査が優先されるべきではないかと思っております。海外の例などを見ましても、おおむね事故調査が実質的に優先をされていると言ってもいいと思います。特に、昨今話題になっておりますヒューマンエラーの側面の大きな事故、とりわけ組織自体が事故を起こしやすい、事故を生じやすいような状況になっておるような場合は、より事故調査に比重が置かれなければいけないだろうと思います。

 私は、今すぐにとは言いませんけれども、事故調査委員会の予算やあるいは常勤のスタッフ、これをアメリカのNTSB並みにふやしたり、あるいは専門家を登録して事故現場に直ちに赴くということができるような、先ほども議論で言っておりましたパーティー方式とか、そういう体制をとるべきだと思っております。同時に、現状では、警察と協力関係をさらに密にして、警察の捜査情報を事故調査委員会に流しやすい状況もつくるべきだというふうに思っておりますけれども、これらの点について、大臣の御所見を伺いたいというふうに思います。

北側国務大臣 今の細川委員の御指摘も、これもかねてから御議論のあるところでございます。

 今おっしゃっていただきましたように、事故調査委員会とそれから捜査機関とはそれぞれ目的を異にしているとはいうものの、事故が発生した場合、現場では当然事故調査と司法における捜査が競合していくということでございまして、この事故調査並びに司法捜査が、それぞれの業務が円滑に実施されるように、両方の機関の必要な協力、調整を図っていかなければならない、それは非常に重要なことであると思っております。そういうことで、覚書や細目をこれまで取り交わしてきたわけでございます。

 私が大臣に就任させていただいて以来、鉄道の場合に大きな事故がございました。それぞれ現場に私行かせていただきましたが、率直に申し上げますと、事故直後は、まずは被害者の方々をいかに救出するか、これで懸命に協力し合って活動しているわけでございます。これは福知山線の事故の際もそうですし、羽越線の事故のときもそうでした。警察と消防が中心になりながら、まずは被害者の救出、これに全力を挙げているのが初期の状況でございます。当然の話だと思います。

 そこに事故調も当然入っているわけですが、事故調としては当然保全をしなきゃいけないわけですね。そこについては、警察とは非常に連携をとってやらせていただいているというふうに思っております。

 私も、例えば福知山線の事故のときにそのことが少し心配でございましたので、国家公安委員長初め、連携よろしくお願いしたいということはその都度申し上げさせていただいているところでございますが、後々救出作業が一応終了し、その後の本格的な捜査と調査に入ったときに、私も、実を言いますと、事故調に、捜査機関とはうまくいっていますかということでちょっと聞いているんです。その都度、うまくやっていますかと。そうしたら、かつてはいろいろあったようなんですが、今は非常にうまく連携をしているということでお聞きをしているところでございます。

 今後とも、事故調査を行っていく際には、捜査機関とも十分な協力、調整を図りつつ、しっかり原因究明の調査ができますように努力をしてまいりたいというふうに考えております。

 捜査機関の方も、逆に、事故調の方は専門家の人たちの集団でございますので、事故原因の究明がやはりなされないと、例えば捜査機関の方の捜査の遂行も十分できないというふうなこともあって、非常に尊重していただいているのではないかというのが私の今の印象でございます。

細川委員 非常にスムーズにいっているということでございますから、それはそれでよろしいかと思います。

 最初に行くのは、現場でいろいろと証拠物といいますか、証拠としていろいろ押収をするのは警察の方だと思うんですけれども、押収したものを事故調が利用できるというのは、どういう手続でやっているんですか。

福本政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、事故が発生いたしました場合、大臣も申し上げましたけれども、現実には被害者の救済等々がございますので、イの一番に警察あるいは消防が駆けつけておるということでございます。

 その次の段階として事故調査あるいは犯罪捜査というようなことが行われるわけでございますが、その過程においては、やはり刑事訴訟法の手続によりまして、警察の方が証拠物件等々を押収するという可能性が多々ございます。現実にそういうものが多いというのも事実でございます。

 その中で、例えば航空機でございますと、航空機の事故の場合、いわば三種の神器ではございませんが、大変重要な機材といたしまして、飛行記録装置といったようなもの、あるいは音声記録装置、いわばコックピットの会話を記録したようなもの、こういうものにつきましては、これは極めて専門性が強いということもございますので、私どもの方に優先的にお貸しをいただくというような取り決めになってございます。

 その際、これも刑事訴訟法の手続によりますいわゆる鑑定嘱託といったような手続が後ほどとられて、私どもの方から、事故報告書というものをその鑑定嘱託に対する回答という形で警察の方にお渡しをするというようなことはやってございます。

細川委員 では、その点はあれしまして、次に伺いたいと思います。

 私は、鉄道事故あるいは航空機の事故などに対する刑事上の責任を問うということについて、多少疑問がございます。外国、特に欧米の方では、業務上過失という規定はほとんどございません。犯罪にならない例も多いという話でございます。

 例えば、信楽鉄道事故の遺族の皆さんでつくっておられる団体でございますが、鉄道安全推進会議、TASKと言っておりますが、ここの調べによりますと、航空事故でパイロットが刑務所に入るのは日本とギリシャだけだというようなことも報告されております。それから、アメリカなどでも刑事免責が与えられる場合が非常に多くて、ヨーロッパでも運用上では過失は訴追をしない、裁判でも無罪となる場合が多い、こういうふうに聞いております。

 そこで、我が国でも刑事免責制度、これを導入するということはなかなか無理だとは思いますけれども、システム上問題のあるヒューマンエラーについて、これを何が何でも業過で罰するのは、そろそろ反省をすべき時期に来ているのではないかというふうに思います。被害者側の皆さんあるいは国民の、そういう事故を起こした責任を追及しなきゃというような応報的な感情もあろうかと思いますけれども、そこは国民的な理解の上に立って、こういう特別の事故については刑事免責をしていくような、そういう方向について法務省の考え方をお聞きしたいと思います。

三ッ林大臣政務官 お答えいたします。

 御指摘のような事案につきましては、事故当事者たる個人に対する刑事責任の追及を控えるべきであるという旨の御意見があることは承知しております。しかしながら、その一方で、このような事案につきまして、刑事手続を通じて事案の全容を解明し、その責任の所在を明らかにした上でそれぞれの責任に応じた刑罰を科すことが、被害者を初めとする多くの国民の感情に合致しているという意見もあると承知しております。

 同種事案の再発防止の観点は重要ではありますが、そのために行為者の刑事責任を一切不問にすることにつきましては、国民の理解を得ることは困難であると思います。

 以上です。

細川委員 確かにこれについては難しい問題がありますけれども、やはりこの点につきましても、海外のいろいろな例というのも参考にしていただいて、こういう多くの人命にかかわるような事故というのはやはり再発防止が最も大事でございますから、刑事訴追ということを中心に考えますと、黙秘権もございますし、自分が有利になろうと思って真実を話さないようなことも考えられるのではないか。やはり、この場合、事故の再発防止を目的とした徹底的な原因究明というのが必要だというふうに思いますので、ぜひ法務省の方でも御検討をしていただきたいというふうに御要請をさせていただきます。

 もう時間がありませんから、最後に、事故報告書につきまして、この報告書が刑事責任の方の証拠になるかどうかというようなことについてお聞きをしたかったわけでありますけれども、この点はまた機会がありましたらお聞きをするということで、私の質問はこれで終わります。

 ありがとうございました。

林委員長 三日月大造君。

三日月委員 民主党の三日月大造です。細川委員に引き続きまして、事故調査委員会関連質疑をさせていただきます。

 包括的な議論は今細川さんの方がしていただきましたので、若干各論に踏み込んでお伺いをしたいと思います。同時に、安全をどう守るんだ、どうつくるんだという哲学だとか文化、また、将来的なビジョン、見通しも含めて、大臣初め関係の皆様方の見解をお伺いしたいと思います。

 資料をお手元にお配りしています。ページは九ページまでですが、十一枚物、途中ページが飛んだところがあることを御容赦いただきたいと思います。

 一枚目に、国土交通省の皆様方、また事故調、海難審判庁等々、関係各局の皆様方の御協力もいただきながらデータをいただいた、鉄道、自動車、航空、海運、それぞれのモードの、今の事故、トラブル、インシデント、そして被害の状況、そういったモードに対してどのような監査、指導を行っているかという状況を計算してつけさせていただいています。

 まず、今回の法案すべてにおいて言えることだと思うんですけれども、今、この国の運輸の安全というものがどのような状態にあるのか、どういう現状にあるのかということについての、国土交通省としての認識をまず問わなければいけないと思います。事故、兆候、トラブル、インシデント、こういったものの発生状況、増減、また、事故による被害の状況ですね。

 今回、被害の軽減というものを事故調査委員会の所掌の中に入れるということがありましたけれども、その中身、傾向、また、事故原因の傾向分析について、どのような特徴があるという御認識でいらっしゃいますか、冒頭、お伺いしたいと思います。

北側国務大臣 三日月委員におかれましては、このような詳細な取りまとめをいただきまして、ありがとうございます。

 ここに出ておりますとおり、数そのものはこういうことなんですが、御承知のとおり、昨年は、JRの福知山線の本当に悲惨な事故がございました。また、羽越線の事故も年末にはあった。さらには、航空の方でも、事故には至っておりませんけれども、トラブルが続出をしているということでございまして、やはり、特に公共交通にとって、輸送の安全の確保、これが利用者、国民に対する最大の使命、役割でございまして、そこのところを本当に、改めて、交通事業者の方々、そして私ども行政の側が、従来の制度に問題がないのか総点検をして、しっかり見直すべきは見直していくということで、今回の法案も提案をさせていただいているところでございます。

 特に、一連の事故やトラブルの中で私どもがやはり意識をしておりますのは、ヒューマンエラーの問題でございます。人為的なミスが事故やトラブルにつながっているというものが多いということを認識しておりまして、こうしたヒューマンエラーの事故防止対策等につきましては、特にしっかりと取り組んでいく必要があるというふうに考えているところでございます。

三日月委員 大臣からは包括的に御答弁をいただきました。せっかくの機会ですから、事故調査委員会そして海難審判庁それぞれから、より踏み込んだ観点で、最近の事故や兆候、海難の傾向、中身、今、大臣はヒューマンエラーに起因する事故やトラブルが多く発生するようになってきたという御見解をお述べになりました。私も、感覚的には、また間接的には、そのようなことについての認識をともにしておりますけれども、そのあたり、過去をさかのぼって最近の変化をどうとらまえていらっしゃるのか、事故調、海難審判庁、お願いします。

福本政府参考人 お答えいたします。

 現在、航空・鉄道事故調査委員会は、事故及び重大インシデントにつきまして、再発防止という観点から原因の究明を行ってございまして、私ども昭和四十九年に発足いたしておりますが、これまでに千三百件を超える事故等につきまして調査を実施いたし、かつ報告書に取りまとめたということでございます。

 当委員会が調査を実施いたしております件数につきましては、近年、大体安定化しております。航空分野では年間四十件程度、鉄道分野では年間三十件程度となってございまして、長期的に見ますと、やはり大幅な低下を見ておるということで考えております。

 例えば、乗客の死亡事故を見ますと、我が国の定期航空運送事業者におきましては、例の御巣鷹山のJAL一二三便の墜落事故以降一件も発生をしてございません。また、外国の定期エアラインによります事故につきましても、平成八年に福岡でガルーダ・インドネシア航空機が炎上をいたしてございますが、その事故以来これも皆無であるということで、そういう点を見ますと、かなり事故件数は減ってきておるんではないか。

 また、鉄道につきましても、鉄道運転事故、これは全体でございますが、これは委員の資料にも書いてございますとおり、発生件数も減少傾向であるという認識を持ってございます。

 一方で、鉄道につきましては、一昨年の上越新幹線の列車脱線事故、あるいは昨年の福知山線の列車脱線事故、あるいは年末の羽越線の列車脱線事故といったような大規模な事故が発生をいたし、かつ甚大な被害が生じておるという状況にございます。

 さらには、航空分野におきましては、事故には至ってはいないわけでございますが、昨年四月の、日本航空ジャパン所属機が閉鎖中の羽田の滑走路に進入したという重大なインシデント、あるいは同じく六月に、これも日本航空インターナショナル所属の航空機のタイヤが着陸の際に脱落をしてしまうという極めて大きなインシデントがございまして、そういう意味で、重大事故に至らないトラブルが頻発をしておるんではないか、こういうぐあいに考えております。

 したがいまして、航空、鉄道分野における運輸の安全性の向上は、現時点において極めて重要な課題になっておるんではないかという認識を持っております。

上野政府参考人 海難審判庁では、海難審判によって海難の原因を究明し、裁決によって明らかにしております。

 近年、裁決の件数は減少傾向を示していましたが、平成十六年七百六十件の裁決が行われ、前年の七百十五件に比べて四十五件増加しています。また、裁決書の対象となった船舶については一千百二十七隻で、外国船が六十七隻となっており、海難に伴う死亡、行方不明は五十四人となっております。このうち、海難原因がなかったとされた船舶は九十九隻あり、これらを除いた一千二十八隻の海難原因総数は一千三百八十七原因となっています。

 指摘された原因数によると、見張り不十分が四百十一、原因で最も多く、全体の三〇%を占めており、次いで航法不遵守が百五十原因、信号不履行が九十九、服務に関する指揮監督の不適切が八十七、居眠りが八十一となっています。

 こういう状況でありますが、最近、これらについて、ヒューマンファクターも含めて、分析を行っているところです。

三日月委員 いや、済みません、今、冒頭、事故調査委員会の事務局長の方から、私が示した資料の三ページ目、鉄道事故調査委員会がこれまで扱ってきた件数千三百件、件数は大体安定しておりますということなんですね。これは後ほど議論したいと思うんですけれども、鉄道事故調査委員会が、事故にしろ、兆候にしろ、調査を行う範囲をどのように定めているかということについては極めてブラックボックス化されていると思っています。本当はもっと調査しなければならない事案についても調査できていないんではないだろうか。この事故調査委員会が調査をしている案件が、件数が安定しているということをもって、この間の事故の分析をするというのは、私は余りにも稚拙なんじゃないかなと。

 しかも、こういう場で、原因についてはこういう傾向があります、特にこの分野の、このモードの、この地域の、この年齢の、この時間帯の事故が多くなっています等々のアウトプットを、やはりその都度その都度、事故調査委員会というのは持っている必要があると思うんです。それを、各事業者がそれぞれの安全対策を講じるときに参考にしたりということができないと、事業者が一義的に担う安全対策というものが有効にとれないんじゃないかなと。

 そして、もう一つ。海難審判庁の、今、お答えの中に、千三百件ぐらいの海難があって、そのうち三〇%が見張り不十分です、居眠りもあります、信号の見落としがあります。違うんですよ。その原因は何なんですか。なぜ見張り不十分になったんですか。なぜ信号見落としをしたんですか。今、ヒューマンエラーだとかヒューマンファクターというものがもっともっと大事だ、そのエラーがなぜ起こるのかということについて分析しなければいけないから、この法案を出してきたんでしょう。だったら、なぜ見張り不十分になったのか、なぜ信号の見落としになったのか、なぜ居眠りしちゃったのかということの踏み込んだ分析というのが私は必要だと思うんです。

 まず、事故調査委員会にお伺いしたいと思うんですけれども、二点。

 冒頭お断りすべきだったんですけれども、私は、事故調査委員会のメンバーの方々、調査官の方々も、不眠不休で本当に一生懸命調査をしていただいていると思っています。海難審判庁もしかりです。ですから、その方々のことをとやかく言うよりも、この国が今置かれている状況の中で、事故調査委員会が果たすべき役割というのは非常に大きいんです。経済に対する規制を緩和して、その分、起こった事故を教訓化して、二度と起こさない、それを次の再発防止のための対策、政策、規則、そういったものにつなげていくという取り組みが、今、以前よりも増して非常に重要な取り組みになっているんです。

 ですから、よりよい事故調査委員会にするためにはどうしたらいいかという観点で、ぜひ真摯な御議論と、自分たちの組織のことを、いや、これはできませんのや、ここに問題があるんですわとなかなか言いにくいかもしれませんけれども、しかし、ぜひそのあたりの踏み込んだ検証をしていただく必要が、私はこの委員会では必要だと思いますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 まず、事故調査委員会、私の示した資料の四ページ目ですね。先ほど大臣からも、まず事故が起こったら被害に遭われた方の救済だ、私も同感です。しかし一方で、警察と同様、事故調査のための現場保存、証拠保全、これはやはり必要だと思うんです。にもかかわらず、まあいろいろな事情があったんでしょう、現地到着時間がこのような形になっているんですね。お伺いをすれば、何か、夜出てきて、国土交通省で準備して、荷物を持って電車に乗って出かけていく。何か、ヘリコプターが国土交通省にあるのに、それを今まで使っていなかった。国土交通省の持っているものを使うというんだったら、もちろん地方の運輸局の方が行かれているんでしょう、それもあるにしても、やはりまず事故調査委員会が即応できる体制をとるべきだと私は思うんです。国土交通省が持っているヘリコプターも使えないんじゃ、国土交通省の中に置いている意味がないと思うんですね。

 この即応性についてどのようにお考えなのかということと、そして、ヒューマンエラー、ヒューマンファクターについて、今の時点で分析できる事故調査委員会の体制になり得ているのか。一昨日の参考人質疑の中では、その部分、非常に重要な要素を占めるんだけれども、今の事故調査委員会の体制では、機能では不十分だと参考人の方からの指摘もありました。そのあたりに対しての御見解をお伺いいたします。

福本政府参考人 お答えいたします。

 委員がお示しいただきました四ページの資料でございます。航空事故と鉄道事故につきまして、事故発生日時と、それから私どもの、通報を受けた日時と、さらには現地到着日時というのが書いてございます。

 この通報を受けた日時といいますのは、委員がお示しいただいたその前のページの資料でございますね、「事故発生から調査までのフロー図」で、事故が発生いたしますと、まず国土交通大臣、現実には航空局の運航課でございましたり鉄道局の安全対策室でございますが、そこに第一報が入ります。そこでは、鉄道でございますと、ざっと年間八百件以上、二十四時間電話がかかってくるわけでございますね。航空でも、やはり三百件を超えるそういう通報が入ります。それを二十四時間受け取るわけでございます。

 その中で、先ほど委員もおっしゃったように、これは省令で決まってございますけれども、私どもが調査をすべき事故、いわば重大事故といったようなものは省令で規定が明確になされておりまして、それに該当するかどうかを、いわば航空局の方で、あるいは鉄道局の方で判断をされまして私どもの方に通報が来るというのが、この通報の時間でございます。そういう意味で、事故が発生いたしまして、私どもが通報を受けるのに若干の時間的なそごがあるということでございます。

 それから、私ども、現地に派遣をいたしますが、委員御指摘のとおり、基本的には公共交通機関を使いまして、航空機でございましたり新幹線でございましたり、そういうものを使いまして現地に赴くというものが通常でございます。

 先ほどヘリコプターという例を出しましたのは、実は、ここにはちょっと書いてございませんが、例の上越新幹線が脱線をいたしましたときに、通常でありますと、あの辺で鉄道の事故があれば我々は上越新幹線で行くわけでございますが、まさに本家本元の上越新幹線がああいう形で事故になっておった。あわせて、周辺の在来線も全く動けない。こういう中で、現実に私どもは、はっきり申し上げますと、タクシーをチャーターして東京から向かったという実態がございまして、こういうことでは、なかなかやはり、事故調査の円滑化には私どもとしても難しいのではないかという反省も踏まえまして、国土交通省と十分に今調整をとりまして、十八年度からそういう形で、国土交通省のお持ちのヘリコプター、あるいは保安庁でお持ちのヘリコプター、航空機、こういうものを使わせていただけるという形になったということでございます。

 それで、さらにもう一言申し上げますと、やはり事故現場は基本的には屋外でございますので、夜に入りましても十分な調査ができないということもございますので、どうしても明るくなってからその調査活動を始めるというようなこともございます。そういう意味で、若干の、現地到着が朝になっておるというのは、そういうことではないかと思っております。

三日月委員 いや、限られた資源、能力の中で精いっぱいのことをやっていただいていると思うんですけれども、しかし、上越新幹線がとまっているときにタクシーをチャーターして現場に向かうというのは、余りにも国土交通省所管の事故調査委員会らしからぬ即応体制だと思うんです。来年度からそのあたりについて見直しをするということですので、大臣もぜひそのあたりの目くばせをしっかりとしていただきたいと思いますし、今事務局長がおっしゃった、この「事故発生から調査までのフロー図」ですね。まず一報、国土交通省に入りますよ、その上で、事業法、航空法、そのもとにある省令に照らし合わせて、事故調査委員会が調査をすべき事故かインシデントかという判断が行われた上で、事故調査委員会に国土交通省から通報があるということなんですね。

 これはまず二つお伺いしたいんですけれども、私の示した資料の六ページと七ページの間に、資料一と右上に書かれております「航空・鉄道事故調査委員会の調査対象の事故等(鉄道)」という表をつけています。これは、今私が申し上げました、また答弁にありました、省令のものを表にしたものなんです。

 例えば、事故で調査対象になる、この右側の上から三つ目のところを見ていただければ、4から7のうち、要は、踏切障害、道路障害、鉄道人身障害、鉄道物損、「乗客、乗務員等に死亡を生じたもの」、「五人以上の死傷を生じたもの」、「特に異例と認められるもの」。この「特に異例と認められるもの」というのがこの表だけでもたくさん出てきますし、しかも、インシデントだとか航空、失礼しました、航空はまた違った言い方をしているんですけれども、事この鉄道に至っては、「特に異例と認められるもの」というブラックボックスが非常にあるんです。

 このあたりの基準の明確化、もしくは、昨今のヒューマンエラーに起因する事故がある、大事故が起こった、もう少しこのあたりの基準を明確にするという取り組みが行われてしかるべきではないかと思うんですけれども、御見解をお伺いしたいと思います。

福本政府参考人 お答えいたします。

 委員がお示しの今の資料の左側に大きく、運転中における事故、列車または車両、こういう欄がございまして、1から7までがございます。そのうちの1から3までは、いわば列車衝突、列車脱線、列車火災、だれが見ても、いわばこれは事故だなとわかるわけでございますが、問題といいますか、4以下の、踏切障害、いろいろな例がございますが、かなりな部分、踏切がもう閉まっておる、あるいは踏切警報機がカンカンカンカン鳴って遮断機がおりておるのに、自動車が、はっきり申し上げますと勝手に進入をしてくる、こういう事例が多々ございます。

 そういうような事例、あるいは道路障害も同じようなことでございます。あるいは鉄道人身障害、鉄道物損、こういったものも、いわば、だれが見ても鉄道は悪くないねというようなものもあるわけでございまして、ですから、すべてを私どもが調査をしなければならないというものではなくて、やはりその中で、ここにもございますように、特に異例と認めるものについて国土交通省の方で判断がなされまして、事故調が詳細な専門家の調査をやれ、こういう通報をいただいて私ども調査をするということでございます。

 そういう意味で、いわばすそ切りみたいな議論でございまして、私ども、鉄道の調査官が現在七名でございます。ようやくプラス七名と、十四名に来年度からなりますが、十四名体制で日本全国の鉄道のこういう事故の調査をやるということに関しましては、私どもとすると、そこから逆算する必要はないのでございますが、何とか私どもは、十四名体制になれば、今の事故件数、あるいは、今重大事故が頻発してございますが、そういうものの調査は遺漏なきようやれるんではないかということで今考えておるということでございます。

三日月委員 そういう考えでは述べるべきではないでしょうけれどもという注釈を加えて、今非常に重要なことを言われましたよ。人数が少ないから調査対象にならないんですか。その持っている体制、能力から調査する事故を決めるんですか。それは大問題ですよ。

 それで、大臣にぜひこのあたりの御見解をお伺いしたいんですけれども、国土交通省が特に異例だと認められるもの、どう異例だと認めるんですか。何をもって異例だとするんですか。

北側国務大臣 この「特に異例と認められるもの」の前に要件が書いてございます。だから、基本的には、この要件に該当しているかどうかということだと思いますが、そうした要件に該当しなくとも、事故調査委員会がやはり調査をすべきというふうに判断するような事実関係が想定されているという場合だと思うんです。

 ただ、それがより類型化をしていくべきであるというのは、それはそのとおりだと思います。そうした類型化をできるだけやって、要件をより明確にしていくことは大事だと考えております。

三日月委員 実は、この基準の明確化というのは、せんだってこの国土交通委員会でも私は指摘をさせていただいて、今の大臣の御答弁のように、より明確な基準をつくるために検討するという御答弁もいただいております。ぜひ、非常に難しい線引きだとは思いますけれども、このあたりが明確にならないと、また同時に、同時進行で、どのような要請があったときにでも調査できる体制を事故調査委員会に持ってもらっておくということをやはり早急にしていかないと、私は、事故を教訓化するということにつながらないのではないかと。

 一点これはちょっとお伺いするんですけれども、ホームページに、「航空・鉄道事故調査委員会が行う鉄道事故等の調査について(鉄道事業者用手引き)」というのがあるんです。これは、関係法令だとか、またこういう形で事故調査を行うんですよと。事務局長お持ちかどうかわかりませんけれども、きょうの朝引っ張り出したホームページのこの資料によりますと、別に言葉じりをとらえるつもりはないんですけれども、二ページのところに「事故調査委員会が調査対象と判断した場合には、原則として、地方運輸局を通じて鉄道事業者にその旨の連絡をすることとなっています。」鉄道事故調査委員会が調査対象と判断されるんですか。こういう記述があるんです。

 ぜひこれは確認をしていただきたいですし、以前、私が少し前にとった資料では、別のところにもそういう表現があったんです。要は、「特に異例と認められるもの」が定められていますが、実際に事故等が発生した際に、当該事故等が「特に異例と認められるもの」に該当するかは、その都度事故調査委員会が判断することとなります。

 結局、言われていることと、こうやって事業者に対して通知されているものとが違う形になっているというのは、私は、事故調査を行うに当たって問題があると思うんです。ぜひ、法律では、国土交通省のしかるべき部局が判断をして事故調査委員会に通報するということですので、事業者に対してもその旨がきちんと遺漏なく徹底されるように早急に修正を求めておきたいと思います。

 さて、先ほど細川委員の議論の中でもありました、事故調査委員会の独立性の問題です。

 朝から各委員が指摘をされておりますように、事故調査委員会には、当然のことながら、公正さ、中立性というものが不可欠です。そのためには、組織の独立性というものを確保、担保することがこれまた不可欠だと思うんです。組織の独立性なくして事故調査の公平性、中立性はあり得ない。

 私が示した資料の六ページをごらんいただきたいと思うんですけれども、増強されて、今、航空・鉄道事故調査委員会事務局は四十一名いらっしゃいます。この方々と別に、国会の同意人事である委員の方々が十名、先生方がいらっしゃる。それで航空・鉄道事故調査委員会が成り立っています。

 しかし、この四十一名の事務局のうち、調べてみると、国土交通省から三十六人。全然、組織的に独立性というのは担保されていないんじゃないでしょうか。いや、大臣、首をひねられていますけれども、もちろん、鉄道というのは特殊な状況がある、航空というものも専門的な知識が必要だ、そのことはよくわかります。

 しかし、先ほど大臣が御答弁されました、ちょっと数字が間違っていたので修正したいと思うんですけれども、勧告については九件、建議については十八件、うち勧告については国土交通省に対して三件、そして建議については十八件、合計二十一件、勧告と建議という形で行われているんですけれども、しかし、鉄道事故については国土交通省に一件の勧告もないんです。

 かつ、こうやって事故調査委員会がタクシーで事故現場に向かっている間に、運輸局の皆様方が現場保全していただくんですよね。運輸局と連携して、そういったことのメリットもあるかもしれません。しかし、何よりもまず確保しなければいけないのは、事故調査委員会の公平性と中立性です。そのために組織の独立性というものがやはり必要なんです。

 四十一名の事務局のうち三十六人が国土交通省から来ていたら、情報もだだ漏れ、人間関係もずぶずぶ。若干ちょっと極端な言葉を使いましたけれども、このあたりの御見解をお聞かせください。

北側国務大臣 私も先ほど申し上げましたように、大臣就任以来、事故調査委員会が出る場面が多いもので、私もその辺のところはずっと見てきております。見てきておりますが、現実問題として、この事故調査には、先ほど申し上げましたが、航空当局なりそれから鉄道当局との密接な連携協力というものなしに、スムーズな、円滑な調査なんというのはできません。

 大事なことはそちらの方でございまして、現に今ここに挙げていただいたように、調査官のうち大半が国土交通省であるということで何か公正さが疑われるような話があったか。一切ございません、私が見ている限りは、一切ありません。現に、委員長初め委員は、これは国会人事でございまして、独立性を持っていらっしゃいます。その方々の指示で調査官の方々は動いているわけでございまして、何か国土交通省のメンバーが調査官にいるからといって、そうした問題はない、むしろ連携協力が非常にスムーズにいっているというふうに私は考えております。

三日月委員 いや、日々のオペレーションに対して連携を否定しているわけでは決してないんです。当然、これは国土交通省から切り離しても、航空で事故が起これば、鉄道で事故が起これば、国土交通省のしかるべき部局が連携して対応して当然じゃないですか。

 それで、密接な連携なくして調査できないとおっしゃいますけれども、例えば内閣府だったら密接な連携はとれないんですか。では、例えば原子力安全委員会も原子力委員会も食品安全委員会も、それぞれの日々の当事者として専門的に所管をされる部局の方々との連携がとれていないんですか。

 私は何を申し上げたいかといえば、まず、より中立的になるために、例えば、これはだれが見たってちょっとおかしいよねと思うじゃないですか。違いますか。もちろん、個別具体的に、この人は中立性の面で問題のある行動をした、この人が独立性の面で問題がある、そんなことを私は一切確認できていませんのでということでもって、この三十六人もの出向者の方々がいらっしゃる事故調査委員会の独立性について問題がないと言われる大臣の見識を疑うんですけれども、いかがでしょうか。

北側国務大臣 例えば、先ほど来申し上げていますように、事故調査委員会が、現実に事故とかトラブルがあったときに調査に出向きます。(発言する者あり)

林委員長 御静粛に。

北側国務大臣 そこに、例えばこういう国土交通省の人間が調査官で入っていることによってどういう問題があったか、何か具体的に公正さに疑義を与えるような事例があったならば、それはぜひ御指摘いただきたいと思うんです。

 仮に、これは将来の課題として、先ほど細川委員からも御指摘がございましたし、内閣府に移管ということを今後とも研究はさせていただきたいと思います。

 ただし、じゃ内閣府に移管したからといって、国土交通省の鉄道局や航空局の人間が結果としてやはり行くような形に、多分現実問題にはなるわけなんですよ。というのは、日常的に、技術面、専門面も含めて、また、そういうのに携わってきたという経験、そうしたものを持っている人間が調査官にきちんといないと、委員長も委員も具体的な指示をしても動けないわけですよ。

 そして、おっしゃっているとおり、事故調査というのは最初の初動段階が非常に大事ですから、その段階で適切に調査ができるような、手足となるような調査官がいなければ、現実に具体的な実効的な調査もできないわけでございまして、これをごらんになられて、こういう、国土交通省の人間が調査官に入っているのが大半であるというのをごらんになられて非常に不公正であるとおっしゃるのは、余りにも短絡的過ぎるというふうに申し上げざるを得ないと思います。

三日月委員 不公正な事故調査をしているとか、そういうことを私は申し上げているんじゃないんです。より公正な委員会にするためにはどうしたらいいんですかということを申し上げているんです。

 しかも、もちろん、専門的な知識だとか、そして培ってきた経験、鉄道にしろ航空にしろ、それを生かしてもらうのは当然です。それを内閣府に移管されたって、きちんと当事者である専門省庁が役割を果たすべきです。

 しかし、再三再四にわたって、ヒューマンエラーについての分析が必要なんでしょう。おっしゃっているじゃないですか。なぜ厚生労働省から入っていないんですか。例えば警察との関係だってあるんでしょう。なぜ防衛庁だけなんですか。警察庁は入っていないんですか。そうやって各省庁の専門知識を生かしていく、英知を結集して、力を結集して事故調査をやるというんだったら、何も国土交通省だけじゃなくてもいいんですよ。しかも、折しもヒューマンエラーについて注目されて、いろいろなところでトラブルの原因にもなっているんです。なぜ厚生労働省は入っていないんですか、ちなみにですよ。サバイバルファクターが重要なんでしょう。サバイバルファクターも……(発言する者あり)いや、私は、よりよくするために申し上げているんです。見識を疑いますよ、大臣。

 例えば、サバイバルファクターのことを言うんだったら、消防だとか、なぜ入っていないんですか。もっと入れればいいじゃないですか。鉄道だって、地震だとか風だとか自然災害の影響を受けるようになりました、気象庁一名入ったということなんですけれども、こういう部分ももっと膨らましていく必要があるんじゃないでしょうか。

 御見解をお伺いします。

北側国務大臣 例えば、委員会の構成におきましても、常設の委員と、それから、専門委員といいまして、「学識経験のある者のうちから、委員会の意見を聴いて、国土交通大臣が任命する。」「専門委員は、非常勤とする。」こういう非専門委員もいらっしゃるんです。現にそういう人をお願いしているわけなんですよ。

 また、今回の法改正でも、これから嘱託ということも、ある特定の調査について委嘱していくということもできるというふうにお願いをしているわけでございまして、こうした規定等々を活用していくならば、私は問題はないというふうに考えております。常設に必ずいないといけないということではないわけでして、その都度、必要なときに、そういう専門家の方々を活用すればいいわけでございます。

三日月委員 外部委託も今回できるようにしようという法改正ですから、その時々、必要に応じて専門家の方々に要請をしたり委託をしたりすればいいんだ、専門委員もしくはそれ以外の委員の方々もいらっしゃるので、各分野の方々を集めているんだとおっしゃるんだと思います。

 現状がこうだと私は申し上げていて、これをより独立性を高めるためにどうしたらいいでしょうか。もちろん、今の時点で独立性がないとか公平じゃないとかということは指摘できないと思いますよ。なかなかそれはお認めにもなられにくいと思います。しかし、よりよくするためにはどうしたらいいかということなんです。

 例えば、なぜ国土交通省だけなんですか、省庁のこの派遣だって。もっといろいろな省庁の方に入っていただければいいじゃないですか。しかも、その省庁に対して内閣から直轄で指示をする、要請をする、そういうことができるように、内閣府にあった方が、国土交通省ぶら下がりであるよりもいいんじゃないでしょうか。

 私は、今こうなっていますねということを言っているんです。今こういう体制になっています、これを、より独立性を持った組織にして、より、いや、恐らく大臣やなんかも、そうだな、そういえば、あいつの言うことも一理あるなと心のどこかで思われていると思うんです。(発言する者あり)今どこかから、思わないなんていう何かわけのわからない御指摘もありましたけれども、現状がこうなっているんです。

 我々は、よりよくするために、例えば国土交通省から切り離して内閣に置いてみたらどうでしょうか、食品の安全を見る食品安全委員会があるように、運輸の安全を専門的に見る、省庁横断的に見るような事故調査委員会にしようじゃないですかと。折しもヒューマンエラー、ヒューマンファクター、ソーシャルファクターというものが非常に重要なんだという時期なんですから、引き続き検討するという大臣の先ほどの御答弁もありましたので、ぜひ今後も、よりよい、より要請にこたえられる、より時代の変化に応じていける事故調査委員会をつくっていくために、私も審議、議論に参加することをお誓い申し上げて、きょうの質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

林委員長 斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。

 これまでの委員の質疑と重なる部分がございますけれども、公明党として確認をさせていただくという意味を込めて質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、事故調査委員会、どのような事故、どのようなインシデントに対して調査を行うのか、その基準、先ほども議論になっておりましたけれども、お示しいただきたいということと、昭和四十九年の発足以来、途中で性格も変わっているということもございますが、何件調査し、何件調査報告書を公表し、また、何件について勧告、建議を行ってきたか、このことをまず最初にお伺いをいたします。

福本政府参考人 お答えいたします。

 航空・鉄道事故調査委員会は、航空機の衝突あるいは墜落、それから、列車の衝突、脱線等の事故でございましたり、航空機のニアミス、列車の信号違反等、いわば事故が発生するおそれがある事態、いわゆる重大インシデントと呼んでおりますが、そういうものについて原因究明のための調査を行うとともに、再発防止のための提言というものをやっておるところでございます。

 昭和四十九年に発足をさせていただきまして、現在までに、航空関係で千二百件、鉄道関係で百件、合わせまして千三百件を超える事故及び重大インシデントにつきまして調査を実施いたしまして、すべてこれは報告書にまとめ、広く国民に公表をいたしておるところでございます。

 さらに、事故防止のために講ずべき施策につきましては、国土交通大臣に対しまして、これまでに勧告を三件、これはいずれも航空でございます。建議が十八件、航空で十六件、鉄道で二件を行ってございます。

 先ほど、若干、鉄道に関して勧告がなぜないのか、こういうような御指摘もございましたが、実は、勧告は調査報告書がまとまってしか出せないというような性格のものでございます。法律にそう規定がございまして、私ども、JRの福知山線につきまして建議を既に出してございます。それは、建議しか出せなかった。現時点では福知山線の報告書がまとまってございません。まだ鋭意調査中でございます。そういう観点で、建議しか出せなかったので建議しか出していない。

 いわばそういうようなことでございますが、合わせてこれまで二十一件、国土交通大臣に対しまして再発防止に向けた取り組みを提言させていただいておる、こういうことでございます。

斉藤(鉄)委員 次の質問でございますが、先日の参考人質疑でも、警察の犯罪捜査と事故原因調査とは根本的に異なる、また相矛盾するところもあるという学者の話もございました。これまでの経験から、警察の捜査との関係で調査上支障となった、そういう事例はあったかどうか。特にJR福知山線事故と最近の事例で顕在化している問題点があるのか、この点についてお伺いします。

福本政府参考人 お答えいたします。

 事故調査は、事故原因の究明を目的といたしております。一方、警察は、司法捜査ということをやっておるわけでございまして、目的が明確に区別をされておるところでございます。

 しかし、先ほども大臣から答弁がございましたが、事故が発生いたしました場合、事故調査と司法捜査は現場において競合するということでございます。そういう意味で、その業務が円滑に実施されるように、必要な協力及び調整を図るために覚書なり細目というものを取り交わして、いわば交通整理といったようなことをやっておるということでございます。航空・鉄道事故調査委員会として改組されました平成十三年十月以降も、その覚書及び細目に従いまして、円滑にそれぞれが役割を全うしておるということでございます。

 先ほどお話にもございましたが、JR福知山線の脱線事故あるいは年末の羽越線の脱線事故につきましても、何ら問題なく現在調査が円滑に進んでおるというところでございます。

斉藤(鉄)委員 次に、先ほど、千三百件の事故及びインシデントに対して調査をし、報告書を出したということがございます。

 この事故調査委員会のメンバーはその都度かわるわけでございますので、この千三百件、これからも積み重なると思いますけれども、その情報をよく整理してデータベース化して次に役立たせるということも非常に重要ですし、今のように、コンピューター、IT化が進んだ中では、特にこの作業も簡便にできるわけでございまして、この点についてどのようにお考えでしょうか。

福本政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の過去の事故データでございましたり、あるいは諸外国の事故事例等を収集、整理するということは、同種の事故の再発を防止するという観点から極めて重要ではないかと考えております。そのため、私ども事故調査委員会では、データベースを構築いたしてございまして、あわせてホームページで公開いたしてございます。

 しかしながら、現在のデータベースにつきましては、検索項目が一部に限られておったり、過去の事故の教訓を十分に再発防止に生かすということまではまだいけていないのではないかと率直に私どもも反省いたしております。そういうことで、さらにその内容を充実させてまいりたいと考えております。

 そのため、現在、我が国の航空機製造事業者やエアラインの方々等々のニーズを踏まえまして、データベースのあり方について基礎調査を実施いたしてございます。あわせまして、十八年度には私どもに企画調整課という課をつくっていただけることになっておりますので、その課を中心にこのデータベースの充実を図って、さらに再発防止に向けた活動を強化してまいりたい、こういうぐあいに考えております。

斉藤(鉄)委員 いろいろな研究機関との連携も深めて、このデータベースの活用をぜひお願いしたいと思います。

 次に、事故調の予算、定員、組織の現状ですけれども、これは既に質問がございました。この予算、定員、組織、諸外国との比較はどうなっていますでしょうか。それぞれ外国は組織形態が違ったりするようでございまして、簡単な比較はできないというふうに聞いておりますが、そこをあえてお聞きすると、どういうお答えになるでしょうか。

福本政府参考人 お答えいたします。

 諸外国との比較でございますが、例えば米国にはNTSBという組織がございまして、そこの常勤職員数は約四百二十名でございます。それで、米国の主要都市に、いわばブランチといいますか、出先を持っておりまして、二十四時間体制でそういう事故情報等々の収集等もやっておるというぐあいに聞いております。その際の予算額が約九十億円ということでございますので、私ども、ようやく一億五千万という予算をいただいておりますが、比較いたしますと、そういうようなのが実態でございます。

 直ちに比較をするということは難しゅうございまして、先ほどもお話ございましたとおり、NTSBの場合は、海運もやっておったり、あるいは一部、ハイウエーの事故も担当いたしておったり、所掌事務が若干違っておりますので、単純な比較は難しいかとは思います。

斉藤(鉄)委員 随分、人員も予算も違うなと思いますが、今アメリカの例でしたけれども、ヨーロッパの例がもしあれば、一国でも教えていただければと思います。

福本政府参考人 お答えいたします。

 ヨーロッパの場合は、私どもの調査が不十分なせいもあるのでございますが、私ども承知いたしておりますのは、フランスの航空事故調査の専門機関がございまして、そこは百一名の人員をお持ちでございます。ただ、予算規模は、これは人件費を除くという関係もございますが、約四億五千万ぐらいの予算規模で運営がなされておる。フランスの場合は、御案内のとおり、エアバスという飛行機の製造メーカーを持っておられる関係もございまして、そういう事故調査については大変力が入っておるのかな、こういうぐあいに認識しております。

斉藤(鉄)委員 諸外国との比較、よくわかりました。

 次の質問に移ります。

 航空、鉄道は非常に技術の進歩が速いわけでございまして、事故調査委員会としても、その技術の進歩に追いついていくということも必要だと思いますが、外部の専門家の意見、技術の進歩をリードしているような専門家の意見も当然その機能の中に加えなければ、本当の意味での事故原因調査や被害軽減調査ということはできないと思います。この活用について、どのようにお考えでしょうか。

福本政府参考人 昨今、航空機やあるいは鉄道車両等の機能、構造でございましたり、あるいは航空機及び鉄道の運行システムというものは、大変高度化してございます。IT化に伴いましてかなりの高度化が進んでおるわけでございますが、そういうものが利用者利便の向上に寄与いたします一方で、一たん事故が発生いたしました場合の原因関係が大変複雑化しておるという一因にもなっておるんではないかと思います。また、背後要因につきましても視野に入れた多角的な観点からの原因究明の要請も強まってございますので、そういう意味でも、事故調査において求められる知識でございましたり経験というものが、従来にも増して広範かつ高度複雑化したものになっておるんではないかと思います。

 そういう意味で、こんな状況を踏まえまして、委員会の組織体制の強化あるいは事故調査官の研修を行う等の資質の向上ということも図ってまいりますが、やはり、先ほど大臣のお話にもございましたが、事故の規模や態様に応じまして、外部の専門家の方々の知見を機動的に事故調査に活用するということも重要ではないかと考えております。

 今回の改正におきまして、調査等の外部委託に関する規定を整備いたしまして、委員会外部の専門的かつ多角的な知見を積極的に活用させていただこうということを企画いたしてございますが、そのほか、重大事故が発生いたしました場合には、やはり直ちに事実調査あるいは物件収集等を行うために、初動調査の段階で、先ほど来申し上げておるNTSBに倣った、いわゆるパーティー方式という方式をとりまして、外部の実務専門家の方々にも非常勤調査官として御参画いただくようなことを今検討してまいっておるところでございます。

斉藤(鉄)委員 この点、ポイントになると思いますので、よろしくお願いします。

 今回、事故調査委員会の設置目的に「被害の軽減」という項目が入りました。そして、被害の原因の究明のための調査を追加するということになったわけですが、その理由及びこれまでの事故調の基本理念でございました事故の防止、再発防止ということとの関係、もっと突き詰めて言うと、逆に従来の基本理念、事故の防止という点が薄まらないのかという意味も込めまして、この点について質問いたします。

福本政府参考人 お答えいたします。

 昨今、航空、鉄道分野において、大変、事故あるいはトラブルが相次いで発生をいたしております。公共交通そのものへの国民の信頼が揺らぎかねない、大変ゆゆしき状況ではないかと思っております。

 特に、昨年のJR福知山線の列車脱線事故におきましては、近年例を見ない人的被害が生じてございまして、当委員会としても、事故の背後要因あるいは被害の発生、拡大原因も視野に入れた全容の早期解明に努めておるというところでございます。

 今後、公共交通機関のさらなる効率化、高速化あるいは大量輸送化に伴いまして、一たび事故が発生いたしますと、甚大な被害の発生に至る危険性はますます高まっていくというぐあいに予想されるということで、事故は起こってはならないわけでございますが、はっきり申し上げますと、やはりこの人間社会がある以上、事故としてはどうしても起こってしまう。逆に言いますと、起こるものだという前提で考えますと、その際の被害をいかに最小限に食いとどめるか、こういうこともあらかじめ対策として講じておくべき課題ではないか。

 いわば、そういうことで、今般、福知山線の列車の脱線をごらんいただいて、アルミの車体がマンションの壁に激突して、ほぼおせんべい状態にまでなって、大変たくさんの方々が亡くなっておられるというようなことをかんがみますと、もう少し、そういう観点、サバイバルファクターという観点からアプローチをして、被害の極小化へ向けた提言をやはり私どもとしてはやってまいる必要があるのではないかということで、今般、こういう改正をお願いいたしておるところでございます。

斉藤(鉄)委員 我々国民としても、このサバイバルファクターというのは非常に関心があるところでございまして、ぜひ国民にわかりやすい形で研究成果、調査結果を発表していただきたい、このように思います。

 次に、海難審判法の改正について質問をさせていただきます。

 今話題になりましたというか、今質問をさせていただいた被害の軽減、それから被害の原因の調査という考え方、これは今回の海難審判法の改正には入っておりません。なぜ海難審判の方にはこの被害の軽減及び原因の調査というのが入っていないのか、このことについてお伺いします。

上野政府参考人 被害の軽減あるいは被害の原因の調査につきまして御説明申し上げます。

 海難審判庁がその調査対象とする海難という用語の中には、被害の軽重に関する概念も含まれております。例えば、船舶における火災発生後の消火活動が適切に行われたか、ライフジャケットの着用の有無が被害にどのように影響したかというような点について以前から調査を実施しております。

斉藤(鉄)委員 そもそももう入っている、こういう理解でございますね。わかりました。

 次の質問ですが、海難審判庁、なぜ海の運輸事故だけ別な組織になっているのか。航空・鉄道事故調査委員会と一つの組織でもいいのではないかという素朴な疑問もあるわけですが、この点についてはいかがでしょうか。

上野政府参考人 海難の調査につきまして、独立した組織で行っております背景について御説明いたします。

 海難につきましては、原因調査と海技従事者に対する懲戒を一連の手続の中で効率的に行っております。毎年、七百から八百件という大変多くの事件を処理しております。

 海難につきましては、システム全体での安全管理を行っている航空、鉄道の場合に比べて、船長の判断に安全がゆだねられている度合いが高いこと、航空や鉄道において衝突事件はまれであるのに対して海難の多くは衝突事件であること、あるいは物証が得られにくい場合が多いことなど、他の交通モードとは異なる特徴を持っており、事故当事者の口頭弁論を公開の場で慎重に聞きながら原因を究明していく海難制度に大きなメリットがあると考えております。

斉藤(鉄)委員 事故のモードが大きく異なるということかと思います。よくわかりました。

 最後の質問です。

 海難というのは、列車事故また航空事故に比べて、やや国民にとってなじみの薄い分野でありますけれども、物流の大動脈ということから考えますと、国民生活を安定させるという点からも非常に重要な課題だと思います。

 今回の法律改正も踏まえて、我が国における海難の原因究明の体制は航空や鉄道の事故の場合と比べて遜色がないんだというふうに考えていいのかどうか、また、そうであらなければならないと思いますけれども、決意も含めて最後にお伺いをいたします。

北側国務大臣 今委員のおっしゃっているとおり、日本というのは四囲を海に囲まれた国家でございます。まさしく海洋国家日本だというふうに思っておりまして、日本の貿易量の九九・七%は海から入り海に出ていくという、海上交通によって日本の貿易も成り立っているわけでございます。そういう意味で、海上交通の安全を図っていくということは極めて大事なことであるというふうに認識をしております。

 海難審判につきましては、戦前からの経緯、沿革もございますし、また、昭和二十二年に法律ができまして以降六十年近くたってきているわけでございまして、これまでの経験、実績が積み重ねられてきているということで、そういう意味では、航空・鉄道事故調査委員会よりも古くからある、実績のある制度だというふうに認識をしているところでございます。

 今回、法改正によりまして、海難審判で行っている調査、また審判を通じて得られた知見、こういうものをその事件だけに活用しているだけではなくて、しっかり再発防止に向けて活用していこうということで、関係行政機関に対して提言できると規定を追加させていただきたいということでお願いをさせていただいているところでございます。

 これまでも、さまざまな情報の発信によって再発防止に向けては取り組んできておりますが、なお一層、再発防止に活用できるようにしっかり取り組みをさせていただきたいと考えているところでございます。

斉藤(鉄)委員 終わります。

林委員長 日森文尋君。

日森委員 最初に、事故調について御質問したいと思います。

 冒頭、先ほど不規則発言もいろいろございましたが、私どもも、航空・鉄道事故調査委員会については、現在の八条から三条委員会にきっちりと位置づけて、そして、独立性、中立性、公平性、これをしっかりと担保するという立場であることを明確にしておきたいと思うんです。

 この前の参考人の質疑のときも、NTSBのお話もたくさん出ました。これ以外に、さまざまな先進国では独立性を持った機関があるわけですが、これらの機関が国際的にお互いに交流して事故防止を図っていくために、さまざま研さんしていこうという意味も含めて、ITSAという協議機関もあって、国際的にもこれがいわば標準化している、グローバルスタンダード化しているのではないかというふうに私は思っているわけです。そういう意味で、ぜひ、三条委員会ということについて積極的に御検討していただきたいということを最初に申し上げておきたいと思います。

 今度の設置法の改正で、航空機の使用者、鉄道事業者または軌道経営者の事業所に立ち入って、帳簿、書類を検査することができるというふうになりました。権限が強化をされるということになると思うんです。

 先ほど来議論が出ているんですが、実際の問題として、こういう権限が付与されたけれども、ヘリコプターで行かなくてタクシーをチャーターして行くと、どうも警察が先に行っちゃっていて警察が書類を押収しちゃった、事故調はタクシーで信号待ちなんかしているから間に合わない。警察が先に押収しちゃった場合、その書類はどうなりますかということが一点。

 それから、そういう意味では、事故調に押収権、事故調査に必要な書類はちゃんと押収しますという権限を持たすようなことはできないのか。それから、その優先順位、これはいろいろ、さまざまなんでしょうが、帳簿や書類、これを調査するのに、警察が押収しようとする場合、いや、おれのところが先だといって事故調がしっかり押さえるとか、その優先権というのは一体どうなっているんでしょうか。

 そういうことについて、ちょっと想定される範囲でお聞きをしたいと思うんです。

 今までの議論だと、どうも、警察がみんな持っていっちゃって、後で貸してという話になっているようなので、そうすると、せっかく法改正をしてこういう権限を与えても、何やら宝の持ち腐れになってしまうのではないかという心配があるんです。これは、私は事故調の立場で物を言っているので、ぜひその辺についてお聞かせをいただきたいと思います。

福本政府参考人 刑事手続と私どもの事故調査手続との関係は、先ほど来申し上げておりますように、相互に、どちらがどちらに優先するというものではございませんで、独立をある意味しております。

 ただ、しかしながら、先ほど来お話ございますように、現場に到達したときにそれぞれ現場で、証拠といいますか物件の押収等々を行います場合には、やはり刑事訴訟法に基づく手続が優先しがちであるということは事実でございます。一つには、やはり圧倒的多数の警察官の人員がございまして、現場に一番近いところにおられるのも事実でございます。そういう意味で、警察の方が先に押さえるというものが多々あるのは事実でございます。

 ただ、私ども調査に行きまして、そういう物件については、私どもの方にいわば移管をしていただいたり、あるいは先ほど委員がおっしゃったように貸していただくといいますか、私どもの方で預からせていただいて、内容を読み取りましてまたお返しをするとか、そういうような手続はお互いさまございます。私どもが先に押収したものをまた警察にそのままお貸しするというようなこともございます。

 先ほども申し上げましたが、特に航空機の事故の場合における、DFDRという飛行記録装置、いわゆるブラックボックスに入っておるああいうもの、あるいはCVRと言っております操縦士の、操縦室の交信記録、会話記録といいますか、そういうものについては、やはり何といいましても私どもの方が専門性が強うございますので、基本的には私どもの方が先に解析を始めるというような関係にはなっておるところでございます。

 そういう意味で、この覚書が締結されましてもう三十有余年たってございますが、今のところ特に支障なく、それぞれ円滑に実施をいたしておると認識いたしております。

日森委員 これはちょっと通告にないんですが、感想だけ聞かせていただきたいと思うんです。

 さっきNTSBの話で、もちろん司令部があるけれども、主要な都市にはちゃんと出先があって、アメリカは広いですからそれは必要なのかもしれませんが。これは今四十一人ではどうしようもないんでしょうが、私はもっと人員的にも予算的にも強化すべきだという立場にあるんです。そういう格好で全国をブロックに分けて、三ブロックか五ブロックに、直ちに事故現場に行ってできるようなそういうものができないものかというふうに思ったんですが、どうでしょうか、その辺の感想は。

福本政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘いただきましたように、米国の場合は、大変国土も広い、かつ事故件数も多い、航空機の小型機がいっぱい飛んでおります、そういうようなこともございまして、そういう地方組織の充実がなされておるのではないかと思います。

 ただ、日本の場合は、航空機の数はやはり圧倒的に違います。事故も、そこそこ起きてはございますが、やはり事故件数が少ないということと、日本の場合は、ある意味で東京からのそういう交通機関が大変便利になっておりまして、日本全国、東京からでございますとかなり短時間で到達ができるということでございます。

 そういう意味で、東京に、今私ども霞が関に事務所を構えてございますが、やはりそこである程度の人数を抱える方がいざというときの出動にも便利でございますし、かつまた研修とかそういうことをやるについても、どうしても地方に行きますとその辺がおろそかになりがちでございますので、私どもとしては、やはり現時点では東京である程度の人数を抱えながら、研修をしつつ、事故があれば飛んでいくというような体制が望ましいのではないかと思っております。

日森委員 次に、国土交通省がヒューマンエラー事故防止対策検討委員会というのを立ち上げて、中間取りまとめがありました。

 その中で、「安全風土の確立に向けた取組みの視点」というところがありまして、「「不安全行動」の防止と安全風土の確立に向けた課題の背景として、近年において、」幾つか省きますが、「経済的規制の緩和等市場主義による熾烈な自由競争の結果、企業の優勝劣敗がより鮮明化」になった、あるいは、「雇用の流動化に伴う正社員割合の低下、若年労働者の離職の増大」とか、「アウトソーシングの進展」というようなことが背景にあるんだというふうにこの中間報告はおっしゃっています。

 そうすると、国土交通省の機関ですから、今度の、安全対策をもっと強化しなさい、事故防止対策を強化しなさいという意味での法改正が出されてきた背景には、こういういわば規制緩和とか不安定雇用の増大とかアウトソーシング、こういうことがあるんだという観点で今度の法改正についてお考えになったのかということについて、まず最初にお聞きをしたいと思います。

竹歳政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘の委員会の中間取りまとめでございますが、この委員会は外部の有識者の御意見もいただきながら、ヒューマンエラー発生の原因、背景とメカニズムを整理して、その対策について中間的な取りまとめが行われたところです。

 このヒューマンエラー発生の原因については、まず大きく二つございます。一つは人間の行動に関するもの、もう一つは人間と高度技術のミスマッチということでございますので、対策も大きく二つ必要でございます。

 また、今御指摘のところでございますが、こういう人間の意図的に行う不安全行動の防止についても三つ問題があるということが言われておりまして、一つは、不安全行動を容認する職場環境、企業風土、二つ目は、安全に対するリスク管理意識の不足、三番目が、情報の迅速かつ的確な共有の不足。今御指摘の点は、その最初の職場環境、企業風土の背景として指摘されております。

 したがって、不安全行動の背景として、競争の激化等はございますが、それだけではございませんで、さまざまな原因がございますので、さまざまな原因に対して多面的な対策を講じていこうと考えているわけでございます。

日森委員 幾つか要因があるんでしょう。しかし、先日の参考人の先生方の御意見の中でもたしか、いわば現場で働く人たちが安全を担うんだ、その担えるためにはそれなりの環境が整備されていなければいけない、私はまさに当然だと思うんです。

 そういうことになってくると、例えば大量の公共輸送機関、これも含めて規制緩和を進めてきた、その結果、競争が激化されて、いわば安全をしっかりと現場で守るべき労働者のそういう環境がぶち壊されてしまった。いや、壊されてしまったと断定してはいけないかもしれませんが、そういう傾向にあるということで、規制緩和を進めてきた国土交通省というのはちょっと責任があるんじゃないかと思うんですが、その辺、どうなんでしょうか。

竹歳政府参考人 規制につきましては、御案内のとおり、大きく経済的な規制と社会的規制がございまして、グローバル化という中で、経済的な規制につきましては、経済の活性化を図るという観点などから見直しが行われてまいりました。

 ただ、公共交通機関の安全というのは最も基本的なサービスでございまして、国民の公共交通に対する信頼の根本をなすものでございますから、国として、民間の行う事業や民間事業者に対し適切な規制を行うということは、必要な安全等の確保を図ってきているところではございます。

 今後とも、社会的規制につきましては、科学技術の進歩や社会情勢の変化に的確に対応して不断に見直しを行うことによって、公共交通に対する国民の信頼を回復すべく、公共交通の安全確保に万全を期していきたいと考えております。

日森委員 余り責任はないと。ないけれども、しかし、この間議論に出ましたけれども、事後チェック体制、これはきっちりやらなきゃいけないわけで、そういう意味も含めて今度の法改正もあると思うんです。しかも、若干そのチェック体制をする人間はふえるんでしょう、全体は減らすけれども。そういう意味では、きっちり実効性あるものにできるようなチェック体制を人間的にも財政的にもやっていただきたいということです。

 次に、JRの関係について御質問したいと思うんです。

 これは、JR西日本ですね。福知山線の事故があって、さまざま問題点が露呈しました。そういうことも含めて、JR西日本は、去年の五月に安全性向上計画というのを決めました。国土交通省は、去年の七月に大阪支社、八月に神戸、京都、さらに十月に本社、保安監査というのを実施しました。十一月十五日にJR西に対して七項目の勧告を行ったわけです。

 この七項目の勧告を行うに当たっては、実はその前に十月にやっている保安監査、この結果に基づいてその勧告を行ったと思うんですが、十月に行った保安監査で、JR西日本の実態の一体どんなところが明らかになって、したがって七項目の勧告をしたのかということについてお聞かせいただきたいと思います。

梅田政府参考人 国土交通省といたしまして、今回の事故後、先生御指摘のように、五月三十一日に、JR西日本に安全性向上計画の作成を求めまして、提出させたところでございます。その取り組み状況を確認するために、七月から八月にかけまして大阪地区の三つの支社に対して保安監査を行いまして、さらに、十月の二十五日から二十八日、四日間、本社に対する保安監査を実施いたしたところでございます。

 その結果、安全性向上計画につきまして、一定の進捗は見られるということは確認できましたけれども、今後、本計画の実施に当たりまして、さらにしっかりと取り組むべき事項も見られました。

 具体的には、安全ミーティングや事故の芽の報告などを通じて得られた意見が整理されつつあります。その時点で一万件ほど意見が出ているというようなことでございましたが、具体的な対応がまだ未定のままでございましたという指摘をいたしまして、その対応を早くするようにということでございます。それからもう一点、現場の技術者の中に世代間のギャップがございまして、技術や技能の円滑な承継のための体制の構築が必要であるというふうに思いました。さらに、安全に関する情報につきまして、関係する部署の間でお互いにその情報の共有を図るという点についてまだ十分ではないというような点がございました。

 こういう点を踏まえまして、先ほど七項目とおっしゃいましたけれども、代表的に申しますと、安全ミーティングを通じて得られたさまざまな意見に対しまして、本社みずからが率先して具体的な施策を打ち出すこと、それから、今後のベテラン層の大量退職を控えまして、早急に若年層への技術、技能の円滑な承継の対策を講ずること、日常業務の実施に当たりまして、各部署が連携を図り正確なデータ等を作成するとともに、最新データを常に共有できるシステム、体制の構築を図ることなどの勧告を行ったところでございます。

 その後、この勧告及び本計画を適正に実施させるために、金沢支社を初めとする各支社に監査を行ってきておりまして、今後とも、同社に対しまして必要な指導を徹底して行ってまいりたいと思っております。

日森委員 その勧告、本当に実行していただかねばならないと思うんですが、新聞報道で、安全性向上計画のいわば大きな柱に安全ミーティングというのが位置づけられていると思うんですが、これについて、これらを含めたJR西日本の職員の意識といいますか、これについてアンケートを組合が行いました。

 これは複数の組合がやっているので、結果は同じような結果が出ているんですが、ちょっとこの新聞から、去年の十二月二十六日にこれが公表されたんですが、職場が全く変わらないと言っている人が、半年以上たっても変わらないと言っている人が六〇・三%、二回目のアンケートでまだいらっしゃる。それから、安全ミーティングについて、内容が理解できない、形式的だという人が七〇%いる。事故の芽の減点評価は対象外とします、JR西日本がそう言っているわけですが、報告なんかするときですね、これは四一%が信用できないと言っています。それから、事故の芽、まあインシデントというふうになるのかもしれません、ヒヤリ・ハットかもしれませんが、これは報告していないという人がふえちゃった、三二%だった人が四七%になってしまった。報告している人も若干ふえているんですが、しないという人がふえたんですね。

 どうも、いろいろ国土交通省も指導、勧告を行って、西もいい方向に向いているのかもしれないけれども、しかし、職場の中では実は、これは一部かもしれませんが、こういう実態が依然としてあるということなんだと思うんですよ。こういう、まだまだ改善途上というか、出発点に立ったのかどうかわかりませんが、こういう西の実態について、改めて国土交通省の見解を伺いたいと思います。

梅田政府参考人 JR西日本におきましては、安全性向上計画に基づきまして、昨年の六月から八月、三カ月間でございますが、全社的に二百四十カ所、延べ九百四十八回の緊急安全ミーティングを開催したと聞いておりまして、その参加者は約一万七千名に及ぶと聞いております。これは社員のかなりの部分でございます。この緊急安全ミーティングのときには、本社や支社の役員が現場に赴きまして、職員との交換を行ったところでございます。

 また、その後も、安全ミーティングといたしまして、現在も継続中でございますが、一月の末現在で、本社開催分で約二百回、支社開催分で約七百回、延べ参加者大体一万人の現場職員との意見交換を進めていると聞いているところでございます。

 安全性の向上を図るということのためには、こういう安全ミーティング等を通じて得られましたさまざまな意見を踏まえまして、具体的な施策を打ち出すことが重要であるというふうに考えております。私どもといたしましては、御指摘の点も踏まえながら、今後ともこういう取り組みの状況をしっかり確認して、必要な指導を徹底して行ってまいりたいと考えているところでございます。

日森委員 同じJR西で、伯備線で三名の社員が死亡するという接車事故がありました。これについて、ちょっと国土交通省のお考えをお聞きしたいと思うんです。

 実は、これは本当は事故調が出張っていく場面ではないのかと私は個人的に思っているんですが、鉄道自体に問題があるということよりも、こういう今の、結論が出ているわけじゃありませんが、監視責任者のヒューマンエラーだということが大分報道されているという意味から考えても、死者は三名で五名に達していないからという意味ではなくて、実は、こういうところにもしっかりと事故調が原因究明に出張っていくのではないかという思いがあるんですが、それはともかくとして、こういう事故が起きました。

 タイタンパーを使って作業中に、列車がおくれていて、反対側から来た列車にはねられてしまったという事故なんです。ちょっと時間がないので説明はしませんが、こういう事故が起きたわけです。実は、この問題についても西日本の幹部は、これはマニュアルどおりにやっていれば起きない事故だったんだというふうにおっしゃっているんです。しかし、実際には、マニュアルどおりやったら起きなかったのかといっても、そのマニュアルが、例えば列車のおくれによって反対側から列車が来てしまうということまで想定したマニュアルになっていたのかどうかということが一つ問題だと思うんですよ。

 そういう意味では、見張りを一人ではなくて二人置いていればこの事故は起きなかったという識者の意見もありますし、それから、どこでも当たり前にやられているように線路封鎖、単線だからなかなか難しいという意見もあるようなんですが、しかし、安全を確保していくということであれば、線路封鎖をして作業を行わせるというようなことが当然なければいけないというふうに思っているんです。

 それで、例えば、もう一つは夜間工事。普通は、前は夜間に線路補修などというのは主にやっていたんですが、夜間はお金がかかる、手当をいっぱい出さなきゃいけないからというようなことも理由になっていて、昼間やるようになった。列車がばんばん走っているところでやるようになったということだとか、さまざまな問題があって、マニュアルどおりやれば事故が起きなかった、マニュアルを無視した人の個人の責任だというような風潮が、実は安全性向上計画を出した後もこんな話に西日本はなっているわけですよ。西日本の社長が悪いとかと言っているわけじゃなくてね。

 そういう意味から考えると、少し、この事故について国交省、これはもう事故調が出張っていくわけじゃないので、米子支社とそれから警察、県警が捜査をしているんでしょうけれども、これについての国交省の御見解について伺いたいと思います。

梅田政府参考人 本年一月の二十四日十三時十八分ごろ、JR西日本伯備線の根雨駅―武庫駅間におきまして、保線作業中のJR西日本の保守要員四人が下り特急列車に触車し、三名が亡くなるという痛ましい事故が発生いたしました。

 JR西日本によれば、当該箇所は単線区間で、当日は列車のおくれにより当該箇所を通過する上りと下りの列車の順番が変更されていたにもかかわらず、見張り員が列車の来る反対の方向を見張っていたと聞いております。

 こういう事故を踏まえまして、JR西日本におきましては、線路内及び線路に近接して作業等を行う場合における触車事故の防止を図るため、必要な安全動作あるいは作業の方法などを定めました工務関係触車事故防止要領というのがございまして、この運用を見直しまして、単線区間におきましては、保守作業を行う場合には、原則として関係する信号機を赤にして作業区間に列車を進入させない線路閉鎖工事手続によることとしたという報告を受けているところでございます。

 私どもといたしましては、事故後、中国運輸局から職員二人を派遣いたしまして現地調査を行うとともに、JR西日本に対しまして、文書で、早急に事故原因を究明し再発防止対策のための措置を講ずるよう、厳重に警告をしたところでございます。

 また、JR西日本の本社、支社に対しまして、安全性向上計画の取り組み状況を確認するために、現在保安監査を実施しているところでございますが、当該のJR西日本の米子支社に対しまして、二月二十一日から四日間立ち入りまして、伯備線の人身事故における安全対策の状況等を含め保安監査を行い、再発防止対策に万全を期するよう、さらに厳しく指導をしたところでございます。

 私どもといたしましては、こういう事故が発生しないよう、引き続きJR西日本をしっかり指導してまいりたいと思っておりますが、マニュアルにつきましては、JR西日本の出しました安全性向上計画の中でもこの規程を見直すという趣旨で書かれておりますので、必要な措置につきましてさらに指導してまいりたいというふうに考えているところでございます。

日森委員 結局、やればできる安全対策をやってこなかったために事故が起きた、そういう一面もあるということだと思うんですよ。

 それで、これは要望になるんですが、統括安全管理者と同時に安全管理規程を置きなさいということになります。その規程はどうするかというのは政省令でさまざま出てくるんでしょうが、そのときに、本当に、安全がもちろんトップに来るわけですから、今各社が持っているいろいろなマニュアルがあると思うんですが、そういうものについても安全第一にきちんと見直しができるようなものをぜひ置いていただきたいと思っています。

 ちょっともう時間がなくなってしまったので、幾つか省きます。

 業務の委託の問題について最後にお聞きをしたいと思うんです。

 今度の改正によって、鉄道事業者あるいは航空運送事業者の業務の受委託について規制が強化される。国土交通省がしっかり認定しますということになると思うんですが、鉄道事業でいうと、元請を、国土交通省は、よしわかった、認可しましょう、こうなるんですが、認可された後、一定の規制が働くかもしれませんが、現状を言うと、その元請が、建築業法違反に当たるんじゃないかと思うぐらいなんですが、全部下請、孫請に丸投げしているような事態が実際あるわけです。しかし、国土交通省の規制が行き届くのは元請だけであって、その下になるとなかなかチェックできないということになると思うんですね。今のような、常態化しているような、孫請まで丸投げしてしまうような実態があると、これは本当の意味で安全が確保できるかどうか心配なわけです。

 それで、ちょっと私のところに資料を持ってきた方がいらっしゃるんですが、さっき、伯備線も接車事故でしたが、JR民営化以降、ことしの一月までに、作業中の事故により三百十二名が亡くなっています。これは数字は調べた人が三百十二名と言っているんですが、三百十二名の方が亡くなっているんですが、そのうち二百四十六名が下請会社の人ですよ。これはちょっとわかりにくいかもしれませんが、下請の方が死んでいる。

 どんなことになっているかというと、例えば線路補修作業もそうなんですが、元請が下請に丸投げする、しかし、そこには現場管理者を置かなきゃいけない、元請が行かなきゃいけないんだけれども、人がいない。そうすると、下請の人が、その作業の期間中だけ元請に出向するんですよ。出向社員になって、それで現場管理をやっている。こんなことは現場ではもうかなりあるんですよね。

 これを放置しておいちゃいけないわけだし、こんな実態があるから下請の人が二百何十人も亡くなっているようなことが起きているということもあるので、まず、ぜひその辺を御理解した上で、元請だけでいいのかなという思いもあるんですが、この受委託の関係について、改めて国土交通省でどうお考えになっているのか。まあ、鉄道事業だけになりましたけれども、お聞かせいただきたいと思います。

梅田政府参考人 先生御指摘の鉄道事業法、今回の改正の眼目の一つでございます。

 この事業法上の責任というのは、あくまでも委託者である鉄道事業者にございます。したがいまして、今回は、受託者を管理する立場にある鉄道事業者の行政の監督を十全ならしめるというのが目的でございまして、鉄道事業者から直接業務を受託した者に対しまして報告徴収あるいは立入検査を行うことができるというのが今回の改正の趣旨でございます。

 これは、鉄道事業者から直接委託を受けた事業者からさらに委託を受けた、いわゆる御指摘の孫請でございますけれども、これは今回の報告徴収の対象にはしておりません。おりませんが、鉄道事業者に対する監督と、直接業務を受託した者に対する報告徴収権を通じまして、鉄道事業者における安全管理体制というのをきちっと確立していきたいと考えておりまして、孫請業者の適切な作業管理もそうした中でより確保されるものというふうに理解しているところでございます。

日森委員 ありがとうございました。

林委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午後は、特に事業者の安全管理体制について質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。望月義夫君。

望月委員 自由民主党の望月義夫でございます。

 今、多くの政治家が安心、安全を公約に掲げて選挙区であいさつをしていると思いますけれども、私も、年末年始の会合で、住とか食とか医療などの安心、安全について選挙区の方々からさまざまな御質問を受けます。国民の関心の高さを改めて痛感させられました。そして、特に輸送の安全、安心については、昨今のヒューマンエラーなどに起因する事故やトラブルが多発していることを考慮しても、緊急の課題だ、このように思っております。

 これは一つの例でよく言われることなんですけれども、現代の若者が、あるいはまた高齢者の方でもいいんですけれども、スポーツカーに乗りますと、そのエンジンというのは二百馬力だと。二百馬力というのは馬二百頭ということですからすごいものなんですけれども、ドライバーがよそ見をしてぶつかったら大変なことになるということをやはりもう一回認識しなきゃいけない。

 まして、五百人の乗員乗客を乗せて高度一万メートルの上空を時速八百キロで飛行するジェット機の旅客機は、二人のパイロットが、二人ですよ、二人が操縦しているわけなんです。そして、千五百人の乗客とともに時速二百キロで疾走する新幹線、これはたった一人の運転士が運転しているわけですね。現在まで大体四十億とか五十億人ぐらい運んだんじゃないかと言われておりますけれども、まだ一度も新幹線は事故を起こしていないという立派なことで、我々の技術は大変すばらしいんですけれども、一人で運転しておりますから、そういった意味で、今回の法案は、何としても、ぜひとも早く成立させなくてはいけないと考えているわけでございます。

 そういった意味で、鉄道局、航空局、自動車交通局、それから海事局に、事故防止、安全性の向上の観点から質問をさせていただきたい、このように思います。

 まずは鉄道局にお伺いさせていただきたいと思いますが、昨年の福知山線の事故の際にも、私、この場で質問をさせていただきました。大変痛ましい事故で、一体どうなっているんだと社長に強く質問させていただきました。ヒューマンエラーなどによる事故の再発防止という意味では、今般の法改正における鉄道局の指導的役割というのは大変重要なものだと私は思っております。

 なぜかといいますと、事業者の中には、JR、大手民鉄、中小の民鉄それから第三セクターなど、さまざまな規模があります。それから、事業エリア、地域性も、例えば都会へ行けば、この間から問題になっているあかずの踏切とか、踏切は幾らでもある。ところが、山間部の災害の多いところはまた全然違った意味で、事業者の安全に対する経営環境というのは千差万別である。

 そういうことを思うと、したがって、法改正後の運用、我々がここで法律をつくっても、その後、政省令で何かわからないけれども一律につくってそれで押しつけるというわけではないけれども、手続を画一的に定めたり細かい規定を押しつける、こういうことではなくて、真に実効性が上がるような、事業者の意見を、現場の意見をうまく吸収し、そして反映していくことがやはり大切なことではないかと思います。

 事業者も、安全性というものが利益につながるというのはもう骨身にしみていると思うんです。一つ間違えば会社がつぶれるということは十分にあり得ますので、そういう非難にもさらされます。そういうことで、事業者はそういうことが一番よくわかっていると思いますけれども、その点、今後どういう対応をしていくのか、質問させていただきたいと思います。

梅田政府参考人 御指摘のとおり、JR東日本のように、世界一と言ってもいいぐらい大きな規模の会社もございます。また、ちょっと出していいのかどうかわかりませんが、津軽鉄道だとか銚子電鉄だとかいったような、規模においても極めて小さい、零細な鉄道事業もございます。また、運営している鉄道路線でございますけれども、環境も、都市もあれば田舎もある、さまざま大きく異なるものがございます。そうした中で鉄道輸送の安全を確保するためには、個々のこういう鉄道事業者の規模やあるいは輸送頻度などを踏まえまして、鉄道事業者に最も適した形で安全管理体制を確立させる必要があると考えているところでございます。

 このため、今回の改正におきましては、法律で鉄道事業者ごとに安全管理の方針、体制、方法を定めた安全管理規程の作成あるいは届け出の義務をかけることにしておりますが、当該鉄道事業者に最も適した形で安全管理体制を確立させるためには、安全管理規程の具体的な内容、あるいは鉄道事業者に選任を義務づける安全統括管理者等の資格要件、あるいは毎年度の公表を義務づける安全報告書の具体的な内容、これは省令で決めることになりますけれども、その際には、先生の御指摘を踏まえ、鉄道事業者と十分な意見交換を行うとともに、その運用に当たりましても、実情を踏まえながら適切に対応することによりまして、今回の法改正の実効が上がるように努めてまいりたいと考えているところでございます。

望月委員 そこのところをしっかりやっていただきたいと思います。

 それから、もう時間がございませんので、大変申しわけないんですけれども、次に移ります。

 航空局にお聞きしたいんですけれども、昨年は、JALとANAのたび重なる運航上のトラブルを目の当たりにして、私たち一般の利用者から見ても背筋が寒くなるような思いが大分いたしました。事故という、あってはならない事態を思い起こさせられました。そういったことで、安全体制の構築、携わる人員のモラルの向上、これはもう何回かきょうも出ておりますけれども、完全に必要なことなんですけれども、航空会社における一連のトラブルを踏まえて、今般の航空法の改正では具体的にどのような対策を講じようとしているのか、とりあえず当局にちょっとお聞きしたいと思います。

岩崎政府参考人 御指摘のとおり、昨年、JALを中心に多くのトラブルが発生いたしました。先生また御指摘のとおり、中でもヒューマンエラーに伴うトラブル、これは重大な事故にもつながりかねないものですから、こうしたものが多発したところでございます。

 私ども、個々のトラブルに対応した再発防止を図る一方、こうしたいろいろなトラブルを教訓に、制度的な、総合的な対策を図ることが重要だ、このように考えて、今回この法案を提案させていただいたところでございます。

 特に、ヒューマンエラーをなくすためにはどうしたらいいかということで、有識者から成る委員会の御意見も伺いながら、安全管理体制の構築を求めるというようなことを柱にしております。また、トラブルが起こった事後の対策だけではなくて、未然防止も大変重要だろうと思っております。このため、報告制度の充実等々を今回の法案に盛り込ませていただいたところでございます。

望月委員 特にJALなんですけれども、最近の新聞を見ましても、週刊誌じゃないんですけれども、おもしろおかしく、JASとの統合がうまくいっていないとか、九つの組合がある、これは異常でないのかとか、最近では経営陣のごたごたとか、こういったニュースがもう毎日のごとく言われております。

 組合があるのは働く人の権利で当然かもしれませんけれども、例えば、パイロットと乗務員と整備士がみんな組合は違う、たまたま全然違うことになっちゃったと。そういうことが、それは組合としてはそれぞれ頑張っているのかもしれない、我々はわかりませんけれども、お客さんの立場にすれば、パイロットと整備員が、もしかしたらああいうことでちょっとした違いがあって、仲が悪くなっちゃっていて大丈夫かしら、そんなことで本当に命を預かっていて大丈夫なのかしら、そういうようなことを、私たち、大丈夫なんですかということを国民の皆さんからよく聞かれるんですよ。

 そういうことを考えると、言うまでもなく、日本を代表する航空会社はJALですよ。ナショナル・フラッグ・キャリアとしてこれまで頑張ってきたわけでありますけれども、天下のJALというプライド、こういうものにおぼれてしまっているんじゃないの、しがみついていて利用者を顧みていない、内向きばかりの大企業病に陥っているんじゃないのか、このままじゃつぶれちゃうんじゃないのというような、そういう国民の気持ちをぜひひとつ経営者はわかってもらいたい。

 このことについて、今後どのような指導監督を行っていくのか、これが安全に関係してきますからね。どうなっているのか、ちょっと教えていただきたいと思います。

岩崎政府参考人 最近、経営陣の交代なども発表されておられますけれども、いかなる経営環境にあっても、やはり航空会社は安全を第一にちゃんとやっていただかなきゃいかぬ、このように思っておるところでございます。

 JALにつきましては、昨年の三月以来、いろいろなトラブルが続いております。私どもも、JALに対しては、厳しく立入検査を定期的に実施する、あるいは抜き打ちの立入検査もやる、報告を求める等々、監視を強めてきているところでございます。今後とも、JALに対しては、より厳正な監視、監督を継続していくつもりでございます。

望月委員 それでは次に、海事局に移りたいと思います。

 先ほどから大臣も御答弁ございましたように、外航については九九%、内航については国内輸送の四〇%を船舶にゆだねているわけでございますけれども、大変残念なことに、国民の多くは、この船の貢献度というのは、当たり前というんですか、もうあるものと思って余り知らないのが現状ではないかな、私たちがもっともっと国民の皆さんにそういった重要性を喧伝していかなきゃいけないのかなと思っております。私も、清水生まれで、国の特定重要港湾という港で育ったわけでございまして、清水の次郎長のところでございますけれども、そういった意味では非常にさみしい思いをしております。

 海難事故は、一たび発生すれば、海上ゆえの救助の困難性、それから沿岸地域への甚大な環境被害など、社会的に重大な影響を与えることになります。

 私も、実は外務政務官として、えひめ丸と例のアメリカの原子力潜水艦の追突事故の責任者として、一カ月以上もハワイで交渉してまいりました。これも、特殊な事例とはいえ、ヒューマンエラーに起因する、アメリカの原子力潜水艦の艦長のヒューマンエラーだ、そういうことで、大変厳しい毎日でございましたけれども、貴重な体験をそのときにさせていただきました。

 そこで、人材育成についてでありますけれども、最近は外航船に至ってはほとんどが外国人なんですね。船長とだれかぐらいですよ、本当に。内航海運においても、四十五歳以上の船員が約半数以上を占めているということでありまして、非常に高齢化が進んでいる。せっかく国費で、海員学校とかいろいろなところで教育した若者たちがこの業界に入れないというのは、これは一体どういうことなのか、理解に非常に苦しむわけであります。

 海運業の過当競争の中で、船主の用船料というのがございますけれども、景気が非常に上向いてきて一体どうなっているんだと。多分そういうのも上がっているんだろうなと思うんですけれども、あに図らんや、いわゆる四九九船という船がございますけれども、四百九十九トンですかね、標準的には経費が大体千二百万かかると言われております。ところが、現在の平均の用船料というのは一千万に満たない。これは、船を出せば出すほど赤字というのが現状なんですね。

 もうかっている会社があれば日陰のところは一体どこかというと、まさにこういうところなんです。最近の原油高の状況下で、定員割れだとか時間外労働を強いることによってしのぐしか仕方がない、そういうふうに皆さん言っているんですけれども、若い船員の新規採用とか雇用とか、予備船員として教育をしていく暇などないというのがこういう人たちの話なんです。

 これでは、当然のことながら、結局安全面にまで影響してくるわけでございまして、海洋船員の確保、海員の安全教育、そしてそのための経営の安定についてどのようにお考えなのか、御質問させていただきます。

    〔委員長退席、吉田(六)委員長代理着席〕

星野政府参考人 ただいま、安全の問題にもかかわる事柄といたしまして、外航海運における日本人船員の減少、内航海運における船員の高齢化、この二点について御指摘をいただき、若い方が意欲を持って海上輸送に従事していただけるような取り組みが今後極めて重要だ、こういう御指摘をいただいたと認識をさせていただきます。

 この問題について、三つの側面からちょっと取り組みについて御説明を申し上げたいと思います。

 一つは、受け入れ側、事業者側の問題でございます。

 外航海運につきましては、国際競争が極めて厳しい中で、先生がただいま御指摘いただいたような日本人船員の減少が続いている、これが現状でございます。

 ただ、安全で、かつ、よい品質の輸送サービスを行うためには、海上輸送の中核を担うような日本人の海上技術者が必要だ、こういう認識について現在関係者の中でやはり浸透してまいっておりまして、こうした共通の認識のもとに、では、具体的にどうやったらそういう対応ができるのかという話し合いが、日本船主協会と全日本海員組合、いわゆる労使の場で現在持たれております。おおむね六月ぐらいを目途に一定の方向性を出す、そういうことで協議が進んでおりますので、私どもとしては、その協議の結果を踏まえて、国として対応すべきことはきちっと対応するということで取り組んでまいりたいというふうに思っております。

 それから、内航につきましては、長期にわたる景気の低迷の中で船主経済が極めて苦しくなっている、これは先生御指摘のとおりでございます。したがって、現在の景気回復の局面、これが船主経済まで円滑に波及してくるように、私どもとして対応できることについてはきちっと対応しようと。

 例えば具体例でございますが、燃油の問題につきましては、せんだって大臣の御指導のもとに、荷主の方々に内航海運の現状をよく理解していただいて、運賃転嫁が円滑に進むようにということで、私どもとしても汗をかかせていただきましたが、とり得る体制についてはきちっと対応してまいりたいというふうに考えております。

 他方、船主経済が厳しいからといって安全がないがしろにされてはやはり困るわけでございまして、法定定員を確保し安全運航を実現する、これについては、実は、用船料を払うオペレーター側の方がしっかりした事業者としての責任を持っているわけでございます。したがって、オペレーター側、用船料を払う側についても、運航管理責任をきちっと果たすようにということで、厳しく指導してまいりたいというふうに思っております。

 第二の側面の供給側、船員教育の方でございますが、これは、現実のニーズに合った、即戦力となる若い人を社会に送り出すというのが極めて重要でございまして、今回、清水にある海員学校を海技大学校に統合するという法案もお願いをいたしておりますが、必要な体制の見直し、あるいはカリキュラムの対応ということは今後ともきちっとやってまいりたいというふうに思っております。

 よろしゅうございますか。

望月委員 時間がございませんので、あと一問だけ、最後に聞かせていただきます。

 バス、タクシー、トラック等の事業用自動車については、これは毎年、大きい事故も小さい事故もあるんですけれども、六万件以上の交通事故を起こしているという数字を聞いておりますけれども、一向に減少しなくて、これは大変なことだと私は思っております。

 今後、事業用自動車の事故を確実に減らしていくためには、運行形態が自動車の場合には他の交通機関と比べて大変大きく異なっておりますけれども、中小零細企業規模の事業者が最も多く、そして、これはもう過当競争がずっと続いております。こういったことを十分考慮して、適切な安全対策を検討する必要があると思いますけれども、安全マネジメントの導入に当たって、こうした自動車運送事業者の特色をふまえて、どのような安全対策を実施していくのか、お聞かせいただきたいと思います。

宿利政府参考人 お答えいたします。

 今、望月先生から御指摘ありましたように、自動車運送事業につきましては、かなり特殊な事業形態であると思っております。すなわち、車両が営業所を出まして戻ってくるまで、運行の安全の責任が運転者一人にゆだねられておるということで、運転者が全責任を負って安全を確保しているということと、道路の上を自家用自動車と混在をして運行いたしますから、特に運転者に高い安全意識と能力が求められるといったことがあると思っております。したがいまして、現在の安全対策は、営業所ごとに、一定の車両台数ごとに国家資格であります運行管理者というのを配置させまして、そこで、点呼などいろいろな施策を通じて運行の安全確保を図るというのが基本になっております。

 一方で、望月先生御指摘のように、九九%以上が中小企業者であるという特別な事情もありまして、どうしても、経営者の安全意識に安全が左右されるといった側面や、企業全体での安全確保が運行管理者に任されてしまうといった、現行の安全対策の限界があるということも確かであります。

 そういうことで、今回の法律改正によりまして、すべての自動車運送事業者に安全の確保といった法的な義務を課すと同時に、安全マネジメントを導入して会社全体に安全意識の浸透を図る、こういうことをしようとするものでありますし、現場まで目が届きにくい一定規模以上の大規模事業者について、安全管理規程の作成や安全統括管理者の選任などを義務づけようとするものであります。

 この安全マネジメントの導入に加えまして、今申し上げました運行管理制度を徹底するということが基本だと思っております。この運行管理制度の徹底と、もう一つ、事後チェックの最も重要な部分であります監査の強化ということを図ることが重要だと思っておりまして、この二月から、予防的な監査に重点を置きまして、新規参入事業者に対する早期監査あるいは無通告監査、あるいは再違反の場合の処分を厳しくするといっためり張りをつけるといったことをやっております。

 この三つの対策を三位一体で強力に推進することによりまして、自動車運送事業の安全の確保を図っていきたい、このように思っております。

望月委員 終わります。どうもありがとうございました。

吉田(六)委員長代理 西銘恒三郎君。

西銘委員 自由民主党の西銘恒三郎でございます。

 鉄道、航空、海運、自動車、それらの事業を取り巻く社会全般でグローバリゼーションという言葉がはやっております。こういう外部環境のもとで、原油の高騰や、あるいは規制緩和による競争の激化など、それぞれの事業者が、グループ企業を含めて大変厳しい状況下に置かれているものと認識をいたします。

 私は、経済産業委員会で関西電力の事故現場を視察する機会に恵まれましたけれども、この最終調査報告書の中で、調査委員長は安全文化のほころびという表現を使っておりました。電力の事故ではあったのでありますけれども、今の世の中、どういう事業をする方でも、一番何よりも優先すべきは安全の確保であると考えます。

 今回の法改正によって、事業者の安全確保が少しでも前進をするように、何よりも安全を優先していくという事業者の意識が高まっていくことを祈念しながら、今回は、特に航空と自動車の事業で質疑を行いたいと思います。

 昨年の一月に、沖縄にある嘉手納の飛行場を視察する機会がありました。そのときに、米軍の管制官にまじって我が国の航空管制官が訓練をしているという場面を視察いたしました。沖縄は歴史的に米軍が管制をしている、嘉手納ラプコン、レーダー・アプローチ・コントロール、沖縄に進入する飛行機をレーダーコントロールするのは米軍の業務になっていたわけでありますが、主権国家としていよいよ我が国の航空管制に移管をしていく、ちょうどその場面を視察したわけであります。

 訓練から三年ぐらいかかると聞いておりますけれども、米軍機、軍用機や民航機を航空管制する、この訓練の状況が、去年から現実、現時点までどのようになっておりますか。航空局長の御説明をお願いしたいと思います。

岩崎政府参考人 嘉手納ラプコンの業務移管でございますけれども、嘉手納の米軍、我々航空局の管制官は民間の航空機の管制はやっておりますけれども、米軍、自衛隊等の管制については必ずしも十分ではないものですから、今訓練を受けているところでございます。

 平成十六年の十二月から開始をいたしまして、おおむね三年後の移管を目指して訓練を行っております。四十名の管制官に訓練をしてきっちり資格を取らせていかなきゃいけない、こういう状況でございます。現在は十三名が訓練をしておるところでございます。うち二名は既に資格を取得したところでございます。当初予定しておりますスケジュールにおおむね沿った形で訓練が進んでいるものと承知しているところでございます。

西銘委員 沖縄の米軍関係の事故を調べてみますと、昭和四十七年から私の手元で平成十六年の例の国際大学のヘリコプターの墜落事故まで、インシデントと呼ばれるような小さな事故等を含めますと四十一件、復帰三十三年間で起こっております。単純に計算をしますと一年に一・二八回ぐらい、あるときはF15のパイロットのフードのキャノピーという部分が落ちたり、あるいは部品が落ちたりするインシデントも含めてでありますけれども、軍用機の事故がデータを見る限り極端に多いなと。

 そういう中で、今、我が国の航空管制官、米軍側の説明によりますと非常に高い能力というお話がございました。軍用機と民航機の進入管制業務を遂行していく上で、ちょうど今移行期に当たっているわけですけれども、空の安全性という意味では十二分に担保をされているのかどうか、大変心配でございます。その辺はどうなっておりますでしょうか。局長の説明を求めます。

岩崎政府参考人 現在でも、那覇空港に関する管制は私どもの航空局の職員がやっております。嘉手納のラプコンについては、先生御指摘のとおり、米軍が管制をやっておりまして、今我々の管制官がその訓練を受けている、こういうことでございます。現に今もう飛んでおりますので、これは管制のミスでトラブルがあっちゃいけないということで、従来から米軍と我々日本側といろいろな取り決めを結びながらやっております。

 移行期間中は、当然、嘉手納のラプコンについては米軍が従来どおり責任を持ってやるということでございますので、我々、訓練は受けておりますけれども、米軍の責任の中で、那覇の空港の我々の日本の管制と十分連絡をとりながら、安全性を担保しながらやっております。

西銘委員 私は毎週、東京―那覇間を往来しておりますけれども、那覇の空港から離陸をした方は経験されたことがあるかと思いますけれども、那覇空港を北側へ向かって離陸をしていきますと、その先には普天間の飛行場や嘉手納の飛行場の空域に接近することになります。上昇をしてわずか一、二分ぐらいしますと、そのまままた平行飛行の状態が続いてまいります。素人考えでも、燃料の効率も悪いし、そのまま上昇を続けることの方が燃料効率も安全上もいいのではないかなと、飛行機に乗るたびにそういう思いを抱きながら乗っておりますが、今回、この嘉手納ラプコンが我が国航空管制官に移管された場合、こういう現象がなくなるのか。なくなって、安全性という意味で高められていくのか。その辺はどうなっておりますか。局長に御説明を求めます。

岩崎政府参考人 那覇空港は、先生御案内のとおり、北側に飛んでいきますと、嘉手納飛行場の着陸機と、嘉手納飛行場は東西でございますので、ぶつかってしまいます。このため、那覇から離陸する飛行機は、嘉手納に着陸する航空機がある場合、千フィートで飛行することになります。これは、安全という意味では十分に検証した上での飛行方式でございますけれども、燃費が悪いでありますとか、あるいは乗客の方に心理的にも不安を抱かせるということで、何らかの工夫ができないか、このように思っておるところでございます。

 嘉手納ラプコンが我々に移管されても、こうしたことは、那覇空港からの離陸と嘉手納への着陸が重なる場合はこの飛行方式をとらざるを得ないと思っておりまして、なくなるわけではございませんけれども、私ども、移管後、できるだけきめ細かい管制を行うことによりまして、そうした事態が少しでも少なくなるようにいろいろ工夫はしていきたい、このように思っているところでございます。

西銘委員 ちょっと視点は変わるんですけれども、局長、米軍再編によって普天間の飛行場が移設をされたと仮定しますと、普天間の空域の分が変化が起こってくると考えられますが、その場合、普天間の空域がなくなった場合は、今言われたような平行移動がなくなるということはないでしょうか。その辺はどうでしょうか。

岩崎政府参考人 先ほど申しましたように、千フィートの低空飛行をするのは、嘉手納基地への着陸機と那覇空港からの出発機の交差を、安全の確保を保つためにやっている方式でございますので、普天間が返還されてもそこについては大きな変化はないと思っております。

西銘委員 二〇〇九年に予定されております羽田空港の拡張があります。横田飛行場の空域の管制がまだ米軍に握られていると思うのでありますが、この米軍の管制、嘉手納が日本に移管、今訓練を受けている状況でありますが、横田の航空管制はこれからどうなりますか。御説明ください。

岩崎政府参考人 横田と岩国とこの嘉手納が三つ、米軍がやっておる管制の空域でございますけれども、特に横田の空域は羽田、成田に近うございますから、この空域が我々に返ってくるのは大変いいことだろうと思っております。

 特に、今、羽田再拡張ということで四本目の工事を着手しておりますけれども、滑走路ができても上空の空域が窮屈ですとなかなかその機能を十分に発揮できないということで、横田の空域の見直し、削減が必要だろう、このように思っているところでございます。

 昨年来の2プラス2、昨年の十月の二十九日に日米安全保障協議委員会で発表された文書におきましても、この横田空域についても取り上げられておりまして、横田の空域は羽田空港の拡張を念頭にいろいろ検討していこうというようなことの取り決めがなされているところでございます。今後その具体化に向けて調整を図っていきたい、このように思っているところでございます。

西銘委員 国民の安全を確保していく上からも、ぜひとも十分な話し合いをして、安全の環境をつくっていただきたいと思います。

 さて、羽田の拡張によって航空事業者への発着の枠が出てくるものと思います。航空事業者にとってはこの発着の枠は経営戦略に大きくかかわってくると思いますが、経営の安定性がなければ、また事業としての安全性にもさまざまな面で影響が出てくるものと思われます。

 この発着枠を割り当てる場合、どういう基準で枠組みを航空事業者に割り当てていくのか。局長の説明をお願いします。

岩崎政府参考人 羽田の発着枠でございますけれども、現在でも発着枠の配分をやっているところでございますが、航空法の規定に基づきまして、航空機の運航の安全上適切なものであること、競争の促進、多様な輸送網の形成等を通じて利用者の利便に適合する輸送サービスを提供するものであること等、羽田空港について適切かつ合理的に使用するものであることを基準に配分しているところでございます。

 羽田再拡張をいたしますと、現在、定期便は国内線だけでございますけれども、近距離の国際線も羽田から飛ばしていこう、このように思っているところでございます。再拡張後は、まず国際線と国内線とをどのように配分するのかという新たな課題も加わってまいりますので、今やっております発着配分の基準等々も踏まえながら、羽田空港の再拡張事業の進捗状況をあわせて見ながら検討していきたい、このように思っているところでございます。

西銘委員 事業者にとっての経営の安定性と安全性が大きく絡んでくると思いますので、十二分に検討されて発着枠を決めていただきたいと思います。

 自動車業界、特に沖縄のタクシー業界が、今般、緊急調整地域の指定が解除されるということで、現場では緊急に大会を開いて、大変心配をしているようでございます。今後、実車率とかあるいは一日の営業収入等に変化があれば、この緊急調整地域の指定が再びなされることもあり得るのかどうか。局長の御説明を求めたいと思います。

宿利政府参考人 沖縄本島につきましては、日車営収や日車実車キロといったような輸送実績が向上をいたしましたことから、緊急調整地域の指定基準に合致しないこととなりましたので、ことしの四月以降は指定を行わないということにしたところであります。

 西銘先生が今お尋ねになりました再指定の件でございますけれども、これにつきましては、今後、輸送実績などが悪化するといった状況の変化がありまして、改めて指定基準に合致するようなことになれば、運輸審議会への諮問、答申を経た上で、緊急調整地域として指定をするといったこともあり得ると考えております。

 なお、緊急調整地域の指定を行わないこととした場合の取り扱いでございますけれども、これは指定期間満了後の急激な状況の変化などによりまして混乱が生じて、輸送の安全などに問題が生じないように、今般、新たに特別重点監視地域という制度を設けることといたしました。

 沖縄本島につきまして、ことしの四月一日から来年の八月三十一日まで、この特別重点監視地域として指定をすることにしております。この間は、最低車両台数を二十両に引き上げるといった新規参入の審査を厳格に実施いたしますと同時に、重点的な監査の実施あるいは行政処分の加重を行うといったことによりまして、輸送の安全の確保に支障が生じないように万全を尽くしたいと思っております。

    〔吉田(六)委員長代理退席、委員長着席〕

西銘委員 実車率の推移を見ましても、平成二年度が四四・三%、十三年度三一・三%、十四年度三〇・八%、十五年度二九・四%、十六年度で二九・七%と、非常に低い推移で動いております。また、運転手の日収も二万二千円程度で非常に厳しい状況が続いております。供給過剰になることによって、タクシー事業者の安全性に影響が出ないものか大変心配をするものであります。どうぞ、局長においては、現場の状況等も十二分に御賢察をいただき対応していただきたいと思います。

 以上をもちまして質問を終わります。

林委員長 鉢呂吉雄君。

鉢呂委員 民主党の鉢呂吉雄です。

 きょうは、陸海空の交通機関の安全にかかわる法案の審議ということでありますが、私は、特に航空、航空法の改正案について、大臣のみに御質問をさせていただきたい、こういうふうに思っておりますので、枝葉のことは抜きにして、こちらの方でお話をします。大臣のお考えをぜひ承りたいというふうに思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

 まずは、前回の一般質疑でもお話をさせていただきましたJALの今回の社長交代劇、私は、昨年国土交通委員会に所属をしておりませんでしたから、議事録を全部見させていただきました。もちろん航空に関する議事録であります。衆参の委員会に新町社長が参考人として数回出席をして、るる決意等を述べられておるわけでありますが、例えば、現場と経営との距離感をなくして一体感を醸成していく、役員が二百回以上現場職員と意見交換をしているというようなお話をされておるわけであります。

 一昨日、参考人のお話がございまして、芳賀繁教授は、やはり各事業者が安全輸送を一番最高位の経営目標として掲げて、その達成に向けた経営トップの関与というのが究極の安全、輸送機関の安全ということになるんだということで、ここでも、現場第一線とトップとのコミュニケーションということを言っておるわけであります。

 皆さんの、国土交通省の監査でも、ずっと継続監査しておる中で、こういったトップの現場とのコミュニケーションがなされておるというような報告もされておるわけでありますが、今回の社長の交代劇は、まさにこれに全く反するような、逆行するような形で、社長の信頼感が失われておるという中で、管理職が四百名以上も異議を唱える、社長交代をすべきだというような形で噴出をしてきたというふうに思うわけであります。

 これは、大臣も去年の事業改善命令については直接社長にお話をしたというふうに思うわけでありますが、今回のJALの社長交代劇ということについて、昨年の一連の新町社長の御発言と照らし合わせて、大臣としてどういったお考え、感想を持つのか、率直なところをお聞かせいただきたい、こういうふうに思います。

北側国務大臣 日本航空グループも民間企業でございますので、その経営体制のあり方について私の方からコメントするのは控えさせていただきたいと思っております。

 先般、新たに社長に就任されます西松さんが私のところにいらっしゃいました。私の方からは、昨年の一連のトラブルを踏まえまして、また、再発防止策を取りまとめて、それを今実行に移しているわけでございますが、現場とのコミュニケーションをしっかりやってもらいたい、経営陣と現場とが一丸となって安全な航空を確保していただけるように、そして利用者の方々の信頼回復を得られるようにしっかり取り組んでもらいたいということは、新たにこのたび社長になられる西松さんの方には申し上げたところでございます。

鉢呂委員 私は、今回の委員会を開くに当たりまして、参考人招致ということで、次期社長の西松さんですか、ぜひということで理事を通じてお話をさせていただきました。残念ながら、私だけのということで、これは賛成を得られませんでしたが、ぜひ林委員長、早急に、やはりトップの重要性ということがありますから、この参考人招致をぜひ実現していただきたい。よろしくお願い申し上げます。

林委員長 理事会にて協議します。

鉢呂委員 今、大臣からお話があったわけでありますが、昨年この委員会等でもお話をされている決意といいますか、あるいは実際のやっておる中身と相反するような形で今回こういう社長交代劇というのがドラスチックに行われたわけであります。

 そこで、いろいろやはり我々としても考えなければならない。前回は、経営の改善命令というところまで踏み出すべきでないだろうかというお話もさせていただいたんですが、きょうは、一つは、やはり今回の法改正が本当に安全を貫き通してそれを実効性のあるものにしていくという法案になっておるのかどうか、それが一点。

 同時に、行政の検査体制というのがこれまでも言われてきました。前回もお話ししましたが、大臣と私は同期でありますが、この十六年間の国政で私にとって一番印象的なのは、やはり大蔵政務次官をやっていたときの住専のああいう不祥事といいますか、金融行政が護送船団方式になっておった、いわゆる行政の執行ということに対して、指導監督という形なんですが、きちんとした監督というのがなされておらなかったということで、金融庁を別途置きました。

 それとまた、私もかかわらせていただきましたBSEの、いわゆる食品の安全についても、これは厚生労働省と農水省のいわゆる行政の執行が適切でなかったと。やはりこれをきちっと第三者的に管理監督をし、そしてその評価をして次の政策に映させるということの大切さというものを身にしみて、そういう意味では今は過渡期であろうと。

 今回の航空行政についても、安全委員会が昨年の八月ごろに中間答申ということで出しました。

 しかし、その後、国土交通行政の、住宅に関して、まさに住宅の安全性をチェックする機関が、民間の検査機関というものをきちんとチェックできないでいるということも明らかになったわけでありますから、私は、そういう面で、国土交通省のあらゆるこういうチェック、管理監督をするその機能というものをどういったふうに見直しして本当に実効の上がるものにしていくのか、ここがやはり問われておるという観点で、きょうは具体の例を私の方から示しますので、大臣の方で、やはり政治家が大きい意味で現状を変えていくということの必要性があるなと。

 私もこれまで勉強する中で、事務当局、お役人の皆さんは、やはり既存のところがありますから、改善の努力はされておると思いますが、本当にそれが実効上がるものになっておるのかどうかの、そこのところの大英断というのが、必ずしも、この間の日本の官僚制度の経験からいっても、なかなかそこが出し得ないというところを、やはり思い切って今、政治の、我が委員会で変えていく段階にあるのではないか、こういうふうに思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 そこで、先ほども三日月委員からもお話ありましたが、最近の大型機、これはもちろん航空機でありますが、大型機の航空事故等の発生件数、これはもう既にホームページにも出ておるんですが、この四年間、平成十五年の一月から今年の二月までのデータを見ましても、航空事故というのは、これは客室乗務員に、機内でいわゆる揺れが激しくて骨折の事故が起きたとかいうのをいうんだそうですが、これはこの四年間、平成十五年三件、五件、一件、一件という形になっています。そして重大インシデント、重大な事故の兆候と言われるようなものが七件、五件、八件、ことしはまだゼロということであります。

 ところが、イレギュラーの運航ということで、これがこの四年間で二百一件、二百十八件、そして昨年が二百五十五件。この一月、二月で五十九件。ことしに入っても、先ほど調べてみましたら、一月で二十七件、二月で三十二件。この二月三十二件というのは、この四年間でも一番多いものと同数の件数であります。

 そういう面では、イレギュラーの運航ですから、この中身を見ましても、例えば徳之島空港で鹿児島行きのJALが燃料漏れで欠航したとか、あるいはエンジンをかけるための駆動ワイヤが摩耗してかからずに欠航したとか、あるいはこれも、宮崎発羽田行きが、三月五日ですが、油漏れで欠航するとか、その他、部品のふぐあいというようなものが多々あるわけであります。

 私も勉強させていただいたのですが、アメリカの損保会社のハインリッヒさんという方が、六十年前です、大事故が起きる前には必ず二十九件の小さな事故が起きる、そしてその前にさらに小さなトラブルが三百件起きると。ですから、小さなトラブルといってもこれは大変重大なことなんだということを六十年前に言って、これが一つの原則になって、一昨日の全日空の副社長さんも同じようなことをお話ししておりました。ですから、小さな毎日毎日の努力、トラブルを一つも出さないんだという努力が大切なんだというような話をされておったわけであります。

 私は、このイレギュラー運航の約二百件以上、だんだん増加をしております、この中身を見ますと、先ほど言ったように非常に整備不良、もちろん機械ですから突発的に計器が不良になるとか、いわゆる脚が閉じないとかいうのはあるんでしょうが、非常に整備不良に伴うようなものが出てきておるというふうに思うわけであります。

 大臣、ヒューマンエラーということがよく言われますが、整備不良に伴うようなこういった、小さなと言っちゃおかしいんですが、整備不良によって引き返すというのが非常に多いような感じで私は見ておるんですが、大臣の感想をお聞かせいただきたいと思います。

北側国務大臣 大切なことは、事故にさせないということが大事だと思うんですね。イレギュラーな運航というのは、この数を見ていただいてもわかりますとおり、これはこれからも、ゼロにしろと言っても、それはない方がいいに決まっていますが、ゼロにしろと言ってもこれは多分無理なんだと思うんですね。むしろ、そうした一つ一つのイレギュラーなことについて、なぜそうなったのかということについてきちんと調査をし、明らかにしていくこと、そうした努力が大切だと思います。

 そうしたことがないように努めていくことが大事で、最も大事なことは、そうしたことがあっても事故には絶対に結びつかせないということが、特に航空にあっては大事なことなんだというふうに思っております。

鉢呂委員 もちろん、それはそのとおりで、二重三重の体制といいますか、大きな事故に至らずということが大事だと思います。

 ただ、中身を見ますと、先ほど言ったように、燃料漏れ、油漏れ、あるいは異臭を発したとか、前脚ステアリングが不作動になって滑走路上で停止してしまって牽引車で移動したとか、先ほど言いましたようなさまざまなものが起きています。

 私ども普通に考えれば、やはり整備が必ずしもきちっとなされておらないのではないかというふうな感じで、大臣も昨年の四月十九日の参議院の国交委員会で、佐藤雄平氏の質問、規制緩和が安全を損なうことになっておるのではないかということに対する御答弁で、経済規制は緩和しても、特に安全確保という社会的規制は堅持していかなければならないと思っています、今委員危惧されている安全面での規制が、逆にそういう流れ、逆にそういう流れというのは、緩和の流れをされておるのではないかというようなことについては、私はよく見ていく必要があると思います、こういう答弁をされておるわけであります。

 私は、そういった意味で、後で具体的に言いますが、整備のあり方、このことについてやはり大きく全般的に見直していく必要があるのではないか、こういうふうな感じがしておるところであります。

 その中で、例えば、一つは、よく言われておるんでしょうが、着陸をして次の離陸をする間、飛行間と言うようなんですが、飛行間点検というのが、従来は整備士、ダブルチェックというふうなことで、複数でやっておったのが、今は一人で可能であるというような法改正がなされたんだというようなことで、本当にこういうふうに、小さなトラブルかもわかりませんが、これほど頻発をするんであれば、きちんとそこは行政として、こういう飛行間チェックというもののあり方、改善のあり方というものを、旧来のそういった、法とか政省令の改正に伴ったからこれはもう仕方ないんだというような形でなくて、やはり柔軟に、何がその背景として原因があるのか、そういった見直しをすることが必要になっておるのではないか、こういうふうに思いますが、いかがお考えでしょうか。

石田大臣政務官 航空機の整備に関する規制につきまして、航空法制定以来、航空機の性能の向上等の環境変化、また諸外国の制度を踏まえながら、安全性を確保しつつ制度を見直してきたところでございます。

 平成八年の航空機検査の制度改正は、国が十分な能力を有すると認めた整備事業者が検査した航空機のみを対象として国の検査手続を一部見直したものでございます。また、平成十一年の航空運航整備士導入は、整備作業には一等航空整備士等がすべて従事しなければならなかった制度を、軽微な作業に限りまして必要な能力を有する一等航空運航整備士が従事できる制度としたものでございまして、いずれも仕組みを見直しつつ、安全性を確保しているものでございます。

 また、議員御指摘の飛行間点検につきましては、航空機の設計、性能が向上したことを受けまして、航空会社の判断により、複数の整備士で行っていた点検を一人の整備士でよい、いわゆるシングルチェックとしたものでございます。安全性を堅持した上で規制内容を見直したものでございまして、制度改正によりふぐあいが出ていない現時点でさらに見直すことは考えておらないわけでございます。

 なお、今後とも、安全規制につきましては、国際標準も踏まえまして、また事故や安全上のトラブルも分析しながら、適時適切なものとなるよう常に見直しを行うことといたしておりますけれども、緩和を目的とした制度変更を行うことは考えておりません。

鉢呂委員 石田政務官がペーパーを読んでいただいて結構で、政治的なやりとりにしたいと思うんですが、ただ役所のだけを読んだのでは困りますので、私が言っているのは、飛行間、一名でやっているんですが、先ほど言ったように、脚のステアリングが不作動になったとか、非常にそういうものが多いんですね。

 我々は乗客、私は毎週乗っていますが、外部のことはわからないのが多いんですが、しかし、やはりこれは大事なことで、この二カ月だけ見ても、脚のところがふぐあいで、出し入れのランプのところがきちっと警告がついて戻ったというのも相当あるようでありますが、こういうトラブルが出ておるわけでありますから、そういう面で、大臣として、私は何も私の言っているのが絶対だと思いません。ただ、一名で本当にいいのかどうかの検討は、やはり大臣なり政務官の方で、本当に大丈夫かよというような疑問のもとに、行政としてのチェックといいますか、本当に一名で大丈夫なのかなという検討はあってしかるべきでないかということなんですが、そこのところは、大臣、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 そしてもう一つは、おとといも安部誠治参考人が、海外への発注、海外整備委託ですね、これは、一つは、法的に効力が及ぶのか、二つ目に、品質が維持できるのか、三つ目に、本社の技術水準をなくしてしまうのではないかと。まさに本社が管理監督をある面では委託先にしなければならない、こういった技術者がいなくなる、これが将来の安全の最大の脅威になるのではないか、ここまで安部誠治さんはお話をしたわけです。

 私も調べてみましたら、二〇〇〇年ですから今から六年前、これは海外委託は六%でありました。そして、二〇〇二年は三四%、昨年、五年のJAL系だけを見ますと四五%に、これは海外への整備発注でありますが、このようにふえてきておるわけであります。

 昨年の十一月十四日、JAL機がエンジンの一基目と四基目を全く取り違えて飛んでおった、七カ月間も飛行しておったという、これは重大なミスになるんだそうですが、このJAL機は、シンガポールのSASCOというところで機体整備をしておったというようなことで、こういった単純にしてかつ非常に重大なミスというのは許されないと思うわけでありますが、こういう形がなされております。

 そういったことで、この外部発注について、やはり、安部先生の言われたような、一定限度のところで規制をするとか、一定割合のところで規制をする。このままいけば、一体どこまで海外委託というのがなされていくのか、あるいは、本社における技術の確保というのは本当に大丈夫なのかどうか、この点について大臣に御答弁をいただきたいと思います。

北側国務大臣 これは、自社整備をする場合、それから国内で外注する場合、それから海外に外注する場合、それぞれあるわけですね。

 これは、平成十六年度における我が国の大手航空会社の整備作業の状況でございますが、統計を見ますと、例えば、外注しているからふぐあいが多いというふうにはなっておりません。その実態を見てみますと、海外を含む外注整備に起因する機材トラブルが自社整備に比べて多く発生しているわけではないわけでございます。ですから、外注だからだめなんだということではないと認識をしているところでございます。

 それから、整備作業の外注先を、今般の法改正におきまして、国が作業実施能力を認定した事業場に限定をすることとしております。国は、これらの外注先を認定事業場として、立入検査などを通じて直接指導監督するということにぜひさせていただきたいというふうに思っているところでございます。

 また、海外委託した場合に、例えば、きちんと監督できるのかというふうな御質問もあったかと思いますけれども、海外の外注先であろうと、認定事業場にこれは限定をしていくわけでございますので、国は、この外注先を直接指導監督することには変わりはないわけでございます。

 ただ、委員の方からおっしゃった、みずからが技術水準をきちんと維持していくということは、やはり大事なことだというふうに思います。航空会社も大手、新規会社等々いろいろありますから一概には申すことはできませんけれども、やはり自社の技術水準の保持という観点から、自社で整備を適切に実施する能力を保持することは、これは当然望ましいことであるというふうに考えているところでございまして、そういう観点から、適切な指導は今後とも行っていきたいというふうに考えております。

 それからもう一点、昨年の、エンジンを左右取り違えて装着したという件でございますが、これは極めて遺憾なことだというふうに思います。シンガポールのSASCO社というところに外注をしておったわけで、ボーイング747型機の定期整備を行った際に左右取り違えて装着をしたというふうに聞いているところでございます。

 これ自体は、左右取り違えてもエンジン自体には差異がないために、ボーイング社におきましても、これはメーカーでございますが、安全上の問題はないというふうに聞いておりますが、やはり整備というものは、きちんと確実に、適切にやってもらわないといけないわけでございまして、その日のうちに、日本航空及びこのSASCO社に対して原因究明と再発防止を指導したところでございます。

 今後とも、国内に発注しようが海外に発注しようが、整備作業が適切に行われるように厳しく指導監督してまいりたいというふうに思っているところでございます。

 今回の件に関しましては、口頭による指導を行っているところでございます。

鉢呂委員 一つは、私は、海外だからふぐあいが多いというような、皆さんのデータからいけば同程度という形で出ておることは承知をしております、多く出るからということだけではなくて、今申し上げました。

 それから、このエンジンの入れかえ、これは専門家から聞きますと、着陸時の逆噴射を行うんだそうですが、その角度が違うというようなことで、しかも重大なのは、この七カ月間全然わからず、機体を受領するのは本社で行うというふうには聞いておりますが、これは長年、やっとこれが機体整備の段階でわかったというようなことで、通常わかりにくいんでしょうが、そういうことがあってはならない。もしくは、これが重大なことにつながるようなことになれば大変なことになるわけですから、そういったこともあわせて、自社できちんと技術水準を管理して、そして的確に下請、外注について、これを領収する場合も見られるかどうか、こういったものについては極めて重要だと、一昨日、参考人の発言を聞いて私は考えておりますので、これをどういうふうに担保するのか、大臣も今後御検討をいただきたい、こういうふうに思います。

 次に、私は一番申し上げたいのは、国の安全検査の関係でございます。前回も若干お話をいたしましたが、一つは、一昨日の安部誠治教授の発言も、性善説に立った検査の時代ではなくなったのでないかということであります。

 大臣にも前回お話ししましたが、ずっとJALの抜き打ち検査ですとか、検査を続行して、十二月の二十二日にその検査結果、検査報告というのが国土交通省から出されておりますが、この十二月二十二日でも改善の方向にあるというような形で、中身を見ても、どういった指摘をしたのか、そして、どういった改善がなされたのか。これ以上のものはないんですかと言ったら、ないんですと。ミーティングを二百回以上やったとか、こういった現場の形で、きちんと整備の形でやっておるとかいう結果だけでございまして。

 私は、やはり検査のあり方、姿勢というものが抜本的に変わらなければならない、旧来の護送船団的な指導、そして監督するということではなくて、やはりきちんと大臣の方にも、こういった指摘をした、そしてこういった改善が見られたというような検査体制に変える必要があるのではないか、こういうふうに思うわけでございまして、検査体制の転換ということについて大臣の御所見をいただきたいと思います。

北側国務大臣 昨年の一連のトラブルを受けまして、航空局の安全監督体制をやはり強化していかないといけないという観点から増員をさせていただきました。二十七名の増員をしまして、監視監督体制を強化し、今後さらなる増強についても検討してまいりたいというふうに思っております。

 また、アメリカの連邦航空局における研修に航空局の職員を派遣するなど、監査の手法についても諸外国の事例を十分に研究させていただいて、その見直しを今後とも図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

鉢呂委員 その検査の手法といいますか、あり方について問うたんですが。

 例えば、これまでは、運航関係二十名、整備関係十四名の職員で安全基準を策定したり規程類の審査を実施する、それと同時に、兼任で九十七社の航空運送事業者の監督を行っていたということでございます。したがって、私どもも痛い経験をした。いわゆる行政のさまざまな施策、これは指導もあるでしょう、そういうものと、規程とかそういう基準をつくることと、そして監督をするというのが一体でやっておったわけでありまして、ここはやはりきちんと区分けをする必要がある、こういうふうに思うわけでございます。

 そういう中で、今大臣も言われましたように、二十七名増員をしたということであります。その中身をいろいろ聞いてみますと、そういう中でいわゆる管理監督官、検査官というのを独立的にして、ここに十八名単独で置いた、しかも航空会社ごとにということで、大手のJAL、ANAには五名ずつ配置をして、その他の航空会社に五名というような組織図であります。

 ただ、私は非常に懸念するのは、前回、大臣もまずはそこでやってみるんだという言い方でございました。例えば、この中身を見ますと、先ほど言った五名というのは、ほとんど単独で、課長補佐が総括で一人、あと運航で第一係と第二係、整備で一係と二係、ほとんど単独、一人世帯という感じであります。これで果たして本当に日本のこの過密な航空会社の管理監督、検査というものができるのかどうか、非常に私は危惧をするわけであります。

 事務方に聞いても、まずはこれで、こんな二十七名もふえたのはもう大変なことなんだということでありますが、私は、やはりどういう検査体制にしていくのかというきちんとした計画、それに基づいて現状は二十七名しか到達していないというものがなければ、全体検査をきちんとこういう方向で転換するというものが何ら見えないわけでありまして、前回も、大臣だけでなくて副大臣、政務官にも、そういった検査体制の将来の目標、組織図、組織体制、こういうものをつくるべきだというふうに私はお話をさせていただきました。

 管理、監査の体制の規模、これについて大臣の方から御答弁をいただきたいと思います。

北側国務大臣 そういうこともあって、今回、これはかつてなかったことなんですね。委員からすれば不十分だと思われるのかもしれませんが、人員が国土交通省の中で大幅に抑制されている中で二十七名の増員をしたわけでございまして、これは今委員のおっしゃった観点から大幅に増員をし、そして安全監督部門を強化したということでございます。

 また、今委員の方からお話がございましたように、JALグループ、ANAグループ、その他の航空会社担当ということで専従チームを三チーム編成する、これも新たな取り組みでございます。こうした取り組みを通じて、しっかりと安全管理をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

 今後のことについては、そうした状況も見つつ、さらなる増強についても検討させていただきたいと考えております。

鉢呂委員 アメリカでは、一九九六年の事故を契機に、各航空会社ごとに安全基準に適合しているかどうかを監視する新しい監視プログラム、これを九八年に導入して、検査官が、立案と実施、評価、分析、このプロセスで体系的な監視を実施するということで、十航空会社、大手の航空会社には四百六十名、一社平均四十六名配置をしてやっておるということですから、日本の五名体制からいきますと、かなりの強化した形でやっておるわけであります。ぜひ、今大臣がお話をされた、これにとどまらず、どういった検査がいいのかどうか、人員の配置についてきちんとした方向づけをしていただきたい、こういうふうに思うわけであります。

 ちなみに、EUについても航空安全規制は欧州航空安全庁というところで行い、イギリスについても独立機関としての民間航空庁の中でやっておる。

 先ほど言いましたように、航空行政と検査管理機関、この分離。事故調とはまた違った形で分離する方向づけ、これについてちょっと大臣の所感を述べていただきたいと思います。

北側国務大臣 航空輸送の安全確保につきましては、航空会社の安全監督を一元的に行う今の体制というのが適切な体制であるというふうに思っておりますし、国際的にもこれが一般的なものであるというふうに認識をしているところでございます。

 国交省といたしまして、先ほど申し上げたように安全管理体制について航空局としても強化をさせていただいているところでございますが、さらに、今回の法改正でお願いをしておりますのは、公共交通の事業者として安全管理体制をしっかりとつくっていただく、それを国交省が評価をする仕組み、安全マネジメント評価と申しますが、こうした新たな組織も別途設置をさせていただいて、そちらの方からも安全管理体制がきちんとできているかどうか評価していこうということで取り組みをさせていただいているところでございます。

鉢呂委員 それと、いわゆる国交省のOBが主要航空会社に取締役以上という役員に天下りしている件数ですが、JALで二名、ANAで一名、あと日本貨物航空で一名、エア・ドゥで一名というような形で、これは取締役以上であります。それ以下について私がお聞きしたら、国交省ではとらえておらないということで、出してもらえませんでした。法に基づいて二名天下りしている分についてはお示しをいただきましたが、その他については把握しておらないと。通常からいけば絶対把握しているはずでありまして、やはりこういう天下りが、こういったチェック、検査に甘くなる、公正さ、厳密さを失うようなことがないように、これについても大臣から御答弁をいただきたいと思います。

北側国務大臣 これまでも、航空であれ鉄道であれ、公共交通にとって安全確保というのは最優先のことでございます。この安全確保のために、今後とも国土交通省としては厳しく監督、監視をしてまいりたいというふうに思っております。

鉢呂委員 アメリカの方法がよいかどうかはいろいろ議論のあるところでありましょうが、アメリカでは日本の処罰の規定とは逆でして、さまざまな形で、抑止力としての法令違反の摘発というような形で、先ほど言ったエンジンの間違いなんというものは罰則の対象ということで、例えば、酸素ガスを危険物輸送規則の違反ということで積み込んだ場合に、これは二〇〇一年ですけれども、三件ほどあるんですけれども、一件当たり約二十三万五千ドルですから、日本円で二千万を超える罰金を三件ぐらいかけております。あるいは、先ほど言ったランディングギアの防護装置を損傷したまま四十七回も飛行したなんというものについては、これまた二十一万一千ドルというような形で罰金をかけておる。

 日本の場合は、聞きますと、処罰規定はあるんですが、国土交通省が告発をして処罰したということはかつて一回もない。アメリカ航空局の場合は行政罰で、即刻行政が処罰をかけるという方法の違いはありますが。

 大臣、今回も一億円以上というような形の処罰規定はつくったんですが、日本は百万とか百五十万以下になっておるんですが、一体これが牽制になっておるのかどうか、あるいは処罰をかけるという決意があるのかどうか、そこの決意をお伺いいたしたいと思います。

北側国務大臣 アメリカの制度はアメリカの制度といたしまして、事業改善命令という行政処分があるわけですね。これも大変な行政処分でございまして、昨年、日本航空グループに対して事業改善命令を出したわけでございますが、このこと自体が、これは社会的にも大きな、ある意味では制裁と言えるかもしれません、を受けているわけでございまして、それに対して再発防止策をJALとしては取りまとめた。その後も厳しく立入検査、抜き打ち検査も含めてやらせていただいているという状況が続いているわけでございます。

 こういうアメリカのようなやり方もあるのかもしれませんが、やはり我が国においては、昨年、JALグループに対しては事業改善命令という、これも非常に例外的な措置だと思います。厳しい措置をとらせていただいて、やらせていただいておるということもぜひ御理解をいただきたいというふうに思っております。

鉢呂委員 改善命令をかけて措置を講じておるというのが、昨年の三月―五月の段階でした。前回もお話ししましたが、その後もさまざまな事故といいますかインシデントのたぐいですが、頻発をしておる。皆さんが抜き打ち検査も含めてかなり入っておるんですが、それは、今日まで続いておるというふうな受けとめ方もできるわけであります。

 昨年は、例えば六月七日の参議院の国土交通委員会の末松信介さんでしょうか、これは自民党さんの質問で、岩崎航空局長が答えておるんですが、先生御指摘の今後トラブルの続発ということになりましたら、その状況に応じて、国土交通省としては利用者の安全の確保を最優先とした適切な対応を考えていきたいと。これは、末松さんはやはり運航停止処分というものもきちっとやるべきではないかということに対して、岩崎航空局長は答えておるわけでございます。

 私は、やはりこのことについても、もう実行するような形が必要ではないかなというふうに思いますが、大臣のお考えを聞きたいと思います。

北側国務大臣 制度としてあるものでございますので、当然、事業改善命令を出してもきちんとした対応がなされていないということであるならば、最終的な手段として、今おっしゃった運航停止というふうな権能も与えられているわけでございます。ただ、一方で、運航停止というのは単にその事業者だけにとっての問題ではございませんので、その辺のところも、重大な措置でございますので、利用者の方々もいらっしゃるわけでございます。

 そうしたこともよく考えて、これはあくまで最終的な手段として、持っていることは間違いございませんので、そういうことが本当に必要な場面が私はあってはならないと思いますけれども、そうした権能はきちんと持っておる。それは適切に判断をしてやっていかなければならないと考えております。

鉢呂委員 先ほど言ったように、さまざまな検査をやっておるんですが、必ずしも透明性があるといいますか、指摘はこういう指摘をしておるんだ、これに対してこういう改善がなされておるんだと必ずしも世間に、国民にわかるような形に、大臣も、ですから、あの改善はこういうふうにしているというだけの話で、実際、こういう問題がありますと文書か口頭でか指摘をしたことについてはやはり大臣まで上がってくるという検査の責任性、検査する方も責任を伴うわけでありまして、こういう厳しさがやはり必要になってくるのではないか、こういうふうに考えておるところであります。

 残すところ十分しかなくなったんですが、同じ建物の安全性についても、この間大変大きな問題になっております。私の地元の札幌市における建物の耐震偽装、これが二月の二日に実は発覚をしておったんですが、三月の五日ごろ、札幌市がこの関係について公表をしたということでありますが、大臣の方からこの中身についてお伝えをいただきたいと思います。

北側国務大臣 この内容も話しますと、大変長くなりますので。

 三月二日の日に札幌市の方から、建築確認した五件について偽装があったものと判断いたしまして、北海道並びに国土交通省の方に連絡があったわけでございます。

 保有水平耐力が〇・五未満の、いわゆる危険な建築物というものはないというふうに判断をしているところでございます。札幌市が今調査をしているところでございますが、札幌市の判断として、これは構造耐力の数値の割り増しを行い、計算書類の差しかえの疑いが認められたということでございます。

 この建築士、浅沼建築士という人でございますけれども、全道で百十二の物件に関与をしております。北海道以外では仕事はしていないというふうに本人は言っているようでございます。札幌市内で七十九件、このうちの三十三件について偽装を認めているというふうに聞いております。現在、札幌市それから北海道、それから他の特定行政庁におきましても、国土交通省と連携をしながら、調査をしているところでございます。

鉢呂委員 今、三十三件を偽装したというふうに二級建築士の方が表明しておる。その中で、五件は検査が終わったということなんですが、確認をするということで、まだ、物件名等については公式の行政からのお知らせはない。しかし、いろいろな形で、ここだろうというようなことで、道民の皆さんは大変不安になっておるわけでありまして、国土交通省として、公表の手続はあるようです。偽装について建築士本人から確認をし、そして検査を行って、どういうものであるのか、そして所有主に公表してもいいかどうかの確認をして初めて公表をする。

 今回は、今大臣が言われましたが、許容応力度計算で今までやってきているんですが、これに対して、高度な計算方式ということで限界耐力計算という形が出てきまして、これでやれば大丈夫だぞというようなことになってきて、どうもその確認をしておるのかどうか、この五件についても公式の公表をされておらないということなんでありまして、私は、これはぜひ早急に市民の皆さんに公表すべきものであると。

 同時に、きょうのニュースでは、この百十二件についても、市は、市の建築確認だったんですが、一年の保存期間で、すべてこの申請書はないんだと。民間の検査機関には五年の保存期間を定めておきながら、行政の方には保存期間の指定がないのだそうでありまして、札幌市は一年と定めて、すべてもうこれはないと。したがって、申請者の方から申請書類を今出させておるんだけれども、しかし、全部はどうも集まらないということで、この三十三件についても――いや、それはそのとおりなんです、確認してありますから。

 そういうことであれば、かなり、これがまた確認する作業がおくれるということでありまして、そういう中で、ぜひ集中的に確認の調査を進めて道民の不安を一掃していただきたいなというふうに思いまして、この公表の迅速化あるいは調査の迅速化について大臣の御答弁をいただきたいと思います。

北側国務大臣 公表するにいたしましても、逆に、中途半端な公表をいたしまして、市民の方々に余計不安が広がるということは、これはしてはならないわけでございまして、偽装の有無等、それから、偽装があった場合に、では、耐震性はどの程度あるのかということをちゃんと確認させていただいて、そして必要なものについては公表していく、こういう段取りで今までやらせていただいているところでございます。

 現在、札幌市を中心に耐震性の程度につきまして検証の実施をしておりまして、できるだけ早くこの調査が終了して、必要なものについて物件の公表を行っていくというふうにさせていただきたいと思っております。

鉢呂委員 これはもう、できるだけ早急に行っていただきたい。

 そして、今お話ししましたように、二級建築士が、鉄筋コンクリート三百平米以上の建築物については認められていない方が、まあ元請設計士はいるんでしょうが、丸投げのような形で受けておるということで、これも、委員長、この当該する建築士、そしてまた元請の設計事務所、この参考人招致をぜひお願いいたしたいと思います。

林委員長 理事会にて協議いたします。

鉢呂委員 そして、最後に、あと五分はないんですが、今、大臣、北海道では、北海道道州制特区法案、これが、大臣の所属の公明党さんではなくて、自民党さんが張り切っているというよりも、小泉さんが張り切っているようなんですが、この法案を出すというような形で進められておるようでございます。

 私どもも、道州制そのものについては、地域主権といいますか、地方分権という形で、これは国の形を大きく転換するものとして全体像をきちんとしてやるべきものであって、地方分権の理念なり、道州制の姿というものを国全体として考えて、それを結果として行うこと、これはもう私どももそういう方向だというふうに確信をしております。

 ただ、今回のやつは、やつはと言ったら言葉は悪いんですが、北海道に特区という形で、しかも、中身を見ますと、本当に地方分権、そして道州制なのか。らしきものということはわかりますが、こういう全体像からいって、都道府県を分けないということからいけば、北海道は一本という形でやれるということなんでしょうが、ある面では非常に実験的なにおいがする、色彩がするというふうに言わざるを得ません。

 国土交通省についても、国道の整備と管理、それから河川の管理、治山事業というようなものに限定をしながらこれを行うんだというような方向のようでありますが、大臣として、所管のこの三つの事業を含めて、私はもっと全体像を明確にする、そういう中でやはりやっていくべき問題だというふうに思うわけでありますが、大臣のこの点についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

北側国務大臣 北海道の道州制の特区法案の問題につきましては、今、政府側、内閣府の中で検討がされておりますし、また、自民党内でも非常に活発に御議論いただいております。

 自民党内の御議論を少し聞かせていただきますと、議論もかなりいろいろな御意見が出ておりまして、行け行けどんどん、やっていけというふうな方向でなされているとは聞いておりません。賛成論、反対論含めまして、さまざまな御議論がなされているというふうに聞いているところでございまして、そういう意味では、まだ、この中身について固まっている段階ではないのかなというのが私の認識でございます。

 ただ、今、委員のおっしゃったように、国土交通省からいたしますと、やはり、安全、安心にかかわる部分、ここのところはしっかり国として責任を持って遂行していかないといけない場面が多いわけでございます。そこを、道州制ということで、北海道で本当に十分できるのかどうか、そこのところはきちんと見させていただかないといけないと思っているんです。

 例えば道路でありますと、もう私が言うまでもなく、委員が一番よく御承知ですが、北海道の道路整備なんていうのは本当におくれているわけですね。そういう中で、少なくとも基幹的な道路のネットワークについては、やはり国が責任を持ってやっていかないといけないんじゃないでしょうか。

 また、ことしの冬は大変積雪が多かったわけでございますが、こういう積雪寒冷地域における冬期の交通確保は不可欠でございますけれども、こういうことも果たして北海道だけで本当にやっていけるんでしょうかというふうなことも感じますし、さらには、一昨年は、本当に台風が十個も上陸した、また大きな地震もあったわけでございますが、そういう水害等の災害から国土を守っていくという観点で、北海道の場合、一級河川もたくさんあるわけですね。大きな川もたくさんあります。そういう河川管理が本当に北海道だけでできるのでしょうか。また、大規模災害があったときは、さまざまな災害事象について精通して高度な技術力を駆使できる国の機関というのがやはりしっかりと関与していく必要があるのではないのか。そうしたことなんかも私自身は感じもし、意見も述べさせていただいているところでございます。

 道州制の論議がどう行くにせよ、こうした国がやるべき基本的な責任については、やはりその責任をきちんと果たしていけるようにしていく必要があるというふうに考えているところでございます。

鉢呂委員 大変どうもありがとうございます。

 北側大臣は秋には公明党の代表になるかというふうにうわさされておるわけでございますから、北海道の公明党さんもこれについては非常に消極的、慎重だというふうにお聞きをしておりますので、ぜひ、大きな形で道州制をしくというのは私は一向に構わないと思いますが、北海道が、実験場、試験場、何かそういう形で単なる国の合理的なものの押しつけということにならぬようによろしくお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

林委員長 下条みつ君。

下条委員 民主党の下条みつでございます。

 本件改正案、大変すばらしい改正内容だと私は思います。ただ、同僚議員を含めて多くの方々からいろいろな御指摘があったとおりで、いろいろな細かい部分をこれから検討していく課題も多くなってきたというふうに思っております。そういう意味では、私の方からは、船だとか飛行機、トラック、バス、鉄道、その他ありますが、その中でも、もし事故やミスがあったときに最も被害が多く出そうな航空部門に限って、少し絞って幾つかの御質問と御要請をさせていただきたいと思います。

 まず、今度の場合の法案の中の内部監査という問題が、指摘して、実施する予定ということが出ております。今回、安全管理規程として内部監査の実施を予定する。これまでにも内部監査は事業者が自主的にやっていたけれども、今回、文言で改めて内部監査のやり方を定めていくというふうに聞いております。

 私も企業におりましたけれども、どの企業がやっても、やはり内部監査というのは、ある程度の段階でなかなかその域を超えない。ある意味で、悪く言えば甘さがあるんじゃないかと思います。その中で、では、その甘さを乗り越えてどうすればいいかということになると思います。これが俗に言う抜き打ちの検査だというふうに思っております。今までも、御省からのヒアリングでお聞きする限りでは、抜き打ちについてもある程度やっていたというお話を聞きました。なるほど、すばらしいというふうに思います。

 この抜き打ちについてですが、ただ、伺った話を詰めていくと、抜き打ちについては事故を起こした事業者や苦情の出ている事業者が優先されて、余り抜き打ち検査は現実的にはやっていないというお話をいただきました。これはどうしてかなと私も思いまして、突き詰めていったときに、やはり監査に当たる職員の人手不足が影響しているんじゃないかというふうに思います。

 例えば、航空部門に限って言えば、私もアメリカにおりましたけれども、アメリカでは、アメリカンとかデルタなど十大航空会社には、首席検査官、地方局の検査官、客室安全検査官、分析官、データ評価プログラムマネジャー等で構成された担当チームがそれぞれの企業の検査をきっちりしていくということであります。そして、こういう担当チームが配備された上で、監視、報告、評価、分析というプロセスでやっている。すばらしい体系的になっているなというふうに思います。

 これは釈迦に説法ですけれども、米国連邦航空局、FAAの職員は、職員数だけで四万七千三百人、うち、安全部門が六千六百人、航空会社監視監督専門職員が三千三百名いらっしゃいます。一方、日本の場合は、運航関係職員が二十人、整備関係職員が十四人、計三十四人が当たっている。ただ、こういう話をすると、おい下条よ、おまえ、相手の社数が違うじゃないか、こういう話になってきます。

 そこで、調べさせていただきました。監視職員だけ絞っていった場合は、日本は三十四人で、アメリカが三千三百人。大手エアラインは、日本が今のところ十四社、アメリカは百五十社。小型機事業者は、日本が八十三社、そしてアメリカが三千社。やはり向こうが多いじゃないか、確かにそうだと思います。

 しかし、職員一人当たりの航空事業者数で割り算をしてみました。日本の場合は一人頭で二・八五社を担当しなきゃいけない。まあ単純な割り算です。地域によって違う、また飛行回数が多いところによって違う、飛行機数の多いところによって違う。単純にやらせてもらいました。アメリカも単純にやりました。アメリカは〇・九五社。つまり、三倍以上も人員が多いので、内部監査だけじゃなくて抜き打ちもきちっとできますよというのが一応数字で出ています。

 そこで、私は、人間はどの人も間違えるのが習性だと思っています。これは、その間違いをどれだけ許容できていくかということだと思いますけれども、それがあるから、法制度を整備して機械に頼っていくということであります。

 ただ、監査については、いずれにしても機械に頼れない、抜き打ちも頼れない。ということであれば、これからの話として、今言いましたように、アメリカだけと比べても、アメリカは三倍の人員をもって監査、抜き打ちをずっとやってまいりました。そういう意味では、この日本については、果たして今までの、今度の法制度はいいと思っています。おまえ、内部監査して上がってきたものを全部報告書とチェックしてやるぞ、これは確かにいいと思う。

 ただ、最初に申し上げたとおり、内部監査というのは、やはり私もそうです、自分に甘い。やはり、抜き打ち的にすぱっと入っていって、その陣容を膨らませた意味で、せめてアメリカの半分ぐらいまでもっていって、内部監査そして抜き打ちの部分についてのチェック機能を、これからの話として充足していったらどうかというふうに思っています。そういう意味で、ぜひこの点を今後の御検討課題としていただきたいので、大臣からお答えいただければというふうに思います。

北側国務大臣 先ほども鉢呂委員からも同じ方向での御質問があったわけでございます。

 今回大幅に増強をさせていただきますが、そうはいうものの、これで十分かというと、まだまだ強化をしなければいけないところはあると思っております。しっかりと海外の事例等もよく勉強させていただきまして、監督監視体制をこれからも増強できるようにさせていただきたいというふうに考えております。

下条委員 ありがとうございます。

 やはり抜き打ちを含めてやっていただくことの増員体制が、次の大きな過ちの前に小さな過ちで済ますことになるというふうに思いますので、今おっしゃったとおり、ぜひ御検討を前向きに進めていただきたいというふうに思います。

 次に、幾つかの委員からも出ておりますが、例えば私は、航空機の整備についてちょっとお聞きしたいというふうに思います。

 もちろん、内外問わずいろいろな事業がアウトソーシング化しています。この部分についても、外注の割合がふえてコストダウンをさせていただいているということであります。

 例えば、去年の整備ミスの事例でいくと、日航のジャンボ機が去年の十二月、シンガポールで委託整備されたときに、右のエンジンと左のエンジンを逆に装着された。そして、八カ月とうとう運航して、エンジンの一部の部品は、規定では六百五十回の飛行ごとにチェックをする、それを、左右取り違えてしまったために、一機のエンジンは約八百五十回もチェックなしでどんどん飛んでいたという、これは皆さんもおわかりの事例が起きております。これについて、日航は安全上の問題はなかった、国交省も再発防止を指示したという事例がありました。

 ここで疑問でございますけれども、疑問というかクエスチョンなんですけれども、このシンガポールの整備会社というのは、国土交通大臣が認定して事業場として指定したわけでございますね。ここで整備ミスが起きた。これは航空法施行規則三十七条の規定によって、認定の有効期間は二年。二年間でまた整備会社は申請をしてチェックしなきゃいけない。

 そこで、このチェックがどういうふうになっているのかなと僕は気がかりなんですよ。例えば、前からやってミスがないからいいよ、はいどうぞという感じでは、私もシンガポールに赴任したことがありますけれども、いい悪いはともかくとして、やはり日本よりは落ちるというふうに思います、いろいろな意味で。そうなると、そのチェック機能について、今どの程度、日本の飛行機会社は飛んでいった部分のチェックをやっているのかということが一つあります。

 そして、認定の責任問題ですね。例えば日本が、国が、やっていいよと、申請をした者に対して許可をする。国としての責任問題はどうなのかなということも僕は出てくると思います。

 そこで、この整備ミスをした会社が、実際、右と左、逆につけていた飛行機がばんばん飛んで、そこにはたくさんのお客さんが乗っていたということでありますから、これについて重大なミスだと私は思っています。それについて、お聞きするところによると、国交省からの御返答では、口頭で指導したと。二年に一度行う監査で再発防止になっていないかチェックするよ、こういう御回答を私の方でいただいております。

 大臣の場合は、大阪ですから新幹線があるのでありましょうし、余り飛行機に乗らないかもしれませんが、ただ、海外に行くときはお乗りになりますし、そうなると、自分の乗った飛行機が、例えば、日本の国内でもだんだんアウトソーシングになってくると、外人さんがやり出したりいろいろなことになると思いますけれども、海外で特にそうですよね。これは口頭ベースで、右と左を間違えた、いいよ、それでと。チェックも、六百五十回に一回やらなきゃいけない、八百五十回でやった、いいよいいよ、それはいいよ、また二年後にチェックするからいいよと。果たしてこれでいいんでしょうかというふうに私は思います。

 そういう意味では、口頭ベースでの指導をしたということしかお聞きしておりませんが、現実ではいかがでございましょうか。お答えいただきたいと思います。

岩崎政府参考人 先生御指摘の事例でございますけれども、エンジンは、左右取り違えてもエンジン自体に差がないため、安全上の問題はない、これはメーカーであるボーイング社からもそういうふうに言っております。ただ、やはり整備というのは確実、適切にやるべきと我々も認識しておりまして、日本航空、SASCO社に対して原因究明と再発防止を指導したところでございます。

 今回は口頭で指導いたしましたけれども、これは繰り返しになりますけれども、このミス自体、いいことではありませんが、程度問題として、安全上大きな問題はないために、この程度の指導にとどめたところでございます。海外の認定事業場であるからといって、重大なミスを起こした場合はいろいろな処分をやっていきたい、このように思っておるところでございます。

下条委員 局長、私が言っているのは、右左間違えたことは、今のおっしゃり方だと大したことないということだと思いますけれども、それは、じゃ、百歩譲りましょう。しかし、エンジン一基に六百五十回で実際はチェックをしなきゃいけないのが、今回は八百五十回飛行してチェックをした、この部分はいかがでございますか。

岩崎政府参考人 これも決していいことではないとは思いますけれども、六百五十サイクル間隔のところ二百サイクルを超過したことは事実でございます。この入れかわり判明後直ちに作業を実施しまして、異常がないことを、SASCO社、JALでも確認をしておりますので、繰り返しになりますけれども、この口頭指導ということでとどめたわけでございます。

下条委員 何でもそうです。例えば、赤信号を突っ切って、車が来ないから、事故らなかったからいいというレベルの話にまで行きそうな話になってきちゃうので、この辺でとめておきますが、要は、起きなきゃいいということじゃないと思うんですよね。六百五十回飛行でチェックしなきゃいけないのが、八百五十まで持っていっちゃったことについては、やはりしっかりと厳重に、特に、シンガポールと日本は御存じのように近いけれども、それを外注している責任は、じゃ、局長、例えば何かあったらどうするんですか。何かあったら首飛びますよ。そうでしょう。だから、それについては、今後は厳重だぞということをアウトソーシングの指定会社にもしていく意味があると僕は思います。

 ですから、例えばそれが、極端な話、国交大臣が乗っているジャンボ機だったらどうするんですか。右肩傾いちゃって、実を言うと、右と左のエンジンが違っていて、知らぬ間に七百回飛行になっていて、申しわけないけれども、大臣、非常着陸で海の上へ行っちゃったよなんというふうになったら、局長、首飛んじゃいますよ。私は、皆さんを守るために言っているんだから。

 そのためには、アウトソーシングは企業としては当然だと僕は思っています。しかし、そこに厳重に注意をしていく。今言ったように、口頭でやっただけでは、私はアジア人の習性は知っております、アジアで自分の企業でも首席でやっておりましたので。日本人と比べて、そういう事故意識、事件意識に対して非常に甘いと僕は思いますよ。そういう意味では、今後については厳しく教育していっていただき、そして指導していただきたいということをお願い申し上げたいと思います。皆さんを守る意味であります。

 次に、これも先ほどちょっと出た話なんですけれども、私もちょっとお聞きしたいのは、飛行機が、ジャンボ機が飛んできました、そして到着した後に、持ち越された故障を修理する予定がないとき、また、そのジャンボ機に前に乗っていたパイロットから、法令では指定はないんだけれども、何も故障はないという報告をある程度口頭ベースで受けた場合、あのでかいジャンボジェット機の整備を整備士一人でいいというふうになっています。

 これは私は、自分がジャンボに乗るとしたら、これは法令で指定ないですよね、局長。特に、前便のパイロットが何の問題もないという意味の報告をすれば、整備士は一人でいい、あのでかいジャンボ機を端から端まで一人で全部見ろと。それは、私は、小さい車だとわかります。あれだけ機械性能が発達している中の、先ほど同僚の鉢呂議員からありました脚の問題から始まって、尾翼、左翼、右翼、全然目で見えない部分のチェック、そして、ちょっとひびが入っていたりする部分を、果たして本当に、整備士が、前便のパイロットが何にもないと言えば、一人で全部任せちゃって果たしていいんでしょうかねというところなんです、私の質問は。

 これはコスト面があるかもしれないが、やはり故障があったり、そういうことがだんだんマスコミの表に出ると、だんだんみんなそういう会社は使わなくなっちゃいますよね。そういう意味では、私は、やはり法令で規定して、間違いない、例えば機械ごとにありますね、右の翼、左の翼、後ろの翼、脚の問題からタイヤから空気圧から、それから機内の気圧から始まって、それが全然問題ないことをチェックした上で、さらに整備士が、中にいる人間ではわからない部分をきちっとチェックするという整備が、私は、行政府として指導として必要なんじゃないかというふうに思うんですが、この辺はいかがでございますか。

岩崎政府参考人 先生御指摘の飛行間点検でございますけれども、我が国のエアラインでは、現在、通常一名の整備士が実施をしております。ただ、ふぐあいが発生している場合、あるいはその疑いがある場合、こういうものについては必要に応じて複数名による作業を実施する体制となっております。

 国際的に見ましても、一名の整備士による飛行間点検の実施というのは、欧米のエアラインでも同じようなことが行われておりまして、これ自体が今必ずしも大きな問題になっている、これがトラブルにつながっているということではないと認識しております。

下条委員 これは局長、法令で、前任パイロットというか前便パイロットですか、問題がなければ整備を一人で全部やっていいよと。私は、前から、先にちょっと質問した中にもありますけれども、監視体制とか人員が日本の場合はすごく少ないんですよ、全般的に見て。その上、アウトソーシングですよ。外に任せちゃっている。

 これからシンガポールから北の方に飛んでいったり、西海岸へ遠くへ飛んでいくのには日本の乗客がたくさんいる、まあ日本人じゃなくてもたくさんいると思いますけれども、そのときに、本当に一人でいいんですかね。局長、そういうのに乗りたいですか。それとも、何人かで本当に余裕を持ってきちっとチェックをしてもらって、時間的にフライトで詰まっているんだったら余計、整備士を多くして、その中身の濃度を高くして整備した上で安全航行をしてもらいたいと私は思うんですが、これは何か法規制があるんですか。

岩崎政府参考人 私ども、エアラインの整備規程を認可するという行為をやっております。そのときに、飛行間の点検についてどういう形でやるかというのはエアラインの判断に任せております。各エアラインの方が、今、通常一人でやりますという形の規程でやっているわけでございまして、これが、諸外国の例なんかも比較しながら、それでも大きな問題がない、こういうことで認可をしているということでございます。

 それから、なお、飛行間点検は飛ぶ間の点検でございますけれども、飛行機が夜着きまして、朝飛び立つ前にはさらに綿密な点検をやっておりますので、これだけですべての点検をやっているというわけではないということで御理解いただきたいと思います。

下条委員 おっしゃりたいことはわかりますが、やはりいつ故障が起きるかわかりません。その飛行機が最初に飛び立つときに故障がなくても、いろいろな、雲の間や高いところを飛んでいたり、鳥がぶつかるか知りませんが、隕石がぶつかることがあるかもしれませんし、いろいろなものをチェックすることで、ある意味では、最初の旅立ちのときにチェックしていればいいということではないというふうに僕は思いますので、この辺を含めまして、私の方からも今後の課題として御検討いただければというふうに要請したいと思います。

 次に、今度の法改正の航空分野についてなんですが、安全管理規程の策定等の適用対象事業者、これが、簡単に言えば、定期的に路線を定めて大型機、中型機による旅客、貨物の輸送を行ういわゆるエアライン、これが大体二十社程度というふうに聞いております。そして、対象外となる事業者は、上記以外の、セスナ等の小型機を使用して遊覧飛行、貸し切り輸送、または写真等の航空機使用事業が中心となる航空運送事業者、これが約六十社程度。簡単に言えば、適用対象者が二十社、対象外が六十社、社数でいけば、こういうことになります。

 それで、対象内となる事業者の事故数をちょっと確認させていただきました。それによると、五年間で約十三件の事故がありました。これが対象者の二十社に対する事故件数であります。一方で、対象外と思われる企業所有の小型機やヘリコプターの事故というのは約三十件。ということは、簡単に言えば、対象となる事業者の事故数よりも対象外となる方々の事故数の方が多いという数字の結果になっています。小型機、ヘリコプターというのは登録制になっていますし。

 それで、私は何を言いたいかというと、恐らく局長が今頭によぎっているのは、対象となるのはたくさんの人を乗せるじゃないか、こういうことだと思います。私もそのとおりだと思います。

 しかし、いいですか。飛行機というのは、私に言わせればミサイルと同じであります、言いにくいけれども。いつかは地上におりてくるんですよ。そうなると、例えば対象外の小型機であろうと写真用の遊覧飛行であろうとヘリコプターであろうと、これはある意味では武器になるわけであります。大きく地上の人たちに被害を与える武器になってくる。武器という言い方はあれですね、被害を与える要素を持っている機械である。

 ということは、例えば皆さんが対象にしてきちっとやりなさいよという、ジャンボとかでかいところを扱っているのは、確かにそれは必要であると思います。でも、事故数は二十であります。そうじゃない、セスナ機とかちっちゃいヘリコプターとか、ばんばん飛んでいるのがあちこちでおっこっています。今現在も落ちている。

 ところが、落ちる場所が山の上とか海だったら私は問題ないと思います。例えば、嫌な言い方をすると、そのヘリコプターが局長の御自宅に落ちたらどうしますか。そうでしょう。いつ落ちるかわからない、チェックしなかったら。それから、原発のところに落ちたらどうするんですか、セスナが。そうですよね。学校に落ちたらどうするんですか、ヘリコプターが。前も学校に落ちていましたよね。

 ですから、私は何を言いたいかというと、きちっとした企業は確かに多くの人を乗せるのが原点にあるから対象にする、これはもうわかります。でも、逆に言えば、この五年間で事故数が多いのは、きちっとした会社よりも、きちっとしていない会社ですよ。

 私は、最初に申し上げたように、この法案はすばらしいと思っています。大変すばらしい改正で、自己申告を含めて、いいチェック機能が働いていると思うし、事故調もいいと思っています、まあいろいろな意見があると思いますが。ただ、私はその部分はちょっと譲れないなと思っているんですね。

 もう一度言います。原発にセスナが落ちても、責任はとりますか、とりませんか。答えてください。

岩崎政府参考人 私ども、今回、安全管理規程の策定を義務づけますけれども、その対象につきましては、現在、先生御指摘の範囲の事業者が適当かな、このように今思っているところでございます。

 もちろん、セスナ等の小型機の事故件数も多いわけでございますけれども、これらの小型機の事故はなぜ起こったかの分析をしますと、整備が十分でなかった、あるいは運航の、パイロットの操作がうまくいかなかった、これが主なものだと我々は認識しております。

 今回、安全管理規程というのを義務づけましたのは、いわゆるエアラインで一定規模の会社になりますと、どうしても経営と現場で一体的に安全を最優先にしてやっていくというような企業文化が構築しにくい、あるいは部門間の意思疎通が不足している、こういうおそれがあるので、我々は今まで、運航規程とか整備規程とか、そういうパーツ、パーツについてきっちり見ておりましたけれども、さらにこうした一定規模以上の会社は上乗せをしてこの安全管理規程を義務づけることが適当、このように思って、今のような対象範囲の事業者にこの安全管理規程の策定を義務づけをしていこうかなと思っているところでございます。

 繰り返しになりますけれども、セスナ等の小型機を所有している会社は通常そう大きな、大規模な会社もございませんで、また、主な原因が運航規程や整備規程の問題が多うございますので、今後、そういうことについて我々は、小型機なんかについてもよりきっちり見ていきたい、このようには思っておるところでございます。

下条委員 要するに、整備の問題、そして、小さい会社等という問題は確かにあると僕は思いますけれども、今私が申し上げたとおりで、あれは動く危険物なんですよ、飛行機というのは。上がったものは下に落ちるのであります。落ちるというか、おりるのであります。落ちると言っちゃいけない。

 ですから、そういう意味では、私は、今後の検討課題として、整備不良だったからセスナが地元の小学校に落ちて、授業中の子供たちの窓にぶち当たったということがもし起きたら、そのことを私は今言っているわけです、今後の話として。そういうことが起き得るということなんですよ。これだけ過密にダイヤがなっていて、整備もある程度お任せしちゃっているんですよ、簡単に言えば。チェックが働いていない、内部監査がない、抜き打ち検査もないんですよ、そこは。そういうところで何かもし今後に起きてもいいんでしょうか。大臣、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

北側国務大臣 今回、公共交通の一定の事業者に安全管理規程の作成並びに届け出を義務づけをさせていただこう、その趣旨は、今航空局長も少し述べておりましたが、昨年のJR西日本の福知山線での事故、またJALの一連のトラブル等々を踏まえまして、経営に当たる方々とそれから現場の方々の間で、特に大きな企業の場合そうなんですけれども、安全管理についての一体感、そういうのが欠けているのではないか。また、いろいろさまざまなトラブル事象があったときに、そういうトラブルがあったということが現場の組織の横横できちんと共有をされているのか、その辺にやはり大きな問題があるなということを我々考えたわけでございます。そこに大きな問題点がある。

 そういう意味で、公共交通に携わる事業者の方々においては、会社の中で、やはり安全管理体制、安全マネジメント体制というものをしっかりとつくってもらう必要がある。その安全マネジメント体制をつくっていくための一つの手段として、この安全管理規程をつくってくださいね、それを届けてください、責任者も決めてください、このようなことを今回決めさせていただいたわけでございます。そうした趣旨からいうと、やはり比較的大きな事業者のところでそうした問題点が多いですから、そういうところについてこのような義務づけをさせていただこうというふうにさせていただきました。

 とはいうものの、小さなところが大丈夫だと言っているわけじゃもちろんありません。これまでも、そういう小さな航空事業者についても、当然、これは運航規程や整備規程等、これは認可を国がしているわけでございまして、そうしたものを通じてしっかり安全管理が徹底できるように努めさせていただきたいと思っているところでございます。

 この安全管理規程の策定の義務づけの対象の問題についてはさまざま御議論があるかと思いますが、まずはそういう比較的大きな事業者ということでさせていただきたい。その運用をぜひ見させていただきたいというふうに考えております。

下条委員 できれば小さいところもやっていくような、検討課題に挙げていただきたいというふうに思います。

 今申し上げたとおりで、事故件数は恐らく今後もふえると思いますが、小さい、対象外のところの方が過去五年間においても多い。そして、それはたとえ小さくて、一人、二人しか乗っていなくても、落ちた場合の被害というのは、場所により、相手により非常に大きくなっていくということを、ぜひ大臣、念頭に置いていただいて、代表になられてもしっかり参考課題に入れていただきたいというふうに思っておりますので、局長もよろしくお願いいたします。

 ちょっと時間の関係があるので次に移らせていただきたい、ぜひ検討していただきたいとは思います。

 次は、労働条件と労働環境について、ちょっと幾つかお聞きしたいと思います。

 厚労省の関係の方にお聞きしたところによると、航空関係で働いている方々のうち、客室乗務員と整備士については、労働基準法に基づいて、一般と同様、定期的な健康診断を行うことになって、すべて企業ごとに独自のチェックのケアをさせている、こういうふうにお聞きしております。

 ただ、私が思うのは、またこれはもといになりますけれども、いろいろな事故やミスが起きるというのは、やはり精神的に追い込まれたり、仕事量が多過ぎたり、また、体の調子が悪い中でやらざるを得ないという、ノルマの中でやっているのではないかなということも一部あるんじゃないかというふうに思います。

 そういう意味では、単純に、お一人でも二人でも命は命。ただ、飛行機の場合は、大きければ何百人という命を乗っけているわけでありますし、それが、言いにくいですけれども、落ちた場合は何千人という命につながってくるということを考えた場合は、果たして客室乗務員や整備士の健康管理について、労働基準法のまま、企業に全くそのまま任せて、一般の、普通の、命の重みはもちろん同じなんですが、対象となることが、客室乗務員と整備士というのは全然違ってくると私は思いますけれども、それと全く同じにしちゃっていいんでしょうかねという疑問を僕は持っています。

 そういう意味では、もう少し厳しい指導をしていってもいいんじゃないかな、もうちょっと健康管理を厳しくして、精神的管理も含めてやるべきじゃないかなというふうに思いますが、どのような体制でお考えになっているか、お聞きしたいと思います。

小野政府参考人 お答えをさせていただきたいと思います。

 私ども所管しております労働安全衛生法という法律がございます。この法律におきましては、業務の内容によらず、すべての労働者の健康管理を目的として、年に一度の健康診断の実施を法律で事業者に義務づけているということでございます。

 今委員御指摘の、国際線の旅客機の客室乗務員あるいは整備士などの、いわゆる深夜業を含む業務に従事する労働者の方の場合につきましては、通常の労働者の方よりも深夜労働による身体の負担がやはりかかるということがございますので、労働安全衛生法におきましては、年二回健康診断が義務づけられております。

 また、事業者につきましては、この健康診断の結果に基づいて、必要に応じて適切な事後措置を行う、こういうふうに法令上定められているところでございます。

 そういう意味では、一般の労働者に比べて、より健康管理に対して、事業者に対して、より十分な措置を講じるように、こういう趣旨で義務づけをしているということでございます。

 委員御指摘のように、今後ともこういった法令の周知をしっかりしながら、働く方々の健康がしっかり確保されていくように私どもとしても十分対応していきたい、こういうふうに考えております。

下条委員 ありがとうございます。

 恐らくそういうお答えが返ってくると思いましたので、その範囲内以上はちょっとお答えできないというふうに私も思っております。

 そこで、何でこういう質問をしたかというと、実を言うと、こういうことがあります。

 航空機というのは非常に高いところを飛ぶわけであります。と同時に、高いところを飛行する航空機内というのは、簡単に言うと、宇宙から降る放射線の線量が地上より多いんですよ。放射線の線量です。宇宙線というのは宇宙で太陽その他から宇宙空間を通って送られてくる複数の放射線であります、これは文科省の方なら御存じだと思いますけれども、航空機の乗務員の宇宙線の被曝率が非常に高いのであります。いいですか、地上にいるときよりもずっと、ぶうんと飛んでいる飛行機の中は高い、これはもう現実に数字で出ております。

 それで、例えば国際放射線防護委員会、ICRPが、一九九〇年、今から十六年前に、航空機乗務員の宇宙線、宇宙線というのは今言ったような放射線です、宇宙線被曝を職業被曝と位置づけているんです。管理するよう勧告しており、EU加盟国では欧州放射線防護指令第四十二条としていろいろ規定している。これはもう釈迦に説法です、おわかりだと思いますので。

 例えば、関係する搭乗員の被曝線量の評価をするとか、被曝線量の高い搭乗員の線量を低減する観点から、勤務スケジュールを作成する際にいろいろな評価をしなさいということであります。

 例えば、赤道線を飛ぶのと北の方を飛ぶのでは、北の方が多いわけですよ。太陽に近いということで被曝率が高くなる。そうすると、どういうことになるかというと、これは数字をちょっと述べた方がいいと思うんですが、一般人の年間線量、宇宙線の線量限度は一ミリシーベルトというのがよく言われている限度であります。成田からニューヨークを往復すると被曝率が〇・一九ミリシーベルト、つまり、一般人が一年間に受ける宇宙線の五分の一を成田とニューヨークの間で受けてしまうということであります。そうなると、僕は、機長、副機長、それから事務員、添乗員、客室乗務員等々の方々というのは非常に健康管理が必要になってくるんじゃないかなということを前提に一番最初の質問をさせていただきました。

 そこで、今現在、文科省の放射線規制室では、一千時間の乗務をすることは日本ではない、おおよそ年間最大乗務時間数は九百時間なので、直ちに健康への影響は心配する必要はない、こういうような結論を出しています。一方で、私に言わせてもらうと、今言いましたように、非常に多くの被曝を現時点で受けているわけですね。私は、この被曝率というのはこれから非常に問題になってくると思います。

 例えば、最近でいえば、北の方の飛行ルートが多いと、例えばがんの発生率が非常に多くなったり、それから乳がんだ、皮膚がんだという発生率が多くなっている事例も出てきております。

 ところが、私のところにある事例は、すべて海外の航空会社にそれぞれのEU団体とか海外がさせた事例であって、なぜ私の手元に日本のがないかというと、日本では、今言いました法律の中で、全然被曝については、例えば日航とかANAとかいろいろ会社がありますよね、立派な会社が、そこに入社した人たちに対して説明がないんです、説明の義務がない。したがって、そのぐらい被曝するよということは言う必要もないんです、もしくは聞いていない。これが、今、日本の航空会社での実態であります。

 でも、これでいいんですか。被曝率はもう数字で出ています。私は、今までの法律でそうなっていますという答えしか返ってこないのはわかっています、それは。だからどうしましょうという話です。

 そこで、提案でございます。ぜひ、日本の航空会社にこの被曝率についての検査をしてもらいたいと思います。そして、従業員の方々に、今度四月から入るんですか、よく知りませんが、ぜひこの被曝について徹底的に数字を見せてあげてもらいたい、ディスクローズしてもらいたいと思っています。お答えいただきたい。

下村政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、人間が自然界から受けている自然放射線の量は年間約二・四ミリシーベルト程度と低いわけでございますけれども、高高度を飛行する航空機におきましては、宇宙線の影響によりまして、地上と比較して時間当たりの被曝量が大きいことは事実でございます。

 国際放射線防護委員会、ICRPの九〇年勧告の中でも、先生御指摘のように、航空機における被曝を職業被曝に含める必要があるとされておりまして、文部科学省の放射線審議会におきましては、同勧告を踏まえまして、「国際的動向も考慮しつつ対応することが適当である。」との意見具申を関係省庁に行ったところでございます。

 これを踏まえまして、文部科学省といたしましては、平成十六年六月に、航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する検討ワーキンググループ、これを設置いたしまして、航空機乗務員等に対する宇宙線被曝の影響につきまして検討を進めました。そして、昨年十一月でございますけれども、報告書を取りまとめて放射線審議会に説明をしたところでございます。同報告書では、航空事業者におきます自主的な取り組みとして、放射線による被曝管理のために、年間五ミリシーベルトの管理目標を定めるということを提案してございます。

 放射線審議会におきましては、昨年十二月より、同報告書を踏まえた航空機乗務員の宇宙線被曝管理に関しますガイドラインの策定に向けての審議が開始されたところでございます。放射線審議会におきましては、現在、ガイドラインの案文を取りまとめまして、パブリックコメントを求めているところでございます。

 今後、その結果を踏まえましてガイドラインが取りまとめられ、同審議会より、国土交通省も含めまして関係省庁等に対して提示されることとなるものと思料しております。

下条委員 ありがとうございます。今お読みいただいた中身は私の手元にもありますので、ありがとうございます。

 そこで、私は、今、質問のもう一つは、海外では実を言うと航空会社が検査をしていて、かつ、新入社員、機長、搭乗員、整備士等について説明をしております。これを、きょう、これがあるからこの法案に反対とか賛成という話ではありません。今までの法律の中で、網の目になっていた部分の、すき間の部分はきちっと直していくべきだという私からの提案であります。これで、例えば先へ行って、乳がんの発生率がどうだこうだといって、それがすぐ訴えられたりして出るよりは、今のうちから動き出すべきではないかというふうに思っています。

 日本の各航空会社にこの開示を徹底すべきだと思いますが、局長の意見を教えてください。

岩崎政府参考人 先ほど文科省から御説明があったとおり、今、放射線審議会の審議がなされていると承知をしております。航空会社の自主管理のためのガイドラインとして取りまとめる見込みだ、このようにも聞いておりますので、それを見させていただきながら適切な対応をしていきたい、このように思っているところでございます。

下条委員 私は今、答えを前向きととりました。

 私も、この委員会に所属している以上、この件についてはしっかり、後押しですよ、足を引っ張るんじゃないですよ、あくまで後押しをさせていただきたい。今までの法律で間違っているわけじゃないんだから。ただ、現状として、この部分は実を言うと知らない人が多いという部分でありますので、新入社員を含めてディスクローズすべきだというふうに思います。

 そこで、もう時間が来ております、最後でございますが、現状の検査をしていただくこと、またそれをディスクローズすることと同時に、ここに一例があるんですが、フィンランドでは、放射線を浴びて遺伝子に障害が起きて、一般人よりも搭乗員については乳がん発症率が五倍、皮膚がん、悪性黒色腫の発生率が非常に倍加している。太陽光線、悪性黒色腫の発生率というのは、非常に重い調査結果が実を言うと出ております。

 ですから、私は、何事もそうでありますが、インプルーブメントしていけばいい、どんどん改善されればいいと思いますので、こういう事例の中で明確に出てきているところを見てよといって、ぜひ推し進めていただきたいと思います。

 その中で、今のは、僕は端っこに含めたのは、整備士というのを含めたんですが、実を言うと、確かに乗っている飛行機は、整備士は乗れませんから、外側に乗ったら寒くて死んじゃいますので。飛行機の中に機長と副機長、操縦士、そして搭乗員が乗っていますが、その飛行機が戻ってきたものを整備するのは地上の整備士であります。ですから、そういう意味では、整備士も、例えばアスベストもそうですよね、つくっている方もさることながら、そこに住んでいる人が一番被害をこうむるわけであります。

 だから、そういう意味では、今、明確にちょっとお答えの中に入っていなかったので、もう一度御質問をしたい。もう時間が来ているのであれなんですが、最後に、局長の方からも整備士についても含めていただくようにちょっと要請したい。お願いいたします。

岩崎政府参考人 整備士の方に放射線がどれぐらい影響するのかというのは、私、今知見を持ち合わせておりませんので、文科省、関係省庁などと相談しながら適切な対応を考えていきたい、このように思っております。

下条委員 ありがとうございます。ぜひ御検討ください。

 この件については最後に大臣にも御認識いただいて、非常に被曝が多いです。非常に多い。ですから、なるべく大阪に選挙区に戻られるときは新幹線をというわけにいかないですが、そういう中でどうすりゃいいかということでありますので、ぜひ大臣、前向きに最後にお答えいただきたいというふうに思います。

北側国務大臣 問題提起をちょうだいいたしました。きょうの論議をよく踏まえまして、よく検討させていただきたいと思います。

下条委員 ありがとうございます。ぜひ御検討いただいて、早目にいろいろなうみを取り去っていただきたいというふうに思っています。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

林委員長 三日月大造君。

三日月委員 民主党の三日月大造です。

 午前中に引き続きまして、法案の質疑に参加をさせていただきます。長時間にわたります質疑、御答弁、本当に御苦労さまでございます。

 午後は、事業者の安全対策ということで、まず基本認識からお伺いしていきたいと思うんですけれども、まず大臣にお伺いをいたします。

 この間、規制緩和がずっと行われてまいりました。鉄道分野、乗り合い・貸し切りバスの分野、そしてトラックの分野、タクシーの分野、海運の分野もそうですね。この間の規制緩和と事故、また、午前中議論いたしました兆候、トラブル、こういったものとの因果関係についてどのような御認識をお持ちですか。特に、安全を守るための監視、監査とのバランスの面からどのようにお考えなのかということも含めてお答えをいただきたいと思います。

    〔委員長退席、吉田(六)委員長代理着席〕

北側国務大臣 経済的な規制につきましては、やはり経済の活性化、また利用者の利便の向上等のために、この経済的規制については、私は当然のこととして見直しは必要であるというふうに考えております。

 ただ、一方で、公共交通機関というのは大量の利用者の方々、国民の方々を輸送するわけでございまして、安全に送り届ける、安全に輸送するということが最も基本的な、また重要なサービスでございまして、国民の方々の公共交通に対する信頼の根本をなすのもこの安全の問題でございます。国といたしましては、民間の行う事業や民間事業者に対し、これまでも、適切な規制を行うことによって必要な安全を確保していくということで取り組んできたところでございます。

 このような安全に関する規制、社会的規制については、冒頭申し上げた経済的規制とは違うわけでございまして、しっかりとこの社会的規制については維持をしていく必要があるというふうに思っております。

 ただ、一方で、科学技術が進歩する等のこともございます。そうした変化に的確に対応して、この社会的規制も、何か一つ決めたらずっとそのままということではないと思うんですね。やはり、こちらの社会的規制についても不断に見直しをしながら、安全の確保をしっかりと努めてまいりたい。今回の法改正についても規制をむしろ強化しているようなところもたくさんあるわけでございまして、まだ規制の見直しをしているところでございまして、こうした法改正をお願いしているのも、こうした安全確保のための見直しの一環ということで御理解いただければ大変ありがたいと思っております。

 いずれにしましても、公共交通に対する国民の信頼を回復するために、安全確保に万全を期してまいりたいと考えております。

三日月委員 異論ございません。全く同感です。

 では、その公共交通の安全をつくっていくこと、守っていくことに近道もないと思っていますし、これで絶対安全が守られるというような万能薬みたいなものはないと思います。要は、ルールを決めること、能力を高めること、そして適切なチェックを施していくこと、大臣がおっしゃいました社会的規制、安全に対する監視、こういったものをきちんと施していくことというのが大事だと思うんです。

 その観点から、午前中に配りましたこの資料、もう持って帰られてお持ちじゃない方もいらっしゃるかもしれませんが、大臣、お持ちですか。せっかくですので一日フルに使いたいなと思うんですが、一ページ目に、網かけの部分は、鉄道、自動車、航空、海運、それぞれのモードでどのような保安監査が行われてきたのか、これは国交省に提出いただいた数字に基づいてつくっています。

 今大臣が、強化するところは強化してとおっしゃいました。これまでの質疑の中でも出ておりました。鉢呂委員の質問の中でも出ていましたけれども、七ページ、「運輸に係る安全監視体制の強化」ということで、来年度、それぞれのモードで、監視される方、監督管理される方々を、この公務員縮減の中にあってこういった部分はふやしていくんだというお考えのもと、ふやしていかれようとされています。

 この数字をにらみながら、また一ページ目に戻っていただいて、それぞれのモードの保安監査のあり方についてちょっとお伺いしたいと思うんです。

 体制面については、七ページのように、ふやしましたということなんですけれども、それぞれのモード、運んでいるお客様の数、旅客の数と、起こってしまう事故の数と、起こったときに被害に遭われる方の数等々を勘案して、それぞれのモードのこの監査のあり方について、今どのように評価をなさっているのか。

 ただ人をふやしましたということだけではなくて、例えばこの鉄道の部分の監査というのは、数字の面からだけ見ますと非常に何か少ないように見えますし、そして航空の保安監査や何かは、事故だとかインシデントを上回る形で監査が行われている。これはもちろん数字だけでは何とも評価しようがないと思うんですけれども、このあたりの各モードの保安監査の基準だとかあり方について、事故が起こった場合のことは午前中議論しましたけれども、日常の業務の中で、オペレーションの中で問題があるところだとか緊張感を与えるためのこの保安監査、非常に重要だと思うんですけれども、このあたりについてどのようにお考えでしょうか。

杉山政府参考人 今、モードごとの保安監査のあり方ということについてお尋ねがございました。

 それぞれのモードごとに事業の規模も違いますし、その輸送人数等々も実は大きく異なるわけでございます。したがいまして、一概に、この一ページにございますような数字というものを比較して、何が多いか、あるいは何が少ないかということは、実は比較は正直なところなかなか難しいのではないかと思っております。

 したがいまして、それぞれのモードの中で、実は、これは各原局になるわけでございますが、それぞれの局が、それぞれのモードの実態に合わせまして監査計画というようなものをつくりながら監査をしていくということに現実にはなっているわけでございます。実際にその監査をしていく過程で、あるいはその監査の頻度がどうかとかいうようなことは、いろいろな議論が確かにあり得るかと思っております。

 そういう過程の中で、先ほどの七ページに、増員をしたという資料もございますが、やはりこれはもう少し強化をした方がいいなというような部分が実は多々あったわけでございますので、平成十八年度は特にこの安全部門につきまして、これは七ページの資料をごらんいただきますとわかりますとおり、モードによって多い少ないはございますが、やはり各モード全般にわたりましてこの監査の重要性というものを十分認識いたしまして、こういう要求をし、また認めていただいたということでございますので、それぞれのモードに、これで十分かという議論はあろうかと思いますが、一定の計画等々の中で、十八年度はまたきちっとやっていきたいというぐあいに考えております。

三日月委員 それぞれ、モードも違えば事業の規模も違う。当然、それに伴って監査のやり方も違う。当然だと思うんです。

 ただ、私、ちょっと踏み込んでお聞きしたいのは、定期に行う監査、例えば年限を決めて何年に一回やる監査と、何か問題があったからやる監査、定期監査と特別監査、これがそれぞれのモードあると思うんです。

 しかし、それぞれのモードごとに、例えば内規で定められていたり省令で定められていたり、例えば航空や何かのように、一定の規模以上の会社、事業所、空港や何かは、必ず一定期間、定められた期間内に一回は監査を受けるというようなモードもあれば、例えば鉄道のように、支社単位でやっているから、しかも運輸局でつくった計画に基づいてやられているから、ずっと長い間監査を受けないまま事業を営んでしまうようなモードだとか会社もある。

 この監査のばらつきといいますか、やはり一定期間、定期的な監査というものについては、しかも、済みません、言葉を足しますと、海運や何かは、最近重点化をしようと。ただ定期的にやるんじゃなくて、ただのんべんだらりとやるんじゃなくて、重点化をして、エリアにしても種別にしても、監査をやっていこうというような試みも行われているやに聞いていますけれども、この定期監査と特別監査のバランスについて、これまたそれぞれのモードによって違うと言われるかもしれませんが、例えば鉄道や何かはどのようなお考えをお持ちでしょうか。

梅田政府参考人 先生御指摘のように、監査の回数というのをいただいた表で見ますと、少ないように、そういう印象をお持ちになるかもしれません。私どもは、先生の資料の中にもございますように、基本的に、五年を基本として、比較的定期的にやっていこうというふうに考えているところでございます。

 しかしながら、これは、今までの我々の、監査を行う人間の数だとか、あるいはこなせる業務の量との関係もございますし、それから今まで、昨年は非常に大きな事故がございましたけれども、事故等につきましては経年的にかなり減少してきているというような状況もございまして、多いか少ないかは別にして、定期的な監査の数としてはそういう数になってきているわけでございます。

 ただ、重点的にやるかどうかというのはいろいろございまして、とりわけ重点的にやる場合は、地方局に任せず、場合によっては本省と一緒になってやるというようなやり方にしておりまして、これはどういうケースかといいますと、非常に事故が頻発する、あるいは、我々インシデントだとか輸送障害とかとっておりますけれども、非常にそういうのが頻発するというのが一つ。

 それから、もう一つは、事故には至らないけれども、いろいろとほかのチャネルで、例えばマスコミの報道であるとか、あるいは、いろいろな情報が我々には寄せられてまいりますから、そういう情報でもって、どうもちょっとやはり会社の中の状況を把握せないかぬというようなことがございます。それから、一回監査に入りまして、是正をしているはずなんだけれども、どういうふうに本当にやっているのかと。また同じようなことが別のところで露見するというようなこともございます。

 そういうようなときには重点的に監査をやってきているわけでございまして、例えばJR西日本に関して言いますと、平成十三年度から十六年度、十八回監査をやっております。同じ支社に二年続けて入ったこともあります。

 これは、事案によって我々としては判断していきたいと思っておりまして、ただ、今回、監査の要員の数も増員させていただきましたので、しかも専門部署も設けるということになりましたので、私ども、もう少し周回の頻度も上げ、重点的な監査もしっかりやっていきたいというふうに考えているところでございます。

三日月委員 ただ監査をすればいい、干渉すればいいということではないと思うんですけれども、鉄道事業等監査規則というものがあって、その七条、八条のところに、監査の実施及び監査計画について書かれています。お手元の資料の、これは八ページ目ですか、いわゆる鉄道における保安監査の実施についてはこのような取り決めがなされているわけでありまして、定期的な監査が緊張感を持って入られるように、そしてまた大きな事故が未然に防げるように、ぜひ取り組みをよろしくお願いしたいというふうに思います。

 それで、一点、お伺いしますけれども、航空管制ですね。航空管制に対する監査については、これは国交省所管ということでありますので、もう内部監査のような形になってしまうと思うんですけれども、その辺の緊張感の保ち方も含めて、どのようにお取り組みでしょうか。

杉山政府参考人 先生御指摘ございましたように、航空管制は、国土交通省が直接業務としてやっているものでございます。したがいまして、その航空交通管制につきましてどういう監査制度をとるかということでございます。

 一つは、やはり、これは当然内部監査ということになるわけでございますので、本省の管制保安部が中心となりまして、現場に赴きまして、最近トラブル等もございましたので、現場に赴きまして実際に監査を実施したというぐあいに聞いている次第でございます。したがいまして、これは内部監査が中心になるということでございます。

三日月委員 そこなんですね。今回、一連の航空のトラブルのときには、この管制のミス、トラブルもありました。それを受けて、今回、航空局としても文書を出されて、この二月ですか、管制業務監査報告書ということで出されておりますけれども、これはあくまで内部監査なんですね。

 この内部監査に対する報告がどうなっているのか。そもそもどんな体制で監査をしたんですか、定期的に監察を行って指摘を行っているというから、ではどんな監察をしてどんな指摘をやっているんですか、そして管制トラブル、もっともっと踏み込んで、どういう原因があったんですか、どんな対策をとられようとしているんですかということについて昨夜いろいろとお尋ねしましたけれども、夜遅かったということもあって朝までに資料が間に合わずに、この委員会での質疑に供することができないので、ぜひ、この航空管制に対する監査、ここの部分の、内部監査であるがゆえの甘さというか、わかりにくさというか、ここをぜひ改めていくことも必要だと思います。

 もう一点。一ページ目を見ていただいて、この自動車のモードのところに「指導」というのがあります。「巡回指導件数」、ああ、こんなことをやっているんですかと、きのう実はびっくりしました。「うち行政への通報件数」、あるんですね。これについては詳しく、九ページ、一番最後のページですね。

 要は、トラック事業者なんというのはたくさんあるから、公的な、例えば省庁、陸運局だけの監査だけだと間に合わないということもあるんでしょうか。これは、貨物自動車運送事業法に基づく運送適正化事業ですか、適正化事業実施機関を指定して、こういう巡回指導をされている。では、適正化事業実施機関というのはどこですかと聞けば、四十七都道府県で四十七あるそうですね。どこですかと聞けば、全国の各地にあるトラック協会。全日本組織では全日本トラック協会、そして、北海道から沖縄まで、各トラック協会さんがこの適正化事業実施機関に指定をされているんだそうです。その方々が見て回られた結果、行政へ通報された結果がこの九ページなんです。

 これ、見られて、何となくおかしいなというか違和感あるなと。もちろん、民間にお願いしているというか、各事業者、社団法人さんにお願いをしているということもあるんでしょうけれども、九州の行政への通報件数と、例えば関東、近畿の通報件数、近畿に至ってはこれはもうゼロ件というようなこともあって、やはり、行政を補う通報制度、巡回指導制度でありますので、かなりこの方々に、甘いですね、たるんでいますねということは言えないと思うんですけれども、しかし、ちょっと余りにも制度としていかがなものかと思うんですけれども、そのあたりについての御見解、いかがでしょうか。

杉山政府参考人 先生御指摘がございましたように、トラック運送事業者は非常に数が多いということもございまして、以前から、このトラック事業適正化機関というところで巡回指導をするということでやってきているわけでございます。そこでいろいろ問題があったというものにつきましては行政に通報し、行政が今度乗り出して具体的な処分をしていく、こういうシステムになっているわけでございます。

 御指摘の点は、恐らく数字といたしまして、巡回指導件数と行政への通報件数が、数といたしますと非常に小さいのではないか、あるいはそういう御印象を持っておられるのかなという感じがするわけでございますが、自動車交通局の方に聞きましたところ、ことしの二月から、特にこの通報、連携を非常にもっと強めまして、もっともっとこの通報件数というものをふやすような施策を講じていきたいというぐあいに聞いておる次第でございます。

 したがいまして、これから十七年度、十八年度になりますと、ここの数字が、これからのことではございますが、上がっていくのではないかというぐあいに思っております。

三日月委員 ぜひ、官の部分、公の部分が頭ごなしに監査をするということだけではなくて、それぞれの事業組合だとかこういう協会さんが自助努力をしながら、お互いチェックし合いながら安全を守っていくという体制は、私は期待したいと思いますし、それが今後実効性あるものに変わっていくんだとするならば、その体制を見守っていきたいというふうに思います。

 タクシーや何かにも、これは二月一日からですか、監査方針及び行政処分の基準の一部改正ということで、事後チェックの強化というものが打ち出されています。この中には、労働の部分にもちゃんと関係部署と協力してやるんだということですとか、その中で、社会保険の未加入状況の通報制度も設けるんだということが入れられています。この問題も、私、改善基準告示の問題や、労働基準法が守られていない、雇用保険、年金に加入されていない事業者がこういう旅客運送事業をされていることの問題点を指摘してまいりましたので、この取り組みについては歓迎をしたいと思いますし、ぜひ、それが本当に実効ある監査体制になっているのかという検証を引き続きしてまいりたいと思います。

 法案の中身に若干入るんですけれども、この資料の二ページ目を見ていただければ、あっち行ったりこっち行ったりで恐縮なんですけれども、今回、この運輸の安全確保をするための法案の対象になる事業者数が右側に記されています、鉄道二百十二から六百七十二からずっと。

 一つ、事業者の範囲についての考え方ですね。この一番下に、バス、総車両数二百両以上、タクシー、総車両数三百両以上、トラック、総車両数三百両以上。これらの事業者というのは、例えばバスの何%なんですか。タクシーの何%になるんですか。今回せっかくこうやってトップマネジメント、安全マネジメントを課す、報告制度もつくる、その公開もする、必要であれば指導もする、罰則も与える、こういうことの網がかかる自動車の事業者数は約三百とありますけれども、それぞれのバス、タクシー、トラックの何%ずつなんでしょうか。

杉山政府参考人 今、バス、タクシー、トラックにつきまして、それぞれの事業者数に占める比率というお尋ねがございました。

 バスにつきましては、現在、総車両数二百両以上の事業者を予定しておりまして、事業者数で申し上げますと約百事業者、率で申し上げますと二・七%でございます。それから、タクシーにつきましては、総車両数三百両以上の事業者ということで、事業者数は六十事業者、率で〇・七%であります。それから、トラックにつきましては、総車両数三百両以上、事業者数で申し上げますと百七十事業者、率で〇・三%ということでございます。

三日月委員 そうすると、バスが二・七%、タクシーが〇・七%、トラックが〇・三%。何か余りにも少な過ぎるんじゃないでしょうか。

 先ほど下条委員の質問の中にもありましたけれども、規模の大小を問わず、安全に対する意識だとか、恐らく目の行き届きにくい大規模事業者ということが念頭にあるのかもしれませんが、しかし、中小の小さい事業者さんほど、非常に苦しい経営の中でこの安全に対する投資だとか手当てというものが難しい状況になり得ているのではないかということを推測するんですけれども、いかがでしょうか。

杉山政府参考人 先生御指摘がございましたように、自動車運送事業の場合に率として大変小さいのではないかという御質問かと思いますが、自動車運送事業、先ほど来からも出ておりますが、ほとんどは、実は九九%以上が非常に零細な事業でございます。今回この安全管理規程を導入し、安全統括管理者を設置するということを考えますと、これは趣旨といたしましては、組織的に経営管理部門が中心となって安全管理業務をやっていこう、こういうことでございますので、やはりある程度の事業規模がその対象になっていくというところがまず基本にあるわけでございます。

 それと、もう一つは、これは考える上で非常にいろいろ議論があったわけでございますが、自動車につきましては、やはりその運行形態が、どんなに大きなトラック事業者でも零細な事業者でも、最後は、実は、トラックで出ていきますと、一人一人のトラックの運転手が運転していくということで、責任を持つのはそのトラックの運転手になるということになるわけでございます。そういたしますと、そこで安全を保つのはどうしたらいいかということで、実は現在は、いわゆる運行管理者制度が非常に発達しているわけでございまして、この運行管理者制度を軸といたしまして、現在、安全管理体制というものが自動車の場合には既に構築されているわけでございます。

 したがいまして、今回、自動車の場合には運行管理者制度があるということを前提といたしまして、それに加えてこの安全管理規程、安全統括管理者を置くという、その上にいわば階段でいうと二階を載せるような格好になるわけでございますが、そういうようなさらに上乗せをするような規制をする事業者はどうあったらいいのかということで、先ほど申し上げましたように、自動車の場合には、現場まで目が届きにくくなるような大規模な事業者、こういう事業者を対象にして安全管理規程を義務づけるという形が、やはり事業者にとりましても、この円滑な制度の導入につながっていくし過大な負担にもならないのではないか、なおかつ、安全は安全できちっと確保できるのではないか、こういう考えで整理したところでございます。

三日月委員 どこかで線引きをするときにはいろいろな物の考え方があるでしょうから、そのことについては理解をします。

 一ページ目のグラフの中で、規模の大小に応じた事故比率や何かもとるべく奮闘したんですけれども、ちょっと時間が間に合わずに、そのあたりの検証ができませんでした。ぜひ引き続き自分なりに研究しながら、むしろ我々の考えだと、こういう大きな事業者さんは、比較的こういう安全に対する投資だとか、逆に、目が行き届かない分、組織としてそれを浸透させることができやすいんじゃないだろうか、中小の事業者さんほど、非常に苦しい経営の中で、こういったところの投資だとかメンテナンスがしにくいんじゃないだろうかという考えを持っていますので、そのあたり、また引き続き見ていきたいと思います。

 ただ、中小事業者に対しては、ただ規制をかける、ただ何かを課すということだけではなくて、やはり安全を守ることに対する支援というものが、これはたとえ鉄道であっても、そして自動車であっても必要だと思うんです。

 その中で、大臣所信の中に、非常に、何点かいろいろなキーワードがあったんですけれども、思いのほか踏み込んで発言をされているなと思ったのが、今お手元にないと思うんですけれども、四ページのところに、大臣覚えていらっしゃるかどうかわかりませんが、原油価格の高騰問題への対処に当たって、トラック、内航海運を初めとした運輸事業の現下の窮状に対し、最大限の努力を行ってまいりますと。

 まだまだ、この原油価格というものの高騰で非常に苦しい経営をされている事業者さんは多いと思うんです。この最大限の努力というものは、直接的に安全とはリンクしないかもしれませんが、安全に対する投資をするお金を確保できるという面で、私はちょっと中身についてお伺いしたいんですけれども、済みません、通告していませんでしたので、もし中身についておわかりになれば。

    〔吉田(六)委員長代理退席、委員長着席〕

北側国務大臣 昨年、原油価格が高騰いたしまして、今も高どまりしている状況でございますけれども、先ほど答弁がありましたように、運送事業者の方々というのは零細中小企業の方が圧倒的に多いんですね。そういう方々というのは、荷主さんとの関係で運賃転嫁がなかなかできない。普通でも弱い立場。荷主さんの側の方が圧倒的に強い。それで、原油価格が高騰してきている。一方で、トラック運送事業者の方々には、環境との関係で、またいろいろ規制もさせていただいている、コストもかかっているという中で、トラック事業者の方々、また内航海運の方々が、原油価格の高騰という事態の中で非常に厳しい経営状況にあるわけでございます。

 こういう原油価格高騰の中で、これはやはり経済的にはちゃんと荷主さん側の方で運賃転嫁がしていただけるようにすることが大事なわけで、これは最終的には消費者負担ということにつながってくるかもしれませんが、それはこの原油価格高騰という中ではやむを得ないわけですね。

 それで、私が昨年、経済界、経済団体の側に、これは荷主さんの代表でございますので、経団連また日本商工会議所を初めとしまして、各地方の経済団体に対しましても、これは各地方の運輸局の方々にお願いをいたしましたが、東京の方では私が奥田会長だとか山口会頭等に直接お会いさせていただいて、今トラック事業者また内航海運の方々はこういう状況がございますと、そういう実態をお示しいたしまして、原油価格の高騰についてきちんと転嫁できるようにぜひ御理解をお願いしたい、このことをぜひ傘下の企業の方々、荷主の方々にもしっかり御理解いただきたいということを直接お願いさせていただきました。

 各地方運輸局でも同じような対応をさせていただいて、先般調査をさせていただいたところによりますと、これは景気が少しよくなってきているということもあるのかもしれませんが、この原油価格の高騰について転嫁が少し改善をしてきているという報告も受けさせていただいているところでございます。

 原油価格の状況につきましては、これからも注視をして、それぞれの内航海運、トラック事業者においては中小零細が多いわけでございますので、その辺の状況をよく見させていただいて、またしかるべき対応をさせていただきたいと考えております。

三日月委員 非常に丁寧な御答弁をありがとうございます。それぞれの事情があるでしょうから、一足飛びにコスト負担のシェアだとか転嫁というものはなかなか難しいかもしれませんけれども、ぜひ、国土交通省として応援できる体制、また、税制も含めて支援できるアイデアをともに勉強してまいりたいというふうに思います。

 さらに、ヒューマンファクターの面で何点かお伺いしたんですけれども、四月の福知山線の脱線の折に、福知山線脱線事故の後、運転士の資質維持向上策についていろいろと検討をされたと聞いています。私は、八月二十六日の中間取りまとめの文書も持っているんですけれども、運転士の資質向上検討委員会というものも設置しながら、鉄道の運転士の資格をどうすればいいんだろうか、またメンテナンスをどうすればいいんだろうかという検討をされていると聞いています。

 以前、六月でしたか、私がこの委員会でこの問題について大臣に見解を求めたところ、第三者機関の関与のあり方ですとか、また資格の更新制度ですとか、そういったことも検討していきたいという旨のお話がありましたけれども、他のヒューマンエラーの検討委員会だとか各モード別の検討委員会に比べると、いささか、この運転士の資質の維持向上策の検討だけは、何か報告も薄っぺらくて、中身が見えないものになっているんですけれども、現時点での進捗状況についてお聞かせいただきたいと思います。

梅田政府参考人 八月二十六日の「運転士の資質の維持向上策について」ということで、先生御指摘の、運転士の資質向上検討委員会というものの中で現在検討を進めている中の報告を出しているわけでございますが、この検討委員会は、昨年の九月に設置いたしまして、現在のところ三回ほど開催をしてきているところでございます。

 この検討委員会は、心理学の専門家とかお医者さんとかそういうような方々、それから鉄道の専門家の方々とか、いろいろな分野の方に集まっていただきまして議論を始めているわけでございますが、そこの中でやはり、一つは、運転士に対するより効果的な教育の手法のあり方、要するにトレーニングの仕方、これを、昔からずっと同じようなやり方でやってきているという部分もありますので、もう少しやはり今の時代に即して、運転士になろうという方の気質も大分変わってきていますから、こういうものを少し検討しようと。

 それからもう一つ、運転士になる際に適性の試験を行うわけでありますけれども、この適性の試験も、クレペリンの試験とかいろいろあるんですけれども、こういう試験もやはり抜本的に見直して、適性をどうやってはかっていくか。これは非常に実は難しいんです。これは私にも専門家じゃありませんのでわかりませんけれども、非常に難しい分野の仕事なので、こういう点についても、少し試験のあり方も変えていこうと。

 それからあと、これまた難しいんですけれども、職場環境ですね。こういうような点についても少し検討しようということでございまして、とりわけ、ちょっと御指摘のあった第三者機関につきましては、この資質向上検討委員会の中で少し御議論をしていただいて、その意見を踏まえながら、どういう格好で関与できるか、どういう格好で活用していけるのかというようなことも含めて議論をさせていただこうかということで、今やっている最中でございます。

三日月委員 今の運転士の資質の維持向上策にも関係するんですけれども、自分自身の経験も踏まえて二点の御提案をさせていただきたいと思います。

 一つ目は、やはり安全を守るということは、一昨日の参考人質疑の中でもありましたけれども、やはり減点主義なんですね。なかなか加点主義で評価してもらいにくい分野なんです。とかく罰則だとか規制の強化ということだけが先行してしまって、評価だとか表彰だとか支援という分野が手薄になってしまうんですね。また、事故事例、あんなことがあった、こんなことがあったということだけで広がりますけれども、例えばこんな形で頑張っている、こうやって安全を守っているというのは余り知らされないんですね。

 ですから、今の運転士の資質向上にも関係すると思うんですが、こうやって運転士を養成している、こうやって運転士の資質を維持させている、向上させているというような、何かいろいろな事業者があると思うんです、工夫しながら頑張っている事業者が、職場が。そういったところのものを何か集めるような、またそれを水平展開できるような、そんな仕組みを国土交通省が音頭をとってやってみてはどうかということが一つ目。

 二つ目は、午前中の事故調の議論の中でもありました。いろいろな事故だとかトラブル、ミス、こういったものを教訓化すること、蓄積すること。産官学一緒になって、失敗学じゃないですけれども、安全を守るための何か研究所みたいなものを、例えば防災、減災、午前中にも言いましたけれども、地震が起きて新幹線脱線、風が起きて列車が脱線、自然環境にも自然災害にも公共交通機関は向き合っていかなくちゃいけない。また、いろいろな先端技術を中小企業だとなかなか導入できない。ATS一つだってなかなか難しい。人材育成、どうやってやればいいんだろう。

 こういうことについて、もう少し、各事業者任せだけにするのではなくて、いい取り組みは水平展開していく、その導入について国土交通省が支援をしていく、時には金銭的な支援も含めて。こういうことをぜひ考えてみられてはどうかと思うんですけれども、最後に御感想、御所見をお伺いしたいと思います。できれば大臣。

北側国務大臣 委員の方がよく御承知のとおりなんでしょうが、鉄道総研、私もあれは昨年行かせていただきました。あれはJRですか、JRが出資をしているんでしょうかね、すばらしい研究機関だと実際見させていただいて思いました。ただ、ああいう鉄道総研なんかが、実を言うと、あれはやはりJRがやっていますので、ほかの鉄道の会社が十分に利用できるかというと、多分そうじゃないんだろうというふうに思っておるんです。

 ああいう既存の研究所もございますし、そういうのをしっかりと活用して、今の委員の御提案については、例えばそういう事故とかトラブルとかあったときに、経験、知見というものを集約して、さまざまな鉄道機関が、事業者が活用できるようにすること、これは非常に大事な御提案だというふうに思います。

 また、前段の、運転士の方々について、規制をするだけじゃなくて、きちんと褒めるところは褒めるといいますか、運転士の方々の地位を、条件、環境も含めてきちんと整備をしていくべきだというのも、私はそのとおりだと思います。

 話が少し余談になるかもしれませんけれども、先般、私、秋葉原にある交通博物館に行かせてもらったんですね。あれもJR東日本がやっているんです。あれ、今度閉鎖になるんですよ、閉館になるんです。皆さん、時間があったらぜひ行っていただきたいと思いますが、大宮に行くんですね、あれはすばらしい博物館ですよ。一階にいろいろな鉄道が動く大きな模型があるんですけれども、子供たち、あれを見たら本当に喜びますね。あれを見た子供たちは何と言うか、運転士になりたいと言うわけですよね。

 そういうふうな啓発というか、そういうのも非常に大事だと思いますし、そういう意味では、今度大宮にできる博物館なんかには、運転士の方々についての理解を深めていくような、そうした企画も大事だなというふうに思います。委員の今の御意見については、しっかり検討させていただきたいと思います。

三日月委員 終わります。ありがとうございました。

林委員長 伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉です。

 きょうも一日の審議でございますので、重なるところもあるかと思いますが、よろしくお願いしたいと思います。

 まず初めに、安全軽視の風潮が重大な事故やトラブルとなって頻発しているきょうこのごろでございます。安全、安心がすべてに優先される社会の構築こそ急務でございます。この安全の確保といいますのは、技術の積み上げという側面も大きいと思います。私が、技術畑出身ということもございます。最大の技術者集団でもある国土交通省の役割はこの点について極めて重要と考えますが、まず初めに、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

北側国務大臣 昨年、福知山線での悲惨な大きな事故、百七名の方がお亡くなりになるという大きな事故がございました。また、年末には羽越線での事故もあったわけでございます。また、航空の方ではトラブルが続いたわけでございまして、公共交通にとって安全、安心を確保するということは、最も大切な、基本中の基本のサービスだというふうに認識をしているところでございまして、この公共交通機関における安全確保をさらに図っていくために今回の法案の提出をさせていただいたところでございます。

 公共交通の安全、安心を確保していくために、強力にさらに推進をさせていただきたいと考えておるところでございます。

伊藤(渉)委員 おとといの参考人の質疑なども聞かせていただいておりまして、人間は必ずミスをするものだ、決して故意にではなくてミスをするものだ、そういった考えに基づいての制度設計、あるいは、安全をつかさどる立場にある人間の組織や企業における地位、あるいは社会における地位、耐震偽装の問題でいけば構造をつかさどる設計士、この方々の社会における立場、こういったものを改善をどうしていくのかというのも重要な視点ではないかと考えます。

 今回の法改正で、各事業者に対し、安全に対する意識や取り組みの向上というのを法律の改正によって位置づける、冒頭、それを考えたときに非常に難しい話だなと私は思いました。今回の法改正に至るまでの経緯について、簡単に御説明いただきたいと思います。

杉山政府参考人 お答えいたします。

 昨年の四月に発生いたしましたJR西日本の福知山線における脱線事故、あるいは航空分野における各種トラブル等、ヒューマンエラーが関係すると見られる事故、トラブルが多発した状況にかんがみまして、従来の監督行政の延長ではなく、運輸事業者に対する新たな監視、監督の手法につきまして、省内に外部の有識者も含めました公共交通に係るヒューマンエラー事故防止対策検討委員会を設置いたしまして、検討を進めてきたところでございます。

 この委員会が、昨年の八月でございますけれども、中間取りまとめをしていただいたわけでございますが、その中では、公共交通の安全を確保するためには、事業者における安全意識の浸透、安全風土の構築のための具体的取り組みを強化する必要があること、そして、そのための国の果たすべき役割といたしまして、事業者においてトップから現場まで一丸となった安全管理のための体制の構築を図ること、また、その安全管理の体制について国が監視する仕組み、我々、安全マネジメント評価と言っておりますが、そうした仕組みを導入することが提言されたところでございます。

 本法案におきましては、この趣旨に沿いまして、事業者に安全管理規程の作成の義務づけ等を行いまして、経営トップ主導のもと、現場まで一丸となった安全管理体制を構築させることとしております。これによりまして、事業者内部において、安全意識の浸透あるいは安全風土の構築が図られるものと考えております。

 以上でございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 また、事故防止対策、今までさまざまもちろん手を打ってきているわけでございますが、なかなか表層的なものにとどまって、その本質に迫り切れないというような印象も受けるところでございます。

 おととい、新幹線の運転をしていましたという話をしましたけれども、本職は鉄道のメンテナンスのようなこともやっておりまして、安全管理のプロ集団、いわゆる見本を世の中に見せていかなければならない。事故調の話もさまざま出ておりますが、これはあくまで、私が思いますに、事故が起こった後の調査、分析。そうではなくて、本来安全は、皆様が気づかないところで粛々と手を打ち、何も起こらない、安全であることが空気のように当たり前、こういう状況をつくり上げるのが最終的な目指すべきところだと思います。

 そこで、今般の改正にあわせてといいますか、官房の中に数十名の体制で安全をつかさどる新組織を立ち上げるというようなお話を聞きました。私は、非常にここに大きな期待をしている一人でございます。その組織の人選や考え方、現在までの検討状況についてお伺いいたします。

杉山政府参考人 御指摘のとおり、来年度、大臣官房に、運輸安全政策審議官、仮称でございますが、これをヘッドといたします専任の安全監視組織といたしまして、二十七名体制の新組織を設置する予定にしているところでございます。

 本法案に基づきまして運輸事業者が構築する安全管理体制の適切さの評価、運輸安全マネジメント評価ということでございますが、これは非常に専門的な知見を要するものでございまして、これを一カ所に効果的に蓄積することによりまして、モード横断的に、効果的、効率的な評価の実施を図る観点から、この新組織において実施することとしております。具体的には、事業者の経営トップへの聞き取りや記録の確認等によりまして、安全管理規程に記載されました安全管理体制の適切さの評価を実施してまいるところでございます。

 なお、人選等につきましては、平成十八年度予算が認められましたら早急に人選を進めたいと思っておりますが、その際には、可能であるならば、役所の人間だけではなくて、できれば外部の方も入っていただければというようなことも考えているところでございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。ぜひとも民間企業の見本になるような、安全管理とはこうやってやるんだ、そのような組織に育て上げていただきたいと思います。

 話はかわりまして、今回の改正で規程を定めた、企業のトップマネジメントに安全管理を埋め込む、このような表現であったと思いますけれども、この規程を実効たらしめるために、つまり、いかにして現場の第一線といわゆる経営トップをつなぐか。ありていに言えば、企業でいえば風通しをよくするのか。こういった話にどこまで行政が介入できるのかというような難しさもあると思いますが、今後、行政としてこういった観点からいかなる取り組みを継続されるのか、お考えを伺いたいと思います。

杉山政府参考人 安全マネジメント体制というものを実効あらしめるためには、二つポイントがあろうかと思います。

 一つは、やはり事業者みずからがこの安全管理体制をきちっと構築し、それを継続的に見直ししながら、スパイラルアップといいますかレベルアップをしていく、そういう不断の努力を続けていただくということがまず第一点でございます。

 と同時に、なかなか事業者だけではどうしてもそこが、マンネリと言ったら失礼かもしれませんが、惰性に陥るという可能性もあるわけでございますので、そういう意味におきまして、私どもといたしましては、国といたしましても、事業者の構築いたしました安全管理体制というものをいわば国が評価し、監視するという仕組みの必要性があろうか、こう思っている次第でございます。

 本法案におきましては、事業者に対しまして安全管理規程の作成の義務づけを行うとともに、国が、経営トップへの聞き取り、記録の確認等を通じまして、安全管理規程に記載された事業者の安全管理体制の適切さの評価を行う安全マネジメント評価を、本法案の施行にあわせまして実施することとしております。この評価の実施によりまして、国として、運輸事業者の安全管理体制が構築され、また継続的に見直しが行われているかどうか等を適切に監視してまいりたいと思っております。

伊藤(渉)委員 もう一つ、安全を高めていくためには、責任の所在を明確にしていくということも重要かと思います。その中で、今回の法改正の中では、安全統括管理者、こういうものを定めていく、これも盛り込まれております。今回の改正の十八条の三の七項に、安全統括管理者等が職務を怠り、かつ安全確保に著しく支障を来す場合は、鉄道事業者に対し解任すべきことを命じることができると。企業の経営トップを解任することができると、なかなか強烈な法案だなと思うわけでございますけれども。

 この中にある職務怠慢、どんなことを想定されているのか。また、例えば事故が発生したときに、その過失責任、これをこの規定によって刑事罰を経営トップが負う、こういうところまでこれは踏み込んでの法改正かどうか。この辺についてお伺いしたいと思います。

梅田政府参考人 安全統括管理者の職務は、経営中枢において決定された安全に係る事項を確実に実施させるために、事業実施部門に関する業務を統括管理するというのが一つございます。それから、安全を確保するために必要な設備投資、あるいは適正な人員配置等の措置を経営トップに意見具申するというようなことなどでございます。いわば鉄道事業者の安全管理体制において、ボードの中で極めて重要な役割を担うということになります。

 先生御指摘のように、この安全統括管理者がその職務を怠った場合であって、引き続きその職務を行うことが輸送の安全の確保に著しく支障を及ぼすおそれがあると認めるときには、解任をするということができるような規定を置いております。具体的にはいろいろなケースが想定できるとは思いますが、抽象的に申しますと、安全統括管理者が、業務の統括管理あるいは意見具申などの職務を怠った上、何らの改善措置を講じようとしないために、安全性が阻害され、重大な事故が発生した、あるいは発生しようとしている、あるいは発生のおそれが著しく高いと認められるような場合が想定されるわけでございます。

 この解任命令といいますのは、鉄道事業者の安全管理体制を適正なものとして、輸送の安全の確保をするために行われるものでございまして、したがいまして直接経営トップの過失責任等につながるものではありません。そういう意味では、刑事罰の対象としての、つまり、この安全管理者が怠ったために、その結果として直ちに経営トップに刑事罰がかかるというようなものではありません。

伊藤(渉)委員 引き続き法案の中身で、十九条の三及び四では、安全にかかわる情報の公表というようなことを規定されております。こういった規定も、ともすると、官民ともに書類の整備に追われて、本質的な安全管理業務の向上そのものにつながらないのではないかと懸念を持つことがございます。

 そこで、この公表について、どのような内容をどの程度の頻度で行うと考えているのか、また公表によってどういった効果を想定しているのか、御答弁いただきたいと思います。

梅田政府参考人 鉄道の場合は高速、大量の輸送機関でございますので、一たん事故が起こると被害は極めて甚大なものになります。鉄道事業者にとってみて安全は最も基本的で基礎的な、前提としてのサービスでございますけれども、残念なことに、利用者にとってみましたら、利便性や快適性のように直接自分の肌で感じるというようなものではございませんので、利用者にとって、鉄道事業者がどういうふうに安全に取り組んでいるのか、この把握がなかなか難しいものでございます。

 そこで、私どもといたしましては、鉄道事業者が自主的に公表することが想定しがたい事業改善命令あるいは監査後の勧告、こういうのは大臣なりあるいは地方の局長等がやるわけでございますが、そういうふうな事業者に対してとった措置、あるいは鉄道運転事故の件数等の輸送の安全にかかわるような情報につきまして、利用者に対しまして、わかりやすいように整理して毎年度公表するというふうにしておりますし、事業者サイドにおきましても、安全に関する基本方針、あるいは取り組み体制、取り組みの実績、計画、こういうものを報告書の中に書いていただきまして、毎年度公表するということを義務づけたいというふうに思っております。こういうふうに、具体的な取り組みを定期的に利用者の方に提供するというようなことでございます。

 こうした措置によりまして、いわば鉄道事業者への監視力が各所から総合的に高まることになります。鉄道事業者におきましては、平時から安全の確保に対する意識を高めて、具体的な取り組みをするというようなインセンティブになるというふうに考えているところでございます。

 私ども、こういう措置でございますけれども、先生御指摘のように、こういう報告書につきましては、具体的にどういう事項を個々に表示すべきか、事業者の過度な負担にならないように、事業者の意見もよく聞きながら適切に配慮をしてまいりたいというふうに考えております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。利用者の方から見ても、一般の方が見てもわかりやすい形で、ぜひ公表の形を整えていっていただきたいと思います。

 最後になりますけれども、この法改正に至る間に、ヒューマンエラー事故防止対策検討委員会という中でいろいろな議論がされていまして、その中間取りまとめの中に、これは昨年の八月に出されているんですが、非常に、おっしゃるとおりだなということが書いてありました。すなわち、「下請会社等も含めた現場の情報(特にマイナス情報)が経営トップに伝わる仕組みが十分に構築されているか。」「集められた情報は整理され、問題点・課題に対しては適切に対応策を検討し、現場へフィードバックするというシステムが構築されているか。」「集められたマイナス情報が、専ら個人責任追及、懲罰のために使われているという実態はないか。」等々、企業においても行政組織においても非常に重要な視点であると思います。

 国土交通省も、工事監督など現場組織を有する行政組織でございます。その社長とも言えるべき大臣に最後お伺いしたいんですが、国土交通省自体として、この中間報告をどのように生かそうとお考えか、また具体的な取り組み等がございましたら、御説明いただきたいと思います。

北側国務大臣 ヒューマンエラーというのはあるんですよね。あるということを前提にして組織をつくっていく、また組織運営をしていく、また、さまざまな安全投資をしていくということがやはり非常に重要だと思います。

 ヒューマンエラーがあったときに、それを、今委員がおっしゃったように、またこの中間報告にあるとおり、単にそのヒューマンエラーを起こした現場の方々に対する懲戒等に使っていくのではなくて、むしろ、そういうのはあるということを前提にして、こういうヒューマンエラーがあったことについてむしろ積極的に報告をすることについて、それはいいことを言ってくれたというふうに言えるような会社の中の、事業者の中の空気をつくっていくということが非常に大事で、では、なぜそういうエラーが起こったのか、ないようにするためにはどうすればいいのか、そういうふうなことを本当に議論できるような、そういう空気ということが非常に大事だというふうに思っております。

 この中間取りまとめの中身につきましては、しっかりそれを施策に反映していきたいというふうに考えているところでございます。

 委員からおっしゃっていただいたとおり、国土交通省というのは、旧建設の側も、直轄工事等々をみずからやっているわけですね。旧運輸の側も、特に航空管制にあってはみずからやっているわけでございます。

 今回の法律改正で、公共交通の事業者の方々にさまざま規制の強化をさせていただくわけでございます。ましてや公共交通の事業者の方々に、民間にそういうお願いをしていく以上、直轄を抱えておる国土交通省としては、みずからそうした安全確保の体制をしっかりつくっていくのは当然のことでございまして、しっかりとそうした取り組みを、この中間取りまとめに書かれているようなことについてはまさしく国土交通省の中の組織に当てはまる話でもありますので、しっかり取り組みをさせていただきたいと考えているところでございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

林委員長 穀田恵二君。

穀田委員 航空法の改正について聞きます。

 今大臣からヒューマンエラーの話がありまして、積極的に報告できるようにということがわざわざありました。その点と関連して、昨年八月、航空輸送安全対策委員会取りまとめで、国における安全情報の収集、分析の強化が求められました。今回の改正で、新たに事業者に対して安全上のトラブルの報告を義務づけます。ヒヤリ・ハットの報告、情報収集、分析も強化する。

 一点確認したいんです。報告の目的は事故の防止にあると思うが、どうか。報告が懲罰につながるとかえって報告されなくなり、結局、事故防止の目的に反する結果になる、こういう指摘が現場からありますが、どのような対策をとるのか、述べてください。

岩崎政府参考人 今回、法案の中で、事故や重大インシデントに至らないものの、例えば飛行中のエンジン停止など機材のふぐあいに起因するトラブル等々、ヒューマンファクターに起因したトラブルなど航空機の運航に安全上の支障を生ずるものについて、事業者から報告を求めることを予定しております。

 こうした、今回創設する義務報告制度、それからヒヤリ・ハット等の報告徴収、報告を求めることによって、同種トラブルの再発防止、それからその予防対策を講じていくために活用していきたい、このように思っているところでございます。

穀田委員 私は、報告は事故の再発防止を目的とし、懲罰の対象としないということを明確にすべきだと考えているんです。委員会の取りまとめでも、「国が的確に安全情報を収集していくためには、報告しやすい環境を整備し、自発的な報告が促進される仕組みにすることが重要である。」と指摘されているわけです。改めて私は要求しておきたいと思います。

 二つ目に、株式会社や大株主の投資ファンドが実質的な経営主体となるケースが生まれています、この間。持ち株会社について安全確保にどういう対応をしていくのか、お聞きします。

岩崎政府参考人 例えば日本航空の例でございますけれども、御案内のとおり、事業会社が、現在、日本航空インターナショナル、それから日本航空ジャパンという会社がございます。そのほかに日本航空という持ち株会社がございます。

 我々が基本的に監督していますのは、日本航空インターナショナル、日本航空ジャパンである事業会社でございまして、航空法によるいろいろな許認可等々、あるいは報告を求めるのもこうした会社が対象でございます。また、事業改善命令を出しましたのも事業会社の方でございます。ただ、持ち株会社に対しましても、例えば日本航空グループ全体でより適切な安全対策を講じてもらいたいというときには、持ち株会社であります日本航空の方に指導の文書を出したこともございます。

 今後もそうした形で適切な対応をとってまいりたい、このように考えているところでございます。

穀田委員 前回、法案の改正の際に、わざわざ附帯決議を付されまして、そういう持ち株会社に対しても指導ができるようにきちんとやれよというのがあったわけですね。だから、今ありましたように、事実上、行政指導をしているということなんですが、やはり、航空に限らず鉄道も含め、持ち株会社や投資ファンドが短期的な利益を求める結果、安全輸送に必要な投資がおろそかになるおそれがある、そういう意味で、安全監査、報告の徴収、立入検査の対象とすべきだと私は思います。

 次に、JR西の問題について少し聞きます。

 一月二十四日、三名の方が亡くなったJR伯備線の触車事故の概要については、先般八日に説明していただきました。なぜこの問題を取り上げるかということなんですね。昨年四月二十五日のJR福知山線脱線事故を受けて、JR西日本は、二度と事故を起こさないために安全性向上計画の実施中であり、国交省は、昨年の十一月十五日に「着実な実施について」ということで勧告したもとで引き起こされた事故だからです。国交省の勧告では、「監査の結果、「安全性向上計画」について一定の進捗が確認できた」と評価しています。

 まず、大臣に聞きます。この伯備線触車事故を引き起こしたJR西日本の姿勢、安全性向上計画の実施状況についての評価はどうなのか。

北側国務大臣 この伯備線の人身事故につきましては、これは、こうした勧告がなされ、そもそも厳しく再発防止に向けて保安監査等をやっている中でこうした伯備線の事故が起こったことについては、まことに遺憾であるというふうに言わざるを得ないというふうに考えております。

 この伯備線につきましては、中国運輸局の方から職員二名を派遣いたしまして現地調査を行うとともに、JR西日本に対しまして、文書により、原因究明と再発防止をするように警告をいたしたところでございますし、また、二月の二十一日から二十四日まで四日間、今回の事故が発生したJR西日本の米子の支社に立ち入りをいたしまして、安全性向上計画の取り組み状況、伯備線の人身事故後の安全対策の状況等を確認するために保安監査を行い、再発防止対策に万全を期するよう指導をしたところでございます。

 国交省といたしましては、こうした事故を発生させないよう、今後とも引き続き、JR西日本に対しましてしっかり指導をしてまいりたいと考えております。

穀田委員 それは、評価じゃなくて、この間の経過とやっていることを言っているだけで、もうちょっと議論をしたいなと思うんですよ。

 私、この間も、安全性向上計画が実行されている段階で、金沢でこんなことを話しているという例を出しました。そうしたら、国交大臣は、事業者が現場の声を聞いて風通しのよいようにしてもらいたい、安全性向上計画も、現場も一体となって実施してほしいと答えたわけですね。ところが、また事故を起こしてしまったわけです。

 今お話あったように、監査もしていると。監査内容は、安全性向上計画の進捗状況、二番目に、伯備線での人身障害事故の再発防止対策の取り組み状況についてということです。そもそも、安全性向上計画を着実に実施しておれば、この事故も起こらなかったはずなんですよ。だから、その当たり前の立場に立てば、事故をなぜ起こしたかという原因と安全性向上計画の徹底状況というのは一緒に見ていく必要があるわけです。

 そこで、国交省が把握した内容について聞きたいと思う。具体的に少し聞きます。

 安全性向上計画には、ヒューマンエラーについては起こり得るものであることを前提という認識に立って、先ほども前の質問者に対する答弁でもるる大臣はお話ありました、そして、事故の芽などの報告をつかみ、事故防止を図る体制を構築するとしています。この認識を米子支社のトップが持っていたかどうか。それを検証する上では、事故が発生した直後、JR西日本の米子支社長が記者会見でどんな発言をしたかということに象徴されると思うんですね。この内容を掌握していますか。そして、何らかの指摘を行いましたか。

梅田政府参考人 先生御指摘の、伯備線の事故発生後、JRの米子支社長がマニュアルについて発言したことは承知しております。

 私ども、昨年の四月二十五日に発生しました福知山線の脱線事故を受けまして、御指摘のように、安全性向上計画を策定し、その具体化をする実施の中で、こういう作業のマニュアルについても見直しを行っているということで、私どもの監査の中で確かめつつ、たくさんのマニュアルがありますから、早くやるように指導しているところでございます。

 そうした中で、安全性向上計画の取り組み状況の確認のために、米子の支社等にも入りました。そういう際に、幹部に対しまして、いま一度原点に立ち戻って輸送の安全の確保にしっかり取り組むよう指導しているところでございまして、これは、私どもとしては、ほかのJRと違いまして、JR西日本に対しましては強く指導してきているところでございますので、まだ足らないところは多々あるかと思いますが、私どもとして、最大限徹底した指導をしながら体質を変えていきたいというふうに考えているところでございます。

穀田委員 今局長からお話あったマニュアルの話は、確かに前半ではそう述べているんですよ。これは、おたくのところからもらった資料ですよ。そこの中で彼はこう言っているんですよ。「人間はミスをするものだという前提にたった事故防止策が必要だとおっしゃってましたが、これまでそのような発想が無かったのか。」こういう質問をされているんですよ。その質問に答えてどう言っているか。「発想が全くゼロであったということは無いと思いますが、人間はミスをするもの、危険性がある、ということを基本にいろいろなルールを積み上げてきたという歴史は、残念ながらございませんでした。」と言っているんですよ。

 肝心な話に答えてくれなくちゃ困るじゃないですか。しかも、肝心な話をしないということは、そういうところに着目していなかったということじゃないですか。二重の過失と私は思うね。そう思いませんか。どうですか。

梅田政府参考人 具体の発言につきましては、先生の御指摘のようなことだろうというふうに私どもも報告を受けております。

 私どもといたしましては、安全につきまして、原点に立ち戻って、ミスをするものだという発想でマニュアルの見直しをやるというようなことは最初から指導してきているところでございまして、そういう点で、そういうものが今までJR西日本にはなかったという事実を述べたと思います、彼は。

 ただ、そうはあっても、この事故を起こした以上、やはり考え方を変えて、原点に立ち戻ってもう一度根本からマニュアルを見直すということが大事だろうと思っておりますし、私も、現実に、本社に入りましたときに、いろいろなマニュアルがありますけれども、このマニュアルについて、こういう事故が起こったということを、厳粛な事実を受けとめて、原点に返って徹底した見直しをやってほしいということを申し上げておりますので、まだまだ徹底さが足りなかったという点では、再度我々としても努力してまいりたいというふうに思っております。

穀田委員 当たり前だと思うんですね。何で私そんなことを言っているかというと、十一月十五日にわざわざ、安全ミーティングなんかを通じて得られた意見に対してきちんと対応せいということまで言っているから、言っているんですよ。今お話があったヒューマンエラーという考え方というのは、その価値観、安全最優先の風土を徹底するという、真っ先に書かれた内容だったわけですね。だから、私言っているんです。

 そこで、緊急安全ミーティングというのをずっと開きましたよね。そこの中でとりわけ、支社長が全現場に赴き、趣旨の徹底を図るというのが計画だったわけです。この緊急安全ミーティングの場で、触車事故を起こす危険が現場の労働者から指摘されていたのではありませんか。この内容は把握していますか。

梅田政府参考人 JR西日本の米子支社では、昨年の四月二十五日の列車脱線事故を受けまして、六月から八月の間でございますが、本社役員あるいは支社長が現場に赴きまして、担当者と緊急安全ミーティングを九十一回開いたという報告を受けております。私どもが把握しています情報では、緊急安全ミーティングはいろいろございますけれども、いろいろな意見が出てきております。

 例えば、他区所で事故が発生しても自分には関係がないという意識があったという風土、価値観に関する意見。それから、事故原因が安全追求から責任追及へ変わっているので事故の芽は報告したがらないなどの、事故の芽等の報告に関するもの。それから、技術系の若手社員は経験不足により異常時に不安を持っているなど、教育指導のあり方に関するもの。落石防止対策として防護網の整備が必要であるなど、設備面の安全面に関するものなど、さまざまな意見があったというふうに聞いております。

 そういうところに出ました意見につきましては、本社みずからが率先して具体的な対策を打ち出すということで、その風土、価値観の変革を推進するよう言っておりまして、例えば、その際に出ました落石防止対策として防護網の整備につきましては、私どもが把握しております限りでは、十八年三月末までに、山陰線十三カ所等、指摘されたものについては、二億以上の予算がかかるわけですけれども、整備をしている最中であるというふうに聞いておりますが、先生の御指摘の触車事故の可能性があるというようなものにつきましては、現在私どもが聞いております情報では、この安全ミーティングの中であったというようなことは聞いておりません。

穀田委員 私は、少なくとももう一度ぐらい、どうやったと聞くぐらいのことが必要だと思うんですよね。

 私、持っているんですけれども、「本社役員による緊急安全ミーティングで出された意見に対するフィードバック」、つまり、自分たちがどういう意見を言って、どういうことをやったかというものなんです。これでいうと、米子保線区、七月二十二日と書いていますね。そして、伯備線は曲線区間が多く見通しが悪い、ヒューマンエラーを一〇〇%なくすのは困難、ハード面でカバーすべきではないか、特に列車の見張りについてはハード対策を希望すると意見が出されている。そして、本社がちゃんと答えている。どう答えているか。お金の制約はあるものの、列車接近警報装置等は検討すべきであると、指示まで出しているんですよ。だから、少なくとも、緊急ミーティングに参加した人たちはそういうことを言った、本社も答えてきたという話があったということなんですよ。

 だから、現場に聞けば、こんなこと、どうやったという話を聞けばわかることなんですよ。書類を渡してこうやってやっているから、そんな情報も入らない。私、いただきましたよ、そちらから。その資料は、分類したもの、確かに緊急ミーティングの実施状況についてという状況がありましたよ。だけれども、そういうときにそういうことはなかったのかという、いわば労働者、働く者は、実際に現場でいろいろなことが起きている問題について、いわゆるヒヤリ・ハット、そういうヒューマンエラーに関する問題を出しているときに、それをつかもうとしないというところに私はちょっといささか難儀やなと思うんですね。

 だから、私はあえて聞きたいんです。監査に入っているわけですやんか、事故があってから、二月に。その際に、現場の職員や労働組合の話を直接聞きましたか。お答えください。

梅田政府参考人 今回の事故が発生しましたJR西日本米子支社に対する保安監査では、まず、安全性向上計画に基づき、本社や支社の役員による緊急安全ミーティングなどを通じまして、現場職員の意見の吸い上げ、あるいは事業者の風土、価値観の変革に向けた取り組みがどのように行われているかという、計画の取り組み状況について確認を行ったところでございます。また、伯備線の事故の発生後、中国運輸局が行いました警告に対します再発防止対策、これの取り組み状況について、支社がどのような対応をしているかを確認して、万全を期するように指導したところでございます。

 私ども、今後とも、こういう事故が発生しないように、JR西日本の会社、事業者側に対しましてしっかり指導をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

穀田委員 私、一番最初に大臣に聞いたですやんか。そのときにお話ししたのは、現場の声を聞くことが大事だということをわざわざ言っているわけじゃないですか。今度の事故が起きたときにも監査に行っている、そういう話はなかったのか、現場の話を聞いたらええやないか、それがなかったらあかんで、こう言っているわけですよ。

 それで、支社長はどう言っているかというと、要するに、マニュアルどおり対応していれば事故は起きなかったとまで言っているんですよ。では、そのマニュアルはどうだったかという話を、私は持ってきましたよ。これが米子支社工務関係触車事故防止要領ですよ。大臣、これ、ポケットに入りますか。入らぬですわな。こんなにでかいものなんですよ。JR西日本の大阪支社なんかは、こういうぐらいのものでポケットに入るんですよね。これは、こんなものなんですよ。ポケットに入らぬですわな、これ、だれが考えたかて。要するに、マニュアルどおりやっていればと言うけれども、およそそういう持たすようなマニュアルがあったんかいなと思いませんか。

 だから、保線の労働者に私は聞いてみましたよ。このマニュアルには、気象状況が急変するなどの異常時には列車の見張りを増員することなんかの規定もあるんです。さらに、雪の日の作業だったが、見通しのきかない悪条件のもとでは本当に適切だったのかと、出動する際の要件まで書いている。そして、行った人たちは七人だったんです。ああいう直すための作業というのは大体十二人がセットでいうと一番いいというので、線路がありますわな、四カ所やろうと思ったらそのぐらいの人数要るんですよ。それをわざわざ七人しか行かなくていいということだったのは、それほど緊急な事態だったのかということまで出ているわけです。

 そして、これなんですね。これ、みんな持てないから、どうしているかというと、事務所に置いているだけなんですよ。だから、マニュアルどおりやっていればよかったなんという話は全く通用しないということが実態だと思っています。

 そこで、この問題について最後に、安全性向上計画では、事前に事故を防ぐために、事故の芽などを報告する予兆管理活動の定着、拡大を図るとしています。この点で、JRの取り組みがどうだったのか。本来、過去の事例を教訓にすれば今回の事故も防げたはずなわけです。

 そこで、伯備線における過去の触車事故の事例、待避不良等の発生状況はどうなっているか、また、安全性向上計画策定後のJR西日本管内における触車、待避不良等の発生状況はどうなっているか、それらについてその都度つかんでいるのか、そういう内容について短くお答えください。

梅田政府参考人 昭和六十二年四月のJR西日本発足以来、伯備線において線路で作業していた係員が列車に触車した事故は、今回を含めて二件でございます。触車しなかったものの待避がおくれた事案、これが一件発生しております。

 今度は、昨年の五月三十一日の安全性向上計画でございますが、この策定以降、JR西日本全体でございますけれども、線路で作業していた係員が列車に触車した事故は伯備線の一件でございます。触車をしなかったものの待避がおくれた事象、これが五件発生しております。

 ちなみに、私ども、この触車の問題は、事故がありますれば、当然、事故の報告で把握することができますけれども、触車はしなかったものの待避がおくれたというようなケースにつきましては、我々、JRに問い合わせまして、どういう件数があったのか、どういう事案だったのかというので情報を収集してきたところでございます。

 今回の法律の改正が行われましたら、こういったものにつきましても、我々は、随時あるいは定期的にとってまいりたいというふうに考えているところでございます。

穀田委員 それとの関係で、そういうものが起きたときに、必ず「軌道内等の作業における安全確保の徹底について」とかという文書を出しているんですよね。

 今回も一月二十五日に出しています。それによりますと、「接触災害防止のためのガイドラインの策定について」等により機会あるごとに注意を喚起したところだ、再発防止を図るための措置を講ずるように厳重に警告すると。これが指示、警告文書なんですね。前の事故が起きたときもそうなんですよ。機会あるごとに注意を喚起したところである、再発防止対策を講じるよう警告すると。

 これ、事態は変わっているんですよ。つまり、安全性向上計画を実施中だという問題が今あるわけですね。そういうもとで起きている。そういう指摘が何にもないという本当に情けない実態だと思っています。

 しかも、先ほど言いましたように、それが安全性向上計画の実施過程の中で、その「着実な実施について」という勧告まで出していて、その二つの、いわば風土の問題、事故の芽、そういう問題を対応方を警告しているときに起きている、そういういわば深さという問題の指摘は全くないわけですね。それでは、本当の意味での監督指導責任を果たしているとは言えないということだけ言っておきたいと思います。

 次に、飛行機の問題について少し言います。先ほど来、航空機の整備の問題がありました。私も一言、少しやりたいと思います。

 外注化が進んでいますけれども、今回の法改正で海外整備に対する規制が強化されるわけだが、その理由は何か、その点について簡単に。

岩崎政府参考人 先ほど来御説明させていただいていますように、海外の整備事業者への外注が行われておりますけれども、比率を見ますと、自社整備の場合、あるいは国内のグループ会社に外注する場合、海外外注の場合、ふぐあいの発生件数は海外整備が特に多いというわけではありません。

 しかし、航空の安全にとって、整備というのは大変重要な安全を確保するための作業でございますので、今、エアラインの方は、海外を含めた外注整備が少しずつ進展をしております。こうした状況に対応するために、整備作業の外注先を、国が作業実施能力を認定した事業場、海外の場合も含めてでございますけれども、これに限定することによって、今までは、外注した場合には委託者、エアラインから、それを通じて受託者を監督したわけでございますけれども、国が直接外注先を認定事業場として限定することによって、立入検査などを通じて直接指導監督していきたい、このように考えておるものでございます。

穀田委員 さっきから何か聞いていると、ふぐあいの率は変わらぬ変わらぬという話ばかりしているけれども、先ほど、左右のエンジンの取り違えの話がありましたね。これの問題でいうと、先ほど来あったように、安全に問題がない、ここまで言っていました。

 では、聞くけれども、航空局で調べて問題ないという結論を出したんですか。

岩崎政府参考人 シンガポールの整備会社でエンジンの左右の取り違えの件でございますけれども、これにつきましては、メーカーでありますボーイング社、これに問い合わせて回答を得たものでございます。

穀田委員 要するに、つくったところに聞いたというだけの話でしょう。安全の根拠は、メーカーが安全だと言っているからにすぎないんです。うのみにしているだけですやんか。何のための安全チェックかと言わざるを得ないと思うんです。

 そこで、ここも私、何を言おうとしているかというと、先ほど大臣に一番最初に聞きました、現場の声を聞けということなんですよ。現場の人たち、機長なんかは、安全上問題ないと言っていることに対して、冗談じゃない、危ないと言っているんですよ。しかも、ふぐあいの率はそれは変わらぬかしらぬけれども、常識では考えられない事態が起こっているというのが、この間の海外における整備の問題が大きいという話をしているんですよ。だから私は言っているんです。

 では、もう一件聞きましょう。二〇〇四年十二月に、スカイネットアジア航空で、整備ミスによりボルトが脱落し運航中に強い振動が発生するトラブルがあった、このケースも安全上問題ないんですか。

岩崎政府参考人 平成十六年の十二月でございますけれども、スカイネットアジア航空で、降下中に機体に振動が発生するという事例がございました。

 調査の結果でございますけれども、昇降舵のタブの取りつけのボルト四本のうち一本が脱落しておりました。これは、先生今御指摘の、中国のTAECOという整備会社でございますけれども、ここの整備において部品の取りつけが十分ではなかったということが原因でございました。

 これも別に、決していいことだと言っているわけではございませんけれども、当該ふぐあいによって機体に振動が発生はいたしましたが、これによって運航に直ちに支障が生ずるものではありませんでした。

 私どもも、これについて、トラブルが発生後、スカイネットアジア航空、それから当該整備を担当いたしました中国のTAECOという会社に原因究明、再発防止の指導を徹底したところでございます。

穀田委員 だから、中国のところの現場に対しても、これはあかんでということを言いに行ったぐらい大変だったんでしょう。

 いいことではないなんという、あなた、その同じ飛行機に乗っていて言ってごらんなさいよ、その現場でそういうことを。冗談じゃないですよ、それは。幾ら考えたかて、機長がそういうことで怖かった、危なかったと言っているときに、いいことではないなんて、そういうたぐいの問題じゃないほど大問題なんですよ。それを、そういうことを言うから、航空局というのはほんまこれは大変やなとみんな思っているんですよ。

 この件について私も現場から聞きましたけれども、ボルトの脱落なんというのは信じられないミスなんだと。例えば、日本航空の話ですけれども、シンガポールの整備会社では、定期整備、C整備というのだそうですけれども、行った747型機について一年後に日本で定期整備をしたら、構造部材の腐食や亀裂のふぐあいがひどく、九日間整備の予定を延長したというんです。また、別の航空機では、通常十三日の整備予定を多目に見積もって三十三日で計画したにもかかわらず、七十六日、倍以上もかかった。こういう状態だと、トラブルが一向になくならない原因かなと思うのは当たり前じゃないですか。

 海外整備でなぜこんな信じられないミスやトラブルが続くのか、国交省はどのように分析、解明しているんですか。

岩崎政府参考人 先ほど申しましたように、我々、トラブルの計数的な分析を行っております。海外の整備の場合、自社整備の場合、国内の下請会社に外注した場合、それぞれのトラブルの発生率を分析いたしました。繰り返しになりますけれども、大きな差はございませんでした。

 我々、何もトラブルがあることをいいとは言っておりませんけれども、航空機の場合、一定の確率でこうした整備上のふぐあいというのが生ずることは、残念ながら、やむを得ないことだと思っております。したがって、海外の整備に出しているからといって、一概に安全上大きな問題があるというふうには考えておりません。

穀田委員 少々のふぐあいじゃないということをまず肝に銘じてくれなあきませんよ。

 今ありましたけれども、何回も言うように、件数の問題じゃないんですよ、質を見るべき問題なんです。整備の基本認識、常識を疑う対応という点で深刻さがある、これが現場の声なんです。だから、私は現場の声をきっちり聞きなさいということを何度も言っているわけです。

 では、聞きますけれども、国内の整備と海外整備の根本的な違いがどうなっているかということを言いますと、国内と海外では作業する一人一人の整備士の意識が全く違うというふうに現場は言っています。

 日本では個々人が整備士としての意識を持って整備するけれども、海外整備工場では、整備資料を渡しても見るのはスーパーバイザーという監督者だけで、作業者は見ていないという実際の作業が現場で行われている。つまり、指示するだけで作業に責任持たないという現実があって、同時に、ミスに対する懲罰は厳しくて、ミスすれば解雇や減給に直結する、だからミスを隠す風潮が強い、こういう点も指摘されています。

 これは事実として確認できますか。

岩崎政府参考人 海外の整備の場合でございますけれども、海外で整備を行っている場合においても、その受託を受けた整備会社で、それぞれの作業の各段階ごとにおいて、作業者とは別の検査員が作業の適切性についてチェックをしております。

 私ども、こうしたことについては、先ほど来問題となっておりますSASCOでありますとかTAECOでありますとか、これは認定事業場になっておりますので、二年に一度、認定のときに実際に我々の検査官が行きまして確認をしているところでございます。

穀田委員 そこの問題なんですけれども、国内の整備士というのはやはり環境がちょっと違うんですね、現実は。例えば、国内の整備士の場合には、国家試験を通るために、そういう作業なんかの一つ一つの大事さをわかって、ステップアップするという形で取り組んでいる。海外ではどうなっているかというと、やはり、スキルアップしてみずからの力が上がれば給料のいいところに移っていく、大体こういう傾向にあると言われているんですね。

 だから、そういう現実をよく見て、何か言うとすぐ検査があるといって、その検査をやって見逃してこうなっているわけなんですね。だから、こんな大変な事態が起きているわけだから、そこの事実にも着目をしてしっかり私は見る必要があると思うんです。(発言する者あり)やじ飛ばすんだったら、きちんと質問したらいいじゃないか。

 そこで、最後に領収検査について言いたいと思うんです。

 先ほども他の委員からありましたように、海外委託による国内整備の空洞化の問題というのが懸念されます。現場では、海外委託が進めば運航の第一線を支える整備士の訓練の場がなくなってしまうんじゃないかと不安の声が上がっています。それは年代的にもすごく特徴的でして、五十代の人たちの後に陥没をしているという現実もあります。

 したがって、当然、領収検査する側の問題として、技術力が継承されず、不良品が持ち込まれても確認できない事態につながる不安があるわけです。航空会社任せでなくて、政府としても委託の割合を規制するなど手を打つべきでないでしょうか。そこはいかがでしょうか。

岩崎政府参考人 先生御指摘のとおり、航空会社が、自社の技術水準の保持という観点からは、一定程度、自社での整備を適切に実施する能力があることが望ましいと考えております。

 ただ、これは、やはりJAL、全日空、大手会社と新規会社では規模の相違あるいは体力の相違等々がございますので、一概には何が適切かというのはなかなか難しいだろうと思っております。国としても、よく見守りながら適切に指導してまいりたい、このように考えているところでございます。

穀田委員 私、きょうは、JR西の伯備線の事故と、そして今度のJALを初めとする整備に関係する問題を言ってきました。

 何を言いたいかというと、JRにしろ航空にしろ、やはり今起きている現場の声をよく聞けということなんですよ。大体、先ほども、事故があったときにも、製造会社の声は聞くんだけれども、実際にふぐあいがあってそれを告発して、これは大変やなと言うている人たちの声はなかなか聞かないということではだめだと思います。

 特に、整備コストについては、安さやリストラによる効率化を求める余り、致命的なミスが起こる可能性がある。そういう意味では、整備委託というのを本当に重視して、国としても、最終的な責任を負える、そういう自社の整備についての継続、技術力強化、そういった点についても留意をして進めるべきであるということを述べて、終わります。

林委員長 糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 今回の運輸の安全性の向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律案に関連して、事故原因究明対策と事業者の安全管理体制についてお尋ねをしたいと思います。

 運輸の安全性を高めていくためには、事業者の意識を高めていくことと並んで、不幸にして起こってしまった事故について徹底的な調査を行う、そこから得られた教訓を生かして事故の再発防止ということを図っていくということが重要であるというふうに思っております。その意味で、国の事故調査機能の強化が持つ意味ということは極めて重要なことではないのかなというふうに思っております。

 そこで、事故原因究明対策についてお尋ねいたします。

 被害原因に関する調査、それから提言機能を強化する趣旨、社会的背景というものがどのようなものなのか、それからまた、被害の原因とか被害の軽減のために講ずべき施策として具体的にどのようなものを想定されているのか、お聞かせいただけますでしょうか。

福本政府参考人 お答えいたします。

 昨今、航空、鉄道分野におきまして、事故、トラブルが相次いで発生をいたしてございまして、公共交通そのものへの国民の信頼が揺らぎかねない大変ゆゆしき状況となってございます。

 特に、昨年発生いたしましたJR福知山線の脱線事故におきましては、近年例を見ない多数の人的被害が生じたことから、当委員会といたしましても、事故の背後要因あるいは被害の発生、拡大原因も視野に入れまして全容の早期究明に努めておるところでございます。

 今後とも、公共交通機関のさらなる効率化あるいは高速化、さらには大量輸送化に伴いまして、一たび事故が発生いたしますならば甚大な被害が発生する危険性がますます高まっておるのではないかと予想されておるところでございます。また、依然として後を絶たないヒューマンエラーの問題、自然災害等に起因する事故というものにつきましては、従来の予防型の対策のみでは限界があるのではないかというのも事実でございます。

 このたび、事故の原因究明及び再発防止に加えまして、事故に伴う被害の発生あるいは拡大原因を究明いたしまして、仮に、万が一事故が発生いたしました場合でも、被害を可能な限り軽減をするというための提言を行うことも当委員会に期待される極めて重要な役割だと考えておるところでございます。

 具体的には、航空機、車両の耐衝撃性、いろいろなぶつかったときの衝撃を和らげるといいますかそれに対する力をつける、こういうこと。あるいは耐火性、燃えないということでございます。それから、座席でございましたり、シートベルト等車内設備の安全性、かえってこういう車内設備で被害が拡大をしておるというようなこともございます。あるいは、事故直後の乗務員の救急救命活動が適切に行われたかどうか、こういった点につきましても、調査をし、かつ提言を行っていくこととしておるところでございます。

糸川委員 これは通告していないんですが、福本局長にお尋ねしますが、事故調の中に心理の専門官というのは何名いらっしゃるんでしょうか。

福本政府参考人 お答えいたします。

 私どもの事故調査の委員、トータル十名の委員がいらっしゃいますが、その中のお一人に、垣本先生、心理学の専門の先生が非常勤委員という形で入ってございます。あと、調査官につきましては、JR福知山線の脱線事故の調査を専門にお願いしようということで、民間から一名の方に調査官という形で今来ていただいておるということで、トータル二名の委員及び職員がおるということでございます。

糸川委員 今回の福知山線の事故にしましても、物理的な原因ということよりも、例えば心理的に、運転士さんがもし会社からの連絡で回復運転しなくていいというようなことを言われていたならば、もしかしたら同じ事故が起きなかったかもしれない。それから、静岡の上空でJALの日航機がニアミスを起こしたときにも、心理的に、恐らく、高度を片方が上げる、片方が下げるというところを同時に下げたとか、そういうようなことでニアミスが起きているという現状から、その心理状態がどういうことだったのかということも調査して、今後の事故防止のために結びつけていくというのが重要なのではないかなというふうに思うわけでございます。

 今回の改正で、事故調の立ち入り場所として、航空機の使用者とか鉄道事業者、また経営者の事務所として、これはまた、調査対象となる物件として帳簿ですとか書類を加えておるわけでございますが、これによって事故調査の業務というのはどのように改善されているのでしょうか。

福本政府参考人 お答えいたします。

 事故調査委員会の事故調査につきましては、事故の直接的あるいは技術的な原因を究明するだけでなく、委員から今御指摘がございましたとおり、乗務員の勤務状況、運行ダイヤ、人的要因、いわゆるヒューマンファクター等も含めました事故の背後要因につきましても明らかにしていくということで、ハード、ソフトの両面から事故の全容を解明することが必要だと考えてございます。

 特に、安全管理体制、先ほど御指摘もございましたが、乗務員の教育の問題、労務管理の問題、安全設備投資がどのように行われておったか等々につきましては、従業員の勤務、教育等に関する資料でございましたり、安全関連投資に関する資料等を収集、分析することによりまして、現在、慎重に検証を進めておるところでございます。

 この点、航空・鉄道事故調査委員会設置法は、委員会の処分権限、具体的には、立入検査、物件の提出命令あるいは留置、保全命令及び移動の禁止というものの範囲につきましては、「関係物件」という形で規定がございまして、事故等の現場におきます航空機あるいは鉄道施設というものを例示として挙げておるところでございます。すなわち、これまで、主としてハード面に関する技術的調査が想定されておって、ソフト面に関する調査につきましては、「その他の必要と認める場所」あるいは「その他の事故等に関係のある物件」として補足的に位置づけられるにとどまっておるところでございます。

 ということで、今回の改正では、立ち入り場所の例示といたしまして、航空機の使用者、鉄道事業者または軌道事業者の事務所というものを加えさせていただくとともに、関係物件の例示といたしましては帳簿、書類というものを加えることによりまして、これらの物件に関しますソフト的な調査が円滑に実施されることになりまして、さらに多角的な事故調査が可能になるのではないかと期待をいたしておるところでございます。

糸川委員 大臣にお尋ねしますけれども、事故調査委員会は、事故の背後にある組織的な問題点の調査等、それから事故の再発防止に資する調査を行う必要があるというふうに考えておるわけでございます。この事故調査のあり方に対して、大臣の見解をお聞かせいただけますでしょうか。

北側国務大臣 事故が起こったときに、物理的にまた技術的に、どういうことでその事故が起こったのかと解明すること、もちろんそれが大事なわけでございますが、それだけではなくて、このJR西の福知山線事故で象徴されますように、やはりその背景、背後にあるもの、そういったものをしっかり調査していただくことが事故原因の全容の解明そして再発防止に向けて非常に重要である、そういう多角的な調査が必要であるというふうに考えているところでございます。

 今後とも、こうした事故調査を総合的にきちんと実施できるように、事故調査体制の整備に努めてまいりたいと考えております。

糸川委員 福知山線では、百七名もの方が亡くなられて、五百名以上の方が負傷されたわけでございます。今大臣がおっしゃられたように、調査をしっかりとしていくと。

 今回の安全管理体制についてお尋ねしたいんですが、今回の改正によって、再発防止についてどのような効果が期待されるのかということをお答えいただけますでしょうか。

北側国務大臣 こうした事故を防止していくためにやはり一番大事なことは、事業者の方々がまず安全管理体制をしっかりと構築していただくことが最も大事なことであります。もちろん、行政側が、国の側が監視、監督を強化していく、それも大事なんですけれども、何よりも大事なことは、公共交通の事業を担う方々が安全管理体制をしっかりととっていただくことが私は最も大事なことであるというふうに思います。

 今回は、そういう安全管理体制を事業者としてきっちりとつくっていただこうということで、例えば、安全統括管理者、これは役員の方々がなっていただくわけでございますが、安全統括管理者というものをきちんと定めていただく、また運転管理者も選任をしていただく、安全管理規程もきちんと作成を義務づけをして届け出をしていただく、鉄道事業者内部の経営中枢から現場までの安全管理体制を確立するというのが一番目の大きな今回の法改正の目的でございます。

 国交省といたしましては、この安全管理体制が適切に機能しているかどうか、これを監査等を通じて確認して、必要な場合には、安全管理規程の変更命令、場合によっては管理者の解任命令、これなんかはかなり、本当に、人事に介入していくという趣旨でもあるわけでございまして、こうしたことができる仕組みを確立させていただきたい、また、国や鉄道事業者による毎年度の安全にかかわる情報については公表する、公表して利用者の方々の監視機能というものを強化していきたいというふうに考えているところでございます。

 こうしたさまざまな制度の改善、改正を通じて、鉄道輸送の安全を確保し、再発防止に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

糸川委員 ありがとうございます。

 今回の改正で安全統括管理者と運転管理者の設置をするということですけれども、この人たちの例えばペナルティーが、今、場合によっては人事に入っていって解任があるということから、場合によって運転士さんがさらにプレッシャーに感じるということがないようにしなきゃいけないということを前提にして、鉄道の運転士の資質の維持ということをうたわれているわけでございますから、具体的にどのような対応を考えているのか、お聞かせいただけますでしょうか。

梅田政府参考人 今回の改正では、運転士の資質の維持を図るために、まず、安全管理規程におきまして、運転士の日常の教育方針あるいは資質の管理の方法等について明記していただこうかと考えております。その次に、運転区所、これは現場でございますけれども、運転士の資質の充足状況を確認し、必要な教育や訓練を行う者といたしまして乗務員指導管理者というものを選任していただきまして、これを鉄道事業者に義務づけるというふうにしたいと思っております。もちろん、これも安全管理規程にきちっと書いていただこうかと思っております。さらに、鉄道事業者が運転士の資質の充足状況につきまして定期的な確認を行いまして、その状況を国へ報告させるというような制度を省令上規定したいと思っております。

 こうしたことによりまして、鉄道事業者において運転士の資質の管理が適切に行われているかどうかを国が確認する仕組みをつくりたいというふうに思っているところでございます。

 また、一層運転士の資質の向上を図るために、有識者より構成いたします運転士の資質向上検討委員会というものを既に設置しておりますけれども、ここの中で、先ほど申しましたけれども、効果的な教育システム、あるいは運転士としての適性を効果的に判断するための総合的な方策、あるいは職場環境の改善方策、こういうようなものにつきましても検討を行っているところでございまして、結論を得たものから速やかに実施をしていきたいというふうに考えているところでございます。

 こうした措置によりまして、適切に運転士に資質の維持管理が図られるものだというふうに考えておりますので、我々といたしましては、ぜひこの法案を早く実際にワークさせるべく努力してまいりたいというふうに思っているところでございます。

糸川委員 先ほど来から私はどうしてもメンタルの部分が気になるわけで、我々でも、運転をするときに、とっさの判断というのがどれだけ重要かということをいつも考えながら運転するというふうになるわけでございますので、ぜひ、プロの鉄道の運転士さんですとかそういう人たちのメンタルの部分のケアをしていただければな、その中で資質の維持をしていただければなというふうに思います。

 時間もなくなってまいりまして、今回の安全管理体制の部分なんですが、航空会社の安全管理システムに関する国際的なルールというのがどのようになっているのかというのをちょっとお聞きしたいので、簡潔にお答えいただけますでしょうか。

岩崎政府参考人 国際的にも、この安全管理システムの導入というのは始まった段階でございます。主要な国では、法令に基づきまして、カナダでは二〇〇五年の六月から義務づけられております。イギリスやオーストラリアでも導入が推奨され始めているところでございます。

 我が国は、かなり国際に先駆けて、今回、安全管理システムの導入の重要性を認識いたしまして、義務づけることとしたものでございます。

糸川委員 では、今、現行の海上運送法及び内航海運業法において海運事業者に要求している安全管理体制というのがどのようになっているのか、これも簡潔にお答えいただけますでしょうか。

星野政府参考人 海運事業者に対する安全管理体制についてのお尋ねでございます。

 現在、旅客船及び内航貨物船運航事業者に対しましては、海上運送法及び内航海運業法によりまして、いわゆる運航管理者制度、運航に関する安全上のさまざまなマニュアルというか作業手順等々を文書化し、それを運航管理規程として現場レベルで共有する、それを適切に実施するよう運航管理者を選任する、そういう制度によって安全管理を行っております。また、そうした安全管理が適切に行われているか、現場で、私どもの出先でございます運航労務監理官がしっかり保安監査をするということで安全の確保を図っているということでございます。

糸川委員 最後に大臣に、今回の改正によって安全管理体制の確立についてどのように取り組んでいかれるのか、決意をお聞かせいただいて、これで私の質問を終わりたいと思います。

北側国務大臣 昨年のJR西日本における福知山線の事故、またJAL等の航空での連続したトラブル、こうしたことを受けまして、公共交通にとって一番の基本でございます安全な輸送、安全の確保、ここをしっかりと、まずは公共交通を担っております事業者の方々の中でしっかりやっていただく必要があるというふうに思っております。事業者の方々が、経営トップの方々から現場の方々まで一丸となってこの安全管理体制の構築に取り組んでいただく、そのためのさまざまな取り組みについて、今回、法改正でお願いをしているところでございます。

 そして、国の側としても、こうした安全管理体制をしっかり監視をしていく、安全マネジメント評価というふうに我々は申しているわけでございますが、そういう導入をさせていただいて、運輸の安全性の向上を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

 また、先ほど来御質問がございます鉄道の運転士の資質の向上の問題や速度制限装置に係る技術基準、航空管制に係るヒューマンエラー対策等々も検討を進めているところでございまして、今後とも、国民の皆様の公共交通機関に対する信頼回復に向けまして、総合的な安全対策の推進にしっかり取り組みをさせていただきたいと考えております。

糸川委員 ありがとうございました。

 終わります。

林委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

林委員長 この際、本案に対し、長妻昭君外四名から、民主党・無所属クラブ、日本共産党、社会民主党・市民連合及び国民新党・日本・無所属の会の四会派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を求めます。三日月大造君。

    ―――――――――――――

 運輸の安全性の向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

三日月委員 ただいま議題となりました運輸の安全性の向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律案に対する修正案について、提出者を代表して、その理由並びに趣旨を御説明申し上げます。

 JR福知山線脱線事故や羽越線脱線事故など、最近の運輸分野における事故、トラブルの発生状況を考えるとき、事故に関して、独立した自由な立場から、ヒューマンエラー、組織の問題まで踏み込んだ原因の究明を行い、再発防止に向けた提案がなされることが強く望まれているところであります。

 ところが、今回の航空・鉄道事故調査委員会の改革については、被害の軽減に向けた調査提言機能が追加されているにすぎません。事故を客観的に分析し、その対策を提言するためには、利害関係を持つ私的主体や事業官庁からの独立性、中立性の確保が不可欠です。国民の側に立ってみれば、航空・鉄道事故調査委員会がある程度の独立性があるとはいえ、国土交通省に属していることは、調査報告書が本当に客観的になされ、事業官庁から自由な立場で書かれたものなのかについて疑義を持つことにもなりかねません。

 また、国際民間航空条約の第十三附属書においても「航空事故調査当局は、調査の実施に関し、独立性を有し、かつ、制限されない権限を有しなければならない」と規定されているところであります。現在の航空・鉄道事故調査委員会では、調査の実施に関して十分な独立性を有しているとは言いがたい状況であると考えます。

 そこで、修正案の趣旨ですが、航空・鉄道事故調査委員会を国土交通省から切り離し、内閣府に移管することにより、独立性をさらに高め、公正中立な事故調査並びに報告書の作成、建議、勧告を行うことができるようにするものであります。また、自動車に関する事故調査に関しても、中立的な機関による調査を行うべきであり、航空・鉄道事故調査委員会の権限に追加するものであります。それに伴いまして、名称も運輸事故調査委員会としております。

 事故調査を中立公正に行うことにより事故の再発防止により資すること、国民の事故調査に対する信頼が高まることが期待されます。この修正の趣旨につきましては、すべての会派の皆様に御賛同いただけるものと確信しておりますので、よろしくお願いいたします。

 以上です。(拍手)

林委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

林委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 運輸の安全性の向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、長妻昭君外四名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

林委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、原案について採決いたします。

 原案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

林委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

林委員長 ただいま議決いたしました本法律案に対し、衛藤征士郎君外六名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び国民新党・日本・無所属の会の六会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。渡辺具能君。

渡辺(具)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 なお、お手元に配付してあります案文の朗読をもって趣旨の説明にかえることといたします。

    運輸の安全性の向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺憾なきを期すべきである。

 一 最近の公共交通機関において頻発する事故・トラブルを踏まえ、公共交通の安全対策を総合的に推進し、更なる運輸の安全性の向上に努めること。

 二 安全管理規程の作成及び安全統括管理者等の選任その他本法律案に規定される措置を通じ、安全管理態勢の構築及び安全風土の確立が的確に図られるよう、運輸事業者に対し適切な指導・監督・支援を行うこと。

 三 国土交通大臣及び運輸事業者が公表する輸送の安全にかかわる情報が、利用者、住民その他公共交通に関わる者に提供されることを通じ、運輸の安全性の向上に向け有効に活用されるよう、環境の整備に努めること。

 四 自発的に安全報告を行う制度については、諸外国の例を参考にしつつ、今後の課題として検討を行うこと。

 五 運輸事業分野において、これまで実施された規制緩和が運輸の安全性に与えた影響を検証し、必要に応じ適切な措置を講ずること。

 六 ヒューマンエラー防止に向けて労働条件・労働環境の整備に資するよう、運輸事業者に対し適切な指導・監督・支援を行うこと。

 七 ヒューマンエラー防止に向けて、航空機・船舶の製造事業者及び整備事業者に対して、安全情報の周知に努めること。また、我が国の領域内を航行する航空機・船舶に関し、それらを管轄する諸外国及び国際機関と十分に連携しつつ安全性の向上に努めること。

 八 ヒューマンエラー防止に資する技術開発については、輸送モード横断的に連携を図りつつ推進に努めること。

 九 運輸事業者に対する監査・検査体制及び事故等調査体制に係る国土交通省の予算及び定員については、監査・検査・調査が円滑に実施できるよう十分確保するとともに、ヒューマンファクターの調査も行い得るよう機能の向上に努めること。

 十 航空機の運航乗務員と管制機関がマニュアルの遵守・日頃からの情報交換に努めることを通じ、相互間の意思の疎通が円滑に図れるよう環境整備に努めること。

 十一 安全に関する技術継承や人材育成のための環境整備が図られるよう、運輸事業者に対し適切な指導・監督・支援を行うこと。

 十二 運輸事業者の業務の受委託については、委託者・受託者の連携を密にするとともに、安全上の支障を及ぼさないよう、運輸事業者に対し適切な指導・監督を行うこと。

 十三 踏切事故の防止及び交通の円滑化のための緊急的かつ重点的な踏切道の改良の実施をするよう努めること。

 十四 航空・鉄道事故調査委員会は、委員会設置法第四条の趣旨に則り独立性を確保し、公正中立な立場で的確に事故調査を行うこと。

 十五 今後の事故調査に当たっては、被害の状況も勘案するとともに、航空・鉄道事故調査委員会の在り方については、諸外国の例を参考にしつつ、その体制・機能の強化、自動車、海運を加えるなど陸・海・空にわたる業務範囲の拡大の必要性について、今後の課題として検討を行うこと。

 十六 航空・鉄道事故調査委員会と捜査機関は、国際民間航空条約の趣旨を尊重し、事故調査と犯罪捜査のそれぞれが適確に遂行されるよう、十分協力すること。

 十七 航空・鉄道事故調査委員会事故調査報告書を作成するに当たっては、ヒューマンエラー再発防止の観点から幅広い調査を行い、報告書に盛り込めるよう努めること。また、報告書の内容については、国民が有効利用するために理解しやすいものとなるよう努めること。

以上であります。

 委員各位の御賛同をよろしくお願いいたします。(拍手)

林委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

林委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、国土交通大臣から発言を求められておりますので、これを許します。国土交通大臣北側一雄君。

北側国務大臣 運輸の安全性の向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律案につきましては、本委員会におかれまして熱心な御討議をいただき、ただいま全会一致をもって可決されましたことに深く感謝を申し上げます。

 今後、審議中における委員各位の御高見や、ただいまの附帯決議において提起されました事項の趣旨を十分に尊重してまいる所存でございます。

 ここに、委員長を初め理事の皆様方、また委員の皆様方の御指導、御協力に対し深く感謝の意を表します。

 大変にありがとうございました。(拍手)

    ―――――――――――――

林委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

林委員長 次に、内閣提出、独立行政法人に係る改革を推進するための国土交通省関係法律の整備に関する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。国土交通大臣北側一雄君。

    ―――――――――――――

 独立行政法人に係る改革を推進するための国土交通省関係法律の整備に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

北側国務大臣 ただいま議題となりました独立行政法人に係る改革を推進するための国土交通省関係法律の整備に関する法律案の提案理由につきまして御説明申し上げます。

 政府においては、これまで小さくて効率的な政府を実現する観点から行政改革を積極的に推進してきたところでございます。この法律案は、この行政改革の一環として、独立行政法人に係る改革を推進するため、平成十七年度末に中期目標期間が終了する国土交通省所管法人について、土木研究所及び北海道開発土木研究所の統合並びに海員学校及び海技大学校の統合を行い、一体的かつ一層の効率的、効果的な事業の実施を図るとともに、特定独立行政法人を、民間との人事交流等の面でより自由度の高い特定独立行政法人以外の独立行政法人とし、その役職員を非公務員化するものでございます。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、独立行政法人土木研究所及び独立行政法人北海道開発土木研究所の統合並びにその役職員の非公務員化を行うこととしております。

 第二に、独立行政法人海員学校及び独立行政法人海技大学校の統合並びにその役職員の非公務員化を行うこととしております。

 第三に、独立行政法人建築研究所等七法人の役職員の非公務員化を行うこととしております。

 その他、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案を提案する理由でございます。

 この法律案が速やかに成立いたしますよう、御審議をよろしくお願い申し上げます。

林委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十四日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五十分散会


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