衆議院

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第13号 平成18年4月14日(金曜日)

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平成十八年四月十四日(金曜日)

    午前九時三十三分開議

 出席委員

   委員長 林  幹雄君

   理事 衛藤征士郎君 理事 中野 正志君

   理事 望月 義夫君 理事 吉田六左エ門君

   理事 渡辺 具能君 理事 長妻  昭君

   理事 三日月大造君 理事 高木 陽介君

      赤池 誠章君    石田 真敏君

      石原 宏高君    遠藤 宣彦君

      小里 泰弘君    越智 隆雄君

      大塚 高司君    鍵田忠兵衛君

      金子善次郎君    亀岡 偉民君

      北村 茂男君    後藤 茂之君

      島村 宜伸君    杉田 元司君

      鈴木 淳司君    薗浦健太郎君

      田村 憲久君    長島 忠美君

      西銘恒三郎君    西本 勝子君

      葉梨 康弘君    福井  照君

      馬渡 龍治君    松本 文明君

      盛山 正仁君    若宮 健嗣君

      小宮山泰子君    古賀 一成君

      下条 みつ君    高木 義明君

      土肥 隆一君    長安  豊君

      鉢呂 吉雄君    馬淵 澄夫君

      森本 哲生君    伊藤  渉君

      斉藤 鉄夫君    穀田 恵二君

      日森 文尋君    糸川 正晃君

    …………………………………

   国土交通大臣       北側 一雄君

   国土交通副大臣      江崎 鐵磨君

   国土交通副大臣      松村 龍二君

   国土交通大臣政務官    石田 真敏君

   国土交通大臣政務官    後藤 茂之君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    矢代 隆義君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           松井 一實君

   政府参考人

   (国土交通省自動車交通局長)           宿利 正史君

   参考人

   (一橋大学大学院商学研究科長・商学部長)     山内 弘隆君

   参考人

   (財団法人全国福祉輸送サービス協会会長)     関  淳一君

   参考人

   (NPO法人市民福祉団体全国協議会専務理事)   田中 尚輝君

   参考人

   (全国自動車交通労働組合連合会書記長)      待鳥 康博君

   国土交通委員会専門員   亀井 為幸君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十四日

 辞任         補欠選任

  鍵田忠兵衛君     石原 宏高君

  亀岡 偉民君     馬渡 龍治君

  坂本 剛二君     西本 勝子君

  盛山 正仁君     福井  照君

  亀井 静香君     糸川 正晃君

同日

 辞任         補欠選任

  石原 宏高君     鍵田忠兵衛君

  西本 勝子君     坂本 剛二君

  福井  照君     盛山 正仁君

  馬渡 龍治君     越智 隆雄君

  糸川 正晃君     亀井 静香君

同日

 辞任         補欠選任

  越智 隆雄君     亀岡 偉民君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 道路運送法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三一号)

 住生活基本法案(内閣提出第三〇号)


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     ――――◇―――――

林委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、道路運送法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として全国自動車交通労働組合連合会書記長待鳥康博君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

林委員長 これより質疑に入ります。

 本日は、本案審査のため、参考人として、一橋大学大学院商学研究科長・商学部長山内弘隆君、財団法人全国福祉輸送サービス協会会長関淳一君、NPO法人市民福祉団体全国協議会専務理事田中尚輝君及び全国自動車交通労働組合連合会書記長待鳥康博君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席を賜り、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、山内参考人、関参考人、田中参考人、待鳥参考人の順で、それぞれ十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないこととなっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 なお、参考人及び質疑者におかれましては、御発言の際は着席のままで結構でございます。

 それでは、まず山内参考人にお願いいたします。

山内参考人 ただいま御紹介いただきました山内でございます。着席のままで失礼いたします。

 私は、これまで、学校の方では交通経済学と言われる分野を専攻し、研究をしてまいりました。特に、バスあるいはタクシー、航空、こういった交通産業を中心に勉強してまいりました。

 今回提出されました法案のうち、道路運送法の関係部分につきまして、国土交通省で設置されました、コミュニティバス等地域住民協働型輸送サービス検討小委員会、それからNPO等によるボランティア有償運送検討小委員会、この二つの小委員会におきまして関係者間で議論をした結果が今回のこの法律の基礎となっております。

 私自身のことを申し上げますと、私は、この二つの委員会に委員長ないしは委員として参加をさせていただきました。また、この二つの小委員会を束ねる懇談会があったわけでございますが、その懇談会の方の座長も務めてまいりました。こうした経緯でございましたので、その立場から、小委員会での検討内容を御紹介いたしまして、今回の法案について意見を述べさせていただきます。

 まず、今回の道路運送法改正部分、これは全般についてでございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、道路運送法の改正部分につきましては二つの小委員会で議論いたしました。この際、事業者あるいはNPO法人、運転者の労働組合、それから利用者代表、自治体、我々学校関係者、こういった各界の関係者が一堂に会して議論をいたしました。そこでいろいろな議論をして、その結果を今回踏まえて道路運送法の改正部分に至った、こういうふうなことであると思います。その意味では、いろいろな階層の方々の意見を聞いて、それをうまくまとめたというふうなことが言えると思います。

 つまり、地域のニーズとか事業者の立場とか、あるいはNPO団体の方々の考え方とか、こういった総合的な判断に立った上の改正というふうに言えると思います。その意味では、極めて時代に即したものになっているというふうに自負しておるわけであります。

 そこで、具体的な内容ですけれども、まずコミュニティーバスの関係について申し上げます。

 バス運送事業というのは、御承知のとおり、昭和四十年代の初期ぐらいから中盤ぐらいに日本で最高の輸送量を記録して、非常に大きな産業だったわけですけれども、それから自家用車の進展等ありまして、これが若干小さくなってきている。これは、小さくなること自体に問題があるというよりも、それによって、地域の方々の足、要するに交通の利便性が損なわれる、こういう問題があったわけであります。そこで、道路運送法におきましては、平成十二年だったと思いますが改正をして、いわゆる需給調整規制を廃止して、そして、より自由な参入というものが認められたということだと思います。

 こういう経緯の中で、地域の交通をいかに確保していくかということが考えられてきたわけですけれども、そのときに、バスの輸送というのは、コンベンショナルな大きなバスを使って輸送する、これはたくさんの人が乗ればコストは安いんですけれども、少人数であればコストが高いというふうなことがあって、それが維持できない。そうすると、例えばバスとタクシーのあいのこのような中間的な輸送の供給形態、こんなものが求められたり、あるいは場合によっては、これは事業ベースではなくて、自治体がサービスとして部分的に行うようなもの、こんなようなことが求められてきたというわけであります。

 コミュニティーバスにつきましては、御承知のとおり、そういった中で出てまいりまして、都市部において大成功をおさめ、それが全国的に拡大したというようなことがございます。

 今回、コミュニティバス等地域住民協働型輸送サービス検討小委員会での議論を踏まえまして、今申し上げましたように、コミュニティーバスあるいは乗り合いタクシーという新しい輸送形態、こういったものを導入してはどうか、こういう内容が盛り込まれたわけであります。

 これは言うまでもないことでありますけれども、日本の社会は大きく変わっておりまして、少子高齢化、それから地域におきましては過疎化の進展、こういう問題がございまして、あるいは都市におきましては中心市街地の空洞化、こういう問題がございます。こういったときに、今申し上げたような形で新しいサービスを提供することによって、地域住民の方々の足の確保、それから場合によっては市街地の活性化、こんなようなことも考えられるわけであります。

 このコミュニティーバスあるいは乗り合いタクシーについてですけれども、例えば、現在でも、地域住民や自治体が中心になってバスサービスの維持改善に主体的に努めていく、そういう例が出てきております。御承知のように、バス車両とかジャンボタクシーを使ったサービス、あるいは、自治体によっては百円でワンコインバスなどを運行するということで、いろいろな工夫がなされて、それが地域住民の足になりつつあるという面もございます。

 ただ一方で、こういったサービス、御承知のとおり、全国に普及してまいりまして、特にコミュニティーバスにつきましては、かなりの自治体がこれを実施する、そういう段階に来ておるわけですけれども、必ずしもそれがうまくいっている例ばかりとは限らない。場合によっては、大きな赤字だったり、問題をはらんでいるケースもないことはないわけであります。

 そこで、こういう小委員会におきましては、ある意味でのベストプラクティス、こういったものを検討して、こういう新しいバスサービスを成功させるためにどういう条件が必要かということを検討してきたというわけであります。

 私は、常々、交通の分野で、特に地域交通、都市交通においては、そこにお住まいの方々、住民の方々、それから事業者、自治体、こういった方々の連携が必要だというふうに申し上げて、特に場合によっては、地域交通のQCサークルとかあるいは都市交通のQCサークル、こういうような言い方をしておるのでございますが、要するに、地域の交通というのは、そこにお住まいの方々、あるいはそこで事業をされている方々、自治体、こういう方々が一番情報を持っているわけでありまして、そういった方々がその情報を出し合ってよりよいサービスを追求していく、これが重要ではないかというふうに考えております。

 今回のバスについても、地域住民のニーズへの対応とか、あるいは、どのようにしたら利用されるかということの視点。あるいはもう一つは、既存の公共交通サービスとの関係、整合性とか連続性、こういったもの。それから三つ目は、その地域地域によっていろいろな状況があると思いますので、運賃とかサービスといったものをいかに多様化させるか、そういう柔軟性、こんなことも必要ではないかという視点から議論を重ねてまいりました。

 その結果出てきたのが、基本的に今私が申し上げたとおりで、地域の住民の方々、バス事業者、自治体、その他関係の組織、そういったものを組織いたしまして、計画段階から、どういうサービスがいいのかとか、どういうサービスが必要なのかという議論を行う、そういう合意形成の場をつくるということ。それから、地域のニーズに合うように柔軟に対応するような協議会をつくって、柔軟なサービスをできるような規制緩和と弾力化を図ること、こういうことが必要。それから最後に、先ほど言いましたように、既存のバス路線とか公共交通との連携、これをどう図っていくかという連携とか整合性の問題。こういった三つぐらいの視点を非常に重視してこの計画をつくってはどうかということになりました。このような結果が、今回の道路運送法の改正に反映されているというふうに考えております。

 以上がコミュニティーバス等の問題でございますが、二点目は、NPO等によるボランティア福祉有償運送関係であります。

 先ほど私は、バスサービスというのは、今までの固定的な概念ではなかなか新しいニーズにたえられないというふうに申し上げましたが、タクシーについても同じでありまして、少子高齢化する中で移動制約者がかなりふえています。急増していると言ってもいいかもしれません。そういった方々に対して、十分な移送サービス、輸送サービスを提供するにはどうしたらいいかという意味では、先ほどのバスの新しいサービスということとある意味では同じ考え方として、このNPOのボランティア福祉有償運送を位置づけていくということになろうかというふうに思います。

 この手のたぐいの輸送、ドア・ツー・ドアの移動を提供するサービスを、STS、スペシャル・トランスポート・サービスと通常呼んでおりますけれども、今申し上げましたように、少子高齢化の中で高齢者あるいは障害者の方々が多様な生き方をされる、それによって社会に参画していくという意味で非常に重要なサービスであるというふうに思っております。

 ただ、これまで、福祉タクシーを初めとする既存の運送主体のみでは十分なサービスが提供できないのではないか、こういう認識がございました。今隣にいらっしゃいます、後で発言される関さんのところでは、こういったところを非常に重視してサービスを提供されてきたわけですけれども、それでも十分ではないということであります。

 そこで、今回、NPO等によるボランティア有償運送検討小委員会では、既にNPO等によって提供されております今申し上げたSTS、これにかかわる有償運送について、利用者にとって安全、安心なサービスを普及させるための新しい仕組みについて、先ほども申し上げましたけれども、実際にタクシーの運送を行っている事業者の方、それから、移送サービスと呼んでおりますけれども、移送サービスを提供されているNPO法人の方、それから利用者の代表、タクシー運転者の労働組合、自治体あるいは学校関係者、関係の行政機関、こういった方々の協力を得まして議論をしてまいったというわけであります。先ほども言いましたように、きょうここに参考人としていらっしゃいますお三方にもこの委員会に参加していただいております。

 このボランティア輸送の検討ですけれども、NPO等でボランティア有償運送を行っているというのは、先ほど申しましたように、既存の公共交通機関によっては十分にカバーできない移動制約者の方々へサービスを提供するということ、ある意味では補完的なサービスというふうに位置づけられるわけであります。そういったことから、既にあるタクシー事業者と移送サービスを行っているNPOの方々が共存していけるような形をいかにつくっていくか、これが重要なポイントだというふうに思っております。それによって利用者の方々がメリットが得られるということであります。

 済みません、時間が超過しているようなのでちょっと急がせていただきますが、議論の過程でいろいろな議論が出ました。特に、いろいろな利害対立がございますので、意見が一致しないところもございましたけれども、一つ大きなポイントは、これについて制度化するというような必要性が指摘されたところであります。そこで、今回の運営協議会の場でも、いろいろな関係者の方々の御協力を得まして、少しでも安全性については最低限必要なことを確保するということを前提として、自家用車による有償運送を可能とするようなスキームをつくる、こういうことで関係者の合意を得たというわけであります。

 このような議論を十分踏まえて今回の改正案になっているというふうに思っておりますので、よろしく御検討いただいて、この法案を御支持いただければというふうに思っております。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

林委員長 ありがとうございました。

 参考人の方々に重ねてお願い申し上げますけれども、それぞれ十分程度で御意見をお願いしたいと存じます。

 次に、関参考人にお願いいたします。

関参考人 ただいま御紹介をいただきました関淳一でございます。

 私は、現在、大阪の南港のタクシー基地という、タクシーが千台ほど入る基地を昭和五十三年につくりまして、その協同組合の理事長もやっておりますが、大阪市住之江区の方においてタクシーの事業をやっております。また、それと並行しまして、高齢者や障害者等の輸送を行うためのリフトつき車両等を使用した福祉タクシー事業も行っております。こういった関係から、タクシーにつきましては、大阪タクシー協会の副会長をやっております。また、福祉タクシーの関係では、財団法人全国福祉輸送サービス協会の会長に就任をしております。

 本日は、先ほど先生の方からも御意見ありましたように、道路運送法等の一部を改正する法律案の審議に当たりまして参考人としての意見を求められましたので、日ごろ、タクシー事業また福祉タクシー事業にかかわっている立場から意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず、財団法人全国福祉輸送サービス協会について申し上げたいと思います。

 この協会は、財団法人となりましたのが平成十年でございますから、丸八年ほど経過しておるということであります。しかし、任意団体としましては、活動歴は、昭和五十二年十一月から設立をいたしまして、今日、おおむね三十年の歴史があるということであります。

 私どもは、任意団体としての活動を始めたころから、メーカーと協力をいたしまして、高齢者や障害者の輸送を行うためのリフトつき車両等の、いわゆる福祉型車両の開発や改造等を手がけてまいりました。この間、身障者割引を自主的に実施したり、地方自治体との連携による福祉タクシー券の導入、高齢者や障害者輸送をスムーズに行うためのタクシー運転者教育を関係者の方々と議論をしながら実施してまいりました。

 また、言うまでもなく、タクシーを含む公共交通機関は、人命を運ぶという重い責任を負っております。安全、安心な輸送サービスを提供することが最大の使命であると認識をしております。したがいまして、輸送の安全と利用者利便の確保のためには、乗務員の教育がまず最も重要であると考えます。

 交通バリアフリー法成立後の平成十四年からは、福祉輸送サービスに従事する運転者に対する研修であるケア輸送サービス従事者研修を、社団法人シルバーサービス振興会と社団法人全国乗用自動車連合会とともに主催してまいったところでございます。高齢者や障害者の状況を深く理解するとともに、車いす等からタクシー車両へ安全に移乗させる技術や、高齢者や障害者を乗車させたときの安全運転技術等の教育を行っております。現在では、この輸送サービスの従事者研修の受講者数は年間二千二百名余りとなり、乗務員の心のバリアフリー化に一役買っているものと自負をしております。

 さらに、運転者に対してヘルパー資格の取得も促進し、現在、十五年度なんですが、八千五百名を超える運転者が既に資格を取得しているなど、福祉輸送の一層の充実に向けた取り組みを強化しております。

 しかし一方で、高齢者や障害者の輸送は、一般のタクシーのようなドア・ツー・ドア型のサービスというよりも、ベッド・ツー・ベッドと言われるようなきめ細かいサービスが求められている輸送でありまして、輸送コストが高く、その面では極めて効率性が悪い事業であります。このため、現在、福祉タクシーを行っている事業者の大部分は、企業の社会的責任、あるいは公共交通機関として地域の役に立ちたいという使命感から、本業のタクシー事業の収入によって何とか福祉タクシー事業を経営しているというケースが多々あります。

 このため、私ども事業者としましても、今後とも地域社会に貢献するため、福祉タクシーの普及に一層努力していくこととしておりますが、財政面や税制面における国や地方自治体からの援助についても御配慮いただければ幸いと思っております。本日はせっかくの機会でございますので、この点についても強くお願いをしておきたいと思います。

 さて、本題である道路運送法等の一部を改正する法律案について申し上げます。

 現行のボランティア福祉有償運送の全体的な取り組みは、二年前、平成十六年三月に出されましたいわゆる二四〇号通達と言われる国土交通省自動車交通局長通達によって進められてまいりました。この通達は、NPO等のボランティア福祉有償運送について、現行の道路運送法第八十条第一項に基づく例外許可の対象として、その際に必要な措置を求めているものであります。

 このような現行の仕組みは、NPO等のボランティア福祉有償運送についても、道路運送法の対象として、ある程度の安全措置を求めていくことであります。それはそれとして大きな意義があったものと言えますが、一方で、八十条という例外的な条文を使って、恒常的に実施されつつあるNPO等のボランティア福祉有償運送を規定している点は問題であると考えております。

 そもそも、NPO等のボランティア福祉有償運送といいましても、有償でお年寄りや障害者といったお客様をお運びするという点ではタクシー事業と全く変わりがございません。このため、NPOであっても、安全、安心な輸送サービスを提供するために一定の責務を負うべきであると考えています。したがいまして、こうした福祉有償運送を法律ではなく一片の通達で規定するということは大いに問題があると考えていましたし、私どもといたしましては、一日も早く法律的な位置づけが明確にされることが必要と考えておりました。

 このように、通達によるボランティア福祉有償運送の全体的な仕組みにつきましてはいろいろ問題があったわけでございますが、国土交通省は、それらの問題点はいま一度検討することとして、昨年九月から四回にわたってNPO等によるボランティア福祉有償運送検討小委員会を開催しました。この小委員会には、私ども協会からも私を初め副会長の立場にある者が委員として参加し、NPO等の福祉有償運送を進める皆さん方とも激論を交わしながらも、一定の方向性を見出そうと努力をしたわけでございます。

 この結果、今回提案されております道路運送法改正案は、その小委員会における議論を十分盛り込んだ形で形成されているものと理解をしております。同時に、これによって、NPO等によるボランティア福祉有償運送について法的な位置づけが明確にされるということにもなりますから、私どもとしましては大いに歓迎をしているところでございます。

 一方で、私どもは、このNPO等検討小委員会において、NPO等のボランティア福祉有償運送が担当すべき移動制約者の範囲等についても意見を申し上げましたので、その一部をここで述べさせていただきます。

 一つには、高齢者や障害をお持ちの方で移動に制約を受けられる方がNPO等のボランティア福祉有償運送が担当すべき移動制約者の範囲ということになるわけでございますが、それは、例えば介護保険法で言うところの要介護一以上であって単独では公共交通機関を利用できない人といったように、ある程度明確に分けられる方に限るべきではないかということであります。

 また、もう一つは運営協議会についてでございます。この法案が成立すると、NPO等が自家用自動車で福祉有償運送を行おうとする場合には登録を必要とすることになるわけでございます。その前段といたしまして、現行の二四〇号通達と同様、それぞれの地域で地方自治体により設置される運営協議会の場で、当該地域における有償運送の必要性について地域の関係者と議論することが必要になります。

 このため、運営協議会は関係者間の大切な議論の場となるわけですが、どうしても委員構成の面で偏りが見られ、その結果、多数決で事が決せられるような場合には、関係者の意見が必ずしも公平に反映されないケースが多々あったということでありまして、この点については、私どもタクシー事業者といたしましては大いに問題視しているところであります。

 移動制約者の範囲や運営協議会のあり方等につきまして、法案が成立した後、省令、通達等で詳細な制度が定められることになるわけですが、その際には、ぜひともこの問題意識について十分御考慮をいただきたいと考えております。

 また、最後になりましたが、この法案が施行されることになりましたら、監督官庁である国土交通省におかれましては、輸送の安全と利用者の利便を確保するため、タクシー事業者に対するのと同じように、NPO等のボランティア福祉有償運送に対しても適時適切な指導をしていただくようお願いをいたしまして、参考人としての意見とさせていただきます。

 私からは以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)

林委員長 ありがとうございました。

 次に、田中参考人にお願いいたします。

田中参考人 NPO法人の市民福祉団体全国協議会の田中尚輝と申します。

 まず、今回の法の改正のところで私どもと関係しておりますのは、ボランティア、NPO等による福祉有償輸送という部分に関してでありますので、その点に関して申し上げます。

 まず、道路運送法において白ナンバーによる有償サービスが禁止されているわけでありますが、実は、これは、三十年も前から実際上白ナンバーによる有償サービスが延々と行われておりまして、現状では約三千団体が白ナンバーによる有償運送をやっている。

 これは、法的な関係でいうと明確な違反でありまして、それがなぜ行われているのかというと、指導官庁は黙認をするということなんですが、なぜ黙認をせざるを得ないかといいますと、移動制約の方々が非常に多くて、その移動の自由をしっかり保障する政策、サービス体系がないということに大きな問題があり、隣近所で自家用車を活用して病院まであるいは買い物のときに移動するということで、この三十年間の間ずっと放置されてきたわけであります。したがって、我々は、ボランティア団体として、移動しながら、法律違反で、極端なことを言えば、いつ告発されるかわからないというふうな状況の中で活動をしてきたわけです。

 こういう事態は非常に異常でありますので、今関さんがおっしゃいましたように、二年前にガイドラインができ、今回は道路運送法の中でそういうものをしっかり位置づけようということになりました。そのこと自体は、大変、国は、法治国家でありますので、大きな前進だというふうにとらえているわけであります。

 しかしながら、そもそも、業界を取り締まるというか業界そのものをコントロールする法律というのが道路運送法の基本でありますから、その中にボランティアとかNPOを含むということ自体にかなり大きな問題点があります。したがって、法律の中で位置づけることのプラス面とマイナス面があるわけであります。

 マイナス面の側から申し上げますと、今ガソリン代実費等で隣近所の助け合い活動をやっているというふうなところまですべてこの改正法の網にかけて、運営協議会に膨大な資料を提供して、それから一万五千円の登録料を払って申請をしていくというふうなことまでやるべきでないというふうに思います。つまり、この法律が制約している範囲をぜひ御議論いただきたいというふうに思います。

 端的な例で申しますと、昨日新潟の方から連絡があったのですが、新潟市社会福祉協議会がこのボランティア輸送をやっております。それは、乗る方、移動制約者から一円もいただかずに、ボランティアで活動してもらうわけですから、一回サービスをしたたびに新潟市の社会福祉協議会が百円ずつガソリン代として差し上げるというものであります。

 これを、新潟運輸局は、国土交通省さんは、有償輸送であるからこれは運営協議会にかけて許可を得なければならない、こういう御指導を国土交通省側はされているわけであります。こんなことまでされてしまいますと、ボランティア活動として移動サービスに関与する人たちがいなくなります。事実、新潟の社会福祉協議会は、こんなことの制約を受けるならそのサービスはやめるという方向になっているわけです。

 したがって、本当に留意していただきたいのは、この法律が対象とする有償輸送というものがどの範囲であるかということを、ぜひ、議論に当たっては慎重に御審議いただきたいと思います。

 私どもは、ガソリン代等の実費をいただく程度のものであれば、この法律はそもそもタクシー業界等の規制法の性格を持っておりますから、そこで言う有償運送というのは、その有償というのは適正な利潤を上げるということが前提になっているはずでありまして、私どものようにボランタリーにガソリン代実費程度、一回行って百円とかキロ当たり三十円とかいうふうなことをやっているところまでを含めるべきでないということを最初に強調させていただきたいと思います。

 それから、私どもがやっております活動の実態でありますが、三千団体と非常に多いのですが、タクシー業界のように二十四時間毎日毎日それが動いているわけではありませんで、参考のために、NPO法人移動ネットあいちの「現況調査」という一枚ぺら物を出してありますが、そこでも明らかなように、愛知県の、約七百六万人いらっしゃいますが、その中の四千人程度にサービスをしている。移動制約者というのはどこでも人口の約六%ぐらいおりますので、四十二万人ほど愛知県には移動制約者がいらっしゃるはずなんですが、そのうちの四千人程度というレベルでありまして、非常に少ない人たちに私どもがサービスをしているという実態についてもまず押さえておいていただきたいと思います。

 それで、法律上の問題でありますが、一番大きな問題は七十九条の四第一項第五号でありまして、これは法律が出ておりますのでごらんになっていただきたいわけでありますけれども、ここで大変重要なことは、簡単に言いますと、タクシー業界さんが反対をすれば運営協議会が開かれないというふうに読み取れる条文であります。

 現状は、タクシー業界の、関さんは非常にいい方なんですが、例えば愛媛県でいうと、タクシー業界は、運営協議会を開かせない、開くなら勝手にやれ、こういうふうにおっしゃっておりまして、愛媛県はそれで開かないわけです。そういうところが、各市町村単位でいいますと五割以上実はそういう実態があって運営協議会が開かれないわけです。

 この法律に従ってやりますと、運営協議会が開かれない限り登録できないわけでありますから、ということは、タクシー業界さんが反対したらボランティア活動もできない、こういう、運用を誤ると大変大きな問題点を生ずるということになってしまうわけであります。したがって、この範疇に縛られるところ、縛られないところを明確にしていただきたいということであります。

 次に、問題点は、実はささいなことだけを申し上げておきますが、これに合わせて税法上の改正がありまして、そこにおいて、登録料を一万五千円お支払いなさい、こういうふうになっております。

 実は、中身は細かく申し上げませんけれども、我々のボランティア、NPO有償運送は、タクシー料金の半額以下にして、もうけちゃいけないという縛りが大前提であります。もうけちゃいけない事業でお困りの方をお運びするのに、そのことが運営協議会で通った後は登録料一万五千円ずつ払え、それから、運転者からお運びする人まで全部名前を登録しなくちゃいけないんですが、その一人ずつかわるときに三千円ずつ払えというふうなことを決めているというか、そういう法案になっております。

 これは、どちらかというと財務省の側の論理であると思いますが、ぜひそういった悪法のところは、税法の方ですけれども、これに付随していることについては、ぜひそういうことがないようにしていただきたい。ちなみに、NPO法の登録、登記は完全に無料であります。そういうことも参考にしていただきたいと思います。

 この法律そのものができるということは、私どもは前向きな評価をしております。しっかりとした有償のボランティアNPO輸送ができるこの法律によって、しっかり実行して、移動困難者に対してできるだけの応援を私どもはしていきたいというふうに考えており、ここに明文化されたことは大変いいことなんですが、逆に、それが縛りになるマイナス面が非常に大きな面がありますので、その点については、ぜひ慎重な御審議をお願いしたいというふうに思います。

 ありがとうございました。(拍手)

林委員長 ありがとうございました。

 次に、待鳥参考人にお願いいたします。

待鳥参考人 御指名いただきました、全自交労連というタクシーの運転者の労働組合の全国組織で役員をいたしております。先ほど来出ております国交省のNPO等の有償運送の検討小委員会にも参画をいたしてまいりました。

 私たち労働組合も、三十年ほど前から、実は労働組合が経営にかかわっているようなタクシー企業を中心としまして、社会貢献の一環として福祉タクシーに取り組んできたところであります。それ以外にも、労働組合独自に講座を設けまして、車いすの取り扱い等の講習なども自主的に実施をしてまいりましたし、また近年では、高齢化社会での公共交通の役割を果たす、そのためにも運転者の技能向上を図るということで、ホームヘルパー資格の取得の運動を展開していまして、既に多くの組合員が介護タクシーなどに従事をしているところであります。

 ホームヘルパー資格の取得については、非常に、そのことによって、体の不自由な人の身になって考えられるし、優しい運転に心がけるようになったといったような副次的な効果も出てきて、取ってよかったなという声が多く上がっているということについても御報告をしておきたいと思っています。そうして現在では、全国各地域で数多くのタクシーの労使で福祉タクシーや介護タクシーの運行に努力をしているということについて、御理解を賜っておきたいなというふうに思っているところです。

 その上で、今回の法改正については、NPOの皆さん方が行われている福祉輸送をきちっと道路運送法の法律で位置づけるということについて、これは基本的には大変結構なことだというふうに考えております。

 ただし、自家用車、白ナンバーで対価を取って運ぶ、つまり自家用車による有償運送というのは、あくまでこれは例外的な対応であって、本来はタクシーなど公共交通で賄われるべきではないかというふうに思いますし、そして、タクシーで足らざるところをNPOの皆さんなどに補っていただく、こうした発足当初からの趣旨を、やはり法改正に当たっては改めてしっかりと確認をしておいていただくことが必要ではないかというふうに思っているところです。

 つまり、公共交通によりがたい部分、タクシーでは対応し切れない場合に初めて、NPOなどの皆さんにお願いをしなければいけないだろうというふうに考えています。先ほどの運営協議会の設置についても、そこのところで初めて設置の必要性が出てくるものじゃないかというふうに思っているところです。こうした位置づけで、これまで暫定的に自家用車による有償運送が認められてきたわけでありますけれども、今回の法改正はその延長線上に法整備を行うものだというふうに認識をしています。

 そこで、自家用車の有償運送の協議にかかわってきた観点から、幾つかの指摘をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、法改正案では、自家用車による有償運送を登録制で認めていくということになっておりますし、登録に当たっては、これまで同様に、自治体ごとに設置される運営協議会において関係者の合意が調っていることが前提になっております。この運営協議会については、やはり法律上の制度として明確に位置づける必要があるというふうに考えますし、その構成と運営の公平さが確保されることが大事なことだというふうに、これまでの経験で痛感をしているところです。

 これまでの運営協議会の中には、もう最初から結論が決まっているような強引な運営も見受けられました。また、運営協議会を主宰する自治体の担当者が、制度をよく理解していなかったり、あるいは公共的な輸送の安全確保に対する認識が乏しかったりして、とにかく何でも許可してしまえばいいとするような傾向も多々見受けられたところであります。それから、やはり運営協議会が形式的なものになってはいけないんではないかということを強調しておきたいというふうに思います。

 やはり、タクシーのように、事業許可に当たって事前のチェック、あるいは事後のチェック、厳格なチェックが働く交通事業とは異なるわけでありまして、NPOの皆さんの場合、やはり善意であるということが前提として極めて薄い資格要件で、実態はタクシーと同じような運送を行うわけでありますから、やはり運営協議会のあり方というのは、NPO輸送の健全性を確保する上で決定的に重要だというふうに思っています。

 したがって、運営協議会については全国統一した制度運営を徹底することが絶対的に必要だというふうに思いますし、そのために、運営協議会のあり方について省令等できちっと定めていただきたい。そして、そこには、これまでどおりタクシーの労使も参画をして、合意に当たっては全会一致の原則とすることをぜひ強く求めておきたいなというふうに思っているところです。

 二点目は、運転者の資格についてであります。

 タクシーは、第二種運転免許ということになっています。今回、NPO等の輸送については、第二種運転免許の取得を基本としながらも、一定の講習を受講すれば一種免許でも可能とするという方針になっておりますけれども、やはりタクシーやバスと同じように有償で人の命を預かって運ぶということについて一種免許でもいいというのは、道路交通法上でも矛盾がありますし、輸送の安全の確保という観点からも極めて問題があるんじゃないかというふうに考えています。

 輸送の安全の確保にとって最も重要な課題というのは、やはり運転者の技能と、それから運転者の状態であるというふうに思っていまして、酔っぱらいを運ぶ運転代行でさえ、今二種免許が必要というふうにされていますのに、体の不自由な人を運ぶのに一種免許でよいのかということについては、どうしてもまだ納得がいかないところでありまして、改めて二種免許を義務づけることをお願いしておきたいというふうに思っています。

 それから、第三点目には、運送の対価の問題であります。

 この間の、各地で開催をされてきました運営協議会では、運送対価をめぐってしばしば混乱が生じました。現行の国交省が出されておりますガイドラインのような、おおむねタクシーの二分の一以下といったような基準では、非常にあいまいで不十分であるし、あるいは抜け道がとられているといったようなこともありました。

 したがって、障害者や体の不自由なお年寄りといったような、いわば交通弱者の方々を運ぶわけでありますから、そうした人たちを守るためにも、対価については一目でわかるような明瞭なものでなければならないというふうに思っています。NPO等の運送の趣旨からすれば、タクシーの二分の一以下ということについてはおおむね妥当な水準だというふうに考えておりますけれども、その二分の一という物差しが、基準が幾つもあったのでは、ベースが幾つもあったのでは、正確な比較はできないというふうに思っていますので、対価については、できれば届け出制にして、不適切なものは排除をするような、制度上のことはよくわかりませんけれども、そうした方が望ましいというふうに思っているところであります。

 利用者の費用負担の問題が出てくると思いますけれども、それはすぐれて政策的な課題だということについても申し上げておきたいと思っています。

 四点目には、セダン型車両の使用についてであります。

 現在、構造改革特区で試みられていますけれども、今回の法改正とともに解禁されるわけでありますが、やはりその解禁については白タク行為の温床になりかねないということについて懸念がされているわけであります。つまり、自立歩行が不可能な方だけではなしに、セダンということで、自家用車で健常者を運ぶことがあってはならないんじゃないか、その懸念がやはり深いわけであります。そうした法違反が横行しないように、格段の措置をぜひ講じていただきたいなというふうに考えています。

 特に、輸送の対象者を自立歩行が困難な方で障害度や要介護度の一定以上の方にきちっと厳密に限定をすべきでありますし、そうした会員の皆さんの登録の適正についてはチェックを運営協議会の中でできるような形にしておくことが必要ではないかというふうに思っています。

 ほかにも多くの課題や問題点があるわけでありますけれども、法案を見ますと、具体的な枠組みについてはかなりの部分が政省令にゆだねられている部分が多いわけでありますので、やはりこの法案審議の中で、その点も含めて十分な御審議をお願いしておきたいというふうに思っています。

 以上、私たちのこれまでの経験に立って、幾つかの肝要な点について意見を申し述べさせていただきましたけれども、これからさらに高齢化社会が進行していく中で、輸送需要の変化に対応するためにも、やはり公共交通であるタクシーが中心になって役割を果たしていかなければならないと考えておりますし、NPOの皆さん方とも協力をして、その役割を分かち合いながら努力を傾注していきたいと思っております。

 以上であります。ありがとうございました。(拍手)

    〔委員長退席、望月委員長代理着席〕

望月委員長代理 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

望月委員長代理 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。盛山正仁君。

盛山委員 自由民主党の盛山正仁でございます。

 四人の参考人の方々、本日はお忙しい中御出席いただきまして、まことにありがとうございます。また、大変貴重な御意見を賜りまして、心より厚く御礼申し上げます。

 今回のこの法案につきましては、少子高齢化が進む中で、地域の実情に応じた輸送サービスを安全、安心というような形で提供するということを主眼として、コミュニティーバス、そして乗り合いタクシー、こういう二点について輸送サービスの普及、また市町村バスやNPOによる有償運送に関する登録制度の導入ということが主な内容であると私は理解しております。

 そこで、まず、コミュニティーバスにつきまして山内先生にお尋ねしたいと思います。

 武蔵野市のムーバスがコミュニティーバスの先駆けとして有名でございますけれども、私の地元の神戸市の東灘区でも住吉台くるくるバスという名前のコミュニティーバスが運行しております。

 この住吉台というところは六甲山の山ろくの古い団地なんですけれども、古いところなものですから、道も狭く、また坂道だらけで、バス路線が余りうまくございません。以前は若年で入られたのでよかったんですけれども、だんだんお住まいの方が高齢化され、そうするとマイカーが利用できないということで、お年寄りにとって大変足の便が悪いようなところになっております。そこで、地域の住民がいろいろ御相談をされた結果、地元のみなと観光というバス会社なんですけれども、ここのバス会社さんといろいろ御相談をされて、住民の主導で、どういう形で運行するのかというところで御相談をされた結果、この高台にお住まいの高齢者の貴重な足と、こういうことになっております。

 多くのバスがなかなか採算性が悪く、自治体が補助金を出さざるを得ないという現状の中で、この住吉台のくるくるバスは、たまたま補助金ももらわず、バス会社と住民の方が協力している大変いい例であるとは思っておりますけれども、全国でなかなかそういうことがうまく広がっているというわけでは決してないと思います。

 ですから、そういう失敗をするような例ではなく、成功するためには、どういうふうにしていけばコミュニティーバスがうまく導入し、そしてそれが運営されていくのか、そういうことについてポイントは何かということと、この法案がそういったことを十分に踏まえたものであるかどうかにつきまして、山内先生にお尋ねしたいと思います。

山内参考人 御質問でございますけれども、コミュニティーバスがどのようにしたら成功するのかということでございます。

 コミュニティーバスも、これはある意味では一つの事業を行っているわけでありまして、その面では、計画を立てる段階から十分な情報を持っていること、特に住民の皆さんの参画が必要であるということがポイントだと思います。住民の方々がそのサービスに対してどういうふうに愛着を持って利用していくかというのが、ある意味では企業で言うところのマーケティング的なものにつながっていくわけでありまして、そのようなことが実現することだと思います。

 ただ、それもやみくもにやってはいけないわけでございまして、ある意味で客観的な、冷静な判断が必要です。そのために、事前調査あるいは実証実験、それからニーズの把握、こういったものを実践していくことが重要かというふうに思います。その結果として、地域交通ネットワークと連携して住民が使いやすいサービスをいかに提供していくか、これを実践することであります。

 私、先ほど発言の中で、都市交通あるいは地域交通のQCサークルというような表現を申し上げましたけれども、要するに、こういった情報を共有することによっていいサービスをつくり上げていく、さらに、それによって愛着を持っていく、これがポイントであるというふうに思っています。

 今回の法案でございますけれども、バス事業者それから住民の方々を含めた上での協議会というものを設置する、こういうことになっております。これによって、地域のサービスはどのようなものが望ましいか、あるいは、そういったものをいかに普及させていくかということを十分に議論するような、そういうことを念頭に置いたスキームになっているわけでございますね。その意味では、コミュニティーバスをいい方向に導く一つの手段がそこにあるというふうに考えております。

 この協議会の具体的な内容等についてはこれから省令等で定められるというふうに聞いておりますけれども、今申し上げましたように、住民との間の意思疎通やあるいは小委員会での議論を踏まえまして、適切な制度をおつくりいただきたいというふうに思っております。

 以上です。

盛山委員 山内先生、どうもありがとうございました。今の先生の御趣旨も踏まえて、今後成功する事例がふえていくことを期待しているところでございます。

 次に、NPOの福祉有償運送についてお尋ねしたいと思います。

 この福祉有償運送につきましては、以前、平成十二年に私、運輸省の担当課長として交通バリアフリー法を担当いたしましたけれども、その際の国会の附帯決議で、タクシーなどを利用したいわゆるスペシャル・トランスポート・サービス、STSについて導入に努めるということが決議されております。今回の道路運送法の改正は、その宿題が実現ということになるのかなというふうに考えているところでございます。

 関参考人にお尋ねしたいと思います。

 先ほどの関参考人のお話の中で、もう三十年にもわたってタクシー事業者の方が地域貢献という形で福祉輸送に取り組んでいられるということを改めて知りました。心から敬意を表するところでございます。

 一方で、今回の法案では、タクシーでは賄い切れないニーズについて、いろいろほかの参考人の方のお話もありましたけれども、NPOのような方の力をかりようとしているということです。ある意味では、ある見方では、現状では福祉タクシーのサービスがうまくないのではないか、数が足りない、あるいは福祉のニーズに対して十分にこたえ切れていない、そういうことの裏返しというふうにも考えられるわけでございます。

 関参考人として、福祉タクシーの現状についてどういうふうにごらんになっていられるかということ、また、タクシー事業者の方が今後一層福祉の分野で頑張っていただくためにはどういうふうにしていけばいいのか。先ほど関参考人のお話にもありましたけれども、なかなかやはり、採算を度外視して、ボランティアでというんでしょうか、地域貢献だけでやっていくことには限度があると思います。車両の購入にもお金がかかれば、その運行についても、人件費、燃料費、整備費、その他の運営費がかかっていくかと思います。国や地方公共団体の協力その他についてどういうことをお考えか、具体的にお伺いしたいと思います。

関参考人 今の先生の御質問なんですが、福祉タクシーが非常に現状は厳しくて、車両数が減少しておる、こういう問題が一方で実際にはあるわけですね。

 ただ、タクシーも時代の変わりがありまして、福祉タクシーだけが全部お客さんのニーズに合うかというと、そうではございませんで、介護保険の制定によって介護タクシーがそのかわりにどっと出てきましたから、そういうものや、いわゆる軽福で一車一人限定という福祉タクシー、軽で限定の福祉タクシーがございますから、これはやはり従来の福祉タクシーのはっきり申し上げて十倍ぐらいの格好で認可をされています。

 そういった通常の福祉タクシーと限定の福祉タクシーと介護タクシーというのが今タクシーがやっている部分であろうと事実思うので、その中で今回NPOさんの有償運送が出てきたわけですけれども、ただ、どれを見ても、これはそれぞれ私も運営協議会、枚方も出ていますし、こっちの大阪市も出てはおるんですけれども、整理されていないんですね。地方自治体に言っても数字が出てこないんです。どの地域にどれだけ配置されているのかということを言っても、こちらがつくって出さないと出てこないというような問題ですね。

 そういう問題等もありまして、福祉タクシーだけを取り上げていくと、やはり価格が高くてなかなか採算が合っていかない、これはもう御承知のとおりですし、現実に、従来の福祉タクシーは寝台と車いすを備えてやっていましたから。ところが、現在は、もう車いすだけでいいんだとなると、利用者の方は軽でいいということで、少しでも安い方がいいということでそっちを利用されていっている。ですから、福祉タクシーの中でも少しは変わってきているということになると思うんです。

 もう一方の運営協議会ですが、運営協議会でいろいろと輸送の範囲とかそういったことの論議がしょっちゅう起きてくるわけですけれども、それと、運営協議会に申請される方々の中で、気持ちはわかるんですけれども、完全に幼稚な書類がたくさんある。あの場で全部やっていくのかなという気がするような、時間だけが食われるというのが運営協議会の状況ですから、その辺はやはり委員の選定問題にもいろいろあるのかなという気がしています。

 ですから、運営協議会というのはもう少し、やはり委員会構成等もきちっとしていかなきゃいけないでしょうし、現実に申請のあった地域に福祉タクシーがあってもやるのか、そういったことのあれも調べていける。それと、福祉輸送の人たちのデータが出てこないんですね。福祉輸送というよりもNPOの人たちのデータが出てきません。枚方さんでも一番困っているのは、何をしているのか、件数しか出てこない、一気に何件運んだとか。どういう輸送をしてきたんだということが出てこないわけですね。ですから、もう少しそういったものはきちっと限定していかないとだめではないかな、ボランティアだからそれでいいんだということにもならぬのかな、こういう気がしています。

 今後は、そういったこともきちっと構えながら、申請される前にはもう少しNPOさんも勉強をされて、運行管理者と運転者が同じ名前で申請されてくることが多々ありますから、そういうことを、力の問題もあるので、その辺をよく運輸支局が教育をされる必要もあるのじゃないか、運転体制の教育をされる必要があるだろう、こう思っています。

 どの企業を回りましても非常に厳しい状況ですけれども、今現在ある福祉タクシーと福祉限定、そして介護タクシー、これは輸送の形態は少し違いますけれども、せめて青ナンバーで認可されている部分をいわゆる共同配車センターであとどれだけ賄えるのかということもやってみないといけないだろうと。今般、そういうものに対して国土交通省の方から予算をいただいておるわけですが、設備資金はいただけるんですが、なかなか、運営資金の半分ぐらい、二、三百万でもいただけませんかというような話になるんですけれどもね。

 あと、運行が大変だろうと。運行には、この間も、大阪で計画しておるのは、障害のある人を採用して、そういった補助金をもらいながら運行していこうかということで、大阪府と私の間ではそういうものを今進めております。そこで、大阪へ来ていただいたら、そのセンターに電話すれば車いすならどこからでも配車できると。それを賄って、まあNPOさんの方は会員制ですけれども、それでもやはり賄い切れない場合は当然そのセンターを利用されていく。その辺からお互いの共存が始まるのかなと思っていますけれども、そういったものをつくり上げるということで、少し補助も考えていただかないとだめだなと思っています。

 以上です。

    〔望月委員長代理退席、委員長着席〕

盛山委員 ありがとうございました。いろいろ御苦労しておられるというのが、よく感じが出ていたかと思います。我々も政府の方ともよく相談をしていきたいと思いますが、今後とも御努力していただけるよう期待しております。

 続きまして、田中参考人にお尋ねしたいと思います。

 今いろいろな御意見、運営協議会についても出ましたけれども、NPOの福祉有償運送について、いろいろ両方の御意見があるわけなんですけれども、日本だけではなく海外でも同じようにこういうことをしているんじゃないか、あるいは、いろいろな知恵を出してうまくやっていっている例があるんじゃないかと思うんです。そういったことにつきまして、御存じの範囲で教えていただければと思います。

田中参考人 その分野は私は専門ではなくて、逆に山内先生の方がよくお知りになっているんですが、つまり、イギリスとかヨーロッパの方でやっています基本形態はどういうふうになっているか。

 いろいろな国ですから制度の違いがあるんですけれども、移動制約者の方の移動というのは、STSというふうに、よく御存じのようにやっておりますが、つまり、街角でタクシーを拾ってどこかまで行ってということで済まないわけですね。ベッド・ツー・ベッドというか、部屋から自動車のところへお連れして、自動車から病院へ行って、病院の受付へ行って、また待っているなんというようなこともあるわけです。

 これは、現行の日本のようなタクシー業界の運賃体制ではそもそも無理なんでありまして、乗っているときの料金しか取らないわけですから、その前後のサービスは取れないわけですから、そこについて各国はいろいろ工夫を実はしておりまして、いろいろなパターンがありますけれども、NPOのような非営利の団体のところにそういうサービスを任せて、一定程度の日本で言う補助金のようなものをセットしていくというふうなやり方を、国々によって工夫をしながらやっております。

 私どもが強調していますのは、そのことと同時に、タクシー業界さんを私どもが見ていてもちょっとかわいそうというか、お金にならないところのサービスをしろと言っても無理なんですね。そこのところを日本の法体系の中で、タクシー業界さんに対して、福祉的、介護的移送の場合にどういうふうにするかという配慮がなくて、取り締まりばかりやられているというところが日本の場合には問題であって、他方、NPOに対しては、NPOには二種類ありまして、簡単に言うと、タクシー料金の半額程度の料金を取る部分と、本当にガソリン代、実費しか取らないところとがあるんですけれども、そのガソリン代、実費のところまで有償ということで、この道路運送法で規定しているタクシー業界の規制の枠に入れてしまおうということになっているわけですね。

 そこらあたりは、海外との比較でいうと、移動制約者に対する配慮を、もうちょっと根本的に言えば、この道路運送法の中だけで対処しようというのに無理があるというふうに私は思っています。

盛山委員 ありがとうございました。

 今、参考人がおっしゃったように、確かに、どちらの法律で、どういう観点でやっていくのかということはいろいろ検討しないといけないのかなとは思うんですけれども、ただ他方、先ほどからの参考人の御意見にもありましたように、これまで道路運送法でちゃんとした位置づけがなかったというものを、御不満な点はあろうかと思いますけれども、今回それなりにちゃんとした位置づけをするということは大きなものではないのかなと私は思います。今後の話になるんでしょうけれども、とりあえずはこれでスタートして、どういうふうに次に変えていくのか、よりよいものに変えていくのか、こういうことではないかなと私は感じた次第でございます。

 続きまして、待鳥参考人にお尋ねしたいと思います。

 先ほど参考人の方から、タクシー事業との競合で大変厳しいんだ、こういうようなお話を伺いました。大都市では、一応データの上では景気が回復して大分利用客も増加している、特に東京では増加しているというふうにも聞いておりますけれども、地方都市に行きますと、なかなかそういうことはまだまだないんじゃないか、私のいる神戸でも東京とは大分違うんじゃないのかな、そんなふうに感じております。

 タクシーの運転手さんにお伺いすると、タクシーの売り上げが減少して、ハンドルを握っている運転手の方にそのしわ寄せは来ているんだ、人によっては、もう生活保護を受けた方がいいんじゃないか、生活保護者以下の生活を我々はやっているんですよ、借金まで持っていてもう大変ですというような悲痛な訴えを先週末にも聞いたばかりなんですけれども、運転手さんの生活水準、これも大変重要な問題であるとは思うんですけれども、また同時に、タクシーはやはり安全、安心というのが運送サービスの基本でございますので、その辺についても懸念があるのじゃないのかなというふうに考えるわけでございます。

 この今回の法案、STSを正面から認めるということに関して、待鳥参考人はどのようなふうにお考えか、お尋ねしたいと思います。

待鳥参考人 先生御指摘のとおり、バブルが崩壊しましてから、タクシーの営業収入というのは低下の一途をたどっておりますし、規制緩和で台数がふえた、あるいは値下げ競争が激化をしたということで、運転者の収入が大きく下がって、生活保護以下の収入というのが全国的に拡大をしているということについてはそのとおりで、私たちも非常に厳しい状況に置かれているわけです。

 そうした中での、今回、NPOの有償運送の法的な位置づけを明確にするということでありますけれども、私たちは、これは対立的にとらえることはないというふうに考えています。やはり、タクシーはタクシーでそういった新たな高齢化社会の需要にきちっと対応していく努力をする、それに足りないところをまたNPOの皆さんに補っていただく、そういうすみ分けが十分可能ではないかなというふうに考えていますので、お互いにこれは努力をすればいいというふうに思っているところです。

 ただし、やはり景気がよかったときと違いまして、これからタクシー業界でも福祉輸送を拡充していく、あるいは介護タクシーをふやしていくという上では、非常に経営的な制約が強まっているということについても事実でありますし、あるいは、そうした介護タクシー、福祉タクシーの投資を捻出するためにも、これが運転者の労働条件にしわ寄せをすることがあってはならないんじゃないか、やはり安全の問題に直結をしてくるんじゃないかというふうに、このところは非常に懸念をいたしております。

 したがって、今、タクシーとNPOについては、法律上も今回は非常に差をつけた位置づけがされているというふうに私たちは見ています。タクシーは、やはり、安全確保の点でも、あるいは運行管理の点でも厳しい規制が道路運送法の中で置かれていますし、それを皆で、労使で遵守して安全の確保に努めているところでありますけれども、先ほど田中さんは、タクシーと同じようなことを強いられては無理だというふうに言われましたけれども、そこはかなり差があるんじゃないかというふうに思っているところです。したがって、そこのところは分けて考える必要があるだろうというふうに思っています。

 それと同時に、これ以上、これからさらにタクシーがそういった交通弱者の足として役割を果たしていくためにも、政策的な措置がやはり大事になってくるんじゃないか。

 今、NPOの皆さんには、かなりの部分、福祉車両については社会福祉協議会等を通じて車両の寄附等が行われているというふうに承知をいたしています。ところが、タクシーについては、やはり事業者が自前でその費用は捻出をしなければいけない。こういう非常に景気が悪くなっている状況の中でその厳しさというのは増しているわけでありますから、タクシー事業に対しても、そういう国やあるいは自治体等の政策的な措置ということが求められてきているということについては、ぜひお願いをしておきたいというふうに思っているところです。

 それと同時に、これまでの、タクシーの二分の一以下の費用でNPOの有償行為を認めてくるということで、暫定的に行われてきた中での非常に矛盾が生じてまいっておりまして、今回これが法律で位置づけられる中で、やはり、そこでどんどんどんどん簡単な条件でこういった輸送が登録で認められていくということになるのであれば、タクシー事業者にとっては非常にこれは存亡にもかかわる問題だということで、タクシー事業者の中にも、NPOの皆さんに対抗して二分の一でやろうかといったような意見さえ出てきている。

 それを非常に懸念するところでありまして、今タクシーのコストに占める人件費が七五%に達している中でそういったことになりますと、これは全部運転者の賃金や労働条件にかかってくる、悪影響を及ぼすという問題でありますから、そうしたことにならないように、すみ分けがきっちりとなされて、お互いに役割を果たしていけるような制度的な措置をお願いしておきたいというふうに思っています。

 以上であります。

盛山委員 ありがとうございました。今おっしゃられたように、両者がうまく協力して、利用者にとって一番使い勝手のいいような形になるといいなと私も期待しているところでございます。

 それでは、再度、山内先生にお尋ねしたいと思います。

 コミュニティーバスにつきましてもSTSにつきましても、先生、これまでこの委員会の報告書の取りまとめに御尽力をされておられたことと思います。

 今までの参考人のお話を伺いましても、やはり国、地方公共団体に期待されるところが大きいんじゃないのかなと思うんですね。財政的な支援もそうでございましょうし、あるいは関係者の間の仲立ちをする、そういった形で、うまくコミュニティーバスあるいはSTSが長続きするような形で運行されるようになるためには、国、地方公共団体の役割が大きく、いろいろなことが期待されると思うんですけれども、山内先生、これまでの議論をずっとされた中で、どのように御期待をしておられるのか、その辺をお尋ねしたいと思います。

山内参考人 先ほども私の発言の中で、地方自治体あるいは地域の重要性ということを強調させていただきました。恐らく、今、日本の一般的な行政、政治の考え方で、地方自治あるいは分権、こういった考え方が主流になっている。このケースもそういった重要性があるんだというふうに思っています。

 ただ、一般的に言って、そこで国の行政が何をすべきかということを考えたときに、それは例えば、全国の統一的な基準で行政サービスを提供していくということであったり、社会あるいは国家全体としての利益を追求するために何が必要であるかということを考えたり、あるいは、より広い視点での情報の蓄積あるいはその発信、収集、こんなことを行うのが国の行政かというふうに思っています。

 このSTSの問題あるいはコミュニティーバスの問題を考えたときに、やはり今の基準に照らして言えば、国がやることというのは、全国的に統一的に安全性を確保する、安全、安心なサービスのためにいかにどうすべきか、そういう基準をつくっていくということ、そしてまた、それを事後的にチェックしていくこと、これがまず一つかというふうに思っています。

 二つ目ですけれども、今申し上げたように、国は、より広い視点でいろいろな情報を蓄積できるということになる。そういったことを地域の事例の中にも生かせるような形、例えば、適切な形での専門家としてのアドバイスとかノウハウの開示とか、そういったものを行っていく。これが二つ目の役割かなというふうに思っています。

 それから、まさに情報提供という意味でいえば、地域の住民の方々にどんないいサービスがあるのか、先ほどベストプラクティスという言葉を使わせていただきましたが、そういったことを情報することによって、よりよいサービスの提供を促進できる、こういうふうに考えております。

 こういったところが国の役割であろうというふうに思いますが、一方でやはり、こういった地域の交通の問題は、自治体、地域の住民の方々、事業者の方々あるいはボランティアの方々、こういった方々が中心になるというふうに思っています。特に自治体につきましては、先ほどもちょっとそういった関連した発言がございましたけれども、総合的な観点で行政をやっていく。例えば福祉問題であれば、福祉という、いろいろな側面を考えた上で地域のニーズを満たしていく、こういうようなことが地域には求められるのではないかというふうに思っています。

 また、今回中心になります、これはコミュニティーバスもSTSもそうですけれども、地域の協議会ということに関しては、これはもちろん設置をするということがまず第一前提。設置をして、そこでいろいろな議論をする。そしてまた、そこで物事を決めるわけですけれども、やはりそれだけでは十分ではない。実際にそのサービスの提供された後どうなっているのか、それが適切なサービスなのかどうかということをいつもフォローアップしていく、こういうことも必要になるかというふうに思います。

 いずれにしても、地域住民の方々の福祉の視点から、財政支援を含めて、積極的に取り組んでいくことが求められるというふうに思っています。

 以上でございます。

盛山委員 ありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

林委員長 穀田恵二君。

穀田委員 参考人の方々、本当に御苦労さまです。お疲れさまです。

 私は、日本共産党の穀田といいます。

 まず最初に、この二つの検討小委員会、検討で御尽力された先生にお聞きしたいと思っています。

 今の、事業者それからボランティア団体、タクシー労働者の代表の方々のお話を聞いていますと、それぞれ結構まだ矛盾があるなというのが率直な実感です。

 そこで、先ほど先生がおっしゃったように、結局のところは運営協議会の設置。つまり、国がどう統一的な方向を出すにしたって、結局、先生が今おっしゃいましたように、地方自治体の役割は重要だと言っていましたが、先ほどボランティア団体からもお話ありましたように、それぞれの県などでは運営協議会はつくらないなんというところもある。そういう意味でいいますと、運営協議会の設置とそこでの議論が極めて重要だと思います。

 そうしますと、皆様方がお話ししていた話をずっとまとめてみますと、政省令自身をどうつくるのかというところが極めて重要だ、結局のところ、そこに最後は帰着するんだと思うんですね。先生がおっしゃっていましたけれども、政省令で立派なものをつくっていただくということ自身にも、やはり皆様方が参加していただいてつくられるということが望ましいんじゃないか。大体、政省令というのは省がつくるものですけれども、例えば、政治資金規正法やそれから選挙にかかわる法律などの政省令については、議員も参画してつくろうというようなこともあります。

 したがって、私は、この際にそういう方向性も含めた出し方をしないと、今のままでいきますと、結構お互いに意見がそれぞれの点で違うことがあるわけですから、そこを実らせていく意味での結節点というか、そこは大切じゃないかなと思うんです。そこを、おまとめになった先生にお伺いしたいと思います。

山内参考人 おっしゃるとおりでありまして、こういった具体的な行政運営についての規定、これをどうつくるかというのは、まさに、本体の道路運送法の改正に加えて非常に重要な問題であると思います。特に、地域の問題が絡んでくるということであれば、そういった地域の持っている実情、そういった情報、それをいかに組み入れるか。あるいは、今回の場合ですと、これは事業ということとボランティアということも絡んでまいりますし、いろいろなところの影響もございますので、そういったところの情報を入れることは重要かというふうに思っております。

 ただ、我々二つの小委員会をやってまいりまして、その辺の情報もかなりのところまでは収集できたんではないかというふうに思っています。ですから、まずはそういった我々の議論を踏まえていただいて、その上での政省令の作成ということをお考えいただきたいということが一つ。

 それから、私は立法の過程について詳しくございませんけれども、現状では、いろいろな形での一般的な意見の募集といいますか、そういった形もあると思いますので、そういったことを参考にしながら、具体的な省令づくり等に臨んでいただきたいというふうに思っております。

 さらに言えば、これは地域によって実情はかなり違いますので、先ほどもほかの参考人の方が御発言になりましたように、いろいろな事例が出てくると思います。こういったことも非常に重要なポイントだと思いますけれども、ただ、先ほど私は、国の行政の役割として統一的な基準をと申し上げましたけれども、そのとおりなんですが、そこだけではカバーできないことが出てまいりますので、そういった意味でいえば、若干の弾力性といいますか、そういったものを持った形が望ましいのかなというふうに考えています。

 以上でございます。

穀田委員 では、残りのお三方にお聞きしたいと思うんですが、実は、バリアフリー、ハートビル、そういういろいろな形で取り組みが強められて、STS、つまりスペシャル・トランスポート・サービスをみんなで支えていこうというのが新しい全体の流れだと思うんですね。

 それで、一つ例を見ますと、地域生活支援事業というのがありますが、その中で移動支援事業というのがあるんですね。それを見ますと、その事業の内容というのは、グループ支援型だとか、福祉バス等車両の運営だとか、車両移送型だとか、いっぱいあるんですね。こういうものを、実は利用者負担というのは実施主体の判断によるものとするとありまして、結局、実施主体の判断が大事なんですね。

 これは、お三方も皆さんお話があったように、もともと、そういう移動困難者に対する権利としてどう保障していくかという観点が大事だと私は思うんですね。同時に、先ほど労働組合の代表からもありましたように、そうすると今度は、労働者の賃金を得ていく当然の権利、また、事業者は事業者としての営業を行う権利、これらが当然あるわけですね。それらを踏まえながら、全体として移動困難者を支えていくということになりますと、それを調整する機能として、実施主体の判断によるものとするというのが、これがかなめなんですね。

 要は、それぞれが不利益にならない形で、全体としてうまくいくということが大事なんですね。だから、私は、そういう立場で御努力いただけないだろうかというふうに思っています。

 そこで、私は、つまるところ、次に三つ大事じゃないかと思うんですね。利用者が今よりも不便になるということではだめなんだ。それから二つ目には、それぞれの団体が協力をして、それぞれの団体に不利益が来ないようにするということが当然だ。三つ目に、そういう意味でいいますと、今後、単なる運送事業だけじゃなくて、これは本来、福祉の分野や社会保障の分野全体で支えるものであることは確かなんですね。そうしますと、労働組合であれ事業者であれ、いずれにしてもボランティア活動に取り組むということが大事なわけでして、ボランティア活動の取り組みが弱くなってはならない、こういうメルクマールが必要だと思うんですね。その辺が一致できれば、私はさまざまなことができるんじゃないかと思っています。

 したがいまして、今私が述べましたような点での御意見をお聞かせ願えれば幸いです。お三方に。

田中参考人 どうもありがとうございます。田中です。

 まず、ちょっと確認をさせていただきたいんですけれども、今回も議論が出ていますが、移動制約者の範囲が大分もめておりまして、私どもNPOはかなり広くとるべきだというふうに言っておりまして、事業者及び労働組合の方は狭くとるべきだ、こういう対立があるんですね。

 そこのところは、実はほかの政策、例えば介護保険事業だとか社会保障のあり方だとかに全部関連してきておりまして、大変重要なことは、私どもが主張していますのは、要介護状況になったら、簡単に言うと年間百万、二百万というお金をお使いになるわけですよね。要介護にしない方がいいわけですよね。要介護にしないためにどうするかといったら、要介護直前の方々が引きこもりと栄養失調でどんどん寝たきりになられるわけですよ、だから、介護保険の要介護になっていない人をどうやって外へ引っ張り出していくのかというところに資金を投下すれば、介護保険のお金ほどはかからないんですね。

 そういう事業をタクシー業者さんがおやりになる、NPOがやるということであれば、地域推進事業等についての予算をそういうところへどんどん振り向けるということが必要だというふうに思っております。

 もう一点、何しろ原理をちょっと強調しておきたいんですけれども、移動制約者の移動を保障する責任は一体どこにあるんですかね。僕はやはり国とか地方自治体の責任が物すごく強いと思うんですね。そこのところが、道路運送法の矛盾なんですが、事業者のコントロール、規制というふうなところで解消できるわけではないわけであって、ぜひとも別個の論理、ボランティアの件を指摘していただいてありがたいんですが、ボランティア活動が自由にできるような基本法のようなものが別個の体系でないと、実はSTSのサービスがうまくいかない。実費程度以下でしかやっていないところの有償というのはこの法律で言う有償移送じゃないというふうにぜひ確認していただいて、法律を成立させていただければというふうにお願いをしておきます。

林委員長 関参考人、よろしいですか。

関参考人 特に東京、大阪というような大都会におけるボランティア輸送とタクシーのかかわりというのと、地方とはもう全然違うんですね。地方というのは、もう現実に、介護保険ができたときに全部がそこへ行っちゃって、お客さんが午前中はお年寄りの通院の人ばかりだと。ところが、そういう状況で何とか息継いできたところに今度はNPOの問題が入ってきたということで、その人たちはもうかんかんなんですね。なぜ我々の最低の、運んでいるところでまたやるんだと、こうなっている。

 ですから、東京なり大阪なり、まだまだタクシーがある程度やっているところの中では、タクシーはあってもなかなかやれない部分というのもありますし、福祉タクシーがあったっていわゆる穴があいている部分もあるので、そういったものは運営協議会の中で調整していってうまくできれば、それはそれなりの論議をしたらいけると思いますけれども、やはりどこかですみ分けしておかないとだめなのかなという気がしていますね。その範囲というのを、どこかですみ分けしていく。

 そうすると、今のところでいくと、要介護一以下というのは、通常一人で乗れますし介護保険も適用されないわけですから、今回も外されておるわけですから、そういうのはタクシーでどうですかと。我々も最初に福祉に期待しておったのは、やはり重度の人たちを最初はやっていましたから、それはもう大変なんですね、重度の方というのは。ですから、そういう人たちは手伝ってもらえるというのが一番の前提なんですけれども、なかなかそれはうまくいかない。だんだんとやはりセダン化の方へ行って、通常の介護タクシーに乗せられるようなことと同じことが出てきたら、やはりそこでは抵抗が出てきて難しいんじゃないかなと。

 ですから、もう少しすみ分けをきちっとやってもらうということは、やはり法律の中でどこか、政令か省令かで規定をしてもらわないと、お互いにやりにくいと思うんですよね。その点はひとつそうした省令の改正なりをお願いしておきたいと思いますし、まあこれはもう前のときも一緒だったんですけれども、輸送の範囲のすみ分けをという話、なかなかそこは合わないんですけれどもね。

待鳥参考人 穀田議員の指摘された三つの観点というのは一番大事なところだと、これはもう賛成をするわけでありますけれども、しかし、具体的な問題になりますと、やはりそれぞれ調整をしなければいけないところになってくるんじゃないかと思っています。

 費用負担の問題が挙げられました。費用負担は実施主体の判断に任せるべき、それが原則だということでありますけれども、お年寄りなど非常に情報が乏しい中で、そういった人たちをどう守るかという観点がやはりなければいけないんじゃないか、だから先ほど明瞭化を図るべきだということを申し上げたところです。

 今、運営協議会の中でおおむね二分の一と言っていますけれども、例えば申請の中身を見てみますと、タクシーの二分の一といったときに、通常は、タクシーというのはお客さんを乗せてからおろすまでが対価であります、距離であります。しかし、NPOの皆さんの申請の中には、車庫を出てから帰庫するまでという全体が対価になっているといったようなこともある。二分の一といったって結局はその物差しが違うということがあるわけですから、やはり省令の中でしっかりと位置づけるか、あるいは届け出制にして不当な運賃については排除できるような形をとっておかないと、利用者の利益を損なってしまうことになるんじゃないか、あるいは食い物にしてしまうようなことさえ出てくるんじゃないかということを懸念しているわけであります。

 いま一つは、輸送の対象の問題でありまして、今、田中さんから、狭くとるか広くとるかという指摘がありましたけれども、狭いか広いかの問題ではないと思います。やはり基準をしっかりしておくということは、一人では公共交通を利用することがかなわない人、自立歩行がかなわない人という基準に照らして、要介護度、要支援度あるいは障害度で判断をしていくものじゃないかなというふうに思っていますので、そこのところをはっきりしておけば問題はないかなと。それで、タクシーを利用できる方は、事業として、公共交通としてきちっと許可をされているタクシーを利用していただく、あるいは公共交通を利用していただくということが、やはり輸送体系としては健全なあり方じゃないかなというふうに考えています。

 いま一つは、タクシーについて、今日のニーズにこたえていないんじゃないか、つまり、ベッド・ツー・ベッドで病院通い等の本当のきめ細かいニーズにこたえていないんじゃないかという御意見も先ほどありましたけれども、決してそうじゃない。今のタクシーというのはもうベッド・ツー・ベッドなんですよ、はっきり言って。高齢化社会が進んでいる地方に行けばなおさら、そういったところにタクシー事業者、労使とも含めて対応していかなければ、タクシーというのは役割を果たせないという状況にあります。

 その中で、本当にお客さんをベッドからタクシーまで、あるいはタクシーからおろして病院の窓口あるいは病室まで連れていくということについては、それこそ本当にタクシーもボランティアでやっている部分があるということについては御理解をいただいておきたいなと思います。

穀田委員 ですから、私、STSの本源的意味というのは、だれが責任を負うのかということなんですよね。だから、私は地方自治体の例を引いて、そういうところがしっかり現実はやるべき事態が欠けている、だからいろいろな矛盾が起きているということを言ったわけですね。

 同時に、それぞれ皆さんがお持ちの意見については、やはり政省令のところでほんまにこれは詰めた話をせなあかんなということがよくわかりましたし、また、皆さん自身もそういう点も参画していただくことを希望して、私の発言を終わります。おおきに。

林委員長 下条みつ君。

下条委員 民主党の下条みつでございます。

 きょうは、早い時間から御参集いただきまして、本当にありがとうございました。大変リラックスしてやりたいと思いますので、座らせていただいて質疑応答させていただきたいと思います。お許しいただきたいと思います。

 それぞれの方が、正直、一つの法案に向かっての利益のベクトルの方向が、同じであったり、それから違う方向であったりという中の質疑を、今まで大変拝聴させていただきました。

 そこで、私は、今までお聞きした部分以外の部分で、限られた時間の範囲内で、お一人ずつに御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、前、私も民間サラリーマンをやっておりましたが、属していたグループが山内先生の商学部に寄附講義を今度やることに。大体おわかりだと思いますが、そこに私も属しておりまして、金融プランニングを含めて、ありがとうございました、若い新しい指導者がこれから育つと思いますので、ぜひ、先生、お願いしたいと思います。

 ちょっと別の話をしましたが、そんな中で、中立のお立場である山内先生の方にまずお聞きしたいと思うんですが、私は、何だかんだ言って、各県における運営協議会、ここがやはり一つの問題になっていると思うんです。運営協議会ですごく盛んに行われているところもあるし、途中でなくなってしまうところもありますし、その構成員の内訳を踏まえて、今の運営協議会のあり方について、まず先生にちょっと、お立場の中で御意見をいただきたいなと思います。

山内参考人 先生おっしゃるとおりでして、運営協議会もいろいろなケースによって、非常に活発に行われ、ある意味では、おっしゃるような形での利害の対立をうまくさばかれていいサービスを提供されているところもあれば、逆に言うと全く運営協議会ができていないなんというところもあるわけでありまして、特にSTSの輸送についてでございますけれども、一つは、見ていますと、やはり地元の自治体の方がいかにこの問題に取り組むのに汗をかいているか、問題認識から始まりますけれども、問題認識を持って汗をかいていらっしゃるかということから始まると思います。

 それで、先ほどから議論がありますように、例えばSTSのケースなんかですと、そういった移動制約者の方の移動の権利といいますか、そういったものをどこが確保するのかということ。これは一概にここだということではないと思うんですね。もちろん国の政策として何らかの法律をつくるということであればそうかもしれませんが、現場でいるうちには、恐らくいろいろなそこの地域地域の手段を使われて、あるいは状況を見られて、それを確保していくというのが実態ではないかというふうに思っています。その面では、それぞれの地域の問題意識、あるいは属人的なものもこれは行政的にあるわけでありますけれども、そういったところにかなりの差があって、それが今の結果になっているというふうに思っています。

 ですから、これは、どちらかというと、法的に、あるいは制度的に何か担保する問題ではなくて、意識の問題、こういったところを、ある意味では情報発信、ある意味では意識を高めるような措置を考える、こんなようなことが必要かなというふうに思っています。

下条委員 ありがとうございます。

 もう一つお聞きしたいんですが、私は、今回の法案を規制緩和の一つの法律だと思っています。そうなると、だれもが、ほとんどの方がそれをもとに汗をかいて、それをうまく法案として利用していきたいということだと思うんですが、一方で、規制緩和と相反の部分は、グレーゾーンをふやしたり、それから、今回の場合は極端な話、白タクの部分がちょっと枠が広がっちゃうんじゃないかとか、そういう懸念も生まれてくると思います。

 今回の法案の規制緩和の部分と白タクを含めたグレーゾーンの広がり、また、それをどうしたらチェックできる機能になるかというのを、先生のお立場で結構でございますので、ちょっと御意見をいただければというふうに思います。

山内参考人 先生、グレーゾーンという言葉をお使いになったわけですけれども、グレーゾーンというと、かなりマイナスのイメージが強い。規制緩和をする、私自身も道路運送法を初めとするいろいろな事業法の規制緩和を勉強させていただいて、また、具体的な政策形成プロセスに携わらせていただいてまいりました。

 そのときに何が目的であったかというと、逆にそのグレーゾーンを広げる、今の言葉で言えば、これが目的であったところもあります。グレーゾーンというよりも、何か今までにないサービスをつくり出すとか、あるいは今まで行われたことのなかったマーケットに何かサービスを提供するとか、こういうことが行われるのが規制緩和の目的であります。そのために民間の事業者の方々がいろいろ工夫される、あるいは、場合によっては行政がそれに関与していく、こういうことだというふうに思っております。その意味でいえば、まさにおっしゃる、今回グレーゾーンを広げるという意味でいえば、これは規制緩和かもわかりません。

 ただ、今回の場合非常に難しいのは、特にSTSについて言いますと、民間の輸送と公共輸送の中間的なものが出てくる、こういうことであります。これは先ほどもちょっと議論がありましたけれども、欧米においてもこういった流れというのは一定程度あるわけでございまして、それを参考にこういったことがあるということですけれども、公共交通の重要性というのはあるわけです。例えば道路運送法でも引き受け義務というような形で、要するに対価を払う者に対してサービスを提供しなければならない、こういうようなところがあって、恐らく公共交通の公共性というものの一番の担保はそこにあろうかと私は思っておりますけれども、そういったことが担保されないような状況になってくると、これはまた困るということであります。

 一番端的な例は、乗用車が普及したのでバスがなくなりました、こういうことなんですね。だけれども、これは乗用車を取り締まるわけにいかないと私は思いますので、そのために、例えばコミュニティーバスのような中間的なもの、あるいは乗り合いタクシーというようなことが出てくる。これはまさにグレーゾーンでありまして、そういったところをプラスの方向で生かせるような施策が必要ではないかというふうに思っております。

下条委員 ありがとうございます。時間の関係がありますので、次に移りたいと思います。

 次は、関参考人にお伺いしたいと思います。

 先ほどもいろいろおっしゃっていただいた中で、福祉タクシーについて、現在の景気を含めて、今いろいろな御苦労をなさっていると思うんですよ。その中で、正直、私もいろいろな方から今お話を聞いておりますけれども、売り上げ的に見て、それぞれのベクトルの方向が若干違ってはいますけれども、関さんのお立場からして、どの程度のところにきちっとした線引きをしながらという御意見があるのか、ちょっとお聞きしたいと思います。

関参考人 関でございます。

 売り上げの線引きというのは非常に難しい問題なんですけれども。ですから、輸送の範囲の線引きというのはそれはそれなりにできると思うんですが、障害の程度に応じてのそういう判断というのはその都度発生しますし、だから、そう決められたものでもないですから、一定の、軽度なものというものについての規制、歯どめはしておかないかぬだろうというふうに思っています。

 ただ、これは全般に言えることですけれども、一般のタクシーがすべてそうした福祉ができるのかといったら、それは無理だと思います。仮に二十六万台のタクシーがすべてそれをやっているということではない。今、タクシーの中でも、介護タクシーをやったり、福祉タクシーをやったり、限定福祉をやったりしているのは一部の事業者なんですから。タクシーをやっている一部の事業者だ。だから、その辺のすみ分けがきちっとできないと、それをコントロールするものができないと、なかなかそこは解決せぬのかなと。

 だから、ワシントンあたりのセンターを見ていると、これは割合やられていると思いますけれども、あそこらでの配車というのはうまくやられていますし、センターそのものできちっと認定までしていますし、そうすると、どの範囲と言わなくても、決められた範囲で、何かお医者さん三名ぐらいの認定をもらってやっている。昔は一名にしていたら、面談したら、帰り、走って帰りよったという話もありましたですから。一名にしてそういう、センターがすべてそういうことをもってうまく解決をしているというところもありますし、日本の場合の、タクシーがというあれと福祉タクシーがというのでは物すごく違うと思うんですね。

 ですから、一般タクシーでできるというのは、今回、運賃でやっているような、障害のある方については一〇%引きですよ、手帳を提示していただいたら一〇%引きましょうと。これは現在もやっていますね。そういった大きなことはできますが、あとの障害の程度に応じてやることは、皆そういった専用の車が要る、また介護が要るということになりますから。その辺は、我々がやっているところとボランティアさんがこの部分はこうやりたいと言われる中で、我々は、そこを満たしておれば、満たすようなシステムがあって、いわば共同配車システムというのがあって、例えば難波のところでは、この地域はこれを満たしていますよというようなところがあって情報が交換されれば、何とかすんなりできるんじゃないかと思っています。ですから、それに、どうしてもこの地区は本当にないですね、そうすると、お願いしますよというようなことになるんじゃないかなと思うんですけれども。

下条委員 ありがとうございます。

 あと、もう一点だけお聞きします。

 ヘルパーの資格の取得等を踏まえて優先的に今いろいろおやりだと思いますけれども、ヘルパーの資格を取っておやりになることに対しては利用者の非常にいい声が多いと思うんですが、一方で、それをやることによって会社的に社内研修を含めて相当負担がかかっている。この両面から、ちょっと実態の御意見をお聞きしたいと思います。

関参考人 介護保険が制定されて、もう五年目に入りますかね。乗務員の、やはり福祉をやりたいという気持ちはたくさんあるんですよ。その中で、やはり中途半端なことはできない。昔から介護輸送というのは、車いすを畳んで移動する人を輸送をしていた歴史は結構古うございまして、四十八年ぐらいからやっているんですよ。二千五百ぐらいの車で乗務員を五千人ぐらい指導して、そして、大阪府のところではそういう指導もして走らせた事実があります。だから、それからそういう介護の流れはあるんですが、今回、介護保険が制定されて、そういう二級ヘルパーの資格を取りなさいと言われる。

 三十時間の通信教育と合わせて三日間の実地教育をやらすわけですけれども、ちょっと、ほかの団体さんは相当厳しいみたいですね。我々はそれをやってくださいよということでお願いをしているんだけれども、最近は、その教育も簡素化されつつあってしまって、どの部分はというようなことだけをやっているというような形に変わっておる。しかし、教育というのはやはりきちっとやった方がいいなというような気がしているんですけれども。ですから、そういう、今我々がつくっている方のものは確かに厳しいですけれども、それはそれでやってもらったらどうかなと。

 そういったものも、また田中さんの方も検証してもらって、この部分はこうしましょう、ああしましょうというのは、相談はそれぞれされていい。やはりやる人が自信を持ってやっていただくということじゃないと、やはり我々にとっても安全を疎外してはできませんので。

 ただ、そういったヘルパーの養成というのは、ヘルパーも五万円かかるんですよ。ですから、その辺の費用というのは、二種免許を取っている運転手がやはり取らないわけにいかない、そうすると、会社によっては半分持ったり一万円以上は運転手が持ったりということで、そういうことをしていますからね。もう三年たちましたから、それぞれ一級とかいうことで、次はもうケアマネの資格も取る者がたくさん出てきていますから、そういった運送形態というのもタクシーだけじゃない総合的な部分がありまして、その部分で、これは厚生省の関係なんですけれども、非常にそういう点で厳しいところがあります。

 介護タクシーの認証で、そういった百人ほどヘルパーを抱えて介護タクシーをやってますね、本社にそういった介護支援センターをつくって、そして、本社近辺はケアマネのあれに基づいてやります。ところが、同じ区域内で営業所をつくれば、この営業所じゃ、ここから配車できない、もう一度そういうセンターをつくりなさいということになるんです。そうしたら、大阪市の中に三つ営業所があったら三つつくれと。今の時代にこれは無駄じゃないかということを向こうには言っているんですけれども、そうしないとだめだと言っていますけれども、あれを変えてもらわないと無駄じゃないかなと思っています。ですから、タクシーの側でも、そういった介護の問題と専用車がどこまで行くかというのも検証せないけません。

 それと、限定で青ナンバーを持っている人たちというのは、今は放置できないですね。余りにも、免許証だけを取られて、一、二件契約されてやられて後は仕事がないという人たちはたくさんいます。会員制でボランティアで取られた人は、そこはちゃんと持っておられますから、そっちの方がよう持っておるのと違うかということでございますから、もう一度これは国土交通省にお願いをしてそういった人たちの講習というのをやっていかないと、あれは青ナンバーになっていますからね、一人一車のいわゆる青ナンバーですから、そういうところをきちっと検証し直す必要があるんじゃないかな、こう思っています。

 以上です。

下条委員 ありがとうございます。

 ちょっと時間の関係もありますので、次に入らせていただきます。

 田中参考人、お願いいたします。

 先ほど、七十九条の四のお話をおっしゃって、これはまた国自旅の二百四十号にもあります。簡単に言えば運営協議会の中にNPOが入っていけないという部分だと思うんですけれども、私が見ていても、やはりそこの部分が一つの大きな障害になっているんじゃないかと思うんです。その部分の御意見と、それから資格研修の極端な位置づけというのはちょっとどうかなという部分を、もし補完するのであれば、自分たちではこういう対応をしているからそこまで要らないんじゃないかという意見があれば、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

田中参考人 まず、運営協議会なんですが、本当に困っておりまして、この両側にいらっしゃる関さんとか待鳥さんがそういうことをやっていらっしゃるんじゃないんですけれども、地域のタクシー業界はかなり強硬なところがありまして、自治体に大変圧力をかけまして、運営協議会を開くなというのは物すごく現実的にやられております。

 結果、これは国土交通省に聞いていただければいいんですけれども、多分、現況で四割の自治体で運営協議会がやられていたらいい方で、しっかりとした統計をとっておりませんが、もっと低いんじゃないかというふうなのが率直な感じです。ということは、六割のところは、ないしは半分ぐらいのところはボランティア輸送がこれからできなくなるわけでありまして、とんでもないことなんですね。

 したがって、私が冒頭申し上げましたように、七十九条の四の第一項第五号のところは、つまりタクシー事業者さん等が合意しない限り開かなくてもいいなんということになっていまして、このとおりやられちゃうと全くのボランティア輸送とかNPOの輸送を圧殺してしまうことになりますので、玄関のところから、やるなというような話ですから、めちゃくちゃなんですね。

 ここのところは文章そのものを私は変えていただきたいことなんですが、地域住民の生活に必要な旅客運送を確保するため必要であると認めるときには、つまり合意という範疇の理解なんですけれども、住民が必要だと思うところは開いてほしいんですね。それで、開いた中でいろいろな条件が出てきますよね。タクシー業界さんの意見をそこで、あればいいし、ボランティア側の意見があればいいので。まず開かなければ何事もできないので、ここのところはぜひ何とかお願いします。

 それから、今私どもも、安全、安心は待鳥さんなんかにぎゃんぎゃん言われておりますので、一生懸命やっておりまして、約二日間、関係の専門家が入ったマニュアルをつくりまして、一万円とか一万五千円の受講料を自分たちで払って、自分たちで自主的に一種免許の場合には安全、安心の運転講習をやっております。

 これは今後もしっかりやりたいと思っておりますので、ぜひその範囲で、つまり、私どもはボランタリーに助け合いの世界で、タクシー運転手さんのように二十時間、十五時間も十六時間もだあっと走っているというんじゃなくて、多くは本当に週に二、三回、一、二時間のサービスをしているわけでございまして、一種免許がだめだというんだったら、一種免許は安全、安心ができないんでしょうか。

 それは取った上で、しっかりとしたそういう研修をやることは前提で私どもは納得して現実的にやっておりますので、それ以上に二種を取れとかいうふうな形でボランタリーな活動を封じ込めちゃう、ハードルを高くするということは、日本におけるSTSの移動制約者が人口の六%、十万人の人口のところで六千人いるわけですから、そういう方々をタクシー業界だけですべてできるわけじゃないのははっきりしているわけですので、私どもの自主的なそういった研修をやりますので、ぜひそういうレベルでこのボランティア輸送についてはお認めいただくというふうにしていただければありがたいと思います。

下条委員 申しわけありません。時間が来てしまったので、最後に一点だけ待鳥参考人にお聞きしたいと思います。

 やはり私は、車は、極端な話、凶器に近いというふうに思っています。そういう中で、車の運行管理の重要性、そして、それに伴うことによって救われた事例等ありましたら、時間が来ておりますが最後でございますから、端的にちょっと御意見をお聞きしたいと思います。

待鳥参考人 バス業界でもタクシー業界でも、今、非常に競争が激化する中で、不祥事等も起きていることは承知をいたしています。

 しかし今、少なくともタクシー業界では、運行管理者が配置をされておりまして、朝の出庫点呼等厳密にやっている中で、飲酒状況のチェック等、酒気帯び等のチェック等について厳しくやっています。そのことで重大な事故について未然に防がれているということについては、タクシー業界にかかわらず、本来であれば、これから認知をされるであろうNPOの皆さん等の、やはり人命輸送ですから、そういったところにも適用されてしかるべきじゃないかなというふうに思っているところです。

 資格の問題は、私は、やはり多くの人、不特定多数ではありませんけれども、他人の命を運ぶ、それも対価を取って運ぶ以上は、タクシーやバスと同じように、頻度の問題は別として、二種免許でなきゃいけないし、本当にそれによりがたい場合はどういうことなのか、どういう場合に二種免許を取れないのかということについては、これは明確に基準をつくっておいていただかないとやはり低きに流れてしまうんじゃないかと。

 そういう研修についても、自主研修という声もありますけれども、やはり公平を期すためにも第三者機関、できれば公安委員会が実施をするきちっとした講習、しかるべき水準の講習等を受けておくことが必要じゃないかなと思っています。やはり人命の安全を確保するという点ですから、そこのところはしっかりしていただきたいと思います。

下条委員 申しわけありません。まだまだ御意見を聞きたいんですが、時間が参りましたものですから。きょうは大変貴重な御意見をちょうだいしました。きょうは午後にこの件について、全員でまた審議法案について質疑をやりたいと思いますが、本当に参考になりました。

 ありがとうございました。

林委員長 森本哲生君。

森本委員 民主党・無所属クラブの森本哲生でございます。

 本日は、何かと御多用の中、参考人の四人の方、まことにありがとうございます。

 また、意見陳述を聞かせていただいておりますのと、今の質疑を聞かせていただいておりまして、なかなか大変な法案だなというようなことを改めて感じさせていただいております。

 そういうところから、今、運営協議会のお話が田中参考人の方からも少し出ておるわけでございますが、後は座って質問をさせていただきますので、よろしくお願いします。

 このことの、下条議員の続きのような形になるんですけれども、今回の法案のスキームでは、コミュニティーバス、乗り合いタクシー等の運賃・料金の規制が、地域の関係者の合意がある場合、今の話ではそれ以前の問題のお話だったんですけれども、許可制から事前の届け出制に移行が可能となったわけでございまして、ボランティアの有償運送が可能となった。既に全国では五十以上の地域運営協議会が立ち上がっておるわけでございますが、この合意とは何か。

 合意形成を目指すプロセスの中で、各参考人の皆さんが感じておられる問題点について簡単に御意見をお願いいたしますので、先生からよろしくお願いいたします。

山内参考人 私は学校の研究室にいる人間でございまして、現場にどういう問題点があるかということについて十分な情報を持っているわけではございませんが、私の持ち得る情報の中で申し上げると、先ほど申し上げましたけれども、やはりだれが主体的に何をするかという意識、この辺のことがかなり大きくかかわっているのかというふうに思います。

 特にコミュニティーバスについては、ある意味では住民サービスという形でのバスサービスの提供ということですので、比較的目立ちやすい、あるいは行政としてもやりやすい、こういうことがあるわけですけれども、一方で、STSの場合には、これは今お聞きになっておわかりのように、タクシー事業者の方々とボランティアの方々の間に考え方の違いがかなりあって、先ほどの言葉を繰り返しますが、逆にグレーゾーンということがなかなか合意に達しないということになっています。

 そのときに、コミュニティーバスとの対比でいうと、やはり地域の自治体の行政にあっても、こういった表に出ないようなところ、あるいは、これは重要なことなんですけれども、すべての住民にかかわる問題ではないかもしれないようなこと、これを責任を持ってどういうふうにするか、その辺のインセンティブといいますか問題意識、これが一番重要なのではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

関参考人 運賃は、今のところ、タクシーのおおむね半分という形で指定されておりますけれども、各協議会に今出ているのはばらばらなんですね。先ほどおっしゃっていましたが、百円でいいところもありますし。

 ところが、これはタクシー以上だなという申請をされる場合があります。どういう形をされるかというと、十五分で七百円とかいう形で出てきたり、それでお迎えも皆取られると。だから、十五分、それで五分ごとに迎えは取りますよとか。そうなりますと、結局、迎えなしでやると半額ですけれども、迎えに行っておれば半額を超える。そういう申請とか、結局、タクシーメーターと借り上げとの関係とばらばらに入ってくるわけです。ですから、申請をされるということであれば、もうどこかで統一を、申請をしなかったらいいんじゃないのかと。

 これは要らない、うちはこれは要らないんですよと言われる。逆に、我々はそれを取りなさいよという話もするんです。そんな、百円じゃ困ると、はっきり言って。ところが、身体介護をもらっているから、本当はもう要らないんですと。要らないとおっしゃっているんですが、この人は遠いからもらうんだ、こういう形のが出てきたり。ですから、その辺は少し、現場に行ったときにそういう問題が困るなということですね。

 ですから、これは団体と、例えば一つの事例を出されて、やはり各協議会で、その辺から協議会がやらないかぬ、毎回協議をせないかぬという無駄は省きたいなと思います。ですから、ボランティア運転の物の考え方というものは、やはりもう少し整理をしていただいた方がいいかなと思っています。

田中参考人 この合意という七十九条の四のところは大変大問題で、これはぜひ慎重にやっていただきたいんです。

 つまり、逆側からいえば、タクシー業界さんが反対したら運営協議会が開かれなくて、そこではボランティア輸送ができないというふうになりますので、そうでないということを、移動のサービスの必要な人がいて、私はタクシー業界が全部できているところなんてないと思いますよ。

 というのは、私、埼玉県の運営協議会の委員をやっているんですが、十市ぐらい集まってくるんですけれども、基本的にデータを全部見ますと、要介護保険の人、それから身体手帳を持っている人、そういう行政がわかっているだけで平均して人口の六%が移動制約者なんです。つまり、全国的にいうと八百万人ぐらいいらっしゃるわけでありまして、それを二十六万台とか三十万台のタクシーがフル回転して、一時に行くわけじゃないんですけれども、できるわけないんですよね。

 もう一点申し上げますと、これは付随的な事項なんですけれども、例えば、透析患者が週三回通う。タクシーで行けば、片道例えば二千円かかる、それで四千円で、五万四千円というふうな料金を出せる方が日本国にどれだけいるのか、病院に行くために。そこのところを、私どもの、三分の一、四分の一でやっているところを利用しながらやっている方もいらっしゃるわけですね、現実的に。

 だから、そういう移動制約者の責任をだれが持つんですか。それを、僕は、国土交通省よりはこれは厚労省マターのところが物すごくあって、殊に自治体が責任を持たなくちゃいけないんです。自治体の責任でここは開催できるようにしていかないと現実にそぐわない。逆に言うと、大変なボランティア圧殺法になる可能性がありますので、そこの危険性は何とか避けていただきたいと思います。

待鳥参考人 運営協議会の問題、合意の問題ですけれども、位置づけをはっきりさせておけばそんなに深刻な意見の対立というのは生まれないはずであります。そこのところがこれまであいまいだったばかりに、運送の対価をめぐっても、あるいは輸送の対象者をめぐってもやはり混乱が生じてきたわけですね。

 はっきり言って、東京の運営協議会の中では、本来、独立歩行が困難な方であるべきなのに、赤ん坊を連れたお母さんでもその輸送の対象にしろといったような申請が出ている。そういう非常識な申請も出てくるわけですね。それまで含めて、深刻な対立、議論がなされなければいけないといったような場面もありますから、やはりはっきりさせておく必要はあると。

 それから、運営協議会の設置についてでありますけれども、やはり公共交通を優先してその役に担わせる、そして足りないところをNPOの皆さんに補っていただく、その位置づけもはっきりさせておけばもめる問題ではないというふうに思っています。

 それともう一つは、タクシーではそんなこと賄えないという決めつけがありましたけれども、そうではなくて、移動制約者の数、いわゆる障害者とあるいは要介護者等の数、イコール外出希望の数ではないということですね。それを、単純に移動制約者の数をタクシーの台数で割ってとても賄えないということではなしに、そういった人たちにどれだけの移動ニーズがあるのかということまで検証しなければ、決めつけることは難しい、そこのところは御理解をいただきたいと思います。

森本委員 ありがとうございます。具体的にお話をいただきまして、感謝申し上げます。

 私の方の時間が食い込んで、もうあと十分もありませんで、ちょっと粗っぽく聞きますので、お許しをいただきます。

 実は、私も、いろいろ地域の方々に相談されておるところで、特区でやられたところが、やはり、これは赤字で私どもはもうやめようかというお話があります。しかし、それを逆に、非常に厳しかったタクシーの関係の方々から、いや、せっかくやったものだからお互いに協力してやろうというような話等も今いただいて、頑張ろうかという話が現実にございます。

 そんな中で、この改正法、法案の第七十九条の九の第二項において、あとこれは省略しますが、四点ございますね、こちらの内容が。これは、NPOの田中さん、もう時間がありませんので簡単にお答えいただきたいんですが、必要以上に運送者に負担を強いるものになると考えていいわけですね。よろしくお願いします。

田中参考人 まず、立場がちょっと隣の方と違うのであれなんですが、タクシー事業者の監督の法律ですから、その基準にずっと合わされるんですよね。

 これがもう大変に厳しくて、例えば運営協議会の中で、対面でちゃんと見てから、あいさつしてから、酒飲んでいるかいないか言ってから、ちゃんとやれとかと言われても、週に一回か二回、近所の人を乗っけて病院へ行くようなことをやる場合に、そんなふうな制限をつけられたり、いろいろなことが出てきちゃいまして、非常にボランティア団体にとっては重いんですね。

 したがって、書類もこんな分厚いのを出さなくちゃいけませんし、一人一人の過去の免許違反の経歴から全部出さされますし、それから乗せる人の名簿、何で移動制約なのかというのを証明してやらなくちゃいけない。そんなばかばかしいことを全部に、非営利だけれども事業としてやるところは構わないんですけれども、助け合いだとかボランティアでやるような部分についてはこの法律の範疇外のところにしていただかないと、これでやれと言ったら、今までやっている三千団体の多分半分ぐらいが申請しないと思いますね、運営協議会に申請しなくなると思う。

 そのことは、だれが困るのかといったら、移動制約者の人が困るんですよ。それはだれの責任かといったら、国なり自治体の責任が物すごくあると僕は思うんですね。そこらを慎重に御審議いただければありがたいと思います。

森本委員 ありがとうございます。

 あと、山内参考人にお伺いしたいんです。例えば移動制約の関係なんですが、有償運送の旅客は、国土交通省令による制約者の概念をどう法制上規定するべきか、あるいは、地域の事情に応じた形で、これはいろいろきょうお話がもう既に出ておるわけでございますが、柔軟な定義づけを可能とする余地を残すのかということ。

 私、提案なんですけれども、例えば重度の関係の方には、福祉の補助制度を重視して、入れてもひとつタクシーとか、その福祉のタクシーでやっていただくようにしながら、ボランティアでやられる方々は、もう少しその枠を支援まで広げるとか、そういった議論というのはこの委員会の中ではされなかったんですか。

山内参考人 今先生御指摘の点について、両グループといいますか、事業者の方々あるいはボランティアの方からいろいろな議論が出されたということは事実であります。

 それで、今、恐らく、私どもがどのように考えるかという御質問というふうに思料いたしますが、これは基本的に国の法律でありますので、一定の基準を示すというのが原則であろうというふうに思います。

 その意味では、国土交通省の何らかの基準というものを設けて、それが基本になるというふうに考えておりますが、ただ、先ほど言いましたように、地域の事情、実情というものがございますので、そういったところをどこまでしんしゃくできるのかという余地は若干あってもよろしいのかなというが私の個人的な意見でございます。

森本委員 時間がありませんで、もう最後。

 ちょっと生々しい、下条議員からの、法の抜け道で、この法律の中で一番危惧されるところは、これはタクシーの関係からお聞かせいただいた方がいいのか、少し、先ほどのような具体的な事例を、この法律が、法の抜け道としていろいろもうける仕事をしていけるようなところで見て、今、関参考人からもお話が一部ありましたが、ほかの方で、ありましたら簡単に、時間がもうあと一分でございますので、お願いをいたしたいと存じますが、どなたかお願いできませんか。

関参考人 きょう、ここでお話しされている田中さんがおっしゃっていることはわかる、これはわかるんですよ。別に無理なことを挙げていないわけですけれども、ただ、現場の申請では全然違うんですね。全然違います。

 本当に地域がそこの、仮に枚方なら枚方の地域にあって、そしてお客さんを全部区域を超えてとっている。二台の車で九十人ぐらいの会員をとったり。そして、タクシーの半額プラスは取りますから、このタクシーの半額を決めると、福祉、介護タクシーもそこへ寄らざるを得なくなるんですね、お客さんを運ぼうと思えば。そうすると、必然的にタクシーは半額の方へ寄ってしまう。通常のタクシー料金を取っていたらお客さんの単価が高くなりますから、どうしてもそこに。

 片っ方は、やはりボランティアですから法的なそういう負担はありませんから。片っ方はそれだけの負担をせにゃいけない。競争にならないというところがある。その部分をうまくやっておられる方もあり、これはタクシーよりいいんじゃないかというような、申請を出しておられる方は研究されているんでしょうけれどもね。これはもう商売ですね、ここまでいったら。

 ただ、今、田中さんらがおっしゃっておられる話は、これはボランティアの話なんですよ。だから、そのすみ分けを、特に大阪は、全員、ヘルパー免許を持たないで一億五千万も請求した例もありましたからね。だから、そういう人たちがボランティアでやられると、ただ、ほっておいたらやるんですよ。その辺をどういうあれでやるのか。

森本委員 ちょっと急ぎまして、ありがとうございました。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

 終わります。

林委員長 伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉でございます。

 本日は、当委員会に参考人として御出席いただきまして、まことにありがとうございます。以後、座ってやらせていただきます。

 ここまでの議論を聞かせていただきまして、まず、改めて総論として四人の参考人の方にお聞きをしたいと思いますが、さまざま今この法案についての、特にやはりマイナス面への議論がずっと行われていると思います。

 そうはいっても、このボランティア輸送というものを法で定めるという、根本的な、今回の法案化の意義については賛成という御理解でいいのかどうか、ちょっとお一人ずつお聞きしたいと思います。

山内参考人 私は、今回の法律でこれを制度的にきちっとすること自体が非常に大きな意義があるというふうに感じております。

関参考人 先生と同じ意見でございます。制度にすることが大事だと思っています。

田中参考人 黙認で、法律違反をびくびくしながらやっていたときと比べると、非常に進歩しています。ただし、何回も申し上げています、逆に規制が入り過ぎて、問題点が十分にあります。

 条件つき賛成、こう言っておきます。

待鳥参考人 現状の、もうやられているNPOの皆さん等の輸送については、すべてをボランティア輸送という言葉でくくることは難しいような実態にあるというふうに思っています。

 したがって、そういうグレーゾーンについては、タクシーと同じような事業規模まであるような皆さんもいらっしゃるわけですから、きちっとした法的な位置づけで定めていく必要があるんじゃないかというふうに思っています。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 そこで、今までの議論とまた少し重なるところがあると思いますが、まず運営協議会について、これは山内参考人と関参考人にお聞きをしますけれども、先ほどから田中参考人の方から、そもそも開かれないんだ、四割ぐらいしか開かれていないと。私も、前職は鉄道事業者におりまして、違う形でのこういった協議会というのを数々やってまいりました。協議会というのは、確かに非常に難しい面があります。

 そういうことで、先ほど、七十九条の四の話ですか、そもそも開かれないということをまずちょっと排除しなきゃいけないんじゃないかという御意見は確かにごもっともではないかなと思いますが、そのことについて、もし田中参考人がおっしゃっていることに賛成というか、開かれないというのはまずいなというお考えであれば、具体的な改善方法があれば、もう一回ですが、山内参考人と田中参考人にお伺いします。

山内参考人 この議論は、先ほど紹介した小委員会の中でも何度も出た議論でございまして、それで、当時と比べては、現状ではかなり協議会もふえているというふうには伺っておりますけれども、それにしても、必ずしも十分ではない、あるいはすべてではない、こういうことだと思います。

 それで、地域の問題をだれがどういうふうに進めるかということについては、これは非常に難しい問題だと思います。

 例えば、国がといいますか、中央の行政府としてあるいは中央の政治として地域のあり方についてかかわるときに、内容までにはかかわらないけれども、あるべき姿を示すとか方向を示すとか、こういうようなことというのはあり得るかなというふうには思っています。

 ただ、私自身は、実は、私はこういった交通とかあるいは公益事業とかという政府と企業が重なる部分というのを専門にしておるんですけれども、もう一方の専門は、行政の経営とかそういったあり方、そういう、最近の言葉で言いますと行政経営というようなことを専門にしておりますけれども、そういうところで言われるのは、いかに行政、特に地域の行政が参加型の行政実績をつくっていくか、この重要性だというふうに思っています。

 そういったときに考えますと、これは、何か中央で、あるいは国の役割としてこれを促進するというよりも、地域地域がその地域の行政のパフォーマンスとして地域の住民の方々、あるいはこの場合には事業者の方々、ボランティアの方々の参加を促していく、こういう姿勢をより強くしなければならないと思っています。

 最近ニュー・パブリック・マネジメントなんかで言われますのは、そういったことを逆に地域行政は積極的に行わなければならない、これは受動的な立場として参加型のモデルをつくるのではなくて行政自体が参加型を求めなければならないのではないか、こういう議論が主流でございます。

 そういった面からすると、運営協議会の問題に立ち返って考えますと、これは何らかの仕組みをつくってやりやすくするというのはもちろん大前提でありますけれども、それに加えて、やはり地域の監視の目、あるいは地域で行政をどういうふうにするかという、そういった仕組みですか、そういったものについての議論を大きくするということが重要かというふうに思っています。

 特定の利益において地域の行政がゆがめられるようであっては、これは全く話にはならないというふうに思っております。

田中参考人 五号のところなんですが、例えば、関さんのいらっしゃる大阪府だとか、私の住んでいます埼玉県だとか、神奈川県だとか、自治体がしっかりしているところは、タクシー業者さんに理解を求めて、全県的にしっかりとした運営協議会をやられているんですね。ところが、愛媛ばかり言って悪いんですけれども、愛媛県のように、業界が反対だと言うと、自治体さんがこの趣旨を理解しないで運営協議会を開催しないというふうなところが出てきているわけです。

 したがって、私は、この第五号については、地方公共団体の責任において開催する、つまり、以下、一般旅客自動車運送事業者とかずっと書いているんですけれども、地方公共団体が地域住民の生活に必要な旅客輸送を確保するために必要であることについて合意というか、決意した場合には開催できるというふうにしないと、タクシー事業者の中で、本当にちゃんとやろうということで賛成してくれているところはいいんですが、やはり半数強反対側に回られると、この条文だと、開催しなくて自治体が済んでしまうという状況になってしまいます。

 自治体も、かなりしっかりしているところと、率直に言ってしっかりしていないところがありますので、こういうことでタクシー業界さんが反対したらボランティア輸送、NPO輸送ができないなんということになる危険性がある条項というのは大変に問題があるので、そういうことがないように、地方自治体が決意して、そこに移動制約者がいたらしっかりと運営協議会を開かなければならないという方向に条文そのものをしていただくのが最もいいことだというふうに思っております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 これは関会長にお聞きをしたいんですが、例えば今おっしゃっていた愛媛の事例など、これは要するに、開かれると、意見陳述の中でも言われていたかと思うんですが、結論ありきのような部分があって、そこに事業者としてのリスクがあって業界側が開かないという印象を田中参考人のお話から受けるんですが、同業として、そういった可能性はやはりあるとお考えですか。

関参考人 田中さんがおっしゃった側面も、それはあると思いますよ。

 ただ、そういったことで非常に頑張っていこうという事業者は、それはそれ以上にやはり自分たちがやらないと人は理解しないです。ですから、その件において自分らでやれるということで頑張ってきた、そういう何件かのものは知っています。そして、それなりに、行政も今のところ支障ないということでやっている。

 その中で、今一遍に、田中さんがおっしゃるように全部真っ白にしなさいと言ったってなかなか難しいから、しっかりやっていたって、それは福祉の問題というのはどこかでお手伝いということは出てくるわけですから、それはそれなりに幅を広げていく中でそういう問題が検討されるんじゃないかと思います。時間の問題だと思います。

 だから、現状は、行政とそういう福祉の事業者とが自分たちでやりますということでやっているんだろう。それで、福祉の団体の方々が異議を唱えない。それで、そのままそういう形で進んでおれば、それはそのままになっちゃうんだろう。だから、意図的に我々の団体がそれに関与したとか、それはないです。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 ここまでの議論の中で、そういう話で、すみ分けとか共存とか、そういうことがキーワードとして出てきたと思います。それを定義づける上で、安全というまたキーワード、これは非常に重要なキーワードだと思います。

 これは待鳥参考人にお聞きしたいんですが、いわゆるタクシー事業者の運転手と、NPO、セダン輸送、いわゆる一般の方が運転する。安全というキーワードから見たときに、今のままだと具体的にここが危ないんだ、タクシーの運転手とはここが明確に違う、ちょっとその辺を教えていただけますか。

待鳥参考人 安全の確保において、タクシーであろうとNPOであろうと差があってはいけないと思うんですね。それは走行距離が長いか短いかの問題では判断できないというふうに思っていますので、できれば、やはり同じぐらいの水準が必要じゃないかというふうに思っています。

 我々のOBの中にも、定年後にそういったNPOの団体の皆さんなどと一緒に運転に携わっているような仲間も多くいるわけでありますし、それで、やはり二種免許を持って、そして一定の技能以上をきちっと認められた、そういう運転者が輸送に携わるということについて、これはやはり一番原点じゃないかなというふうに思います。

 やはり、プロとアマの差というのは、一種免許と二種免許の試験の中身を見ていただければ、これは一目瞭然でありますので、その辺の一定レベルの技能を確保するということが、まずはハンドルを握る労働者の技能をしっかりと一定水準確保するということが安全の確保には一番大事だというふうに思っていますので、やはり二種免許ということについて再考をいただきたいと考えているところでございます。

伊藤(渉)委員 では最後に、山内参考人と関参考人にお聞きします。

 今までの具体的な事例として、協議会が開かれて、やはり、NPOの方の地域への参入という言葉が正しいのかどうか、そういったボランティア輸送をやるということはこの地域には必要ありませんねとなった事例があるかどうか、これを最後に教えていただきたいと思います。

山内参考人 大変恐縮でございますけれども、私自身は具体的にそういった事例を存じ上げませんが、それは別に、それがなかったという意味ではないと思います。

 以上でございます。

関参考人 更新の時期にやめる事業者はあります、もたないということがありますから。だから、やめるという事業者はある。これは別にやめたからいけないという問題じゃないですから、これ以上できないというのはある。今、大阪の方は、枚方は少し早いですから、そういった更新が入っていますけれども、ほとんどは、これから、まだですから。ただ、もうそれ以上にいろいろ出ていますから、これでという話は出ていますね。

 ただ、今のやり方の中で一番あれなのは、問題を指摘しても、ああ、それは直しといてください、ほな、それでいいですよ、こうなっちゃうんですね。それは指摘しても何もならないという形で皆終わっているというのがあれだろうと。だから、法律的にもう一度締め直して、人を輸送することについてのそういった安全性というものをもう少し勉強していただく方が後々のためにはいいんじゃないかなと。

 今は本当に単純に出ていますし、代書屋さんがちょっと書いて持ってきたらそのまま出ているというのが実情で、イロハがわかっておられないというのがある。指摘されても、今の流れがそうなんでしょうか、何度も指摘されても、その気があったらそれでいいんじゃないですかという、地域住民の方がそういう形ですね、専門的にはわかりませんから。だから、もう少しやはりきちんとしたものにはしなきゃいけないなと思っていますね、お互いのために。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。

 貴重な御意見、大変参考になりました。本当に当委員会としては、今やはり一番大事なのは安全の確保、その上で利用者の利便性が向上するように、きょうの御意見を参考にしまして、しっかり法案の審議をさせていただきたいと思います。

 以上です。

林委員長 日森文尋君。

日森委員 四人の参考人の皆さん、大変お疲れのところ御苦労さまでございます。

 社民党の日森と申します。座って質問させていただきます。

 今、参考人の皆さん方の御意見それから質疑を聞いていて一番思ったことは、まだまだ意見の、あるいは考え方の差がかなり開いているということをちょっと痛感させられました。例えば、安全の問題もそうですが、資格の問題がそうですし、対価の問題がそうですし、それから移動制約者の範囲の問題であるとか、さまざまな問題が整理をしなきゃいけないということになっているんだと思います。

 そこで、これでいうと運営協議会、そこにそういう問題が丸投げされるというとおかしいですけれども、そこでかなり議論をしていかないと整理がつかなくなっているということなんですね。そうすると、この運営協議会が持っている責任というのは物すごい重大で、そこが整理をされないと、両方ともにっちもさっちもいかないような事態が生まれてしまうということになると思うんです。待鳥さんは、少し法的な位置づけを明確にすべきではないかという意見もございました。

 それで、改めて四人の参考人の方に、あるべき運営協議会の姿というのをぜひ端的に示していただけたらありがたいと思っております。私の方も実際イメージがわいてこないわけですよ。ぜひお願いをしたいと思います。

山内参考人 先ほど最初の発言のときに、私自身、タクシーのことを随分長く今まで勉強してきたというふうに申し上げました。それで、特徴的に一つ言えることは、日本のタクシーの制度、これはバスも同じなんですけれども、それと諸外国の違いというのは、要するに、国会でタクシーについてその地域地域の具体的なところまで議論をするというのは日本だけではないかというふうに思っています。もちろん、イギリスやヨーロッパ諸国は基本的な枠組みを持って国が決めておりますけれども、具体的なタクシーないしは地域交通のあり方というのは地域地域が議論をするというのが基本になっているということだと思います。

 今回、運営協議会ということでいろいろな問題があり、それの運営の難しさ、あるいは問題点を指摘されているわけですけれども、そもそもこの道路運送法が最初に日本にできたとき、たしか昭和二十六年だったと思っておりますけれども、その段階で、地域交通委員会でしたか、ちょっと忘れましたけれども、それぞれの地域に交通のことを考えるような委員会をつくられたという経緯がある。これは、アメリカのどちらかというと分権型の委員会制度に倣ってそれがつくられたというふうに思っておりますけれども、その後、これが集約化といいますか、国の方に一本化されるような形になるわけです。その当時は、恐らく、地方自治あるいは地方行政のある意味では未成熟な部分もあって、必ずしも十分な政策を打てなかった、総合的な視点ができなかった、こういうことだというふうに思っています。

 一方で、国、地方の関係、これは、ここで私が言うまでもなく、今、地方自治、分権の必要性がもう長い間叫ばれてきて、そういう形で法制度が変わってきているわけでありまして、恐らく交通とかこういった問題もその流れの中の一つととらえられるというふうに思います。

 それで考えたときに、今我々ここで、運営協議会の問題あり、いろいろな矛盾点あり、こういうようなことを考えるときに、それは確かに非常に難しい問題、利害の関係が非常に対立するようなそういう問題だけを取り上げてここで議論をするということの視点から見ると、非常に問題を含んだ協議会ではないか、こういうようなことになるわけでありますけれども、ただ、振り返ってより広く見ると、地域の交通政策をどう考えるかとか、あるいは、先ほどから御指摘がありますように、例えば移動制約者の方の移動に対してどういうふうに確保していくかというような、そういった広い視点を持って議論が出されるような場に育てていく。こういうことであれば、私は、これは希望的な観測ということになってしまうかもしれませんが、地域の利害対立を超えたところで一定の方向性が出していただけるのではないかというふうに思っています。

 先生御指摘のように、ある意味でこれは丸投げというような言い方ができないこともない。しかし、その本質はやはり考えるべき人が考えるということであって、これは丸投げということには当たらないんではないかというふうに思っています。

 私が考える協議会のあり方というのは以上でございます。

関参考人 非常に難しい問題なんですけれども、今のいわゆる委員の編成でいきますと、レベルが十の人と三ぐらいの人とが一緒にやっていますから、勢い、はっきり申し上げて、運輸支局に行って企画の書類の提出をしたらいい、それだけのことを何時間もかけてやっている。本来、その程度の書類なら、運輸支局に出して是非を聞いたらいいじゃないかというような書類を何回も何時間もかけてやっている。まあ、輸送のイロハをやはり御存じない。

 ですから、住民の方、代表の方が出てこられて意見を述べられる、その認可の意見を述べられるような場じゃないと思いますね。だから、住民の方が、この地域にはタクシーがありません、そして、ボランティアでこういうことを要望するとかせぬとかいう問題が出てきて、その地域でそういうものが発生してくるというのは、それは論議をそこでしたらいいわけですけれども、そういう問題じゃなしに、そういった認可、許可をおろす段階で、そういったタクシー側と専門家等が入ってここでわいわいやっている。それだったら、もうその論議しなくても、それの許可をして終わりなんですよ。

 ここで、いわゆる集中配車センターをつくってこうするかという話をこの間も出していますけれども、なかなかそっちへ行かないですね、一緒になっていかない。どうですかと言っても、それはわからない、私らではわかりません、こうおっしゃる。だから、どこかでやはり、地域協議会一本ではなしに専門的なことを分散しておかないと、専門化しておかないと、やはり一カ所に集めてというのはちょっと無理かなという気がしていますね。会議が進まない。進んでも単純なことだけの繰り返しになる。だから、もう一度組みかえる必要があるだろうというふうに私は思っています。

 その際に、意見を、我々のいわゆるタクシー事業者の意見、NPOさんも入ってもらって結構ですから、双方が激論できるあれでないと、双方の話ですからね、大半が。地域住民のは場所がちょっと違うなという気がするんですね。その方が多過ぎるんですよ。

 以上です。

田中参考人 まず、現在の運営協議会が開かれているところの実情で申しますと、申請されるNPO等のところを許可するかしないかという議論だけをしているんですね。今、関さんもおっしゃいましたように、それから山内先生もおっしゃっていますが、その運営協議会を、できれば地域の交通体系をどうするんだという議論ができる場にしていく必要があるんだと思います。

 先ほども申しましたけれども、人口の約六%ぐらいの移動制約者がいて、私どもがやっているのはその六%の中の、十万人だとすると六千人いるわけですが、その六千人の中の私どもNPOがやっているのは、頑張っているところでもたった六百人ぐらいの話なんですね。五千四百人の方は放置されているわけです。それは、待鳥さんがおっしゃったように、移動する希望がない人もその中にいるかもしれませんが、多くの方は移動そのものをあきらめちゃっている方が多いんですね。そういう国であっていいと僕は思わないんです。移動したいんだけれどもベッドの上にずっとじっとしているということではなくて、車いすにさえ乗れればどこでも行けるという、移動が自由な国にする必要があるというふうに思っています。

 そういうことを運営協議会で、例えば、歩道と車道をしっかり分けないと車いすで行けないじゃないかだとか、さまざまな問題があると思うんですね、これはバリアフリー法とかいろいろ絡んでくるんですけれども。そういうことを、地元の運輸事業者であるタクシー事業者さんと、市民のいろいろな人たちが集まって、一体こういうことをどう解決していくんだという場にする必要が僕はあると思うんです。

 したがって、運営協議会を開かないというのはもう考えられないことでありまして、そういう場を、現在は許可問題でやっているんですけれども、できれば各地域で、本当に過疎地へ行けば行くほど問題もあり、都心部は都心部での移動問題がありますので、そういうことが協議できる運営協議会になるように、この運営協議会をスタートにして、進化できるようにしていただければ大変ありがたい。

 各自治体に全部運営協議会があって、移動制約の方が自由に移動ができるような社会をぜひ国会議員の先生方が先頭になってつくっていただければ、私どもも一生懸命汗を流そうと思っていますので、その場として運営協議会が必要だというふうに思っております。

待鳥参考人 今回議論になっています運営協議会というのは、移動制約者の輸送をどう確保するかということに絞った運営協議会ですから、やはり道路運送法上で位置づけられた運営協議会というのは、そこにやはり議論は限定されなきゃいけないんじゃないか。地域の福祉政策すべてを網羅したような議論も加味していきますと、やはり収拾がつかなくて、結論も出ず、対応不可能という形になってしまうんじゃないか、そういうふうに心配をしているわけですね。やはり、きっちりと地域の輸送手段をどう確保するのかということに絞った方が私はいいと思っています。

 それと同時に、なぜ開かれないかということについては、その地域の事情がやはり現状でもあるというふうに思っていまして、決してタクシー事業者が圧力をかけて開かせていないということではない。やはり、NPO輸送の位置づけをはっきりした上で、自治体の判断に基づいてやられているものだというふうに思っています。

 往々にして、本来の位置づけを逸脱して、例えば高齢化社会がこれだけ進行していくと、あそこにニューサービスがあるんじゃないかととらえて、新たな事業まがいの申請がやはりあるということですよね。そこのところについては、本来の趣旨と違うんじゃないかと思っているんですね。そこをはっきりしておけば、運営協議会の設置の是非についてのトラブルなんというのはないというふうに思っていますので、繰り返しになるんですけれども、その辺の仕分けというのか明確化を図っていただくことが必要だと思っています。

日森委員 時間です。どうもありがとうございました。

 運営協議会が勝負だというふうに思っていますので、ぜひ一緒にいろいろいい方法を考えていきたいと思います。ありがとうございました。

林委員長 糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 本日は、四人の参考人の皆様から大変参考になるお話をいただきまして、本当にありがとうございます。ここから座らせて質問させていただきます。

 先ほどまで、それぞれ異なる立場からの御発言ではございましたけれども、今回のこの法改正、特にNPO等によるボランティア福祉有償運送について、これを大いに振興すべきであるということでは大体方向性としては一致しているのかなと。

 そこで、まず山内参考人にお尋ねいたしますが、今回の法案の基礎となった小委員会の座長を務められていたということでございますが、今回の法案提出の背景となっているコミュニティーバスですとか乗り合いタクシー等の普及状況について、どのように認識されているのか、お聞かせいただけますでしょうか。

山内参考人 今、大きく分けて二つあって、一つはボランティアによる有償の旅客輸送、STSの分野と、それからコミュニティーバスを中心とする乗り合いタクシーを含んだような、二つの大きなカテゴリーがあるわけですけれども、やはりかなり状況が違っているというふうに思っています。

 もちろん地域の住民の足を確保するという意味では非常にどちらも重要でありますけれども、コミュニティーバス、乗り合いタクシーについては、特にコミュニティーバスについてかなりの普及を見て、外形的には非常に重要な交通上の役割を果たしつつあるというふうには見えるわけですけれども、ただ、先ほども冒頭で議論ありましたように、必ずしもそれが成功、あるいは地域の住民の足として十分な役割を果たしていない、成功していないような例もあるというようなことで、それについては、先ほど言いましたように、今、どうやってそれをいい方向に持っていくのかというようなことを中心に議論しなければならない状況にあるというふうに思っています。

 一方、スペシャル・トランスポート・サービスについては、これはボランティアの皆さんのお力もあり、ある意味では、理屈からいうと、タクシーで捕捉し得ないところをボランティアの方々の移送という形でやる、あるいは輸送をやるということでありまして、その意味での重要性はあるものの、先ほどから議論に出ておりますように、今まで法的に認められてこなかったということもあって、必ずしも十分ではないのではないかというふうなところは思っております。

 ただ、今回、この法的な位置づけをし、また、安全性等についてはあるべき姿が示されたことによって、今御議論が出ておりますように、いろいろな阻害要因だ、あるいは規制の強化だという面もあるかとは思いますけれども、逆にそれを土台として次のあり方を探っていただくとか、あるいは、タクシーで捕捉し得ないところがどこに重要なポイントがあるのかということを捕捉していただいて、より広い発展を期待するような状況、こういったことを考えております。

糸川委員 ありがとうございました。

 では、関参考人にお尋ねいたしますが、福祉タクシーについては、現在需要が急増しておるということでございます。それに十分対応できるほどには普及が進んでいないということですが、その需要が急増しているということは、今後成長が期待される極めて有望なマーケットであるというふうに思われるわけで、新たなビジネスチャンスではないのかなというふうに思います。

 この点についてタクシー業界全体としてはどのように見ているのか、端的にお答えいただけますでしょうか。

関参考人 福祉タクシーと言われる範囲が、従来の、昔からやってきたリフトとかそうしたスロープの範囲である、それに限定しての話ということになりますと、当初、五十年ごろにつくった時代というのは非常にマスコミも取り上げましたし、それと、こういった業務が非常に困難だということで割合肯定的に行政が取り上げて、行政の借り上げが多くなってきました。しかし、今やはり時代が変わってきて、そういったものでも安くという問題がありますから、その関係からいくと、それは軽自動車のスロープに変わってきている。

 ですから、タクシーそのものはそれぞれ、福祉といえども非常にさま変わりをしてきているのは事実です。今はむしろ、そういう大型の福祉タクシーよりも小型の福祉限定、そして介護タクシーというのは、これは非常に売れていますね、セダンでヘルパーがやるものは売れていますから。だから、今そういったものが主体になってきています。

 ただ、言われておるそういう福祉車両というのが、仮にニーズが高まってきてそれが必要となると、それをそれならどうできるんだとなると、やはりこれは車両費の問題がひっかかりますね。一番車両費が高いですから、四百万ぐらいしますからね。だから、そういう車両費の高いものだと移送効率も本当に悪い。行って帰るということで終わっちゃうわけですから。そういうことで、採算ベースになかなか合っていかないというのは大きな抱えている問題ですね。

 我々というのは、やはりタクシーという本業があって、そういう福祉部門というのを二、三十台持ってやっているという会社が多いですから、その部分は営利的なことを全体で決算して、そして福祉部門をやむを得ないでやっているというのが今現状ではないかなと思っています。

 だから、おっしゃるとおり、いい方向に向かってということになると、本当に財政支援をきちっと考えてもらわないとなかなかやりにくい。ボランティアさんとの関係で一番困るのは、どの部分でどう手を添えていくのですかという。だから、どっちもそんなこと言わなくてもいいような補助体制があれば、それらの問題は起きないと思いますけれどもね。

糸川委員 ありがとうございました。

 では、待鳥参考人にお尋ねしますが、今後、福祉タクシーの普及に当たっては、タクシーの乗務員に対する福祉関係の教育というものが重要になってくるのかなと思います。そこで、乗務員の労働組合として何らかの対策を講じられているのか、これはもう時間がほとんどありませんので、端的にお願いいたします。

待鳥参考人 先ほども申し上げましたけれども、私たちももう何年も前からホームヘルパーの資格取得の運動を起こしてきまして、かなりの組合員がそれを取得しています。ただし、やはり厚生労働省の教育訓練費の補助が切り下げられました関係で少し拡大が鈍っているという状況にあるので、その辺もやはり考えていただかなきゃいけない部分だろうと思っています。

 それと、これからは、ニュービジネスという言葉が出ましたけれども、ニュービジネスということではなしに、公共交通としての役割、使命を果たすという意味からもやはり介護とか福祉ということについて積極的に進んでいく必要があると思っていますので、介護資格、ヘルパー資格という高度な資格は全員に取らせることは非常に難しいと思いますけれども、最低限の、タクシーの乗降の介助、そういった技能の向上に努めるとかそういう研修を行うとか、あるいは救急時の処置等について、やはりこれは組合としても積極的にいろいろな研修会等でもやっていきたいなというふうに思っているところです。

糸川委員 ありがとうございました。

 それでは、最後に田中参考人にお尋ねいたします。

 今、急速な少子高齢化というものを迎えておるわけでございます。そこで、ドア・ツー・ドアの移動を提供するSTS、スペシャル・トランスポート・サービス、この普及というものが大変重要であるというふうに私も考えております。

 そこで、STSの普及に当たって、NPOというものがどのような役割を果たすべきだというふうにお考えでしょうか。お聞かせいただけますでしょうか。

田中参考人 簡単に言いますと、NPOに自由闊達にできるようにしていただければいいので。ただし、タクシー業界との線引きはよくわかりますので、一定の枠をつけていただくのは全然構わないんですけれども、それをもうぐっぐぐっぐタクシー業界と同じような締めつけ方をされると、そこへ参入できないNPOが多いわけですね、力が弱いところもたくさんありますので。

 ですから、私どもは自治体から一円の金ももらわなくて移動サービスを一生懸命やっているわけですから、当事者の利用者から幾ばくかのお金をいただいてやっているだけですので、そういう団体が自由に活動できるような御配慮をいただければ、STSの担い手のごく一部になれる。私ども全部できるなんて全然思っていませんから、移動制約者の中の一割程度は何とかNPOでしっかり応援をできるという体制ができると思います。

 それを手を縛り足を縛り、何か後ろからけ飛ばされて、お金もくれないのにやられるのではもうとてもSTSの担い手になれないので、そのあたりの御配慮をぜひお願いしたいというふうに思います。

糸川委員 ありがとうございました。

 終わります。

林委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言申し上げます。

 本日は、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 この際、休憩いたします。

    午後零時二十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時三十八分開議

林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、道路運送法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省自動車交通局長宿利正史君、警察庁交通局長矢代隆義君及び厚生労働省大臣官房審議官松井一實君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

林委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鍵田忠兵衛君。

鍵田委員 自民党の鍵田忠兵衛でございます。

 今、本会議が終わったところで、皆さんお疲れだと思うんですが、これからまだ五時半までこの委員会があるわけであります。どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は、四月十一日の本委員会における道路運送法の改正について北側大臣の趣旨説明を受けて、何点か質問をさせていただきたいと思います。

 我が国は、戦後の復興そして高度成長期を経て、今や自動車大国としてアメリカに肩を並べる国となり、また、いつしか車社会という言葉も日常的に使われるようになってまいりました。

 同時に、毎年痛ましい交通事故もふえ続けておるわけであります。この交通事故についても、いっとき一万人を超す死者がありました。最近、一万人を割ったわけでありますが、それでも、いわゆるこの事故が非常に多い日本の国になってきております。

 そういった中で、やはりこういった安全、安心な車社会の実現、これが喫緊の国民的な課題と言っても過言ではないのではないでしょうか。

 本法案の改正につきましては、少子高齢化が進展する中で、地域のニーズに応じた安全な輸送サービス、これを確保することを目的としておりますが、この法案によってどのような効果が期待できると考えておられるのか、まず北側大臣の御所見をお聞きしたいと思います。

北側国務大臣 本会議でお疲れのところ、また当委員会を開催していただきまして、また御議論いただき、ありがとうございます。

 今、高齢化が進行しているわけでございますが、本格的な高齢社会はまさしくこれからやってまいります。一方で、人口減少社会にいよいよ突入をしてきたわけでございますが、私は、これから過疎化の問題がさらに深刻になってこざるを得ないというふうに考えております。

 そういう中にありまして、我が国車社会、今委員のおっしゃったように車社会であるわけでございますが、一方で、高齢者の方々がこれからますますふえてくるわけでございまして、余り車に依存できるような、車というか自家用車ですね、みずから運転する、そういうことに依存できるような時代じゃなくなってまいります。

 そういう中にありまして、高齢者の方はもちろん、障害者の方はもちろん、自由にやはり移動ができるというふうな交通システムに対するニーズというのは非常に高くなっているわけでございます。多様化、高度化する地域の輸送ニーズに的確に対応した安全そして安心な輸送サービスを提供すること、これが今求められていることであるというふうに考えております。

 こうした認識のもと、各地で導入されておりますコミュニティーバスとか乗り合いタクシー、市町村バス、またNPOによるボランティア有償運送、こうした地域のニーズに的確に対応した安全、安心な輸送が提供されるように本法案を提出させていただいたところでございます。

 この法案が成立することによりまして、多くの方々が自由に社会に参画することが容易となるわけでございまして、ひいては地域の活性化にもつながってくるというふうに私どもは考えております。

鍵田委員 どうも大臣、ありがとうございました。

 今回の法案で、コミュニティーバスの導入が促進されることになると思うわけでありますが、周囲の乗り合いバス路線との競合、こういった競合で、結果として地域交通のネットワークが崩れてしまうのではないかということを考えるわけであります。もしそうなった場合、住民の利便性を損なうようなことになるのではないかと危惧をする声があります。この点について、いかがお考えでしょうか。

宿利政府参考人 コミュニティーバスの導入を促進するというのは、あくまでも地域のニーズに対応して利用者の利便を高めていこうということでありますから、当然のことながら、既存の路線バスとのネットワークとしての整合性が確保された形で導入されるということが必要になってくるわけであります。

 そういう意味で、今回の改正に当たりましては、それぞれの地域におきまして、地方公共団体、地元のバス事業者、地域の住民などの関係者から成ります協議会を設置していただくことを考えておりまして、この協議会におきまして、地域のニーズに即した運行形態あるいはサービス水準、運賃などについてしっかり協議をしていただきたいと思っております。

 このような協議会における協議の場を活用することによりまして、既存のバス路線と整合性のとれたコミュニティーバスの導入といったものが促進され、効率的なバスサービスネットワークが構築されることを私どもは期待しております。

 いずれにいたしましても、詳細は省令等で定めることになりますが、実効性のある、実態に即した制度にしていくように努力していきたいと思っております。

鍵田委員 どうもありがとうございました。

 いずれにいたしましても、しっかりとした協議会の中で話をしていただいて、そして計画的なすみ分けをやっていただくようによろしくお願い申し上げる次第であります。

 さて、次に、私も奈良の市長をさせていただいておりました。ですから、やはり、それぞれの地域が抱える問題というもの、地域の問題というものを私もよく理解しておるつもりでございます。私が市長時代、いやまた国会議員になった今もそうでありますが、何をするにしても、やはり一番大切なことは、利用者、つまり住民の視点に立って物を見ることだと考えております。

 少子高齢化が進む中で、特に過疎地における、先ほども大臣からも過疎地のお話もありました、この過疎地における高齢者や高校生など、マイカーを利用できない住民にとっては、バスは交通手段として大変重要なものであるわけであります。

 私の地元奈良も、東部山間地域というのがございます。奈良市の面積の半分が、皆様も御承知の柳生という町もあるところが東部山間地域でございまして、非常に過疎が進んできております。そういった場所、過疎地域における交通手段は大変重要になってくると思うわけであります。

 一方、バスの輸送人員、つまり利用者は年々減少しており、バス事業者も厳しい経営状況が続いており、路線の撤退や事業自体が破綻してしまうということが全国各地で起きてきております。もともと小泉総理は、地方でできることは地方に、こうおっしゃっておられるわけでありますから、これは逆に言うと、地方にできないことはやはり国がやるということだと私は解釈をしております。

 そこで、これらのバス事業の状況に対して国土交通省がいかに取り組んでおられるのか、お聞かせを願いたいと思います。

宿利政府参考人 鍵田委員御指摘のとおりでございまして、地方バスのサービスにつきましては、地域の住民、特に自家用車の利用がなかなかできないような方にとりまして、老人とか学童などが最もわかりやすいケースでございますが、このような交通弱者にとっては必要不可欠な交通手段だと思っております。その維持確保は、過疎化あるいは高齢化の急速な進展の中では、とりわけこれから重要になると私どもも認識をしております。

 一方、バス事業は、輸送人員が、年々といいますか、もう三十年にわたりましてずっと減少を続けておりますし、昨今でも、軽油価格の高騰などでさらに経営環境が厳しくなっている実態にあります。

 そういう中で、私どもは、国の立場といたしまして、都道府県、市町村などの関係者と連携しながら、国の補助制度と地方財政措置の組み合わせによる支援を通じまして、生活交通の確保に努めていきたいと思っているところであります。

 今回の法律改正で提案しておりますコミュニティーバスや乗り合いタクシーなどの導入促進といったものも、あるいはNPOなどの活用といったものも、こういった地方のバス路線あるいは生活交通の確保を何とかして達成したいということから提案しているものでございます。

鍵田委員 どうもありがとうございました。

 続きまして、NPO等によるボランティア有償運送、これを可能とする制度の創設、そして市町村バスの関係についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 これまで、例外的に特区やまたガイドラインでやってきたものを明確化するというのが今回の趣旨だと思っております。高齢化社会を迎えようとしている中で、ドア・ツー・ドアの個別輸送手段である福祉タクシーなど、これはますます重要性を増していると考えております。

 午前中の参考人質疑の中でも、財団法人全国福祉輸送サービス協会の関会長からもお話がありましたが、福祉タクシーの普及状況は現在どうなっているのか、そしてまた、今後もこの福祉タクシーは普及促進させるべきだと思うのですが、その取り組みについてお聞かせを願いたいと思います。

宿利政府参考人 まず、福祉タクシーの現状でございますけれども、私ども国土交通省では、従来より、要介護者や身体障害者などの輸送に限定したタクシー事業者、これを患者等輸送限定事業者と言っておりますけれども、このような方々に対する許認可の弾力的な運用あるいは税制上の優遇措置などを講じてきておりまして、こうした取り組みを通じまして、ことしの一月末時点でございますけれども、全国で五千二百九十七事業者、八千八百二十九両の福祉タクシーが導入されるに至っております。

 福祉タクシーにつきましては、このように近年導入が進みつつありますけれども、一方で、リフトつき車両とかスロープつき車両といった場合には、価格が一般の車に比べましてかなり高価であることあるいは有効活用という点で問題があることなど、現実に急増する福祉タクシー輸送ニーズに対応できていないという現状にあるものと認識をしております。

 私どもは、十八年度予算の中で、新たに福祉輸送普及促進モデル事業といった新しい制度を創設いたしまして、福祉輸送に先進的な取り組みをしております地域をモデル地域として認定をいたしまして、その地域で共同配車センターの設立あるいは福祉車両の導入をしていく場合に、地方公共団体と協調して支援をしていく制度を創設いたしました。

 このような新しい制度あるいは中小企業金融公庫などの低利融資制度、これもことしからスタートするものでありますが、あるいは税制上の優遇措置などを通じまして、福祉輸送の一層の充実に取り組んでいきたいと思っております。

鍵田委員 冒頭でも申し上げましたが、今まさに安全、安心が問われております。昨年末から、食の安全そしてまた住の安全、食の安全はBSEであったり鳥インフルエンザであったり、そしてまた住の安全、この国交委員会でも耐震偽装の問題を取り上げてやっておったわけでありますが、そして交通の安全、空そしてまた海、いろいろと安全、安心なところで、国民にとって非常に大きな問題が今出てきておるわけでございます。

 そういった中で、NPO等によるボランティア有償運送にせよ、市町村バスにせよ、自家用とはいえ人命を預かるものであります。今回の運転者の資格について、基本は二種免許、しかし、国土交通省が認定したところで一定の講習を修了している場合は一種免許でも可能となっておるわけであります。これで本当に安全を担保できるのでしょうか。

 安全確保が極めて重要と私は考えておりますが、どのような対策を講じるおつもりなのか、お答えいただきたいと思います。

宿利政府参考人 NPOなどによりますボランティア有償運送の場合も、市町村バスの場合も、鍵田委員御指摘のとおり、他人を有償で運送するものでありますから、当然、輸送の安全の確保が第一に図られなければならないと私ども考えております。

 具体的に、そのための要件は今後省令で定めることになりますけれども、運転者の要件につきましては、鍵田委員からお話がありましたが、NPO等ボランティア有償運送の輸送の実態などに照らしますと、二種免許の保有を基本といたしますけれども、それが困難な場合については講習の受講等一定の要件を満たすということで足りるということにしたいと思っております。

 また、一定の講習の受講などを要件といたしました運行管理体制の整備、あるいは事故などの場合に適切な損害賠償措置が講じられるような保険契約の締結といったことを義務づけることといたしております。

 また、法律上の制度になりますので、仮に導入いたしました後問題がありますような場合には、監査の結果、必要な是正命令あるいは業務の停止、極めて悪質な場合には登録の取り消しといったことを通じまして、安全の確保ということに努めてまいりたい、このように思っているところでございます。

鍵田委員 どうも宿利自交局長、ありがとうございました。

 ぼちぼちと時間でございます。最後の質問になるかと思いますが、これまでいろいろな分野で規制緩和を進めてきたわけでありますが、規制緩和を進め過ぎて、ある意味あおりを一番に受けたのがタクシー事業者ではないのかなと私は思っております。今回、NPO等による有償運送が可能になる制度が創設されることにより、タクシー事業者と競合し、そしてまた、タクシー事業者の経営を圧迫することになるのではないかと私は心配をしております。

 先ほども言いましたが、利用者のためには、本来両者が共存して補完的にサービスを提供する、このことが可能となるような制度にならなくてはならないと思うのでありますが、大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。

北側国務大臣 自動車を使用しまして有償で他人を輸送するというのは、これは本来的にはバス事業者であったりまたタクシー事業者が担うべきものだ、これが基本だと思います。今回の改正では、採算などの面で、バス、タクシー事業者によって十分な輸送サービスが提供されず、地域の足が確保されない場合に、NPO等によるボランティア有償運送を認めようとするものでございます。

 このため、地方公共団体が主宰する、先ほども出ておりました協議会の場で、地元のタクシー事業者等も含めた地域の関係者がその必要性について合意をした場合にボランティア有償運送を可能とするということとしておりまして、この協議会の場で地元のタクシー事業者等との調整は十分に行えるものというふうに考えております。

 タクシー事業者による福祉タクシーと、これを補完しますNPOによるボランティア有償運送が共存をして、福祉輸送の一層の充実が図られるように、私ども行政の側も関係者と緊密に調整を図りまして、ぜひ実効性のある制度にしていきたいというふうに考えております。

鍵田委員 大臣、どうもありがとうございました。

 今おっしゃったように、協議会の中での話し合い、しっかりとまたやっていただきたいと思います。その辺を御指導いただくよう、よろしくお願い申し上げる次第でございます。

 時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

林委員長 北村茂男君。

北村(茂)委員 自由民主党の北村茂男でございます。

 時間が限られておりますので、包括的な、前段階の説明や輪郭的なお話は避けたいと思います。早速質問に入らせていただきたいと思います。

 道路運送法等の一部を改正する法律案について質疑をいたします。

 きょうは、午前から、この法律作成にも深くかかわってこられた参考人の方々や、あるいはこの法律に業務としてかかわりの深い方々の参考人としての意見陳述もございました。それに伴う質疑もございました。その中で、おおむね、私どもにも、この法律の目指すところ、あるいはこの法律の問題点等についても若干浮き彫りになってきているような感がいたします。

 そこで、きょうの午前中の質疑の中では、私自身も、まだまだ、今後運用の経過を経た上で、改正やあるいは修正や手直しということが将来起こってくるかもしれないな、そんな印象を受けながら午前中の質疑を拝聴させていただきました。

 そこで、まず大臣に伺いますけれども、今ほどお話もありましたように、市町村単位で設置をされる運営協議会等についても、実際に動いているのは四割あるいは五割弱だというようなお話もございましたし、参考人の意見の中では、全会一致を原則としてほしいというような話をする団体の方もありました。それで果たして地方での合意ができるのかどうかという若干の疑義も感じましたけれども、いろいろな角度からの、いろいろな立場からの意見があるんだなということだけは理解ができました。

 そこで、この法律の目指すところ、あるいは意図するところというようなものは出ているように思いますけれども、とりわけ大臣として、この道路運送法の改正に当たって、今はこのことが自分の一番期している問題なんだ、あるいは、若干もしも心引かれるものがあるとすれば、この辺に心引かれるものがあるんだということでも結構ですが、まず、この法律案のねらい、意図、そして若干そういうような問題でもあるとすれば、どんなところをお考えなのかを、まず大臣からお聞きいたしたいと思います。

北側国務大臣 この法律案が提出された背景は、もう委員も御承知のとおり、社会経済情勢の大きな変化にあると思います。高齢化がこれから本格的に進む、そして人口減少時代に突入して、過疎地域もこれからふえてくるだろう。そういう中にあって、従来の地域の足でございますバスまたタクシー等だけでは十分な利便性を確保できない、そういう場面がこれからますますふえてくるだろう。こういう中にあって、やはり地域のさまざまな多様な交通システムに対するニーズに的確に対応できるような、そういう制度をしっかりとつくっていく必要がある、こういう観点があると思います。

 我が国の自動車の保有台数は七千九百万台を超えまして、私どもが若いころから考えますと、本当に車を持っているのが当たり前のような、そういう車社会が成熟の時代を迎えつつあるというふうに思っております。そういう中にあって、今申し上げた本格的な高齢化社会の到来、過疎化の進行が進む中で、マイカーでの移動が困難な国民がこれから急増していくだろうというふうに考えられます。

 こうした国民の多様なニーズに的確に対応できるように、公共輸送サービスをきめ細かく改善をしまして、自動車を通じて国民や社会の安全、安心の確保を図っていくことが重要な政策課題と考えております。

 こういう認識のもとで、一つは、コミュニティーバスや乗り合いタクシー、市町村バス、NPOによるボランティア有償運送など、地域のニーズに応じた安全、安心な輸送サービスの普及を推進していく必要がある。

 もう一つ、違った面からなんですけれども、三菱ふそう等のリコール隠し等の不正行為がありました。また、先般から問題になっております架装メーカーによる不正な行為もありました。こういう不正行為の再発防止を図るためのリコール制度の充実だとか、そうした検査の強化だとか、そうしたことについても今回の法案で法改正をお願いしているところでございまして、こうした措置を通じまして、安全、安心な車社会の実現を図っていきたいというふうに考えているところでございます。

 先ほども御質問がございましたように、こういう新たな形態の事業を認めていこうとするときに、既存のバス事業者であったり、タクシー事業者の方々との調整がなかなか困難なことが各地域においては出てくるというふうに予想されます。そこのところは、この協議会で、やはり市町村が、地域地域で特性がございますので、市町村が主体となって、その調整をしっかりやっていただきたいというふうに考えております。

北村(茂)委員 確かに、今お話しのとおりだと思うんです。あるいは、さきの鍵田先生の御質問もありましたから、重複することは避けたいんですが、改正点が集約されておりますので、どうしても似通った質問になることだけはお許しをいただきたいと思うんです。

 急速な少子高齢化が進む中で、過疎化も進んでいる。その中で、公共輸送機関が果たす役割に限界と、一定の改善を加えて万全を期さなければならないけれども、その中で、補完と言っては失礼かもしれませんけれども、そういう側面を持ったいわゆる乗り合いタクシーやコミュニティーバスというものは、今全国的に広く展開されていることは御案内のとおりです。

 余り地元の話を言っちゃいけないのかもしれませんが、私の石川県でも、ほとんどのと言ってもいいほどの市町村がいわゆるコミュニティーバスを導入しておりますし、乗り合いタクシーも、能登空港の乗り合いタクシーは今かえって評判がいいんですけれども、非常に評価を受けているバスもございます。

 そこで、これからこんな時代が来るのかなという気がするだけに、国土交通省で把握されている、いわゆるコミュニティーバスや乗り合いタクシーの現状は全国的にどういうような状況になっているのかということを、まず簡潔に伺いたいと思います。

宿利政府参考人 まず、コミュニティーバスの現状でございますけれども、昨年の十月一日時点の統計でございますが、全国の市区町村の約半数に相当します九百十四市区町村でコミュニティーバスが運行されている実態にございます。

 また、乗り合いタクシーにつきましては、ことしの一月末時点の実績でございますけれども、全国で約千三百ルート運行されておりますが、このうちの四五%に当たります五百八十三ルートがいわゆる過疎地域で運行されているものとなっております。

北村(茂)委員 お話によりますと、そうすると千八百余の市町村のうちで九百十四ということですから、優に過半数を超えているということになるわけでありまして、なるほど全国的には、いわば今はそれが流行、はやりなのかなという思いすらするわけであります。

 そこで、過疎地で利用されております、いわゆる乗り合いタクシーでありますけれども、乗り合いタクシーについては、あらかじめ定刻の時間があるわけじゃありませんので、おばあちゃんが病院に行くので、何時ごろ、いつもの停留所、近いところで来ていただけませんか、はい、わかりましたというような事前予約型の、いわゆるディマンド型の乗り合いタクシーも各地で展開されているようでありますが、利用者にとっては非常にありがたい。過疎地だけに、定刻のバスよりもずっと感謝されているものだと思うんですけれども、これについては今後どういうような、さらにこれを国土交通省としては大いに広めていきたい、こういうような思いで取り組もうとしているのか、今の現状についてはどんなような取り組みを考えておられるのか、お聞かせください。

宿利政府参考人 まず、私どもの基本的な方向でございますけれども、今、北村委員がおっしゃいましたようなディマンド型の乗り合いタクシーといったものがその地域の輸送ニーズに適合するものであれば、それができるだけ普及して利用されるということが望ましいものだと思っております。

 そういう意味で、何らかの支援措置を場合によって考えなければいけませんけれども、従来は、生活路線の維持ということで、地方路線バスの維持のための国の補助制度と地方財政措置の組み合わせで対応しておりましたが、この中には、ディマンド型の乗り合いタクシーについては対象になっておりませんでしたけれども、十八年度予算におきまして従来の補助制度を一部見直しいたしました。その結果、市町村が主体になりまして、従来の生活交通路線を、コミュニティーバスやディマンド型の乗り合いタクシーといった、地域の実情に即した運送サービスに転換する場合の初期費用について国が補助できるような制度に変えましたので、今後、こういった措置を拡充することを検討しつつ、その普及促進に努めてまいりたいと思っております。

北村(茂)委員 ありがとうございました。

 多分、そういうことであれば、支援制度も十八年度から制度としてできたんだ、乗り合いタクシーについてもそういう制度の中で大いに推奨していきたいということであります。もちろん、それだけの支援制度をつくるからには、資格要件等についても一定の条件があるのだろうというふうには思いますけれども、過疎地における人たちの期待にこたえるという意味では、乗り合いタクシーの評価が高いだけに大いに努力をしていただきたいというふうに思います。

 そこで、コミュニティーバスや乗り合いタクシーがこれから広く普及をしていくと、これまでの路線バス、あるいは市町村で経営するような市町村バス等々の競合場面というようなところも場合によっては出てくるかもしれないという思いがいたします。

 先般、ある私どもの先輩のお話で、名前を言っていいのかわかりませんが、鬼怒川温泉で定期バスが撤退した。市町村が何とかバスをやろうということで、市町村バスを設営した。ところが、そこで民間会社が土日だけのバスをやって、バスの時間前に走っていってお客をどんどん持っていかれちゃって、その市町村バスも今までどおりの運営がとてもできなくなっているというような事態も起こっているというお話も聞いたわけであります。

 このようにして、いわゆる既存バスや市町村バスと競合するという場面も出てこようかと思いますが、その辺についてはどのようなことをお考えなのかを伺っておきたいと思います。

宿利政府参考人 コミュニティーバスや乗り合いタクシーが導入されるに当たりまして、既存のバス路線と調和のとれた、整合性のとれたバスサービスネットワークというのが確保されるということがなければ、かえって住民の利便性が損なわれるということが懸念されることになるわけであります。

 そういう意味で、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、今般、地方公共団体、地元のバス事業者や住民など関係者によります協議組織を設置して、そこでサービス水準や運賃などについて協議をしてもらう仕組みを構築することといたしましので、ここで関係者間が十分協議をしていただいて、それぞれの地域で、ふさわしい、より利便性が高くなるような交通ネットワークの構築について十分議論をしていただき、それを通じてそれが実現されることを期待しておるところでございます。

北村(茂)委員 どちらも大事なんでして、どちらだけを重要視しろと言っているのではありません。どちらともが競合しながらも存続できるように、その機能を果たしていただけるようにという意味で申し上げたわけでありまして、その努力に期待をしたいと思います。

 そこで、バスに関してですけれども、最近よく言われていることに、子供たちの登校、下校時の安全が脅かされているという事例がよくマスコミ等を通じて報じられておりますし、身近なところでも、何人声をかけられた、声かけ人間がどこそこにいるのではないかというような話が毎日のようにマスコミを通じて報道されております。いわゆる子供の安全が脅かされているという問題でありまして、とりわけ登校時よりも下校時における安全の確保ということが地域でも議論になっております。

 そこで、せっかくこのようにして市町村バスやコミュニティーバスというようなものがこの制度のもとで地域に貢献をする、あるいは地域から期待を担っているということであれば、子供たちの下校時、もちろん登校時も含めてでも結構ですけれども、とりわけ下校時の子供たちの安全を守るという立場から、いわゆる市町村バスやコミュニティーバスがスクールバスの機能を兼用できないかという問題についてはどのようにお考えなのかをお聞かせいただきたいと思います。

宿利政府参考人 北村委員御指摘の、子供を犯罪から守るためのスクールバスの活用ということにつきましては、児童生徒の登下校時の安全確保のための一つの有効な方法であると考えております。

 私ども、そのための選択肢を広げるべく、路線バスを活用した通学時の安全確保ということについて、文部科学省、総務省、警察庁といった関係省庁と今連携をして取り組んでおります。

 御指摘のコミュニティーバスや市町村バスにつきましても、これは、市町村がバス事業者に運送を委託して運行するコミュニティーバスや、みずから市町村が車両を保有して運行するコミュニティーバスなどもあるわけでありますけれども、その際に、バスルートを通学ルートに合わせるといいますか、通学ルートをバスサービスのルートに組み入れるということを行えば、コミュニティーバスであれ、市町村バスであれ、スクールバスとして通学時の子供の安全確保ということに十分機能するわけでありますから、そういった活用がそれぞれの地域で検討されることを期待しているところでございます。

北村(茂)委員 そうなりますと、問題点は、私もちょっと詳しくはないんですが、これまでバスの路線の許可、認可等については、運輸局へ行ってきちんと路線の指定だとかいうものをもらわなければできなかった時代がありましただけに、市町村バスあるいはコミュニティーバスはその手順を踏まなくてもできるというのであれば、今言われているいわゆる協議会の中で協議をすることによってそれが可能なのかどうかという問題が派生して起こってこようかというふうに思いますけれども、その辺についてはいかがでしょうか。

宿利政府参考人 今御指摘のような点につきましては、私どもも、可能な限り手続の弾力的な運用ということに努めたいと思っておりまして、そのような取り扱いをしていきたいと考えているところであります。

北村(茂)委員 次に、NPOによるボランティア有償運送の登録制度の導入に関して伺います。

 NPOによるボランティア有償運送に当たっては、事故やトラブルが生じないように、輸送の安全及び旅客の利便の確保のために必要な措置を講じていくべきであると考えているのですが、今申し上げたことは、先ほども冒頭に申し上げましたように、免許が一種だとか二種だとか、あるいはわずかの代金をもらっているんだからというような話もありましたけれども、平穏にそれが進んでいるときには何ら問題がない。何か一たんトラブルや事故やというようなときにこそ今言われているような問題が懸念されるわけでありまして、そういう意味では、具体的にどのようなことを、細かいことは省令でやられるというようなお話もありましたけれども、具体的に今わかるものであれば、この際明らかにしていただきたいと思います。

宿利政府参考人 今考えておりますことにつきましては、一つは、運転者の資格でございまして、これは二種免許の保有を基本としつつ、講習の受講など一定の要件を満たす場合にそれで足りることにすること、それから、運行管理の体制の整備をしていただくこと、それから、万一の事故時の損害賠償措置がきちっと講じられるような保険契約の締結を行ってもらうことなどを考えているところでございます。

北村(茂)委員 最後に、今後移動制約者の個別輸送ニーズがますますふえていくと思いますけれども、いわゆる福祉輸送の一層の普及促進のために、国土交通省としては今後どのような支援方法を進めていかれようとしているのかを伺って、私の質問を終わりたいと思います。

宿利政府参考人 福祉輸送のニーズにつきましては急増していると認識をしておりますが、残念ながら、福祉輸送サービスがニーズに追いついていないという実態にあると認識をしております。

 そういう意味で、福祉輸送普及促進モデル事業制度を十八年度予算から創設をいたしまして、この新しい仕組みを活用いたしまして、共同配車センターあるいは福祉車両の導入を支援していきたいと思っております。

 そのほかに、中小企業金融公庫などによる低利融資や税制上の優遇措置などを通じて、福祉輸送の充実発展を支援してまいりたいと思っております。

北村(茂)委員 ありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

林委員長 高木義明君。

高木(義)委員 民主党の高木義明でございます。

 今日、まさに移動の自由を保障するということは大切な課題でございまして、スペシャル・トランスポート・サービス、いわゆるSTSの成熟といいますか、これはまだまだそこには至っておりません。また、公共輸送機関のみでは行き届かない点について、今回の法律改正が提示されたと私は認識をいたしております。

 今回の道路運送法等の一部改正では、移動弱者あるいは移動制約者と言われる要介護者、障害者などの地域住民の移動手段を確保する、これをNPO等による自家用車での有償運送を可能にするという制度でございます。

 そこで、まずお尋ねしてまいりますが、改正法案の七十九条の四の一項の五には、登録の拒否について、合意しないときとありますけれども、この合意、不合意の判断基準は何なのか。何を基準に判断すべきか不明確であってはならないと私は思います。NPO等による有償運送の本来の意義、役割について、また位置づけ、この点について、国土交通省のお考えをお聞きしておきたいと思います。

宿利政府参考人 私ども、今回のNPO等による福祉有償運送につきましては、福祉輸送ニーズに対応するということと、それから、安全、安心な輸送サービスが提供されるということを目的にして制度を設けているわけでありますが、今先生の御指摘にありました、登録に当たって必要となる地域の関係者の合意に関する手続でございますけれども、これは、具体的には今後省令等で定めることになりますが、地方公共団体が主体となりまして、主宰をいたしまして、地元のタクシー事業者や地域住民、その他この問題について地域の実情をよく知っておって検討をするのにふさわしい方々から成る協議会を設置していただき、ここで十分な議論をしていただくことにしておりまして、この協議が調った場合に合意が得られているものと判断をして、登録をしていくということを考えております。

高木(義)委員 今回の改正によりますと、従来の福祉輸送の車両ではなくて、セダンが解禁されたということから、要介護者、障害者以外の健常者を運ぶ、タクシー等の営業類似行為、いわゆる白タク行為の温床となるという懸念が言われております。現行制度でも、有償貸し渡しは大規模な災害時等においては例外規定、八十条の一項でございますが、NPO等の有償運送については本来の意義、役割に沿った運用が求められると私は思います。

 そういうことで、特に運送対象者について、要介護、障害者などが自立歩行ができない、そして一人では公共交通機関を利用することができない方を会員登録することになっておりますが、その範囲について明確にすべきであると思いますが、この点についての考え方をただしておきます。

宿利政府参考人 今御指摘の範囲でございますけれども、基本的には今度の制度の趣旨に照らして考えるわけでありますが、今回は、要介護者や身体障害者など、単独ではタクシー等の公共交通機関を利用することが困難な移動制約者に個別の輸送サービスを提供する、俗にSTSと言っておりますけれども、そういうサービスを法律的な制度としてきちっと位置づけて提供し、それを促進するということが目的でございますから、この法律改正の趣旨、あるいはこれまでの関係者の議論、実は、午前中の参考人質疑でも出てまいりましたけれども、昨年の秋に関係者で相当精力的な議論をしてまいりましたが、その議論、それからその報告書に取りまとめられた結論、それから実態、こういったものを十分勘案して、関係者と調整しつつ、その範囲を確定したいと考えているところでございます。

高木(義)委員 次に、料金についてなんですが、利用者保護の観点からいいまして、この運送の対価というのは明らかにしておかなきゃならない事項だと思います。タクシーのおおむね半額という基準では極めて不明確。その中身において、きちんとしておく必要があろうかと思っております。タクシーは乗車したところからおりたところまで、こうなんですけれども、これに対して一部のNPOの場合、車庫を出たときから車庫に帰るとき、こういうことも想定されるという場合がございます。

 料金のあり方について最初から細かく定めておくべきではないか、このように思いますが、いかがでしょう。

宿利政府参考人 高木委員御指摘のとおり、現在は、運送の対価につきまして、法八十条一項の例外許可の運用ということで、営利に至らない範囲ということを基本としておりまして、具体的には、当該地域におけるタクシー事業者の運賃の上限のおおむね二分の一を目安に定めるということにしております。

 今回は、法律の中で、運送の対価につきましては、実費の範囲内であることその他の国土交通省令で定める基準ということにしておりますが、この実費の範囲内であることのほか、運営協議会の中で十分協議をしていただいて、その協議が調っていることといったようなことを定めることを今考えているところであります。

 いずれにいたしましても、本日も対価につきましてのいろいろな議論があったわけでありますが、この点は重要な点の一つであると考えておりますので、今後、関係者と十分議論、調整を図りながら、具体的な基準を定めていきたいと思っております。

高木(義)委員 次に、運転者の資格についてですが、これは午前中も参考人の皆さん方の質疑のやりとりでありました。代行運転は二種免許、そういう意味では、大切な、また十分注意が必要になる障害者、自立歩行困難な高齢者などを運ぶわけですから、一種免許では問題があるのではないか、こういう指摘がたくさん寄せられております。

 この件については、輸送の安全確保、こういう大命題がございますので、十分な対応が求められておる、このように私は思っております。二種免許を取らない場合、NPOボランティア小委員会のまとめによりますと、高度な技能習得を担保できるものとする必要がある、こういう指摘がされておりますけれども、これについてどう考えておるのか、この点について明らかにしていただきたいと思います。

宿利政府参考人 NPO等の福祉有償運送につきましても、御指摘のとおり、他人を有償で運送するものでありますから、輸送の安全が確保されることは何よりも重要な点だと思っております。

 その場合に、二種免許を義務づけるべきだという議論があることは十分承知しておりますが、実際の福祉有償運送の運送形態を考えてみる場合に、常にタクシーと同様の高いレベルの運転者の技能を求めることが適当かどうかという議論がございまして、私どもはそこまで求める必要はないのではないかと考えております。

 しかしながら、二種免許の保有を基本といたしますので、それが困難な場合には、それに十分相当する技能、知識が習得できるような講習の受講ということを一定の要件にしたいと思っておりまして、具体的な講習につきましては現在検討を進めているところでございます。

高木(義)委員 運営協議会の点についてただしておきます。

 改正法に基づいて省令で提起される運営協議会が私はポイントになろうかと思います。

 この運営協議会というのは、福祉輸送の必要性、輸送の安全性あるいは利用者の利便性等々について地域の関係者で協議をするということで設置をされたわけでありますが、移動困難者に対する輸送はこれからもかなりニーズが高まってくると思いますが、この運営協議会という制度が実効性あるものになるためには、当然、地元でよく状況を承知しておる自治体のリーダーシップ、これが私は必要になってくる、このように思っております。

 自治体のリーダーシップを高めるために、私は、国としても奨励促進措置というものを用意しながらこの制度の実効性を高めていくことが必要であろうかと思いますが、国土交通省、国としてのこの点に対する対応についてお聞きをしておきます。

宿利政府参考人 高木委員御指摘のとおり、運営協議会が実りある議論をして適切な判断をするかどうかということが、この制度を生きたものにできるかどうかの一つの大きなかぎだと私どもは認識をしております。

 きょうの午前中の参考人質疑の中で、運営協議会の設置に際して関係者の合意が必要であるといったような発言もありましたけれども、これは、従来から設置そのものは地方公共団体の自主的な判断に任されているところでありまして、この法律が成立した後もそのようなものでございます。

 私ども、この協議会の設置、運営に当たりましては、やはり主宰者であります地方公共団体がその位置づけや意義をよく理解していただくということが極めて重要だと考えておりますが、今回の法律改正によりまして、NPO等によるボランティア福祉有償運送の法律上の位置づけが明確化されることになりますれば、これを通じて地方公共団体の理解や協力が得やすくなるものと考えております。

 同時に、私どもは、協議会に地方運輸局あるいは運輸局の支局の職員を参加させるなど、関係機関あるいは地方公共団体と連携を図りまして、この協議会の設置あるいは適切な運営が行われるように努めてまいりたいと考えております。

高木(義)委員 政省令にゆだねられる部分が非常に多いわけですね。

 そこで、ここにいわゆるNPO等によるボランティア有償運送検討小委員会報告書がありまして、これはそれぞれの関係者の協議の中でまとめられておるものだと思っております。その政省令については、この報告書がベースになる、こういうふうに理解をしていいでしょうか。どうでしょう。

宿利政府参考人 この小委員会につきましては、先ほどの参考人の四名の方がまさに参加をしていただきまして、私もずっと参加しておりましたけれども、非常に熱のこもったやりとりを続けてまいりまして、その結果が今般の取りまとめになったわけでございます。

 したがいまして、私どもといたしましては、今回の改正案そのものがこの報告書で取りまとめられた内容を基本としてつくられたものでございますし、今後、制度の詳細部分について省令などで具体的に規定をしていくことになりますけれども、その際に、この報告書で取りまとめられました内容を十分踏まえ、また、引き続き関係者と十分調整をいたしまして、実態に即した実効性の高い制度となるように取り組んでいきたいと考えております。

高木(義)委員 時間も限られておりますから、次に行きます。

 いわゆる福祉輸送サービスの普及促進に向けて、国土交通省としては今後どのようなサポートをしていくのか、この点の考え方をお示しいただきたいと思います。

 例えば、大阪府の枚方市でございますが、共同配車センター、これを通して福祉輸送サービスの運行実績を上げております。昨年度一年間では一万六千四百七十七回であったのが、今年度は、一月までの十カ月間で二万二千九百二件、既に昨年実績を大きく超えております。

 この促進事業に当たっての国の役割は大変大きなものがあろうかと私は思いますけれども、今後、予算措置を含めて、こういった助成活動の拡大、そしてこの事業の推進、展開をされようとしておるのか、この点についてのかたい決意をひとつお伺いしておきます。

宿利政府参考人 今、高木委員からお話がございました大阪府の枚方市のケースでございますけれども、これは、共同配車センターをつくりまして、そこでタクシー事業者とNPO双方が協調して福祉輸送サービスを行っている、先進的でかつ極めてうまくいっている事例の一つだと考えております。その結果、利用者利便の増進に地域で大変役立っていると私どもも聞いております。

 私どもといたしましては、このような枚方市のような事例を全国になるべく速やかに展開をしていくことが必要である、こう考えておりまして、十八年度予算で、このような取り組みをする地域を福祉輸送普及促進モデル地域として認定をいたしまして、共同配車センターの設立や福祉車両の導入について地方公共団体と協調して支援をしていく、そういう補助制度を創設したところでありまして、これらの支援措置を通じて福祉輸送の普及促進を支援してまいりたい、このように思っております。

高木(義)委員 時間も参りましたので、最後の質問をいたします。

 いわゆるタクシー従業員を取り巻く実態でございますが、御承知のとおり、二〇〇二年二月一日施行の道路運送法の一部改正によりまして需給調整規制が廃止されました。これによりまして、まさに規制緩和、大量増車と低価格運賃競争によって、労働時間も延びたし、あるいはまた、それを延ばして営業収入をふやそうと頑張っておりますが、それもままならず、他産業との賃金格差は年々拡大をしておるという状況です。

 具体的には、これは厚生労働省の調査でございますが、二〇〇五年度におけるタクシー労働者の全国平均賃金は三百一万六千四百円、これに対して全産業労働者の平均は五百五十二万二千円との対比で、約二百五十万円低い賃金になっております。年間労働時間も、二千三百八十八時間で、全産業平均より二百四時間多い、こういう状況であります。

 今、格差社会が国政の大きな問題になっております。とりわけ、ハイヤー、タクシーに従事される方々の生計のもとになる現場の実態は極めて深刻化しておると私は思います。一部に、労働基準法やあるいは道路運送法に抵触する事例も散見をされております。したがって、前回の法律改正に伴う国会の附帯決議、こういった精神が生かされていないのではないか、私は、これに立ち返って、この点について十分な国としての対応をしていくべきであろう、このように思っております。

 大臣、タクシー規制緩和の影響についてどのように認識をされ、関係従業者の生活の安定と健康のためにどう対応していくのか、この点についてお考えを示していただきたいと思います。

北側国務大臣 今、高木委員から御指摘のあった問題は、この委員会においても何度も取り上げていただいているところでございます。

 平成十四年に規制緩和が施行されまして以降、実態を見ますと、既存の事業者の方々の増車が非常に多いわけでございますが、景気の低迷と相まって、事業者の方々は車をふやすことによって、そして、特に給与の体系が歩合制というふうな体系になっておりますので、逆に、事業者の側からすると、車をふやした方がいい、そしてその中で収益を上げていこうとされたわけでございますけれども、景気の低迷が続く中で一台当たりの収益というのは下がってしまう、したがって運転手の方々の収入も当然減ってしまう、こういう状態が続いているわけでございます。

 二つ問題があるかと思っておりまして、一つは、労働基準法違反等々の問題、これはどうあれあってはならないわけでございまして、今、それにつきましては、厚生労働省と連携をとりまして、そうした労働者の方々の、運転手の方々の労働環境の問題についてはしっかりと監視を厳しくさせていただきたいというふうに思っております。やはり最低賃金違反なんということがあってはならないわけでございまして、そうしたことについてしっかり監査の強化をしていきたいと考えているところでございます。

 また、もう一つは、今後のタクシー事業のあり方をどうするのか、ここはやはりしっかり議論をしていかないといけないと思っておりまして、今まさしくその議論をさせていただいております。六月ぐらいを目途に、タクシー事業のビジョンについて、実態も踏まえながら、今議論をさせていただいているところでございます。

 規制緩和によりまして、先ほど来議論のある福祉タクシーだとか観光タクシー等々、さまざまなタクシー事業が展開されるようになってきているといういい面もあると思っております。そういうプラスの面をしっかりと発揮していただけるようにするためにはどうすればいいのか、また運転手の方の登録の問題だとか、そういうことについても今議論をさせていただいているところでございまして、しっかりと議論をさせていただいて、今後のタクシー事業についての展望が持てるような検討をしていきたいというふうに考えております。

高木(義)委員 しっかりとした対応をお願いいたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。

林委員長 古賀一成君。

古賀(一)委員 民主党の古賀一成でございます。

 高木委員に続きまして、道路運送法の問題につきまして質問をしたいと思います。

 私も実は、かつて出向で交通警察も担当したことがございまして、そして、その後、道路行政も携わりました。そういう面で、町を歩いたりタクシーに乗ったりしますと大変関心が高うございまして、最近の道路状況を見ますと、世界じゅうを見ても、これほどタクシーの空車が複数車線にわたって占拠しているというか待っているという国は珍しいものであります。最近、特にそれが目立つような気がいたします。

 また、タクシーに乗りますと、私は必ず運転手さんに、最近景気はどうですか、稼ぎはどうですかと聞きます。タクシーの運転手さんがやはり一番景況感がありますね。自分自身の売り上げ、遠距離が少ない、近距離ばかりだとか、時間帯でこれだけ減ったとか、あるいは、後ろに乗っているお客さんがぼやくとか最近景気がよくなったとか、そういう情報が一番集まるのはタクシーの運転手さんだろうと思いますし、そういう意味でよく聞くんです。

 さて、彼らに最近給料はどうですかと聞きますと、最近、東京では上向いてきましたという声もあるし、稼ぎも地方都市に比べればまあまあという感じもなくはありませんが、地方都市に行きますと、これは本当に惨たんたるものでございます。

 せんだって、私の地元久留米市のハイヤー、タクシーの運転手さんの労働者の組合の皆さんとじっくり何度もお話をしました。月収手取り十万を切るという人はもう全然珍しくありません。もう生活ができないという現状をよく聞くわけでありまして、私は、きょう法案としてかかっております道路運送法改正によるいわゆる福祉輸送の強化というか、NPOの皆さんの登録による正規参加という問題の前提に、やはりこの問題をしっかりと見ておくべきだろうと思います。

 それで、先ほど、最後に高木委員から現状認識と今後の話がございました。ことしの六月までにタクシー事業の今後の展望、あり方ということで今研究をしているということですから、ぜひ、我々国会の意見と問題の視点もその研究会に伝えていただきたい、そういう思いで私はひとつ今から申し上げます。

 大臣にお願いをしたいのでありますが、問題は、先ほど大臣が、厚生労働省所管で最低賃金を割るなんということはあってはならないことだ、こうおっしゃいました。問題は、あってはならないんだけれども、あらざるを得ないような構造がある、そこが国土交通大臣あるいはこれから進むであろう研究会での一番の視点だろうと私は思うんですよ。それは、供給側と需要側、二つあると私は思うんです。これをしっかり今度の研究会で分析もしていただきたいし考えていただきたいと私は指摘をさせていただきたいと思います。

 まず、こういう構造になっているんですね。

 まず、供給側、つまりタクシー事業者、もちろん運転手もその中に入ります。先ほど大臣もちらっとおっしゃいましたけれども、ハイヤー、タクシーは事業の特性として、ほかの産業と違って、比較的、拡大、新規参入がやはり容易な事業分野なんです。これが根底にあるんです。そして、その結果、過剰参入と。

 規制緩和しても、過剰参入が不可能な分野もあるんです。設備投資をしなきゃならない分野というのは、そう簡単にはできません。タクシーについては新規参入が大変簡単だということで、過剰参入という現象があまねく全国で起きています。そして、慢性的な供給過剰体制というのがもう全国津々浦々でできている。

 そして一方で、供給側の問題として、運賃、コストですね、価格、この原価の八割は人件費であるという、これまた、ほかの産業にはないほど高い人件費の比率がこの業界というか事業にはある。そして、それが歩合制というもので構成されておるという実態があるんです。そこで、どうなるかといえば、業績が悪化してくれば運転手のいわゆる給与、所得に直結するという仕組みがもう組み込まれているんですね。

 私は、今度のNPOの参画を認めるにしても、今後のタクシー事業のあり方を議論するにしても、この点をしっかり踏まえて、どこを改正したらいいのか、それをしっかり考えていただきたい。

 そして、こういう構造の中に、実は、収入を確保するために長時間の労働を強いられ、過労、こういう流れが供給側にあるのでありまして、今度、翻って、需要側、お客さんの方を見ますと人口減ですよね。高齢化社会ですよ。

 もう、かつての繁華街とは大いに違い、今の若い人たちの飲むライフスタイルが変わってきた。夜十二時ぐらいになると、昔は、地下鉄はもうラッシュでしたよ。今、もちろん地下鉄もふえましたけれども、もう本当に、飲んだ人もほとんどいない。がらがらとは言わないけれども、昔に比べれば五分の一ぐらいの乗客数に、まあ銀座線とか有楽町線もそうですが、そう見えます。

 結局、ライフスタイルが変わって、お客さんが減った。もちろん、コンピューターとかそういうのもあるんでしょう。需要側は、人口減少の上に、そういうライフスタイルが変わり、そしてまた飲む文化、遊ぶ文化ががらっと変わってきた。

 そして、そういう需要側と供給側のミスマッチというか、供給過剰という体制の中に、これに対する手だて、展望、そういうものが示されないときに、実は、今まで八十条で運用としてやっておったけれども、今度は登録制でNPOのいわゆる有償輸送を認めますよと。であるものだから、きょうの参考人の皆さんの意見にも、邪魔はしたくない、認めたい、しかし心配だという、あの構造が私はできているんだと思うんですね。

 そういう面で、これまでの規制緩和、これだけではないんです、金融の規制緩和もある。いろいろな規制緩和が行われてきましたけれども、規制緩和をすべき分野における供給側と需要側、それの特性、日本的な問題もあるでしょう。そういうものを、現実というものをしっかり見た上で規制緩和をしなければならない、その議論がおろそかだったように私は思う。

 その結果、タクシーの運転手さんにすべてツケが回り、しわ寄せが来て最低賃金割れ、子供を本当に学校にやることもできないというような現状にあるわけでありまして、私は、そういう根底的な問題をこの法律の改正を機に議論すべきだ、こう思います。

 この点につきまして、大臣ひとつ、私の今申し上げました規制緩和、とりわけ道路運送におけるその規制緩和の行き過ぎといいますか、こういうものにつきましての御所感を承りたいと思います。

    〔委員長退席、中野(正)委員長代理着席〕

北側国務大臣 非常に本質的なお話をちょうだいいたしました。

 今議論しておりますタクシーサービスの将来ビジョン小委員会におきまして、今古賀委員のおっしゃっていただいたお話が、まさしく主要な前提であり課題であるというふうに思いながら、私もお話を聞かせていただいたところでございます。

 ただ、昔のように、また需給調整をやるということでは多分ないんだろうと私は思っているんです。そうではないと。規制緩和後に生じております、今のタクシーの業界の方々また運転手の方々の置かれている環境、そういうものをよく掌握した上で、また、今委員のおっしゃった構造的な問題についてよく検討した上で、今後の方向性について議論をさせていただきたいと思っておるんです。

 そこでの観点として、利用者にとっては、もちろん、多様なサービス提供がある、また料金も安い方がいいということは当然あるわけですが、それとともに一番優先されるのは、やはり安全に、また安心して輸送をしていただくということが、タクシー事業にとって、これは公共交通です、一番最も大事なことではないかと私は思うんですね。そういう観点から議論が展開できないかどうかということも、ぜひこのビジョン委員会で議論してもらいたいと思っているところでございます。

 今の委員のおっしゃった御趣旨をよく踏まえまして、今後、議論を進めさせていただきたいと思います。

古賀(一)委員 大臣も深く理解していただいたように思いますので、ぜひよろしくお願いします。

 ついでながらというわけではありませんけれども、もう一つ、やはり本質論について申し上げておきたいと思います。

 それは何かというと、この道路運送法の改正を見たときに、しばし私もあれっと思ったんですね、あれっと。なぜかというと、道路運送法というのは、今まで、ある面では許認可行政の典型、需給調整という手段を通じて一定の範囲に認可なり許可をエンクローズして、この中で、要するに既存の業者さんが生きていくというか、需給調整で稼いでいくというシステムだったんですね。

 ところが、二〇〇二年の規制緩和で、今度これがまたがらっと変わって、極端に言えば市場原理でやれ。その結果が、ほかの業界では珍しいぐらい過剰供給ということになったわけで、私は、今度の改正も、先ほどの七十九条ではありませんけれども、新たなNPOの参画を認めるという体制をとりながらも、根っこではもともとの道路運送法的な体質、エンクローズ的な体質がやはり残っている。だから、今度制度をつくっても、いわゆるタクシー事業者とかほかの人たちの合意がない場合は、登録は拒否されるという構造になっているんですね。

 だから、これは非常に極端なエンクローズ、ディスクロージャーじゃない、反対のエンクローズ、囲い込み、いわゆる許認可で仲間だけでやるという世界から、一方で、極端な過剰投資を生んだ規制緩和をし、今度新しい分野を認めるけれども、それはまだ一部には許認可行政的な、需給調整的な発想の残骸みたいなものが残り、しかし新しい看板は持っている。非常に不思議な感じにこの法律が私はできているように見えるんですよ。見えます。

 これが実際に運用になったらどうなるかというのは先ほど来ずっと議論もありましたし、先ほどの参考人の方も、この条文を見て、本当に、認めると言っているけれども認められてできるんだろうか、そこら辺がすっきりしていないんです。その根底は、私は、もともと許認可行政で来たそのルーツというかな、それが残骸が残っていて、国民の足、高齢者とか地域の人とか、そういう人たちは交通政策としてどう構築したらいいんだというビジョンが見えないから、みんな心配しているんだと思うんですよ。

 そこで、将来、今後こういう規制緩和をやるときは、先ほど言ったような需給側、供給側のいわゆる構造、根本問題、制度の問題を見るとともに、これからはどういうニーズがふえ、高齢化社会がどう進展する、地方はこういう状況だ、大都会はこうだ、そういう将来展望の中に、タクシー事業者の皆さんはここをやってほしい、しかし、タクシーではできないこういう分野がまだ拡大してあるではないか、我々の予測、分析はこうだ、それをこういう仕組みで担ってほしいという大きなシナリオが見えないままに、この七十九条の四を中心とした制度を組み立てておられるわけですよ。だから、将来が見えない。だから、私もこの運用について大変心配をします。参考人の方も大変そこを心配しておったように思います。

 どうでしょうか。これからの超高齢化、人口減、いろいろな社会変化が起こる中で、タクシーと今度参入されるNPOの人たちによるこういう福祉運送というものを、マクロでどういうふうに将来見通しを持った上でこれを提案されたのか、御説明をいただきたいと思います。

宿利政府参考人 お答えいたします。

 私ども、今回の法律改正を考えました背景は、昨年来いろいろ関係者で議論をしてまとめたものではありますが、その背景には、大臣からも御説明いたしましたけれども、やはりこれからの時代といいますか、今まさに進行しつつある急速な少子高齢化、あるいは過疎化に代表されるような地域の構造の大きな変化、それから、古賀委員がおっしゃいました国民のライフスタイルそのものが非常に大きく変わっていること、都市の構造も変わっていること、そういう中で、どうしても移動をしたいけれどもなかなか公共的な輸送サービスを利用できない人が現実に急増しているという実態と、困っておられる人がたくさんおられるということを背景に、どうすればいいかという議論の中で制度を設計して御提案しているものでございます。

 道路運送法の話がございましたけれども、これは私の考えでございますが、道路運送法自体は、需給調整規制を廃止いたしましたときに、法律の性格はまさに古賀委員がおっしゃったように百八十度変わりまして、従来の経済的規制を主としていた法律から社会的規制、とりわけ輸送の安全の確保を図るためにどういう規制をするかというものに変わったものだと認識をしております。

 その主たる主体が極めて厳しい要件をクリアして事業を営んでおりますバス事業者やタクシー事業者でありまして、こういう方々が旅客の輸送を担うというのが国民にとって一番安全、安心ということかもしれませんけれども、それで賄い切れない部分をNPOの皆さんに補完していただくという哲学でこの法律を構成したものでございまして、その具体的な仕組みは、先ほど来出ていますような協議会の活用であるとか、そこにおける協議その他という仕組みになったものでございます。

 いずれにしても、私ども、可能な限りこの新しい制度を活用して輸送ニーズにこたえていきたい、このように思っております。

古賀(一)委員 二〇〇二年の改正で百八十度というか抜本的に変えたんだというお話がありましたけれども、私は、やはり依然、道路運送法という法律体系の中に接ぎ木をしたように見えます。

 したがって、今回さらにNPOを取り入れるという新しい試みをされるわけで、私は、これが本当にうまくいかなかったら、やはり道路運送法という事業じゃなしに福祉に関する総合立法というようなことで、もう一回ガラガラポンで組みかえた法律を本当に将来つくらなきゃならぬと思うんです。

 そういう意味で、皆さん、これは本当に、看板はこうだけれども実態は全然違うということにならないように、今後の研究会の報告であるとかあるいは運用であるとか、そういうものをしっかりと私は主務官庁としてやっていっていただきたい、しっかり見守らせていただきたいと思っています。

 それで、この問題につきましては、実は警察庁と厚生労働省の方にも来ていただいておりますので、ひとつ、規制緩和後の、今のタクシーを中心とする交通事故の発生状況であるとか、あるいは最低賃金の問題の発生状況、それに対してどれだけ皆様しっかりと認識し、今後対応しようとしておられるのか、これは押さえておきたいところですので、両庁からの御答弁をお願いしたいと思います。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 規制緩和によりましてタクシーの台数が増加しておるということで、それがどのように交通事故あるいは渋滞等であらわれているかということでございますが、交通渋滞ということになりますと、これはタクシーのみが原因ではなく道路交通全体の状況によるものでありますので、タクシー台数の増加がそのまま交通渋滞の増加をもたらしているかどうかは明らかではありませんが、駅前や繁華街等におきますタクシーの客待ちのための違法な駐停車が増加しているとの印象を受けておりまして、現実に、平成十四年以降の営業用普通乗用車の駐停車違反の取り締まり件数を見ますと、取り締まり件数は増加しておりますし、また駐停車違反全体に占めます割合も増加しております。

 また、事故につきましては、平成十四年以降、タクシーによります交通事故の件数は増加傾向にありまして、平成十七年には二万五千百十件でございました。平成十四年に比べまして一千四百七十五件増加しているところでございます。車種別に見ますと、交通事故件数あるいは走行キロ当たりの交通事故件数いずれも、事業用乗用車が各車種の中で最も大きく伸びておるところでございまして、タクシーの台数の増加が厳密にどのような影響をもたらしているかは定かではないといたしましても、これらの数字を見る限りでは、タクシーの台数の増加ないし走行状況の変化が何らかの要因をなしていることは推定されるところでございます。

 警察におきましては、客待ちタクシーによります違法駐停車等でございますが、その原因があるわけでございますので、タクシーベイの場所やスペースの確保、あるいは無線タクシーの待機場所の確保等につきましても、関係行政機関、団体と連携しつつ対策を打ち、また一方で、悪質性、迷惑性の高いものにつきましてはこれを取り締まってまいりたい、このように考えておるところでございます。

松井政府参考人 タクシーの運転者につきましては、平成十六年には年間で平均労働時間が二千四百十二時間と、全産業と比べましても二百十六時間以上長くなるとか、それから、年間の平均賃金にいたしましても、全産業と比べて二百三十五万円低く、さらには平成十三年当時と比べても七・八%減の三百八万円台。こういった水準になる中で、御指摘のように、最低賃金法を割り込む労働基準関係法令上の問題が生じている、こういった認識がございます。

 このため、厚生労働省といたしましては、これまでも、業者による自主点検を実施して改善を促すということをやるとともに、積極的に監督指導をし、賃金、労働時間などの労働条件につきまして労働基準関係法令違反が確認された場合には、司法処分も含めまして厳正に対処してきております。今後とも、引き続きそういった的確な実施に努めてまいりたいと思っております。

 さらには、本年四月からは、国土交通省と共通の認識のもとで連携を図りまして、労働基準監督署とそれから地方運輸支局との合同による監督であるとか監査、こういったことを実施するとともに、最低賃金法令違反等についての相互通報制、こういったことをやっておりますが、これを拡充するというようなことを通じて確実な実施に努めてまいりたい、こういうふうに考えております。

古賀(一)委員 私は、この際指摘をしていきたいと思うんですけれども、こういう規制緩和がある、一つの制度の抜本改正があった、現状においてタクシー運転手の皆さんは、もともと低賃金の長時間労働というのは前からあったわけですから、さらにそれを加速するであろうこういう規制緩和の法制度改正というものがあったときは、後追い的に自主点検をするんじゃなくて、やはり労働行政を所管する役所として、それについて、だって権限があって責任があるんですから、そういう規制緩和があったら、後追いじゃなくて前もってちゃんとそれをチェックする、調査をする、そこで問題が起きていないかをいつも労働行政の立場から見ていくという姿勢が私は大変必要だろうと思うんです。それは私は後追いだと思いますよ。

 それで、去年の十一月十一日に自動車運転者(タクシー)の労働条件自主点検結果というものを出されました。この後、先ほど一般論としての監督とありましたけれども、あの文章を見る限り、文書による督促、要請を行うようなくだりしかなかったように思うんですが、私は、それでいいのかと。

 後追い的に調査をした、やはりいろいろ問題がありました、それで、今後気をつけてくださいよという形で文書で督促するぐらいのことで、あの現場の、いわゆる十万円を割る、子供を学校にやるだけの稼ぎもない、長時間労働してですよ、そういう実態から見ると、私は、労働行政として大変弱いのではないかと。やはりもっと、自分の所管の権限と責任がある分野については、国土交通省がそういう政策をとろうが何しようが、自分の所管については、私は、しっかりとそれをフォローしていくという責任を今後持っていただきたいと申し上げておきたいと思います。

 今度は国土交通省にお聞きしたいんですけれども、今後、全国のタクシー事業の実態を調査した上で、増車や新規参入を規制する緊急調整区域の指定要件緩和を検討する。先ほど大臣は、需給調整を復活することはないと。それは丸々制度として復活することはないと思うんですけれども、いわゆる緊急調整区域という形で、余りにも問題の多いところはやはり指定していくという方向を聞いたことがあるんですけれども、これについて御方針はいかがでございましょう。

宿利政府参考人 現在、古賀委員御指摘のような、緊急調整地域の指定という制度が道路運送法の中にあります。これは、急激な状況の変化によりまして、輸送の安全あるいは利用者の利便に著しい支障が生ずるような極めて例外的な事態につきまして、新規の参入あるいは既存事業者の増車を一定の期間につきまして一切凍結する制度でございます。

 この制度につきましては、改正法発足以来、厳格な指定要件を定めて運用してきておりまして、ことしの三月末まで、全国で唯一、沖縄の本島につきましてこの取り扱いをしておりましたが、この四月以降、要件に該当しなくなりましたので、現在は全国で指定されている地域がない状況でございます。

 この制度につきましては、本来、経済的規制がない中で事業ができる、その権利を例外的に制限する極めて権利制限性の強い制度でございますから、要件を明確にした上で、厳密に、かつ客観的、公平に制度を運用するように常に指摘を受けておりまして、現在、この四月からの新しい基準を設定して対応しているところでございますが、今この時点でその要件に該当する地域はないということでございます。

古賀(一)委員 先ほどモデル事業のお話が出ておりましたけれども、極端に緊急調整区域ということで時計の針を逆に回すというようなことも若干変に思うけれども、やはりこれは、先ほど申し上げましたように、地域特性があります、全国一律ではありません、この福祉自動車とかNPOの参画のあり方は。僕は、こういう緊急調整区域と今度の法改正という両極端だけじゃなしに、やはりいろいろなバリエーション、知恵があるんだと思うんですよ。うまいすみ分けの知恵も、考え出せば僕はあると思うんですよ。

 そういうところをやはりひとつ国土交通省自動車交通局が、全部基準を決める必要はないですよ、しかし、地域地域でいい知恵を出してごらんと。タクシー事業も成り立ち、もちろん移動制約者の方も喜び、そしてタクシー事業者もNPOの方々も、これならいい形じゃないか、そういうものをやはり具体的に、幾つかのパターンというものを全国で模索していくことだと思うんですよ。法律だけじゃ絶対解決しません。そこが一番重要でありまして、私は、その点、ひとつ御指摘をしておきたいと思います。

 それで、これは質問しようと思ったんですが、きょう昼にぱっと思いついて、思いついてというか前からあったんですけれども、警察庁の方に質問したかったんですけれども、イントロとして告知だけしておきたいと思います、当委員会じゃないかもしれませんが。

 今の問題は、タクシー事業者そしてNPOの方々の、運ぶ側の、移送する側の問題でありまして、移送してもらうのは、どっちみちいわゆる移動制約者ですね。私は、これからは移動制約者も車に相当乗ってくると。一番多いのは高齢者ですよ。今の九十歳の方なんか免許を持ってなかったでしょうけれども、我々が八十、九十になったって、私は免許を持っていますから、ほとんどの人が車に乗るだろう。やはり、そういう人たち、制約者も、今身障者の方々も乗りますから、そういう問題が一方にあると思うんです。

 ところが、これまでは、我々今の健常者は車に乗れますけれども、身体障害を持っておられた方が、やはりこれからは自立するために、社会参加、いろいろな意味で免許を取りたいという動きも既にあり、相当の方が、身体障害者運転者協会があるように、取っておられます。

 これについては、私は、警察庁として、今後、身体障害者の方みずからが自分の車で運転していくということをやるには、免許を取ってもらわなきゃならぬ。しかし、これは話を聞いたところ、全国でそれに対応できる自動車教習所は極めて少ない。教官がいない、それに合った車両がない、カリキュラムがない、マニュアルがないということでございまして、これはやはり、二百万人ぐらいの方々が身体障害を持っているけれども、運転免許を取って自立できるというニーズがあります。

 これについては、ちょっと本題から離れるんですけれども、重要な視点として、これは内閣委員会かもしれませんけれども、ひとつ私自身質問をしたいと思っておりますが、まず、簡単で結構でございます、そういう身体障害者に対する免許取得、教習所のシステムというものについて、今、警察庁交通局として何かお考えがあるんでしょうか、問題意識は。お答えいただきたいと思います。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 身体障害者の運転免許、従前は、身体障害を一律に欠格事由としておったときもございますが、平成十三年の道路交通法改正によりまして、一律にこれを欠格事由とするのではなく、実際に自動車の安全な運転に支障を及ぼすかどうかというおそれの有無によりまして、運転免許の取得の可否を判断するということにいたしておりまして、現在のところ、身体障害者を受け入れております自動車教習所は、全国千四百五十校のうちの大体三分の一くらいに当たりますが、五百七十所でございます。そこで、昨年の例ですと千九百十五人の方が卒業しておられます。

 私ども、障害者の社会参加、これは非常に重要なことと考えておりまして、今後とも、交通の安全を確保しつつ、障害者の社会参加に資する観点から、指定自動車教習所におきます教習の充実を図るように指導してまいりたいと思いますし、また、その運転の可能性の可否につきましても、例えば、今般は、聴覚障害につきましてどこまで可能かということで、この最後の研究成果が出てまいりましたが、それを免許制度の方にどこまで可能かということで移してまいりたい、このように考えております。

古賀(一)委員 時間がもうあとわずか二分になってしまいましたので、あとたくさんある問題につきまして、まとめて指摘を申し上げたいと思います。

 先ほど来、自動車有償旅客運送制度に係ります根本問題の一端を申し上げてきておりましたけれども、あとやはりもう一つは、地方分権の流れに行こうとしておるわけですけれども、これは依然、大変中央集権的な法律の立て方になっているように私は思います。それは、七十九条の四の運営協議会。例えば、省令等で定める一定の者が参画したもので、こういう項目について合意がなければ登録を拒否する、こう書いてあるんですね。これが最大の問題だと思うんですよ、私は。そこまで国が決めなきゃならぬのか。私は、もっと緩やかな、地域で議論してくださいと。一見地方分権のように見えるけれども、どうですか。

 タクシー事業者が、あるいは協会の方がメンバーで入るんです。NPOの方々はどうも解釈上入らないようなんです。そこで合意できなければ、合意しないと言えば登録拒否という法律がもう条文上設定してあれば、それはみんな、社長あるいは協会長と反対したらNPOは入れないんですよと、反対しろといかにも誘いをかけるような私は法律制度になっているんじゃないかと。何でこういう組み立て方をしたんだと逆に思って、看板は立派だけれども、腹の底ではNPOさんが入れないようにして、関係者がみんな戸惑うような法律構成になっているんじゃないか、かように思います。

 では、下条委員も来ましたから、後は恐らくフォローしてくれると思うんですが、その後、七十八条の二号及び七十九条の四の第一項五号に言っております例えば自動車有償旅客運送の有償という概念も、恐らく国土交通省で決めるんでしょうけれども、これなんかも地域分権で決めていい、もっと地域に調整をゆだねるような法体系にした方がよかったのではないか、かように私も思っております。そういうことで、この法律の体系はもう少し地方分権的な流れにしたらいいという話も含めまして、何か今後運用がぎくしゃくしそうな、そういう感じがしてなりません。

 したがいまして、今後、この法律がこういう審議を経まして通った暁には、この条文だけで後は知らないじゃなくて、その魂というか政策の方向性というのをやはり法律を提出した国土交通省でしっかりして、後は皆さんしっかりとこういう議論をするというような、そういう体系に運用上持っていっていただきたい。

 今度、これで法律はできたけれども、タクシーの運転手さんはいらいらかりかり、最低賃金はもっと下がった、NPOの人たちは一方で不満が募る、こういうような運用にならないように、また、その可能もまだある法律体系だろうと私は思いますので、後は皆さんの指導、運用、そこら辺が肝心なところでございまして、交通政策として、国土交通省がひとつ方向性を示していくという新しい展開を心からお願い申し上げまして、質疑を終わらせていただきます。

 以上です。ありがとうございました。

中野(正)委員長代理 続きまして、下条みつ君。

下条委員 民主党の下条みつでございます。

 本当に午前中から長い質疑の中で、ただ、それだけ重要な法案だというふうに思っております。あと一時間半でございます。ぜひ濃厚な質疑をしたいと思いますので、前向きな御答弁をお願いできればというふうに思います。

 今まで既にそれぞれの委員から、いろいろな大局観を含めたお話がありました。私の方は、少し個別に幾つかの疑問点をお聞きしたい。もちろん、午前中の参考人の方々の重要な意見もありましたが、既にもうそれぞれの委員の方からも御質問ございましたので、その中で対応させていただきたいというふうに思います。

 まず一番目に、利便性、安全性の確保という点でございます。

 福祉有償運送、これは運転者の方について御提案させていただきたいと思います。まずは、今回の運転者の要件として、普通一種免許でも講習を受ければ認めることとしている。この講習というのは、約二日間、講義と実技を受けるということであります。これ自体は、内容的に、いろいろ限定された地域とか場所、そして登録された方をやる意味では、その範囲内は私は結構だというふうに思います。

 ただ、問題は、どの場合も、しばらくたてばまた、その人間が例えば体を壊しているかもしれない、いろいろな悩みを抱えているかもしれない、心身的に。また、介護とかいろいろな部分のケアの部分が、しばらく時間がたつと少しずつ緩んでくるということは、僕はあると思うんです。

 そこで、プロの方の運行管理者レベルまではいかないので二日間でいいという講習ですが、問題はその後のケアですね。私は、法案を見る限り、その部分について余りちょっとよく見えないものですから、まず第一番目に、その後は、では一回講習を受けたらもうずっと、その方の身体状況、心身状況を含めて、運転なさる、ケアなさる方について全くもういいのか、それとも、定期的にきちっと節目を入れて報告してもらうようになっているのか、その辺をまず第一にお聞きしたい。お願いします。

宿利政府参考人 ボランティア有償運送でありましても、とにかく他人を有償で運送するわけでございますから、安全の確保についてしっかりやっていただくということは当然だと思っております。

 その意味で、二種免許を原則としつつも、一種免許プラス講習ということにいたしますが、その講習の内容と、それから今御指摘ありましたような一定期間経過後にブラッシュアップをするような仕組み、そういったものも含めて、法律の成立をさせていただければ、これから具体的な制度設計に向けて検討を進めていきたいと思っております。

下条委員 本当に、ぜひ検討していただきたいと思います。

 といいますのは、お聞きすると、やはり運転される方は、手短では例えば学生さんのバイトの方がいたり大学生がやっていたりすると、免許を取ってからすぐだったり、そして、試験があった何かとドタキャンがあったりすると、どうしても運転を頼む相手としては、やはりどちらかというと、もう退職なさった六十五歳以上もしくは七十歳以上に限定されてくるというふうになります。

 そうすると、旅客自動車運送事業運輸規則第三十八条には、大臣が認定する適性診断をプロの方は受けなきゃいけないというのが、これは釈迦に説法ですが、ありますよね。ですから、逆に言えば、同じ命を預かるNPOさんの部分についても、私は最初に言いましたように、この法案は大変いいと思います。きょうの参考人も、四人の方がいろいろおっしゃって、それぞれありました。百点ではないけれども、いい方向だと思います。まさに今局長がおっしゃったように、磨きをかけていただいて、その部分は一体どうしたら今後管理していけるかというのを、プロの方は必ず適性検査を大臣の認可のもとにやらなきゃいけないわけですから、同じ命を預かる身として、ぜひ今おっしゃったお言葉どおり進めていただきたいというふうに思っています。

 次に、保険に関してです。これは現在、損害賠償制度というのは、利用者保護のために、現行制度と同様に、運送に使用する車両すべてについて、対人八千万、対物二百万以上、任意保険もしくは共済、まあ共済の場合は搭乗者傷害を対象に含むものに限るとありますが、加入していることを求めている。

 この保険に対して、個人で加入する場合とNPOで加入する場合と僕はあると思うんですよ。私は、例えば、個人のセダンでいろいろ動いている場合、車は個人のものだけれども、やはりいろいろ毎日やってくれているから、じゃ、保険の方はNPOさんで払おうというふうになったとします。いろいろな事例も何百とあるでしょう、例えばの話です。その場合、端的に言うと、線引きがちょっと難しいのかなと思っています。

 というのは、例えば運転手さんがNPOの動きで動いている分には、私はこれは問題ないと思うんですよね、自分の車でNPOが保険に入っているのなら。だけれども、運転手さんだって、自分の車です、旅行も行くでしょうし買い物も行く。その私的に使用したときに、保険はNPOさんが入って、がちゃんとなっちゃった場合、イフです、もしもそうなった場合は、その線引きというのは、例えば、NPOで入っているからそっちでやらせてくれやというふうにやるのか。それははっきり言って規則上おかしいと僕は思いますけれども。

 その辺の線引きを、もうこれからどんどん進めていく中で、申しわけないですけれども、今まではこういう部分ははっきり言ってグレーです。わかっていて目をつぶったところもあると思います。例えば、八十キロの制限速度のところを八十五から九十で走るのと同じです。ただ、これだけ明快に法案が出てきて、いいぞ、どんどんある意味ではアクセル踏んでもいい人が出てくるよという段階の中で、保険の部分も明快にやっておく必要があるんじゃないかというふうに思います。その辺の線引きをお聞きしたいと思います。

    〔中野(正)委員長代理退席、委員長着席〕

宿利政府参考人 今御指摘の点でございますけれども、今私ども考えておりますのは、法人の所有する車両であれヘルパーが持ち込む個人の車両であれ、いずれにしても、仮にその車両で、NPO、ボランティア有償運送をしていて不幸にして事故を起こした、そのときに損害賠償責任が生ずる場合には、十分な損害賠償責任能力が担保されるような保険の付保を求めたいと考えております。

 具体的には、金額は対人八千万、対物二百万ということでありますが、今、下条委員から御指摘がありました点もちょっと念頭に置きながら、問題が生じないような制度を考えなければいけないと思っております。

下条委員 最初の前段は、局長、私が私の口から既に申し上げた部分であります。ですから、今私が言っているのは、NPOが加入した保険で個人で運転してがちゃんだ、どうするんですかということだと思います。

 この辺、大臣、今私が質問させていただいた部分ですが、個人で、NPOが入っている保険のときにがちゃんこになっちゃった、これは一体どういうふうにすみ分けしていくんだということで、局長が今、今後検討するというふうにおっしゃっていただいたんですが、大臣の御意見もお聞きしたいと思います。

北側国務大臣 大切なことは、利用者の方々がそうした万一の事故があった場合にきちんと賠償を受けられるということ、賠償を受けられるような担保がきちんとあるということが最も大事なことだと思いますね。

 そういう意味では、先ほど局長が答弁しましたように、ヘルパー持ち込みの車両であっても、そのヘルパー持ち込みの車両についてそうした任意保険へきちんと入っていることが登録の前提ということになるわけでございまして、あとはむしろそのNPOとヘルパーとの間の問題になってくるのかなというふうに、今お聞きしながら聞いておったわけでございます。

 肝要なことは、利用者の方の賠償がきちんとなされるというふうな担保がなされていること、それが確保されているかどうかが、私どもからすると大事なところではないかというふうに考えております。

下条委員 私の質問は、個人でその車を使っていたときに事故が起きたらどうするんだという質問、急にちょっと大臣にお話ししましたので、ぜひ、局長がおっしゃったとおりの中で今後検討して線引きをしておかないと、実を言うと、言いにくいんですけれども、白タクの部分と同じで非常にグレーな部分に私はなってくると思います。ですから、これは今後の課題として、きょう法案は、大変いい法案で、恐らくですが通るんじゃないかと思いますが、その後の検討材料の中に入れておいていただくというふうに先ほどおっしゃったので、ぜひ御検討をお願いしたいというふうに思います。

 次に、私も子供が大好きなものですからどうしても子供の話題になるんですが、過疎地有償運送の対象となる旅客を見ると、その中には妊婦が含まれています。過疎地の有償の部分では妊婦が含まれている。一方で、福祉有償運送の対象には妊婦は含まれていません。つまり、おなかに赤ちゃんがいる奥様また女性の方については、福祉有償運送の対象には妊婦は含まれていない。簡単に言えば、過疎地でない妊婦の方はこの対象になっていないということで、一、二、三という回答になると思うんですが。

 そこで私は、これだけ少子化とか弱者救済とかいろいろな手当てを出していながら、私も見ておりまして、私は女性ではありませんが、やはり最初の母子手帳をいただいてから数カ月間の間は、一番私は安定期に入るまで大変だと思うんですよ、女性は。そのときに、がたがた揺れるバスに乗らなきゃいけない、いつまでも立っていなきゃいけない、寒い中、雪の中、立っていなきゃいけない。例えば局長が、自分のお嬢さんがそうなったらどう思いますか。だと思うんですよね。

 ですから、今回の法案でどうだと私は申し上げない、今後の課題として、過疎地でないところの妊婦の方もぜひこの福祉有償運送の対象に入れていただくよう御検討いただきたい、こういう私の提案であります。

 これは、本当に極端な話、東京都の中央区では、出産前の産婦人科通院の交通費として三万円のタクシー券をもう出しているんです、現状。そしてまた、ある地域によっては一割引きでサービスをやったりとか。だんなさんが会社へ勤められていて御自身は車がなかったりして、極寒の中また暑い中、お子様がおなかにいながら。私は命の値段は同じだと思っています、どの年齢の方も同じ。

 そういう意味では、局長、妊婦の方は二人分であります。ということは、私に言わせると、倍の命を今預かっているということであります。この辺、ぜひ御検討いただきたいんですが、御意見をお伺いしたい。

宿利政府参考人 下条委員からの御提案、御指摘でございますが、まず、今回の法律改正の趣旨は、これが過疎地あるいはボランティア福祉有償運送としましたのは、バスやタクシーという公共交通サービスを利用したくても、サービスが全くないか、あるいはその身体的な条件その他の理由によって通常の公共輸送サービスが利用できないような方について、特別の取り扱いをしなければ社会参加あるいは日常生活が営めない方にどうやって足を確保するかという観点からのアプローチでございます。

 妊婦の方につきましては、おっしゃるようにバスの問題などが万全かどうかについてはいろいろな見方があると思いますが、少なくともタクシーの利用というのは通常は可能ではないかと思いますので、その限りでは別の範疇ではないかと思います。別の範疇だとして、そういうものをどう考えるかというのは、これは福祉政策の問題も含めて、国全体としては一つの検討の課題ということではなかろうかと思いますが。

下条委員 まさに今局長おっしゃっていただいた、要するに、私に言わせれば、今NPOさんがやられている部分だってタクシーを使えば使えるんですよ。みんな金を払えば使える。

 だから、私に言わせれば、お金の問題もさることながら、やはり今これだけ不景気の中でお子さんを産む決心をなさって、そういう立場にいらっしゃる。また、それについては今後も出産費用を含めていろいろなものがかかってくるわけですよ。そうすれば、どの主婦も、なるべくだったら赤ちゃんを守りながらバスとか安いもので行きたいと思うんでしょうけれども、物すごい込んでいるところは避けなきゃいけない。そして、暑い中も立ってなきゃいけない。寒い中もいなきゃいけない。そういう意味では、ある意味では、今まさに最初におっしゃった範疇に私はかすめる部分だと思っているんですよ。すべてクローズドされていると思っていませんが。

 ですから、今回の法案のスタートを切った後の検討課題として、私はこの部分は、命が、申しわけないですけれども、一・五倍、二倍になるわけですから、温かいフォローを検討材料に入れていただきたい、そういう意味であります。いかがでございますか。

宿利政府参考人 委員の御指摘、御提案の趣旨は理解したつもりでございます。ただ、私の率直な感想を申し上げますが、交通政策の問題として考えるのか、福祉政策あるいは少子化対策といいますか、そういう観点の問題としてとらえるのかということにつきまして、いろいろな考え方があるのではないかという印象を持ちました。

下条委員 ぜひ、検討課題の中で、温かい中で入れていっていただければというふうにお願い申し上げたいと思います。

 次に移ります。次は、運送主体のNPO等における個人情報の問題であります。

 いろいろな方が会員登録して、その中でNPOさんがその方のところに迎えに行き、そしてお送りしたりケアをしていく、こういうことでございます。

 個人情報保護法、これは釈迦に説法ですが、安全管理措置として、個人情報の取り扱いについてさまざまな義務を事業者に与えています。そうですね。その中で、個人情報データベースにある個人の数が五千人以下の事業者はこの法律の対象外になっている。つまり、個人情報も、いろいろなロックの義務化を与えているんだけれども、データベースが五千人以下の場合は余り義務化が入っていないということであります。

 私は今までいろいろな話をNPOさん含めてお聞きしております。その中で、対象が五千人より多いかというと、どうもそうでもないような感じがするのが多いと思います。まあ百とか三百とか、五十とか五百とか、せいぜいそのぐらいじゃないかと思うんですね。そうなると、逆に言えば、個人情報の保護の義務が、たががちょっと外れてしまっているわけです。

 ただ、私は、そこで問題は、今よく言われる振り込め詐欺から始まって、弱い立場の方が物すごい多いわけですよ。そこにはいろいろな会員の情報、年齢、住んでいるところ、もしくはひとり者かもしれない、おひとりでの奥様かもしれない。もしくは、言いにくいけれども、賞罰もあるかもしれない。もしくは精神的な障害を持っている方かもしれない。この情報が、今言った個人情報保護の五千人の対象会員数よりも低い場合は、全部とは僕は申し上げません、低い場合は義務がないわけです。ということは、ぽんと机の上へ置いておいてもいい、極端な話。この辺が出てくる可能性がある。

 私は、なぜ個人情報が出たかというと、やはりデータが外にどんどん漏れちゃ嫌ですよという人が多いと思うんですよね。そうじゃなければ、NTTで住所から電話番号から名前がわかるような状態もないでしょうし、また、現在いろいろな振り込め詐欺があって、そういう方向にいろいろな問題が流れているわけですよね。

 ですから、私は、特にこの弱い立場の方々の情報というのは、この先、この法案はいいと思います、この先として何かやはりきちっとロックを入れておかないと、情報がどんどん流れて、私もある民間の企業にいました、一人のところに行きます、一人のところは幾らでも悪いことをすると言うと言い方はあれですけれども、できちゃう。それは、今のNPOの方々が悪いと言っているんじゃないです。今後、それを使ってそういう新しい犯罪が出てくる可能性に対して提供してしまうということもあり得るかなというふうに思います。

 ですから、今後の話として、局長、このロックの部分、情報のロックについてどういうふうに御指導していくか、教えていただきたいと思います。

宿利政府参考人 下条委員御指摘の個人情報保護の課題につきましては、私も重要なテーマだと思っております。

 二つの場面があると思いますけれども、一つは、NPOそのものが会員を募りまして会員登録した方の移送サービスを行いますので、会員についての個人情報を知ることになるわけでありますが、当然その中にはその個人の移動制約の状況がわかるような情報があるわけでありまして、これは個人情報保護法の直接の適用は大半はないと思いますが、しかし、NPO法人がそういった個人情報を適切に管理するということについて十分理解をして対応していただきたいと思っております。

 それからもう一つは、運営協議会におきまして、移動制約者として会員としての取り扱いをすべきかどうかという議論をする場合があるわけでありますが、この場合には運営協議会自身がそういう情報に接する可能性があるわけでありまして、これは運営協議会を主宰する地方公共団体に対しまして、そういう個人情報保護の趣旨を十分理解した上で協議会の運営などをやっていただくように、自治体に対して働きかけをしていきたいと思っております。

下条委員 ありがとうございます。

 弱い立場、認知症にもなっている方もいるし、体の動けない方もいらっしゃる。もともとそういう方々の会員登録の情報でございます。ぜひ、今おっしゃったように、今後とも引き続き御指導そして御検討いただきたいというふうに思います。

 ちょうど時間が来てしまいましたので、最後に一点だけ、リコールについてちょっとお聞きしたいと思います。申しわけございません。

 今回このリコールについての研究所ができて、その理由、そしてそれの起きたことに対してチェックするシステムは、僕はすごくいいことだと思っています。ただ問題は、虚偽報告とか報告義務違反についての日本の罰則というのが、一年以下の懲役もしくは三百万円以下の罰金、法人に対しては二億円以下、これはもう法案に載っていますから、そうですね。

 一方で、繰り返さないために、再犯したり再々犯した場合は、言いにくいけれども、海外なんかの場合は見せしめ的に罰金を科すわけですよ。ですから、私は、今回の部分についても、それは人間だれも間違えます、法人もだれも間違う、一回はいいよと。しかし、二回、三回というのは、これはもう意図的としか思えない。ですから、その部分については、やはり再犯、再々犯については明確に行政府から、罰金もしくは罰則が重いぞというのをこの法案以上に出すべきじゃないかと私は思っているんです。そうしなければ、いやいや、どうせこんなのだよということになって、ともかく、やってもきちっと報告すればいいんですから、何回やってもいいわけですよ、極端な話。この部分の足かせが、ロックがきいていないです、法案の中に。

 ですから、何回も申し上げます、この法案はいいですが、今後の話として、リコールのチェックはいいけれども、リコールを報告する方々に対して、何回もやるんでしたらもう、何でも罰則はそうじゃないですか、ふえていくと。だから、その辺はぜひ、再犯、再々犯の場合は罰則規定を今後の課題として膨らませていってもらいたいと思いますが、最後の質問になりますが、御意見をお伺いしたい。

林委員長 宿利自動車交通局長、申し合わせの時間が経過していますので、簡単明瞭に答弁を願います。

宿利政府参考人 今、下条委員から御指摘の点でございますが、私どもの認識としましては、平成十四年に改正をしまして引き上げられました現在の懲役刑あるいは法人重罰二億円を含めた罰則というのは、最も厳しい罰則レベルだと考えております。

 累犯の場合に、再犯の場合にどうするかというのは、それは一つの刑事政策上のいろいろな議論はあるかもしれませんけれども、今この時点で、私どもとしては、そういうことが適切な措置かどうかということについてはまだ明確な方針を持っておりません。

下条委員 もう時間が来てこれで終わりにしなきゃいけませんが、今後の課題として、その繰り返しているところについては、海外では厳しいですから、ぜひ今後の検討を含めて前向きに御対応していただきたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

林委員長 高木陽介君。

高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。

 本日は、道路運送法の改正案ということで質疑を行わさせていただきますけれども、冒頭、委員会というのは国会の中でも本当に重要なものであり、特に法案の審議ということで、理事会等々でも野党の理事の先生方は、野党は質問することしかできないんだ、委員会が大切だということを重々述べられておりますので、きょうは大分席の方が、きょうは委員会が重複しているというのもありますけれども、なるべく法案審査のときには、与党側はかなり座っているんですけれども、野党側の方、なるべく、質問の内容もしっかりと聞きながら法案を深めていきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 まず最初の質問でございますけれども、規制緩和が一つの時代の流れとなっておりまして、その中で、例えば既存のバスの事業者の不採算路線からの撤退、こういうのがあると思うんですね。これによって交通の空白地域が出てしまって、地域の公共交通というのがかなり厳しい状況になっている地域もあると思われます。

 私の住んでおります多摩地域もやはり、鉄道網というのが放射線に都心の方には延びているんですけれども、ある意味でいうと、南北にはなかなかないということもあって、バスというのが大きな足となっております。そういった部分を含めまして、規制緩和以降の不採算路線からの撤退、これとともに、今回の改正でどのような効果があるのかということも含めまして、冒頭、大臣にお伺いできればと思います。

北側国務大臣 平成十四年二月に規制緩和が行われたわけでございますけれども、乗り合いバス路線の廃止につきましては、実を言いますと、それまでも、この規制緩和以前においても廃止が顕著でございました。その当時は同法施行前でございますが、年平均約九千キロ、規制緩和後も年平均約八千キロでございまして、この規制緩和の前後を通じてバス路線の廃止が進展している、進んでいるという状況だと思います。

 三多摩は過疎地とは言えないと思うんですが、ただ、今おっしゃったように、南北の路線について交通空白地域が生じてきているということはそういうことだと思いますし、全国的に見れば、過疎化の進行に伴いまして、地方部で交通空白地域が拡大したり、交通空白でなくても運行頻度が低下をして利用者の利便性が低下している、こういう状況にあることだというふうに認識をしているところでございます。したがって、この地域住民の足を確保していくことは大切な、重要な政策課題というふうに認識をしております。

 こうした中で、各地でコミュニティーバスまたは乗り合いタクシー、ディマンド交通等が、そうした多様な形態の運送サービスが提供されてきているわけでございますけれども、具体的には、コミュニティーバスにつきましては、全国の市区町村の約半数に相当する地域でこのコミュニティーバスが導入されておりますし、乗り合いタクシーについても、一千三百ルートございますけれども、そのうちの半分近くが過疎地において運行されている、こういう状況でございます。

 こうした実態を踏まえまして、今回の改正法案では、こうしたコミュニティーバス等の普及促進を図るとともに、市町村バス等の制度化を行うこととしたものでございます。そして、一方で、安全、安心な旅客運送サービスがきちんと提供されるような制度とさせていただいた、そうした方向にしっかりと努めてまいりたいと考えております。

高木(陽)委員 今、コミュニティーバスの話も出ました。本当に、自治体等も含めまして、地域でいろいろと工夫しながらやっているのは確かなんですね。ただ、なかなか財政的な部分もございまして、これは前回の法案、都市計画法の部分でも、郊外型の部分で、この公共交通の重要性というものが議論されたと思いますので、この点、今回の法改正を含めまして、しっかりと国交省の方でもこのいわゆる公共交通という角度でバックアップをしていただきたいということを要望しておきたいと思います。

 続きまして、第九条四項におきまして、運賃・料金の規制につきましては、一般乗合旅客自動車運送事業者が、地域における需要に応じて住民生活に必要な旅客輸送の確保等を図るため乗り合い旅客の運送を行う場合、地方公共団体や一般乗合旅客自動車運送事業者、または住民その他、ここからですね、国土交通省令で定める関係者が合意した場合、事前の届け出で足りるとしていると。

 この関係者というのは、おれは関係者だ、私は関係者だ、いろいろな人がいると思うんですね。ここら辺の範囲、またはその合意の手続。やはり、その合意というのが結果としてなされたというのは大切なんですけれども、そのプロセスの段階というのが重要だなと思うので、この点についてどのように定めているのか伺いたいと思います。

宿利政府参考人 お答えいたします。

 今回、地域の関係者が運賃・料金について合意している場合、これは不当に高い運賃が設定されるというような心配がありませんから届け出で足りる、こうしたわけであります。

 その場合の関係者でありますけれども、これは今後、具体的には省令で範囲を決めますが、主宰者であります市区町村、地方公共団体ですね、それから住民の代表、利用者の代表、それからバス事業者、道路管理者や警察当局、それから運輸局の職員といったような人を念頭に置いておりまして、最終的には省令の中で構成員について確定をしたいと思っております。

 また、合意のプロセスでありますけれども、これらの関係者で十分議論をしていただきまして、協議が調ったということをもって合意と判断をすることにしております。

高木(陽)委員 住民にとってみればその合意の部分というのはすごく重要であり、なぜそうなったのかということをしっかりと告知するというか知らしめていく、こういった努力もよろしくお願い申し上げたいと思います。

 続いて、自家用有償旅客運送者の業務につきまして、輸送の安全または旅客の利便が確保されていないと認めるときは、運送者に対して、四つございまして、一、運行の管理の方法の改善、二、路線または区域の変更、三、旅客から収受する対価の変更、四、旅客運送に関し支払う損害賠償のための保険契約の締結というのを七十九条の九で規定しておりますけれども、これもどのような基準になっているのか、輸送の安全または旅客の利便が確保されていないと判断するのかということを伺いたいと思います。

宿利政府参考人 輸送の安全や旅客の利便が確保されていない場合でありますけれども、例えば、運行管理が著しくずさんであるような場合、あるいは利用者への適切な情報提供がなされていないような場合、あるいは実費を明らかに超えるような対価を得ているような場合、あるいは必要な保険に加入しておらずに十分な損害賠償措置を講ずることができない場合、こういったことが考えられますけれども、具体的には個々の事案に即して判断することになると思っております。

高木(陽)委員 時間が限られておりまして、リコールについてちょっと伺いたいと思います。

 まず、ふぐあいの初報、これからリコールの届け出の期間、平成十五年の場合には平均して十・三カ月、平成十六年は三菱ふそうの問題を除いて十・一カ月、これはちょっと長いんじゃないかな。やはり、初報があって、リコールされるまでの間、届け出るまでの間、これはこれでずっとあるわけですから、この点について、長期化の原因または時間短縮のための対策はあるのかどうか、この点を伺いたいと思います。

宿利政府参考人 一般論でございますけれども、自動車メーカーがリコール届け出を行うためには、まず、ふぐあいが最初に出てきたということ、それが幾つか出てきて、それを確認した上で発生原因を究明して、かつ改善措置を見きわめた上で届け出をしてくるということでございますから、ある程度の期間は必要だと思っております。

 しかしながら、私どもとしても、安全、安心を確保するという意味では、リコール手続が速やかに行われて早期にふぐあいが改修されるということが必要だと思っていますので、自動車メーカーなどに対して速やかなリコールの届け出を指導してまいりますし、国土交通省としても、独自にふぐあい情報の収集に努めまして、早期のリコール届け出の実施について努力をしてまいりたい、このように思っております。

高木(陽)委員 今回、リコール制度の強化についてということで、技術的な検証、これは独法の交通安全環境研究所に行わせる、まさにこれは期間短縮にも役立つかなと思うんですけれども、ここら辺のところの効果、どのような効果があるか、お聞かせ願いたいと思います。

宿利政府参考人 現在は今回法律改正で予定しておりますような技術的な検証を組織的に行う体制になっておりませんので、リコールの疑いが強い案件についても、結局メーカーが提出します書面などの審査をするというようなことでとどまらざるを得ない面がありますけれども、今般の措置が講じられますと、実車実験などで技術的な検証をきちっと行いますので、それによりましてリコール隠しなどの不正行為を防止できる、このように考えております。

高木(陽)委員 最後の質問にしたいと思います。

 全国の二万八千ある指定整備工場、これに対して国交省地方運輸局が監査をすると思うんですけれども、現状の地方運輸局の人員体制でこれができるのか、やり切れているのか、この点、やはり一番大切なのは現場だと思うんですね。国交省というのは巨大な官庁でありますけれども、やはり現場を持った官庁である。そういった部分では人員体制を強化していく、今行革の流れでなかなか人というのはふえない流れなんですけれども、やはり安心、安全を確保するためにはこういった点にも力を入れていかなければいけないんではないかなと思いますが、最後にこの点を伺いたいと思います。

宿利政府参考人 現在、指定整備工場に対します監査は地方運輸局の支局等の職員、約三百三十人で対応しております。年間の実績は、十六年度で、二万八千の工場に対しまして三万五千回の監査をやっております。

 一方で、昨今の問題は、指定整備工場がいわゆるペーパー車検その他の悪質な違反を行う事例がふえてきておりまして、そういう意味で、監査を厳しく行うということが非常に重要な状況になってきておるわけであります。

 私どもは、監査基準、処分基準の見直しをして、悪質な事業者に対してめり張りをつけた処分をやるように四月から改めました。それから、監査職員のレベルアップを図ったり、効率的な監査を行うというようなことを通じて、指導監査の充実を図ってまいりたいと思います。

 要員が限られておりまして、その中でやりくりをしなければいけませんけれども、私どもでできる努力は精いっぱいやっていきたいと思っております。

高木(陽)委員 持ち時間はもう少しあるんですけれども、これまで時間が大分オーバーしてまいりましたので、ここでペーパーどおりの時間に戻したいと思いますので、いろいろとありがとうございました。

林委員長 穀田恵二君。

穀田委員 今回の法改正案が施行されると、きょう午前中の参考人質疑にもありましたように、明確な区分や見直し、すみ分けというふうな話が、随分意見が出ました。

 そこで、これまでNPO等がボランティアとして行ってきた移送サービスについて、過度の負担を求めることになってボランティア活動の芽を摘むことにならないか、そういう面がありますが、まずその点についてのお答えをしていただきたいと思います。

宿利政府参考人 今般の制度は、自家用自動車でありましても、有償で他人を運送する以上は、輸送の安全及び旅客の利便を確保するために必要な最低限の措置を求めるものであります。

 当該措置の内容につきましては、現に行われておりますNPOなどによる移送サービス、ボランティア福祉有償運送が過度に萎縮をし利用者利便を損なうことがないように、実態を十分踏まえたものとしたいと思っております。

 いずれにいたしましても、今後、省令などで詳細な内容を定める際には、関係者と十分調整を図りながら実効性のある制度にしていきたいと考えております。

穀田委員 先ほど、政省令という問題では、午前中も私は参考人に質問をしましたが、ここが本当にかぎを握っている。これは、単に自分たちで決めるというのではなくて、きょうの参考人の方々も、結構矛盾があるということが随分出ました。したがって、私は、そこの点を踏まえた形でやることがどうしても必要だし、ボランティア活動が萎縮したり縮小したりすることのないように、その点をしっかりやっていただかなければならないと考えています。

 そこで、二つ目に、今回の法改正案によって、自家用自動車を用いて有償で他人を移送する場合は国土交通大臣の登録を受けなければならないことになっているけれども、例えば、助け合いとか相互扶助を目的として仲間内で自家用自動車で送迎などを行って、その際に、感謝の気持ちを示す意味で少額の金銭のやりとりがあるような場合であっても、有償とみなして登録を受ける必要が生じるのでしょうか。

宿利政府参考人 有償性の判断につきましては、個別具体的な事例に即して行う必要があると考えております。

 単に社会通念上相手方の好意に対する謝礼としての意味にとどまるような金銭の収受が行われたにすぎないようなケース、これは、これまでもガイドラインで示してきておりますけれども、有償による輸送とは解さないということにしております。

穀田委員 実は、私、昨日もそういう点が非常に不安だという方々の要望をお聞きしました。

 例えば透析患者の方々。この方々の多くは、今二十万人ぐらいの患者がいますが、その方々の年齢の平均が六十五・八歳、そして少なくとも透析に週三回通わなければならない、当然、往復六回、月にして大体二十六回ぐらいの往復をしなくちゃならない。そういう方々が、どれだけ身内でこれをやって、一緒にやろうとしているか。ボランティアで支え合っているという活動が、少なくともこれでできなくなるようなことにならないようにしなくてはならぬと改めて私は指摘しておきたいと思います。

 大きな二つ目に、不正車検の問題について次に質問します。

 昨年、三菱ふそうトラック・バスの一〇〇%子会社の架装メーカー、パブコが新規検査等の受検の際、トラックの最大積載量をふやすため、車両重量を実際の状態より軽くして不正に車検を取得していた事件に絡んで、国土交通省は、今月の四日、ほかの架装メーカー四十七社でも、三年間に計八千六百七十台で同様の不正を行っていたとの調査結果を発表しました。業界のほぼ半数が車検制度をかいくぐっていた実態が浮き彫りになりました。

 大臣にお聞きしたい。まず、実態の把握状況と、不正車検が業界に蔓延していたことに対する見解はいかがでしょうか。

北側国務大臣 これは、昨年国土交通省より行った指示に基づきまして、社団法人日本自動車車体工業会から今月の四日に提出された報告でございます。

 その内容によりますと、この工業会の会員のうち、トラックの架装を行っている九十社を対象に、平成十五年から十七年までの三年間に行った二次架装について調査した結果、今委員のおっしゃったとおり、四十七社において計八千六百七十台もの不正と思われる二次架装が行われていたとのことでございました。ですから、これは業界団体の方の自主的な調査でございます。

 これに対しましては、同日付で再発防止の徹底について厳しく指導するとともに、不正と思われる二次架装を行った車両について、販売会社と連携するなどしまして、車両の復元を行うか、もしくは自動車検査証の記載事項の変更手続と構造等変更検査の受検をするなど、適切な対応をするように指示をしているところでございます。

 このような悪質な不正行為が多数の架装メーカーにおいて、かつ多数の車両に対して行われたことは極めて遺憾というふうに考えております。

 委員のおっしゃるとおり、これはもう業界に蔓延しておったというふうに言われても仕方ない実態であると私は思います。今後、関係業界に対しまして厳正に指導監督をするなど、再発防止に努めてまいりたいと考えております。

穀田委員 今あったとおり、これが蔓延しているということがあるんですよね。違法なトラックの過積載が事故の多くを占めているということを考えますと、私は極めて悪質な違反行為だと思うんです。

 同時に、これは大臣、建築ではこうだし、空ではこうだし、陸ではこうだしで、しょっちゅうここで出てくるんだけれども、やはり国民の命と安全を守るためには、自動車の安全をチェックする自動車の検査制度に不備がなかったのか、このこともはっきり言って問われていると思うんです。

 したがいまして、私は、今述べたように、不正車検の悪質さ、深刻さについて、やはり監督官庁として徹底分析、検証して、違法行為の根絶、再発防止対策をとる必要があると考えています。

 そこで、私は注目すべき問題と見たのは、「月刊交通」二〇〇五年九月号で、「「トラック業界では、最大積載量を多くするために新規検査などを受検した後、「二次架装」をするのは常識です」と平然と供述した。」こういう実は大阪府警の交通捜査課長の文章が出ています。その中で、ダンプを所有する運送会社と架装業者から事情聴取したものが今の発言なんですね。平然と二次架装というのは業界の常識だということが言われるほど違法がまかり通っている。

 そこで、さらに見てみると、被疑者は一様に「大型トラックの業界では当たり前のように、半ば公然と行われていた。ディーラーとユーザー、それに架装業者が全員不正な改造とは分かっていたが、お互いの利益になることと目をつむった」、こう述べているんですね。

 そして、同課長は、一個人の犯罪ではなく、業界全体の体質的な問題だとした上で、背景には、「一回の運送でより多くの積載物を運びたいという、いわゆる利益優先主義に基づき根付いてきた悪しき体質であることも事実」だ、このように指摘しているんですね。

 私は、一連、この間私がずっと指摘してきた利益優先体質といいますか、そういう問題がこんなところにもあらわれているのかということだと思うんですね。

 だから、今回、架装メーカーの半数が不正を行っていたというまさに異常が業界に蔓延していたこと、それが常識であったなんということになっている状況、こういう点を、業界ぐるみの不正をなぜ放置されてきたのか、ちゃんと監視すべき国交省の怠慢と言われても仕方がないんじゃないか。この点をどう自覚しているのか、お聞きしたいと思います。

北側国務大臣 今委員がおっしゃったように、この日本自動車車体工業会からの報告によれば、多数の会社において不正と思われる二次架装が行われていたことが判明したわけでございまして、これは本当に極めて遺憾というふうに考えております。

 これまでもこういう不正な二次架装があったときには、そういう事実が判明したときには、告発だとかそれから改善の指示とか、そういうような対応は当然してきているところでございますが、今回のパブコの事案に見られるような非常に広範な不正な行為がなされていたということ、また今回のこの団体の報告等もありまして、今回の道路運送車両法の改正、今御審議をしていただいております法案の中に、架装メーカー等の改造等を行う者に対する立入検査と報告徴収の根拠規定を設けることとしたところでございます。

 この部分につきましては、公布の日より施行ということにさせていただきまして、今回のこの九十社、違反があったと言われている企業だけではなくて全体に順次この立入検査並びに報告徴収等をさせていただきたいというふうに考えておりまして、今回の報告のあった内容の事実関係の確認もしっかりとさせていただき、もしそこで虚偽報告だとか再発等悪質な事実が認められた場合には、告発も含めて厳正に対処したいというふうに考えております。

 いずれにしましても、このような不正事犯の再発防止に向けまして、厳しく監視をしてまいります。

穀田委員 何で私がこんなことを言っているかというと、新聞報道では、国交省というのは過去と現状の実態解明には驚くほど腰が重いとメーカーから、関係者からも上がっている、こう報道があるんですよね。

 私は、調べてみると、パブコの下田社長というのは、昨年の記者会見で、この不正は昭和四十年代から始まったようだ、長年の慣習から抜け出せなかったと。四十年近くこれをやっていたということまで言っているんですよね。だから、こんなことをなぜ放置して見抜けなかったのかという問題になると思うんですよね。

 今ありましたように、立ち入り根拠法をつくる、それから今までの確認もする、こう言っていたわけですけれども、では、今私が言っているのは、業界ぐるみだということだから、架装メーカーに対するディーラー、販売会社の指示があるという点では、ディーラーに対する監視監督強化も当然必要じゃないのか。そういう点では、ディーラーへの立入検査も可能なのかということについて、最後に聞いておきたいと思います。

宿利政府参考人 ディーラーに対する立入検査でありますが、これは、ディーラー自身が不正改造を行ったようなケースについては、今御審議いただいております法律改正を受けて、立入検査が可能になるものであります。

 一方で、ディーラーは、かなりの方々が自動車整備事業を兼務しておられる場合がありまして、その場合につきましては、自動車整備事業者に対する立入検査、報告徴収ということで、現行法でも対応可能でございます。

穀田委員 それはそうなんです。整備工場を持っているし、整備会社を持っているから、そこに入る。問題は、そういうことをしっかりちゃんとやれよと。これは、改めて私言っているわけですけれども、結局、あしき体質とまで言われるぐらい蔓延しているという現状にメスを入れようと思えば、どこが大事かということなんですよね。

 だから、建築基準法の問題の際、耐震強度偽装、これの関係でも言いましたように、つくってくれという、いわばつくる側に問題があったわけですよね、あのときも。今度も、いわば売り手の側がそういうことを強要して、売らんかなと思えばこういうことをやれと。何で大変かというと、積載する方はたくさんやりたい、そういう要望から来る。だから、川上の方も含めてしっかり見ないとだめなんだということを改めて言っておきたい。

 したがって、その根底には、行き過ぎた効率追求やコストダウン競争というものに対しても行政として改めてチェックすべきだ、そこまで踏み込んだことまで考えていただかないとだめだということを言って、質問を終わります。

林委員長 日森文尋君。

日森委員 先ほどタクシーの話が出ました。聞きしに、規制緩和によって本当に悲惨な実態が今タクシー業界の中にある。これはもう重複になりますから触れませんが、バスも規制緩和の中で大変厳しい状況に追い込まれています。

 先ほど、もう既に規制前後で一万七千キロの路線がなくなった、前に九千、後に八千というふうに大臣がお答えになって。それだけの路線が切られていって、しかもさらに縮小をしていく傾向になっていて、バス路線の約七割は赤字だというふうに言われています。しかも、そういう厳しい状況ですから、実際に、バスの運転手さんの労働条件、労働時間は長くなるし、賃金も二割から三割減っているという結果も出されているわけです。

 こういうタクシー、バスという現状が規制緩和の中で生み出されて、今回の改正で、ディマンドバスとか乗り合いタクシーがサービスを提供することが可能になる。これは、先ほどお話が出ていましたけれども、従来からの路線バスとの競合、これがますます厳しくなるというふうに予想されるんですが、この辺についての国土交通省の見解と、国土交通省として具体的にこういう問題というのはどう対応するのかということについて、最初にお聞きをしておきたいと思います。

宿利政府参考人 地域のバス輸送サービスを利便性の高いものとして利用してもらうためには、ディマンドバス、乗り合いタクシーの導入ももちろんですけれども、それと既存の路線バスのネットワークというのが有機的にかつ整合性がとれた形で機能を発揮するということは極めて重要だと思っております。

 今回、法律改正に当たりまして、地方公共団体が主宰して、地元のバス事業者や地域住民などの関係者から成る協議会というのを新たに設置して、そこで、地域のニーズに即した運行形態、サービス水準、運賃などについて協議をしていただく仕組みを構築いたしますので、そこで関係者間で十分議論をしていただいた上で、効率的な地域交通ネットワークが構築されることを期待しておるところでございます。

日森委員 その運営協議会なんですが、その運営協議が、午前中の参考人の方々に対する質疑の中でも、実はここが勝負じゃないかという話をさせていただきました。

 その運営協議会については、「国土交通省令で定めるところにより、」というふうになって云々という文章があるわけですが、これがどういう格好で組織をされるのか、どんな方々が構成員として参加をされるのか、そして、しかも地方公共団体が責任を持つということになっていますが、一体どんな権限や調整機能を発揮することができるのかということは大変重要な課題だというふうに思うんですよ。

 この辺について、しかも、これと関連すると、新しいその運営協議会ではないんですが、地域の協議会というのがもう既に全国二百ぐらいあるというふうに言われていますが、しかし、その機能などが決して十分でないという声も大変聞かれるわけです。

 ですから、地方公共団体が責任を持つのであるけれども、しかし、相当国土交通省自身がイニシアチブを発揮しないと、きょう午前中の参考人質疑で出たようなさまざまな問題をクリアする機関としては十分機能しないんじゃないかという思いを持っているんです。

 その運営協議会について、改めて国土交通省の御見解を伺いたいと思います。

宿利政府参考人 それぞれの地域の足をどういう形で確保していくのかというのがここの場合の本質でございますから、基本的には、地域の実情を最もよく把握し、かつ地域の公共の福祉を確保する観点からも責任を負っております総合行政主体である地方公共団体が主体になりまして、関係者とよく議論をしていただくということが一番ふさわしいと思っております。

 ただ、国といたしましても、協議会の設置、運営が円滑に進むように、私どもの地方運輸局の職員、支局の職員を参加させ、あるいは関係の機関と連携を図りながら、必要な指導をしていきたいと考えております。

日森委員 つまり、先ほど来御答弁がありますように、既存の公共交通、つまりバスやタクシーで対応し切れない部分について補完をするという御答弁がありました。

 ということは、主はあくまでも既存の公共交通であって、それを補完する立場で新たな有償ボランティアの輸送制度みたいなものがあるんだという位置づけになると思うんですよ。

 そういう基本的な問題について地方公共団体に徹底させなきゃいけないし、あるいは、補完的なものであるという以上、一定の規制というのは、幾つか出ていますけれども、当然必要になってくると思うんですが、その辺について、ちょっと質問の項目にはないんですけれども、国土交通省の御見解を伺いたいと思います。

宿利政府参考人 まず、地方公共団体が協議会の主宰者になりますが、残念ながら、午前中の参考人質疑にも出てまいりましたけれども、現在のところ二百数十で協議会が設置されているということで、いろいろな背景がありますけれども、いま一つ、地方公共団体自体に十分自覚、理解、認識されていない面があるのかなと思っております。

 今回、法律上の明確な制度になりますので、このような制度が成立いたしましたことによりまして、地方公共団体の認識、考え方も大きく変わってくるだろうと期待をしているところであります。

日森委員 ぜひ徹底していただきたいと思うんです。

 規制緩和をする場合、まあ、した場合そうなんですが、必ず事後チェック体制を強化しますというふうに書いてあるんです。書いてあるけれども、先ほども話が出ましたが、さまざまな規制改革によって事件が起きた、どうも事後チェックというのはそう言ってきたけれども十分行われてこなかったというのが、これまで散見というか、いや、かなり数多い例見られたんじゃないかと思って、今回も事後チェックをちゃんとしますということなんですが、この事後チェック制度を導入するということについて、これは具体的に、どういうことを示しているのか、どういうことでやろうとしているのか、どの程度の権限を持っているのかということについて、これは最後になりますけれどもお聞きをしたいと思います。

宿利政府参考人 NPO等によるボランティア有償運送につきましては、一つは、輸送の安全を確保するという観点から、運転者の資格あるいは運行管理の体制、損害賠償能力その他について一定の要件を課すわけであります。また、白タクを防止するということも重要な観点でございますので、これは登録を受けている旨の車体表示であるとか運転者証の車内への掲示その他を義務づけることとしております。

 こういった措置が適切に実行されているかどうかにつきまして、私どもの出先機関の職員が、適切に必要な監視をしながら、不適切な場合には指導、行政処分などを通じて是正していく予定にしております。

日森委員 その際、先ほど、地方公共団体が主体となる運営協議会というのは国土交通省の出先機関がチェックをするけれども、そことの関連というのは一体、具体的にどういう格好になるんでしょうか。

宿利政府参考人 運営協議会自体がいろいろと実質的な地元での検討をして判断をいたしますので、一つは、監査などによりまして判明いたしましたような事実を運営協議会にもフィードバックをいたしますし、また、運営協議会のメンバーあるいは運営協議会そのものが参入を認めたそういう福祉運送について、適切に、ルールにのっとって事業が行われているのかどうかについて、やはりある種の監視機能みたいなものを持っていただくことも重要かと思っております。

日森委員 時間になりました。終わります。

林委員長 糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 参考人の質疑に引き続きまして、幾つか質問させていただきます。

 我が国は未曾有の高齢化社会を迎えようとしているわけでございます。地域の都市構造も大きく変化していることから、住民の移動に関するニーズも大きくさま変わりしているというふうに思います。地域のニーズに的確に対応するための一つの手段として、コミュニティーバスが挙げられるわけでございます。コミュニティーバスを地域住民のニーズに合わせより利用しやすくするためには、地域における協議が必要だというふうに考えるわけでございます。

 今般の改正では、コミュニティーバス等を導入しやすくするというふうに聞いておりますが、協議会の構成員がどのようになっているのか、また運営方法がどのようになっているのか、お聞かせいただけますでしょうか。

宿利政府参考人 コミュニティーバスにつきましては、午前中の参考人のお話にもありましたように、計画段階から関係者でよく議論をしながら進めていくのが最も有効であるというお話がありました。

 その協議会のメンバーでありますけれども、主宰者であります市区町村、乗り合いバス等の関係事業者、住民代表それから運輸局支局の職員その他、地域の実情に応じて関係者を加えることを予定しております。

 また、協議会の運営方法につきましては、それぞれの協議会がやはり地域の実情に応じて具体的に定めることになりますけれども、円滑な運営を促進するという意味で、国としても一定の指針を示す必要があるのではないかと考えております。

糸川委員 次に、NPOのボランティア輸送についてでございますが、高齢者がふえるという中で、要介護者の方や、介護の認定を受けていないけれども外出しにくくなっている、こういう公共交通機関を利用しにくくなるということに直面をしてきているというふうになってきております。

 このドア・ツー・ドアの個別輸送サービスの普及促進というものは欠かせない状況になるというふうに考えておりますが、国土交通省はどのような支援方策を考えられているのか、また、NPOのボランティア輸送といっても安全の確保ですとか、例えば利用者の安全確保について任意保険に付保を確実にできるのかどうか、こういうことをどのように担保されるのか、御見解をお聞かせいただけますでしょうか。

宿利政府参考人 まず、福祉輸送促進のための支援方策でございますけれども、これは平成十八年度予算で新たに福祉輸送普及促進モデル事業というものを創設いたしまして、共同配車センターの設立及び福祉車両の導入について、モデル地域を選定して、地方公共団体と協調して支援をしていくということをしていきたいと思っております。その他、低利融資制度あるいは税制上の特例措置を適用して、普及の促進を図ってまいりたいと思います。

 また、保険の関係でありますけれども、登録に当たりまして一定の保険、具体的には対人八千万、対物二百万という要件を満たす保険を確実に付保することを求めることとしております。

糸川委員 この保険に関しましては非常に抜け道があるというふうなことで、またこれは別の機会で質問させていただこうと思いますけれども、被害者を守れるというようなことで、しっかりとやっていただきたいなと思います。

 最後に、副大臣にお尋ねします。

 リコール問題になるんですけれども、トラックの架装を行うメーカーによる不正な二次架装ですとか、そういう自動車メーカーによるリコールに関する不正など、自動車の製造、製作にかかわる企業による組織的な不正というものが明らかになっておるわけでございます。

 このような不正に対して国土交通省としてどのように取り組んでいくお考えなのか、お聞かせいただけますでしょうか。

松村副大臣 先ほど穀田委員の質問に対しまして、大臣の方から、詳細、この問題に対する対応をお述べになったところでございます。

 過積載というのは、決められた重量以上のものを載せますと、十分なブレーキの制動力が得られないとか、車両の重さにタイヤや車軸が耐え切れなくなるとか、車両の重さにより道路が損傷するというような安全上の問題が生ずることから、厳しくこれを規制しているわけでございます。

 このたびの二次架装の問題につきましては、昨年、株式会社パブコによる不正事犯が、平成十四年から十六年までの三年間に二千三百五十三台の不正架装をしていたということで、これにつきましては告発をしております。

 また、その後の調査によりまして、先ほど大臣からお話がありましたように、四十七社が八千台の二次架装をしていたということもありまして、これを今後正す。これは自主的にこちらに報告があったわけでございますが、これを車検に正確に合わせるというようなことも厳しく求めているところでございます。

 その他、この調査につきまして、今後、不正等ありましたときには、告発をするということも考えているところでございます。

 そして、このたびの法律改正によりまして、国土交通省としても、しっかり検査その他ができるようにというふうに取り組んでいるところでございます。

糸川委員 ありがとうございました。

 終わります。

林委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

林委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 道路運送法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

林委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

林委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、衛藤征士郎君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び国民新党・日本・無所属の会の四会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を求めます。衛藤征士郎君。

衛藤委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 なお、お手元に配付してあります案文の朗読をもって趣旨の説明にかえることといたします。

    道路運送法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺憾なきを期すべきである。

 一 地域の多様な需要への対応及び移動制約者の移動手段の確保の重要性にかんがみ、コミュニティバス、乗合タクシー、NPOによる福祉有償運送等の運送サービスが安全・確実に提供され、その普及が円滑に進むよう、法の適正な運用に万全を期するとともに、法施行後の状況の把握に努め、引き続き地域交通の充実策について検討すること。また、タクシー営業類似行為、いわゆる白タクの防止のため、適切な対応をとること。

 二 運送主体のNPO等が作成する会員名簿等の個人情報の管理に当たっては、個人情報の漏えいのないよう適切な指導を行うこと。

 三 地域の需要に即した乗合運送サービスの運行形態等について協議を行う新たな協議組織が多くの地方公共団体で設置されるよう、関係者に対し本法改正の趣旨の周知徹底を図るとともに、福祉有償運送及び過疎地有償運送の必要性等を協議するために設置されている運営協議会についても、多くの地方公共団体で設置が促進され、NPO等関係者の意見等が反映されるよう必要に応じ構成員として含めるなど、一層の取組に努めること。

 四 自動車登録情報の電子的提供に当たっては、個人情報の漏えいを未然に防止することが特に求められることから、登録情報提供機関において個人情報の厳格な取扱いが確保されるよう、適切な指導・監督に努めること。また、不当な情報の取得を防止するため、申請時においては、自動車登録番号と併せて車台番号も要することについて検討を行うこと。

 五 架装メーカー等自動車の改造等を行う事業者に対し、本法改正の趣旨の周知徹底を図るとともに、適切な指導等を行うこと。

 六 自動車の検査・点検制度の向上のため、広く関係者及び国民の意見を求めつつ、引き続き、安全確保、環境保全、技術進歩の面からの検討を行うこと。

 七 リコール業務の迅速かつ適確な運営を確保するため、情報収集活動の拡大に努めるとともに、特に、リコール不正事案の再発防止のための施策の充実に努めること。

以上であります。

 委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。

林委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

林委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、国土交通大臣から発言を求められておりますので、これを許します。国土交通大臣北側一雄君。

北側国務大臣 道路運送法等の一部を改正する法律案につきましては、本委員会におかれまして熱心な御討議をいただき、ただいま全会一致をもって可決されましたことに深く感謝を申し上げます。

 今後、審議中における委員各位の御高見や、ただいまの附帯決議において提起されました事項の趣旨を十分に尊重してまいる所存でございます。

 ここに、委員長を初め理事の皆様方、また委員の皆様方の御指導、御協力に対し深く感謝の意を表します。

 大変にありがとうございました。(拍手)

    ―――――――――――――

林委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

林委員長 次に、内閣提出、住生活基本法案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。国土交通大臣北側一雄君。

    ―――――――――――――

 住生活基本法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

北側国務大臣 ただいま議題となりました住生活基本法案の提案理由につきまして御説明申し上げます。

 これまで、我が国の住宅政策は、住宅建設計画法のもと、公的資金による住宅の新規供給の支援を通じて、戦後の住宅不足の解消や居住水準の向上に一定の役割を果たしてまいりました。

 しかしながら、近年の急速な社会経済情勢の変化に応じて、現在と将来における国民の豊かな住生活を実現するためには、住宅の量の確保を図るこれまでの政策から、住宅セーフティーネットの確保に配慮し、健全な住宅市場の環境整備と、居住環境を含む住宅ストックの質の向上を図る政策へと本格的な転換を図り、新たな住宅政策の基本となる制度を構築することが大きな課題となっております。

 この法律案は、このような趣旨を踏まえ、住生活の安定の確保と向上の促進に関する施策について、その基本理念、国等の責務、基本的施策、住生活基本計画その他の基本となる事項を定め、住生活の安定の確保と向上の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民生活の安定向上と社会福祉の増進を図り、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とするものです。

 次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。

 第一に、住生活の安定の確保と向上の促進に関する施策の推進について、その基本理念を定め、国、地方公共団体及び住宅関連事業者の責務を明らかにすることとしております。

 第二に、国と地方公共団体が講ずべき、住生活の安定の確保と向上の促進に関する基本的施策を定めることとしております。

 第三に、政府が定める全国計画と都道府県が定める都道府県計画から成る住生活基本計画を策定することとするとともに、この計画を実施するため、国、地方公共団体等が講ずべき措置について定めることとしております。

 第四に、住宅建設計画法を廃止することとしております。

 その他、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案を提案する理由です。

 この法律案が速やかに成立いたしますよう、御審議をよろしくお願い申し上げます。

林委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十八日火曜日午後一時十分理事会、午後一時二十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四十八分散会


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