衆議院

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第23号 平成21年6月9日(火曜日)

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平成二十一年六月九日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 望月 義夫君

   理事 奥野 信亮君 理事 菅原 一秀君

   理事 中山 泰秀君 理事 福井  照君

   理事 山本 公一君 理事 川内 博史君

   理事 後藤  斎君 理事 上田  勇君

      赤池 誠章君    泉原 保二君

      稲葉 大和君    江崎 鐵磨君

      小里 泰弘君    大塚 高司君

      太田 誠一君    岡部 英明君

      亀岡 偉民君    木村  勉君

      北村 茂男君    佐田玄一郎君

      七条  明君    島村 宜伸君

      杉田 元司君    長島 忠美君

      西銘恒三郎君    原田 憲治君

      藤井 勇治君    藤田 幹雄君

      松本 文明君    盛山 正仁君

      吉田六左エ門君    若宮 健嗣君

      石川 知裕君    石関 貴史君

      小宮山泰子君    古賀 一成君

      高木 義明君    長安  豊君

      三日月大造君    森本 哲生君

      鷲尾英一郎君    高木 陽介君

      谷口 和史君    穀田 恵二君

      下地 幹郎君

    …………………………………

   議員           細川 律夫君

   議員           三日月大造君

   議員           穀田 恵二君

   議員           下地 幹郎君

   国土交通大臣       金子 一義君

   国土交通副大臣      加納 時男君

   国土交通大臣政務官    谷口 和史君

   国土交通大臣政務官    西銘恒三郎君

   政府参考人

   (内閣府規制改革推進室長)            私市 光生君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局長)      舟橋 和幸君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 宮島 守男君

   政府参考人

   (総務省人事・恩給局次長)            笹島 誉行君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           渡延  忠君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           大下 政司君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  金井 道夫君

   政府参考人

   (国土交通省自動車交通局長)           本田  勝君

   政府参考人

   (観光庁長官)      本保 芳明君

   国土交通委員会専門員   石澤 和範君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月九日

 辞任         補欠選任

  稲葉 大和君     木村  勉君

  小里 泰弘君     藤田 幹雄君

  鷲尾英一郎君     石関 貴史君

  亀井 静香君     下地 幹郎君

同日

 辞任         補欠選任

  木村  勉君     稲葉 大和君

  藤田 幹雄君     小里 泰弘君

  石関 貴史君     鷲尾英一郎君

  下地 幹郎君     亀井 静香君

    ―――――――――――――

六月九日

 港則法及び海上交通安全法の一部を改正する法律案(内閣提出第二六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法案(内閣提出第二七号)

 道路運送法の一部を改正する法律案(細川律夫君外四名提出、衆法第二八号)

 特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法案(細川律夫君外四名提出、衆法第二九号)


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     ――――◇―――――

望月委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法案、細川律夫君外四名提出、道路運送法の一部を改正する法律案及び細川律夫君外四名提出、特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省道路局長金井道夫君、自動車交通局長本田勝君、観光庁長官本保芳明君、内閣府規制改革推進室長私市光生君、公正取引委員会事務総局経済取引局長舟橋和幸君、総務省大臣官房審議官宮島守男君、総務省人事・恩給局次長笹島誉行君、厚生労働省大臣官房審議官渡延忠君及び経済産業省大臣官房審議官大下政司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

望月委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

望月委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福井照君。

福井委員 おはようございます。自由民主党の福井照でございます。

 今回、閣法、タクシー適正化・活性化法案、そして、衆法、道路運送法改正案、タクシー適正化・活性化法案を出していただきまして、真摯にこの委員会で議論を重ねていただきました。そしてまた、修正につきましても、本当に真摯に、与野党の先生方に御参加を賜り、御指導を賜り、大団円を迎えつつある状況にまで御努力をいただきましたこと、この席をおかりいたしまして厚く御礼を申し上げたいと思います。

 その修正協議の中で議論の焦点となっているところについて、まず、将来の、議事録に残すという意味で、これから少し御紹介をさせていただきたいと思います。

 一番焦点となりましたのは、衆法で道路運送法が提出をされました。閣法は、タクシーの法律だけでございます。衆法提出者の皆様方の思いは、今回、タクシー適正化法案だけじゃなくて、道路運送法の根本原則にまで立ち戻って修正を、改正をしなければならない。特に、運賃の問題について基本的なプリンシプルを変更しなければならないというのが、衆法提出者のお気持ちでございました。

 一方、参考人の質疑でもございましたように、まだそこまでは立ち入らない、少し時間をかけて議論して、そして、道路運送法の基本原則を改正すべきは改正する、修正すべきは修正するということで考えているんだけれども、今回は、まず第一歩を踏み出すという意味でタクシーの適正化法案を提出し、そして、今後とも、与野党でも、政府の審議会でも議論を重ねていくということでございました。

 もし、この今焦点となっております修正ができましたら、前代未聞、およそ明治以来の、日本の法制度始まって以来の修正になります。といいますのは、もしこのタクシー適正化法案の法律の中に道路運送法の改正を盛り込むということになれば、将来、五十年後、百年後、法律を勉強している方がずっと勉強して、突然、このタクシーの法律の中に、道路運送法の基本プリンシプルを変更する、改正する、修正するという条項が出てきますとびっくりされるわけでございまして、きょうの野党の先生方の質疑も含めて、この議事録を読んで、ああ、そうだったのかというふうに思っていただければ幸いでございます。

 といいますのは、条項は別としまして、道路運送法の中に、運賃につきましてはコストと利潤を加えたものを超えないものとするというプリンシプルがございますけれども、超えないものとするというふうに上から押さえつけるから、運転手さんが困っているんだ、経営者が困っているんだということなので、超えないものとするという字がデリートされたら、下から持ち上がる。上から押さえつけるのじゃなくて、下から持ち上がって、すべて適正な経営状況になる、そして運転手さんの生活も楽になる、そういうことでございまして、我々としても、参考人質疑も踏まえて、与野党の質疑も踏まえて、なるほど、それは傾聴に値するなということで、今、修正協議に当たらせていただいているところでございます。

 しかし、先ほど言いましたように、タクシーの特別な法律、道路運送法はあまねく陸上交通にかかわる基本的な考え方を示したもの、その特別な法律が基本の法律を改正するということについては、前代未聞、明治以来、法制度始まって以来なので、ここで時代認識、なぜそうしなければならないのか、どういう気持ちでそうしなければならないのかということについて、ちょっと御紹介をさせていただきたいと思います。

 まず、どうして内閣法制局とか政府とかがこの道路運送法まで立ち戻り得なかったのかということにつきましては、これはもう行政の常識でございまして、法治国家ですから、法律で権利を制限されるとか、義務を課せられるとか、罰を与えられるとかいうことですから、およそ法律たるものは、システムがかっちりしていて、そして矛盾なく、いかなるクレームにも堅牢なものでなければならないということですから、いわば品格を持って体系的に整備されている。今の法律はすべてそうなっているわけですけれども、いわば特別なものから基本に戻るということがあれば、それはだから、びっくりするわけでございます。

 今回、与野党でやはり修正協議がなされまして、消費者庁の設置法案がなされました。今までの行政ののりを越えて、そして、今までの国会審議の結果としての法案修正ののりを越えて、何とかそこにまで持っていきたいというふうに私たちが思っている、この委員会全体で思っているということの歴史認識を考えてみますと、いろいろあると思いますけれども、消費者行政が消費者庁設置ということで一歩踏み出した、この国会がその象徴だったということで、タクシーも一歩踏み出すということもあると思います。

 それから、規制緩和のありとあらゆる分野で行き過ぎを修正するということで、政府系の銀行も民営化を少し見直すとか、あるいは道路公団も見直すとか、郵政もいろいろな議論がございますけれども、規制緩和の行き過ぎを見直すという象徴的な国会だったということもあろうかと思いますし、それから、世界同時大恐慌で、雇用と賃金について、その議論がフォーカスをされている。そういう意味で、運転手さんの賃金について特に御議論があったので、のりを越えた修正が必要なんだということだと思います。

 ちょっと話が飛びますけれども、たまたま五年前の厚生労働委員会の委員だったときに、まさに、障害者の自立支援法、議決をしました。法案を若干は修正したんですけれども、可決するときに、国会議事堂を障害者の皆さん方、支援者の皆さん方が取り囲むようにして、この障害者自立支援法は足らざる部分があるということだったんですけれども、ほとんど閣法のまま可決をしてしまいまして、今回、大幅な修正をいたしました。五年かかったわけでございます。

 やはり今回も、タクシーの経営者の皆さん方、運転手さんの皆さん方、閣法のみなら足らざる部分があるということで、この二カ月ぐらい大運動もしていただきました。当時の障害者の皆さん方、支援していただいている皆さん方も、本当に大運動をしていただきました。やはり、そういう国民の声というのは傾聴しなければならない。何が足らないのか、何が不足しているのかということについて、国会として、ローメーカーとして、真摯に問題を直視しなければならないというのは、反省点としてあったと思います。

 ですから、その修正するまでの五年間、障害者の皆さん方が、支援するお金が少なくて、いわば苦しまれたわけでございまして、そういうこともなく、もし、あのとき、障害者自立支援法のあの国会で、今回の国土交通委員会のように、みずから国会で、時間を圧縮して修正するということになれば、後々障害者の皆さん方がお苦しみにならないで済んだということでございます。

 今回は、たまたま、本会議で趣旨説明が行われてから二カ月ありましたので、時間を圧縮して、政府がおっしゃるように五年後に見直すんだということではなくて、この国会中に、この委員会の審議の最中に、アプリオリに、五年後の修正を少しでもいいから運賃に関してはするということを、今、修正協議をさせていただいているところでございます。

 いろいろな意味があると思いますけれども、もっと大きな意味は、規制と誘導というのが行政のツールでございますけれども、誘導というのは、ほとんど経済、マネータームでしか今のところないと思います。例えば、税金を減免するとか補助金をふやすとか、あるいは容積率、建ぺい率でおまけを与えるとか、そういうことでいろいろな施策を誘導するということがございます。一方、規制もございますけれども。

 今回の法律の修正、結果としての意味は、今までの行政のツールを超えて、今までの行政ツールというのは、マネータームであり、いわば左の脳、左脳、理屈であり理論にすぎなかったんですけれども、今回は、それだけ、先ほど言いました障害者自立支援法のときの反省、そして、今回の経営者、運転手さん、およそタクシーのサービスにかかわる全員が参加をして私たちに訴えていただいた。この心をもって私たちが反応しなければならないのは、右脳に訴える、理性だけじゃなくて情緒、感情に訴える、そういう法律というのもやはり考えなければならなかったんだということでございます。

 プロシア以来の法治国家というのは、そういうことを一切無視してあったわけでございますから、理性だけじゃなくて、右脳に、情緒に、つまりやる気になってもらう、そういう法律もあってもよかったんじゃないか。今からは、そういう法律体系というのも考えるべきじゃないか。

 前回、エクイティーという言葉を御紹介しました。やはり、時代が変わる、環境が変わると物差しが一個ふえるということの象徴でございます。そのエクイティーというのが、今回の法律の、右脳に訴える、やる気になってもらうという、その修正協議が象徴なんだということで、今、議事録に向かってしゃべっているんですけれども、後世の方、ぜひ御理解をいただきたいというふうに思います。

 だから、何が問題かというと、今後の課題は、やる気になってもらうということなんです。きょうもたくさん傍聴していただきましたけれども、タクシーの業界の皆さん、経営者の皆さん、そして運転手の皆さんが、消費者に、お客様に、いかにサービスを磨いて満足していただいて、そして社会に貢献していただくかということがキーで、それがなければ今回の修正協議は何の意味もないわけでございます。というのは、やる気になってもらうということが目的だからでございます。

 そこで、ちょっと前置きが長くなりましたけれども、第一問で局長に質問させていただきますけれども……(発言する者あり)茶々を入れないように。

 タクシーの消費者支持、利用者に評価されるサービス、利用者をふやす努力、そして何よりも社会に貢献する努力、このタクシー業界全般のインセンティブ、やる気ですね。マネータームだけじゃなくて、ノンマネータームのやる気をいかに業界として出していただくかというのは、局長はお答えする立場にないんですけれども、それも含めて、行政として、業界自体として、そして行政、業界の連携として、今後どのようにやっていく決意があるか、ちょっとその決意を御紹介いただきたいと思います。

本田政府参考人 お答え申し上げます。

 利用者サービスの向上という問題に対しては、タクシー業界におきましても、これまでさまざまな対策を講じてまいりました。また、それに対して、国としても必要な支援を行ってまいりましたが、残念ながら、こうした取り組みはいまだ個々の事業者の方々のレベルにとどまっており、地域を支える重要な公共交通機関という位置づけの中でのサービスレベルの問題については十分ではないという認識を持っております。

 交通政策審議会の答申におきましても、タクシー事業をめぐる諸問題の一つとして、利用者サービスが不十分という指摘がなされております。答申で指摘されておりますとおり、タクシー事業をめぐる諸問題の原因の中で最も基本的な原因であるタクシーの輸送人員の減少に対処し、需要を拡大していくためには、やはり、事業者御自身が、地域を支える重要な公共交通機関としての自覚のもとに、利用者のニーズに合致したサービスを提供していただくことが重要であり、これに対して我々も強力な支援をしてまいりたい、かように考えております。

福井委員 しっかり、国民総ぐるみ、国家総動員体制でお願いをしたいというふうに思います。

 それで、再びまた、業界、業行政といいましょうか、業界そのものの皆さん方の自己努力、自己再生へのお取り組みが必要だと思いますけれども、前回もございました、いわば秩序を守らない、ちょっとお行儀の悪い方もいらっしゃるということも現実としてあると思います。

 ちょっとまた話がかわりますけれども、黄金律というのがございまして、黄金律というのは、なんじの欲せざるところ人に施すことなかれというのが黄金律、ゴールデンルールということですけれども、それだと自分の都合から発想がスタートするので、新しい黄金律というのがございます。

 新しい黄金律というのは、自分と社会との関係においていわば決まりをするということです。つまり、あなたが社会全体からリスペクトされたいと思うぐらい、その程度あるいはそれ以上に、社会全体に対してリスペクトしなさいと。だから、あなたは、社会に対して、あなたの自律を尊重し支持してほしいと願うように、社会全体の道徳、秩序を尊重し、支持するようにというのが新しい黄金律というもので、いわばコミュニタリアンという新しい政治の思想にもつながっているわけです。そちらの方はどうでもいいんですけれども。

 つまり、業界の方も、何回も言いますけれども、やはり社会全体に対していかに貢献するかということが、先ほど言いました、もし修正協議が成りましたら、私たち委員会の総意として、タクシー業界が、私たちも、法律も支援する、国民全体も支援するけれども、だけれども、タクシー業界、そして運転手の皆さん方、サービスを提供するすべての皆さん方が、社会にいかに貢献するか、社会に対していかにリスペクトをささげるかというのが一番キーになるわけで、しつこいですけれども、そこが本当に今回の話の出口、いかに業界の皆さん方が頑張るかというのがこれからのキーになりますので。

 また、業界自体あるいは行政自体、そして業界と行政との連携について、節度ある対応についてどういうふうに考えているか、局長の方から御説明をいただきたいと思います。

本田政府参考人 タクシー事業は、営業である限り、基本的には個々の事業者の方々の経営判断というものが尊重されると考えております。ただ、今先生がおっしゃいましたとおり、その地域の全体のタクシー事業として、その地域の公共交通を支える重要な役割を果たしており、かつ、その地域の住民を初めとする利用者の方々からさまざまな要請が参っておるわけであります。

 ぜひ、事業者団体を通ずるなどして、そうした要請に対してタクシー業界一丸となって対応していただきたい、かように考えておりますし、我々もそれを促して、かつ支援してまいりたいと考えております。

福井委員 ありがとうございました。

 前回も少し入り口をお伺いしましたけれども、ガイドラインについてもう一度、それこそ議事録にさん然と輝く御答弁をお願いしたいわけです。

 我々の方は、最初は、このガイドラインで話の出口が定まって、もうそれでオーケーなんだ、すべてこのガイドラインで業界の方も御協力をいただく、そして法律もそれで満足だということだったんですけれども、先ほどからずっと、るる御説明しているとおり、道路運送法の基本プリンシプルまで立ち戻って法案修正をしなければ、やはり業界の皆さん方のやる気も、そして実行も、それぞれの地域においてのお話し合いも実効あらしめられないということでございました。

 どうして、このガイドラインの中身について皆さん方から信用されなかったのか。それは、役所のガイドラインの議論の腰が定まっていないからなのか、行政指導の峻厳さといいましょうか、今までの、それぞれ地域地域の、いわば運輸行政の厳しさが足らなかったのか、業界みずからの、自分の自律についての限界がかいま見えるのか。なぜ、このガイドラインでこれだけ信用されないのかということも含めて、もう一度、ガイドラインで特に低い賃金が生まれないようにこうこうこういうふうにしますということで、物差しと、今後の行動はこうしますということで、局長の方からもう一度はっきりと明確に御答弁いただきたいと思います。

本田政府参考人 運賃審査に関してのガイドライン、これは運賃の認可に関する事務に携わる担当者の審査の業務要領と考えていただいて結構だと思いますが、大きく論点が二点あろうかと存じます。

 まず第一、自動認可運賃の幅の設定の問題でございます。

 現行では、全国押しなべて、上限運賃から一〇%、一割を下回る運賃につきましては、不当な競争を引き起こすこととなるおそれが全くないという判断のもと、個別の審査を省略、自動認可をしております。しかし、過度の運賃競争による運転者の労働条件の悪化等の問題に対処していく上で、この幅を縮小する必要があるのではないかといった方向で検討を進めていく必要があると今は考えております。

 次に、個別に審査を行ういわゆる下限割れ運賃の審査のあり方でございます。

 この点については、現行では、原則として、その事業者の収支率が一〇〇%以上、すなわち、収支が相償えばこれを認めることとしております。しかしながら、この点についても同様に、過度な運賃競争への対策として、この基準だけで足りるのか。例えば、収支率は一〇〇%以上であっても、経営の違法性あるいは不当性が認められる場合には、その運賃を認めないこととすべきではないか。また、労働条件の悪化の防止や運行の安全の確保等の見地からの新たな基準を設ける必要があるのではないか。こういった方向で検討を進めていく必要があると考えております。

 いずれにしましても、運賃に関しましては、本委員会でさまざまな御議論を賜っておりますので、その御議論を今後のガイドラインづくりに反映してまいりたい、かように考えております。

福井委員 ありがとうございました。

 それでは、もう一つの論点でございました、特定地域とそれ以外の地域、特定地域以外の地域においてタクシー事業をめぐる問題が生じた場合、もちろん、ゼロじゃないと思います。その場合の対策について、やはりきょうの審議の中で政府として明らかにしていただく必要があると思いますので、特定地域以外の対策について、局長から再度御答弁をいただきたいと思います。

本田政府参考人 特定地域に指定されていない地域に関しましては、二つの切り口からの対策があろうかと思います。

 まず第一、特定地域に指定されるまでには至っていないものの、やはり供給過剰の問題をはらんでいる地域、こういった地域についてどうするかということでございます。

 特定地域につきましては、本法案に基づき、具体的な指定基準のもと指定してまいりたいと考えておりますし、交通政策審議会で指摘されておりますとおり、その際には、特に供給過剰に陥りやすい特性を有している都市部の地域などを優先することも検討する必要があると考えておりますが、こうした本法案の特定地域の指定から外れた地域でも、必ずしも何ら問題がないとまでは言い切れず、何らかの対策が必要な場合もあり得るかと思っております。

 そうした地域については、やはり、本法案に基づく特定地域に準じたような制度、こういったものも準備する必要があると考えておりまして、具体的には、現在、まさに行政運用の措置として導入しております特定特別監視地域の指定制度が一定の効果をあらわしておりますので、こうした行政運用上の措置といったものも考える必要があるというのが第一点でございます。

 これと同時に、供給過剰問題以外の問題は、これは特定地域であるか否かを問わず、対策を講ずべき地域でございます。具体的には、先ほど申し上げました、利用者のニーズに合致したサービスをいかに提供していくか、それから、悪質事業者をいかに排除していくか、また、過度な運賃競争への対策といったものは、特定地域以外の地域においても強力に推進していく必要がある、かように考えております。

福井委員 ありがとうございました。

 それでは、もう一つ、アウトサイダーですね、前回も御質問があり、そして野党の皆さん方からも御質問があり、何回かお答えしていただいておりますけれども、もう一度、再整理をして最終的な御答弁を。

 地域計画の中身、それぞれの地域、イメージ的には、百を超える地域地域でステークホルダーにすべて集まっていただいて、そして具体的に、適正な運賃で優良なサービスをしていただくためにはどうしたらいいかということを話し合っていただくわけですけれども、それに参加したくないという人、参加しても破る人が出ないように、どうやってこの地域地域のお話し合いを穏便にしていただくかということについては、これがそれこそ実行可能性、実現可能性の一番のキーだと思いますので、現在のところ、行政府としてどういう対策を考えていらっしゃるか、御紹介いただきたいと思います。

本田政府参考人 御指摘のとおり、本法案に基づく協議会の組織、そして、地域計画を作成し、かつ実施していく上で、できる限り多くの事業者の方がこれに参加することが必要であるというふうに考えております。

 その意味では、まず第一に、各地域の事業者団体において、その地域のタクシー事業の適正化、活性化の必要性等に関する事業者の意識の向上に取り組んでいただく必要があると考えております。また、本法案に基づく協議会には、直接の当事者である事業者団体あるいは運転者の方々、そして、運輸行政担当者のみならず、地域の公共団体あるいは住民の方にも参加していただき、その地域のタクシーをどうしていっていただきたいか、そういったことが広く議論されると思います。

 したがって、その協議会に参加していただくことがやはり地域にとって必要だという、これをその地域のあらゆる事業者の方にも理解していただく必要があると考えておりますし、そうしたことを踏まえて、地方運輸局を通じて、幅広く関係者に参加を呼びかけるといった努力を重ねてまいりたい、かように考えております。

福井委員 ありがとうございました。

 では、最後に、今後の具体的な見直し、今から決めるというときに見直しというのも変ですけれども、しかし、今回、冒頭ずっと御紹介をさせていただきました、非常に時代象徴的、神が時代に織り込んだメタファーがこの法案にちりばめられているということでございます。消費者行政が確立をしたこの国会でもございます。規制緩和の行き過ぎを是正する象徴的な国会でもございました。

 特に、この世界同時大恐慌で、タクシーの業界の皆さん方が本当に呻吟されているということを目の当たりにして、タクシーほど私たちの日常生活に密着した陸上交通サービスはございませんので、この法案の一日も早い成立をということで与野党一丸となって、それこそ行政府みたいに、省庁間協議みたいに徹夜に近い協議もさせていただいて、それを積み重ねて今日まで立ち至ったわけでございますので、まず、スタートをさせていただく、そして、のりを越えて法案の修正も協議をさせていただくということでございます。

 今後、それぞれの地域地域で協議会が立ち上がっていく、そして、それぞれの地域でうまくいく点もあり、うまくいかない点もあり、さまざまだと思いますけれども、そういうことをにらみながら、もちろん我々としても国土交通委員会としてウオッチングをしなければなりませんが、行政府としてどういう予定でこの見直しあるいはモニタリングをしていく御所存でいらっしゃるのか、最後にお聞かせをいただきたいと思います。

金子国務大臣 与野党が、徹夜に近い状況の中で、ついきのうまで議論をしていただきまして、相当詰めた話し合いをされた、大変感謝また評価をさせていただく次第であります。

 供給過剰が進行している地域について、御指摘のようなさまざまな手法というものを今度の法案ではまず施行させていただきますが、当然でありますけれども、それがタクシーの持つ公共性あるいは消費者利便という意味できちんと適応しているのかどうか、あるいは供給過剰地域の進行に対して適切に働いているのかどうかということは、きめ細かく拝見をさせていただき、また検証もしなければいけないと思っております。同時に、その検証結果を踏まえまして、本制度の見直し、また、御議論いただいております道路運送法に基づく諸制度のあり方についても見直しを行っていく必要もあると思っております。

福井委員 最後は大臣に御答弁いただきまして、本当にありがとうございました。

 では、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

望月委員長 次に、三日月大造君。

三日月委員 おはようございます。私も、タクシーの法案について質問をさせていただきます。

 四月二十一日でしたか、衆議院の本会議で趣旨説明が行われました。私もそのときに質問に立たせていただきましたが、私たち民主党としては、昨年から約一年間かけて、このタクシーの問題点を改善するために、やはり、法改正でもたらされた問題は法改正で改めていかなければならないという趣旨のもと、道路運送法の問題点を改善する、改正するということが必要ではないかという観点に立って検討を重ね、一月にビジョンをまとめ、そして、この国会にも、他の野党の皆様方の賛同も得て、野党共同提出で道路運送法も提出をし、この国会審議を行ってきました。

 特にこの数カ月は、タクシーのことを考えない日はないぐらいタクシーのことを考えながら、皆様方にいろいろなことを教えていただきながら、この審議に臨んでまいりました。

 きょうは、三十分という限られた時間ではありますけれども、そんな思いもちょっと込めながら、審議に臨ませていただきたいと思います。

 私は、タクシーという交通機関は非常に可能性のある交通機関だと思っています。これから温暖化が進む、対策を講じなければならない、日本は高齢化が進む、地域の公共交通手段を整え直していかなければならないという時代にあって、ドア・ツー・ドアで運べるタクシーという交通機関は、私は、これからますます役割が高まってくるし、必要性が見直されてくると。

 したがって、この時期に、安易な競争を促進することだけでこの業界を疲弊させてはならない、タクシーでなりわいが成り立つ、また、地域の中でタクシーという公共交通機関がきちんと存続をしていく、この状態をもう一回つくり直していかなければ、これから対処していかなければならない変化に対して、また期待される役割に対して、タクシーというものが役割を果たしていけなくなるのではないかという危機感も持ちながら、法改正を提案させていただきました。

 まず、大臣に、基本認識としてお伺いをしたいと思います。

 この間、約二カ月間審議を行ってきました。参考人の皆様方からも貴重な御意見をいただいてきました。私たち野党の方からも法案を提出し、答弁にも立たせていただきました。この経過を受けられて、大臣の問題認識はどのように改められたのか。特に、閣法としては、地域限定、期間限定の特別措置法というものを提案されましたけれども、そのものの不足、足らざるところも、私たちの方から指摘をさせていただきましたが、この点について大臣のお考えなり基本認識がどのように変化をしてきたのかということについて、まずお伺いをしたいと思います。

金子国務大臣 三日月委員も、先ほど福井委員に申し上げたように、本当に連日のようにこの問題に取り組んでいただいて、また、後藤委員も先頭に立って、与野党間で大きな、考え方についてはかなり共通の意識を持っていた。それは何かといえば、やはり一つ、タクシー事業というものを公共交通機関としてきちんと位置づけられるようにしよう、その際、構造的に持っている問題、供給過剰、その結果として運転手さんの賃金の引き下げというこの現象に対して何らか対応していくべきである、ここは共通された認識だったと思います。

 それに向けて、具体的にどういう法案を、あるいはどういう枠組みをつくっていけばいいのかということについて、冒頭に申し上げましたように、基本認識は与野党とも共通していたと思いますので、具体的な作業についても与野党で取り組んでいただくことができた。これは本当に、与野党協議、評価いたします。

 過度な運賃競争への対策に対しての本委員会での真摯な御意見、あるいは法案修正をめぐりましての与野党協議の結果を真摯に受けとめて、そして、法律が成立した場合、それがきちんと実施をされますように全力で取り組んでまいりたいと思っております。

三日月委員 特に、法改正によって弱いところにしわ寄せが行くんだということも、改めてわかりました。例えば、地方とか働く人とか。したがって、私たちは、極力、法改正の際に、政府が正しいんだ、与党が正しいんだということだけではなくて、あらゆる角度から問題点を検証するために、また是正していくために、いわゆる熟議の民主主義ではありませんけれども、あらゆる角度から問題点を検証して法改正をしていくことが必要だということも改めてわかりました。

 特に、この間の審議で、運賃・料金について、政府の提出された特措法では、運賃・料金の対策がありませんでした。私たちは、運賃・料金の認可基準を見直すべきだ、道路運送法の中で見直すべきだということを提案いたしました。政府の方は、ガイドラインで対処するんだということをおっしゃいましたが、私たちは、法改正なきガイドラインは意味がないんだということを主張して、この審議をずっと続けさせていただいたところなんです。

 大臣にもう一点、これは答弁を用意されていると思うんですけれども、特に運賃・料金に対する対策が不可欠だという私たちの提起についてのお考え、どのように改まってきたのかについてお伺いをしたいと思います。

金子国務大臣 今の運賃・料金の件について、問題意識として、私自身、この法案の中でどういうところで進めていくのかについて、ガイドライン、このガイドラインはまだ中身がありません。まだ法案の段階では出てきておりません。これだけだとやはりなかなか、残念ですけれども、本当に実効性が上がるのかという部分はありました。そういう中で、野党の細川代表が提出されておられます法案というのは、一つの参考としては常に私も頭の中で考えてまいりました。

 ただ、そういう中で、本当に実効性が上がっていくもの、法律をつくっても実効性が上がりませんと意味がありませんから、法案修正と同時に、やはりそれを実行できる仕組みというのを一方でつくっていく必要があるなということで、法案としても与野党で御協議をいただいている、その結果を真摯に受けとめさせていただきたい。

 特に運賃のポイントについて法案修正が行われておるというふうに伺っておりますので、これは評価させていただきたいのと同時に、それがきちんと的確に実施できるように、今度は国交省自動車交通局側の体制もしっかり整備をさせていただきたいと思います。

三日月委員 今回の法改正で私たちに求められた対処すべき課題は、供給が過剰になったこの状態を何とか是正しなければならないということと、やはり、さまざまなばらつく運賃が出てしまって、働く人たちの生活にしわ寄せが行き、結果的に利用者の安全を損なってしまっているという、運賃・料金に対する問題に手当てを打たなければならないということだったと思います。

 それで、特に供給過剰の状態を是正するための対策は私は三つあると思っていて、一つは、需要をふやすこと、その供給に見合う需要をふやしていくということと、二つ目は、これ以上供給をふやさないという、入り口を閉めること、さらには、今あるたくさんの供給を減らしていくこと。

 この三つの対策が必要ではないかと思い、特に、特措法の修正項目として、十一条のところに掲げられております特定事業計画、その中にある事業再構築、供給過剰にある状態を受けて、例えば事業の譲渡または譲り受け、法人の合併、分割とあわせて、供給輸送力の減少、すなわち減車ですね。これが提起されていたところに、私たちの方から加えて、なかなか、持っている車を減らせと言われてもつらいだろうし、合意が得られないだろうから、休ませる、持っている自動車の使用の停止、いわゆる休車というものを枠組みとして提案させていただきました。

 これについて、政府の見解を伺いたいと思います。

本田政府参考人 御提案のありました休車という問題についても、その意味はあると考えております。

 ただ、私どもの提案させていただきました法案の三項の中で、「供給輸送力の減少」という言葉がございますけれども、この点について、文理上、言葉の問題として申し上げますと、道路運送法に言う供給輸送力の増減という言葉は、事業用自動車の車両数の増減をあらわすものとして、事業計画の変更を伴うものとして扱っております。したがって、事業計画の変更を伴わない、いわゆる紳士協定的な車両の使用停止という状態を、文理上、供給輸送力の減少と呼ぶにはふさわしくないのではないかというふうに考えております。

 それから、事業者が実際に休車を行っているかどうかというのは、外形上非常に確認が難しくて、今回、認定制度を設けるわけですが、認定をした場合にも、認定の実効性が地域によっては、状況によっては不明確になる、そういう懸念もございます。

 ただし、事業計画を変更しないまでも、車の稼働をとめるということは、まさに自主的に供給輸送力を減らすことでありますので、今申し上げました、もしそういった複数事業者による休車に関しての計画に実効性があるということであり、かつ、その地域によってふさわしい対応であるということであれば、やはりこれもこの制度に入れていく必要があると思っております。

 そういう意味で、十一条三項には、そうした事業再構築を最終的には国土交通省令で定めるということにしておりますので、そういった休車の問題については、事業再構築の一例として、本法案十一条三項の国土交通省令で規定する方向で検討してまいりたい、かように考えております。

三日月委員 今の御答弁、ちょっと前段の部分は私理解できなかったんですけれども、要は、休車についてもこの省令の中で定めて、枠組みとしてとっていくという理解でよろしゅうございますね。

 せっかくきょうは公正取引委員会にもお越しをいただいております。公正取引委員会との関係もこの特措法の中に定められております。

 これは十二条ですか。公正取引委員会として意見を述べることができる、「述べるものとする。」ということも定められているんですけれども、二つお伺いをいたします。

 公正取引委員会として、現下のタクシー市場をどのように見ていらっしゃるのか。この特措法が提案されてきた、審議されてきた経過と背景をどのようなものであったと承知していらっしゃいますか。

 また、今回、この十二条の第二項で、「意見を述べるものとする。」とされておりますが、公正取引委員会として、どのような観点で意見を述べられることになるのかということについてお伺いをします。

舟橋政府参考人 二つ、御質問をいただきました。

 まず最初の現下の情勢の認識でございますけれども、タクシー事業につきましては、平成十四年二月、改正道路運送法が施行された、その後、需給調整規制の廃止を柱とする規制緩和が行われた、そのプラス面とマイナス面、そういう形があろうかと思います。

 昨年十二月に交通政策審議会の方から答申が出ておりますけれども、まず、プラス面といたしまして、私どもとしても、この規制緩和後、待ち時間の短縮とか多様なサービスの導入、そういった一定の効果がプラス面として出てきているのかなと。

 それに対しまして、マイナス面といたしまして、長期的な需要の減少傾向、そういったものがある中で、地域によっては、タクシー車両が大幅に増加してきている。そのことによった問題として、一つには、タクシー事業の収益基盤が悪化してきている、それから、タクシー運転者の労働条件の悪化というものを招いてきている。いろいろな問題が生じてきている、そういう認識でおります。

 二つ目の御質問でございますけれども、今回の特別措置法、私ども、意見を申し述べる、そういう機会が与えられておるわけでございます。先生御指摘のとおり、特措法十二条の二項にそういう規定がございまして、国土交通大臣から送付を受けた共同事業再構築に係る事項が記載されている特定事業計画、これについて意見を申し述べるわけでございますけれども、こういうタクシー事業者による共同事業再構築は、タクシー事業の適正化とか活性化を推進するための措置、そういう位置づけと考えております。

 私ども公正取引委員会としましては、このタクシー事業者による共同事業再構築が独禁法の枠内で行われ、タクシー事業者間の競争を制限することがないようにまず行われていく、それによって消費者やタクシー事業者の利益になっていく、それが重要というふうに考えております。かかる観点から、各地域いろいろな実情があろうかと思いますが、そういう実情を踏まえつつ、必要に応じて私どもの意見を申し述べてまいりたい、そういうふうに考えております。

三日月委員 所管される独占禁止法の第一条、目的に、今答弁の中でおっしゃった、競争を制限しないようにというようなこともありますけれども、「以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。」ということが書かれておりますので、その趣旨に沿った意見を述べていただくようにお願いをしたいと思います。

 事実の確認として、国土交通省に伺います。

 今回、供給過剰の状態と運賃の問題に対処しなければならない一つの理由として、タクシーの事故がふえているし、減らない、他の事業用自動車に比べて多いという問題がありました。どれぐらいの事故が発生をしているのか。

 あわせて伺いますが、私たちは、悪質事業者を市場から退出させるべきだという観点で、その一つとして、道路運送法二十九条を改正して、事故報告の対象を拡大して、それぞれの事業者がどのような事故を起こしているのか、その事故を頻発するような事業者については、タクシー業から、タクシー市場から速やかに退出をしていただくというようなルールも整備していくべきではないかという趣旨の提案をさせていただいておりますけれども、この二点、お伺いをいたします。

本田政府参考人 お答えいたします。

 タクシーの事故の問題でございますが、まず、警察庁の統計に基づきます平成二十年のタクシーの交通事故件数は、全国で二万四千三十件でございました。

 この状況を他のものと比較いたしますと、まず、全自動車事故に比べて、ここ数年の状況については、タクシー事故の減少の歩みが非常に鈍いという特徴がございます。さらに、数値的に申しましても、同じ走行距離当たりの交通事故件数で見ますと、タクシーの場合には、残念ながら、全自動車の平均の約一・八倍という事故発生率になっておる、これがまず現状でございます。

 したがって、私どもとしても、事業用自動車、とりわけタクシーについては、さまざまな安全対策を総合的に講ずる必要があると考えております。

 次に、衆法で御提案のありました道路運送法二十九条に基づく事故報告の拡大の件でございますが、御提案の条文については、もともと、国土交通省令であります自動車事故報告規則に基づきまして、現在、死者あるいは重傷者が生じた事故といったものについてタクシー事業者から報告を求めております。これについて、御提案の改正案で、軽傷といった場合を含めて、人が死傷した場合のすべてを報告の対象とするようなことである場合には、やはり事業者に対して過度な負担となる可能性があるということを懸念しております。

 ただ、タクシーについての安全性の確保、その対策が重要であることは、今まさに御説明申し上げたとおりでありますので、私どもとしては、現行法のもとでも、これまでもやってまいりましたが、必要に応じ国土交通省令を改正して、報告の範囲、時期を見直してまいりました。

 先ほど申しましたタクシーの実情に照らし、この三月に、私ども、事業用自動車総合安全プラン二〇〇九という総合対策をまとめました。その中におきまして、事故報告の速報性、それを拡充すること、それから報告時期の迅速化、こういったことが指摘されておりまして、これに即して、タクシーについても、国土交通省令で事故報告についての拡充を図ってまいりたい、かように考えております。

三日月委員 事業者にとって負担になったとしても、余りに過度な負担はやるべきではないと私は思いますが、しかし、事業者にとって少々負担がかかったとしても、他の事業用自動車に比べて走行キロ当たり一・八倍にもなっているわけですから、やはり利用者の安全という観点から、事故報告を速やかに行い、かつ対象を拡大して大きな事故を未然に防いでいく、また、そのような事故を繰り返す事業者については市場から退出をしていただく、こういう枠組みを整備していくことが必要だと思います。

 したがって、省令でやります、省令でやりますと言われると、何か、やってくださるのかどうかなという気にもなるんですけれども、この国会でなかなかそのことを確認できなくもなりますから、しっかりと実効性を持って、この事故報告の速報性、また対象拡大ということについても取り組んでいただきたいというふうに思います。

 趣旨は理解し合っていると思いますけれども、中身が抜けないように、魂が抜かれないように、しっかりと行政としてもやっていただきたいというふうに思います。

 厚生労働省に伺います。

 今回、事故がふえたことの一つの原因として、タクシーの運転者の労働実態、これが極めて劣悪過ぎるのではないかという問題点があります。労働法制違反、事業用自動車の運転者に定められている改善基準の告示違反、運賃の問題を改善するための私たちは一つの根拠にもしていました最賃法違反、また、通達で禁止をされているにもかかわらず横行していると言われている累進歩合制というものについての問題、この四つの実態について、厚生労働省から簡潔に伺います。

渡延政府参考人 お答えいたします。

 平成十九年にタクシー運転者の労働時間等の改善を重点とした監督指導結果を見ますと、監督指導件数は七百十二件ありまして、そのうち労働基準関係法令の違反件数が六百十一件、率にして八五・八%。それから、改善基準告示の違反件数が三百八十四件、率にして五三・九%。それから、累進歩合制度について指導した件数が八十件、一一・二%でございました。また、平成十九年のハイヤー、タクシー業における最低賃金法違反は、一七・三%となっておりました。

 以上でございます。

三日月委員 数字で報告されるとさらっとしたものなんですけれども、労働基準関係法令違反が八五・八%もあるんです。かつ、運転者に定められている改善基準告示の違反件数が五三・九%もあり、最賃法違反が一七%を超えている。さらには、賃金にしますと他の産業に比べて百六十万円低く、労働時間にすると二百四十時間長い、このような実態があるんです。

 国土交通省に伺います。

 この答申の中にもありました「違法・不適切な事業運営の横行」の中に、今厚生労働省から指摘のあった最賃法違反だとか不適切な運行管理、名義貸し等々のコンプライアンスの見地から問題のある事例が生じているというふうにまとめられておりますけれども、このような違法、不適切な事業運営が横行している原因、これをどのようにとらえていらっしゃるのか。ここの総括なくして今後のタクシー行政の適切化というものはあり得ないと思うんです。悪貨が良貨を駆逐するということを改善していくための国土交通省の見解を伺いたいと思います。

本田政府参考人 お答えを申し上げます。

 労働関係法令を初めとするこうした違法、不適切な事業運営の横行に関して、その原因につきましては、交通政策審議会の答申でも述べられておりますとおり、そもそもタクシーの輸送人員が減っている、にもかかわらず地域によっては車がふえている、場合によっては地域によって過度な運賃競争が展開される、さらには、タクシーの構造的な要因として、消費者がなかなかよいタクシーか悪いタクシーかを選択できない、あるいは運転者の方々が歩合制の賃金システムの中に入っておられる、そういった要因が複合的に絡んで発生しているというふうに認識しております。

 いずれにしましても、こうした事態は改善する必要があることは論をまたないことでありまして、そのための対策として、答申で述べられております、そもそもの利用者のニーズに合致したサービスの提供、悪質事業者等への対策、過度な運賃競争への対策、さらには供給過剰進行地域における対策、これはやはり総合的に実施していく必要があると考えております。

 とりわけ、悪質事業者等への対策は、違法、不適切な事業運営の排除に直接的な効果がありますので、利用者に対して情報提供を充実する、あるいは事業者団体による主体的な取り組みの強化を図るほか、運転者の資質の確保、あるいは行政による事後、事前のチェックの強化、こういったものを着実に実施してまいりたいと考えております。

三日月委員 当然のことながら、景気、経済も含めたマクロ的な問題、あわせて、タクシーが持っている特有の構造的な問題はあるんですけれども、やはり法を犯して事業を運営するということはあってはならないわけで、ここについての監査や取り締まり、そして改善をやはりきっちりと行政としても行っていくという姿勢がなければ、いろいろな対策を講じたって結局は意味を持たない。結果的に利用者の安全を損ない、タクシー市場に対する信頼性を損なうということにもなると思いますので、ここの認識と対策をしっかりと持っていただきたいと思います。

 そして、最後に、個人タクシーのあり方について伺いたいと思います。

 ここの委員会でも一部議論になりました。ないところとあるところとあるそうですね、個人タクシーというのは。しかし、東京では、一番もうかるところにどっと個人タクシーが時間帯によってわいて出る、それが供給過剰の状態を引き起こしてしまっているんだというような問題点も指摘をされています。居酒屋タクシーという問題もありました。これは、個人タクシーの皆様方が、すべてではないんでしょうけれども、行っていらっしゃるというような指摘もありました。

 個人タクシーのあり方について、どのような認識を国土交通省として持っていらっしゃるのか、これをどのように改善していくべきだ、とらえていくべきだ、位置づけていくべきだというふうにお考えなのか、伺いたいと思います。

本田政府参考人 法人タクシーであるか個人タクシーであるかを問わず、やはりタクシーはその地域を支える重要な公共交通機関である、あるいはそうあってほしい、こう考えております。

 そういう見地から申し上げますと、個人タクシーは、そもそも法人タクシーとは異なり、運行の管理あるいは整備の管理、それから事故発生時の対応など、すべて運転者自身が責任を持たねばならないということで、私どもも厳格な資格要件を設けて対処しております。その意味では、本来、優良、優秀な運転者の方々がそれに従事しておられるわけですので、ぜひ、まず公共交通機関であるということを自覚の上で対応していただきたいと思います。

 そして、今先生が御指摘になっておられますとおり、一方では、事業運営あるいは運行の時間帯等が運転者の自由にゆだねられているということに起因して、特定の時間帯のみにサービスが偏っている、あるいは居酒屋タクシー問題を含め、さまざまな問題が発生しております。

 こういった問題に対しては、やはり公共交通機関としての役割を果たすという意味で、事業者団体の主体的な取り組みを促しながら、その是正を図っていく必要があると考えております。

 また、今回の法案におきましても、特定地域においてタクシーの適正化、活性化を図っていこうという試みの中には、当然、個人タクシーにおいても重要な役割を果たしていただきたい、かように考えております。

三日月委員 最後に、その個人タクシーのあり方も含めて、私たちは、法改正の中で、道路運送法を改正して運転者登録制度を拡大すべきだ、そして、このタクシーの資格制度のあり方についても、個人タクシーも含めてやはり検討を行っていくべきではないかという問題意識を提起しておりますけれども、その点についての政府の認識を伺って、私の質問を終わります。

本田政府参考人 我が国のタクシー制度というのは、事業者が運行の適切な管理あるいは従業員としての運転者の資質の向上を図る、そういった責務を果たしていただくという前提で、法人タクシー制度というのが一般でございますけれども、こうした中にあっても、なかなか事業者の方で運転者の方の管理が行き届きにくい、例えば流しが多いような地域におきましては、タクシー業務適正化特別措置法に基づいて運転者の登録制度を実施させていただいて、運転者御自身の資質の向上を別の制度によって担保していく、こういった道筋がございます。

 そして、もともとはこれは東京と大阪で実施してまいりましたが、本委員会で御議論の上、法改正が成立しまして、昨年の六月からは札幌など主な政令指定都市まで拡大し、現在、十三地域でこういった制度が導入されております。

 したがって、運転者登録制度の対象地域のさらなる拡大、あるいはその制度の拡充という点については、交通政策審議会答申では、この制度の改正の成果を見ながら対象地域のさらなる拡大を検討すべきである、こういう御指摘をいただいておりますので、文字どおり、今回の制度改正の成果あるいは各地域のタクシー事業の実態を見ながら、前向きに、必要な検討を行ってまいりたい、かように考えております。

三日月委員 ありがとうございました。

望月委員長 次に、川内博史君。

川内委員 川内でございます。おはようございます。

 政府提出の特別措置法案、さらには民主党を初めとする野党提出のタクシー改革法案二法案について、与野党の協議も、真摯な議論の中でそろそろまとまりそうな気配であるというふうに思います。

 大きな成果が生まれようとしているわけでございますが、本日の私の質問は、平成十二年五月に成立をし、平成十四年二月に施行された改正道路運送法、いわゆる規制緩和、規制改革の代表的な法律になっているわけでございますけれども、これが、小泉内閣のもとで行政改革担当大臣もお務めになられた金子国土交通大臣でいらっしゃいますので、この平成十二年の五月に成立した改正道路運送法のもとになる、平成十一年四月九日、運輸政策審議会自動車交通部会が出している報告書には、「タクシーの活性化と発展を目指して」というタイトルがついております。「タクシーの活性化と発展を目指して」と。

 そもそも、平成十二年の改正が活性化と発展に資するものであったのか、全く逆ではなかったのかという根本的なところを総括せずして、小手先のびほう策だけで、今のタクシーの業界、運転手さん、あるいはお客様も含めて、改善あるいは前進をしていくことはないのではないかという問題意識で、そもそもどうであったのかというところから議論をスタートさせていきたいというふうに思います。

 そこで、まず金子大臣に総括的に御答弁をいただきたいんですけれども、今私が申し上げた、この平成十一年四月九日、運輸政策審議会自動車交通部会、「タクシーの活性化と発展を目指して」と題する答申、需給調整規制の廃止、運賃規制の廃止が大きな柱として示されて、改正道路運送法に至る。金子国土交通大臣にお伺いしますが、ごくごく単純に、これはタクシーの活性化と発展に資したんですか、この改正道路運送法は。

金子国務大臣 この全体の規制緩和というのは、土光臨調以来、ずっと長い間議論してまいりました。その後の規制改革会議でも引き継がれて、これはタクシーだけでなくて、いろいろな分野での規制緩和議論があったんだと思います。

 今の平成十一年四月の運輸政策審議会の「タクシーの活性化と発展を目指して」という中で、やはり需要が一方で減っておりますけれども、だからこそ、そういう時期に規制を緩和して、今までの、完全に需給調整、全部行政が、あるいは官僚がすべてをいい悪いという認可制、許可というものにかわって、もっと事業者の創意工夫を生かしていきたい、そして創意工夫の結果として、当時、消費者利便という観点からもう一遍考え直してみようという議論の大前提があったと思います。そういう中で行われてきた結果であります。

 結果として、地域によりましては、なかなか需要が伸びずに、需要が減る中で、一方で供給過剰が起こってしまった。その結果、事業収益の悪化、運転手さんの給料の低下といったような現象が起こってきている。こういういわば地域によるばらつき、ばらつきといいますか、需要が長期的に地域によりましては低迷するということ、こういう問題を改めて今回議論してみようと。

 一方で、先ほど来答弁に出ておりますように、消費者の利便という点からいって、待ち時間が少なくなった、あるいは利便性が、いろいろなサービスの多様化が行われたという意味でプラスだったという面もありますので、そういう意味で、結果としてマイナスになっている社会的な現象、あるいはタクシーの公共性というものから考えて好ましくないと思うものはやはり直していこうというのが、今回、新たな提案であります。

 そういう意味で、全体としての規制緩和という中で、タクシーがその規制緩和の結果起こってきている問題点を本委員会で見直していこうという意味で、ある意味大変画期的な法案といいますか、議論を我々はやっているんだと思います。

川内委員 大臣と私の認識は全く逆で、大臣は、全体としてはよかったのだ、一部不都合が生じているのでそこを修正するのだというお立場のようですが、私は、全体として間違っていたと。一部いいところも、もしかしたらあったかもしれない、しかし、全体としては間違いであるということから議論をスタートさせていかなければ、全く、今後のタクシーをめぐる、公共交通機関として位置づけるわけですから、そういうタクシーの業界、利用するお客様、あるいは働くドライバーの皆さんに対する、また間違った方向に行ってしまうのではないかというふうに思いますよ。

 では、ちょっと検証していきたいんですけれども、そもそも、需給調整規制を廃止すべきである、あるいは運賃規制を廃止すべきであるということを望んだ人はだれですか。

本田政府参考人 背景といたしましては、タクシー事業の輸送需要をめぐり、減少が継続し、なかなか増加が見込めない、こういった現象に対して、当時、私どもの前身であります運輸省におきまして、このタクシー事業を活性化していくためにはどうしたらいいのかと。

 当時は、道路運送法に基づきまして、需給調整規制、具体的には、新規参入に対しての免許制、それから、既存の事業者の方の車をふやそうという増車に関しては認可制をとっておったわけでありますが、年々タクシー需要が減っております中では、新しくその市場に入ろうとする事業者の人も入れない、あるいは、既存の事業者の人で事業を拡大して展開していこうという場合にも増車が認められないという閉塞感がございました。

 そういったことを打開して、意欲と能力のある事業者の人に市場に参入していただくとともに、事業を拡大していただく、そういうチャンスを与えよう、これが、その当時運輸省として考えました原点でございます。

川内委員 いやいや、私が聞いているのは、運輸省が考えたことを聞いているんじゃなくて、需給調整規制を廃止すべきである、あるいは運賃規制を廃止すべきであるということをだれが望んだんですか、だれが要望したんですかということをお聞きしているわけでございます。

本田政府参考人 その点につきましては、当時の運輸省として、各方面としか申しようがございません。例えば、利用者を含めた消費者の方々から、タクシーについてやはりもっと競争促進をすべきではないかといった御議論、あるいはマスコミの方々を通じた御意見、あるいは政府のさまざまな機関からの御意見も参考にしながら、運輸省としてそういった方針を策定させていただいたところでございます。

川内委員 この運輸政策審議会の前段で、政府の行政改革委員会規制緩和小委員会の中で議論をされているわけですけれども、そのときに、需給調整規制を廃止すべきである、運賃規制を廃止すべきであるという意見を寄せているのは、経団連あるいは日本商工会議所、さらには、個人として数名ですね。業界団体あるいはタクシーのドライバーさんの集まりである労働組合の皆さん、数十の団体はすべて、廃止したら大変なことになるよ、問題が起きるよと、今日の事態を予想して反対の意見を寄せておりますね。

 そのことはお認めになりますか。

本田政府参考人 規制緩和の当初の方針の議論からその実施に至るまで、かなり時間がございますので、その折々に触れて、事業者団体あるいは運転者の方々の代表の方々の御意見をいただいております。確かに、その当初におきましては、先生のおっしゃるとおり、事業者団体及びタクシー運転者の労働組合の方々からは、非常に否定的、消極的な御意見が多かったのは事実でございます。

川内委員 タクシー問題については、当事者は、タクシー事業者、ドライバーの皆さん、そして消費者の皆さん、利用者の皆さん、当事者が三者いらっしゃるわけでございます。

 まず、タクシー事業者について、法改正後の状況、現状をどう見ていらっしゃるのか、そしてまた、タクシー事業者の皆さんがこの現状に対してどのような要望を持っていらっしゃるのかということ、これをちょっと国土交通省から御説明いただきたいというふうに思います。

本田政府参考人 タクシー事業の規制緩和あるいは昨今の輸送需要の低迷といった状況に対して、まず、事業者団体がどう受けとめてまいったかという点について、私どもに寄せられております要望書等における主なところを御紹介したいと思います。

 まず、輸送需要が減少する中、タクシー車両数が増加し、全国各地で供給過剰となっている、供給過剰の問題でございます。そして、供給過剰による客待ち違法駐車や交通渋滞が引き起こされ、環境にも悪影響を及ぼしている、さらには、運転者賃金の低下等により良質な運転者確保が困難な状況をも惹起している、こういった現状認識が示されておりまして、これに対しての対策を早急に講ずるように、そういった強い要望をちょうだいしておるところでございます。

川内委員 現状に対するタクシー事業者の皆さんの要望を受けて今回の法改正が行われるわけですけれども、その現状に対する要望の中に出てくる問題点というのは、平成十二年の法改正のときに、法改正をしたらこういうふうになってしまいますよ、大変な事態になりますよということをタクシー事業者の皆さんは予見していましたよね。全く同じことを言っていたでしょう。

本田政府参考人 多くの点について懸念があったという点は事実であろうかと思いますが、一点だけ御紹介させていただきますと、最終的に、道路運送法改正案を当時の運輸省が取りまとめまして、その骨子案を全国に照会させていただいた段階で、当時のタクシー事業者の団体からは、こういう最終的な御意見をちょうだいしております。

 一つは、その後、道路運送法に盛り込まれましたが、緊急調整措置の導入、運賃認可制の堅持、それから、事業参入の許可あるいは増車の取り扱いについて、供給過剰による混乱が生じないよう有効な措置を講じられたい、具体的にはこんな要望をちょうだいしたところでございます。

川内委員 最後の最後、お上が法改正するよと言われたら、それは、いたし方ございませんね、しかし、このぐらいお願いしますわと。それは、国土交通省と国土交通省に所管される業界団体との情報の非対称性と、それこそ言うのではないかというふうに思いますけれども。

 では、タクシーの運転手さんたちはどうであったのか。平成十二年の法改正後の状況、現状をドライバーの皆さんはどう見ておられるのか、そしてまた、この現状についてドライバーの皆さんはどうしてほしいという要望を持っておられるのかということを国土交通省の方から御説明いただきたいと思います。

本田政府参考人 タクシーの規制緩和後あるいはその間の需要の低迷、こういったことを受けて、タクシー運転者の団体の方々から寄せられた要望書、数々ございますけれども、幾つか御紹介したいと思います。

 まず、現状認識として、供給過剰状態が深刻化している、低価格競争が拡大している、運転者の賃金、労働条件が著しく悪化している、交通事故が大幅に増加している、名義貸し等の悪質事業者が膨張している、こういった現状認識が示されました。例えば、要望書をそのまま読ませていただきますと、「今日の事態を引き起こした規制緩和政策を根本から見直して、新たな産業ルールを確立することが不可欠です。」こういった御要望をちょうだいしております。

川内委員 その現状に対する認識と要望は、特に現状に対する認識は、平成十二年の法改正をする前に、そんな規制緩和をしたら交通事故が物すごくふえるよ、労働条件もめちゃめちゃ悪くなるよ、大変な事態に立ち至るよということをドライバーの皆さんはおっしゃっていましたよね。

本田政府参考人 規制緩和の実施以前においても、否定的、消極的な御意見を賜ったのは事実でございます。

 先ほど御紹介した事業者団体と同様に、最終的に、道路運送法改正案等を当時の運輸省が骨子案として照会させていただきました。主な御意見を御紹介いたしますと、事業者の質の確保のために現行の免許基準と同等以上の許可要件を設定し、厳格な事前審査を行うこと、運賃の認可制は堅持し、不当廉売を防止するための明確な下限を設定すること、運賃の上下限の幅は現行の一〇%を拡大しないことといったような内容の要望書を最終的にはちょうだいしているところでございます。

川内委員 いや、最終的にちょうだいした要望書を読み上げてくれということを申し上げたわけではなく、ドライバーの皆さんが懸念していたとおりの状況に今なっていますね、そのことを国交省として確認しますか、認めますかということを聞いているんです。

本田政府参考人 平成十二年の法改正、十四年の実施後の規制緩和の成果につきましては、再三申し上げておりますとおり……(川内委員「成果を聞いていないじゃない。質問に答えるように言ってくださいよ、委員長」と呼ぶ)

 その後の状況についての認識を申し上げたいと思いますが……(川内委員「その後の状況についての認識なんか聞いていないじゃない。ちょっと下がって。もう一回質問するから」と呼ぶ)

川内委員 局長、私が聞いているのは、ドライバーの皆さんが、規制緩和をしたら交通事故がふえますよ、労働条件が悪化するんですよということをおっしゃっていた。局長は、否定的な意見とか消極的な意見とおっしゃったが、それは否定的な意見でも消極的な意見でもないですよ。将来を予見した意見ですよ。将来を予見した意見。

 いいですか。規制緩和をするときに規制緩和側が何と言っていたか。需給調整規制を廃止して運賃規制を撤廃すれば、労働条件はよくなるのだと言ったんですよ。書類の中にちゃんと書いてありますよ。労働条件はよくなる、事業基盤も強化される、タクシー会社ももうかります、消費者も運賃が下がってよくなりますと書いてあるんですよ、規制緩和側は。

 全然そうはなっていないね、需給調整規制を廃止したら大変なことになるよと言っていた人たちの言うとおりになりましたねということをまずお互いに認識し合わないと、問題点がどこにあるかというのがわからなければ、解決策なんか出てくるわけないじゃないですか。そのことを私は確認しているんですよ。ドライバーさんたちが言っていたとおりになりましたねということを確認しているんです。

本田政府参考人 失礼いたしました。

 その意味では、地域によっては、需要が長期的に低迷する中で、車両数が現実に増加して、その結果、タクシー運転者の労働条件が悪化する、あるいは交通事故が増加するといった形で、公共交通機関としてのマイナス面が生じていることも事実でございます。

川内委員 大臣、これは、私ども政治の立場にいる者が、あるいは政府としてはもちろんのことだと思うんですが、一番現場に詳しい方たち、事業者、そしてまたドライバーさんたちがおっしゃっていたような懸念というものが顕在化したということについては、素直に、おっしゃるとおりであったということを認めなければいかぬというふうに思いますが、大臣、御所見を聞かせてください。

金子国務大臣 これが十二年に法改正されて、十四年に施行された。それ以降起こってきた問題。特に、建前を改めて申し上げますけれども、タクシーの公共交通機関としての役割というものを欠くような状況というのも出ているのではないかということが、まさにそういう意味で、今回の法案のベースとなります反省点、問題点というものが、タクシー事業をめぐる今回の答申に、関係者の皆様方に集まっていただいて、ここでそれぞれの意見を開陳し合い、そして答申として今回出てきたわけですから、当然に、川内委員が言われた、特に当時だれが、タクシーの運転手さんの組合が言ったか、事業者が言ったかということ以上に、その両方を見て、公共性という観点からどういう状況が起こっているのか。

 したがって、どういうことを対応していかなければいけないかということは、まさに今回、このベースとなります答申の中に、皆さん、言っていただいているんだと思います。これを読んでいただければ、委員が言いたいこともこの中にかなり入り込んでいますよね。そう思いますよ。

川内委員 いや、大臣、そこがちょっと違うんですね。私も、当然これを見せていただきましたけれども、これの前身になる平成十八年の七月の交通政策審議会陸上交通分科会自動車交通部会タクシーサービスの将来ビジョン小委員会報告書というのがあるんですね。この中には、さまざまに起きている問題は市場の失敗だと書いてあるんですよ。規制緩和したこと自体は間違いではないんだけれども、市場の失敗であると総括しているんですね。そうじゃないでしょう、政策の失敗だろうということを素直に認めるところからスタートしなければいけないのではないかというふうに思うんですよ。

 だから、大臣、この報告書に書いてある市場の失敗を今さら、平成十八年七月の文書ですから、政策の失敗というふうに書きかえろとか、そんなできもしないことは私は言いませんよ。だからこそ、この委員会でみんなが懸念していたことがそのとおりになりましたねという認識については、そうだね、そうなったねということは、大臣としてお認めをいただかなければならぬというふうに思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

金子国務大臣 認める、認めないという話ではなくて、よりよい、繰り返しますけれども、供給過剰の結果起こっている事項というものをきちんと修正していこう、それはもう与野党ともに、今度かなり、もう既に言われていますように、今回の法案の修正協議の中で共通認識として出てきているところでありますから、そういう意味では、まさに今回、こういう規制緩和で起こったことへの問題点の反省というものを我々はベースにして議論しているんだと思います。

川内委員 いや、私は、無理やり認めろとか言っているわけではなくて、事業者の皆さんやドライバーの皆さんが規制緩和をする前におっしゃっていたことが現実のものになりましたねということを、局長に御答弁いただいた上で、大臣にも、そうなりましたねということを確認してくださいということを申し上げているわけですね。それを、いや、そんなことは問題じゃないんだと言われると、これは今後の議論が、流れがなくなるんですよ。

 だって、事業者とドライバーが言っているとおりの、交通事故がふえますよ、そんなことをしたら交通事故がふえるんです、労働条件は悪化して大変なことになりますということをみんなが言っていたのに、そのことを、あえて、労働条件はよくなるんだ、交通事故も減るんだ、経営基盤は強化されるんだという規制緩和側の意見を取り入れて、需給調整を廃止して、運賃規制も廃止したわけですよね。

 そういう経過があるわけですから、そういう経過を説明した上で、でも、やはりきちんと認めるべきですねということを申し上げているわけですから、大臣、そこは、事業者側やドライバーさんがおっしゃっていたことが現実のものになったねということは、それはそのとおりだ、だから改正するんだと言わないと、いや、それは問題じゃない、でも改正するんだと言うんじゃ、議論にならないんですけれども。

本田政府参考人 規制緩和を実施させていただく際に、まさに先生が御指摘のとおりの懸念があったことは事実でありますし、地域によって状況の差はありますけれども、まさにそういった懸念どおりに、需要が低迷する中で車両が増加するといった事態で、その結果、懸念されておりました労働条件の悪化あるいは交通事故の増加といった現象が生じたのは事実であります。

 なおかつ、先ほど先生が十八年の答申を市場の失敗ということで御紹介いただきましたとおり、単に市場に多少の手を加えるだけではこの問題の解決は済まない、まさに、今回の法的措置、そういった規制を見直すということも含めて今回対策を講じたいというのが、この答申に基づく我々の考え方でございます。

川内委員 政策の失敗とは口が裂けても言いたくないと。そこが、やはり今日の政権の限界を如実に露呈しているなと私は感じるわけですよ。

 なぜかならば、やはり問題があった、問題はここだ、それはなぜ生じたのかということを素直に認めることからしなければ、それは問題点の解決なんかとてもとてもできないですよ。市場の失敗だ、市場が失敗したから規制を強化するんですというのは、それはちょっと余りにも、それこそ我田引水が過ぎるというか……(発言する者あり)いやいや、そんなことはないですよ、言い過ぎじゃないですよ。(発言する者あり)いやいや、みんなと会話しながら委員会質疑を、余り批判だけしていると、とげとげしくなりますから。和やかな雰囲気も大事ですから。

 それでは、局長は、懸念されていた事実が現実のものとして起きたということは認めたわけですね。懸念されていたことが現実のものとして起きたということは認めた。それは、国土交通大臣、そのとおりであると確認してください。大臣が確認するだけですから、そのとおりだと。

金子国務大臣 少し論点が、本来、規制緩和というのを何のためにやったかというのはありますよね、やはり消費者利便と。タクシーの事業者、それから運転者、同時に消費者。これは決して平成十八年の答申だけでなくて、もう土光臨調からずっと規制改革あるいは行政改革の議論の中で行われてきたことでありますから、当然に、その懸念された事実が起こったということは、今、つまり、運転手の賃金の低下につながったということも事実だと思います。

 ただ、それが全部、全国で起こったという、今回そういう認識ではなくて、やはり地域によって供給過剰が行われた。随分地域性があるじゃないですか。はっきりそれが出ていますよね。

 ですから、そこは、規制改革の趣旨は何だったのか。あれはあくまでも、やはり消費者の利便性、サービスの多様化、企業の創造力の発揮というところも求めてきたのが今回の規制緩和であります。それから、繰り返しますけれども、需給調整に完全に、増車をすべて、一台一台の増車、減車も含めて、官僚の手に戻すなんということは全く考えていませんから、いわば事業者の創意工夫というものをやはり生かしていくんだということ、そういう観点から、今回、規制緩和全般が行われてきた。

 ですから、繰り返しますけれども、いい部分もあった、ただ一方で、供給過剰という結果、あるいはタクシーという業界の持つ特性として歩合制といったようなものもありますから、その結果として、事業者の対応、そして、その結果、運転手の給料の低下ということを招いてしまった。事故の多発というのもそれが一因。

 そこは素直に、こういう事実も起こっているということは反省しながら、したがって、今回のそういう供給過剰地域に対しては非常に厳しい措置。あるいは、悪質業者、最低賃金法すら守られない、十何%もあったというのは私も実は愕然として聞いていたんですけれども、そういうものに対しては、きちんとした対応、監査というものをきちっと強化していくということを今回の法案の中に盛り込んだ。

 それから、もう一つは、運賃の決定の仕組みについても、民主党の、野党の皆様方から御提案いただいた部分については、それなりの工夫を、今度の法案修正の中で今御相談をされているということ、そういう認識であります。

 したがいまして、いいところ、悪いところ、規制緩和全体としてもたらしたものを、我々、もたらした結果、マイナス面というのは当然認め合いながら、さらに前に向けていこうと。道路運送法全体を改正していろいろな手直しをしていこう、歩合制についてもどうやっていこうかというのは、タクシーの運転手さんの給与のあり方についても検討してもらうわけでありますから、まだまだ見直すべき点は、さらにこの国土交通委員会でも、当然に引き続き行われていくべき事項だと思っております。

川内委員 私は、規制緩和全体が悪いとか悪だと言うつもりは全然なくて、規制緩和にもいい規制緩和と悪い規制緩和があるでしょうと。タクシーの場合には、悪い規制緩和になってしまっているのではないかというふうに思うんです。

 金子大臣が消費者利便の向上という言葉をお使いになられましたが、それでは、消費者、利用者の皆さんについて、法改正後、このタクシーの現状について、消費者の皆さんがどう見ていらっしゃるのか、利用者の皆さんがどう見ていらっしゃるのかということを教えていただきたいと思います。

    〔委員長退席、中山(泰)委員長代理着席〕

本田政府参考人 お答えを申し上げます。

 平成十七年九月に、利用者のアンケート調査をさせていただきました。その数字を御紹介したいと存じます。

 問いかけとして、昔と現在、昔というのは三年より前ということで、当時の規制緩和の前に比べてというような質問の設定がされておりますけれども、それに対して、タクシーの待ち時間の問題について、昔と比べてよくなっていると思うと回答された方が二四・六%、一方で、昔と比べて悪くなっていると思うと回答された方の割合が二・九%でございました。

 また、各種運賃の割引の多様化について、昔と比べてよくなっていると思うと回答された方が三八・五%、昔と比べて悪くなっていると思うと回答された方は三・〇%です。

 他方で、運転者の道の詳しさといった要素につきましては、昔と比べてよくなっていると思うと答えられた方は七・〇%に対して、昔と比べて悪くなっていると思うと回答された方は二六・一%ということでございます。

川内委員 社会生産性本部に委託して、サンプル数が千八百ぐらいでお調べになられた調査の結果を今発表していただいたわけでございます。平成十七年の九月のものであるということでございまして、どういうサンプルをとったのか、どのようにとったのか、どういう聞き方をしたのかということの詳細が明らかではないので、どのくらいその調査に信をおくかは別にして、同じ調査で、消費者のニーズが最も強いものとして、「運賃が少しでも安いこと」ということにやはり消費者は最も敏感に反応するわけでございます。

 では、法改正後、平成十四年施行後、運賃は安くなっているんでしょうか。

本田政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、規制緩和以降、タクシー運賃については、一般的に多様化が進み、具体的にはさまざまな形態がございますけれども、以前に比べまして、いわゆる割引運賃が全国で導入されたという点を申し上げたいと思います。

 もう一点、一方で、基本運賃につきましては、平成七年以降、実質的に据え置かれてまいりましたけれども、タクシー運転者の労働条件が悪化していくということを背景に、平成十八年六月以降、全国の多くの運賃ブロックでタクシー運転者の労働条件の改善を主たる目的とした運賃改定の申請が出され、これを受けて、平成十九年四月以降、運賃改定が実施され、現在、全国九十三運賃ブロックのうち五十八ブロックでは運賃の値上げをせざるを得なかったという状況でございます。

川内委員 現在の状況では、五十八ブロックで運賃値上げをせざるを得ない状況になっていると。消費者にとっては、運賃についても上がってしまったということなわけで、結局、タクシーに関しては、事業者の皆さんも、ドライバーの方々も、あるいは利用者、消費者の皆さんも、すべての当事者にとって、一体平成十二年の法改正は何だったんですか、一体何のための規制緩和だったんでしょうね、だれのためだったんでしょうねということになっているのではないかというふうに思います。

 昨年十二月の交通政策審議会答申にもあるように、道路混雑等の交通問題や環境問題、都市問題も含めて、デメリットの方が多かったのではないか、その原因は、法改正による供給過剰、要するに、需給調整規制を原則廃止して供給過剰になってしまったと。

 この、市場の失敗ではなく政策の失敗であるということを素直にまず認めなきゃいかぬというふうに思いますが、まあ、金子大臣に聞いても絶対にそうだとは言わないと思いますので、指摘だけして、市場の失敗ではなく政策の失敗であると。

 私は、今後、タクシー問題での議論を審議会などでされるときに、やはりそこを有識者の先生方にも、ごまかさずにしっかり、失敗と言うと言葉が強いので、政策が不十分であったとか、十分ではなかったとか、そういう言葉でもいいですから、そもそもみんなが指摘していたことがそのとおりになったわけですから、そのことは素直にお認めになられた方がよろしいかというふうに思います。

 ところで、タクシー問題については、当事者がもう一人いるわけでございまして、実は、日本経団連のホームページに掲載されている資料でございますが、平成八年の十二月二十六日付の経団連の新産業・新事業委員会企画部会報告書、「日本型コーポレート・ベンチャーを目指して」という文書の中の経団連加盟企業の各社の取り組み事例として、オリックスさんが自社の新規事業の成功例を挙げております。

 それによりますと、「成功例として、オリックス・オートリース、オリックス・レンテックが挙げられる。オリックス・オートリースは、車両十八万台を所有して、メンテナンスを中心にオートリースを行っている。全国タクシー合計が二十五万台であり、かなりのシェアを確保している。」「かなりのシェアを確保している。」というふうにこの経団連の報告書の中でオリックスさんが述べていらっしゃいます。

 オリックスというのは、紛れもなくタクシー問題の当事者の一人。どういう意味の当事者の一人であったかというと、オリックスの最高経営責任者である宮内義彦氏が、規制緩和の旗振り役であり、また、タクシーの規制緩和についても、行政改革委員会規制緩和小委員会の座長を務めていたということでございますが、まず、この事実を確認してください。

宮島政府参考人 お答え申し上げます。

 規制緩和小委員会は平成七年四月に発足をしたわけでありますが、当初は椎名さんという方が座長をしておられましたが、平成八年四月から宮内座長となっております。

川内委員 では、最初は椎名さんが座長で、次は宮内さんが座長になったよということを教えていただいたわけでございます。

 そこで、ちょっと確認をさせていただきますが、タクシーの規制緩和に関する宮内さんの役割でございますけれども、当初、行政改革委員会が発足をし、第一次意見というものが椎名座長のもとで出された。その中には、タクシーの需給調整規制の廃止、あるいは運賃規制の廃止というものは書かれていなかった。

 その後、宮内さんが座長になられて、平成八年の七月、規制緩和小委員会が宮内座長のもとで「規制緩和に関する論点公開(第四次)」を公表し、その中で、タクシー事業の参入、価格規制の見直しが論点の項目の一つに取り上げられた。

 さらに、同年、平成八年十二月に行政改革委員会が規制緩和小委員会のもとでまとめた規制緩和の推進に関する意見、第二次意見の中で、タクシーについて、需給調整基準を段階的に緩和、需給調整規制の廃止に宮内座長のもとで言及をしたということでよろしいですね。

    〔中山(泰)委員長代理退席、委員長着席〕

宮島政府参考人 お答え申し上げます。

 基本的には御指摘のとおりでございますが、一点だけ補足をさせていただきますと、椎名座長のもとでありました第一次意見におきましても、タクシーについての需給調整、具体的な改革案の提言はございませんが、その中で、「平成七年度は、以下の四項目」ということで車検等の改革が取り上げられているわけですが、「以下の四項目を取り上げ意見具申を行うこととしたが、八年度以降、タクシー、航空等他の項目についても取り上げることとしている。」というふうになっているところでございます。

川内委員 第一次意見の中では、平成八年度以降、以降に取り上げるということですから、まさしく平成八年に取り上げたのは宮内座長の御判断であったということになるわけでございますが、その宮内座長がこれを取り上げたということの根拠でございます。

 平成七年四月十二日に行政改革委員会委員長決定文書として、「規制緩和小委員会の設置及び参与の依頼について」という文書がございます。この中で、規制緩和小委員会の小委員長というのはまた別にいらっしゃるわけでございますけれども、この小委員長は宮崎さんという方でございますが、「小委員長を補佐し、小委員会の運営をつかさどる座長を置くこととし、小委員会の構成員のうちから委員長が指名する。」ということで宮内さんが座長になっていらっしゃる。運営をつかさどるということで、実質的には宮内さんが規制緩和小委員会を取り仕切ったということでよろしいですね。

宮島政府参考人 取り仕切ったというか、小委員長、座長、それからメンバーの委員、全体として合議体としていろいろ御議論され、その結果をまとめられたというふうに理解しております。

川内委員 私は、利害関係を持つ当事者が、利害関係というのはこの場合でいうと、宮内さんはオリックス・オートリースあるいはオリックス自動車を経営されていらっしゃって、自動車をリースしていますよという意味において、利害関係を持つ当事者が審議会の場などで意見を述べるのは、これは当然のことだと思いますよ。しかし、審議会の委員として意見を述べる場合には、非常勤の一般職の国家公務員として、公正中立な立場で議事進行あるいは取りまとめなどを行う座長でなければならないというふうに思います。

 座長として、論点として取り上げて、そしてまた、自分の仕事に直接利害関係を及ぼすことについて取りまとめていく立場を宮内さんにお任せしたというのは、ちょっと不適切ではなかったのかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

宮島政府参考人 あくまでも、当時、どういうふうに委員が選任されたかということでございますが、必ずしも過去のことを詳細に理解しているわけではございませんが、一般的に申し上げまして、もちろん合議体の中には、いわゆる利害調整、利害関係者、三者構成等のいわば調整の場とするような合議体もあるわけですが、このような政策課題を建議したり答申したりするという合議体にありましては、一般的には、まさに各界の有識者にお集まりいただいて、その中でいろいろな御意見の中から意見が取りまとめられていくというふうに理解をしております。

 どこかの代表者ということで利害関係者として御発言いただくような、そういうことにはなっていないものだというふうに理解をしております。

川内委員 だから、先ほども申し上げたように、審議会の委員として意見を言うこと自体は何ら問題ないと思います。それぞれの利害を代表していろいろな方が審議会に参加していらっしゃるわけですから、それはいいと思いますけれども、取りまとめ役になるというのはどうかということを問題提起しているわけです。

 まず、ちょっと総務省に確認しますけれども、審議会のメンバー、あるいは、この場合でいうと、行政改革委員会規制緩和小委員会のメンバーというのは、非常勤の一般職国家公務員である。審議会に参加するときは、審議会で意見を述べるときは、非常勤の一般職国家公務員として述べるということになりますね。よろしいでしょうか。

笹島政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおりでございます。

川内委員 そうしますと、国家公務員法の縛りが出てくるわけでございますが、総務省にお伺いします。

 国家公務員法第九十六条、服務の根本基準、「すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。」という規定、同じく国家公務員法第九十九条、信用失墜行為の禁止の規定は、これら審議会の委員など非常勤一般職国家公務員の皆さんにも適用されるという理解でよろしいでしょうか。

笹島政府参考人 一般論で申し上げますと、国家公務員法は常勤、非常勤問わず適用されておりまして、先生御指摘の国家公務員法第九十六条第一項あるいは同法の第九十九条は、常勤、非常勤問わず適用されているところでございます。

川内委員 特に国家公務員法第九十九条。九十六条は、憲法にも、「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」みんなのために仕事をするんだよということを書いてあるわけですから、当然のことである。

 さらに、国家公務員法九十九条、信用失墜行為の禁止の規定の趣旨は、「職員は、自らの行動が公務の信用に影響を与えることを認識するとともに、日常の行動について常に公私の別を明らかにし、職務やその地位を私的な利益のために用いてはならない。」

 信用失墜行為の禁止の規定の趣旨というのは、「職務やその地位を私的な利益のために用いてはならない。」という趣旨でよろしいでしょうか。

笹島政府参考人 お答え申し上げます。

 先生今御指摘のありましたことにつきましては、過去、平成八年の十二月十九日事務次官会議におきまして、「行政及び公務員に対する国民の信頼を回復するための新たな取組について」という申し合わせが行われまして、この申し合わせにおきまして、「職員は、」「職務やその地位を私的な利益のために用いてはならない。」というふうに規定されているところでございます。

 国家公務員法の九十六条あるいは九十九条の規定というのは、こういった趣旨を含むものというふうに理解しております。

川内委員 とすれば、オリックスさんの場合には、日本経団連にオリックスさんがみずから報告した報告書の中に、タクシー台数は二十五万台で、オリックス・オートリースはかなりのシェアを確保しているというふうに平成八年の段階でおっしゃっていらっしゃる。ちょうど、規制緩和小委員会で座長として議論を取りまとめていらっしゃる時期と同時期であります。

 私は、タクシーの規制緩和を論点に持つ委員会の座長として、やはりどうだったんだろうかという疑念をぬぐい去ることができないんです。

 一般論としてお伺いしますが、職務やその地位を私的な利益のために用いたことがもし明らかになったならば、宮内さんが座長として、規制緩和の、タクシーの需給調整規制を外すよ、外した方がいいですよという意見を取りまとめたというのは、国家公務員法九十六条、九十九条に違反するのではないかということになってしまうと思うんですけれども、いかがでしょうか。

笹島政府参考人 お答え申し上げます。

 公共の利益のために勤務する国家公務員というものは、先ほど申し上げましたように、第九十六条の趣旨、あるいは九十九条の趣旨を踏まえて勤務するべきものでございまして、こういった規定を遵守するというのは当然のことでございます。ただ、具体的なケースがこれらの規定に抵触するか否かということになりますと、一義的には任命権者が御判断するということになっておるところでございます。

川内委員 具体的なことは、個別具体の事例に照らして任命権者が判断することであるということでございます。

 平成八年、九年、十年、十一年、十二年、そして十四年の施行の間、オリックスさんがタクシー業界に対するレンタルあるいはリースの車両台数をどのように営業していらっしゃったのかということが、経団連の資料からしかわからないので、私も確たることをここで申し上げることはできないわけでございますけれども、またこの件については引き続き議論を深めていきたい。

 私は、規制緩和、特に規制緩和の委員会の委員のあり方については前々から疑問を持っていたので、一度、ちょっと厳密にみんなで考えた方がいいかなというふうに思っておりますので、引き続きの議論をさせていただくことをお約束申し上げて、ちょっとまだ質問が余ってしまったんですが、あしたもあるみたいなので、ここで終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

望月委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 私は、まず最初に、新型インフルエンザの観光への影響についてただしたいと思います。

 政府並びに観光庁としてどのような調査をこの問題について行っているか、そして、観光庁として、新型インフルエンザによる神戸や京都における観光への影響をどのように認識、掌握しているのか、お答えいただきたいと思います。

本保政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、影響の調査でございますが、御案内のとおり、インフルエンザの発生以降、修学旅行を初め旅行のキャンセルが数多く発生しております。このことから、宿泊業関係の団体などからも、業況が悪化したということで国からの支援が求められておりますので、その状況を把握するということで、日本旅行業協会を通じまして修学旅行のキャンセル状況の調査を行いますとともに、地方運輸局を通じまして宿泊施設への影響を調査しているところでございます。

 また、五月二十二日には、政府の基本的対処方針が定められまして、外出については自粛要請を行わない、それから、集会、スポーツ大会等につきましては一律に自粛要請を行わない、こういうふうに方針が決定されましたので、こうした状況を踏まえた対応が自治体等できちっとなされているかどうか、こういう観点から、各都道府県に対しまして、新型インフルエンザ発生に起因する観光産業への影響の実態や、二十二日の対処方針の決定を受けた出張あるいは行事などの対応状況の変化について調査を行っているところでございます。

穀田委員 神戸と京都はどうやと聞いているんだけれども、出ていなかったので、まあ、いずれにしても、大変だということなんですよね。

 それで、今、自治体への協力をお願いしていると言いましたけれども、私がつかんでいる範囲内では、今、修学旅行のキャンセルという話がありました。これは、京都市の調査は旅行代理店の調査報告をそのまま使っているにすぎないんですね。こういう程度のものなんですわ。

 観光客が来るか来ないか、それから、宿泊が来ないかというのは、実は、輸送に関係しているから言っているんですよね。その前ぶれとつかんでいただければありがたい。

 ところで、インフルエンザの影響はいろいろなところに及んでいます。今ありましたように、宿泊の問題、キャンセルとありましたけれども、例えば煎茶道大会の様相はつかんでいますか。それから、本委員会ではタクシー業界の供給過剰と規制強化をめぐって今、議論をしています。タクシー業界は、規制緩和、それから昨年来の経済危機、そして三つ目に今回のインフルエンザ、三重苦と表現しているほどであります。このような議論をしている最中に、このタクシー業界への影響はどの程度あったと掌握しているのか、お答えいただきたい。二つ。

本保政府参考人 観光関係につきましてお答え申し上げますが、行事やイベントの中止状況、これは、一般的には把握しておりますけれども、今お尋ねのございました全国煎茶道大会といった形で、個々の行事、イベントが開催中止になったか、延期になったかというところまでは把握しておりません。

本田政府参考人 タクシーの状況について御説明を申し上げます。

 京都の状況で御報告したいと思います。

 ちょっと、全体の数量的な情報は把握しておりませんけれども、一部大手の企業に対する聞き取り調査などでは、京都の場合、修学旅行生が利用されます観光タクシーというものがありまして、その予約状況でまいりますと、六月予約分について、既にその半数を超えるキャンセルが出ているといったような影響を受けている企業もございます。

 こうした事態を受けて、京都のタクシー業界では、やはり、今回の新型インフルエンザの影響で修学旅行が中止になり、観光地の人影が途絶えておる、あるいは、昨年秋からの景気の落ち込みといったことも含めてタクシー需要が低迷している中で、観光地ではまさに二重の影響を受けている、こういった認識を持っておられ、この認識に立って、タクシー業界として、地元の公共団体を初め、我々の地方運輸局に対しても支援策の要望をされているという状況でございます。

穀田委員 私、きのう言ったんですよ、これはちゃんとつかんでくれと。電話番号もちゃんと教えたんやけれども、そこまで丁寧にやってもこの程度やから、本当に、どういうふうな実態があるのかということについて、そんなこともあるのかということぐらいつかみなさいよと私は思うんですね。

 私がつかんでいるので言うと、五月二十三、二十四日に第五十四回全国煎茶道大会が、全国の茶道の三十流派が黄檗山萬福寺に集まっているんですよね。それで、お茶席があって、例えば使用予定の生菓子三千四百個、これはキャンセルなんです。お菓子というのは、あんがあったものを使うわけにはいかへんわけやね。全部捨てなくちゃならぬ。一軒のお菓子屋さんだけで七十万円近くのロスがある。こういうふうに影響が起きているということを、先ほど、一般的には把握していないと。把握してくれなきゃ困るというんですよ、そういうものを。

 それから、本田局長は、全体を把握していないが、こうくるわね。こんなもの、今タクシーの話をしているんやから、京都だって、タクシー全体がもうまとまっているわけやから、そこに聞けばわかるわけで、そういうものが非常に、議論している最中にこういう話をすると、全体を把握していない、こうくる。この情けなさというの、わかりますか。私は、本当にだらしがないというか、もう情けないなというふうに思うわけです。

 例えば、半数以上と言いますけれども、京都の中堅タクシー会社でいえば、七十六校キャンセルを受けて、七千万円の損失。京都市などは、秋口に必ずそれが返ってくると言うわけですよ。修学旅行で九割返ってくる、こう言うわけですよね。

 しかし、九割返ってくると言うけれども、それでは、四月、五月に来なかった部分が、そのままぼんと加算されるのか。そんなことはあれへんわけやね。そやから、キャンセル料ももらえない。だから、どうするか困っている。だから、何が困っているか、何が起こっているかということをしっかりつかまなあかんと私は思うんです。

 そこで、この問題について、大臣に最後に一言言いたいんですけれども、これは観光地域自身が疲弊をしている。だから、単に個々の事業者を助けろという意味じゃなくて、地域に対してやはり緊急休業補償制度を含めた支援を検討すべきではないか。

 観光庁というのをつくった際に、どう言ったか。それぞれの各省をまたいで、きちんと観光問題についてやるんだと大見え切ったわけでしょう。大見え切ったにふさわしく、国土交通省として、これらの問題について、キャンセル料の問題やさらには行事の中止、そういった問題について、観光全般に対してきちんとした支援をするためのイニシアチブを発揮すべきではないか、この見解を大臣に問いたいと思います。

金子国務大臣 京都で、一週間前でありますけれども、一週間前までに出たキャンセル料は二十六億円という報告を京都市長が受けております。

 それから、観光庁も、全部ではありませんが、今の煎茶道のキャンセルというようなのは、もとより長官もつかまえております。観光だけじゃなくて、タクシーも航空会社も全国で、決して関西だけではないんですけれども関西が中心になりました、一番影響が出てきているということを私も認識しております。

 したがいまして、一刻も早く安全宣言を出して、観光客に来てもらう、物が動くようになってもらえるようにしていきたいというポジティブな対策、我々としてもできる範囲でのポジティブな対応というのが一番大事だと思っておりますけれども、これは医学的な見地、いろいろなのがあるようですから、今検討してもらっております。

 今の御質問の関係でいえば、資金繰り的にいろいろな面で回っていかないというのに対して、政策金融公庫等、相談窓口を全国で九百二十七カ所つくって、相談をしてもらう。先般、特別保証枠が十兆円、二十から三十兆円にふやしてもらいました。補正で通りました。これに対して、こういうインフルエンザで影響を受けたところが話を持っていったときに、あなたのところはこれまでこれだけ借りているからだめですよみたいなことのようだったんですけれども、今度は新型インフルエンザ対策ということで上乗せで対応してもらえるような、前向きな話を今進めてもらっております。

 それから、さっきの、修学旅行のキャンセル料をどうすんやねんという話がありましたけれども、これは地域活性化・経済危機対策臨時交付金というのが、これも地方自治体に渡ったお金でありますが、これをキャンセル料に、自治体が必要とあれば対応してもらうということができるように今しております。

 もっと大事なことは、観光客をやはり早くふやしていくことだと思いますので、関西にキャンペーンを、特に穀田先生の京都だけじゃありませんけれども、滋賀県も入っていますけれども、関西への観光キャンペーンを総力を挙げてやるということを今進めております。そういう意味で、前向きに話をしていけるようにしていきたい。

 全国の被害を補償かという話になりますと、決して観光だけじゃない、飛行機もある、タクシーもある、あんこ屋さんもあるということで、なかなかその実態の把握というのが難しいのはもとより、基準をつくるというのも難しい。これはSARSのときもできなかったんです。しかし、先ほど申し上げたような金融面での対策で、やはり何とかこれでもっておかしくならないようにしていきたいというのが、今のところ講じている対策であります。

穀田委員 これは何度も言うんですけれども、金融というのは返さなくちゃならぬわけですよね。では、先ほど言ったところが七千万戻ってくるのかと。戻ってくる間のつなぎだったら、それは可能性があるんですよ。戻ってこないから、今、休業補償なんかも含めたものを検討しないとあかんというときに来ていると私は思うんですね。これは単に、京都や神戸の例を出しましたけれども、奈良も、それから和歌山、そして滋賀、当然大阪も大変なわけですから、それらはきちんとやっていただきたいと思うんです。

 次に、タクシー法案との関係で規制緩和の問題について、これは私はもっと端的に問いたいと思うんです。

 大臣に、先ほど来ずっと議論がありましたけれども、私は、規制緩和でタクシー業界はよくなったかということを端的に問いたい。当時の運輸大臣はどう言ったか。新しいタクシーの需要も起こってくる、労働者に対しても条件をさらによくしていく方向になっていくと述べたわけです。つまり、規制緩和の未来がバラ色であるとしたわけです。

 改めて質問します。タクシーの需要はふえたのか、労働者の労働条件はよくなったのか、この二つだけ、端的にお答えください。

金子国務大臣 全国のベースでいえば、残念ながら、タクシーの需要は減ってきた。これは今回の規制緩和だけじゃなくて、経済が悪くなっている、悪化する経済という背景ももとより複合的にありますから、規制緩和だけではありませんけれども、需要が減ってきている。タクシーの運転手さんの給料も下がってきているという現状であります。

穀田委員 経済の悪化のことを言わはりますけれども、私は思うんです。去年からの話は別ですよ。だけれども、この数年間というもの、政府は、イザナギ景気超えと言って、景気がよくなっている、よくなっていると言ったじゃないですか。こういうときだけ悪くなったというふうな話を使うというペテン的やり方はあかんということを言っておきたい。要するに、明確に悪くなったということなんです。

 それで、二〇〇〇年当時の質疑で、私どもは、需給調整廃止によって供給過剰状態を一層深刻化させると指摘をしたわけであります。単に労働組合や業界団体がそういう意見も述べたというだけじゃない、うちは共産党としてそういうことになるということを指摘した。

 そして、さらに、「規制緩和によりタクシーの台数がさらにふえ、一台当たりの水揚げが減れば、それをカバーするために一層の長時間労働を余儀なくされ、安全を脅かすことになる」と結論づけて、法案には反対の態度をとりました。そして、あわせて、政府の緊急調整措置は台数規制の歯どめにはならないと反対討論でも明らかにしたところであります。

 私は、去る六月二日の参考人質疑で主張しました。何か、こう言うとすぐ、ええところもあったとか、デメリット、メリットと言うんですよ。まずその前に、政策の誤りがどれほど多くの方々に被害と苦しみをもたらしたか、そのことに思いをいたすということが政治の基本だと。そういう人に対して、結果として安全が損なわれて人の命が失われることが生まれた、労働者が路頭に迷う事態が生まれる、給料が減っている、そういう事実に対して、タクシーの労働者が塗炭の苦しみをなめているということに対して、市場の失敗という言葉では済まされないと私は思っています。

 したがって、当時の見通しは、先ほどの議論じゃないですけれども、ちょっと違うというふうな話をしましたけれども、私はそう思っていない、大きく違うと。だから、大きく間違っていたというその反省はあるかということを端的にお答えいただきたい。

本田政府参考人 タクシー事業の規制緩和の当初の趣旨は、まさに事業者間の健全な競争、事業者の創意工夫、多様なサービスの提供、そういったことにございました。そういった意味で、一面、サービスの多様化、待ち時間の短縮といった形で、利用者にとって一定の効果もあらわれているものと認識しております。

 ただ、タクシー事業をめぐる状況は、地域によっては、規制緩和後の経済状況の悪化等の影響により、結果として輸送需要の低下に歯どめがかからず、それに伴って運転者の労働条件の悪化などのマイナス面が生じていることも事実であります。

 そうした事態について、規制緩和当時の見通しどおりに事態が推移しなかった面があると認めざるを得ません。いずれにしても、この問題に対しましては、現に生じている諸問題に対して適切な対策を講じてまいりたいと考えております。

穀田委員 適切な対策というのは、出した政策がどうだったかという検証の上にあるわけですね。よかった話があったなんという話じゃなくて、根本の中心は何だったか。あなた方は、我々の議論の際に、我が党の、当時、寺前議員、平賀議員が言ったのは、悪くなると。あなた方はよくなると言ったんですよ。よくなっていないんですよ。その結論をはっきりせな、何かちまちました話で、サービスがどうやったらこうやったらという話を何回したってあかんて、それは。やはりそういう認識では、タクシー労働者の血の叫びが私は理解できないと思うんです。

 大体、いつも例に出す福祉タクシーだとかそういうサービスなどというのは、規制緩和しなければできないことだったのか。だって、これは複数運賃でいうならば、一九九四年からMKタクシーが低運賃で参入している。それから、あなた方がよく言う福祉タクシーでも、むしろ今は採算がとれずにふえない事態に、膠着状況になっている、こうなっているわけですね。

 すぐ市場原理が働かなかったとか失敗だったとか言っているんだけれども、やはり市場任せにしたことが国民のサービス向上につながらなかったということを、まず根本を反省する必要があると私は思っているということを改めて主張しておきたいと思います。これは歴史が検証したということですよ。

 次に、法案の内容について少し聞いておきたいと思うんです。

 まず、地域協議会についてです。

 内閣提出法案では、特定地域におけるタクシー事業の適正化、活性化を推進するための地域計画の作成や、必要な協議を行うための協議会を組織することができると規定されています。タクシー事業の適正化、活性化を推進するために、この協議会が積極的な役割を果たすことが求められていると思いますが、こうした役割はどのように保障されるのか、そして、協議会には当然利用者も事業者も労働者も参加して、例えば公共交通機関としてどのようなサービスが求められているか、また、そうしたサービスをどう実現するのか、さらに、安全を確保するためにはどのような取り組みが必要かなど、積極的に議論し、取り組みに反映されることが肝心だと思うんですが、その点の見解をお聞きしたい。

本田政府参考人 御指摘のとおり、今回の法案におきまして、やはり、特定地域のタクシー事業の適正化、活性化を推進していく上では、その地域の幅広い関係者の方が参画した協議会、この協議会の取り組みの実効性を高めることは極めて重要な要素であるというふうに思っております。

 このために、まず、法案自体におきまして、協議会について、具体的なメンバーの構成、さらには、協議会で作成されます地域計画の成立要件、あるいは、地域計画で定められた場合、その事業の実施に係る協議会構成員の責務、さらには、協議会による事業実施主体以外の者に対する協力要請といった事項について事細かく法定させていただいております。

 さらに、協議会の具体的な運営方法等につきましては、本法案に基づき国が定める基本方針等に規定することを予定しておりますし、地域計画での作成事項についても、ただいまお話のありました、その地域をよくするためにタクシーの適正化、活性化、その具体的な施策、どういった事項を盛り込むかといった基本的な事項も、国が定める基本方針の中で明らかにするといった対策を講じてまいりたいと考えております。

穀田委員 私は、この問題をなぜ聞いているかということを少し述べたいと思うんですね。

 二〇〇〇年の法改正の際には附帯決議がありまして、簡単に言えば、そこでタクシー事業適正化協議会というのをつくりなさいといって、できたわけですよね。その後、二〇〇七年のいわゆるタクシー特別措置法を受けて登録諮問委員会などを地域で設置してきたわけですよね。

 ところが、例えば京都で調べますと、そういう後者の登録諮問委員会などというのは、なかなか開催されない。理由がまた振るっていて、学識経験者は夜でないとあかん、ところが、タクシー事業者は夜は仕事で忙しいと。ほんまかいなと思うけれども、それでなかなか開催されない。前のタクシー事業適正化協議会は、これは学識経験者がいない。それで、これは三つ目なんですね。三つ併用するのかどうか、それはいろいろやり方があるんでしょうけれども、私は、地域協議会を本当に実効あるものにするためには、今、本田さんがおっしゃったように、権限と性格をきちんとしなくちゃならぬ、今まであるものをどうするのかということも含めて。

 そうすると、やはり協議会というのは、日常的、継続的に開催することが求められるというのはどうか。あわせて、この協議会が実効あらしめるというのは、本当の意味で地域を代表するということになりますと、運賃やそれから労働者の賃金が適正かどうかということも議論しないと、肝心なことが抜けちゃう。そうすると、必要な資料を要求すれば提出されるといったようなルールが必要ではないかと思うんですが、その辺、二つ、お答えいただけますか。

本田政府参考人 本法案に基づく特定地域というのは、既に、現実に、供給過剰等により多くの問題が発生している地域でありますから、その問題を具体的に解決していくことが重要だ、その意味で、その中核的な役割を担うのが協議会、そしてその成果である地域計画だと存じます。

 順番に申し上げますと、まず、こうした協議会の権限や性格につきましては、先ほども触れさせていただきましたが、本法案八条、九条、十条といった規定において、できる限り具体的に規定させていただいたところでございます。それから、協議会の運営に関し必要な事項自体は、協議会が設置されるそれぞれの地域によって事情が異なりますので各協議会が定めるということにいたしておりますが、やはり協議会に託された責務、これが遂行できるように十分な配慮をしてまいりたいと存じます。

 さらに、地域計画の内容に関しては、今御指摘をいただきました、その地域の運転者の労働条件の改善、このための対策あるいは過度な運賃競争への対策につきましては、地域計画の必要記載事項とすることとし、これを国が定めます基本方針等に明記したいと考えております。

 また、協議に必要な資料の提出等に関しては、特に国につきましては、本法案第六条の規定により、国の責務として、こうした取り組みに必要となる情報の収集、整理、分析あるいは提供、助言その他の支援を行う、これを国の責務として規定させていただいておるところでございます。

穀田委員 したがって、提出は当然だということでいいわけですね。

 関連して、それでは利用者負担の軽減について聞きます。

 高齢者が増加し、障害者も含めて、移動が困難な方々がふえています。こうした方々の移動の権利を保障し、通院や社会参加の活動を可能にするため、タクシー輸送が果たすべき役割は今後一層拡大すると思われます。あわせて、だれもが必要なときにタクシーを利用できるよう、負担軽減措置が求められています。国には利用者の助成制度はありませんが、自治体によっては、これまでも独自にタクシー利用者への助成制度を設けています。

 今後、協議会でタクシーの活性化を議論し、こうした、特に政府や国交省が言う例の利用者ニーズにこたえたタクシーの運行ということや、利用者補助についての取り組みを具体化した場合、国として、こうした運賃の助成を行う自治体に対する補助制度は考えているのでありましょうか。

本田政府参考人 御指摘のとおり、地域の協議会では、高齢者の方あるいは障害者の皆さんの移動の確保という観点から、タクシーの活用をどうしていくか、そういった取り組みも当然話し合われることと思います。

 この点に関しまして、昨年十二月の交通政策審議会答申におきましては、「今後講ずべき対策」の中で「福祉輸送分野をはじめとして、当該地域社会において住民等から強く望まれている取組みに対しては、積極的な支援を行うことが望ましい。」という指摘がされております。

 これを受けまして、個々具体によって事情が違うと思いますので個別に判断をさせていただきたいと存じますが、地域の協議会においてそうした具体的な取り組みが決められました場合には、できる限りの積極的な支援を行うべく検討させていただきたいと存じます。

穀田委員 今行われている福祉タクシーというものに対して、車両購入補助などはあります。

 ただ、そういう意味でいいますと、地域計画でこういうことをやられた場合、これはいつも大切なのはランニングコストなんですよね。なかなか地方自治体でもそういうことの日常的金まで出せない、財政まで出せないという問題がありますから、そういう運賃の補助が必要だと私は思うんです。したがって、改めてこれは検討を求めておきたいと思います。

 次に、特定地域の指定について聞きます。

 内閣提出法案では、三条で、特定地域について、条件は四つばかりありますけれども、供給過剰の状況などを基準に、期間を定めて指定されるとしています。現在、通達に基づいて、特定特別監視地域、いわゆる供給の拡大によって運転者の労働条件の悪化を招く懸念が特に大きな地域として、〇八年度には全国六百四十四営業区域のうち百九地域が指定され、新規参入基準の引き上げや増車抑制措置が行われています。

 特定地域は、この特定特別監視地域を参考にするということだと伺っています。京都はこの特定特別監視地域に指定されていませんが、タクシーの実態といいますのは、人口百五十七人に一台の世界一タクシー過剰地域なんですね、人口当たりでいいますと。それぐらい台数があるんですよ。そう言うと大体、観光地域だから、こうくるんですけれども、別に観光といっても、波もあるので、そんなもの、いつもそういう人たちが来ているわけじゃないわけですから、問題は、基礎的な数字がこれだということであって、先ほど、私は三重苦という話をしました。規制緩和、そして経済危機、それからインフルエンザ、こういう被害、影響が起きている、そういう三重苦で、ますます深刻であります。

 特定地域の具体的な指定基準は今後検討するということでありますが、供給過剰となっている地域がきちんと対象となるよう運用すべきだと思いますが、いかがですか。

    〔委員長退席、奥野委員長代理着席〕

本田政府参考人 本法案に基づきます特定地域でございますけれども、これは、供給過剰が進行し、労働条件、とりわけ、そこで働かれる運転者の方々の労働条件が悪化している、そういったことを食いとめて、タクシーが地域公共交通としての機能を十分に発揮できるようにするのが、この制度の本来の趣旨でございます。

 そして、特定地域の指定基準については、現在検討中でありますので、特定の固有の地域について指定の有無についてはお答えできませんけれども、あくまでも、現在運用として実施しております特定特別監視地域の指定制度を参考としながら、この法案の審議内容等も踏まえながら、具体的な指定基準を検討してまいりたいと存じます。

 ちなみに、昨年七月十一日の段階で、特定特別監視地域制度の拡充を図りました際の京都の状況でございます。

 これは、地域指定の要件として、日車実車キロ、一日にお客さんを運んだキロ数、または日車営収、一日当たりの水揚げでございます。これが規制緩和前の平成十三年度と比較して、当時は直近のデータが平成十九年度でしたので、平成十九年度のデータが減少している、そういった地域で人口十万人以上の都市を含む営業区域、そういった要件を課させていただいたわけです。

 京都の交通圏について具体的な数字を申し上げますと、日車実車キロは、平成十三年度で八十七・七キロのところ、平成十九年度が九十キロ。それから日車営収が、平成十三年度が二万六千八百五十三円が二万七千九十九円。そういったデータでございましたので指定に及ばなかった、こういうことでございます。

穀田委員 その後、七月十一日以後ですから、大きく下がっているという現実があるから、当然これは指定されるべきものであるということだけは言っておきます。

 次に、今言った趣旨、つまり、悪化を食いとめるということが、こういう問題について大きな柱となっているわけですね。そこで今度は、労働者の犠牲を前提にした増車や低賃金の問題について、少し論を進めたいと思います。

 交通政策審議会答申は、タクシー事業の構造的要因として、利用者の選択可能性の低さ、歩合制主体の賃金体系を指摘しています。その上で、構造的要因への対応として、この要因が、需要が減少しているにもかかわらず増車が行われるなど、過剰な輸送力の増加や過度な運賃競争を引き起こす根源的な要素ともなっているということで、適切な対応の必要性を説いています。

 昨年暮れ、京都に本社を置くMKタクシーが、以下、MKと言いますけれども、一万人を雇用すると言って話題になりました。この話をすると、個々の企業がそういうことをするんですからというふうに国交省はすぐ、私のところに来て、聞きますとそう答えましたが、私はそれでは済まぬと。雇用の拡大と聞こえはいいけれども、MKが一万人雇用するということは、一万台増車するということなんですよ。もちろん、一車二人制ということにすれば、それは五千台ということになりますけれども。

 それにしても、結局、こういうことがなぜできるのか。つまり、一万人雇用をふやすんだ、五千台でも一万台でもいいですけれども増車するということを、なぜ彼らが言えるし、できるのかというところのなぞを少し議論し、MKの賃金システムの問題を取り上げてみたいと思います。

 皆さんには資料をお配りしていますが、なかなか見にくいのでわからないわけですけれども、まず厚労省に聞きます。

 累進歩合制は通達で禁止されているはずですが、その簡単な理由と、それから、ハイヤー、タクシー事業の累進歩合制度に限った指導件数の推移はどうなっているか、お答えいただきたい。

渡延政府参考人 お答えいたします。

 タクシー運転者に係る累進歩合制度については、水揚げ高等に応じて歩合給が定められている場合に、その歩合給の額が非連続的に増減する、いわゆる累進歩合給、水揚げ高等の最も高い者またはごく一部の労働者しか達成し得ない高い水揚げ高等を達成した場合にのみ支給する、いわゆるトップ賞、水揚げ高等を数段階に区分し、その水揚げ高の区分の額に達するごとに一定額の加算を行う、いわゆる奨励加給が該当する、これを総称して累進歩合制度と呼んでおります。

 賃金制度につきましては、本来、労使が自主的に決定すべきものでございますが、このような累進歩合制度については、労働者の長時間労働やスピード違反を極端に誘発するおそれがあることから望ましくないものとして、平成元年の労働基準局長通達に基づき廃止するよう指導を行ってきているところでございます。

 ハイヤー、タクシー事業場に対して実施した監督指導、平成十七年から十九年度までの累進歩合制度に係る指導の状況について申し上げますが、平成十七年には、監督指導を実施した九百十一件のうち八十七件、九・五%について、同じく十八年には九百三十二件のうち百十八件、一二・七%について、平成十九年には同じく七百十二件のうち八十件、一一・二%についてこれが認められたところでございまして、廃止するよう指導してきたところでございます。

穀田委員 私は、極めて問題だと思うんです。つまり、累進歩合給を禁止しているのに、なくなっていないということなんですね。そして、指導監督の率からいいますと、今ありましたように、九・五%から一二・七、一一・二ですか、一〇%台でずっと推移して高どまりしているということがあるわけで、しかもこれは、指導件数というのは氷山の一角でしかないことは、だれもが知っているわけなんです。

 千葉日報は、次のように述べています。

 「タクシー業界 累進歩合給の廃止進まず 労基署指導に「偽装」も」ということまで書いて、これは見出しですけれども。「長時間労働を招く「累進歩合給」の廃止が進まず、県内のタクシー運転手から、改善を求める訴えが続いている。累進歩合給は、一定の売り上げに達すると運転手の取り分が増える賃金体系。」中略します。

 「給料確保のため、運転手は必然的に過重労働を強いられる。労基署は累進歩合給を廃止するよう指導しているが、給与体系の偽装やその場しのぎの対応をとる業者も」いる。「労基署は、国の告示を守るよう指導しているが、船橋労基署の担当者によると、是正勧告で一旦は累進歩合給を廃止しても、数年後には元に戻す会社や、労基署に報告する書類と内部規定が別で、実際には保障給がなく、累進歩合給を取っている会社もあるという。」

 こういう実態があるわけですね。広くこれがあるということは、やはりメディアも認識しているわけであります。

 私は、累進歩合給の指導対象が、廃止すべきと言っている対象が、なぜ非連続的に増減する、これは非連続というんですね、なぜそれだけなのか。今答弁があったように、累進歩合給の問題は、売り上げに応じて賃金が大きく変動する場合、長時間労働やスピード違反を極端に誘発する危険性が高いから廃止を通達しているわけですよね。

 私は、非連続であろうが連続であろうが、問題は刺激性が高いかどうか、そして、結果として、収入を上げるために長時間労働が行われているかどうかにポイントを見定めて指導すべきではないのかということについて、少し伺いたい。

渡延政府参考人 お答えいたします。

 本来、労使により、事業場の実情に応じ自主的に決定され、また、実態も多様である賃金制度について、労働基準関係法令の施行を任務とする労働基準監督官が全国斉一的に指導を行うに当たりましては、労働能率への刺激効果を初め、個々の賃金制度の内実に立ち入って評価、判断することは、元来非常な困難を伴うものであることをまず御理解いただきたいと存じます。

 こうした制約を前提としつつも、タクシー運転者の長時間労働や交通労働災害につながりかねないスピード違反を防ぐ意味から、賃金制度についても指導の対象とし、かつ、全国斉一性を確保しつつこれを行うためには、ある程度明確な着眼点が示されることが必要であります。

 そうした着眼点として、ただいま御説明いたしました、例えば、水揚げ高と歩合給の額が非連続的に増減する、非連続点を有することなどの特徴を持った賃金制度を累進歩合制度として、指導対象として示しているものでありますことを重ねて御理解賜りたいと存じます。

穀田委員 いや、労働者は理解できないと言っています。私も理解できない。大体、タクシー労働者の年間総実労働時間の推移を見ましても、やはり先ほども議論がありましたように、全産業労働者平均の労働時間と比べても、二百四十時間も多いわけですよ。そこに象徴的にあらわれているということを見なくちゃなりませんよ。

 MKの資料を配付しましたが、一番下の賃金支給額試算表という欄をごらんください。MKの賃金は、売り上げが高くなれば高くなるほど、賃率、すなわち、売り上げに対する賃金の割合が上昇する仕組みになっています。これを見ても、売り上げ五十万であれば賃金が二十三万一千四百二十八円、四六・三%、八十万なら五十一万四千九百二十八円、六四・四%であります。

 普通、違法とされる累進歩合制は、最高賃率と最低賃率の差が二〇%程度だと言われています。MKのそれは三四%。最低限は、例えば四十万のラインを見てください、賃率は三四・三%。一番高いところでいいますと、先ほど言いました八十万の場合でいうと六四・四%。三〇ポイント近く開きがある。これは非連続ではないかもしれないけれども、売り上げを上げれば上げるほど、賃率自体が急カーブで上昇する。

 厚労省は、非連続というと、こう階段状に言うわけですよ。これが上がったところ、階段のところを上がる場合、ここを問題にしているわけですね。そのカーブは、今お話ししたように、平均でいえば大体この二〇%ポイントに近いものだ。ところが、今お話ししたように、MKの場合には、非連続でないかもしれないけれども、急カーブを描いてぐっと上がる。こういうことになれば、まさに究極の累進歩合給ではないか。

 刺激性の高いMKの累進歩合制が、ないしは類似行為がなぜ禁止されないのかということを私は言いたいわけです。多くの人たちがこれは理解に苦しむわけですよ。誘発する極端な長時間労働ということを言うのであれば、そこに着目すれば、MKが京都の中でも極めて長時間の労働を強いている実態や、急速なカーブを描いているということは、だれもが知っているわけですね。それをなぜ禁止できへんのかということを、一言、言ってください。

渡延政府参考人 個別の事案についてのコメントはこの場では差し控えさせていただきますが、ただいま御提起がありました問題につきまして、重ねてのお答えで恐縮でございますが、個別の労働基準監督官の立場で指導するに当たりましては、労働能率の増進と水揚げ高と賃金の関係といったものについて、ある程度外形的、客観的に判断できる着目要素がどうしても必要でございます。

 そうしたものを全国的に斉一的に指導を展開するために必要な制約があるということを、ぜひ御理解賜りたいと存じます。

穀田委員 何回も言うように、それは理解できぬ。そういう現実があるということを見逃しているから、みんな、ほんまに助けてくれへんと思っているわけですやんか。何の労基局だと多くの方々が言っているということについては、私は一言言っておきたいと思うんです。

 そこで、もう一つ。このMKというのは、今言った累進歩合給で一方やると同時に、もう一つ、別なやり方をしているんですね。名義貸しという問題について少し触れたいと思うんです。

 名義貸しの根本というのは、タクシー経営者とは、タクシー事業に係る損益の帰属主体として、みずからの危険負担のもと、事業遂行に伴うさまざまな責務を適切に全うすべき主体を指すという規定なんですね。

 これは、聞いているとなかなかわからないので、簡単に言えば、平たく言えば、事業をする上で損失等のリスクは事業者が負うべきである、労働者にそのリスクを背負わせることがあってはならないとしているわけですね、簡単に言うとそういうことですわな。これは名義貸しの行為の判断の基準であって、労働者性の担保にかかわる問題であります。

 そこで、MKのシステム支給基準を見ていただきたい。真ん中ですね。それは、運転手が負担する固定経費の中には、車両費や社会保険の事業主負担分、公課費という名目で事業主負担分が明記されています。車両保険費が含まれている。さらに、下の変動経費の欄には、燃料費、修理部品費、制服費、メーター費、シートカバー費まで含まれています。

 要するに、タクシー事業に必要な経費はすべて運転手が負担するという仕組みで、MK側はリース制と言ってはばかりません。このようなやり方が経営者として、先ほど述べた、みずからの危険負担をせずに、事業遂行に伴うさまざまな責務を適切に全うしていないということは明らかではないのか。どうですか。

本田政府参考人 まず、道路運送法で禁じております名義貸し行為あるいはその基準について、少し御説明を申し上げたいと存じます。

 道路運送法は、タクシー事業の経営に関して許可制をしかせていただいておりまして、輸送サービスの円滑かつ確実な提供、あるいはその安全の確保、さらには利用者の利益の保護、利便の向上、そういったことを目的として、事業者みずからが適切な事業計画と能力を有する、これを確保する、これがまず法の基本であります。

 このために、具体的には、許可を受けた事業者に対しては、運行管理の適切な遂行あるいは事業資産の適切な管理、事故時の賠償責任、そういった責務をみずから負うことを求めておるわけであります。

 これに対し、道路運送法第三十三条で禁止をされておりますいわゆる名義貸し行為、これは、今申し上げました、許可を受けた事業者がみずから負うこととしております責務を、許可事業者の名義を用いながら、許可を受けていない第三者に実質的に負わせる、そういう行為でありますので、道路運送法のそもそもの事業許可制度の趣旨を没却するということで、これを禁止しておるわけでございます。

 この点に関して、私ども、具体的にどういう場合に名義貸し行為に当たるかどうかの判断基準、いわゆるガイドラインを昨年六月六日に策定し、全国の運輸局に指示をしたわけでありますが、その中におきましては、まずは五つの要素、一つは雇用関係、それから経理処理、今先生がおっしゃいました経営のリスクといったようなことも含めた経理処理、それから運行の管理、車両の管理、あるいは事故の処理、これを許可事業者がみずからの責任で行っているのかどうか、それを総合的に判断する必要がある、これが判断基準ということでございます。

 今先生からお話のありました特定の企業の賃金制度について申し上げますと、そこでリース制と言われる形態は、タクシーの運送収入のうち、その一定額を控除した金額を運転者の収入とする、そうした賃金体系を指すものと認識しております。

 そうした賃金体系自体、労使の間でどう締結され、かつ、労働法規に照らしどう判断するかというのは、今私どもがお答えする立場ではありませんが、これを名義貸し行為の判断基準として見ますと、経理処理等を許可事業者がみずから行っているかどうかがやはり重要な判断要素となりますので、運送収入が一たん全額その会社の事業収入として計上されている場合には、それを直ちに名義貸し行為に該当する、そういった判断をするというのは実態としては難しいと思います。

 ただ、例えばその他の要素で、先ほど申しました事業者の雇用関係で、運転者の固定給あるいは保障給等一定の保障された給与の支払いがないとか、本来事業者が支払うべき社会保険料あるいは雇用保険料控除、源泉徴収が行われていないといった他の要素、これを含めてやはり総合的に判断せざるを得ないと考えております。

    〔奥野委員長代理退席、福井委員長代理着席〕

穀田委員 今言った判断基準の五点、それは承知しています。そこにありますが、ただ、私が言っているのは、労働者性というところに着目をすれば、確かに、料金収入の全額が事業者収入に計上されていないということがあればというふうなことをいつも言うんですね。

 最後のところで今、本田局長がおっしゃった、結局、では、どんな形で金を渡しているのか、何を負担させているのかということを見た場合に、先ほど言ったように、公課費として厚生年金だとか雇用保険だとかという、本来事業者が払うべきものまでそんなことをやっている。ということになると、これはまさにすれすれのことをやっているというふうに言わざるを得ない。その辺はうまいんですよ。

 今言った五点のところは、確かにクリアしかかっている。例えば一つ、今言った五つのうち一つだけクリアしていないでここの会社がまずいというんじゃないんです。五つともクリアしているんだけれども、法すれすればかりやっていて、全部足すと今までになくひどい。これがMKのやり方というのは、みんな知っているんですね。

 MKは、今私が述べましたように、賃率急上昇の累進歩合制ということを一つの柱に、もう一つは、必要経費は全部運転手持ちのリース制という二本柱で来ているんですよ。まさに、先ほど言いましたように、脱法、違法すれすれの行為をやって、告発されるとすぐ訂正して、そこをうまく切りかえていくというやり方をしているんですね、ここは。

 そこで、車だけ貸してその経費を受け取る、損をするのは労働者だけで、会社は損しない、こういう仕掛けなんです。だから、増車すればするほどもうかって、運賃を仮に安くしても、会社の収益には関係ない。ここに、増車と低賃金を可能ならしめる構図があるわけですね。

 MKのように労働者を犠牲にして低運賃を売り物にすることが公正な競争と言えるのだろうか。ひいては、利用者、国民の安全、安心を守れるのか。そして、地域社会経済に活性化だとかいうことで貢献できるのかということは疑問だと私は思うんですね。

 したがって、国交省として、先ほどの五項目もいいんだけれども、実際に起こっている現場の労働の実態、確かにこれは厚労省の関係です。でも、接近の角度はいろいろあるんですが、本当にこの増車と低賃金という二つの問題が今日一番の問題だということに着目した場合は、まさに国交省として経営実態に踏み込んだ指導監督、そのためにも厳格な法規制をすべきじゃないのかということについて、大臣、いかがですか。

金子国務大臣 実態は私はわかりませんが、今委員のお話を伺っている限り、かなりぎりぎりというんでしょうか、五つの指標については一応クリアしているというお話もありましたけれども、総体として見ると相当ひどいと。これもちょっと私、委員がおっしゃったことが、逆によく理解できなかったんです、五つの項目が全部クリアされて、全部を足し合わせるとひどいというのは。だから、それは別としまして、やはりそういう実態もいろいろ御指摘いただく部分もあるんだろうと。

 そういう意味で、この法案が施行されたときに、そういういわば公共交通機関としての役割、あるいは運転手さんへの名義貸しというお話も大分出ましたけれども、禁止されているもの、最低賃金制、それから累進歩合というあり方、これについて、今、これまでは厚労省がチェックしていて、ある意味情報共有しながらもそこで終わっていたようなところもあるかもしれませんが、今度この法案を運営していく上で、ある意味、そういう厚労省の労働基準局の調査というのもきちんと共有してもらって、そういうものを踏まえて経営監査に国交省として当たってもらうということは当然やっていきたいと思っています。

本田政府参考人 補足をさせていただきますと、タクシー事業の場合に、やはりさまざまな問題の要因に歩合制賃金があるという認識から、交通政策審議会答申におきましても、「歩合制賃金については、その実態を所与の前提とするのではなく、営業形態や運行管理の実態等を踏まえ、合理的な範囲内で、例えば固定給のあり方など、タクシー運転者の賃金システムの改善の可能性等につき、関係者で検討を深めていくべきである。」という指摘をいただきました。

 この指摘を踏まえ、本年三月三十日に、厚生労働省にも御参加いただく形で、関係者で構成されますタクシー事業における賃金システム等に関する懇談会を設置し、運転者負担制度、こういったことも含めた賃金システムのあり方について検討を行っていくこととしております。その検討を踏まえ、所要の改善を図ってまいりたいと考えております。

穀田委員 その検討の際の基本は、労働者の実態であり現実だということを私は言っておきたいと思うんです。

 タクシーの需要が増大しないにもかかわらず、なぜ増車が続くのか、この根本原因は、歩合給、とりわけ累進歩合給の事実上の蔓延があるからなんですよ。また、低運賃競争がなぜ可能なのか、それは、事実上のリース制によって、収益が減るリスクは運転者に負わせ、経営者が損をしない仕組みとなっているからなんですよ。経営者は、運賃値下げもしくは増車によって一台当たりの営業収入が減っても、台数をふやすことによって売り上げを維持ないしは増加させることができるわけであります。

 つまり、歩合制、累進歩合制と事実上のいわゆるリース制をとっていること自体が、必然的に増車、値下げ競争が激化する産業構造なんです。ここがポイントなんですよ。だから、ここにメスを入れることが今後のタクシー業界の発展にかかわると私は考えています。

 だから、私はいつも言っているんです。一番最初に言ったように、最後の質問のときに言ったように、労働者の労働実態、生活実態を改善することに視点を置けば、必ずここがきいてくると思っています。

 最後に、大臣に一言。今、政府提出のタクシー法案と野党提出の二法案が修正協議が行われています。これが実った場合、やはり国交省としてきちんとした、実行するかどうかについてだけ、決意をお聞きしておきたいと思います。

金子国務大臣 与野党共同修正というお話を、おまとめになりそうだという話も伺っております。法律をつくっても運用ができないようではしようがありませんから、きちっと体制を整えて運用させていただきたいと思います。

穀田委員 終わります。

福井委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四分散会


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