衆議院

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第12号 平成22年4月13日(火曜日)

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平成二十二年四月十三日(火曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 川内 博史君

   理事 阿久津幸彦君 理事 小泉 俊明君

   理事 田中 康夫君 理事 橋本 清仁君

   理事 村井 宗明君 理事 岸田 文雄君

   理事 三ッ矢憲生君 理事 竹内  譲君

      阿知波吉信君    加藤  学君

      勝又恒一郎君    神山 洋介君

      川島智太郎君    川村秀三郎君

      菊池長右ェ門君    熊田 篤嗣君

      黒岩 宇洋君    小林 正枝君

      近藤 和也君    中川  治君

      中島 正純君    長安  豊君

      畑  浩治君    早川久美子君

      馬淵 澄夫君    三日月大造君

      三村 和也君    向山 好一君

      谷田川 元君    柳田 和己君

      若井 康彦君    赤澤 亮正君

      金子 一義君    金子 恭之君

      北村 茂男君    佐田玄一郎君

      野田 聖子君    林  幹雄君

      穀田 恵二君    中島 隆利君

      柿澤 未途君

    …………………………………

   国土交通副大臣      馬淵 澄夫君

   国土交通大臣政務官    長安  豊君

   国土交通大臣政務官    三日月大造君

   参考人

   (一橋大学大学院商学研究科教授)         山内 弘隆君

   参考人

   (全日本空輸株式会社代表取締役社長)       伊東信一郎君

   参考人

   (JAL再生タスクフォースリーダー)       高木新二郎君

   参考人

   (株式会社日本政策投資銀行取締役常務執行役員)  柳  正憲君

   参考人

   (航空労組連絡会議長)  山口 宏弥君

   参考人

   (経済ジャーナリスト)  町田  徹君

   国土交通委員会専門員   石澤 和範君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十三日

 辞任         補欠選任

  阿知波吉信君     近藤 和也君

  石井  章君     柳田 和己君

同日

 辞任         補欠選任

  近藤 和也君     阿知波吉信君

  柳田 和己君     石井  章君

    ―――――――――――――

四月十三日

 高速自動車国道法及び道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する等の法律案(内閣提出第五一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国土交通行政の基本施策に関する件(日本航空問題)


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     ――――◇―――――

川内委員長 これより会議を開きます。

 国土交通行政の基本施策に関する件、特に日本航空問題について調査を進めます。

 本日は、参考人として、一橋大学大学院商学研究科教授山内弘隆君、全日本空輸株式会社代表取締役社長伊東信一郎君、JAL再生タスクフォースリーダー高木新二郎君、株式会社日本政策投資銀行取締役常務執行役員柳正憲君、航空労組連絡会議長山口宏弥君及び経済ジャーナリスト町田徹君、以上六名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、山内参考人、伊東参考人、高木参考人、柳参考人、山口参考人、町田参考人の順で、それぞれ十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の方々に申し上げさせていただきますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないこととなっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず山内参考人に意見陳述をお願いいたします。

山内参考人 山内でございます。

 このような機会を与えていただきまして、ありがとうございます。十分ほど、今回の日本航空の再建問題につきまして意見を述べさせていただきます。

 まず最初に、現状の認識でございますけれども、今回、公的支援によりまして日本航空の再生を支援するということになったわけでございますが、結論といたしましては、私は、これは妥当な策であったというふうに考えております。

 よく言われますように、航空産業あるいは航空輸送の持つ公共性、それから日本航空が持っている経済に対するインパクト、その大きさを考えますと、今回このような措置をして、運航をとめない、そして再生を図っていくということは、妥当性があったのではないかと思っております。

 また、今回、一月に法的措置の決定ということになったわけでございますけれども、私的整理、法的整理といろいろな手段がある中で法的整理に至ったということにつきましても、状況の変化、こういったものからして、結果的に不可避であったのではないかというふうに思っております。

 日本航空の経営でございますけれども、現状は極めて厳しいというふうに理解しております。施策の失敗というものが国民の負担を増大させる可能性は大きいわけでありまして、その意味で、慎重かつ大胆な再建案の策定と、それから、それを実行していくということが必要であるというふうに考えております。

 続きまして、経営悪化の要因について、私なりの解釈を述べさせていただこうと思います。

 これは、企業の経営でございますので、外的な要因とそれから内部の要因、二つあるわけでありますけれども、まずは外的な要因から申し上げたいというふうに思います。

 私は学校の方で、規制産業といいますか、政府にかかわるような産業のことを研究と教育をしておりまして、航空に関しても比較的長い間勉強させていただいておりますけれども、私の意見をまず申し上げますと、航空産業というのは非常に経営的に不安定な産業である、こういう前提を置かなければならないというふうに思っております。

 米国の航空会社を見ましても、ちょうど十年ぐらいのサイクルの中で、例えば一九九〇年代、あるいは一九八〇年代もそうなんでありますけれども、最初の前半の五年間ぐらいは大きな赤字をつくりながら、後半は黒字で、それで何とかつじつまを合わせる、こういう経営をして、非常に不安定な産業であるということが言えると思います。

 外的な要因として言われますのは、例えばリーマン・ショックのようなマクロ経済の変動ということだけではなくて、御承知のように、国際的な騒乱でありますとかあるいは疫病の問題、こういった影響が非常に大きく左右するのが航空の経営だというふうに思っております。ある意味では、需要変動というものがそれで起こって、それに対する脆弱性を本質的に備えた産業、これが航空産業であるというふうに思っております。私は航空の変動についてリスク分析というのをやったことがあるんですけれども、そういったところからも実証されるのが、この変動に対する弱さということであります。

 ただし、経営の責任というのは、経営者、あくまでも経営主体のものでありまして、こういった外的な要因に押しつけることはできないということであります。例えば、日本航空のケースでいいますと、日本航空は路線構成の問題をよく指摘されておりますけれども、極めて硬直的な路線構成であって、赤字の路線を非常に大きく抱えたまま、そういったものを整理できないでいたということがあります。これは、恐らく国際線、国内線両方において言えるんだろうというふうに思っております。

 国際線と国内線で分けてみますと、国際線の方は、先ほど言った大きな外的な要因の影響を強く受けるという要因を持っております。この弱さがある。それから、国内線についていいますと、日本航空の場合は、二〇〇二年でございましたでしょうか、日本航空は日本エアシステムと合併をしたということがございまして、そういった不採算路線を引き継いだという事実もあります。こういったことをうまく処理できなかったというところが一つの内的な要因ではないかというふうに考えております。

 もちろん、額として見ますと、国内線と国際線、国際線の方が赤字の額が非常に大きくて、今回の経営破綻の直接の引き金になった、こういうようなことは言えるかというふうに思っております。ただ、先ほど言いましたように、国内線の不採算というものも、これは見逃せない事実であるというふうに思っております。

 それから、日本航空の経営のシステムということについて触れたいと思うんですけれども、世界の航空会社は、一九八〇年代ぐらいから、規制緩和ということで、競争の中を勝ち抜いてまいりました。そして、近年ではローコストキャリアと言われるような新しい事業形態、ビジネスモデルを持った経営者が出てきている。こういう中で、日本航空の場合、経営そのものを、事業の改善を十分に行い得なかった、こういうことも指摘できるというふうに思っております。

 例えば、航空の場合に、コストをどのように把握していくのか。通常のメーカーといいますか製造業でいえば、コストの管理、管理会計なんという手法を用いるわけでありますけれども、そういったところがどこまで徹底できたのかどうか、こういったところから始まりまして、具体的には、機材を更新できたかどうか、あるいは人件費を抑制できたかどうか、それから労働条件の問題等も改善できたかどうか、こういったところについて、経営の不十分さ、改善の不十分さというものを指摘できるのではないかというふうに思っております。

 日本航空の場合には、過去において財務的に厳しい時代が続き、黒字と赤字を繰り返すわけですけれども、黒字の期間は必ずしも長くない、そしてその額も大きくないということで、抜本的な改革がおくれたということになろうかというふうに思っております。

 こういった経営の悪化の要因を受けて、再建の方向ということでありますけれども、基本的に、事業の縮小、それから生産システムの効率化の徹底ということが日本航空の再建の方向かというふうに思っております。今申しましたように、経営改善の基盤となる、例えば運営自体の把握、コストの把握、管理の徹底、こういったところが中心になろうかと思っております。

 それからもう一つは、この企業がグローバルな企業に脱皮する必要があるということだと思います。日本航空は国際線は非常に運航しておりますけれども、その対象が日本国民であるというようなことで、必ずしもグローバルな企業になり切っていない。アライアンスへの参加にもおくれたということもございまして、そういった問題を国際標準に直していく、あるいは事業運営を改善していく、こういうことだというふうに思っております。

 再建計画の具体的な内容につきましては、将来の競争状態あるいは企業の展望ということを前提としておつくりになられたらよろしいかというふうに考えております。航空産業自体が構造変化をしております。それに対して制度も変化しております。日本航空がこういった再建から脱皮してひとり立ちをする段階で、どのような航空の世界になっているのか、そういったことを見るべきであると思います。

 例えば、今までですと国の、国籍といいますか、外資規制というものが極めて強かったわけですけれども、欧米を見ますと、だんだんとそれが緩んでいく方向にもありますし、それからもう一つの大きなポイントは、国の航空会社の競争からアライアンス同士の競争に今移っているということであります。これによってネットワークの競争が起こっている。これに対応するような再建計画にならなければならないというふうに思っております。

 その意味では、この会社、日本航空及びその管財人の自己責任であるということを前提にして、経営計画の一定の自由度を付与すべきであるというふうに思っております。ただし、現段階では、私、具体的な数字を持っておりません。具体的に経営計画がどのように数字に結びついていくのか、財務諸表に結びついていくのかというところが必ずしも明確ではないというふうに思っております。その辺を明確に示すことは必要であろうというふうに思います。

 それから、一点だけつけ加えますと、航空企業の生産システムというのは、各部門あるいは各段階の密着度といいますか、製造業でいうとすり合わせという言葉をよく使いますけれども、それが非常に重要だというふうに考えております。その意味で、経営の一体感、それから企業としての一体感をどのようにつくり出していくのか、これが重要でありますし、そのためには、具体的な措置とリーダーシップ、危機意識の共有ということが必要であろうと思っております。

 最後に、再建に向けて一言申し上げたいと思いますけれども、再建の目的は、社会に良質なサービスを提供できる経営の健全性、こういったものを日本航空に回復してもらって、そして公的資金あるいは社会的負担をいかに小さくしていくか、こういうことであろうというふうに思っております。このために、政策的にも、いわゆる出口という言葉が使われますけれども、日本航空がひとり立ちするときの出口の確保というものを意識していただければというふうに思っております。そのためには、規制政策あるいは資本政策等、幅広い支援体制が必要であろうと思っております。

 さて、最後に、航空産業の特色から、航空産業は非常に寡占的な色彩の強い産業であります。そのために、そういった公的な支援措置が競合他社に及ぼす影響も考えなきゃならないというふうに思っておりまして、その辺の公正性を保った上で、幅広い支援を必要とするというふうに考えております。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

川内委員長 山内参考人、ありがとうございました。

 次に、伊東参考人にお願いいたします。

伊東参考人 おはようございます。

 私は、全日本空輸の伊東信一郎でございます。本日は、日本航空の問題に関しまして意見を述べさせていただきます。

 航空業界は、一昨年秋のリーマン・ショック以降、新型インフルエンザの影響等も重なりまして、極めて厳しい経営環境に置かれております。弊社も、一昨年度、昨年度と二年続けまして最終損失を計上する経営状況となっておりますが、グループ従業員三万人が一体となりまして、事業の選択と集中を進めるとともに、人件費の抑制や増収に向けた創意工夫を行いまして、今年度は最終利益確保を目標に、現在懸命に努力を続けているところでございます。

 さて、本日の趣旨でございます日本航空問題に関する意見でございますが、私どもとしては、意見は二点でございます。

 一点目は、日本航空に大規模な公的資金が投入をされる中で、公正公平な競争環境の維持をお願いしたいという点でございます。もう一点は、公的資金の使途、使い道も含めまして、適切な情報開示が適宜行われるべきという点でございます。

 まず一点目の公正公平な競争環境の維持について、私どもといたしましては、先般、国土交通省に対し、公的資金支援による企業再建について欧州連合と同等の考え方に基づくガイドライン制定等の措置を検討していただくようお願いをしてまいりました。

 欧州連合におきましては、今回のような公的資金を航空会社に投入する場合に、その資金の使途、使い道や再建に際してのルールが定められております。欧州連合の条約第百七条ですけれども、加盟国が公的資金支援により特定企業や産品を優遇して競争をゆがめることは共同市場にそぐわないと定めておりますが、この条項の例外措置として、やむを得ず公的支援を行う場合のガイドラインが定められております。

 その底流には、お手元の資料のとおりでございますが、経営不振企業の市場からの淘汰は当然である中、公的資金支援により行う経営不振企業の救済と再建は競争相手の犠牲のもとに行われる、要は、野方図に救済や再建が行われることが、競争環境をゆがめ、競争相手に被害を与える結果につながるという考え方、認識が基本に据えられております。その上で、やむを得ず支援を行う場合には、その規模や競争市場における影響等を考慮し、案件ごとに、資産の圧縮、生産量の削減、市場シェアの削減、市場実勢よりも低い運賃提供の禁止などの厳しい条件が課せられ、公的資金が投入された企業がその資金を背景に競争環境をゆがめない補償措置が講じられております。

 過去の欧州の事例では、エアフランスやベルギーのサベナ航空、イベリア航空、アリタリア航空等への公的資金による支援において、実際にこうした条件づけが行われているところであります。

 また、公的資金を、短期的な事業継続のための救済資金、もう一つは、長期的な再建プランをなし遂げるための再建資金という二つの資金に峻別をいたしまして、後者の再建資金については、特に競争上の懸念を生じるため、必要最小限にする旨、決められております。

 日本航空の公的支援の根拠は、国民にとって必要な航空ネットワークの維持にあり、日本航空の経営破綻によって国民生活に支障が生じることを避けなければならないということは、当然理解をするところであります。しかし、私どもが申し上げたいのは、このネットワークの維持という観点だけにとどまらず、競争環境をゆがめた支援になっていないのかという点にございます。

 日本航空の記者会見によりますと、日々赤字が計上されているとのことでございましたが、その補てんに公的資金が使われているとすれば、投入額はどんどん膨らむ結果になってしまっているということでございます。

 また、競争相手としては申し上げにくいことではありますが、一昨年以来、弊社を含めた航空会社の経営悪化の要因の一つに単価水準の落ち込みがあると考えておりますが、一月十九日以降に発表されました日本航空の運賃やマイレージキャンペーンを見ていますと、需要喚起というよりも、体力消耗につながっているのではないかという気さえしておるところでございます。このような運賃やサービスの設定が公的資金を背景に行われたものとすれば、それは遺憾と言わざるを得ません。

 さらに、同じく報道でありました、新規の機材投資やIT投資などの設備投資に公的資金が使われるとすれば、EUのガイドラインに照らし合わせると、救済資金ではなく、明らかに再建資金と認識されるべきものであります。公的資金による投資すべてを否定するものではありませんが、航空機は、航空会社にとって競争力の源泉となる非常に重要な経営資源であります。その投資を公的資金で行うに当たっては、必要性や競争市場に与える影響度合いについて厳格に検証されるべきと考えております。

 私どもといたしましては、各種報道で伝わる事象から、あえて言いますが、ルールなき再建計画の行方を重大な危機感を持って注視しております。我が国においても欧州連合と同様のルールが設定されることを強く望む次第でございます。

 また、二点目は、一点目に関連する意見となりますが、欧州連合のようなルールがない中で、公正公平な競争環境が維持されているかどうかを判断する上では、日本航空からの適切な情報開示をお願いしたいと考えております。特に、資金の使途、使い道につきましては広く開示されるべきであり、その内容が資金の性格上適切か否かを、会社更生法という制度の中で、経済原則や国民目線と照らし合わせながら見きわめていくことをぜひお願いしたいと思います。

 最後になりますが、今後のオープンスカイの流れやアジア―欧米間の旅客流動の増加、そしてアジア各国の経済的発展やローコストキャリアの台頭等にかんがみますと、今後、世界の航空会社間の競争はますます厳しさを増してまいります。こうした環境においては、諸外国と比較し高位となっています着陸料や航空機燃料税等の公租公課の大幅な引き下げ等、本邦航空会社の国際競争力向上のための環境整備についても、喫緊の課題として御認識いただきますよう、よろしくお願いを申し上げます。

 私どもANAグループは、航空会社の使命として安全運航を堅持し、健全な経営の維持に今後も努めてまいります。

 以上でございます。(拍手)

川内委員長 伊東参考人、ありがとうございました。

 次に、高木参考人にお願いいたします。

高木参考人 高木でございます。

 私は、八点について述べさせていただきます。一つ、JALを国が助けなければならないのはなぜか。二番、どうしてJAL再生タスクフォースができたのか。三番、なぜJAL再生タスクフォースはおりたのか。四番、JAL再生タスクフォースは何をして、何をやろうとしていたのか。五番、その後の進展についてどう思うか。タスクフォースの案と企業再生支援機構の案はどう違うのか。七番、会社更生にしたのをどう思うか。それから八番、JALの再生見込みについてどう考えているか。この八点について述べさせていただきますが、一番は、既に先ほど山内先生もおっしゃったことでございますので、省略させていただきます。

 なぜJAL再生タスクフォースができたのかということでございます。

 JALの経営改善計画の当否を判断するための有識者会議というのがございましたが、手足となる実動部隊を持たない中で、JALの報告を聞くだけでその当否を判断する、これはもう最初から難しいと私は考えておりました。実動部隊とともに現場へ行って財務内容を調査し、現場の方々の意見を聞きながら再生計画というのはできていくものです。そういうものなしにJALの報告だけで判断する、現場から遊離したこういったことは、そういうことを有識者の方に求めるのは無理だと最初から疑問に思っておりました。

 それで、前原大臣が大臣に就任されて、まずその点について御懸念を表明されておりまして、私が共有するところでございますので、タスクフォース方式、事業再生について豊富な経験を有する民間の専門家がみずからデューデリを行って、JALがつくった計画案が妥当で実行可能かを検討して、必要に応じてみずから計画案をつくり直し、その実行のお手伝いをする、こういうタスクフォースの方式を提案したわけでございます。

 これは、オバマ政府が自動車産業についてとったのと似た方式でございまして、御案内のようにアメリカ連邦政府の高官というのはもともと民間出身でございますから、民間のエキスパティーズを持っておるわけでございます。そういった方法を進言しましたところが、前原大臣は、そのほかの方々の意見もお聞きになって、それはぜひやってくれ、こういうことで始まった顧問団、国交大臣の顧問団という位置づけで始めました。

 では、なぜそのタスクフォースがおりちゃったのかこういうことなんですが、これは申しわけないが、私も真相はわかりません。推測にすぎないわけでございますが、タスクフォースは案をつくっておりました。政投銀に千八百億の緊急融資をしていただいて、三月までですけれども、さらに三千億円の資本投入をしていただく、ニューマネーの投入をしていただくという方向でまとめつつあったんですが、どうも財務省と政投銀さんがそれに難色を示されたのだと思います。

 私どもが想定しておったのは、改正産活法による危機対応融資、危機対応出資、エルピーダなんかに出したものですね、あれを想定しておったわけでございますが、これは難しいというお話でございました。十月十六日に業務を開始した企業再生支援機構がまだ使っていない一兆数千億の枠をお持ちなわけでございまして、そっちの財布を使ってくれ、こういうことだったのではないかなというふうに推測しておるわけでございます。

 再生支援機構というのは独立の組織でございまして、独自の判断で支援するかどうかをお決めになるわけでございますので、私どもが容喙すべきところではないということで、突然に手を引かざるを得なかったということでございます。私のきょうの肩書、JAL再生タスクフォースリーダー、もうリーダーじゃないです、もとです。

 それから、タスクフォースの案と企業再生支援機構の案との違いでございますが、大筋は一緒なんです。大型機をやめて小型機にするとか、不採算路線の撤退をするとか、子会社の整理、それからダウンサイジング、皆同じ。ただ、タスクフォースの案を深掘りしていますねというところです。

 どういう深掘りをしているかというと、人員削減の案を、私どもは八千四百人、向こうは一万五千七百人。子会社の整理は、私どもは四十六社、機構は五十七社。路線撤退は逆に減らしたんですね。それから、DIPファイナンスが千八百億から六千億、これは大幅にふえています。金融支援額が、金融機関については二千五百億から三千五百八十億、これはある程度ふえている。出資の額は変わらないということでございます。

 これは、これだけ深掘りしたのはいろいろ理由があると思いますが、結論的に、三年以内にエグジットしなきゃいけないんだという機構の立場からすると、ある程度はやむを得ない。ただ、後に申します、もしかして時間をかけたのが、その影響だったのかなとすると、これはちょっと残念なことであります。

 済みません、大分飛ばしてしまいました。JAL再生タスクフォースは何をして、何をやろうとしていたのか。

 最多で百名のプロスタッフとJALの数十名の担当者とともに実動部隊をつくって、過去、現在、デューデリジェンスを行いまして、政投銀と主要三行のメガの御意見をお聞きしながら事業再生計画を立案し、十月二十九日には計画案ができ上がりまして、国交大臣に提出した。

 十月中に政投銀と主要行の大方の同意を得て、国交大臣の確認を得て、タスクフォースのうち私と冨山さんと、それからほかの二人のメンバーが再生担当執行役員になって、十一月中に金融機関の同意を得て再生計画を確定させて、さらに、労組、年金受給者その他の関係者との交渉を行って、人員削減や年金減額や関連会社整理について道筋をつけまして、ことしの三月までには有利子負債の削減、追加出資を実行して、リストラクチャリングについては大方のめどをつけて、決着をつけるつもりであった。

 もとより、通常業務は私どもでなくて経営陣が行う。十一月中または年内には、外部から招聘する経営トップあるいは新しい経営陣、これも実は四十歳代の人まで下げるということだったんですが、現実には五十歳代になっちゃったんです。これはちょっと、私らはもっとリフレッシュさせる、こういうつもりでおったんです。

 その後の進展についてどう思うかですが、私どもとしては、十一月中、少なくとも十二月中旬までには機構の支援決定がなされるということを期待しておったんです。ところが、現実になったのが一月十九日でございました。これは今から考えてみますと、機構と協働して期間短縮の道もあったのかなと反省している次第でもございます。もっとも、タスクフォースができたのは九月二十五日で、まだ機構の業務が開始されていないときです。

 機構法一条は、もともと、地方における総合的な経済力の向上を通じて地域経済の再建を図るために、中堅事業者、中小企業者その他の事業者に対して云々、こういう条文になっているわけでございます。もともとローカル経済のために中堅以下の企業を再生させるためにつくられた、こういうのが一般の理解でございまして、私もそういう理解をしておった。ところが、複数の機構関係者の方は、既にその当時から論文を発表しておられまして、その他の企業には大企業が入るんだと。機構法の審議の委員会の議事録の中にもそういう質疑応答が既にあったということでございます。

 この辺が、ですから、機構の関係者の中には、これをやりたい、JALをやりたいと言っておられる方もおられると聞いておりましたので、タスクフォースの発足に当たってはそのことも話題になったのでございますが、前原大臣を含めまして、やはり機構は中堅以下向けだからということで、御相談しなかったわけでございます。

 事業再生はスピードが第一である、そのことは事業再生のプロは共有するところであって、結果として時間がかかって、もし、その間による企業価値が減った、これが尾を引くとしたら、まことに残念なところだなと思います。

 それからもう一つ、会社更生にしたのをどう思うか。ちょっと順序をさっき間違えました。

 機構が産業再生機構スキームと同じだとすれば、ワークアウト、私的整理でやるのが本来のやり方だと思っておったわけです。支援決定の対象となった事業再生計画とは違う更生計画をつくる、こういうお話でございますが、そうだとすれば、機構というスポンサーをつけたが、事前調整はできていなかったのかもしれない、こういうふうに思います。

 更生計画つくりのための時間がまた余計にかかる、こういうことになる。会社更生にした以上、更生計画をもう一度つくるのはやむを得ないんですが、もう更生計画と同じ事業再生計画ができているんだ、それに対して主要三行はもとより、その下の二十五行も同意しているんだ、これを更生計画にしてくださいよといったら、裁判所は文句を言わないんですよ。二度も更生計画をつくる必要はない、これは私は裁判官だからわかる。

 だから、そういった意味で、事前調整だとおっしゃっているけれども、どうも事前調整じゃないんじゃないか、こういうふうに思う。ただDIPファイナンスを出すスポンサーをつけたということなのではないか。

 機構は、会社更生の利点として次の諸点を挙げておりますが、例えば、公正公平、透明性とおっしゃっている。これは機構のワークアウトもそうなはずなんです。それから、偶発債務の遮断とおっしゃっている。これはすべてのMアンドAに共通の問題。社債権変更、これは意味があるけれども、金額との比較考量の問題。デリバティブ違約金変更、これもメリットだとおっしゃるが、これは会社更生にしたために発生した違約金なんです。それから貨物撤退リース債権の変更、これもファイナンスリースとすればワークアウトでも変更可能ではないか。既存株式の一〇〇%消却、これは意味がある。ただし、それも再上場の手間とか費用というところから考えると、どうもよくわからない。結局私にはコメントは難しい。

 つまり、GMのような事前調整型なら、これは効果的だった。言った途端に、すぐ事前譲渡で再生させて、既にキャッシュフローは黒字転化しているわけですから、これは効果的なんです。だけれども、やり直しなんですから、この会社更生は、ということです。

 それから最後に、再生すると思うかということです。これは、再生すると思います。ただ、問題は、どの程度に変わっちゃっているかという問題です。

 一度、無限後退をやりますと、ずるずる無限後退、これは絶対やっちゃいけない。ここで踏ん張るんだということで、全社一丸となって再建しなきゃいけないわけでございまして、もし次々また会社更生案をつくる、そうすると、また変更計画をつくらなきゃいけなくなる。無限後退をやっちゃいけない。そのためには、必要なら思い切った撤退をして、後方に陣地をつくって、つくり直すということも必要。

 新聞報道ですけれども、銀行が、まるで日本アジア航空になっちゃうような案をおっしゃっておられるということですが、ちょっとわかりません、正しくは。だけれども、あるいは、そういう根本的に考え直して無限後退をここでストップして、それでやり直すということも思い切ってやるべきで、そういう決断力が必要であると思います。(拍手)

川内委員長 高木参考人、ありがとうございました。

 次に、柳参考人にお願いいたします。

柳参考人 ただいま委員長から御指名いただきました株式会社日本政策投資銀行の柳でございます。

 JAL関連の説明の前に、若干、当行につきまして御説明をさせていただきます。

 当行は、平成二十年十月、これまでの政策金融機関から株式会社として発足し、ちょうど一年半が経過したところでございます。政策金融機関時代と同様に、長期的な視点あるいは中立的な立場から、投資、融資を一体型で提供するという金融サービスを今運営しておるところでございます。

 また、政策に近い分野では、昨今のリーマン・ショックに端を発する一昨年以来の国際的な金融危機に際しましては、これまで培ってきた政策金融での知識あるいは経験を生かしながら、金融危機対応業務に積極的かつ機動的に取り組んできておる状態でございます。この業務につきましては、まさにかつてのパブリックマインドあるいは中立性といった私どもの特徴を十分に発揮して、他の金融機関と連携しながら、引き続き的確に取り組んでまいる所存でございます。

 次に、当行と日本航空グループとの関係でございますが、平成十三年以来、米国を中心とした同時多発テロあるいはイラク戦争、SARSといった航空業界全体に対する危機への対応として、我が国の安全で安定的な航空ネットワーク維持の観点から、同社に対して御支援を行ってきた経緯ということがございます。

 私どもは、一般の金融機関と同様、取引先から得た情報につきましては守秘義務を負っておりますことに加えて、同社グループは現在、会社更生法に基づく手続中ということでございます。策定中の更生計画に与え得る影響に配慮することが必要ということは言うまでもございませんので、取引経緯の詳細については御説明することはなかなか難しいのですが、既に調査報告書等で公表分を中心に、以下、御説明をさせていただきます。

 同グループは、平成十三年以降、先ほどの繰り返しになりますが、米国同時多発テロ、イラク戦争、SARSといった事象が相次いだことによって、特に比重の高かった国際線需要が減少、国際線を主力とする同グループは甚大な影響をこうむるということでございました。

 このような事態に直面して、同グループとしては、リストラ策、賃金カットあるいは退職金制度の見直し等、収支改善策を断行してきたわけでございますが、平成十三年度以降、それらを支援するためにも、当行より二千七百億円規模の緊急融資を実施いたしました。というのが、政策金融時代の話でございます。

 その後、同グループは、御存じのように、平成二十年秋以降の国際的な金融危機等による需要低迷が引き金となって、資金繰りが特に逼迫をいたしまして、非常に悪い状況に陥ったということでございます。

 このような事業環境の急激な悪化を受け、平成二十一年六月には、同グループは、国土交通省の指導監督のもとで、路線の見直し、貨物事業の見直し、年金制度の改定等を含むコストの徹底的な見直しを柱とした経営改善の方向性を打ち出すとともに、同年九月末を期限とする抜本的な経営改善計画を策定するということを条件といたしまして、危機対応融資について、当行は政府の指定金融機関という位置づけでございましたが、当行及び他の主要取引金融機関と協調のもと、一千億の融資を行っております。

 その後、先ほどから参考人の方が御説明されておりますように、同グループの再生に当たっては、企業再生支援機構が活用されることとなったわけでございます。同機構からの支援決定を受けるまでの対応として、プレDIPと称しておりますが、事業再生ADR手続の第一回の債権者会議の直後である平成二十一年十一月二十七日に、当行以外の他行から二百五十七億円の融資を受けたほか、当行からは、同日以降一月にかけて、総額二千億のつなぎ資金の融資を実施しております。

 そして、同グループが機構からの公的支援を受けることにより資金繰り破綻を回避し、運航を維持して事業再建を図るため、平成二十二年一月十九日に、主要取引金融機関である当行あるいは株式会社日本政策金融公庫、国際協力銀行、国際協力銀行はその一部でございますが、株式会社みずほコーポレート銀行、同じく株式会社三菱東京UFJ銀行及び株式会社三井住友銀行とともに、同機構に対して支援を申し込むとともに、更生手続開始の申し立てを行い、即日、支援決定及び更生手続開始決定を受けるということに至ったわけです。

 さらに、更生手続申し立て及び決定の直後から半年の間で総額六千億の資金が不足すると見込まれたところから、同機構と当行で合わせて最大六千億の協調融資枠を設定いたしました。

 当行といたしましては、もともと期待されております公共的役割を踏まえながら、安全で安定的な航空ネットワークの維持を中心とする同社の再生計画の策定に今後とも積極的にかかわっていくことが重要という考え方に基づいて、日本航空再生のため、引き続き協力を行ってまいる所存でございます。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

川内委員長 柳参考人、ありがとうございました。

 次に、山口参考人にお願いいたします。

山口参考人 航空労組連絡会議長の山口でございます。

 まず最初に、当委員会で航空労組連絡会に意見を述べる機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。深く感謝を申し上げます。

 私たち航空労組連絡会、略称航空連ですが、日航グループ、全日空グループ、また日本に乗り入れております外国航空会社の従業員、パイロット、客室乗務員、整備士、またグランドハンドリング、営業職などすべての職種、五十組合一万一千名で構成されております。航空連は、活動の一つといたしまして、三十年間にわたり航空政策活動を行ってきています。

 私たちは、今回の日本航空の問題について、赤字体質に至った原因と責任を明らかにし、抜本的な対策を講じることが国民から求められていると考えております。

 日航の経営破綻については、これまで、経済危機などの外的要因や放漫経営、また硬直的な経営体質などについて、前原国交大臣やタスクフォース、また管財人から指摘されているところであります。

 しかし、私たちは、破綻の原因については、これにとどまるものではないと考えております。これまでの航空行政こそが大きな問題だったと分析しております。

 第一に、日本航空の過大な設備投資の問題です。

 この点については、日米間の貿易不均衡解消を目的とした米国からの航空機購入の圧力を指摘しないわけにはいきません。象徴的なのが、最も高価なジャンボ機の購入です。一九七〇年以降、百十三機ものジャンボ機を米国から購入し、その保有数は世界一となっております。また、一九九三年には、経営危機に陥ったマクダネル・ダグラス社からMD11型機を十機購入しました。

 第二に、国が進めてきた空港整備計画の問題です。

 諸外国にはない燃料税や高い着陸料などで構成される空港整備勘定は、二〇〇九年度には五千二百八十五億円に上っています。日航、全日空の二社だけで、燃料税や空港使用料は毎年度約三千三百億円で推移し、経営の大きな負担となっています。例えば、港湾整備勘定では三千二十七億円で、一般会計からの真水が七二・五%であることに対して、空港の場合は一三・七%となっています。こうした財源をもとに、過大な需要予測を立て、相次いで新空港が建設されました。そして、航空会社は飛ばすことを要請されてきたわけです。

 私たちは、このような航空行政を進める大もととなっているのが、一九九〇年六月に最終報告が出されました日米構造協議の結論であると考えます。構造協議の約束は、当時、貿易、財政という双子の赤字に苦しんでいる米国の要求に応じて、内需拡大を公約、四百三十兆円、後に六百三十兆円の公共投資基本計画が推進されてきました。

 米国の要求内容は極めて具体的で、滑走路総延長要求では、八八年度の百三十七キロメートルから九五年度は百六十三キロメートルへ、五年間で二十六キロメートルの延長を要求してきました。二十六キロメートルというのは、近距離国際線の運航が可能な二千五百メートル滑走路十本分に相当いたします。

 こうした米国からの圧力が、実需を無視した空港建設につながったものと言えます。貿易黒字の縮小要求が航空機購入圧力につながったことは否定できません。

 こうした点に加え、航空経営に大きな影響を与えてきたのが規制緩和の問題です。規制緩和で、一九九六年以降、自社で整備能力を持たない新規航空会社が次々と設立されました。二〇〇〇年には路線への参入、撤退が自由化され、新規航空会社は不採算路線を撤退し、高収益路線をねらって運航するようになりました。その結果、日航や全日空は、幹線の利益で地方路線を維持するという内部補助が不可能になり、不採算路線の維持が困難な状況が続いてきました。

 次に、私たちは、日航再建に当たって最も重視すべきことは、安全と公共性が守られ、国民の足として信頼できる日本航空に再建できるかという点であります。

 航空産業は、製造業などと異なり、多くの人手を介して業務を遂行する労働集約型の産業です。そのために、安全運航を維持する現場でのモチベーションの高さは極めて重要な要素であります。このことは、昨年十月のタスクフォースの報告や、十二月に出されました日本航空安全アドバイザリーグループの新提言書でも指摘されております。

 当初の計画は、グループ社員四万六千名の三割に当たる一万五千七百名を三年間で削減するとのことでした。そして、二〇一〇年度中に二千七百名の削減が提案され、早期退職の募集が進められてきました。しかし、会社側からは路線、便数の計画など事業計画が示されず、マスコミ報道だけが先行しているために、多くの疑問と不安の声が現在出されています。

 そうした中で、今年度中に航空機百十機を退役させる計画や、十月から国際、国内合わせて四十七路線に撤退を拡大し、今年度中にグループ全体で一万六千四百五十二名に人員削減数を拡大する報道があり、職場の不安が一気に広がっております。先に人員削減ありきで、安全と公共性の視点が置き去りにされているといった状態が現在の状態であると言っても過言ではありません。

 整備の現場では、特に五十歳以上をターゲットに、個々人のライセンス保持資格に関係なく、いわゆる肩たたきが行われています。早期退職の面接で、整備士が、私がやめて大丈夫ですかと上司に確認すると、資格でなく、人員削減数の確保が先だと説明がなされたとの報告があります。一年間に熟練整備士を千六百七十八名削減する方針などは、安全よりも金勘定が優先されているということのあかしではないでしょうか。航空の現場に欠かせない熟練、熟達、技術の伝承が壊されていくことではないでしょうか。

 客室乗務員には、事実上の整理解雇とも言える大阪、福岡基地の廃止の問題があります。この問題では、七日の当委員会で指摘されていましたが、解決に至っていません。乗務員が乗務をする前に退職の話をしたり、上司から二次破綻をさせないためにと強制的な退職の話をさせられるなど、不健全な状態はモチベーションの低下につながるものです。

 また、会社は、再建に当たって、現在裁判で争われている客室乗務員の人権抑圧の監視ファイル事件、昇給、昇格の極端な差別、後を絶たない不当労働行為、正社員の四割の賃金という契約社員制度など、非現代的な労務管理を抜本的に改める必要があります。

 グループ各社も同様です。特に、グループ会社は、賃金が低い上に、年末一時金もなかったことから、札幌では地元のハローワークに一月に六十名が駆け込んだとの報告が出されています。また、羽田では、航空機を牽引する労働者が、展望をなくして退職したり、多数の退職希望者がいることから、航空機の牽引の訓練を一部中止してまで人員を確保しているような状況です。また、関連会社では、将来のJALとの契約縮小を見込んで契約社員の契約更新を打ち切るなど、グループ全体に雇用の不安が広がっております。

 路線撤退の問題では、交通機関として公共性の問題を指摘しないわけにはいきません。

 日本航空への国の支援について、一月七日付朝日新聞は、政府が守るべきは日航という会社組織でなく、日航が担っている国民の足であり、貿易立国を支える航空輸送のパイプの役割だと論評していました。不採算を理由に地方路線の切り捨ての動きは、日航支援の本来の目的から逸脱し、国民の期待に反することです。政府は、日航再建を進めるに当たって、総合的な交通体系の中で航空の位置づけを明確にして、地方自治体の理解と協力で進めるべきであると考えます。

 最後に、日常運航を支えているのは人間の労働であります。企業あっての労働者だけでなく、労働者あっての企業という立場も大切であります。人を物のように切り捨てる現在のやり方は、安全の土台を切り崩していることにほかなりません。特に、人員が削減される六月一日以降の運航に、現場は不安を覚えております。現場の労働者は、安全のレベルを常に肌で感じております。安全と公共性が守られ、そこに働く人たちが自信と希望を持てるような再建策でなければ、日本航空の自立は困難なことではないのでしょうか。

 私たちは、政府が現場の労働者の声に耳を傾け、政府の責任によって安全と公共性を重視した再建策を進めるよう要請いたします。

 ありがとうございました。(拍手)

川内委員長 山口参考人、ありがとうございました。

 次に、町田参考人にお願いいたします。

町田参考人 おはようございます。経済ジャーナリストの町田徹でございます。

 委員長それから皆様、本日は、このような機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 率直にということでございますので、できるだけ、ふだん、日ごろの取材で感じていることを申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。

 本日、私は、主に三点申し述べようと思っております。

 今何が一番問題なのか、これが一点目です。これは、二次破綻が起きるのではないか、それを放置しておくと大変なことが起きるのではないかという問題意識を、日ごろ取材して持っております。これが一点目です。

 二点目は、それを防ぐために何が必要か。この点では先生方のお力をおかりするしかないと思っていますので、その二点目を申し上げます。

 さらに最後、三点目に、そのために何が必要か、注意点についても申し上げたいと思います。

 それでは、早速、一点目を申し上げます。

 お手元に、委員長の許可を得て資料を配付させていただきました。

 一点目については、何が一番懸念されるか、何が一番問題かと申し上げますと、二次破綻の懸念が消えていない。日本航空は、御案内のとおり、一月に会社更生法の申請をいたしました。それで一たん破綻しましたが、さらにもう一度破綻するのではないかということが、日ごろ取材しておりますと、関係者の間では大変懸念されております。

 第一点目から申し上げますと、今現在、最近になってもう一度、人員カットが必要ではないかとか路線の削減が必要ではないかとか、随分話題になるようになっています。そもそも、こういうことが最初にでき上がっていれば、今、二次破綻する心配はないんですね。だけれども、今こういうことを議論しなきゃいけないような状態にあるということは、それができなければ、黒字転換は難しく、経営は再び悪化し、再びとめどなく公的資金の投入が必要になりかねないということでございます。

 これについて、四つ端的に申し上げますと、現在、月二百億円程度という説もあれば、一日当たり八億円から十五億円程度という説もありますが、赤字、出血がとまっていないということを日本航空について言われております。稲盛会長は、毎日流出が続いている、赤字が続いているということを三月の記者会見で認めています。それから、各種の報道で月間二百億ではないかと、私自身もそう書いたことがありますが、言われているがどうかということに対して、十―十二月の決算発表の席でも、明確な数字は言えないと答えただけです。

 こんなディスクロージャーもしないで、現状がどうなっているかもほったらかしのまま、再建策なんかあり得ません。まず、これは現状が今どうなっているのか、徹底的に説明させるべきです。

 ようやく二月分の旅客の状況が発表になりましたが、間違いなく出血がとまっていないことを裏づけるような数字がきのう発表になって、きょう新聞各紙に掲載されております。その数字を見れば、日本航空の二月の国際線の乗客数は八十万四千百九十一人、これは前年同期比で一〇・三%の減少です。同じく国内線も二百七十五万八十一人で、一・九%の減少です。しかも、この中身を見ていきますと、過去に積み上げたマイレージの消化であるとか、もう使えなくなっちゃう株主優待券の消化であるとか、要するに運賃が物すごく安いお客さんがこの中でふえているという状況です。物すごく収支は悪化しているはずなんです。

 これを一切説明しないまま、国民の税金を、公的資金を一兆円近くも投入されながら、一切そこの状況を説明しないということはあり得ません。このままいくと、この公金がどぶに捨てられるような形でなくなってしまうのではないか、回収できなくなるのではないかということが懸念されていくわけです。

 ただ、もしこのまま二次破綻が起きたら、既にこれは民間の調査機関の調査でわかっていますけれども、孫請まで入れると一万社を超える会社が日本航空と取引しているとされています。世界経済、アメリカあたりは、リーマン・ショック直後の株価水準まで回復して明るさが出ているときに、日本だけがこの日本航空の二次破綻によってもう一回経済的苦境に陥りかねない状況にあると我々は考えております。

 ですから、この苦境で、絶対にこの破綻をさせないでいただきたい、何とか入れたお金で回して再建を実現させていただきたい、これが一点目でございます。

 二点目。二点目というのは、これを実現することによって投入した一兆円近い公的資金の回収が確実になりますから、これを実現してほしいわけですが、その際に注意いただきたいのは、実は、六月末までに企業再生機構が管財人として更生計画を東京地裁に提出することになっています。これが絶対におくれてはならないということです。

 ちまたでは、もしかしたらこれがまとまらなくて、これは要するにリストラ策なんですよ、黒字が出ていく体制に変えるリストラ策で、これがあれば、金融機関が今投入されている資金の借りかえ融資に応じてくれるということなんですが、これに応じないおそれがあるわけですね。だから、これをまとめて六月に計画を提出できないということは、再建のめどが立たないということになります。

 ちまたでは、六月をジャンプして、秋にしようとか、八月末にしようとか九月末にしようとか、少し延ばしたらどうだという議論が出てくるんじゃないかと言われています。しかし、これを認めたら、この間の分だけ、税金、投入された公的資金の回収が難しくなります。運転資金に使われてしまうおそれがありますから、これは絶対に認めてはならないと思います。

 国土交通省に、絶対これを認めないように、議会の皆様の力できちっとこれは歯どめをかけていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 三点目なんですが、こういう公的資金を投入して再建していくこと自体、高木参考人を含めて私の前に意見陳述された参考人の方々は、国がやるべきことなんだ、そのことの理由もあるんだというお話でした。

 しかし、もちろん国がやるべき場合もあると思っております、私も経済ジャーナリストですがそういう場合もあり得ると思っていますが、それは自由主義経済国家においては極めて限定されるケースで、例えば、リーマン・ショックの直撃を受けている金融機関に限定されるような一時的な危機であり、そのことが国全体の経済に大きな悪影響を及ぼす場合に限定されるべき話だと思っています。

 今回の日本航空に対する国の支援を振り返ったときに、そういう議論がまず行われたのか。全くなかったですね。いきなり、大臣に就任された方が白紙撤回と言われて、そのままなし崩し的に、腹案があるといってタスクフォースができ、そのタスクフォースがJALの中に入って再生計画をつくるというステップに入っていったと思います。

 したがって、何ゆえそのタスクフォースが外されたか、理解できないんだというお話もありました。それから、その後のことに関しては、プレパッケージになっていないという御指摘もありました。その後のことに関しては御指摘のとおりだと思いますが、その前の段階のことに関しては、むしろ、国民的なコンセンサスがなかったからこそ、そのまま任せることができず、ほかのグループにバトンタッチせざるを得なかったという部分がかなり大きいというふうに我々は取材して感じております。

 そういうことも含めて、まずは、当時の日本航空の経営がどうであったのか。これに関しては、私が取材する限り、二〇〇六年当時に既に実質巨額の債務超過に陥っていたはずです。その段階で、機材関連報奨額、専門的な言葉になって恐縮ですが、これは、飛行機を買ったとかエンジンを買ったというときに、それについて航空機のメーカーからリベートをもらったら、そのリベートを利益に計上していたんですね。物を買って利益が出るようなことはありません。これは将来の利益を先食いするような決算処理ですから、後々の日本航空の経営の足を引っ張りました。それから、この時点で、二千億円を超す膨大な年金積み立て不足が二〇〇六年の段階でありました。さらには、簿外のリースも巨額に存在しました。

 こういう中で、最終赤字に転落して無配に転落した中で、国内の大手証券二社が主幹事の引き受けを拒否する状態の中で、二〇〇六年の時価発行増資をこの会社は強行しております。これに対して、当時、日本証券業協会の会長等からも厳しいクレームがついております。にもかかわらず、その後も、例えば年金一つとっても、抜本策を講じないままにここに至っているわけですね。

 その会社を本当に救済する必要があったのかどうか、その国民的コンセンサスは一体いつ受けたのか、これが全然ないままに来ているということだと思っています。

 ですから、経営陣に対するけじめの問題、それから、これをコンセンサスもつくらないまま国民の公金を投入してしまった問題、この二つについては、本当は資金を投入する段階でけじめをつけるべき問題だったと思いますが、これは必ずつけないと、未来永劫、国民の理解は得られることがないと思います。

 この点も含めて、先生方のお力できちっとけじめをつけさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。(拍手)

川内委員長 町田参考人、ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

川内委員長 質疑の申し出がございますので、順次これを許します。谷田川元君。

谷田川委員 民主党の谷田川元でございます。参考人の皆さんから、それぞれの立場で貴重なお話をいただきまして、ありがとうございます。

 私の持ち時間は十五分しかありませんので、早速質問に入らせていただきます。

 山内参考人は、金子国土交通大臣のもとつくられた日本航空の経営改善のための有識者会議、そのメンバーであられます。八月二十日に設立されまして、九月十五日と二回開催された、そういう話でございますが、先ほどの高木参考人のお話の中にありましたが、単にこれは、日本航空がつくった再建案を聞いて、それに対して助言を与える、そういう役割にしかすぎないと先ほど高木参考人はおっしゃいましたが、そのとおりなのか、まず確認いただきたいと思います。

山内参考人 我々の委員会の役割は、日本航空の再建案について審議をすることでありました。それを我々が認めるかどうかというような立場には我々はなかったというふうに思っています。なぜかといいますと、我々の委員会の法的立場といいますか、そういったものが必ずしもそういった権限を与えられていなかったということであります。

 ただ、いろいろな情報をいただきまして、その後の再建案のあり方、あるいはそれをどのようにつくっていくか、さっき高木参考人がおっしゃいましたけれども、我々は手足がありませんので、それを具体的にやらなければならない、こういったことを進言するような立場にあったというふうに思っております。

谷田川委員 それでは、過去二回の会議の内容なんですけれども、JALの経営危機意識が足りなかったとよく言われております。例えば企業年金の問題、この改善策なんかは、過去二回の会議でJALの方からあったんでしょうか。

山内参考人 企業年金の問題につきましては、日本航空様から御説明がございました。

 それで、どのような方針でいくのかということを伺いましたけれども、法的な問題もあり、それを具体的に実施できるかどうか、こういったことを確認していた、そのような段階だったというふうに思っております。

谷田川委員 そうすると、できるかどうかわからない。これは、政権交代によって、前原大臣のもと、日本航空の経営改善のための有識者会議というのは廃止されまして、そして、高木参考人がおっしゃったように、JAL再生タスクフォースというのが誕生したわけであります。ということは、日本航空の再建内容が、果たして日本航空の言うとおり、そのままうのみにしちゃいけないんじゃないか、そういう危機意識のもと、JALタスクフォースができたと思うわけであります。

 ですから、私は考えますと、企業年金の問題、少なくとも、この有識者会議が立ち上がってJALの方からそういう話を聞いても、企業年金の問題について解決するという結論はなかなか出なかったんじゃないか。その意味で、JALタスクフォースが誕生していろいろな問題をしっかり指摘された、それが、最終的には法的整理という形になりましたが、山内参考人も先ほど妥当であるという御指摘をいただきましたが、それなりに前原大臣がしたことはいい方向性を生み出しているんじゃないか、私はそう思っております。

 そこで、高木参考人も先ほどおっしゃいましたが、前原大臣はこうおっしゃっています。日航の自己申告では経営実態がよくわからなかった、タスクフォースによる厳正な資産査定という過程がなければ支援機構への申請という結論にはならなかった、そういう発言をされておりますが、前原大臣の言うとおりだと思われますか。

高木参考人 おっしゃるとおりだと思います。

谷田川委員 ありがとうございます。山内参考人、そして高木参考人から、今のお話について確認いただきました。

 そこで、今後のことについてちょっとお話をさせていただくんですが、先ほど、アライアンスについての強化が必要だ、そういう話がございました。稲盛会長になられてから、デルタとアメリカン、どちらのアライアンスにすべきかという中で、いろいろ議論があったが、最終的に稲盛さんが決断して、アメリカン航空という結論を出しました。これは、では、お二人にお伺いしたいんですが、山内参考人、そのアライアンスのことについて、稲盛会長の決断をどう思われるか。

 それと、町田参考人にお尋ねしたいんですが、町田参考人は、前原大臣のやられたいろいろなことに対して、非常に批判的なことをいろいろおっしゃっているのはよく承知しております。非常に鋭い指摘なので、これに反論するのはなかなか大変だなと私は思っております。

 町田参考人は、一月十九日の「町田徹「ニュースの深層」」という文章の中に、稲盛さんが会長に就任することについて非常に否定的な意見を述べられております。過去の業績がどんなにすばらしくても、稲盛さんが設立したPHSのウィルコム、これも企業再生支援機構の対象になる、そういうことを考えると、稲盛さんが会長になられたのはよくないんじゃないかというニュアンスに聞こえます。しかし、一方で、二月十二日のダイヤモンド・オンライン「経済ジャーナリスト 町田徹の“眼”」、稲盛会長がアメリカンを選択したことは高い評価に値する、そういうふうに見方を変えております。

 稲盛会長が就任されたこと、これはよかったというふうに、そして、このアメリカンの決断はもちろん評価されているんですけれども、それについてお考えをお聞かせいただきたいと思います。

 お二人からお願いします。

山内参考人 私は具体的に日本航空の経営にかかわっているわけではございませんので、情報に限りがあります。その意味では、御下問のアライアンスのあり方について日本航空の選択がよかったかどうかというのは、私自身で決定的な判断を下すことはできません。

 ただ、状況的に見ますと、これまでも所属してきたアライアンスでありますし、それから路線の補完性等もございますので、そういったことを勘案されてこの選択をされたんだというふうに思っております。

町田参考人 お答えします。

 御質問の趣旨は、私の一月十九日の記事と二月十二日の記事で矛盾があるのではないかという御趣旨かと承りました。

 私は、一つ一つの事象について是々非々で書いておりますので、一月十九日の記事については、ウィルコムもJALも両方とも機構の指導のもとで再建策を得ようとしている、そのときに、ウィルコムの大株主である京セラの大株主である稲盛さんがJALの会長を引き受けることで、機構からウィルコムの支持が出やすくなるとすれば、これは大きな利益相反が存在しますから、このことは構造的におかしいということを書きました。

 一方、二月十二日の記事に関しては、デルタとアライアンスということになりますと、日本航空が新規に投資しなきゃいけない金額が膨大になるはずです。これは再建中の会社にとって再建が難しくなる行為ですから、この経営判断は、アメリカンにしたことは正しいという解釈をしました。

 以上でございます。

谷田川委員 国民の税金を投入する以上、その再生の過程は透明にすべきだ、できるだけ情報を出すべきだという話はもっともだと思います。

 それで、せんだって、自民党の方から、JALの各路線ごとの収支を出すべきだという要求がありました。全日空の伊東参考人、例えば、全日空も赤字ローカル線を抱えていらっしゃるというふうにお聞きいたしております。その収支について公開しろと言われた場合、それは出せますか。

伊東参考人 お答えいたします。

 個別の路線の収支につきましては、経営上の最も重要な資料であるというふうに思っておりまして、開示をしておりません。

谷田川委員 それは企業戦略上なかなか出せないというのはよくわかります。

 そこで、もう時間もなかなかないので、一つこれだけはちょっと言わせていただきたいなと思って、山口宏弥参考人にお聞きしたいんですが、先ほど航空労組連絡会議長という立場でお話をされましたが、経歴を拝見しましたら、日本航空のボーイング777の機長でいらっしゃる、日本航空の社員でいらっしゃいますよね。もちろん一番悪いのは企業経営者だと思います、それはもうそのとおりです。ただ、日航の社員として反省というか、そういうものは一切発言されなかったので。

 ちなみに、ボーイング777機長になられると年収は幾らぐらいで、それで、この日航が再生するに当たってそれなりの給与の下げがあったとか、そして、振り返ってみて、社員の一人として反省すべきではなかったのか、その辺をお願いいたします。

山口参考人 お答えいたします。

 社員としての反省ということでございますが、私どもは、従業員の立場で、いわゆる国民目線という点では、従業員全員、非常に複雑な気持ちでおるわけですけれども、全員が安全とサービスということで業務命令に従ってやってきているということなので、なかなか割り切れない気持ちも一方ではあります。いろいろマスコミ等の報道もありまして、自分たちとしても協力しようじゃないかということは全体的な機運としてありますけれども、ただ、日本航空全体のグループといたしますと、四十歳で手取りが二十万円とか、そういう下請、関連等々ありまして、そういったところで働く人たちはなかなか納得できないという面がございます。

 あと、賃金等の面につきましては、有価証券報告書をごらんになっていただいて、御理解していただければと思います。

 以上でございます。

谷田川委員 日本航空という会社は、本当にある意味で日本を象徴する会社だったと言っても過言ではないと思います。私は今四十七歳ですから、今からちょうど二十五年前、一九八五年に就職活動をいたしました。そのときのランクで、まさに人気のある企業は日本航空、常に上位にありました。伊東参考人がいらっしゃって恐縮ですが、全日空はまだまだ下でありました。しかし、今やもう全日空が日本航空を追い抜かしたと言っても過言ではないと思います。

 ある意味で、私は、全日空というのは我々民主党に通ずるものがあるのかなと。今から二十五年前、まさか自民党が政権から落ちるなんてだれも思わなかった。それと同じように、民主党が政権をとるともだれも思わなかった。だけれども、こうやって、どうなるかわからない。

 ただ、それはどうでもいいんですけれども、やはり、日本という国が本当にこれから立ち上がっていけるのか、それが非常に重要だなと私は思っているんです。

 日本経済新聞の論説委員の平田さんが十八日付で、「日航は「あすの日本」か」というタイトルでいろいろやっておりますけれども、少なくとも、日本航空が業務改革がおくれた、あるいは中年社員や退職者は既得権益に固執している、公的な融資に安易に依存している、そういった日航が、ある意味で、日本において、構造改革がおくれている、成長に必要な規制緩和や法人税減税、あるいは、中高年人口が多くて投票率も高いので政治的に大きな影響力を持つために、社会保障制度も恵まれている、国債を乱発している、これが重なる、そういった記事がございました。

 こういうのを見ますと、やはり日本全体として、この日本航空の問題をしっかり考えなきゃいけないなというふうに思った次第でございます。

 最後に、山内参考人から、重ねてお伺いしますが、日本航空の再生に関して、一言で言えば何が一番必要かということをおっしゃっていただければと思います。

山内参考人 これは一言で申し上げるのはなかなか難しいかと思いますけれども、基本的には、履行可能な再建案をつくって、それを社員一丸となってやっていく、これしかないというふうに思っております。先ほど申しましたように、これは、公的資金をいかにちゃんと返して、国民に負担をかけないかということでありますから、それの意識を持っていただきたいというふうに思っています。

 以上でございます。

谷田川委員 時間が来ましたので、終わります。

川内委員長 次に、岸田文雄君。

岸田委員 自民党の岸田文雄でございます。参考人の皆様方、きょうは、本当にお忙しい中、ありがとうございます。

 日本航空の再建問題ですが、一月十九日に会社更生法の申請が行われたわけですが、この際に、法的整理を行う利点、メリットとしまして、現政権は、透明性あるいは衡平性、公正性、さらには国民目線が確保される、こういったメリットを挙げて、法的整理を行う、こうした手法をとることの大切さを訴えたわけでありますが、残念ながら、現状はこうした言い分とは全く異なっているというふうに我々は感じています。

 きょうも、参考人の皆様方からさまざまな御意見が寄せられた中にありまして、どうも情報公開が不十分ではないかとか、あるいは数字を明らかにするべきではないかとか、あるいはマスコミ報道しか聞こえてこない、こういった指摘がございましたが、一月十九日に再建計画の概要が明らかになってから後、マスコミ報道は盛んに行われるわけでありますが、確たる情報というものが全く入ってこない、こういった状況がずっと続いています。

 我々国土交通委員会におきましても、これを問題視しまして、ぜひ関係者にしっかりとした資料を出していただきたい、ずっとこれをお願いし続けてきたわけであります。しかし、残念ながら、今日に至るまで肝心な資料については提出をいただけていない、こういった状況にあります。資料がいただけないのであるならば、それでは、関係者の皆様方に参考人としてお越しいただいて、直接お話を聞かせていただこう、こういった趣旨できょうの参考人質疑になったわけでございます。

 日本航空の再建問題には、多額の国民の税金が投入されようとしております。我々は、少しでもこの実態を国民の前に明らかにすることによって、国会としての責任を果たしたいというふうに考えておりますので、ぜひ御協力をよろしくお願い申し上げたいと存じます。

 そして、その上で質問に入らせていただきたいと存じます。

 まず、これは山内参考人にお伺いしたいと存じます。

 そもそも何のために民間企業、日本航空に公的資金を投入してまでも再建しなければならないかというこの問題、疑問、これはそもそも論でありますが、これにつきまして、先ほど山内参考人の陳述の中で、公共輸送の重要性あるいは経済に対するインパクト、こうしたものを考えたならば、これは妥当であるという御発言がございました。このそもそも論でありますが、先ほど町田参考人の方からは、国民のコンセンサスが得られていないのではないか、こういった指摘もあったわけです。

 この問題につきまして、言葉をかえてお伺いしたいのですが、それでは、公的資金を投入してまでも何を一体守らなければいけないのか。公的資金を投入して日本航空を再建する、最低限何を守らなければいけないのか、こういった質問についてどうお答えになるのかお伺いしたいんです。

 要は、国民生活なのか、地方生活路線なのか、国際ネットワークなのか、何を最低限守らなければいけないか、これによって、具体的な再建案、何を具体的に切り、何を具体的に残さなければいけないか、こういったものにも影響すると思うのですが、こういった問いかけにつきまして、山内参考人、どうお答えになるか、お聞かせいただけますか。

山内参考人 先生の御指摘、なかなか難しい問題でございますけれども、先ほど、私、公共性という言葉を使わせていただきまして、公共性という言葉は非常にあいまいな概念というふうに言わざるを得ないと思います。

 我々、公共性と言うときに何を頭に描くかというと、多数の人が使っているということが一つ、それから必需的であるということが一つ、そういった要素が公共性の成分かというふうに思っております。その公共性に基づいて日本航空を公的資金で救っていくということであれば、今申し上げたそれを達成する、社会に提供していく、こういうことかというふうに思っております。それは、経済に対するインフラという航空輸送の意味を含めて申し上げたいというふうに思います。

 ただ、そう申しましても、多数性といいますか、多くの人が使うという産業はたくさんあるわけでありまして、それだけではその説明にならないということであります。

 今委員御指摘の、例えば、国民の生活なのか、あるいは赤字ローカル線の維持なのかというところ、これは微妙なところでありますけれども、私の考えは、基本的には、この会社が公的な資金で救われなければならない理由は、一般の経済のインフラである、ここにあるというふうに思っております。

 例えば、海外との人や物資のやりとり、貨物についてはほかにも代替手段がありますのであれですけれども、日本航空が持っている海外とのやりとり、それからあと、国内線におきましてもかなり多くの人がこれを前提として経済は成り立っている、こういったことがあると思います。そういった点から、それを守っていくのが公共性の維持だというふうに思っております。

 さらに言いますと、赤字ローカル線をどうするかという問題がございますが、基本的には、私は、これはこの会社の維持ということではなくて、政策といいますか、国民としてナショナルミニマムの維持、こういう観点から考えるべきであるというふうに思っております。

岸田委員 ありがとうございました。

 続きまして、高木参考人にお伺いいたします。

 日航の再建問題、この窮境原因といいますか、何が主要因となって日本航空はこうした窮状に追い込まれたかということでありますが、要は、破綻した主要因は何なのかということです。

 当委員会におきましても、この主要因、国内の地方路線が原因だったというような意見もあり、一方で、国際線が大きな負担になったんだという意見があり、これにつきましては議論があったところでありますが、これにつきまして、先ほど山内参考人の方からは、国内路線も無視することはできないけれども、国際路線の方が額が大きく、そして引き金になったというような趣旨の御発言があったというふうに聞きました。

 山内参考人も金子大臣のもとでの有識者会議のメンバーとして御活躍をされました。一方、高木参考人の方は前原大臣のもとでのタスクフォースのメンバーとして日航の分析をされたと思いますが、高木参考人は、日本航空破綻の主要因は、国内線、国際線、あるいはそれ以外、何にあるというふうにお考えになりますか。そして、現状、今どこから出血しているのか、そういった面も含めてお伺いしたいと思います。

高木参考人 結論として、複合要因であると。

 まず、JALの生い立ちからして、国策特殊会社として発足して、完全民営化されましたけれども、実際には国や地方公共団体と持ちつ持たれつの関係にあった。今回の窮境に至った遠因も、そうした旧態依然とした官業体質にあった。そのために、打つべき対策が後手後手に回った。こういうことに大きな原因がある。

 国際線か国内線かということでございますが、これは両方でございます。

 国際線につきましては、これまた、早く取りかえなきゃいけない大型機、これを埋めるために随分いろいろと無駄なことをした。これを早く小型のリージョナルジェットにかえるべきであった。こういったことが影響した。それから、ANAに比べまして国際線の依存度が高かったために、リーマン・ショックによる旅客減等の影響をANAよりも余分に受けたということ。それから、いろいろな国内の空港に飛ばしておる赤字路線、これも大変な原因でございました。こういうふうに、複合要因。

 ですから、我々のつくった計画それから機構のつくった計画、いずれもこの辺にメスを入れて、徹底的にダウンサイズするものはしていく、こういう方針になっておるわけでございます。

岸田委員 もう一問、高木参考人にお伺いいたします。

 先ほど高木参考人の陳述をお伺いいたしますと、タスクフォースのありようについていろいろ御説明がございました。そしてその後、会社更生法を適用したことについての御意見がございました。この全体を聞いておりまして思いましたのは、要は、タスクフォースの皆様方は、日航の再建について私的再建を標榜されていた。しかし、結果として法的整理になった。法的整理については、先ほどおっしゃったように、いろいろと問題点もあり、思うところがある。そういった陳述をされたというふうに聞こえましたが、それでよろしいでしょうか。

高木参考人 おっしゃるとおりで、会社更生にした点については、メリットのあった点もあれば、デメリットの点もないわけじゃないということでございまして、結論的に、私どもとしては、会社更生でなくやる予定でいましたということでございます。

岸田委員 ありがとうございました。

 続きまして、伊東参考人にお伺いいたします。

 先ほどの陳述で、公正公平な競争をということを訴えられました。これはもっともなことだというふうに思います。その中で、一月二十日ですか、国土交通省の航空局長に対しまして、公正公平な競争環境の整備について申し入れをされたというふうに聞いておりますが、この申し入れに対しまして国土交通省からその後何か対応がありましたでしょうか、リアクションがありましたでしょうか。いかがでしょうか。

伊東参考人 お答えいたします。

 一月二十日以降だったと思いますが、国土交通省への申し入れは昨年の六月以降三回ほど、最後が一月の二十日ということで、十九日の翌日ということでありますが、その時点で、公平公正な競争環境の維持ということで、特に、公的資金を背景に、安売りといいますか、そういうことが行われるのはいかがなものかということを言った後、前原大臣の方からそのことについてお話があったり、日本航空に対して航空局長からそこについての文書が出されたという記憶があります。

岸田委員 申し入れの後、大臣発言があった、また航空局長の方から申し入れがあったということですが、この対応で参考人は十分だとお考えでしょうか。

伊東参考人 実際のマーケットでどういうことが起きているかについて、伝わってまいりますのは旅行代理店等々から伝わってくる話でありますから、確たるものではございません。もう一つは、運賃等につきまして、例えばバースデー割引運賃というものがございましたけれども、私どももこれに対抗する運賃をつくらざるを得ないというようなことが起きました。

 そういったことでは、新しい運賃をつくる、これは、例えば需要喚起をしなければいけないだとか、そういったことで思い切ったことをやることはありますが、基本は、収入が上がる、利益が出るという前提でございます。そこを逸脱するようなことが間々起きるということであれば、これは理解ができないということでありまして、そういったことが今も起きているというふうに思っております。

岸田委員 そうした現状に対しまして、やはり御不満を感じているというふうに理解いたしましたが、これにつきまして、国土交通省、ぜひ公平公正なルールづくり、御指摘があったルールづくり等、やはりしっかりとした対応が必要なのではないかというふうに思います。

 次の質問、もう一つ、伊東参考人にお伺いしたいと思います。

 一月十九日、JALの再建問題につきまして、再建計画の概要というものが明らかになりました。この内容を拝見いたしますと、極端なV字回復が見込まれているということが指摘をされています。この計画だと、旅客単価もかなり上がらないとこうしたV字回復は難しいのではないか、こういった指摘があります。

 先ほど伊東参考人の陳述の中で、航空業界、極めて厳しい経営環境にあるという御発言がございました。また、割引運賃ですとかマイレージサービスですとか、今、大変な競争が行われている、大変な状況になっているという御指摘がありました。一方、この業界の中には、格安航空会社の参入、こういった動きもどんどん進んでいます。

 こういった航空業界にあって、旅客単価を今より大幅に引き上げるということが実際可能なのかどうか、我々素人はどうもわからないのですが、日本航空の方の事情は全日空の方からはわからない、これは当然のことですが、全日空として、今の環境の中で旅客単価を大幅に引き上げるというのは簡単にできるというふうにお考えでしょうか。

伊東参考人 お答えいたします。

 旅客単価というのは、リーマン・ショック以降の状況は大幅に落ちました。落ちるのはすぐに落ちます。上げるのはなかなか難しいというのが現状でありまして、極端に言いますと、国際線で言いますと、現状、二〇〇六、七年のピークからは三〇%以上の下落というような状況になっておりました。

 少しずつ今戻りつつありますが、大きなところは、やはり高単価なビジネスの出張需要がなかなか戻らないというのが大きく影響しておりますし、供給過多なマーケットの中で、供給過多なマーケットを実は公的資金でもって維持しているという現状があるというふうにも思うわけでありますが、供給過多なマーケットの中で何とか利用率を上げていこうと思いますと、どうしても安く運賃を出さなければいけない、安い旅行をたくさん集めなければならない、こういった販売活動がどうしても起きるわけでありまして、そういうことでいきますとなかなか単価が上がらない、こういうことが現状であります。

 今後どう上げていくのかについて、我々自身は、需給適合の機材といいますか、需要に見合った機材を路線にしっかり張っていくこと、それから、しっかりしたイールドマネジメントといいますか、そういったものを徹底していくということで何とか単価を上げていこうというふうに考えておりますが、一朝一夕には上がらないというのが現状かと思います。

岸田委員 日本航空の方はどうやってこのV字回復を実現するのか、これはぜひ日本航空に直接聞いてみたいものだなということを強く感じました。

 次に、柳参考人にお伺いいたします。

 今話題になりました、一月十九日に明らかになった再建計画の概要の部分なんですが、その概要が明らかになり、その後はマスコミ報道等でいろいろな情報が飛び交っております。この再建計画について金融機関としてどのように評価されておられるか、お聞かせいただけますか。

柳参考人 お答えいたします。

 現在、更生計画の認可に向けて、当初の計画よりさらに具体的かつ深みのある内容の検討が行われているものと認識しております。先ほど申しましたが、当行としては、当行が期待されている公共的役割を踏まえて、安全で安定的な航空ネットワークの維持を中心とする同社の再生計画の策定に積極的にかかわっていくことがむしろ重要だと考えておりまして、JAL再生のために引き続き積極的な協力を行っていきたいと考えております。

 以上でございます。

岸田委員 計画の作成に協力する、かかわっていくというお話ですが、具体的に今後どう対応されるおつもりか、お聞かせいただけますか。

柳参考人 まだ認可される計画自身が出ていないのでコメントする立場にございませんが、適宜、当行としても意見を述べていきたいと思っております。

岸田委員 これも報道レベルの話ですが、関係金融機関、メガバンク等は、みずからの債権を再生支援機構に買い取りを要求しているというような話も伝わっております。金融機関の対応というのは今後の再建計画に大変重要だということを改めて感じています。金融機関の対応をしっかりと注視していかなければいけない、こういった面でも、メガバンク、関係金融機関のお話もぜひ直接聞かせていただかなければいけないな、こんなことを感じているところでございます。

 続きまして、町田参考人にお伺いさせていただきたいと存じます。

 まず一つは、JALの破綻につきましての責任の話なんですが、この責任につきましては、この委員会におきましても、前政権の責任、現政権の責任、あるいは国土交通省の責任、さまざまな責任の議論がありました。しかし、考えてみると、日本航空は民間企業であります。ですから、まず問われなければいけないのは民間企業の経営陣の経営責任だというふうに思うのですが、今日までの日本航空の再建問題の議論の中で、経営陣の経営責任ということについて、何か思うところがあればお聞かせいただけますでしょうか。

町田参考人 先生御指摘のとおりで、経営破綻ですから、一義的な責任は経営陣にあると思っています。特に日本航空の場合は、先ほど何が破綻の原因かという御質問をされていましたが、私は、レガシーコストというものが日本航空の場合の破綻の最大の原因だと思っています。

 と申しますのは、リーマン・ショックであるとか景気の後退であるとか、さまざまなことがありましたが、これについてはライバルの、例えば全日空であるとか、そういうところも同じ衝撃を受けているわけですね。それにもかかわらず、なぜ日本航空がそれを乗り切れなかったか。それは体力の問題が大きいからなんですよ。

 その体力の問題を一番左右していたのがレガシーコストで、先ほど、冒頭少し申し上げましたけれども、航空機や何かの購入の際に受けたリベートを利益計上なんかしますと、バランスシートに計上される航空機の価値は実体より大きくなってしまうんですね。それが今度は、収益にはね返ったときに大きなコストとなって償却を求められてきますから、そういう過去の、ざっくり言っちゃえば放漫経営ですが、その放漫経営のツケのコストが実は物すごく大きかった。

 現実問題として、先ほど労働組合の方もおっしゃっていましたが、二〇〇七年、八年ぐらいの合理化を見ますと、実は、短期的な収益、PL上発生してくるようなコストに関しては、日本航空が物すごく合理化努力していたのは事実なんです。それでも間に合わなかったのも、すべて過去の放漫経営のツケのレガシーコストに原因があると思っています。

 以上でございます。

岸田委員 ありがとうございました。

 もう一つ、町田参考人にお伺いいたします。

 先ほど来この議論の中に出ておりますように、再建計画、概要が発表された後、まだまだ不十分なのではないかということでさまざまな動きがある、こういったことが報道等で伝えられております。

 これにつきましては、見通しの甘さ等、いろいろな要因があるというふうに思うんですが、一つは、国土交通省自身も、この産業全体に対するビジョンというものが描き切れていない。国土交通省自身が、日本のこれからの航空行政はどうあるべきなのか、産業としてはどうあるべきなのか、こうした絵を描き切れていない、こういった状況にあるということも、こうした再建計画をめぐる混乱の一つの要因ではないかというふうに思っておるのですが、国土交通省、行政の責任ということにつきまして、町田参考人、何か御意見があればお聞かせいただけますか。

町田参考人 お答えいたします。

 社会資本整備事業特別会計という特別会計がございます。これは、空港に関しては主に地方空港の整備等に充てられてきた資金です。これに関して、やはりどこかで縮小に入るというか見直すべき時期があった。

 というのは、これは時期によっては、日本航空とか全日空は年間一千億とか二千億とかいう負担をこの会計に対してしていますから、やはりこのことが大きく収益の足を引っ張ってきたことは事実です。これを使って地方空港の整備を進めてきましたから、この重荷からどこかで回復させてあげる、日本国内に百近い空港が必要だったかどうか、どこかで転換する必要はあったと思います。

 ただ、それは最初から意味がなかったものではないと思います。どこか、やはり日本が貧しい国から転換していく過程で必要なタイミングはあったんだと思いますが、いつまでもやり続けたことに問題が残ったと思います。

岸田委員 ありがとうございました。

 参考人の皆様方からいろいろなお話を聞かせていただきました。

 冒頭申し上げましたように、日本航空の再建問題、国民の大切な税金が、多額な税金が投入されようとしている。にもかかわらず、情報が十分に開示されていない。言ってみるならば、ブラックボックスの中に血税を投入するような状況になっている。このことの問題点を我々はしっかりと指摘しなければいけない、そういったことで資料請求を行ってきた。しかし、なかなか肝心な資料が出てこない。そして、それであるならばということで、参考人の皆様方に御出席いただいて、少しでもこの実態を国民の前に明らかにすることによって責任を果たしたい、こういった思いでこの参考人の質疑にたどり着いたわけです。

 きょう、参考人の皆様方から大変貴重な御意見をいろいろお伺いさせていただきました。大変勉強もさせていただきましたし、いろいろ参考にさせていただきました。心から感謝を申し上げますが、ただし、やはり皆さん方のお話を聞いておりまして、改めて、この問題におきます当事者であります日本航空あるいは再生支援機構、さらには、これからの再生計画の行方を握っておられる民間金融機関、メガバンクの皆様方、こういった方にもぜひこの委員会に御出席をいただきまして、直接話を聞かせていただく必要があるのではないか、こういったことにつきましても思いを強くした次第でございます。

 ぜひ、当委員会におきましても引き続き、こうした当事者の皆様方、関係者の皆様方にしっかりと御出席をいただきたい、そのように努力をしていきたいというふうに思っていますが、委員長におかれましてもまた御協力いただきますようよろしくお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

川内委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。きょうは、六人の参考人の皆さん、本当にお疲れさまでございます。

 きょうは、JALの集中審議、そしてJALの参考人質疑ということであるわけですけれども、にもかかわらず、JALの経営陣は出てきていないわけです。稲盛会長もここにはいません。そして、JALの支援決定をして、今、公的資金を投入している企業再生支援機構、こちらも出てきていない。一体これは何なんだというふうに思います。

 これはどうしてこういうことになっているのか、ジャーナリストの目で、町田参考人、今こういう状況になっていることをどう思うかということも含めて、ぜひコメントをいただきたいというふうに思います。

町田参考人 冒頭の意見陳述でも申し上げましたが、突然一兆円近いお金が、税金が投入されたことについて、国民は十分に理解していないと思います。

 プレパッケージ型という表現をしてきているんですけれども、実は、我々ジャーナリストが使っている一般的な意味でのプレパッケージ型という再生の方法と、今回の前原大臣や再生機構が使っている言葉の意味は違いますね。

 ゼネラル・モーターズのケースがありましたから、ゼネラル・モーターズのように完全に再生可能なものとして、きちっと関係者と話し合って、収益が回っていくような、合理化策も織り込んだ上でのプレパッケージ型の再建策を用意してください、マスコミ側としてはそういう警鐘を発してきたつもりですが、機構の方は実は、一般商取引債権を守る、そこのところの合意がある意味でのプレパッケージだということを限定的に使っていて、そこはすごく注意深く事前調整型という表現で逃げている。

 前原さんは割とアバウトに、そこをプレパッケージ型という表現で、少なくとも二回以上ここの委員会でもその表現をされていると思うんですが、その言葉を使っているから、当然、再建策がきちっと明示されて説明されるべきだと我々は思うし、皆さんも思うし、当然そうなんですが、実は、彼らはそういう意味で使っていなくて、実際には申請してから再生計画を詰めていっていますから、大混乱が起きているわけですね。

 だから、そういう意味では、そもそも、国の役割がこの時点でどういうことがあるのかもなかったですし、法的にどういうことに基づけばこういうことを抱え込んでいいかどうかという権限もなかったですし、そういう中でずるずるとやってしまった。それで、ずるずるやってしまった上に、例えばプレパッケージの言葉の定義一つきちっと明示せずにやってしまったから、こういう大混乱になっているんだ。

 だから、前原大臣は恐らく、日本航空の経営というのは実際問題としては二〇〇三年ぐらいから営業収支ベース、実力ベースでは利益が出ていない状況が続いていますから、その意味で、長年放置されてきたものをどこかでメスを入れなきゃいけない、早くやらなきゃいけないといういい御趣旨はお持ちだったんだと思うんですが、そのやり方が全くわかっていらっしゃらなかった。それがこういう混乱になっているのではないかと思います。(柿澤委員「出てこられない理由は」と呼ぶ)ここへですか。

 だから、恐らく、期待されているようなプレパッケージ型の再建策というのは持っていらっしゃらないわけですよね。ないものを出せと言われても出せないということになっているのではないかと思います。

柿澤委員 伊東参考人にお伺いをいたします。

 このJALの経営再建また破綻ということをめぐって、恐らく最も大きな影響を受けているのは、やはり全日空さん、ANAさんだと思うんです。そして、今、経営再建ということでやっているさまざまな施策の影響も受けざるを得ない。日本航空の再建等、航空行政について、競合他社として今の現状をどのように受けとめておられるか。また、ややもすると、JALに何か政府が肩入れをして、そしてJALにとって有利な政策があたかも実行される方向になってしまうのではないか、こういう懸念も種々語られている状況ですけれども、そうした点についてANAとして御懸念はお持ちでありますでしょうか、お尋ねを申し上げます。

伊東参考人 まさに公的資金が、あのような多額な額が投入をされるということの中で、私ども、一定の公的資金が投入をされることについては、国民にとって必要なネットワークが確保されるという観点ではそのとおりだというふうに思っております。ただし、冒頭の陳述で申し上げましたけれども、公的資金の使途については慎重に検討がなされるべきではないかということについて申し上げたつもりでございます。

 そういう意味では、先ほども申し上げましたけれども、度が過ぎた値引きだとか、機材の更新に当たるだとか、IT更新だとか、そういったことに使われるについては、将来も含めて、公正公平な競争環境をゆがめる可能性があるというふうに思います。そこはぜひとも、今後、対応をしていただきたいというふうに思うところでございます。

 航空行政についてというお問い合わせでありましたのでそこから申し上げますと、私ども、先ほども申し上げましたが、今後、国際線で成長していくという目標を立てております。そういう中で、特にアジアの成長、ここで私どもが存在感を持って成長していく、これが私どものビジョンでもございます。

 そういう中で、国際的な競争力をそぐような、日本固有の特有な、例えば航空機燃料税だとか、アジアのハブ空港、他国の、例えば韓国の仁川空港と比べますと数倍の着陸料を払っているだとか、そういった足かせになるようなコストがございます。航空機燃料税については、日本航空と私どもで約一千億近いような、これは国内線にかかっている税金でありますが、他国に類を見ない税金であったりもします。そういったことについてぜひ是正をしていただきたいというふうに思っておりまして、これは業界団体であります定期航空協会で長らく要望をしている内容でもございます。

 こういったことにぜひ今後注力をしていただいて、日本の航空会社が世界のマーケットで戦える、こういった施策を講じていただきたいというふうに思っております。

 以上でございます。

柿澤委員 公的資金を使った、場合によっては採算割れの値引きであるとか、こういうことをJALが行い続けて、そして同業他社である全日空、ANAの経営を圧迫する、やはりこういうことになってはならないというふうに思います。現に、それがここまで行われているわけです。

 JALのマイレージキャンペーンについていろいろと資料をいただいたんですけれども、今行われているマイルのキャンペーンを全部適用を受けると、成田からニューヨーク線、エコノミークラスで一名が往復した場合、支払い総額は九万三百六十円になるということでありますが、この獲得マイル九千四百三十二、今ダブルアップとかもろもろのキャンペーンを全部やっていて、これが全部適用されると、獲得マイルは五万五千二百四十四マイルになってしまう。これは、いいですか、七万五千円分のJALクーポンに交換ができる。

 今言ったように、九万円支払ってニューヨークにエコノミーで一人で飛ぶと、七万五千円のクーポンをもらえるわけですから、実質一万五千円でニューヨークへ行けちゃう。こういうことを今JALはマイルのキャンペーンでやっているんです。成田―ホノルルで換算すれば、往復二名分の特典航空券と交換ができるということであります。

 こんな、ANAさんにとっても大変な影響を与えるでしょうし、そもそもJALの採算、収支に多大な影響を与えますよね、これは。こういうことを今行っている状況だということをお聞きいたしました。

 こういうことが影響して、先ほど町田参考人がおっしゃられていましたけれども、きのう発表された数字だと、国際線八十万四千人、去年のとても悪い時期から一〇・三%もJALは下がっている。しかも、その中身はこういうマイルだったり株主優待だったりするわけですから、もう収支は推して知るべしと言わざるを得ない。

 このような状況では、はっきり言えば、JALの経営再生、事業収支をバランスさせていくことにもつながりませんし、その一方で、はっきり言えば、ANAさんの経営にも大きな影響を及ぼして、場合によっては、言葉は悪いですけれども、足を引っ張られて共倒れということにもなりかねないのではないかと思います。

 先日、ANAは、四百億円の収入未達、赤字増加を発表しておりますけれども、JALとこのままこうやって国際線でやっていけば、共倒れになってしまうという危機感を感じておられるでしょうか。そして、国際線マーケット等において二社が発展できるほど、今この日本の航空業界というところにマーケットのサイズがこれだけあるのかどうか、この点でも私はいささか疑問に感じるんですけれども、伊東社長の御見解はいかがでしょうか。

伊東参考人 お答えいたします。

 先ほどから言っておりますのは、私ども、日本航空に多額の公的資金が投入されたことによるところがあるわけですけれども、私ども自身が大きな危機感を持って経営をしているということでございます。

 日本のマーケットといいますか、経済状況がなかなか厳しい中で、冒頭も申し上げましたけれども、リーマン・ショック以降の需要の落ち込み、特に私どもの収入の柱、これは日本航空も同じだと思いますが、海外出張だとか、そういったイールドの高い、運賃の高いお客様の減退といいますか、それが非常に大きかったということでございます。今後どういうふうに需要が戻ってくるのかについては、時間がかかるということも先ほど申し上げました。

 そういう中で、今後航空会社としてどういう発展の道を探るのかといいますと、それは国際線、国内線は御存じのとおり、今、新幹線との競争だとか、もっと言いますと、少子化、人口が減る中で、国内線は我々にとっては大きな経営の柱でありますが、今後の成長からいえばなかなか厳しいところがございます。そういう意味では、日本を基盤に持ちます航空会社として世界で戦える、戦っていく、こういう方向でございます。

 そういう中で、おっしゃっているのは、では日本の中でどう航空が成り立っていくのかということだったかと思いますが、それは、公平公正な競争環境がある中でお互いに切磋琢磨しながらやっていく、こういうことであろうかと思います。そのためにも、今回の公的資金が投入される中で、私どもが先ほど申し上げましたような、EUにおけるようなガイドラインといいますか、競争環境を守るためのガイドラインの設置といいますか、そういうことについてぜひとも考慮をしていただきたいというふうに思っているところでございます。

柿澤委員 ここはちょっと詰め寄って恐縮ですけれども、今、公平公正な競争環境で切磋琢磨をするというお話をされました。

 そのお言葉を前提にお伺いをしたいんですけれども、今、公的資金を投入されているJALが先ほど申し上げたような大変なマイレージのキャンペーンをやっている。こういう状況というのは、ANAさんの立場から見ると不公正、不公平だというふうに感じておられるのかどうか、お伺いをしたいと思います。はっきり言ってください。

伊東参考人 お答えいたします。

 マイレージキャンペーンは、私どもも追随をせざるを得ないということで追随をしているところであります。これは、私どもにとっても、少しといいますか、やり過ぎなキャンペーンだというふうに思っているところでありまして、冒頭も申し上げましたように、この資金といいますかマイルは負債となってまいります。

 そういう意味でも、公的資金を背景にしたそういったキャンペーンだとか値引きだとか、こういうことについては、私どもはやってほしくないというふうに思っております。明らかに減収になるようなキャンペーンとか販売施策、販売企画については、これはやるべきではないというふうに思っております。

柿澤委員 御答弁ありがとうございました。

 このマイレージキャンペーンは、今、伊東参考人がおっしゃったように、これは要は負債になるわけです。マイレージも債務になるわけです。

 このマイレージキャンペーンのような債務の積み上げに当たって、これは銀行の了承のもとに行われているんですか。政投銀さんは、このマイレージキャンペーンで減収になりますけれどもやりますよ、こういうことを了承した上でこれは行われているんですか。大事な点だと思います。

柳参考人 お答えします。

 御存じのように、現在JAL自身は更生計画中でございますので、管財人団あるいは裁判所の監督下のもとで経営をされていると存じています。したがって、当行といたしましては、今のような部分については関与しておりません。

柿澤委員 関与しておりませんということですけれども、それで本当にいいんですか。管財人がやっているからということで、いわばお任せ、言われるがままにつなぎ融資を出していく、こういうことになるんですか。私は、この御答弁は大変疑問だというふうに思います。

 さらにお伺いをしたいと思います。

 先ほどガイドラインのお話が伊東社長からございました。いろいろ資料を拝見すると、やはり一民間企業であります航空会社に、公共性の問題はあるといえども、公金を多額に投入するということについては、やはり厳しい条件が課せられなければいけないということだと思います。

 EUの事例からひもといてみると、一九九四年七月、エールフランスに政府が四千五百億円の出資をしたときには、課せられた条件は、機体数の凍結、そしてEU域内就航路線の凍結、市場実勢よりも低い運賃提供の禁止、こうしたことを更生期間終了まで遵守すること、こういうことが条件として課せられている。新たな投資や事業規模の拡大はだめなんだということで、たがをはめられた。もちろん、四千五百億円を返済すればこの条件は外れるわけですけれども、こういう厳しい条件のもとに公的資金の投入が行われているわけです。町田参考人もおっしゃっていましたが、日本もそのようにあるべきだというふうに私は思っております。

 これまで伊東参考人も、きょう資料でお出しをいただいていますけれども、国土交通省に対して、こういう形のガイドラインを設けるべきだという申し入れをされています。これに対する国土交通省さん、政府の反応というのは今までどうだったんですか。検討していただいているんでしょうか、お伺いをいたします。

伊東参考人 現時点で具体的な動きについては承知をしておりませんが、検討していただいているものと信じたいと思います。

柿澤委員 それは、要は、受け取った、その後はどういう検討をしているか皆さんは何も聞かされていないということをお答えされているんだと思います。

 今申し上げたように、欧米のスタンダードでいえば、これはアメリカだって基本的にはそうですが、このような形で事業規模の拡大を、公的資金が投入されている経営再生中の会社が堂々と行うなどということは、これはやはりあり得ないわけでありますし、また、徹底的な業務のダウンサイジングをやることがある意味では当たり前だと思うんです。しかも、そうしたことをやはりきっちり第三者の目で監視をしていかなければいけない、その約束どおりに物事を履行しているのかどうかをだれかがしっかり見届けて、監視をしていかなければいけないはずだというふうに思います。

 そういう意味で、やはり私たち議会、国会の役割は非常に大きいというふうに思います。私は先日、残りのつなぎ融資を実行するに当たって、その融資の実行に当たって、事業の計画をJALさんにお出しいただいて、それを精査した上で、このままゴーしていいのかということをもう一度この場で、国会で議論をする、そして最終的に決定を行う、こういう枠組みを今からでも超党派で整えるべきだというお話をさせていただきました。

 欧米の事例で、こういう厳しい条件が課せられている、新規の投資はだめなんだという条件が課せられているわけですけれども、こうした履行監視というところについては、EUのガイドラインでは実効性を保つためにどのような監視の仕組みがつくられているんでしょうか、お尋ねを申し上げます。伊東参考人にお願いします。

伊東参考人 私どもも詳しいところまで承知をしているわけではありません。各国の当局がその進捗状況について六カ月ごとに報告をするということを決めていることを見た程度でございまして、ここで正確に言えるほどの知識を持っているわけではございません。

柿澤委員 話をかえます。

 先ほど、前の委員の参考人質疑で路線別収支のお話が出ました。JALの路線別収支を出してほしいということを多数の委員が資料要求したんですけれども、やはり出してもらえない。ANAさんにこの路線別収支、じゃ、出してと言ったら出してもらえますかと言ったら、やはり経営の根幹にかかわる部分だというようなお答えだったと思いますが、しかし、これは大きな違いがある。

 実は、JALは、この路線別収支はそもそも算定することが困難であるということで、責任を持った路線別収支の数字を出すことができないというふうにおっしゃっています。今、伊東社長のお話を聞くと、ANAさんは、路線別の収支を基本的に数字として持っていて、それを経営に当たっての参考資料として活用しておられるということだと受けとめましたけれども、皆さんは、路線別の収支がどのぐらいで、今どういう状況になっているかということをしっかり把握しながら経営をしておられるということでよろしいんでしょうか。

伊東参考人 これはもちろんそのとおりでありまして、どのレベルの利用率があって、こういう一人当たりの単価があって、そしてこれぐらいの御利用があればこの路線は黒字であるとか赤字であるだとか、そういうことはすぐわかるようになりますし、大体翌日には私の机の上で路線ごとの実績というのが毎日わかるようになっておりまして、この路線は最近調子が悪いということであれば、営業部門に、どうなっているのかだとか、マーケットの状況等についてもしっかり報告をされるような環境にあります。

 そういう意味では、航空の経営の根幹だというふうに、当然、各路線ごとについて収支は把握をしております。

柿澤委員 これをJALは、正確に算定することが困難である、まあ、正確に算定することが困難であるというのは正確度合いにもよりますけれども、こういうことで出してきていないわけです。最初の説明を聞いている限り、あたかも路線別収支を何かつくっていないかのような説明をしていたようにも記憶をしております。そういう意味で、私は、JALの私たちに対する姿勢を疑わざるを得ないというふうに思います。

 さらにお伺いをしてまいりたいと思います。

 九月以降、前原大臣が、今までの再建計画を一回ストップしてタスクフォースを投入し、そして政府の主導でというかリーダーシップでさまざまな経営再建に当たっての発言をされてきた。この政府の行動がある意味では逆に信用不安を起こす引き金を引いてしまったというふうに指摘をする方もいます。

 町田参考人はまさにそういう一人であると思いますけれども、この九月以降の、前原大臣がタスクフォースを投入して以降の政府当局者の発言また行動によって、どれだけJALの経営に影響を与えたというふうに思っておられますか。町田参考人、お答えください。

町田参考人 お答えします。

 端的に金額にしてとか数字にしてとかいうことはなかなかに難しいと思うんですが、私が当時取材していた限りでいいますと、十二月末に向けて日本航空が調達する必要があった資金というのは、当時の段階でいうと七百億円ぐらい。一千億の枠が既に春の段階で自公政権時代に用意されていましたから、その部分も含めて、その部分も使っちゃった上で不足額が七百億円ぐらいで、それを調達できるための合理化策とか収益の改善策を一生懸命詰めていたというのが水面下の段階で、山内参考人がやっていらした有識者会合をもう少し回数を重ねていれば、それを前提にしたものも恐らくいろいろ出てきたんだと思うんですね。

 ところが、現在は、御案内のように、六千億円のつなぎ融資が企業再生支援機構から出ている。さらに、日本航空の再建が決まったら、三千億円の投資も機構からすることになっている。都合九千億のお金が必要と言われています。

 だから、JALが自前で七百億調達すればよかったものが、政府が白紙撤回と言って経営危機があるかもしれないと見せた結果、政府が補完しなきゃいけなくなった金額が九千億になっているわけですから、これは十倍以上の負担を国民にかけることになった、それぐらい信用を毀損したんだという見方もできるのではないかと思います。

 以上でございます。

柿澤委員 最後に、先ほど山内参考人が答弁にお立ちになって、JALのこれからについて、実行可能な再生案を会社、社員一丸となってやっていく、こういうお話をされました。冒頭、町田参考人が御答弁をされたところだと、プレパッケージといいながら、今はとにかくいろいろ動いていて、はっきり言えば、今JALの方、支援機構の方が出てきても、こういう再生計画をやっていくんだと言えるほどのものを今の段階でつくれていない、持っていないんじゃないかというお話でした。

 また、社員一丸となってやっていくということでありますけれども、報道ベースで、何と一年の間に一万六千人のリストラをやるというわけです。これは山口参考人にお伺いをしたいんですけれども、これをそのまま労働組合に提起された場合、のめますか。

山口参考人 先ほど冒頭で陳述させていただきましたけれども、一万名を超える分野で人が減るということは、これは大変な問題だというふうに理解しています。

 個々の問題につきましては、各労働組合が労使間で決めることですので、私どもは産別の団体ですので直接交渉はできませんので、その点については各職場の労働組合が交渉して解決していくというふうに考えています。

柿澤委員 今の段階で、JALの再生が確実なものになっている、ある意味では軌道に乗って、線路に乗って、終着駅を目指して順調に進んでいるというふうには、情報がない中でも全く見られない、こういうふうに受けとめざるを得ない状況なのではないかなというふうに感じました。

 これを覆していくためには、JALの経営に当たっている稲盛会長、そしてそれをバックアップしている支援機構を初めとする皆さん、こうした皆さんがやはりこういう場に出て、国民に向かって自信を持って、自分たちのプランというものを話せる範囲で説明していただくということが不可欠ではないかという思いを強くいたしました。

 参考人質疑の最後に当たって、その意味で、先日もいろいろな委員からお求めがありましたけれども、JALの稲盛会長を初めとする経営陣、そして支援機構の役員の皆さん、そうした方々にぜひこの国土交通委員会にお出ましをいただいて、参考人として発言をいただきたいということをぜひ御協議いただきたい。お願いを申し上げまして、この参考人質疑を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

川内委員長 次に、竹内譲君。

竹内委員 おはようございます。

 参考人の皆様、本日はお忙しいところありがとうございます。私は、公明党の竹内譲でございます。

 今までの先生方と若干重なる部分もあるかとは思いますが、またお聞きいたしますので、よろしくお願いいたします。

 最初に高木参考人にお伺いしたいと思うんですが、JAL再生タスクフォースは、昨年九月二十五日に発足されているわけでございます。先ほど高木参考人は、以前から前原大臣に助言をしていたというふうにおっしゃっておられました。これはタスクフォースをつくれということだと思うんですけれども、タスクフォースをつくるという御提案をされたのは高木参考人の方であって、それは大体九月よりもどのぐらい前からおっしゃっていたのか、まずこの点をお聞きしたいと思います。

高木参考人 九月の十九日でございます。

竹内委員 九月の十九日ということでありますが、その場合に、前原大臣に、大臣は企業再建とかそういうのは余り御存じなかったかもしれないんですよ、どういうことをやるか。資産査定、デューデリジェンスというのをやる場合には、コンサルタントをたくさん使って大変なお金がかかるよということは、事前に説明されていましたか。

高木参考人 説明しておりました。

竹内委員 それでは次に、我々のいろいろなヒアリングでも、相当規模のコンサルタント料をJALが支払ったということはお伺いをしておりますけれども、その上で、次にお伺いしたいのは、我々の情報では、タスクフォースは主要銀行に再建の実務部隊として参加するよう要請していたという情報がありますが、これは事実でしょうか。

高木参考人 要請しましたし、実際にも入っていただきました。

竹内委員 このタスクフォースの主要メンバーは五名ですよね。ところが、私どもは、当初案では日本政策投資銀行も入っていたというふうに伺っておりまして、それが突如なくなっていたというふうに聞いておるんですが、いかがですか。

高木参考人 ちょっと微妙な問題で、政策投資さんにも入っていただこうかなと思っていた時期はありましたが、結局、入っていただかないで、利害関係人のないメンバーでやった、こういうことでございます。

 それから、先ほどのお金の話でございますが、確かにかかるわけでございまして、だから私は、何回も同じようにかけちゃいけない、こう思っていたわけでございます。

竹内委員 日本政策投資銀行は、タスクフォースに入ってもらいたい、要するに、六名として入ってもらいたいという要請は受けましたか。

柳参考人 正式には受けていないと思います。

竹内委員 正式には受けていないということですね。

 先ほど高木参考人は、実務部隊には主要銀行が入っていたとおっしゃっていたんですが、それは政策投資銀行もメガバンクも入っていたということですか。

高木参考人 おっしゃるとおりでございます。

竹内委員 ということは、タスクフォース案の一々は、どういう議論がなされているかはDBJもメガバンクも全部知っていた、こういう理解でいいんでしょうか。

高木参考人 実動部隊に加わった銀行メンバー、ある程度、出てきた銀行との情報の遮断ということをお願いした時期もありましたけれども、むしろリエゾン、連絡員として動いていただいた時期も、両方あります。

竹内委員 私がちょっと不思議に思うのは、やはり企業再生というのは絶対につなぎ融資が必要ですし、資金繰りが大事だと。当初から、十一月から十二月にかけては資金が逼迫することはわかっていたわけでありますから、そういう意味では、メガバンクなりDBJなり、もっと深くコミットしてもらわないとこれはうまくいかないんじゃないかなと、私は当初から思っておったんですけれども、そういう御心配はされませんでしたか。

高木参考人 当然、それは最初から話に出ていたことでございまして、三月までに総額一千八百億のつなぎ融資をしていただく、これは政投銀にしていただく、こういうお話が出ておりましたし、その点は御了解いただいていたかなと思います。

竹内委員 少し前へ進めたいと思います。

 先ほどの高木参考人のお話の中で、一つは、改正産活法を用いたタスクフォース案が採用されなかった、これは財務省とかDBJの反対があったのではないかと推測されるというお話がございました。これもそういう意味では推測していただくしかないんですが、なぜ彼らが反対したのか、そこはどのようにお考えでしょうか。

高木参考人 もう一つ出し手があったので、そちらにお願いした方がいいだろう、こういうことになったんだろうと思います。もしそれがなければ、やはり現行法上はそこしか出し手がないということになったかもしれません。助けないという結論になれば別ですけれども。

竹内委員 なぜ、もう一つの出し手の方を選ばれたのか。せっかくタスクフォースを結成して、高木参考人を初め企業再生のプロの方々を集めてやったアイデアをなぜ採用しなかったのかというのは、いまだに非常に疑問に思っておるんです。

 そこについては、高木参考人はどのようにお考えですか。

高木参考人 大変難しい質問でございまして、私は、先ほど冒頭に御説明申し上げましたように、ことし三月までのスケジュールをもう組んでおりまして、体を張ってこれに取りかかるつもりでおったわけでございますが、御案内のとおり、企業再生支援機構は独立の機関で、企業再生支援委員会という意思決定機関もある。それに外部の者である私どもが介入するということはやっちゃいけないことであるというふうに理解いたしておりましたが、振り返ってみると、もっとよく話し合って、協働するという余地をもう少し探るべきだったかなと実は多少反省しているんであります。もし、あの時点で私がそれを言ったならば、こう言っちゃなんですけれども、私どもの方がかなり先輩に当たるわけでございますので、先輩が余計なことを言うなという気持ちにさせてしまった可能性があるんですが、その辺をもう少し両方で協議してもよかったのかと今はちょっと反省していますけれども。

竹内委員 率直に、ありのままに答えていただいて、大変よくわかりました。

 産業再生機構で実績を上げられた皆様でいらっしゃいますから、本当にプロ中のプロでいらっしゃいます。ですから、その使い方にあいまいさがあった。法的地位とか、その後の計画をどう進めるか等、本当にメガバンク等も、銀行団も指導していかないといけないし、当然その経営者、経営にも介入していかないといけない。そうすると、先々のことを考えたときに、このタスクフォースというものが、ちょっとあいまいさがあったのではないかという感じが私はするんです。

 今、高木参考人がおっしゃったように、むしろ企業再生支援機構の方々の方が若手で、後輩、どちらかというと皆様よりは経験は不足している。そういうところへもう一回やるというのは、私もちょっと不思議な感じなんですね、デューデリジェンスを二回もやる。

 先ほどおっしゃったように、これは時間との勝負ですから。私もかつては銀行で調査や企業再建も多少はやったことがあるので、これは早くやらないといけないことはもうわかっていますよね。しかも、そこに当然銀行の人間も入り込んで、本当に意思疎通をしっかりやっておかないと、とてもじゃないけれどもこれは進まない。

 そういう意味で、今回、事前調整と後で言っていますけれども、途中かなり迷走した感じがするんですよね。タスクフォース、それから企業再生支援機構、それから年末の資金繰りのどたばた。そしてまた、事前調整と言いながら経営再建の方針をめぐってはなかなか決まらない。本来であれば、高木参考人がつくられたタスクフォース案をそのまま先ほどおっしゃっていたように採用して、すぐぱっぱっと結論を出せたと思うんですが。

 もう一度、素人にもわかりやすく、今回の、事前調整と言いながらできていなかった、その辺の経緯の問題点をちょっともう一回整理していただけますか。

高木参考人 私どもが十月の末に解団したということにつきましては、新聞報道では主要行の同意が反発を受けてとれていなかったんだ、こういうふうに報道をされておったんですが、あれは誤りでございまして、事実と相違するわけでございます。もちろん、詳細にわたっては同意は得ていなかった。しかし、主要三行、それ以外の二十五行に対しても説明しておりました。

 主要三行からは、詳細についてはともかく、大方については、大筋はこれでいこうということ、それを同意という形で、ただ、口頭だけじゃ困るので書面でいただく。ただ、まだしばらくいろいろな留保がついている、それをどういうふうに大ざっぱな形で同意したということを書面で出すか、そういう協議まで、ディスカッションにまで最後の週は入っていたわけで、それをいただけたならば、十月三十日に前原大臣がこの事業再生計画でいくという御確認をいただくというところまで実はやっておったわけでございます。

 済みません、それでよろしゅうございますか。

竹内委員 大変貴重な御発言をいただきました。ということは、突如これは方針が変わったという感じがするんですよね。

 その上で、企業再生支援機構に移ってから会社更生法申請に至るまでの、この問題点はどのように御認識されていますか。

高木参考人 デューデリを企業再生支援機構の方でもおやりになりましたが、やったスタッフはかなり重複した部分もあるわけで、それをお互いに連携をとって、もう少し、つまり、一度やったわけでございますから、それをベースに参考にしてやるという方法もあったのかもしれません。

 しかし、そこはプロ同士でわかっている話でございます。よく公認会計士さんに調査をお願いいたしますと、一からやり直すんですね。これは非常に無駄です。だけれども、私どものような立場から考えますと、やはり、では、どういうふうにやったのと、いろいろわからない点を質問して、そこまでおやりになったのならこれは使っていいねということで、かなり期間が短縮できるわけです。

 もともと私どもがつくったのは、九月二十五日に顧問団をつくりまして、十月二十九日にはもう大臣に渡しているわけでございますので、一月ちょっとでできている。それを精査してやるとなれば、私の個人的な見解で申しわけございませんが、一月本当は要らないはずなんですね。この点での時間のロスが、これは後を引いてしまったなと。

 私、先ほど申し上げたんですが、それがやはりいろいろな企業価値の下落に、もしかしたら結びついたかもしらぬ。それで始まって、もしじりじり後退したんだとしたら、これは、ここでもう食いとめなきゃいけない、仁王立ちになって、もうこれでいくんだということで、全社一丸となってやるということでないといけないんだ、こう思います。

竹内委員 ありがとうございます。

 非常に時間がかかったなという感じが私もしておりましたので、そこは非常によくわかりました。

 では、日本政策投資銀行の柳参考人にお聞きいたします。

 過去の経緯等、数字も融資実績、融資残高等をずっと拝見しておりますと、やはりメガバンクよりは現在の日本政策投資銀行がメーンバンクであったというふうに思います。メーンバンクとしては、やはり今日に至るまでにさまざまな経営指導をすべき責任があるのではないかというふうに思うんですが、どのような経営指導をされてきたのか、まずこの点についてお伺いします。

柳参考人 御存じのように、当行は、先ほど御説明いたしましたが、同時多発テロ以降の緊急融資及び今回のDIP融資において、残高は最大の規模であることは確かでございます。

 しかしながら、よく御存じのように、当行はもともと、性格上、企業さんの日々の資金繰りの面倒を見させていただくとか、あるいは決済機能がございませんので、いわゆる純粋な意味でのメーンバンクではないということを御承知おきいただきたいと思っております。

 ただ、今の御質問の点でございますが、当然のことながら、大口債権者として、債権管理の観点から、同社が経営してきた問題について適宜意見を述べさせてもらうとともに、今般の経営改善計画に対しても適切な意見を述べてきたと考えております。

竹内委員 もちろんメガバンクの責任も大きいと思うんですよね。ただ、しかし、やはり何といっても最大の融資先ですから、長期資金を貸してこられたことは事実ですよね、航空機を初めとして。それを担保にとっておられることも事実であるわけでありますから、そういう長期経営計画について、やはりきちっとしたことを言っていかないといけないんじゃないかと思うんですよね。どう考えても、さまざまな機材の更新であるとか、人員の体制の問題であるとか、路線の問題であるとか、年金の問題であるとか、これは長期の話ですから、当然、長期銀行がやはり責任を持ってやらないといけないと思うわけであります。

 そういう意味では非常に残念な回答だと思うんですが、これまで、日本航空に人を派遣して経営の改革をやっていこうというようなことをお考えになったことはないんでしょうか。

柳参考人 金融機関としての性格上、経営に直接タッチするような人材を派遣する予定はございませんでした。

竹内委員 私は、金融機関というのは、これまで企業再建で随分人を派遣してきたと思うんですよね。大体メーンバンクがその会社に人を派遣して、再生といいますか、さまざまな経営改善計画を立案してきたというふうに私は過去の体験でもよく知っております。

 そういう意味では、日本政策投資銀行のあり方というのは、やはりもう少しよく考え直していただかなくてはいけないんじゃないかなと。このままでは、JBICで今度国際投融資も進出するというようなことになっておりますが、非常に心配です。こんなことで本当に融資ができるのか、判断ができるのか。金を貸すというのは大変なことでございますから、一千億といったって、一千万じゃないんですから。まあ、一千万でも大変なことですけれども。そういう単位で、本当に何のためにそれを貸すのか、資金需要原因は何だ、それが本当に返済能力はあるのか、また、担保は本当に大丈夫かということをきちっと見きわめる、そういうことができなければ銀行としての意味はないというふうに思うんです。

 それで、時間がどんどん迫ってまいりましたのでお聞きしたいんですが、法的整理を今回主張し、誘導されたのは、日本政策投資銀行ではないんでしょうか。

柳参考人 当行といたしましては、公正公平で、かつ透明性があり、抜本的な再建計画で、JAL自身の再建が確実になるという計画をつくっていただきたいということを一貫して申し上げてまいりました。

 そのような意味では法的整理の方がいいかということもございますが、一方において、企業価値の毀損、あるいは一時的に、例えば燃料費の支払いでありますとか、多額な資金が要ることも確かでございます。そういうデメリットもございます。それら両方を勘案しながら、関係者が合意をして最善の案になったんだと考えております。

竹内委員 今回、たまたま企業再生支援機構が十月に発足したものですから、企業再生支援機構に投げるような形で話が進んでいったんですが、もしもこれがなければ、これはやはり銀行団と日航が中心になって、どう進めていくか、当然考えなければいけないと思うんですね、通常のケースであれば。

 そういう意味では、法的整理に進むのか、私的整理でいくのか、ここはどのように考えておられたんでしょうか。

柳参考人 仮定の御質問なのでちょっと答えにくいんですが、いずれにせよ、繰り返しになりますが、当行としては、法的整理、私的整理にかかわらず、公平公正で、透明性があって、確実な再建ができるという案が一番望ましいと思っておりますので、そのような観点から他の金融機関あるいは当事者と相談をしていったと考えられます。

竹内委員 ここの経緯、大事なところでございますので、私もやはり、きょうこの場に日本航空の関係者の方、また企業再生支援機構の方が来られていないということは非常に遺憾に思いますし、改めて委員長に参考人招致を要求するものであります。

 時間も迫ってまいりました。先ほどから、全日空の伊東参考人にはお話が何回も行っておりますが、改めて、あと、そのほかの競争条件の公正化ということで特に主張しておきたいことがございますでしょうか。繰り返しになっても結構ですので、御主張があればおっしゃってください。

伊東参考人 まさに繰り返しになってしまいます。

 公的資金が全く否定されるものでないというのも言っておりますが、その使い道については、特にEUのガイドラインについて説明をしてまいりましたけれども、公的資金を短期的な事業継続に必要な救済資金と長期的な再建プランの遂行に必要な再建資金に分けて、特に再建資金については、競争上の懸念が強いとして、抑制的に投入をされるというのがEUのガイドラインでございます。

 そういった意味で、機材への投資は、まさにこの再建投資に当たるというふうに思うところでございます。公的資金が何の制限もなく機材投資に使われた場合には、将来にわたって公正な、公平な競争環境が確保されなくなる可能性があるというふうに危惧するものでございます。

 航空機は、私ども航空会社にとって重要な経営資源でございます。例えば、製造業においてこのような事態になった場合に、製造業の工場の会社は閉鎖をされるようなことがあるかと思います。今回の事例でいいますと、最新の工場を公的資金で整える、新たにつくるということと、新たな航空機を設備投資といいますか購入をするということは、非常に近いように私は思うところでございます。

 そういう意味でも、そういうことというのは、同じマーケットにいます競合他社として非常に危惧する、競争上の危惧があるというふうに思うところでございます。そういったことについて、ぜひ今後考慮していただきたいというふうに思っているところでございます。

竹内委員 時間が終わりました。

 私もそのように思います。やはり、何もしなかった方が有利になるということでは、これは何のための社会かわからないというふうに思いますので、その点、また我々も質疑を深めていきたいというふうに思います。

 きょうはありがとうございました。

川内委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。参考人の皆さんには、貴重な御意見を本当にありがとうございました。

 私は、まず、航空労組連絡会議長の山口参考人にお聞きします。

 私は、当委員会における日本航空問題について質問した際に、次のように指摘しました。企業再生支援機構による再建が進められているが、そもそもなぜこうなったのか。再建する上でも、改めて経営破綻を招いた原因と責任を明確にすることが不可欠だと言ったわけです。

 その上で、さらに、企業再生支援機構もJAL再生タスクフォースも、JAL窮境原因について、事業構造また組織体制の両面が非効率かつ硬直的だと言っていますし、航空産業が装置産業であるがゆえに、大型機材の保有や不採算路線を抱えていたことなどと、同様の分析をしています。問題は、なぜ大型機材の大量保有や不採算路線を維持しなければならなかったのか、なぜ硬直的な組織体制から抜け出せなかったのかだと。すなわち、政府の空港、航空政策にまで踏み込んで考える必要があると述べて、その原因をはっきりさせぬとあかんということを言いました。

 そういう意味では、山口さんの陳述は、なるほどと感じたところであります。

 そこで、巷間、ぬるま湯とか癒着構造とかの指摘があります。したがって、さらに突っ込んで、そのような構造が何ゆえにつくられたのか、その背景についての所見をお聞きしたいと思います。

山口参考人 お答えいたします。

 昨年来の報道で、企業年金等の問題で経営危機ということが随分報道されまして、私ども、破綻の原因につきましては、先ほど冒頭の陳述の中でも触れましたけれども、昨年の十月のタスクフォースの報告といいますか、また一月十九日に企業再生支援機構が日航の支援に当たって分析した内容のように、窮境原因については、事業の硬直化があったのではないかというふうに考えております。また、最大の問題であります大型機材の大量保有の問題、これは日米間の問題等について先ほどお話しさせていただきましたけれども、この問題。また、不採算路線の維持の問題があったというふうに考えています。

 これはまた、不採算路線の維持については、いろいろ、地方自治体からの要求や、また地元出身の政治家の先生方のいわゆる陰に陽にの圧力があったのではないかということも報道等でされておりますけれども、そういった問題がある。

 加えて、私たちが見ているのは、これまでナショナルフラッグキャリアとして政策的に運航してきた問題は非常に大きいのではないかと。これは国内にとどまらず、国際線等については、特によくお話に出るのは、南米線の日系人の人たちの要求とか、さまざまな日本の国益といいますか、そういうことに関して、国策的に日本航空が運航に当たってきたという面があると思っています。

 先ほど資料を委員会の前にお配りしたかと思いますけれども、欧米各社のジャンボ機の保有内容を見ていただけるとおわかりかと思うんですけれども、保有の数そのものもですけれども、全体の事業規模に対する保有機数というんですか、これが、日本航空の場合にはジャンボ機が異常であるということが言えるのではないかなというふうに思います。特に、アメリカの大手でありますアメリカン航空やデルタ航空は全くジャンボ機は買っておりません。そういった中で、日本航空だけが突出してジャンボ機を買ってきているというようなことが、資料を見ておわかりいただけるのではないかなと思います。

 不採算路線の問題ですけれども、現在九十八空港が供用されているということなんですけれども、特に、先ほどいろいろ圧力という話がありましたけれども、私、これまで日本航空の社内で見ておりまして、私は一九七二年に日本航空に入りまして、ずっとその間、映画で出ているような光景といいますか、あるのではないかなというふうな内容をじかに見てきておりますので、その点、若干、どうしてそういうところが吹っ切れなかったのかといいますか、そういう点をちょっとお話しさせていただきたいと思うんです。

 日本航空の場合には、八七年の完全民営化まで半官半民という歴史がありまして、政府とのつながりが非常に強い企業の一つであったのではないかなというふうに思います。当時から、日本航空設立以来、運輸、大蔵、郵政、また自治省関係の警察の官僚の方が天下りして、大体社長をやられたり、また役員になられてきたというような歴史がある天下り先でもありました。

 そしてまた、そういった場だけではなくて、よく報道に出ていますけれども、運輸族と言われる先生方との関係も非常に強かったというふうに私たちはずっと見てきておりますし、実際にそうであったことは幾つかの状況から言えるのではないかなというふうに思います。

 特に、新聞にも一部ありましたけれども、政治家が食い物にしてきたのではないかなということが報道されております。食い物にしたために、逆に言えば、日本航空のいろいろ批判の中で、政治、経営者がそういった強いつながりがあるために、一般的には癒着と言えるのではないかというようなことだと思うんですけれども、いわゆる安全、安心、ぬるま湯体質ということで、長年、今日まで来たというふうに言えるのではないかというふうに思います。

 私の体験で非常に恐縮なんですけれども、一つの参考になればということで、一九八二年の二月の九日に羽田沖事故で、当時の機長の精神状態ということで、逆噴射事故が起きました。そのときに何が問題になったかといいますと、パイロットの身体検査問題というのが非常に大きな社会的な問題になりまして、それまでは産業医が検査をしていたわけですけれども、航空身体検査のやり方を改めて、航空医学センターというのが結果としてはできたわけです。

 当時その問題は非常に大きな問題で、ちょうど御巣鷹山の事故の後、これは八五年ですけれども、当時は山下運輸大臣でしたけれども、その後、亡くなられた橋本元総理が運輸大臣をされておりました。私はちょうどそのときに、日本航空内に乗員組合という組合があるんですけれども、そこの委員長をしておりまして、当時のカネボウから来られた伊藤会長が、そんな問題があるんだったら直接運輸大臣と話したらどうかということで、私と、当時の機長会と、それからフライトエンジニアといいますか、航空機関士の会と一緒に議員会館に会いに来たわけです。私ども、私なんかは初めて大臣に会うということで非常に緊張していたわけですけれども、ドアをあけて開口一番、日本航空の皆さん、株でもうけさせてくれてありがとうということから話が始まって、ああ、やはり世間で言われていることはこういうことなのかなというふうに率直に感じたことがありました。

 それだけではなくて、代理店の問題なんかでも、東京、大阪、札幌、宮城県の古川に代理店があるようなところが日本航空等の切符を売るというんですか、そういった状況もあって、私たちは、そういったつながりが、なかなか日本航空経営が独自にいろいろ判断できなかった理由もあるのではないかというふうに思っています。

 特に、自民党には毎年日本航空から出向しているということも報告されておりまして、なかなか独自に環境の変化に臨機応変に対応できなかったということは言えるのではないかと思います。

穀田委員 もう少し短くお願いします。

 先ほどの陳述では、日常運航を支えているのは人間の労働、さらに、労働者の安全のレベルというのは肌で感じているんだということがありましたし、現場の労働者の声に耳を傾けるようという話がございました。

 そこで、余りこういう機会がないんですから、この機会に、働く人々、例えばパイロット、それから整備、グランドハンドリングというんですか、地上支援というんですか、それから客室乗務員のモチベーションといいますか、今日の置かれている現状について一度お聞きしたいと思います。

山口参考人 お答えいたします。最近の職場の状況について御報告させていただきます。

 先ほどパイロットの話というのが出ましたけれども、私の同僚などのいわゆるベテランと言われるパイロットは、会社に来て同僚と話をすれば、もう退職の話ばかりだと。早期退職に応じる、応じないの話で持ち切りであり、フライト中も、つい雑談、話があるということになりますと、退職されるんですかというようなことを聞かれたり、そういった会話が日常的に職場のどこででも出るような状況ということがあります。こういった点ではモチベーションがなかなか保てないというのが今の現状です。

 整備の方からの報告によりますと、これはまた深刻なことで、五十歳以上が五月三十一日で相当数退職されるということで、既に多くのベテラン整備士が特別年休消化に入っているということで、中で仕事の引き継ぎができないという声が上がっております。

 また、グランドハンドリングといいますが、飛行機をトーイングといいますか牽引したり、また貨物の搭載をやる職場ですけれども、既に、うわさによると、半分ぐらいが管理職がもうやめるそうです。中からの報告によりますと、一体組織はこのままいったらどうなるんだろうかというような不安が出ているという報告が来ております。

 また、三十五歳の制限のない子会社が一部にあるんですけれども、ここは予想外に、入社して間もない、一年、二年、三年の社歴の労働者が、組合員がやめますと。その理由は、昨年年末にボーナスがなかった、ところが、特別退職一時金が六カ月出るということで、ああ、いいタイミングだったということでやめていくという。せっかく仕事を覚えた人たちがいなくなるということで、非常に深刻というふうな状況が報告されています。

 また、客室乗務員につきましては、お客様と接するという点がありまして、かなり一層深刻で、早期退職の面接というのが行われているわけですけれども、女性のマネジャーが、あなたが会社の負担になっているのよ、わかるということを聞かれるそうですけれども、そうしてやっているうちに、最後は女性マネジャー自身が泣き出すというふうな報告も聞いております。

 また、エピソードといいますか話としては、福岡空港で、仕事を終えて空港の売店でからしめんたいを買おうとしたら、後ろから男性に、税金で買うめんたいはうまいかねと、本当に悲しくなったというような報告もありますし、羽田の帰りにモノレールで座っていたら、税金をもらっている会社の社員が座っていいのかねと、そういう状況が出ております。

 これはマスコミの影響等も非常に大きいのではないかなというふうに思います。そうした組合員からは、本当にモチベーションを保つのが大変だ、今の状況は何とか改善してもらいたいというふうな報告がされております。

 以上です。

穀田委員 リアルな実態を本当にありがとうございました。

 では、次に、有識者会議の委員でもあった山内弘隆参考人、そして、元JALタスクフォースリーダーの高木新二郎参考人、経済ジャーナリストの町田徹参考人のお三方にお聞きします。二点です。

 一点は、再建を行う際、国民への説明責任と透明性の問題です。平野官房長官も二月十二日の予算委員会で答弁していまして、政府としては、より透明性、衡平性を確保しつつ、国民の目線に沿った確実な再生を行う、こう述べているんですね。これが実行されているのか。また、今後、このような視点に立てば、企業再生支援機構やJALはどのような対応をすべきかということが一つ。

 もう一点は、安全運航を支えるのは、今お話があったように、モチベーションといいますか、大事だと思います。必要な要員と労働条件の確保が当然大切なわけですが、そういう点を考えます。

 タスクフォースの調査報告書説明では、JALで働く人々の特徴として、航空機の現場に近いセクションにいる人々ほど活気があると。さらに、昨今の経営危機報道、人員削減報道が流れる中で、JALが安全運航面でかつてのような大きな問題を起こさずに運営を続けていることは、JALの現場で働く人たちのモチベーションの高さの一つの証左と言えようと指摘しています。

 先ほどの現場の実態もありました。この辺についての御意見をお三方に順番にお聞きしたいと思います。

山内参考人 御指摘の第一の点でございますけれども、こういう形で公的資金を入れて再建する、その説明責任と社会的な納得性というのは非常に重要な点だというふうに思っております。ただ、一方で、再建でございますので、非常にスピード感といいますか時間が大事でございまして、その点で、今回の決定に至る過程で、ほかの参考人が御指摘のように、十分な説明がなかったということについて認めざるを得ないところはございますけれども、やはり一方で、そのスピード感ということをどうとらえるか、こういう問題であろうかというふうに思っています。

 それから、現状でどのような情報公開をして、そして皆さんと議論をして、国民に納得していただくかということでございますけれども、これも相反する二つの面がございまして、先ほども御指摘がございましたけれども、経営計画でございますので、ある程度守秘的なところは持たざるを得ないということだと思います。

 私も昨年の夏にこういった委員をさせていただきました。そのときに、これは私は、経営の具体的なところまで入っていったわけではございませんけれども、マスコミの皆様に非常に多くの取材を受けまして、私の持っている情報をどこまで出していいのかということについて、非常に困った経験がございました。現在も、いろいろな報道がされる中で再建計画をつくるということの難しさ、これはあろうと思います。一方で、委員御指摘のように、これは公的な資金を入れているという中で、透明性、衡平性ということを確保していかなければならない、この辺のバランスをうまくとっていくべきであるというふうに考えております。

 それから、二点目の御指摘でございますけれども、非常に重要な点でございます。私も冒頭の陳述の中で、航空輸送、航空産業の実態というのは、極めて重要な生産プロセス、これは従業員の一体化あるいはすり合わせというものがなければできないということを申し上げました。特に安全運航ということにかかわる点についてはおっしゃるとおりだというふうに思っております。

 これも非常に難しい問題でございまして、一方では再建計画、具体的に雇用をどこまで維持できるのかという問題と、それから各従業員の士気を、モラールをどこまで高めていられるのかという問題、これを経営側としてぎりぎりの線でやっていただきたいというふうに思っております。

 以上でございます。

高木参考人 まず、公正、透明性の問題でございますが、これははっきり申し上げて、上場企業でございますから、かなりの情報は開示しなきゃいけない、何もこういうことがなくてもですね。いろいろ法令で定めておる情報は公開していると思います。

 それから、裁判所の記録も、利害関係人は全部閲覧できることになっているんです。だから、それを全部コピーをとってきてお配りすればいいんですよ。裁判所は決して秘密主義じゃありません。私も裁判所におりました。特に新会社更生法になってから、利害関係人は書類を全部コピーできることになっています。それを全部コピーをとって先生方にお配りしても、これはかなりの資料になる。

 余計なことを言うと、アメリカの裁判所へ行きますと、三光汽船のときにお願いしたんですが、記録を見たいと言ったら、枚数を数えて小切手はこれだけだと。そうしたら、段ボールいっぱい送ってきまして、それだけ、利害関係人でもないのに情報公開が進んでいる。日本の裁判所も今かなりそれをやっていますので、どうぞ御遠慮なくやっていただければ、先ほど来、ないないとおっしゃっているんですけれども、あるんです、裁判所に。それは利害関係人が言えばコピーをとれますので、よろしくお願いいたします。

 それから、モチベーションの問題。従業員、労働者のモチベーション、これが一番大切なんですね。この企業文化というものを変えないというと事業再生というのはできないんです。幾らデューデリで一生懸命企業価値を計算して、それでこれだけ負債を減らさなきゃいけない、そんなことを何回もやったって、これはしようがない。その前にこれは黒字化しなきゃいけない。もちろん、黒字化するためには、機材を入れ直すとかそういうことが必要なんですけれども、やはり皆さんが本当にやる気になって、これはお金にかえられないんですよ。それをやはり先頭に立って、今、稲盛さんがやっていただいているんだと思います。

 私がちょっと心配していたのは、稲盛さんにお目にかかったとき、ちょっと年配でございますので、それなりのスタッフを連れていっていただけているかなということを気になっておるのが一つ。

 それから、私どもが考えていたのは、もっとぐっと若返って四十歳代の方が社長になっていただく、こういうつもりでおったんですが、どうやら五十歳代の方になって、しかも前の経営者の何か御推薦があった方みたいに、これはちょっと間違っているかもしれませんので、申しわけございません。私らは、もっと若返って、元気出して、今までの官僚体質に関係のない人、五十二年、五十三年からは採用方式を随分変えましたから、そういう新しい人たち、私のせがれが四十代の半ばでしょうか、このくらいあたりを社長にして、こういうふうに実は思っていたんですが、そんなことがモチベーションに随分大切なことかなと思ったりしております。

町田参考人 最初の透明感の問題からお答えさせていただきます。

 この問題、実はわかりにくいところが何点かあるかと思っていまして、単なる企業再建ではなくて国が支援する企業再建ですから、なぜ国がこれを支援するのかについて、当然、監督官庁なり所管大臣なりがきちっと説明しなきゃいけないわけですね。ところが、前原さんが言ったことをるる思い出していただきますと、内閣ができてすぐのころ、自主再建ということをしきりにおっしゃいました。ところが、現時点で仕上がっている姿は法的整理です。

 自主再建というのは、これはもう本当に書いたとおりで、自分の力で再建することを普通いいます。間の過程で議論にあった私的整理についても、これは金融機関から金融支援を受けますから、この段階で既に自主再建とは言わないと思います。さらに、法的整理で、裁判所の力をかりて強制的に債権カットに応じてもらうという手法を使っていますから、ますますもって自主再建とは言えないと思います。

 ここがなぜこう変わったのか。自主再建であれば国が支援することではなかったはずです。ここが決定的に変わったことについて、所管大臣から一切説明がなされていないことが物すごく不透明だというのが一点あると思うんです。

 それから次に、一般的な企業再建として考えたときも、アメリカのゼネラル・モーターズのケースが比較的似ている、あるいは参考になると思うんですけれども、あのケースは、二カ月間で、むしろGMサイドに、会社サイドに、自分たちで通用する再建策をつくって持ってきなさいと言って、支援する政府側はそれを判定する委員会をつくっただけです。

 ところが、日本の場合は、今回のタスクフォースにしろ企業再生支援機構にしろ、むしろ主導的に役割を担う立場に入っちゃっているわけですね。そうではなくて、やはり、会社側から持ってこさせたものに対してどういう評価を下したんだ、持ってきたものはどういうものであり、どういう評価を下して、どういう支援をするんだという、この役割分担がきちっとされていなきゃいけないのに、それがもう一緒くたのまま走っちゃったというのが今回のケースだと思うんですね。これが、純粋の、政府が関与しない企業再建であれば、こういう形で走ってもいいんでしょうけれども、政府が関与する以上は、ここをきちっと分ける必要があったということだと思います。

 スピード感に関しては、補足になりますけれども、ゼネラル・モーターズの場合は二カ月でつくらせました。一方、今回、九月からとりますともう七カ月です。これは全く意味がないと思います。

 それから、節目節目で、どういうことになりましたという再建策の具体策が言われなければいけません、説明されなければいけません。

 それも、ゼネラル・モーターズの場合は一年以内に再上場するとか。これから更生計画が承認された場合に、出資を受けて国有化に近い、国有化の状態に入って、それを再度上場して株式を売却するという、延々とスケジュールがJALの場合想定されるわけですけれども、ゼネラル・モーターズの場合は、それを一年間でやるということをはっきり言いました。そのためには、持っている自動車のブランドのこれとこれとこれは売却するとか、これとこれとはどこと交渉しているとかということまで、全部オープンにしました。

 対する日本航空には、いまだに削減する路線数すら決まっていなくて、何路線にふやすとかふやさないとかやっています。これは公的資金が担保されてきちっと計画が立ってということになっていませんから、これを至急詰めて出していただく必要があると思います。

 それから、モチベーションですけれども、これは、そういう計画さえきちっと出されていて、再建のめどさえついていれば、どんなに苦しくても頑張ってくれる社員たちはいると思いますし、モチベーションはわいてくると思います。だから、大切なのは、そういうかっちりした計画を早く見せることだと思います。

 失礼しました。

穀田委員 ありがとうございます。

 最後に、全日空社長の伊東信一郎参考人と柳正憲参考人に聞きます。一点だけです。

 社会資本整備事業特別会計の空港整備勘定、いわゆる俗に言う空港整備特別会計、これをどのように改善すべきとお考えか。それぞれ御意見があればお聞きしたいと思います。

伊東参考人 空整特会と言われるものであろうかと思います。空港をつくるために一定の役割を果たしてきたというふうに思いますが、現時点では、空港は既に、概成しているというふうな言葉が使われておりますけれども、まさにそういうことだと思います。

 そういう意味では、国土交通省の中の成長戦略会議というのが、六月に向けて、結論といいますか何かの案を出されるというふうに聞いておりますけれども、我々にとっては、この空整特会と、先ほども申し上げましたが、いわゆる着陸料だとかそういったものとの関係といいますか、ぜひともそういう意味では公租公課を下げてほしいということは重ねて言っておりますけれども、これと空整特会との関係について整理がされて、より競争力を持つことができるような公租公課にしていくための空整特会の見直しになってほしいということを申し上げたいと思います。

柳参考人 意見を申し上げる立場にないので差し控えさせていただきますが、いずれにせよ、合理的に計画をつくられることを願っております。

穀田委員 では、最後に一点だけ、山口参考人にお聞きしたいと思うんですが、今後の再建について提言などあれば、一言お訴えいただければ幸いです。

山口参考人 お答えいたします。

 二点ほどあるんですけれども、一つは、人員削減の今のやり方ですね、これを変えてもらいたいというのが大きな点です。

 それから二つ目に、今、全日空の伊東社長がお話しされましたけれども、空港整備特別勘定、約五千億円あるわけですけれども、そのうちの二千五百億円が首都圏空港です。これは羽田、成田の両空港ですけれども、羽田はことしの十月にはD滑走路が完成するということですから、もうこの二千五百億というのは、率直に言うと首都圏で必要ないということですね。

 日本航空の場合、先ほども出ていますけれども、約一千五百億円の公租公課を払っているわけです。これを更生期間中の三カ年だけでも、半分、七百五十億で三カ年進めただけでも、国民の税負担なり公的資金の問題というのは相当負担が軽くなるのではないかということで私たちは要求しております。

 以上です。

穀田委員 終わります。

川内委員長 次に、中島隆利君。

中島(隆)委員 社会民主党の中島隆利でございます。本日は、六名の参考人の皆さん方、貴重な御意見をいただきまして、まず心からお礼を申し上げたいと思います。

 まず最初に、山内参考人にお伺いいたします。

 山内参考人は交通経済の専門家で、航空行政にも大変詳しいと伺っております。昨年は、JALの経営改善のための有識者会議の委員も務められております。新しい政権のもとで、有識者会議が廃止となりまして、その後JAL再生タスクフォースが設置をされ、そして現在では企業再生機構の方向で今検討が進められております。

 そこで、有識者会議のメンバーに選ばれた山内参考人ですが、JALの経営の行き詰まりの原因、これまでもいろいろお話があっております。日航のシステム、コスト管理の体系とか、あるいは機材、事業の縮小、労働条件の改善、こういう抜本的な改善がおくれたという御指摘もございます。グローバル企業として脱皮がし切れなかったのではないかという御指摘もございますが、改めて、JALの再建についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。

山内参考人 私は、去年の夏まで委員をさせていただきまして、現状では詳しい情報等を持っておりませんので、どこまで正確なことが言えるか、その辺を御容赦いただきたいんですけれども、私が考えますに、先ほど申し上げましたけれども、経営悪化の要因、内的、外的要因があって、外的の方は、航空会社が持つ本来的な弱さ、こういったものが出てしまった。これは、需要の変動に対して航空会社というのは非常に弱いわけでありまして、それが出てきたというのが一つの外的要因かなと思います。

 内的要因につきましては、先ほども申し上げましたけれども、日本の航空の輸送の構造ですね。一つは、国内、国際両方ともなんですけれども、非常にリジッドな路線構成、それを更新し得なかったということにあると思います。国際航空については、最近はオープンスカイが非常に主力になっておりますけれども、基本的には二国間協定という交渉事で決まる、この中で路線が決まっていく。そういったところで営業せざるを得ないという問題もございますし、国内線については、先ほどもるる出ておりましたけれども、赤字のような路線も維持せざるを得なかった、こういう問題があります。

 ただ、先ほど言いましたように、こういったところを経営者としてどうだったのか。これは、コストの管理、それから経営の効率化、そして機材や人件費等の問題、こういったことを十分に改善し得なかったところに問題があるというふうに思っています。

 もう一つは、グローバルな企業と申し上げたのは、この会社が、やはり世界的な標準の意思決定、意思決定のスピードといいますか、そういったところに問題があったのではないかというふうに考えております。

中島(隆)委員 今御指摘のとおり、参考人は昨年の九月にも、二、三年間ではJALの路線の廃止、減便が必要である、こういう御指摘もされていました。それから、JALの経営の縮小均衡等々も出されておりました。早急にこういう計画案を更生計画の中で出すべきではないかというふうに思っております。

 次に、伊東参考人にお尋ねをいたします。

 伊東参考人におかれましては、大変多忙な中、御出席をいただいて、ありがとうございます。同業他社で競争関係にあるJALの再建問題ですから、意見を差し控えたい質問もあるかと思いますが、よろしくお願いをいたします。

 JAL再生に向けた課題は、同時に、日本の航空行政のあり方全体の見直しにつながっていかなければならないというふうに私は思っております。その際、先ほど来指摘があっておりますオープンスカイなど自由化の波、さらには、価格競争の激化する中、伊東参考人は空港使用料や航空燃料税についてその引き下げを強く求められております。

 確かに、近年では、JAL、ANAを含めまして、航空燃料税あるいは空港使用料などの公租公課は年間三千億近くに達しております。他方、社会資本整備事業における空港整備勘定、これまでの空港整備特会でありますが、整備勘定の半分以上が公租公課に占められています。新規建設も含めた大規模な空港整備が不要となっている現状で、燃料税や空港使用料などは大幅に縮減できるのではないかと私も考えております。

 今後、公租公課が航空会社の経営に与える影響について、もう少し詳しくお聞かせいただきたいと思います。

伊東参考人 先生のおっしゃるとおりでございまして、私どもの公租公課、総額約一千百億、正確な数字でなくて申しわけありませんが、その程度かと思います。航空機燃料税が四百数十億、あとは着陸料並びに航行援助費用ということになっております。これも正確ではありませんが、全体の費用の一二%程度に匹敵するのではないかというふうに思っております。非常に高い比率でありまして、まさに諸外国、特にアジアの航空会社の比率を見ますと、そこで払っています彼らの公租公課と比べますと随分高いものを払っているというふうに思っております。

 これは、空整特会との関係でどうなのかということは、直接的ではないですが、我々からすれば、より安い着陸料なり航行援助費用、航空機燃料税というものが適用になって、より世界のマーケットで戦えるような基礎力をつけていきたいというふうに思うところであります。

中島(隆)委員 もう一点、伊東参考人にお伺いいたします。

 昨年の十月―十二月期でございますが、世界の主要航空会社は、連結決算を見ましても、大変厳しい状況にございます。先ほど来のお話でも、一キロメーター当たり、JALでは前年度比二一%マイナス、ANAでも前年比一五%という状況にございます。これは、航空業を取り巻く自由化や価格競争という大きな流れの影響だというふうに思いますが、率直に言って、ANAでさえ苦しんでいる現状であります。仮にJALが計画どおりに再建を進めたといたしましても、低価格競争のもとで採算を確保することには大変な困難があるのではないかというふうに思います。

 そこで、伊東参考人にお伺いいたしますが、企業戦略にかかわる中で十分なお話は聞けないかと思いますが、自由化や価格競争が進む中で利益や採算をどのようにして確保していくべきか、そのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

伊東参考人 現状、確かに、私どもも〇八年度、〇九年度と二年連続の赤字を計上するというような状況になっておりまして、大変厳しく、危機感を持って現状をとらえているところであります。

 御指摘のとおり、今後につきましても、大変厳しい国際競争、特にLCCの台頭等あるわけでありますが、私ども、過去数年といいますか、二〇〇二年ぐらいから選択と集中ということを進めてまいりました。これは、ホテル事業の売却だとか不動産事業の売却だとか、そういったことによって航空に資金を集中するということをやってまいりました。その資金で航空機を調達したり、財務体質をよくしたりということをやってまいりました。これが、私どもが今こうして自分の足で立っておられる最大の要因だというふうにも思っているところであります。

 今後、そういった厳しい競争環境の中で、そういう財務体質なり企業体力をしっかり持ちながら、どう戦っていくのかということであります。

 それは、先ほど申し上げました公租公課等々、競争環境を国としてもぜひ整えてほしいということも一つでありますが、我々自身の自助努力といいますか、こういったことについても、しっかり現在の危機意識を従業員全体で共有するということで、現場の隅々まで今の現状、危機を意識し共有していくということをしっかりやりながら、一方では、収入を上げるべくマーケティング機能を充実するというようなこともしっかりやりながら、より柔軟に対応する。

 国際線を延ばしていきますと、いろいろなイベントリスクといいますか、先ほどから出ておりましたけれども、インフルエンザが起きたとかどこかで戦争が起きたとか、そういったことに大変大きく影響を受ける事業でもございます。そういう意味でも、よりそういったものに対応できる体質、また柔軟なコスト構造、こういったものをしっかり整えることによって、今後の競争に勝っていく、勝ち残るということを目指して、従業員、グループ挙げて努力をしていっているところでございます。

 私ども、ビジョンを掲げておりまして、アジアでナンバーワンになろうということを全グループ掲げまして、このビジョンのもとに努力をしていこうということで頑張っております。

中島(隆)委員 今貴重な御意見をいただきました。先ほどのお話にもありました、路線別の収支が翌日にははっきりわかる、こういう経営の状況、それから経営者と労働者のお互いの危機感の持ち方等が経営に大きな役割を果たすということであると思います。これまでも、JALの再建の問題で、先ほども指摘がありました、路線別の収支もわからないという状況でありますし、そういう経営の実態が、やはり破綻の要因にもなっているのではないかという感じもいたします。

 次に、高木参考人にお伺いいたします。

 高木参考人からは、先ほど再生タスクフォースについての経過もございました。真相が、おろされたのがわからないという御意見もございました。そして、事前調整が十分に行われていなかったのではないかという御指摘もございました。これまで検討された経過と、それから、今再生機構が検討していますが、皆さん方のこれまでの検討と今後の再建に向けてのお考えをもう一度お聞かせいただきたいと思います。

高木参考人 繰り返しになりますが、スピード感を持って処理していただく。無限後退、これは切りがないですから。何回もつくり直す、計画というのは臨機応変につくり直すということも非常に大切なんでございますが、何回もやるのはいかがなものかと思います。早く実行に移す、これが肝要でございます。

 最後に申し上げたいんですが、けさの日経新聞に出ておりましたけれども、ギリシャを助けるのに、IMFとユーロ圏の何十カ国が合計で約三兆八千億円をキャップで投入する。これから投入するお金も含めれば、JALについて一兆を超えるわけでございます。これはやはり、どんどんスピード感を持ってやらないと、やっているうちにまた悪いところが出てきちゃうんですよ、こういうものは。

 だから、慎重に慎重に考えておやりになるのはいいんだけれども、深掘り深掘りを続けていくのはいいんだけれども、やればやるほど怖くなっちゃうんですよ。これはいけないんです。これはとめなきゃいけないんですよ。それで、実行しなきゃいけないんです。そういう段階にもう入っているはずでございます。支援決定のときにつくった再生計画をまた更生計画でつくり直すとやっていますけれども、これは仕方がないですよ。さらにまたなんというようなことになっては、とんでもないです。また出さなきゃいけない金額がふえてきます。これはぜひお願いしたい。

中島(隆)委員 時間が参りましたので、山口参考人にもお尋ねする予定でありましたが、要望だけ、今後の考え方だけ述べさせていただきます。

 先ほど来の、この破綻の原因が、過大な航空機の導入あるいは日米構造協議による新空港の建設、こういう経営者の放漫と、やはり政府の航空行政の誤りというのが原因であるというような御指摘もございました。一万五千七百人の人員整理が、もう既に六月一日までに作業が進められています。特に必要である安全のモチベーションが全くもつ状況にない、こういう危機的な状況が言われています。

 ぜひ、今後、職員の方と使用者側の協議が十分行われるように、我々国会の方からもお願いをしていきたいし、そういう話し合いの中で、危機感を同一にしながら、再建に努力をしていただきたいと思います。

 以上、終わります。

川内委員長 中島君の質疑を終了いたします。

 この際、参考人の方々に一言御礼を申し上げさせていただきます。

 本日は、忌憚のない貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。今後の本委員会での審議あるいは航空行政への提言に、本日いただいた御意見をしっかりと生かしてまいりたいというふうに考えております。委員会を代表して、大変お忙しい中お運びをいただいた参考人の皆様方に心から御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十八分散会


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