衆議院

メインへスキップ



第21号 平成22年5月19日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十二年五月十九日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 川内 博史君

   理事 阿久津幸彦君 理事 小泉 俊明君

   理事 田中 康夫君 理事 橋本 清仁君

   理事 村井 宗明君 理事 岸田 文雄君

   理事 三ッ矢憲生君 理事 竹内  譲君

      阿知波吉信君    大西 孝典君

      加藤  学君    勝又恒一郎君

      神山 洋介君    川島智太郎君

      川村秀三郎君   菊池長右ェ門君

      熊田 篤嗣君    黒岩 宇洋君

      小林 正枝君    高橋 昭一君

      玉城デニー君    中川  治君

      中島 正純君    長安  豊君

      畑  浩治君    早川久美子君

      馬淵 澄夫君    三日月大造君

      三村 和也君    向山 好一君

      谷田川 元君    柳田 和己君

      若井 康彦君    赤澤 亮正君

      岩屋  毅君    金子 一義君

      金子 恭之君    北村 茂男君

      佐田玄一郎君    徳田  毅君

      野田 聖子君    林  幹雄君

      福井  照君    松浪 健太君

      斉藤 鉄夫君    赤嶺 政賢君

      穀田 恵二君    中島 隆利君

      柿澤 未途君    下地 幹郎君

    …………………………………

   議員           岩屋  毅君

   議員           金子 一義君

   議員           中谷  元君

   議員           福井  照君

   議員           三ッ矢憲生君

   国土交通大臣       前原 誠司君

   経済産業副大臣      松下 忠洋君

   国土交通副大臣      辻元 清美君

   国土交通副大臣      馬淵 澄夫君

   外務大臣政務官      西村智奈美君

   経済産業大臣政務官    高橋 千秋君

   国土交通大臣政務官    長安  豊君

   国土交通大臣政務官    三日月大造君

   防衛大臣政務官      楠田 大蔵君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    鈴木 久泰君

   国土交通委員会専門員   石澤 和範君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十九日

 辞任         補欠選任

  石井  章君     柳田 和己君

  早川久美子君     玉城デニー君

  向山 好一君     高橋 昭一君

  谷田川 元君     大西 孝典君

  金子 恭之君     松浪 健太君

  古賀  誠君     福井  照君

  徳田  毅君     岩屋  毅君

  穀田 恵二君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 孝典君     谷田川 元君

  高橋 昭一君     向山 好一君

  玉城デニー君     早川久美子君

  柳田 和己君     石井  章君

  岩屋  毅君     徳田  毅君

  福井  照君     古賀  誠君

  松浪 健太君     金子 恭之君

  赤嶺 政賢君     穀田 恵二君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際連合安全保障理事会決議第千八百七十四号等を踏まえ我が国が実施する貨物検査等に関する特別措置法案(内閣提出、第百七十三回国会閣法第一二号)

 北朝鮮特定貨物の検査等に関する特別措置法案(石破茂君外十名提出、第百七十三回国会衆法第一号)

 特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法第五条第一項の規定に基づき、特定船舶の入港禁止の実施につき承認を求めるの件(内閣提出、承認第三号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

川内委員長 これより会議を開きます。

 第百七十三回国会、内閣提出、国際連合安全保障理事会決議第千八百七十四号等を踏まえ我が国が実施する貨物検査等に関する特別措置法案、第百七十三回国会、石破茂君外十名提出、北朝鮮特定貨物の検査等に関する特別措置法案及び内閣提出、特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法第五条第一項の規定に基づき、特定船舶の入港禁止の実施につき承認を求めるの件の各案件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 第百七十三回国会、内閣提出、国際連合安全保障理事会決議第千八百七十四号等を踏まえ我が国が実施する貨物検査等に関する特別措置法案及び第百七十三回国会、石破茂君外十名提出、北朝鮮特定貨物の検査等に関する特別措置法案の両案につきましては、第百七十三回国会において既に趣旨の説明を聴取しておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

川内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

 国際連合安全保障理事会決議第千八百七十四号等を踏まえ我が国が実施する貨物検査等に関する特別措置法案

 北朝鮮特定貨物の検査等に関する特別措置法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

川内委員長 この際、お諮りいたします。

 各案件審査のため、本日、政府参考人として海上保安庁長官鈴木久泰君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

川内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

川内委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。黒岩宇洋君。

黒岩委員 おはようございます。

 きょうは、貨物検査法案と特定船舶入港禁止法の入港禁止措置の承認案件、この二つについて質問をさせていただきます。

 まずは、入港禁止措置の承認案件について、私の方から閣議決定部分についての質問をし、この後、同僚議員の川島議員から入港禁止法の本体について質問をさせていただきますので、どうかよろしくお願いいたします。

 六年前に特定船舶入港禁止法が成立しまして、その三条二項において、じゃ、入港禁止の目的は何なの、特定の外国ってどこなの、特定の船舶は一体どういったものなのといって、一号から七号にわたる、すなわち七項目を閣議決定しなければならないと。これは三条二項に規定してあるわけです。

 四年前にこの閣議決定がされてから、実は今回で八回目の閣議決定がなされたわけですけれども、しかし、残念なことに、ここ三年間、直近の五回は、全くもって単純に期間の延長をするだけで、他の項目については今までどおり、まさにマンネリ化した状況なんですね。

 しかし、きょうは外務省の西村政務官に来てもらっていますけれども、昨今、この極東では、韓国の哨戒艦の沈没事案があったりとか、いろいろと、この極東をめぐる国際情勢も変わっている。当然、北朝鮮との二国間の関係も非常に、刻一刻と変化を見せている。にもかかわらず、なぜ閣議決定が直近三年間、一切この本体部分、法律で規定されている本文の部分は何にも変更されずにここまで来ているのかという問題意識を私は持って、何点か質問をいたします。

 まず第一点、聞きますけれども、この最大の閣議決定事項である入港禁止の目的、この目的に、実は拉致問題、拉致という言葉が一切明記されていません。これは一体なぜなのか、まずお答えください。

西村大臣政務官 お答えいたします。

 黒岩委員も私も同じ新潟でございますので、拉致問題には本当に強い意欲を持って委員も取り組んでおられることだというふうに拝察をいたしますけれども、実は、現在行っている北朝鮮船舶の入港禁止措置は、法律上、我が国の平和及び安全の維持のため特に必要があると認めるときに発動することができるとされており、閣議決定の記述ぶりは、その契機となった核実験実施発表に言及しつつ、同法の規定ぶりを踏まえたものとなっております。

 一方で、入港禁止措置を決定するに当たっては、北朝鮮が拉致問題の解決に向けて具体的な行動をとってこなかったことも当然判断材料の一つとなっており、閣議決定文中の「その後の我が国を取り巻く国際情勢」の中には、拉致問題をめぐる現在の状況も既に含まれております。

 また、こうした趣旨をより明確にするために、官房長官の発表におきまして、北朝鮮が拉致問題について具体的な対応をとっていないことに言及をしております。

 いずれにいたしましても、政府としては、拉致問題を含む諸懸案の解決に向けて、北朝鮮が具体的な行動をとることを粘り強く求めていく方針でございます。

黒岩委員 西村さんの答弁、私も事務方から聞かせてもらっています。

 ただ、要するに、十六年にこの法律ができたときのそれ以降の事実関係がそんなに進んでいないというような表現を外務省の事務方が言うんですけれども、でも現実には、直近でいったら、もう〇八年の時点でこちらから拉致の被害者のさまざまな調査を投げかけた、その再調査をしないという、これは外務省も指摘していますよ、非常に不誠実な対応が返された。こういったことが刻一刻、この閣議決定というのは今一年単位で行っていますから、この一年の間にもいろいろなことが起きているわけですね。

 ですから、今の答弁で、すなわち入港禁止の理由に入れなくてもいいよということは、私は論理必然ではないと思っていますので、最後は西村さんも、今後は前向きに検討だと言いますので、今後の北朝鮮の拉致に関するさまざまな事象が起きたときには、これはやはり本体である入港禁止の目的の中に入れていただきたいと思っております。

 では、二番目の質問に行きます。

 貨物検査法が今回制定されるきっかけとなったのは、昨年四月の北朝鮮のミサイル発射、そして五月の核実験、これが大きな契機となって、国連の制裁決議が発動されたわけです。このようなまさに大きな事実が起こったにもかかわらず、またもや、入港禁止の目的、ここに加えられていないわけですね。何で、これほど大きな事態がこの一年以内に生じたのにもかかわらず、閣議決定の本文に何ら変更がないのか、この点についてもお聞かせください。

西村大臣政務官 お答えいたします。

 先ほどと同様の趣旨となりますけれども、現在行っている入港禁止措置は、法律上、我が国の平和及び安全の維持のため特に必要があると認めるときに発動することができることになっておりまして、閣議決定の記述ぶりは、その契機となった核実験実施発表に言及しつつ、同法の規定ぶりを踏まえたものとなっております。

 閣議決定文中の「その後の我が国を取り巻く国際情勢」の中に、まさに核、ミサイルといった諸懸案を含む北朝鮮をめぐる諸般の情勢が含まれております。

 また、こうした趣旨をまた明確にするために、繰り返しになりますけれども、官房長官の発表等においては、平成二十一年四月のミサイル発射や同年五月の核実験の実施について言及をしております。

 閣議決定の理由の中に入っていないということでありますけれども、それをセットとするために、官房長官の発表等でそうしたことについて言及をしているところでありまして、引き続き、北朝鮮が具体的な行動をとることを、こういった談話もあわせて、粘り強く求めていきたいと考えております。

黒岩委員 官房長官談話で付言しているというようなことは何度もお聞きしているんですけれども、何度も言いますけれども、これは議員立法で法律をつくって、その三条二項で閣議決定に明示すると書いてあるわけですから、この法律事項にある閣議決定にその時々の事象を入れていくというのが、私はやはり政府の姿勢として当然だと思っておるんですね。時間がないので、これは言及するまでにとどめますけれども。

 それで、例えば、この特定船舶というものも、法律上は、定義は三類型あるわけですね。一つ目は、北朝鮮籍の船。二号船舶と言われるものは、他国の船籍だけれども、北朝鮮に寄港した船、立ち寄った船ですね。三番目は、北朝鮮籍じゃないけれども、北朝鮮がどこかの船をチャーターして自分の特定貨物を運ばせている、そんな可能性のある船、これは三号船舶といいます。しかし、これも、しょっぱなからせっかく法律では三類型を定義しているにもかかわらず、過去八回の閣議決定で、対象船舶というのはずっと一号船舶だけなんですよ。

 お聞きしたいのは、二号船舶等に対象を広げるような検討、議論というのはされたのかどうか、この点については御説明いただけますか。

西村大臣政務官 委員御指摘のとおり、北朝鮮寄港船及び北朝鮮のチャーター船の入港禁止措置については、北朝鮮船舶の入港禁止措置のみでは効果が上がらないような場合のみ発動する補完的なものであるというふうに考えられておりますし、私もそのように考えております。

 そこで、現在は、総合的に判断をいたしまして、これらの補完的な措置の発動が必要な状況ではなく、逆に、第二号それから第三号船舶、そういったものを対象にすることにより、第三国の輸出者及び海運事業者並びに第三国から輸入を行う日本の産業に悪影響を及ぼすおそれがありますことから、今回、一号船舶のみという判断にまたなったわけでございます。

黒岩委員 これも、海上保安庁なんかに聞くと、過去の寄港した履歴というのは、直近の十港まで履歴があると。立ち寄った十港のうち一つでも北朝鮮に寄ったもの、こういった船まで調べ始めると、これは確かに物すごい手間がかかるし、ある意味、他の国にも外交上大変迷惑を及ぼすかもしれないという説明なんですけれども、これは、例えば直近の一港とか二港に絞れば、そんなに数は多くないんですよ、北朝鮮に寄港している船なんというのは。だから、そういったものに絞ってでも対象を広げていくとか、こういったことを前向きに検討しているという姿勢を私は全然外務省から感じ取れないんですね。何か、西村さん、口を曲げていなくて結構ですから。とにかく、こういった姿勢については、あくまでも今後前向きに検討していただきたいということは申し上げておきます。

 これは、時間の関係上、前原大臣にお聞きしますけれども、閣議決定に行くまでの過程というのは、この内容は、取りまとめは外務省だそうです。加えて、国交省、そして経産省の事務方が打ち合わせをしながら、これを閣議決定にまとめていくんだ、こういうプロセスだそうなんですね。

 私、それだけ多くの人たちが集まって、過去五回も全く何にもいじらないというようなことが何であるのかなと。普通だったら、検討していく中で、ここは入れ込もうとか、そういったことがこの閣議決定の中にやはりあらわれるはずだと思っておるんですね。取りまとめは外務省なんですけれども、やはり、国交省の事務方もこれに携わっているわけですから、私は、その最高の権限者である前原大臣から、国民の感覚に立ってメッセージを発信していただきたいんですよ。

 拉致問題でもそうです。入港禁止に拉致問題、入っているだろうと多くの方は思いますよ。ミサイルの発射があったり核実験があったら、そういったこともつけ加えられて、これはあくまでも圧力と対話の中の圧力なわけですから、制裁措置も強めていくのかな、こうやって国民は思っているわけですね。これに対するメッセージというのは、あくまでも議員立法でできた本法の条文に沿った閣議決定の本文の中に明示していくべきだと私は思っておるんです。

 そこで、大臣、今のやりとりを聞いた中での、もう今回のことはどうこう言いません、次回以降、これは毎年閣議決定があるわけですから、この中でやはり本文に、その時々の情勢の変化を機敏にしっかりととらえているんだ、北朝鮮問題というのは我が国は一つ一つ注視しているんだ、こういった内容を盛り込んでいく、このことについて前向きな姿勢を大臣からいただきたいので、よろしくお願いいたします。

前原国務大臣 黒岩委員にお答えをいたします。

 委員御承知だと思いますけれども、二〇〇二年の日朝平壌宣言というものの中にも、拉致という言葉は入っていないんですね。しかしながら、その中身については、当然、拉致問題を含む人道的な問題というものを解決するということでありますし、この閣議決定における入港禁止理由というものの中には、日朝平壌宣言というものが引用されているという面もあります。

 ダイレクトに拉致という言葉を入れるべきだという黒岩委員の御主張というのは、私、理解できるところでございます。また、今回、八回目になるんですか、八回目の文章で、三回目以降が同じ文言であるということについても、もう少し直近のさまざまな要因を取り入れてということも理解できるところでございます。

 いずれにいたしましても、中身について、法律としてやることというのは、同じことをきっちりやる、毅然とした対応をとる。ごめんなさい、七回目ですね。今回七回目の延長です。七回目の延長で八回目の措置ということでありますけれども、やるべきことはしっかりやっていくということであります。

 意思として閣議決定の入港禁止理由というものにより明確にあらわせという御意見を踏まえて、今後また、それは関係省庁で議論するときには参考にさせていただきたい、このように思います。

黒岩委員 大臣、前向きに踏み込んでいただいてありがとうございます。

 それでは、あと残り五分ということなので急ぎ足で、次に貨物検査法の質問をします。

 お手元にチャート図を配らせていただきました。実は、私は、昨年秋の臨時国会で、一つ一つ、内水において、領海において、公海においてと、この実効性を聞いていきました。これはある意味机上の論理で、頭の体操でもあるんですけれども、最後、公海において、そこの船は怪しいんじゃないかといったときは、それを検査するには、その船の旗国の同意を得て検査をする。ただ、その同意がない場合は、その旗国は、要するに、日本の検査は嫌だよ、だけれども、例えば自分の国に戻ってきなさいという回航指示をします、こうあるわけです。

 ただ、これはここで、回航を指示した場合で終わっておるので、じゃ、回航を指示しない旗国もあるかもしれない、その場合はどうするんですかと。これは、実は前回の質問でも聞いたので、今回、私の方で説明だけさせてもらいます。そうなると、実は、回航指示をしない国については、我が国が国連の制裁委員会に報告する。そうすると、制裁委員会でこの国を、簡単に言えば呼びつけて弁明を求めたり、かなり厳しい措置をすることになっておりますので、結果的には、回航指示をしない国というのはほとんどないであろうというのが、これは私、外務省から承っております。

 私が申し上げたいのは、このように、非常に国連決議というものは全体的に網がかかっているということまではよくわかりました。

 次に、もう一つの事例をちょっとお聞きしたいんですけれども、じゃ、ある国が、旗国が船に、おまえ、もう日本の検査は受けなくていい、でも、例えば自分の国に戻ってこいといったときに、船長の承諾がとれない場合も論理的にはあり得るわけです。

 では、その場合、旗国は回航指示はした、要するに国連決議を遵守している、だけれども船の現場責任者がそれに従わなかった場合、こういう場合はどういった対応が想定されるのか、お答えいただけますか。

西村大臣政務官 お答えいたします。

 旗国が回航指示をしたにもかかわらず船長が承諾しないという場合でありますけれども、一般論として、旗国の回航指示に船長が従わずに公海にとどまる場合においては、旗国が他国による公海上での当該船舶への検査に同意を与えることがあり得るわけでございます。

 また、国連加盟国は安保理決議により、禁止品目を含むと信じる合理的根拠があることを示す情報を当該国が有する場合には貨物検査を実施することが要請されておりますので、船長等が旗国の回航指示に従わず、指示された港以外の港へ寄港したとしても、当該港が所在する国は安保理決議に基づいて貨物検査等の措置を実施することが要請されます。

 なお、関連の安保理決議においては、船長の承諾が貨物検査を実施する上での条件となっているわけではないことを付言いたします。

黒岩委員 ちょっと、耳で聞いただけではきっとわかりづらいと思うんですね。これは私は結構丁寧に答えていただいて、四つのパターンがあるそうです。

 一つのパターンは、その船長の、ならず者船長ですよ、その旗国と日本が協議をして、この旗国に、要するに自分の旗国の権利を放棄させるんだそうですね。そうするとこの船はどうなるかというと、無国籍船になりますから、無国籍船は我が国だろうがどこだろうがもう自由に検査できるというのが一番目のパターン。

 二番目は、この船というのはどこかにいずれ寄港するんですよ、しなかったら生きていけないわけですから。これが、例えば今言った旗国、自分の国に戻れば、これはもう旗国が国連決議において検査しなければいけませんよと。旗国じゃない第三国に行った場合も、国連加盟国であったら、これは国連決議の網がかかっていますから、絶対に検査するんですね。

 私は最後に聞いたんですよ。では、国連加盟国以外のところに寄港したらどうなんだと。そうしたら、国連非加盟国というのは世界に一つしかない。バチカン市国なんですね。これは内陸国で、海がないんですよ。だから、このバチカン市国に寄港する可能性もない。本当に私はつくづく感心しました、よくできたものだと。こんな机上の論理でいろいろな場合分けをしても、最終的には貨物検査ができるというところにこの国連決議、そして今回の貨物検査法というのはスキームとして網がかかっているんですね。すばらしいんですよ。

 そこで、これだけすばらしいスキームをつくったわけですけれども、じゃ、この一年間で世界の七つの海、このすべての海でどれだけ貨物検査の事例があったのかと聞いたら、これは私が答えますね、たったの四件なんです。これはどういうことかというと、結局は、もう海に出ちゃった、公海に出ちゃった、そこで一々旗国の同意を取りつけて検査に行くなんてことは実際上はできないわけですよ。

 となると、これはもとに戻りますけれども、国連決議とそして検査法の立法趣旨、制度趣旨というのは、あくまでも、私が先ほど何点か述べた国際的な抑止力をもって、まずは未然に防ぐ。そして、重要なことは、これは外交のさまざまなルートを使って特定貨物の情報を入手していくんだと。そして、先ほど申し上げた四件というのは、検査は海で行われていません、すべて港なんです。やはり水際で処理をしない限りには、実はこの特定貨物を物理的に移動させることは防ぐことはできないわけです。

 ですから、西村さん最後に、これはある意味決意表明で聞きたいわけですけれども、この国連決議ができました。一年たっていますけれども、当然、各国との連携、協調というのは深まっているだろうし、北朝鮮の特定貨物に対する国際的な圧力、プレッシャーをかけていく機能性というのは十分に機能しているんだと思いますし、それに対する意気込みをどうかお聞かせください。

西村大臣政務官 黒岩委員から、安保理決議一八七四違反として貨物検査が実施された事例が幾つあるのかという御質問通告をいただいておりましたので、制裁委員会を通じて確認しました。五件でございました。

 それで、我が国は、国際社会が国連安保理決議一八七四の着実かつ全面的な実施が重要であるという立場から、これまでも制裁委員会における情報交換、議論等に非常に積極的に参画してきております。

 また、政府としては、さまざまな機会をとらえて、今回の安保理決議一八七四を受けての諸外国の対応についても、関係国や国連との間で意見交換や情報収集を行ってきております。これはもう非常な量のものがありますけれども、実際に検査等の措置を実施するに際しても、対象船舶及び積載貨物に関する情報の交換を含めて、外交ルートを通じて各国と緊密に連携し、協力していくこととなりますし、また、そうしていきたいというふうに考えております。

 今後とも、関係国との緊密な連携、そして関係省庁との連携、これが非常に重要であるというふうに認識しておりますので、今回の法律を受けて、またこの連携を密にし、そして着実な履行に全力で努めてまいりたいと考えております。

黒岩委員 力強い御答弁、ありがとうございました。

 政府に対しては、毅然たる北朝鮮に対する態度を心からお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

川内委員長 次に、川島智太郎君。

川島委員 皆様、おはようございます。きのうは遅くまで本当に御苦労さまでございました。民主党の川島智太郎でございます。

 本日は、初めての質問となります。このような機会をいただきまして、心から御礼を申し上げる次第でございます。初当選以来少々時間がたってからの質問となりましたが、どうぞよろしくお願いいたします。また、前原大臣初め政務三役の皆様方には、連日本当にお疲れさまでございます。

 きょうはまず、特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法第五条第一項の規定に基づき、特定船舶の入港禁止の実施につき承認を求めるの件について、幾つかの御質問をさせていただきます。

 平成十六年の通常国会にて成立した特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法により、特定船舶の入港を禁止する措置をとることを可能とし、その後、平成十八年七月五日の北朝鮮による弾道ミサイル発射、同年十月九日の北朝鮮による核実験を実施した旨の発表があり、平成十八年十月十四日から、特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法に基づき、北朝鮮船籍すべての船舶の入港を禁止する措置を実施したところであります。

 そして今般、政府は、現在の我が国を取り巻く国際情勢にかんがみ、引き続き今回の措置の延長になったものだと理解しておりますが、改めて、本措置の目的と、北朝鮮に対して具体的にどれくらいの効果がこれまであったのか、またはその評価について大臣の所見をお伺いしたいと思います。

前原国務大臣 川島委員にお答えをいたします。

 政府といたしましては、北朝鮮籍船舶の入港禁止措置を講ずることによりまして、北朝鮮に対し、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の解決に向けた具体的な行動を求めることが我が国の平和及び安全の維持のために特に必要があると認め、本措置を講じているところでございます。

 入港禁止措置の効果につきましては、本措置とあわせて実施をしております北朝鮮との輸出入禁止措置など、これまで実施してきた各種措置を通じて、我が国と北朝鮮の間の人、物、金の往来は相当程度縮小してきておりまして、北朝鮮の厳しい経済状況をあわせて考えた場合、北朝鮮に対して一定の効果を及ぼしているものと考えております。

川島委員 本措置は、北朝鮮に対する我が国の姿勢の一つだと思います。対話と圧力ということがよく言われますが、対話をするためにも圧力が必要ですし、圧力をかける目的は対話のためでもあります。そのためにも、本措置が実効性を伴わなければなりません。

 そこで、本措置が施行されて以降、北朝鮮からの本措置の解除について要請があったのかどうかをお伺いしたいと思います。

西村大臣政務官 端的にお答えいたしますと、そのような事実はございません。

川島委員 今回の措置が北朝鮮に効果があるとは言えていないのかもしれませんね。今後において、大臣のお考えを再度お聞きしたいと思います。

前原国務大臣 済みません、もう一度ちょっと質問を。申しわけありません。

川内委員長 質問をもう一回言っていただけますか。

川島委員 今、結局、北朝鮮の方から要請がなかったという話だったもので、効果がなかったんじゃないかと私は考えるんですよ。だから、そういった意味で、また今後どういうような形でこの問題に当たるのか、大臣のお考えをお聞きしたい。

前原国務大臣 失礼いたしました。

 効果がないわけではないと思います。つまりは、効果があっても、北朝鮮が効果があると認めるということは、彼らにとってはメンツもつぶれるし、また屈辱的なことであるわけで、効果があったとしても言ってこない、そういった外交をずっと北朝鮮はやってきたんだろうと思います。

 我々としては、国際的な協調の中で、こういった毅然とした姿勢をとり続けて、そして北朝鮮にメッセージを発し続けるということが大事であると思いますので、先ほど御答弁いたしましたように、北朝鮮の厳しい経済状況を考えると、一定程度の効果はある、そういう強い意思を持って続けることが大事である、このように考えております。

川島委員 ありがとうございました。

 実効性の確保という観点から、さらにお尋ねしたいと思います。

 本措置の目的である経済制裁の実効性を確保するためには、現実問題として、関係各国との協力が必要であると考えられます。北朝鮮をめぐる問題は、一国では解決いたしません。例えば、今回の措置の延長によって、北朝鮮は引き続き日本の物資の輸出入ができないこととなりますが、第三国を経て迂回することで、実質、物資の輸入はできるわけで、まず、こうした事例を確認できているかどうかをお伺いしたいと思います。

高橋大臣政務官 川島委員にお答えしたいと思います。

 北朝鮮との輸出入については、第三国経由のものも含めて禁止をしているのは御存じのとおりでございますけれども、国内の事業者に対して、迂回輸出入が外為法違反であることの周知というのは徹底をしております。ところが、違反と知りながら、偽装して北朝鮮との輸出入を行う事業者というのがあるのも事実でございまして、取り締まりにつきましては、警察、税関等の関係機関と連携をしまして、厳格に対応させていただいております。

 ただ、過去に、最近でも、ミサイル運搬が可能なタンクローリーの違法な迂回輸出をしようとしたものがありまして、こういうものを防止したりとか、あと、化粧品などのぜいたく品を不正輸出した事業者などを摘発しております。ウニとかアサリとか、そういうものについても北朝鮮から不正輸入をしようとしているところがありましたけれども、こういうところにつきましては、行政制裁を実施して、北朝鮮だけじゃなくて、ほかの国にも輸出入が何年かはできないような、そういう厳しい措置も実施をしております。

 それと、アジア諸国の輸出管理関連部局及び産業界に対してセミナーを行いまして、日本はこういう第三国経由で輸出入ができないということも、そういうところにお知らせをさせていただいておりまして、連携強化をさせていただいております。

 政府としましては、これらの措置を総合的に講じまして、北朝鮮との間で違法輸出入が行われることがないよう、今後も関係省庁と連携をしていきたいというふうに思っております。

川島委員 ありがとうございます。

 きのう韓国の各紙が、韓国海軍の哨戒艦天安の沈没原因について調査している軍と民間の合同調査団が、沈没海域で、中国、旧ソ連などの旧共産圏製と見られる魚雷のスクリュー破片を発見したと報じております。さらに、朝鮮日報は、北朝鮮による魚雷攻撃を裏づける決定的な物証が確保されたとして、韓国政府が、二十日の最終調査結果発表後、対北朝鮮制裁に着手する方針と伝えております。

 そこで、こうした情報について、関係各国の協力という観点から、韓国政府またアメリカ政府から何らかの情報提供を受けているのかどうか、お伺いしたいと思います。

西村大臣政務官 お答えいたします。

 韓国哨戒艦沈没事案に関してでございますが、本件事案については、韓国、米国と緊密に意思疎通を行っているところでございます。

 十六日に、日中韓外相会談が開催をされましたけれども、その際に行われました日韓外相会談におきまして、柳明桓外交通商部長官から岡田外務大臣に対して、調査の現状等について説明がありました。その内容について申し上げることは、相手国との信頼関係にかんがみて差し控えたいと存じますが、緊密に意思疎通を行っているということは申し上げたいと思います。

川島委員 済みません、そうすると、我々の知らない情報が今かなり流れてきているということでよろしいんでしょうか。

西村大臣政務官 お答えいたします。

 我々のとおっしゃいますけれども、そこはどこまで御承知かという問題もありますし、緊密に意思疎通を行いつつ、そしてやはり日米韓で連携をしていくことが大事であろうというふうに思いますので、その点は常に確認をできているというふうに考えております。

川島委員 ありがとうございます。

 次も、実効性の確保ということに関連してですが、我が国の沿岸水域の監視体制についてお伺いしたいと思います。

 我が国は、四方を海に囲まれ、日本海を挟んでロシア、北朝鮮、韓国、そして東シナ海を挟んで中国と、大変重要な海域に面しております。海上における安全、安心の確保は、海上保安庁が一義的に担っていると思います。

 そこで、本特措法により北朝鮮船籍の入港が禁止されている現在、密輸などによる物資の運搬などが懸念され、海上保安庁による警備体制も強化が引き続き必要であると思われます。本特措法が施行されて以降、北朝鮮船籍、あるいはそうと思われる船が確認された例があるのかどうか、お伺いしたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 北朝鮮籍船舶の入港禁止措置がとられた平成十八年十月以降、北朝鮮籍船舶が我が国の港湾に入港した実績はございません。

 ただ、荒天時の避泊等を理由として北朝鮮籍の船舶が我が国の領海内に入域した、緊急入域と言っておりますが、この事案が十三件ございます。これは、例えば台風を避けるために島陰などに錨泊をするといった事案でありますが、これに対しては直ちに巡視船艇を派遣して、立入検査を全部実施しております。いずれの事案においても特に異常は認められませんでした。

 それから、それ以外にも、過去に北朝鮮に寄港したことのある船舶等北朝鮮とかかわりがあると考えられる外国籍船舶に対しては、適宜立入検査を実施しておりまして、今後ともこういう対応を継続してまいりたいと考えております。

川島委員 ありがとうございました。

 それでは、拉致問題や核、ミサイルといった北朝鮮に関する諸懸案事項についてですが、私は、こういった問題を解決するために本措置があると理解しております。ただ、新聞やテレビなど報道を見ても、ここ数年、どうも膠着状態というか、余り進んでいないようにも思えますが、大臣はどのように考えておられますでしょうか。

前原国務大臣 政府といたしましては、二〇〇二年の九月に日朝間で交わした日朝平壌宣言にのっとって、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決をして、不幸な過去を清算して国交正常化を図るという方針には全く変わりはございません。したがって、この諸懸案の一日も早い解決に向けて具体的な行動を北朝鮮から引き出さなければいけません。そのためには、我々の強いメッセージというのが必要であり、膠着状況と言われますけれども、この入港禁止あるいは経済制裁の措置等をとり続けていくということが私は大事だと思います。

 またあわせて、国連決議の実行をしっかり国際社会で行っていくということと、あとは、韓国の哨戒艇の爆破、沈没の問題で不透明ではありますけれども、六者協議というものをしっかりと大事にしながら、多国間の協力体制の中で北朝鮮のさまざまな問題について解決をしていくということでございまして、私は、ここは辛抱、粘り強さ、そして一貫した毅然とした態度が必要ではないか、このように考えております。

川島委員 昨年より政権がかわり、前政権を踏襲するもの、またそうでないものがあると思います。新政権として北朝鮮の問題にどのように対峙していくのか、国土交通大臣としての大臣の決意を最後にお聞かせください。

前原国務大臣 重ねて申し上げることになるわけでございますけれども、この北朝鮮に対する姿勢というのは、私は政権交代で大きく変わるというものではないと思っておりますし、何よりも、国連決議というものがあって、そして国際社会で連携して対応していこうということになっているわけであります。

 もちろん、日本特有の問題、地政学的に日本が置かれている厳しい状況というのはありますけれども、なおさらこの国連決議というものをしっかり遵守し、だからこそ、きょうこうやって議論していただいておりますけれども、国連決議に基づいた措置というものを延長させていただき、そして日本としての意思をしっかりと伝え続けるということ、そしてまた、六者協議などの場を通じて粘り強く、日本の立場をしっかりと主張しながら解決をしていく、その姿勢が何よりも重要だと私は考えております。

川島委員 どうもありがとうございました。

 特に拉致問題などは、残された家族にとっては、一分一秒を争う、一刻も早く解決をしなければならない問題だと思っております。政府としても、また我々政治家全体で全力で取り組んでいかなければならない問題と思っております。

 以上で質問を終わります。どうもありがとうございました。

川内委員長 川島智太郎君の質疑を終了いたします。

 次に、岩屋毅君。

岩屋委員 自民党の岩屋毅です。

 川島智太郎委員は私の別府の後輩でございまして、活躍を期待しております、別府が続きますが。

 前原大臣、私、やはりこれはタイミングを失していると思いますよ、きょうようやくこの法案の審議をして、採決まで行くということですけれども。

 事の起こりは、言うまでもない、二〇〇六年十月九日に北朝鮮が核実験をやった。国連決議一七一八ができた。二〇〇九年五月二十五日、二回目の実験があった。それを受けて、これは日本のイニシアチブだったんですね、日本のイニシアチブでこの決議一八七四というのが六月十二日にできた。これを受ける国内法を早くつくらないかぬということで我々は案をつくって、当時国会に出して、衆議院は通過したけれども、審議未了、廃案ということになったわけですね。

 本当は、この種の法案というのはやはり間髪を入れずにつくって、北朝鮮に対して、国際社会に対してメッセージを発する、日本が言い出しっぺなんですから。そういう意味でいうと、いろいろな政局事情とか政治環境とかありましたけれども、やはりこういうことは与党も野党もない、一致協力して、早く、迅速に対応するということが大事だったのではないかということを、私は非常に残念に思っているところであります。

 政府もようやく、政権交代して案を出してこられた。我々は前の案を衆法として出して、今並んでいるわけですけれども、はっきり言うと、違いは二つしかないわけですね。法律の名前と、我々で言うところの九条二項、自衛隊の関与をはっきり書くか書かないか、このたった二つの違いしかないわけで、わざわざそこを変える必要があったのかなと。政権交代したから、やはりまるっきり同じじゃいかぬ、名前も変えないかぬ、どこかいじらないかぬ、こういうことだったのかもしれないが、そういうのも小細工なんであって、私は、法律の趣旨がほとんど一緒だというのなら、そのまま早く通すということでもよかったのではないかなと思います。

 要は、違いは二つしかないので、それを中心に聞くしかないわけですが、法律名から北朝鮮という国名を削除した理由は何ですか。

三日月大臣政務官 お答えいたします。

 委員も御指摘いただいたように、この法案は、安保理決議第千七百十八号及び第千八百七十四号が、国連加盟国に対し、法案に言う北朝鮮特定貨物の検査その他の措置を要請し、北朝鮮との輸出入禁止品目が発見された場合の押収、処分等を義務づけていることを受けて、同決議を履行するために必要な法的基盤を整備するためのものであり、そのような法案の基本的性格を明確化するための名称をつけさせていただいたということでございます。

岩屋委員 だから、法案の性格というのは、まさに、北朝鮮の特定貨物というものをきちんと検査せないかぬ、これが法案の性格というか趣旨なわけですから、最初の法律の名前、今の衆法の名前、北朝鮮特定貨物の検査等に関する特別措置法案というのでいいんじゃないですか。なぜ決議を引かなきゃいけないんですか。

三日月大臣政務官 委員の御主張、御意見は承りますが、委員もいみじくも御指摘いただいたように、安保理決議に基づく北朝鮮特定貨物の検査その他の措置について定めるための法的措置であるという性格を、私たちは政府の意思として明確に示させていただいたということでございます。

岩屋委員 それでは聞きますが、これまで、特定の国連決議を表題にした立法例というのは過去にありますか。

西村大臣政務官 お答えいたします。

 過去においては国際連合決議等という文言が入った法律もございますが、今回の貨物検査法案のように、法律の名称に特定の国連安保理決議の番号を用いた法律はないと承知をしております。

岩屋委員 そうでしょう。だから、過去に例があるのは、国際連合の決議に基く民生事業のため必要な物品の無償譲渡に関する法律というのがあるだけなんですよ。こういう決議の番号を引用したというのはないので、なぜそこでそういう無理をするのかなと私は疑問に思っているわけですよ。

 本法案というのは時限立法じゃないですよね。北朝鮮をめぐる情勢、この北東アジア周辺の情勢というのは、これからも大きく変わる可能性がありますよね。さっきも質問に出ていました韓国船事案というのもあるし、場合によってはまた新たな国連決議というものが採択される可能性がある。私はかなりその可能性は高いと思いますよ。

 もしもですよ、仮定の話で恐縮ですが、韓国船の沈没というのか撃沈というのか、この事案に北朝鮮の関与が疑わしいということになったときに、新たな北朝鮮に関する制裁決議というか国連決議というものが採択される可能性が高い。そのときはどうするんですか、この一八七四という番号を引用した法律は。そのときに変えるんですか。

三日月大臣政務官 本法案に言う北朝鮮特定貨物の検査等につき、委員も言われたように、今後事態が変化をし、新たな国連安保理決議が採択された場合には、まず、今御審議いただいておりますこの現行法案の改正の要否について、必要であるのか必要でないのかということについて精査させていただくことになると思いますが、法改正が必要となる場合であったとしても、現行の御審議いただいている法案の名称、「国際連合安全保障理事会決議第千八百七十四号等を踏まえ」と定めさせていただいているところから、現行名称を変更することなく対応することが可能であるというふうに考えております。

岩屋委員 それは、やることが一緒なら、法律の名前がどうであろうが変えなくてもいいというのはそのとおりですよ。だけれども、変わってくる可能性がある、新しい決議が出てくる可能性がある、それが積み重なっていく可能性があるというのがわかっていながら、こういう法律名をわざわざつける必要はないんじゃないの。

 北朝鮮特定貨物の検査等に関する特別措置法案というのがきちんとあれば、決議が出てきたからといって一々慌てる必要もないわけで、そう思いませんか。

三日月大臣政務官 委員の御指摘、御意見は拝聴いたしたいと思うんですが、今いみじくもおっしゃったように、この現行法案に基づく措置内容というものが変わるのか変わらないのかということについて精査をさせていただくわけでありますから、そういう意味において、私たちは、この名称が「千八百七十四号等を踏まえ」ということで、ある程度の広がりを持って定めさせていただいていることで対応可能だというふうに思っております。

岩屋委員 だけれども、船舶検査という活動に目的を限定した法律なわけですから、北朝鮮に対する制裁内容がつけ加わったとしても、この法案の趣旨、性格というのはそう変わらないはずなんですよ。まあ、いいです。そのことを指摘しておきたいと思います。

 このように、法律名をわざわざこういう形に変えた、法律名の中から北朝鮮という国名を外したという政府の、鳩山政権の意思決定、あるいは与党内の意思決定は、どこでどういうふうに行われたんですか。

三日月大臣政務官 これは、与党を経験され、連立政権も御経験された委員であれば十分御承知だと思うんですが、当然のことながら、与党三党で議論を積み重ねて、その結果、現政権の中で議論をして、閣法として現行法案を提出させていただいたということでございます。

岩屋委員 我々は、自公政権のときは、安保に関する与党PTというのをつくっておって、安保だけじゃない、すべての分野において、それは本当に議論を詰めていきましたよ、すり合わせを。

 当然、御承知のようにと今政務官はおっしゃったが、連立与党三党がそういうコンセンサスづくりをしっかりやっていると見えないんですよ。あの普天間問題なんて、何ですか、あのざまは。今日この段階に至っても与党内のコンセンサスすらつくれていない。だけれども、これについては、じゃ、コンセンサスがしっかりできたというわけですね。与党の中のどういうレベル、内閣の中のどういうレベルで話し合って、この法律名を変更するということになったんですか。

三日月大臣政務官 法律名の変更にしろ、その内容の決定にしろ、与党内の議論、そして政府内の議論、これは、その時々、それぞれの会議においてしっかりと決定をさせていただき、結果、閣議決定をし、閣法として提出をさせていただいているということでございます。

岩屋委員 何か手順を今説明しただけであって、どこでだれがいつこの意思決定をしたのかというのを私は聞きたかったわけですよ。後で、きょうは辻元副大臣にも聞かせていただきたいと思っております。

 法律名から北朝鮮というのをわざわざ外したというところに、私は、何か外交的配慮というものがもしかしてあるのかな、だとしたらそれは余計な配慮だなと。これは、あくまでも制裁法案なわけですね。メッセージを明確にターゲットに向かって出すということが大事なんであって、そういう意味では、わざわざ国名を外しているというところにどういう意図があるのかなと。

 先ほど前原大臣は、拉致問題というか対北朝鮮方針について説明されましたが、対話と圧力、これまで北朝鮮に対して我々はそういう方針で臨んできたんですけれども、鳩山政権の対北朝鮮基本方針は何か我々のときと変えたところがあるんですか。違ったものが何かつけ加わっているんですか。もうちょっとやわらかく北朝鮮に対応せないかぬ、こういうことなんでしょうか。

三日月大臣政務官 委員の御主張は御主張としてしっかりと承りたいと思うんですが、先ほど前原大臣が答弁されましたように、決して現政権として変えたことはなく、かつ、この法律案については、北朝鮮という国名を削除したことについては、安保理決議千七百十八号及び千八百七十四号が各国に対して要請していることをしっかりと明確にするという意思を持って決めさせていただいたということでございます。

岩屋委員 事の経過からして、前政権が北朝鮮という国名をつけた法律を出して、国会で、衆議院は通過をして、だけれども廃案になった。鳩山政権にかわって、それを名前を変えて出し直したという経緯は、北朝鮮当局はもとより、変な話、国際社会にオープンになっているわけですから、その経過を考えると、やはり北朝鮮に対するメッセージ性というものは弱まったんじゃないですか。なぜわざわざそういうことをしたのかというのが我々の疑念の一つです。

 もう一つの違いは、冒頭に申し上げたように、これは二つしか違いがないんですね。衆法案というか、前の法律の中にあった九条二項、九条とかいうと何か憲法の話みたいですが、そうじゃなくて、この法案の中の九条二項を削除しているわけですね。

 確認していきますが、九条一項で言う関係行政機関の中には、防衛省・自衛隊というのは、当然のことだと思いますが、含まれているんですね。

三日月大臣政務官 今言われたように、本法案九条一項、政府が出しております法案の九条一項で言う関係行政機関には、防衛省・自衛隊というものも含まれております。

岩屋委員 当然といえば当然ですが。

 問題の九条二項ですね。九条二項を政府案ではわざわざ削っているわけですが、この九条二項というものがなくても、自衛隊法八十二条、「防衛大臣は、海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に海上において必要な行動をとることを命ずることができる。」この自衛隊法八十二条の発動には全く支障がない、そういうふうに考えてよろしいですか。

三日月大臣政務官 まず、委員も御承知のとおり、もしかしたら見解が違うかもしれませんが、旧法案の第九条第二項ですね、衆法で出されております。これは、同法案による貨物検査等に関して、自衛隊が既存の法律に基づく措置を実施することがあり得ることを確認的に規定したものであるというふうに考えておりまして、私たちは、それを設けなくても、北朝鮮に対する輸出入の物品をしっかりと貨物検査という方法、その他の手法により制限することは可能だ、したがって、法的効果の面において何ら問題はなく、同じであるというふうに考えており、かつ、加えて、今御指摘のあったような自衛隊法に基づく海上警備行動その他自衛隊の任務や権限に変更が生じるものではないというふうに考えております。

岩屋委員 前の政府案、だから、今で言う衆法ですね、前の法律案をつくるとき、自民党の中の部会の最初の議論から私は参画をいたしました。もちろん中谷委員も、みんなそうです。そのときに議論になったことは、やはり北朝鮮の船舶を検査するに当たっては、海保の活動と海自の活動がシームレスで直ちにつながっていくんだぞという形の法律にしないと、これはなかなか実効性が上がらないのではないか、そういう問題意識を持って我々はあの法案をつくったわけですよ。

 だから、政務官がおっしゃるように、法的効果というのは確かに変わらない、そういう説明かもしれませんが、法の持つ効果というのは、この九条の二項があるとないとで私は違うというふうに認識をしているんですよ。もともとの議論の出発点がそうでしたからね。だから、我々はあえてそこに書いたわけです。海保の活動と海自の活動はシームレスに続いていくんだぞということを明示することが大事だという認識で前の法案を書いたわけですね。そこはぜひ政府においても理解をしておいていただきたいと思います。

 つまり、北朝鮮の特定船舶の検査に際しては、必要とあればいつでも自衛隊を活用する用意が日本国はありますよ、このメッセージ性が法の持つ効果なんですよ。だから、これを、法的な効果は一緒だ、書いていても書いていなくてもできることは一緒だ、だから外すんだという政府の判断は、私は適切ではないと考えているわけですよ。これもさっきの法律名と一緒のように、法の持つ効果、メッセージ性を減却させている、こういう認識を私は持っているわけです。

 北朝鮮という相手の船舶を検査する、これを実効性あるものにするためには、やはり九条二項にあえてこれを書いておくということが必要ではないかなと思うんですが、いかがですか。

三日月大臣政務官 委員の御主張は御主張としてしっかりと承りたいと思います。

 一政務官として御答弁することに値するのかどうかわかりませんが、私は、九条二項を定めなかったとしても、法的効果は変わらず、法の持つ意図と効果も変わらない、何ら減じるものではないというふうに考えておりますし、この規定が置かれているか否かにかかわらず、今御紹介いただいた海上警備行動発令の要件に該当する場合には、防衛大臣が閣議に基づく内閣総理大臣の承認を得て適切に発令をされ、行動されるというものだと考えております。

岩屋委員 政務官の御主張は御主張として承りますけれども、私は、やはり最初の案文も、それは当然北朝鮮当局も国際社会も見ているわけだし、今度、鳩山政権が同じような法律を出してきた、あれ、何でこの九条二項を削っているのかなと。やはり物事には事の経過というのがあるので、法的効果が同じだというんだったら、よりメッセージ性の強い九条二項というものをぜひ生かしてもらいたいというのが我々の考え方でございます。

 念のために聞きますが、二〇〇一年、不審船事案というのがありましたね、北朝鮮の不審船です。このとき当該船舶はどんな武器を携行していましたか。どういう形でそれを使用しましたか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 二〇〇一年の不審船事案でございますが、二〇〇一年の十二月に奄美大島の北西海域において不審船が発見されまして、直ちに私どもが巡視船あるいは航空機を発動させてこれをとめようといたしました。停船射撃をしたり、それから巡視船二隻で挟み込みをしたりしてとめようとしておりましたが、そのときに向こうが突然ロケットランチャーとか自動小銃を撃ってまいりました。これに対して正当防衛射撃を実施したところ、突然爆発をいたしまして沈没したという事案でございます。

 その後、翌二〇〇二年に沈没した不審船を引き揚げまして、陸揚げして、全部隅々まで調べました。現在でも横浜の資料館に飾ってございます。

 その際に調べた結果、武器は、携行型地対空ミサイル二機、ロケットランチャー二機、八十二ミリ無反動砲一機、十四・五ミリ二連装機銃一機、五・四五ミリ自動小銃四丁、七・六二ミリ軽機関銃二丁、手りゅう弾六個を保有しておりました。今でも飾ってございます。

 この使用状況でありますが、先ほど申し上げましたように、突然ロケットランチャーと自動小銃を向こうは撃ってまいりました。ロケットランチャーの方は、我が方の巡視船を飛び越えてその先の海中に落ちておりますので、もしこれが直撃をされておったら大変な被害だと思っております。

 それから、自動小銃の方は、巡視船のうち「あまみ」という一隻が型が古くて防弾になっておりませんので、船橋を攻撃されて三名負傷してございます。これは、たまたま向こうの船が小さくてこちらの船が大きかったので、斜め下から撃ち上げるような状況になりましたので、天井に当たった弾が、破片が刺さって負傷してございます。これも真横から撃たれておったら大変なことになっておったと思っております。

 したがいまして、我々としては、これを貴重な教訓として、その後の不審船対応の巡視船等の整備に当たり、防弾等の高性能化をきちっと図っておるところでございます。

岩屋委員 でしたよね。だから、本当に特定貨物を北朝鮮が積んで、核関連物質とかいうものであれば、やはりかなり重武装している可能性もあるわけで、だから、もちろん海保がまず対応するけれども、自衛隊もしっかりと、いつでも出ていく用意がありますよということをしっかりメッセージとして伝えておくことが、検査の安全を確保することにも、実効性を確保することにもつながるということで、私はきちんと書いておくべきだと思っているわけです。

 時間がなくなってきましたので、きょうは、辻元副大臣、ある意味では社民党を代表して今政府の中で活躍をしておられるわけですが、私、ちょっと心配しているのは、社民党さんはどうしても自衛隊の活用について消極的で今までずっとこられたですよね。だけれども、政府の中に今入って、与党を同じく構成しておられるわけであって、今回の一連の法律の書きかえ、一連と言っても二カ所しかないわけですが、こういうところに、もしかして社民党さんの意見というのは色濃く反映しているのかなということをちょっと私は心配しているんですが、その点についてはいかがですか。

辻元副大臣 今、岩屋議員がおっしゃった自衛隊の活用について消極的というよりも、正確に申し上げましたら、抑制的という言葉が妥当かと思います。自衛隊はあらゆる面で軍事組織ですので、どの国家も抑制的であらねばならぬということは万国共通だと思っております。

 その中で、今は三党連立政権ですので、三党の中でそれぞれの党の立場を主張し、政権運営をしております。しかし、岩屋委員と私は同期だと思います。当時は、自社さ政権でございました。自民党との隔たりより民主党との隔たりの方がずっと近いので、自社さ政権よりもやりやすいなと思っております。

岩屋委員 自社さ政権のときは、僕は浪人しておりました。幸いに、あの自社さ政権というわけのわからないものには参加せずに済んだわけでございます。

 辻元副大臣、じゃ、例えば現在も自衛隊が派遣されているPKO活動、それから海賊対策などについて、社民党さんとしてはどう評価しておられますか。

辻元副大臣 個々の事案について、プラス面もあれば反省すべき点も、それぞれの海外に対しての自衛隊の活動については、しっかり検証しなければいけないと思っております。

 しかし、今は、法治国家ですので、その中で海賊対処法やPKO関連の法律は現在機能しておりますので、その機能している法律の範囲でしっかり活動していくということだと考えております。

 そういう中で、特に海賊対処につきましては、ソマリアという厳しい気象条件であったり、それから周辺状況である中で、海上保安庁の職員やそれから自衛隊の皆さんは、本当に緊迫した中で厳しい仕事をこなしていただいていると考えております。

 これは、連立政権になりましたので、前政権のときに反対した法案であっても、法律として成立している限りにおいては、行政を預かる者、それから国会議員として、その法律の範囲でしっかりとした任務を行っていくというのは常識かと思います。その法律について、好きだとか嫌いだとか、反対だとかということと、仕事としてきっちりと法律の範囲でこなしていくことを預かるということは別だと考えています。

岩屋委員 自民党は今度、自衛隊による国際貢献のための一般法というのをまとめて、中谷さんが責任者になって国会に出します。

 やはり、事態が起こるたびに特措法、特措法で、どたばたどたばた対応する、期限が切れたら船を戻してくる、また出す。これは、鳩山政権はとうとう引っ込めましたけれども。こういうことをやっておったのでは、なかなか有効な国際貢献はできないし、国際社会の信用も得られないと私は思っているので、社民党さん、今与党を構成しているわけですから、自衛隊の活用についても、必要とあらば積極的な対応をしっかりしてもらいたいと思っています。

 時間になりましたが、こういう法律名を変える、それから九条二項をわざわざ外すという措置は我々は余り評価できないな、かえってそのメッセージ性を弱くして、不十分なものにしてしまったなという認識を持っているということを指摘させていただいて、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

川内委員長 次に、福井照君。

福井委員 尊敬する川内委員長のチェアで国土交通委員会で質問させていただきますことを大変誇りに存じておる次第でございます。

 昨日の本会議、ちょうど穀田先生、現在いらっしゃいませんけれども、絶対に審議には出席される共産党さんから率先して退席をされたということ、これはどれだけ重大なことかということで、ぜひ与党の皆様方にも御認識をいただきたいということをまず申し上げさせていただきたいと思います。

 きょうは、ざっくり言いまして、貨物船の臨検と万景峰号ということですけれども、当然、拉致問題の解決というのも行政目的に入っているということで、担当大臣ではいらっしゃいませんけれども、しかし、きょう審議していただいている法案と承認の件の本質的な目的でございますので、その本質について前原大臣の御答弁をいただきたいというふうに思っております。

 六月十日、緊急国民集会・大行進ということで、「すべての拉致被害者をすぐに返せ! いまこそテロ国家北朝鮮に全面制裁を 緊急国民集会・大行進」というのがなされます。いまだに帰ってこられない拉致被害者の皆様方を一日も早く帰そうということで、国民的には活動を続けておるわけでございます。

 前政権のときには三つございまして、御存じのとおり、前原大臣も本当に身命を賭してこの問題に取り組まれてきました、被害者の安全確保と帰国、そして拉致に関する真相究明、拉致実行犯の引き渡し、この三要件、これをずっと旧政権は続けてきたわけですけれども、この基本方針、拉致問題における今後の対応方針を引き継ぐのか引き継がないのか、忘れてしまったのか、議論しているのか、何をしているのかさっぱりわからないというのが現状なんです。

 そこで、前原大臣にお伺いしたいのは、もうずっと政治家として取り組まれてきたこの拉致問題について、担当大臣ではありませんけれども、こうやって対話と圧力のツールを持っていらっしゃる大臣として、両方あります、フォーマルとしてもインフォーマルとしても。閣内でどんな議論が今なされていて、今までこの八カ月、何が議論されて、今何をされようとしているのか、御紹介いただければ幸いでございます。

前原国務大臣 福井委員にお答えをいたします。

 拉致の問題というのは、これは政権がかわろうがかわるまいが、人権が侵害をされる、テロでございまして、許されるべきではない。そして、御家族の方々を含め、一日も早い帰還を願っておられるわけでありますので、前政権から努力をされてきたことを政権交代後もしっかり引き継いで問題の解決に当たるというのが基本的な考え方でございます。

 したがいまして、中井国家公安委員長をまた拉致担当の内閣府の特命担当大臣として任命をし、そこを中心にして、この問題については引き続き取り組みをしているところでございまして、前政権から変わることはございません。引き継いでこの問題についてはしっかり取り組んでいかなくてはいけない、そういう思いを持っております。

福井委員 恐らく、ここでは明らかにできない水面下のいろいろな活動をしていただいているものと信じさせていただきたいというふうに存じます。

 そこで、北朝鮮の軍事情勢ですけれども、北朝鮮は経済が非常に困難な状態にある。しかし、軍事面に資源を重点的に配分して、特に非対称の軍事能力、特殊部隊十万人規模、核と弾道ミサイルを装備しているという状況、そして、ますますその膨張圧力を強めているということです。

 戦後、アメリカによって日本から奪われたものは、大きく言って二つあると思っているんです。一つは大日本帝国憲法第一条、要するに国体の本質そのものの天皇陛下のあり方、そしてもう一つは地政学だと思うんです。

 この前、決算行政委員会で一問だけさせていただいて、お答えをいただいたんですけれども、ちょっと生煮えだったので、もう一回だけ、もう一答だけしていただきたいのは、地政学で、軍事、戦争といいましょうか、国の全体の行動をするときに、七段階に分かれているというふうに言われています。六段階目から、上の方からいきますと、政策がある、ポリシーがある。そしてその下に大戦略がある、グランドストラテジーがある。そして軍事戦略がある、ミリタリーストラテジーがある。そしてその下にオペレーション、作戦がある。そしてその下にタクティクス、戦術があって、最後にミサイル、戦車等の技術がある。この六つのレイヤーがある。その六つのレイヤーをはるかに超えて一番大事なのが、リーダーの世界観、ビジョンであるというふうに言われております。

 これは世界の常識で、リーダーの世界観、日本人とは何なのか、日本をどこに持っていこうとしているのか。チャーチルはイギリスをあそこに持っていこうとした。いろいろな国のいろいろな指導者がこの世界観を持ち、そして歴史認識を持ち、時代認識を持ってすべての政策を実行し、そして国全体として一丸となって頑張ってきたという歴史がある。

 今、支持率云々は言いたくないんですけれども、どうして国民全体が不安に駆られているかというのは、この世界観だと思うんです。鳩山総理の世界観に不安を潜在的に、潜在意識として感じている、ここにあるんです。常時駐留なき安保、これは理想かもしれない。しかし、理想とリアリズムがうまくバランスしていただいているリーダーのしっかりとしたビジョン、世界観があってこそ国民が安心できるんだということをこの前申し上げたかったんですね。

 ですから、地政学上の日本の位置、沖縄の位置、そして今この瞬間の時空間の位置、アメリカとの戦後の歴史、そして中国が今膨張しようとしている、そして北朝鮮も膨張しようとしている。中国は、世界の歴史上、人類史上初めて陸軍も世界一、海軍も世界一という国を今どうも目指しているらしいというときに、民主党さんには申しわけないですけれども、大デレゲーションで中国に小沢さんを筆頭に行かれた。あるいは、外国人に、海外に居住するお子様に子ども手当を差し上げる、朝鮮人学校の高校の無償化についてははっきりした政府の方針がない。事ほどさようなんですね。中国の属国にしようとしているのではないかという、半分おそれ、半分冗談が、巷間、一般庶民の間でコミュニケーションとしてささやかれている。

 こんな段階で、ぜひ前原大臣に、もう本当に個人的な見解で結構でございます。今、日本がどこに行こうとしているのか。鳩山さんはこういうふうにしようとしているけれども、前原さんがプライムミニスターだったらこういうふうにしようと思っているという地政学上の今の時代認識、もう一回、この前の続きで教えていただきたいと思います。

前原国務大臣 私がずっと安全保障を考えるときに何を考えてやっているかということを少しお話をしたいと思うのでありますが、日本の主権が脅かされる可能性のあるものというのは、私は大きく三つあると思っているんですね。

 一つは、テロであります。これはさまざまなテロが考えられるわけですね。まさに第三国が入り込んで、原発をねらわれるかもしれない、あるいは薬品、薬剤を使われるかもしれない、あるいは生物兵器を使われるかもしれない、あるいはサイバーテロなんというものもあって、日本の経済が混乱をするというようなこともあるかもしれない、あらゆるテロというものが考えられるということがまず一つ。

 二つ目は、これは主に北朝鮮でありますけれども、日本を射程に置いているミサイルを持っている国が北朝鮮を含めて複数ある。このミサイルの攻撃にどう対応していくのかということが二つ。

 三つ目は、島嶼侵攻含め、日本の主権が脅かされる。つまりは、日本はみずからの固有の領土だと言っていても、他国はそれは自分たちのものだと言っているところもあるわけですね。あるいは、日本が島だと言っているものについては、それは島ではなくて、したがってそこから二百海里の排他的経済水域を認めない、こういうところがあるわけです。しかし、主権国家としては、こういった日本の主権をどう守っていくのかということをやっていかなきゃいけない。

 私は、日本が今考えておかなくてはいけない安全保障の、日本の主権が脅かされる可能性があるのは主にこの三つだと思うんですね。では、この三つをどう守っていくかということで安全保障政策を構築していくということが大事なんだろうと思うんですね。

 では、テロにおいて何が重要かというと、一番大切なことは実は情報なんですね。情報をいかに把握するのかといったことが大事であります。つまりは、だれがやっているかわからぬわけですよ、テロというのは。あるいはどのような攻撃にさらされているかということは、例えば地下鉄サリンのときでも、あれはだれがやっているのか、あるいは使われた薬剤は何かということがわからなかったわけですね。

 しかし、他国の例を見ると、未然にテロを防止しているというのは極めて件数は多くて、これは情報力の差と言ってもいいのではないかと私は思いますけれども。では、この情報というものについて、日本はどれだけの情報を持っているかというと、私は極めてここは脆弱だと思っているんですね。例えば衛星について言えば、多目的収集の衛星がたった四基ですよね。アメリカはペンタゴンだけで百基以上持っておりますし、定点観測しようと思ったら、当然ながら衛星は回りますから複数を組み合わせてやらないといけないし、じゃ、アメリカの衛星の分解能と日本の衛星の分解能は、これは大分差があるわけですね。ということは、そういったいわゆる衛星情報も日本はアメリカやフランスから買っている。

 ヒューミントという面についても、日本はもちろん、それは警察とかあるいは公安調査庁とか、さまざまな警察機能がありますけれども、イギリスでいうとMI5、アメリカでいうとFBIのようなものはない、またイギリスでいうMI6やアメリカでいうCIAのようなものはないということで、ヒューミントも極めて弱いわけですね。ということは、日本独自でそういったテロを未然に防止するだけの情報網とそれを防ぐだけの体制が整えられているかというと、なかなかそうはなっていない。

 また、ミサイル防衛についても、やられた場合、ミサイル防衛網で何とか撃ち落とさないかぬですけれども、撃ち落とせなかった場合にやり返す能力はないわけですよね。専守防衛できて、今までは水際で防ぐということをやってきましたけれども、今や、遠くから飛んでくるものについて、やられてやり返す能力がない、あるいはその基地を攻撃する能力がない。

 だからこそ、日本が持っていない情報収集能力、あるいは盾の能力しか持っていなかったら矛の能力、こういうものを日米同盟関係でアメリカに対して求めていく中で日本の脆弱性を補完していくということが大事で、だから基地の問題にもつながってくるわけでありまして、基地の問題というのは、そういう意味では極めて重要な問題だというふうに私は思います。

 また、島嶼侵攻やあるいは日本の主権が脅かされる場合にどういうふうに対処していくのかということになると、これは物量が物を言いますし、また、物量のみならず、装備の性能というのは非常に重要になってくるわけですね。例えば戦闘機でいうと、これから第五世代になってくるわけですね。ステルス性そして超音速で飛べるというところが大事になってきて、そういうものを備えられるかどうか。

 ことしで恐らく中国は日本のGDPを抜くと思いますけれども、八年後から十年後は、恐らく日本のGDPの倍以上になっているだろうと思うんです。その中で、今まで二十年間毎年一〇%以上の軍事力を増強していって、公表されている数字というのの恐らく倍以上じゃないか、実質公表しているものの倍以上じゃないかとペンタゴンなんかは分析しているわけですね。

 そういうのがまさに日本の置かれている安全保障上の問題だという認識の中で、どういった対応策をとっていくのか。だから、日本の置かれている限界と制約要因、そしてそれをどのようにカバーしていくのかということを全体的に考えながらやっていかなくてはならないと私は思っております。

 そういう意味では、北朝鮮の問題というものも、拉致の問題も大事、しかし、やはり核やミサイルの問題というものも日本の安全保障に極めて切迫した問題で、例えば一発の核弾頭を積んだミサイルが撃ち込まれたら、日本の大都市に撃たれたら、それは相当、日本の経済的活動は数十年立ち上がれないようなものになる可能性が高いわけであって、そういう意味では、日本の限界、そしてそれを補う日米同盟関係の重要性というものをもう一度確認しながら、しかし、日本の自立というか自前の能力も時間をかけて高めていくということをやりながら、交渉力を高めていかないといけない。

 交渉というのは、結局、長くなって申しわけないですが、北朝鮮がなぜアメリカと交渉したがって日本と交渉しないかというと、それは、足元の能力というのをわかった上でやっているわけですよ。つまりは、日本というのは自前でなかなか安全保障もできていないね、アメリカに頼っているねという部分があるわけですね。だから、アメリカと交渉したら日本はついてこざるを得ないかと思って、米朝交渉というのをやろうとしているというものもあるわけですね。

 ですから、一朝一夕では変わらないけれども、それこそ十年後、二十年後に中国は日本のGDPの倍以上になっている可能性があって、しかし、日本の主権を守っていかなくてはいけない中で日米安保をどうマネジメントしていくのかということと、日本独自の交渉力を高めるための国力増強のために何をしていくのかといったことを考えて、すべての政治を行っていくということが私は大事ではないかというふうに思っております。

福井委員 ありがとうございました。

 一言一言がもうすっと入ってきましたので、ぜひ、個人的には、普天間の問題も与野党を超えて大連立という考え方で解かなければならない、タックルしなければならないというふうに私は思っているんです。ですから、今たまたま元防衛庁長官と並んでいらっしゃいますけれども、石破さんも入れてもいいですけれども、ぜひ、この問題は、ちょうど年金のスウェーデン方式と一緒ですよね、与野党を超えて、政府と、国家と国民が約束事を交わすということで社会保障があった。だから、安全保障も同じだと思うんですね。

 ですから、もう与野党を超えて、今まさに大臣がおっしゃった、普天間の問題というのは安全保障のこれからの根幹であるから、与野党を超えて議論し、そして国家として決めましょうと。だから沖縄の方にも、ほかにそういう御迷惑をかけることがふえる方にも説得ができるというふうに思うんですね。これは個人的なことなんで、国対ベースでも国会ベースでもないんですけれども、そういう意味で、今、現状認識をいただきました。

 もっと引いてちょっとお伺いしたいのは、ちょうどことしは日韓併合百周年ということで、日本からいうと日韓併合ということなんで、半島と日本との歴史を振り返って総括するべき、学者は学者で、そして政治家は政治家で議論するべき年に当たっているんですね。

 日本は、ちょうど文明が成熟したときに人口が減っています。縄文時代の後期、平安時代の後期、江戸時代の後期、それぞれ三回人口が減っている。その都度、次の時代の新技術というのが大陸から半島を通じてやってきて、それで次の時代、日本が発展するわけですね。

 ですから、今、日本はインドのマーケット、中国のマーケット、マーケットはターゲットとしているんだけれども、しかし、日本の中をこれから発展する、再生するために、半島と中国というのは非常に大きな役割を果たすというのは歴史が教えているところなので、大陸と半島との歴史、日韓併合百周年というこのタイミングを踏まえて、先ほどのコメントに加えて、三十秒ぐらいで、ちょっともう時間もないので、総括をしていただければ幸いでございます。

前原国務大臣 国土交通大臣としていつも私が申し上げているのは、公共事業の見直し、きのうも金子委員と河川の問題について議論させていただきましたけれども、まさに福井委員がおっしゃる、人口も減っていく、しかも少子高齢化が進んでいって、これから社会保障に莫大なお金がかかっていく。毎年自然増で一兆円を超えるような社会保障費が積み重なっていくということですね。一兆どころじゃないですね、数兆円規模の社会保障費が、年金、医療、介護すべて入れると毎年毎年積み重なっていくということ。

 他方、GDPの一・七倍を超える長期債務を日本は抱えている。この制約要因の中で日本がどう発展をし続けるかということは、まさに党派を超えて、国会議員すべてが知恵を絞って解決をしていかなくてはいけない問題だと私は思っているんですけれども、その中にあって、発展し続けるアジアの成長を日本がどう取り込んでいくかということが私は極めて大事だと思うんです。

 きのう外務省から発表していただいた、中国に対するビザの発行要件を緩和するということについては、いろいろな議論がありましたけれども、日中間の交流人口をふやしていく中で相互理解を深めるとともに日本の経済にも資するというようなことで、まさに人、物、金の移動というものをより大きくしていく中で、日本の制約要因を超越していくということも大事だと思います。

 また、先般、閣議の前で関係閣僚が集まって、EPA、FTAをしっかり進めていこうということで、今、福井委員がおっしゃったように、一九一〇年から百年に当たることし、何とか日本と韓国の間で、今ちょっと交渉が停滞をしている、EPA、FTA交渉というのが前に進まない。そのためには、これは向こうの外交通商部長からも評価をいただいたんですけれども、赤松農水大臣が韓国に行かれて、農産物についてEPAについて前進させる用意があると、今までの日本では考えられなかったということを向こうの部長はおっしゃっていた。

 そういう意味では、それぞれの品目あるいはそれぞれの分野については抵抗があるかもしれないけれども、全体の、韓国にしたって少子化で悩んでいて、そして、このままでいくと人口減少、少子高齢化と日本と同じような状況が生まれてくる。この日本と韓国の市場というのを一体化する中で、お互いがパイを広げて人や物、金の行き来を大きくしていく中で、また日韓のみならずほかのところにも広げていって日本の価値を高めていって、そして制約要因を超越していく。こういった経済面での、あるいは通商面でのグランドデザインも一緒にやっていかないと、日本がこれから安心して社会保障も提供されて、経済も発展していくということは、なかなかナローパスじゃないかと私は思っております。

 そういう意味では、ことし、そういったアジアの成長を取り入れ、そして市場という意味でも拡大をしていくということをしっかりやっていかなくてはいけないと考えております。

福井委員 ありがとうございました。

 おっしゃるとおりだと思いますが、ちょっと時間もなくなってきましたので、勝手にしゃべるのが三分ぐらいで、あと質問を二問させていただきたいと思います。

 日韓併合百周年と同じように、朝鮮戦争というのも、去年いろいろ厚い本が出ましたけれども、総括をしておかなければならないと思います。

 それが始まったのは、アメリカが防衛線を日本列島に下げたから、ああ、そんなんだったらということで北朝鮮が、金日成が攻めて、そしてマッカーサーが攻め返したけれども、やはり、マッカーサーが信じてやまなかった中国とソ連の参戦は絶対ないというのが破られて、中国が攻めてきたので、もとのもくあみ、戦争しただけで、何万人も亡くなっただけで全く同じバウンダリーになったということで、防衛線という考え方が一番戦争を抑止する。

 つまり、先ほどの大戦略と世界観に匹敵するものになったなということで、今、中国が一番深い防衛線を日本列島と沖縄と台湾に引いているということでも、辻元副大臣いらっしゃいますけれども、社民党さんが幾らおっしゃっても、やはり沖縄のこの線から、まさかグアム島に下げるというようなことはあり得ないということを朝鮮戦争の始まりが教えているんだなということを感じる。

 それと、民主党さんには耳が痛いんですけれども、大統領とマッカーサーとの関係ですね。大統領が幾らマッカーサーに言おうとしても言うことを聞かなくて、勝手に、しかし第一生命ビルにずっといて、韓国には一泊もしなかったという、そういう指揮のもとで戦争をしたから、いわば余りうまくいかなかったということで、これはもう今の民主党の中のバランス・オブ・パワーに似ていますね。

 ちょうどさっき自社さの話が出ましたけれども、細川さんが日経新聞に書いた「私の履歴書」を読んでも、私は、小沢さんに総理にしてもらって、米の開放と小選挙区制度を導入したから、もうこれで小沢さんに許してもらって、総理を辞したというふうに書いてあるわけですね。

 ですから、今全く同じことが繰り返されていて、そのバックにいる超権力者と、その権力者に物を言えない大統領でありプライムミニスターであるということがあるので、この朝鮮戦争の権力構造と、そして今の政権の権力構造と、全く同じことが繰り返されているということが学習できるわけですね。

 そんなことで、先ほど大臣がおっしゃったヒューミントの話も聞きたかったし、それから、文民統制とはいえ、閣内に軍事専門家が要るのではないでしょうか。防衛大臣は文民だから軍事のことを詳しく知らないというのではだめだと思うんです。だからといって、海軍大臣、陸軍大臣を置けということを言っているわけじゃないんですけれども。

 しかし、だから前原さんは、そういう意味で、軍事アドバイザーとして閣内でそういうチャージを負うべきか、あるいはそういう専門家、大臣、副大臣、何でもいいんですけれども、そういう公的なポストとして軍事専門家を閣内に、今後、どういう政権になるかわかりませんけれども、今後の日本の統治機能としてそれを新たに導入すべきだというふうに思いますが、これはもう答えは結構でございます。

 そして、最後に、きょうは二つございました、万景峰号といいますか、特定船舶入港禁止関係でございます。これは政務官ですか、大臣ですか。船舶関係は半年、半年でやってきました。それで、一年延長しました。今度また一年なんですが、どうして一年なんでしょうか。今度は二年、今度は五年でなくて、また一年なんでしょうか。

 ということと、農林水産物の輸出入、それから薬とか暴力団とか、そういう意味で農水省、警察庁、そして財務省からの、日本の銀行からの北朝鮮への送金、そして海外の銀行からの送金の情報を、きょうは他省庁を呼ばなかったんですけれども、きょう審議していただいている法案の担当大臣としてどういう情報を得ているか、その特定船舶関係と、まとめて、最後に臨検ですね。これは、警察権限ですから海上保安庁に主としてやっていただいて、もうどうしてもできない場合は自衛隊に助けていただくという法律構造になっています。これは衆法も閣法も変わりません。

 最後に、去年、この法律をつくろうと思った案件がありました。アメリカがずっと追跡して、アジアに行って引き返したという不審船がありました。その後、臨検が必要な事案があったのかなかったのか、それだけ最後にまとめて質問させていただいて、時間が参りましたので、質問を終わらせていただきたいと思います。

前原国務大臣 まず、延長期間をなぜ一年としたのかということでありますけれども、今後の北朝鮮の対応を見きわめつつ、我が国の平和及び安全を維持するために特に必要か否かという観点から、当該措置につき評価をするために一年間の期間を設けた、こういうことでございます。

 それから、他省庁との協力関係の話でございますけれども、迂回輸出入防止対策会議というのがございまして、これは中身については非公表になっていますけれども、先ほど委員が指摘をされたようなさまざまな役所が入って、意見交換、情報交換をして、情報共有をしている。こういうことで、詳しい中身については差し控えさせていただきたい、このように思っております。

 それから、貨物検査でほかの事例があるのかということでございますけれども、日本ではございませんけれども、例えば、安保理決議第一八七四号採択後に、実際、同決議違反の可能性がある事案は五件安保理に報告をされているということで、UAEによる貨物検査事案、イタリアによる押収事案、それから、これは韓国の釜山に入港したパナマ船籍のコンテナ、南アフリカによるリベリア船籍の貨物船の検査、それからタイ、これは空港に着陸した、ウクライナの企業がチャーターをしたグルジア籍貨物機、この五件がいわゆる違反事案として安保理に報告されている、こういうことでございます。

福井委員 時間が参りましたのでやめさせていただきますが、ちょうど津波のときに前原大臣にもお伺いしましたが、農水大臣にも質問させていただいたんですね。そのときに、もうびっくりしました。とにかく東京にいたんだから、だれも呼ばなかったということで、東北の三陸海岸では水産の被害が甚大だったんですけれども、農林水産大臣も担当の局長も何も知らなかったというのが翌日の国会でわかったわけで、口蹄疫かくもあるべしということだと思います。これは、国会全体として、政府全体として取り組まなければならないし、そして受けとめなければならないと思います。

 これからは、危機管理に緊張感を持って政府もやっていただきたいし、国会も頑張っていきたいというふうに申し上げて、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

川内委員長 次に、竹内譲君。

竹内委員 公明党の竹内でございます。

 まず最初に、先ほど自民党の岩屋先生から、閣法について、第百七十一回国会から題名を変更した理由について、さらにまた、第百七十一回国会提出案に規定されていた自衛隊による所要の措置に関する部分を削除した理由について御質問がありました。その点はもう既にお聞きをいたしましたので、最初に衆法について逆に、確認でございますが、自衛隊による所要の措置を定めた理由についてお尋ねをしたいと思います。

中谷議員 このことは、ちょうど昨年の今ごろでありますけれども、自公の連立政権、与党におきまして、とことん議論をした上で、やはり法律においてやれることははっきりと、正々堂々と明記すべきであるという結論で設けた項目でございます。

 この法律の目的というのは、国連決議に違反して核・ミサイル開発をやめずに行動している北朝鮮へ、その行動を規制してやめさせることを目的とした、いわゆるメッセージを込めた法案でもございます。また、この対処につきましては、我が国のあらゆる事態を想定しまして、国家のすべての手段、組織を活用して、効果的な成果を出すことが必要でありまして、それは、他国と同様に、自衛隊を活用する場合もあるわけですから、それを明確にしておくことがその理由でございます。

 また、事実といたしまして、九九年の領海侵犯、そして昨年の海賊対策のときもそうでしたが、実際に自衛隊法八十二条を適用して海上警備行動で対処しました際も、その後、国会において、これに対する反対や批判の意見もございました。やはり事前に法律にこのことを明確にしておけば、よりはっきりとした措置をとることができまして、むしろ政府にとって、このようなことを法律に明記しておくことこそ、国の対処が迅速に、確実に行われる、また国会の意思も明確になっているということでございます。

 そしてもう一点、やはり自衛隊というのは我が国の実力組織でありまして、よりシビリアンコントロールを明確にするためには、所要の措置をとるという重要性にかんがみまして、このことを確認しておく、むしろ政府にとってこのことが必要ではないかということで法案に明記をしたわけでございます。

竹内委員 趣旨は非常によくわかりました。特に、北朝鮮へのメッセージという点では衆法の方がすぐれているんだろうというふうに思いますし、また、自衛隊へのシビリアンコントロールも明確にしておくという点は非常に重要な点だと思うんです。

 しかし、その二点の違いはあるわけでございますが、衆法も閣法も、こういう違いはございますけれども、内容においては実質同じであると認識をしているところでございます。もちろん、今申し上げましたように、北朝鮮に対するメッセージ性は衆法の方が高いと考えるところでございます。しかし、安保理決議一八七四に基づく北朝鮮に対する制裁を科することがまず大事である、具体化することがまず大事であるというふうに我が党としては考えておりますので、そういう意味で、今回、最初に私どもの党の立場を申し上げておきますけれども、万一衆法が否決された場合には、閣法に賛成するということをあらかじめ表明しておきたいというふうに思っております。

 この貨物検査法等につきまして、昨年の秋にも御議論がございましたので、中身についてはほぼ承知をしております。そこで、きょうは、まず北朝鮮をめぐる外交、安保上の問題についてお尋ねをしたいと思います。

 まず、三月二十六日に起こりました韓国哨戒艦沈没事件について、事実関係並びに韓国及び我が国の認識を外務省にお尋ねしたいと思います。

西村大臣政務官 お答えいたします。

 三月二十六日、韓国海軍の哨戒艦天安が、黄海のペンニョン島の南西約二・五キロメートルの海上で沈没をいたしました。四月十五日に艦尾、そして二十四日に艦首を引き揚げております。乗員百四名おりましたけれども、そのうち五十七名は事案発生直後に救助されましたが、残りの四十六名は死亡をいたしております。

 四月の十六日に軍民合同調査団が、内部爆発より外部爆発の可能性が高い旨を発表しておりまして、同二十五日、同調査団が、爆発原因について、一つは内部爆発の可能性はないこと、二つは金属疲労の可能性はないこと、三つは、原因は外部爆発であり、水中での非接触爆発の可能性が高いことを発表しております。

 韓国政府の認識につきましては、これも、現在、韓国政府が引き続き詳細な原因究明に係る調査分析を行っているものと承知しておりまして、日本政府としてコメントすることは差し控えたいと存じます。

竹内委員 あす、軍民合同調査団の調査報告が出るんですよね。四カ国も入っているということで、韓国政府としては、北朝鮮製魚雷という確実な物証は確保されていないとしながらも、明日の軍民合同調査団調査報告では、攻撃したのは北朝鮮との文言が含まれる可能性がかなり高い、こういうふうな情報を得ておるんですが、これについてはいかがですか、そういう情報はありますか。

西村大臣政務官 まず最初に、先ほど私、哨戒船乗員について、百四名中五十七名が救助と申し上げましたけれども、五十八名の間違いでございましたので、訂正をさせていただきます。

 さてそこで、現在、韓国政府が行っている原因究明に係る調査分析について御質問がございましたけれども、現在も韓国政府により引き続き詳細な調査分析を行っているものと承知をいたしております。

 この点については、十六日に行われました日韓外相会談において、柳明桓外交通商部長官から岡田外務大臣に対して調査の現状等について説明はございましたが、会談の具体的な中身につきまして述べることは差し控えたいと思います。

 まだ調査結果が出る前でございますので、予断を持ってコメントすることは差し控えたいと存じます。

竹内委員 何か岡田外務大臣は、既に新聞でも、韓国を支持する考えを伝えたと。韓国の柳外相は、日本独自の対北朝鮮制裁の強化や国連安全保障理事会での協力に取り組むよう日本側に求めた、これに対して岡田外務大臣は、韓国を支持する考えを伝えた、こういうふうに既に出ておりますけれども、ここの事実関係はいかがですか。

西村大臣政務官 岡田外務大臣からは、日韓外相会談のときに、改めてこの四十六名の犠牲者及びその御家族にお見舞いを申し上げております。そしてまた、それにつきまして柳明桓長官から調査の現状等について説明があったことに対しては、韓国政府として各国の専門家が参加した客観的な調査を実施していることを評価したいこと、また、我が国として、極めて困難な状況の中で毅然かつ冷静に対応されている韓国に敬意を表すること、そして、韓国を支持し、必要な協力を惜しまないということを伝達いたしております。

竹内委員 最初からそういうふうに言っていただいたらありがたいんですけれども。

 日韓外相会議概要、アジア大洋州局地域政策課からも既に情報をいただいておりまして、岡田外相はもっと具体的に言っていますよね。「岡田外相から、仮に、北朝鮮の関与が明らかとなれば、何もなかったかのように六者会合を行うことにはならない旨述べた。」とまではっきり書いてあるわけでございます。この点は、まず確認をさせていただいたということにしたいと思います。

 そこで、そういう答え方でいくとなかなか難しいんでしょうが、これは北朝鮮の関与が疑われているわけでございますが、もしそうであるとすれば、北朝鮮は何ゆえこの時期にこのような重大な事件を起こしたと考えられるか、この点についてお答えください。

西村大臣政務官 今まさに韓国政府が行っている調査分析は、その原因等についてなされているものであると承知をしておりますし、また、その点、日本政府としても、どういった調査報告が出されるのか、冷静に見守っている最中でございますので、現在、原因は何かということについて冷静に見守りつつ、そして、その事案がなぜに起こったのかということについても、現時点で日本政府としては予断を持って申し上げることはできないということを御理解いただきたいと思います。

竹内委員 あすの軍民調査団の報告をもって、しっかりとした原因分析、それからその理由、北朝鮮のねらい、こういうものについてしっかりとしたものを持っていただきたいと思うわけでございます。

 次に、金正日総書記の最近の訪中についてお伺いします。

 形としては中国側の要請となっておるわけでございますけれども、四年四カ月ぶりに金正日総書記が中国を訪問した。破格の扱いで、党政治局常務委員九人全員がそろって出迎え、また視察同行、会談、会食もやったということでございます。破格の扱いであったというふうに言われているわけでございます。

 ここで中朝両首脳は、当初、中朝国境の島の開発や対北朝鮮食糧支援などについて話し合うのではないか、また、それによって北朝鮮は数十億ドル規模の支援を得たという情報もありましたけれども、日本政府の認識をお伺いしたいと思います。

西村大臣政務官 お答えいたします。

 金正日国防委員長の訪中につきましては、中朝双方がメディアを通じてそれぞれ公表しているほか、我が国としても、中国を含めた関係国との間で連携をし、情報共有は行っておりますけれども、その内容について述べることは差し控えたいと存じます。

 その上であえて申し上げますと、御指摘の、中国が北朝鮮に対して数十億ドル規模の経済支援を約束したという情報については、当方としては承知をしておりません。

竹内委員 重要な答えだと思うんです。

 昨年の十月、二〇〇九年十月、温首相が北朝鮮を訪問したときに発表されたのは、中朝国境の橋の建設、それから二億元、約二十七億円の無償支援などを公表しているんですね。しかし、今回は具体的な説明はないんです。それから、金総書記による六者協議予備会合への支持表明もなかった、こういう違いがあるわけでございます。

 そこで、中国側は、今回の首脳会談において五項目の提案などもしておるわけでございますが、今回の会談で中国側の得たものはいかなるものであるとお考えでしょうか。

西村大臣政務官 中国側が得たものは何かという御質問でございますけれども、実は、この点についても中朝双方の公式発表はございません。

 中国の新華社電といたしまして、先般の金正日国防委員長と胡錦濤国家主席との会談のときに、胡主席から五つの提案を行った旨報道されておりますけれども、それに対して、北朝鮮側の報道は、その五つの提案については言及をしていないと承知をしております。

 中朝間のやりとりについて当方がコメントするのは適当ではないというふうに思いますので、これ以上は差し控えたいと考えております。

竹内委員 適切ではなくて、分析をしてほしいんです。つまり、五項目出したと。それで、報道で、中国報道が先に行われているわけですね。一日おくれて北朝鮮が報道している。そこに違いがあるわけですよね。

 特に中国側は、今政務官おっしゃったように、胡主席提案の政府間の戦略的な意思疎通の強化とか、それから、温首相が示した中国の改革・開放の経験を紹介していく意向というようなことが中国側の報道としては出ておるわけでございますが、一日おくれた北朝鮮の報道では、そういう部分が全く欠落しているということでございます。

 私どもとしては、政府間の戦略的な意思疎通の強化というのは、これは推測ですが、恐らく核実験や哨戒艦沈没事件などを勝手に起こすなということであろうと思いますし、また、中国の改革・開放の経験を紹介していく意向というようなところは、裏では先軍政治を批判して、中国の改革・開放に学べということであろう、こういうふうに読み取っておるわけでございますけれども、これらの報道を通じて、北朝鮮は中国側の五項目の提案をどのように受けとめたと考えられるか。また、北朝鮮は中国の改革・開放政策を学ぶ意図はあると考えられるのか。この辺につきまして、認識はございますか。

西村大臣政務官 先ほども申し上げたとおり、さきの金正日国防委員長の訪中につきましては、中朝とも正式な発表を行っておりません。

 しかし、その中で、中国新華社電におきましては、温家宝国務総理が、金正日国防委員長との会談で、中国の改革・開放及び国家建設の経験を紹介したいと発言したとされております。これに対して、北朝鮮側は、報道では、温総理のかかる発言については言及がありませんでした。

 ただし、中朝間のやりとりや北朝鮮側の意図につきましては、我が国政府としてコメントするのは適切ではないと思っておりますので、差し控えたいと思います。

 いずれにしても、我が国としては、北朝鮮における民主化や改革・開放が進んで、北朝鮮が本当に国際社会の責任ある一員となることを期待しております。

竹内委員 私どもの考えは、今回の首脳会談で、中国としては、後継者問題とか経済の改革・開放にも口を出すということを示したんじゃないかというふうに思っております。その上で、ひょっとすれば、今回の後継者の問題につきまして了承したのではないか、こういう感じを持っております。

 それから、北朝鮮につきましては、こういう報道から、とはいいながら、内政介入だ、内政干渉だという不満を非常に持っているのではないか、経済政策等についても一々指図は受けないという意思表示を示しているのではないか、こういうふうに推測をしているところでございます。実際に、金正日総書記は、北京での滞在日程を一日早く切り上げていたというふうに言われておりますし、そういう意味では、なかなか、北朝鮮にとっては十分満足のいくものであったかどうか疑問の点も多いという認識を私どもは持っております。

 外務省として、しっかりとその辺を分析して、対北朝鮮外交を進めていただきたいと要請するものでございます。

 それで、時間がだんだんなくなってきたわけでございますが、六カ国協議について進めたいと思います。

 韓国の哨戒艦沈没事件などもあったわけでございますが、この六カ国協議、安易な復帰を求めるのではなくて、日本独自の対北朝鮮制裁の強化や国連安全保障理事会での協力に取り組むことが今後必要だというふうに考えておりますが、この点についてはいかがでしょうか。

西村大臣政務官 韓国の哨戒艦沈没事案から、今度はその関係ということでしょうか、六者会合の再開について御質問をいただきました。

 この件につきましては、現在、韓国政府が引き続き詳細な原因究明に係る調査を行っております。六者会合は重要であると認識しておりますけれども、それは哨戒艦沈没事案の調査結果によって左右されると考えます。この点については、岡田外務大臣も記者会見等で、仮にという仮定の話ではありますけれども、仮に北朝鮮の関与が疑われるということであれば、六者会合をすぐさま、すんなりそのまま開催するということにはならないのではないかという見解が示されているところでございます。

竹内委員 ですから、やはり韓国哨戒艦沈没事件をなぜ起こしたのかということの原因の分析が非常に重要だと思うんですね。北朝鮮が支援を得たいときになぜこんなことをやったのか、また、総書記が訪中するようなタイミングでなぜこんなことをしたのか、その辺につきまして、非常にここが重要なポイントになってくるんだろうというふうに思うわけでございます。

 この関連で申し上げますと、仮に明日、韓国哨戒艦沈没に北朝鮮の関与が明言された場合に、中国は北朝鮮への支援を続けると思われるでしょうか。

西村大臣政務官 これもまた、日中韓外相会談のときに韓国で行われた日中外相会談におきまして、岡田外務大臣から中国のヨウケツチ外交部長に対して、韓国側の調査の結果を冷静に見守ることが重要である旨を指摘し、また、ヨウケツチ部長からも同様の認識が示されたところでございます。

竹内委員 最後に、北朝鮮問題の日本外交における優先順位についてお尋ねをしておきたいと思うわけでございます。

 どう見ても、新政権としては普天間問題、また密約問題などが優先されてきたというふうに思います。そういう意味では、これまでとは違って、北朝鮮問題の優先順位が低いのではないか、このように思うわけでございます。そういう意味で、まず、要望としては、北朝鮮外交をもっと優先順位を上げてもらいたいと思うわけでございます。

 私も、拉致問題対策委員会の理事でございますが、最近、漆原国対委員長にかわりまして、公明党の拉致問題対策委員長も拝命をしたところでございます。最後に、拉致問題について、外務省として、政権交代後どのような交渉を行い、その結果、現状としてどのような状況にあるのか、そして、今後の方針と見通しについて報告を求めたいと思います。

西村大臣政務官 お答えをいたします。

 ほかの問題にスポットが当たるというのは、事実としてそういう状況にはあると思いますが、対北朝鮮政策が我が国の重要外交案件の一つであるということは疑う余地はございません。

 現在、拉致問題について、二〇〇八年八月の日朝協議の合意に従って、北朝鮮による調査の早急なやり直しが必要であるという認識でおりまして、現在、ボールは北朝鮮側にあるというふうに認識をしております。この調査のやり直しが早期に開始されて、生存者の帰国につながるような成果が早期に得られるように、引き続き北朝鮮側に強く求めていく考えでございます。

 そして、日朝平壌宣言にのっとって、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決して、不幸な過去を清算して国交正常化を図るという方針には変わりはございません。この諸懸案の一日も早い解決に向けて、具体的な行動を北朝鮮側から引き出すべく、引き続き、国連安保理決議等に基づく措置を着実に実施して、関係国と連携して最大限努力をしていきたいと考えております。

 この点については、現政権におきましても非常に強い意欲と意思を持って取り組んでいるところでございますので、その点、どうか委員からも御理解をいただきたいと思います。

竹内委員 最後に一言だけ申し上げて、終わります。

 私も、前回も申し上げましたように、昨年の十二月に中国へ行きました折に、全人代の常務委員の主要なメンバーと拉致、核、ミサイルについて話し合いを行いました。そして、核とミサイルは当然でございますけれども、拉致問題についても中国として何らかの協力をお願いしたいと。そういう角度で、中国の取り込みといいますか、中国との関係が非常に重要になってくると思いますので、ぜひともいろいろな角度で政府としてもしっかりと拉致問題に取り組んでいただきたい、このことを申し上げて、終わります。

 ありがとうございました。

川内委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 きょうは、貨物検査法について質問をさせていただきます。

 鳩山内閣が提出した貨物検査法案は、総選挙前の第百七十一回国会に麻生内閣が提出し、審議未了、そして廃案となった北朝鮮特定貨物検査法案から九条二項、いわゆる自衛隊関与条項を削除し、法律名を変更しただけで、その他の、法の目的、定義、各条文、提出理由まで全く同じものであります。

 法案は、国連安保理決議一七一八、一八七四を踏まえ、海上保安庁が、我が国の領海のみならず、公海上で北朝鮮特定貨物の検査、提出命令、保管、回航命令などの措置を実施できることを規定しております。

 そこで、まず外務省に、公海上での貨物検査にかかわって、安保理決議一八七四の各国の履行状況について聞きます。

 安保理決議一八七四が昨年六月十二日に採択されてから、来月で一年になります。この間に、公海上で貨物検査が行われた事例は何件ありますか。

西村大臣政務官 委員のお尋ねは、違反の可能性がある、おそれとして提起されて調査を行った事例というふうに理解してよろしいでしょうか。五件でございます。

赤嶺委員 今、五件というお話がありましたが、決議は主文十五で、自国の領域または公海上で貨物の検査、押収、処分をしたときは、関連する詳細が含まれた報告を委員会に提出することを要求しております。

 私は、先ほど、公海上で何件あったかということを伺ったわけですが、五件というのは公海上ということで間違いないんでしょうか。そして、報告というのは何カ国から提出があったのか、そのうち公海上での貨物検査に関する報告、これは何カ国あったのか、もう一度伺います。

西村大臣政務官 先ほど答弁申し上げましたのは、国連安保理一七一八委員会におきまして国連安保理決議一八七四号違反の可能性のあるケースが提起され、同委員会として調査を行っている事例として五件でございます。

赤嶺委員 ですから、公海上でそのうち何件あったかということを聞いているわけです。

西村大臣政務官 お尋ねでございますが、我が国は、国際社会が国連安保理決議一八七四等を着実かつ全面的に実施することが重要であるという立場から、一七一八委員会における情報交換、議論等には積極的に参画をしておりますが、具体的な事例に関しては、事実関係を含めて、この委員会において調査が行われているところでありまして、この委員会における関係国間の申し合わせにより、これ以上の詳細について申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。

赤嶺委員 外務省は差し控えるということでしたが、先ほど前原大臣は答弁していたように思いますが、いかがですか。

前原国務大臣 答弁いたしました。

赤嶺委員 それは公海上は含まれていましたか。

前原国務大臣 私が持っている資料でございますけれども、UAEによる貨物検査事案は、入港したコンテナ船を検査した。それから、イタリアによる押収事案というものは、イタリア中部の造船所で製造されていた北朝鮮向け豪華ヨット二隻を押収した。それから、韓国による貨物検査事案は、釜山に入港していたパナマ船籍のコンテナ船を検査した。それから、南アフリカによる貨物検査事案というのは、南アフリカに入港したリベリア船籍貨物船を検査した。それから、タイによる貨物検査事案というのは、これは飛行機でございまして、ドンムアン空港に緊急着陸したグルジア籍貨物機、これはウクライナの企業がチャーターした貨物機を検査した、こういうことでございます。

西村大臣政務官 先ほど大臣が御紹介をくださったのは、報道ベースでの事例ということで承知をしております。

 私が先ほど詳細について申し上げることは差し控えたいと申し上げましたのは、制裁委員会における関係国間の申し合わせにより、そのように申し上げさせていただきました。

赤嶺委員 今度の検査法案、公海上でもできるようになるということで、前原大臣が答弁していただいたのは全部領海内あるいは陸上であります。この決議に基づいてどんな活動が行われているか、そういうことについて外務省は全く国会に知らせないで、この法案の是非について何か議論しようというのがおかしいんじゃないですか。

 各国が自国領域内で検査を実施しているというのが、今の報道で出ている限りであります。カンナム号のときにも、各国が連携してミャンマーが入港を認めなかったため、結局北朝鮮に戻らざるを得ませんでした。各国が協力連携しながらそれぞれの自国領域内で検査を実施すれば、安保理決議に基づく武器の禁輸措置は十分に実行可能であることを示しています。

 その点について言えば、日本は、武器どころか、北朝鮮に対する輸出入の全面禁止、そして全船舶の入港禁止の措置を既に実施してきているわけですから、最も厳しい措置で国際的な包囲網に協力しているのではないかということを、まず指摘しておきたいと思います。

 次に、禁止物品、この問題について聞きます。

 法案第二条に規定する北朝鮮特定貨物をどのように指定するかについて、政府はこれまで、国連の委員会による指定を受けて政令に反映する、こう説明をしてきました。これも外務省に伺いますが、委員会による禁止物品の指定は完了しておりますか。

川内委員長 ちょっと時間がかかりますか。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

川内委員長 速記を起こしてください。

 西村外務大臣政務官。

西村大臣政務官 申しわけございません。調べております。後で御答弁申し上げたいと思います。

赤嶺委員 さっきの答弁の違いは違いとして、はっきりしたことでいいんですが、今、特定貨物について、何が特定貨物かと禁止物品について私は聞いているわけですよ。禁止物品について、何かわからない、答弁できないといったら、一体どういう活動をするんですか。

 これはちょっと速記をとめてから調整してください。

川内委員長 いや、もう一度、西村外務大臣政務官、答弁してください。まだ決まっていないなら、決まっていないでいいんです。決まっていないと答弁すればいいんですよ。

西村大臣政務官 申しわけございません。

 安保理決議一七一八号及び一八七四号によって北朝鮮への輸出入が禁止されている物資は、核関連、生物化学兵器関連、ミサイル関連その他の大量破壊兵器関連の物資、武器その他関連の物資でございます。

赤嶺委員 今、外務省に説明していただいたのは、国連決議一七一八、大量破壊兵器についての武器だと思いますが、私の質問は、国連決議一八七四に基づいて禁止物品は何を定めているかということを聞いているんですが。

川内委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

川内委員長 速記を起こしてください。

 西村外務大臣政務官。

西村大臣政務官 申しわけございません。

 通常兵器につきましてですが、今後、安保理のもとで設置された北朝鮮制裁委員会におきまして、これらの具体的な品目について作業することとなっております。

赤嶺委員 ちょっと今の答弁は理解しにくかったので、もう一度答弁してくれますか。

西村大臣政務官 一七一八号による禁止物資が大量破壊兵器関連でございまして、一八七四号による禁止物資が通常兵器関連でございます。

 その通常兵器につきまして、今後、安保理のもとで設置された北朝鮮制裁委員会において、これらの具体的な品目について作業をすることとなっております。

赤嶺委員 つまり、一八七四については、何か今後国連に設置された委員会で検討するというお話ですが、安保理決議一八七四は、おっしゃいましたように、北朝鮮からのすべての武器の輸入、小型武器を除く北朝鮮へのすべての武器の輸出を禁止しているわけですが、禁止物品の指定については、主文二十四で定めがあります。委員会が三十日以内に安保理に報告するよう指示し、委員会が行動しなかった場合には、安保理がその報告の受領から七日以内に措置の調整のための行動を完了する、このように主文二十四では定めております。

 決議採択からやがて一年たとうとしているのに、なぜ委員会や安保理は禁止物品の指定を行っていないんですか。

川内委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

川内委員長 速記を起こしてください。

 西村外務大臣政務官。

西村大臣政務官 なぜこれだけ時間がかかっているのかという御質問であろうかと思いますけれども、現在も引き続き、追加の品目リストについて、北朝鮮制裁委員会について具体的な作業が今まさに進められているということで時間がかかっているということだと理解をしております。

赤嶺委員 国連決議では、三十日以内、それで決められなかったら七日以内ということですから、既に決まっていなきゃいけないものですよね。これはまだ議論中だと。何も決まっていないわけですね。

 何も決まっていない、しかしこの法案は出してきた、そういう理解でいいですか。

三日月大臣政務官 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、法案の第二条で北朝鮮特定貨物について定義を定めておりまして、具体的には、国連安全保障理事会決議千八百七十四号に基づき政令で定めることとしております。

 その政令で定める検査対象となる品目については、今委員から御紹介いただいた国連の制裁委員会で品目を定めることになっておるんですが、例えば、核関連物資、生物化学兵器関連物資、ミサイル関連物資、そして通常兵器関連物資、これらの品目については既に定められております。

 なお、最後に申し上げました通常兵器関連物資については、四十カ国が参加いたしますワッセナー・アレンジメント、これは軍需品リストとして、国際社会における取引や管理についての相場観を示すもので、定められているんですけれども、それに基づき我が国において政令において具体的な品目を今後規定していく考えであり、今おっしゃった、まだ決まっていないというのは奢侈品についてでありまして、これについては、制裁委員会において今なお議論が継続をしているところでありまして、その議論の結果を受けて我が国としても定めてまいりたいというふうに考えております。

赤嶺委員 奢侈品というのは、国連決議でいいますと一七一八ですよね。私がさっきから議論しているのは一八七四で、さっき、外務省の答弁のとおりに、国連でもまだ決まっていない。しかし、国土交通省は、相場観としてという言葉をお使いになりましたが、ワッセナー・アレンジメントに基づいて指定するとおっしゃいました。

 このワッセナー・アレンジメントというのは、これに基づいて各国が禁止物品を指定する、これは国連の委員会で、そういう方向でいこう、このように確認されているんですか。相場観じゃなくて、国連できちんと確認しているのかどうかと言っているんですよ。

三日月大臣政務官 繰り返しになりますけれども、通常兵器については、国際輸出の管理レジームでありますワッセナー・アレンジメントに基づいて我が国の政令で定めるという方針を我々は今持っております。それは我が国の方針として定めさせていただいたところであり、米国、英国を含む四十カ国が参加をし、透明性の面、管理の面での取り扱いを規定しているというふうに考え、定めさせていただいているところであります。

赤嶺委員 つまり、国連で決まっていないから、我が国としては相場観としてワッセナー・アレンジメントに基づいて決めていくと。

 それでは、ほかの国は、先ほど出されたこの禁止について、一八七四でははっきりしていない、我が国は相場観に基づいてやる、この間の各国による武器の検査、押収は、何に基づいて行われたんでしょうか。

西村大臣政務官 各国、諸外国の対応でございますけれども、国連安保理決議をもとにそれは実施できるということでありますので、国連安保理決議を根拠に行われているものだと理解をしております。

赤嶺委員 何も決まっていない。国連決議はあるが、何を禁止するかというのは決まっていないのに、国連決議に基づいてやると。だから、全体として非常にあいまいなんですね。非常にあいまいなまま、ここまで来ている。

 それでは次に、自衛隊について聞きたいと思います。

 まず、国土交通省に確認いたしますが、法案第九条は、二項が削除をされた一方で、一項の関係行政機関による相互の連絡、協力に関する規定はそのまま残っております。この関係行政機関に、防衛省・自衛隊は含まれるんでしょうか。

三日月大臣政務官 まず、先ほどお問い合わせのあったことで、何も決まっていないように委員御指摘いただきましたけれども、例えば、核関連物資であればプルトニウムでありますとか天然ウラン、そして生物化学兵器関連物資またミサイル関連物資、こういったものについては、もう御承知のとおり、国連安保理決議の中でしっかりと定めることができております。

 ただ、通常兵器及び奢侈品というものについては、その範囲が、その合意形成が非常に難しいものですから、我が国として、通常兵器についてはワッセナー・アレンジメントで定め、そして奢侈品については、今なお国連安全保障理事会の制裁委員会で議論されている内容を踏まえて定めていこうという方針をとらせていただいているということでございます。

 なお、今お尋ねの法案第九条の関係行政機関というものには、防衛省・自衛隊も含まれます。

赤嶺委員 国土交通省の答弁と外務省の答弁と、何ら変わるところはないんですよ。何も決まっていないというのは外務省の答弁ですよ。決まっていないから、相場観で皆さん、日本はやっているという話であって、核やミサイルというのは、大量破壊兵器を禁止した決議一七一八ですよね。一八七四についてはまだ何も決まっていないという答弁の繰り返しですから、時間の無駄ですから、繰り返していただきたくないと思います。

 それでは、防衛省に確認をしますけれども、一項に基づく活動として、具体的にどういう活動を規定しているのか、警戒監視活動による情報提供、あるいは対象船舶の追尾も想定しているというのが去年の七月の政府答弁でありますが、同じ認識でしょうか。

楠田大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 先般、副大臣からも答弁がありましたように、我々といたしましては、この関係機関といたしまして、警戒監視活動により収集した情報を関係行政機関に提供するということはまず第一の役割として期待されていると考えております。

 また、海上保安庁では対応できない激しい抵抗を受けるような場合も全くないとは言い切れませんので、そうした際に、自衛隊法等の既存の法律に基づきまして、海上警備行動等の所要の措置をとるということもあり得ると考えております。

赤嶺委員 外務省に伺います。

 公海上で貨物検査を実施する場合の国際法上の根拠について、昨年七月の政府答弁は、一般国際法の解釈として、執行管轄権は基本的に自国の領海内に限り認められるが、公海においても、安保理決議に基づき要請がなされている場合や旗国の同意がある場合には、例外的に、その範囲内において他国船舶に対して執行管轄権を行使することは可能というものでありました。

 今回の政府案でも同じ整理をしている、このように考えてよろしいでしょうか。

西村大臣政務官 公海上で貨物検査を行うことについての国際法上の根拠については、先ほど委員が述べたとおりでございます。

赤嶺委員 そうしますと、公海上での貨物検査は対象となる船舶の旗国の同意を得て行うというのが今回の安保理決議一八七四の規定であります。その範囲内において例外的に執行管轄権を行使できるということは、旗国の同意が得られない場合は我が国が執行管轄権を行使することはできない、そういうことでよろしいでしょうか。

西村大臣政務官 御指摘のとおりでございます。

赤嶺委員 そうしますと、旗国の同意が得られない場合でも対象船舶の監視や追尾ができるというのは、国際法上どういう根拠に基づくものですか。

川内委員長 もう一回質問してもらいますか。

 では、赤嶺さん、もう一回質問してください。

赤嶺委員 委員長、時間がありませんので。

 旗国の同意が得られない場合でも対象船舶の監視や追尾ができるというのは、国際法上どういう根拠に基づいていますか、こういう質問です。

西村大臣政務官 公海上であれば、追尾ないしは警戒監視は問題ないというふうに思います。

赤嶺委員 今、特定貨物検査法案について審議しているわけですから、旗国の同意を得られない場合に、対象船舶の監視や追尾することまで安保理決議一八七四で授権されているんですか。

川内委員長 その追尾や監視を行う主語は何ですか。

赤嶺委員 自衛隊。

楠田大臣政務官 我々としましては、海上警備行動においては、国際法の条文というよりは、本来、旗国の同意がなくともこれを行うことはできますので、追尾等はできると考えております。

赤嶺委員 決議一八七四は、主文十六で、旗国の協力が得られない場合に、それを委員会に報告するということまでは規定しております。それ以上の規定はありません。ないけれども、何で自衛隊がそのような活動ができるのか、国際法上の根拠を聞いているわけですが、非常にあいまいであります。

 そうなりますと、自衛隊が対象船舶の監視、追尾をする場合に、安保理決議に基づく活動というよりも、通常の軍事活動の一環としての監視、追尾とみなされることはありませんか。

楠田大臣政務官 先ほどの訂正をさせていただきます。

 海上警備行動ではなくて、一般の警戒活動といたしまして、我々自衛隊といたしましては、こうした追尾等の情報収集等は行うことができると考えております。

赤嶺委員 いずれにしても、その行動が、国連安保理決議では報告にとどめるものが、追尾までできる、情報収集までできる、一般の軍事活動としてそれをやる。そんなことをやったら、相手が商船といえどもトラブルになってしまう、追尾、警戒監視をずっとやっていくわけですから。そういうことになりませんか。

楠田大臣政務官 我々といたしましては、本来のもともとのこの法律の趣旨といたしまして、基本的には、第一義的に海上保安庁がこの対応に当たる、我々が必要とされる場合というのはそうした著しい反抗等があった場合に限られる、そのように考えておりますので、委員が御指摘されますように、そうした問題が起こらないように対処をしていくということだと考えております。

赤嶺委員 激しい抵抗を受ける場合というのがこの間の榛葉副大臣の答弁でもありますが、公海上で検査が実施できるのは旗国の同意が得られた場合に限られるわけです。検査されては困るような船舶は、そもそも旗国の同意を与えるはずがないわけです。抵抗を受けるような事態も想定されません。そういうところに自衛隊がつきまとって監視、追尾を行うことが海上警備活動を発令するような事態を招くことになりかねない、こういうことを指摘して、質問を終わりたいと思います。

川内委員長 赤嶺君の質疑を終了いたしました。

 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 まず、やはり、先日の北朝鮮の金正日総書記の訪中についてお伺いをしたいと思います。

 金正日総書記は、五月三日に中国に入った、四年ぶりの訪中であります。特別列車で遼寧省丹東から大連へ、五日に北京入りして胡錦濤主席と会談をしたということが報道をされております。

 今回の金総書記の訪中の経過と目的について政府はどのように見ているのかということについて、お伺いをしたいと思います。

西村大臣政務官 報道により金正日国防委員長が中国を訪問したということでありますけれども、その詳細について、双方から正式な発表はありません。

 いろいろと関係国との情報収集、情報共有に努めているところでありますけれども、日本政府としてコメントすることは差し控えたいと思います。

柿澤委員 差し控えられてしまいましたが、これは、報道によれば、何か予定を切り上げて一日早く帰ったということが言われております。金総書記からの大規模な援助要請について、国連安保理の対北朝鮮制裁枠組みを超える援助はできないということで温家宝総理が断った、それで観劇の日程を取り消して日程を短縮して急いで帰国した、そのように報道されております。破格の援助を期待していたのに拒否をされて、不満を抱いて日程を切り上げて帰ったということが言われている。こうした見方を見ると、これは、経済援助を引き出すことにかなり北朝鮮はデスパレートであるということが見てとれるように思います。

 六カ国協議なんですけれども、金総書記は胡錦濤主席との今回の首脳会談で、関係各国とともに六カ国協議再開に向け有利な条件をつくり出したいということを語ったというふうにも言われております。

 今回、金総書記の訪中に当たっては、それが明らかになった時点から、六カ国協議に関する北朝鮮側の言及があるのではないかというふうに見られていました。今、韓国海軍の哨戒艦沈没の問題があります。これが北朝鮮の関与が強く疑われている状況ですから、アメリカを六カ国協議の再開の議論に引き入れる、この哨戒艦の問題をうやむやにする、そういうために北朝鮮の側から六カ国協議に踏み込んだ発言があるのではないかというふうに見られておりました。

 今回のこの六カ国協議再開に向け有利な条件をつくり出したいという金総書記の発言というものをどう見られておりますでしょうか。

西村大臣政務官 お答えをいたします。

 先ほども申し上げましたけれども、今回の金正日国防委員長の訪中につきましては、中朝双方から正式な発表がなされておりません。報道ベースではいろいろと情報があるようでございますし、また中国の新華社電といたしまして幾つかの情報はあるわけでありますけれども、なかなかそれをもってそれについて何かコメントをするということは、繰り返しになりますけれども、この場では差し控えをさせていただきたいと思っております。

柿澤委員 なかなか御答弁もいただけないということでありますので、次に進めさせていただきたいと思います。船舶検査法です。

 先ほどこの質疑の冒頭に黒岩委員から提出された資料を流用すると、北朝鮮特定貨物積載の情報があった場合、公海上、旗国の同意があれば回航命令をして云々かんぬんということにフローチャートとしてなるわけです。ただ、北朝鮮の貨物を積んでいる、こういう船舶は北朝鮮籍の船舶に限らないということでありますから、そういう意味では、さまざまな旗国の船舶に対してこのような行為を行っていくことが考えられる。

 このところ、ここ何年かの間に、海のないモンゴルが便宜置籍国として急速に船舶数を伸ばしているというふうに言われております。この問題に詳しい東海大学の山田吉彦先生の論文によれば、モンゴル籍船の入港先が見られた場所として、石垣島だとか下関、門司、新潟、小樽など、日本海側にこのモンゴル籍船の入港が集中しているというふうに言われております。

 一方、北朝鮮籍船は、〇六年十月の経済制裁の発動を経て、〇七年以降はゼロということになるわけで、要するに、北朝鮮船が日本の監視対象になったので、モンゴル船に衣がえしたんじゃないかというふうにも見られています。さらに、北朝鮮の存在を隠すために、このモンゴル船の船主が中国人になっている。こうなると、一体だれが何を積んでというところがかなりぼかされてしまう、こういう状況になってきているようであります。

 そこで、モンゴル籍船の日本への入港状況というのをぜひお伺いしたいんですけれども、いかがでしょうか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、船の船籍というのは内陸国でも置けることになっておりまして、モンゴル籍の船というのも最近ふえてございます。

 ただ、この形態はいろいろでございまして、乗組員も中国人がいたりロシア人がいたり、いろいろな形で運航されております。しかも、これを北朝鮮の船主などが実質的に支配しているかどうか、便宜置籍の状態にあるかどうかというのはなかなか判定が難しゅうございまして、我々としてもそこまではしっかりとつかまえていない状況でございます。

 いずれにしても、先ほども御答弁申し上げましたように、我々としては、過去北朝鮮の港に寄港したことがあるかとか、あるいは北朝鮮の特異な輸入貨物などをよく積んでおるかどうかとか、そういった外形的なところをよく吟味しながら、北朝鮮関連船舶について立入検査等を実施しているところでございます。

柿澤委員 このモンゴル籍船というか、モンゴルは、もちろん海のない国なんですけれども、今、便宜置籍船をかき集めて、これを一種のビジネスじゃないんですけれども、一つの施策として行っている。老朽船とか故障船とか、こういうものでも割合簡単に船籍を取得することができるというようなことであります。

 そういう意味で、悪意を持った意図によって活用される可能性が非常にあるというものであると思いますので、モンゴルは比較的親日的な国だったというふうにも理解をしておりますので、そういう意味で、こうした部分について特段の協力を求めるということも必要なのではないかというふうに思います。

 その他にも、パナマあるいはリベリアといった便宜置籍国に船籍を置いた事実上の北朝鮮船が数多く航行しているというふうに言われております。

 北朝鮮による便宜置籍船の利用の実態というのがどうなっているかということをお伺いしたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 先ほどもお答えいたしましたとおり、便宜置籍につきましてはさまざまな形態がありまして、立入検査等の現場においても、これが北朝鮮の便宜置籍船だというのを判定するのはなかなか困難な状況にございます。

 したがいまして、我々としては、我々が確認し得る情報を総合的に分析しながら、北朝鮮関連の船舶だというものに対しては厳正な立入検査を実施しておるという状況にございます。

柿澤委員 さらに、最近では、これは全く逆に、北朝鮮が便宜置籍船の多くを今度は自国船籍に戻しているという話もあるんですね。

 ことし三月の国連安保理の北朝鮮制裁委員会で、補佐専門家パネルのメンバーである浅田正彦京都大学大学院教授が指摘をされておられますけれども、安保理決議一八七四による船舶検査の対象になるような違反行為を行っていた場合、便宜置籍船だと、要は、旗国の同意があれば船舶検査は実施されてしまう、つまり、パナマ、リベリア、モンゴルが同意をすれば船舶検査はやられてしまうわけですけれども、しかし、それを北朝鮮籍にしてしまえば、北朝鮮が旗国ということになりますので、船舶検査を拒否できるということになる、こういう動きが出ております。

 こうした中で、先ほど来議論が出ていますけれども、北朝鮮籍に対して船舶検査を有効な形で行うことができるのかということが非常に問題になってくると思います。

 今回の法案では、九条の自衛隊の活動を定める条項を削除されております。法律名にも北朝鮮という名前がなくなっている。この二点がいろいろと議論の対象になっているわけでありますけれども、北朝鮮が旗国である船舶に対して、仮に船舶検査を行って、拒否をする、場合によっては、先ほど御答弁に出たような大変激しい抵抗を受けるということも、これはあり得ることなのではないかというふうに思います。

 そうした中で、自衛隊の活動を定める条項を削除してしまうというのはいささか問題があるように感じますけれども、北朝鮮の船舶が貨物検査を拒否した場合、日本としてどういうことができるのかということをお伺いしたいと思います。

辻元副大臣 これは、この法律によりますところ及び国連決議に基づきまして、旗国の同意が必要であるということになります。よって、拒否した場合は、まず国連に報告をすることになります。

 それと同時に、関連の周辺諸国などとの協力をすることになっておりますので、関連諸国と情報を共有したり、それからさらに、当該船舶に対する燃料等の供給を禁止するということになっておりますので、この船舶がいろいろな国に入港する可能性もありますが、それらの国々に入ったときにはそこで対応してもらう、または燃料などの供給も拒否するということになろうかと思います。

柿澤委員 では、先ほどもちょっとお話に出ましたけれども、自衛隊が、北朝鮮の貨物検査に関連をして、場合によっては海上警備行動を発動するという状況が起きるとすれば、それはどんな場合であるかということをお伺いしたいと思います。

楠田大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 先ほど来申しておりますように、自衛隊としまして対処をする可能性というのは非常に限られているとは考えておりますが、先ほど申しましたように、激しい抵抗を受けるような場合も全くないとは言い切れないと考えております。

 激しい抵抗というのはどのようなものかというのは、仮定の質問でありますのでお答えをしにくいところでありますので、激しい抵抗があった場合というふうにお答えをさせていただきます。

柿澤委員 激しい抵抗があった場合行う可能性がある、激しい抵抗というのは激しい抵抗だということであります。

 これについて、この法案そのものは去年の臨時国会に一たん提出されて継続審議になったものですけれども、そのころ、去年の十月ですけれども、鳩山総理がこの法案に関して発言をされておられます。報道をそのまま読みますと、十月二十二日の夕方ですけれども、臨時国会に提出方針の北朝鮮関係船舶に対する貨物検査法案に関し、検査活動は海上保安庁で十分やり切れる、海上自衛隊が云々かんぬんということを将来的に考える必要もないと述べ、自衛隊の関与は不要との考えを強調した、こういうことが言われております。

 先ほど来伺ってまいりますと、防衛政務官の見解としては、著しい反抗、激しい抵抗があった場合は自衛隊が出てくる場合もある、海上警備行動もあり得るし、追尾もあり得る、こういうお話だったと思いますけれども、もう一度読みますけれども、自衛隊が云々かんぬんということを将来的に考える必要もないというこの総理の発言とは、いささか距離があるように思われます。

 もう一度、自衛隊の関与が今回の法案の中で想定をされているのかされていないのかということをお伺いしたいと思います。

前原国務大臣 何度も答弁をさせていただいているように、衆法に書かれている自衛隊の関与というものは、確認をしているわけでありまして、法律の枠組みではないわけですね。確認をしている。つまりは、自衛隊法の規定によって自衛隊は動くということになるわけです。そして、私が海上保安庁を担当させていただいているわけでありますけれども、この法律に基づいて一義的に仕事をするのは海上保安庁であります。私は、総理がおっしゃったように、海上保安庁で大方の仕事はやれるというふうに思っておりますし、自衛隊にお願いする可能性というのは極めて低いのではないかというふうに思っています。

 私もちょっとこの黒岩さんのチャートを引用させていただくと、つまりは、このチャートから見ると、旗国の同意がなかった場合は回航を指示する。でも、旗国が回航を指示しない可能性もあるわけですね。そうすると、追尾をして、どこに入るかというようなことになる。これも基本的には海上保安庁で行うということでございます。これに対し、著しく反抗するというのは、こちらは、要は、旗国の同意がない、あるいは、回航を指示するように旗国に頼んでも旗国はしないだろうというようなことになれば、無理やり向こうから何かをしかけてくる可能性というのは極めて低いのではないかという意味で総理がそうおっしゃったんだと思います。

 しかし、万が一、先ほど楠田防衛政務官がお答えをしましたように、激しい抵抗を仮にしてくる可能性もある。そのときには自衛隊に、私が、海保ではちょっと手に負えないので、防衛大臣や総理に相談して、自衛隊の海上警備行動を発令するという判断をされる可能性もあるということで、この法案の立てつけとしてはそれを否定していない、こういうことでございます。

柿澤委員 特定船舶承認案件関係でちょっとだけ伺います。

 先ほど来、便宜置籍船の話をいたしましたけれども、今回、ここまで行ってきた制裁措置というのを強化する観点から、これまで入港禁止措置の対象船舶を北朝鮮籍としてきたわけですけれども、特定の外国の港に寄港した船舶に対して対象を拡大するなどの措置を考える余地があるのではないかと思います。そういう点について検討されなかったのかということについて。それと、入港禁止措置が行われていることによって、一方で我が国の経済にもいささかの影響を与えている部分があると思います。

 松下経済産業副大臣にお見えをいただいていますので、この入港禁止措置が日本の経済に与えている影響というものをお伺いして、時間切れなので、外務省さんと経済産業省さん、それぞれ御答弁をいただいて、終わりにしたいと思います。

松下副大臣 お答えいたします。

 輸入禁止措置当時は、百四十五億円というような輸入等も水産物等でございましたので、一時それがストップしていくということで混乱いたしましたけれども、最近はすっかり落ちついてきている、そう見ております。みんなが知恵を絞って輸入先を変更するなどしたのではないか、こう思っています。

 全国商工会議所等に七百八十一カ所の相談窓口をつくっておりまして、そこの相談件数を見ましても、全体で百二十六件ほどあったんですが、今は三件ほどでもう少ないということで、落ちついている、こう思っています。

 それでも、中小企業に対する支援はしっかりと注意深く丁寧にやっておりまして、セーフティーネット、それをしっかりカバーしながらやっているということでございまして、しっかりやりたいと思っています。

西村大臣政務官 先ほど黒岩委員からも同様の趣旨の御質問をいただきました。

 北朝鮮寄港船の入港禁止措置につきましては、北朝鮮籍船の入港禁止措置のみでは効果が上がらないような場合のみ発動する補完的なものと考えられます。

 二号、三号についても対象を拡大すべきではないかという御趣旨かと思いますけれども、現在は、総合的に判断いたしまして、これらの補完的な措置の発動が必要な状況ではなく、逆に、第二号、第三号と拡大することにより、第三国の輸出者及び海運事業者並びに第三国から輸入を行う日本の産業に悪影響を及ぼすおそれがあることから、このような判断になったものと承知をしております。

柿澤委員 いずれにしても、冒頭の金総書記の訪中が、やはり非常に経済的な支援を強く強く求めて、これが拒否されて怒って帰った、こういうことを見ると、経済制裁が大変効果を発揮しているんだと思います。そうした状況の中ですので、さらに監視の目を強めてこれから対応していくということが大事なのではないかなというふうに考えております。

 時間も過ぎておりますので、これにて終わりとさせていただきます。ありがとうございました。

川内委員長 これにて各案件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

川内委員長 これより各案件を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 日本共産党を代表して、北朝鮮貨物検査法、閣法及び自民党案、両案に反対の討論を行います。

 本法案は、国連安保理事会決議一八七四の実効を図ることを目的に掲げています。もとより、我が党は、さきの北朝鮮による核実験に強く抗議してきたところであり、安保理決議一八七四において、国際社会が一致して抗議し、北朝鮮に対して、再び核実験、ミサイル発射を行わず、核計画の停止を要求し、非軍事の制裁措置として武器禁輸などを求めたことは重要だと考えております。

 安保理が各国に義務づけた武器などの禁制品の輸出入制限について、我が国は、北朝鮮に対する輸出入全面禁止と全船舶入港禁止の措置を既に実施してきており、最も厳しい措置で国際的な包囲網に協力しているのであります。輸出入も入港も全面遮断しており、貨物検査の対象となるべき船舶や貨物はそもそも日本に入ってこないのであり、安保理決議一八七四の義務を実施するための新たな法案は必要ありません。

 新政権の政府案は、旧政権案、すなわち現自民党案、衆法から、自衛隊関与条項、九条二項を削ったものですが、この規定はもともと確認的なものであり、この条項があってもなくても、自衛隊は自衛隊法八十二条に基づき海上警備行動で出動できるというのであり、両案には全く違いがありません。

 問題は、海上保安庁が、北朝鮮が禁止品目を輸送する疑いのある船舶への検査活動を公海において実施する法的根拠を与えていることです。これを政府は警察権の行使だと説明しますが、国際法上、主権の及ばない自国領域外の公海で、どうして警察権が行使できるのでしょうか。

 政府は、旗国の同意がある場合には例外的に可能だと説明する一方で、旗国、すなわち北朝鮮の同意を得られなかった場合には、公海上を追尾、監視すると答弁し、そうした監視活動を自衛隊の平素からの情報収集活動として行うことも答弁しています。

 さらに、海保では対応できないような激しい抵抗を受けるような場合には、自衛隊法八十二条に基づく海上警備行動として自衛隊を出動させるというのであります。また、法律上、自衛隊法九十三条の海上保安庁準用規定は、自衛隊が船舶の検査活動を行うことも否定していません。

 結局、本法案は、貨物検査を口実に、日本の領域外の公海で、海保と自衛隊が一体で出動し、北朝鮮に軍事的圧力をかける態勢をつくるものにほかなりません。このこと自体が、新たな緊張を生み出し、情勢の悪化を招きかねないのであります。

 以上、北朝鮮問題において、日本は、非軍事で、あらゆる外交努力を尽くすべきことを強調し、両案に反対の立場を表明するものです。

 次に、特定船舶入港禁止措置の承認案件については、賛成であります。

 特定船舶の入港禁止措置は、二〇〇六年十月の北朝鮮による核実験を契機にとられたものであり、我が党は、昨年五月の二度目の核実験強行という事態を受けて、禁止期間を六カ月から一年間に延長した際にも、賛成の立場を表明しました。

 北朝鮮は、その後も六カ国協議への復帰に応じないばかりか、ことし四月には、北朝鮮外務省が備忘録を発表し、みずからを核保有国であると重ねて強調するなどの態度をとっています。

 こうした北朝鮮の姿勢を勘案するなら、入港禁止措置を継続することは、北朝鮮を対話の道に復帰させ、核問題の外交的解決を図るための手段として必要であると考えます。

 以上、討論を終わります。

川内委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

川内委員長 これより各案件について順次採決に入ります。

 まず、第百七十三回国会、石破茂君外十名提出、北朝鮮特定貨物の検査等に関する特別措置法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

川内委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。

 次に、第百七十三回国会、内閣提出、国際連合安全保障理事会決議第千八百七十四号等を踏まえ我が国が実施する貨物検査等に関する特別措置法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

川内委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法第五条第一項の規定に基づき、特定船舶の入港禁止の実施につき承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

川内委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各案件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

川内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

川内委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.