衆議院

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第22号 平成18年5月23日(火曜日)

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平成十八年五月二十三日(火曜日)

    午後二時三分開議

 出席委員

   委員長 林  幹雄君

   理事 衛藤征士郎君 理事 中野 正志君

   理事 望月 義夫君 理事 渡辺 具能君

   理事 長妻  昭君 理事 三日月大造君

   理事 高木 陽介君

      赤池 誠章君    石田 真敏君

      遠藤 宣彦君    小里 泰弘君

      大塚 高司君    鍵田忠兵衛君

      金子善次郎君    亀岡 偉民君

      北村 茂男君    後藤 茂之君

      坂本 剛二君    島村 宜伸君

      杉田 元司君    鈴木 淳司君

      薗浦健太郎君    田村 憲久君

      長島 忠美君    西銘恒三郎君

      葉梨 康弘君    松本 文明君

      盛山 正仁君    若宮 健嗣君

      小宮山泰子君    古賀 一成君

      下条 みつ君    高木 義明君

      土肥 隆一君    長安  豊君

      鉢呂 吉雄君    馬淵 澄夫君

      森本 哲生君    伊藤  渉君

      斉藤 鉄夫君    穀田 恵二君

      日森 文尋君    糸川 正晃君

    …………………………………

   議員           下条 みつ君

   議員           田島 一成君

   議員           長妻  昭君

   議員           森本 哲生君

   国土交通大臣       北側 一雄君

   国土交通副大臣      江崎 鐵磨君

   国土交通大臣政務官    石田 真敏君

   国土交通大臣政務官    後藤 茂之君

   政府参考人

   (消防庁次長)      大石 利雄君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           御園慎一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           中村 秀一君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長)            竹歳  誠君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  山本繁太郎君

   国土交通委員会専門員   亀井 為幸君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十三日

 辞任         補欠選任

  亀井 静香君     糸川 正晃君

同日

 辞任         補欠選任

  糸川 正晃君     亀井 静香君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八八号)

 居住者・利用者等の立場に立った建築物の安全性の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案(長妻昭君外四名提出、衆法第二二号)


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     ――――◇―――――

林委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案及び長妻昭君外四名提出、居住者・利用者等の立場に立った建築物の安全性の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省総合政策局長竹歳誠君、住宅局長山本繁太郎君、消防庁次長大石利雄君、厚生労働省大臣官房審議官御園慎一郎君及び厚生労働省社会・援護局長中村秀一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

林委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中野正志君。

中野(正)委員 自民党の中野正志でございます。

 今日までの質疑の中で、政府案につきまして、ピアチェックの導入、あるいは中間検査の義務づけなど建築確認検査の厳格化、あるいは指導監督の強化、罰則の強化あるいは情報開示ということで、耐震偽装再発防止策には相応の成果があらわれるだろう、私はそう考えておりますし、ルール違反に対する抑止力を強化する内容となっている、こういう前提であります。

 はてさて、質問に当たりまして私は民主党案というものを詳しく見詰めさせていただきました。よく見ましたんですが、結果的には、いたずらに規制強化を図る非現実的な法案だなと率直に思います。建築実務や建築行政の現場を本当に承知されておられるのかな、私は現状とかけ離れた改正案であると思っております。要は対案を出したというアリバイ作戦、アリバイづくりのために提出した、ある意味、いいかげんな法案だなと思うわけであります。

 そこで、特定行政庁の実態やあるいは法技術的な課題についての詳しい、民主党案の課題、民主党案の問題点について政府側にお尋ねをいたしたいと思います。

 まず第一点でありますけれども、民主党案の建築士法の改正に関する第三条の施行については、附則第九条で「必要な経過措置その他の事項については、別に法律で定める。」とされております。このように「法律で定める。」とあるからには、つまり、民主党案の建築士法部分を施行する際には、もう一度この国会で議論をして議決をしなければならないということになります。その際には、この民主党案で提案した内容を将来施行する前に改正してしまうことも可能であるということを意味しているのではないでしょうか。

 私は、これでは、本法律案のいわゆる建築士法改正部分については、附則の方に逃れているだけの先延ばしであって、実は十分な検討がなされていないことを露呈しているのではないか、こう思っておるのでありますけれども、国交省側、この点についての見解をお伺いいたします。(発言する者あり)国交省に質問しています。

山本政府参考人 民主党案におきまして、建築士法の改正、第二条、第三条とございますけれども、第三条の規定は、その施行期日及び同条の規定の施行に関し必要な経過措置その他の事項について別に法律で定めることとされております。

 この第三条の規定は、建築士会への加入の義務づけなど、社会資本整備審議会建築分科会の中間報告におきまして引き続き検討する必要があると指摘されている課題が含まれております。政府といたしましては、これらを初めとした建築士制度のあり方等につきまして夏ごろまでに方針をまとめていただき、その結果を踏まえて所要の見直しを図っていく方針でございます。

 なお、法案におきまして施行期日それから施行に関し必要な経過措置などの規定は本則と同様に重要なものでございますことから、内閣提出の法案においては、施行期日は公布の日または同日から一定期間内で政令で定める日としまして、経過措置等は当該法案の附則に規定されるのが一般的でございます。

 ただし、施行期日や経過措置などを別に法律で定める例もございます。これは、旧法を廃止して新法を制定するといったような場合に、経過規定が複雑で重要な問題を含んでいる、本法のほかに施行法あるいは整備法を制定する場合にとられる立法技術でございます。しかし、このような場合にも、本法と同時に施行法や整備法があわせて審議され制定されるようにお願いするというのが、内閣提出の場合の法案の一般的なやり方であると認識しております。

中野(正)委員 そうなんですよ。一般的ではないのであります。審議その他、今説明があったとおりであります。

 さて、民主党案においては、建築士が登録した時点やあるいは建築士法人が設立された時点で、建築士会及び日本建築士連合会の会員になることとされております。一方、建築士に関係する団体は、もう参考人でお出かけをいただいた人たちを初めとして、たくさんあります。ちなみに、日本建築学会、日本建築士連合会、日本建築士事務所協会連合会あるいは日本建築家協会、建築業協会、日本建築構造技術者協会、建築設備技術者協会、日本設備設計事務所協会、その他挙げれば切りがありません。

 こういった建築士に関係する団体は大変に多うございますけれども、それぞれ、建築士制度に関してそれぞれの団体への加入義務づけなどの要望を出されております。資格者団体への加入のみを義務づけていただきたい、あるいは事業者団体への加入も義務づけてくださいという要望などであります。こういった関係団体間の十分な調整を行うことがやはり必要であると考えますけれども、国交省、どうですか、この見解、お伺いをいたしたいと思います。

山本政府参考人 今いろいろ御指摘いただきましたさまざまな団体から、資格者団体だけでなく事業者団体あるいは分野別の団体への加入を義務づけるべきだといったような意見が出されておりまして、こうした関係団体のお考えを十分に調整した上で、法律改正をしていただく必要があるというふうに考えております。

 社会資本整備審議会建築分科会の中間報告では、こうした団体への加入義務づけについての検討ございますけれども、それだけでなく、専門分野別の建築士制度の導入、建築士の資質、能力の向上、建築士事務所の業務の適正化、工事監理業務の適正化、報酬基準の見直しといったような課題も指摘されているところでございます。

 建築士会等への加入の義務づけを検討してまいりますけれども、これを検討するに際しましては、これらの論点を含めた建築士制度のあり方について総合的な検討を行うことが必要であると考えておりまして、夏ごろまでに方針を取りまとめていただき、その結果を踏まえて所要の見直しを行っていく考えでございます。

中野(正)委員 ぜひそのようにお進めをいただきたいとも思います。

 三つ目でありますけれども、民主党案の二十三条では、建築士事務所の開設資格を建築士のみに限定をいたしております。そして、建築士に対して、業務を行おうとするときには、二つの事項を設けておりまして、それで建築士事務所の開設を義務づけているということになります。

 一つは、建築士の使用人である場合。でありますから、株式会社の従業員はこれに該当しないため、事務所の開設が必要ということになろうと思います。そして二つ目は、建築士法人の社員または使用人である場合。この場合、民主党案で、二十七条の十四で、建築士法人の社員に対しては無限責任が課されておりますから、有限責任である株式会社とは相入れない制度ということになろうと思います。この結果、建築士みずからが建築士事務所を開設するか、ほかの建築士の使用人としてその建築士の開設した事務所に所属するか等でなければ、建築士の仕事ができなくなると思考されます。

 このように、建築士業務に多大な制約を課す民主党案では、例えば既存の株式会社の設計事務所あるいは建設会社の設計部門、こういったところは設計、工事監理を行えなくなるのではないかと思うのでありますけれども、国交省、見解をお伺いいたします。

山本政府参考人 民主党案におきましては、建築士の使用人である建築士、建築士法人の社員または使用人である建築士を除き、業務を行おうとするときは建築士みずからが建築士事務所を開設することを義務づけているところでございます。

 したがいまして、御指摘いただきましたように、株式会社が建築士を雇用して建築士事務所を開設することはできなくなります。現在、設計、工事監理業を行っている株式会社の設計事務所等は、これらの業務を行うことができなくなるものと理解しているところでございます。

 株式会社に限りませんけれども、現在登録されております一級建築士事務所の登録数、九万二千余りございますけれども、このうち法人の事務所が五万四千八百余りございます。現状ではそういうことで、株式会社組織による設計専門の建築士事務所が多数ございます。それから、建設会社が設計、施工を一体として責任を持っているケースもございます。したがいまして、このように業態を一律に禁止するということは現実的ではないと考えているところでございます。

中野(正)委員 ありがとうございます。

 そのとおり、全く現実的ではないと私たちも考えます。さっきの無限責任ということに関して言えば、ここで議論もされましたように、建築士の資力、財政力を考えれば、無限責任を課すというのはいかにも現実的ではない。私は、結果的に、かえって消費者保護につながらないのではないか、こうも思っておるところであります。

 なお、民主党案、建築士法第五章の二削除とありますけれども、これは、建築士事務所の業務の適正な運営などを図ることを目的とする団体の指定ということでありますけれども、それを削除。これは調べましたけれども、第百四十回国会において議員提案により追加された条文で、国会審議においては、共産党を除いて野党の皆さんも賛成をされております。

 社団法人日本建築士事務所協会連合会などを大臣指定している根拠が、削除ということになりますとなくなるものでありまして、建築設計、工事監理の業務の適正化を図る観点から私は問題だと思います。

 こういった二つ三つを挙げましただけでも、民主党案は大変乱暴だなと。先ほどの各団体、協会を法律一つで一元化させよう、私はどう考えても、民間の自主自律の活動を阻害するものである、こう断ぜざるを得ないのであります。答弁は要りません。

 四つ目の問題であります。

 今回の法律改正のきっかけとなった耐震偽装問題での最大の被害者は、マンションの住民であることは言わずもがなでありまして、このようなことが二度と行われないようにしなければなりません。今回、住宅の購入者が瑕疵により被害を受けた場合、保護を徹底するいろいろな議論もありました。

 そこで、民主党案を見ておりましたら、これまで民主党が繰り返し主張しておりました保険加入の義務づけなど、瑕疵担保責任の履行措置の義務づけが実は盛られていないのであります。どうも、世論受けをねらったパフォーマンスの今日までの発言だったのかなと率直に思います。故意または重過失に対する保険の検討については、取り扱いについては、当然これからますます議論をし検討もしていかなければなりません。

 実際に、政府案はその点をかんがみて、答弁にありましたように、損保業界からのヒアリング、あるいは免責規定のない、新しい商品開発などを盛り込んだ、そういった可能性を探っている段階だ。義務づけはされておりません。こういった保険加入の義務づけについて、あるいはその可能性について、国交省、改めて見解をいただきたいと思います。

山本政府参考人 新築住宅の売り主等でございますが、住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づきまして、住宅の主要構造部分の瑕疵について十年間の瑕疵担保責任を負うこととされていますが、売り主等が十分な資力を有さないような場合は瑕疵担保責任の履行がなされないということが、今回の事案で明らかになったわけでございます。

 このため、社会資本整備審議会の中間報告におきましては、住宅の売り主等の保険への加入等、瑕疵担保責任の履行の実効を確保するための措置を講じる必要があるとの御指摘をいただいているところでございます。これを踏まえまして、今回のお願いしております法案におきましては、宅建業者に対しまして、契約締結前に保険加入の有無等についての説明を義務づけるなどの措置を講じることとしているところでございます。

 この情報開示からさらに進みまして、保険への加入など瑕疵担保責任の履行の実効を確保するための措置を義務づけるということにつきましては、被害者救済に必要な保険金の支払いの安定的な確保など、多くの課題が存するところでございます。今御指摘いただきましたけれども、売り主等による故意、重過失につきましては、モラルハザードの問題など、責任保険では対応が難しいとされておりまして、慎重に議論すべき課題であると考えております。

 このため、住宅購入者など住宅の瑕疵により被害を受ける者への対応を図る観点から、有識者の参画を得て御意見を広く伺うために、住宅瑕疵担保責任研究会を設置して、検討を進めているところでございます。今後、研究会においてさまざまな観点から御意見を伺いますとともに、関係機関とも連携を図りながら、方針を取りまとめてまいりたいと考えております。

中野(正)委員 いろいろ不規則発言もありますけれども、前段で申し上げましたように、特定行政庁の実態や法技術的な問題は、政府側に質問をした方がいいのであります。

 続いての質問に移ります。

 民主党案では、建築確認、中間検査、完了検査済証の発行権限を特定行政庁に限定しておりまして、いわゆる指定確認検査機関は発行できないとなっております。これは、やはり、建築確認検査手続を民間に開放した経緯を考えると、どうも逆行しているな、また、今回、指定確認検査機関の責任の明確化を求めてきております東京都を初めとする特定行政庁の主張などについて逆行するものであるなと思います。確かに、今、先週ですか、読売新聞の記事にありましたけれども、多くの特定行政庁は強化にもう早速着手をいたしておりまして、人員も、それなりの形で増員配置をされておるようであります。しかし、それであっても、特定行政庁だけでこなすということはなかなか難しい、これが現実であります。

 そういう意味で、やみくもに官の肥大化を招きかねない、こういった、特定行政庁だけに発行権限を与えるなどということは、実際の現場を御存じならないのではないか、こう考えるのでありますが、国交省、いかな見解をお持ちですか。

山本政府参考人 民主党案におきましては、指定確認検査機関が確認証等を交付した……(発言する者あり)

林委員長 御静粛に願います。

山本政府参考人 指定確認検査機関が確認証等を交付した建築物の計画につきまして、改めて建築主事が確認済証等の交付を行うこととされております。

 この仕組みにおきましては、まず、建築主が、指定確認検査機関に対しまして確認の申請を行い、建築計画が建築基準関係規定に適合することについて確認証の交付を受けた上で、さらに、建築主事に対して確認の申請を行い、建築主事から最終的な確認を受け、確認済証の交付を受ける必要がございます。

 このように、この仕組みは建築主事の責任を重くするものでございます。指定確認検査機関の責任の明確化を求めている東京都など特定行政庁の主張に逆行するものであることから、これらの特定行政庁の理解を得ていくことは難しいのではないかと考えております。

 また、この仕組みは、建築主にとりましても、指定確認検査機関と建築主事の双方に確認の申請を求められるということになります。申請書の提出など手続が煩雑になる上に、確認手数料も双方に納めることになると考えられるほか、確認済証の交付を受けるまでに、指定確認機関において要した審査期間だけでなく、その後の建築主事による審査期間を要するということになってしまうということから、建築主等の関係者からも理解を得ることがなかなか難しい面があるのではないかと考えているところでございます。

中野(正)委員 共通認識だと思いますけれども、そういった審査は、屋上屋を架すものであり、いたずらに建築主事の負担を増大させるものである。言ってみれば、建築主にとっても、確認検査機関と建築主事の双方に確認を強いられる、また、手続も確認手数料もダブる、審査期間もダブるということで、不合理きわまりないものだと私も考えております。いたずらにやはり規制を強化すればいいというものではありませんで、検査業務の手続を煩雑にしているだけのものだな、私はそうも考えます。

 さて、次の質問に参りますけれども、適切な建築活動を担保するためには中間検査の実施を強化するということは、けだし当然であります。ただ、民主党案では、すべての建築物に対して中間検査を義務づける、こういうことになっております。

 ただ、中間検査のすべての義務づけによって、特定行政庁や指定確認検査機関の業務量、地域によってそれぞれあるかもしれませんけれども、あるいは五倍になるのではないか、あるいは十倍になるのではないか。これは、特定行政庁からよく私たちもお聞かせをいただくところであります。参考人質疑でも、この点は、確かにそのとおりだということでの答弁もありました。

 この法案が、そういう意味でも、非現実的な法案であるということがわかりますけれども、現状の建築確認検査実施体制から見て、特定行政庁、あるいはそういった建築確認検査機関、しっかりと対応が可能なのかどうか、これについても御見解をお伺いしておきたいと思います。

山本政府参考人 中間検査は、特定行政庁が対象となる建築物を指定する制度とされております。これは、中間検査を導入いたしました当時は、建築行政の体制といいますか、検査の体制が必ずしも十分ではない、限られているということもありまして、地域の実情を勘案して、特定行政庁が対象区域と期間を限って中間検査を行うこととしたものでございます。

 今回の耐震偽装事件を契機としまして、特にマンションについては、全国共通の課題として、厳格な検査を行う必要性が改めて認識されたために、政府案におきましては、三階建て以上の共同住宅について一律に中間検査を義務づけることとしております。

 民主党案においては、すべての建築物について、全国一律に中間検査を義務づけることとしておりますけれども、平成十六年度で見ますと、特定行政庁それから指定確認検査機関が行いました中間検査、全部で約十四万件ございます。仮に、平成十六年度に建築確認を行いました七十五万件すべてについて中間検査を少なくとも一回行うということになりますと、これだけの倍率になりますので、現状の特定行政庁それから指定確認検査機関を合わせた検査体制では非常に難しくなってくる、そういうおそれがあると思います。三階建て以上の共同住宅以外の建築物につきましては、特定行政庁が地域の実情に応じて対象となる建築物を指定することが適切だと考えております。

林委員長 発言者に申し上げます。

 提出者の方から、誤認があるとの認識で発言を求められておりますけれども、いかがしましょうか。

中野(正)委員 いや、私は質問者でありますから、私の質問どおりに答弁をしていただきたいと存じます。ちなみに、私は、前日までという民主党に対する質疑通告はいたしておりませんので、私は民主党に対する質疑はいたしません。

 確かに、局長お話しされるように、大変厳しくなることだけは間違いありません。ただ、こういった業務の増大によって、私たちの心配は、違反建築物対策などに手が回らなくなる、こういったことがあっても困るな。これは、どうあれ、しっかり御指導いただきたいと思っております。

 はてさて、民主党案においては、建物の完成から二年後に検査の実施を義務づけるということになっております。建物完成後に配筋の量などの審査をするということは、技術的には大変難しいなと思うのであります。むしろ確認時の審査、今話に出たような中間検査、これをしっかりと行うことが重要でありまして、むしろ完成二年後の検査は実効性という意味からしてもなかなか難しいのではないかと思うのでありますけれども、国交省はどう考えられますか。

山本政府参考人 御指摘いただきましたように、確認時の審査、それから中間検査を的確に行うことが大事であると認識しております。

 現行法におきましては、共同住宅、ホテル、百貨店、劇場などの一定の建築物につきましては、建物完成後に、違法な増設工事などを行っていないかどうか、建築物が適切に維持保全されているかどうかをチェックするために、建築士などの専門家が定期的に建築物の状態を調査し、これを特定行政庁に報告させるということにしております。これは定期報告制度でございます。こういった一定の建築物につきましては、定期報告制度を活用して的確を期するということができると考えております。

 それから、定期報告が義務づけられていない戸建て住宅等の建築物全体について、完了二年後、完了検査を行うということについては、人員の関係もあってなかなか実務がついていけない、それから、建築主に対しても過大な負担を強いることにつながるのではないかというふうに考えているところでございます。

中野(正)委員 どうもありがとうございます。

 まだまだたくさんあるのでありますが、時間の関係もあります。建築士制度にかかわる課題を初めとして、秋以降にまた大議論もしていかなければならない問題もありますけれども、以上で私の質問といたします。ありがとうございました。

林委員長 葉梨康弘君。

葉梨委員 どうも御苦労さまです。自民党の葉梨康弘でございます。

 今、中野先生からも質疑がございましたけれども、自民党は国民に開かれた公正な党でございます。主として民主党に対して御質問をさせていただきたいというふうに思いますけれども、私は葉梨と申しまして、中野ではございませんので、私の質問に対して端的にお答えを願えるようにお願いを申し上げたいと思います。

 まず、通告の順番を少し変えまして、建築士法の改正関係で申し上げたいと思います。

 先ほど中野委員からも、第五章の二、ここを削除するというのは問題じゃないかという指摘があったんですけれども、今回、建築士事務所の業務の適正な運営を図ることを目的とする団体の指定、これについての規定を削除された理由と関連団体との調整状況について簡単にお答えを願いたいと思います。

長妻議員 まず、先ほどの中野委員の質問に対して、これは全く、法案提出者がここに座っているにもかかわらず、委員長からの助言があったにもかかわらず、それを振り切って質問が進んだということに対して、私は、この委員会の議事録にきちっとやはり残さなきゃいけないというふうに考えますので、委員長のお許しを得て、前の質問に対して若干コメントをさせていただきたいと思います。

 まず、中野委員の……(葉梨委員「委員長、時間内でやらなきゃいけないから困ります」と呼ぶ)では、ちょっと待ってください。委員長、お許しいただけますか。

林委員長 どうぞ。

長妻議員 今、委員長、どうぞということでお許しをいただきましたので、不規則発言、慎んでください。

 先ほど何点か、中野委員の中で、私は逆に非常に不可思議に思いましたのは、いろいろな自治体からの要望、何でそのとおりに民主党案はなっていないんだという話がございましたけれども、中野委員が引用された自治体の要望というのは、私どもが承知しておりますのは、完全に、建築確認という最後の責任までも民間確認検査機関に任せてほしいと。今は、建築基準法六条あるいは最高裁の判例等々で、最終的に、民間確認検査機関が建築確認を出したとしても自治体の責任になるということであります、今現在。

 ところが、それは中野委員は、先ほど引用されたことを推定いたしますと、基本的には、一から十まで建築確認の責任を民間確認検査機関に負わせよう、賠償責任は自治体や国には一切ない、こういう自治体の要請に基づいて御質問されているわけで、我々はそれは決して容認できない。今の政府案でさえそういう法構成にはなっていないわけで、非常に、みずから政府案を御存じなく質問していると言わざるを得ない。

 そして我々は、役所の力をかりずに、当然、議員とスタッフで法案をつくっております。中野委員は御自身でつくったのか。これは、政府の力をかりて、ほとんど御自身で吟味されないでつくられた上でそういうお話をされているというのは、我々は非常に容認できないところでございます。(発言する者あり)

林委員長 御静粛に願います。

長妻議員 我々の主張といいますのは、民間確認検査機関が最後の建築確認を出したとしても、これは昨年の最高裁の判決で、横浜市の例でございましたとおり、最高裁の判決では、横浜市の区域内にある建物に対して、民間確認検査機関が建築確認をおろした案件であっても、最終責任は横浜市にある、こういうような話でございまして……

林委員長 提出者に申し上げます。発言者の質問にお答えください。

長妻議員 そういう意味では、今現在、最後の確認済証の発行は、一から十まで民間確認検査機関が、検査済証の発行も最終的には民間確認検査機関が出している。しかし、最高裁の判例等では行政にその責任があるということで、実態と責任が非常に乖離しているという意味で、我々は、最後の済み証の発行も行政に任せる、こういうようなことで申し上げているわけでございまして、非常に……

林委員長 提出者に申し上げます。

 葉梨委員の発言に御答弁ください。

長妻議員 まだ何点か申し上げたいことございますが、委員長のお話もありますので、中野委員のコメントは以上にいたします。

 そして、葉梨委員の、この建築士法に対する今御質問がございました。我々は基本的には強制加入というのを考えておりますので、既存の団体ではなく、一つの団体に対して建築士が強制的に加入する。これは、弁護士あるいは公認会計士あるいは税理士等々でも広く見られる自治組織として地位を向上する対策でございますので、そういう意味で、先ほども質問がありましたように、我々は施行の期日は決めておりません。別途法令で定めるということで、いろいろな法案でこういう前例はございます。

 そういう意味では、日にちを決めないで、基本的には話し合いを続けていただいて、一つに自主的に業界がまとまっていただく、それを促しながらこの法案を施行していく、こういう趣旨で、建築士の地位を高めていく。我々はこういう案を持っているわけでございます。(発言する者あり)

葉梨委員 御静粛にお願いいたします。

 この点についてはぜひ参議院の小川勝也先生の御意見も承っていただきたいと思うんですけれども、もともと、建築士の団体について第四章の二と第五章の二というのが二つできたわけですけれども、士資格というものに着目する団体は、この資料にもありますけれども、建築士会ですね。それから士業、業に着目する協会が建築士事務所協会。そして、いずれの方向から建築士の健全化を図るべきかというのは、今不規則発言にもございましたけれども、ずっと昔から議論になっているところなんです。これを弁護士あるいは公認会計士と同じような形で整理できるかどうか、私自身は疑問に感じているというふうに言わざるを得ないんです。

 現在、民主党案では、建築士事務所の開設者を建築士に限る、そして無限責任を負わせるというふうになっていますが、これは簡単な話で結構です。二十七条の十三、「特定の業務について、その業務を担当する社員を指定することができる。」となっていますが、この「特定の業務」というのは、一般的に、あるマンションの設計というようなことで解釈してよろしいんでしょうか。質問にイエスかノーかでお答えいただければ結構です。

田島(一)議員 御質問ありがとうございます。

 今御質問いただいたとおり、端的に申し上げれば、できるというふうに判断をしておりますので、御理解いただきたいと思います。

葉梨委員 通常、この法律の読み方として、依頼主の求めがあればということですから、通常の損害賠償関係もございますので、大体、ある建物、ある工事の設計、これが特定の業務、それにかかわる社員を指定することができる、その指定する社員が無限責任を負うというような立て方になっているわけです。

 ただ、今、建築士の世界で大変問題となっていますのが、設備と構造と意匠、これの専門分化なんです。実際に、姉歯の事件でアトラスの渡辺建築士が偽装を見抜くことができたというのも、これは渡辺さんが構造の監理を委託されたことからであって、昨年のここの委員会における参考人質疑の議論でも、意匠の設計士は構造のことはわかりませんということになります。

 そして、ある建物について、指定社員として、構造の設計士は長妻さん、それから意匠の設計士は下条さん、それから設備の設計士は森本さんというふうに三人が指定されるわけですね。そして、長妻さんが姉歯さんと同じようなことをやられたときに、やはり森本さんは責任をとらなきゃいけないんでしょうか。どうぞ、お答えください。(発言する者あり)こんなにわかりやすい質問はない。

田島(一)議員 恐れ入ります。もう一度質問をちょっとお願いしたいんですけれども、よろしくお願いできますでしょうか。

葉梨委員 無限責任という法律の仕方は御存じですよね。ある業務について指定社員を置きます。その指定社員が代表するわけです。

 先ほど言いましたとおり、特定の業務というのは、あるマンションの建設です。永田町マンションを建設しよう。そこの指定社員として、長妻さんと下条さんと森本さんが三人指名されました。そして、長妻さんは構造の専門家、下条さんは意匠の専門家、森本さんは設備の専門家、それぞれ分担して仕事をしております。そして、長妻さんが姉歯と同じことをやったときに森本さんは無限責任を問われるんでしょうかということです。

 わかりやすい質問だと思いますけれども、法律をよく見てお答えください。

田島(一)議員 ありがとうございました。

 同じ法人であるならば、当然、無限責任を負うべきだというふうに考えます。

 ただ、我々が、今御指摘をいただいたように、それぞれが意匠の設計事務所、構造の設計事務所、設備事務所というふうに独立した場合には、なかなかそのようにはいかないというふうにも考えます。

葉梨委員 当然のことながら、建築士法人として同じ事務所に属しているということを前提で、今お尋ねをしたんですよ。無限責任を負うわけです。

 今現在、皆さん御存じのとおり、構造と設備と意匠、それぞれ専門分化していて、わからないことについてまでどうして無限責任を負わなければいけないんだ、そうなりますと、ある程度大規模な建築士法人というのは一切つくれないということになってこようかと思います。

 そしてもう一つ、ちょっと申し上げます。(長妻議員「誤解している。委員長」と呼ぶ)違いますよ。発言は求めていません。

林委員長 発言中です。

葉梨委員 いいですか。無限責任の立法例というのは、御存じとは思いますが、釈迦に説法です。例えば弁護士法においては、特定業務となっているのが特定事件となっています。公認会計士、監査法人については特定証明となっている。特定の業務というような言い方はありません。すなわち、弁護士であればある民事事件、それから監査法人であればある証明ということで、大体同じような専門家が指定社員として指定されるときに無限責任を負うというのが通常の立法例です。

 現在のような、建築士がこれだけ構造分化しているときに、全くわからない業務についてまで無限責任を負わせてしまうということは、ちょっとこれは憲法上も問題があるんじゃないかというような感じを私は持っています。

 そこで、長妻さんに御質問ですけれども、質問に対して端的に答えていただきたいんですが、現在、法人開設の建築士事務所は七万四千三百八十四ありますね。個人開設の建築士事務所が五万九千百五あります。七万四千三百八十四の法人開設の建築士事務所が民主党案の施行と同時に路頭に迷うことになるんですけれども、その再就職対策についてはどう考えるでしょうか。

長妻議員 路頭に迷うということで、ちょっと誤解があるようなので御説明を申し上げますけれども、基本的に、我が党案では、開設者は、一級建築士あるいは二級建築士でも木造建築士でも結構ですが、建築士に限ると。

 そして、建築士の法人をつくるということで、株式会社は認められておりませんけれども、本当にその業務が必要であれば、その株式会社の中、解消して、そのメンバーあるいは関連する方々で組みかえて、その中には必ず建築士の方はおられるわけですから、その人が代表者となって、再度開設の手続をとるという形で、そういう事務所を組みかえていく。

 今問題なのは、基本的には、例えば、社団法人日本建築士事務所協会連合会の各都道府県会員に対するアンケート調査では、一級建築士事務所における建設業との兼業事務所の割合は約三一%になっているということでございまして、例えば、社長さんが建設会社の関連の方、そして、そこの資本は建設会社の資本である、そういう建築士事務所があったとすれば、それは当然、そこの下に仕える建築士の方が代表になって、例えば開設者となって、その事務所をさらに建築士の法人格を取って開設するということで、その運営はそのまま引き継げるわけでありまして、そういう意味では、主客逆転といいますか、建築士が主導権をとる建築士事務所がそこで再編成される、こういうふうに我々は考えております。

 皆様方のお話を聞いておりますと、現実的には無理だ無理だ、無理だ無理だということで、今回、姉歯偽装問題というのは、だれも予想しない大変な事態が起こっております。これは小手先の改革で済むものか。みんなが無理でない、みんなが容認できるような改革で済む、そういう簡単な問題ではないという認識で、居住者の立場に立つと、かなり大きな改革をしなければいけないということで、我々も、実態を調査しながら、この法案を提案しているわけであります。

葉梨委員 時間がなくなりますから、ちょっと一言申し上げたいと思うんですけれども、私、別に民主党さんとけんかしているつもりもないんです。いろいろな形で、やはりこの建築士制度をしっかり考えていこうということについては私は評価しているんです。

 ただし、これは民主党さんの方々もよく認識をしていただきたいんですけれども、実際にワークする制度でなければ、これは居住者のためにも利用者のためにもならないということなんですね。現実に、建築士法人の法制にしても、あるいは会員に対する強制加入の法制にしても、そして無限責任という法制にしても、他の立法例においては、やはり相当、どんなような業務について、どんなような資力があってということをしっかりと検討した上でつくっている。

 私は、建築士制度というのはしっかり改善をしなければいけないと思うけれども、建築士業界が決して小学生だと言うつもりはございませんが、小学生に大学の問題をやらせては、これは動かなくなってしまうし、本当にそれこそ消化不良を起こしてしまう、そういう感じを持っております。

 時間の関係もありますので、特定行政庁の関係も少しお伺いしたかったんですが、最初に時間をとられてしまいました。

 資料の二をめくっていただきたいと思います。

 私も、この質問をするということになりまして、現場でいろいろとちょっと調べてまいりました。これは、地元の常陽新聞という新聞社が発行しています常陽ウイークリーというもので、毎週金曜日にこういう形で、新聞折り込みで配付をされるものでございます。

 提出者にお伺いをいたします。この広告の問題点はどこにあるとお考えでしょうか。

下条議員 お答えします。

 文字がやはり小さいとは思います。しかし、それについて一つ一つ、下の方についても、1、2、3とつけ加えていけばつながりができるのではないかと思います。ともかく、小さいということは間違いないと思います。

葉梨委員 宅地建物の購入者、消費者も決して、先ほど申し上げましたように、小学生が買うわけではありません、いろいろな形で情報を収集しながら、実際に一生に一回の買い物ですから、やはり私もマンションを買いましたときはいろいろなところを見てまいりました。決して大根を買うわけじゃないんです。

 購入者にとっても、このような常陽ウイークリー、インデックス広告というふうに名づけましょう、こういうような広告をもとにしてその宅建業者、不動産業者に電話をする、そして詳しい情報を取り入れる、そういった行為が、この民主党案ですと、例えば、宅建業法三十一条の二の改正ということで、「当該宅地の所在、地番その他当該宅地を特定するために必要な表示又は当該建物の所在、種類、構造その他当該建物を特定するために必要な表示」、「代金又は交換差金の額並びにその支払の時期及び方法」、「宅地又は建物の引渡しの時期」、当該建物が新築住宅のときは云々、これらの事項を全部広告宣伝に書き込まなければ罰金がかかってまいりますけれども、それでよろしいんでしょうか。提出者にお伺いいたします。

田島(一)議員 仰せのとおり、今御提示をいただきましたこの資料、確かに、倍率がどれぐらいのサイズで現物が出されているのかわかりませんけれども、実際に、今御指摘をいただいたように、この資料の中に書き込もうと思いますと、非常に厳しいということも現実として理解をしております。

 ただ、広告宣伝というのは、あくまでそれぞれの企業が販売しようとしているものを宣伝項目として挙げていくわけですから、当然自由に行われることが望ましいというふうには考えております。しかしながら、国民の生命財産に重大な影響を与えるという懸念がある場合にはやはり所要の規制が必要というふうに考えて、今回、民主党案に盛り込ませていただいたところであります。

 参考までに申し上げたいと思いますけれども、実は、消費者基本法においては、平成十六年の改正によりまして、表示の適正化等について定める規定を広告その他の表示の適正化等について定める規定とし、広告が含まれることが明示されたところでありますので、ぜひこちらの方も御参考にしていただきたいと思います。

葉梨委員 この手の広告宣伝の規制というのも、私、かつて、昭和五十九年に風俗営業法の改正をやりましたときにやらせていただきまして、ただ、一般的には、この表示の適正化というのは誇大広告についての適正化を主に言うわけで、今民主党案が出されているように、必ずこの事項を盛り込まなければいけない、しかも、ある事項についてはあるポイント以上にしなければいけないというふうにしている制度というのはほとんど皆無なんですね。なぜかというと、広告宣伝の規制というのは、実は、アドバタイズメントですから、表現の自由にもかかわってくるわけなんです。

 ただ、現実の問題として、大きさはこの大きさです。これが現物でございます。実際に利用しておりますのは中小の不動産屋さんです。大きな折り込み広告だとかいろいろなきれいなパンフレット、ヒューザーがつくっていたような、ああいうのは確かに大手の不動産屋さんとか大手の建設業者はつくれますけれども、中小の不動産屋さんというのは、まずこういう広告で出して、これは一個一個、ちょっとお金を取られますけれども、それで自分のお店に来てもらってということをずっとやっているんです。

 今回、宅建の方々にもずっと聞いてみました。そうしたところが、これをやられたら、まず多分、大手の不動産屋さん、それから建設業者は生き残ることはできるけれども、中小の宅建業者というのはもうやっていけなくなりますと泣き声を出して言われるわけなんですが、今回、何で民主党がこういった中小企業いじめの法律を出されたのか、見解を承りたいと思います。

長妻議員 今、葉梨委員の方から、皆無である、ポイント、文字の大きさを決めたものはないというお話がありましたけれども、これは御存じありませんですかね、あるんですよ。

 例えば、我々も決して突出したものをつくっているつもりはございません。割賦販売商品に関する広告に、割賦販売法では第三条、ここで書かなければいけない事項を定めており、そして経済産業省令では、書面により広告を行う場合であっては、日本工業規格に規定する八ポイント以上の大きさの文字及び数字を用いること。文字の大きさを規定している広告というのは、もうあります。

 そして、先ほども話にあったように、消費者基本法にもそういう形はありますし、あるいは、たばこのパッケージの広告等にも一定の大きさ以上の表示を義務づける等々ございまして、決して我々は突出した規制をかけているつもりはございません。

 ただ、これは再三申し上げておりますように、居住者あるいは購入者が実際、重要説明の時点でこの情報を知ったときには、やはり相対面して、向こうのお店でお話をするわけですから、なかなか冷静な判断が事前にできない、こういう大きな問題意識を持ちまして、あくまでも居住者あるいは購入者の立場に立てば、それは業界、役所にとっては少々厳しい案になるかもしれませんが、我々はあくまでもそちらの利益を優先する、こういう趣旨でこれを設定したわけでございます。

葉梨委員 割賦販売法の規定も私は見ております。「割賦販売業者は、第一項、第二項又は前項の割賦販売の方法により指定商品若しくは指定権利を販売する場合の販売条件又は指定役務を提供する場合の提供条件について広告をするとき」、すなわち販売条件または指定役務を提供する場合の提供条件について広告するときということで限定を付しているんですね。

 こんなような形で、一般的に、「宅地又は建物の売買又は交換に関する広告をするとき」、こんなに広い規制はかかっておりません。そのことは私からも指摘をさせていただきたいなというふうに思います。

 それからもう一点なんですが、これは長妻委員じゃなくて結構ですけれども、さっきの質問に対しては、私は中小企業をいじめる法案を民主党が提出されたということについて、耐えてくれということでしたけれども、その点は、中小企業には泣いてくれということでよろしいのか、もう一度お答えを願いたいと思います。

長妻議員 いや、全くそれは趣旨を曲解した話だと思います。

 今言われたのは、広告にその建物が保険に入っているか入っていないか、それを義務づけることが中小企業いじめだ、こういう非常に短絡的なお話でございますけれども、広告の規制というのはほかにもございます。

 消費者の利益を本当に図る、そういう健全な市場をつくることは、結果として、そういう企業にとっても強い市場をつくるということで、非常に市場に対して信頼が高まる。市場に対する信頼が高まればそれを利用する、つまり購入する方々もふえていく。こういうことで、健全な市場の育成というのに資するということで我々はこういう法案を出しているわけでございまして、その意味では、厳しいということは、確かに今よりは厳しくなりますが、いじめということではございませんで、市場の健全な育成に資するということは最終的にはお互いの利益になる、こういうふうに判断しております。

葉梨委員 この点についても、短絡的、短絡的というふうに言われますけれども、私どもは、出てきた法案について審議をする立場でございます。もしも、民主党さんのこの法案を提出する理由というのが、保険に入っているか入っていないか、これを主としてやるというのであれば、過剰規制を避ける意味からも、そういったものに集中的に特化すべき話なんです。これは、例えば、「宅地又は建物の引渡しの時期」、「代金又は交換差金の額並びにその支払いの時期及び方法」、そんなところまでどうして義務づけなければいけないのか。

 これは過剰規制の問題が非常に出てくるのと、あともう一つは、この手の広告ですけれども、やはり、一番冒頭申し上げましたとおり、これは常陽新聞という新聞社が出しているものですが、新聞社の広告としてこういったインデックスの広告というのは非常に多いです。電話番号を指定して、ここに電話してください、うちだったら取手新町で売り地があります、電話してください、そういうような広告を一行載せる。そういった新聞の例というのは、これを見ていただいたらわかるとおり相当あるわけですけれども、新聞協会の意見を聞かれたのかどうか、一点について、イエスかノーか、お答え願いたいと思います。

長妻議員 新聞業界の意見というのは基本的に聞いておりませんけれども、新聞業界の意見を聞くというのはどういう趣旨なのか。我々は、いろいろな利害関係者の意見は聞きますけれども、新聞の広告の立場の意見も重要だと思いますが、ただ、我々は、それは、先ほど申し上げた趣旨でこの法案を提出しておりますので、その意味での利害関係者の意見は聞いております。

葉梨委員 イエスかノーかということをお答え願えればよかったんですけれども。

 新聞協会というのも二重の意味でございまして、一つは、やはり広告を載せるという形で利害関係という媒体でございますし、また、広告も含めて、やはり我々が大切にしていかなければいけないのは表現の自由じゃないかと思います。どうもちょっと、民主党案を見ていると、思いはわかるんですけれども、思いがきつ過ぎて過剰規制、統制規制になっているのかな、代表がかわられたので大分統制がきつくなったのかなという感じもいたしますけれども。

 最後に二問、国交省にお伺いいたします。

 まず、特定行政庁、先ほど中野先生から議論がありました。きょう、最初のあの議論がなければもっと民主党さんと議論したかったんですけれども、私が見たところ、例えば確認済証の交付権限を特定行政庁に限定する。あるいは、通常、建築についての監視が行き届いていると思われるような木造三階建ての持ち家等への中間検査、これを義務づける。それから、二年後の完成検査ですと単なる外形的劣化、これを見ることになります。そうしたら、その効果しかない完成二年後の検査を義務づける。こういったものは、私も行政改革に大分携わっておりますが、行政の効率性の確保という観点からやはり問題だと思います。

 こういうことまで特定行政庁に行わせるということであれば、本来求められている業務の実施を阻害することになりはしないか、そういう懸念があると思いますけれども、住宅局長、お答え願います。

山本政府参考人 御指摘いただきましたとおり、今挙げていただきましたような内容につきましては、現状の特定行政庁及び指定確認検査機関の体制では実施が困難であるということ、それから、特定行政庁において、行政でなければできない建築基準法違反対策などに重点を置いて仕事を進めるといったようなことが難しくなってくる、そういうおそれがあると考えております。

葉梨委員 それでは、最後に大臣にお伺いをいたします。民主党さんからは十分お話を承りました。

 民主党さんから対案が出てきたということは、冒頭言いましたとおり、私自身は評価をいたします。ただ、全部詰め切ることはできなかったんですけれども、ちょっと制度としては、ワークする制度、代物ではないということは、この一端を見ても明らかだろうというふうに思います。思いはわかるんですけれども、実際に制度としてワークしなければ、居住者のためにも、利用者のためにもなるわけではありません。

 そして、この本日の質疑で、この問題については、単なる思いつきだけじゃなくて、やはり自治体の過度の負担だとか、広告宣伝などへの過剰な規制、こういったものを避けながら確実に再発防止を図るためには多面的な検討が必要だと私は思います。ただ、国民に安心感、これを与えていくためには、私は、その検討に残された時間というのは決して長くはない。だから、夏までというお話、御決意、大臣からありましたが、これは相当タイトな仕事だと私は思いますけれども、今後のスケジュール、それから今後の御決意について、大臣から承りたいと思います。

北側国務大臣 まず、民主党の対案でございますが、私も野党生活が長かったもので、野党が対案を出すというのはなかなか大変でございまして、そういう意味で本当に敬意を申し上げたいというふうに思います。

 今後、今葉梨委員がおっしゃったように、今回の改正案はあくまで第一弾でございます。これで十分とは思っておりません。残された課題につきましても、これまでも委員会で御議論いただいておりましたが、今おっしゃったように、この夏までにぜひ取りまとめをさせていただきたい、今精力的に論議をしている最中でございます。この委員会での御議論もよく踏まえて、この夏までの改革の中身について、しっかり参考とさせていただきたいと考えているところでございます。

葉梨委員 どうもありがとうございました。

 きょうは、いろいろと論点を詰めるということで御質問をさせていただきましたけれども、決して民主党さんを恨んでいるわけでもございません。しっかりといろいろと話し合いをしながら、居住者、利用者のためにいいものをつくっていきたいということをお訴え申し上げまして、私の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

林委員長 古賀一成君。

古賀(一)委員 与党の民主党案に対する質問も終わりまして、今度は私の方からは、政府案に対して大臣ほか政府委員にお聞きをしたいと思います。

 中野議員、そして今の葉梨議員の方からも質問が民主党に対してありました。最後には、ともに与野党意見を聞いて、この夏に本格的ないい体制をつくろうというお話があったわけでありますけれども、それについてはまさに賛成で、我々民主党の提案も本当にいい切り口、提案を含んでおりまして、翻って与党側が先ほど、実効性あるシステム、実際にワークするシステムに民主党はなっていないのではないかという御議論もありました。それは、場合によっては真摯に受けとめなきゃならぬ点もあろうかと思いますけれども、逆に、また同じ問いかけが政府案についてもされておると私は思います。

 したがいまして、民主党の提案した仕組み、あるいは私が今から申し上げますいろいろな問題提起というものをしっかり受けとめて、本当に深く、広く、真剣に考えた案を政府は今後検討してもらいたい、そういう思いも込めまして質問をしたいと私は思います。

 私は、今回の建築基準法改正を機に、昭和二十五年当時の、いわゆる建築士法が議員立法され、その前段としての建築基準法が改正される、その経緯の古い資料を読んでみました。当時は戦後間もないわけでありまして、物がない、戦後の焼け野原、住宅もこれからつくらないといけない。GHQの厳しい監視、介入もある。そして、それまでの官選知事、官選の中央集権体制というものから地方自治へ大きくかじを切ろうとしている。

 そういう本当に転換期の困難な物のない時代に、当時の建設省、国土交通省の前身の方々は、やはりロマンを求めて、これからどうやって建築士を育て、どうやって日本の国民の期待に沿う住宅をつくっていくか、その制度はいかにあるべきかというのを、本当にロマンに満ちて、また責任感に満ちて議論した、そういうのを私は読んだわけですね。私はいたく感激をいたしました。

 しかし、それから法律ができて制度ができてざっと五十五年たった今日、もう御承知の耐震偽装という、本当に浅ましくて、言葉をかえれば卑しいと言ってもいいですね、この事件がこれだけの広がりを持って発生した。今度の改正というものは、昭和二十五年にああいう思いで条件が整わない中にも制度をつくってきた先人、それが、その後、今日に至るまで育てられずに、発展させられずに、何か物質主義というか、もうければいいという世相というか、あるいは数の拡大に追われる余り、そういうあるべき姿というのを見過ごしたまま来た結果、私は耐震偽装が起こったような気がしてなりません。私は、そういうのが問われたのが今度の問題であり、この建築基準法及び建築士法の改正だろう、かように思います。

 そこで、大臣に、先ほど、今回の改正はすべての対応ではない、鋭意この夏に議論を進めて、次の改正で本格的な対応をすると御答弁になってまいりました。そうなりますと、それでは、今回の耐震偽装が提起します建築確認制度の問題点の全体像、それをどう認識しておられるのかというのは大変重要なことだろうと思います。

 この問題点を、今回の改正では、その中で今回はこれ、次回はこういう本質問題についてこういう項目でやるという、やはりシナリオが今あってしかるべきだと私は思います。これは大変重要な質問だと思うんです。また夏になって、臨時国会になって、まあ忙しゅうございましたと、それでまた対症療法的な制度を出されちゃ困るんです。とりあえずの対症療法的な一つの改正案を出されたこの機に、次の臨時国会も含めた、全体像を踏まえた改正案というものをどうイメージしておられるか、私は大変重要な問題だと。

 これは議事録に載りますから、次、これをもとに私も秋の臨時国会には臨みたいと思いますので、どういう問題認識を全体として持っておられ、今回の改正ではここ、次回にはこのように積み残したというところをはっきり御説明を大臣にいただきたい、かように私は思います。

北側国務大臣 今回の問題につきましては、私は、大きくは三つのところで問題があったというふうに考えております。

 まず第一には、これは、業務独占をしている一級建築士が故意で構造設計を偽装する、このようなことを行ったわけでございまして、姉歯元建築士だけではなくて、姉歯元建築士は下請でしたから、元請の設計士もその偽装を見逃してしまったということでございます。

 建物の建築設計を行う側、建物をつくり出す側、これはもう建築主も含めてです。一義的には、建物の安全性の問題というのは一番基本的なところでございますから、建物をつくり出す設計士であったり、施工者であったり、そしてそもそも建築主であったり、そういう建築側が責任を負うのは当然の話でございまして、そこのところに今回このような事案が発生したということは、極めて遺憾なことと言わざるを得ない。そこにはやはり制度としての問題点があると考えます。

 二番目に、建築確認の問題です。行政の側が、特定行政庁であれ指定確認検査機関であれ、偽装された建築確認申請を見抜けなかったというわけでございまして、それぞれ見抜けなかった原因というのはさまざま、多様でございますけれども、結果として見抜けなかったということについて、これまた建築確認制度そのものにやはり問題点があるというふうに考えております。

 三点目に、これは、消費者、住宅取得者の利益を保護するという観点から、例えば瑕疵担保責任制度というのがあるわけでございますけれども、現実にそれが実行できないと意味がないわけですね。売り主が、建築主が倒産をしてしまったら瑕疵担保責任も追及できないわけでございます。そういう意味で、消費者、住宅取得者の利益をいかに保護していけるのか。これは、一生に一度の買い物である住宅取得ということを考えたときに、その重要性は大変高いものがあるわけでございまして、そこにもやはり不十分な点がある。

 大きくこの三つの問題点があるのではないかというふうに私は考えております。

 現在審査をしていただいているところでは、例えば、一定規模以上の建築物につきましては、特定行政庁や指定確認検査機関だけではなくて、指定構造計算適合性判定機関、専門家等による構造計算適合性判定の義務づけをしていく、ピアチェック制度を導入させていただくだとか、また、三階建て以上の共同住宅については中間検査の義務づけをするだとか、また、特定行政庁の指定確認検査機関に対する指導監督の強化を制度化するなど、建築確認検査の厳格化をさせていただいているところでございます。

 また、情報開示という観点から、保険加入の有無、また保険加入をしている場合はその内容、そうしたことを売り主、宅建業者等にきちんと告知をする義務も義務づけをさせていただいているところでございます。

 こうした今国会での制度改正だけではなくて、残された課題といたしまして、先ほど来議論されておりました建築士の問題、専門分野別の建築士制度の導入など、建築士制度に係る課題や、また、そもそも構造専門の確認検査員の養成方法をどうしていくのかというような問題だとか、さらには、建築士について団体への加入を義務づけしていくべきなのかどうか、そうした課題については、残された課題ということでございます。さらに、住宅の売り主の瑕疵担保責任の問題でございますけれども、保険制度の義務づけの是非については、今まさしく検討をさせていただいております。

 こうした残された課題につきまして、この夏までに取りまとめをさせていただいて、次の国会にぜひ提案をさせていただきたいというふうに考えているところでございます。

古賀(一)委員 大臣なりの三点の整理というのは、私ももっともなことだろうと思います。

 しかしながら、この背後には、建築行政、とりわけ建築確認行政を最終的に制度設計していく国土交通省の建築行政のいわば失念というか怠慢というか、視点の欠如というものがあったように私は思います。きょう、私はそれを中心に質問をしていきたいと思っております。

 大きい流れを総合すれば、大臣のような分類もありますけれども、私なりに、今回の事件に至る現象を総括するならば、こういうことじゃないかと思うんですね。

 当初は、昭和二十五年当時、理想を持ちながらも、時代の制約でとりあえずの制度で発足をせざるを得なかった建築士制度が、その後、世相に流されたというか、忙し過ぎて、もうほかの法制度整備できゅうきゅうとする中で、建築士のあるべき姿というものが追われなくなって、結果として、しなやかで強い、いわゆるスピリッツというかモラル高い建築士制度に発展し得なかった。

 こういう現象が一方にあり、また、建築確認行政の方も、どちらかというと計算技術過信の世界に私ははまり込んでいったのではないかと。後ほど申し上げますけれども、建築主事が簡単な計算方法のルート三がわからないという現状は、もうあるわけですよ。そういうふうに、いわゆる建築確認行政が複雑、あるいはコンピューター化、計算化していって、置いてきぼりを食らった、こういう建築確認行政の側の実態がある。

 一方、これまた後ほど時間があったら申し上げますけれども、建築物の、とりわけマンションの供給側にも、新規マンション業者の参入は大変簡単であります。そういう供給体制が広がってきて、モラルなき者が横行してきたという供給側の問題があり、そして最後に、これはちょっと広過ぎるかもしれませんけれども、国民サイドにも、広さと価格、見ばえがいいものがいいというような、そういう価値観というのがやはり広がっていったと思うんですよ。やはり、百年、あるいはマンション管理組合を通じて長く維持するのがこれからの住宅のあり方なんだというキャンペーンを、国土交通省自身が私はしていないと思う。

 昔も、マンション建替え円滑化法のときも、扇大臣に質問したときに、マンションの寿命は三十年とおっしゃったから、とんでもないと私は申し上げたことがある。国土交通行政、住宅行政の中で、やはり仮住まいの思想で、まあ建物は二十年、マンションだって三十年で寿命おしまいよという雰囲気がずっとあったんですね。そういう住宅の価値観も含めて、国土交通行政というものが、とりわけ住宅行政がこれを放置していた。

 こういう四つの流れがずっと合わさってきたときに今のような問題が起こったわけでありまして、私は先ほどの大臣の三点の整理はそれなりに正しいと思いますけれども、今言ったような広いところまで含めて、私は、今回の夏の改正に臨んでいただきたい、かように思います。

 要は、総括的なシステムを構築すべきであります。その中で一番重要なのは、やはりプレーヤーであります。建築主事、指定検査機関の担当者等のプレーヤーでありまして、この人間がしっかりしない限り、幾ら法制度を複雑にしても、計算方法を高度化しても、この問題は結果として何の解決にもならないと私は断言せざるを得ません。このことを強くここで指摘しておきまして、夏の改正、どういうものになるかを注視させていただきたいと思います。

 それでは次に、ちょっと順番を変えまして、今回の改正の本質の部分をまず先にお聞きしたいと思うんです。構造計算適合性判定の実効性について、ここで、住宅局長からのしっかりとした説明を求めたいと思います。

 今回の改正の要点は、従来の確認検査機関のほかに、都道府県知事が構造計算適合性判定機関をつくる、そして、計算結果をチェックして、確認制度を厳格、強化すること、これが一つの大きな柱であります。もう一つは、建築士の名義貸しや虚偽証明あるいは宅建取引業者の違法行為への罰則強化、大体こんなところが大きい柱ではないかと思うんです。

 いわば建築確認機関をふやして罰則を強化する、これが柱ではないかと思いますけれども、こういう対応で、先ほど申し上げましたような今までのこの建築確認五十五年の結果から見て、今度の体制は本質をついているのかというのを大変疑問に思うし、参考人の中からもそういう意見もあったと思います。構造適合性判定制度というものがどうして今度のこの事件の解決策の第一番目の柱になるのか、まだ私は理解できません。この点、御説明をいただきたいと思います。

山本政府参考人 いろいろな制度を改革しましても、制度を運用するプレーヤーの資質をきちんと向上するのでなければ、その的確な運用は確保できないわけでございまして、大変大事な御指摘をいただいたと思っております。

 今回の偽装物件の偽装の内容をつぶさに見てみますと、単純にデータを差しかえるということを行ったものだけでなくて、コンピューターの計算途上の数値をごまかしたり、出力結果の一部を巧妙に修正するといったようなものまで、非常に多様といいますか多岐にわたっております。そのほか、偽装とまでは言えないけれども、コンピューターへのデータの入力が不適切だといったようなものまであるわけでございます。

 これらの偽装の中で、単純に差しかえを行ったもの、そういったものにつきましては、建築確認のときに主事とか資格者が厳格に的確に審査をしていれば、見抜くことが可能だったと考えられるわけでございます。その観点から、今回の改正案では、確認審査についての指針を国土交通大臣が定める、この指針に従って審査をすることを義務づけております。

 一方、出力結果の一部を巧妙に修正いたしましたり、構造計算の過程などの詳細な審査あるいは再計算まで行わなければ偽装を見抜くことができなかったようなものがあるわけでございまして、今回の改正案は、この部分に着目しまして、高度な構造計算を要する一定規模以上の建築物に対しては、御指摘いただきました構造計算適合性判定を義務づけることとしたわけでございます。

 この部分の構造計算適合性判定でございますけれども、具体的には、大臣認定プログラムを用いて構造計算書を作成した建築物につきましては、建築確認申請時に入力データもあわせて提出していただきまして、指定構造計算適合性判定機関において入力方法等を審査した上で再入力、再計算を行うことで、今回のような偽装事件の再発を防止することができると思っております。

 また、大臣認定プログラムを用いないで構造計算書を作成した建築物につきましても、指定構造計算適合性判定機関におきまして、建築についての構造についての専門的な知識、技術を有する構造計算適合性判定員が、計算方法、計算過程などの詳細な審査を行うこととしているために、偽装やミスを発見することができると考えております。

 そのほかに、今回の改正におきましては、建築分科会の中間報告を踏まえまして、建築構造技術者団体の協力を得まして、構造計算書が適切に作成され、偽装の防止に資することを目的とした、構造計算書の中身、内容についてのガイドラインを作成すること、それから、建築主事、確認検査員を対象とした当該ガイドラインの内容についての研修を実施すること、そういったような措置を講じてまいりたいと考えております。

 さらに、指定確認検査機関の業務の適正化を図るために、特定行政庁による指導監督の強化、それから、特定行政庁が指定確認検査機関の不適当な行為を発見した場合の指定権者への報告などの措置を講ずることとしておりまして、こういった措置を講じて的確な審査の実施体制の整備に努めてまいりたいと考えております。

古賀(一)委員 私は、最初に申し上げましたように、この問題は大変根が深いと思うんです。

 もう一回くどいようですけれども申し上げますと、今回のこの事件がこれだけ出た背景は、まずは、とりわけ木村建設あるいはヒューザー、いずれも新興マンション分譲を専業とする業者なんですね。これは新規参入が割と簡単です。こういう会社は、ことし二十棟つくった、もうたくさんつくったから来年は仕事しなくていいということにならないんです。去年よりも余計つくらないといけない。それじゃないと、自転車がとまってばたっと倒れるようなものでありまして、無理してでもマンションをつくり続け、売り続けていかないと結局倒れてしまうような、いわゆる新興のマンション専業の業者というものが起こしたんです。

 私は、やはりそういう専門業者はそうならざるを得ないと思いますよ。そういうふうに、あの建築士という士が、元請であろうが構造計算であろうが、これほどみっともない仕事に携わってきたのは、結局、やはりお金の流れだと思うんですよね。施主から元請へ、あるいは、意匠設計士から、下請である、下で使われる構造設計士へと、そういう金の流れが厳然とあるところにこの事件もまた起こったわけでありまして、もっとわかりやすく言うならこういう構造ですよ。

 マンションを企画する人は、もう今や、いいマンションを、安全なマンションをつくるよりも、売れるマンションをつくらなければならぬというシステムになっているわけです。構造設計者は、自分の使命感、誇りというようなことよりも、安く上げろ、早く上げろという圧力に負ける構造がもうあるんです。現場監督も、発見しても、こんなことで一々指摘して工期がおくれたら自分にはね返ってくるということで見て見ぬふりをする、もうそういう価値観の中に組み込まれているんですね。

 私は、そういう中にこの問題が、建築士あるいは確認機関、これだけのプロがかかわっておりながら、無知な老人が何かの詐欺にかかったわけじゃないんです。これだけの大きな買い物について、これだけの専門家が何層にも関係しながらこの事件が起こったというのは、今言ったような大きい構造があるわけでありまして、私は、そういう意味では、今のような検査機関をふやす、研修をやるということで済まない問題で、民主党が提案をした保険制度を組み込むとか、いろいろな逆方向のもっと力強いシステムを組み込んでいかないと、今度、ほとぼりが冷めればまた同じ問題が起こるように思えてしようがありません。

 この点、大臣、今の私の構造的な指摘について、この夏の改正に向けてしっかりと受けとめるお気持ちがあるかどうか、ひとつお答えをいただきたいと思います。

北側国務大臣 まず建築設計士の問題でございますけれども、それ自体が専門分化しているという問題もありますし、そういう意味で責任の所在が明らかでないという問題もあります。それと、そもそも、多くの建築士の方々の身分といいますか、そういうのがきちんと保障されていないといいますか、そういう問題もあります。

 建築士の報酬の問題も、建築士の方々が誇りを持って安全性のあるいい建物を設計していただく、そういう公共的な使命を担っているわけでございますので、そうした使命を果たしていただくためにも、私は、そういう意味では独立性を担保していくことが必要でございますし、独立性を担保していくためには、その身分について今のままでいいとは考えておりません。やはりきちんとそれなりの保障がされるように、施工者や建築主に対しても言うべきことはきちんと言える、そういうふうな建築設計者の制度というものを構築していく必要があるというふうに思っております。

 もう一つは、チェックする側の建築主事や民間の指定検査機関の検査員の方々のやはり能力の向上、育成というものもしっかり力を入れていく必要があるというふうに考えております。制度がやはりきちんと機能していくためには、委員から御指摘のあったとおり、そうした人の問題というのは最も大事なことでございまして、そこのところにもしっかり焦点を当てた見直し作業をさせていただきたいと考えております。

古賀(一)委員 それでは、次の質問に移りたいと思います。

 資質の問題が今ございました。その一環として、一番重要なのは、現在の建築主事の資質、あるいは数を含む体制だろうと私は思います。やはりここが依然としてこれからの中核の部分です。だから、ここがこければ、幾らいろいろな検査機関をほかに周りに配置しても責任があいまいになるだけでありまして、やはり建築主事の資質、能力そして体制というものが一番今回問われなければならぬ問題だろうと思っております。

 それで、せんだってといいますか、昨年でありますけれども、最高裁の決定及び横浜地裁の決定で、民間の指定確認検査機関の確認事務は地方自治体の事務であるということで、幾ら検査機関は民間として設置しても、それはやはり法的には特定行政機関の地方自治体の責任ですよといういわば決定が相次いで出たわけであります。

 これについては、何か国土交通省としては意見といいますか、この司法判断に対して異議があるんでしょうか。

山本政府参考人 御指摘いただきましたのは、民間確認機関が行った確認検査に問題があった場合に、それについての損害を賠償する訴訟の相手方に、当該建築確認が行われる、本来であれば建築主事が行ったとした場合の特定行政庁に被告適格があるかどうかということについての最高裁の小法廷の決定でございます。

 これは、今の建築基準法の体系、その中における建築確認の事務、建築主事と民間確認機関の仕事の役割分担、それを前提にしますと、小法廷の決定はやむを得ないものと私どもは受けとめております。

古賀(一)委員 そうなりますと、今度の判定機関をつくっても同じことです。やはり幾ら周りに検査機関を二重三重に張りめぐらしても、結果としてはそれは地方自治体の責任を問われるんですよ、こういう話になるんですから、今言ったように、建築主事及び特定行政庁の体制及び資質というものは極めて重要だということになるんですけれども、今の建築確認体制、特定行政庁で、建築主事が全国で千七百九十五名、監視員千五百五十一名。何と確認件数は三十三万三千六百六十五件、主事一人当たりでいえば年間百八十六件。中間検査は非常に少のうございますけれども、完了検査もこの上に二十四万件ございまして、これも建築主事一人当たり年間百三十四件。

 確認検査機関もまた同様の、大変重い、数の多い任務を担っております。全国で百二十四機関でございまして、建築確認がざっと四十二万、完了検査が三十万強。そして、一つの事例を見ますと、民間のトップを走っております日本ERIは、何と一社だけで建築確認件数が四万四千六百七十五件とこの資料に書いてあります。何と一人当たり年間三百八十五件。常識的には百件が限度ではないかと言われるのに、このERIでは、その四倍近い年間三百八十四件の検査を行っているという計算になる。

 こういうことで、大変無理をしているというか、体制が伴っていない。資質の問題もありますけれども、まずこの体制を今後どうされる予定でしょうか、どう現状を認識してあるんでしょうか。そしてまた、ついでに、二〇〇〇年以来、民間開放後、建築確認行政の組織、人員の削減はどういうふうに推移してきたのでしょうか。御説明をいただきたいと思います。

山本政府参考人 阪神・淡路大震災の経験を教訓としまして、平成十年に建築基準法を改正して建築確認検査を民間開放したわけでございますけれども、その前提としまして、建築物が大規模化、高度化する中で、今も御指摘いただきましたように、建築確認とか検査などの実施体制が行政では十分に確保できないという状況を踏まえまして、官民の役割分担を改めて見直した上で、的確で効率的な執行体制を創出するという観点から、これまで建築主事だけが行ってまいりました建築基準関係規定への建築計画の適合性を審査する確認検査事務につきまして、新たに、必要な審査能力を有する公正中立な民間機関も行うことができるものとしたものでございます。

 今、平成十六年の断面の数字を委員の方から御紹介いただきましたけれども、実は出発点の平成十年で見ますと、十年の建築確認の件数は八十三万件余りでございます。そのときの主事の数は千八百五十四でございます。それが今、若干確認件数が減っておりまして七十五万件余でございますが、建築主事の数が千七百九十五、確認検査員、民間の検査員の方が千九十ということで、合わせますと二千八百八十五。

 これだけの人数で確認検査をやってきているわけでございまして、建築行政の入り口の建築確認検査事務につきましては、執行体制が整備されてきているというふうに考えております。この結果、本来、建築行政の舞台でなければできない、行政庁でなければできないような、いろいろな違反対策などの仕事に重点を置けるようになったという評価をまずしております。

 その上で、問題意識を持っておりますのは、実は、この民間開放を行ったということを契機として、公共団体において、地方行革の流れもございますものですから、建築行政職員の定数を削減する地方公共団体も出てきているわけです。我が国全体のトータルで見ますと、さっき言いました平成十年が千八百五十四人ですが、十五年度末の千九百五人、これがピークです。それからまた若干減ってきていまして、ことしの四月一日現在で千八百二十五人、こうなっております。

 私どもとしては、民間開放の趣旨が先ほど申し上げましたところにあるわけですので、ぜひ特定行政庁においては、きちんとした建築行政の体制整備、充実を図っていただいて、本来きちんとやらなきゃいかぬことを遺漏のないようにきちんとやっていただく、間違いのないようにしてくださいというお願いをしてきたところでございます。

 それは員数の関係でございますけれども、主事の能力の向上につきましても、今度の基準法改正に限らず、改正ごとに講習会を開催しましたり、あるいは特定行政庁と指定確認検査機関が日本建築行政会議という組織を設けておりますので、こういう建築行政会議との連携に努めて、資質の向上に努力しているところでございます。

 今御指摘いただいた非常に大事な部分については、さらに社会資本整備審議会の中間報告でも、特定行政庁において審査体制を強化するための専門の職員の増員でございますとか、構造専門の確認検査員の資格要件、養成方法について、さらにきちんと検討して方針をまとめるべきだと言っていただいていますので、その結果を踏まえて所要の見直しを行っていきたいと考えております。

古賀(一)委員 一人当たりの件数から見れば横ばいというか、件数も減って人数も減っている、さほど危機的状況はないようにも聞こえましたけれども、団塊の世代が来年から都道府県、市町村から大量にやめていく、それで当然、今まで世代別で見れば割と膨らんでおった建築主事の数も、今後は減っていくスピードはアップしていくと私は思うんですよ。

 それとともに、現実、今度の事件が起こって、自治体が相当の見逃しをやっていた。そして、その後の対応強化について、これは五月十七日の読売新聞なんですけれども、建築確認審査事務を行う二百七十六自治体のうち約六割、半数を優に超えておるわけですが、この六割に当たる百六十五の自治体が審査担当職員の増員などの対応策を講じた、あるいは追われたと。結果としては、実は現場では今度の事件を機に、人手が足りない、対応できない、外部に委託をする、計算ソフトを初めて買う、そんな騒ぎがあちこちで起こっている、それが実態だと思うんです。やはり体制は全然十分ではないんです。悲鳴が聞こえると言っても過言ではない。

 私は、先ほど言いましたように、何といっても、今度の判定機関であるとか民間検査機関の制度をつくった、だから対応をしたんだと言いたげでありますけれども、先ほどの言葉じゃありませんけれども、それがアリバイじゃなくて設計偽装を防止していく本当の機能になるような、その本質をついたところ、それをやはり目指さなきゃならぬ。それは、私は、建築主事の数であり体制であり能力だと思いますので、その点については、今後、予算措置も含めてしっかりと、アリバイづくりじゃない、実効性ある、そういう制度の構築という面で見守ってまいりたい、かように思います。

 時間も迫ってきましたので、建築主事のほかに、もっといろいろ問題があります。

 次に、ちょっと指摘しておきたいのは、耐震強度の計算方式の問題でございます。

 今度、計算方式が大変問題になったのでありますけれども、そして、それに対応する審査体制というのも、能力というのも問題になったんですけれども、今回の改正でこれはどういうふうに対応をされたのでありましょうか。局長、お願いします。

山本政府参考人 建築基準法における耐震基準の考え方、耐震基準の考え方に沿って構造安全性を検証する方法として施行令で定めておりますが、この枠組みは今回の改正で変更する考えはございません。

古賀(一)委員 それでは、これは積み残された問題として、今後、夏の改正へ向けてどういう方向でお考えでしょうか。

山本政府参考人 先ほども申し上げましたように、耐震基準とかその基準に基づく構造安全性を検証する方法自体については、法令で定めている定め方を変更する方針はないと申し上げましたけれども、ただ、実際の事務手続において、一番大きいのは、先ほど言いました構造審査の厳格化のために第三者判定機関を導入して審査を厳格化するということがございますし、そういったことは、当然、今回のお願いしております改正案のポイントでございます。ですから、その部分は第二弾に先送っているわけではございません。

 ですから、一番肝心な審査の厳格化については、法令で定めております検証方法それぞれについて的確に審査をしていく、厳格に審査していく、今回の法律改正をもって、これを契機にきちんとやっていくということでございます。

古賀(一)委員 ちょっと現状を申し上げますと、これは私は大変な問題だと思うんですよ。

 法改正としては考えていない、今回も次回もと。そうなりますと、予算措置なのかあるいは資格制度なのか、いろいろな手だてで、現在ある能力、実際の能力と、表向きの体制、建前と、ここに大変大きなギャップがあるというのが今回の事件で私は証明されたと思うんですよ。これを何らかの政策として、法律じゃないかもしれない、施行令じゃないかもしれないけれども、埋めていく対策がなければ、私はまた同じようなことが起こると思うんです。

 具体的に申し上げますと、今、計算方法はこうなっておるんですね。簡単な方法という計算方法がございまして、これが、ルート一、ルート二、ルート三というのがあるんです。それで、ルート一というのは許容応力度計算ということで、大抵の人というか全員できる。

 ただ、簡単な方法のルート三が保有水平耐力という計算方法でございまして、これを実は姉歯さんは駆使をしてきたんですね。これが、簡単な計算方法だから、私は当然、建築主事とかだれでも、簡単な方法のルート三だから的確にみんな把握していると理解をしておったわけでありますけれども、何と、専門家に聞きますと、これもわからない。建築主事でこれを理解できない人がたくさんいるというのが実は現状なんです。

 ましてや、高度な方法というのがあるんですけれども、これはもう本当のプロの世界でありますから、プロがプロをチェックするということで、これはいいとして、中間的な方法の一として指定をされておる限界耐力計算になりますと、もうからっきしわからない、てんで対応できない。これが現状なんです。

 私は、こういう大きい大きいギャップがこの建築確認の一番重要な部分で存在をしていると。しかも、コンピューターでやりますから、もうブラックボックス化しているわけですよ。能力的な真空地帯、システムとしてはコンピューターを使ったブラックボックス、ここに実は今度の問題の本質の一つがあるわけであります。

 これは、法制度の問題であるかどうかというのは、確かにおっしゃるとおりなんです。人に言わせれば、法律で計算方法を建築士にがちがち縛るのがおかしいという説もある。しかし、この問題については、いずれにしろ今度新しい判定機関をつくるわけですから、皆さんは、新しいチェック機関をつくりました、政府としては対応しましたと言うでしょうけれども、今のところが対応できなければ、真空地帯とブラックボックスは残るわけですよ。それで、またやっちゃったと必ずなりますよ。

 そういう意味で、この部分も、夏へ向けては法制度の改正が皆さんの最大のテーマでしょうけれども、この技術的な部分、これは本当にどう盛っていったらいいのかというところを、専門家の意見を聞いてしっかりと原因を洗い出し、対策を、予算なのか、あるいは研修なのか、新しい資格なのか、それは今言いませんけれども、対応をしていただきたいと私は思います。

 ところで、構造計算の判定士みたいな新しい資格制度を、今回、これから国家資格として創設しようというお考えはないんでしょうか。

山本政府参考人 今回お願いしております改正案の中の中核部分が、高度な構造計算を要する一定規模以上の建築物について、指定構造計算適合性判定機関による厳格な構造審査をやるということでございます。ですから、今、詳細に計算方法を御指摘いただきましたけれども、例えば、指摘していただいた限界耐力計算による構造計算をやったものはすべてこの指定判定機関の厳重な審査にかかるということでございます。

 その際の、判定機関で判定をする資格者の問題でございますが、新たに国家資格を設ける考えはございません。高等教育機関で研究をしてきた方、教授とか助教授とか、これは地方の研究機関も含めまして、そういう専門家でございますとか、長い間構造計算に従事してきた専門家でございますとか、そういった方々を判定員として選任いたしまして、厳重な審査をやっていただこうとするものでございます。

古賀(一)委員 もう最後になろうかと思いますけれども、最後にちょっと問題提起として、大臣にもしっかり申しておきたいことがございます。

 これまで問題になったのは全部新築マンションだったわけですね。ところが、これまでいろいろな、都市計画法、あるいは住宅、例のこの前の基本法ですね。そうそう、住生活基本法。ちょっとあの法案の名前を、私は反対でしたから。住生活基本法、こういう法律がずっと出てくる中で、常に中古の住宅というものがこれから問題になる。実際、問題になってきている。これからは中古マンションというものが流通する、こういうことになろうと私は思うんですよ、今よりもはるかに重要な意味を持って。

 ところが、この中古マンションについては、今、このマンションが築幾らで、だれが建てて、どの程度の危険性があるというようなものは買う者にとって全くわからない状況で放置をされておるわけでありまして、これから中古マンションが流通し、拡大していくときに、私は、この問題はまた別の形で、中古マンションの耐震設計問題というかそういうものが出てきそうな気もするわけであります。

 これはきょう質問しませんけれども、一つ重要な課題として、新築マンションの対応だけじゃない、中古マンションのそういう耐震あるいは強度、もっと言うならば、マンションの管理組合を今後どう維持管理にかませ、しっかりとした情報を把握させ、そして購入者に伝えていくかという問題が大きい問題になるであろうし、それをまた視野に入れた耐震偽装設計の後始末というか対応を私は考えてもらいたい、こう指摘を申し上げまして、質疑は終わりたいと思います。

 御清聴ありがとうございました。

林委員長 土肥隆一君。

土肥委員 民主党の土肥隆一です。

 私は、どうしても聞いておかなければならない問題をずっと抱えておりまして、きょう、それを取り上げさせていただくわけでございます。

 資料が回っていると思いますけれども、配っていただいておりますか。それは、ことしの一月八日に長崎県の大村市で、認知症高齢者のグループホームが焼失いたしました。あれからもう半年がたとうとしておりますけれども、そのときの新聞記事などは割に詳細に報告をしておりますけれども、その後、何の音さたもなく、焼け跡も相当長い間ほったらかしにしておいて、やっとグループホーム関係者が一級建築士をよこしてその建物の調査をいたしましたら、いろいろな問題が出てきたということも報告されているわけでございます。

 今、マンションだアパートだといって、あるいは高層建築の耐震構造の偽装問題に端を発しまして、今日まで審議をしてきたわけでございます。しかし、どうでしょうか。低階層の、つまり一階建て、二階建ての建物の、それもいろいろな種類の建物がございますけれども、いわゆる建築基準法というのは、私に言わせれば少し、少しどころか、まあまあ軽く考えられているわけでございまして、一般住宅についてそうやかましく建築基準法を適用するというのも、最低限のものはあったにしても、例えばこの痴呆高齢者のグループホームなどについても、割に緩やかな建築基準が採用されているように思うのでございます。

 私がきょう質問をあえていたしますのは、これに、あの姉歯事件から出発しました有名な総研、正式には総合経営研究所、総研と申しますけれども、その内河健社長が絡んでいるわけでございます。彼だけ今刑務所に入っていないんですね。あとは全部ほうり込まれました。我々委員会も、刑事事件あるいは詐欺事件、いろいろなものがございましょうけれども、何となく一件落着でございまして、あとは一級建築士のあり方やその他の規制についていろいろと今議論しているわけでございます。

 しかし、一般建築あるいはこうした低階層の建築物についての建築基準法上の扱いを見ますと、割にさっぱりとしているわけですね。しかも、建築確認も完成後の検査もすんなり何の問題もなく通っているようでございまして、ことし一月八日に起こりました「やすらぎの里さくら館」というのも、実は内河社長も絡んでいるわけです。そして、例の熊本の木村建設、これも絡んでいるわけでございまして、何と長崎県の大村市まで総研の手が伸びているということが明らかになっているわけであります。これはもう新聞報道でも出ていることであります。

 ちょっとだけ資料のナンバー一を見てほしいんですけれども、これが「さくら館」です。火元は一番上の、北側の、ソファーが置いてあるところから火が出まして、そして、東側に一、二、西側に五、六と個室がありまして、四人はこの部屋で焼死していらっしゃるわけですね。どなたかわからないけれども、火元のところに一名焼死体があったわけでございます。そして、南の方の三、四、八、九にいらっしゃった方、これは午前二時ごろでございますから、担ぎ出しました。消防車はこの南から入りますからね。七の方はどうなったか、具体的な調査が出ておりませんからわからないんですけれども、いずれにしても、北側の四人と火元の人が、六十九歳の女性ですけれども、亡くなられて、あと残された三、四、九、八、七の中から四名搬出するのでありますけれども、既に二名は亡くなっておられて、二名が生き残ったという事件でございました。

 よく調べますと、ほとんどグループホームというのはこんな形でございまして、ほぼ構造上は何の問題もないのでございます。

 これはだれがつくったかということを私なりに分析しますと、次のナンバー二でございますけれども、一番上が建築主ですね、有限会社はるる代表取締役、西村綾美と申し上げましょうか。実は、「さくら館」が燃えたときの宿直をしておりました職員は、この施設の施設長で渕綾美といいまして、同一人物だろうというふうに私は思うわけでございます。あるいはだんなさんかもわからない。でも、綾美という名前が、これは女性の名前ですし、当日宿直をしていた施設長であっただろうと思います。恐らくこの西村綾美か渕綾美さんが土地か何か持っておられたんだろうと思いますが、はるるという有限会社をつくって、グループホームをつくろうと考えたのでございます。

 その二番以下、代理者から三、四、五、六、これが同一人物でございまして、工事施工者は矢野という名前になっておりますけれども、しかし、一級建築士であります森山浩一郎もこの矢野地建株式会社の社員でございまして、まあ雇われ一級建築士。二番目に代理者となっておりますけれども、この代理者が、西村綾美か渕綾美かわかりませんけれども、その代理になりまして、設計、そして工事監理、工事施工、これを全部一人でやったんだろうというふうに思います。

 三番目の資料を見てもらいますと、矢野地建株式会社ですけれども、この会社がつくったグループホームがここに一から五まで出ております。これは国土交通省でとっていただいた資料でございますけれども、確認済証交付日が、平成十五年の五月、その次は八月、その次は十月、その次は十一月、そして翌年の四月と、どんどんどんどんグループホームをつくってきて、全部、設計、施工、工事監理業務をやるわけですね。ここに非常に重大な問題を含んでいるんだろうと私は思います。

 そのことを言うためには、やはり総研の内河社長のこの長崎県地方での活動を見てまいりますと、彼は長崎にやってまいりまして、そして、グループホームというのは、彼の言葉を引用するならば、特需だと。これは軍事特需だとかいう言葉がございますけれども、このグループホーム、介護保険法が二〇〇〇年に施行されて、そしてグループホームがつくられていくわけです。その前からもちろんあったわけでありますけれども、新規につくられていきまして、法人格さえあればだれでも介護保険に参加できますし、グループホームもだれでもできるよと、いわば一種の福祉上の大規制緩和が行われるわけですね。今、老人福祉、そして在宅福祉の分野では、まさに、社会福祉法人の独占企業じゃございませんで、どなたでも、有限会社でも、法人格を持ったらこの事業を始めることができるわけであります。

 私の想像でいきますと、矢野地建は土地持ちの人たちに、グループホームをやりなさいよ、全部面倒見てあげるからと言って、こうやって注文をとってまいったと思います。内河社長の話によると、特需だというようなこと、それから安上がり商法であるというふうにも新聞で報道されておりまして、グループホームの建設を大いにやりなさいと言って、自分の関係する事業者などを呼びまして、セミナーなども行って、グループホームをどんどんどんどんつくっていくわけです。長崎県がいわば日本一、六十五歳以上の対象年齢人口比の施設の割合は日本一でございまして、すさまじい勢いでグループホームがつくられている。

 私は、そうした建設を進めていく過程とともに、まじめにグループホームを今までやってきた人たちに対して、いろいろな問題点を投げかけているというふうに思うんです。それは、一つは建築上の問題点。これが建築基準法で最も低い規制になっておりまして、だれでもつくれるような施設になっておりますから、それはそれでいいんでありますけれども、では今度、消防庁さんに後でお聞きしますけれども、やはりああいう事件が起きると、消防というところに力点を置きますと、今八千カ所からありますグループホームが消防庁の規制に縛られてどうなるんだろうか。

 グループホームというのは一体何を資源として生きているか、経営しているかといえば、本当に、利用者の家賃やら食費を取って、あとは介護保険法上の報酬を得て運営をしているわけでございまして、その人員にいたしましても、あるいは経営にいたしましても、言ってみれば自分の家を開放して、そして自分の家が三室、五室、まあ三室では無理ですね、五室から九室必要なんですけれども、最低限五つの部屋があればグループホームを開くことができるわけですね。そして、自分でしっかりお世話をしながら頑張っているグループホームの設置者にとっては、過度な規制をかけるということは、いわばこの事業から撤退するということにもなるんじゃないかと思っております。

 そこで、国土交通省にお尋ねいたしますけれども、総研社長が提案しました建築工法についてでございます。

 何しろ、安上がり、短期間、そして投下資本を早目に回収するという目的でつくっておりますから、とんでもないことを考えているわけでございまして、その一つを申し上げますと、AAB工法というのを導入いたします。これは、鉄筋を組む場合に発泡スチロールで挟んで、その間に鉄筋を置いてコンクリートをそこに流し込む。普通は、コンパネを打って、後から外して、できぐあいも見ながら外装材、内装材をつけていくわけでありますけれども、ここはもうそれを省略していいわけですね。後は断熱材に使うんだというのであります。彼が言うには、アルバイトでもできる工法だ、こう言うわけでございます。私も施設をつくったことがありますけれども、コンパネ職人がちゃんと集まるというのは大変なことでございまして、それだけ人件費がかかるわけです。

 国土交通省にお尋ねしますけれども、このAAB工法というのは御承知でしょうか。これは、今の基準法からいって問題ないんでしょうか。

山本政府参考人 新聞の報道によりますと、AAB工法とは、木板などの型枠のかわりに発泡スチロールを内側と外側に立てまして、その間に鉄筋を立てて生コンクリートを流し込んで外壁をつくる工法で、固まった後も発泡スチロールは取り外さないでそのまま断熱材として活用するもので、カナダで地下構造物用に開発されたというふうに記されております。

 まず、鉄筋コンクリート造におきまして、型枠を取り外さずにそのまま活用する工法は特別な工法ではなくて行われております。特に、鋼板ですね、鉄鋼の板で型枠をつくりまして、それを取り外さないで床板に使う、そのまま床として使うというようなことは広く使われておりますけれども、発泡スチロールで行われるものが広く行われているかどうかは私どもは掌握しておりません。

 これの建築基準法上の取り扱いですけれども、建築基準法に関連しましては、一般的な構造規定で型枠を取り外さない工法が活用されております。したがって、国土交通省において、例えばこういう工法を構造方法についての認定をするといったようなことはしておりません。

 したがいまして、国土交通省としましては、この工法、AAB工法自体について、それ自体は基準法上問題があるとは考えておりませんけれども、今回の火災後の検証で指摘されておりますけれども、発泡スチロールの型枠の固定が十分でないために、いわゆるジャンカと称する不良施工が生じているという場合には、構造強度が不足するということで建築基準法に適合しない可能性がございます。それから、このことは他の鉄筋コンクリート造の工法と同様でございますが、コンクリートが密着に充てんされるように適切な施工が行われなきゃいかぬということを考えております。

土肥委員 そうすると、これを取り締まるというような方法はないわけですかね。

 矢野地建が建てました五つの建物も、恐らくAAB。これは何でAABかというと、アドバンスト、非常に進んだ、そしてオルタナティブ、取っかえ引っかえできる、あるいは今までやっていた型枠の代案として出した、そしてベターな、これがAABの訳なんでございまして、いかにも詐欺師が考えそうな名前でございますけれども。

 私は、やはり、少なくともこれは調査すべきだと思うんです。これが建築基準法上適切であるとするならば、ほかの部分に及ばないとはだれも言い切れないわけでありまして、少なくとも五つの矢野地建がやった工事について、ドリルで穴をあけて何工法であったかというようなことを、今さら可能じゃないかもしれませんけれども、やはり部分的にそういう何か内容物を引き抜くような方法で検査をすべきではないかと思いますが、そういうことはおやりにならないですか。

山本政府参考人 先ほど御紹介しましたように、例えば基準法に当該建築物が適合していないおそれがあるというふうに建築行政当局が判断しました場合には、基準法に基づいて調査を命じることもできます。

 したがいまして、本件、特にこの建築会社が施工いたしました「やすらぎの里さくら館」以外に四件ございますけれども、これについて、問題状況を整理した上で、建築主等に対しまして報告を聴取したり、実態を明らかにするための努力をするように長崎県当局と相談してまいりたいと思います。

土肥委員 総研はモジュール工法というのも提案しているようでございまして、これは一種の、壁材をブロックにいたしまして、外国で、タイなどで、内容物も含めて、言ってみればプレハブですね、それを運んできて積み上げれば一週間でできる。一週間で躯体が建ち上がるというようなことも言っているわけでございまして、どうか、国土交通省としては、こういう人たちがやっている従来工法ではなかった新しいやり方を絶えず目を光らせておくことが必要ではないかと思うのであります。

 ですから、建築部材あるいは建築のためのさまざまな工法についてやはり情報を収集していただかないと、短時間でだれでもができて、あっという間に建ってしまう。この「さくら館」は三カ月で建っているんですね。平米数は二百七十九・一平米でございます。これらの建物が三カ月で建つというのは驚くべきことでございまして、やはりこれは、二十四時間突貫工事でやったらできるのかもしれませんけれども、少なくとも私の経験では、半年はたたないと、九人という小規模のグループホームであれ、建て上がらないというふうに思うのでございます。

 もう一つ、消防庁の方にお聞きしたいんですけれども、結局、非常にいい報告書を出していただいておりまして、認知症高齢者グループホーム等における防火安全対策検討会の報告書がここにございます。平成十八年三月二十九日、総務省消防庁でございます。

 この資料をつぶさに見てまいりますと、痴呆高齢者のグループホームが今どういう状態にあるかというその調査は実によくできておりまして、私、大変参考になるのでございますけれども、しかし、この建物の火事の原因は何かというと、書いてないんです。調査中だということでございまして、どう考えてもライターしかないと。ライターの破片が残っていたようでありますけれども、普通、グループホームでたばこをのむことはありません。禁止をいたします。ですから、ライターやら灰皿があったというのはどうかなと思うのでありますけれども、しかし、この火事の原因はどうなっているんでしょうか。いつになったら特定できるんでしょうか。

 そして、私は、消防庁がおっしゃるには、警察と一緒になって調査しているから、警察も捜査中であるから、実はきょう警察庁も来てもらおうと思ったんですけれども、にべもなく、何も申し上げることはありませんというので、では来ないでよろしいとなっておりますが、消防庁と警察庁、一体どういう協議でこの調査を進めておられるのか。

 そして、これは刑事告発されますと、このグループホームの設置者が刑事責任を負うわけでございます。私は、恐らく全国の七千、八千ある老人ホーム、これはまた高齢者のみならず、知的障害者も身体障害者も、それから精神障害者もグループホームがあるわけでございまして、そこの設置者は震え上がるんじゃないかというふうにも思うのでございますが、一体この火事の本質的なところ、原因は何なんですか。

大石政府参考人 お答えいたします。

 今回の火災の原因でございますが、消防庁におきましては、火災発生後、この火災の重大性にかんがみまして、消防庁及び当時の独立行政法人消防研究所の職員を派遣しまして、地元消防本部と連携して火災原因調査に当たったわけでございます。火災現場では、建物の焼損状況や火元と見られる部分を中心として調査を実施いたしました。それから、独立行政法人消防研究所において燃焼実験もいたしたわけでございます。

 私ども、火災原因については、火災現場の状況それから燃焼実験の結果から、たばこによる失火も考えられるものの、その可能性は低く、ライターによる着火の可能性が高い、このように判断しているところでございます。

 それから、警察と行いました事情聴取でございますが、警察が中心になってもちろん行っているわけでございますが、その際に消防も立ち会いまして、宿直者からお話を聞いております。

 宿直者に対して火災の発生等の状況を聴取しましたところ、火災発見時には既に炎が天井まで達しておって、消火器で初期消火を試みたけれどもそれには失敗した、避難誘導するいとまもなく、それも実施しなかった、通報は、通りかかった車の運転手の携帯電話によって緊急通報をした、こういう状況でございます。

 私ども、今回の火災、自力で避難することが困難な方々が入所しているこのような施設で、一たん火災が起きてその初期消火に失敗すると大変な事態になるという大きな教訓をいただいたものと考えております。

土肥委員 ソファーに座っていた方がライターで火をつけたというような結論のようでございますけれども、ライターでどうやって火をつけたんでしょうかね。カーテンとかクッションとか、それからソファーそのものもございますけれども、それはわからないという形で、火をつけたその御当人も亡くなっておられますから、わからないわけでございますけれども。

 そして、私がもう一つ驚くのは、もうあっという間に燃えてしまうような耐火構造でございまして、この時間の速さ。一時間四十七分ぐらい、鎮圧というところまでいきますと二時間かかっていないわけでございまして、もう全く手がつけられない。「共用室居間から立ち上がった炎は、共用室の天井及び小屋裏へ延焼し、その後、時間を置かず共用室に面する各居室へ延焼拡大し、」先ほど言いましたように、北側の四室でございます。さらに、東側及び西側の通路から、縦に通路がございますけれども、南方向へ延焼して、この南側の部屋も全部焼けてしまったということでございます。

 こういう火の走りを考えた場合に、建築基準法では、間仕切り壁を火災に強い準耐火構造にしなさいと。間仕切り壁を小屋裏や天井裏に達するようにしなければならない。これが建築基準法施行令第百十四条第二項。

 つまり、これは何かというと、間仕切り壁が天井まで上がっていたのだろうかと。もうあっという間に火が走るというのは、上がっていなかったんじゃないかとか、あるいは、主要な通路の壁及び天井の仕上げというのは、東西二つ、縦に廊下があるわけですけれども、その壁材があっという間に燃えてしまうわけですけれども、長崎県の建築確認によると、何も問題は認められなかった、建築検査済証の交付のときだと思いますけれども、そういうふうに述べております。

 山本局長は建築の御専門でございますけれども、こういう火の走りが速いというのは、くだんの構造からいってどうなんだろうか。消防庁は、こういう火の走りで、この間仕切り壁を疑わなかったのかどうか。二者からお答えをいただきたいと思います。

山本政府参考人 今引用していただきましたように、建築基準法施行令で、防火上主要な間仕切り壁を火災に強い構造、準耐火構造でつくり、当該間仕切り壁を小屋裏や天井裏に達するようにしなければならないと求めておりますけれども、準耐火構造でつくりますと、四十五分間の耐火性能、つまり、発火してから四十五分間、避難する時間を確保できるような構造ということで、火災安全性を求めているわけでございます。

 今回、火災のありましたグループホームについてももちろんこの基準が適用されるわけでございまして、設計図書に照らして建築確認もやりました。それから、でき上がったところでも完了検査をやったわけでございまして、これを実施しました長崎県に問い合わせた限りでは、建築確認や完了検査の際、問題は認められなかったという報告を受けているところでございます。

土肥委員 これはやはり長崎県に出かけていって、どこまで見たんだというのを聞いてみないとわからないと思います。ただし、長崎県は、このグループホームについては全部地方行政庁が建築確認をやっているわけですね。ちなみに、兵庫県なんか、調べてもらいましたら二五%ぐらいしかやっていなくて、あとは民間確認機関がやっているということでございますから、これも厄介な話だと思うんですけれども。

 何しろ総研の手は沖縄から北海道まで伸びております。したがいまして、よほど腰を据えて目を光らせないと、こういうことがいわば特需的に、今もうけどきだ、一週間でも建つよというような言いっぷりと、それから、土地持ちに対して、全部やってあげるからグループホームをつくったらということでございます。

 先ほど消防庁と申しましたけれども、この四十五分間というのは、今回のこの火災を見て異常に速いんじゃないかなというふうにはお思いになりませんか。

大石政府参考人 お答えいたします。

 もとより構造上の問題はいろいろあったかと思いますが、消防法上、特に問題があるということは認識しておりません。

土肥委員 そこで、全国で、二〇〇五年度で七千六百四戸ある痴呆症高齢者グループホーム、やがてこれは一万戸になろうかという勢いでございます。

 これは一体どういう行政手法だろうかというふうに思うんです。グループホームというのは、そもそも何のためにつくったのか。そして、介護保険法が施行されまして、法人格さえあれば株式会社であろうとタクシー会社であろうと、土地を持っていて、建設資金、そうですね、この規模の建物を建てようと思ったら一億円はかかると思います、補助金は若干ありますけれども、一億円ぐらいかけてもいいよと。話によれば早く回収できるよというような話に乗る人が続々出てくる。そして、この業者のように、全部引き受けるからおやりなさいよというようなことになるわけでございます。

 その辺の、介護保険法を通したとき、私も厚生労働の委員でございまして介護保険法を審議したのでございますけれども、やや、もう今日に至ると、建築部分まで規制緩和が、介護保険法の負のイメージといいましょうかそういうものが出てくるわけでございますが、厚生労働省当局のお答えをいただきたいと思います。

御園政府参考人 認知症高齢者のグループホームでございますけれども、これはもう委員御存じのとおりでございますが、少人数の認知症高齢者が家庭的な環境の中で安定した生活を送っていただいて、認知症の周辺症状を抑えてその人らしい生活を取り戻してもらいたいということで導入をしたところでございます。

 いろいろな設置主体があるじゃないかというお話でございましたけれども、私ども、介護保険法を導入した際に、多様な主体が経営していただくことによって、サービスを受ける方の選択の幅を広げたいというようなこともございました。また、実態として、介護保険法を導入した際には、既にいろいろな設置主体が運営を始めておられましたので、そのような実態も踏まえて、従来ですと社会福祉施設は社会福祉法人なり医療法人なりという、設置主体が限定されていたわけですが、そういう限定を行わないことにしたわけでございます。

 ただ、介護保険法の制度創設以降、いろいろな主体が設置を行ってグループホームが急増しておる中で見ますと、御指摘のように、本来の目的を十分に認識しないまま運営をされて、私どもから見ても、一番大事な、入所された方に対するケアの質が十分でないというものがあることも認識しておりますので、今回、昨年改正した介護保険法、四月に施行しておりますけれども、その中で、地域密着型サービスというようなものも創設して、市町村がしっかり指導監督、指定をするというようなこと、あるいは、過剰な整備が進まないように、介護保険事業計画の中で必要利用定員総数を定めて、市町村が指定拒否をすることができるような仕組みも入れたり、あと、管理者等への研修なり運営推進会議といったようなことで、ケアの質が確保できるような対策を講じているところでございます。

土肥委員 高齢者のみならず障害者も、知的障害者や身体障害者、それから精神障害者もグループホームを持っているわけですよ。リスクからいえばもっと高いんです。そして、住んでいる住宅というのは、善意の方が貸してくださっている住宅であるとか、普通の住宅なんですね。普通の生活を目指すといいながら、さまざまなリスクを持っていて、火災というのも一つのリスクなんですね。そのほかに幾つものリスクがあるわけでございますけれども、今、障害者部分でのグループホームというのはどこまで来ているんでしょうか。

中村政府参考人 高齢者の認知症についてはただいま老健局の審議官から御答弁申し上げましたけれども、障害者のグループホーム、主として知的障害者の方々が、これまでは、従来ですと大規模な施設でお暮らしになっている、もっと地域に暮らし、そこから例えば働く場に通うという、ノーマライゼーション、普通の生活を地域で送る、こういう理念のもとでグループホームが発展してきております。

 障害者自立支援法では、十八年、ことしの十月以降大きく見直しをいたしますけれども、介護が必要な方を対象とするケアホームと介護が必要でない方を対象とするグループホームに分けるわけでございますが、いずれにしても、現在約三万人の方がグループホームやケアホーム、委員御指摘の普通の民家にお住みになったり、あるいは新設している場合もあるかと思いますが、そういったいわば小規模の居住施設にお住みになっております。平成二十三年度末、これは三年ごとに計画を立てるので、二期目の障害福祉計画の終わる二十三年度末には六万人程度増加し九万人になるもの、こういうふうに考えております。あくまでも通常の暮らしをしていただくということでございますので、普通の住宅と変わりがないというのが基本的なコンセプトになっております。

 しかし、さまざまなリスクがありますので、世話人の方がついたり、介護度が高い方については介護する人を配置する、こういったことを十八年四月の障害者の方に対する報酬で規定し、十八年十月から新しいサービス体系については基準が適用される、こういうふうになっております。

土肥委員 ですから、もう膨大なグループホームがあるわけですよ。そして、普通の生活をしてもらおうというんですから、普通の家なんです。しかし、火災とか防災とかいうのも一つのリスクでしょうけれども、そのほかにたくさんのリスクを抱えているのがグループホームの現状で、決してそれで資金が回収できるというようなものじゃないわけでありますけれども、建築界では、資金回収までできるみたいな、投資を促すような建築が進んでいるということを大きく声を出して申し上げておきたい。

 そして、消防庁的な考え方によれば、スプリンクラーを入れましょうと。それはよく厚生労働省と相談してくださいよ。普通の家に普通に生活しましょうといって始まったこの小規模な密着型のお世話ホームを、何かもう火事の一点で見れば、全部いつ燃えてもおかしくないように見えるわけでありまして、それで本当にいいのか。

 そのほかに、私、きょうは人員のことを言いませんでしたけれども、夜勤が一人だった、これは宿直者だった、夜勤勤務者じゃなかったというようなこともありますから、夜勤体制をどうするかということも、これは厚生労働省の仕事だと思いますけれども。

 要するに、国土交通省的な視点で見ればマイナーなというか余り規制のかからない分野の住宅にあって、ややもすると見逃していろいろな工法が導入されて、それがちまたに行き渡るというようなことがあると思います。大臣、今私が御質問いたしましたけれども、こういう状況というものについて、住宅あるいは国土交通省的な見地でどういうお考えか、最後にお聞きしたいと思います。

北側国務大臣 大変勉強になりました。

 これからグループホームがますます増設されていくと思います。そういう中にあって、やはり建物の安全性というものは、これはほかのことでも当然の話でございますが、しっかりと安全性については確保されていく必要があるわけでございまして、そこのところをきちんと建築行政の中で見られるような体制整備をしっかりする必要があるというふうに感じました。しっかり取り組んでまいりたいと思います。

土肥委員 終わります。

林委員長 小宮山泰子さん。

小宮山(泰)委員 民主党の小宮山泰子でございます。

 本日、最終の質問となりますので、最後までおつき合いのほどよろしくお願いいたします。(発言する者あり)ありがとうございます。よしと言っていただいて、ありがとうございます。

 ここのところで、先日、十七日には開発会社でありますヒューザーの小嶋社長も逮捕されましたし、また、昨日はイーホームズの藤田社長さんも保釈、起訴された後保釈というふうな形で、この耐震強度計算偽造事件というものはいろいろな面を迎えている。そして、これが発端で政府案の方はやはり建築基準法の改正ということで出されているんだと理解をしております。やはりこの根本的な問題というのは、きょうもいろいろな審議がありましたけれども、いろいろな関係の方がいて、その合間等で事件の全容というものが見えづらくなってしまっている。そして実際に、私ども委員会の方では、昨年、委員長の決断もありまして、早くにこの証人喚問やそして参考人招致など、ずっとして、しっかりと解明をするということで、この委員会、全員が、恐らくその点に関しては同じ思いでこの審議をしているんだと思っております。

 本日ですけれども、国交省も、昨年十一月までにイーホームズについての立入検査、早速にされておりますし、また十二月末までにはすべての指定確認検査機関についても立入検査を実施されたと聞いております。この建築基準法のうちで民間の指定確認検査機関にかかわる問題ということで、本日質問をさせていただきたいと思っております。

 特定行政庁による指定確認検査機関への立入検査というもの、これはいろいろなところから要望が出ていると思いますが、まずこの点に関して質問をしていきたいと思います。

 改正案第七十七条の三十一でございますが、特定行政庁による指定確認検査機関への立入検査について、特定行政庁が「確認検査の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、」と、特定行政庁が指定確認検査機関への立入検査をできるということで改正案は出されているかと思います。

 この点につきましては、埼玉県の方から、私も埼玉県民でありますが、上田知事からも、北側国交大臣あてに、昨年十二月二十六日付の要望書の中で、「指定確認検査機関に対し、特定行政庁が立入り調査ができる制度の創設」ということで要請が届いていらっしゃると思います。この要望自体は政府案にももちろん民主党案にも盛り込まれているところでありますが、この本項にあります、必要がある場合というのは、だれが必要があると考えるかによって、必要があるかないかというのが非常にあいまいなものとなってしまいます。

 でありますので、これはどのような場合なのでしょうか。国交省に伺いたいと思います。地方公共団体において、このいろいろな判決を見ても、責任があると言われてしまいますと、やはりこの点、どういった基準で考えていかなければいけないのか、とらえるかということに大きく影響してまいりますので、具体的にまずこの点、お伺いしたいと思います。

山本政府参考人 今回の改正案では、指定確認検査機関に対する特定行政庁の指導監督権限を抜本的に見直しまして、その強化を図ることとしておりまして、御指摘いただきました特定行政庁による指定確認検査機関への立入検査を導入することとしております。

 特定行政庁による指定確認検査機関への立入検査でございますが、引用いただきました改正法第七十七条の三十一第二項におきまして、特定行政庁が「確認検査の適正な実施を確保するため必要があると認めるとき」とされておりますが、具体的には、例えば、指定確認検査機関におきまして不適切な審査が行われている疑いが生じまして、個別の確認検査の実施状況を機動的かつ実地に検査しようとする場合でありますとか、指定確認機関が過去に行った確認検査について違反見過ごしの疑いがあるといったようなことを契機としまして、当該確認検査に関する事実関係の把握あるいは適切な指示等を行うために必要な情報を収集する場合などを想定しているところでございます。

小宮山(泰)委員 今、何度も聞いたような答弁で、ある意味、もしかするとあいまいなままなのかなという気がいたします。

 不適切なのは何をもって不適切かといいますし、必要な情報を得るということでありますけれども、今回の耐震偽造の中で、特定行政庁においても見過ごされたという事実をかんがみますと、具体的に実際どこを基準にしていくのか、また、指定確認検査機関に対して特定行政庁が行う立入調査を実効性あるものにしていかなければいけないわけですよね。その場合、どのように具体的に対策をとっていかれるんでしょうか。実際、その点に関して、ぜひお伺いしたいと思います。

山本政府参考人 立入検査という非常に難しい職務を実効性のある形で実施しなければ意味がないという御指摘でございます。大変大事な御指摘だと受けとめております。

 今申し上げましたように、今回の改正法案におきましては、特定行政庁による指定確認検査機関への立入検査の結果、いろいろなことを明らかにするわけでございますけれども、その際、指定確認検査機関が確認検査業務に著しく不適当な行為をした事実を確認しましたような場合には、特定行政庁は当該機関の指定権者に、大臣あるいは都道府県の知事でございますが、その旨を報告しなければならないという義務を課しておりまして、指定権者は必要に応じまして、その報告に応じて、当該機関の業務停止などの処分をするということにしております。

 また、従来、指定権者が指定の取り消しそれから業務の停止命令を行いました場合には公示することとされておりましたけれども、今回の改正法案におきまして、指定確認機関に対する指導監督権限の強化に伴いまして、監督命令を行った場合、指定の取り消しとか業務の停止命令だけではなくて、監督命令を行った場合もこれを公示して情報公開を徹底するということにしております。

 今お話ししましたように、特定行政庁が行った立入検査の結果に基づいて、著しく不適当な確認検査を行った指定確認検査機関等につきましては、まず厳正に処分されますし、取り消し、業務停止命令それから監督命令について情報公開されますし、そういうことを通じて特定行政庁による立入検査の実効性が担保され得ると考えております。

 さらに、御指摘いただいた立入検査の仕事は非常に難しい仕事でございますので、今回、住宅局におきまして、検査機関等に対する立入検査検討会を設けておりまして、学識経験者の御意見もいただきながら、立入検査時における検査内容あるいは検査体制について抜本的な見直しを含めた検討を進めているところでございます。その成果に基づいて、公共団体においても的確に立入検査が行われるよう徹底してまいる所存でございます。

小宮山(泰)委員 今検討されている、難しい仕事だからといって検討されているというのは十分検討をしていただきたいと思いますが、具体的には、やはり今までの審議の中でも、なかなか現場を知らず、行政として、行政マンとして働いていらっしゃる。だから、当然、現場を知っている人から見れば、不適切なことというのが、たとえ情報公開がされていてもそれがわかるとは限らないわけですよね。小刻みにうなずいてはいただいておりますが。そういった意味で、具体的にどこまで措置をされていくのか、もう一回改めて聞きたいと思います。

 予算とか研修とかそういった、また現場においては非常にこういった問題がありますので、逆に地方公共団体においては非常に業務が過密になって非常に苦しい中、さらに教育という意味において、また、三位一体改革と称して、地方においては予算削減がある。そういう意味においては、非常に地域が頑張りたくても頑張れないというそういった現状の中で、また国の方からいろいろなことを言っていく。そのときに、現実として実効性あるものとする場合、どうされていくのか。方向に関して教えてください。

山本政府参考人 御質問のポイントが、やはり立入検査を実効性あるものにするということにあるわけでございます。そうしますと、立入検査をした結果得たものが、現実に、具体的な……(小宮山(泰)委員「立入検査するためにですよね、これ」と呼ぶ)立入検査を的確にして得た情報がいろいろな行政行為に生かされるということが一番意味があるわけでございまして、それが指定の取り消しとか監督処分とかにきちんと生かされ、かつ、そのことがきちんと情報開示されれば指定確認機関を使う場合のお客様の行動にも反映されるわけでございまして、結果として、立入検査が意味のある、実効性のある形になっていくという意味でございます。

小宮山(泰)委員 立入検査するまでとその後というのは二つ、二段階あると思いますので、その点、ちょっと時間もあれですので先に進みますけれども、なかなか、地方公共団体、非常に苦しい立場にいるという場合も多くあります。

 私の住んでいます川越市の中で、伝統的建造物群というんでしょうか、伝建地区になりました。その前のときに、そのそばで十四階建てのマンションの建築、これは景観を著しく損ねるということでしたが、市の方に住民がいろいろなことを、建築会社とかが虚偽の事実みたいなものをいろいろ言ってはいたんですが、住民説明をしたとか言って、された覚えがないのに、したことになっていたりとか、いろいろなことがありました。

 しかし、市の人とかにいろいろ聞いていて、こういったトラブルが起きた場合は、市長が最終的には仲介に入ることができるという条例というかそういったことにはなっているが、結局そこにまでは至らなかった。裏でいろいろ、あちこち聞いて回りますと、建築基準法とかいろいろな、都市計画法も含めまして、法律に合致していたら、建築確認許可をおろさなかったら、結局のところ、後で自分たち、要するに市民の税金なりとかで損害賠償を払う可能性も高い、だからその点に関して建築許可をおろさざるを得ないんだという、そういった声も聞きました。

 ある意味、今、建築というものに関して地方公共団体というのは、視点は違うかもしれませんが、必ずしも強い立場にいないというのも現実だと思います。しかし、これから本当にいろいろな法律、この建築基準法、かかわってまいりますし、先般はまちづくり三法の見直しということで私どもも審議をしておりましたけれども、点というか建築物、点から面の整備ということもしていかなければいけない。そして、大臣が決断されて、危ない建物なんだから、その点に関しては周りがもし何かあったときの被害をしないようにということで、本当に政治的判断というかいろいろな判断、安全のための判断といろいろなところでおっしゃっていますが、取り壊しなどをされるという意味では、もう点でとらえるような時代ではなくなったんだと私自身思います。

 その点において、やはり地方公共団体にもっと権限が、建築確認も含めまして、いろいろな意味で権限がきちんと移譲されるということが必要なんではないか、その視点からみなし規定について確認をとらせていただきたいと思います。

 建築基準法六条の二というところに、国土交通大臣の指定を受けた者による確認について、特定行政庁による建築確認、確認済証の発行とみなすとされております。また、完了検査について七条の二の第五項、及び中間検査について七条の四の第四項にもみなし規定がございます。民主党案ではみなし規定の廃止、政府案では今回は改正されずということで、現行のままであるということで理解してよろしいでしょうか。

山本政府参考人 現行の建築基準法におきまして、指定確認検査機関が建築確認を行い、確認済証を交付した場合には、第六条の二第一項の規定によりまして、その確認、その確認済証は、それぞれ、特定行政庁の建築主事が行った確認、建築主事が交付した確認済証とみなされることとされておりますが、御指摘いただきましたとおり、今回の改正案におきましては当該部分について改正を行っておりません。

小宮山(泰)委員 当該のままということでありますので、これは結局のところ、みなし規定を残すということは、やはり民間指定確認検査機関による不適切な建築確認等によって生じた損害というものに対して特定行政庁が責任を負担するという見方もありますし、ある意味あいまいなところを残す。今回、判決で、どこがあるんだという話、何度も何度も出ています。あいまいなところを残すということに理解しても大丈夫でしょうか。御見解お願いします。

山本政府参考人 御質問の趣旨が、あいまいなところと、何についてあいまいなところかというところをきちんと理解できないものですから、的確な答弁になるかどうかわかりませんが、このみなし規定は、建築基準法で、建築主事の確認済証を受けた上でなければ建築に着手できないという規定を置いております。片っ方で、指定確認検査機関が建築基準関係規定に適合しているかどうかを判断して、適合していると建築主事と同じように判断した場合は、それを契機として建築着工できるようにする仕組みが必要なわけでございます。それを、立法技術上、建築主事の確認あるいは確認済証とみなすと規定することが最も効率的に法定できるという観点からみなし規定を置いているわけでございまして、このみなし規定を置いたことだけをもって事務の性格とか事務の帰属先が規定されるというふうには私どもは理解していないところでございます。

小宮山(泰)委員 いろいろありますけれども、大臣にぜひお伺いしたいのですが、このみなしがどうであるかということがいろいろな面で波及してくる部分だと思います。

 今までの大臣の答弁の中にも、一月二十七日にありました予算委員会、我が党の小川委員の答弁にも、大臣は、予算措置をする、国費投入ということにおいて、緊急性また公益性という観点から支援措置をとられたということもありました。また、同じ予算委員会では、公明党の斉藤委員に対しましても、公的支援が手厚過ぎるのではないか、また、民民の問題なのではないかという批判があるという事実も踏まえているという、そういった認識の中で政府対応を質問された中でも、今回の政府の支援策は、法律上、民事上の責任に基づくものというのではありません、あくまで、極めて必要性が高いというふうに行政が判断いたしまして、このような支援策をつくらせていただいたわけですという答弁があります。

 建築確認に伴う同様の事件、安全性ということにおいて、今回すぐさま国費投入を大臣は決断されました。

 安全かどうかという問題に関して見れば、この前出ておりました週刊東洋経済の最後にありましたが、民間の不動産データ会社のデータによっても、旧耐震マンション、一九八一年六月下旬以降に建築確認を出された旧耐震マンションと、基準で、現行の耐震基準である一・〇を下回る物件がほとんどであって、戸数は百四十六万戸、棟数では二万二千六百五十九棟もある。こういった中で、現役世代ではなくて高齢者が多く住んでいてという中で、耐震構造、現状として住まわれている中では安心が確保されないという意味においては、耐震偽造であっても旧耐震基準前の不安定なところにいる方も、不安定なものという意味においては同じなんではないかなという思いがあります。

 そこで伺ってまいりますけれども、みなし規定を改めずに存続すると、民間機関の不適切な建築確認によって生じた損害賠償の責任というもの、これも当然、過去のものについても、行政が建築確認をおろしているという点に関しても一緒になりますので、その損害賠償の責任を、行政責任が問われる可能性があるか。また、今後こういった点に関して大臣が御決断をされていく場面、そのときがいつ出てくるかわからないということにおいては、どの大臣になっているかわかりませんけれども、今現在、昨年決断された北側大臣の御見解、御展望をお聞かせいただきたいと思います。

北側国務大臣 今回の支援策につきましては、当然、要件を定めているわけですね。

 構造計算書の偽装を原因とし、違反建築物が建築されたこと自体について区分所有者に責任がない、さらには、構造計算書の重大な偽装が建築確認において発見するに至らなかった、三番目に、区分所有者がみずから居住するところが大部分であること、四番目に、保有水平耐力の指数値が〇・五未満で、耐震改修による対応は困難であり、除却命令を受けたものであることという、この要件を定めて支援策を決めているわけですね。

 ですから、同様に、こうした要件に該当するような事例があるならば、これは当然支援をしていくことになるというふうに考えております。

小宮山(泰)委員 例外というものは基本的にない方がいいわけで、やはりその辺は、安全、安心という、その点に関して重点を置いて対応していかなければいけないことだと私も思います。

 ところで、政府としては、国庫から八十億円ですか、支出もしているかと思いますが、補正予算なども組みました。地域住宅交付金で補正五十億円。また、地方公共団体で、この対応については、十七年度、十八年度で合計すると四十四億ほどですか、支出はされております。

 民間の不適切な建築確認を原因として生じた損害でありますが、もちろん、これについても過去にも言及されていますが、この国費や税金を支出したということで、損害の原因をつくったヒューザーや民間の確認検査機関等に対して、損害の原因をつくった人に対して国、地方公共団体が請求をしていくべきだと思うんですが、具体的にどんな方法を行っていくのか、これはそのままというわけにはいかないと思いますので、回収方法など具体的なこと、計画がありましたら、どうぞお聞かせください。

山本政府参考人 本来、売り主である事業者は、買い主である居住者に対しまして、第一義的に瑕疵担保責任という契約上の責任を負っているわけでございます。このため、今回の公的支援措置を実施するに当たりましては、その前提として、売り主である事業者に対して徹底した責任追及を行うこととしております。

 この責任追及につきましては、具体的には、買い主である居住者の方々の御協力を得て、公的支援措置に見合う額について、売り主に対する請求権の一部を行政側が取得しまして、この請求権をヒューザーの破産手続において破産債権として届け出ることとしております。

 なお、指定確認検査機関については、買い主と直接的な契約関係に立っているものではないために、第一義的に瑕疵担保責任を負っている売り主であるヒューザーに対して責任追及を行うこととしております。

 指定確認検査機関等の関係者の法的責任については、最終的には司法の場で明らかになるものと考えているところでございます。

小宮山(泰)委員 緊急として安全のために支出をしたとはいえ、国民の皆さんが一生懸命働いて納めている税金であります。やはりこの点はしっかりと回収をしていただきたいということ。

 そして、今回なんですけれども、みなし規定の削除、規定削除の要求というのが首都圏の方から出ているかと思います。今後、権限のやはり移譲ということもあるんでしょう。そういった点に関してどのような対応をしていくのか、簡単に、簡潔にお伺いしたいと思います。簡潔にお願いします。

山本政府参考人 昨年の末以来、首都圏の八都県市といろいろな意見交換をしてきております。八都県市の基本的な問題意識は、指定確認機関が行った確認検査に関し、当該機関、民間機関に法的責任があることを法律上明確にすべきであるということに尽きるわけでございます。そのことの具体的なあらわれとして、当初、事務的に八都県市と意見交換をする中で、みなし規定を削除すべきだという御指摘もいただきました。

 あるいは、最近では、直近では、連休明けにも八都県市の首長さんたちがお集まりになられましたけれども、そのときの御指摘では、民間確認機関にも国家賠償法上の被告適格があることを規定すべきであるというような主張をしていただいております。

 いずれにしても、これは指定確認機関が行った確認検査について、この機関に法的責任があることを法律上明確にしろという御指摘だと受けとめまして、どういうことが可能か、検討しているところでございます。

小宮山(泰)委員 民主党案と政府案の大きな違いの一つがこのみなし規定の扱いでありまして、やはりこの責任の所在のあいまいさというもの、そして、この法案はいろいろなところにつながっていく。この建設や不動産業というのは約百兆円ぐらいの規模があるということは、それだけ多くの人がかかわり、そして購買者に関してみれば一生に一度の大きな買い物であるからこそ、やはりきちんとした改正をしていかなければいけないし、多くの問題がまだまだこの政府の改正案においては残っているというふうに考えます。ぜひ、やはりみなし規定というものは見直しをした方がいいのではないかと思いますが、この点について最後に大臣にも伺いたいと思います。

 今私どもがやっているのは、この建築基準法の改正においてこれからどうするかの話であり、本当の意味で多くの皆様方が、今、司法の中に入るかもしれませんが、現実に、私どもが昨年証人喚問をやって、ことしも証人喚問をやり、参考人招致をしたその後からもいろいろな新しい事実が出てきていることをかんがみれば、やはりこれは委員長にもお願いしたいんですけれども、伊藤公介元長官、またその秘書でありました元秘書の都議の方、また私自身としては、やはりこの都議の方との関係ということが新たに出てきております、今保釈されておりますので、イーホームズの藤田氏においてもやはりもう一度この国会に、新しい方もいらっしゃいますが、国会できちんと参考人招致をし、この委員会でして、なぜこんなことが起きていったのかということをやはり事実関係をきちんと把握していく必要がある。

 それによって、商慣習であったり法律に書かれない部分で、やはりそういったところでのこの事件というもの、やはり人間欲がありますから、何とかしてもうけよう、そしてやっていこう、あうんの、今、共謀罪をやっていますけれども、目くばせやまばたきでも大丈夫なんということを考えれば、ある意味、非常にこの問題をきちんと、なぜこの問題が起こったかというのは、私どももやはり責任を持ってしなければいけないと思いますので、まず一点は、大臣には、今後みなし規定のことをどうされていくのか、そして最後になりますが、委員長におきましては、参考人招致について理事会で、また委員会で取り計らっていただくよう、よろしくお願いいたします。

林委員長 理事会で協議します。

北側国務大臣 結論から申し上げまして、みなし規定を削除する必要性は感じておりません。

 みなし規定を削除すべしとおっしゃっている趣旨が私もちょっともう一つ理解できておらないんですけれども、いずれにしても、民間の指定確認検査機関が建築確認検査をやっていくということは、今後とも必要だと考えております。

 その際に、指定確認検査機関に過失があって建築確認を誤ったという場合にどうするんだ、責任関係が不明確だとおっしゃっていますが、指定確認検査機関には責任が明確に今でもあります。指定確認検査機関に過失があれば、あります。

 そして、問題は、特定行政庁はどうなんだといったときに、最高裁の決定がありまして、そもそも、事務の帰属そのものが特定行政庁に及ぶということでございまして、指定確認検査機関に過失があった場合には特定行政庁である地方自治体の方にも民事責任が及んでくるというケースも出てくるわけでございます。

 そもそも、民間の指定機関が建築確認検査をやった場合には、特定行政庁には責任を及ぼすべきではないという見解だとするならば、それは多分そうではないんだろうと思うんですね。やはり建築確認検査というのは、これはまさしくまちづくりに当たっての非常に大事な事務でございまして、ここについて、これが公の事務であるという性格そのものは、私はやはり変えるべきではないのではないかというふうに考えております。

 ポイントは、先ほど住宅局長が申し述べておりましたが、指定確認検査機関が責任があるけれども、そういう過失があった場合にきちんと責任がとれるような、そういう体制をしっかりと構築をしていく必要があると考えております。

小宮山(泰)委員 やはり今建築に対しての大きな、消費者とかそういう中で信頼が失われた、その点に関して払拭するための、住民のまた購入者の安心のための建築基準法改正になることを訴えまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

林委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時九分散会


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