衆議院

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第5号 平成18年11月28日(火曜日)

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平成十八年十一月二十八日(火曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 塩谷  立君

   理事 後藤 茂之君 理事 中野 正志君

   理事 西銘恒三郎君 理事 葉梨 康弘君

   理事 林田  彪君 理事 山本 公一君

   理事 伴野  豊君 理事 三日月大造君

   理事 高木 陽介君

      赤池 誠章君    秋葉 賢也君

      石田 真敏君    宇野  治君

      遠藤 宣彦君    小里 泰弘君

      大塚 高司君    鍵田忠兵衛君

      梶山 弘志君    亀井善太郎君

      亀岡 偉民君    木原 誠二君

      北村 茂男君    坂井  学君

      坂本 剛二君    島村 宜伸君

      杉田 元司君    鈴木 淳司君

      薗浦健太郎君    冨岡  勉君

      長崎幸太郎君    長島 忠美君

      平口  洋君    松本 文明君

      三ッ矢憲生君    宮澤 洋一君

      盛山 正仁君    安井潤一郎君

      吉田六左エ門君    若宮 健嗣君

      泉  健太君    市村浩一郎君

      奥村 展三君    川内 博史君

      黄川田 徹君    小宮山泰子君

      古賀 一成君    郡  和子君

      下条 みつ君    長安  豊君

      鷲尾英一郎君    伊藤  渉君

      穀田 恵二君    日森 文尋君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   国土交通大臣       冬柴 鐵三君

   国土交通副大臣      渡辺 具能君

   国土交通大臣政務官    梶山 弘志君

   国土交通大臣政務官   吉田六左エ門君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長)            宿利 正史君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  榊  正剛君

   国土交通委員会専門員   亀井 為幸君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十八日

 辞任         補欠選任

  遠藤 宣彦君     冨岡  勉君

  小里 泰弘君     坂井  学君

  鍵田忠兵衛君     安井潤一郎君

  鈴木 淳司君     三ッ矢憲生君

  盛山 正仁君     平口  洋君

  奥村 展三君     川内 博史君

  土肥 隆一君     郡  和子君

  亀井 静香君     糸川 正晃君

同日

 辞任         補欠選任

  坂井  学君     小里 泰弘君

  冨岡  勉君     亀井善太郎君

  平口  洋君     盛山 正仁君

  三ッ矢憲生君     宇野  治君

  安井潤一郎君     鍵田忠兵衛君

  川内 博史君     奥村 展三君

  郡  和子君     市村浩一郎君

  糸川 正晃君     亀井 静香君

同日

 辞任         補欠選任

  宇野  治君     秋葉 賢也君

  亀井善太郎君     木原 誠二君

  市村浩一郎君     土肥 隆一君

同日

 辞任         補欠選任

  秋葉 賢也君     鈴木 淳司君

  木原 誠二君     遠藤 宣彦君

同日

 理事林田彪君同日理事辞任につき、その補欠として西銘恒三郎君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

十一月二十四日

 タクシー運転免許の法制化を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第六七三号)

 同(石井郁子君紹介)(第六七四号)

 同(笠井亮君紹介)(第六七五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第六七六号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第六七七号)

 同(志位和夫君紹介)(第六七八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第六七九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第六八〇号)

 同(吉井英勝君紹介)(第六八一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 建築士法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)


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     ――――◇―――――

塩谷委員長 これより会議を開きます。

 理事辞任の件についてお諮りいたします。

 理事林田彪君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任に伴う理事の補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に西銘恒三郎君を指名いたします。

     ――――◇―――――

塩谷委員長 内閣提出、建築士法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省総合政策局長宿利正史君及び住宅局長榊正剛君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩谷委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。亀岡偉民君。

亀岡委員 自由民主党の亀岡偉民です。

 本日は、建築士法改正に関する法案に対して質疑をさせていただきます。

 まず最初に、この法案が提出されるに至った事件であります姉歯問題について質問させていただきます。

 この姉歯問題、一人の建築士が日本の社会に多大なる影響を及ぼしました。まさに昨年の十一月十七日ですが、国土交通省からこの問題が公表されて以来約一年が経過をしましたが、その中で、この問題は本当に、住んでいる住民のみならず付近の近隣住民、さらには多くの国民に、従来の建築に対する信頼感を損なう、そして社会不安を伴う、まさに一大事件を引き起こしました。

 そして、この問題を何とか早急に解決したいという我々与党も、この報告を受けてから、十一月三十日、与党として政府に申し入れをさせていただきました。まず最初に、この住民の方々が安全に避難が確保できること、そしてさらには、近隣の住民が倒壊のおそれのある不安から逃れられるようにすること、これを早急にしてほしいということで政府に申し入れをさせていただきました。この問題は多くの国民の望むところであり、そして、その不安を取り除くことが一番の信頼を回復することであるということで、我々与党としては正式に申し込ませていただきました。

 この我々の申し入れに政府もすぐにこたえてくださいまして、十二月にすぐに、地域住宅交付金だったと思いますが、地域住宅交付金による支援策ということで多くの支援策を示していただきました。

 この大きな問題を引き起こしたヒューザーそして姉歯、この重大事件を引き起こした二人、そしてそれに伴う多くの関係者、この方々はさておきまして、ヒューザーが分譲したマンション、このマンションが一番問題があった。しかも、このマンションの中に、現行の耐震強度基準の半分以下の危険なマンションが十一棟あったと聞いております。この十一棟はまさにすぐにでも倒壊しかねないという恐怖、その中で、住民の皆さんまたは近隣住民の皆さんが不安におののいておった。そして約一年が過ぎた今、これらは多分、政府の皆さん方の協力、そして我々の申し入れによってかなり改善はされたと思いますが、一番の今の関心事であると思います。

 ぜひ住宅局長にお聞きしたいんですが、これだけ不安を与えたこの十一棟のマンションの建てかえも含めて、現状がどうなっているのか、進捗状況も含めて教えていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

榊政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、保有水平耐力比〇・五未満の危険な分譲マンションのうち、ヒューザーが建築主のものは十一棟ございます。これらにつきまして、売り主であるヒューザーが責任を誠実に果たし、居住者の方々の移転と建物の解体を円滑に進める見通しが全く立たない状況にございました。このような状況を見過ごすことはできないということで、売り主への徹底した責任追及を前提といたしまして、既存の地域住宅交付金を活用した相談、移転、取り壊し、建てかえといったような総合的な支援策を、御指摘のように昨年の十二月六日に提示をいたしました。融資、税制についても必要な措置を講じてきたところでございます。

 こうした支援の結果、現時点までに、実は十一棟のうち耐震改修でいきたいというところがございまして、それを除く十棟におきまして、建てかえ推進決議等を行っていただいております。このうち、法的拘束力を有する区分所有法に基づきます建てかえ決議でございますが、既に五棟建てかえ決議をいただいております。それから、建てかえ決議を年内に予定している物件が一棟ということになっておりまして、その他につきましても建てかえ決議等のおおむねの見通しが立ちつつあるという現状でございます。

 建てかえ決議を行いました五棟のうち、マンション建替え円滑化法に基づきます建てかえ事業認可を受けたものが二棟ございまして、このうち一棟は、保有水平耐力比〇・一五ということで耐震性が非常に低いという、グランドステージ藤沢でございますけれども、これについては既に除却工事に着手をいたしているところでございます。

 このように、各物件におきまして、建てかえに向けて居住者と地方公共団体において検討が進められてきておりまして、合意形成等が円滑に進めば、平成二十一年三月までにすべての物件において建てかえが完了できるのではないか、このような見通しを持っているところでございます。

 今後とも、居住者の方々の早期の合意形成と建物の取り壊し、建てかえ等が円滑に進められるように、公共団体と十分連携を図ってまいりたいというふうに思っておるところでございます。

 以上でございます。

亀岡委員 ありがとうございます。

 今の御報告を聞きましたら、大体の建てかえがめどが立ったということで快く思っております。ただし、本来であれば、売り主である責任者そしてまた姉歯建築士が重大な責任の瑕疵を負っているわけですから、責任を果たすべき人たちはその方々なんですが、その能力がないということで、政府と関係者、地方公共団体みんなで力を合わせてそこまで進んだということはすばらしいことだと思います。

 もう一つ、今の説明にありました地域住宅交付金による支援は、本来であれば、一番瑕疵担保責任を果たすべき売り主のヒューザーに徹底した責任追及をしながら、それを前提に行われるものとされるのは当たり前でありますが、ヒューザーは、ことしの一月三十一日に破産手続が開始され、現在は破産管財人による破産手続が進められている残念な状況であります。こうした中で、建てかえの支援については、ことしの九月八日に、政府及び地方公共団体から構成される構造計算書偽装問題対策連絡協議会において、ヒューザーの破産手続において配当がなされることに対応して地方公共団体の受けるべき配当額について、補助金を減額して調整することがこの間発表されました。

 この措置に関して、マンションの居住者の方々から、配当相当額については補助金を控除せず、全額交付してほしいとの意見があると聞いております。これに対する冬柴大臣の見解を伺うとともに、今後マンションの再建が円滑に進むのかどうか、伺いたいと思います。冬柴大臣、よろしくお願いいたします。

冬柴国務大臣 責任者でありますヒューザーが最終責任、いわゆる瑕疵担保責任を負わなければならない、これはもう当然の話でございます。したがいまして、居住者が有する瑕疵担保責任の追及を、ヒューザーが破産をいたしましたから、破産債権の届け出という形で配当を請求する、そういう手続になるわけであります。

 一方、建てかえのために十分な配当が受けられない、あるいはそれには時間がかかるというようなことから、一日も早くいろいろな損害についてあとう限りの助成を地方公共団体においても行おうということで、先ほどから説明がありましたような補助がなされたわけであります。

 これは最終的にはヒューザーが、すなわち破産財団が負担すべきものでございます。そうなりますと、被害者である居住者と地方公共団体の両方が債権届けをいたしますと、破産管財人といたしましては、できれば年内にも中間配当したいという意思でありますけれども、その債権の額の確定が難しくなってしまうということがあります。そういうことから、今お話がありましたように、構造計算書偽装問題対策連絡協議会というところでこの問題を協議いたしまして、助成額から地方公共団体の助成に係る配当相当額を控除する措置をとるというようなことが示されたわけでございます。

 そういたしますと、これに対して、本来地方公共団体が受けるべき配当というものについても補助金から控除しないでほしいという、先生の今おっしゃいましたような要求が出てきているわけでございます。しかしながら、補助金は税金から払われるわけであります。したがいまして、国民の皆様方の理解を得られなければ、それはそういうことになりません。したがいまして、公共団体が遠慮した配当の額だけは将来とも補助金から減らしていただくということ以外に、これは国民の理解は得られないんだろうというふうに思います。

 したがいまして、破産財団からの配当を一日も早くしていただく、そういう意味で、債権届けはいたしませんけれども、その分は将来の補助金から減らしていただくということが最も妥当な解決策であろうと思いますので、御理解をいただきたいというふうに思います。

亀岡委員 ありがとうございます。

 居住者の方々の理解と納得の得られる説明を早急にしていただきまして、ぜひ全員に納得していただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、総論に入らせていただきます。

 十一月十七日に公表された構造計算書偽装問題は、まさに一級建築士が構造計算書を偽装し、多数のマンション等の耐震性に大きな問題を発生させました。また、それだけでなく、国民の間に建築物の耐震性に対する不安と建築業界への不安を広げております。

 構造計算書問題では、本来法令を遵守すべき資格者である建築士が職業倫理を逸脱して構造計算書の偽装を行い、その偽装を、設計図書の作成、建築確認、住宅性能評価、工事施工のそれぞれの段階で、元請の設計者、指定確認検査機関、建築主事、指定住宅性能評価機関のいずれもが見抜くことができませんでした。結果として、建築確認検査制度及び建築士制度に対する国民の信頼を失墜させ、極めて深刻な事態であると言わざるを得ません。

 事件が公表されて一年が過ぎたわけですが、この間、さきの通常国会では、建築確認の検査の厳格化、指定要件の強化、特定行政庁に立入検査権限を付与する等、指定確認検査機関の業務の適正化、建築士等に関する罰則の大幅な強化等を内容とした建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案が成立いたしました。次いで今国会では、建築士の資質、能力の向上、高度な専門能力を有する建築士の育成、活用、設計そして工事の監理業務の適正化、建設工事の施工の適正化等を内容とする建築士法等の一部を改正する法律案が提出されるに至ったわけであります。

 この建築士法等の一部を改正する法律案を提出されるに当たり、国土交通省として、姉歯元建築士を初めとした複数の建築士による不適切な業務実態についてどう総括し、今回の建築士法改正においてどのような措置を講じているのか、まず大臣にお聞きしたいと思います。大臣、よろしくお願いいたします。

冬柴国務大臣 今日、建築技術の高度化に伴いまして、建築設計も高度化、専門化し、分業体制による建築設計が常態化しているのは事実でございます。

 こうした中、構造計算書偽装問題を契機として、複数の建築士による不適切な業務の実態が明らかとなってまいりました。これは、一つは、建築士資格の取得後に新たな知識の取得及び技術力の維持向上を怠り、能力が欠如した建築士が存在しているという残念な事態が一つであります。二つ目には、元請建築士事務所、下請建築士事務所、双方の責任が不明確なままに安易に設計の外注がなされる実態が見受けられまして、結果として、建築士の職業倫理の低下や、能力の欠如した建築士の設計活動を助長しているといった問題が背景にあったというふうに総括をいたしました。

 このため、今回、建築士法を改正いたしまして、建築士の資質、能力の向上、すなわち、建築士事務所に所属する建築士に対する定期講習受講の義務づけや、あるいは、高度の専門能力を有する建築士の育成、活用という意味から、一級建築士の中から構造設計あるいは設備設計に関して高度な専門能力を有する者を構造設計一級建築士あるいは設備設計一級建築士として区別し、高さ二十メートル超の鉄筋コンクリートづくりの建築物など一定規模以上の建築物の構造設計や設備設計への関与を義務づけるということをいたしました。これらの者に、そのような作業をしたということを明らかにさせるために記名押印させ、責任の明確化を図るなどの措置をとりました。

 また、建築士事務所の業務の適正化についてでありますが、建築士事務所を所管する管理建築士の要件を強化いたしました。設計等の受託契約締結前に、管理建築士等による施主に対する重要事項説明の実施と、書面に記載してそれを交付するという義務づけをいたしました。分譲マンション等の一定の建築物の設計等について一括再委託の禁止など、建築士制度の抜本的な見直しを行うことともいたしております。

 こういうものと、さきの国会で成立いたしました建築基準法の改正、それから今回の建築士法の改正によりまして、建築物の安全性の確保と建築士制度への国民の信頼の回復を図っていきたい、このような決意でございます。

亀岡委員 ありがとうございます。

 今大臣が御説明になりましたが、まさに重層的な構造の中にいろいろなゆがみがあった。今回は、姉歯問題だけではなくて、北海道の浅沼元二級建築士の事件もありました。まさに、国民が情報を得る市場の中で建築士の情報がまともに入ってこない、そして、どの建築士が正しくてすばらしいのかという情報が未開示、これが物すごく今回の不安をあおったということも間違いありません。

 そういう意味では、この一般市場に関して建築士の情報が正確に伝わるような情報開示の場とか、それも含めて今後の体制をどう講じているかというのを住宅局長にお尋ねしたいと思います。よろしくお願いします。

榊政府参考人 お答え申し上げます。

 建築士に定期講習の受講を義務づけるといったような事柄と、建築士の資質、能力の向上のための取り組みにあわせまして、消費者が市場において設計者、工事監理者を適切に選別できるようにいたしまして、能力の不十分な建築士が市場により淘汰されるということが重要ではないかと考えております。

 今回の改正案では、まず建築士名簿の記載事項を充実させまして、これらを閲覧するということにいたしております。そして、定期講習の受講歴、構造設計一級建築士、設備設計一級建築士であるかどうかということ、それから建築士の処分歴といったような情報を消費者に開示するという方向で検討を進めております。

 また、免許証でございますけれども、実は免許証も携帯用の免許証に変更するということをいたしておりまして、その携帯用の免許証の中に、定期講習はちゃんと受けたかどうか、それから、構造設計一級建築士であるかどうか、設備設計一級建築士であるかどうかということも新たに記載をするという方向で検討をしております。

 なお、設計、工事監理契約といったような締結をする前には重要事項を説明するということになっておりますが、その際にも免許証の提示を義務づけるといったようなことをいたしております。

 こうした措置を講じることによりまして、消費者が建築士についての情報を入手しやすいといったようなことをやっていきたいというふうに思っておるところでございます。

亀岡委員 ぜひ、消費者がきちんと選択できるような情報開示の方法論をしっかりととっていただきたいと思います。

 それから、今講習というお話がありましたが、この講習も、調べてみましたら、一級建築士は約三十万人、二級建築士、木造建築士合わせて約百万人の建築士がいるということで、かなり資格者がたくさんいらっしゃる。この資格者の資質を向上させるという意味では講習というのは避けられない、まさに的を射ているというふうに思いますが、この講習に関して、講習をしっかりと受けて、その講習が実効性があるものになっているかどうか、または講習機関が中立で公正であるかどうか、そういうものも含めて講習の体制がどうなっているか、住宅局長、教えていただければと思います。

榊政府参考人 講習でございますけれども、登録講習機関が行うということにいたしております。

 講習事務の公正さを確保するために、登録申請者が、建築関連事業者、すなわち、業として設計、工事監理もしくは建築物の販売、その代理、媒介といったようなことをやっていないというふうな登録基準を実は設定をいたしておりまして、この基準に適合する機関を登録するというふうにいたしております。したがいまして、建築関連事業者でない方が登録をするということになっております。

 また、登録講習機関がこの基準に適合しなくなった場合には適合命令を出すとともに、従わない場合には登録の消除等の処分を行うというような形で、公正、中立性というのを確保させていただいております。

 また、講習の内容でございますけれども、登録講習機関は、公正に、かつ省令で定める講習の実施基準に適合する方法によりまして講習事務を行わなければならないというふうに規定をいたしております。登録講習機関がこれに違反した場合でございますけれども、改善命令、監督処分の対象というふうになっております。

 また、この講習の実施基準でございますけれども、年間の講習回数、講習時間、教材の内容、修了考査の実施等を定めたいと思っておりまして、講習が一定水準以上のレベルであるということを担保いたしたいと思っております。

 さらに、それぞれの講習は、講義のみならず修了考査を実施する予定でございまして、受講生の講習の理解度を確認いたしたいというふうに思っているところでございます。

 以上でございます。

亀岡委員 ありがとうございます。

 ぜひ、やる以上は講習をしっかりとやっていただいて、国民の安心と理解、納得できる方法でお願いしたいと思います。

 それから、高度な専門能力を有する建築士の育成、活用について伺います。

 今日の建築設計においては、特に専門性が高いと言われる構造設計や設計設備の分野に関して、高度な専門能力を有する建築士が活躍する機会が増加していると聞いております。この構造計算書偽装問題に関しても、構造計算書の再計算で社団法人の日本建築構造技術者協会の任意資格である建築構造士が活躍したことは、我々も記憶に新しいところであります。特に大規模建築等の設計においては、こうした専門能力を有する建築士を活用することが不可欠と考えます。

 建築技術の進歩に伴い、建築設計の高度化、専門分化が進展している実態を踏まえ、今回の改正案において構造設計一級建築士、設備設計一級建築士制度を創設するということですが、その趣旨をわかりやすく説明していただきたいと思います。局長、よろしくお願いします。

榊政府参考人 委員御指摘のように、建築技術の進歩に伴いまして、建築設計の高度化、専門化が進展している実情を踏まえまして、大規模な建築物の設計におきまして、高度な専門能力を有する建築士の活用は重要な課題だというふうに認識をいたしております。

 社会資本整備審議会におきましても、建築設計の専門分化への対応について御審議いただきました。建築物の安全性を確保する観点から、特に高度化、専門分化が進展しております構造設計及び設備設計について適正化を図ることが重要であるという旨の答申をいただいております。

 そこで、今回の改正でございますけれども、建築物の安全性を確保するために、設計段階の法適合性確保の対策といたしまして、一級建築士として五年以上構造設計または設備設計の業務に従事した後、所定の講習を受講して修了考査に合格した方につきまして、構造設計または設備設計に関し高度な専門能力を有する一級建築士、構造設計一級建築士、設備設計一級建築士というふうに呼んでおりますが、こういう形で選別をいたしまして、一定規模以上の建築物の構造設計を行う場合には、構造設計一級建築士がみずから設計をしていただくか、または、構造設計一級建築士以外の一級建築士が構造設計を行う場合には構造設計一級建築士の方の法適合チェックを義務づけるというふうにいたしたところでございます。

 また、この措置の実効性を確保するために、確認申請の段階で、設計図書に構造設計一級建築士等の記名押印があるかないかということを確認を行いまして、この方の記名押印がなければ確認申請を受理できないというような形で実効性を担保するということにいたしたところでございます。

亀岡委員 その実効性の担保というのは最重要ですので、ぜひその辺は厳密に厳格にやっていただきたいと思います。

 今の専門分野に関してなんですが、建築設計の専門化と分業化に関連して、建築設備の設計に関して、先ほど例示しました建築構造士のほかに建築設備士という資格があり、全国で三万人いらっしゃるというふうに伺っております。この建築設備士は、建築設備の計画に関して建築士にアドバイスを行う者として建築士法に位置づけられているもので、建築士とは別の資格と聞いております。

 今回創設される設備設計一級建築士は一級建築士の中から選別されることになっているため、一級建築士の資格を持っていない建築設備士の方から、今後仕事が減るのではないか等の不安が今聞こえてきております。今回、建築設備士の位置づけはどのように変わるのか、または変わらないのか、住宅局長にお伺いしたいと思います。

 それともう一つ、一級建築士でない建築設備士の方々をそのまま、すなわち一級建築士でないにもかかわらず設備設計一級建築士とすることは、幾ら何でもちょっとこれは乱暴かなという気がしないでもないんですが、せめて、これまで建築設備の分野で設計業務にかかわってこられた建築設備士の方々が、今回の改正を契機に、頑張って一級建築士試験を受験し、合格して、晴れて設備設計一級建築士となれるような何らかの工夫も考えているのかいないのか、その辺も含めて住宅局長にお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

榊政府参考人 先ほど先生の御指摘のように、建築設備士でございますけれども、建築士法上は、建築士が設計を行う場合に、建築設備計画についての助言を行い、設備計画の内容について不都合な点を指摘するような資格者という形で位置づけられてございます。

 建築士が建築設備士の意見を聞いた場合には、その設計図書や工事監理報告書においてその旨を明らかにするということになっておりまして、今回の改正案によりまして、実はこの位置づけは全く変わりません。引き続き、建築設備の適正な設計、工事監理を確保するために、建築設備士が一層活用されるということを期待しているところでございます。

 それから、建築設備士の方が一級建築士にちゃんと受かるようなことにつきましてどのようなことを考えておるかということでございますけれども、実は、私どもの方の審議会の答申では、受験資格の見直しの一環として、専門能力を有する技術者の受験資格についても適切に見直しをしろというような指摘をいただいております。

 したがいまして、今回の審議会答申を踏まえまして、建築設備士資格を有する者の一級建築士試験の受験資格要件の見直しということにつきまして、建築設備士の知識及び技能を適切に評価できるように、今回の学歴要件、実務要件の見直しがございますので、これにあわせまして、総合的に検討していきたいというふうに思っておるところでございます。

亀岡委員 ありがとうございました。

 ぜひ、三万人の建築設備士の方々が不安に陥らないように制度もしっかりと運用していただいて、そしてできれば、加入率一〇%以下というような業界団体の指導も含めて、あわせて、エンドユーザーである国民が不安にならないようなきちんとした制度をつくっていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 どうもありがとうございました。

塩谷委員長 次に、伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉です。

 まず冒頭、大臣にお伺いをいたします。

 さきの通常国会での建築基準法等の改正に引き続いて、耐震偽装等のこうした悲惨な事件が二度と発生しないように、今臨時国会におきまして建築士法の改正を行うわけでございますけれども、この建築基準法等の一連の法改正で、いわゆる昨年の耐震偽装等の問題から国民を完全に守ることができるのかどうか、この点について御所見をお伺いいたします。

冬柴国務大臣 今般の構造計算書偽装問題を契機といたしまして、能力が欠如した建築士が存在する、また、元請と下請建築士事務所双方の責任が不明確なまま安易な外注がなされ、建築士の職業倫理の低下を助長している等の課題が指摘され、明らかになりました。

 このため、今回、建築士法等を改正し、建築士の資質、能力の向上、すなわち、建築士事務所に所属する建築士に対する定期講習受講の義務づけなどを行うことにしました。

 二番目には、高度の専門能力を有する建築士の育成、活用であります。一級建築士の中から構造設計あるいは設備設計に関して高度な専門能力を有する者を構造設計一級建築士、設備設計一級建築士として選別をいたしまして、高さ二十メートル超の鉄筋コンクリートづくりの建築物など一定規模以上の建築物の構造設計、設備設計への関与を義務づけるとともに、これらの者に各書類、設計図書等に記名押印をさせ、責任の明確化を図るなどの措置をとりました。

 また、建築士事務所の業務の適正化の観点から、建築士事務所を管理する管理建築士の要件を強化し、設計等の受託契約締結前に、管理建築士等による重要事項説明の実施と、そしてその結果の書面の交付を義務づける等、責任の明確化を図りました。また、分譲マンション等一定の建築物の設計については一括再委託の禁止など、建築士制度の抜本的な見直しを行うことともいたしております。

 こういう今回の改正とともに、さきの国会で成立いたしました建築基準法改正、それは、先ほどの高さ二十メートル超の鉄筋コンクリートづくりの建築物など高度な構造計算を要する一定高さ以上の建築物等につきまして、構造計算適合性判定、いわゆるピアチェックの義務づけを行うことにいたしました。また、確認申請書等に担当したすべての建築士の氏名等の記載を省令等で義務づけるということもいたしましたし、指定確認検査機関の業務の適正化、罰則強化等も図りました。

 こういうことで、今回の建築士法の改正により、建築物の安全性の確保と建築士制度への国民の信頼回復を図りたいというふうに考えております。

 あわせまして、今後、消費者すなわち住宅購入者の保護という観点から、売り主等の瑕疵担保責任、これは十年間あるわけでございますけれども、その履行の実効を確保するために、相応の資力確保の措置を新築住宅の売り主等に対して義務づけることについて現在検討いたしておりまして、早急に立法化を図りたいというふうに考えているところでございます。

 これにより、今回のような事件が二度と再び起こることがないということで、これを進めていきたいというふうに思っております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。

 今回また前回の法改正の一連の流れを御説明いただきまして、最後におっしゃっていただきました保険制度、るるの法改正できちっとした建物ができるようにほぼ網の目をかけてきたと思いますけれども、最後のとりでとしてのこの保険制度というものの成立もぜひとも積極的に検討をしていただきたいと思います。

 以降は、順次具体的なことを細かくお聞きしていきますけれども、まず、前回の通常国会でも議論になりました建築士の報酬というものについてお伺いをいたします。

 姉歯建築士を初めとして、建築士の中にもさまざまな分野の専門家の方がいらっしゃって、特に構造に携わる建築士というのは、建築士の中でも非常に厳しい価格で仕事をしなければならないような状況があったというような認識をしております。

 そういう意味で、報酬が十分でない、こういう背景がありますけれども、建築士の業務報酬の基準については今回見直しを行っていないようですけれども、この点について住宅局長にお伺いをいたします。

榊政府参考人 現行の報酬基準でございます告示千二百六号は、実は昭和五十四年につくられております。

 この告示の内容でございますけれども、標準的な業務内容と業務量を人日という形で示しておりまして、建築士事務所におきます業務の適正化を担保するとともに、建築主にとっても、委託する設計業務、工事監理業務の報酬決定に際しての目安になるようにということでやっておりますが、実は、委員御指摘のように、近年、ちょっと業務実態に合わなくなっているのではないかというような指摘がされております。したがいまして、今後、所要の実態調査を行った上で、この報酬基準を見直したいというふうに考えております。

 実は、具体的に申し上げますと、人日で書いておりまして、用途別、工事金額別の告示になっております。これを少し変えまして、意匠とか計画、構造、設備といったような分野ごとに標準的な業務量を示しまして、工事金額じゃなくて延べ床面積に対応したような形で示していきたい、それから、設計業務のCAD化とか調査業務の増大といったような、業務量の見直しもあわせて行いたいというふうに思っております。

 こうした改正をいたしますと、建築主が委託します設計業務の報酬決定についての目安ということになると同時に、構造設計とか設備設計を担当する建築士の報酬決定に際しての目安にもなるというふうに考えておりまして、これを通じて、設計、工事監理業務の適正化に資するものというふうに考えておりますので、報酬基準の見直しは、この施行にあわせましてきちっとした形でやりたいというふうに思っておるところでございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。報酬についても見直しをしていただくということで確認をさせていただきました。

 その一方で、そうした報酬の見直しに伴って、それにきちっと対応できる建築士の資質、能力の向上、これが大前提であることは論をまたないわけでございます。

 そういう意味で、今回、建築士に対する定期講習の受講を義務づけまして、またあるいは建築士試験の受験資格の見直し等も行っておりますが、まず、定期講習について、こういった定期講習をやることによって具体的にどのように不適格な建築士を除外していくことになるのか、この点についてお伺いをいたします。

榊政府参考人 今回の改正案では、建築士事務所に所属します建築士に対して定期講習の受講を義務づけるということを考えておりますが、実は、講習内容をきちんと理解しているかどうかを確認するために修了考査を実施する予定でおります。したがいまして、修了考査が通らないということになれば、二度ならず三度受けていただくということになるのではないかと思っております。

 それから、定期的に講習を受けていただくということでございますので、これにつきまして、国、公共団体、関係団体が連携いたしまして十分な周知を図りたいというふうに思っておりますが、実は、講習を受けないという方がいるかもしれない、こういった方に対しては戒告、業務停止または免許の取り消しの処分といったようなこと、いわば最初はちゃんと受けてくださいというお願いをし、それが二度三度ということであれば、戒告をし、業務停止をし、または免許の取り消しといったような処分まで行うようなことも考えまして、違反の程度に応じまして厳正に処分を行って、こういったようなことを通じて、能力が不十分な建築士を排除していきたいというふうに考えておるところでございます。

伊藤(渉)委員 その点についても、確かに一時期の議論では免許の更新制といったことも議論になっておりました。私も、土木ではありますけれども、そういった技術関係に携わってきて、なかなか免許の更新制といっても難しいとは思っておりましたし、今回のような形が精いっぱいだろうと思います。そういう意味で、例えば試験を受けないですとか、十分ユーザーの方の仕事にたえられない方を利用者もわかるような形で公表をするですとか、そういったことも実施をしていっていただきたいと思います。

 もう一点、建築士の受験資格の見直しについてでございますけれども、今回、学歴要件また実務経験の要件を適正化するとお聞きしておりますが、具体的にこれもどのようなことをお考えになっておられるのか、また、この見直しによって、現在建築士を目指して大学や専門学校に通っている方々には混乱は生じないのかどうか、この点についてお伺いをいたします。

榊政府参考人 建築士制度の信頼を損なう事案の発生を踏まえまして、建築士として本来期待されている設計及び工事監理に必要な能力を的確に検証した上で資格が付与されるようにということで、今回の改正案では、学歴要件、実務経験を見直すということにいたしております。

 学歴要件というふうになっておりますが、実は、学歴要件を変えまして、学歴は今まで、どちらかといいますと建築学科卒業とか学科主義でやっておりました。これを、指定科目の単位取得ということで科目主義に変更したいというふうに考えております。建築構造、建築設備、建築計画、建築施工、建築法規といったような各分野の知識を全般的に習得する必要がございますので、したがいまして、科目の指定に当たりまして、こうした分野の科目をバランスよく履修しているということを学歴要件とするように具体的な検討を行っていきたいというふうに考えております。

 それから、実務経験でございますけれども、実は、原則として、設計図書の作成またはチェックに関与していること、工事と設計図書の適合に関与していること、つまり、設計図書に密接にかかわる業務であるということが必要だというふうに考えております。

 具体的にどのような実務を実務経験として認めるかという点でございますけれども、今後検討をいたしまして、省令において定めようというふうに思っておるところでございます。ただ、例えば、私ども、住宅局でございますので住宅行政をやっておりますが、住宅行政だけをやっているようなことであれば、ちょっとこの実務要件には合わないな、こういうようなことを考えておるところでございます。

 それから、受験資格の見直しでございますけれども、法施行時に混乱が生じないように経過措置を講ずるようにいたしております。具体的には、平成二十年度の入学生までは経過措置が適用されるという形になっておりますので、平成二十年度までに入学された方が卒業されれば現在の学歴要件が適用されるということになっておりまして、そういった形で、混乱を来さないようにいたしたいというふうに思っておるところでございます。

伊藤(渉)委員 特に、建築士さんの中でも設備、今は建築設備士という方がいらっしゃいますけれども、電気や機械を専門にされている方もたくさんいらっしゃいますので、そういったところからも建築士になろうと思うと、多分建築の何か科目をとらなきゃいけないということで、大学の履修の状況等もしっかり勘案していただいて制度設計をお願いしたいと思います。

 次に、今回の法改正で構造及び設備の設計の適正化ということにも光を当てていらっしゃいます。新たに構造設計及び設備設計の専門的な一級建築士を養成し、そこに責任を持たせていく、責任の所在を明らかにするということで、私も賛成でございます。

 一方で、専門性を持った十分な人材が確保できなければ、専門を持った一級建築士、数が少ない一級建築士のもとに一般の建築士などが集まって、最終的には、その資格を持った方がいわゆる判こをつくというかサインをするというか、そういった形式的なものになりかねないという側面も持っていると思います。

 そこで、法改正後に必要になるいわゆる専門の、構造、設備一級建築士の人数、これについてどの程度の規模を想定されているのか。また、この専門の一級建築士の養成、例えば人数的にまだまだ足りないという御判断等があれば、この専門の一級建築士の養成に対する何らかの施策、こういったことも考えていらっしゃるのかどうか、お伺いをいたします。

榊政府参考人 まず、構造設計関係でございますけれども、構造設計一級建築士が関与すべき一定規模以上の建築物ということでございますけれども、これは、さきの建築基準法で改正いたしました構造計算適合性判定の対象となる建築物とほぼ同じでございます。したがいまして、対象件数も年間六、七万件程度というふうに想定をいたしております。

 現在、構造設計を行っておられます建築士が約一万人程度というふうに推計されております。そのうち、一定規模以上の建築物の構造設計について、JSCA、日本建築構造技術者協会の建築構造士という名称を持っておられる方が約二千五百人、それから、日本建築士会連合会の構造専攻建築士を持っておられる方が約九百人ぐらいおられます。構造設計を専門的に行っておられるという建築士がみずから設計または設計のチェックを行っているケースがほとんどであるというふうに私ども考えておりまして、こうした方々が法施行後に構造設計一級建築士になるのではないかというふうに考えております。したがいまして、少なくとも三千人から三千四百人ぐらいの方がおられるということになります。

 想定が六、七万件ということでございますので、構造関係の適合チェックというのは、私どもの想像では数日間でできるのではないかというふうに思っていますので、そのぐらいの規模の構造設計一級建築士で何とか対応可能ではないかというふうに考えておるところでございます。

 それから、設備設計の関係でございますが、これは、設備設計一級建築士が関与する建物につきまして、三階建て以上で、かつ床面積五千平米を超えるといったような建築物を考えております。これが年間約三千五百棟ぐらいあるというふうに推計をされております。

 現在、建築設備士の方が約三万三千人おられますが、アンケート調査によりますと、その一割強が一級建築士の資格を有しておられるということでございますので、約三千人程度の方が建築設備士であると同時に一級建築士の資格を持っておられるということでございます。想定が約三千五百棟ということでございますので、これも十分に対応可能ではないかというふうに考えております。

 今後、施行までの間に、関係団体とも連携しながら、新制度についての情報提供、周知徹底を図りながら人材の育成に努めていきたいというふうに考えているところでございます。

伊藤(渉)委員 これもここ一年ほど議論をしているわけですけれども、構造を専門にする方、要するに建築士を目指される方は、今、世間のイメージもそうですけれども、アーティスティックなデザイナー的なところがやはり脚光を浴びていて、構造という非常に縁の下の力持ち的なところを目指す建築士の方は少ないのではないかなという印象を持っています。これは国の方でもきちっとした統計がないので、なかなか把握し切れないわけですけれども。

 そういう意味では、構造に携わる専門家をいかに育成していくかということは大事なポイントだと思っておりますので、引き続き、こういったところの構造を目指す建築士がふえていくような施策、またインセンティブというようなものが何らかの形でできますように御尽力をいただきたいと思います。

 次に、設備の一級建築士についてお伺いをいたします。

 先ほど、亀岡委員の方からも同じ趣旨の御説明がありました。というのも、いわゆる現場でそういった声がよく聞かれるということであろうと思いますので、先ほどの亀岡委員の質問と非常に似通ったことをもう一度お伺いしますけれども、この設備一級建築士制度の創設によって建築設備士の位置づけがどのように変化をするのかということと、位置づけが変わらないとしても、新たに設備に携わる者に対する制度ができることで、今まであった建築設備士は地方公共団体や一般の建築事務所からの業務委託を受けられなくなって、仕事がなくなると心配をされている方がいらっしゃるのも事実でございますので、この点について、改めて国土交通省としてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

榊政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど来の御質問にもお答え申しましたが、建築設備士というのはいわば設備設計についての助言を行うということでございまして、建築士が建築設備士に意見を聞いたときには、設計図書とか工事監理報告書におきましてその旨を明らかにするということになっております。今回の改正をいたしましてもこの位置づけは変わるものではございませんので、引き続き、建築設備の適切な設計、工事監理を確保するために、建築設備士が活用されるように期待をいたしているところでございます。

 ただ、御指摘のように、そういう御不安があるというようなことでございますので、いわば私どもは誤解だというふうに思っておりますが、今回の改正がありますれば、このような誤解が生じないように、地方公共団体や関係団体に対しまして、文書によりまして改正内容の周知徹底を図りたいというふうに思っているところでございます。

伊藤(渉)委員 この前の質問で、建築設備士、一級建築士を持った設備にかかわる方の人数的には、何とか業務が回っていく程度の人数が確保できているのではないかという御答弁をいただきましたけれども、一方で、その人たちが全国に満遍なくいるかどうかという問題がありまして、地方によっては、そうした一級建築士を持っていて、かつ設備について専門的な知識を有するという方が少ない場合に、設備専門の一級建築士という方のお墨つきがないと仕事が受けられないとなった場合に、そういったところで仕事をされている方たちの危惧ということなんだろうと思いますので、全国漏れなく、地域に格差なく、専門的な設備に関する一級建築士の方がまた養成できるように御配慮もいただきたいと思います。

 次は、建築士資格の見直しによって、国土交通省、こちらはいわゆる技術をつかさどる方、技官と呼ばれる方も大変たくさんいらっしゃる中で、一級建築士の資格要件の厳格化で資格取得の道というのが狭まるのではないかなと思っています。もちろん、資格を持っていることイコール技術があるということにもならない現実的な部分もありますけれども、最大の監督官庁である国交省の技術力の養成ということも非常に重要なポイントであると考えておりますので、国土交通省の技術力の強化という意味から、今回の資格要件の厳格化ということについて何か問題は発生してこないのかということについてお伺いをいたします。

榊政府参考人 今回の実務要件の見直しということでございますが、原則として、設計図書の作成またはチェックに関与していること、工事と設計図書の照合に関与しているということなど、設計図書に密接にかかわる業務にいたしたいというふうに考えているところでございます。

 具体的にどのような実務を実務経験と認めるかにつきましては、今後検討いたしまして、省令で明らかにいたしたいというふうに思っておりますが、設計図書に密接に関する業務ということになりますと、我が国土交通省では、例えば営繕行政におきます設計、工事監理の業務補助につきまして、これまでと同様に実務経験として認めることができるのではないかというふうに考えております。典型的に申しますと、私ども住宅局でございますが、住宅行政に携わる場合には実務経験として認めることは若干難しいかなというふうに考えておりますが、営繕行政に携わる場合には実務経験として認められるというふうに考えております。

 資格要件の厳格化が発注者の技術力の強化という観点から問題がないのかということでございますが、そういう意味で、国土交通省が発注者となるというのは実は営繕行政の場合でございますので、法改正後におきましても特段の問題は生じないものというふうに考えているところでございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。よくわかりました。

 時間が少なくなってきましたので、若干通告の順番を飛ばしまして、一括下請負についてちょっとお伺いをします。

 今回の法改正で、一括の下請負を全面的に禁止しております。これは、実際にその監督をしていたこともある人間からすると、一括下請負がされているかどうかというのは、日本語で書くほど簡単に見抜けないというのが私の実感でございまして、どのような場合が一括下請負になるのか、また、これに違反した場合の措置はどうなっているのか、一括下請負の禁止についての実効性を確保するため建設業法においてどのような措置を講じているのか、この点について確認をさせていただきたいと思います。

宿利政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、一括下請負の類型、形態でございますが、二つの類型がございます。一つは、請け負いました建設工事に関しまして、その施工に実質的に関与することがなく、かつ、その工事の全部またはその主たる部分を一括して他の業者に請け負わせる場合、これが一つであります。それからもう一つは、請け負った建設工事の施工に実質的に関与することなく、その建設工事の一部分であって、他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の工事を一括して他の業者に請け負わせる場合。この二つの類型が私どもは一括下請負に当たると考えております。

 また、施工に実質的に関与しているかどうかの判断でありますけれども、これは具体的には、施工計画の企画、あるいは工程管理、安全管理、品質管理、下請負人間の施工の調整、下請負人への指導監督、こういったことについて、これをすべて主体的に行っているということが必要だと考えております。

 次に、違反した場合でございますが、これは建設業法上の監督処分の対象でございますから、原則として十五日以上の営業停止の処分を行うことになります。

 また、建設業法上、実効性確保のための措置でございますが、現在の建設業法二十二条では、発注者保護の観点から、原則、一括下請負は禁止でございますけれども、発注者が書面によって承諾をすれば一括下請負も構わないという扱いにしております。しかしながら、今般の一連の経過の中で、分譲マンションのような発注者とそれを取得するエンドユーザーが異なるような場合につきましては、仮に発注者の書面の承諾があっても一括下請負を禁止するということによりまして、マンション取得者の元請業者に対する信頼を保護する、それから建設工事の品質の確保を図るということを図ってまいりたいと思います。

 また、そのために、私どもの情報収集機能の強化でありますとか、あるいは現場事務所への立入検査などの強化を図っていきたいと考えております。

伊藤(渉)委員 もう一度、最後にもう一問だけお聞きします。

 この一括下請負は既に公共工事では全面禁止に取り組んでおられますけれども、ここまでに、公共工事において建設業法により一括下請負の有無で処分を受けた事例がどの程度あって、具体的にどういうふうに発覚をしたのか。具体的な事例を一つでも御紹介いただければと思います。

宿利政府参考人 伊藤委員御指摘のとおり、公共工事につきましては一括下請負は全面禁止になっております。

 国土交通大臣の許可業者の過去五年間の実績でございますけれども、平成十三年から十七年でおよそ四十件の処分実績がございます。これにつきましては、公共工事の発注者から私どもに通知をいただく、あるいは建設業の許可部局が立入検査などを行いまして、一括下請負の事実を現認して処分をしたというものでございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。

 いずれにしましても、この住宅、土木でいえばインフラといったところは、一般のユーザーでは偽装ですとかそういったところはとてもとても現実的には見抜けない代物でございますので、しっかりとした行政側の対処、管理を今後とも引き続き強化をしていっていただきたいと思います。

 以上で終わります。

塩谷委員長 次に、下条みつ君。

下条委員 民主党の下条みつでございます。

 きょうは、新しい形で、大臣になられました冬柴大臣初め皆さんに、ここ一年近く懸案でございました建築士法について、時間の範囲内でお聞きをしたいと思います。ぜひ、新しいところで、清新な、温かい御回答をいただければというふうに思っております。よろしくお願いします。

 まず、今、他の委員からも幾つか出ました建築士の問題でございます。私、きょうは、建築士と、それから実際に私が幾つか現場を見た現場監理、それと最後に、私どもが一番気にしております建築士の報酬問題等について、時間の範囲内で質問及び御要請をしていきたいというふうに思います。

 まず、建築士についてでございますが、今、もう幾つか御発言が出ておりますけれども、今回の資格制度の創設については、私は大変いい案だというふうに思っております。エキスパートをつくって、そこに設計図書、そして中をチェックしなきゃ引き受けないぞと、非常に厳しくていい法案ではないかというふうに思います。大変結構なことだと思います。

 そこで、私は、きょう、この内容について、もう一つちょっと踏み込んでお聞きをしたいと思っております。

 まず、法案の第十条の二に、一級建築士として五年以上構造もしくは設備設計の業務に従事した後、登録講習機関の行う講習を受けていなければならない、この要件に該当する一級建築士は、構造もしくは設備一級建築士証の交付を申請できるというふうにしております。

 ここで、まず、一級建築士として五年以上の業務に従事したということをどのように把握するかをお聞きしていきたいと思います。つまり、五年以上構造設計の業務に従事したとあるけれども、期間というのは確かに五年かもしれない、携わる期間が丸々五年びっちり、月ベースで二十二日間働いて、びっちりと仕事をしていく、それも五年になるでしょうし、一年間に二、三件しかやらない、でも五年間きっちりと、建築士の仕事をとりあえず、資格を持って、事務所に所属して、管理建築士の下でやったということも五年になるのか。つまり、私が言いたいのは、期間の把握をまずどうやってしているんですかということです。

 それからまた、仕事内容も、確かに五年びっちりやった、一年間に十何件やった、でっかいものをたくさんやった人もいるかもしれない、ほんのちっちゃい構造建築もしくは設備設計の方の仕事をしたのかもしれない。要は、この構造設計等の質の把握を一体どうやって五年間というのをとらえていっていらっしゃるのか。私はこれは非常に問題だと思います。

 というのは、どこでもあります、例えば、初心者マークの運転手さんがいるのと、初心者マークだけれども、ペーパードライバーじゃなくて、局長、ほとんど取った次の日からずっと仕事をし、もしくは運転なさっている方もいる。その質がやはり問われるのが僕のこの後の質問にちょっとつながってきます。

 まず、この五年従事という点についての期間的な、また質的にどのように把握するのかをお聞かせいただきたいと思います。

榊政府参考人 実務経験でございますけれども、実務経験の内容は、原則といたしまして、構造設計ということであれば構造設計図書の作成に、チェックに関与しているかどうか、工事と設計図書の照合に関与しているかどうかというようなことが必要だというふうに思っておりまして、具体的には、建築士事務所の管理建築士等といったような第三者の方に証明していただくということしかないのかなというふうに思っているところでございます。

下条委員 実を言うと、局長、この部分はまだちょっと具体的に御省からもお答えが進まっていないので、あえて提言させていただくことで御質問させていただいておりますが、つまり、今おっしゃったのは、管理建築士に証明を出してもらうからその証明に従う、こういう話でございます。

 私は、一つ、今度の改正案の第十四条で一級建築士試験の受験資格の見直しをする。受験資格である実務経験については、原則として、建築士の独占業務である設計及び工事監理の業務に関するものとして建築士事務所の管理建築士に証明させると聞いている。つまり、これは一級建築士の試験を受けるときの要件ですね。ある意味では、これを今局長が引っ張ってきた、案ですね、あくまで案ではないかと思います。

 私は、そこで、今、把握する部分を一体どう把握するか。これは議事録に残りますので、ぜひ把握というのをもう一つ、一歩踏み込んでいただきたいと思います。というのは、今言いましたように、年間一、二件もある、小さいものだけやっているかもしれない、そこの部分の把握もある。

 それからもう一つは、管理建築士さんというのは当然設計事務所に一人いなきゃいけないわけですね。この管理建築士さんのぽんという判こ一個さえあれば証明になってしまうとすると、言いにくいけれども、要するに、今、四人か三人でやっていて、もう大変で、大きい建築設計事務所にどんどんいい仕事をとられちゃっている。後で話しますけれども、一日十何時間働く人が山のようにいて、年収も、管理建築士以外は、一人から五人の事務所は平均四百万未満ですね。それで飯を食っているわけです。

 そうなってくると、五年なんか探していられないぞと言って、そこの今言った期間と質の要件を詰めていないと、管理建築士一個の判こをぽこんと押すだけで証明になってしまったら、僕は、そこにまた、仕事を欲しいために、姉歯さんのように偽装を生んだ見せかけの証明ができちゃいかぬなと思っているわけですよ。

 だから、私は、あえてそこに今質問をさせていただいておりますけれども、この証明を発行するのは管理建築士に任せてしまうというところが一つのポイントだと思うのですけれども、それについて附帯要件をやはり詰める必要があると僕は思います。でなければ、いや、四年とか三年だが、まあやったことにして、おまえ、この仕事をやったことにしろ、判こを押すからというふうにやれば、これは私に言わせれば、新たなる、新しい違う部分の偽装が生まれてくるような感じもいたします。

 そういう意味では、証明方法の厳格さ、そして瑕疵については、逆に言えば、せっかくいい法案をつくって水が漏れないようにしておいて、この証明だけで漏れてしまえば、また同じことの繰り返しになるような危惧もいたしております。そういう意味では、厳格さ、瑕疵がないようにする証明方法について、今後の方向感についてぜひ御意見をお聞かせいただきたいと思います。局長と、大臣からもお願いしたいと思います。

榊政府参考人 実は、この法施行までに、法施行自体が二十一年の春ということになっております。それまでの間に、実務経験要件をきちっと言った形で詰めてお示ししたいというふうに思っております。

 一方で、実は、建築データベースをきちっととらえようじゃないかという話もございまして、そういったような動きと先生の御指摘のようなことも踏まえながら、総合的な検討を今後していきたいというふうに思っているところでございます。

下条委員 ぜひ大臣からも、御方針をちょっとお聞かせいただきたいと思います。

冬柴国務大臣 ただいま局長が申しましたように、今質問者の疑問というのは私も納得できる話で、これにこたえられるように、せっかくつくった法律がそういうところから水が漏れないように、きっちりとやらせていただきます。

下条委員 ありがとうございます。

 今回のいろいろな偽装についても、最終的なところでいろいろなものが漏れている。私はいつも思いますけれども、非常にいい法案をおつくりになって、その生気を失わないように生き血を注いでいくのは最後の締めの部分だと思います。そういう意味では、今度の法案、図書をつくらせて、それでいろいろなものをチェックさせる、非常にすばらしいと思う。ところが、その資格要件の証明について、ぜひ局長、踏み込んでいただいて、漏れのないように、そして瑕疵のないように証明書を発行できるように運営していっていただきたいとお願いいたしたいと思います。

 そこにつきましては以上にしまして、次に、お手元の資料一をお配りしてございます。これは朝日新聞の十一月十五日、今月の十五日の新聞であります。これは何かというと、要約しますと、ことし六月に成立した改正建築基準法において新設された構造計算適合性判定機関、チェック機関ですね、新しくチェック機関を置いて、自治事務をやっている建築主事や民間の機関からそこに出してピアチェックをしていく。そのチェック役となる専門家の確保について、四十七都道府県のうち三十道府県が、確保が困難か、必要な数を満たせないおそれがあるという記事であります。

 この点は、さきの通常国会の質疑で、私どもの方より、判定機関の判定員の要求される能力や、それから、現実問題として制度のスキームをカバーする人数をどういうふうに確保するのかという質問に対して、局長の山本さんから、先ほどもちらっと出ましたけれども、対象件数は今のペースの建築活動のもとで年間八万五千もある、月間に直すと七千件程度、判定に要する審査体制については、いろいろな積算はあると思うが、今の件数を前提に必要な人員を算定していくと、一千五百名程度の判定員が必要になるんじゃないかというふうにおっしゃっておりました。現在、社団法人の日本建築構造技術者協会の会員数は約三千六百名、建築構造を専門とする建築士は全国で一万名、さらに、専門的な研究者、大学の教授、助教授といった方々もいる、そういったことで、この事務処理体制は必要な人員の確保は可能である、こういうふうなお答えを前局長の山本さんがおっしゃっておりました。

 そこで、早速それを振り返ってみて、これはまだおっしゃってから五カ月たった段階ですが、要は、人材の確保はできるぞ、問題ないぞとおっしゃって、現実問題は、これは新聞の記事でございます、ただ、私どもの方もこの新聞社に確認をしておりますけれども、やはりそういう答えが非常に多く出てきた、非常に不安だということでございます。

 大丈夫、大丈夫といっても、現実に五カ月ですから、これからの方針があると思うのですが、その辺、この人材の確保の現状について、これからどういったお考えを持っているか、お聞かせいただきたいというふうに思います。

榊政府参考人 さきの通常国会の法改正によりまして、指定構造計算適合性判定機関を義務づける、こうなりました。この判定機関でございますけれども、構造計算の審査を専門的に行う公正中立な第三者機関ということでございまして、大学の教授、研究者、すぐれた構造設計実務者等を構造計算適合性判定員という形で選任する、構造計算の過程などの詳細な審査や再計算を実施する機関ということでございます。

 各都道府県で、来年の六月に向けまして、改正法の円滑な施行に向けまして準備作業を進めております。地方の住宅建築センターなどを中心に、指定構造計算適合性判定機関という形で指定するというふうに考えております。ちょっと調査時点は古いんですが、九月時点で、二十三都道府県で管内の立ち上げを予定というふうに私どもは聞いております。

 ただ、委員御指摘のように、この適合性判定員となります構造専門家が実は大都市圏に集中しておりまして、地方都市で不足しているということも事実でございまして、私どもとしては、建築行政会議だとか関係団体との連携を図りながら、この制度の円滑な実施ができますように、都市部の構造家を地方の判定機関に紹介、あっせんするなどの必要な支援、いわば出張していただくというようなことのお願いをするといったようなことも考えております。

 さらに、指定構造計算適合性判定機関という形で業務を行う機関がないという県も出てきかねないというおそれもございますので、全国的な組織でございます日本建築センター、それから日本建築総合試験所、こういったところが広域的な業務を実施できるよう必要な支援を行っていきたいというふうに考えているところでございます。

 何よりも、来年六月の法律の円滑な施行に向けて努力をいたしたいと思っております。

下条委員 局長、ありがとうございました。

 私が何を言いたいかは局長は大体おわかりだと思いますが、構造計算適合性判定機関の要員について、大丈夫と局長がおっしゃっていて、現状はなかなか、一万人いるぞ、三千何人いるぞと言いながら、難しかった。これは、今局長おっしゃったように、能力ある方という言い方は失礼な言い方ですが、割と都市部に集中している、やはり建築物も多いですからね。地方自治体の方は首都圏の方に頼らざるを得ない。首都圏の一部機関に集中すれば、一定機関の審査件数が膨大になってくる、業務の滞るおそれも出てきて、質の維持、こういう順番になると私は思っています。

 今局長は、出張させてどうのこうのと言いますけれども、なかなかこれはというふうになりますよね、現実。まあ、今おっしゃったように六月まである、そこの期間の間でぜひ、質的な部分を含めて対応を検討していただきたいと思います。

 私がなぜこういう話を言うかというと、当然、建築士の方も、実際、私は今、日本建築士会連合会が主体となって建築士実態調査をちょっと前にやったのでいくと、構造設計に従事する人というのは全体の中で約四%、設備設計に従事する人は一%だと。人数的に言えば、一級建築士で構造設計に従事しているのは約一万人ぐらいですね。その中で、五年以上の実務経験がある人は少なくとも五千人ぐらいだろうと言われています。単純に言えば、構造設計の専門家が一万人いて、五年以上は五千人とすると、簡単に言えば、従事する人が半分に減るということは業務が倍になるということですよね。一級建築士の中でも、構造、設備の業務に従事する者の割合が非常に低くなってくると思います。

 先ほどちらっと出ましたけれども、年間で一体どのぐらい、一定規模以上で構造設計に一級建築士がかかわってきたかというと、大体六、七万件の案件と言われています。設備の方は約三千五百件。

 お手元の資料二の方に、ことしの二月の日経アーキテクチュアの「構造技術者の現状」という、これは私も愛読書でございますけれども、皆さんの頭に追いつかなきゃいけないので勉強していますけれども、これでいくと、構造設計事務所の三割が一日平均十一時間以上業務を行っている。建築設計の二〇%、建設会社の一七%に比べて、非常に多くなってきていますよということであります。

 つまり、これは、今言った一万人を対象にして、これほど多くの業務をやっていることですね。ということは、これが半分になったら、五年以上の対象になる人が半分に人数が減るということは、これは業務は倍になってしまうということです。今十一時間、一人から五人以上の事務所でやっている人は一体どうなっちゃうんだという危惧が、私はこれを読みながら出てきました。そして、私に言わせると、先ほどの資格制度の運用と同時に、これを一体どういうふうに運用して、もちろん、資格証明の部分のさっきの質、それから年数の問題もある。

 それで、どうやってこれを地方を含めてばらまいていくか。五千人の対象がおよそいると言われています。ただし、都市部に集中している。業務時間は、小さいところだと約十一時間が三割以上いる。これは、こういう実態が、実際数字で実を言うと私が確認したところ出ているわけですけれども、この実態をいかがおとらえになって、今度の法案は、何回も言いますが、いいですよ。私は本当に賛成したいと思っています。そう思っているぐらいです。どうなるか今はちょっとよく知りませんが、私は賛成したいと思っています。ただ、こういう実態がある中で、果たしてこの法案の内容がワークしていくのか、生きていくのかというのを僕は非常に危惧しております。

 そこの方向感をぜひちょっとお答えいただきたいと思います。

榊政府参考人 委員御指摘のようなおそれが、私どもも危惧をいたしているところでございますが、実は、この制度、二十一年の春から、構造設計一級建築士という方のチェックがないと確認申請は受け付けられないということになります。したがいまして、まだ今から、今十八年の秋でございますので、約二年近い間がございます。したがいまして、現在構造設計をやっておられる方も、実はこの二年の間に実務経験がふえてくるという点もございます。

 それから、先ほど報酬規定の見直しについて御議論がございまして、今まで、どちらかといいますと、ざくっというような形での報酬の告示になっております。これを分野別に分けるということになりますと、構造設計部門で何人日というふうな形の報酬の基準になってまいります。

 そういたしますと、先ほど委員御指摘の、設計の方は非常に単価が安いみたいな御指摘がございましたけれども、そういったようなものも是正されてくるということになりますと、構造設計を一生懸命やろうと思われる方がまたふえてくるわけでございまして、そういった意味で、今まで実は構造設計に携わっておられる方が一万人おられますので、そういった方々も含めて考えれば、二十一年春には十分対応可能なことではないかというふうに思っているところでございます。

下条委員 そうなってほしいとは思いますが、現実に、六月におっしゃった段階が、今言ったように都市部に集中している。これは何か方策を、これから私どももいろいろ知恵を出していきますけれども、考えていかないと、確かに二年ちょっと先、二年半、三年近く先といいながらも、果たして、さっき言った従事者、大物、小物を含め、また件数を含めて、きちっとした証明を出した方が出せるのかなという疑問を、きょう、この十一月二十八日の議事録に載っけておいていただければというふうに思っているので、質問させていただきました。

 というのは、これから改正を含めていろいろ議論をしていかなきゃいけない中の一つでございます。そういう意味では、何といっても、税金も人も今都市部に集中しているので、先ほども言いましたように、最終的にはその辺の落としどころを、機関をまた設けて、新しくそこに所長を置いてというふうになるかもしれませんし、違った形で、内容の審査について郵送物でやりとりするような話になるかもしれませんし、それは、そこに瑕疵がないように、ぜひこれからの中で推し進めていっていただければというふうにお願い申し上げたいと思います。

 次に、私が今度のいろいろな偽装事件の中で最も注目している部分が現場の工事監理の部分であります。これは言うまでもなく、工事監理というのは、建築主の立場に立って、設計図書と照合し、その設計図書どおりに実施されているかどうか確認することである。適切な工事監理が行われれば、基準法に違反するような建築工事あるいは欠陥工事は決して起きないわけであります。

 そこで、いろいろな方々に私はその後もお会いしました。耐震偽装の発覚後、現場管理者が工事監理をやっても十分なチェックをしていなかったり、設計者が工事監理者であっても工事現場の指導をほとんどしなかったり、ずさんである実態も随分私は目の当たりにしました。また、建築主が設計者のその名義を工事監理者と記入させて、実際は工事監理者なしで工事がどんどん進められちゃっている。名義貸しです。こういうことも実態でありました。

 こうした状況の中で、今回の改正で、ことし八月の「建築物の安全性確保のための建築行政のあり方について」という社会資本整備審議会の答申を踏まえて、設計、工事監理契約締結前に管理建築士等には重要事項の説明及び書面交付を義務づける、これはいいことでありますね。さらに、今回の建設業法の改正で、資格者証の交付を受けた監理技術者の配置を要する割合を集合である病院や学校の重要な民間機関に拡大していった。これは、かなりの部分、前進したと私は思っています。いい発想だと思います。

 ですが、ここで私が一つ加えていきたいのは、建築主に選任された工事監理者が適切に工事監理を行うこととは、一〇〇%、必ずしも結びついていないんじゃないかというふうに思っています。

 それはなぜか。まず、工事の監理技術者については、建設工事を施工する建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にある者がなることになっている。簡単に言えば、現場の監理者は、私が建設会社の社長だったら、おまえやれ、山田君やれ、伊藤君やれ、その人が現場の工事監理をするということであります。あくまでも建設業者側の人として施工監理を行って、第三者的なチェックが行われていない。ここに僕は何かクエスチョンを感じています。

 というのは、今回の、今いろいろ裁判が行われていますが、木村建設、いろいろな問題が今出てきています。篠塚さんはこの間あれになりましたけれども、木村建設の方がやる工事を木村建設側の人間がチェックしたと同じことであります。

 つまり、今言いました、民間の病院や学校にいろいろ拡大しているのは、これはいいことだと思います。新しく拡大しなさいという法制度です。しかし、任命権はあくまでも、木村さんの名前を余り出しちゃいかぬけれども、ある建設会社があって私が社長だったら、おまえやれ、わかっているだろうな、おまえ、サラリーマンだろう、うまくやれよ。この方が、現場での監理者になるということであります。そういう意味では、その現場の監理者との利益のベクトル部分が全く同じ方向に向いているんじゃないかというふうに私は危惧しております。

 私もいろいろな現場に行きました。コンクリートのひび割れのところとか、それから建築士さんがつくった構造図と建設会社がつくった施工図の違いがあちこちにあったり、また、でかいマンションが建っていて、でかいマンションというのは柱だけじゃなくて横のはりがあって、改めて、物というのははりがあるから横に揺れたとき大丈夫なんですね。このはりの一番のつけ根のところに穴ぽこがあいていたりして、ただ柱が立っているだけの建物の十階に行きまして、私はぞくっとしましたですね。今もしか来たら自分はどうなっちゃうのかなと思いました。まあ名誉の戦死になるのかもしれませんが。

 そのぐらいに、現場での監理というのは、利益のベクトルが違った方にやらせるべきじゃないですか、そう私は思っております。なぜこういう話をするかというと、現場での、私が今まで味わった、ある意味でいろいろな欠陥の部分を見てきているからであります。

 そこで、一たん、海外では一体どうしているんだということを見出していただくと、アメリカのロスでは、カリフォルニア州建築基準法に基づいて、市の職員が、市の職員がですよ、土盛りや建築基礎工事が安全に行われているか、また、構造体、配管等が壁や床などに埋め込まれる前に、法規に適合しているかどうかについて検査する。現場には記録カードがあって、検査が済んだ後、検査官がそれにサインしなければ工事は前に全然進まないんです。とまっちゃうんです。それが彼らの責任である。そして、違反があれば、命令が出るまで何度も検査をし直していくわけです。これが、私も住んでおりましたけれども、アメリカのカリフォルニア・ロサンゼルスの大きい工事についてのチェック機能であります。

 また、戸建て住宅は、これまた六回ぐらい、市の検査員が出向いて、大型の建物についてはコンクリートの打ち込み作業や溶接とか、補強、配筋など建築法で規定された工程について、建築の監理とは別に建築主が、簡単に言えば建物の主ですね、こうした民間の検査員が市の代理人としてその現場に常駐している。常駐するわけです。ずっとそこにいて、朝から晩まで見る。結果を市に報告する。

 アメリカは、御存じのとおり、相当やはり裁判とか瑕疵について厳しいです。日本はいろいろな意味でアメリカの文化に追随しておりますけれども、いいところはどんどん追随していいですけれども、やはり罰の面でも、またチェック機能でもちょっとおくれている感じが私はいたしております。

 そこで、この工事監理についての徹底や建物の品質を確保するということは、新しい機関を設けてやっちゃえよと言うのは簡単だと思うんですが、すぐに私、これは絵にかいたもちだと思うんですよ、実際問題として。やはり準備運動が必要だし、徐々にほぐしていきながらと。

 それで、私は三つの提案をこれからしたいと思うんですが、その前に、私はなぜこういう提案を、非難じゃなくてプレゼンでしていくかというと、実際こういうことがありました。

 ことしの五月に、私が建築基準法改正の質疑で、建物を施工しているときの監理や施工品質のずさんさを指摘した。そのときに、高層のマンションのバルコニーやベランダの危険な手すりの問題について問題提起をしました。これは釈迦に説法でございますけれども、現実にはそういう法律はないんですね。実際、私はその十階のベランダに出て、住民の方がさわってくださいと言いましたら、大臣、本当に十階のベランダがぐらぐらするわけですよ。十階ですよ。一階だっていろいろな問題があります。大臣もしくはお子さんやお孫さんが、お孫さんいるか、ちょっと私存じ上げなくて申しわけないんですが、十階のマンションに自分の孫が住んでいる、ぐらぐらした手すりでやっちゃ大変だぞという問題提起をしました。

 そうしましたら、このぐらぐらについては、時の山本さんから、手すり、さくの安全基準はどういうふうにあったらいいのかということを、今回の建築基準法の改正や第二弾の法令の見直しに際して、どういう措置がとれるか勉強したい、こういうふうにお答えいただきました。

 実を言うと、この局長の発言を受けて、先週の金曜日に、日本金属工事業協同組合が、本当に自主的に、局長の発言を受けて手すりの安全性についての検討委員会を開いたんです、初めて。そこで、やはり安全基準は現状はない、自社基準になっちゃっている、何の基準もなくて、組合がつくるべきじゃないかと。はたまた、安全を主張すると逆に受注のチャンスがなくなるとか、いろいろな問題が出ている。手すりは竹でも段ボールでもいいのか、こういう話まで出たと私はお聞きしています。さらに、次回については安全基準について具体的に深めて提案をしていきたいという話が出ています。いい話だと思います。

 要するに、こういうところで、現場で働いている方にとって、安全基準がなければ、手すりのぐらぐら度合い、これはもう釈迦に説法で御存じだと思いますけれども、そういうことをこの現場の、国交省の委員会でやったことによって、自主的に手すりについての安全を検討委員会を設けて、もう開いて始まっている。これはすばらしい一歩だと僕は思っています。

 そこで、話をもとに戻すと、現場の監理というのは本当に、榊さん、御自身のマンションが、優秀な日本一の建築士につくってもらった構造図、施工図、構造図ばっちりだ、証明もばっちりだ、ピア機関もオーケーだ、現場は木村建設に建てさせますか。これですよ。だから、現場の監理というのは最後の水漏れの、これまたさっきの建築士の証明と同じであります。

 そこで私が提起したいのは、まず一つは、構造設計を行った構造一級建築士に構造監理をさせたらいいじゃないですか。自分が図書でチェックしているんなら、設備設計をした一級建築士に設備を監理させる。その人が全部チェックしているから、現場に行くんです。そして、建築士の専門家のように分野別に専門の監理者を置いてみるのはどうかなと。つまり、自分でチェックした設計士が現場でもその部分をチェックしていく。この提案、実を言うと五月にもさせていただいています。これが僕の第一案であります。

 第二案は、指定検査機関、さっき言った、ちょっと人数足りないかもしれないを含めて、中間検査、完了検査は確かにやっていらっしゃいます。これは今までも自治体含めてきちっとやっていらっしゃいますが、プラス、抜き打ちでその方たちに指導していったらどうか。つまり、中間、完了検査以外で、例えばいきなり行ってコンクリートの納入のところを見たり、それからスリットがどうなっているか、構造図、施工図がどう違っているかというのをきちっと見ていく、この部分をやらせたらどうか、これが第二案であります。

 第三案は、アメリカの、これはなかなかちょっと距離感はあると思います、ゴルフでいくと五百四十ヤードみたいな感じだと思うんですけれども、いきなりすぐは難しいかなと。建築士を有する外郭団体に、アメリカのように現場に常駐して工事の施工を適切にチェックさせたらどうだと。私は、なぜこういう第三者的なチェックが必要かと今まで申し上げておりますのは、資料三の「耐震偽装見抜けるか」というのがあるんですよ。何か、別に僕は朝日さんの回し者じゃないんですがね。現実にはこういう形でいろいろな不安を抱いているわけですね。

 ですから、その中で、下から三段目の右から二行目、「また、東京都は施工段階の検査の重要性を強調し、「建築確認をすべて民間に任せてでも、行政は現場での検査を手厚くすべきだ」」、現場でチェックしろと提言。新制度で義務化される中間検査を複数回、徹底して行う制度を求めている。東京都ですね、これは。というのは、やはり東京都が多かったですからね、今まで見ても。こういうことも言われております。

 それと付して、もう一つは、資料四に出ております東京新聞の十一月十六日の夕刊であります。これに出ております。これもいい記事、いい内容、これは物すごくいい内容だと思います。

 国交省がお開きになっている指定確認検査機関を専従で監視する建築安全調査室、来年度にもつくっていく、これはすばらしいことだと思います。前大臣の置き土産か、現大臣がいろいろブラッシュアップをかけた、いずれにしてもすばらしい話だと思います。専門職で固める建築安全調査室、すべての国指定機関を年一回以上抜き打ちで監査し、建築確認した物件を抽出して審査内容を精査する。私は、これは大変評価できる部屋が来年できるなと非常に喜んでおります。

 この第三者機関が抜き打ちで監査するというのも、私に言わせてもらうと、榊さん、大臣、もう一歩広げていただいて現場で、申しわけないですが現場です、現場での監理に、ぜひこのような形の調査室の方々を含めて検討していただきたいというふうに思います。ぜひお答えいただきたいと思います。局長と大臣、お願いします。

冬柴国務大臣 一度、我々が提案しているこの法律でやらせてください。そして、その上で、今提案されたような問題につきましては、不断に見直しをしながらやってまいります。今まで、工事監理制度、同じ会社で社長が指名したから事故が起こったという問題は指摘されていない、私はそう思います。

 ただ、今回起こったような、木村建設のようなそういう問題は、もちろん大変な問題でございまして、ありますけれども、普通の企業体の中で、現場監理が不十分であったということからいろいろな事項を指摘されたということは寡聞にして聞かない。私どもは、そういうことも前提にしながら、今回の工事監理について相当厳しい規定をしたつもりでございます。したがいまして、一度これでやらせていただきたい、このように思うわけでございます。

榊政府参考人 委員の方から、工事監理に設計をした構造設計一級建築士をちゃんと活用したらどうかというお話です。趣旨としてはまことに賛成なんでございますが、実は、委員申し上げましたように、この構造一級建築士がそこまでやっていますと本当に人数が足りなくなる可能性がございまして、むしろ、この構造設計一級建築士をきちっと制度として位置づけて、ちゃんと設計ができるようにして、人数がふえた段階でそういったようなことを検討したいというふうに思います。

 そういう意味では、工事監理業務についてガイドラインみたいなものをつくって、こういった構造設計一級建築士の関与を促すといったような方向の検討を、いわばこの制度が根づいたときにそういうことがきちっとできるようなことを私ども検討いたしたいというふうに思っております。

 それから、現場監理というのはまことにそのとおりだと思いますが、例えば、設計施工している会社ということであれば、設計をしている設計士さん、それから工事を監理している設計士さん、それから建設業者の立場で工程監理、施工監理をしておられる建設業者の方、実は現場には二種類の方がおられると私ども思っています。そういう意味で、注文主の立場に立った設計監理をする方と建設業者の立場としての工程監理をする方がおられて、実はそれは一緒ではないのではないかというふうに思っておりまして、そういったような形で、現場の監理が重要だというのは、そのとおりだと思います。

 そういったことを考えれば、今回の改正とそれから本年の六月の改正では、中間検査、完了検査の申請書に関与した建築士の氏名を全部出せ、こういうふうになってございますし、三階建て以上の共同住宅についても中間検査の義務づけをいたしております。さらに、特定行政庁が地域の実情を勘案して工程後の中間検査の実施を促進しようというようなこともできる状態になっております。そして、私どもの大臣が定める指針に従いまして、中間検査、完了検査時に工事監理の状況を具体的に記載させようというふうなことを考えておりまして、そういった意味で、中間検査、完了検査の厳格な実施の徹底を図りたいというふうに思っております。

 そういったような形で、建築主事等が設計どおり施工しているかどうかという検査をするときに、こういう工程監理がなされていますよということをきちっと明らかになるような形をとりたいというふうに思っているところでございます。

 それから、私どもの予算要求、組織要求に大変お褒めいただいてありがたいところでございますが、実はオーケーというサインはまだ出ておりませんで、この十二月にならないと、お褒めいただいたチェックをする室といいますか組織ができるかどうかわかりませんので、それがうまくいきますようにこれからも全力で取り組みたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

下条委員 ありがとうございました。

 逆陳情いただきました。大臣のおっしゃっているとおりで、この法案については私は非常にいい法案だと思っておりますので、まだ賛否があるかもしれませんが、自分としては全然問題ないので、押し出していきたいなと思っております。

 ただ、もう一つ加えさせていただくと、要するに、住む方と建てる方が違う場合の利益のベクトルなんです。つまり、自分の家を建てる場合は、だれもが瑕疵をしたくない、だれもがチェックをいたします。だけれども、分譲だと建てた人が売っ払ってしまうわけであります。

 私は、もう極論で余り言いたくないんですが、あえて言えば、今この日本じゅうで、きっちり全部やっているか、一カ月以内に申告したら一切罪を問わないと言ったら、どのぐらい出てくるか。もしそれ以降に申告して欠陥や瑕疵があるものが見つかったら重罪に科すぞというふうに出した場合、一体どのぐらいの件数が出るか。胸に手を当てたいなと思っております。

 そういう意味では、分譲というのは、例えば悪い人がいた、中ぐらいの悪い人がいても、できるだけ安くつくって売り飛ばしてしまいたいわけです。そこで、この間の偽装の連鎖が生まれた事件が発覚して、それが丸のみになっちゃったわけです、検査機関も。それで今回の法案は、非常にこの五月以降、いい法案が出ていると思っていますけれども、その最後のチェック機関が、実を言うと工事監理の部分だと私は思います。

 そういう意味では、さっき局長は建築の方が落ちついてからとおっしゃっていますけれども、落ちつく間にどんどん物も建ってしまいますから、落ちつくというのは期間的に非常に難しくて、五年で落ちつくのか一カ月かよくわかりませんが、ぜひスピードアップをしていただいて、現場で、もし、榊さん、自分の親族が住むかもしれないんですよ、分譲に。そのときに自分は、つまり、お子さんやお嬢さんたちは建てた後しか見られないんですよ。現場のチェックというのは、あくまでも利益ベクトルが違った方、高く売りたい人たちがやるわけです。そこにメスをきちっと入れていくことが、このせっかくすばらしい法案を生かす、また、さらに飛躍させるいい滑走路になるというふうに思っていますので、ぜひ、落ちつく前に同時並行的に進めていただきたいと思いますし、このGメンのものは、党が反対しても私は賛成したいぐらいに大変拍手を送っていきたいというふうに思っておりますので、その方の陳情はお引き受けいたしたいと思っています。

 もう時間がどんどん迫っておりますので、次に移りたいと思います。

 次は、報酬基準であります。これは、一連の耐震偽装事件というのは、複数の建築士が構造計算書の偽装を行った。偽装を行った動機は何だったのかなと。姉歯元一級建築士の裁判では、仕事の数をこなすことによって設計料を稼ぎたかった、つまり、経済的な理由で、奥さんがぐあい悪くて、御冥福をお祈りしますけれども、亡くなられたりしています、構造計算書の偽装を行っていたということを裁判で言っております。

 つまり、その根になるのは、受託した構造設計の設計料が安い。それを補うために仕事の数をふやす、しかし、仕事の構造設計は専門的で高度な技術が求められるために時間がかかっちゃう、そこで、構造設計、特に構造計算をでたらめにしてスピードアップして構造計算書の偽装に走った。そのひもを解いていくと、ここだと思います。

 あともう一つは、構造設計士としてもっともっとスキルがあればもっとさばけたんじゃないかということが、プラスで僕は理由があると思っています。ですが、最も大きい動機は、やはり設計料報酬が少なかったということは否定できないと思います。

 そこで、現在の建築設計の報酬基準というのは、もう釈迦に説法でございますが、今から二十七年前、昭和五十四年の告示の一二〇六ですよ。これは、建築設計業務の標準的業務内容と業務量を示したものであると。これが制定されてから随分たって、随分IT化したり専門化になっている、つまり、業務量もふえている。これについて、まず、住宅局長の御意見をお伺いしたいと思います。

榊政府参考人 御指摘のように、この報酬基準は、昭和五十四年に建設省告示という形で出しております。

 趣旨としては、標準的な業務内容、業務量を示すことで、建築士事務所における業務の適正化を担保するとともに、建築主にとっても委託する設計業務、工事監理業務の報酬決定に際しての目安となるということを目的としたものでございますが、いかんせん、御指摘のように、実は二十七年たっておりまして、業務実態に合わなくなっているという指摘がございます。

 したがって、私どもとしては、実態調査を行った上で、報酬基準を見直したいというふうに考えているところでございます。

下条委員 ありがとうございます。

 今まで話したことで相当カバーされていると思いますけれども、現実問題として、その賃金水準というのを私も調べさせていただきました。厚労省の十七年の賃金構造基本統計調査によると、一級建築士の賃金水準は、四十四歳で五百四十万、医師と弁護士と比べると低い水準になっている。社労士、薬剤師とほぼ同程度。それに加えて、下請となっている構造設計や設備設計に携わる建築士は、契約関係上、弱い立場にあり、十分な報酬が得られていないという指摘もあります。

 そこで、ちょっとお手元にお配りしました資料二の方に、これもアーキテクチュアの二月のものでございます。私の大変好きな雑誌でございますけれども、別に雑誌の宣伝をしているわけじゃありませんが。これでいくと、この中に全部書いてございますけれども、先ほど最初の質問でちょっと言いましたけれども、平均年収は、勤務先別でいくと、構造設計事務所の賃金は、年収四百万未満が一四・二%、建築設計事務所の六%の二倍、建設会社の二・六%の五倍以上になっている。つまり、賃金水準は非常に低くて、その上、一日平均十一時間以上が三割になっている、そういう労務実態であります。

 私も、実際、いろいろ建築士さんに、いろいろな方に会った、いろいろな御意見ももう数限りなくちょうだいしました。またあした参考人がおいでになりますけれども、私も相当お会いして直接お話を聞きましたが、結局、彼らの本音は、仕事の受注がままにならない、継続的に受注するため、建築主や元請事務所の要求に従わざるを得ないんだ、耐震技術が進歩し、構造設計が複雑化する中で、意匠設計事務所の下請に追いやられて、次が問題です、長時間勤務と低所得に甘んじ、実務者が減少している。ここなんです、ポイントは。

 つまり、長時間やって、誉れ高い、年間、私の地元の松本でも、去年、ことしか、三人ぐらいかな、受かったのは。そのぐらい難しいです。それなのに、実際は下請に追いやられちゃって、十一時間でですよ、平均で四百万程度、そして、それによって実務者がどんどんどんどん減っちゃっている。ここがポイントなんです、局長。

 これが、さっき言った、今度の法案をならしていくときに、確かにあと二年あるから、三年の人もあと二年で五年になる。その証明の問題はあえて、さっき言いましたので言いませんけれども、実務者が減少しているということなんですよ。これが、これからこの建築士法を生かしていくのに非常に問題になってくるんじゃないかと私は思っております。

 また、ことしの五月の委員会質疑で、山本局長の答弁で、千葉の船橋市の湊町二丁目中央ビルと本町三丁目中央ビルの二つの物件について姉歯さんの払われた報酬額については、姉歯元建築士の報酬額については、社団法人の日本建築構造技術者協会に照会した、この二物件とも、通常の業務を前提に、通常の業務を想定した場合の設計料の目安よりかなり低目だという報告が協会からあった。

 つまり、ここなんですよ。だから、生活していくために、奥さんが病気で病院にかかっていくために、ではといって多くの仕事をとり、スキルが追いつかないから見せかけになり、まさに偽装のワン、ツー、スリーであります。こういうふうに絶対陥ってくる。そこに輪をかけるのは、言いにくいですけれども、五年間シリーズをやると、さらにそこに絞られた上、業務量が変わらなければ、六、七万件はそこにかぶさっていく。

 ですから、私は、今回のことは、ある意味では、非常にこれからの人たちにとっていい話だと思っているんです。つまり、いろいろな部分に目を、大体私も初めてですよ。マンションの現場に行って、レントゲンで中を見て、鉄筋が半分になっているなと、見てぞっとした話とか、さっき言った手すりの話もそうですが、そんなの、今までだれもが信用していたんです、当たり前だと思っていた。現場監理、そして報酬です。

 そこで、私は、この報酬については、最終的には人間です、やはり多い方がいいんですよ。そして、スキルが追いついていない人も、さっき言ったように、実務経験者はどんどん減っているんですから、この懸念を払拭するためにも、ぜひ報酬基準はアップして、劣悪な労働環境を改善すべきだと私は思っています。

 そこで、実を言うと、国交省や土木健保とかそれから厚生労働に私は聞きました。建築士さんたちの労働実態や保健状態はどうですかと聞いたんです。資料がない、これが回答でございます。もしそういうことを実態把握していなければ、今言いましたように、やはり言いにくいけれども、飛行機も、何とか症になって、レバーを機長が落として墜落した例もあったじゃないですか。それと同じように、どういうことをするかわからないです。いろいろな精神状態、建築士の精神状態や健康状態、そういう調査を入れるべきだということを提言していきたいと同時に、二十七年前の一二〇六の告示については、これから住む方、そして冬柴船長のもとで新しく出航する船出として、ぜひ前向きな答弁を局長と大臣からいただきたいというふうに思います。報酬基準についてお答えいただきたいと思います。

榊政府参考人 実は、報酬基準でございますけれども、用途別といいますか、工場、倉庫とか、学校、事務所だとか、戸建て住宅とか、そういった用途と、請負金額、工事費の金額でございますね、それに合わせて何人日というふうに決めております。これは、具体的な工事費の何%と書くと、ちょっと公取の関係もあって、おかしいんじゃないかというようなこともございまして、人日というふうに定めておるのが実態でございます。

 今回、改正をいたしたいと思っていますのは、委員の御指摘のようなことも踏まえまして、例えば、設計のことでございますと、意匠、計画、構造、設備といったような分野ごとに、工事金額じゃなくて延べ床面積に応じて報酬の基準を決めたらどうかと思っております。こういうふうにいたしますと、例えば、デザインについては何人日だねとか構造設計については何人日だねというふうな形が明確になってくると思います。

 そういたしますと、委員の御指摘だった構造設計について、下請になるとえらく安くたたかれちゃうんだというような話が、実はそちらの方で目安というものが出てまいりますので、そういったようなことが払拭されていくのではないかということを期待も込めまして、そういったような形に分けた形でやりたいというふうに思っております。

 それから、先ほど設計業務のCADみたいなこともふえたじゃないかという御指摘もございましたので、そういったCAD化とか調査業務の増大も踏まえて、業務量全体の見直しも行うように検討いたしたいというふうに思うところでございます。

冬柴国務大臣 御指摘のように、大変、二十七年といえば物価もそれから社会の状況も全部変わっているわけですから、業務実態に合っていないのではないかということはそのように思います。

 したがいまして、今後、所要の実態調査等を行った上で報酬基準を見直し、そのようなことを行いたいというふうに思います。

下条委員 ありがとうございます。大変前向きな御発言をいただきまして、ありがとうございます。

 その何人日というのを僕も見ましたけれども、よくわからなかったです。どの部分が何人日かなんて、すごく細かく分かれています。ですから、やはりそれによって隠された下請、孫請の部分についての搾りがきいているのかなという感じがいたしておりますので、ぜひ、もう二十七年たっておりますので、大臣おっしゃったように御検討いただきたいとお願い申し上げておきます。

 最後になりましたが、ちょっと最後にもう一問だけ質問させていただきたいと思います。

 お手元の資料三でございます。

 これは先ほど申し上げた「耐震偽装見抜けるか」という新聞記事でございますが、簡単に言えば、ここに書いてあることは、事実確認の審査で姉歯の耐震偽装を見逃した全国二十九の自治体のうち、偽装を確実に発見できるとしたのは、現状、六割の十七自治体にとどまっているということであります。つまり、残りの十二自治体については、国民の安全を守る責務から国として指導なり助言をこれからもしていくべきだというふうに思っています。

 というのは、私も五月のときにちょっと質疑の中で申し上げたのは、物すごく言いにくいですけれども、今度の姉歯についての発火点は民間から出た話であったと思います。つまり、私も厚生労働の方でおやじが大臣のときに秘書官をやっていたりして、一緒に役人さんと動きました。あのばかでかい組織だと、なかなかいろいろな意味で、中央、地方含めて、いろいろな話が出にくいということもあります。そういう意味では、そういう監督をするのが国の責務だと私は思っています。

 そういう意味では、自治法の問題も、弁護士の先生でありますので、もう、あえて釈迦に説法で申し上げませんが、特定行政庁に対する指導というのは非常に重要なことだというふうに思います。つまり、残りの四割以上のところにきちっと自信を持ってできるように整備しなさい、でなきゃ、結局また第二、第三、第五、第八か第五十か知りませんが、姉歯さんみたいなものが発生してくる。つまり、特定行政庁についての指導をもっともっと強化して、どうなんだとヒアリングをしながら進めていっていただきたいというふうに思います。それによって、まずはその見逃した自治体についてはさらにブラッシュアップをかけて、スピードアップできるんじゃないかというふうに思っております。

 この辺について、最後ちょっと大臣にお聞きしたいと思います。お願いしたいと思います。

冬柴国務大臣 ここに書かれてあるような事実であれば、本当に国民は不安であります。制度的にはピアチェックというような形をとることによりもう一度審査をきちっとして、法律に適合しているかどうかということを審査する機会を持つことにしておりますので、そこで見逃しても、次は発見することができるというふうに私は思います。

 しかしながら、何といっても特定行政庁が第一義的にそのものの建築確認あるいは竣工検査の責任を持つわけですから、そういうところを強化してまいりたいと思います。

下条委員 ありがとうございました。きょうは非常に前向きな御答弁をいただきました。

 私はいつも思うのは、常に法案は自分の子供に降りかかってくるということを前提に、ぜひこれからもブラッシュアップしていただきたいというふうに思います。

 時間がなくなりました。以上で終わります。ありがとうございました。

塩谷委員長 本会議散会後直ちに再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二十八分開議

塩谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。川内博史君。

川内委員 民主党の川内博史でございます。

 委員長、与野党の理事の先生方にお許しをいただきまして、本委員会で発言をさせていただく機会をいただきましたことにまず感謝を申し上げさせていただきたいと思います。ありがとうございます。

 さらに、冬柴大臣におかれましては、先ほどエレベーターで神崎前代表と私、御一緒させていただいたら、冬柴大臣を頼みますというふうに御指示を受けまして、よろしくお願いしますと言われても、どうよろしくお願いされるのかよくわからなかったんですが、とにかく、きょうは私の方がよろしくお願いをしたいというふうに思います。

 まず、本委員会にかかっております、法案の名称でいきますと建築士法等の一部を改正する法律案でございますけれども、この建築士法等の一部を改正する法律案が出てまいった経緯というのは、耐震偽装問題に端を発して、消費者にとって安心、安全な建築物を提供していくにはいかにすべきであるかということについて、社会資本整備審議会の建築分科会基本制度部会で議論をされ、そして取りまとめられたことを踏まえてこの法律案が出てまいったものというふうに理解してよろしいかということを、まず当局の方から確認をさせていただきたいと思います。

榊政府参考人 基本制度部会で御議論をいただきましたものを建築分科会の方で再度議論いただきまして、審議会の答申をいただきました上で、私どもの方で整理をして法律改正として出させていただいているものでございます。

川内委員 この社会資本整備審議会の報告書、答申を見ると、「建築物の安全性確保のための建築行政のあり方について」というタイトルになっております。そして、私が議事概要あるいは議事要旨を拝見させていただきましたところ、建築士法については、今までは建築士が業務独占をしていたけれども、実務実態に合わせて、専門家が専門家としての仕事をし、消費者に信頼をいただけるような建築行政のあり方を追求していくべきであるという意見が大勢を占めておったように思いますが、しかし、出てきた法律は、一級建築士の業務独占というものが全く変更が加えられていない、手が加えられていないという法律案になっております。

 そこで、まず基礎的な事実を確認させていただきますが、建築士という言葉を英語に訳すと何という単語になるかということを教えていただきたいと思います。

榊政府参考人 アーキテクトということかと思っております。

川内委員 今のはごまかしがありますね。法律上の建築士、私は法律の議論をしていますから、ここで言う、建築士法に使われる建築士という言葉は英語に訳すと何ですか、あるいは建築士法を英語に訳すと何ですかということをお答えください。

冬柴国務大臣 欧米諸国の多くでは、日本と異なりまして、意匠、構造、設備の各分野を包含した資格は存在をいたしておりません。したがいまして、日本の建築士法等を正確に英訳する場合には、Kenchikushiとローマ字で表記するということでございます。

川内委員 今冬柴大臣から御答弁がございましたが、欧米においては意匠、構造、設備を包含する資格はない、したがって、日本における法律上の建築士という言葉はケンチクシというしかないと。したがって、建築士法はザ・ケンチクシ・ローというふうに英語に訳すということで、局長、よろしいですよね。

榊政府参考人 そのようなことでございます。

川内委員 要するに、これは、私がなぜこんなことを申し上げるかというと、社会資本整備審議会の分科会に出されている「海外における建築設計等に関する資格制度について」という資料を見させていただくと、イギリス、フランス、アメリカは名称独占ではあるが業務独占ではないというようなことで説明をされていて、この建築士、そもそも業務独占をさせているというのは先進国の中では日本だけなんだなということをこの資料で気づいたからであります。

 では、そもそもなぜ業務独占をさせなければならないのかということについて御説明をいただきたいと思います。

榊政府参考人 日本は地震国ということもございますが、建築物と申しますのは、地震、火災、健康被害に対する安全性など、居住者、利用者の生命財産に大きくかかわる基礎的な生活基盤であるということから、確実にその安全性の確保が必要でございます。

 そのために、建築物につきまして、計画段階から施工段階を通じて、一定の知識、技能を有する専門的な技術者の関与を義務づけることによりまして、適法な建築が行われるようにするということが必要不可欠だというふうに考えております。

 このことから、建築士法におきましては、そのような技術者である建築士の業務と責任を明確化した上で、建築物の設計、工事監理につきまして業務独占を与えることとしておるということでございます。

川内委員 専門的な技術者という言葉をお使いになられましたが、建築士が意匠、構造、設備の三つの分野の専門的な技術者であるというふうに国土交通省は断言いたしますか。

榊政府参考人 建築士というのは、そういう業務を行うのが建築士ということでございます。

川内委員 いや、正確に御答弁をいただきたいのですが、法律上はそうなっているが、法律上は意匠、構造、設備について専門的な知見を有する者が建築士でなければならないが、しかし、実態としてそうなっていないから耐震偽装問題が起こり、それを契機として建築制度、建築行政全般についての見直しの議論をしたのであるということではないですか。

榊政府参考人 建築士の中には、意匠の得意な方、構造の得意な方、設備設計の得意な方がおられると思います。したがいまして、例えば意匠の得意な方は、どちらかというと構造についてちょっと知識が不足しておられるという方がいることも事実でございます。

 そういう意味で、一つの設計というのが、現状では、意匠の得意な方、構造の得意な方、設備の得意な方というような形で、いわば共同、協調体制の中でつくられているということではないかと思っております。

川内委員 建築士に元請をさせるということがそもそもの発想であったのではないかというふうに私は推測をするんですけれども。

 では、今回の法改正で、建築士について、構造については構造設計一級建築士、設備については設備設計一級建築士という資格的なものが設けられて、その方たちが法適合性証明をするということになっています。裏を返して言えば、今までは一級建築士であればどのような建物でも設計をすることができたわけでありますが、今後この改正法が施行された暁には、設備について申し上げれば、私の興味は設備ですが、設備設計一級建築士が法適合性証明を出さなければその書類は建築確認を通らないという意味において、今回の改正で一級建築士の業務権限は制限をされるという理解でよろしいでしょうか。

榊政府参考人 一級建築士の中から一定の実務経験、講習を受けた方が設備設計建築士という形になるということでございまして、一定規模以上の建築物に関しては、その人が設計するか、もしくはチェックをして記名押印しなければ確認申請が受理されないということでございますので、その限りにおいて言えば、今までいわば裸の一級建築士の方がいて、その方が設備設計の設計士を取られないということであれば、その方は一定規模以上のものはできないということに相なります。

川内委員 そうすると、最後に私が申し上げたように、一級建築士の業務権限が今回の改正によって制限をされるようになるということでよろしいですね。もう一回確認させてください。

榊政府参考人 ちょっと言葉足らずなところがございましたが、設備設計をしちゃいけないということではないんですね。設備設計をしてもいいんですが、設備設計建築士の確認、チェックをしてもらわないとだめだということですから、すべてそれができないということではありません。

川内委員 私も言葉足らずで済みません。

 建築確認の書類を受け付けてもらえないという意味において、建築確認を通らないという意味において、実態として業務権限が制限をされるという、実態としてという言葉をつけます、実態として業務権限が制限をされる法改正であるということでよろしいですね。

榊政府参考人 ちょっと実態としてという意味もよくわからないのですが……(川内委員「だから、建築確認を受け付けてもらえないという意味において」と呼ぶ)もらえないという意味においては、自分のなした仕事を自分だけでできなくなるという意味では、そういう意味かと思います。

川内委員 いや、これは私だけが言っていることではなくて、基本制度部会の座長をお務めになられた慶応大学の村上先生が、この審議会の答申がまとまった後、都内某所の講演会、これはオープンな講演会でございますが、講演会で今回の改正について、実質的に一級建築士の業務権限が制限をされるというおかしな法改正になっているのだということをみずから御指摘されていらっしゃったので、そこをちょっと確認させていただいたということでございます。

 では、そもそも、昭和二十五年、建築士法制定時は、建築基準法も含めて、建築物という言葉の定義の中に設備は入っていなかったのではないでしょうか。要するに、設備の設計については、建築士法制定時には建築士の業務権限の中に入っていなかったのではないですかということをお尋ねいたします。

榊政府参考人 基準法制定時の建築物の定義規定には、確かに建築設備を含むという定義規定はございませんでしたが、制定当初から、建築基準法に基づく建築物の中には建築設備を含むものだ、建築設備は建築物の一部をなすものという形で取り扱われていたところでございます。

川内委員 制定当初から建築物には建築設備を含むとして取り扱われていたということでありますが、それを証する、証明する文書はありますか、どこかに。

榊政府参考人 昭和三十四年に法律改正をいたしたわけですけれども、そのときの建築基準法の改正の要点というのが当時の「建築行政」というところに書かれております。

 そのところに、第二条「定義」というのがございまして、「一号の建築物中には従来建築設備を含むこととして扱つていたが、官公庁施設の建設等に関する法律二条に見るような例もあるので、この点を明確にし、更に建築物の一部かどうかあいまいであつた敷地については、建築物に含まぬこととし、」云々というふうに書いてございまして、こういったところの改正の要点というようなところではっきり、従来設備を含むこととして扱っていたがということで、明確にするというふうに書いてございます。

川内委員 今の御説明は、昭和三十四年に建築基準法が改正された後に出た解説書に記載をされている、しかも民間の雑誌の文書であって、公的な文書ではない。

 したがって、昭和二十五年から昭和三十四年の間に、建築物の中に建築設備を含むのだとする政府の文書は存在をしないのではないか、あるいは、当時そこに解釈の争いがあったからこそ、昭和三十四年の法改正時に、建築物の中にわざわざ建築設備を含むという文言を入れたのではないかというふうに私は思います。それは、すなわち、先ほどから私が申し上げているとおり、建築士の業務独占についてさまざまな議論が当時から展開をされていたのであろうということの一つの証左だと思います。

 今回の審議会の議論の中で、業務独占をある程度崩してでも消費者のために安心、安全な建物を提供していく、そのための建築行政が必要だという議論が大勢を占めていたというふうに思いますが、今回の審議会の議論の中で、業務独占を崩すのに反対だというふうな、建築にかかわるさまざまな団体から意見書が提出されておりますが、この業務独占を崩すのに反対だということを意見書を提出した団体はどこの団体でしょうか。

榊政府参考人 社会資本整備審議会の建築分科会基本制度部会では、建築士の資質向上の観点から、既存建築士の業務独占範囲の見直しについて議論がありました。これについて重立った団体から反対があったように承知をいたしております。

 それから、建築士の専門分化に関しまして、改正をお願いしておりますこの構造設計、設備設計一級建築士の制度の創設のほかに、建築士の指示のもとで構造設計、設備設計を行う専門資格の創設とか、専門建築士事務所制度の創設といった議論がございましたが、これらは、いずれも業務独占範囲を現行のままとしているということでございまして、私の方から、だれそれの連合会が反対しているという名前はちょっと差し控えたいとは思いますが、そういうようなことでございます。

川内委員 いや、審議会というのは政策決定の透明性を確保するために設けられているものであって、それぞれの利害関係者がそれぞれの利害を代表して意見を言うというのは、ある意味当然のことですよね。私は、それをいけないことだなんと言うつもりはさらさらございません。だから、なぜ、建築士法の中の根幹である、そしてまた今回大きな議論であった業務独占について、それを見直すことが行われなかったのかということの事実の経過をしっかりと把握するために御答弁をいただきたいのですが、これは、基本制度部会に提出をされた各業界団体からの意見書をまとめた資料でございます。

 これを見ますと、日本建築士会連合会が法による一律の切り分けは不可能というふうに言っていて、あとの団体は、専門分野ごとに切り分けられるかということに関して、すべて可能であるというふうに答えています。したがって、日本建築士会連合会が業務独占を崩すのにただ一団体のみ反対をしていたということでよろしいですね。

榊政府参考人 そのほかにもございます。

川内委員 いや、全然よくわからないです。私は一生懸命いろいろな資料を見たんですけれども。

榊政府参考人 日本建築士事務所協会連合会につきましても、中身に関して詳細に見させていただければ、反対というふうに読めると思いますが。

川内委員 いずれにしても、日本建築士会連合会、日本建築士事務所協会連合会、どちらにしても、一級建築士の皆さん方が自分たちの業務権限を削られることに反対をした、審議会の取りまとめはそのとおりになっていったということが、今明らかになったのではないかというふうに思います。

 さらに、冬柴大臣、この基本制度部会の取りまとめに当たって非常に私が不可解だなと思うのは、構造については、あるいは意匠の部分については、利害関係者がこの審議会のメンバーとして入っている。しかし、設備については、基本制度部会の中に全然メンバーとして入れられていないんですね。

 七月三十一日の基本制度部会の委員の発言としては、部会長御自身が、部会には建築設備の関係者が入っていないということを問題であるというふうに言い、ほかのさまざまな委員が、専門分野を建築士だけですべてできることになっているが、実態は専門分化が大きく進んでいる、建築士法がそれについていっていないであるとか、専門建築士の創設には賛成だが、一級建築士を前提と考えるのはどうだろうかというような御発言とか、建築学科を出て設備分野に進む人間は多くない、試験などで建築一般の素養を確認すれば一級建築士をベースにする必要はない、詳細な検討が必要だという、取りまとめに向かって、設備の人たちがこの委員会に入っていないということが委員の間で大変大きな問題になっているわけです。

 私は、ここで事務当局にお伺いをしたいのは、なぜ、基本制度部会のメンバーを選出するに当たって、先ほど意匠、構造、設備という建築の三分野があるとみずからおっしゃるわけですから、その設備について、代表者を基本制度部会のメンバーとしなかったのかということを御答弁いただきたいと思います。

榊政府参考人 今回の制度の改正の発端は、姉歯事件を初めといたします構造計算書偽装問題への対応を審議するということで始まりました。

 したがいまして、社会資本整備審議会の建築分科会に設置いたしました基本制度部会におきまして、中で、業に携わっている方という意味では、日本建築士会連合会、日本建築士事務所協会連合会といった関係団体の代表者のほかに、構造計算にかかわるテーマであるため、特に社団法人日本建築構造技術者協会の代表者に御参画をいただいておるというのが実態でございまして、御指摘のように設備関係の団体の御参画は実はいただいていないところでございます。

 ただ、基本制度部会におきます建築設計の専門分化の議論と並行いたしまして、建築設備技術者協会ですとか日本設備設計事務所協会といった設備関係団体とも、適宜、情報交換、意見交換を行ってまいりました。ことしの五月から九月の二十日ぐらいまででございましょうか、設備事務所協会さんとは十回ぐらいにわたって協議いたしておりますし、設備の六団体というところからも提言をいただいております。

 そういった意味で、設備関係の学会、それから施工会社の団体を含めた建築設備六団体といったようなところからの意見書も基本制度部会に、こういう意見が出ているということの意見書も資料として提出しております。答申案の御意見の募集につきましても、設備の関係者から数多くの意見をいただいておりまして、それを踏まえた上で、基本制度部会で十分に御議論いただいた上で答申を取りまとめていただいているということでございます。

川内委員 いや、私は、意見を聞いていないのはなぜかということを聞いているのではなく、意見はそれは聞いていると思います。私も確認しています。しかし、基本制度部会のメンバーというのは議決権を持つ、要するに、この答申でいいかどうかということについて賛否を表明する権利を持っているわけです。しかし、建築設備の団体の方たちは、意見は言わせてもらったが、しかし答申の決定には参画していないという、それが問題なのではないですかということを申し上げているわけであります。

 なぜかならば、構造設計をされるのは一級建築士の方が大部分である、そしてまた、もともと意匠を設計するのは建築士の方々である、そしてまた国土交通省の建築指導課の方たちも一級建築士が中心であるということを考えれば、しかし、現場の設備の実務は建築設備士の方たちが大部分を担っているんだということは、この審議会の議論の中でも委員の先生方が口々におっしゃっていらっしゃるわけで、その方たちの参画を得なかったというのはなぜですか、なぜ外したんですかということをお尋ねしているんです。

榊政府参考人 議決権の話が出ましたので、ちょっと御答弁させていただきますが、実は、日本建築士会連合会とか建築士事務所協会連合会の代表者という方は専門委員で出ておられますので、そういった意味での議決権はございません。

 ただ、先生の御指摘のように、参画していないということは実は事実でございまして、それはなぜかと申し上げますと、先ほども申し上げましたけれども、構造計算書偽装問題への対応を議論していただくために実はこの基本制度部会を開いて、そのためにどういう法制度がいいかということを議論していただこうということで始まった部会でございます。その議論の過程の中から、構造だけじゃなくて設備も、こういうふうになりましたので、その間、それに関して設備の専門の方からいろいろ御意見を伺って、意見書も提出していただいてというのが事実上の経過でございます。

川内委員 専門委員には議決権はないと。建築士会連合会の皆さんや日本建築士事務所協会連合会の皆さんが議決権はないということを、基本制度部会が始まるときに御説明されましたか。

榊政府参考人 始まりましたとき私は住宅局長ではございませんので、今すぐちょっと確認ができません。

川内委員 大臣、私がなぜこんなことを言うかというと、建築士法二十条の四項で「国土交通大臣が定める資格を有する者」という形で、建築設備士というのは法的に位置づけられている、建築士法の中で位置づけられている方たちである。それで、設備設計についての実態を担っている。

 しかし、この基本制度部会にメンバーとして入っていないし、結果として、議論が一級建築士をベースにした議論になってしまったということに関して、私は、消費者にとって何が安心、安全なのかというと、消費者は、私も含めてですが、建築物については素人であります、設計についても素人であります。そして、その素人である私が発注するときに、この人が設計しているんだな、この人が仕事をしているんだなということがしっかり見えるということが大事なことであって、したがって、今回の法改正でいえば、構造設計の部分については私はよしとしますが、設備の部分については相変わらず実際に図面をかく人たちが後ろに隠れてしまうのではないか、見えなくなる構造自体は変わらないのではないかという危惧を持つからでございます。

 ここで、改めて国土交通省の事務方の皆さんに要求をしたいというふうに思うんですけれども、私は、この議事要旨は読ませていただきましたが、議事録をぜひ詳細に点検させていただきたいというふうに思っておりますので、基本制度部会の議事録の公開をしていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

榊政府参考人 実は、建築分科会の議事録につきましては、内容につきまして委員の確認を得た後、発言者の氏名を除いて広報並びにインターネットにおいて公開いたしております。

 ただ、分科会に設置します各部会におきましては、同分科会において決定された取り決めに従いまして、原則、審議をプレスに公開した上で、議事録については議事要旨の形で公開するという形になっております。

 どちらかと申し上げますと、分科会の方で決定された取り決めに従いましてこういうことをやっておりますので、私どもの方から、特に将来に向けて御検討をということであれば、持ち帰り、審議会の分科会にもお諮りすることも可能でございますけれども、過去のものにつきまして御指摘を受けても、若干、私どもの限りで対応しかねるというところがあるのでございます。

川内委員 住宅局長、御存じないのかもしれませんが、平成十一年四月二十七日閣議決定文書でありますが、審議会等の整理合理化に関する基本的計画という閣議決定がございます。

 この中に、この「審議会等」の中には分科会、部会、すべて含まれるわけでございますが、審議会の公開という欄がございまして、「1審議会等の委員の氏名等については、あらかじめ又は事後速やかに公表する。 2会議又は議事録を速やかに公開することを原則とし、議事内容の透明性を確保する。」この原則の例外は何かというと、「特段の理由により会議及び議事録を非公開とする場合には、その理由を明示するとともに、議事要旨を公開するものとする。」というふうに書いてございます。

 通常、議事録を公開できないという場合は、議事録を公開することにより当事者または第三者の権利、利益や公共の利益を害するおそれがある場合に限られるわけであって、本基本制度部会における議事録というのは閣議決定に従って公開をされるべきものであるというふうに思いますが、もう一度御答弁いただけますか。

榊政府参考人 その平成十一年の決定を踏まえた上で、実は、平成十三年の七月の十一日に「建築分科会の運営について」ということで議事について決定がなされております。

 そのときの議論で大変申しわけないんですけれども、「分科会に設置する部会は、分科会に準じてプレスを除き一般には非公開とする。ただし、」というふうになっておりまして、もちろん、そういうようなことがございますので、委員の御指摘も私はよくわかるんですが、私から、ではこうしますというふうにここで確定的なことは申し上げられないということでございます。

川内委員 ちょっと今私は奇妙な感じを受けているのですが、閣議決定で審議会等の議事録については速やかに公開するということを決めておいて、国土交通省の局のレベルで、審議会の部会の議論については、議事録については非公開であるということを決められる何か根拠がありますか。大臣、おかしいと思いませんか。

榊政府参考人 恐らく、この部会では、先ほど申し上げましたようないろいろな業界団体の方が入っておられて、いわば、だれそれが反対をするとか賛成をするとか赤裸々なものが出てくると、本当の意味の真摯な議論が問題があるんじゃないかということもあって、こういうようなことになっているのではないかと私としては推測をいたしているところでございます。

川内委員 例えば、文部科学省が設置している文化審議会の法制問題小委員会という審議会がありますけれども、ここなどは、著作権法というのはむちゃくちゃ利害が絡む法律ですから、しかし、利害関係者が堂々と名前を出して議論されていますよ。

 そもそも、法律を制定したり改廃したりするというのは利害が絡むわけですから、利害関係者はみずからの利害を代表して発言するというのはある意味当然のことなんですから、そんなことをよくないとか、なぜあなたは自分の利益だけのことを言うんだ、それは当然なんですよ。自分の利益を図るというのは、その方たちにとっては当然のことなんです。それを悪いなんて言わない。

 だから、全体の議事の流れを議事録で確認し、どうであったのかという政策決定の透明性を確保するという意味において、議事録の公開が必要なのではないですか。しかも、これは閣議決定文書ですからね。それを国土交通省のレベルで、いや、それはやりませんというふうに言うというのは、ある意味、これは閣議決定に違反しているということにもなるんじゃないかなというふうに思いますが、国土交通大臣、何か御所見がありますか。

冬柴国務大臣 閣議決定の例外規定に基づいて、分科会そのものがこのように決めたものだというふうに思います。

 この中で「建築分科会の議事」という項目がありまして、その中には、「建築分科会の議事は、プレスを除いて一般には非公開とする。 また、議事録については、内容について委員の確認を得たのち、発言者氏名を除いて国土交通大臣官房広報課及びインターネットにおいて公開することとする。」というような、これは、先ほど挙げられた閣議決定の後に、その存在も十分認識をしながら、その例外規定に基づいてこのような決定をして、扱いをしているものであると承知をいたしております。

川内委員 大臣、ぜひ国土交通省の中でもう一度御検討いただきたいというふうに思いますが、この原則の例外の部分は、「ただし、行政処分、不服審査、試験等に関する事務を行う審議会等で、会議、議事録又は議事要旨を公開することにより当事者又は第三者の権利、利益や公共の利益を害するおそれがある場合は会議、議事録又は議事要旨の全部又は一部を非公開とすることができる。」というふうに閣議決定に書いてございますので、私は、例外規定をそこで援用されることについてはやや無理があるのではないかなというふうに思いますし、国民の皆さんから見て、今回の建築士法の改正、あるいは建築行政の信頼性を確保していくという意味においても、いかなる議論が行われたのかということについてしっかりと公開をしていただきたいということを再度改めて申し上げておきたいというふうに思います。

 それでは、次の論点に移らせていただきたいと思いますが、今回の改正案の構成として、構造も設備も全く同じ法律の構成になっております。そもそも、構造と設備では、実務の実態、業務の実態、すなわち、先ほどから申し上げているとおり、構造については一級建築士の皆さんが計算をされているが、しかし、設備については、建築士法二十条四項に定められている建築設備士の皆さんが実態としては業務の大半を担っている、実務実態が違うということは国土交通省としてはお認めになられますか。

冬柴国務大臣 二十条四項を挙げられましたので、そこに書かれていることは、建築設備士は、建築士法上、建築士が設計を行う場合に、建築設備の計画について助言を行い、建築設備の計画内容について不都合な点を指摘する資格者として位置づけられております。建築士が建築設備士に意見を聞いた場合には、設計図書や工事監理報告書においてその旨を明らかにすることとされておりまして、今回の改正案によって今述べた問題は全く径庭がない、変更されていないわけでございます。従来と全く同一でございます。

 建築物の設計は、意匠設計、構造設計、設備設計のそれぞれが密接に関係しておりまして、相互に連携して設計を行う必要があることから、専門分化している構造設計、設備設計を適切に行うためには建築物の設計全般についての知識及び技能が不可欠であるという観点に立っているわけでございます。

 したがいまして、建築設備士は、そういう観点では、今言った意匠、構造、設備、そういうものを一体として全体的な知識を持っていられるということではありませんので、別異なものであるという扱いをしているわけでございます。

川内委員 それでは、今大臣から、建築設備士については法律上何らの変更も加えられていないのであるという御答弁があったわけでございますが、他方、これは第六回基本制度部会議事概要の中に、事務局、要するに国土交通省建築指導課の説明として、「設備については、現行法では建築設備の設計について意見を言うことができる建築設備士という資格があり、専門分化により設備設計部分をどのように調整できるかについては検討課題と考えている。」というふうに事務局として御説明をされていらっしゃいます。

 この検討課題と考えている建築設備の部分について、法的には何らの変更は今回加えられていない。しかし、先ほど私が申し上げたとおり、設備設計一級建築士の制度を導入することによって、一級建築士の業務権限は、ある一定以上の建物については建築確認を法適合性証明がなければ受け付けてもらえないという意味において、ある一定の制限を受けるということになっている。その制度の改正の中で、建築設備士をどのように今後国土交通省として位置づけていこうとするのかということについて、ちょっと御説明をいただきたいというふうに思います。

榊政府参考人 大臣からも申し上げましたように、今の建築設備士というのは、そういう意味でいわば助言をするという立場でございますし、具体に一級建築士の下で現在やっておられる仕事自体が、いわば設備設計の補助的な事務を委託されてやっているんだという認識のもとでおりますので、今回の法律改正がございましても、今までと同じように業務を適正にやっていただきたいというふうに考えておるところでございます。

川内委員 いや、私は、国土交通省さんが「設備設計部分をどのように調整できるかについては検討課題と考えている。」というふうに基本制度部会の中でおっしゃっていらっしゃるので、今後どのようにされていくのかなということをお尋ねしているわけでございます。

榊政府参考人 先ほど大臣から申し上げましたように、建築物の設計自体は、意匠設計、構造設計、設備設計とそれぞれが密接に関連をしておりまして、相互に連携をして設計を行う必要があるということから、専門分化しております構造設計、設備設計を適切に行うためには建築物の設計全般についての知識及び技能が不可欠だということから、一級建築士の中から設備分野において専門的な能力を有する建築士を設備設計一級建築士という形で選別をして、一定規模以上の建築物の設備設計に関与させたということでございます。

 それで、いわば建築士ではない専門資格の場合に、あくまで業務の補助をしておるということでございますので、建築士法で言う設計者にはなり得ないのではないかというようなことがございまして、今言ったような整理になっておるところでございます。

川内委員 いや、ただ、局長、実は国土交通省さんが所管しているというか、外郭団体と言ってもいいと思いますが、建築技術教育普及センターという団体がございます。この団体が中心となって、日本設備設計事務所協会や建築設備技術者協会の方たちが「建築設備設計・工事監理業務の実状に関する調査」を二〇〇二年に実施し、二〇〇二年六月にその結果を公表されました。その中には、「建築士が建築設備士から意見を聴取した場合に行う設計図書等への表示は、全般的に低調で徹底されていない。」ということが報告をされていたりするわけですね。建築士法二十条四項で定められていることをしっかりやっていないということを報告している。

 これは国土交通省の外郭団体が報告していることですから、国土交通省がそう言っているというふうにみなしてもいいというふうに思うんですけれども、しかし、これらのことを放置して、ただ単に、今回法改正してよくなりますよというのは私はちょっと違うんじゃないですかと。私が言う検討課題というのは、こういうところをどうしていかれるおつもりなんですかということをお聞きしているんです。

冬柴国務大臣 法に定められていることが一部履行されていないということは甚だ残念なことでありますので、私の方は、地方公共団体とか関係団体に対し改めて周知徹底を図りますとともに、行政指導によって是正をさせたいというふうに思います。そういうことを意見を聞けば、聞いたということをきちっと書くべきである、法の規定どおりにしていただくということであります。

川内委員 局長から何か補足することはありますか。もっとこういうこともやるみたいな。

榊政府参考人 大臣の答弁のとおりでございます。

 本当に、せっかく意見を言ったにもかかわらずそういうことが明らかにされないというのは、だれが業務を行ったかということ自体が不明瞭でございますし、建築設備の適正な設計に支障を来すということにもなりかねませんので、今般の改正にあわせて、公共団体、関係団体に対して改めて周知徹底方をやりたいというふうに思います。

川内委員 大臣の答弁は非常に前向きで、行政指導という言葉が含まれておりました。今の局長の御答弁は周知徹底というところまでしかなくて、周知徹底は今までもやっているわけですよ。それをさらに実効力をあらしめるものにするには、今大臣がおっしゃられたように行政指導という言葉が必要ではないか。同じ言葉を言ってください。

榊政府参考人 大臣の申されたとおり、設計図書におきましてその旨を明らかにしないといったような、いわば悪質なケースだろうと思いますが、行政指導によりまして是正を促したいというふうに考えております。

川内委員 大臣、消費者にとって建築物というのは、外側は見えますよね。ああ、きれいだなとか、大きい建物だなとか、いい建物だなという、外側は見える。しかし、設備にしても構造にしても中に入っている、中に隠れているものであって、消費者からはなかなか見えないし、これはもうプロフェッショナルを信頼するしかない、信じるしかない。それで、だれを信じたらいいのかということに関して、実際に図面を引いた人、実際に施工をした人、そして実際に工事監理をした人がきちんとわかって、ああ、この人が設計をしているんなら大丈夫だなというような信頼関係というものが建築関係の方々と消費者との間に結ばれていくということが今回の法改正の目的であろうというふうに思うんですね。

 ところが、先ほどから冒頭の部分で繰り返し繰り返し御指摘を申し上げましたけれども、諸外国においては、建築というのはそれぞれのプロフェッショナルがいて、そして建築家が最後に統合するという法の仕組みになっている。しかし日本だけは、建築士はすべての分野のプロフェッショナルである、スペシャリストであるという位置づけで、何でも知っているという位置づけで、法律的にはですよ、仕事ができるようになっている。

 しかし、実態はそうはなっていないからさまざまな問題が起きてきたという中で、基本制度部会で議論が行われ、建築士の業務独占については考え直してもいいのではないかということが私は議論の大勢だったのではないかなと。議事概要しか読んでいませんから、議事録を公開していただいたらその辺もしっかり読ませていただこうというふうに思いますが。

 そういう中で、今後はやはり、さらにこの建築行政を一歩先に進めていくためにも、建築士の業務独占というものが果たして国際的に見て整合のとれたものであるのかどうか。これからさまざまな資格が国際的にオーバーラップしてくるようになるわけですから、そういう不断の見直しというものをしていく中で、消費者に対する安心、安全というものを高めていく御努力をしていただきたいというふうに思いますが、最後に大臣の、この建築士制度のさらなるブラッシュアップというか見直しに向けた御決意を承って、私の質問を終えたいと思います。

冬柴国務大臣 建築士という大変な資格を持った人が構造計算において偽装を行ったということは全く驚きであり、本当に、そういう職業倫理というか使命というか、そういうものに欠けた人が出たことはまことに残念で、また、そういうものを担当する官庁としてざんきにたえないところでございます。

 そういう意味で、今回、建築士法の改正を行いまして、そういうことが二度と再び起こらないような仕組みを今つくり上げたところでございます。

 この独占の問題でございますけれども、そういう考え方は一つはあるだろうと思います。しかしながら、先ほど局長も申しましたように、我が国の自然あるいは地形というものは非常に厳しいものがあります。大きな地震もあります。そういう意味で、そういうものをつくり上げる、担当する人たちが、やはり格別の知識経験、そしてまたそれを認証するだけの試験、研修を受けた人たちに独占をさせるということが私は必要ではないか、このように現在思っております。

 そのような川内委員の御意見を拝聴しながら、思い直すところがあるのかもう一度考えますが、現在のところは、独占をさせる方が国民の安全、安心という意味では妥当ではないかというふうに思っております。

川内委員 あと一分ぐらい時間が残っておりますので。

 現在はそう思う、業務独占が適当であるというふうに考えている、しかし、きょうの質疑を踏まえて考えてみたいと。考えてみたいというところに私は期待をかけさせていただきたいというふうに思います。

 というのは、先ほどから繰り返し申し上げているとおり、意匠、構造、設備の専門分化が進んでいて、それぞれの専門家が協力して、コラボレートして一つのいいものをつくっていく、そしてそれが消費者にとってもしっかりと目に見える形であるということを私は思いますし、また今後も折に触れて大臣とそのような議論をさせていただいてまいりたいというふうに思います。

 終わらせていただきます。ありがとうございます。

塩谷委員長 次に、小宮山泰子君。

小宮山(泰)委員 民主党の小宮山泰子でございます。

 建築士法の改正につきまして質問させていただきます。

 まず、昨年、私も二回目の当選をさせていただきまして、その中で国土交通委員会に入らせていただいたときには、本当に、まちづくりであったり、県土の健全なる、均衡ある発展のため、夢のある質問をしていきたい、そういう思いを持っていたやさきに、この耐震偽造の問題が起き、そして、北側前大臣もそうですが、委員長や各、自民党、もちろん民主党もそうですけれども、筆頭理事を初め理事さんや委員の皆さん、本当に熱心にこの問題、議論を重ねてまいりました。

 建築基準法の改正、そしてこの建築士法の改正と今続いているわけでありますけれども、本当の意味で、この問題、根が深いと思いますし、また、現実的にはすべてが解明されたわけではないんじゃないかという思い、今、釈然としない思いを持った状態ではあります。

 それは一つには、姉歯氏というんでしょうか、元建築士が下請をしていた、その前の方の、大もとの方が途中でお亡くなりになられている。そういった意味では、その元請をした方とか、やはりそういったところの問題も、もっと本当は参考人としてお話を聞いてみたかった。そして何よりも、コンサルタントの問題がありましたが、あそこは全くもって罪に問われることなくいってしまった。

 しかし、それぞれが自分の利益のため、今、建設業界はなかなか、国の経済状況はよくなったと言いますけれども、結局、その中においては、本当に地方、苦しい中で、それぞれが自分の思いやいろいろな利害関係を思い、直接の共謀はしたわけではないが、結果として、どこも、悪いところ悪いところがすべて制度の中で出てきて、あの問題につながったんだという思いをしております。

 そこで、非常にこの問題、今回、先ほど大臣もおっしゃっておりましたけれども、こういった問題が二度と起こらないために、この建築士法、最後にされるんだというようなこともありました。本当にそうなのかという思い、そして、この建築士法が改正されることによっての影響ということを念頭に置きながら、質問をしていきたいと思います。

 まず、朝からずっと出ておりますけれども、この建築設計という中に意匠、構造、設備、その三分野があるということは今までの答弁の中でも何度も繰り返されております。この試験に合格するということも大変難しい、登竜門でもありますし。けれども、やはり実務経験がしっかりしていること、今までのこの一年間の参考人などのお話を聞いていても、やはり現場に出ているということが一番の知識であり経験則である、その中から培われたものというのが信頼になっていくと思うということを何度も聞いております。

 そういった中において、今度の建築士法の中において、やはり受験資格というものがネックになってくるのではないか。もちろん実務経験ということもあります、そして今までの資格の問題もありますが、その中において、設備設計の分野でありますけれども、この分野で今まで設備の資格を持っていた方というのが一級建築士になっていってもやはりいいと思っておりますし、今現在持っている方がその団体の資格者の中でも約一割ぐらいはいるということがはっきりはしています。それでは、あとの九割の方はどうなるのかということを考えていきますと、やはりこういったプロフェッショナルの方がこれからももっと専門性を生かして、そして専門的な知識を持った上で仕事ができるようになっていく、そういった受験資格というものが与えられてもしかるべきなのではないかと思っております。

 その点に関しまして、また二級建築士、木造建築士の方々もいらっしゃいます。現場に出ていらっしゃる。そして、そういった意味においては、こういった方々にもどんどん門戸が開かれていく、もちろん今でも開かれておりますが、この点に関しまして現状としてどうなっているのか。それと、今後、この建築士受験資格、建築士法が改正されたときにどうなっていくのかという点をお答えください。

榊政府参考人 まず、現行の学歴要件ですけれども、例えば、建築学科を卒業すればいいとか、都市工学科を卒業すればいいというような、いわば所定の学科卒業主義をとっております。それから、そういう意味で、大学を卒業された方については、二年間の実務経験で一級建築士が受けられる、こういう形になっておるところでございます。

小宮山(泰)委員 それは現行のことだと思うんですが、電気設備とかそういった方々に関しては、この法律改正では今後どうなるんでしょうか。

榊政府参考人 今度、学歴要件を、指定科目の単位取得というので科目主義に変えたいと思っております。その中には、建築の構造、建築の設備、建築計画、建築施工、それから法規というような、いわば五分野ぐらいの分野からバランスよく全般的に科目を、卒業していただくということですから、そういう科目を指定するということになります。

 したがいまして、今後の議論ではございますが、今まで、例えば電気学科を卒業しておられると、そのままではなかなか認められないということになるんですが、電気学科の方が、すぐ、いわば電気学科にいると設備の関係は多分取得されていると思いますので、その在籍中に建築の設備ですとか計画に関するような科目をとっていただければ、受験資格ができるものだというふうに考えております。

小宮山(泰)委員 それでは、その問題に続いて聞きたいんですけれども、それではどういったところで、大抵の実務に入ってしまっている方は、中卒、高卒、多くは高卒、専門校とか出ていらっしゃると思うんですが、さらにステップアップをしていきたい、そう思ったときには、大学に入り直すべきなのか、それとも専門校で取るのか、どういった場所でそういった資格を取っていくということを想定されていますか。

榊政府参考人 今現在、二級建築士の受験資格の場合は、学歴がない場合には七年以上の実務経験が必要だということになっております。それは、四年間の大学の教育プラス二年間の実務経験というようなこともありまして、二級建築士の受験資格というのは学歴がない場合に七年以上必要、こういうふうになっておるところでございます。

 多分、今まで全く関連しないような実務経験を持っておられる方については、その実務経験について考える余地はちょっと少ないかなというふうに思っております。

 ところが、先ほど川内議員が御議論になっていたような建築設備士に関して言えば、ある意味で設備設計に関連するような業務をやっておられますので、そういう方が例えば一級建築士を受けるといったときに実務経験をどうするかというようなことについては、今後の検討課題だなというふうに思っておるところでございます。

小宮山(泰)委員 今後の検討課題だなというか、省令で定めることとかが結構この法案は多いんですよね。特に、いろいろなものがまだまだ決まっていないというところもちょっと気になるところではあるんですが。

 ぜひそういう意味では、実務をした方、大体、本数が少ないのは見ればわかるよとよく現場の方はおっしゃいます。そういった意味においても、やはりそういった現場で長年しっかりと実務を踏まれた方、経験を積んだ方というのがさらに次の段階に進める、広げられるというのは、ある意味、国の方でも生涯学習とかいろいろなことをやっていますけれども、やはりそういった、今特に勝ち組、負け組という言葉、私はこれは好きじゃないんですけれども、格差社会という中においては、一たん学歴が下がってしまっているとか、そういう資格が下がってしまうと、その次に上がることがなかなか難しくなっていく。この分野、やはり技術があってこその分野だと思います。ぜひ、そういう人たちにも門戸を広げていただきたい。

 特に、私の友達でも、高校生のときに大学受験をしたときにわからなかった問題も、実務に出てきて調べると、実際、後からもう一回また別の大学に入ろうとしたときに勉強したら、何であのときにあんなにわからなかったのかなとよく言います。それはなぜかといえば、やはり実務をして経験を積んだからこそ、その問題というものが非常に理解がしやすくなった。やはり社会人の経験、そして実務の経験というのを生かせるような、そういう制度設計にしていただきたいと思います。

 この点に関して、ぜひ大臣、ちょっと御意見があれば伺ってもよろしいですか。

冬柴国務大臣 学歴と実務の期間を相応して、学歴が大学の場合には先ほど言ったように実務期間が二年とか、短期大学の場合は三年とか、高等学校の場合は四年とか、いろいろなものがメニューがそろえられております。

 今局長が答弁しましたのは、全く七年間の実務だけという人が、これは二級建築士ですけれども、それは受ける場合にどうかとか、それからあるいは設備士、そういう人たちが一級建築士を受けようという場合にどうかという問題はまだ残されていますけれども、それ以前の問題について私が言ったことは、きっちり今法律で規定されております。したがいまして、学歴と実務修習期間との相応というのは明らかにされております。

小宮山(泰)委員 これだけ専門性を持たせていくという中、また、最初にこの設計士の法案がつくられたときとは随分違って、いろいろな意味で構造が複雑化し、そして専門性が必要になったという意味においては、本当に各団体さんも恐らく望んでいたことだろうし、これが一つの地位確立になっていくことによって、今までのダンピング競争のようなそういったことにならないためにも、ぜひ実際に働いていた方たちにも門戸を広げるような、そういう構造設計一級建築士と設備設計一級建築士という新たな制度であります、そういう方向にしていただきたいと思いますので、大臣、よろしくお願いいたします。大きくうなずいていただいて、ありがとうございます。

 さて、この法案の中で、非常に私自身不思議に思っているというか疑問に、まだまだこの法案、完成されたものではないなという思いがしております。それはどういう点かといいますと、これも随分朝から出ておりますけれども、建築士会への加入という問題であります。

 この点に関して、現在加入している方々というのは全体で三二%、一級建築士で三五・九%、二級建築士で一八・四%という状態であります。

 つまり、弁護士さん行政書士さんや、そういう強制加入の方々と違って、全員が入る必要がない状態である。それに対して理解を示す方もいらっしゃいますけれども、これ自体は現実でありますけれども、こうやって考えていくと、消費者の側から考えて、この建築士さんはどういう人なのか調べようと思ったときには、今はもちろん情報公開等、本当に、この法案改正によって、指定団体の方でちゃんと情報がとれるという話になっておりますので、その点は、各都道府県の登録に行ったり、また国交省なりで調べることも、実際これは公開していないのでわからないという現実もあります。

 この点、かなり変わっていくと思いますが、今回の改正でどういう点が消費者から見た点で一番の変わった点なのか、もう一度ぜひ確認したいんですが。

榊政府参考人 まず、従来、建築士の登録事務に加えまして、建築士の名簿の記載事項の拡充をやるとともに、建築士の名簿を実は閲覧しておりませんでしたので、新たに閲覧することにいたします。それから、免許証も実は携帯用じゃなかったものですから、顔写真入りの携帯用の免許証に改善いたします。それから、構造設計なり設備設計というふうな一級建築士証も新たにつくる。こういうことになっておりまして、そういった意味で、今まで名簿自体の閲覧をやっていなかったというようなこともございますので、そういうのが一番のあれかなというふうに思っております。

 それから、携帯免許証の中には、講習をちゃんと受けたかどうかとか、自分が構造設計一級建築士かどうかとか、それから、処分がもしなされたとすれば、その処分もこの免許証の中に書き入れていきたいというふうに思っております。

小宮山(泰)委員 今までよりは格段に情報公開が進むというふうに理解はしておりますけれども、この改正案で、二十七条以下に、団体による監督体制の確立を設けたと説明がされております。

 団体による名簿の作成、今お話しになった公開、研修の実施というものが盛り込まれておりますけれども、この点で二点、私が気になる点は、団体による建築士のモラルの維持、また自浄作用というものはどこまで保障されていくのか。また、今回の改正で不良不適格な建築士が制度上排除されると言えるんでしょうか。その点に関して、ぜひお伺いしたいと思います。

冬柴国務大臣 建築設計に対する国民の信頼というものを回復するためには、建築士等の団体、これはたくさんありまして、強制加入でありません。けれども、みずからが建築士の資質や能力の向上、そういうものについて裨益しなければならないと思います。そのために、建築士事務所の業務の適正化に取り組むということは非常に重要であると私どもは考えております。

 したがいまして、今回の改正案では、建築士会あるいは建築士事務所協会に対しまして、建築士、建築士事務所の開設者に対する研修の実施を義務づけました。また、建築士事務所協会また建築士事務所協会連合会を法律上位置づけまして、そして、建築主からの苦情とかあるいは相談等の業務も担っていただくということにしております。

 したがいまして、団体による自律的な監督体制を強化し、あるいは消費者保護の取り組みと一層の充実を図ることにより、今まで未加入であった建築士さんもそういうものに加入するインセンティブが与えられるのではないかと私は考えております。

 そういうことで、これらの措置を前提に、それぞれの団体で建築士の資質、能力の向上や倫理意識の涵養、建築士事務所の業務の適正化のための積極的な取り組みを行っていっていただきたい、このように念願をしているところでございます。

小宮山(泰)委員 今、ちょっと一つ気になったのが、もう団体は決まっているということでしょうか。

冬柴国務大臣 いいえ、まだ決まっていません。これは、団体には指定と、そしてまた、みずから要件に適合する人が手を挙げればできるという二つの制度があります。

 指定の方は、これはたくさん乱立しても消費者がどこへ見に行っていいかわからなくなりますから、そういうものについては数は制限されますけれども、例えば、教育をするとかそういうものについては、一定の要件を備える人であれば株式会社でもやれるということになると思います。

小宮山(泰)委員 団体、今、建築士協会さんの方、話が出ましたけれども、この点に関しては、要件に合っているところできちんと手を挙げるところは、提示した要件でそれに適合したところはやはり認めていただきたい。どちらかというと、国土交通省の皆様方、もう既に念頭にある団体がはっきりしていると、業界の側から見てもそうだとみんな言うので間違いはないんでしょうけれども、そうではなくて、きちんと提示した要件に合っているならば、ほかは排除することなくそれは受け付けるべきであるし、最初から一つしか認められないならば、その要件を明確に出していただきたいと思っております。

 それでは、今団体による自律的な監督体制ということで、非常に必要なことなんですが、結局のところ、今回の法案においても任意の参加ということにしかならないわけであります。それによるメリットがどこまであるのかというのが、なかなかこの法律はわかりづらいのではないかという思いがしています。それは、一つには、個人情報の保護という面においても、実際にもう既に行政で今後情報がきちんと開示されるということであるならば、それをまた新たに別の団体に委託する、そのメリットはどこにあるのか、この点についてぜひ御説明をお願いいたします。

冬柴国務大臣 何もかも役所がやるのではなしに、民間に委託してできることはできるだけ民間にやっていただく、これは大きな流れではないでしょうか。そして、その場合に、指定または登録という二つの団体の性格があると思います。ともに法律できちっとその資格要件を決めまして、それに当てはまるもので、しかも公的な登録とか閲覧とかいうようなものは、そんなにたくさんつくってしまうと消費者の方が困ると思います。したがって、そういうものは指定になるだろう。

 しかし、登録の方は、いろいろな要件をきちっと決めて、そのとおり要件を充足する人にいろいろなことをやっていただく。

 やはり行政の効率化とかそういう意味からも、また、今の何もかも役所でやるのではなしに民間でできることは民間にやっていただくという精神からも、それは意味のある話だと私は思います。

小宮山(泰)委員 今回の法案というか、この耐震偽造の問題、一つには、やはり検査の指定機関というものを民間に委託した、そこにおいて問題が発したという一面もございます。もちろん、行政においての検査のミスというものも発覚されておりますけれども、そういう意味において、安易にすべて民間でやるんだ、コストが安いからやるんだ、そういった体制がこの問題の根底にあることは絶対にお忘れになっていただきたくはない。公がやること、民間がやること、公でやるべきこと、民間がやるべきでないこと、そういった区分けをきちんとしていただきたい。

 特に、この登録している者というのは、設計をされる方々というのは全国で働くような時代に入ってきたと思います。そうなってくると、今都道府県や、またこの指定機関というものが、どこまで閲覧ができるのか、どこでできるのか、説明を伺っていくと、どうも今のままと余り変わりない。特に都道府県で、私、埼玉県ですから、埼玉で登録してあるものは埼玉でなければ見られない、それをどうやって北海道の方が見るのか、そういった点に関しては、この登録制度を今後どうされていくのか、ぜひ御説明ください。

榊政府参考人 登録ということでございますけれども、先ほど大臣から申し上げましたように、こういった登録につきましては、一を限って指定法人というような形で、業務を民間にやらせることができるというふうに考えております。

 基本的には、いわば名簿の閲覧というのを今までやっておりませんでしたので、名簿の閲覧事務を、委員の御指摘のように、実は法律の建前は、東京都で登録した方は東京都へ行かないと見られない、こういうことなんですが、例えば、日本建築士会というのは全都道府県に協会がございます。それで、その上部団体がちゃんと建築士会連合会という形でございます。そういたしますと、そこのネットワークを組みますと、二級も木造も一級も、神奈川の人は神奈川のそこへ行っていただければ全国どこでも見られる、こういうような体制をつくるのが実は必要ではないかというふうに思っております。

 それで、私ども、こういったような登録情報を全国的に共有できるように共有データベースをつくろうということで、今年度実は予算要求をいたしております。その予算要求を認めていただければ、そのデータベースを早急に整備して、そういったような要件が、今回の法律改正で名簿の閲覧ができますので、例えば埼玉県なら、埼玉県の建築士なら、建築士会へ行っていただければ全国の建築士の方の名簿閲覧ができるというような実態をつくり上げていきたいというふうに思っております。

小宮山(泰)委員 レクに来ていただいたときはそういう話はなかったものですから、その点に関しては、逆に言えば、実を言うと私、この準備をするときに国交省の方とお話しさせていただいている間に、予算等のやりとりはない、だから安全なんだみたいなことをおっしゃっていました。特に指定法人、ほかの法案を見てもそうなんですけれども、大変天下り先になりやすい、また、利権とか、そういった業務委託等になって、そういった予算が行き来することによって、本当に不透明な予算のやりとりの温床になりやすいということを、この数年間ずっと見ていて気になっている点でもあります。

 今局長がお話しになっていたことを考えますと、これからそういった指定法人、今現在決まってはいないんですよね。頭に思い描いている団体はあるけれども、今にっこり笑われたけれども、実際には、そういった団体にそういうネットワークを構築させて、当然、業務委託とか、そういう管理をさせていくということを既に考えていらっしゃるんですか。そういった理解でよろしいんですか。

榊政府参考人 あくまで、私どもの方でデータベースをつくるための予算要求をいたしております。そのデータベースが、例えば、今回のような機関が全くなくて、都道府県なら都道府県ということであれば、都道府県と私どもの間を結んでいくということに相なります。

小宮山(泰)委員 それでは、そういう団体の方は使わないということになるわけでしょうか。

榊政府参考人 そうではなくて、そういう団体に、私どもの考えを述べさせていただければ、全国にちゃんと連携をとれるような団体に事務が移譲できれば、そういうところへ行けば、国も、県の登録事務の内容がそこへ行けば全部見られる状態になるのが消費者行政として一番いいだろう、そういうふうな実態を、法制度的には登録事務は県は県となっているかもしれませんが、埼玉県でも神奈川県のが見られる、東京も見られる、北海道でも沖縄のものが見られるというふうな実態をつくりたいというふうに申し上げているところでございます。

小宮山(泰)委員 つくりたいということでよろしいわけですね。

 ちなみに、予算要求はお幾らされているのでしょうか。データベースをつくるという言葉ですと、私は最初厚生労働委員会におりましたので、非常に、社会保険庁のあの年金問題ですと、データベースをつくると言った瞬間に、ああ何か変なことがあるなというふうに、どうしても経験上そうなってしまいまして、どうしてもこの点に関しましては質問せずにはいられないのですが、数字は出ますか。

冬柴国務大臣 何か指定登録団体をつくると天下りがあるようなことを言われましたが、名誉のために申しておきますが、ここへは天下りはさせません。そういうことをきっちり議事録に書いておいてください。

榊政府参考人 ちょっと、予算要求なもので、つくかどうかわからないというのと、額もどの程度になるかわからないという状態でございまして、ただ、私どもの頭の中は、今回の法律改正が、こういったようなものが、平成二十年の秋もしくは二十年度の終わりといいますか、二十一年冒頭といいますか、そういったところに間に合うようにデータベースをつくりたいと思っております。

小宮山(泰)委員 ぜひ、法律に関係するところでもありますので、そのぐらいは覚えていていただけたら、ここに来るにはちょっとありがたかったかなと思いながらも、大臣には、私、この後に質問しようとしたことを先取りで答えていただきまして、力強く天下りはさせないとお答えいただいております。

 私、この後には定期講習について伺っていこうと思っておりました。やはりこういったところにいると、委託とかいろいろなものがどうしても出てきます。そうなってきますと、試験問題をつくっているところはまた別にありますけれども、天下りとか、やはり一番熟知している方というのが行きやすいということもあり得るでしょう。また、今みたいなデータベースをつくって、そういった行政との絡みがさらに深くなるということを考えるならば、もう一度、本当にこういった意味で公務員等のOBを天下りさせない、これは国土交通省だけではなく、各都道府県の、そういった地方の団体も当然、次のところに今天下りがどんどん行っております。そういったところまで含めての天下りはさせないという意味なのか、確認をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

冬柴国務大臣 国と都道府県は対等、平等でございますから、私の方がこうせい、ああせいということは言えません。しかし、この法律に基づいて行われる事務について、そういう天下りを受け付けないようにしてほしいということは当然我々の方から申し上げるべき事項であろうというふうに理解をいたします。

小宮山(泰)委員 ありがとうございます。ぜひその言葉どおり実行されて、そして国が都道府県の手本となる、そういう国土交通省でいていただきたいと思います。

 そうはいいましても、この法案で免許証型の証書を出していくということになっていきますと、講習を受けたのが、イメージとしては、普通の自動車の免許証の裏にぺたっと講習を受けましたよという判こが押されるみたいな、そんなようなイメージを私自身は持っているんですが。

 また、この法案でいえば、もちろん顔写真入りということは非常に安心感を生むと思いますし、これ自体は必要だと思うんですが、当然これは必ずしも持たなくてもいいものになります。設備士や、そういった構造建築ということに特化をしていかなくなれば、普通の一級建築士さんは持たないということも選択肢としてはあり得ると思うんですね。そうなると、場合によっては見せなければいけないとなった場合は、もとの証書を、余り想定はしづらいのですけれども、それを見せても法律上仕事はできるということでよろしいんでしょうか。

榊政府参考人 どちらかというと、こんなでかい証書みたいなものなものですから、かえていただくのがありがたいかなとは思っていますが、それでおやりになるというのであれば、それはそれで結構かと思います。

小宮山(泰)委員 私も、本来、全員が同じ書式のものをやはりしっかり持っていただきたい。これが先ほど、今加入率が低い建築士会への登録というものに対して、そういう意味では、全員のしっかりとした加入義務を設けて、一つの会にきちんと所属をするということも、ある意味メリットになるのではないかと思います。この点に関しては今回の改正では入っておりませんけれども、ぜひお考えいただきたいな。

 結局のところ、人によって持っている持っていない、そして、何よりも今回やはり問題となったのは、一つ一番大きいと思うのは、三十万人から、いわゆる建築士資格者が大量にいる。だからこそ、ある意味、ダンピングが起こっていくという構造にもなっています。その点に関しては、まだまだ本当に一番、構造であったり設備であったり、一級建築士の方、二級や木造建築の方、設備の方、いろいろな方がいらっしゃいますけれども、こういった設計をされる方々の地位の向上というものをしっかりと図っていかなければいけないという思いがしております。ぜひこの点に関しては、今後、遠からずまた検討していっていただきたいなと思っております。この点に関しては要望させていただきます。

 また定期講習の件に戻りますけれども、改正案二十二条の二というところでは、三年以上五年以内において国土交通省令で定める期間ごとに講習を義務づけるということがあります。

 今現在、これを受ける対象の方というのは、結局のところ、資格を持ち、そしてお仕事を続けていらっしゃる方々が対象になっていく。これはすべての方々に当てはまるわけですけれども、この点に関しては、ぜひ業務の妨げにならないような、そういった方策をとっていただきたいと思います。

 なかなか免許の更新、結構自動車の免許証でも更新を忘れてしまったりということもあります。しかし、それ以上に、法改正、そういったものにあわせてきちんと今の現状の法令を伝えていくという非常に重要な場にもなると思っておりますので、この点に関してぜひ配慮をしていただきたいと思います。その点はいかがでしょうか。

榊政府参考人 定期講習ですけれども、大変多くの方が今既に資格を持っておられますので、実は、経過措置にも書いてあるんですけれども、まず、平成二十年の秋からこの部分については動くということになりますが、その秋以前であっても、この講習が事実上受けられるような仕組みを経過措置の中でつくっておりまして、それもあわせまして、きっちりとした体制をとっていきたいというふうに思っております。

 それから、定期講習は、大臣も申し上げましたけれども、いわば株式会社でもできるというところがございますので、恐らく法律が施行された後に、こういったような定期講習をやっていただくというところも出てくると思います。そういったところもあわせまして、何年何月から何月までにめちゃくちゃ何か集中していて、実は三年か五年たったときにまたそれが大きな山になってくるなんというようなことは私どもも避けていきたいというふうに思っているところでございます。

小宮山(泰)委員 ぜひお願いいたします。

 特に、中小零細企業、建築業は多くいらっしゃいます。大手ならばほかの方がいるでしょうけれども、そうでない場合はやはり自分で動くしかない。技術者であり経営者であるそういった人たちがその現場を離れるということになりますので、ぜひその点の御配慮をいただきたいと思っております。

 その関連なんですけれども、建築基準法の六条に関連して、小規模木造住宅にかかわる構造規定の審査省略が見直されていまして、木造住宅については、専門能力を有する建築士が設計した場合だけ審査が省略されることになっております。逆に言えば、専門能力がないということになれば、審査は省略されることがなくなるということになるかと思います。

 朝、下条委員の質問の中にもありました。なかなかその審査をする現場の方も非常に苦しいし、実際には追われているということを考えると、そういう意味では、現実に、けさほどは局長の方もその点は大丈夫だと言いましたけれども、現場の方は本当に大変なことになるのではないかなと思っております。

 また、こういった専門能力がないということにおいて、中小零細の建築業というのは、非常に経営というか、受注をとってくることが、ほかにさらに委託をしたりとかしなければいけないということをかんがみると、非常に苦しくなるのではないか。建築物の区分に加えて、建築士の区分について政令で定めると説明をされておりますけれども、この政令の決定においては、中小の建設事業者の意見もきちんと聞いて制定をしていただきたいと思いますけれども、この点に関していかがでしょうか。

榊政府参考人 実は、小規模木造住宅構造審査につきまして、全体で年間四十五万件、特定行政庁で十六万件、二十九万件が指定確認検査機関という形でやっております。

 これは、いわば木造建築士とか二級建築士の方、一級建築士も含めて、そういう資格を持った建築士が設計をすれば、こういう特定行政庁なり指定確認検査機関の審査が要らないということでございますので、むしろ審査がふえるのは、実は特定行政庁と指定確認検査機関でございます。

 私どもの方でちょっと見てみますと、そこの部分は、一件当たり三十分から一時間程度の審査時間で済むのではないかという想定をいたしておりまして、そういった意味では、何とか対応できるのかなというふうに思っているところでございます。

 それから、中小企業、零細企業の意見を十分に取り込んでいただきたいという話でございましたが、基本的に政令で決めるということになっておりますので、政令を定める際はパブリックコメントを実施するということになっておりますので、その中で中小零細企業の御意見も十分お聞きできるのではないかというふうに思っております。今回の改正を踏まえまして、具体的な内容を判断していきたいというふうに思います。

小宮山(泰)委員 ぜひ聞いていただきたいと思います。

 それで、パブリックコメントに関してなんですが、こちらを見まして、登録機関、指定機関がまたふえるということでありますから、そして政省令にすごく委任している点が多いというのもこの法案の特徴の一つかと思います。

 これは質問通告はしていないんですけれども、大臣、ちなみに、最近、パブリックコメントを国土交通省は十八年度どれだけ出されているか御存じでしょうか。大体で構いませんが。

冬柴国務大臣 ことし四月以降、私の記憶では百十三件でございます。

小宮山(泰)委員 さすがです。通告がなくてもしっかり答えていただいて、ありがとうございます。全部の大臣がこのぐらいの大臣でいていただくと非常にありがたいんですが。

 そうなんです。百十三件あるんです。しかし、パブリックコメントを出していますけれども、四月から手続法が改正になりましたので、この中で六件、実を言うと、告知期間が短くなっているというものが出てきております。そうなってきますと、当然、今、局長の方から、パブリックコメント等でしっかり周知するんだと言いますけれども、百十三件中六件ということですので、必ずしも多いとは言えないかもしれませんが、本当にそうなのかなという気もいたします。

 実際、もっとこの点に関して、実を言うと、六件のうち、一つ、十日間ぐらいしか告知期間を持っていないもの、最高、一番長くて、三十に近いのは二十七日間ということでありまして、木曜日とか水曜日あたりになっていて、あと三日がなぜ待てなかったんだろうという不思議な、法案の施行がその後さらに一カ月ぐらいあるというにもかかわらず打ち切ってしまう。どの局といいますと、その六つというのは、港湾局、自動車交通局、海事局、住宅局があります。複数あるところもあります。

 こうやって考えますと、きちんとやはりパブリックコメントの期間というのはしっかりとる、またいろいろな場所を見つけてしっかりとパブリックコメントをとっていかなければ、せっかくのこの制度というものが、逆に、何年かこの制度が採用されてからたったがために、たがが緩んで、ある意味、こういう、短くてもいいや、もう法案が成立する直前なんだから短くてもしようがないや、やったという事実を残すんだみたいなことにならないように、ぜひ大臣、しっかりと注意をしていただき、また法案が通ってしばらくたっているのにもかかわらず、結構ぎりぎりになってパブコメをしているような気配も見受けられないでもないわけですので、その点はしっかり逆算をしてパブリックコメントをとるということをぜひお願いしたいと思います。ぜひ御決意のほど、ありましたら。

冬柴国務大臣 これは行政手続法の中で規定されておりまして、パブリックコメントは三十日前ということが決められております。ただし、やむことを得ざる事由がある場合には、その例外が認められるということの規定もあるわけでございまして、その場合には、そのやむを得ない事由というものを明らかにして、そしてパブリックコメントの期日を三十日を切ることができるという規定があるわけでございます。

 したがいまして、それが、あなたのおっしゃるように、もっと余裕を持ってやれる自信があるのかどうかという、それは総合判断されなければなりませんけれども、行政手続法上は、今私が説明したように三十日の規約、ただし、やむことを得ざる場合にはそれを切る場合があるけれども、その場合には、その理由を明らかにしなければならない。この六件については、きちっと明らかにしているところでございます。

小宮山(泰)委員 六件全部が非常に緊急性があるとも思えない部分もありましたので、この点、ぜひもう一度、理由を見ていただいて、ぜひもう少し、多分三日ぐらいでしたらもう三日早く始めても大丈夫だったろうという点、局長、そう思いますよね。今大変受けていましたけれども、そういった点は、ぜひ厳格にこれを運用していただきたいと思います。

 最後の質問も時間がないのであれですけれども、私の選挙区におきまして、地元でありますけれども、高齢者のリフォーム詐欺がございました。認知症によって、そこにつけ込んで、耐震をしっかりするんだとか、いろいろなことを言って、詐欺をされた。全国にもこういうトラブル、発生しております。

 今回、せっかく専門性を高めて、設計をする方々、建築士の方々の地位向上に努めていく、そして、このモラルをきちんと高めていく、こういうすばらしい法案の方向になっていってほしいと願っているにもかかわらず、こういう悪徳業者の方が耐震構造を強くするんだと言って悪徳の限りを尽くしてしまったのでは、結局、何のためにこの法案、建築士法で専門性を強め、さらに、二級建築士の方たちも本当にハードルをどんどん高くしていくのかわからなくなってしまうんだと思います。

 ぜひ、この点に関して、埼玉県、きのう私の部屋にも県議会の議長さんもお見えになりましたけれども、要望が国土交通省に届いております。五点出ていますが、その点においては、ぜひ優良なリフォーム業者を育成するために、業者にリフォーム業の登録を義務づけ、不良業者には勧告、業者の公表、営業停止など措置を講じる必要があるという点。また、リフォーム工事では、工事内容の義務づけはされていないですけれども、工事内容を表示するとか、構造に関することは、そういったことをもっとわかるようにする、公開するようなこと。また、業者に責任を持たせることとしても、行政としても、工事の件数とか、そういったことを事前に、着工前に届け出を行うとか、やはりそういったところを、本当は設計士がやるべきようなところを、こういったところが悪質に入り込んでいってしまうようなことがないように、ぜひ制度を取り入れていただきたいなと思っております。

 これは要望でございます。こういった業者と、構造をさわるような方々と、本当の意味で責任を持って行われていく設計を行われる人たち、そういう地位の向上のために、ぜひこれからこの法案、さらに生かしていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 それと、最後にもう一点なんですけれども、この耐震構造偽造の問題、これだけでは絶対なくならないんだと思います。民主党案、先回建築基準法改正のときに出させていただきましたけれども、やはりもっともっと、まだまだ情報の公開であったり、ノンリコースローンの問題であったり、いろいろな観点からきちんと、本当にまじめにやっている方たちの扱ったものなら後にないというようなこと、そして、悪いことをやったときにきちんと消費者が守られる、そういった制度設計をぜひ今後つくっていただきたいと思います。その点をお願いいたしまして、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

塩谷委員長 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 昨年の十一月十七日にこの構造計算偽装問題が公表されましてから、おおむね一年が経過したわけでございますが、この法案の審議に入る前に一点お伺いをさせていただきたいんですが、この問題におきまして最も重要で深刻な課題というのは、被害に遭われた分譲マンションの居住者の安全の確保と居住の安定であって、この危険な分譲マンションの取り壊し、そして建てかえ、改修を早急に進める必要があるということで考えております。

 この問題が公表されましてからこれまでの間、分譲マンションの建てかえの進捗状況については、国土交通委員会での質疑、それから新聞報道等で知る機会も多いわけですけれども、一方で、改修を行うこととされている物件の進捗状況については、なかなか情報提供される機会が少ないのではないかなというふうに言わざるを得ません。

 そこでお伺いしますが、耐震改修によって耐震性を確保する必要がある、こういうふうにされております保有水平耐力比が〇・五以上一・〇未満の分譲マンション十五棟について、建てかえ予定の物件よりも進捗状況がおくれている、こういう印象を受けておりますが、これらの分譲マンションについての耐震改修の進捗状況、どのようになっていらっしゃるのか、お伺いできますでしょうか。

榊政府参考人 御指摘のように、保有水平耐力比が〇・五から一・〇未満の分譲マンションが十五棟ございます。これは、耐震改修等によりまして建築基準法に適合させて、安全性を確保するという必要がございます。

 私どもの方で、住宅・建築物耐震改修事業というのがございますので、そういったような事業によります助成、それから、改修工事費用については、地域住宅交付金のような助成金を使い、それから住宅金融公庫の融資も活用していただこうというようなことで、おおむね今年度内に着工していただきたいということで事業を進めているところでございます。

 十一月二十七日現在の進捗状況でございますけれども、実は、建築主がヒューザーである建物が十棟ございます。そのうち四棟は、耐震改修工事の概要や概算費用を内容とする耐震改修基本計画の策定を終えまして、改修工事に向けまして実施計画の策定を準備中でございます。それから、四棟が耐震改修基本計画の策定中でございます。二棟につきましては、建築物の現況について、コンクリート強度の調査といったような現況調査を実施中もしくは準備中といったような状況でございます。

 それから、ヒューザー以外の五棟でございますけれども、これは建築主の方で耐震改修または建てかえに向けて対応を進めているところでございます。うち一棟につきまして、建築主が買い戻しをいたしまして、建てかえに向けて除却工事中というのがございます。それから、一棟は、耐震改修実施計画を策定中でございます。それから、あと一つの一棟は、基本計画案の策定を進めているところでございます。残り二棟につきまして、対応を検討中ということになっております。

 いずれにしろ、公共団体と十分連携をとりながら、耐震改修計画の策定と改修工事が円滑に進むように取り組んでまいる所存でございます。

糸川委員 今お話を伺っていても、やはり、大臣、若干おくれているんじゃないのかなと。まだ策定中だとか検討中というようなことが聞かれているわけですから、ぜひ、これは住民の安全の確保という観点からしましても、早急にこれは取り組んでいただいて、特に改修の部分もしっかり目を配っていただきたいというふうに思います。

 さて、この構造計算書の偽装問題では、法令を遵守すべき立場にある建築士が構造計算書を偽装され、そして多数のマンション等の耐震性に大きな問題が生じたわけでございます。この事件の再発防止策を講じ、そして一日も早く国民が安心して住宅の取得または建築物の利用ができるようになる、こういうことが必要であるというふうに考えております。

 このためには、前回の国会で成立いたしました建築基準法の改正について、その運用に万全を期すとともに、建築士制度について抜本的な見直しを行う、こういう必要があるというふうに考えておるわけでございます。

 そこで、大臣にお伺いさせていただきますが、建築士制度の抜本的見直しに当たって、今回のこの建築士法の改正で大臣が目指されている建築士像、これはどういうものなのか、建築士が果たすべき役割は今後どうなっていくのか、ここについてお聞かせいただけますでしょうか。

冬柴国務大臣 今般の構造設計偽装問題が資格を有する建築士によって行われたということは大変な驚きでありまして、この事件を通じまして、建築士として期待される能力を十分に、その後勉強不足といいますか、備えていないのではないかと思われる人とか、あるいは職業倫理観というものが非常に欠如しているのではないかというふうに思うわけでございます。

 それとともに、設計業務というものが、いろいろと先ほどから言われるように、構造計算とかあるいは設備とか意匠についてもそうですけれども、非常に大がかりな、今まで考えられなかったような大きな建物とか容積を擁するものができてきまして、そういうものを安易に元請の設計事務所と下請の設計事務所がその事務を分担し合って、責任の所在が非常に不明確になってしまっているのではないかというような点が指摘され、また明らかになったと思うわけでございます。

 そういうことから、我々は、細かな技術のことを今糸川さんは聞いておられるわけではないと思います、期待される設計士像というもの、これは私は、さきの建築士法の改正の中でも、建築士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、建築物の質の向上に寄与するよう、公正かつ誠実にその業務を行うというような旨を早々に決めたわけでございまして、これに尽きると思うんです。

 それをそうするために、今回の建築士法の改正によって、品位を高めるとか、そして精通するための勉強をきちっとしていただくとか、そしてまた責任の所在を明確にするために、自分がかかわった仕事についてはその名前をきちっと明らかにするとか、あるいは、処分を受けたらその部分がうやむやではなく世の中にきちっと公表されるとか、いろいろなものをここで決めたのは、さきの建築士法改正の中で決めたあるべき姿、これだと私は思います。

糸川委員 ありがとうございます。

 では、今大臣がおっしゃられたような建築士像、こういうものを目指すわけですから、建築士の資質の向上ですとか能力の向上のための取り組み、これを行わなければならないわけで、行うことで国民の信頼を回復するんだ、そういう必要があるんだというふうに私も考えておるわけです。

 では、実際、具体的にどういった取り組みを行うのか。これは、住宅局長、お答えいただけますでしょうか。

榊政府参考人 構造計算書偽装によりまして失墜した建築士に対する国民の信頼回復ということから、建築士の資質、能力の向上を図るという観点からは、今回の改正案では、まず、建築士事務所に所属するすべての建築士に対しまして、定期講習の義務づけということをいたしております。

 また、建築士として本来期待されている設計及び工事監理に必要な能力を的確に検証した上で資格が付与されるように、学歴要件、実務経験要件、それから試験内容について、それぞれ見直しを行うということにいたしております。

糸川委員 今回の建築士制度の抜本的見直しに当たって、新たに登録の講習機関、そして指定登録機関、こういうものが創設されることになっておるわけでございます。現存する職能団体を活用して行政の効率化を図る、こういう観点からの措置だというふうに思いますけれども、一方で、こうした団体の活用に当たっては、公益法人の改革等の観点からしますと、しっかりとしたそういう議論が必要ではないのかなというふうに考えます。

 次に、この点について質問させていただきますが、先ほど大臣、指定登録法人についても天下りは絶対させないというふうに明言されたわけでございますが、今回の改正案では、国土交通大臣及び都道府県知事が指定登録機関に建築士の登録等の事務を行わせる、こういうことができるようにしておりますが、なぜ指定法人とする必要があるのか。それからまた、建築士の登録等の事務をアウトソーシングする、こういうことに実際どのようなメリットがあるのか。住宅局長、お答えいただけますでしょうか。

榊政府参考人 今回の改正案では、従来の建築士の登録事務に加えまして、建築士名簿の記載事項の拡充をいたします。建築士名簿の閲覧事務も新たに加えます。顔写真入りの携帯用免許証の交付もいたします。それから、構造設計一級建築士証の交付もやりますということで、実は、何もしないと都道府県の事務量が大幅に増加するということに相なります。このため、指定機関を活用して行政事務を代行させるということによりまして、行政事務の効率化を図るものでございます。

 今回の改正案によりまして、実は、先ほど申し上げましたような登録事務、名簿の記載事項の充実、名簿の閲覧事務、免許証の交付といったような事務を指定法人にやっていただくということになりますので、建築行政としては、違反建築物の是正といったような本来行政機関でしかできない事務の執行に集中することが可能になるということで、建築行政の体制の強化を図ることができるものというふうに考えておるところでございます。

糸川委員 次に、建築士登録事務等を行う指定登録機関と建築士定期講習等を行う登録講習機関、これには公益法人が指定登録されることも十分予想されるわけでございます。先ほど大臣が、天下りはさせないとおっしゃられましたけれども、結果的に行政職員の天下り先をふやすんじゃないのかとやはりどうしても懸念するんです。天下り先がということですよ。実際天下りさせるかさせないかということよりも、天下り先がふえるんじゃないか、そういう懸念があるんですが、もう一回大臣に、させないということを明言していただきたいと思います。

冬柴国務大臣 新たにこういうふうなものをつくって、そしてそこへ天下りがあるということになりますと、国民の信頼を失います。その信頼は、この建築士法自体、こういうものに対しても信頼を失いかねない問題だと私は思います。したがいまして、新たなこういうものをつくって、そこへOBが天下るということは、私はさせないということを明言するわけでございます。

 ただ、都道府県とかになりますと、先ほども申しましたけれども、国と都道府県は、地方分権法によりまして、対等、平等の関係になりました。そういうことから、命令をしたりすることはできませんけれども、しかし、この法律に基づいて委嘱するという形でのつながりがありますから、その関係では、そういうところにも天下りは受け付けないということをお願い申し上げるということをお約束したいと思います。

糸川委員 ありがとうございます。

 大臣の強い決意を信じて、今後もしっかりと取り組んでいただきたいというふうに思います。

 ありがとうございました。終わります。

塩谷委員長 次回は、明二十九日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十九分散会


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