衆議院

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第10号 平成18年4月4日(火曜日)

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平成十八年四月四日(火曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 林  幹雄君

   理事 衛藤征士郎君 理事 中野 正志君

   理事 望月 義夫君 理事 吉田六左エ門君

   理事 渡辺 具能君 理事 長妻  昭君

   理事 三日月大造君 理事 高木 陽介君

      赤池 誠章君    石田 真敏君

      遠藤 宣彦君    小里 泰弘君

      大塚 高司君    鍵田忠兵衛君

      金子善次郎君    亀岡 偉民君

      北村 茂男君    後藤 茂之君

      坂本 剛二君    島村 宜伸君

      杉田 元司君    鈴木 淳司君

      薗浦健太郎君    田村 憲久君

      長島 忠美君    西銘恒三郎君

      葉梨 康弘君    松本 文明君

      盛山 正仁君    若宮 健嗣君

      小宮山泰子君    古賀 一成君

      下条 みつ君    高木 義明君

      土肥 隆一君    長安  豊君

      鉢呂 吉雄君    馬淵 澄夫君

      森本 哲生君    伊藤  渉君

      斉藤 鉄夫君    穀田 恵二君

      日森 文尋君

    …………………………………

   国土交通大臣政務官    石田 真敏君

   国土交通大臣政務官    後藤 茂之君

   参考人

   (横浜国立大学大学院工学研究院教授)       小林 重敬君

   参考人

   (大阪市立大学大学院創造都市研究科教授)     矢作  弘君

   参考人

   (青森市長)       佐々木誠造君

   参考人

   (富山市長)       森  雅志君

   国土交通委員会専門員   亀井 為幸君

    ―――――――――――――

四月四日

 日本のタクシー再生に関する請願(金田誠一君紹介)(第一〇八〇号)

 同(末松義規君紹介)(第一〇九九号)

 同(阿部知子君紹介)(第一一七九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 連合審査会開会申入れに関する件

 都市の秩序ある整備を図るための都市計画法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三三号)


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     ――――◇―――――

林委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、都市の秩序ある整備を図るための都市計画法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、横浜国立大学大学院工学研究院教授小林重敬君、大阪市立大学大学院創造都市研究科教授矢作弘君、青森市長佐々木誠造君及び富山市長森雅志君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、小林参考人、矢作参考人、佐々木参考人、森参考人の順で、それぞれ十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないこととなっておりますので、あらかじめ御了承ください。

 なお、参考人及び質疑者におかれましては、御発言の際は着席のままで結構でございます。

 それでは、まず小林参考人にお願いいたします。

小林参考人 それでは、私の方から十分ほどお話しさせていただきます。

 私は、今回の法案のベースになりました社会資本整備審議会の小委員会あるいは部会において、答申の取りまとめをやったという立場からお話をさせていただきたいと思います。当然私見でございますが、お話をさせていただきます。

 お手元に資料が行っているかと思います。十点ほど御紹介させていただきたいと思います。

 第一点でございます。都市構造改革を目指すことの必要性でございます。

 二十世紀型の人口増大による市街地、都市の拡大を整序するということを主な目的といたしました都市づくりから、二十一世紀型の人口減少等も見据えました集約型都市づくりを目指す都市構造改革が必要であるというふうに考えております。それは、望ましい都市構造を実現するために広域的都市機能の郊外立地を抑制し、集約型都市づくりのために各種の誘導手法を活用する必要があるということにつながっていくことでございます。

 ここで、都市の拡大を整序するというお話と、それから広域的都市機能の郊外立地を抑制するという二つの話が出てまいりましたが、整序するという意味は、例えば郊外部においてニュータウンをつくってそのような市街地をうまく整えていくということでありますし、広域的都市機能の郊外立地を抑制するというのは、その抑制するという言葉どおりの表現でございます。

 二番目でございます。中心市街地の再生を目指すことでございます。

 中心商店街の再生を目的とするのではなく、中心市街地の再生を目的とする必要があるということでございます。

 確かに、中心市街地は商業機能の役割は大きいものがございますが、それと並んで、住機能、交流機能、例えば公共施設などを中心とし、さらに民間のホテルなどもこの一部に入ると思いますが、そのような機能、事務所機能など多様な機能で構成されて、それらの多様な機能の集約により中心市街地はにぎわいを実現する必要があるというふうに思っております。

 ただ、そのような機能を集めただけでは実はにぎわいが十分実現するというふうに考えておりませんで、集約するだけではなくて、諸機能を支える環境をどのように整備するかということも必要だというように思っております。

 三点目でございます。そのような中心市街地の再生を図るには、多くの関係者、関係主体の参加によって再生を目指さなければいけないということです。

 従来の中心商店街の再生を目指してきた再生は、行政と商業者のみによって市街地を再生しようと図っていたという嫌いがございました。今後は、それだけではなくて、地元金融機関、交通機関、交通事業者、工業関係者など多様な関係者、さらに地元住民、あるいは最近新たな公共を担っているNPOなど、多くの関係主体が集まって再生を図る必要があるというように考えております。

 当然、行政も、従来の行政ではなくて、すなわち商業に対応する商工の部門だけではなくて、さまざまな行政のパーツが横断的な行政組織をつくって対応する必要があるというふうに思っております。

 四点目でございます。これからの超高齢社会への移行あるいは持続可能性を求める動向などの社会経済状況に適合した都市づくりを目指すことでございます。

 超高齢社会では、高齢者が生活する上で利便性が高い都市であり、さらに地球環境問題が深刻になっていることに対応する地域づくりであるためには、できるだけ車、特に自家用車に依存しないで、公共交通機関や徒歩による生活ができる都市づくりを実現する必要があるということでございます。調査によりますと、高齢者の外出手段の多くが徒歩、さらに公共交通機関であるというようにデータで出ております。そのような高齢者の外出手段をベースに都市を考えていく必要がこれからはあるのではないかということでございます。

 五番目でございます。ストック活用の都市づくりを目指すことでございます。

 都市づくりの目的を拡大市街地の整序から集約型都市構造の実現に変革することを別の言葉で表現いたしますと、これまでの都市づくりが新規の開発を中心にしたものから、既存ストックである従来の中心市街地を活用して、それを有効に運営することにつながるものではないかというふうに思っております。

 そのとき、開発は一時的なものでありますが、運営、マネジメントは継続的なものであるとの認識が必要であり、その継続的なマネジメントを運用していく、マネジメントをしていく組織が必要であるというように考えています。その組織こそ、先ほど三で申し上げました、多くの関係主体の参加ということを考えなければいけないということでございます。

 二枚目でございます。

 六番目でございます。中心部から郊外に向かって開発規制が厳しくなることを目指すことでございます。

 我が国の都市づくり、地域づくりの規制制度は、実質的な面から見ると、中心部から外に行くほど規制が緩くなっているという傾向がこれまであったというふうに私は認識しております。都市計画区域外の規制が最も緩く、計画白地区域、市街化調整区域、市街化区域などの順で厳しくなるということでございます。

 また、広域都市機能のように適切な制限ができていない事例とか、多様な例外扱い、例えば公共公益施設の扱いでございますが、これが存在し、計画的な都市づくりを阻害してきたと思っておりまして、これを是正する必要があるのではないかということです。

 七番目でございます。事前明示性のある社会ルールがあり、かつ、公正、透明の参加手続により判断される都市づくりを目指すことでございます。

 都市づくりの基本は、的確に判断できる地域主体と適切に広域調整が可能な主体が、十分な情報をもとに、公正、透明な手続の中で慎重に判断して決めることであると思っております。多くの関係者が考えてもいないところに、たまたま大規模な土地利用が可能な土地があるからといって、よく判断されることなく、広域都市機能が立地することがないようにすることが必要であるというように思っております。

 八番目でございます。選択と集中による再生を目指すことでございます。

 これまでのまちづくり三法の成果が乏しい大きな理由は、制度ができたから、特に補助制度ができたからそれに乗りおくれるなという立場で基本計画をつくり、十分な体制も整わず中心市街地活性化に取り組んできたことにあるのではないかと私は思っております。これからは、既にさまざまな形で熱心に中心市街地再生に取り組みながら、まだ十分成果を出し切れていない地域に選択と集中で対応し、さまざまなタイプの成功事例をまずつくり出すということが必要ではないかというように思っております。

 九番目でございます。中心市街地の再生のための人材づくりを目指すこと。

 これまで、中心市街地再生に実績を上げている事例が幾つかございます。そのような事例を拝見いたしますと、人材が民間あるいは行政にも存在するという例が多いわけでございます。幅広く我が国の中心市街地再生を目指すには、まず、そのための人材を幅広く募り、あるいは育成する必要があるというように考えております。

 最後でございます。

 十番目、選択可能性の高さを失わない都市づくりを目指すこと。

 中心市街地再生を集約型都市構造の理念のもとに実現するとしても、これまで拡散して拡大した市街地を一挙に変えることは不可能であるというふうに私は思っております。現在、郊外に居住している、生活している多くの方々の生活の便を考え、さらに、将来は都心居住と郊外居住のすぐれた二つのタイプをつくり出す選択性の高い都市づくりを進めることが求められているのではないかと思っております。さらに、よく判断された結果として、現在の中心市街地以外に都市の中心を定める、そういう選択もあり得ることが必要であるというように考えております。

 以上でございます。(拍手)

林委員長 ありがとうございました。

 次に、矢作参考人にお願いいたします。

矢作参考人 大阪市大の矢作です。

 今回の都市計画法の改正に関し、三点に絞って簡略に私見を述べさせていただきたいと思います。

 まず一点目は、郊外立地型大型店の立地規制に関しましては、日本の場合、ここ十年から十五年の間、欧米諸国都市と比較して明らかに逆行してきたというふうに理解をしております。

 幾つか事例をお話しいたしますが、英国の場合には、サッチャー政権時代に大型店の郊外立地規制が緩和されましたけれども、九〇年代半ば以降、大型店の郊外立地については厳しい政策が導入されているようであります。大型店については、まずタウンセンターに出なさい、そして、タウンセンターに適当な場所がない場合には、エッジ・オブ・シティーということで都市の周縁部に立地するようにと、エッジ・オブ・シティーに立地場所がない場合には、初めて郊外に立地が認められるということで、郊外立地が大変厳しく規制されているわけであります。しかも、タウンセンターないしはエッジ・オブ・シティーに適地がないということをディベロッパーは証明するというか、あるいは説明をしなきゃいけないという義務を負っているようであります。

 ドイツ、フランスにつきましては、既に大型店の立地は厳しい政策がずっととられておりますが、北欧諸国も二〇〇〇年前後に、国全体で大型店の立地が既に飽和状態であるという理解のもとに、総量規制を一時的にモラトリアムとして行うという政策を導入した国が幾つかございます。

 それから、米国の場合ですが、一九九〇年以降、日米構造協議の中で、日本政府に対して、私は、大店法の規制の緩和あるいは廃止に至る過程でアメリカの政治的要求というのは大変強かったというふうに理解しておりますけれども、その米国は、基礎自治体レベルで大型店の立地について厳しい規制を導入するようになる傾向が九〇年以降観察されているというふうに理解しておるところであります。

 御存じのように、連邦政府には連邦都市計画法というのはございません。州政府の権限に属しておりますが、具体的な規制権限は基礎自治体が発揮しているところであります。この基礎自治体の中で、キャップ制度といいまして、大型店のフロアの上限を制限するとか、あるいは大型店の立地そのものを認めないとか、あるいは、大型店が出てくるときに、地域社会にどういう影響があるのかという出店の影響調査を義務づけるとかいうようなことを条例で展開する自治体がたくさん出てきているということでございます。

 すなわち、欧米諸国都市が大型店の郊外立地について厳しい態度で臨むようになった中、ここ十年から十五年、唯一日本のみが規制緩和に走ったのではないかというふうに私は理解しているところであります。

 二点目は、大型店の郊外立地規制問題は、小林参考人が述べておられましたように、単に商業問題ではない、まちづくりであり、環境の問題であるというふうに理解しているところであります。今お話ししましたように、英国の場合、九〇年半ば以降、大型店の郊外立地規制を強化しておりますけれども、九〇年の初頭に、EU、欧州連合が環境緑書、グリーンペーパーというのを出しておりますけれども、このグリーンペーパーの中で、コンパクトなまちづくり、あるいは車に依存しない都市をどうつくっていくのか、あるいは環境に配慮したまちづくりをどうするのかということを指針として出しておりまして、ネーションステーツあるいは都市レベルの都市政策に大きな影響を与えるようになったわけでありますが、英国政府が先ほどお話ししましたような郊外規制に向かうのも、こうしたEUの都市政策の影響を受けているというふうに理解しているところであります。すなわち、英国の大型店郊外立地規制も、単に地域商業の問題ではなくて、環境であり、あるいはコンパクトな町をどうつくっていくのかという視点から展開されているところであります。

 日本の場合も、人口がこれから減少社会に向かっていくわけであります。あるいは、環境容量も枯渇していくわけであります。どういう町構造をつくっていくのか、端的に申し上げれば、都市規模の創造的縮小ということがこれから大きな課題になってくると思います。自然環境を守る、あるいは既存の都市資源をどう再生、再利用していくのかという視点から、町のありよう、都市のありようを考えていかなきゃいけないというふうに考えているところであります。今回の大型店の郊外立地規制は、そうした大きな視点の中で考えることが重要ではないかというふうに考えております。

 それから、最後に、郊外型大型店の立地規制をすると中心市街地は活性するのかというふうに質問をされることがございます。私は、大型店の郊外立地規制は、中心市街地活性化の必要条件であるけれども必要十分条件にはならない、郊外型大型店を規制したから即中心市街地が再生するものではないんだというふうに理解しております。

 ここも先ほど小林参考人がお話しになっておりましたけれども、中心市街地のステークホルダー、利害関係者が町をどういうふうに再生していくのかという努力、それが前提になっているのではないか。町中の再生には、商業者あるいは商店街、商工会議所を超えて、町にかかわる人々、町内会あるいはNPO、場合によっては農協とか漁協とか、いろいろな社会組織が参画して、自分たちの町をどう再生していくのかということに取り組んで初めて必要十分条件が満たされてくるのではないかというふうに考えております。

 以上でございます。(拍手)

林委員長 ありがとうございました。

 次に、佐々木参考人にお願いいたします。

佐々木参考人 私は、青森市の市長をさせていただいております佐々木でございます。

 私は、皆さんのお手元に資料を差し上げてございますが、それに沿いながら説明をさせていただきます。「青森市のまちづくりについて」ということであります。

 私どもの町の御紹介をちょっといたしますと、本州の最北の県庁所在都市でありますが、陸奥湾に接しておりまして、そしてまた、背中に国立公園の八甲田連峰、これを背負っておるという町であります。その中心部、海に近いところに市街地が形成された町であります。

 昭和二十年の空襲で、当時の町の九割が灰じんに帰したという町でもございます。それから営々と過ごしてまいりまして今の町が形成されましたが、現在、昨年の四月一日に合併しまして、人口約三十二万人の新しい市になったところであります。市域が広うございまして、八百二十四平方キロという大変広い市域をちょうだいしております。しかし、そのうちの七二%は林野の面積であるということであります。

 さて、そういう地勢を持っておりますが、もう一つの大きな特徴は気象であります。豪雪都市であるということであります。

 グラフにありますが、平成十年、年間の降雪量は十メーター、平成十二年、これまた十メーターを超えています。ちなみに、平成十六年も十メーター四十三センチ。ことしの雪は八メーターで、これは大体八メーター前後が通年ベースであります。そういう豪雪都市でありますので、県庁所在都市として唯一特別豪雪地帯に指定されているという町でございます。このことが、私どものまちづくりに何としても欠かせない要件の一つというふうに考えております。

 そういうことから、冬になりますと、毎日の除排雪作業それからまた交通渋滞等々で、市民生活に重大な影響を及ぼしているわけであります。それを排除するために除排雪するわけでありますが、これが大変な経費を要するということであります。そういう意味で、都市を運営するコストは雪を処理するだけで大変な負担になっている、これが大きな課題であります。そういうことで、これからのまちづくりを考えたところであります。

 したがって、豪雪地帯で安全に安心に快適な暮らしをするためには、何としてもコンパクトシティーの形成で持続発展可能な都市を実現していかざるを得ない、こういう状況で、コンパクトシティーの発想の原点は雪である、こういうことが一ページであります。

 次に、二ページに入らせていただきますと、そういう中で、私は、平成元年に市長に就任させていただいたわけでありますが、まちづくりの基本理念にコンパクトシティーを掲げてこれまで町を経営してまいりました。そういう中で、コンパクトシティーの目的は三つありまして、市街地の拡大に伴う新たな行財政需要を抑制する、既存のストックを有効活用した効率的な効果的な都市整備をする、三つは市街地の周辺に広がる自然、農業環境との調和をする、これが目的であります。

 そして、そのコンパクトシティーを具体化するために、私どもは、平成十一年六月、一九九九年に都市計画マスタープランをつくりまして、それにコンパクトシティーを位置づけたところであります。その目指すべき市の方向性としては、まず雪に強い都市、高齢福祉社会に対応した都市、環境調和型の都市、災害に強い都市、効率的で快適な都市、これを目指そうということで方向づけしたものであります。ちなみに、私どもの高齢化率は現在二〇・二七%、大体全国の平均並みに高齢化が進んでおるところであります。

 そして、それをより具体化するために、「都市構造の考え方」にありますように、町の区域を、インナー、ミッド、アウター、こういうふうに三つの区分をいたしております。インナーは、昭和四十五年、一九七五年当時に形成された既成市街地でありまして、密集し、また老朽化も進んでいる再構築エリアであります。ミッドは、土地区画整理方式によるストックエリアで、将来の需要に備えよう。アウターは、これは自然環境それからまた営農環境ということでありまして、これは保全しよう。こういう大きな区分をしております。

 この方向性は、無秩序な市街地の拡大抑制をすることと、町中の再生をする、この二本立てが私どものコンパクトシティーであります。開発のエネルギーを内側に向けることで、中心市街地を活性化させ、同時に郊外開発の抑制による自然環境の保全を推進するというのが私どもの趣旨であります。

 まず第一の、中心市街地の再活性化、一つの柱であります。

 私どもの町は扇形に広がる町の構造をしておりますので、中心市街地はまさに扇でいえばかなめであります。これがまた青森市の顔であります。県庁、市役所、青森駅等の公共施設そしてまた中心商店街から形成されておりますが、これを、約百ヘクタールをターゲットにしまして、再活性化計画を平成十年につくりました。

 その骨子は、町中にある歴史的ストック、これまで整備が進められてきたインフラストック、市民生活の中心としてのコミュニティーストックなど、多くのこの町中にあるストックの活用、これをすることがコンパクトシティー実現のかぎであるというふうに考えております。三つの方向性を持っておりまして、まず交流できるまちづくり、それから町の楽しみづくり、それから町暮らし、この三つをその方向に掲げまして、そして結果としては、歩いて楽しめる、いわゆるウォーカブルタウンの創造ということをその目標にしております。

 次、三枚目に入らせていただきます。

 そのための先導的なプロジェクトが幾つかございますが、それを御紹介しますと、「アウガ」と書いてありますが、これは昭和五十一、二年に、商業近代化計画で、中心市街地の、特に駅前の再開発事業が提案されておりますが、これが営々と二十七、八年かかりまして、ようやくでき上がったのが青森駅前第二地区市街地再開発事業「アウガ」でございました。

 ここは、市場とファッション、図書館等の公的施設が一体となった複合商業ビルであります。平成十三年の一月にオープンいたしまして、以来年間六百万人以上が来館をし、そして買い物等を楽しんでいる場所であります。

 そういう中で、ここには三百人規模のホールとか、また男女共同参画プラザとか、あるいはファッション、これは若者の物販とか、また生鮮市場、特に図書館で本を読みながら、帰りにおかずを持って帰れるようにということで、市場で買ったおかずが腐らないように冷蔵ストッカーも備えられている、こういう特徴を持ったところであります。

 そういうことでやりました結果、一つのビルで六百万人でありますが、図書館に至っては一日二千数百人、毎日利用いただいているというものであります。

 そして、次に、冬期バリアフリー計画。これは、中心市街地に、冬でも、先ほど申し上げた豪雪でも、すたすた歩ける歩道を実現しよう、こういうことで、平成十二年にバリアフリー法が施行されたのを受けまして、すぐ冬期バリアフリー計画をつくり、それをお認めいただいて、国、県、市、あわせてこれを五年間やってまいりまして、そしてほとんど、この百ヘクタールについては冬の無雪歩道をほぼ実現できるようになった、こういうことがその二つ目であります。みんなで使う中心市街地は、ひとつ歩きやすい中心市街地にしようということであります。

 さて、次のページに入ります。

 このようなことから一つのブームが起きました。それは、アウガ効果というものでしょうか。これができ上がってから、右の二番目のグラフにありますように、これまで衰退の一途をたどっていたその町が息を吹き返しつつあるということであります。つまり、歩行者がふえてまいりました。郊外型の大型ショッピングモールが郊外に十二年の六月に開店をしたわけでありますけれども、にもかかわらず、このアウガ効果で、平成十三年の六月のこの通行量を見ますと、平日、休日とも大幅にふえております。ちなみに、オープン前の十二年と十六年の数字を見ますと、何と三三%平日でふえ、休日では四二%通行量がふえている、こういうことであります。このことによって、町中が非常に元気が出てきたということが言えます。

 そういうことがもとになりまして、町中に今度はマンションブームが起きております。いわゆる町中暮らしということであります。平成十四年から十八年の二月までで七百二十二戸完成をいたしまして、さらに、今やっているのがすべて完成しますと、約八百五十戸のマンションが町中に整備される。この中に、市営の賃貸型の公営の住宅も四十戸入っておることをつけ加えさせていただきます。そういう形で、こういうふうに町中が元気になってきたということであります。

 もう一つの大きな柱が、郊外の保全、これがもう一方のコンパクトシティーの柱の一つであります。

 それは、郊外の保全ということの目的は、一つは中心市街地の衰退の防止につながる。郊外への大型ショッピングセンター等の建設をうまくコントロールできれば、それが中心市街地の衰退の防止につながる。つまり、安易な市街化区域の拡大をしない、調整区域での開発は基本的に認めない、区画整理でできた商業地でも地区計画で大規模ショッピングセンターの建設を防止しよう、そういうことでやっていくことによって中心市街地の衰退が防止できる。そしてさらには、すぐれた自然環境の保全をするということであります。八甲田山系のすばらしい水が出るこの地域を大事にしていこうということでございます。

 しかし、これをやっていく過程で、現行の都市計画法の規制には限界がありますので、やはりどうしても自然環境の破壊は懸念されるという状況がございます。そこで私どもは、郊外の水道水源保護条例をつくったり、あるいは市民運動でブナの植林を毎年一万本やったり、そういうことをやりながら、それに幾らかでも抑制しようという運動をしております。また、準都市計画制度の活用で、無秩序な開発を規制しようという行為もしておるところであります。

 そういうことから、中心市街地と競合しないで、共存できるようなまちづくりの推進のために、やはりこの用途地域の指定、地区計画の導入、そして大型ショッピングセンターの建設のコントロール、これは大変大事であるというふうに考えているところでございます。

 とりあえず、以上、御報告をさせていただきます。(拍手)

林委員長 ありがとうございました。

 次に、森参考人にお願いいたします。

森参考人 富山市長でございます。おはようございます。

 私の方も、今、青森の市長さんがお話しでございましたように、本市のまちづくりの基本的な考え方や、具体的に取り組んでおりますことを御披露させていただきまして、そのまちづくりを進めていく上からも、現在検討がなされております大型集客施設の郊外立地を規制という形で進めていくことが望ましいとの立場から意見を述べさせていただきます。

 お手元に配付をさせていただきました資料を少し手がかりにしながら進めてまいります。

 一ページ目に、富山市の都市特性として記載がございますが、私どもも昨年四月に合併をして市域が大きくなりましたが、合併以前から、既にこの旧富山市は極めて車に特化した社会でございます。資料にもありますように、旧富山市のDID地区は年々広がっておりまして、しかし、人口は横ばいであります。つまり、広く、薄く、拡散型のまちづくりとして取り組んできたわけであります。その結果、DID地区の人口密度は全国の県庁所在地で最下位という状況であります。

 いろいろなことがございますが、この一因としては、やはり商業施設がロードサイドに張りついたり、郊外へ展開していった、あるいは公共施設もみずから郊外移転をしていったということなども含めて原因していると思いますが、いずれにしても、拡散型のまちづくりをずっと続けてきたわけであります。

 二ページに記載がありますように、その結果、現在、自動車が自由に使えない人にとっては極めて暮らしにくい町となっております。参考までに申し上げますと、小学校単位のエリアで野菜が買えないという地域が幾つも出てまいりました。つまり、八百屋さんではとてももう経営ができないということで、中小のスーパーさえ経営をやめていくという状況であります。

 また、都市の管理に要する行政コストが極めて高い。さらには、もちろんのことですが、中心市街地の空洞化ということから活力が喪失している。今後さらに人口が減少していくことを考えますと、低密度化が一層進むということも予想されます。何よりも、高齢化がどんどん進むことによって、近い将来、交通弱者がどんと出現してくる、その時代をどう乗り切っていくのかということが大変重要だと思っております。あわせまして、中心市街地が平面駐車場と空き家ばかりでございまして、投資対象としての魅力がありませんことから地価の下落も進んでいるということであります。

 そういった問題を認識して、どう対処するかということに際しまして、今、青森市さんの御披露もありましたが、一言で言いますと、コンパクトなまちづくりを実現したいと思っているわけであります。鉄軌道を初めとした公共交通を活性化させ、その電停や駅周辺に居住、商業、業務、文化等の諸機能を集積させることによって、公共交通を軸とした拠点集中型の町をつくってまいりたい、こう思っております。

 先ほど小林先生のお話にもありましたが、さりとて、郊外に居住している方を中心市街地に誘導してくるというときに、無理やり引っ張ってくることはとても不可能だろう、こう思っております。しかしながら、少なくとも今まで続けてきた拡散型のまちづくりということには歯どめをかけて、中心部に住むことが選択されるような魅力を高めていく取り組み、そして同時に、郊外に住んでいる方から見ても、中心部への移動が容易だ、そういう移動手段の確保をすることが両方の柱として必要ではないか、このように思っております。

 三ページ目以降に少し具体の取り組みを披露したいと思いますが、その取り組みのリーディングプロジェクトと位置づけておりますのが、現在整備を進めております、JR富山港線をJRさんから引き受けて、市が中心となりました三セクで新たに路面電車化をしてLRTとして運行を開始しようとする取り組みであります。

 四ページには具体の沿線なども書いてございますが、延長およそ八キロ程度の線ではございますけれども、北陸新幹線の供用開始までの間、富山駅の高架化事業が進みますので、富山港線を廃止することによって高架化事業の工事の余裕スペースをつくろうということから、あえて廃止をしたところでありますが、二月末で廃線となりました。現在鋭意工事を進めておりまして、路上に新たに軌道を敷設するということを、工事はほぼ完成に近くなっておりますが、進めております。道路上に軌道敷設するというのは、昭和三十九年以来国内でも四十数年ぶりということだそうですが、市民の応援もありまして、今順調に進んでおります。

 具体的な電車のイメージその他は五ページに記載がございますが、全低床車両を二両一編成で七編成を導入いたしました。来る四月二十九日からいよいよ営業を開始する予定でございます。利用者をふやすために運行サービスの質を大いに改善いたしまして、日中一時間に一本ぐらいしか走っていなかったものを、ラッシュ時は十分、日中も十五分間隔に走らせるなど、いろいろな配慮をしたところでございます。

 そして、六ページにありますように、この鉄軌道の沿線を一つのまちづくりの区域と定めて、この中に住む人を集積するとか、暮らしやすさの質を高めていくということなどを進めていきたい、こう思っている次第であります。

 七ページですが、その際、非常に大きな特徴は、まさに公設民営でこの事業をやろうとしていることであります。とかく鉄道事業あるいは軌道事業というのは、民間が鉄道事業として取り組んでいる、そして、その中で収支が合うことが期待されているわけでありますけれども、それではもうとても存立させることができませんので、あえて建設費や維持管理に要する費用は市が負担をする、そして、上下の上の部分、運行の営業だけは民間会社が担うという形で、はっきりと公設民営の方向性を市民に説明し、市民の理解も得ながら今進めております。おかげさまで、国を初め多くの関係機関の方々の御協力をいただき、四月二十九日、開業予定でございます。

 続きまして第二弾として、現在、JR高山本線も、これも日中二時間に一本ぐらいしか走っておりませんが、あえて高頻度運行の実験にこの秋から取り組もうといたしております。この費用も市が負担をいたしますが、そうすることによって、それぞれの駅周辺に住む方の暮らしの利便性というものを実感してもらうことができれば、そこに住むという選択肢を大きなものとして対象としていただけるのではないか、こういうことなどを期待しております。

 そして最終的には、最後はちょっとポンチ絵で恥ずかしいのですが、八ページにありますが、実は富山市は全国でも有数の恵まれた鉄軌道資源を持っております。そして、それがすべて富山駅に結節するという好条件も備えております。したがいまして、富山駅から発着します市内に奇跡的に残ったこの路面電車を、もう少し延伸するなど質を高めて、先ほど言いましたLRTの富山ライトレールもここに接続をし、市の中心部に環状化したループとなった市電網をつくり、そのループにさまざまな方向から鉄軌道が結節してくるというまちづくりを完成させたいと思っております。

 そうすることによって、中心部に歩いて暮らせる環境をまずつくり、そのためには、先ほど来各先生方のお話もありましたが、図書館などの公共施設や商業施設、そういったものを集積しなきゃならぬと思います。そして、既存の商業機能のブラッシュアップも図りながら、交通弱者がふえる、ひとり暮らしの高齢者がふえる市域全体の中、どの地域からもこの中心部にアクセスしやすい環境を同時につくっていくことによって、エリアとしてのコンパクトさのみならず、全体として、機能としてのコンパクトなまちづくり、これを実現してまいりたい、こう思っております。

 現在御議論のあります本法律案につきましては、私どもが考えております、今申し上げたまちづくりにつきましても大変有用である、このように思っております。一万平米を超える大規模店舗などの特定大規模建築物の立地を都市計画によってコントロールする、そして、それを強化することが本法案の中心となっておると思っております。

 今言いましたまちづくりを進める上で、大型店の郊外立地は極めて深刻な悪影響を及ぼすと認識いたしております。町中に魅力のある商業施設をつくることも重要でありまして、そのためにも効果すると思っております。現在、本市の隣接市町村に極めて大きな影響を及ぼす可能性のある大規模ショッピングセンター立地の動きなどもありますことから、都道府県が広域的な観点から調整を行う仕組みを取り入れていることも本市にとっては大変ありがたいことだ、このように評価をいたしております。

 人口減少という大きなターニングポイントの中で思い切ったまちづくりの方向性の転換というのが求められていると思っておりますので、この観点からもよろしくお取り組みをお願いしたい、こう思う次第であります。また、国におかれては、具体的な運用が円滑に進みますように、関連する政令、省令、運用指針などもお示しをいただくとありがたいと思っております。

 以上でございます。(拍手)

林委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

林委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤池誠章君。

赤池委員 自由民主党の赤池誠章でございます。

 私は、昨年夏、初めて当選をさせていただきました。今回、国土交通委員会、初めての質問ということです。

 きょうは、四人の先生方に、年度初めの大変御多用の中、それぞれの立場からすばらしいお話をちょうだいいたしました。

 私の選挙区は、山梨県の県都甲府市を中心とする一区でございます。中心市街地の活性化ということに関しましては、全国都道府県県都の中でも大変厳しい状況ではないかというふうにも感じております。選挙中も公約を掲げさせていただきましたし、また私自身も、中心市街地活性化、甲府市の中心部を活性化したいということで、文部科学省の補助金を活用して、私はもともと専門学校長をしておりましたので、人材育成面、起業家育成という形の中で、空き店舗を借り上げて、そこで起業家育成の塾を開催するというようなことで、ささやかではございますが、中心市街地の活性化に選挙前からお手伝いをさせていただきました。

 そんな中で、きょう、四人の先生方にそれぞれ御発言をいただいたわけでございますが、まず小林先生の方からお伺いをしたいと思います。

 今回の審議会の答申及び取りまとめということで、小林先生が中心になってと言っていいと思うんですが、まとめていただいて、非常にすばらしい答申をいただいたというふうに聞いております。そんな中で、自民党の中でも相当熱く激しくいろいろな形で議論もさせていただきました。私も自民党の部会の中で議論に参画をさせていただいたんですが、今回の答申からこの法案に至る、この法案を取りまとめた先生におかれては、どのような形でまず評価をなさっているか、お伺いをさせていただきたいと思います。

小林参考人 お答えをさせていただきます。

 我々審議会でまとめた今回の答申はかなり大部のものになってございます。お読みいただくとおわかりいただけると思いますが、かなり大部のものになってございます。具体的に、これからの新しい中心市街地のあり方について、どのような郊外規制を図りながら実現していくのかということについてるる述べられているところでございます。

 かなりの内容を持った答申となってございまして、その内容のかなりの部分は今回の法案の中に盛り込まれているというように認識しております。当然、我々が答申をまとめる段階では十分議論できなかった具体的な行政スタンスのお話その他がその後出てきたようには伺っておりますが、しかし、大筋、骨格は我々の答申どおり法案ができているというように思っております。

赤池委員 ありがとうございます。

 そういう面では相当審議会の中身が、いわゆる衆知を集めた答申案がそのまま法案となっている。当然、自民党の中でも相当議論をさせていただいて、いろいろな利害のぶつかり合いもある中でそれが今回の法案に至ったということで、先生としては相当高く評価なさっているということでよろしいでしょうか。――はい、ありがとうございます。

 その中で、きょう先生の方からそれぞれ十項目ほどいろいろいただいておりますが、きょうは本当に私の時間が短いのですべてにちょっと御質問できないんですが、一番重点、当然すべてが大事なポイントだとは思うんですが、答申を含めて、今回の法案の中で一番ここが重要だ、先生が一番力を入れて置かれたポイントというのはどこになるでしょうか、教えてください。

小林参考人 今回の法案は、ある意味で、これからの都市を二十一世紀型につくるためにどのようにするかという枠組みをつくったと思っております。ただ、枠組みだけでは現実に都市がその方向に行くということの保証にはなりません。私がここで申し上げているのは、具体的に進める、きょう行政の首長さんがお見えですが、行政側に人がおり、さらに町に人がおり、そういう方々が実質的にまちづくりを担ってそれを実現していくという体制をつくる、そのことが重要である。

 ここであえて、例えば三番目で、多くの関係者が参加しなければいけないとか、人材の話、あるいは選択と集中の話をしているのは、まさに、ただ法の枠組みをつくっただけでは、これからのまちづくりはそれだけでは実現しない、それを実現させるための仕組み、そのことが重要であるということを訴えたかったということでございます。

 以上でございます。

赤池委員 ありがとうございます。

 私も先生の「エリアマネジメント」という著書を読ませていただきまして、そういう面では、先生の今の御指摘というのはまさに、ディベロップ、開発型ではなくて、それをした後もきちっと維持、運営、管理をしていくという、地区経営みたいな、そういう発想が大事だということだというふうに承ったわけなんですが、その中で、つまり、私も勉強させていただくに、いわゆるABCD理論みたいな形で、行政であったりビジネスであったりコーディネーターであったり、今でいえばNPO団体が先生の御指摘のようにたくさんまとまるということは大事なんですが、実際、私もささやかな経験の中で、理想論は最初そういう形でスタートするんですが、なかなか足並みがそろわない、利害関係が違ってくるということの中で、そこで難しくなって行き詰まるという事例がやはり全国各地にあると思うんですね。

 そんな中で、有名な、例えば滋賀県の長浜市の株式会社黒壁の事例なんというのを見ると、いわゆる一点突破型の、ある事業者が突出してやって、それから全体がまとまっていくみたいなそういう手法もあると思うんですが、理想形はそうなのかもしれないけれども、やはりケース・バイ・ケースにおいては突出型で行かざるを得ないようなそんな事例もあるのではないかと思うんですが、先生はどのようなお考えをお持ちでしょうか。

小林参考人 お話のように、いろいろなタイプが実は中心市街地活性化にはあると思っております。

 私は、これからの中心市街地活性化は、例えば大型店舗にある意味で対応する、対抗するためには、やはり中心市街地全体で支えなければいけないと思っております。中心市街地全体について例えば再開発しようとか区画整理事業をやろう、そういう事業を起こしても、それを全体として動かすことはなかなか難しい。できるところはいろいろな事業制度をやる、そのための人材、仕組みを動かす。しかし、そうではないところ、例えば緩やかな再開発をやったり、そのような大きな事業ではないいろいろな仕組みを中心市街地の中に展開して、さまざまな方々が参加できる、そういうまちづくりにしていくべきではないかというように思っております。

赤池委員 ありがとうございます。

 ことしの一月二十二日の読売ウイークリーという週刊誌の方に今回のまちづくり三法の改正が載っておりまして、「「イオン規制」で甦る?瀕死の駅前商店街」というタイトルで、週刊誌ですから結構激しく書いてありまして、「地方がイオンだらけになったわけ」とか、そんな中で、各地に多くの出店計画を抱えるイオンは、今回の規制案に、町の具体的活性化策が議論されないまま、商業あるいは郊外の大型店のみを規制するのは議論のすりかえではないかという、これは代表的な反発があるわけなんですが、先生は、その考え方についてはどのような御見解をお持ちでしょうか。

小林参考人 先ほども申し上げましたように、郊外の大型店舗を規制するだけでは中心市街地の活性化は実現できないと思っております。ですから、今回の法はそういう枠組みをつくった、しかし、現実にその中に魂を入れるのは、そこで活躍する、中心市街地で活躍するさまざまな人材が町中で活躍してまちづくりを行っていくということが重要であるというふうに思っております。

赤池委員 小林先生、ありがとうございました。

 矢作先生にお伺いしたいんですが、この十年は逆行という厳しい評価もなさっていたんですが、今回の法案に関しては評価をなさっているのかどうか、その一点をお伺いしたいんですが。

矢作参考人 少なくとも、方向を逆を向いて一歩踏み出したというふうに理解しております。

赤池委員 評価なさっているということでよろしいでしょうか。

矢作参考人 結構でございます。

赤池委員 きょうは、そういう面では、この法律の枠組みの中で実際に市長として御活躍なさっている佐々木先生、森先生に来ていただいておりますので、残りの時間御質問させていただきたいと思うんですが、先ほども、佐々木先生、青森市長としての御活躍ということで、私も日経流通新聞を読ませていただきましたが、昨年だけでも八十以上の自治体が視察に来て、全国の成功事例ということで脚光を浴びているという形で聞いております。

 市長さんは経営者ということも聞いておりますし、商工会議所副会頭ということで、市長になる前から相当熱心に取り組まれていたということを聞いておりますけれども、先ほどもその一端をいろいろ教えていただいたんですが、そういう面で、今回の改正がさらに追い風になってますますまちづくりが進むかどうか、その辺のお話を聞かせてください。

佐々木参考人 私も、平成元年から十八年ほど市の経営を担当させていただいてきたわけですが、申し上げましたように、私どもの方はすごく広い市域をいただいています。旧青森市だけでも六百九十二平方キロという広い市域でございますので、東京二十三区がすっぽり入るぐらい。その中で、いわゆる都市計画区域というのはおよそ三分の一であります、三五%ぐらい。それ以外はまさに都市計画区域外でございますので、そういう意味では、いわゆるすき間だらけという状況でまいりました。

 その中で、私どもは、雪が多いということを旗印にしてコンパクトシティーを掲げて、そして、先ほど申し上げた、内向きに向ける方向性で町をつくってきたという経緯がございます。最後に申し上げましたように、でも、そういう中で、コンパクトシティーの大きな柱の中心市街地の再活性化、もう一つは郊外の保全という二つの目標があるのにかかわらず、実際はすき間だらけということでございます。

 ですから、それをそのままにしておくと、やはり非常に、コンパクトシティーを形成する上で阻害する要因がいっぱい出てくるということでございますので、あらゆる方法で今までやってまいりましたけれども、今回は、それについてこの新しい法律で、いわゆる都市計画区域外は打つ手が限定されていたにもかかわらず、今度はそれに農地を含めて幅広く網をかけるということにさせていただいているということは、私どもにとっては、これは非常に有効だ、ありがたいと一つは考えております。

 それから、大規模集客施設を郊外部などに無計画に立地することがこれによってなくなるであろう。それから、原則、商業地域等にしか立地ができなくなったことは、中心市街地を活性化する立場としては、私どもは非常に安心できる。なおかつ、国や県の施設も開発許可が必要になったということからしますと、地元を預かる身としては、責任ある都市計画を進める立場にとっては、これは非常に有効であるというふうにまず一つは考えております。

 なお、中心市街地の活性化法案が何か他の委員会で審議されると伺っておりまして、そういう点からいきますと、やはり、規制の部分と、一方では今度中心市街地を応援するという、そういう二本立てになっていただければ、私ども地域としては、これほどまちづくりに有効なことはないというふうに受けとめておりまして、ぜひともこれを成立させていただきたいというふうに考えております。

赤池委員 ありがとうございます。ぜひ実現をさせていきたいと思います。

 その中で、当然、同じ市民といっても、特に外側、開発規制にかかった方の中で、うちの方にも大型店が欲しいとか、うちをぜひ開発に入れてくれみたいな、そういった市民の、同じ市民でも利害が相違して、そんな中での意見の衝突みたいなものはなかったんでしょうか。

佐々木参考人 実は、私の経験では、当然それが起きるであろうと思っていたわけでありますけれども、それが起きなかった。

 つまり、それは、やはり私どもの方は雪が非常に多いことと、そして、そういうときには、やはり冬の生活を持続的に快適に維持するためには無駄なコストはかけられない、そういういわゆる基本的な合意があって、したがって、散漫な都市の形成は決してよくないということが、私ども、コンパクトシティーは雪ということが原点にありましたので、それで、むしろ一定のそういう方向性が出せたんじゃないかなというふうに思っていまして、今御質問のようなそういう運動は郊外の方から起きてこないという、ありがたい状況でございます。

赤池委員 本当に、そういう面では、雪という、ともすると非常にマイナスな部分を逆にプラスに転換したという、地域の個性ということで、それを生かしたまちづくりということですばらしいのではないかなということで、私、改めて感銘を受けたところでございます。

 その中で、先ほど小林先生の「エリアマネジメント」の本の中に紹介をされておりました青森市のまちづくり会社、有限会社PMO、パサージュ・マネジメント・オフィスというまちづくり会社、民間主導というふうに聞いているんですが、いわゆるパサージュ、そぞろ歩きするようなものをつくり、それをお任せしているということだと思うんですが、その内容について、先ほどお話がなかったものですから、お聞かせ願えますか。

佐々木参考人 パサージュ・マネジメント・オフィスというのは、まちづくり会社でございます。

 これは、市の中心部にありました空き地といいますか、ビルがあったんですが、それが空きビルになりました。それを買い取って、ひとつ活性化のモデル事業をやろうということで、チャレンジしました。そして、それを市が買い取って、基本的にその装置は市が担いますと。そこに実験店舗ということで、パサージュというのは、つまり、表通りと裏通りを行ったり来たりして、その中に広場があって、両側に飲食店とかあるいは専門店がある。こういう、よくヨーロッパ等にあるスタイルでございますが、それを事業を起こしまして、そこは、飲食部門は五年間非常に安い家賃でお貸しします、チャレンジしてくださいと。それから、いわゆる物販部門は一年間ひとつ実験をやってください、そして自信をつけて、中心部の空き店舗等に自立して出店してくださいと。こういう実は実験場でございました。

 それをつくったときに、それを市が担うんではなくて、装置は市がつくります、でも、それを運営するのはまちづくり会社でやってくださいということでやりました。結果として、中心市街地の青年部的な立場で長年町運動に参加してこられたリーダーがおりまして、この人が核になって、出資を募ってその会社をつくりまして、そして、それを十七年まで五年間、実際やりまして、ちょうど今一区切りついたということでございます。

 したがって、今度は、十八年からリニューアルをしまして、また再度五年間に向けてスタートするべく今基盤整備をしているという状況でございまして、その中で育った営業者が、中心部の空き店舗、あるいは先ほど御紹介したアウガというあのビルの中に出店をして、それで成功している事例も出てきている、こういう状況でございます。

赤池委員 ありがとうございます。そういう面では、本当に担い手もきちっと、まさにエリアマネジメントされているという好事例ではないかなというふうに聞かせていただきました。

 時間がなくて、森先生の方には申しわけないんですが、自民党の部会の中でもLRTに関しては小委員会がございまして、欧米の事例など研究もさせていただいているんですが、富山はもともと路面電車が残っていた、その辺での発想かなと思っているんですが、LRTに着目された発想の原点みたいなものがございましたら教えていただきたいと思うんですが。

森参考人 今先生お話しのとおり、幸い、極端に車に特化した富山市ですが、さっきも言いましたが奇跡的に路面電車が残っておりまして、この経営自体は黒字でやっておりますので、電車を使うということに対して市民の一定の理解というものが基礎としてあるだろう、こう思いました。

 さらには、廃止するということが浮上しました富山港線そのものが、八十数年にわたって市民の足としてやはり愛されてきた、そういう背景を踏まえたときに、ここで廃止してバスにかえてしまう、それは余りにももったいないという意識がみんなの中にあったと思います。やがてこの二つの路面電車を十年後ぐらいにはネットワーク化することの計画などを持ち出しましたので、大いに理解が広まったと思っております。

 やはり底辺にあるのは、市民のもともとの理解だったと思っています。

赤池委員 きょうは本当にありがとうございます。短い時間ですが、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

林委員長 遠藤宣彦君。

遠藤(宣)委員 赤池議員に続いて質問をさせていただきます。福岡一区の自民党の遠藤宣彦でございます。

 国土交通委員会では初めての質問となりますが、今回のこの三法、多くの専門家の方々にいろいろと議論をしてきていただいたということでございますので、私は若干視点を変えて、利用者といいますか、また消費者といいますか、そういった素人的な立場で素朴に今まで思っていることを質問させていただきたいというふうに思っております。

 また、私の立場ですが、郵政省におりましたけれども、横浜市役所に出向しまして、都市計画の仕事、また、身内のことでありますけれども、私の妻が都市計画局におりまして、まちづくりに相当苦労をしてきた。今回、質問に当たって相談をしたところ、専門家の方がいっぱいいるんだから、素直に思うところを聞いた方がいいんじゃないかというアドバイスを受けてまいりました。

 また、私自身、非常に旅行が好きでありまして、暇を見つけては各都道府県あるいは外国にふらふらと遊びに行く。いろいろな町を見て、魅力のある町あるいは人の集まる町と、ちょっと寂れているなという町、どこに差があるのかな、そんな疑問を持ち続けてまいりました。

 また、長野県の佐久市というところ、六万二千の人口ですけれども、そこの郵便局に行ったときに、だんだん寂れてくる中心市街地、人を見ながら、あるいは町を見ながら、これは大変だけれども仕方ないと思うところもあるな、そんなようなことを感じていたわけであります。

 そういった経験を踏まえて、本当に人が集まるところ、活性化していく町は一体どんなものなのか、こういった観点で質問をしたいと思います。

 つまるところ、人が行きたい町あるいは人が集まる町、どういったところが重要なのか。一つは、やはり町の景色がいい。外国でもドイツのローテンブルクとか、あるいは日本でも川越みたいな古い町並みを生かして、小林先生も御指摘されているように、歴史とか伝統とか文化、こういったものも非常に町が人を引きつけるに当たっての重要な要素であるというふうに私自身は考えるんですが、そのあたりについて御見解を小林先生にお伺いできればと思います。

小林参考人 私の方から二つ事例を挙げてお話をさせていただきたいと思います。一つは国内事例、一つは海外事例でございます。

 国内事例は、先ほど赤池先生からお話ございました黒壁でございます。

 黒壁の中心人物だった笹原さん、もう自主的に引退されておりますが、引退される以前にお話をしました。そのとき笹原さんがどういうことをおっしゃったかというと、長浜という町は歴史、文化を壊す力さえなかった、それがよかった。戦後、日本の商店街はみずから持っていた歴史や文化を壊してきた歴史ではないか。長浜は壊す力がなかった、残っていた。それを生かしてまちづくりをやったら人が集まってきた。それは、全国の壊してしまった町とは違う町がそこに出現した、それが人を引きつけたんだということを笹原さんはしきりに強調されていました。それが一点でございます。

 それからもう一点は、これは中心市街地の活性化に絡んで、少し前になりますけれども、アメリカに行ったときに、アメリカのメーンストリートプログラムをやっている機関から、中小の都市の中心市街地活性化を支えている組織なんですが、そこに行って、どこを見たらいいかということを推薦していただいたら、まずワシントンDC郊外のワラントンがいいんじゃないかというお話でした。

 それで、ワラントンという小さな都市に行きました。そこで、そこにおられるタウンマネジャーにお会いしました。そのタウンマネジャーは、もともとはワシントンの議会の議員秘書をやっておられたという方で、議員秘書時代に比べると収入は三分の一ぐらいになったけれども働きがいがあるとかおっしゃっていました。その方が、そのワラントンという町にウォルマートも出ているんですね、大規模店舗が出ている、だけれども自分の町は人を集められると。

 なぜ人を集められるかというと、例えば、ウォルマートで売っているワインは日本円でいうと千円以下のものしか売っていない、しかしワラントンの中心市街地は、それよりも高級なものを、その客の好みに応じて、これがあなたの好みですよということをしっかり伝えられる、そういう店員がいる。そういう店をずっと並べていった。それで人が集まるようになった、にぎわいを持つようになった。ウォルマートとは違うにぎわいを持つようになった。

 そういう二つの事例が、私には、にぎわいという面では強く印象に残っております。

 以上です。

遠藤(宣)委員 ありがとうございます。

 本当に、町自体を見に出かけて、そのついでに買い物をするといいますか遊んでくるといいますか、私なんかはふらふらあっちこっち行くものですから、そういったにぎわいのある町、意外と、何にもやることがないからとりあえずあそこの町に出てみようか、こんなようなところが非常に重要なんじゃないかなというふうに思います。

 そしてまた、人が行く、私たちが出かけるときに、二つの相反する動機があります。一つは、人に会いたい、だれか知り合いがいるんじゃないかと、サロン的な場所があると出かけていく。あるいはもう一つ、いろいろな人に会うのは煩わしいから、なるべく大衆の中に潜り込みたい。そういった二つの相反する願望があると思うんです。

 例えば、昨今、高齢者がふえてきて、交通機関をまず整えなきゃいけない。しかしながら、どこに集まるか。これは、皮肉なことに病院に集まっているという話を友達から聞くんですね。変な話がありまして、病院の待合室がサロンになっている、いつも来ているおばあちゃんがきょうは姿が見えない、どこか体が悪くなったんじゃないかと周りが心配する。

 つまり、高齢者も楽しみがあれば集まる。集まる場所というものが実はなかなかない。青少年は、ゲームセンターだとかあるいはコンビニにたむろするとか集まる場所があるんですが、中高年世代は、何もやることがないときに集まる場所がないということが一つ大きな問題になっているんじゃないか。

 まちづくりの観点においては、あらゆる世代が集う、それぞれの世代が集う場所、そういったものについての配慮というものが必要だと思うんですが、小林先生あるいは矢作先生、そのあたりはどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、ちょっとお伺いしたいと思います。

小林参考人 おっしゃるとおりでございます。

 今の中心市街地に一番欠けているものの一つが、お話のように、そこの商店街に行ったときに、ある一つの店舗で買い物をして、その次どこか行くところがなかなかない、帰る。要するに、商店街として成り立っていない。商店、個店がそれぞれあって、個店に客がいる。しかし、商店街全体としてそこに楽しみがあるかというと、ない。それに比べて、大型店舗はもっと違う楽しみをする場所があるという面も確かにあって、中心市街地がなかなか人を集められないというように私は思っております。

 そういう意味で、サロン的なものをつくることが必要で、先ほどお話ししました、また同じ話になりますけれども、長浜の黒壁では、高齢者、お年寄りが集まるサロンを具体的につくって、喫茶店のようなものなんですが、座敷に上がってお茶を飲むようなところをつくったり、あるいは、その地域の高齢者が働く場所を商店街につくって、商店街の方が中心市街地といろいろな形でコミュニケーションをとれる場をつくるというさまざまな工夫をして、それも一つのこれからの中心市街地の大きな役割ではないかというふうに思っております。

矢作参考人 先ほどの参考人の先生方の御報告の中にもございましたけれども、この間、公共施設ですね、美術館とか図書館とか等々、皆郊外に出たようでございまして、そうした集客といいますか、人がとどまる、たまる施設が郊外に出ていたわけでありますから、できるだけ町中に戻ってきて、人がそこに滞れるような空間をつくっていくということはこれから大変大事ではないかなというふうに考えております。

遠藤(宣)委員 あと、また私自身の話なんですが、私は今、五歳半の娘がおります。いつも、どこかに出かけなきゃいけないということになりますと、子供が遊べるところがないと、なかなか買い物もままならない。いつも考えあぐねて、子供の遊べる施設、そういったところがあるところについつい足が向いてしまうんですね。自由が丘というところの近辺に住んでいるんですけれども、自由が丘も若者がいっぱい集まります。ところが、なかなか子供が遊ぶ施設というものというか、遊ばせておく施設というのが非常に少ない。こういったことから、利用者の立場からすると、どうしても子供が遊べるところを選んでしまうという選択をしてしまうんです。

 青森市長あるいは富山市長にお伺いをしたいんですけれども、高齢者の集う場所と同時に、子供、核家族が出かけていくための、子供を扱ってくれる場所、遊ばせる場所というものはどういったような感じで取り入れられているか、ちょっと教えていただきたいと思います。

佐々木参考人 私どもの方では、一つだけ事例を紹介しますと、中心市街地の中にアウガというのをつくったと申し上げました、複合ビルでありますが。そこの五階に、実は、男女共同参画プラザと、三百人ホールと、それから、ゆっくり外を見ながらくつろげるいわゆるインドアの公園風の場所がございます。そこは、一つは時間帯によって、高齢者が集う時間帯と、それからまた主婦層が集う時間帯、それから午後になって夕方近くなると学生が集う。うまいぐあいに時間で使う方々がかわる場所なんですね。

 それから、その一つ上に、六階から図書館がございますので、その図書館の吹き抜けのところ、下が見える、下からも見える場所に実はつどいの広場というのをつくりまして、そこは子育て中の親御さん、子供さん、あるいはおばあちゃんが連れて集う、そういう場所をつくっております。ネーミングも募集したら、さんぽぽという名前です。これは、散歩しながら集う、タンポポとひっかけて、さんぽぽという。

 これをやりましたところが、もう一日数十人単位で子供さんを連れた親御さんかおばあちゃんが来て、そこには世話をしてくれる保母さんも配置しております。それが中心市街地にあるということで、これは非常に好評でございます。もちろん無料なんです。そこに預けておいて、ちょっと下の市場で買い物したり、あるいはまたちょっと本を借りに図書館に行ったりという形でそこをやっていただいていまして、大変これは好評でございます。

 ですから、こういう方向でやっていったら、今ある施設をうまく使って、それをうまく使いこなすということでいければ、中心市街地も非常に喜ばれるんじゃないかなというふうに思っております。

森参考人 先生お話しのとおり、私も、中心市街地なかんずく中心商店街の発揮しなきゃいけないこれから期待される機能としては、御指摘のとおり、子供連れの買い物客をどう満足させるのかということはあると思います。

 取り組みとしては、私どもも、中心商店街の中の空き店舗を、TMOが運営主体となりまして、しばらく買い物の間お子さんを預かるとかというようなスペースは用意をしております。あるいはまた、駅前にも市民学習センター的なものがありますが、そこにも職員も配置してスペースを用意してあります。

 利用度は一定程度あると思っておりますが、しかし、全体としてはまだまだこの部分の機能を高めていくことは必要だろう、このように認識しています。

遠藤(宣)委員 ありがとうございました。

 あと、大型店舗の問題で非常に思いつくのは、私ども車でぱっと買いに行く、近くでも売っているけれども、品ぞろえがいっぱいある、あるいはまとめ買いができるというところで、ついついそっちに出かけていってしまう。利用者あるいは消費者の立場でそういった行動をとってしまうんですが、例えばお酒なんかは、近くに酒屋さんがあってもカクヤスというまとめ買いをして安いところに行ってしまう、あるいは文具なんかはアスクルというカタログでどばっと買ってくるとか、家電は量販店で買っちゃう、古本屋さんは品ぞろえがいいブックオフへ行くとか、こういった、まとめて買える、そこの共通点があって、保存のきくものからどうも商店街の外に行っているという感じがすごくあるんです。

 私も、暇を見つけては商店街とかいろいろなところにふらふら出かけるものですから、保存のきくものから出ていく、最後に残った生鮮食料品、肉屋さんとか八百屋さんとか、ところが、ここは先ほど申し上げたように匿名性がないものですから、近所で豚の細切れ百グラム買おうと思ったら、いいお肉があるんですよといってついつい見えを張って買ってしまう、煩わしい、だからスーパーに行ってしまう、こういうところが標準的な利用者の行動体系だと思うんですね。

 そうしますと、では、商店街、中心市街地を活性化するために商店街の人たちはどういった工夫をするか。これは、サービスあるいはソフトで勝負をするしかないと思います。なかなか家電が故障しても見に来てくれない、町の電気屋さんだったらすぐに飛んできてくれる、あるいは量販店のようにいろいろなものがずらっと並んでいないけれども相談に乗ってくれる、こういった意味で、地域住民に対しての人の接し方、サービスの提供の仕方というものは非常に大きなものがあると思うんです。

 それからもう一つ、いつも思うんですけれども、近所の商店街、個々に、ばらばらに広告が入っているんですが、統一的なカタログとか広告というのは入ってきません。先生方が書かれているように、選択の楽しみというものが買い物にはつきものであります。一つのお店に行って、顔見知りの人にこんなのがありますよと言われても、好きなものがなければなかなかお店が出にくい。いつも思うんですが、新聞の折り込みとかにでも、商店街全部の共通のカタログ、あるいは配達サービスとか、そういったものがあれば、量販店にもあるいは大型店舗にも対抗できるんじゃないかなというふうに思ってしまうんですけれども、そのあたり、自治体を実際に運営されている両市長の方々、事例があればお伺いできればなというふうに思います。

佐々木参考人 私どもで、実は中心市街地で、商人隊とか、若い人がもちろん中心でありますけれども、そういうネットワークで、中心部にある例えば七つの商店街がネットワークをして、そして情報をまとめて発信する、こういったようなこととか、いろいろな媒体を使ってそういう情報発信をしているという実態がございます。

 それからもう一つは、高齢者の方が来られたりハンディキャップの方が来られたときにはそのサポートをするというボランティアですね、そういう体制もとっているということ。それから、買い物をして持って帰るのが大変だという場合は、それをお預かりして世話をする場所、空き店舗を一つ用意しておりまして、そこに行けばそれをうちまでお届けするとか、そういういわゆるソフトの部分で、町衆がみずから工夫してチャレンジをして、そしてお世話している、こういう状況がございます。

森参考人 御指摘のとおり、まずは商業者自身が中心商店街に住んでいないというようなことなどがあって、みずから当事者として、今御指摘のありました、にぎわいといいますか、ある意味のわい雑さも含めてつくり上げていくという努力は、今までは少し方向が違っていたんだろうと思います。そういうことをもう一度呼び戻してくることが大切だと思っていますし、つまり、郊外に巨大な大型店ができると引っ張られて困りますが、商業地域の中でしっかりとした商業施設を誘致するということなどが、今おっしゃったことなどの解決にもなると思います。

 もう一点だけ。今、高齢者のお話がございましたが、私どもは、日中に限り、六十五歳以上の高齢者が中心商店街へ行く場合、あるいはそこから帰る場合、市域のどこから乗っても百円というサービスを、バスですが、始めました。非常に利用度が高くて、今まで長い間、孫が休みの日だけ買い物につき合ってもらっていたというようなおばあちゃんたちが、何人か誘い合って日中にバスで町へ出かけるという実績が確実に出ておりますので、そういった取り組みも一つのアイデアかなと思っております。

遠藤(宣)委員 ありがとうございました。

 時間が参りましたので、最後に締めくくりたいと思います。

 矢作参考人がおっしゃられたように、今回の法案、歯どめをかける必要条件にすぎないと。また、小林先生がおっしゃられたように、枠組みだけではだめである。今まで本当に地域のいろいろな苦しさが伝わってくる中で、今回の法案というものが一つの大きなターニングポイントになって、まさに仏をつくって、そしてその魂もこれから入れていくという段階だと思いますので、皆様のお知恵をかりながら、日本のそれぞれの地域社会がこの法案をきっかけに大きく、いい方向に変貌することを心から願っております。

 本日は、お忙しいところありがとうございました。以上で終わります。

林委員長 三日月大造君。

三日月委員 民主党の三日月大造です。

 本当に四名の参考人の皆様方におかれましては、朝早くから、富山市長も青森市長も恐らく昨日から上京していただいたんではないかと思うんですけれども、本当にお忙しいところ本委員会の参考人質疑に御協力いただいていることに、心から感謝を申し上げたいと思います。

 限られた時間ですので、現状をしっかりと認識しながら、将来志向の夢のある議論ができるように、私も四十分間質疑をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、四名の参考人の方にお伺いをしたいと思います。概念的で哲学的な問いで大変恐縮なんですけれども、四名の皆様方がそれぞれの御経験や御専門の中で、中心市街地が活性化しているという状況は、何がどうなっている状況を指されていらっしゃいますか。また、理想的なまちづくりというのは、どういう状態になっていることを表現されていますか。

 これは国会の中でも、また省庁でも、いろいろな審議会でも議論されるときに、皆さんそれぞれ考えられていることが非常に違うことが多くあると思っています。中心市街地の活性化とはどういう状態のことを指されていますか。また、理想的なまちづくりとはどういう状態のことをそれぞれお思いですか。この二点について、四名の参考人の皆様方にお伺いいたします。

小林参考人 なかなか答えにくい御質問なんですが、私は、中心市街地の活性化というのは、先ほどからいろいろ御意見出ていますが、高齢者から若い人まで集まって楽しめる、そういう市街地が恐らくベースになければいけない。

 あわせて、今までの中心市街地、今問題が起きている中心市街地以前の日本の昔の市街地、中心市街地を考えてみますと、そこにやはり住む人がいた。そのことは非常に重要であって、住む人がそこにいて、そこで買い物をし、あるいはコミュニティーをつくり、その地域社会を支えていたということがベースにないと、中心市街地がこれから長らえて、それぞれの都市の拠点としてあり続けるということはならないのではないか。

 ですから、まず住む人がいて、多くの方々が交流するために集まってくる、それが中心市街地だというふうに私は思っています。

 理想的な都市というのは、大規模な都市から小さな都市までいろいろありますけれども、私は、先ほど赤池先生からお話ございましたように、これからの理想的な都市は、しっかりマネジメントできる都市、今まではどう開発するかということを中心に都市を考えてまいりました。しかし、これからはしっかりマネジメントして、都市が都市の機能としてしっかり維持、経営できる、そういう都市、マネジメントしている都市ですね、それがこれからの理想的な都市ではないかというように思っています。

 以上です。

矢作参考人 哲学的な御質問なので、少し抽象的に御回答させていただきたいと思いますが、まず、町とは何かということについてですけれども、私自身は、無辜の民の暮らしの積層だというふうに、時間の積層であるというふうに理解しております。ごく一般的な庶民の暮らしの積み重ねの中に町があるというふうに理解しているところであります。すなわち、歴史と文化と風土の積み重ねである。ある大きなディベロッパーが郊外に町をつくるというようなことではない、時間をかけて人々がつくり上げてくるのが町でありますというふうに理解するところであります。

 それで、町を活性化する、あるいは元気な町とはどういうことか、こういうことでありますけれども、アメリカのカリフォルニア大学の先生をやっておられたクリストファー・アレグザンダーという人は、町をいやすということを言っております、町はいやすものだというふうに言っております。あるいは都市はいやす。それから、女性のジャーナリストでグラッツという人がおられますが、この方は、都市はあるいは町は養育するものであるというふうに言っております。

 今お話ししましたように、町は歴史的、文化的風土の中で形成されてくるものですので、ある種の有機体あるいは生命体だというふうに理解しておりますので、そうした有機体なり生命体が持っている潜在能力をどう引き出してくるのかということが町を活性化させるということですね。すなわち、どう養育し、どういやしながら町を活性化させるのか、潜在能力を生み出してくるのか。すなわち、潜在能力というのは、それぞれの地域あるいは町、都市が持っている地域資源、それの発見と育てることだというふうに理解しています。

 以上です。

佐々木参考人 一言でずばり言うのはなかなか難しい問いかけですけれども、私は、さっき申し上げたように、中心市街地の再活性化計画の柱は、今あるいわゆるストック、すべてのストックをすべて活用し切ろうということですけれども、その中で目標とするところは、人が交流できる町中、それから楽しく集えるにぎわいの、いわゆる魅力のある町中、それから町暮らしが楽しめるという町中、これがやはりそのベースではないかというふうに実は考えております。

 そして、なお、理想的な町というお話がございましたけれども、私どもの方は非常に広い市域をいただいておりまして、その一画に国立公園もある、そういう状況でありますので、自然生態系が非常に多様で豊富でございますし、八甲田に降る雪のおかげで日本一おいしい水道の水もいただけるということでもありますし、そういうことから、やはりせっかくいただいている自然生態系とかそういう環境は孫子の代まできっちり守り伝えていく、そういうことでなきゃいけないというふうに考えております。

 と同時に、そのことをするためには、やはり自分たちが、開発して住むところはきっちり定めると同時に、それ以外のところは最善を尽くして保全し再生をしていく、そういうことをしっかり押さえていくべきである。

 同時に、やはり自分の町に誇りを持てない人間にいい町がつくれるわけはないというふうに私はいつも言っているわけですけれども、そういう意味では、自分たちの町に誇りを持つ人間がいっぱいいるということ、そして十年後、二十年後を目指して、その連中がみんなでいい町をさらによくしようと思って努力している状態、こういう状態を私はイメージしているわけでございまして、そのことを今目指したいと思っています。

森参考人 お答えになるかどうかわかりませんが、まず最初の中心市街地の活性化、どういう形が活性化と認識するかというお尋ねですが、やはりこれはひとり商業だけではないと思います。住まいすることや楽しむことも含めて、多様な面がありますので、そういったさまざまな面において元気があるという環境だろうと思いますが、しかし、その中でも商業の果たす役割はやはり極めて、非常に大きいものがあると思っていますので、勢い商業を中心に町が形成されていくということだろうと思います。

 同時に、そこに住む方々が歩いて暮らせる環境が提供されている、そういう中心部だろうと思います。現在のように小学校さえ成り立たないというような状況では、問題が大きいかなと思います。

 それから、理想的な町というのは、いろいろな見方があると思いますが、文化度ですとか、景観ですとか、自然度だとか、さまざまなことを含めて選択肢が豊富にある地域であって、どういうライフスタイルを要求する人にもある程度こたえていけるようなものを提供できる、そういう町だろうと思います。そして、それは時代の要請に応じて刻々変化していくものだ、こういうふうにも思います。いずれにしても、市民一人一人がみずから暮らしたいと思う町、これがやはり理想の町だろうと思います。

三日月委員 ありがとうございました。

 非常に抽象的な問いにもかかわらず、それぞれのお立場で短く、わかりやすく御表現いただいたこと、非常に参考にさせていただきたいと思います。

 要約すれば、先ほど十分間表明いただいたこととあわせて要約すれば、規模としてコンパクトであり、目指す姿としてサステーナブルであり、そして機能として、住む、学ぶ、働く、商う、生活そのものだということであったり、プロセスとして多様な参画があり、かつ手法として既存ストックを活用するという五点の形で私なりに理解をさせていただいているんですが、さらならば、そういうものを国が規定をして、また国が認定をしたり審査をして、そこにお金を出していくという中心市街地活性化の枠組みそのもののあり方もこれから変えていかないといけないんじゃないだろうかと。恩着せがましく、一つの物差しや尺度、評価で、どこの中心市街地は活性化していますね、これは成功例ですねと言うことそのものが、果たして国が進めるまちづくりのあり方として、中心市街地の活性化のやり方としていかがなものかという疑問を私は長期的には持っています。ここについてのコメントは求めませんが、ぜひ、後々のそれぞれの御表明の中で参考になる御知見等を賜れれば幸いだと思います。

 さて、小林先生と矢作先生にお伺いをしたいと思うんですが、これまで国がとってきた、特にこの十年とってきた中心市街地活性化及びまちづくり、都市計画、このあり方についての評価をどのようにされているか。特に、矢作先生は、先ほど十分間の御陳述の中で、欧米が郊外立地の大型店を規制するときに日本は逆の方向をとったということを指摘されていますし、小林先生は論文の中で、これまでの都市計画が商業中心だった、また行政主導だったという評価をされていますけれども、では、国がとってきた都市計画の規制のあり方、また中心市街地活性化を応援する政策についてどのように評価をされているのか。それを踏まえて、今回の改正の中で、今回の都市計画法及び中心市街地活性化のこの法律の改正の中で、ここが一番のポイントだと言われることについて二点、小林先生、矢作先生からお伺いできますでしょうか。

小林参考人 お答えをします。

 近年、十年ぐらい、国の都市計画、あるいは建築基準法にかかわる動向、私なりに理解しているのは、二つ方向があると思うんですね。

 一つは、民間の力をできるだけ活用したい。そのためには、場合によっては規制緩和というようなことを図ってきたというのが一つです。それから、もう一つは地方分権の流れだと思いますね。できるだけ、先ほど三日月さんからお話ございましたように、国が一律に決めるのではなくて、国は大枠を示す、しかし具体的な中身は地方にお任せするという、そういう地方分権の都市計画、まちづくりに大きくかじを変えたと思っております。

 その二つの方向は、ある意味で時代に合った私は動きだろうとは思っております。しかし、今回の中心市街地の議論を考えてみたときに、それが、方向性として、その部分に限った場合、正しい答えだったのかということについては若干反省をすべき点がある。その反省すべき点を今回の法改正の中に組み込んだというように思っております。

 先ほど矢作先生からもお話ございましたように、規制緩和だけがこれからの規制改革ではない、むしろ、やるべきときには規制を強化しなければいけない。規制強化するツールとして、今回は、郊外の大規模店舗を中心とする大規模な広域都市機能ですか、そういうものをコントロールするという枠組みをつくりましたし、それから、地方分権というのは非常に大きな国の動向として評価しますけれども、しかし、現実の都市のあり方を見ると、地方分権がもたらしているある一定の問題点が、今回の中心市街地との関係では出てきたのではないか。

 御案内だと思いますが、例えばある都市で、自分たちの都市にはもう広域の都市機能は必要ないというコントロールをする。例えば、自主的に条例をつくって、それをコントロールするということを皆さんではかって決めた。しかし、すぐ隣の市町村が大型店舗を受け入れますよと。それによって税収が上がって、雇用がふえる、それはハッピーではないかということで受け入れられる。結果的に、コントロールした市町村にとって、何だったのか、そういう事態を招いてしまった。それはやはり、一定の地方分権とは違う方向性、広域調整の枠組みが必要ではないか。

 そういう二つの方向性を、今回の法の枠組みの中で示したというように私は思っております。

 以上です。

矢作参考人 二点ということですので、二点お答えしたいと思いますが、まず、二〇〇〇年の都市計画法の改正のときだったと思いますが、都市化社会から都市型社会へというふうに、あんパンのあんこの中を大事にしましょう、再生させましょうということで、方向転換をしてきたわけでありますけれども、そうした都市型社会への、さらに一歩前進した形で大型店の問題の認識が深まったのではないかというふうに一点考えております。

 それからもう一点は、常に市場と規制のせめぎ合いということが政策展開の中で行われているわけでありますけれども、すなわち、市場を活用する、あるいは規制を強化する、そのバランスですね。軸足をどこに置くかということが大変大事だと思うんですけれども、大型店の郊外規制に関しましては、大型店対策に関しましては、少なくとも、どうも市場の方に随分シフトしていたんではないか。しかし、先ほどお話しいたしましたように、町というのは時間をかけていやしたり、あるいは養育するものでありますので、短期間に変わることはできないというふうに理解するところであります。

 すなわち、市場の要求というのは、大変短期間な対応を要求しますので、そうした短期間な要求に、町というのは変われないんですよ、時間をかけて変わっていくものですよと。そういう意味では、市場と規制のバランスをどこのところに置いていくのかということが大変重要だと思いますけれども、少し規制の方に、時間を町の方に与えてくれる方向にシフトしたことはよかったんではないかというふうに理解しているところです。

 以上です。

三日月委員 ありがとうございます。

 今回の法改正、ややもすれば、先ほど来、参考人の先生方から御指摘いただいているように、大型店が悪いんだ、郊外が悪いんだということに受け取られがちなところがあるんですけれども、私は違うと思っていまして、大型店だから悪い、郊外だから悪いということではなくて、計画がないところにそういう開発がどんどん進むということが問題なのであって、かつ、今矢作先生も御指摘されたように、それが一時的なものであったり、市場要請過重な開発であるということが大きな問題のようなところがあって、その辺の履き違えがないように、この国会審議も通じて理解を深めていく必要があるというふうに思っているんですけれども。

 青森市長と富山市長にお伺いをしたいんですけれども、雪深い中でバリアフリーを目指され、中心市街地の再開発をされた青森市さん、そして、車に特化した町でありながら、車とある意味競合してしまうLRT、路面電車を導入され、また高山線の再活性化策を試みられている富山市さん、この、まちづくりなり、中心市街地を活性化しようとされる中で、何か、先ほど来お話を聞いていると、御苦労された後の成果物なり、非常に輝かしいプロセスはうかがい知れるんですけれども、一番こういうところが苦労した、困ったんだという部分についての偽らざる御見解なり吐露をいただければ幸いです。

佐々木参考人 苦労した点といいますか、私どものコンパクトシティーという理念を私が平成元年、市政に持ち込んだという話をしたんですけれども、その前に、実は、一九八四年、私、商工会議所の副会頭でまちづくり担当でございまして、やはり雪運動の先頭に立っていたわけであります。そのときに、実は、こういう町が持続的発展をしていくためには、やはり無秩序な開発に流されたままでは、いつまでたっても快適な、安心な、安全な町はできないというふうに考えて、コンパクトということを言い出したんです。ですから、今から二十年以上前でございますけれども、それがたまたま市長になったものですから、そのものを実は市政に持ち込んだということでございます。

 その中で、当初は、二十一年前を思い出しますと、決してこのコンパクトシティーというものには深い理解は得られていなかったです、はっきり言って。議会に出ていったときも集中砲火を浴びました。一体それは何のことだ、どうでも小さければいいのかという、実はそういうことがございました。でも、それから、いろいろ実態をつくりながら、実際に町のいわゆる雪運動をやったりしている連中とも一緒にやりながら来まして、結局十年以上たって、そして、やはりこれがいいんだというふうになるまでには十年かかったというわけでございます。

 ですから、平成十一年に都市マスタープランをつくって、そこに正式にコンパクトシティーを位置づけたわけでありますけれども、そこまで来るのに十年かかったということは事実でございます。今ではもうそれが全国的な一つの風潮になりましたので、だれもそれに文句を言う人はいなくなったんですけれども、やはりこれは非常に手間暇かかったということがあります。

 それから、でも、これをやっていながら、やはり、そうはいうものの、基本的合意は得たものの、広い市域を持っていて、そして都市計画区域に入っていないところが三分の二もあるということでありますから、これは、手をかけて使っちまおうと思えば使えるという状況が常に発生しかねない状況でございますね。ですから、そういう意味では、いろいろな手法で、例えば農地法上の問題とか、あるいはまた保存の条例をつくったとか、いろいろな方法で防ぎはしておりますものの、しっかりとした形で法律上は保護されていませんので、非常にそこにはすき間だらけである、こう思っております。

 ですから、そこに、早く今のようなこういう形でしっかりとした規制をいただければ、やはりあるべき方向のまちづくりがしっかりやっていけるだろう、実はこう思っておりまして、私は今回のこの法律には大変期待をしている一人でございます。

 それからもう一つは、問題点は、そういうコンパクトをやってきた中で、それでは郊外はどうするんだということが当然あるわけでございますね。ですから、郊外は、やはり環境とか自然は保全しながら、一方では、空き家ができてきたときに、町中に暮らして空き家をそのままにしておくわけにいきませんので、それはやはりどうするかというのは大きい問題でございます。

 それについても今チャレンジをしている最中でございまして、やはり子育ての若い世代は、地面に足のついたところで、ゆったりした環境で育てるのがよかろうということで、そういうことのために、そういう、家をうまくサイクルさせるというふうなことでやったらどうかということで、今、地元の大学の先生方にそれを研究プロジェクトとしてタイアップして、その方法を、取り組む計画をしているという状況でございます。そうしますと、町中に住む人と、あいたところは子育ての若年世帯がうまく安く使うということをぐるっと回せるというシステムができれば、これは非常にいいなと思っていまして、それに対してのいろいろな政策もこれから期待をされているところでございます。

 以上でございます。

森参考人 御指摘いただきましたように、極端に車に特化した地域社会でございます。乱暴に言うと、三百メートル以上歩かないというような人さえいるわけですので。そういう中で、あえて路面電車を延伸するとか、四車線、片側二車線あった道路の中にLRTを走らせるということについては、やはり市民の皆さんの中にはいろいろな意見がございます。あるいはまた、その事業を進めることについて、先ほど言いましたように、公設民営で公費で整備をする、民間の鉄道事業なり軌道事業に公費で施設整備するということについてはいかがなものかという意見も、当然ながらあるわけであります。

 現在も恐らく、市民の皆さんの中には死ぬまで意地でも電車に乗らぬという人もいるかもしれません。しかしながら、幸いなことに、今工事を進めている期間も、それから、発表しましてから今日までも、直接的に私どもの方に大きなクレームというのは届いていません。私自身は一定程度の理解が形づくられていると思っております。

 そこが一番やはり苦労があったところでありまして、結局、解決するのは粘り強く説明をし続けることだということ、これに尽きると思っています。例えば、男女の平均寿命の違いを一つ見ても、やがて一人で十年なり十五年暮らさなきゃいけない高齢者、特に女性の高齢者が大量に出てくる、そのときに、これほどまで車がないと暮らしにくい町の構造でいいのかということをやはり強く主張してきたわけでして、このことが苦労がありましたけれども、一定程度進んできたかなと。まだまだ道半ばだとは思っています。

三日月委員 ありがとうございます。それぞれ多くの御苦労がある中で、今、試行錯誤、そして住民の方々を巻き込んでまちづくりをされている様子をうかがい知ることができました。

 今もお話の中で出てきました、また、先ほど十分間のそれぞれの先生方の意見陳述の中でも御指摘いただきました、まちづくりに多様な主体を取り込むこと。中心商店街の活性化じゃなくて中心市街地の活性化にすべきだという小林先生の御指摘、住んでいる方や交通事業者、その他も含めて巻き込んでまちづくりをしていくことの大切さというのはずっと指摘されて久しいんですが、特に最近指摘されているんですけれども、しかし、なかなかそれがかなわない難しい状況もあるというふうに聞いています。

 この多様な主体をまちづくりに参加、参画させていくことの工夫や仕掛けについて、四名の参考人の先生方はどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。特に小林先生におかれては、行政主導じゃないんだ、もっとそこに住んでいる人たちがムーブメントを起こすような、また、矢作先生は、地域デモクラシーなんだという表現を使われておりますけれども、その点、言葉は極端かもしれませんが、言うはやすし行うはかたしの部分だと思うんです。そのあたりについて、両市長におかれては、どのような仕掛けをされているのかという、取り組み事例も含めてお話をいただければ幸いです。

小林参考人 なかなか具体的なお話をするのは難しいんですけれども、私も幾つかそのようなまちづくりにかかわっております。私がかかわっている事例の中には、確かに商店街、商店振興会が中心になっているわけですけれども、商店振興会が中心になっただけではまちづくりはできない、さまざまな分野の人、私がかかわっている中で一番大きな問題は、地方のお金が地方で使われるようにするという仕組みをどのように組み立てるかということです。

 具体的に申し上げますと、地方の銀行が地方のこういうまちづくりにどこまでかかわっておられるか。私が感じていることは、地方の銀行は、どちらかというと地方からお金を集めてそれを中央に流している、そういう機関にだんだんとなってきている。現在でも、例えば日本で展開しているJ―REITやREITにお金を出しているところは、たしか三〇%ぐらいは地方銀行だというお話を承りました。J―REITというのは大都市の不動産に投資されるお金ですね。そういうものが地方のお金を集めて流れているというお話を聞きました。

 先ほどお話ししたように、アメリカに行ったときに、私は先ほどのワラントンという都市でおもしろい体験をいたしました。我々が視察に行ったときにまず出迎えてくれたのが地方銀行の頭取の方なんですね。中心市街地を見に行ってなぜ地方銀行の頭取の方が我々を迎えに来ているのか、意味がわからないというようなことを私が申し上げたところ、頭取が逆に非常にけげんな顔をいたしまして、地方銀行というのは地方経済を活性化して初めて地方銀行でしょう、そういう言葉が返ってきました。なるほどなと思いました。

 日本の場合は、私がかかわっているところに関してお話ししますと、地方銀行はむしろ郊外に出店する大型店舗と金融的なつながりがあって、中心市街地のまちづくりに積極的にはかかわれない、そういう立場にあっている。これは一例ですけれども、そういう関係を徐々にほぐしながら、それはかなりいい方向に方向転換してきておりますが、いい方向に向かわせていく、そういう努力はしていく必要があるだろうというように思っておりまして、そう簡単なことではありませんけれども、努力次第では、そういう主体がさまざまにかかわれる、参加してくる、そういう体制をつくることはできるだろうというように思っています。

 以上です。

矢作参考人 先ほど冒頭に、地域社会のステークホルダー、利害関係者がまちづくりに参加することが大事で、商店、商店主だけでは問題解決しないでしょうというお話をいたしましたけれども、私の知っているところで、愛知県の安城市というところに「まちづくりAnjo」というのがございます。そこの構成要員は、市役所、市議会、それから従前のように商工会議所、商工連合会ですか、あるいは商店街等入っておりますけれども、それ以外に青年会議所とか地元のNPO、あるいは明治用水の土地改良区、農協、あるいは地元の私学法人等、いろいろな組織がこのメンバーになっているようであります。そして、町というのは、そこで働き、あるいは暮らし、あるいは買い物をし、遊ぶ空間ですから、そうしたものにかかわっている人がみんな、この「まちづくりAnjo」というのを盛り上げていこうという運動になっているやに聞いております。

 先ほど先生方の議論の中にもありましたけれども、長浜の事例等々、昨今幾つかはぽちぽち、あちこちに成功事例が出てきているのではないか。そういう意味では、成功事例をモデルとして、お互いに学習し合う仕組みが必要かな、あれば望ましいなと。御存じのように、インターネットの時代ですので、お互いの成功の事例紹介をそういう形でネットを通じてすることも可能かなと。

 そういう意味では、成功事例あるいは努力している組織が集まって、何かナショナルセンターみたいなものができて情報を共有できるような、一段高いまちづくり運動に発展するといいなというふうに考えております。

 以上です。

佐々木参考人 どういうことがポイントになるかということでございますが、私どもの方は、行政だけでやったのでは多分今のような形にはでき得なかったろうというふうにはっきり思っております。

 つまり、先ほど申し上げましたけれども、昭和五十九年、一九八四年に、やはり去年、ことしのように大豪雪、十メーターぐらい雪が降った時期がございましたときに、商工会議所が、このままでは商店街も寂れてしまうし大変だということで、雪対策研究委員会というのをつくって、私は委員長を引き受けたんです。それで、つまり、行政だけの雪にしておったのでは、お金をふんだんにかけられないからといって呼びかければ行政がサボるからだろうと言われますし、ですから、これはもう運動を起こさないといけないということで、雪運動を起こしたんです。それが今、北国のくらし研究会という一つの市民運動の固まりになっておりまして、もう二十年来のあれを踏んできました。私は初代の会長なんです。

 それで、雪をいかに克服するかということから始まって、雪を丸ごと利用しちゃおうか、あるいはまたそれを産業化できないかとか、雪といかに親しむかというあらゆる活動を運動がやっております。まさに市民運動の会でございます。それには企業も入っていますし、それから、いろいろな市民も入っていますし、それからまた行政ももちろん入れるというボードなんです。そこがずっと夏も冬も活動して、二十年以上やっております。それがやはり一番のベースになっておると思います。

 それが、雪運動がまちづくり運動に今度はしたわけですね。ですから、それを並行してきた。

 その過程で、一九九二年でございますが、それに、世界冬の都市市長会議という国際会議がございます。これは国連の経済社会理事会のNGOに指定されている。この加盟も私どもが許されまして、そこで国際会議にも出て、いわゆる町を、厳しい冬を持つ都市はどうあるべきかということを実はいろいろ討論してまいりました。そんなことでやっております中で、その世界会議を青森市で開催をさせていただきました。そのときに、今のコンパクトシティーということについてテーマにして論議をしましたときに、英国の西イングランド大学の教授が来たりして、やはりこれをテーマにして切り口でやった、こういったようなこともございました。

 つまり、そういうことで、中と外と、そういう形で雪運動がまちづくり運動になって、そしてだんだん情報が出ていくに従って、これがコンクリートされてきたというのが今までの経過でございます。

 ですから、単に行政だけ幾ら頑張っても、なかなかこれはいかぬだろうな、やはり地域の人と企業もみんな一緒になって、それで初めてこれができていくんじゃないかな、こういうふうなのを今実感として持っているところでございます。

 以上です。

森参考人 私の方も申し上げたいのは、今、青森市長さんがおっしゃった結論と同じことでございますが、さまざまな取り組みも、結局やはり市民の一緒になってやっていく、動こうとする気持ちがないと前へ進まない、こう思っています。

 LRTの運行につきましても、第三セクターとは申せ、半分は民間が出資をしていただいているわけでありまして、これもあっという間に出資がまとまりました。さらには、市民の寄附を含めて、現在二億六千万ほど基金も持っております。このように、多くの市民が当事者として参加してくれている機運をつくったことがよかったかな、こう思っていますし、あるいは、電停ごとにベンチがたくさんありますけれども、一基五万円でドネーションをお願いしますといったら、百六十八基、あっという間に応募があったり、さまざまな形で市民を取り込んでいくというか、この取り組みにやはり尽きると思っております。

 また、先ほどちょっと御披露しましたが、市域のところからバスに乗っても中心商店街でおりると百円という仕組みは、交通事業者の全面的な協力があって初めてできるわけであります。こういうことがきっかけとなって、それじゃというので、中心商店街の、例えばホテルがその定期券を見せるお客さんは一〇%引きにするとか宿泊は五割引きにするとか、思い切ったサービスがどんどん広がって、協賛店も今七十店舗にふえています。そういうふうに、市民も交通事業者も商業者も商工会議所もその他の機関も一つの事業に積極的にかかわっていただける、こういう機運が大事だと思います。

 もう一点だけ特徴的なことを言いますと、かつて北前船が盛んだったころの回船問屋が随分残っておりましたが、余り手も入らないでいましたけれども、今のLRTの終着駅の岩瀬港にその町並みが残っていまして、市民の中から自発的に、この統一した景観、修景というものをつくっていこうという運動なども起きてきているところです。

 もう一点申し上げますと、蛇足になりますが、中心商店街で、現在、地元の大学生が中心になって、女性が専らですが、女性も男性も、まず土日は町へ出てごみを拾う、それから、大きな荷物を持っている人を助けてあげるとか道案内をするとかという形で、一種のアテンダントみたいなことが若い人を中心に進んでいますが、これも専ら民間の皆さんによって運営されているということであります。

 以上などの例です。

三日月委員 ありがとうございました。

 小林先生からはお金の流れと地方銀行も巻き込んでということでしたし、矢作先生はステークホルダーを巻き込んで成功事例をぜひ共有化しようじゃないかというお話、佐々木市長、森市長からは運動としてのまちづくりの事例を挙げていただきました。

 視察に行った前橋市では、一方で中心市街地活性化に取り組みながら、そこに人がお住みになっていらっしゃらない。一方で中心市街地の活性化に取り組みながら、学校や何かはどんどん郊外に出されてしまうという、何かアンバランスなまちづくり、また非常に苦悩されているまちづくりというのをかいま見たんです。

 その苦悩の一つの例であるTMOという組織について、青森市さんでも富山市さんでもそれぞれ一つずつ認定のTMOをお持ちだと認識しておりますけれども、会計検査院や総務省の行政評価や検査、監査の中で、機能していないんじゃないか、もしくは、当初の目的が、例えば効果測定であったり体制が不十分であったりという理由から、果たしてお金をかけているだけの効果がそこで得られているかということについては疑問符だという指摘があるんです。

 TMOが行うまちづくりというものについて、先ほどいろいろなステークホルダーを巻き込んだ運動をつくっていくんだという御指摘がありましたけれども、どのように評価をなさっているのか、また使い勝手なりその組織のあり方について、どういう限界、問題点があるからそういう監査、評価になるんじゃないかということについての御知見をいただければありがたいと思います。

佐々木参考人 TMOはかなり早いころできました。これは事務局は青森商工会議所の中にございます。これがあるから、それがすべて、企画から実現までTMOができるかというと、それは決してできないと私は思います。

 むしろ、それは行政と民間との間にあって、いろいろな運動を盛り上げたり、巻き込んだりしていく。それから、深い理解を求めるというときに、行政もそれなりの計画を持ち込んで、そして相談をかける、そうするとその人たちもまた意見を出し合う。つまり、そういう形で、双方向でいろいろなかけ合いをしてこれでよしというものを、それでは実行段階に入っていく、そういうプロセスの中でTMOが一つは活躍できる場がある、そういうふうにするべきが一つ。

 それから、やはりもう一つは、具体的な事業が決まったときに、それを、じゃ、TMOが運営主体になって実際運営していこうかというふうになれば、それも担えると思います。

 たまたま私どもの場合は、TMOが、そのメンバーの中のごく一部が出資してまちづくり会社をつくってPMOになったということで、それも延長線上の問題でありますから、そういう形で運営にかかわる。実際それを起案したときにかかわり、実際に仕上がったときにその運営にかかわる、こういったようなことをやはりやっていけば、TMOはそれなりの役割を十分果たしていけるというふうに思うんですね。

 ですから、そういう双方向のやりとりがないと、それは単独で置いただけでは名目だけに終わってしまう、こういうふうに思いますけれども。

森参考人 私どもの方もTMOが一つございまして、ある程度の効果は出していると思っております。

 先ほどどなたかお話がございましたが、創業、起業を考えている皆さん方にまさにインキュベーター機能を提供して、そのスペースから巣立っていった店舗もたくさんありますので、そういった点では一定の機能を果たしたかなと思います。あるいはまた、民業圧迫に近いようなことですけれども、行政としてこういうことをやってみたいとか動かしてみたいというときの担い手としては、一定程度これからも期待していいんじゃないかと思っています。

 もう一つは、ソフト事業について随分頑張っているなと。市民を巻き込んで、町が持っているさまざまな価値を再発見するというようなことなどについていろいろ発信するという役割は十分果たしておると思います。

 ただし、問題点としては、結局、協力していただいている各企業から人間を、人を出してもらって、人件費はそちらの負担になっているというようなことがあって、実態として経費をきちっと、それじゃ、収支を見ていったときに、厳密に言ったらそれは独立して運営をしているのかという点で甚だ中途半端だなという印象は持っています。

三日月委員 貴重な御意見をありがとうございました。終わります。

林委員長 伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉でございます。

 まず初めに、四人の先生方には、きょうは、お忙しい中、国土交通委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。

 ここまでさまざま議論がなされてきていますように、少子高齢化社会の進行あるいは地域コミュニティーの低下、その結果としての地域防災力あるいは防犯力の低下、国土交通行政という観点から、これにどういった歯どめをかけていくかというような趣旨もあろうかと思います。また、歩いてあるいは自転車で移動できる範囲の町、そこに住む人の顔がわかる町、いわゆるコンパクトシティーをいかに再構築していくか、こういったスタンスに立っての今回の法改正であると認識をしております。

 また一方で、モータリゼーションの進展に伴う都市居住者の自動車保有台数の増加、また、自動車を運転する世代にとっては、大規模郊外店舗は、そこに行けばすべてがそろう便利な場所でもございます。家族で出かけていけば、買い物を含めて一日遊べるアミューズメント的な色彩も強い施設でもございます。全般にわたって今の行政が非常に難しいのは、国民のニーズそのものが多様化をしてきているからにほかならないと私は考えております。

 そこでまず、佐々木、森両市長に概括的にお伺いしたいと思いますが、現在の中心市街地の置かれています現状、そして今般の法改正で期待できる効果、これを実際に運用される側から見てのその効果について、できるだけ一般論、普遍的な御見解をお伺いできればと思います。

佐々木参考人 一般論ということでございますけれども、余り広く、ほかのところをよく知りませんのですけれども、私どもの方の立場から体験上申し上げられることは、一九七〇年から二〇〇〇年ぐらい、三十年間に町の中に住んでいた人口がどんどん減りまして、大体五〇%、五五%ぐらい減ってしまった、住む人がいなくなった、こういうことがございました。そういう中で、当然、人がいなくなればお店もはやらなくなる、こういうことになりました。その中に郊外店が幾つかできまして、ますます拍車がかかった、こういうことがございました。

 そこで、果たしてそのままでいいんだろうかというときに、私が申し上げたような、自然条件が非常に厳しい、それからもう一つは、せっかく残っておる郊外の自然とか環境がすばらしいものがある。一方では、高齢化がどんどん進む、そしてなおかつ少子化も核家族も進む。こういったようなことになりますと、このままでいったら自分たちのこの町が果たして生き続けていける町であり続けられるのかどうかということに非常に危惧を感じたということでございまして、そこからいわゆる運動がスタートして、そして駅前の再開発をやったり、いろいろなことをやらせていただきました結果、今の平成十六年の居住人口が、ちょうど二十年前の、昭和六十年ぐらいの人口に実は戻ってきました。それに戻るのには、申し上げたいろいろの手だてをした結果で戻ってきました。

 今のマンション、町中暮らしがもっと進んでいけば、さらにそれが昭和五十五年ごろまでの人口に復元していくだろう、こういうことを目指して今やっているわけでございます。

 ですから、そういうことなので、恐らくこれに似たような傾向は、全国のどこの都市でも経験してきたことではないんだろうかというふうに私は思っております。幸い、私どもは、雪を逆に一つの武器に使って、そして合意形成しながらやってきた結果、事実、外側にいた人、いわゆる郊外にいた人が町中におりてきて暮らすということもできてきましたので、これにリーディングプロジェクトの、いわゆる町中の再開発のあれが寄与したことはもちろんですけれども、やはり時代の流れとしてそういう風潮が、町中に回帰しようという風潮が、少しずつではありますけれども、やはりどこの都市でも出てくるんじゃないかと私は期待しておるわけでございまして、だとすれば、それに対してちょっとしたインセンティブ、刺激をする、そういうきっかけをつくっていただければいいのではないか。

 その意味で、どこのエリアに何をつくってもいいよということから、そうではないよ、ここはつくってはいけませんよ、つくるときにはそれなりの都市計画の手続を経た上で、住民の合意を得て、町の合意を得てやりなさいよ、こういう形で今回のような都市計画法を変えられるということは、そのために非常にこれは有効に働くのではないかというふうに私は思っております。

 そんなことでよろしいでしょうか。

森参考人 先ほども申し上げましたが、私どもの市は、中心市街地の人口密度が全国の都道府県で一番低いという、極めて薄っぺらな町として、拡散型のまちづくりを進めてきました。これをこれ以上進めるとすると全体として地盤沈下してしまうという危機感を強く持っております。そのことからもう一度都心回帰というものを誘導していこうという施策を進めているわけでして、郊外に住む人も町の中へ出やすい、そのかわり移動手段も一緒にセットして提供します、こういう方向です。

 したがいまして、町の中に住むという選択肢を選んでもらえるような魅力というものを町の中につくっていくことが必要であります。

 たくさんの要素がありますが、その中の一つの要素としては、やはり魅力的な商業施設が町の中にあるということは、これはどうしても避けられない問題だろうと思っています。その際、そのことが一定程度のコントロールの下で誘導されていくということが必要だろう、こう考えていますことから、郊外での大型商業施設の立地規制というものは、私どもの向かっている政策の方向からいうと、どうしてもこれは避けられない、ぜひ実現してほしいと思っている問題であります。

 加えて、一都市で考えている都市計画やまちづくりの方向性が、隣の町で独自に判断する都市計画によって大型商業施設ができることによって混乱したり破壊したりするということを防ぐ意味で、都道府県の調整機能が盛り込まれていることも非常に高く評価をしているところであります。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 私、前職が、JR東海という会社におりまして、土木工学の中でも都市計画関係で、特に駅周辺の開発といったことに取り組んでまいりました。数々の駅のリニューアル等をやってまいりましたけれども、東京のように人がたくさんいるところは駅を生かす方法がさまざま考えられるわけですけれども、地方になると非常に難しく、駅をどんなにきれいにしてもそれで単発的に終わってしまうという事例をたくさん見てまいりました。

 やはり、そこで痛感するのは、インフラを生かす人材また知恵、そういったものをどう結集していくかということであろうと思います。しかも、これを生み出すために、行政という立場からどういったことができるんだろうかということもまた非常に難しい問題であると思っておりまして、行政の立場として、この人材の育成また知恵出し、こういったことにどういった寄与ができるのか、これも同じく両市長に御教示いただきたいと思います。

佐々木参考人 私どもの方は、市勢としては、さっき申し上げましたように、本州―北海道のいわゆる玄関口として青函連絡船が発着した場所が青森市の発祥の地でございます。それはもうトンネルができたと同時になくなったんでございますけれども、港は残っております。そこで、港に近接した、もう一つはJRの駅がございます。それから同時に、そこにすぐくっついた中心市街地がございます。ですから、そういう意味では、私どもの方は、港から出て、そこに青函連絡船の拠点としてのJRの青森駅が、現駅があり、そして、そのすぐつながりに中心市街地がある、こういう特徴を持った町でありますから、港と駅と中心市街地がぴったりくっついているという特徴を持っております。

 ですから、そういう意味では、私は、今になれば、この特徴をいかにうまく生かすかということが非常に町にとっては大変大事だと思っております。とりわけ、今の中心市街地の再活性化にとっては、これは非常に重要な要件の一つでありますし、メリットの一つであると考えております。ですから、今、JRの駅を含む、それから港、ウオーターフロント、中心市街地、これを一体として、やはり魅力ある空間になるようにそれをデザインしようということで検討会をつくって、そしてプランも練り上げて、今、実行段階に入ろうとしているところでございます。

 ですから、そういう形でやっている中で、当然、人材の問題としては、やはり民間の人々がどれだけその気になって立ち上がって、そしてこのプロジェクトに参加してくれるかどうかということでございますので、その検討会の中にも一般公募した市民も入れて、検討会をつくり、そしてみんなで一緒になって知恵出しをする、そして実行段階になったらまたみんなで協力する、こういったようなことを繰り返し繰り返しやっていくということ。

 それからまた、計画ができたら、実行段階の前には、いわゆるパブリックコメントですね、情報公開して、それでまた意見をいただく、こういういわゆるプロセス、手順をやはりきっちりやっていくことが、結果としては、それができたときに継続していけることにつながるんではないかというふうに思っておりまして、今、ちょうど新幹線があと四年ほどで青森に入ってくるという非常にうれしいニュースがございますが、これは、反面、現駅から四キロ離れた西に振られたところに新駅ができるんです。とすると、それをにらんで、それでは、現在の中心市街地の現駅と一体どうそれをリンクして、そして上手にやはり開業効果を受け取るか、これが私どもの大きなテーマになっております。

 それをにらんで、一生懸命、今、知恵出しをやっているという状況でございまして、今、いよいよこの年度から実行段階に入るというところになってきているところでございます。

森参考人 今、青森市長さんの四年後に新幹線だといううらやましいお話でございましたが、私どもの方は、平成二十六年、今予定されております。しかしながら、幸い現駅に入ることになりますので、先ほども申し上げましたが、現在も鉄軌道資源というのは極めてすぐれたものがあると思っていますが、そこに同じように現駅に新幹線が来るということは、大変大きなきっかけを生むと思っております。

 その際、御指摘のように、ハード整備や施設の整備だけではだめなんで、どう生かしていくかというのは、一にかかって、人にかかっているじゃないかという御指摘はそのとおりだと思います。ただ、これを具体的にどういう取り組みで人材を育成するかというのは大変難しいことだと思って、先ほどからどうお答えすればいいのかと思っておりました。

 やはり、行き着くところは、きっちりとビジョンを説明して、市民挙げて、将来に大きな期待を生む、そしてその期待を実現するためには、一人一人が当事者となって、できることから始めていくという共感をしっかりつくり上げることだろうと思っています。そのために私どもがやるべきことは、先ほど来何度も言いましたが、飽かずにきちっと説明を続ける、そして、行政用語ではなくて、きちっとわかりやすく説明をし続けることだろう、このように思います。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。難しいことと承知の上でお聞きして、大変恐縮です。

 続いて、小林、矢作両先生にお伺いしたいと思います。

 今回の法改正の中で規制をかけるのが一万平米以上の店舗ということで、これも聞きながら、難しいことであろうなと思いつつ、考え方によっては、一万平米を切る形で出店しても企業にとってメリットがあれば、一万平米以下の店舗が相変わらず出てしまうという可能性も否定できないかなということがさまざま議論されているわけですけれども、その辺についての御見解をお聞かせいただければと思います。

小林参考人 審議会でその議論もございました。審議会で、青森市長も参加されておりましたが、もうお一方、長岡市長の参加もございました。長岡市長のお話の中で、先ほど私は若干申し上げましたけれども、地方には、これから集約型都市をつくっていくということを政策的にやるけれども、しかし郊外に多くの方々が住んでおられる、郊外の方々はやはり郊外に立地するショッピングセンターに買い物に行くだろう、それがいけないという社会をつくるというのは必ずしも市長として受け入れがたいというお話でございました。

 恐らく、数千平米の店舗は郊外に今後必要なんだろう。その道を閉ざすということは、恐らく、都市全体のバランスから考えて現段階では適切ではないというふうに思っておりまして、一万平米という枠組みをつくったこと、そのこと自体は、現段階ではそうなのかなというふうに考えております。

矢作参考人 なかなか難しい問題だと思いますけれども、基本的に、店舗規模あるいは売り場面積をもって規制の根拠とするのはなかなか難しいと思いますね。どこまで引き下げればいいのかということが必ずしも明瞭ではございません。

 それから、郊外に果たして本当に大きなショッピングセンターが要るのかということについては議論がございますけれども、私は、郊外にお住みになる方は、大きな青空と、豊かな自然と、それからより広い居住空間を求めて郊外に出ていかれているわけですから、大きな自然、立派な自然も欲しいけれども町中と同じ商業集積も欲しいというのは、ちょっと両手に花を要求し過ぎているのではないかなと考えておりますけれども、ただ、郊外に商業集積がなくていいというふうには考えていないわけであります。

 ですので、長い目では、都市空間の構造をどういうふうに再編するのかというのは多分課題になってくると思います。都心と郊外のセンターの間のすみ分け、あるいはそれにふさわしい規模の商業集積というのはどういうものかということを構造的に考えて、土地利用計画が立てられてこないといけないでしょう。

 そこに至るにはちょっと時間がかかると思いますけれども、いずれにせよ、一万平米でいいのか、八千平米でいいのかというのは、なかなか神学論争で結論がないのではないかというふうに考えております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 引き続き、小林、矢作両先生にお伺いしたいのですが、中心地にそういった、やはり青森の例を聞いておりましても、何か集客施設というのが一つ核になる可能性が高いと思ったときに、附置義務という問題に私自身がぶち当たったことがございまして、新幹線の新駅である品川駅、これをつくるときに、これも東京ならではだと、私も初めて聞いたときは驚いたのですが、港区には附置義務住宅というものがございまして、ああいったものをつくるために住宅を付設、附置しなければならない。さすがは東京だなと思ったわけですけれども。

 一般的には附置義務として駐車場がございますが、今、道交法なども規制が強化をされてきておりますし、より中心地へのインセンティブを働かせるためにもう少し、要するに、附置義務駐車場等をつくろうとすると土地代が要りますから、本当に町の中にそういった集客施設をつくろうとしたときに、これが少しブレーキになりかねないかなという若干の危惧を抱いております。

 今回の法改正と直接関係ないんですが、この附置義務の、特にやはり一般的な駐車場という観点から、今のままで十分いいのか、よりよくするために何かお考え等があればぜひお聞きをしたいと思います。

小林参考人 附置義務をどのように運用するかということにもかかわっていると思いますね。今は一棟ごとのビルに対して附置義務を課しているという関係がございますが、それを、むしろエリア全体で運営するというようなそういう仕組みに変えていく、若干そういう方向は大都市の中で幾つか出ております。例えば、私がかかわっている大手町・丸の内・有楽町地区ではそういう運営をされておりますが、そのような工夫をしながら、附置義務の仕組みをその町にとってより有効な仕組みに変えて運用していくという手が一つあると思っております。

矢作参考人 私は、義務化は基本的に緊急避難処置じゃないかなというふうに考えております。状況が急転しているときに、あるいは状況が急速に何か変化しているときに、制度的に対応できないときに何か義務化していくということが行われるんでしょうと。

 基本は、市場のメカニズムを活用しながら開発をどういうふうに誘導してくるのか、あるべき姿にどういうふうに誘導してくるのかということが基本であって、その際に、誘導の仕方として、いろいろな施策の中の一つとして規制という考え方があるのではないかというふうに考えております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 時間になりました。最後に、佐々木市長にお伺いしたいと思います。

 ここまでの議論をお聞きしていまして、集客施設としてのアウガが非常に成功をされていると。お話を聞いていて、やはりそのニーズというものを的確に把握したからこそそれだけの集客力を発揮しているんだろうと思いますが、このニーズというのをとらえるのがどのような分野でも非常に難しいと思うのです。

 このアウガの設立に当たって、いかにこのニーズを吸い上げていったのかというところのお話を最後にお聞かせいただければと思います。

佐々木参考人 これは、実は、商業近代化計画で全国一斉に駅前再開発がいろいろ言われた時期に、やはり同じように青森市も商業近代化計画の中で民間主導の駅前再開発ということで、第一と第二地区が提案されました。

 ところが、それが合意形成できないまま二十数年経過をし、そして、いわゆるキーテナントを目指したテナントが全部出店できないという客観情勢が起きてしまったんですね。ところが皮肉なことに、合意形成できなかったはずのものが、それがキーテナントがいなくなった途端に合意形成できちゃったということなんです。

 そういうことから、これはもう、ここまで来た以上はもう少し別な知恵を出さなきゃいかぬじゃないかということで、実は行政の側もそれから商工会議所の側も考えまして、結果としては、やはり多くの保留床を行政がまず買い上げて活用しましょう、そのためには、老朽化した図書館を核にそこへ移しましょう、こういう意思決定をしたんです。

 ですから、これはある意味で偶然といえば偶然、時代の流れといえば流れですけれども、結果としてそれが非常に時宜にかなって、それで市民のニーズにぴったりはまったという結果でございまして、実は、最初からもくろんでそうなったかと言われると、必ずしも自信を持ってそうだったとは言い切れないところがございますけれども、でも、私どもにとってはもっけの幸いだったということで、今になれば、そういう手法はあったんだということに後になって気がついた、正直に申し上げてそういう経過でございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 以上で質問を終わります。貴重な御意見、大変にありがとうございました。

林委員長 穀田恵二君。

穀田委員 私は、日本共産党の穀田恵二です。

 四人の参考人の皆さん、本当にお疲れさまです。きょうは貴重な御意見をありがとうございます。私も若干質問させていただきます。

 私は、これまで、大型店と中小商店、商店街とが真に共存共栄してこそ地域社会と住民の暮らしを守ることができると考えて、まちづくりの観点から京都で運動してまいりました。京都は、御承知のとおり、保存と開発、さらには規制と緩和がせめぎ合って、そういう町であります。きょうはそういう立場から若干質問します。

 まず第一点は、地域社会への企業の社会的責任としての貢献という問題です。これはこの間、委員会で各党が質問しまして、とりわけ大型店の焼き畑商業という点をすべての会派が指摘してきました。これは、大スーパーなどが、商店街や住民が長い間築き上げてきた町、生活の場を席巻してしまうやり方、もうからなくなれば平然と撤退する身勝手な商法についてのそれぞれの発言だと思うんです。

 そこで、私は、最低限、大型店の出店の際は、その地域の住民と自治体に対し、商店街など地域の商業環境、住民の生活環境、まちづくり計画など地域環境に対する影響評価、いわゆるまちづくりアセスメントに関する事前の情報提供を義務づけるなどが必要じゃないか、立地予定の住民への説明だとか、自治体との協議を経て合意を得る仕組みが必要じゃないかと。先ほど、矢作参考人もアメリカの例を若干引いてお話がありましたけれども、その点について四人の参考人に御意見をお聞きしたいと思います。

小林参考人 私もその点は、今回の都市計画法、建築基準法ではなくて、中心市街地活性化法の枠組みの中で恐らく議論されるべき課題だろうと思っておりますが、重要な視点だろうと思っております。

 中心市街地がどのようになっているかということ、ある政策をやったときに、ある施策をやったときに町がどうなっているのかということをしっかりアセスメントするということの重要性、これまで、我が国の中心市街地の活性化にとって、そのアセスメントが非常に欠けていたと思いますね。欠けていたから、結果として何が出てきたのか、どういう効果があったのかはっきりしない、そういう側面は非常に大きかったと思います。

 中心市街地活性化を行って、どれだけ成果が上がって、あるいはどれだけ問題が起きたか。例えば、イギリスの中心市街地活性化にかかわる施策を展開している中では、毎週、その中心市街地にどれだけの人が通行者として来ているのか、買い物客として来ているのか、あるいは売上高はどうなのかということをしっかり記録して、その動向をキャッチしている、それによって次の施策を打つというような、そういう関係がとられているというふうに聞いてございます。

 そのような全体の仕組み、もし大型店舗が出店するとすると、町全体でどのようにそのような動向がなっているのか、その結果どういう影響が出ているのかということを全体でとらまえる必要性というようなものは、当然のことながら必要だというふうに私も思っております。

矢作参考人 アメリカでは、基礎自治体の中に、条例で大型店の出店影響調査を義務づけるところが出てきているようであります。一般的には、大型店が出てきて、その影響をより長い期間、あるいはより広い範囲で見るとマイナスが大きいというふうな評価が多く出ているようであります。より短く、あるいは狭い範囲で見るとプラスが多いということのようであります。すなわち、どこまで評価基準の中に入れるかということでありますが。

 したがって、アセスメントがされると、そのアセスメントをもとにまた次の議論が起きてきて、なかなかアセスメントの客観性というのが難しいのでございますけれども、一応、実質的な議論をあるデータに基づいて繰り広げていくという意味では、出店影響調査というものを行うことには意味があるのではないかというふうに考えています。

佐々木参考人 今のお話、アセスメント、町を預かる立場の私どもとしては、やはりそれは大変大事なことだと思います。

 つまり、どういう方向で町を経営していこうか、持っていこうかとしているときに、出店できるからといって、今までのように、広い市域を持っている私どものようなところにどんどんどんどんと出てしまう、こうなりますと、町の経営者としては非常に困るわけでございます。ですから、そこには一定の歯どめが必要でございます。

 今回の新しい法律によれば、原則、いわゆる非線引きとか白地のところはだめよ、こういうふうになっているように拝見しています。その中で、新たに地区計画制度として開発整備促進区を設けて、そして、そういう形で十分な合意を得て、ここなら受け入れられますよ、こうなったときでなければ出せない、こういうふうにされるということは、非常にこれまでとは違った、我々にとってはありがたい方向性だ、こう考えておりまして、まちづくりアセスメントという表現がいいのかどうかわかりませんが、やはり地域が合意の上で受け入れる場合には、そういうしっかりした都市計画法上の手続をしてやるというふうなことにすべきではないかと考えます。

森参考人 先ほど来申し上げてまいりましたように、中心市街地の中に一定規模の商業施設というものがあるということ、これはやはり望ましい姿だと思うんです。そういう意味で、今回も、商業地域や近隣商業地域において一万平米を超えるものであっても立地ができる、こうなっている。しかしながら、その際であっても、都市計画法の規制以外の部分で、先生御指摘の一種のアセスメントみたいなものが必要ではないかということについては、非常に難しい問題だろうと結論としては思います。

 考え方としては確かにそういうことが言えるわけですが、しかし、消費者のニーズが那辺にあるのかということや、例えば地域の商業者を含めてどういう意向を今は示すのかということを含めると、先ほど矢作先生おっしゃいましたように、短期的にはぜひ誘致したいという動きが起きてきたり、いろいろなことがあって、数値化して、これをゴーサインを出すのかどうかを判断するというのは、技術的にはかなり難しいのではないかと思います。

 しかしながら、御指摘のとおり、それでは、自由に退店していってしまって、あとは夏草だけだったということも、確かに問題としては困るなと。問題認識としては持っております。

穀田委員 それでは、都市計画法の改正との関係で、お二人の市長にお聞きします。

 制限地域はこれでは十分と言えないというのが私の考えなんですけれども、商業地域も含めてすべて原則禁止して、まちづくりに必要な場合のみ許可するという仕組みに変えてもいいんじゃないかなと私は思っているんですね。ただ、それはいろいろありますもので。

 そこで、今度の法改正との関係で二つ、最低限、一つは、準工業地域については原則禁止すべきじゃないか。先ほど一万平米という話も先生お二人には問うていましたけれども、私は、床面積一万平米以下の大規模集客施設については規制の対象外となっている、せめて三千平米以下にすべきじゃないだろうか、こういう意見を持っているんですね。ですから、今お話しした準工業地域の問題と、規制の対象三千平米以下という点について、それぞれ町を実際に預かっておられるお二人の市長に御意見をお伺いしたいと思います。

佐々木参考人 準工業地域については無制限ではないわけですね。つまり、これはやはり特別用途地区を活用したり、あるいは、特に地方都市では、これを中心市街地活性化法の基本計画の国による認定の条件とすることを基本方針で明記とか、そういうことになりそうなので、だとすると、そこに勝手にどんどんという形にはならないんじゃないか、一定の歯どめがかかるんじゃないか。私どもの方は、そういう形できちっと対応していきたいというふうに考えています。

森参考人 私も同じ意見です。準工地域においてはそれぞれの自治体の判断が働くという構造になっていることは、大いに評価していいのではないかと思います。それぞれの地域特性や背景、いろいろなことを踏まえて、自治体ごとに、例えば今お話ありました特別用途地区その他の手法を使っていく、さらには、中心市街地活性化法の基本計画の中でそのことを判断していかなきゃいけないということを含めて、この規定というのは評価していいのではないかと思います。

 それから、床面積の問題は、これは妥当性の議論だろうと思いますので、一概にどこが絶対正しい正解値ということではないと思いますが、一万平米という数については、いろいろな法律にも一万という数字は一つの基準になっていることなどもありますので、私個人としては妥当ではないかと思っております。

穀田委員 小林参考人と矢作参考人にお聞きしたいと思います。

 大規模小売店舗立地法の十三条では、地方自治体が条例などで大型店出店に対して商店街に与える影響を勘案するということについては禁止しました。大型店出店の抑制策をとろうとする自治体の事実上の手足を縛ってきたと私は判断していまして、今回のまちづくり三法の見直しの中で、大店立地法については手をつけていません。

 まちづくりは、先ほど来御議論ありましたように、地方自治体や住民が主体性を持って計画、実施してこそ意味があるわけです。今回の法の提案の理由でも、地域の主体的な判断により的確に対応するためと述べています。こうなりますと、この十三条というのは、事実上、真っ向から否定する条項であって、私は廃止が必要じゃないだろうかと思っているところです。これを一点、お聞きしたい。

 もう一点。これは一九九〇年以降、アメリカからの市場開放の要求を受け入れて、大店法、とりわけ規制を相次いで緩和したわけです。その実態、これが今日もたらしているわけですが、地方自治体が需給調整の規制を行わないよう監視することを日米の規制緩和の政府協議で約束している、こういう点についてどうお考えか。

 この二点、お二人の先生にお聞きしたいと思います。

小林参考人 適切なお答えになるかどうかわかりませんけれども、私は従来から、国がつくる法というものがあるとすると、一方で、地方公共団体が独自に考える条例がある。法と条例によって地域が運営されているというのが基本的な原則であって、従来は、法がかなり優先的な地位を占めていたと思いますが、現在は、むしろ条例と法が併存してその地域を支えているというふうに考えています。

 そういうようなことを考えますと、条例によってそれぞれの各自治体が独自の政策を、今回の法の枠組みをベースにしながら付加的に考えていくということは十分あり得ることだろうというふうに考えておりまして、そういう方向性を追求する自治体も今後あらわれるのではないかということを私は期待している。

 十分なお答えになっていないと思いますが、とりあえずお答えさせていただきます。

矢作参考人 都市計画法の中で、特別用途とかあるいは特定用途制限地域という、用途を決められるようになっておりますので、必ずしも立地法の問題が直接足かせになるというふうには考えていないんですけれども、自治体の方でかなりできることも現状の法制度の中であるのではないか。

 ただ、いずれの用途も、必ずしも各自治体の方で積極的には採用されてきておられないようであります。その理由の一つは、恐らく、自分のところで秩序ある土地利用を展開しようとすると、ひとり負けになってしまう。周辺の自治体の方で大型店を誘致して、自分だけがひとり負けになるという意味で、広域調整の仕組みがなかなかうまく機能していないということが一つの理由かというふうに思います。

 そういう意味で、今般、福島の方で、県レベルで広域調整の仕組みを何とか採用しようというのは、現行の枠組みの中の一つの取り組みとして注目すべきものかなというふうに理解するところであります。

 以上です。

穀田委員 後半の方を私は言ったんです。

 矢作先生は著作で、また、この間の論評の中で、大店法に関連するアメリカからの市場開放の圧力という問題をところどころで言っておられます。私はその点で、今申し上げましたように、当時それがあっただけじゃなくて、この間、一番の問題は需給調整なんですよね、大店法の考えの思想というのは。そういうのを規制を行わないように監視するという日米の政府協議という約束、これがある。この問題が、この間、例えば「拒否できない日本」だとか、いろいろ本が出ていますけれども、一番の問題はアメリカと日本の政府協議で約束があるという点ですよね。その辺なんかについて、どうお考えですか。

 ここの後半の部分だけ、じゃ、お二人ちょっともう一度。

矢作参考人 私は、政府の間にどういう文書があるのかは具体的に知りませんけれども、新聞報道を理解する限りは、需給調整しない、これはGATSに抵触するんだというふうに報道されておりますし、私もそのように理解しておりますけれども、現状、アメリカの基礎自治体のところでは、需給調整という言葉を条例の中に入れているところはございませんが、実態として明らかに経済規制であるという条例が幾つもございます。

 ただ、アメリカの場合は、これが経済規制か社会規制かというような議論はしておりません。逆に言いますと、経済規制を含まない社会的規制というのはあり得ないわけでありまして、そういう無意味なというか、アメリカというのは大変プラグマティックな世界ですので、そういう抽象的な議論はしていない。まちづくり、あるいは環境のために必要な条例の制定、土地利用をしますということしか述べていないわけであります。結果として経済的規制になっているというものが多々あるということは間違いないと思います。

小林参考人 いや、その点については特に私の方からコメントするというのはございませんので、申しわけございません。

穀田委員 では、最後に端的にお聞きしますけれども、まちづくり三法のスケッチ的総括というのは少し先ほどありましたけれども、私は、矢作参考人に、じゃ、都市計画法でのゾーニング規制は役立ったのかということを端的にお聞きしたい。

 それから、小林参考人に、きょうもありましたけれども、まちづくりとは極論すると地域のお金を地域で、こういうことで論述されておられます。私は、地域における再投資という問題なんかを念頭に置いておられるのかと思うんですけれども、その辺について最後、御意見があればお聞かせいただいて、お二人から一言ずつお話しいただければ幸いです。

矢作参考人 都市計画法と大型店の関係につきましては、現行の都市計画法は、市街化区域についても幾つかの地域、かなり多くの地域について面積が青天井になっておりますし、それから、市街化調整区域についても首長さんの判断で開発許可ができるような仕組みが、一定規模以上のものですけれども、準備されている。あるいは、白地の地区については青天井になっているというようなことで、ゾーニング規制としてはかなり限界があるものであったというふうに理解しております。

 と同時に、都市計画法は国土の二五%しかカバーしていないようでありますので、それ以外のところ、七五%のところについては機能していないわけでありますので、これまでは十分機能したというふうには言えないのではないかというふうに考えております。

 以上です。

小林参考人 今、私がかかわっている中で地域ファンドづくりをやっておりまして、幾つかの主体がその地域ファンドに資金を投じる。一つは国というか政策投資銀行の絡み、もう一つは行政からお金を出し、全体としてのファンドのリスクをできるだけ小さくして、そこに地域のお金が入れるような、そういう流れ道をつくってやる。そういう地域ファンドづくりをやっておりまして、恐らくうまくいくだろうというふうに考えています。そういうプログラムがいろいろなところで動き出すことを私は期待しております。

穀田委員 どうもありがとうございました。

林委員長 日森文尋君。

日森委員 お疲れのところ大変恐縮でございます。社民党の日森文尋と申します。四人の先生方、どうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。

 最初に、これは感想で結構なんですが、四人の先生にお聞きをしたいのですが、大店法が立地法に変えられる段階で、商調協がなくなってしまった。もちろんオールマイティーではなかったわけですが、商調協自体が、大型店舗の進出と、それから地元の、特に商店になると思いますが、そこが共存共栄していこうというようなことで、随分協議を重ねてきて、果たしてきた役割は大変大きいと思うんです。これを廃止してしまった、そしてそういう制度がなかなか再び立ち上がってこないということについて、お考えを最初にお聞きしたいと思います。

小林参考人 その点は、私は余り詳しくないんですけれども。私の今感じている理解内で申し上げますと、恐らく商調協というのは、調整する機能を持っていると同時に、調整するための時間リスクを非常に大きく抱え込んだ、そういう仕組みではないかと思っております。

 民間がいろいろ活動するときに大きなリスクの中の、特にこういう商業系のリスクの大きなものは時間リスクだろうと思うんですね。そういう時間リスクに十分対応できないような仕組みは、今日の経済の大きな流れの中では必ずしも十分機能を発揮できない、あるいは、してはいろいろな弊害を生む、そういう組織だろうというふうに私は思っております。

 以上です。

矢作参考人 今、先生御指摘のように、商調協はコミュニティーベース型の問題解決組織というか、あるいはスキームだったというふうに理解はしておりますけれども、実際は、とりわけ明瞭性というところでかなり問題があったのではないかというふうに理解しております。

 例えば、ディベロッパーが本来五千平米の店を出そうと思っているのに、商調協にかけたらまず七割は削られるだろうということで、初めから八千平米の申請を出すとか、あるいは地元の方も初めから三割は削れるだろうというようなことで交渉が行われる。あるいは多分、問題解決金のようなものも使われることがあったというふうに記憶しておりますけれども、そういう意味で、機能の仕方に明瞭性を欠いていたという部分があるのではないか。そういう意味では、制度変更がやむない状態にあったというふうに私は理解しております。

 以上です。

佐々木参考人 特に、今は市長という立場からしますと余り具体的に申し上げるあれはないんですけれども、私はかつて商工会議所の副会頭をやらせていただいた関係がありますので、そのときの経験からいたしますと、今、両先生おっしゃったように、やはりちょっと形骸化してきたというのですか、いつの間にか、大きな面積が出たのが決着してみたら小さくなったとか、その陰には吹っかけてあったとか、いろいろなことをその過程では聞いたことはございました。

 しかも、今度は地方自治体の立場になりますと、そこに余り口を差し挟む余地がない、ただ意見をちょっと聞かれるぐらいですね。そうしますと、地域を預かる立場としては、甚だこれは心外ということが、結果が出ればそう思わざるを得ないということだったと思っていまして、ですから、問題はやはりそこまで来ていたんじゃないでしょうか。

森参考人 実は私も、昔、小さな商工会の役員をしておりました時代にそういう事案として経験をしましたけれども、結論から言うと、きちっとした機能、できなかったと思います。矢作先生がえんきょくにお話しになりましたような事柄ということがあって、逆にエクスキューズをもたらしてしまうということにもなりかねなかったのかなという思いを持っております。

 もう一つは、そのころの消費者のニーズというものとまた違うんではないかと思いますね。当時はやはりそういうことを求める声も、一方で大きな大型店を求める声も消費者に大きくあった、こんな認識も持っています。

日森委員 ありがとうございました。

 小林先生にお伺いしたいんですが、先ほどちょっと出ました、先生のレジュメの三番の「多くの関係主体の参加によって再生を目指すこと」。その中で、地元金融機関の参加で、先ほど地域ファンドの話も伺いました。それから、アメリカに行ったら地元金融機関の頭取がまず最初に出てきたという話を伺って、なるほど、そうなのかというふうに思いました。

 実はアメリカでは、出発点は、住宅ローンの人種差別から始まった地域再投資法ですね。CRAと言われているようですが、ちょっとわかりにくいので、資金を地元に公平に還元するための法律というふうに言った方がわかりやすいと思うんですが、これがつくられて、何度か改正をされて、地域の再生のために資金が使われている。もちろん、自治体が担保したり、さまざまなやり方があると思うんですが。

 我が国でもこのCRAについて一回導入しようかという流れもあったように聞いているんですが、実はこういう規制があった方が、現実問題として、地域の金融機関がまちづくりに積極的に資金提供をするとかいうことがしやすいのではないかという思いがあるんですよ。このCRA等について、先生の御意見をぜひお聞きしておきたいと思います。

小林参考人 お答えいたします。

 私も地域再投資法のことはよく存じ上げています。一定の割合、地域にお金を使わなければいけない、投資しなければいけない、そういう枠組みをつくって、地域にお金が流れる、そういう仕組みをつくっているということでございます。

 我が国で、そういう法をつくってまでそういうことをやる必要があるのかどうかという議論が一つあると思いますね。先ほど申し上げました私の経験でいうと、地元の金融機関に地域経済のあり方の議論を含めてお話を差し上げて、結果的に、我々もそれに乗りましょう、参加しましょう、そういう納得をいただいていますし、地域の方々が自分たちの地域をこういう町につくりたい、そのためには銀行が参加してもらうことが一番いいんだ、いろいろな形で参加してもらうことは非常に必要なんだということをお話しして、そのことによって地元の銀行も参加してきたというプロセスを聞いてございます。

 これからの中心市街地の活性化は、そういう声をしっかり上げる地元の組織があって中心市街地が活性化するものだと思っておりますから、規制する前に、私は、今回の法を生かして地域の組織がそういうムーブメントを起こす、そのことによって地域の金融機関がそこにかかわってくるということをまず動かすべきではないかというふうに思っております。

 以上です。

日森委員 ちょっと同じ質問で、矢作先生、もし御見解ございましたらお聞かせいただきたいと思います。

矢作参考人 法律が必要なのかどうか、なかなか即断しかねますけれども、CRAについては、私、ロサンゼルスに新聞記者で行ったことがございますけれども、かなり厳しくアメリカでは適用されているようであります。同時に、当時、地銀がロサンゼルスにこぞって支店を出しておりましたけれども、グローバル化の時代に対応するということで支店を出しておりましたけれども、みんな今撤退してしまったんじゃないかと思います。

 逆に、たしか北海道の帯広の信金だったと思いますけれも、私たちは帯広の都市圏に貢献するんだということで、札幌の支店まで閉めて帯広に集中して営業活動をするというふうに、地域密着型の営業活動を展開している信金もあるやに聞いておりますので、今小林先生おっしゃいましたように、地銀なり第二地銀なり、あるいは信金、信組が、コミュニティー、運命共同体ですので、どう考えていくかということがまず基本ではないかなというふうに考えております。その上で、必要ならばCRAということかもしれません。

日森委員 ありがとうございました。

 続いて小林先生にお伺いしたいんですが、地元金融機関と同時に交通事業者、これも当然参加をしていただくということが不可欠だと思うんですね。富山の市長さんはLRTで、鉄道網ですね、やって、うまくできそうだという自信をおっしゃったんですが、その他のところは、交通事業者が参加をするというのは大変厳しい環境があると思うんですよ。

 現実問題、今でも、人が乗らない、空気を運んでいる路線はどんどん廃止をしていく、市の方で肩がわりして福祉バスなどというのを走らせて対応しなきゃいかぬというような状況になっているんですが、先生の御経験で、交通事業者も一緒に参加をして、まちづくり、中心市街地の活性化に寄与しているような例とか、あるいは、こんな格好で交通事業者に参加してもらうというようなことがありましたらお聞かせいただきたいと思います。

小林参考人 私も幾つかかかわってはいるんですが、交通事業者が会議に出てくる。例えば、私がかかわっている浜松の中心市街地活性化は、あそこは遠州電鉄ですか、が社長さんを初めやはり熱心に会議に出てこられて、いろいろ中心市街地活性化にかかわっておられます。

 ただ、一方、例えば浜松は自動車の自治体ですから、自動車を活用するためには地域は分散化していた方がいいんだという意見も別途ありまして、そういう議論も実はあるわけですね。そういう議論もある中で中心市街地の活性化の議論をやっておるものですから、それが実際に実を結ぶのはまだまだ時間がかかるかなという状況です。ただ、交通事業者も自分の役割を担わなきゃいけないという認識を持ち始めていることは間違いないというふうに思っております。

 以上です。

日森委員 ありがとうございました。

 それから、富山の市長さん、僕は実に楽しい話を聞かせていただきまして、私もLRT議員連盟というのに入っていまして、私はさいたま市なんですが、ぜひそういう循環できるようなLRTをつくったらという提起をしているんですが、道路の拡幅から始めなきゃいけないということで、あれは二十五メーターぐらいですかね、もうちょっとなくても大丈夫なんですかね。

 この間ジュネーブに、何度か行ったことあるんですが、二年ほど前にジュネーブに行ったときに、これまで道路だったところを掘り返して線路をつくっているんですね。何でですかと言ったら、フランスの国境に近いですから、どんどん車で買い物に来たりしていて、渋滞して、これは町の活性化に逆に役立たない、だから、道路をつぶして路面電車にまた改めて切りかえるんだという大胆な発想でやっているんですよ。

 そういう意味で、大変有利なインフラがあったということが前提でおつくりになるんですが、かなり市域が広いと。そうすると、でっかい駐車場をどこかにつくって、そしてこの公共交通とつなげていくというようなことも発想の中には入っていらっしゃるんでしょうか。

森参考人 イメージしています全体の最終形の中にはもちろんありますけれども、そこへはすぐに持っていくのは難しいだろうと思っています。

 路面電車を延伸したり熟度を上げていくから車が減るとか、車に特化した社会のありようから脱車社会に向かえるかというと、そうではないと思います。したがって、当面、車も使いますが公共交通も大事にする、こういう機運をつくっていくことかな、このように思います。

日森委員 ありがとうございました。

 ちょっと時間がなくなってしまったので、最後に一問だけ、それぞれ四人の先生方にお伺いをしたいと思うんです。

 矢作先生のお話で、欧米の例が出されて、基礎自治体が大変な権限を持っていて、一定の規制力をきちんと発揮していると。

 ドイツのケルンという町に行ったことがありまして、そこは鉄道の空き地がありまして、そこにIT産業を集積しようという話があったんですね。周りは全部ヒトラーがつくった黒い森ですよ。ヒトラーがつくったって、別にヒトラーはどうでもいいんですが。それで、住民にその問題を提起したら、操車場を全部つぶしてそんなものをつくる必要ないと。けんけんがくがく議論があって、結局半分にして、残りの半分はまた森にしたんですよ。それが市民の総意だったわけですね。そのとおりにしたんです、企業の側が。ということで、ヨーロッパ、アメリカでもそうなんですが、住民参加というのが実に当たり前になっている。それは分権ということが徹底しているわけですね。

 そういう意味から考えると、これからの都市計画法の運用も含めたあり方について、それから、両市長さんは、こういうふうに都市計画法があった方が実は首長として使い勝手がいい、やりやすいという御意見があったら、最後になりますが、お聞かせいただきたいと思います。

小林参考人 私は、めり張りのきいた都市をつくるということが重要だと思います。集約型都市を目指しているけれども、しかし、それだけですべてのものが解決するわけではない。郊外部に相変わらず住み続けたいという方、自然と親しみたいという方がいらっしゃる。中心部に住みたい、あるいは企業として存在したい、郊外部に住みたい、企業として存在したい、それぞれの場がよりよい環境で支えられる、そういう都市が理想的な都市だ、それは選択可能性を高めるということにつながるだろう、そういう都市づくりを目指すべきだというふうに思っています。

 以上です。

矢作参考人 基本的には分権の流れを追求していくべきだと思います。

 ただ、その際、自治とは何かということですけれども、都市間競争を前提にする限り、自治すなわち自分の町が一番いいようにということになりがちであります。結果的に、都市圏全体の福利が最大になっているかというのはなかなか難しいところですね、空き店舗があちこちに出てきてしまうというようなことが起きておりますので。

 分権あるいは自治を前提としながら、その自治もセルフィッシュなものではなくて、自己的なものではなくて、やはり周辺との連携の中で自治のあり方を考えられるような、すなわち、都市間競争から都市間連携を前提にした都市計画のありよう、あるいは町のつくり方ということがこれから考えられなければいけないんではないかなというふうに考えております。

 以上です。

佐々木参考人 それぞれの町には、都市にはそれぞれの個性と顔があると思いますので、一概には言えないと思いますが、私は、今回のこの法の改正は、先ほど申し上げましたが、私どものこれまでやってきた方向性からすると、極めてこれは有効に働くであろうと思っております。

 そういう中で、選択と集中の話もございましたけれども、最終的に、規制をかけるところはきっちりかけた上で、あとは地域がよく判断して選択できる、こういうふうなことが盛られていることは、これはやはり町を預かる者としては極めてありがたいと思います。それからまた、もう一つは、広域で調整機能を持たせるという部分もありますので、これも非常に有効に働くのではないか、こういうふうに思いまして、これは今までに比べたら大変な進歩だというふうに思っていまして、ぜひとも早くひとつ施行していただきたいというふうに考えています。

森参考人 都市計画法とは直接関係ありませんが、先生の方から、こういう制度があったらいいがなという意見をということでしたので、言わせていただきます。

 既に街路が整理されて、公園もある、そういう町の中で、しかし、青空駐車場や空き家が点在していてゴマ塩状になっていますので、これをもう一度再整理する、税制の面なりいろいろな面からそれほど負担が発生しないでもう一度再整理できる、そういう方法があったらいいな、こんなことをいつも思っております。

日森委員 終わります。ありがとうございました。

林委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言申し上げます。

 本日は、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

林委員長 この際、連合審査会開会申入れに関する件についてお諮りいたします。

 ただいま経済産業委員会に付託されております内閣提出、中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律の一部を改正する等の法律案について、経済産業委員会に対し連合審査会の開会を申し入れたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、連合審査会の開会日時等につきましては、経済産業委員長と協議の上、追って公報をもってお知らせすることといたします。

 次回は、明五日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時七分散会


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