衆議院

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第3号 平成21年11月20日(金曜日)

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平成二十一年十一月二十日(金曜日)

    午前十時三十三分開議

 出席委員

   委員長 川内 博史君

   理事 阿久津幸彦君 理事 小泉 俊明君

   理事 田中 康夫君 理事 橋本 清仁君

   理事 村井 宗明君

      阿知波吉信君    石井  章君

      石山 敬貴君    加藤  学君

      勝又恒一郎君    神山 洋介君

      川島智太郎君    川村秀三郎君

      菊池長右ェ門君    熊田 篤嗣君

      黒岩 宇洋君    小林 正枝君

      中川  治君    中島 正純君

      長安  豊君    畑  浩治君

      早川久美子君    馬淵 澄夫君

      三日月大造君    三村 和也君

      向山 好一君    谷田川 元君

      山田 良司君    若井 康彦君

      渡辺 義彦君    穀田 恵二君

      中島 隆利君    吉泉 秀男君

    …………………………………

   国土交通大臣       前原 誠司君

   外務副大臣        武正 公一君

   国土交通副大臣      辻元 清美君

   国土交通副大臣      馬淵 澄夫君

   防衛副大臣        榛葉賀津也君

   国土交通大臣政務官    長安  豊君

   国土交通大臣政務官    三日月大造君

   国土交通委員会専門員   石澤 和範君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十日

 辞任         補欠選任

  阿知波吉信君     石山 敬貴君

  石井  章君     渡辺 義彦君

  早川久美子君     山田 良司君

  中島 隆利君     吉泉 秀男君

同日

 辞任         補欠選任

  石山 敬貴君     阿知波吉信君

  山田 良司君     早川久美子君

  渡辺 義彦君     石井  章君

  吉泉 秀男君     中島 隆利君

    ―――――――――――――

十一月二十日

 北朝鮮特定貨物の検査等に関する特別措置法案(石破茂君外十名提出、衆法第一号)

 国際連合安全保障理事会決議第千八百七十四号等を踏まえ我が国が実施する貨物検査等に関する特別措置法案(内閣提出第一二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国際連合安全保障理事会決議第千八百七十四号等を踏まえ我が国が実施する貨物検査等に関する特別措置法案(内閣提出第一二号)


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     ――――◇―――――

川内委員長 これより会議を開きます。

 開会に先立ち、自由民主党・改革クラブ、公明党及びみんなの党所属委員に御出席を要請いたしましたが、御出席が得られません。

 再度理事をして御出席を要請いたさせますので、しばらくお待ちください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

川内委員長 速記を起こしてください。

 理事をして自由民主党・改革クラブ、公明党及びみんなの党所属委員に対し御出席を要請いたさせましたが、いまだ御出席が得られません。やむを得ず、万やむを得ず議事を進めます。

 本日付託になりました内閣提出、国際連合安全保障理事会決議第千八百七十四号等を踏まえ我が国が実施する貨物検査等に関する特別措置法案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。国土交通大臣前原誠司君。

    ―――――――――――――

 国際連合安全保障理事会決議第千八百七十四号等を踏まえ我が国が実施する貨物検査等に関する特別措置法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

前原国務大臣 ただいま議題となりました国際連合安全保障理事会決議第千八百七十四号等を踏まえ我が国が実施する貨物検査等に関する特別措置法案の提案理由につきまして御説明申し上げます。

 今年五月二十五日、北朝鮮は核実験を実施しました。北朝鮮による核実験の実施発表はこれで二度目であります。北朝鮮による核実験は、北朝鮮が大量破壊兵器の運搬手段となり得る弾道ミサイル能力を増強させていることとあわせて考えれば、国際社会の平和及び安全に対する脅威であり、その脅威は近隣の我が国にとって特に顕著であります。こうした我が国の安全保障に対する挑戦は、断じて容認できるものではありません。

 国際連合安全保障理事会が決議第千八百七十四号を全会一致で採択し、こうした北朝鮮の一連の行為を強く非難するとともに、北朝鮮及び各国がとるべき追加的な措置を決定したことを評価します。決議の採択に当たり、米国、韓国等の関係国と緊密に連携し、協議に積極的に参画した我が国には、この決議を実効あらしめるよう適切な対応を早急に行う責務があります。

 この法律案は、国際連合安全保障理事会決議第千七百十八号が、核関連、弾道ミサイル関連その他の大量破壊兵器関連の物資、武器その他の物資の北朝鮮への輸出及び北朝鮮からの輸入の禁止を決定し、さらに、同理事会決議第千八百七十四号が当該禁止の措置を強化するとともに、国際連合加盟国に対し当該禁止の措置の厳格な履行の確保を目的とした貨物についての検査等の実施の要請をしていることを踏まえ、我が国が特別の措置として実施する北朝鮮特定貨物の検査等の行政上の措置について定めることにより、北朝鮮の一連の行為をめぐる同理事会決議による当該禁止の措置の実効性を確保するとともに、我が国を含む国際社会の平和及び安全に対する脅威の除去に資することを目的として提出するものであります。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、北朝鮮を仕向け地または仕出し地とする貨物のうち、国際連合安全保障理事会決議第千七百十八号等により北朝鮮への輸出の禁止及び北朝鮮からの輸入の禁止が決定された核関連、ミサイル関連その他の大量破壊兵器関連の物資、武器その他の物資であって政令で定めるものを北朝鮮特定貨物と定義しております。

 第二に、海上保安庁長官または税関長は、船舶が北朝鮮特定貨物を積載している等と認めるに足りる相当な理由があるときは、海上保安官または税関職員に検査をさせることができることとしております。

 第三に、海上保安庁長官または税関長は、検査の結果、北朝鮮特定貨物があることを確認したとき等において、海上保安庁長官にあっては当該船舶の船長等に対し、また、税関長にあってはその所有者または占有者に対し、その提出を命ずることができることとしております。

 第四に、海上保安庁長官または税関長は、提出を受けた北朝鮮特定貨物を保管しなければならないこととするとともに、提出貨物の公告、返還、売却及び廃棄について定めております。

 第五に、海上保安庁長官は、一定の事由があるときは、当該船舶の船長等に対し、当該船舶をその指定する港等の検査等に適した場所に回航すべきことを命ずることができることとしております。

 第六に、外国の当局による公海上の日本船舶に対する検査について我が国が同意しないときは、国土交通大臣は、当該日本船舶の船長等に対し、我が国または外国の当局による検査を受けるために当該日本船舶をその指定する港に回航すべきことを命ずることとしております。

 第七に、公海にある外国船舶に対する検査、提出命令及び回航命令は、それぞれ、旗国の同意がなければ、これをすることはできないものとしております。

 第八に、関係行政機関の協力について定めております。

 第九に、内水等における検査を忌避等した者並びに提出命令及び回航命令に従わなかった者には、罰則を科すこととしております。

 なお、この法律案は、さきに述べた北朝鮮の一連の行為をめぐる現下の情勢に対応して実施する特別の措置を定めるものであり、国際連合安全保障理事会決議第千八百七十四号の関連部分が効力を失ったときは、別に定める法律によって廃止することとなります。

 以上が、この法律案の提案理由及びその概要でございます。

 この法律案が速やかに成立いたしますよう、御審議をよろしくお願い申し上げます。(拍手)

川内委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

川内委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。黒岩宇洋君。

黒岩委員 皆さん、おはようございます。民主党の黒岩宇洋でございます。

 前原大臣、きょうは眠くはありませんか。私は多少眠いんですが、この不正常な委員会を吹っ飛ばす思いで元気に質問しますので、どうか答弁のほど、よろしくお願いをいたします。

 北朝鮮という相手は、私は大変ひどい相手だと思っております。今回の核実験やミサイルの発射、そして我が国にとっても本当に大きな懸案課題となっている拉致問題といった、さまざまな挑発的な行為を国際社会に振りまいている。そして、この北朝鮮との関係においては、対話と圧力といいますけれども、私は、やはり徹底した圧力が必要だと思っております。なぜならば、なかなか、この北朝鮮という相手は、対話だけでは交渉が成り立ちづらい。例えば拉致問題について、このことを考えてみたいと思います。

 〇二年の九月十七日に、小泉総理の訪朝によって、我が国の拉致被害者十三人のうち五人生存、そして八人死亡という情報がもたらされました。これは、日本人はだれもが信じられないと思ったと思いますよ。さらに、あり得ないと思ったと思います。

 では、どれほどあり得ないかということを、私は、確率統計で少し計算してみたんです。どのくらいあり得ないのか。

 これは、例えば横田めぐみさんのケースですと、十三歳のときに拉致をされたんですけれども、二十九歳で死亡だと北朝鮮は言っていますけれども、では、本当に二十九歳で、日本人のうち、横田めぐみさんと同い年、同じ年に生まれた十三歳の方が二十九歳で死亡する率はどんなものか。これは調べてみますと、約二%なんですね。これは割と年齢が低いので、百人のうち二人ぐらいが亡くなっている。

 しかし、例えば田口八重子さんのように、二十二歳の元気な方が、三十歳で亡くなったと言われていますけれども、では三十歳で亡くなる確率はというと、これはもう一%を切るんですよ、〇・何%。当然、ほかの死亡された方もほとんど、日本において亡くなる率は一%を切っている。

 これをすべて掛け合わせて順列組み合わせの計算式を加えると、出るんですよ、数字が。あらあらなんですけれども、これは、十三人中八人の方が亡くなる、そして五人の方が生存する確率は、一京分の一以下なんです。よく我々は言いますよね、万が一あり得ないよねと。しかし、一京というのは一兆の一万倍ですから、万が一の一兆倍あり得ない。すなわち、確率統計論、科学的に、論理的においては絶対にあり得ないことを事実として北朝鮮は我が国に通告してきたわけです。

 ですから、およそ論理性を持って議論できる相手ではない。あり得ないことをあり得ると言ってしまう相手に対しては、私は、正直申し上げて、やはり圧力というものを強めない限り、なかなか交渉の糸口は見出せないと思っております。

 そこで、鳩山政権は、この北朝鮮のさまざまな懸案事項に対して解決の道を探るんだ、こういう力強いメッセージを発信している内閣でございます。その内閣の一員である前原大臣、そして一人の政治家としての前原誠司さんの、今回のこの法案の制定を通してという趣旨も踏まえながら、毅然とした態度で北朝鮮とのさまざまな懸案事項を解決していく、この決意と御所見をお聞かせください。

前原国務大臣 黒岩委員は、新潟の選挙区、御出身でございまして、特に、横田めぐみさんを初め拉致被害者の方々、また御家族の方々に対する思い入れも人一倍お強い。また、そういった問題に積極的に取り組んでこられたことに、心から敬意を表したいというふうに思います。

 今委員がおっしゃったように、北朝鮮には、我が国からすると、拉致の問題、核の問題、そしてミサイルの問題、ほかにもさまざまな問題がございますけれども、そういった日本の主権を脅かす、大変ゆゆしき問題を抱えている国でございまして、そういった国に対しては、毅然と対応していくということは基本ではないかと私も考えております。

 今回、この核実験について、あるいはミサイルの問題については、国連決議一七一八、一八七四、こういった国連決議に基づきまして、我々も、北朝鮮の危険な、そういった核あるいはさらなる大量破壊兵器の拡散や、あるいはさまざまな技術が北朝鮮に入り込まないように、これは全会一致の国連決議でございますので、日本も国際社会の一員として、また北朝鮮に対するそういった懸案事項を抱える国として、しっかりこの法律を制定し、国際協調の中で毅然とした対応を日本もとっていくということが大事だと思っておりますので、ぜひこの法案を通していただき、日本の決意というものを北朝鮮にもしっかり伝えるということが大事だと思います。

 あわせて、六者協議なりあるいは米朝協議というものが行われる糸口が、おぼろげながらではございますけれども見えているわけでございまして、当然ながら、そういった対話を通じて北朝鮮を説得していく、そして、朝鮮半島を非核化されたものにしていくために、粘り強い努力を日本も関係諸国と連携をしながら行っていく、こういった姿勢が大事だと考えております。

黒岩委員 ありがとうございます。その決意を示していただきまして、民主党政権一丸となってこの問題に取り組んでいきたいと私ども思っております。

 さて、短い時間で、この貨物検査法案の全体の検査の流れについて若干お聞きしたいと思います。

 これはまず、我が国の内水においては、この検査はもちろん何の問題もなく我が国の権限で行えるんですけれども、では、我が国の領海においてこの検査を行うときに、外国領海においては、国際法上、どの国の船舶においても無害通航権、要するに、害がなければ通航する自由な権利が与えられておるんですけれども、この法案のスキームですと船長の承諾が必要です。承諾があれば検査をする、ないしは、船長の承諾がない場合は回航命令が行われる、そして、回航命令に従わない場合は懲役刑がある。このスキームは国際法上の無害通航権とどういう関係になっているのか、国際法上何ら問題がないのか、その点についてお聞かせください。

三日月大臣政務官 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、世界のそれぞれの国が船舶を航行する場合、国連海洋法条約に基づきまして、それぞれの国の領海を通航する場合に認められる権利、すべての国の船舶が有する権利というものとして、無害通航権というものがあります。

 今回、この法律で定める、我が国の領海内における旗国の同意を得ずに貨物検査を行うということについては、この無害通航権を制限する関係になります。すなわち、安保理決議第千八百七十四号主文十一において、すべての国が、領海を含む自国の領域内で、禁止されている品目を含むと信じる合理的根拠があることを示す情報を当該国が有する場合には、貨物を検査することが要請されております。

 したがいまして、本来であれば無害通航とみなされる航行を行った際であったとしても、本法案に言う、北朝鮮特定貨物を積載していると認めるに足りる相当な理由があるときについては検査を行うことができる、このことについては国際法上も問題がないということで規定をさせていただいております。

黒岩委員 ありがとうございました。

 無害通航権の制限はあるけれども、この安保理決議によって国際法上の問題がクリアされるということで理解をさせていただきました。

 次に、領海内はいいんですけれども、いわゆる公の海、公海に出たときに、これは今政務官がおっしゃった旗国の同意が必要になるんですけれども、この同意は、具体的にどのような手続、そして形式において求めるのか、これについてお聞かせください。

三日月大臣政務官 今おっしゃった公海上の船舶に対しては、旗国の同意を得て貨物検査を行うこととしております。

 この同意を取りつける手段については、一般国際法上の規則や慣行というものはありません。また、今回の安保理決議においても、それをどういう手段においてとるかということについての言及もありません。また、それぞれ、個別具体的な状況というものが異なるということが考えられますから、確定的なことを申し上げることはできないんですけれども、例えば手段については、それぞれの外交当局を通じた確認という形で行われる、同意を得るということが考えられると思います。

 また、旗国から同意を取りつける形式、どのようなものをもって同意が得られたかという形式につきましても、これも国際法上の規制や慣行というものがなく、個別具体的な状況によって変わるということがありますが、対象となる船舶の旗国が我が国による検査等の措置に同意をしている、その同意をしているということが明確に示されることが重要だ、同意をしているということをきちんと確認できる、そういう形式を取りつけることによって確認をしてまいりたいというふうに考えております。

黒岩委員 手続、形式については理解したんですけれども、要は、懸念しているのはいかに速やかに同意を得るかであって、同意を得る間に船舶は公海を自由に航行しているわけですから、ではいざ検査ができませんでしたというようなことにはならないように、こういう指摘をさせていただきます。

 そして次に、旗国の同意がない場合ですね、旗国が同意しなかった場合は旗国が回航指示をする、こういうスキームになっていますけれども、旗国自身、自分の国に回航しなさいという場合、ある国が、我が国の回航命令には従わないよ、だけれども、自分の国の船舶を自分の国に回航しなさいと指示した場合とか、ないしは、日本とは外交上距離のあるような国ないしは旗国と大変親しいけれども日本とは距離のあるような国に回航指示をした場合、その港でその国の当局が検査をすることになる。こういうふうなスキームになっているんですけれども、このようなスキームで本当に実効性ある検査ができるのかどうか、この点について御説明をいただきたいんです。

三日月大臣政務官 大事な部分だと思います。

 この法案では、公海上の船舶に対して、今委員もおっしゃいましたけれども、旗国の同意を得て貨物検査を行うこととしています。

 しかし、旗国が同意をしない場合もあり得る。そういう場合については、旗国が回航指示をするということをこの安保理決議の千八百七十四号に基づいて義務づけをしております。さらに、回航先の国、要は、今委員もおっしゃった、同意もしない、その旗国が自分の国自身に回航先を指定した場合についても、当該船舶の貨物を検査することがこの安保理決議において要請をされております。

 この安保理決議で義務を負い、かつ要請をされている、そういったものをそれぞれの国が広く遵守し、取り組んでいくということによって、この北朝鮮の貨物の検査というものが、輸出入が禁じられるものについてきちんと制限できるという効果が持てるように、私たちは期待をしております。

黒岩委員 わかりました。

 それと、このスキームですと、最後、旗国が回航を指示するとありますね。でも、この指示をしなかった場合、ほったらかしにした場合、これは最後どうなるんですか。

三日月大臣政務官 繰り返しになりますけれども、同意をしない場合についても、その旗国は回航を指示する義務を負っております。さらに、回航先の国において当該船舶の検査をすることが要請されているにもかかわらず回航指示をしなかった場合については、このような不作為について安保理に報告をされるということになります。

 さらに、先ほども申し上げましたけれども、そういったことがないように、それぞれの国が遵守することによって制限できる、輸出入の禁止物品について北朝鮮が持ち出し、持ち入れをすることができないようにするという効果が持てるように期待をしているというところであります。

黒岩委員 最後、締めくくりますけれども、今国連決議の十三項で、要は制裁委員会に提訴することができるとあるんですけれども、この制裁委員会というのは、正直言って結構対応が時間がかかるわけですよ、半年とか。その間に、もう船は港に着いちゃっているわけですね。ですから、そう考えると、やはりなかなか、この法案だけですべて実効性あらしめるのは難しい部分もきっとある。そして、旗国が北朝鮮の場合だったら、同意をすることはあり得ないでしょうし、回航指示もしない、こういったものがある。

 最後、私が申し上げたいのは、確かにこの法案はすばらしいスキームですけれども、そうはいっても、この法案ですべてが取り締まれるわけじゃない。重要なことは、この法案を制定して、そして国際社会と我が国が協調し、そして、この法案にも書かれていますが、我が国の関係行政機関が緊密に連携をとって、早目早目に北朝鮮という相手にプレッシャーをかけていくんだ、圧力をかけていくんだ、このことをお願い申し上げまして、私からの質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

川内委員長 黒岩宇洋君の質疑は終了いたしました。

 次に、中島隆利君。

中島(隆)委員 社会民主党の中島隆利でございます。

 この法案につきましては、さきの議会でも一度議論をされたということでありますが、私は、今回初めてでありますので、数点にわたって御質問をさせていただきたいと思います。

 ことしの四月の北朝鮮によるミサイル発射、さらには五月の核実験の実施は、理由のいかんを問わず、地域の安全を損なう、到底認めることができない行為と言わなければなりません。その意味で、ミサイル発射と核実験を国際社会が強く批判し、北朝鮮に自制を求める国連決議一八七四の趣旨、方向性については理解するところでございます。その上で、法案の内容について四点ほど質問させていただきます。

 法案は、北朝鮮の特定貨物を積載していると認めるに足りる船舶に対し、船舶の検査、貨物の提出、船舶の回航命令を可能とする、ある意味で強制力を伴った措置を可能とするものであります。国連海洋法条約では、航行の自由を含めた公海の自由が保障されているわけですが、これを超えた形で、公海上でも貨物検査を我が国が実施できる国際法上の根拠を最初にお示しいただきたいと思います。

辻元副大臣 公海上で貨物検査等、我が国の警察権を行使する上での国際法上の根拠は何かというお尋ねだと思います。

 実は、これは国土交通省の所管とは違うんですけれども、一般的に、一般国際法の解釈として、執行管轄権は基本的に自国の領海内に限り認められるとされていることは事実です。しかし一方、公海においても、安保理決議に基づき要請がなされている場合や、それから、先ほどからも出ておりますけれども、旗国の同意がある場合には、例外的に、その範囲内において他国船舶に対し執行管轄権を行使することが可能であると考えております。

 今回の場合は、安保理決議一八七四及び本法案においても、この旗国の同意を得るということ、そして国連の決議があるということを根拠にして、執行管轄権を行使することが可能であるというように考えて、本法案を提出しております。

中島(隆)委員 ただいまの答弁、了解をいたしました。安保理と旗国の了解によっての範囲ということでお伺いをいたしました。

 次に、貨物検査の措置がどの程度の地理的範囲にまで及ぶのかについて質問させていただきます。

 実施主体である海上保安庁が保有する船舶は、長距離航行能力がない、だからソマリア沖の海賊対処においても海上自衛隊の艦船が任務に当たるしかないということでしたから、今回も海上保安庁の船の活動範囲はおのずと限定されるであろうと思います。また、警察活動とはいえ、貨物検査という強制力を伴った活動である以上、活動領域は限定的であると思いますが、いかがでしょうか。

辻元副大臣 条文上は、内水、領海及び公海において検査等を行うこととしております。ですから、この条文上は、地理的にどこからどこまでという限定はしておりません。

 その上で、検査等を行う区域を制限したり、場所によって検査等の実施の取り扱いを変えるということになりますと、この警察権の行使に対して、法的な性格、ここではするけれどもここではしない、では、この領海はどうやねんと。なかなかこれは、法的な行使をどこまでどの範囲でやるかということを限定しにくいし、法的になじみません。

 しかし一方、北朝鮮に関する特別な措置ということですので、北朝鮮を中心に出入りする船が対象になってくることにかんがみますと、おのずと、主として我が国の近海を中心に貨物検査等を行うということが想定されると思います。

 これは各国と協力してやりますので、いろいろリレーをしたり、そして協力関係、それぞれの個別の事案はなかなか想定しにくいですけれども、その時々によって判断をしていくということになるかと思います。しかし、おのずと近海が対象ということが想定されるということです。

中島(隆)委員 北朝鮮の特定貨物の検査でございますので、それに限った検査だと思いますが、特に隣国であります北朝鮮、韓国、中国、この範囲内の強化になりますが、領海域ということでの範囲、あるいはそれを超すところもあるかと思いますが、今おっしゃったように、十分警察行動としてそれぞれ近隣の諸国と綿密な連携をとって、情報交換をしながら、この捜査が目標を達成されるように特にお願いをしておきたいと思います。

 次に、本法案では、さきの通常国会で廃案となりました北朝鮮特定貨物の検査等に関する特別措置法案の九条二項、すなわち、海上保安庁のみでは対応することができない特別の事情がある場合における自衛隊に関する規定を削除いたしました。社民党としては、自衛隊の活動範囲をやみくもに広げかねないような危険な規定を削除したことについては、基本的に評価したいと考えております。

 この九条二項を削除した意味はどのような点にあるのか、お答えをいただきたいと思います。

辻元副大臣 旧法案、前政権のものですけれども、九条二項に、自衛隊の海上警備行動等の規定が入っておりました。しかし、これは確認的なものです。要するに、自衛隊は、自衛隊法八十二条によって海上警備行動を発動します。ですから、この中に入れてあったとしても、この法案があるから自衛隊が動けるということはないわけです。ですから、それを確認的に中に入れていただけということですので、それを削除しても、何らこの法案の性質や、それから、この法案によって規定される海上保安庁の行為が変わることはありません。

 一方、この法案は、対象が商船なんです。こう書いてあるわけですね。「軍艦等以外の船舶であって、軍艦等に警護されていないものをいう。」よく議論の過程で、軍事行動と船舶検査をごちゃごちゃにして言う方がいらっしゃるんですけれども、ここははっきり線を引いているわけです。商船を対象にしているということ、それから旗国の同意を得た上での行為であるということで、これはあえてそこに自衛隊法によって規定されている海上警備行動を入れる必要はないということで、削除をいたしました。

中島(隆)委員 続いて、自衛隊との関連についてお聞きをしたいわけですが、海上保安庁の船舶が貨物検査に当たりながら、どうしても海上保安庁の手に負えないようなケースが生じた場合、本法案とは別立てで、今お話がありました自衛隊法八十二条の海上警備行動の発令を検討するようなケースが出てこないとも限らないことを危惧するわけであります。

 本法案は、警察作用に属する検査活動にあるという趣旨であります。海上警備行動の発令に当たっては、極めて抑制的に、厳格に運用すべきであるというふうに思います。貨物検査は断じてあり得ないということを確認させていただきたいというふうに思いますが、その点は再確認したいと思います。

辻元副大臣 今御指摘の海上警備行動の発令の要件は、自衛隊法八十二条の規定にのっとって、防衛大臣において内閣総理大臣の承認を得て、閣議決定も踏まえて行われるということになっております。ですから、その段階を踏んで、きちんとその間に内閣としての判断をするということになっております。

 一般的に申し上げまして、どこの国でも、実力部隊を出すときは抑制的であらねばならぬというのは当たり前のことだと思います。

中島(隆)委員 九条二項の自衛隊に関する規定が削除をされたということでありますし、それから、それに対する目的も今お話があったとおりであります。軍事的緊張を伴わない、そして、警察の行動の中で海上の安全を守る、あるいは危機をなくしていく、こういうことでございますので、八十二条の問題を含めて、ひとつ、今の国会の中で十分対応いただきたいと思います。

 それでは、最後に大臣にお尋ねしたいと思います。先ほどの質問にも関連いたしますが、私からも質問させていただきます。

 北朝鮮による核開発、ミサイル発射は、日朝平壌宣言にも違反する重大な事案です。加えて、日本には拉致問題という大きな課題も存在しています。ですから、国民感情も含め、北朝鮮に強い圧力をかけることに終始しがちな傾向が生まれやすいわけであります。

 他方、この間の経緯を振り返りますと、北朝鮮に圧力を強めても、逆に反発を強め、地域の緊張を高めるようなことを繰り返してくるのも事実なわけであります。その意味では、やはり対話による緊張緩和、対話による問題解決が大変に重要なウエートを占めており、圧力も、北朝鮮を国際社会との対話のテーブルに着かせるためには必要な措置と私は理解しています。

 十月の中国温家宝首相と北朝鮮金正日総書記との会談で、北朝鮮が六カ国協議復帰を示唆し、十二月には米国で北朝鮮政策を担当するボズワース特別代表が北朝鮮を訪問し、直接対話を行う可能性も報道されています。対話再開の雰囲気が存在するこの機に、北朝鮮に圧力を行使する法案がどのような作用を及ぼすのかについては、いささか懸念せざるを得ない点がございます。

 大臣は、北朝鮮の核開発、ミサイルの発射問題等の解決に向け、日本の政府がとるべき基本的な姿勢はどのようにあるべきかをお尋ねいたします。

前原国務大臣 北朝鮮との間には、拉致、核、ミサイルなどの問題、懸案を抱えております。核実験も二回行ったということで、今回の国連決議に基づいて、国連が全会一致で安保理で決議したこの決議に基づいて貨物検査を行うということは大変重要なことだと思いますし、そういった国際連携を通じて北朝鮮に対してしっかりと毅然たるメッセージを伝えていくということは極めて大切なことだというふうに思っています。

 他方、委員がおっしゃられたような六者協議の枠組みもございますし、米朝協議が行われる雰囲気にもなってきたということは大変いいことだというふうに思っておりますし、また日本も、いまだ国交がない状況でありますので、しかしながら、みずからしっかりとしたパイプをつくり、協議をするということも大事なことだというふうに思っております。

 しかし、若干、一九九四年以降の北朝鮮の数度にわたる対話と、そして暴走の繰り返しということにもまた学ばなければならないのも事実でございまして、そういった今までの教訓に学びながらも、毅然とした対応と、そして対話の糸口を常にオープンにしておく、そういった対応策が必要だと考えております。

中島(隆)委員 それでは最後に、海上保安庁の検査等だけではなくて、海上保安庁の問題で御要望を申し上げておきたいと思います。

 というのは、私は先月、地元、熊本の八代であります、八代港の港祭りがございまして、私も国土交通委員会ということで、担当委員会でございますので、巡視船に同乗させていただきました。海上での防災あるいは検査等の訓練も見させていただきました。巡視船に乗せていただきましたが、説明を聞きましたら大変古いんです。余り遠くまで行けません、こういう実情もお訴えいただきました。

 今回は北朝鮮の貨物検査の対応でありますけれども、今後は、やはり世界の領海あるいは排他的水域、あるいは世界の海の安全を守るためにはこのような警察行動による保安活動、これを全世界の国々が連携をしてやることによって紛争をなくす、こういうことが大きな課題ではないかなというふうに思います。

 特に来年度予算に、国土交通予算で出ております巡視船の主な、大きな「しきしま」級の予算を要求してありますが、四年計画でやるということでありますが、ぜひこういう保安庁の海上施設あるいは人員訓練、これをやはり強化しながら、世界と連携をして、そして世界の紛争をなくしていく、こういうことをひとつ努力をしていただきたい。インド洋でもソマリア沖でも自衛隊が即出ていく、こういうことではなくて、こういう活動でひとつ安全な海を守っていただきたいと思います。

 最後に要望を、よろしくお願いします。

辻元副大臣 海上保安庁の老朽化した船は切りかえていくということをしっかりとやってまいりたいと思っております。

 ただ、一言つけ加えさせていただきますと、日本の海上保安庁というのは非常に実績がございます。例えば、立入検査は年間九千百五十九件行っております。そのうち排他的経済水域で十八件、領海で九千百四十一件ということで、非常に世界の中からも評価されておりまして、例えばいろいろな国々の方々に日本の海上保安庁の技術をきちんと教えているというか、そういうこともずっとやってきております。

 それから船足も、実はこの間、速い船をそろえておりまして、例えば、この間、カンナム号という韓国のがございましたけれども、ああいう事案には十分対応できるユニットを、今、この不審船対応巡視船の配備状況ということなんですが、四隻で一ユニット組みまして、三ユニット対応させるということで、非常に船足の速い高速特殊警備船なども配備をしております。

 ただ、まだ古い船もございますので、海洋国家ですから、この案件にかかわらずしっかりとした体制を整えてまいりたいと思っております。

中島(隆)委員 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

川内委員長 以上で中島隆利君の質疑は終了いたしました。

 これより自由民主党・改革クラブ及び公明党の質疑時間に入ります。

    〔委員長退席、橋本(清)委員長代理着席〕

    〔橋本(清)委員長代理退席、委員長着席〕

    〔委員長退席、橋本(清)委員長代理着席〕

    〔橋本(清)委員長代理退席、委員長着席〕

川内委員長 これにて自由民主党・改革クラブ及び公明党の質疑時間は終了いたしました。

 次に、穀田恵二君。

穀田委員 私は、昨日来の出来事について一言述べたいと思います。

 私は、民主党の国会運営は異常きわまりないものだと思います。

 私自身が昨日の討論に立ちましたように、新政権下での最初の審議を始めた中小企業金融円滑化法案について、現場の財金の理事会での合意を覆し、国対の指令のもとにいきなり強行採決する、そしてまた、本日未明の本会議で強行、続いて、深夜でしたけれども、議院運営委員会ですべての法案の委員会付託を強行、そして、きょうは一斉に与党だけで委員会をセットする、こういうやり方については、私は許しがたいと思っています。

 私どもは、だからといって自分の発言権を放棄するということはしません。質疑に立ち、徹底審議を貫くことが国民に対する責任だと考えています。

 そこで、きょう本委員会に付託されたのは二法案であります。私は、両案の趣旨説明を要望しました。残念ながら、衆法の提案者が来られないということでしたが。この法案は、総選挙前の百七十一国会、テロ特で審議をされました。その内容は憲法、自衛隊にかかわる広範なものであって、私は、本国土交通委員会では本日が初の質疑であり、慎重かつ徹底した審議が必要だということを最初に申し上げておきたいと思います。

 そこで、鳩山内閣の提出したいわゆる貨物検査法は、総選挙前の百七十一国会に麻生内閣が提出し、審議未了、廃案となった北朝鮮特定貨物検査法案から、自衛隊関与の条項、九条二項を削除し、法律名称を国際連合安全保障理事会決議第一八七四号等を踏まえ我が国が実施する貨物検査等に関する特別措置法案と変更しただけであります。その他、法の目的、定義、各条文は全く同じものであります。

 そこで聞きたいんです。九条二項を削っただけで、あとは旧政府案と変わらないということは、法案の各条項について、前内閣の答弁というのは基本的に引き継ぐということで理解してよろしいでしょうか。

前原国務大臣 今回、政権交代がありまして、鳩山内閣でこの貨物検査法というものを出させていただいているわけでございます。

 今委員がおっしゃった旧法案の九条の二項のみならず、名称も変更しておりますので、新たな法案を出して、そして鳩山内閣のもとの解釈で答弁をさせていただくということでございますので、そのまま旧政権の解釈を踏襲するということではございません。

穀田委員 そうすると、縛られないということだと。そうすると、どこが違うのかということになると思うんです。

 今、大臣が提案趣旨説明を行いました。その提案趣旨説明も、何々「いたし」ということと、「る」とかが違う程度で、そしてさらには、そこが変わって、「自衛隊による所要の措置」、この文言が抜けただけなんですね。

 では、どこが縛られないということになるのか、大まかに言ってどこが違うということについて言っていただけますか。

前原国務大臣 我々は、この九条の二項を外したということと、名称も変えておりますし、これはぜひこの委員会で、委員が逆に、旧法の政府答弁はこうだったけれども今はどうなのかということを個別に聞いていただけば結構かと思います。

穀田委員 私は、哲学が違うのかと思ったら、そういう話をしていただけるかと思ったんですが、残念ながらそうではなかったみたいです。

 それでは、第九条について、唯一の変更点であるいわゆる自衛隊関与条項についてお聞きしましょう。

 九条二項は、「自衛隊は、前項に定めるもののほか、防衛省設置法、自衛隊法その他の関係法律の定めるところに従い、」云々かんぬんという文章で、この条項の削除について、「自衛隊が削除されたという大きな違いがある、率直にそれを評価する」という見解もあります。二つの法案に自衛隊の関与をめぐって本質的な違いがあるのかということを、防衛副大臣にお聞きしたいと思うんです。

 〇九年、ことしの七月十三日、テロ特委で、今委員長になっておられる川内委員が質問し、浜田大臣が答弁をしています。「九条の第二項は、自衛隊が防衛省設置法や自衛隊法等の既存の関係法律の範囲内で活動することを確認的に規定したものでありまして、この規定によって自衛隊に新たな任務や権限を付与するものではありません」「海上警備行動についても、当然のことながら、本法案の規定を根拠として行うのではなく、あくまでも自衛隊法第八十二条に基づいて行うことになります。」と答弁しています。

 こういう答弁は認識しておられる、そのとおりだと言ってよろしいか。

榛葉副大臣 穀田委員にお答えいたします。

 旧法案第九条第二項でございますが、同法案による貨物検査等に関し、自衛隊は、海上保安庁のみで対応できない特別な事情がある場合において、海上警備行動等の既存の法律に基づく措置を実施することがあり得るということを確認的に規定したものでありまして、先生のおっしゃるとおりでございます。

穀田委員 では、確認的だということについては同じだということですね。ですから、一つ一つ具体的に問うと、この点は同じだと。

 そこで、私は新たにもう一度言いたいと思うんですけれども、新政府案が削除した九条二項は、今ありましたように、もともと、自衛隊が既存の自衛隊法等の範囲内で活動することを確認的に規定したというものにすぎず、この規定によって新たな任務や権限を付与するものではない、この点は繰り返し答弁されていたわけであります。そうなると、確認的規定の削除ということでいうならば、自衛隊の活動のあり方については、実質的な変化は何の意味もないということに結論的にはなるわけであります。

 そこで、自衛隊は、やはり八十二条を根拠に海上警備行動を行うことが可能だということも今お話がありました。したがって、法案が閣法とそれから衆法があるわけですけれども、それがあるかないかによって本質的には大きな違いはないということが結論づけられると思うんです。

 そこで、自衛隊の海上警備行動について聞きたいと思います。

 七月十日の政府答弁では、「自衛隊は、自衛隊法等の既存の法律の定めるところに従って、海上警備行動などの所要の措置をとることができる、」として、例えば、「万が一の可能性として、捜査対象船舶から海上保安庁では対応ができないような激しい抵抗を受けるようなケース」では、海上警備行動の発動が全く排除されない、つまり、あり得るという見解を河村官房長官そして高見澤防衛省防衛政策局長が答弁していますが、これらの点も一致していると言ってよろしゅうございますね。

榛葉副大臣 これは対象が商船でございますから、極めて考えにくいことであると思いますが、万が一の可能性として、貨物検査等の対象船舶から海上保安庁では対応できない激しい抵抗等を受けるような場合は、全くないとは言い切れないということでございます。

穀田委員 だから、踏襲をする、引き継ぐと言ってもいいでしょう。

 もう一つ聞きたい。

 防衛政策局長は、七月十三日、「平素から、北朝鮮に限らず、あるいはこういった特定貨物の監視に限らず、幅広いいろいろな情報収集活動を行っている」として、情報収集活動については、「関係行政機関の一つとして協力をしてやっていく」と答弁しています。これも同じふうに踏襲すると見て、これはよろしいですね。

榛葉副大臣 我々は防衛省設置法の九条の十八、これで調査、そして情報収集、研究等をやっているわけでございますから、そのとおりでございます。

穀田委員 一連の今話をしてきたことを総称しますと、要するに、結局、前の政府案から、九条二項、いわゆる自衛隊関与条項を削除しても、自衛隊の活動は制約されない、前の法案と同等に出動ができるということがこれでもう明らかになった、この点は違いないということは確認できると思います。

 そこで、もう一つの問題を言っておきたいと思うんですけれども、国連安保理決議一八七四にかかわってであります。

 今回の法案は、国連安保理決議の実効性の確保が目的とされていることは御承知のとおりであります。私たちは、今回の北朝鮮による核実験の強行に対しては、いかなる核実験または弾道ミサイルの発射もこれ以上実施しないことを要求した国連安保理決議一七一八、さらに、北朝鮮が一切の核兵器及び現在の核計画を放棄すると合意した六カ国協議の共同声明に明確に違反する暴挙であって、世界で生まれている核兵器廃絶に向けた新たな動きに対する乱暴な挑戦であると厳しく抗議をしていることは、皆さん御承知のとおりです。北朝鮮に対して、私どもは、これ以上の核実験を厳に慎んで、核兵器及び核兵器開発計画を放棄して六カ国協議に無条件に復帰するよう強く求めてきたところであります。

 そのもとで、本年六月に一八七四が全会一致で採択されました。北朝鮮に対して、国際社会が一致して、核実験と弾道ミサイル発射をこれ以上行わず、すべての核計画を放棄するよう求め、非軍事の制裁措置として武器禁輸などを決めたことは重要だと考えています。

 そこで聞きたいんですけれども、今回の決議について、何か貨物検査ばかりが強調されているように思うんですが、決議一八七四の全体から見ると、当時の答弁とそれから外務省のペーパーがこの調査室の資料に詳しく載っていまして、それを見ると一番わかりやすいんですね。ですから、この一八七四の決定に基づく、各国に義務づけられているのは二つだと思うんですね。北朝鮮のすべての武器の輸出入禁止、それから禁止物品を輸送する疑いのある北朝鮮船舶への燃料供給の禁止、つまり入港禁止、この二つが中心であります。貨物検査は、この外務省ペーパーにもありますように、要請にすぎないんですね。

 武器の輸出入禁止、船舶への燃料等の供給禁止という二つの義務について言うならば、日本は既にすべての北朝鮮船舶の入港を禁止し、武器どころか輸出入を全面禁止するという措置をとっていますから、その意味では、日本は既に、この決議の義務という点でいうならば一〇〇%実施していると考えてよろしいですね。

榛葉副大臣 訂正します。

 先ほど、防衛省設置法九条の十八と言いましたが、四条の十八の訂正でございます。済みませんでした。

武正副大臣 穀田委員にお答えをいたします。

 国連安保理決議の一八七四について、先ほどお話がありましたように、北朝鮮に対する禁輸措置、貨物検査に関連する措置、金融面での措置、自国領域内または自国民による禁止物品を輸送する疑いのある北朝鮮船舶への燃料供給等の禁止をすること、決議一七一八の措置のさらなる具体化及び本決議の実施、全加盟国に対し、北朝鮮国民の核・核兵器運搬システム関連の教育訓練を監視し、防止することを要請、これが措置ということでありまして、その中で、御指摘のように、貨物検査に関連する措置というところを受けて、具体的に本法案の第三条から第七条に規定をしております。

 それで、もう既に日本は実施しているではないかという御指摘でございますが、この中で、「全ての国が検査に協力すべき旨要請する。旗国が同意しない場合は、旗国は当該船舶に対し検査のため適当な港に向かうよう指示することを決定する。」また、もう一つは、「全加盟国に対し、検査において特定された禁止物品の押収・処分を行うことを決定する。」この二つについては、本法案が、やはりこの行為、決定するということを担保する法案の措置ということになろうかと思います。

穀田委員 それをよく見てほしいんだけれども、要するに、義務と要請ときちんと分けないとだめなんですよね。ですから、そこが、皆さんが言うやり方をしていると、義務については一〇〇%やっているんだと。やっているんですよ。だって、既に北朝鮮に対する制裁措置として、船舶の入港を禁止し、武器どころか輸出入を全部禁止しているわけですから、いわゆる制裁措置としての、国連安保理決議一八七四が提起している義務についてはやっているんですよ。そのほかは要請しているというふうに書いているわけですよね。

 では、要請の問題について今お話があったから、どんなことが想定されるのか、実際はどうなっているかについて一言聞いておきたいと思います。

 日本が公海上でそういう船舶検査を行うような事態が果たして想定されるのか。言うならば、この六月、北朝鮮の貨物船カンナム号を米軍のイージス艦が追尾したことについては大々的に報道されました。では、公海上の船舶検査ということについていろいろやるというんだったら、こういうことを想定しているんですか。

前原国務大臣 先ほど委員が御指摘をされたように、義務と要請という言葉が分けられると思います、この一八七四を見ると。

 しかし、要請をされたことについて、それをどの程度行うかどうかというのは、それぞれ加盟国の自主的な判断でございますので、我々としてはそれを書かせていただいたということでございます。

 ちなみに、公海上で行う場合もあるでしょうし、それができない場合においては、回航命令を出すということもあり得ると思います。

穀田委員 先ほど私が例に出したカンナム号、あの場合だったら、では、アメリカは旗国であるそういう北朝鮮に対して検査の同意を求めたかというと、なかなかこれは微妙な問題でして、旗国の了解が得られない場合については、詳細な報告を制裁委員会に速やかに提出するようになっているわけなんですが、それが提出されていないということは、テロ特における質疑で明らかであります。

 同時に、旗国の同意ということでいいますと、北朝鮮が同意するはずがないんですよ。それはだれが考えたってそうですね。

 しかし、カンナム号というのは、各国の連携でミャンマーに行けなかったわけですよね。それが新聞、テレビでも放映されて、結局、北朝鮮に戻ったわけであります。やはり、アメリカの当時の副大統領も、どの港も寄港を許可しなかったためカンナム号は帰港した、港に帰ったと。だから、周辺諸国が行ったことを見ればわかるだろうと。

 そういうことで、公海上での摩擦を起こして検査する必要など全くないということは、これは十分できるということを示したわけですね。ですから、私どもは、今の意味での公海上のあれは必要ないということを言っているわけであります。質問時間が終了したというので、最後、私どもの考え方はそういうことだと私は考えている。

 そこで、最後に、私は、やはり日本の役割という問題ですよね。

 それは、先ほど述べたように、輸出入の全面禁止とそれから全船舶の入港禁止の措置を実施していて、これによって安保理が義務づけた内容はほとんど実施されている。したがって、その意味では、私どもは新たな法案は必要がないというふうに考えています。

 そして、にもかかわらず、日本領域外の公海で海保と自衛隊が一体となって出動していく、さらに、北朝鮮等への船舶検査を行う体制をつくるということは、やはり軍事的な対応、緊張の悪化につながるということで、私どもは批判してきたところであります。

 公海上での船舶検査は、領海内の警察活動とは異なって、軍事的強制力を持つということは明らかであります。したがって、私は、海保が任務として出動すること自体が問題であって、その事態によっては海上自衛隊が海上警備行動で出動することにつながり、緊張のエスカレーションを招くことになる、それだけはやってはならぬということについて、私どもの見解を述べて、時間が参りましたので終わらせていただきます。おおきに。

川内委員長 穀田恵二君の質疑は終了いたしました。

 これよりみんなの党の質疑時間に入ります。

 これにてみんなの党の質疑時間は終了いたしました。

 この際、休憩いたします。

    午後一時三十二分休憩

     ――――◇―――――

    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕


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