衆議院

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第7号 平成24年5月18日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十四年五月十八日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 伴野  豊君

   理事 小泉 俊明君 理事 小宮山泰子君

   理事 古賀 敬章君 理事 辻元 清美君

   理事 松崎 哲久君 理事 金子 恭之君

   理事 山本 公一君 理事 富田 茂之君

      阿知波吉信君    石井  章君

      奥田  建君    川村秀三郎君

      沓掛 哲男君    熊田 篤嗣君

      黒田  雄君    古賀 一成君

      坂口 岳洋君    高木 義明君

      津島 恭一君    辻   惠君

      中川  治君    橋本 清仁君

      畑  浩治君    向山 好一君

      谷田川 元君    柳田 和己君

      吉田おさむ君    若井 康彦君

      鷲尾英一郎君    赤澤 亮正君

      小渕 優子君    北村 茂男君

      佐田玄一郎君    徳田  毅君

      二階 俊博君    林  幹雄君

      平沢 勝栄君    福井  照君

      望月 義夫君    稲津  久君

      竹内  譲君    穀田 恵二君

      中島 隆利君    柿澤 未途君

      中島 正純君

    …………………………………

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    舟本  馨君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    石井 隆之君

   政府参考人

   (総務省行政評価局長)  新井 英男君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    稲田 伸夫君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  菊川  滋君

   政府参考人

   (国土交通省自動車局長) 中田  徹君

   政府参考人

   (観光庁長官)      井手 憲文君

   参考人

   (公益社団法人日本バス協会副会長兼高速バス委員会委員長)         小田 征一君

   参考人

   (高速ツアーバス連絡協議会会長)         村瀬 茂高君

   参考人

   (関西大学社会安全学部教授)           安部 誠治君

   国土交通委員会専門員   関根 正博君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十八日

 辞任         補欠選任

  橋本 清仁君     鷲尾英一郎君

  徳田  毅君     平沢 勝栄君

同日

 辞任         補欠選任

  鷲尾英一郎君     橋本 清仁君

  平沢 勝栄君     徳田  毅君

    ―――――――――――――

四月十九日

 尖閣諸島を初め我が領土領海を守ることに関する請願(古賀誠君紹介)(第九三六号)

 同(山本剛正君紹介)(第九七八号)

 同(浜本宏君紹介)(第一〇三一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 国土交通行政の基本施策に関する件(バス事業等のあり方)


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     ――――◇―――――

伴野委員長 これより会議を開きます。

 国土交通行政の基本施策に関する件、特にバス事業等のあり方について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として公益社団法人日本バス協会副会長兼高速バス委員会委員長小田征一君、高速ツアーバス連絡協議会会長村瀬茂高君及び関西大学社会安全学部教授安部誠治君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伴野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として国土交通省道路局長菊川滋君、自動車局長中田徹君、観光庁長官井手憲文君、警察庁刑事局長舟本馨君、警察庁交通局長石井隆之君、総務省行政評価局長新井英男君及び法務省刑事局長稲田伸夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伴野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伴野委員長 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと思います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、小田参考人、村瀬参考人、安部参考人の順で、それぞれ十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないこととなっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず小田参考人にお願いいたします。

小田参考人 おはようございます。日本バス協会高速バス委員会委員長をいたしております小田と申します。どうぞよろしくお願いします。

 四月二十九日の悲惨な事故に際しまして、同じ旅客運送事業に身を置く者として、改めて安全確保に対する強い決意を抱いております。また、被災されました関係の皆様に対しまして心からお悔やみを申し上げる次第でございます。

 さて、この事故に関しての所感等を求められておりますので、少しお話をさせていただきます。また、資料につきましては、お手元に配付してあると思いますので、十分のうちの半分程度、後ほど簡単に御説明いたしたいと思います。

 今回の事故について、私自身も四十数年、旅客運送事業、いわゆるバス事業に携わってまいりましたが、定時、定路線、三百六十五日運行するいわゆる路線バス、高速乗り合いバスと申し上げますけれども、この事業の中で、今回のように、運転者、それから運送を受託した貸し切り事業者、そして企画旅行を催行しました旅行会社、それぞれが安全確保についてここまでルールが乱れておったかということについては、甚だ面目ない次第でございますが、大変驚いております。

 そういう中で、あり方検討会というのが、二十二年の十二月からことしの三月まで、全十三回にわたり開かれておりました。全てに参加する中で、こういった諸問題についての一定の方向を結論づけたわけでございますけれども、その結論、実施が間に合わない中でこういう悲惨な事故が起きたということについては、じくじたる思いがございます。

 今回の事故でポイントは、高速ツアーバス業界であろうと日本バス協会であろうと、両方に共通して横たわっておりますのは貸し切りバス業界の問題でございます。

 この貸し切りバス業界は、平成十二年二月の自由化によりまして大幅な新規参入がありました。もともと、平成四年比較で申し上げますと、現在は事業者が三倍にふえております。規制緩和のあった十二年以降でも二倍になっておるわけでございまして、総数は四千事業者を超えております。私どもが組織する日本バス協会に加盟している会社はその五〇%の約二千社余りでございますので、残る二千社は、我々といえども全体が詳しく把握できない、そういう現状にございます。

 また、国土交通省におかれても、適時適切な監査ということにはなっておりますが、基本的には、これらの協会未加盟の事業者も含めて適時適切に監査ができておったかどうかということについては、予算、人員の面で恐らくできておらなかった。こういうことで、いわば未組織の、指導が行き届かない部分の事業者がたくさんある。それが、今回のように日雇い運転手を活用したり、それから、日雇い運転手自身がアルバイトをやっておったり違法行為をやっていたり、もちろん貸し切り事業者自身が、運行管理体制がきちんと整っていないなど、安全体制がおろそかになっておった。

 旅行会社、これは企画、募集をして催行する旅行責任会社でございますが、こちらも、我々は企画、募集してお客様を集めて、運行するのは貸し切り事業者だ、運行途上でどんなことがあっても運行事業者の責任だ、こういう基本的なスタンスの中で、不幸にして、それぞれが安全確保をきちんとできなかったということで未曽有の大事故になったと思います。

 きょうの事情聴取等を経まして、あり方検討会の結論も踏まえて、事故前に考えていたスケジュール、ルール、スケジュールについては一層の前倒しを、ルールについては歯切れよくきちんとした対応を実行することを切実に今感じております。

 所感としては以上のとおりでございますが、お手元の資料について若干御説明しておきます。

 衆議院国土交通委員会用資料として、資料一、資料二となっております。

 資料一の方は、四月二十九日の事故以降、日本バス協会としてどのような緊急的な措置を講じたかということの資料でございます。これは、ごらんいただいた上で御質問があればと思います。

 それから、資料二の方でございますが、「高速ツアーバス問題について」、五月十八日、日本バス協会となっております。これは、ちょっとページを開いていただきますと、右下にページが振ってございますが、二ページ、一つのテーマとして、「高速ツアーバス廃止に向けて」ということになっております。これは、あり方検討会で、今後二年間のうちに高速の乗り合いバスの方に許可をとって一本化する、こういう方向が示されている部分でございます。

 それから三ページは、「行き過ぎた規制緩和がもたらしたもの」。我々の姿勢は、たとえバス業界といえども、規制緩和の中で適正な競争を図っていかなければならないと認識しておりますが、行き過ぎた規制緩和は、人命を損なった今、ぜひともきちんとした一部見直しを、はっきりと安全重視の中で見直す必要があると認識しております。

 五ページは、高速ツアーバスがなぜこのように急成長したかということの背景に、平成十七年、十八年に、旅客課長の事務連絡、僕らは通達と申しておりますが、生じておりました高速ツアーバスを法的に認知をしたという通達でございます、これによって、高速ツアーバスのありようが全面的にオーケーされたというような錯覚を業界の方に与えたという、非常に契機となるというか、問題となった通達でございます。六ページ、七ページ、八ページにその通達の本文がございます。

 それから、九ページは事故の例でございます。

 十ページは、二年前、二十二年の秋に総務省から、国土交通省は是正すべきところが多々あるということで勧告を受けたものでございます。

 十一ページは、先ほど申したバス事業のあり方検討会、勧告等も踏まえて一年間で結論を出すとして始めた全十三回のあり方検討会でございます。

 十三ページは、日本バス協会が主体となって、貸し切り事業者の安全性、サービス等についての成績をいわゆる星の数によって公表しながらレベルを上げていこうというものについてでございます。

 十五ページは交通基本法に関して、十六ページは油の問題、また、その他、十九ページ以下でございますけれども、バス事業の現況等で参考になるデータを掲出させていただいております。

 以上でございます。

伴野委員長 ありがとうございました。

 次に、村瀬参考人にお願いいたします。

村瀬参考人 おはようございます。高速ツアーバス連絡協議会の村瀬でございます。よろしくお願いいたします。

 今回の事故に際しまして、不幸にも亡くなられた方々への心からのお悔やみと、負傷された方々への早い回復をお祈りいたしております。当協議会としても、今回の事故を非常に重く受けとめており、同様の事故を二度と起こさないよう、可能な限りの安全対策を行っていきたいというふうに考えております。

 お手元の資料に沿って御説明させていただきますので、お手元の資料をごらんいただけますでしょうか。

 本日、三つの点についてお話をさせていただきたいと思っております。一つが、高速ツアーバス事業の概要、二つ目が、高速ツアーバス事業の課題と取り組み、それから最後に、事故を受けての今後の取り組みというところに向けてお話をさせていただきたいと思います。

 四ページの方をごらんいただきたいんですけれども、まず、高速ツアーバスの定義をお話しさせていただきたいと思います。

 高速ツアーバスとは、旅行業法に基づいて、募集型企画旅行形式で旅行会社が企画、募集をする、この集客したお客様を貸し切りバス事業者に依頼をして運行いただく、こういったような、一般のいわゆる旅行会社が募集して、貸し切りバス会社に運行を依頼するというようなビジネスモデルになっております。その中で、特に二地点間の輸送を目的とするもの、観光目的ではなく、二地点間の輸送を目的とするものを高速ツアーバスというふうに定義をしております。

 五ページの方に参ります。

 高速ツアーバスの利用者数の推移ですけれども、二〇〇六年から急成長をしております。この要因は、インターネットを利用したウエブマーケティングを活用することで、既存の高速乗り合いバスが掘り起こせていなかった需要を喚起したというところが非常に大きいところだなと思っております。

 六ページの方ですけれども、規模観でいいますと、乗り合いバスとツアーバスでいいますと、全体の約六%が高速ツアーバスになります。それから、貸し切りバス事業に至りましては、輸送人員の約二〇%が高速ツアーバスの移動ということになっております。

 続きまして七ページの方なんですけれども、特徴としましては、首都圏から仙台、首都圏から名古屋、首都圏から京阪神、こういった大都市間を結ぶ三路線が高速ツアーバスの七〇%以上ということで、地方路線が主体の高速乗り合いバスに対し、高速ツアーバスは大都市間の路線が中心になっております。

 七ページの方はシェア率になっておりますけれども、八ページの方は、利用者数を棒グラフにしますとこのような形になっております。

 続きまして九ページの方なんですけれども、高速ツアーバスの特徴としまして、多様な商品の設定というところがございます。飛行機のファーストクラスのようなシートであったりとか女性専用車といったような商品を開発して、利用者が乗りたくなるバス、こういうものを提供してきました。

 下段の方を見ていただきますと、それぞれのお客様のニーズ、いわゆるセグメントごとに分けたニーズに向けてこういったような商品をつくることで、それを先ほど申し上げましたウエブ上で比較検討ができる。こういうことで、お客様がバスを選んで乗る時代を実現していくということができたかというふうに思っております。

 以上が高速バスの概要でございますけれども、引き続きまして、我々が考えております高速ツアーバス事業の課題というところをお話しさせていただきたいと思っております。

 十二ページの方になりますけれども、まず、運用面での課題ということで、一つ目、貸し切りバス事業者の法令遵守状況の問題、それから二番目に、集合場所での安全性確保の問題。

 今回の事故におきましては、この一番目の貸し切りバス事業者の法令遵守というところが特に大きかったのかなというふうに考えております。急成長する中でこういったような課題も浮き彫りになってきておりまして、あり方検討会の方でも、指摘事項ということで、課題として挙げられている事項になっております。それから、制度面での課題ということで、高速乗り合いバスとの規制格差の問題。この二点が大きく挙げられるかというふうに思っております。

 この運用面、制度面、これを先ほど言いましたあり方検討会の方で検討の結果、解決策として新高速バス制度というものが決められているというふうに考えております。

 続きまして十三ページの方なんですけれども、旅行会社と貸し切りバス事業者の関係、こういうところですけれども、旅行会社が企画、募集をする、集めたお客様を、貸し切りバス会社に手配をして運行を依頼する、これは一般的な旅行業の形態ではあるんですけれども、課題点は、バス運行管理の知識がない旅行会社が無理な依頼をしたり、法令遵守意識の低い貸し切りバス事業者に、これは、意図する、意図せず、両方あるかと思いますけれども、依頼してしまうリスクが存在している、こういうところが課題かなというふうに思っております。

 それから、集合場所問題に関しましては、各社の出発が集中、その上で、バスがふくそうして道路混雑、利用者による歩道占拠、こういったような問題があっているかなというふうに思っております。

 先ほど言いましたけれども、急成長とともにこういった課題が浮き彫りになってきているのかなというふうに認識をしております。

 それから、十五ページの方に参りまして、規制格差の問題なんですけれども、こちらに書いてあるようなところ、双方にそれぞれ長所、短所というところがあるかなと思っております。

 こういったそれぞれの問題点を解決すべく、この新高速バス制度の骨子に関しましては、旅行会社が高速乗り合いバス事業者に移行をする、それから一定割合の車両を直営化する、二つ目に、旅行会社から貸し切りバス事業者への運行依頼から、高速乗り合いバス事業者から貸し切りバス事業者への運行委託に変化をしていく、こういったところが骨子かなというふうに思っております。

 こうすることによって、十七ページの方に参りますけれども、新高速バス制度が想定する効果として、一番目、貸し切りバス事業者の法令遵守状況の問題が以下の四項目から解決をしていく。それから、集合場所の問題、規制格差の問題、こういうものも新高速バス制度によって解決されていくというふうに思っております。

 新高速バス制度が各課題に対応し、安全性向上につながるとの認識のもと、今後、あるべき姿として、業界全体で早期にこちらの制度への移行の実現を目指していきたいというふうに考えております。

 最後になりますけれども、この事故を受けての協議会の取り組みについてお話をさせていただきます。

 対応方針としては、中期的には、先ほどの新高速バス制度に一日も早く移行していくための会員への支援を行っていこうということを考えております。短期的には、移行完了までの間、現行制度下において安全に万全を期すため、自主対策を実施していくということを考えております。

 こちらに関しましては二十一ページをごらんいただきたいんですけれども、高速ツアーバス安全確保指針というのを制定しまして、五月十六日に発表しております。趣旨としましては、新高速バス制度の中で安全に寄与する部分を先取りし、自主ルール化を進めていくということを行っております。

 二十二ページの図を見ていただきたいんですけれども、安全確保指針を制定、これの遵守を協議会として各会員に求めてまいります。同時に、会員に向けて、実態がわかるようなアンケート調査も行ってまいります。今後、この安全確保指針に関しては、必要に応じ見直し、さらには強化ということを継続的に行っていこうということを考えております。

 実行性というところにつきましては、各会員から安全確保指針の対応状況を報告いただく、それから協議会による抜き打ち的な実地調査を行っていく、こういったことを、協議会のホームページで会員の遵守状況を定期的に公開していくということで、利用者の方に情報開示もしくは安全の見える化ということをすることで実行性を高めていきたいというふうに考えております。

 同時に、当会に入っております受託販売会社、販売を専門に行っている会社におきましても、安全確保指針を遵守しない場合は販売停止もしくは契約の解除、こういうことを契約書の中に盛り込んでいくという形でさらに実行力を高めていくということをやっていきたいと思っております。

 こういった安全確保指針を運用しながら、先ほど言いました新高速バス制度への速やかな移行ということを進めていきたいというふうに考えております。

 最後になりますけれども、安全に対する取り組みはこれで終わりということはないという姿勢で、協議会としても安全の徹底ということを進めていきたいというふうに考えております。

 以上になります。

伴野委員長 ありがとうございました。

 次に、安部参考人にお願いいたします。

安部参考人 安部でございます。

 私、専門は運輸機関の安全問題ですとか事故調査問題をやっております。

 五年前に、私の大学のあります大阪の吹田で大きな事故が起こりまして、そのときも直後からこの問題を調査いたしました。かなり関心を持って取り組んでおりまして、その後、御承知の、総務省で実態調査、行政評価のかなり詳しい報告が出まして、これにも協力させていただいた経験がございます。

 そうした経験を踏まえますと、今回の事故を見ておりまして、まず、大変残念な気がしております。貸し切りバスの中のツアーバスの問題をめぐる事態というのは五年前よりも一層悪くなっている、あるいは深刻化しているんじゃないかというふうに感じております。

 直接の原因は居眠りということなんですが、単にドライバーの居眠りということだけに原因を帰すのではなくて、なぜああいった問題が起こったのかということを構造的に調べていって、制度を直す必要があるというふうに考えております。同種事故の再発の防止のためにはそれが必要だというふうに感じております。

 今から、四点につきまして所感を述べさせていただきます。

 まず、事の発端は、先ほどから出ておりますように二〇〇〇年の規制緩和でございますが、この規制緩和は消費者利益の確保ということを目的としたものでございまして、目的自体はいいわけでありますが、私の見るところでは、消費者利益の確保ということが運賃の点ばかりにいってしまって、価格の点ばかりにいってしまった。

 実は、消費者利益の確保というのは、二〇〇五年にJRの福知山線の事故が起こりましたし、いろいろな事故が起こった関係で、二〇〇六年に運輸安全一括法というのが成立いたしまして、ちょうど当時も私、この委員会に参考人で呼ばれまして意見を述べさせていただいたんですが、二〇〇六年の法律改正によりまして、各事業法の中に、第一条の目的に安全の確保ということが盛り込まれることになりました。これは大変いいことだというふうに思います。

 安全の確保ということが事業法の目的に盛り込まれているわけですから、当然これは、消費者の利益の増進、確保の中に安全の確保ということが盛り込まれるべきでございまして、今回の事態を見ておりますと、価格競争の方ばかりにいってしまって、そこがおろそかになっているんじゃないかというふうに感じております。

 では、なぜそういう事態になっているかというと、規制緩和によって参入のところのハードルが低くなりまして、たくさんのバス会社が入ってきて、非常に競争が激しくなっているということが一つ大きな理由としてあるのではないかというふうに思っております。例えば、貸し切りバスにつきましては、規制緩和の前は大都市圏では十両というのが最低の参入の要件になっていたわけでありますが、これが五両以下、中型を含む場合は三両というふうに大きく変わっております。

 運行形態は違うんですが、高速の乗り合いのバスがありますが、大手のバス会社の実情を調べてみますと、運行管理者というのを必ず毎晩二名ほど配置をしている会社がございます。つまり、夜中に万が一、運行中に事故が起こりますと、これは会社に連絡をして対応する必要があるわけで、そのために運行管理者というのを二名ほど常時置いております。大手の乗り合いバスのところはそういうことをしております。

 これは事業規模によりますので、二名の運行管理者を置くというのはかなり無理な点があるかもしれませんが、最低一名の運行管理者を置く必要があるのではないかというふうに考えております。そういたしますと、例えば最低の車両数、五両の会社がそういった運行管理者を余分に置くことができるかというと、これはちょっと無理だろうというふうに思っております。したがいまして、入り口のところについてはちょっとハードルを下げ過ぎたので、これをもとに戻す必要があるというふうに考えております。

 これは実はタクシーで例がございます。タクシーも同じようなことをいたしまして、二年前に特措法というものをつくっていただきまして、最低のところの参入を少し見直ししました。こういったことがございますので、貸し切りバスの分野につきましても、そこの見直しというのが一つのポイントになるのではないか。

 監査ということで事後対応するということなんですが、今、国交省の監査の職員の方はたしか三百名ほどだと思うんですけれども、この三百名が全国に散らばって、貸し切りバスだけでも四千社、それから乗り合いバスが約千社、タクシーは、個人を除いて法人のタクシー会社が八千社、それからトラックが六万社ほどあると思いますが、これだけを三百人がどう監査するのかということで、監査は重要でございますが、事実上、これに頼ってしまっては質の担保ができないんじゃないかというふうに思っております。

 以上が一点でございます。

 二点目、国土交通省の方では六百七十キロという二人乗務の基準をつくられたわけですが、これは私は余りにも緩過ぎるというふうに思っております。

 これも、二人乗務三百八十キロということで、高速乗り合いの方で、ツアーバスとは違うんですけれども、そういう自主基準を持っておられる会社もありますし、四百キロという会社もございます。私の知っている貸し切りバス会社ですと、二百キロ以上の夜間走行は二人乗務のところもございますので、これについても早急に見直しをしていただいて、しかるべきキロ数を設定していただくということが必要ではないか。これは総務省の行政評価でも言われている項目ですので、しかるべきことをしていただく必要があるんじゃないかというふうに思っております。

 三つ目でありますが、ツアーバス会社というのは高速乗り合いバスのような費用負担をしてございません。例えば停留所がございませんので、私、吹田の事故の後、かなり大阪の事情を調べましたが、例えば天王寺というところで路上に駐車をして集客するということをやっておりまして、非常に道路交通自体にも支障を与えております。

 それから、今回の事故車両も、東京ディズニーランドが最終目的地というのは、いわゆる車庫を持っておりません。既存の乗り合いバスの場合は車庫を持っておりまして、そこに駐停車をさせるわけですが、それがないものですから、ただでとめられる遊園地を最終目的地にするというようなことがあります。こういったことから考えても、適正な費用負担をしていないということでございますので、高速乗り合いバスとツアーバスの整理をどうしていくかというのも急ぐべき課題というふうに考えております。

 それから、最後でございますが、ツアー会社にも問題があるというふうに考えております。

 実は、五年前の吹田のスキーバスの事故の後、民事裁判が起こりまして、大阪地裁の方で、この民事裁判の中で、ツアー会社の方にも一部過失の責任があるという判決が出ております。これは、ツアー会社の方の社員が、事故を起こしたあずみ野観光の方に無理な運行を強いたというところで、この点で責任が一部認められてございます。

 これは氷山の一角でございまして、今、貸し切りバス業界は大変業者が多うございますので、ツアーバス会社の方がどちらかというと優位に立って、いろいろな契約の内容を決めているというようなことがあるのが実態でございます。

 例えば、公示運賃というのは幅があって、その公示運賃の幅の中で届け出運賃を決めて、これを契約の中で書面上はするわけでありますが、では、この届け出運賃がどこまで収受されているかというと、なかなかされていないことがあって、実際には表向きの運賃とは違う運賃の取引がされている。そういった実態にございますので、そこをどういうふうに考えていくのかということで、これは旅行業法等の改正も必要になってくるのではないかというふうに思っております。

 改正する場合のポイントといたしまして、二つぐらいあるんじゃないかと思いますが、届け出運賃の適正収受ができるように、そういうことをやはりきちっと義務化なりする必要があるのではないかというふうに考えております。

 それから、公示運賃どおりの適正な収受ができるためには、途中に仲介業者を介して中抜きを許すようなことをしてしまうとまずいと思いますので、ツアー会社が実運送を担うバス会社に対して直に契約ができるように、中抜きを許さないような仕組みを法律上も明記していくことが必要ではないかというふうに思っております。

 とりあえず急ぐべき課題はこの四点で、今、業界は大変混沌としておりまして、その構造的なところにメスを入れて制度を変える必要がある。そうしないと、なかなかツアーバスというのは消費者に対して安全を提供することができないのではないかというふうに考えております。

 とりあえず、最初の意見として以上を申し上げたいと思います。

伴野委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

伴野委員長 これより参考人及び政府参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 民主党の鷲尾でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして大変感謝をいたしたいと思います。

 早速でありますけれども、四月二十九日、ゴールデンウイークに大変な事故が発生をしたわけでございます。これからゴールデンウイークを楽しく過ごそうという人たちが帰らぬ人になった、大変痛ましい事故でありました。

 お亡くなりになった方々には心からの御冥福をお祈りし、また、御遺族の皆様には衷心より哀悼の意を表したいと思います。また、けがをされた方々に、できるだけ早い回復とそれからお見舞いを、この場をおかりして申し上げたいと思います。

 さて、きょうは、参考人の皆様方におかれましては大変お忙しい中貴重なお話を賜りまして、感謝を申し上げたいと思います。

 質問に移らせていただきたいと思います。

 高速ツアーバスにつきましては、平成十四年の規制緩和の後にいろいろな問題が指摘をされていたところでございます。これは主に、事業者がふえ、そして車両数もどんとふえ、結果として、過当競争により実働日車当たりの営業収入もどんどんと低下していっている。その中で、コンプライアンスの意識でありますとか、あわせまして安全確保対策が不十分であるということがずっと言われてきているわけでございます。

 実際、先ほど安部参考人からお話があったあずみ野観光バスの死亡事故、そして今回の死亡事故。大きな問題もありますし、また小さな問題といたしましても、これは小さいと言ったら、利用者の皆さん、それから関係の皆様方にはちょっと語弊がある言い方かもしれませんけれども、高速ツアーバスの問題でいきますと、例えば道路の二重駐車の問題でありますとか、駐停車禁止区域でのいわゆる営業、乗りおり、それからツアーバスの受け付けの問題もございます。また、公共空間自体をそもそも無断に利用して、場合によっては器物損壊とも思えるような事態にも今直面をしているわけであります。

 こういったさまざまの課題が、規制緩和後出てきている。出てきていることに対して、これはしっかりと対応してもらわなきゃ困る。大きなものが起こってから議論するのでは遅いわけでありまして、ぜひともこういった、今まさに起こっていることに対する対応をお聞きしたいわけでございます。

 そこで、特に、きょう村瀬参考人においでいただいておりますので、高速ツアーバス連絡協議会といたしまして、こういう本当に身近な問題、今まさに起こっている問題に対してどのような対処をしているのか。会員に未加入の方もきっとおられるでしょうし、それから、先ほど安部参考人からも話があった中小事業者に対する指導のあり方の問題もあるでしょうし、貸し切りバス事業者に対してどのような、指導も含めて行っているのかということについてお聞かせ願いたいと思います。

村瀬参考人 今回の事故は協議会としても非常に重く受けとめておりまして、先ほどもお話をさせていただきましたけれども、あり方検討会でもこの問題点に対しては指摘をされており、新制度への移行をとにかく早く進めていく、これが一つでありますけれども、当面におきましては、先ほどお話をさせていただきました安全確保指針を即座に運用していきたい。

 それから同時に、利用者の方にこの情報、いわゆる会員の遵守状況を見える化をしていくということをまずやっていきたいというふうに考えております。それから、もちろん同時に、各高速ツアーバス会社のそれぞれのホームページで、安全状況、安全の取り組みについての開示をしっかりしていただくということで、まず、利用者の方に安全を確認して御予約いただけるということをしていきたいと考えております。

 未加入の高速ツアーバス会社に関してなんですけれども、高速ツアーバスのビジネスモデルは、旅行会社が企画、募集をする、その上で旅行会社が貸し切りバスを手配するという形態になっておりますので、まず、この旅行企画実施会社の我々の協議会への加盟状況なんですけれども、ほぼ一〇〇%に近く今加入をいただいております。現状我々が把握できているところでいいますと、およそ三社から四社は実態として未加入という形になっております。

 今回に関しましては、会員に向けましては、今回の事故の原因究明されているところの課題を克服するための安全確保指針をつくっておりますので、これを遵守するということを当然していきます。それから未加入のところに向けましても、協議会として、同じ基準をお願いしていくということを実行していこうというふうに考えております。

 貸し切りバスに関しましては、先ほど言いました、旅行会社が募集、企画をする、そこから旅行会社が貸し切りバス事業者を手配するという形態になっておりますので、事前に旅行会社がそれぞれのバス会社の安全の事業実態というものを把握する、把握したものを当協議会の方に送っていただく。今後、我々の協議会のメンバーに関しましては、事前に書面でバス会社の営業実態を確認することと同時に、書面での契約のやりとりを実施するということを安全確保指針の方に入れております。

 貸し切りバスの法令遵守、安全に関しましては、今後、規制の見直しも含めて、安心して手配できるように、貸し切りバスの安全が向上することは、いわゆる法令遵守の実効性を高めるということは我々もぜひ進めていただきたいというふうに考えております。

鷲尾委員 こういった事故が起こらないように、ぜひ徹底をお願いしたいところでありますけれども、先ほど安部参考人から、規制緩和によって参入規制が過度に下がったというところがありますが、結果として中小規模の貸し切りバス事業者等が業界に参入している中で、監査の実効性ということが先ほど来、参考人からも指摘されているわけでございます。

 そこで、これは国交省にお聞きしたいと思いますけれども、新規参入のみならず、特に中小規模の事業者に対する監査というのは今どのようになされているのか。これは、貸し切りバス事業者とそれからツアー業者についても、どんな監査を行っているのかということについてお答えを願いたいと思います。

中田政府参考人 先生の御質問にお答えいたします前に、まず私からも、今回、公共交通の安全確保に職責を負う国交省として、今回の事態を深刻に受けとめてございます。今後、安全対策、的確でなかった部分につきまして早急に改めまして、実効性のある対策を進めてまいりたいと考えております。

 今先生から御指摘いただきました、貸し切りバス事業者、特に中小事業者への監査の状況でございます。

 貸し切りバス事業者は、平成十一年の規制緩和によりまして、事業者数は平成十年度比で二・一倍ということで非常に増加したわけでございますが、これら貸し切りバスを含む自動車運送事業者全体に対しまして、私ども、輸送の安全を確保する観点から、道路運送法に規定する安全に関する諸規定が遵守されているかどうか確認するための立入検査、この遵守を指導する対策を講じておるところでございます。

 立入検査につきましては、事業者の規模にかかわりませず、問題のある事業者及び新規参入した事業者に対して早期に実施するという方針で行っておりますし、指導につきましても、全ての事業者を対象といたしまして、安全教育のためのマニュアルの配布でございますとか運行管理者の研修等、指導しているところでございます。

 私ども、限られた要員でございまして、先ほど先生御指摘もございましたけれども、監査を担当する人間は非常に限られてございますが、平成十八年度では、立入検査をした事業者は七百十九でございましたが、二十二年度では二千二十ということで、監査する事業者数も大幅にふやしてございます。

 その中で、この立入検査を効果的に実施するという面で、今回の事故は非常に反省することが多かったわけでございます。立入検査のあり方について抜本的な見直しを図るなど、実効性のある安全対策を実施してまいりたいというふうに考えてございます。

井手政府参考人 旅行会社につきましての立入検査についてお答え申し上げます。

 これまでも、旅行業者につきましては、旅行業法の第二十六条という規定がございますが、これに基づきまして、事業の規模あるいは事業の内容にかかわらず、幅広く立入検査を実施してきたところでございます。

 今回の事故も踏まえまして、高速ツアーバスの主催を行っている旅行業者につきましては、今月から来月にかけまして重点的な立入検査をさらに行っていきたいというふうに考えています。

鷲尾委員 今お話を聞いていましても、やはり監査というのは本当に限界があるんだなということを感じます。

 そんな中で、これはちょっと安部参考人にお聞きしたいですけれども、参入規制をもう一度見直すということも一つでしょうけれども、そういう中小事業者に対してどういった監査のあり方といいましょうか、中小事業者をどうマネジメントしていくかということについての御見解を、恐縮なんですけれども手短にコメントしていただけないでしょうか。

安部参考人 国交省は二〇〇六年から、運輸安全マネジメントというのを事業者に義務化されています。これは、大手の方はかなりそのことで、自社内部でそういうことができるようになっているんですが、中小の、特にこういう貸し切りバスやトラックもそうなんですが、中小のところは、やはりそういうことに投入できる人的資源も、財政的にも難しい部分があって、なかなか中小のところは難しい。

 今回事故を起こした会社も、結局、経営が大変しんどいので、ああいう日雇いのようなことをやらざるを得ないということになっていますので、これはやはり監査を幾らしても、ちょっと私は無理ではないかというふうに考えております。監査はもちろん大事ですので、監査で適正なことはやっていく必要があるんですが、やはりそれだけに頼っていると事態の改善はできないんじゃないかという認識を持っております。

 以上です。

鷲尾委員 そこで、今進められているバス事業のあり方検討会、最終の取りまとめが行われたということでありますけれども、これは平成二十五年度末までに移行するということになっています。新たな枠組みでもっと早くやっていれば、こういう事態ももしかしたら防げたのかもしれない、そういう思いもありますけれども、もう今こういう事態になっているわけですから、できるだけ早く移行しなきゃいけないというふうに感じております。

 そこで、できるだけ早く移行していただきたいんだけれども、そのことについての国交省の認識をまず伺いたいと思います。

中田政府参考人 高速ツアーバス問題につきまして、構造的な問題があるという認識のもとに、バス事業のあり方検討会において検討してまいりまして、ことしの四月に、高速ツアーバスにつきましては新しい高速乗り合いバスというものに移行するという方針を決定したところでございます。

 決定した時点におきましては、今先生御指摘のように、二十五年度末までの移行という目標を持ってございましたが、今般の事故を踏まえまして、国土交通省といたしましては、高速乗り合いバスに係る規制を見直し、バス停留所問題についての調整作業を進め、高速ツアーバス事業者による移行準備をそれぞれ加速させることによりまして、移行時期の前倒しを図ることといたしております。

 具体的には、新しい高速乗り合いバスについての新制度を七月半ばごろまでにスタートさせた上で、それから一年以内に事業者の方には新しい高速乗り合いバスに移行するよう指導してまいりたいと考えてございます。

 先日、大臣の方からも、その旨要請したところでございます。

鷲尾委員 今ほど局長から指導ということでお話をいただいたところですけれども、小田参考人から最後にお聞かせいただきたいんです。

 新しい制度に移行していくわけですけれども、移行の指導に従わない業者だとかそのまま居残る業者がいると、これまた問題が同じように放置される可能性もあるわけでありまして、その事態をどういうふうに改善するのがいいかというところについてコメントをお願いしたいと思います。

小田参考人 今回の事故の再発を防ぐための極めて重要な一つの施策が、この新制度の方に、高速乗り合いバスの方に一本化するということです。これは、あり方検討会では二年以内に移行を終わらせるということであるものが、今の局長の御発言のとおり、一年でということでございます。

 二年のものを一年に前倒ししてやるという考え方は大賛成です。しかし、これは、あり方検討会でも種々議論があったわけでございますが、果たして二年で順調に移れるだろうかという現実的な議論もたくさんございました。しかし、それを乗り越えて一年で移すということになるわけですけれども、当然のことながら、不幸にして一年以内に移らなかった、移ってこなかったというケースは十分考えられます。

 このバックアップをきちんとしないと、例えば、今のあり方検討会の結論では二年間で移すということになっておりますが、移らなかった高速ツアーバスは禁止するという姿勢にはなっていないんです。あくまでも指導する、そういう指導の中で移していくんだというルールになっておりますので、あり検の中でもこれは手ぬるいということを何度も申し上げて、一定の期間の中で移らなかった場合は、今回の事故も踏まえれば、当然、禁止する、できなくするということが新事業に移すという意味なんですね。

 今の高速ツアーバスでこういうことが起きているからこそ何とかしよう、そのためには新高速バスルール、いわゆる高速乗り合いバスの方に一本化するんだということを方針として決めたわけですので、今次の事件を踏まえれば、速やかに、一年なら一年で移し終わる、意図的に移ってこない場合は高速ツアーバスはできなくする、この担保をきちんとしなければならないだろうと思っています。

 これについては、我々も引き続き、そういう姿勢で御当局にもお願いして、頑張っていきたいと思います。

鷲尾委員 参考人の指摘ももっともだと思いますので、ぜひとも政府は、またそういった視点から取り組んでもらいたいというふうに思うところであります。

 それから、規制緩和に関連をいたしまして、最後に、新潟市のタクシー事業について政府から見解を求めたいと思います。

 タクシー業界も、規制緩和した後、過当競争で随分と苦しみまして、それこそつい数年前にタクシー事業活性化法が制定をされまして、そのことによって一服感が出てきているわけですけれども、その中において、特にこれは新潟市の問題ですけれども、今、公取から独禁法違反で排除命令と課徴金納付命令が出ているというところで、事業者の皆さんもそれに対して不服審判をする、そういう状況になってございます。

 私が思いますに、新潟市の状況、今まで随分と優良な会社も潰れてきて、数百人の失職者が出るというような状況の中で、果たして国交省の指導が適切に行われているのかどうか。特にタクシー事業のこの法律をつくるに当たって、随分と、自動認可運賃の問題でありますとか、減車をする問題でありますとか、いわゆる規制緩和を是正する方向で法律としても後押しするという趣旨で制定されたにもかかわらず、それが本当に事業者の皆様方に、例えば独禁法に違反する可能性があるとか、そういった機微も含めて指導されていたのかどうかというところに甚だ疑問な点があります。

 そこで、国交省が適切にその指導を行ったかどうか、このことについて回答を求めたいと思います。

中田政府参考人 お答えを申し上げます。

 タクシー事業を取り巻く厳しい状況に鑑み、平成二十一年に、タクシー適正化・活性化法と略称されております特別措置法が制定されまして、それに基づきまして、需給バランスが崩れている特定の地域について一定の減車を促進する措置を講じたところでございます。

 この法律の施行に当たりまして、国土交通省は、この施行について、タクシー事業に関する全国的な事業者団体はもちろんのこと、各地方運輸局におきまして、各種の事業者に対しましてこの法律の趣旨、概要の説明を各地で行ったところでございます。

 それぞれの説明会で具体的にどこまで説明したかにつきましては、議事録等が存在しませんので詳細には把握してございませんが、例えば北陸信越運輸局からは、本法の施行により独禁法の適用除外になるというような話はしていないという報告を受けてございます。この法律に基づく事業再構築という形で各事業者に減車を進めていただくことになってございますが、この減車の話及び運賃の適正化に関しまして事業者間で共同行為を行う等をすれば、独禁法上の問題があることは当然のことであるということで、改めて申し上げるまでもないという認識であったのではないかというふうに推察をしております。

 すなわち、この法律は、地域計画を立てまして、地域としてタクシー事業の適正化、活性化に取り組むということでございますが、この地域計画に基づきまして、各事業者はその趣旨に沿ってそれぞれ活性化、適正化を進めていただく。そういう趣旨の法律であるということについては、今申し上げました説明会等でしっかりとお伝えをしたというふうに考えてございます。

鷲尾委員 独禁法違反に当たるような行為をしないのは当然なんです。それはわかります。ただ、今回は、国会でもさまざまな議論があって、抵触する可能性があるんだよ、だから十分に留意しなきゃいけないということはやはり所管官庁としてしっかりと指導してもらわないと、新潟市の例になってしまうんじゃないかなというふうに思うんです。

 というのは、一月下旬に公取が強制捜査に入った後、二月十日に運輸局向けに通達が出ていますよね。入った後、何で二月十日にあえて通達を出す必要があったのか。私が思いますに、これはやはり指導が徹底していないということの証拠だと思うんです。ですから最後に、この通達を出した経緯を簡単に説明していただけませんか。

中田政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のように、新潟のタクシー事業者に対しまして公取が立入検査をした後、この立入検査がタクシー適正化・活性化法の取り組みそのものを否定しているのではないかという不安が関係者に広まったというふうに当時お聞きをいたしました。

 したがいまして、関係者に広まった不安を払拭するために、私どもとして、改めて、タクシー適正化・活性化法に係る取り組み自体は独禁法による立入検査というものでは何の否定もされていない、国土交通省として、今後とも適正化、活性化の取り組みをしっかり推進していくということを、全国の運輸局及びそれを通じて事業者の方に知っていただくという目的でこの通達を発出させていただきました。

 その際にあわせて、念のために、この取り組みに関しては、独禁法を初めとする他の法令に違反することがないよう十分注意をするように、そういう注意喚起をしたということでございます。

鷲尾委員 自動認可運賃の新潟市の業者さんは最低レベルに値上げをしたんですね。これがどうして、カルテルで談合して他を排除するような運賃として認められているのか、私には正直言ってわかりませんけれども、皆様方の指導がやはり至らない部分があったんだということは、不安にさせる部分を実際に全国に惹起せしめたんだというところも含めて、ぜひとも責任の一端を感じていただきたい、そのように思います。

 最後に、きょう参考人質疑という形で委員会が開かれました。本当に関係者の御努力だと思います。評価させていただきたいと思いますけれども、やはりこういった問題は大臣、副大臣、政務に、しっかりとした国交省の見解として私は聞きたいと願っております。

 どうか今後は一般質疑をしっかりと国土交通委員会でもしていただきますことを、委員長にお願い申し上げたいと思います。

伴野委員長 ただいまの鷲尾委員からの御要求につきましては、理事会等で今後協議させていただきます。

鷲尾委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

伴野委員長 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。

 三人の参考人の皆様には、大変示唆に富む御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。

 最初に、小田参考人にお尋ねしたいんです。

 今、最後に鷲尾委員の方からお尋ねがありましたけれども、バス事業のあり方検討会、また、ことしの一月号の「交通公論」の中で小田参考人が、あり方検討会の議論を踏まえて、高速ツアーバスを高速乗り合いバスに一本化していく中で、新高速バス事業として一本化すると同時に、それ以降、従前の高速ツアーバスは廃止すべきというふうにずっと主張されております。先ほども、禁止までいっていないのが問題だというふうに言われました。

 参考人の意見陳述の冒頭で、これほどルールが無視されているのかと驚いているというふうにおっしゃっておりましたけれども、多分そのあたりが、高速ツアーバスは廃止あるいは禁止、これをきちんと法律で明記すべきだという御意見だと思うんですが、そこのところと、その理由をぜひ教えていただきたいと思います。

小田参考人 微妙な問題はありますが、今次の事件を踏まえても、前倒ししてでも、一年以内に新高速バス事業ルールの方に許可をとって移行を図る。これが行われて一二〇%解決だとは思いませんが、少なくとも今よりは格段に、要するに、我々の運営しています高速乗り合いバスと同じレベルに法規制が及びますので、安全面では格段に向上すると思います。

 なぜ、高速ツアーバスをおやりになっている方を高速乗り合いバスに移す、禁止までして移す必要があるかという点でございますが、冒頭申し上げたとおり、高速ツアーバス問題も貸し切り事業の問題も根っこは同じでございまして、平成四年対比ですと事業者は三倍にふえ、四千社になっているわけです。十二年の規制緩和と比べても二倍になっているわけです。したがって、日本バス協会としても、末端まで、組織されていない事業者まで物事が行き渡るという仕組みになっていません。また、協会加盟であれば、国交省関連から出た通達、その他のお役所から出た通達も隅々まで、都道府県のバス協会を通じて、それの連絡が行き具体化される仕組みになっておりますけれども、協会未加盟の会社が二千社もあり、その貸し切り事業者がツアーバスを受託してやっている。

 この実態がありますので、もし仮に法律で禁止までしないとしたら、高速の乗り合いバス事業者、それから移ってこられた元高速ツアーバスの事業者、そして移らないでそのまま高速ツアーバスをやる会社、こんなふうに一国三制度のようなことになり、移らない会社というのは、移らない形の理由があって移らない。むしろ、自由度を今のままでやっていきたい、コストの面でもそうしたい、こういうことにつながるので、今よりも悪くなる。一国三制度のようなことになって、問題解決にはつながらない。

 だから、ルールばかりで物事が解決するとは思いませんけれども、今回、あり方検討会の結論でもあります新高速バス事業ルールの方に速やかに移す。移らない場合は、もちろん指導して移らない場合は強制的に、移るかやめるかどっちかにするということをけじめをつけないと、国民に対して申しわけないのではないかと考えております。

富田委員 小田参考人の言われるとおりだと思うんですが、その「交通公論」の正月号の中で小田さんは、高速ツアーバス側の委員からは、このあり方検討会で、一本化後も高速ツアーバスを廃止しないでほしいとの主張は出ていないというふうに明確に書かれていました。

 村瀬参考人は高速ツアーバス協会の方を代表してこの検討会に出ていたと思うんですが、小田さんがこの「交通公論」で書かれた経過で間違いないんでしょうか。また、村瀬参考人はどういう御意見をお持ちですか。

村瀬参考人 今回の事故の結果を見ましても、あり方検討会の議論の中で、高速ツアーバスに内在する問題があるのではないかと。これは、そのときには実態は把握できていなかったんですけれども、安全を担保しようとしない旅行会社と安全確保ができていないバス会社が結び合ったときに大きな事故を生む可能性があるんじゃないか、そういうことで、一般論として、内在する問題があるというふうに検討してきたかと思っております。

 その中で、旅行業の募集型企画旅行に関しては、やはりたくさんの人の夢であるとか楽しみを運ぶ商品ですので、旅行業自体が縮小していくというような規制はよくないと思っておりますけれども、まさに今の高速ツアーバスということに関しては、移行後、意図的に移行をする意思がないという業者に関しては禁止をしていく。

 ちょっと遠回りに言いましたが、直線的に言いますと、私も、今の新制度の移行期間以降に関しては、高速ツアーバスと旅行業の募集型企画旅行とはきちっと線を引いた上で、高速ツアーバスに関しては禁止をしていくということがよいというふうに考えております。

富田委員 高速ツアーバスの運営もされている村瀬さんの方からそういう意見が出るというのは非常に大事だと思うんですけれども、検討会の議論の中で、質の低い業者の参入を防ぐため、新規参入の要件を厳しくすべきだという意見が出たというふうに報道がありました。

 ただ、ここは検討会の報告書にストレートには反映されていないと思うんですが、こういう意見が出てきた経緯、あるいはこの意見に対してどういうふうに考えているかを、小田参考人と村瀬参考人、両者の御意見を伺いたいと思います。

小田参考人 先ほど申し上げたとおり、平成四年対比で三倍に貸し切り事業者がふえた。規制緩和を行った十二年二月以降でも、前年比較で二倍にふえている。しかも、これらは零細の事業者が多いということで、運行管理体制も満足にとれないような中で事業の許可が次々と得られている。こういう実態が今回の事故の底辺に間違いなくある。これは、国交省も我々業界団体も把握できていない非常に残念な分野なわけでございます。

 したがって、この分野をどうするかということは、同時に真剣に考えないといけない。それで出てきますのが、例えば私は三つの考え方を持っているわけでございますけれども、一つは、このまま今までと同じように新規参入を緩い条件の中で認めていくのか。要するに、そういう能力に欠けたと言ったら失礼かもわかりませんが、欠けた嫌いのある事業者を同じように許可を続けていっていいのだろうか。これは、事件の再生産をある意味ではしているような意味もあるわけで、この蛇口をきちっと閉めないといけない。

 何も規制緩和前とは限りませんけれども、例えば、我々は、五両のものを十両にしてくださいとか、あるいは今、五両であっても車齢は問いません、中古車でも構いませんというようなルールだとか、それから車庫については雨ざらしでもいいですとか、こういった部分は基本的に、きちんと一定の財力がなければ、社会に責任をとれるような財力がなければ参入させないんだ、できないんだ、いかに規制緩和の中といえども、安全がきちんと最低限担保されない事業者、有資格のない者は当然窓口で絞るべきだと思います。

 もう一つは、既存のふえ過ぎた貸し切り事業者のレベルをどうやって上げるかということです。これは安全性評価認定制度などで既に動き出しております。また、当局も監査制度を強化するとおっしゃっています。さまざまなメニューはあるんですけれども、これが二番目。既存の事業者のレベルを上げる。

 もう一つは、ふえ過ぎたままになっている事業者が、あえて申し上げますけれども、旅行会社から、言葉は悪いんですけれども、鼻面を引きずり回されるような形で、低運賃、低料金で仕事を受けていかなきゃ生きていかれないという構図、これが続いている限り、例えば何かのルールをつくったとしても、やはり買いたたき、届け出運賃の有名無実化、したがって行き着くところは人件費の削減、こういうことがあるので、旅行業法の中に、旅行業者に対しても、人命を預かる仕事をやる場合には一定の責任を負うというルールを明確にしてほしいとあわせて申し上げているわけでございます。

村瀬参考人 この新規参入というところで少し整理をしておきたいんですけれども、高速ツアーバスの新規参入ではなく、これは貸し切りバスの新規参入という観点だというふうに考えております。

 高速ツアーバスに関しましては、先ほども申しましたように、旅行会社が募集、企画をして運行会社を手配する、こういう形になっておりますので、高速ツアーバスを実施している旅行会社の立場からいっても、手配する貸し切りバス会社が安全かどうか、これは非常に重要なことだと思っておりますので、法令遵守の実効性を高めるということで、新規参入の蛇口を閉めるということが必要であれば必要かなというふうに考えております。

 貸し切りバスの安全性の向上ということは、ぜひしていただきたいというふうに願っております。

富田委員 小田参考人が今具体的に例を挙げていただいたのは本当によかったと思うんですが、安部先生も先ほど意見陳述の中で、入り口のハードルをもとに戻す必要があるというふうにおっしゃっていました。

 今、小田参考人の方は、もとに戻す必要はないけれども、やはりいろいろ考えてもらいたいというような御意見でした。この点について、新規参入への今後の規制のあり方はどんなふうにしていったらいいか、御意見がありましたら。

安部参考人 貸し切りバスなりツアーバスというものは、一番大事なのは、公共交通でありまして、乗客の命を運んでいる事業であります。したがって、安全にコストをかけて、きちっと最低限の安全の担保ができるということが必要だというふうに考えています。

 規制緩和によって免許から許可に変わったわけでありますが、私は、許可であっても許可条件として幾つかの、最低の車両台数とかいうのは実はあって、国の許可基準をクリアした者が参入してくるということに制度はなっていますので、そこで一旦入ってきた者が安全が担保できていないという状態自体がおかしいのではないかというふうに思っております。ですから、優良バスの認定制度というのをやられていて、これはこれで意味があって、そういうことをやっていけば消費者が選択できると思うんですが、本来は、国が許可をしたものの品質が担保されないということで、そこをやはり変えなけりゃいけない。

 そうすると、ある程度、例えば運行管理者を設ける、何々ができるという最低限の基準というものを、許可の基準というものを見直していくことが必要ではないかというふうに考えております。

 それから、もう一言だけ言わせていただきますと、先ほどから国交省なり小田参考人、小田参考人の申されている意見は、私は意見が同じなんですが、一点だけ違うのは、実態がよくわかっていなかったというのは私はいかがなものかと。つまり、あずみ野観光の五年前の事故以降、これは社会問題化いたしましたし、総務省の二年前の行政評価の報告書でもかなり詳細に実態を書いておりますので、あのことで私は実態がかなりわかっていたんじゃないかというふうに考えておりますので、実態がよくつかめていなかったというのはちょっといかがなものかという認識を持っております。

富田委員 今の小田参考人と安部参考人の意見を踏まえて、中田局長、許可しているのに品質が担保されないというのはやはりおかしいんじゃないか、基準の見直しは最低限必要だと、安部先生のおっしゃるとおりだと思うんですが、今後、国交省としてはこの点についてどう対応されるおつもりですか。

中田政府参考人 先生方の御指摘にもございましたが、バス事業のあり方検討会におきましても、参入規制の強化、具体的には、貸し切りバス事業者の新規許可の際の審査基準の一つでございます最低車両台数の問題や、かつて免許制の時代に採用されておりました車齢の規制の復活などの提案もございました。

 あり方検討会の議論では、しかしながら、規模を大きく拡大すれば安全が確保されるということではなくて、安全の確保に関する具体的な問題に対応するために、それに対応した規制の見直しをすることが効果的だというふうに考えられましたことから、「まずは貸切バス事業における法令遵守体制確保のための規制の強化等を通じて貸切バス事業の適正化を図ること」とされたところでございます。

 それで、それを受けまして、国交省としてこれからどうするかということでございますが、御指摘の、まず新規参入の問題でございますが、安全に関する法令遵守意識に欠ける事業者の参入を防止するために、許可時に実施してございます経営者の法令試験の厳格化でございますとか、運行管理者制度の強化などを通じて、参入時における安全確保面での要件を高くしてまいることを考えてございます。

 さらに、一旦許可してもそれが守られていないじゃないかという御指摘、非常に私どもとしては深刻に受けとめてございますが、それがまさに事後チェックということでございまして、事後チェックをより効率的なものにすることによって、悪質な業者を貸し切りバス市場から排除するということに努めてまいりたいと思います。

 我々の事後チェックだけで全てできるかというと当然限界がございますので、既にお話が出ておりますようなマル適マーク的なものを採用するとかいろいろな工夫をしなきゃいけないとは思いますが、まず我々の使命として、悪質業者をこの市場から排除するということについて、これまで以上に努めてまいりたいというふうに考えてございます。

富田委員 中田さん、今のは形式的にはわかるんだけれども、今回の事件で陸援隊の社長が記者会見していましたね、横に弁護士さんを置いて。日雇いじゃないと明確に言い切っていた。でも、隣で弁護士さんは日雇いだと言っているんだよね。こういう人に許可を与えるということ自体が問題なんじゃないかというふうに国民は思っているんだと思うんですよ。

 きちんと法令遵守できないような業者には許可しない、そこのルールをせめて最低限きちんとしないと、幾ら業界の皆さんが一生懸命努力されても、行政の方がきちんとそこができないんだったらずるずるになっちゃうんだと思うんですが、そこはどうですか。

中田政府参考人 今回の陸援隊という事業者があそこまで法令違反を続けていたということについて、私ども、まことにじくじたる思いでございます。ああいう事業者を許可したということについて大いに反省してございまして、その意味で、先ほど申し上げました、これから許可する際の要件についてしっかりと検討して、このようなことが起きないように全力を尽くしてまいりたいと思います。

富田委員 ちょっと論点を変えます。

 検討会のメンバーのお一人で、元バス運転手の佃栄一さんという方が、高速バスツアーの価格競争は行き過ぎだ、夜行バスについては運転手二人で行うことを義務化すべきだというふうに検討会で訴えたという報道がありました。こういう訴えがあったのかどうか。また、夜行バスでの運転手二人の義務化ということについて、業界の代表としてどう思われているか、小田さんと村瀬さんからお聞かせ願えればと思います。

小田参考人 今回、図らずも明らかになった、貸し切りバスのワンマン運行上限六百七十キロ以内というものに関してでございますけれども、あり方検討会で、二人乗務云々、具体的に指摘があったかどうかについては必ずしも私ははっきりと覚えておりません。しかし、安全をそういう意味で強化すべきだということはおっしゃっていました。

 それはともかくとして、私どもの高速乗り合いバスでは、現実、おおむね五百キロを超える場合は二人乗務で長年やっております。六百七十キロはあるにしても、四百五十キロだったり三百五十キロだったり、さまざまな例はございますけれども、一番長いのを見ても、五百キロを超えれば二人乗務というようなところが上限のような慣習になっています。

 それと申しますのは、六百七十キロというのは夜も昼もというようなイメージのルールでございますが、昼と夜では運転手の負担というのは格段に違います。そういう中で、率直に申し上げれば労働組合の立場もあり、そこといろいろと安全性についても話し合う中で、それぞれが一つの指針として三百五十キロだったり四百キロだったり、そういう基準を設けてやってきているということなんです。

 これを、夜行だから全て二人乗務にすべきかどうかということについては、これは事業運営上のこともよく考えて、あるいは利用者サービス、お値段のことでございますけれども、そういうことも踏まえて、慎重に考えていかなきゃならない問題かと思っております。

 現実は、そういうことで、大都会と大都会、大都会と中都市、大都会とローカル、こういったところにさまざまな夜行高速バスが走っておりますが、両端の事業者が共同運行のスタイルをとっているのが大部分でございまして、大手でやっていることというのは、共同運行会社の中小の路線バス事業者もほぼ同じ基準でやっているということでございます。

 高速のツアーバスについて、貸し切り事業者ですから夜も六百七十キロでいいんだと安易に考えていた点は、これはルールとしてきちっとしなければならないんじゃないかと思います。

村瀬参考人 夜行の乗務二名ということに関しまして、当協議会でも理事会の方でいろいろと議論をさせていただきました。二名乗務になれば安全なのか、一名では安全ではないのか、こういう意見もいろいろ出ました。

 夜行という特性だけで言いますと、本来、人は夜寝るというのが一般的ですので、一名より二名の方がより安心であるということはまず間違いないというふうには考えております。

 その中で、協議会としまして、まず当面というところですけれども、四百五十キロ。ただし、これは発地―着地。これはお客様にわかりやすいというところで、実際には総走行距離六百七十キロというのが今の指針であるかと思いますけれども、当然、この総走行距離六百七十キロの指針を守った上でですけれども、発地―着地、四百五十キロというのを今回の安全確保指針の方に入れております。ただし、ここは暫定的な数字としまして、今後、会員の実態調査を行い、また国土交通省からの指導も含めて、見直し、強化はしていきたいというふうに考えております。

 この四百五十キロの基準に関しましては、まず、我々のツアーバスで一般的に、先ほども御説明させていただきましたが、路線が非常に決まっておりまして、東京―名古屋、東京―新潟、東京―仙台、ここの三路線ぐらいがおよそ四百五十キロというところに当たるんですけれども、この四百五十キロに向けて、言い方をかえますと、四百五十キロ以上は必ずツーマンにするということを今回の安全確保の指針に入れております。

 ただし、何回も言いますけれども、これは当面ということで、今後、実態調査を含めてまた検討していきたいというふうに考えております。

富田委員 今、小田参考人の方からは、乗り合いバスの方はもう五百キロでちゃんとやっていると。また、高速ツアーバス協議会の方では、今、村瀬参考人の方から、四百五十キロという安全確保指針を出して、四百五十キロでやるんだというお話でした。

 このことを踏まえて、六百七十キロでは緩過ぎるというふうに先ほど安部先生は言われていたんですが、先生はいろいろな事故調査とかもやられていて、実際、どのぐらいがぎりぎりの線だというふうに思われますか。

安部参考人 これは大変難しゅうございまして、なかなか明確には言えないんですが、先ほどから議論になっていますように、高速路線バス、乗り合いの方につきましては、各社の基準で四百キロ以上は二人乗務、三百八十キロをとっているところもございますし、四百五十キロをとっているところもある。

 しかも、高速の路線バスの方につきましては、行った先の目的地に乗務員の詰所なり休憩所を設けていて、そこできちっと仮眠もとらせる、睡眠もとらせる、乗務員が出発の際にはアルコールチェッカーをかけて飲酒運転もないようにするということで、かなり厳格に安全管理がされてございますが、ツアーバスの場合は、行った目的地のところで仮眠所があるわけでもなし、また、折り返し運転のときに乗務員管理をして、そこでアルコールチェックをするわけでもない。かなりそういうことがあるように思います。

 大事なことは、ドライバーがきちっと一カ月単位で労働時間が管理できていて、疲労が蓄積されていないようなドライバー管理が行われておれば、私は、三百キロ、四百キロの夜間一人運転をしても差し当たって大きな問題はないのではないか。

 つまり、国鉄時代からドリーム号というのがあって一定のことでやっておりますので、問題はやはり、ツアーバスの方でそういう適正なドライバー管理がきちっとできていない現実の中で、六百七十キロという余りにも緩い基準が上限として設定されていることが問題であるということですので、これにつきましては速やかに見直しをする必要があるのではないか。総務省の行政評価でもそこを見直すべきだという指摘があって、それがされておりませんので、そこをどうするかというのがポイントではないかというふうに思っております。

富田委員 今、安部先生の方から御指摘ありましたけれども、平成二十二年九月十日の勧告でも、六百七十キロの目安の基準の見直しを求めています。残念ながら、国交省の方ではこれに対応しませんでした。中田局長、これはなぜ対応がおくれたんでしょうか。

中田政府参考人 乗務距離による交代運転者の配置指針は、運転時間に係る基準、一日九時間でございますけれども、それをもとに距離に換算した目安でございます。

 先生御指摘のように、平成二十二年九月に総務省より、この配置指針については生理学的な検討を行うべき旨勧告を受けましたが、このときの総務省勧告は、貸し切りバス安全確保対策に関する広範な課題について御指摘を受けたものでございまして、国土交通省としては、これを受けまして、貸し切りバス、特にツアーバスの問題、安全対策について根本的な対策を講ずるべきだということで、先ほどから御紹介してございますバス事業のあり方検討会を立ち上げて構造的な対策を決定したところでございます。

 その中で、この配置指針の問題につきまして、あり方検討会でも労働者の非常に厳しい状況についての御議論もありましたが、配置指針自体の見直しには至りませず、過労事故防止マニュアルの作成など、今の指針をとにかく守るということに専念をして、この指針の見直しがまだ行われていなかったということにつきまして、スピード感に欠けたということについては大変反省してございます。

 その意味で、今般、この配置指針、これは目安でございますけれども、その前提となっております運転時間の基準を含めた過労運転対策全般を見直すために、新たに専門家による検討会を、厚生労働省の協力、参画を得て早急に進めて、その結論を実施に移してまいりたいというふうに考えてございます。

富田委員 きちんとやっていたらこの事故は起こらなかった可能性もあるので、早急にと言われているけれども、本当に迅速にやっていただきたいというふうに思います。

 もう時間になりますので、最後に、安部先生が最後に言われていた、中抜きを許さないというのは今回の事故を見ていて非常に大事だなと。間に二業者が入って恐らく抜いていて、国交省の皆さんからいろいろ事情を聞きましたら、中抜きじゃないんだ、紹介料をもらっただけだというふうに逃げているというような話もありますので、実際に、こういう丸投げで何もしないで自分たちがもうけるというようなところを規制していかないと、最後は運転者の方が過重負担を全部受けるというような、この実態が変わらないと思います。

 中抜きを許さないような法律の枠組みというのは、先生、制度としてどういうものが考えられますか。

安部参考人 その点につきましては、やはり旅行業法の中のどこかの条文に、契約の項の中で、実運送するバス会社に直接発注することとか何かそういうことが、今ちょっと手元に旅行業法を持っておりません、どの条文というのは思いつかないんですけれども、そういう工夫はあり得るかなというふうに考えております。

富田委員 ありがとうございました。

伴野委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 私も、事故に遭われた方々にお悔やみとお見舞いを申し上げたいと思います。

 そして、きょうの参考人の貴重な陳述に改めて感謝したいと思います。

 この際、私の質問の立場について最初に述べたいと思います。私は、今度の事故でとうとい人命が失われている、それを防ぐことができなかったのかという角度から問題点を明らかにしなければならないと思っています。

 かつて、あずみ野観光のスキーバス事故がありました。この教訓を生かして対策を行っていれば防げたかもしれない。また、総務省の貸切バスの安全確保対策に関する行政評価・監視結果に基づく勧告がなぜ実行されなかったのか、実行されておればどうだったのか。さらに、根本的には、この間の規制緩和路線を真剣に検証しなければならないと私は思います。

 国交省の責任は極めて重大だと私は考えています。この事故を機会に、高速ツアーバスの安全をめぐる問題点を深くえぐって教訓を導き出し、本当に事故が再び起きないようにするための万全の措置をとらなければならないと思います。

 そこで、まず、なぜ違法状態がこれほど蔓延しているのかという問題です。小田参考人は、ここまで乱れたのかとおっしゃっていました。

 今回事故を引き起こした運転手が違法な日雇いだったことはもはや明らかであります。そして、名義貸しなど三十六もの法令違反が指摘されています。法令違反はこの事業者にとどまらず、貸し切りバス業界にある意味では蔓延している。

 総務省の調査では、旅行業者との関係では、貸し切りバス事業者の九七%が届け出運賃額を受領できていない、このように述べています。また、〇七年四月の、あずみ野スキーバス事故を受けて国交省が行った重点監査でも、貸し切りバス事業者の六四・六%、ツアーバス事業者の八一・〇%に法令違反が見られたと述べていた。

 業界で、なぜこうした違法状態が正されず蔓延しているのか、小田参考人と村瀬参考人にお聞きしたいと思います。

小田参考人 私は冒頭に、驚きだというような意味のことを発言し、気持ちとしては正直な感想なんですね。ただ、旅客運送事業のバス事業の中で長年やってきて、こういう立場で答弁するような人間としては、やはり十分に把握できていなかったということについては反省とじくじたる思いはございます。

 一点、具体例で申し上げますと、私のところは成田空港輸送にも関係しているわけでございますが、中国の方だとか東南アジアからのお客様も大変ふえております。成田におり立った方々を都内や関西方面に足を提供するという意味で、観光バスがよく使われております。陸援隊も、この輸送を主としておやりになっていたようでございます。

 我々の認識としては、そういう外国からのお客様をあの料金ではとても受けられないということで、仕事がほとんど、例えば千葉県内のしかるべき協会加盟の事業者などはどうしても入札等に漏れてしまう。そういうことをああいう、いわば参入の許可条件が比較的甘い中で入ってきて大量にふえて、監査の手も理想にはほど遠い状態でしかできていない、それが何をやっても構わないんだ、規制緩和の中で、高い料金でやること自体が何か体質が古いというような、そういう中で、例えば成田に外国の方が、東南アジアの方が見えたときにでも既にあらわれているわけです。何だかえたいの知れないバスがお客さんを運んでいるらしいよと、業界の中ではそういううわさなり話がたくさんあるんです。

 ただ、我々みずからがある種の権威を持ってそういうのを調べたり指導したりということは現状ではなかなかできませんので、そういう意味で把握が十分でなかったということでございます。

 そういう現状を生んでいるものについては、再三申し上げているとおり、今度の事故は、考え方をちょっと変えると、旅行会社、貸し切り事業者、それから運転者それぞれが、法的に問題があるか、たくさんの違反を起こしているわけです。

 だから、考え方とすれば、今あるルールを厳格にきちんと守れていれば、例えば六百七十キロにしても、国土交通省の指針によれば、あれは六百七十キロを超えていると思われます。そういう今のルールさえ守れていない。まずは守ることが極めて重要だという言い方になると思います。その上で、今次さらに、安全性を高めるための今ある基準の見直しと、二段構えで物を考えてもよろしいのではないかと思います。

 例えば六百七十キロについて言うと、貸し切りバスの、夜行や昼間を問わず一日の運行の運転者の最大キロでございますから、例えば六百七十キロを三百キロにすればいいんだということになると、日中の、例えば東京から下田へ行くだとか、東京から二本松へ行くだとか、東京から三春の滝桜へ行くだとか、こういったものというのは微妙な距離にあります。一般道路が長うございまして、これを二倍にするという中で、事業者は商品ごとに距離の計算をして、これで何とかクリアできる、こうやっているわけでございますから、一律に夜も昼間も三百キロにすればいいんだということについては非常に慎重に考える必要があると思っています。

村瀬参考人 先ほどのあずみ野観光の事故をもとに、我々、高速ツアーバス連絡協議会をつくって、全体の安全の底上げをしていくということを目指してやってきました。その中では、常々法令遵守ということを申し上げてきたんですけれども、今回こういうようなことが起きたことを非常に残念に思っております。

 その中で、今回の問題ですけれども、やはり旅行会社が、バス運行管理の知識がない中で無理な依頼をしたり、法令遵守意識の低い貸し切りバス会社に、意図する意図しないにせよ依頼してしまうリスクが存在するということが、我々協議会も、貸し切りバス会社の安全性をどこまで旅行会社として見られるかというところが一つの課題かなというふうに思っております。

    〔委員長退席、小宮山(泰)委員長代理着席〕

穀田委員 では、国交省に聞きたいと思うんです。

 今ありましたように、何をやっても構わないみたいな事態が起こっているということまで言われていまして、守っていればとありました。違法状態が蔓延化して、それで、どこが崩れているか。安全対策が崩れているんですよ。起こるべくして起こったというふうに労働者の方々は言っておられますよ。そこを私は見なくちゃならぬ、今のままでは違法状態はなくならないと思います。

 事故を防ぐ上で、今、守っていればとありましたが、最低限、違法状態の根絶は不可欠だと思うんです。国交省に聞きますけれども、なぜ違法状態がなくせませんか。

中田政府参考人 ツアーバスを運行する事業者の状況につきましては、国土交通省におきまして、立入検査等を通じまして、多数の法令違反があったことを確認してございます。違反のあった事業者に対しましては行政処分等によって是正を図ってまいりましたが、結果として、法令遵守の改善が進んでいないと認識してございます。

 特にツアーバスにつきましては、ツアーを主催する旅行業者と、そのもとでツアーバスを運行する貸し切りバス事業者という、二つの事業者の構造の中でこの貸し切りバス事業者の法令違反が多くなっているという側面が背景にあると考えてございますが、いずれにいたしましても、今まで我々、立入検査の中で法令違反を把握し、その是正を図ってきたにもかかわらずこのような状況であるということを改めて知らされまして、まことに遺憾に思っております。

 その意味で、これまでのルールを守らせるという取り組みが不十分であったという認識のもとに、先ほど小田参考人からも御指摘がありましたように、まずこのルールを守らせるということについて、国土交通省としてこれから全力を挙げてまいりたいと考えてございます。

    〔小宮山(泰)委員長代理退席、委員長着席〕

穀田委員 私、中田局長に一言言っておきますけれども、今まで守らせる立場をきちんととっていたんだったら、できたことは何ぼでもあるんですよ。大体、おたくのところは総務省から言われて、旅行業者が命令をいろいろしてやっているということは出ているわけですよ。あなたのところが調べても、そこがひどいという話はわかっているんですよ。だから、そこをぐっと締め上げて、きちっとやれば少しはましだったということを、私はあえて言わせていただきたいと思うんですね。

 そこで、次に、では法令が安全を守る歯どめになっているのかという問題です。御意見を伺いたいと思います。

 今、皆さんから六百七十キロの話がありました。安部参考人からも村瀬参考人からも話がありました。国交省のこの基準、六百七十キロと決めた根拠は、一日の運転時間の上限が九時間とした運輸規則の規定から算出したものなんですね。もともと、そのもとになったのが厚労省の改善告示、すなわち、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準を出発点にしているんですね。だから、それを遵守したとしても、拘束時間は最大一週七十一時間三十分、四週で二百八十六時間。これを時間外労働に直しますと、一カ月で百十五時間以上の時間外労働を容認することになるわけですね。

 ですから、この問題について、自交総連の労働者を初めとして、厚労省が定めた過労死認定基準をはるかに上回る基準になっているじゃないかということで厳しく指摘されているわけですね。労働者からは、劣悪な労働条件そのものとして批判が出ています。これが一つ。

 もう一つ、五月七日放送のNHKクローズアップ現代「検証 高速ツアーバス事故」で、バス会社の社長の証言は極めて重要です。仕事量をふやすには価格を下げるしかないんですよ、うちは安全を守れない、バスの今回の関越の事故についてね、これはもう人ごとじゃないです、はっきり言って、あすは我が身というのを絶えず考えている、こう言っているんです。つまり、価格を下げる、賃金を下げなければやっていけない、そうしたら安全は守られないという現状告発の発言なんですね。

 交通運輸機関で安全を担保するのは運転にかかわる労働者なんです。労働者の労働条件を改善しない限り、安全確保はできない。労働者の置かれている実態の改善に着手して、過当競争、そして次に起こるダンピング、そしてその次に待っている労働条件悪化、それで安全ないがしろ、この悪循環の根を絶つことが必要ではないか。

 ですから、この点の考え方をお三方に、できたら簡潔にお願いしたい。

小田参考人 我々、どうしても自分の経験してきたこと、自分の周辺のことから集約した言い方になりますが、乗り合いバス会社というものは、道路運送法上の四条、五条の許可を受けて、それで初めてできるわけでございますが、形としては、営業所というものは認可に基づいてありますけれども、これは事実上、運行管理所みたいなものなんです。

 乗り合いバスの営業所というのは、定期を売ったり、回数券を売ったり、切符を売ったりということもございますけれども、基本的には、営業所イコール運行管理所。運行管理をしっかりやることによって法も我々を守ってくれる、こういう立場で何十年もやってきた、それが乗り合いバス会社。貸し切りバス事業者についても、私の知る限りでは、そういう優秀な会社、きちんとしている会社はたくさんございます。

 ところが、例えば高速ツアーバスというのは、先ほど新しい需要を掘り起こしたとか、私もそういうことについては評価するにやぶさかではございません。しかし、営業が最優先で生まれ、その運行が貸し切り事業者におろされている、こういう図式。営業があって、運行管理の方が中心になって運行が行われているわけではない。例えば、今度高速ツアー会社が乗り合いの高速バスに移ったとして、移ってこられた側は、これからは運行管理にかかわる投資に私はお金がかかると思います。かけていかざるを得なくなるわけです。

 我々の方はむしろ、ツアーの高速バスが開拓した、いわゆるネットの販売ですとか集客の新しい仕組みだとか、こういうことがある意味では欠けているわけで、こちらの方に多分精力を、運行管理の問題は別にして、進む方向になるだろうと思っております。そういう意味で、一本化するということは、お互いが補えなかった部分がこれで明白になってきちんとできる、そういう方向になるだろうと思っているわけです。

 的がちょっと外れたかもわかりませんが、よろしくお願いします。

村瀬参考人 高速バスは、お客様が望むサービスと安全というのが当然両立して初めて商品となるというふうに考えております。ですので、当然、この安全ということのコストを考えた上で、その上での自由競争というふうには考えております。

 先ほど私の説明させていただいた中で、商品をインターネット上で比較して予約ができるということが今まで現実的にできたということもお話しさせていただいたんですけれども、今後は、ここを、安全の見える化ということでお客様が商品を選ぶためにはどうするかということを協議会でも考えていき、安全に必要なコストを各社がかけ、それをユーザーがちゃんと判断して予約ができる、ひいては、その安全のコストをかけた分がバス事業者に行くというような仕組みを構築していきたいというふうに協議会では考えております。

安部参考人 運輸産業の中でも、鉄道ですとか航空の場合は人間のエラーをバックアップするシステムが、システム産業ですからありますので、例えば鉄道ではATSというようなものがありますが、バス、タクシー、トラックにつきましては、人間の、ドライバーのエラーをバックアップする装置がございません。したがって、ドライバーが事故に対して物すごく大きく寄与するということであります。

 過労運転ということはやはり避けないと安全が確保できないというふうに思っておりまして、二十年前に、労働省時代に改善基準告示というのができたわけでありますが、実は、当時からなかなかこれ自体が守られていないという状況にありました。改善基準自体の水準が適正かどうかというような問題はさておきまして、これ自体もなかなか守られていないという状況で、この十年間、規制緩和の中で一層その状況があるのではないか。

 ですから、法律を守るようにするということが現実的になかなか、監査の手段では難しいと私は思っておりますので、やはり入り口のところで少し、最低限の労働条件等が担保できない企業については入れないようにする。こういうことを考えないと、後から守らせるというのはなかなか難しいのではないかというふうに考えております。

 以上です。

穀田委員 私、安部先生から今お話ありましたように、最終的には運転手のところが安全の最後のとりでだし、最大のとりでだと。そこの現状がどうなっているかというところに着目しないとだめだという立場なんですね。だから、国交省が一日九時間などというものを決めてやっていること自体がおよそ意味がない。だから、仮にその法令を守ったとしても、それを守ったからといって、安全というのは私は担保できないという立場であります。

 そこで、一貫して皆さんから出ているバス事業との関係での自由化、規制緩和なんですが、先ほども小田参考人からありましたように、当初からは倍になっていると。私は、あえて誤解を恐れずに言えば、白バス行為を行っていた業者さえも参入できるようになったというのが現実じゃないかと思うんですね。

 安部先生も著作で指摘していますけれども、運輸事業のように、何よりも安全が求められる産業において過度の競争が組織された場合、それは輸送の安全の基盤を掘り崩してしまうことになると。私はここが一番大事なところだと思うんですね。私は、他の問題についても、人の命を預かる運輸事業においては絶対安全が必要だと主張してきました。したがって、直接命にかかわるところでの規制緩和は間違いだと私は思います。

 国交省は事後チェックで万全を期すから大丈夫などと主張してきましたし、先ほど国交省は、効果的に実施すればというようなことを言っています。だけれども、十二万社を超える運送事業者を、幾らふえたといって、三百二十人で監視することなど到底不可能、こんなの絵そらごとですよ。だから、要するに入り口のところでチェックしなければならない。そこで、私は今後、再発防止を行う上で、規制の強化が必要だと。どこが肝心か、ポイントか、そこの点をお三方に伺いたいと思います。

 そこで、一つ、参入資格の厳格化。二つ、適正な賃金と労働条件の改善。これは、オーストラリア連邦議会ではトラック運転者安全賃金法案を可決しました。道路交通産業における労働者に、適切な強制力を持つ最低保障賃金、労働条件を決定することとしました。これを参考にすべきじゃないかというのが二つ目。三つ、事故を起こしたバス会社に対して仕事を発注していた旅行会社の発注者責任を問うこと、こういうことも必要じゃないか。この三つの点について私は考えているんですね。

 ですから、その点に対する皆さんの御意見を伺えればお三方にお願いしたい。

小田参考人 幾度か申し上げておりますけれども、ふえ過ぎて、ある意味では、事後の手が回り切れないほどふえているというのは素直に認める必要があると思います。そういう中で、これからも同様の、資格に結果的に欠けるような事業者が同じルールで新規参入で入ってくる部分については、従前と違ってハードルを高くする。これがまず第一点、必要だと思います。

 それから二つ目は、何度も申し上げていますように、今、四千社近くあるわけでございますけれども、この既存の事業者のレベルアップは業界としても何としてでも、行政とタイアップする中で、一事業者ずつのレベルを上げていく。具体策を実行しようとしておりますが、これをやっていく必要があるのが二つ目です。

 三つ目は、事業者がふえ過ぎてしまっている中で、実際、貸し切りバス業界というのは、旅行業者から仕事を受けて、それで営業していく、こういう形が大部分です。もちろん、エージェント依存というのは会社によっていろいろ率の違いはございますが、エージェントなくして貸し切りバス業界は成り立たないぐらいの関係にございます。

 その旅行業者と貸し切り事業者のアンバランスな力関係が今日の低価格、例えば平成四年と現在で、貸し切りバス業界が受けている営業収入というのは四五%も減っちゃっているんです、業界全体の収入が。そういう中で、事業者が、平成四年対比だと三倍にふえているんです。当然のことながら、生き延びていくには、引受単価を安くして、仕事を常にもらい受けるような形をとらざるを得ない。いわばこれが、最後の、古い車両を使うだとかにあわせて賃金の問題、労働時間の問題に影響していると思います。

 したがって、冒頭申し上げたことを繰り返しますけれども、三つの視点の対策が的確に行われれば、その結果として、賃金問題、労働条件問題も一定の水準に維持できる状態が生まれると思います。

村瀬参考人 貸し切りバスの新規参入に関しましては、規制を強化することで安全の確保が進んでいくというふうに考えております。

 あと旅行業者に関しましては、今、旅行業に対するところの国家試験もありますけれども、そこの中に、今後、旅行業者が手配する者に対して、運行管理であるとか労働基準法であるとか、こういうところも把握をしていただくということも非常に必要じゃないかなというふうに考えております。

 こういった中で、とにかく安全が確保されていくことによって、まさに安全を握るドライバーの、乗務員さんの賃金等の安定が図られればというふうに考えております。

安部参考人 貸し切りバスの問題とツアーバスの問題は整理をして考える必要があるのではないかと思います。新しく莫大な数がふえた貸し切りバス業者全てが、ツアーバス、今回のような長距離の二点間を結んでいるような輸送をしているわけではないというふうに思います。

 ツアーバスと高速乗り合いバスの制度を今国交省の方は一体化しようというふうにされていて、それを前倒しということで、これはこれでよろしいのではないかというふうに思います。

 その際、そういう新しく二点間を結ぶ高速の遠距離バスで、その場合の夜行のバスについては、例えば、運行管理者を必ず夜、営業所に配置をすることなどなど、こういった基準を少し厳格にして、夜の安全が確保できるようなことをして、その資格をクリアできる者が、新しく発足する制度の高速のバスの事業ができるということにする。そういうことがあり得るのではないかというふうに思っております。

 貸し切りバスの問題については、参入をどうするのかについてはまた別途、別の枠組みで考えていく必要があるんじゃないかというふうに考えております。

 以上です。

穀田委員 期待をしております。

 私は最後に、旅行業界と貸し切りバス会社、現場の労働者の代表を招致しての参考人質疑をやはりもう一回やるべきだということを提案しておきます。

 以上です。

伴野委員長 ただいまの穀田恵二さんのお申し出は、後刻理事会で協議させていただきます。

 次に、平沢勝栄君。

平沢委員 自由民主党の平沢勝栄でございます。

 三人の参考人の皆さん方には、貴重な御意見をありがとうございました。

 本論に入る前に、前田国交大臣の件について、きょうは警察庁と法務省においでいただいていますので、ちょっとお聞きしたいと思います。

 これほど明確に公職選挙法に触れる疑いのあるケースというのは珍しいんじゃないかなと思いますけれども、もう既に告発が出て、東京地検の方で受理しているということで聞いておりますけれども、捜査の方はどうなっているんでしょうか、警察庁と法務省。

舟本政府参考人 個別具体的な事案につきまして、捜査をしているかどうか、あるいは具体の捜査手法にかかわる事柄につきましてはお答えを差し控えさせていただきたいと思いますけれども、一般論として申し上げれば、マスコミ報道、聞き込み、内部告発等によりこの種事案の容疑情報を入手した場合におきましては、刑事事件として取り上げるべきものがあれば、しかるべき捜査に着手をし、法と証拠に基づき適切に対処しているところでございます。

稲田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のありました事件につきましては、東京地方検察庁に対しまして告発状の提出がなされましたところ、検察当局におきましては、これを受理し、現在捜査中であるというふうに承知しております。

平沢委員 もう一言だけ言わせていただきたいんですけれども、前田大臣が下呂の建設業協会に送られたオリジナル、原本はここにあるんですよ。これを、何で捜査当局はぜひ提出してくれというようなことを言ってこないんですか。やっているんですか、捜査は。もう一回答えてください。警察庁でいい。

舟本政府参考人 繰り返しの答弁で恐縮でございますけれども、お尋ねの内容につきましては、個別具体的な事案の捜査手法にかかわる事柄でございますので、捜査をしているか否かを含め、お答えは差し控えさせていただきたいと存じますが、一般論として申し上げれば、警察は、犯罪があると思料するときは捜査をすることとなっておりまして、刑事事件として取り上げるべきものがあれば、法と証拠に基づき適切に対処してまいります。

平沢委員 わかりました。では、警察庁の方はこれで結構です。

 そこで、参考人にお聞きしたいんですけれども、まず小田参考人。

 小田参考人がお書きになられた論文を読ませていただいたんですけれども、小田参考人は、この高速ツアーバスというのは法的許可を得ない法令違反行為である、乗り合い類似行為を常習的に行っているため、道路運送法違反ではないかということを書いておられます。法違反じゃないかというようなことを小田参考人が言っておられるわけです。そのような業界がずっとそのような状態のまま続いてきた。それは最近急速に伸びたということもありますけれども、どうも理解に苦しむんです。

 小田参考人、これだけ小田参考人が強く業界代表として主張されたにもかかわらず、何でこの業界について国交省はこのままの状態でずっと今日まで来たんでしょうか。小田参考人はどう思われますか。

小田参考人 今お話しされた私の記述等については、全くそのとおりでございます。

 その上で申し上げますけれども、今日では高速ツアーバスと申しておりますけれども、これが走り出した幾年間かは、国土交通省におかれても、いわゆる高速の乗り合いバスというのは、法的な根拠の中で、定時、決まった時間、決まった路線、それから毎日運行、こういった原則のもとに運行しておるものが高速の乗り合いバスの定義でございます。今は法律が変わりまして若干抽象的になっていますが、基本は同じです。

 高速ツアーバスというのは、今でこそそういう名前で呼びますけれども、決まった時間に、およそ決まったルートで、しかも通年運行しているということになると、これは道路運送法のいわゆる乗り合いバスの類似行為だ、したがってそれは法律違反だ、こういう主張を我々は業界として申し上げてきたわけです。

 そのほか、例えば小泉規制改革の中で、市場原理あるいは競争原理の導入、そういう市場原理の大きな風が吹いている中で、ある意味では、バス業界においても規制緩和を進めるんだ、こういう波の中で、国土交通省側も、従前は乗り合い類似行為だということで指導の対象にしておったものが、平成十七年、十八年の通達、事務連絡でございますけれども、これによって、高速ツアーバスは道路運送法上の責任は問えない、違法とは言えない、こういう通達をお出しになり、それで、ある種の分野の方々は、これで法的に認知されたということになり、大っぴらに、しかもある種の風に押されて育成されるようなスタイルの中で、いろいろなスタイルで、今日事故を起こしたような運行スタイルにつながるところまで来てしまった。

 でありますから、今でも我々は、あれは道路運送法違反ではないかということを主張して申し上げているわけでございます。

平沢委員 ありがとうございました。

 そこで、次は村瀬参考人にお聞きしたいんです。

 村瀬参考人は、この業界では代表的な会社を経営しておられる。村瀬参考人の会社は、というか、真面目にやっている事業者からすれば、今回のこういう悪質な業者がいたというのは極めて迷惑なことだろうと思います。

 今の小田参考人の話を聞かれて、今の高速ツアーバスは業界を取り締まる道路運送法の違反じゃないかということなんですけれども、それについて、実際に経営しておられる村瀬参考人はどう思われますか。

村瀬参考人 高速ツアーバスに関しましては、旅行業法に基づいた旅行商品ということで、旅行業法を遵守していくということで考えております。

 その中で、もちろん、安全ということに関してないがしろにしていい、旅行業法だからいいということは全く考えておりませんので、旅行業法の遵守イコール、その中に安全配慮義務というものもあるかと思っておりますので、この高速ツアーバスに関しては、我々の認識では、今、違法行為とは思っておりません。

 ただ、内在する問題があるということは熟知しておりますので、一日も早い新高速バスへの移行を推進していくということに決めております。

平沢委員 次に、安部参考人にお聞きしたいんですけれども、安部参考人は先ほど、規制緩和は、消費者にメリットを与える部分はもちろんあるわけですけれども、それが行き過ぎてしまうと、料金が安くなるというより安全性がおろそかにされてしまう、そういう大きなデメリットがもたらされる、こういうお話だったと思います。

 先ほどこれについてはいろいろ質問が出ましたので、安部参考人にお聞きしたいのは、外国の場合、例えばアメリカなんかはグレイハウンドバスとかいうアメリカじゅうを走り回っているバスがあるわけですけれども、アメリカの場合は、こういう高速道路を走っているバスの運転手に対する規制とか、あるいはそういった会社、事業所に対する規制というのは、日本と比べてどこが違うんでしょうか、おわかりだったら教えてください。

安部参考人 厚生労働省からある民間のシンクタンクに委託がありまして、ヨーロッパのトラック、バス、タクシーの労働時間の現状と規制のあり方について、私、つい二カ月前まで一年ばかりその委託の研究のチームに入っておりまして、ちょうど調べた経緯がございます。手元にありましたら詳細にお答えできるんですが、ちょっと今手元にございませんので。

 その結果わかったことなんですが、一つは、日本の労働時間規制がそう大きく緩くはなくて、ただ大きく違うのは、ヨーロッパの場合は、特定の、日本で言う国土交通省だけが規制に当たるのではなくて、いわゆる警察に当たるところ、道路の交通安全ですが、それからいわゆる日本の厚生労働省に当たるようなところが、安全を確保するためのそれぞれのアプローチで総合的にタイアップしてやっているということ。それから、EUの一番大きな違いは、デジタルのタコグラフをトラック、バスに装備して、そこで厳格な労働時間の規制を始めたということが大きな特徴かなというふうに思っております。

 今、御質問につきましては、アメリカの事情につきましては、私、調べたことはございますが、ちょっと手元にありませんので、大変申しわけございませんが、詳細はお答えできません。

平沢委員 もう一つ教えてください。

 規制緩和、規制緩和といいますけれども、先ほどありましたけれども、安全に対しては、規制緩和どころか、むしろ規制は強化しなきゃならないということだろうと思います。諸外国は安全性については厳しい規制を行っているのかどうか、対して日本の場合は、何か規制緩和、規制緩和と、安全まで規制緩和の方に行ってしまったのかどうか、その辺ちょっと。

安部参考人 実は、規制の中には、一般的に経済的規制と社会的規制というものがあるというふうにされておりまして、経済的規制については緩和をしていくけれども、社会的規制は緩めない、むしろ強化をするという、そういう整理分けがされているんですが、運輸の場合は、なかなか、経済的規制と社会的規制をそういうふうに分けて考えることができるか。

 例えば、安全の担保ということについては、ドライバーの労働時間管理をどうするのかというのが非常に安全の寄与要因になります。では、ドライバーの労働時間が守られるためにはどうしたらいいかというと、一定の所得保障なりドライバーの配置ということが問題になりますが、これは会社の営業状態にかなり大きく依存いたしますので、そうすると、経済的規制を緩和してしまって競争が激しくなりますとなかなかその実質の担保ができなくなるという問題がありますから、運輸の場合、経済的規制と社会的規制とを峻別してそれぞれということは、なかなか現実には合っていないんじゃないかというふうに思います。

 ヨーロッパで規制緩和等がされているんですけれども、日本のようにここまで過当競争が起こっているということはございません。

平沢委員 そこで、国交省の自動車局長にお聞きしたいんですけれども、先ほど来、この業界はいろいろな違反がいわば山ほどあるというような話がずっと出ているわけです。

 まず、今回の事故を起こした陸援隊、これに対する立入検査というんですか監査というんですか、これはやられたのかどうか。いつやられたのか。そして、そのときにはどういう事故が見つかったのか。見つかった場合、それに対してのフォローアップはどういう形でされたのか。それをちょっと教えてください。

中田政府参考人 お答えを申し上げます。

 今回事故を起こしました陸援隊という貸し切りバス事業者に対しては、これまで三回立入調査をいたしてございます。一回目が事故を起こした翌日の四月三十日、それから二回目が五月二日、三回目が五月六日でございます。三回の立入検査を実施してございます。(平沢委員「事前です、事前」と呼ぶ)

 事前につきましては、平成二十年の一月二十一日に立入検査を行ってございまして、これにおきまして、複数、九件の法令違反を確認いたしたところでございます。例えば、認可を受けずに営業所の位置を変更したでございますとか、点呼の未実施、業務記録の記載不備、休憩時間の記載不備、乗務員台帳の未作成等の違反がございまして、この法令違反に対しまして、六月十日に道路運送法に基づく処分を実施したところでございます。(平沢委員「何の処分ですか」と呼ぶ)

 処分は、三両を二十五日間運行停止するという処分でございます。車両の使用停止をするという処分でございます。

平沢委員 結局、処分したけれども、全然この会社は改まっていなかったということだろうと思います。

 そこで、きょうは総務省の行政評価局長にもおいでいただいていますけれども、総務省は国交省に、平成二十二年の九月十日、この問題で勧告をしていると思いますけれども、その勧告の概要をちょっと教えてください。

新井政府参考人 お答えいたします。

 本行政評価・監視につきましては、平成十九年のあずみ野観光バスの死傷事故等の重大事故発生後も貸し切りバス事業者に多数の法令違反があり、安全運行への悪影響が懸念されることなどから、安全確保対策の推進を図るために実施したものでございます。

 調査の結果、国土交通省の監査を受けた事業者の三割程度で法令違反があるなど法令違反が後を絶たない状況があること、また、国土交通省において告発の考え方、方針が未策定で、法令違反事業者に対する告発の実績がないこと、また、調査した貸し切りバス事業者の九割以上が届け出運賃を収受できず、交代運転者の配置など安全運行に影響を与えるおそれがあることなどが判明いたしました。

 これらの調査結果を踏まえまして、法令違反事業者に対する行政処分基準の明確化、処分内容の公表徹底による行政処分の実効性の確保、告発に関する方針の策定などの貸し切りバス事業における安全確保対策の徹底、また、届け出運賃の収受実態の把握、適正収受指導の実施や、発注者である旅行業者に対する指導の徹底などを、平成二十二年九月十日、国土交通省に勧告したところでございます。

平沢委員 総務省が勧告した内容を見てみますと、違反がいろいろある、それに対していろいろ指導したということなんですけれども、まさにこれは違反のオンパレードですね、恐らく総務省が入った事業者の違反状態は。それをなぜ国交省は、総務省の勧告を受けるまでもなく、もっと的確に対応しなかったのかなという疑問が出てくるんです。

 その中で、例えば、告発実績が全然ないということも総務省からの勧告にあるわけです。きょうは警察庁交通局長が来ていると思いますけれども、道路運送法の違反の検挙というのは何件あって、これは国土交通省からの告発によるものがあるのかどうか、ちょっと教えてください。

石井政府参考人 道路運送法違反により検挙した件数でございますが、過去五年間で二百八十件ございます。

 しかし、事件の端緒別の数字は把握をいたしておりません。一般的には、交通事故や交通取り締まりを端緒として検挙したものが多いものと承知をいたしております。

平沢委員 総務省が国交省に勧告した資料を見てみますと、近年は告発の実績はないと書いてあるんですよ。

 そこで、国交省にお聞きしたいんですけれども、違反がいっぱいあるんだったら、何でこれを告発しないんですか。

 それから、ついでに聞きたいと思うんですけれども、営業停止とか何かの行政処分をやっているんだと思いますけれども、悪質な業者は許可の取り消しをしなきゃおかしいと思うんです。その許可の取り消しというのはあるのかどうか、それをちょっと教えてください。

中田政府参考人 私ども、先ほどから御説明いたしておるように、事業者に対しまして立入検査を実施し、所定の処分をしてございます。先ほど陸援隊に対しまして車両の停止という処分を申し上げましたが、違反の態様の重さに応じて、事業の停止、それから営業許可の取り消しという処分がございます。

 これまでそういう形で行政処分を行ってまいりましたが、告発につきましては、近年では関東運輸局において二十一年九月に刑法違反で告発した事例はございますが、それ以降、刑事告発が行われてございません。これにつきまして総務省から勧告をいただいたこともございまして、告発につきまして、改めて、事業者を告発する際の考え方、方針、これを、本年四月に基準を定めまして通達を発出したところでございます。

 今後は、今回の事業者のように、事業規制の根幹、安全に対する対策の根幹を侵すような悪質なものに対しまして、刑事告発を含めた対応を積極的にとってまいりたいというふうに考えてございます。

平沢委員 自動車局長、告発が近年全くゼロというのは、これはおかしくありませんか、いろいろな違反がこれだけあると言っているのに。

 それともう一つは、今、いろいろな行政処分はあると言ったんですけれども、悪質な業者に対しては、これは安全にかかわることなんですから、営業許可を取り消すのは当然だと思いますけれども、営業許可の取り消しというのはどのくらいあるんですか、処分の中で。

中田政府参考人 私ども、自動車運送事業者に対しまして立入調査をし、行政処分をしてございますが、貸し切り事業につきましては、過去五年の実績でございますが、許可の取り消しに至ったのは五件でございます。

平沢委員 やはりこれは、監査体制というか、国土交通省のこういった業界に対する姿勢にも何か問題があるんじゃないかなという気がしますけれども、この業界の一番大きな問題はやはり運賃ですよね。届け出されている運賃が必ずしも業界で守られていない。競争が激しいからどんどんどんどんダンピングされて、今回は十五万ですかで請け負ってやっている。

 自動車局長、今回の陸援隊の場合、届け出運賃は幾らになるんですか。実際は十五万円で受注しているらしいですけれども、届け出運賃は幾らになるんですか。

中田政府参考人 お答えいたします。

 貸し切りバス事業は、運賃は届け出制でございますが、その届け出というのは、一つ一つの行程全てについて事前に届けるということではなくて、その会社としての賃率とかそういうものでございます。

 その届け出られた賃率をもとに、今回のツアーにつきまして幾らになるかということを試算いたしますと、往復の最低額は二十二万円ということでございまして、実際の運賃額はまだ調査の過程で確定してございませんが、報道ベースで申し上げますと陸援隊の運賃額は十五万円ということでございますので、届け出された運賃に比較しますと下回っているという状況でございます。

平沢委員 要するに、二十二万円、届け出の運賃で計算するとそうなる。しかし、実際はいろいろあって、先ほど安部参考人でしたか、中抜きもあって、そして結局十五万という、もうこれは、ぎりぎりというより、運転手のコストまである程度削減しなかったらとてもやれないような料金で受注している。こういうところに大きな問題があると思います。

 そこで、村瀬参考人、これは業界ではかなり幅広く行われているわけですか。それとも、この陸援隊というのは極めて特殊、例外的な会社なんですか。

村瀬参考人 今のは、陸援隊というか、旅行会社が発注する金額ということでよろしいですか。

 個社の、それぞれのバス会社との取引金額というものまで全て把握しているわけではございませんけれども、実態上、今、旅行会社とバス会社の運賃のやりとりの中では、公示運賃を守られていないものもあるというふうに認識はしております。

平沢委員 次に自動車局長にお聞きしたいんですけれども、これだけ多くの事業者がある中で、今の監査体制で十分な検査はできますか、監査というかチェック。もちろん、バスもありますけれども、トラックもタクシーもあるわけですから、そういう中で、先ほど来三百何十人という話が出ていましたけれども、これで実際できるんですか。事実上できないんだったら、もっと別な方法を考えていかないとまた同じような問題が起こりかねないと思いますけれども、自動車局長、どうですか。

中田政府参考人 私ども、事後チェック体制の強化ということで監査要員の増員等をこれまで図ってまいりまして、現在、今年度の数字では三百二十人ということでございます。

 一方、これまで増員を図ってきたことによりまして、監査する事業者数も、全ての運送事業を合計いたしますと年間一万二千社余り監査をしてございますが、現在この事業に携わっている数からいいますとわずかであるということでございます。

 今後、私ども、この監査体制につきましては、これまでの監査では事業者の違法行為を確認しそれを除去するということについて不十分だったということが今回非常に明らかになりましたことから、抜本的に監査のあり方について見直して、この監査体制を実効性のあるものにしたいと考えてございます。

 ただ、そう申し上げましても、まさに先生御指摘いただきましたように、三百人で全部見られるかというと、正直申し上げまして、全部私どもが監査してチェックするというのは当然限界がございまして、これにつきましては、あり方検討会の中でも提起されておりますけれども、事業者団体みずからが、法律上位置づけられた一定の機関を設けまして、事業者みずからが事業者をチェックする、そういう仕組みを導入することが提案されてございまして、これは、トラックの世界ではもう法制化されてございます。

 そういう制度を参考にしながら、我々行政がするチェックと、あわせて民間自身の自主努力というものも活用したいと思っておりますし、さらに今、国土交通省で吉田副大臣を筆頭とする政務二役のチームができまして、消費者の目で悪質な事業者を判断できるような、そういう仕組みについて検討するということを言っていただいております。

 その意味で、事業者の自主、それから消費者、利用者の目で、事業者について一定の情報を提供することによって排除する、そういう総合的な仕組みをこれから構築する必要がございまして、まさに、私ども監査ということで精いっぱい体制を強化いたしますけれども、それだけでは不十分で、それ以外の対策も講じてまいりたいというふうに考えてございます。

平沢委員 きょうもバスは走っているわけで、一刻を争うわけで、ぜひ迅速にしっかりした安全対策をとっていただきますようお願いしたいと思います。

 最後に、法務省と警察庁においでいただいていると思うんですけれども、今回の関越道の事故、恐らくこのドライバーは自動車運転過失致死で逮捕されて送ったんだと思いますけれども、これは、居眠りということでこれだけ大きな事故を起こした。死者が七名、三十九名の負傷者が出た。盗みでもと言ったら語弊がありますけれども、窃盗で十年。しかし、今回の自動車運転過失致死だったら七年。国民感情から見て、どう見てもバランスを欠くんじゃないか。

 ですから、法律に危険運転致死というのがあるわけですから、この危険運転致死を適用すべくいろいろ工夫があってしかるべきだと思いますけれども、これについて、警察庁と法務省、答えてください。

石井政府参考人 本件事故につきましては、群馬県警察におきまして、事故発生当初から、危険運転致死傷罪を含めあらゆる法令の適用を念頭に置きながら捜査を進めてまいりましたが、被疑者に対する取り調べや関係先に対する捜索、差し押さえにより押収した証拠の分析結果をもとに、群馬県警察におきましては、自動車運転過失致死傷罪を適用し、身柄送致をしたものと承知しております。

 なお、引き続き、群馬県警察におきましては、本件事故の背景等も含めた全容解明に向け、鋭意捜査を進めているところでございます。

稲田政府参考人 ただいま警察当局の方から御答弁がございましたように、五月一日に当該被疑者であります運転手を逮捕し、警察当局は、五月三日に前橋の地方検察庁に身柄つきで送致をされたところでございます。現在、その勾留期間中で、捜査中であるというふうに承知しているところでございます。

 お尋ねの点は、その捜査の中身、証拠の内容にかかわる事柄でもございますし、また、どういう法令を適用するのかというのは、結論において、捜査当局において収集した証拠に基づいて判断されるべき事柄であるというふうに考えているところでございまして、現時点でお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

平沢委員 時間が来たから終わります。ありがとうございました。

伴野委員長 次に、中島隆利君。

中島(隆)委員 社会民主党の中島隆利でございます。

 本日は、三人の参考人の皆さん方、大変貴重な御意見、そしてまた、いろいろな御質疑に御丁寧な御回答をいただいていること、まず心からお礼申し上げたいと思います。

 私も今まで、この事故の背景あるいは経緯、そしてまた、今の質疑の中で感じるわけでありますが、今回の重大な事故が、規制緩和によって、この業界、貸し切りバスあるいはツアーバス業界が大量にふえ、そしてそこに対する監査、指導が行政として十分にいっていない、しかも業界内でも実態が把握できていない、こういう本当に重層した構造の中で起こっているということをつくづく感じたわけであります。

 そこで、それぞれもう質問されて、できるだけ重複しないように質問したいと思うんですが、まず最初に村瀬さんに、高速ツアーバス連絡協議会の会長をされているということで、今回の事故を起こした業者に関連する団体でもございますので、まずそこから質問させていただきたいと思います。

 今回の報道によりますと、運転手の居眠り、過労運転、これが原因だと思いますが、本当に根幹はそこだけではないということが指摘されています。

 しかし、その中でも、運行指示書の未作成、あるいは乗務前の点呼あるいはアルコールチェック、日雇い雇用、あるいは名義貸しという、三十数項目にわたって違法が発生をしている、こういう実態ですね。

 そこで、業界のホームページも見させていただきました。会長の御意見も拝見したわけでありますが、この業界は二〇〇八年六月に設立をされております。そこで、数をこのホームページから見ますと、今、八十九社が会員であられるということですね。しかし、規制緩和でふえた業者は二百社以上、三百社近くと先ほどありました。これくらいの高速ツアーバスの業界の実態であると。

 ですから、まずはこの八十九社、二〇〇八年に発足をされて、業界内で、業界の連携強化はもちろんでありますが、特に安全に対する教育と研修を行ってきた、これを連絡協議会の活動の指針にして取り組んできたということでありますが、これまで業界として、安全対策あるいはその徹底をどういうふうにされてきたのか。それと、組織に入っておられない未入業者の方々にはどう対応されてきたのか。そこをちょっとお尋ねしたいと思います。

村瀬参考人 高速ツアーバス連絡協議会は、三つの分科会に分かれております。一つは旅行を企画、実施する会社、それからバスを運行する貸し切りバス事業者、それから高速バスツアーを販売する受託販売会社、この三つから成り立ちまして、その合計数が今、八十九社ということになっております。

 その中で、今回のこのビジネスモデルの、募集をする、それからバスを手配するというところは、この分科会の中の旅行企画実施会社というところになっていきます。ここに関しましては、今、全社で約四十社、正確には三十八社が我々のところに加盟をしております。

 旅行企画実施会社ということでいいますと、我々に未加入のところ、これは我々が把握できている限りということですけれども、未加入のところが三社ということで、企画実施会社にはほぼ全社が御加入をいただいているという形になっております。

 この中で、今回、この企画実施会社から貸し切りバス会社を手配する、こういう仕組みになっておりますので、我々の会員から手配を行う貸し切りバス事業者に向けては、今後全て管理をしていくという形をとることを考えております。

 現在の貸し切りバス事業者数が少ないというところに関しましては、いわゆる旅行会社がバス会社を発注するため、旅行会社としてはどこの会社にでも今手配ができる、こういうような状況になっております。その中で、主たる利用バス会社に関しては御加入をいただくというような形に今はなっております。ですので、貸し切りバス会社に対しては、全てが我々の会員にはなっておりません。

 ただし、先ほど言いましたように、今回、旅行企画実施会社がバス会社を選ぶ基準というところの明確化を書面で必ず行う、これを協会の方で管理していくということで、利用するバス会社の管理ということも今後やっていきたいというふうに思っております。

 それから、協議会での安全に関しての活動ですけれども、国交省からいただきます事務連絡、いわゆる通達に関しては、全て我々の企画実施会社に通達をするということを実施しております。それから、総会等を催したとき等に、安全に対する勉強会ということで、有識者の方に来ていただいての勉強会の実施ということをやってまいりました。

 ただし、本来、会を発足した際に、実態調査を行うということを入れておりましたけれども、発足してすぐ、二カ月後に今回のバスのあり方検討会が発足するということがありまして、我々は、より安全の向上が望めるということで、このバスのあり方検討会の方に注力をしていったがために、実態調査までは至っておりませんでした。その部分に関しましては、反省をしまして、すぐに実行するということで、この安全確保指針の中にそういったところも盛り込んでおります。

中島(隆)委員 今、発足以来、八十九業者の中には、バス会社だけじゃなくて、企画業者、旅行業者も含めた連携をやってきたということでございますが、その中で、やはり先ほどから問題になっています運賃・料金の問題、低コストで受注、発注、この関係が大きな問題であったと思うんですが、業界の中では、その点がどういうふうに、価格安定については十分協議されて一定の料金でなされていったのか、やはり契約はもう自主的な管理であったのか、その点、ちょっとそこだけお願いします。

村瀬参考人 商品に関しましては二種類に大きく分かれていると思っていまして、一つは、先ほど言いましたような高級シートであるとか、そういったところでの価格訴求を競うというのが本来あるべきだというふうに考えております。

 その中で、今、価格に対して、個社が、それぞれバス会社と旅行会社が幾らで契約をするかというところまでは、協議会の方では、報告義務もなく、管理をしておりませんでした。

中島(隆)委員 三人の参考人の皆さん方にお尋ねしたいと思いますが、これまでの発言、それから三人の皆さんの御発言の中で、二〇〇〇年以降の規制緩和、これがやはり問題の大きな背景にあるように伺います。

 特に、一九九九年、二千三百三十六社、それが二〇一〇年には四千四百九十二社、倍増になっている。先ほど小田さんの話では、その前からすると三倍になっている、こういう業界の増大が指摘をされています。それから、一台当たりの営業収入が、八万五百十九円だったのが六万三千四百三十五円、二割以上も減少している。規制緩和によって業界はふえるわ、あるいは運賃の引き下げ競争の中で、運転者が非常に過酷な労働で、安全がまさに犠牲になって運行されてきた、こういうのがこの背景にあると思うんです。

 それぞれもう今まで出ておりますが、先ほど小田会長からは、規制緩和だけが問題ではない、やはり問題は、これを運行する業者、あるいは行政も含めて対応が問題だということ。そこもわかるんですが、一番大きな根本は、規制緩和によって大量にふえた業界、違法状態がこれだけ放任されている、これが大きな問題だと思うんです。三人の方に、この規制緩和に対する考え方をもう一度聞きたいと思います。

小田参考人 規制緩和、市場開放あるいは競争原理、こういったものは、日本を取り巻く情勢も考えれば、そういった方向は全面否定するというものではない。要するに、そういったものの中で、より市場化をしてより競争をしていく中で、そういう中でどうやって安全管理をきちっと確立するか、こういうテーマだというふうに業界も私も認識しているわけです。

 それで、きょうお配りしております「高速ツアーバス問題について」という資料の中でも、三ページにあります「行き過ぎた規制緩和がもたらしたもの」、それから「規制緩和がもたらした高速ツアーバス問題について」、あるいは「高速ツアーバスを急拡大させた「事務連絡」について」、こういうぐあいに直接的な問題点を指摘する中で我々協会の姿勢を明らかにしているわけでございます。

 例えば料金のことについて言うと、同じように、タクシーは十四年でございましたか、乗り合いバスも十四年、貸し切りは十二年に規制緩和が行われたわけですが、料金でいえば、タクシーは皆様御存じのとおり定額です。どんなに事業者がふえても車両数がふえても、一定地域の運賃というのは基本的には定額です。貸し切りバスは届け出運賃ということにはなっておりますが、いわばこれが、一種の買いたたき、ディスカウント合戦で、事実上全く、全くは言い過ぎですけれども、守られていないケースが余りにも多い。

 したがって、料金を適正に収受できるかどうかは、安全確保、乗務員の待遇といったことと密接に関係しているので、この料金・運賃制度については、あり方検討会も別にワーキングを設けて徹底議論する仕組みになっております。何とかそういう貸し切りバスについても、一日幾らというような、わかりやすい、定額のそういった仕組みにならないものかというのは私自身の考えているところでございます。

 ともあれ、今回、あり方検討会の中で、今いろいろ出ている問題を踏まえて、十三回、一年半にわたってやったわけで、その成果は、高速ツアーバスは種々問題があり、安全性にも直すところがあり過ぎるので、高速乗り合いバス、言い方をかえると新高速バスという言い方になりますが、これに二年間を限って移すということになっているので、これをとにかく徹底してきちんとやっていく必要がある、これが第一点です。それを前倒しして一年間にするかということも踏まえてですけれども。

 それから、その期間に移らなかった場合、そういう事業者をどうするかということを法制度も含めてやはりきちんとするということによって、高速ツアーバスで今生じている問題は、基本的には高速乗り合いバスと同じレベルの水準に直るだろう、こういう基本認識を持っているわけです。

 それから、高速ツアーバスの問題はそういう大方針が生まれているわけですが、もう一つ、貸し切りバス業界の問題というのは、あわせて解決を図らなきゃならないという大きなテーマがあります。

 これは、先ほどの運賃の問題もそうですけれども、そういうものも含めて直すとしたら、ふえ過ぎた事業者のレベルを上げる仕組みと、それから、これから新たに入ってくる事業者を同じルールで入れ続けたのではイタチごっこになるわけですから、入るところを少し蛇口を閉めてもらう、それで既存事業者のレベルを上げる。それからもう一つ、旅行業界、貸し切り業界自体の商売が、平成四年、十二年と比べて総体として減っていますので、どうしてもダンピングが生ずる。それの鍵を握っているのが旅行業界にある、こういう認識も主張しておりますので、ぜひ、旅行業法、旅行業界の方に、大勢の人命を運ぶ旅客運送事業に携わる場合は、やはり一定の罰則といいますか、責任を分担する仕組みもあわせてつくってほしい。

 ほかにもございますけれども、この三つが確立できればかなり大幅な改善に至ると信じているものでございます。

村瀬参考人 この規制緩和には二種類あると思っています。一つは高速ツアーバスというものと、それからもう一つが貸し切りバスの話と、二種類の話があると思っております。

 この中で、高速ツアーバスに関しましては、今までバスに乗らなかった方が、インターネットを通じて、こんなバスだったら乗りたいということで新たな市場をつくることができた。これは、規制緩和にとって非常にメリットだというふうには感じております。

 ただ、本来、それと同時に安全の確保ということがなければ規制緩和の成功とは言えないというふうに思っておりますので、この安全確保の、法令遵守の実効性をどうするかというところが課題だというふうに考えております。

安部参考人 競争の評価をどうするか。規制緩和の評価の問題ですが、競争がサービス改善を促進する側面があると思いますので、競争そのものは否定されるべきではないと思います。

 問題は、運輸の労働コストが高いバス、タクシー、トラックで過当競争になったときに、いろいろな弊害があらわれる。特に、今回の問題でも象徴的にあらわれているんですが、どうしても労働コストと車両のコストのところに行ってしまう。最近はおさまったんですが、二、三年前に相次いでバスが火災事故を起こすということが発生しまして、あれを調べてみますと、いわゆる車齢、通常、これまでは八十万キロぐらいで更新をしていたものを、百万キロを超えるような車両を使って、そこがどうも火災事故になっているようなこと。やはりこういう二つの問題が発生しているんじゃないかというふうに思います。

 これはやはり、規制緩和で参入をここまで、過当競争を許容するようなところまで参入を緩めたからであるというふうに思っております。このことに対して、例えば監査で対応するのは一つの考え方なんですが、例えば監査要員を千人とか二千人に増員すればそれも可能かもしれませんが、しかし、それは規制コストを余りにもかけることになりますから、これは、行政改革ということが求められておる時代に適切じゃないというふうに思います。

 それから、業界の自主努力ということも、実は、問題の業者は業界の加盟員自体になりませんので、自主努力は大事なのですけれども、なかなかこれも限界がある。いろいろなことをやらないといけないんですが、規制コストをかけずに効果を上げようとすれば、入り口のところの許可条件を見直して、入り口のところのハードルを高めるということがやはり今検討されるべきことだというふうに考えております。

中島(隆)委員 今、規制緩和についてお三方の考えを聞きました。

 問題はやはり、規制緩和、自由化によって業界がふえ、今、安部先生がおっしゃったように、労働コスト、車両コスト、そこに全部犠牲が行って事故が起きているという実態が明らかになったわけであります。要するに、まず先ほど言った法の一体化と業界に対する安全監査、指導の徹底だと思いますので、そこでひとつ努力をしていただきたいと思います。

 最後に、時間がありませんので、政府参考人にお尋ねをいたします。

 今、安全運営指針で、一日九時間、六百七十キロ、これについてはあり方検討会でも指摘をされています。この基準だけではない、構造的なものがあるということですが、しかし、まずはこの基準を早く見直して、やはり基準に到達していない部分についてはもう運行停止させるというところから入らないと、一年前倒しでやりますということだけれども、一年間あるわけですから、これだけ、二百社あるわけで、あるいは四千社もあるわけですから、即、まずその見直しをどうするのかということ。

 それから、もう一つは監査体制。先ほどから指摘がありました、三百名程度、二千二十カ所やったと言うけれども、四千カ所、これだけ多くの業界があるのに、三百の監査体制ではどうしても恐らく不可能だと思うんです。

 そこで、実際どういう監査をされてきたのか、二千二十社。実際立ち入りをやったのか、書類だけなのか。摘発がわずか九件ですね。ですから、余りにもずさんというか、不十分な監査ではないか。ですから、監査だけでもいかないと思いますから、やはり先ほど指摘がありました、業者と行政と、本当に安全確認のためにどうすべきか、そこの徹底をやらないと、また業者任せではいかないと思いますので、その点を含めて政府参考人の方からまとめて答弁してください。

中田政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、運転者の勤務時間、乗務時間の基準の見直しについてでございますが、これにつきまして、過労運転の防止の観点から基準が定められてきたところでございますが、今回のツアーバスの事故が発生したことを契機に、この基準の妥当性についてさまざまな御意見をいただいております。

 それを踏まえまして、今月中に、厚生労働省の参画も得まして、この基準の見直しも含めた過労運転対策全般を見直すための専門家による検討会を設置することといたしております。この検討会における検討を早急に進め、結論を得次第、実施に移してまいりたいと思います。

 なお、この検討する間、運転時間、乗務時間に関しましては、事業者の団体に対しまして、前倒しですぐに自主的な措置としてとり得べきことをやっていただきたいという要請をしているところでございまして、その形で早急に事業者の方でも御対応いただければありがたいというふうに思ってございます。

 それからもう一つ、監査体制の話でございます。

 何度も御指摘いただいてございますが、今年度末で三百二十人という体制で、二十二年度では二千二十事業者に監査に入りまして、そのうち六百二十五事業者を処分してございます。前年度、二百六十四事業者でございましたので、処分事業者もふやしてございます。

 ただ、限られた要員の中で立入検査をやってまいりましたが、これでは十分でないということは重々承知してございまして、先ほども御答弁いたしましたけれども、立入検査のあり方について抜本的な見直しを図りまして、実効性のある安全対策を実施してまいりたいと思います。その中には、厳重に処分する、重罰化というようなことも当然視野に入れて検討してまいりたいというふうに考えてございます。

中島(隆)委員 時間が参りましたので、終わります。どうもありがとうございました。

伴野委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 三人の参考人の皆さん、きょうはお疲れさまでございます。

 もう本当に痛ましい事故で、防音壁に突き刺さったあのバスの映像は目に焼きついて離れません。犠牲になった皆さん、おけがをされた皆さん、被害に遭われた皆さんの悔しさ、怒りを思うと、言葉にならないものがあります。

 先ほど来、バス協会副会長の小田参考人から、行き過ぎた規制緩和、こういうお話がございました。中島委員からも同趣旨のお話がありました。安部先生からも、認識としては共通したものが語られております。行き過ぎた規制緩和により不良事業者が多数参入をして事故が増加した、行き過ぎた規制緩和が事故の原因である、こういう報道がそれこそ洪水のように行われております。

 私は、規制緩和を絶対善だとも思いませんし、絶対悪だとも思いません。陸援隊をかばうつもりも毛頭ありません。ただ、事故を防止していくためには、その要因をいわば統計的なエビデンスに基づいて論じていく必要もあるのではないかと思っております。行き過ぎた規制緩和が事故の原因だとするのであれば、規制緩和以降事故がふえた、こういうことが統計上明らかにならないといけないと思います。

 ところが、今配付をさせていただいた資料ですけれども、これは、高橋洋一さんが国交省と交通事故分析総合センターの統計をもとにつくったグラフであります。億キロ当たりの事故発生件数を見ると、平成十二年、二〇〇〇年、乗り合いバスは平成十四年、二〇〇二年、規制緩和の実施以降、事故が顕著にふえているかというと、ふえていないように見えます。特に、高速ツアーバスの業者の激増を招いたとされる二〇〇五年の通達以降を見ると、事故は横ばい、あるいは減っているようにも見えます。

 規制緩和以降事故が増加をした、こういう統計的なエビデンスはあるのかどうなのか、国交省にお伺いしたいと思います。

中田政府参考人 お答えを申し上げます。

 貸し切りバスの事故件数につきまして、私ども、警察庁の交通統計に基づいて分析をいたしましたけれども、規制緩和前と比較しまして、規制緩和後、平成十二年から十七年までは増加傾向を示しておりましたが、それ以降減少しまして、直近の事故件数も規制緩和前とほぼ同水準でございます。その意味で、今先生がお示しいただいた資料と整合してございます。

 一方、自家用乗用車を含む自動車全体の事故件数を見てみましても、実は貸し切りバスの事故とほぼ同様の推移を示してございまして、平成十六年まで増加した後、減少を続けてございます。

 したがって、これらを勘案いたしますと、貸し切りバスの事故件数が増加したということは、必ずしも規制緩和との関係で増加したとは言えないのではないかというふうに考えてございます。

 また、貸し切りバス事故による死者の数を見ましても、件数は年間数件程度でございまして、特段の傾向があるわけではございません。

 その意味で、事故の件数というのは、交通量でありますとか、それぞれの安全対策とか、さまざまな要因の結果でございまして、その増減の理由を特定するのは大変困難でございます。その意味で、貸し切りバスにつきまして、規制緩和後、事故件数が増加したというふうに、我々、そういうふうに判断しているところではございません。

柿澤委員 平成十二年に行われた規制緩和というのは一体何であったか。需給バランスを勘案して業者の数を決める、需給調整を前提とした免許制から、国が定めた条件、基準を満たした業者はバス事業者として参入を認める、こういう許可制に移行が行われたわけであります。

 免許制から許可制になったからといって、バス事業者が守るべき安全基準がそれによって緩められたわけではないんだろうと思うんです。規制緩和によって参入業者の満たすべき安全基準は何か変化をしたのか、お伺いしたいと思います。

中田政府参考人 貸し切りバス事業に関する需給調整の規制廃止、平成十二年二月に施行されてございます。あわせて、乗り合いバスにつきましても、平成十四年に需給調整が廃止されてございます。

 道路運送法で、道路運送に関する秩序の確立というものを目的から除きまして、道路運送の利用者の利益を保護するということに転換したわけでございます。このときに安全についてどういう考え方をとったかということにつきましては、競争を促進することによって安全が損なわれてはいけないという意味で、逆に安全対策については強化をするということを行ってございます。

 その一つの具体的な例が、今回も言及していただいております、運転者の勤務時間、乗務時間の基準というものを明確に道路運送法上の義務として位置づけるということを行ってございます。それ以外にも、運行管理者制度を強化する、立入検査についての体制を強化する、処分基準を強化する等、いろいろな安全対策の強化ということをこの間行ってきたところでございます。

柿澤委員 安全基準の強化に努めてきたと。規制緩和以降、それによって事故がふえているわけではない、安全基準を緩めたわけではない、むしろ強化をしていると。

 だとすると、今回の事故の原因というのは改正道路運送法施行による規制緩和の行き過ぎにあるということが果たして言えるのかどうか、この点、国交省の考えを伺いたいと思います。

中田政府参考人 今般、関越自動車道において発生した大変痛ましい事故につきましては、現在、関東運輸局、警察等の関係者によりましてその原因究明が進められております。

 したがって、今回の事故の原因そのものについてはまだ確定してございませんが、私ども、今までやってまいりました安全対策、強化を図ってまいりましたが、その安全対策の実効性の面において十分ではなかったかという反省はしております。

 十二年に施行されました道路運送法の改正で需給調整が廃止されたということではなくて、むしろ、今申し上げたような安全対策ということについて十分ではなかったということを今反省しているところでございます。

柿澤委員 小田参考人のお出しいただいた資料にもありますが、事業者数四千社、平成十二年と比較すれば一・三倍、平成四年と比較すると三倍だ、こういうお話がありました。

 過当競争ということが言われるわけですけれども、しかし、何をもって過当競争とするかという過当競争の定義というのは、実は判然としていない部分もあります。

 改正道路運送法施行後に、ニーズが高く、高速乗り合いバスの供給の追いついていなかった、首都圏から仙台、名古屋、京阪神の路線がふえて、運賃も安くなった。エンドユーザーのニーズにかなっている面もあるわけです。

 そうした中で、かつてのような、参入事業者数を官がいわば抑制する需給調整を再び導入すればよくなる、事故は減る、というより、ふえていないんですから少なくなる、こういうふうに言えるかどうか、国交省、考え方を伺いたいと思います。

中田政府参考人 先ほど御説明申し上げましたが、需給調整規制の廃止をした前後の事故のデータ、過去のデータから見ますと、需給調整と事故という面で大きな相関関係はないと考えてございます。その意味で、需給調整の問題がこの事故についての背景にあったのではないかという御指摘もいただいておるところでございますが、何度も申し上げているところでございますけれども、直接的には、これまでやってまいりました安全対策について、その基準を遵守させるということについて私どもの対応が十分至らなかったということでないかと考えてございます。

 その意味で、私どもとしては、今回の事故を教訓に、関係の省庁、警察や厚生労働省、それから関係業界とも連携いたしまして、安全対策全般を見直すこととしておりまして、公共交通の安全に対する信頼を取り戻すために鋭意取り組んでまいりたいと考えてございます。

柿澤委員 問題はむしろ、国交省によるチェックが行き届いていないというか、そうした基準を守るということが徹底されていないということなのではないかと思います。

 運転者、事業者、旅行会社の安全管理がここまで乱れていたのか、こういう冒頭の小田参考人のお話がありました。陸援隊の業務遂行には法令違反が多々指摘をされていますけれども、このような法令違反は、規制緩和後に新規参入した同業者において往々にして見受けられるということがるる言われております。

 こうした実態がありながら、どうしてチェックし、抑止ができなかったのか、国交省に改めてその認識を伺いたいと思います。

中田政府参考人 今般事故を起こしました事業者に対する立入検査で多数の法令違反の疑いを確認いたしまして、事故発生以前にこのような法令違反を把握できていなかったことについて、まことに遺憾でございます。これまで、立入検査で法令違反を確認した場合に処分等を行ってまいりましたが、それが十分でなかったということでございます。

 新規参入した事業者がそれ以外の事業者に比較して法令違反率が高かったという傾向が必ずしもあるわけではございません。貸し切りバス事業者全体に法令違反があったということでございまして、今後とも、違反があった事業者に対しましては、行政処分等により是正を図ってまいりたいというふうに思います。

 このたびの事故におきまして、申し上げていることについて、実際は違っていたという御批判をいただいております。その意味で、今回、貸し切りバス事業者の中で高速ツアーバスを行っている事業者に対しまして、重点的な立入検査を、この五月、六月、やることといたしてございます。その中で徹底的に問題を解明いたしまして、その結果を踏まえて対策を講じていく予定でございます。

柿澤委員 村瀬参考人にお伺いをしたいと思います。

 今、安全管理のチェックが十分でなかった、こういう反省が局長から語られたわけですけれども、事業者でいらっしゃいますから、その立入調査等を受ける立場にある。受ける立場として、この国交省の業界に対する監督姿勢というものに不十分な点があったのではないかとか、こういうことを、御社そのものでもいいですし、業界全体を見通してでもいいですけれども、感じておられるかどうか、お伺いしたいと思います。

村瀬参考人 法令遵守だけで全て安全が確保できるというふうには考えておりません。その中では、我々協議会の方でいち早く自主ルールをつくって、事業者として安全確保すべきだという点は反省をしております。

 今回の事故を踏まえまして、安全確保指針というのをつくらせていただいて、早急に国交省と連携をとりながら、法令遵守プラス我々の業界でつくりました安全確保指針の遵守の徹底というのを、業界としても官民一体となってやっていきたいというふうに考えています。

柿澤委員 過去にあずみ野観光のスキーバスの事故もあったわけですから、こうした事業者の法令違反や基準を逸脱した運行の実態を国交省がつかめていなかったと言いわけはできないはずだと思います。

 そして、総務省の行政評価、先ほども御紹介がありましたけれども、さんざん指摘を受けているわけです。この行政評価を、では一体何人でやったのかといえば、何人か知りませんけれども、しかし、人員の体制の問題に帰することもできない、こういうふうに思います。

 むしろ必要なのは、しっかりチェックをやって、ひっかかったというか抵触した、そうした違反事業者にしっかりと厳しいペナルティーを科する、市場からの退出を求める、こういうことをやっていくことによって、三百二十人の体制でも、基本的に一罰百戒で市場から退出させられるとすれば、そうしたルールを守らざるを得なくなる、このような対応を行うべきなのではないかと私は思います。

 局長、この辺で御見解はありますか。

中田政府参考人 これまで、高速ツアーバスについていろいろな問題があるということを把握してございました。加えて、二十二年には総務省からも勧告をいただきました。それを受けまして、あり方検討会を設けまして、このたび、構造的にツアーバスについて安全対策を講じるべきだということを決定いたしました。その構造的な解決を早急に図りたいと思います。

 それによって高速ツアーバスの安全についていろいろな対応が可能でございますが、さらにそれに加えまして、我々の事後チェック体制の強化、非常に限られた要員の中でございますが、今先生御指摘があったような厳罰化等も含めまして、実効性のある事後チェックをしっかりやってまいりたいというふうに思います。

柿澤委員 村瀬参考人にもう一度お伺いします。

 こういうことがあると、エンドユーザーのためになる市場開放まで抑圧されてしまいかねない、このように思います。村瀬さんの会社はこの高速ツアーバスのいわばリーディングカンパニーなんでしょうから、こういう事業者は、えてして、むしろ厳しい基準の徹底をみずからの業界に求めるものだと思うんです。なぜならば、それが業界全体の信頼につながり、そして基準を守れない競合事業者が市場から撤退をしていく、こういうことになるからです。

 そういう意味で、村瀬さん自身は、今、私と、また局長も認識を披瀝していただきましたけれども、こうした事後チェックをもっともっと厳しくして、そして見つかった場合は市場から退出させられる、こうしたことを徹底していくことはむしろ望ましいというお考えではないかと思いますけれども、御見解はいかがでしょうか。

村瀬参考人 まさに高速バスは、望まれる商品と安全、これが両立されて初めて商品として出るのが当然だというふうに考えております。

 その中では、今の、国交省の方の監査で退出する者が出るということはもちろん望むことでありますし、それから、我々の安全確保指針の中でも、実効性を高めるために、それぞれの事業者の、我々の加盟の事業者の安全確保体制を見える化していく、情報公開をどんどんしていくということを含めまして、安全を守らない者は市場から撤退するということを進めていきたいというふうに考えております。

柿澤委員 時間もなくなってきましたが、もう一つ、国交省に見解をただしておきたいことがあります。

 防音壁に突き刺さったあのバスの無残な姿は、本当に痛ましいものでありました。これは、防音壁とガードレールの間に十センチのすき間があって、そこにバスが突っ込んだわけですね。そこにガードレールがあったら、少なくともあのような悲惨な事故になるのは防げたかもしれない。

 調べてみたら、こうした防音壁とガードレールのすき間が五千カ所あるというではないですか。そして、国交省は、こうしたすき間をなくすように、一九九八年、通知を変更していたと思います。

 このすき間と事故の因果関係についてどのように認識をしているか、そして、国交省自身は法律に基づいて高速道路の管理を高速道路会社に許可している立場でありますが、そうした立場としてこの責任をどのように考えておられるか、お伺いをしたいと思います。

菊川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、ガードレールと防音壁の因果関係というところからでございますけれども、群馬県議会、五月八日に常任委員会で、今お話がありましたように、すき間によりまして被害が拡大したのではないかということで問いがされておりまして、群馬県警の方で答弁がなされております。すき間の詳細は不明であり、事故被害との因果関係は確認できない、こういった御答弁をされております。道路構造と被害の大きさの因果関係ははっきりわからないというのが正直なところでございます。

 今お話がありましたように、平成十年に防護柵の設置基準を改定いたしました際に、防護柵の安全性をさらに高めるために、異なる種類の防護柵を隣接して設置する場合は防護柵の車両を誘導する面を連続させる、こういった規定を追加いたしたところであります。したがって、それ以降のものにつきましては、この新しい基準でつくっております。また、それ以前に設置いたしたものにつきましては、更新をする際に、新しい現行の基準に適合する形で整備をしてきております。

 今回の事故が発生した箇所でございますけれども、御指摘ございましたように、誘導面は不連続となっており、数センチのすき間はあったようでございますが、防護柵の車両を誘導する前面の部分は同じ面で設置されておりまして、所要の安全性は確保されていたというふうに私どもとしては考えております。

 道路構造と被害の大きさの因果関係、先ほど申しましたように不明確な状況ではありますが、ただ、今回、七名の方が死亡されるという大変痛ましい事故の重大性に鑑みまして、先ほどお話があったような、全国で、NEXCO全体で今、五千百カ所ほど確認されましたこういった箇所につきまして、安全性をより一層高めるために必要な対策を早急に実施するように、NEXCO三会社に対して要請を行ったところであります。

柿澤委員 小田参考人、安部参考人にはお尋ねできませんでしたが、次に国交省の見解を伺えるのがいつの機会になるかわかりませんので、きょうは国交省の見解をたださせていただきました。

 規制緩和、需給調整措置の廃止、こうしたことがこの事故の原因かということ等々私はお尋ねをしましたが、しかし、そのことをただすことは、国交省の責任を軽視することでは決してありません。最後の問いに対する御答弁をお聞きしておりましても、本当に当事者としての認識があるのかということを少し感じてしまいました。この点、しっかり取り組んでいただくように重ねて申し上げさせていただいて、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

伴野委員長 これにて参考人及び政府参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言申し上げます。

 本日は、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げさせていただきます。

 当委員会におきましても、引き続き、国民の皆様方の安全、安心を確保するために、しっかりと調査してまいりたいと存じております。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十三分散会


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