衆議院

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第22号 平成21年6月5日(金曜日)

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平成二十一年六月五日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 望月 義夫君

   理事 奥野 信亮君 理事 菅原 一秀君

   理事 中山 泰秀君 理事 福井  照君

   理事 山本 公一君 理事 川内 博史君

   理事 後藤  斎君 理事 上田  勇君

      赤池 誠章君    井澤 京子君

      泉原 保二君    稲葉 大和君

      浮島 敏男君    江崎 鐵磨君

      遠藤 宣彦君    大塚 高司君

      太田 誠一君    岡部 英明君

      亀岡 偉民君    北村 茂男君

      佐藤ゆかり君    七条  明君

      島村 宜伸君    西銘恒三郎君

      橋本  岳君    原田 憲治君

      藤井 勇治君    松本 文明君

      盛山 正仁君    若宮 健嗣君

      石川 知裕君    小宮山泰子君

      古賀 一成君    佐々木隆博君

      高木 義明君    長安  豊君

      三日月大造君    森本 哲生君

      高木 陽介君    谷口 和史君

      穀田 恵二君    下地 幹郎君

    …………………………………

   議員           細川 律夫君

   議員           三日月大造君

   議員           穀田 恵二君

   議員           日森 文尋君

   議員           下地 幹郎君

   国土交通大臣       金子 一義君

   国土交通副大臣      加納 時男君

   国土交通大臣政務官    谷口 和史君

   国土交通大臣政務官    西銘恒三郎君

   政府参考人

   (国土交通省河川局長)  甲村 謙友君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  金井 道夫君

   政府参考人

   (国土交通省自動車交通局長)           本田  勝君

   国土交通委員会専門員   石澤 和範君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月五日

 辞任         補欠選任

  小里 泰弘君     井澤 京子君

  杉田 元司君     浮島 敏男君

  長島 忠美君     橋本  岳君

  吉田六左エ門君    佐藤ゆかり君

  鷲尾英一郎君     佐々木隆博君

  亀井 静香君     下地 幹郎君

同日

 辞任         補欠選任

  井澤 京子君     小里 泰弘君

  浮島 敏男君     杉田 元司君

  佐藤ゆかり君     吉田六左エ門君

  橋本  岳君     長島 忠美君

  佐々木隆博君     鷲尾英一郎君

  下地 幹郎君     亀井 静香君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法案(内閣提出第二七号)

 道路運送法の一部を改正する法律案(細川律夫君外四名提出、衆法第二八号)

 特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法案(細川律夫君外四名提出、衆法第二九号)


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     ――――◇―――――

望月委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法案、細川律夫君外四名提出、道路運送法の一部を改正する法律案及び細川律夫君外四名提出、特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省河川局長甲村謙友君、道路局長金井道夫君及び自動車交通局長本田勝君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

望月委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

望月委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福井照君。

福井委員 おはようございます。自由民主党の福井照でございます。

 きょうは、一時間、時間をいただいております。最初の三十分、衆法について先生方に御質問させていただいて、残りの三十分、閣法について政府から御答弁いただきたいと思います。

 別に恩を売っているわけじゃありませんが、普通の国会対策の常識あるいは政局絡みの場合ですと、決して、衆法をそのまま翌日つるしをおろすということはございませんけれども、山本筆頭のお人柄と我々の努力によりまして、国会対策委員会に根回しをさせていただいて、それで同じ日に閣法と衆法の趣旨説明をしていただいたということでございます。

 その上で、きょう、法案担当理事として衆法の御質問をさせていただくこと、大変光栄に存じます。

 衆法についても、傾聴すべき点が多々ございます。多々ございますけれども、少し議論が深まっていないのではないか、あるいは少し行き過ぎているのではないかという点について、御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、基本理念でございますけれども、タクシーは今回の法律で、閣法では公共交通機関として高らかにうたわせていただいております。公共交通機関として、その器としてふさわしいタクシー会社であり、そしてサービス提供者でありということで、その品格を当然持ってくださいと。公共交通機関なら、我々の方も、社会全体としても公共交通機関は大切にしなければならないけれども、公共交通機関たるタクシーにかかわるすべての方々に、社会に対するリスペクトも十分していただいて、品格も備えていただいて、そして、もうけ主義に陥らない、自己中心主義に陥らない、社会全体の調和の一員としてどのようにパフォーマンスをしていただくか。それを誘導し、そして、必要に応じて規制をしたり緩和をしたり、それが今回の法律の目的になっているわけでございます。

 ですから、なかんずく消費者、顧客への対応ということが論点になるわけですけれども、衆法を読ませていただく限り、会社の御都合であったり、あるいは運転手さんの御都合であったり、もちろん、そちらも物すごく大事なんですが、そこに少し前のめりに行き過ぎているのではないかという疑義がございますので、まず第一問でございますけれども、社会全体の公器として、消費者、お客様の御都合、利益の確保といった観点から、何点かお伺いをさせていただきたいと思います。

 まず最初に、平成十二年の道路運送法の改正によりまして、需給調整規制が廃止をされました。いわば規制緩和されたわけでございます。この議論の中では、需給調整規制によって参入や増車を全国一律に制限していることに対しまして、次のような批判がございました。意欲と能力のある事業者の市場への参入の機会を奪っているのではないか、消費者に評価されると思われるすぐれた事業者の事業拡大の機会を奪っているのではないか、あるいは逆に、問題のある既存事業者を市場に温存しているのではないかという、消費者サイドからの大変厳しい批判の声があったと承知をしているわけでございます。

 衆法提出者として、需給調整規制、需給を調整する規制に対する、まだ日本に厳然として存在しているこのような批判についてどのようにお考えになっているか、どのように考えたのでこの衆法を提出されたのか、まず基本的なところからお伺いをさせていただきたいと存じます。

穀田議員 お答えいたします。

 まず、与党からの野党四党提案に対する質問、ありがとうございます。

 それで、今、福井議員からありましたけれども、消費者の意見という場合に、消費者が今一番タクシーに求めている根底は何かということを考える必要があると思うんです。それは、つまり、安全が第一だということだと思うんです。したがって、私どもは、会社の都合、労働者の都合というのではなくて、労働者の働く条件に着目をして、そのことが安全に一番大事な問題だという角度から物事を考えたということをまず知っていただきたいと思います。

 その上で、お話があった、規制緩和を要望する議論の中には御指摘のような意見があったことは知っています。

 ただ、大事なことは、それらの意見を規制緩和の方向にどう取り入れたのか、政府はその批判的意見を踏まえて、規制緩和すればどうよくなると法改正を行ったのか、結果はどうなったのか、これらを検証することが必要ではないでしょうか。

 一例を申し上げましょう。

 御質問で批判点として挙げられた、問題ある既存事業者を市場に温存するということについて、規制緩和によって悪質事業者が市場から退出されたでしょうか。政府のタクシーサービスの将来ビジョン小委員会の報告にありますように、市場の失敗、問題のある事業者が市場からなかなか退出せず温存されると結論づけたことをもってしても、規制緩和によって実現されなかったことは自明です。政府の法改正による展望と結果を冷厳に見なければなりません。

 さきの参考人質疑で、私はそのことに言及しました。当時の運輸大臣は、新しいタクシーの需要も起こってくる、労働者に対しても条件をさらによくしていく方向になっていくと答弁しました。現実はそうなりませんでした。消費者の批判点と法改正についての相違も、この際、直視すべきではないでしょうか。したがって、消費者サイドの今日の批判点を正しく掌握し、それへの対応も練り上げ、対応策を国民的に議論を深めることが肝要と考えます。

 もちろん、二〇〇〇年の規制緩和の法改正について、今回共同提案した野党四会派においても、立場は異なっていました。しかし、規制緩和が失敗に終わったことについては、現時点で共通の認識に立っています。

 このため、法案は、過去の道路運送法に単純に返るのではなく、国民のサイドに立って、安全、安心で、合理的な運賃で地域の公共交通機関たるタクシーを利用できるように作成したと言えると考えます。

 以上です。

福井委員 穀田先生、ありがとうございました。

 まさにおっしゃるように、マーケットをミクロにとらえて、そこでプライスだけを物差しにした場合失敗が起きるということを私たちは社会全体として学習したわけでございます。

 規制と規制緩和があって、いわば小学校のときの三十センチ物差しのように、こっちが規制で、こっちが規制緩和で、今までは規制一〇〇%、今は緩和一〇〇%。どこまで戻して次なる日本の世の中をつくっていくかといういわばグレードを私たちのこの委員会がはかっている、あるべき姿をはかっているということでございまして、まさに神が時代に織り込んだメタファーだと思います。この物差しが一本でX軸一つだけだと失敗をするということでございます。

 川内先生もずっとやってこられた道路のBバイCもそうでございます。今、消費者余剰だけでやったら、やはりそういうBバイCという評価が失敗をしたということは学習したわけでございます。

 したがって、今、総合評価ということで、命の問題、災害復旧の問題、消費者余剰だけじゃなくて、時間便益、走行便益だけじゃなくて、地域の全体的なコミュニティーの維持、あるいは私たちの生活の、生存の維持、命の維持ということも含めて、いわば一次元を二次元にして総合評価をする。そうでなければ、道路の評価も公共事業の評価もできないということは学習したわけでございまして、まさに今、穀田先生おっしゃったように、安全の問題もそう、そして運賃の問題もそう、それを総合的に地域地域で評価しなければならない、そのバランス。

 バランスというのは、理念ではなくて、現場現場で、現実に沿って、現場の方がそれぞれの立場で、ステークホルダーがそれぞれの御意見をおっしゃって、我々がずっと三千年間維持、経営してきた村落共同体の平等な世の中の経営の仕方でそれを解決していく、これが特定地域の考え方、閣法の考え方でございますから、ぜひそういう意味で、この閣法について、今、消費者の利益を確保するという観点からも、何か賛成をしていただいたのではないかなという気がしましたけれども。

 次に、同じ消費者の話ですけれども、国土交通省で、交通政策審議会、このワーキンググループで、タクシー事業をめぐる諸問題について幅広い観点から総合的な検討を行ってきました。まさに今申し上げましたように、タクシー事業にかかわる事業者、労働者、消費者、マスコミ、いろいろな方々の参画を得まして、消費者の利益の確保の観点で提言がなされました。その提言を踏まえて答申が行われたわけですけれども、そこで次のように指摘をされております。

 ちょっと読ませていただくと、供給過剰の進行によって深刻化している諸問題の対策を講じる場合、さまざまな問題の背景にある根本的な問題である供給過剰への対応を行うことはやむを得ないものと思われるけれども、一方で、例えば新規参入や増車に伴い、個々のタクシー事業者の自由な営業活動とか競争の中から事業者の創意工夫が促されることも事実である、それが消費者利益の増進につながることも事実である、こういうことに留意する必要がある。

 ですから、もちろん供給過剰への対応は行うんだけれども、その一方で事業者御自身の、先ほど言いました、品格を目指して創意工夫をする、消費者利益の増進、社会全体への貢献、これを行っていただくということにも留意する必要があるということが提言をされているわけでございます。

 したがって、それを踏まえて、政府案、閣法については、地域を限定して、特定地域に限って、そして必要な期間に限って社会実験として、先ほど言いました、とにかくバランス論ですから、バランスというのは現実に即してしか発見できない。ムービングターゲットですから、発見も、その動く目標に向かって私たちも社会全体も動いていくということですので、現実に従って現場現場で解いていくしかこの問題解決の手法はないということなので、特定地域、特定地域ごとに、そして期間ごとに、その年、その年ごとに最適なことを図っていこうということで、今回の閣法が特定地域の社会実験、一言で言うと、そういうことを目標に閣法がなされているわけです。

 衆法提出者の先生方は、こういう交通政策審議会での議論、そして消費者利益の確保、そして、閣法のこういう、特定地域に限って社会実験をしようという考え方についてどのようにお考えか、御見解をお伺いしたいと思います。

下地議員 過剰供給であるというのは、政府案も私たち提出者も一緒なことであるんですけれども、消費者の視点から、手を挙げてタクシーが確保できるとか、サービスの向上があるとか、安全であるとかというのを、ちゃんと消費者の立場で守っていかなければいけないというふうに思っております。

 しかし、サービスにおいても、今、Cランクの業者というのが、東京タクシーセンターの調べによりますと、低運賃の方は、一〇%だったものが四四%までふえておりますし、先生おわかりのように事故も減っていないというような状況なんです。

 また、タクシーが本当に供給過剰なのかどうなのかということがはっきりしているのは、実車率を見たら、一番高い千葉県千葉市でも四七%しか実車率はないんです。一番低いのは、私ども沖縄県の三一%ですから、手を挙げてタクシーがとまらないという状況にもなっていないことだけは確かなので、私たちは、全体的に、全国、全部の地域で、今はもう供給過剰に陥っているんじゃないかなというふうに思っています。

 だから、規制緩和をしたときに、一部の都市で、都市の中の一部の地域で、一部の時間帯だけ、もうタクシーがつかまらないということを余りにも過剰反応して、これだけの規制緩和をやってしまったわけでありますけれども、私たちはもう一回、適正な運賃で、適正な経営が成り立つような状況をやった方が、消費者に対してちゃんとサービスも安全も提供できるというようなことを考えると、全国で一回指定して、ある意味、この指定をした中で、乗車率が上がってきたところからどんどん外していけばいいのではないかなというふうに考えております。

福井委員 尊敬する下地先生から御答弁いただきましたけれども、先ほどの続きで、特定地域とそれ以外の地域、要するに、ダブルスタンダードがむしろ必要だというふうに私たちは考えたので、閣法を今支持させていただいるわけです。

 それはどういうことかというと、ちょっと迂遠になりますけれども、例えば、地球環境問題でエクイティーという言葉がございますけれども、イコールじゃなくて、平等、公平じゃなくて、新たな社会に私たちは突入しているわけですね。

 地球環境も限界に行かないように、地球環境も守りつつ、そして持続的に経済発展、もっとおいしいものを食べたいという私たちの欲望も満足しつつという環境と経済の両立を図るために、それぞれの国が、衡平、てんびんの衡ですね、バランスをとった衡平をどういう物差しではかっていくのか。マージナルな努力で衡平と見るのか、あるいは一人当たりの低炭素社会への努力のお金でいくのか。あるいは国全体のGDPのシェアでいくのか。それを今、二〇二〇年までの中期目標、そして二〇五〇年の長期目標で、この十二月に、世界の各国が同じ、複数の物差しで百九十カ国、合意をしなければならないというところに来ているわけです。

 ですから、物差しは一個でもだめ。そして、今までの物差しも進化しなければならないというのがエクイティーです。

 もっと言うと、エクイティーのもともとは、イギリスは物々交換だった。それがコモンローの世界だった。そして、フランス、ドイツから貨幣が来た。それで、それぞれの社会では、今まで公平だった、正義だった、正しかったわけですけれども、大陸とイギリスとが貨幣をもって経済を発展させることによって、それぞれの国では正しい、間違っていないんだけれども、利害が対立することだった。それを、エクイティーという新しい概念を使って解いたわけですね。ですから、ライト・イン・エクイティー・オア・アット・ローということで、コモンローでも正しい、そしてエクイティーでも正しいというところで解いていこう。

 つまり、社会が進化すると、そして経済や文化が進化すると、新しい物差しが、今までの物差しも変えないといけないし、さっき言ったX軸も、Y軸もZ軸も加えなければならない。だから、さっき言いました、特定地域の物差しと、それ以外の地域の物差しと、ダブルスタンダードこそ、今私たちが求められていることなんだということは、もちろん衆法提出者の皆さん方もおわかりだと思いますけれども、あえて衆法を提出されたので、今御質問させていただいたわけでございます。

 それで、今言いました、ダブルスタンダードの最も根幹中の根幹、何回もこの委員会でも御議論がありました、同一地域同一運賃。我が自民党からも御質問がございましたけれども、この同一地域同一運賃の問題に関して、交通政策審議会では次のように指摘をされています。

 利用者にとって多様な運賃の存在もサービスの一つである。適正な事業運営を行っている事業者の経営努力として、ほかの事業者よりも安い運賃を排除する理屈、理由はないということを、この交通政策審議会の議論の結果として書いているわけです。

 ですから、シャープにこの地域は七百五十円でなければならないとか、そういうイメージで我々は同一地域同一運賃をとらえているわけですけれども、閣法の方、あるいは後ほど御議論させていただくガイドラインの方は、もう少しふわっとしているわけですね。ふわっとして幅を持たせて、日本人らしい解決策を模索しようとしているわけですけれども、衆法を提出された意図として、この同一地域同一運賃、どういう考え方でこれから運営をされていこうとしていらっしゃるのか、ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。

三日月議員 御質問、ありがとうございます。

 冒頭、福井先生の方から、今回衆法についてもこの国会で審議をいただくことになった過程や御配慮についてありました。もちろん、与党のいろいろな配慮はあるんだと思うんですけれども、しかし、それだけ、タクシー市場の混乱といいますか、利用者の利便、安全を損なっている現状を改善しなければならないんだ、このことが今立法府に求められているんだ、そのことについて与党も野党もなく共通認識として持っているんだ、これは国会の都合とか国会の配慮とか国対の戦略とかではなくてそういう共有認識を持っているんだということについて、私たちはまず確認をしなければならないと思います。

 それで、今御指摘のありました、利用者にとって多様な運賃の存在もサービスの一つであり云々という交通政策審議会の答申に書かれた御指摘は、私はごもっともだと思います。そして同時に、そうした利用者のニーズに合致した多様なサービスの提供が求められている、そして運賃がそのサービスの一つであるということについては、私たち民主党も、そして野党提出者も、みんな承知をしております。

 当然のことながら、適正原価、適正利潤、これは事業者ごとに、かつ地域ごとに異なっていますから、その結果、生み出される運賃というものが異なってくる、これも私たちは当然のことだと考えています。

 しかしながら、先般も御紹介しました三菱タクシーの判決にありますように、能率的な経営のもとにおける適正な原価というものは、各タクシー事業者にとってほぼ同じようなものになる。これは御案内するまでもなく、七五%が人件費、すなわち、ほとんどが人件費で原価が構成される以上、各地域ごとに計算される適正な原価というものは、おのずと各地域ごとに同じものに収れんされていく、こうしたことがあることが一つ。

 さらには、この答申、今、福井先生が御紹介いただいた「一方、利用者にとって、」というものの前に、「タクシー事業者間における健全なサービス競争を確保し、利用者が安心してタクシーを利用できるようにするためには、同一地域同一運賃を制度化することが望ましいとの意見があった。」という前段もあるわけでして、ぜひこのあたりのことをよくお含みおきいただいて、私たちは、この提案した法律で、同一地域は同一運賃でなければならないということは決して志向しておりません。

 適正な原価に適正な利潤を加えたものを運賃の目安にしようじゃないか。これはすなわち、今の上限価格制を改めて下限を設定することによって、福井先生もおっしゃった、一〇%の自動認可枠を狭めること、そして、甘い審査によって認められてしまっている下限割れ運賃をなくしていくこと、これを私たちは求めている、願っているのであります。

 残念ながら、閣法では、特定地域に限定し、期間を限定し、かつ、運賃に対する手当てがありませんから、ぜひここは衆法の、私たちが提案する野党案の、運賃を改善しなければ労働者、運転者の生活、労働条件は改善されず、それを改善しなければ利用者の安全性が改善されないという観点から、理解と歩み寄りをお願いしたいというふうに思います。

福井委員 口幅ったいですけれども、もう既に私は民主党員になったつもりでございまして、給料をくれとは言いませんけれども、ほとんど反党行為者みたいな理解と歩み寄りをさせていただいておるわけでございまして、来るべき近い何時間かのうちにぜひ合意をさせていただきたいというように思っております。

 まさに今、三日月先生がおっしゃいました下限運賃の設定、それから下限割れ運賃の審査にかかわるガイドライン、ここが、後ほど政府にお伺いさせていただきますけれども、今回一番キーポイントだと思います。ですから、このガイドラインを信用するかしないかでいわば議論のバイナリーチョイスになっておりまして、我々の方は、後ほど答弁していただきますけれども、議論を先取りして、六月下旬から、七月から議論をするとかいう答弁は絶対許しませんから、そのガイドラインをどういう論点で、どういう視点で、どういう物差しでつくっていくんだ、そして、これこれかくかくしかじかをはっきり書きますということが出るまできょうは質問をやめませんので、そういう趣旨で、ガイドラインは信用していただきたいなということでございます。

 ちょっと時間も迫ってまいりました。今、三日月先生がおっしゃいました、「適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないもの」と今確かに書いてございます。それで衆法の方は、「適正な原価に適正な利潤を加えたもの」、つまり「超えないもの」をデリートしている。上から押さえつけるだけじゃなくて下のものを上げる、つまり適正なんですね。適正なところで、上からも下からも圧力がかからないようにしましょうというのが衆法の御趣旨だというふうに理解をさせていただいております。

 しかし、こうしたとしても、あくまで個別の事業者ごとに当該基準への適合性を審査します。個別の事業者ごとに、適正な原価に適正な利潤を加えたものとしても、この基準への適合性を審査しますので、運賃の適否というのは個別事業者ごとに判断するわけですね。

 個別の事業者ごとに判断するわけですので、業界等が要望する同一地域同一運賃、今、三日月先生がおっしゃいました、決してシャープではない、幅を持っているとしても、事業者ごとに判断せざるを得ないということについてどういうふうに考えておられるか、重ねてですけれども、御質問させていただきたいと思います。

三日月議員 ありがとうございます。

 だんだんわかり合ってこれたと思いますので。

 私たちも、四月から政府において行われている運賃に対する検討会、これはぜひしっかりと検討してもらいたいと思います。ガイドラインをつくること、これも必要だと思います。しかし、法律の改正なき、法律の見直しなきガイドラインというのは意味を持ちません。ぜひ、そのガイドラインを法律でしっかりと裏づけをしていくということについても、その必要性をわかっていただきたいなというふうに思います。

 それで、御質問にありました、私たちの求める適正原価に適正利潤を加えたものという運賃基準をつくったとしても、先生のおっしゃるとおり、それぞれの事業者が出してきた運賃の適否というものについては、私たちの基準に沿って個別事業者ごとに審査、判断せざるを得ない、この部分は私は必要だというふうに思います。

 ただし、その基準を大きく見直すこと、すなわち、繰り返しになりますが、下限を明確に設定するということでもって、結果的に、そして事実上、判例にもあります、各地域ごとに安全というものを確保するために必要な運賃というものを実現していくということをねらっておりますので、このことについては、過日伺いました参考人の御意見の中においても、手当ての必要性を指摘されたというふうに認識をいたしております。

福井委員 もう本当に、時間単位で修正協議できると確信をいたしました。

 最後の質問でございますけれども、道路運送法まで遡及する必要についての御質問でございます。

 今回、道路運送法までさかのぼって、根元の根元のところまでさかのぼって修正しなければ、改正しなければ、衆法提出者の皆さん方の志は達成しない、これはよくわかるわけですけれども、ちょっと時間がないんですが、読ませていただくと、参考人の山内先生の議事録そのままですけれども、

  その他、残された問題がございまして、先ほどの、タクシーの運賃は本当にこのままでいいのかとか、タクシーの運転者の皆さんの待遇の改善をするにはもっと根本的な問題があるのではないかとか、あるいは、タクシーのマーケットというものをうまく機能させるためにはほかに何か手だてが必要なのではないか、こういうような構造的な問題が残されているというふうに認識しております。

  そこで、タクシー運賃の制度についてもう少し深掘りをするとか、あるいは賃金システムについてもう少し深掘りをする、こういった形の研究会、懇談会も新たに設けられておりますので、何か問題があるということであれば、その中でもう一度議論をしていくということだと思っております。

 つまり、今回は特定地域で社会実験をして、そしてそれを見ながら、道路運送法にさかのぼって、根本的なプリンシプル、基本的な考え方について修正すべき点があれば修正し、そして法律を改正するということなんですけれども、今はまだそこまで議論が深まっていないというのが、参考人で述べていただきました山内先生のお言葉でございました。

 そのような、もう少し広範な議論を経て、そして慎重に判断をして、それから道路運送法を改正するという私たちのスタンスについて、それでは間に合わないんだ、今のこの現状解決にはならないということだと思いますけれども、そういうコメントを最後におっしゃっていただければというふうに思います。

細川議員 私どもは、道路運送法の改正を提案しているわけでありますけれども、現在のタクシー業界がどうなっているかということについては、これはもう与野党同じような認識ではないかというふうに思っております。

 そういう認識のもとに、ではどうしたらいいかということを我々はずっと、昨年から議論してまいりまして、私どもとしても、消費者団体とかあるいは事業者団体、さらには働いておる労働団体の人たちとか、いろいろなところから意見を聞いてまいりました。そういう中で私たちは、ことし一月には、民主党の改革ビジョン、こういうものを取りまとめたところでございます。

 他の三党、社民党さん、あるいは共産党さん、それと国民新党さん、一体今のタクシー業界、タクシー事業、どうしたらいいかということは、それぞれ党で長く議論をして、そして現在の法律をどうしたらいいか、こういうことを検討してまいりまして、そういう経過のもとで、私どもは、今度、道路運送法も改正をしなければならないという結論に至って、今回、道路運送法の改正案も提出をしたところでございます。

 そういうことで、まだ議論が足りない、あるいはもっと議論すべきところがあるというのは、これは与党さんの立場であって、私どもはこれまで十分議論をしてまいりまして、やはり本則である道路運送法を改正しなければ今のタクシー業界についての問題は解決をされない、道路運送法を改正してこそタクシー業界の問題は解決する、こういう結論に至った次第でありまして、今、福井先生の言われたことについてはちょっと同意しかねる、こういうことであります。

福井委員 ありがとうございました。

 それでは、衆法提出者の皆さん方への質問は以上で終わらせていただきまして、政府の方に御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、ちょっとずっと引いて、来し方行く末、パースペクティブを御説明、背景を解説していただきたいと思います。

 今、新自由主義といいますか、経済思想の勉強会というのを自由民主党でやっていまして、その新自由主義、何でもかんでも競争すればいいんだ、小さな政府がいいんだ、規制緩和原理主義がいいんだという時代はもう高らかに終わりのゴングを告げたということでございまして、今まで新自由主義者、経済学者の方も、やはり雇用とか地域経済の維持とか、そういう物差しをつけ加えなければならなかったな、こういうことでございます。

 今までは、人類の歴史、近代の歴史は、自由と平等、自由と平等で、右足、左足、右足、左足のように、逆に対立する概念をエネルギーにして経済も社会も文化も進めてきたわけですけれども、今は、規制と規制緩和、規制と規制緩和、規制緩和が行き過ぎたので規制する方向にどこまで戻すかという議論をしているわけですけれども、そういう今私たちが直面しているこの現在、この時代認識と背景について、局長の方から簡単に御説明をいただきたいと思います。

本田政府参考人 今回の政府案を提出に至りました経緯と背景について、簡単に御説明をしたいと思います。

 タクシー事業をめぐりましては、長期的に需要が低迷する中で、タクシー車両数が増加しているということによって、地域によっては、現実に収益基盤の悪化や運転者の労働条件の悪化等の問題が生じており、タクシーが地域公共交通としての機能を十分に発揮することが困難な状況にあると考えております。

 こうした中で、全国のタクシーの運賃は約十二年据え置かれておったわけでありますが、やはり運転者の労働条件の改善のためには運賃改定が必要だということで、三年ほど前から全国各地で改定手続が開始されましたけれども、こうした動きに対して、内閣府における物価安定政策会議といった場では、タクシーの現状に対しての強い不信あるいは反発が起きてきたわけでございます。それを受けて、政府の物価問題に関する関係閣僚会議において、やはりこれは運賃改定だけの問題ではなくて、タクシー事業をめぐるさまざまな論点について早急に検討を進めるように、こういうことが決定されました。

 これを受けて、交通政策審議会で一年間の議論をしていただいたわけでございますが、その交通政策審議会の中から、四つの方策が提示されたわけでございます。

 順番に申し上げますと、まずは、タクシーが利用者ニーズに合致したサービスを提供していくということ、そして、悪質事業者等への対策をきちんと行う、さらには、過度な運賃競争への対策を初めとする現行運賃制度の適切な運用を図る、そして、供給過剰進行地域における対策が必要、こういった対策がまとめられまして、今回、私ども法案として出させていただいておりますのは、こうした答申の提言を踏まえて、その中で法的措置が必要とされるものを盛り込むに至ったものでございます。

 以上です。

福井委員 ありがとうございました。

 それでは、先ほど衆法提出者の方にも御質問させていただきましたけれども、特定地域に限って供給過剰問題への対策を考えるということにしたその制度設計の理由、そして特定地域の指定から外れた地域における対策、ここがダブルスタンダードと言われる、批判を浴びるわけですけれども、その特定地域で、まず何カ所ぐらいでどういうことをしようとしているから特定地域に限った、そしてほかの地域はこういうことをしようとしているということについて、具体的に局長の方から御答弁いただきたいと思います。

本田政府参考人 まず、供給過剰進行地域に対しての対策ということで、交通政策審議会の答申でございますが、先ほど先生の方からも引用されましたとおり、今般、「供給過剰への対応を行うことはやむを得ないものと考えられるが、一方で、例えば、新規参入や増車に伴い個々のタクシー事業者の自由な営業活動や競争の中から事業者の創意工夫が促され、それが消費者利益の増進につながり得ることにも留意する必要がある。」という指摘がなされております。さらに、「全国すべての地域で供給過剰による問題の深刻化が生じているわけではないことから、対策は全国すべての地域を対象としたものではなく、それぞれの地域において発生している問題の状況を踏まえ、実情に即して検討すべきである。」という指摘を受けております。

 この指摘を踏まえ、政府案では、供給過剰が進行し、問題が深刻化している地域を特定地域として指定し、法に定める必要な対策を講ずることとさせていただいております。

 さらに、お尋ねの特定地域でございますが、全国に、タクシーにつきましては六百四十四の営業区域がございますけれども、その中から、供給過剰の状況でありますとか、あるいは車両一台当たりの収入の状況、これは運転者の方の賃金に直結する指標でございますけれども、あるいは法令違反、事故、そういったものの客観的な指標に照らして、国土交通大臣が指定を行うこととしております。

 具体的な指定基準につきましては、昨年七月十一日から現在運用で実施しております特定特別監視地域、これにつきましては百九地域を指定させていただいておりますが、この指定制度を参考にしながら、今回の委員会での御審議を踏まえて最終的な基準をつくってまいりたい、かように考えております。

福井委員 ありがとうございました。

 何か、局長が答弁するようになって会場がしいんとしてしまったんですけれども。丁寧に御答弁いただいていると思います。

 では、続きまして、その特定地域において増車を認可制にすることになっております、閣法では。供給過剰が問題となっている特定地域、特定地域は供給過剰が問題となっているから指定するわけでしょうけれども、新規参入を含めて、安易な供給拡大、これはもう厳に抑制すべきだと思いますけれども、その方策、その方針、どのようにされるのか、続けて局長から御答弁いただきたいと存じます。

本田政府参考人 法案におきましては、特定地域は、まさに供給過剰等により問題が生じているという、そのことに起因した指定をいたします。

 そうした指定の趣旨から、法案におきましては、国は、特定地域においては、タクシー事業の適正化を推進するため、道路運送法に基づく処分、この中には、当然新規参入の許可、あるいは今回特定地域で導入させていただきたいと考えております増車の認可といった処分がございますが、これを的確に実施するという条文がございます。したがって、特定地域においては安易な供給拡大は国として厳に抑制すべきであると考えておりまして、新規参入あるいは増車の申請に対しては、原則としてこれを認めないという運用をさせていただきたいと考えております。

福井委員 先ほどはマイルドに申し上げましたけれども、古賀先生以外、どなたも民主党の先生、いらっしゃらなかったということをさっき言いたかったんですけれども。済みません。二人いらっしゃる。失礼しました。今のはひとり言ということで。

 では、続きまして、特定地域におきまして、地域の多様な関係者によって構成される協議会ですね。もう本当に多様な、その地域を代表するステークホルダーに集まっていただく協議会、この協議会でどういうことをいつまでに決めるかということが最も、この法律、そして今後のタクシーを占うキーになってくるわけですけれども、地域計画を作成することになっているわけですけれども、地域計画の具体的内容、これはどのようなものを想定されているのか。

 そして、私どもも土日、いつも地元でタクシーの会社の皆さん方に鋭く指摘されるのは、幾らそういう仕組みをつくっても、必ず暴れる人は出てくる、アウトサイダーが出てくる、破る人が出てくる、こういう人たちの存在は想定しておかなければならない。その想定をして、どのように対処するのか。法律、政省令、通達、あるいはそれ以外のきめの細かい対処方法があるのかないのか。ないんだったらちょっと問題ですけれども、今言える範囲内ではこうこうで、そして今後こういう方向で検討していくということも含めて、この地域計画の具体的内容、そしてアウトサイダーへの対応について、局長の方から御答弁いただきたいと思います。

本田政府参考人 まず、地域計画でどういうことを具体的に定めるかということでございますが、この点につきましても交通政策審議会の答申の中で、単にその地域の車両の台数をどうするかということではなく、その地域のタクシーをどうよくしていくか、こういう視点から、次のようなことを計画として定めるということが示されております。

 まず第一は、タクシーサービスの活性化、さらには、その地域におけるタクシー事業経営の活性化、効率化、そして、運転者の労働条件の悪化の防止、違法、不適切な事業運営の排除、交通問題等の改善あるいは減車の促進等供給抑制、そして過度な運賃競争への対策、こういったことを総合的に定めていく必要があるというふうにまず考えております。

 それをより実効あらしめるためのこととして、単にタクシー事業者の方々あるいは我々の行政、そして運転者の代表の方々のみならず、やはり幅広く、地域の公共団体あるいは住民の方々にも参加していただいて、そういった取り組みの中身が地域全体としても必要なんだという、こういった合意形成を図ることによって、そこに関係するタクシー事業者にとってもやはりこれは実施することがその地域における責務なんだ、こう理解していただけるような仕組みづくり、そういった計画づくりを進めていく必要があると考えております。

 その点に関しましては、私どもの運輸局を通じて地域の理解を得てまいりたい、それによって、なるべく多くの方々がこの計画づくり、そしてその実施に向けて同一歩調をとっていただくように促してまいりたい、こう考えております。

福井委員 わかりましたが、いま一歩、抽象的なので、最後の質疑の日にもう一回詰めたいと思います。

 それから、減車ですね。これも実際に地元で会社の方々からお伺いしますけれども、国による強制的な減車の命令とか減車する仕組みとかがなければ、やはり閣法で言っていることが実現しないのではないか、あるいは協議会がうまくいかないのではないか、地元では話し合いがうまくいかないのではないかというようなことを心配して言われて、私たちも毎週詰められているわけでございますが。

 そうはいっても、今回の閣法はすごいですよね。もう本当にすごいです。公正取引委員会との調整があって、それで事業者の協調減車を促進するスキームというものがあるわけですから、これはもう本当に、何段も何段も飛び越えた法律体系になっていまして、ここまでの努力については敬意を表するわけです。

 しかし、一方で、地元地元で減車する強制命令とか国による関与とかを要望する声もあるわけですから、そういったところで、減車するスキームですね、公取まで含めて、少し体系的に、今閣法はこうなっていて、そして現場ではこういうことを期待しているということについて、局長の方から御答弁いただきたいと思います。

本田政府参考人 まず第一に、減車を確かに制度的に実効性あらしめるためには、強制的な減車命令といったようなことが議論の俎上に上ることは事実でございますが、この点につきまして、昨年の交通政策審議会の答申でも指摘されておりますとおり、国が減車を希望しない事業者に対して、その意に反して減車を行うことを強制的に命ずるという制度をつくるというのは、やはり事業者の財産的価値あるいは営業上の権利を国が侵害するといったことでありますので、問題があり、こうした仕組みの導入は困難であると考えております。

 ただ、やはり減車を法的に許される制度の中で最大限促進するという必要は生じておりますので、今回の政府案では、先生から御紹介いただきましたとおり、タクシー関係の制度としては初めての試みとして、複数の事業者が協調して減車を行う場合に、事前に国土交通省と公正取引委員会がその協調減車に係る計画について調整を行うという仕組みを入れさせていただきました。ぜひこれを円滑、有効に活用していただけるように私どもも働きかけてまいりたいと思います。

 もう一点、その地域で車の数が多い、そのために何の問題が発生しているか、そして、どうしていけば車が減るかといったことについては、先ほどお示ししました地域計画の作成の中で、地域の中で大いに議論をしていただいて、やはりその地域として、タクシーの車が多過ぎる、減らそうといったようなコンセンサスをつくることによって、そこにおられる事業者の方々も自主的に協調減車に参加できるような、参加する意欲が出てくるような、あるいは我々もそれに対して支援を行うような、そういった運用を考えてまいりたいと思っております。

福井委員 ありがとうございました。

 ちょっと話は飛びますけれども、入札契約制度の改革をしている、ある自民党の勉強会で、埼玉県知事さんと和歌山県知事さんにお越しいただいて、それで先ほどから御紹介していますX軸、Y軸ですね、総合評価をする、そして点数を毎年毎年変えていくということでずっとやってきたんだけれども、結局、従前の業界秩序を守る、あるいは業界秩序を運営してきたその物差しにのっとるということがやはり正義であり、正しかった、公正であったということが、民主党出身の埼玉県知事も、そして通産省出身の和歌山県知事も共通しておっしゃっておられました。これはもう本当に時代象徴的なことなんだと思います。

 新自由主義が正しかったわけでもなく、規制緩和原理主義が正しかったわけでもなく、そして競争原理主義が正しかったわけでもなく、やはり三千年間自信を持って運営してきた日本社会のこの原理原則こそ正しかったんだということを入札契約制度の改革を通じて両知事が学習されたということについて、私たちもそれに倣わなければならないというふうに思いますので、ぜひ、先ほどの局長の御答弁のとおり、秩序立って、そして品性、品格のあるタクシーサービスというものをその現場現場で話し合ってつくり上げていただきたいなということでございます。

 それから、先ほど衆法提出者の三日月先生からも御答弁をいただきましたが、この同一地域同一運賃について、政府の方からも御答弁をいただきたいと思います。

 三日月先生からも御議論ありました三菱タクシーに関する最高裁判決も含めて、国土交通省としての同一地域同一運賃についての基本的な考え方、どういうターゲットなのか。だから、シャープに幾ら幾ら、十円単位まで賃金を統一するのか、あるいは少し幅を持って考えるのか、その辺も含めて御答弁をいただきたいと思います。

本田政府参考人 タクシーの運賃を同一地域同一運賃とすることにつきましては、答申の中でも触れられておりますが、ほかの事業者より安い運賃で、かつ適正に事業を行っている者に対し、その意に反して運賃を上げるように強制するというのは、やはり法的な制度としては困難でありますし、また利用者の理解も得がたいというふうに私どもは考えております。

 それから、御指摘いただきました判決の件ですが、これは先般、少し御説明申し上げましたけれども、最高裁で平成十一年七月十九日に行われました。内容は、平成三年当時、タクシー事業者が、その地域の同業他社より安い運賃での運賃改定を申請しましたところ、私ども国がそれを却下した事案に関しての最高裁の判示でございます。

 当時の道路運送法に基づきますタクシー運賃の改定に当たりましては、それぞれの地域において、いわゆる平均原価方式と当時我々は呼んでおりましたが、平均原価方式に従って算定された額をもって当該同一地域内のタクシー事業者に対する運賃の設定または変更の認可の基準とするという運用を行っておりました。これはもう少し詳細に御説明しますと、タクシー事業者の方は非常に数が多いものですから、個別に審査するのではなくて、こういった平均原価で計算された額で申請された場合には、多少個々の事業者の方の原価あるいは適正利潤と違っていても、それに基づいて認可をしておったわけであります。

 まず、そういった運用について許されるかという点について、この判決では、先ほどもお話ございましたとおり、「タクシー事業は運賃原価を構成する要素がほぼ共通と考えられる上、その中でも人件費が原価の相当部分を占めるものであり、また、同じ地域では賃金水準や一般物価水準といった経済情勢はほぼ同じであると考えられるから、当該同一地域内では、」「「能率的な経営の下における適正な原価」は各事業者にとってほぼ同じようなものになると考えられる。」こうした上で、タクシー事業者が、このような平均原価方式に従って算定された額を内容とする運賃変更をタクシー事業者の方から申請された場合には、これを認可するというものを、その運用を是認しておったわけです。

 他方で、同じ判決の中に、一方でタクシー事業者が、そうではなくて、「平均原価方式により算定された額と異なる運賃額」、そうした「異なる運賃額を内容とする運賃の設定又は変更の認可申請をした場合には、地方運輸局長は、当該申請について」当時の道路運送法「九条二項一号の基準に適合しているか否かを提出書類に基づいて個別に審査判断すべきであることはいうまでもない。」という表現を使っておられます。

 したがって、当時の道路運送法の解釈として、本来、個々の事業者ごとに運賃額を審査すべきことが判示された、こう我々は理解しております。

福井委員 ありがとうございました。

 それでは、局長から最後に、ガイドラインですね、先ほど、衆法の提出者の皆さん方にもお約束をさせていただきました。局長がきちっと答弁するまで私は質問をやめないと申し上げました、このガイドラインの見直しですね。この上限運賃から一律一〇%という自動認可運賃の幅とか、あるいは一番大事な下限割れ運賃の扱い、この問題について、どういう視点、論点、どういう物差しで今後厳格に審査しようとしているのか。これからの議論に任せるという答弁ではなく、ちょっと先取りして、いわば前のめりに御答弁をいただければありがたいと存じます。

本田政府参考人 まず第一に、過度な運賃競争という問題に対しての私どもの立場として、交通政策審議会で言われておりますとおり、やはり過度な運賃競争はさまざまな弊害を現実に発生させておりますので、そのことに対しては、今後厳格な対処が必要だと考えております。その意味で、現行の道路運送法の運用を強化するという方針が示されたわけでございます。その具体策として、今お話のありますガイドラインづくり、これを本年から検討を開始させていただいておりまして、論点はまさに二点あります。

 一点は、現行では、全国一律で私どもが示します運賃の上限額から一〇%、一割下回る運賃については、不当な競争を引き起こすこととなるおそれが全くないという扱いをさせていただいて、審査も省略し、自動的に認可しておりますが、果たして、この一〇%の範囲であれば不当競争にならないとまで明確に言っていいのかどうか、その点について改めて検討、見直しを行うべきだ。例えば、現に供給過剰で労働条件が悪化している特定地域といった場合に、そういった一割下回るような運賃によってさらに労働条件が悪化していくということであるならば、やはり運用を見直すべきではないか、こんなことを考えております。

 それから、さらに下限を下回る運賃については、現在、個別に審査を行っておりますが、その審査基準は、今、唯一、収支率が一〇〇%以上、すなわち、その下限割れの運賃であっても収支が相償うということを実は求めているにすぎません。しかし、不当な競争を防止する見地からは、この収支基準だけで足りるのかどうか。例えば、労働条件の悪化を防止する、あるいは運行の安全を確保するという見地から、もう少し議論を深めた新しい基準を設ける必要はないのか、そういった点について検討を行うべきであると考えております。

福井委員 ありがとうございました。

 その点につきましては、また最終日に御確認をさせていただきたいと存じますが、きょうのところはその程度でとどめさせていただきたいと思います。

 とにかく、私たちの今の目標は、負のスパイラルに陥った、今、規制緩和し過ぎたタクシーサービス業界、会社経営も、そして運転手さんの労働条件も、そしてその生活も、本当に厳しい厳しい状態にあって、全員共倒れ、元も子もない状態になろうとしているわけでございます。したがって、ミクロに消費者とサービス提供者の現場だけに着目するのではなくて、社会全体の調和の中でこれから物を考えていかなければならないということで、今、与野党で閣法の修正協議をさせていただき、そしてもちろん衆法の論点なり意義を生かして、これから社会にどうやって展開をしていくかということも含めて議論をさせていただいておるわけでございます。

 最後に、大臣の方から、閣法を提出していただいた御努力は重々に評価させていただきますけれども、今後の委員会の展開により、そして私どもの話し合いにより修正もあり得べしということで、ぜひ御覚悟もいただいた上で、今後のこのタクシー業界に対する対処方針、基本的な考え方について御紹介をいただいて、私からの質問を終わらせていただきたいと思います。

金子国務大臣 諸課題に対して、与野党、方向としては同じ方向にあると思います。我々としては、もとより、この閣法が最善のものとして提出をさせていただいて、まずはこの法案を施行させていただければと思っておりますが、スタート以来、与野党でこの議論が行われております。現在、与野党におきまして、修正も含めての議論がなされていると伺っておりますので、十分尊重して対応していきたいと思っております。

福井委員 ありがとうございました。以上で終わらせていただきます。

望月委員長 次に、森本哲生君。

森本委員 おはようございます。民主党の森本哲生でございます。

 特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する法律案、道路運送法の一部を改正する法律案の、内閣、そして衆法について質問をさせていただきます。

 まず初めに、前回の質疑、今回の質疑もそうでございますが、六月二日の参考人質疑を聞かせていただいて、論点はほぼ出尽くしたのではというふうに思っております。さらに幾つか確認、そして検討を加えていただきたいことを申し上げて、質問に入らせていただきます。

 平成十四年の二月から施行された規制緩和後のタクシー事業において、待ち時間の短縮とか多様な運賃、サービスの導入等、一定の効果というものがあったということは、私自身も認めておるわけであります。ただ、一方で、運転者の労働条件、特に運転手の皆さんの大幅な収入減、中には最低賃金を割り込んでいくというような厳しい環境下に置かれておるということ、そして、違法、不適切な事業運営の横行等によるタクシーの安全性、これは事故の増加を見れば顕著でありますが、そうした問題が指摘をされて、今回の法律案の提出になったわけであります。

 そんな中で、タクシー業界にとっては、これまで経験をされたことのない需給調整、特にこれは今回の供給過剰という問題が一番論点になりますから、どう対応するか、大変難しい課題であるというふうには認識をいたしておりますが、その具体策について、協議会などの設置も挙げられておりますが、この供給過剰にどう対応していくかという問題について、法案提出者の皆様方から個々にお伺いをさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

本田政府参考人 本法案におきます供給過剰への具体策につきまして御説明申し上げます。

 まず、本法案では、供給過剰の進行等によりタクシーが地域公共交通としての機能を十分に発揮できていない地域、これを特定地域として指定させていただきます。

 特定地域につきましては、タクシー事業者が増車を行う場合には、国土交通大臣の認可制をしかせていただくということで、その特定地域におけるタクシー事業の適正化を推進するために、安易な供給拡大を厳に抑制する、具体的には、新規参入やあるいは増車は原則として認めないという措置を講ずることがまず第一点でございます。

 さらに、既に過剰な車両をどうするかという問題、つまり減車の問題がございますが、この点につきましては、タクシー関係の制度としては初めての試みとして、複数の事業者が協調して減車を行うといった場合に、事前に国土交通省と公正取引委員会が調整を行うことによって、その地域全体として減車が円滑に進められるような仕組みを導入させていただいております。

 さらに、当該特定地域では、地方公共団体の長あるいは住民の方々にも御参画をいただく協議会を組織して、地域のタクシー事業の適正化、活性化のための地域計画を作成、そして実施しようとさせていただいておりますが、その中にも、やはりその地域のタクシーの車の台数について本当に適正なのかどうか、そういったことも当然協議されることを予定させていただいております。

 以上でございます。

下地議員 先ほど、福井先生の論議にもありましたけれども、私たちは、消費者の立場、そして経営者、そこで働く労働者の立場を考慮してこの衆法を提出している。そういう意味では、安全であることやサービスが向上することというのが非常に大事であるし、タクシーが必要なときに確保できるというのも非常に大事だと思っております。

 ただ、今、経営者も運転手の生活状況も非常に厳しいので、そのこともしっかりと対策を立てていかなければいけないということを考えておりますから、今回のタクシー事業の規制に関する許可、認可の基準を見直して、増車をやめるということも考えておりますし、また、それに伴って、増車をとめるだけでは今の現状は改善できませんので、ただ単に減車をするといってもなかなか難しいので、休車制度というのも新たに入れさせていただいております。

 また、料金の設定、過当競争にならないように、原価をしっかりと入れた運賃の見直しもできるような制度も、下限設定ができるというようなこともやらせていただいておりますし、また、事故の報告の拡大というのもやらせていただいておりますし、市町村長からもちゃんとこの特定地域の要請ができるということもやらせていただいております。

 多くの声を大事にしながらこの衆法をつくらせていただいておると思っておりますから、ぜひ、この衆法で衆議院の御理解をいただきたいというふうに思っています。

森本委員 どうもありがとうございます。

 今、政府側から減車というお話と、そして衆法の方で休車というお話が出てまいりました。

 ともにこれは、これまでに経験したことがない供給過剰にどう対応するかということでございますが、これは政府にお伺いしますが、円滑な導入ができる仕組みというお話も今いただきました。そんな中で、適正な供給量とするためのインセンティブの具体的なお考えを持っておられましたら、お伺いをさせていただきます。

本田政府参考人 地域での過剰なタクシー車両に関する適正な供給量とするためのインセンティブという御指摘でございます。

 まず、先ほど御紹介申し上げました、タクシー関係の制度としては初めての試みとして、複数の事業者が協調して減車を行う場合に、事前に国土交通省と公正取引委員会が協調減車に係る計画について調整を行う、これによって減車を進める仕組みを入れさせていただいたわけでありますが、その地域の事業者の方が減車のこの仕組みになるべく乗りやすいようにするためには、実は、減車と同時に、法案では特定事業と呼んでおりますけれども、その地域のタクシーをよくする積極的な取り組み、これも一緒にやっていただくことになっております。

 そういった前向きな取り組みに対しては、例えば私どもが助成を含めた支援をする、そういった促進策、あるいは、これは地域によっていろいろ異なりますので事情があるかと思いますが、現に減車をされた方に対して何かインセンティブを付与する、これも今後具体的に検討していきたいと思います。

 それから、やはりもう一つ大きなインセンティブとしては、先ほども御紹介いたしましたが、まさに特定地域においては、その地域で、タクシー事業の狭い意味での関係者の方だけではなくて、地方公共団体の方あるいは住民の方にも参加していただいて、タクシー事業のあり方について御議論いただくわけでありますが、その御議論、協議に際しては、当然ながら、その地域における供給過剰の状況がどうなっているか、あるいは、それによって、例えばその地域のタクシー運転者の方の労働条件がどう問題が発生しているか、こういった点について、地域全体として理解を深めていただく。さらには、では、そのために何をやったらいいのか、例えば供給を削減する必要があるのではないかといった議論も地域の中でしっかりやっていただくことが、現実に減車を進めていく上で大きなインセンティブになるのではないか、かように考えております。

森本委員 今後、具体的にその内容は詰めていくということで理解をさせていただきます。また後で少しインセンティブについてはお話をさせていただきます。

 需給調整は、法人タクシーの皆さんとの調整が重要と考えるわけでありますが、個人タクシーの方に対しては恐らくそれはされないというふうに理解しておるんですが、確認だけさせてください。

本田政府参考人 御指摘のとおり、個人タクシーの場合、減車という意味になりますと、これは事業の廃止そのものになりますので、事業者の方がみずからそういう判断を行うことがないとは言いませんけれども、行政として、その意に反して強制するということは困難であるというふうに考えております。

 ただ、いわゆる新規参入を抑制するという意味では、法人タクシーの参入あるいは増車と同じような影響がございますので、新規参入としての個人タクシーについては同じような考え方で抑制してまいりたい、かように考えております。

森本委員 了解しました。

 そして、今、福井委員からもお話がありまして、ここはかなり議論というんですか、お話があったわけでありますが、参考人質疑を聞かせていただいておって、経営者、労働者側も同一地域同一運賃を望まれておるというふうに私は解釈をさせていただいておるわけであります。

 ここで、くどくなりますが、なぜそのことがだめなのか、お答えください。

本田政府参考人 お答え申し上げます。

 タクシーの運賃を同一地域同一運賃とすることにつきましては、交通政策審議会の答申で指摘されておりますとおり、他の事業者より安い運賃で、かつ適正に事業を行っている者に対し、運賃を上げるよう強制することは、法的に困難でありますとともに、利用者の理解も得がたいというふうに私どもは考えております。

 また、先ほども引用させていただきましたとおり、平成十一年七月十九日の最高裁判決におきましても、同一地域同一運賃と異なる額の運賃の申請に対しては、個別に審査判断すべきであるのが当然と判示されているということでございます。

 したがって、同一地域同一運賃というものを制度化する、法制度として強制するというのはやはり難しいと思います。

 ただ、一方で、過度な運賃競争については、やはりこれは問題があると言わざるを得ません。このために、答申では、現在の運用で行っております下限運賃の設定あるいは下限割れ運賃の審査については、道路運送法に言います「不当な競争を引き起こすこととなるおそれ」があるかどうかについてガイドライン等の形で明確化し、これに基づいて個々の運賃の適否を判断する必要があると指摘されておりまして、私どもとしては、このガイドラインの検討を進め、このガイドラインに基づきまして、過度な運賃競争に対しては厳正に対処してまいりたい、かように考えております。

金子国務大臣 前回の森本委員の質問でも、このガイドラインというのは何だかまどろっこしいじゃないか、何をいつごろまでに出すんだという御意見がございました。

 ガイドラインについては、この法の施行までには出してもらいたいと、今委員会を開いてやっております。

 では、ガイドラインで一体全体何をやるんだということについて、まだ局長からお話がなかったのでありますけれども、不当な競争というものについて、赤字の運賃なのかあるいはダンピングなのかということ、それから、安い運賃で黒字を出す経営の違法性、これについては、例えば社会保険にちゃんと入っているのかどうか、それから、もとよりでありますけれども運転手さんの労働条件の悪化、あるいは他の客を奪ってくるというような、略奪性という言葉が適当かどうかわかりませんが、こういうものも厳格に対応する。こういう今申し上げた観点をガイドラインの中に盛り込んでもらいたいということで、今進めておるところであります。

森本委員 大臣、ありがとうございます。

 ですから、ここのところは、私どもは法改正、法にしっかりうたってほしいということのお願いをしておるわけでありますが、このことにつきましては、今、福井委員の質問に非常に具体的にお答えいただいたのでありますが、このことについて少し補うところがあれば、衆法提出者にお伺いをいたします。

三日月議員 ありがとうございます。

 かつては、それぞれ、同じ地域であれば同じ運賃でタクシーが運行されているという制度だったと伺っております。それが、一九九三年に廃止をされて、そして一九九七年にはゾーン運賃制というのが導入をされた。そして、二〇〇二年の改正道路運送法の施行時に運賃・料金の上限認可制というものが導入をされて、これが言ってみれば一部の地域での過度な、過当な運賃競争をもたらす一因になったと私たちは考えています。これがさまざまな問題を引き起こしました。

 もう既に御案内のとおりだと思うんですけれども、審査の甘さもあって、一〇%ルール、その後は収支を償うことの個別審査の運賃審査というものが行われておりますけれども、その下限割れの運賃を排除できなかったこと、またさらには、名義貸しも含めて、違法な営業や事業も行いながら安い運賃を設定するという事業者を排除できなかったこと、これは先ほど本田局長が、他の事業者よりも安い運賃で、かつ適正に事業を行っている者に対し、運賃を上げるよう強制することは法的に困難とありますが、適正に事業を行っているかどうかの審査をやはり行政側がきちんとチェックできなかったという問題はあると思うんです。

 これに、例えば歩合制というタクシー事業ならではの構造的な問題も相まって、最賃割れを二〇%も野放しにするような営業形態を看過してしまったということを私たちは改善するために、大臣は法施行までにガイドラインをつくるからいいじゃないかと言われますが、法の改正なきガイドラインでは意味がありません。そのガイドラインを実効あらしめるためにも、法の改正をやるべきだと。しかも、それは特定地域に限り期間限定でやるのではなくて、運賃にダブルスタンダードというものはかえって利用者のサービスを低下させ、混乱させることにもつながりますから、全国で運賃というものの哲学を見直そうじゃないかということで、私たちは提案をさせていただきました。

 もう御案内のとおりだと思いますが、適正原価に適正利潤を加えたものと明確に定めることによって、結果的に、事実上の同一地域同一運賃を実現していきたいというふうに考えております。

森本委員 ありがとうございました。

 労働者の生活を守るために、行き過ぎた競争には、やはり政治が何らかの対応をしなければならないということであります。

 そこで、今の答弁を聞かせていただいて、道路運送法の九条の三、「能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないものであること。」この「超えないもの」というのを削除することがなぜできないのか、お伺いします。

本田政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、過度な運賃競争ということにつきましては、昨年十二月の答申においても、やはりこれは厳正な対策を講ずることが必要だという指摘を受けておりますし、我々もそうだと考えております。

 そこで、現在の私どもの現行の道路運送法の運用について御説明をさせていただきますと、安い運賃、低額な運賃を個別に審査いたします場合に、道路運送法の運用として、これは現在の九条の三の二項の一号ではございません、三号で、他の事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがないという基準、この基準を根拠に、健全で安定的な事業運営を確保する見地から、その運賃によって収支が相償うということについては、現在の基準でもこれを確保させていただいておるところでございます。

 今回の答申で言われておりますのは、そうした運用を前提とした上で、さらに過度な運賃競争の問題に厳格に対処する方針としては、先ほど来申し上げておりますとおり、現在の、一〇%の幅であれば全く不当競争がないという扱いをしているというような幅の適否、あるいは大臣からも申し上げましたとおり、低額な運賃に関して、今申し上げました収支相償うというだけの基準で本当に適正な審査ができるのかどうか、そのことについてきっちり議論をし、ちゃんとしたガイドラインをつくって、それに基づいて厳正に対処する。

 その意味では、現行の道路運送法の運用の強化をすべきだ、こういう御指摘でございまして、それに基づいて、現在、我々は、道路運送法の改正ということではなくて運用の強化ということで対処してまいろうとしているところでございます。

森本委員 ここのところはぜひ我々の主張というものを受け入れていただいて、やはりこれは検討いただかなければならないということを申し添えて、次に移ります。

 先般、タクシーの運転手の方と今回の法律について少し雑談をさせていただく中で、以前のような小型、中型のような料金設定もよかったのではないかという御意見もありました。検討の余地、そういうことはおありか、お伺いをいたします。

本田政府参考人 まず、実情をちょっと御紹介したいと存じます。

 この二年来にわたって、全国で運賃ブロックが九十三ございますけれども、五十七地区でタクシー運転者の労働条件の改善を目的とした運賃改定が行われております。

 その中で、東京を含みます二十一地区では、実は、それ以前は中型車に加えて小型車といった区分がございましたけれども、小型車の車両数比率がこの二十一地区は非常に低い。例えば、東京では小型車の比率というのは二・三%という実情だったものですから、消費者の方から見ても小型車を目の前で選ぶというような環境にないということから、今回の運賃改定を契機に、中型車と小型車を統合せざるを得なかったという事情がございます。

 他方で、地域によっては、引き続き、中型車と小型車の車両数の比率が拮抗して、消費者の方からも小型車を選べるし、残してほしいという要請が強い、そういった地域において、これは具体的には三十六地区でございますが、従来どおり、中型車と小型車の車種区分を存続しております。

 こういったぐあいに、車種の区分につきましては、やはり地域の実態、利用者の方々の声あるいは事業経営の問題、これを考えながら柔軟に対応していくことが必要だと思っておりますが、その際のちょっと判断の要素として、非常にジレンマがございますのは、確かに小型車というのは環境に対しての負荷でありますとか車両コストといった面で好ましいという判断もありますけれども、実は、そこで働かれる運転者の方の賃金は歩合制になっておるものですから、安い小型車の収入ということになりますと、やはり運転者の方の賃金の低下につながるおそれもあるということでありまして、かなり慎重に考えていく必要があろうかと思います。

森本委員 局長、ここのところは私が申し上げたかったのとよく似ておるんですけれども、多様なサービスもあっていいという考え方があります。小型を含む環境対応車に対して支援をやっていくことが供給過剰に対応するインセンティブにつながっていくんじゃないか、こういう思いも私は実はあります。

 ただ、今の小型、中型になって、労働者の皆さんに対する、ここのところの問題はやはり非常に、私は、今のお話を聞かせていただいて、問題もあるという認識を今させていただいておりますので、ここのところはやはり慎重に、今言う料金設定、ガイドラインを含む法改正、我々は法改正を言っておりますが、ここのところは非常に重要な問題だというふうに思っておりますが、この環境対応車に対する、減車とか休車とかいう案が出ておる中で、具体的な対応は、簡単にお答えください。

本田政府参考人 まず、タクシーの環境対応車両導入への支援措置でございます。

 これは、私どもに低公害車普及促進対策補助制度というのがございまして、それを活用して、具体的には、低燃費のLPGの車両、さらには、昨今普及が進んでおりますハイブリッド車両につきまして、補助制度を設けております。

 この補助制度の運用として、現在は既存車両の代替車両である場合のみ補助を行っておりまして、したがって、増車といったような場合には認めておりません。ただ、今回、法案におきまして、減車を進めるような対策も打とうと考えておりますので、本法案の特定地域といったような地域では、増車の抑制のみならず、減車の促進に当たってこうした制度を何か有効に活用できないか、検討してまいりたいと考えます。

森本委員 今回の補正予算を見せていただいておりますと、そのことも少し触れられるというよりも現実に考えられておるようでございますから、ここのところはしっかり有効に活用していただくことをお願い申し上げて、次の質問に移ります。

 実は、今回の地方分権とタクシー法案というようなことでお伺いしたいんですが、閣法は大臣が特定地域を指定するとしているのに対し、衆法では、特定地域の指定を自治体が要請できる制度を導入しようとされております。地方分権の理念からすると、私は衆法の方を採用すべきというふうに考えておりますが、そのことについて衆法提出者の皆さんからお願いします。

穀田議員 地方自治体が地域における住民の暮らしと、営業、経済活動等の地域の実情と、それに基づいて発生する交通需要等を最も的確に把握していると考えるからであります。あわせて、地方分権をこの分野で進める、地方自治体の積極的役割の発揮を期待するからであります。

 結論はそういうことなんですが、少し敷衍して論理を述べますと、タクシーというのは、地域の公共交通機関として重要な役割を担っていることは御承知のとおりであります。しかしながら、タクシー事業に係る規制法である道路運送法において規定された規制権限というのは、すべて国土交通大臣に属しております。地方自治体が関与する余地は、ほとんどありません。その意味で、タクシー事業における地方分権は進んでいないと言わざるを得ないわけであります。

 今回、政府提出法案においても、ある地域が特定地域に指定されるべきかどうかについては、国土交通大臣が判断するスキームになっております。これでは、当該の特定地域に設置される協議会に参加する関係地方自治体を初めとする地域の関係者の姿勢も、おのずと受動的なものにならざるを得ないのではないかと危惧しているからであります。

 私どもとしては、地方自治体が実質的に関与できない現行のタクシー事業に係る法体系については、いずれ見直さなければ、住民の移動という重要な国民の権利における地方分権は進まないとの判断から、今回の野党四会派提案において、地域の実情に精通した地方自治体が能動的に特定地域の指定を要請することができるようにしました。

 このような措置を講ずることにより、その後設置される協議会、これが極めて重要な役割を果たすと私は考えております。その協議会につきましても、地域の関係者の積極的な関与が期待され、施策の実効性が向上するものと考えているからであります。

 以上です。

森本委員 御丁寧にありがとうございました。

 それでは、ごめんなさい、来ていただいて申しわけなかったんですけれども、ちょっと時間のある限り、国家財産の処分についてということで、全く違う話なんですが、実は、この問題についての今回のテーマは、河川の砂利採取について、堆積土砂の排除というところを、私はどうも、協会とか組合員の方に国の方が県を通じて委託されておるようなお話を聞いておるわけでありますが、その実態について簡単にお答えください。

甲村政府参考人 お答え申し上げます。

 河川におきます砂利採取でございますが、過去において、乱掘によって橋の橋脚が露出したり、あるいは川の護岸が壊れたり、あるいは海岸がどんどん減っていくということで、五年ごとに砂利採取規制計画を作成し、その範囲内で採取を認めております。その採取量は漸減させていっております。ただし、異常な出水によって土砂が堆積した場合はこの採取計画の範囲の外ということで認めております。

 実際、河川において砂利採取を希望する場合には、砂利採取業者は、砂利採取法第十六条に基づく採取計画の認可及び河川法二十五条における土石等の採取の許可を河川管理者から受ける必要がございます。おのおのの許可は、直轄区間については国、県管理区間については県が許可いたしまして、砂利採取料は、直轄区間も含めてすべて県に納受される仕組みでございます。

 それで、先生御指摘の組合の話でございますけれども、従来、砂利採取業者はその大半が中小零細業者であり、業界の健全な発展のためにも共同化は有効な対策となるということで、これまで共同化の促進を指導してきたところでございます。

 ただし、最近、よりオープンな制度を取り入れるべきというような傾向もございまして、先ほど申しました、異常な出水によって堆積した土砂を除去するような場合、採取業者を一定の条件のもとで広く公募し、業者を決定する方式を採用している事例もございます。

 国土交通省におきましても、河川整備の推進及び資源の有効利用の観点から、公募方式による適切な運用に向けて、現在、具体的な検討を進めている段階でございます。

森本委員 そうすると、うなずいていただくだけで結構でございますが、国の方では、採取量と金額をまとめたものは今ございますか。ない。ないんですね。

甲村政府参考人 砂利採取量について申しますと、平成十九年度、河川全体で約七百七十万立方メーターの採取でございます。

 金額の方は、ちょっと今、ございません。

森本委員 時間が参りましたから終わりますが、ここのところは、今から変えていくという答弁でございましたから、それで検討いただきたいと思うんですが、非常にアカウンタビリティー、説明責任がつきにくいような砂利採取、国家財産の処分というものについては、私は、より透明に、慎重にやっていただくことをお願い申し上げて、またこれは次回に、資料をいただきながら質疑をさせていただきます。

 少しオーバーしました。お許しください。

望月委員長 次に、後藤斎君。

後藤(斎)委員 民主党の後藤斎でございます。

 大臣、タクシーの問題に入る前に、ちょっと一点だけ確認をさせていただきたい点がございます。

 大臣、昨年から、緊急総合対策ということで、高速道路料金を平日深夜五割、休日昼間五割、いろいろな引き下げを行った上で、生活対策ということで、四月から休日上限千円等、いろいろな高速道路料金の値下げの仕組みをつくってまいりました。

 渋滞も非常に多発をし、フェリー会社は非常にマイナスの影響を受けている。いろいろなお話がありますが、まだ本格的な検証というのは、時間が十二分にたっていませんからできないものの、現時点でどのようなプラスマイナスが影響としてあるのか、簡潔で結構ですから、御答弁をお願いしたいと思います。

金井政府参考人 お答えいたします。

 特に休日上限千円につきましては、例えば、四国などで非常にキャンペーンをやっていただきまして、連携をした取り組みをしていただいたということもありまして、特に遠方の地域で非常にお客さん、観光客がふえ、地域の商店の売り上げが非常にふえたというようなプラス面をたくさん御報告いただいております。

 一方、御指摘のとおり、高速道路は、日取りの関係もございますが、昨年に比べますと大体倍の渋滞があったということでございまして、特に、物流の事業者の方々、それからバスの事業者の方々と、今後の渋滞対策の充実については調整に努めていかないといけないかなというふうに考えておるところでございます。

 それから、他の交通機関でございますが、これも、景気の後退やいろいろな要素がございますので、一概にはっきりとした数字はございませんが、例えば本四の高速と競合する航路などでは、土曜、日曜の乗用車輸送が少し減ったということもございまして、これらについては、フェリーの活性化に向けた支援策に取り組んでいるところでございます。

 いずれにせよ、景気であるとか、天候、日取り、いろいろな原因がございますが、今後の輸送動向を注視いたしまして、いわゆる総合交通の全体の体系から、必要に応じて対策を講じていく必要があるものというふうに考えておるところでございます。

後藤(斎)委員 そういう部分を踏まえて、大臣は先般、お盆や年末年始も高速道路料金引き下げかという御発言をしたというふうに報道で承知をしております。

 大臣、私は、三月の末、二十五日と四月一日のこの委員会で、少なくとも今の高速道路の引き下げのスキームというのは、株式会社が主体で最終的に判断をするという中で、いわゆる高速道路利便増進計画という仕組みを通じながら対応しているというふうに確認をし、先ほどお話をした昨年の緊急総合対策というのは、二十年度の二・五兆円を財源として、十年間、スマートインターチェンジの三千億も含めて財源手当てをし、さらには、生活対策の平日三割引き、休日上限千円、これについては五千億を追加投入し、三兆円の債務承継は既に三月二十四日で終わっているということを局長からも御答弁を明確にいただいて、新たな道路料金引き下げの財源はもう基本的にはないという前提で、四月一日に確認をしました。

 にもかかわらず、大臣が年末年始やお盆に引き下げができると言う根拠は、いわゆる財源論からいうと大変へんてこな理論であります。ただ、担当の方に御説明をいただいたところ、五千億の内訳、二・五兆円の十年間の、それを前倒ししたりいろいろな調整をしながら財源は捻出をしなければいけないというお話もありました。

 大臣というお立場の中で、確かに渋滞緩和という一つの目的はあるものの、やはりきちっとした実現性が、少なくとも四月一日に確認をした時点では、債務承継がすべて終わっていると。これはその時点でも確認をしましたが、この債務承継の期限は平成二十一年の三月三十一日ということに法定、明記がしてあります。

 その部分でも、例えば、新たな追加のお金を捻出して機構にお金を上げても、それは法律改正をしなければできないという前提の中で、大臣がなぜお盆や年末年始に料金引き下げをするというふうなことを御発言なさったのか、その真意について大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

金子国務大臣 お盆あるいは年末年始、前回のゴールデンウイークの経験にかんがみて、料金引き下げはいいんだけれども、一方で渋滞というものがある。特に、我が国の場合に、お盆あるいは年末年始というものについては、ある一時点に集中するということもありますので、考え方として、あるいはルールとしてといいますか、お盆あるいは年末年始はこうしようというようなことをあらかじめ対応できないだろうかという観点。

 ただ、これについては、今お話しいただいたような財源問題もあります。それから、物流、これを拡大することによって非常に渋滞等が、一分一秒を争うような物流を求められているようなところに対してどういう影響があるかということも考える必要があるよねということで、今検討してもらっております。

 そして、採算という面でいえば、既に入ってきている料金収入との、収入の中で考えてもらいたいということで道路会社に今投げかけておりまして、新たな財源を要するというものではありません。今ある収入の中で対応するということで考えております。

後藤(斎)委員 大臣、大臣の御発言はわからなくない部分もあるんですが、実は、これも三月の委員会で、私も含め、同僚議員からもETCの話もしました。

 これも結果的に言えば、高速道路交流推進財団が行った実績というのは、四輪車で百十五万台。そして、現在はそれがもう予算的になくなったということで、高速道路株式会社がETC普及促進策ということで、これは株式会社の財源だというふうにお伺いをしていますが、搭載価格については、財団が行うときには五千二百五十円でしたが、三千円、先着三千台ということで、当時もお話をしましたが、要するに、期間限定で、金額も違ってくる。これからの方にはその恩恵が適用できないということでは、やはり大臣、非常に不平等だと思うんです。

 それが今回、これからタクシーのお話をしますが、もちろん選挙も近いということで、いろいろな政策のあり方は各党自由ですし、大臣というお立場の中では、それが実現できるというお立場にあると思うんですが、では、なぜ、私たちが昨年の三月、四月に、一般財源化をいち早くしてそれをもっと違った形で使った方がいいという指摘に対して、そのとき、当時の冬柴大臣は、絶対できないということを繰り返して御発言をされました。

 私は、政策的にはそうではなくて、大臣がおっしゃるような部分も含めて言えば、今回のタクシーの問題もそうですが、やはり私たちが今、道路運送法の改正も含めて提案をしているものに真摯に与党も歩み寄り、政府側も大臣も含めて歩み寄る中で、今のこの厳しい状況にあるタクシー業界にきちっと手当てをする。それが、先ほどもお話しした財源というものが直接関係なければ、自主的な取り組みを進めるという仕組みをやはりこの委員会が中心になってつくらなければいけないという思いで、私も、自民党の福井理事と今まで協議をしてまいりました。

 なかなかハードルが、詰まらない部分も正直言ってあります。ですから、それは政府側の中でも、これから幾つか再度確認をさせていただく部分で、真摯にぜひお答えをいただきたいというふうに思います。

 大臣、冒頭、これは参考人の方にもせんだってお聞きしましたが、このタクシー事業というのは、要するに、消費者にとっても料金が上がってしまった、なおかつ、事業者の皆さん方も経営環境が厳しい、ドライバーの皆さん方は年々給与が下がって、現在は、全産業に比べれば六割の賃金しか得られないという、本当に三重苦の事業の仕組みになってしまいました。

 それについて、大臣が、十二年なのか八年なのかというのは期間は別としても、今までの政府の対応、今の法体系はやはり間違っていたんだという前提に立った上でこの閣法も含めて出していただいておると私は思いますが、やはりこの規制改革は行き過ぎたというふうなことで、まず冒頭、大臣から御見解を伺いながら、タクシー問題について質疑を始めたいと思います。

    〔委員長退席、中山(泰)委員長代理着席〕

金子国務大臣 蒸し返すつもりはありませんけれども、高速道路料金の話は決して、マスコミは選挙対策という話をされていますけれども、後藤委員ですからそんなことは思わない。やはり我が国のために、住民のためにどうするかということで、これはそんなけちな話ではないということをぜひ御理解いただきたいと思います。

 それから、まず、今、いろいろ閣法の修正議論をしていただいている後藤委員、福井委員、与野党ともどもにやっていただいておりまして、この議論を私たちも真剣に受けとめさせていただきたいということは、先ほど福井委員の答弁でも申し上げたとおりであります。

 本題に入りますけれども、規制緩和ということが土光臨調以来、各分野で進んでまいりました。このタクシーについても、土光臨調以来の結果が、平成八年、十二年、そして十四年から実施されたわけでありますが、この部分の、需要が実際に落ちている中で平成十四年にこの規制緩和がされたということをどう評価するかということについて言えば、需要が落ちているからこそ創意工夫をして参入を自由にして需要を拡大しようという意図も、当時あったんだと思います。

 しかし、経済の影響もあって、残念ながら、結果として、供給過剰地域、地域によっては供給過剰だけが先行し、需要がむしろ減少したまま、その結果として運転手さんの労働条件が悪くなるという構造的な問題を生じた。

 ただ、これは、必ずしも全国で全部起こっている現象とは思っておりません。むしろプラスになっている地域もあるということで、そういう意味で、今回の法案では、提出させていただいておりますとおり、供給過剰がまだ進行しているような地域について、地域を指定して供給過剰を抑制し、私も非常に大事に思っておりますのは、そういう場合に、運転手さんの労働条件をやはり改善していく、改善に向けていけるようにしていきたい、同時に、悪質の事業者を排除していけるようなものにしていきたいという基本的な考え方を持っておりまして、多くの点で衆法の御提出案と重なるところもあると思っております。

 それだけに、繰り返しますけれども、今、与野党における修正議論というものを私たちも見守らせていただいているという状況であります。

後藤(斎)委員 大臣にぜひお聞きをいただきたいのと、提出者の皆さん方にもぜひお聞きをいただきたいのは、タクシー事業を取り巻く環境は、ほかの産業にも実はございます。

 三十数年前から、我が国は、米の減反政策というのをしています。当時も、米の消費量が減少するという中で、ある意味では自主ルールだったかもしれませんが、減反をした。でも、ほかにつくるものがないということで、米から麦や野菜やほかのものに転作するときに補助金を出して、農家の所得、価格を支えながら需給調整をした。今でもそれをやっています。これからの米のあり方というものも、農業全体の中でなかなか先行きが見えないということであります。

 大臣が今お答えをいただいた中にもありますように、そこで価格と供給量が、これは需要がどんどんふえればいいんでしょうけれども、タクシーの歴史を見ると、ちょうど米の減反政策が始まったころの昭和四十年代の後半が、タクシー利用率というのが一番高かった、利用者が一番乗ったという時代だったというふうにも言われています。それがなぜこの需要が減少したのかということを、私はもう少し、政府の中でも、また交通政策審議会の中でも、もっと議論をして、それに対して、これからのあるべきいい仕組みというものをやはり考えていかねばいけないというものに立つ一人であります。

 大臣が最後におっしゃっていただいたように、私も、このまま閣法と衆法が並立した流れでいけば、マルかバツかしかない形でいえば、これは参議院にそのまま送付をし、また違った結果になって、では衆議院の議決を優先するのかという、これは、私は個人的にはあってはならないという立場に立っています。できるだけ歩み寄りができるところはし、ただし、根幹である部分はきちっと私たちの主張も通していただきながらまとめていくという作業を、この短い時間の中でようやくできるような環境に、今の大臣の御発言を聞くと、なったのかなと、細川先生もにこっとしてうなずいていますので、なったのかなと思いつつも、まだちょっとハードルが少しあるのかなという感じを持っています。

 順番は全然変わりますけれども、これは局長で結構です。局長が先ほど福井議員の質問に答えられて、これから運賃のガイドラインを詰めていきます、できるだけ我が党が考えている、野党が考えていることも含めて考えていきますという趣旨の御発言をしていました。

 であれば、そのベースになる法的根拠というものはどこに置いて、これからの運賃のガイドラインをきちっと詰めて、今の業界の置かれているマイナスの部分をプラスに転じていくきっかけにするのか、局長にお答えをいただきたいと思います。

本田政府参考人 お答え申し上げます。

 現時点で作業を開始しておりますガイドラインづくりにつきましては、現在の道路運送法の九条の三第二項三号に、他の事業者との間で不当な競争を引き起こすことがないという基準がございます。いわゆる不当競争防止条項でございますが、これを明確化し、かつ厳格な運用を図る、こういう見地から、今ガイドラインづくりをさせていただいておるところでございます。

後藤(斎)委員 であれば、局長、やはり私たちが提案をしておる、能率的な経営のもとで適正原価に適正利潤を加えるという形に統一をした中でやった方が、先ほど福井議員の質問に局長が答弁をされた部分により近い形でこれからのガイドラインがつくられて、法体系、ガイドライン、そしてそれが事業者の方にきちっと伝達をされ、それがひいては消費者利益にもなるということになりませんか。

本田政府参考人 現在着手しました前提といたしまして、まず、現在の道路運送法の運用におきましても、その運賃で収支が相償わないような運賃、その収入で原価を含めて収支が相償わない運賃につきましては、やはり問題がある運賃ということで、今認めていない運用をいたしております。

 交通政策審議会での御議論では、その基準だけでは不足しておるのではないか、先ほどの繰り返しになって恐縮でございますが、やはり単に収支が相償えばいいというだけではなくて、その運賃によって、例えば、違法な経営を背景としてその運賃が実現されているのではないか、あるいは、違法とは言わないまでも、不正、不当、例えば労働条件をいたずらに悪化したり、他の事業者の客をこちらへ向かせることだけを目的とするような運賃、そういったものについても明確な基準が要るのではないかということ、これが問題になったものですから、そういった視点で今議論をさせていただいております。

 現在御議論をいただいております九条の三、二項一号をどうするかという点については、これはまた委員会での御判断に従ってまいりたいと考えております。

後藤(斎)委員 ちょっと話を戻させていただきます。

 大臣、今、衆法と閣法で一番の違いは、今局長にお尋ねをした運賃部分をどう考えるかという点と、もう一つは、私たちは、道路運送法本体を修正しながら全国に適用していきたいという思いであります。

 ただし、特定地域を閣法の中でどういうふうに設定するかによって、今六百四十四営業区域がある、基本的にはこれごとに特定地域を決めていくという流れですよね、局長。それで、この特定地域の指定というものが、この法律の中では、特定地域を期間を定めて指定するという部分で、その条件として法律の中に明定してあるものは、供給過剰の状況、一台当たりの収入の状況、法令違反その他の不適正な運営の状況、事故の状況というふうなものに、輸送の安全及び利用者の利便の確保、地域公共交通としての機能を十分発揮できるというふうなことが、ある意味ではふわっと書いてありまして、昨年の七月十一日に、当時の冬柴大臣に、我が党も細川座長と私も含めて要望して、その後に緊急調整地域の延長、さらには特別監視地域の指定も含めて対応していただきました。

 このときに、この数がどうこうということもあるんですが、特定特別監視地域なんかは百を超える数になっておりますし、その部分で、今の局長たちがいろいろな数字を持っている中で、では、この特定地域なるものにどの程度指定ができていけるのか、現状でしなければいけないのかというのは、どの程度を想定されていますか。

本田政府参考人 今回の法案におきます特定地域自体は、まさに供給過剰が進行している地域ということで、先ほど先生がお示しになりました法案の各要素、これを具体的な指標に即して当てはめていくということになろうかと思います。その意味で、昨年七月十一日に、現在の運用として特定特別監視地域制度の拡充を図らせていただきましたが、その精神は基本的に同じであろうというふうに思っております。

 ちなみに、現在の特定特別監視地域制度の基準は、平成十三年、規制緩和の直前の年度に比べて日車営収、つまり、一日当たりの収入が落ちておりますとか、あるいは実車キロが落ちるという形で、端的に言えば収益基盤が悪化し、かつ、それが歩合制を通じて運転者の方々の労働条件の悪化につながっている、こういった地域を指定させていただいて、結果としてそれが百九になっておるということでございます。

 したがって、我々としては、それを基本的には参考にしたいと思っておりますし、なおかつ、昨年の指定のときには、その時点での直近のデータに基づいて行いました。今回、法を施行させていただきます場合には、また新たな数値によって当てはめてまいりますので、今ここで何地域ということは申し上げられませんが、考え方としては、同じような考え方に即して指定してまいりたいと考えております。

後藤(斎)委員 局長、そういう意味では、昨年、特定特別監視地域は百九地域で、六百四十四が営業区域ですから、大体二割弱であります。特別監視地域には五百三十七指定をしました。もし、五百三十七がこの特定地域になれば、ある意味では八割近くの営業区域がこの特措法の対象になっていくという理解でよろしいんですね。

本田政府参考人 現在の運用におきます特別監視地域自体は、直ちに供給過剰に対しての対策を打っておる地域ではございませんで、様子を見ているという地域です。その中から、供給過剰対策を現行の法が許す範囲で実施する、この地域が、特定特別監視地域という百九地域でございます。

後藤(斎)委員 ですから、この委員会でも同僚議員から話がありましたように、この半年間というのがさらに需要が急速に減少している。これはせんだっての参考人の質疑の中でも、富田参考人からも全乗連の会長というお立場の中でも同趣旨の発言がありました。そういう意味では、ある意味では厳しくなっている地域が多いという前提で法の仕組みはやはり考えていかなきゃいけないということを、古賀議員からもせんだって話があったところであります。

 そういう意味で、この閣法がこのままということは、当然私どもからいえばあり得ないわけでありますけれども、これがある意味ではベースになって物事の仕組みを考えていくという前提に仮に立てば、非常に厳しい地域は、特定特別監視地域が特定地域とイコールかどうかというのはまた別の話としても、やはりそれに準じた形できちっとした法の手当てができる、そして、きちっとした、少なくとも需給調整の機能が協議会の機能も通じながら発揮できるという立場に立って、これから議論を進めてもよろしいのかどうか、ちょっと確認をしたいと思います。

本田政府参考人 まず、全国の六百四十四の中から、しかも最新のデータに基づいて指定するということでございますので、地域数を今申し上げることはできませんけれども、地域数そのものに意味があるのではなくて、それに該当するそもそもの基準に該当すれば、これはやはり多くであれ少なくであれ指定は粛々とさせていただくということになります。

 なおかつ、指定をさせていただきますれば、この法律に基づくさまざまな対策を講ずる、特に中心的なものは、新規参入あるいは増車を抑制し、かつ減車を進める、こういうことになろうかと思います。

後藤(斎)委員 大臣、質問通告になくて、非常にベースの話ですから、ちょっとお答えをいただきたいのです。

 先ほどもちょっと御議論があったと思いますが、私たちはもう一方の観点で、運賃は後で触れますけれども、やはり地方の意見をきちっと踏まえた法体系にしたいという強い意思を持っています。

 協議会も、やはり地方の自治体も含めた、新たな需要拡大というものをどう考えるかというのは、先ほどのお米の話ではありませんけれども、いろいろな品種ができて、それを主食として食べるだけではなくて、例えばそれが飼料米にもできる、バイオのエネルギーにもできる、いろいろな需要拡大の努力を、これは事業者がメーンでやることかもしれませんが、やはり国や自治体も関与をしながらやっていかねばいけないというのが必ずあると私は思うんです。

 大臣は、新しいタクシー事業、特に協議会のあり方の中に、地方の声をきちっと聞くべきだという私たちの主張に対してはどのようにお考えでしょうか。

金子国務大臣 全く賛成であります。

 そういう皆様方の声は必ず入れてもらいたいと思います。

後藤(斎)委員 今ちょっと需要拡大の話に入りましたが、この間も富田参考人からも、事業者代表ということで、今いろいろなサービスをしているというふうに言っています。これは、事業者の皆さん方は、もちろんたくさんのお客様に乗っていただくという観点で、子供の子育ての部分とか福祉、いろいろな部分があります。

 多分、大臣や局長は公用車があって、タクシーには毎日ほとんど乗らない方のお一人かもしれませんが、去年、居酒屋タクシーで、国土交通省の使用も多分かなり減っていると思うんですけれども、やはり事業拡大をどうするかというベースがないと、どんな業界も何か頑張れないような感じがあるんです。幾ら仕組みを変えて法体系を変えたにしても、そこだけですべてが解決しない、後で運賃と賃金の話をしますけれども。

 私は、そういう中で、先ほども言った昭和四十年代の後半というのが一番利用者の方が多かったというのは、多分地下鉄も不十分だったし、いろいろな他の交通体系との利便性や、運賃が適正だったかどうかは別としても、やはりその拡大の努力というものをきちっとすべきだと。

 この間も公用車の話をどなたかがしましたけれども、公用車も国交省所管で四、五千台あって、それをこれから削減するというふうに国交省でおっしゃっています。それを例えば、すべてタクシーに切りかえるかどうかは別としても、そういう需要拡大の努力というものは、大臣、あってもよさそうだなというふうに思うんです。

 僕なんかは一日二回か三回、実は乗るんです、近いところですけれども。大臣は多分御存じだと思いますけれども、昔はチケットがあって、それを一万円で買うと一万一千円分あったんです。それが、二、三年前に一万円出したら一万円分しか買えなくなって、偽造の問題でこの三月で基本的になくなっちゃったんです。いつも現金を持ち歩く、カードというのは私余り持たないんですけれども、やはり、ある意味では、これは事業者の皆さん方も努力をしていかなきゃいけない部分があるんです。

 今、禁煙、禁煙ということで、私、それにこだわるつもりは別にないんですが、まあ、こだわっているんですけれども、ほとんど東京でも山梨でも、全部禁煙車なんです。一つの会社だけ、実は東京で発見をしまして、そこはたばこが吸えるところなんです。私は、五十円高くてもいいから、この辺にも吸いたい人が何人かいらっしゃいますけれども、五十円出してもいいと。

 いわばそういうサービスを、大臣がしろと言って事業者の方がするものではありませんが、やはりそういうことを審議会の中でもこれから考えてほしいと僕は思うし、なおかつ運賃の問題でも、では、新たに法体系を私たちの考えのようにしていったら、消費者利便が損なわれる、これはよく言われるワンコインタクシーがなくなってしまうというふうなことが指摘をされています。

 私は、そうではなくて、今、例えば二キロまでが七百十円、これは一律のルールで、山梨でも七百十円、東京でも七百十円。そうではなく、例えば一・五キロで五百円という新たにワンコインの仕組みを、運賃のガイドラインをつくるときに、そこまで縛ることはできませんけれども、そういう新たなメニューというものも、多分たくさんの事業者の方がきょうもお聞きになっていると思うので、そういうサービスをつくりながら、消費者利益にも私たちはきちっと配慮しているというスタンスを私は今でも持ち続けたいと思っていますし、これからもそうでなければ需要者はふえない、利用者はふえないという、まさに仕組みを変えただけで、悪循環はとまらないことになっちゃうんです。

 そうではないものを、ここまで厳しい経営環境になった事業者の方、ドライバーの皆さん、そして利用者の方も、何で六百六十円から七百十円になったんだと、当時は素朴な疑問があったはずなんです。だから、一時期、一週間か二週間は利用者が多分減ったと思うんです。今はそこそこフラットかもしれませんけれども、でも、景気が悪くなれば、またどすんと下がる。

 やはり、この繰り返しというものを、例えばJRや私鉄だと、地下鉄もそうですけれども、定期とか通学みたいなもので、何回もたくさん乗ると安いという運賃体系をとっています。それが、チケットのときには、東京なんかは個人も含めてほとんどそのチケットが使えた。いろいろサービスがなくなってしまったものが、正しいサービスであれば、やはりそれはやってもらいたいと僕は思うし、そういう中で需要がふえていくであろうという前提の中で、今回の法律改正が本当に生きる、運賃ガイドラインが生きるという仕組みにしていただきたいと僕は思うんですけれども、大臣、まずトータル的にどういうふうにお考えであるか、お聞かせください。

金子国務大臣 後藤委員から二つ御意見が出たな、消費者利益というのはちゃんと守れよ、消費者利便性というのは大事にしていくべきだよねと。やはり消費者あってのタクシー業界ですから、そのことを大事にしていく、これは一つの考え方であると思っております。もう一つは、これにこたえるために需要をどうやってつくってくれるかという、これは事業者の皆様方の対応、まだまだ分野があると思います。

 それから、最近の事業者もかなりいろいろな工夫をされているな、割引チケットはないかもしれませんけれども、カードにしてICを入れて、それを入れれば、その人がだれのだれべえというのがわかって、自宅までがナビゲーションに入るとかというふうなこと、言ってみればマイタクシーみたいなもの、酔っぱらって、黙っていても、乗った瞬間寝ちゃっても、自分の自宅まで届けてくれる。これは、居酒屋タクシーを評価するわけじゃありませんけれども、やはり疲れ切っちゃって、乗った瞬間寝ちゃって、自分のうちまで届けてくれるなんというのは、ある意味、消費者にとっては非常に利便性のある、居酒屋タクシーがいいということじゃありませんけれども、そういういわばマイタクシー。

 それからもう一つは、最近、なぜ業界の皆さんはやってくれないんだと思いますのが、介護タクシーですよね。介護タクシーは圧倒的に不足していると思いますよ。病院に年寄りを、あるいは施設に年寄りを搬送する、車いすに乗ったまま搬入できるタクシーというのは極めてまだ限定的だろうな、こういう部分はもっともっと伸ばしていってもいい部分だろうなと。

 あるいは、地方に行きますと、代行というのがあるんですけれども、ある意味、乗り合いタクシー、どなたか委員の方が、北海道だったと思いますけれども、言われていましたけれども、ある路線のところは普通のバスのような停留所を決めて乗り合いで行って、そしてそこから先は完全に個人の家に送るといったような乗り合いタクシー形態とか、こういったようなものを、需要をやはりどんどんつくっていただくということはやっていただきたいと思いますし、特定地域になったところ、地域指定されたところこそ、そういう新たな計画というものをおつくりいただく、それで需要がふえていくということが一方で消費者利便にもつながってくる。

 ただ、その際、過当競争で運転手の賃金が下がってしまうということを起こさないような仕組みで今申し上げたことができるようにしていくのが、今回一番大事だと思っております。

後藤(斎)委員 局長にも細かくお尋ねをしたいんですが、ちょっと時間があれですけれども、私はこう思うんですね、大臣。これは、私も、先ほどお話ししたように、何とかこの法案をいい形でまとめ上げていきたいというふうに思っています。その際には、やはり消費者の人に何でこんなことをしたんだというふうに言われないような形にしていくことが一番大切な部分だと思います。

 これは、一時期、例えば、まずかろう悪かろうみたいなお米をつくる人と、おいしいお米をつくる人と同一の値段だった時期が、いわゆる政府米のときにもありました。一等、二等、三等という形で級であれして、その中では、ある意味では努力もしなくていい。

 そうではないというものをきちっと私たちは示さなければいけないし、やはり利用者というのはある意味では、よくこのタクシーについて言われるのは、同じタクシーの運転手さんとなかなかダブるということはないわけですね、よっぽど待っていてくれと言わない限り。そういう中での、よく何か経済学用語で非対称性というふうに言っていますけれども、そんな難しいことを言ってもわからなくて、タクシー業界が大きな財源投入がなくきちっと再生できる法体系の仕組みにできるかどうかというのは、ある意味では、先ほどお話しした、行き過ぎた、規制の緩和をし過ぎた、それをどう是正するかという大きな象徴だというふうにも、大臣、私は思っているんです。

 あわせて言えば、アメリカはそれを堂々と今、完全な金融至上主義、先ほども新自由主義というようなお話がありましたが、少なくとも、政権が交代をした中で、ゼネラル・モーターズがガバメント・モーターズという国営企業に衣がわりをせざるを得ないようなところまで行ってしまいました。

 私は、決してそれは正しいやり方だとは思いませんし、そうならないように法律や仕組みをどう変えていって、事業者や関係の皆さん方が切磋琢磨をしていただく、そのベースの土台だけはやはりつくっていくというのが私たちの与えられた役割だというふうに強く思っています。

 ですから、私は、この法体系のこれからのあるべき姿というのは、先ほど、特定地域というのはどうなりますかというときに、基本的には、非常にルールに合った形で、困っているところについてはきちっとした需給調整の機能も入っていくという部分の確認を改めて局長に一点したいのと、あわせて、運賃の問題でいえば、私たちが提案をしている、能率的な経営のもとで適正原価に適正利潤を加えたものがあった方がよりガイドラインがきちっと運営できるという二点について、明確に答弁を求めたいと思います。

本田政府参考人 まず、本法案におきます特定地域、これは、まさに供給過剰の進行によって、その地域の運転者の方々の労働条件が現に悪化しているといったような地域でありますから、供給過剰問題をちゃんと解消するというのが本法律の目的でございます。したがって、新規参入あるいは増車は原則として認めない、場合によっては減車を促進するといった措置を的確に講じていく必要があると考えております。

 それから、運賃問題に関しては、繰り返しになりますけれども、九条の三の二項の一号、これについて、「適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えない」という、「超えない」という部分をどう取り扱っていただくかにつきましては、まさに当委員会での御審議、これを拝聴しながら対応してまいりたいと思いますが、やはり一番大事なのは、過度な運賃競争で弊害が生じている場合に、それに対してきっちり対応していくことでありまして、その点については私どももちゃんと対応してまいりたい、かように考えております。

後藤(斎)委員 法案提出者には次にお尋ねしますが、一点、局長、確認したいのは、先ほどちょっと指摘をした、現行の運賃体系の中でも、例えば一・五キロなのか一・二キロなのかわかりませんが、それ以内は例えば五百円からみたいなワンコインタクシーというのは、例えば東京でも誕生することになりますか。

本田政府参考人 二点、ちょっと申し上げたいと思います。

 いわゆる初乗りの運賃につきましては、それを例えば二キロなら二キロにして七百円にするのか、あるいは、まさに先生がおっしゃった、それを短くして初乗りは例えば五百円にする、これはいろいろな選択肢があります。

 たしか名古屋だったと思いますが、今回の運賃改定では、全体としては増収を図りますが、おっしゃいましたとおり、初乗りの距離を縮めて、初乗り運賃についてはむしろ下げるといったような判断をされている地域もございます。

 次に、初乗りの距離がA社とB社で違ってくる、したがって、最初乗ったときは安いけれども、実はすぐ高くなってしまって、それで運賃が結果で見ると初乗りは安いのに高くなってしまう、これは消費者から見ると非常に混乱を招きますので、やはり距離と運賃の関係につきましては、初乗りが安いのであれば、その後も安くなっていくといったような整合性は要るように思います。

後藤(斎)委員 実際の運賃設定の難しい部分はあると思いますけれども、これは、局長、この閣法がいろいろな修正を加えた中でもスタートができるという状況になれば、ある意味では、消費者の方にもやはり新しい法律の形、仕組みの形というものを改めてきちっと周知していくことが非常に大切だと思います。今のような形で対応ができるのか。消費者の方に、今よりも利便性も高まるのであろうなという期待を持っていただくことは、当然、やはり大前提だと思うんです。

 この法律の中で言う消費者利益というのは、私は個人的に利用者の立場からいうと、きちっとした運賃できちっとしたところに連れていってもらう、大臣が言ったように、寝ていても自分のうちまで連れていってもらうことも含めてかもしれませんが、そういう安心感も含めて、やはり安全な形で移動ができるということの基本は変わらない中で、よりプラスに転じるんだというふうな周知というのはこれから非常にもっと大切になるというふうに思うんです。

 その点については、総括で結構ですから、個別には結構ですから、今回改正した中でどういうふうに周知をしていくべきなのか、ちょっとその点について、簡潔で結構ですから、教えてください。

本田政府参考人 本法案、あるいはそれ以外の運賃問題に関しての対策も、やはり消費者に支持されて、できれば需要が拡大する方向で問題が解決していくことが望ましいと我々も考えております。

 その意味では、まさに消費者の方々に今回の対策全般について御説明し御理解をいただく、そういった機会、これはあらゆる機会を通じて我々も努力してまいりますし、とりわけ特定地域については、住民の方々にも参画していただきますので、より以上に今回の制度あるいはその必要性について御説明、周知を図ってまいりたいと考えております。

後藤(斎)委員 今回、この法案を政府側でも私たち野党でも議論し始めた一つの大きな問題意識は、最低賃金法違反の事例が多発をし、イコール、そこでドライバーの皆さん方の給与が下げどまらないというふうな問題意識も大前提でありました。

 なぜ、一七%を超えるこのタクシー事業の最低賃金割れという違法状況が現在あるのか、政府側に簡潔に御答弁いただいた上で、法案提出者に、この衆法で提出している道路運送法を改正すればそれが是正できていくのかどうかというのを、それぞれ、端的で結構ですから、御答弁をお願いします。

本田政府参考人 まず、最低賃金割れという、まさに違法状態だと考えておりますが、これが発生する背景、理由についてであります。

 これはやはり、地域によっての問題かもしれませんが、長期的に輸送需要が低迷する、総収入が減る中で車両数が増加する、そういった供給過剰であったり、あるいは過度な運賃競争によって車両一台当たりの営業収入が減少する。

 タクシーの場合には、再三御説明しておりますとおり、運転者の方々の賃金は歩合制ということでありますので、一台当たりの収入が減ればやはり一人当たりの賃金が低下する。それがどんどん悪化することによって、まさに法で定められた最低賃金も割るというような事態が出てしまう、こういうことであろうかと思います。

三日月議員 やっと質問をしていただきまして、ありがとうございます。

 まず、最低賃金違反率、これが大きく増加しています。二〇〇二年には監査したうちの六・六%であったものが、今、後藤委員の指摘されたように、二〇〇七年には一七%を超えている。かつ、重要なのは、全産業、他の産業は大体二%前後で最賃違反率、これもないことが一番いいのでありますけれども、二%前後で推移しているにもかかわらず、このタクシー業界は一七%を超えるという、看過できない極めて重大な問題を発生させています。

 過日、参考人の質疑の中にもありました。不況の問題もあります。そして、今局長から答弁があったように、タクシー業界ならではの歩合制の問題とか、そういう特有の構造もあります。賃金ですから、労使の問題でもあるでしょう。かつ、労働法制に基づく厳しい監督も必要だと思います。

 しかし、最賃法違反というのは違反なんです、違法なんです、あかんもんはあかんのです。したがって、そういう観点に立った立法措置というものがまず必要であろうと。

 私たちは、この最賃割れというものを是正するためにも、現行の上限認可制というものを廃止して、これは、原価の中で七割を超えると言われている人件費を含め、原価というものを適正なものに定め、かつ、それに適正な利潤を加えたもので運賃を設定し、その運賃に限り認可していくということを明確にしていくことによって、地域の実情に応じて決められた一定の運賃・料金の幅を下回る、または上回るものも含めてですけれども、徹底的に排除していくように制度の運用をつくっていきたいというふうに思っています。

 あと一点、現行法のこれは第九条の三、二項の三号、不当な競争云々かんぬんという、現行法に基づくガイドラインでこの問題に対処しようというような方向性も今打ち出されておりますけれども、現行法でできているんだったら今もできるんです。できていないから問題になっているんです。

 したがって、その前段にあります九条の三、二項の第一号、適正な原価に適正な利潤を超えないという、やはりここを変えないガイドラインは意味を持たないということについて、だんだん政府も与党も野党も共通認識を持てるようになってきましたので、その措置をぜひつくっていきたいというふうに思っています。

 以上です。

後藤(斎)委員 時間が何かなくなってきましたので、衆法提出者にはあと一問しか聞けないかもしれません。

 今、三日月提出者からあって、私も、やはり、もし現行法の中でできるのであれば、ガイドラインだけでもっと前に今の状況でない形が出現しているというふうに思っています。だからこそ私たちは、一年以上かけて議論をし、今の部分が最善だということで対応していますが、やはりここはいろいろな意味で、冒頭申し上げたように、どんな形であるかは別として、きちっと大前提を置きながら歩み寄っていくことが必要だと。二つの馬車がずっと走り続けることは、そろそろ一頭立てにして、少しずうたいが大きい形にしながら一つの馬車になるように、私もこれから努力したいと思います。

 最後に、局長と提出者にちょっとお尋ねをしたいんですが、違法状況をこれからなくしていく、特に最低賃金法違反である事業者、これはある意味ではイコール悪質事業者だというふうに思いますし、あわせて運賃についても、これから、新たな需要拡大や、供給過剰の状況を是正するためには、やはり監査や、それをきちっとした協議会の中でまとめ上げていくということがこれからさらに大切になってくるというふうに思います。

 そういう意味で、現状の監査体制について、どのようになっておるのか、政府側にお尋ねしたいのと、政府側で、これから地域協議会がプラスアルファの業務として実施主体になっていく中で、新たに人的、財政的な追加の負担をどうしたいのかということと、あわせて衆法提出者に、やはり監査体制がきちっとしなければ、幾ら法体系を正していっても実効面では難しい部分が出てくるという点についてはどのように考えておられるのか、時間がないので、それぞれ簡潔に御答弁をお願いします。

    〔中山(泰)委員長代理退席、委員長着席〕

本田政府参考人 まず、監査体制の現状でございますが、規制緩和が行われました平成十四年当時、私どもの現場の運輸局あるいは運輸支局の監査担当要員は百八名でございました。これが今年度末二百五十八名体制ということでありますけれども、正直まだまだ不足していると思います。厳しい定員事情ではございますけれども、この充実は今後とも図ってまいりたいと思います。

 かつ、今回の答申の中でも、悪質事業者をどう排除していくかということは大変大きな課題にされております。単に監査要員を増強するだけではなく、やはり効果をより発揮できるようなめり張りのある監査でありますとか、先ほどの最低賃金などについては、三年ぐらい前から厚生労働省の方との連携を強めておりますけれども、関係省庁との連携の強化でありますとか、あるいは、やはり、問題のありました場合にはそれに対しての行政処分の強化、とりわけ、労働関係法令違反に対する処分の強化、こういったことをあわせてやることによって、監査の効率化、それから実効性を高めてまいりたい、こう考えております。

日森議員 質問通告はございませんでしたが、お答えをしたいと思います。

 監査体制の強化というのは全くおっしゃるとおりで、若干人数もふえているようですけれども、さらに権限とかあるいはチェック体制をもっとしっかりしていかなきゃいかぬというふうに思います。

 とりわけ、タクシー労働者の労働条件の問題というのは極めて重要な問題で、私ども、これ以上労働条件の悪化が続いていくことになれば、タクシー産業自体が崩壊しかねないというぐらいの危機感を持っているわけです。そういう意味では、ここを全面的に改善するための措置というのが当然必要になるというふうに考えているわけです。

 参考人の意見の中でも議論がありましたけれども、例えば累進歩合制の問題、完全歩合というのもありまして、これは何としても改善をしていかなきゃいけないと思いますし、賃金の一定部分を固定給にしていくとかいう問題も、当然、喫緊の課題になっているんだというふうに思います。

 それから、労働時間が非常に長くなっている。これは運転者負担の問題などがあって、これと関連して、労働時間が極めて長いということなどについても、労働時間規制を遵守させる。これは安全運行に直接かかわっていくわけですから、そのためにも、運行記録計を全国一律設置していくとかいう具体的な措置を通じて、賃金だとかあるいは労働時間を中心とした労働条件の改善を図るということで、当然、国土交通省自身も積極的に関知をしていかなければいけないというふうに思います。

 同時に、事業者の側も、労務管理のあり方等についても再検討してもらう。本当に、安全運行、そして、タクシー労働者がきちんと暮らしていけるような賃金体系をやっていくことが、実は業界の発展にもつながるんだというプラス思考で考えていくような、そういう環境をぜひ、この法律を変えること、特に衆法を通すことで実現していきたいというふうに思います。

 以上です。

後藤(斎)委員 時間が過ぎましたので終わりますけれども、私は、全国の四十七都道府県で個人タクシーがない三県のうちの一県の出身者であります。そういう意味でもタクシー業界というのは関係者はそんなに多くないんですが、この一年間に全国の多くの皆さん方から、何とか今の現状を解決しろという強い要望も含めて、冒頭申し上げたように、何とか成案を得ながらよりよい制度づくりができるように、与党の関係者の皆さん、また政府におかれましても、柔軟な姿勢で臨んでいただけますように最後に心からお願いをして、衆法提出者の皆さん方には十二分な質問ができませんでした、また来週たくさんやらせてもらいますので、どうぞよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

望月委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十二分散会


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