衆議院

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第23号 平成18年5月24日(水曜日)

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平成十八年五月二十四日(水曜日)

    午前九時四分開議

 出席委員

   委員長 林  幹雄君

   理事 衛藤征士郎君 理事 中野 正志君

   理事 望月 義夫君 理事 渡辺 具能君

   理事 長妻  昭君 理事 三日月大造君

   理事 高木 陽介君

      赤池 誠章君    石田 真敏君

      宇野  治君    遠藤 宣彦君

      小里 泰弘君    大塚 高司君

      鍵田忠兵衛君    金子善次郎君

      亀岡 偉民君    北村 茂男君

      後藤 茂之君    坂本 剛二君

      島村 宜伸君    杉田 元司君

      鈴木 淳司君    薗浦健太郎君

      田村 憲久君    冨岡  勉君

      長島 忠美君    西銘恒三郎君

      葉梨 康弘君    平口  洋君

      松本 文明君    盛山 正仁君

      山本ともひろ君    若宮 健嗣君

      小宮山泰子君    古賀 一成君

      下条 みつ君    高木 義明君

      土肥 隆一君    長安  豊君

      鉢呂 吉雄君    馬淵 澄夫君

      森本 哲生君    伊藤  渉君

      斉藤 鉄夫君    丸谷 佳織君

      穀田 恵二君    日森 文尋君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   議員           小宮山泰子君

   議員           長妻  昭君

   議員           森本 哲生君

   国土交通大臣       北側 一雄君

   国土交通副大臣      江崎 鐵磨君

   国土交通大臣政務官    石田 真敏君

   国土交通大臣政務官    後藤 茂之君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    寺田 逸郎君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長)            竹歳  誠君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  山本繁太郎君

   国土交通委員会専門員   亀井 為幸君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十四日

 辞任         補欠選任

  亀岡 偉民君     冨岡  勉君

  島村 宜伸君     山本ともひろ君

  吉田六左エ門君    平口  洋君

  伊藤  渉君     丸谷 佳織君

  亀井 静香君     糸川 正晃君

同日

 辞任         補欠選任

  冨岡  勉君     亀岡 偉民君

  平口  洋君     吉田六左エ門君

  山本ともひろ君    宇野  治君

  丸谷 佳織君     伊藤  渉君

  糸川 正晃君     亀井 静香君

同日

 辞任         補欠選任

  宇野  治君     島村 宜伸君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八八号)

 居住者・利用者等の立場に立った建築物の安全性の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案(長妻昭君外四名提出、衆法第二二号)


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     ――――◇―――――

林委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案及び長妻昭君外四名提出、居住者・利用者等の立場に立った建築物の安全性の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省総合政策局長竹歳誠君、住宅局長山本繁太郎君及び法務省民事局長寺田逸郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

林委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森本哲生君。

森本委員 おはようございます。民主党・無所属クラブの森本哲生でございます。

 建築基準法等の法改正につきましては、衆法、閣法ともに相当程度議論が蓄積をされてきておるわけでございます。私は今回、衆法の提案者の一人として委員会審議に臨ませていただいておりますが、問題の根源、議論すべき政策の幅は、委員会の所管権限を越えるような、より大きな所掌にもあるということに最近気がついている次第でございます。

 もともと、マンション耐震構造計算偽装問題を端緒として、その解決をどう図っていくべきかという、本来、与野党の壁を越えた政策課題として今回の立法が検討されてきました。いわば国会が究極的な政治責任を負うという強い政治的自覚と覚悟のもと、今日に至るまで、さまざまな立法事実を問題解決の糸口としてお互いに共有できているという認識は持っております。お互いにといいますのは、国民と国会とがという意味でも重要でございますし、ある意味、自戒を込めて申し上げたところであります。

 しかし、立法政策としてカバーすべき射程範囲、具体的にはステークホルダー、利害関係の方々の範囲をどうとらえるか、だれのどういう利益を法的に保護するのか、保護するべきかという問題、そしてさらに、だれのどういう権利を制約するのか、制約するべきかという問題について、両案には入り口と出口に違いが随所に見られるわけであります。さまざまな相違点がある以上、私は、人の衣食住、これが基本生活にかかわる問題として、国会でさらなる政策論議を積み重ねていく必要があるというふうに考えます。

 ところで、名義貸しの罪で建築士法違反の罪に問われ、逮捕、起訴されている姉歯元一級建築士ですが、昨年十二月の当委員会における証人喚問においては、平成十年、木村建設の篠塚元東京支店長から鉄筋の量を減らせと圧力を受けたと証言をいたしましたけれども、一部の報道によりますと、これ以前に、木村建設とは無関係のマンション、川崎市内で既に耐震強度を偽装していたという事実が取り調べ段階で判明したということでございます。

 ヒューザー小嶋社長と木村建設の木村元社長の逮捕から一週間がたつわけでございますが、当局の捜査によって、今後、院外では、さまざまな客観的事実と主観的動機が明らかになってくると思われます。小嶋社長においても、グランドステージ藤沢の耐震強度不足を認識しつつ、その上で、不作為による欺罔行為があったのかなかったのか、これは刑事実務においても重要な論点の一つですし、国民的な関心の高い問題であると思っております。

 したがいまして、院外でさまざまな事実が明らかになりつつあること、さらには、被害者の住民の皆さんも新しい生活に向けて努力と苦労を日々重ねておられることにかんがみますと、この国会の場で余り建築分野の制度論、抽象論に傾き過ぎると、実態にかけ離れてしまうということを危惧いたします。日々いろいろな事実が明らかになっております。そういう問題意識を絶えず頭の片隅に置いておく必要があるというふうに私は思っております。

 少し前置きが長くなってしまいましたが、さて、前々回、五月十六日の委員会では日置弁護士が参考人としてお越しになりました。日置参考人の御発言の趣旨を変えない程度で要約いたしますと、建築基準法上、建築確認の際の対象外となっている法令、例えばまちづくり条例、建築物に係る紛争予防条例などは建築確認と政策的に関連していない、このようなことを強調しておられました。確かに、都市計画分野、建築行政の現場において、条例の横出し、上乗せということで独自の運用が進んでいることと思いますが、日置参考人に言わせれば、地域の実情に合わないものでも建築確認がおりてしまうということであります。

 行政訴訟の代理人としての経緯に基づいた、意味の深い御発言であったと私は理解をいたしております。もっとも、法律に基づく行政という原理原則に忠実に従っているという点では、建築主事の判断に直ちに法的な問題が発生するわけではありませんが、日置参考人の発言、問題提起は、今後の建築行政のグランドデザインにつながっていく契機となります。

 建築基準法という基本法制を所管する国土交通省として、この発言をどのように受けとめられたのか、御答弁をお願いします。

山本政府参考人 まちづくりを実効的に行うためには、一定の強制力は不可欠でございます。このためには、都市計画法、建築基準法といった法律に基づく規制が不可欠だと認識しております。

 また、公正で透明性のある行政を進めるという観点からは、まちづくりのルールは、あらかじめ適正な手続を経て、できる限り客観的に、明確に定めておくことが必要だと考えております。このためには、都市計画、これは都市計画手続がございます、都市計画を決定するということとか、あるいは都市計画をもとに、建築基準法に基づく条例によりまして、まちづくりのルールを事前明示的に定め、これに適合するかどうかを建築確認でチェックするということが最も合理的であると考えているわけでございます。

 御指摘いただきましたまちづくり条例等でございますが、法律に基づかない条例は任意の取り組みである、ですから、きちんとした強制力というよりは、むしろ行政指導でそっち方向に誘導するというものが大部分でございます。方向性は定めているんですが、そういう意味の強制力は伴っていない。

 憲法も、財産権の内容は法律でこれを定めると言っております。土地に建物を建てる場合の、土地の権利の中身でございますので、どうしても、強制力を持たせるためには、法律に基づく条例、法律に基づく都市計画とか、建築基準法に基づく条例というものが非常に大事でございますので、これらを決定する場合は、もちろん困難ではございますが、地域の実情に応じてさまざまな課題にこたえるという観点から、これらの制度を活用して地方公共団体の範囲できめ細かな規制を行うことが可能でございますので、ぜひこの手段を活用して、まちづくりに役立てていくべきだと考えているところでございます。

森本委員 ありがとうございました。

 局長からは、強制力はある程度必要なんだという見解もいただきながら、最後には、きめ細かな配慮もできるんだというようなお答えもいただいておりますので、評価をさせていただきます。先ほど言われました、法的な安全性が求められる建築確認と、まちづくりの特色を引き出していく、それを生かしていくというまちづくりの政策的調和というものが、一義的に生み出せるものでは決してないということに理解をさせていただきます。

 私どもの地元の三重県でも文化力というような言葉が一時盛んに言われて、やはりそれに合った建築、まちづくりをどうしていくかということが、次の新しい時代の目的といいますか目標にされておるわけでございます。これはとても大事なことでありますし、きょうの視点は少しそれとは離れますので、これはもう申し上げませんが、やはり、参考人が申されました建築士という資格専門職の社会的役割を将来的にどう位置づけていくかということで、これは大変まちづくりと関連して大事なことでありますので、こうしたことについて、今後さらに他省庁との連携を深めながら御努力いただくことを要望として申させていただいて、次の質疑に移らせていただきます。

 委員会質疑、参考人質疑でも、しばしば建築士の専門分化に、先般も葉梨議員か田村議員もその辺にいろいろ触れられておったと思うんですが、大変重要な視点だというふうに認識をさせていただいております。

 そんな中で、専門分化に対応した資格制度をどのようにするかという論議が今これから行われるということでございますが、建築士法の制定時とは、設計、建築土木の技術は飛躍的に発展してきたわけでありますが、それは自明のことといたしまして、過日も答弁させていただきましたが、民主党案、衆法第二十二号において、例えば意匠、構造、設備というような分野ごとの資格制度については法制化が見送られておるわけでございます。建築士法の二段階改正というアジェンダが前提ですが、建築士が強制加入となった後で当該建築士会における専門分野ごとの制度化が進むことを期待しておるわけでございます。

 これは大臣にまたお伺いさせていただきたいんですが、日本には技術士、技能士という名称独占資格がございますが、実にさまざまな分野で職能に対応をしてきております。建築士において、制度上、制度の向上ひいては利用者保護という観点で広く認知されていくという必要があろうかと認識をさせていただいておるところでございますので、専門分野を分けた建築士資格の将来ビジョンという点で、国家試験を監督する官庁としてどのような認識を持っておられるのか、お答えをいただきたいと思います。

北側国務大臣 今、委員の方から御指摘ございましたように、建築士の実務というのが専門分化が進みまして、大きく言いますと、計画、意匠ですね、それと構造、設備、この三つの分野に分かれているというふうに考えます。

 これにつきましては幾つか問題点が指摘をされておりまして、一つは、構造設計だとか設備設計を担当する建築士は、契約関係上弱い立場となって、十分な報酬が得られないという問題が生じているのではないか。また、対外的に設計への関与が明確になっておらず、責任分担があいまいである。このような課題が指摘をされているところでございます。この建築士の専門分化の実態に対応いたしまして、分野別の資格者の位置づけ、また責任分担のあり方につきまして、関係者の方々の合意形成を図りつつ、十分な議論を行っていく必要があると考えております。

 この専門分化の課題につきましては、今後、専門分化する業務範囲をどのように定めていくか。また、専門分野ごとに業務独占とするのかしないのか。現在は建築士はすべての分野について業務を行えるということになっているわけでございますが、これを、専門分野ごとの建築士でなければ当該分野の業務は行えない、こういう制限を課していくのかどうか。さらには、設計というのは、一つの建物をつくるわけでございますので、当然整合性が必要でございます。この設計の整合性を図るためにどのような業務体制とすべきなのか、全体を統括するような設計者というのはやはり必要なのかどうか。

 こうした問題点につきまして検討する必要があると考えておりまして、こうした論点を踏まえまして、建築士資格の専門分化につきましては、夏ごろまでに方針を取りまとめたいというふうに考えております。

 こうした問題と並行して、建築士の資格に絡むさまざまな課題がございます。そうした課題とパラレルに、先ほどの団体への加入の問題につきましても並行して結論を出していきたいというふうに考えております。

森本委員 大臣、ありがとうございました。

 この問題につきましては、民主党案でもかなり積極的な分野、これは一〇〇%とは私どもも申しておりません。ただ、大臣の今の、設計の整合性とか分野別、これは専門の建築士の皆さんにも十分、参考人の皆さんにもお話をいただいて、いろいろな意見があることも事実でございます。しかし、責任分担とか、先ほど言われました整合性、分野別の制限というような問題については、これから大事な問題になってこようかと思います。

 昨日の自民党の皆さんの質問は、全体を含めてかなり民主党案に厳しい発言もあって、ある面では一部認めていただいておるところもあると思うんですけれども、そんな中で、今後、これは秋に考えられるということを大臣おっしゃってみえます、かなり大変だなというのを心中お察し申し上げるんですけれども。そのことについて、厳しい御意見と、私ども既にこの問題についてかなり突っ込んで、きのうも敬意を表するというようなお言葉をいただいたんですけれども、大臣の今まで述べられたお言葉と一致する面が多いんですけれども、昨日なんかの委員会ではかなり難しいかなという判断を私個人的にさせていただいておるんですけれども、個人的な見解で結構でございますので。

北側国務大臣 今回の耐震偽装事件を受けまして、建築士制度の問題点、さまざま指摘をされております。この建築士制度の見直しをしっかりさせていただきたいというふうに考えております。

 この見直しをすべきである、責任の所在を明らかにすべきである、また構造や設計等の設計士の身分の問題ですね、こうした問題についても変えていかないとだめだ、この辺の認識は私は恐らく与野党を通じて一致しているのではないかと思うんですね。

 問題は、この建築士制度、抜本的な見直しをすべく今検討しているところでございますが、今申し上げた専門分化の課題をどう考えていくかだとか、そもそも建築士の資質、能力をどう向上させていくのかだとか、それから工事監理業務の適正化をどう考えていくのか、報酬基準をどうしていくのか。そして、建築士会や建築士事務所協会等への加入の義務づけをどう考えていくのか。こうした問題というのはすべて関連している問題でございます。

 そういう意味で、まずは業界団体の方々の御意見も踏まえながら、やはり制度をつくった以上はそれがきちんと持続的に機能をしていかないといけませんから、そこのところは拙速にならず、ぜひ議論させていただきたいというふうに思っておりまして、私は、その辺の考え方について、民主党案と政府案との基本的な目指す方向について、そんな大きな違いがあるとは認識をしておりません。しっかりと機能するように、しっかり議論をさせていただき、夏までに考え方を取りまとめたいというふうに考えております。

森本委員 それでは、愚問かもわかりませんが、大臣は、今回の民主党案で、いいものは取り入れて修正をしていこう、そういうお考えはないということで解釈して、それは考えられませんか。

北側国務大臣 現在審査していただいております法案についての修正は考えておりません。これはあくまで第一弾でございますので。ただ、この夏までの取りまとめをしようとしている中で、きょう、この委員会で与党の委員の方々、また野党の委員の方々から出ているさまざまな御意見については、しっかりと参考にさせていただきたいというふうに考えております。

森本委員 それでは、次に移ります。

 建築士事務所の制度改革についてお尋ねをいたします。

 この制度改革をどのように進めていくかという問題でございます。委員会の審議、過去の証人喚問、参考人質疑の中でも、一つの事業体として事務所経営の独立性と透明性をどう高めていくかという政策課題が露呈しているわけでございます。

 プロフェッションというのは、法律、会計、税務、コンサルティング、どのような業務であっても身分の独立性は切り崩せない問題があるということは明らかであります。士業として、専門職業人として、当然に事務所を構えて、あるいは組織内の従事者として位置づけられるわけでございますから、今回のような事態を招かないようにするためにも、この地位を高めて職業倫理を確かなものにしていくということが求められているわけであります。

 この点について、政府は、近々の制度改正の必要性がないと認識して立法解決は先送りするのでしたら、これは大変大きな誤りであると私は思っております。衆法に対しては、建築士会への強制加入など、幾つかの御意見を出されております。各単位会に独立した懲戒権を付与するかどうかという議論があろうかと思いますが、他の士業団体の例を見るまでもなく、自治機能の強化に資することは間違いがないというふうな認識に立っております。

 また、建築士法人の創設について、スケールメリットという、効用ということでありますし、出資者としての社員の員数要件については、弁護士法人と同様に特に規定は置いていないということでもございますから、法人設立の際に不合理かつ過重な負担を強いるということではないというふうに認識をしておるわけでございます。特許業務法人とか司法書士法人、土地家屋調査士法人については、御承知のとおり、有資格者が要件とされておるわけでございます。

 したがいまして、衆法の提出に当たってはさまざまなことを勘案しておりますので、今申し上げた例は一部にすぎませんが、やはり建築士事務所の制度改革についても、閣法も、内容的に不足なく、衆法がメニューとする内容を今回の法改正と一体的に行う必要があるというふうに思っておるんですが、その認識についてお伺いします。

山本政府参考人 まず現行の建築士法のもとでの業務の実態でございますけれども、建築士は資格を持つ個人でございます。建築士資格だけでは他人の求めに応じて業として設計等を行うことは許されない、建築士事務所を登録して初めて建築士としての業が行えるということとなっております。消費者からの依頼を受けて設計などの業を行うのは建築士事務所でございます。建築士事務所に所属する建築士が、技術面を総括する管理建築士のもとで業務を行う、これが現行の仕事のやり方でございます。

 今回お願いしております改正案におきましては、消費者が建築士事務所に業務を依頼するに当たりまして、建築士事務所の業務に関する十分な情報を知ることができますように、まず第一に、従来は、建築士事務所の開設者に対しまして、建築士事務所の業務実績、事務所の管理建築士の実務経験などを記載した書類を建築主の求めに応じ閲覧させることを義務づけておりましたが、これらに加えまして、所属するすべての建築士の氏名、実務経験等についても、都道府県知事に報告した上で閲覧に供させることとしております。さらに、当該建築士事務所におきましても、損害賠償保険への加入情報とあわせまして、建築主に閲覧させることとしております。

 このほかに、社会資本整備審議会の中間報告におきましては、建築士事務所の業務の適正化を図るために、管理建築士に一定の実務経験等の要件を課すこと、それから責任と権限を明確にすること、それから建築士事務所の組織体制、管理体制などの要件を設けることなどについて、ただいま御論議がありました専門分野別の建築士制度の検討とあわせて、その社会的必要性や具体的要件などについて検討する必要があるとされております。また、元請、下請の契約の適正化、あるいは責任の明確化についても検討する必要があると指摘されているところでございます。

 建築士事務所の業務の適正化を検討するに際しましては、こういった論点を含めて、建築士制度のあり方について総合的に検討を行うことが必要であると認識しておりまして、夏ごろまでには方針を取りまとめていただき、その結果を踏まえて所要の見直しを行っていく考えでございます。

森本委員 どうもありがとうございました。丁寧に説明いただきました。

 それでは、次に移らせていただきます。

 四番目の、指定構造計算適合性判定機関の設置と専門家の確保ということでございます。都道府県知事が指定する指定構造計算適合性判定機関、いわゆるピアチェックの問題に関係しまして、先般の参考人質疑における大越参考人の御発言がありましたように、構造設計の専門家の質と量の問題は、制度の人的担保として非常に重要であり、悩ましい問題であるというふうに思っております。

 当該判定員の要求される能力、それから、現実問題として制度のスキームをカバーする人数をどう確保するかという点で、十分な見通しがあるのか、御答弁をお願いします。

山本政府参考人 構造計算適合性判定の対象件数でございますが、今のペースの建築活動のもとで、年間約八万五千件、月間で七千件程度と見込んでおります。

 構造計算適合性判定に要する審査体制でございますけれども、いろいろな積算はあると思うんですけれども、今の件数を前提に必要な人員を算定しますと、約一千五百名程度の判定員が必要になると考えております。現在、社団法人日本建築構造技術者協会の会員数は三千六百名でございます。それから、建築構造を専門とする建築士は全国で一万名でございます。これにはさらに、専門的な研究者、大学の教授、助教授といった方々もございます。そういったことで、構造計算適合性判定の事務処理体制としては、必要な人員の確保は可能であるというふうに考えておるところでございます。

 今後、指定構造計算適合性判定機関の設立に向けた準備を円滑に進めることができますように、日本建築構造技術者協会など関係者と調整を早急に進めてまいる考えでございます。

森本委員 この問題と関連をしまして、指定確認検査機関が都道府県知事を経由して指定構造計算適合性判定機関に対して適合性判定を求める場合に、当該特定行政庁に対しても前もって通知するとか、不意打ちのないように、そのような制度を設けられないかという意見が実は届いておるわけです。行政責任が厳格化される方向での法改正でございますので、そのような意見も傾聴に値すると思いますが、この点について所見をお伺いいたします。

山本政府参考人 今回改正案でお願いしております構造計算適合性判定の仕組みは、まず知事に専門家を集めて判定してもらうことをお願いしておりまして、知事が指定した第三者機関においてもこれを判定していただくことができる、そういう仕組みにしているわけでございます。

 御案内のとおり、もともと、本来特定行政庁の建築主事が行う確認検査をかわって民間にやっていただいているところでございまして、その中で、一定の大規模な建築物に限るとはいえ、さらに構造計算について改めて専門家の審査をお願いするというピアチェックでございます。そのことを考えますと、御指摘のようなルートで事務を処理するということは実務上なかなか難しいというふうに考えておりまして、御提案のような形で事務を処理させていただければと思料しているところでございます。

森本委員 局長、提案のようなという最後の言葉と初めの言葉がちょっと、私の誤解か、私の言ったことをある程度、ある程度というか配慮するというふうに理解させていただいてよろしいんですか。ちょっと難しいという、前段は難しいというようなお話、前もって通知するとかそういう連携は非常に難しいんだというようなお話、最後の方はよかったようなんですけれども、もう一回お願いできませんか。

山本政府参考人 建築主事であれ民間の確認検査機関であれ、建築確認をするに際して、一定の規模の建築物の確認については第三者機関に直接判定をお願いするという仕組みでやるのが適当である、妥当であると考えているということでございます。

森本委員 わかりました。このことは後で個別にいろいろまた提案をさせていただきます。

 それでは、特定行政庁の立入検査でございますが、指定確認機関への立入検査権限を特定行政庁に付与するという規定でございますが、これは当該行政区域に限れば別段問題ないと思います。しかし、法人としての所在地は全国各地に考えられるわけでございますので、衆法も同様の規定を置いているところでありますが、政府としては実効性をどのように考えておられるのか、この点についてお伺いします。

山本政府参考人 実務上、非常に大事なポイントを御指摘いただいたと思います。

 今回の改正案におきましては、特定行政庁は、建築主事が確認権限を有する建築物の確認検査の適正な実施を確保するため必要がある場合に、指定確認検査機関の事務所へ立入検査を行うことができることとしております。したがいまして、所管区域内にある建築物の確認検査について所管区域外にある指定確認検査機関の事務所が実施した場合は、御指摘いただきましたように、特定行政庁は所管区域外の指定確認検査機関の事務所への立入検査を行うことも考えられるわけでございます。

 御指摘のような、指定確認機関の事務所が遠隔地にある場合、九州の建築物を東京の確認機関が審査するような場合でありましても、特定行政庁は、個別の事案ごとに、指定確認機関に対して報告を求めることができますので、まずこれによって必要な情報の提出を求めます。その上で、報告徴収では必要な情報が得られない場合に、必要に応じて事務所へ立ち入ることになるわけでございます。

 なお、報告徴収により必要な情報が得られない場合にありましても、いろいろな事情により立入検査を行うことができない場合には、必要に応じて指定権者とも連携することによって所期の目的を達成するというような形で、いろいろな機関の連携を密にしてしっかり仕事をしていくということが大事だと心得ておるところでございます。

森本委員 そのことがスムーズに行えればこの問題は解決するんじゃないかと思いますので、ある面では運用になるんですかね、そのように理解をさせていただいて、次の質問に移ります。

 文書公開の充実についてでございます。

 建築関係図書の保存については、この主体及び保存期間について、衆法と閣法で意見が相違している部分の一つでございます。御承知のとおり、衆法では、特定行政庁が電子化して永久保存とする提案を採用しております。また、当然のことながら、指定確認検査機関の保存文書をどう法的に位置づけるかという問題もございます。いろいろ議論があろうかと思いますが、特定行政庁の権限強化を実効あらしめるため、指定確認検査機関が法令上取り扱った文書についても、特定行政庁のもとで情報公開に付すべきとの意見もあり得るところでございます。

 情報公開制度に基づくある種の官民格差が生じないように、そのような配慮を求める意見もあるということについてどのようにお考えか、お答えをお願いします。

山本政府参考人 確認申請書などの保存と情報の公開についてのお尋ねでございます。

 建築規制の実効性の確保とか住宅の買い主等の保護を図る上で、地方公共団体において構造計算書等の確認申請に係る図書を保存しておくことは極めて重要であると考えております。

 このため、今回の政府案におきましては、新築住宅の基本構造部分については十年の瑕疵担保期間が義務づけられていること、それから、新築後最初の大規模修繕が行われるのがおおむね十五年程度であることを勘案いたしまして、十年から十五年の程度の期間で図書保存を義務づけることを考えております。

 建築物に関する情報の公開でございますが、現行の建築基準法令におきましては、特定行政庁は、建築主や設計者、工事施工者、主要用途、高さ、構造などを記載しました建築計画概要書や定期報告概要書、建築基準法令による建築確認や完了検査などの処分等の概要書等について、閲覧に供さなければならないこととしております。

 指定確認機関が行いました建築確認につきましては、指定確認機関が確認済証を交付したときは建築計画概要書等を特定行政庁に報告するとされておりますので、指定確認検査機関が確認を行った建築物の概要についても、このように特定行政庁において同様に閲覧に供される仕組みとなっております。

 一方、現在、建築確認図書自体につきましては、特定行政庁、指定確認検査機関のいずれが建築確認を行った建築物であっても閲覧に供しておりません。これは、結果として、閲覧した者が建築物の内部の状況を詳細に知り得ることになる、建築物の所有者等の権利利益を侵害するおそれがあるということでございまして、慎重に検討すべき課題と考えているところでございます。

森本委員 ありがとうございました。

 非常に個人情報とか、そういうところをこれからチェックされるというようなこと。しかし、もう一度、例えば情報公開制度の官民格差、そのあたりについてもう少しお答えいただけませんでしょうか。

山本政府参考人 先ほど申し上げました趣旨は、建築計画の概要書レベルは、主事が行いました場合であっても民間の確認機関が行いました場合でも、いずれも特定行政庁において公衆の閲覧に供しているということでございます。

森本委員 しかし、特定行政庁だけに情報公開という、これはもう少し指定確認検査にも広げるというようなことは、そちらも情報公開するというようなことは、そのあたりはなかなか難しい問題ですか。

山本政府参考人 民間の確認機関が確認をしたものについても、建築計画の概要書を特定行政庁に送りますので、市民の方でそれを見たいと思われる方があれば、特定行政庁の建築の窓口に言っていただければ、民間機関が確認したものであっても特定行政庁の窓口で概要書を閲覧できるということでございます。

森本委員 わかりました。あくまでもこれは特定行政庁の方ですべてを管理していくというような、その考え方で回答としては承っておきます。

 それでは次に、検査済証を保存登記に加えることについて、少しお話をお伺いしたいと思います。

 建築物の安全性の確保と不動産登記制度との政策的な接点が見出せないかという観点からの質問でございまして、完了検査の実施率とも関係をしてまいりますが、およそ適正な建築確認を通らないような不動産、建物の取引は対象とはならないであろうということは自明でありますので、完了検査の検査済証を建物保存登記申請書類の必要的附属書類に加えてはどうかという意見が実はございます。表示の登記については、登記官が職権で行っているという事例を伺っております。今問題としているのは保存登記の段階でございます。

 この点について、登記実務に負担をかけるとの懸念もあるようでございますが、登記のオンライン化が進展しておりますし、当該の済み証を電子的にスキャニングするとかして添付することは物理的に困難な作業ではないと考えます。また、私法上問題となる取引の安全性にも影響はないと思われます。

 この点について、法務省の見解をお伺いいたします。

寺田政府参考人 委員の問題意識については十分理解できるところでございますが、不動産登記は二段階になっておりまして、今御指摘のありました保存登記の前提として、建物については建物の表示の登記というのがされるという仕組みになっております。

 つまり、ここには役割分担がありまして、およそ権利の対象として成り立つものが存在するかどうかということを公示するのが建物の表示の登記であり、この表示の登記がされた建物について一体だれが権利者かということを示すものが権利の登記であり、保存登記はその一部を構成しているものであります。

 したがいまして、保存登記においては、一体だれが所有者かということが問題になるわけでございますので、その申請をするに当たって、その建物がおよそ違法かどうかということは問題にならないというのが、登記の仕組みからいうと当然のことにならざるを得ないわけでございます。

 委員の御指摘のありました問題意識は、むしろ表示の登記で解決すべきところでありましょうが、ただ問題は、今おっしゃられました完了検査済証というのはすべての建物について出されるものではないというところでございまして、そういうものがあれば、それが一つの、権利が成り立つ不動産がそこにあるということの証拠として表示の登記の際の申請の添付情報として扱うことは、これは現に認めているところでございますけれども、すべての建物についてそれを行うということにはやや無理があるというのが私どもの理解でございます。

森本委員 この問題はまだいろいろ中が深いところもあるというふうに理解もいたしておりますので、意見として、お話としてお伺いをさせていただいておきます。

 それでは、大臣がそろそろ向こうへ行っていただく時間になったようでございますので、とりあえず私の質疑はここで中断させていただきます。

林委員長 鈴木淳司君。

鈴木(淳)委員 おはようございます。自由民主党の鈴木淳司でございます。

 今回の建築基準法改正案の審議でありますが、先々週以来、参考人質疑も含めて、またきょうの質疑も含めて二十五時間ということになろうかと思いますけれども、本日が取りまとめの質疑になろうかというふうに思います。これまでの審議で論点も幾つかに集約をされてきた感があるわけでありますけれども、基本的な点の再確認も含めて、また、さきに衆議院を通過した住生活基本法の柱でもある良質な住宅ストックの形成に向けてという視点からも、幾つかお尋ねをしてみたいというふうに思います。

 大臣は参議院の本会議ということで、お時間で御退席いただいて結構でございますので、どうぞ。

 さて、今回の耐震強度の偽装でありますけれども、いわば建築家の良心を失ったともいうべき耐震構造設計の偽装という、そうした思いもかけない事件の発生、そしてまた、それを建築確認で見過ごしてしまった、こういう観点において、建築行政に対する信頼を根底から揺るがした、そうした事件、重大な事件というふうに思うわけでありますけれども、実は、これは建築業界のみの問題ではないというふうに私は理解をいたしております。

 今日、政治、行政の大きな転換期に当たって、官から民という流れは確実に進むわけでありますし、その中で、建築確認という検査部門が民間に開放された中で発生したこの事件への対応は、建築確認という一つの問題に限らず、今後の時代の必然ともいうべき官と民との協働、民が担う公、新しい公の構築の上でも、民間に公的な権能の一部を担わせることに対する不信感の払拭というもの、その信頼を回復できるか否かというものがまさに試金石であるというふうに思うわけであります。

 何はともあれ、建築確認を中心とした建築行政への市民の失われた信頼というものを早急に回復する必要があるわけでありますが、今回はまず、事件発生を受けての緊急措置であり、事件発生以来さまざまな角度から検討された改善案のうち固められた当面の措置でありまして、この後も、第二弾として改善措置がまとまり次第、法案として提出されるものと理解をし、今回の改正それ自体については評価をしたいというふうに思います。

 しかしながら、今回の国家的な関心事項ともなりました耐震強度の偽装をめぐる報道、議論の中で、ともすれば耐震強度が一を上回るか否かの一点に市民の関心が集中するわけでありますけれども、さきの住生活基本法にも盛り込まれたとおり、本来は、良質な住宅ストックの形成というものが今後の建築行政の主眼であるというふうに思うわけでありますので、高性能、高安全性の住宅建設の促進のためにも、建築確認制度の意味合いの市民の正しい理解を促して、良質な住宅建設の促進に資するべき建築行政の進め方というものを改めて検討すべきであるというふうに考えるわけであります。

 それでは、以下、この基本認識に従って質問に入ってまいりたいと思います。

 まず、総括的な話からお尋ねをしたいのでありますが、本来、設計士による意図的な偽造という事態は建築確認制度の想定外でありまして、また、建築に携わる者の良心からは本来あり得ないはずの事件が起こったわけでありますけれども、今回の一連の耐震強度偽装事件から国土交通省は何を学び、また、何を学ぶべきだとお考えなのか、改めて国交省の認識をお尋ねいたします。

山本政府参考人 今回の事件は、本来法令を遵守すべき資格者である建築士が構造計算書の偽装を行い、それを元請の建築士も工事施工段階において見抜くことができなかったものであります。一方、その偽装を指定確認検査機関だけでなく地方公共団体も見逃してしまった、その結果、居住者が大きな被害を受けることになってしまったということで、まことにざんきにたえないわけでございます。

 このことから、今回の問題から課題として設定される課題領域としては、まず、建築設計を行う側における課題、それから、偽装を見逃した建築行政側の問題点、それから、住宅消費者保護の問題、この三点において非常に重大であると考えておりまして、国としても、建築確認制度あるいは建築士制度等の抜本的な見直しによりまして再発防止策を講ずるべきだと考えているところでございます。

 今回の改正案におきましては、建築確認検査の厳格化のために、国による確認検査の審査方法の指針の策定とこれによる確認検査の厳格化、それから、高度な構造計算を要する一定規模以上の建築物について指定構造計算適合性判定機関等における構造計算適合性判定の義務づけ、それから、三階建て以上の共同住宅について中間検査の義務づけ、特定行政庁への立入検査権限の付与等による指定確認検査機関に対する指導監督の強化などにより、再発防止を図りたいと考えております。

鈴木(淳)委員 今回の建築基準法の改正案に盛り込まれた個々の内容というものは、建築確認制度に対して失われた信頼を取り戻すための緊急措置として理解できるものであります。

 今回の改正に当たって、社会資本整備審議会建築分科会等でさまざまな検討がなされる中で、取り急ぎまとめられた第一弾の措置というものが今回の改正内容でありまして、これまでの質疑の中でも明らかにされたように、この夏以降にも引き続き第二弾の取りまとめがなされるようでありますが、果たしてその内容はどのようなもので、どのように具体化されようとするのか、答えられる範囲で簡潔にお答えをいただきたいと思います。

山本政府参考人 本年二月の社会資本整備審議会の中間報告におきましては、施策の実現に向けて引き続き検討すべき課題等としまして、まず第一に、専門分野別の建築士制度の導入など建築士制度に係る課題、次に、住宅の売り主等の瑕疵担保責任のさらなる充実、それから、国及び地方公共団体における監督体制、審査体制の強化と建築物のストック情報の充実、それから、構造計算書に係る電子認証システムの導入の検討といったような項目が挙げられております。

 これらの課題につきまして、その社会的必要性あるいは実効性、見直しの具体的な内容、方法等についてさらなる検討を行います。特に、関係団体との調整も必要であると考えておりまして、今回の改正案では措置されていないものでございますけれども、社会資本整備審議会で引き続ききちんと御検討いただいた上で、所要の見直しを図りたいと考えております。

鈴木(淳)委員 さて、今回の耐震強度偽装事件で、一つの素朴な疑問というものがあるわけであります。それは、偽装が実施設計段階やあるいは実際の施工現場で、施工段階でなぜ見抜けなかったのかという問題であります。建築確認申請のための構造計算書の数字あるいは審査用の略図からは見抜けなかったとしても、多くの建築士を抱える建設会社の中にあっては、実施設計図面の段階ではおかしいと気づいたり、あるいは、施工現場においては、職人や監督者が鉄筋量の不足等についていわば直観的に気づき得るものではないかと思うわけでありますけれども、これが何ゆえに指摘をされずに施工されるに至ってしまったのかということについてどうお考えかをお尋ねいたします。

竹歳政府参考人 お答えいたします。

 まず、法律論でございますけれども、建設会社、施工者は、発注者が示した設計図書に基づき、工事請負契約を誠実に履行し、建設工事を適正に施工する責任を有しております。今御指摘のような、もし実施設計の図面に基づいて施工図を作成する過程とか、また、実際に現場で施工する過程で設計内容に疑義がある場合には、建築士の資格を有する設計者に確認をとり、指示を仰ぐこととなります。したがって、施工者が設計図書どおりに施工していれば瑕疵担保責任を問われることはないのが原則ですが、施工者が設計図書に誤りがあることを知っていたのにこれを告げなかったときは、瑕疵担保責任を負うこととなります。

 そこで、一般論として申し上げれば、建築確認がおりている設計図書の構造計算を施工者が改めて精査するということは、通常行われておりません。また、強度を主に柱とはりで確保するのか、あるいは壁にも持たせるのかといった構造耐力の考え方にもさまざまあるため、施工者が施工図を作成する過程や施工の現場で設計図書の誤りに気づくべきであったかどうかとか、気づかなかった理由は何かという点については、一概には申し上げられないのが現状でございます。

鈴木(淳)委員 今回この法改正によって建築確認の内容の強化は図られるし、その面から一応の安心感、信頼感の回復は達成されるものと思われます。

 しかし、建築確認制度の意味というものをしっかり認識しておかないと、それは次の誤解を招くことになりはしないかということが危惧されると思います。それは、建築確認を二重チェックで厳格に済ませれば、これで絶対に安全だ、いわば安全性のお墨つきを得たんだ、こういうふうに思われてしまうといった誤解であります。

 そこで、確認のためにお尋ねをいたしますけれども、そもそも耐震強度が一を満たすというときの、その耐震強度一というのはどのようなレベルでありましょうか。

 私の理解では、阪神・淡路大震災クラスの地震が来たら、耐震強度が一あっても、建物は大きく損傷をし、被害を受ける。倒壊までは至らずに、どうにか命は助かったとしても、建物という資産価値は失う。耐震強度一とはそのようなレベルではないかというふうに思われるわけでありますけれども、果たして耐震強度一というのはどのような具体的なレベルでありましょうか。

山本政府参考人 今非常にわかりやすく御指摘いただきましたけれども、御指摘いただいたとおりでございます。

 現行の基準法における耐震基準、新耐震基準は昭和五十六年に改正されておりまして、二段階の審査をいたします。

 第一段階では、中規模の地震、震度五強程度に対しましてはほとんど損傷を生じない、経済的な価値は毀損しない、平たい言葉で言えば、びくともしないということでございます。しかし、極めてまれにしか発生しない地震、震度でいいますと六強から震度七程度の大規模な地震に対しましては、人の命に危険を及ぼすような倒壊などの被害は生じない、もちろん建物は壊れてしまうけれども、破滅的な崩壊はしない、そういうことを目標とした基準でございます。

 そういうことでございますので、耐震強度一を満足すれば大きな地震が来ても建物は大丈夫なんだというのは大変な誤解でございますので、それはきちんと国民の皆様にも御理解いただかなきゃいかぬということですし、国民の皆様はさらにそれより質のいい建築物も求めているわけでございまして、例えば、住宅の品質確保の促進等に関する法律で住宅性能表示制度なんかがございますけれども、さらにレベルの高いものについての品質をきちんと理解できるような表示制度、これも普及させていく必要があると考えております。

鈴木(淳)委員 今おっしゃったような観点が実は本当に重要だというふうに思うんですね。そしてまた、そのことを国民の皆さんが理解をしなければいけない、こういうふうに私も思うわけであります。

 それでは次に、改めてまた確認でありますけれども、建築確認とはそもそも何なのか、建築確認制度の意味について改めてまたここで確認をしたいというふうに思うわけであります。

 建築確認制度というものは、建築基準法の最低基準に適合しているかどうか、それを確認する制度でありまして、最低基準の確認だけであるという理解を国民の多くが理解しなければいけないと私は思うわけであります。

 建築確認には、建築物の個々の性能評価であります単体規定、そして集団規定として、都市計画や地区計画、近隣影響評価等まちづくりとの関係の二つの側面というものがあると思うわけであります。

 例えば単体規制、規制の評価について言えば、建築確認申請で確認される中身というものは、法が求める最低限を満たしているかどうかのみでありまして、特にいわゆる経済設計の技術が上がった今日、耐震強度一ぎりぎりに設計することは可能でありまして、その点、建築確認を通ったものでも、それが安全性などの公的なお墨つきではないんだよということをマンションの購入者はしっかり理解をしておかなければいけないというふうに思うわけであります。

 国民の誤解を招かないように、いかに建築確認制度の意味を理解してもらうかについて、御見解があればお伺いをしたいというふうに思います。

山本政府参考人 建築基準法におきましては、御指摘いただきましたように、建築物等に関する最低基準を定めまして、第一に、建築主の側、建築士を雇って建築計画を立案する建築主の側に、基準に適合する建築計画を立案し、実行する義務を法律上課しております。

 その上で、特定行政庁が指揮監督を行います建築主事、あるいは国、都道府県が指定する指定確認検査機関に対しまして、当該建築計画を審査する後見的な義務を課している、これが建築確認でございます。最低基準である建築基準関係規定に建築計画が適合していることを公権的に判断、確定する行政行為、これが建築確認であるわけでございます。

 こういう制度を導入しております趣旨でございますけれども、これは、建築物を一たん建築しようという場合には、一般の財と比べて非常に多額の費用を投下する必要があるということに加えまして、構造とか防火とか避難などの安全性能等につきましては、竣工後に欠陥が見つかった場合に、それを改修しようとすると非常に大きな損失を伴う、社会的な損失となるということから、竣工時点で必要な性能が確実に確保されていることが必要である、そういう考え方から、建築士法において、専門的知見を有する資格者のみが建築計画を立案できるということとしておりますし、また基準法において確認することにしているわけでございます。

 国民の命と健康と財産の保護を図るために規定された最低基準に適合するかだけを見た確認だということを必ずしも十分に理解できていないというのが非常に基本的な問題でございまして、今回のことも契機に、この建築確認制度の性格について、十分な情報の提供、周知を図って、国民の皆様の理解を得るように努めてまいる所存でございます。

鈴木(淳)委員 今回の事件が余りにもショッキングであっただけに、それの対応の今回の法改正が、逆にそれによって安全性が確認されるんだという誤解を招いてはまたいけないというふうに私は思うわけであります。

 さて、耐震偽装事件を受けて、さまざまな団体からいろいろな意見表明がなされました。その中で、幾つかの提言からも、またこれまでの質疑の中でもそういう指摘がありましたけれども、構造計算に際して用いられる大臣認定プログラムへの過度の依存、あるいは十分な認識を持ち得ない方の利用の危険性という指摘がなされておりましたけれども、それについてはどのような認識を持ち、どう対処されようとしているのかについてお尋ねをいたします。

山本政府参考人 今回の偽装事件は、構造計算プログラムの性能に問題があるということよりは、本来法令を遵守すべき資格者である設計者が、職業倫理を意図的に逸脱して、構造計算書を差しかえたり、計算結果の一部を切り張りするといったような巧妙な方法で修正するなど、構造計算書の偽装を行ったというものでございまして、さらにその偽装を元請の設計者などの関係者が見過ごしたということでございます。

 そういう意味では、偽装事件の第一義的な責任は設計者にあるということでございまして、その上で、御指摘いただきましたように、構造計算プログラムに過度に依存したり、あるいは、十分な建築構造に関する知識を持たない者が安易に構造計算プログラムを使用すると的確な構造計算ができないという指摘があるのも事実でございます。

 この点について、社会資本整備審議会建築分科会の中間報告では、建築基準法令の規定に適合しない数値が入力できないようにする、それから、構造計算途中で改ざんをしたり、計算結果の保存データを改ざんしたりすることを防ぐための措置が講じられていることといった、構造計算プログラムの内容について国土交通大臣が認定を行う必要があるという御指摘をいただいておりまして、国土交通省では、これを踏まえまして、構造計算プログラムの偽装、誤用防止策を含めた構造計算プログラムの認定制度の見直しを行うこととしております。

 加えまして、今回の改正では、中間報告での御指摘を踏まえまして、高度な計算を要する一定規模以上の建築物については、構造計算適合性判定を義務づける。それから、建築主事等がチェックすべき事項について、確認検査等に関する指針を国土交通大臣が定めて審査を厳格化する。それから、建築構造技術者の団体の協力を得て、構造計算書が適切に作成され、偽装の防止に資することを目的とした構造計算書の内容に係るガイドラインを作成するといった措置を講じることとしているところでございます。

 こうした制度の見直しを行いまして、設計者が適切な構造計算書を作成し、審査側も円滑な審査を行えるような体制の整備に努めてまいります。

鈴木(淳)委員 さて、さきにこの国土交通委員会で審議をし、また衆議院を通過いたしました住生活基本法において、良質な住宅ストックの形成というものが一つの大きな柱に据えられたわけでありますけれども、その良質な住宅ストックの形成を促すために、我が国の建築行政は今後どのようにあるべきとお考えでありましょうか。

 これについては、さきに我が党の政務調査会の部会におきまして、日本建築家協会環境行動委員会によって建築確認制度の抜本的改革案の提案、あるいは性能ラベリング保険制度、中古市場の活性化等の興味深い提言が実はなされました。一々ここでその中身を紹介いたしませんけれども、また、国土交通省はよくそれを御理解だというふうに思いますけれども、果たして国交省はこれらの提言に対してどのようにこたえようとしておられるのか、お尋ねをいたします。

山本政府参考人 御指摘いただきました住生活基本法案では、住宅ストックの質を高めていくという観点から、理念を掲げて、将来にわたって努力を積み重ねていくというふうに住宅政策の方向を定めていただくわけでございますけれども、建築行政におきましても、同様の理念に、同じ考え方にのっとりまして、住宅の安全性、耐久性、快適性、エネルギー使用の効率性など、品質、性能の維持向上等に関する施策を一層進めていくことが必要であると認識しております。

 具体的な施策の検討に当たっては、建築関係団体を含むいろいろな御意見をちょうだいすることが大変大事だと思っておりまして、今御指摘いただきました社団法人日本建築家協会による提言につきましては、いろいろな内容のものを含んでおりますので、例えば建築の単体規定はもう民間が責任を持ったらいいんだという考えもありますので、なかなか、すべてということではないんですが、例えば今ありました設計性能のランク評価、あるいはこれを保険制度と連携させるという性能ラベリング保険制度等の提言につきましては、これは必要に応じて適切に施策へ反映させるように検討していく必要があると考えております。

鈴木(淳)委員 今の部分が随分重要だというふうに私は思うんですね。

 良質な住宅ストックの形成のために、先ほど局長がお触れになりました住宅性能表示制度というものをさらに活用、定着させる必要があると思われますけれども、それに向けてはどのような取り組みを進めていこうとされているのでしょうか。

 また、あわせてお尋ねいたします。良質な住宅ストックの形成のためには、高性能、高安全性などの要素について、先ほどもお触れになりましたけれども、民間の保険をインセンティブとして介在させていくということが重要かつ不可欠であろうというふうに思われるわけでありますけれども、建築物の評価にいかにして民間保険を介在させていったらいいと考えておられるのか。

 また、参考人質疑でも、参考人から指摘がなされましたけれども、我が国ではまだまだ例の少ないノンリコースローン、これを促進するためにはどのような取り組みをしていったらいいとお考えでありましょうか、御見解をお尋ねしたいというふうに思います。

山本政府参考人 まず、住宅性能表示制度をきちんと普及させていくというのは非常に大事な施策分野だと思います。特に、市場を重視した住宅施策を展開していく上で、消費者主権を確立するという観点から、取引をする住宅の性能が客観的に的確に表示されるということが非常に大事ですので、まず皆さんに広くこれを知っていただく。知っていただいて、御利用になった方が意味があるということを実感していただいて、普及させなきゃいかぬと考えております。いろいろな催しをやっておりますので、住宅フェアとかいろいろな催しに際して、しっかり普及啓発を図る必要があると考えております。

 それから、二番目に御指摘いただきました住宅の評価と保険の連携でございます。住宅性能保証に損害賠償責任保険、保証保険をつけて運用しておりますけれども、これを手がかりにさらに一般化できないか。あるいは、さらに瑕疵担保責任履行を確実なものにするための措置として、ぜひ、いろいろな課題はたくさんありますけれども、しっかり課題を吟味した上でその方向を追求したいということで、今研究会を設けて研究しているところでございまして、夏までに方針を定めたいと考えております。

 それから、ノンリコースローンにつきましては、債務履行の責任財産を融資対象物件に限定するということをあらかじめ契約して、その財産だけで信用を担保するということで、財産を取り上げればそれ以上は追及しないというものでございますけれども、仮に債務不能になった場合に、債務者は融資対象への抵当権の実行により回収しまして、債務者の給与収入等の他の資産に遡及できないという仕組みでございますけれども、我が国におきましては、不動産投資関連融資で近時非常に普及してきているわけですけれども、通常の住宅にノンリコースローンを導入することにつきまして、住宅がマンションであれ戸建てであれ、使い始めると価値がかなり急速に下がっていくという市場の実態がありますので、ぜひ、その価値を維持しながら市場で流通させるという既存住宅の流通施策に力を入れるという努力とあわせて、これを検討していく必要があると考えております。

鈴木(淳)委員 行政がダイレクトに手を入れる部分ではないかもしれませんけれども、ぜひそうした住宅性能というものをしっかりと評価し、それがまた良質な住宅のストックの形成につながるような仕組みに向けてやはり努力をしなければいけないというふうに私は思うわけであります。

 さて、今回の法改正というものは、失われた信頼を取り戻すための規制強化であって、それは緊急措置として理解をするし、また支持をするものでありますけれども、何度も申し上げておりますように、本来は最低限度の基準の確認という建築確認制度の意味について、この機会に改めて国民の皆様方に正しい理解を持っていただくと同時に、住生活基本法の趣旨にのっとって、より良質な住宅、居住環境を実現するための建築行政の今後の新たな展開、そしてまた、国民の意識改革の促進に向けての国土交通省挙げての取り組みの御決意についてお尋ねをいたします。

北側国務大臣 大事な御指摘をいただいております。

 建築基準法というのはあくまで最低限の基準を定めたものでございまして、それを確認するのが建築確認制度でございます。消費者、住宅取得者の方々は必ずしもそういう御理解が十分にされていない、ここを正しい理解を持っていただけるように、しっかりと情報提供、また理解を得る努力をさせていただきたいというふうに考えているところでございます。

 また、委員の方からお話ございました、良質な住宅ストックを形成する、ここがやはり一番大事なところであるというふうに思います。

 今回、緊急調査委員会の報告書の中でもこのような指摘がございます。「偽装問題の背景には、建築物をあたかも消耗品のごとく考え、社会資産として、優れた建築資産を創造し長期にわたって大事に利用する、という共通認識に欠けていたことがある。これからの建築社会をそうした方向に変えて行く必要がある。」

 このような御指摘があるわけでございますが、私は非常に重要な御指摘をいただいていると思っておりまして、ぜひ、住宅をつくっては壊すという社会から、いいものをつくってきちんと手入れをして長く大切に使う社会へ移行することを目指してまいりたいと思っておりまして、建築行政におきましても、品質、性能のさらなる維持向上等に関する各種の施策を一層推進して、後世に残すに値する魅力ある住宅ストック、また住環境の形成が図られるよう、しっかりと取り組みをさせていただきたいと考えております。

鈴木(淳)委員 今回、大変厳しい事件でありましたけれども、これを受けて建築行政が、まさに最低限の基準の確保から、より良好な住宅形成の促進に向けて進んでいくという流れをぜひこの機会におつくりいただきたいということをお願いいたしまして、質問を終わります。

林委員長 森本哲生君。

森本委員 それでは、引き続き質疑をよろしくお願いいたします。

 それでは、罰則の抑止効果についてお伺いをいたします。

 規定違反に対する罰則の強化については、国民世論の強い後押しがありましたので、衆法、閣法ともに盛り込んでいるところでございますが、他方で、刑罰制度に対する国民の信頼、一般予防効果が低下しているという現実も無視することができません。取引額が何千万という世界でございますので、建築法令違反というのは、これまで処罰規定がなかったものも含めて、割に合う犯罪類型としてのイメージがなきにしもあらずというふうに思っております。

 法定刑の引き上げについては、衆法はもちろん、他法との均衡などさまざまな政策的配慮の上で検討されたことと思いますが、抑止効果についての認識を改めて確認させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

山本政府参考人 今回お願いしております改正案では、違反建築物の是正命令違反や耐震基準など重大な実体規定違反について、現行の法定刑、最高で罰金五十万円を大幅に引き上げ、最高で懲役三年または罰金三百万円の刑を科し、さらに、法人の代表者や従業者がこれらの違反をした場合には、その法人について最高で罰金一億円の刑を科すこととしております。

 また、建築士法におきましては、建築士、建築士事務所の名義貸しや建築士による構造安全性の虚偽証明について、新たに罰則を設けまして、最高で懲役一年または罰金百万円の刑を科すこととしております。

 宅地建物取引業法につきましては、不動産取引の相手方に説明すべき重要事項として、今回新たに瑕疵担保責任を履行するための保険加入の有無などを追加し、当該事項を含め、重要事項の故意による不実告知等について、現行の法定刑、最高で懲役一年または罰金五十万円を大幅に引き上げまして、最高で懲役二年または罰金三百万円の刑を科し、さらに、法人の代表者や従業者がこれらの違反をした場合には、その法人について最高で罰金一億円の刑を科すこととしているところでございます。

 これらは、現行の法定刑を大幅に引き上げるなど、現行法令の罰則の体系における均衡を確保した上で最大限の罰則の強化を行おうとするものでございまして、最も厳しい法定刑を設定したものでございます。したがいまして、違法行為に対する抑止力として妥当なものと考えております。

森本委員 局長では妥当なものというふうに答えざるを得ないんでございましょうが、私どもも、先般のこのところでも性善説、性悪説のお話が与党の議員さんからもありました。私は、罰金をふやして抑止効果がどのぐらい高まるかということは、極めて残念な思いをいたしておるところであります。

 これと含めて、私どももこのように出させていただいておるところでございますが、今世論が非常に厳しい中で、私は、かなりの抑止効果は、というよりも、こういう罰金がなくてもある程度これはおさまっていくんじゃないかと思うんですが、しかし、当面それでしのげると思うんですけれども、基本的には、やはり設計、施工の分離とか建築士の地位向上の話をしっかり議論されない限り、これは多くの問題を後に残すということを私はここで指摘させていただきたいと思います。

 今はグローバルスタンダードと言われて久しい、規制緩和の問題とかいろいろありますし、地球環境、地球の問題の中でインターネット等で一つになりました。しかし、こういう時代にあっても、規制緩和が進んでも、建築業界のしにせの信用ある実績とか、やはりそういったこともしっかり大事にしていかないと、いつでも形だけ整えれば事業に参入できるというような仕組みをもう一度すべてのところで考え直していただかないと、私は罰則の抑止効果は出てこないというふうに思っています。

 ですから、そのあたりは、もうそれほど議論をさせていただいている時間がありませんから提言にとどめますが、私どももしっかりこのことを議論させていただいて今日まで至っておりますし、そのことをぜひ含んでいただいてこれから御努力をいただきますように、これはもうお願いにとどめます。

 それと、今大臣が、建物を長く使って後世に残すすばらしい住宅というようなこと、建築物というようなことを話されて、その後水を差すような質問になってしまって、これは偶然なんですが、老朽化建物の建てかえ促進についてお伺いをさせていただきます。建築物の安全性確保ということで、これは全く別の視点からの質問になります。

 既存不適格建築物や接道不良建物、老朽化建築物が密集した市街地などで取り残されている、つまり建てかえが行われないために、火災予防や犯罪予防の観点から問題視がされておるわけでございます。過日も、岐阜県の中津川市内にある廃墟化した旧パチンコ店において、中学生のとうとい命が奪われるという極めて痛ましい事件が起きたばかりでございます。

 建てかえを個別に進めていくということは、当然に個別の権利関係が問題になりますので、強権的な権利調整は不可能でありますし、また抑制的であるべきだと思っております。政策メニューの組み合わせで問題解決を目指すことがスタートではないかというふうに考えますが、規制改革の観点からも重要でありますので、現状と今後の見通しについて答弁をお願いいたします。

山本政府参考人 老朽建築物が基盤が整備されていない地域に密集して残存している、いわゆる密集市街地は、高度経済成長期に、市街地がきちんと整備されていないところに住宅が密集して建ち上がったという部分でございまして、そういう意味では、我が国の都市が二十世紀から抱え続けている負の遺産というふうに受けとめておりまして、政府としても、都市再生プロジェクトに位置づけて、密集市街地の中で、特に、いざ災害が起きたときに大規模な市街地大火になってしまうような危険な密集市街地については、重点的にこれを解消するという観点から、東京圏、大阪圏でそれぞれ二千ヘクタールずつ指定して、これに取り組んでいるところでございます。

 この密集市街地に取り組むための具体的な事業としては、公共団体が住宅市街地総合整備事業を活用しまして、いろいろな広場とか道路とかを整備しながら、それとあわせて老朽建築物の建てかえ促進を図るということに取り組んでいるわけでございます。

 具体的に申し上げますと、密集市街地において、幾つかの要件があるわけですが、まず、共同化を行っていただける場合は、設計費とか建物の除却費、共同化のために必要となる施設の整備費を補助します。それから、個別に建てかえを行う場合には、設計費とか建築物の除却費などに対する補助を行うことにしておりまして、この事業制度は公共団体も非常に一生懸命取り組んでいただいておりまして、密集市街地に取り組むといいますか、特に老朽建築物の建てかえに有効であると考えております。

 実績ですけれども、住宅市街地総合整備事業は昭和五十八年から始めておりますけれども、平成十六年度末までに全国で七百七十三件、建てかえを実施しておりまして、七千六百四十五戸の建てかえを行ってきたところでございます。

 今後とも、密集市街地の安全性を確保するために、積極的にこの建てかえに取り組んでまいりたいと考えております。

森本委員 それではよろしくお願いをいたします。

 それでは、最後の質問に移らせていただきます。

 質疑の冒頭で申し上げましたように、耐震強度偽装事件については、刑事手続が日々進行する中でいろいろな事実が明らかになってきております。民事事件という枠組みでは、今被害住民の方は、一生懸命に毎日の生活を支えて、日常の疲労と将来の不安を解決するための努力をされながら、しかも二重、三重のリスクと闘っておられるというのが現実でございます。債権者、債務者、そして抵当権者、特定行政庁、指定確認検査機関等の当事者が存在する中で、最も弱い立場にあり、要保護性が高いのが被害住民の皆さんであるということがここで再確認をされるべきではないかというふうに思っております。

 行政官庁としても、現在進行形のところがあると思いますが、被害住民の方へのメッセージとして、現在、北側大臣の心づもりをお聞かせいただければというふうに思います。

北側国務大臣 今回の耐震偽装事件が公表されて以来、私どもは、この被害住民の方々、マンション居住者の方々の居住の安全を図っていく、また居住の安定を図る、これをこれまでも最優先として取り組んでまいりました。これからも、この問題に関しましてまだまだ道半ばでございまして、被害住民の方々が建てかえられたマンションに居住をされ、居住の安定が確保されるまで、私ども、地方公共団体としっかり連携をとって、居住の安定確保が図られるように、これをやはり最優先にして取り組んでまいりたい、その決意は何ら変わっておらないところでございます。

 現在のところ、十一棟のうち十棟の居住者の退去が完了いたしまして、三百九戸のうち三百戸が現時点で退去が終わりました。十一棟のうち、一棟において除却工事を今実施しております。また、七棟において建てかえ推進決議がされました。

 この建てかえというのは、もともとマンションの方々というのは合意形成がなかなか容易じゃないわけでございまして、ましてや、こうした事案においてさまざまな大きな課題があることはもう当然のことでございまして、しっかりと地方公共団体と連携をいたしまして、建物の取り壊し、建てかえの円滑な推進ができるようにしっかりと頑張ってまいりたいと考えております。

森本委員 ありがとうございました。

 私ども政治家は、いろいろな地区、地域へ行かせていただいたり、こうした事件に直面したり、道路交通法を改正することによって、そこでプラスになる方、マイナスになる方、法律をつくるということが国民の皆さんの心の中での幸不幸にも作用していくというような、そんな中で、今までも、現実はよくわかりましたという言葉を発しておるわけでございますが、いろいろなことは、私ども体験しないとその人の苦しみがなかなかわからないのが現実でございます。

 ですから、できるだけ現実を直視しながら、理解しようとする努力と将来展望に立っての政治というようなことで、特に大臣にはそのことをお願いいたして、きょうの質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

林委員長 馬淵澄夫君。

馬淵委員 民主党の馬淵でございます。

 建築基準法等の改正案審議、二度目の質疑の機会をいただきました。しかしながら、理事会等の協議において、本日の委員会、きょうこの法案審議は終局を迎え、採決という日程になっているとお聞き及びしております。

 残念ながら、この委員会の審議冒頭で、私は質疑の中で、やはり問題の解決としては、一つ一つ、基準法の改正等今後の再発防止を行う、これは当然ながら必要であり、また、被害者住民の方々を思うこの被害者救済措置に対しても、より実効ある形に変えていかねばならないことは当然でありますが、一方で、そこに政治の関与あるいは不作為等の問題はなかったのか、こうしたことがとりわけ国民の最も関心の高い事柄として上がっている事実。これを勘案すれば、伊藤公介元国土庁長官の証人喚問や、あるいは、伊藤元長官の秘書であり、都議であられた吉原氏、吉原都議が、それこそ事件に関与したとされるイーホームズの設立当初に深くかかわってこられたという報道等を勘案すれば、こうした証人喚問や参考人招致等が当委員会の理事会の協議の中でも何ら前進することなく本日を迎えていることは、本当に残念でなりません。

 実態の解明、これはやはり国会で行うべきであり、国民の皆さん方は、国会で政治家同士がしっかりとした審議の中で事実の解明を行う。もちろん、事件となれば、これは司直の手、捜査当局によって事実の解明がなされ、犯罪構成の要件等が確認をされ、いわゆる犯罪であればこれは処罰をされるということ。これは、国民からすればある一定のステージに行ったことではありますが、全体構図として明らかにすることはやはり国会でしかないんだということは、昨年来のこの耐震偽装の問題に深く興味を持っていただき、また全国からさまざまな御意見が寄せられたという世論の反応を見てもこれは明らかだということは、大臣初め所管の官庁の方々は十分御理解をいただけるものだと思うんです。

 その意味で、こうした土壌あるいは背景、公正化、公平化ということも含めて、本当に当委員会での終局を迎える今日において十分な審議がなされたかというのを私は疑問を持たざるを得ないんですが、これは大臣、この委員会の本日の終局を迎えて、十分な審議と言えるでしょうか、いかがでしょうか。大臣、御所見をお伺いいたします。

北側国務大臣 今回、建築基準法等の改正について審査をお願いしているところでございます。これは、以前から申し上げておりますとおり、緊急に措置すべき内容につきまして今回法改正をお願いしているところでございまして、これですべて課題が解決するというふうに考えているわけではございません。

 この委員会でさまざまな課題についての御指摘もちょうだいいたしました。そうしたこともしっかり踏まえながら、残された課題についてこの夏までにしっかり取りまとめをさせていただいて、さらに、次の国会にさらなる制度の見直しについてさせていただきたいと考えているところでございます。

 緊急に措置すべき内容でございますので、私どもといたしましては、できるだけ早い成立をぜひともお願いしたいというふうに考えているところでございます。

馬淵委員 緊急に措置すべきこと、これももうおっしゃるとおりであります。そして、まず第一弾として今回法案が出された、そして秋にはまた次なる改正なりを視野に置いているという御説明をいただきましたが、もちろん、早急な措置、これを図りながらも、実態の解明という部分については、これはやはり置き去りにされてはなりません。

 これは、引き続き当委員会におきましては、法案審議、もちろんこのことについては本日終局を迎えること、これは理事会でもう協議をいただいたということでありますから、委員として私がそれにさお差すことができないことも重々承知でありますが、委員長、ぜひこの証人喚問と参考人招致については、何らまだこれは決着を見たわけではございません、引き続き当委員会としても重大な関心を持って理事会にて協議をしていただくことをお約束願えませんか。

林委員長 理事会にて協議を続けています。

馬淵委員 ありがとうございます。

 それでは、今、本日この終局の場面での質疑をさせていただきます。

 私は、先回、十二日、冒頭に質疑をさせていただいたときには、この問題については、逮捕者が出る以前でございまして、四月の二十六日、八名の逮捕者が出た。しかし、これは別件逮捕のような形で、この事件に関与した方々が逮捕をされている。まだまだ事態の解明は明らかではないんだが、こうした事件の解決、ただ単に犯人がだれか捕まってしまうことで終わりではないんだよ、この問題は、むしろ本質的な制度の欠陥にあるのではないかということを前回の十二日には御指摘をさせていただきました。大臣からも、御答弁としては、確認制度、これはもう本当に問題があったんだ、そうはっきりと言明をいただいたというふうに記憶しております。

 その中で、実は、さかのぼれば平成十年、八年前の建築基準法の改正、このときに本当に抜本的な改正ができたのかどうか、阪神・淡路大震災を受けての建築基準法の大改正の中で、八年前に、確認検査制度を含め、あるいは民間の指定確認検査機関をつくり、民間開放を行う、規制緩和を行うという流れの中で、本当に十分この制度を見直すことができたのかということに関しては、私はある疑念を投げかけさせていただきました。

 その一つは、例えば国総研において提出を受けていた研究の報告書、この中に、平成十年改正後、平成十一年の法律施行の後、確認検査制度そのものが、もはや基本的な制度枠組みを見直さねばならない状況にあるんだということ、このままいっても破綻することは目に見えているといった報告がなされ、十分にそうした判断なり知見をお持ちであるはずの当局が今日まで置き去りにしてしまったという不作為は、これはその責任を問われても免れることではないのではないか、こんな御指摘を再三させていただいたかと思います。

 そのときにも大臣からは、当該報告書に関しましては、国交省の正式な見解ではないんだというお答えに終始されましたが、私は、また別の点で、今回のこの問題の本質の部分についてぜひお尋ねをしていきたいというふうに思っております。

 この行政の不作為の責任というものがあるやなしやということ、これは非常に重要な問題であります。その行政の不作為の責任、もちろん、もうそのことも十分承知しながら、たまたま今回の偽装事件でより大きな問題として国民の皆さん方に承知されることになったというそのことは十分認識をしますが、こうした制度が問題があるんだということについて、いかに真剣に取り組んでこられたかというのが、国民の最もやはりこれは疑念に思う部分ではないのかというふうに思っております。

 さて、きょうは、理事会の協議を得て委員長のお許しをいただきまして、皆様方にお手元に資料を配付させていただきました。少し分厚い資料となりますが、その表ページ1をごらんいただきたいと思います。

 これは、この頭に書いてある「日本行政会議及び某特定行政庁における構造審査チェックリスト」というのは後で付されたものだと思いますが、この資料そのものは、昨年の十二月七日、当委員会の参考人招致におきまして、イーホームズの藤田社長、現在被告とお呼びするべきでしょうが、藤田被告が、このチェックリストをもって確認検査を行ってきたんだ、自分たちはこのように、国やあるいは行政の定めた方法によって行ってきたんだ、このように掲げて御説明をされました。

 さて、これにつきまして、国交省としての見解をお聞かせいただけますでしょうか。局長からお願いいたします。

山本政府参考人 この2の方にですね……(馬淵委員「まず、1を」と呼ぶ)1につきましては、イーホームズが、例えば緊急調査委員会なんかのコメントでも、建築行政の中で使われてきたチェックリストと、あるいは日本建築行政会議でオーソライズされた審査要領であるという趣旨のことを御発言しておられますけれども、この2の方で私どもが緊急調査委員会にコメントしているとおりでございまして、これは建築確認を的確に行うための一律的な審査の手順とはなり得ないというふうに私ども受けとめているものでございます。

馬淵委員 当初、委員会なんかでは、これでやったんだからということを声高に主張されていた藤田被告でありましたが、これは、資料の2というところで、国交省としては見解を明確に出されておられます。

 これをごらんいただきますと、これは抜粋でございますが、この問題が発生して国交省としても緊急調査委員会を発足させて、そこでヒアリングをし、それに対しての見解をまとめられた、その報告書の中の抜粋でございますが、「イーホームズのコメントに関する事実関係」として、十二月七日の参考人招致を受けて、さまざまな場面での発言を受けて、国交省としては一月の十八日にこのペーパーを出されております。これは抜粋をさせていただきましたが、この中に、「そのチェックリストにおいてすべてチェックしても、今回の偽装は、確かに結果として見抜けなかったということでございます。」こう語っておられるわけであります。

 これに対して、国交省の見解としては、このチェックリストは、参考人招致の中で、質疑の中でイーホームズが提出したものであるけれども、これについては、平成十年、十一年ごろに東京都や横浜市で使用されていたものがベースになっていると推察され、そして、これは、「国や日本建築行政会議等で決定・監修等が行われたものではない。」このように明確に記されておられます。そして、「これらに従って」つまり、国や建築行政会議等が決定、監修等を行っていないものに従って「審査したとしても、適正な審査が行われたとは言えない。」こう国交省はコメントを出されているわけであります。

 さて、そこでお尋ねをします。

 イーホームズが出したこのチェックリストというのは、御指摘のとおり、何もオーソライズされたものでないものをもって、これでやったんだから大丈夫だということについては、これは、そんなことはないですよと国交省の見解を出されたわけでありますが、一方、国や建築行政会議等で決定、監修が行われたものということについては、これは、すなわち、これによって審査するものというのは適正な審査が行われたということになると解釈すればよろしいんでしょうか。

山本政府参考人 御質問のポイントは、日本建築主事会議、現在は日本建築行政会議と呼んでおりますけれども、が策定をいたしました建築構造審査要領に基づいて審査することについての国土交通省の評価についてのお尋ねだと思います。

 そこで、まず、日本建築行政会議でございますが、この前身である日本建築主事会議は、全国の特定行政庁あるいは建築主事が会員となりまして、特定行政庁などが、相互の情報交換あるいは共同作業の場を確立しまして、より的確な基準の整備、運用並びに諸制度の活用、改善を図ることを目的に平成二年に設立されました。

 この日本建築行政会議は、平成十二年に指定確認検査機関とか確認検査員が加わりまして、日本建築主事会議が日本建築行政会議に変わりました。

 御指摘の建築構造審査要領でございますけれども……(馬淵委員「まだ私、指摘していないですから。端的にお答えだけお願いします」と呼ぶ)はい。

 この建築構造審査要領は、構造耐力上の安全性を審査する際に参照すべき留意事項を記載したものでございます。今回の改正案で法律の第十八条の三の規定で定めることにしております確認審査等に関する指針のような、建築確認等の公正かつ的確な実施を図るためによるべき方法を一律かつ厳密に定めたものではございません。

馬淵委員 局長、お聞きしたことをお答えいただければありがたいんですよね。局長、大変、先、先がお見えになられるようで、どんどんどんどん先のお答えをいただいているんですが、私がお聞きしたことをお答えいただけませんでしょうか。限られた時間でございますので、お願いいたしたいと思いますが。

 今、私は、このように国交省の見解として、建築行政会議等で決定、監修等が行われたものについては、すなわち、審査が行われた場合、適正と言われるのか、こうお尋ねをしたわけであります。

 さて、それに対してのお答えは、もう先々に発しておられましたが、もうお聞きはしませんが、少なくとも、国や建築行政会議等の監修を受けていないものでやったのは勝手にやったんだということだ、一方で、そうでないものは適正な審査になるんだということの前提があるということはこれで明らかだと思います。

 資料の3をごらんいただきますと、これは、平成十八年、ことしに入りまして二月十日、イーホームズが北側大臣あてに出された意見書であります。これも抜粋でございます。意見書の表紙と4の「審査項目について」というところを、お目にとまりやすい部分だけ載せました。

 この3をごらんいただきますと、イーホームズ側の主張でありますが、建築構造審査要領平成十一年版並びに日本建築行政会議指定機関部会確認審査標準マニュアル二〇〇三年十月版、これらに基づいて、まあ社内のマニュアルなんでしょうね、これは「当社の確認に関するマニュアルに」と書いていますから、これらに基づいて、それでマニュアルを作成して、この確認検査を行った。そして、このような確認検査を行う行為そのものは省令の二十六条一項四号に規定の確認検査業務の実施方法に関する事項の遵守そのものである、このように、今は藤田社長は藤田被告とお呼びするべきでしょう、藤田被告、イーホームズ側は出されている。

 さて、そこで、やっとここに加わるわけです。資料4をごらんいただきますと、この建築構造審査要領というものの表紙を載せています。これは、まさに建設省、国が監修をしたものであり、そして、編集は日本建築主事会議、これは先ほどの日本行政会議に後に変わるものでありますが、これらが編集をしています。そして、「監修のことば」としては、当時、建設省指導課長の言葉として、資料5に「監修のことば」を載せておりますが、「建築確認及び検査を行うにあたり、構造耐力上の安全性を審査する際の参照すべき標準的な取扱いを示したもの」である、こう述べられております。

 これにかかわったかかわり方としては、当時、建設省の委員の皆さん方、建設省の指導課の職員の皆さん方が協力委員としてこの策定に加わっておる、この6の資料にも傍線を引かせていただきましたが。

 このように、この構造審査要領というもの、これ自体は国交省がまさにかかわって、監修をし、決定をしていくものである。これに基づいた審査ということが行われるというのは、すなわち適正な審査だ、このように読み取られることは、私はむべなるかなと思うわけであります。

 この審査要領にのっとって行った行為がずさんであったか否かは、当局がそれこそその捜査の中で把握すべきことでありますが、私が申し上げているのは、今、国は特定行政庁なりに判断をゆだねている。そして、その審査に関しては、それぞれが、民間の指定確認検査機関なりが、特定行政庁も含めて、こうした審査要領をもとに建築確認を行っている。ところが、結果的にはどうなのか。民間の確認検査機関のみならず特定行政庁までが、多数の偽装の見落としをしてしまった。国としての責任、国としての、この確認制度をつくっていく中で本当に何をチェックすべきかということのしっかりとした確定というものがなされていないのか、あるいは、しているのはあくまで監修をした、この程度、この要領なのか。ここがあいまいなんですよね。

 それで、私は十二日のときに質疑をさせていただいたんです。そのときに、皆さん方にお配りした資料、委員長のお許しをいただいてお配りした資料には、そのときの報告書、国交省に提出された平成十七年二月の報告書として、ちょっと長いんですが、建築構造分野における品質確保のための新たな社会システムの制度及び技術基準に関する調査業務報告書、平成十七年二月、社団法人日本建築構造技術者協会が国土技術政策総合研究所に出されたレポートである。

 そして、この中には、明確に「基本的な制度的枠組みを維持しつつ行う対策には限界がある。」と述べられておる。また、確認検査のこの制度そのもの、「「確認」制度を前提として、技術的多様性を確保するため、技術基準(特に大臣告示)の増加・詳細化が行われている(それ自体否定すべきでないが、いずれ破綻することが予想される)。」このように報告書の中で明言されている。私は、十二日の段階でも、やはり国として、これは十分に認識しながらも対応がおくれたという不作為の責任は免れないのではないか、こう御指摘をさせていただきました。

 そして、この審査要領であります。現に、この審査要領に基づいてそれぞれの特定行政庁や確認検査機関は確認を行っておられる。さらに、きょうおつけはしませんでしたが、このマニュアルの二〇〇三年版、イーホームズが語っている、3資料に書いてありますこの確認審査標準マニュアル二〇〇三年十月版、ここには、その精細な構造審査について、その目次を載せているだけなんです。

 つまり、国としては、重要な部分をあくまでこのような指導要領の中での監修というような形で、そのまま検査機関の指導要領として出すぐらいしか行わず、結果的には、破綻している制度、あるいはもう基本的枠組みを見直さなきゃならない制度の中で検査を行わせていたという、現実の不作為がそこにやはり存在するんじゃないでしょうか。

 大臣、この構造審査要領のあり方そのものを見ても、私が指摘した、前回並びに今回も、やはりここは国としての責任が十分にあるのではないかということに対しての大臣の御見解をお聞かせいただきたい。お願いいたします。

北側国務大臣 まず御指摘の建築構造審査要領の性格でございますけれども、これは、構造耐力上の安全性を審査する際に参照すべき留意事項、審査をする際にこういうところに留意しましょうねという事項を示した、これは限定的な内容が記載をされているところでございます。

 そういう性格のものでございまして、今回の改正では、十八条の三の規定に基づき定めることとしております確認審査に関する指針、ここでは、より一律かつ厳密に定めたものを定めさせていただきたいというふうに考えているところでございます。

 それと、前回も御指摘いただきました、これは調査業務報告書でございますけれども、これにつきましては、社団法人日本建築構造技術者協会に業務委託をして取りまとめられたものでございます。これは国総研の見解を示すものではございません。

 この報告書の内容の中にはさまざまなことが書いてございます。今回、私どもが法改正でお願いしておりますピアレビューについても触れられておりますが、片方で、法令で定める内容はもう極力限定しなさい、むしろ設計者の判断にゆだねる制度につくっていきなさい、このような御指摘もいただいているんですね。これは、現時点で考えますと、設計者の判断にゆだねる部分を拡大するというのは、こうした事件を受けて適切ではないわけですね。というふうに、さまざまな内容が盛り込まれているわけでございます。

 この報告書を受けまして、これは業界サイドからの提案でございます、その実現性を含めてさらなる検討が必要であるということで、国総研では引き続き研究をしておったという段階というふうに聞いております。

馬淵委員 今、大臣から二点ちょっと重要な御見解をいただいたわけですが、まず一つは、済みません、この審査要領については、先ほどの局長の御説明をそのまま受けて御説明いただきましたが、これはいわゆる耐力上の安全性を審査する際の留意事項だ、こうおっしゃいました。局長も同様に語っておられますが、しかし、国や行政会議、このときは主事会議と称していますが、そういったものの監修、決定がなければ適正な審査がなされていないんだ、こう、一月の少なくとも国交省の緊急調査委員会の中では表明されているじゃないですか。それがなきゃだめなんだと。一方で、これは何だと聞くと、いや、留意事項だと。非常にあいまいじゃないですか。

 私が申し上げているのは、このように、何ら、一見権限があるようなないようなことをぼやかしながら、責任はないと言っている、まさに権限あって責任なしの無責任、責任回避の構図がここにも見てとれるんじゃないですか。この問題というのは、先ほど大臣が御指摘いただいたように、もちろんこの法改正の中で変えていくんだということでありますが、省みずして新たな抜本的な対策というのは打てません。

 そしてもう一点、重要な御発言です。先ほどの調査業務報告書の中では、いいことも書いてあるけれども悪いことも書いてある、そしてこれは国総研の見解ではないというお話でありますが、いいことも書いてあるけれども悪いことも書いてあるからだという片づけ、これはおかしいんじゃないでしょうか。

 いいことが書いてある、すなわち、この問題は平成十四年から三年かけて既にこうした点が指摘されて、報告書でまとまったのが昨年の二月なんですよ。その段階で、いいことが書いてあるということについての認識をお持ちだということは、当然ながら問題点の認識はあったということなんです。それを今日まで放置して、そして耐震偽装が発覚したときに、とんでもないやつが出てきた、とんでもないやつがとんでもないことをやったという話で終わらせてはならないということを私はお伝えしているわけです。

 大臣、もう一度お尋ねします。

 最初に申し上げた一点、留意事項だと言っておきながら、一方、緊急調査委員会の中のコメントでは、この決定、監修がなければこれは適正な審査ではないんだ、そう明言をされている。この矛盾はどのようにお考えでしょうか。私は、先ほど来申し上げているように、権限あって責任なしのいいかげんな行政のその姿勢をあらわにしたことではないかというふうに思えます。

 もう一点、国総研の見解ではないなどとおっしゃる言葉は、まことにこれは問題なのではないか。この部分に関しても重要な指摘がなされていて、これについて十分認識しながら、あるいはそれ以前に予見しながら、対策を怠ってきたことの責任はないんですか。これについて、国民に向かって謝罪をされるお気持ちはないですか。

 この二点、再度お伺いします。

北側国務大臣 恐らく馬淵委員は、行政の不作為があった、そこに過失があるから法的な責任が国にはあるのではないかという御指摘をされておられるんでしょうか。もしそうだとしたら、行政の不作為による過失があって法的には責任があるぞというふうな御主張であるならば、私はそうは考えておりません。

 ただ、今回の事件を通じて、建築確認検査制度にさまざま問題点があることはそのとおりでございます。したがって、今回の法改正、さらには残された課題についてもまさしく今検討しているところでございまして、より建築確認検査制度の信頼が回復できるようにしっかり取り組もうとしているところでございます。そういう意味では、これまでの建築確認制度に何ら問題なかったと言うつもりはございません。

馬淵委員 法的な責任とは私は一切申し上げておりません。こうした、まさに法的な責任にならないからこそ、あるいは法的な責任として明確にもしあれば、この委員会の中でもっと大きな議論になっているでしょう。そうではなくて、不作為という部分については、それが法令違反なり法的な責任というところに及ぶ以前の問題としてその責任があるのではないかということを私はお問いかけをしているわけです。

 所管される大臣ですから、当然ながら法令違反なりがあればそれは厳しく処罰される権限をお持ちですし、そうした見識をお持ちだ、私はそのように思っております。ところが、法令違反までいかなくても、あるいは法的責任が生まれなくとも、不作為等によって発生するさまざまな問題の責任というのは、所管する責任者であれば当然ながらにそれは背負わなければならない、認識をしなければならないというお立場ではないですかとお尋ねをしているんです。

 その意味で、確認制度に問題があったと御認識いただけるならば、問題があったことを少なくとも見過ごしてしまったということについての踏み込んだ御発言というのはいただけるんでしょうか。それについて大臣は、いや、やはりこの問題がなければわからなかったんや、こうおっしゃるんでしょうか。

 少なくとも、当委員会、そしてこの秋、さらに再度改正を考えていこうという前向きな方向は私も大賛成であります。しかし、再度申し上げるが、こうした思いがなければ、しっかりと内省をしなければ新たな抜本的対策というのは打てないのではないかということをお伝え申し上げます。

 大臣からは同じお言葉しかいただけないようですので、この問題に関しては今私が御指摘をさせていただくにとどめますが、このように調査業務報告書でも述べられている。さらには、この問題の中にも上がってきている確認検査制度そのもののあり方の中で、指導要領とする、規範とするマニュアルあるいは留意事項と呼ばれるものも、実は国がある意味そこに権限を付与しているんだ。権限を付与しているならば、その責任の所在というのはより明確にしなければならないのではないかということをお伝えして、次の質疑に入らせていただきます。

 さて、私は、権限あって責任なしではありませんかと申し伝えたわけでありますが、この権限あって責任なしの責任の部分がさらに刑事事件の中で追及される展開となってまいりました。

 それは、私の質疑後、先週でありましたが、八名の逮捕者の後に、ヒューザー小嶋社長が詐欺容疑で逮捕をされました。さらに、逮捕されている木村建設の木村社長、森下専務も同様に詐欺容疑で再逮捕となりました。事件は、一見別件逮捕のように見える、当該問題に直接に関与する容疑とは見えないような形で、八名の逮捕者からスタートをしたわけでありますが、先週において一つの転機を迎えたのではないかというふうに思っております。

 小嶋容疑者は、偽装を知りながら、偽装の事実を認識しながら、グランドステージ藤沢、具体的に、この物件の引き渡し、受け渡しを行って、そしてその受け渡しの代金を受領したということで、知りながらもそれを伝えなかったという不作為の詐取による詐欺容疑が容疑としてかけられていると言われています。

 また、木村建設の社長と専務に関しては、奈良のサンホテル奈良というホテルの引き渡し、工事完了引き渡し時点で、偽装があるということを認識しながら工事完了引き渡しの代金を受領したということで、これも不作為の詐取として、詐欺容疑で再逮捕となりました。

 さて、こうした小嶋社長並びに木村建設の社長、専務、彼らの逮捕、再逮捕でありますが、私どもこの国交委員会では、証人喚問並びに参考人招致で再三、このお三方、お二方になるんでしょうか、木村社長、小嶋社長にお越しいただいての証人喚問、参考人招致をさせていただいております。

 そこで、この証人喚問にかかわっての問題でありますが、当委員会では、木村建設の木村社長の証人喚問を昨年の十二月十四日に行いました。ここでは、耐震偽装については木村建設が圧力をかけたか否かということを中心に喚問が行われたわけであります。そして、私自身は、ホテルルートと呼ばれる耐震偽装の全体構図のことを中心に当委員会での質疑もさせていただきました。

 その後、年明けて、小嶋社長、容疑者の証人喚問となるわけでありますが、ここにおいては、ホテルルートが置き去りにされている、また、伊藤元国土庁長官と国交省を訪ねたという、こうした政治と業と官との癒着、これも指摘をされた部分がありまして、証人喚問が実現したわけであります。そして、証人喚問の当日、一月十七日であります。御出席の委員の皆さん方は記憶にはっきりと残っておられると思いますが、小嶋証人は、その証人喚問の証言席で、繰り返し答弁の拒否をなされました。

 さて、刑事訴追のおそれがあるとしての証言の拒否、当委員会でも質疑者の方々、大変な憤りを感じられたと思います。また、委員長におかれましては、そうした証言拒否に対して、あるいは補佐人との打ち合わせ等に対しても、厳しくその委員会の運営に対して御発言をなされておりました。国民の皆さん方も大変な怒りを持ってあの証人喚問をごらんになられた。その後は、私の事務所のみならず、国会議員の先生方、皆さん方のところに、再喚問だという声すら届いたのではないでしょうか。こうした状況を私どもも本当にほぞをかむ思いで見てきたわけであります。

 ところが、つい先日、逮捕される直前の小嶋社長がいろいろなところでお話をされる、そうした場面も流れてはいたのですが、実は、この証人喚問の前のリハーサルのビデオというものが、つい先日来よりテレビ等で放映されるという運びとなりました。

 私も、この証人喚問リハーサルというのを初めて見させていただいたわけであります。この証人喚問のリハーサル、お手元にこの資料7を配付させていただいております。ビデオをここで流せればいいんですが、それもできないそうですので、そのビデオからテロップと音声を書き起こしたものをお配りしました。忠実に書き起こしたものであります。

 「小嶋進社長 証人喚問リハーサル(提供 新潮45)」として出てまいりました。「GS藤沢の危険性を認識か」というこうしたテロップが出て、そして、「今年一月、国会の証人喚問を控え、小嶋容疑者が入念なリハーサル」「歩き方」「弁護士とのやりとり」、こう続くわけであります。

 私もビデオを見ると、国会の証人喚問席のような形で、ソファーに腰をかけて、そして証言席まで歩いていって、そしてその証言席にはわざわざ水差しまで置いてという、非常に手の込んだ形でリハーサルをされておられました。また、証人の席の後ろには補佐人が座って、後ろを振り返りながら補佐人と相談をするしぐさまで相談をされている。こうしたビデオを見ます。

 その中で、司会者の方が、「最初の質問者として、民主党の馬淵議員お願いします。」と。これも、私が質問をするという前提で、馬淵役の方がいらっしゃるわけですね。これは本当に驚きました。顔も映らず、声も聞こえずだったので、どなたがされたかわかりませんが、馬淵議員役が、「それでは質問させて頂きます。」と言って、質問をされるわけです。

 「質問者は民主党の馬淵澄夫議員を想定」「リハーサルではこんな証言を―」ということで、馬淵議員役がこういうふうにおっしゃいました。「このGS藤沢についてですね、偽装の可能性ということについてはどのように認識されていたのか? まったく一〇〇%安全であるという認識だったのか?」こう馬淵議員役が質問されたんです。私は証人喚問でこれをお聞きしませんでしたが、実際にはお聞きしなかったんですが、これもリハーサルでこういうふうに積んでおられた。

 小嶋社長はこう答えておられますね。「えー、まったく安全だという認識ではございませんでしたが、手続き的には、ほぼ契約の履行が終了しておったというふうな状況でございまして、基本的には引き渡しの義務の方が優先されるというふうに判断しました。」このように述べておられるんです。

 リハーサルどおり答えていただければ、まさに証人喚問での証言としてまた次なる事態の解明につながったかもしれませんが、実際は、皆さん方の御記憶にあるように、刑事訴追のおそれがあるためお答えは差し控えさせていただきますという、その言葉に終始をされました。

 そこで、このリハーサルは続きます。馬淵議員役は、「危険性を認識していたというはっきりとした証言を、今なさったわけですよ。」と、これは突っ込んでおられるんですね。とてもこんな切り返し、私なかなかできないんですが。

 このように、このリハーサルの場面では、危険性の認識ということ、つまり、安全ではないという認識を小嶋証人は既にリハーサルの段階で認識されておられるわけです。ところが、証人喚問では、皆さん方覚えておられるように、刑事訴追されるおそれがありますので証言は控えさせていただきたいと思います、この一点張りでありました。

 さて、大臣、私がこれは非常に問題があるなと思っておりますのが、ぜひ御見解を伺いたいんですが、このような、事前に、既に一月の十七日の証人喚問以前に、グランドステージ藤沢の引き渡しについては、全く安全だという認識はなかったということを持っておられる。その上で、あの証人喚問の場面では証言拒否をされた。国会軽視あるいは議会軽視。国民の皆さん方に事実を明らかにしようということで、理事会初め当委員会で協議をいただいて、証人喚問が実現したわけです。にもかかわらず、証人喚問の証言では全くお答えがいただけなかった、つまり証言拒否をされた。

 このことについて、大臣、いかがお感じでしょうか。あのときは大臣が出席されたわけでも何でもありませんが、所管する省庁、そしてその関係する委員会、この中でこのような証言が、実際にはリハーサルに出されたような証言とは全く違うことをされた。これについて、大臣御自身はどのような御見解をお持ちでしょうか、御感想をお聞かせいただけませんでしょうか。

北側国務大臣 私、このビデオというか放映を見ておりませんで、今初めて聞かせていただきました。いただいたこの文書化されたものを見まして、まさしくここが最大のポイントのところなわけですね、だと思うんです。私も弁護士でございますので、一番ポイントとなるところが、このGS藤沢について、引き渡しの際にどこまで偽装について認識をしていたのか、ここが、刑事事件、これは民事事件でも多分そうだと思いますが、最大のポイントのところだと思っております。

 そういう意味では、もし偽装であるということを知っていて引き渡しをしたとするならば、これは刑事事件として詐欺罪等で立件される可能性が十分出てくるわけですね。そういう意味では、刑事訴追のおそれがあるというふうに判断することも十分あるんじゃないかと思うんですね。

 刑事訴追の可能性があるということでありますと、一方で、証人喚問ですから証言をする義務がございます。そことぶつかるわけですね。証言をすると自分は刑事訴追されるかもしれない、そういうことで、黙秘権といいますか、与えられているんだということに思います。恐らく、そういうことでそういう権利を行使されたんだというふうに理解をしておるところでございます。

馬淵委員 さすが弁護士として、非常に法律的な切り口でお話をいただきましたが、こうした答えというのは、このリハーサルの答弁というのは本当に重大な答弁だと思います。当局も、これは重要な関心を持ってごらんになったというふうに聞いております。

 一方で、刑事訴追というおそれがあるということの前提が、それも十分に考えられるということであるとの大臣の御所感でございましたが、私は、やはりこの当委員会の中では、その後の小嶋社長、小嶋容疑者がさまざまな場面でいろいろなことを語っておられます。そして、それは実は、当委員会の証人喚問の証言とそごを来す部分もたくさん出ています。これを、いや、もう事件として逮捕されたからということではなくて、この問題についてやはり当委員会で整理をしていかねばならない、こう思います。

 告発できるかどうかというのはまた別の問題ではありますが、少なくとも、証言拒否ということに対しての正当な理由、あるいはその決定がなされているかどうかも含めて、あるいは発言された証言とメディアに向かって発信していることのそごについて、これは委員会でやはり整理をしていくべきではないかと私は思います。

 そこで、委員長、大臣の御所見も、やはりこうした重大な発言であるということの御所感はいただきましたが、ぜひ委員会として、この問題、証人喚問をまさに空疎化させてしまう、大きな国会軽視となるおそれのあるこの事例については、委員会として整理をして、これについて十分な検討を行うということを御表明いただけませんでしょうか。

林委員長 理事会にて協議をいたします。

馬淵委員 ありがとうございます。

 少なくとも、国民の皆さん方が注視した中であのように証言拒否をなされた。もちろん、それは一方で正当な理由として該当するものか否か、それは国民の皆さん方になかなかわかりにくいわけです。しかし、逮捕をされた。では、国会は、何だ、手ぬるいなと、国民の皆さん方にそのように理解をされてしまっては何もなりません。そこは、しっかりと委員会として襟を正して取り組んでいただきたいというふうに思います。

 そして、この資料の8と9をごらんください。

 これも実は国交省としての問題があるんじゃないかなというふうに私は思っておるわけでありますが、十一月二十五日、これは、事件が発覚後、ヒューザーにヒアリングをされたものであります。これは、概要として国交省が発表されたものであります。

 9は、十二月十五日、その二十日後、三週間後に、東京都が同じくヒューザーにヒアリングをした問題なんです。もちろん、東京都は、宅建業等を都知事認可するという立場で、不動産業の認可という立場で質問されているという意味で、事件全容とはまた違う観点で質疑、聴聞をされたかもしれませんが、ここでも重大なヒューザーの答弁がここに記されています。

 下線部でありますが、グランドステージ藤沢の販売契約を終了している物件については引き渡しに必要な事務手続がほとんど終わっている、だから、実務上これはもう中止できなかったんだ、そして、報告物件になかったグランドステージ藤沢は引き渡し中止までしなければならないという判断はなかったと。

 しかし、安全でなければ引き渡しは中止しなければなりません。このヒューザーの報告を受けても、やはりこれは問題だなと十分にとらえられることなんです。

 ところが、国交省は、残念ながら、十一月二十五日の段階で、証人喚問に続いて、その後の聴聞なり調査というのは進めておられない。これについて、やはり国交省としても、強い関心を持って、本来ならば十分に聴聞等々を行っていくべきではないか、このように私は思うわけでありますが、端的に、イエス、ノーで結構です、お答えいただけませんか。大臣からは、その要否について。

 これは十一月二十五日で、もうそのままで終わっているわけですが、東京都はこのようにその後も調査をされている。今回こういう事件になっていますが、要否について端的にお答えいただけませんでしょうか。

北側国務大臣 当然、これは東京都とよく連携をとりながら、私どもやらせていただいているわけでございます。

 東京都は、宅建業者の免許権者ということで、むしろ、十二月十五日、前面に出てやっているわけでございまして、ただ、その間も、当然のこととして東京都の担当とは連携をとりながら進めさせていただいているということでございます。

馬淵委員 東京都との役割分担だというお話でございましたが、やはり、国交省としても十分にウオッチをしていくという意味では、適宜適切な対応ということをあわせてお願いを申し上げたいというふうに思います。

 この問題は、もう既に容疑者として逮捕、勾留されておられますので、逮捕、勾留の中でやがて容疑等々も明らかとなるかと思います。十分に注意を持って見守っていきたいという大臣の御答弁もかつていただいておりますので、私もその思いでおります。

 さて、ヒューザー小嶋社長は、いわゆるマンションルートと呼ばれる部分でございますが、今回の逮捕、先週の逮捕の中には、いわゆるホテルルートにかかわる木村建設両名の再逮捕も含まれておりました。これによって、いわゆるマンションルートだけではなく、ホテルルートに対しても詐欺行為がなされていたのではなかったかということにようやく当局の手が及んできたわけであります。

 そして、この詐欺容疑については、かかわる対象物件はサンホテル奈良というビジネスホテルでございます。これは私の地元の選挙区であり、このサンホテル奈良は、当初、この委員会における参考人招致や証人喚問の中でも、私が再三御指摘をさせていただいた物件として、さまざまな情報提供をいただいたホテルでもありました。

 ある意味、これによって、このサンホテル奈良のさまざまな情報提供、資料提供、これを機に事態がより明らかとなり、大きな問題となって、今回のこうした法改正、政治が動くという場面、国民の関心が高まって政治が動くという大きな場面につながったと私も思っておりますが、このサンホテル奈良をめぐる経緯、当委員会の中でこれは踏んではおりませんので、若干ここについて踏まさせていただきたいというふうに思っております。

 資料の10をごらんください。これは、私の方で報道等をベースに再整理をしたものであります。

 平成十七年の十月の二十五日、これはいわゆる内部監査によって偽装が発覚をし、イーホームズにおいて最初の会議が行われた日であります。平成十七年十月二十七日には、今度はヒューザー社において姉歯建築士も含め関係者が一堂に会して会議が行われた。この二度の会議によって偽装が明らかになっていったということが、これは繰り返し報道の中で上がっておるわけであります。

 さて、同日でありますが、平成十七年の十月二十七日のその日に、小嶋社長は上海出張中の木村建設篠塚氏に電話で姉歯氏の偽装を伝えられました。そして同日、篠塚支店長は木村社長に電話で報告をされました。これは資料の12をごらんください。資料の12は毎日新聞の五月十九日付の記事でございますが、ここに、中段から下、昨年十月二十七日、小嶋容疑者が篠塚被告に「姉歯被告による構造計算書の改ざんを電話で通知。篠塚被告は同日中に木村容疑者に電話で報告した。」と書かれております。このように、二十七日の段階で木村建設には偽装の事態が、有無が伝わっていたということが報道に供されました。

 さて、明けて十月二十九日、サンホテル奈良では試泊会というのが行われておりました。そして十一月三日、これは祝日でありますが木曜日、ホテルの引き渡しが行われ、残金の請求が行われた、オーナー側はそのように主張をされておられます。そして、サンホテル奈良のオープンセレモニーは十一月の五日に行われました。土曜日でございます。

 このサンホテル奈良、十一月五日のこのオープンセレモニーが行われた前後、七日ごろでありますが、木村建設が構造計算に姉歯を使わないようにとのファクスを関係先に送付したとされています。これは資料の12を再度ごらんください。資料の12には、冒頭の方ですね、毎日新聞のこの記事、「「姉歯使うな」指示文書」の中に、木村建設が出先事務所など複数の関係先に姉歯を使わないように指示する文書をファクスで送っていたことがわかった、こう書かれています。このように、木村建設は十分に承知をして、そして使うなというファクスまで送られている。

 十一月七日、月曜日、オーナーは木村建設、平成設計に対してサンホテル奈良の竣工、引き渡しによっての残金を支払われ、十一月十七日に国交省によって偽装問題が発覚をしました。当然、この段階で大変なパニックに陥ったわけであります。このサンホテルのオーナーとは、私は、十二月七日の参考人招致の前にお会いをし、資料提供等をいただきながらその背景についてのお話を伺ってきたわけでありますが、このように、事前に木村建設は承知をしていたとされる可能性が高いということで再逮捕容疑となったわけであります。

 さて、そこで、私は、このホテルルートについては当委員会の中で、総研、総合経営研究所の関与というものについて再三指摘をしてまいりました。総合経営研究所、通称総研が、そのコンサルティングというお立場で、設計、施工、ホテル運営も含めた全体を把握した指導を行っているのではないかという指摘をさせていただいた。そして、その上で、総研がこうした偽装については十分承知する立場にはいたのではないかということを、今回、この流れの中では感じざるを得ないわけであります。

 さて、お手元の資料11をごらんください。

 今申し上げたように、十月二十七日の段階で、小嶋社長は木村建設の社長、支店長に伝えたわけです。小嶋社長が直接伝えたのは篠塚支店長ですが、姉歯の偽装を伝えました。そして、このホテルの引き渡し、オープンセレモニーに行くわけです。木村建設、平成設計、総研、この11の座席表をごらんください。木村建設、平成設計、総研内河健氏、一緒に並んでこのオープンセレモニーを迎えておられます。このときに、段階的に言うと木村建設は既に承知しているはずなんです、十月の二十七日にはこのことが知らされている。平成設計も同様です、このことは知っている。となると、隣り合わせに座っている総研内河健氏、このことに一切触れずにオープニングセレモニーを迎えられたんでしょうか。

 さて、披露宴のスケジュールでは、ごらんいただきますように、右側のスケジュール表でありますが、来賓の祝辞として内河総研所長は祝辞を述べられることになっていました。ところが、当日になってこの祝辞は突然辞退をされキャンセル、祝辞は述べられなかったんです。また、今回詐欺の容疑で再逮捕された森下専務は中締めのあいさつをされている。このように関係する方々が一堂に会する中で、全くこのことに触れずに終わったんでしょうか。

 総研内河所長は、テレビなどのメディアを通じて、顔を合わせているが、三、四人間にいるので話もできなかったというふうにおっしゃっています。しかしながら、このように座席表を見れば、明らかに、隣に承知されている平成設計山口社長、木村建設森下専務がお座りである。こうしたパーティーの座の中で一切話がされなかったのか。極めて不自然に思えるわけであります。

 さて、こうしたオープニングセレモニーなどを受けながら、総研が、姉歯の偽装を知っている森下あるいは山口さんといった方々と一切そのことについては会話を交わさないでいたんだろうかという流れの中で、資料の13をごらんください。これは二〇〇六年の五月二十二日付の毎日新聞の記事でございます。計画段階で四ケ所氏が、これも総研の方であります。当委員会にもお越しをいただきました。四ケ所氏が「鉄筋量切り詰め明言」をされた、サンホテル奈良で、ということが報道に供されました。

 傍線部、該当部分でありますが、

  サンホテル奈良の着工から四カ月ほど前の〇四年十二月中旬、建設計画を検討する打ち合わせが木村建設の子会社「平成設計」で行われた。平成設計社長や四ケ所氏、オーナー側関係者らが出席。関係者によると四ケ所氏はこう言った。「「このところ造るホテルは鉄筋量とコンクリート量が計画を上回り、指示通りになっていない。この物件(サンホテル奈良)についてはそのあたりをきちんとみるように」と所長から言われている。私が責任を持って構造をみる。目標値を持ってやる」。内河健・総研社長の意向を伝えるような発言だった。

このように報道に供されています。

 さて、この十二月中旬ということの会議の話でありますが、出席をされた方から私は直接お話を伺うことができました。

 資料の14をごらんください。平成設計でサンホテル奈良の設計の打ち合わせが行われたのは平成十六年の十二月中旬、それは十二月の十三日のことでした。総研四ケ所氏と、ホテル指導部の総研小林氏、さらに、平成設計の山口社長、野田氏と、ここに書いてありますのはタキザワと読みます、滝沢さん、これはどんな方か。これは、先ほどのオープニングセレモニーの中にもお名前が載っています。資料の11に、ごらんいただくと滝沢義一郎さんとして載っておられます。サンホテル奈良の総支配人になられた方であります。すなわち、オーナー側の方として出席されたお一方、滝沢さんであります。

 そして、この資料の14は滝沢氏のメモであります。奈良ホテルの設計に当たっては、「構造のチェックを確実な、効率のよい設計」、意匠との整合性を図るということで「整合性」と書かれています。そして、四ケ所氏の発言を受けて滝沢氏がメモられた。「鉄筋、コンクリート等の平米あたりの目標を与える」、このようにメモを書かれておられます。

 御本人にお話を直接伺いますと、滝沢氏は、いわゆるホテルの建設会社の利益率が目標どおりにいっていないということから、四ケ所氏が設計と建設会社の指導をやるということで平成設計にきちんと指示するからと説明をされたと明言されておられます。このことは、私が、当委員会の証人喚問や、あるいは参考人招致の中でも再三指摘をさせていただいた、コンサルタントという名のもとにおきながら、実は、設計並びに施工まで十分にその権限を持ってかかわっているということの事実ではないかということであります。

 さて、では総研に対して、もちろん、当局がどのようなことを考えられているかというのは我々がそんたくする部分ではありませんが、少なくとも総研に対しても、一定の関与があるということを十分考慮しながら、国交省としては総研に対して事情聴取をなされました。これは、証人喚問の翌々日、十二月十六日のことであります。

 資料の15をごらんください。総研に対して、これは赴いて、どうも聞き取りをされたようであります。この聞き取りの概要を見ますと、ホテルのリストと、そして、これは私が指摘をした四ケ所メモの、指示メモについての内容確認でありました。しかし、これに終始しただけであったのかどうかわかりませんが、この概要が出されただけであります。

 私は、やはり今回の法改正の中でも、このコンサルタントということのあり方に非常に重要な問題があると思っております。

 まず、国交省にお尋ねと要請をさせていただきますが、事情聴取について、概要ではなく、議事録の当委員会への提出をお願い申し上げたいんですが、大臣、この事情聴取についての議事録の提出、お願いできませんでしょうか。

山本政府参考人 事情聴取について私どもが持っておりますのは、今十五ページでお示しいただいた事情聴取の概要を示す資料だけでございます。

馬淵委員 やはり、これしかないと言われると、私は、本当に国交省として、重大な事件、問題としてのかかわりを考慮して聴取されているのかと大変疑問に思うわけであります。これは大事な問題だということで認識されて、あの証人喚問の翌々日ですから、しっかりと議事録をおとりになられないんですか。この概要だけで終わりですか。これしかないと明言されるんでしょうか。イエスかノーかで結構です。局長、もう一度。

山本政府参考人 総研からの事情聴取について私どもが持っております資料、十五ページの資料だけでございます。

馬淵委員 それだと、あえて資料をおつくりにならなかったということでしょうか。これ、見ていただいたらわかりますように、一時半から三時四十五分まで二時間十五分、ヒアリング、聴取されているんですよ。ここに書かれたこと、では、これは同じことを繰り返しお聞きになられに行ったんですか。そうだとすると、これはむしろ、逆に、国交省のヒアリングの仕方そのもの、体制そのものが問題じゃないでしょうか。このように大きな問題となる可能性があるということで、十分な興味を持って、関心を持って聴取に行かれたんじゃないんでしょうか。これしか残さなかったという意図は何なんでしょうか。

 また、逆に言えば、このように報道に供されるように、次から次へと新たな事実が出てくる。本来ならば、国交省としては、先ほどヒューザーの問題に関しては東京都と連携だというふうにおっしゃいましたが、これはどうなんですか、その後、事情聴取等されましたでしょうか。お答えください。イエスかノーでお答えください。

山本政府参考人 十二月十六日に事情聴取して以降は行っておりません。

 ただし、一言御説明させていただきます。

 この十二月十六日に事情聴取をしました一番の目的は、総合研究所が関与したホテルの一覧の提供を受けることということがまず第一でございます。それから、内河所長に対する国会証人喚問時に、今の御指摘がありました提示されたメモについて、内容、趣旨を確認することが目的でございました。したがいまして、ホテル一覧の提供については若干のやりとりをしております。

馬淵委員 大半がこのホテルのやりとりだったという御説明と理解をいたします。

 しかし、それでも、このような問題にかかわっていく中で、こうした会社がどのような関与をしていくか。指摘をしたことが、再度、今この時点においても繰り返し報道に供されてくる。やはり国民の関心がどこにあるかということをよく御理解いただいた上で、事情聴取は必要とあらば再三行われるべきなんじゃないでしょうか。それを怠っているということについて、私は、非常にこれは問題であるなと感じざるを得ないんです。

 そこで、今回も、私、この法改正の中で、こうしたことに対しての十分な関心が払われて、どのような改正に向かっていくのかというのを非常に注意深く見守っていました。

 少し御説明をさせていただきますが、資料の16、これは総研がホームページで出したもの、もう既に消されたキャッシュであります。これも私が証人喚問時でも御提出しました。フルターンキー・システムと称して、すべて、その事業計画から設計、施工、運営までも、ディールパッケージとしてすべて行うんだ、これを任せてくださいという形で総研はこのビジネスのパッケージを用意している、こうした仕組みでやっている。これが、いわゆる経営コンサルだと彼らが称する部分であります。

 そして、そういいながらも、資料の17、18をごらんいただくと、これも提出させていただいたものでありますが、名鉄イン刈谷の新築工事の、木村建設の施工品質計画書、これは私が独自に入手したものであります。これについては、その中に、18には、事業監理者として、米印があるように、設計監理者に指示する形態があり、あるいは、作業所長、現場代理人、木村建設の現場代理人に指示する矢印が流れているように、この四番、「責任と権限」とありますように、権限が付されているという実態があるのではないかと、これも指摘させていただいたわけであります。

 このようなフルターンキー、一括請負で行うことについて、あるいは事業監理者という位置づけについて、総研は、メディアに対しては、そんな契約は結んでいませんと一言で終わっています。契約はないんでしょう。経営コンサルという名のもとに、フルターンキーとうたいながら、実態上事業監理者として、そして先ほどの、平成十六年十二月十三日の四ケ所氏の説明のように、明確な目標を持って指示していく、内河所長に言われたから私がやる、このようにおっしゃっている。こうした業務の実態、一括請負というものに対して、果たして国はこれを見過ごしていくんでしょうか。

 そこでお尋ねします。

 この一括請負と呼ばれるような契約、ディールパッケージあるいはフルターンキー・システム、法の枠組みでは、確かに設計でもなければ施工でもない。そして、経営コンサルだというふうに言う。しかし、現実には、そこに明確な従属関係があらわれている。平成設計との従属関係は、私が行った参考人招致で平成設計の徳永氏から明言されました。

 こういう状況の中で、いわゆる一括請負業務の受託者の持つ、例えば建物の瑕疵、あるいは設計の瑕疵責任、これはどのようにお考えでしょうか、大臣。局長ですか。

山本政府参考人 ただいま示していただきました資料の中に記されていることは事業の監理者という名称だけでございますが、御指摘の一括請負契約、これの内容がどういうものであるかということは必ずしも定かではありませんけれども、仮に、発注者、建築主の委託を受けて、設計事務所とか施工業者を選定する、そういう仕事を代行する契約、業務を意味しているとすれば、設計の瑕疵による責任、あるいはその選定されて設計者となった建築士がやった仕事の瑕疵は、この建築士ないしその所属事務所が負うことになるわけですが、問題は、その瑕疵のある設計を行った建築士事務所を選択した責任についてどう考えるかということでございます。

 これは、基本的には発注者等の、まあ代行契約に係る契約上の責任でございますので、最終的には司法の判断によらなければならないという考え方でございます。

馬淵委員 私は、そこで、これは本当に今回の法改正の中で重要な問題だなと思っている点があります。

 最後の資料に載せましたが、今回の法改正で、建築士法の二十一条の三に「違反行為の指示等の禁止」というのが盛り込まれました。これが、いわゆるこうした鉄筋を減らせとか、不当な指示をさせないということの縛りの法改正なんです。ところが、これを見ていただくとわかるように、違反行為について指示し、相談に応じたり、それらに類する行為、これをしてはならないという建築士に対しての縛りである。確かに、現行の法令の改正ではそのような形しか方法はないということも十分に勘案できますが、いいですか、非常に大事なポイントなんです。コンサルタントと称するものに対する法規制というのは実はないんですね。

 建設業界の中では、建設コンサルタントという登録業務はあります。これは任意の登録です。これは、我が国の土木事業の中でさまざまな土木工事や公共工事として発注される中で、どの程度の技量があるかということを把握するために、任意の登録制度としてできました。二十一ほどの部門があって、建設コンサルタント業登録というのがなされた業者が、それぞれ公共事業を受けたりするときに判断される登録のその指標となるものです。しかし、それ以外は、この業界に係るコンサルタントというものの縛り、何もないんです。

 ところが、現実に、このように一任契約のような形で一括請負ですべてを受けて、そして設計や施工、その選定も含めて、その表見代理のような権限を持って工事も差配するという事実が起きているじゃないですか。これを規制していく、あるいは、これをどのように法的な枠組みで考えるかというのは極めて重要な問題なんです。このことを国交省の皆さんに私が御指摘申し上げると、いや、なかなかそういったことでやっているものはない、こういうふうにおっしゃる。いや、そんなことないんです。

 例えば、投資顧問事業のような場合は、例えば、投資顧問の単に相談という部分では、財務金融の世界では、これは登録制度です。投資顧問という、相談に応じる方は、これは登録してくださいという登録制度です。そして投資一任勘定、預けるから、それ、じゃ運用任せますとなると、これは内閣総理大臣認可です。つまり、私が申し上げたいのは、コンサルタントと称しながらも、まるで投資一任のような形ですべて一括請負するという業態が生まれているんですよ。こうした業態を実は法律がもう既に追っかけられなくなっている。

 同様のことはほかにもありますよ。信託業務の中で、不動産の受益権販売をやるということが、不動産の譲渡ではなくて、有価証券、受益権の販売業務ということで、これは金融の世界になっちゃう。これも、私は、財務金融委員会の中で、信託業法の改正の中で十分指摘をしてきました。

 つまり、ビジネスモデルが変化をする中で、法律の枠組みを今までどおり建築士法、建築基準法では、もはや追い切れないんですよ。追い切れないから、このように権限だけがあって責任なし。先ほど私、国交省に対して申し上げたけれども、権限あって責任なしが野方図の状態で置かれてしまうという可能性があるんです。このような、一括請負と称されるようなコンサルティング契約が今後もこれ、このままだと横行してしまいますよ。

 大臣、これは望ましい形でしょうか。国民の皆さん方からして、このようなことが国交省所管として放置されること、これはあるべき姿なんでしょうか。いや、今ここですぐに規制の方法なりをお答えいただこうとしているのではありません。私が申し上げているのは、これほど重大な問題が、なぜこの法改正の中で十分議論なされないまま、建築士法の二十一条の三で済んでしまうんでしょう。これは私は見過ごされてはならない問題だと思います。大臣、いかがでしょうか。

北側国務大臣 非常に大事な問題を御指摘いただいていると思っております。

 ただ、この総研がおっしゃっているような実態で、一括請負契約ですか、というのをした、そして設計から施工、そしてホテル経営までですか、すべてコンサルティングをやる。そうした契約をだれと結んでいるかといいますと、これは建築主と結んでいるわけですね、建築主と。建築主と総研との間でそうした契約を交わしている。そして、総研が仮に設計事務所はどこどこにする、施工者はどこどこだ、金額はこれぐらいだというふうなことを実際は決定している、仮にこういう実態であったとした場合に、今も設計士は設計士で当然義務があるわけですね、責任もある。そして、施工者は建設業者として、当然これも、責任もあれば義務もあるというふうに、それぞれが負っているわけですね。

 ということで、今の現行の制度で建築士法があり、建設業法があり、建築基準法がありという中で、果たしてこれがそれぞれの分野できちんと対応できるならばいいのか、それとも、委員のおっしゃっているとおり、こういう形態が出てきているのだから、こういう形態について何らかの対応をやはり検討すべきではないのか、こういう御指摘と、これはぜひ勉強させていただきたいというふうに私は思います。

 ただ、基本は、冒頭申し上げたように、これは、そういう総研が出てくるのも、建築主、建築主というのは建物ができ上がるまでの全責任を負っている方々なんですね。設計者を選ぶ、施工者を選ぶ。全責任を負っている。だから、瑕疵担保責任がある、無過失責任があるわけでございまして、その建築主がまさしく総研と契約をしているわけでございまして、むしろそれは建築主との間の問題、建築主がそういう契約じゃないだろうということで総研に対して責任を追及していくという立場であることはこれまた明らかでございまして、そういうことも含めまして勉強させていただきたいと思います。

馬淵委員 大臣にこの御認識をしっかり持っていただいて、やはり私はこれは見過ごすべき点ではないと思うんですね。もちろん長い歴史の中での法律、これを改正しながら、でも、どんどんどんどんビジネスの世界は新しいビジネスモデルを開発していく、追っつかなくなるのはいたし方ないなと思うんです。しかし、知恵を絞ってそれをやっていくのがこの国会であり、行政の仕事じゃないですか。

 その意味で、私は、今非常に前向きな御答弁をいただいて、そして、これはぜひ、コンサルタントという名のもとに行われてしまうフルターンキー、一括請負契約のような形というものに対する何らかの一定の制限を加えていくということは、絶対にこの国会の中で十分な議論を重ねて、これは前に進めるべきだということを重ねて申し上げたいというふうに思います。

 そして、その上で、やはり何といっても、これも国交省にお尋ねをしたときには、いや、こんなのは特別な例だというお答えをいただいたんですが、実態を把握されているんでしょうか。これは局長で結構です。例えばこういったことで、コンサルタントと称してさまざまな業態の中でかかわってくる方というのがどれぐらいいらっしゃるかというのを、実態を把握されていますでしょうか。

竹歳政府参考人 先生は、この建設生産システムについては大変お詳しいわけでございます。

 今の日本のシステムというのはハード中心の、具体的な施工とか建築士とかそういう分野の規制ができております。ただ、今はゼネコンが中心にいろいろなことを整理していますけれども、新しい建設生産システムの中では、その上流部分であるコンストラクションマネジメントでございますとか、逆に専門工事業の職人の世界をどうするのかとか、さまざまな問題が生じておりまして、これについては幅広く勉強していきたいと思います。

 今、具体的に人数はというお話がございましたけれども、具体の、もちろん四千数百のコンサルタントという登録業者はおりますけれども、実務は、実は建設会社がそういう部分も含めて今までやってきているということだと思います。

馬淵委員 建設コンサルタント登録をしている業者を調べろという話ではなくて、私が申し上げているのは、かつて土木工事を受けていた建設コンサルタントが登録しているその業種じゃなくて、このように、まあ異業種ですよ、建設とはかかわりのない経営コンサルだとか、あるいはマーケティングのコンサルだとか、それこそ市場開発だとか、いろいろなことの観点から、結果的にはこのように建設や設計や、果ては技術の世界にまで踏み込んでしまうようなことが起き得るということを私は指摘させていただいているわけです。

 それらに対して何らかの実態調査というのを行うということ、これをぜひこの場で御明言いただけませんか。

竹歳政府参考人 国土交通省では、建設生産システムについての検討会を立ち上げようとしております。そういう中で、なかなか難しい問題でございますけれども、実態についてもヒアリング等を行っていきたいと思います。

 今先生おっしゃったように、いろいろ問題が起きているので規制だというお話が中心になっておりますけれども、実は、建設業界では、コンストラクションマネジメントとか、アメリカで幅広く行われていますように、そういう分野に新しいビジネスがあるんじゃないかという観点もございますので、プラスとマイナス両方の面から検討をしていきたいと思います。

馬淵委員 ありがとうございます。

 長時間いただきましての質疑、私は冒頭に、新社会システム研究会の報告を引き合いにして、いわゆる行政の不作為があってはならないということ、そしてさらには、権限あって責任なしというこうした状態を放置してはならないということ、これをお伝えさせていただきました。

 そして、今回の事件の中でより一つ一つ明らかになっていくホテルルート、マンションルート、こうした中で、結果的には、我々が、国会やあるいは行政がそのような不作為を行っていくとどこに波及するのかといえば、これは民です。それこそ、この悪い状態というものはすぐに伝播してしまいます。

 無責任、責任回避ということを決して許さず、そして公平公正なこの業界のさらなる発展を築くためにも、大臣の強い御決意をいただきましたので、このコンサルタントに対するさまざまな検討、私もぜひこれから前向きな、建設的な御意見なり、また御提示をいただけることを信じながら、私の質疑とさせていただきます。

 委員長を初め、きょうお願いをしました理事会での協議、重ねてお願いを申し上げて、質疑とさせていただきます。ありがとうございました。

林委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。穀田恵二君。

穀田委員 きょうは、民間検査機関の建築確認について、まず最初に聞きたいと思います。

 民間指定確認検査機関が行った建築確認に見落としなどの瑕疵があった場合、その責任はだれが負うのかという問題について、最高裁ではこの間決定が下されました。

 そこで、現行法では、民間検査機関が交付した建築確認済証については、特定行政庁の建築主事が交付する確認済証とみなすとされています。ところが、指定確認機関から特定行政庁への報告は、私、一番最初にこの議論が始まったときにお見せしましたけれども、四ページなんですね。その報告書しかなくて、検査することはない。当然、瑕疵があった場合に責任を負えと言われても、その果たしようがないというのが現実であります。この矛盾を、今回、この法案はどのように解決しているのか聞きたいと思うんです。

 もし民間指定確認検査機関の確認検査で構造計算の偽装やミスの見逃しなどがあった場合、監督強化など、本法案による変更は現行法とどのように違ってくるのか、まずお聞きしたいと思います。

山本政府参考人 特定行政庁が、民間機関の個別具体の確認事務について監督権限を強化できるように、民間確認機関に立入検査をすることができるようにいたしました。それから、逆に、今御指摘がありました民間確認機関から特定行政庁への報告でございますが、審査の状況についても、審査の主要なポイントについても、特定行政庁に報告するようにいたしました。このことによりまして、個別具体の確認事務についての特定行政庁の監督権限を強化したということでございます。

穀田委員 後でも述べますけれども、監督権限を幾ら強化しても、現実に初歩的ミスがその指定機関や特定行政庁で行われている、見過ごしている現実を見たら、その程度で物事が解決するとはとても思えません。

 そこで、地方自治体からこんな御要請が出ています。国、特定行政庁及び指定確認検査機関の役割と責任について明確にすること、特に、指定確認検査機関の行った確認検査について、当該機関に法的責任があることを法律上明記することなどの要望が出されています。

 本法案によって民間検査機関の法的責任があることが明確にされたのか、また、逆に言えば、なぜ民間検査機関の責任を明確にできないのか、この点についてお答えいただきたい。

山本政府参考人 ただいまの御指摘に端的にお答えいたしますと、現行法は、民間確認機関が建築基準関係規定に建築計画が適合しているかどうかを判定した上で確認済証を交付するということを規定しておりますので、その確認に、あるいは確認済証の交付に瑕疵があった場合には、民間確認機関が責任をとるということは建築基準法上明確だというふうに考えているからでございます。

穀田委員 そうは簡単になっていないんです。では、法律上明記したらいいじゃないか、こうなるわけでして、そうならないのは理由があるんですよ。やはり、今、先ほど一番最初に私が触れましたように、要するに、特定行政庁の確認とみなすという規定そのものに矛盾があるんです。こういう規定はそんなに多くありません。

 建築確認というのは、特定行政庁の建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならないという原則があって、特定行政庁はその瑕疵ある場合責任を負っている。一方、指定確認検査機関にも、先ほど言った、みなすとしているけれども、その責任はやはり不明確だというのが多くの自治体からの意見なわけです。

 もちろん我々は、何度も言いますように、当時、この問題についての民間開放をする際の法律に対して、そういうやり方は間違っているということで反対したことは御承知かと思うんです。だから、建築確認は自治体の事務だから、そもそも公の事務を民間が行うことに問題があるというのが私どもの考え方ですが、そういう点で、あわせて、民間が行った公の事務を公の事務とみなす場合、その民間の法的責任を明確にしておくべきだったんですね。だから、そういう点なども九八年の法改正時に作業しておくべき問題であって、その矛盾が今回の事件で露呈したと考えています。

 だから、私どもは、民間検査機関の建築確認は、今後の問題ですよね、あくまでも自治体の事務の補完、補助であって、最終責任の伴う確認済証の発行まで任せてしまうべきではないと。この点を改めない限り、今後も同様の矛盾が起こると考えています。

 そこで、民主党に質問したい。

 民主党案では、確認済証の発行権限は特定行政庁に限定するとしています。これによって、最高裁判所の判例で建築確認は自治体の事務とされたことによる、先ほど来指摘している特定行政庁との矛盾、瑕疵ある場合の民間検査機関の責任の明確化などは改善されるんでしょうか。

小宮山(泰)議員 先生御指摘のとおりでございますけれども、現状では、特定行政庁に責任は帰属するが、事前には審査が全くできないという状況にございます。これは制度上極めて問題があると言えますし、また、それによって、民主党案では、責任の丸投げを認めないで、確認済証や検査済証の発行権限を特定行政庁に限定することとしております。民間の指定確認検査機関が建築確認業務を行った場合でも、特定行政庁が確認済証や検査済証を出すこととなります。

 民間確認検査機関が不自然なチェックを行っていた場合や、民主党案で特定行政庁に設置が求められている苦情受付窓口に情報が入った場合、特定行政庁が再度精査することになり、法令違反に歯どめをかけることができるようになると考えております。

穀田委員 では、その点と関係して、私はこの間、参考人質疑その他含めて、建築確認の民間開放についてをずっと質問してきました。構造計算書偽装問題に関する緊急調査委員会は、これは何度も私指摘したことですが、「一部の検査機関が、営利企業であることから「建築主に好まれる低料金で早く」という経済原理に基づく安易な審査に流れる傾向を招いた。」こう指摘しています。一部とはいえ、営利企業であることの弊害を認めています。

 この点について、民主党案ではこの安易な審査に流れる傾向を食いとめることができるのでしょうか。

小宮山(泰)議員 そちらの方でございますけれども、確かに、安くて早くて審査が緩いところに流れる傾向というのがあったと思います。経済的にもやはり支配されるというのは、そういった状態が生じたというのは現実にあったことだと思っております。

 このような状態を解決するためにも、民主党案では、責任の丸投げを認めないということで、確認済証や検査済証の発行権限を特定行政庁に限定するということにしておりまして、特定行政庁の審査能力の向上、業務の適正化についても規定をしております。さらに、民主党案では、指定確認検査機関の業務適正化として、建築主が株式の所有関係、親族関係にある者等であるときは、確認検査等を引き受けることができないとしております。

 これらにより、指定確認検査機関が安易な審査を行うことを防ぐことができると考えております。

穀田委員 ただ、今ありました民間の検査機関が現実に存在するというもとで、どうしてこれを、全体として、安全性を確保するための方策として実らせるかという問題については、若干の態度を私どもとしては既に発表していますので、また、多くの皆さんはそれを見ていただければと思っています。

 そこで、次に、丸投げ問題について聞きたいと思うんです。

 大手ゼネコンが工事を下請に丸投げすることが問題となりました。姉歯元建築士が偽装したマンションやホテル計九十八件のうち、二十二件が鹿島や太平工業など元請のゼネコンなどから木村建設に丸投げされていた。分譲マンションの丸投げは計九件だった。施工を元請したゼネコンが中小の建設会社に丸投げするケースは、一般の建築工事でよく見られます。しかし、大手業者の施工かどうかはマンション選びの重要な目安になっているにもかかわらず、実際は別の業者に丸投げされている。これは消費者から見れば不当表示です。

 国交省として、何らかの手は打ったのでしょうか。

竹歳政府参考人 まず、現行の建設業法でございますけれども、民間工事におきましては、発注者の書面の承諾があれば一括下請は違法なものではありません。これは、発注者保護の観点から、発注者の信頼を裏切る行為である一括下請負を原則として禁じているものの、保護される対象である発注者自身が一括下請負を承諾している場合には、これを禁じるまでもないとの考えによるものです。

 しかしながら、今御指摘のように、分譲マンションの場合においては、発注者とマンションを買われるエンドユーザーが異なるという状況でございます。こういう場合には、購入者の信頼を損なうのではないかという御指摘がまさにあったと思います。

 このため、消費者の利益を保護する観点から、一括下請負については情報開示のあり方も含め検討することが必要であると考えておりまして、分譲マンションの広告における表示内容の適正化について、不動産業界の自主ルールを定めてもらうよう不動産公正取引協議会連合会等と相談しているほか、六月に総合政策局に建設産業政策研究会というものを設置する予定にしておりまして、そこで一括下請負を含む施工体制のあり方についても検討していきたいと考えております。

穀田委員 情報開示は当然だし、それから、自主ルールといってもそれは要請しているだけで、だから、緊急調査委員会報告でも指摘しているわけで、マンションの場合というのは、何回も言うように、購入者は建築主ではないわけなんですよね。購入者の同意があればまだしも、大体、建設前には購入者は決まっていないわけだから、どう考えたってそれはおかしいわけなんですよ。

 そこで、大臣にこの点はお聞きしておきたいんです。

 緊急調査委員会報告でも「分譲マンションのような発注者(建築主)と、建設された建築物の最終所有者とが異なる場合は、互いの利益が相反することがある。」と指摘しているとおりだと私も考えるんですね。マンションなどの建築物というのは、要するに建築主の同意なんかを外せばそれはいいわけで、そういう法改正をすべきではないか。もちろん、研究会をやるというのはわかるんですよ。大臣の政治的な見解についてお聞きしておきたい。

北側国務大臣 分譲マンションの場合に、建築主とそしてエンドユーザー、要するに住宅取得者が違うわけでございますから、その住宅取得者の保護を図るという観点から、私は、所要の見直しをすべきだということで大分前に指示をしているわけでございます。そういうことで、今竹歳局長が答弁したような取り組みもしているわけでございますが、今後、制度的に、単に自主的に云々ではなくて制度的に、表示についても、きちんと表示をしていくということについて義務づけすべきかどうか、そこはぜひ検討させていただきたいと思っております。

穀田委員 研究会が開かれるし、それで見直しすべきだということがありますから、私は、法改正に踏み込んできちんとやろうということを改めて提起だけしておきたいと思います。

 次に、偽装問題についてもう少し触れていきたいと思うんです、後半は。

 この前、関西で初めてマンションで耐震強度不足が判明しています。また、国交省がこの間、民間検査機関から抽出した百三件のうち十五件に疑問があることも公表されています。さらに、ことしの四月二十四日には、不動産業者によるマンションの耐震性の再確認に関する調査結果が発表されていて、五件、強度不足物件が判明しています。このように、調べれば調べるほど問題物件が明らかになっているんです。

 そこで、第一に、大阪のマンションで耐震強度不足が判明した点について、大阪市城東区の内容なんですが、この概要と原因を簡単にお知らせください。

山本政府参考人 指定確認検査機関が確認を行いました大阪市内の一物件でございますが、建築基準法上必要な耐震強度が確保されていないということが確認されました。

 大阪市からの報告によりますと、当該物件は、必要保有水平耐力の計算過程で誤って適正でない数値が入力されたことなどによりまして、大規模地震時の強度の指標値Qu/Qunが〇・六一程度となっており、また、指定確認機関もその誤りを見抜くことができなかったと聞いております。

 大阪市におきましては、既に、建築主などに対しまして、建築物の耐震性を確保するために早急に是正措置を講ずるよう指示したというふうに聞いております。

穀田委員 簡単に言うと、原因というのは二つあると。建築士の数値入力ミス、それからERIのミスの見落としということなわけですな。

 建築主の日本リートは、住民説明会でこう言っているんですね。全く単純なミスだと言っています。ただ、説明を受けた住民からは、単純な入力ミスと言うけれども、素人にはわかりにくいという声が当然上がったわけです。単純な入力ミスがなぜ起こるのか、そのミスがなぜ見逃されるのか。今度の事態の中で、国交省はその内容をつかんでいますか。

山本政府参考人 大阪市の物件の確認検査は日本ERIがやったわけですけれども、基本的に、なぜこれを見過ごしてしまったかという部分について、今の段階でつまびらかになっていないといいますか、要するに審査のポイントを踏まえていなかったということに尽きるというふうに受けとめております。

穀田委員 そこで、一番最初に戻るんですけれども、そういうミスというのを見逃されるということで、これは、検査を強化したり立ち入りをやっただけでは、そう簡単にはなかなか直らないよということを私は一つ言いたかったわけですよね。

 あわせて、私が前に指摘した横浜のケースもありますよね。これも報道でいうと、田中構造計画研究所の確認申請をERIが審査した。耐震壁などが基準を満たしていないと指摘した。基準を満たすにはコンクリートと鉄筋の強度補強が必要だったが、同研究所は鉄筋だけを補強し、ERIに再提出した。ERIは見落として建築確認を出した。こういうことでしたよね。それで、構造計算は建築士資格のない社員が行って、建築士のチェックも受けていなかった。確認検査機関の日本ERIに不備を指摘された後のやり直しも同じ社員が行っていた。こういう経過だと。

 つまり、資格のない社員が構造設計を行い、建築士のチェックなしでERIに確認申請を出した。ERIは一たん不備を指摘したけれども、やり直しが不十分な再申請をチェックせずに確認した。全く初歩的ミスと言えるけれども、間違いありませんね。

山本政府参考人 横浜のケースの事実関係は御指摘のとおりでございます。

 特に、建築確認機関におけるミスは、指摘して再び上がってきたものについてこれをチェックできなかったということですので、ミスとしても重大であるというふうに考えております。

穀田委員 だから、こういう初歩的で、しかも重大なミスが起こるというのが今の現実であるわけです。

 なぜ無資格者が構造計算ができるのか。有資格者である一級建築士がきちんとチェックして、みずからの責任で申請書を出す必要があったわけだけれども、それをしなかった。しなかっただけではないんですね。担当所員は何と言っているかというと、以前から強度不足を認識しながら、指定確認検査機関に確認申請をしていた。所員は市の聴取に、時間に追われ、ミスを指摘された後で修正すればいいと思ったとまで言っているんですよ。だから、まさに法令違反、やるべきことをやっていない、これが広く常態化していたというところに問題がある。

 ですから、今回の法改正で、こうした初歩的ミスと思われる事例は改善されるんでしょうか。端的にお答えいただきたい。

山本政府参考人 御指摘いただきました二つの事案は二つとも、今回の改正案によりまして、第三者の構造適合性判定を受けるべき物件でございます。したがいまして、この第三者による構造安全性についての厳密な審査を受けることになりますので、両事案とも、新しい制度のもとで審査を行えばチェックはできるというふうに考えております。

穀田委員 そこはちょっと異論があるところで、そう簡単にはならぬと。

 それが発見されるという場合、またいろいろなことが起きる可能性はあるわけですけれども、問題は、構造設計者側の責任そして自覚、これの欠如が一つあるわけで、もう一つは、検査機関の無責任さ、検査のずさんさ、こういう二つの、いわばつくる側と検査する側の両方の内容が改善されてこそ法改正の意味があるというふうに私は一貫して考えているわけです。問題は、こうした事例が特殊じゃなくて常態化しているということについて、ぜひ私は注意を喚起しておきたいと思っています。

 そこで、初歩的ミスには、簡単に言うと、チェック体制、機能、これのほころびや不備があって、それの改善が必要だ。問題は、そういうときに何が背景にあるのかについて問われてくると考えます。

 そこで、国交省が実施したサンプル調査についてお聞きしたいと思っています。

 民間検査機関十三社からの、抜き取り調査五百件のうち設計条件の厳しい物件百三件、そのうち十五件が強度不足の可能性があるとされています。確認したい。一つは、このうち、偽装が確認されたものはないということだけれども、強度不足の疑問がある物件がなぜ確認検査を通ったのか。検査側は確認していないか、それか見落としミスか、こういうことですわね、聞きたい。二つ目に、強度不足の疑問がある物件の設計者は資格、技術能力はあったのか。これは大事な問題ですから、もう既に調べていると思いますが、お聞きしたい。

山本政府参考人 今御指摘いただきましたサンプリング調査は、今回事案を契機といたしまして、国が指定しております五十機関の民間の機関に対しまして、昨年末に立入検査をいたしました。この検査に際しまして、各機関ごとにあらかじめ抽出された直近の確認済みの物件、これは階数十階以上のものを優先して出していただいていたわけですけれども、この中から、鉄筋コンクリート造を優先して、まず五十件を各機関ごとに抽出しました。

 その五十件の中から、今回の事案の問題であります柱、はりの断面積あるいは鉄筋の本数、鉄筋の径などをチェックしまして、設計条件が相対的に厳しいと思われるものを十件抽出しまして、これについては、実際に確認検査をした検査員と検査官がやりとりをしまして、いろいろ問題点を整理したものでございます。その上で、この十件の中から、さらに、今言いましたいろいろな条件をチェックした上で、設計条件が一番厳しいと思われるものを二つ取り出しまして、設計図書を全部私どもは持ち帰りました。これが百三件でございます、全部合わせまして。この百三件に対して専門家に調査をしていただいたわけでございます。

 いろいろ問題点の対応はあるんですが、例えば構造図あるいは構造計算書相互の不整合といったような形で疑問点があるわけでございまして、五月十六日に、確認を行った指定確認検査機関、それから特定行政庁に結果を伝えて、改めて問題点等、法適合性について今精査を求めているところでございます。

 それから、二番目に御指摘いただきました民間機関の検査員の能力の問題でございますけれども、これは立入検査で今言いましたものを材料に検査員とやりとりをした上で、問題点がある検査員につきましては、整理した上で指導しているところでございます。

穀田委員 その前半の話は、私は、今も言いましたように設計条件の厳しいということで、わかっているわけですよね。それは言っていただかなくても大体わかっているんです。

 今言ったように、なぜ検査機関を、確認検査を通ったのかということなんですよ、それらが。もう一つは、強度不足の疑問がある物件の設計者は資格だとか技術能力はあったのか。検査する側と違って、強度不足の疑問がある物件の設計者、それは資格、技術能力というのはあったんかいなということを聞いているんですけれどもね。もう一度、簡単に。

山本政府参考人 その部分を、十五の物件についてすべて確認をした確認機関とそれから特定行政庁に戻しまして、特定行政庁において設計者とか所有者とやりとりをして、今のような問題点について精査をしているところでございます。

穀田委員 だから、精査しているから今はわからないということやね、簡単に言えば。

 だけれども、これはとても大事なことで、私が言ったのは、なぜ確認を通ったのか。それから、やったところは、つまり二つですわな、つくる側と検査する側があるわけやから、そっちがどっちも資格があるのか、能力があるのかという二つを調べなければ、現実の建物の評価に伴っていろいろ問題が起きている内容を、何が問題かということについては、少なくとも最低限の条件として、それは資料として押さえなきゃだめだということを私は言っているわけですね。それを至急やってくれということです。

 今お聞きした中で、簡単に言うと、設計条件の厳しいというのは、今、柱だとか、はりだとか鉄筋だとかとありましたように、要するに余裕が少ないということですわな。簡単に言えば、耐震基準ぎりぎりでの設計。これは、一番最初に思い出します、小嶋社長などが経済設計が何が悪いというようなことを平気で言っていましたけれども、要するに、一般的に言う経済設計ということなんですかね。

山本政府参考人 一概にレッテルを張るのはなかなか難しいと思うんですが、要するにコストを下げているということでございます。

穀田委員 そちら流に言えば、コストを下げている。これは、ただ、私が大事だなと思うのは、局長、コストを下げていると言っているのは、やはり小嶋さんも言っているんですよ、何が悪いと言って。だから、これが経済設計なんだと言っているわけだから、世に言う経済設計であるということは認めておられる、しかも、それがコストを下げているというところまで来たというところが大事だと。

 だとすると、私は、その構造物というか建物というのが、つくった人たち、つまり建築士または事務所が経済設計を手がけていた可能性もあって、他の構造設計は大丈夫かどうか調べる必要があるわけですね。当然、そういうぎりぎり、最初にありましたようにいわゆる設計条件の厳しい物件としてどうも出てきている、その人たちがやった、建築士または事務所がそのほかのところでも経済設計を手がけていた可能性もある、そこを調べることが相当大事だと思うんですね。さらに、設計の依頼主は、ヒューザーのように経済設計を要求していなかったのかどうか、これも調べる必要がありますよね。私が言っているのはわかりますわな。

 そこでやったところと、それを注文したところがそこでやっていなかったかというのが、この間の一連の中で起きている事象からして、今後の事態からしても、安全性を確かめる上でも一つの幹となるという意味から言っているわけですが、この点はどこまで進んでいますか。

山本政府参考人 具体的な事例で御報告いたしますと、まず、横浜市内で構造計算に誤りが判明しました物件は、構造設計者である田中テル也一級建築士が関与した物件でございます。これについては、特定行政庁と協力しまして、この田中テル也一級建築士が関与した物件について同様な誤りがないかどうか、個別の物件について調査を行っているところでございます。八物件が特定されておりまして、七件が調査済みでございます。調査済みについてはいずれも偽装はなく、耐震性にも問題がない旨報告を受けております。

 それから、もう一つの例を申し上げますと、熊本県内で、木村建設に関連する物件で、構造計算に誤りが判明した二物件がございまして、これも構造設計者である設計事業者の関与物件について熊本県において調査を進めております。今、これまでの報告では、耐震性等に問題がある物件の報告は受けておりません。

 同じように、大阪市についても、先ほど今精査していると申し上げましたけれども、同じような考え方でやってまいります。

 ただ、御指摘がありましたその発注者について、発注者がほかに関与したものについてというところまでは今やっておりません。

穀田委員 先ほど私、横浜の例を出したわけですね。皆さんお聞き及びかと思います。それが実はこの例なんですよね。

 だから、わかっている範疇は、それは特定的なものはそうなんですよ。明らかにそれぞれの特定行政庁でミスをした、それから、これを検査で通して失敗をしたというものは、それは大体やっているんですよ。それはわかっているんです。

 問題は、先ほど言った百三件のうち十五件が強度不足の可能性があるとされた、そういう事態のもとで、そのほかに四百件もやっていますね。もちろんやっていますよ、そちらは。それは知っているんです。問題は、そういうところから二つの例を出したけれどもあとはないというのが実際だと思うんだけれども、やはり私は、全部きちんと調べて、そういうものが一つの、一番わかりやすいところなんだから、きちんとしていく必要があるんじゃないか。

 つまり、この調査から、皆さんがせっかく調査なすったところから言えることは、余裕が少ない構造設計の百三のうち十五件、簡単に言うと一五%は強度に疑問があるという可能性が高いということなわけですね。

 だから、五百件の抽出方法は、先ほどありましたように五十件それぞれの機関ごとに抽出していただいて、その中から二件選んだ方法なわけだから、もちろん単純に五百件のうち十五件とならないのは、それは当たり前ですよね。でも、余裕の少ない設計が全体の中でどれくらいあるか、いわゆる経済設計と言われる物件がどれだけあるのか、これがもしわかれば、先ほど言いましたようにこの物件を集中的に検証すればよくて、経済設計と言われるそういうものの中で少なくとも一五%の確率で疑問物件があるということは、今の数値上は考えられるわけですね。

 だから、検査機関によっては経済設計物件が多いところも少ないところもあるだろうから、その意味で、監視、監督する上でも効率的であります。こういうサンプル調査も検討すべきではないでしょうか。率直な御意見をお聞きしたいと思います。

山本政府参考人 経済設計の定義が非常に難しいものですから、建築基準法上の最低基準をとにかく満たしていればいいんだという考え方で、そういう思想で設計されたものがどれだけあるかという観点から調査するのはなかなか難しいものですから、今、その百三の調査は定性的に申し上げたんですが。

 そのほかにも、マンションについて、四百件の調査に今取り組んでおります。これは、現実に、過去五年間に六千棟中高層のマンションが建っておりますけれども、その六千棟から無作為に四百件を抽出して調査をしようというものでして、これは既に三百二十件を抽出し、居住者、管理組合の同意も得て調査に入っておりますけれども、そういうふうなことから統計的な意味のある形で抽出して調査し、結果を公表したいというふうに考えているところです。

穀田委員 私、今無理を言っているわけじゃないんです。経済設計という定義づけでいいますと、なかなか難しいというのはありますよ。でも、お互いにわかっていることで、これは最後大臣にお聞きしたいわけですけれども、それは定義づけという問題を言っているんじゃなくて、それぞれの特定行政庁や民間検査機関に対して抽出してくれということを最初から言うわけでして、先ほどあったように、あらかじめ設計条件の厳しい物件という形でお互いに認識が一致するわけですね。そこからはかれるわけですから、私は、そういうサンプル調査もきちんとしていく必要があるだろうと考えています。

 そこで、結果的に、私がるる述べました経済設計というのが、やはり偽装や強度不足の背景要因になっている証左とも言えるだろうと考えます。この経済設計を推進したり持ち上げたりする業界のコスト削減第一の風潮に対する警鐘を私は鳴らす必要があるんじゃないかと。先ほど経済設計ということを、定義づけの一つとして、もちろんいろいろな考え方はあるでしょうけれども、簡単に言えばコスト削減ということを言っていましたが、こういうコスト削減一辺倒の経済設計を技術進歩だとして吹聴する向きもあるが、私は履き違えたらだめだと思っています。安全第一こそ建築技術の進歩のかなめであることを、今回の事件をきっかけに徹底する必要があると思います。

 したがいまして、私の今述べた点での大臣の見解をお伺いして、質問としたいと思います。

北側国務大臣 穀田委員の今の御趣旨は、非常に大事な視点だと思います。

 住宅取得者からしますと、建物の構造の部分、これは安全第一に、安全性を重視してつくってもらいたいというのがやはり住宅取得する側の思いだと私は思います。

 建築基準法というのはあくまで最低基準を定めたものでございまして、私は、やはりそういう消費者、住宅取得者の観点から考えた場合には、安全度の方に余裕を持った建築設計が特に構造部分においてはなされることが大切であるというふうに思っておりまして、ぜひ、そういう安全面についての物差しといいますか、そういうのが住宅取得者や消費者にわかるように、きちんとしていくべきなんだろうなというふうに思っているところでございます。

 いずれにしましても、一部の方々の中に、経済設計といいますかコスト削減を競争していくような、そういう風潮については、私は決してよくないというふうに考えております。

穀田委員 私は、何回も建築基準法の改正の議論だとかそれからこの間の偽装事件で提起してきましたように、ただ、このコスト削減という背景の中には、九五年以来の、政府のやはり全体としてコスト削減が第一だ、規制緩和は当然だという背景があったことだけは何度も指摘していますので、その点はお忘れなく認識しておいてほしい。このことを述べて、終わります。

林委員長 日森文尋君。

日森委員 藤田社長が逮捕されて、イーホームズ社は今月末で廃業するということになりました。逮捕理由等々についてはここで触れませんけれども、国土交通省は先日の委員会の答弁で、このイーホームズの指定に関しては適正に審査をしたというふうにお答えをしておりますが、しかし、どうもいろいろ仄聞するところによると、ずさんな審査だったのではないかということと同時に、基本的には、営利を目的とする民間企業に公的事務をゆだねる、そこに潜む危険性について、国土交通省自身の認識が非常に甘かったのではないかというふうに言わざるを得ないと思うんです。

 そこで、イーホームズ社が廃業するに伴って、イーホームズが持っていた設計図などの建築確認関連の図書が、その建物が存在する特定行政庁、自治体に引き継がれるということになっていて、また、イーホームズ社が建築確認をして工事中のもの、これについての中間検査であるとか完了検査についても、その建物が存在をする特定行政庁が行うということになるわけです。

 先日も若干触れましたけれども、特定行政庁、大変戸惑いもあるわけですね。市場原理、競争原理の中にこういう公的事務をほうり込んでしまったわけですから、今後も当然、イーホームズと同じように、倒産するであるとか廃業するであるとかいう指定検査機関が出てくるということは予想できるわけです。

 そこで、こうした問題も含めて、具体的にどのような対応を国土交通省はしていくのか、まずそれについてお聞きをしたいと思います。

山本政府参考人 指定確認検査機関が業務を廃止いたしましたときには、建築物の台帳を指定権者に引き継ぐ、それから、建築確認申請図書などの書類を当該建築物が所在する特定行政庁に引き継がなければならないということを規定しております。したがいまして、特定行政庁におきましては、所管区域に存在する建築物に係る書類を引き継いだ上で、みずから定める書類の保存期間に応じて当該書類を適切に保存または処分する、その上で、基準法が定めるもろもろの行政をとり行っていくということになります。

 そういうことで、イーホームズが業務を廃止するということを言ってきておりまして、これに関連して、特定行政庁、例えば新宿区などから、円滑な図書の引き継ぎについて配慮すべきだというような要請も行われております。この制度を導入しましてから民間指定確認機関が業務を廃止するというのは初めてのケースでございますので、御指摘いただきました考え方を受けとめまして、引き継ぎが円滑に行われますように、イーホームズとも的確にやりとりをした上で、さらに特定行政庁とも情報を共有して、連携しつつ進んでまいりたいと考えております。

日森委員 関連して、イーホームズの問題が端的に示しているんですが、今回の法改正で指定確認検査機関の指定基準が拡充されるということになるわけですが、その一つが、常勤確認検査員をふやす、拡充する。もう一つが、確認検査の公正さを維持するために、指定検査機関を実質的に支配する関係にある親会社、これは建築業務をしてはいけませんということになるわけです。

 先ほどの問題と関連するんですが、九八年の法改正のときには、これは絶対大丈夫ですよ、こう言って民間に開放したわけですね。しかし、実際にこういう問題が起きてみると、今までの指定検査機関の指定基準では、公平性、中立性あるいは独立性が損なわれているというふうに判断をされたから、今度改正を行うということになっているんだと思うんです。

 まず、そういうふうにお考えになって今度指定確認機関の基準を拡充されたのかどうなのか。そうならば、どういう点で公平性であるとか中立性であるとか独立性が損なわれているのか。そうでないというのであれば、なぜこの基準の拡充を行うのか。これについてお答えいただきたいと思います。

山本政府参考人 まず、今回の偽装が見抜けなかったことについての認識でございますが、通常行われるべき審査が不十分だったということ、偽装が非常に多様でございますので、あるいは、見抜くためには再計算とか高度な審査が必要なものがあったということで、さまざま指摘されるわけですが、今具体的に御指摘いただきました、審査の際に公正中立性が確保されなかったために偽装が見過ごされたというケースはなかったというふうに考えております。

 一方、お話にありましたように、今回の改正案では、確認検査を的確に実施するということを確保するために人員の体制それから経理的基礎の要件を見直すわけですが、それとあわせて公正中立性の要件も見直しを行おうとしております。

 その趣旨でございますが、現行の規定では、建築確認検査に利害がある住宅メーカーなどを営む者が原則として二分の一未満まで出資できることとしておりますけれども、この制度導入当初は、この仕事を引き受ける指定確認機関がきちんと手を挙げてくれるだろうかという問題意識があったんですが、既に指定確認検査機関が百二十三ございます。そういったようなことを踏まえますと、今回の問題を当委員会を初め国会あるいは審議会、緊急調査委員会などで御審議いただく際に、制度に対する信頼性という観点から、公正中立性をきちんとやることが国民の信頼を確保する方途だという御指摘もいただいておりますので、この際、指定基準の拡充を図ることとしたものでございます。

日森委員 よくわからない答えなんですが。

 要するに、現行の基準では、公平性や中立性、独立性が担保できないおそれがあるから強化するんでしょう。そういうふうに言ってくれたらいいんですよ。だから、現行制度ではだめだったんですよ、九八年のときの。不十分だったんでしょう。だから強化するんじゃないですか。それが原因じゃないと言うけれども、やはりそこが一番心配なところなんでしょう。

 そこで、関連しますけれども、やはり市場原理、ここに開放してしまったということは大きな要因になっているんですが、確認事務という公的業務に影響を与えかねない、そういう基本的な要因については完全に排除しておくということが必要なのではないか。

 先ほど、株の保有率二分の一以下というふうにおっしゃっていましたが、例えば、建設業務に係る企業の指定確認検査機関に対する株式所有、これは一切だめだ、排除するというような厳しい対応をしていかないと、さらに、いやいや、少し強化したけれどもやはりまただめだったということになりかねないのではないかという思いがあるんですが、これについてお考えをお聞かせいただきたいと思います。

山本政府参考人 先ほども御説明しましたように、現行制度でも公正中立性に関する規定は設けております。今、出資の関係では、原則として二分の一未満、こうしておりますが、今回の改正において、指定確認検査機関の経営を実質的に支配することが可能となる関係にある親会社等が設計、工事監理、施工などの業務を行ってはならないということを法令上明確化する、あわせまして、役職員や出資割合の制限についても大幅に強化したいと考えております。

 一方、建築業務に係る企業の指定確認検査機関の株式所有を一切排除する、あるいはそもそも株式会社に仕事をさせるべきでないという話は、この仕事の性格に照らして、一定の専門的な能力を持っている者であれば建築基準規定に適合しているかどうかの判断はできるという点を考えますと、経済活動に対する過剰な規制となる可能性もございますので、一切排除するということは困難であろうと考えております。

 いずれにしましても、確認検査の業務の公正な実施に支障を及ぼすおそれがないものとして、どのような出資割合の要件を規定すべきかなどにつきましては、公正中立性の観点から、今後、引き続き有識者などの意見も踏まえまして検討してまいります。

日森委員 それは、ぜひ厳しい検討をしていただきたいと思うんです。

 資料によると、今回の構造計算の偽装パターンというのは二つあって、単純な差しかえというのと、比較的巧妙な改ざんがあった。これは、差しかえと異なって出力結果に連続性がある、したがって詳細なチェックが必要になったという二つのパターンがあったわけです。構造計算プログラムの開発企業からのヒアリングによりますと、後者の巧妙な偽装パターン、これは、改ざんが可能なプログラムがありますというふうにおっしゃっているようなんです。

 そこで、偽装発覚以降、認定プログラムの総点検、これは先日もお伺いしたんですが、これをきちんとやったのか。また、現在認定されている構造計算プログラムで、姉歯容疑者が行ったような偽装可能なプログラムというのは幾つぐらいあるんでしょうか。あるとすれば、それらのプログラムへの対応というのは、国土交通省は具体的にどう行ってきたのか。

 これは仮にの話ですが、偽装可能なプログラムがあるというふうに開発企業が言っているわけですが、この偽装可能なプログラムが現在でも使用されているとすると、構造計算の審査というものは、具体的に、それに対するガードをしなきゃいけないわけなので、どのように改善をされているのか、これをお聞かせいただきたいと思います。

山本政府参考人 現在百六の構造計算プログラムが大臣認定されておりますけれども、大臣認定を取得する際の必要な性能評価の際には、構造設計者によって適切な計算条件が入力されることを前提に、プログラムが構造計算を法令等に従って正しく実行することなどの項目について審査しておりまして、今回偽装に用いられた大臣認定プログラムについても、このような性能評価を経て認定したものでございます。

 認定したものではございますが、今回の偽装物件では、構造計算書を途中で差しかえたり、あるいはコンピューターの計算途上の数値を、あるいはその出力結果の一部を張りかえたりといったような行為が見受けられているわけでございます。

 今回の事案を契機に、確認検査過程を総点検する中で、社会資本整備審議会の建築分科会での御検討に資するために、この認定プログラムのプロジェクトチームもつくりまして、いろいろ検討してもらいました。

 検討した結果、中間報告では、次のような構造プログラムについての御指摘をいただいております。大臣認定プログラムでは、建築基準法令の規定に適合しない数値はそもそも入力できないようにすること、それから、構造計算途上での改ざん、あるいは計算結果を保存しているときにその保存データが改ざんされるということを防止するための措置が講じられていることといったような内容について、国土交通大臣が認定を行う必要があるという御指摘をいただきました。

 国土交通省としては、これを踏まえて、構造計算プログラムの偽装、あるいは誤用の防止策ですね、誤って使われることの防止策を講じたいとしております。

 審議会でいろいろな議論をしていただいている過程もありまして、たくさんのプログラム開発会社がございますけれども、各社では、例えば、入力できる数値を建築基準法令の規定の範囲内に制限する、あるいは出力ファイルを暗号化するといったような改ざん防止装置、そういったような構造計算書の偽装防止に向けた措置を講じていると聞いております。

 そのこともありましたので、そういう意味では、大臣計算プログラムの総点検をした上で、改めて認定をするということを考えております。

日森委員 当然改善をしていかなきゃいけないわけですが、そこで、今おっしゃったようなさまざまな改善を加えた上で、新たに認定をされる。そのプログラムを認定した場合、これから、特定行政庁や民間の指定検査機関にどのように具体的にそのことを伝えて、伝えてというか、きっちりとできるように伝達していくのか。周知徹底というのはどういうふうに行っていくのか。

 例えば、この間も申し上げたんですが、どなたかもおっしゃっていました。読売新聞の記事の調査によると、プログラムを持っていないとか、そういう特定行政庁がいっぱいあるわけですよ。使い方もよくわからぬとか、初めて買ったとか。今度新たに、今までと違ってもっと厳しい、しっかりブロックがかかったものを認定していく。これはかなり徹底していかないと、特定行政庁も仕事が随分厳しくなるわけですね。責任も重くなるわけですよ。

 ということで、その辺について具体的にどのようにしっかりと国土交通省の考え方を伝えていくのか。もしお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。

山本政府参考人 大臣認定プログラムの使用とそれから建築確認の実務との関係でございますが、現行の大臣認定プログラムの制度は、平成十二年六月から施行されたものですけれども、基準法令の規定に基づきまして、大臣認定を取得した構造計算プログラムについて、大臣が指定した構造計算書の計算過程について申請時にその部分の申請図書を省略することができる、添付することを省略することができるとしたものでございます。

 これは、通常、構造計算書は膨大な量となることが多くて、申請者にとっても、審査を行う建築主事、指定確認検査機関にとっても大きな負担となることから、大臣認定を取得した構造計算プログラムを使用してエラーなく一貫計算を終了するなど、一定の条件を満たす構造計算書については、申請時に膨大な構造計算過程の図書を提出する必要がない、そういうことで確認審査の合理化を図ったものでございます。

 今回の姉歯の事案が明らかになってから、偽装があるかないかを正確に見るためには再計算しなきゃいかぬという事態が生じたものですから、従来は今申し上げましたような形で、建築確認審査にプログラムで再計算をするということは求めておりませんので、確認検査機関も建築主事もプログラムを持っていなかったわけですけれども、今回の事案が明らかになって、それに緊急に対応する過程で特定行政庁等がプログラムを入手しようとしたことは事実でございます。

 ただ、今度お願いしております法改正案が成立いたしますれば、第三者機関で専門的に審査していただいたり、あるいはそこで再計算をしたりするということになりますので、具体的に建築確認の部隊が構造計算プログラムを操作するという必要はないわけでございます。

 しかし、それでも今申し上げましたような事情がございますので、国土交通省では、大臣認定を行いました構造計算プログラムなどの情報を逐次公表しておりまして、ホームページなどに掲載しておりまして、この情報につきましては、特定行政庁、指定確認機関はもちろんでございますが、一般の方々も情報共有できるようになっております。

 それから、大臣認定プログラムで図書省略制度を御利用になる場合は、建築確認申請時に、大臣認定書の写し、それからその添付書類であるプログラムの概要、適用範囲を示したチェックリストなどを添付することとしておりまして、建築主事とか指定確認検査機関は、それらによりまして当該プログラムの内容を把握した上で審査をするということになるわけでございます。

日森委員 ぜひ支援を強めていただきたいと思うんです。

 ちょっと別の質問になりますが、先日、参考人に来ていただいて、大変貴重な御意見をたくさん伺いました。

 その中で、設計と施工というものは分離してやるのが、独立してやるのが一番理想的だという意見がございました。また、一つの施工、建築主の流れの中で、今度のような事件は、設計施工は一緒というよりも建築主も一緒でありまして、全部何か一つのグループの中でやっている、だから今度のような事件が起きたのだ、これはもう非常に異常な行為だと思っていますという参考人の方々の意見がありました。

 民間で建物が建築される場合、それは当然、民間同士の契約において行われるものであるから、行政が民間に口出しするというのはいかがなものかという意見があることも承知をしていますが、しかし、問題は国民の生命財産に直接かかわる問題であることを考えれば、設計、施工、工事監理の独立性を担保するための、これは今までもこういう意見が出ていますが、法的な規制というのはあってしかるべきではないのかというふうに私どもは考えているわけです。

 また、それとのかかわりで、建築主や元請である施工者がその地位を利用して違法な設計を指示、強要した場合の罰則を建設業法等にも広げて、きちんと対応していくべきではないのかというふうに思いますが、国土交通省の御意見をお伺いしたいと思います。

山本政府参考人 現在、設計、施工、監理につきましては、分離方式、一貫方式の両方の方式が行われているという実態がございます。設計と施工を一貫して行う方式につきましては、設計意図を十分理解した施工や、あるいは施工方法も含めて検討された適切な建築計画の設計が可能となるといったメリットが考えられるわけでございまして、設計と施工を常に分離することが望ましいとまでは考えていないわけでございます。

 しかしながら、設計、施工を一貫して行う方式あるいは分離して行う方式のいずれの方式をとる場合においても、適切な建築活動を担保し、建築物の質の確保と向上を図るため、設計図書どおりに施工が行われているかどうかを監理する工事監理が適正に行われることが重要であると考えます。

 工事監理業務の適正化につきましては、社会資本整備審議会の中間報告におきましても、仕事の中身を明確に双方にわかるようにするということを検討するということと、あるいは、工事監理業務適正化の一つとして、工事施工者と利害関係のない第三者の建築士による工事監理を義務づけることについて、必要性や実効性について検討が必要とされております。

 これらの論点を含めまして、建築士制度のあり方についてしっかり御検討いただいた上で、夏までに方針をまとめていただき、所要の見直しを行っていく考えです。

 それからあと、罰則のお話ですが、お願いしております建築基準法の罰則は今御指摘いただいたとおりでございますが、建築基準法に違反した建設業者あるいは宅建業者に対しましては、他法令違反ということで、建設業法におきましても宅建業法におきましても監督処分の対象となります。したがって、今回の規定をベースに、両法に基づいて厳正に対処するということになります。

日森委員 そこはしっかり法的に整備をしていただきたいと思っています。

 そして、ちょっと時間がなくなりましたが、大臣に。せっかくおいでになって、この前、大臣に質問するのを忘れたわけじゃなくて、お疲れのようなのでちょっと省かせていただいた。今回は二問ほど大臣にしっかりお答えいただきたいと思っているんです。

 これも参考人のお話から始めたいと思うんですが、特に日置参考人からは、建築確認ではなくて許可制度を導入すべきではないか、私も昨年の段階でそういう問題提起をした覚えがあるんですが、そういうお話もございました。

 現行の建築基準法でも、一部の建築物、例えば道路内建築物であるとか特殊建築物の位置など、ちょっと正確にはわからないですが、十以上、既に許可制度になっているというお話を伺いました。したがって、今回の耐震偽装事件に関連して、一定規模以上の建築物を許可制度にする、確認ではなくて許可にするということは、既に存在している制度を拡充するという意味で検討に値するのではないかという思いがずっとあるんです。

 さらに、これも委員の方々から示されましたが、地方自治体ではそういう意味で条例をたくさんいろいろ工夫しておつくりになっていて、建築安全条例であるとかまちづくり条例であるとか紛争予防条例、これらとリンクして特定行政庁が許可をするという制度にしていけば、まちづくりなどとも整合性を持ったものができてくるんじゃないかという思いがあるんです。

 そういう意味で、許可制度にすることは大変意味あることだというふうに私は思いますし、十分可能なことではないのかというふうに思うんです。これからも審議会を継続してさまざまな問題について議論をしていくということになるんですが、これは検討すべき重要な課題ではないか。何度も申し上げて恐縮なんですが、そういう思いがあるんですが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

北側国務大臣 まず、建築基準法というのは、建築物等に関する最低基準を定めたものでございます。この最低基準をだれが守る義務があるのかといいますと、これはまず第一に、やはり建築する側が基準に適合する建築計画を立案して実行する義務があるわけでございまして、また義務を課しているわけでございまして、その上で、特定行政庁が指揮監督を行う建築主事や国、都道府県が指定する指定確認検査機関に対して、当該建築計画を審査するという後見的な義務を課している、こういう構成になっていると思うんですね。

 したがって、この審査そのものが、後見的な役割を果たしているこの審査が建築確認でございまして、建築基準関係規定に適合することを公権的に判断、確定する行政行為、これが建築確認であるというふうに考えているところでございます。

 今、委員の方からは、まちづくりのルールについてお話がございましたが、これは、あらかじめ都市計画等の手続を経て事前明示的かつ明確に定めておくことが必要であるというふうに考えます。そういう意味で、建築物の例えば用途であったりだとか容積率であったりだとか高さであったりだとか、そうした基準というのは、事前に都市計画等の手続を経て客観的かつ明確に定めている基準であることから、その規定に適合するかどうかを建築確認でチェックする、やはりこのような現行の仕組みが合理的ではないかというふうに考えております。

日森委員 時間が来ました。もう一つだけ大臣に聞きたかったんですが、この建築基準法、改正、改正、改正でやってきたために、非常に複雑怪奇な法律になっているのじゃないか。例えば、今度の改正の中で七十七条というのは重要な改正の一つですが、七十七条は六十二まであるんですね。その七十七条の三十五というところは十五まである。そのほかにも六十八条が二十六まであるとか、いやはや専門家はそれはそれなりに使いこなすんでしょうが、一般の人が見たら何が何やらさっぱりわからぬという法律になっているわけですよ。

 そういう意味で、これは要望にとどめておきますが、専門的な知識を持った方々が建築基準法でしっかり仕事をしてもらう、同時に、もう一回整理をして、これも神田東大教授が参考人で来たときにおっしゃっていたんですが、建築基本法的なものをしっかりつくって、だれでもわかるような、いわば国民の側に立った、そういうものを整備しておく必要もあるんではないか。ぜひ検討していただきたいということをお願いして、ちょっと時間が超過しましたが、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

林委員長 長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻昭でございます。

 きょうも質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。端的にお答えを願えればと思います。

 イーホームズに対する処分というのが、あの耐震偽装から全く何も国交省から音さたがなかったわけでございますが、初めて、何かきょうの三時ごろ、私の質疑時間中に処分が出るやに聞いておりますけれども、どんな処分でございますか、何時ごろ出るんですか。

山本政府参考人 民間指定確認検査機関で仕事をしておりました、確認検査員として登録されております建築基準適合判定資格者につきまして、今回の偽装の態様に応じて事案を整理いたしまして、処分をいたしました。(長妻委員「もうしたんですか」と呼ぶ)きょう午後二時に発表しております。

 判定資格者の登録を消除した者が二名、業務を禁止した者が十六名となっております。

長妻委員 処分はしましたけれども、今度は、では国交省自身の、イーホームズを指定した責任、省内の処分、これはどうお考えですか。

山本政府参考人 イーホームズについて国土交通大臣が民間確認検査機関として指定しました行為につきましては、法令に基づきまして適切に指定したものと考えております。

長妻委員 いや、現場を一度も見ていないで適切なんてうそついちゃだめですよ。何をとぼけた答弁しているんですか。

山本政府参考人 イーホームズの指定についてのお尋ねでございましたので、答弁したんですが、イーホームズの指定につきましては、法令の基準に従って適切に指定したと認識しております。

長妻委員 現場を一度も見ていないで、何で適切なんですか。

山本政府参考人 法令で定めております指定の要件がございます。指定の要件につきましては、それぞれ申請書を審査いたしまして、法令の要件を満たしていると判断した上で指定したものでございます。

長妻委員 ちょっと神経が信じられないですね。文書が出てきて、法令の要件を満たしている。法律上は、当然どんな法律だって、こういう文書で、こういう実態があれば、指定していいですよと書いてありますよ。

 しかし、その書類が本当かどうか、その申請が本当かどうかというのは、これは行政が確認する義務があるわけですよ。現場に一度も行かないで、その書類をうのみにして、いや、法令に合致していますと。こんなばかなこと、いいんですか。それでだまされているじゃないですか。全然実物が違うわけじゃないですか、結局は。

山本政府参考人 申請図書に基づきまして、申請の中身が的確であるかを審査した上で、法令の基準に照らして指定したものでございます。

長妻委員 その審査したというのは、どういうふうに具体的に審査したんですか、現場に行かないで。

山本政府参考人 御質問の趣旨が必ずしもつまびらかでないんですが、法令で定めている基準と申請図書に記されている中身を突き合わせて、法令で定めているところをイーホームズが満たしているかどうかを見たということでございます。

長妻委員 いや、ちょっと私、本当に局長というか国土交通省全体がそういう意識であれば申し上げたいんですが、書類だけ突き合わせて、はい、出てきました、書類。それで、法律にこの書類が合っているかどうかぺらぺらめくって、合っていますと。これが審査。こういうことじゃだめなんですよ、局長。

 それで、私も前回このイーホームズ指定の問題を質問させていただきましたが、そのときは隠しておられたのかどうか私も知りませんけれども、名義貸しもこっそり国土交通省は調査していたじゃないですか。何がきっかけで名義貸しを調査して、マスコミにばれたら急いで発表する。これは何でこそこそやるんですか。

山本政府参考人 確認検査員に事情聴取したことについての御質問だと思いますけれども、これは、今回の報道を受けまして、そのことが報道されたということから、報道が事実であるかどうかということを確認したというものでございます。

長妻委員 いや、国交省、それで名義貸しというのが確認できて、何で我々に教えてくれないんですか。私、前回もこの質問をしていますよ、ほかにもないのかということで。

山本政府参考人 特別隠す考えは全くございません。報道を契機に、私ども、確認する必要があると思ったので、申請図書に登載されております確認検査員に対して事情聴取したところでございます。長妻委員からその状況を教えてくれというお話がありましたので、その聴取した中身をお伝えしたところでございます。

長妻委員 これは、ある新聞がスクープをして、そちらが極秘で調べている内容を記事で書いたから私は知ったわけで、名義貸しを国土交通省が調査をして確認したのはいつなんですか、日にちは。

山本政府参考人 ただいま国土交通委員会に配付されました長妻議員提出資料の一ページ目にございますA氏、B氏、C氏、それぞれ、いつの何日の何時に電話で確認したかということを記しているところでございます。

長妻委員 そうすると、その電話の日にわかった。五月十八日に名義貸しを確認しているんじゃないですか。何でそれを発表しないんですか、こんな重大なことを。

山本政府参考人 重大なことということの意味でございますが、確認検査員の勤務の実態について掌握した事実でございますので、事実として私どもが確認しておったということでございます。公表すべきものとも思いませんでしたので、手に持っていたということでございます。

長妻委員 もう一回答弁。

山本政府参考人 報道では、名義貸しとかいろいろなことがありまして、あるいは虚偽の申請というようなことがありましたけれども、ここで確認しておりますとおり、A氏につきましては就職の約束をしていたということでございますし、それぞれイーホームズとの雇用契約には入っているということが確認されましたので、報道の、そういう虚偽の申請という事実はないということを確認したので、公表するまではないと考えたところでございます。

長妻委員 今、矛盾していませんか。就職の約束はしたけれども実際は就職していないと。それは、では、そういう就職の約束をすれば、紙に書いて働かなくてもオーケーだ、こういうことなんですか。

山本政府参考人 雇用関係に入っていたというふうに認識しているということでございます。

長妻委員 では、実際に働いていたんですか、イーホームズで。

山本政府参考人 ここに書いておりますとおり、「イーホームズに行く約束になっていたが、体を壊してしまったため結局行かなかった。」ということでございます。(長妻委員「ちょっと、ふざけた答弁しちゃだめだよ。精査して。何をかばっているんだよ」と呼ぶ)

北側国務大臣 局長が答弁していますのは、名義貸し、当初から意図して、その人を使う意図がないにもかかわらず、その人を単に届け出のためだけに使ったということではないということを局長は答弁しているんだと私は思います。

 委員提出のこの電話照会内容にも書いてありますとおり、実際問題、翌年の四月までの期間、イーホームズに行く約束になっていた、体を壊してしまったため結局行かなかったんだ、月五万円振り込まれていたというふうな記述から見て、当初からイーホームズが意図して、そういう、採用するつもりもないのに名義貸しをやったというふうな事案ではないというふうに判断をしたということだと思います。

長妻委員 いや、これは驚きますね。月五万円振り込まれていた。聞くところによると、国交省が聞いたら毎月五万円振り込まれていたということですよ。全然勤務していないのに月五万円振り込まれていた。大臣も局長も、いや、全然虚偽じゃないんだ、これは三人とも全く問題ないんだ、そういう御見解なんですか。法的にも、申請書類上も、全くこの三人、常勤ということですよ、三人は。資格者。それが要件で申請書類は出ているわけですよ。問題ないということなんですか、これ。

山本政府参考人 イーホームズが指定確認検査機関として業務を適切に行うかどうか、そのために必要な確認検査員が実務についているかどうかということが非常に大事なポイントでございます。

 そういう意味では、この記しておりました、Aさんは体を壊したために出勤はできなかったということは事実でございますが、イーホームズの立ち上げ時期の、指定を受けてから立ち上げ時期に当たります十三年度中、十四年の三月までの仕事を見てみますと、建築確認の棟数でございますが、建築確認が二十五棟、完了検査が一棟ということでございまして、この確認検査の実務自体は残りの二名の確認検査員で適切にこれを処理し得たというふうに認識しております。

長妻委員 局長、だめですよ、こういう答弁。三人の名前が国交省に出した申請書類に出ているんですよ、常勤ということで。それで、このCさんというのは給料は月八万円ですよ。常勤で月八万円というのはあり得るんですかね。

 これは問題ないということですか、結局言いたいことは。この三人、書面で、申請書類は常勤ということで出してきたけれども、この三人はいろいろあるけれども書類上全く問題ございません、こういうことなんですか、本当に。

北側国務大臣 これもちなみにの話ですが、このイーホームズの申請時の確認検査の業務の予定件数、これからしますと、必要な確認検査員の数は二名なんですね。(長妻委員「三名ですよ」と呼ぶ)二名なんです。必要な数は二名でございます。

 ただ、委員のおっしゃっている趣旨が、御質問に対して、三名で申請をしてきて実際は二名しか働いていないじゃないかと。(長妻委員「いやいや、Cさんだってわからないですよ」と呼ぶ)まあまあ。働いていないじゃないかということを、それをちゃんと確認すべきではないかという御指摘については、これはやはり指定時において実質的な審査をできる限り尽くしていくということは非常に大事な点だと私も考えます。

 したがって、本人確認だとか出勤簿だとか給与支払い調書のチェックだとか、そうしたことを立入検査時に効果的に実施ができるように、これはぜひ検討してまいりたいと思います。(長妻委員「いや、質問できません。これは法令違反ですから。違反じゃないと言っているんです」と呼ぶ)

林委員長 検討すると言っていますよ。(長妻委員「いやいや、法令違反かどうか。今後のことを言っているだけじゃないですか。これは法令違反ですよ」と呼ぶ)

山本政府参考人 指定確認機関の指定基準、法令に定められております。

 イーホームズが申請時に確認検査業務の予定件数として予定しておりました建築確認の件数は千三百二十棟でございます。中間検査が三百九十三棟、完了検査が千五十四棟でございました。法令が求めるこれに必要な確認検査員の員数は二名でございます。

長妻委員 質問に答えてください。だから、これは申請書類は法令違反なのかどうか。

林委員長 立って質問して。

長妻委員 いや、もうさっきから聞いていますから。違反じゃないなら、ない。違反なら違反。(発言する者あり)そうしたら、もう一回答弁させてください。違反じゃないというのを言ってくださいよ、そうしたら。

山本政府参考人 イーホームズを指定する際に、法令が求める指定基準に適合していたかどうかという意味の御質問だと思います。イーホームズは法令の基準を満たしていたという認識でございます。

長妻委員 そうすると、資本金も五千万円見せ金だった、これは今わかっているわけですね。容疑として出ているわけです。それでも満たしているわけですか。

山本政府参考人 先ほど言いましたように、申請時の申請図書をベースに判断した限りで法令の基準を満たしていたということでございます。

長妻委員 いや、そういうことを聞いているんではなくて、指定の際に掲げる基準に適合しないと認めるときというのは書類だけの話じゃないですよ、この建築基準法七十七条の三十五は。実態を問うている条文ですよ。紙が合っていればいいですと一言も書いてないですよ。

 確認しますが、Aさんが、名義貸し、つまりイーホームズに勤務していないということは国交省は確認しているわけでありますが、そうすると、Aさんを書類上出してきたことは何の問題もないです、こういう見解でいいんですか。

山本政府参考人 出してきたこと自体については問題がないんですが、結果として病気で出勤できなくなった時点できちんと報告をすべき事柄であったと考えております。

長妻委員 そうすると、法令に違反していないんですか。病気で出てこなかった、解任届とかそういうことが出ていない。実際には全く出ていないのに解任が五月三十一日ですよ。

山本政府参考人 その部分の法令の定める基準、イーホームズが備えているべき検査員の員数の基準は二名でありますので、たとえ報告があったとしても、基準は満たしている状態で立ち上がり時の業務をこなしていたという認識でございます。

長妻委員 ちょっと、局長、なぜそれだけかばうんですかね。自分たちに責任が及ぶからかどうか。局長が今言っているのはおかしいと思いますよ。

 Aさんを申請時に常勤ということで出してきた。しかし、局長の話だと、常勤で、例えば平成十四年の一月、二月、三月、四月、五月、全く働いていなくても、いや、これは二人が要件なんだから、働いていなくても、解任届とか何らかの届けがなくても、二人が要件なんだからそれは構わないんですと。こういうことで本当にいいんですか、局長。

山本政府参考人 先ほどの答弁を繰り返すことになりますが、申請時に申請した事柄と異なる事態になったときに的確に報告すべき事柄だったと申し上げております。

長妻委員 だから、それは法令違反なんでしょう。するべきことだったというのは、それは何か違反ではないんですか。違反ですよ、これは。国交省の担当の方に聞いたら違反ですよ。

山本政府参考人 基準法の指定基準を定めている趣旨に照らして、検査員の員数というのは最も大事な要素でございますので、その部分について的確に報告すべきであったということを申し上げております。

長妻委員 いや、だから、それが違反なのかどうかと聞いているんですよ。担当者の方と違うから。違反じゃないんなら違反じゃないでいいんですよ。

山本政府参考人 建築基準法令で定めている指定基準の趣旨に照らして、当然、指定権者に報告すべき事柄であったと申し上げているわけで、報告しなかったから直ちに基準法令に違反しているとまでは言えないと考えております。

長妻委員 これは違反じゃない、直ちに違反でないということは、今後調査されるんですか、Cさんの月八万円ということも含めて。

山本政府参考人 ここに記しておりますように、複数回にわたって電話で聞いた事柄ではありますが、より詳細にCさんの勤務実態も話を聞いて調査したいと思います。

長妻委員 直ちに違反だという認識ではないと。

 この方は、平成十四年の一月、二月、三月、四月、五月と全く働いていないんですね。これは国交省も確認している。そのときには速やかに解任届を出さなきゃいけない。出さないということは、法令違反なんですよ、実態と違いますから。では、これは法令違反の可能性もあるということなんですか。

山本政府参考人 今非常に肝心な御指摘だったと思うんですが、Aさんは、雇用契約を結んだわけですけれども、病気のために出勤できなくなった。雇用関係は解除するという明確な意思表示があって、つまり雇用関係から解かれたということが明白になれば、それは当然届け出るべきだと考えております。

長妻委員 では、それが明白になっていれば法令違反の可能性もあるということなんですね。

山本政府参考人 確認検査員の仕事について求めておりますのは、七十七条の二十四の三項ですが、「指定確認検査機関は、確認検査員を選任し、又は解任したときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨を国土交通大臣等に届け出なければならない。」となっているところでございます。

長妻委員 法令違反じゃないですか。解任したかどうか確認しますね。次の委員会で報告してください。解任したのかどうか、いつしたのか、次の委員会で報告するというふうにお答えください。

山本政府参考人 雇用関係につきましては、引き続き調査をした上で、明らかになり次第、当委員会に御報告したいと考えております。

長妻委員 そして、この三人は、これは重要なんですよ。平成十三年の十二月に初めてイーホームズという会社が、民間確認検査機関の仕事をしていいよ、こういう指定をするときの話でありますから。そして国交省の担当者の方はイーホームズに対して、営業エリアが広過ぎるよ、狭くすればとアドバイスもしている。しかし、都議会議員の二回の電話の後に満額回答になったというさなかの話でもあります。このAさん、Bさん、Cさんは、申請時、これは常勤ですということで出てきて、国交省もそういう認識で認めたということでございますか。

山本政府参考人 御指摘のとおりでございます。

長妻委員 そうしたら、常勤でなければだましたということになりかねないんじゃないですか。

山本政府参考人 だましたということの意味ですが、常勤であるということでございますので、常勤である必要があると思っております。

長妻委員 いや、答えになっていないですよ。

山本政府参考人 常勤関係につきましては、雇用関係が常勤かどうかということが一番クリティカルだと思いますけれども、当初の雇用契約の内容に依存すると考えております。

長妻委員 ですから、常勤だったんですか、この三人は。書類は知りません、私は。実際の話なんですよ、この法律というのは、運用は。実際に常勤だったんですか、この三人は、初め。

山本政府参考人 常勤の雇用関係にあるという申請図書をいただいているわけですが、御指摘いただきましたように、現実にどういうふうな勤務形態にあったかという点についてのお尋ねでございますので、先ほど答弁いたしましたように、さらにしっかり調査した上で、明らかになり次第、当委員会に報告させていただきます。

長妻委員 指定するときに、この三人に少なくとも会った、面談はしたんですか。

山本政府参考人 三人に面談はしておりません。

長妻委員 これは、現場に、イーホームズの本社にせめて訪問する、こういうことをしなかった。普通は私は常識的にすると思うんですが、しなかったというのは、その責任というのは痛感されておられませんか。

山本政府参考人 建築主事としての仕事をやってきて、有資格者であるという証明書を添付して申請をしてきているわけでございますので、また、今日のような状況も想定しておりませんので、その資格者の証明書を添付して申請があった個人個人について、面談をしてこれを確認するまでの必要があるとは考えなかったということでございます。

長妻委員 ちゃんと答えてください。現地に行かなかった責任というのは今感じておられますか。

山本政府参考人 当時の民間確認検査機関の指定の実務を想定しますと、資格者一人一人に面談した上で指定をする……(長妻委員「現地、現地」と呼ぶ)現地に行って、資格者一人一人に面談した上で指定するということはなかなか困難だったんじゃないかと思います。

 ただ、今の現実を見れば、そこまでしていれば今の事態は招かなかった可能性もあるわけで、一切何の反省もないかと言われると、そこまで言い切るつもりはありませんが、当時の指定の実務を思い返しますと、現地に行って、一人一人面談すべきであったとまでは言えないんじゃないかと考えているわけです。

長妻委員 今もそうですけれども、建築確認と違って、毎月何件も民間確認検査機関の指定があるということじゃないんですね、民間確認検査機関は百件ちょっとですから。そういう意味では、なぜそういうことをしなかったのか、平成十年にあれだけ議論があって、慎重にという議論もあったにもかかわらず。

 イーホームズはピーク時三十人の確認検査員を国交省に申請しているということですが、この三十人に対して、名義貸しだったかどうか再度調査をされていると聞いておりますけれども、これは電話調査ですね、結果はいつごろ出るんですか。

山本政府参考人 指定確認機関に対しましては、毎年一回、数名の検査員で定期的な立入検査を行ってきたわけでございます。

 それから、日本ERIによる、補助員による検査の問題が発覚いたしました平成十四年の九月以降の立入検査におきましては、確認検査員が実地により検査を行っていることを、帳簿に記載されました検査日、あるいは出勤簿、旅費の支払い記録、整合しているかについてサンプルチェックをしております。

 こういう立入検査によりまして勤務実態の一端は把握できるものと考えておりますけれども、現在……(長妻委員「三十人の話」と呼ぶ)イーホームズについて、業務を廃止すると聞いておりますので、確認検査員の数も大幅に減っております。現時点で過去の確認検査員の勤務実績を調べることは極めて難しい、しかも時間もかかると予想しているんですが、勤務実態の掌握に向けて、こういう案件ですので、最善を尽くしてまいりたいと思います。

長妻委員 では、ピーク時三十人いたという確認検査員、これは、三十人、本当に名義貸しかどうか。今、確認できる範囲内で確認されるということですので、これも委員会に速やかに御回答いただきたいと思います。

 そしてもう一つ。イーホームズは、平成十四年の十一月一日に申請を出し直して、今度は一万平方メートルを超える建物も取り扱いが可能になったということで、そのときの要件は資本金が一億円という要件でありますが、しかし、これは経理的基礎ということで、局長通達で、いや、現金が、資本金が一億円なくてもいいんだよ、資本金は実際はイーホームズは六千万円だったけれども、一億円の保険に入ればいいんだということで、この二ページ目でございますけれども、イーホームズは一億円の保険に入った。

 しかし、一年間の保険料が六十四万七千円で一億円の保険に入れてしまうということでございまして、これはイーホームズによると、あいおい損保の保険だと。賠償責任保険、医師その他用という保険でございます。証券特記事項として、「ケンチクカクニンケンサギョウムノミタンポ」というふうに書いてございます。

 これも非常に不可解なんですが、資本金の規定というのは、これは会社の存続性とかいろいろな体力をあらわす資本でありますけれども、資本が足りなくても、それに見合う保険に入っていればカウントされるというようなことで、年間六十四万七千円払えば一億円の資本金と同じようにみなす、こういうことなんですか。

山本政府参考人 ここのポイントは、損害賠償請求にこたえるという観点でございます。こたえ得る経理的な基礎があるかという観点から、建築確認検査を行う建物の床面積規模に応じて上限を定めているんですが、安定的な保険制度の活用は、損害賠償請求にこたえるという観点からは、安定的な措置であると考えております。

長妻委員 ちょっと、資本金と同じ見合いとして、資本金が一億円でも一万平方メートル以上できる、しかし、資本金が百万円で一億円の保険に入っていてもできる、同じなんだと。

 全然違うんですよね、資本金と賠償責任の保険というのは。資本金という意味合いは、やはり会社の存続性とか、体力とか、投資能力とか、信頼性とか、そういうもろもろのところに起因するのが資本金だと思うんですが、これは局長通達で出されたということですけれども、法律では経理的基礎と書いてあるものが、局長通達で、何か保険もいいですよという形で、こういうふうに変えてよろしいんですかね。

山本政府参考人 法令で求めております基準を具体的に適用する際の判断の手がかりとして準則を定めているわけでございますが、今御指摘がありました資本金などの基本財産等でございますが、これについては、同じ経理的基礎の内容の一つといたしまして、確認検査の仕事を進めていく際の年間の支出の総額、確認検査事務の仕事をするために必要な、仕事を進めるための支出額ですね、この総額の一割以上の基本財産が必要だということを別途要件で求めております。

 その上で、損害賠償にたえ得るかどうかという観点から、資本金、基本財産等か、あるいは保険を付保しているかどうかということを見る仕組みになっております。

長妻委員 そうすると、イーホームズはこの当時、資本金六千万円で一億円以上なかったけれども、一億円の保険に入っていたから一億円以上とみなされて、一万平方メートル以上取り扱うことができるようになったわけですけれども、これを、法律には全く保険という文字はないにもかかわらず、経理的基礎というふうにだけ書いてあるものを、局長通達で資本金と同じ位置づけで保険も準用していいというふうに出されたというのは、私は局長通達に対して非常に疑問があるわけでありますけれども、これはぜひ今後吟味をしていただきたい。これは通達ですから、法律じゃありませんので、お願いをいたします。

 そして次に、サムシング、これも懸案になっておりますけれども、実際に福岡の方々というのは大変な御不安を皆さん持っておられる。といいますのも、サムシングの物件というのはかなり多いと言われているけれども、どこにあるのかさっぱりわからない。わかっているのはたった六百六十六件だということでございますが、サムシング物件というのは全部で大体何棟あるというふうに推定されておられますか。

山本政府参考人 サムシングの関与した物件が全体で幾らあるかは、まだ完全には掌握できていないんですが、福岡市からの報告によりますと、約一万件ほどあるというふうに伺っております。

長妻委員 そのうち、例えば福岡市内に存在するサムシング物件、推計値は何棟ですか。

山本政府参考人 建築行政当局サイドで確認をしたデータではありませんけれども、私どもが調査した範囲で、福岡のサムシングがかかわった物件はほとんど九州にありまして、九州の中では福岡県が九五%、それから福岡県内を一〇〇%とすると、福岡市が七〇から七五%で、残りは福岡市近郊が多いという情報を得ております。

長妻委員 そうすると、先ほどの分母を掛け算すると、福岡市は七〇パーから七五パーということだと、大体何件ぐらいですか。

山本政府参考人 そういう厳密なオーダーの話ではないので、今の掛け算をすれば、六千とかそういうオーダーになると思います。

長妻委員 これは本当に驚くべき話だと思います。推計値六千、福岡市内にサムシング物件がある。しかし、今、市内外を含めても六百六十六件しか特定できていない。しかし、六百六十六件だけをサムシング物件の調査をしたら、偽装あるいは偽装の疑いがあったというのは六百六十六件中何件でございましたか。

山本政府参考人 大変失礼しました。

 五月二十三日、昨日現在で六百六十六件の関与物件が判明しているわけですが、このうち調査が進んでいる二十四件について見ますと、十一件についてデータの差しかえあるいは強度不足のおそれがあるという事実が判明しておりまして、十三件については耐震性に問題がないということでございます。(長妻委員「偽装は何件ですか」と呼ぶ)データの差しかえを偽装というふうに言えば、この十一件でございます。十一件のうち、データの差しかえ、ちょっと待ってください。調べてまた御報告します。

 大変御無礼しました。偽装ということで明確に報告を受けているのは、この十一件のうちの三件です。

長妻委員 そして、データの差しかえが七件と偽装、グレーのところということだと思いますが、そうすると六百六十六件中十一件強度不足があるという確率でありまして、福岡市内で推計値で六千棟もある。これはもうさっぱり場所はわからないんですか。仲盛設計士やその部下、接触を全然されていないんですか。仲盛設計士が経営していたサムシングのピーク時の設計士の数というのは、何人ぐらいおられたんですか。

山本政府参考人 サムシングが仕事をしていたピーク時の雇用人数でございますけれども、これも建築行政当局サイドで確認した数字ではございませんけれども、ピーク時には五十五名から五十六名、平均で四十名、所員が。(長妻委員「設計士は」と呼ぶ)設計士は、ちょっとお待ちください。

 大変御無礼しました。そのうち、建築士は十名ということでございます。

 それから、御指摘はこれらの所員をどのぐらい掌握しているかということでございますが、福岡市からの報告によりますと、平成十四年に廃業して名簿等が散逸して、名簿等によって掌握するのは困難であると。そういう中で、福岡県におきまして、追跡調査によって一部の所員の情報を得ているけれども、まだ最終的に確認はされておりません。

長妻委員 国交省、これは本当に草の根分けても捜し出して、福岡市内で推計六千棟もあるわけですね、サムシングの。御不安に思われている市内の方もいらっしゃるかもしれませんが、ちょっとけたが違う大きさ。

 仲盛氏とは接触を何度かされていると思うんですけれども、あるいは一部の所員の情報もあるということですので、これは何で六百件しかわからないんですか。この六千棟あるいは全体で一万と言われている部分、本当にこれをどこの建物か特定する努力、建設会社からヒアリングすればわかる可能性もありますけれども、どこまで国交省は本気でやっているんですか。

山本政府参考人 関与物件の掌握につきましては、福岡県を中心とした関係特定行政庁におきまして、まず、特定行政庁が持っている建築申請図書を総ざらいしまして確認をする、それから、今御指摘がありました関係団体あるいは元請の設計事務所等への情報提供の要請、あるいは、相談窓口を設けまして、市民の方々から、耐震診断の相談もございますので、いろいろ相談を受け付けるというような形で今の関与物件の把握に努めてきたところと聞いております。

 ただ、先ほども言いましたけれども、十四年に廃業しているという事実がございます。しかも、廃業も、経済的に破綻したということがあって廃業した。それから、仕事は昭和五十五年からやってきております。古い物件については、もちろんのことですが、特定行政庁に図書はもう保存されておりません。そういったようなことで、なかなか関与物件全体を特定するのが難しい状態だということでございます。

長妻委員 本当に申しわけないですけれども、お役所仕事というふうに言わせていただきます。

 何で仲盛氏本人あるいは部下の一部わかっている方本人に、強制権は今の段階ではないでしょうけれども、丁寧に根気よく接触をして、そこから聞き出す。あるいは、これは聴聞ということも当然視野に入れられていると思うんですけれども、そういう法的な措置というのも国交省は権限があるわけですから、なぜ本人から、あるいは部下から直接根気よく聞かないんですか。聞く努力はきちっとしているんですか。何回ぐらいしているんですか。

山本政府参考人 福岡市当局それから福岡県、これは建築士事務所を統括する行政庁でございますけれども、それから私どもの九州地方整備局、それぞれにおきまして建築士と直接のやりとりを重ねておりますが、なかなか、今御指摘いただきましたようなきちんとした、本人からもトータルな説明を受け切れないという状況でございます。

 先ほど御説明しました三物件の偽装も含めて、事実関係を整理した上で特定行政庁の調査結果がまとまりました段階では、建築士に対する処分ということになりますので、御指摘にありましたような聴聞ということもございます。今、それに至るまでの調査の段階でございますので、関係行政庁と協力をして力を尽くしていきたいと考えております。

長妻委員 ぜひ北側大臣、これは六千棟もある可能性があるというので、事前の説明を受けても今のお話を聞いても、何だか迫力が感じられないんですが、本当にそれを聞き出して、一棟一棟確認する。これはぜひそういう迫力を持って確認して、一カ月以内に、六百六十六件じゃなくて、まあ六千件全部は難しいとしても、せめて六千件に近くなるようなオーダーで特定する、こういうふうに御決意いただきたいんですが。

北側国務大臣 福岡県また福岡市としっかり連携をとって、このサムシング案件についてできる限り確定できるように、しっかり努力をしたいというふうに思います。

長妻委員 そして、この耐震偽装問題、今法案が出て議論しているわけですけれども、もう一つ、非常に国民の皆さんにとっては大変な、危険な状態が放置されている問題があります。

 三ページ目でございますけれども、つり天井の建物、これが危険な形で放置されている疑いがあるということでございまして、これは国交省がことし三月に発表した資料でございますけれども、全国で、技術指針と比較して問題のある建築物で崩落防止の対策が済んでいないのが四千八百七十八件もある。分母といたしましては、二万二千二百三件、調査の回答が返ってきた。つまり、二二%が崩落防止対策が済んでいない、問題のある建物である。これは体育館、屋内プール、劇場、ホール、ターミナル、空港、展示場などのうち五百平方メートルを超える建物のうち、つり天井である、こういう限定した調査でございますけれども、そうすると、この建物は、町を歩いて、ああ、ここの建物だと思ったときに、五件に一件は危ない。

 これは、かつて、仙台市で平成十七年八月十六日に震度五強の宮城県沖地震が起こったときに、プールを含む屋内施設、ここで天井が崩落して四十七名の負傷が出た。震度五強です。そういう意味で、この四千八百七十八件のうち、震度五強でつり天井が落ちるおそれというのはこの中で何件ですか。

山本政府参考人 今提示していただきました資料でございますが、これは昨年の八月十六日に発生しました宮城県沖地震で、仙台市内のスポーツ施設で天井の崩落により多数の負傷者を出したということで、各都道府県に対して、全国の屋内プールとか体育館などについて総点検を実施しまして、指導を行うように通知したところでございます。

 ここに報告を受けた二万二千余りでございますけれども、これは、技術指針に照らして、技術指針で求めているいろいろな措置を完全に講じていないものが五千百七十一あったということでございます。

 御質問は、震度五強で、つり下がっているのが落ちるか落ちないかという部分については、ちょっと数字的に、そのうち、これが落ちる落ちないというのを言うのは難しい、そういう調査でございます。

長妻委員 いや、そこが、大変申しわけないですけれども、ちょっと普通の一般の感覚から、金をかけて調査した割には、何をやっているんだという感じなんですね。震度五強でつり天井が落ちる、そういう危険性のある建物はどれなんだ、こういう調査も、どうせするならしなきゃだめじゃないですか。

 これは調査していただけますか。

山本政府参考人 失礼しました。

 建築基準法令が定めている必要な措置をとっていないものがあったということですので、私ども、各都道府県を通じてお願いしておりますのは、特に特定行政庁に速やかに措置をしていただくようにという方向で今お願いをしておりまして、改修指導をお願いしますけれども、それでもなお改善が進まない場合は法令上の手続で、是正命令等できちんと措置してもらう、そういうことで力を尽くしたいと思います。

長妻委員 いや、それはもう是正命令というのは基本的に出ませんから、今の行政の枠組みではほとんど。これは震度五強で本当に危険なんだと特定されれば、そしてそれを公表すれば、自治体は慌ててやりますよ。

 そういうおつもりはないですか。

山本政府参考人 御指摘が、震度五強で、今つり下がっているのが落ちるか落ちないかという点でございますので、どういう調査が可能かも含めて検討させていただきたいと思います。

長妻委員 しかし、本当にこれはのんきだと言わざるを得ません。震度五強というのは、そんなに何百年に一回じゃない、起こる地震でありますので、そういう建物がかなりある可能性があって、何件あるかさっぱりわからない。これは、事故が起こって、また後手後手に回る危険性が大変あると思いますので、ぜひ徹底していただきたいというふうに思います。

 そして、最後に山本局長にお伺いしますけれども、国交省案の法案では中間検査を三階以上に義務づけるということで、中間検査は何件にはね上がると推定されていますか。

山本政府参考人 三階建て以上の共同住宅でございますけれども、建築着工統計によりますと、十六年で二万四千棟でございます。それで、既に現行制度のもとで中間検査を義務づけているものが約半数程度あります。したがいまして、私どもの見込みとしましては、今回法律で一律に義務づけることによりまして新たに中間検査が必要となるものは一万二千件程度であろうと推計しております。

長妻委員 先日も与党の質問で、かなり民主党案を、私に言わせたら意図的に局長答弁で、非常に問題があるかのような御指摘をいただいたわけでありますけれども、その中の局長の答弁で、民主党の仕組みというのは「建築主事の責任を重くするものでございます。指定確認検査機関の責任の明確化を求めている東京都など特定行政庁の主張に逆行するものであることから、これらの特定行政庁の理解を得ていくことは難しいのではないかと考えております。」とありますが、政府は、建築主事の責任というのは今以上にこれから軽くするおつもりなんですか。

山本政府参考人 民間の指定確認機関が行う個別具体の確認事務についての監督責任、これは強化したいと考えているところでございます。

長妻委員 そうしたら、調子に乗って与党質問の中で誤解を招くような発言はやめてください。局長は、民主党は建築主事の責任を重くするものだ、これは東京都などの主張に逆行するものだ、理解を得るのは難しいと。ということは、つまり、建築主事の責任を軽くするのが政府案だ、あたかもそういうふうに発言されておりますけれども、実際は建築主事の責任というのは今よりも重くなるわけですか。

山本政府参考人 一番、特定行政庁として民主党案で悩むなというふうに私どもが受けとめましたのは、建築基準関係規定に適合しているかどうかの判定は民間機関に任せる、しかし、済み証は、特定行政庁、公共団体しか出せないという部分でございます。

 午前中の提案者の答弁でも、丸投げはしないという思想でこの枠組みをつくっているという答弁がございましたけれども、しかし、民主党の案でも、建築基準関係規定に適合しているかどうかの判定の実務はすべて民間機関にやっていただくということは間違いないんです。それを、最終的に確認済証を出すのは特定行政庁に限るということをやっている部分が、単に一切審査をしないで確認検査済証を出せると特定行政庁が受けとめるかどうかという部分について懸念があるのではないかというふうに考えたということでございます。

長妻委員 そうであればそういうふうにきのうも答弁されればいいものを、民主党は建築主事の責任を重くするんだ、そういう非常に誤解を招くような発言をされておられます。

 我々は、やはりこれから、例えば二十三区、私の地元のところも話を聞きますと、自前でやっているのは区内三割だ、七割は民間確認検査機関だ、その流れはどんどんどんどん、もう民間の流れはとまらない、ましてや、これだけ安全性が問題になって確認業務が多くなってくる、検査業務が多くなってくるときに、もう民間にせざるを得ないんだと。

 基本的にはだんだん実務は少なくなります、この特定行政庁は。ある意味では、監督者の立場で、基本的には民間確認検査機関でさらに優秀なところを、私は、国交省、今回みたいなずさんなあれじゃなくて本当にきちっとした優秀なところを指定していただく、これはどんどんとは言いませんが慎重にさらにふやしていただく、そういうことはお願いしたいんですけれども、そのときにやはり最後の手綱は特定行政庁が握る。実務はどんどんどんどん手離れをしていくけれども、人数はふやせませんが、そういう意味では、そういうところを明確にしていくという趣旨で、我々は、そういう流れの中で最後の手綱まで手放すということではいかがなものかと。

 しかも、建築基準法の第六条の二には、今でも、特定行政庁は民間確認検査機関が出した済み証がおかしいと思えば取り消さなきゃいかぬ、こういう条文があるわけですね。ところが、特定行政庁に話を聞くと、取り消さなきゃいかぬ、特定行政庁の君らの責任だと。しかも、民間確認検査機関が出したものも最高裁の判例で特定行政庁の責任だというふうになる。しかし、実際おれたちは全然済み証も何もさわらせてもらってない、出すのは民間が出す、しかし責任は我々にある。このおかしな状態を一致させてくれという意見もあるのも事実なんです。そういう意味では、我々は、この条文をきちっと担保するためには、最終的な済み証は、これは車の車検も同じです、陸運局が最後に判こを押しているわけですから。

 そういう意味では、そういう仕組みにしようということであります。

 これは大臣発言でも、記者会見で、民主党案は多分率直に申し上げて特定行政庁は嫌がると思いますねと。嫌がる、嫌がらないというのは確かに表面的にはあるかもしれませんが、本当に日本の国の建築行政のためにきちっと考えている特定行政庁もいるんです。ですから、そういう意味では、何か口では特定行政庁に対しては余り責任を重くしませんよというリップサービスをしながら、実態は政府案でも特定行政庁の責任は重くなるわけです、立入検査もできますから。ですから、そういう非常に不満を一時的に和らげるような議論じゃなくて、どなたかがこれは負担を重くしなきゃいけないんです、これはだれかが。

林委員長 申し合わせの時間が経過していますので、簡潔にお願いします。

長妻委員 安全を担保するには、ぜひ最後に大臣の御決意をいただきまして、質問を終わりたいと思います。

北側国務大臣 特定行政庁の方とはいろいろな御意見をちょうだいしております。今回の見直しにつきましても、特定行政庁の御意見を反映したものもございますし、また、そうでないものもございます。今後ともよく特定行政庁と連携をとって、この建築確認制度、本当に信頼が回復できるようにしっかり取り組みをさせていただきたいと思います。

長妻委員 ありがとうございました。

林委員長 杉田元司君。

杉田委員 自由民主党の杉田元司です。

 これまでの審議で、法律案の中身、個別の改正事項については相当の議論がされてきました。私の方からは、今後の方向性を中心に何点かお伺いをしてまいりたいと思います。

 まず第一点であります。

 耐震強度偽装事件が発覚してから六カ月余りがたちました。現在、姉歯元建築士による偽装が報告された物件は九十八件に及んでおり、被害も十八都道府県に拡大しておりますが、そればかりか、姉歯元建築士以外の建築士による構造計算書の偽装も発覚しており、問題は一層の広がりを見せております。果たして我が家は大丈夫なのかと思っている国民の不安は、払拭されたとは言えません。偽装事件を受け、これまで政府においても、耐震偽装物件の調査を行い、実態の把握に努めてきたことと思います。

 そこでまず、偽装物件に関する調査について、現在の調査状況はどのようになっているのか伺います。

山本政府参考人 幾つかの類型に分けて御説明したいと思います。

 まず、姉歯元一級建築士が関与した物件の調査でございます。

 姉歯元一級建築士が関与いたしました二百五件の物件につきましては既に調査が終了しておりまして、偽装が判明したものが九十八件、その他誤りが判明したもの一件、偽装がなかったもの九十一件、計画が中止されたものなど十五件となっております。偽装が判明した九十八件の内訳は、共同住宅五十七件、ホテル三十八件、その他三件でございまして、うち七十六件は耐震強度が基準を下回っているものとして報告されております。

 次に、姉歯関係業者の非姉歯物件に関する調査でございます。

 姉歯物件に関係しておりました木村建設、ヒューザー、平成設計、総合経営研究所が関与した五百三十九物件につきまして、昨日の時点で四百八十四件が調査済みとなっておりまして、偽装が判明したものが三件、その他誤りが判明したものが三件、偽装がなかったものが四百七十件、計画が中止されたものが八件、調査中五十五件となっております。

 それから、この中の木村建設が関与しました物件の中で偽装が判明しました三物件は、いずれもサムシング株式会社が構造計算を行った福岡市内の物件でありまして、これらについては、福岡市から二月八日に、三物件に偽装があった、二物件に耐震強度が不足するおそれがある旨公表されております。また、このほか一物件について、偽装の有無は確認できないけれども、竣工図をもとに所有者が作成した構造計算書により再計算を行ったところ、耐震強度が基準を下回っているおそれがあるというふうに報告を受けております。

 その後、福岡県においてサムシング株式会社の関与物件を調査した結果、福岡市の公表物件四件とは別に、現在までに七物件においてデータの差しかえのおそれがあることが公表されております。

 これまで福岡県を中心としてサムシングの関与物件の調査を行いました結果、昨日現在で六百六十六件の関与物件が判明しており、このうち、調査の進んでいる二十四件のうち十一件についてデータの差しかえ、強度不足のおそれが判明している、十三件については耐震性に問題がないことが確認されたということでございます。

 それから、非姉歯物件調査で誤りが判明した構造設計者の関与物件調査ですが、誤りが判明した物件の設計者でありますフジタ株式会社、それから木村建設関与物件で誤りが判明した物件の設計者であります田中テル也一級建築士、ふなもと設計、本田建築デザイン事務所の関与物件については、特定行政庁において耐震性の検証などが進められておりまして、現在のところ、耐震性に問題がある物件の報告は受けておりません。

 このほかに、浅沼二級建築士による構造計算書の偽装が北海道から報告を受けております。浅沼二級建築士が関与した物件につきましては、これまで札幌市により、札幌市内の十六件、分譲マンション十二件、賃貸マンション四件について偽装が確認されております。このほか、小樽市から四月十八日に、一物件で耐震強度が不足するおそれがある旨公表されております。

 これまで北海道を中心として浅沼二級建築士の関与物件の調査を行った結果、昨日現在で百十九物件の関与物件が把握されておりまして、そのうち調査の進んでいる七十五件では、十七物件について偽装や強度不足のおそれが判明しております。五十八件については既に偽装がないこと、耐震性に問題がないことが確認されたと聞いております。

 これらの調査によりまして強度不足が判明した物件につきましては、関係特定行政庁において、改修等により早期に安全確保をするよう所有者等に働きかけを行っております。

 国土交通省としましては、引き続き関係特定行政庁に対して、強度不足が判明した物件の安全確保を促進すること、また、残りの調査物件についても安全確認を早急に行うことを要請するとともに、違法行為を行った建築士については、特定行政庁との連携の上、厳正な処分を行ってまいる所存でございます。

杉田委員 今回の事件は、法令を遵守すべき立場にある建築士が故意により構造計算書を偽装したことに直接の原因があり、特異な事件であると言うことはできますが、一方で、結果として、指定確認検査機関のみならず、建築主事においても偽装を発見することはできませんでした。建築確認という公の事務の執行においてこのようなことが二度とあってはならず、再発防止に向けた取り組みを全力で行い、国民の信頼を回復していくことこそが政府の責任であると考えます。

 そこで、改めて国土交通大臣に、今回の偽装事件をどのようにとらえているのか、基本的な認識と、再発防止に向けた今後の取り組みに対する決意について伺います。

    〔委員長退席、渡辺(具)委員長代理着席〕

北側国務大臣 まず、私ども、十一月の十七日にこの問題を公表して以来、何よりも優先してまいりましたのは、危険なマンションにお住まいの居住者の方々の安全を確保すること、そして居住の安定を確保していくことでございます。

 三百九戸あったわけでございますが、現在三百戸の方々が退去をしていただきましたが、取り壊しをしたのはまだ一棟だけでございまして、これから、この危険な建物の取り壊しが早くできるよう、そして、建てかえた建物に早く入居していただいて居住の安定が図れるように、これは地方公共団体の方々と一緒になってしっかり努力をしてまいりたいというふうに思っております。まだまだ道半ばでございまして、これがすべて終わるまでにはまだまだ時間がかかろうかと思いますが、私どももしっかり取り組みをさせていただきたいと考えておるところでございます。

 そして、今委員のおっしゃった再発防止に向けての取り組みをしっかりしなければならないと考えております。

 今回、緊急に措置すべき事柄につきましてはこの国会で審査をお願いしているところでございまして、例えば、高度な構造計算を要する一定規模以上の建築物についての第三者機関による構造計算適合性判定の義務づけ等の改正案について今御審議をいただいておりますが、これだけではなくて、さらに残された課題がございます。専門分野別の建築士制度の導入等々、建築士制度の抜本的見直しの問題、また住宅を取得する方々の利益の保護の問題等々、残された課題もございまして、こうした課題につきましては、この夏までに取りまとめをさせていただき、次の国会において見直しをすべきものは見直していくという形で考えているところでございます。

 いずれにしましても、再発防止に向けまして全力を挙げて取り組みをさせていただきたいと考えております。

杉田委員 決意のほどを伺いました。しっかりとお願いをしたいと思います。

 大臣は二十九分退席というふうにお聞きしております。どうぞ御退席ください。

 三点目でありますけれども、再発防止に向け、まず重要なのは、偽装を確実に見抜くことができるよう審査側の課題を解決するということであります。この点、今回の改正案では、国が確認についての審査方法の指針を定め、建築主事等はこの指針に従って審査を厳格に行うことになります。構造計算の審査を専門に行うための構造計算適合性判定制度も導入され、建築確認時の審査の厳格化のための制度的な仕組みは整ったと言えます。

 しかし一方で、今回のような事件を二度と起こさないという観点も非常に重要であると考えます。とりわけ、構造専門の技術者の育成がこれから非常に重要であると考えますが、この点について今後どのように取り組んでいくのか、お示しをいただきたいと思います。

山本政府参考人 御指摘いただきましたように、制度をきちんとするという努力と並行する形で、この制度を運用するといいますか、実際に仕事をする構造専門の技術者の育成という観点は非常に重要であると認識しております。

 本年の二月に社会資本整備審議会から中間報告をいただきましたけれども、この中で、施策の実現に向けて引き続き検討すべき課題として、御指摘の観点から、専門分野別の建築士制度の導入、建築士の資質、能力の向上、構造専門の確認検査員の養成方法などが挙げられております。

 こうした論点をきちんと踏まえまして、構造専門の技術者の育成について御審議いただきまして、夏ごろまでに方針を取りまとめていただいた上で、所要の見直しを行っていきたいと考えております。

杉田委員 さらに、今回の事件では、一部の指定確認検査機関で多数の偽装が見過ごされており、その反省も踏まえ、改正案では、特定行政庁の指定確認検査機関に対する監督権限を強化することとされております。しかし、指定確認検査機関の業務に誤りなきことを期するには、そもそもの指定権者である国土交通大臣及び都道府県知事において、指定確認検査機関に対する指導監督を徹底することがまずもって必要ではないかと考えます。

 この点について今後どのように対応していくのか、伺います。

山本政府参考人 国土交通省では、大臣指定の指定確認検査機関から毎年度定期報告を受けますほか、年一回程度、数名の検査員が事務所に立ち入りまして、事業計画、業務実績に応じた確認検査員、補助員の確保、役員や確認検査員等の兼業の状況といった事柄につきまして、指定確認検査機関の指定要件が引き続きその後も的確に維持されているかという観点を中心に検査をしてきております。

 また、このような定期的な立入検査のほかに、指定確認検査機関による重大な違反が発生した場合、あるいは通報を受けた場合などは、必要に応じて緊急の立入検査も実施してきたところでございます。

 しかしながら、今回の事件を受けまして、指定権者である国土交通大臣あるいは都道府県知事において、指定確認検査機関に対する指導監督を徹底する必要があるということでございますので、これをさらに進めるために、住宅局におきまして、検査機関等に対する立入検査検討会を設置いたしまして、学識経験者の御意見をいただきながら、国指定の指定確認検査機関に対する立入検査においても、構造計算書などの設計図書を抜き打ちで検査を行うなど、立入検査時における検査内容や検査体制について抜本的な見直しを含めた検討を進めているところでございます。

 この検討結果について都道府県と共有して、指定確認検査機関に対する指導監督の徹底に努めてまいりたいと考えております。

杉田委員 先ほど少し触れましたが、今回の改正案では、審査方法の指針の策定によって確認検査を厳格化することとされております。指定確認検査機関に対する監督強化策の一つとして、特定行政庁が立入検査を行うこと等の措置が講じられております。しかし、これらはいずれも地方公共団体の業務の増加につながるものであり、地方公共団体の建築部局の体制の充実をさせることが重要であると考えますが、この点についての認識はいかがなものか、お伺いをいたします。

山本政府参考人 現行法では、特定行政庁は、指定確認検査機関が行う業務の適正さを確保するために、指定確認検査機関が確認を行った場合は、建築場所、建築物の概要、主要用途などの建築計画の概要について報告を受けまして、規定に適合しない場合は確認の効力を失効させることができるとするとともに、必要に応じまして、建築物の計画や施工の状況に対する報告を求めて、確認検査の適正な実施のための必要な措置をとるべきことを指示することができるとしているところでございます。

 しかしながら、特定行政庁は指定確認検査機関に対する立ち入り権限がないなど、指定確認検査機関が行う業務の適正化を確保する上で十分な監督権限を有しておらず、また、指定確認検査機関が行った確認検査の地方公共団体への報告は、確認審査の内容を知る上で不十分であることが指摘されております。

 このため、今回の改正案におきましては、指定確認検査機関を指定する際の関係特定行政庁からの意見聴取、そもそも指定する時点でです、それから特定行政庁による立入検査導入など民間機関への指導監督の強化、それから特定行政庁が民間機関の不適当な行為を発見した場合の指定権者への報告、それから民間機関が行った建築確認に関する報告事項を充実するといったようなことで、特定行政庁が負う責任に見合うよう、指定確認検査機関の適正な業務の確保のための監督権限の強化等の措置を講じることとしております。

 御指摘のように、これに伴いまして、特定行政庁の業務が拡大することが見込まれます。特定行政庁の体制充実が必要となると考えております。

 国土交通省におきましては、民間開放を契機といたしまして、地方における行政改革の流れの中で、建築行政職員の定数を削減する動きがあることに対し問題意識を持っておりまして、特定行政庁において的確かつ効率的な建築行政の体制整備充実を図る必要があることから、本年二月に、必要な執行体制の確保について遺漏のないよう措置されることをお願いする通知を発出したところでございます。

 さらに、今回の改正法案によりまして業務内容が拡大することが想定されますので、今後とも、建築行政の的確な執行体制の確保の観点から、特定行政庁に対して必要な執行体制の確保等について要請してまいる考えでございます。

杉田委員 建築士制度の見直しに関連して次は伺ってまいりたいと思います。

 今回の事件では、構造計算書の作成に際して、元請建築士事務所と下請建築士事務所の間の契約が不明確に行われた事実も明らかになっております。責任の所在のあいまいさが事件を生み出してしまった要因の一つとも言え、今後、不正行為を防止するためにも、建築士事務所間の責任を明確にすることが重要であると考えます。

 そこで、建築士事務所間の元請、下請関係の適正化について、今回の政府案における対応も含め、どのような措置を講じていこうとしているのか、伺います。

山本政府参考人 御指摘いただきましたように、建築士事務所の業務の適正化を図り、不正行為の防止を徹底するためにも、元請建築士事務所と下請建築士事務所の責任を明確にすることが重要であると考えております。

 このため、今回の改正案においては、建築士事務所の間における元請、下請関係の適正化を図るため、建築士事務所が他の建築士事務所から設計、工事監理を受託したときは、委託者に対し、設計、工事監理の契約時に、その内容、報酬額等を記載した書面の交付を義務づけます。それから、建築士が構造計算書を作成したときは、その委託者に対し、構造安全性の証明書の交付を義務づけます。それから、建築確認の申請書などに、設計を担当したすべての建築士の氏名を記載させます。

 そういった措置を講じることとしているほか、それぞれの建築士事務所の業務に関する情報を開示するため、建築士事務所の業務実績、あるいは建築士事務所に所属する建築士の氏名、業務実績などを、都道府県及び建築士事務所における閲覧の対象とすることとしております。

 また、本年二月の社会資本整備審議会の中間報告におきましては、施策の実現に向けて引き続き検討すべき課題として、建築士事務所の業務の適正化など、建築士制度の見直しに関するものが指摘されておりますので、引き続き御検討を進めていただいた上で、次回の見直しに的確に反映していきたいと考えております。

杉田委員 次に、違法行為を行った建築士等に対する制裁についてであります。

 今回の事件の直接の原因は、資格者である建築士が偽装を行ったことにありますが、事件が全国に広がり、大きな社会問題となっているにもかかわらず、現行の建築基準法等の体系では違反者に対する罰則が極めて軽いものとなっております。このため、今回の改正案では罰則の大幅な引き上げを行うこととされておりますが、具体の事例に即して伺いたいと思います。

 今後、姉歯建築士、ヒューザー、総研のようなケースが起こった場合、どのような罰則が科せられることとなるでしょうか、お伺いをします。

山本政府参考人 今回の事件について、構造計算書の偽装を行った者はもとよりでございますが、売り主である建築主その他多数の者が関係しておりまして、これらの者に対してどのような罰則が科せられるかということは、最終的には司法の場において、個別具体の事実関係に即して判断されることとなります。

 今のお尋ねにつきまして、今後、同種の事件が起こった場合、関係者に対してどのような罰則が科せられるかということにつきまして、一般論として申し上げますと、次のとおりでございます。

 まず、建築士でございます。

 建築士が構造計算書を偽装したことによりまして、構造規定違反の建築物が現実に建築された場合、建築基準法上、構造規定違反の建築物を設計した建築士には、三年以下の懲役または三百万円以下の罰金が科せられます。それから、建築士法上、構造計算では建築物が安全でないことを知った上で安全性を確かめた旨の証明書を交付した建築士は、一年以下の懲役または百万円以下の罰金が科せられます。この二つの罪が併合罪となる場合には、四年以下の懲役または四百万円以下の罰金が科せられます。

 次に、住宅の売り主でございます。

 住宅の売り主が建築主として故意に構造規定違反の建築物を建築した場合には、建築基準法上、違反行為をした代表者または役職員には、三年以下の懲役または三百万円以下の罰金が、法人には法人重科として一億円の罰金が科せられます。それから、建物の売買契約の際に構造計算書の偽装等重要な事実を告げなかった場合には、宅建業法上、違反行為をした代表者または役職員には、二年以下の懲役または三百万円以下の罰金、法人には法人重科として一億円の罰金刑が科せられます。二つの罪が併合罪となる場合には、四年六月以下の懲役または六百万円以下の罰金、法人には二億円以下の罰金が科せられるところでございます。

 それから、コンサルタント会社でございます。

 コンサルタント会社が構造規定違反の建築物の設計または建築を設計者または建築主に教唆をしたり、あるいは実際に違反建築物が建築された場合、設計者または建築主に対して犯罪を教唆した共犯として、建築基準法上、違反行為をした代表者または役職員には、三年以下の懲役または三百万円以下の罰金、法人には法人重科として一億円の罰金刑が科せられるものと考えております。

    〔渡辺(具)委員長代理退席、委員長着席〕

杉田委員 最後にもう一点、建築士免許の取り扱いについて伺います。

 姉歯元建築士については、既に昨年の十二月、免許が取り消されているところです。しかし、極めて悪質な違法行為を行い免許を取り消された建築士が再度免許を与えられることがあるとするなら、制度的に問題であると考えます。姉歯元建築士のような場合、どのような扱いになるのか伺います。

山本政府参考人 建築士免許の要件につきまして、現行の建築士法におきましては、過去に建築士免許の取り消しを受け、その日から二年を経過しない者に対しては免許を与えないこととしております。二年を経過した後五年を経過しない者に対して免許を与えるかどうかについては、免許権者の判断にゆだねられております。

 また、過去に禁錮以上の刑に処せられた者、あるいは建築士法に違反して、または建築物の建築に関し罪を犯して罰金の刑に処せられた者に対し免許を与えるかどうかについては、免許権者の判断にゆだねられております。

 さらに、今回の改正案におきまして、不適格者の排除を徹底するために、欠格事由の強化を行っております。過去に建築士免許の取り消しを受け、その日から五年を経過しない者に対しては、免許権者の判断にかかわらず免許を与えないこととしております。また、過去に禁錮以上の刑に処せられた者、建築士法に違反して、または建築物の建築に関し罪を犯して罰金の刑に処せられた者に対しては、少なくとも五年間は免許を与えないことにしまして、五年を経過した者に対し免許を与えるかどうかについては、免許権者の判断にゆだねることとしているところでございます。

 姉歯建築士は、昨年十二月に免許を取り消されたところでございまして、仮に姉歯元建築士が再度免許を受けようとする場合には、改正法の規定により、取り消しを受けた日から五年間は免許を与えられないことになります。

 また、姉歯元建築士に対して適用される具体的な刑罰は今後の司法判断にゆだねられることになりますが、仮に、姉歯元建築士が建築士法に違反して、または建築物の建築に関し罪を犯して罰金の刑に処せられた場合には、改正法の規定によりまして、刑の執行が終わった日から五年間は免許を与えられず、さらに、五年を経過した後においても、免許権者の判断により免許を与えないことができるとなるわけでございます。

杉田委員 今回のこのような事件は二度と起こしてはなりません。何よりも再発防止が重要でありますが、これまでの討論を伺ってまいりまして、政府案に基づく対策を速やかに講じ、適切に施行していくことが不可欠であると意を強くしております。

 政府案の速やかな成立を強く要望するとともに、建築士制度の見直しなど残された課題についても早急な検討がなされることを期待して、私の質問を終わります。

林委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後三時四十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後四時十二分開議

林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。下条みつ君。

下条委員 民主党の下条みつでございます。

 長い長い質疑を、本当にお疲れさまでございます。与党野党問わず、重要な法案ということで、大臣初め、行政府の方々初め、委員の方々、御苦労だったというふうに思います。あと一時間半でございますので、ぜひよい御回答を得られますように期待しながら、これから質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、正直ベース、私もいろいろな質問を考えておりましたんですが、やはり与党野党問わずいい御質問が随分出ましたものですから、いろいろな意味でつまみ食いの部分もありますけれども、そこはお許しいただきながら、これから質問をさせていただきたいと思います。

 まず、指定確認検査機関の業務の適正化について質問したいというふうに思います。

 政府案では、第七十七条の二十で指定要件の強化、七十七条の三十一で特定行政庁による指導監督の強化等が挙げられています。一方、特定行政庁への指導監督の強化に対しては触れられていない。私は、これは現場を歩いた中で非常にクエスチョンだなというふうに思っています。

 といいますのは、今回の耐震偽装の問題、一番最初の偽装であるグランドステージ池上を見逃したのは特定行政庁である大田区でありました。今回の姉歯元建築士の偽装問題は九十八件ありますが、そのうちの四十一件の建築確認を特定行政庁が行っており、特定行政庁は約四割、確認検査機関は約六割を見逃していた。四割対六割ということであります。また、ここもやはり一つ問題だと思うんですけれども、偽装がわかったのは民間から出てきた話で、特定行政庁からは出てこなかったということですね。民間から出てきたということであります。

 国民の生命、安全を確保するためには、国による特定行政庁に対する指導監督も必要ではないかと考えています。

 私ども民主党案では、特定行政庁に対して業務実態の公表を求めております。国による特定行政庁に対する指導監督という点では、さきの参考人質疑を皆さんの御同意をいただいてやりましたけれども、日本建築学会村上会長も非常に新しい視点じゃないかというふうに、これは参考人では御意見をいただきました。

 この点を踏まえて、国による指導監督を検討の中に入れていただけないかというふうに、まずはちょっと質問をさせていただきたいと思います。お願いします。

山本政府参考人 基準法が建築物についての全国一律の最低基準を定めるというものでありますために、自治事務とはいえ、法律に基づく自治事務でございまして、しかも、建築基準法の守る法益がそういうものであってみれば、運用も全国にわたって共通して行われるということが必要でございます。

 この観点から、建築基準法第十四条に、国は、特定行政庁に対して、法の施行に際し必要な勧告、助言もしくは援助をし、または必要な参考資料を提供することができるという規定が置かれております。国土交通省としては、この規定に基づきまして、特定行政庁に対する助言などの支援をしっかり行っていく必要があると考えております。

 今回の事件に関しましても、国土交通省において、まず、姉歯元建築士による構造計算書の偽装が報告されました昨年の十月二十六日以降、特定行政庁と密接に意思疎通を図りまして、事態の推移に応じて適切な情報の提供あるいは共有、それから、必要に応じて助言などの支援を行ってまいりました。

 情報の提供に関しましては、事柄の性格にかんがみまして、さまざまな偽装の手口とかその発見の方法といった特定行政庁が必要とする情報を全国から集めまして、迅速に皆で共有するよう提供してきたところでございます。また、耐震性の確保に疑義のある物件が見つかった特定行政庁からの相談に応じまして的確な助言を行っておりますし、さらに、必要な場合は、緊急を要する場合は、担当官を派遣いたしまして特定行政庁が的確に業務を行えるよう必要な支援に努めてきたところでございます。

 こういった方法によりまして、姉歯元建築士や偽装物件の関係者が関与した多数の物件について、偽装の有無あるいは耐震性の確認を優先度に配慮しつつ的確に進めてきたものと考えておりまして、今後とも、地域の建築行政を担う特定行政庁に対しまして適切な助言等の支援を行っていく所存でございます。

下条委員 ありがとうございました。

 的確な助言、支援は大変いいことだと思います。そういう意味では、それはそれとして進めていっていただきたいんですが、局長には釈迦に説法ですが、やはり国が目を光らせているぞというものがなければなかなか、いろいろな問題が地方の方から出てくるのかなというところに実を言うといつも僕はクエスチョンを持っています。

 そこで、もう一歩ちょっと踏み込まさせていただきまして、建築基準法に基づく建築行政の事務は、地方公共団体がとり行うこととされている自治事務にもちろんなっているわけですね。そこで、国の指導監督については、地方自治法における建築基準法の位置づけで建築確認をこの自治事務から法定受託事務とすることで、実を言うともう実現可能であると私は思います。

 法定受託事務というのは、釈迦に説法でございますが、地方自治法二条九項の「法律又はこれに基づく政令により都道府県、市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち、国が本来果たすべき役割に係るものであつて、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの」。地方自治法では、御存じのとおりで、建築基準法の一部が既に法定受託事務に入っております。細かく言いますと十七条等入っております、御存じだと思いますが。

 法定受託事務とすれば、もう既に一部が入っています。本来国が果たすべき役割に係るものとなるので、国の指導監督の中にその部分を置くことができるのではないか。

 ここで、建築基準法第一条にこういう条項があります。「法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資すること」を第一条では目的としている。つまり、国民の生命、健康及び財産の保護を目的として掲げられている建築基準法であります。国民を守るという意味では、財産を守る、国の大黒柱を守るという意味では、大変、変わらないものだと私は思います。

 そういう意味では、具体的に申し上げたいと思いますけれども、今後の課題として、今回の改正はもちろん間に合わないと思います、今後の課題として、やはり目を光らせて、最終的にはもちろん地方に任せるんですが、目を光らせて、これは出してこいよ、もしくは、これはやりなさいという権限を私はこれから考えていってはどうかなと。その中で、法定受託事務をちょっと提案したいと思います。いかがでございますか。

山本政府参考人 非常に基本的な課題についての御指摘だったと受けとめております。

 委員よく御存じのとおりなので改めてあれなんですけれども、これは地方分権改革の一環として、分権一括法ですね、地方分権推進法で、従来の機関委任事務が二つに分けられまして整理をされたわけですけれども、地方分権委員会で一番論議になりましたテーマが、身の回りのまちづくりとか建築活動についてのいろいろな権限が、機関委任事務ということで都道府県に非常に多く留保されている、市町村長さんといえども、なかなか自由に身の回りのまちづくりが行えないという主張が分権委員会のかなりテーマになりまして、ここは思い返しますと、都市計画の話と建築基準法のいろいろな事務を法定受託事務にするのか自治事務にするのかという根っこからの議論は分権委員会では行われなかったと記憶しております。もともとそのテーマなので、当然、これは自治事務だというふうに整理されてしまったと思っております。

 今回のようなことを契機に、根っこから事務の性格のあり方自体を議論するということは非常に大事なテーマだと認識しております。大事なテーマだと認識しておりますけれども、分権一括法の、地方分権改革の非常に大きな分野としてこれが論議されていたために、そういうふうになっていない。

 それで、今回、あるいは今回のことを契機に、改めて特定の事務について法定受託事務化するということは非常に現実的には難しいと思いますが、その御指摘になりました問題意識はよくわかりますので、特に必要な部分について、特に、国の責任を全うする仕事のやり方はどういうふうになるのかという観点からしっかり検討したいと思います。

下条委員 ありがとうございます。

 現実問題として、いろいろな部分のディスクローズが特定行政庁は出なかった、いろいろな資料も出にくかったということは、我々も、この間の偽装で、与野党問わず、お互いのチームの中で、党の中でやりました中で、非常に壁になっていたというふうに思っています。

 そういう意味では、人間も行政も会社も、監督なくして何とかなしじゃないですけれども、やはり何かしらチェック機能があったらどうかなという提案でございます。議事録に残りますので、まあこれからすぐというわけではございませんが、四割は特定行政庁が見逃しているわけでございますので、その辺を含めて、ぜひ今後の課題の中にとめておいていただければというふうに思っております。

 次に、今のお答えはおおよそ、実を言うと、ある意味で想像はしておりました範囲でございますが、そうであれば、今度は、特定行政庁における審査能力というのをもうちょっとブラッシュアップ、向上させていったらどうだということで思います。

 前段に申し上げましたとおりで、偽装見逃しについては、指定確認検査機関、特定行政庁、多くありました。ここで、特定行政庁においても審査能力の向上が早急な対策になっていくのではないかというふうに思います。

 そこで、検査を行う者については、政府案では、建築基準適合判定資格者、つまり、建築主事や確認検査員に必要な資格者でありますが、この欠格条項の強化は、例えば、資格者の登録を消除された者が登録を受けることのできない期間というのは二年から五年に延長になった。これはこれで僕はいいと思っています。ただ、問題の資格者の質という部分には、実を言うと、この法案は触れられていないというふうに思います。

 そこで、私どもは、資格者登録簿への登録要件を強化したい。つまり、その要件というのは、一級建築士として設計、工事監理について一定期間以上の実務経験を有する者でなきゃならないんじゃないか。つまり、資格の中に、現場の中を知っていることの重要性を濃く加えていきたいということであります。これによって、特定行政庁の審査能力が大幅に向上することが今後僕は期待できるんじゃないかと思います。資格について、もうちょっと加える必要が僕はあると思います。

 実を言うと、もう御存じだと思いますが、五月十七日に、読売新聞のホームページに、二〇〇〇年から認められている新しい構造計算方法に対応できない自治体が四五%ある。つまり、五割弱が対応できていない、現実問題として。それだけに、やはり資格者の能力を、現場を含めた能力をそれに濃く入れていっていただきたいというふうに思っております。

 この点で、政府案第十八条の三の第一項ですね。確認審査等に関する指針を、きょういらっしゃる国土交通大臣が定める。同三項に、確認審査等は、その指針に従って行わなければならない。その指針というのがいかに重要かということですね。指針を定め、その指針に従って確認審査をしなくちゃいけないということが、ここにずばっと入っております。

 ですから、この指針というのは、本当にこれから数カ月、改正がこの後また、大臣がよくおっしゃいますが、あり得るということであれば、ここ数カ月、いろいろ起きてくる中で非常に重要なポイントになってくると思います。そこで、今後は、レクで送ってきましたけれども、特定行政庁、指定確認検査機関や大学の研究者等の意見を聞きながら、審査において間違いない法を作成していくということ。きちっとした指針を定めていただきたいと思います。

 そこで、質問をしたいのであります。

 仮に、建築物の完成後に耐震強度が偽装されたり手抜き工事が行われていたことが判明した。そのとき、特定行政庁や指定検査機関が、指針どおりに審査を行ったので責任はありませんと主張する。これは指針どおりやったんだ、私どもは一切責任ないよ、指針を定めた国側として責任というのはどう出てくるんだと。これはどういうふうにお考えになりますか。指針が出た後に、その指針どおりやったんだぞというふうに言われてしまう。お答えいただきたいと思います。

山本政府参考人 非常に難しい御質問でございます。

 そもそも、指針を法律が策定すべきであると求めている趣旨は、審査を的確に行うことができるようなよりどころとしての指針を策定するようにということを法律は求めているわけでございます。したがって、ロジカルに、その指針に従って行えば、建築確認において、問題のある建築計画は、これをチェックすることができるということが前提でございます。

 ですから、まず、御質問に対して第一に答弁すべき内容としては、御指摘の中にもありましたように、衆知を糾合して、法律が求める、意味のある実効的な指針をいかにして策定するかということにまずあると思います。

 そのために、できるだけ建築確認の具体的な事務をコントロールすることができるような指針となりますように、今私どもが考えておりますのは、建築確認、中間検査、完了検査、それぞれに指針を設けますけれども、できるだけ具体的に、確認検査の事務のプロセスに沿って、大事なポイントで事務を適正に進めることができるように策定したい。これは指針の姿形ですが、中身そのものにつきましても、できるだけ仕事に熟達した方々の英知を集めて的確なものを定めていきたいと考えているところでございます。

 そういうふうに指針を的確に定めることがもしできますれば、御質問にあったようなケースは出てこない。出てこないようにこの制度の枠組みを今回法改正でお願いしているということでございますが、万一そのことが挙証されたようなときはどうするんだというもし質問でありますれば、それは指針策定の責任が問われるということにはなろうかと思いますが、そういうことはあってはならぬというふうに考えているところでございます。

下条委員 私が質問する趣旨は局長はばりばりにおわかりになっていると思いますけれども、指針の中にこういうことがあったらなということを前提につくっていっていただきたいという意味なんです、例えばチェック機能にしてもですね。

 今ここで議論をしているよりも、これからその指針に沿ってやっていくわけですから、指針というのは、これからいろいろな意味で検査機関、大学の研究者さんとかにいろいろ聞くわけであります。そういう意味では、その中に、こういう話があったなということで、起き得ないようにチェック機能を含めてやっていただきたいという先輩に対する親心でございますので、ぜひくみしていただきたいというふうに思っております。

 次に、指定検査機関や特定行政庁の審査能力の向上というのは、今私は挙げさせていただきました。今回新たに第三者機関を設けて、そこが一定の高さ以上の建築物の構造計算について再審査を行うというふうにしてあります。

 ただ、今回のようなスキームで建築確認を行って仮に偽装を見抜けなかったとしますと、やはり責任は一体どこにあるんだということになる。特定行政庁や指定検査機関など、いわゆる建築確認を行うところですか、再計算を依頼した構造計算適合性判定機関、まあ長いんですけれども、なのでしょうか。見逃した責任がどこにあるかということなんですね。

 この点、この間の参考人質疑で、新たに機関を設けることで、また責任の所在がさらにあいまいになりかねないんじゃないか、そういう意見も出ておりました。

 この間、五月十七日に局長が御発言になったものが手元にあります。そこをちょっと読ませていただくと、違法な建築確認が行われた場合、それが民間機関の資格者であれ建築主事であれ、違法な建築確認を行った当該建築主事等にまず責任があり、指定構造計算適合性判定機関が行うべき審査に違法が認められた場合はこの判定機関に公共団体が求償することになると考えると。これは、そのまま議事録に残っている局長の発言であります。

 ただ、今回のように、わかっていればいいんですけれども、わからない、うちは悪くない、悪いのはあっちだこっちだと押しつけ合っちゃって、どこが偽装を見逃したか、最終的な責任がどこにあるんだというふうになった場合、責任の所在がよくわからなくなってくるんじゃないかと危惧しております。例えば建築確認を行った機関が最終的には必ず責任を持つんだというふうに、今後の課題としてお決めになっておいた方がいいんじゃないかなと私は思うんですが、その辺はいかがでございますか。

山本政府参考人 今お尋ねがありました責任の所在でございますけれども、とにかく、建築確認の事務に間違いがあったということさえ明らかであれば、その間違いがあったことの責任は、第一義的には確認を行いました建築主事あるいは民間確認検査機関にあるということは法律上間違いないということをはっきり申し上げられると思います。

 その上で、その当該間違いが建築主事の誤りによって、あるいは民間確認検査機関の間違いによって行われたのか、それとも、その前の段階の構造計算適合性判定機関が仕事を間違ったから間違った建築確認につながったということなのかということについては、内部の問題でございまして、指定構造計算適合性判定機関が行う審査に違法があったという場合は、建築主事あるいは民間確認検査機関がこれに対して求償するという姿になる。

 だから、第一義的な責任は、確認を行った者が責任を負うということは明確であろうと思います。

下条委員 外は雷が鳴っていますけれども、粛々と進んでおります。やはり議論をきちっとしていかないといけないと思っております。(発言する者あり)いやいや。

 そこで、局長、なぜ私がこういう発言をしているかというと、実を言うと、昨年の六月二十四日に特定行政庁の被告適格が争われた最高裁の判決がありました。これは釈迦に説法でございます。特定行政庁の被告適格というのは、指定確認検査機関の確認業務の取り消しについて特定行政庁に訴えることができるかどうか、これの最高裁の結果が手元に出てきております。これをちょっと読ませていただきます。

 最高裁の判決では、指定民間検査機関による確認に関する事務は、建築主事による確認に関する事務と同様に、地方公共団体の事務であり、その事務の帰属する行政主体は、当該確認に係る建築物について確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体であると解するのが相当である。これは最高裁の判決であります。というわけで、つまり、私は何を言いたいかというと、最終的には地方公共団体が、つまり特定行政庁が責任を持つんだよという最高裁の判決が去年の六月二十四日に出ているわけであります。

 それで、今回新設される指定構造計算適合性判定機関については、都道府県知事が指定権者です。また、知事は当該機関に対して報告徴収権や立入検査権限等の監督権限を有しています。それだけ指定して監督していけるんです。そして、あくまで、知事が適合性判定をこの指定機関に行わせることができるとしていますが、指定機関の判定というのは指定機関独自の行為ではなくて、判定という行為は行政主体に帰属するということがこの最高裁の判決から考えられると私は思います。よって、審査判定が仮に誤った場合の責任は行政主体に帰属するというふうに理解できると私は思います。この辺が今まさに、五月十七日でございますので今から何日か前、そして今局長が言った、指定判定機関に公共団体が求償するという意見と全くミスマッチをしているということであります。

 このことについて、まずは局長から御意見、その後大臣から御意見をいただきたいと思います。最高裁の判決でございます。

山本政府参考人 最高裁の小法廷の決定は、これは特定行政庁の属する公共団体が被告適格になり得るかどうかというのを判断した判決でございます。

 これを決定するに際しまして、基準法に定める建築確認の事務がだれに帰属する事務かということを判定した上で、なおかつ、その事務を具体的に執行する民間確認検査機関と特定行政庁とのいろいろ指導監督関係を吟味した上で、民間確認検査機関が行った確認事務に瑕疵があった場合であっても、その事務が究極的に帰属する特定行政庁の属する公共団体の事務ということが言えるので、その被告適格は免れないということを小法廷決定は言っているわけでございます。

 その観点から逆に言いますと、この小法廷決定が、民間確認検査機関が建築確認という事務をやったときに瑕疵があった場合に、その民間確認検査機関自身が被告となり得るかということについては、法律上当然被告となり得るわけでございまして、完結した建築確認及び確認済証の交付という行政行為に対して、その行政行為に瑕疵があったということをもってこれを訴えることができるわけでございまして、それのほかに、特定行政庁の属する公共団体も被告適格があるということを小法廷は決定しているわけでございます。

 そのことからしますと、建築確認の事務の性格について論じている小法廷の決定を前提にしますと、今の構造計算適合性判定を経て建築確認を行い、建築確認済証を交付した建築主事ないしは民間確認機関の責任については、今申し上げたことがそのまま並行的に理解されるわけでして、建築確認自体に瑕疵があった場合はそれぞれが被告適格たり得る、訴えられるということは、指定構造計算適合性判定機関の判定を経た建築確認であっても同様であるというふうに理解しているところでございます。

下条委員 大臣もお願いいたします。

北側国務大臣 今、住宅局長が述べたとおりだと私も思います。

 建築確認制度そのものの性格といいますか、構成そのものを今回の改正で別に変えているものではありません。あくまで建築確認の事務をやるのは特定行政庁の建築主事であり、そしてまた指定確認検査機関でありまして、そのこと自体は何ら変わっておらないわけでございます。建築確認そのものに過失があって損害を与えたというふうな場合には、当然、責任はそれぞれ、特定行政庁にもありますし、指定確認検査機関にもある。そして、そもそもの原因が今回新設になります判定機関にあるならば、判定機関の方に求償するという形になるんだろうというふうに思います。

 もう一点付加して申し上げておきますと、こうした責任というのは一体だれに対する責任なのかというところがありまして、例えば、今回の例でいいますと、姉歯元建築士が一番最も責任があるわけでございまして、姉歯元建築士から、おれの偽装がわからなかったおまえが悪いんだと言われる筋合いは全くないわけですね。と同様に、その元請設計者からもありませんし、さらに建築主はどうなんだということですね。

 建築主から、では、建築確認にミスがあったんだろう、あんたが悪いんだろうと言われるかというと、これについては、実を言うと山口地裁というところでこれについて判示を示したのがありまして、そこは、一義的にはやはり建築主に責任があるんだ、建築確認検査というのは後見的な責務だというふうな判示をしておりまして、一義的には建築主というものが全責任を負っているんだというふうな判示を示しているということもぜひ御理解いただきたいと思っております。

下条委員 限られた時間の中なので、議事録に残る話でございますので、日本語の解釈をここで法廷みたいに言ってもしようがないのですが、結論を言えば、公共団体に最終的なものは責任があるんだよという部分がどうも薄まっている感じを私は受けているという印象があるんですよ。そこをやはり上の方から、おまえ、ちゃんとやるべきですよとやる監督指導が今度の法案に入ってないのは、私は非常に危惧をしているという意味であります。

 それがやはり、その適格の部分の訴訟によって最高裁まで時間をかけていった最後で、やはりおまえが悪いじゃないかということが去年の六月に出ているということでありますので、この辺はちょっと押し問答になるかもしれませんが、先ほど申し上げたとおり、なぜ私が今までの課題を申し上げたかというのは、そこの部分の監督が今回の改正法では薄いので、ぜひ今後の課題に、まあ地方分権ありますけれども、十七条はもう法定受託事務に入っておるんですから、ぜひ検討の中に色を入れていっていただければというふうにお願い申し上げたいと思います。

 それでは、時間の関係がありますので、次に移ります。

 次は、保険制度であります。

 建築物に対する保険制度でありますが、今回の政府案では、宅建業法第三十五条にも、宅建業者の保険契約加入の有無の説明義務が盛り込まれています。これは非常に、これはこれでいいことだと思います。我が党案では、さらに進んで、重要事項説明と広告での記載義務まで求めているということであります。これら保険制度加入の有無については、分譲マンションなどの販売される集合住宅や建て売り住宅などの建築主と居住者が異なった場合に定められている。異なっていますね、建築主と居住者、購入者です。しかし、それ以外の個人住宅、いわゆる注文住宅の場合はどうなんでしょうかということであります。

 個人住宅は、建てようとする建築主と居住者がもちろん同一である。最終消費者が建築主になるわけです、同一でございますからね。そこで、建築に関する知識は全くほとんどないと思います、普通の一般の方は、そういう意味では。設計を依頼して、工務店等に施工をお願いすることが工事の始まりになる。建築基準法の中では、建築物についてすべての責任は建築主が負うことになっている。つまり、最終消費者が全責任を負うことになります、個人の場合ですね。私は、言いにくいけれども、ほとんど知識を持っていない消費者が多いんじゃないかと思いますけれども、建築主になる、建築物に対してその人が全責任を持つことは、今後の課題として、ちょっと酷じゃないかなというふうに思っています。要するに知識がないわけですから。

 実際に、きょうも何回も出ておりました姉歯さんがかかわった偽装物件の中には、二棟ほど個人住宅もあったと聞いております。そこで、個人住宅に代表されるような、建築主と居住者である消費者が同一の場合、全く同じですね、この保険制度について、ぜひ今後の課題として検討してみていただきたいというふうに思います。

 具体的には、設計者や施工者がそれぞれ加入する瑕疵担保保険を整備して、その上で、建設する建物に対する瑕疵担保保険加入の事実を開示していく、入っていても入っていなくても開示していく。建設する際に建築主が、設計者、施工者を選定する上での判断材料にしていく、個人の場合であります、一致していた場合。これについて、ちょっと御意見を聞きたいというふうに思います。

山本政府参考人 戸建て住宅、個人の方が工務店を選んで戸建て住宅をお建てになるようなケースにありましても、現行の住宅性能保証制度、これは機構がやりますけれども、そのバックに損害賠償責任保険があるわけでございまして、これは工務店が住宅性能保証機構に登録をしまして、戸建て住宅の注文主と契約を結んで、しかじかの建物を建てるということを登録すれば、機構が保険会社と結んでおります保険契約によってバックアップされるという制度でございます。

 ですから、ダイレクトというよりも、間に保険リスクをプールするような主体が入れば、そういう枠組みを用意することは可能でございますので、共同住宅とかあるいは戸建ての分譲住宅に限らず、戸建て住宅の建設活動につきましても、お客様をそういう形で保護することは可能でございますので、一体的に、保険、付保の問題につきましては、そのことまで視野に入れた上で検討してまいりたいと考えております。

下条委員 ありがとうございます。

 ぜひ、従前の制度でいろいろ漏れていることもありますので、ここのところを今後の検討課題に入れていただきたい。

 もう一点、同じような質問になるんですが、今までは新築の部分でお話しして、今度中古ということも出てくると思うんですよね。中古住宅というのは、中古分譲マンションでも中古戸建て住宅でも、当然一回だれかが買って、まあ二回か三回かもしれませんが、そして、それを購入した人がリフォームをしたり、また売る人がリフォームしたりする。そのときに、建物の一部について、当然間取りとか手を入れていくことになります。そうすると、壁の配置を変えたりどこかを撤去したり、自分のものですから自由にやることになるわけですよね。

 このリフォームの場合でも建築確認が私は必要になってくるのかなとは思いますけれども、この辺について、リフォームを含めた前提として、中古住宅の場合についての御意見を局長にお聞きしたいというふうに思います。

山本政府参考人 中古住宅あるいはリフォームについてのいろいろな建築活動の質について、実は新築のときほどなかなか容易ではないというのは、やはり新築の場合は新築活動をゼロからやりますので、設計図書の審査も可能ですし、建築活動、建築生産活動途上のいろいろな検査も可能ですし、そういうことからいろいろなことを、従前にこれを整理できるということから、制度としてかなりでき上がっている部分はあるんですが、中古の取引あるいは中古住宅をリフォームしての取引については、実は、制度の形としては性能表示制度もあるんですが、なかなか実態が、足腰がついてきていないというのが現実でございます。

 しかし、住生活基本法の御審議でも御指摘いただきましたように、新しい住宅政策におきましては、既存住宅のストックの質をよくして、これを的確に流通させてストックの価値を生かし切るという政策分野が正面の課題でございますので、困難な分野ではありますけれども、今ある制度を手がかりに、さらに改良しながら、御指摘いただいたような課題に取り組めるように努めてまいりたいと思います。

下条委員 ありがとうございます。

 ぜひ、今温かい御答弁をいただいて、本当に外の天気とは違って平和に済ませております。

 これからも中古住宅の買い手は非常にまだまだ、分譲マンションよりも下手すれば買い手数が多くなる可能性はあります。そこの部分は全く、今、柱が、はりがというのを全部取っ払うことも実を言うと多いんです。そういう意味では、それによって非常に危険な状態になることが、中古分譲マンションもあり得るし、また戸建てもあり得る。ここをぜひ、今局長がおっしゃっていただいた検討課題の中に入れていっていただいて、きょう、あしたという中ではなくて、今後の課題として、ぜひ今おっしゃったように進めていっていただきたいというのをお願い申し上げたいと思います。

 それから、次に移りたいと思います。これはまさに本当に今後の課題でございます。

 まず、専門別設計士でございます。

 建築基準法の中で、建築行為にかかわる主体は建築主、設計者、施工者の三者で、建築物についてのすべての責任は、何回も申し上げますが、建築主が負うことになっている。その中で、建築士である設計者の役割は、もう何回も出ていますが、建築主から委託されて代行者として設計を行っている、代行者として設計を行っている。そして、現行法では、一人の建築士が建物すべてに設計責任を負っているということになっています。

 一連の耐震偽装事件では、姉歯さんのように、構造設計を行った設計者は建築基準法上の設計者となっていない。これはなっていないですね、もう何回も発言ありますけれども。明確な責任はない状態であることが明らかになっている。現在の建築設計では、規模の小さい建物においても、建築、構造、設備と、建物の機能別に設計を行っているのが実情であります。その実態に建築基準法が、ちょっと言い方をあれすると、まだ若干追いついていないんじゃないかなというふうに私は思います。

 そこで、設計の実態に即して設計者の責任を明確に、詳細にする必要があるんじゃないかと私は思います。現行法で一人の建築士が建物すべてに責任を負っている部分を、分野別で設計責任を明確にしていくということであります。具体的には、例えば統括設計者を決めて、その下に機能分野別に建築設計、構造設計、設備設計者を明確にしていく、こういう案を提案していきたいというふうに思っていますが、お考えをお聞きしたいと思います。

山本政府参考人 引き続き検討すべき課題とされた課題の中で、一番大事な検討分野の一つだと受けとめております。

 中間報告でも、専門分野別の建築士制度の導入について、社会的必要性を明らかにした上で幾つかのことを検討しなきゃいかぬと言っていますけれども、イの一番は入り口ですけれども、専門分野をどういうふうに定めるかですね。論議になっている構造の分野、それから設備の分野あたりは余り問題ないかもしれませんけれども、それだけでいいのかという議論がまず入り口であります。

 それからもう一つ、一番ハードな課題は、今の建築士の制度はオールマイティーでございます。すべての仕事は、建築士法上、建築士に与えられた仕事は一人の建築士が全部できるという建前で制度ができております。しかも、建築士法上、建築士に与えられた仕事は建築士でなきゃできないという業務独占となっております。業務独占で、なおかつオールマイティーという今の現状に対して、今、新たに定めようとする専門分野の資格者の関係をどういうふうに規定するのかというのが非常に難しい分野でございます。

 それを整理する一つの方法として、建築計画を策定する建築士の仕事を統括する建築士と、それぞれの専門の建築士に全く分離するというのも一つの考え方です。しかし、出発点が、オールマイティーの力を持っている建築士が現状ですので、今のおっしゃった一つの考え方に到達するのに、どういう問題意識を皆さん方が持たれるかというところが非常に大きな課題です。

 ですから、一足飛びに今御指摘になったような形にいく手前で、オールマイティーの建築士が統括の部分はやる、しかし、特定の非常に難しい構造の建築物の構造設計については構造専門の資格者でなければできないということにするというのも一つのオルタナティブだと思います。そういったようなことを御議論いただいております。

 これは非常に稠密に議論した上で、最終的にこれでいくという整理をして国会の御審議をいただかなきゃいかぬと思います。その上で最終的に確定するテーマでございますが、そのようなことをこれからしっかり検討いただいて、方針を定めたいと考えているところでございます。

下条委員 ありがとうございます。

 あともう一点、建築確認後の施工段階で、設計者にかわる監理者があります。ここでも設計と同様に、私は、統括監理者を決めておいて、その下に機能別に設計、構造、設備の監理者を明確にすべきだというふうに思っています。

 そういう意味では、今検討テーマというふうにおっしゃっていただいて大変ありがたいんですが、この辺、大臣、よく今回の法案の当初からおっしゃっている八月というXデーでございますけれども、そこに向けて、この機能別の、分野別の設計士を含めた、監理者を含めた対応についてはどのように方向感をお持ちでございましょうか。もしお答えいただければというふうに思っています。

北側国務大臣 残された課題の大きな一つの問題を御指摘いただいております。

 建築士をめぐる問題というのはほかにもたくさんございまして、例えば工事監理、これを適正にやっていただく必要があります。また、建築士そのものの育成の問題があります。さらには、先ほども御議論ございました、建築士会もしくは建築士事務所協会等々の団体への加入の義務化の是非の問題もあります。こうした問題と今の専門分野別の建築士制度をどう構成していくかという問題とは関連している問題でございまして、すべて総合して、私は、新たな建築士制度というものをぜひこの機会につくらせていただきたい。その際に、この委員会で賜ったさまざまな御意見について、しっかり参考にさせていただきたいと考えておるところでございます。

下条委員 ありがとうございます。

 一つ一つの積み上げでございますので、私としてはぜひ大臣に引き続きずっとやっていただきたいと思っていますが、内閣がかわればわかりませんので、その辺は神のみぞ知るでございますが、八月というふうにおっしゃっていたので、いろいろな課題がありますけれども、その中でぜひ入れていっていただきたいというふうに思います。

 あと、もう一つ、今の件に関してでございますが、分けて監理というものもございますし、品質の管理というのは今度出てきた後にあると思うんですね、つくられた後ですね。設計段階の改善を行っても、実際に建設する段階でしっかりと施工していない、つまり、簡単に言えば手抜きの部分ですね。この部分もいろいろ出てきている。

 私も、もう多くは語りませんが、いろいろな現場に行って驚くべき結果を見てまいりました。ああいうところに自分の家族が、朝から学校へ出ていって、戻ってきて、ちびどもが住むかなと思うとぞっとしております。そういう意味では、その辺も含めて早い段階でスピードアップしていって、大臣が在任中に起きたことでございますので、ぜひしっかりした形で進めていっていただきたいというふうにお願い申し上げたいと思います。

 それから、時間も大分迫ってまいりましたが、今回、ちょっと私も現場に行きまして、あれというのが幾つかあったんですが、そのうちの一つが、マンションですから、いろいろな問題があったマンションに行って、九階のマンションに行かせていただいて、その九階の部屋の中に入っていって、住民の方が物すごく私に主張することの一つが、ベランダの手すりがぐらぐらだと。女の子が八階かどこかから落ちた大変かわいそうな事件もつい最近ありましたけれども、ベランダの手すりが非常にぐらぐらしていると。

 これは、今後の課題としてどうかなと思ったものですから今ちょっと申し上げるのですけれども、それはどういうことかというと、できたてのベランダの手すりが全く、ちょっと手で押すだけでぐらっと向こう側に行くわけですよ。私もちょっとおっかなくて下がったぐらいで、何かというと、できてからそうだったと。

 私もいろいろ、基準法とかあっちこっちひっくり返しました。そうすると、建築関連法に何か規制はないかと調べたのですけれども、建築基準法施行令の二十五条の一項に「階段には、手すりを設けなければならない。」こうなんです。階段には手すりですね。例えば超高層だったら、三十五階や五十階の超高層の階段に手すり、それと同じだと。それから、同百二十六条一項に「屋上広場又は二階以上の階にあるバルコニーその他これに類するものの周囲には、安全上必要な高さが一・一メートル以上の手すり壁、さく又は金網を設けなければならない。」これしかどうも見つからなかったんです。

 私は何を言いたいかというと、これは物すごく、実を言うと住民の安全を守る上で結構抜けている部分で、確かに鉄筋の部分とかいろいろあります、ありますけれども、目に見えて、実際、建築基準法にどうもないみたいなんです、ない。つまり、どのぐらいの強度でそこに手すりを置いてどのぐらい守らなきゃいけないよという、強度の部分が一切ないわけであります。だから、極端な話、手すりがあって、それが割りばしでつながっていてもいい、全然違反はしていない、そういうことが建築基準法上で出てきている。

 ですから、私としては、これは実を言うと、恐らく、私がこうやって発言をすれば議事録に残りますから、今後の課題としてぜひ検討していただきたいという意味で申し上げております。今ないと私は見ております。ですから、そこの部分については、今後の課題として物すごく重要な話だと思うんです。局長は、お孫さんはいるか知りませんが、もしお嬢さんとか御子息のお子さんが、出て、ばあんと、ぼっとおっこちちゃったと。いや、これは全然我々も文句を言われる筋合いはないよと建築主が言ったと。法令的にも何にもない、緩くてもいい、ビスがずれていても何にも構わない。これは非常に私は大きな問題だと思っています。

 したがって、これは今回の改正法にすぐどうのこうのじゃないんですが、今後の改正、八月にどうのこうのとおっしゃっておりますが、その中に、ベランダの部分の安全性について、手すりの部分についてぜひ検討課題に入れていただきたいと私からお願いでございます。いかがお考えでございますか。

山本政府参考人 確かに、手すり壁、さく、金網を設けなければならないと書いてありますけれども、それが安全なものでなければならないとは書いておりません。しっかり、最低基準ですので、金網とか手すり、さくの安全基準というのはどういうふうにあったらいいのかということを、今仕事をしている関連業界ではいろいろ勉強してくれているようですので、せっかくの御指摘ですので、今回あるいは第二弾の法令の見直しに際して、どういう措置がとれるか、きちんと勉強したいと思います。

下条委員 ありがとうございます。

 今の件、大臣も一言、もしよろしければ、お考えをお聞きしたいと思います。

北側国務大臣 ちょっと私も詳細はよく承知しておらないのですが、今住宅局長が答弁したとおり、安全なものになるように、法令等の精査また必要な整備をしていかねばならないというふうに考えております。

下条委員 ありがとうございます。

 時間も来ておりますから、最後のあれにさせていただきたいと思います。

 私は、今回の改正法で述べられている部分について、全体像としては、オール・オア・ナッシングになかなかできないのですが、なかなか積み上げた内容ではないかなと思います。ただ、党としてどういうふうな判断をするかはまた別としまして、対案も出させていただいている、それものみ込みながら一つ一つの法案をつくっていかなきゃいけないというふうに思います。百メーター走をいきなり走ればアキレス腱が切れるのと同じでございます。準備する方も必要ですし。

 ただ、私は、一番必要なのは、今回これだけの、与党、野党のいろいろな重要な方々、そして行政府の方々が汗を流して出した意見でございますので、ぜひ期限を切っていただいて、先ほど申し上げましたけれども、期限を切っていただいて、ここまではファーストステージ、ここまではセカンドステージというのを明示していただきたいというふうに思っておりますが、それがあと二カ月でどうなるか、三カ月でどうなるかは、非常に不明確なところもあります。

 その時点で国会が開かれているかどうかもありますけれども、その辺を、最後に御決意を、住宅局長それから大臣にお聞きして、時間が来ておりますので、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

山本政府参考人 今回の事案は、建築行政にとりまして一種の非常事態でございまして、国だけでなく地方公共団体をあわせて、これにどういうふうに対応するか、二度と起きないようにするためにどう対応するかということにずっと取り組んできたわけでございます。

 その際、制度的な課題があれば、あれはだめ、これはだめという態度ではなくて、しっかりテーブルにのせて、きちんと吟味した上で、必要なことは措置し切るという方針で、大臣の指揮のもとに取り組んでまいりました。

 今回は第一弾でございますけれども、残りました課題は第二弾できちんと措置し切るという方針で取り組んでまいりたいと考えております。

北側国務大臣 建築士制度をめぐる問題、さらには建築確認制度を初めとする建築行政にかかわる問題、そして住宅を取得する消費者の利益をより実効的に守っていく問題、こうした問題について、今回の改正案で出させていただいたものもありますし、積み残されたものもございます。

 今、住宅局長が申し上げましたように、こうしたさまざまな問題、課題につきまして、この夏までにはやはり方向性、少なくとも方向性についてはきちんと出さないといけませんし、取りまとめるものはもちろん取りまとめていく必要がありますし、次の国会にしっかりと提案できるように体制、準備をとらせていただきたいと考えているところでございます。

 また、根底的な問題といたしましては、先ほど中古住宅のお話がございましたが、私は、やはりこれから、住生活基本法を審議していただいたばかりでございますけれども、いい住宅、良質な住宅を供給していく、提供していくということをいかに制度として実効あるものとしていくかという意味で、この中古住宅の問題なんかも非常に大事な問題だというふうに認識をしているところでございまして、良質なストックをしっかりと確保できるような、そうした日本の住宅制度にぜひこの際変えさせていただきたいというふうに考えているところでございます。

下条委員 熱い御決意、どうもありがとうございました。

 私どもも是々非々でそれぞれの検討課題について議論をさせていただきたいと思いますので、ぜひ検討を含めて前進していただきたいと思います。

 時間が参りました。以上で終わります。ありがとうございました。

林委員長 糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 前回の質疑におきまして、私は、特定行政庁への監督強化が必要であることや中間検査の義務づけを徹底すべきであること、構造計算適合性判定の公正、的確な実施、こういうことの必要性について質問させていただきました。このときの政府側の答弁について幾つかさらに突っ込んでお聞きしたい点がございますので、本日は、まずそれを質問させていただきたいというふうに思います。

 第一に、特定行政庁に対する監督強化に関してでございますが、確認検査事務というものは、これは自治事務でございます。国が地方公共団体の事務の執行に関しましてあれこれ指図ができない、こういうことは理解いたしますが、問題は、制度としての建築主事の要件、こういうふうに考えます。

 今回、建築主事に実務の設計経験ですとか監理経験があれば偽装を見破ることができたのではないのかなと。私といたしましては、建築主事の設計の経験ですとか現場監理経験の義務づけが必要であるというふうに考えますが、どのようにお考えでしょうか。御見解をお聞かせいただけますでしょうか。

山本政府参考人 建築主事または確認検査員となるためには、建築基準適合判定資格者検定に合格した上で、国土交通大臣の登録を受ける必要がございます。

 建築基準適合判定資格者には、建築物が建築基準関係規定に適合するかどうかを審査する能力がもちろん必要であるわけでございます。そのため、この資格を受検するためには、設計、工事監理等の業務を行うために必要な知識、技能を有することについて、まず、一級建築士試験に合格している者、一級建築士でなければいかぬということを求めています。

 一級建築士は、さらに、資格を得るためには、建築に関して二年以上の実務経験が課されています。現場で二年以上経験していないと一級建築士の受験資格がないという仕組みになっておりまして、この実務経験は、建築行政における実務経験ももちろん含むわけでございますが、実務の経験が必要だということでございます。

 まず、建築基準適合判定資格者検定の受検資格として一級建築士を要件としているということで、一級建築士の実務経験をもって設計とか工事監理等の実務経験を有するということは、今御指摘いただいた問題意識には正面から実はこたえていないんですけれども、ただ、建築基準適合判定資格者としては十分な能力を有しているということは言えると思います。

 さらに、建築確認の業務等に関しまして、二年以上の審査での実務経験を有することを求めておりますので、建築士の設計に係る建築物が建築基準関係規定に適合するかどうかを判定するための必要な知識を有することをこの資格試験で見れば、的確な能力を持った者が資格者になり得るという考え方で進めているところでございます。

 これにさらに実務経験を課すかというところが御質問のポイントなんですけれども、さらに加えるということになりますと、確認審査等の的確な運用のために必要な人員確保もなかなか難しくなってくるということもありますので、今は私どもはそこまでの意思決定をしていないということでございます。

糸川委員 局長、ぜひ、厳しい方向へ、厳しい方向へということでお願いをしたいなと。確かに、人手が足りないとかそういうことが起きると思いますけれども、それは一つの方向づけとして聞いていただければなというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

 第二に、中間検査の徹底についてでございますが、前回は、中間検査の義務づけの対象が拡大されるべきではないかな、こういう問題意識から質問をさせていただいたわけでございます。

 本日は、少し違った観点から質問させていただきたいんですが、建築基準法を見ますと、ある物件について建築確認を行った者が、例えば建築主事または指定確認検査機関でしょうか、その物件について中間検査を行うことに法律上の制約はない、こういうようでございます。しかし、これでは公正な検査が行われない、こういうおそれがあるのではないかなというふうに思います。

 つまり、一たんこの確認をしているわけですから、その物件についての検査というものはお手盛り的になってしまうのではないかな、こういう危惧がされるわけでございます。

 同一の物件につきましては、建築確認と中間検査はそれぞれ異なる主体が行うよう措置すべきではないのかなというふうに考えますが、この点どのようにお考えでしょうか。お聞かせいただけますでしょうか。

山本政府参考人 現行制度におきましては、建築確認を行う者と中間検査を行う者、それぞれについて、これは建築主の判断で選んでいただくという仕組みになっております。

 中間検査は、あくまでも工事施工段階での基準不適合を発見することを主たる目的としておりますので、中間検査を建築確認を行った者以外に実施させたとしましても、検査の段階で構造計算書の巧妙な偽装を発見することができるかどうかということを考えてみますと、偽装の態様次第でございますけれども、別の者がやったから今回のような偽装であれば発見できただろうとまでも言えないかと考えるわけです。

 仮に偽装を確実に発見するということが目的であれば、中間検査を行う者に改めて中間検査のとき使う設計図書を建築確認のときと同じように審査させるということが必要になってくるわけでございますけれども、これは中間検査の目的と言えないところがありますので、そこまでは求められないだろう、中間検査に行った人に設計図書の基準適合性を改めて審査させるというようなことはできないだろうと思っているわけです。

 むしろ、建築確認時に建築計画の審査を行った者が計画の内容を理解した上で厳密に中間検査を行う方が、より効果的に工事施工段階での不適合を発見できるのではないかという考え方もあると思います。

 しかし、御指摘いただきましたように、資格者が限られていますものですから、今回、私ども反省しなきゃいかぬと思っています点は、耐震安全性について基準法の最低基準を確認で見ますね。同じ機関が、住宅性能表示で耐震安全度の等級が幾つかというのを審査してもらっていて、これは基準法の基準を満たしているのが等級一ということなんですが、一・〇を割っているにもかかわらず見過ごしてしまったというケースが出ております。ですから、限られた技術者が同じものを見たために、要するに、いいかげんに見たんではないかということも疑われるわけですね。同じ人間が見ちゃいかぬということを言っているわけですけれども、それでもそういうことは疑われるわけです。

 ですから、御指摘の問題意識を受けとめて、検査とか性能評価とかについて、民間の機関を活用するときにどういう役割分担が一番望ましいかということについて改めてきちんと検討して、前に進んでいきたいと思います。

糸川委員 私が言いたかったのは、お手盛りにならないということで、建築確認と中間検査、そういうところで基準を厳しくしっかりと見ていただきたいというふうなことでございますので、そこも指摘をさせていただきたいと思います。

 次に、構造計算適合性判定制度についてお尋ねいたしますが、これまでの審議で、この制度が偽装を見抜くための手段として有効に機能し得ることは理解をしてきたわけでございます。しかし、私はその運用に若干の懸念をまだ持っておりまして、そこで二点ほどお尋ねをしたいんですが、まず一点目は、天下りの懸念についてでございます。

 改正案では、構造計算適合性判定機関、これは都道府県知事が指定することとされておりますが、これによって行政職員の天下り先というものをふやすことにはならないのか。そのようなことが起こらないように留意するということが必要であるというふうに考えますが、大臣、御見解をお聞かせいただけますでしょうか。

北側国務大臣 構造計算適合性判定機関で実際に判定業務を担っていただきます構造計算適合性判定員の方々というのは、この事柄の性格上、当然のこととして、建築構造に関する専門的な知識だとか技術を有している方々になっていただかないといけないわけでございます。

 そういう意味で、想定しておりますのは、そうした専門の大学の先生方や経験豊かな構造設計の実務者等を想定しているわけでございまして、これらの方々が非常勤で判定業務を行うことを考えているところでございます。

 したがって、こうした非常に専門的な業務を担っていただくわけでございますので、都道府県等の建築行政職員がこうした判定員になるというふうなことは想定をしておりません。

糸川委員 二点目に構造計算適合性判定員についてお尋ねをしたいことは、この能力についてでございます。

 構造計算適合性判定機関では、判定員が判定の業務を担うことというふうになっておるわけでございます。今回のような事件は二度と起こってはいけないということでございますが、そこには、偽装を確実に見抜く、これが必要になってくると思います。そのためには、当然、判定員が、先ほどからお話をしているように、十分な能力を備えておかなければならないわけでして、判定員の審査能力、これについてどのように担保されるのか、お聞かせいただけますでしょうか。

山本政府参考人 御指摘いただきましたとおり、この制度がきちんと生きるかどうかは、判定員の能力をいかにして確保するかという点に尽きると思います。

 構造計算適合性判定員の要件につきましては、国土交通省令で定める予定でございまして、まだ確定はしておりませんけれども、今想定しております要件としては、大学、短期大学または高等専門学校において建築構造を担当する教授もしくは助教授として仕事をしてきた人、あるいは試験研究機関において建築構造分野の試験研究の業務に従事し、高度の専門知識を有する者、あるいは建築構造設計に関して十年以上の実務の経験を有し、専門的な知識を有する者、これは社団法人日本建築構造技術者協会に属する建築構造士などを想定しているわけですけれども、こういった要件を定めたいと考えているところでございます。

 したがいまして、構造計算適合性判定員の選任に当たりまして、特別な試験をするということはやりません。やりませんけれども、建築構造に関する専門的な知識、技術、実務経験を求めることで審査能力を担保する考えでございます。

糸川委員 ありがとうございます。

 以上が、大体前回の議論の点についての質問だったんですが、今回の改正案では、建築士が構造計算によって建築物の安全性を確かめた、こういう場合に、その旨を証明しなければならないという制度が提案されているわけでございます。

 この制度について、昨今話題になっております建築基準法に複数の構造計算方法が認められていることに関連しまして、もう少し質問をさせていただきたいと思いますが、質問の前提といたしましてまずお聞きしたいのが、許容応力度計算では耐震基準を下回っているのに限界耐力計算によれば安全性に問題がない、こういう建築物が存在する理由について簡潔にお答えいただけますでしょうか。

山本政府参考人 建築基準法におきましては、構造安全性を検証する方法として、保有水平耐力計算のほか、限界耐力計算などを選択することができることとしております。

 保有水平耐力計算は、建築物の構造種別や形状等に応じて必要な耐力を求める方法でございまして、耐震強度の指標は、Qu/Qunでございますが、安全度を見込んだ計算結果が出るように設定されております。一方、限界耐力計算は、地震時における建築物の変形量及び変形による地震エネルギーの吸収量などを精緻に算定いたしまして、それに応じて耐力を求める高度な計算方法であります。

 一般的な建築物を一般的な敷地に建築する場合には、両計算法による計算結果の差はほとんどありません。

 限界耐力計算を行った場合に、保有水平耐力計算を行った場合と比べて、まず第一に、柱とかはりの鉄筋量が十分あって、大きく変形することが可能な措置を講じた建築物につきましては、変形能力が大きいことを精緻に計算して、地震時の安全性を高く評価することができます。それから、かたくて良好な地盤に建築される場合、適切な地盤調査を実施することによりまして、地盤の性状により地震力が増幅される影響を適切に評価して、建築物に働く地震力を小さくすることができます。限界耐力計算を行った場合には、保有水平耐力計算を行った場合と比べてこういう特性があるわけでございます。

 その結果、より高度な計算方法である限界耐力計算を用いた場合は、構造部分の変形能力が高くて、かたくて良好な地盤に建つ建築物については、高い耐震性を有するものとして計算されることになるということでございます。

糸川委員 そうすると、御答弁いただいたように、許容応力度計算では耐震基準を下回っているのに限界耐力計算によれば安全性に問題がない、こういう建築物は存在するということになると思います。

 そうすると、構造安全性の証明制度について疑問が出てきてしまうわけです。

 具体的に言うと、建築士が設計の際、許容応力度計算によって構造計算をして安全性の証明をしたのにもかかわらず、実は許容応力度計算の基準を満たしていなかった。この時点で、うその証明をしたとも考えられるのではないか。しかし、後に限界耐力計算等のほかの計算法で改めて計算してみると、安全性を満たすことがわかった。このようなとき、この安全性の証明制度の適用はどうなるのか、お聞かせいただきたいなと。

 また、改正案では、構造安全性について、うその証明をした場合、罰則の対象となるというふうにされておりますが、今申し上げたような場合に建築士が虚偽証明の罰則を免れることになれば、これは制度上極めて問題なことが起きるのではないかなというふうに思いますので、見解をお聞かせいただけますでしょうか。

山本政府参考人 これは、今回新設しました証明書の交付制度についての非常に大事なポイントについての御指摘だと思います。

 今回、改正案でお願いしております建築士法二十条二項で、構造計算によって安全性を確かめた場合に、その旨の証明書を設計の委託者に交付しなければならないとしております。

 建築基準法で建築物の構造安全性を確認するに当たって、先ほど御説明しましたように複数の構造計算の方法を認めておりますけれども、ただいまの証明制度の規定の適用におきましては、設計者が設計段階においてどの計算方法を採用して構造計算を行い、証明をしたのかということでその適合性が判断されるべきものでありまして、仮に、構造計算を許容応力度計算によって行い、許容応力度計算では安全性が確かめられなかったにもかかわらず安全性を確かめたものとして証明書を交付した場合には、その後、仮に限界耐力計算等の他の方法で安全性が確かめられたとしても虚偽証明に該当すると考えます。

 したがいまして、この場合であっても、建築士法第二十条第二項違反として、同法第三十五条第五号の規定に基づきまして、一年以下の懲役または百万円以下の罰金に処せられることとなると考えられます。

糸川委員 ありがとうございます。

 きょうは三十分いただいたんですけれども、どんどん時間がたってしまうので、大臣にお尋ねいたします。

 建築士の団体への加入義務につきましてお尋ねしますが、現行では、建築士の団体加入というものは任意というふうになっております。しかし、建築士の業務の適正化を図る上では、建築士に対し、建築士会ですとかそういう団体への加入の義務づけというんでしょうか、こういうものが課せられている、それらの団体を通じて建築士に対する指導監督を強化することも有効な手段の一つというふうになるのではないかなと。いわゆる団体自治のような考え方なんですが、政府案では団体への加入義務づけが措置されておりません。その理由はどこにあるのか、お聞かせいただけますでしょうか。

北側国務大臣 今委員がおっしゃったように、建築士の方々の資質を向上するだとか、それから建築士または建築士事務所等の業務の適正化を図っていくだとか、さらには自治的に自分たちの建築士団体の中で建築士の指導監督を強化していくだとか、こうしたことを期待して団体への加入の義務づけについてやるべきではないか、こういう御議論があるわけでございます。今まさに、そのことについて、社会資本整備審議会でも論議をいただいておる主要な点の一つでございます。

 これにつきましては、一つは、団体といってもこれは本当にいろいろな団体がありまして、各都道府県ごとの建築士会、それから日本建築士会連合会もあります、また建築家協会というのもありますし、建築設計や構造設計、設備設計に専門的に携わる者の団体もありますし、さらには建築士事務所協会もある、日本建築士事務所協会連合会もあるといったように、多様な団体が今活動をしておられる。これは、すべて任意の団体ではございます。

 団体への義務づけを仮にするとしても、じゃ、どの団体への義務づけをしていくのかということについて、やはりこれは当然、今もいろいろな意見が出されておりまして、資格者団体のみならず、事業者団体や分野別の団体への加入も義務づけるべきだ、こんな意見も出されておりまして、こうした関係団体間の十分な調整もしていかねばならないと考えているところでございます。

 一方で、きょうも大分議論がされました建築士をめぐる問題につきましては、専門分野別の建築士制度の導入の問題だとか、それから建築士の資質、能力をどう向上していくのか、また、どう育てていくのかというような問題だとか、さらには工事監理業務の適正化の問題だとか報酬基準の問題もあります。こうした建築士をめぐるさまざまな課題がありまして、そうしたさまざまな課題とこの団体への加入の義務化の問題というのは極めて関連している問題だと思います。

 そうした問題をすべて一緒にやはり議論をしていく必要があるわけでございまして、今、そういう意味で、建築士制度のあり方そのものについて、総合的な、抜本的な検討をさせていただいているところでございます。夏ごろまでに方針を取りまとめて、その結果を踏まえてぜひ見直しをさせていただきたいと考えております。

糸川委員 では、ただいまの答弁に関連して、今度は民主党案についてお伺いしますが、民主党案では、建築士が登録した時点で、建築士会と建築士会連合会、これに加入しなければならないこととされております。

 現実問題として、建築士に関係する団体は、各都道府県ごとに設立されている建築士会及びその連合会のほかにも建築家協会や建築構造技術者協会など多様な団体が活動している現状が報告されております。こうした現状を踏まえますと、前回も御指摘がございましたけれども、建築士のすべてが建築士会に加入しなければならないこととするのは、現段階においてはいささか拙速ではないのかなというふうな感じがいたします。

 資格者団体によりますいわゆる団体自治、こういうものは重要なテーマではございますけれども、民主党案の提出に当たって、これまで建築士にかかわる各種関係団体とどのような調整をしてこられたのか、その辺をお聞かせいただけますでしょうか。

森本議員 糸川議員の質問にお答えをさせていただきます。

 先般、先輩の田村議員に、時間で、早くやれというようなことでございましたので、大分抜きましたので、きょうはしっかりとお話をさせていただきますので、よろしくお願いします。

 民主党の方では、建築士について、建築士会への強制加入制度を創設いたしております。これは建築士の、先ほど申された自治組織の活動を通じて、建築士の品位の保持、業務の改善、適正化等を図ろうとするものであり、建築士の地位を向上させ、責任と誇りを持った仕事を行ってもらうために必要な措置であると考えておるわけでございます。

 議員御指摘のとおり、現在複数存在している建築士の全国組織が一つになるなど、実態面で幾つかの準備過程を経る必要が実はあります。それらの準備は、国家が強制的に一本化するというのは望ましいことではないというふうに考えております。建築士の方々がみずからの将来のことを真剣に考えていただいて、建築士自身の手で自発的に一本化されることを望んでおるわけであります。したがいまして、民主党案でも、建築士自身の建築士会の一本化に向けた活動状況を見きわめた上で、適切な時期に、この規定を施行するための法律を制定するということといたしております。

 一方、政府におきましても、北側大臣が過日の記者会見でも述べられておりますし、この委員会でも述べていただいておりますので、私どもの評価につきましては、この分については時間の関係で省略をさせていただきますが、前向きな御発言をしていただいておるところであります。

 建築士にかかわる団体との調整については、具体的に何を調整をというような、十分細かく理解できないところが私自身もあるわけでございますが、関係する団体や個々の建築士の方々からヒアリングを行っておりまして、意見を賜ったところであります。

 そうしたことから、さまざまな意見を伺った結果、居住者、利用者、購入者の立場に立って、安全、安心な建築物が供給されるためにも、建築士会への強制加入制度が必要であると判断をさせていただきました。建築士にかかわる関係団体も、建築士の地位の向上のため、責任と誇りを持った仕事を遂行してもらうためにも、一本化に向けて協力をいただけるものと考えておる次第であります。

糸川委員 ありがとうございました。

 最後に、先ほど大臣が、報酬の基準についても見直しをされるということで、何か答弁の中で報酬の基準の見直しについてお話をされましたので、最後に、これは参考人で構いませんのでお尋ねいたしますが、構造設計を担当する建築士というものは下請になっていることが多いわけでございます。契約関係上弱い立場にあって十分な報酬が得られない、こういう話をよく聞くわけでございます。

 今回の事件を引き起こしたのは構造担当の建築士でございますけれども、このような現状のままでは、また同じような不正を働く者が出てこないとも限らない。構造専門の技術者が誇りと責任を持って業務に当たるということが、この環境を整備するということが不可欠なのではないかなというふうに思いますが、そのための一つの策といたしまして、建築士の報酬基準を見直すべきではないかなというふうに考えますが、御見解をお聞かせください。これで、終わりましたら私の質問を終わりますので。

林委員長 山本住宅局長、答弁は簡潔に願います。

山本政府参考人 御指摘のとおり大事な課題だと思いますので、建築士制度の見直しとあわせて、しっかり検討してまいります。

糸川委員 ありがとうございました。終わります。

林委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

林委員長 これより両案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。三日月大造君。

三日月委員 民主党の三日月大造です。

 民主党・無所属クラブを代表し、政府案に反対、民主党案に賛成の立場から討論させていただきます。

 政府案と民主党案は、大きく三点、立ち位置や方向性が異なっています。

 第一は、設計と施工、監理の分離、建築士の地位の向上に対する対策です。

 姉歯氏は、国会の証人喚問で、偽装のきっかけとして、建設会社からの厳しいコスト削減圧力があった旨の証言をされています。現在、構造設計士を含む一級建築士の多くの方々が、ゼネコンや建設会社、ディベロッパー等の下請的立場に置かれています。厳しい相互チェックを実現するために、建築士の地位を向上させ、独立性を確保することが不可欠です。

 民主党案では、すべての建築士が建築士の会に入会することを義務づけ、その会は自治組織として運営し、建築士の地位と独立性を向上させることをうたっています。建築士同士の情報交換が密となり、構造を初めとした専門建築士育成のための研修、検定などが充実することも可能となるでしょう。

 一方、政府案では、建築士に対する罰則は強化しようとしていますが、従来から指摘され、今回の偽装問題で露呈した、建築士の経済的、社会的地位の問題点には何ら手当てされていません。これでは、建築士が誇りと責任を持って質の高い仕事をすることにつながらないばかりか、今回の耐震強度偽装事件を受けた対策としては極めて不十分ではないでしょうか。

 第二は、保険加入の表示や説明の問題です。

 現在、住宅の瑕疵担保責任を十年間保証するための保険がありますが、加入状況は低率にとまっています。売り主が倒産した後にも保証される保険の普及は急務の課題です。

 民主党案では、すべての一戸建て及びマンション販売の広告に、その住宅が保険に加入しているか否かを表示させることを、文字の大きさや体裁についても規定し、違反には罰則を科すなど、住宅販売業者等から消費者へのわかりやすい情報提供を義務づけています。

 政府案でも保険加入の有無を重要説明事項と位置づけられておりますが、契約の直前に保険加入の有無を説明されても冷静な判断はできず、契約や購入への第一歩となる広告の段階での表示を義務づける民主党案と比較して、消費者保護の観点からも不十分だと断ぜざるを得ません。

 第三は、建築確認申請手続の問題です。

 民主党案では、民間の確認検査機関が審査した物件であっても、最終的な建築確認済証は特定行政庁が発行することとされています。さらに、建築主事登録要件を厳しくし、すべての建物に中間検査と完成二年後検査を義務づけることなど、政府案にはないセーフティーネットを用意しています。

 以上三つの点からも、両法案は法案の立脚点が大きく異なっていることを指摘しなければなりません。

 今回の法改正は、昨年の秋以来、大きな社会問題となり、今なお住民の方々が不安な日々を過ごされ、問題の真相の解明もいまだ不十分な耐震強度偽装問題を受けての再発防止に向けた重要な改正です。住民の安全や、利用者、購入者の権利や財産の保護の観点からの対策を講じる必要があります。

 道半ばとはいえ、居住者や購入者の立場に立たず、建物の安全をも確保することができず、行政や業界に差しさわりのない、単なる罰則強化や制度の取り繕いに終始し、ざる検査を放置した責任ばかりか、再発防止の責任までも放棄した政府案には到底賛成することができません。

 議員各位の良識、良心に基づいた御判断を期待し、私の討論を終わります。(拍手)

林委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 私は、建築基準法改正の政府案反対、民主党案賛成の討論を行います。

 耐震強度偽装事件は、姉歯元建築士以外の新たな構造計算書の偽装、改ざんや耐震強度不足の建築物の存在も明らかになるなど、我が家は大丈夫かという国民の不安はますます強まり、建築物の安全性を確保するための建築行政に対する信頼は失墜しています。

 この失った建築行政に対する信頼を回復するためには、国民不安を引き起こした今回の事件の原因や背景要因を真摯に分析し、反省すべきところはきちんと反省して正す。再発防止に必要な抜本的な対策に最善を尽くすべきであります。

 この事件の核心は、九八年の建築基準法の改悪を初めとした規制緩和路線により、建築行政を安全よりも効率優先に変質させたところにあると考えています。

 九八年の法改正の問題点は、第一に、公の事務である建築確認検査を民間開放したことです。第二に、チェック体制も整えないまま、性能規定化等により建築士の設計の自由度を拡大させ、コスト最優先の経済設計を可能にしたことにあります。こうしたことに対する反省がなければ、再発防止はもちろん、建築行政に対する国民の信頼回復はできません。

 政府案は、建築確認検査の民間開放に対して、民間にできることは民間にという方向は間違っていない、基本的に現行の枠組みを維持すると答弁するなど、建築行政を安全よりも効率優先に変質させたことに対する反省が全くありませんし、大枠を維持しているからです。

 反対の理由の第二は、民間検査機関が営利目的の競争をすることをそのままにし、特定行政庁が建築確認検査に責任を持つ仕組みがあいまいにしたままであることです。

 政府案では、民間検査機関のあり方について、指定要件の強化や特定行政庁の指定確認検査機関に対する監督を強化するとしています。しかし、現行の民間検査機関が構造計算書の偽装を見抜けなかった要因には、建築主など顧客を獲得するために検査を甘くするという競争がありましたが、この営利目的の競争を排除する仕組みが政府案にはありません。

 次に、民主党案について、賛成の第一の理由は、建築確認検査済証の発行を特定行政庁に限定しているからであり、政府案よりも改善であります。

 第二の理由は、建築士の地位と独立性を高めることや、設計、施工、監理の分離の促進など、建築行政の抜本的改善に必要な課題であり、我が党が九八年以来かねてから主張してきた当然のことだからです。

 最後に、今回の偽装マンション被害住民の方々が、二重ローンなど新たな負担を余儀なくされ、生活再建のめどが立たないままの事態を踏まえ、早期解決目指して超党派で知恵を出し合うことを呼びかけて、討論とします。(拍手)

林委員長 次に、日森文尋君。

日森委員 私は、社会民主党・市民連合を代表し、建築基準法等の一部を改正する法律案について、政府案に反対、民主党案に賛成の立場で討論を行います。

 今回の法改正の契機となった耐震強度偽装事件は、単なる個人や個別業者の問題ではありません。激しい住宅販売合戦と、安全性よりも安さや効率性ばかりが追求された建設業界の異常なまでのコスト削減競争、手抜き工事等の欠陥住宅を生み出す元請、下請、孫請という重層的多重下請・ピンはね構造、設計、施工、監理の三権分立の崩壊、ずさんな建築確認検査の実態、さらには、政府が進めてきた規制緩和、民間開放の流れといった構造的な問題にもしっかりと踏み込んだ抜本的な対策が求められています。

 政府案は、危険なマンションをつくった建築士や施工者への罰則の強化、新たに第三者機関が構造計算の適合性を判定する仕組みなどを盛り込み、現行法より前進している面があることは否定しません。しかし、民間検査機関の中立性、公平性確保についても、ゼネコンからの出資が禁じられていないなど不十分であり、また、特定行政庁の指定確認検査機関への指導監督権限を法的に強化するにもかかわらず、その財政的な保障はなく、建築主事や関係自治体職員の人材育成や体制強化もありません。何よりも、建築確認検査を民間に開放してきた行政の責任と反省が感じられません。

 一方、民主党案には、設計と施工の分離促進、保険加入の促進、すべての建物に中間検査と完成二年後検査の義務づけ、罰則の強化など、居住者、利用者、購入者の立場に立ち、安全な住宅を確保する制度を目指しているものと言うことができます。

 最後に、建設された欠陥住宅を購入してしまった居住者の救済問題が大きな課題です。国は既に構造計算書問題への当面の対応をまとめているといいますが、国のスキームに即した建てかえは一件もなく、スキームの見直しを含めた国の積極的な対応が求められていることを強調し、討論を終わります。(拍手)

林委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

林委員長 これより採決に入ります。

 まず、長妻昭君外四名提出、居住者・利用者等の立場に立った建築物の安全性の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

林委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

林委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

林委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五十五分散会


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