衆議院

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第11号 平成19年4月10日(火曜日)

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平成十九年四月十日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 塩谷  立君

   理事 石田 真敏君 理事 後藤 茂之君

   理事 中野 正志君 理事 葉梨 康弘君

   理事 山本 公一君 理事 伴野  豊君

   理事 三日月大造君 理事 高木 陽介君

      阿部 俊子君    赤池 誠章君

      飯島 夕雁君    稲田 朋美君

      遠藤 宣彦君    小里 泰弘君

      鍵田忠兵衛君    梶山 弘志君

      北村 茂男君    桜井 郁三君

      島村 宜伸君    杉田 元司君

      鈴木 淳司君    薗浦健太郎君

      徳田  毅君    長崎幸太郎君

      長島 忠美君    原田 憲治君

      平口  洋君    堀内 光雄君

      松本 文明君    盛山 正仁君

      吉田六左エ門君    若宮 健嗣君

      泉  健太君    小川 淳也君

      黄川田 徹君    小宮山泰子君

      古賀 一成君    下条 みつ君

      土肥 隆一君    長安  豊君

      鷲尾英一郎君    赤羽 一嘉君

      伊藤  渉君    穀田 恵二君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   国土交通大臣政務官    梶山 弘志君

   国土交通大臣政務官   吉田六左エ門君

   参考人

   (政策研究大学院大学教授)            森地  茂君

   参考人

   (社団法人日本バス協会会長)           齋藤  寛君

   参考人

   (富山市長)       森  雅志君

   参考人

   (立命館大学経営学部教授)            土居 靖範君

   国土交通委員会専門員   亀井 為幸君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十日

 辞任         補欠選任

  小里 泰弘君     稲田 朋美君

  大塚 高司君     平口  洋君

  亀岡 偉民君     飯島 夕雁君

  島村 宜伸君     堀内 光雄君

  小宮山泰子君     小川 淳也君

  亀井 静香君     糸川 正晃君

同日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     阿部 俊子君

  稲田 朋美君     小里 泰弘君

  平口  洋君     大塚 高司君

  堀内 光雄君     島村 宜伸君

  小川 淳也君     小宮山泰子君

  糸川 正晃君     亀井 静香君

同日

 辞任         補欠選任

  阿部 俊子君     亀岡 偉民君

    ―――――――――――――

四月十日

 広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律案(内閣提出第四二号)

 港湾法及び北海道開発のためにする港湾工事に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 地域公共交通の活性化及び再生に関する法律案(内閣提出第四一号)


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     ――――◇―――――

塩谷委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律案を議題といたします。

 これより質疑に入ります。

 本日は、本案審査のため、参考人として、政策研究大学院大学教授森地茂君、社団法人日本バス協会会長齋藤寛君、富山市長森雅志君及び立命館大学経営学部教授土居靖範君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、森地参考人、齋藤参考人、森参考人、土居参考人の順で、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないこととなっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 なお、参考人及び質疑者におかれましては、御発言の際は着席のままで結構でございます。

 それでは、まず森地参考人にお願いいたします。

森地参考人 おはようございます。森地茂と申します。

 お手元に簡単な資料を用意いたしましたので、これに従ってお話をさせていただきたいと思います。

 まず、現在の時代認識を一に示しております。一ページ目の一、地域公共交通問題の重要性というところでございます。

 一つは、高齢化社会あるいは地球温暖化等環境問題が大変重要な課題になっておりますし、団塊の世代や海外からの観光客もますます増加傾向にあり、活性化に向かっております。特に観光の問題は地域活性化の効果が非常に大きいということで、格差問題とも関連して重視されてきております。こういうことから、公共交通はますます重要になる、そういう時代にございます。

 ところが、にもかかわらず、少子高齢化社会の進展による需要減少のために公共交通の経営は難しくなってきている、こういうことは御存じのとおりでございます。

 二番目は、我が国は民間企業による効率的な公共交通を志向してまいりましたし、公営交通についても独立採算を原則としてまいりました。このことは、欧米に比べて効率的な公共交通サービスを提供してきた反面、需要が減少するときサービス維持が困難になる、こういう状況にございます。

 下に、図一として、公営バスの公営維持と民間譲渡に関連するデータをお示ししてございますが、左上の絵は、モータリゼーションの進展に伴いバスの経営が一九六〇年代から悪化し、その間いろいろな努力がされて挽回してはまた需要減のために経営が悪化する、こういうことがございます。

 右側の図は、縦軸に営業収支比率、横軸に収支差をあらわしてございますが、ごらんのとおりで、主に大都市の、つまり規模の大きい公営交通で大きな赤字を抱えている、こんなことでございます。

 下に、そういう中にあって、公営を維持しながら経営を改善する努力だとか、あるいは、ある路線あるいは組織全体を民間譲渡して何とか効率性を上げようとか、いろいろな努力がされてきた、そういう状況にございます。

 次のページに行っていただきたいと思います。

 ここには、二、交通システム管理計画、通称TSMと呼んでございます、それから交通需要管理計画、TDMと呼んでございますが、欧米では石油危機と都市交通問題が大変深刻になってきた、そういう中で一九七〇年代にTSMという概念が大変重要になってまいりました。これは、鉄道が込めば鉄道をつくるとか、道路が込めば道路をつくるということが、財政事情もあってだんだん難しい中で、そういうことをしながら同時に既存の交通システムを改善していこう、これをシステム管理と呼んだものでございます。

 それでも問題が解決せず、八〇年代に至りますと、需要そのものを抑制したり誘導したりするような、そういう施策が導入されました。既存交通システムの改善や交通需要の抑制・誘導施策と、それから同時にLRTとかバス、公共交通の改善を行ってきたわけでございます。

 六〇年代、エッセンで始まりましたモール、これは歩行者しか通れない道路のことでございますが、それが広がって都心部、大体五百メーターから一キロ四方ぐらいの割合狭いエリアでございますが、そういう中に自動車を入れない施策、あるいはトランジットモール、これはアメリカのミネアポリスで六〇年代に始まったものでございますが、一般の自家用車だけ入れないで、バスとタクシーだけを走らせて、あとは歩行者空間にした、これはトランジットモールと呼んでございます。

 こういうものを導入することによって、再び、一たん外した路面電車を機能改善して、LRT、ライトレールトランジットの略でございますが、LRTとして入れたり、バスを低床式あるいは乗り心地のいいバスを入れたりする、こういうことを行ってまいりました。公共交通の改善だけではお客が十分とれないので、自動車を抑制することによって相対的な公共交通のサービスを上げようとしたものでございます。

 これに対して日本では、歩行者天国という政策が同じころとられました。土曜、日曜だけ自動車規制をするようなものでございます。銀座を初め各都市で導入されました。ただ、欧米と違いますのは、土日だけなものですから、そこに木を植えたりベンチを置いたりという、より魅力的な空間としては措置がなされずに、そのことが普及を妨げてきたと言えるかもわかりません。もちろん、そういうことにとどまったのは、自動車抑制に対して市民や商店街の合意形成が難しかった、こういうことでございます。

 しかしながら、そんな中で、バスロケーション、コミュニティーバス、低床式バス、LRT、オムニバスタウンあるいは共通切符とかいろいろな努力がされ、最近では自動車抑制について自主的に努力していただくべく、モビリティーマネジメントとして理解を得る政策が展開中でございます。

 下の図には、世界のLRTの導入都市と時期をあらわしてございますが、七〇年代にTSMが提唱されて準備をして、八〇年代ごろになるとLRTが盛んにつくられるようになりました。自動車中心社会のアメリカでもこういうことが行われてきたわけでございます。

 次のページに行っていただきたいと思います。

 三として、地域公共交通の維持、改善のために重要なことは何かということを四点ほどまとめてみました。

 一点目は、関係者の合意形成でございます。特に自動車利用・抑制と公共交通利用に対する国民の理解をいかに進めるか、あるいは自治体、公安委員会、利用者、商店街、交通事業者あるいは市民全般の合意形成をいかに図るか、こういうことが要点でございます。

 その中で、二として、自治体の役割。計画をつくる、あるいは計画の実行に向けた利害調整、あるいは財政支援、こういうことが大変重要でございます。

 エッセンのモールを始めるときも、大変な反対がございました。当時の、私も若いころでございますが、自治体の方に伺いますと、自分たちが先導してやるのではなくて、いろいろな人の意見を聞いて何とか解決策を見つけるんだ、こういう役割に徹したことが成功だった、こんなことも言っておりました。

 さらに、日本でも社会実験という政策が九〇年代から導入されました。これは、政府とか自治体、政府の関係は確実に成功することを行い、失敗は許されない、こういうことで、裏返して言いますと、一たんやったことはなかなか変えてもらえない、こういう市民の感覚がございました。それに対して、わからないことはわからないからやってみせる、やってみせることによって市民の理解も進み、それがよければ定着をするし、まずければ修正をして何とか定着をさせていこう、こういう思想のものでございます。こういう方式がさらに進んで、自治体の役割がより強化されていくことが重要だろうと思います。

 三番目として、国の役割でございますが、情報支援、技術支援、財政支援あるいはインセンティブ政策ということがございます。これは、自治体なり市民なりがいいことを考えたら、それを後ろから押してあげよう、そういう政策でございます。

 これの典型は、英国で九〇年代から始まっておりますローカル・トランスポーテーション・プランという施策でございます。もう二度改定をされてございますが、これは、各都市が都市交通計画をつくりますと、それを中央政府が評価をいたしまして、いいところには五年間集中的にお金を投資する、こういう施策でございます。これを使って、路面電車十何キロつくった都市もございます。競争型支援と言っていいかもわかりません。

 それから、もう一つ典型的なのは、EUのCIVITAS、これはキビタスと読みますが、都市間の情報交換の仕組みでございます。

 これは、幾つか大きい都市から小さい都市まで、こういう公共交通とか自動車抑制の施策にすごく成功したところからなかなか難しいところ、数都市ずつグルーピングをいたしまして、最初四グループをつくりました。今はそれが九グループになってございますが、そのグループで、お互いに教え合って、経験を交換し合う。また、一年に一回はその全グループを集めて大会議を開催いたします。関係者は、ほかの町で見たり、ほかの町の経験を学ぶ、同時に、大変魅力的な都市で行われますので、年一回、非常に楽しみにしている、こういう施策でございます。

 それから、四番目に挙げてございますのは、地域条件が大変多様である。地域公共交通といいましても、都市の規模によって、あるいは中山間地かどうか、豪雪地帯かどうか、あるいは既存公共交通がどうか、いろいろな状況がございますので、画一的な政策では問題を解決できない。こういう問題をどう解決するかというのが一つの課題でございます。

 最後のページに、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律案の要点と私が考える事項を述べたいと思います。

 一番目は、国のガイドライン、主務大臣が基本方針を決定することになっているのは御承知のとおりでございます。ここで基本的なことを、ガイドラインを作成する。

 二番目は、計画の作成、実施につきましては、地域公共交通総合連携計画、協議会参加者の協議結果の尊重義務ですとか、計画作成にかかわる提案制度ですとか、協議会の参加要請応諾義務ですとか、先ほど申しました合意形成のバックアップをする仕組みが入ってございます。

 三番目は、国による総合支援でございまして、予算制度として、計画策定経費の支援とか、実際の事業にかかわる関係予算の重点配分、あるいは法律上の特例措置として、LRTの上下分離制度ですとか、LRT、BRT、オムニバスタウンに対する起債の規定ですとか、その他関係法令の特例がさまざま入ってございます。情報やノウハウの提供支援、こういうのもございます。

 四番目は、新たな形態の輸送サービスの導入円滑化についての規定でございます。ここも大変重要かと思います。新地域旅客運送事業計画の認定によって、鉄道事業法とか営業法、あるいは道路運送法、海上運送法を初めとして、さまざまな手続が簡素化される、セットでいろいろな工夫ができる、こういう規定でございます。特に、DVMとかIMTSとか水陸両用車とか、技術革新がさまざま進んでまいりますので、それらがいち早くサービスに向かえるようなこういう規定は重要だろうと思います。

 最後に、地域の多様性への対応として、今回の法律の内容は、計画内容については大変自由を確保してございます。各町がいろいろなことを検討できる、こういう内容になっていて、ただし、合意形成については公明な場を確保する、みんなの見ている中で協議ができるようにする。それから最後に、多様な取り組みへの支援を用意した。こういうことが、今回の法案の最も評価できる点であると考えます。

 本法律に基づいて、各地域で関係者が専門家を交えて十分検討された上で、人口減少下でも必要なサービスが確保される、そういうような事業あるいは計画が実行されることを強く期待したいと考えます。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

塩谷委員長 ありがとうございました。

 次に、齋藤参考人にお願いいたします。

齋藤参考人 日本バス協会会長の齋藤と申します。神奈川中央交通株式会社の取締役会長を務めております。

 今回の陳述に当たりましては、まず、日本のバス事業の現状と課題につきまして紹介させていただき、次いで、本法律案につきましての私どもバス業界の受けとめ方を述べさせていただきたいと思います。

 バスの現状と課題を述べさせていただくため、お手元の色刷りのパンフレットを見ながら簡単に説明させていただきます。

 まず、日本のバス事業の現状と課題でございます。

 バス業界の経営状況ですが、パンフレット一ページにありますように、年間輸送人員は約四十七億人で、交通機関別に見ますと一六%程度を占めております。この輸送人員は、次の二ページ下段の棒グラフで示されておりますように、昭和四十三年のピークの約百一億人から一貫して減少を続けてまいっております。この最大の原因はモータリゼーションの進展でありますが、ほかにも、交通渋滞による走行環境の悪化や都市交通の整備なども大きな要因となっております。

 このような旅客の減少によりまして、事業者の懸命の合理化努力にもかかわらず、バス事業の収支は、二ページ下段右の棒グラフに示されていますように、基本的に赤字であり、収支率は、民営バスで九六%、公営バスで八五%程度となっておりまして、極めて厳しい経営状況にあることが御理解いただけると思います。

 なお、このような経営状況の中でバス事業がどのような合理化努力を講じてきたかは、五ページを見ていただきますと、上段の円グラフに示されておりますように、バスは労働集約産業で、人件費が六割以上を占めております。これを削減するため、中段の折れ線グラフのように運転手の人数そのものを減らし、下段のグラフのように賃金を大幅に低下させてきたのでありまして、このような合理化努力は、もはや限界に近づきつつあると考えております。

 なお、このような合理化努力を講じてもなお残る赤字につきましては、パンフレットの十三ページにありますように、国の補助金から地方バス運行の確保として約七十二億円、これには同額の都道府県の協調補助がありますが、それに地方公共団体に対する財政措置額が七百六十億円あり、この財政措置に基づく自治体の単独補助が約三百六十億円ありまして、これらによって何とか生活路線の維持を図っているところでございます。

 バス事業の努力の状況でございますが、ただいま、日本のバス事業が旅客の長期減少により赤字基調に推移している現状を申し上げましたが、事業者もこのような状況を手をこまぬいて傍観しているわけではなく、国や自治体の御協力を得まして、さまざまな増客努力をしてまいりました。それがパンフレットの六ページから九ページにかけて示されているさまざまな試みでありまして、ICカードの導入、オムニバスタウンの整備、GPSバス・ロケーション・システム、連節バスの導入などであります。

 このうち、ICカードにつきましては、本年三月十八日より首都圏でも導入が始まり、一枚のカード、PASMOで私鉄、JRも共通で利用できるようになり、将来の増客につながると期待されております。また、八ページのGPSバス・ロケーション・システムは、主要都市を中心に普及が進んでおり、携帯電話でもバス接近情報がとれるなど好評でございます。同ページのPTPSも、警察に御協力をいただいてバスの平均速度の向上等に有効でありますし、また、九ページにありますように、弊社が最近導入しました連節バスも、従来以上の基幹的輸送力を発揮できるものとして有効であります。

 また、十ページから十二ページのように、当業界は、人と環境に優しいバスを推進し、一層の御利用をいただくとともに、バス利用そのものが地球環境問題解決の一助となると考え、努力しているところでございます。十ページにありますノンステップバスは、車いす利用者に限らず御高齢の方にも利用しやすいため好評であり、十七年度末には九千台近くに達し、一五%程度がノンステップ化されたことになります。また、十二ページにありますDPFは、必要とされているものすべて、約二万台に装着いたしました。新長期適合バスへの代替も進めていく考えであります。

 それから、地域ごとの課題でございます。

 まず、東京圏、大阪圏といった大都市圏は、最近では、わずかではありますが乗客需要の回復傾向が見られ、分社化、管理の受委託などによる合理化努力とも相まって経常収支率も黒字基調に推移し、さらにICカードなどによる増客も期待されるところであります。また、連節バスによる基幹的輸送も、今後さらに導入例がふえるものと考えております。この地域では、先ほど申し上げました労働条件の低下による運転手の確保が今後大きなネックになる可能性があると考えております。

 次に、地方の県庁所在都市やその他の地方都市についてでありますが、これらでは、需要の減少が顕著であり、ここ数年の間に戦前からの名門会社が幾つか経営破綻をいたしております。例えば、宮崎交通、九州産業交通、中国バス、京都交通、関東自動車、常磐交通などであります。これらは、関係者の懸命な努力にもかかわらずこのような事態に至っておりますので、今後とも、バスがその役割を果たしていけるよう、さらに公共交通の再生、活性化を推進する必要があります。

 第三に、地方中小都市とその周辺部についてでございますが、これらの地域は、経済の高度成長期を通じて過疎化が進み、バスは自家用車の運転ができない高齢者や学童の日常生活を支える最後の生活の足として役割を担っており、その生活路線の維持が最大の課題であり、赤字補助の維持拡大が命綱となっていると言っても過言ではないと思います。事業者もさらに一層の経営努力をいたしますが、その努力も限界に至っておりますので、サービス水準を社会福祉の観点から公的に設定して、公的な負担においてそれを維持していくことが必要であろうと考えております。

 次に、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律案に対する意見ですが、以上申し上げましたとおり、日本のバス事業者の考えは、基本的に本法案の立法趣旨に賛同するものでございます。

 特に、市町村、事業者、道路管理者、住民等で構成される協議会により地域公共交通総合連携計画が作成されれば、利用者である住民も納得し、住民の福祉に責任を有する市町村も認定したバスサービスのあり方が示されることとなりますので、バス事業者といたしましても有効な指針が示されるものと期待されるところでございます。

 また、この連携計画に定められた事業、特にバス関連の道路運送高度化事業につきましては、弊社の連節バスも日本版BRTとも言われるような一つの事例として取り上げられておりますが、この車両は、一般の大型バスの一・六倍程度の百二十八人を一挙に輸送することができ、朝夕のラッシュ時の大量の需要に効率よく対応できますので、現在導入した小田急線湘南台駅から慶応大学に至るルートでも好評を博しております。

 なお、BRTと申しますのは、アメリカにおいて、バス専用道路または専用レーンと高速大型バスを組み合わせ、郊外からの通勤幹線輸送などを効率よく行うものでございます。こうした高速大型バスの導入に当たっては、バス事業者だけでなく、国、県、市、警察、道路管理者といった多数の関係者による一丸となった取り組みが必要であり、本法案による協議会制度の活用は非常に有効であると期待しております。

 このようなバス車両は、日本では製造されておりませんので、購入段階からいろいろな特別措置が必要でありまして、そのような点につきましても御配慮をいただけることとなり、大変よいことであると思っております。さらに、高額となります車両購入費や路線上の道路整備につきましても御配慮をいただけることとなると思われますので、バスサービスの高度化、活性化に有効な制度となると期待しております。

 また、先ほど申し述べましたバス利用促進のための努力の一環でありますICカードの導入につきましては平成十八年度予算で、バス・ロケーション・システムのうち高速道路のものにつきましては平成十七年度予算で、DPF装置の取りつけにつきましては平成十五年、十六年度の予算で、それぞれ道路特定財源から御支援をいただいております。これらの事項はいずれも先ほどの道路運送高度化事業の一環たり得るものと考えておりますので、今後ともこれらの事業やその類似事業につきましても一層の御支援をいただくべく、お願い申し上げる次第でございます。

 以上で私の意見陳述を終了いたします。ありがとうございました。(拍手)

塩谷委員長 ありがとうございました。

 次に、森参考人にお願いいたします。

森参考人 富山市長の森雅志でございます。よろしくお願いをいたします。

 私の方からは、富山市という地方都市の実情を説明させていただきまして、結論として、地域公共交通を活性化させることが地方都市にとっていかに大切かということを述べさせていただきたいと思います。

 お手元の資料を御参考にお願いいたします。

 富山市は、海岸からヘリコプター事故のありました水晶岳まで大変広範な市域を有する都市ですが、下段にあります、十一年の資料で古いのですが、パーソントリップでの自動車分担率は七二・二%、通勤だけに限りますと八二%という極端に車に特化した地域社会でございまして、それに伴いまして薄く広く町が発展してきました。その結果、DID地区の人口密度は全国の県庁所在地で一番低いという典型的な車都市であります。

 二ページに行きますが、その結果、しかしながら、車を自由に使えない市民にとっては極めて生活しづらい町となっております。右側に表がございますが、富山市で昨年度調査しましたところ、約三割の市民は車を自由に使えない。免許を持っていない方もたくさんいますが、仮に持っていても、自由に使いこなす車を自分一人で持っていないという意味で、家族に送迎してもらっているとかいう人を含めますと、三割は交通弱者です。かつ、これが人口減少時代に入ってどんどんふえていく、特に高齢者を中心にふえていくというのが実情です。

 また、薄っぺらな都市構造ですので、ごみの収集延長ですとか除雪ですとか、このまま拡散型の都市構造を続けていくと都市管理コストが増嵩し続けていく、こういう問題も抱えています。また、全体に都市活力が低下している。

 そういうことを踏まえまして、4にありますように、幸い富山駅に幾つもの鉄軌道が結節していますので、鉄軌道とバス路線を使った公共交通を活性化したコンパクトなまちづくりというものをまちづくりの方向性と位置づけております。

 三ページ目の上に目指すべきビジョンを述べておりますが、一定水準以上の鉄軌道と一定水準以上の密度の高いバス路線を公共交通軸と位置づけまして、この軸の沿線にこれからの居住だとか文化だとか商業だとかという施設を誘導していこう。つまり、だんごと串の関係のように、この図にあります緑とか青とか黄色の線はそれぞれ鉄軌道でございます、赤の破線が密度の高いバス路線でございまして、この沿線に人の住まいというものを将来に向けて誘導していこうという方向を打ち立てたわけでございます。

 そのために最初に取り組みました事業が、富山ライトレールの取り組みでございます。

 八十六、七年の歴史のありました富山港線というJR線でございますが、廃止というような流れになってまいりました。その背景には、四ページにありますが、富山駅周辺の北陸新幹線の工事に合わせまして、今連続立体交差事業に取り組んでおりますが、場所が極めて狭隘でございますので、富山港線を廃止することによって工事がやりやすいというスペースをつくる。そのために、富山港線を廃止したままバスに代替するのか、あるいは違う道路上を走らせて富山駅へ入れることによって富山港線を延命させるのか、この選択に迫られたわけでありますが、道路上に新たに軌道を敷設してLRT化することによって富山港線を生かしていこう、こういう選択をいたしました。準備に三年かかりまして、昨年四月に供用開始したところであります。

 四ページの下にありますが、運行密度を上げる、あるいは時間帯も二十一時台に終電が終わっていたものを二十三時台まで延ばす、こういうふうな取り組みをし、かつ、運賃は二百円均一としたところであります。十八年度いっぱいまでは日中百円で運行をしてまいりました。四月から二百円に戻したところであります。

 五ページにありますのがその実態でありまして、LRT化することによって、ベビーカーを含む乗車の乗りやすさ、あるいはフィーダーバスとの接続を乗りかえ抵抗の少ないドア・ツー・ドアで乗りかえできるような形、さらには電停もふやし、全体をトータルデザインでイメージを上げるというようなことに取り組んでまいりました。

 六ページは整備費用でございますが、整備に当たりましては、最初から公設民営でいこうということを市民に打ち出して、市民の理解も得て進めてきたところであります。富山市のような地方都市では、やはり輸送密度が低いことから、基盤整備費用まで運賃収入で賄うというのは当初からもう無理だと市民に説明をいたしまして、整備は行政がやります、三セクでつくりました富山ライトレールという会社は運行だけやってください、将来にわたる維持管理、例えば除雪車を去年新たに購入しましたが、この部分も行政でやりますというふうなやり方であります。

 建設費五十八億を要しましたけれども、内訳は、一番右端にありますように、連続立体交差事業から富山港線はいわば支障補償を下さいということで三十三億を回していただき、街路事業あるいは国交省で新たにつくっていただきましたLRTシステム整備費補助などを使いながら整備をしてまいりました。

 具体の内訳は真ん中にありますとおりでございます。また、上段にあります運営費三億、仮に三億と見込みますと、維持管理費の一億は、仮に一億になっても毎年市が負担をする、ただし運行経費については運賃収入で賄ってください、こういうこととしたところであります。

 なお、三月末での決算、今、仮決算ですが、九十八万円の黒字となりました。本当はもう少しあったんですが、開業費五千四百万円を償却しようとしておりますので、実際はもう少し、三千万程度で利益は出たかなと思っております。

 また、市民、企業からは資本金への出資も、五一%ほど民間企業で出していただきましたし、そこに記載のありますように、ベンチドネーション百六十八脚、五万円ですとか、新駅のネーミングライツ一駅一千五百万円ですとか、広告収入ですとか、そういうことも市民の協力を得ながら進めてまいっております。

 なお、市民の寄附も含めて、現在二億六千万程度の基金を持っておりますので、今後仮に単年度収支に問題があったとしても、ここら辺を担保として経営をしていきたい、こう思っております。

 七ページは、一年たちました後の実績でございます。JR時代に平成十七年十月二日と六日に乗車人員の具体の調査を行いましたものと比較してございます。青く記載しました部分がJR時代の数字でございます。一日平均で、かつて平日で二千二百六十名程度だったものが現在四千九百ということであります。

 また、下の棒グラフを見ていただくとわかりますが、どこの時間帯で乗車人員がふえてきたのかということを見てみますと、十時台とか十一時台とか、休日もそうです、日中の乗降客がふえております。そして、それはだれなのかと見てみますと、3のグラフで見ますように、五十代、六十代、七十代の層の方がふえている。つまり、日中、高齢者を中心に外出機会を新たにつくったという効果だろうと思っています。このことは、将来の介護保険ですとか医療費とかを考えましても、介護予防の観点で非常に意味があるというふうに思っています。また、4にありますように、新規二〇・五%という利用者、これがまさに今言った層に当たるのではないかと、今途中の段階ですが、分析をいたしております。

 八ページ以降は、そのほかに富山市が独自に取り組んでおります公共交通活性化の施策であります。

 まず、7と記載しましたところはJR高山本線の活性化の社会実験です。二時間に一本程度しか日中走っていませんJR西日本の高山本線に、富山市が費用負担をいたしまして、いわば電車をチャーターして、これはディーゼルですが、運行頻度を上げた。今、一・五倍にしたところでございます。まだ去年の十月から始めたばかりでありますけれども、正確な分析は済んでおりませんが、十九年度いっぱいまずは続けてみたい、このように思っていまして、二割ふえるとか一割五分ふえるとかということになれば、その段階で判断をして、もう一度延長を図っていきたいと思っています。

 なお、JR西日本さんとは、十七年度の利用実績をベースとしまして、それよりふえた部分は、その運賃収入に相当するものを富山市に返してください、こういうふうな約束事となっていますので、乗車人員が一・五倍になると負担がゼロになるということですが、さすがに一・五倍は無理だと思いますが、一割なり二割なりふえることを期待して、沿線でさまざまな、駐輪場の整備ですとか駐車場の整備ですとか、JR保有の駅のトイレの整備ですとか、そういうことを今一生懸命やっているところです。

 8は、市内でいろいろと運行していますコミュニティーバスですが、我が市は一般会計一千六百億程度の市ですが、その財政規模で、右側にありますように、コミュニティーバスに約二億、それから民間のバス事業者の市の赤字路線への補助で三千二百万程度。これが仮に三億になっても、今ここでお話がありましたように、富山市としてはやはり負担していかざるを得ないだろう、過疎バスも含めて、地域の足としては大変大事なものだろう、こういうふうに思っております。

 それから九ページでございますが、もう一つユニークなことをやっております。これは、六十五歳以上の方に限り、市内のどこからバスに乗っていただいても、中心市街地で乗降する場合に限り百円という制度でございまして、9の利用実績の欄にありますように、六十五歳以上人口の二七・五%の人がこの制度を利用しております。平日、千四百人程度が使っておりますので、これもまた新たな外出機会をつくる効果につながっていると思います。

 当初は中心商店街に人を呼び込もうというねらいで始めたわけですが、利用実態は、中心部まで行くと百円で、そこで乗りかえるとまた遠くへ出るのも百円ですので、結局A地点からB地点へ行くのにわざわざ中心部へ寄って二百円で移動するということにつながっておりまして、これが結果的にはバス利用者を随分ふやすことにつながってきた。

 地元のバス会社とは、当初、これは利用者は百円払うわけですが、富山市も百円相当を払う、こう言っておりますが、当初わかりませんでしたので、月額四百万円払いますと言って始めて、三カ月試行しましたところ、バス事業者は、これはいいからやりましょう、こう申し出がありまして、私どもは四千八百万円を覚悟していたんですが、二千六百万円でいいというお話でしたから、恐らく、仮に千四百人毎日乗ると十四万円ずつが現金で入ってきますので、やってみると結構売り上げ増になったんだろう、こういうふうに評価しております。

 最後に、10でございます。図面がありますが、その図の中の下に新規軌道整備区間と記載してございます。この新規区間を除く部分をいわばコの字型に既存の市電が走っております。また、先ほど申し上げました富山ライトレールというLRTは北の方から富山駅に乗りつけております。高架事業が終わりました後、今度はライトレールと既存の市電をつないで、新幹線や在来線の高架下を地表レベルで路面電車でつなぐということを構想しておりまして、せっかくそれをやるからには、既存の市電網の南側の部分があいておりますので、ここを何とかつないで、そして町の中心に路面電車、LRTのループをつくりたいと思っています。ウィーンのリングのような形にする。そうすると、真ん中にぐるぐる電車が走っている都市構造となりますので、この周辺に、高齢者賃貸住宅ですとかケアハウスですとか、あるいは今後投資する図書館ですとか文化施設ですとかというものを集約していこうという計画であります。

 そうすると、先ほど言いました市内にあります幾つもの鉄軌道は全部富山駅に結節しておりますので、その沿線にさえ住んでもらえれば、車に乗れなくなった高齢者であっても都市機能というものを十分享受できるだろう、こう思っております。

 そのためには、この南部分をつなぐ必要がございますが、その際、先ほどの富山ライトレールは公設民営ではございましたけれども、費用負担を公設民営としましたので、施設は富山ライトレールが保有をしています。しかし、今度は民間の鉄軌道事業者にお願いをするわけですので、ぜひこの部分を上下分離でやりたい、こう構想をしているわけでございます。整備費は富山市が負担して、運行は富山地方鉄道という民間会社が実施していく、この考え方で、ぜひ三年間で整備を仕上げたいと今思っているところでございます。

 富山ライトレールという株式会社でLRTを経営してみましたが、この場合、全額補助で整備しましたので圧縮記帳ができますことから減価償却の対象となりませんけれども、こういうふうに民間企業に市が補助金を出して整備するというのでは、やはりどうしても減価償却の負担に耐え切れないということが起きてまいります。あわせて、公費を投入するという際に、市民の理解を得ようとしますと、資産は市の所有なんです、市の資産を民間事業者が利用しているんだという位置づけをつくることができますと、公費を投入することについての市民の理解も得やすい。

 この二つの観点から、ぜひとも軌道においても上下分離の実現ということが、極めて大きな期待を持っているところでございますので、今度の新しい法律の中でそのことがうたわれておりますことに非常に大きな期待を持っているところでございます。

 ただ、そうは申せ、今のケースで言いますと、富山市が新たにつくる軌道を保有させていただくとしても、そのことにあわせて技術者を必置として要請されますと、市の職員として技術者をそこに持つことは非常に大きな負担となりますので、このあたり、導入しやすい形での上下分離というものの実現をぜひとも望みたいと思っているところであります。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

塩谷委員長 ありがとうございました。

 次に、土居参考人にお願いいたします。

土居参考人 立命館の土居でございます。

 お手元に意見書のメモがございますけれども、基本的に私は、今回、この法律の制定を高く評価しております。段階といたしましては、とりあえず形が整ったといいますか、この段階だと認識しているわけです。

 次に、細かい解決課題に入る前に一点申し上げたいわけですけれども、仏をつくったからにはぜひ魂を入れていただきたいということです。

 我が国では昔から、仏つくって魂入れずという言葉があります。ただいまの富山市長森さんのお話にもありましたけれども、今回、LRTというバリアフリーの新しい交通手段を入れられたわけですね。形は整ったわけですけれども、森市長のリーダーシップのもとで魂を入れられたと思います。

 具体的には、これまでのJR西日本の非常に乗りにくいダイヤから変えて、十五分ヘッドとか、それから終発を遅くまで走らせるとか、それからいろいろな運賃制度も、三月末ということで残念でしたけれども、百円という運賃を設定されて、沿線の利用者、観光客、すべてが乗ってみたいという形で、こういう新しいシステムを定着されたわけですね。そのことはやはり大きな教訓にすべきだと思うわけです。

 形はこの法律で整うと思います。ですけれども、それを具体的に運用するのは、各地方自治体の職員の方とか、それから技術者の方とか国土交通省の方、さまざまな方の援助がなかったらこの法律が十分に機能しないと思うわけですね。そういう点で、ぜひ次の課題の方を何点か御配慮をお願いしたいと思います。

 お手元に大きく六点書いておりますけれども、今回、国土交通省の主務大臣が策定される基本方針の枠内において、各地方においては地域公共交通総合連携計画の策定という形で進められるわけですけれども、やはり地方自治体がその枠内から超えるということも考えられますから、ぜひそういった形で地方自治体が自主的にその枠をつくれるように、それに対して、さまざまな事業を地方自治体がするときにはぜひ助成システムを確立していただきたいということがまず一点です。

 ですから、二番目にありますけれども、今回出されましたさまざまな各事業がございます、LRTの整備とかBRTの整備、海上運送サービスの改善、乗り継ぎの改善、地方鉄道の再生という形で事業がございますけれども、この法律以外に事業をされる場合に、果たしてそれが取り入れられるかどうか、こういったことを具体的に心配しているわけです。

 例えば、現実に過疎地域におきましては、路線バスに関しても、空気を運んでいるみたいなものですから、なかなか利用されておりません。現実に今過疎地域で活躍しているのはディマンドタイプの、乗り合いタクシーといいますか、あるいはスクールバスにもかわってそういう乗り合いタクシーが運行されていますから、そういったところに、本当の地域住民の需要に向かってフレキシブルに対応できるかどうか、これを一つぜひ助成制度の中に入れていただきたいと思います。

 それから三点目になりますけれども、この公共交通政策、非常に基本ですけれども、住民の暮らしには、単にそういう公共交通を利用するだけじゃなくて、身近な、歩くとか、あるいは自転車に乗る、あるいは駅にマイカーを置いて都心に出て行く、こういったことが交通にかかわってあるわけですけれども、そういった形の公共交通以外の、自家用自動車のパーク・アンド・ライド用の駐車場の整備とかあるいは自転車専用道の整備とか、非常に切実な問題であるわけですけれども、こういった助成もぜひ一体化してお願いしたいということが三点目です。

 それから次の二ページに行きますけれども、今回、こういう協議会の中に、道路管理者とか公安委員会とかがテーブルに着くというふうになっております。今まではなかなか公安委員会などはテーブルに着かなかったわけですけれども、今回そういった義務として着くという点では大きな前進なんですけれども、そういった形で進められますけれども、他省庁も含めて、公共交通維持の政策を一体的に進めるのにより一歩前進を図ることが必要ではないかと思います。今の現状ではなかなかそこまで共通の認識がないというふうに私は理解しております。

 五点目ですけれども、平成の大合併が行われてきています。各自治体においては非常に行政区域が拡大しております。これまでのコンパクトな行政区域から、市役所、町役場に行くにも困難な状況が出てきております。そういう点をどういうふうに解決するかということで、ひとつ、そういう複数の地方自治体、広がった地方自治体を連合して、その中に各運輸事業者、バス事業者、鉄道事業者とかを連携した運輸連合という組織、これはヨーロッパ、ドイツとかフランスとかにありますけれども、そういった運輸連合を、ぜひ枠を超えて設立をお願いしたい、検討をお願いしたいということです。できましたら、その中の運賃制度を、乗りかえても初乗り料金で行けるという形、乗りかえのそういったバリアをなくすという意味で、共通運賃制の導入などの検討もぜひお願いしたいと思います。

 それから最後の点は、今回の法律は非常に高く評価しておりますけれども、その次のステップとして、ぜひ交通基本法の制定をお願いしたいということです。これは、フランスの交通基本法で、ヨーロッパ、EUの方に非常に普及しておりますけれども、我が国でもそういった法律が要るのではないかということです。

 国民あるいは住民の移動の足を守るということは、国及び地方自治体の大きな責務であると考えます。こうした交通権保障の視点が重要になってきます。高齢福祉社会での公共交通の整備充実を、まちづくりや豊かな医療、福祉、教育等を実現する中核、いわゆるプラットホームに据えて、今回の地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の運用が急がれるべきだと思います。

 これまで国土交通省においては、規制緩和という形で、各公共交通の事業者の規制緩和を進められてきたわけですけれども、それによって、かなりローカルな地域では、移動ができなくなる、いわゆる移動制約者が増大してきております。そして、それが地域の崩壊といったことにもつながっているわけですね。限界集落という言葉がございますけれども、移動する手段がなくて、もうそこに住めないという形で国土が荒廃するということも出てきています。

 今後、持続循環型社会あるいは高齢福祉社会、地域コミュニティーの復興といった二十一世紀の豊かな社会づくりに向けての解決のために、公共交通、とりわけ生活交通の再生がなくてはならないと考えています。地域の再生、活性化及び過疎対策の基本に生活交通の再生を位置づけるべきだと思うわけです。その責務自体は住民に一番密接な地方自治体にあると思うわけですね。その地方自治体が最終的にそうした生活交通の維持に力を注ぐべきではないかということを考えているわけです。

 これまでの国の政策、国が中心となって国土全体のことを考えられて、あるいは民間の事業者に任されてきたわけですけれども、そういった点はやはり大きな問題を今起こしてきていると考えるわけです。地域の住民に最終的な責任を負う地方自治体が中心となって地域交通政策を全面的に展開する、今回の法律の趣旨のとおりですけれども、そういったことが必要になってくると思います。

 ただ、現実に地方自治体にそういった人材がいるかどうか、それが懸念されます。地方自治体、非常に規模が小さいですし、政令指定都市なんかになりますと、交通対策課とか交通政策課が用意されておりますが、一般のそういった市町村に関して、三年間とかかなりローテーションで各職場を回っていく段階で専門家がいかに育つかということ、これを心配しているわけですし、ぜひ国土交通省の各運輸局の人材をこういったところにも活用されて、いろいろ努力されることを期待しているわけです。

 以上、るる申し上げましたけれども、基本的なスタンスとしまして、これまで国及び交通事業者任せであった地域交通政策の策定や実現の権限を、地域住民の暮らしや生命に最終的な責任を持つ市町村等の地方自治体に移すという、新しい枠組みを構築する必要があると思います。このために財源確保を伴ったシステムづくりが今後の焦眉の課題と考えるわけです。

 国は、国民の交通権、現代社会の移動の権利を保障することを基本にした交通基本法を策定し、軌道法等の縦割りの各事業法の全面的な改編、再編を含めて、長期的な道路政策も含めた総合交通政策を樹立して、地方自治体に地方交通政策を策定し実現する権限を移譲し、公共交通整備基金、これは私の仮称ですけれども、そういった整備基金を準備して、十分な財政制度の確立を図るべきではないかと考えます。

 以上、終わります。

塩谷委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

塩谷委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長崎幸太郎君。

長崎委員 自由民主党の長崎幸太郎です。

 本日は、貴重なお話をありがとうございました。

 初めに、森地先生と土居先生にお伺いいたします。

 これまでの交通政策というものが需要の後追い政策ではもはや対応し切れなくなって、需要自体を誘導するとか抑制するというような交通需要マネジメントに重点を置くのが世の中の流れだというふうに伺いましたが、これも、大都市の場合と地方の場合はそれぞれ区別して考える必要があるのではないか。

 大都市は、需要がどんどん伸びていくにつれてインフラをつくり、それがまたさらに需要を呼ぶという形だと思いますが、これが地方の場合は、過疎化の進展によってむしろ需要が減ってくる、減ってくる中で事業者の収益が悪化して、それに伴ってサービス水準の低下あるいは補助金の支出という形になってくる。こういう地方の、要は大都市とは違う逆回転のスパイラルというか、需要減が起こっているような、地方における交通需要マネジメントのあり方というのはどのように考えればいいか、御所見をお伺いさせていただければと思います。

森地参考人 先生御指摘のとおり、TDMの概念は、大都市で需要に供給が追いつかない、こういう場所での議論でございます。ただ、需要の後追いに加えて、仮に先の需要を見込んでやる、あるいは需要があってからサービスを提供する、どちらも需要ありきなんですが、その需要ありきではなくて、需要をどこかに誘導したり、こういうことをTDMと呼んでございます。

 したがって、御指摘のとおり、地方部では需要マネジメントというのは、TDMは概念として入らないんですが、ただし、こういうことがございます。例えば中ぐらいのところで、モノレールをつくりました、バスもありました、今の概念では自由に競争してサービスを向上するというのがコンセプトでございますが、共倒れになってしまう、そういう場合に、どちらかに需要というか供給を合わせて入れてしまってはどうかとか、あるいは同じように、先ほど富山市の市長さんからお話がございましたように、あるサービスを上げることによって需要が出てきて、そのサービスを上げることによって土地利用が変わって、需要マネジメントは、ある需要をどちらかにやるということだけではなくて、土地利用を通じてのそういうこともございます。

 ただ、中山間地でこれができるかといいますと、かなり高齢化した社会でございます。昭和四十年代、三十年代に集落再編成ということがございました。この政策は小学校の分校問題と一緒になってございまして、言いかえますと、小学生の親御さんたちですから、三十代、四十代の人にどこに住んでもらうか、こういうことだったわけでございますが、今はむしろ、七十代、八十代のお年寄りがそこにずっと住み続けるのか、お子さんが戻ってくるのか、あるいは町に出て行くのか、かなり人生観にかかわるようなところですから、国の権力で集落を無理やり再編する、そういう場では多分ないのではないか。したがって、土地利用を中山間地で入れるというのは、場所によってはやや問題があるな、そういうふうに思っております。

土居参考人 各地域でかなりいろいろな形で努力されていると思います。路線バスでは、先ほど言いましたけれども、空気を運んでいるみたいなものですから非常にもったいないわけですけれども、現実にやはりディマンドタイプの、タクシー事業者に運営を委託するといったタイプが各地域で紹介されています。その場合に、どこがコーディネーターになるかということで、いろいろなタイプがあるわけですから、農協さんがやるとかいうこともあるでしょうし、村とか町はかなり危機意識を抱いて、やはりこの地域を守るためにも、そういった形の本当に住民に合った交通システムを構築せないかぬということで窓口になっているところもございますけれども、かなりそういうタクシー事業者との連携で乗り合いタクシーという方式が、その中にいろいろな要素も入れていく。先ほど言いましたけれども、非常に子供の数も減っていますから、スクールバスをタクシーにかえるといった形とか、さまざまな形で行われておりますから、そういった点で今回、各地域がどんな交通手段がいいかぜひ出していただいて、それに支援されるということが非常に大事ではないかと思います。

 以上です。

長崎委員 ありがとうございました。

 ちょっと地元のことに置きかえて、御意見をいただければと思うんですが、私の地元は、高速道路でいうと約四十キロちょっとぐらいの範囲の中に二万から三万の都市が約五つか六つ所在をしております。そういった中で、一般国道というのは極めて狭い二車線道路で、渋滞地域であります。こういうところでそれぞれ各都市が生活圏というものを構成して、それがくし刺しのような形になっているんですが、ここで、どう考えるか。

 私は、生活圏域内の足の確保と生活圏域間の交流の確保というのはやはりそれぞれ区別するべきなのかなと。生活圏域間の交流の確保というのは、現状でいうと、鉄道ですとか高速道路に頼らざるを得ない。ただ、生活圏域内においては、先ほど土居先生がおっしゃるように、例えば通学ではスクールバスですとか、その他はディマンド型の公共交通手段というものを活用していくのかなとも考えられるんですが、その生活圏域内の足の確保と生活圏域間の交流の確保のあり方はそれぞれどうあるべきか。

 また恐縮ですが、森地先生と土居先生、それから森市長さんにお伺いしたいと思います。

森地参考人 二、三万で五、六都市、四十キロでくし刺しになっているとすると、割合まだ状況はいい形だろうと思います、軸が一つ成立いたしますので。

 今、国土形成計画の策定中でございますが、その中で、今の市町村合併地域よりもうちょっと広い範囲、できれば人口三十万ぐらい、一時間圏ぐらいでまとまって、より高度のサービス、医療サービスとか文化サービスを確立できたら、こんな議論をしてございます。

 理由は簡単でございまして、三十万から五十万というのは県庁所在地の規模でございます。その規模ですと、盛り場もあり大学もあり三次医療もできというような、公的あるいは民間のサービスが一応整ってございます。一時間というのは、大都市の人間が高いサービスを受けるために平気で移動している距離でございます。四十キロというのはまさにそういう範囲でございますので、真ん中にあれば二十キロですから、高速道路を使えばそういうことができます。問題は、今まで市町村単位で小さな診療所、図書館をという格好になっていたのを一カ所にまとめてより高次のサービスを受けられるようにすれば、人口減少した農山村の人たちも都市と同じような生活ができる、こんなことを国土形成計画では議論しております。

 したがって、今の、軸上にございましたら、そこにしっかり、例えば先ほどのBRTとか、バスラピッドトランジットでございますが、そういうものとか、あるいはそういうものも必要なくて、ただバスを公道で走らせて、それに対してフィーダーのサービスをつける、こんな形が考えられるのではないかと思います。

 以上でございます。

土居参考人 各地域地域によって状況が違いますから、適切な手段をどうとるかということが非常に大事になってきます。そういうくし刺しのところを巡回バスで結ぶといいますか、そういったことも一つの手法でしょうし、先ほど富山の市長さんのお話のように、JRのこういった線をもっと頻度を上げて、その各駅にパーク・アンド・ライド用の駐車場を設置する、車ですべて回らずに、鉄道とのいわゆるドッキングといいますか、こういったことも考えられます。各地域で本当にどういうところに利用されているかといいますか、利用者がどこに行きたいのかによってまた違うと思いますので、ぜひ、各論的にはまた地域地域で考える必要があるのではないかと思います。

 以上です。

森参考人 お話しのとおり、都市間を結ぶ移動手段と、都市内、都市といいますか地域内を結ぶというところはやはり分けて考えなきゃいけないんだろうと思います。その外に過疎地があって、それでは過疎地に住む人たちの移動の手段をどうするのかという、それぞれの考え方を別な発想で取り組んでいくことだろうと基本的には思っています。

 都市間を結ぶことにつきましては、今お話しいただきましたように、やはり鉄軌道があるとすれば、公費を投入してその質を上げるということは欠かせないと思っています。公共交通をしっかりやっていくからといって、脱車ということはあり得ないと思いますので、車も使いますが公共交通も使うという社会に少しずつ変えていくことだろうと思います。

 高齢者で、もう運転技術を自分でも不安だと思っている人たちが確実にふえています。でも運転しているわけですね、移動手段がないから。これがもたらす交通事故を中心とした社会的損失というのは非常に大きいと思いますので、例えば過疎地であれば、NPO法人が運行するマイカーで、さっきおっしゃったようにディマンド型で、定時性はなくても移動できるというような方法もあるでしょうし、あるいは、私どもの市では、ある地域では、八千世帯の地域ですけれども、そのバスに乗ろうが乗るまいが一世帯当たり年間四百円出す、そうすると三百二十万円出てきます。残りを域内の開業医の先生とかお店をやっている方に月額一万円とか協力金をもらって、それで約二百万ほど集めて、残りを一人百円で運賃を取って、それでも赤字ですが、その分だけ市で負担するというような方法などもやっておりまして、これは、市が負担している金額に一定程度歯どめがかかります。それから、地域の皆さんに自分たちのバスだという意識も生まれてきますので、例えば地域によってはそういう方法をやっていくということなどが有効ではないかと思っています。

長崎委員 ありがとうございました。

 今、過疎地におけるディマンド型の交通のお話が出てまいりました。齋藤会長にお伺いいたしたいと思いますが、事業者さんの目から見て、例えば、過疎地におけるディマンド型交通というのは経営的にどういう、それを実現するためにはそのポイントというのはどういうところにあるとお考えになるでしょうか。

齋藤参考人 過疎地のディマンドバスは、本当にお客さんがいればということなんですが、交通事業者は、自分たちの使命として、もう使命のようなものを持っているんですよ、どんなに少なくてもお客さんを運ぼうという気持ちが。ただ一方で、経営という問題がありますから、経営を抜きにしてもできない。

 これはやはり、その市町村の首長さんとよく相談して、どうしても地域で必要だ、そういう考えのもとにあるなら、事業者とそれから首長さんとの話し合いのもとに、今の言う請負のようなことも必要ですし、ディマンドバスでも必要だろうと思っています。要は、そういうやり方の中で、住民が納得して、事業者もこれに協力してやろうという気持ちが必要だろうと思っております。

長崎委員 ありがとうございました。

 住民の納得というのは大変重要なんだとは思うんですが、その納得するポイントの一つに、やはり納税者、要は税金の投入がどうあるべきかというのは避けて通れない議論になるんだと思います。

 先ほど、バス事業者さんで、やはり過疎地のバス運行というのは大変厳しい経営環境に置かれざるを得ない、公的な助成が不可欠であるというお話がありました。現時点で、今いただいた資料で見てみますと、国庫補助で約百三十億程度、毎年入っている。それから地財措置も含めると七百六十億ですから、約九百億円程度の公的支援。このほかに税制措置があるわけですが、これぐらいのものが入っていても、さらにまだ赤字体質というものから脱することができない。こういう中で、単に無制限に公的補助を積み増すということは、やはり納税者の理解は得られないのかなと思います。

 そこで、例えば、従来型の公共交通というものが仮に補助金依存とならざるを得ない場合には、ここはまさに判断になるんでしょうけれども、場合によっては他の代替手段というものに移らざるを得ないのではないかという考え方もあると思います、あるいは地域を限定するとか。

 こういう点で、森市長さんにお伺いしたいと思いますが、行政として、補助金、要は財政支出をどこまでするのかという判断は、どういう考え方で市民の皆さんに納得していただけるのか、その市民の皆さんに対する説明のポイントというのはどこにあるのか、この点を教えていただければと思います。

森参考人 先ほど御説明いたしました富山ライトレールの整備につきまして、御説明したとおり、整備は市で公費負担でやります、もちろんさまざまな補助もいただきましたが。あるいは運行をランニングしていく上でも、維持修繕については市でやるということにつきましては、非常に数多く、驚くくらい数多くの説明会を、市民の間に入って説明をしてまいりました。

 去年四月に運行を開始いたしまして、七月にやりました意識調査では、約九割の市民が支持をしてくれております。たかだか八キロの線ですので、その沿線とは全然離れた地域の住民に対しても、同じように八割以上の支持をいただいております。

 これはやはり、先ほど言いましたように、全体の将来ビジョンを明確にして、やはり公共交通をなくしてしまった地域では生活が極めて困難になる、今は車に乗れますけれども、やがて一人一人が当事者として交通弱者になっていくかもしれない、そのことに備えて今から布石をしておかなきゃいけないんだよということを地域に幅広く説明してきたことに尽きると思っています。

 したがいまして、市民の理解を得るためにどうするのかということは、やはり行政の側が飽かず説明をし続ける、そして共感をつくっていくことだろうと思っています。

 先ほど言いました高山本線の増発便の事業とか、その他を含めて、千六百億の一般会計規模の都市ですが、公共交通の維持のために全部で五億一千万を十九年度当初予算で入れていますが、議会の中においても全面的に皆さんに支持をしていただいております。やはり将来構想を含めて着地点を明確に示して、そのために今この段階でやるんだということをきちっと説明することだろうと思います。

 もう一点、参考までに申し上げますと、同時に、運転免許証の返上運動というのをやりまして、背中を押してあげると高齢者の方は運転をやめていただけないかということで、初年度だけ二万円、公共交通の利用券を差し上げます、翌年からは出しませんということで、当初五、六十人ぐらいを予算化しておりましたが、十八年度からの新規事業ですが、五百七名の実績が上がりました。

 これはやはり、さっきも言いましたが、この方たちが交通事故の加害者になるかもしれないという内在しているリスクを考えますと、そういうことも含めて、公共交通への投資というのは理解の一助ではないかと思っています。

長崎委員 ありがとうございました。

 続けてお伺いして恐縮ですが、将来ビジョンを明確化して市民の皆さんに説明して、それが理解を得るポイントだということでありますが、もう一回、まちづくりにおける公共交通の役割というものを整理して御説明していただければと思います。

 市長さんは集約型のまちづくりに向けてかなり御努力されていると思いますが、そういう実体験の中から、まちづくりにおける公共交通というのはこういう意味があるんだというのをまとめて教えていただければと思います。

森参考人 中心市街地活性化計画の地域認定の第一号をいただいたわけですが、富山市の考え方は、冒頭に言いましたように、極端に拡散した都市ですので、それを強制的に引っ張ってくるということは、それはとてもできないことです。しかしながら、今後新しい居住をどういう形でしていくのかということの選択肢として交通便利な地域に住むことを考えてもらいたいということが基本的なスタンスです。

 高齢者の方も、今持っている一戸建ての住宅がついの住みかだという発想を変えて、例えば、冬期間だけでも都心部に住みませんかというようなこと、あるいはひとり暮らしになったらその家から離れて質のいい高齢者賃貸住宅に住みませんかというようなことなども含めて、全体をまちづくりの方向として示す。その際に、移動手段はやはり公共交通を軸とするんだということです。

 ですから、公共交通の活性化というのは、単に移動手段ではなくて、先生がおっしゃいましたように、まさにまちづくり全体の根幹をなしているというふうな思いでおります。

 そのためには、鉄軌道もバスも市電も、公費を投入しながら一定程度質のいいものにしていく。一遍にはできません、着実に一歩一歩だと思いますが、しかし、成果を見せていくことによって、市民の皆さんはやはり応援団になってくれる、こう思っております。

 そうしながら、例えば、今後公共投資をする際は、電停や頻度の高いバス停から三百メートル、五百メートルの圏域の中に拠点化していく。あるいは、民間に対しても、高齢者福祉施設であれ質のいい集合住宅であれ、そういうものをその圏域につくる場合は積極的に補助をする。

 富山市は、一昨年から、例えば、中心市街地のゾーニングをした範囲に質のいい集合住宅をつくる場合は、建築事業者に一戸百万円、購入者に五十万円ですとか月額一万円の家賃補助とか、そういうことを積極的に行ってまいりました。幸い、今、外からの投資もどんどん出てきましたし、昭和三十八年以来、中心部の人口が減り続けていましたが、昨年九月、半期ですけれども、三十七名ですが、ふえました。

 こういう形で少しずつ兆しが出てきておりますので、そういうことを示していくと市民の皆さんも、極めて不公平な制度なんですね、ある道路から外は補助を出さないけれども中は出すとか、極めて不公平なやり方ですが、かなり乱暴ですけれども、しかし、結果を少しずつでも出していくことによって、きちっと理解は得られると思っています。

 さっき言いましたライトレールの沿線も、障害者向けの施設ですとかデイサービスですとか、いろいろな計画も起きてきております。それからコールセンターを幾つも誘致しましたが、事業者は駐車場が要らないということで、そのことの魅力も評価していただいております。

 以上です。

長崎委員 ありがとうございました。

 次に、土居先生にまたお伺いいたします。

 土居先生はたしか京都でLRTの導入に取り組んでいらっしゃると承知しておりますけれども、確かに、観光客がより気軽に観光地を楽しむためには、利便性の高い公共交通というのは不可欠だと思います。観光地域における公共交通の役割というのをどのようにお考えなのか、教えていただければと思います。

土居参考人 観光のパターンがいろいろ変わってきていると思います。これまでの非常に慌ただしくいろいろなところを時間に追われて回るというよりも、かなり滞在型とか、何回かリピーターで行くという形で、こういうふうにだんだん変わってきているでしょうし、それから海外からもどんどん観光のお客さんを呼ばないと観光立国としての名に恥じますから、そういう点では、このLRTの果たす役割というのは非常に大きいと考えています。

 私は、ヨーロッパへ行ってもバスなどになかなか乗れなくて、駅前から出ているLRT、もし違うところに行ってもまた同じところに帰ってこられるわけですから、LRT自体の持っている安心感といいますか、それは非常に大きいわけですし、とりわけ初めて来る都市は不安ですから、そういった点で、観光地に果たすLRTの役割は大きいと評価しているわけです。

 そういう意味では、京都などは非常に向いているわけですし、ほかの地域でもどうでしょうか。富山の場合でも、今回、沿線に観光地がかなり潜在的にあります。そういったところをゆっくり観光してもらうために、行きはLRTに乗って、帰りは運河でまた帰っていただくとか、さまざまな工夫ができて、その地域地域でそういった一つの交通手段をいかに利用してもらうかということが今後大事ですから、単に観光だけの手段ではなくて、地域住民の足でもあるでしょうし、総合的に使わないと非常に無駄になりますので、ぜひ観光地にもこのLRT導入ということを進めていただきたいと思います。

 以上です。

長崎委員 ありがとうございました。

 森市長さんのお話では、まちづくりと一体不可分で、まさに臓器と臓器をつなぐ血管みたいな役割だ、それから観光振興においても極めて大きな役割をしょっている、こういうことであります。

 それで、最後に森地先生にお伺いしたいと思います。

 まさに、こういう地域の生活、あるいは観光振興、あるいは産業振興、それに極めて密接に関係する地域公共交通ですが、地域公共交通総合連携計画を作成するに当たって、私は、こういういろいろな視点を踏まえて、都市計画、あるいは地域のあり方、ビジョン、あるいは観光振興のあり方、観光ルートがどうなっているか、こういうことも含めていろいろ総合的に検討すべきだと思いますが、今後、地域公共交通総合連携計画をつくろうとする市町村あるいは地域の住民の皆様に対して、こういう点をさらに留意すべきだということがあれば、ぜひ最後に教えていただければと思います。

森地参考人 森市長からるるお話があったので、私自身も感心しながら拝聴していたんですが、したがって、繰り返しお話しのように、場所場所で違うだろうと思います。

 一点だけ、観光地については少し違った観点がございます。

 例えば、保津川のトロッコ電車、山陰線の後の線路を使ったものとか、ほかにもいろいろありますが、交通自身が観光資源化する可能性がございます。

 それから、上高地のように、自家用車を入れなくてバスだけで運んでという格好でやっているところもございます。これは観光地の容量があるので、そこに余りたくさんの人が入っては困るとか、余りたくさんの宿屋が建っては困るとか、それぞれの観光地のキャパシティーに合った交通システムを入れる。これは世界じゅうで、カーレスエリア、車を入れないエリア、ロードレスエリアとして道路をつくらないエリア、そこに公共交通をセットにしてとか、いろいろな組み合わせがございますので、観光地についてはまだまだいろいろな可能性があるだろうと思っています。

 例えば、白川郷、合掌づくりのところでございますが、今、高速道路が通じてたくさんの車が来ている状況でございます。しかしながら、あそこは田んぼがあって、合掌づくりがあって、あるキャパシティー以上になるとそこの魅力自身が損なわれてしまいますので、そういう場合には一体どういうふうにすればいいのか、こんなこともございます。

 森市長がおっしゃったように、ぜひ地域の方が理解されて、交通をよくすることが将来に非常に意味があるということと同時に、交通というのは、子供たちが乗り物が好きなように、大変楽しい対象でございますので、楽しみながら取り組んでいただければいいのか、こんなことを思っております。

長崎委員 ありがとうございました。以上で終わります。

塩谷委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 きょうは本当に、今の質疑も含めまして、とても参考になりました。私は実は、随分話題になりました京都に住んでいるものですから、参考人の皆さんがそういう京都に触れられながらお話しいただいたことに、とても興味を持ちました。最後に森先生からお話のあった、車を入れないという問題も、京都などでは、私はそういう意見でして、ところが、国土交通省というのはなかなかのものでして、市内に高速道路を乗り入れようかという話まであるようなところでして、いかがかなと思ったりしているのを、本当に勉強になりました。

 座らせていただいて、質問させていただきます。

 まず、森地参考人と森参考人にお聞きします。

 交通政策審議会交通体系分科会地域公共交通部会の中間取りまとめでは、地域公共交通の活性化、再生は、事業者の経営努力や利用者の負担だけでは限界としています。そして、地域公共交通は公共財的側面を有することから、国や地方公共団体による財源の確保のための仕組みが重要であるとしています。

 森地参考人は、国による支援の中で予算制度という問題を触れられていました。また森参考人は、上下分離方式を初め、市民の理解という問題について触れられていました。今後の財源的手当てについて、もう一歩具体化が必要なんじゃないかという時期に来ているんじゃないかと私は思っているものですから、お二方にその点の御意見をお聞きしたいと思います。

森地参考人 財源ということと、それからどういう予算の仕組みにするというのはセットではございますが、今各省で、インセンティブ型といいますか、工夫をすればそれを後押しするようないろいろな制度が出てまいりました。これはこの数年間の画期的なことで、ヨーロッパ、アメリカはもう大分前から、均等に配分するよりも競争型にして、いいところには集中的に支援しよう、こういうふうにだんだん変わってきていたと思います。日本では、どちらかというと、全部まとめて交付税化するのがいいとかというような議論が盛んでございましたけれども、むしろ欧米では、そういうインセンティブ型、競争型の補助制度が国の役割として重要である、あるいは県の役割として大変重要である、こういう認識に立っている声が大きかったように思います。

 財源につきましては、例えばアメリカで、七〇年代から都市鉄道を整備したのは全部消費税アップを条件にしてございます。連邦と州自治体、カウンティーそれからミュニシパリティーがそれぞれ分担してお金を出すのですが、自治体の方が財源がないものですから、それに見合うような財源として、消費税を何%か上げたらそこで初めて地下鉄をつくります、こういうことをやりました。

 それから、先ほど申しましたイギリスのローカル・トランスポーテーション・プランは、最初、地方の、日本でいう裏負担分の財源がなかったので、うまくいきませんでした。二〇〇〇年代に入って改正するときに、ロードプライシング、込んでいるところを国の許可のもとに有料道路化してよろしい、それから公営だけではなくて民間が持っている駐車場にも駐車場税を課してもよろしい、こういうことをやって、導入したのがございます。

 それから、この三、四年前にフランスは、社会資本整備のための財源調達庁というのをつくりました。昔から交通税があったのは御承知のとおりでございますが、そういうようにそれぞれの国がいろいろな工夫をしておりますので、この国でもそういう議論が必要ならやっていけばいいのではないか、こんなふうに思っております。

森参考人 財源という意味では、今の法律の中で自治体助成についての起債というようなことがありますので、この点は非常に高く評価をしたいと思っています。補助金として民間事業者に出そうとするときに、やはりどうしても一般財源だけでは限界がございますので、そういう点はそのとおりだろうと思っています。

 もう一つは、僕は、さっきちょっと我が市の例で言いましたが、利用者は、運賃だけではなくて、一定程度、地域の足の確保ということに対してやはり地域で負担するということも必要だろうと思っています。それはどの程度まで許容できるのかというのは地域によって違うのでしょうし、ニーズの大きさにもよるんだろうと思いますが、そうでないとなかなか理解は得られないのかなという思いも持っています。

 全く個人的な意見ですが、もしも可能なら、こういう公共交通の維持ということに、あるいは公共交通の質を上げるということに道路特定財源を使えたら大変ありがたいなというふうに個人的には思っています。

穀田委員 ありがとうございます。

 次に、土居参考人にお聞きしたいと思います。

 私も、最初に言いましたが、まちづくりと公共交通という関係がとても大事なことだと思っています。実は私も、森参考人に中心市街地の問題と公共交通の沿線のコンパクトなまちづくりという関係は質問したかったんですけれども、もう出ましたので、大方それだと思うんですが、土居参考人は著作でソウル市の交通改革なんかも評価されております。その点で、まちづくりと公共交通の関係について、先生のお説を拝聴できればと思います。

土居参考人 単に公共交通という目的だけではなくて、まちづくりとか福祉とか教育とか、そういったところがまず上段にあると思いますので、そういったまちづくりのために公共交通を整備していくといいますか、安心して安全に住み続けられるまちづくりといいますか、こういったことが非常に大事だと思います。

 近年、ソウル市のバス改革が世界発信しております。ソウルは、清渓川という、高速道路の撤去によってその下を川に復元して、そして今、非常に観光客とか市民がそこを拠点にして楽しくやっているということで有名ですけれども、清渓川、ソウル市庁のすぐそばの高速道路の撤去は、それだけではなくて、そこで都心に入ってくる膨大な車をまちづくりの観点から排除せないかぬわけですね。そのためにバス改革というのをされているわけです。

 そういう意味では、やはりソウル市自体が、先ほど森市長のプランといいますか、ソウルが世界一流の都市になるということを掲げて、市長がそのためにいろいろな手段をされたわけですね。都心にある高速道路も撤去していく。そのためには交通をどうするかということで、地下鉄は非常に金がかかるし時間もかかりますからなかなかできないわけですし、LRTも線路を引かないかぬとかいろいろありますからどうしても早急にはできないということで、ソウル市の場合は、中央に専用バスレーンというのを大規模に設置して、中央にバスの停留所、シェルターをつけて、そして時間どおりにバスが来る、どっと大量にたくさんのバスが来て、たくさんの人がおりられるといいますか、そういったことをした。そしてその運賃も、バスと地下鉄の乗りかえごとに初乗り料金を払うのではなくて、一応ICカードを持っていれば、目的地までは例えば乗りかえがあっても二百円で行ける。そこで二時間ぐらいあいた場合はICカードでチェックできて、それはまた初乗り料金を払う。

 こういったシステムで、総合的に、市長のリーダーシップということが非常に言われていますけれども、住民のこととか世界観光都市とか、いろいろな視点からソウルが発信されて成功している事例ですから、ぜひ参考にしたらいいのではないかと思います。

 以上です。

穀田委員 夢を持ちたいなというふうに、森参考人と土居参考人の話を聞いて思いました。

 そこで、齋藤参考人にお聞きします。

 地域公共交通総合連携計画というのは、地域の関係者が合意形成を図る、それから協議会を設けることができるわけですね。それで、住民参加のもとで要求が反映した交通計画の策定に道を開くものだと私は考えています。

 そこで、ちょっとお聞きしたいんですけれども、これまで自治体が公共交通計画を策定しようと思っても、事業者の参加、同意が得られないことが少なくなかったというのがこの間の経過にあるんですね。そこで、このような事情について、事業者としての意見はどうですか。また今回、事業者等に対する協議会参加要請に対して応諾義務などを提起しているが、それへの所感をあわせて述べていただければと思います。

齋藤参考人 路線の交通について、事業者が拒否しているような感じがちょっとお話の中にありますけれども、拒否しているようなものはないと思うんですね。事業者が今まで営々としてやっていたものが、これでお客様に不便であるということでない、合意が得られないときにそういうことはあるかもしれませんが、実際には、協議会に出たり、それから地域のための、喜んでいただくようなことについては、事業者としても大賛成でございますので、出て、できるだけ交通についての御理解をいただきながら、利用者に満足していただけるという姿勢は十分持っております。

穀田委員 わかりました。なかなか現実は、もちろんバス事業者が参加を拒否しているとは思っていないんですけれども、いろいろなところでいろいろな事態がそれこそ多様に起きていまして、それは御承知かと思うんです。

 では、土居参考人に今との関係でお聞きします。

 先ほど述べた中間取りまとめではこう述べています。地域のニーズはそれぞれの地域によって多種多様であるため、当該地域住民の移動手段確保について責任を有する市町村のプロデューサーの役割を強調しています。当然と私も思います。

 参考人は地域の交通問題と自治体の役割について実際的な研究も行っているとお聞きしています。その経験を踏まえて、現場で起こっている事象、そしてこの法律案が現実にマッチしているか、学ぶべき点などあれば、お伺いしたいと思います。

土居参考人 地域の方では、そういう地域住民の足を守るという点で問題がかなり起こってきております。

 これも一つのケースなんですけれども、福祉有償運送、あるいは過疎地域の無償運送の場合、これまで地域の人が、どうしても移動するために公共のバスでは不便だからとかいう形で、そういうボランティア的にされているような、助け合い的な手段があるわけですね。それが、今回の福祉有償運送とか、そういう意味では、白タク行為とかそういうことで、安全面からそういう規制は大事なわけですけれども、京都の亀岡という地域なんですけれども、そういった形で、非常にローカルな地域でなかなか路線のバスも来ないところですから、そういう地域の人は、そういうところで自分らでやっていたわけですね、ボランティア的にやっていたわけなんです。そして、通学の手段にも使われ、高校生などはかなり通学圏が広がっていますから、最寄りの駅まで行けないという通学圏の問題もありました。それが結局、国土交通省のいろいろな通達のもとで、NPOをつくったわけです、そういう意味でやはり担保せないかぬですから。講習にも行って、やったわけです。

 具体的には、夢バスという、バスを買い上げてやっているわけですけれども、現実に認可を受ける協議会を開いていただけないといいますか、そういった事態で、そこは、何ぼ地域の住民が言われても白タク的な行為はしたくないということで、やめられて、地域の人が非常に困っている事例があるということです。

 ほかにもいろいろな地域地域で困っておられると思いますから、この法律でぜひ、もうちょっとフレキシブルに、安全面が非常に大事なんですけれども、もうちょっとそういう意味でもいろいろなところをクリアできるような手段をぜひお考えいただきたいと思います。

 以上です。

穀田委員 今のでおわかりいただけたと思うんですが、私は、事業者という問題について、バス事業者を言っているわけではなくて、そういうさまざまな事業者としての角度から、もっと本当に交通を大事にするということが、どうしたら力を全体に発揮できるかという立場からいろいろ御提言いただければという趣旨で述べたわけです。

 最後に私、土居参考人にもう一つお聞きしたいんですけれども、この間の地域交通が、ではなぜ衰退したのかという問題について、どうもこの法律案というのは一定の是正を図っているんだと私は思っているんですね。

 ですから、先生は移動制約者の交通権という立場から御意見を出していますけれども、地域公共交通が衰退した歴史的経過と、それが何をもたらしたかという、原因を簡潔にお聞きし、あわせて、私は、まさしく今の地域交通の危機的状況があるんだと思うんですね。そこの今の認識。

 もちろん富山のように新しい問題提起をして発展されているところはあるんですが、全国的に見れば、本当に今手を打たなければならない時期に来ているのではないかという認識を持っていますので、私は、その辺の根本のところで言いますと、政府がやってきた規制緩和の点で大きな問題点があったんじゃないかという反省が一面必要じゃないかと思っているものですから、その辺の御意見をお聞かせいただければと思っています。

土居参考人 長年、地域公共交通のそういう衰退の原因も研究してきておりますけれども、一つは、地域のそういう重要な足を民間の事業者に任せきりだという姿勢がやはり問われると思うんですよ。民間の事業者自体は福祉事業でやられているわけでないですから、やはり一定の再生産を踏まえて、ちゃんとしたコストを償わないと再生産できないわけですから当然のことですけれども、これまで地方自治体自体は、先ほどもお話がありましたけれども、補助金といいますか、それを出しているわけですね。毎年、県とか地方自治体が集めて出しているわけですけれども、極端に言いますと、そういう出すだけで、地方自治体自体の姿勢が無責任ではなかったかと思います。

 ちゃんとした住民の税金を使っているわけですから、その補助金自体、単にそれをアリバイ証明的に出すのではなくて、やはりその地域の住民の足を確保するという点でもうちょっと積極的に、補助金を出す場合でも、もっと利便性を高めるとか、このルートを回ってほしいとか、さまざまな要求を出しながら、そしてお金も出す、口も出すという姿勢を貫いてこなかったといいますか、それが一つまだ、今から言っても残念なんですけれども、今回そういう意味では、地方自治体にそれだけの人材もなかなかいなかったといいますか、バス事業者なり鉄道事業者が持ってきた書類を一応見て査定はしますけれども、それ以上は関与しなかったといいますか、こういった問題、一つはそういうふうに私は考えております。

 ですから、規制緩和というのは、交通事業者は内部補助がきかないということになったらどうしてももうかるところだけしかやらないというふうになりますから、そういう意味で、やはり社会的な担保がなかなかとれないということで、その地域地域によっていろいろな原因があると思います。だから、本当に需要に見合った形でそういう交通サービスが提供できなかったということもあるでしょうから、本当に地域住民の需要に見合った形であればもっとふえたかもしれませんし、いろいろな地域でそれを点検していきながら、望ましい、非常に安いコストでもっと持続できるような交通手段を考えていくことが必要ではないかと思います。

 以上です。

穀田委員 どうもありがとうございました。終わります。

塩谷委員長 次に、伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉です。

 きょうは、四人の先生方に貴重なお時間をいただきまして、大変にありがとうございます。特に富山市長の森参考人のお話、大変興味深くお聞かせいただきました。順次、今から意見を拝聴していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。座らせていただきます。

 まず、基本的なところから、森地先生及び土居先生にお伺いをいたします。

 今回の法案については、交通政策審議会交通体系分科会地域公共交通部会、これの中間取りまとめを受けたものと聞いております。この中間取りまとめを受けて、実態上、特に今回については、運用面などでこれを具体化するのではなくて、あえて広くトータル的にコーディネートするような形で法律を策定した、このことについてまず御評価をお伺いしたいと思います。

森地参考人 その部会の部会長を務めておりました。山陰の方とか北海道の北見の先生とか、ボランティアでいろいろなことをやっている方とか、いろいろな方がメンバーになってございます。

 その中で自由に問題を、都市とか地方部とか分けて、問題がどういうところにあるのか、それからカテゴリー別にどんな課題があるのか、そういうことを随分幅広く議論をさせていただきました。

 その結果を、どう解決するかということについて、ほとんど取り入れていただいております。ほとんどというか、全部と言っていいかと思います。我々が考えることがすべて入った、大変すばらしい法律だと評価しております。

    〔委員長退席、葉梨委員長代理着席〕

土居参考人 冒頭申し上げましたけれども、高く評価しているわけです。それは、地方自治体のそういう立場といいますか、これまで国自体の政策が交通機関ごとの縦割りといいますか、そういった形で、各バスとかタクシーとか鉄道とかそういった形の助成というのは手厚くやられていたわけですけれども、地方においては縦割りではなくて総合的に移動ということですから、そういった意味で一定の障害になっていたと思うわけですけれども、この法律によってそれが円滑に事業化されるのではないかということが一つ評価されます。

 地方分権を進めるという点でも評価されますので、一定評価しておりますけれども、これまでの縦割りで、いろいろ鉄道事業法とか軌道法とか各交通運送法とかで、縦割りで安全規制をされていたわけですね。その事態が、今回、特例的にいろいろな形の交通事業が入ってくるときに、その安全規制がそのすり合わせによって抜け落ちるのではないかということを一定危惧しております。

 以上です。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 私もこの法案については、まさに国土交通省ならでは、非常に重要な、また画期的な法律だなという印象を持っております。

 もう一点、先ほど申し上げました地域公共交通部会、この議論の過程の中で、三大都市圏、政令指定都市、県庁所在地、その他地方都市、またあるいは中山間地域、離島など、地域ごとの政策課題についてもさまざま議論がされたと聞いております。

 この法案において、地域の別にかかわらず適用する協議会スキームというものを規定しておりますが、これは非常に地域によっては、そもそもなかなかこういう協議会がつくりにくい地域、それだけの人材が確保できない地域もあろうかと思います。この点について、この法律制定後になろうかと思いますが、的確に対応していく上で御意見があれば、お伺いをしたいと思います。

 これも森地先生と土居先生にお伺いをいたします。

森地参考人 冒頭お話ししましたように、この法案の計画内容については完全に自由度が確保されていて、それを公明な場で議論していただく、こういうことになっておりますし、応諾義務とか協議結果の尊重義務とか、こういう格好で、今おっしゃったような問題が起こらないような手当てをしていると考えております。

 したがって、逆に言いますと、さっきの、都市規模別にいろいろ議論をしてまいりましたが、地域地域で物すごくいろいろ状況が異なりますので、そこは自由にして、しかしながら、いろいろな人から見てわかるようにしていこう、こういうことでございます。

 それからもう一つは、法律の冒頭に書いてございますが、国は情報とか技術、こういう面での支援をする、こういうことが大変重要なポイントではないかと思います。

 以上でございます。

土居参考人 私は、コーディネーターといいますか、そういうところとかに、あるいは市町村がこの中に出てくるときに、実際の運用に当たっては非常に問題が出てくる。おっしゃるように、やはり市町村にそういった人材がいるかどうか、非常に心配しているところです。

 府県段階ではかなりそういう優秀な人材が交通政策課とかに配置されておりますけれども、市町村レベルではそういった協議会を運営してコーディネートするだけの人材が今現在は見当たらないと思いますので、国土交通省の各運輸局のそういう意味で地域地域にかなり精通した方が、そして全国的な視野も、いろいろな情報とか世界的な情報を持った方がかなりこのコーディネーターの中に入っていただくことをぜひお願いしたいと思うんです。この点が私は、この協議会の役割の中でいろいろ出ておりますけれども、どういう役割を果たせるか、ちょっと疑問に思っているところです。

 以上です。

伊藤(渉)委員 続いて、では四人の先生方にお伺いをします。

 この地域公共交通、まさにさまざまありまして、非常にその解決策、打開策は難しいと思います。一つの方向性として、私は、事業としてペイできるものは、今後どんどん民間、民営化という方向に流れていくんだろうと思っています。その上で、どうしても採算がとれない、けれども地域また市民、県民の皆さんの足として存続をさせなければならないものについては、行政が関与をしてその存続を図っていく。

 この後者の方に対して、公共交通、公共の役割というものはあるんだろう。今回は法律の議論なわけですが、予算面の意味で、さまざまな補助事業等を見ていましても、イニシャルコストに対しての助成というものは見受けられるんですけれども、ランニングコストに対しての対応というところがイニシャルに比べると少ないんじゃないかと私は今見ています。

 この点、私の考えとしては、イニシャルよりも、今後このランニングコストをいわば税金、公金を使ってどう補助していくのかというところを議論していかなければならないと思っていますけれども、四人の先生方にこの予算面の対応ということについて御意見をお伺いしたいと思います。

森地参考人 もう釈迦に説法かと思いますが、ランニングコストをどんどんつぎ込むと非効率が増してくる、こういうジレンマがございますので、それをどうマネージしながら効率的にやっていくか、こういうことかと思います。

 例えば、かつては、高齢の方とか体の悪い方、こういう方についての援助はなかったんですが、今は、その分は自治体が負担をして利用分としてバス事業者に払う、こういうことも行われております。私の記憶ですと、公営のバスの収入の二五%ぐらいが、そういう高齢者あるいは体の悪い人の輸送費に見合うものとしての自治体の負担でございます。これなんかは、実際に使う人の分を払うということで、支援というよりも、需要を喚起しながらやるという一つの例かと思います。

 それからもう一点、少し関連することで申し上げたいことは、前半におっしゃった、事業としてペイするものは民営化、それからペイしないところは行政、もうおっしゃるとおりだと思いますが、少し長いスパンで見ますと、事例が、メキシコ、それから先ほどお話がございましたソウルも、実態としては、民間会社がたくさんやっていたところを、かなりの税金を投入して公的関与を物すごく強めた例でございます。

 こういうことに関して、私の知る限り一編だけ経済学者の論文がございます。公営でやっていると非常に非効率になるので、それを何とかしたいということで民営化する。民営化していると、だんだんいろいろな弊害が出てきます。独占の弊害ですとかいろいろな問題が出てきて、それに公的関与をする。公的関与をすると、民間の資本はそこからうまみがなくなって逃げ出す。それで、ますます公的関与を強めて、だんだんそっちに向かっていく。したがって、公と民の関係はサイクリックに動くんだ、こういう論文が一編だけございます。

 その実例は、私の知る限りはメキシコとソウルでございますし、アメリカの航空会社が、あの九・一一の前には、まさにモノポリー、独占の弊害が出てきたというような議論が盛んでございました。

 もしそういうふうに長期的にサイクリックに動くんだとすると、規制緩和とか民営化とかということと公的な関係が二十年とか三十年の間で動くかもしれないということを想定して制度設計をすることが必要かもわかりません。

 日本でそれと同じようなことが起こっているのは、先ほどお示ししました、民間に譲渡した、そういう市町村で特定のコミュニティーバスとか福祉バスとかということだけ公的関与で入ってきているというのは、もしかするとそれの第一歩と見ることができるかもわかりません。

齋藤参考人 今の予算措置でございますけれども、公営交通と民間が、私たちのやっているところはちょうど隣り合わせでやっておりますが、コストが全然違うんですね。公営交通でやりますと予算の措置で赤字補てんをしていただけますが、民間ではない。それでできる。

 たまたま最近も私の方へ路線の移譲を受けました。公営交通の非常に悪いところを受けておりますけれども、何とか、いろいろな路線の再編成とか合理化をしてやっていこう、そういうことで努力しているんですが、どうしてもできない地域もあるんです。これはやはり、コミュニケーションのとれない子供さん、それから高齢者、これに対しては、最後の足の踏ん張りはしますけれども、予算を必要としているんだと、これはぜひ行政で見ていただきたいと思うんです。

 たまたまその中で、少し赤字だけれども民間がそれだけやれないというような路線に関して、民間に、これだけの補助を出すからこれをやってくれないかという路線別の委託のようなものがあるのでございますけれども、これは私たちも経験しておりますが、この中で、幾ら上げますよということよりも、全体をプールして、その中で、本当に民間も収入を上げるための、お客さんに乗ってもらうための努力をして、そういうことの上で、プールしたものを今度は市当局とか公的なところと半々で持っていくということになりますと、インセンティブが出てくるような気がするんですね。これは、一生懸命やった人は報いられる、市の方も、それだけの収入がふえれば補助金が少なくなる、そんなようなことを常に考えながらやるべきだと思うんです。

 たまたま、先年、北欧の方へ行きましてストックホルムの市の様子を見てきたんですけれども、ここで、市の交通局が民間に運営を委託しておりました。これはフランスのコネックス社という会社だったんですが、何となく聞いて先年戻ってきましたら、つい最近、その会社が公営交通を少し買いたいという、ちょっとこれは不確実な情報ですけれども、同じ名前が出てきました。これなんかを見てみますと、本当に、委託を受けますと、市の方で決められた回数、決められた時間、決められた場所をただ機械的に運行しているだけ。お客さんにありがとうもないし、営業努力もない。

 日本的な営業努力というのはここにあるような気がするんです。そういうものが出てきた場合、これから少子高齢化になってきますから、やがてこういう路線バスもそういう問題が起こりますけれども、これはやはり日本的な勤勉さを利用して、そこで、今言った、一生懸命働いたところには少しその利益を与える、それから負担の方も、そのかわり半分は市の方に入りますから負担も減る、そんなようなことを考えていったらいいんじゃないかなと思います。

 ただ、この中で、安全で安心して乗れるということをまず大前提としていただいて、それだけの実績があったり社会的な信用があるところがこれを受けるべきだな、そんな感じを持っております。

森参考人 先ほど森地先生がおっしゃいましたように、二つに分けて考えることが必要だろうと思います。

 一つは、採算性の高いものと不採算なもの。採算性の高いところであっても、新たな需要喚起という観点ではやはり一定程度公費を投入することは意味がある、このように思います。ほかの意味ですね、にぎわい創出だとかまちづくりとかという観点から。

 一方、不採算の部分は、それではなくしていいのかということの議論に究極的には行き着くと思いますので、地域社会がそれはどうしても維持しなきゃいけないということであれば、やはりこれは公費を投入してでも維持していくということに尽きるんだろうと思います。例えば、ヨーロッパのストラスブールのあの有名な電車でも、運営費も公費が入っているわけです。やはり、明治以来の日本の常識となっている、鉄道事業だとかバスも含めた公共交通事業が単体で収支がきちっと合っていなきゃいけないということから少し意識を変えて見詰めていく必要がある、そういう時期に至っているのではないかと思います。

 とにかく地方都市は人口が減っていって、高齢者ばかり残っていくわけで、都会に住んでいる若い世代が、それじゃ、自分の親の様子を見にしょっちゅう帰ってくるかということもない。やはり地域社会で支えていくしかありませんから、その際に、移動手段をどうしていくかということは、やはり自治体として真剣に考えていく必要があるだろうと思っています。

 もう一つは、特に私どもの市は、北陸新幹線に伴う並行在来線をどう維持していくかということもありますので、これはどうしたって公費を入れないともたないんだろうと思うんですね。ですから、そういうことも含めて、各事業者の垣根を越えた、地域で一体となった運営形態というものを考えていく必要があるのではないか。場合によると、ホールディング会社をつくるとか、統合するとか、委託するとか、いろいろな手法をしながら、経営を一元化していくということの努力などが必要ではないかと思っています。そうすると、均一料金の実現とかいろいろなこと、利便性の向上にもつながるだろう。

 もう一つは、私どもの市が取り組んでいますように、例えば車両とかバスとかというものは市が購入して、事業者の方に無償で貸与する。この場合は、資産を取得するために公費を使うわけですので、市民の理解も得やすいというようなことで、中間的な償却財ですけれども、そういうものに公費を入れるという方法もあるのではないかと思っています。

 あと、現実には、今、おかげさまでまちづくり交付金とか既存の補助制度を精いっぱい利用させていただいておりますが、今後、ますます地方公共団体の負担はふえていくことは確実ですので、このあたりで財政負担に対して何らかの手当てをしていただくことができれば、それは大変ありがたい、このように思います。

土居参考人 イニシャルコストとランニングコストの公的な負担をどうするかというのは、交通学会でも非常に大きな問題になっております。

 そして、そういう意味では、やはりヨーロッパの教訓、今御紹介がありましたけれども、いわゆる初期的な、例えばLRTの新設にしても、いわゆる架線とかレールをつくるというのは、道路と同じような社会的なインフラですから、これ自体に関しては公的な資金を投入するということで理解を得ておられます、ヨーロッパの場合、EUの場合ですけれどもね。

 これまでEU諸国においては、バスとかいわゆるローカル鉄道が、極端に言えば赤字であってもいいといいますか、そこで何もそういう収益が出なくてもいいという形で、赤字で当然だという主張で来ていたわけですけれども、やはりそれではだめだということで、できるだけランニングコストでは収支償うような形で、そういった条件をつけるべきだということで大きな風潮が出てきております。そして、入札制度とか、路線を事業者ごとに入札して、一番安いコストでやってもらえるところに出すとか、そういったいろいろな形を取り入れております。

 やはりそういうランニングコスト的な負担をどうするかということで、一つの理論としては、単に税金の投入を、一つの路線とかバス路線に投入するときの負担ということで狭く考えるのではなくて、その公共交通を維持することによって、他に違った意味の波及効果といいますか、例えば高齢者の方がその公共交通を使うことによって非常に元気になられて、そしてそれが、国民健康保険料の負担に解消されるとか、さまざまな意味でいろいろな波及効果がありますから、そんなことも市町村としてはトータルで考えていって、狭く、そういうランニングコストの負担がどうかじゃなくて、公共交通の持っているそういう社会的な効果をいかに測定していきながら市民の理解を得るといいますか、こういったことも非常に大事になってくると思います。

 もう一つ、財源問題の私見ですけれども、道路特定財源、やはり一般財源化する方向が最終的にいいと思いますけれども、この過渡期の段階では、やはりこういった公共交通の維持とか改善のために使う形で、そういったステップを踏みながら国民の理解を得るべきではないかと思っています。

 以上です。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。

 質問時間が二十分しかなかったので、既に終了してしまいましたけれども、このイニシャルとランニングの話は、私の問題意識は、公共交通機関が今の時代の中で仮に失われたとして、将来また、長いスパンで見たときに、もう一度それが必要になったときに、一たん失ってしまうと、再生させるときにやはり相当な費用がかかりますので、一時ランニングコストを仮に負担してでも存続させることの方が、長いスパンで見たときに実は効果的なんじゃないかというような問題意識を持っておりますので、確認をさせていただきました。

 森市長にLRTの話を含めてもっと聞きたかったんですが、時間が終了しましたのでこれで終わります。ありがとうございました。

葉梨委員長代理 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 本日は、四人の参考人の皆様方におかれましては、大変御多忙の中、御出席いただきまして、また貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございます。

 私も持ち時間が二十分でございますので、質問させていただきます。座らせていただきます。

 私も福井県の出身でございまして、地域公共交通の活性化には非常に興味を持っております。そういう中で、地方では、今、廃止になってしまう路線バスですとか鉄道、私どものところで、永平寺に向かう電車が廃止になったりとか、そういうことがございます。大都市圏と地方圏の間には、公共交通サービスの観点から非常に大きな格差があるというのを、我々地方の議員は非常に感じるわけでございます。

 公共交通ネットワークが地方経済、観光振興、こういうものに果たす役割についてかんがみますと、このような格差について、四人の参考人の方々は、国はどのような対応をすべきなんだというお考えをお持ちなのか、お聞かせいただけませんでしょうか。

    〔葉梨委員長代理退席、委員長着席〕

森地参考人 交通の問題、それから生活そのものの問題、それから環境の問題、いろいろな観点があろうと思います。したがって、基本的には、公共交通をどの地域でももっと確保しなきゃいけない、この命題ははっきりしているかと思います。

 それから二番目に、この国と欧米を比べますと、大都市については公共交通について物すごく成功している、世界優等生のところでございます。中ぐらいの都市、ちょうど富山とか県庁所在地ぐらいのところ、ヨーロッパに比べると公共交通にやや弱い、そうなっております。

 その裏には、先ほどからお話が出ておりますように、日本と違って、社会的にその費用を公で負担する、こういうことが大変強い、そういう国でございます。ただ、お金がどこかから降ってわいてくるわけじゃございませんので、出しているお金はだれか別の人が払っているわけで、結局、納税者がそういうことにお金を使うことに理解を示すかどうか、この一点にかかっていて、先ほどの森市長のお話のように、市民が理解をすればそういう格好でやっていくんだろうと思います。

 最後、福祉バスとか中山間地、こういうところは、むしろ福祉の問題で考えていく。それに、病院に行くバスだからといって、ほかのお客が乗れないというようなことではなくて、それに汎用性を持たせる、そんなやり方。それからさらに、今、昨年の法律改正で進展しておりますような、NPOだとか、国土形成計画で新たな公、こういうコンセプトを出してございますが、そういうところでサポートするとか、このミックスでやっていくよりしようがない、そんなことだと思います。

齋藤参考人 事業者としましては、先ほど申しましたように、お客様がいる限りやっていきたいという気持ちが多いわけですね。

 ただ、やはり経済原則で、大赤字ではやっていけない。この部分で地方の首長さんと十分話し合って、どうしても必要なところ、どんなに補助金がかかっても、先ほど申しました、交通弱者の人たちの確保のためにはどうしても必要なんだというところについては、やはり公的資金をどうしても入れていただきたいと思う。これについても、先ほど言いました、安全、安心ということがまず求められませんと、大変な災害に陥ってしまってから、しまったという問題が起こるような気がするんです。

 今、世界の先進国は、路線バスについてはほとんど公営的なバスしかない。ですけれども、日本だけはもう精いっぱい民間がやっているわけですね。この勤勉性をやはり利用して、一生懸命やっているところにインセンティブが与えられるような、そういう政策をしていただきたい。

 要するに、お客様に喜んでいただける、そういうやり方をしなくちゃいけないんですが、たまたまおもしろいデータがありまして、神奈川県では一年間のバスの利用が八十回弱、七十八回ぐらいだったかと思いますが、一番少ないところが一年間で四回か五回しか乗っていない、こういうところもあるんですね。事情もさることながら、そういう努力もやはりしないとお客様もついてこないだろう。

 そういう必要なところはやはり予算を出してほしいし、いろいろ事業者としてはお願い事ばかりでございますけれども、精いっぱい努力をして最後までやりますけれども、そこが経営が成り立たないような、そういうことまでならないように、必要なものには補助金を出していただきたい、そんなふうな考え方でございます。

 以上です。

森参考人 都会と地方で需要量の大きな差がある、その格差を都会から持ってくるということは不可能ですから、やはりそれぞれの地方に応じた対応をしていくしかないんだろうと結論的には思います。

 一世帯当たりの車の保有台数は、たしか福井県が日本一で富山県が二番ですけれども、それはそれなりにその時代の要請にこたえてきた。道路整備もやってきた、あるいは駐車場の整備もやった、橋梁も含めて本当にいい社会基盤整備をやってきた。それは、やはりその時代の要請にこたえてきたんだろうと思うんです。

 しかしながら、十年後、二十年後の人口減少の状況を考えていくと、交通弱者が激増する。そうすると、先ほど伊藤先生がおっしゃいましたが、今はやはり将来への再投資をする時期に来ているんだということを社会全体で考えていくんだろうと思っています。

 一人一人のライフスタイルの中でも、私の地元の市民もそうですが、みんな車で移動することになれ過ぎていまして、五百メートルを歩かないんですね、富山駅の北口から南口まで歩くのも大変だと言う地域ですから。実は一人一人の暮らし方の中でも、そういうところも意識改革をしていって、バスに乗って暮らしていた時代の記憶をもう一度呼び戻す、そうしてみんなで公共交通を支えるという仕掛けが必要だろうと思っています。

 ですから、そういうことも精いっぱい、やるだけ努力をした上で、やはりその上で維持するための公費投入という議論をちゃんとやっていくということかなと思っています。

土居参考人 地域ごとの特質がありますから、首都圏とかいわゆる地方都市、それから過疎地域とか、さまざまに分けて、現実的に考えることが必要だと思います。

 ですから、首都圏の場合は、いわゆるメトロ、地下鉄に各私鉄が乗り入れて、物理的には非常に乗りやすいといいますかそういうシステムがつくられておりますけれども、もしこれが、欧米のようないわゆる運輸連合をつくって、そういう形で乗りかえ自由にどんどん行けるとなったら、もっと需要はふえるでしょうし、乗りかえもスムーズにいくと思いますから、そういったことをまだまだ工夫すれば、首都圏の場合ですと出てくると思います。

 それから、地方圏、いわゆる政令指定都市とか県庁所在の都市なんかは、現実には、やはりLRTなんかをもとにもう一度システムを組むとか、そのときにバス事業者もそこに参画してもらうとかいろいろな、やはりそれぞれにもっと知恵を絞ってやればいろいろな手だてはできてくるわけですから、ぜひそれぞれの地域の人が、もう二十一世紀、高齢化社会、環境問題、いわゆる財源の少なさとかを含めて、さまざまな工夫をすることが大事ではないかと思います。

糸川委員 ありがとうございます。

 私の福井県、今、約八十万人の人口でございまして、至るところに観光地が点在してしまって集中していないわけですね。そういうところに公共交通がまた発達をしていない、バスが一時間に一本では観光客が乗れない、ではどのタイミングで乗ったらいいのかという案内もできない、そういう中でまたさらに観光地がなかなか振興できなくなっていくというようなことで、悪循環になっているものですから、そろそろいろいろなところの力を結集して、もう一回活性化をしていかなきゃいけないなというのは考えているところです。

 そういう中で、本当に富山市長の先ほどのお話も感銘を受けまして、私も、私の政党の代表が富山なものですから、何度も富山に行ってこのライトレールを拝見させていただいております。

 ただ、これは重なる部分もあるんですけれども、ちょっともう一回、森市長にお答えいただきたいんです。

 LRTの導入、これは非常に興味がございます。市が主導的な役割を果たしたということも、先ほどもおっしゃられております。自治体が公共交通機関を支えていく場合、財政的な負担というものが結構大きいようには感じるわけでございます。事業者ともどのように役割分担、先ほど資料をいただきましたけれども、役割分担をどのようにするべきだ、どういうふうにすると成功するんだということを、ちょっともう一回御説明いただけるとありがたいと思います。

森参考人 富山ライトレールのケースについての御質問だと思いますので、先ほども御説明しましたが、私どもは、最初から公設民営でいく、道路や橋を税金、公費でつくって、その上をバス事業者が運行しながら運賃をもらっているということと、新たに取り組むLRT事業も一緒だと。ですから、軌道の敷設も、それをもう一歩超えて車両の購入も公費でやります、それを新たにつくった三セクで運行を任せますけれども、しかし、運賃収入で運行経費だけは見てください、そこに公費は入れませんということを明確にして取り組んできました。やはり、新たに取り組もうとするときは、ぎりぎりこの線までは公費を入れないと、とても事業として生まれてこないと思っています。

 ただ、私どもの場合は、非常にラッキーだったのは、まず民間の、経済界が非常に大きな応援団になっていただきましたので、資本金を集めるときからオーバーするくらいに資金が集まりましたし、それを積んで今基金も持っているわけです。そして、市民が全体として大きな応援団になっていただいたことによって、利用が大きく伸びてきた。

 百円でやってきたものを、先ほど来先生から、残念だけれども、百円延ばしたらみたいなお話がありましたが、既存の市電もありまして、市電は全く民間が二百円でやっていて、市がかかわっている部分だけいつまでも百円というわけにはやはりいかないだろうとの思いで二百円に復したわけです。四月に入りましてから利用はほんの少し落ちてはいますけれども、心配するほどではなくて、やはり安定的に利用してもらっています。そのかわり六十五歳以上は百円とか、いろいろな手当てもしました。

 いずれにしましても、新規に公共交通をやろうとする、あるいは既存のものを行政が受けてやろうとするときには、今申し上げたようなことがぎりぎりで、何とかランニングの方だけは頑張ってみようということの機運で始めることだろうと思っています。ここは、歯どめが崩れると、過疎地で走る場合は、さっき言いましたように不採算地域は公費、ランニングも入れていいと思うんですけれども、一定程度見込めるところは、やはり今言ったところがぎりぎりではないかなと思っています。

糸川委員 ありがとうございます。

 では、これは森地参考人と土居参考人にお尋ねしたいんですけれども、今までお話を伺っていると、このLRTの導入というのは非常にいいケースなのかな、すばらしい提案なのかなというふうに思っているわけでございますが、では、新たに導入していこうとしていく県であったり市であったりというところに関して、LRTの導入に当たって、今後どのような点が課題になってくるというふうにお考えか、お二人の参考人からお聞きしたいというふうに思います。

森地参考人 一つは、利用者がちゃんとそれをウエルカム、歓迎してもらえるかどうかということが最大の問題だろうと思います。

 冒頭申しましたように、ヨーロッパ、アメリカは、ほとんどと言っていいかと思いますが、都心部の自動車を入れないところにこういうものを入れる。トランジットモールという形式は都心部だけですが、そういうことをやってお客を確保し、それから都心の活性化を実現しております。

 八〇年代からもうずっと、どこの国へ行ってもそういう格好になっております。この国はそれを市民が受け入れないという風土がございますので、ここを何とか意識を変えていってもらえれば、もっといろいろな使い方が出てくるんだろうと思います。

 それから、クライストチャーチというニュージーランドの南の島の一番大きな都市に、京都のチンチン電車に相当する電車がループで走ってございます。これは観光用で、市内の観光地をずっと回る。もちろん市民も使えますが、観光客だけすごく高い値段を課しております。そんな事例もございます。御参考までに。

土居参考人 LRTというのがなかなか社会的な認知を得ていないといいますか、京都でも、従来の京都市電という、チンチン電車と言われていますけれども、非常にそういう古いイメージが残っておりますから、近代的なバリアフリーの富山のライトレールのイメージがまだ浸透していませんから認識が弱いということもあって、そういう意味では、いろいろな経験といいますか、そういうところでは富山さんのところに乗りに行くとか、そういうことも必要ではないかと思います。

 やはり政策的には、今お話もありましたけれども、TDM政策ですね。軌道敷内に車が乗り入れないのは当然なんですけれども、車の渋滞とかいうことが非常に抵抗になっています、感覚的ですけれども、利用者の考えとして。ですから、そういう意味ではやはり、新しくLRTをつくってもマイカーの人もちゃんと移動できるといいますか、逆に確実に渋滞のないLRTをつくったら、マイカーからシフトしていただく率も多いわけですね。そして、道路もすいてくるといいますか、マイカーも移動できやすくなるというふうなことが、熊本とかいろいろな事例が出ておりますから、LRT単独に入れるのではなくて、TDM政策と一体化して総合的な政策をつくっていくことが必要ではないかと思います。

 以上です。

糸川委員 ありがとうございます。

 では、もう時間がございませんので、最後に齋藤参考人にお尋ねをしたいんですけれども、LRTとBRTというものが今回の大きなものでございますけれども、大型の高速バスシステムの導入に当たって、今までどのような点に御苦労されていらっしゃったのか。これは都市部、地方部、過疎地域、それぞれ違いがあるわけで、特に地方部での御苦労について、解決してきた解決の方法と、そしてまた、今後解決すべき課題についてお答えいただけませんでしょうか。

齋藤参考人 今、LRTのお話がありましたけれども、今回の連携計画の中で、道路運送高度化事業ですか、この中の日本版のBRTということで、連節バスの話が入ってまいりました。当社でたまたま取り入れておりますが、今四編成使っておりまして、小田急線の湘南台という駅から慶応大学の湘南校舎まで四・二キロでございますけれども、これを入れましたら、一日七千八百人ぐらい運びまして、大変好評でございます。

 私たちも本当に意外だと思ったのは、その四・二キロのうちの三キロぐらいは片側一車線です。だから、連節バスというのは片側二車線以上なかったらできないものかなと思いましたら、そうではなくて、そこでやはり知恵を絞らなくちゃいけないということで、その部分だけは急行にしました。ノンストップです。ですから、普通のバスと同じです。その間に停留所がありますから、この人たちには、従来のバスを運行計画の中の間隔に入れまして、そういう人たちを救済しました。

 それで、学生さんですから、もう本当に駅前にあふれちゃうんですね。これを何とかしようということで、この連節バスの能力は非常に高く、大体普通のバスの一・六倍の百二十九人を一遍に運べますので、これによってそれらの渋滞を解消しましたが、たまたまこれはネオプラン社製のものでございますけれども、ことしはもうヨーロッパでなくなっちゃったんです、その会社が。

 それで、ダイムラーの方にことし購入の計画をお願いしたところ、ダイムラーの幅は、日本の車両の規格が二・五メートルのところが、二・五五なのでございます。少し長い。それから長さが、これも、今入れたのはもう例外ですが、十二メーターのところを十八メーター、それから重量の方も、一軸当たり十トンのところが十一・五トンというふうに、ちょっと今までの基準をオーバーしますけれども、たまたま幅の方は何とか整っておりましたので、今まで入れました。それが、今回これから入れようとしているのは、幅の方が二・五五メーターでございますので、これらの特例の方を少し考えていただきたいというのを先ほど陳述の方で申し上げまして、少し考えていただければなと。

 それから、価格が大分高いんですね。一編成六千万でございますけれども、これは十七年三月に入れたときの価格で、ユーロがちょっとレートが上がりましたものですから、七千万近くいくんじゃないか。だから、補助金の方を入れていただかないとちょっとできないんじゃないかなと思っておるんです。ただ、今やっているのが非常に順調で、地域の人にも喜ばれたり、それから住民の人たちも喜んでいただいておりますので、周辺の都市が、うちにも入れてくれということで、予算化する都市も出ました。

 当然に、ことしは四編成また買いますけれども、行く行くは三十編成ぐらいまで買って、主要なところは入れる。それで、少し路線の小さいところは、少ししか乗らないところはフィーダーバスということで、これに連節させるような形で、携帯電話に何時にこれと連結しますよというようなのを、今そういう方向でやっておりますが、それらが非常にうまく機能していただいておりますので、ぜひ先生方も一度乗っていただきたい。

 これは、バスだけで、道路の方はそんなに要らないですね。ですから、設備投資が非常に少なくて済みます。回転半径もほぼ大型バスと同じぐらい、ちょっと多いかというくらい。それから免許の方も二種大型でやれます。

 できれば停留所を、今までの十二メーターの切り盛りがあるのが、十八メーターになりますから、これを長くするとか、それから、乗りおりするところにガードレールがついていたり、そういうことが、入り口が三つになりまして、ちょっと大きくなりますので、そういうものを直していただいたりということをしていただきながらやっていただきますと、まさに本当にLRTのかわりのものができるんじゃないかと思います。

 本当に、専用道路があれば一番いいんですけれども、それがなかったら、朝晩だけ二時間ぐらいずつ専用にしていただいて、あとは市民が使っていただいて結構なんですが、そういうことの工夫もしながらすれば、設備投資しないで有効にできるような気がするんです。

 今回の件につきましても、関係当局でいろいろ計らいをしていただきまして、ヨーロッパ基準に近いような規制になりそうでございますので、また御協力をお願いしたいと思います。

糸川委員 ありがとうございました。

 時間が参りましたので、参考にさせていただきます。ありがとうございました。終わります。

塩谷委員長 次に、三日月大造君。

三日月委員 民主党の三日月大造です。

 きょうは、それぞれ四人の参考人の皆様方、お忙しいところありがとうございます。

 私も、元鉄道会社の社員でありまして、それで、こういう交通機関を生かしたまちづくりのあり方についてはいろいろと考えてきたつもりですし、また、私の選挙区は、新幹線新駅をつくるかつくらないかという、びわこ栗東駅のあるところで、つくるかつくらないかという土地でありまして、きょうは、そういう政治的な話は抜きにいたしまして、先生方にいろいろとお話を伺えればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 早速なんですけれども、いろいろ移動手段の確保という点で四名の方にお伺いしたいんですけれども、少子高齢化の中で高齢者の方がふえていて、免許を持っているけれども危ないという方々がふえていると。森市長からお話がありましたけれども、車を自由に使えない市民が、いわゆる交通弱者という御表現で三〇%いらっしゃるようになったと。地方の過疎地域ですとか交通空白地域なんかも生まれてきているという状況の中で、いわゆる移動する権利、国民の移動する権利というものを国で法に明文化することに対する御見解。

 一部、土居先生の方からは、今回は今回、ワンステップとして、次の機会に交通基本法というものを整備すべしだという御意見を承りましたが、私たちは、今国会に交通基本法というものを提出させていただいて、その条文の第二条に、移動する権利、また移動の自由というところを盛り込み、さらに、そういう交通空白地帯に対する国の配慮、移動制約者に対する公的機関の配慮というものも条文化した法律を実は今国会に提出させていただいているんですが、この状況下に及んで、移動する権利というものを法で定めることについての皆様方、四名の参考人の方々の御見解をお聞かせいただきたいと思います。

森地参考人 もう昔からこの議論がございます。論点もはっきりしておりまして、そうやったときに、どのレベルまでのサービスをし、それにお金がどれぐらいかかって、その負担を一体だれがするのか、結局国民がするわけですから、それをアプリオリに、もう無条件に権利を与えて、幾らお金がかかってもやりますという話は、これは国民の納得を得られるわけがない、こういう話だろうと思います。

 したがって、今それを今回の法律のように個別に手当てをして、富山の市長さんが苦労しておられるように、そういう格好でやっていくやり方と、権利があるんだからといってばさっとやるやり方と、どっちが向いているかといえば、当然今日本でやっているやり方の方が向いていると私は思います。

齋藤参考人 バスの事業者としては、皆さんが本当に自由に移動できる、これはもう大賛成なんですが、予算措置もあることでございますので、それらを含めて住民の合意が得られれば、私は賛成でございます。

森参考人 生活を保障するという意味では、行政の側に一定程度のサービスを確保する義務というものは、広い意味ではあるんだろうと思うんですが、先ほど先生からお話がありましたように、それを法律で権利というふうに明確化してしまうと、反対給付として自治体としては非常に困難が予想されますので、そこまでは果たしていかがなものかという気はいたします。

土居参考人 交通基本法のルーツは、御存じのようにフランスの交通基本法から来ていますけれども、ヨーロッパ各地で、このように具体的に交通基本法という法律がなくても、そういう意味でいろいろな法律の中にこれが盛り込まれております。

 そういう形で、運用面といいますか、スイスでも、鉄道事業法の中にそういう大きなことはうたっていても、具体的には、いわゆる通達とかそういった形で、集落に住民が二百人以上いるところには政府は公共交通をちゃんと整備する必要があるとか、そういう形で各論的に言っておりますから、まず国民的な合意を得た上で、具体的な内容とか運用に関しては次のステップでいいのではないかと思っています。

 以上です。

三日月委員 ありがとうございます。

 森地参考人と土居参考人に重ねてお伺いしたいと思うんですけれども、今言われたように、私も当然、権利を保障する以上財政の負担も伴うわけで、それをだれがどのような形で負担をしていくのかということに対する合意形成というのが欠かせないと思うんです。

 しかし一方で、中山間地域のようなところ、また離島のようなところ、どこまでを権利と認めるのか、必要な移動と認めるのかということについては論があると思うんですが、しかし、森市長のように、鉄道だけを見ない、今だけを見ない情熱的な市長がいらっしゃって、何とかして交通をやろうという地域はいいけれども、そうじゃないところは、何か声出せど届かぬみたいなところもある。

 そういう市長も結局は一票一票で選ぶということであれば、みんなでまた選んでいけばいい、政策をつくっていけばいいということであると思うんですけれども、こういう地域による格差というものをどこまで許容していくべきだ、もしくは許容できるとお考えなのか、森地先生、土居先生にお伺いできればと思います。

森地参考人 一般論としてここまでがというのは、私自身決める知識はございません。ただ、こんな例をお話ししたらいいかと思います。

 日本もバリアフリー法ができましたが、ああいうことを最初にカナダあるいは北欧が始めました。そのときに、ある国は、駅にもバリアフリーの措置をしなきゃいけない、それから、体の悪い方のためのバスをサービスしなきゃいけない、さらにタクシーも、要求があればタクシー代を補てんしなきゃいけないというふうに、何重にもやった国もございますし、そうじゃなくて、一番安い方法、具体的には、体の悪い限られた人についてはタクシーを、上限を決めて交通費として渡すというような、こんな政策をとった国もございます。さらに、これは北欧が多いんですが、体の悪いということの認定を、お年寄りなんかを含めて町のお医者様が認定できるよ、こうやった途端に物すごいボリュームの人たちがその対象になった、こんな国もございます。

 したがって、国民がどこまで許容できるのか、その負担を認めるのか、そういう議論の中で決まっていくことですが、基本的には、国全体でやる話ではなくて、やはり地元の自治体が責任を持ってそれに見合ったことをやるべきだというのが私の基本的な考えですので、その場合には当然格差が出てまいります。そうすると、よりいい町に自分は住みたいな、こういう格好で選択がなされる、こんなことではないかと思います。

土居参考人 各地域ごとにそういう形の施策を、先行事例といいますか、富山の事例とかが紹介されて、ほかの地域もそれに追随するということが一つあると思いますから、やはり全部が平等ではなくて、先進事例を追って各地方自治体の首長さんの方とかがまた熱心に取り組むということが出てきておりますから、目標自体は富山のケースが今回非常に参考になると思います。

 ただ、武蔵野市のムーバスというのが、そういう意味で、コミュニティーバス、百円バスのルーツになっているわけで、これは十年ぐらい前からでしょうけれども、そういう非常に新しく、交通空白地域とかそういうところに小まめにバスを運用されるということで、先行事例として全国各地の自治体の方が見に行かれて、やはりこういう形が非常に今後の高齢社会に向けていいということで、かなり全国的に導入されているわけですけれども、先ほど言いましたように、魂を入れずといいますか、形だけになってしまったもので、やはり本当に地域に合った、十五分ヘッドとか百円ではできないわけですから、どういう形でそれができるかとか、それぞれ先行事例を研究してバリエーションというものをやっていかないと現実的な運用は難しいと思いますから、そういう意味で、やはり先行事例を十分に研究して、コーディネートできる人を育てていくということが非常に大事ではないかと思います。

 以上です。

三日月委員 ありがとうございます。

 齋藤参考人にお伺いしたいんですけれども、先ほど連節バスの、御社で導入されたバスのお話はいただきましたが、過疎バス対策についてお伺いしたいと思うんです。

 今回定めた法律では、バス事業の高度化というか、いわばそういう先進的な取り組みをするところに対する支援のあり方について定められました。昨年十月ですか、道路運送法が改正されて、そこで一定程度手当てはされております。また、鉄道の再生というものについては今回盛り込まれておるんですが、いわゆる過疎バス対策というものについては、既存の、先ほど意見陳述の中でおっしゃっていただいた七十二億円、自治体の裏打ち七十二億円、国が七百六十億円、そして自治体の単独補助三百六十億円、こういう形で路線補助が今行われているんですけれども、この過疎バス対策というものについて、今後のあり方をどのようにバス協会としてお考えになっていらっしゃるのか。

齋藤参考人 大変難しい問題だと思うんです。

 これはやはり地方自治体の首長さんの考え方が大変必要だろうと思うんです。先ほど申しましたように、交通弱者、どうしても足がない人たち、これにはどんなに原価がかかってもこれだけのバス路線は必要なんだ、足が必要なんだ、こういう考え方であるならば、これはもう補助金を出していただきたいし、事業者としては、そういうことの収支が整えば、何としてでも協力していきたいという気持ちでおります。

 今、実情としては、地方の方へ行きますと、一キロ走るのに三百円とか、京浜地区になりますと六百円ぐらいのコストがかかりますが、こんなふうに、都会と田舎とこんなに違っちゃうわけですね。

 ですから、これを民営バスが全部というわけにはいかないと思うんですが、地方自治体の首長さんが、どうしても住民の足として必要なもの、これについてはやりたいということがあれば、精いっぱい協力して、こういうことを維持するということは、やぶさかでございません。

三日月委員 ありがとうございます。

 私も同感なんです。しかし、これは国でやるべきなのか、地方自治体で賄うべきなのか、どの程度まで、官と民のあり方、自治体で持つべきなのか、事業者で負担すべきなのか、利用者が負担すべきなのかということについて、それぞれの土地土地によって事情が異なると思うんですけれども、今後また、あるべき姿を皆様の御意見も聞きながら探ってまいりたいというふうに思っています。

 森市長にお伺いしたいと思うんですけれども、きょうも、かなりいろいろな、また新たなアイデアも伺いました。JR高山本線の活性化社会実験ですとかコミュニティーバスの運行、また、おでかけ定期券、さらには、免許証を出してくれと、二万円でしたか、五百七十人の方が御協力という形なんですけれども、失礼な話、こういうアイデアはどなたから次々とわいてくるんですか。

森参考人 もちろん私の方からこういうのはできないかと言うこともありますが、職員の方から提案してくるものもございます。

三日月委員 すばらしいことだと思いますし、私、市長になられるときのマニフェストというんですか、「まちのチカラ」「人のチカラ」「森のチカラ」ということで、このときから既に、北陸新幹線が来るから、それに伴う連続立体交差があるから、町の交通、LRT化も含めて検討していくということを約束されて、そして住民の支持を得られてこういう政策を実施されているということだと思うんです。

 一点ちょっとお伺いしたいのが、事業者との関係。

 先ほど、住民との関係ということについては、飽かず説明を繰り返していくんだと。富山の場合は、北側がLRT化で整備されて、南側のエリアは関係ないように思って、そこも含めて税金を投入するということについての理解を得るためには、各地を回りながら説明会を繰り返したというお話もいただいているんですけれども、JRにしろ富山地鉄にしろ、こういう事業者との関係をどのように日常的に積み重ねていらっしゃるのか。

 また、交通事業者の経営形態、それぞれ、株式会社であったり民間会社であるわけで、今回、軌道に関しても上下分離方式が認められることになりました。私は、一定程度、一定というか、そういう形で整備していくことが必要だと考えているんですけれども、ならば、交通事業者の民間での経営形態についてどう考えるのかということについて、お考え、御示唆をいただければと思います。

森参考人 富山市の場合、非常にラッキー、ラッキーと言うと言葉が過ぎるかもしれませんが、よかったのは、市内にあります交通事業者が一社だったということです。例えば、バス事業者が複数社いるとか軌道事業者が複数社いるとかという場合に、どの事業者と組むかということの難しさがあったと思いますが、それが幸い一社でございましたので、バスも市電も鉄道も、富山地方鉄道一社しか私鉄はないわけです。

 したがって、市が取り組むさまざまな、過疎バスであれ、コミュニティーバスであれ、さっきちょっと御説明しましたが、地域で自主的に運行しているバスであれ、現場で運行自体を担っているのは全部富山地方鉄道ですので、その点では合意形成をやりやすい。企業として見合うか見合わないかを判断されて、あとこれだけ負担してくれたらやりますよ、こういう話ができていくということが一点ございます。

 もう一つは、今度の法律でも、総合的な計画を策定ということの流れですが、実はこれと似たものを、任意の計画ではありますけれども、富山市公共交通活性化計画検討委員会というのを設置しております。この中には、国土交通省の整備局にも運輸局にも入ってもらっていますし、県警察、そしてバス事業者、鉄道事業者、JRも入ってもらっています。それから、タクシー、市民の代表、そういう幅広い組織で交通ビジョンというものを検討してきて、そこでまず基本的な枠組みというものをきちっとして、そしてあとは、財源を見つけた範囲で一歩一歩進めていく、こういうふうに進めてきましたので、今後も地元の事業者とは良好な関係でやっていける、こういうふうに思っています。

三日月委員 ありがとうございます。

 私もJRにいました。また、今こういう立場で、自治体とJRの関係、もしくは交通事業者との関係をいろいろ見ているんですけれども、一方で、自治体からすれば、何かお金の負担を求められてしまう。JR側も、踏切の整備にしろ駅舎の改築にしろ、さまざまな財政負担という面がやはりネックになって、住民にとって必要な設備投資や何かが進んでいかないということが多々見受けられるものですから、そのあたり、富山市長は日ごろから、協議会をおつくりになって、さまざまな意見交換を積み重ねていらっしゃる。まあ、会社がそんなにたくさんなくて、競合する会社がなかったという特殊事情もあったのかもしれませんけれども。

 土居先生、そのあたり、いろいろな地域の事業者と自治体との関係をごらんいただいておりますけれども、どのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。

土居参考人 そういう点では、利用者と事業者が接点がないというのは大きな問題だと思います。富山市の場合のようにいろいろな場があればいいんでしょうけれども、利用者の意見が通じないというのは、過疎バス、コミュニティーバスを初め、聞いたら、事業者がそういうところに全然出てこないという、出てこないというか、そういう懇談会にしろ開かないわけですから、もう本当に利用者のニーズを全然吸収していないというのが私の感覚です。

 やはり密接に、それは、事業者にしたら、日ごろのサービスのいろいろな不満を住民から追及されるということで不安かもしれませんけれども、やはり利用者は原点ですから、定期的に、月に一回とは言いませんけれども、利用者懇談会というのを年に一回ぐらい開いていただく。そうすると、いろいろな利用者の声も、できないことはできないでいいわけですけれども、そういったことをやはり常設の場としてぜひ、この協議会とは別かどうか知りませんけれども、お願いしたら、かなり地域の交通はよくなる可能性があると思います。

 以上です。

三日月委員 ありがとうございます。

 先ほど、森参考人の方から、アイデアは職員なり市長御自身も出されているという話がありました。こういう公共交通政策で、何とかよくしよう、もしくは、どうしたらいいのかなと悩む自治体は多いと思うんです。

 今回、法案の基礎となりました分科会、検討会でも、そのあたりのことについて一部触れていただいておりますし、また、森地参考人の方からは、先ほど、CIVITASですか、という形の、都市間の情報交換の仕組み、それぞれ規模別にグルーピングして、そして経験なり試行、実験をみんなで共有化するんだという仕組みを紹介されました。私は大変すばらしいことだと思いますし、国においても、今回、法で、そういう情報提供や何か法文化されておりますが、もっともっと充実をさせていくことが必要だと考えるんです。

 そのあたり、森地参考人、まず、お考えなり、もう少し踏み込んで教えていただければと思います。

森地参考人 ありがとうございます。

 CIVITASは、同じ規模を集めたのではなくて、パリと小さな町と、こういうのもまぜていろいろな情報が流れるようにした、こんなものでございます。先に御説明をさせていただきました。

 情報については、たまたま私が所長を務めております運輸政策研究所あるいは運輸政策研究機構で、昭和四十年代からずっと交通関係の研究をして、たくさんストックがございます。それから、我々の研究所には外国の方も、常時、研究員でおりますし、協定を結んでいる研究所もございます。そんな格好で政府のお手伝いができれば、そんなことも思っておりますし、それから、運輸局を通じていろいろな情報が、先ほどから御指摘があるように、各市町村の方が相談に行かれればそこからとれるし、そこで情報が足りなければ霞が関に問い合わせられるし、あるいは我々のところに問い合わせていただくような、こんな仕組みをつくっていけばいいと思っております。

 ちなみに、全くこの法律と別に、私どもの研究所で研究のツールとして、鉄道から始めたんですが、交通の事業をやっている方々に直接アクセスできる、インターネットのモニターの特定版みたいなもの、そういう仕組みをもうつくり上げました。こんなものを通じて、直接電話でやりとりだけではなくて、ネットを通じての情報のやりとり、こんなこともできますし、それから、情報だけじゃなくて意見の交換なんかもできるような、そんな仕組みをつくっていきたいな、こんなことを思っています。

 自分でやっていることと国がやるべきことをちょっと混同してお答えしてしまって、恐縮でございました。

三日月委員 ありがとうございます。

 ちなみに、今、森地先生がおっしゃったいろいろな情報提供のインターネットなり仕組みは、どの程度利用がありますか。

森地参考人 今、各鉄道事業者の方に、なるべくたくさんの職員の方にそこへ登録してくださいとお願いしている段階でございます。多分連休明けぐらいから運用がスタートできると思っております。

三日月委員 土居先生も先ほど御意見の中で、そういう、国として、各地域地域で、これからプロデューサーになる、コンサルをしなければならない自治体職員の方々や、協議会の中で取りまとめ役になる方々の専門能力について言及されておりましたけれども、どのようにお考えいただいているでしょうか。これは国の役割等で。

土居参考人 その点が非常に重要なポイントだと思うわけですね。

 だから、今のところはそういった専門家がいないから、一つは、やはり教育機関といいますか、今、大学院大学とかが非常にたくさん、各地に私学とかが出てきていますね。公共政策大学院とかそういった形で、高度なそういう専門家を養成する、自治体行政にかかわって。ですから、ぜひ、そういった意味で、交通計画とか交通のいろいろな仕組みについて専門家としての研究能力ができるような形で、できたら教育機関を国の中でやっていただいて、いろいろな研究所もありますからね。それと三位一体となって養成していかないと、つけ焼き刃では難しいと思います。

 以上です。

三日月委員 それでは、最後に齋藤参考人と森参考人にお伺いしたいと思うんです。

 国の支援なりに頼らなくても自前でやっていくんだという気概をお持ちの中で民間事業としてやられている齋藤参考人には失礼ですし、また、森市長におかれては、そんなアイデア提供なく、自分たちのアイデア、職員のアイデアで町を何とかしよう、住民のアイデアも含めてしようという気概をお持ちで行政運営をなさっているところで恐縮なんですけれども、こういう国なり都道府県による交通政策の情報蓄積のあり方、また、それを共有化する、みんなでサーベイして経験も蓄積していくことの必要性について、現状なり今後のあり方についてどのようにお考えいただいているか、お聞かせいただければと思います。

齋藤参考人 先に説明させていただきますが、私たちのバス事業につきましては、日本バス協会というのが上部団体にありまして、各都道府県に県ごとにバス協会があります。ですから、先ほど、交通機関が一社でよかったという話がありましたが、もし複数の場合でも、そういう機関でも御利用いただければ、一本化できる道があるような気がします。

 それから、私たちは交通のいろいろな情報に飢えておりますので、これは大賛成でございますので、いろいろなものに参画していきたいと思っておりますが、一つ、ちょっと先ほどの連節バスで言い忘れましたが、連節バスにも、日本で入れているのは、今、私のほかに、二つのバスがくっついているだけなんですが、三つついているのがブラジルのクリチバとかオランダのユトレヒトとか、現実に走っております。いろいろ、設備投資の少ないもので大量輸送ができる、こんなものをさらに推し進めていきたいという気持ちでおります。

 ちょっと返答と違うかもしれませんが、申しわけございません。

森参考人 もとより、アンテナを絶えず高くして、さまざまな情報を単体の自治体としても当然のことながらやっていかなければなりませんが、今お話がありましたように、技術的な問題点なども含めて、数多くの実例というようなこと、あるいは計画されていることを含めて、世界的な例も含めて、どこかへアクセスすると容易に情報が得られるというようなシステムができるとしたら、それは大変ありがたいことだというふうに思います。

三日月委員 ありがとうございます。

 貴重な御意見、ありがとうございました。

 以上で終わります。

塩谷委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言申し上げます。

 本日は、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、明十一日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十七分散会


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