衆議院

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第15号 平成18年4月21日(金曜日)

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平成十八年四月二十一日(金曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 林  幹雄君

   理事 衛藤征士郎君 理事 中野 正志君

   理事 望月 義夫君 理事 吉田六左エ門君

   理事 渡辺 具能君 理事 長妻  昭君

   理事 三日月大造君 理事 高木 陽介君

      赤池 誠章君    石田 真敏君

      遠藤 宣彦君    小里 泰弘君

      大塚 高司君    鍵田忠兵衛君

      金子善次郎君    亀岡 偉民君

      北村 茂男君    後藤 茂之君

      坂本 剛二君    清水清一朗君

      島村 宜伸君    杉田 元司君

      鈴木 淳司君    田村 憲久君

      平  将明君    長島 忠美君

      葉梨 康弘君    橋本  岳君

      松本  純君    松本 文明君

      松本 洋平君    武藤 容治君

      盛山 正仁君    森  英介君

      山本ともひろ君    若宮 健嗣君

      渡部  篤君    小宮山泰子君

      古賀 一成君    下条 みつ君

      高木 義明君    土肥 隆一君

      長安  豊君    鉢呂 吉雄君

      馬淵 澄夫君    森本 哲生君

      伊藤  渉君    斉藤 鉄夫君

      穀田 恵二君    日森 文尋君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   国土交通大臣       北側 一雄君

   国土交通副大臣      江崎 鐵磨君

   国土交通大臣政務官    石田 真敏君

   国土交通大臣政務官    後藤 茂之君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長)            竹歳  誠君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  谷口 博昭君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  山本繁太郎君

   参考人

   (国際基督教大学教養学部国際関係学科教授)    八田 達夫君

   参考人

   (前法政大学大学院人間社会研究科教授)      本間 義人君

   参考人

   (独立行政法人都市再生機構理事)         尾見 博武君

   国土交通委員会専門員   亀井 為幸君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十一日

 辞任         補欠選任

  鍵田忠兵衛君     平  将明君

  北村 茂男君     清水清一朗君

  薗浦健太郎君     森  英介君

  西銘恒三郎君     渡部  篤君

  松本 文明君     松本 洋平君

  亀井 静香君     糸川 正晃君

同日

 辞任         補欠選任

  清水清一朗君     北村 茂男君

  平  将明君     鍵田忠兵衛君

  松本 洋平君     松本 文明君

  森  英介君     松本  純君

  渡部  篤君     山本ともひろ君

  糸川 正晃君     亀井 静香君

同日

 辞任         補欠選任

  松本  純君     薗浦健太郎君

  山本ともひろ君    武藤 容治君

同日

 辞任         補欠選任

  武藤 容治君     橋本  岳君

同日

 辞任         補欠選任

  橋本  岳君     西銘恒三郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 住生活基本法案(内閣提出第三〇号)


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     ――――◇―――――

林委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、住生活基本法案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、国際基督教大学教養学部国際関係学科教授八田達夫君及び前法政大学大学院人間社会研究科教授本間義人君、以上二名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いをいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、八田参考人、本間参考人の順で、それぞれ十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないこととなっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 なお、参考人及び質疑者におかれましては、御発言の際は着席のままで結構でございます。

 それでは、まず八田参考人にお願いいたします。

八田参考人 八田でございます。

 本日は、住宅政策に関して意見を申し述べる機会をお与えくださいまして、どうもありがとうございました。

 戦後の住宅政策は、戦後すぐの住宅の絶対的不足という状態から出発いたしました。それで、それに対処するために、非常にトップダウンのやり方で、住宅金融公庫、公営住宅制度、それから日本住宅公団という住宅政策の三本柱が創設されたわけでありますが、これは、一九五〇年と五五年の間、この五年間にこの三つの基本的な枠組みができております。

 そして、戦後の荒廃の中から住宅建設をするという体制に支援したわけですが、それでも足りなかった。それの足りない根本的な理由は、高度成長に伴って大量の人口が大都市地域に移動してきたことであります。それで、一九六六年に建設五カ年計画というのがスタートしまして、それから幾度か重ねられてきた。これが日本の住宅政策の根幹を担ってきたわけであります。

 しかし、七〇年代以降、大都市への人口流入がとまりまして、それから、大幅な少子化がございました。それによって、量不足という戦後の出発点であった問題は徐々に解消していったわけでございます。

 その一方、少子高齢化あるいは家族形態の多様化など社会経済情勢が大きく変化いたしまして、住宅政策に関する新しいニーズが生まれてまいりました。特に、質を求めるニーズ、それからミスマッチがある、非常に大きな家に老人が住んでいて、一方、若い人がなかなか住宅がないというようなミスマッチが起きてきた、そういうのが例でございますが、いろいろなニーズが生まれてきた。しかし、従来の住宅の新規供給支援型の制度的枠組みでは、こうしたニーズに応じて住宅の質や住環境を改善するといった課題には十分対応できなくなってまいりました。

 このような状況を踏まえて、国土交通大臣より諮問を受けました社会資本整備審議会が、新しい住宅体系の構築を目指すものとして、新たな住宅政策に対応した制度的枠組みについて答申をいたしました。私はこの住宅宅地分科会の会長でございましたので、そこにその審議過程を簡単に記しましたが、十七年九月二十六日に国土交通大臣に答申をいたしまして、今回の住生活基本法案の基本的な枠組みをここで答申させていただいたわけであります。

 それで、今度、それではこの新しい枠組みでどのような住宅政策を目指すかということでありますが、第一は、これまで量をつくるということを政策の基本に置いてきた、例えば五カ年計画というのは何年度までに何戸の住宅をつくるといったことをいつも規定してきたわけですが、そういう目標から住宅の質を改善するという目標に、基本的には目標を変えようというわけです。

 これの一つの背景には、高度成長時代に人々が住宅を買った一つの大きな理由が、投資のために財産として住宅を購入するということがあった。それは結局は土地を購入するということだった。ところが、土地神話の終えんということがあって、人々はもう今や住宅自身の質に大変関心を払うというようなことがございますから、量から質への転換ということが大きな目標です。

 それからもう一つは、これまでのトップダウン型の、政府でもってそういう住宅建設戸数を決めていくというようなこと、これは民間の住宅建設まで含めた計画を立てていたわけですから、そういうことをやめて、むしろ、民間の市場ができるところにはそれを助け、それから市場でできないところにはそれを補っていくといった形の、元来の、市場を支援して人々のニーズをできるだけ反映できるような住宅建設のシステムをつくっていこうということが第二の目標であります。

 それから第三番目は、そのときに、政策の目標として、市場の失敗への対策、市場に任せておいたらできないところに対策を立てるんだということを明確化した。

 特に、情報の非対称性ということがございまして、ボールペンみたいなものだったらだれが見ても質がわかる。ところが、住宅に関しては、買って何年か使わないと質がわからない、あるいは購入する直前には少なくともわからない。そういうようなものの質がきちんとわかるような仕組みをつくるということが住宅市場自体を育成することになりますし、それは民間の市場に任せておいてはできないことですから、そういう質を改善するだとか、それから、まとまった住宅環境をつくって、例えば老人が暮らしやすい地域をつくるのに支援する、そういったことも市場に任せておくだけではできない。

 そういう市場の失敗への対策ということと、それから、セーフティーネットをきちんとつくる、住宅弱者をつくらないという再分配政策ということを明確に打ち出す、この二つを基本にして住宅政策の目標をつくっていこう。この辺が特色だと言えるのではないかと思います。

 それで、今度、住宅政策に関する基本法制の具体的な手段でございますが、基本的には、住宅政策あるいは住宅建設に当たる各主体の役割を明確化した。これまではトップダウンでやってきたわけですけれども、これからは、ある意味で分権化してやるわけですから、それぞれの主体がどういうことを考えて行動すべきかを明確にした。二番目に、国土交通省だけではなく、他の行政庁との協力の分担、それが必要であるということを明確にした。そういうことであります。

 最後に、具体的にどういうことがこの枠組みでつくられていくかということを私なりに考えてみますと、住宅性能に関する情報の提供というようなことを整備していくということが、先ほど申し上げましたように一つあると思います。それから、耐火性とか耐震性とか遮音性とか、割と、自分の住宅だけの性能じゃなくてほかの人に迷惑をかけることを防ぐ、そういうようなものに関して公的な役割をきちんとつけていく。それから、再分配政策ですね、セーフティーネットに対する整備ということをできるだけ充実させていく。そういうようなことが具体的に行われていくのではないかと思っております。

 以上でございます。(拍手)

林委員長 ありがとうございました。

 次に、本間参考人にお願いいたします。

本間参考人 本間でございます。

 我が国の住宅法制の形成過程というのを勉強してきた者の一人として、参考意見を述べさせていただきたいと思います。

 今回、内閣より提出されました住生活基本法案は、あえて住生活と名づけられておりますが、住生活とはつまり居住のことを指しております、あるいは、居住の基礎をなすものは住宅そのものでありますから、これは私は住宅基本法と言ってもいい法案であると思います。それをあえて住生活としておりますのは、住宅を取り巻く環境とか、あるいは住宅にかかわる事業等について法案が触れているところによると思われます。しかし、私の考えでは、いかに国民の居住を改善するための政策を展開していくか、その方向を指し示す法としての名称としては、やはり住宅基本法案とか居住基本法案という名称の方がふさわしいんじゃないかというふうに考えております。

 住宅基本法ということでありますと、戦前においても検討がなされております。戦後は、住宅宅地審議会がその早期制定を提案しておりまして、旧建設省が、七六年度から八四年度にかけて、毎年検討中法案として国会に報告しておる経緯があります。また、公明党が住宅基本法案という名称で七回、旧社会党が住宅保障法案として五回、旧民社党が居住基本法案として一回、国会に提案したことがあります。公明党案につきましては、現在の北側国土交通大臣が何度もその趣旨説明に当たっておられます。

 こういった流れから見ますと、今回の住生活基本法案は、それら以前考えられたものより、計画法ないし経済法の二つのニュアンスの方が濃いのではないかというふうに私自身はとらえております。これは恐らく、廃止される住宅建設計画法が持っていた役割を代替させる趣旨から生じたものではないかというふうに私は考えております。

 基本法というのは、申すまでもなく、立法の専門家でおられる先生方は御承知のとおり、理念法、宣言法でありますから、まず、ここでは、国民の居住保障、居住確保、居住改善を図る上での理念、これはもちろん憲法第二十五条の示しているところを受けた居住権の保障を明記して、その理念のもとに、住宅政策の目標、国及び地方公共団体の責務、施策分担、住宅及び住環境の水準、基準の目標、しかるべき住居費負担のありよう、住宅計画等が示されなければならないと思うんです。

 住生活基本法案では、これらに触れられている部分はありますが、あいまいなままに終わっている懸念があります。これでは、住宅にかかわる基本法としては少し寂しいんじゃないかというふうに私自身は考えております。今申し上げました基本法に盛り込むべき事項、それらがきっちり盛り込まれて初めて、この法案が国民の居住のセーフティーネットとして機能し得ることになります。

 なぜ、セーフティーネットなのか。

 それは、現在、格差が広がりつつある中で、居住の格差も際立ってきておる。特に、住宅建設計画が定めた最低居住水準未満世帯が、この参考資料にもありますように、首都圏ではなお一三%強ある。中でも、民間賃貸住宅、古い公営、公団、公社住宅、これらの方々の居住水準が放置されたままでいるからにほかなりません。一方で、六本木ヒルズの億ションなんかに住んでいる方もおられる。

 今、このように格差が拡大しつつある中で、放置されている方々の居住水準をいかに改善していくか、これが法の目標でなければならないと思います。それらの多くの人々は高齢者であり、これから年金受給世帯がふえていく中で、自力ではなかなか、居住改善どころか、年々高額化していく家賃を支払えなくなってくる世帯もあり得るんじゃないかというふうに心配しております。そういう状況だからこそ、セーフティーネットを万全に張りめぐらせることが必要だと思うのであります。

 韓国では、我が国と同じように、二〇〇三年の十一月に、それまでの住宅政策の基本法でありました住宅建設促進法という法律にかわって住宅法というのが施行されています。ここでは、具体的に、住宅政策の目標は居住福祉を実現することであるとして、持ち家を持たない者、低所得層に対する支援を貫いて法案になっております。また、アメリカでは、一九九〇年に制定された、簡略化してアフォーダブルハウジング法といいますが、その法律は明確に、アメリカにおける居住のセーフティーネットを構築するものだということを明言しております。かつて公明党などが提案しました法案も、そうした趣旨を明確にしておりました。

 私は、住生活基本法等の審議に当たっては、これら歴史の教訓に学ぶ、あるいは諸外国の例に学ぶ、そういう視点が重要でありまして、経済的な視点よりは、むしろ社会政策的な視点からこの法案の審議に当たっていただきたいというふうに念じております。

 なぜ、社会政策的視点か。住宅政策における社会政策的視点の最大の問題は公的住宅をいかに供給するかということでありますが、なぜ公的住宅の供給が必要か。

 先ほど、首都圏における最低居住水準未満世帯が一三%強おると申しました。全国でその数は二百万世帯になります。これまで我が国は、戦後、公営住宅を営々と建設してきましたが、その数は二百十七万戸です。つまり、このことは、仮に公営住宅が二百十七万戸の倍これまで建設されておりましたら、その住宅難世帯の二百万世帯が完全に解消するということになるわけです。

 そういう意味でも、公的住宅の供給というのは非常に重要でありまして、公的住宅供給をセーフティーネットの核とした基本法が制定されることを私は切に願ってやみません。

 とりあえず、総論的に私の意見を述べさせていただきました。(拍手)

林委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

林委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。葉梨康弘君。

葉梨委員 おはようございます。

 きょうは八田参考人、本間参考人、本当にありがとうございます。余り威圧感を与えてもいけませんので、以後は座らせて御質問させていただきます。

 自民党の葉梨康弘でございます。

 本日は、参考人の先生方、大変貴重な御意見をありがとうございました。

 私自身も、実は、私ごとになるんですが、この世に生まれて、四十六年ほど生をうけておりますが、十五回引っ越しをしておりまして、延べ十五回なんですけれども、十軒の家を渡り歩いて、仕事の関係ですけれども、住んでおります。

 それぞれ形態がございまして、一戸建て持ち家、一戸建て借家、それから集合住宅借家、集合住宅持ち家、それぞれいろいろなところに住まわせていただいております。一番広かったのは、たしかインドネシアにおりましたときの一戸建て借家、あれは家賃が安うございますから、床面積が三百平米ほどあった、そのかわり相当物騒でございました。それから、住環境として余りよろしくなかったのは、昭和四十三年築の東京オリンピックの廃材でつくられました官舎でございますが、そこに住んでいたときでございます。これは、実は断熱材も入っていなかったというような覚えがあり、ですから、結露が大変すごかったです。

 ですから、そんな経験に基づきましてきょうは御質問させていただきたいと思いますが、忌憚のない御意見を御開陳いただきまして、今後の住宅政策に役立てていただくことを切に希望するものでございます。

 そこで、まず両参考人に伺いたいと思います。

 今、八田参考人、それから本間参考人の方から住宅政策についてそれぞれ御意見の開陳があったわけですけれども、私自身も、住宅政策というのはいろいろな多面的な要素が入っているのかなというような感じを持っております。

 一つは、今、本間参考人からもお話が、重点としてありましたけれども、三つほどあるかなと思います。一つが社会政策、社会政策というと、これはビスマルクが始めた用語ですから福祉政策と言ってもいいのかもわかりませんけれども、それとしての住宅政策である。それからもう一つが経済政策、あるいは景気対策と言ってもいいかもわかりません、としての住宅政策である。そして三つ目が都市政策、あるいは最近ですと環境政策と言ってもいいかもわかりません、その意味での住宅政策である。このような分け方ができるんじゃないかなというような感じを持っております。

 三位一体で我が国の住宅政策を進めてきたツールであります公営住宅、公庫、公団、それぞれ実は、公団住宅においても社会政策の部分を相当担う部分はあろうかと思いますけれども、主に、やはり社会政策としての色彩が色濃い部分というのはやはり公営住宅であろうし、あるいは、経済政策、景気対策としての色彩が色濃い部分というのは新規住宅に対する融資等も含めた公庫であろうし、さらには、都市政策としての色彩が色濃い部分といいますのは、やはりかつては新しいライフスタイルをつくるということの先鞭を担っていた公団であろうし、というような分け方が私個人はできるんじゃないかなと思います。

 そして、今後の住宅政策の基本として、どのような分野にそれぞれやはり重点を置いていくべきなのかということについて、八田参考人と、それから本間参考人から、それぞれ御意見を承りたいと思います。

 まず、八田参考人からお願いいたします。

八田参考人 今、葉梨先生が整理された枠組みというのは、非常に明快な枠組みだと思うんですが、その中で、社会政策あるいは福祉政策としての住宅政策というのが一つあるんですが、これの根拠というのがなかなか難しい面があるんですね。

 まず、生活保護でもって、あるいは生活扶助で現金をお渡しして、後はその中から好きなようにお使いくださいというのが基本的な社会政策あるいは福祉政策の根本ではないか。これは、受け取り手の自由に任せる。受け取り手が、例えば子供を進学させたい、家は、どうせみんな夜しかいないんだから安いところでもいいと言ったら、それはそのお金を自由に使うようにさせてあげた方がいいじゃないかというのが、一つの考え方であります。

 それなのに、事住宅だけに限って、ある意味で、受け取り手を信用しないで、このお金は必ず住宅に使いなさい、ほかに使っちゃだめだよということはどういうことでもってあるのかと申しますと、私が考えますには、公営住宅をずっと日本で続けざるを得なかったことの一つの原因は、日本で借地借家法がありまして、そして、なかなか賃貸住宅というものが戦後は発展しなかった。戦前は大阪なんか九割の人が賃貸住宅に住んでいましたから、所得階層に関係なくある程度住宅を借りられたんですが、戦後はある程度以上広いファミリー向けの借家というのがぴたっととまってしまった、あるのは学生向きだけだ、そういう状況になったときに、代替的に公的にやらざるを得なかったということがございます。これは、定期借家ができてこの問題は解決すると思いますが。

 もう一つ、じゃ、借家の市場が自由になって、それでも公的に住宅政策を通じてセーフティーネットを張らなきゃいけない理由は何かというと、私は、住宅の場合には特有な理由があって、賃貸住宅でもって差別が起きるからだと思うのです。

 これは、貸す方の側に立ってみれば、所得のある人とそれから低所得の人が来たら、家賃の不払いを恐れる人にとっては、ちゃんとした所得のある人に貸すのは当たり前でありまして、そうすると、低所得であるかもしれないという可能性のある人には貸さないということになってしまう。実は、低所得の方でも大部分はきちんと家賃を払うのにもかかわらず、そういうことで、賃貸市場がうまく低所得者に成立しなくなってしまう。

 そういうことがあるから、公的に関与する、住宅に限っては公的にセーフティーネットで特段のケアをする必要があるんだと思います。それの方法は、公営住宅でやるという手もありますし、もう一つは、家賃補助をやる方法もあると思います。

 今回明記されておりませんが、そういう方向も含めてセーフティーネットを充実させていくというのが住宅政策の方向だ。要するに、公営住宅だけではない、いろいろな方向を広げていくんだということが明記されたことが一つの意義であろうと思います。景気対策は税でこれからやることになると思いますし、環境対策はまさにここの今度の基本法の一番大きな主眼であると思います。

 以上でございます。

本間参考人 住宅政策といいますのは、そもそも戦前から社会政策の中の柱として展開されてきた経緯があります。一九一九年に当時の内務省社会局がつくりました小住宅改良要綱、まさに、いかに都市住民の中の居住困難あるいは住宅不安、そういったところにある人々を救済するかというのが眼目でありました。戦後も、戦後すぐは、戦災により焼失した住宅のために住むところがなくなった人たちのために、いかに早急に居住に値する住宅を供給するかということを眼目に行われてきました。

 戦後、一九七〇年代、第一次オイルショック以降、これが経済政策としての色彩を強めてまいりました。すなわち、経済政策としての住宅政策はどういう形で展開されてきたかというと、住宅金融公庫を中心にした持ち家取得策です。第一次オイルショック、第二次オイルショックを通じて、あるいは今回のバブル以降の経済不況を通じて、政府は住宅金融公庫の貸付戸数をふやしてまいったわけであります。

 住宅を多く建てさせることによって経済を浮揚させようというねらいがありましたが、その結果どういうことが起きたか。持ち家を持たなければかい性なしのような雰囲気さえつくられる中で、人々は争って持ち家取得に走ったわけであります。何となれば、公的な住宅に入る保証はどこにもありませんから、みずからの手で居住改善を図るしかないということで持ち家取得に走ったわけであります。

 人々が持ち家取得に走り、あるいは分譲住宅政策が進められた結果、地価が高騰することになりました。バブルの最中の地価高騰についてはまだ記憶に新しいところでありますが、その結果、公的住宅の建設用地の取得難が起こります。つまり、公的住宅の用地費というのは限られた中で決められておりますから、その中で用地が取得できなくなる。

 用地が取得できなくなった結果どうなったかといいますと、公団住宅あるいは公営住宅、公社住宅、こういった公的住宅の建設戸数、供給戸数はどんどん減っていくということになりました。その結果、みずから居住改善を持ち家で図ることができない層、これらの人たちの受け皿となる公的住宅がどんどん減っていって、なかなか居住改善を図ることができなかったということであります。

 民間では、経済政策によります住宅政策の結果、採算に合わない住宅改善を図るといった大家さん、家主さんが少なくなった。これが、例えば、現在空き家率が一〇%を超えたという数字になっております。

 なぜ空き家がふえているのか。これは、先ほど申し上げました最低居住水準未満の利用不適格な住宅が二〇%あります。そのほか、住宅としての条件を備えていないために入居者を募集していないものが二八・六%あります。それから、入居者を募集していても、劣悪な居住水準のために空き家になっているのが四三%あります。日本の総住宅数の中で一一%強が空き家になっているというのは、こういう家主さんや大家さんが採算が合わないために住宅を補修しない、改修しない、改築しないがために起きているわけであります。こういう住宅が年々ふえてきている。これでいいのかどうなのか。

 先ほど都市政策としての住宅政策がなければならないというお話でございましたが、都市政策としても、これは非常に憂慮すべき状況ではないか。こういう住宅が、東京では山手線と環七の間にベルト状に二百万ヘクタールぐらいあります。世帯にして八十万世帯。大地震が東京を襲ったとしたら恐らく一番大きな被害を受けるところでありますが、都市政策としても、経済政策に偏った住宅政策はまずいんじゃないかということが言えると思うんですね。

 ですから、私は、住宅政策というのは、そもそものスタート時に戻って、あるいはヨーロッパなどの例に倣って、社会政策との視点をはっきりさせなければ、居住のセーフティーネットを構築することには至らないということを改めて申し上げておきたいというふうに思います。

葉梨委員 大変重要な御指摘をいただいたかと思います。

 ただ、ちょっと私も三十分しか時間がございませんので、短く簡潔にお答え願いたいと思います。

 この問題について、冒頭の質問ですけれども、まさに基本の問題であろうかと思います。実は、私が考えておりますのは、八田参考人も本間参考人も目指している方向として全然別のことを言っているわけではなくて、ただ、法律の評価は多少お二人違うようですけれども。

 ただ、法律といいましても、特に本間参考人に対して、これはあくまで基本法という性格になっておりますので、基本法というのは、気持ちは物すごくよくわかるんですけれども、たかが基本法、されど基本法、そこでいろいろな形でのやはり施策体系というのが最終的な形でパッケージになりまして初めてワークするものであって、この基本法だけで何かをできるという性質のものではないけれども、しかしながら、思想を示すという意味では、私は非常に大事な法律なんだろうというふうに思います。

 もともと私自身も、住宅政策というのは、弱者を守るという意味での社会政策から発展したものであるというふうに思います。

 住宅というとよく引かれますけれども、盛唐の詩人杜甫の、いずくんぞ広き廈の一千万間なるを得て、大いに天下の寒士をかばいて、ともに喜ばしき顔をせん、風雨にも動ぜず、安きこと山のごとし、ああ、いずれのときか眼前に突兀としてこの屋を見れば、我がいおりはひとり破れて、凍死を受くるとも既に足れり。そのような詩、これはよく住宅政策で引かれますけれども、まさにそこから始まったものなんだろうというような形、感じはいたします。

 ですから、その意味でいうと、この法律において、今まで各種の基本法という案が提示されましたけれども、やはり明確に一つの施策の柱としてセーフティーネットの構築というのを立てたということは、私自身は非常に評価するものだろうと思うんです。

 ただ、社会政策の部分だけではなくて、もう一つの経済政策あるいは都市政策の部分というのが相当やはり変わってきている。特に、経済政策としてのということでいいますと、従来でありますと、やはり新規の住宅の着工ということで、これは新規の住宅を着工いたしますといろいろな形でのニーズが生まれますので、景気対策としては非常に大きな効果を有しますけれども、しかしながら、量的には充足をされているという現状の中で、やはり既存のストックというものあるいは中古住宅の流通というものをどうしていくのか。

 あるいは、さらに都市政策という意味では、今、本間参考人から非常に重要な指摘を受けたと私は思いますけれども、特に空き家の問題をどうしていくのか、さらには、いわゆる既存不適格の住宅の問題をどうしていくのか。そこら辺のところが非常に大きな課題として残ってくるんだろうというふうに思います。

 そこで、ちょっと八田参考人にお伺いしたいんですけれども、いろいろな指摘の中で、この基本法の改正案というのが今ごろになって出てきたというのが遅過ぎるんじゃないかというような指摘が実はございます。

 しかし、考えてみたら、あるいは十年前、十五年前に同じような法律をつくっていたとしたら、多分、頭の中ではわかっていても、人口減社会への対応というのが今ほど切実なものでなかったと思うんですね。ですから、その意味で、十年前、十五年前に同じような答申が出て、同じような法律ができると、今回の法律ほどには、いわゆる既存ストックの重視あるいは人口減社会への対応、そういったような側面というのがむしろ出づらかったんじゃないかというような感じを私自身は個人的な感想として持っているんですけれども、八田参考人から御意見を承りたいと思います。

八田参考人 おっしゃるとおりだと思います。

 やはり八〇年代の末まであるいは九〇年代の前半までは、人々の住宅を購入しようという動機がどうしても地価神話に導かれていたという側面がありまして、住宅の質自体にこだわるという面がなかった。

 今回の法案の一つの眼目は、先ほどおっしゃった三つの点と、もう一つ加えて、人々の住宅の質への要求に対して情報がきちんと伝わるように、そういう整備をして市場を整えていくというところがございますが、特にそこなんかは今だからこういう大改正ができるようになった、そういうふうに思っております。

葉梨委員 そして、その既存ストックという意味で、今度は本間参考人に伺いますけれども、私は大変重要な指摘だと思います。この空き家の問題というのは極めて大きな問題としてのしかかっております。

 そして、実は私の地元も、取手市というところですけれども、昭和四十年代に公団住宅ができまして、そして五十年代に人口が急増いたしました。そして今、すごく地元でも空き家が多いんです。

 しかも、これは東京と比べてさらに問題なのは、公団の住宅ができたところはいいんですけれども、ミニ開発でできた部分がありまして、そのような部分については、個々の家の耐震性ですとかあるいは間取りといった問題だけではなくて、実は下水道すら整備されていない、そういったような住宅もあって、ほとんど引き取り手もないという形での空き家になっている。

 ですから、その意味で、本間参考人から御意見の御開陳を願いたいと思うんですが、本間参考人として、この空き家対策というのをどういうような形の施策体系でやっていったらいいんだというようなアイデアがございましたら、ちょっと短くで恐縮ですけれども、御意見を承りたいと思います。

本間参考人 東京都内にあります木造賃貸住宅の密集地帯につきましては、国も東京都も、それから二十三区も、それぞれ木造賃貸住宅密集地帯の改良事業というのをやっております。しかしながら、予算が少ない。

 先ほど申し上げましたように、山手線と環七の間につながるベルト状の地域だけで、二百万ヘクタール、八十万世帯分の住戸があるわけでありますが、これらの改善が行われているのは年間数百戸単位にすぎないわけです、数百戸単位です。とすると、全部を改善するには百年以上かかることになります。これで、一体、近々予想される大地震に間に合うのかどうなのか。恐らく間に合わないと思うんですね。

 どうしたらいいのか。やはり木造賃貸住宅密集地帯の改良事業にかかわる予算をふやして、集中的に改善事業を行うしかないわけですが、これには権利関係も重なっているわけですね。土地所有権あるいは借地権、借家権、いろいろなものが錯綜して、予算も少ない、そういう権利関係がふくそう化しているということで事業がおくれているわけでありますが、これはやはり、都市政策として最大のプライオリティーを持って取り組まなければならない事業なんじゃないかというふうに私は考えています。

 今私は東京に住んでおりますので東京を例に申しましたが、大阪等についても同様の状況にある地域がたくさんございます。そういうところにつきましては、やはり予算と権利調整に最大限の力を注ぐ必要があるんじゃないかというふうに私は考えております。

葉梨委員 ありがとうございます。私も、実は全く同意見でございます。

 同じことを実は八田参考人にも伺いたいと思います。

 観点を変えまして、特に住宅の場合なんですけれども、この委員会では耐震性の問題が極めて大きな問題になっておりますが、よく指摘されますのは、地球温暖化対策の意味でも、住宅の省エネというのはすごくおくれております。何でおくれているんだということで、これは国土交通省それから経産省もかかわる話なんですけれども、まさに権利関係の話になっております。耐震もやはりおくれている。

 なぜかといいますと、住宅というのは個人の持ち物ですから、個人の持ち物にどうしても所得移転をするような形で、お金を上げてやらせるということがなかなかできない。ですから、どうしてもやはり、まだるっこしいようだけれども、税制上の優遇策であるとか、あるいは省エネについてもそういうような形になっている。

 ですから、爆発的に既存ストックを活用していくということになりますと、そこら辺の権利関係についてどういうような知恵を出していくのかというのは、これから極めて大きな問題になるだろうと思います。

 それだけではありません。既存ストックの活用という意味では、昭和四十八年の新規着工の持ち家ですけれども、これが百平米、百平米もあったのかというのか、あるいは百平米しかなかったのかという問題もありますけれども、平成十五年になりますと、百二十二平米、二割も大きくなっている。ですから、二割も少なくて、耐震性も低くて、それで省エネ性能も悪い、そういう住宅は流通するはずがないわけなんですね。

 ですから、既存ストックの活用といったときには、そこの権利関係への調整ということで、これは単なる国土交通委員会だけの話ではありません。経済産業あるいは法務、そういったものともかかわってきますけれども、今後やはり、私自身は、いろいろと知恵を出していかなきゃいけない問題だろうというふうに思いますけれども、八田参考人から御見解を承りたいと思います。

八田参考人 そこに関しても全く同意見です。日本の特に借家に関する権利関係が非常に錯綜しているということが、低層密集住宅を解決するのに大きな障害になっていると思います。

 それで、一方で、セーフティーネットをきちんと用意するということは絶対条件ですが、それとともに、やはり再開発をするのを権利関係の錯綜のためにできないというような状況は防ぐべきで、大多数の人が賛成するならば、それは再開発ができるというような形をとるべきだと思います。

 それから、借地借家法ももっと使いやすいものにして、あいているうちは人に貸せるということになると、先ほどのような手入れをしないというようなことも少なくなって、貸せるのなら貸そうということになると思います。

 そういう、この関係ではない、確かにおっしゃるような法的な整備が必要だと思います。

葉梨委員 この法律自体は基本法ですから、この法律ができたからといってすべてが解決するわけではないので、やはり、そのような意味でのいろいろな工夫というのは今後も必要になってくるだろうというふうに思います。

 特に問題なのは空き家でございまして、先ほど本間参考人からもお話がありましたけれども、これは防災上の問題だけではなくて、防犯上も極めて大きな問題になっております。

 ですから、私自身は、個人的には、今同じような問題が実は農業でもありまして、耕作放棄地というんです。耕作放棄地と空き家というのは大体似たようなものです。ですから、その耕作放棄地について、やはりある程度公の部分が関与して、しっかりやっていかなきゃいけないんじゃないか。そういった議論も片っ方でなされている中で、やはりこの住宅についても、そういったことというのは、今後さらに加速度的に考えていかなきゃいけないなというふうに思います。

 それから、予算が少ないという話については、これは私、財務省ではございませんから、個人の立場でいうと、本当に予算が少ないんだろうなというような感じはいたします。でも、予算だけではございません。

 そこで、本間参考人にちょっと短くお答え願いたいんですが、実は、どうしても権利関係という話がありますから、住宅政策といいますと、補助金、交付金というよりも、税制の支援であるとか、あるいは融資の支援であるとか、そういった形でのソフトなツールが使われることが多いような気がいたします。

 ただ、そのソフトなツールといいますと、公営住宅みたいにぼんとつくってくれるんだったらわかりやすいんですけれども、ソフトなツールで、例えば融資だ、税制の支援だと言っても、なかなかこれは一般人にはわかりづらいんですよ。施策体系として、住宅関係の施策体系、いろいろなことを国土交通省も考えているし、また、いろいろな各省庁等も考えながらやっているんですが、パッケージとして一般庶民になかなかわかりづらいというような点が私はあるんじゃないかという感じがするんですけれども、その件について本間参考人から御見解を承りたいと思います。

本間参考人 私は、住宅政策における税制あるいは融資、そういう支援策も無視するものではありませんが、その効果よりも、むしろ逆効果の方が多かったのがこれまでの歴史が示しているんではないかというふうに考えております。

 例えば、先ほど申し上げた持ち家取得策です。これは、税制を優遇し、あるいは融資額を優遇し、とにかく借りられる方はどなたでもお貸ししますというような形で持ち家取得策が進められてきたわけですが、果たしてその結果はどうだったかというのは先ほど申し上げたとおりです。

葉梨委員 あと二分ほどで質問時間が終了ということですけれども、まだちょっと本当はいろいろとお聞きもしたいところがあるんですけれども、今も参考人からのお話もございましたけれども、非常に大事なことというのは、やはり基本法ができたこれからというのがすごく大事なんだろうというような感じがいたします。

 基本的な柱として、社会政策の柱、それから、経済政策あるいは都市政策として既存のものをどう活用していくか、さらには予算の確保ということも非常に必要になってくるんだろうけれども、これから本当に大事なことというのは、個々の施策体系をわかりやすくしっかり組み立てていって、しかも法律関係についても、他省庁に絡むものもございますけれども、やはりしっかり整理していかないと、本当に空き家の問題だとか既存ストックの問題には対応できないような感じがいたします。

 そしてさらには、最後ちょっと本間参考人とは御見解が多少違ったような感じもするんですけれども、やはりこれからは、公営住宅について建てかえなんかはしっかりやっていかなきゃいけないと私は思っていますけれども、それだけじゃなくて、いろいろな税制ですとか、あるいは融資、やはり民間の融資に対しての保証とか、そういったような形もあろうかと思いますけれども、いろいろなツールが出てくる中で、多様なニーズに応じていろいろな施策を講ずるということは、ある意味で、その施策の体系自体をわかりづらくしてしまうということがある。

 ですから、私自身は、国土交通省に対しても、この施策体系を国民にぜひともわかりやすく説明をして、使いやすいものにしていくということが大事じゃないかなということを最後に意見として表明をさせていただきまして、私からの質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

林委員長 小宮山泰子さん。

小宮山(泰)委員 民主党の小宮山泰子でございます。

 本日はお二人の参考人の方に質疑をさせていただきますけれども、この住生活基本法、本当にわからないことがたくさんございますので、忌憚のない御意見を伺わせていただき、今後の参考にさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。それでは、座って質問させていただきます。

 まず、二人に伺いたいと思うんですけれども、どうしてもこの法案、住宅建設計画法が終了するのに伴い出てきたというふうに私自身解釈しておりますけれども、住生活基本法というのは、住宅の需給関係で供給が需要を上回っているという見方を基本にして、今後の住宅政策は、量から質を問う時代であるということを政府は強調しているように思えてまいります。

 住生活基本法という法案の名称、先ほど本間参考人からもお話ありましたけれども、残念ながら、法案自体というものに国民の生活や暮らしというものは全くにおいがしない、見受けられない。だから、先ほど、居住とか住宅基本法ということの方がいいのではないかというようなお話もございました。私自身もその点に関しては多少同感をするところでもございますし、国民の住生活ということからかけ離れているものではないかなと。

 解釈を広げた割には、余りその理念が明確になっていないのではないか。基本法の法案でありながら、理念が非常に不明確なものであるから、何というんでしょう、雲をつかむようなというか、しっかりしているようなので、ウレタンのような、低反発まくらみたいな、何かふにゅうっとした、何をもってこの法案を、どういう社会にしたいのかという基本法の理念というのが非常にわかりづらいものであるなというのを、この法文や、何度説明を聞いていてもわかりづらいところがございます。

 ぜひ、お二方からは、住生活基本法案提案理由に、豊かな住生活を図るためとある、この豊かな住生活の定義をどうするべきなのか、また、そのイメージについてございましたら伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

八田参考人 どうもありがとうございました。

 従来は、先ほどから本間先生からもお話あったように、割と、きちんとした住宅をつくっていくときに、戦後の住宅の不足に対して対応するためにたくさんの住宅をつくっていくということを中心にしてきたわけですが、ここで質を重んじるということになった背景には、明らかに住宅のストックは余っているわけですから、それを有効に活用したいとか、それから、人々が新しく買うときにいい状況をつくりたいというところで、その三本柱は、やはり一つは、住環境をきちんと整備するところに公的な役割を入れていく、これが例えば第四条ですね。

 それから第五条では、住宅を購入するときに、ただ市場に任せておけばいいといっても情報がなければどうしようもない、それから、管理や何かに関するノウハウというのも最終的には一種の情報である、こういう情報というのは、市場では、今度の偽装事件のようなこともあるように、公的にもきちんとやらないと、しかも公的に徹底的にやらないと、なかなかきちんとした情報が出回るということがない、そういうことをやろうと。

 それから三番目に、今のは五条ですけれども、六条は、やはり基本的にはセーフティーネットをきちんと確保しようじゃないか、最低生活を保全しようじゃないか、そのためには、今まで使ってきたツールだけじゃなくていろいろなものを考えていこう、場合によっては、他省庁との連携も深めてそういうものを充実させていこう、そういうことがこの法案の基本的なねらいだと思います。

 したがって、確かにおっしゃるように抽象的に見えるかもしれませんが、まさに、今必要とされている住宅へのニーズにこたえよう、それの大枠をつくろう、そういうものだと私は理解しております。

本間参考人 豊かな住居、住生活のイメージでございますけれども、昔は、住居というのは、雨露しのげばいい、あるいは、起きて半畳寝て一畳あればよし、そう言われてきたわけですね。それから、親子三人川の字になって寝れば幸せだと。しかし、親子三人川の字になって寝ることが本当に住生活上の幸せと言えるのかどうなのか。恐らく、プライバシーなんかないわけですね。やはり住居というのは、豊かな住生活というのは、生存、生活、福祉の基礎であって、そこで私たちが基本的人権を享受し得る空間でなければならないと思いますね。

 先ほど来、私は最低居住水準の話を申し上げていますが、この基準は、御存じのように、四人世帯で三DK五十平米であります。六畳、四畳半、四畳半ぐらいですね。これで果たして、四人世帯が住むに足りる豊かな住生活を送れる空間と言えるかどうか。恐らく、豊かな住生活空間としては、最低居住水準じゃなくて誘導水準ではなかろうかというふうに思っております。

 私たちが住む住居、居住地、地域、都市、農山漁村、国土などを含めまして、住宅を含めて居住環境そのものが、安全で安心して生きることができる、暮らすことができる、そういう基盤になっている、そういうものが豊かな住生活の基礎じゃないかというふうに私はイメージしております。

小宮山(泰)委員 ありがとうございます。

 この豊かな住生活を図るという言葉自体は、この言葉だけとらえるならば、非常にあいまいなままの法案なんだろうという思いはやはりぬぐい切れるものではないと思います。ですので、具体的な中身ということになっていきますと、先ほど、八田先生の方から、情報の開示とまた公的部分のきちんとした確保、そしてセーフティーネットをきちんとつくっていくこと、また、本間先生の方からは、やはり最低の居住空間の確保や安全で安心で暮らせるような、そういった制度設計をきちんとするべきであるということにつながっていくのではないかなという思いはしております。

 提案理由の中で、そこにある豊かな住生活の実現を図るということを考えていきますと、それでは現実はどうなのかということを考えてしまいます。国民の皆様の生活実態を見ていきますと、私の近所もそうなんですけれども、やはり住宅ローン返済とか家賃負担が家計をすごく圧迫していて、住居費負担が軽くなった方がいいなと。

 定率減税やいろいろなもので優遇されたのもどんどんなくなっていくという現実を考えていくと、本当に居住空間、また、この前、耐震偽造のことで横浜市などは、大体一世帯一千二百万円ぐらいの負担をしていって改修をしていくというようなこともありますが、そういう一千万を超す負担というのはなかなか簡単にはできるものではないのも当然だと思います。

 総務省の家計調査によりますと、平成十六年で住宅ローンを抱えている勤労世帯は三八%、負債総額というのが千六百四十七万円、毎月の返済額約十万円という統計もありますし、また、昨今の社会状況を見てみますと、少子高齢化社会になって年金だけで暮らされている高齢者の方も増加しておりますし、また、生活保護受給をしている高齢者世帯というのは、この五年間で、平成十二年ですけれども三十四万一千百九十六世帯から、五年後、平成十七年の統計によりますと四十四万八千八百七世帯というふうに、今、高齢者になればなるほど、こういった受給をしなければ、生活保護を受けなければ暮らせなくなっている、そういう社会変化もあります。

 また、昨年末にも報道もありまして記憶に新しいところではありますけれども、今、人口が減ってきてしまっているという中において、非常に社会変化が大きい。だからこそ、公的な部分によって守らなければいけないし、まじめに納税をしていただく、そういった社会環境もつくっていかなければいけない。だからこそ、年金生活者やそういった社会的な弱者になってしまった方々の住宅のセーフティーネットというものは、しっかりとつくっていかなければいけないと私自身非常に痛感をしているところでもございます。

 また、政治は、その点をきちんと把握し、そして守っていかなければいけない、それがある意味政治の本来の使命であり役割であるんだというふうに、この法案を通して改めて統計を見させていただいて、痛感をしております。

 その上で、やはり人間として、豊かさというのは人によって、それぞれの生い立ちによって、何を豊かととるか、また、人生の中において、今自分が豊かであるという基準というものは常に変化をしていくものである、だからこそ、この豊かさというものの表現に関して、あいまいな、いろいろなイメージが持ててしまうというところで難しい部分があるんだとは思いますけれども、この豊かな住生活の実現を図るという表現というものが目指す国民に対しての住宅政策を考えるというのが、非常に難しい部分があるんだと思います。

 お二人にお伺いしていきたいのは、私自身、ひとつ、これは仮説になるかもしれませんが、今回、先ほども伝えました、住宅建設計画法がここで終了いたします。しかし、あいまいな基本法を制定するというよりも、国民の住生活のセーフティーネットというものをしっかりとしたものにするためには、やはりもっと、今、地方公共団体の住宅供給にかかわる公営住宅法もありますが、少子高齢化に対応できるように、強化、改正していくというものも必要なのではないかという考えもあるかと思います。

 この社会状況の中において、こういう点に関して、住居をまず人間として、やはり基本的に、その面積も含めて、もちろん、住宅建設計画法の制定の中において量から質へという転換も図ってきた、この歴史的背景もあります。ぜひ、お二人の御意見をお伺いさせていただきたいと思います。

八田参考人 セーフティーネットの整備、特に今、高齢者が多くなった場合の整備ということが非常に必要であると思います。そして、それが今度、確かに具体的じゃないかもしれないけれども、きちんと今度の基本法に盛り込まれているということは、これを最初の一里塚として、これから住宅セーフティーネットに関するさまざまな整備というものをやっていかなきゃいけない。そのときには、ある意味では他省庁と一緒になって法律をつくっていくというようなことがあるんではないかと思います。

 ただし、それは公営住宅、非常に狭い意味での公営住宅を整備することによってではなくて、やはり家賃補助なんかも含めた、広い意味でのセーフティーネットを整備することが必要なのではないかと思います。

 これは、例えば公営住宅の場合には、つくっても入らないというようなところが地方にはたくさんあります。結局、住宅というのは広さだけじゃないんですね。やはり場所とかそういうこと、それから、自分の職場に近いところとかいうことがありますから、公営住宅をつくるということよりは、むしろ、自分の好きな場所を選んで、そこに家賃補助を差し上げようというような仕組みをこれからはつくっていくべきで、それのきちんとした根拠を明確にするとか、それから、厚生労働省との、さまざまな施策との間の連携をとるとか、そういうことをこれからやっていく必要があるんだと思います。

本間参考人 低所得層を含めた住宅困窮者あるいは住宅困難者に対するセーフティーネットとしての公的住宅、特に公営住宅や公社住宅、公団住宅は、今危機的な状況にあるというふうに私は認識しております。

 これは、一つは、昨年の第百六十二国会で成立しました住宅関連三法によるところが大きいというのが私の認識であります。特に公営住宅につきましては、地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅等の整備等に関する特別措置法、公的賃貸特措法というのが成立しております。これによって、地方公共団体は、公営住宅の供給がこれまでの責務から努力義務というふうにされた。責務から努力にされた。これは非常に大きいわけですね。

 それから、三位一体改革の関連で、公営住宅建設にかかわる補助金が廃止されました。そのかわり交付金が交付されることになった。交付金の額、二〇〇五年度の場合、五百八十億円になりました。これは、ちなみに、二〇〇三年度の国の公営住宅予算三千四百五十億円の六分の一ですね。こういうふうに、公営住宅建設にかかわるお金、国から出るお金が減ってきている。ということは、地方は財政面から公的賃貸住宅を建設することを放棄ないし敬遠する、そういう状況がつくられてきているわけですね。

 しかも、住宅関連三法の関連で改正されました公営住宅法、九六年の一部改正によりますと、公営住宅建設の家賃収入補助、これが廃止されることになっていますね。これは、地方公共団体に公営住宅を供給する意欲を失わせて、この事業からの撤退の口実を与えるものになるんではないかという気がしてなりません。

 さらに、地方住宅供給公社法が一部改正されまして、公社が、公社住宅居住者の意向に関係なく、恣意的に解散できることになってしまった。入居している人たちが全く知らない間に、その管理者たる公社が解散されてしまって、仮に民営化されてしまうというような事態も起こりかねないわけです。

 こういうふうに、公社、公団、公営の状況というのは非常に危機的な状況にある。これはやはり、ここを打開するところから、セーフティーネットというのは構築されるんじゃないかというふうに私は感じております。

小宮山(泰)委員 大変、ある意味、これからのセーフティーネットをつくっていくというのは、基本法ができ上がりましたら、その後どうするかという問題が多くまだまだ残っているんだということを感じます。

 今の広い意味での、選定というんでしょうか、家賃補助をきちんとしていくこととか、また、今、家主がいきなりかわってしまうというか、解散されてしまうと、本当に手も足も出ないというのが中に入っている方々の心配になるんだと思います。ここで、いろいろな独立行政法人等、今問題が出てきておりますので、その点に関して、やはりもっともっと国も、そして地方公共団体においても、恐らくはこれから数々の問題点が出てくるのではないかなという気がしてなりません。

 本間先生にまた伺っていきたいと思うんですけれども、基本法としての住居法ということで、日本で制定をされていないということで、著書や論文で一九四〇年前後の同潤会の考えを引用されています。私も非常に興味深く読ませていただいたんですけれども、先生の「同潤会研究会による「住居法案」の検討 その先見性と意義について」というのを読ませていただきました。この中において、住居法に最低限盛り込むべき事項として、先ほどから何度もありますが、居住水準、居住費負担、住宅供給の三点を挙げていらっしゃいます。

 本間先生が描いていらっしゃった基本法としての住居法の考え方と、今回、政府提案の住生活基本法案を比べていただいて、一番何が違うとお感じになるのか、改めて伺わせていただきたいと思います。

本間参考人 一番違うのは、やはり国民の居住の権利というものが明確にされていないところではないかと思います。

 居住の権利については、ハビタットのイスタンブール宣言なんかでも明記されておるわけでありますが、居住の権利、憲法二十五条の生存権の延長線上に、国民にはすべて健康で文化的な住生活を送る権利があるということをやはり明記する必要がある。

 それから、同時に、では、どういった住まいなら、住宅ならば、居住の権利というもの、国民の権利というものが充足されるのか、そういう水準。それから、それを達成するための国、地方公共団体の責務。それから、住居における住居費がどのぐらいであったら国民の居住の権利を充足することになるのか、その居住費負担の水準。それから、これからストックを含めて、住宅をいかにその質を向上させていくか、あるいは、個々の住宅を取り巻く環境を改善していくか、あるいは、先ほど来お話があった欠陥住宅みたいなのを絶滅していくか、そういう方向性。それから、居住における、単身者、高齢者、外国人等々に今起きている居住差別、そういうものをなくしていく努力。

 それから、先ほど八田参考人も、これは下から積み上げていく住宅政策をつくっていく法律であるということを申しておりましたけれども、その下からの積み上げ、住民参加、いかに住宅政策に住民参加を実現していくかということが非常に重要だと思います。

 そういう意味で、私は、この住生活基本法案が、国の計画と都道府県の計画、二つに絞られているのが非常に気になるところであります。むしろ、都道府県の計画よりも市町村の計画じゃないか、重要なのは市町村の計画ではないかというふうに考えます。

 といいますのも、社会福祉法が改正されまして、二〇〇二年から各市町村では地域福祉計画というのを展開、または作成中であります。その地域福祉計画というのは、地域における人々の居住の福祉をいかに実現していくか、その計画にほかならないわけでありますから、当然、住宅政策、住宅計画と関係するところであります。

 したがって、市町村が、地域住宅政策、地域福祉計画を作成あるいは展開する上で、住宅にかかわる部分はやはりその計画に取り込めるように、やはり市町村が主体的にその住宅計画もつくることができる、こういうふうにしなければ、住民参加とか地方分権とか、絵そらごとに終わってしまうんじゃないかというふうな気がいたします。重要なのは市町村であるというふうに改めて申し上げておきたいと思います。

小宮山(泰)委員 本当にその点に関して私も賛同いたします。

 また、この基本法ができて、地方や都道府県などが計画をつくることが主になってしまって、現実に実行するというところに行くときには、ある意味、ほかにも、ほかの省庁やいろいろなところで計画をつくりなさいと言っているものが非常に多くありますので、そこで疲れてしまって、実際に住民の参加というものが促せなくなってしまっては、やはりこの基本法というか、住宅の政策というものに関して多くの国民の理解も得られないでしょうし、また、国民自身がそういった基本的な最低水準を超して住もうというモチベーションにつながっていかないのではないかという危惧は私自身も持っております。

 そこで、セーフティーネットということで、八田先生にお伺いしてまいりますけれども、先生自身、国交省のこれは平成十六年のときの資料でございますけれども、新たな住宅政策に対応した制度的枠組みのあり方に関する中間とりまとめ、これは社会資本整備審議会の住宅宅地分科会の座長さんという形でされているのも読ませていただきまして、やはり、先ほど来出ておりますけれども、答申の中でもありますが、住宅関係の月刊誌にもお書きになられておりますが、市場の機能を十分に発揮させ、市場の失敗がある場合はそれを補正し、さらに再分配への政策を行うことになるというふうに述べていらっしゃいます。

 具体的には、住宅困窮者への安定した居住の確保という政策が必要として、再分配の政策の基本は現金給付であるとされ、民間賃貸住宅への家賃補助制度に言及されています。高齢化に伴い、高齢者の住宅困窮者が増加していることから、その方向性の明確化は重要であると指摘されてもおります。

 この点につきまして、高齢者の居住の安定確保に関する法律を適用して、この趣旨が生かせないものかとも考えますが、先生には、市町村でいえば実際あるんですけれども、今、公的なところには入っているが、それに対しての家賃が払えないから出ていってくれということも市町村では実際には出てきているという話もちょっと漏れ聞こえてきます。

 この家賃補助制度を実現する方向性というものについて、八田先生にお伺いしたいと思います。

八田参考人 この基本法自体は、まさに先ほど申し上げたように、これからのセーフティーネットを構築するための、しなきゃいけないよという枠組みだと思います。

 そこの具体的な中身について、今度は私個人の意見を述べさせていただきますと、やはり人々は、住居に関しては、広さとか、日が入ってくるとか、そういうことよりも便利さを求めるという人も中にはいるわけですね。いろいろなことを人々は好みとして持っている。なるべくその人たちが自由な選択ができるようにしてあげたらいい。それは低所得者の方についても同じだと思います。

 したがって、家賃補助がやはり一番いいんではないか、自分で見つけてきた家に対して公的に補助してもらうというのが、基本分科会でも非常に多くの人が述べた意見です。それから、基本問題小委員会でも述べましたし、住宅宅地基本分科会でも多くの委員が述べられました。

 ところが、それをもし実行するときにどういうことが問題になるかというと、私は、これは市町村だけに任せるわけにいかないと思います。それはどうしてかというと、生活保護とかそれから家賃補助とかいうのは、市町村が充実すればするほど低所得者の方は移ってきます。市町村は担税能力がない方が移ってくるのを嫌がりますから、多くの市町村がそういうものに手を抜き出す。

 だから、自由にやりなさいとやって、市町村が競争しなさいよというのは、プールだとか図書館は、それはいいものをつくってなるべくいい人を、税金を負担する人に来てもらおうとしますけれども、この家賃補助のようなものは、どうしても国がきちっとした枠組みを決めて、そのお金をほぼ全面的に負担してあげるというような、少なくとも、非常に大きな割合を負担してあげるような仕組みが必要で、そのためには、どうしても、福祉政策、生活保護における住宅扶助との関係をどう整理するかということがやはりこれからの大きな課題になるんではないかと思っております。

小宮山(泰)委員 ありがとうございます。

 本当に格差社会という言葉が最近非常によく聞かれてくることでもあります。ある面、やはり低所得者の方々というのが、その次の代、親から子にという意味で連鎖をするという状況はやはりとめなければいけない。先ほども、何度も言葉で出ていますけれども、好きなところにやはり住めるというか、必要なところに住むんでしょうが、やはりそういった意味でも、職業等ももちろん固定されるべきものではないと思います。そういった一つに、この住宅というものも含まれていくんだと思います。

 地方分権という中において、先ほど下から積み上げていく住宅政策だということは、二人の参考人、それぞれお認めになっていらっしゃることだと思います。そういう意味で、本間先生にも、今八田先生がおっしゃいました、固定化しないためにも必要だと私も思う部分がありますが、同じところに住んでいる、最近、必ずしも公営住宅に住んでいるから低所得者の人だというものでもないのが現実ではありますけれども、家賃補助にすることによって、これは海外の事例もございますが、いろいろなところに住むことを可能にすることで、また社会的に一定に見られないという、枠にはめられない、だからこそまた自由な次の一歩が進めるという面もあるかと思いますので、本間先生にも、この家賃補助制度というものに対しての御意見を伺わせていただきたいと思います。

本間参考人 家賃補助というのは、前々から随分、経済学者の一部の方々からは言われていることであります。

 家賃補助のメリットというのは、恐らく、専ら財政支出が少なくて済むというところにあると思います。

 家賃補助は、事業者に対して行う、それから入居者に対して行う、両方ありますが、事業者に対する家賃補助はともかく、入居者につきましては、経済学者の中には、人に対する援助、石に対する援助を挙げまして、石というのは住宅そのものですね、人に対する援助の方がいいという声が大分あります。それは、例えば、家賃補助の費用を、中には、居住者が、居住水準の改善や家賃の負担軽減のために使うよりも、もっと欲求の緊急度の高いものへの支出に使える。例えば、ブランド品のバッグが欲しい、居住水準を改善するよりはブランド品のバッグを買った方がいい、そういう場合がある。そうしたら、それに使える。すると、その消費によって市場が拡大する。そういうことがあるので、現金給付による家賃補助は非常に住宅政策として有効であるという意見があります。

 しかし、これは大正時代からも議論になっていることでありまして、当時の住宅会社の法案の審議中に、内務省社会局長官の長岡隆一郎という人は、そういうことがあるからこそ石に対する援助、石を通じての援助が必要なのであるということを申しております。つまり、社会政策としては、石による、石に対する援助こそ、やはり低所得層あるいは住宅困難層に対する住宅の保障になるんだということを申しております。私も、この基本的な原則というのは今も変わっていないんじゃないかというふうに考えております。

 つまり、家賃補助というのはそういう面がある。ただ、少ない財政の中から支出するお金が市場の拡大につながる、消費につながっていくだけでいいのかどうなのか。それより、やはり居住水準そのものの改善につながらなきゃならない。とすれば、やはり石による、石に対する援助の方がよりベターであるというふうに私は考えています。

 それから最後に、小宮山先生の質問にお答えしておきたいと思うんですが、先ほど地域福祉計画というのを申し上げました。これは、地域福祉計画の策定を提言した社会保障審議会というところは、この計画の策定には住民参加が前提であるというふうに言っております。その前提のもとに各市町村が今計画を策定あるいは展開中であります。ですから、地域福祉計画が住民参加を前提にしてつくられている、そして展開されているのに、住宅計画は、では、住民参加、市町村の関与は要らないのかということにはならないと思うんですね。むしろ住宅の方が重要であるということを私は申し上げておきたいと思います。

小宮山(泰)委員 ありがとうございました。

林委員長 高木陽介君。

高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。

 本日は、両参考人におかれましては、貴重な御意見を述べていただきまして本当にありがとうございます。

 住生活基本法の審議がスタートいたしまして、特に、この問題というのは本当に国民生活に大きなかかわりを持っている問題ということで、きょうも、前回もそうでございますけれども、公団住宅の自治協の皆様方もずっと傍聴しておられまして、やはりそれぞれの生活にもかかわる問題ということで、また質疑をさせていただきますけれども、貴重な御意見をさらに拝聴したいと思いますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 私も座って質問させていただきたいと思います。

 まず、八田参考人にちょっとお伺いをしたいんですが、先ほどからずっと御意見をお伺いして、今の住宅の問題というのが、量から質の向上になってきている。そういう移行が求められている中で、今回この法案、この住生活基本法という法律をまず基本法としてつくって、これからさらに次々と施策を打ち出さなければいけないんですけれども、量から質への転換という考え方の中でこの法案がどの程度達成し得るか、ここら辺のところをどのようにお考えか、まずは伺いたいと思います。

八田参考人 今までの五カ年計画では、量から質への転換を、公が関与する以外の普通の市場に対して及ぼすことはできなかったと思います。今度の基本法というのは、公のお金が出ているところだけじゃなくて、すべての市場に対して情報の非対称性をなくして充実させていく、そういう意味での質の改善を非常に広範囲に図るということを中心的に打ち出しておりますから、これは従来のものと比べて抜本的な改革である、そういうふうに思っております。

高木(陽)委員 続いて、今度は本間参考人の方にお伺いしたいんですが、本間参考人は毎日新聞で編集委員までやられて、私の大先輩になるということで、そういった現場をずっと踏まれてきて、さらにその上で今回この住宅問題に関してはさまざまな学識を持たれた、こういう経緯の中で、私は、現場を歩いていて、今の住宅、特に公営、公団、セーフティーネットとしての住宅というものが今のままで果たしていいんだろうか、こういった疑問もすごくございます。

 その中で、国民の居住水準を保障するということは福祉国家の基盤である、こういうようなお立場だと思うんですけれども、今回の法律というのは、その先生のお立場でどのように評価しているのか、もう一度お伺いをできればと思いますので、本間先生よろしくお願いします。

本間参考人 私は、今の高木先生の御質問にお答えする材料の一つとして、さきに公明党が住宅基本法案というのを提出したことが、七回出したことがあるということを申し上げましたが、それを改めて振り返ってみたいと思うんです。これはなかなかいい法案だったんですね。なかなかいい法案です。

 例えば、第一条、目的ですね。国民の住生活の安定向上が国民生活における緊急かつ重要な課題である、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与するのが目的だと。それから、第二条から第四条では、すべての国民に対し健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を確保し、国民の住生活を適正な基準に安定させるための施策を展開する必要があると。それから、第七条から九条では、健康で文化的な生活を営むに足りる適正な基準というのを設定しておりまして、私が申し上げたあるべき住宅基本法の要素というのをすべてこれは取り込んでおるんですね。

 これはなかなかいい法案でありまして、こういう法案をつくられた公明党の方々が、今回、政府・与党として、住生活基本法案にもちろん賛成の立場をとっておられるのは不可思議でしようがないわけです。

 なぜ、では今もってこの公明党案が生きているのか、この法案が生きているのかと申しますと、例えば、量より質だと言います。しかし、私が先ほど来指摘しております最低居住水準未満世帯の解消というのは、一九七〇年代の第三期住宅建設五カ年計画で目標として掲げたものですね。一九八五年までに全部解消するんだというのがその趣旨でありました。ところが、その第三期住宅建設五カ年計画で掲げられた目標は、それから四半世紀以上たっている今日もなお、先ほども申しましたように、首都圏では一三%強が達成していないという状況ですね。

 だから、量より質、一面そういう面もあるけれども、量も質もという時代ではないか。量も無視することはできない、かなり重視しなければならない要素であるということを私は申し上げたいと思うんですね。仮にこの公明党案が、一九六九年から一九九一年まで二十年以上の間、七回提案をされているんですが、これが仮に成立していたら、もう随分とこの住宅事情というのは変わってきたんじゃないかというふうに考えるんですね。

 そういう意味で、私は、高木先生にはぜひ、北側大臣がかつて説明されたこの住宅基本法案、固執されて、政府案をよりよいものにしていただきたいというふうにお願いする次第であります。

高木(陽)委員 今、公明党のこともずっと御指摘をいただきまして、先ほど先生が北側大臣が提案されたとおっしゃられましたけれども、北側大臣のお父様が、建設委員長も経験されて、その時代にずっと出されたという経緯だと思うんですね。

 私どもも、今回の法案について提案をする前までいろいろと議論を重ねてきて、今先生のおっしゃった、量も質もだ、まさにそのとおりだと思います。その上で、今度は、最初に一〇〇%完璧に実現できる、これは理想だと思いますけれども、今の財政事情等々も含める中で一歩ずつ変えていく、それも必要なことであろうなと。これが今私どもの立場だということをまず申し上げておきたいなと思います。

 その上で、次に、八田先生が、先ほどの冒頭のお話の中でミスマッチの話をされました。例えば、単身の老人また御夫婦二人で住まわれている、しかし、それがすごく広い。一方で、ファミリー世帯、子育て世代が狭いところにいる。こういう現状というのがなかなか解消されていない。ただ、ストックとしてはそれだけの量がある。こういうような現実の中にあって、どうやってこのミスマッチを解消させるか。では、今住んでいるところをかわってくれ、かわっていく、これもなかなかそう簡単ではないというような中での、これのプロセスというものをどういうふうにしていくかということを八田先生にちょっと伺いたいなと思います。

八田参考人 今おっしゃった問題は非常に大きな問題で、ある意味では、象徴的に、日本の住宅ストックがいわゆる中古市場として余りうまく活用されていないということだと思います。

 米国では、確かに、建築戸数は日本ほどない年も多いですけれども、中古住宅の取引というのは非常に活発に行われている。

 その理由が何かということですが、一つは、税制のことがあると思います。アメリカの場合に、老人の御夫婦が家を売却された場合に、老人の場合には譲渡益税を免除されるということがございますから、非常にスムーズに売却できるということであります。それから、売却した後すぐ新しい家を買わなくても、十分な借家の供給がある、それも売りやすくしていることだと思います。それから三番目に、もうそういうふうに中古住宅があるのが当たり前という状況では、家を建てるときに、人に貸すためのことを考えて非常に標準的な家をつくる。それで、住宅の情報についても整備されている。

 日本では、そのどれもがないわけですから、ある意味では、譲渡益税のことももちろん今はできないわけですし、アメリカの制度がいいかどうかもよくわからない。

 二番目の、借家にして人に貸せるということ、これは、定期借家ができたし、ある程度の大きさのところにはかなり定期借家の普及が始まっていますから、これをよりよく、使いやすくすることによって、老人の方がそれを人に貸して、売るのはちょっと難しい、でも、人に貸して移動できるというような仕組みを整備する必要はあると思います。

 それから最後に、やはり中古の住宅を借りる方も買う方も非常に不安ですから、そこの情報の整備をしていく。そういう情報を登録していくというのがもっと見やすいようにするとか、それから診断をする人たちを支援していくとか、そういったようなことが必要なんではないかと思います。

高木(陽)委員 本間先生の方にお伺いをしたいと思いますけれども、公的な住宅、先ほどから、量と質、量もまだ足りない、量もしっかりしていかなきゃいけないという御意見だったんですけれども、その中で、家賃の問題というのは結構あるなと思うんですね。

 公的な住宅の中で、公営そして公団、公社、特に公団住宅の経緯を見ますと、当初は、昭和三十年代、これは中堅所得層を対象として、いわゆるストックが足りないということで供給をしてきた。そのころは、働き盛りの方々が入居をされて、そして家賃も、ある意味じゃ余裕はなかったかもしれませんけれども、しっかりと払っていける。

 ところが、これが定年を迎える、高齢者になられて、いろいろなニュータウンも今高齢化の問題というのはすごくあるんですけれども、そういった方々がそのまま公団に住み続ける、もしくは公営住宅、公営住宅というのは、大分幅が広がってきましたけれども、当初は低所得者をターゲットにしてやってきましたけれども、そういう部分での選択肢、例えば公営住宅と公団住宅のその間に入るようなものがない。そういう選択肢が少ないという現実もあるんじゃないかなとは思うんですけれども、その点についてどのようにお考えか、伺いたいと思います。

本間参考人 今高木先生の御質問、家賃の問題を中心に考えますと、公営住宅、特に私は都営住宅の場合を言いたいんですが、都営住宅あるいは公団住宅、現在の都市再生機構の住宅でありますが、この家賃問題というのは、高齢者あるいは中低所得者にとっては非常に危機的な状況になりつつあるんじゃないかというふうに感じております。

 といいますのは、公営住宅の収入超過者、あるいは公団、都市再生機構の住宅は全部そうですが、その家賃が、近傍同種家賃並みにするということで、近くに立地する民間の賃貸住宅の家賃並みにするということですね。従来は、社会政策上、公団、都市再生機構住宅も公営住宅も公社住宅も、一般の民間住宅家賃よりも安く抑えられてきております、政策家賃として。

 ところが、近傍同種家賃になって民間と同じになるということで、先ほど八田参考人も申されたとおりに、例えば立地を優先するとかいう傾向が出てきておるわけですね。立地を優先するという傾向は、まあ、私はそれはそれでいいとして、問題は、そこに住み続けなければならない人々、特に高齢者、年金受給者あるいは低所得層、これらの方々が民間並みの家賃にどこまでたえられるかという問題が起きておるわけですね。

 現に、東京都下の大ニュータウンを抱えた市におきましては、このニュータウン対策、ニュータウンの居住者対策が福祉政策の最重要課題になっているということがあります。もちろん、それは、五階建ての階段を上りおりするのは大変だ、そういう物理的なこともある。居住面積が狭くなってきておる、老朽化しておる、そういう物理的な面もありますが、実は、物理的な面よりも、生活保護世帯ぎりぎりの線で家賃を支払わざるを得ない層というのが年々ふえてきているということなんですね。

 そういう意味で、果たして公的賃貸住宅の家賃が近傍同種家賃でいいのかどうなのか。恐らく、住宅政策本来のあり方としては、近傍同種の、つまり民間住宅の家賃を公的賃貸住宅の家賃並みに下げていく、それが政策だろうと私は思うんですね。ところが、逆なんです。だから、問題がこれから大きくなるだろうと私は予測しております。

 だから、政策のあるべき本来の趣旨を逸脱して、公的賃貸住宅の家賃まで民間並みにして、それが市場化だ、これでいいのかどうなのかということを問われているんじゃないかと思うんですね。

高木(陽)委員 今の本間先生の御指摘の、公的な賃貸住宅が近傍同種、市場家賃でいいのかどうか、まさに私もそのところはずっと感じておりまして、例えば今申し上げたような、若いとき、本当に働き盛りのときは、家賃の部分というのはそんなに大きな負担にならない。ところが、高齢になって年金生活者になる、そういったときに逆にこれが、今までは公的賃貸ということで安い家賃だったのが、急に、ここに来て、収入が減ったときに市場家賃になってくる、こういったアンバランスがあるというのは事実だと思うんです。その点について、やはりこれは政策的にもしっかりと対処していかなければいけないと私も強く感じております。

 あともう一つ。時間も限られておりますので、八田参考人に、これが最後の質問になるかもしれませんけれども、住宅政策ということは、もちろん今回、住生活基本法ということで国が主導してやっていくわけでありますけれども、やはりそれぞれの地域の事情を勘案しながら構築すべきだな、こういう考え方もあると思うんですね。住宅政策における、都道府県さらには市町村、ここら辺の役割分担ですね。

 今、三位一体改革という流れの中で地方分権が進む中で、例えば住宅の補助金というのがなくなっていく、でも、その分交付金という形で国からしっかり支援しようという流れはあるんですけれども、やはり、都道府県さらに市町村、財政事情を考えると、この住宅政策というのはなかなか力を入れられない部分もある。そこら辺の役割分担についてどのようにお考えか、お聞かせ願いたいと思います。

八田参考人 今の、地方と国の役割分担を住宅政策においてどういうふうに行うかというのは非常に重要な問題だと思います。

 例えば、まちづくりをどうするか、あるいは、ある駅の周辺を病院も整備し、それから介護の施設も整備し、老人のためのアスレチックセンターも整備し、老人が住みやすいような地域にしていくというのは個々の事業者ではとてもできませんから、そこの地方が先導してつくっていく、あるいは住民の主導でもってつくっていく、そういうことが必要だと思います。

 一方、先ほどの、公営住宅がもともとは低所得者層に大きな重きを置いていたのにもかかわらず、今、本間先生も御指摘になったように、非常に自由に地方でもって使えるようになった。それは自由に使えることでいい面があるんですが、本間先生が御指摘になったように、それでは低所得者への補助はどうなるんだということは明らかに大きな問題だと思うんです。

 ここが、実際の使い方、低所得者に限って使うのならば、その使い方を公営住宅にするか家賃補助にするかは地方に任せるが、必ずこれは低所得者にしか使っちゃいけないよというお金を国が出さない限り、地方はそれを十分に低所得者に使おうというインセンティブがないんですね。だから、私は、そこは国の役割ではないかと。その枠組みをつくる、お金を限定して配付する、そこは国の役割ではないかというふうに思っております。

高木(陽)委員 時間も参りました。

 まだまだお伺いしたいことはたくさんあるんですけれども、住宅問題というのはストックの問題だけではなくて、また今、量から質だとか、いろいろ言われておりますけれども、一番大切な視点というのはそこに住んでおられる方だなと。その方々が本当にそこで生活をしていける、または、そういった希望を持ってやっていけるのかどうか、こういった視点をしっかりと持っていかなければいけないと思いますし、この住生活基本法というのが、基本法でございますから、今お二方の先生に御指摘いただいた部分もしっかりと勘案しながら、政策の一つ一つの実現というものに努力していくこと、このことを私たちもしっかりと決意をしてまいりたいと思います。

 以上で質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

林委員長 穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田です。

 お二人の参考人、本当にお疲れさまです。私も若干の点について質問させていただきます。座らせていただきます。

 まず第一点、お聞きしたいのは、公共住宅の役割と住生活基本法に盛り込むべき内容についてです。

 一九五〇年に制定された公営住宅法の目的には、「健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、」として、さらに、国民生活の安定と福祉に寄与するとありました。当時、こういう、一九四〇年代から戦後の五〇年代の時期というのは、憲法に書かれた権利というものを明記するのが結構ありました。そのことがやはり基本にあったと私は思っています。そして、そのことで安価で良質な公共住宅が一定の比率になれば、民間の住宅にも影響を与え、国民全体の住生活の向上につながるという考え方が全体としてあったと見てとることができます。

 さらに、政府の住宅宅地審議会は、一九八〇年の答申で、今問題になっているそれら住宅基本法、そういう点の制定を迫って、同法に盛り込むべき内容として、一、住宅政策の目標、二、国、地方公共団体の施策分担及び相互協力、三、住宅及び住環境の水準の目標、四、全国及び地方公共団体等地域レベルで設定される住宅計画の策定、五、住宅に関する諸施策及びそのおのおのの基本方向の提示を掲げていました。

 これらは、いわば、当時なぜ住宅基本法が必要かという問題とあわせて、国や地方自治体を初めとする行政の責任という角度で、しかも、目標を明確にするという点でも大事な指摘だったし、基本法制定の歴史的経緯からしても大切だと私は思っています。

 その辺の大きな基本的観点について、まず、お二人の参考人からお聞きしたいと思います。

八田参考人 居住に関する最低限の生活を保障するということが住宅政策の一つの非常に大きな目的だということは、全くそのとおりだと思います。

 そう考えてまいりますと、ある意味では、既に公営住宅に入っておられる方よりは、やはりホームレスの方に対してどういう対策がきちんと立てられるかということが、本当のことを言うと一番大切な問題だと思うんですね。今回の法案で第六条に書いてあるセーフティーネットをきちんとやらなきゃいかぬということは、私が思いますには、そのことも含まれているんだと思います。

 ただし、それは今まで、住宅政策当局に与えられた役割であったというよりは、むしろ厚生労働省の役割というふうに思われていた面があると思うんですね。だから、実際は境界にあるわけで、二つのいすの間に腰を落としたような関係で、うまくホームレスの対策が今までできていなかった。この基本法で、ある意味で省庁間の協調ということもやっていかなきゃいけないということが明確になることで、そういう問題に対する解決がこれから図られていくのではないかと期待しております。

本間参考人 今穀田先生が御指摘のとおり、公営住宅法初め我が国の住宅法というのは、憲法二十五条の生存権規定の延長線上において、その確保、目的を明記しておったわけでありますが、これが年々希薄化してきているというのも事実であります。

 それは、例えば、公営住宅法の第一条、第二条等は変化ありませんが、日本住宅公団法が、その後、組織の改編を通じていろいろな名称の団体に変わってきました。その都度新しく法律がつくられてきたわけでありますが、その第一条の目的を比較検討されればはっきりすることであります。だんだん憲法二十五条の理念が希薄化してきているのが現状であります。

 国の現状はそういうことでありますが、むしろ地方自治体の方が、憲法二十五条の理念に沿った住宅条例をバブル以降各地で制定してきておる。私は、この地方自治体がつくってきておる住宅条例というのを、住生活基本法においても参考にしてしかるべきなのではないかというふうに考えております。

 例えば東京都住宅基本条例、この前文を見ますと、まさに憲法二十五条の理念を受けた上で、地方公共団体、地方自治体としてのあるべき住宅政策の責務、理念を明記しております。これは、東京都のほかに、新宿区とかあるいは世田谷区とかいうところでも住宅基本条例をつくっております。これらもすべて、地域住民の住宅確保、居住水準の改善を、地域の責任ある自治体の区としてどうしたらいいのかという方向性を示しております。

 こういうふうに、自治体の方が、地方公共団体の方が進んでいる状況じゃないかというふうに私は考えるので、ぜひ御参考にしていただきたいというふうに考えます。

穀田委員 自治体の方は現実に、今本間先生からお話がありましたように、直接住民を抱えていますから、私も、その意味で中身を反映させていきたいと考えています。

 私はなぜ理念を聞いているかといいますと、実は、先ほどもお話がありましたが、一九九六年のイスタンブールでの第二回国連人間居住会議、いわばハビタット2が開催されて、日本を含む全参加者の賛成で居住の権利宣言というのを採択していますよね。宣言の骨子というのは、各国政府は居住の権利を完全かつ前進的に実現する義務を負うと。そういう理念を打ち出す限り、やはりそういう土台をしっかり据えなくちゃならぬという意見なんですね、私の立場は。しかも、居住の権利保障というのは世界の流れだ。

 したがって、今度の住生活基本法はその方向とマッチしているのかということをお二人の参考人に聞きたいと思います。

八田参考人 私は、これはマッチしていると思います。

 ある意味で、これは一里塚であると思います。もちろん住宅政策というのは、セーフティーネットの整備だけじゃなくて、ほかの、例えばまちづくりのようなことで住宅の質を実質的によくしていくというような役割もございますが、セーフティーネットに関しても非常に大きな柱を置いてこれから各省庁が連携して政策をつくっていく、その土台をつくるものだというふうに考えております。

本間参考人 私は、今回提案されました住生活基本法案については、非常に疑問に思っております。

 穀田先生御指摘がありました、一九八〇年に住宅宅地審議会が住宅基本法の早期制定を目指して提言をいたしました。その中に、住宅基本法に盛り込むべき事項というのがありましたですね。少なくともそれは最低限盛り込まなければ基本法としての意味はなさないんじゃないか、不備なんじゃないかというふうに考えます。

穀田委員 私は、なぜその理念を強調したかといいますと、今の現実をその理念に近づけることが必要だと思っているからです。

 私は前回、住宅関連二法の質疑の際に指摘したんですけれども、先ほどもありましたが、最低居住水準以下の世帯というのは百九十五万世帯ある。さらに、国土交通省が目標としている誘導居住水準に至っては、それ以下が二千万世帯ある。さらに、耐震基準を満たしていない既存不適格住宅というのは千二百万戸あると言われている。そして今、公営住宅や公団住宅で住まれている方々のさまざまな思いがある。それらが改善される方向にこの基本法は役立つかどうかという問題だと思うんですね。

 そういう角度でやらないと、例えば九五年の社会保障制度審議会も、全体としては私はいろいろな不十分さを持っていると思うんですけれども、住宅、まちづくりは従来社会保障制度に密接に関連するという視点に欠けていた、ここまで指摘しているわけですよね。このため、高齢者、障害者等の住みやすさという点から見ると、諸外国に比べて極めて立ちおくれた分野であるとまで最後に指摘していました。まさに今、こういうものが問われていると思うんです。

 ところが、基本法は、私ちょっと見たところ、市場原理というものを重視しています。先ほど来お話もありましたが、私は、これでいきますと、市場にゆだねると家賃がさらに一層上がり、また、公営住宅、公団の民営化路線につながりかねないと考えています。

 したがいまして、最後に聞きたいのは、こういう住宅に関するものまで市場任せでいいのか、どうなるのかということについてお二人に聞きたいと思います。

八田参考人 まず、この法案の一つの柱は、住宅の地震に対する安全性の向上を目的とした改築の促進などについて、国及び地方公共団体が大きな責任を持っているということを明記していることであります。したがって、それは非常に大きな柱だと思います。

 それから、住宅に関しても市場を重視すべきかというのは、もう全くすべきだと思います。先ほど申し上げたように、これを人々の選択にできるだけ任せていくということと、それからセーフティーネットをきちんとつくるということは別のことで、人々の選択に任せたらセーフティーネットにお金を使えないとか、セーフティーネットを充実できるような仕組みをつくれないということは全くないと思います。両方ともできると思います。それで、それぞれにやるべきことは別々にあると思います。

 今度、市場について、例えば借地借家法については大変な制限がありまして、借りた人が望むならばずっと借り続けていいという借家人保護の法制があったわけですが、それを変える、変えて定期借家を導入するということは借家人の保護につながらないという意見があったんですが、実際に市場化してみたら、さまざまな実証研究で、一〇%以上の家賃の低下がある、定期借家と普通借家を比べると定期借家の方が一〇%から一二、三%の家賃の引き下げが起きた。全くこれは、市場化することによって、人々に選択を与えることによって安い家賃ができたんだと思います。

 私は、市場の役割というのを今まで余りに無視し過ぎてきたんだ、住宅に関して無視し過ぎてきた、そこを回復すべきだ、しかし、同時にセーフティーネットもきちんとしたものを整備しなきゃいけない、そういうふうに思っております。

本間参考人 住宅というものが市場化になじむかどうかということでございますけれども、例えば、昨今話題になっております建築確認業務が市場化されました、民間検査機関が建築確認業務を行うようになりました。その結果、どういうことが起きているか。町じゅうの至るところで建築基準法、都市計画法違反の建築物がふえてきている、町が壊れていっている。これでいいのかどうなのかということ。

 それから、住宅金融公庫の業務が民間に全面移管されることになりました。その結果、住宅金融公庫が従来定めておりました戸建ての住宅基準というのはなくなったことになります。その結果、従来は法を遵守し、法より、より水準の高い設定をしておりました水準の住宅が全く姿を潜めることになって、安かろう悪かろうの戸建て新築住宅がふえてきている。

 つまり、住宅というのは商品じゃないんですね。環境というのは商品じゃないんです。これはある程度秩序立てて供給されなきゃならないし、ある程度秩序立てて形成されていかなきゃならない。つまり、公的な役割というのはそこに非常に重要なものがあるわけであります。

 私は、現在町が壊れてきている現状、これがついには壊れてしまったということにならないように願うばかりです。

穀田委員 私は、現実に住まいしている方々のさまざまな苦労というものに対して、絵にかいたもちであってはならないと思っています。したがいまして、多くの方々の現実の住まいの要求に対して、量も質もあわせて改善する方向で、こういう法律をつくるために努力したいと思います。

 ありがとうございました。

林委員長 日森文尋君。

日森委員 社民党の日森文尋でございます。

 両先生には、お疲れのところ大変恐縮でございますが、もうしばらくよろしくおつき合いいただきたいと思います。

 では、座って質問させていただきます。

 重複する点もあると思うんですが、住生活基本法と銘打っている以上、住宅及び住生活に関する憲法であるというふうに考えているわけです。

 憲法である以上、ちょっと今具体的にお答えになられるかどうか、大変面倒くさい質問になってしまうんですが、上位法であって、この住生活基本法で触れられている例えば良質な住宅の供給であるとか、良好な住環境の整備であるとか、あるいは、高齢者、障害者もそうでしょう、それから低所得者、子育て家庭、こうしたところにきちんと居住を保障していくというふうなことが書かれていて、そのためには、基本法の柱になっている部分を具体化するためには、かなり関連法を今後整備していかなきゃいけない。

 今、両先生の中で、これを本当に具体化するために必要な関連法の整備というのは、どの程度、どんなことをお考えになっているか、ちょっと面倒くさい質問で申しわけないんですが、もしありましたらお考えをお聞きしたいというふうに思います。

    〔委員長退席、吉田(六)委員長代理着席〕

八田参考人 それは非常に多岐にわたることになると思います。あくまでそれこそおっしゃったように憲法ですので、これからたくさんのことをなされていかないといけないと思います。

 特に、住宅がほかの財と違うところの特質は二つあると思うんですね。

 一つは、その質が必ずしも購入者にとってよくわからない。これは、薬とか、それから例の食品の問題、牛肉や何かの食品のものと非常に似ていまして、ただ市場に任せておくだけではその中身はわからない。そこに関する法律というのはこれからどんどんできていかなきゃいけないと思います。充実させていかなきゃいけないと思います。

 先ほど言われた、建築確認が民間に行ったら何か変になったじゃないかというのは、あれはそんなことは全くないと思いますね。市役所もみんな間違えたわけです。一番の根幹は、そんな生易しいことじゃなくて、やはり、検査機関が市町村であろうと都道府県であろうと民間であろうと、それがちゃんとやっているかどうかということをきちんと監視する仕組みがなかった。それから、失敗した場合に保険がなかった。市町村が失敗したって、それはある種の保険がカバーするというような仕組みがなかった。やはりそういう制度をつくるということが、例えば一つの例ですが、今回、一歩踏み出されましたが、でも、そういう制度というのはこれからますます充実していかないといけない。これは耐震の問題だけじゃない。

 そういうことが一つあるし、それからもう一つは、先ほど議論になっているようなセーフティーネットに関すること。これはもう明らかに役所間の協議が必要で、そういうところも、この情報のこととそれからセーフティーネットというのはまず足を踏み出していかなきゃいけないことだと思います。

 それから、もちろん、まちづくりに関しても、これまでも幾つもの法律がありますが、それをこの下に位置づけて充実させていかなきゃいけないと思います。

本間参考人 先生おっしゃるとおり、基本法というのは実定法の上位法であります。ですから、基本法はしっかりしなけりゃならない。

 と同時に、実定法もちゃんと機能していかなきゃならないわけでありますが、住生活基本法のもとに置かれることになるであろう例えば公営住宅法等を見ますと、先ほど申し上げましたように、昨年の百六十二国会において大きな改正がなされております。公営住宅法なんというのは、戦後、改正に次ぐ改正の歴史を重ねてきたわけでありますが、その都度、入居者にとって不利なような改正が行われてきている。客観的に見ても、これはバランスを欠くと感じざるを得ない。そういう改正をしないことがまず大事だと思うんですね。

 公営住宅法を制定当時のまま存在させることは現実からいって不可能でありますが、その理念あるいは目的、その意義、そういう基本的な原理原則だけはやはり貫かなければならないんじゃないかという気がします。それが住宅関連三法の改正においては大分薄れてきた、入居者に背を向けるような改正が行われてきた、これが政治と言えるのかどうなのかというふうに私は感じざるを得なくなっております。

日森委員 私も全く同感でありまして、重複しますが、基本法である以上、理念が明確になっていなければいけない。先ほど本間先生は憲法第二十五条の例をお出しになりましたけれども、実は、私ども、あの日本社会党の時代に出した住宅基本法は、憲法十三条であるとか憲法二十五条であるとかいうところの理念をしっかりと生かした、国民の権利としての基本法という意味で住宅基本法を提出したという経過があるんです。

 今回、八田先生はかかわっていられたわけですが、あえてといいますか、今度の住生活基本法の中に、イスタンブール宣言の話がさっき出ましたけれども、国民の権利としての居住権ということを明記されなかったというのは何か理由がおありになるのかということをちょっと八田先生にお聞きしたいのと、それから、これが明記されないことによって、この住生活基本法というのは、一体、その性格が本来あるべき姿とどう変わってしまうのかということについて本間先生にお伺いしたいと思います。

八田参考人 まず、健康で文化的な生活をする権利というのはもう憲法に書いてあるわけですが、それがこの法案の六条では、「住宅が国民の健康で文化的な生活にとって不可欠な基盤であることにかんがみ、」と書いてあります。ここが憲法に対応した箇所であると考えております。

本間参考人 私は、先生方とっくに御承知のことかと思いますが、立法技術としまして、法律の一条あるいはないし二条に、健康で文化的な云々と書くのは当然、当たり前のことになっているわけですね。これが書かれているから、国民の生存権の延長線上にある居住権というのが保障されているとは言えないと思います。

 といいますのは、この条文を見れば、ごらんのとおりかなりあいまいなものでありまして、やはり実定法の上位法たる基本法というのは、もう少し、現実よりも、憲法二十五条の理念を受けた形で理念というものを打ち出すべきじゃなかったかというふうに私は考えております。

 立法技術としては当然のことを今さらここで記してあると言っても仕方ないわけです。当たり前のことですから。

日森委員 それから、もうちょっと具体的な話に入りますけれども、時代が随分変化をしてきて、最低居住水準であるとか平均居住水準、これも見直す必要が当然出てくるのではないかというふうに思っているんです。見直した上で、その水準に満たない世帯を解消する、これは具体的な課題としてももちろん理念の中にも入っているわけですが、そういう目標年次であるとか、これはこの基本法で書くかどうかというのはいろいろ異論があるかもしれませんが、こういうことの明確化。

 あるいは今、公団や公営住宅の家賃の問題、近傍同種の家賃でどんどん引き上げられていくというお話がありましたけれども、そういう国民の所得に見合った居住費負担、大体年収の一七%程度以下でないと厳しくなるのではないかという説もあるようですけれども、こういうことなどについても一定明らかにして、そして具体的に居住水準を引き上げていく、住宅困窮者に対しても対応していくというふうなことが必要なのではないかというふうに思っているんですが、それについて両先生の御見解がありましたら、お聞きしたいと思います。

八田参考人 問題を二つに分ける必要があると思うんですね。

 一つは、低所得者の方、あるいは資産がない方、その方たちが健康で文化的な生活ができるように、ここでの最大の課題はやはりホームレスをどうするかということだと思います。そのことが、ある意味では、これからやっていかなきゃいけない住宅政策、福祉政策の一番大切なことだろうと思います。

 次に、今度、公営住宅が余っている地方もあるし、それから、とても入れないというところもある。そうすると、入れた人、入れなかった人の間に大変な不公平感がある。そういう問題をどう解決していくかということがございます。そうすると、公営住宅ではなくて、先ほどから何度も申し上げておりますように、家賃補助のような仕組みの活用が必要になる。一方ではストックであきがたくさんあるわけですから、それをうまく活用するような方法がどうしても必要になる。

 それから今度は、三番目に、それ以上の生活水準の人に対して、これは役所と私の考えが違うということもありますが、私は、もう誘導居住水準とか最低居住水準とかいうものは一切廃止すべきだと思っております。こういうものはまことに僣越な話で、官が人にどれだけの大きさで住めというのはとんでもない話だと思います。これも人々の選択に任せるべきで、職場に近いから小さいところに住んでもいいという人だっていてもおかしくない。

 私は、本郷で、東大のすぐそばのクリーニング屋さんで、御夫婦で、四畳半が下に一つ、それから上に四畳半。これは九十年たった木造だそうですが、本当に幸福に暮らしておられて、そして、奥さんはダンスをやっておられて、七十歳ぐらいの方たちですけれども、そこで御飯も食べるし、寝るのもそこで寝る。全く平和にしていらっしゃる。とても便利なところで、いい学生にいつも会う。そういう生活もあってもいいんじゃないかと思います。

 だから、ある程度以上の方に対しては、むしろ選択の自由を与えて、そのかわり変なものをつかませられないように情報のきちんとした整備をする、そういう対処が公の役割ではないかと思っています。

本間参考人 私は、持ち家居住者については、まあ心配しておりますけれども、悲観はしておりません。といいますのは、今、少子時代で、一人息子、一人娘の御家庭が非常に多くなって、恐らく御両親が苦心して取得された持ち家を相続されるであろう、それが市場化されるだろうということで、余り悲観はしておらないわけですが、問題は、持ち家に居住できないでいる、公的住宅に住んでいるけれども、なおかつ居住水準を満たせない層、こういう方々に対しては、やはり福祉社会、福祉国家を形成する上で、ナショナルミニマムというのは絶対必要だというふうに考えます。

 冒頭に申し上げましたアメリカのアフォーダブルハウジング法でありますが、これは正確にはクランストン・ゴンザレス・アフォーダブルハウジング法というんですが、ここでは、国家としての住宅の到達目標を、すべての米国の家族が適切な環境の中に適切な住居を手にすることができることであるというふうに明確に書いてあります。

 つまり、適切な環境の中に適切な住居、これがアフォーダブルハウジングでありますが、このナショナルミニマムはアメリカでさえ明示して、とにかくそれを実現しよう、それで、自力で到達し得ない人に対しては、国の補助つき住宅とパブリックハウジングにおいて自立を達成する手段を改善しようというようなことを言っているわけですね。市場原理の祖国であるアメリカでさえこういう法律をつくっているわけです。

 市場原理だけアメリカを追って、こういう住宅法についてはアメリカのを参考にしないなんというのはおかしな話であって、やはりこれは参考にすべきではないかというふうに私は考えます。

日森委員 ありがとうございました。

吉田(六)委員長代理 糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 本日、両参考人におかれましては、大変貴重な御意見をありがとうございます。

 私も数点質問をさせていただきます。これよりは座って質問をさせていただきます。

 私も、いろいろな地域のまちづくり協議会なるものに参加したりなんかして、まちづくりや住宅政策というものには大変関心を持ってまいりました。そこで、今、住宅政策の歴史を変える初めての基本法というものの策定を答申されたわけでございます。

 審議会の分科会会長といたしまして、八田参考人がどのようなことに留意されてきたのか、それから、新たな住宅政策の枠組みを提言するに当たって重要なポイントとしたのは何なのか、また、その審議会の中にはさまざまな立場の方々がいらっしゃるわけで、その委員の立場によって主張も異なったのではないかな、その出された主な意見というものがどういったものだったのか、お聞かせいただけますでしょうか。

八田参考人 これの私たち分科会で留意したところと申しますのは、基本的には、今までの大変巨大な制度があったわけで、それが時代が変わって立ち行かなくなった、それで、これを何とかして新しい枠組みにつくっていこうというので、政策の目標をきちんとしようではないかということが大きな観点でございました。そして、最終的に絞ったのが、情報の非対称性をきちんと解消して情報を提供できるようにする、セーフティーネットを整備する、それから、住環境をきちんと整備する、そういうことが大きな柱になりました。

 中での意見でどういうものがあったかということについて、必ずしもここに反映されなかった意見についてどういうものがあったかということの御指摘ですが、私がちょっと特別に申し上げたいのは、実に多くの方が、立場を超えて、家賃補助をすべきだということを申されました。

 一つには、いろいろ地元のことを考える、地方のことを考えると、入れた人と入れなかった人の不公平感が余りに強い。それから、もう一つは、コミュニティーミックスといいますか、要するに、周辺の人たちが、非常に申しにくいことですが、嫌がる、公営住宅ができることを嫌がる、そして、どんどん、それを、低所得の人じゃない方を入れていくような枠組みにしてしまう。そういうようなことでは本当に低所得者の方たちに対してこれが機能しないではないか、だから、家賃補助をして、自分の好きなところに、見つけたところにするようにしたらどうだろう。アメリカは、ちなみに、基本的にもう六〇年代に公営住宅をやめて、そして家賃補助、バウチャーといいますが、それに大々的に変換いたしました。

 それで、そういう方向を目指すべきじゃないかというのは圧倒的意見だったと思います。圧倒的といったら申しわけないですけれども、非常に多くの方が声を大きくして言われました。ここでは、そういう具体的なことは入っていなくて、セーフティーネットをやろうということですが、恐らくは、それは各省間の調整が必要だからだということだろうと理解しております。

糸川委員 それでは、本間参考人にお尋ねいたしますけれども、本間参考人は、住宅都市政策ですとか、そういったことに本当に長年研究をされていらっしゃったということでございますが、今回のこの法案に対して、いろいろ今までも質問があったと思いますけれども、この評価というところに関しまして、どのようにこの法案自体を評価されているのか、お聞かせいただけますでしょうか。

本間参考人 それは今まで申し上げたとおりでありますが、非常に疑問に思っているということでございます。

糸川委員 再度、その疑問に思っているところをもう少し細かく教えていただけますでしょうか。

本間参考人 例えば計画についてお話ししましょう。

 住生活基本法案においては、住宅計画というのは、全国計画をまずつくる、その上で、それを参酌して都道府県計画をつくるということでありますが、一体、地域の住宅事情の実態を霞が関が全部把握することができるでしょうか。地域の住宅事情の実態を一番熟知しているのは、区市町村、自治体ですね。したがって、実態をよく一番熟知しているところがまず需要実態に応じた計画をつくって、それを積み重ねていって、仮に全国計画をつくるんだったら全国計画をつくるべきであって、それがこの法案では逆になっているわけですね。逆になっているというよりは、区市町村の出る幕が一つもない。これでは、地域の住宅事情の実態に対応した計画がつくれるはずありません。

 計画一つとってもそういうことが言えると思うんですね。これは逆ではないか、まず市町村ではないかということでございます。

糸川委員 はい、わかりました。ありがとうございました。

 それでは、両参考人にお尋ねいたしますが、今までの、今回のこの質問なんかも踏まえまして、戦後の住宅の事情ですとか、それから政策の変遷ですとか、そういった、今の情勢というものに照らして、今回の法制化のタイミングというもの、実現のタイミングというものがどのように見られているか。今ではないという疑問があるかもしれませんけれども、そのタイミングという点からしてどうなのか、法制化というものがどうなのかというのをお聞かせいただけますでしょうか。

八田参考人 先ほども申し上げたところなんですけれども、日本では、住宅需要の大きな理由というのが地価神話にあったということがあると思うんです。それで、はっきり言って住宅の質はどうでもいい、むしろ土地をとにかくできるだけ確保したい、そういう形で住宅購入が長いこと進んできたと思うんです。

 それが今や、そういうことではだめで、ある意味で、住宅自身をストックとして取引できるようなものにしたいという動機も出てきたと思いますし、それから、何よりも、土地のために買うわけではないですから、住む住宅の質をよくしたい、そういうことが出てきた。これはやはり、ストックを回すことに対する需要が出てきたのは、明らかに、土地の価格が下がったという今の時点で非常に明確化してきたんだと思うんです。しかし、これは、もともとあったのが、潜在的にあったのが出てきたわけで、タイミングとして今のタイミングが、すべての人が非常にこれを必要としている時期だったというふうに思っております。

    〔吉田(六)委員長代理退席、委員長着席〕

本間参考人 私は、ここに住生活基本法案が提出されたのは、やはり今政府・与党が進めておられる構造改革の一環ではないかというふうにとらえております。つまり、住宅政策の市場化をさらに進めようということではないか、そういうタイミングではないかと。

 例えば、法案の第八条「住宅関連事業者の責務」、第九条「関係者相互の連携及び協力」、それから、第二章「基本的施策」の中の第十一条「住宅の品質又は性能の維持及び向上並びに住宅の管理の合理化又は適正化」、これらを見ますと、住宅事業者の事業をいかに法的にバックアップするかということにほかならないわけですね。

 全体を通じて、国の関与あるいは国の計画、あるいは今申し上げた住宅事業者のいろいろなバックアップ的な施策、こういうものについては書かれておるのでありますが、肝心の国民の視点といいますか、住宅に入居している国民の方々の視点、それをどうするか、どう改善していくのかという条文は全く見当たらないわけですね。これで基本法と言えるのかどうなのかということを感じざるを得ません。

糸川委員 はい、わかりました。ありがとうございます。

 それでは最後に、今国民が本当に豊かさというものを実感できているのかどうかというところで、これは疑問というふうにも言われているわけでございますが、国民が真に豊かになる生活を実感するという意味では、今後どのような住宅政策を展開していくべきだというふうにお考えでしょうか。これは八田参考人にお尋ねいたします。

八田参考人 これからの、豊かさを感じられる住宅政策というのは、基本的には、ライフサイクルに応じて自分たちの家族にふさわしい住宅をきちんと購入していける、そういうことが一番大切だと思います。したがって、今までのように、住宅を一遍買ったらもう一生ということではなくて、ある程度それを機能的に買っていける、そういう市場をつくるということだと思います。

 一方、セーフティーネットの構築ということは大変重要なことであります。今までの政策ツール以外のものを使うべきだと思っております。

 以上です。

糸川委員 ありがとうございました。

林委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。

 本日は、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く厚く御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。(拍手)

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時四分開議

林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、住生活基本法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省総合政策局長竹歳誠君、道路局長谷口博昭君及び住宅局長山本繁太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として独立行政法人都市再生機構理事尾見博武君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

林委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木淳司君。

鈴木(淳)委員 自由民主党の鈴木淳司でございます。

 きょうは、委員会がたくさんありますので委員の方々も大変かと思いますが、久々に質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 さて、質疑も二日目に入りました。午前中の参考人質疑もありましたけれども、論点も課題もそろそろ集約をされてきたかな、そんな感もありますけれども、新たな観点も含めて、確認のために幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 まず、本法案の中身を要約すれば、住宅政策の基本を量の確保から質の向上に転換し、良質な住宅の供給を図る、地域やそこに住む人たちが誇りと愛着を持って住める居住環境の形成を図る、既存住宅の有効活用と購入者への配慮を図る、低額所得者や高齢者、子育て世帯等、いわゆる住宅困窮者のためのセーフティーネットの確立を図るとして、これまでにはなかった視点、基本理念が四点ほど盛り込まれておりますが、その基本理念に基づき、住宅建設五カ年計画にかわって、国、地方それぞれ住生活基本計画を定め、十年先を見越した政策目標や指標が設定されることになります。

 まず最初に、本法案に込められた意味についてお尋ねをしたいのでありますが、本法案は住宅基本法ではなくて住生活基本法という命名がされましたが、そこにかける思いについてお尋ねをいたします。

山本政府参考人 従来の住宅政策におきましては、住宅政策の対象を住宅そのもの、住宅の戸数を拡大するとか住宅の広さを確保するということで住宅そのものに置いて運用しておったわけでございますけれども、今回、住宅政策を量の確保から質の向上に転換していくという観点に立ちまして、住宅を一つ一つの単体だけではなくて、住宅市街地における居住環境を含めた住宅全体、そういう住宅ストックの質をよくしていくんだということを通じまして、国民の皆様の豊かな住生活を実現する、今現在豊かな住生活が必ずしも実現できていないという認識に立ちました上で、これを実現するんだということを今回法律の目的としております。

 このために、具体的に取り扱います施策の分野におきましても、従来は住宅関連事業者とか居住者でございますけれども、これらに加えて、保健医療サービスあるいは福祉サービスを提供する事業者といったような、住生活に関連する事業者との連携協力を図るという視点も非常に大事になってくるわけでございます。

 それもこれも、本法が住宅単体よりも広い概念である国民の住生活ということを政策の対象として、これを豊かにしていく、豊かな住生活を実現するんだという趣旨でございますので、これを端的にあらわす名称として住生活基本法という案にしているところでございます。

鈴木(淳)委員 今回、この法案によって、住宅政策はいわゆるトップダウン方式からボトムアップ方式への転換が図られるものと考えるわけでありますけれども、その場合の国と地方の役割分担とは何か。

 また、法案の意図を実現するために、国、地方、今おっしゃいました住宅関連業者あるいは福祉関係その他、住民等も含めたすべての協力連携というものが必要でありますが、その協働体制の推進をいかに図っていくのでありましょうか。

 また、アウトカム指標の設定に際しまして、いかなる指標をどのような観点で設定し、また、その実現をいかに図るのか。さらには、数値化されない指標、例えば住民の満足度あるいは便利度、誇り度、こんなことをどうやってはかっていくのか、その向上をどう達成するのかについてお尋ねをいたします。

山本政府参考人 三点にわたって御質問がございました。

 まず第一に、法の理念を実現するために、国と地方でどういう役割分担関係に立ってこれを進めていくのかという御質問でございました。

 従来の住宅建設五カ年計画、住宅建設計画法に基づくアプローチは、もともと数が、住宅戸数が足りないということで、何とかして力を集めて住宅の不足を解消するんだということで五カ年計画を立案して進めてきたわけですけれども、その中の本当の中核の中核の政策として公営住宅がございます。

 公営住宅を国と公共団体が一緒になって供給するということでございますけれども、ぎりぎり、日本のどこで住んでいる世帯であっても低廉な家賃で住宅を確保していただかなきゃいかぬという、ナショナルミニマムを確保するという観点でこの公営住宅はやっておりますので、これが住宅建設五カ年計画で表現されるものですから、どちらかというと、まず国の五カ年計画で全国の公営住宅の供給目標を立てて、都道府県と協議をしながら、各都道府県にこれだけの供給量で供給してくださいということをお願いする形で、一言で言えばトップダウンで公営住宅なんかの建設目標をセットしていたわけですけれども、今回の基本法に基づきまして、国と公共団体が、全国を通じた目標については全国計画で定めますけれども、それを踏まえた上で、各都道府県において地域の特性を踏まえて計画をつくっていただくということで、横の関係に立って基本計画は進めていくんだという思想で法律は整理されております。

 それから、関係事業者がきちんと協力をして国民の住生活を高めていくんだという部分でございますけれども、戦後これだけ経済成長をしてきて、なおかつ西ヨーロッパとか北米に比べて住生活が豊かと実感できない一番の理由が、やはり長年各事業者も各家庭も住宅の質を高めるために努力をしているわけですけれども、それが積み重なってストックの質として結実していない。そこをやはり関係者がすべて同じ方向に向かって努力を積み重ねていく、そういう気持ち、考え方を込めて、本法案の九条で、国、公共団体、それから公営住宅等の供給を行う者、住宅関連事業者、居住者、それから地域において保健医療サービスまたは福祉サービスを提供する者その他の関係者が、この法律で定める基本理念にのっとって、現在それから将来の国民の住生活の安定の確保と向上の促進のために、相互に連携を図りながら協力するように努めなければならないという考え方を明定しているところでございます。

 それから、三点目の御質問がありました。政策の効率的な進め方ということで、政策目標を成果指標といいますかアウトカム指標で設定して、なおかつそれを計測しながら政策の効率性を高めていくべきだという御指摘がありました。これについては、住宅の質そのものをはかる指標、耐震強度とかあるいはバリアフリー化率とか、そういったものに加えて、地域の環境水準なんかを示す指標も追求したいと思います。

 さらに、国民の皆様が住宅に関してどの程度満足しておられるのか、そういったような成果についての計測指標についてどのように考えるかという御指摘でございますけれども、この部分が一番難しい指標でございます。従来から、住宅需要実態調査とかを通じて、住宅、住環境についての満足度もはかってきておりますけれども、なかなか十分とは言えませんので、そういう統計調査の改善とかあり方も含めて、住宅政策の改善に努めてまいる考えでございます。

鈴木(淳)委員 ありがとうございました。

 今のお話は、まさにこれからの国のあり方の試金石だと私は思うんですね。これまではトップダウン方式、ただ、これからはボトムアップといいますか、あるいは横の連携、さらにはすべての関係者が協働して政策目的のために推進をしていく。まさに、そうした進み方、あり方がこれからの国の方向性であると思いますので、今回の法の運用につきましては、ぜひそのあたりを十分達成ができますようによろしくお願いをしたいというふうに思います。

 さて、本法案の柱は、良質な住宅ストックの形成と、もう一つ、ストックの活用といいますか流動化の促進と思いますけれども、まず、良質なストックの形成についてお尋ねしたいと思います。

 我が国では、リフォームの市場が欧米に比べて小さい、特に省エネあるいは耐震改修の割合について低いと言われますけれども、その理由はなぜでありましょうか。

 また、環境行政の視点から、京都議定書目標達成計画において、我が国は、CO2排出減において住宅関連の比重が一九%と小さくないですけれども、その住宅の省エネ化というものをいかに図るのか。あるいは、喫緊の課題であります耐震改修をいかに推進するのか。

 その二点についてお尋ねをいたします。

山本政府参考人 いずれの課題も今目の前の一番大きな課題でございますので、短い時間に端的に御説明するのは非常に悩むわけでございますけれども、まず、我が国のリフォーム市場の大きさについての認識でございます。

 西ヨーロッパとか北米の国と比べますと、リフォームの投資の割合が非常に少ないということは事実でございます。年々の住宅投資の中に占めるリフォーム投資の割合という指標で見てみますと、平成十五年の数字で、我が国の場合二九%です。米国の場合はリフォーム投資は三一%で、フランス五六%、英国に至りましては、既存の住宅を改良するための投資が住宅投資全体の中で六一%を占めているというような状況でございます。

 これについては、要するに、基本的には各家計の住宅投資行動の特質ですので、各御家庭で住宅についてどのように考えておられるかということが一番大きいとは思うんですけれども、客観的な条件といたしましては、特に高度成長期におきまして我が国で急速に都市化が進んだということ、要するに、住宅が足りないので急いで住宅を確保するということ。したがって、さらに高いニーズの質のいい住宅ということになると、高度成長期の住宅をつい全部除却して、全く新しい高度な住宅を建てたいというふうに思いがちであるといったようなことが言えると思います。だから、しっかり質のいいものを建てて、リフォームをしながら長く使うという行動で高度成長期に住宅投資が行われてなかったという部分が一番大きいのかなという認識でいるんです。

 あと、省エネについても、近年、京都議定書以降、非常に大きな課題で、建築物全体でも取り組んでおりますけれども、住宅につきましても、実は昨年、省エネ法を改正いただいて、ことしの四月から省エネ法を改正しましたけれども、この改正の中で、二千平米以上のマンションにつきましても、新築等について省エネ措置の届け出の対象にしたところでございます。非住宅の建築物について、従来、省エネ措置の届け出対象にしておりましたけれども、この対象にするという措置を講ずることで飛躍的に新しい省エネ基準の導入が進みましたので、住宅についてもそういったことを期待しているところでございます。

 住宅金融公庫の融資でも、省エネをきちんとやっているもの、バリアフリーをやっているもの等につきましては低利融資を行っておりますし、そういうふうな形でどんどん進めていく考えでございます。

 耐震改修については、これも一番大きな政策課題でございますので、昨年の特別会で耐震改修促進法を改正していただきましたことを出発点にして、十八年度予算、税制等でその法律の枠組みを力強く進めていくということで、今取り組んでいるところでございます。

鈴木(淳)委員 ありがとうございました。

 それでは、他の施策との連携、政策連携についてお尋ねをします。

 良好な住環境の形成には、先ほどもお話がありましたけれども、単体としての住宅の質の向上以外に、面としての居住環境の向上というものが重要であると思われますけれども、コンパクトシティー等、中心市街地の活性化事業あるいは町のバリアフリー化事業等他のまちづくり施策との連携、関連をいかに図るのかについてお尋ねします。

山本政府参考人 少子高齢社会の進展、あるいは人口減少社会が到来するということを考えますと、高齢者でも暮らしやすい、にぎわいのある町を再構築するという観点から、コンパクトシティーを実現するということは住宅政策上も非常に重要な課題であると認識しております。

 このため、まちづくり施策と住宅政策の連携を十分にとりまして、この法律の中でも、先ほど来御紹介させていただいておりますけれども、理念においても、施策領域においても、地域における良好な居住環境の形成を図るべきこと、それから既存の住宅の有効利用を図るべきことといったようなことを明らかに規定していただいているところでございます。

 さらに、現在、国会で御審議いただいておりますけれども、まちづくり三法についてもいろいろな施策を研ぎ澄ませてきておりますし、さらに、ユニバーサルデザインを進める観点から、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律案も国会で今御審議していただいております。

 こういったような形で、コンパクトシティーを進めようということでツールを今集めてきているところでございますけれども、私どもとしましても、こういった施策を進めるために、地域住宅交付金とか、あるいはまちづくり交付金を積極的に生かして活用してまいりたいと考えております。

鈴木(淳)委員 次に、住民主導のまちづくりについてお尋ねをします。

 住民主導のまちづくりは、地区計画あるいは建築協定等があるかと思いますけれども、この全国的な制定の度合いというものはいかがでございましょうか。また、これから積極的に導入する意思があるのか。さらには、その場合には、いわゆるまちづくりコーディネーター、こうした人材の育成が必要と思われますけれども、その点はどうお考えでしょうか。

 また、定期借地あるいは定期借家というものの制度がありますけれども、これは従来期待されたほどには多分使われていないのではないかと思われますけれども、そのあたりの分析はいかがでしょうか。

山本政府参考人 まず、地区計画、建築協定でございますが、地区計画につきましては、実績だけちょっと申し上げますと、平成十六年三月末の時点で四千二百二件ございます。それから、建築協定の方は基準法に基づく制度でございますが、土地所有者等の合意で土地を建築物の敷地として利用する場合のいろいろなルールを定めるわけでございますけれども、同じく一昨年三月末の時点で四千五百三十五件でございます。

 いずれも、すぐれた居住環境を形成し、それを維持保全する上で非常に大事なツールでございますので、積極的にこれからも活用していきたいと思います。

 そのために、まちづくりのコーディネーター等も非常に大事でございますので、いろいろな制度を使って、地域住宅交付金、まちづくり交付金、みんな使えますので、そういった制度を使って、地域の住宅政策の一環として公共団体がこれに取り組まれる場合は大いに応援していきたいと思います。

 それからもう一点御質問がありました、既存の住宅をきちんと生かすという観点、あるいは既存の宅地をきちんと生かすという観点から、定期借地、定期借家の制度の活用状況についての御指摘がありました。

 まず、定期借地でございます。平成四年に制度が導入されまして、一昨年の末、十六年の十二月末までの数字があるんですが、四万九千件の定借つきの住宅が供給されております。要するに、地価に対する負担を抑制できるということもあって、立地がいいところにより広い敷地で戸建て住宅を確保できるというようなメリットが評価されていることと思います。さらに、平成十六年度に定期借地権設定時の一時金の授受について税制上取り扱いが明確になりましたので、そういったこともこれからさらに活用が進む要素になるんじゃないかと見ているところでございます。

 それからもう一点、定期借家制度でございます。これは、平成十一年でございますが導入されまして、それ以降、着実に活用されてきているという認識です。新しく借家契約を結ぶ契約を分母にして定期借家の割合をとりますと四・七%ですけれども、その中で特に戸建てだけとりますと、戸建ての新規契約に占める割合は一一・二%に達していますので、特にファミリー向け賃貸住宅として持ち家を有効に活用するという観点から意義が深いと考えております。

鈴木(淳)委員 次に、既存ストックの活用、流動化、すなわち循環型市場の形成についてお尋ねをしたいと思いますが、時間もありませんので簡単にします。

 きょうの午前の参考人の話にもありましたけれども、いわゆる子育てが終わった高齢者の方のお持ちの家が非常に広くて、逆に子育て世帯の方々が大変多くの人間を抱えながらも狭い住居に居住する、こうしたミスマッチをどうするんだという問題がありました。住宅のストックのニーズとシーズのミスマッチというものをどう解消するのか。特に、高齢者世帯と子育て世帯との仲介機能をどうするのか。

 さらには、流通促進のために税制等の支援をどうするのか。これはもちろんいわゆる売買もあるでしょうし、あるいは賃貸もあるでしょうけれども、そのあたりの流通促進策についてお尋ねをいたします。

山本政府参考人 豊かな住生活を実現する上で、各御家庭の住宅に対するニーズが的確に満たされるということが大事でございますので、せっかくストックが充実してきても、それが本来のニーズに合う形でしっかり使われているという状態を実現するということは非常に大きな課題でございます。

 それは、午前中の議論も含めて、住宅ストックとニーズのミスマッチ、これを解消しなきゃいかぬという課題として議論されているわけでございますけれども、特に賃貸住宅市場に着目しますと、大都市におきましては、床面積が狭くて、子供をこれからはぐくんでいくという若い世帯が、これなら借りたいと思うような賃貸住宅ストックが非常に限られております。一方、高齢者の目から住宅を見た場合にも、そんなに広くなくてもいいけれども、コンパクトに安心して暮らせるバリアフリー化された賃貸住宅というのがたくさん求められているわけですけれども、このような賃貸住宅も不足しているという現実でございます。

 そういう観点から、例えば、高齢者用のきちんとした賃貸住宅を供給する民間事業者に対する助成施策はどんどん拡充してきておりまして、良好な賃貸住宅の供給の促進を図っているところでございます。

 そういう努力とあわせて、今御指摘の、高齢者の単身あるいは高齢者の御夫婦がカップルで住んでおられるような広い住宅を子育て世帯の方々にきちんと使ってもらうというのは大きな課題ですので、国土交通省も、高齢者の持ち家の賃貸化をスムーズにする、それで高齢期の生活に適した住宅に、賃貸住宅などに住みかえていただくということを片っ方で促進しながら、子育て世帯が広い住宅に賃貸で住める、こういうことを進めるモデル事業を今年度から導入いたしました。こういう仕事、施策は緒についたばかりでございますけれども、ぜひ拡充して前に進めていきたいと思います。

 既存のストックを生かすということでは、中古住宅流通も非常に大事ですので、これは需要面、供給面双方で、市場の制度を整備してきちんと進めていきたいと考えております。

鈴木(淳)委員 ありがとうございました。

 次に、住宅困窮者のためのセーフティーネットの確立についてお尋ねをしたいのでありますが、これは私の意見でありますけれども、公営住宅というものが本当の意味でいわゆるセーフティーネットとして活用されているのか、ともすれば、既得権益化をして、長らく居住される方がずっと住み続ける、こんなことが多いように思います。

 やはり私は、公営住宅というのは、基本的に、一時的にいわゆるセーフティーネットとしてそこに居住をし、資力をつけていただいて、その後、公営住宅から出て新たに自分で居住をする、そうするための一時的な居住というふうに思うわけでありますけれども、そのあたりの認識はいかがでございましょうか。本当の意味でセーフティーネットとして機能させるための国交省の考え方をお尋ねいたします。

山本政府参考人 今回お願いしております基本法で、豊かな住生活を実現するために住宅市場の機能を高めていくということで、施策分野は充実する必要があるわけでございますけれども、そういう政策を追求する方針を立てればなおさら、住宅市場で的確に居住を確保できない世帯に対して、どのようなセーフティーネットを張ってこれを運用することができるかというのが非常に大きな課題になるわけでございます。

 その住宅セーフティーネットの中で公営住宅は核となる制度でございますけれども、公営住宅の運用について御指摘のような問題があることは事実でございまして、私どももきちんとこれに対応していく必要があると思っております。一言で言いますと、市民の皆様が、公営住宅があるから住宅については安心だという気持ちで公営住宅の供給、管理を見ていただいているかどうかというテストでございます。

 公営住宅になかなか入れない、有資格者なのに公営住宅にきちんと入れないというようなことも指摘されていることは事実でございまして、公営住宅の管理の適正化、公営住宅をより公平、的確に供給するために、施策対象者によっては、実際に事業者もそういうことを今試みておりますけれども、定期借家といいますか期限つき入居というようなこともあり得ると思います。すべてがそうだというわけにいかないと思いますけれども、そういったような努力、さらには、入居の継承制度を厳格に運用するとか、そういったことを通じて、やはり公営住宅があるから安心だと市民の皆様が思っていただけるような制度運用を図っていく必要があるという認識でございます。

鈴木(淳)委員 本法案には、木材使用の伝統技術の承継と向上ということが盛り込まれました。とてもこれはすばらしいことだと思います。本来質問したかったのでありますが、時間がありませんから、これは要望でありますけれども、まさに日本の居住文化、住文化のためにもこの木造住宅の技術は重要でありますし、また、リフォームにおいても極めて有効、重要な機能を果たすと思われます。この木材使用の伝統技術の承継、ぜひこのあたりをしっかり振興策を図っていただきたいというふうに思います。

 さて、最後に、改めまして大臣にちょっとお尋ねをしたいのでありますが、今法案のポイントは、やはり国の施策展開というものを、地方公共団体、業界団体あるいは住民、そうした方々の協働でいかに進めていくのか、その実効性をいかに上げるかということが実は勝負だと思いますし、まさに今後の国政運営上の大きな課題であるというふうに思います。地方公共団体や業界関係者への協力依頼、さらには連携のあり方、どう進めていくのか、お尋ねしたいと思います。

 また、もう一点。今法案におきまして、個人資産としての住宅を、それに加えていかに社会的なインフラの一つとしてとらえるのか、そうした意識の変革というものが問われると思いますけれども、社会全体のストックの有効活用という意味で、その意識変革をどうやって進められるかについてお尋ねをいたします。

北側国務大臣 これまでの住宅政策は、これまで住宅局長が述べてまいりましたように、住宅の供給ということを、国がトップダウン方式で住宅を供給していく、こういう政策手法が中心でございました。これからは、住宅の量から質へと、住宅の質を向上させていくという方向に根本的に住宅政策の転換をこの法案でぜひさせていただきたいと思っております。

 そして、住宅の質を向上していくためには、当然のこととして、国、地方公共団体がよく連携をとって協働していくのはもちろんでございますが、まずはやはり住宅を直接供給されていく民間事業者の方々の協力、また御理解が不可欠でございまして、また、住環境の整備という観点からは当然住民の方々の協力も必要でございます。国、地方、また関係業界、住民の方々、しっかりと連携をとって、本法案の目指しております質の向上に向けてしっかり取り組みをさせていただきたいというふうに思っているところでございます。

 住宅というのは単に個人資産ではなくて社会的なインフラである、こういうお話がございました。全くそのとおりだというふうに思います。住宅は、その個人にとってももちろん生活の基盤であるわけでございますけれども、都市や町並みという観点から見ますと、この住宅一つ一つが重要な構成要素でございまして、住宅そのものが地域における居住環境に大きな影響を及ぼしていくわけでございます。そういう意味では、単なる個人資産としての性格にとどまらず、社会的な性格を有しているというふうに考えているところでございます。

 今回の法案におきましても、「現在及び将来における国民の住生活の基盤となる良質な住宅の供給、」というふうに規定をさせていただいているのもそういう趣旨でございます。そういう住宅の持つ社会性というものも、しっかりと関係者の方々とともに意識を改革して、住宅の質の向上、住環境の整備に努めてまいりたいと考えております。

鈴木(淳)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

林委員長 杉田元司君。

杉田委員 自由民主党の杉田元司です。

 住基本法につきまして、先ほどの鈴木委員と若干重なる部分がございますけれども、同じ愛知県であります。尾張でありますが、私は三河でありまして、昔から余り仲がよくないんです。先ほどと二点ほど重なる部分があります。その部分につきましては御配慮をいただきまして、木造の件につきましては、私の方で質問をさせていただきたいと思います。

 それでは、幾つかの点につきまして質問を行わせていただきますが、まず住宅、これは戦後、戦災復興から六十年、まさに我が国は経済の上では一流になってまいりました。そしてまた、衣食住、これは最初に吉田委員もお話がありましたけれども、その中でも住の部分においては、我が国というのはまだ国民の満足度が必ずしも得られていない部分であろうと思っています。住、これにはもう住環境というものがあわせて持つ意味合いというものが大変大きい。そしてまた、その住環境というものは長い歴史に培われてそのものがはぐくまれてきた。そういう大変息の長い、長期的な視点に立って行われていかなければならないものであります。

 そういう意味では、今回のこの法案が、住と住環境に視点を当てているという点につきましても評価に値するものであろうと思っておりますし、また、住宅政策の今後ともの必要性を示しているものではないか、こんなふうに考えております。

 それでは、幾つかの質問に入らせていただきたいと思います。

 昭和四十八年に住宅統計調査が行われました。その時点で、都道府県において住宅戸数が総世帯数を上回っておりました。それから三十年余が経過しておりますけれども、その後も供給が続き、平成五年には空き家率がもう既に一〇%を超えておりました。住宅建設五カ年計画の中でも、第三期計画からは居住水準の目標を掲げ、住宅政策の重点を質の向上や良好なる住環境の確保に移行させてきたにもかかわらず、依然としてその水準は低い位置にとどまっております。

 量的供給を優先するこのスキームを現在まで維持してこられましたけれども、今回、きょう午前中の参考人意見陳述の中にもありましたけれども、時期として少し遅過ぎた感が否めないのではないでしょうか。その点につきまして御見解を賜りたいと思います。

山本政府参考人 今御指摘いただきましたように、昭和四十八年の住宅統計調査で、全国の都道府県で住宅ストック数が世帯数を上回ったわけでございます。

 今、平成十七年まで運用してまいりました住宅建設五カ年計画の基礎となる住宅建設計画法を制定していただいたのは、昭和四十一年でございます。住宅がまだ絶対的に足りないという時代、三十年間のうちの最後の十年の節目のところで住宅建設計画法を制定していただいたわけでございますけれども、この制定過程におきましても、当時、国会において、住宅基本法を制定すべきだという御議論があったと伺っております。ただ、当時の状況は、住宅の絶対量が足りないから、急いでとにかく絶対的な不足を解消するんだ、五カ年計画できちんとやっていくんだということで、住宅建設計画法の成立となったと理解しております。

 ちなみに、四十一年当時の、計画法ができ上がりましたときの衆議院建設委員会の附帯決議のイの一番でこういうふうにあります。「住宅対策は不足戸数の数的解決と共に質及び居住環境の向上を図る必要があり、特に四〇〇万戸を民間の自力建設に依存している点にかんがみ、住宅基本法等これが対策を樹立すべきである。」というのが衆議院建設委員会の附帯決議の一でございます。

 そういうことで出発しました住宅建設計画法でございますが、御指摘いただきましたように、昭和五十年になりまして、量的不足が解消したということもあって、第三期目の五カ年計画、五十一年を初年度とする計画では、住宅床面積について居住水準の目標を掲げまして、特に最低居住基準については十年で解消するんだという目標を掲げて、床面積に傾斜しておりますけれども、住宅の質の向上ということを建設計画法の枠組みの中で追求してきたわけでございます。

 その後、いろいろな施策も改革し、改善してきているわけでございますけれども、特に、昨今、急速な少子高齢化あるいは人口減少社会の到来といったような状況も踏まえて、行政改革あるいは三位一体改革の中で、住宅政策の三本柱でございます公庫融資、公団住宅、公営住宅といったような政策手法を抜本的に見直しまして、そういう中で、建設計画法という制度的枠組みについてもきちんと見直して基本法を制定する、そういうことで今回、住生活基本法を御提案させていただいているものでございます。

杉田委員 今御答弁ありましたが、人口減少社会、これは、二〇一五年には確実に減少社会に入っていく、世帯数もまた当然減少に入っていくわけであります。今、三本柱という答弁がありましたが、特殊法人改革の見直しの中で、公団は廃止をされ都市再生機構が発足をし、また公庫につきましても新たな法人化への動きが進みつつあります。そしてまた公営住宅につきましては、補助金制度の見直しの中で、これから地元、地域の創意工夫が図られるようにという意味合いで、助成制度への転換が図られる。

 こうした中で、きょうは都市再生機構理事にお越しをいただいておりますけれども、かつての三本柱と言われたところがこれからどのようにこの基本法の中で役割を果たしていかれるものなのか、お答えをいただきたいと思います。

尾見参考人 済みません。私、今回、建てかえに関していろいろ資料を検討して持ってまいりましたが、今先生の御質問は、今回の法律の中で機構の役割なりがどういうふうに位置づけられているのか、それをどう受けとめて機構として仕事をしていこうとしているのか、こういうお尋ねかというふうに思いますが、それでよろしゅうございましょうか。

 今回の法律の中で、私どもは公営住宅等のグループの中で、従来の公的賃貸住宅の一員としての役割を基本的に維持していくというような位置づけになっているかと思っております。

 具体的な中身は、都市再生機構が発足したときに付与されました役割についてきちっと進めていくということになると思いますが、賃貸住宅の部分につきましては、基本的には、七十七万戸というストックがございますが、そのストックをきちっと活用して、例えば新しい土地を取得しての賃貸住宅の供給ということはもうやらないわけでありますが、そういうストックを上手に活用しながら、ファミリー向けの賃貸住宅を初め、いろいろな政策的な課題、例えば高齢者への対応の問題とか安全、安心の問題だとか、そういうものに適応をしていくということだと思います。

 以上でございます。

杉田委員 この件に関しては住宅局長も御答弁を賜れますか。

山本政府参考人 行政改革あるいは三位一体改革の中で、住宅政策の大事な柱、それぞれ抜本的な見直しを行っております。

 まず、金融公庫につきましては、金融公庫も都市再生機構も、改革に当たっての基本的な考え方は、住宅政策を進める上で、民間でできることは民間にやっていただく、公が関与する主体である金融公庫でなければできないこと、あるいは機構でなければできないことに特化して進めていくという考え方で整理されておりまして、まず住宅金融について、質のいい住宅ローンを拡充していくという仕事を担う住宅金融公庫は、従来の財投を原資に直接住宅金融を供給するという仕事をやめまして、証券市場から資金を調達して、民間金融機関が住宅ローンを長期、低利で貸せるようにこれをお手伝いするという仕事に特化してやってまいります。今、経過期間でございますが、来年の四月一日から独立行政法人になって、その仕事を正面に据えて取り組んでいくわけでございます。

 都市再生機構については、大都市だけではなくて地方の都市も含めて、町の真ん中の大事な土地を将来にわたってきちんと使えるように都市再生を進める。そのために、基盤を整備したり敷地を整備したり、公共団体と連携しながら、非常に難しい、公の主体でなければできないところについて、都市再生機構があらゆる資源を投入して努力をする。

 その都市再生の仕事とあわせて、今理事が御説明しましたけれども、賃貸住宅のストックについては、大都市を中心に特にニーズの高い高齢者居住、そういったことを配慮しながら、ストックをきちんと生かして賃貸住宅政策を運用していく、この実施機関としての役割を担うということでございます。

 もう一つの公営住宅については、昨年法律を改正していただきまして、地域における多様な住宅政策を公共団体が、特に市町村が主体となってこれを進めていくことができる制度に改革していただきました。公共団体が地域住宅計画をつくれば、もちろん公営住宅の建てかえなどの事業が中核になりますけれども、それに関連して必要となる地域住宅政策に必要な資金については、地域住宅交付金でまとめてこれを交付して、公共団体が主体的な地域住宅政策を運用できるようにしたというのがこの三本柱の近時の改革の要点でございます。

 今回の基本法におきましては、このことを踏まえて、例えば、住宅に困窮する者が多様化する中で、市場で適正な水準の住宅を確保することができない方に対して公平で的確に住宅が供給できるように、公営住宅を中心にして住宅セーフティーネットの構築、機能向上に取り組むといったような仕事、あるいは、住宅金融公庫それから都市再生機構につきましては、この法律に基づきまして基本計画ができます。全国と都道府県でできますけれども、この基本計画に定められてそれぞれの政策目標が掲げられますので、これを着実に実現するということで力を発揮していただくということになるわけでございます。

 よろしくお願いいたします。

杉田委員 御丁寧にありがとうございました。

 本法案のスキームを見てまいりますと、もはやハードの部分は終わったのかな、そして、これからもっとソフトの部分に移行していく、そのことがよくわかります。

 ただ、昭和三十年代とか四十年代に建てられた住宅は大変陳腐、古くなっており、リフォーム等々は大変困難な状況に置かれているのではないだろうか。地域コミュニティーにとってもその辺が大変大切な要素でありますから、今後、そうした古くなった住宅につきましては建てかえをする計画等々おありになられるのかどうか、そのあたりを御確認させていただきたいと思います。

尾見参考人 それでは、お答えを申し上げます。

 建てかえ事業についてのお尋ねでございますが、当機構の前身であります住宅公団の昭和三十年代の賃貸住宅約十六万戸につきましては、昭和六十一年度から建てかえ事業を開始して、約十一万一千戸の建てかえ事業に着手してきたところでございます。この平成十七年度末で約六万九千戸の賃貸住宅を供給しているところでございます。

 この建てかえ事業の目的は、申すまでもなく、居住水準の向上や敷地の高度利用を確保するということでありますが、今御指摘がありましたように、建てかえに当たりましては、そうした賃貸住宅の供給という観点だけではなくて、都市の居住環境の向上あるいはコミュニティーの再生といった課題を念頭に置きまして、周辺市街地を含めた一体的なまちづくりに向けての公共施設の整備や、あるいは社会福祉施設等の整備によって団地の再生を進めてきているというところでございます。

 ところで、今、三十年代、四十年代と含めてお話がございましたが、今後更新期を迎える四十年代の住宅は、実は三十年代の倍の約三十二万三千戸ございます。七十七万戸の賃貸住宅の約四割を占める、こういうことになります。ちょうど大量供給が望まれた時代でありまして、大規模な郊外型の団地というものが非常に多うございます。比較的画一的な住戸も多いというような特徴がございます。

 その扱いをどうするかということにつきましては、現在いろいろ検討しておりますけれども、本格的な人口減少社会を迎えて今後の住宅需要の動向がどうなるのか、あるいは都市のコンパクト化といったいろいろな課題もございますので、そういう動向をきちっと見きわめてから対応を考えていく必要があるんじゃないか、こういうふうに考えているところでございます。

 また、今回の法案の背景としても、住宅のストック重視という観点があるように思います。このストックという点につきましては、敷地だけでなくて住宅本体、住宅そのものの有効活用ということも課題なのかなというふうに考えているわけでございます。そういうことで、三十年代については一律建てかえをするという方針で進めてまいりましたが、四十年代については、やはり全体的に四十年代もこうする、一律の対応をするということは厳しいのかなというふうに思っております。

 団地が個々に置かれている状況を見きわめまして、団地の特性とか、あるいは整備の効果とか事業の採算性、そういうものを十分勘案しながら、いわゆるリニューアルというものを進めております。住宅の内部を改善するということでありますが、そういうことに加えて、例えば住宅の周辺、外壁だとか共用部だとか、あるいは住棟そのものを全体的な大規模なリニューアルをしていくというようなこととかをあわせて、居住環境の整備、例えば駐車場とか公園とか、そういうようなものについてその整備を図っていくことが必要なのではないかと思っております。

 いずれにしましても、四十年代のものについては、個々の団地の特性、需要動向、そういうようなことを見きわめた上で、各事業を、事業手法なりをミックスした形で個別の団地ごとに計画を決めて対応していくことがいいのではないかと考えておるところでございます。

 以上でございます。

杉田委員 ニュータウンもこれからそのような見直しと考えてよろしいんですか。

山本政府参考人 ニュータウンについて、いろいろ御指摘いただいているような問題があることは事実でございます。ただ、ニュータウンは計画開発された住宅市街地でございますので、基盤もきちんと整備されている、いろいろな環境も整備されているということでございますので、これを大事にして、将来にわたってきちんと使えるように再生していくということが課題だと思っております。

 昨年一年間、このニュータウンの再生についての検討会を大臣のもとに設けまして、検討しました。その御提言を昨年十一月の終わりにいただいておりまして、そのポイントを申し上げますと、一つは、職住分離のベッドタウンということで整備しましたけれども、これからは職住が共存する都市につくりかえていく必要がある、雇用機会、就業機会も積極的につくって、そういう融合都市にしなきゃいかぬというのが一点。それからもう一つは、いろいろな意味で、リフォームとか建てかえとかいろいろなことを講じて、オールドタウンからの再生を図らなきゃいかぬということが二点目。それから三つ目は、かつては新住民だったわけですけれども、もう四十年暮らしてそこの古くからの居住者になっておられるわけですので、住民主体の成熟した市街地として生かして使うという観点からどういう対策が可能か。

 その三点を柱にしてニュータウンの再生に努めるべきだと御指摘をいただきましたので、いろいろな市街地整備の施策がございますので、これを集中的に導入して、やはり再生のモデルとして取り組んでいきたいという考えでございます。

杉田委員 それと、全国計画におきましては、先ほどもちょっと鈴木委員の中にありましたけれども、バリアフリー化や省エネ化や、あるいは耐震化等々、一定の基準については、これはわかります。それを超えたものの住環境あるいは豊かさの実感、こうしたもののしっかりと目標設定をどのあたりに置いていかれるのか、そのあたりの御答弁をお願いしたいと思います。

山本政府参考人 基本計画を策定する際に目標を設定するに当たりましては、できるだけわかりやすい、例えばストックの質でありますと、引用していただきました住宅の耐震化とか省エネ化とかバリアフリー化、それからさらには、住宅の性能表示という制度も品質確保に関する法律でございますので、例えば住宅性能表示の実施率とかそういったような指標も使って、基本計画の目標設定をしてまいりたいと思います。

 ただ、地域的に取り組むべき課題もございますので、全国一律の目標については、全国計画ではそういうことを取り組んだ上で、都道府県計画において、例えば、雪寒地域であれば積雪対策がございましたり、あるいは木造住宅について地産材をどこまで使うかというような目標設定もあり得るかと思いますけれども、そういうふうな指標の設定とか、あるいは国が例えば居住水準の目標を定めて、それをさらに上乗せして、地方においては上回る居住面積の目標を掲げることも可能ですし、全国計画で設定するとともに、やりとりをしながら、都道府県で地域の特性に応じて目標設定していただくということで前に進んでいきたいと考えております。

杉田委員 時間が迫ってまいりました。質問も急ぎますが、答弁も急いでお願いをしたいなと思います。

 今度の計画、国と都道府県でありますけれども、市町村という枠組みがとらえられておりません。これからは市町村にいろいろとシフトしていかなきゃならない、そしてまた市町村の声を聞き入れていかなきゃいけない、そういう中にあって、なぜ今回この市町村というものが外れているのか、そのあたりをお聞かせいただきたいと思います。

山本政府参考人 本当の地域の住宅政策を担っていただくのは市町村であることは間違いありません。これまでも住宅の世界で住宅マスタープランとかをやってきていただいております。

 ただ、今回、基本法に基づいて基本計画をつくっていただくのは、国のほかに都道府県ということにしておりますけれども、例えば、都道府県計画を定めていただくときには、当然、市町村と稠密にやりとりをしてつくっていただきます。

 その上で、昨年法律をつくっていただきました地域住宅特別措置法に基づいて、地域住宅計画を市町村がおつくりになります。これについては、地域住宅交付金という財政措置がついておりますので、ですから、都道府県計画と各市町村がおつくりになる地域住宅計画の連携もきちんと図っていただいて、施策を推進していきたいと考えております。

杉田委員 これから市町村合併が進みますので、ぜひそのあたり御配慮をいただきたいなと思います。

 それから次に、温室効果ガス、CO2に絡んで、これは平成二十年までには目標数値五割、新規住宅から削減をするという数値が定められておりますけれども、木材の需要という意味合いを考えても、これから、この新規住宅を含め木材利用、国産材利用というものが大変大切になってくるのではないかと考えておりますけれども、そのあたり、これからの計画の中でどう取り入れられていく予定があるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

山本政府参考人 これは、法律の中で国の責務として、我が国の伝統的な住宅への木材利用技術をきちんと継承して、そういう形で質のいい住宅をつくっていくんだ、これは国の責務だということを明確にうたっておりまして、そのことを踏まえて、全国計画においても木造住宅を進めると。特に、内国産材をきちんと使った伝統的な日本のいい住宅をこれからは普及していくんだ、そのために国が前に立って努力するんだということを法律でもうたっていただいておりますので、基本計画では一番大きな課題の一つになると考えております。

杉田委員 ぜひ、この点につきましてはお願いを申し上げさせていただきたいと思います。

 もう二点ほど質問させていただきます。

 先ほどコンパクトシティーという、今まちづくり三法、今国会での最大の重要法案の一つでありますけれども、町の中に人々が潤いと豊かさを実感できるには、町の中に車の流入をある程度防ぐということがまた必要ではないのだろうか。パーク・アンド・ライドという方式がありますけれども、一たんそういうところで区切りをつけて、住とその環境というものを保ちながら本当の潤いと豊かさを実感できる、そうしたコンパクトシティーを目指すべきではないか。

 今回のこの法案の中にそのことはどう組み入れられていくものなのか、お答えをいただきたいと思います。

谷口政府参考人 お答えいたします。

 重要な御指摘をいただいたと思っております。

 これからの道路整備は、車中心ということでなく、歩行者空間、町の中での空間機能の充実といった視点が重要であると認識をしておるところでございます。

 具体的な施策を申し上げますと、面的な渋滞対策が必要な人口十万人以上の都市圏において、パーク・アンド・ライド施策等を推進することにより、公共交通機関との連携強化を図る都市圏交通円滑化総合計画を平成十年度から重点的に推進をさせていただいておりまして、これまでに二十三都市圏での計画の策定、実施が行われているということでございます。

 例えば、この都市の中に豊田市があるわけでございますが、郊外にパーク・アンド・ライド駐車場を整備する一方、市内中心部では歩道を広げる事業を行うなど、町中で歩行者が楽しめる空間づくりを進めているところであるということでございまして、良好な居住環境の整備にも資しているということであろうかと思います。

 海外でも同様の取り組みが行われておりまして、例えば、フランスのストラスブールにおきましては、LRTの導入にあわせてパーク・アンド・ライド施策を一体的に進めることにより、中心市街地を抜ける通過交通を抑制し、歩行者などにとって快適な歩行者空間を実現していると聞いております。

 今後とも、豊かでゆとりある居住空間、都市空間の創造に向けて、道路局としましても努力をしていきたいと考えておるところでございます。

杉田委員 ありがとうございました。

 大臣にも決意のほどを伺いたかったのですが、時間が参りました。

 これにて終わります。ありがとうございました。

林委員長 長安豊君。

長安委員 民主党の長安豊でございます。

 先般、先週の火曜日でございますが、本会議におきまして、住生活基本法案、本法案の代表質問に立たせていただきました。その代表質問におきまして大臣からも御答弁賜りましたので、より明確にしたい論点につきまして御質問させていただきたいと思います。

 今回、この本会議の答弁の中で大臣は、豊かな住生活は、国民一人一人の価値観、ライフスタイルやライフステージごとに異なるものであり、また豊かな住生活の実現のためには、国民の多様なニーズに合った、安全、安心で良質な住宅が適時適切に選択できる市場の環境整備が必要であるという御認識を示されたわけでございます。

 これは、例えば、子育て世代の世帯が狭い住宅にお住まいで、両親といいますかお年寄りの方々が広い家に住まれている、持て余して住まれているということが多々散見されるわけであります。実際、私の家庭なども、両親はそういう家を持て余すように住んで、我々夫婦は狭い家に住んでいるという状況があるわけです。こういう状況を見たときに、やはりそれぞれのライフステージ、つまり生活の形態に合わせた住みかえというものが促進されるようなことをされなければならない、そういう思いで大臣は御答弁されたんだと思います。

 逆に言うと、これまで国が進めてきた持ち家政策、これは税制を優遇したり、また累次の景気対策によって促進政策というのを打たれてきたわけですけれども、これが、ある意味、家を持ちたいという、一般の国民の方の行動の特性というものをゆがめてきたのではないかという気がするわけであります。そういった意味に関しての真摯な反省がこの段に及んで必要ではないかと思っておりますけれども、先般の大臣の御答弁を拝聴させていただきますと、過去の住宅政策に関する反省というものが欠けていたのではないかと思うわけでありますけれども、改めまして大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

北側国務大臣 過去の住宅政策が持ち家取得重視ということではなかったと私は思うんです。そもそも、住宅が足らない。戦後直後はもちろんそうなんですが、高度経済成長期のときに、東京、大阪を初めといたしまして、都市部に地方から人口が集中する。住宅が全く足らない。いかにその住宅の供給をするか、ここに最大の主眼がこれまでの住宅政策は、特に前半はそういうところに大きな目的があったというふうに思っておるところでございます。

 その中で、例えば持ち家政策としては、今おっしゃったように、住宅金融公庫の融資だとか減税政策だとか、そういうのがあったんですが、逆に、借家については公営住宅、公団住宅を大量に供給する。これは、税金であったり財投からの融資であったり、そういうものを活用して、公的資金によって賃貸住宅を大量に供給してきたわけでして、これは決して持ち家取得を重視するという政策であったんではなかった。まずは、供給不足の中で、いかにその供給を満たしていくかというのが住宅政策の中心であったというふうに考えているところでございます。

 ただ、住宅の量についてはもう十分満たしてきている。むしろこれからは、これまでも途中から住宅の質ということが言われてきたんですが、より根本的に、住宅の量から質への政策転換をこの法案で明確にさせていただこう、位置づけをさせていただこうということでございます。

 また、もう一つは、今でもやはり持ち家のニーズというのは非常に強いと思うんですね。なぜ今でも持ち家のニーズが強いのかというのは、やはり将来が不安だからというのがあると思うんですよ。賃貸住宅のままだと将来本当に大丈夫なのかなという不安がある。そういう意味では、私は、これはさまざまなニーズがあると思いますが、良質な賃貸住宅をしっかり供給していく、できるだけ安い家賃で良質な賃貸住宅を供給できるようなインセンティブを持つような政策をこれからしっかりと実施していく必要があるというふうに思っております。

 また、委員もおっしゃったように、これからは本当に高齢社会、私は、高齢社会というのは決して暗い話じゃなくて、これは長寿社会という意味ですから。世界で一番の長寿社会。そういう意味では、定年退職した後もまだ人生長いんですよね。そういう意味で、独身時代、そして結婚をして子供たちを育てる時代、子供たちが大きくなって夫婦だけになる時代、そして高齢者の時代ということで、本当にライフステージが長い。その中で、住宅に対するニーズというのは恐らくさまざまなんだろうというふうに思うんですね。そういうさまざまなライフステージにおけるニーズにしっかりと、選択をできるような市場をつくっていくということが非常に重要な政策課題ではないかと考えております。

長安委員 まさに今大臣おっしゃったとおりでございます。

 私もよく申し上げます。少子高齢化が問題だという発言などがよく専門家の方からされますけれども、少子化は問題だ、高齢化は問題じゃない。多くの子供が生まれてくれば、高齢化を乗り越えられる。社会保障の問題についても、多くの子供がいれば、将来的には解決できる問題が多くあるのではないかと思うわけです。そういう中にあって、今大臣おっしゃられたように、それぞれの世代がそれぞれ多様なニーズを持った中で、そのニーズに合うように市場の環境整備をしてやるということが我々政治の仕事だとまず思います。

 それと、このようにニーズが多様化してきたというのは、急にといいますか、ある意味、速いスピードで起こってきた。それに対して、政策の方も、すぐにそれを取り上げて、タイムリーに変えていくということがこれから求められていくのではないかと私は痛感しておるわけであります。

 今大臣は、賃貸の住宅に関しても公営住宅等を整備してきた、それは、最初は不足状態だった、だから供給を頑張ってやってきたんだと。おっしゃるとおりで、それによって多くの方々が安い家賃で住宅に住むことができた。しかしながら、今ここではたと振り返ってみると、実は、その供給が過剰になったというのは、もう早い段階から過剰になっていたのではないかという部分もあるわけです。そういう意味では、うがった見方をすれば、今回のこの住生活基本法というものができて、先ほど量から質へというお話がございましたけれども、ある意味、これが遅きに失したのではないかということも言えるわけであります。

 一方で、量から質に変わったこと自身は、これは評価されるべき問題だと私も感じております。そういう意味では、今大臣のおっしゃった、環境整備をどのようにしていくかということが今後重要になるわけであります。

 私も、若いころには賃貸住宅に住んでおりました。そのときに疑問に思ったことがございまして、現在まで解決しておりません。それは何かといいますと、賃貸住宅を借りるときに連帯保証人をとられるんですね。大臣、もちろん、弁護士の資格をお持ちですので御理解いただけるかと思うんですけれども、連帯保証人というのはかなりの重い責任を持つ立場なわけです。そのような方を契約のときに探してこないと、連帯保証人がいないと賃貸住宅が借りられないということが、これは賃貸市場での商慣行なんだと思いますけれども、まかり通っているというか当たり前のこととなっている。一方で、借りるときに、当然、礼金や敷金というような経済的な負担もあるわけです。

 こういった連帯保証というものに関しては、これは一例にすぎませんけれども、この基本法の制定にあわせて、こういった不動産市場における慣行というものも見直していくべきではないかと私は考えるわけでありますけれども、こういった慣行を見直すことによって住みかえの促進を実現するためにも、今後具体的にどのような施策を検討されるおつもりか、御所見を賜れますでしょうか。

山本政府参考人 御指摘いただきましたように、住みかえを円滑に進めるという観点から、民間賃貸住宅市場の環境整備をする、非常に大事な課題であると考えております。

 これまでも、今のような慣行に根づくいろいろなバリアがあるわけでございますので、具体的な取り組みとしては、賃貸住宅の標準契約を用意いたしましたり、これは通常の賃貸住宅契約でも定期借家の契約でも標準契約書を用意してやりましたり、トラブルのケーススタディーをやりまして、解決のためのガイドラインを提示して普及を図ったり、とにかく合理的な賃貸借関係を結んでいただいて、契約内容をめぐるトラブルができるだけ発生しないようにという観点から、いろいろな取り組みをしてきたわけでございます。

 今御指摘いただきました連帯保証制度、これにつきましても、最近では、民間ベースではありますけれども、家賃保証サービスが出てまいりまして、連帯保証人を確保しなきゃ契約できないということではなくなってきつつあるという認識でございますけれども、国におきましては、例えば、民間賃貸住宅について入居にいろいろな制限がある高齢者なんかにつきましては、高齢者の居住の安定確保に関する法律に基づきまして、高齢者円滑入居賃貸住宅の登録を受けた賃貸住宅について家賃債務の保証をするとか、そういったような取り組みをやってきております。

 今般、その枠組みをベースにして、あんしん賃貸支援事業というのを今年度から発足させました。これは、高齢者の方だけではなくて、障害者とかあるいは外国人、それから子育て世帯も含めて安心して入居できる、そのために、家賃保証サービスの利用もできる民間賃貸住宅について情報提供して、入居がスムーズにいくように支援をするという制度を初めて発足させました。

 こういった取り組みを通じまして、民間賃貸住宅ストックの質を高めながら、合理的な賃貸借ルールを普及させることで、安心して住みかえができる民間市場を整備していきたいと考えております。

長安委員 今局長の御答弁をお伺いしますと、なるほどなるほどと納得できるわけでございます。私も、実際この質疑をするに当たりまして、現在どのようなサポートがなされているのかというのも調べさせていただいたわけでございます。家賃の保証というようなお話も今局長からございました。

 ただ、国民の立場に立って見たときに、例えば、今、お年寄りや外国人の方また障害者の方々に対して、それがどれだけ知れ渡っているか、啓発ができているかということになると、ほとんど知られていないのが現状ではないか。知らないから、結局は保証等の必要のない例えば公団に入るとか、安易な方に流れてしまっているというのが現状です。そういう意味では、今後、そういった啓発にもやはり力を入れていただくことが必要ではないかなと思うわけであります。

 一方で、先般来、都市計画法の改正案であったり、また、まちづくりに関する法律というのがこの国土交通委員会でも議論されてまいりました。この法律では、論点としては、やはり地方をいかに再生していくかということが議論になっているわけであります。そういう意味では、今回の住生活基本法という法律の理念を踏まえ、地方における空き家をいかに活用していくか、また、若い世代の受け入れの促進等に関して公的なサポートも含めたどのような取り組みが必要だとお考えか、具体的に検討されているものがございましたら、お話しいただきたいと思います。

山本政府参考人 実は、特に地方におきまして、空き家が出てきております。非常にすぐれた住宅で使われないままになってしまっているというのが、地方の都市部というよりはむしろ田園地域にそういうものがあったり、いろいろ賦存してきていることは事実でございまして、そういったものをきちんと生かして、居住水準を高めるとともに地域の活性化にも役立つようにということに取り組み始めている公共団体が出てきております。特に市町村ですね。住宅でいえば、供給側と需要側の両方のサイドから、ぜひそういうことを進めたいと考える市町村が出てきているということでございます。

 もし、そういう住宅が地方都市の中心市街地にあるのであれば、ぜひ、それがいいものであればリフォームをしながら町中居住に役立てる、それを賃貸で使っていただくということもあり得ますので、そういうアプローチをしていますし、あるいは団塊なんか典型ですけれども、UJターンで田園地帯に帰ってきてそういう暮らしをしたいということであれば、田園地帯のすぐれた住宅について、利用可能なように整備をしながらUJターン者を受け入れるというようなことをトライしています。

 そういった意欲的な公共団体に対しましては、先ほど来何回も引用しておりますけれども、地域住宅交付金が十分な形で利用可能でございます。例えば、公共団体がそういう住宅を借り上げてリフォームをして貸し出すということであれば、リフォームの費用はもともと基幹事業でできますし、あるいは、そのためにいろいろ宣伝をしたりするということでソフトなお金が必要な場合は、提案事業に位置づけていただければ交付金で応援することが可能でございますので、私どもどんどん宣伝しておりますけれども、公共団体で意欲的なところにこの制度を活用して、大いにこの政策を進めていきたいと考えているところでございます。

長安委員 まさに、今局長おっしゃられた地域住宅交付金、こういうものを活用して、住宅がうまくライフスタイルに合うように、流通という言葉が正しいかどうかわかりませんけれども、当てはめていくということが今後求められていると思います。

 きょうは多くの方が傍聴に来られておりますけれども、ぜひ思い浮かべていただきたいのは、都心にお住まいの若い御夫婦が、やはり田園地帯でもいいから庭がちょっとあって、庭で野菜でもつくりながら子供を育てたいなんという気持ちをお持ちの方がいらっしゃる。一方で、お年寄りで、庭はあるけれどももう庭をさわるほどの体力もないというようなときに、やはりこれはいかに住みかえを促進していくかということが求められていくわけですから、ぜひ、そういった取り組みを強力に進めていただきたいなと思うわけでございます。

 先般の本会議でも、成果指標について大臣からも御答弁賜りました。全国計画におけます成果指標の一例として、新耐震基準の適合率、あとバリアフリー化率というようなものを提示していただきました。

 これは、確かにこういった指標というのは重要でありますけれども、一方で、この数値だけでマネジメントをしていくというのは非常に難しい問題です。つまり、数値が羅列されるだけでは、はっきり申し上げまして結果を生んでこない、成果を生んでこない。数値に対してそれぞれ何が大事なのか、つまりウエートづけをしていくということが、成果指標を用いたマネジメントをしていく上では重要だと考えております。指標のポートフォリオなんという呼び方をするのかもしれません。

 一方で、成果指標の設定というのは、ある意味もろ刃の剣であります。そういう意味では、どのようにこの指標群をウエートづけして見ていくのか。また、この指標も漏れがあったりダブりがあったり、漏れ、ダブりなく指標を設定するということが必要になるわけです。一方でこの指標の体系をつくることは難しいというのは十分わかっておりますけれども、重要な問題ですのであえて御質問させていただきます。

 この成果指標の設定に当たって、どういったプロセス、手続を踏んで指標を設計するのか、また目標水準を定めていかれるのかということをどのように想定されているのかお伺いしたいのと、また、指標数はどれぐらいを見込んでおられるのか、御意見をお伺いしたいと思います。

山本政府参考人 基本計画の全国計画における目標の設定の仕方についてのお尋ねですが、今まさに設計をしている最中でございますので、その考え方を御紹介させていただきたいと思います。

 基本法で四つの理念を掲げて、それぞれ理念を追求するための施策分野を条文で四分野並べさせていただいております。第一が、良質な性能、住環境、居住サービスを備えた住宅ストックの形成、これが第一でございます。それから第二が、多様な居住ニーズの適時適切な実現を示していくということ。それから三つ目が、住宅の資産価値の評価、活用。四つ目が、住宅困窮者について安定した居住を確保する。この四つの施策分野について、それぞれアウトカム指標を今追求しているところでございます。

 先ほど来御紹介がありました例えば耐震性能とか省エネ性能とかというのは、住宅のストックの質がどうであるかということを示す指標の例としてございますけれども、それぞれについて今追求しているところでございます。これは、まだこれから試行錯誤を重ねて毎回充実させていこうということで取り組んでいるものでございますので、例えば既存の住宅政策関係統計がございます、一番ベーシックな統計では住宅・土地統計調査というのを五年に一回やっておりますけれども、そういった統計調査のあり方についても、計画を立案しフォローアップする過程できちんと見直していかなきゃいかぬと思っております。

 そういうことでございますので、それぞれの施策分野について、これまで五カ年計画で追求してきたものも含めまして、例えば住環境でございますとか、そういったものも含めまして今指標を検討しているところでございまして、今現在で何個でございますということはないんですけれども、そういうことで追求してまいります。

 それから、各施策分野の政策的な重みをウエートづけて、全体として今回の基本計画における政策のポートフォリオはどうなっているのかというようなことを端的にお示しできるといいんですけれども、まだそこまでちょっといっておりません。いろいろ吟味する必要があると認識しております。

 そういう意味では、いろいろ試行錯誤は重ねなきゃいけませんけれども、漏れとかダブりとか、統計上の制約もあっていろいろ不十分なところはあるかと思いますけれども、精いっぱい頑張ります。

 それから、指標の設定についての手続、プロセスでございますけれども、これは法律でも、基本計画を策定する段階で審議会にはもちろんお諮りする。それから、横に、都道府県ときちんとお話し合いをして、全国にわたって定める目標ですので、どういうふうにしたらいいかという御意見をいただきます。

 それに加えて、国民の皆様から広く意見を徴するようにというのが法律の要請でございますので、いろいろな方法を、直接シンポジウムとか会合を持って意見を聞くということに加えて、パブリックコメントに付して一定期間御意見をいただくというようなことは、もちろん努力をしたいと考えているところでございます。

長安委員 今指標のお話ございましたけれども、確かに、適度な数じゃないと、何百と指標があってもコントロールがきかなくなるわけでございますので。

 一方で、この指標のウエートづけ、今お話ございましたように、じゃ何をもってウエートづけしていくのか、これは重要であります。例えば耐震化率なんというのは、これは国民の皆さんの安全ということになりますから、やはり重要な観点かなと。一方で、省エネという、これは環境になりますから、安全と環境を比較してどちらが重要なんだというところは難しいところでありますけれども、ただ単なる成果指標というだけではなくて、これは何と連携するのか、つまり、安全なのか環境なのかということをしっかりと見きわめていただいて、有効な成果指標を設定していただきたいなと思う。

 あと、今後、当然さまざま社会の情勢は変わってくると思います。そういったときに、今まで使っていた指標は必要じゃない、また新たな指標を入れないといけない、そういうものが出たときに、いかに適時入れかえできるかということも重要になってくると思いますので、一たん入れたからこのままいくんだということではないようにお願いしたいなと思うわけでございます。

 それと、次に参りますけれども、全国計画と都道府県計画というものがございます。この目標の数値の設定、それを実現する政策手段、また、そのために必要な経営資源、これについて、全国計画と都道府県計画の策定の過程でどのように調整していくことを想定されているのかということでございます。

 つまり、国として先ほどのような成果目標を設定することは、私は否定すべきではないと思いますけれども、これだけ地方分権が叫ばれているわけです。そういう中にあって、地方が目標を設定して達成していく。一方で、これは国でまた定めている目標がある。これがそれぞれひとり歩きしてしまうんじゃないかなという気がするわけでございます。

 こういった成果目標というものを地方と国が共有することが必要なわけでございまして、共有できる成果目標のあり方、また、計画策定のプロセスについての御所見をお伺いしたいと思います。ぜひ、私としては、地方と国が別個の方向を向いて歩いていくということがないように、調整がいかにきくのかということを注意を図らなければならないと思うわけですけれども、御所見をお伺いしたいと思います。

山本政府参考人 御指摘のとおり、今回、基本法を定めて、それぞれの住宅政策にかかわる主体が同じ方向に向かって努力を積み重ねていく、そこに今回の基本法の制定の非常に大きな意義を見出しているところでございまして、そのための手段が基本計画でございますので、基本計画の策定に当たって、策定主体でございます国それから都道府県の計画意思が必要な限りにおいて完全に調整されるということは非常に大事だと思っております。

 ですから、これは、法律でもやりとりをすることを義務づけておりますので、しっかりやりとりをするということに尽きるわけですけれども、特に国の基本計画では、基本法で定める政策課題の基本的な事項とか、大事な事項について定めますので、国の基本計画を定める過程で、特に意を用いて努力をする必要があると考えているところでございます。

 原案をつくる前の段階とか、審議会にかける段階とか、節目節目できちんと計画調整ができるように努めてまいりたいと考えております。

長安委員 ありがとうございます。

 続きまして、この成果指標の設定というのは、法律に義務づけられている政策評価の有効性を確保するための有効ツールになると私は考えます。一方で、目標管理型の政策評価というのは、国の仕組みとして有効に機能させるにはなかなか難しい話でございます。おまけに、政策評価自体は、これは膨大な事務量がかかるわけであります。ただ単に政策評価をして評価書を公開するというだけではもったいないというか、何をやっているのかわからないわけでございます。つまり、PDSサイクル、プラン・ドゥー・シー、このサイクルをしっかりと位置づけて、その後の将来の政策に反映していくということが、そういう仕組みづくりが重要になってくるわけであります。

 地方自治体では、この目標管理型の政策評価を使いこなしているところももう出てきておりますけれども、国土交通省においても、ぜひこの全国計画を軸とした政策評価をしっかり機能させていただくよう私は心から念願しておるわけでありますけれども、大臣の前向きの御見解をお伺いしたいと思います。

北側国務大臣 大変大事な御指摘だと思っております。

 この政策評価をきっちりしていくためにも、やはり最初の成果指標については具体的なものでないといけないと思っているんです。抽象的な目標ではなくて、具体的な目標をきちんと決めて、そしてきちんと評価をしていくというようなやり方をすべきだと考えております。

 この法律が通りましたら、国としては全国計画、地方では地方計画をつくっていただきますが、それぞれ客観的な数値目標である成果指標が掲げられます。これは大体、おおむね十年後の目標を考えているんですね。途中の五年目に、五年ごとに政策評価をやる。その政策評価をやった結果をきちんと、計画の見直しや、それから関連の政策、予算、税制等へ十分に反映、活用していくことを通じて、それぞれそのときの社会経済情勢に即したものとしていくことが非常に重要だと思っているところでございます。

 目標達成に向けた政策の効果的、効率的な実施をしていくためにも、この政策評価はしっかりとさせていただきたいと思っております。

長安委員 ありがとうございました。

 質疑を終わります。

林委員長 馬淵澄夫君。

馬淵委員 民主党の馬淵でございます。

 この国土交通委員会、住生活基本法の審議に際しまして、私にも質疑の機会をいただきました。きょうは、この住生活基本法、いわゆる、この国の国民の住居並びにその生活を規範していく基本法でございます。

 きょうは、その理念並びに我が国における住宅政策の基本的な考え方というものを、ぜひ大臣から国民の皆さん方に、わかりやすい、政治家としてのお言葉で御答弁をいただきたいと思っております。

 さて、この住生活基本法は、我が国の住宅政策の三つの柱、住宅金融公庫法並びに公営住宅法、日本住宅公団法、これら三本柱に基づいた住宅政策の転換期に当たって、いわゆる住宅建設計画法を八期終える段階において、基本法の必要性が十分議論なされる中、ようやくのこと、この基本法、政府としても満を持して、先ほど来、遅きに失したのではないかという各委員からの指摘もございましたが、それらも踏まえて御提示をいただいたものと理解をしております。

 さて、こうした基本法に先立つ戦後の復興期の中での基本政策三本柱、先ほどの住宅金融公庫法、公営住宅法、日本住宅公団法、これらの法律についてどのような経緯があったかということについて若干触れてみたいと思います。

 委員長並びに理事の皆様のお許しをいただいてお配りをしましたお手元の資料には、一枚目に、元総理であられます田中角栄氏がつくられたいわゆる角栄法、百二十本と言われる角栄法の一覧表、これは書籍からの抜粋でございますが、一枚目、二枚目と載せております。

 少し線を引くところが誤っておりますが、一番右の欄に昭和二十五年に住宅金融公庫法、そして二十六年には公営住宅法、三十年には日本住宅公団法。これらの法律については、当時の田中角栄議員が議員立法として率先してその提出者としてお出しになられた法律、ここでは角栄法と呼ばせていただきますが、角栄法、並びに、閣法となって出されているものにつきましても、党内におかれて田中角栄氏が率先してこれも法律の提出につなげたと言われている閣法、これら合わせて百二十本ほどの法律群を田中角栄氏がつくった法律としてまとめたものでございます。

 この田中角栄氏がつくられた角栄法、これらが住宅政策の三本柱となって、長い年月、今日の我が国の住宅政策の礎となったわけでありますが、さて、田中角栄氏が初めて国会に来られたときの、そのときの思いというものをひもといてみました。

 実は、昭和二十二年、初当選したばかりの田中角栄氏、当時民主党で初当選をされた田中角栄氏は、新憲法下の昭和二十二年の片山哲社会党内閣時代に、初めて国会におきまして本格的な住宅の問題を取り上げられました。当時の片山総理に、一年生議員でおられた田中角栄氏は、働く人々に家を与えずして何が民主主義か、このように庶民の代表たる発言をされたわけであります。

 当時の議事録をひもといてみますと、このようなおっしゃり方をしています。「米もない、着物もない、住宅もないということになりますと、人間生きるためのまつたく必需条件であるところの衣食住、しかもその住宅問題というものは一家の団欒所であり、魂の安息所であり、思想の温床であるその住宅が、三十年間も戦前に戻れない状態であつたならば、これはえらいことになる。」そして、総理に対して、「総理大臣がみずから責を負つて執務されるのであるという気構えをちょつとお聴かせ願いたい。」このように質疑の中でおっしゃっています。

 当時、四百二十万戸も住宅が足りないという中で、計画の段階では二十四万戸ずつつくっていく、これでは三十年もかかるじゃないか、本当にこの国に安寧をもたらすにはまず住宅政策が必要なんだ、田中角栄氏はこのように時の総理に迫られたわけであります。

 そして、田中角栄氏がこのようにつくられた角栄法、住宅金融公庫法、まずは資金の供給が必要である、そして公営住宅をつくっていかねばならないという公営住宅法、さらには住宅公団という形でさらに全国に展開していくという公団法。これらに田中角栄氏が深く深くかかわってこられたわけでありますが、いずれも、我が国の高度経済成長期、我が国の社会環境を象徴するような法律群の中の一角としてこの法律がございます。

 しかしながら、これら角栄法、ここをごらんいただきますと、先ほどまで国会の行革で議論されておりました特別会計等々、さまざまな法律もこの中にちりばめられております。今日においては、まさに政官業の癒着あるいは利権構造の温床となってしまったのではないかと指摘されるような法律群にも見まごう部分もあるかもしれませんが、少なくとも昭和二十二年当時、本当に清新な気持ちで我が国の住宅政策を憂う田中議員のその率直な質問というのが、私は、極めて、この国の状況の中で一生懸命に当時の諸先輩方々が国会の中で議論されたその端緒となったという深い感慨もございます。

 さて、こうした状況で、基本法がつくられずに、まずは住宅政策三法、さらには住宅建設計画法、これに基づいて今日の施策がつくられてきたわけであります。そして、基本法の策定につきましては、たびたび国会の中でも議論に上がりました。これは先ほど来も、委員の御指摘や、また局長並びに大臣からの御答弁にもありましたように、数度にわたってこれらの議論がなされています。

 繰り返しになりまして申しわけございませんが、公明党からは八回、当時の社会党から六回、社公民合わせての提出で一回と、基本法についてはたびたびの国会での議論があった。こうした政府部内の議論、これもお手元の資料の中に、国交省の方でおまとめいただいた簡単な基本法に関する議論の経緯というものを載せております。三枚目でございますが、ここに、公明党からの住宅基本法案の提出、社会党からの提出、これは住宅保障法案という名前にもなっておりますが、また、平成五年には社公民、民改連共同提案の提出等々、実に平成五年まで、こうしたたびたびの基本法の審議があった。大臣が属される公明党からも実に計八回の国会提出があった。

 先ほどお話を伺いましたところ、趣旨説明も大臣みずからがされたということも、それは間違いですか。(発言する者あり)なるほど、お父様でございますか。私もそれは議事録を見たところ気がつかなかったわけでありますが、失礼いたしました。大臣のお父様、義一様が、北側大臣のお父様が当時かかわっておられたということだというふうに今お聞きをいたしました。

 このように、公明党や社会党、まさに野党からこの基本法の必要性というのは、繰り返し、たびたび指摘をされ、また国会の中でも附帯決議が付される、そうした状況になっております。

 皆様のお手元にはその議事録も付させていただいております。昭和五十六年、建設委員会、二月二十日の議事録でございます。傍線を引かせていただいておりますが、ここでは、建設大臣の所信表明の中で住宅政策の基本的方向を示すための立法措置、これは従来住宅基本法と言われていたものを指すのですか、鋭意検討というのは今の国会に提出することなのかという尋ねに対しても、当時の斉藤国務大臣、建設大臣が、従来住宅基本法と言われたものであって、今国会に提出するように鋭意検討しております、このように明確にお答えをされている。

 さらに、同年の三月二十六日の参議院の建設委員会におきましても、これは茜ケ久保議員という方ですか、いまだ提出がないんだが、これはどういうことなのかということに対して、ここでも斉藤大臣は、繰り返し、今国会には提出したいというようなことを再三申し上げている、なお一層検討を進めながら合意を得て提出したいという気持ちに変わりはないんだ、こうして、かなり明確に踏み込んだ発言をされておられました。

 このような基本法の議論、そして最後に、基本法がなぜまたそこで一たん議論が途絶えてしまうかというところをひもといていきますと、これも付しております資料の中にあります。昭和六十二年七月八日でございます。これは衆議院の本会議における代表質問で、公明党の当時の石田委員長からの御質問で、すべての国民に住宅権を保障する住宅基本法を早期に制定すべきだと考えます、見解を承りたい、このようなお尋ねに対して時の中曽根康弘内閣総理大臣が、住宅基本法につきましては、国民のコンセンサスに基づいて制定されるべき性格のものであるが、現時点においてはまだ過早ではないか、早過ぎるのではないかと考えます、こういう御答弁をされておられます。

 このように、住宅政策の三本柱がまずあって、そして、それに基づく建設計画法がなされて、八期にまで住宅建設計画、まずは足りないので量を、そして量から質へ、さらにはその質の目標水準というものを定めていくという流れの中で、基本法が必要であるということは再三再四問われていたわけであります。

 さて、こうした、今申し上げた一連の流れの中で、大臣からぜひお伺いをしたいのは、三十年以上こうした基本法不在を容認せざるを得なかった、一番最初は三十七年前のことです、この容認せざるを得なかった最大のポイントというのは何であったとお考えでしょうか。大臣、御所見を伺えますでしょうか。

北側国務大臣 馬淵議員には、これまでの住宅基本法をめぐる、また住宅政策をめぐる戦後の経緯について詳細にお話がございました。私も、だから、そういう意味では、今回、住生活基本法について、このような形で、国会で、政府提出で御論議をいただけるというのは本当に長年の悲願であったわけでございまして、非常にありがたいと思うとともに、やはり機が熟したのかなというふうに思っております。

 これまでは、委員のおっしゃったように、昭和四十一年に制定されました住宅建設計画法、これは五カ年計画でして、八次にわたって四十年間、住宅建設計画法に基づいて住宅政策が具体的に推進をされてきたわけでございます。

 この五カ年計画も、実を言いますと、これは委員も御承知のとおり、最初のころと、それから後半といいますか、最近のとでは性格も少し異なってきておるわけでございます。最初のころは、やはり量をしっかり供給しなきゃならない、それがまさしく逼迫した情勢でございましたので。それが、量の充足がだんだん満たしてくるにつれて、余りにも狭過ぎるね、もっと面積を広げないといけないんじゃないかというふうな、居住水準というふうなところに途中から少しずつ変わってくるわけでございますが、いずれにしましても、住宅建設計画法というのがいわば住宅政策の基本的な性格を位置づけた法律であったというふうに理解をしております。

 しかし、先ほど来御議論ございますように、いよいよ人口減少社会に入り、本格的な高齢社会が到来し、そして住宅の量そのものは十分に充足をしている中で、住宅の質がまだまだ欧米諸国に比べて劣っている、これからは住宅の量ではなくて明確に住宅の質への政策に転換をしていく必要がある。そういう中で、先ほど来おっしゃっておられます住宅供給をしていくための戦後の住宅政策の三本柱についても、改革をここ数年でさせていただきまして、こういう条件が整って、この国会で住生活基本法を提案させていただいたというふうに理解をしているところでございます。

    〔委員長退席、望月委員長代理着席〕

馬淵委員 今大臣の御説明の中に、この三本柱、これがひとつ三本柱として社会の変化の中で十分に機能しながら、住宅建設計画法そのものが、これも、量から質へ、そして質の中での水準設定等々、住環境も含めたものを設定する中で基本法の役割を果たすということが一部にあったのではないか、こういった御所見を伺わせていただいたというふうに理解をいたします。

 しかしながら、それでも、この住宅建設計画の法律がつくられ、そして八期にわたる計画がつくられていく中で、三期、四期という中間のところで、基本法の制定というのが、私、先ほど御指摘をさせていただきましたように、繰り返し議論がなされている。そして、それが結局は、合意に至らないから今日まで置かれておったわけだと思うんですが、合意に至らずに今日に至ってしまった、この最大の要因というのが、機が熟さなかったということで、本当にそれだけなのかというのが、私、どうも気になって仕方がないんです。

 今、私としては、ぜひ大臣に確認をさせていただきたいのは、いろいろな条件、事情というのはあったと思うんですが、とりわけ、大臣のお父様も、先ほど趣旨説明もありました、公明党としても八回も提出をされてきたこの基本法が、どうしてもその一点で進むことができなかったところというのは、どの点だとお考えでしょうか。

北側国務大臣 当時、野党の公明党なり社会党なりから住宅基本法が何度か提出をされて廃案になるという経過が、昭和四十年代、五十年代続くわけですね。これは、そういう中身の問題もさることながら、政治状況といいますか、当時は冷戦下の時代でございまして、また特に自社が、自民党、社会党が非常に対立する中で政治が続く、こういう中でございました。

 その中で、私も若いですので余り昔のことはよくわからないんですけれども、私が聞いておりますのは、やはりこの住宅基本法そのものが、どちらかというと対立法案として当時位置づけをされたようでございます。自社の非常に先鋭的な与野党の対立の中で、また冷戦下という背景のある中で一つの対決法案としてこの住宅基本法というのが位置づけをされている中で、この中身について、それぞれの政党ではあったと思いますが、必ずしも国会の中では十分な議論がなされなかったのではないかというふうに思っております。

馬淵委員 何分古い話ですからというのでは、それも十分理解をいたしますが、先ほど私がお配りをさせていただきました資料の中に実はそのかぎがあるのだなと感じておるんですね。最後のページの、石田委員長の、公明党の当時の委員長の御質問に対する中曽根総理の答弁。

 つまり、住宅基本法というこの考え方、きょうの参考人の本間先生のお話にもありましたが、いわゆる住宅権という憲法二十五条に基づく権利の保障という発想からこの基本法を制定しようという当時の野党なりの考え方があったのではないか。これは、石田委員長のお言葉の中に「国民に住宅権を保障する」という、このこと……(発言する者あり)ごめんなさい、居住権を保障するという、ここでは住宅権、このように石田委員長はお話をされておられますが、「住宅権を保障する住宅基本法を早期に制定すべきだと考えます。」こういうふうにお考えを示されておられます。そして、これに対しては、こうした保障すべき権利ということについては、中曽根総理は、当時、国民のコンセンサス、これがまだ十分じゃないんじゃないか、だから、それに基づいて制定されるべき性格なので、現時点では早過ぎる、このようにお答えになられたと私はこの議事録を読み取るわけであります。

 つまり、大臣が今おっしゃるように時期尚早であり、あるいは対立軸の中での対立法案であったという位置づけもさることながら、実は、ここでは石田委員長は住宅権とおっしゃっておられます。居住権と呼んでもいいかもしれませんが、こうした個人の権利として国が保障すべきものかどうかというところの議論がまだ実は煮詰まっていないんだ、こう当時の政府の見解が明確に出された。これによって基本法というものが、ある対立構図の中ではなかなか出さないという、出たり引っ込んだりということになったのではないか、こう推測するわけであります。

 さて、そこで、当時の答申の方を見てみますと、昭和五十年八月九日に、今後の住宅政策の基本的体系についての答申、これが出されております。これは、先ほどの住宅建設計画法に基づくそれぞれの計画を見直していく中で、五年間の計画期の中で答申を行って、またさらに次年度の次期計画に反映させるという答申でございます。

 さて、昭和五十年の答申では、「今後の住宅政策体系の概要」として、具体的政策として住宅基本法の制定というのを答申の中でも見据えておられます。そして、住宅基本法に盛り込むべき事項としては、一、二、三、四、五、六、こうあるわけですが、その第三項に居住水準、これは今日でも重要な指標としてあるわけですが、「居住水準及び居住費負担の目標」という文言が入っております。

 そして、五年後、昭和五十五年の七月三十日、また次の建設計画の策定に向けての答申が発表されました。

 五年後の七月三十日のこの答申におきまして、実施すべき施策として、「基本的政策体系の確立」という中で、住宅基本法に盛り込むべき事項というのが同じように列挙されています。そして、ここにも一、二、三、四、五と五項目ありますが、その五項目ある中で、先ほど三のところでは、「居住水準及び居住費負担の目標」というこの居住費負担の目標、つまり、住宅権、居住権、個人が住まいをするということに対して保障するんだ、憲法二十五条に基づくような権利の保障をするんだということの目安としての住宅費負担の目標という検討項目が入っていたのが、昭和五十五年の答申では、三番の項目では「住宅及び住環境の水準の目標」ということで、この負担の目標というのが欠落しております。

 つまり、この五年間の答申の中で、まさに中曽根総理がおっしゃるように、国民的コンセンサス、合意が得られるような議論が十分煮詰められなかったという結果ではないかと考えるわけでありますが、この点についていかがお考えでしょうか。

山本政府参考人 非常に懇切に説明していただきまして、基本的なことについて、私どもと認識が異なるところはないと思いながら伺っておりました。

 まず、昭和五十年の答申それから五十五年の答申は、五カ年計画でいえば三期と四期でございます。実は、昭和四十一年にできまして、ちょうどうまいぐあいに四十一年から四十五年までが一期、四十六年から五十年までが二期、こうなっていまして、先ほど来御質問にもありましたけれども、昭和四十年代をもって量的充足はなったわけです。それは、具体的に第三期の五カ年計画、この昭和五十年の答申をいただくためのデータは、昭和四十八年の住宅統計調査の結果に基づいて皆論議したわけです。

 したがいまして、五カ年計画の法律ができて、たった十年たっただけで量的不足が解消された、それで、どういう目標を立てるかという議論がこの昭和五十年答申のときの最大の課題でして、その中で、今引用していただきました居住水準の目標、それから、戸別の広さ、世帯規模と床面積の広さで設定する居住水準の目標だけではなくて住環境についても論議しようということがありまして、その流れの中で、住宅建設計画法を国会で御審議いただいた際にも御論議があったところなので、基本的な体系についてもさらに検討を深めていこうというのが審議会の答申だったと思います。

 これは、ですから、第一期は計画の中に長期的な居住水準の目標を掲げたわけですね。五カ年計画であるにもかかわらず、十年間で最低居住水準は解消するんだという目標を掲げたわけです。そういう意味では、住宅建設計画法の指定といいますか、それを超えた計画を先輩たちは立てたというふうに私どもは認識しているわけです。

 したがって、そういうことで出発しましたので、第三期五カ年計画期間中に、次の第四期はどうするか、今の住宅建設計画法でいいのかどうかということを住宅局と住宅宅地審議会は相当論議を重ねてきたと思います。その結果が、今御紹介いただきました昭和五十五年の答申、具体的に基本法に盛り込むべき事項として五項目を掲げて、国民各層の幅広いコンセンサスを得て法案の内容を確定していくんだというふうに最終的な答申をいただいた形になっていると思います。

 大臣からも御説明がありましたけれども、この居住の権利を社会的な権利として国家が保障するかどうか、その根拠法として基本法を置くかどうかというのは非常に政治的な課題になっていたという認識を私どももしております。

馬淵委員 今御説明いただきまして、水準のところはよくわかるんですが、居住費負担の目標という住宅権、居住権、この個人の権利の保障の部分については、一度は挙げてみたけれども、やはりそれについてはなかなかコンセンサスをとるのは難しいんだ、結局はそういうことであったと。今の局長の御答弁をいただくと、五十五年の答申ではそれが落ちているわけですから、そういった政府の一定の見解がなされたという証左であることは、私は今の御答弁をいただいても間違いないんだろうなと思うわけであります。

 さて、そうしますと、先ほど私が御指摘をさせていただいた中曽根総理の当時の御答弁というのが、非常にその論旨としては明確であるわけであります。石田委員長が御指摘をされた、こうした権利の保障ということについては、国民のコンセンサスに基づいて制定されるべきだが、それができないんだということの御答弁。つまり、政府見解としては、この五十五年の答申、そしてその後の建設計画の中でも、こうした権利の保障という部分において基本法の制定というのは余り国民のコンセンサスが得られるものではないんだ、こういう判断をされたということであるかと思います。

 さて、であるならば、その住宅権のことについてはコンセンサスをとれなかったということで、私はこれはよく理解をするんです。しかしながら、その段階で、それについてはコンセンサスがとれなかったという一つの結論を、一定の結論を見たならば、その段階で、それを抜いて基本法の制定というのに踏み出すことができなかったのかというと、私はここはなぜ踏み出せなかったのかなと。

 繰り返し繰り返し、大臣、本当に繰り返しで申しわけないんですが、やはりそこで、コンセンサスがとれなかったんだ、とれないならそのことをおいて基本法の制定ということに踏み出すべきではなかったか、私はこのように感じるわけでありますが、いかがでしょうか。大臣、お考えをお聞かせください。

北側国務大臣 具体的には、もう委員も御承知のとおり、先ほどの、戦後の住宅政策の三本柱でございますね、住宅金融公庫、住宅公団、そして公営住宅、住宅をこの三つの政策の柱によって供給をしていこうという三つの手段そのものについて、数年前から大きく変更をさせて見直しをさせていただきました。

 もう言うまでもございませんが、住宅公団につきましては、新たに住宅の分譲等はしない、都市の再生と賃貸住宅についてしっかりと管理をしていく、こういう独立行政法人の機構ということでなったわけでございますし、また、住宅金融公庫については、昨年この委員会で御論議を賜りまして、住宅金融公庫についても来年廃止をする、そして、住宅金融公庫の役割も、直接金融ではなくて、民間の金融機関の低利、固定のそうした住宅ローンについて証券化支援業務を中心としてやっていく。

 さらには、公営住宅につきましても、地域住宅交付金制度というのを創設させていただきました。これも去年この委員会で御論議をいただいたわけでございますが、地方の方が使い勝手がいい交付金制度に変えさせていただくというふうに、この戦後の三つの住宅供給を進めてきた政策の柱、組織について大きく見直しをさせていただいた上で、そして、これからの住宅政策についての基本的な目標、政策の方向性、そういうものをこの住生活基本法で御論議をいただいているわけでございます。

 そういう意味では、そうした三つの改革をする中で、この住生活基本法がこのたび提案ができたというふうに考えております。

馬淵委員 住宅建設計画法、さらなる三つの柱の改正ということで御対応する中で、やっとのことで出せたんだ、こういうお答えだったというふうに理解をいたします。

 基本法でありますから、できる限り、国民に生活の安全、安心、これを提供するためにもいち早く策定していくということが強く求められた法律ではなかったかと私は思いますが、今般、今お話しのような流れだったという御説明を承っておきます。

 ただ、住宅権に関しましては、大臣、これはそれこそ御党の公明党が最も強く主張された部分であり、これが当時の内閣によって、それはもはやコンセンサスはなかなかとりにくいんだ、こういう見解を示されて、この基本法には盛り込まれなかったという部分については、それこそ、大臣のお父様も当時趣旨説明をされたということであれば、その辺は、今のお立場、大臣というお立場でいらっしゃいますが、こうした公明党の趣旨、本旨にのっとった思いというのはどうでしょうか。じくじたる思いというのは、今お持ちでしょうか。この住宅権ということについての御見解はいかがでしょうか。

北側国務大臣 この論議は、実を言うと、今国会でまだこれは御論議をいただきます新バリアフリー法の法律でも同じような論議が実を言うとございまして、移動円滑、移動権というものをきちんと今回の新バリアフリー法の中に位置づけをすべきではないか、こういう論議が、論点があるんですね。それと同じ一つの問題だと私も思っております。

 憲法の趣旨、それは憲法二十五条、直接は二十五条、そしてさらには私は憲法十三条だと思うんですが、こうした憲法十三条や二十五条の趣旨を当然踏まえてこの法律ができているというふうに私は考えております。国民の皆様の住生活の安定そして向上、これを国、地方公共団体が責務としてその施策を推進していくことを明記させていただいているわけでございまして、ただ、具体的なものについては、それは具体的な施策を通じて進めていくということで、そういう意味で、いわゆる法律上の居住権というような形で権利性を付与しなかったということだというふうに理解をしておるところでございます。

 ただ、この法律全体は憲法二十五条また十三条という理念に基づいて、この法律そのものが、全体が構成をされているというふうに理解をしております。

馬淵委員 今大臣のお言葉を伺いまして、随分と幅広く御理解をされて本法案につながれたんだな、そういうふうに私も感じました。

 さて、今住宅権のことについては御説明をいただきましたが、今回、住宅ではなく住生活ということでこの法律が命名されております。本委員会でもたびたびこの住生活ということについての質問が出てくるわけでありますが、つまりは、住宅、物理的な箱という居宅だけではなくて、中での人の住まい、あるいは住宅をめぐる環境、これは防災、安全、あるいは自然環境もあれば医療や教育といったさまざまな人の営みにかかわるすべての環境を意味してこの住生活という言葉をここに掲げられた、こういう御説明も聞いております。

 先ほど私は、田中角栄氏のつくられた角栄法、ちょっと御説明をさせていただきましたが、田中元首相、これをまたいろいろ調べていきますと、自民党内には都市政策調査会というのをつくられて、そして都市政策大綱を発表されました。そして田中元総理は、みずからの豊かな生活像というのを具体的に語っておられました。

 ぜひ私は、大臣からも大臣の意味する住生活というのをお聞きしたいわけですが、田中元総理はこんな言葉を語っておられます。仕事が終わったら、豊かな水と緑のある家にさっさと帰って、浴衣に着がえて、冷ややっこで一杯やり、女房や子供を連れて盆踊りに出かける。私の都市政策の目標は、年寄りも孫も一緒に楽しく暮らせる快適な環境をつくることなんだ。このようにおっしゃっておられるんですね。

 具体には、全国に住の基幹都市をつくってとか、こういったそれこそ改造論の話なんだと思いますが、少なくとも、田中元総理が、その後、さまざまな巷間言われる癒着、あるいはさまざまな構造の話にお名前も出てきますが、こうしたわかりやすい庶民に届く言葉として、人々の暮らしというものを私たちに、国民に語った言葉であるというふうに理解をいたします。

 さて、大臣、ここは大臣からも、大臣が、少なくとも御自身が感じる、その法案の提案趣旨の中にもありました、豊かな住生活と呼ばれるこの住生活ということについてはどのような御自身の思いがあるかということを、少し聞かせていただけませんでしょうか。

北側国務大臣 昔は一つの家の中に三世代お住まいになられまして、おじいちゃん、おばあちゃんもいる、そして若夫婦がいて子供がいて、こういう御家庭がむしろ普通だったんだと思うんですね。また、すぐ近所に御親戚の方々がたくさんいる、こういうのが普通の家族だったんだろうというふうに思うんです。

 ところが、今はもうそれは一変いたしました。今少子高齢化、少子化の問題、高齢化の問題を考えましても、例えば介護の問題一つとりましても、昔は家の中で、おじいちゃん、おばあちゃんがちょっと足が悪くなってきたというときに、もちろん若夫婦が直接の責任があるわけでございますけれども、お孫さんもいる、近所には身内もいるということで、家族で身内でそうした介護機能というものを担っていくことができたわけですね。また、子育てについてもそうでございます。若夫婦に子供が生まれた、おじいちゃん、おばあちゃんがそのお子さんの世話をするということができたわけです。子育て機能にしても介護機能にしても、家の中でその機能が果たされていくという時代であったと思うんです。

 ところが、今はそうじゃなくて、やはり地域の中でそういう介護だとか子育てだとか、そういうものを支援していくような社会にしていかないと、私は、やはり、少子化の問題であれ高齢化の問題であれ、これは解決ができないというふうに思っております。

 そういう意味で、住宅の政策につきましても、単に、今委員のおっしゃった、箱物としての住宅政策ではなくて、それだけではなくて、もちろんそれも大事ではございますけれども、その箱物の住宅の質の向上プラスやはり住環境、地域の中での住宅、地域の中での住環境、そういうものもともにやはり向上をさせていかないといけない、そういう時代に今なっているのではないのかなというふうに私は思うわけでございます。

 よく少子化の問題で出生率の話がされますけれども、私は、この住環境の問題がやはり改善をされてくるということが非常に大事な、少子化対策としても大きな要素ではないかというふうに思っております。その住環境の中で、住んでいる人が、いや、本当にこの町はいい町だ、犯罪もない、そして地域コミュニティーができている、お互いに助け合いもできている、そういうふうに安心できるような町になって、住環境があって初めて、よし、子供を産んでみようか、子供を育ててみようかというふうになってくるわけでございまして、そういう意味で、例えば今大きな課題になっております少子化対策一つ取り上げましても、私は、この住環境の整備ということが非常に大きなポイントの一つであると思っております。

 そういうふうな趣旨も含めて、今回、住宅基本法ではなくて、住環境も含めた、居住環境も含めた住生活基本法という形に名前をつけさせていただいたところでございます。

    〔望月委員長代理退席、委員長着席〕

馬淵委員 ありがとうございます。

 今、大臣の口から地域コミュニティーという言葉が出てまいりましたが、それはちょっと後ほど触れるといたしまして、それこそ、三世代暮らしていた家族が今はそうではなくなった、しかしながら、介護や子育てという機能が地域で営まれるようなそうした住環境をしっかりと根差してつくっていく、それがこの基本法の住生活なんだ、こういうお答えをいただけたというふうに思います。

 実は、私は前職ではメーカーの経営をしておりましたが、大阪市内にある会社でございまして、工場が移転したために大阪市内に二・四ヘクタールの工場跡地ができることになりました。そして、私は役員をしておりましたので、当時、この二・四ヘクタールに対して新たな再開発を行うというプロジェクトの担当者となりまして、住居規模でいえば、計画上一千戸規模のマンションあるいはさまざまな施設のコンプレックス、これをつくるという大規模なプロジェクトを担当させていただきました。

 さて、その中で私自身が、もちろん、住戸でいえば、大臣お話しのとおり、建物ということでいえば、それこそ平米数幾ら、そしてそれを坪単価幾らで売るかということで、単純に物としてつくってしまえば、コストが幾らで売り値が幾らで利益が幾ら、単純な物づくりの発想となればそうなってしまうかもしれませんが、そこでは物づくりよりも一歩踏み込まねばならない、こんな思いがございました。

 恒久構造物である千戸規模のマンションとなれば、それこそ二千人、三千人という方がお住まいになるわけです。そこには、生まれる方や、そこで育ち、やがて巣立っていき、さらにはそこで亡くなられる方もいる。まさにその町がふるさととなっていく。そのときに、これらの町がその周辺の地域、環境とどういう形で溶け合って、融合していくような場所をつくっていかねばならないかということに頭を悩ませることになりました。

 そんなとき、私が調べていくと、まちづくりの中で、ラテン語で言いますゲニウスロキ、土地の魂、地の霊、地霊という言葉に出会いました。ヨーロッパでは、それぞれ土地には魂が宿る、そこで人が生き、暮らし、あるいは動物が走り回り、時には自然環境があり、その土地には土地の歴史があり、人が成長してやがて年老いて死んでいくように、土地も同様の長い年月の中での文脈がある、それをヨーロッパの方々はゲニウスロキ、地の霊、地霊と呼びました。

 私も同様に、このように開発を行うということは、単に面開発を行って、そして住戸を何戸つくるか、幾ら売り上げするのか、そしてコストを幾らに抑えるのかという話ではなくて、それこそ、その地域における歴史的文脈の中で、お住まいされている方々がどのような思いで、新たにできる、開発されたマンションなり区画の方々との融合を図っていくのかということを考えねばならない、これこそが住生活ということを考えるまずスタートであるのだ、こういうことを考えて実は計画の中でつくってまいりました。

 そしてさらには、このゲニウスロキの塊であるような私の地元奈良。それこそ国の始まりでありますこの奈良の地は、長い長い歴史の中で、それこそ神々の信仰というものは山々であり自然であり、私の地元の奈良市におきましては、春日大社、その奥にある三笠山、三百メートルほどの小さな山でありますが、この山がその信仰の本体であり、あるいはその奥に連なる春日原生林。こうした山々が、土地が世界遺産として、文化遺産として登録されている最大の理由は何かというと、こうした景観や地域を人の営みとして守り続けてきたということに対する文化的背景に対して価値を認めていただいたということが最大のポイントであると私は理解をしております。

 このように、本法案の中で、第四条では、地域の自然や歴史、文化その他の特性ということをこの基本法の中で掲げておられますが、今申し上げたように、地域の文脈、歴史的文脈にかんがみた住生活のあり方というものについて、大臣はいかにお考えであるか。そして、この四条の意義というものはどういうものかということをお聞かせいただけませんでしょうか。

北側国務大臣 日本というのは非常に南北に長い、四囲を海で囲まれた国土でございます。本当に北海道と九州、沖縄では全く気候風土も違うわけでございまして、私もこの立場にならせていただいて改めて日本全国を回らせていただいておりますけれども、ああ、日本というのは本当にさまざまな、多様な風土、気候の中で、その地域地域ごとに伝統とか文化が育ってきているんだなということを痛感しております。

 住宅も全くそのとおりでございまして、住宅にせよ、また住環境にせよ、その地域の自然、歴史、文化というものに当然位置づけられているわけでございまして、それ抜きにして住宅の整備、住環境の整備と言っても、それは地に足をつけたものにならないと思うんですね。

 ちょっと余談になるかもしれませんけれども、私、この間奈良県に行かせてもらいまして、京奈和道路の一部開通のときにちょっと行かせていただいて、帰りに今井町に寄らせていただいたんですよ、委員の御地元の奈良県の今井町。私は大阪の堺なんですけれども、海の堺、陸の今井町と言いまして、環濠都市なんですね、両方とも。私の堺も環濠都市ですし、今井町もあの奈良盆地の中の、飛鳥地方の橿原市の環濠の町、行かせていただきまして、本当に感動いたしました。

 中世の時代からの家並みをきちんと保存されていらっしゃいまして、今もちっちゃな環濠が残っております。その一番の今西家というおうちにも行かせていただいて、その家の中も見せていただきました。この今西家の中では、昔ここで自治権、自治がなされておりましたので、ここで司法、立法、行政、すべてされていたんだというふうなお話も現当主の方から直接聞かせていただいたんですけれども、やはりそういう地域のこれまでの歴史とか文化に根差したまちづくり、そして住宅、住環境を整備していくということがとても大事なことであるというふうに思っております。

 そういう観点から、今回、この住生活基本法の中でも、第四条で、先ほど委員のおっしゃったような位置づけ、意義づけをさせていただいているところでございます。

馬淵委員 奈良にお越しいただいたということで、大変光栄に思っております。

 四条についての意義ということで、大臣今お答えいただきましたが、繰り返し申し上げますが、まさに土地という平面に物をつくるという発想ではなくて、私たちがどのような営みを行うかという発想から居住居あるいはさまざまなユーティリティースペースというものをつくっていく、それこそが住生活、そして、それには、その地域に宿る魂、人々が暮らしてきた歴史を知るその土地になじんだ生活環境というものをつくっていくんだということがこの四条の示す意義であるということを、私の方からも重ね重ね御指摘させていただきたいというふうに思います。

 さて、そして十二条について、先ほど大臣からは地域コミュニティーということが出ましたが、十二条につきましては、地域における居住環境の維持向上という部分で、この地域コミュニティーという言葉は法律としては、法文としては出てまいりません。しかしながら、この地域コミュニティーということについて、私はこれも非常に重要な要素であると考えております。

 と申しますのは、先ほど申し上げたように、千戸規模のマンションの開発等々を行っていきますと、住まわれる方というのは、もちろんみずからが購入したマンションあるいは賃貸した部屋に入られるわけですが、それは箱に入られるという意識をお持ちの方もさることながら、コミュニティーに、そこに参画するんだという意識も持っていただかねばならないんです。

 ところが、物件によるわけですが、利便性がよかったり、いろいろなところからの方が集まってくるとなると、まだできていないコミュニティーに新たに参画するとなると、このコミュニティーの創造というところにまで自分たちのエネルギーが割かれるんだということについては、これになかなか意識が回られない場合が多うございます。私も、開発においてはそこの部分が大変懸案となっておったということを記憶しておるわけでございます。

 さて、そのコミュニティーの創造の中で、とりわけ最近ふえてまいりました超高層マンション、タワー型と言われるマンションですね、並びに板状型の中高層のマンション、こうした大体二種類の建物が最近は数多うございますが、とりわけ超高層がふえてきています。

 その最大の理由としまして、やはり都市再生の新たな施策によって容積率の緩和あるいは容積移転という形で都市に密集、集積が、過度に集中されるように、過度にといいますか、これは適切にということになるのかもしれませんが、集中されるような都市再生の方針にのっとった施策の誘導によりまして、超高層型のマンションができてくる。

 私は何も超高層がいい悪いというお話をしているわけではございませんが、私の経験の中でいうと、実はこの超高層型のマンションというものが極めてコミュニティーとして成立しにくくなる場合が多いということを経験の中で感じております。

 超高層となりますと、最上階そして中層階、低層階と、これは相当の価格差が出てまいります。また、時にはそうした、ある意味ハイクラスの方々と呼ばせていただいていいんでしょうか、高い物件を購入される方々のために厳重なセキュリティー等々を置くことによってアイランド化してしまう場合があります。陸の孤島となってしまう場合がある。地域の環境となじまない場合が生まれてまいります。このような状況の中で、いかに地域とのコミュニティーをつくっていくかということが極めて重要なポイントになってまいります。もちろん、そこでは、民間の開発者、私どものような者や、あるいはさまざまなそのプロジェクトにかかわる方々が知恵を働かすわけでありますが。

 そこで、大臣、今申し上げたように、こうした住環境の整備をしていく中でも、今進められている政府のもう一方の政策である都市再生という方策によって、より高度な集積が図られるようになっていきます。民間事業者でいえば、より高度な集積が図られるということは、高い塔型のマンションを建てることによって収益上は有利に働くとなれば、そういった物件をつくっていかれます。今、見れば、大阪や東京というところはにょきにょきとこの超高層が建っていく。しかし、地域のコミュニティー、人と人との距離感というものは極めて希薄になりつつある。

 こうした都市再生政策と、居住環境の維持向上、そして地域におけるというこの第十二条で掲げられる基本理念の部分をどのようにすり合わせていかれるのか。私は、これは非常に重要な課題になりかねないと思っております。

 私自身は、集合住宅で育ってまいりました。私は奈良の鶴舞団地という、それこそ当時の住宅公団ですね、七十数戸ある、この団地の一角で幼いころから中学まで、そこで育ちました。当時の集合住宅というのは、それこそ同潤会アパートがつくられた後に南面板状神話というのができて、ようかん型の板状の建物が五階建て、六階建てという、今でいうと低層のものが幾つも南向きにようかんのように並べられた。そして、その集合住宅に住まう方々は、少なくとも一つの階段で十戸ほどある、その十戸ほどが一つのコミュニティーとして、向こう三軒両隣のような、そういったかいわい性が保てるものでありました。

 しかしながら、こうした公団団地、住宅は老朽化が激しく進み、先ほど来の議論にもありますように、老朽化の中で再生をどうするかという大きな課題に直面しております。私も既に、地元ではありますが、老朽化が激しいその公団を離れました。こういう状況の中で、かつては、集合住宅に集って住まうことによって、より密接な人間関係、地域におけるコミュニティーの創造というものが非常につくりやすかったのが、今日においては、せっかくこの住生活基本法という法律を制定しようという運びの中において、都市再生政策によって高度に集積されるタワー型のマンション、一方で、戸建て住宅等々で地域で暮らせる方々との隔絶、私は、極めてこの地域コミュニティーの創造の中での融合性というものについて、これは慎重に、ある程度そこを見ていかねばならないのではないかということを問題意識として持っております。

 さて、大臣、今私が申し上げたような、こうした都市政策の誘導による高度集積と、そして地域コミュニティーの創造という部分、どのような配慮、そしてお考えをお持ちでしょうか。御所見をお願いします。

北側国務大臣 良好な地域コミュニティーを形成していくというのは、私は、今本当に大きな課題だと思っております。

 先ほど来申し上げましたように、防災の問題であれ、防犯の問題であれ、教育の問題であれ、福祉の問題であれ、地域コミュニティーの中でそうした機能を果たしていくような時代になっているわけでございまして、反面、例えばニュータウンの問題だとか中心市街地の問題だとか、そういう中で地域コミュニティーが崩れかけているというふうな事例も見受けられるわけでございまして、私は、そういう意味で、地域コミュニティーをしっかり形成していくように、政府としても地方自治体とよく連携をとって、さまざまな施策を打っていかないといけないというふうに思っているところでございます。

 今委員の方から、都市再生と住生活基本法の中の第四条ですか、四条との……(馬淵委員「四条、十二条ですね」と呼ぶ)はい。との関係についておっしゃいましたが、都市再生というのは、非常にさまざまなものがその中に入っております。例えば、六本木のあの防衛庁跡地のところを緊急整備地域にしまして、今もうほとんどビルがばあんとでき上がっておりますけれども、ああいう緊急整備地域に指定をして、都市の、本当に大都市のある地域の都市機能の高度化をしていこうというものと、それから、よく総理がおっしゃっています、稚内から石垣までと言っている、この都市再生とはまた全然意味が違っていまして、こちらの方はむしろ、先ほどの今井町の話じゃございませんが、その地域地域の魅力をどう引き出していくのか、それをどう誘導していくのかという観点での都市再生でございまして、都市の再生という中にもさまざまなものがございます。

 おっしゃっているのは、恐らく、そういう都市機能を高度化して、超高層の六本木ヒルズのような、あれは極端かもしれませんが、ああしたマンションができてくることについて、この住生活基本法との関係性をおっしゃっているんだと思いますけれども、これはいずれにしても、これを決めるのは地方なんですね。地方自治体が判断、地域のことを一番よく知っている市町村であったり、また都道府県であったりが、我が地域のこの部分については都市機能をしっかり集積して高度化していこう、この地域については、むしろそういう高層な建物は建てさせないでやっていこうとか、それはもうすべて、その地域地域ごとに都市計画でまさしく決めていくことではないかというふうに思っておりまして、そういう意味では、その都市の再生とこの住生活基本法で言っております地域コミュニティーの形成の話とは決して矛盾するものではないというふうに理解をしております。

馬淵委員 地域で、都市計画の中で、地域の計画の中で定めていくべきものではないかという大臣の御答弁であったというふうに理解をいたしますが、もちろん、具体の計画というのは最もそのことを知悉している地域自治体だということも、私も理解をするわけでありますが、私の問題意識としましては、基本法でありますがゆえに、やはり地域コミュニティーの創造ということについて、この十二条においてこれはその意味をなしているんだということの御意見であったというふうに理解をいたしますが、やはり、基本法であるがゆえに、地域コミュニティーの創造ということについては、とりわけ丁寧な配慮が必要ではないかということを重ねて御指摘させていただきたいというふうに思います。

 私自身は、先ほど申し上げたように、公団住宅で育ち、そして時には面開発もやる製造業のおやじでしたが、しかしながら、やはり今もって愛着ある公団のたたずまい、今も私は、本当に自分のふるさとは自分の住まいした団地だという思いが強くて、しんどくなったときには、それこそ自分の住んでいた三階の窓を眺めて、あの窓から母親が手を振ってくれたな、そんな思いを思い出す、そんな気持ちになります。ですから、やはりコミュニティーというものがいかに重要であるかということ。これが都市再生、地域の計画に基づくものだということは理解をいたしますが、基本法であるがゆえに、コミュニティーということに対してのこの新たな示しを今後ともぜひ省としてしていただきたいと思います。

 さて、時間も余りなくなりましたが、最後の方、残り五分となりましたので、あと少しだけお伺いをさせていただきたいと思いますが、先ほど申し上げたように、この公団も、私が住まいをしてきた公団も大変老朽化をしまして、建てかえという状況になりましたが、これも再三他の委員からも御指摘がありましたニュータウンの再生ということで、これについては、先ほど来、これは重要な課題であるという御指摘もありました。

 このニュータウンの再生については、私自身、今思うのは、かつての公団住宅がつくられ、そして老朽化していく中で、これも大きな課題となってしまった、再生するべき課題となってしまったということでありますが、現今、また同様にマンションがあちこちでつくられています。これも同様の轍を踏まないような十分な監視なりあるいは政策上の誘導というものが必要になるかと思うわけでありますが、ニュータウンの荒廃と再生ということについて、これは単にかつてあった住宅公団の話だけではないんだ、今後もつくられていく、大量生産されていく住戸に対して、どのような誘導なり指導なり、あるいは監視なりをしていかれるのかということについての御所見を伺いたいと思います。

北側国務大臣 当面、このニュータウンの再生の問題について私どもが意識をしておりますのは、東京であれば多摩ニュータウン、この首都圏でいえば千葉ニュータウンとか、関西の方で一番古い千里のニュータウン、千里のニュータウンは、一番最初の入居が始まりましたのが昭和三十七年なんですね。昭和三十七年に千里のニュータウンの入居が始まって、その当時三十代で入った人が、それからもう四十四年たっていますから、七十代になっている。そして、割と同世代の方々が一挙に入って、そのまま高齢化されていらっしゃいますので、非常にその地域において高齢化が進んでおります。これは多摩ニュータウンにおいても同様でございます。

 建物は老朽化をしてきている。高齢化、そして建物、施設等の老朽化が進んできている。若い人たちは、そこで生まれ育っても外に出ていくという中で、先ほど来申し上げた、地域コミュニティーなんかも崩壊しつつあるようなところが目につくわけでございまして、私は、このニュータウンの再生の問題というのは、今委員が質問でおっしゃった、これからの、今できているさまざまな高層のマンション等々についてもこれからまた当てはまる話でございまして、そういう意味では、今、住宅政策の大きな課題の一つとして位置づけていますのは、多摩ニュータウンや千里ニュータウンのような、昭和三十年代、四十年代に整備され居住がなされた、そうしたニュータウンについていかに再生をしていくのか。

 これは、国土交通省では、昨年も相当議論をさせていただきまして、今取り組みをしているところでございますが、その中で、今までは職住が別ということだったのですが、むしろ職住共存のまちづくりを、そして高齢者だけではコミュニティーが形成できませんので、若い人たちに住んでもらえるような、そういう誘導をやはりしてこないといけないとか、そうしたことを考えておりますし、また、高齢化が進んでいますので、バリアフリー化をしっかり進めていく必要があるだとか、ニュータウン再生について、まずは千里ニュータウンや多摩ニュータウンを一つのモデルにしてぜひ再生をしたい。

 そして、多摩ニュータウンや千里ニュータウンというのは非常に環境のいいところにできているんですよ。これは先輩方がつくっていただいた貴重な既存のストックですから、これを有効にやはりリニューアル、再生をして活用していくという観点からしっかり再生をさせていただきたい、これは総合的に取り組みをさせていただきたいと思っています。

 これをモデルとしてやることによって、これからの、今委員のおっしゃっているさまざまな高層のマンション等の問題についても、さまざまな教訓といいますか、政策が出てくるのではないかというふうに考えております。

馬淵委員 ありがとうございました。

 時間もなくなってまいりました。

 今、大臣からのさまざまな御所見、私も、きょうは理念ということでしたので、基本的な考え方について繰り返しお尋ねさせていただきましたが、私の手元に、今、実はヒューザーのパンフレットがございます。これを見ますと、ちょうどこの委員会でも問題になった耐震偽装問題、ヒューザー社、今まさに耐震偽装問題が事件となって、さらに大詰めにたどり着くという状況にあると今報道もなされていますが、改めてこのヒューザー社のパンフレットを見ますと、「こだわりの「広さ」」ということで、広さということが住宅の最も高い質をあらわすんだ、このような形でこのパンフレットに書かれています。

 しかしながら、もちろん広さというのは住まいの大事な指標の一つでもありますが、私は、住まい、住生活というのは広さだけではかられるものではない。私は、六人の子供と両親と家内の家族とで十一人で暮らしております。その意味では、一人一人のスペースというのは決して広うございませんが、しかしながら、集って暮らすことの喜び、これを私は公団で暮らした生活の中に見出したと思っています。集って暮らすことの喜びこそ、そして、そうした暮らしを守ることこそがこの基本法の基本理念であるということを重ね重ね私も大臣にお伝え申し上げて、そして、今後、構造改革の中で、都市再生と、先ほどのお話の中でも、ここは地域が考えて矛盾しないようにしていくんだというお話でありましたが、十分に地域コミュニティーということに目を向けた施策の実現というものを、今後ともこの委員会でもしっかりと見届けさせていただきたいということを申し上げて、私の質疑とさせていただきます。

 ありがとうございました。

林委員長 日森文尋君。

日森委員 今、馬淵委員から詳細に経過について御報告がありましたけれども、私も、コンパクトに経過について述べた上で質問をしていきたいと思います。

 社民党の、御承知のとおり、社会党時代から、共同提案も含めると七回、住宅保障法案あるいは住宅基本法案ということで国会に提出をしてきました。恐らく、公明党さんもそうですが、そうした流れを受けて六八年に設置された建設大臣の諮問機関、住宅宅地審議会、これもさっき御報告がありましたが、二回とも、住宅基本法の検討あるいは制定をしていこうじゃないかということを提言しているわけです。

 こういう流れの中で、今回、住生活基本法が提案をされたということは、ある意味では評価をしたいのですが、しかし、残念ながら、これまで私どもの先輩たちが提起をしてきた法案が十分に生かされているとは言えないということだと思うんです。

 先ほどは、大臣は、今度の住生活基本法案の中には、憲法十三条、幸福追求権、それから二十五条の生存権、こうした精神が生かされているというふうにおっしゃっていましたが、しかし、これは明記されていない。国民の権利として明記されていないということは非常に重大だと思うんですよ。生かされているんだとすれば、私はこれは明記すべきであるというふうに思っているんです、これは後で触れたいと思いますが。

 そこで、これは先ほど参考人の方にもお聞きをしました。住生活基本法というのは、住宅及び住生活に関する憲法だというふうに理解してよろしいんでしょうか。

北側国務大臣 今後のさまざまな住宅政策の基本法だというふうに考えております。

日森委員 基本法というのは、したがって、住宅関連法、たくさんありますけれども、その上位に立つ基本法なんですから、これはその分野における憲法だというふうに理解をしてよろしいんでしょうかという意味です。

北側国務大臣 そのとおりでございます。

日森委員 最初にそう言っていただけると三十秒ほど時間が縮まったんですが。

 とすると、憲法であるこの住生活基本法、これを具体的に実行していくためには、これも参考人にも聞きました、さまざまな関連法案を整備したり、改正をしたり、あるいは新たな法律をつくったりということが当然必要になるというふうに思うんですよ。今度、建築基準法というのが例の事件を受けて若干の改正案が提出をされる。これも恐らくそうだと思うんです。

 そういう意味では、今すべて言うことはできないかもしれないけれども、具体的に、この基本法を実行するに当たって、その法改正、関連法の改正等についてはどのように現段階でお考えなのか、お聞きをしたいと思います。

山本政府参考人 この基本法は、住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策についての基本理念、基本的政策など基本となる事項を定めたものでございますので、基本法の第十条に、政府は、施策を実施するために必要な法制上、財政上、金融上の措置その他の措置を講じなければならないと規定しております。この考え方に沿って、これから逐年、住宅政策に係る法制、予算上の制度、金融上の措置、税制、そういったようなものを改善していくという考え方でございます。

 住生活に係る法律、公営住宅法を初めさまざまな法律がございますけれども、今度、基本法の理念に関連しましては、例えば一番直近の法律ですと品確法、住宅性能表示とか、そういう市場のインフラに係る緒についたばかりの制度もございますので、そういったものも含めて住生活に係る法律を逐年改善していく、改革していくということでございます。そのための基本方向を定めているという認識でございます。

日森委員 一つもちろんそういうこともあると思うんですが、今、例えばマンション紛争とかさまざまなトラブルが発生をしているのも御承知のとおり。したがって、この法案になるのかどうかはともかくとしても、住生活を保護し保障する、そういう条文とかあるいは規定を明確にしておく必要があるのではないかという思いがあるんですが、そこはどうでしょうか。

山本政府参考人 一番肝心なところでございまして、憲法の二十五条の考え方に沿って、この住生活基本法では、第六条に「住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保が図られることを旨として、」施策の推進を行わなければならないと明記しております。この考え方に沿って施策の方向について定めました第十四条におきましても、国、公共団体は、国民の居住の安定の確保が図られるように必要な施策を講ずるんだということを明確に規定しております。

 こういう考え方で、憲法二十五条の考え方は、きちんと基本法上受けとめられているというふうに考えているところでございます。

日森委員 それは、局長はそういうふうに解釈をなさったと。まあ、それはそれでいいですよ。

 この基本理念について、各委員からさまざまな御意見がありました。これは、やはり大変重要な問題ですから、私からも申し上げておきたいと思うんですが、要約すると、良質な住宅の供給、良好な住環境の形成、住宅市場の整備と消費者利益の保護、さらに低所得者、高齢者、子育て家庭等の居住の安定の確保等々が理念の中心に据えられていると思います。これ自体は全くそのとおりで、しっかりやってほしいというふうに思うんですが、先ほど触れた憲法第二十五条、十三条、これが明記されていないということについては非常に残念に思っているんです。先ほど、馬淵委員の意見でも、公明党案よりも、いや、私どもの先輩が出した社会党案よりも、実はそういう意味であいまいになっていて後退しているのではないかという思いがしてならないんですよ。

 これも、先ほど参考人の質疑の中で出ていましたが、一九九六年、国連人間居住会議というのがあるそうなんですが、いわゆるイスタンブール宣言というのを採択いたしました。これは国際的なトレンドになっている、トレンドと言うとおかしいけれども、これは常識になっていると思うんですが、そこで適切な住居に住む権利ということを明確に言っていまして、住宅政策に当たっては、国民が適切な住居に住むことを権利としてきっちりと規定をしているということになっていると思うんです。

 そういう居住権というのは公明党さんもおっしゃっていたわけなんですが、安定的に安全な住宅に住むことが国民の権利であるということをなぜ明記されなかったのか。理念の中に生かされているということであれば、このことを明確に書いた方が国民にとってわかりやすかったのではないかというふうに思うんですが。

 先ほど、参考人の意見の中でも百八十度違う意見がございました。本間参考人は、やはり明記すべきだ、国民の権利として明記すべきなんだ、そのことが基本法としての意義を高めることになるんだし、そういう主張がありました。

 これについて、大臣、よろしいですか、お答えいただきたいと思います。

北側国務大臣 このイスタンブール宣言については承知をしております。これは、憲法二十五条と同趣旨の宣言であるというふうに理解をしておるところでございます。

 先ほども住宅局長が答弁をさせていただきましたが、もうちょっと詳細に読ませていただきますと、この住生活基本法案の第六条の中には、「低額所得者、被災者、高齢者、子どもを育成する家庭その他住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保が図られることを旨として、」住宅政策というのは行わなければならない、こう規定があるんですね。十四条には、「国及び地方公共団体は、」少し飛ばさせていただきまして、「公営住宅及び災害を受けた地域の復興のために必要な住宅の供給等、高齢者向けの賃貸住宅及び子どもを育成する家庭向けの賃貸住宅の供給の促進その他必要な施策を講ずるものとする。」というふうに、それぞれより具体的な形で責務規定を置かせていただいているわけでございまして、そういう意味で、私は、先ほど申し上げた憲法二十五条や十三条の趣旨を踏まえた法律になっているというふうに考えております。

日森委員 大臣は法律家だから詳しいのかもしれませんが、責務は言っているんですよ、国や自治体の責務、しなければいけないと。権利というのは、国民の側からの問題なんですよ。国民の側から、私たちは安定的に良好な住居に居住する権利があるんだということでしょう。そのことを明記をなぜしないのかということを聞いたんですよ。それがある国民の側から、権利をきちんと、国民の側の権利を保障しているということと、国や公共団体にそういう責務がありますということは、やはり若干ニュアンスが違うんじゃないですか。

北側国務大臣 それはむしろ、私はもう憲法二十五条の中に規定されているという理解をしているわけなんです。その中で、その憲法二十五条の趣旨をきちんとこの住生活基本法の中で具体化をしていかないといけない、それが先ほど申し上げたような条文になっているのではないかと考えております。

日森委員 いや、改めて明記をすべきであったということを申し上げておきたいと思うのです。

 基本理念の中でもう一つ、「民間事業者の能力の活用及び既存の住宅の有効利用を図り」ということが書かれているわけですが、同時に、「住宅の流通の円滑化のための環境の整備」という言葉もあるわけです。現在、その住宅ストックのうち、持ち家が、これは資料によると六一・二%、民営借家が二六・九%というふうに言われているようですが、こう考えると、民間事業者の責務というのは決められていますが、かなり大きいというふうに言えると思うのです。

 具体的に、この民間事業者の能力の活用、既存住宅の有効利用、あるいは住宅の流通の円滑化のための環境の整備ということは、具体的にどのような施策を考えていらっしゃるのか。同時に、国民に対して安定的に安全な住宅を供給する、提供するという責務は、主要には政府が負うもの、したがって政府に決まっていると思うのですが、そういう意味で考えると、住宅政策における官と民の役割分担、これは今までの住宅建設法とは異なったものになっていると思うのですが、そこについてちょっと教えていただきたいということをお聞きしておきたいと思います。

山本政府参考人 まず、基本理念における民間事業者の能力の活用でございますけれども、これは、最近特に住宅需要が多様化、高度化しておりまして、質のいい住宅のストックの形成を効果的、効率的に行うためには、住宅市場の役割、その中における民間事業者の能力の活用が重要であることから、住宅政策を進めるに当たっては、その観点から、民間事業者の能力の活用、さらには市場を重視すべきという認識をこの条項で示されているものと考えております。

 それから、既存住宅の有効活用につきましても、同じように、充実してきたストックについてリフォームなどを適切に行ってこれを活用していくというストック重視の認識でございます。

 具体的には、例えば、民間事業者の能力を活用する、これは、国民の住生活の安定の確保と向上の促進と、この二つがございますけれども、主として向上の促進の方に非常に力を発揮するわけでございますけれども、セーフティーネットを通じて、安定の確保という観点からも、例えば、その観点から、その分野で民間事業者の能力を活用するという意味では、公営住宅について借り上げ方式で供給を多様化していくとか、そういったことを意味しているわけでございます。

 それから、リフォームの促進とか中古住宅の流通について具体的に二、三御紹介しますと、例えば、住宅性能表示、先ほど引用しましたけれども、これについて普及、活用を図る、それから、住宅購入者に対する金融とか税制面の措置を拡充するといったような事柄、それから、住宅取引についての相談とか紛争処理体制を整備していくといったようなことで、市場における取引を円滑化しながら消費者の皆様の利益の擁護を図っていくという考え方でございます。

 もう一点御指摘がございました。法律で、国民に対して安定的に安全な住宅を提供する責務についての御質問ですが、法案の中で、国及び地方公共団体は、住宅の地震に対する安全の向上を目的とした改築の促進など住宅の安全性その他の品質、性能の維持向上のために必要な施策を講ずるという責務を、責務の部分で国、公共団体の役割を指摘しておりまして、一方、民間事業者の役割につきましては、住宅関連事業者みずからが住宅の品質、性能の確保について最も重要な責任を有していることを自覚し、必要な措置を講ずる責務を有すると。公、国、公共団体の責務と民間事業者の責務をこういうふうに書き分けております。

 これらの行政と住宅関連事業者の責務は、基本的には従来と異なるものではもちろんないわけでございますけれども、それぞれの立場から担うべき役割をこの法律においては明確化することで、住宅政策の的確な推進を図っていこうとするものでございます。

日森委員 ちょっと質問が、時間がなくなりそうなので先に進ませていただきたいと思うんですが、これも先ほど参考人の方にも意見をお伺いしました。これまで、最低居住水準であるとか平均居住水準、あるいは九三年からは、誘導居住水準といういわば指標が示されて、それを目標にしながら改善をしていこうということになってきたんだと思うんですが、しかし、現在の段階では、時代の変化によってこの基準の設け方が現状に合わなくなっているのではないかというふうに思うんです。

 そういう意味では、平均居住水準であるとか誘導居住水準であるとか、こうしたものも再検討する時期に来ているんじゃないかということが一点と、それから、参考人の一人は、いや、そんなものは一切要らないというふうにおっしゃっていた先生もいらっしゃいましたが、しかし、それでいいのかという私たちの思いがありますので、再検討する時期に来ているのではないかということ。

 それから、基本法の中に、目指すべき居住水準、これを明らかにすべきじゃないのか。同時に、きちんと目標年次みたいなものも、目標年次を実際に基本法の中に含めるかどうかは微妙なところだと思うんですが、目標達成の時期であるとか、あるいは先ほど申し上げましたが、居住費の負担割合、目安みたいなものを明確にして、そして具体的に進めていくことが必要じゃないかというふうに思うんですが、その辺の御見解はいかがでしょうか。

山本政府参考人 居住水準の目標については、新しい法律に基づいて策定します基本計画の中で基本的に継承していきたいと考えております。やはり世の中が進展するに従って居住水準も見直す必要がありますので、基本計画の中で五年ごとに見直すという形で設定し……(日森委員「五年ごとですか」と呼ぶ)十年のタームでつくりますけれども、五年ごとに前に、先に出していくという意味でございます。見直していくという考えでございます。

 その中で、まず最低居住水準につきましては、豊かな住生活を実現する上で、この解消を図ることは最も基礎的な条件だという認識でございますので、引き続きこれをきちんと位置づけた上で、早期の解消を目指すという考えで今取り組みたいと考えております。それから、誘導水準についても、中身の見直し、最低水準も含めて中身を見直した上できちんと位置づけて、政策の目標として追求していきたいと考えているところでございます。

 具体的に、例えば、今度つくる基本計画、おおむね十カ年を目標に最初の基本計画をつくりますけれども、この最低居住水準を解消する目標年次をこの計画期間中とするのか、さらに手前に倒すのかという議論は、これからもう少し議論をした上で最終的にセットしたいと思っておりまして、今現在ではどのくらいのタームでということはまだ定めておりませんけれども、そういうことも含めて今検討しているところでございます。

日森委員 もう時間がほとんどなくなりました。

 今度の法律案では、住宅金融公庫や都市再生機構についての役割についても触れられているわけです。

 都市再生機構についてちょっとお伺いしておきたいと思うんですが、今度の基本法において、都市再生機構が運営する賃貸住宅、これについても公営住宅等という概念として取り扱われているわけです。都市再生機構は、もう言うまでもありませんけれども、セーフティーネットの一翼を担う大変重要な機関であるというふうに私どもは思っていますし、そういう意味で、具体的に今度の法案を通してどのような課題を都市再生機構に課しているのか、期待をしているのかということについてお聞きをしたいと思うんです。

 例えば、過密都市をその過密から解消しなきゃいけない、逆に過疎だったら、これはそうじゃないようにしていかなきゃいけないし、そういう意味では、都市再生機構そのものが、先ほど言った官民の役割分担の問題でもそうなんですが、民間をよりよい方向へ誘導する役割というのも含めてあると思うんです。そういう意味で、今度の法案の中で都市再生機構が果たすべき役割について、少し明確にお答えいただきたいと思います。

山本政府参考人 昭和三十年代以降、大都市で必要な良質のファミリー向け賃貸住宅の不足を解消するということで、公団によって大量に供給されてきたわけでございますけれども、都市再生機構の賃貸住宅管理の役割は、この公団から引き継ぎました七十七万戸のストックを生かして、大都市の賃貸住宅政策上の課題をしっかり果たしてもらうということに尽きるわけでございます。

 具体的には、量から質に住宅政策を転換してまいりましたけれども、住宅の供給等に関する事業を実施するに当たりまして、基本計画にいろいろな目標を定めますけれども、都市再生機構はこれからも、七十七万戸の的確な管理を通じまして、都市の居住環境の整備とか少子化対策、高齢社会対策等の取り組みをきちんとやっていただいて、このストックの意義を有効に活用していくということに尽きると思います。都市再生機構設置の目的そのものでございますけれども、それが、新しい基本計画においてもそういう方向で役割を果たしてもらうということを考えております。

日森委員 都道府県計画と国との関係とか、それから民間のディベロッパーとの関係とか、聞きたいことはたくさんあったんですが、時間になりましたので終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

林委員長 次回は、来る二十八日金曜日午前十時二十分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時九分散会


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