衆議院

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第2号 平成22年10月26日(火曜日)

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平成二十二年十月二十六日(火曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 古賀 一成君

   理事 小宮山泰子君 理事 田村 謙治君

   理事 辻元 清美君 理事 中川  治君

   理事 長安  豊君 理事 福井  照君

   理事 山本 公一君 理事 高木 陽介君

      石関 貴史君    市村浩一郎君

      打越あかし君    大島  敦君

      加藤  学君    笠原多見子君

      沓掛 哲男君    小泉 俊明君

      古賀 敬章君   斎藤やすのり君

      下条 みつ君    津川 祥吾君

      橋本 清仁君    畑  浩治君

      松宮  勲君    三井 辨雄君

      皆吉 稲生君    向山 好一君

      森本 和義君    森山 浩行君

      矢崎 公二君    谷田川 元君

      横粂 勝仁君    吉田 公一君

      若井 康彦君    赤澤 亮正君

      金子 恭之君    北村 茂男君

      佐田玄一郎君    徳田  毅君

      二階 俊博君    林  幹雄君

      三ッ矢憲生君    竹内  譲君

      穀田 恵二君    中島 隆利君

      柿澤 未途君    下地 幹郎君

      田中 康夫君    中島 正純君

    …………………………………

   国土交通大臣       馬淵 澄夫君

   国土交通副大臣      三井 辨雄君

   国土交通副大臣      池口 修次君

   厚生労働大臣政務官    小林 正夫君

   国土交通大臣政務官    市村浩一郎君

   国土交通大臣政務官    小泉 俊明君

   国土交通大臣政務官    津川 祥吾君

   政府参考人

   (財務省大臣官房総括審議官)           木下 康司君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房長) 小澤 敬市君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房建設流通政策審議官)     大森 雅夫君

   政府参考人

   (国土交通省土地・水資源局水資源部長)      谷本 光司君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  本田  勝君

   政府参考人

   (気象庁長官)      櫻井 邦雄君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    鈴木 久泰君

   参考人

   (株式会社企業再生支援機構常務取締役)      水留 浩一君

   国土交通委員会専門員   関根 正博君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十六日

 辞任         補欠選任

  川村秀三郎君     斎藤やすのり君

  松宮  勲君     横粂 勝仁君

  亀井 静香君     下地 幹郎君

同日

 辞任         補欠選任

  斎藤やすのり君    森山 浩行君

  横粂 勝仁君     松宮  勲君

  下地 幹郎君     亀井 静香君

同日

 辞任         補欠選任

  森山 浩行君     打越あかし君

同日

 辞任         補欠選任

  打越あかし君     皆吉 稲生君

同日

 辞任         補欠選任

  皆吉 稲生君     笠原多見子君

同日

 辞任         補欠選任

  笠原多見子君     川村秀三郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 国土交通行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

古賀委員長 これより会議を開きます。

 国土交通行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として株式会社企業再生支援機構常務取締役水留浩一君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

古賀委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として国土交通省大臣官房長小澤敬市君、大臣官房建設流通政策審議官大森雅夫君、土地・水資源局水資源部長谷本光司君、航空局長本田勝君、気象庁長官櫻井邦雄君、海上保安庁長官鈴木久泰君及び財務省大臣官房総括審議官木下康司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

古賀委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

古賀委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中川治君。

中川(治)委員 おはようございます。民主党の中川治でございます。馬淵国土交通大臣就任後初めての国土交通委員会でございますので、どうかよろしくお願いをいたします。

 質問に先立ちまして、去る十月二十日から実に四日間にわたって、奄美地方、特に奄美大島が集中豪雨に見舞われました。そして、三名の方がお亡くなりになりました。心から御冥福をお祈り申し上げたいと思っております。

 また、テレビ、ニュースで聞くところによりますと、住民生活の基盤が破壊され、農作物にも甚大な被害が出ておるというふうに聞いております。被災された皆様方にお見舞いを申し上げるとともに、町と暮らしの復興が一日も早く達成されますように心からお祈りを申し上げたいと思います。

 きょうも、まだ来られておりませんけれども、地元の徳田先生の御労苦、あるいは関係者、関係行政や関係諸団体の皆さんの御労苦にしっかりとこたえて、国土交通省としても最大限の支援体制にぜひ取り組まれることを希望しておきたいと思っております。どうかよろしくお願いを申し上げます。

 それでは、質問に入らせていただきたいと思います。

 まず第一に、高速道路の料金問題でございます。

 政府がこの春に提出されました高速道路に関する法案については、まだ審議が始まっておりません。しかし、他方では、政府・与党が断念したんじゃないかというふうなことが複数のマスコミに書かれたりというふうなことであります。

 私も、春に発表された高速道路の新料金体系についてはさまざまな異論を持っております。この場でそれを議論しようということではございませんけれども、一体どうするんだろうかと若干心配をいたしております。マスコミ先行型ではなくて、国土交通省として基本的な料金の問題について御見解をお伺いしたいというふうに思います。

 私は、もう一つの選択肢をしっかりとつくり上げていくということも、しっかりと準備をしなければならないんじゃないかというふうにも思っておりますし、二つ目には、やはり現行よりも高くなることがあってはならない、そんなふうにも思っております。ぜひ大臣の所見をお聞かせいただきたいと思っております。

 また、かつて大臣は、野党時代、ある意味では高速道路無料化の急先鋒の一人ということであったようにも思いますけれども、今後の高速道路無料化ということについても改めて御決意をお聞かせいただきたいと思います。

馬淵国務大臣 質問ではないということで承知しておりますが、奄美の大雨、また豪雨災害についてのお見舞いの言葉がありましたが、私どもとしても最大の支援をしてまいりたい、また、心からお見舞い、お悔やみを申し上げたいというふうに思っております。

 さて、御質問の件であります。

 料金についてと無料化についてということでありますが、まず私どもとしての整理をお伝えしますと、提出した法案については、これは料金の法案ではございません。あくまで高速道路の整備のあり方ということの中の一つとして、国幹会議の廃止、これらを含めた法律を出させていただいたということであります。

 その上で、料金の議論もあわせてということで四月の九日に提示をさせていただいたわけでありますが、この料金の問題については、再三申し上げてきたように、来年の三月で期限が切れてしまいます。これは、料金割引を措置したいわゆる利便増進事業の措置と、また首都高、阪神などにおける各都市高速の協定が切れるということで、料金については急いで対応しなければならないということについては、私、就任時に申し上げてきたことであります。

 したがいまして、今報道でどのような形で上がっているかということについては私どもの方から申し上げることではないかと思いますが、いずれにしましても、料金については、法律事項ではないということも踏まえて、一刻も早く皆様方に御検討いただくべきものだというふうに承知しております。現在、国交省の中でも改めて検討を指示して進めておりますし、今後は、与党の中では政調、あるいは与野党含めた議論等々、そういった場に提示をしてまいりたいというふうに考えております。

 さらに、高速道路の無料化の件でありますが、これも私は重ねてお伝えしてきたことでありますけれども、政策立案者として、昨年の二月に高速道路政策大綱というものを、政権交代前に私自身が取りまとめを行いました。そこでの基本的な考え方は、交通需要管理であります。交通流量をいかにコントロールしていくかということを念頭に置いて既存の高速道路を利活用するということから、無料化という政策、こういったネーミングがつけられたというふうに承知をしておりまして、今後もこれは、社会実験を行って、交通渋滞あるいは公共交通機関への影響等、これらを配慮しながら、また都道府県の皆さん方の御意見、これらも今聴取をしておりますので、こういった過程の中で段階的実施を全力を挙げて進めてまいりたい、このように考えております。

中川(治)委員 新しい料金についても検討を始めるというお話でございます。余りこういう形で質問をする機会がございませんので、そういう新料金体系の検討と同時に、私は大変気になっております、ぜひ取り組んでいただきたいことがございます。

 それは、六つある高速道路株式会社の、もちろんこの会社自体の総点検も必要でありますし、それから子会社、一体どうなっているのかということについて大変関心を持っております。株式会社だからということなのか、いまだに事業仕分けには本格的にかかっていないというふうにも思います。

 私は、実は五年半ぐらい前、落選する前の二〇〇五年の春、ちょうど道路公団の民営化の問題で大変議論が伯仲したときに、この問題、何回となくいろいろな角度から質問をさせていただきました。そして、道路公団のOBが毎年毎年、ほぼ三分の二近い人たちが子会社に天下っている。当時、道友会という、こんな職員録がございました。私はそれを手に入れて、その中で子会社に再就職した人は何人か調べてみたら、千百五、六十名おったように思います。

 どうやら、昨今の新聞の情報でも、こういう伝統が続いているようであります。マスコミの情報によりますと、どうやら高速道路株式会社のトップの経営者の皆さん方は、民間企業なんだから当然なんだと。五年半前には、当時の公団の総裁はそんなこと言いませんでした。しかし、株式会社になった途端に、民間企業なんだから当然だということを堂々と言うということは、本当にこれでいいんだろうか。ぜひ真剣な検討をいただきたいというふうに思っております。

 特に、もう一つはパーキングエリアの経営、ここは大変潤沢だというふうに聞いておりますし、景気もいい。一・五倍ぐらい、倍増したとかいう話もございます。高速道路株式会社は巨大な借金をある意味では抱えたままで出発をしているわけでありますから、国交省としてもしっかりこの分野での事業仕分け、私たち議員としてもこれはできればしっかりと追及をしていきたいというふうに思っておりますけれども、国交省としての御決意を伺いたいと思います。

馬淵国務大臣 私も、道路問題にかかわるきっかけとなったのは、ちょうど道路公団民営化が行われて、その検証を始めようというところから道路問題にかかわるようになりました。そのときも、私自身、かつての道路公団がどのような形でファミリー企業をふやし、どのような形で契約をつくっていったかといったものも調べ、また民営化後の状況というのも詳細に見ていったという経緯がございます。

 御指摘のように、民営化以前は、それこそOBがみずからつくった会社に、これは天下りじゃないですよね、OBがみずから会社をつくってそこに随意契約でお金を流している。これは全く、とんでもない、許されざる事態だというふうに私は思っておりますが、こうした状況を踏まえて民営化の議論がなされたというふうに思っております。

 そして、民営化後に関しては、現時点においてはすべて連結子会社の対象となっているということでありますので、これはすなわち、この道路会社全体の収益を連結決算で組みますので、お金を流したという形で外に逃がしたということにはならない。収益についてもそこにあらわれるということでありますから、連結決算という中でのガバナンスは、私は一定程度あるのではないかというふうに思います。

 ただ、そうはいっても、そこでコスト縮減が本当に図られているのかとか、競争に付された方がよりよいサービスが提供されるのではないかといった観点は十分に必要だと思いますので、委員の御指摘のように、中川さん御指摘のように、私自身も、この問題については、ただ単に民営化したから終わりだという話ではなく、今後も不断の監視が必要だと思います。

 そのことについて言えば、先ほど来高速道路のお話をしておりますが、今後、高速道路をどのような形で無料化を進めていくか、またさらには、こうした民営化会社あるいは機構といった組織問題というのも大きな課題の一つになってまいると思いますので、その中での検討、検証が必要だというふうに思っております。

中川(治)委員 ぜひしっかり、よろしくお願いをしたいと思います。

 一つだけ気になっていることで、御要望申し上げておきたいと思いますけれども、阪神高速道路株式会社、阪神高速道路の前回の料金値上げ案が出たときに、まあ値上げではないという意見もありますけれども、前の前原大臣は大阪府の知事に説明に行って、はっきり言って大阪市の職員からすれば、うちも一二・五%同じ株を持っているんや、うちは紙切れ一枚か、ええかげんにせいという思いがあったり、恐らく、大阪市民、市内のETCをつけていない大阪のおばちゃんは、上がって下がったら九百円取られる、こんなこと納得できるかという思いをいまだにずっと持っているはずでございますので、ぜひ大阪市に対する説明は懇切丁寧に、たまに地元に帰られる途中にでも寄っていただきますようにお願い申し上げたいと思います。御要望でございます。

 さて、少し時間が予想以上にたってしまいましたので、はしょっていきたいと思います。建設業法の問題について伺っていきたいというふうに思っておりました。

 私は、建設業法については抜本的な改善が必要だということをずっと思っておりました。さきの予算委員会で、前の国土交通委員長でありました川内議員が、建設現場での一人親方の問題、転落死の問題、現状はどうなっているかというふうなことについて質問がありました。私も、質問時間をいただくことができたので、少し関係者の人たちにヒアリングをしてみようということで、お手元の資料、一枚目を見ていただきたいんですけれども、資料一、これは実際に今大阪で起こっている現状でございます。

 例えば型枠大工は、国交省が発表している設計労務単価は大阪では一万七千円ということになっておりますけれども、実際にはどのぐらいの形で行われているか。二〇〇七年から二〇一〇年、わずか三年間で一平方メートル当たり三百五十円も下がってしまった。それが実際の職人の給与にはどんなふうに反映するかということを根掘り葉掘り複数の型枠の企業の方、一人親方の方、いろいろと聞いて、まとめてみたものがこれでございます。こういう形で、実際のところ、大変な事態になっているんじゃないか。

 しかも、この費用は直接渡すお金でありますから、ここから駐車場料金、交通費、さまざまなものが引かれて、今大阪では、一番ひどいところでは、職人の日当が七千円を切っている、六千円台になってしまっている。これで保険料から何から何まで払いますと、実際上はひょっとしたら最低賃金違反にもなりかねないというふうな現状にまで来ているということをぜひ御理解いただいて、最賃の問題を議論しようということではございませんけれども、政権交代をして、現場で働いている職人の皆さんにとってはまだ政権交代は来ていない、何も変わらない、ますます悪くなる一方だ。小泉さんや竹中さんが始めた、全国から一番安い職人を連れてきてやればいいんだという仕組みが、まだ全然変わっていない。

 このことについて、国土交通省はこれからどんなふうな対応をされようとしているのか、一言お聞かせをいただきたいと思っております。

馬淵国務大臣 川内前委員長の問題意識も踏まえて、私ども、この委員会でもたびたび説明させていただきました。大変厳しい状況になっておられるということもよく承知しております。その上で、今後この低下傾向をどのように歯どめをするかということについては、ただ一義的に、いわゆる建設労務単価をどのように設定するかということだけで決まるものではないというふうに思っております。

 ただ一方で、我々、実態調査として、取引の実勢調査として発表している建設労務単価、これに引きずられるんだといった御意見があることも承知をしております。その上で、私ども、外部の検討会議を設置いたしました。対応といたしましては、学識経験者、業界団体あるいは労働団体の方々等で建設技能労働者の人材確保のあり方に係る検討会、こういうものを設置いたしまして、現在、既に幅広く検討を行っておるところであります。単に建設労務単価の設定の仕方のみならず、労働者の方々の賃金、特に重層的な下請構造になっておりますのでダンピングの防止等、また賃金の適正な維持に対しての取り組みとして下請のしわ寄せ防止、これらも引き続き行ってまいらねばならない、このように考えております。

中川(治)委員 ぜひ意欲的に取り組んでいただきたいと思います。

 もう一枚めくっていただきまして、資料二というのは、先ほど大臣がおっしゃいました公共工事設計労務単価、これが過去十三年間でどのぐらい変わってきているかということをわかりやすいように一覧表にしてみました。これは、約五十種ぐらいの職種を全国平均した数字でございます。平成八年に二万三千二百九十五円であったのが、平成二十一年度、これが発表されたのは二十二年ですけれども、一万六千四百七十九円にまで約三〇%下がった。この十三年間で三〇%も下がったのは、恐らくここだけだと思います。

 ただ、恐らく、現場の職人さんからいえば、おれら、この半分ももろうてないんやというのが実際でありまして、私も上げるか下げるかということだけにこだわるつもりはありませんけれども、もう一枚めくっていただきましたら、確かに低過ぎるところもあります。社会保険料も一切合財何も考慮せずに、例えば交通誘導員、いわゆるガードマンの皆さんですね、ガードマンの皆さんは、この値段でさらにたたかれているというのが今の現状でありますので、しっかりと上げないかぬもの、それから発表の仕方を変えていかなあかんものと、ある意味では厳守させるものとをしっかりと分けて、ぜひ取り組んでいただきたい。もう答弁はあれですけれども、意欲的にお願いを申し上げたいというふうに思っております。

 最後に、もう一言、建設業法の問題についてお伺いしたいと思います。

 実は、建設業法というのは、昭和二十四年に施行されまして、そして昭和四十六年に大改正が行われました。今、古賀委員長に大きくうなずいていただきましたけれども、実は、古賀一成青年が入省されて最初に取り組まれたのがこの建設業法の大改正だということでございまして、私は、その大改正された建設業法、もう抜本的な改正に取り組んだらどうかと。怒られはせんかいなと思いながら質問をしておるわけでございますけれども、もうそういう時期に来ているんじゃないか。

 今大臣が申されたようなさまざまな問題があります。総合的に、恐らくこれは厚生労働省なんかとも連携をしっかりととりながら、かつて建設業は六百万とか五百五十万人とかと言われていたのが、今四百五十万人ぐらいまで減っております。大方の予想では、さらに百万人ぐらい減るんじゃないか。それも含めて新しい職種転換が必要だ、いろいろな議論が今行われているところでありますけれども、私が一番心配するのは、どこの業者の皆さんでも、二十代で入ってきた職人さんが、前途有望な職人さんが三十歳を目前にして次から次へとやめていく、将来見込みのある、いい大工になりそうな職人さんがやめてしまうんだと。要するに、給料と、結婚して家族を養う、そんな夢も何もない、こんなことやったら、ほかのスーパーかどこかに勤めた方がましや、そういう職種になっているという現状であります。

 これをしっかりと変えないと、本当に技術力のある職人が、あるいは大工さんが日本から消えてしまう、今そういう瀬戸際だというふうに私は思っております。ある意味では、日本の建築文化の危機だというふうに思っておりますので、その点も含めて、私はあえて建設業法の改正をする必要があるということで、私たちも議員連盟をつくってやっております。この点についてもぜひ一歩を踏み出していただきたいと思っておりますけれども、ひとつよろしくお願いいたします。

馬淵国務大臣 私も、かつて大学を出て建設業に従事をしていた者でありますから、御指摘の点は本当によくわかります。また、かつては建設業に従事することに誇りを持って仕事をできた。しかし、今、こうした非常に厳しい経済環境の中で、働く場として若い方々がどんどん敬遠をされているという実態も承知しております。

 その上で、御指摘のように、私も、高度経済成長、どんどん国土を開発していくといった状況から、維持管理あるいは更新といったことを踏まえて、新しい二十一世紀型の公共事業の担い手としての建設業のあり方というのは議論されるべきだというふうに思いますし、私、所信でも申し上げたように、地域の再分配、この機能を社会資本整備はしっかりと果たさねばならない。

 これは何を意味するかといいますと、まさに建設業の方々、地域の担い手として、労働集約型でもありますから、大変、地域の防災、あるいはさまざまなイベントも含めて対応されておられるんですね。その意味では、業法の見直しの中には、地域の担い手といった位置づけも一方の観点としては必要ではないかというふうに思っております。

 御指摘のようなことから、業法につきましては、いずれにせよ、これも事業仕分けで提示されましたが、いわゆる技術資格者証、技術者の資格証について、事業仕分けの結果を踏まえて、私どもはこれを廃止するということで進めておりますので、業法の見直しについては今後行わねばならないということは十分認識しておりますし、これは法律改正が必要になりますので、その上で抜本的な見直し、また御意見を賜りたいというふうに思っております。

中川(治)委員 委員長、よろしく御指導ください。お願いします。

 抜本改正のときに、厚生労働省には技能士というのがあるんですね。国交省には施工管理士というのが、建築施工管理士、土木施工管理士。しかし、これは施工を管理するだけで、実際に物をつくるのは技能士さん、大工さん、職人さんなので、そこのところの評価も含めて、経営審査事項のあり方、それから経営分析も、大変無責任なところがお役所仕事のような、借金は多ければ多いほどだめというふうなことだけでは、先行投資をしてやるという意欲的な企業が全然浮かばれません。そうすると、そのはざまに、いろいろな形で企業が迷惑をするということもあります。ぜひ、そんなことも含めて御検討いただきたい。これはもう要望にしておきます。

 あと五分でございますので、最後のところに入りたいと思います。

 最後の、一枚のカラー刷りの資料を見ていただきたいと思います。ぜひ政務三役の皆さんに御検討いただきたいということで、きょうはあえて五分だけ御提案をさせていただきたいと思います。

 大阪で私たちは、障害者団体あるいはビルメン協会の皆さんも含めて一緒になってつくり上げてきたのが、こういう自立就労支援型の総合評価一般競争入札という制度であります。こういうことで、大阪府あるいは大阪市関係のありとあらゆる建物の清掃は、こういうことを基準にして今入札をやっております。それから、去年あたりからは、中島先生のところの地元ですが、大阪では有名な住吉公園や住之江公園、府営公園自体もこういう入札でやっております。

 要するに、障害者や社会的支援が必要な人たちの就労を支援しながら事業をしていくということが大事じゃないか。それを入札制度としてつくり上げたのが、もう七年ぐらい前になります。これは橋下さんが始めたのではありません。横山ノックさんのときから検討を始めて、太田知事のときに完成した制度でございまして、私は、ある意味では、このことを全国に広げようと思って国会議員になり、福祉の中川のはずが国土交通委員会に居座っているのは、これを全国に広めたいからでございます。

 こういうことをやれば、恐らく、大層なお金を使わなくてもしっかりと自立就労、本当に就労困難な人たちの仕事を確保する。それは、ひいては生活保護を減らしていくということで、生活保護の四分の三を負担している国が最終的には楽になる政策だと私は思っております。別に、公共事業全体でこれをやるということではなくて、国交省がお持ちのありとあらゆるさまざまな事業、ぜひ御検討いただきたいと思っております。

 先ほど高速道路のことを申し上げましたけれども、春夏秋冬、高速道路は花を植えかえております。どこに発注をしているのか、だれがその花をつくっているのか。恐らく、社会的就労、社会的支援、そんなことを考えないと思います。これはぜひ政治主導で、そういうところをぜひ新しい視点で少し切りかえたらどうか。

 あるいは、値段を高くせいと私は申し上げておりません。全体としては下がっております。URなんかは、恐らく全国で毎年毎年七十万枚近いふすまの張りかえがあります。どんな形で仕事を出されているのか。ふすまの張りかえなんというのは、今、全国で障害者の皆さんが一生懸命やっております。彼らの自立のために寄与するということを、国土交通省としても、少なくとも政務三役の皆さんは頭の中に入れて、これからぜひ全体の改革に取り組んでいただきたい。

 私はいつも申し上げております。厚生労働省よりも自立就労のための力は数百倍、まあ数百倍は言い過ぎ、百倍ぐらいは恐らく国土交通省は力をお持ちだと思いますので、一歩これも踏み出していただければありがたいということでございます。ぜひ前向きに取り組んでいただきますようお願いをいたします。

池口副大臣 中川先生からの貴重な御意見をいただいたというふうに思っております。

 余り紋切り型で答弁するつもりはないんですが、ただ一方で、やはり国の発注する事業というのはコストと品質が一番重要な点ということで決まっておりまして、そこに今言われた障害者の皆さんとかの観点をどう入れていくかというのが、今、中川委員からの御指摘だというふうに認識しております。

 国交省だけではなくて、障害者等の就労施策に関する動向を見きわめながら、国交省としてもぜひ慎重に検討させていただきたいというふうに思っております。

中川(治)委員 ぜひよろしくお願いします。

 会計法、透明性と公平性ということでございますけれども、私たちも大阪府でこれを始めるときに、本当にいろいろと議論をしました。あくまでもこれは一般競争入札でありまして、その上限をしっかりとつけてということで、こういうことが国でできないはずがないということでございます。大変御期待申し上げておりますし、これも私、多くの仲間と一緒に議員連盟をつくって頑張っておりますので、またいろいろな形でディスカッションさせていただければありがたい。心からお願い申し上げまして、質問を終わります。

 どうもありがとうございます。

古賀委員長 次に、森本和義君。

森本(和)委員 おはようございます。民主党・無所属クラブの森本和義です。

 まず冒頭に、今般、鹿児島県奄美地方の集中豪雨によってお亡くなりになられました方々にお悔やみを申し上げますとともに、被災地の皆様には心よりお見舞いを申し上げます。被災地の一日も早い復興支援に政府、与野党挙げて取り組みますことをお願い申し上げます。

 馬淵大臣初め政務三役におかれましては、連日の激務に敬意を表するとともに、課題の山積しております国土交通分野でらつ腕を振るっていただくことを大変に期待しております。また、国土交通委員になったばかりの私に質問の機会を与えていただきましたこと、委員長、理事、そして委員の皆様に感謝を申し上げます。限られた持ち時間ですので、早速質問に入らせていただきます。

 まず尖閣諸島の問題に関してですが、今次の尖閣諸島にかかわる問題についての政府対応の初動の違いが、小泉内閣時代に発生した尖閣諸島への上陸事案と比較されることがあります。

 今回は、船体をぶつけるなどの危険行為あるいは公務執行妨害行為があったということでございます。海上保安庁の対応としては、尖閣諸島でのこのような同様の事案が再度発生した場合、国内法にのっとって粛々と対応し、公務執行妨害等の容疑がある場合は逮捕に至るという認識でよろしいでしょうか。今回の一連のことがあったから方針が変わるということは論理的にはあり得ないというふうに思いますが、あえてお聞きしたいと思います。お願いします。

三井副大臣 おはようございます。初めての答弁でございまして、森本委員、ありがとうございます。

 お答えいたします。

 海上保安庁では、尖閣諸島周辺の領海において、今後ともこれまでと同様に、我が国の国内法令にのっとり、しっかりと取り締まることを行うことにしております。

森本(和)委員 ありがとうございます。

 領土問題のない尖閣諸島と、領土問題のある北方領土や竹島における海上保安庁の日常的な海上活動に違いがあるでしょうか。あるとすれば、それはどういう点でしょうか。

三井副大臣 海上保安庁では、領海における主権を確保するために、関係機関と連携し、監視、警戒に万全を期しているところでございます。

 特に尖閣諸島においては、我が国固有の領土でありますから、現に我が国が有効に支配しているところでございます。

 また、海上保安庁においては、平素から大型巡視船を常時配備するとともに、定期的に航空機を、哨戒を行っております。また、個別の具体的な情勢に応じましては、体制を強化するなどして所要の警備を適切に実施しているところであります。

 それから、北方領土、竹島でございますが、御存じのとおり、北方領土は昭和二十年以降ソ連及びロシアによって、また、竹島は昭和二十九年以降韓国によって、それぞれ不法占拠が続いているわけでございます。

 こういう状況のもと、海上保安庁では、根室海峡周辺海域や竹島の周辺海域で操業する我が国の漁船の安全を確保するなど、巡視船を周辺海域に哨戒させ、直接漁船に、または漁協を通じて、被拿捕の防止指導あるいは情報提供をしているところでございます。

森本(和)委員 お手元に資料もお配りしております。

 広大な日本の領海、EEZ、排他的経済水域における海上保安庁の多岐にわたる業務は、今後ますます重要性が増してくると思います。海賊、テロの対策のこともございます。現在の海上保安庁の規模や体制はこういった昨今の流れの中で十分であるかどうか、大臣の御認識をお聞きしたいと思います。

馬淵国務大臣 御指摘のように、国土の十二倍という世界六位の領海、EEZを持つ海洋国家であります。これらをしっかりと警備する上におきましては、海上保安庁の体制というのは不十分である、私はこのように思っております。

森本(和)委員 明確なお答え、ありがとうございました。

 この海上保安庁の体制については、また今後とも十分な体制に向けて皆さんでお話をしていきたい、そういうふうに思っております。

 次に移ります。港湾政策に関してでございます。

 一般的に財政が厳しい中でございます。選択と集中という政策は大変よいことだと思います。ただ、今回の国際コンテナ戦略港湾の選択において選定されなかった港湾、これは投資が集中されないということになるわけでございます。国際コンテナ戦略港湾に選定されなかった、例えば伊勢湾では、港湾が結節点となる道路、鉄道ネットワークへの投資がなされず、地元産業にとって競争が不利になってしまうということはないのでしょうか。

 後背地に日本経済の屋台骨とも言える自動車産業などの世界有数の産業集積地が控えておりますけれども、民間のこれまでの努力を官が邪魔しているということになってはならないと思います。日本経済の足を引っ張るということになってもいけないと思います。この点いかがでしょうか。

 また、国際コンテナ戦略港湾を二港に絞るということで本当に東アジアの他の主要ハブ港に伍していけるのかどうか、そういう見通しについてお答えをお願いします。

馬淵国務大臣 委員御指摘の伊勢湾につきましては、今回の検討委員会の結果、次点という位置づけになりました。

 この御提案の内容は、もう細かいことは申し上げませんが、ターミナルコスト低減や、あるいは情報化、荷主サービスの向上等、こういったものについて高い評価を受けておったところでありますが、今後、私どもとしては、今回二港に絞りましたが、それ以外の港湾についても、引き続き、継続中の事業の支援はしっかりと進めてまいりたいというふうに考えております。

 また、物流のネットワークという観点からも、当然ながら、この二港以外も、選に漏れた港湾については、道路あるいは鉄道、いわゆるアクセスの部分についてもインフラ整備が必要だというふうに考えておりますので、これも強化をしてまいりたいということであります。

 その上で、この主要二港について今後伍していけるのかという御指摘でありますが、平成二十三年度の予算要求の中で、さらには税制改正要望の中では、インフラ整備と内航フィーダー機能強化ということを挙げております。

 こうした中で、国際競争に勝てるようにということを、今、私どもとしても計画を掲げております。インフラ、コンテナターミナルの整備、またガントリークレーンの整備等、これがハード対策でございますし、また、ソフト対策としては、これらの国内フィーダー機能強化ということで、新規の内航航路等の立ち上げなどにつきましては私どもとしても協力してまいりたいというふうに考えておりますので、主要ハブ港に伍していく、その強い決意のもとで取り組みたいというふうに思っております。

森本(和)委員 別途並行して進んでおります国際バルク戦略港湾の選択については現状どうなっているか、教えてください。

三井副大臣 お答えさせていただきます。

 国際バルク戦略港湾については、現在まで十一の応募者がございます。

 現在、応募者に対し各委員会としての意見を送付しているところでありまして、各応募者において、十二月上旬に予定しております二回目のプレゼンテーションに向けて計画書の内容のブラッシュアップをしているところでございます。

 また、二回目のプレゼンテーションを受けて、平成二十二年末ごろをめどに国際バルク戦略港湾を選定する予定でございます。

森本(和)委員 コンテナやバルクという概念だけではなくて、港湾を囲む地域の特色を生かした、例えば国際産業ハブ港湾、あるいは国際自動車港湾というような考え方、また、複数の重要港湾の連携など、個性ある港湾の展開もぜひ御支援をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

三井副大臣 特に委員の御地元であります伊勢湾地域は、自動車産業やさまざまな産業が集積していると承知しておるところでございます。

 こういった我が国の各種の産業活動の競争力を強化していく観点からも、港湾の国際競争力を進めていきたい、大変重要であると認識しております。また、国土交通省としても、これまでどおり、こういった地域における取り組みをしっかり支援してまいりたいと思っております。

森本(和)委員 質問ではないのですが、一言加えさせていただきたいと思います。

 今、円高で経済が非常に厳しいということで、少しでも国として支援をしていき、景気を早期に回復する、そして雇用を確保していく、これは非常に重要なことだと思います。

 そういう中で、先ほどちょっとお話が出ましたが、例えば自動車産業におきまして、海外に事業を展開していくというようなお話もよく聞くわけであります。日本国内においては、ユーザーが車を保有する、購入する際に非常にコストが高いという中で、例えばそういった関係の諸税を簡素化する、そういう負担を低くしていく、そういった工夫が必要だ。これは私、議員になる前からもよく聞いていた話であります。

 そういう応援がある一方で、こういう流通コストが、高くなるとは言いませんが、余り効果がないようになってしまうようなことがもしあれば、これは政策的に、こっちで盛り上げておいてこっちで引き下げるというような、非常に無駄な、それこそ本当の無駄な政策になってしまいます。そういう観点も広く総合的に見ていただいて、こういうネットワークについてはまた御考慮いただきたいというふうに思います。

 次に行きます。交通政策でございます。

 ただいま、交通基本法の制定に向け議論が始まっています。地元の公共交通の関係者に話を聞いていますと、大変に交通基本法に期待をしておりまして、地域交通のこれからのあり方を支えてくれるんじゃないか、そういう期待が高まってきております。まだまだ議論は道半ばだと思いますが、どういう点に力点を置いていかれるのか、大臣のお考えを教えていただきたいと思います。

馬淵国務大臣 この交通基本法、これは私ども、この一年間、基本的な理念を示す法律の体系として必要であるということで議論を進めてまいりました。

 この交通基本法の制定に関しましてはしっかりと前に進めていきたいと考えておるんですが、一方で、地域公共交通の確保ということにつきましては、強い要望があるのもよく承知しております。ただ、地域公共交通の確保という観点だけに絞られてしまうとやはり画竜点睛を欠くのではないかというふうに私は思っておりまして、一義的にはまちづくりの観点は極めて重要だと思っております。その上で、地球温暖化などの対策も当然ながらその視野に入ってくると思います。

 ヨーロッパを含め世界じゅうの基本法のあり方を見ますと、いわゆるまちづくりの観点の中から、今後コンパクトシティーを考えていくのであれば、そのコンパクトシティーの中での交通体系のあり方という整理をされております。

 私も、今後は、まず基本的な理念を掲げ、そして地域公共交通という目の前の課題への対応というものも視野に置きながら、今申し上げたようにまちづくりの観点、あるいは温暖化対策、さらには経済の成長といった分野にまで寄与できるような法体系というものが必要だというふうに考えておりますので、そこはしっかりと整理をし、提示ができるように取り組んでまいりたいというふうに思っております。

森本(和)委員 ありがとうございます。

 交通基本法そのものに直接関係があるかどうかというのはちょっとわかりませんが、質問ではございませんけれども、意見として聞いていただきたいと思います。

 私、今バッジを二つつけておりまして、こちら側が、ちょっと見づらいと思いますが、今名古屋で開かれております生物多様性COP10のバッジでございます。こちら側に平仮名で「え」というのがあるんですが、これは、地元の豊橋市が今、ええじゃないかという運動を一生懸命やっておりまして、ええじゃないかというのは、皆さんも御存じだと思いますが、幕末のころに、伊勢神宮にお参りに行くおかげ参りのときに、ええじゃないか、ええじゃないかと踊りながら行ったというものでございます。豊橋市がこのええじゃないかの発祥の地とも言われておりまして、そういうお伊勢さんにお参りに行く道、これが、実は私、地元でございますが、渥美半島を通って海の道、これは国道四十二号というふうになっております。海の道をフェリーで通って伊勢に行く。そしてまた、平成二十五年には、式年遷宮といいまして、二十年ごとに建物を改善するというような形で、非常に多くの皆さんが観光あるいはそういったお伊勢参りということで利用されるわけです。

 こういう歴史あるいは伝統というものの中で、この交通基本法そのものにどう取り入れるかというのはちょっと難しいかもしれませんが、まちづくりあるいは経済活性化、そういうものに絡んで、歴史と伝統というのは、大変にブランドであり、価値のあるものだと思います。そういう観点で、観光という点でも、やはりそういうものを積極的に活用していくという中での交通体系というのもひとつ考えていただきたいなというふうに思っております。

 最後に行きます。広域連携についてでございます。

 地元では、三遠南信広域連携という地域連携が進んできております。お手元に資料を配付させていただきましたが、三遠南信というのは、愛知県の三河地方、特に豊橋市を中心とした東三河地域の三に、浜松市を中心とした静岡県西部地域、いわゆる遠州の遠、そして飯田市を中心とした信州の南部、南信を合わせた地域で、略してSENAと呼んでおります。こういった県境を越えた広域連携としてさまざまな事業を展開しているところであります。

 地方分権時代におきまして、道州制あるいは基礎自治体の議論が始まっておりますが、歴史的経緯や経済交流など実態に即した地方分権を進める上で、こういった広域連携は地方再生のかぎだと思います。極めて重要と思いますが、実は大臣の所信表明の中で余り触れられていなかったものですから、この件、どう思われるのかなと思いまして、ぜひ教えていただきたいと思います。

馬淵国務大臣 今御指摘の三遠南信、この広域連携につきまして、私も、飯田、豊橋、そして浜松市長、お三方のお話を伺いました。副大臣時代でございます。極めて重要なこういった広域連携、とりわけ県境を越えての広域連携というのは極めて重要な位置づけであるというふうに思っております。

 所信で触れていなかったじゃないかという御指摘でありました。所信の中ではとにかく絞ってということでありますが、国土交通省が昨年来取り組んでまいりました成長戦略会議の取りまとめの中には、委員御指摘の広域的地域戦略というものを盛り込んでおります。地域の自発的な広域的地域戦略の提案と、そしてさらにその推進を促すための仕組みを法制度も含めて構築する、このように記しております。

 今後、こうした先駆的なSENA、三遠南信地域の皆さん方の取り組みにつきましては、代表事例ということでしっかりと私どもも認識しながら、今申し上げたように法制度を含めて構築することが必要である、こうした提言を出しておりますので、提案がなされるだけで終わってはならない、提案に対する回答をあわせて協議ということでありますので、こうした仕組みを考えてまいりたいというふうに思っております。

 現在は、国土審議会の政策部会国土政策検討委員会で議論をしていただいておりまして、有識者の皆さん方にさまざまな御意見をちょうだいしているところであります。御指摘のような方向性をしっかりと踏まえてまいりたいと思います。

 三遠南信の皆様方の取り組みにつきましては心から敬意を表するとともに、全国的な全面展開を図っていけるような制度の構築に努めてまいります。

森本(和)委員 ありがとうございました。

 本日、尖閣諸島問題、港湾政策、また交通政策、広域連携に関してお聞きさせていただきました。本当に広い範囲を国土交通省は管轄しております。大臣を初め政務三役、なかなか大変だと思いますが、私、政治家になるというか、政治を志したときから、国民の命と心と暮らしを守るのが政治の役目だというふうに思ってやってまいりました。きょうの質問すべて、国民の命、そして心も暮らしも守る観点から極めて重要なことだと思っておりますので、どうかその点をお忘れなく、また政務にしっかりと勤務していただきたいと思います。

 質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

古賀委員長 次に、山本公一君。

山本(公)委員 自由民主党の山本でございます。前任者の方が七分残して質疑時間を終えられましたので、急遽飛んでまいりました。

 馬淵大臣には、昨夜もルース大使とにこやかに握手を交わしておられました。連日御苦労さまでございます。

 きょうは、大臣の所信に沿って質問をさせていただきたいと思います。

 冒頭、過日の奄美の豪雨による土砂災害、心からお悔やみとお見舞いを申し上げたいと思います。一日も早い復興を我々も強く望んでおります。どうぞ、国交省におかれましても鋭意努力をしていただきたいなと思っております。

 こういう災害が起きますたびに私はいつも思うんですけれども、この国においては、こういう災害というのは、復旧に多くの手と時間と財源をとられて、言ってみればあたふたとして繰り返しているような国土なのかなと思うんです。

 私は四国に住んでおりますけれども、四国というところで、四国地方整備局があります。当然、言ってみればこの種の予算を四国地方整備局が持っていらっしゃいます。四国の土地柄、徳島とか高知というのは非常に脆弱な土壌を抱えた土地でありまして、ちょっと大雨が降ると災害が起きてくる。したがって、そういう予算がそういう復旧のために大半使われてしまう。翻って瀬戸内側、香川とか愛媛というのは、たまにしか災害が起きてまいりません、起きたときには大きな災害になりますけれども。

 申し上げたいことは、香川とか愛媛の瀬戸内側においても、そこに住んでいる人は、ちょっと大雨が来たら今度はあそこが崩れるなと、ところに住んでいらっしゃる方は皆思っていらっしゃいます。ところが、そういうことに対しての予算は回ってこない。一たび事故が起きれば復旧のためにお金は回ってまいりますけれども、いわゆる予防的な防災事業というのには、ある意味でこの国のその種の予算はほとんど使われていないのではないかという危惧を、こういう災害が起きるたびに私はかねがね感じておるんですけれども、大臣、その辺について、今回の事故を含めて何かお考えがあったらお述べをいただきたいと思います。

馬淵国務大臣 改めて奄美の今回の豪雨災害における問題につきまして質問をいただきましたので、私の方からも、三名の亡くなられた方々への心からの哀悼の意を表するとともに、被災地の方々にはお見舞いを申し上げたいと思います。

 今御指摘の、予防にしっかりと予算を費やすことができないのかということでございますが、私も、地元奈良には十津川を初めとする大変山深い地域がございます。ここは、年間を通して土砂の崩落等が起きておりまして、通行どめも年に数回起きるような状況です。こうしたことがわかっているにもかかわらず事前の予防策はできないのかというのは、本当にかねがね私も思っておったところであります。

 急峻な斜面あるいは森林に囲まれた我が国におきましては、予防に対しての意識は当然ながら持たねばなりませんが、一方で、財政の中でそれをどのように配分するかというのは極めて難しい。だからこそ、政治が取り組まねばならない課題だというふうに思います。

 今回の奄美の件に関しては、私どもが承知しておりますのは、過去に例を見ない記録的な降雨、これに起因しているということでありますので、被害に遭われた方々には大変申しわけない思いでいっぱいなんですが、具体的にこの箇所でということを予測するのは極めて困難ではなかったかというふうに思います。

 ただ一方、自治体の方々が、ハザードマップなり、こうした崩落の危険性のあるところというものをかなり具体的に特定される作業も進めておられますので、今後は、こうした防災の予算の配分という意味においては、自治体との連携をとりながら優先順位をつけていくということは私も必要ではないかというふうに思っております。これは、あくまで私の方で所感として申し上げさせていただきます。

山本(公)委員 御党は、コンクリートから人へということを標榜されて、一種の国土交通行政を荒っぽく進めていこうとされておるわけでございますけれども、今申し上げたように、一方では、財源が許すならば、人の生命財産を守るためにコンクリートも必要な箇所があるんだということだけはぜひ忘れないでいただきたい。

 そういう意味において、私ども、八ツ場を初めダムの問題も非常に関心を持っております。いずれこの委員会で、私どもは、このダムの問題については集中して審議をできる時間を要求してまいりたいと思っておりますので、ぜひ与党の皆さん方の御協力をお願い申し上げておきたいと思います。

 次に、私も国土交通委員会に一年ぶりに帰ってまいりました。この国土交通委員会で筆頭理事を二年務めておりました。大体が仲よし委員会でした。

 国土交通省というのは、性懲りもなく毎回毎回多数の法案を出してまいります。この法案の処理、もちろん、国民生活に直結をするわけですから、法案の処理をしていかなければいけない。大変な数の法案を出してくる。与野党問わず、その法案の処理に、国会中、いろいろな知恵を絞ってやってまいりました。

 今回、またこの委員会に戻ってまいりまして、見ておりましたら、継続法案が五本も閣法で残ってきております。私も現場にいませんでしたので、何でこんな委員会になっているんだろうな、かように思ったわけでございますけれども、いろいろな人がいろいろなことを言いました。

 大臣は、副大臣として前原さんのもとでずっとそこにお座りだっただろうと思います。どういう御感想をお持ちになり、どの辺のことがまずかったのかなというお考えをお持ちでございますか。

馬淵国務大臣 一年間、副大臣としてこの隣の席に座っておりました。国土交通委員会のみならず、政権交代後のいわゆる政府・与党一元化の法案の処理あるいは審議の進め方については、さまざまな委員会でも、また部署でも、試行錯誤があったのではないかなと思います。

 当委員会でも同様に御意見ある中で、徹底審議ということで法案の審議そのものが処理できなかったということについては政府側としては大変残念に思っておりましたが、私は、政権交代後、国民の皆さん方の不断の監視のもとで審議を行うというその姿としては、いっときの過程の姿かなというふうに理解をしておりました。

 ただ、こうして二年目に入り、改めて菅二次内閣としてスタートを切ったわけであります。今後、残された課題について徹底的にこれを詰めていくんだという総理の御指示もありますので、私どもとしては、この委員会、当委員会でまず議論をしていただくことが極めて重要だと思っておりますので、今後は、法案の審議、積極的に皆様方に御審議いただくように心からお願いを申し上げたいというふうに思っております。

山本(公)委員 私は、多分、委員会の不手際ではなかったんだろうと思うんです。継続が五本も残るような委員会になっていったのは、多分、委員会運営の不手際ではなかったんだろうと思うんです。

 質問通告していませんけれども、三井先生、国対の幹部でしたが、何で前国会、国土交通委員会は停滞したんですか。

三井副大臣 もう忘れました。そのころのことを思い出せといっても、私も今こういう立場でございますので、また山本先生にはオフの場でお話を申し上げたいと思います。済みません。

山本(公)委員 私は、やはり政権交代して以来、民主党政権が、国土交通政策、特に道路政策で迷走したことに因があると思っているんです。委員会の運営がまずかったからこういう結果になっているのでは決してないと思う。一に、民主党政権の高速道路政策、その場しのぎ、その場しのぎのさまざまな対応をされた、それが言ってみれば委員会の真っ当な審議をある意味で制約していったのではないかというふうに思っております。

 新たな国土交通委員会が開かれていくわけでございますけれども、その辺のことは政務三役の方はぜひ頭に置いて、この国会、国土交通委員会の場に臨んでいただきたいなというふうに思います。

 まず、我々が見ておりましても迷走しているなという感じを受けましたのは、一体、民主党さんはこれから先の日本の高速道路というのをどういうふうにお考えになっているんだろう。原則無料です。割引です、上限料金です。一方では、つくります。この三つの命題というのは、ある種矛盾した命題だと私は思っているんです。矛盾しているように見える命題を解決する方法だって、私どもはあると思っている。だけれども、余りにも、きのう何とかさんがこう言ったからこうやったとか、そういうことをしていたら迷走するばかりです。

 この問題は、大臣、一回落ちついて、日本の高速道路はかくあるべし、これぐらいの距離は国の責任においてつくるんだ。そこから延びていく枝葉の部分についてはまた別の考え方もあるでしょう。そうなったときに一体料金はどうなっていくのか、落ちついて原点に返って、民主党政権さん、お考えになったらいかがかなと。これがお互いのためになる話だろうと私は思っているんです。

 大臣、高速道路をつくりますか、つくりませんか。

馬淵国務大臣 まず、この委員会の責務ではないという山本先生からの御指摘につきまして、私もそのように思っております。私どもが、政権交代後の新たな政治主導あるいは政府・与党一元化というその仕組みをつくっていく過渡期の中で大変御迷惑をかけたところではあるかというふうには承知をしておりますが、しかしながら、一方で、さまざまな政策の継続性を十分に留意しながら改めて方向をつくっていく、あるいは方向転換をしていくという中では、私は、一体どっちに向いているんだという御指摘もございますが、御理解をいただきながら丁寧に議論を進めていくしかないというふうに思っております。

 その上で、割り引くのか、無料にするのか、つくるのか、このようにおっしゃいました。

 現行でいえば、割り引いています。そしてその上で、我々は無料化施策というものを提示してまいりました。したがって、この割引を無料化施策とどうすり合わせていくかということが極めて重要である。

 そして、つくるのかという御指摘がございました。

 つくることに関しては、国幹会議でかつて十分な議論なきままに進められてしまったのではないかという指摘を我々再三繰り返してまいりましたがゆえに、この国幹会議の仕組みは廃止するという法案を提出させていただいた。そこには、三段階のスクリーニングとして、社会資本整備審議会、国会、さらには都道府県を含めた意見聴取という、このスクリーニングによって高速道路が真に必要かということの検討を図るという仕組みを提示してきた。

 私どもとしましては、今申し上げたように、先生御指摘の、割り引くのか、無料なのか、つくるのかという、それぞればらばらじゃないかということではなくて、むしろ、今申し上げたように、現行の制度を継続しながらもどのように変えていくかという中での一つ一つの積み重ねをしていかねばならないというふうに思っております。

 ただ、この一年間の中で現実に法案が積み残されたということについては、政府の一員として、これは大変私どもも残念に思っておりますし、そのことについては、誠心誠意、皆様方に御説明をしながら新たな方策を示していかねばならないと思っております。

 さて、高速道路をつくるかという御指摘でありますが、当然ながら、必要な高速道路は整備をしてまいらねばならないと思っております。そして、その真に必要な高速道路とは何かということを、改めて、形骸化した国幹会議ではなくて、新しい仕組みの中で皆さんの議論の中で決めてまいりましょうというのがこの法案の提出の本来の役割でありました。今後、御議論をいただきたいというふうに思っております。

 また、さらには、私が所信で申し上げたように、社会資本整備のあるべき姿というものは、これは一年一年で変わるようなものではありません。二十年、三十年、未来を見据えて、この国土をどのようにつくり上げていくかということを議論しなければなりません。それは社会資本整備重点計画で定められるべきものでありますから、この見直しを、私自身が副大臣時代より取り組んでおりましたので、現在大臣となって、計画部会での徹底的な審議をお願いしております。この中で国土のあるべき姿が示されて、さらに、先ほど来申し上げるように、真に必要な高速道路の整備のあり方というものを皆さん方に御提示していく、あるいは議論していただきたい、このように考えております。

山本(公)委員 我々、政権にあったときも、高速道路の議論は、かなり煮詰まった議論をつくってまいりました。時あたかも、いわゆる道路特定財源なるものがあるがゆえに無駄な道路ができるのではないか、かつまた無駄な組織があるのではないかという世の批判がありました。我々、真摯に受けとめました。であるならば、道路特定財源というものは、いつかは一般財源化せざるを得ない。しかしながら、国土の道路政策はいまだ道半ば。であるならば、道路特定財源があるならば、この時点までに国の責任においてつくり上げてしまって、その時点で道路特定財源が一般財源化されることもやむを得ないというような計画をつくりました。十年という長いスパンです。

 今回、民主党さんには、そういうような中期計画といいますか、もう一回腰を据えておつくりになったらどうですか。ただきょうどうするか、ああするかという話ばかりじゃなくて、どうしていくんですか。そうすれば必ず、真に必要な道路というのが、みんなが納得いくような、説明のつくような話が出てくると思うんです。その場その場の話をされるから、道路問題が前国会のような迷路に入ってしまった。

 腰を落ちつけて。原則無料なんて無理なんです。原則無料にして新規につくるなんて無理なんです、物の考え方として。

 ただし、今回、社会実験で一部無料化されました。無料化したものをあしたからまた上げますよというのは、これは難しいですよ。一回ただにしたものをやっぱりお金を下さいというこの作業は、道路であろうが何であろうが一番難しい作業ですよ。

 私、きのうも乗ってきましたが、私のところは無料になりました、西予というところから松山まで。みんな言っています、ただほど怖いものはない。暫定二車線ですよ。二車線ただにされました。交通事故が頻繁に起きております。私の近所の産婦人科の奥様は、はみ出してきたトラックと正面衝突してお亡くなりになった。それは通常の高速道路でもある事故かもしれない。暫定二車のところで、本来、高速道路ユーザーではない方が乗ってきておられます。

 笑い話を一つ言います。

 暫定二車線で渋滞が起きました。五十キロ台で走るような状況です。パトカーが後ろからサイレンを鳴らして来ました。そして、先頭に行きました。マイクで、先頭の車、アクセル踏んでくださいと。高速道路がどういう道路かわからない方が先頭を走ったときに、そういう状況が起きてパトカーが来て、先頭の車、アクセル踏んでくださいなんて、笑い話ですよ。当然、何かあったときに救急車なんて走れません。

 いずれにいたしましても、今、社会実験をおやりになっていらっしゃいます。今、私ははしょって先に申し上げてしまいましたけれども、大臣、最終的には違う評価をまたお考えになるんでしょうけれども、現時点での評価をお聞かせ願いたいと思います。

 国土交通省の道路局の評価を聞きますと、大成功、大成功のペーパーばかり持ってまいります。余りデメリットの話は書いてない。よかったよかったばかり書いているんですが、大臣はどう思っていらっしゃいますか。

馬淵国務大臣 まず、先ほど御指摘の部分につきまして冒頭にお答えします。

 地に足をつけてしっかりと検討せよという御指摘でございましたが、これにつきましては、先ほど申し上げたように、社会資本整備重点計画の見直し、ここから、現状のアウトカム指標ではわかりにくいということの御意見もありますので、わかりやすい計画に置きかえてまいりたいと思います。

 ただし、今まで、かつて前政権によって行われてきた中期計画のような縦割りの事業で事業費を目標とするものについてはいろいろと問題があるのではないかという認識を我々も持っておりましたので、これに戻すわけではありません。新しい指標を含めて考えてまいりたいというふうに思っております。

 そこで、高速道路無料化の評価ということでありますが、先生御指摘のように、事故等の問題、これはいろいろなところで、今、二割の部分で行っておりますので、これらの評価については、まさに社会実験でありますから、最終的なその評価という中で判断をしていかねばならないと思っております。

 一般道からの転換が進んでよかったと言われる地域もあれば、逆に、出口周辺のところでボトルネックとなってしまっているといった意見も聞いております。決してメリットばかりを強調しているわけではありません。現時点においても、都道府県の意見聴取、今、全都道府県において行っております。詳細に意見を集めた上で判断をしていかねばならないと思っております。

 私自身は、まさに御指摘のように、メリットもあればデメリットもあるという御意見がある、そういうふうに思っておりますので、ここは、三月まで年間を通して我々としては評価したいというふうに申し上げてまいりましたので、三月までの季節の波動も含めて、結果を踏まえたところで判断をしたいというふうに考えております。

山本(公)委員 いずれにしても、デメリットも結構あるんだということを、大臣自身が通って体験されるのが一番いいんだろうと思います。私のところは二車線しかないんですから、材木を満載した車が前を走ったら、確実に五十キロ台で走ります。それが高速道路です。トラックからいったら、下道を通るよりは高速で真っすぐ行った方が材木を積んでいますから楽です。これに前を走られたらもうアウトです。台数がふえただけ喜ぶんじゃなくて、そういう現実もあるということをぜひ考えて、また報告を出していただきたいと思います。

 ところで、大臣は、以前よりこの委員会にお見えになって道路のことでさまざま御発言をされた中で、馬淵さんといえば、道路はBバイCと、BバイCの馬淵か馬淵のBバイCかぐらい、BバイCに非常に御関心の高い方でございましたけれども、もしこれからも道路をおつくりになるという物の考え方で一つの構想を練っていかれるならば、BバイCというのはやはり最優先事項ですか、真に必要な道路をつくるとき。いかがですか。

馬淵国務大臣 私はBバイCにこだわったつもりはないんですが、あえて申し上げれば、事業評価というものには、当然ながら評価の上でつくっていくわけですから、これはしっかりとこだわらねばならないと思っております。

 その上で、BバイCというものは一つの指標であります。これは、我々国土交通省、経済官庁という立場で申し上げれば、経済性というのはまさに費用対効果ですから、この費用対効果が一未満、すなわち費用が上回ってしまう、効果を上回るような事業というのは行うべきではない、経済非合理性が高いということでありますから。その意味でこの指標というのは重要でありますが、これがすべてではないということは、私も、野党で予算委員会で質問をしていた時点でも、そのように考えて質問をさせていただいておりました。

    〔委員長退席、田村(謙)委員長代理着席〕

山本(公)委員 このBバイCが表に出てくるときというのは、新規の事業計画が浮上したときに、いわゆるBバイCを添えて出てくる格好ですよね。そうしますと、例えば私の身近なところでいうと、松山市から宇和島市という一つの都市と都市を結ぶ、ある程度のBバイCの数字が出てきますよね、この区間は。宇和島市から何とか町、県をまたいで宿毛市、細切れに事業計画が出てきます。この事業計画ごとにBバイCを出すという物の考え方ですべてを判断するというのは多少無理があるんじゃないかというふうにずっと思っているんです。

 例えば四国の場合、一番わかりやすいんですけれども、ネットワークが完成して橋と全部がつながったそのときに全体のBバイCという計算をするんだというような発想はとれないものでしょうか。

馬淵国務大臣 このBバイCは、便益の計算のところでいいますと、四十年後の便益から、将来交通需要推計の数値をもとに現在価値への計算をずっと重ねてくるんですが、そこでは、将来的にはネットワークが完成した前提の便益というものを計算の前提に置いておりますので、御指摘のような部分というのは十分に考慮されております。しかし一方で、しかしながら地方においてはなかなかBバイCが出にくいじゃないか、こういった議論は確かに私もあると思っております。

 私自身の問題意識としても、いわゆる高速道路であれば、これはもう短時間で長距離を輸送するという中においてはBバイCという便益対費用の測定は極めて重要な要素であったかもしれませんが、このBバイCの発想をいわゆる国道あるいは他の道路にまですべて援用する形になっているんですね。これはちょっと問題だということを私はかねがね思っておりました。地域においては生活道路もありますし、まさに命の道もあるわけです。こういったものをどう評価するかが極めて重要でして、現在においては、この事業評価の方法、仕組みを変えようということで、いわゆる政策目標評価型事業評価という仕組みを現時点で試行しております。

 このように、私自身は、ネットワークのあり方もしっかりと検討しながら、事業評価をわかりやすくすることが重要だと思っております。私が予算委員会でかねがね指摘してきたのは、BバイCというものを設定しておきながら、一方で、そのBバイCが一以上なかなか出ないからといって何か数字をかさ上げしているようなことがあるんじゃないですかというところから委員会の質疑が始まったわけでして、そこも、将来交通需要推計は徹底的な見直しというものを現時点で図っておりますし、皆さん方にごらんいただいて、しっかりと、なるほどなと御理解いただけるような透明性の高い事業評価をお示ししたいと思います。

 一点、先生の御指摘の中で、新規のときにBバイCをというふうにおっしゃっておられましたが、再評価のときにもございます。これは、五年後の再評価ということ、十年間行ってまだ未了のものについては五年後ということだったんですが、これのサイクルを短くしました。新規から五年後、そしてそれ以降は三年ごとの再評価ということにいたしましたので、このBバイCに関しては、新規のみならず、事業後にもしっかりとチェックが図られるようになっております。

山本(公)委員 いずれにしても、BバイCを最優先に考えた道路政策というのは、今、総合評価という言葉を使われましたけれども、やはりある種の大きなロマンがなかったらできないんだろうと私は思うんです。

 さっき言いましたけれども、コストだけで考えていくと出るはずがないので、この四国の西南部で、細切れにとったここの部分だけ、絶対出ないですよ、それは。だけれども、これがつながったときに、そして、四国の三本の橋がありますよね。つながったら四国全体が離島じゃなくなるんですから。本州からさっと車で来られるんですから。そのときに、この道路がどういうぐらいの効果があるのかというような、まさに総合評価の中にそういう発想を入れてください。ぜひ細切れに考えないように。あれは、役所が政治家を余り介入させたくないからつくったんだなんという説もあるぐらい、BバイCというのは、今のいわゆる分子の部分というのは極めて狭量な考え方だろうと思いますので、ぜひ大臣が御在任中にその辺の検討を役所でやらすようにしていただきたいと思います。

馬淵国務大臣 BバイCによらないものについては、総合評価ではございませんで、政策目標評価型事業評価という形で今試行を行っております。

 まさに御指摘のように役所の技官の世界でありますから、政治家どころか、旧建設省でいえば事務官の方々ですらなかなかさわれない世界だった、このように私も承知しております。

 ある意味今回初めて政治が介入し、政治が国民の不断の監視のもとにさらそうという取り組みを今行っておりますので、省内にも大変いろいろと物議が起きているというのは承知しておりますが、これは徹底してやりますので、また先生方にもごらんをいただきたいというふうに思っております。

山本(公)委員 我々も関心を持って見ていきたいと思っております。

 続いて、大臣の所信の中で、例の海運、造船の強化という部分があります。この海運、造船の強化というのは、それはそれで当たり前のことなんですけれども、頭に書いてあるところが気になりまして、「我が国の国際競争力を高めるために、国際コンテナ・バルク戦略港湾の機能強化等による港湾力の発揮、海運力及び造船力の強化、」とあるんです。我が国の国際競争力を高めるために海運及び造船力の強化、ちょっと片手落ちじゃないかと思うんです。

 つまり、内航をどうするんですか。我が国は海運国ですよね。島国ですよね。物流の大宗は内航海運で国内輸送は補っておりますよね。今回の大臣所信の中に内航海運を思わせる部分が全くないんですよ。

 一方で、海事局の概算要求、外航なんてことにはほとんど、なくはないけれども、造船なんてなくはないけれども、ちょろっと書いてある。大半が内航海運のことです、海事局の概算要求には。しかし、大臣所信にはその内航海運のところが欠落している、読めない。どうお考えですか。

    〔田村(謙)委員長代理退席、委員長着席〕

馬淵国務大臣 私の所信についてということでありますが、確かに私の所信の中には、「我が国の国際競争力を高めるために、」としてずらずらと例示をして、その中に「海運力及び造船力の強化、」というふうに書いておりますが、当然、この国際競争力強化というのは、国全体の経済を意図したものでありますので、国内の経済を無視したものではございません。

 一方、貿易、国内物流というものにつきましては、海運、造船の強化というのは極めて重要だということを私も承知しておりますので、今回も、二十三年度の税制改正要望につきましては、トン数標準税制、これは外航海運ということでありますが、これを掲げましたし、さらには船舶特別償却制度あるいは買いかえ特例制度ということを挙げております。内航海運では同様に特別償却制度、買いかえ特例制度を要望しております。また、予算概算要求では、省エネなどを通じた競争力強化、海上交通の低炭素化総合事業の補助などを要求しております。

 いずれにしましても、私は海のない県の出身でありますが、海洋国家である以上、造船あるいは海運ということの、特に内航におけるその活性化、経済の活性化、内航におけるフィーダーのより有効的な、機能的な運用が図られるような投資は我々は行うべきであるということ、現にこれは考えていかねばならないと思っております。

山本(公)委員 もう大臣御存じだろうと思いますけれども、造船業界、今は大丈夫なんです。三年先以降は、日本の造船業界は大変厳しいことになります。

 去年、日本の造船業界が建造したのが多分千七百万総トンだったと思う。ことし上半期、日本の造船業界が受注をしたのが四百万総トンぐらい。そして、韓国と中国がそれぞれ一千万総トンを超えて受注をしています。何より驚いたのは、ことしの一月か二月、日本を代表する船会社が六隻発注しました。全部韓国と中国です。

 大臣が、日本の国際競争力を高めるためにも海洋国家日本として造船には力を入れるんだとおっしゃるけれども、現実には造船業界は大変厳しい状況にある。そしてまた、船社も、安い安い船を求めて、日本に造船会社がありながら海外に発注をしている。円高の影響もあるんでしょう。

 その辺を頭に入れて、せっかく所信にこれだけのことを書いていただいております、目に見える形で造船業界、海運業界にいわゆる政策を発揮していただきたいなと思います。

馬淵国務大臣 中国並びに韓国が大変台頭していることを承知しておりますし、ただ、同じやり方で日本、我が国の造船あるいは海運が取り組みをしてはだめだと。コアとなる競争力、核となる競争力を高めていく必要があると思っております。

 例えば、低炭素化あるいは省エネ技術などは大変高い技術レベルがあるということで、現時点、造船業におきましては、IMO、国際海事機関で国際ルールづくり、これは我が国が主導して、委員会でその国際ルールづくりの素案を提示しています。こういった形で、標準づくりから我々が先導していくといった取り組みも大事だと思います。

 また、昨年五月に香港で批准されましたシップリサイクル条約といったものも含めて、今後我が国が取り組むべき課題ということについては、今先生御指摘のような、単にやるんだぞというかけ声だけではだめだということを十分承知しております。これからの世界的な趨勢を見据えて、いかに我が国が競争力として優位性を保てるものがあるかということを見据えながら造船業、海運業については取り組みをしたいと思っておりますので、これは、私どもとしても一定のまとめを行って、また皆様方に発表してまいりたいというふうに思っております。

山本(公)委員 ぜひ、気がついたときには日本から造船業界がなくなっていたなんていうことにならないように。もう既に中小型造船は、だんだんだんだん数が減ってきております。そのことを頭に入れながら、造船に対して政策をなしていただきたいと思います。

 最後に、先週、ちょっと気になる発言がありました。この国土交通の前の大臣の前原大臣、今、外務大臣になっていらっしゃいます。TPPの話題が浮上いたしました。そのときに前原大臣が、外務大臣としてのお考えか個人的なお考えか、それはよくわかりませんけれども、GDPにおける生産費が一・五%の一次産業のために残りの九八・五%が犠牲になってよいのだろうかという御発言をなされました。これは農業問題のことを言われたんだろうと思いますけれども、前原大臣といえば、この前の国土交通大臣です。私も一緒に仕事をしたことがあります。

 この一・五%しかない一次産業のためにほかの産業が犠牲になってもいいのかという思想、国土交通政策にもひょっとしたらその思想が流れているんじゃないかということを昨今感じます。

 大都市に国民のほぼ三分の二の方は住んでいらっしゃいます、その周辺に。その三分の二の人のためのインフラ整備、これが主であって、残り三分の一の方は、そこに住むのが御不満なら大都市周辺に集まってこられたらどうですかと言わんばかりの国土交通政策が今どんどんどんどん進んでいるんじゃないかというような気がしてなりません。

 いろいろな意味で、国土交通政策というのは大都市中心ではないということを大臣も常々多分おっしゃるだろうと思います。しかし、現実には、大臣のこの所信を読んでも、地域という言葉はほとんど出てこないんですよ、この大臣の所信のごあいさつ。ほとんどが、成長のために、また、大都市の国際競争力の強化を進めるとともにと。

 大臣も先ほどおっしゃいましたけれども、奈良県、大臣は奈良県の一区ですから都市部だろうと思います。私なんか愛媛の四区ですから、高速道路もない、鉄道もない、そういうところを選挙区にしておるところですから、おまえのところは、住んでいるのに文句があって、道路もできないんだから、住んでいるのが嫌だったらもっと便利なところに出てこいよと言わんばかりの政策は、大臣、とらないでくださいよ。

 かつて、今政府の要職についていらっしゃる民主党のある方が、ある委員会でこう言いました。中越地震のときに山古志村が崩壊しました。皆さん長岡に移られました、仮設住宅に。長岡というのは、もともとが地すべり多発地帯。かなりのコストをかけてその防災をやってきた。にもかかわらず、崩れていった。皆さんが避難をされた。また帰りたいといったときに、また同じようなコストをかけてお帰りになる状況をつくるよりは、もう長岡に住んでもらった方が社会的コストとしては安くつくんじゃないですかという御発言をされた。

 この思想で国土交通政策をやらないでくださいよ。日本国じゅう、いろいろなところでいろいろな人が幸せを求めて生活をしているんです。大臣に御就任になってまだわずかですけれども、馬淵さんはそれができると思う。やってくださいよ。都会の票だけ目当ての政策をやっちゃだめですよ。頼みます。

 終わります。

古賀委員長 次に、福井照君。

福井委員 おはようございます。

 尊敬する古賀一成大先生のチェアのもと、沓掛先生もいらっしゃって、御質問をさせていただきますこと、大変光栄に存じてございます。

 まず、補正予算、地方支分部局、それから建設業の状況をそれぞれ官房長、局長から御報告いただいた上で大臣に御質問させていただきますので、来年度予算要求に向けて、公共事業の必要性に向けてどうお取り組みをされているか、考えながら聞いていただきたいなというふうに思います。

 まず補正予算でございますが、小澤官房長の方から御報告いただきたいと思います。

 ちょうど今、通貨安競争、二番底を恐れて各国ができる限りのことを今やっている。今、私たちは円高にあえいでいる。ちょうど一九九〇年代、失われた十年あるいは十五年と世界じゅうからやゆされたときに私たちは何をしたかというと、公共事業、補正で何とか内需を下支えして、一秒たりともGDPを下げないようにした。そのグラフを当時の麻生総理大臣がニューヨークのサミットで各国の首脳にお示しをして、ああ、なるほどということで、リーマン・ショック以降の世界同時大恐慌は各国それぞれ公共事業主体の内需拡大政策をとったということは、記憶に新しいところでございます。

 そこで、金曜日にでも閣議決定されるはずの補正予算案について、国会答弁からいえば、言えませんというその一言でしょうけれども、ちょっと整理をしてみました。

 平成二年から昨年度、平成二十一年度までの、補正予算全体に占める当時の建設省、今の国土交通省の一般公共事業の割合というのをちょっと見てみたんです。そうすると、平成四年度は三六%でした。補正予算全体国費分の公共事業費国費というのは三六%もあったんですね。平成七年度が二八%、平成十年度が二八%。全体が膨らんで真水が少ないときは一九とか一八とか、少し下がりますけれども、いわば、麻生総理大臣が各国に示した一九九〇年代の補正予算の中身というのは、一般公共事業が支えた、それが基盤であったというふうに実証されます。

 コンクリートから人へという標語もわかりますけれども、当初予算の国費のうち、公共事業費を社会保障関係費が上回ったのがちょうど平成七年ですよ。ですから、もうそこからコンクリートから人へという時代が始まっている。そんな時代の中で、補正予算で一生懸命公共事業費が支えたというのが、この日本の歴史なんです。

 以降、小泉政権になってからずっと下がりまして、三六%が二〇%になり、二五%になり、そして平成二十年度なんかは四%ですよ。平成二十一年度、与党から退場を命令された当時の自民党の最後の、渾身の補正予算で、全体二十二兆のうち二兆円、約一割、一〇%が補正予算国費のうちの一般事業費の国費でございました。

 そういう中で、そして各国がまた二番底を恐れているというリーマン・ショック直後の状況に似てきた中で、今般の補正予算に占める、まさに馬淵大臣が指揮されるこの一般公共事業費の割合というのは非常に大きな意味を持つんですね。この時代に折れ点をつくるのかつくらないのか、一九九〇年代以降の財政運営についてどう評価するのかという意味で大変重要な補正予算になってくるわけです。

 それで、小澤官房長、今のような時代認識で正しいのか、あるいは間違っているのか。今般の補正予算の全体事業費の中で占める国交省の一般公共事業費の国費、当初予算に占める大体の割合でも結構でございます。今、山本公一影の国土交通大臣が、やみではありませんからね、影の大臣がおっしゃった、特に都市ばかりじゃなくて地方に優しい、国全体に優しい国土経営というのをまさに体現する補正予算の事業費であるのかないのか、その辺のところ、事実関係を小澤官房長の方から紹介していただきたいと思います。

小澤政府参考人 お答え申し上げます。

 本日の閣議で決定されました平成二十二年度補正予算のうち、国土交通省の関係は一般公共事業約四千五十一億円を含む総額約四千八百五十九億円となっております。今委員御指摘ございました、当初予算と比べるといかがかということについては、当初予算の約八・七%に当たる数字となってございます。また、補正予算に占める一般公共事業の割合、これは国全体に占めるシェアでございますが、ことしの予算については八%、八・〇二%という数字になっているところでございます。

 その施策別の内訳といたしまして、円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策関連の新成長戦略の推進、加速に係るものが約百八十三億円、地域活性化、社会資本整備、中小企業対策等に係るものが約四千六百七十四億円等計上されております。このほか、公共事業の契約の前倒しについては、事業費約二千五十二億円を計上しているところでございます。

 これらの補正予算を活用いたしまして、経済対策の実現に向けて実効性のある施策の推進を図ってまいりたいと考えているところでございます。

福井委員 ありがとうございました。

 それで、次に大森審議官から御紹介いただきたいのは、特に地方の建設業、なかんずく地方の建設業の窮乏についての現状認識、ちゃんとされているのかどうか、非常に不安なんです。

 今、山本先生の方から、住民としての地方の住民の不安、これはおっしゃっていただいたんですけれども、消防団を支え、水防団を支えている建設業、まさに地方のコミュニティーを歯を食いしばって支えている、そして雇用も支えている、そんな建設業がまさに窮乏にあえいで、何とかこの上半期までは、前年度、前々年度の補正予算から続く景気対策で、会社をつぶさないで、人をそんなに切らないで頑張ってきたんですけれども、これからですよ、この下半期、どんな目に遭うのかということで、この補正予算に大変期待をしております。

 今、小澤さんの方から御紹介がありましたが、当初予算に比べて約一割の仕事が出るんだというのは、まあまあ経営材料にとって明るい見通し、ややですね、別にそれで一〇〇%明るくなるわけじゃありませんけれども、ゼロよりははるかにプラスの情報であるわけです。そんな補正予算のみならず、前の補正、その前の補正でやった金融その他の支援策がうまく回転しているのかどうか。とにかく、建設業にかかわる方、経営者が明るい気持ちになるような情報を特にピックアップして御報告いただきたいと思います。

大森政府参考人 お答えいたします。

 建設投資額、とりわけ公共投資が大きく減少する中、競争激化によるダンピングを招き、利益率は低迷しております。特に、先生御指摘の地方部の問題でございますが、地方部ほど全倒産件数に占める建設業の比率が高くなっているということで、建設企業を取り巻く環境は深刻さを増しているという認識を持っているところでございます。

 このため、これまで分離分割発注の推進、適正な地域要件の設定、ダンピング防止対策の徹底、またさまざまな金融支援策に取り組んできておりまして、地域の建設企業の支援としては一定の成果はあったものと認識しているところでございます。

 先ほど官房長からも話がありましたが、先般取りまとめました経済対策において、社会資本整備を対策の柱の一つとしていただいたところでございます。また、これまでに講じてきた金融支援策の強化、地域の建設業の成長分野への事業展開、海外展開支援策などをこの経済対策にも盛り込ませていただいたところでございます。

 このような取り組みによりまして、技術と経営にすぐれた企業が生き残り、成長する環境整備を行っていく必要があるものと認識しております。

福井委員 ありがとうございました。

 今御紹介の、名前はおっしゃらなかったんですけれども、地域建設業経営強化融資制度、そして下請債権保全支援事業、さらにまた強化の方、そして延長の方、それは財務省協議があるので一年ごとに延長するしかないんでしょうけれども、理想的にはあと三年とか五年とか複数年度で延長してほしかったわけですけれども、ことしのところはしようがないにしても、来年度からは御検討いただきたいというふうに思います。

 それから、もう一つ事務方から御報告をお願いしたいのは、地方整備局、地方支分部局でございます。

 域内GDPで、四国とか鳥取県、島根県、県庁から支弁する、市町村から支弁するだけじゃないんですね。電力会社のところもありますけれども、やはり大きくは地方整備局、直轄国道をつくり、直轄ダムをつくり、直轄の河川で護岸を張る、そのお金が域内でぐるぐる回って経済効果を生むということで、大変重要な経済財政ツールになっているわけですね、地整の職員にとってみると失礼な話なんですけれども。

 それを、とにかく原則廃止するということで、さきの総務大臣、あるいは前原大臣も徹底的に守るとはおっしゃっていただかなかったわけですので、きょう現在の、地方整備局、地方支分部局原則廃止という検討はどうなっているのか。地方整備局の職員が心安らかに仕事に励めるのか、来た予算の設計書をちゃんと組めるのか、そこら辺のところを教えていただきたいと思います。

 たまたま、エピソードですけれども、高知県に早明浦ダムというダムがありまして、ダム特措法ができる直前のダムでございまして、まさに地域にお金やいろいろな援助が、今はあるんですけれども、来ないままダムがつくられて、そして、当然のように、ダム直下の下流域は直轄管理区間じゃないんですね。だから、吉野川を守るために、徳島県と香川県を守るために高知県が、ダムサイトとしても河川管理としても、そして頻繁に起こる洪水被害としても、二重、三重の被害をこうむっていて、地元としては、ぜひダムまで、最上流まで、水源まで直轄管理区間にしてほしいという要望すらあるわけです。何も、国から地方へ国から地方へ、権限移譲だ財源移譲だと言っている人ばかりじゃないんですね。そういうエピソードもあります。

 それから、前の大臣とかいろいろなところで御説明したので、まだ馬淵大臣の前では御説明していなかったので、今、山本先生もおっしゃった中越地震のときに、皆川優太ちゃんが助けられました。その東京消防庁のハイパーレスキュー隊の横に国交省の職員が二人立っていまして、砂防屋さんが一人と、そして道路屋さんだけれども斜面崩壊のプロですね、その二人が、ハイパーレスキュー隊が作業できる時間、そして逃げる時間、これを指揮したんですよね。それはどうしてかというと、あの石は浮き石だから崩壊の可能性があるので余震が起こったらすぐ逃げなくちゃいかぬ、あるいは小石が落ちてきたらすぐ逃げなくちゃいかぬということをその二人がずっと見ていて、だから、当時、子供の命が助かったわけです。

 ですから、その二人はもちろん、地方整備局で現場の経験をずっと積んできたからそういう命を助けることができたわけですので、地方整備局を廃止するということは、技術力がなくなるということ、すなわち子供の命を、救えるものを救えなくするということにエクイバレントなわけですね。

 自民党にもいろいろな議論がありました。しかし、では地方整備局を簡単になくしていいかという議論には到底賛成できないという人の方が、知事も含めて、市町村長も含めて、むしろ多いのが現状でございますので、また再び官房長の方から今の検討状況について御説明いただきたいと思います。

小澤政府参考人 御指摘ございました地方支分部局の見直しについてでございますが、去る六月に閣議決定されました地域主権戦略大綱に基づきまして、八月末に出先機関の事務、権限の自己仕分けの結果を地域主権戦略会議に報告させていただいております。この報告の中では、個別協議に基づく道路、河川の地方への移管の早期実現などに取り組むとともに、受け皿のあり方、職員の処遇、財源のあり方、防災・危機管理体制の確保といったような課題について、今後、政府全体として、地方側とともに議論を進めていくことが必要ということを申し上げているところでございます。現在、総理からの地域主権推進に関する御指示を踏まえまして、地方支分部局の事務、権限の移譲についてさらなる検討を行っているところでございます。

 今委員から、直轄事業あるいは防災対策について国が重要な役割を担っているという御指摘をいただいたわけでございますが、そういったことも踏まえつつ、国と地方の役割分担について見直しを行い、国は本来果たすべき役割を重点的に担うとともに、住民に身近な行政はできる限り地方にゆだねるという考え方に沿って出先機関改革を進めていく所存でございます。

 いずれにいたしましても、地域主権改革は内閣の重要課題と認識しておりますので、適切に対処してまいりたいと考えております。

    〔委員長退席、田村(謙)委員長代理着席〕

福井委員 そこで、大臣、今ずっと聞いていただいて、現状認識をしていただきました。補正予算は額が決まっている。それで、今からお願いしたいのは、来年度に向けての公共事業費の確保でございます。

 三年分一挙に減らしたんだから、五兆七千億にしたんだから、まさか来年度から減ることはないだろうというふうに夏までは思っていましたけれども、どうもそうでもない。コンテストはありますけれども、例外なく査定をすることになるという状況に今立ち至っている。財務省にだまされたわけじゃないんでしょうけれども、対前年度主義というのも、これは固定された予算査定の考え方でございますし、財務省もそんなに甘くない、世の中もそんなに甘くない。

 一方で、さっきBバイCだけじゃないということもおっしゃっていただいて、そして都市ばかり偏重しているわけじゃないということもおっしゃっていただいて、総合的に判断していただくということもおっしゃっていただいて、つまり、公共事業というのは悪の権化じゃなくて、これだけいいものなんだということを、馬淵大臣にぜひメディアその他でアピールをしていただきたい。

 特に、下水道は今、一人百万円なんですよ、原単位は。ですから、今五〇%ですから、資産が五十兆円あるんですね。一〇〇%できたら、下水道処理場やそのパイプや、全部入れて百兆円の資産を持つことになります。道路は何千兆でしょうか、ダム、河川で何千兆でしょうか。そういう社会資本という形で日本人が持っている資産、これのメガ管理、百年、二百年のメガな視点の管理という視点も当然出てきます、財政的にも。

 そして、今たまたままた山本先生もおっしゃったんですけれども、ちょうど明治の元勲がずっと見てきたときはパリの大改造の最中でしたね。シャンゼリゼ通りをちょうど街路事業で、うちをのけまして、それでルーブルをつくって凱旋門をつくってという状況を明治の元勲が見て、それで日本のまちづくりも、そして憲法もできたということもあった。

 ただ予算を確保するというのじゃなくて、野党ですから敵に塩みたいなものですけれども、ぜひ夢の超特急とか夢の何とかという、まさにBバイCだけじゃない一つの国民的な目標というものを、馬淵夢プランみたいなものをつくっていただいたら、一億二千万人が志がぐっと固まって、一つの方向に、日本を守るという方向に行くんじゃないかというふうなこともあり、それもこれもいろいろあり、確かに逆行列係数は二を切ってもう大分たちましたけれども、公共事業の必要性というのを来年度予算要求、来年度予算確定に向けてどういうふうにお取り組みになるか、簡単で結構ですから、ちょっと御紹介いただきたいと思います。

馬淵国務大臣 ありがとうございます。

 私も所信から述べてまいりましたし、またさまざまなメディアでもこれからどんどん発信をしてまいりたいというふうに思っているんですが、土木屋出身だから言うわけではありません、公共事業というのはまさに社会資本なわけですから、これを国民共有の財産としてしっかりと守るということが極めて重要。

 高度経済成長期に、それこそ、坂道を駆け上がるかのごとく物すごいエネルギーをかけてこの国を開発あるいは均衡ある発展を遂げさせてきたという公共事業が、今低成長になった、ダッシュで走る状況から、今度はゆっくりと歩みを進める。当然ながら、その体に流れる血液の量あるいは勢いというのは違うものがあると思います。隅々まで血液が流れるかのような形で、地域への再分配、そして必要な社会資本を確実に整備していく、そのために最低限守らねばならない公共事業投資というものがあることを、私は、大臣を拝命いたしまして、国民の皆さん方にわかりやすく示したいという思いでおります。

 だからこそ、社会資本整備重点計画の見直しを指示し、計画部会に徹底審議をお願いしているんですね。非常に、社会資本整備重点計画という、これは名前が悪いんじゃないかと私は局長にも話をしているんですが、何かわかりにくいなと。社会資本整備重点計画の次は社会資本整備重要計画が出てきて、さらには最重要計画が出てくるんじゃないかと思わせるような、いわゆる官僚がつくり上げたような名前ではなくて、本当に、未来に必要な国民共有資本だとか、わかりやすい言葉で、私はいいワーディングが浮かびませんけれども、必要な公共事業というものをしっかりと明示していくことが政権交代後においても極めて重要だというふうに思っております。

    〔田村(謙)委員長代理退席、委員長着席〕

福井委員 ありがとうございました。

 ちょっと時間が迫ってきましたので、JALの問題に移らせていただきたいと思います。

 まず航空局長の方から御紹介いただきたいのは、前の国会まで、国土交通省としては、とにかく機構に任せているんだから私らは知らぬという答弁でずっと終始してきました。きょうは機構の常務にも御来院を賜りまして、本当にありがとうございます。

 それで、現在までのJAL再建のイシューにつきまして、銀行団、そして機構と国土交通省、どういう打ち合わせをして、どこまで情報を共有して、今どうなっているのか。事務作業の今までを、今まで国会で紹介していただかなかったことをきょうお述べいただきたいと思います。

本田政府参考人 お答えを申し上げます。

 企業再生支援機構が日本航空の支援決定を行うに当たりまして、私ども国土交通省としては、日本航空が我が国の成長基盤であります航空ネットワークの形成に重要な役割を果たしている、こういうことから、会社更生計画の策定過程を通じて、航空行政を所管する国土交通大臣の意見を十分に聴取されたい、こういう意見を申させていただいております。

 これを踏まえて、詳細はなかなか申し上げられませんが、これまでも管財人であります企業再生支援機構とは特段密に、また必要に応じて銀行団とも意見交換をさせていただいておるところでございまして、引き続き企業再生支援機構とは連携して日本航空の確実な再生を図ってまいりたい、かように考えております。

福井委員 全然満足する御答弁じゃないので、それでは、きょうお忙しい中お越しをいただきました株式会社企業再生支援機構の水留常務取締役の方から御紹介いただきたいと思いますが、三千二百億融資をするという新聞もございました。そして、本日に至っているわけでございます。今まで、その三千二百億の前の三千五百億の出資が毀損した場合、損金を埋められるのか、責任をとれるのかという基本的な疑義があるわけですが、きょうお配りした資料がございますので、ちょっとごらんいただきたいと思います。

 ちょっとワーディングは激しいんですが、破綻した会社が短期間でローコストキャリアレベルの利益率を達成する可能性はないとさせていただいておりまして、このグラフをごらんいただきますと、更生計画案で、この赤い四角ですね、二〇一〇年、二〇一一年からずっとありますが、四・八、六・二、九・二、八・七、一〇・一と、まさに右にあります、エアアジア初めイージージェットまでのローコストキャリアの利益率を更生計画としているわけですね。

 一方、ユニットコスト、左の下の方に行きまして、JALの〇九年度、一二年度のユニットコストは、一二・六、一二・七と変わらないんですね。ユニットコストはローコストキャリアと比べて三倍とか二倍で、なおかつ更生計画案の営業利益率がローコストキャリア並みという、それだけ見たって論理矛盾なわけですよね。

 なおかつ、この右の下の方の「JALの収入・費用計画」、費用を見ていただくと、二〇〇九年は一兆六千二百八十六億円から、例えば二〇一一年度だったら一兆一千四百七十二億円、この二年間で四千八百億費用を削減するわけですね、四千八百億、二年間で。

 これが実現できるかどうかというのは常識的に極めて疑わしいということ、そしてユニットコストが二倍、三倍で利益率がローコストキャリア並みというのが、これはどう考えたってわけがわからないという状況だと思いますが、機構で今までどういう議論をされて、今お示しをしたペーパーに対する反論をお述べいただきたいというふうに思います。

水留参考人 お答え申し上げます。

 まず、機構が今般出資を予定しております三千五百億円という多大なる金額、これを毀損させないように、当然ながら最大限の努力を払っていくというのは機構として考えているところでございます。

 御案内のとおり、一月十九日に会社更生法を適用とともに、機構としては管財人の任についております。また、八月の末日に更生計画案を裁判所に提出させていただきましたが、その間においても、さまざまなコスト削減の努力、そういったものを進めつつ、また、更生計画案としては、相応のリスクを織り込み、決して実現不可能なものではないものを策定させていただいております。

 議員の御質問にありましたとおり、この三年間で、二〇〇九年度対比という意味で四千七百億円強のコスト削減をしていくというのは、御指摘のとおりでございます。

 その内訳をということを若干お話をいただいておりましたので御紹介を申し上げますと、まず、二〇〇九年度というのは、御案内のとおり、非常に変動の激しい年でございました。その中で、更生会社日本航空は、燃油ヘッジ等をやっていた関係もあって、多くの燃油費というものを計上しておりました。今般の二〇一二年度、三年後の計画との比較でいいますと、燃油のコストだけを見ましても、一千百億円強のコストの削減が見込まれております。この前提は、現在、市況等を見ても決して高い前提ではなくて、どちらかというと市況よりも上目の燃油の単価を前提にし、なおかつ為替も一ドル九十五円という、現状と比較しますとかなり保守的なレートで計算をしましてもこの金額程度のコスト削減効果がまず出てまいります。

 また、もう一つ大きな部分としましては、人件費の削減でございます。これは、今般いろいろと報道もありますとおり、かなり多くの方々に早期退職等を通してJALグループからおやめいただいて、その人件費、もしくは、今回更生法を適用することによって年金の積み立て不足ですとかさまざまなコストを一括で償却することにより、年度ベースでのコスト改善効果は一千二百億円を超える効果になります。

 それだけ足し上げても二千四百億円程度のコスト削減効果がございまして、残りの二千数百億に関しましては、まさに今回、路線、路便、また機材を大きく減少させることによって、空港コストもしくは機材のコスト、さまざまなコストを減少させて達成させていく見込みでございます。

 これは相当細かい費用の積み上げで構成をされておりますので、確かに、おっしゃられるように、四千八百億という金額を聞きますと、本当にできるのかというような御懸念がおありなのはわかりますが、実際に現在、半期ほど進めていく中でも、更生計画を上回る実績を現状上げておりますので、この計画をぜひ引き続き実現してまいりたいというふうに思っております。

 以上です。

福井委員 収入の面だと、例えば路線別あるいはエリア別の搭乗率とか、何か想像すると、ファーストクラスとかビジネスクラスにどっとエコノミーから移ったのを前提としているんじゃないかとか、中身からいくと相当疑義があるので、今一通りは御説明されましたけれども、ぜひまた別の機会を持って集中審議をしていただくように、また後ほどもお願いしますけれども、その機会に御説明いただきたいと思います。

 そこで、さきの峰崎副大臣が、JALの再建計画の達成は難しいと、新聞紙上ですけれどもコメントをされていました。財務省でJALの再建は難しいというメモがあるのではないですか。峰崎さんにそういうレクをしたんじゃないんでしょうか。政投銀とかJBICとか、そういう政府系の、保証をする機構を抱えて、財務省としても責任をどう果たすのかという議論をいつもされている役所が、内閣府、今の機構、そしてJAL、国土交通省というスキームに大変大きな疑問を財務省としてはお持ちなんじゃないかということが峰崎さんのコメントから想像されるわけですけれども、きょう木下総括審議官にお越しいただいていますので、コメントをいただきたいと思います。

木下政府参考人 お答えいたします。

 峰崎前副大臣の御発言につきましては、日本航空の再建に当たり、引き続き緊張感を持ってコストの見直し等を行っていくことを求められたものと理解をしております。

 政投銀及びJBICを所管する財務省といたしましては、日本航空が確実に再建されるよう、関係者に引き続き緊張感を持って更生計画案の着実な実施に取り組んでいただくとともに、中長期的な観点からも持続可能な経営を実現していただきたいと考えております。

福井委員 そこで、大臣、今データを見ますと、二〇〇九年度ですけれども、国際路線で一位はLCCですね、ライアンというアイルランドのLCC六千五百万。それから三位も、イージージェット三千五百万。国内だけ見ても、一位はサウスウエスト一億百万。ANAとJALをどう並立させるかという議論じゃなくて、今、国交大臣、国交省がやるべきことは、日本の飛行機会社が世界と、特にこのLCCとどう戦うかということを、その戦略論を議論するという立場に今直面しているわけでございます。

 そこで、そういう認識をぜひ持っていただいて、その上で、従前までの大臣の御答弁は、今機構で検討していますから私たちは見守っていますということに終始したわけですけれども、きょうは、今機構にも、本当にさわりだけですけれども御紹介をいただきました。国交省として、国交大臣として、第一義者として責任を持ってJALの再建をする、そして航空行政の根本的な立て直しをするということを、一言で結構ですから、ぜひお願いいたします。

馬淵国務大臣 まず、私どもとしては、航空業界の中では、安心、安全を確保するということ、これは第一義的にあるものであります。その上で、JALの再建について、今の取り組みについては、私どもは、現行のスキームの中で進めておられるJAL再建をしっかりと見守るのが私どものあるべき立場だというふうに思っております。

 いずれにしましても、この更生計画、最終的に決定をし、改めて再出発をしていただく、それに向けて全力で取り組んでいただいているということを私どもとしては認識しております。

福井委員 時間があと一分しかないんですけれども、ぜひ答弁いただきたいのは、海上保安庁長官、予算委員会では最初に民主党の長島委員がおっしゃっていただいただけで、我が自民党からはそういうコメントはなかったんですけれども、まさに、まずぶつけられて、追いかけて、そして乗り込んで、並行して島の近くまで持ってきてそこで逮捕したという、十一管区も、そして海上保安庁のオペレーションルームも本当に完璧にやり遂げたと思うんですね。問題は、理由なく解放したというのが問題であって、逮捕までは海上保安庁は本当に、九月七日、八日、完璧なるパフォーマンスをしていただいたと思います。あえて反省点があるというのだったらどういう点があるのかという点が一点。

 そしてもう一つは、今はもう余りテレビにも出ませんが、海賊対策。これも特措法ができてからもう一年たちました。外国船籍も含めて守っているという状況で、一千隻を超える船を、そして荷物を守っていただいているという、船と船会社、そして自衛隊との間を取り持つ調整役として海上保安庁は本当に日夜仕事をしていただいております。その紹介と、二点、簡単で結構ですので、コメントをいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 まず、今回の尖閣の事件に対する反省点ということでありますが、私どもは我が国領海内の事件に対して毅然として対応したものでありまして、特に現場第一線の職員はしっかりと任務をやってくれたものと考えております。

 お話がありました、強行接舷して停船をさせたのは大変危険な業務でありまして、防舷材をクッションにして船を強行接舷して、六人飛び移りまして停船させました。これは日ごろの大変厳しい訓練のたまものと思っておりまして、私も高く評価しているところでございます。したがって、特に反省点というのは今回の業務については私は見当たらないと思っております。

 それから、ソマリアの件でございますが、これは、御承知のように、私どもの船では行けるのが一隻しかなくてとても対応できなかったということで、護衛艦が二隻ずつ現地に行きまして、サンドイッチ方式で、最近では大体平均九隻ずつの商船を間に挟んで護衛活動をやっております。延べ百八十五回、一千三百三十五隻の船舶の護衛をきのうまででやっております。これに私どもの保安官も、もし海賊を捕まえた場合に取り調べ等の司法警察活動を私どもはやらなければいけませんので、四人ずつ八人、毎回保安官を乗せております。今、六次隊といいまして、六回目の派遣隊が行っておるところであります。

 それだけではなくて、東南アジアの海賊対策の経験を生かしまして、ソマリア周辺国、イエメンとかオマーンとかジブチとかケニアとか、そういった周辺国の海賊に対応する法執行能力の向上のための研修とか専門家会合とか、いろいろな活動も私ども支援をしておりまして、ソマリアの海賊問題につきましても海上保安庁としてできる限りのことをしてまいりたいと考えております。

福井委員 ありがとうございました。

 もう時間は終わりましたけれども、委員長、今聞いていただきましたように、JALの再建の問題につきましては、これからこの国土交通委員会で集中的に議論をしていただかなければJALの再建はおぼつきませんので、集中する討議の場をお与えいただきますようにお取り計らいをいただきたいと存じます。

 同時にもう一つ、山本委員からもお願いをさせていただきましたが、八ツ場ダムにつきましても、地元で、そして一都五県の知事も含めて動きがございます。この問題につきましても集中的に討議をしていただかなければなりません。あわせて委員長にお願いをさせていただきたいと思います。

古賀委員長 ただいまの要求につきましては、理事会でしっかりと論議をして、対処をしてまいりたいと思います。

福井委員 では、以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

古賀委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時四十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

古賀委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。高木陽介君。

高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。

 本日、馬淵大臣の所信に対する質疑ということで、特に時間が限られておりますので、社会資本整備と、あと住宅の問題について中心にお話をお伺いしたいと思います。

 まず、大臣の所信で、「三つの観点から国家の背骨を築いていくものであると認識しております。」こういうお言葉がございました。「一つ目は、国土の背骨です。国土の礎となる社会資本整備のあるべき姿をしっかり示して、これを実現させてまいります。」という発言がございました。

 そこで、この社会資本整備。重点計画が、平成十五年に九本あった事業別分野計画というものが一本化して、第一次、そして第二次、これは平成二十年度から二十四年度の五カ年計画ということでやりましたし、一本化したことで、成果目標、アウトカム目標というものを明示して、それを目指してやっていく、こういう流れができておりましたけれども、昨年の政権交代以来、社会資本整備重点計画を見直す、こういうふうに言われて、民主党政権、この社会資本整備についてどのように考えているのか、またその見直しの状況についてまずお伺いをしたいと思います。

馬淵国務大臣 社会資本整備重点計画の見直しについてお尋ねがありました。

 これは、七月二十六日の社会資本整備審議会、交通政策審議会の合同総会におきまして、社会資本整備重点計画の見直しについて付議したところでございます。現在、この社整審、交政審の計画部会、これは合同でこの重点計画の見直しについての闊達な御議論をいただいておりまして、私どもとしましても、できるだけ早くこれを取りまとめてまいりたいというふうに考えております。

高木(陽)委員 できるだけ早くまとめてまいりたいと言うんですけれども、大体いつごろになりそうですかね。

馬淵国務大臣 私も、従来型のといいますか、今日まで続いてきた社会資本整備重点計画のアウトカム指標というのは非常にわかりにくいな、このように思っております。だからといって、先ほども申し上げてまいりましたが、過去の縦割り事業の、いわゆる十カ年、五カ年といった計画の縦割りの中での事業費を明示するものも、これも先祖返りである、新たな基軸で目標を設定できないかといった議論をしていただいております。

 したがいまして、大変多岐にわたる議論が必要となりますので、これも、例えば年内にといった期限を区切るのではなくて、多少アローアンスを持って議論をしていただきたいというふうには私も現時点では考えておりまして、ここは、社整審の計画部会の先生方に、私も直接部会に出てお願いをしておりますが、闊達な議論と、かつ、先延ばしにならない、本当に迅速な対応をお願いします、このように申し上げております。具体的にいつまでということを現時点で社整審計画部会に何らかの形で私が伝えているものではありません。

高木(陽)委員 そこで、これは全体的な社会資本整備計画を見直している。その一方で、各分野ごともそれぞれいろいろな見直し、検討がされていると思うんですね。

 例えば高速道路、道路関係でいきますと、無料化実験が今行われている。通常国会から、高速道路関係の法律の改正も出されている。そこには国幹会議を廃止するという流れもある。一方で河川の方は、八ツ場ダムをやめるという話とともに、それ以外のダムについては検証する、そういった中での治水のあり方、これも検討をされている。港湾、さらに空港、いろいろな角度からそれぞれ検討されていると思うんですが、この関係性ですね、もう少し言うと整合性。全体的な見直しがあって、全体像があって初めて個別の問題というものに行くんじゃないのかなと私は思うんですね。個別は個別でやっていて、その一方で全体は全体でやっている。こうなってきますと、整合性がとれなくなる。

 もちろん、道路は道路でいろいろな考え方があるでしょう。または、河川は河川でいろいろな考え方がある。ところが、では、大臣の所信にありましたこの国の背骨、こういう観点との整合性はどうなるのか。

 もう一つ申し上げますと、先ほどいつまでというふうに質問しましたが、今、これから補正の審議もあるんでしょうけれども、来年度の予算、概算要求を民主党政権がされましたね。昨年は政権交代したばかりでしたから、その前にあった自公政権時代の概算要求をベースにしてやる。一たんは白紙にしましたけれども、その流れがあったのは、これはいたし方ないと思います。

 さあ、一年たちました。全体像がない中で、ではこの社会資本整備、もう少し言うと公共事業関係、この予算の概算はどういう基準で決めているのかという、ここら辺の関係性、予算との関係性、これはどうなっているんでしょうか。

馬淵国務大臣 重点計画の見直しは大変抜本的なものでありますから、一定程度私は議論をしていただかねばならないと思っております。その上で、二十三年度、これは八月末までに概算要求を取りまとめたものでありますが、これは、前原前大臣のもと、選択と集中、そして新規事業につきましても、供用が既に済んで、その供用の済んだ部分に関しましては、その箇所分を一定程度想定しながら、改めて新規事業も盛り込んだということであります。

 ただこれは、先ほど来申し上げているように、昨年の政権交代以降からの継続性の中で我々予算を組んできたものです。今回の成長戦略に沿うものとして出してきたものでありますが、社会資本整備重点計画は、まさに先生御指摘のように、長期のスパンで国土のあり方を問うものでありますから、私は、現状、個別の予算を組みながらも、この社会資本整備重点計画、長期のスパンで国土の創造というものを定める中でのすり合わせというものは十分に可能である、このように考えております。

高木(陽)委員 今大臣は十分に可能という言い方をされましたけれども、まさに民主党政権は、昨年の衆議院選挙、終わってからもそうですが、コンクリートから人へというスローガンを掲げられた。そこはいろいろなとらえ方、人によって違うと思いますけれども、多くの人たちは、公共事業をどんどん削っていく、こういうふうに意識したと思うんですね。

 その中にあって、先ほど自民党の山本委員からの質問もございましたけれども、やはり地方においては、かなりまだまだインフラ整備がおくれている、そういった背骨ができていない、こういったところもある。こういった観点を、まさに社会資本整備重点計画、この国をどうするんだというのをつくっていただかなきゃいけない。

 今あるのはなくなっていませんから、これは自公政権時代につくったものですね。先ほど大臣が新規という言い方をした、来年度の予算だから。この新規も、実はその計画は自公政権時代にできているもの。別段、政権交代したから全部ひっくり返せ、こういう話ではないんですが、そこら辺の整合性について、やはり説明をしっかりとしていただきたいなと思うんですね。

 その上で、大臣、時間が限られているので次の質問にもう移りたいんですが、大臣所信にもありました、先ほどのお言葉にもあった、前原大臣時代もそうだというふうに言っておられましたけれども、選択と集中による重点化とありますね、選択と集中による重点化。何を選択し何を重点化していくのか、この問題について、その基準というのはどういうものがあるんですか。

馬淵国務大臣 これはさまざまな基軸があると思いますが、私どもで考えてきたのは、先ほど御指摘のように、地域における必要性、さらには安全、環境、あるいは雇用といった観点、こういったものから、これはそれぞれの事業によってまた優先順位は変わってまいりますが、今申し上げたような観点から選択と集中を図ったということであります。

 少なくとも、昨年、二十二年度の予算を策定する段階でも、いわゆる箇所づけのところに関しましては極めて厳しく判断をさせていただいたと思っておりますし、この二十三年度の概算要求時におきましても、限定的に行ったということであります。

 ただこれも、私が大臣を拝命いたしまして、もう既に申し上げているように、公共事業を削減するということが我々の方針ではありません。真に必要な社会資本整備をしっかりやっていく、それがまさに、国家の背骨である国土創造ということを所信にも書き込んだわけでありまして、それを実現していくためには、今申し上げてきたように、社会資本整備重点計画で定めるということ、そして選択と集中は、その中でもさらに私はより絞っていく必要があるんじゃないかと思っているんですね。ミッシングリンクと呼ばれる道路整備が必要なのか、あるいは港湾なのか空港なのかも含めて、この社会資本整備という部分についても一定程度絞り込みは必要だろうというふうには考えております。

高木(陽)委員 政治、特に政権を担った民主党の皆さん方、一番大きいのは予算をつくるという作業ですね。

 その中で、限られた財源の中で、優先順位をつけるというのがまさに政治の仕事だと思います。そのときに、集中と選択という言葉はすごく重要だと思うんです。今大臣幾つか言われましたね、安心、安全だとか地域の要望みたいな、いろいろとあるわけです。要望というか、こうしてもらいたい、こういう基準がある。さあ、その基準が、優先順位としてどれが上なんだと。これを明確にしていかないと、集中と選択といっても結構恣意的になる。

 これも、実は自公政権時代、もっと言えばもっと前の自民党政権時代にも、そういった基準があいまいな中で、例えば声のでかい人、声のでかい地域、こういうところが優先されたんじゃないか、もしくはそこには談合だとかがあったんじゃないかというような、いろいろな疑問も呈せられました。

 だからこそ、民主党政権というのは、透明化と言っていましたね。公開性と言っていましたね。だから、この基準というものを国民のだれもがわかるようにして、そして、ああなるほど、ここでこれだけの予算がついたのはそういう基準だったんですねと。

 例えば、地域によって違うわけです。地域の要望を上げたら、これは全部やらなきゃいけませんよ。先ほど質問に出た四国の山本さん、また福井さんも四国ですよ。四国だって基盤整備がおくれているから、要望はあるでしょう。北海道だってあるでしょう。例えば私の住んでいる東京でいえば、三環状は早くつくってもらいたい、こういう要望がありますよ。

 では、その中で限られた予算を集中と選択するときに、何が基準なんだという、これを明確にしないと、また国民からは、それは大臣の出身だから、または民主党の勢力が強いから、こういうふうに言われかねないと思いますが、その辺はどうでしょう。

馬淵国務大臣 二点ございます。

 まず一点は、優先順位を決めていく上で極めて重要なことは事業評価だというふうに思っておりますから、事業評価の仕組み、方法についても見直しを図っています。さらにその上で政治が判断する優先順位は何かと問われると、これは所信にも書かせていただきましたけれども、産業の背骨と書きました。これはすなわち成長を意味します。経済成長を実現しなければ、幾ら我々が社会資本を整備しようとしても、その財源すら確保できていけないわけですね。ですから、ここは、しっかりと産業を成長させていくという分野にまずは重点的に配分をしていくことが必要でしょう。

 もう一つ重要なことは、疲弊してしまった地方、地域を再生させるためにも、再分配という機能をもう一度機能させていく、再分配というものを再度地域の方々に実感していただけるような施策を打っていくこと。

 私は、この二点が極めて重要だというふうに考えております。

高木(陽)委員 今、地方の疲弊という言葉が出てまいりました。

 ちょっと質問が飛びまして、二十二年度予算、これは民主党政権は公共事業を一八%削りましたね。この影響というのは多々出ていると思うんです。本当に、地方においてはなかなか産業がない、育てていかなきゃいけない。これは中長期の問題なんですが、リーマン・ショック以降この二年間、かなり地方経済が疲弊している。そういった中での地方における公共事業、建設関係、これはかなり大きな雇用の問題にもなっていましたね。これが一八%削られた。

 この二十二年度予算の公共事業削減における地方経済への影響をどのように認識しておられるのか、聞きたいと思います。

馬淵国務大臣 まず、国土交通省所管としては一五・三%ということで御承知いただきたいと思います。

 昨年、予算編成過程で一五・三%削減を行った。この大幅な削減で、地方におかれましては、公共事業削減によって不安であり不満であるという声を皆さん方が発せられていること、十分認識しております。

 その上で、将来に対する不安というものを払拭させていくために、私どもとしては、見通しのある将来の社会資本整備の姿を提示しなきゃならぬ。これだけのボリュームを今後必ず国家として実現していかねばならないということを示していくことによって、先ほどおっしゃるように、地方の建設産業あるいは関連する産業に従事される方々が安心をしていただけるのではないかというふうに思っております。

 そして、もう一つ重要なことは、それだけのボリュームがあっても、実際には地域経済に寄与しないような形で事業が流れてしまってはこれは意味がないんです。私再々申し上げていますが、指先の毛細血管に至るまでしっかりと血液が流れるようにしなきゃいけないんですね。それも含めて、私は、地域再分配機能をしっかりと果たしてまいる、このように申し上げてきたつもりであります。

 そして、今回、緊急総合経済対策ということで補正予算を組ませていただくということになりました。社会資本整備が項目で挙がっておりますので、地方の方々の御不安、不満というものについては一定程度対応させていただける結果になる、このように思っております。

高木(陽)委員 今、補正の話も出てまいりましたけれども、この補正予算で、社会資本整備、公共事業もある意味では上乗せしていただける。

 ただ、当初予算で一八%、国交省関連で一五%、これを無理して削らなければそういうことにならなかったわけですよ。もっと言えば、円高になった、さらに景気、経済がかなり厳しい、こういうような、いわゆる状況が変わってきた部分もあります。だから、逆に言えば、マイナスのところをゼロに持っていくんじゃなくて、例えば当初予算で削らなければ、削らなきゃいけない部分もあったかもしれませんが、そんなに大きく削らないでやった場合には、ゼロから今落ち込もうとしているところをプラスに持っていく、こういうことは可能だったと思うんですね。

 だから、ここら辺のところは検証もしっかりしていただきたいと思いますし、これは答弁は要らないんですけれども、そういう地方経済、そこには人がいます。まさに民主党は、コンクリートから人へと、人と言っているわけですから。だから、公共事業というのは、イメージとして、例えば大手のゼネコンやそういう一部企業だけがもうけているんじゃないかな、またはそういったところに利権があるんじゃないかな、こういう疑問、疑惑はあったかもしれません。それはそれで直せばいいんですよ。大切なことは、そこに住んでいる人、ここに対してしっかりと視点を当てる公共事業というものを考えていただきたいなと。これはもう御答弁は要りません、時間も限られておりますので。そういったことをどうか国土交通省を担当される大臣としては意識してもらいたい。

 もう一つ申し上げておきたいのは、大臣が野党時代、この場に立っていろいろと質問をした。BバイCの話をよくされましたね。BバイCというのは、これはこれで一つの大きな基準だと思います。しかしながら、数値にはあらわれないものというのがあるのはどうか知っていただきたいと思います。

 もう御存じだと思うんですが、実は、私が昔、もう今から十年ぐらい前ですかね、決算行政監視委員会の視察で北海道に行きました。北海道に行ったときに、高速道路があそこはまだ全部できていませんから、クマの通るような高速道路といろいろと批判されていました。しかしながら、そこは峠を越えなければ行けない。国道はあるんですが、冬になると峠が凍結して、国道は通行どめになる。そのときに、例えば命にかかわる三次救急医療、二次救急医療、救急車で運ばなければいけないときに行けないわけです。そのために高速道路も必要。

 例えばそういった事故や、または救急の患者が出る可能性というのは、十年に一回かもしれない。もしかしたらあしたかもしれない。にもかかわらず、その一人の人の命というのはBバイCじゃ計算できないんですね。でも、地元の人たちはいつもそういう不安を持っている、特に冬になれば。というようなことにもしっかりと光を当てるのがまさに人に対する政治じゃないかな。こういうことをどうか認識もしていただきたいということで申し上げておきます。

 ちょっと、時間が本当に限られているので、住宅の、URの問題についてお伺いしたいと思います。

 URの賃貸住宅、七十万戸、二百万人が住まわれております。この家賃の値上げが今検討されているというふうに聞いておりますが、その状況について伺いたいと思います。

馬淵国務大臣 URの賃貸住宅の家賃につきましては、平成十一年に原価家賃から市場家賃に制度変更されました。その際に、既存入居者の家賃については、三年ごとに現行家賃と市場家賃の差額のおおむね三分の一を引き上げるとして、市場家賃との格差是正をするという、これをルール化したものであります。ただし、平成二十一年度に予定をしていた継続家賃改定については、当時の国交大臣の要請があり、機構として当面延期されたということであります。

 現時点におきましては、既存入居者、継続家賃の方ですね、そして新規入居者、市場家賃の方、これらの家賃負担の格差是正を図るために、URにおいて来年度の改定について検討中であるというふうに承知をしております。

高木(陽)委員 今検討中ということなので、結論は大臣の口からお話としては出てこないと思いますが、前回、家賃を値上げするのを見送ったという、このときの状況、経済状況が悪いという判断もあったと思うんですね。それから二年たって、今、経済状況は好転しているかというと、なかなかそうはいっていない、こういう現実があります。しかも、URの賃貸住宅に住まわれている方々、七十万戸、二百万人の中で、年金生活者、六十五歳以上の方々というのは三〇%をもう超えているんですね。国民の人口の平均が今は二一%ですか、それよりも多い。

 こういった高齢者の方、低所得の方、こういった厳しい状況の方々に対する配慮、これは本当に考えなきゃいけないと思うんですが、その点について大臣どうでしょうか。

馬淵国務大臣 継続家賃の改定に当たりましては、これまでも、低所得の方々、あるいは高齢者、母子世帯等について減額措置というものを講じてまいりました。また、これらの世帯の方々、ほとんど家賃を据え置かれております。

 現在の機構の検討、URの検討なんですが、こうした低所得の高齢者の皆さん方への配慮というものは必要である、このように認識していると承知しておりますので、今後も、先生御懸念の、こういった方々に住まいの不安を惹起させてはならないということについては、十分配慮するものというふうに思っております。

高木(陽)委員 今、大臣の方からしっかり配慮するといった考え方が示されましたので、ここはしっかりと守っていただきたいと思います。

 さて、今度はUR本体、機構自体の見直し状況、これはいろいろと検討されているようでありますが、その点についての検討状況をお伺いしたいと思います。

馬淵国務大臣 URに関しましては、都市再生機構のあり方に関する検討会を設置いたしまして、その報告書が十月一日に提示をされました。私もそれを手交されまして、これを踏まえて今後の方針ということが定められることになります。

 現状はつぶさに有識者の皆さん方に見ていただきました。民営化すればいいという御意見がある中で、ただし一方で、十四兆円、大変多額の債務がある、これらの縮減、あるいは透明性の高い組織、経営体制の見直しを図るということにおいては、なかなか簡単にはいかないということもその検討会の中で報告に上がっております。

 今後、需要動向に応じたストックの削減、あるいは資産、負債の圧縮、また、PPPなどを利用したサービスつきの高齢者住宅など、こういったものを検討していかねばならないと思っておりますが、年度内に改革の工程表を策定していくということ、皆様方にお示しをしていきたいというふうに思っております。

 いずれにしても、乱暴な議論は問題があるなと私は思っておりまして、確かに、今日において、そもそも政策的な目標が大きく変遷する中で、非常に問題だと指摘される部分というのがあった。ただし、ではこれを民営化すればいいんだといった議論ではないということをこの検討会の中でも十分に皆さん方に議論いただけたと思っております。

 これからがまさに正念場でして、年度内の改革の工程表、これをまた議員の皆様方にもしっかりとごらんいただきながら御意見を賜り、そして改革を進めていきたいというふうに考えております。

高木(陽)委員 今、大臣が年末までに一つの結論みたいなことを出して……(馬淵国務大臣「年度内」と呼ぶ)年度内に出されるということを言われました。

 実は、行政刷新会議、事業仕分けの方で、四月から五月にかけて、第二弾でこのURの見直しというのをされました。その後、決算行政監視委員会で私は質問をさせていただいて、ちょうど大臣は副大臣として出席をしていただいたと思います。あのときの結論は、事業仕分けの方では、まず市場家賃部門は民営化する、そして高齢者または低所得者といった弱者に対しては国または地方自治体にそれを移す、こういったことを一つ結論づけられました。しかし、それは現実とかなりかけ離れているなというのが私のあのときの質問であったと思います。

 一方で、国交省で、あり方検討会でこうやって今結論を出そうとしている、国交省として一つの結論を出そうとしている。

 同じ政府でありながら、行政刷新会議では一方の結論がある、あり方検討会でそういうのをやっていく。これは一体どっちなんだと。私の感覚としてみれば、事業仕分けの結論には無理があるだろうなと。そもそも、七十万戸、二百万人が住んでいる、こういった現実のところを見ずにたった一時間の議論で結論づけるということは、これは無謀だな、こういうふうに思うんです。

 それとともに、関係法人について、剰余金、これは国庫返納と言っていた。ところが、これは果たして国庫返納が可能なのか、もしくはそれがふさわしいのか。

 URという本体がある、ここら辺のところの関係性、事業仕分けの結論との関係はどうなのか、これを最後にお伺いしたいと思います。

馬淵国務大臣 行政刷新会議での事業仕分けそのものは、一時間でやっているわけではなくて、それ以前に十全に、長い長いヒアリングあるいは議論が重ねられたというふうに承知しております。

 ただ、その上で、仕分け結果の反映を受けながら、我々としては、国土交通省として主体的に改革の工程表を定めてまいるということでお示しをしていくわけでありまして、国庫返納につきましても、年度内に他の株主との協議を進めていく、このように考えておりますし、また、今後、そのあり方については、先ほど来申し上げているように、事業仕分けの方向、その結果を踏まえての我々の検討結果でありますから、これをまずはお示ししながら御理解を求めていく。行政刷新担当相ともよく協議をしながら進めてまいりたいというふうに考えております。

高木(陽)委員 もう時間が参りましたが、僕は、行政刷新会議もしくは事業仕分けというのを否定するものではないんです。ただ、本来、国交省がちゃんとやればいい話なんですよ。だって、所管なんだから。それを何か、申しわけないけれども、わけのわからぬというか、権限もない、そういう法的な位置づけもない仕分け人と言われる方々、または議員の方々が出てきて、それで議論する。たった一時間じゃないと言われましたけれども、あのときにも、決算行政委員会でも指摘しましたよ。僕、議事録を全部読ませていただいたときに、例えば公営住宅が一千万戸あると言っていた仕分け人がいるわけですよ。一千万戸も公営住宅なんかあるわけがないのに、そういう基礎的な知識もない人がいわゆる事業仕分けをやって、これは民営化だとかいってやっている。これ自体が大きな問題だなというふうに大臣も多分思われていると思うんですよ。

 だから、ここのところは、パフォーマンスをやるんじゃなくて、本当にそこに住んでいる人のために、もしくは国民全体、税金の無駄遣いを省くというんだったらそのためにやるように心がけていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

古賀委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 私は、日本航空の再建、再生問題について質問します。

 この再建、再生において、安全運航の確保は大前提です。会社更生手続を確実に進める上でも、この点はゆるがせにできない問題です。何よりも、企業の存立基盤である輸送の安全を第一義的に考える必要があります。

 ところが、この安全運航を脅かす懸念が生じている。輸送の安全を航空会社に守らせる国土交通省の責任にかかわる問題であり、一刻も放置できない重大問題だという認識を持って質問したいと思います。

 安全運航を確保するには、それを支える労働者のモチベーション、コミュニケーションがかぎです。必要な要員と労働条件の確保を初め、安全への配慮がおろそかになるようなことがあってはならない、経営陣と現場一体の密なコミュニケーションなどによって労働者のモチベーションの維持、高揚を図ることが重要であり不可欠だ、これは更生計画にも書いているとおりでありますが、この点を大臣に確認しておきたい。

馬淵国務大臣 安全を確保していくためには、当然ながら、社員の士気、モチベーションというものがしっかりと担保されなければならないということは御指摘のとおりだと思います。少なくとも、私もかつて会社におりましたが、それこそ労使一体となって、この安全という非常に公共性の高い目標達成のためにはしっかりと一体となって取り組まねばならないということは十分承知をいたしております。

穀田委員 その前提に立って議論を進めます。

 そうすると、私が述べたいのは、安全運航を脅かす重大な懸念と言いましたのは、人員削減のやり方において、労働者のモチベーションを低下させるやり方、退職強要を経営陣が労働者に迫っていることであります。綿密なコミュニケーションどころか、不安、疑心暗鬼を生み、不信感が広がっています。

 そこで、厚生労働省に確認します。

 労働者に退職を勧める退職勧奨について、労働者の自由な意思決定が妨げられる状況であった場合には違法な権利侵害となるということで間違いありませんね。

小林大臣政務官 お答えいたします。

 多数回、長期にわたる退職勧奨が争点となった事案について、勧奨を受けた労働者の自由な意思決定を妨げる退職勧奨は違法な権利侵害に当たるとされた昭和五十五年七月の最高裁判決があることは承知しております。

穀田委員 だから、まあ間違いないということですね。

 そこで、日航の更生計画案では、今年度中にグループ社員の三分の一に当たる約一万六千人もの人員削減を計画しています。日航は、この計画を遂行するため、希望退職募集を実施しています。九月からの募集では一次締め切り時点での応募数が目標に達しなかったとして、十月一日から、年齢の高い労働者を中心にパイロットや客室乗務員を乗務から外し、個別面談で退職を迫っています。このやり方がひどいやり方で、今政務官からお話があった、労働者の自由な意思決定が妨げられる状況としか言えない。

 まず第一に、解雇を知らせるやり方であります。

 会社は、九月二十七日に整理解雇の人選基準、皆さんにお示ししている資料一を見ていただけますか、これを組合側に提示した。客室乗務員に対して、希望退職でやめなければ解雇になる、あなたは年齢が高いので一番最初に対象になる、こういうことを発言して退職を迫っている。ある乗員に対しては、二十二日までに早期退職希望を提出しなければ、二十二日以降十一月十九日までに整理解雇されて、退職日は十一月三十日以降、管財人が整理解雇すると言っているのだからそうなるのではないか、こういう発言までしている。

 あくまでも自主的なはずの希望退職に応募しないと、次は強制解雇だ、これ自体が自由な意思決定を妨げるおどしではないかと私は思うんですが、大臣はどう思いますか。

馬淵国務大臣 まず重要なことは、日航の再建においては、日航みずからがこの更生計画をしっかりと進めるという中で、人員削減ということも一つの固定費の削減の中で取り組んでおられるということであります。

 その上で、私どもとしては、運航安全をしっかりと確保していくという立場で指導を行うということを心がけなければならないと思っておりますが、今御指摘の事例につきまして、私は、事実かどうかということについても詳細を把握しておるわけでありません。もし仮に穀田先生が御指摘のようなことが違法行為に該当するようなことであれば、当然ながら、厚労省における当局でしっかりと監督されるべきものだというふうに思います。

穀田委員 事例が事実であるかどうかわからないという発言がありましたけれども、しかし、先ほどの発言は、管財人でさえ不適切なものだと認めて、指導を徹底したいと団交で約束せざるを得なかったわけです。こういう事実、つまり、私が指摘しているだけじゃなくて、それを引用しただけじゃなくて、団交の場でそのことについて不適切だということで管財人でさえ言っているということを見れば、そのことがいかに公のものになっているかというのは明らかだと思うんです。

 加えて問題は、退職に応じないと仕事をさせない、パイロットや客室乗務員を乗務させないということまでやっているということです。

 そこで、皆さんのところに渡した資料二を見ていただきたいと思います。この二の中では、七四七―四〇〇運航乗員部長発ということで、「下記の日程で説明会および面談を実施することとなりました」「面談日以外は基本的にHとブランクにさせていただきました。」ということで、次の表を見ていただいたらわかりますように、空白のスケジュール表をお渡ししているということになるわけです。この中に、MTG、OPZというのは、会社による面談という略だそうです。

 ある客室乗務員は、十月十一日以降の乗務が組まれていたけれども、十月初めの面談の際、退職しないと返答したら、組まれていた乗務から外されたという。これを見ても、これは事実でないなどということは明らかに言えないわけで、これは乗務員のところに配られているスケジュール、空白に全部なっている。これはだれが見たって空白なんです。そうすると、仕事を与えないという嫌がらせが違法であるとした裁判例もあります。きょう発表されたことによりますと、新聞でも報道されているように、十一月も白紙のスケジュール表が組まれ乗務させない。こういうことになると、違法性は一層濃厚になっていると言わざるを得ません。

 しかも、御承知のように、パイロットの場合、一定期間乗務しない期間があると乗務資格を失って、再度、航空身体検査基準に基づく検査や研修などをやり直さなきゃならないという不利益もある。

 こういうことがこういう形でやられることが、余りにもひどいやり方だと大臣は思いませんか。

馬淵国務大臣 穀田先生が問題意識として持たれて、そしてこうして国会という国民不断の監視の場にそれを示されて議論をされるということ自体、私は極めて重要な御指摘であるというふうには理解をしております。

 ただ、だからこそ、日本航空は、再建を目指して適切な人員削減の進め方というものが問われているわけでありまして、これは実際にさまざまなステークホルダーがおられるわけですから、こういった方々の監視のもとで適切に進めることができなければ、経営再建というものも、今後の道行きとして、さまざまな疑念の声なりが大きく上がってきてしまう。だから、ここで一生懸命に取り組んでいただいているというふうに私は思っています。

 御指摘のように、これは違法じゃないか、とんでもないじゃないかということについては、私自身がそのことの事実を具体的に承知しているわけじゃありませんので、判断はできないと思っております。そして、もし違法であれば、これは当然当局がしっかりと管理監督すべきだというふうに思っております。

穀田委員 適切な人員削減という話かどうかということを問うているわけですよ。こういうやり方がもしまかり通っているとすれば、これは大臣が事実であるかないかということを認定できないと言うんだったら、確かめてくれて次にやってもいいんだけれども、私は事実だと示しているわけですよ。そして、管財人もそういうことを発言しているという事実もお示ししているわけですよ。だから、これが適切なやり方かと。

 削減については、労働組合の方も社員の方も仕方がないと言っておられる。そういうさまざまな人員削減だとか労働条件の切り捨てについて、やむを得ぬという話をしている。しかし、だからといって、会社更生法の適用会社だからといって、退職強要だとかそういった無法なやり方が許されるのかということを言っているわけですよ。だから、一般論で言ってもそういうことが許されないということなんです。ましてや、皆さん、私が言っているのは、一つ一つ事実を言っているわけです。

 例えば、客室乗務員の方のそういう報告では、イエス、ノー、どちらを言っても、十一月三十日付の退職が決まっている、こういうことが言われていると報告されています。これはまさにおどしでしかありません。こういう繰り返し、数回にわたって執拗な面談、こういう発言、これ自体が自由な意思決定を妨げるものとして違法だという話が先ほどもあったとおり。

 もう一つ問題なのは、退職勧奨対象者の構成問題です。年齢の高い者から順番に、削減目標人数まで機械的に対象にしていると言われています。

 パイロットでは、希望退職募集は全職員で、年齢制限していないにもかかわらず、退職勧奨対象者は五十五歳以上がほとんどだと言われています。客室乗務員や整備関係などでは、一般職で四十五歳以上など年齢制限して希望退職募集し、退職勧奨対象者も年齢の高い人たちがほとんどです。先ほど言ったように、年齢が高い人だからあなたが一番だという、そんなことまで言っているという事実を私は示しているわけですよ。

 ですから、このやり方からすれば、まるで整理解雇の対象者だと言わんばかりの人選で退職勧奨の対象者を選んでいる。したがって、そういう皆さんの実態報告を聞いた利用者からは、ベテラン機長がいなければ心配よという不安の声まで上がっているわけであります。

 まさに、私は何を言いたいかというと、こういうことをしたら安全運航に対する不安に直結し、日航に対する信頼性にも直結する問題だということを言いたいわけです。

 あわせて、では、皆さんあれこれ言うから、四番目の資料を見ていただきたいと思うんです。

 この文書、当局の方から出されて、組合の団交でも、こういう文書がつくられていたということだけは確認しているそうです。ですから、この文書を見ますと、結局六月時点でこういうものが構想されていたということが明らかです。更生計画案が出されたのは八月末。それ以前に、仕事を与えないというやり方で強制解雇を考えていたということになる。最初から予定で組み込んでいる。

 つまり、こういう一連の文書や一連のやり方というのは、初めに強制解雇ありきというやり方だと思います。私は、仕事を取り上げ、拒否すれば整理解雇をちらつかせて退職を迫るこういうやり方は、まさに自由な意思決定を妨げる退職強要そのものだと思います。

 先ほども大臣は、事例について私は承知していないからというようなことを平気で言っていますけれども、私は事実を述べているつもりだが、そしてそういう告発もやられているわけだが、そこまで言うんだったら、私に言わせれば、こういう違法行為を日航がやっている、所管する事業者が労働者の人権を侵害する、あなたに言わせればしかねない、そういう違法な退職強要をやっている。しかもこれは、政府が主導する再建でこうした不法、違法な行為がもしやられているとしたら、許していいのかということになりますよね。

 だから、事実であるとかないとかと言うんだったら、こういう問題についてきちんと調査し、もし事実だったら、そういうやり方はやめなさいという監督指導をすべきじゃないのかと私は思いますが、いかがですか。

馬淵国務大臣 繰り返し申し上げることになりますけれども、経営再建に向けて固定費の削減が必須である。そのための人員削減というものを計画として出されて、そして今、その人員削減について日航自身が適切に対処されている現状であるということを、私どもは、我々所管する立場として、その計画の達成に向けての努力を見ている状況です。

 もし仮に違法行為も含めて御指摘のようなことがさまざまな形で横行するような状況であれば、それこそまさに日本航空自身が経営の適切さというものが問われるわけですから、私は、そのことについては、経営陣みずからがしっかりと適切な対応をするということに目を向けていただかねばならないと思いますし、仮にこれが違法行為であるとすれば、当局が所管をする中で判断をされるべきだと思います。

 私どもとしては、経営再建に向けた取り組みを今日においても所管する立場としてしっかりと見守る、今現在適切に行っているという説明の中で、それを見守るということが私どもの立場である、このように申し上げたいと思います。

穀田委員 見守るというのは、厚生労働省がそういうことについてやるというのも事実なんだけれども、やはりあなた方が所管をしているところでやっている。だから、固定費の削減というのは必至だ、適切にやられているだろうと思うと。適切にやられていないということを私は言っているわけですよね。しかも同時に、大臣は固定費の削減必至だと言っているけれども、まず安全の方が第一だということを最初に私は確認したわけですね。

 では、こういうことがやられているもとで何が生じているかということに論を進めましょう。

 私が言っているのは、こういった問題が安全運航に直結しているということを真剣に考えないといけないということなんですね。

 現場では、解雇の対象になりたくないから余計なことは言わないと思っていたり発言したり、お互いに言い合ったりしてなど、極度の不安、それとコミュニケーションの低下が職場を襲っています。

 パイロットは、風邪薬を服用しての乗務は禁止など、法令で体調管理が厳しく定められています。それは安全運航に欠かせないからです。だから、少しでも体調が悪ければ自主的に届け出て休むことも間々あります。ところが、先ほどの資料一にありますように、少しでも体調が悪ければ、会社が示した整理解雇の人選基準では、病欠日数が基準にされている。したがって、病欠日数が解雇の基準になるとすれば、少々無理しても乗務しようということになりかねません。

 労働者の声として、私にもメールが随分来ています。職場では、同僚と顔を合わせるたびに、やめるかということが合い言葉になっている。仕事の合間の話は、転職探しや勤務の切り下げに対する不満の話ばかり。明らかにモラルは低下していると思うが、個人個人にとっては死活問題なので、どうしてもそうなってしまっている。次は自分の番かとびくびくして飛んでいる。恐怖政治の始まりで、不安全を感じても会社や上司に物言えぬ状態になっている。ここまでメールが届いています。

 今何かやったらすぐ首というおそれがあります。上に物申したらにらまれるのではないかと思っています。本当のことは言わないでおこうと思ってしまいます。体のことは言わない方がよいでしょう。悪い報告はしない方がよいでしょう。危ない考え方を振り払って乗務についています。こういうことまで言わざるを得ない切実な実態があるわけです。だから私は言っているわけです。

 だから、この声というのは、労働者のコミュニケーション、モチベーションが低下している実態をあらわしていて、重大事故の予兆をつかみ警告するヒヤリ・ハット情報などの自発的安全報告制度、すなわちセーフティーリポートなど安全管理体制が十分に機能していないんじゃないかという意見も出ているそうです。

 国交省として、まさに日航の安全確保体制について監査を実施すべきではないのか。事故、トラブル情報など、安全情報がきちんと把握されているか、今回の人員削減や退職強要が安全確保に悪影響を与えていないかどうか、この点からの調査が必要じゃないでしょうか。

馬淵国務大臣 安全運航の確保というのは大変重要なものであるということで、万全を期すことが必要だと考えております。国土交通省としても、日航に対しては立入検査あるいは報告徴収を適宜行っておりまして、安全管理体制が機能しているかということについては監視、監督を行っております。

 実際には、立入検査ということでは、本社や、あるいは運航便に搭乗して実際にその状況を確認する等、さまざまな検査を行っておりまして、必要な監視、監督を現在も実施をして、運航の安全確保に関しては万全を図ってまいっております。

穀田委員 きょうは厚生労働省も来ていますから、今言ったそういう退職強要だとかという事態と安全運航という問題が深く結びついているという角度から調べていただきたいということを言っているわけです。

 こういうことが起こっている背景についても、私、一言したいと思うんです。問題は、退職強要までして人員削減目標達成にこだわるのはなぜかということなんです。

 メディアの報道では、日航の会社幹部は、今回の人員削減について、金融機関との約束事で絶対に達成しなければならないなどと言っています。この間の日経新聞でも、「日航融資再開へ三条件」という見出しで、人員削減、返済期限の短縮、公的保証の三点を銀行団が要求していると報じています。銀行が借りかえ融資を認める条件として、来年三月末までの目標を前倒しして十一月までの人員削減の達成を求めているというのが理由なわけです。

 ところが、考えてみると、八月末の更生計画案では、更生債権等の弁済計画というのは七年間の分割債権になっているんですね。このこと自体が十一月に承認されるかどうかが問われているのにもかかわらず、こんなことを言っている。だから、銀行の借りかえ融資というのは、会社更生の前提条件ではないはずなんです。このことだけはお聞きしておきたいんです。

 しかも、この問題の中心は、やはり銀行というのは極めて横暴だ。はっきり言って財務面だけのことしか考えていなくて、安全や労働者の生活とかはお構いなしという姿勢がありありだと私は考えます。

 そこで、銀行団は目標達成のためなら退職強要も行えと言っているのかということについて、見解をお聞きしたい。

馬淵国務大臣 この更生計画は人員削減のみで達成されるものではありませんので、ですから、その意味では、人員削減計画を含めて、この計画の着実な実行というものが求められているわけです。

 その上で、金融機関がこの更生計画案の着実な実行の中で融資を行うということが一つ大きな課題となっておりまして、早期一括弁済による更生手続の早期終結を目指すということが更生計画案に盛り込まれておりますので、これを前提とさせていただいているということであります。

穀田委員 早期と言っているだけで、十一月末までにこういう人員削減をやらなくちゃならぬということを書いているわけじゃないんですよ。やはり銀行の態度というのは非常に横暴だ、間違っていると私は思います。

 やはりこういう問題というのはあくまでも納得と話し合いで進めるべきものであって、大体、政府は、一に雇用、二に雇用、三に雇用と言っているわけだけれども、これほどの大量の解雇をとめないでどうするのかということを私は言いたいと思うんです。

 更生計画案の中で安全運航確保が記載され、先ほど述べたように、計画の実行に当たり安全への配慮がおろそかにならないようにとしています。私は、この観点を堅持させることが必要だと。私は、もう一度そういう立場で公共性や安全性を優先して実施するように管財人にも強くその点は要請すべきだと思うんですが、その決意を承りたい。

馬淵国務大臣 更生計画案の概要にも明確にそのことは示されておりますので、私どもとしても、日本航空並びにこの機構に対しましては、しっかりと指導監督してまいりたいというふうに思っております。

穀田委員 私、指導監督は、先ほど言ったように、監査をやったり立ち入ることをやっていることは知っています。問題は、今述べましたような、大臣も事実かどうかと言ったわけだから、そうすると、事実かどうかということを確かめる必要があるわけでして、そこはしっかりやっていただきたいと思います。

 私は、なぜ一万六千人もの解雇が必要なのかという根拠が極めて不明確だと考えています。何度も言うんですけれども、航空輸送における安全は航空会社の至上命題であり、いかなる経営危機のもとにおいても揺るぎないものにしなければならない、これは日本航空の安全アドバイザリーグループ新提言書に書かれている精神であります。安定しているときは安全の投資は比較的楽だ、こういう経営が困難のときこそ安全のための投資が必要なんだという角度でやらなきゃならぬということをこのアドバイザリーグループは指摘しているわけですよね。

 もちろん、いろいろな考え方はあるでしょう。でも、実際は、計画を大幅に上回る黒字が、大量の解雇を行わなくても、さらに給料をカットしていないのに生まれているわけです。したがって、一定の合理化だとか給与減を組合側は受け入れを表明している。これとあわせて、公租公課の負担軽減などの工夫を行えば再建は可能だ。

 したがって、徹底して我々が見守らなければならないのは、安全問題、それにつながる人の問題という角度から見ることが必要だということを述べて、質問を終わります。

古賀委員長 次に、中島隆利君。

中島(隆)委員 社会民主党の中島隆利でございます。

 馬淵大臣は、ごあいさつ、所信表明で、国土交通行政は日本の背骨をなしているというふうに申されました。国民生活のありように直結しているというふうに私も思います。大臣を初めとする政務三役におかれましては、国土交通行政の改革や当面する諸課題に全力を挙げて取り組んでいただけると強く期待しているところであります。

 また、鹿児島県奄美地方を襲った豪雨災害について、被害に遭われました方々に心からお見舞いを申し上げ、同時に、国土交通省といたしまして、ライフラインの復旧と万全の対策を講じるよう、強く冒頭に要請しておきたいと思います。

 さて最初に、今後の治水、利水対策のあり方についてお伺いをいたします。

 有識者会議の中間取りまとめは、パブリックコメントを受け、ダム事業の検証に関する実施要領が九月二十八日に各検討主体に通知をされました。ダム建設をめぐっては、膨張する事業費、住民とのあつれき、環境に対する影響、さらに、計画から建設まで長期間を要し、治水、利水の効果も大きく変わっていることなどを踏まえ、ダムによらない治水、利水対策への転換は急務であり、時代の趨勢だと考えます。

 しかし、事実上の建設主体である事業者が検証主体になっていること、あるいは補助ダムの検証は都道府県への要請にとどまっていることから、ダムによらない治水、利水への転換が本当に進むのかという懸念を本委員会でも再三指摘させていただきました。

 実際、十月二十日の読売新聞で、検証の対象となっている三十一のダムについて、事業費を支出する五十六都道府県のうち三十四都県が、検証を前にして、ダム建設の継続を求める方針であると回答しているということであります。建設中止を求めるという回答はゼロであったということでございます。

 このような現状、懸念を踏まえつつ、大臣は治水、利水対策の転換をどのような決意を持って進めようとしていらっしゃるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

馬淵国務大臣 政権交代によって、ダムによらない治水、利水、これらの検討を行うということで、この一年間、有識者会議で議論を重ねてまいりました。ようやく、その再検証の評価軸が定まり、再検証の指示、これは地方整備局並びに水資源機構、そして関係の都道府県に関しましては要請という形でお願いをしております。

 私どもとしては、とにかくこの再検証というプロセスにしっかりとのせていただく。主体が検討の中心にいるということが問題だという御意見もいただきますが、一方で、流域の市町村を含め自治体の皆さん方の御意見ということもあわせて地域の方々の御意見を取りまとめていくには、国が行うというよりも、むしろ事業主体がやはり行うべきであるということを、これは有識者の皆さん方の中での御議論としてまとめていただいたものであります。

 いずれにしましても、私どもとしては、これは予断を持たずに検証ということでありますから、今後も、この検証プロセスの中で御議論いただくものだと思っております。

 新聞記事には、御指摘のように、都道府県ではそういった声があるということも、私もこれは報道では見知っておりますけれども、具体的な検証プロセスはこれから実施されるわけですから、そこでどのような結果が出るかというものについては、まさに予断を持たずに見届けてまいりたいというふうに思っております。

中島(隆)委員 五月の十八日、この国土交通委員会で、前原前大臣にこの点も質問いたしました。それに対する回答でございますが、検証をゼロベースで実施してもらい、補助金については、この検証の結果についてシビアに判断し、補助金をつけるかどうか、額についても査定をする、こういう御答弁をいただきました。

 これは、私が指摘したのは、補助事業であるけれども、二分の一は国が出しますし、しかも、国庫補助を受けますと、七五%近くは国が補助をするわけであります。八十三事業で、総事業見直しの予算だけでも三兆円に上ります。そして、五十三の補助事業で九千億にも上るわけであります。こういう予算が投じられる補助事業をやるわけですから、国は、ただ要請をするだけではなくて、やはり厳しくこの検証をただすべきではないかと再三申し上げておるわけであります。

 今の御答弁も、要請をする、予断を持たずに、こういうお言葉、回答でありますが、前大臣が述べられました、そういう意思に基づいて検証されるかどうか、再度決意をお尋ねしたいと思います。

馬淵国務大臣 私も、この一年間、できるだけダムに頼らない治水ということの有識者会議に出席をしてまいりました。基本は、この中で定められた検証プロセスでしっかりと検証を行う、これに尽きると思っております。

中島(隆)委員 この中間まとめの検証に基づいてしっかりやるということでありますので、今の視点も、ぜひひとつ論点に置きながら検証をお願いしたいと思います。

 さて、私は、社民党の九州ブロック選出の議員でありまして、党の九州ブロックのダムによらない治水対策の実現を目指す連絡会議を結成いたして活動いたしております。

 先日、長崎県の石木ダムの視察を行いました。行政、住民のそれぞれからお話を伺いました。石木ダムにつきましては、建設計画の策定が今から三十六年前、この間、一九八二年には土地収用法に基づく強制立入調査が行われました。しかも、機動隊と反対住民が衝突する、こういう状況の中で開始されているわけであります。昨年には、ダム建設反対の署名簿を県が無断でコピーして、関係市町村に配付する、こういう問題も起こっております。現在でも反対住民が十三世帯存在する中で、長崎県では昨年事業認定申請を行い、今年三月にはつけかえ道路建設の工事が着手されましたが、反対住民の抗議によって工事は中断しているという状況にあります。県側との話し合いが行われておりますが、反対地権者の方々は、最終的に強制収用のような強権的な手続が発動されるのではないかと強く危惧をされております。

 ダムによらない治水対策に向け、石木ダムを含めてダム事業の検証が要請されているわけでありますが、一たん事業認定手続等を中断して、あくまでも住民との合意形成に真摯に取り組むべきではないかというふうに思います。この石木ダム建設の現状について、国交省はどのように認識をされているのか、お尋ねいたします。

三井副大臣 今、中島議員からお話がございましたように、石木ダムについては、地権者の反対という中で工事がストップしているのが現状でございます。また、事業に対する合意形成がいまだなされていないという状況であることも承知しております。

 また、石木ダムの補助ダムについては、今大臣からも御答弁ございましたように、有識者会議からの中間取りまとめをほぼそのまま反映して新たに策定した、ダム事業の検証に係る検討に関する再評価実施要領細目に基づき検討を行うように、去る九月二十八日に道府県知事に対して要請をしたところでございます。また、その再評価実施要領細目では、検証に係る検討に当たって、透明性の確保を図り、地域の意向を十分に反映することが重要との考えのもとに、検討過程において主要な段階でパブリックコメントを行い、関係住民の意見を聞くとされております。

 これらの点を踏まえて、石木ダムについては、長崎県において適切に対処されるものと考えております。

中島(隆)委員 ただいま答弁いただきましたように、十分住民の意見を踏まえながら今後検証を求めていくということでございますので、ぜひそのような配慮をいただきたいと思います。十三世帯、絶対反対の意見を申される方が三十一年間にわたって運動をされています。ぜひ、あくまでも住民との合意に真摯に取り組んでいただきますよう、切にお願いしておきたいと思います。

 引き続き、石木ダムに関連して何点かお尋ねいたします。

 お手元に配付しております資料の、まず資料一を見ていただきたいと思います。長崎県石木ダムの目的、位置を示している図でございます。これは、御承知のとおり、川棚川が本流でありまして、その支流であります石木川、一番下の方に赤い印ができておりますが、ここにダムをつくるわけであります。この川棚川の延長が二十一・八キロ、八十一・四平方キロメーターございます。石木ダムについては、約四キロメーター、川棚川から二キロメーターの地点にできるわけでありますが、九・三平方キロ、約一一%を占める領域でございます。こういう位置にできます関係で、十二の支流があるわけですが、河口地域に接点がある石木川、このダムでは治水対策の効果はないのではないか、こういう指摘が現地でもなされました。

 私も現地に行きまして、水害の起こった河口地域、平成二年、その前の昭和四十一年に床下、床上浸水があったと聞いておりますが、それ以来水害は起こっていないんですが、ここでも、急傾斜の下流の石木川にダムをつくっても、上流から流れてくる流量の治水には効果がない、こういう指摘がなされています。そこで、識者や住民からダム建設に対して、このはんらん対策、十分なる調査、計画についての検証が必要であるということを強く指摘もされております。

 そこで、これらのダム建設の計画のデータの洗い出し、あるいは補助ダムの場合の、県に任せてしまうというこの検証方法、これは非常に問題ではないかというふうに思っております。そこで、国としては、やはりこれらの計画についても、専門家あるいはその他の学識者を含めたチェックが必要ではないかというふうに思っておるわけでありますが、この点についてお考えをお尋ねいたします。

三井副大臣 今回の個別ダムの検証に係る検討につきましては、事業をみずから実施する、そしてまた検討に必要となる情報を保有している事業主体が責任を持って検討することが適切であると考えております。また、補助ダムにつきましては、各道府県が主体となって検討を行うよう要請しているものであり、その検討を国が直接行うものではない、こういうぐあいに考えております。

 また、今回のダム事業の検証は、事業再評価として実施するものであり、道府県が対応方針を決定した上で、国土交通大臣が補助金交付等に係る対応方針を決定することとしております。

 これらの点を踏まえて、石木ダムについては、長崎県において適切に対処されるものと考えております。

中島(隆)委員 治水についても、データについて大変問題があるような気がいたします。ぜひこの問題について、道府県が事業主体でやるわけでありますが、その検証後のさらなる国の検証を厳しい視点で行っていただきたいと思います。

 次に、水需要予測のデータの検証でございます。

 資料二を見ていただきたいと思います。これも、長崎県石木ダムの行政区域内の人口及び給水人口の予測値を示しております。これは、佐世保市からパンフレットとして提供された資料でございます。資料二の方の人口の推移でありますが、示されているように、平成十九年から二十九年、約一万人ぐらいの人口の減少が予測をされております。しかも、給水人口、資料三を見ていただきたいと思いますが、これによりますと、実績値、平成十五年のところから二十一年まで、ここは横ばいであります。一人当たり一日百九十リッター前後という位置でございます。それが今回の予測では、一人当たり二百二十一リッターが予想されています。

 人口が減少する中でこれだけの給水量の予測をされているわけでありますが、これは、これからの節水型機器あるいはその他の技術開発等で、給水量は減少しているというのが一般的な社会的な現象でございます。そういう中で、今回の長崎の石木ダムの人口予想と給水人口、この資料を見ましても、非常に給水の計画が問題ではないか。これは地元からお聞きいたしましても、このような給水の予測は余りにも過大過ぎる、こういうような御指摘があっております。

 この点につきましても、やはり住民や識者から将来的な水需要の十分なる検証をすることが必要ではないかというふうに思っております。特に、利水参加者にデータの点検、これを任せるのではなくて、これもやはり国や専門家の給水計画についてのチェックが必要ではないかというふうに思っておりますが、これについてのお考えもお尋ねいたします。

三井副大臣 利水面の検討も当然行ってまいりますが、特に、先ほども申し上げましたけれども、事業主体が責任を持って検討するのが適切であるとの考えのもとに、国が直接行うことは考えておりません。

 長崎県において適切に対処されるものと考えているところでございます。

中島(隆)委員 利水の問題についても事業主体だというふうにおっしゃるんですが、この事業計画そのものをお尋ねいたしました。総事業費が二百八十五億。治水分で六五%で百八十五億円、このうちの二分の一が国でありまして、その二分の一の九十二億が県。しかも、利水関係については、百億が佐世保市等々の負担でありますが、国庫補助を含めますと、二百億以上が国の負担であります。しかも、利水関係で聞いてみますと、佐世保市はこの百億に、ダムの建設の負担のほかに、ダムができた後、浄水場配水管等をつくるのに二百五十三億も予算が要る。合わせますと、三百五十億。こんな膨大な費用がこの利水計画に要るわけであります。現地に行きましたら、現在でも年間一万トンの漏水が起きている、こういう計画であります。

 ですから、こういう計画で、事業主体に検証を任せるということであれば、水を引きたいと要望する事業主体は、当然建設という方向に向かうわけであります。こんな治水とかあるいは利水が問題点があるという状況がうかがえる中で、国が全く検証を任せるということでは、今回の検証が本当になされるのかどうか、危惧をするわけであります。この点については、中間まとめの検証に基づいて、住民の意見を十分聞きながら対応するということでありますので、ぜひこの治水、利水については十分なる検証を国も行っていただきたいと思います。

 五点目に、ダムの検討に関する実施要領に、学識者や関係住民から意見を聞くよう定められています。指摘するまでもなく、ダム建設にあっては周辺住民の間で賛成、反対の意見が分かれております。今回のダム事業の検討では、検証主体がダム事業者になりますから、ダム建設の推進に偏りがちになります。住民の意見をしっかり聞き、対応方針に反映されることが必要であります。

 そこで、今回、この検証の実施要領の中にはパブリックコメントあるいは住民の意見を聞くということになっておりますが、双方向の、事業者と住民の十分な意見、これが保障されるような公聴会等が必要ではないかというふうに思っているわけですが、これについての意見をお尋ねいたします。

馬淵国務大臣 御指摘のように、検証に当たっては、その地域の住民の皆さん方の声をしっかりと受けとめなければならないということは十分承知をしておりまして、そのためにパブリックコメントを入れてはおりますが、あわせて公聴会の開催をということで御指摘いただきましたが、これはその地域の実情に応じて御判断いただくべきものだというふうに私どもは思っております。

 パブリックコメントはプロセスの中に入れ込んでおります、皆さん方の意見を聞くと。その開催の形式については、あるいは運用については、実情に合わせて御判断いただくべきものだというふうに思います。

中島(隆)委員 これも、地元の住民の皆さん方は、これまで三十一年間、ダムの建設について県との協議、ほとんど聞く耳を持っていただけなかった、こういう強い不満もございます。今回の検証については、それを正す意味でも学識者による検証がなされたと思うんです。その中にも、住民の声を十分反映する、それを求めています。ぜひ、事業主体のそういう検討だけではなくて、第三者機関の公聴会等の開催、これも強く国の指導をお願いしておきたいと思います。

 時間がございませんので、次に荒瀬ダム撤去の関係でございます。

 これにつきましては、九月までに二回の会議を国、県が持たれたというふうに聞いております。これも全国初めてのダム撤去で、前大臣も全国のモデルとして検討していくということを述べられております。これまでどういう取り組み現状なのか、今後の取り組みについてお尋ねをいたします。

馬淵国務大臣 これは、国と熊本県が協力して検討会議を設置してまいりました。荒瀬ダムの撤去実施に当たっての具体的な施工計画、コスト縮減方策、実施に当たっての詳細な技術、社会資本整備総合交付金制度の適用などについて検討を進めることとしたというふうに聞いております。国としては、これらの課題について適切にアドバイスを行ってまいりたいと考えております。

 こうした老朽化の施設、河川構造物への対応ということでありますが、これに関しましては、直轄の管理区間で、河川管理施設が約一万施設、許可工作物が一万五千施設ございます。現在、築後四十年以上であるものが約四割、十年後には約六割となるということで、大変重要な課題であるということはよく認識しております。

 いずれにしましても、こうした厳しい財政状況の中ですので、長寿命化あるいはコスト縮減、こういったことを行って確実な維持管理の推進を進めながら、また戦略的な河川維持管理についても検討を河川局において進めさせていただいているところであります。

中島(隆)委員 この問題は、全国初めての大型ダムの撤去だということで、国もモデルとして、県と国も協議会には参加をして取り組んでおられるわけであります。

 今おっしゃったように、全国には一万五千近く構造物があるということでありますが、五十年近くになる老朽化のダムの撤去が今後続いてくるわけであります。荒瀬ダムも、三月三十一日に水門が開かれて、不許可施設として残っているんですね。二年後に撤去するという計画でありますが、今の撤去の資金的な手だてがなければこの不許可のダムがそのまま残るわけでありまして、今後ダムの撤去が続く、全国のダムがこういうことで残る状況になるのではないかという危惧をしています。ぜひひとつ国、県協議をもって、大きな今後の方針としてダム撤去に支援をお願いしていきたいと思います。

 時間、最後になりましたが、一つだけ、これは地元から承った桜島の火山対策の問題でありますが、非常に今年度降灰が大量に、昨年から膨大にふえています。それで、鹿児島近隣の市町村を含めて、道路の降灰除去の車両が国から貸与されていますが、小型の貸し付け車両がない、こういうことで、これについての増車をぜひお願いしたいということでありますので、これについての対応をお願いしたいと思います。

三井副大臣 平成十八年から引き続き桜島の噴火が続いているわけですけれども、今、中島先生からお話がございましたように、小型車両については、結論から申し上げますと、可能な限り貸し付けを行うということで御理解していただきたいと思います。

中島(隆)委員 可能な限りということですが、大型車両では除去できないところがあるわけでありまして、除去できなければ当然そのまま火山灰の中で生活をするという環境になるわけです。この地元の御要望を受けて、小型車両の貸与についてぜひひとつ万全な体制をとっていただきたいと思います。

 特にお願いしたいのは、昨年、平均の降灰が年間百二十六キロ、今回は約七百八十回の爆発、大変な量で、今爆発が起こっています。私も熊本で、阿蘇で経験しました。大変な被害をこうむっています。農家の経営、あるいは高齢者だって宅地内の降灰が除去できない、こういうことが起こっています。ぜひ、活動火山対策特別措置法の見直し等を含めて、財政的な面、いろいろな支援を強化していただきたいと思います。

 以上、要望して、終わります。

古賀委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 馬淵大臣初め皆様方、御就任おめでとうございます。またこれからいろいろと議論をさせていただきたいと思っておりますが、きょうは、尖閣諸島の中国漁船衝突事故に端を発するさまざまな問題について、海上保安庁を所管する国土交通大臣初め、皆様方にお伺いをしてまいりたいというふうに思っております。

 私、先日、十月九日に、超党派の議員連盟のメンバーとして、尖閣諸島の上空からの視察を行ってまいりました。原口一博民主党代議士、また河井克行自民党代議士を初めとする四名のメンバーで、民間のチャーター機に乗って、石垣空港からおよそ四十分かけて、尖閣諸島、魚釣島、また南小島、北小島、そして久場島、大正島と回って、一通り見てまいりました。この視察については、さまざまな形で報道にも取り上げられたり、いろいろと議論を醸し出している部分もありますが、私としては初めて、初当選以来、さまざまな懸案となっている尖閣諸島の地を自分の目で見ることができて、大変有意義だったというふうに認識をいたしております。

 これまで、こうした超党派の国会議員団が尖閣諸島を見る、あるいは国土交通政務三役、各政党の国土交通政策の責任者、こういう方々が現地に赴く際には、基本的には海上自衛隊あるいは海上保安庁が哨戒機を出してというか乗せて、上空からの視察を行わせるというのが通例だったというふうに聞いております。残念ながら、今回の私たちの視察に対しては、私たちは国土交通省にも協力要請をしたわけですけれども、結果として、国土交通省さんからは、通例行われているような哨戒機あるいはその他の飛行機や艦船を出しての視察の協力というのはいただけなかったわけであります。

 これはどういう判断に基づいてこのような対応をとられるに至ったのか、ぜひ理由をお伺いしたいというふうに思います。

馬淵国務大臣 委員会等の国会機関からの便宜供与の依頼につきましては、航空機の運用計画の変更を要しないこと、当庁の業務遂行に支障を来さないことなどを条件として、これに協力することとしております。

 先ほど御指摘のありました、過去において事例があったのではないかということでございますが、過去十年間においては八件、国土交通委員会などの委員派遣などがございましたが、これはいずれも、今申し上げているように、運用計画の変更を必要としなかった、また業務遂行に支障を来さなかったということでございました。

 御依頼のあった十月九日でありますが、十一管区の航空機を中心に、尖閣諸島の周辺海域における哨戒等の業務に全精力を挙げて対応しておりましたゆえ、便宜供与依頼は御遠慮いただいたということでございます。

柿澤委員 運用計画に支障を来さない範囲でというお話がありましたけれども、私が伺っている限りでは、この運用計画に支障を来さないというのは、私たちもそれはそうあるべきだというふうに考えておりましたし、そうした運用の中で、定例的に警戒あるいは哨戒活動の一環として上空を飛んでいる、その通常どおりに運用されている哨戒機に乗せていただければいいんじゃないか、こういうお話も申し上げたようでありますが、そうしたことにも結局は応じていただけなかった、こういうふうなことであります。

 これは結果として、今回この時期に行かない方がいい、そういうふうに、いろいろなところで水面下の御意見があったというふうにもお聞きをしますけれども、そうした政府なりあるいは与党の皆さんの御意向が反映されて、こういう形の判断をするに至ったということではありませんか。

馬淵国務大臣 哨戒の航空機に同乗できたのではないかというお尋ねだと思います。

 当時、御案内のように、尖閣の周辺海域というのが外国漁船の多数操業というような状況でして、哨戒中の航空機がそのまま事態対処に投入される可能性がある、こういう状況でございましたので、便宜供与というものは御遠慮いただいたということでありまして、今申し上げたように、所管する海上保安庁の中での判断である、私どもとしてはそのように判断したということであります。

柿澤委員 では、今まではそういう事態が全くなかったんですか。今回の中国漁船の問題が起きる前から長年にわたって、この海域、あるいは八重山諸島を初めとした石垣管区の全体の中では、外国漁船、中国や台湾、こうした船が、排他的経済水域や、場合によっては領海内に入り込んで操業しているという実態があって、だからこそ、こうした過去十年に八例、国会議員の視察を、皆さんのお運びをする形で行われているのではありませんか。

 今回、このケースに限ってこうした形でお断りをしてくるというのは、結局は、この時期に私たちを乗せて視察を行ってしまえば中国を刺激するだとか、そうした配慮が働いた結果ではないかというふうに思えてなりませんが、もう一度御答弁ください。

馬淵国務大臣 繰り返しになりますけれども、過去八件においては今回のような状況ではなかったということでございます。

 今回に関しましては、繰り返しになりますけれども、哨戒の業務に全精力を挙げて対応したいということ、また事態対処という可能性も高かったことから控えさせていただいたということでありまして、御懸念の点というものは一切当たらないということで申し上げておきます。

柿澤委員 日本の国会議員が自国の領土を視察するというのに当たって、これまで通例として行われてきた海上保安庁の協力を今回に限って拒んでくる、こういう対応をされたということが対外的に見てどういうメッセージを発することになるのか、こういうことを考えなければいけないというふうに思います。しかも、日本の政府、前原国土交通大臣のときに、事件直後に石垣島に足を運んでおられますけれども、それ以降、政府、あるいは政府外でも、日本の国を代表する国会議員が現地に足を運んでというケースは、基本的にはここまで、この一カ月余りの間なかったわけであります。

 そういう中で、私たちが視察を行おうというときにこういう対応をするということは、本当に対外的に、菅総理が国会を何日か休んで、国会日程をある意味では間に挟んでASEMまで行って、それで尖閣諸島は日本固有の領土だということを発信してきました。こういうふうな日本政府の姿勢とは全く合致しないのではないかというふうに思います。こうしたことが対外的に何らかの影響を与える、そうした思慮は馬淵国土交通大臣並びに国土交通省にはおありにならないのか、お伺いをしたいと思います。

馬淵国務大臣 海上保安庁を所管する国土交通大臣としては、このタイミング、この時期においては、とにかく第十一管区においてしっかりと海上警備を行っていただく、あるいは哨戒を行ってもらうということが私どもの最大の使命である、このように思っておりましたので、通常どおり、このときは大変緊迫した状況でもございましたので、この業務に全力を挙げるのが私どもの務めであると考えておりました。

 委員が御自身の予定の中で行って、便宜供与が図られなかったことについては、これは申しわけございませんということで私どもお答えをさせていただいたと思っております。

 対外的にとおっしゃいますが、我々としては対外的に、しっかりと領海内を警備することが我々のメッセージであると考えております。

柿澤委員 私が当日、原口代議士を初めとした視察後の記者会見に同席をしてお伺いした限りでは、馬淵大臣は原口さんとお話をされて、そのときには協力要請に対して、判断がつかない、こういうお話をされたというふうにお聞きしました。自分では判断がつかない、こういうお話をされて、結果として時間切れになったんだ、こういうことを記者会見の場においておっしゃられていたんですけれども、今の説明とは多少違う面がありますけれども、事実を確認させてください。

馬淵国務大臣 済みません、どのような発言を原口議員がされたか、私は存じ上げておりませんが、少なくとも、直接尋ねられたときに、難しいのではないかということは私は直接申し上げました。

柿澤委員 その難しいという理由は、そのときは何とおっしゃったんですか。

馬淵国務大臣 繰り返しですが、当時の状況では、哨戒を行っている、それこそ十一管区を挙げてのこの領海内の警備を行っているというところから、難しいのではないかということを申し上げました。

柿澤委員 九月七日に中国漁船の衝突事件が起きて、そして我々から見れば不可解な中国人船長の釈放の出来事があって、それ以降、先ほど緊張状態だったといみじくも馬淵大臣もおっしゃられましたけれども、緊張状態だというふうにそれを表現すべきかどうかはともかくとして、日中間の議論が確かにメディアなどを通じていろいろあった。そうした中であったから、結局、今回私たちの視察に対して協力を断られた、こういうことなのではないかというふうに、私は今のやりとりを聞いてもそういう思いをぬぐうことができません。

 また、もう一つ、これに関連してというか尖閣諸島の問題で、我が党の小野次郎参議院議員の参議院予算委員会における質疑で、海上保安庁の本庁にこの衝突時の模様を録画したビデオのコピーがある、こういうことが明らかになりました。

 これまで一カ月余りの間、私たち、ビデオの公開を求めて予算委員会等の理事会で議論をしてきたわけなんですけれども、これは捜査当局が持っている資料だということで、那覇地検の判断であるということを繰り返し繰り返し政府並びに与党の皆さんは見解としておっしゃられてきて、那覇地検の判断による、こういうことでずっと提出をしないままここまで来たわけです。今、急転直下動きが出てきているようにも聞いておりますけれども、しかし、一カ月余りが経過をして、参議院の予算委員会で野党のみんなの党の議員がお尋ねをしたら、何と行政府の海上保安庁の中にビデオテープのコピーがあるというじゃないですか。

 これは、今まで言ってきた、那覇地検の判断で提出をすべきものではなくて、まさに馬淵国土交通大臣の海上保安庁を指揮監督する立場で、馬淵大臣が判断をすれば提出できるものですよね。これを今まで存在するということを公式にはおっしゃってこなかった。また同時に、提出をすべきだという小野委員に対する答弁も、これは私が判断することではない、こういう趣旨の答弁だったと思いますが、こういうことになってしまっている。こうした対応をとってきたことについて馬淵大臣はどのように考えておられるのか、お伺いします。

馬淵国務大臣 証拠として提出をした、このように申し上げてまいりましたこととコピーがあるということ、これは何ら問題ないと思っております。なぜならば、これは同一のものでありますから、この同一のものにつきまして、証拠として保管されている映像と同一のものを我々は持っておりますが、これは刑事訴訟法で規定される訴訟に関する書類に該当します。

 例えば物であれば、証拠を送致すればもう現物はございません。しかし、このような映像のようなものはコピーが可能ですから、当然それにつきましては、私どもとして保管をしているということを申し上げましたが、これは同一のものですから、繰り返しになりますけれども、判断は一義的に検察当局、そして海上保安庁は、私どもでございますが、協議して対応していく、このように承知をしておりました。

 私どもがこれを判断して、持っているから出せるんだということではない、このように思っております。

柿澤委員 これは、馬淵大臣の政治家としての判断として、法務省あるいは地検のそうした判断を待つという姿勢をとられているということであって、何か法的根拠があって国土交通大臣としてはこれは出せませんということではありませんよね。何か法的根拠が馬淵大臣の今の御判断にあるのかないのか、お伺いをしたいと思います。

馬淵国務大臣 繰り返し申し上げますが、刑事訴訟法第四十七条に規定する訴訟に関する書類に該当ということでございます。コピーを保管しているから、それは自分で持っているんだから出せるものだと。これは、先ほど繰り返し申し上げましたが、物であれば送致した段階で存在しませんが、コピーをしたものがあるという前提においてはこれは同一のものですので、我々は刑事訴訟法の四十七条に基づいて、これを勝手に開示できるものではない、こういう判断をしておりました。

 これはその後も変わっておりません。検察当局の判断、並びに今、現時点において国会の求めということがございますので、これはしっかりと政府として対応して、今後の対応を決めていくということであると思っております。

柿澤委員 そうはいっても、同じ参議院の予算委員会で、馬淵大臣、このビデオをごらんになられているというふうにおっしゃっていますね。振り返って考えてみると、この事件の海上保安庁としての捜査が行われている段階では、前原国土交通大臣だったと思うんです。そういう意味で、事後的にこのビデオをごらんになられているということは、これは行政府の長としてこのビデオをごらんになられているわけで、証拠品の開示云々の刑事訴訟法上、私たちに公開できないということになると、馬淵大臣が見ていること自体もおかしなことになるんじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

馬淵国務大臣 私どもは海上保安庁を所管しておりますので、その責任者として、行政内での判断というものを踏まえて、どういったものかを知るということにおきましては、公に開示するとは該当しないと考えております。当然ながら、海上保安庁における関係者もこれは見ております。

 これは繰り返しになりますが、皆様方への公開等々とは全く別物である、私ども行政内におけるその責任者としての当然の行動であると思っております。

柿澤委員 では、ごらんになられているということで、ビデオの内容なんですけれども、間もなく秘密会の形で何か予算委員会の理事会に開示をされるということですから、ある種、出しおくれの世界になってしまうのかもしれませんが、先週の日曜日、テレビの「報道二〇〇一」という番組に石原慎太郎東京都知事が出演をされて、このビデオの内容について、いささか、非常に残虐な内容も含んだ、仄聞だという前置きつきの内容をおっしゃられました。内容をそのまま言うと、日本の巡視艇の乗員が何かのはずみで海に落ちたのを、中国の漁船の方がもりで突いている、こういうことが収録をされているんだ、こういうことを公のテレビで石原知事がお述べになられているわけです。

 これが正しいのか正しくないのか、わかりません。もう一方で中国の側は、このビデオが非公開であることをいいことに、日本の巡視船の方から中国の船に衝突をしてきたんだというふうなことを、コンピューターグラフィックスの図解まで入れて、かなり公のメディアで喧伝をしている、こういう状況になっているわけです。こうした内容について、ビデオが非公開である中で、さまざまな、もう流言飛語に近いようなことが言われている。こうしたことが、結果的に国民の皆さんの中で非常にさまざまな憶測や動揺を招いている状況は否定をできないというふうに思います。

 そうした中で、先日私も、先ほど申し上げたように、超党派の議連のメンバーとして石垣島から尖閣諸島の上空を見て、石垣島では石垣海上保安部の皆さんから、また第十一管区の皆さんからお話を聞かせていただきました。

 ビデオの内容そのものは公開されていないにしても、このビデオについて、かつて今の前原外務大臣がおっしゃられていたように、中国船の方から体当たりをしてきたということが明々白々にわかるような内容であるのかどうか、こういうことをお伺いさせていただいたら、石垣海上保安部の担当者の方は、私も船乗りです、実際に話も聞いたしビデオも見た、「よなくに」、「みずき」という二つの船に中国の漁船が衝突したことはその私の判断として明らかだと考えています、こういうふうにおっしゃられていました。現場の担当者のレベルでここまではっきり言うというのは、よほどの内容がそこにはあったんだろうなというふうに感じさせられました。

 そういうことを踏まえてお伺いをさせていただきたいのですけれども、このビデオ、馬淵大臣も見られた。その見られた上で、今申し上げたような、まさに中国船の方が自分からぶつかってきているということがはっきりわかるものなのかどうかということをお伺いしたいと思います。

馬淵国務大臣 だれかが何かを言ったから話せという話じゃないと思っております。

 私は国土交通大臣としてこのビデオを見まして、巡視船の「よなくに」と「みずき」、これに漁船が衝突した前後、この映像であったということで、申し上げられることはそれがすべてであります。

柿澤委員 中国船の側から当たってきたということは明白だと馬淵大臣はおっしゃったのでしょうか。ちょっとわからなかったです。

馬淵国務大臣 もう一遍言いますよ。

 中国漁船が巡視船の「よなくに」、「みずき」に衝突した前後の映像である、これがすべてです。

柿澤委員 中国船が巡視船「よなくに」、「みずき」に衝突した前後の映像である、これがすべてです、これで本当にいいんですか。

 国土交通省として、海上保安庁を指揮監督する国土交通大臣として、先ほど来、超党派の議連が視察に行くと言えば、それはいろいろな理由で協力をできません。ビデオの内容は私たちが公開できるようなものではありません、したがって私たちの判断では公開しません。そして、ビデオの内容はどうだ、こういうことを言っている人がいるがとそれもひもといた上でお尋ねをしたら、衝突の前後が収録をされている映像です。こんなことはわかっていますよ。そういうことしか言えない、これでは、本当に毅然として、粛々と国内法にのっとって、また国際法にのっとって、尖閣諸島は日本固有の領土であって、その領土、領海を日本政府として守り抜いていくんだというメッセージを対外的に発信していることに全くならないではないですか。お尋ねを申し上げます。もう一度答弁してください。

馬淵国務大臣 個別の内容については、捜査の関係上申し上げることはできません。だれが何を言ったからといって話すというような内容でもないと承知をしております。

 そして、委員のおっしゃるような形が対外的なメッセージかどうかというのは委員の御判断であって、私は国土交通大臣としてそのように判断はしておりません。

柿澤委員 あえて申し上げますけれども、私は、このような及び腰の政府の姿勢が結果的にこのような事態をもたらす原因になっているというふうに思います。

 私が海上保安部でお伺いをした限りにおいては、九月七日、あの漁船の衝突事件が起きた際には、その直前には、中国の方からトロール漁船が領海付近に三百隻も押し寄せてきていて、そして一部が領海にも入ってきた、こういう状態だったと。こういう形で、結局、中国の漁船の船長を処分保留で釈放してしまえば、地元の漁民の皆さんも、またシーズンに入れば、どうせ捕まっても解放される、そういうふうに足元を見て、今まで以上に大量の漁船がこの海域に訪れるようなことになってしまうのではないかというふうに懸念をしているんです。

 そして、きのうは中国の漁業監視船が接続水域まで来たというではありませんか。今、報道ベースでいえば、この中国の漁業監視船は、この接続水域の海域に常駐することをねらっているとも言われている。現地の漁協の皆さんは言っていましたよ。このままいけば、日本の漁船が日本の領海内で操業しているのに、中国の漁業監視船に拿捕されて連行されかねない、こういう、皆さん本当に、安全、安心に操業できる環境が保たれないことについて恐れているわけなんです。

 こういう中でこのような御答弁に終始をされるというのは極めて残念なことだと言わざるを得ませんが、しかし、最後にお伺いをしたいと思います。この尖閣周辺の海域について、日本の領土、領海、そして国家主権を守っていくための馬淵大臣の決意をもう一度お伺いして、終わりにします。

馬淵国務大臣 我が国固有の領土であります領海内におきましては、私どもは適切に、国内法にのっとって毅然とした態度で今後も取り締まりを行ってまいります。

 以上です。

柿澤委員 きょうの質疑からはそれはうかがえませんでした。残念です。

 終わります。

古賀委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時四十六分散会


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