衆議院

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第25号 平成18年6月7日(水曜日)

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平成十八年六月七日(水曜日)

    午前九時四分開議

 出席委員

   委員長 林  幹雄君

   理事 衛藤征士郎君 理事 中野 正志君

   理事 望月 義夫君 理事 吉田六左エ門君

   理事 渡辺 具能君 理事 長妻  昭君

   理事 三日月大造君 理事 高木 陽介君

      赤池 誠章君    石田 真敏君

      遠藤 宣彦君    小里 泰弘君

      大塚 高司君    鍵田忠兵衛君

      金子善次郎君    亀岡 偉民君

      北村 茂男君    後藤 茂之君

      坂本 剛二君    島村 宜伸君

      杉田 元司君    鈴木 淳司君

      薗浦健太郎君    田村 憲久君

      長島 忠美君    西銘恒三郎君

      葉梨 康弘君    松本 文明君

      盛山 正仁君    若宮 健嗣君

      小宮山泰子君    古賀 一成君

      下条 みつ君    高木 義明君

      土肥 隆一君    長安  豊君

      鉢呂 吉雄君    馬淵 澄夫君

      森本 哲生君    伊藤  渉君

      斉藤 鉄夫君    穀田 恵二君

      日森 文尋君    糸川 正晃君

    …………………………………

   国土交通大臣       北側 一雄君

   国土交通副大臣      松村 龍二君

   国土交通大臣政務官    石田 真敏君

   国土交通大臣政務官    後藤 茂之君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  山浦 耕志君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 八木  毅君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 杉田 伸樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 梅田 邦夫君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長)            竹歳  誠君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  山本繁太郎君

   政府参考人

   (国土交通省海事局長)  星野 茂夫君

   政府参考人

   (国土交通省港湾局長)  鬼頭 平三君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    石川 裕己君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環境保健部長)       滝澤秀次郎君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  小林  光君

   国土交通委員会専門員   亀井 為幸君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月七日

 辞任         補欠選任

  亀井 静香君     糸川 正晃君

同日

 辞任         補欠選任

  糸川 正晃君     亀井 静香君

同日

 理事吉田六左エ門君五月二十四日委員辞任につき、その補欠として吉田六左エ門君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

六月五日

 気象事業の整備拡充に関する請願(日森文尋君紹介)(第二七二二号)

 公共事業を防災・環境・生活優先に転換することに関する請願(荒井聰君紹介)(第二七二三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五三号)(参議院送付)

 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律案(内閣提出第五二号)(参議院送付)

 国土交通行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

林委員長 これより会議を開きます。

 この際、理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に吉田六左エ門君を指名いたします。

     ――――◇―――――

林委員長 内閣提出、参議院送付、海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省総合政策局長竹歳誠君、住宅局長山本繁太郎君、海事局長星野茂夫君、港湾局長鬼頭平三君、海上保安庁長官石川裕己君、内閣官房内閣審議官山浦耕志君、外務省大臣官房審議官八木毅君、外務省大臣官房審議官杉田伸樹君、外務省大臣官房参事官梅田邦夫君、環境省総合環境政策局環境保健部長滝澤秀次郎君及び環境省地球環境局長小林光君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

林委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。坂本剛二君。

坂本委員 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する一部改正案について若干質疑をさせていただきたいと思います。

 五年前のちょうど今ごろだったと思うんですが、私の地元、いわきの小名浜港沖合でタンカーと貨物船が衝突しました。大量の油が海上に流出したわけでありますけれども、オイルフェンスを張ったりしたんですが、折からの高波で全然効果がない。そして、あれは乳剤だったですかね、処理剤をまくための船が、これもその現場に近寄れないんですね、波が高くて。

 間もなく海水浴のシーズンでしょう。これが海水浴場に漂着したら大変だと思って随分焦ったんですが、案の定、私たちの大事な大事な宝であります海水浴場にその油がべったりと上陸してしまったんですよ。みんなで大変な苦労の末に、約一カ月くらいかかって、この油で汚れた砂の除去も完了したわけですが。

 いつだったかテレビで放映されたロシアのナホトカ号、これも油流出、座礁がありましたね。このときは、ひしゃくで一生懸命おばちゃんたちがやっていましたね。あんな原始的なやり方をやっていていいのか、そういう思いをいたしたわけでありますけれども、事故が発生した場合に、政府初め関係者、これが迅速かつ適切に対応していくということは極めて重要だなと、私は自分の体験からも考えておったわけであります。

 そこで、質問に入りますが、我が国の海洋汚染及び海上災害の防止についての政府の基本的な考え方、それから海洋汚染防止法の改正案を提出した理由について、まずお伺いしたいと思います。

竹歳政府参考人 お答えいたします。

 まず、我が国の海洋汚染及び海上災害の防止についての基本的な考え方でございますが、これらの施策につきましては、国際的な規則及び基準を定めた国際条約に基づいて実施することを基本としており、また、海洋汚染及び海上災害の防止につきまして率先して国際的な責務を果たすという立場から、関連する条約が国際的に発効する時期をとらえて、海洋汚染防止法を初めとした国内法の整備を行い、必要な施策を実施してきたところでございます。

 今回の改正の理由でございますが、今委員御指摘のとおり、現行の海洋汚染防止法は、重油等の蒸発しにくい油について、船舶所有者等に対し防除措置の実施、防除資材の確保等を義務づけていたところでございますけれども、今回の改正は、近年、ケミカルタンカーの事故が多発しているということ、それから国際的な動きとして、危険物質及び有害物質の汚染事故発生時の通報、事故に対応するための国家的体制の構築について規定した議定書についても来年度前半に発効する見込みである、こういう状況から今回の海洋汚染防止法の改正案をお願いしているところでございます。

坂本委員 我が国海域の場合、大体事故の発生する場所というのは決まっているようでして、何かこれは港の出入りに設計上欠陥でもあるのかなと思うぐらい、あるいはまた日本の国情というものを外国船が余り理解していないのかな、こんなふうないろいろな考えはありますけれども、ただいま、今回の海洋汚染防止法の改正の背景は、ケミカルタンカーの事故が多発ということでもある、こういう話でございましたが、最近のケミカルタンカーの重大事故の概要とそれに対する対応策、状況について説明してください。

石川政府参考人 我が国の周辺海域におきましては、年間三十件から五十隻前後のケミカルタンカーの事故が恒常的に発生しているところでございます。

 特に、昨年の七月でございますけれども、濃霧の中でケミカルタンカーの事故が連続して発生いたしました。中でも、昨年の七月十五日、三重県の熊野市沖において発生したケミカルタンカー同士の事故でございますけれども、これは乗組員六名のとうとい命が奪われたところでございます。

 この事故でございますけれども、衝突したケミカルタンカーの一隻につきましては、強い引火性を有し、急性毒性物質、発がん性物質でもあります粗製ベンゼン、これを積載していたわけでございますけれども、衝突によってこれに引火いたしまして、炎上いたしました。消火に二昼夜半を要したところでございます。

 なお、このケミカルタンカーは、風や潮流の影響を受けまして、炎上しつつ陸岸への接近を続けまして、一時は陸岸への漂着という最悪の事態も想定されましたけれども、巡視船艇による放水によって沖へ出す、あるいは、火勢が衰えた瞬間に曳航索を取りつけまして沖合に曳航することによりまして、最悪の事態を回避できたところでございます。

坂本委員 危険物による被害という意味では、ケミカルタンカーやあるいは原子力発電所の開口部、この重要な施設をねらったテロも十分考えられるわけでありますが、陸上からはテロリストが原発に近づくことはちょっと難しいと私は思いますし、飛行機やミサイル攻撃されても今の日本の原発はそんなに被害は起こらない、こう聞いております。しかし、海の温排水の開口部、あそこから潜られたりするとえらい被害があるとも伺っていますが、海上保安庁ではこのテロ対策にどんなふうに取り組んでおられるのか、教えてください。

石川政府参考人 海上保安庁におきましては、海上からの今の御指摘のような点も踏まえまして、巡視船あるいは航空機による、臨海部の原子力発電所あるいは石油備蓄基地等の重要警備対象施設における警備を実施するとともに、海事関係者等に対する自主警備、不審物への警戒等の要請などを行っておるところでございます。

 特に原子力発電所につきましては、全国に所在する原子力発電所の周辺海域に巡視船艇を常時配備いたしまして、警戒に当たっておるところでございます。また、必要に応じて、航空機なども活用して監視、警戒に当たっております。さらに、陸上で警備をしている警察との連絡体制、これも重要でございますので、相互に連絡体制を確保するとともに、情報交換など、あるいは共同訓練といったようなこともやってきておるわけでございます。

 さらに、今般、原子炉等規制法が改正されまして、事業者による防護対策の強化を図るということがなされるわけでございまして、私ども海上保安庁といたしましては、強化される防護措置の状況を踏まえながら、関係機関との連携を図りつつ、原子力発電所の警備というものを実施しているところでございます。

 なお、さらに、シージャック等の高度で専門的な知識や技術を必要とする特殊事案というものもございます。こういうものに対して迅速かつ的確に対応するために、テロの対応のための特殊部隊というものも海上保安庁では整備をしているところでございます。

坂本委員 海上保安庁では、海洋汚染防止、テロ対策以外にも、不審船対策、犯罪の取り締まり、国境警備など、幅広い業務に携わっているわけでありますけれども、高速、高性能の不審船を捕まえるためには、海上保安庁の装備ですね、船艇や航空機もそれに対応できるスピードがなければなりません。ところが、今の船艇や航空機の老朽化が激しくて、四割がもう耐用年数を過ぎているんだという話を伺っております。

 そこで、大臣にお聞きしたいわけでございますが、国民の安全を守るために、船艇、航空機の更新、整備を適切に行っていく必要があろう、こう思うわけでございますけれども、大臣としてはどのような方針でこれに取り組んでいかれるのか、お伺いしたいと思います。

北側国務大臣 今委員の方からおっしゃっていただきましたように、海上保安庁は日常的に、海の安全また環境保全、さらには海洋権益の保全等、非常に重要な任務を日ごろ遂行しているところでございます。

 おっしゃっていただきましたように、昭和五十年代に整備されました巡視船艇また航空機が老朽化、また旧式化しておりまして、海上保安庁が行っております犯罪の取り締まりや海難救助活動に支障が生じており、こうした状態を早く解消することが必要であると考えているところでございます。また、新たな業務課題に対応するためには、高性能化を図った巡視船艇や航空機の整備も急ぐ必要があるというふうに考えているところでございます。

 具体的には、耐用年数を超過した巡視船艇が約百二十隻、また航空機が約三十機、これらの代替整備を緊急かつ計画的に進めていく必要があるというふうに考えております。十八年度当初予算と十七年度の補正予算で、巡視船艇二十一隻、航空機七機の代替整備を図るための予算を認めていただきました。

 今後とも、平成十九年度以降におきましても計画的な代替整備に努めまして、老朽巡視船艇、航空機の早期解消を図っていきたいと考えております。

坂本委員 まだちょっと時間がありますから、これは通告していなかったのでございますが、四海、海に囲まれている我が国ですから、国境は海にあるわけですね。当然、これは不審船の対応、対策があるわけでして、やり方によっては不審船が沈没という状態も十分考えられる、あるいは自爆もこの間もありましたね。そんなときに汚染される海洋、これは一体どこに海洋汚染の責任があるのか、汚染したときの補償はどこに求めればいいのか、そのことをちょっとお聞きしたいんです。

石川政府参考人 海上における船舶の油の補償の第一責任者は、船舶所有者であるわけでございます。ただ、おっしゃるように、船舶所有者が不明の場合、あるいは船舶所有者では迅速に対応できないというふうな場合につきましては、最終的には、海上保安庁長官が海上災害防止センターに対して油の防除を命ずることができるという規定がございます。最悪の場合はそれを活用することになろうかと思います。

坂本委員 ありがとうございました。

 とにかくしっかりやってください。どうも。

林委員長 高木義明君。

高木(義)委員 民主党の高木義明でございます。

 海洋汚染防止法の一部を改正する法律案について質問をいたします。

 まず、法案の中身に入る前に、私は、この海洋汚染防止法というのは極めて重要な法案だろうと思っております。何といいましても、日本は海に囲まれ、まさに海洋国家でございます。ふだんはなかなか海に接する機会がない方々もたくさんおられますけれども、今、村上ファンドの問題が大きく言われておる中でも、日々粛々と、外洋において内航において船舶が稼働して、国民の生活に欠かせない物資などを輸送しておる、このことを私たちは忘れてはならないと思います。

 そこで、海を大切にし、そして環境を保全し次世代に引き継ぐという意味で、大臣は、五月二十七日、二十八日、海上保安庁の東京湾における観閲式、総合訓練に出席をされております。船の上に立って、そして東京湾といえども海洋に立って、何を感じ、どのような思いをしたのか、まずその点からお伺いをしていきたいと思います。

北側国務大臣 日本は本当に海洋国家でございます。海岸延長は約三万五千キロ、これは世界でも六番目の海岸延長を持っている国でございます。また、領海及び排他的な経済水域の面積も四百四十七万平方キロメートル、これもまた世界第六位。さらには、我が国は資源のない国でございます、貿易国家として活発な輸出入をしているわけでございますが、貨物量の九九・七%は海から出入りしている。私たちの日常の生活また経済活動、これは海に依存をしている、まさしく海洋国家でございます。

 この海洋国家の海を、日常的にその海の交通の安全を確保し、また環境の保全に努め、さらには領海等の監視、警備も行う海上保安庁の役割、使命というのは大変大きいものがあるというふうに思っているところでございまして、観閲式におきましては、多くの国民の方々に御出席を賜りまして、そうした海上保安庁の日ごろの訓練の成果を見ていただくことができたというふうに思っているところでございます。

 海での業務でございますので、なかなか国民の皆様には日ごろ見えない仕事をしております。したがって、やはり国民の方々に御理解をいただくことが非常に重要でございますので、これからもいろいろな形で、海上保安庁の日ごろ行っている仕事、役割、重要性というものをしっかりと御理解いただけるようにしていきたいというふうに考えているところでございます。

高木(義)委員 海を守る海上保安庁の件につきましてはまた後でお尋ねいたしますけれども、ここで今大臣から、保安官の訓練についての評価を述べていただきました。私も、日ごろ使命感に燃えて海を守る仕事に携わっておられる方々に、この場をかりまして改めて敬意を表するわけでございます。

 そこで、この法案をいろいろな面から検討していく中でどうしても避けて通ることができないのは、もう一度、日本は海といかなるかかわり合いを持っておるのかということを国民の多くの方々に関心を持っていただくことが必要ではないか、このように思っております。

 そこで、我が国には国民の祝日、海の日があるんです。もう御承知のとおりです。大事なことですから、私は、もう一度、この海の日の制定当初の、国会での祝日法の趣旨説明をここで読ませていただきます。

  我が国は、四面を海に囲まれ、世界でも最も海の恩恵を受ける国の一つであることは、国民のだれもが承知しているところであります。我々は、古くから海に生活の多くを依存するとともに、海を交通の手段に活用して文化等の交流を図り、海と親しみながら今日の日本を築き上げてまいりました。地球上の七〇%を占めている海は、まさに、我々にとって母なる海なのであります。

  さらに、海の環境を保全すること、海洋資源の開発は、人類のさらなる発展の礎ともなる重要なものであります。

こういう趣旨説明にありますように、海はかけがえのない、我が国にとっても財産であり、地球の財産であります。そういう意味では、ちょうどこの法律案が国会で成立をいたしましたのが一九九五年、平成七年のことでございました。翌平成八年から、七月二十日が海の日になりました。そして、ことしで満十年経過したんです。ことしの海の日は十一回目となります。

 私は、この海の日の制定の原点に返って、これまでの海の日の取り組みについて総括をし、もう一度、海の日の意義なり、そして我が国が今後海洋戦略をどこにどのような形で持っていくのかというものをお互いにはっきり明確にすべき、こういう大事な時期であろうと思っております。この時期にこの海洋汚染防止法の一部改正案が出たということは、私はそういう意味でも大事なことだと思っておりますので、どうぞ大臣、国民の祝日、海の日の意義、そして日本の海洋戦略はどうなのか、このことについて御所見を賜りたいと思います。

北側国務大臣 海の日制定に当たりましては、高木委員に大変御尽力をいただきました。この海の日ができたのも、委員の御尽力があったからできたというふうに聞いているところでございます。

 先ほど来申し上げましたが、我が国は海洋国家でございます。海は本当に私どもの生活、経済活動のまさしく源になっているわけでございまして、この海の日というのは、私どもが、国民が、海から数多くの恩恵を受けているということに感謝をし、そして海を大切にする心というものをしっかりはぐくんでいくということを確認する大切な日であるというふうに私は思っているところでございます。

 おっしゃったように、そういう意味で、我が国の海洋政策の基本的なあり方、ありよう、これまでのさまざまな政策も総括しながら、私は、改めて新たな海洋政策というのを打ち出していくべき時期に来ているのではないかというふうに考えているところでございます。

 国土交通省は海にかかわる行政分野を数多く所管をさせていただいておるところでございますが、今、省内におきまして、本年夏を目途に、国土交通省の海洋政策の全体像及び今後の基本的な方向を取りまとめたいということで作業をさせていただいているところでございます。この取りまとめに従いまして、海洋政策を総合的かつ戦略的に推進してまいりたいというふうに考えております。

高木(義)委員 さて、海洋汚染のテーマになりますが、実は最近、海洋汚染に対する問題がそれぞれ起こっております。ことしの二月に、北海道の知床半島の斜里町の海岸に、油まみれの大量の海鳥の死骸が漂着をしたという出来事がございました。ウミスズメ科の海鳥を中心に五千羽以上に上ったと言われておりまして、後に触れますが、ナホトカ号のときは約千三百羽と言われておりますが、それを超えておる状況でございます。

 この原因について、以降調査中であると思いますけれども、この原因究明についてどのような状況になっておるのか、まず、その辺についてお伺いしたいと思います。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 四月十三日にやはりその議論をしていただいたわけでございます。その後ということでございますけれども、今委員御指摘のとおり、回収しました海鳥の数でございますが、当時、五千三百三十八羽というふうに申し上げました。現在では、五千五百七十七羽が回収をされてございます。

 そして、その後の原因究明の取り組みはどうなのかというのがお尋ねの点でございます。ちょうどその四月十三日に、日ロの環境保護合同委員会、これは実務的な会議でございますけれども、ここにおいてロシア政府との情報交換を直接行いました。外交ルートを通じましてもやっておりますが、直接お話を聞きましたけれども、事故等の具体的な情報についてはございませんでした。

 また、衛星写真を活用して油流出があったかどうか判定するということが技術的に可能ではないかということもございまして、これは環境省の方から国立環境研究所に依頼をいたしまして、現在、そういったリモートセンシングのデータの解析を進めているというところでございます。まだ、当たりをつけた、例えば一月とか十二月というようなところで、具体的に油流出の根拠というものは見つけておりません。

 また他方、海鳥に付着していました油、これ自身の分析というのもしてございます。いろいろな機関で分析をしてございますけれども、私どもでも再確認をしておりますが、C重油、恐らく船舶用の燃料ではないかというふうにされておりますので、船舶の燃料漏れ事故あるいは沈没船、こういうようなことについてなかったか、ロシア、中国、韓国、米国、カナダの関係当局に照会してございますけれども、現在まで、思い当たる事故についての情報は得られていない。

 こういうことでございまして、原因究明の努力は続けてございますけれども、これだという原因が今わかったという段階ではございません。

高木(義)委員 昨年の十一月にも、中国の吉林省の石油化学工場が爆発をして、有害物質が松花江に流れて、中ロ国境線のアムール川に流れた、こういう出来事もございました。

 この件について、日本への影響はどうなのか、この点について環境省にお伺いしておきます。

小林政府参考人 海洋汚染、いろいろな形態がございますけれども、今御指摘のは、陸上起源の汚染物質が海洋に流れ込む、こういうことでございます。

 昨年十一月に中国で発生しました化学工場の爆発事故、これに伴いまして、工場からベンゼン、ニトロベンゼンが流出した、そして松花江を経由してアムール川に流れ込み、さらにオホーツク海に入ってくる、こういうことでございます。私ども、それぞれ、中国そしてロシアというところで現地の情報を逐次得てございます。

 発生後の状況でございますけれども、一月下旬にはアムール川の河口まで達した、こういうことでございますが、これも先ほど申し上げたようなチャンネルでロシアに直接聞いてございますけれども、その時点でニトロベンゼンの濃度は環境基準値と同じレベルまで低下をしたということでございまして、現地では既に監視の体制というのは解かれております。

 その後の状況でございますけれども、さらに三月下旬に、発生現場に近い松花江、そこの水質、そして川底の沈殿物、こういったものも分析をされてございますが、検出限界以下だったという情報が得られてございます。そのほか、先ほどの日ロ環境保護合同委員会でも、引き続き、ハバロフスクでの一般的な河川水のモニタリングの結果というのも聞いておりますが、これも正常値に復しているということでございます。

 今後でございますけれども、御案内のとおり、サハリンの東側を通る海流を通じてアムール川の河川水というのは日本に到着する、ことしの秋ごろというふうに予想されてございますが、そういうことで、私ども、大量に希釈をされますので、現地で既に環境基準以下あるいは検出限界以下ということでございまして、恐らく危険はないというふうには考えてございますけれども、引き続きモニタリングに取り組んで、何か危ないというようなことがございましたら、適切な措置をとるようにいたしたいというふうに思っております。

高木(義)委員 いずれの例も、まさに海洋汚染の対策については、何が流れてくるのか、あるいはどういうところに漂着をするのか、そういう意味では、事故発生直後の初期対応というのが極めて重要になります。

 いずれも、近隣諸国との情報の共有あるいは密接な連携、こういったものが大事になりますけれども、きょう外務省来られておると思いますが、これらの件について、外務省はしっかりと情報をとったのか、そして今後そういう密接な連携をとれるのか、この点について御所見を伺っておきたいと思います。

八木政府参考人 御説明を申し上げます。

 まず、知床の海鳥大量死事件でございますけれども、これにつきましては、二月の末にこの死骸が多数発見されたということでございまして、ロシアとの関係では、これが明らかになりました直後から、情報収集あるいは調査等の関係でいろいろ連絡調整をやっておるところでございます。

 また、御指摘がございましたアムール川の流出事件につきましても、中国それからロシアと鋭意連絡をとっておるところでございます。

 それから、大量死の関係でございますけれども、これは、ロシアのみならず、油の流出という関連では、米国、カナダ、中国、韓国等とも鋭意連絡をとっているところでございます。

高木(義)委員 これは先月のことでございましたが、長崎県対馬市において、対馬というのは韓国と約五十キロの距離にあります。ここにはいろいろな漂着ごみが出ております。これについても地域の方々は非常に問題としておりますが、今回、日韓の学生が対馬において約三百人、三日間寝食をともにしながら海岸清掃を行った、日韓の学生、市民がスクラムを組んだという出来事がございました。この問題に見られるように、今、ごみを含めてこういう漂流物について、国土交通省としてはどの程度認識をされておるのか。

 また、先日は、医療廃棄物と言われるものもかなり多くのものが日本に寄せられておる。そういう意味では、これまた先ほどの例と一緒でありますが、近隣諸国との連携はもっともでありますけれども、この点についてどのような対応をされておるのか、お答えをいただきたいと思います。

竹歳政府参考人 漂流ごみの問題でございますけれども、まず、把握している状況から申し上げます。

 一九九九年ごろから、毎年冬場にポリ容器が日本海沿岸に漂着しておりまして、平成十六年度は一万三千個余の漂着が確認されております。また、昨年八月中旬より、日本海沿岸に注射器、薬瓶等の医療廃棄物が漂着しておりまして、漂着数は二万四千個を超えている、このような状況でございます。

 このような医療廃棄物を含めた大量のごみが我が国の沿岸に漂着しておりますが、これについては、発生源が多様で原因者が不明であったり、処理責任が特定できない等、困難な問題となっております。また、自治体が中心となって処理をしているところでございますけれども、量が多いこと等から、その処理が自治体にとって大きな負担となっております。

 国土交通省においては、これまでも、この不法投棄の取り締まりでございますとか、船舶航行のふくそうする海域における浮遊するごみ等の回収、流木の処理に対する海岸管理者への支援、廃棄物の不法投棄に係る指導、啓発、それから調査、把握等々を行っておりますが、さらに、政府全体としての取り組みに参加もしておりますし、また、御指摘の近隣諸国との連携についても進めているところでございます。

 国土交通省としては、我が国周辺海域における漂流ごみ対策に、関係省庁とともに、近隣諸国と連携協力を深めてまいりたいと考えております。

高木(義)委員 私は、去る委員会において、四月九日に、鹿児島において屋久島発鹿児島行きの高速船トッピー4が佐多岬沖で海面の物体に衝突をして、乗客、乗組員百十人がけがをしたという事故をただしました。

 この点について、これは実は、三月十三日に、沖縄県の久米島の北西百五十キロの東シナ海でパナマ船籍の木材運搬船が沈没をして、積み荷の丸太千五百トンが漂流し、この流木と衝突した可能性も一部で指摘をされておりますが、この原因究明についてその後どうなっておるのか。

 私は、やはり海洋の浮遊物、海上の安全のためには、このような的確な調査あるいは予防対策が必要だと思っておりますが、政府の取り組みについてお聞かせをいただきたいと思います。

石川政府参考人 高速船トッピーの事故につきましては、現在、原因究明としては、私どもは、業務上過失致傷ということで刑事的な捜査をやっている段階でございます。

 したがいまして、原因については、現在、付着したものであるとか、あるいはどのような形で衝突をしたのかどうかというふうなことについて、子細に原因を詰めているところでございます。

星野政府参考人 高速船の事故についての政府としての対応でございます。

 再発防止を中心に少し御説明をさせていただきたいと思いますが、今回のトッピーの事故の原因につきましては、ただいま保安庁長官の方からお話ございましたように、現在、鋭意解明中という段階でございます。

 ただ、一説によりますと流木の可能性があるというようなことは、私どもとしても承知をいたしております。しかしながら、現実には、これまで高速艇の多くの事故が鯨類との衝突という事例もございますので、私ども、今後の対応を検討するに当たりましては、そうした鯨類との衝突、あるいは流木との衝突、海中浮遊物との衝突、それら両面をにらみつつ必要な対応をとっていくことが必要だろうというふうに判断をいたしておるところでございます。

 対策そのものについては、先般のトッピー4の事故を受けまして、私どもの国土交通審議官をヘッドとした、省内の関係部署及び学識経験者、超高速船メーカー、運航事業者等から成る超高速船に関する安全対策検討委員会というものを開催いたしました。五月二十四日の第三回会合で、当面の対応策ということで、すぐ取り組むべきことを取りまとめ、今後、中長期的に技術開発も含めて対応すべき話について課題を整理させていただいたところでございます。

 当面の緊急対策については、やはり衝突時の衝撃をできるだけ軽減するような対応策、具体的にはシートベルトであるとか船内の緩衝対策、さらには、そうした漂流物あるいは鯨類の目撃情報等、多様な情報を集積して共有化し、安全に回避する行動を事業者の方々に確実にとっていただく、そういう体制をとるべく、この報告書に従って現在各事業者を指導しているところでございます。

高木(義)委員 いずれも原因究明中というお答えでございますが、これは再発防止という観点から、やはり全知全能を絞っていただいて取り組んでいただきたいと思っております。強く要望しておきます。

 さて、法案の中身に入ってまいりますが、この法案は、すなわち、国際条約MARPOL73/78条約、いわゆる海洋汚染防止条約でございます。これは、予防を主な目的として、船舶の設備、構造規則について導入され、そして、ばら積み有害液体物質等の附属書を追加して、いわゆる未査定物質の輸送を禁止する、こういうものでございます。これについては既に我が国でも批准をしておりまして、国内法令の整備が必要である。

 そして一方で、OPRC条約、これは油汚染に対する応急対応というのが主なねらいであります。すなわち、防除を主とした条約でありまして、御承知の一九八九年の米国アラスカ沿岸におけるエクソン・バルディーズ号の事故を契機に国際会議で採択をされ、そして二〇〇〇年三月、国際海事機関IMOにおいてHNS議定書が採択をされ、油とプラスをして危険物、有害物質に拡大をされ、国際協力の枠組みをつくった。こういう経緯の中で、我が国としてはこれに対する手だてをする。

 先日、今国会で議定書の締結の承認がなされまして、いよいよ海運国あるいは海洋国家としての我が国も、危険有害物質に対する取り扱いも非常に多いわけでありますので、今回、議定書の発効要件である十五カ国の締結が必要、したがって二〇〇七年中に発効が見込まれておる、こういう経過もございます。

 その中で、いわゆる第三条関係でございますが、有害液体物質というのはどのようなものを政令で定める予定でしょうか。

竹歳政府参考人 有害液体物質でございますけれども、油以外の液体物質ということで、海洋環境の保全の見地から害のある物質ということでございます。五百数十種類のものがございまして、危険度に応じて政令でAからDというような形で定めることにしております。

高木(義)委員 OPRC―HNS議定書において危険物質及び有害物質を対象としているにもかかわらず、有害液体物質を対象として、液体ではない有害物質、危険物質を法律の対象から除外した。いわゆる液体であって、固体とか気体は外しておる。この点について、その理由は何でしょうか。

竹歳政府参考人 有害な物質、危険物質についての運搬の形はいろいろあるわけでございますけれども、やはりばら積みでの輸送、こういうものが、座礁した場合とかいろいろな海難事故の場合に直ちに海に広がる危険が非常に高いという観点から、ばら積みのものを規制するということで、固体のものとかそういうものは対象としていないということでございます。

高木(義)委員 今お答えありましたけれども、現在法律上規定されておる有害液体物質は、先ほど私が申し上げましたMARPOL条約、海洋汚染防止条約附属書2に規定されておるものを訳しておられる。一方、HNS議定書の対象となっている危険物質及び有害物質を、条約上異なる文言であるにもかかわらず国内法上同一の文言として、これは一体問題はないんでしょうか。今後問題になる懸念があると私は思うんです。この点、どうでしょうか。

石川政府参考人 先生御指摘のように、議定書におきまして定義が書いてあるわけでございますけれども、その中で、今回の私どもの法律の改正案におきましては、有害液体物質あるいは危険物というものに対して一定の義務ないし措置を命ずることができるという格好でつけているわけでございます。

 そのほかに、今先生御指摘のように、有害液体物質や危険物に該当しない個品輸送される物質、こういうものがあるわけでございます。おっしゃるように、例えば粉末状の薬品あるいは重金属というふうなものがあるわけでございます。そういうものにつきましては、現在の海洋汚染防止法の第四十条に規定いたします「廃棄物その他の物」というものに該当するわけでございまして、これらのものについて排出があった場合においては、海洋汚染を防止する必要がある場合には、私ども海上保安庁の方で必要な措置を命ずることができるということでございます。

 そういう形でございますので、OPRC―HNS議定書に定められた危険物質及び有害物質というものについて、海洋汚染防止法において措置をされているというふうに理解してございます。

高木(義)委員 ばら積みの話が出ましたけれども、ばら積み有害液体物質を対象としているMARPOL条約、これと違って、いわゆるOPRC条約及びHNS議定書にはばら積みに限定した規定はありません。

 このHNS議定書の国内法制化をするに当たって、ばら積み貨物のみを対象としておることについての理由は何でしょうか。そして、これは条約上の整合性はとれておるんでしょうか。この点について明らかにしていただきたい。

石川政府参考人 先ほども申し上げましたように、ばら積みのものにつきましても、一定の、海洋汚染防止法の先ほど申し上げました「廃棄物その他の物」というものに該当いたしますので、条約上そごはないものと考えております。

高木(義)委員 では、第九条についてお伺いします。

 いわゆる未査定液体物質というのがございます。この未査定液体物質とは一体何でしょうか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 有害性の観点でまだ判別がついていない物質ということになろうかと思いますけれども、それについての規定が設けられておりまして、査定物質に当たるかどうかその後判定をして、そして規制の対象を、どういう程度の規制を対象とするかということを決める、そういった対象の物質だというふうに認識をしてございます。

高木(義)委員 未査定液体物質の輸送の状況は、今どのようになっておりますか。

石川政府参考人 未査定有害物質につきましては、現在のところ輸送実績はないものと認識しております。

高木(義)委員 環境大臣の査定が行われた後でなければ未査定液体物質の輸送をしてはならないと規定するのは、一体どういうことなんでしょうか。また、MARPOL条約のいかなる規定をこれについて反映しておるのか。この点についても十分な説明をお願いしたい。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、改正におきまして、第五規則の六というところが第十三規則というところに移ったわけでございますけれども、昔は排出の規制だけ、こういうことでございましたが、排出を確実に規制するということで、輸送の段階からきちっと規制をしようというのが今回の趣旨でございます。

 根拠のところの規定についての御質問でございましたけれども、第十三規則の一の三というところの改正に伴いまして、ここで主語が、従前、第五規則のときにはディスチャージと書いてありましたが、今回、キャリッジということで、輸送ということに対象が広がったというふうに理解をしてございます。

高木(義)委員 本条改正の施行時期については、法の公布以降一年半以内の政令で定める時期とした、こういうことであります。このMARPOL条約附属書2の改正の発効時期は、先ほど申し上げましたように二〇〇七年の一月一日、こうなっておりますが、政令で定める時期の理由についてお示しいただきたいと思います。

石川政府参考人 施行期日につきましては、今回の、油に加えて有害液体物質等についての規制を行うということの中で、資材の配備及び人員の配置というのが必要になるわけでございまして、特にその中で、知識のある人員の養成というものが必要でございます。そういうことも加味して、政令で施行日を決めると考えております。

高木(義)委員 法の改正では、第四十条の二、一定規模の有害液体物質保管施設の設置者等は、有害液体汚染防止緊急措置手引書を作成し、これを当該施設内に備え置き、または掲示しておかなければならないこととするとされておりますが、これは油の場合と同じスキームであろうと私は思います。

 現行では、油濁防止緊急措置手引書を備えておかねばならない油保管施設の要件として、政省令で五百キロリットル以上の油の保管としておりますが、有害液体物質についてもこれは同じなんでしょうか。

 私は、最近もケミカルタンカーの事故があっておりますが、この有害液体物質というのは油より厳しいことが必要ではないか、このように思っておりますが、この点についてお答えをいただきたいと思います。

鬼頭政府参考人 お答えを申し上げます。

 今回の法改正におきましては、有害液体物質の保管施設の設置者等に対して、手引書を作成して備え置くことを新たに義務づけているわけでございます。

 お尋ねのありました保管施設等の規模要件につきましては、今後、国土交通省令で定めることとしておりますが、今委員から御指摘のように、有害液体物質には、一たび事故が発生すると、人も含めて生物に著しい害を及ぼすものもあります。そういう意味で、その特性について考慮しながら、他の有害液体物質に関する規制などを踏まえながら適切に対応してまいりたい、かように考えているところでございます。

高木(義)委員 法案の中身についてはその程度にいたしておきますが、今私たちが考えなきゃならぬのは、あのナホトカ号の検証でございます。ナホトカ号というのは船齢が二十六年。いわゆる一九九九年のエリカ号、三万七千二百八十三トンありましたが、これが二十五年。二〇〇二年十一月のプレステージ号、これは八万二千五百八十四トンでありましたが、これも二十六年。いずれも極めて船齢が高い、老朽化と言われる船であります。

 こういった船については、少なくとも公海上、外洋での航海を禁止したり、代替建造を指導する、呼びかける、こういった国際認識を我が国のリーダーシップで進めていくべきではありませんか。この点についてのお取り組みについて、考え方をお願いします。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま、ナホトカ号を例に、高齢船の安全対策についてのお話がございました。ナホトカ号の油流出事故は、日本近海において、船体強度の低下した外国籍の老朽タンカーにより引き起こされたというものでございまして、私どもといたしましても、同様の事故の再発防止のため、国際的な緊急の取り組みが必要であるという認識のもとに、当時、国際海事機関、IMOに我が国として提案をさせていただいて、その提案に基づき幾つかの規制強化が現実になされているところでございます。

 ポイントは三つございまして、一つは、老朽タンカーの構造に関するフラッグカントリー、いわゆる旗国の検査を強化する。幾つか詳細はございますけれども、例えば、板厚の損耗度について詳細に検査をする、あるいは縦強度についてしっかりした強度評価をして、一定限度以上のものについては検査を通さない、そうした検査の強化というのが第一点でございます。第二点は、老朽タンカーを排除するために、関係国が協力して外国籍船の監督、いわゆるポートステートコントロールでございますが、これを強化する。三つ目として、先ほど、新しい船に代替を促進するというような意味もございまして、タンカーにつきましては、より安全性の高いダブルハル化を義務づける、その対象タンカーの範囲をより広いものにしていくというような、三つの対応がそのときなされております。

 その後、欧州近海におきまして幾つか事故がございました。そういう事故を契機にして、ダブルハル化に関する規制はさらに順次強化をされている。現行の規制によりますと、船齢二十五年以上のいわゆるシングルハルタンカーというのは、もうこの世に存在しないというか、それによって油のような危険物を運送することはできない、ダブルハル化に対応していかなきゃいけない、そういう体制に現在の制度の仕組みとしてはなっておるということでございます。

高木(義)委員 それぞれ、ポートステートコントロール、あるいはまた代替建造、老朽化船の厳粛なチェックを、これからもどうぞひとつ関係者の対応で強めていただきたいと思います。

 時間もありませんので、いわゆる排他的経済水域についての関連の質問をいたします。

 御承知のとおり、国連海洋法条約を、一九九六年、平成八年の七月に批准いたしました。まさに我が国は、自国の沿岸から二百海里の範囲内の水産資源、鉱物資源、これらの探査と開発に対する権利を得たことになります。一方で、当然、厳しい資源の管理あるいは海洋汚染の防止の義務も負うものでございました。日本でも一九九六年にEEZを設定いたしまして、まさにこれから海洋権益をきっちり守っていくという時代に入ったわけです。もう既に十年たちます。したがって、海上保安庁もこれまでと違った決意とそして装備をしなければ、この新しい海洋法条約時代には生きていけない、私はこのように当時から認識をしておりました。

 今、問題点は、韓国の、竹島の問題が出ておりますけれども、権利を侵害されても日本には取り締まる規定がない、一つの問題点。また、竹島周辺地域では、過去三十年間調査は行われていない。これは非常に私は海洋国家としていかがなものかと思いますよ。これは主権にかかわる大切な問題。海洋を、国際社会の中で資源を守り管理をしていこう、こういうときに日本がそれができない。

 外務省、来ておられますか。この点についてどのように取り組まれておりますか。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 多分、先生、日韓の、竹島の周りの水域を念頭に言われているものだと思いますが、御承知のとおり、来週、十二、十三でございますけれども、東京でEEZに関する会合を開催することになっております。その中で、まさしくEEZの境界が画定できれば、今先生が御指摘になったようないわゆる海洋調査につきましても、あわせて取り扱いをしたいなと考えております。

高木(義)委員 私は、今の海上保安庁には、そのような決意も、また人材も装備も、十分ではありませんけれども、あると思うんですよ。大臣、こういった取り締まり規定がないというこの現状について、どう思われますか。これは後でお答えください。

 もう時間もありませんから結びといたしますけれども、我が国は海洋戦略も持たねばなりません。しかし、何といっても、海洋の安全、そしてまた持続的利用を図るためには、そこに国としてのきちっとした姿勢があり、取り締まり体制がある、そして同時に、そういうことをするマンパワーがそこにある、私はそういうことだと思うんですね。したがって、海洋関係に従事している方々がより安全に仕事ができるような体制もつくらなきゃなりません。

 海の日も話をしましたけれども、こういったことはマンネリ化であってはならぬ、新しい取り組みが必要であろう、まさにそういう時期が今の時代であろうと私はこの法案の審議を通じて強く思っております。大臣の私の質問に対するお答えを賜りたい。

北側国務大臣 海上保安庁の役割というのはますます重要になってきております。日常の海上交通の安全確保、また海難救助活動、犯罪の取り締まりだけではなくて、EEZを含めた海洋権益の保全というふうな新たな業務課題、重要な業務課題も託されているわけでございまして、こうした幅広い業務をしっかり遂行することができるための資材、装備、そういうものはしっかり確保していく必要があるというふうに考えているところでございます。

 この平成十七年度補正、十八年度予算でも代替整備についての一定の予算をいただき、新規の装備、代替整備を進めているところでございますが、まだまだ不十分でございまして、これから計画的に、必要な装備、巡視船艇また航空機が古くなっているのが大分ありますので、代替整備を計画的に、また重点的に行い、こうした老朽船、老朽航空機の早期解消を図ってまいりたいと考えております。

 それから、海底また海洋の調査でございますけれども、海上保安庁としては、これは必要な調査は粛々と行わせていただきたいというふうに考えているところでございます。

 先般の竹島周辺の調査につきまして御承知のような結果があったわけでございますが、また、日韓間でEEZの境界画定の交渉が近々会議を持たれるわけでございますけれども、あの海域につきましては、御承知のとおり、両国のEEZの境界の主張が異なっている係争海域でございます。そこのところは、やはり政府全体として政治判断をしていかねばならないところでございまして、私ども海上保安庁といたしましては、やるべき調査は粛々と行う、ただし、そうした係争海域において無用の混乱、摩擦を起こさないようにすることも、これは政府全体としては大事な場面もあるというふうに考えておりまして、そこはよく外務省等とも連携をとって判断をしてまいりたいと考えております。

高木(義)委員 さらなる改善、そして取り組みを強く求めて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

林委員長 長安豊君。

長安委員 長安豊でございます。

 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案に対しまして質疑させていただきます。

 私、十五年前に学生を終え、社会人として出て一番最初に学んだこと、それは船舶の安全性についてでございました。私、その後、原油を運ぶタンカーの輸出という仕事をしておりましたので、この法律にもかなり関心を持っております。当時は、オイル・ポリューション・アクトという法律が制定されたり、初めて英語の法律を読んで勉強した経験もあったわけでございます。

 きょう、大臣及び海上保安庁長官、石川長官と質疑させていただくわけでございますけれども、もう石川長官とは、以前、航空局におられるときから、地元に関空もございますので、何度も質疑させていただいたわけでございます。きょうはぜひよろしくお願いいたします。

 まず、今般、海洋汚染防止法の改正案が出ているわけでございますけれども、海洋汚染防止対策強化に対するお考えと、先ほどもお話ございました重い油、つまりOPRC条約があったわけですけれども、今般、軽い油あるいは危険な有害物質に対する、HNSと呼ばせていただきますけれども、このOPRC―HNS議定書の締結の背景及び発効の見込みについて御説明をお伺いしたいと思います。

竹歳政府参考人 まず、海洋汚染防止対策強化に関する考え方でございますが、国際的に、海洋汚染防止対策は、事前の排出防止対策と排出された場合の防除といった事後対策の両方の対策をあわせて実施することとされております。

 重い油については既に排出規制、さらに防除の措置があったわけでございますが、有害液体物質については、MARPOL条約の附属書2におきまして、その排出の禁止、輸送するタンカーの構造規制、排出防止管理等の事前対策がもう既に講じられておりました。

 今般、防除対策につきましては、近年になって、有害液体物質はいろいろございまして、その物質ごとの防除の方法というものが確立してまいりました。これによりまして、船舶所有者による対応が可能となってきたこと等から、国際的に有害液体物質による汚染事故対応体制を一層充実する流れとなっており、先ほどから御議論になっております、二〇〇〇年にOPRC―HNS議定書が採択され、その締結が進んでいます。

 同議定書は、我が国における有害液体物質による汚染事故の対応を図る上で極めて重要な意義を有するものであることから、我が国としても議定書の発効におくれることなくこれを締結し、その内容に対応した国内体制を整備することとしたものです。

 そこで、発効の見込みでございますが、これにつきましては、締約国十五カ国が締結で発効要件を満たし、その十二カ月後に発効します。現在、加盟国は十四カ国まで来ておりまして、あと一カ国で発効するということになりますので、本年度前半には発効要件を満たし、来年度前半には議定書が発効することとなると考えております。

長安委員 この条約が締結されるまでには、やはりこのOPRC条約、これは、現在まで多くの原油の流出事故というものがあった、それに対する対応を、世界で各国が周辺国と協力できる体制をつくろうじゃないかという流れであった。一方で、今回、このHNS、つまり有害危険物質に対しても同様の協力体制を、協力して応急措置をできる体制をつくろうじゃないかという趣旨だと思います。

 こういった事故は、過去には、先ほど高木委員からもお話ございましたけれども、エクソン・バルディーズ号なんというのは大きな事故でありました。その後、やはりダブルハルというタンカーが普及しました。今では、大きな原油タンカーというのはほとんどがダブルハルになってきているものと私は了解しております。

 そういう中にあって、今回の法律、あくまでも応急措置、また防除ということに観点が置かれているわけでございますけれども、今後、ぜひ我々も勉強し、検討していかなければならないのは、いかに事故が起こったときにも漏れないような構造の運び方をしていくかということも力を注がなければならないと思います。ダブルハル、私は当時、設計図面等も見ましたけれども、やはりさまざまな安全対策がとられている。そういう中にあって、一方、ケミカルタンカーなどはまだまだ考えなければならない余地はあるのではないかと思っているわけでございます。

 今、海上事故また災害というものについてお話しさせていただいたわけでございますけれども、我が国において、そういった海洋汚染また海上災害というのは現状はどのようなものか。また、とりわけ今回新たに適用される有害液体物質の輸送、また輸送上の海洋汚染であったり海上災害というものは、実態はどのようになっているかお伺いしたいと思います。

石川政府参考人 海洋汚染の発生件数でございますけれども、平成十七年には全体で三百六十件ほどでございまして、前年に比べて六十五件ほど減少してございます。

 簡単に内訳を申し上げますと、油による汚染は二百二十九件、前年に比べて四十一件減少。廃棄物による汚染は九十四件で、前年に比べ二十七件増加。それから、有害液体物質による汚染は三件で、前年に比べて五件減少。そのほか工場排水、赤潮等による汚染は三十四件で、前年に比べて四十六件減少ということになります。

 海上災害のうち、船舶火災の発生件数というのは百二十七隻ございまして、前年と比べて二十三隻減少しております。貨物船の火災が十六件、タンカーの火災が二隻、漁船その他の船の火災が百九件ということでございます。

 全体としては、海洋汚染あるいは海上災害の件数というのは若干減少ぎみかなということでありますけれども、有害液体物質を輸送するいわゆるケミカルタンカー、これの事故につきましては、年間約三十隻から約五十隻前後、残念ながら定常的に発生しているところでございまして、先ほども申し上げましたが、昨年の七月、大変大きな事故が発生したところでございます。

 それから、有害液体物質の輸送実態でございますけれども、有害液体物質のみを対象としたデータというのは実はございませんが、いわゆる有害液体物質が大半を占めるケミカルの輸送実態につきましては、我が国国内において年間約千六百万トンという大量のケミカルが海上輸送されているところでございます。

長安委員 ありがとうございました。

 さまざまな事故が起こっている中で、もちろん、数、割合的には、有害液体物質にかかわる事故というのは当然従来の油の事故に対してはまだ少ないわけでございます。

 一方で、こういった有害液体物質、今千六百万トンというお話がございましたけれども、キシレン、ベンゼン、スチレンモノマー、こういったものが輸送量の多いものだと思いますが、やはり、一回海に漏れてしまうと、揮発性が高いという部分で危険が大きいわけでございます。一方で、原油などはやはり重い、そんなに簡単に揮発しないというところがありますので、もちろん、大量な原油が漏れてしまうと海洋が汚染され、環境への影響、また回収作業も大変なわけでございますけれども、揮発性が高いというのはやはり爆発の可能性も高い。となると、直接的に人命への影響というのがあるわけでございます。

 そういう意味では、こういった海洋汚染が起きたときにどのように取り組んでいくかというのが問われるわけでございますけれども、我が国において、そういった海洋汚染に対してどのように取り組むことになっているのか、また、こういった海洋汚染への対応に関しまして、設備、人員等の体制はどのようになっているのか、お伺いしたいと思います。

石川政府参考人 海洋汚染が発生したときに、海洋汚染防止につきましては、国際的な一般原則であります汚染者負担の原則というのがございます。したがいまして、油等の排出があった場合に、まず船舶所有者などの原因者がその防除のための措置を実施しなければならないことになります。これら船舶所有者等原因者が具体的にどうするかということになりますと、一般的には、海上災害防止センターでありますとか民間事業者等にその防除措置、除去措置というものを委託して、防除のために必要な措置を実施するということになるわけでございます。

 一方、海上保安庁といたしましては、そういう事故が発生した情報を入手いたしますと、直ちに現場に巡視船艇、航空機を派遣いたしまして、必要に応じて、油等の防除に関する専門的な知識を有する機動防除隊というものも派遣いたしまして、現場の緊急的な防除措置、除去措置というものに当たるわけでございます。大規模な事故が発生した場合には、海上保安庁だけではなくて、関係機関を総動員してこれに当たるということになろうかと思います。

 そのような防除資機材等に関しましては、私ども海上保安庁では、全国の海上保安部署に、防除に必要なオイルフェンス、油処理剤、油回収措置等の資機材を配備してございます。

 それから、船舶所有者等から委託を受けて防除措置を行う海上災害防止センターでは、全国の主要港湾三十三カ所に防除のための資機材を保管するとともに、あらかじめ日本全国に所在する民間のタグ事業者あるいはサルベージ事業者など百六十社と油などの除去の実施に関する契約を結んで、対応を講じているところでございます。

長安委員 ありがとうございました。

 海洋汚染が起きたときには、いかに早く行動を起こすかというのが一番のテーマであります。今お話ございました汚染者負担の原則という大原則がございます。こういう原則があると、逆に言うと、汚染者にしてみると、報告しようかしないでおこうかちゅうちょし、無駄な、無用な時間が過ぎてしまうのが現状であります。そういった意味では、いかに汚染者が、素直にという言葉が適当かわかりませんけれども、海上保安庁に対して、こういった汚染事故を起こしてしまったということを報告できる仕組みをつくっていくかということが今後問われてくるかと思います。

 今、海上保安庁の組織についてもお話がございましたけれども、いろいろ調べてみますと、海上保安庁さんの中でも、先ほど大臣の御答弁でもございましたけれども、船であったり巡視船艇等の現在の装備といいますか、そういうものが老朽化しているというお話がございました。ぜひ大臣、お忙しい中とは思いますけれども、これは、耐用年数がいつで、今持っている船であったり航空機がどれぐらいになっているのかというのをもう一度見ていただきたいなと思うわけでございます。

 実は、耐用年数をもう過ぎて使っている船もたくさんあるわけでございます。仄聞するところによりますと、緊急事態が起こった、海上保安庁が向かっているけれども船が故障した、故障したので帰りますなんという事態もあったと聞いております。そのようなことがあれば、何のために緊急事態に対応しているのかというのが本当に問われてしまうわけでございます。

 一方で、先ほど高木委員の方からもお話ございました近隣諸国との領海の問題というのもございます。昨今のテロの多発という事態もございます。そういう中にあって、国民の生命と財産を守るため、国としてしっかりとした、国境といいますか、海上の国境警備というものをしなければなりません。日本はすべて国境が海上でございます。

 そういう中にあって、海上保安庁という組織が果たして今のままで十分かと私は考えるわけであります。予算規模千五百億円ぐらいだったと思います。今申し上げました船を買いかえるといっても、そんな簡単にお金がその中から捻出できるわけでもないと考えるわけであります。国益を守るためには、やはりもうちょっとめり張りのきいた予算を配分しなければならないのかなと。もちろん現在も、国土交通省の方が海上保安庁を補う形で予算的な部分でも御協力されているというのもお伺いしております。しかしながら、これは省を超えて、国の国益としてやはり予算の配分をしていかなければならないなと思うわけであります。

 こういった海上保安庁の業務の多様化また高度化している今日の状況を踏まえると、巡視船艇や、先ほどもおっしゃいました装備等の一層の充実が必要だと考えるわけでございますけれども、大臣の御所感をお伺いしたいと思います。

北側国務大臣 耐用年数、大体二十年から二十五年だそうでございます。この耐用年数を超過した巡視船艇が約百二十隻、また航空機が約三十機ございまして、この代替整備を、これはもうしなければならないわけですから、緊急かつ計画的に進めさせていただきたいと思っております。

 十七年度の補正、十八年度の当初予算で、とりあえず巡視船艇二十一隻、航空機七機の代替整備を図るための予算を認めていただいたところでございますが、まだまだ不十分でございまして、十九年度以降、来年度以降につきましても計画的な代替整備に努めて、こうした老朽船、老朽機の早期解消を図っていかねばならないと思っております。

 これはもう委員のおっしゃっていただいたとおり、そんな長い時間をかけて代替整備をするのではなくて、必要なものなわけですから、重点的に予算を計上させていただいて、この十八年度予算でもそうさせていただいているわけでございます。国土交通省の他の予算はどんどん削減される中で、海上保安庁の予算につきましてはふやさせていただいているところでございまして、この緊急整備については、できるだけ早い時期に緊急整備ができるように財政当局としっかり折衝をしてまいりたいと思っておりますので、御支援のほどよろしくお願いいたします。

長安委員 今、耐用年数が二十年から二十五年の船のお話もございましたけれども、逆に言いますと、二十年から二十五年前に、今耐用年数を迎えようとしている船の現状はわかっていた。つまり、二十年後、二十五年後に耐用年数を迎えるから、その時期に本来買いかえなければならないと事前に考えておかなければならなかったのかなと。

 現在、耐用年数を超えたのがこれだけたくさんあるのは、ある意味、この間、今まで、事前に前広に計画をして、代替措置をとっておくという計画が少し足りなかったかなという気がするわけでございますけれども、先ほども申し上げましたように、海上保安庁の行動というのは国民の安全あるいは安心というものに直結するものでございます。今後とも、この設備あるいは装備の充実にはぜひ御尽力賜りたいと思うわけでございます。

 話はかわりますけれども、海上災害防止センターについてお伺いいたします。

 まずは、このセンターの業務、どのような業務を行う組織なのかということと、現在、今回この法改正にありますHNS、つまり有害液体物質についてどのような業務を行っているのかということをお伺いしたいと思います。

石川政府参考人 海上災害防止センターでございますけれども、これは、油等の流出事故に際しまして、船舶所有者などの原因者からの委託に基づく防除作業、それから、船舶所有者等原因者が防除措置を講じない場合において、海上保安庁長官の指示により実施をする必要がある場合の防除作業、こういうものを主な任務としているわけでございます。

 このほか、センターにおきましては、油や有害液体物質の防除に必要な資機材を保有して、契約に基づいて船舶所有者等に提供する業務、それから、船舶所有者等との契約に基づきまして、消防船による危険物荷役の際の監視、警戒、それから、船舶乗組員等を対象とした油防除などの知識、技能を付与するための訓練、研修、このようなことを実施しているわけでございます。

 海上災害防止センターではこれまでも、有害液体物質について、物質ごとの特性あるいは流出時の対応などにつきましてデータベースとして取りまとめるとともに、より効率的な防除手法についての調査研究ということも実施してきているわけでございます。さらに、有害液体物質の流出事故に関しましても、船舶所有者等からの委託に基づき防除作業を実施してきたところでございます。

長安委員 今般、この法改正によりまして、有害液体物質への対応というのが新たに追加されるわけでございます。そういう中で、当然、人材であったり資機材の充実ということが必要かと考えますが、今後どのように図られていくのか、お伺いしたいと思います。

石川政府参考人 人材育成につきましては、海上災害防止センターの職員をアメリカの訓練機関に派遣いたしまして、所要の訓練を受けさせるなどして、センターの職員の対応能力の向上ということを図ってきております。

 資機材につきましては、油防除のために既に整備してある資機材の多くが一般的には有害液体物質への対応においても使用可能であると思っておりますけれども、それに加えて、有害液体物質の対応において固有に必要となるもの、検知器、防護マスク等についてはその整備に努めてまいりたいと考えております。

 さらに、センターは、発生した事故に迅速に対応するために、先ほど申し上げましたけれども、あらかじめ全国に展開をしています民間のタグ事業者、サルベージ事業者などと防除の実施に関する契約を締結しておりまして、事故が発生した場合には、これらの民間事業者を動員いたしまして防除作業を実施してまいりたいと考えております。

長安委員 この独立行政法人であります海上災害防止センターは、設立当初から、多くの企業から出捐金という形でお金を寄附で集めたわけでございます。そういう中にあって、現在は国からの運営交付金というのは全く得ないで運営されているということをお伺いしておりますけれども、逆に言いますと、どのような収入があって運営されているのか、ちょっと御説明いただきたいと思います。

石川政府参考人 海上災害防止センターは、今お話がございましたように、出資、出捐をいただいたりしておりますけれども、国からの運営費交付金等は一切受けておりません。

 どのようなものが収入かと申し上げますと、一つが、油の流出事故発生時に船舶所有者等原因者からの委託に基づいて防除措置を実施するわけでございますが、その防除措置に係る手数料、それから二番目に、オイルフェンス、油処理剤等の海上防災に必要な資機材を船舶所有者に提供する、これによる手数料、それから、船舶乗組員等を対象とした油の防除等に対処するための訓練、研修の受講料、こういうものが中心となって運営されているものでございます。

長安委員 今お話ございました。収入については、さまざまな防除作業の委託であったり資機材の提供の手数料というお話でございましたかね。それから、訓練、研修。そういう中にあって、もう少し詳しくこの組織の収支を見てみると、実は、今最初に申し上げました出捐金であったり出資金というお金は、安定資産としてずっと持たれているわけでございます。

 そういう意味では、今後こういった新たな業務もふえる、またお金もかかってくるわけでございます。私は、当初は重い油だけの対策であったわけでございますから、おのずと重い油にかかわる企業が中心的に出捐あるいは出資したものだと考えております。そういう意味では、今回新たに有害の液体物質、つまりケミカル物が含まれるわけでございますから、新たな企業にも出捐を求める形でしっかりと運営がなされるようにすべきではないかと考えるわけでございますけれども、御所感をいただけますでしょうか。

石川政府参考人 御指摘のように、センターが、油に加えて有害液体物質等についての防除作業あるいは資機材の提供、訓練、研修等という業務を実施していく中で、収入は一定の収入があるわけでございますけれども、その財政基盤を安定させるということは必要だろうと思っております。

 では、どのような方法で、あるいはどのような方々から出捐をいただくかということにつきましては、まさに、独立行政法人の海上災害防止センター、これが業務の実施主体でもございます、十分みずから判断をすべきものだと考えております。

長安委員 どういうふうにするか。要は、中に営業というか出捐金を求める人を配置して、その人たちが回って、ぜひ出捐してくださいと回ればふえるわけでございます。ここは、ずっと黙ってこまねいていたらふえないですよという御指摘をさせていただきたかったわけでございます。

 いずれにいたしましても、この独立行政法人もそうでありますし、海上保安庁がしっかりと我々国民の安心というものを守れるように、環境整備をしていくということが求められていくわけでございます。私も、国土交通委員として、そういったことには全面的に御協力させていただきながら取り組んでまいる所存でございます。

 どうもありがとうございました。

林委員長 伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉でございます。

 まず初めに、海洋に関する一般論について何点かお伺いをしたいと思います。

 ここまでるる御質問があったとおり、我が国は四方を海に囲まれ、海を通して他国とつながっているという島国でございます。二週間ほど前の報道によりますと、海上保安庁が提唱をされて二〇〇〇年に発足をした、中国、韓国、ロシア、アメリカ、カナダ、そして日本が参加をする北太平洋海上保安機関長官級会合で、多国間訓練の実施が日本の海上保安庁の主導で実現をしたと伺っております。

 世論調査を見ても、外交、特にアジア外交の悪化が危惧をされている中で、こうした海上保安という次元で北太平洋に面する各国が共同訓練を行い、信頼感を醸成することは非常に有益なことであると思います。国土交通委員の一人として、心より関係者の皆様に敬意を表するとともに、実り多き訓練となるように念願をいたします。

 そこで、今回のこの訓練の目的と意義、並びに結果として得られる知見等について御教示をいただきたいと思います。

石川政府参考人 今御指摘の北太平洋海上保安機関長官級会合というものは、お話がありましたように、今から六年前に第一回を東京で会合して以来、毎年持ち回りで各国で会合してございまして、昨年、二巡目ということで、日本がホスト国として、神戸で六カ国の長官級を集めて会合をしたわけでございます。

 そのときに、私どもの方から、今まで五年間にわたって長官級会合でさまざまな議論をし、さまざまな意見交換をしてきたけれども、それはそれで今後とも続けていくわけでありますけれども、むしろ、海での実動ということをお互いにやろうではないかということで、机上から海へというキャッチフレーズのもとに、関係国の理解を求めてきた結果として、ことしは二つの多国間訓練と一つの共同パトロールということを実施することに至ったわけでございます。

 今回の訓練は、密航、密輸等の国際的な組織犯罪あるいは海難への対処ということについて、多国間での実践的な連携協力の強化を図るということが目的としてございます。今まで二国間とかいうのはあるわけでございますが、多国間において、現場の執行機関が実際に海上において合同で訓練をするというところに大きな意義があろうかと思っております。

 具体的に、このような多国間での共同訓練を実施することによりまして、参加各機関の技能の向上を図るとともに、具体的な情報交換、連携手法ということを現場において確立することが可能となりますので、そのようなことをもって、北太平洋地域における海上保安、レスキューあるいはセキュリティーの向上というものに資しているものだと考えております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。重ねて、実り多き訓練となることを念願いたします。

 次に、ここまで若干触れられましたが、日韓の海洋調査の問題についてお伺いをします。

 ことしの四月、竹島周辺の海洋調査の問題で日本と韓国との間に緊張感が漂ったことは、もう皆様御存じのとおりでございます。その後、新聞報道等を見るにつけ、海洋調査そのものが若干おくれているというような印象を持ちました。我が国、領土面積そのものは世界六十位にすぎませんけれども、海洋の面積は世界の六位。国際社会との調和を図るためにも、主張をすべきことはやはり明確に主張をする姿勢も大切ではないかと考えます。

 そのような意味で、そもそも我が国の大切な海洋の現状が明らかでないというところは改善をしていかなければならないと思います。この出おくれている感を受ける海洋調査について、今後の取り組み、また現状抱える問題点等について御教示をいただきたいと思います。

石川政府参考人 海洋調査につきましては、ともかく我が国周辺は大変広大な海域でございます。こういう海域について、日本は、ある意味じゃ明治以降、順次、海洋調査、海図の作成ということをやってきたわけでございますが、これまで、どちらかというと、海上交通の安全に重要な海域、こういうものをいわば優先して海図の作成、海洋調査ということをやってきたわけでございます。

 あわせまして、特に最近では、大陸棚の限界画定というのがございまして、一定の要件を満たせば、二百海里を超えた部分においても大陸棚として認められるということがございまして、これが、平成二十一年までに国連にそのリポートを出すというようなこともございまして、特に最近では太平洋側の大陸棚調査のために力を注いでいるというふうなことがあったわけでございます。

 なお、そうはいいながらも、私ども、これからやっていかなければいけない海洋調査というものの海域はまだまだあるわけでございますし、さらに、既にやってある海域につきましても、それを深度化する、最新化するということもあろうかと思います。

 いずれにしても、私どもとしては、今後とも、日本周辺海域の適正な海図を作成するために必要な海洋調査ということについては、関係省庁とも密接な連携を保ちつつ、適切に実施してまいりたいと考えております。

伊藤(渉)委員 続いて、漁船の違法操業について若干お伺いをします。

 アジアの隣国に対して不信感を若干あおるような論調が新聞報道等に散見をされる現状を憂慮しております。そこで、日韓漁業協定が発効をした一九九九年以降、海上保安庁が検挙をした他国の漁船の隻数及び逆に我が国が拿捕された隻数を教えていただきたいと思います。また、今後の海上保安庁としての対応、そして現状抱える問題点等についても、あれば教えていただきたいと思います。

石川政府参考人 日韓漁業協定が発効いたしました一九九九年以降に海上保安庁が漁業関係法令違反で検挙した外国漁船でございますが、全部で百十四隻でございます。主な内訳は、韓国漁船が六十二隻、中国漁船が二十四隻、台湾漁船が十九隻でございます。一方、同時期以降、外国に拿捕された日本漁船は、総計で五十二隻になります。

 この違法な漁業操業を行う外国漁船でございますが、最近の特徴として、高速、高性能を図った船体、こういうもので入ってまいりまして、巡視船艇の接近をいち早く察知して逃走するというような事案があります。さらには、取り締まりに当たる私ども巡視船艇あるいは海上保安官に対して激しい抵抗を行うというふうなこともございました。そういう意味では、その実態、大変悪質巧妙化していると考えております。

 私どもとしては、こういうものに対応するために、関係機関との連携をきちっととるほか、現場においても逃走漁船の追跡捕捉訓練の強化あるいは巡視船艇の勢力の効率的な配備というふうなことなどを行うことによりまして、外国漁船に対する、違法操業ということに対して監視、取り締まりについては引き続き強化をしてまいりたいと考えております。

伊藤(渉)委員 同様な質問ですけれども、北朝鮮の貨物船ツルボン一号による覚せい剤の密輸問題等北朝鮮の貨物船による犯罪が横行しているように見受けられますけれども、これらに対する海上保安庁の取り組みや他省庁との連携についてどのようになっているのか、御教示いただきたいと思います。

石川政府参考人 まず、北朝鮮船舶につきましては、私ども海上保安庁におきましては、我が国に入港するすべての北朝鮮船舶に対しまして関係機関と共同で厳正な立入検査ということを実施しております。あわせまして、一方で、私どもとしても、速力、監視能力を強化した巡視船艇というものを日本海側にも重点的に配備して、薬物密輸等の水際での取り締まりということを強化しているわけでございます。

 さらに、警察、税関などの国内の関係機関あるいは外国の機関とも積極的に情報交換を行いまして、北朝鮮船舶による薬物密輸等の犯罪防止というものに努めているわけでございます。

 最近では、去る五月十二日、警察と合同で北朝鮮貨物船ツルボン一号を利用した覚せい剤密輸事件というものを摘発したところでございまして、暴力団関係者を含めて七名を逮捕したところでございます。現在、引き続き鋭意捜査を進めているというところでございます。

 今後とも、このようなことを図りながら、薬物密輸等に対して徹底した取り締まりを実施してまいりたいと考えております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 先ほど来、例えば不審船等に対する海上保安庁のそうした対応についてさまざま質問があったと思います。船の装備、走行速度の向上等の改善、また老朽化が進んでいる中で今後どういった取り組みをしていくのか、これについてはるるお答えいただきましたので省略をさせていただきまして、大臣にお伺いをいたします。

 改めてですけれども、こうした海上保安庁の現状を深く憂慮し、これも先ほどございましたとおり、艦船等の増強に強い意欲を示されておられます。また、五月末にはみずから艦艇を観閲されました。改めて、この点を含めて大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

北側国務大臣 海上保安庁の業務というのは、非常に多様な業務をつかさどっているところでございます。密輸密航対策、海難救助、海上交通の安全確保、また海洋の環境保全等々多岐にわたっているわけでございますが、先ほど来委員の方から御質問いただいているような海洋権益の保全といった新たな課題にも対応する必要が生じているところでございまして、こうした我が国の国益を本当に守る、そういう重要な仕事をしているわけでございますので、それがしっかり遂行できるような装備というものをしていかねばならないというふうに考えているところでございます。そのためにも、国会の先生方の海上保安庁の業務に対する御理解、御協力が何にも増して必要でございますし、また国民の皆様の御理解も必要だなというふうに私は思っております。

 海上保安庁の仕事というのは、海での日常の仕事でございます。ですから、日ごろは国民の皆様から見えません。日常的には非常に地道な、地味な仕事をしているわけでございまして、そういう意味では、国民の皆様に御理解いただけるような運動といいますか、をしっかりとしていかねばならないというふうに考えているところでございます。

 最近、映画の「海猿」がヒットしておりまして、ぜひごらんになっていただきたいと思いますけれども、大分国民の皆様の御理解も広がってきたなとは思っておりますが、まだまだでございまして、こうした緊急整備をしていくためにも本当に多くの財源が必要でございます。こうした多くの国民の皆様の税金を使っていくわけでございますので、国民の皆様への御理解が深まるようにしっかり取り組みをさせていただきたいと考えております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。

 私も、私ごとでございますが、いとこが海上保安庁にお世話になっていることもございますし、ぜひ「海猿」も時間を見つけて見させていただいて、今後ともしっかり国土交通委員の一人として尽力していきたいと思います。

 以上で質問を終わります。

林委員長 穀田恵二君。

穀田委員 エレベーターで死亡事故が起きました。亡くなられた市川大輔さんの御家族に哀悼の意を表明したいと思います。

 エレベーター事故で、日常使う製品の安全性の問題が浮き彫りになりました。原因究明が一刻も早く求められます。メーカーや保守会社は、安全対策に落ち度がないか再確認し、利用者の不安を払拭する必要があります。

 国交省の責任もあります。国交省は、建築基準法第三十四条、それから建築基準法施行令の百二十九条の三以降、そして安全装置の義務づけは同十「エレベーターの安全装置」というところにありまして、その三項一号に、要するに「すべての出入口の戸が閉じていなければ、かごを昇降させることができない装置」ということまで義務づけています。したがって、責任も重大だと思います。

 私は、この一点だけ、海洋汚染の防止の前に聞きたい。緊急調査、点検を行うべきと考えるが、大臣の認識はいかがかということであります。

北側国務大臣 まず原因究明をしっかり図ることが大切であると思っております。

 今警察も調査に入っておりますが、国土交通省といたしましても、港区とよく連携をとって事故原因を早期に確定すること、それが非常に大事であると思っておりまして、しっかりその調査を進めさせていただきたいと思っております。

 それとともに、このエレベーターはシンドラーエレベータ株式会社というところがつくったエレベーターでございまして、この港区での本当に痛ましい事故だけではなくて、ほかのところでもふぐあいが生じているような報道もあるところでございまして、詳細な調査をさらにしているところでございます。

 また、現在、日本エレベータ協会を通じまして、シンドラーエレベータ株式会社に対しまして、事故機と同型のドア安全装置、制御装置を有するエレベーターの物件リストの作成を要請しているところでございまして、事故原因の解明作業と並行いたしまして、このリストが提出され次第、特定行政庁を通じて運行状況等の調査を実施させていただきたいと考えております。

穀田委員 そこはよくやっていただきたいと思うんです。

 私、今お聞きして、シンドラー社のエレベーターというのは、日本では確かに一千台ぐらいということで、割と小さいというふうに見えますけれども、世界では第二位なんだそうですね。それで、きのうの報道でもありますように、東京工業大学でも起きているということがあります。

 あわせて、私は、なぜこれをこの際と言っているかというと、この間、昨年の七月でしたか、地震の影響で、首都圏で五万台のエレベーターが停止しています。これも受けてでしょうけれども、国土交通省の諮問機関、社会資本整備審議会建築物等事故・災害対策部会は「エレベーターの地震防災対策の推進について」という報告を出しているわけなんですね。そういうことがある。

 もう一つ、今度の問題で私が大事だなと思ったのは、行政の責任が直接問われていると思うんです。といいますのは、マンションは港区が所有し同区住宅公社が管理しているものです。だから、家主は行政なんですよね。

 それで、エレベーターのふぐあいについて、実質上の家主である公社も、それから区も聞いていた。報道によれば、公社は、ふぐあいが頻発しているという認識はあったが、業者の修理で直ったと考えていた、安易だったかもしれないと述べたとされています。

 こうなりますと、私は、安全第一という態度で本当に臨んでいるのかということについて警鐘を鳴らさなくちゃならぬのじゃないかと。その意味で、私は、緊急調査、点検、少なくとも、今お話があったシンドラー製品は当然のこととして、公共的な建物の安全性などについてもチェックするのは当然じゃないかと思っています。

 そこで次に、肝心の問題に入ります。

 海洋汚染防止法案ですが、この法案は、これまで重油等の蒸発しにくい油に限られていた排出防除措置を、キシレンなどの有害液体物質や揮発性の高い油について船舶所有者等に義務づけるということになって、海洋汚染、海上災害の防止対策を強化しようとするもので、私は当然だと思うんです。

 ただ、ここで大もとについて議論しておきたい。私は、率直に言って、これはちょっと遅過ぎやしないかと思っているんです。もっと早く整備されるべきではないかと考えています。なぜなら、先ほど来多くの議員の質疑の中で明らかになっているように、日本は海洋国なんですよね。ですから、他の国に先んじて積極的に海洋汚染防止などに取り組み、イニシアチブを発揮していくべき立場にあるんじゃないかと考えているからです。

 いただいた資料の中で、HNS汚染事故への準備及び対応に関する調査研究委員会の報告がありました。これは海上保安庁がその概要を出していますが、それを読みますと、背景では、大規模油排出事故による海洋環境への影響を最小限に抑えることを目的としてOPRC条約が一九九〇年に採択されたと。この条約がこれまでの重油等の蒸発しにくい油を対象にしたものであることは御承知のとおりです。ところが、このとき既に、油以外のHNSも汚染対象物質の範囲に加えることについて検討すべしという附帯決議がついていました。そして、以降検討されて、二〇〇〇年三月にOPRC―HNS議定書が採択された、こういう経過です。そして、五年経過したことしにやっと国内法が整備されるという経過であると思うんですが、この点について間違いありませんね。簡単に、それだけ。

竹歳政府参考人 以上の経緯については、今御指摘のとおりでございます。

穀田委員 つまり、九〇年当初から問題だという認識はあったわけなんですね。確かに、国際法上の手続だとか整備する上でのさまざまな越えなければならない問題もあったでしょう。なぜもっと早くできないかということを、どういうイニシアチブを発揮したのか。私は、その意味では各国の後を追いかけているというような印象があります。

 日本海難防止協会に意見を聞きました。そうしますと、HNS追加の法改正を急ぎ、対策を強化してほしい、有害、危険なケミカルメタル類は二万種類、日本経済が必要とするケミカルメタル類が大量に海上輸送されており、危険な状態が広がっている、このHNSというのは人命に被害をもたらすとともに海洋を汚染して生態系を破壊する危険物質だ、その上、ケミカルタンカーは世界で二千隻のうち日本が七から八百隻、その九〇%が内航タンカーだ、イルカの漂着や知床の鳥の漂着などの原因にHNSが指摘されている、この現状から見て対策は緊急を要すると考える、こういうふうに述べていました。

 こういう状態になる前に、なぜ国内独自に対策を打たなかったのか、あるいは各国に働きかけるイニシアチブをとらなかったのか、この点について状況をお聞きしたいと思います。

竹歳政府参考人 我が国の海洋汚染及び海上災害の防止対策につきましては、国際的な規則及び基準に基づいて実施するということがまず基本でございます。

 今先生御指摘のように、一九九〇年にOPRC条約が採択された際に、油以外の危険物質及び有害物質に拡大するということで附帯決議がなされ、その後、国際海事機関で十年間かけて有害物質の範囲とか規制対象となる取扱施設の範囲等について関係各国間の調整が行われて、二〇〇〇年にこのOPRC―HNS議定書が採択された、こういうことになって、そこで十年間国際的に議論がされてきたということでございます。

 この問題につきましては、いずれにしろ、それぞれの危険物質及び有害物質についての防除の方法について、きちっとした具体的な方法を示さないと船舶所有者等に防除等の義務化ができないわけでございますので、そういうことが可能になったので提案させていただいたということでございます。

 なお、国際的な状況でございますけれども、平成十八年五月末現在ですと、十四カ国が既にこれを締結しておりまして、我が国は十五番目を目指しているということになるわけでございますが、英国、米国、フランス、ドイツなどの先進国や中国、韓国などの近隣諸国はまだ締結しておりませんので、そういう意味でも、国際的に必ずしもおくれているということにはならないと考えております。

穀田委員 経過は、さっき言ったわけだから、いいんですよ。

 簡単に言えば、防除のそういう知見が深化した、時間がかかったということはあるんですね。それはあると思います。ただ、事は地球環境それから海洋環境にかかわることだから、そういう意味での認識を深めて努力すべきであったと思うんですね。

 今ありましたけれども、大体、十四カ国まで締結をして、あと、準備している日本やドイツが加わるということで見通しが立っているということですよね。

 そこで、今答弁でもありましたが、アメリカや英国などはこの中に入っていないわけですね。その理由は何なんですか。

石川政府参考人 アメリカにつきまして御報告させていただきたいと思います。

 アメリカも、現在、有害物質あるいは有害物質の防除体制について、油と同様に新たに制度をつくるということを、導入を検討しているところでございまして、その案については、既にアメリカ国内においてパブリックコメントも実施をされ、関係事業者等との調整も、アメリカの国内でございますが、終わっているということでございますけれども、アメリカの議会でまだ法制化はされていないというふうになっております。

 ただ、アメリカにつきましては、既に危険物質及び有害物質を対象とした国家的な緊急時計画というものは策定をされているということでございます。

 繰り返しになりますけれども、アメリカはまだ議会において法定化されていないということでございます。

穀田委員 それはわかっているんですよ。だから、法定化されていないから批准されていない、その二つの関係があるということも、それは我々はつかんでいます。

 問題は、いつでもそうなんですよね。国内的な体制を整備することとのかかわりで、アメリカは、事環境やこういう問題にかかわると、必ず独自の道を歩むという傾向がこの間あるということを見ておかないとあかんのじゃないのか。だから、理由が何なのか。法体系の整備との関係でおくれている、それは一つの、法律上の体系との関係で問題になっているんですよ。内的理由はないのかということを聞いているんですよ。それはどうですか。

 要するに、例えば地球温暖化防止対策においても、最大の工業国であるアメリカの姿勢が問われたわけですよね。こういった形と同じような、独自性というのか彼らのわがままというか、そういうのはあるのか。そういう内容上の話を聞いているんですよ。

石川政府参考人 アメリカの詳しい状況はわかりませんけれども、ただ、聞くところによると、さっき申し上げましたように、アメリカの議会の中で、この辺の関係の法令をまさにどういうふうに扱うかということについての中でおくれているというふうに伺っております。

穀田委員 では、最後に一言だけ言いますけれども、大臣、一律に何も環境問題についてアメリカが悪いと言っているわけじゃないんですよね。そういうふうに思っているわけじゃないんだけれども、この間、こういう問題というのは結構独自性という名目でいろいろやっているから、やはり海洋国家としての日本が、もっとイニシアチブをとって、こういう問題についてはさっさと入れと言うぐらいのことをやるべきだというふうに思っていますので、よろしく言っておきたいと思います。

 終わります。

林委員長 日森文尋君。

日森委員 今回の改正で、有害液体物質等を積載して航行する船舶の所有者、これは排出油等の防除のために必要な資材を備えつけ、機械器具を配備するとともに、排出油等の防除に関し必要な知識を有する要員を確保しなければならないということになりました。

 そこで、最初にお聞きしたいのは、この必要な知識を有する要員というのをこれまでどのように養成されてきたのか、あるいは今後養成をされていくのか。それから、これは法律上施行日までに確保しなければならないというふうにされているようですが、それはきっちりと実現できるのかどうか、最初にお聞きしたいと思います。

石川政府参考人 今先生御指摘のように、有害液体物質というのは、その性格、種類によって、浮いたり沈んだりというふうな特性が異なったり、あるいは引火性、毒性というふうなものがあるとか、さまざまな形でございます。したがいまして、法案では、一定の海域を貨物として有害液体物質を積載して航行する船舶の船舶所有者に対して、防除資機材の準備とともに、防除に関し必要な知識を有する要員の確保というものを義務づけているわけでございます。

 この資機材とか要員の確保につきましては、船舶所有者がみずから確保するということもあるわけでございますが、今までの油と同様に、海上災害防止センターを含めて、資機材あるいは要員を有する第三者に委託をするということで、この義務を果たすということが可能になっているわけでございます。

 それで、海上災害防止センターは、一方で、IMO、国際海事機関の訓練カリキュラムに準拠した所要の研修コースを整えて、このような有害液体物質等に対する防除に関する必要な知識を有する要員の研修、訓練ということを実施して、その要員の養成を図る予定にしております。

 なお、この要員の養成につきましては、一定の期間を要するということもございます。所要の準備期間を確保するということもございますので、要員の確保に係る規定につきましては、平成二十年四月一日から施行ということで、施行日までには必要な要員は確保されるものだと考えております。

日森委員 ぜひ、しっかり対応していただきたいと思います。

 海洋汚染と関連して、私ども報道で知ったのですが、アメリカ軍、米軍が二〇〇一年三月に、アメリカ合衆国によって実施された化学薬品と化学兵器の海洋投棄処分という報告書を発表いたしました。

 この報告書を最初に報道したアメリカの新聞によりますと、報告書によると、米軍は日本近海では八カ所での投棄を予定していたと。ほかの報道ですとちょっと違うんですが、実際には、日本近海の六カ所で投棄が行われたという報道がされているわけです。さらに、投棄されたものは、嘔吐性のガス弾、これが十一万発日本近海に投棄をされたというふうに言われているわけです。

 環境省も、二〇〇三年十一月に、昭和四十八年の「旧軍毒ガス弾等の全国調査」フォローアップ調査報告書というのを公表いたしました。これをちょっとちょうだいして拝見させていただいたんですが、この報告書では米軍が投棄をしたと思われる事案も含まれているというふうに考えられますけれども、今回報道されている事案が新規なものなのか、それともこのフォローアップ調査の中で既に確認をされているものなのかどうなのか、しっかり調査をして確認しておく必要があるんじゃないかというふうに思いますが、これは環境省ですか、お答えいただきたいと思います。

滝澤政府参考人 環境省が実施いたしましたフォローアップ調査の報告書でございますが、その中で、情報を地域ごとに整理いたしておりまして、全国で百三十八の事案にまとめたところでございます。このうち、二十九の事案が水域に関する事案でございまして、その中で米軍が毒ガス弾等の海洋投棄に関与したとの情報を有する事案は七事案ございました。

 御指摘の米軍の報告書でございますが、日本近海への旧軍毒ガス弾等や化学物質の海洋投棄に関する情報が数件記されておるわけでございますが、具体的な投棄状況あるいは投棄地点が明記されていないなど情報の内容が限定的でございまして、事案の詳細が不明でございます。したがって、この米軍の報告書は、私どもが行いましたフォローアップ調査に掲載されている水域事案との関係を明らかにすることは困難な報告内容となっております。

 しかしながら、環境省といたしましては、今回の全国調査を契機に毒ガス情報センターも設置しておりまして、旧軍毒ガス弾に関する情報を広く受け付ける体制を整えておるところでございます。今後、新たな情報が得られた場合には、関係省庁と連携して必要な対応を図ってまいりたいと考えております。

日森委員 ぜひ、しっかりした調査をお願いしておきたいと思います。

 同時に、政府は、二〇〇三年十二月に「国内における毒ガス弾等に関する今後の対応方針について」というのを閣議決定しております。この決定の「第一 今後講ずべき施策」「1 各類型に応じた対策 (2)水域の事案」において対処方針が明確に記載をされております。これまでの取り組み状況についてお伺いをしたいと思います。

竹歳政府参考人 これまでの取り組み状況でございますけれども、しゅんせつ等の工事、船舶航行に際しての注意事項の周知徹底、毒ガス弾等の水域における影響についての調査検討を関係省庁と連携しつつ行うということになっております。

 具体的には、国土交通省は、平成十二年でございますけれども、老朽化化学兵器五十七発が発見された福岡県苅田港におきまして、さまざまな対策に取り組んでいるところでございます。

 一つは、平成十五年度と十六年度におきまして、航路しゅんせつ予定区域で磁気探査を実施しまして、それぞれ五百三十八カ所、八十三カ所の老朽化化学兵器と見られる磁気異常点を確認したところでございます。

 平成十八年三月からは、引き続き、港内の磁気探査を実施するとともに、磁気異常点五百三十八カ所のうち未処理となっている老朽化化学兵器九十六発、また、八十三カ所から発見される老朽化化学兵器の処理等を進めているところです。

 この際、このような状況は、航行警報等により周知徹底しており、周辺の船舶やしゅんせつ工事事業者等の安全確保に万全を期しております。

 さらに、確認した化学弾らしき物体を海底より引き揚げる際には、処理の一環として、水質、底質調査を実施しており、いずれの場合も異常がないことを確認しております。

 いずれにいたしましても、国内におけるガス弾等については、今御指摘ございました閣議決定に基づきまして、関係省庁と連携しつつ適切に対応していきたいと思っております。

滝澤政府参考人 若干内容的に重複いたしますが、御指摘の十五年の十二月の閣議決定でございますが、この水域の事案につきまして、特に毒ガス弾等の水域における影響につきましては、農林水産省、国土交通省、環境省等の関係省庁が、防衛庁等の協力を得つつ調査検討を行うというふうに御指示があったわけでございまして、こういった考え方に基づきまして、環境省といたしましても、さらに調査検討を進めていきたいと考えております。

日森委員 投棄された嘔吐性ガスというのが、どういう形で投棄をされたのか。それが、例えば海底で壊れて海水の中に流出をしていくということによってどのような影響があるのかということは、ちょっと私は素人でわかりませんけれども、いずれにしても、今回の法案とはちょっと別になりますが、海を汚して、恐らく魚やあるいは人体そのものにも影響を与えるということが想定できるんじゃないか、こう思うんです。そういう意味では、しっかりこの閣議決定等を生かして具体的な調査を行っていただきたい、改めてお願いをしておきたいと思います。

 最後になりますけれども、大臣にちょっとお伺いしたいんですが、相当、日本の海域に、旧軍あるいはアメリカ軍のものがあるかもしれませんが、こういう毒ガス弾等が投棄をされて、すべて回収されたわけじゃないですから、いわば放置をされているというような現実がある。そうすると、今回の法案だけでは、当然、海洋汚染みたいなものについて、これを全部解消できるわけにいかないわけなので、具体的に、もちろん国交省だけの問題ではありません、農水省も環境省も当然関係してくる問題ですが、こうした問題をきちんと解決していかなければならないだろうというふうに思うんですが、今回の法案とあわせて大臣の御感想をお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。

北側国務大臣 先ほど話が出ました福岡県にあります苅田港でございますが、この現場は、私、ことしの初めに現場へ行かせていただきまして、この毒ガス弾の処理の状況、現場の方々のお話なんかも聞かせていただいております。

 この毒ガス弾に係る問題につきましては、先ほど委員の方からお示しいただきました閣議決定で、政府全体で一体となってこの毒ガス弾の問題について取り組むこととされておりまして、国土交通省も、特に海の場合は航行の安全等も深くかかわってくるわけでございますし、しっかり国土交通省としての役割を果たしてまいりたいと思っております。

 また、毒ガス弾に係る情報につきましては、今環境省から答弁がありましたように、情報センターでその情報を継続的に受け付けて、その情報の分析も行っているところでございまして、いずれにしましても、政府全体でしっかり取り組みをさせていただきたいと考えております。

日森委員 ありがとうございました。

 終わります。

林委員長 糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 四方を海で囲まれた海洋国家の我が国では、経済活動ですとか国民生活の多くを海に依存している、こういうことから、海洋汚染の防止ですとか海洋環境の保護というものは非常に重要な政策の課題であるというふうに認識をしております。

 平成九年に日本海で発生いたしましたナホトカ号の事故、これによります海洋汚染のような大規模な汚染事故が発生すれば、周辺海域の環境やこの沿岸で暮らす住民の生活に多大な被害や影響が及ぶ、こういうことになりますので、このような事故の発生の防止、それから、事故が発生した場合の迅速な対応について政府がしっかりとした対策を講じていく、これが極めて重要ではないのかなというふうに思うわけでございます。

 そこでまず、我が国の海洋汚染の防止対策についての基本的な考え方と、今回のOPRC―HNSの議定書を締結した、また、海洋汚染防止法の改正案を提出した背景についてお聞かせをいただけますでしょうか。

竹歳政府参考人 我が国の海洋汚染防止対策の基本的な考え方でございますが、今先生御指摘なされたとおり、まず、事前の排出防止対策ということと、それから、排出されてしまった場合の事後措置、この両方の対策をあわせて実施していく必要があると思います。

 国際的な流れとしては、重油等の油についてはそういう対策が仕組まれてきたわけですけれども、排出された後の防除措置については有害物質等についてはなかった。それについて、この二〇〇〇年の危険物質及び有害物質による汚染事件に係る準備、対応及び協力に関する議定書というものが結ばれまして、それに応じた国内体制を整備する必要があるということが今回の改正法の背景でございます。

糸川委員 資源の大半を海外に依存して、その多くを船舶によって輸送している我が国としては、その国際的責任を果たすためには、今回の議定書の早期締結、それから、そのための海洋汚染防止法の改正というものは不可欠である、これはそのように考えておりますが、この海洋汚染防止法の改正案が成立することによって、有害物質ですとか危険物質の排出事故についての対応がどのように改善されるのか、お聞かせいただけますでしょうか。

石川政府参考人 今回の海洋汚染防止法の改正案の中身の中で、有害液体物質等の排出があった場合に船舶所有者等は防除のために必要な措置を講じなければならないこと、そのために必要な資材、要員等を確保しておかなければならないこと、さらには、有害液体物質等の排出のおそれがある場合に、船舶所有者等に対して、海上保安庁長官が、所要の措置を講ずるよう命ずることができることなどについて規定をしているものでございますが、このような改正によりまして、一つが、事故が発生した場合に、直ちに船舶所有者等が防除措置を講ずることとなると考えております。

 こういうことから、我が国の周辺海域で年間三十隻から五十隻前後発生しておりますケミカルタンカーの事故に対して、より迅速かつ効果的に対処し得る体制が整備されるのではないかと考えておりますし、さらに、有害液体物質の排出等に対処するために対応する資機材の整備、それから、所要の訓練、研修を受けた要員の配置というものも進むものだと考えております。

 さらには、座礁あるいは乗り上げ事故で有害液体物質や危険物が排出されるおそれがある場合に、海上保安庁長官による措置命令というものも新設がございまして、被害の未然防止ということも図ることができると考えております。

糸川委員 次に、海洋の環境に関する身近な問題として、近年、私もなんですが、そこにいらっしゃる松村副大臣も今お地元とされている福井県、我が国の日本海側の沿岸なんですけれども、こちらに近隣諸国からのものも含めて大量のごみが漂着しているという現状がございます。地元では、このごみの回収ですとか処理が大変大きな負担となっておりまして、大きな問題となっておるわけでございます。

 この漂着ごみの問題への取り組みも、海洋汚染の防止、それから海洋環境の保護の観点から非常に重要であるというふうに考えておるわけでございます。

 そこで、この漂着ごみの問題について、政府としてどのように取り組んでいらっしゃるのか、お聞かせいただけますでしょうか。

竹歳政府参考人 漂着ごみの問題につきましては、政府としては、平成十二年から環境省を中心に関係省庁連絡会を設置して情報交換を行ってきました。しかしながら、外国との関係を含む発生源対策の難しさや、関係する部局が多数に上り事業も異なるということで、なかなか有効な対策を講ずるに至っていないというのが現状でございます。

 国土交通省におきましては、これまでも、海洋への廃棄物の不法投棄の取り締まりでございますとか、船舶航行のふくそうする海域における浮遊するごみ等の回収などを行ってきましたが、さらに対策を講じていくことが必要となっております。

 このため、本年二月十五日に、構造改革特別区域推進本部決定に基づきまして政府部内に漂流・漂着ゴミ対策に関する関係省庁会議というものができておりまして、これに国土交通省も積極的に参加して、必要な施策を推進していきたいと考えております。

糸川委員 この漂着ごみにつきましては、副大臣も御確認されたことがあると思うんですけれども、ハングルの文字ですとか中国語の文字ですとか、そういうものが、ごみの例えばペットボトルとかそういうものについているというところから、今回のこの海洋汚染の防止ですとか海洋環境の保護については、近隣諸国とのしっかりとした連携ですとか協力というものが非常に重要ではないのかなというふうに考えるわけでございますので、その辺の協議もしっかりとしていただければなというふうに思うわけでございます。

 もう時間もほとんどございませんので、最後に大臣にお尋ねをさせていただきたいというふうに思うんですが、海洋に関する課題というものは、海洋汚染の防止、それから海洋環境の保護、これだけではなくて、海洋における資源の問題、それから安定的な海上輸送の確保の問題、我が国の国益に直結するものが多く存在するものでございます。

 この点、近隣諸国を初め世界の多くの国において、国家として海洋政策を定めて、海洋に関する課題について積極的な取り組みを行っているというふうに聞いております。

 そこで、我が国としても、国家としての海洋政策を定めて取り組む必要があるというふうに思いますが、この点について、政府の認識をお聞かせいただきたいというふうに思います。

北側国務大臣 大事な御指摘だというふうに認識をしております。

 我が国は、言うまでもなく海洋国家でございまして、海上における安全の確保、また、きょうも御議論いただきました海洋の環境の保全、さらには、経済的な、排他的経済水域や大陸棚における主権的権利の確保といったさまざまな課題が海にはあるわけでございます。

 国土交通省は海洋に係るさまざまな分野を担当しておりますので、この海洋政策の全体像また基本的な今後の方向性、そうしたものをこの夏までに取りまとめたいというふうに考えておりまして、今作業をしているところでございます。この取りまとめに従いまして、戦略的に海洋政策を推進していきたいというふうに考えております。

糸川委員 ありがとうございました。

 これで質問を終わります。

林委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

林委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

林委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

林委員長 次に、国土交通行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として国土交通省総合政策局長竹歳誠君、住宅局長山本繁太郎君及び海上保安庁長官石川裕己君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

林委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馬淵澄夫君。

馬淵委員 民主党の馬淵でございます。

 本日、一般質疑の機会をいただきました。この一般質疑におきまして、私は、先週新たに発覚をいたしました、いわゆる構造計算の数値差しかえと報道なされております埼玉の物件、この耐震強度の問題につきまして質疑をさせていただきたいと思います。

 昨年来より、この耐震強度偽装問題、私はかねてより、制度の本質的な欠陥がある、このように申し上げておりました。そして、さきの建築基準法の改正におきましても、大臣からも、この制度の欠陥をお認めいただき、また、抜本的な見直しを図ること、さらには、秋口に対してまた再度の改正を念頭に置いている、視野に置いているという御答弁もいただきました。

 しかしながら、今日において、今もって次から次へとこのような状況が発生する。耐震の強度、こうしたものが差しかえられているといった報道。本当に国民の不安というものはまだまだぬぐい去れないものがあるのではないかという気がいたします。

 さて、そこで、本日は、事実の確認ということを中心に質疑を進めさせていただきたいと思いますが、皆様のお手元には、委員長のお許しをいただきまして資料を配付させていただきました。

 お配りいたしました資料1をごらんいただきたいと思います。

 今私が申し上げた、本質疑で取り上げる物件につきましては、先週の木曜日、六月の一日、朝日新聞の夕刊にて第一報の報道がなされました。

 構造計算の数値差しかえという見出しで、ここでは、埼玉県内の建築中の分譲マンション、これは鶴ケ島のアップルガーデン若葉と呼ばれるマンションでございます。建築主のアパ、これはホテル、マンション等で全国で事業展開をされている会社でございますが、このアパが工事中断をしているということがわかった。構造計算を担当した富山市の一級建築士は、取材に対してデータの一部を差しかえたことを認めたと報道されております。

 そして、埼玉県の建築指導課によりますと、この物件に関しては、建築確認は昨年の三月に民間の確認検査機関であるイーホームズが出しておる。イーホームズが建築確認を出したこの物件について、耐震強度偽装問題が発覚した後に、改めてイーホームズ社が建築確認の内容を点検していた中で疑義が見つかったとして、ことしの二月末に県に通報した。そして、県の建築指導課は、三月の十七日にこの建築士らに事情を聞いたところ、忙しかったので未完成のまま提出してしまったなどと説明したという。そこで、同県同課は、安全性が確認されるまで建築をストップするようにアパに依頼し、工事は同月下旬からとまったままになっているとの報道であります。

 さて、これがまず第一報として報道がされたわけであります。次から次へと、昨年の偽装として発覚した姉歯建築士の物件以外にも、このような形で、我々の住まいの安全、安心を脅かすこのようなことが起きているということに対しては、本当に遺憾に思い、嘆かわしい思いでありますが、国交省に、まず事実の確認の経緯ということで、順次お答えをいただきたいと思います。端的に、質問にだけお答えいただくようにお願いしたいと思います。

 まず、国交省がこの事実を最初に知ったのは、いつ、だれからの報告によるものでしょうか。これは局長で結構です。お願いします。

山本政府参考人 建築指導課の担当者の記憶などによりますと、平成十八年三月三日にイーホームズ株式会社より電話があり、埼玉県、千葉県において構造計算書に疑義のある物件が見つかったとの連絡を受けたということでございます。

馬淵委員 三月三日にイーホームズから連絡があったということでございます。

 それでは、国交省は、特定行政庁からこのことについて報告を受けたのはいつでしょうか。局長、お願いします。

山本政府参考人 千葉県につきましては、平成十八年三月七日にイーホームズから……(馬淵委員「本件だけで結構です、埼玉で」と呼ぶ)失礼しました。

 埼玉県につきましては、平成十八年三月二十日にイーホームズから鶴ケ島市のマンションで疑義ありとの報告を受けた旨の電話連絡があり、担当者は、特定行政庁としてきちんと調査するよう伝えたと聞いております。

馬淵委員 それでは、国交省は、埼玉県、特定行政庁が知ったのはいつであると承知をされておられますでしょうか。

山本政府参考人 大変失礼いたしました。平成十八年二月二十八日にイーホームズ株式会社から埼玉県の地域機関あてに連絡が入ったと承知しております。

馬淵委員 埼玉県の地域機関にイーホームズから二月の二十八日に連絡が入った、そして、三月の三日にイーホームズから国交省に連絡が行った、そして、特定行政庁から三月の二十日に国交省に連絡が来たということでありましたが、イーホームズがこのことを、疑義があるということを知り得たというのはいつだと御承知でしょうか。

山本政府参考人 イーホームズが構造計算の再点検を行った結果、構造計算に不整合があったと認知した日時については確認しておりません。

馬淵委員 国交省としては、認知したという時点は確認されておられないということであります。

 イーホームズが二月二十八日に埼玉県に連絡をされた、そして、イーホームズは実は二月の中旬にはこのことを確認していたと埼玉県の方は説明をしております。私が関係者から、すべての関係者、全員とまではいきませんが、お話を聞いたところによりますと、イーホームズがこのことを知り得たのは、二月の十七日、この物件の元請設計のタムラ設計、並びに構造の下請計算をされておられる田村水落設計との打ち合わせの中で、この物件についての疑義というものを確認されたと聞いております。

 さて、この二月十七日というのは今国交省としては把握をされておられないということでありましたが、二月十七日以前に、この当該物件につきまして何らかの問題がある、あるいは、問題があるかどうかはわからないが、調査対象とすべきではないか等々、このアップルガーデン若葉に対して国交省が、この物件に対しての、ある程度調べる必要があるといった、注目、着目をされたことはございませんでしょうか。

山本政府参考人 ございません。

馬淵委員 今、二月十七日、イーホームズが、この元請設計、構造設計との打ち合わせの中で、二月十七日に疑義ありと認識をしたということでありました。そして、このことについて国交省は御存じない。それ以前に国交省としてはこの物件に対して何らかの認知をされていたのかということについては、ありませんとのお答えをいただきました。

 これも確認をさせていただきたいんですが、昨年の十月の二十四日、国交省はイーホームズに立入検査を行われました。この一連の偽装のことがまず第一報として出されたのは、昨年の十一月の三十日の一般質疑でも私はただしましたが、十月の二十六日のメールでありました。その二日前、二十四日には立入検査を行っている。この立入検査の段階でアップルガーデン若葉が調査対象となっていたという事実はございませんか。

山本政府参考人 御質問の趣旨をきちんと理解できていないと思うんですけれども、調査対象ということの意味がきちんと理解できておりません。

馬淵委員 調査対象の意味がよく理解できていないということでありますが、十月二十四日の立入検査の段階で幾つかの物件のピックアップをされたというふうに、これはお聞きをしております。そのときにアップルガーデン若葉というものが、そのピックアップ、抽出の対象となっていたかどうかということをお尋ねしております。いかがですか。

山本政府参考人 二十四日に立ち入りをした際に、どういう物件についてピックアップして調査をしたかということについては、ちょっと手元に資料を持っておりませんので、答弁できません。

馬淵委員 十月二十四日、国交省がイーホームズに立入検査をした段階で、既にアップルガーデン若葉については、その抽出の物件として調査の対象に当たっていたという証言を得ています。これについては、十月二十四日の段階で問題ありということの対象になっていたかどうかが今お手元の資料にはないということでありますが、これは早急に確認していただけませんでしょうか。

山本政府参考人 確認をして答弁いたします。

馬淵委員 私は通告の中で、これは新聞報道がなされて、そして、時系列ですべて確認をしてください、すべて省内で調べてくださいということでお出しをいただいた、その経緯の中にもございません。御存じない部分は仕方がないとしても、今、十月の二十四日の部分というのは、私はこのことについては、この立入検査の中で調査対象となったという証言を得ておりますから、これについては、私はきょうお答えいただけるものではないかと思っておったわけです。確認をお願いします。

山本政府参考人 直ちに確認をして答弁をいたします。

馬淵委員 これは確認して答弁をいただきたいと思います。

 とば口ですので、まだ入り口ですので、順次、ちょっと先に質問をさせていただく部分を聞かせていただきます。

 十月二十四日の段階で御存じかどうか確認していただくということですが、少なくとも、二月の中旬にイーホームズが確認をし、そして二月の二十八日に埼玉県に伝え、そして三月の三日にイーホームズから国交省に連絡が来、三月の二十日に埼玉県から連絡が来たということであります。

 さて、三月の二十日、この日に埼玉県から国交省に鶴ケ島のマンションに疑義ありということで、これについてはきちんと調べて報告するようにと指示を出されたとあります。そして、三月の三日の段階で、イーホームズからの連絡に対しても、これはお手元の資料2で、経緯を示した国土交通省の資料でありますが、特定行政庁に報告するよう指示をされたというふうに国土交通省はおっしゃっておられます。

 私は、イーホームズの関係者の方からもお話を伺いました。三月三日、イーホームズが国土交通省に連絡をしたときに、これは田中補佐に連絡をされたそうでありますが、国への報告は特定行政庁から受けるため、特定行政庁に報告の上、協議するように、このように指導があったとお聞きをしております。これに相違ございませんか。

山本政府参考人 三月三日にイーホームズから電話がありました際に、担当者は、それぞれの特定行政庁にきちんと報告するようにイーホームズ株式会社に伝えたと聞いております。

馬淵委員 それぞれの特定行政庁にきちっと報告するようにと指示を出された。今私がイーホームズの関係者から聞き取ったことと同じ意味ではありますが、文言としては、特定行政庁から受けるんだ、だからそこでちゃんと特定行政庁に報告してくださいねという指示を、指導をした。これはほぼ一致しているのではないかと思います。

 さて、こうした、一たん三月三日に民間の確認検査機関から情報を得た段階で、特定行政庁から上げてくるんだということでお待ちになられた。そして、それを受けたのが三月の二十日でありました。三月の二十日に埼玉県から国交省は疑義ありをお受けされたわけでありますが、三月二十日、疑義ありの報告を行う以前の段階で、埼玉県は当然ながらに調査を行っています。

 そして、その調査とは、ヒアリングであったり、あるいは文書の提出であったりするわけでありますが、埼玉県が三月十七日に、イーホームズ、そして元請のタムラ、田村水落設計、これは構造の下請ですね、それから地域機関ですね、飯能県土整備事務所、埼玉県の建築指導課、こういったところが集まって、そしてこの問題についての議論を行っています。

 特定行政庁にまず上げてくださいね、このように国土交通省は三月の三日の段階で投げ返している。そして、特定行政庁はそのようなことを調べるということをされているわけでありますが、私は、この一連のやりとりを見ると、昨年の十月の、あの耐震偽装発覚の当時の初動がおくれたということを思い出すんです。

 お手元には資料4、ごらんいただきたいと思いますが、これは国土交通省がイーホームズとのやりとりをメールとしてお出しいただいたものであります。イーホームズが二十六日の午前十時五十分に第一報を投げられた。それに対して、二十六日の二十三時五十五分に、これについては、「本件につきましては、当方に対して特にご報告いただく必要はございません。」という言い方になっています。これについては米印で、「個別の案件については、申請者と指定確認検査機関、特定行政庁で対応されるべきとの認識。」このように注釈もされています。つまり、あくまで自治事務であるから、これは特定行政庁でやってくださいねと、昨年の十月の段階でも一たんこのように投げ返している。

 そして、その後、問題の大きさが徐々に徐々に国民の知るところとなり、建築基準法の改正までこれは突き進まねばならない、また、捜査当局の捜査も進展するという状況の中で、大きな問題となっているということを国交省は認識されていたはずです。自治事務でありながら、しかし、三月の三日段階で、特定行政庁でとにかく上げてください、このように返された。そして、お待ちになられた、三月二十日まで。

 これについては、これは端的で結構ですが、大臣、こうした対応というのは問題はないでしょうか。いかがでしょうか。

北側国務大臣 まずは特定行政庁の方で、調査をする、また、イーホームズから話を聞く、関係者から話を聞くということが先決であるというふうに思います。

馬淵委員 特定行政庁から報告を待たねばならない、これは法律のたてつけの中ではそうかもしれません。しかし、問題に対して積極的に取り組む、あるいは問題の周知を徹底的に行うということを、国土交通省としてやはり国民に知らすべきではないかということ、私はこれは予算委員会の中で、二月二十一日の質疑の中でも、熊本県の八代市、あるいは熊本市、こうした県の行政庁に対して、報告を待つだけではなく、しっかりと国土交通省としてリーダーシップをとるべきではないかということをお伝えさせていただきました。

 もちろん、自治事務にゆだねているんだということのたてつけはよくわかっています。しかし、何度も申し上げるように、国民が不安に思っている状況の中で、なぜこのように放置されていくのか、私はこの点に対しては極めて問題だな、そう感じざるを得ません。

 さて、三月の十七日、先ほど申し上げた二十日に国交省に連絡が行く三日前ですね。三月十七日、埼玉県では打ち合わせを行っておりました。埼玉県の打ち合わせにおいて、どのような打ち合わせを行っていたか。関係者を呼んで、これはイーホームズやヒューザーや、あるいは姉歯といった方々がやったこの問題と同様に、関係者を一堂に呼んで、ヒアリング、聴聞が行われているわけであります。

 ここに資料5がございます。これはタムラ建築設計事務所の議事録でございます。関係者から入手をいたしました。

 この議事録を見ますと、これについて、まず本件について、これはミスなのか偽装なのかということを最初に地域機関がお尋ねをされています。ミスなのか偽装なのか、まずこのことにつきましてお尋ねをしたいんですが、ここで、お答えは、「未完でした。」と回答しています。これは田村水落設計です。構造を担当したところ。「設計期間が短く、確認申請を早く下ろすよう施主から言われていました。計画変更をしていく中で、整備していく予定でした。」と回答されています。そして、これについては、イーホームズの担当者はこれを知っていたと言われていますが、イーホームズは知っていたんですかと聞かれると、「担当者に聞いた所、知らないということでした。」ということで、ここは知っている、知らないの水かけ論となるかもしれません。

 三月の十七日の段階で、このように当事者が一堂に会して、この案件についてミスなのか偽装なのかという議論をされております。

 この三月十七日の議論については、国交省は把握されていますでしょうか。

山本政府参考人 打ち合わせの詳細については承知しておりませんが、十七日の打ち合わせの事実については報告を受けております。

 なお、先ほど御下問のありました二十四日にイーホームズに立入検査したときの調査対象となっていたかどうかという御質問でございますが、十月七日に、関係者と名乗る者から、イーホームズは建築基準法において備えつけることを義務づけている帳簿を備えつけていない旨の電話がありまして、立入検査を二十四日に行ったわけですが、この際、帳簿の不備だけでなく、天空率の審査について不備があるという内容でございました。そのために、この二十四日の立入検査に際しまして、新宿支店の二物件を、天空率について審査をしている二物件を抽出いたしました。そのうちの一つが鶴ケ島の物件だったということは事実でございます。

馬淵委員 天空率の問題でというふうにおっしゃいましたが、十月二十四日の段階で、少なくともアップルガーデン若葉は、調査対象として一度は国交省はこれについて確認をされたという事実があることは今わかりました。さて、今お話は、偽装ではない、偽装のことが発覚したのは二十六日以降ですから、この段階では承知はされていなかったかもしれませんが、天空率の部分でアップルガーデン若葉は一度はその対象になったという事実がございます。

 次に、話をもとに戻させていただきますが、今、三月十七日の段階で、こうした議論、これは一体どういうことなのかということを埼玉県が行っているということについては十分承知はされておられないということでありますが、ここにありますように、まず、ミスなのか偽装なのかということの質問に対しては、これは未完なんだという回答をされている。この未完だから計画変更にて差しかえていくんだということが、どうもこの担当設計会社の考え方のようであります。

 この5の下の方を見ていただきますと、何回か提出していくということがイーホームズ側からも説明されています。しかし、三月十三日、提出資料はまだオーケーになっていませんと回答をされています。つまり、とりあえず未完のものを出した、そして建築確認申請を通った。しかし、後で見れば疑義が出てきた。イーホームズ側は、耐震偽装が発覚する中で、これは大きな問題だということで確認を始めた。すると、いや、これは偽装ではありません、未完なんですと言って、差しかえるんだと言っている。

 国交省、ここでお尋ねをしたいんですが、この偽装ということについての定義はどのようなものでしょうか。

山本政府参考人 今回の調査におきましては、設計者本人が偽装を認め、その事実が特定行政庁において確認された場合、あるいは、本人が認めていない場合でも、計算過程で明らかに意図的な差しかえを行っていることが確認された場合、または意図的な差しかえを行わなければ得られないような出力結果が確認された場合、特定行政庁において偽装と判断しております。

馬淵委員 それではお尋ねをしますが、このように未完のものを入れて、これは意図的にです、未完なんだけれども、それを数値を入れた。差しかえたんです、差しかえて出して確認検査を受けた。適法ですか、適切ですか、大臣。――では、局長で結構です。

山本政府参考人 建築確認の制度は、建築計画が建築基準関係規定に適合しているかどうかを書類で審査するものでございます。したがって、未完成のものを出して後で差しかえるというような仕事に対する態度は、言語道断で、法律に違反するものでございます。

馬淵委員 今、違法であると局長から明確な答弁をいただきました。

 この本件は偽装ですか。

山本政府参考人 具体的な本件については、事実関係も含めて今検証中でございますので、それが明らかになった時点で判断すべきものと考えております。

馬淵委員 明らかになった上で御判断いただきたいと思いますが、少なくとも、この議事録や、あるいは関係者の証言の中から得られるものの中から見れば、明らかに国土交通省が定義をする偽装に当てはまる内容であり、言語道断と局長のおっしゃる、このようなことが明らかになっている状況においても、この三月の十七日の段階、あるいは三月三日の段階、いや、もっと言えば二月の十七日の段階、今もってこうしたことが行われている現状があります。

 私は、かねてより制度の本質的な欠陥があるんだと申し上げてきた。そして、その欠陥の制度の上にあぐらをかいている業者が今もってこうしてある。

 大臣、いかがですか。何度も何度もこの問題について、私は国交省にこうした状況をよく把握してくださいとお尋ねをしているわけでありますが、大臣、改めてこうした状況を見て、本件がまだ調査中であるというような言葉はどうか言わないでください。どうか大臣、本当に国民が見ているわけです、真摯なお答えをいただけませんでしょうか。

北側国務大臣 いただいたこれは埼玉県の議事録でしょうか、埼玉県の出している議事録ですね、この5というのは。(馬淵委員「5はタムラ設計ですね」と呼ぶ)タムラ設計ですか、失礼しました。

 タムラ設計の出した、その議事録に書いてある事実どおりだとするならば、この設計士は、「設計期間が短く、確認申請を早く下ろすよう施主から言われていました。計画変更をしていく中で、整備していく予定でした。」このような、これが事実であればということでございますけれども、このようなことは、今局長が申し上げたように、これはあってはならないことでございまして、実態としてこういうようなことがよくあるということであれば、それこそ、そこを改善していかないといけないというふうに思っております。

馬淵委員 相変わらず起きているんですよね、こういうことが。すべてを監視せよなどということは無理なことはわかっています。しかし、現状ではこうしたことが起きている。だからこそ私は、国土交通省がリーダーシップを持って、もっと厳しく事に当たらねばならないのではないですかと。これは、昨年来、そして予算委員会でも、たびたびの一般質疑の中でも御指摘をさせていただいたわけであります。

 さて、先ほどの話の流れの中でいうと、国土交通省は、あくまで特定行政庁にゆだねているんだ、みずからは、こちらがどうだということではなく、待っているんだ、こういう御答弁でありました。

 その三月二十日の後に、国土交通省が特定行政庁から御連絡をいただくのはいつでしょうか。端的にお答えください。

山本政府参考人 埼玉県からその後報告がございましたのは、五月十七日、国土交通省関東地方整備局に対してでございます。

馬淵委員 関東地方整備局に報告がありました。そして、建築指導課、国土交通省ですね、国土交通省に対して、埼玉県から直接御連絡があったのはいつでしょうか。

山本政府参考人 国土交通省本省に対してでございますか。(馬淵委員「はい」と呼ぶ)

 大変失礼しました。五月二十六日金曜日の午後に埼玉県の担当者から報告を受けました。

馬淵委員 これは、お出しいただいた資料に、新聞社よりの取材があった旨の報告があったということでありますね。五月の二十六日に埼玉県より、新聞社の取材があった。つまり、この新聞社の取材というのが、この六月一日報道の朝日新聞の取材であります。これも私は、このことについて確認をさせていただきました。

 さて、こうした取材の報告があった上で、六月一日に、今お手元にお配りした資料のように新聞報道がなされたわけであります。この夕刊の報道記事を見まして、私は六月の二日、午前九時に鶴ケ島のマンション、アップルガーデン若葉駅前のマンションの建設現場に参りました。そして、工事中止の建設現場並びに工事を担当されているゼネコンの現場の所長にヒアリングをし、さらにそこから埼玉県庁に足を運び、建築指導課の方々のお話を伺うこととなりました。

 さて、国交省としては特定行政庁にゆだねてあるということで報告を待っているという状況であった、その後に国交省は、この事態が報道されるという状況の中で、埼玉県からどのような連絡を受けられましたか。

山本政府参考人 埼玉県から、今回の問題の経緯、物件概要等について確認をいたしました。

馬淵委員 それはいつですか。

山本政府参考人 六月二日でございます。

馬淵委員 六月二日に埼玉県から説明を受けた。

 そして、お手元の資料にありますように、私が赴きました、そして来庁した馬淵議員に経緯を説明した旨、これも建築指導課からファクスで報告を受けたということでありますが、こうした一連の報道の報告、あるいは議員がヒアリングに行った等の報告は、国交省としては特定行政庁に対して義務を課しておられますか。

山本政府参考人 報告義務を課しておりません。

馬淵委員 みずから進んで御報告をされたということであるかと思いますが、さて、もう一つ御確認をさせていただきます。

 この六月二日、埼玉県から、私が埼玉県に赴いた等の報告も受けておられる。そして、これは報道が出た後ですからね。報道が出る直前に報告を受け、報道が出た後、呼ばれて話を聞いた。まあ、来られたということでしょうね。来られたということで話を聞かれた。これは電話ですか、ごめんなさい、六月二日、電話で聞かれた。ファクスを受けたということでありますが。

 さて、イーホームズからの連絡あるいはイーホームズへの連絡というのは、三月三日、本件に対してでありますが、三月三日以降には連絡というのはとっておられますでしょうか。

山本政府参考人 イーホームズとのやりとりはしていないと認識しておりますが。

馬淵委員 これは確認をぜひしていただかないと、重要な問題だと思うんですが。

 六月二日、国交省の田中課長補佐はイーホームズの真霜危機管理室長に対して、国交省をたたこうとしている、倒そうとしている議員が動いているから資料を出せ、イーホームズの資料はどこにありますか、議員さんはそれを探しておられます、国交省に出してくれませんかとお尋ねをされたと聞いておりますが、いかがですか。

山本政府参考人 その事実関係については確認しておりませんので、確認をした上で答弁させていただきます。(馬淵委員「確認してください」と呼ぶ)

林委員長 確認できますか、山本住宅局長。

山本政府参考人 今御指摘いただいたようなやりとりをした記憶はないということでございます。処分をした後、イーホームズとやりとりをしたのは、書類の引き継ぎについてやりとりをしたということでございます。

馬淵委員 では、もう一度確認ですけれども、六月二日に国交省はイーホームズに、資料はどこにあるのか、出してくれといったこと等の意味合いは一切言っておられないということでしょうか。

山本政府参考人 ただいまの御質問の趣旨が、国会議員の先生が資料を探しておられるとかそういう文脈での、資料について、やりとりをしたことはないということでございます。

馬淵委員 いや、ちょっとそういう話じゃないじゃないですか。国会議員の先生が探している資料はあるのかという話、文脈じゃないですよ。とにかく、そういうふうに動いているので、関係する資料を出してください、お持ちじゃないですか、そう尋ねられたかどうかというのを私はお聞きしているんですよ。

 本件についてはありませんかと聞いたら、ないとおっしゃったじゃないですか、先ほど。でも、あるんですね。あると訂正した上で、どうなのかとお答えください。

山本政府参考人 そのようなことをこちらから申し上げたという事実はないということでございます。

馬淵委員 ないと今明言をいただきました。このないということについて、私は全く逆のことをお聞きしておりますので、これについては確認をさせていただきたいと思います。

 しかしながら、イーホームズに対しては、もう一度確認ですけれども、このようなことについて、この六月の二日、少なくとも本件に関して連絡はとっていないともう一度御答弁いただけますか。

山本政府参考人 本件に関してやりとりをしたことはございません。

馬淵委員 ここは食い違っております。

 しかし、私が申し上げたいのは、三月の三日にイーホームズから話を聞いて、そして三月の二十日に国交省は特定行政庁から話を聞いた。そしてその後、聞かれた話というのは報道の話。まあ、いわばこれが公表されるのは新聞に報道されてから後の話なんです。この間、二カ月間、国交省としては、これを特定行政庁にゆだねているからということで放置して本当にいいんでしょうか。私は、この部分に対しては大変な問題があると思っています。

 お手元の、お配りをした資料の中の6をごらんいただきたいと思います。

 三月十七日の会議の中で、「施主が」これはアパですね、「施主がイーホームズに工事を止めると言ったことは、施主から聞いておりませんので、工事は止まっていません。」とタムラ設計が答えています。そして、それに対して埼玉県は、「安全かを確認できるまで、工事は停止すること。とりあえず口頭で指示します。」と、ここで明確に指示をされました。そして、三月二十日、工事中止となったわけであります。

 ところが、五月三十一日のアパの、アップルガーデン若葉駅前の御契約者の皆様へというホームページに出された文章を見ますと、三月八日にイーホームズから計算書の一部に不整合があるという報告を受けました、即日、とりあえず工事中止をするよう指示しました、このように答えています。工事中止を指示され、しかし、実際には、田村水落、タムラ設計はそのような指示は受けていないということで、工事は行われていたわけです。こうした状況に対して、さらに、アパは、関係行政に問い合わせしたところ、今の段階で人命に問題があるわけじゃないので事実が明らかになるまではばたつくのはよくない、このように言われた、こう述べられております。

 国交省にお尋ねをしますが、関係行政、これは国交省でしょうか。

山本政府参考人 国土交通省ではありません。

馬淵委員 これは国土交通省でなければ特定行政庁の埼玉なのか、あるいはアパ自身がこのことについては虚偽をおっしゃっているのか、これはわかりません。

 しかし、ここでありますように、三月八日の段階で話を受けた、そして話を受けたところで工事中止をすべきではないかということは当然ながらにその建築主は考えた、このようにおっしゃっているわけですが、現実としては、三月の二十日に工事がとまっている。それまでは工事は進めていたわけです。つまり、偽装や疑義があるということは全く表に出ずに、今までと変わらぬように過ごしている。

 こうした建築主の振る舞いに対しては、当局としては、これは適切だとお考えでしょうか。

山本政府参考人 埼玉県の地域部局がこの事実を確認してから、建築主それから設計者、民間確認検査機関も含めてやりとりをした上で、先ほど設計事務所の資料、私初めて拝見しましたけれども、この十七日の打ち合わせの場で、地域事務所が明確に工事を停止しなさいということを指示しております。法律に基づいて建築行政を担当する埼玉県のこの振る舞いについて、しっかりやっていると思います。

馬淵委員 結局、私は申し上げたい。このような形で、工事も三月八日には建築主がとめたと言っていますが、実際にはとまっていないんです。三月二十日なんです。そんな指示はされていない。特定行政庁の指示によって三月二十日にとまりました。

 しかし、事の発覚は二月の中旬なんですよ。二月の中旬といえば、予算委員会の中でもこの問題、大きく取り上げられていたわけです。そうした状況においても、今もって、今日この状況においても事を表に出さないといった心理が働いている業界の中で、なぜ国交省がリーダーシップを持ってこうしたことに取り組まないのか。国交省が、特定行政庁の問題だ、自治事務だからと任せるのではなくて、私は、繰り返し、こうしたことに対して責任を持って取り組むべきであるということをお伝えしてきた。そして、現実には、三月の二十日に報告を受けた後に、このことが報道される六月の頭まで、契約者の方々は何も御存じないわけですよ。

 そして、私は何も建築主のアパをとやかく言うつもりもございません。アパにはアパの言い分があります。アパは、いや、このことについて対応してもらおうと思っても、イーホームズは既に廃業が決定している、対応が不十分なんだ、こういったアパ側の見解もあるでしょう。さらには、設計事務所は設計事務所で、こうしたことをやってきたんだ、これは慣行上やってきたんだ、このようにおっしゃってもいます。

 もちろん、これについては言語道断だという局長の答弁をいただきましたし、これは違法行為であるということですので、事実が明らかになる中で、はっきりとした処分なり裁断をしていただかねばなりませんが、埼玉県は埼玉県で、現場でそれぞれの調査をしている。時間がかかっています。

 そして、国土交通省、結局二カ月間、何一つこのことは、所有者や、あるいは購入しようとされる方々にすら知らされない状況なんです。これは、まさに昨年の十一月のときに発覚した耐震強度偽装問題と同じ構図じゃないですか。責任をみずからがだれもとらずに、制度の欠陥があるからゆえとはいえ、こうしたことが横行しているんですよ。

 お手元の資料の9、10をごらんください。

 ここは、マンション購入者の掲示板なんです。マンション購入者のサイトです。eマンションというサイトの中に、アップルガーデン若葉駅前を購入された方々が、匿名で思いを寄せられています。四月二十五日、「工事がストップしているとの話を聞きかじりましたが、本当ですか?」四月の二十七日、「今日も工事してないね。中止?」五月十三日、「確かに今日も工事してませんでした…。若葉駅の改札に入って、工事現場を覗いてみましたが。」手にとるように、その購入者の不安がここに出ているじゃないですか。もう二週間以上になると思うけれども、とまっていて、何の報告もないのかな。そして五月に入って、どうもこれは工事や販売を休止しているよ。そんなことを匿名で一生懸命情報交換している。グランドステージで本当に不安にさいなまれた方々と同じ思いですよ。今もこれは起きているんですね。そして、これは五月の三十日の午後九時に、「先ほどアパから電話があった。」「うちも電話が連絡ありました。」

 このように、報道が出るという段階で初めて公表に動く、あるいは、報道が出るという前提の段階で初めて役所が動き出す。いいんでしょうか。このような行政のあり方でいいんでしょうか。

 大臣は、被害者救済だ、とにかく住民の方々に対してという言葉を、何度も何度も私はこの委員会や予算委員会の場でもお聞きをしてきました、おっしゃっておられました。にもかかわらず、今もって、この業界の中では、このように何の過失もない方々が、無過失の購入者がこうした損害をこうむるかもしれない状況に置かれてしまっている現実があるじゃないですか。しかも、そのことが知らしめられるのは、報道がなされてからです。

 こうした状況に対して、大臣、ぜひこれは、任せているということではなくて、建築基準法を改正したから終わりではなくて、強いリーダシップを持って臨んでいただけませんでしょうか。大臣、御所見をいただきまして、私の時間が終了となっておりますので、どうか最後に大臣、一言お願いいたします。

北側国務大臣 先ほど住宅局長が申し上げましたように、特定行政庁は、委員の方からお話がありましたように、口頭ではあれ、工事の中止を指示したということで、特定行政庁としても対応は、何もしていないわけじゃない、しているということだと思います。

 ただ、これまで、三月の三日ですか、イーホームズから建築指導課に連絡があってからもう三カ月たっているわけでございまして、委員のおっしゃっているように、購入された方々がいらっしゃるわけでございます。そういう方々は非常に不安な状況に置かれているという状況は、全くおっしゃっているとおりでございまして、これはもちろん建築主がしっかり対応しないといけないわけでございますが、私ども、この問題にしっかり対応するようにさせていただきたいと思います。

馬淵委員 大臣、引き続きしっかり対応するというお言葉をいただきました。このことについては、また当委員会においても、フォロー、キャッチアップをしていきたいと思います。

 本日、私の質問時間は終了となりました。終わります。

林委員長 糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 先ほどは海洋汚染防止法についての質問をさせていただいたわけでございます。

 海洋権益の確保に関して、海上保安庁の取り組みについてまたお尋ねをさせていただきたいというふうに思うわけでございます。

 平成十三年の十二月に発生した九州南西海域における工作船事件、これは社会的に大きな反響を与えまして、いまだに記憶に残っているところであります。そして、本年四月に行われた海上保安庁の測量船によります竹島周辺の海域の調査、これにつきましても記憶に新しいところだというふうに思います。また、海上保安庁におきましては、現在、大陸棚の調査を行っている、先ほどもこのようにお話をされたわけであります。

 周辺を海に囲まれた海洋国家である我が国が確実に海洋権益を確保していく、このためには、大陸棚の調査を初めとした海洋調査を確実に推進する、こういうこととともに、不審船等に対応した海上の治安の維持、これが大変重要な課題であるというふうに認識をしております。

 そこで、この二つにつきまして海上保安庁にお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。

 特に、竹島周辺海域につきましては、本年の四月、日本の排他的経済水域内に韓国固有の海底地形名をつけよう、こういう韓国側の動きに対応して、海上保安庁が当該水域で海洋調査を実施しよう、このように行動されて、韓国との間で大きな摩擦が生じたということでございます。このときに海上保安庁が実施しようとした海洋調査の概要について、お聞かせいただけますでしょうか。

石川政府参考人 海上保安庁は、日本海南西部における海図編集の基礎資料の収集、それから海底地形名称の命名、こういうことのために、明洋、海洋、二隻の測量船を使いまして、当該海域で三十年ぶりに、本年四月から海洋調査を行う予定でございました。

 これにつきましては、御承知のとおりの外交交渉の結果を受けまして、今回予定していた調査は中止することといたしましたけれども、今後とも、我が国周辺海域についての適正な海図の作成に引き続き努力してまいりたいと考えております。

糸川委員 ただいまの海上保安庁長官のお話ですと、竹島周辺における調査というものは三十年ぶりだ、このようなことだというふうに思いますが、領土問題を抱えるこのような重要な海域について、もっと早い時期に調査を実施すべきだったんではないか、このように思うわけですけれども、何で三十年間も調査を実施しないでほうっておいたのか、その理由をお聞かせいただけますでしょうか。

石川政府参考人 私どもの海洋調査につきましては、対象海域が、我が国周辺の大変広大な海域がございます。そういう広大な海域につきまして、順次必要な調査を行ってきているわけでございますけれども、これまでは、海上交通の安全に重要な海域、こういうことを初めとして調査を進めてまいりましたし、最近では、特に大陸棚調査のために太平洋側の調査を推進しているということでございまして、日本海側につきましては調査の間隔があいてしまったということについては、各方面から御指摘されているとおりでございます。

糸川委員 この問題は大変重要でありますので、今後もしっかりと取り組んでいただきたいというふうに考えております。

 先ほどの御説明では、日本海での調査より大陸棚調査に重点を置いてきた、このように御説明されたわけでございますが、平成二十一年の国連への提出期限を控えて、私としましても、大陸棚の調査は重要であるというふうに考えておりますが、そこで改めて、大陸棚の調査の意義、これにつきまして御説明をいただけますでしょうか。

石川政府参考人 大陸棚につきましては、国連海洋法条約におきまして、沿岸国の二百海里まで、ここまでの海底を大陸棚とするということが一つ原則でございますけれども、さらに、海底の地形、地質、こういうものが一定の条件を満たす場合には、二百海里を超えた一定の海域、海底、これにつきまして、大陸棚として、大陸棚の外側の限界を延長させることが可能となるということでございます。

 このためには、手続として、国連の大陸棚の限界に関する委員会というのがございまして、ここに、当該大陸棚の地形、地質に関するデータなど、大陸棚の限界の延長に関する情報を提出して、勧告を受けるという必要がございます。この提出期限が、御指摘のとおり、我が国の場合、平成二十一年五月までとなっているわけでございます。そのために、できるだけ早期に太平洋側の大陸棚の調査を完了させるという必要があると考えております。

糸川委員 長官から今お話がありましたとおり、確かに、この大陸棚の調査を推進することというのは、我が国の海洋権益が広がる、そういうこととなるように感じるわけで、非常に重要な調査であるというふうに思います。

 この重要な調査を推進していくのに当たって、今後、海上保安庁としてどのように取り組まれるのか、お聞かせいただけますでしょうか。

石川政府参考人 平成二十一年五月までに国連の大陸棚限界に関する委員会に大陸棚の限界の延長に関する情報を提出する、これが極めて大事でございまして、このために、内閣官房の総合調整のもとに、海上保安庁は、平成十六年から、精密海底地形調査とあわせて地殻構造探査というものを進めてきております。現在まで、平成十六年度には五十四億円、十七年度、十八年度にはそれぞれ六十七億円の予算を計上してございまして、平成十九年末までに所要の調査を終えるべく、引き続き調査を進めてまいりたいと考えております。

糸川委員 ありがとうございます。

 冒頭にも申し上げましたけれども、平成十三年に発生した九州南西海域における北朝鮮の工作船の事件における海上保安庁の活躍、これはいまだ国民の記憶にも新しいところだというふうに思いますが、一方で、次に同じような事案が我が国周辺で発生した場合に、前回のような、現場の海上保安官が命の危険にさらされるような対応にならないのか、あるいは、不審船ですとか工作船、これに適切に対処できるか憂慮しているところでございます。

 不審船、工作船事案に対応していくためには、まずは、工作船が具体的にどのような船舶であって、どのような武器を保有していたかをしっかりと解明した上で、それに対応するための船艇あるいは装備の強化、これが必要だというふうに思いますが、そうした対策を検討していく上で、平成十三年の工作船事件で判明した船体の特徴あるいは装備していた武器について、改めてお聞かせいただけますでしょうか。

石川政府参考人 当該船につきましては、平成十四年に陸揚げをしてございます。この工作船の船体を調査した結果、工作船は、エンジンとプロペラを四基保有しております。極めて高速船であります。また、観音開きの扉を有して、上陸用と見られる小型舟艇、水中スクーター及びゴムボートなどが搭載されております。

 武器でございますけれども、携行型地対空ミサイル、射程距離約五キロ、対戦車ロケットランチャー、有効射程距離約五百メートル、八十二ミリ無反動砲、有効射程約千メートル、十四・五ミリ二連装機関銃、有効射程約二キロ、こういうふうなものを搭載するなど、極めて重武装であることも明らかになっております。

糸川委員 そうすると、今お聞きしたような、武装した、そして高速で航走することができる工作船に対して、当時、本当に乗組員の命が助かったからよかったのではないかなと思いますが、次は、海上保安庁としてさまざまな対策を講じて、不審船、工作船に対処しなければならない、このように考えるわけでございます。

 これらの船舶への対処のために、基本的に、まず工作船を早期に発見して、逃げられないように追跡それから捕捉して、そして相手船を停船させる、これが必要であるというふうに思います。そのためには、防衛庁との連携による早期の情報の入手であるとか、停船させるために、可能な限り相手船の反撃意欲をそいで、相手方の反撃能力に耐え得るだけの海上保安庁の船艇の武器、装備を保有する、これが必要だというふうに思うわけでございます。

 この件に関して、海上保安庁でどのような対策を講じているのか、お聞かせいただけますでしょうか。

石川政府参考人 御指摘の点でございますけれども、私ども、不審船、工作船の過去の事例も踏まえまして、一つが、おっしゃるように、防衛庁との運用面における共同作業といいますか、そういう問題でございますけれども、防衛庁との間に共同対処マニュアルというものを実は作成してございまして、早い段階からお互いに情報共有をする、あるいは自衛隊との共同対処が的確に行われるよう、連携強化ということに努めてきているわけでございます。

 それから、装備面につきましても、今お話がありましたように、相手方の装備等を考えながら、巡視船そのものの防弾対策、それから武器の高性能化、つまり遠いところから撃てるという格好での武器の高性能化、あるいは巡視船そのものの高速化などを図ったところでございまして、そういうふうなものを図った巡視船を逐次整備しているところでございます。

糸川委員 特に、船の装備についてですけれども、海上保安庁では最近、日本海側に、不審船、工作船に対応することを主な目的とされた巡視船を配備されたというふうに聞いておりますけれども、具体的にどのような船舶なのか、お聞かせいただけますでしょうか。

石川政府参考人 不審船対策につきましては、特に日本海側及び東シナ海周辺におきまして、今までも高速かつ武器の高性能化等を図った巡視船の配備に努めてきたわけでございますが、この四月でございますけれども、新潟にヘリ甲板を有する二千トン型の巡視船、新造船でございます、それから秋田と金沢に千トン型の巡視船を配備して、日本海側の体制の強化を図ったところでございます。

 これらの巡視船でございますけれども、速力及び装備面を強化しておりまして、一つが高速力化でございまして、三十ノット以上あるいは四十ノット以上という形の高速船でございます。それから、遠隔操作あるいは自動照準ができるような形の武器の高機能化、それから先ほど申し上げました防弾対策、さらには、夜間において監視能力が強化できるように、必要な捜索監視装置というものも図っているものでございます。

 こういうものにつきまして、繰り返しになりますが、四月に、新潟に二千トン型を、秋田、金沢に千トン型を導入、配備したところでございます。

糸川委員 九州南西海域での工作船事件を経て、海上保安庁の体制も強化されている、このようなことでございますが、一方で、不審船もさらに装備を強化してくる、こういう可能性がございます。海上保安庁の重要性がますます高まる中、人的にも装備面においても一層の強化が必要であるというふうに認識しております。

 ぜひ、我が国の安全を守るために一層努力をしていただきたいというふうに要望しまして、私の質問を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

林委員長 次に、内閣提出、参議院送付、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。国土交通大臣北側一雄君。

    ―――――――――――――

 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

北側国務大臣 ただいま議題となりました高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律案の提案理由につきまして御説明申し上げます。

 我が国においては、諸外国に例を見ないほど急速に高齢化が進展していること、障害者が社会のさまざまな活動に参加する機会を確保することが求められていること等から、高齢者、障害者等の自立した日常生活及び社会生活を確保することが大変重要となっております。

 平成六年に、高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律、いわゆるハートビル法が制定されました。また、平成十二年に、高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律、いわゆる交通バリアフリー法が制定されました。それ以降、建築物、公共交通機関及び公共施設のバリアフリー化につきましては着実に進展しているところでありますが、本年は交通バリアフリー法施行五年後の見直しの年に当たり、より総合的、一体的な法制度を構築することにより、高齢者、障害者等の日常生活及び社会生活における移動上及び施設の利用上の利便性及び安全性の向上を図ることが必要となっております。

 このような状況を踏まえ、高齢者、障害者等の移動等の円滑化を促進するための各般の施策を総合的に講じるため、ハートビル法及び交通バリアフリー法を統合、拡充したこの法律案を提案することとした次第です。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、主務大臣は、移動等の円滑化を総合的かつ計画的に推進するため、移動等の円滑化の促進に関する基本方針を定めることとしております。

 第二に、公共交通機関の旅客施設及び車両並びに一定の道路、路外駐車場、公園施設及び建築物について、新設または改良時に移動等の円滑化のために必要な一定の基準に適合しなければならないこととしております。また、既存のこれらの施設についても、当該基準に適合させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならないこととしております。

 第三に、市町村は、移動等の円滑化を図ることが必要な一定の地区について、基本方針に基づき、移動等の円滑化に係る事業の重点的かつ一体的な推進に関する基本構想を作成することができることとしております。この際、高齢者、障害者等の計画段階からの参加の促進を図るため、基本構想の作成に関する協議等を行うための協議会制度、基本構想の作成を高齢者、障害者等が市町村に対し提案することができる制度等を設けることとしております。

 その他、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案を提案する理由でございます。

 この法律案が速やかに成立いたしますよう、御審議をよろしくお願い申し上げます。

林委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

林委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、来る十三日火曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る九日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十四分散会


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