衆議院

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第19号 平成21年5月22日(金曜日)

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平成二十一年五月二十二日(金曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 望月 義夫君

   理事 奥野 信亮君 理事 菅原 一秀君

   理事 中山 泰秀君 理事 福井  照君

   理事 山本 公一君 理事 川内 博史君

   理事 後藤  斎君 理事 上田  勇君

      赤池 誠章君    泉原 保二君

      稲葉 大和君    江崎 鐵磨君

      遠藤 宣彦君    大塚 高司君

      太田 誠一君    岡部 英明君

      亀岡 偉民君    北村 茂男君

      佐田玄一郎君    七条  明君

      島村 宜伸君    杉田 元司君

      長島 忠美君    西銘恒三郎君

      原田 憲治君    藤井 勇治君

      松本 文明君    盛山 正仁君

      吉田六左エ門君    若宮 健嗣君

      石川 知裕君    小宮山泰子君

      古賀 一成君    高木 義明君

      長安  豊君    三日月大造君

      森本 哲生君    鷲尾英一郎君

      高木 陽介君    谷口 和史君

      穀田 恵二君    下地 幹郎君

    …………………………………

   議員           細川 律夫君

   議員           三日月大造君

   議員           穀田 恵二君

   議員           下地 幹郎君

   国土交通大臣       金子 一義君

   国土交通副大臣      加納 時男君

   国土交通大臣政務官    谷口 和史君

   国土交通大臣政務官    西銘恒三郎君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 深草 雅利君

   政府参考人

   (国土交通省自動車交通局長)           本田  勝君

   政府参考人

   (国土交通省海事局次長) 大野 裕夫君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  前田 隆平君

   国土交通委員会専門員   石澤 和範君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十一日

            補欠選任

             泉原 保二君

同月二十二日

 辞任         補欠選任

  亀井 静香君     下地 幹郎君

同日

 辞任         補欠選任

  下地 幹郎君     亀井 静香君

    ―――――――――――――

五月二十日

 建設不況打開・生活危機突破に関する請願(古川元久君紹介)(第二三九八号)

 建設不況打開と資材高騰への緊急対策に関する請願(古賀一成君紹介)(第二四一四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法案(内閣提出第二七号)

 道路運送法の一部を改正する法律案(細川律夫君外四名提出、衆法第二八号)

 特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法案(細川律夫君外四名提出、衆法第二九号)


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     ――――◇―――――

望月委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法案、細川律夫君外四名提出、道路運送法の一部を改正する法律案及び細川律夫君外四名提出、特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省自動車交通局長本田勝君、海事局次長大野裕夫君、航空局長前田隆平君及び警察庁長官官房審議官深草雅利君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

望月委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

望月委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。遠藤宣彦君。

遠藤(宣)委員 おはようございます。自由民主党の遠藤宣彦でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。今回のタクシーの規制の問題、ちょっと広い視点といいますか、歴史的に今どういう時点にあるか、そういうようなお話からさせていただきたいと思います。

 日本はかつて、私が役所に入る前ぐらいですね、七〇年代から八〇年代、ジャパン・アズ・ナンバーワンとか日本を見習うべきだという話がいっぱいありました。そんな中で、日本の秩序、規制というものはそれなりに合理性ありというふうにとらえられておりました。

 しかしながら、冷戦構造が崩れて、アメリカの方からしますとソ連という敵がいなくなりましたから、日本に対してシステムの見直しを迫ってきた。日米構造協議が始まったのが一九八九年でございます。その中で、日本のシステムの見直し、日本は規制がいっぱいあって業界が守られ過ぎているんじゃないか、そんなような風潮が蔓延をいたしました。

 その中で一つターゲットになったのはどこか。旧運輸省。旧運輸省は許認可権が一番多い役所として、私に言わせるとある種の魔女狩りのような形で、規制をいっぱい持っているこの役所がいけないということで、相当突き上げを食らいました。

 しかしながら、今、さまざまな公共交通機関、タクシーを初めとして、バス、フェリー、あるいはJR、飛行機、いろいろな部分でさまざまな問題が出てきている。これは一体どういうことなんだろうか。ある種の八〇年代の末から九〇年代にかけての、規制緩和に反対するやつは非国民だ、国賊だみたいな雰囲気の中で、ポピュリズムの中でちょっと行き過ぎたんじゃないか、そんな思いが私自身は消えません。

 今回、タクシーの規制問題を検討するということは、単に一業種についての問題を取り扱うというよりも、一九八〇年代の末からの、失われた十年を含む日本のあり方をいま一度考える大きな試金石になるんじゃないか、こんな思いがございます。今回、その視点で質問をいたしたいと思います。

 ある意味で今回の改正は、時代の必然として登場してきたと思います。そのあたりについて、大臣に、今回の改正の意義について、この二十年間の総括の意味合いも踏まえて、基本的な認識をまず初めにお伺いしたいと思います。

金子国務大臣 今、遠藤委員御指摘のとおり、この規制緩和、昭和六十二年、大槻文平会長を含めた第二次行政改革審議会、ここで議論が始まってまいりまして、その後、随時、規制改革の計画がずっと続いてまいりました。平成十二年に、最終的に規制緩和ということでこの分野に規制が緩和されて、これまで一番大きいのは、需給調整という、ある意味がんじがらめになっていたわけですけれども、これを、今御指摘のとおり、タクシー事業者にむしろ自由に競争させよう、適正な競争といいますか、健全な競争をしてもらって、創意工夫を生かして、そして利用者にサービスの提供をさせよう、生活者サイドという言葉が当時言われたんだと思いますけれども、そういう活性化、効率化を図ってもらうというのが一つの大きな流れとして出てまいりました。

 ただ、一方で、これが実施されて以降、非常にサービスが向上する、待ち時間が生活者にとって短縮されるというようなメリットは生活者に対しては出てきている反面で、タクシー業界が持つ構造的な部分はありますけれども、地域によっては非常に供給過剰が起こるという地域も出てきて、その供給過剰の地域については、タクシー運転手の労働条件の悪化、運賃の低下といったようなことがもたらされてきた。

 そういう意味で、もう少し大きなスパンというか、構造的に言えば、規制緩和そのものの持つプラス面と、一方で規制緩和というものがもたらしてきているマイナスの面を、ほかにいろいろ規制緩和をやってきた部分というのは我が国社会、経済の中にありますけれども、今度、タクシー業界で初めて、こういう規制緩和に伴うマイナス面というものをどういうふうにとらまえるのかということで、そういう意味で、これは大変大きなこの委員会のテーマだと思っております。それだけに、今回提出させていただいている法案は、適正な競争というものをもう一遍見直すという大事な法案だと改めて思っております。

遠藤(宣)委員 ありがとうございます。

 今申し上げたように、この二十年間の総括を含めて、公共交通機関の規制のあり方、いいものは残して悪いものは取り除いていく、この視点が重要だと思います。

 さて、公共交通機関の一つでありますタクシー、このタクシーについて幾つかの視点がございます。るる申し上げていきますと、まず一つ、私自身が思いますのは、タクシーというのは非常に国柄をあらわすもの。私自身、バックパッカーで随分海外を回りましたけれども、一番気にするのはタクシーなんですね。国によっては危険だ、どこに連れていかれるかわからない、料金がぼられる。タクシーに乗るときが一番緊張します。

 そんな中で、例えばイギリスがいまだに紳士の国と思われているのは、タクシーのマナーが非常にいいんですね、信用が高い。そして日本のタクシーは、乗るのに心配するということはまずありません。極めてマナーがいい。マナーといいますか、きちっとしている。客とドライバーというのは一期一会的な関係でありますから、日本人の信用の国際的な指標の一つとも言えるぐらい、タクシー業界というのは褒めてあげていい業界だと思います。

 そして二番目、よく言うんですけれども、今、麻生内閣は景気対策を必死にやっております。ところが、景気の実感というのはどこで見るか。私はそのときに、三Kという指標を言います。三K、広告費と交際費と交通費。随分ここのところ新聞の折り込みのチラシがふえた、景気がちょっとよくなってきているんじゃないか。そして、飲み屋さんに行ったらいつもあいていて、電話を入れなくてもすぐ座れるのに、きょうは何々でいっぱいなんですよ、なかなか入れない。そして三番目に交通費。タクシーが、今まであそこの通りに出ればすぐつかまえられたのに、呼べばすぐに予約が入れられたのに、なかなかつかまらない。ああ、タクシーがつかまらないぐらいに景気がよくなってきたんだな。つまり、交通費、交際費、広告費の一つであるタクシーが十分に利用されているというのが、実感としての景気の指標になっているんじゃないか、こんな思いがあります。

 そして三番目に、重要なことなんですけれども、今大臣がおっしゃられた、利用者の利便性のために規制緩和をするということ、これはもう絶対に重要なことなんですけれども、よくよく考えていくと、サービスの提供者、タクシードライバーの方々、タクシー事業者の方々、個人タクシーの方々、この方々はサービスの提供者であると同時に、自分たちも消費者であります。

 つまり、サービスを提供している人たちも、先が細っていくと生活が苦しくなる、生活が苦しくなると消費も冷え込んでいく、消費が冷え込んでいったらますます利用されなくなる。つまり、生活者とサービスの提供者、表裏一体でありますから、余りに、消費者と生産者、消費者とサービス提供者の二元論というものは、極端な振れ方をすると逆の効果が出てしまうんじゃないか、こんな思いがあります。

 そして、四番目なんですけれども、これは本質的な問題ですが、タクシーというのは非常に便利なものでありますけれども、やはり公共交通機関である、このことを一つ確認しておかなければならないと思います。

 特に近年、バス路線の廃止が相次いで、また高齢者のドア・ツー・ドアの公共交通機関として、タクシーの重要度が極めて高まっています。こんな中で、地域の公共交通のインフラとして、安定的に供給と経営が維持されなければいけません。公共交通機関にクリームスキミングを認めると、迷惑をこうむるのは最終的には利用者だと思います。そういう意味で、逆に言えば、健全な経営基盤を持たせることが最終的には利用者の利便性に資することになる。タクシーはあくまで公共交通機関であるということを認識しなければならないと思います。

 今るる申し上げましたタクシーについての基本的な視点、特性について、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

金子国務大臣 今委員が御指摘をされました、タクシーをめぐる問題を議論するに当たって着目すべき項目については、私も全くそのとおりであると思っております。

 特に、地域の公共交通機関としての役割、こういう位置づけ、同時に、運転手の労働、賃金、あるいは地域への公共交通機関としての貢献といったようなことも、非常に大事に、大切な点として議論されるべきだと思っております。お国柄をあらわす、景気状況をあらわす、これもそのとおりだと思っております。

遠藤(宣)委員 ありがとうございます。

 ぜひとも、このタクシー業界の特性を十分生かされるように、行政をきちっとやっていただければと思います。

 そして、規制緩和とクリームスキミングについてちょっと申し上げたいと思います。

 何でこういうような状況になったのか、私は一九八八年に郵政省という役所に入りましたけれども、時あたかもバブルの最盛期だったんですね。タクシーがなかなかつかまらない。一万円札を見せながらじゃないと、とまってくれない。私、役人をやっていましたから余りいい思いをしなかったんですが、民間企業に行った友達はこんなにタクシー券を持っている。長距離じゃないと、タクシーはとまってくれない。

 先ほど申し上げた日米構造協議から始まる規制緩和の流れと、そしてもう一つ、国民感情がここにプラスしちゃったと思うんですね。こんなにつけ上がっているタクシーは規制緩和をして、少し目を覚ましてもらわなきゃいけないみたいな国民感情がすごく広がりまして、これは規制緩和をしなきゃいけない、ちょっと競争させなきゃいけないと。ところが、それが実現したときに、もう既にバブルは崩壊していますので、極めて台数が過剰になってきた。こういう中で、今、ドライバーの方々は平均所得が下がる。

 そしてもう一つは、これはほかの公共交通機関もそうなんですけれども、もうかるところだけ、例えばバスにしても飛行機にしても参入をする。こういう中で、公共交通機関としての機能がちょっとがたがたになってくるといいますか、厳しい状況になってくる。ある意味で公共交通機関の使命を果たすというときには、一定の参入規制があって、そして一定の収入が守られないと、そんなに公共の機能というものが果たせるわけではありません。

 今回の、内部での過当競争を拡大すると同時に、公共サービスとしての役割がおろそかになるという悪循環が出てくる。そうすると何が起きるか。経営が苦しくなると、究極的には、安全面やそこで働く人の待遇にはね返ってくるのだと思います。ある種のポピュリズムに押されながら、私自身は、旧運輸省がさまざまな規制を持っていたというのは、決して理由がないわけではありません。世の中の風潮に流されることなく、改めてタクシー規制のあり方、正当性というものを再確認するべき時期に来ていると思います。事実、外国においては、弊害が生じて再規制に乗り出す国が多くなっていると聞いております。

 この安全性と公共性を担保するためには、健全な経営の基盤をある部分の規制によって生み出さなきゃいけないというふうに私自身は思いますけれども、安全性と公共性の担保という観点から、交通機関の規制の必要性と規制緩和によるクリームスキミングの弊害について御見解をお伺いできればと思います。

本田政府参考人 お答えを申し上げます。

 タクシーにつきましては、るる申し上げておりますとおり、それぞれの地域にとって極めて重要な公共交通機関だと私ども考えております。

 ただ、現実には、先生からも御指摘のとおり、地域によっては、需要が減少する中で、一方で車がふえてしまう、そういった供給過剰が発生し、具体的にはそれが運転者の方々の労働条件を悪化させる。これによって、さらに公共交通機関としての機能を低下させるといった問題が生じております。こういった問題に対しては適切な対策を講ずる必要があるということで、今回、法案を出させていただきました。

 とりわけ安全性の確保、さらには公共性の担保というのは、公共交通機関として大変重要な問題であろうかと思いますし、かつ、それぞれの地域でタクシーがどういう役割を担っていくかというのが違うと思いますので、今回の法案におきましては、各地域において、地域の関係者の方に御参画いただきまして、その町のタクシーの将来のあり方、あるいはどういう対策を講じていくかということについて検討し、かつ取り組んでいただくような仕組みを御提案させていただいているところでございます。

遠藤(宣)委員 ありがとうございます。

 ぜひとも憶することなく、本来のあるべき姿は何だったのかという観点から、するべき規制はして、そして緩めるべきところは緩めるという、めり張りのきいたものにしていく必要があろうかと思います。

 タクシー業界のいろいろな特性がある中で、需給調整が必要である。この中で、幾つかちょっと参考になる話がございます。先ほど申し上げましたように、私は郵政省の出身でありますけれども、例えば、通信や放送を所管しておりましたけれども、放送、CSとかBS、いっぱいふえました。しかし、今テレビがなぜ苦しいか。チャンネルがふえても、テレビとかメディアに接する時間というのはふえないんですね。ふえないとなると、チャンネルがふえれば、一局当たりの視聴時間は下がります。下がると、スポンサーはつかなくなるんですね。こういう状況がある。しかし、一方において、携帯電話は規制緩和をしたら爆発的にふえてきた。

 タクシーはどちらに属するのか、私は前者だと思うんですね。規制緩和をしたから爆発的に、今までバスで通勤していたのをタクシーで通勤しようということにならないんですね。

 ところが、携帯電話の場合には、これは技術革新によって生産性の向上が極めて高い分野です。未開拓の分野はいっぱいある分野です。ですから、この分野はどんどん規制緩和をして、サービスの提供の競争をさせる。それをやらなきゃいけない。

 しかしながら、タクシーについては、今申し上げたように、規制緩和したから利用者が倍にも三倍にもなったということはありませんから、この特性を十分踏まえなきゃいけない。つまり、自由化しても、急激に需要がふえるものとふえないものがある。

 そして二番目が、安心や安全に関するものというのは、基本的には、規制緩和についてはより慎重に扱っていかなければいけないということがあると思います。

 その中で、ではタクシー市場はどういう特性があるのか、ちょっと申し上げたいと思います。

 やはり、運転手さんと二回目に会うことはなかなかないんですね。サービスのいいタクシーに乗ったから、もう一回ここのタクシーを使いましょうといって捜すわけにはなかなかいかない。それから、タクシーの運賃がこれだけ下がりましたよといっても、行くところがそれぞれ違いますから、どこまで安くなったかの実感がすぐに来ない。さらに、タクシーを例えば五百五十円で流しているところがある、七百十円のがある。五百五十円のタクシーが見つからないからといってそこでずっと待っているかというと、待っていないんですね。急いでいるからタクシーを捜しているから、五百五十円のが来なくても七百十円のに乗っちゃう。こういう、事実上利用者に選択肢があるかというと、ないんですね。

 先ほどの比較でいうと、携帯電話は、必ず何とか電器とかに行って、これがいいか、これがいいかと説明を受けながら、選択肢がありますけれども、タクシーの場合には、規制緩和をしても、事実上、そんなに思ったほどの選択肢がふえるわけではありません。だからこそ、ほかの視点が必要だ。

 そして、タクシーの場合、参入。私の福岡にはソフトバンクという会社がありますけれども、携帯電話市場にソフトバンクが入る、これは初期の投資がかなり大きいです。ところが、タクシーの場合には、参入は車一台あればできるんですね。つまり、参入が非常に容易で、かつ、利用者の選択肢がそんなに広くならなくて、どんどんふえてくるようになったら、これは過当競争に決まっているんですね。この部分をやはり十分踏まえていただきたい。

 そして、タクシーは、白タクは別として価格交渉力が弱いですから、どうするようになるかというと、経営悪化を、台数を増加して数で稼ごうという衝動を常に持ってしまう。全体で、数で稼ごう。そうすると、ドライバーの方々の手取りが低くなる。こういう需給の変化に対するタクシーの特性を踏まえずに需給調整を誤った場合には、本当にきつい話になってしまいます。

 このあたりを踏まえて、タクシー業界の特性についてと、そして需給調整のあり方についてお伺いできればと思います。

本田政府参考人 お答えをいたします。

 ただいま先生がおっしゃいましたとおり、昨年十二月にいただきました交通政策審議会の答申の中におきましても、タクシー事業の構造的な特性として幾つかの点が言われております。

 例えば流し営業といった場合には、まさに消費者や利用者が、その望むタクシーを、選択することが特に難しい。このために、ある意味で問題のある事業者も市場に残ってしまうという問題が指摘されております。また、運転者の賃金が歩合制であることを背景に、需要が減っているにもかかわらず、むしろ車がふえてしまうといった特性が指摘されております。

 こういった構造的要因を前提に対策を打つべきだということで、単に市場原理にゆだねるのではなくて、今回の法案による供給過剰進行地域への対策のほか、利用者のニーズに合致したサービスの提供、あるいは悪質事業者対策、さらには過度な運賃競争への対策を実施するべきである、こういう指摘を受けておりまして、これに基づいて対策を講じてまいりたいと考えております。

遠藤(宣)委員 ぜひともその特性を踏まえて、事業者も利用者も、そしてタクシードライバーも幸せになる方法というのは必ずあると思いますので、よろしくお願いいたします。

 そして、今回の改正は、私はかなり評価ができると思いますけれども、ただ、それでもまだまだ懸念がある。関係者がいろいろな協議をする、しかしながら、私は地元のタクシー業界の方々とかドライバーの方とか、あらゆるところで、いろいろな形で話を聞いていますと、心配が幾つかある。

 つまり、いろいろな話し合いとか協議の場において、一生懸命まじめに守る人がいるのと同時に、意図的に時期をずらしたりとか、あるいは故意に減車をおくらせるとか駆け込み増車をするとか、協議を任せている部分だけに、良心的に一生懸命守るところがばかを見る、そして、うまくすり抜けるところが後ろで赤い舌を出しているというような現象が起きるんじゃないかという懸念が物すごく強いんですね。複数のところで一生懸命ヒアリングをしたら、とにかく、正直者がばかを見るような結果になりかねないという心配がある。まず、この担保はどうなっているのか。

 そして、やはり最終的には諸般の状況を勘案して、今まで規制緩和をやってきたという国土交通省、旧運輸省のスタンスもあると思いますけれども、しかし、やはり過ちて改むるにはばかることなかれでありますので、国土交通省が責任を持って、どうやって割り当てをするかというのは、関係者の協議に基本的にゆだねるということではなくて、最終的にお役所が責任を持ってどういうふうにするかというところ、この担保についてどうなっているか、これについてお伺いをしたいと思います。

本田政府参考人 二点、御指摘があったかと存じます。

 本法案の施行に際して、駆け込み増車をむしろ誘発するのではないかという点であろうかと思います。

 この点につきましては、昨年七月十一日に、私ども、現行制度のもとで、できる限り安易な供給を抑制するという見地から、特定特別監視地域といった制度を導入させていただいております。

 今回の法案は、特定地域という地域指定をさせていただきますが、これも現に実施しております特定特別監視地域指定制度の実績を踏まえて実施したいと考えておりまして、特定地域の指定も、基本的にはこの特定特別監視地域の指定に準じて行わせていただければと思います。それによって、駆け込み増車の余地をなくしていきたいというふうに考えております。

 また、過剰な車の台数を減らす、いわゆる減車でございますが、これは法律をもって意に反する減車を強制するということはできませんけれども、今回、タクシーに関しては初めての試みとして、複数の事業者の方が協調して減車をしようという場合には、国土交通省と公正取引委員会が事前に調整をして、制度的に、減車が円滑に進むような制度を用意させていただいておりますが、単に制度だけではなくて、私ども、地域の状況に即してあらゆる手だてを講じながら、減車が円滑に進むように最大限の努力をしてまいりたいと考えております。

遠藤(宣)委員 ぜひとも脱法行為がないように、そして、まじめに遵守するところがばかを見ないようにしていただきたいと思います。

 さて次に、タクシードライバーの生活と安全についてお尋ねをしたいと思います。

 タクシーの二面性といいますか、事業者とドライバーがおります。かねがね、いろいろなところで申し上げておりますけれども、今までは、日本の社会というのは、だれもが学校を出れば働けた。だれもが最後まで働けた。そして、その業界というのは、基本的には大きな変動がない。完全雇用、終身雇用、そして護送船団方式で業界秩序が保たれて、そして人生の時間割りが組み立てられた。人生の見通しが保たれた。だから、安心して消費ができた。そして経済が回っていった。こういうような状況だったんですね。

 そして、先ほど申し上げたように、生産者と消費者が二元論、生産者とかメーカーとかあるいはサービス提供者を厳しくすれば消費者の利益が向上するんだ、こういうふうに言いますけれども、実際に日本の総中流社会をつくったのは、例えば農業でいえば農地改革があった。いっぱい自作農ができた。そして、そこそこの所得がある人たちがいっぱいできたんですね。すそ野が広くなったことによって日本の国内市場が広くなって、そして消費が喚起されて、最終的には高度成長の大きな力になった。

 こういう観点から、私は、やはりタクシードライバーの方々が最低限人生の見通しが立てられるぐらいの給料、そして、そこそこ食っていけるものがあって、そしてもう一つ、今タクシーの強盗が多いです。安全についても十分配慮される職業であるということが非常に重要だと思うんですけれども、このあたりについて、どのようにこれからドライバーの生活保障と身辺の安全について考えられているか、これについてお伺いをしたいと思います。

 そしてもう一つ、最終的に事業者とドライバーの利益の分配について、これはなかなか難しいとは思いますけれども、今申し上げたような観点で、役所がある程度関与をして指導していただきたいと思いますが、そのあたりについていかがでしょうか。

本田政府参考人 まず、御指摘のタクシー運転者の方々の適切な労働条件を確保する、とりわけ、今大変厳しい状況にあります賃金水準を改善するということは、とりもなおさず、公共交通機関としてのタクシーの適正化、あるいは社会の安定等を図る上で極めて重要な課題だと考えております。そのための環境を整えていくことが大事だと考えております。

 ただ、具体的に労働条件の個々の問題になりますと、これはやはり労働者の方と使用者の方の自治に関する問題でありますので、私どもとして、この三月から、タクシー事業における賃金システム等に関する懇談会を設置させていただきまして、労使あるいは学識経験者の方々を交えながら、タクシー運転者の方々の労働条件の改善のための検討に着手したところでございます。

 また、今お話のございました、こういったタクシー運転者をねらった卑劣な強盗事件が、残念ながら相次いでおります。これに対しては、私ども、こうした犯罪の撲滅に向けて、警察庁とも連携しながら、事業者への指導等を徹底しておるところでございまして、今後ともこの面についても対策を強化してまいりたい、かように考えております。

遠藤(宣)委員 ぜひともその視点で、事業者のみならず、タクシードライバー、そして利用者、この三者の利益と幸せを実現していただきますようお願いしたいと思います。

 さて、最後になりますけれども、今回の改正、さまざまな意義がございます。交通政策のあり方、公共交通機関のあり方、公共のものを担っている交通機関がどういうふうにこれからやっていけるのかという、大きな大きな課題を抱えていると思います。

 最後に、事例を幾つか挙げたいと思いますけれども、例えばトラック事業、これも物流の主流を担っています。なかなか価格転嫁が厳しい中で、高速道路について配慮するべきじゃないかとか、あるいは駐車についても配慮すべきじゃないかとか、燃料のサーチャージについて配慮すべきじゃないか、そんなような話もトラックについてもある。あるいは飛行機。もうかる路線だけクリームスキミングするのではなくて、例えば全日空とか日本航空はどういう苦しさがあるかというと、新しい空港ができたら、ぜひそこに飛ばしてくださいという。赤字路線と黒字路線がセットじゃないと、経営ができません。

 こういう意味で、一定の利益、そして公共を担っている機関というもの、あともう一つ、フェリーがそうですね。今、離島なんかについてもそうですけれども、フェリーとかトラックとか飛行機とか、公共の交通あるいは物流を担っているものがそこそこの経営が成り立たなければ、社会的インフラは崩壊をしてしまいます。冒頭申し上げたように、タクシーも同じであります。

 こういう意味で、今回の問題というのは、公を担っているけれども私の企業がそこそこやっていけるようにするために、役所がどういうような規制と指導をしていくか、これが今回の眼目だと思います。

 最後に、大臣に、今の話を踏まえて、今回の改正と意義について、総括的に御所見を賜れればと思います。

金子国務大臣 御指摘いただきましたように、タクシーも航空もバスもトラックも、全部、公共交通機関としてそれぞれの役割を果たしていけるようにしていく。ただ、それぞれの対応というのがありますので、一くくりにどうするという議論はここではできませんけれども、今回の法案の対象でありますタクシーについては、先ほど来御指摘いただきましたように、地域の公共交通機関としての役割をきちっと担っていただけるように、それが持続可能で、地域の人あるいは国民に安心を与えられるような状況というものをつくり上げていきたい、それが今回の法案の一番大事な主眼点であると思っております。

遠藤(宣)委員 利用者も、そして事業者も、ドライバーも幸せになる方法というのが、この日本人の知恵によってできるはずでありますので、この公共交通機関のあり方、交通のあり方について、今、大きな転換点にあると思います。それらのことを踏まえまして、ぜひともいい社会を実現していただきますよう心からお願いを申し上げまして、私からの質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

望月委員長 次に、菅原一秀君。

菅原委員 おはようございます。自民党の菅原一秀でございます。

 本日は、内閣提出のタクシー適正化、活性化法案を中心に議論を進めていきたいと思っています。

 今、同僚の遠藤委員からもるるお話がございました。昨今、駅前あるいは繁華街を見ておりましても、本当にずらっと客待ちのタクシーの長蛇の列。まさに、テレビ報道等でも不況の象徴的なシーンとしてよく映し出されているわけでございますが、ちょうど二十年前、私が日商岩井という会社で赤坂で勤務をしていたころ、先ほどお話があったように、十二時を過ぎれば、無線を呼んでも来ない。あるいは一万円を片手に、タクシーが何とかとまるんですが、乗った途端に、ワンメーターだと、あんた詐欺じゃないかと言われたり、それくらいタクシーがつかまらなかった。こんな経験をする中で、昨今のこの状況は、まさに隔世の感があると感じているわけであります。

 これは、この数年の不況、不景気、さらに、やはり今から七年前の規制緩和。規制緩和論については、それぞれ是非があろうかと思います。それをすべてここで検証しますと三十分の持ち時間ではとても足りませんから、これはまた議論を異にしたいと思いますけれども、やはり規制緩和によって、増車、新規参入あるいは運賃の自由化といいますか、この緩和というものが進んできた。ただ、一方で、このタクシー産業、タクシー業界が二十代から七十代の雇用を吸収してきたプラスの面もしっかり見ていかなければなりません。

 そうした中で、結果的に供給過剰が起こって、そしてドライバーの賃金そのものも下がってしまっている。きょうの日経新聞の一面に出ておりますけれども、世帯の所得が十九年ぶりの低水準、世帯所得で五百五十六万。意外とあるんだなと思いつつも、厚生労働省からいただいた、いわゆる賃金センサス、これを見ますと、全国の全産業のいわゆる所得が、四十一歳を平均年齢でとりますと五百五十四万。ところが、全国のタクシードライバーの平均賃金三百四十二万。これだけでも二百十万も差がある。しかも、沖縄県なんかは年収百九十万。東京が一番多くて四百四十八万。いわば、四十七都道府県の中でも、ドライバーの賃金が二倍以上の格差が開いている。

 こうした問題も指摘をしながら、一方で、事業者からすれば、一人のドライバーを育てるのに、一種から二種に免許を取る場合、大体一人当たり二カ月ぐらい養成期間があって、この間、百万から百五十万ぐらいコストがかかっている。しかも、その二カ月分、まだドライバーとして走っていないにもかかわらず、二カ月分の給料も保証しなければいけない。そういうコストがかかっていて、そしてまた、この運賃の過剰な競争によって、せっかく育てたドライバーが他社にヘッドハンティングされてしまう。こんな現状もある中で、今回のこの法案につながっているんだ、こう思っております。

 もっと、我々の命ということを考えたときに、とにかくお客さんが欲しいものだから、猛スピードでお客さんのところに走っていく、無理な車線変更をしたりして、結果的にそれが事故につながる、こういったことが後を絶たない中で、このドライバーの賃金あるいは交通安全ということをしっかり検証していかなければならないな、こう思っております。

 そこで、国土交通大臣にお尋ねをしたいのは、二〇〇二年当時の規制緩和、これをどのような考え方で進めてこられて、そしてまた、今日に至るその評価といいますか検証について、まず冒頭、お尋ねをしたいと思います。

金子国務大臣 累次の規制緩和会議、先ほども答弁申し上げたんですけれども、生活者利便という観点から需給調整規制を緩和し、そして事業者の創意工夫を生かすという観点から、規制改革会議で議論をしてこられまして、平成十二年の規制緩和、それまで需給調整ということをベースにしてきたわけでありますけれども、完全にそれを認可から届け出制という、生活者利便ということで切りかえたわけであります。

 ただ、現実問題として、一方で、もう既に菅原委員御指摘のとおり、実際の乗降客、つまり利用者は、それによって、経済状況もありまして、ふえるどころか、むしろ一貫して下がっている状況というものが続いてきている。それから、地域によってでありますけれども、急激に、その結果、規制緩和を受けて供給が著しく増加しているということによって、御指摘いただいたような運転手の労働条件の悪化等々が今惹起されておる。

 そういう、ある意味、規制緩和によりまして、生活者に対しての利便性、あるいは事業者間の競争、創意工夫といったようなプラスの面も提供してきたこと、惹起してきたことは否めないわけでありますけれども、一方で、御指摘のような諸問題も引き起こしているということも今現状でありますので、これを全国一律ではなくて、供給過剰に陥っている地域を取り上げまして特に諸問題を解決する、供給過剰の地域について供給を抑制するといったようなことを今度の法案で対応していきたい、そして、公共交通機関としてのきちっとした役割を果たし、運転手の労働条件を悪化させないということができるようにしていきたいというのが、今回の法案の趣旨であります。

菅原委員 車でいえば、規制緩和というアクセルを踏み過ぎてしまって、安全面や運賃やあるいは賃金といったことのブレーキを踏むことをためらってきた、こういう現状の中での今回の法案だろうと思っています。

 ただ、その法案の前に先立って、去年の七月に、いわゆる特定特別監視地域を大変数多く指定して、例えば東京なんかも、いわゆる車両の最低基準を十台から四十台にふやすということを私どもも提言し、役所としても御努力いただき、それはそれで一定の効果が見込めるんだろう、こう思うわけでありますが、それでも今回の法案に至ったということは、昨年の七月からの特定特別監視地域、この地域指定によってどれだけの効果があって、その上でこの法案の、いわば今お話あったような、協議会の設置をして、特定地域を設定して、さまざまな努力をするということにつながるのか、この七月からの取り組みについてちょっとお尋ねをしたいと思います。

本田政府参考人 お答えを申し上げます。

 先生が今おっしゃいましたとおり、私ども、昨年七月から行政運用、つまり、現行法のもとで、できる限り安易な供給拡大を抑制するという見地から、特定特別監視地域制度、この大幅な見直しを行い、百九地域を指定させていただいて、供給抑制のための措置を講じております。

 指定後の全国の車両数の状況を御報告したいと存じますが、まず、昨年七月からこの三月末まで、九カ月弱の間でございますが、全国で三千六百十九車両の減車が行われております。ただ、他方で、六百十一車両について、新しい措置の中でも新規参入あるいは増車が行われております。正確に申し上げますと、それ以前に申請あるいは準備がされておりましたケース、これについて我々拒否するわけにまいりませんので、いわば経過措置として車両増を認めざるを得なかったものが千七百二十両ございます。

 そういう意味で、今までのところを見ますと、昨年七月の地域指定後、地域によって状況は異なりますが、全体としては減車は進んでおると思いますけれども、あくまでもこれは現行法の範囲内ということでございまして、やはりケースによっては、供給過剰地域であるにもかかわらず、新規参入に係る申請を却下することができない、あるいは増車についても行政指導にとどまらざるを得ない、そういった制度上の限界はあるものと考えております。

菅原委員 今御答弁ありましたように、三千六百十九プラスアルファというお話でありました。

 今、東京都内、二十三区、あと三鷹、武蔵野を含めると大体三万三千、個人を含めると五万五千台ぐらい東京だけで走っている。

 いわゆる実車率という言葉をよく使いますが、事業者がそれ相応の健全な経営ができ、また賃金についても適切な賃金をもらえるということを考えると、実車率は大体五二%というような数字が出ております。ところが、現実問題、今、調べてみると、この実車率が四〇%を切っている。これはもう東京でもそうだとするならば、北海道や宮城や大阪、九州、推して知るべしであり、またさまざまな声が全国から寄せられているという現実があるわけであります。

 そこで、今回の、特定地域を指定して協議会をつくって、そしてさまざまな方々に協議会のメンバーとなっていただいて減車を促進しよう、こういうことになるわけだと思います。あわせて、減車を事業者同士でいっせいのせでやれば、結局独禁法にひっかかる懸念もある。この点はやはり国交省と公取委が調整をする、このことも法案に盛り込んでおりまして、ある意味ではなかなか今までにはない、ややイレギュラー、ただし、そのイレギュラーな調整をしなければならないほど供給過剰は進み過ぎてしまっている、こういうことなんだろうと思っております。

 きめ細かな規制をしていくということも大変重要でありますけれども、一方で、そのことを、事業者に対して自主的に減車を促すということには、やはり一定の限界があるんだと思います。先ほどもお話あったように、まじめにやっている人が損をする、正直者がばかを見る、こんなことであっては、法案として出しても、この点の担保はやはりされない。とするならば、私は、国がやや強制的にでも、減車をしっかり事業者あるいは業界にお願いしていくということは一つの流れなのではないかな、こう思っているわけであります。

 ただ、減車をやれやれと言っても、今言ったように、まじめにやった人が損をし、ばかを見て、まさにおいしい思いをしている悪い業者がはびこるということがあってはなりませんし、この辺はしっかり厳罰を科すということもこれから大事でありましょうし、あわせて、やはりインセンティブがどうしても必要だと思います。減車をした業者が多い地域にはタクシーの乗り入れ場をもっと確保するだとか、あるいは、減車といっても廃車にするわけですから、結果的に廃車にする経費もかかる。この辺は、例えば法的に、その減車をする車を買い取る、こういったスキームもこれからつくっていくべきじゃないか。

 これは私見でありましたけれども、こういったことについての局長の御見解をお願いしたいと思います。

本田政府参考人 まず第一に、本法案におきます特定地域、これは、供給過剰によって公共交通機関としての機能の低下、そういった問題が現に発生しておる地域でありますので、今回、この地域につきましては、新規参入の許可あるいは増車については認可制がしかれますけれども、その新規参入あるいは増車については、原則としてこれを認めないような運用をとることになると考えております。

 さらに、そういった供給過剰に対して減車を促進していくということは非常に重要な課題であると考えておりますが、一方で、国自体が過剰な車両について強制的に減車を命ずるというのは、やはり法制度的には問題があると考えておりまして、今回、御提案させていただいておるような、複数の事業者の方からお話があった場合には、国土交通大臣が公正取引委員会との間で事前に調整を図らせていただくという仕組みで、円滑な減車を促していきたいと思っております。

 ただ、先生がおっしゃいましたとおり、それをさらに実効あらしめるためには、先生がおっしゃっておられるようなインセンティブ、こういったものをなるべく多く付与していくということも重要だと考えております。

 例えば、この仕組みにおきましては、減車をするに当たって、まさにおっしゃいましたとおり、乗り場の整備を含めた、その地域のタクシーをよくするような試み、これも一緒にやっていただくことをお願いしておりまして、そういった前向きの取り組みに対しては、地域公共交通活性化・再生総合事業といったようなもので財政的な支援をするなり、さまざまなインセンティブを今後考えてまいりたいと思います。

 そういう意味で、地域によって状況が異なると思いますけれども、地域の事情に即した試み、そういった手段を講じてまいりたい、かように考えております。

菅原委員 減車の話について今承りましたが、減車によって需給調整をして適正な方向に進めていくということで供給過剰を解消するということは一つでありますが、やはりもう一つの規制緩和によって出てきた問題である、いわゆる過度な運賃競争、ダンピング、こういった問題が大変大きな問題としてクローズアップをしております。

 これもやはり、まじめに頑張っている業者が一社、二社のおかげで大変な損失をこうむり、また、そっちの方にせっかく育てたドライバーが移ってしまう、こんな現実を抱えているわけでありますが、今回の法案の中には、運賃問題についてのガイドラインというのがないんですね。やはりこれは、やや欠けているのではないか。私はむしろ、この点はしっかり明記をしておくべきだったのではないかなと。この法案、私どもの部会でもいろいろ審議をした経過の中で、その責任も当然あると思いますが、そういった中で、巷間言われる同一地域で同一運賃、これを制度化すべしという声が、当然出てきているわけであります。

 この点について、地方で、具体的な例は挙げませんけれども、五百円、三百円、四百円、こういった初乗り運賃が現実のものとしてあれば、やはり利用者は、そこまで、例えば、そこら辺を走っているタクシーに乗らないで、わざわざ安いタクシーのとまっている停車場でタクシーに乗る、こんなことも地方においては起こっているわけであります。

 やはりこれは、同一地域においては同一の運賃ということを、せめて、いわゆる規制緩和によって、届け出制ということがあったゆえに、そこは非常に裁量による部分が大きいわけでありますから、この点は最低価格というものはきっちり定めていかないと、これからのタクシー業界、タクシー産業発展のためにはやはり大きなマイナスポイントになると思いますので、この点についての御見解をちょっとただしておきたいと思います。

本田政府参考人 タクシーの運賃につきましては、片一方で、それを御利用なさいます利用者、消費者、この利益の保護ということをやはり考えざるを得ませんので、慎重に考えるべきだと考えておりますが、とりわけ、同一地域同一運賃というものを制度化するという点につきましては、これは、安い運賃で、しかし適正に事業を行っておられる事業者に対して強制的に運賃を上げるようにするというのは、やはり制度的には無理があろうかと思います。

 ただ、先生がまさに御指摘のとおり、地域によっては非常に過度な運賃競争が展開されておって、これによってそこで働く運転者の方々の賃金が一層悪化している、そのことによって公共交通機関としてのタクシーの機能の低下を招いているというのも現実でございます。

 それを踏まえて、昨年の十二月の交通政策審議会答申におきましては、供給過剰対策だけではなくて、やはり過度な運賃競争に対しても毅然とした対応をすべきだということが指摘されております。具体的には、例えば、「(下限割れ運賃)については、労働条件の更なる悪化、事業の収益基盤の著しい悪化や、不当な競争を引き起こすおそれがある」、ここまで指摘されております。

 これに基づいて、この答申におきましても、「下限割れ運賃を採用している事業者の経営実態を詳細に把握し、下限運賃の設定や下限割れ運賃の審査については、どのような場合に道路運送法に規定する「不当な競争を引き起こすこととなるおそれ」があるかについて、ガイドライン等の形で明確化した上で、それに基づき、それぞれの地域において個々の運賃の適否を判断する必要がある。」と指摘されております。

 この指摘を受けまして、私ども、この四月一日からタクシー運賃制度研究会を立ち上げまして、ガイドラインの作成のために、早急に作成すべく今作業を進めておるところでございます。

菅原委員 今の御答弁は非常に大事でありまして、交通政策審議会、またその指摘によってガイドラインを策定中、法案にはないけれども、実効あらしめるために御努力をいただきたい、こう思っております。

 例えば、これからやはり高齢化が進む中で、タクシー業界あるいはタクシーという公共交通機関は極めて重要になってきます。したがって、一つの事業者がいわゆる三百円だ、四百円だという初乗り運賃で、そのことによって、利用者や消費者、いわば世論をバックにしてひとり勝ちに進むようなことがあってはならない。

 これだけ多くの雇用をしっかり確立してきた、また、国民の公共に極めて資しているこの業界でありますから、私は、適切に頑張り、適切に努力をし、また、さまざまなコストをかけてきた、こうした事業者が、今後、こういったことによって価格破壊が起こり、ましてや、そこに勤めているドライバーだって賃金が上がるわけじゃなくて悪化している状況があって、しかも全体も悪くなる、こういった負の連鎖というものは、今お話あったガイドラインによって、しっかり大きく解消、改善の方向に向けて御努力いただきたい、こう思っております。

 ただし、いろいろと申し上げてきましたけれども、私は、この法案によって、いわゆる業界の保護行政、行き過ぎた業界保護になることも、やはり警鐘を鳴らさなければいけないと思っております。やはり自由な競争、そして自由な競争の中において本当の企業としての成熟があるんだということを考えれば、この辺の政策執行者としてのバランス感覚というものが非常に重要になってきますから、これは政治も行政もあわせて努力をしていくことが大事だと思っております。

 あと二、三分ありますので、最後に、この法案、今お話あったように、事業者やドライバーの環境を守り、また、諸問題の改善をしていくということも大事でありますが、やはり利用者あるいは地域の環境、こうした視点も大変重要であります。

 結局、空車率が高まると、空車のまま走っているタクシーがふえる、排気ガスがふえる、CO2がたくさん出される、非常にこういう経過があるわけでありますけれども、やはり、今、タクシーの九〇%はLPGで走っているわけであります。これは、ガソリン車よりも六%、CO2の排出量が少ない、またハイブリッドについては一二%ぐらい、非常に低く済んでいるわけであります。

 まさに、日本が世界一の環境大国になる、こういう国家としての目標を掲げていく上で、先ほどお話があったように、タクシーというのはその国の顔であるという位置づけ、海外からお客さんが来て、日本のタクシーに乗ったらハイブリッドだった、やはり環境問題を国を挙げてやっているんだな、海外から来たお客さんが、日本に来て国の印象をよくしていただく、こういう努力も、微に入り細に入りしていくことが大事ではないか、こんなふうに思っております。

 今回の補正予算で買いかえ特例、補助金が決まりました。これは参議院で今審議中でございますが、早くこの補正を通して、こうしたいわゆる省エネ、環境適応自動車をすべてのタクシーに適用できるぐらい、これは大変時間とコストもかかります。ただ、そういった中で、二十五万円の補助金を出す等々、いろいろやっているものもございますが、この点について、取り組みについてちょっとお尋ねをしたいと思います。

本田政府参考人 タクシー車両についての低燃費、低公害化、これも大変重要な課題だと考えております。

 既に昨年お認めをいただきました二次補正を通じて、LPG低燃費タクシーにつきましては、低公害車等普及促進補助の対象として補助をさせていただいておりますが、現在お願い申し上げております平成二十一年度補正予算の中におきましても、いわゆる新車購入、買いかえ促進補助、これは当然タクシーにも適用されますが、これに加えて、低公害車等普及促進補助の拡充ということで、こちらの方では、ハイブリッドタクシーも低公害車等普及促進補助の対象として拡充させていただくべく、今お願いしているところでございます。

菅原委員 今お話のあった低公害、低燃費、大変重要でありますから、そのさらなる促進を進めていただきたい。

 ただ、タクシーのある事業者の方に聞いたら、車一台、車齢というんですか、車の寿命、四十万キロから五十万キロ走って六年か七年だというんですよ。ところが、今回の補正は、車齢十三年のものじゃなきゃ買いかえができない。この辺やはり、今回これで通ったとしても、将来的には、現実に即した六年、七年ぐらい。それは、業界なり個人の利用、あるいは事業者、それぞれ違ってくると思いますけれども、ウイークデーはサラリーマンで週末しか乗らない人と、なりわいとして四十万キロ、五十万キロ、そしてそれは国民の命を乗せている車であるとするならば、これはやはり、六年、七年ぐらいで買いかえができるような環境づくりのための補助金等々を進めていくべきじゃないかな、このことを最後に提言を申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

望月委員長 次に、高木陽介君。

高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。

 本日は、タクシーの適正化、活性化法案の審議ということで質問させていただきます。

 タクシーの問題でございますけれども、十四年に改正道路運送法ですか、規制緩和されまして、さまざまなメリットは出たんですけれども、デメリットも出てきている。

 タクシーというのは、そもそも、ドア・ツー・ドア、本当に、目的地まで直接運んでくれるということで、公共交通機関としては極めてすぐれたものであると思うんですけれども、タクシーは、地域の公共交通機関として重要な役割を果たすべきだと多くの人たちが考えていると思うんです。

 公共交通というのは、例えば鉄道ですとか、またはバス、大きなところでいえば航空機、さまざまな分野があるんですが、このタクシーというのは、それなりの特徴があるということで、かなり重要な位置を占めていると思うんですけれども、冒頭の質問として、国交省として、地域の公共交通の中でタクシーというのをどうやって位置づけているのか、これをまず最初に伺いたいと思います。

本田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、タクシーは、鉄道やバス等とともに、我が国の、とりわけ地域における重要な公共交通機関であると考えております。

 特にタクシーにつきましては、地域社会に密着する形で、ドア・ツー・ドアの、少人数で個別の輸送ができるとか、あるいは、面的に移動できるため、機動性あるいは移動の自由度が高い、あるいは深夜など時間を選ばず、しかも、だれもが利用できるといった特性があろうかと思います。そういった特性を生かして、お一人お一人の利用者のニーズにきめ細かくかつ柔軟に対応できる、そういった公共交通機関であり、しかも、今後を見渡しますと、やはり、高齢化社会の進展、あるいは、地域によっては、観光立国を目指すといったような地域に対しても大きな貢献ができるのではないか、かように考えております。

高木(陽)委員 今、自動車交通局長の方から、高齢化社会に対応できるというお話がありました。

 私は東京なもので、東京というところはかなり公共交通機関が発達している。鉄道、地下鉄、さらにはバス等々。ところが、地方に行きますと、これが普及していないところが多々ありまして、タクシーの存在というのは大きい。さらに、高齢化の中にあって、バリアフリー化をしている駅、これは大分ふえてまいりました。ところが、高齢者の方々がそうやって自分の足ですべて移動するというのは、なかなか難しい。こういった意味では、タクシーの役割、さらに、これからの時代においては必要不可欠なものであると思うんですね。

 そういった中で、先ほど申し上げました規制緩和の流れというのが一つありまして、当初、規制緩和というのは利用者にとってプラスになる、そういう考え方の中で、時代の流れとして規制緩和がどんどんなされていった。

 タクシーも、その一つとして、十四年の規制緩和の流れで、法改正で、まずは運賃が、ある意味では自由になってきた。さらに、参入規制というのもなくなってきた。だれもが参入できる。事業者の側から見ると、または参入したいという方々から見ると、それはプラスだったんですけれども、逆に、今出てきている問題点、例えば運転者の労働条件の悪化。これは、先ほど自民党の議員の方々の質問にも出ていました。その収入が大変、事業者としてはいいんでしょうけれども、運転者、ドライバーの方々にとってみれば労働条件はかなり悪化している。これは賃金だけじゃありません。

 そういった問題が発生していると思うんですけれども、タクシーの問題というのは、十四年から規制緩和されて今に至るまで、どういうふうな問題が発生しているのか。ここら辺のところは、国交省自身、どうやって認識しているのか、お聞かせ願いたいと思います。

本田政府参考人 タクシー事業の規制緩和の結果、サービスの多様化あるいは待ち時間の短縮といった、利用者の方にとって一定の効果があらわれているという面はあろうかと思いますが、他方で、地域によっては、需要が低迷しているにもかかわらず車両が増加する、それによってタクシー運転者の労働条件が悪化する、場合によっては事故がふえる、こういった形で公共交通機関としてマイナス面が生じていることも事実であろうかと思います。それに対しては適切な対策を講じていく必要があろうかと考えております。

高木(陽)委員 今、需要が減るけれども台数がふえていくというようなことも言われました。バブルのころ、先ほど菅原委員がお話ししておりましたね、タクシーがつかまらない。それはもう、需要がすごかったわけですね。ところが、バブルが崩壊してから、どんどんどんどんそういった需要が減り始める。そういった時代の流れの中での規制緩和になってしまった。まあ、タイミングもあったと思うんですけれども。

 もう一つ、サービスが、運賃はある意味では競争することによって利用者にとってはプラスになる面があるんですけれども、サービスというのは、運賃だけではなくてさまざまな部分、これは体験した方も多いと思うんですが、私も、都内でタクシーに乗ったときに、場所を言っても、その場所をわからないドライバーがいる。わからないからこっちが教えるしかないんですね。どの道で、こうこうこうとずっと説明をしていく。

 タクシーというのは、一定の基準を得てドライバーになっていくと思うんですけれども、そこら辺のところでも大分劣化している部分もあるなと、すべてじゃありません、一部そういうのも出てきてしまったな、こういうような問題も指摘したいと思うんですね。その上で、問題への対策は必要なんですけれども、規制緩和の効果とされる事業者の創意工夫、これは促していかなきゃいけないと思うんですね。

 タクシー事業の規制緩和について、これ自体はどう評価しているのか、これをちょっと伺いたいと思います。

本田政府参考人 規制緩和の効果ということでございますが、もともと前回の規制緩和は、事業者間の健全な競争を促して、その創意工夫を生かした多様なサービスの提供、あるいは事業の効率化、活性化といったことを目的として実施されたものでありまして、先ほど申し上げましたとおり、サービスの多様化あるいは待ち時間の短縮といった形でのプラスの効果もあらわれておりまして、この点は今後も生かしていく必要があろうかと思います。

 ただ、先ほど申し上げましたとおり、地域によっては、供給過剰が発生する、あるいは過度な運賃競争が展開されるといった形で、タクシー運転者の労働条件の悪化を初めとした公共交通機関としての問題が発生しているということも事実であろうかと思います。

高木(陽)委員 そういうような評価と、ある意味でいうと問題点、それらを勘案しながら今回の法改正になったと思うんですね。審議会でもいろいろと議論されて、このタクシー事業をめぐる諸問題の対策というのは、事業者または運転者のためだけではなくて、一番大切なのは、タクシーを利用している、またはそれを支えている消費者、これが一番重要だと思うんですね。

 こういった見地から、今回この法案が出るときに、政府内の規制改革会議ですか、ここでも何か異論があったと伺っておりますし、マスコミ、新聞等の社説などでも、結構、規制緩和に逆行するみたいな、そういう論評がなされていると認識しているんですけれども、こういった批判に対して、今回法改正をしようとする国交省としてどう受けとめているのか、お聞かせ願いたいと思います。

金子国務大臣 規制改革会議等々で、規制緩和に逆行ではないかというような御指摘はいただいております。

 ただ、御指摘されている規制緩和、何が、どういうところが一番出てきているかというと、要するに、タクシー業界を抱える事業者、需要が伴わないのに供給をふやしていくという、事業者の、ある意味需要が伴わなくても車をふやすことによって経営は何とか維持できる、そういうやり方をとってきたという事業者に対して、そのやり方というのを規制を強化することによって守ってしまうということに対して、御批判を規制改革会議からもいただいております。

 ただ、一方、それは全国の話ではなくて、今回の法案は、現実問題として非常に供給が過剰になってしまっているところは、その地域にとってみると、働いておられます運転手さんが、そういう結果ではありますけれども、異常に運賃が低下をして、その結果として交通事故というのも、相対的にやはりそういう地域こそ事故率も高くなってきているということ、そういう状況を改善していく必要がある。

 ですから、全部もとに戻って先祖返りをして需給調整をやるというようなこと、認可制をとるということではなくて、やはりそういう地域を限定して、そういう地域については今申し上げたような諸問題を解決するということであります。つまり、言い方をかえれば、規制緩和によって進んだ分、そのメリットというのは生活者あるいは利用する側からはありますし、事業者間の創意工夫というのも喪失させない。喪失させないけれども、しかし、規制緩和によって生じちゃったマイナス面というのは、やはりタクシーというのは公共交通機関として大事な位置づけでありますから、そこをきちっと保てるような状況を今回の法案によってつくり上げていきたいということでありますので、決して規制緩和の方向と流れを逆行するものではないと思っております。

高木(陽)委員 今大臣の方から、規制緩和の流れに逆行していないと、私もそのように感じるんですね。

 冒頭、公共交通機関についてどういうふうにとらえるのかということで質問もさせていただきましたけれども、例えば鉄道なんかを考えてみますと、これは、ある意味でいうと、競争もあるんですけれども、まず第一義に安全、これが一番、その上でしっかりと乗客を運ぶということですね。その上でサービス等々がプラスアルファされていく、こういう考え方だと思うんですね。バスもそうだと思います。

 ところが、タクシーというのは、いろいろと事業者が多い分、ある意味では競争の中にさらされていて、逆にそちらの視点というのがかなりクローズアップされて、規制緩和、規制緩和という流れというのが僕はあったような気がするんですね。

 ところが、今大臣のお話の中にもありました、例えば事故。これもある意味でいうと、ドライバーが過剰労働になったりして事故の発生がふえる、こういうことも考えられますし、またそういった事象も見られますし、さらには、ドライバー自体が、労働条件、ある意味では賃金の部分も悪化していく、これはほかの公共交通の事業者、バスやまたは鉄道や航空機等々と比べてみても、歩合制という特殊な形で事業がなされている。

 そうなりますと、運転者の方としてみれば、いっぱい走らなきゃいけない、いっぱい乗っけなきゃいけない、こういうようにある意味プレッシャーがどんどんかかってきているわけですね。そういった視点をしっかりと見た上での規制緩和ということのバランスをどうとっていくか、これは本当に重要だったと思うんです。

 ところが、これは十四年のときに、法改正は十二年に行ったんですけれども、そこら辺のところというのはなかなか評価が難しい中での改正もあったのではないか、今振り返ってみると、私自身はそのように思っています。

 ただ、では、それがいいか悪いかというのは、これからの法改正の議論の中でもしっかりしていかなければいけないと思うんですが、そういう供給過剰ということに対して、今回の法案、対策を講じることになるわけですけれども、特定地域という考え方ですね。これはどのような地域を指定されるのか。また、新規参入や増車の抑制などの供給過剰対策というのは、特定地域に限定せず全国でやるべきだ、こういった意見もあるんですけれども、この点についてはどのように考えているか、お聞かせ願いたいと思います。

本田政府参考人 特定地域、供給過剰進行地域として対策を講ずべき地域というものにつきまして、昨年十二月の交通政策審議会の答申で次のような指摘がされております。

 供給過剰の進行によりタクシー運転者の賃金が低下傾向にあるといったように、特定の指標が一定期間を通じて悪化している地域を優先的に指定し、そうした地域の問題の深刻化に歯どめをかけ、さらにその改善を図ることとすべき。それから、地域指定は、特に供給過剰に陥りやすい特性を有している都市部の地域等を優先することも検討すべき。そして、地域指定は、全国統一的な基準で公平に行うべきであり、国が、一定の客観的な指標に基づき行うことが適当という指摘がされておりまして、今後、具体的な指定基準は確定してまいりたいと思いますが、やはり、現在既に運用で実施させていただいております特定特別監視地域の指定制度を参考にしながら指定をしてまいりたいと考えております。

 また、供給過剰の問題について、全国で一斉にという御意見があるのは承知しておりますが、昨年の交通政策審議会の答申におきましては、供給過剰の進行による問題の深刻化は必ずしも全国すべての地域で生じているわけではなく、これのための対策は、必要な地域を限り、かつ期間を限って実施することが適当だと指摘しておりまして、この考え方に基づきまして、本法案を提案させていただいているところでございます。

高木(陽)委員 今局長の方からあった特定特別監視地域、これまでもいろいろと問題を指摘されて、そういう形で指定して見てきた、それを参考にするということも言われましたけれども、現在厳しいところというのは、増車されちゃって、もう需給のバランスが崩れているわけですね。

 そういうようなところは、今回、特定地域に指定されたとして、供給の抑制はできるとして、問題は、これはある意味ではマイナスの状況になっちゃったわけですね、その地域は。マイナスで、そこで今後ふやすのはちょっとブレーキかけますよと、これはこれでいいでしょう。でも、マイナスのままなんですね。ここのところは、民間の事業者がそれぞれの御判断で増車してきた、こういう経緯がある中で、もし需要がふえなければ厳しい状況がそのまま、悪化したままずっと横ばいに行く、こういう形ですね。

 そうなりますと、減車ということ、これも重要だと考えられるんですけれども、ただ、これは一つの意見ですよ。いろいろな意見を私たち公明党もお伺いしてきて、減車を促進するためには、国がその事業者に強制的に減車を命ずることができる、こういうことをすべきじゃないかという意見もあるんですけれども、この点についてどう考えるか。

 また、今回の法案では、そういうような強制減車の仕組みというのはないんですけれども、減車の促進についてはどのような考え方で対策を講じることができるか、マイナスに落ち込んだ部分をどうやってプラスに転じていくか、これが重要だと思うんですが、この点について伺いたいと思います。

本田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、まず第一には、これ以上に供給過剰が進行し、悪化しないという、そのための対策が必要でありますが、さらに進んで、需給バランスをより改善していくためには、需要を拡大するかあるいは供給を抑制していくかという、その方策が必要になってまいりまして、地域によっては、減車を相当進めていくことが必要だと認められる地域もあろうかと思います。

 その意味で、国が地域の過剰な車両について減車を強制的に命ずるということも、確かに議論としてはあり得ると思いますけれども、これはやはり、事業者の意に反して行うとすれば、その財産的価値あるいは営業上の権利を国が侵害するということにほかなりませんので、法制度としては難しいと考えております。

 このために、今回、法案では、今まで制度としてはありませんでした、国土交通省と公正取引委員会が事前調整を行うという仕組みを制度としては導入させていただいておりまして、この制度を軸にしながら、それぞれの地域の実情に即して、新たに設置されます地域協議会といったような場でのコンセンサスづくりも含めて、あるいは減車に伴うインセンティブの付与といったことも含めて、減車が円滑にあるいは実効性を持つような形で進められますように、最大限の努力をしてまいりたいと考えております。

高木(陽)委員 地域の協議会ができますからね、そこでしっかりと議論も進めていただかなきゃいけないと思います。

 しかしながら、これは難しいなと思うのは、例えば業者間で話し合いをする、お互いが首を絞めちゃっているわけですよね、事業者同士で。そうなってくると、では、ここはお互い減らしますかと、ある意味カルテルというか、いわゆる公取の問題にもなってきちゃう部分もある。だからこそ、逆に、地域、自治体も含めて、または利用者も含めて、その協議会での、まさに、その地域にとっても利用者にとっても、また事業者にとっても、本当にプラスになるんだというような協議をやっていかなきゃいけないと思うんですが、当事者同士だけでやりますと、なかなか、お互いが我を張る部分もある。

 ここら辺のところは、やはり所管官庁としては、指定地域をしっかりと見ながら、また、アドバイスもしながらやっていただきたいと思いますし、最終的には、事業者も、そこで働いておられるドライバーの方も、そしてまた利用者の方も、みんなこれはプラスになる、そういう形に持っていかなければいけないということを主張したいと思います。

 あともう一つは、今回の法案でタクシーの運賃制度については触れられていないんですね。これまで、規制緩和される前までは、いろいろと認可制みたいな形もありましたし、地域によっては、過度な運賃競争によってさまざまな問題が生じている。特によく言われるのは関西地域、大阪なんか大変だという話をよく聞くんですね。運賃は消費者にとっても非常に関心が高い。安全というのはまず第一なんですが、サービスも大切なんですけれども、やはり利用者は安い方がいい、これはもう本当にそういう心理があるわけですね。

 この運賃については慎重な検討が必要と考えますけれども、国交省として、過度な運賃競争に対してどう対応しようとしているのか、この点を伺いたいと思います。

本田政府参考人 運賃問題というのは、やはり、それをお支払いになります利用者、消費者にとって非常に重要な問題であります。消費者の利益の保護、少なくともこれを害することのないような対応がまず第一に必要だと考えております。

 ただ、地域によっては、非常に過度な運賃競争が展開されて、供給過剰と全く同様に、その運転者の賃金が悪化していくといったような事態が生じている、そういった地域もございます。

 このために、交通政策審議会におきましても、こういった過度な運賃競争に対しては、明確なガイドラインを持って毅然とした対応をしていくべきだということを指摘されておりまして、現在の道路運送法におきまして、不当な競争を引き起こすおそれがあってはならないという規定がございますが、この規定の明確な運用のためのガイドラインづくり、このために、四月一日から研究会を立ち上げ、ガイドラインを早急に策定して対策を講じてまいりたい、かように考えております。

高木(陽)委員 今、ガイドラインづくりをされているというふうにお話ししていただきました。

 これは本当に、ドライバーの方々からお話を聞いてみると、運賃競争をやられますと、事業者の方は、台数がふえていますから、全体の売り上げは変わらない。しかしながら、歩合制という形になっておりますから、一人一人のドライバーの賃金にはね返ってきてしまう。これはまさに労働条件の悪化ということになるわけですね。

 もう一つは、東京地域ですね。これも運賃が上がりました。上がって、これはドライバーの給料の方にちゃんと還元されるんだということだったんですが、実態はなかなかそうなっていない。こういう現状をしっかりと見ていただきたいと思うんですね。過度な運賃競争もしっかりチェックしなきゃいけないんですけれども、逆に、値上げをしてもそっちに返っていない。事業者としてみれば、この不景気の中で、何とか自分の会社を維持することが手いっぱいだ、こう言われるかもしれないんですが、この点もしっかり見ていかなければいけない課題だというふうに指摘をしておきたいと思います。

 あと、タクシーというのは、先ほども何度か申し上げましたが、消費者に支持されて、利用されてこそのサービスですよね。これはタクシーだけじゃないんです。すべてそうだと思います。供給過剰対策、また、過度な運賃競争への対策、これは何かといったら、消費者にとって、利用者にとって利益になる、プラスになるという形で進めなければならないと思うんです。

 その消費者利益の増進の観点からは、供給を抑制することによる供給過剰の問題の解消だけではなくて、利用者のサービス向上、タクシー事業の活性化に向けたより積極的な施策というのが必要だと思います。この点について、国交省は今回の法案に基づいてどのように対応するつもりなのか、伺いたいと思います。

本田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、公共交通機関でありますタクシー事業を適正化、活性化していくためには、やはり、タクシーが地域の消費者、利用者の方に支持され、利用されることが最も重要であるというふうに考えております。

 このため、今回の法案では、特定地域におきましては、車の車両数を抑えるあるいは減らすというだけではなくて、むしろ、地域住民あるいは地方公共団体、そういった多様な関係者にも参画していただく協議会におきまして、その地域のタクシーをよくしていく、タクシー事業の適正化、活性化を推進するための地域計画を作成し、それを実施していくという仕組みを導入させていただきました。

 この仕組みを通じて、地域住民の皆さんが安全、安心して利用できる利便性の高いタクシーサービスの実現に向けたさまざまな取り組みがなされることを期待しておりますし、我々、現地の運輸局を通じてそういった取り組みを促してまいりたい、かように考えております。

高木(陽)委員 時間も参りましたので、最後に大臣にお伺いしたいと思います。

 冒頭から申し上げた、タクシーというのは地域にとって必要不可欠な公共交通だ、こういう認識。ただ、公共交通だと言いながら、どうも何か、規制改革のいろいろな議論なんかを見ていても、公共交通という認識がすごく少ないような気がしたんです。それは、あくまでも競争、利用者にとってプラスの部分は規制緩和していかなきゃいけないんですけれども、例えば、鉄道で事故が起きる。これは大変な問題で、新聞やテレビのニュースではトップニュースになると思うんですね、鉄道事故というのは。一人でも死んだりしたら、もう大変な事故になる。

 ところが、タクシーは普通の交通事故扱いになっていて、タクシーで事故で亡くなられましたということで、余り大きなニュースにはならない。でも、同じ公共交通として、民間人というか一般の方々を運んでいる。例えば鉄道なんかの場合には、亡くならなくても、事故を起こしてけが人が複数名出た、これも大きなニュースですよね。タクシーで事故が起きて、例えば三人乗っていて三人がけがしたというのは、余り大きなニュースにならない。

 だから、これは、タクシーの位置づけというのが、社会全体で、ある意味では当たり前になってしまったがゆえに、これだけ多いがゆえに、どこでも乗れるがゆえに、そういう認識が低くなっているような気もするんです。逆に、今回のこの法改正を通じて、まさにタクシーというのはドア・ツー・ドア、しかも、高齢化社会にとっては必要不可欠な国民の足なんだ、市民の足なんだという認識をしっかり高めないといけないと思うんですが、そういった上でのタクシー事業の適正化、活性化、これは重要な課題で、この法案施行に当たっての大臣の決意を最後にお伺いしたいと思います。

金子国務大臣 いい御指摘をいただきました。

 ただ、タクシーだけじゃなくて、バス事業というのもやはり公共交通としての大事な役割を担っておりますので、鉄道、タクシー、バス、やはりそういう公共交通機関であるということ。特にこの法案ではタクシーを取り扱っております。そして、事業者の競争、適正な競争という、いわば規制緩和の部分の長所、生活者にとってメリットという部分は残しながら、一方で、それに伴って惹起されているタクシー運転手の賃金の引き下げ、労働条件の悪化といったようなものに対して、やることはやる、きちっと対応していきたいというのが今回の趣旨であります。

 それから、この法案に書かれていないことでもまだまだ検討しなければいけないことがあわせてあるんだと思っておりまして、それについても、この法案を機会にさらに議論を進め、改正すべき点は改正していきたいと思っております。

高木(陽)委員 時間が参りました。

 今、最後、大臣お話がありましたように、さまざまな問題がまだまだある。これまでも規制緩和一つとってみても、一〇〇かゼロかじゃないんですね。規制緩和でいい部分もある。しかし、逆に、それによってのマイナス部分もある。ここをしっかりと見きわめながらやらないと、何か規制緩和でマイナス部分が出たからもうこれは全部だめなんだ、そういうようなことじゃなくて、いい部分はしっかり残し、悪い部分はしっかりと改正をしていく、直していく。

 今回、この法案の議論でもさまざまな指摘もあると思います。そういった中で、今すぐに決着がつかない問題も、ここは議論を進めていく。さっき言った、増車だけじゃなくて減車の部分はどうするかも含めて、また運賃の部分も含めて、まだまだそういった部分では地域ごとでもさまざまな差がある。だから特定地域という形にしたと思いますし、ここのところを国交省としても今後もしっかり見詰めながら対応していただきたいことを要望しまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

望月委員長 次に、古賀一成君。

古賀(一)委員 民主党の古賀一成でございます。

 きょうは、これまでとは違いまして、政府提案に係りますいわゆるタクシー適正化、活性化特別措置法と、民主党ほか野党四党が一致しまして勉強し、そして提案しました道路運送法の一部改正、この二つの法律がこの委員会に提出されておるということで、私は、大変意義のある今度のこの委員会ではないかと思っております。トップバッターを務めさせていただくことを本当にうれしく思います。

 さて、私は、このタクシー問題については、二〇〇二年のいわゆる需給調整規定の廃止に伴ういろいろな問題というものを常にウオッチして、この委員会で事あるごとに質問をしてまいりました。

 そしてまた、地元においても、タクシーのドライバーの方、経営者の方、折々にその実態を聞いてまいりました。一言で言えば、悲痛とも言っていい声を聞いてまいりました。私の地元は久留米でありますけれども、三十万都市です。幾ら働いてもサラリーが十万円を超えないという話も、もう嫌というほど聞いてまいりました。

 そういう背景の中に、今回、いわば行き過ぎた規制緩和というものをもう一度見直して、法律で是正するという意味においては、大変重要な、先駆けともいうべき法律であろうと思うし、この委員会では、大臣、通常であれば、政府が提案をした、附帯決議があり修正があったりするパターンも最近ふえておりますけれども、これはぜひ、大きく政治の流れを変える、しかも、野党四党が真剣に検討してきた対案がしっかりここにあるということで、私は、政府案を何としても通すのがならわしだというようなかたくなな態度ではなく、審議を通じて、確かにここで言っていることは正しいと、真剣な与野党の協議が行われ、事の実態に合った正しい改正を実現してもらいたい。この委員会、委員長にも切にお願いを申し上げたいと思っております。

 私の立場からいえば大変よくできた野党四党の対案でありまして、ぜひその成立を、与党の皆さん方も御理解の上、真摯な議論を、今後、協議をして進めていただきたいと思っております。

 さて、第一問でありますが、立派な野党案をつくられました担当の細川律夫さんに、まずはお聞きをいたしたいと思います。

 きょうの私の質問は、余り枝葉はやめまして、本質的なところだけをもう一度確認するような質問にしたいと思っておるわけでありますが、まずは、タクシー規制改革の失敗、もたらした本当に厳しい状況、そういうものをどう認識されてこの法案提出に至られたのか、その実態部分についての認識をぜひお聞かせいただきたいと思います。

細川議員 古賀委員の御質問にお答えいたしたいと思います。

 私ども野党四会派で、この今のタクシー業界を何とか変えなければならない、こういうことで検討をしてまいりました。その検討の結果が、この二つの法案に結実をしているものでございます。

 今、基本的なところでの御質問がございました。タクシー規制改革の失敗点は何なのか、こういうことでございます。

 御承知のように、二〇〇二年に施行されました改正道路運送法によりまして、需給調整規制が撤廃されまして、規制緩和が実施をされました。実施をされた結果、全国的にタクシーが供給過剰状態になったわけでございます。そういう供給過剰状況になった結果、一体どういうふうなことが生じたか。私どもは三つあるというふうに考えております。

 一つは、タクシーによる交通渋滞。これはもう皆さん方が日ごろから、駅前あるいは繁華街で実感をしているとおりでございます。また、タクシーによる交通事故も発生をいたしておりまして、これが増加もいたしておりまして、都市環境あるいは生活環境が悪化をいたしまして、これはまさに社会問題にもなっている、そういうことがございます。それが一つであります。

 それから二つ目は、タクシー事業者間の過当競争の発生。過当競争によりまして、業者が大変な経営悪化、経営環境が悪くなったということが二つでございます。

 そして三つ目は、タクシー業界で働いている労働者、タクシードライバーの皆さんの賃金が大変下がったということで、労働環境が大変悪くなったということでございます。先ほども議論で出ておりましたけれども、全国平均の六割、そして、規制緩和による格差問題がこれまで国会でも議論をされてまいりましたけれども、この格差の象徴的なところということでタクシー運転手の賃金が議論もされたところでございます。そういう労働環境の悪化、これが三つ目でございます。

 こういう状況が生じてまいりましたので、この規制緩和の実施というのは、これはもう近年のタクシー政策として重大な失敗であったというふうに私どもは断ぜざるを得ないと考えまして、タクシーの法体系を抜本的に改革していかなければならない、これがタクシー業界における喫緊の課題である、こういうふうに考えておるところでございます。

 いろいろな悪化のところをお話ししましたけれども、一つだけ例をとって申し上げますと、交通事故が非常にふえた。タクシーが第一当事者となった事故件数が、一九九一年から増加傾向にございます。一九九〇年には一万七千件であったハイヤー、タクシーの事故件数は、二〇〇五年には二万八千件となっております。二〇〇七年も二万六千件発生をいたしております。これを九〇年に比較いたしますと、五五%も事故がふえているわけでございます。

 交通事故件数の全体を比較いたしますと、一九九〇年には六十五万件であって、二〇〇七年には八十三万件、二九%の増加率でございます。タクシーは五五%、全体の事故件数は二九%の増加ということで、明らかにタクシー事故の件数がふえているわけでございます。

 そういう事故がふえている理由は、明確にはなっておりませんけれども、しかし、実車率の低下と、それから走行距離当たり事故件数の変化、これには相関関係があるのではないか、こういうような指摘もされておりまして、これはやはりしっかり改革をしていかなきゃいけない、こういうことで提案をしたわけでございます。

古賀(一)委員 今の提案者の細川さんのお話をかいつまんで言えば、冒頭は、もう既に規制緩和というのが、地域、住民、国民を巻き込んだ外部不経済として、交通事故渋滞として影響も出ているし、そしてまた、経営側においては、経営がもう大変厳しいという問題、そして、しわ寄せを食らった労働者は悲惨な状況だ、おおむねこういうことで、全体に大きな影響を与えてきたということだろうと思うんです。

 そこで、今度は大臣に、ぜひ総括的な御認識を伺いたいんですが、今回法案提出となった、タクシー業界の構造的ないろいろな問題があると私は思っておるんです。とりわけタクシー労働者にとっては、自分ではいかんともしがたい産業構造あるいは雇用構造、賃金体系といったものがこのタクシー業界にはございまして、それのすべてのしわ寄せが労働者に来るという構造になっている、これはもう間違いないと私は思うんですね。

 私は、この件については、冬柴大臣にも、何の法律でしたか、タクシー適正化法だったか、事あるごとに質問をしまして、当時の冬柴大臣から、いわゆるタクシーにかかわる構造的な、本当にいい指摘を受けた、そういうお褒めもいただき、実は今度の見直しのスタートにもなったように私は自負をしております。

 そういう意味で、大臣に、この規制緩和の行き過ぎを見直すという今回の法案提出のスタートに当たり、再度、この点はもう一度、私も言いたいし、大臣の御判断をしっかりといただきたいと思うんですが、タクシー業界の構造的ないろいろな問題があります。それについて、今回の、規制緩和というものを機にこれが噴き出したという構造について、どういう問題認識をお持ちなのか、ぜひお答えをいただきたい。

 もっと具体的に言うならば、運輸業界全体が置かれた産業構造の中での立場、弱さ、あるいは新規参入、投資が、これは大変簡単な分野なんですね、車を買えばいいですから。ふやせばすぐ、工場をつくる必要はない。だから、経営者から見れば、台数をどんどんふやせば、経営者としては何とかなるという構造はある。そういったところを、ぜひ大臣の危機意識といいますか、問題認識をお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

金子国務大臣 古賀委員が口火を切っていただいたこの問題が、今回こういう法案として一歩前進、すべてこれで解決できるという部分、法案に入っていない部分というのがまだまだありますから、これは検討して、引き続きやっていかなければいけない部分はまだ大いにあるのでありますけれども、まず、構造的な部分として、今御指摘をもう既にされましたように、実需が伸びなくても、ある意味、需要者がそう多くなくても参入が容易である。それから、実需が減っていても、それを経営者として、台数をふやすことによって経営をカバーできる。その結果として、運転手の賃金にしわ寄せされる。

 ここは、一つは事業者の経営の問題、もう一つは根本的な部分としての歩合制という問題。ここをやはり引き続き、歩合制をやめてしまうというのは、いろいろな意味で、既に検討してもらっていますけれども、なかなか簡単ではないのかもしれません。しかし、この問題というのは引き続き検討していくべき、あるいは検討してもらおうと思っているテーマであります。

 しかし、そういう問題を抱えながら、これまでも何もやらなかったわけではありません。供給が、特に大都市においては、どんどん参入するんじゃなくて、ある一定の台数を持って参入してくださいと、最低車両台数という、これは十台を四十台にするといったようなことで、参入の多少こういう、簡単に一台や二台を持って参入できるということでは必ずしもないようにしたのであります。

 しかし、それはそれで今度、やれば、一方で、新しいルールでもってどんどん参入してくるというような現象も起きてまいりました。そういう意味で、今回、そういう供給の過剰というものを抑制させていただこう。

 ただ、細川先生とちょっと違うところを申し上げれば、全国一律に供給をとめるということではなくて、地域によって随分差があるんだろうと思っておりまして、愛知県、福山、あるいは私の地域なんというのは、比較的実車キロ数も伸びているんです。そういう意味では、運転手さんの給与問題というのも他の地域とはまた様相が違う。地域によって随分様相が違いますものですから、そういうところを、非常に過剰供給になった地域に対して供給を抑制していくということを基本的に考えようと。

 従来法律にありましたのは、供給を抑制するというのは道路運送法でもやってまいりましたけれども、しかし、もう一歩進めて、地域の皆様が自主的に減車をするという枠組みまで立ち入る必要があるのではないかということで、地域間の皆さん、業者だけじゃありませんけれども、まとまって計画をつくってもらって、その場合には、先ほど答弁がありましたように、公取にも了解をとってもらって減車まで踏み込めるようにするということで、まず供給を適正化、適正な台数にすることによって賃金の悪化を防止していきたいというのが今回の大きな趣旨であります。

古賀(一)委員 私は、大臣の答弁はそうだろうと思いますが、先ほど言いました、自動車交通局の局長ほか皆さんにぜひしっかり聞いておいてもらいたいと思うんですが、このタクシー業界は、トラックを含め運輸関係のいわゆる車屋さんと言われる方々は、やはり、大企業、下請、流通業界、そういう業界ピラミッドの中の一番末端を担っているんです。それで、やはり一番弱い立場に産業構造上置かれてきたんです。タクシーもそうです。

 そして、先ほど、もう簡単に言いますけれども、設備投資というか新規参入は極めて簡単と。この産業の労働問題に移りますと、これほど労働集約型、つまり運転手さんの比率が高い、総コストの七四%は人件費ですよ。燃料費でも何でもないんです。七四%は人件費。その賃金が歩合制というもので、どんどん働けという構造になっている。だから、名義貸しという、別の新規参入も可能な体系なんです。実はこういう中に置かれているんですね。

 だから、これは、今大臣の方から、全国的な供給過剰ではない、一部地域だという答弁もありましたけれども、私は、では、本当にそうなのかということと、これからはどうなんだと。

 今、地域経済は大変ですよ。実は、私はきょう、この委員会に来るときにタクシーに乗ったんです。よく乗るんです。地方で乗っても聞くんです、どうだい、最近と。今までいただいたペーパーあるいはデータというのは、恐らく去年とか、最新でも去年末ぐらいですよ。古いデータになると二年前ぐらいのデータに基づいて我々は議論してきました。きょうの運転手は何と言ったと思いますか。いや、最近激減ですと。最近というのはいつだと言ったんですね。いや、去年の十月から一日の売り上げが一万円減ったと言うんですよ。それまでも、減った減った、大変だという話ばかり私は聞いてきたんです。ところが、それどころじゃない、去年の十月、つまりリーマン・ブラザーズ・ショックですよ、世界恐慌ですよ。この後の影響は大変ですよと言うんですよ。

 だから、これからはもっと厳しいんですね。今我々がもらっているデータよりももっと厳しい状況が、雇用体系あるいは賃金、収入、過当競争に今反映していると思うんです。だから、私は、一部地域だと、二年前、三年前のデータでそう思うのではなくて、本当に今はどうなんだ、では来年はどうなんだということを、法律を改正するなら真剣に考えて対応すべきだと思うんです。

 それで、ここにもたくさん皆さん住んでおられますけれども、我々は例の赤坂議員宿舎に、私も住んでいるんです。あそこはもう昔からよく通りましたよ。歩いたり、タクシーで行ったりしました。この半年の環境が激変したんですね。何かというと、あそこに赤坂パーキングというのがあるんですよ。つぶれてしまったのかな、国際自動車のツインタワーがあるんですね。TBSがあるんです。

 あそこは昔、すいすいすいすい回っていたんです。ところが、今は、赤坂近辺のお客さんを拾うために空車が一ブロックをぐるぐるぐるぐる回っているんです、全部空車。蛇が自分のしっぽを追いかけてずっとやっているみたいなもので、横のブロックもまた同じことをやっているものだから、自分のしっぽを追いかける蛇のごとく、タクシーの輪が幾つもあって、もう大変な状況ですよ。

 これは一年前はなかったんです。この半年なんです。個人タクシーも参入している。これはもう空車のパレードを毎日やっているようなものですよ。だから、実はこの半年で大変な厳しい状況になっているということを私はしっかり指摘したいと思います。

 もう時間がどんどん行くので困っておりますが、それで、私は自動車交通局長に聞きたいんですけれども、二〇〇二年の施行以来、いろいろな問題が出てきました。私もこの委員会でその対応、報告を受けました。法案も出ました。どういう認識でどういう対応を二〇〇二年以降政府はやってこられたのか、ちょっと御説明いただきたいと思います。

    〔委員長退席、中山(泰)委員長代理着席〕

本田政府参考人 お答えを申し上げます。

 規制緩和につきましては、サービスの多様化あるいは待ち時間の短縮といったプラス面がありますが、一方で、きょう御指摘のとおり、長期的な需要の減少の中でタクシー車両が増加しているといったことから、地域によってはその運送サービスの提供を担っておられます運転者の方々の賃金が著しく悪化する、あるいは、過当な競争の結果、違法、不適切な事業運営が横行しているといったような問題があると認識しております。

 こうした状況に対しての対応を幾つか御紹介、御報告いたしますが、まず第一は、運転者の労働条件の改善を目的に、消費者の方々の理解を得つつ、平成十八年六月以降、全国の運賃ブロックにおきまして運賃改定の手続を進めさせていただいておるところでございます。

 また、一番大きな問題であります安易な供給拡大、これに歯どめをかけるという見地から、平成十九年十一月から特定特別監視地域制度を導入いたしましたが、この制度につきましては、昨年七月に抜本的に拡充をさせていただきまして、全国百九の営業区域を対象に、供給過剰の抑制のための方策についても強化をさせていただいたところでございます。

 また、悪質事業者対策としましては、私どもの現場での監査体制を強化させていただくとともに、行政処分の強化、さらには、昨年夏にはいわゆる名義貸しについての判断基準のガイドラインを示すことによって、この方面での対策についても拡充を図ってきたところでございます。

 ただ、大変多くの問題が出てきておりましたことから、一昨年の十二月にタクシー事業をめぐる諸問題について交通政策審議会に諮問させていただき、その答申を昨年十二月にちょうだいし、これからその答申に基づく対策を逐次実施させていただきたい、かように考えております。

古賀(一)委員 もう既に二〇〇二年にこの制度が、いわゆる規制緩和が進められて、早速にもいろいろな矛盾点があらわれ、政府として対応してきたというお話のように承りました。

 運賃改定もありました。あのとき冬柴大臣は、この運賃改定が働く人たちの給与に反映されることを期待しているとまでおっしゃった。私はテレビで見ていましたよ。ああ、いいことをおっしゃる、心が通じているのかなと思いました。しかし、現状は依然厳しいものがある。

 名義貸し対策もやっている。特別監視地域の拡大もある。このほかに、今おっしゃった、いわゆる監査の強化等がありましたけれども、これは監査の原則無通告化、いわゆる突然、通告なしに厳しくやるぞというお話でしょう。あるいは、労基監督機関との合同監査・監督もやります、相互通報制度も拡充してやります、こうなっているんですね。

 もうこれで、私も、ああ、なるほど対応してくれているのかなとも思うんだけれども、よくこれを考えたときに、私は一つの共通点を感じるんですよ。それは、新規参入であるとかいわゆる歩合制であるとか、そういうもの等の事の本質に対する対策は講ぜずに、規制緩和後に出たところの矛盾を、役所がお互い協力するとか基準を強化するとか、意地悪く言えば役所の権限強化というか、規制緩和で生まれた矛盾を、本質をつかずに行政的な対応で、目くらましと言ったらそれはちょっと失礼であろうと思うんですけれども、論点がずれたところで行政手続的な対応をしてあるように思えるんですよ、意地悪な言い方をしますと。

 いや、この法案を出されたことは私は大変評価しているんですよ。民主党もそうです、よくやってくれたと思う。不十分だと思いながらも、一歩を踏み出してくれたと思う。それは評価をしながらも、今後、この問題はもっと厳しい状況になってくると私は思うんですよ。そうしたときに、法は改正したけれどももっと厳しくなったと言われないためにも、やはりこれまで規制緩和でやってきた諸手続、諸改正、諸改善が、どちらかというと本質をあえてついていない面があるので、この際、私は、民主党ほか四党が出した、ある意味では本質をついた、ここまで実は踏み込んだ議論をしてこの法律をなし遂げてもらいたいという思いが大変強くて、今、これまでの対応を聞きました。

 私は、これまでの対応については、立入検査の強化とか労働基準監督機関との連携とか、そういうのはあるんでしょうけれども、それは決して本質的なものではない、もっと構造的な分野に目を向けた改正に踏み込むべきだと、強く、私は一人の委員として、また野党議員として、ここでしっかりと指摘をしておきたいと思います。

 そういうことで、与党案については、先ほど与党の方からもるる質問も御指摘もありましたけれども、我々の野党案についても、もう一度、今度聞いてまいりたいと思うんです。

 本質をついたところで、今度は、野党四党は、道路運送法、本丸の改正をやろうということで、挑戦の案をつくっておられます。道路運送法第六条の参入規制について規定を改正しよう、特別措置法だけではないという、道路運送法改正の、とりわけ第六条、許可基準の追加について、その背景と意義を野党四党の提案者にお聞きいたしたいと思います。

三日月議員 古賀先生の本質的な御質問に答えていきたいと思います。

 まず、答弁に入ります前に、タクシーという極めて地域経済社会にとっても大事な交通機関、きょうも、今もハンドルを握っていらっしゃる方々、また事業に携わっていらっしゃる経営者、関係者の皆様方、大勢いらっしゃいます。この皆様方に深く敬意を表しながら、私たちは、基本認識といたしまして、規制緩和という改革手法を否定しません。と同時に、個々の事業者の努力や運転者の努力、こういうものを法律や行政で阻害したりゆがめることがあってはならないとも思っています。

 しかしながら、先ほど来、古賀先生や政府の方からもるる答弁がありましたように、タクシー業界が持つ構造的な問題、そして二〇〇二年の規制緩和の行き過ぎ、いわゆる政府の失敗、政策の失敗によって、競争が激化して安全性が損なわれてしまっている事態や、先ほど政府参考人から御答弁がありましたけれども、違法、不適切な営業や事業が横行することによって、タクシー市場では、悪貨が良貨を駆逐してしまう、こういう事態が起こっていること。また、運賃の過当な競争、また安運賃の横行が、タクシー運転者、労働者の生活を最賃割れというような事態も多く生み出しながら、侵してしまっているという、このことをやはり私たちは是正していかなければならないという思いのもとに、政府から出された特定地域に対する対策、これでは不十分なので、それを修正する法案と、そして大もとの道路運送法を改正する法案、この二法を提出させていただいた次第です。

 言うまでもなく国会は立法府ですから、どうか、政党、政局、お互いの立場、メンツを超えて、このタクシー市場、業界を改善するための修正なり歩み寄りを提出者としても期待しております。

 それで、前置きが長くなりましたが、道路運送法六条、参入規制の規定を設けることにつきましては、まず基本認識として、私たちは、供給過剰状態が全国で起こっていると認識をしています。そして、昨年秋以降の経済悪化で日収がどんどん低下をしているという御指摘が古賀先生からありましたけれども、供給過剰状態が起こった後に不十分な対策で対応していくという、いわゆるイタチごっこのような対策をとるのではなくて、このような供給過剰な状態が起こらないための対策を講じることが必要であるということ、そしてさらには、先ほど公明党の高木先生からもありましたけれども、今回運賃の問題の対策がとられておりませんので、そのことも対策をとらなければいけないという、このことを私たちは基本認識として持っています。

 その供給過剰状態が起こらない対策として、この六条の部分を、当該事業の開始が当該営業区域の輸送需要に対し適切なものであるかどうかを審査するという規定を設けることによって、二〇〇二年に、参入というものが免許制から許可制に改められ、増車というものが認可制から届け出制に改められることによって過剰とも言える規制緩和が行われたことを是正したいというふうに考えております。

 二〇〇二年のこの改正が、法によって過剰な規制緩和を生み出したということでありますから、これはやはり法の改正によって改めていくということが私たちは必要だと考えておりますので、この六条の規定を設けさせていただきました。

古賀(一)委員 三日月さんの堂々たる答弁、本当に感心をいたしました。よくわかりました。

 次に、きょうは警察庁にもお越しいただいております。細川提案者の方から交通事故の話が、あるいは渋滞の話が冒頭出たわけでありますが、私はかねてより申し上げておりますように、これは外部不経済まで及ぼしている問題ですね。先ほど赤坂の話をしましたけれども、恐らく霞が関の周りもそう、とりわけ銀座、新宿もそうでしょう。

 私は、実は若いころ、交通警察に出向したことがありまして、交通企画課長を若いころやりました。交通関係も大変関心がありますけれども、渋滞、交通安全等々に交通警察は大変いろいろな措置を講じておられます。最近は、後ろの座席に乗ってもシートベルトをしろというところまで、交通警察は国民の安全を願っておられると思うんです。

 交通警察の立場から、現在の、とりわけ深夜のあの繁華街に、六車線のうち四車線を空車が並んでおるというような実態を、交通警察として、問題意識、どう思っておられるのか。やはりこれは、国民を代表して取り締まる立場であるけれども、交通の流れ、安全をウオッチしておられる、責任を持っておられる交通警察の評価をひとつこの委員会で一度はっきりお聞きしたいと思って、きょうは来ていただいたわけであります。答弁をお願いします。

深草政府参考人 お答えいたします。

 繁華街における客待ちタクシーが一部の地域、場所において路上に二重駐車するなど、他の一般交通の支障になっている実態もあるものと承知しております。

 こうした状況に対しましては、警察として、交通の安全と円滑の確保の観点から、地域の実態に応じて、通行禁止規制等の交通規制や駐車違反等の取り締まりを行っているところであります。

 今後とも、交通の安全と円滑の確保の観点から、必要な規制や取り締まりを行うほか、関係機関、団体とも連携して、適切に対処してまいりたいと考えております。

古賀(一)委員 そういう答弁かもしれませんが、当たりさわりのない答弁であったように思いますが。

 でも、これは現象としては、道路上で起こっている大変な交通の乱れの最たる現象の一つですよ。もちろん、所管が違う、遠慮もあるでしょうけれども、現にこれだけの空車が深夜の繁華街をこれだけ占拠しておる。やっている運転手さんも、我々から見ればかわいそうだと思うぐらいの状況、もう本当にひどい状況ですよ。

 これはタクシー近代化センターの仕事かもしれぬけれども、これは省庁をまたがって、警察庁もそういう根本的なところに目を向けて、やはり自動車は交通行政の中で、国土交通行政の中でもひとつこうやってほしいというような意見を言うぐらいの立場であってほしい、私はかように思い、先ほど監視あるいは取り締まりもやっておられるとおっしゃっていましたけれども、実態から見ると私はそう感じません。取り締まりの問題じゃなくて、むしろ行政政策のあり方だと思うので、それは警察庁も、交通行政の立場からひとつこの空車問題を何とか国土交通省はやるべきだと、どんどん御指摘を今後いただきたい、かようにお願いをしておきたいと思います。

 それで、もう時間がないので総括して申し上げます。

 私はどうも、先ほど言ったように、国土交通省の対応は、規制緩和後は、非常に行政的な、運転手の登録制度をやるとか地理試験を強化するとか、そういうことで来て本質に迫っていないと思うことは先ほど述べました。

 それで、最後に、やはり運賃は多様でなければならない、それじゃないと世界の時流に合っていないという一つの固定観念が物すごくあるように思うんですね。昔は違ったんですよ。ほんのこの前までは、旧運輸省はそんなことはしていないんだから。規制緩和の嵐が吹いた途端、真っ先に、もう何か需給調整規制は撤廃、お客さんに選んでもらう、それが新しい時代の流れだと思っておられるけれども、私は、そうだろうかという原点をもう一回見直してもらいたいと思うんです。

 同一地域同一運賃というのが、極端に言えば、私はそれでいいのではないかという思いがします。実は我々がタクシーを選ぶときに、安いタクシー、初乗りが安いタクシーがないかといって待つことはほとんどないですよ。ない。雨が降っている、急ぐ。早く来たタクシーをつかまえるということで我々はほとんど対応していますよ。いや、時間はある、安く行きたいという人は大体、東京でいえば、みんな地下鉄で行きますよ。その選択はあるんです。

 そうすると、運賃はより安くより多様であればいいというのが、本当にユーザーに利便性、幸せをもたらしているかというと、そうではないんではないかという気が私はしてなりません。何か今までの流れをひっくり返すような言い方でありましょうけれども、事の本質はそうじゃないかと思うんです。

 私は今まで、一生で一回、安いタクシーをずっと待ったことがあるんです。高校生のころ、修学旅行で東京に来たんです。みんな田舎者です。九州から来たんです。田舎は全部小型タクシーなんです。今でも覚えていますよ。同級生五人でずっと待っても、大型しかいない。これは高かろう、宿まで戻るのに幾らかかるだろう。小型タクシーをずっと二十分ぐらい待ったのが、それが一回きりで、もちろん勘違いだったわけですけれども。小型タクシーは当時もなかった。

 そんなくらいで、普通は、要するに、早く、快適に、乗車拒否がない、それがメーンであって、同一地域同一運賃の中でもサービスの多様性はあってもいいかもしれない。私は、この同一地域同一運賃ということに関して、民主党のお考え、政府の対案に一つのお考えがあろうと思いますので、最後にこの点だけ、提案者、どなたでも結構ですが、同一地域同一運賃、あるいは先ほどの延長かもしれませんが、運賃のあり方についての基本的な認識を最後にお聞きしたいと思うんですが、いかがでしょうか。

三日月議員 どんな質問が来るかわからないという、本当に答弁者というのは緊張いたします。

 今の、古賀先生のおっしゃった、やはり供給過剰状態を是正することとあわせて、運賃問題に手当てをするということが今回の法改正に求められる極めて重要な点だと思うんです。その点においては、政府の提出の法案ではそのことに触れておりませんので不十分です。

 私たちは、やはり運賃というものは、安全を確保するために、当然地域ごとに異なります。地域ごとに異なりますが、安全を確保するために、それは人件費もそう、車両の整備費もそう、燃料費もそう、安全を確保するために必要な原価に対して、事業者の適正な利潤を加えたもの、ここできちんと運賃が定められるという状態をつくり出さなければならないと考えております。

 そうしなければ、一見、安い運賃というのは利用者にとっていいように思われがちなんですけれども、そのことがより安い運賃への圧力を生み、そして、その安い運賃の中で生活を確保する、収入を確保するための過当な競争を生み、事故をふやし、結果的に、乗る人たちの安全性や利便が損なわれてしまうという事態を防ぐためにも、私たちは、地域ごとに、安全を確保するために適正な運賃というものをやはり定めるべきだという考えから、道路運送法第九条の三、運賃・料金の認可基準の規定を改正するということを提案させていただいております。ぜひ御賛同をよろしくお願いいたします。

古賀(一)委員 ありがとうございました。

 この法案は相当まだ問題を抱えておりますし、与野党から出ておる、そして行き過ぎた規制緩和を見直す嚆矢、つまり最初の矢ともなる重要な法案でありますから、来週あるいは再来週と私は審議があるものと思い、実はあと名義貸しの問題、歩合制の問題、公取との関係、いろいろな重要な課題がありますし、きょうは総論だけで終わりましたけれども、今後とも深い審議が行われることを期待申し上げまして、きょうは終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

中山(泰)委員長代理 次に、石川知裕君。

石川委員 民主党の、古賀先生に続きまして、二番バッターの石川でございます。

 まだまだこれから、この問題については三番、四番と控えておりますので、きょうは二番バッターで終わりでありますけれども、主に民主党案、野党四党案についてお尋ねをしていこうと思っております。

 タクシーの問題、先ほど古賀先生から今の状況というものをるる御説明がありました。空車でお客さん待ちのタクシーが非常に多くなってきている。または事故もふえてきた。規制緩和をしたことによってプラスになる業界はたくさんあろうかと思います。しかし、このタクシーの規制緩和については、非常に成功だったと言えない、むしろマイナスの部分が多かっただろうということで、今回、政府としてもまた法改正に踏み切ったというところだと思います。

 政府案の提出を受けて野党四党で話し合い、そして、先ほど古賀先生からもお話がありました、本丸の道路運送法の改正もやはり行わないといけないだろうということで、野党四党で共同提出ということで、きょうの審議になっているかと思います。

 供給過剰が行き過ぎたということでありました。まず政府参考人にお尋ねをしたいんですけれども、今回、法案の提出に至った理由として供給過剰対策というものがあると思われますけれども、今回の法改正によって、ではどの程度台数減が進んでいくのかというところをまずはお尋ねしたいと思います。

本田政府参考人 お答えを申し上げます。

 本法案は、御指摘のとおり、昨年十二月の交通政策審議会答申の中で、特に供給過剰進行地域における対策として必要な法的措置を盛り込ませていただいております。

 まず、その仕組みの中として、減車を進めるために、本法案では、タクシー関係の制度としては初めての試みとして、複数の事業者の方が協調して減車を行う場合に、事前に国土交通省と公正取引委員会が協調減車に係る計画について調整を行うといった制度を導入させていただいて、その地域地域での減車が円滑に進められるような仕組みを用意させていただきました。

 どの程度これによって減車が進むかというのはちょっと具体的に予測がつきませんが、一つの参考として申し上げたいと思いますのは、昨年七月十一日に、現行法のもとで、いわゆる行政運用として実施をさせていただいております特定特別監視地域制度、この制度が昨年七月からこの三月までの間で、新規参入あるいは増車が、基準として六百十一両、あるいは経過措置として認めざるを得なかったものが千七百二十両ふえた一方で、全国で減車が三千六百十九両行われておりますので、これを参考にしながらも、それぞれの地域で効果的な減車が進むように取り組んでまいりたい、かように考えております。

石川委員 効果的な減車が進んでいくように取り組んでまいりたい、そういうお話でありました。

 もう一問お尋ねをしたいんですけれども、今回のタクシーの規制緩和によって、ドライバーの方々の賃金水準が大変厳しいものになっているという問題がございます。先ほども古賀先生から、昨年の十月以降、ドライバーの方の賃金がさらに大変厳しくなっているということでありました。

 もう一度政府の方に、では、今回、この法改正によってドライバーの方の賃金水準がどのように上がっていくのか、変化をしていくのかというところをお尋ねしたいと思います。

本田政府参考人 まず、実態といたしまして、全国平均の数字を御報告させていただきたいと思います。例えば、一番高かったのは平成八年ですから、平成八年の全国のタクシーの運転者の賃金が四百十四万円でございましたが、直近の平成十九年におきましては、三百四十二万円といった数字に落ち込んでおります。

 こうした、とりわけタクシーの運転者の方々の賃金の悪化に対処するために、私ども、まず消費者に御負担をいただく形で運賃改定を進めてまいったわけでありますが、やはり供給過剰が進行している地域においては、それを放置しておくことは、とりもなおさず、この賃金をさらに悪化させる、そういったことから、今回の法案におきましては、供給過剰対策を講ずるという対策を打たせていただいております。

 これによって、それぞれの地域での賃金をこれ以上悪化させないといったような環境を整備する、これが第一だろうと思いますし、願わくば、需要の喚起と相まって減車を進めることによって、できれば賃金の改善を図っていきたい、こう考えております。

石川委員 今回の政府の法案の方では、運賃については触れられておりません。一方、民主党を含む野党四党の方は、道路運送法九条の三の運賃・料金の認可基準の規定を改正するとあります。

 そこで、野党四党の提出者にお尋ねをしたいんですけれども、政府案と違って、道路運送法の第九条の三、運賃・料金の認可基準の規定を改正する理由というものをお伺いしたいと思います。

    〔中山(泰)委員長代理退席、委員長着席〕

三日月議員 お答え申し上げます。

 繰り返しになりますが、今回の法改正で、供給過剰の対策をとることと、運賃に対する対策、手当てを行うこと、この二点がやはり肝になると思います。

 その意味におきまして、政府案では、特定地域における供給過剰対策のみ対策を講じようとしているところでありまして、その意味では不十分である。しかも、運賃については四月から研究会を設けてということでありますけれども、これも極めて悠長であろう。したがって、私たちは、道路運送法の第九条の三、この運賃・料金の認可基準の規定を改正します。

 どのように改正するかということなんですけれども、二〇〇二年の規制緩和のときに、運賃・料金の上限認可制というものが導入をされました。これは、適正原価に適正利潤を加えたものを上回らないという基準がとられました。そのことによって、その上限から一〇%は自動認可、それ以下については個別審査という制度が導入されたのです。

 これによって、現状、これは二〇〇八年九月から十一月の調査なんですけれども、当時は九十二の運賃ブロックがありました。九十二の運賃ブロックのうち、七地域で下限割れの、このいわゆる一〇%以下の運賃が発生しており、かつ、先ほど政府参考人から運賃改定が行われたという報告がありましたけれども、そうすると、上限が引き上げられますから、積み残しの下限割れ運賃というものも新たに発生をしまして、これが九十二運賃ブロックのうち三十運賃ブロックで発生してしまっております。

 したがって、このような結果的に安全を損なってしまう下限割れの運賃を残さないためにも、私たちは、この道路運送法九条の三で、適正な原価に適正な利潤を加えたものを運賃・料金としようじゃないかということで、これを明確に定めることによって、地域ごとに安全を確保するために適正な運賃・料金というものを設定していこう、これについてのみ認可をしていこうという規定を設けさせていただきました。

石川委員 先ほど古賀先生の質問のときに、供給過剰対策ということで、それぞれの地域で余りにもふえ過ぎてしまったのではないかということがありました。ただ、野党四党案では、運賃にまで今回踏み込まないと、ドライバーの給料、賃金の水準は保たれないのではないか、ここが政府案との一番大きな違いなのではないかと思います。

 もう一度、供給過剰の問題に戻りますけれども、野党四党案では、緊急調整措置の規定を廃止するということになりますけれども、これによって問題は起きないのか。また、廃止をするに至った理由というものをお伺いしたいと思います。

穀田議員 お答えします。

 まず、この問題を考える場合に、私は、政治の責任は極めて重大だなというのを改めて実感しています。

 といいますのは、当時、二〇〇〇年の審議の際に、運輸大臣は新しいタクシーの需要が起こってくるということを言ったことを、私は今でも覚えています。つまり、需要が拡大するということを一つの前提に置いて政策が実行されたということであります。ですから、その反省が極めて必要だと私は思っています。

 二つ目に、それらを考える上で、現状の認識が極めて大事だと思っています。〇二年の道路運送法の規制緩和の実施に伴って、日本全体が供給過剰、先ほど政府からも答弁がありましたように、長期的に供給過剰の現状があるというのが実態だと私は思います。

 そこで、その問題について、交通政策審議会答申においては、タクシー事業をめぐる諸問題の原因という項で、次のように述べています。地域によって若干事情が異なるものの、多くの地域では、需要が減少しているにもかかわらず、供給が増加し、問題の深刻化を招いていると。まさに問題が深刻化しているという現状をどうとらまえるかということが私は大事だと思います。したがって、全国で手を打たなければならないと。

 三つ目に、今大事なことは、今日の経済情勢がどう推移するかという問題が問われています。これは、昨年の秋以降の新たな経済危機のもとでの需要がどうなるかという見込みを考えた場合に、まさに全国的な事態になるであろうということを我々は考えています。

 その上で、最後に一言申し上げますと、今回の私どもの道路運送法改正案によって、新規参入及び増車は、全国的に需給の調整規制が行われます。これによって、全国で行われるわけですから、タクシーの供給輸送力が輸送需要量に対して著しく過剰になるということはあり得ないことになります。したがって、現行の増車の届け出制が前提となっている緊急調整措置の規定を、論理上当然の帰結として廃止することとしたものであります。

 なお、緊急調整地域について言えば、供給過剰の実態が各地にあるにもかかわらず、これまで、沖縄、仙台の二地域のみが指定されたにすぎません。このような運用の実態では、供給過剰の歯どめとは到底なり得ず、輸送の安全及び旅客の利便を確保するという目的を達成し得る制度と言えるのかという疑問が残ると言わざるを得ないと思っています。

 以上です。

石川委員 共産党の穀田先生から御答弁をいただくというのは非常に不思議な感じがいたしますけれども、やはりこれも野党四党で共同提出ということでありますので、政権交代した後こういうこともあるのかなと、非常に今感じました。

 次に、今回、供給過剰が起きてきた、いろいろな理由があると思いますけれども、さらに不況が現在の状況に追い打ちをかけているんだろうと思います。これは、いずれまた好景気が来るというときもあるかもしれません。バブルのころは、先ほど、遠藤先生の質問だったかと思いますけれども、タクシーがなかなかつかまらなかった、一万円札を出してもなかなかとまってくれなかったという話もありました。タクシーを、今度、余りにも余っているところに、たまたま乗って、ワンメーターだと運転手さんに怒られたりすることも、私も経験をしております。

 そういう中で、好景気、不景気に非常にさらされている業界だとは思いますけれども、その中で、野党四党案の中で、第十一条第三項の、事業用自動車の停止を含むという規定がありますけれども、これを入れた理由というものをお伺いしたいと思います。

下地議員 お答えをさせていただきます。

 二〇〇二年に改正を行ったときに、免許制度が許可制度に、そして、増車の部分が認可制度が届け出制度になりましたけれども、それによりまして、大体二十六万台のタクシーが二十七万台になりました。そして、イザナギ景気というのが続いているといいながらも、実車率は四一・三%程度ですから、私は過剰だったことは間違いないというふうに思うんです。

 今度の法律で、新規においても、増車においても、ある一定の歯どめをかけることはできますけれども、ここまで残ったものをどうするかということが、非常に大事なことになるんです。

 そうなると、二つある。一つは、今先生がおっしゃったように、喚起が起こって需要が伸びること。もう一つは、今、古賀先生がおっしゃったように、なかなかこれからも、厳しくなることはあっても伸びないんじゃないかというふうなことになってきますと、供給量を抑えることが大事だというふうになってきます。減車という方法もありますけれども、有形の資産を減車しろといってもなかなか難しいので、今言ったように、景気のバランスがありますから、休車にしておくというようなことがやりやすいのではないかと。

 だから、一たん休車をしていただくということが供給量を抑えるのに大事だということで、野党四党案では休車案というのを入れさせていただいておるわけです。

石川委員 ありがとうございました。

 政府案と違って、好景気があったときにもきちんと対応ができるということで、休車ということを入れられたということでありました。

 次に、もう一点、政府案と野党四党案の違いの一つに、野党四党案では、特定地域の指定を受けるために地方自治体が要請できるようになっているわけでありますけれども、この理由について、提出者の方にお伺いをしたいと思います。

細川議員 タクシーというのは、もう御承知のように、地域の公共交通機関でございまして、大変重要な役割を果たしているということについては、だれもが認識していることでございます。

 しかし、このタクシー事業におきます法規制というのは、道路運送法によります法規制というのは、すべて権限は国の国土交通大臣、こういうことになっておりまして、地方の公共団体の権限はなくて、関与したくても関与できない、そういう仕組みになっております。したがって、このタクシー業界における地方分権というのは全く進んでいないというところでございます。

 そこで、今度の政府案についても、ある地域が特定地域に指定されるべきかどうかということは国土交通大臣が一方的に判断をする、こういう仕組みになっているわけであります。したがって、これでは、当該の特定地域に設置されました協議会に参加する関係地方団体の皆さん方も、積極的にこれに参加するというよりも、いわば受動的な、そういう姿勢におのずからなっていくのではないかというふうに私たちは危惧しているわけでございます。

 そこで、私どもとしては、地域における住民の暮らしぶりや経済活動などの地域の実情、それに基づいて発生する交通需要等は、地域の地方公共団体こそ第一義的に把握しているのが通常でありますし、地方公共団体が実質的に関与できない現行のタクシー事業の法体系については、これはいずれ私は全面的に見直していかなければならないと。こういうことからも、住民の移動という基本的な分野における地方分権は今は進んでおりませんから、やはりこういうことを通じて進めていくという意識のもとにこの法文をつくったわけでございます。

 そういう意味で、地域の実情に精通した地方公共団体が能動的に特定地域の指定を要請することができるということでございます。このような措置を講ずることによりまして、その後に設置されます協議会においても、地域の関係者の積極的な関与が期待されて、施策の実効性が向上していく、こういうものを私ども期待し、考えておるところでございます。

石川委員 ありがとうございました。

 このタクシーの業界においてもやはり地方分権を進めるべきだと。地域のそれぞれの事情があるわけでありまして、縦割りの行政の中で今まさに改革を行わなければいけないということで加えられたんだろうと思いますけれども、ちょうど提出者全員にお答えをいただいたので、私も一仕事終えたなと今ほっとしているところでございます。

 きょう、資料をお配りしております。

 今、地方ごとにいろいろ違いがあるということを私申し上げましたけれども、私も、今回のこの法律案の質問に当たって、地域の全自交、実際にタクシーを運転している労働者の方々と、そして経営者の方々、実際に聞き取りを行ってまいりました。両方共通をしてきちんと対応をしてほしいと言われたものが、運転代行業者の問題でございました。これは、ドライバーの方も、そして経営者の方も、この問題にきちんと取り組んでほしいという要望が寄せられました。

 きょう、資料の一枚目に、「二種免許なく運転代行」というのがあります。地域によって違うと思うんですが、公共交通機関が、都会のように地下鉄が発達していたり、またはバスの本数が多かったり、そして夜遅くまで運行をしているようなところには余りこの運転代行業というものはなじみがないのかなと思いますけれども、私は北海道の十勝という地域なんですけれども、運転代行業の数が大変多い地域でございます。

 この法律案を勉強するまで、運転代行業が警察と国土交通省の共管であるというのは私も知りませんでした。国土交通省の所管だろうなと思っていたら、いや、実は違うんです、警察の方にお伺いをしてくださいということで、警察と国土交通省両方からいろいろお教えをいただいたわけであります。

 地域の方々が、この運転代行業について、非常に数がふえ過ぎて大変だと。そして、タクシーの料金設定というのは法で決められておりますけれども、運転代行業の場合は平たく言うと言い値でありますから、きちんと料金を最初に示していれば、あとは、タクシーと違って、はっきり言えばお互いの了解で料金が決まってしまうということがあります。そして、だんだん顔なじみになってくると、実際、繁華街にいてお客さん待ちをしているタクシーがある、運転代行業者もお客さん待ちをしている。ちょっと申しわけないけれども、きょう送ってくれないかというときに、車があるところまで送っているのか、それとも実際実車をさせて、まあ白タク行為ですね、やっているのかわからないという声も寄せられております。

 運転代行業の認定というのは、一定の基準をクリアすればだれでも今参入できる状態になっておりますけれども、今後、運転代行業についてどういう対策を持っておられるのか、それをちょっとお尋ねしたいと思います。

本田政府参考人 自動車運転代行業に関しての御質問と御指摘であろうかと思います。

 まず、御指摘のとおり、全国ベースで見ますと、自動車運転代行業者の数でありますが、平成十四年十二月に関係法、自動車運転代行業法が施行されました当時は、全国で四千百四十八者でございましたが、平成二十年十二月、昨年末にはその約二倍の七千七百六十三者という形で、確かに数はふえております。

 また、地域地域によって事情が違うと思いますが、地域によっては、従来タクシーの利用者であった人がこういった自動車運転代行業の利用に移行するというケース、これがその地のタクシー事業者の経営を圧迫していることもある、こう認識しております。

 その際、自動車運転代行業といえども、タクシー類似行為については、これは明確な違反行為でございます。また、路上におきます違法な駐停車といったような違法行為も見受けられますので、私ども、警察庁にも協力をいただきながら、立入検査、そういったものを実施して、違反が確認された場合には法令に基づいて行政処分を行うことなど、厳正に対処していくこととしております。

 とりわけ、自動車運転代行業法が施行されて五年を経過したことから、昨年、今までの施行状況をもう一度見直しまして、それに基づきましてプログラムというものを作成いたしました。

 そのプログラムの骨子を簡単に御紹介いたしますと、まず、利用者との関係では、自動車運転代行業の損害賠償措置に関しての義務の拡充や、あるいは料金システムに関しての透明性を確保する、あるいは問題のある事業者か安心して利用できる事業者かといった情報を利用者へ提供するといったことと同時に、やはり自動車運転代行業法の施行管理の強化、指導あるいは取り締まりの強化、こういったことをプログラムに盛り込んでおりまして、これに基づいて施策を今後実施してまいりたい、かように考えております。

石川委員 この新聞記事の事件自体はプログラムの前ということだと思うんですけれども、運転代行業について改めて少しお話をさせていただくと、ある地点まで車を、二人で一台でとりに行くわけですね。運転代行業の車でとりに行って、一人は必ず二種免許を持っていなければいけない。後でお客さんの車を持って、随伴車両、後ろに一台ついていかなければいけないですから、お客さんを乗せる人というのは二種免許を持っていなければいけない。もう一つの、随伴車両をそのまま持ち帰る方というのは別に二種免許を持っていなくてもいい。今回のこの事件というのは、要は、恐らく二人とも二種免許を持っていない人が迎えに行って、帰ってきたところを警察に検問を受けてそれが発覚したということだと思います。

 地域によって、取り締まりの強化をどうするかということが、警察の対応いかんによっては、それはばらつきが出てくるのは仕方ないという面はあろうかと思いますけれども、この運転代行業の問題というのは大変タクシーの業界を圧迫している。

 タクシー業界からすると、自分たちの方が規制は厳しいのに、代行業の方は規制が緩い。そして、白タク行為がどれぐらい行われているかというのはわかりませんけれども、自分たちの方ばかりがんじがらめに縛られて、何であっちは緩いんだというお声も寄せられております。

 だれが二種免許を持っていて、だれが持っていないのかというのは、実際はなかなかわかりづらい、わからないところではありますけれども、地域によっては、この代行業が余りにもふえ過ぎてこうした問題が起きているということがありますので、ぜひこれはきちんと対応策をとってもらいたいと思うわけであります。プログラムを昨年つくって今対応しているということでありますが、まだ地域間のばらつきが非常に大きいということでありますので、ぜひ対応していただきたいと思います。

 時間がなくなってまいりましたので、次に、資料の二枚目と三枚目に、相乗りタクシー、相乗りバスというのをきょうお配りさせていただきました。相乗りタクシーの方はタクシー会社がやっております。相乗りバスの方は、三枚目ですね、バス会社がやっているんですけれども、ほとんど同じことをしているんです。違うのは、タクシー会社であるかバス会社であるかという違いだけであります。

 これはどういうことかというと、二枚目の相乗りタクシーさんのは、この地域というのは農村地域でありまして、農繁期においては家族の者がなかなか病院まで送ることができない。では、バス停までどれぐらいの距離があるかというと、大変長い距離がある。でも、タクシーで毎回毎回行き来をしていたら大変な金額になるということで、自治体とそして事業者の方が知恵を絞ってこういう体系にしていったようであります。地域の違いによって、バス会社がたまたま三枚目の方の区域をやった、タクシー会社が二枚目の方の区域を担当したということであります。

 今回、タクシーの法案でいろいろな問題点が話し合われているわけでありますけれども、そのうちの一つの大前提として、公共交通機関として位置づけるということを確認するということが本当に一番の肝ではないのかなと私は思っております。

 自分で地域を歩いていると、また、街頭演説なんかを朝していると、私の地域はもう鉄道も廃止になっている地域でありますので、鉄道を利用しているのというのは学生かもしくはお年寄りだけということですので、一番車が通る国道で、私は、だれも聞いていないわけですけれども、立っているというのが仕事なものですから、街頭演説をしております。都会の代議士さんや参議院議員の方は、大体、駅頭、駅に立って乗降客に対して、これもだれも聞いていないんでしょうけれども……(発言する者あり)済みません、聞いている人はいるでしょうが、川内先生ぐらい演説がすばらしい人だと恐らく鹿児島駅の前なんかはたくさん人がおるかもしれませんけれども、鹿児島は人口が少ないですか。

 私のところは来る車に街頭演説をしているわけですが、ほとんど、朝以外はバスは空気を運んでいるような状況です。一人も乗っていないなんということはざらにあります。帯広市から足寄町というところまで六十キロありますけれども、ほとんど乗らないで、そのまま行って帰ってきているというのがざらであります。

 でも、バスを利用しなければいけない人というのはどういう人かというと、お年寄りで、なおかつ、病院に行かなければいけない人、眼科ですとか耳鼻科、またはそのほかの専門科ですね。それは帯広市という中心部に行かなければ病院にかかることができないものですから、五十キロ、六十キロもかけて通わなければいけない。家族が送ってくれているというのが大半だと思いますけれども、その家族もいない、知り合いもいないとなると、どうしてもバスを使わなければいけない。でも、バス停で雪の降る中ずっと立って待っていると、まるで廊下に立たされているしかられた子供のように、本当に気の毒だなと思うことがあります。

 なので、この相乗りタクシー、相乗りバスというのは、そういう地域の事情を考えて行政と事業者の方が知恵を出してこういう体系にしていったと思いますけれども、これは、それでもまだ中心部から近い地域であります。今後、公共交通機関というものを過疎地においてどうしていくのかというのは、改めて知恵を絞って改革を行っていかなければいけないんだろうと思います。タクシー会社はタクシー会社、バス会社はバス会社という垣根が、この相乗りにはないわけでありますけれども、ただ、これも事業参入をしようとしたらいろいろな障壁があるわけであります。

 私が大臣にお尋ねをしたいのは、今後、過疎地や地方においてタクシーを公共交通機関と位置づけなければいけないことがより強まってくるわけであります。タクシー会社やバス会社、そういった事業再編成を、法改正を伴うこともあろうかと思いますけれども、行っていかなければいけない時期に、少なくとも検討しなければいけない時期に来ているのではないのかなと問題意識を私は持っておりますけれども、大臣の問題意識というものをお答えいただきたいと思います。

金子国務大臣 帯広の相乗りタクシーというんですか、これは非常にいいアイデアで、経営上苦労しているのかもしれません、また、地方自治体が採算の上でこれに多少支援しているのかな、御苦労されているかもしれませんが、非常に地域にとっていい役割を果たしているのではないかと思います。

 先ほど私も答弁をさせていただいたんですが、タクシーだけじゃなくてバスというのも大事な公共交通機関という位置づけであると思っておりまして、そういう意味で、バスあるいはタクシーといったような区分にとらわれませずに、地域にとって必要とされる交通サービス、これは既に、国としても地域公共交通活性化・再生総合事業といったような制度がありまして、地域の関係者、地方自治体のこういう取り組みに対しまして、補助事業としては今やっております。

 それからもう一つ、今度、道路財源が一般化いたしました。かわって新たな交付金制度、地方臨交金にかわる交付金制度というのをつくらせていただきました、この委員会でも採決をしていただいたわけでありますけれども。あの新しい交付金制度を使って、さらに、地方のこういう過疎地域におけるバス運行というものにどういうふうに適用できるものかということもあわせて考えたいと思っておりまして、バス、タクシーのこういうケースというものは、地方における公共交通としての位置づけをきちっと大事にしていきたいと思っております。

石川委員 最終的には、地方分権を行って、それぞれの地域地域の事情がありますので、やっていく以外にないのではないのかなと思うところであります。

 最後に、ちょっとタクシーの法案とは違うんですけれども、北海道で丘珠空港という空港がありまして、そこから全日空が撤退を今検討している問題がございます。それについてお尋ねをしたいと思います。

 札幌市を挟んで北側に丘珠空港、南の方に新千歳空港があります。今まで丘珠空港というのは、稚内ですとか函館ですとか釧路ですとか女満別ですとか、北海道は大変広いですから、稚内から札幌というのは特急でも五時間かかりますので、北海道の地域の方々からすると、道内のローカル・ツー・ローカル、地域から地域を結ぶ飛行機というのは、道民にとっては非常にいい交通機関だったわけでありますけれども、もちろん、路線自体を廃止するというよりは、新千歳空港にそれを集約したいというのが全日空側の意見であります。

 その変更によって、乗り継ぎ、いわゆる羽田から新千歳に行って、新千歳から例えば釧路だとか函館だとか、そういう乗り継ぎをふやしていくこともできる。また、北海道の場合はことしから関西線というものが、北海道と関西を結ぶ路線というものがほとんど廃止になる予定であります。新千歳空港以外のローカル・ツー・ローカル、関西空港と北海道の地方都市を結ぶ路線というのはほとんど廃止になるということで、それを関空から新千歳に行って、新千歳からそれぞれの地域にということが提示をされているわけであります。

 ここで一つ懸念は、今まで直行便で飛んでいたのが、全部新千歳に行ってまたそこから行くとなると、非常に乗り継ぎがふえて、便数はふえるかもしれないですけれども、我々にとっては非常に使い勝手が悪くなる、時間がかかるのではないかという懸念も今示されているわけであります。

 丘珠空港の問題に戻りますけれども、この空港の整備に札幌市、北海道を含めて百億円近い予算を投入して空港をつくってきた。ジェット化に対応するために九五年ぐらいに滑走路の延長ということが議論されたわけですけれども、それが実現しなかった。後継機が今製造していないということで、ではそれもクリアできないということで、結局、もう撤退をして新千歳にということで話し合いが今進んでいるわけであります。

 航空局にお尋ねをしたいんですが、全日空に対してどういう指導を今後していくつもりなのか、お答えをいただきたいと思います。

前田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、全日空におきましては、非常に厳しい経営環境の中で、丘珠路線に限らず、いろいろな路線について今見直しを行っております。それから、後継機種のお話もありましたが、Q300という航空機、これが製造中止になって、その後継機種が問題になっているというのも先生御指摘のとおりでございます。

 こういったことを背景にして、今、丘珠路線の新千歳空港への集約について検討している状況でございますが、私ども国土交通省としましても、これは地元に非常に大きな影響を与える問題であると思っておりまして、全日空に対しては、地元との間で丘珠空港のあり方について真摯に議論を行う必要があると既に伝えております。

 それから、一昨日でありますが、五月二十日に、地元から、十分な時間をかけて協議がなされるよう全日空に働きかけをしてほしいという要望が出されました。これを受けまして、私どもも改めて、全日空に対しては、誠意を持って地元と協議を行うようにと伝えたところでございます。

 全日空の方からは、時間をかけて十分に議論を行っていきますという答えを得ておりますし、実際、現在も協議継続中でございますが、私どもとしましても、全日空と地元の間でしっかりと話し合いが行われていくことが重要であるというふうに思っております。

石川委員 路線の廃止を行うというときには半年前に通告をしなければならないとなっていると思います。でも、今回のこの問題というのは、航空会社が引き揚げるとなると、もう空港の存廃そのものにもかかわってくるということであろうかと思います。

 全国で九十七の空港がありますけれども、今後似たような事態がどこかの、これは丘珠空港だけじゃなくて、ローカルな空港で航空会社が引き揚げるとなったときに、似たようなケースが出てくるのではないかということが想定されるわけでありますけれども、そうしたことに備えて何かマニュアルみたいなものというのはつくられるおつもりなんでしょうか。

前田政府参考人 国内航空路線の就航、これは一義的には航空会社の経営判断によって決められるものでございますが、国土交通省としても、地方航空路線のサービスの維持充実というのは重要であるというふうに考えております。

 先生が御指摘のマニュアルというようなものを作成しているわけではございませんが、ただ、地方路線の維持という観点からは、地方路線に関する国管理空港の着陸料の引き下げでありますとか、あるいは国内線就航機に対する固定資産税の軽減措置、こういった形での支援措置は講じているところでございます。

 今後も、地方路線の維持充実のために、観光振興といったことともあわせて支援を行ってまいりたいというふうに思っておりますが、これと同時に、そういった空港を抱える地元において、需要喚起の取り組みを行うということもまた重要ではないかというふうに思っております。

石川委員 これで質疑を終わりたいと思います。ありがとうございました。

望月委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三分散会


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