衆議院

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第13号 平成24年8月3日(金曜日)

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平成二十四年八月三日(金曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 伴野  豊君

   理事 阿知波吉信君 理事 川村秀三郎君

   理事 辻元 清美君 理事 若井 康彦君

   理事 金子 恭之君 理事 山本 公一君

   理事 富田 茂之君

      奥田  建君    沓掛 哲男君

      熊田 篤嗣君    小泉 俊明君

      古賀 一成君    斉藤  進君

      坂口 岳洋君    田名部匡代君

      高木 義明君    高橋 英行君

      津島 恭一君    筒井 信隆君

      中川  治君    橋本 清仁君

      橋本 博明君    初鹿 明博君

      福田 昭夫君    三村 和也君

      向山 好一君    本村賢太郎君

      谷田川 元君    柳田 和己君

      吉田おさむ君    赤澤 亮正君

      小渕 優子君    北村 茂男君

      佐田玄一郎君    下村 博文君

      徳田  毅君    二階 俊博君

      丹羽 秀樹君    林  幹雄君

      福井  照君    望月 義夫君

      森  英介君    加藤  学君

      小宮山泰子君    古賀 敬章君

      竹内  譲君    穀田 恵二君

      中島 隆利君    山内 康一君

      中島 正純君    中島 政希君

      亀井 静香君

    …………………………………

   国土交通大臣       羽田雄一郎君

   国土交通副大臣      奥田  建君

   国土交通副大臣      吉田おさむ君

   外務大臣政務官      中野  譲君

   外務大臣政務官      加藤 敏幸君

   国土交通大臣政務官    津島 恭一君

   国土交通大臣政務官    室井 邦彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 山野内勘二君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   長嶺 安政君

   政府参考人

   (国土交通省自動車局長) 中田  徹君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    鈴木 久泰君

   国土交通委員会専門員   関根 正博君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月一日

 辞任         補欠選任

  山内 康一君     柿澤 未途君

同月三日

 辞任         補欠選任

  沓掛 哲男君     三村 和也君

  高橋 英行君     本村賢太郎君

  橋本 清仁君     田名部匡代君

  初鹿 明博君     斉藤  進君

  谷田川 元君     橋本 博明君

  佐田玄一郎君     丹羽 秀樹君

  徳田  毅君     下村 博文君

  林  幹雄君     森  英介君

  畑  浩治君     加藤  学君

  柿澤 未途君     山内 康一君

同日

 辞任         補欠選任

  斉藤  進君     初鹿 明博君

  田名部匡代君     橋本 清仁君

  橋本 博明君     谷田川 元君

  三村 和也君     沓掛 哲男君

  本村賢太郎君     高橋 英行君

  下村 博文君     徳田  毅君

  丹羽 秀樹君     佐田玄一郎君

  森  英介君     林  幹雄君

  加藤  学君     畑  浩治君

  山内 康一君     柿澤 未途君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 海上保安庁法及び領海等における外国船舶の航行に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四五号)

 派遣委員からの報告聴取


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     ――――◇―――――

伴野委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、海上保安庁法及び領海等における外国船舶の航行に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、本案審査のため、去る七月三十一日から八月一日までの二日間、沖縄県に委員を派遣いたしましたので、派遣委員を代表いたしまして、私からその概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、民主党・無所属クラブの若井康彦君、辻元清美君、川村秀三郎君、阿知波吉信君、自由民主党・無所属の会の山本公一君、金子恭之君、国民の生活が第一・きづなの小宮山泰子君、公明党の富田茂之君、社会民主党・市民連合の中島隆利君、みんなの党の山内康一君、そして私、伴野豊の十一名でございます。

 派遣委員は、七月三十一日夕刻、那覇空港に到着し、翌八月一日に調査を行いました。

 調査の概要ですが、まず、海上保安庁第十一管区海上保安本部において、同管区の担任水域の概要、組織、地域特性、重点業務等について説明を聴取いたしました。

 その際、最近の尖閣諸島をめぐる主な動きについて、中国の公船が尖閣諸島周辺の接続水域や領海付近で徘回する事例、中国、台湾の漁船が違法に操業する事例、台湾の活動家が公船を伴って領有権主張活動を行う事例といった三つの事例が見られるとの説明がございました。

 なお、本年に入り、違法操業をしている漁船に対し警告を行い、退去させた件数は、七月三十日現在で五十件でございました。

 また、中国海洋調査船による、我が国の同意のない海洋調査活動も発生しており、昨年七月から本年六月までの一年間で八件確認されております。

 その他、那覇航空基地には、九名の機動救難士が配置され、マリンレジャー事故等の際、ヘリコプターと連携したつり上げ救助により迅速な人命救助を実施していること等について説明がございました。

 説明聴取の後、懇談が行われ、自衛隊との情報共有の現状、装備や人員の現状、新石垣空港の開港に伴う石垣航空基地の業務への影響等について活発な意見交換が行われました。

 続いて、那覇航空基地において、業務の概要等について説明を聴取した後、庁舎に附属する訓練棟内において、船内で意識不明の急患が発生したとの想定で、機動救難士による患者の心肺蘇生及びヘリコプターへのつり上げ訓練の様子を視察いたしました。次に配属航空機を視察いたしました。

 以上が調査の概要でございますが、今回の視察を通じ、領海警備を初めとする海上保安業務の重要性が一層高まっていることを改めて認識できたことは何よりの成果であり、この成果を本法律案の審査に十分に反映させたいと考えております。

 最後に、台風九号が接近する中、私どもの調査に御協力いただきました関係各位に感謝の意を表しまして、報告を終わらせていただきます。

    ―――――――――――――

伴野委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として海上保安庁長官鈴木久泰君、外務省大臣官房参事官山野内勘二君及び外務省国際法局長長嶺安政君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伴野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伴野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。下村博文君。

下村委員 おはようございます。自民党の下村博文でございます。

 質問の機会をつくっていただきましたことを感謝申し上げたいと思います。そして、この法案に関連して視察をされたということで、委員会の皆様方に敬意を申し上げたいと思います。

 その上で、やっとこの法案が国会に上程をされた。これは喫緊の課題でございます。衆議院ではきょう、質疑、採決まで行くということでございますが、参議院においても、来週はいろいろな政治状況の変化が起きる可能性がありますが、これについてはぜひ与野党を超えて今国会で、参議院も含めて成立をさせなければならない重要な法案であるというふうに思いますし、また、それをお願い申し上げたいと思います。

 そもそも、この領海警備強化法案の制定のきっかけというのは、一昨年の九月、尖閣諸島沖で中国漁船衝突事件が起き、地元の首長や沖縄の漁業関係者から、尖閣諸島周辺海域では中国漁船が我が物顔で振る舞い、大変危険になっている、このままだと安心して操業できない、よって、領海警備体制を強化して、沖縄の海の安全を守ってほしい、こういう要望が出されたことが経緯でございます。

 この沖縄からの要望を受けて、国会でもたびたび領海警備を強化する質問がいろいろな委員会でありました。民間でも領海警備の強化を求める国民署名が始められ、昨年の八月までに、既に二百二十万人分の署名が集まっているわけでございます。このような国会での質問と世論の盛り上がりを受けて、政府も海上保安庁による領海警備体制強化について検討され、ことしの二月二十八日にようやく閣議決定がされましたが、残念ながら、国会審議は今日に至ったわけでございます。

 今回の法改正の目的は、一つには、外国人活動家が遠方離島に上陸して領有権主張活動を行う事案に対するもの、二つ目に、多数の外国漁船が領海内に入域して操業する事案に対するもの、三つ目に、外国の漁業監視船や海洋調査船が領海内に入域する事案、これについて対処する法律案であるわけでございますが、この法律案が閣議決定された以降も、今、特に東シナ海、尖閣周辺では大変な緊張状況がさらに増しているという状況があります。

 ことしの防衛白書においても、中国海軍の太平洋進出について、常態化しているという表現が初めて使われ、一層の懸念が表明されています。中国共産党の指導部交代期を踏まえて、党と人民解放軍の関係にも分析を加え、日本の危機管理上の課題というふうにこの白書の中で位置づけている。特に、対外政策決定や安全保障上の課題で軍が態度表明する場面が増加していると指摘していることが、大変な、この白書の中において新たなポイントであるというふうに思います。事実、この白書が発表された先月、七月三十一日にも、中国の国防省報道官が尖閣諸島の中国の主張を強調し、軍としての職責を果たすと、日本に対する強い牽制表明があったわけです。

 我が国固有の領土である尖閣諸島付近で中国の漁業監視船が繰り返し領海侵犯するなど、尖閣は極めて危うい状況にあるわけでありまして、これについてしっかりした対応をする一環として、この法律案が出されたわけでございます。

 一方で、国内法の整備と同時に、外交問題として、これから特に外国人による主権侵害行為への対応は外交問題に必ず発展するという状況があります。よって、外交問題になることを前提に国際社会を味方につける対策、また、当該国との関係悪化というリスクがあり得るわけでありますから、一方で外交活動として、しっかりとしたコントロールの仕組みをつくるということが必要でありまして、そのためには、丹羽中国大使の早期罷免も必要であるというふうに思います。

 一方で、中国との関係で、しっかりとした危機管理体制をとりながら事前の対応をしていくということも必要であるというふうに思います。この法案が制定される前提で、外務省においては関係国との信頼関係を一層構築するということを、我が国政府も積極的に対応する必要があるというふうに思いますが、まず、外務省からこのスタンスについてお聞きしたいと思います。

加藤大臣政務官 外務省大臣政務官の加藤でございます。

 委員の御質問の趣旨に沿いまして答弁をさせていただきたいと思います。

 尖閣諸島が我が国の固有の領土であることは歴史的にも国際法上も疑いがないところであり、現に、我が国はこれを有効に支配しております。したがって、尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題はそもそも存在しないということをまず前提といたしまして、我が国固有の領土である尖閣諸島に対する不測の事態が万が一にも発生した場合には、政府全体として、毅然として対応することとなりますが、より重要なことは、平素から危機管理体制を整え、外交努力を含め、そのような事態を未然に防止することが大切であると考えております。

 ここの点につきまして、さらに質問の趣旨に沿いましてお答えを申し上げますと、中国の発展そのものは我が国を含む国際社会にとってチャンスであり、意義のあることであり、アジア太平洋地域の安定と繁栄のためには中国の建設的な役割が不可欠と考えております。国益の視点に立って、日中両国の戦略的互恵関係の内容をさらに充実させるとともに、地域の安定した秩序づくりに向けた努力を深めていきたい、このように考えております。

 具体的には、昨年十二月の野田総理訪中の際に表明いたしました六つのイニシアチブに基づき、政治的相互信頼の増進、海洋に関する協力、震災を受けた協力、互恵的経済関係の強化、国民間の相互理解の増進、地域、グローバルな課題に関する対話、協力の強化などの分野での協力を進めていくとしております。

 特に、海洋に関する協力の分野では、本年五月十五、十六日でございますけれども、中国杭州において日中高級事務レベル海洋協議第一回会合が開催されました。このことは両国首脳の合意が着実に実施されていることを示すものであります。本件協議を通じまして、両国海洋関連機関の相互理解と相互信頼を増進し、日中間の海洋分野での協力を強化していくということでございまして、このような高級事務レベルでの相互の会合を今後とも開催いたしまして不測の事態の防止を、危機管理体制としては重層的に構築していきたい、このように考えております。

 なお、第二回は、下半期に日本において開催される予定でございます。

 以上です。

下村委員 外務省は、特に中国との関係でしっかりと、我が国の国益に立ったスタンスで対応していただきたいというふうに思います。

 私は、六月九日、十日、尖閣諸島周辺漁業活動の補助員という名目で視察に行ってまいりました。前日、といっても夜中の二時ぐらいですが、そして次の日の午後も、二回ほど周辺国の漁船に遭遇をいたしました。それだけ尖閣周辺の漁場は豊穣な海でありますが、一方でそのような緊張状況があるということでございます。

 それを受けて、次の日に、衆議院の決算行政監視委員会で石原東京都知事等をお呼びして、この尖閣を中心とした参考人質疑がございました。その中で、山田東海大学教授が、今月にでも尖閣諸島上陸を外国人がするかもしれない、このときに、今の法律において対処することは非常に難しいという話がございまして、そのためにも、今これから議論される領海警備強化法を早期に成立させるということが必要であるというふうに思います。

 また同時に、今、東京都が尖閣の購入を主張し、寄附がもう十四億近く集まっているという状況の中で、中国との緊張関係がさらに出てくるかというふうに思いますので、日本政府としてのしっかりとした対応をしていくことが必要であるというふうに思います。

 そのために、たとえこの法律が制定されたとしても、海上保安庁単独での対応は非常に厳しい、困難であることが考えられます。領海を守るために、海上保安庁のみならず、関係省庁を交え政府全体で、一層の体制の連携強化、これを早期に議論し、そして、しっかりとした監視警戒態勢をつくることによって、抑止力として万全の体制をまず最初に構築していくということが求められるのではないかと思いますが、このことに対する国交大臣からの御意見をお聞きしたいと思います。

羽田国務大臣 委員御指摘のように、我が国の周辺海域をめぐる情勢は変化し、また複雑化してきております。

 海上保安庁では、関係省庁とも連携しながら、その時々の情勢に応じて哨戒態勢を強化するなど、我が国周辺海域における監視、警戒を厳正かつ的確に実施しており、引き続き万全の体制で警備に当たることとしております。

 しっかりと関係省庁とも連携をとっていきたいというふうに思っております。

下村委員 例えば外国漁船が大挙して来た場合、今の海上保安庁の体制では対応できない、難しいというのを現地でお聞きしました。

 この法律案によって海上保安庁の業務の内容にどのような変化が生じるのか。仮に業務が増加するとすれば、現在の海上保安庁の人員、一万二千六百人いるそうでありますが、と同時に、この装備で的確に業務を行うことができるのかどうか、お聞きしたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 今回審議をお願いしています法律案は、海上保安官が現場で法執行を円滑にできるように、一つは、遠方離島上で犯罪が発生した場合に、海上警察である我々もこれに対応できるようにするということ、もう一つは、外国船舶航行法で、立入検査を経て退去命令をかけるということになっておりますが、立入検査できない場合が多うございますので、勧告を経て退去命令がかけられるということで、現場の執行をしやすくするというものでございます。

 この法案が成立した後に、それによって直ちに人員の増加が必要だというようなことにはつながらないと思いますが、今委員おっしゃいました現場の情勢が大変緊迫化しておりますので、我々としては、引き続き、必要な体制整備については今後ともしっかりと努力をしてまいりたいと考えております。

下村委員 これまでも法律にのっとって、海上におけるさまざまな事案に対応してきたというふうには思いますが、逆に、現行の法律や制度が原因で取り締まり等の任務遂行に支障があった、だからこそこの法律を成立させなければならないという意味で、何か支障があった具体的な事例についてちょっと出していただければと思いますが、いかがですか。

鈴木政府参考人 具体的な事例でございますが、例えば、平成十六年に、尖閣諸島魚釣島に中国人活動家七名が上陸した事案がありましたが、この際には、私どものヘリコプターで警察職員等を現地に輸送して対応していただいたということがございます。

 今回お願いしている法律は、そういう場合に、我々が警察官の到着を待たずに現場におる船艇等で対応し、警察が到着したら、それを警察に引き継ぐというようなことで、お互い連携をとりながら、迅速にこういう事案に対応したいというものでございまして、現場における法執行の円滑化を図るものでございます。

下村委員 今のは上陸した場合ですね。上陸した場合には海上保安庁の権限ではなかったから、警察を呼んでこなかったら対応できなかった。それが、今度はこの法律によって対応できるということですね。

 今回の改正によって、海上保安庁の任務に、海上における船舶の航行の秩序の維持が追加され、また、所掌事務に、海上における船舶の航行の秩序の維持に関すること、及び海上における犯罪の予防及び鎮圧に関すること、これが追加されたわけでございます。

 これらの規定は具体的にどのような業務を想定しているのか、具体的にお答えいただきたいと思います。

室井大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 具体的にどのような業務を想定しているのかという御質問だとお伺いをいたしました。

 海上における船舶の航行の秩序の維持として想定している業務は、領海を徘回する政府公船に対する中止要請また退去要請のほか、領海で停留などを行う外国船舶に対する退去指導の業務であります。

 また、海上における犯罪の予防及び鎮圧として想定している業務は、犯罪が発生するのを未然に防ぐほか、既に発生した犯罪を鎮静化する、そのような業務であります。

下村委員 現在、我が国領海等において海洋調査等を行っている公船に対してはどのような対応をしているのか。今回の改正で、違法に領海に侵入し海洋調査等を行う中国等の外国公船に対し、効果的な対応がとれるようになるのか、確認をしたいと思います。

室井大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 我が国の排他的経済水域、EEZにおいて事前申請のない海洋調査などが行われた場合、海上保安庁が、国際法に基づき中止要請や退去要請を行っております。

 今般の改正では、こうした業務を、海上保安庁法の任務及び所掌事務規定におきまして条文上明確化することとしており、引き続き国際法に基づきまして適切に対応していきたい、このように思っております。

下村委員 国際法だけでなく、国内法をきちっと担保させるということだと思います。

 さらに、このような問題で、我が国の領海内に入った場合、質問権が拡大されるということが今回の法律改正案に入っているわけでありますが、拡大されることによってどのような効果が期待されるか、また、今まで質問権の対象が限定されていたことによってどのような支障があったのか、お聞きしたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 現行法上、質問権の対象として「乗組員及び旅客」という書き方になっておりまして、これは船の上にいる者を想定して、それを前提に法律ができておりました。ただ、質問の対象として考えられますのは、船舶運航者とか、あるいは犯罪、不法行為の関与者、犯罪グループの一味みたいな者も十分考えられますので、そういう者を想定した書き方に変えたいということであります。

 具体的な支障が生じたということではありませんが、法律上、そういう書き方になっていないと、相手に抗弁されたときに支障が生ずるおそれがあるということで、規定の整備をしっかりとしておきたいということでございます。

下村委員 今まで、質問権の対象を乗組員及び旅客に限定していたということで、これが拡大された。拡大対象が、船舶所有者、賃借人、用船者と例示され、さらにこれに加え、「その他海上の安全及び治安の確保を図るため重要と認める事項について知つていると認められる者」、そういうふうにされていますけれども、これらの者とは具体的にどのような者を想定しているのか、お聞きしたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 拡大の対象としては、まず第一に船舶所有者、運航者等が考えられますが、それ以外に、密航、密輸事案等の海上犯罪を陸上から手引きしている者など、犯罪グループの一部を構成している者も十分考えられますので、これに対して対象の拡大をしておきたいということでございます。

下村委員 今回の法律改正案で、海上保安庁長官と警察庁長官が告示する離島における犯罪については、海上保安官が対応できるということになるわけでありますが、どのような陸上犯罪を想定しているのか、お聞きしたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 犯罪捜査では、現場で捜査等を行うことにより事案の全容が明らかになるものでありまして、あらかじめ対処可能な犯罪を限定するのは適当でありませんので、今回の改正法律上は、海上保安官の対処する犯罪に限定を付しておりません。

 ただ、典型的に考えられます例としては、外国人が遠方離島に不法上陸して建造物を壊したりした場合には、不法入国罪や建造物損壊罪が問題になると考えております。

下村委員 先ほど長官が、平成十六年の尖閣諸島上陸中国人の問題を挙げましたが、尖閣においてそういうふうな建築物を破壊するというのは、基本的にはほとんどあり得ない、そもそも灯台ぐらいしかないわけですから。ですから、灯台に手をつけなかったとして、これからもそういうことがあった場合、これはどんなふうな犯罪が想定できるんでしょうか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 外国人が不法上陸した場合は、まずは不法入国罪が問題になるものと考えております。

下村委員 不法入国罪で、今までは警察を呼んで、それまでは時間稼ぎをして、それで警察官が逮捕するということであったわけだけれども、海上保安庁が逮捕できるというのが今度の法律改正案ということなんですね。

 この遠方離島における犯罪について、「海上保安庁長官が警察庁長官に協議して定めるところにより、刑事訴訟法の規定による司法警察職員として職務を行う。」とあるが、どの段階の手続まで海上保安庁が行うのか。それとも、逮捕までは海上保安庁が行った上で被疑者を警察へ引き渡し、以後の手続は警察で行う等、両者で分担をするのか、その辺の内容についてお聞きしたいと思います。

室井大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 今般の改正によりまして、海上保安官は、遠方離島上における犯罪について、逮捕から取り調べを経て、検察への送致までの手続を行うことが可能になりますが、実際には、逮捕後に警察への引き渡しが可能となった段階で、それ以降の手続は警察に引き継ぐことを想定しております。

 いずれにいたしましても、海上保安庁と警察庁との間で十分に連携を図りながら犯罪に対処していきたい、このように思っております。

 以上であります。

下村委員 陸上であっても海上保安庁が逮捕することができる、その後は警察に引き継ぐということなわけですね。

 それから、現行法において、領海内において無害でなく通航している外国船舶に対し、領海等における外国船舶の航行に関する法律の規定に基づき退去命令を行うに当たり、立入検査を経てから行うこととしている。これがなかなか大変だったわけですが、立入検査を経てから行おうとしているのはどういう理由だったんでしょうか。

室井大臣政務官 お答えを申し上げます。

 退去命令を行うためには、停留などを行うやむを得ない理由がないことの確認が必要であります。現行法では、立入検査を実施して書類や物件を検査するとともに、乗組員に質問をして、現場でやむを得ない理由の有無を確認することとしております。

下村委員 今回の改正によって、今の、やむを得ないという理由がなく停留等を行っていることが明らかな外国船舶に対しては、勧告を経た上で、立入検査を省略して退去命令を行うことが可能というふうに改正をしたわけでございますが、どのような状況でこの手段をとることを想定しているのか、お聞きしたいと思います。

室井大臣政務官 お答えをいたします。

 現行法では、領海で停留等を行う外国船舶に対して立入検査を行い、その結果、海難を回避するなどのやむを得ない理由がない場合は退去を命令することとしております。

 一方、現行の制度では、荒天や相手方船舶が多数であるという理由などにより立入検査が困難な場合や、航空機で現場に向かったために立入検査ができない場合には退去命令を発出することができないことから、停留等を行うやむを得ない理由がないことが外観上から明らかな船舶に対しては、勧告を経た上で退去命令を発出できる制度を新たに導入するものであります。

 以上であります。

下村委員 昨年の六月十七日に、世界華人保釣連盟が尖閣諸島周辺に千隻の漁船を出航させて、そのうちの一部は上陸するという計画がありました。ただ、三・一一によってこれが延期になった、中止ではなくて。池に落ちた犬に石を打つようなことをしたら、華人、中国人は世界で笑い物になるということで自主規制をしたわけでございますが、池に落ちた犬というのは日本であるわけであります。

 そういうふうに一気に千隻が来たら、これは立入検査はとてもできないわけでございまして、今回の法律改正によって、立入検査を省略して退去命令を行うことができるようにするのは当然のことであるというふうに思います。

 外国船舶に対して退去命令を行う場合、現行法の規定に基づく立入検査を行ってから命ずる対応と、本法律案で新たに導入される、勧告を経た上で、立入検査を行わないで命ずる対応とでは、どちらを原則的なものとし、どちらを例外的なものと想定して運用するのか。ケース・バイ・ケースであるのではないかと思いますが、法律改正をしたからといって、一概に全て立入検査なしとも言えないと思います。その辺の線引きについてお答えいただきたいと思います。

羽田国務大臣 今回の改正は、荒天、海が荒れている場合、また相手方の船舶が多数であり、立入検査が困難な場合において、例外的に、立入検査を行わず退去命令を発する制度を設けるものであります。

 一方、立入検査は、停留等の理由の有無を現場で確認するだけではなくて、犯罪が行われようとしているか否かを調査する重要な機会でもございます。原則としては、立入検査が可能な場合にはこれを実施することが大切であるというふうに考えております。

下村委員 現地に行って沖縄の漁業関係者から聞いたところによれば、沖縄諸島、特に尖閣諸島海域は非常にすばらしい漁場なので、日本の漁船の数倍の大きさの外国船が多数違法操業している、そのことによって、怖くて近づくことができない、こういう日本漁業関係者からのお話を、行くたびに聞かされます。そのとおりだと思います。

 多数の外国漁船による違法操業については、立入検査を行わずに退去勧告を行うべきではないか。勧告にも従わず、航行の秩序を維持するために必要な場合には領海等からの退去命令を出せるようにすべきではないかというふうに思うわけでありまして、この場合は退去命令を行うべきではないかというふうに思います。

 しかし、本来ならば、いわゆる領海侵犯、つまり主権侵害行為に該当するわけでございます。よって、領海等で無害でない通航を行い、我が国の主権を侵害したとして、退去命令違反ではなく領海侵犯罪で対処すべきではないかというふうに思います。事実、平成二十三年一月七日、海上保安庁が公表した海上警察権のあり方に関する検討の国土交通大臣基本方針でも、「外国船舶の無害でない通航にさらに的確に対応するため、政府全体における検討が必要ではないか。」こういう指摘がされているわけでございます。

 また、安倍政権時代、平成十九年に成立した海洋基本法に基づいて、官邸に総理を本部長とする総合海洋政策本部が設置されております。

 そこで、いわゆる領海侵犯そのものを取り締まる法律の整備について、総合海洋政策本部で総合的に検討すべき時期に来ているのではないかと思いますが、これについて政府の考えをお聞きしたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 今回改正をお願いしております外国船舶航行法は、無害通航権のうち、通航に当たるかどうかというところに着目いたしまして、これを領海から退去させようとするものでありまして、通航というのは迅速にすっと通り過ぎるということでありますので、正当な理由もないのに停留したり徘回したりするのは通航ではないということで、立入検査をし退去命令をかける、あるいは今回お願いしているように、勧告をして退去命令をかけて追い出すということをやろうとするものでございます。

 無害通航の方の、無害であるかどうかについては、これはそれぞれの個別法で我が国は規制をしておりますけれども、いろいろな態様がありまして、なかなかこれを一律に規定しにくい部分がございますので、これについてはさらに政府全体で、全体的な検討が必要だと考えております。

下村委員 ですから、無害でない通航と無害である通航があるわけですね。今質問したのは、明らかに害がある通航、こういうことについては対応すべきではないかというふうに申し上げておるわけです。

 ですから、明らかに害がない場合には問題ないわけですけれども、あるということが明確にわかって、なおかつ、それについてただ退去命令、出ていってくれということではなくて、領海侵犯という新たな法の枠組みによって対応すべきではないかということについては、政府も今までの検討の中で指摘されている。そのことについてさらに深掘りをしながら、法的な整備をするべきではないですか、このように提案しているわけです。

鈴木政府参考人 済みません。説明が少し不十分でありましたが、この外国船舶航行法は、無害であっても通航でないのではないかというところに着目して、これは外形的に明らかでありますので、理由もないのに徘回したり停留したりというのは通航ではありませんので、そういうものを排除しようということでお願いしているものでございます。

 一方で、無害か有害かという法の定義は、国連海洋法条約でいろいろな類型がありまして、これを我が国では一々、個別法で対応することにしておりますけれども、そちらの方についてはまたそれぞれの事案に応じて、政府全体としてさまざまな検討が必要であると考えておりまして、今、海洋本部を中心に検討を進めているところでございます。

下村委員 何か今、語尾がよくわからなかったんですが、今回は退去命令を出すことができる。それだけでなく、新たな法律として、今回の法律が成立した以降の話ですが、領海侵犯罪のような枠組みが必要ではないか、こういうふうに申し上げているわけであります。

 本来、これは海上保安庁の長官が答弁する内容ではないんですね。政府全体の話ですから答弁者が違っているんですが、同じ答弁をされても意味がないので、違う答弁だったら答えてください。同じ答弁だったらいいです。

 次に行きます。

 海上警察権のあり方に関する検討の国土交通大臣基本方針に基づいて、海上警察権に関する制度改正等検討会議において検討を行い、平成二十三年八月二十六日、「海上警察権のあり方について」、いわゆる中間取りまとめが発表されました。この中間取りまとめとしている理由は何なのか、いつごろ最終的な取りまとめが行われる見通しか、お聞きしたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 この中間取りまとめは、昨年一月七日の国土交通大臣の基本方針に基づいて、近年の変化する領海警備情勢に迅速に対処するために、海上保安庁として早急に検討すべき事項について作業を行ったものでございまして、そういう意味で、とりあえず早急にやるべきものを取りまとめたということで中間取りまとめとしております。

 さらなる措置のあり方はいろいろ幅広い御議論があると思いますので、内閣官房を含む政府全体で、引き続き検討を進めることが適当であると考えております。

下村委員 長官、答えられていないんです。質問は、いつごろ最終的な取りまとめが行われる見通しかということなんですが、あえて言えば、最終はないということだと思います。つまり、近隣のいろいろな変化において領海警備体制というのはいろいろ対応すべきことだから、これで確定ということはないだろうということですが、そういう答弁が欲しかったということであります。

 この中間取りまとめによれば、武器使用については内部規定の必要な改正を行うというふうにされておりますが、どのような方針で武器使用について改正するのか、お聞きしたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 海上保安庁の武器使用基準につきましては、警察官職務執行法を準用しておりまして、国際的に見ても、現行の法律上の枠組みはこれを維持することが適当と考えております。

 一方で、海上保安庁におきましては、武器に至らない有形力を行使して進路規制等を行う資機材であります放水銃とか、あるいは、遠くにある船舶等に対して効果的に警告を発することのできる長距離音響発生装置を導入しております。

 これらの具体的な手法や手順をこのたび内部規則で定めたところでありまして、今後はこういうものも活用しながら、現場における対応を強化していきたいと考えております。

下村委員 先ほどの防衛省の防衛白書によれば、中国の国防費が、二〇一二年度も前年比で約一一%ふえ、過去二十四年間で約三十倍の規模に達している、こういうことでございます。

 国防費について、我が国において一方で自衛隊費が減っているわけですが、それはそれとして、このような尖閣諸島の周辺状況を考えると、まず第一義的には海上保安庁が事前の対応をすることであるというふうに思いますが、今、果たして大丈夫なのかどうか確認したいと思うんです。海上保安庁の船舶、それから航空機等の装備の現状がどうなっているのか。また、装備の老朽化の現状並びに更新の状況、それから見通しはどうなっているのか。この周辺状況に対応するような体制が今整えられているのかどうか、お聞きしたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 海上保安庁が所有しております船舶は現在四百四十八隻、航空機は、固定翼の飛行機が二十七機、ヘリコプターが四十六機、合わせて七十三機でございます。

 かねてより、これらの老朽化対策と高性能化が課題となっておりまして、平成十八年から緊急的な整備を行ってまいりましたが、その対象となっておりました巡視船艇百十八隻、航空機三十三機のうち、平成二十四年度までに巡視船艇は約八割、航空機の方は約九割の予算措置を図ってきたところでありまして、引き続き、これらの対策もしっかりと推進をしてまいりたいと考えております。

下村委員 ぜひ、緊迫化する国際情勢を踏まえ、大型巡視船等をタイムリーな形で整備する、そういうこともあわせて考えていただきたいというふうに思います。

 この海上保安庁の装備については、中期防のような計画を定めるべき、そういう議論もございます。これについて海上保安庁としてはどのような認識を持っておられるのか、お聞きしたいと思います。

羽田国務大臣 海上保安庁の体制整備については、これまでも、当初予算に限らず補正予算等も柔軟に活用して、さまざまな業務ニーズに対処するための体制整備を図ってきたところであります。

 海上保安庁としましては、昨年八月二十六日に発表しました海上警察権のあり方に関する中間取りまとめにおいて、今後二十年を見据えた中長期ビジョンを取りまとめたところであります。

 今後の体制整備については、これを踏まえて、財政状況等の環境を勘案しつつ、効率化を図りながら着実に進めていきたいというふうに思っているところであります。

下村委員 国際状況、特に周辺諸国との関係によって、この装備体制は総体的に判断されることであろうというふうに思います。

 同時に、民間レベルにおいては、例えば密輸とか密漁とか領海侵犯等が、我が国周辺海域における治安を脅かす事案もかなりふえているというふうに聞いておりますが、その件数と推移、それから対応等はどうなっているのか、お聞きしたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 平成二十三年の薬物事犯の摘発件数は七件、銃器事犯の摘発件数は二件でありますが、傾向としては、覚醒剤密輸ルートが多様化しているほか、暴力団以外の一般人が実行役として関与するような巧妙な手法も発生しております。

 また、外国漁船による漁業関係法令違反の検挙隻数は平成二十三年で十一隻でありまして、国籍別では、中国、韓国の船籍の事案が多くなってございます。

 さらに、平成八年から始まっております、領有権主張活動家の船舶が尖閣諸島の周辺海域を徘回する事案に加えまして、例の衝突事件以降は、中国の漁業監視船が同海域を徘回する事案が発生しておりまして、平成二十三年にはこの中国漁業監視船は九回確認されております。

下村委員 時間が参りました。

 今回の領海警備強化法をきちっと制定させることによって、我が国が法的にも十分な対応をしているということが、近隣諸国との要らぬトラブルやあるいはいろいろな論争について、きちっとした体制をつくることによって、国際社会にも明確に安心、安全、治安を、東シナ海における平和を維持することにつながってくることであるというふうに思います。

 ぜひ、早期にこの法律を成立させ、そして関係機関において十分な対応をすることによって未然に防ぐ、そういう体制強化を図っていただきたいということをお願いいたしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

伴野委員長 次に、向山好一君。

向山委員 民主党の向山好一でございます。

 発言の機会を与えていただいたことを感謝申し上げます。

 私は、ことしに入って尖閣諸島を、民間団体の主催する活動への参加という形で、洋上視察を二回させていただきました。一度は今御質問された下村先生と一緒でございましたけれども、私は、尖閣に上陸できる、そういうときまでこの活動を継続したい、このような覚悟を持っています。

 そして、この尖閣諸島に行くまでは非常に厳しいんですね、石垣島の登野城港というところから出まして百七十キロございまして、漁船で行けば、しけているときなんかでは十時間近くかかりますし、普通でも八時間程度かかります。非常に厳しい環境のもとに尖閣諸島はございますが、その尖閣を守るために、海上保安庁の職員の皆さんは本当に命がけで活動されています。そういうことを私は敬意を持って、視察したときにも頼もしい限りの印象を持って帰ってきたわけです。

 私たちが、我々国会議員がこのように尖閣に視察をしなければいけない、こういった活動をしなければいけない理由というのは、今、中国が尖閣を本気になってとりに来ている、非常に危険にさらされている状況があるということと、一方、我が国でそれに対処できる準備が十分できているかといえばそうではない、こういう状況があるということが大きな理由なんです。

 今回の法改正で、その準備については、海上警察権の強化を図っていくという観点からも前進をする、そういったことに大いに寄与するということですから非常に大切なことで、一日でも早くこの成立をしなければいけないし、海上保安庁あるいは国土交通省の皆さんに激励をする、そういう立場で質問をさせていただきたい、このように思っております。

 先ほども御指摘がありましたけれども、平成二十二年の九月七日に、尖閣諸島周辺で中国漁船の体当たり事件というのが発生しました。あの中国漁船の名前がミンシンリョウ五一七九、そして、その船長の名前がセンキユウという。尖閣に名前が似ているんですね、船長の名前が。それだけでも腹立たしいことでございますけれども、二十四日に無罪釈放した。このこと自体が非常に屈辱、いわゆる尖閣の屈辱なんですよね、国民にとってみたら。そして、その尖閣の屈辱を、国民の皆さんと一緒に海上保安庁の皆さんも当然感じて、二度とあの屈辱を味わいたくないというのが国交省の職員の皆さんの共通認識になったんじゃないかというふうに思うんですよ。

 ですから、そこで、ちょっともう一度確認をさせていただきたいのは、同じような事件がまた発生した場合、どうなるかということなんです。一昨年のあの事件以降、尖閣周辺がそれまで以上に緊迫度を増しているというのは、皆さん周知の事実です。だからこそ、緊迫度を増したあの体当たり事件以上のことが起こったときにどうなるのか。これは、国民の皆さんも非常に大きな関心事じゃないかというふうに思うんです。

 今回、法改正によって、大量に尖閣諸島に上陸した外国人も、海上保安官の皆さんが上陸して、逮捕して、退去させることができるというような法改正になっているわけですけれども、要するに、同じように公務執行妨害等の国内法の違反があった場合、前回と同じように、国内法にのっとって厳正に、適正に、そして迅速に対処する意思にお変わりがないのかどうか。前回の経験から、後ろのめりになっていないかどうか、その辺をまず確認させていただきたいと思います。

吉田(お)副大臣 海上保安庁は、法執行機関といたしまして、国内法のみならず国際法に基づきまして、厳正かつ的確に領海警備業務を実施しているところでございます。

 近年、我が国の周辺海域を取り巻く情勢が大きく変化する中、現場における海上保安官の執行権限を充実強化するためにこの法案を提出しているところでございまして、今後とも、領海警備事案に対しましては毅然として対処していく所存でございます。

向山委員 今、吉田副大臣から、毅然として対処していくという本当に頼もしいお言葉をいただき、ぜひともそれを貫いていただきたい、このように思いますが、それを前提として、数点質問をさせていただきたいと思います。

 まず、平成二十二年九月のあの事件、そこで国民の皆さんが非常に屈辱を味わった一つの大きなものとして、ビデオですね、このビデオの公開をするかしないかということが大問題になりました。国会の予算委員会の中で、理事の間だけで視聴するということになりまして、基本的には公開しないということになりました。これは中国側に配慮したのかどうかはわかりませんが、最終的に一般的には公開しませんでして、国民の皆さんの不信と不満を買ったということでございます。

 さらに、これが十一月になって、ネット上で流出した。いわゆる赤っ恥をかいたということになるわけですけれども、国交省の皆さんあるいは海上保安庁の皆さんはこれをどう教訓としているかということを確認したいんです。

 一方、最近はやはり、国民の知る権利というのが非常に意識が高まっておりますし、取り締まりの可視化ということも、今、大きな時代の流れになっているわけでございます。そういった時代の流れの中で、今後、海上保安官が取り締まりをした現場のビデオ、これはプライバシーや国民の利益に反しない限り原則公開をすべきだ、あるいは、そういったような基準を設けるべきではないのかというふうに思いますが、副大臣の御見解をお伺いします。

吉田(お)副大臣 ビデオ画像につきましては、今、インターネットの世界でございますので、一度外へ出ますと、世界じゅうに瞬時にして広がっていくものであるというふうな認識を持っております。結果として、国際関係等にも大変大きな影響を及ぼすことになる嫌いがあるということも認識をしているところでございます。

 そういう中で、議員の質問でございますが、事案対応時のビデオ画像を公開するかどうかにつきましては、御指摘もございましたように、人権、名誉等々、そういう配慮もございます。また、国民の知る権利等もありますし、海上保安庁自身の海上警備、捜査、取り締まり活動への支障というのもございます。そういうふうなものを総合的に勘案をいたしますけれども、公開するべきものは公開する、その都度適切に判断すべきものだと考えております。

向山委員 それは原則としてはそうなんでしょうけれども、あのビデオを流出させた元海上保安庁の職員は、ある意味、国民の英雄になっているわけです。物事のよしあしは別ですよ。ですから、国民の皆さんは、やはりこれは公開すべきだという意見が非常に多かったわけでございます。一方、あれが仮に釈放前に、あるいは九月七日の発生時直後に公開されていたら、あれだけ中国が強腰でいけたかどうかというのは本当に疑問ですよね。そういう意味では、原則公開することによって国民の利益が守れるということをやはり認識していただきたいと思いますし、できる限り公開という方針を堅持していただきたい、このように思います。これは要望させていただきます。

 そしてもう一つ、今の下村委員の質問ともかぶっちゃいますけれども、国内法をどう整備するかという観点で質問をさせていただきたいんです。

 尖閣はなぜ中国から狙われるのか、いわれなき圧力をなぜ受けるのか。これは地政学上でも経済学上でも、尖閣というところは非常に価値が高いからでございます。

 政府は一貫して、平穏かつ安定的に維持管理するというのが尖閣諸島の基本方針、つまり、今の状態に保っていくというのが基本方針なんですが、それは放置しているというのとは全く違うわけでございまして、周辺の環境変化を敏感に察知して、それに対応して初めて、平穏かつ安定的に維持できるということにほかならないんです。

 その環境変化というのは、今非常に大きく周辺は動いています。それは、今までは漁船によって周辺の揺さぶりがありましたけれども、最近は中国公船ですよ。ほとんど中国公船が、尖閣周辺を徘回したり、あるいは停泊したりして主権を侵そうとしているわけです。これは海上保安庁の資料でも、あの体当たり事件以降、漁政という漁業監視船が二十回、接続水域を徘回したりあるいは領海侵犯をしているし、海監という船も周辺で領海侵犯をしているわけであります。

 漁船のいわゆる取り締まり、これは海上保安庁としては十分に対処可能でしょうけれども、公船となったら、本当に十分な、副大臣が最初におっしゃったような毅然とした対処ができるのかどうか。これは甚だ難しい面があるんじゃないかと思いますけれども、今回の法改正などを含めて、それが前進するのかどうか、このあたりをもう一度確認させていただきたいと思います。

吉田(お)副大臣 先ほどの答弁で、国際法にのっとってと申し上げましたが、政府公船につきましては、国際法上、法令違反行為を取り締まることができ得ておりません。しかしながら、海上保安庁では、こうした外国船舶に対し、停留、徘回等の航行形態に着目して退去要請を行うなど、国際法に基づく最大限の対応をとっているところでございます。

 また、この改正法でも、こうした業務は、海上における船舶の航行の秩序の維持として、海上保安庁の任務、所掌事務規定においても明確化されることとなりました。

 引き続き、海上保安庁では、国際法に基づいて政府公船に対する適切な対処を行うこととしているところでございます。

向山委員 委員長から冒頭、視察の報告があって、そこの中でも、海洋調査活動が昨年七月から六月までの一年間で八件確認されましたという報告をされました。調査活動というのでしょうか、こういうのは非常に微妙でして、それが無害通航なのか、あるいは有害なのかという判断というのは非常に難しいと思うんですよ。

 そして、先ほど長官から、退去命令なんかもちゃんとやっている、事前通告以外のエリアで調査をやっていたら、退去命令なんかはやっているといいますけれども、命令に従えば問題ないですよ。ですが、従わなかったらどうされるんですか。そういったことというのはちゃんと法整備されているんですか。確認します。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 中国の海洋調査船による調査活動で現在問題になっておりますのは、領海ではなくて排他的経済水域で、事前に調査区域を届け出をして、当方の了解を得てから調査をすることになっておるんですが、その届け出た区域を外れて調査しておる事例が間々あります。

 これに対して我々が、直ちに調査を中止するように、あるいは本来届け出た調査海域でやるようにということで要請をして、あるいは外務省からも外交ルートを通じて申し入れをして、是正をさせておるという状況でございます。

向山委員 今長官の御答弁でわかるように、やはり相手から抵抗されたら十分な対処ができないんですよ、今の法整備では。

 しかし、国連海洋法条約には、十七条で無害通航を認めているけれども、十九条で無害でない通航の十二項目を規定し、二十一条で、その通航を防止するために自国で法整備をとることができるというふうに書いてあるんですね。

 一方、今、中国はどうなのかといえば、どんどん法整備しているんですよ。領海法、海島保護法あるいは漁業保護条例、どんどんこの東シナ海周辺で中国ができることというのは整備されていくけれども、一方、日本はまだまだ、ようやくこの海上保安庁の設置法とか外国船舶法の改正がありますけれども、不十分なところがたくさんあるんですよ。そういったものを、これで十分だという認識じゃなくて、これからどんどんとそういった整備をしていただきたいというふうに思います。

 時間が来ましたので、最後に質問させていただきますが、これもかぶるかもしれませんけれども、装備の問題なんですね。海上保安庁の装備というのは不十分だという御指摘がございますけれども、一方、中国はどうなのかということをやはり確認しなきゃいけないんじゃないでしょうか。

 今、漁政とか海監とか言いましたけれども、それ以外に海警、海巡、海関といった、いわゆる五竜というのが役割分担をしながら東シナ海を襲っているわけですよ。一方、日本は、今御説明があったとおり、四百五十隻程度の海上保安庁の保有船なんですね。中国はどのぐらい中国公船を持っているのか、把握されていらっしゃるでしょうか。

鈴木政府参考人 御質問でございますが、中国で我々の海上保安庁に対応するような仕事をしている機関は幾つかに分かれておりまして、例えば公安部の辺防管理局、これは海警という船を持っております。それから交通運輸部の海事局は、海巡という船を持っております。これは海難救助みたいなものをやっております。それから、先ほどの海監という海洋調査船、これは国土資源部の国家海洋局であります。それから農業部の漁業局、日本でいう水産庁に当たるところでありますが、これが漁政という漁業取り締まり船を持っております。

 さらに、中央政府の持っている船のほかに、地方政府が持っているような船もございまして、その総数の全貌は我々も具体的につかんでおるわけじゃありませんが、いろいろな報道等によれば、どんどんその体制の強化を中国側も図っておるということをつかんでおるところでございます。

向山委員 十分な情報をつかんでいないというお話ですけれども、海自と海保の連携というのをよく言われますよね。そこで、ちょっと長官にも御紹介いたしますけれども、防衛省の中の研究所が、中国安全保障レポートというのを毎年出しているんですね。そこの報告書の中に、ちゃんと中国の公船の分析が載っているんですよ。

 そこのデータによれば、千トン以上の哨戒船艇は中国は四十一隻、それ以外の保有船艇数は千四百七十隻というふうに書いてあります。これは今おっしゃったように、地方の船籍は含まれていません。ですから、これ以上のものがあるのかもしれませんけれども、中央政府が持っているのが千四百七十隻ですよ。日本は四百五十隻。三倍あるんですね。

 ですから、やはりこういった防衛省の情報というのは海保もしっかり連携して持っておかなあかんはずですから、その辺、ぜひともよろしくお願いいたします。

 それで、もう時間も参りました。一点だけ質問をさせていただきます。

 以前、北朝鮮の不審船が能登半島から、海保は追っかけましたが、逃げられましたよね。そして、海自と海保の連携があればそれは防げたんじゃないかというふうな指摘がございました。それ以降、連携を深めていると思いますけれども、無線での連絡だけでして、ITを含んだビジュアルな情報の共有というのがまだまだ進んでいないんじゃないかと思うんですよ。

 Xバンド情報を共有化するという話もありまして、それは標準よりコストが高いから、いろいろ検討しなきゃいけないと思いますけれども、そういうビジュアルな情報の共有というのを、このXバンド情報だけに限らず、何でもいいですけれども、やっていかなきゃいけないと思うんですけれども、御見解をお伺いします。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の平成十一年の能登半島事案におきましては、当時の私どもの巡視船のスピードが遅かったということもありまして、途中から自衛隊にお願いして、海上警備行動を発令して自衛隊にも追いかけていただきましたが、逃げられてしまったという事案であります。

 その後、私どもは、不審船対応ユニットと称しまして、高速の船艇を三ユニット整備いたしまして、日本海側と九州の西方に配備しておりまして、そういう体制整備を進めております。

 御指摘の自衛隊との連携につきましては、現在、通信面で、秘匿の問題がありますので、完全な装備を全部そろえるというのはなかなか難しゅうございますけれども、できる限りの体制整備を行っているところでありまして、これから自衛隊とも十分連携しながら、さらなる強化を図ってまいりたいと思っております。

吉田(お)副大臣 事務方の御説明がございましたけれども、基本はこうお考えいただきたいと思います。

 海上保安庁は警察権でございます。海上自衛隊は防衛力でございまして、ここの発想の違いというのがございます。ですから、国境警備に当たる、沿岸警備のあり方というのはそれぞれ各国ごとに違うわけでありますから、今おっしゃっていただいたような情報の部分につきまして、予算の部分を含めて共有化していこうということになりますと、これは、どちらかに合わせる。

 発想が違うということ、そのことはちょっと御理解をいただければと思います。

向山委員 時間が来ましたので、これで終わりますが、海上保安庁のさらなる奮闘を御期待申し上げます。

 以上です。ありがとうございました。

伴野委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十時十三分休憩

     ――――◇―――――

    午前十時三十三分開議

伴野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。古賀敬章君。

古賀(敬)委員 国民の生活が第一・きづなの古賀敬章です。

 本日は、持ち時間三十分のうち、前半二十分を私が、そしてその後、先日の委員派遣で石垣の現場を視察されました小宮山委員が残りの時間を質問させていただきます。

 さて、海上保安庁は、昭和二十三年五月に発足をいたし、以来、昼夜を問わず、海上における犯罪の取り締まり、領海警備、海難救助、環境保全、災害対応、海洋調査、そして船舶の安全航行等の活動に従事をしていただいております。

 そこで、まず最初に、海上保安庁の現有勢力の概要をお聞かせいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 海上保安庁の現有勢力は、船艇につきましては四百四十八隻、航空機につきましては、固定翼の飛行機が二十七機、回転翼のヘリコプターが四十六機、合計七十三機でございます。

 また、人員につきましては、平成二十四年度末の定員におきまして一万二千六百八十九人となっております。

古賀(敬)委員 きょうの質問におきまして、まず、いろいろ重なる点があることをおわび申し上げて、質問を続行させていただきたいと思います。

 その船艇の能力はどういった状況になっておるでしょうか。と申しますのが、速度や、装備の老朽化が進んでいるのではないかということを危惧いたしておりまして、そのことをちょっとお聞かせいただければと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 先ほども御答弁いたしましたように、かつては、海上保安庁の巡視船艇、航空機の老朽化というのが大変な問題になっておりまして、これを早急に代替整備いたしまして、高性能なものに取りかえていく、当然スピードも速く、夜間監視装置といったいろいろな新しい設備もつけていくということが急務でありました。

 このために、平成十八年度から緊急整備ということで鋭意努力してまいりました結果、当時、老朽化しておりました船艇、航空機のうち、船艇については八割、航空機については九割の予算措置ができたものでございます。予算措置というのは、まだ完全にでき上がっていなくて、予算がついたところでカウントしたものでございますが、そういう形で、今鋭意、代替整備それから高性能化というのを進めておりますので、また皆様の御支援も得ながら、しっかりと体制整備を図ってまいりたいと考えております。

古賀(敬)委員 やはり現場主体の役所、保安庁でございますから、現場の保安官の皆さんの士気を高める意味でも、装備、能力、これが他国に比較して劣らないように常に心がけて、国境警備という観点から、ぜひ遠慮なしに、必要なものは必要だということを財務当局に希望を出されて構わないと思いますので、よろしくお願いします。要望いたしておきます。

 今回、海上保安庁法及び領海等における外国船舶の航行に関する法律の改正が上程されておるわけでありますが、この改正が必要となった背景、そしてその理由をお尋ねいたします。大臣にお願いします。

羽田国務大臣 お答えをさせていただきます。

 この法律案は、近年、外国人活動家が遠方離島の周辺海域において領有権主張活動を行う事案や、遠方離島に上陸する事案のほか、外国の政府公船が同海域を徘回する事案が発生するなど、我が国の周辺海域における情勢が変化しているため、現場の海上保安官の執行権限の充実強化を図るものであります。

古賀(敬)委員 これまでの海上保安官の職務執行権限は海上に限定されていたわけでありますけれども、今回、遠方離島とはいえ、陸上でもその職務執行ができるように改正するわけであります。

 そこで、警察との関係はどのように考えたらよいのでしょうか、お聞かせください。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正は、陸上の警察機関が直ちに対応できないような遠方離島上で発生した犯罪につきまして、海上保安庁が臨時にこれに対応できるということにしようとするものでありまして、したがいまして、逮捕後に警察への引き渡しが可能になった段階では、警察にそれ以降の手続を引き継ぐというのが妥当であるということで考えております。

 いずれにいたしましても、海上保安庁と警察庁の間で十分に連携しながら、個々の事案に対応してまいりたいと考えております。

古賀(敬)委員 今長官は臨時にという言葉を使われましたけれども、警察との関係では補完という意味ですか、それとも、それぞれ独立した形での執行権限を付与するというものでしょうか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 もちろん我々は独立した権限を持つことになると思っておりますが、これは、警察が対応できない間、我々がかわって対応しようというものでありますので、本来の警察機関が対応できるような状況になりましたら、そちらの方に引き継ぐというのが妥当であると考えております。

古賀(敬)委員 そうしますと、被疑者を逮捕したといたしまして、その後の法的手続はどのように執行されますか。

鈴木政府参考人 実際の手続としては、被疑者を逮捕し、これを取り調べ、検察に送致するということになりますが、逮捕して取り調べを行っている段階で警察の方が引き継げる状況になれば、そちらの方に引き継いで、送致のところは警察等にやっていただくということになろうかと思います。

 いずれにしても、途中段階では共同で対処するような形になると思いますので、警察と十分連携を図りながら進めてまいりたいと考えております。

古賀(敬)委員 わかりました。ありがとうございます。

 ところで、先ほども質問ありましたけれども、海上保安官が対処することが想定される陸上犯罪というものは、どういうものを想定しておられますか。

鈴木政府参考人 お答えをいたします。

 あらかじめ対処可能な犯罪を限定するというのは適当でないことから、改正した法律上は海上保安官の対処する犯罪に限定を付してはおりませんが、典型的な事例としては、やはり、外国人が不法上陸した場合に不法入国罪が問題になると考えております。

古賀(敬)委員 次に、第二十八条の二に、海上保安官等が犯罪に対処することができることとする遠方離島は、海上保安庁長官及び警察庁長官が告示することになると記載をされておりますけれども、どのような離島を想定されておられますか、お聞かせください。

鈴木政府参考人 海上保安庁長官と警察庁長官が一緒に告示をすることになります遠方離島といたしまして現在検討しておりますのは、警察署とか駐在所といった警察機関が存在せず、かつ、警察の船舶または航空機により迅速に対処することが困難な遠方離島ということで、警察の方が自力で行けないような遠い距離にある離島を告示で指定することを想定しております。

 実際には、二十程度の離島の周辺海域を指定し、改正法の施行に合わせて施行するということを考えております。

古賀(敬)委員 今長官から二十程度というお話がありましたが、そしてまた、岩礁等も含めた海域を指定するということで、個々の島ではなくて、そういった海域を指定するということでいいわけですね。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 遠方離島には本島のほかに附属島みたいなものが多数存在しておりますので、それを全部カバーする意味で、一定のまとまりごとに海域を指定いたしまして、その囲まれた海域の中にある陸域というような形でまとめて指定をすることを考えております。今、そういうグループが二十ぐらい想定されておるということでございます。

古賀(敬)委員 よくわかりました。

 ところで、その指定をする期日はいつをお考えでございますか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 この改正法は公布から二十日後に施行されることになっておりますので、その施行されるまでの間に告示を出しまして、法律の施行に合わせて対象の遠方離島が確定するように措置をしてまいりたいと考えております。

古賀(敬)委員 二十日後までにという御答弁をいただきました。いずれにしましても、国境警備の観点から、迅速に対処されることを御要望させていただきたいと思います。

 次に、領海等における外国船舶の航行に関する質問に移らせていただきます。

 現行法で規定されている立入検査を省いて退去命令を出すことができるとした理由をお聞かせください。

鈴木政府参考人 現行法では、やむを得ない理由がないのに停留、徘回等を行っておる外国船舶に対して領海外への退去命令をかけることにしておりますが、やむを得ない理由があるかどうかというのを確認するために、立入検査を前提とすることとしたものと承知をしております。

古賀(敬)委員 この法律改正後の法律に基づきまして外国船舶に対し退去を命じたとしても、相手船舶がこれに応じない場合は効果が見られないのではないかということを危惧しております。また、そのときにはどのように対処されるのか、お聞かせください。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 この法律の退去命令には罰則がついておりまして、一年以下の懲役または五十万円以下の罰金が退去命令に従わない場合には科されることになります。

 したがいまして、退去命令に従わなければ罰則がかかるぞということを先方に伝えれば、通常の場合は退去をすることになると考えておりますが、それでもなおかつ居座るという者については、検挙をすることになります。

古賀(敬)委員 罰則がかかるというお話でございますが、尖閣周辺には、領有権を主張するためにたびたび中国や台湾から活動家が船を仕立てて向かってくるわけでありますけれども、そのような活動家に対しまして海上保安庁は、今までも、そしてまたこれからも、どのように対処をされているのか、お聞かせください。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 尖閣諸島周辺海域におきましては、平素から大型巡視船を常時配備するとともに、定期的に航空機による哨戒を行い、広域的な監視警戒を実施しております。

 ただいま御質問になりました、活動家がやってくる、そういう情報がありました際には、それに備えてさらに現場の船艇等の体制も強化をいたしまして、当該船舶の領海内への侵入阻止、領海に侵入した場合には領海外への早急な排除など、必要な警備を厳正かつ適切に実施することとしております。

古賀(敬)委員 活動家や漁船等の民間の場合と、先ほども出ておりましたけれども、特に中国の漁政または海監等の公船の場合とでは、保安庁として対処の仕方に何か違いがありますか、お尋ねします。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 活動家等の民間の船舶に対しては法律に基づく規制が可能でありますが、政府公船につきましては、これはお互いでありますけれども、沿岸国の管轄権が免除をされておりますので、いわば手出しができないという状況にあります。

 したがいまして、我々としては、領海に入らないように退去要請をしたり、領海に入った場合には、退去要求を事実上やるという形で、あるいは外務省を通じて外交ルートで抗議をするといった形で、これに対応していくということになると思います。

古賀(敬)委員 わかりました。ありがとうございます。

 ところで、この尖閣諸島の警備強化のために、沖縄県を管轄する第十一管区海上保安本部の体制強化が必要と考えますけれども、これからこの法改正を契機に海上保安庁としてどのような体制をとられるのか、お尋ねをいたします。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 沖縄を管轄する第十一管区海上保安本部におきましては、速力や夜間監視能力等にすぐれた最新鋭の巡視船や航空機を優先的にこれまでも配備しております。

 それから、昨年十月には、石垣海上保安部に千トン級の大型巡視船一隻を増強配備したところでございます。これは、それまで千トン型が二隻ありましたのを、福岡保安部から、巡視船「はかた」を「いしがき」に名前を変えて石垣に回しまして三隻体制にしたものでございまして、いずれも最新鋭の巡視船でございます。

 こういった形でこれまでも努力をしているところでございますけれども、さらに、最重要管区でありますので、今後とも第十一管区の体制整備についてはしっかりと検討してまいりたいと考えております。

古賀(敬)委員 現場に配置される保安官の皆さん、大変厳しい職場環境の中で頑張られるわけでございますので、ぜひ霞が関サイドからもバックアップ体制をしっかりととっていただきますように御要望を申し上げたいと思います。

 最後に、大臣の尖閣諸島における基本的な認識をお聞かせいただきまして、質問を終わりたいと思っております。よろしくお願いいたします。

羽田国務大臣 私は、政府の一員として、尖閣諸島の平穏かつ安定的な維持及び管理の継続のために、国土交通大臣の使命を全うしていくことが重要である、こういうふうに考えさせていただいております。

 具体的には、引き続き、海上保安庁の巡視船や航空機により、尖閣諸島周辺海域の警備を厳正かつ的確に実施していくとともに、船舶の航行安全の確保等に努めてまいりたいと考えております。

古賀(敬)委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

伴野委員長 次に、小宮山泰子君。

小宮山(泰)委員 国民の生活が第一、小宮山泰子でございます。

 海上保安庁法及び領海等における外国船舶の航行に関する法律の一部を改正する法律案について質疑をさせていただきたいと思います。

 まず、沖縄県に委員派遣ということで、私も参加をさせていただきました。委員長の報告のとおりではございますけれども、海上保安庁の役割の大きさや、また、私のおります埼玉県は海がございませんが、しかし、日本は、海で囲まれ、そしてそことつながっているからこそ独立した国家として存在もするし、そこを守っていただいている方がいるからこそこの平和というものも保てるんだということ、これを改めて実感したところでもございます。

 さて、この中におきましては、やはり海上保安庁、まずは、昨年、東日本大震災での災害対応や海難救助、そして国土を守る活動に関してお話も伺わせていただきました。本当に、海の底に潜り、また、「かいほジャーナル」にも載っておりますけれども、一年たった今でも行方不明者の捜査活動を続けていただいていることに、また各地で慰霊をしていただいていることに、私も国民の一人として心から感謝を申し上げ、また、その思いがあるからこそ、大変波の高い中、本当に危険な作業に従事していただいている海保の皆様には、感謝を申し上げたい、敬意を表したいと思います。

 さて、今回の法案によって、海上保安官が一定の離島における犯罪に対処できることとなります。また、領海等における外国船籍の航行に関しても、必要な場合に退去を命令できることは評価をいたします。

 しかし、最近、海外からや、また海賊も含めて、なかなか過激な行動をとられる場合もあるかと思います。今後は、海上警察権のあり方、国交省においても中間報告をお出しになられておりますが、さらなる海上保安庁及び海上保安官の執行権限等の強化が必要と考えておりますが、大臣の御見解をお伺いいたします。

羽田国務大臣 今般の法改正は、変化する領海警備情勢を踏まえて、海上保安官の現場における執行権限を充実強化するために早急に措置すべき事項について取りまとめたものであります。

 さらなる措置のあり方については、改正法の運用状況や今後の情勢を勘案しつつ、関係省庁とともに引き続き検討を行っていきたいと考えております。

小宮山(泰)委員 ぜひ、関係省庁、また地元の方々とももちろん連携をされていると思いますけれども、漁船の方や、またさまざまな危険を感じている現場の方々とも協力をして、この点に関しては、さらなる議論を深め、そしてできれば実行していただきたいと思っております。

 さて、今回、視察におきまして、台風の影響もあり、石垣までは伺うことはできませんでしたが、風をよけるために、逆に石垣に停泊している船が那覇の方に来られている。しかし、私、海の方はなかなかふなれなもので、その嵐の中というか高波の中でも救助活動をしていらっしゃるということを聞いて本当に驚きもしましたし、海というのは本当に装備と寄港する港といったものが大変重要なんだなということを痛感しました。

 そしてさらには、海保の活動の中で、海とは書いてありますけれども、空の活動もあるということで、石垣においては、救助救急体制の充実強化というものが大変重要だというのを伺いました。島々を結ぶ救急搬送を担っていらっしゃるということ、また、石垣についてでありますけれども、現地市街地に隣接する空港で今運用されています。これが、来年供用開始となる新石垣空港ができた際には、少々離れてしまうというようなことも伺いました。

 海上保安庁の石垣航空基地もまた今後併設をされ、海難救助、海上警備等の業務も充実されると見込んでおりますけれども、実際にどのような効果を想定されているのか、その効能につきましてお伺いしたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 新石垣空港は、千五百メーター滑走路の現空港から、二千メーターの長い滑走路をつくることとして整備中であります。

 民間機もそうでありますが、千五百メーター滑走路だと、ジェット機はおりるのはおりられるんですが、帰りに燃料をたくさん積むと飛び上がれないというような状況がありますが、二千メーターになりますと、中型のジェット機ぐらいまでは十分飛び上がれるということです。

 我々海上保安庁も那覇と羽田にジェット機を持っておりますが、これが石垣に行った場合に、やはり帰りに燃料をしっかり積むと飛べないということで、新しい滑走路になれば、十分燃料を積んで、帰る際にも各方面を哨戒しながら帰れるということで、これは大変大きなメリットがあると思っております。

 それから、現空港にないILSという計器進入装置が新空港につきますので、悪天候下でも離着陸ができるというメリットもございます。

 さらに、我々の基地とか格納庫も新しくつくるわけでありますけれども、今までよりも大変広く立派な基地、格納庫ができます。それから、保安庁では初めてでありますけれども、航空機の塩害防止のための機体洗浄装置というのが導入されます。これによって、職員の作業負担の軽減、それから職場環境の改善が見込まれておりますので、我々としても大変期待しているところでございます。

小宮山(泰)委員 ありがとうございます。

 通告はしていないんですけれども、やはりこの点に関しましては、恐らく海上保安庁にとってもさまざまな効果もあると思いますし、今まで滑走路が短かったからこそできなかったこと、それが可能になるという意味においては、より充実した警備や救助活動ができるものと私も期待をしております。

 それとともに、観光政策という意味においても、行き帰りの機内の中において、石垣島のすばらしい雄大な自然や、そしてそれを守っている地元の方、またミュージシャンの方々、そういったものを見せていただきました。成田の方にはプライベートジェットといったような新しい試みもされたりということで、観光政策においてインバウンド等も期待できる設備になるのかなということも思っておりますので、こういったものの活用も、国交大臣初め国交省の皆様においては、環境とともに、日本の新たな観光立国としての、海洋国家でもありますが、ぜひこの点に関してのより充実した政策を十分に深めていただければと思います。大きくうなずいていただいて、大臣、ありがとうございます。

 さて、時間もなくなってまいりましたが、ことしは、海上保安庁が昭和二十三年五月に発足して六十五年目の節目に当たる年かと思います。海上犯罪の取り締まり、領海警備、海難救助、環境保全、災害対策や海洋調査、船舶の安全航行等に取り組んでいらっしゃる。先ほどからほかの委員も、繰り返しではございますが、尖閣諸島であったり、海賊の問題であったり、ソマリア沖などにおいても活動されておりますし、保安庁が設置されてから六十五年、この中には、世界の情勢、また海域をめぐる情勢というのは大きく変化をし、ある意味、最先端で緊迫した日々を過ごされていると思いますし、それに合わせて変えていかなければ、対応していかなければならない時代に入ったと思っております。つまり、ますます重要になる役割を担うために、海保の人員や、船舶や航空機等の機材、さらには使用する港湾など、沿岸や陸上の施設についてもより一層の充実が必要となると考えます。

 この点に関しまして、日本の国土を守る、そして海域の安全を守る、そういう日本の姿勢を見せるためにも、海保の充実、その機能の強化につきまして、最後に大臣の御見解を伺わせていただきたいと思います。

羽田国務大臣 お答えをさせていただきます。

 四方を海に囲まれた我が国において、海洋は経済社会の存立基盤であります。我が国周辺海域においては、近隣諸国の海洋活動が活発化しているなど、海上保安をめぐる情勢は厳しさが増していることから、海上保安庁の役割はますます重要なものと考えさせていただいております。

 海上保安庁の体制整備については、これまでも、当初予算に限らず、補正予算等も柔軟に活用し、さまざまな業務ニーズに対処するための体制整備を図ってきたところであります。

 今後とも、緊迫化する国際情勢等を踏まえて、大型巡視船等の重点整備や人員面での強化を図るとともに、船艇基地や各種装備等も含め、必要な体制や装備の整備を進めていく所存であります。

小宮山(泰)委員 大臣の決意、ありがとうございます。

 尖閣は日本固有の領土でもございます。現在、埼玉の方が所有されております。しっかりとした測量も含め、また土地の地籍調査も含め、していただくこと、これも大切なことかと思います。大変自然の豊かなところでもあり、あの海域は、大変豊かな資源そして漁場でもございます。

 この点も踏まえまして、大臣におかれましては、閣内におきまして、ぜひ、日本の領土保全につきまして、灯台の整備も含めてこれから国交省としてお進めいただくことを要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伴野委員長 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。

 私の方から、先ほど民主党の向山議員が尋ねられていましたけれども、中国漁船ミンシンリョウ五一七九公務執行妨害等被疑事件からまず御質問したいというふうに思います。

 先ほど向山議員は無罪釈放されたとおっしゃっていましたが、これはちょっと違っていまして、処分保留で釈放された。そういう経緯はありましたけれども、海上保安庁としてはこの事件に関してどういうふうに教訓を得たのか、その点からまずお話をいただきたいというふうに思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 一昨年九月七日に発生いたしました中国漁船による当庁巡視船への衝突事件につきましては、当庁の巡視船が二度にわたり体当たりをされたということで、明らかな公務執行妨害であるとして、我々は、強行接舷をしてこれに乗り込んで逮捕し、検察に送致したわけでありますが、その後、九月二十五日に処分保留のまま那覇地検から釈放されたというのは御指摘のとおりであります。

 我々といたしましては、これは検察の判断でありますから、また粛々と現場の警備に戻ったわけでありますが、今後とも、かかる事案が発生した場合には、毅然とした対応をすることはもちろんでありますが、もう一つの教訓としては、やはり、よもや漁船が体当たりをしてくるとは思っていなかった、想定外の事案でありましたので、今後は、領海警備に当たって、そういう事案も発生するのであるということを肝に銘じて、いわば身構えて対処に当たるということも大切なことだと思って、現場にはそういう指示もしているところでございます。

富田委員 今長官が言われた、漁船だったわけですよね。あの事件が起きた後、一昨年の九月三十日だったと思うんですが、予算委員会で私、長官に質問しましたよね。そのときは、公務執行妨害だけじゃなくて、外国人漁業の規制に関する法律違反、操業していたのを見ていたんだから、網を上げて逃げたというところも掌握されていたので、両方できちんと逮捕すべきだったんじゃないか。漁業の方で逮捕しておけば、船長だけじゃなくて、漁労長とか、実際に漁に当たっていた人たちも被疑者になるわけですよね。

 だから、船長だけ、個人が、先ほど向山先生が言われていたけれども、何か後で英雄みたいになっちゃうというようなことも避けられたし、きちんと、こういう大きな事件だったんですよということがやれたと思うんですが、残念ながら、資料を見ますと、翌年の一月二十日になって、外国人漁業の規制に関する法律違反及び、二度体当たりしてきましたから、もう一つの公務執行妨害ということで追送検されて、翌日付で不起訴、起訴猶予処分になったということのようです。

 当時の対応にもちょっと問題があったんじゃないかなと思うんですが、その点はどうですか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 尖閣諸島の周辺海域においては、我々は、領海を守る、領海警備をやはり優先課題と考えて対応しておりまして、当時、中国漁船が多数、三十隻ほど操業しておりまして、これを領海から退去させるというのを主眼に対応しておりました。それで、その退去警告を行っておった最中に向こう側が当たってきたというものでありますので、これは捨ておけないということで、公務執行妨害で逮捕したわけでございます。

富田委員 今長官言われたように、本来は退去させるのが本筋、それが公務執行妨害ということでできなくなった。これは、実は去年の一月に辻元委員なんかと一緒に中国に行ったときに、武大偉さんに会いました。武大偉さんが駐日大使でいたときも同じような事案があって、やはり退去という形で処理してもらったんだ、いろいろ問題はあるけれどもということを言われていたんですが、今回は事案が違ったから、そういうことを私も説明したんです。いろいろなことが想定されるので現場は大変だと思うんですが、その時々に応じた対応ができるように、しっかり準備しておく必要があると思うんですね。その点はぜひお願いをしたいと思います。

 また、対中国という関係で、昨年の九月九日に野田内閣ができて、玄葉大臣が外務大臣に就任されました。玄葉大臣が九月九日に日中電話外相会談というのをやられて、その中でこんなことを言われたというふうにプレスリリースされています。不測の事態に備えた重層的な危機管理メカニズムの構築など、海洋に関する協力を重点的に進めたいと。これは大きく報道されまして、また新聞等にも載っておりました。

 こういうふうに言われたんですが、もうすぐ一年たちますけれども、まず、外務省としては、この大臣の発言を受けて、この一年どんな取り組みをされてきたんでしょうか。

山野内政府参考人 お答えさせていただきます。

 日中関係は、我が国にとって最も重要な二国間関係の一つであります。そういう意味で、中国との間で、具体的かつ大局的な観点から戦略的互恵関係を深めていくということが基本でございます。その関係で、大臣が申したとおり、日中間で誤解や摩擦を少なくするために、常日ごろから中国との意思疎通を強化することが非常に重要だということでございます。

 そういう意味で、重層的な危機管理メカニズムを構築することが大切だということでございまして、海の分野におきましては、昨年十二月末に野田総理が訪中しました。その際、日中両国の海洋問題に関する定期的な協議メカニズムをつくることが大切だということで、日中高級事務レベル海洋協議というものを立ち上げようということを首脳間で合意いたしました。

 その後、具体的な調整を経まして、本年の五月、中国浙江省の杭州におきまして第一回会合が開催されました。ここには、日本と中国それぞれの海洋の分野における関係省庁が参加して、両国間の協力や交流に関して活発かつ率直な意見交換が行われました。

 引き続き、こういうような協議も含めて、海洋分野での意思疎通を強化して、危機管理メカニズムの重層的な構築に向けて努力していきたいというふうに考えております。

富田委員 野田総理が中国へ行かれてそういう実務者間の協議が始まったのはいいと思うんですが、大臣、やはり政治家同士のいろいろなパイプも必要だと思うんですよ、何かあったときにきちんと一対一で話ができる。このミンシンリョウ漁船の事件が起きたときは、申しわけないけれども、民主党政権ではなかなかそういうパイプが機能しなくて、話が進みませんでした。

 私は、先ほど話した去年の一月に中国に行ったときに戴秉国さんにお会いしたんですが、戴秉国さんと当時の岡田幹事長は、私も新進党時代に一緒に戴秉国さんに会ったことがあるので、その話をしましたら、岡田さんと戴秉国さんで一対一でやればよかったじゃないか、すぐ電話をして、解決に向けていろいろなことができたんじゃないかというふうにお話を申し上げたら、戴秉国さんも、そのとおりだと言われたんですね。

 やはり、そういう関係が大事だと。今、山野内さんが話してくれた、実務者の協議が始まった、それも大事だけれども、重層的に考えていくと、やはり大臣なり政治家がいろいろなパイプをつくっていくということが本当に大事になると思うんですけれども、その点は大臣はどうですか。どのように考えますか。

羽田国務大臣 私も今の意見に賛同させていただきたいと思います。やはり、政治家同士の信頼関係をつくっていく、そして日ごろからいろいろな意見交換をしていくことは大変重要なことだというふうに考えているところでございます。

 また、海上保安庁としてですけれども、長官級の多国間会合である北太平洋海上保安フォーラムやアジア海上保安機関長官級会合に中国とともに参画しており、国際的な連携を深めているところでもございます。先ほど外務省から言われた日中高級事務レベル海洋協議にも、海上保安庁も積極的に参加をしたところでございます。

 今後とも、これらの枠組み、また政治家同士の対話も含めて、しっかりと、対話と連携の取り組みを通じて互いの信頼関係の醸成と連携強化を図りながら、周辺海域の安全、安心を確保していきたいと考えております。

富田委員 ぜひよろしくお願いします。

 大臣のお父様は香港と親しくて、私も一緒に議連をやらせていただいていますけれども、そういったいろいろなパイプができると思いますので、ぜひ大臣として対応していただきたいというふうに思います。

 次に、相互事前通報制度についてお尋ねします。

 中国との間で事前通報制度をつくったのに、先ほど来の質問でも、この一年間で八件ほど、もともと通報にあった海域と違うところで中国の調査活動が続いている。

 こういう申請区域外で調査活動を続ける中国の目的というのはどこにあるんだというふうに海上保安庁としては認識しているんでしょうか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 中国側の目的が那辺にあるかは私どもは承知しておりませんが、いずれにせよ、通報海域と異なる海域で調査活動を確認した場合は、直ちに外務省へ通報するとともに、現場において、巡視船艇、航空機により中止要求を行い、その後の動静監視を行うということで対応しております。

富田委員 こういう制度をつくって運用を始めたのに、中国側は破るわけですよね。海上保安庁と外務省で連携するといっても、今後、せっかくこの制度をつくってお互いに信頼関係を築いていこうというのに、一方的に破られる。これをどうやって実効性あるものにしていくかというのが大事だと思うんですが、そのあたりはどんなふうに考えているんですか。山野内さんでもどっちでもいいです。

山野内政府参考人 日中の間で、海洋をめぐっては、大きなところでは平和・友好・協力の海にしていくという首脳間の合意がございまして、その合意を実現するべく、さまざまな取り組み、先ほど紹介させていただきました海洋協議等々を行っておりますので、そういう場を通じて、事前通報制度の考え方とかその実施については、是正すべきところは是正すべく、中国側にも働きかけていきたいと思いますし、実効を上げるように、外務省、海保庁、連携して取り組んでいきたいと思います。

富田委員 ぜひ両省で頑張ってやっていただきたいと思います。

 先ほど来、何度か質問に出ていますが、政府公船への対応というのはやはりなかなか難しいな、国際法の枠組みで限界があるという説明がずっとありました。

 その説明は説明としてわかるんですが、やはり領海警備のあり方について、対政府公船という意味で、政府全体で議論していく必要があるんじゃないかと思うんですが、大臣、どうですか、そこは。

羽田国務大臣 政府公船については、国際法上、法令の遵守を要請し、それでも遵守しないときは領海からの退去を要求することができるのみでありまして、海上保安庁では、国際法に基づく最大限の対応をとらせていただいております。

 政府公船への対処を含めて、領海警備のあり方については、今後の情勢に応じて、関係省庁、政府としてしっかりと検討を行っていくことが適切であるというふうに考えております。

富田委員 ぜひよろしくお願いします。

 次に、先ほど来、巡視船や航空機がどのぐらい配備されているんだという質問がありましたけれども、第十一管区海上保安本部に視察に行かせていただきまして、現場を見てまいりました。

 その際も、私とみんなの党の山内議員から質問したんですが、この第十一管区というのは、担当している水域が物すごく広いんですよね。東西千キロ、南北五百キロ、三十六万平方キロメートル以上で、海岸線で約千七百キロ。三百六十以上の島があって、そのうち有人島が三十九だと。

 これだけの面積を担当しているにしては、ちょっとやはり、どうなのかな、船舶も航空機も少ないんじゃないかなと。職員の数については、二十五年前に比べたら五百人規模が九百人近くなったので、そこはちゃんと配備していただいていますという御説明がありました。

 ただ、資料を見ますと、船舶で、ヘリコプターを二機搭載できる大型船が三隻あるんですよね。そのうち二隻が横浜に配備されて、もう一隻が名古屋。一番事件が起こり得るこの第十一管区のところには、ヘリコプター一機搭載型が、先ほど長官言われていたけれども、博多の方から配置がえになって来ていると。何でヘリコプター二機搭載の大型船をこの第十一管区に置かないんだということを現場で聞いたんですが、何で横浜に二隻も置いておくのか、そのあたりどうですか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 海上保安庁が持っておりますヘリコプター搭載型巡視船のうち、ヘリ二機を搭載できるのは御指摘のとおり三隻でございまして、「しきしま」と「やしま」、「みずほ」というのがございます。そのうち「しきしま」と「やしま」は横浜に置いてございます。

 これはやはり、全国的な事案対応、あるいは、さらに東南アジア等も含めました広域的な対応も勘案して横浜に配置をしたものでありますのと、それから、やはり基地の関係もございまして、そういう大きな船を置ける基地というのも限られております。

 十一管区には、先ほど、石垣に回したのは千トンの、ヘリを搭載していない、ヘリ甲板だけがある巡視船でありますが、那覇に「りゅうきゅう」という三千トン型のヘリ一機搭載型の巡視船がありますし、それから、千トン型の巡視船が沖縄本島に三隻、石垣に今、一隻ふやしまして三隻ということで、合計六隻ございます。

 この七隻の体制で尖閣の警備に当たっておるわけでありますけれども、当然それだけでは足りませんので、全国の各管区から応援派遣をいたしまして、順次交代で尖閣の警備に入ってもらうという形で、ローテーションも組みながらしっかりと警備をしておるところでございますが、さらなる十一管区の体制の増強につきましては、またこれから鋭意検討してまいりたいと考えております。

富田委員 応援体制を組むとかローテーションをしているのなら、ヘリコプター二機搭載型を一機、那覇に配置すればいいじゃないかと思うんですけれども。山内委員が現場で尋ねたときに、何か第十一管区であったときに横浜から行っていたら間に合わないだろうというふうに言われていたんですが、本当にそのとおりだと思いますので、ぜひもう少し現場に対応できるような形での配備を検討していただきたいというふうに思います。

 次に、今回の海上警察権のあり方についての中間取りまとめの中で何点か疑問の点がありますので、お尋ねをしたいというふうに思います。

 「事案発生時の措置」の中の「強制的な行政調査」という項目の中に、「停船措置の具体化に関しては、法律上詳細な手続を規定することは立入検査の的確な運用に支障を生ずるおそれがあることから、具体的な停船措置として停船要請の対象船舶、配慮事項、停船方法、強制措置等が明記されている内部規則について、現場の意見も踏まえつつ、必要な改正を行う。」というような記載があります。

 これを読むと、これまでの内部規則には不備な点があったというふうに読めるんですが、そういう理解でいいんでしょうか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正は、近年の我が国を取り巻く警備情勢を踏まえ、現場の意見を考慮しつつ、また、放水銃などの新たな資機材の運用等について必要な内部規則の改正を行ったものでありまして、立入検査に当たっては、周囲の条件や相手船舶の対応に応じ、さまざまな手法を柔軟に駆使することが必要でありまして、これを法律上に詳細に規定するとかえって柔軟な運用が妨げられるおそれがあることから、法律ではなく、訓令とか通達によって機動的な対応をするということにしたものでございます。

富田委員 ちょっと、質問にストレートに答えていないんだけれども。不備があったのかと聞いているんですが。

 今、法律に詳細に規定すると現場での対応がなかなか困難だというのはわかるんですが、ただ、強制的な措置ですよね。この手続を、法律上の根拠なく、内部規定でいいのかという問題が出てくると思うんですが、そこはもうそれでやるしかないんだという認識なんですか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 あくまで、法律の枠内で法律に基づく措置を運用するに当たりまして、現場は、やはりある程度、内部規則等でマニュアル的に指針を示しておかないと動きにくいという部分がありますので、今までの運用をさらに円滑にできるように見直しを行ったところであります。詳細につきましては、事柄の性格上、具体的な説明は避けますが、あくまで法律に基づく措置であることに変わりはございません。

富田委員 内部規則なのでオープンにはできないというふうに現場でも言われました。まあ、そのとおりなんだと思うんですが、あくまでも内部の運用だということになってしまうと、それが本当に、今長官が言われたように、法律上の根拠に基づいた運用なのかということの判断は外部からはできないですよね。だから、そういった意味でもやはりかなり抑制的にやっていただく必要があると思いますので、その点は要望しておきます。

 もう一つ、同じ中間取りまとめの中に、「事案対処のための強制措置」に関して、「今後も積極的な発動を検討する余地がある」という記載がありました。これはどういう意味なんでしょうか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 海上保安庁法第十八条二項に定める強制措置についての問題でありますけれども、犯罪が行われることが明らかだと認められる場合等多くの事例を包括できるような法律上の要件となっておりますけれども、実際に本項が発動された事例は大変少のうございます。

 このため、積極的という表現がいいかどうかはちょっと問題があろうと思いますが、この第十八条二項を発動することでより適時かつ適切に事案対処を行うための検証を行いまして、やはり必要な場合には発動するというような形で内部規則の運用指針を改正したところでございます。

富田委員 次に、「武器使用」に関しまして、比例原則の枠内で、「近年の領海警備情勢を踏まえた内部規則の必要な改正を行う。」というふうな記載があります。これは、これまでの内部規則では対応不可能な事態が数多く発生しているというふうな認識でよろしいんでしょうか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 武器使用につきましては、これも実際に武器が使われる事例というのは少のうございまして、これまでの内部規則で不十分であったということではありませんが、一つには、先ほども答弁させていただきましたように、武器に至らない有形力を行使して進路規制等を行う放水銃をより使いやすくする、あるいは、遠くにある船舶に効果的に警告を発することができる長距離音響発生装置、LRADといいますが、これもございますので、これらの具体的な使用方法や手順を内部規則において今回定めたところでありまして、武器を使う前に、そういうのをまず使いやすくするということをやります。

 それから、武器につきましては、実際に相手に向かって撃つというよりは、まず、上空に向かって撃つ、あるいは海面に向かって撃つという威嚇射撃をその前段階でやりますので、この威嚇射撃の要件等について今後見直しを行うということを考えております。

富田委員 今の長官の御説明ですと、武器使用基準を変えるというわけじゃないんですね。

 この中間取りまとめで、もう一つ最後に、「事案発生後の措置」につきまして、「個別法において、漁獲活動の保護など具体的な保護法益に鑑みて規定」というふうに書いてあります。これは、具体例としてはどんなことが考えられるんですか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 事案発生後の措置といたしましては、外国漁船を一旦領海外に退去させても、再びまた入ってきて違法操業を繰り返し行うというような事態が想定されますけれども、これを繰り返さないようにするための不利益な措置として、例えば漁具を領置するとか、そういったやり方が考えられます。

 一方で、こういう措置については、それぞれの個別法の保護法益の観点からそういう措置が必要かどうかというのも慎重に検討する必要がありますので、それぞれの所管省庁の方でしっかり検討すべき問題だと考えておりまして、海上保安庁としては、いわば問題提起をしたという状況でございます。

富田委員 最後に、第十一管区海上保安本部の皆さんといろいろ懇談をしていましたときに、海上保安官をどうやって育成するかという話題になりました。

 海上保安大学校と海上保安学校、かなり応募者も多くて、きちんとした教育がされているという御説明でしたけれども、余り知られていないですよね。「海猿」の映画等があって、興味を持たれる方は随分ふえてきているんだと思うんですが、救助訓練も見せてもらいましたけれども、本当に大変な訓練をされて、現場での、嵐の中で遭難された方を救い上げるビデオも見せてもらいました。

 本当に大事な仕事だと思うので、人材を育成していくという意味で、この海上保安大学校と海上保安学校を今後どういうふうに政治がバックアップしていったらいいのか、そういうのも含めて、今後の人材教育という点については海上保安庁としてはどんなふうに考えているんでしょうか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 海上保安庁の将来のためにも、海上保安大学校、海上保安学校による人材育成というのは大変重要だと私どもも考えております。

 今御指摘がありましたように、おかげさまで、最近、映画「海猿」等の影響もありまして、志願者は大変ふえてございます。ただ、やはり保安庁の部署があるような港湾都市などではよく知られておりますが、内陸部などではまだ余り知られていないとか、いろいろな問題がありますので、我々も各管区を通じてそういうPRにも努めているところでございます。

 また、それぞれの大学校、学校の施設が大変老朽化して問題になっておりましたが、プールも新しくいたしました。映画「海猿」にも出てまいりましたプールも新しくなりました。さらに、全寮制でやっておりますので、この寮の改善なども大変重要であります。そういう教育環境の整備をしながら、かつ、教官等の体制もしっかりさせながら、人材育成を鋭意図ってまいりたいと思っております。

 ただ、私も卒業式など両方参りますけれども、出席する父兄も大変感激するぐらい、今のところ立派に人材育成をやってくれております。

富田委員 終わります。ありがとうございました。

    ―――――――――――――

伴野委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、政府参考人として国土交通省自動車局長中田徹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伴野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伴野委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 法案審議に先立って、東北道で発生したツアーバスの事故についてです。

 事故に遭われた乗客の皆さんに心からお見舞いを申し上げます。

 国交省による事故についての報告書によれば、当該運行の計画上の乗務時間が十一時間三十分であることから、交代運転者の配置が必要だったとしています。先般、国土交通省として、高速バスツアーにおける安全確保の徹底についての通達を発出したばかりです。また、一斉点検、監査を行って、八割の法違反の状況などが判明したばかりであります。国交省監査での乗務時間の未確認も実は報道されているんですね。

 事故の真相究明を急ぐこと、そして検査だけでは無理であって、違反をさせない体制、並びに、再三主張してきましたけれども、入り口での規制の強化など、再発防止のために思い切った措置をとる必要があると思いますが、大臣の見解をお聞きします。

羽田国務大臣 昨日、東北自動車道において、高速ツアーバスがトラックと衝突し、多数の乗客の方が負傷する事故が発生しました。事故でけがをされた方々に心よりお見舞いを申し上げさせていただきたいと思います。

 高速ツアーバスの安全対策については、この夏の多客期の安全確保のために、緊急対策として、重点監査や過労防止対策の強化などを既に実施している最中であり、このような状況で事故が発生したことは大変遺憾に思っております。

 事故原因については調査中でありますけれども、国土交通省では、事故を起こした貸し切りバス事業者及び旅行業者に対し特別監査等を実施するとともに、改めて、全ての高速ツアーバス事業者に対し、安全確保の再徹底を指示させていただいたところであります。

 緊急対策のさらなる徹底を図るために、地方運輸局が行う夏の一斉点検強化などにより、一層の事故防止に努めていきたいと考えております。

穀田委員 安全確保の徹底について、出してこの結果なんですよね。ですから、これだけではどうしようもないとは言わないけれども、さらなるさまざまな対策を打って、本質問題に迫らないと、それから、みずからが行った監査で違法ががばっとあるということがはっきりしているわけですから、そこに対してメスを入れてきちんとやるということがなければ、再発防止という観点からしても、これは必死になって取り組まなくてはならぬということを私は申し上げておきたいと思います。

 次に、法案に即して、今回の法改正について聞きます。

 一つは、権限の拡充としては、任意の質問権の対象範囲が乗組員、旅客以外の関係者に及ぶことを明確にし、運用をスムーズにする改正であるとの説明でありましたけれども、そういうことで間違いありませんね、長官。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 任意の質問権でありますので、権限の拡大と言えるかどうかわかりませんが、ただ、その対象が船舶上にある乗組員、旅客に今限定されておるのを陸上の関係者にも広げるということで、質問権の対象の明確化を図ったというものでございます。

穀田委員 では、二つ目に、任務、所掌事務規定の追加について聞きます。

 本改正案では、第二条、海上保安庁の任務、並びに第五条、所掌事務に「海上における船舶の航行の秩序」を追加し、第五条、所掌事務に「海上における犯罪の予防及び鎮圧」を追加している。

 これまでも海上保安庁は領海警備業務に取り組んでいます。今回の改正によって新たな任務、所掌事務を追加するというよりも、現在行っている領海警備業務を、法文上明確に位置づけたという説明を受けましたが、それで間違いありませんね。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 御質問のとおり、現在、領海警備の任務や所掌事務が保安庁にないということではありませんで、法文上、正面から「船舶の航行の秩序の維持」というような規定を置くことによって、そういう業務を正面業務として明確化したものと考えております。

穀田委員 では、領海等における外国船舶の航行の法律の関係についても一つ聞いておきます。

 二〇〇八年に制定された現行法では、正当な理由がない停留、錨泊、徘回等の行為を禁止し、違反が疑われる場合、立入検査を行い、エンジントラブルなどの正当な理由がないことを確認した上で退去を命じることになっています。

 本改正案では、立入検査を行うまでもなく違反が明らかな場合には、立入検査を省略し、勧告を経て退去を命じることができるようにする。このように変更するのは、安全と迅速な処理が主な目的だという説明でありましたが、それも間違いありませんね。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、現行法では、立入検査を行って、やむを得ない理由があるかどうかを確認した上で退去を命ずることとしておりましたが、荒天やあるいは相手方船舶が多数であること等により立入検査が困難な場合に、正当な理由がないことが明らかな場合には、勧告を行った上で退去を命ずることができるということで、円滑な法執行を可能とするための改正でございます。

穀田委員 今、長官から、三つの法文上の問題について答弁がありましたように、運用をスムーズにする、それから、現在行っている領海警備業務を明確にするということで、行政警察権限の拡充は極めて限定的なものだということが言えます。

 二〇一〇年の十二月に海上警察権のあり方に関する有識者会議が設置され、領海警備に当たる海上保安庁の権限や体制の見直しの検討が行われました。この有識者会議の意見をもとに、二〇一一年一月に発表された海上警察権のあり方に関する検討の国土交通大臣基本方針では、海上保安庁の行政警察権限を拡充する方針が盛り込まれました。議論の中では、海上保安庁により強力な権限を与えるという意見もあったようだけれども、検討の結果、慎重な対応が必要であるということで、今回の改正に大幅な権限拡充が盛り込まれなかったのは、この法案で事実であります。

 私たちがこういう問題を考える場合に、お互いに、力に力で対抗するという方向ではかえって緊張も高まって、東シナ海を平和の海にするということに逆行すると私は考えます。結局、周辺海域で生活し、操業する漁業者の安全が脅かされる。平和的話し合いの努力が大切だというのが我々の立場であります。

 そこで、本法の改正案の直接の契機となったのは、中国漁船の衝突事件であります。

 尖閣諸島に対する日本の領有権は歴史的にも国際法上も明確であります。同時に、尖閣諸島の領有をめぐって日中間での見解の相違が存在することは事実です。

 大事なことは、二〇〇六年以来の日中首脳間における累次の共同声明の内容、すなわち、ともに努力をして東シナ海を平和・協力・友好の海とするという合意に基づいて、トラブルが起こっても政治問題にすることを戒め、実務的な解決のルールにのせ、話し合いで平和的に解決していこうとする姿勢が重要だと思いますけれども、その点についての大臣の認識を伺いたい。

羽田国務大臣 先ほど富田委員の御質問にもお答えをさせていただいたんですけれども、海上保安庁として、長官級の多国間会合である北太平洋海上保安フォーラムやアジア海上保安機関長官級会合に中国とともに参画をさせていただいておりまして、アジア周辺海域における地域連携を深めているところであります。

 さらに、昨年十二月の日中首脳会談において立ち上げが合意され、本年五月に第一回会合が開催されました日中の高級事務レベル海洋協議についても、外務省を初めとする関係省庁とともに、積極的に参加をさせていただいているところであります。

 今後とも、これらの枠組みにおける対話、連携の取り組みを通じて、互いの信頼関係の醸成と連携強化を図りながら、平和・協力・友好の海を実現できるように努めていきたいと考えております。

穀田委員 今、対話、連携を強め、そして平和・協力・友好の海にしようという基本的立場は同様であると。

 そこで、日中高級事務レベル海洋協議、これは先ほど来報告がありましたように、相互信頼を増進し、協力を強化する、さらには重層的な危機管理メカニズムの構築ということが言われております。

 そこで、外務省にお聞きしますけれども、日中それぞれでどういった省庁が参加しているのか、明確に願いたい。

中野大臣政務官 お答え申し上げます。

 日本側は、内閣官房の中の総合海洋政策本部、そして外務省、文科省、水産庁、資源エネルギー庁、国交省、気象庁、海上保安庁及び防衛省でございます。

 中国側は、外交部、国防部、公安部、交通運輸部、農業部、国家能源局、国家海洋局及び総参謀部でございます。

穀田委員 今お話があったように、カウンターパートである、そういう海に関する関係者が全部参加しているということですね。

 それで、先ほども述べましたけれども、外務省の協議に関する概要ペーパーによると、両国間の海洋に関する重層的な危機管理メカニズムの探求を図るとあります。重層的な危機管理メカニズムとは具体的にどういうことを念頭に置いているのか、お聞きします。

中野大臣政務官 お答えいたします。

 重層的危機管理メカニズムというのは、先ほど来委員が御指摘の日中高級事務レベル海洋協議等の場で、継続的にこういう協議を実施しながら、日中両国の海洋関係部門が定期的に会合をしていく、そして交流を行うことで両国の海洋関係部門間の相互信頼を増進させ、協力を強化させるということでございます。

穀田委員 具体的なことは余りなかったですけれども、要するに、継続的で、しかも相互信頼を深めるということを目的にしながら一つ一つやっている、こういうことですな。

 報道によりますと、中国の国家海洋局が、日中の海上警備当局間での連絡を密にし、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件のような不測の事態を回避することを狙いとして、海上保安庁との連携を呼びかけたと言われています。そして、中国海監総隊と日本の海上保安庁とのホットラインの確立、現場での相互連絡体制の整備を想定しているということでありますが、海上警備当局での連絡体制の整備も協議されているのかどうか、あるいは今後協議していく考えはあるのか。これは長官の方にお聞きします。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 先ほど御答弁ありました日中高級事務レベル海洋協議では、多数の関係機関が集まって協議を行うという場でございますけれども、その中で、国家海洋局と私どもが直接ホットラインを敷いて何かやろうというような提案は、今のところ承知をしておりません。

穀田委員 というと、この新聞報道でいうと、中国側が日本の海上保安庁とホットラインの確立だとか、現場での相互連絡体制の整備を想定しているという記事が出ているんですけれども、それは今のところないと。

 問題は、先ほど私も、日中双方間における重層的な危機管理メカニズム、重層的なというところに非常に意味があると思うんですね。単なる一つの線じゃなくて、現場、それからさまざまな、相手の方も非常に縦割りはきついところですから、そういう意味でいいますと、どれほど重層的で、しかも密度の濃いやり方、先ほど外務省からありましたように、相互信頼を醸成しながらということになるかと思うんですね。

 そういう意味でいうと、双方の警備当局間における連絡体制の整備というのは極めて大事かと思うんです。相手から来ていないということはよくわかりましたけれども、うちの側から、そういう報道があることについて呼びかけていったり、そうしようじゃないかということが必要かと思いますが、いかがですか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 実は、中国側はいろいろ所管が分かれておりまして、先ほども御説明しましたように、例えば交通運輸部の海事局というのは海難救助を担当しておりますけれども、これは実際に現場で、共同で海難救助に当たる必要がありますので、我々もコンタクトがありますし、今、サーチ・アンド・レスキュー、捜索・救助協定も取り決めようということで動いております。

 したがって、相手の機関に応じてその難易度がありますが、またいろいろと検討してまいりたいと思っております。

穀田委員 先ほどありました、相手が機能で区分されているという問題はお互いわかっているわけですけれども、問題は、その重層的なメカニズムということについて、そういう重層的な対話を重視して、平和・協力・友好の海を築く努力が必要だという点については海上保安庁も同じ認識ですね。

鈴木政府参考人 総論として、私どももそういう認識は持っております。

 ただ、具体的な事例として、中国国家海洋局の海監という船は領海侵犯もいたしておりますし、それから、農業部漁業局の漁政という船も尖閣のところにやってきておるということで、そういう対応を見ながら、今後いろいろ考えていくべき問題だと思っております。

穀田委員 重層的な対話を否定するところはないと思うんですよね。ただ、相手の問題はいろいろあって、どこにやるかという問題はあるんですが、報道を先ほど述べたように、そういう呼びかけもあろうかと思いますから、私は、今後、やはり海上警備当局間でのそういうことも必要かと思います。

 もう一点、こういう問題を考える際に大事なことは、そこに住む住民の視点で考えるということだと思います。

 尖閣諸島を含む先島諸島は、昔から、台湾と大陸、人や物が盛んに往来してきたところであります。海は交流の場でした。与那国町は、歴史的につながりの深い台湾の花蓮市との姉妹都市を結び、子供たちの修学旅行やホームステイを通じて、国境を越えたユニークな交流を進めていると言われています。尖閣諸島をめぐる問題がこうした交流に水を差すものになっては本末転倒です。漁民の方々が求めているのも、安心して操業ができるようにしてほしいということであって、緊張を高めることはしてほしくないと話しています。

 国と国との問題であると同時に、そこに住む住民にとってどうなのかという視点が大事ではないかと思いますが、大臣の認識をお聞きします。

羽田国務大臣 私は、政府の一員として、尖閣諸島周辺の平穏かつ安定的な維持及び管理の継続のために、国土交通大臣の使命を全うしていく、こういうことが重要だというふうに考えております。

 船舶の航行安全の確保等にしっかりと努めていきたいと思っております。

穀田委員 最近も、尖閣遭難事件の慰霊祭を開催することを目的とした魚釣島への上陸が問題になっていますけれども、遺族会の慶田城会長は、右翼団体の、領土を守るという考え方には同意できない、遺族会の名前を活動に使われても困ると述べています。私たちはこの指摘を重く受けとめるべきだと考えます。

 新崎盛暉氏は、日本と中国の国家間で、互いに尖閣諸島を自分の領土だと主張しているが、そこに住む住民にとって誰の生活圏かを考えることが重要で、周辺の人々によって、歴史的、文化的にどのような生活圏であったかを共同研究することが必要ではないかと指摘し、国境を越え、民衆交流が大切であると主張しています。私は、これは非常に大事な指摘だと思うんですね。

 今現場がどうなっているか、また、どんな形で歴史があるかという重みを踏まえて、住民の立場から接近する、交流から接近するということが改めて大事じゃないかと思うんですが、大臣の感想をお聞きしたいと思います。

羽田国務大臣 今言われたことは、ある程度理解はできるわけでありますけれども、やはり、平穏かつ安定的な維持及び管理というのが大変重要だというふうに思っておりまして、あらぬ争いというか、わざわざ争う必要はないというふうに思いますので、そういう意味では、平穏かつ安定的な維持及び管理を継続していくということが大変重要だというふうに考えております。

穀田委員 何でこんなことを言っているかというと、平穏、安定的な管理というけれども、問われるのは、それは誰にとってなのかなんですね。住民であって、漁民であって、そこに住む人たちがそれを享受しなければならないわけですよ。

 その人たちが営々と築いてきた経験や教訓、そしてそのありようを踏まえて、それをしっかりやるということが大きな流れになっていくんだ、それがまた基礎であるということを改めて申し上げて、質問を終わります。

伴野委員長 次に、中島隆利君。

中島(隆)委員 社会民主党の中島隆利です。

 最初に、領海等における外国船舶の航行に関する改正法案について質問をいたします。

 今回の改正で、やむを得ない理由がないまま停留や徘回を行う外国船に対し、立入検査を省略して退去命令を行うことを可能にしました。これにつきまして、領海内で外国船舶が国連海洋法条約で定められた無害通航に違反するような行為をとった場合、他国ではどのような措置をとっているのか、今回の改正のように立入検査を省略して退去命令を行うことが一般的なのかどうか、その点についてお聞かせいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 無害でない通航に対する規制の仕方としては、他国では、無害でない通航や法律違反の行為に対して停船、捜索、拿捕等の一般的な権限を当局に与えるというふうな制度が多くなっておると承知しておりまして、我が国においては、勧告及び退去命令のような個別の権限を法律上規定するということで、他国と比べてよりきめ細やかな法制度となっておると考えております。

中島(隆)委員 関連して質問します。

 今回の改正によって、外国船舶に対して、勧告の後に立入検査を省略して退去命令を行うことが可能になりますが、現行法の規定に基づく立入検査を必要とする措置も併存するものと承知をいたします。そうしますと、立入検査を行うことが原則で、立入検査を省略して退去命令を出すのが例外的な措置なのかどうか、この点について一点お伺いをいたします。

 それから、この措置に関係する法案の第八条二項では、外国船舶が勧告に従わず、「領海等における外国船舶の航行の秩序を維持するために必要があると認めるとき」に海上保安庁長官が退去命令を行うことができるとされています。

 この「航行の秩序を維持するために必要があると認めるとき」とは具体的にどのような場合が想定されるのか、お聞かせいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 まず、今回導入いたします、立入検査を行わずに退去命令を行うという制度は、先ほど大臣からも答弁させていただきましたように、例外的な措置であると考えておりまして、荒天とか相手が多数であるとかいう形で立入検査ができない場合にこれを行うものでありますが、立入検査ができるような状況にありますれば、その際は、やむを得ない理由があるかどうかの確認をするだけでなく、犯罪が行われようとしているかどうかというような調査も一緒にできますので、これは立入検査を行うというのを原則にしております。

 それから、今の船舶の航行の秩序の維持というお話でありますけれども、これは、エンジントラブルとか、正当な理由もないのに領海内で停留、徘回している船舶をそのまま放置すれば、その後何をするかわからないということで、領海の秩序が乱れることになりますので、これは早急に領海から退去させるというのをこの法律の主眼としているものであります。

中島(隆)委員 さて、今回の改正は、指摘するまでもなく、外国船舶による領海侵入などが相次ぐ尖閣諸島周辺を含めた領海警備に関する内容であります。

 これに関連して、七月二十六日の衆議院本会議におきまして、野田総理は、尖閣諸島を含め、領海で周辺国による不法行為が発生した場合、必要に応じて自衛隊を用いることを含め、毅然として対応すると答弁されています。野田総理は、外交努力を含め、そのような事態が生じることを未然に防ぐことが重要といった答弁もされているわけでありますが、領海警備につきましては、まず海上保安庁の任務であることは明白であります。

 いきなり自衛隊を用いることを答弁されたことに少し違和感を感じるわけでありますが、海上保安庁を所管する国土交通省としましては、この総理の答弁につきましてどのような印象を持たれているのか、お尋ねしたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、領海警備は第一義的には海上保安庁の任務でありまして、海上保安庁が、関係省庁と連携しながら、情勢に応じて哨戒態勢を強化するなど、必要な警備を厳正かつ的確に実施しているところでございます。

 御指摘の総理の答弁につきましては、海上保安庁が対応できなくなったような事態の際には、自衛隊法に基づいて海上警備行動が発令されて自衛隊が出ていくこともあり得るというのを前提にされた答弁だと考えておりまして、領海警備が我々の任務であるということに変わりはなく、今後もしっかりと続けていきたいと思っております。

中島(隆)委員 気になりますのは、海上保安庁による領海警備の強化と自衛隊との関係、その境界線についてであります。

 確かに、海上保安庁では対処が不可能または困難な場合に、自衛隊法第八十二条の規定に基づき自衛隊が海上警備行動によって対処する、こういうことが可能になっております。

 この海上警備行動が発令されたのは、過去に三例ほどあります。すなわち、能登半島沖の不審船の事案、それから国籍不明の潜水艦探知事案、加えて、現在も続くソマリア沖・アデン湾の海賊対処であります。ただし、このうち、ソマリア沖の海賊対処を除くと、国籍不明の不審船や潜水艦への対応に限られています。例えば、尖閣諸島周辺でいいますと、退去命令を無視し、巡視船「よなくに」に中国船が衝突を繰り返した事案、それから、台湾、香港の活動家らが領海に侵入するケースを除きますと、中国の船舶が尖閣周辺海域を航行して一時的でも領海を侵犯しているケースは、中国の漁業監視船であります。

 漁業監視船は政府の船舶ですから、海洋法条約三十条を準用すれば警告や退去の要求はできても、退去命令のような強制的な措置は行えないはずであります。だとすると、総理は、何をもって、どのような船舶を対象にして自衛隊の出動にまで言及したのか、よくわかりません。

 そこで、改めてお聞きいたしますが、海上保安庁の手に負えず自衛隊が出動する際の条件といいますか基準についてお尋ねをしたいと思います。

 それからもう一つは、防衛計画大綱では、尖閣諸島周辺での外国船による不法な行為を念頭に、島嶼部における対応能力の強化を盛り込み、南西諸島での防衛力強化を打ち出していますが、これと今回の法改正はどのような関係にあるのかをお聞かせいただきたいと思います。

羽田国務大臣 本法案は、変化する近年の領海警備情勢に鑑みて、現場における海上保安官の執行権限の充実強化を図るため、速やかに措置すべき事項について取りまとめたものでございます。

 領海警備については、警察機関である海上保安庁が一義的に対処するとともに、海上保安庁が対処することが困難な場合には、自衛隊法の規定に基づいて海上警備行動が発令されるという仕組みはこれまでと同様でございます。

中島(隆)委員 違法な行為には適切な対応をとることが必要でありますが、野田総理の、自衛隊を用いて毅然と対応する、こういったような発言が前面に出ますと、地域の緊張が高まることも予想されるわけであります。やはり、主張すべきは主張することが当然でありますが、地域の緊張を高める方向ではなくて、何よりも外交によって問題解決の方向を見出すことが必要ではないかと思います。

 私も先日、沖縄を視察させていただきました。海上保安庁の体制あるいは訓練等について見せていただきました。しかし、設備等については、沖縄については新しいものが配備されているということでありましたけれども、今後、離島の境界管理は大変な業務であります。設備の拡充等について今後も十分対応していただきますようにお願いを申して、私の質問を終わらせていただきます。

伴野委員長 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一です。

 最初に、海上保安庁が行っている国際協力の実施体制についてお尋ねをしたいと思います。

 これまで長い間にわたって、海上保安庁は、特に東南アジア方面などで、国際協力、ODAのスキーム、あるいは独自のスキームで協力をしてまいりました。東南アジアの海賊対策、海上航路標識、いろいろな面で協力をされてきたことと思います。

 実は、私も昔、JICAの職員であったときに、海上保安庁と一緒にフィリピンのコーストガードに協力をする、そういう案件をちょっとだけ担当していたことがありまして、日本の海上保安庁に対するフィリピンなどの期待というのは大変大きいものがあります。

 今後、東南アジアに限らず、インド洋や中近東といったエリアにまでぜひ国際協力を拡大していただきたいというふうに考えておりますが、海上保安庁としてこの国際協力の分野をどのようにお考えなのか、お尋ねします。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘になりましたように、アジアの海上保安機関の中では、日本の海上保安庁、昭和二十三年に設立されまして、もう六十五年たとうとしておりますが、一番先輩格の海上保安機関でありますので、それぞれからいろいろな能力向上のための協力要請がございます。

 このため、フィリピン、マレーシア、インドネシア等の東南アジア諸国に対し、長年にわたって多数の専門家を派遣して、海上保安機関の設立や能力向上のための支援を行っているほか、大型巡視船の派遣による連携訓練や、各国関係機関職員を招いての研修等を行っております。これを最近、ソマリア周辺諸国にも拡大しておりまして、ソマリア周辺諸国の海賊対処のための能力向上等にも今努めているところでございます。

 また、先ほど来大臣の答弁にもありますように、アジア十七カ国一地域によるアジア海上保安機関長官級会合や、北太平洋六カ国による北太平洋海上保安フォーラムを毎年開催するなど、国際的な連携強化にも努めているところでございます。

山内委員 国際協力に関して追加で質問します。

 今でも海上保安庁の人員は十分とは言えないのかなと。人手が足りないといったような声も聞きますけれども、国内で本来業務をやっている中で人手が足りないのを、さらに海外に人を出すというと、なかなか難しい問題があるんじゃないか。もしかすると、OBも含めて、海上保安庁本庁はもちろんのこと、この国際協力に関していろいろな意味で人員の拡充というのが必要だと思うんですけれども、どういった体制をとられているんでしょうか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 国際協力に携わる人材の育成というのも大変重要だと考えておりまして、そのためには、語学力を初め、いろいろな形での研修等を行っていく必要があります。

 今お話ありましたOBの活用につきましては、もう既にやっておりまして、実際に、例えば現役のときにフィリピンに専門家で行ってくれた職員が、さらにOBになってもまた専門家として行ってくれているというような事例もありまして、こういうOBの活用も含めまして、今後ともしっかりと国際協力を続けてまいりたいと思っております。

山内委員 海上保安庁の中長期ビジョンについて質問をさせていただきます。

 海上保安庁体制強化中長期ビジョンというのを拝見しました。先ほど話題になっておりましたヘリコプター二機搭載型巡視船を今の三隻から六隻にふやすとか、いろいろな分野で拡充をしようという方向だと思います。それから、陸上の要員の強化あるいは巡視船の複数クルー化、いろいろな項目がありますが、どの項目を見ても、はた目に見ると、人手をふやさないと対応できないんじゃないかというふうに思います。

 今後、海上保安庁としては、人員に関してどのように拡充をしていくのか、あるいはどういうふうに手当てをしていくのか、お尋ねをしたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 海上保安庁におきましては、今、国家公務員全体で定数削減が大変厳しく行われている中で、実は、定数削減を上回って新規増員を認めていただいておる、いわば純増官庁として少しずつ要員をふやさせていただいております。

 特に、例えば二十四年度におきましては、大型巡視船における運用司令科、これは、航海科とか機関科とか、船を動かす人間しか今までいなかったんですが、作戦を立てる、いわば参謀的な、情勢を分析してそれに対する対応をしっかりしていくというような運用司令科をどんどん今ふやしておりますし、それから、小さい巡視艇では複数クルー制ということで、ワンクルーをツークルーにして巡視艇の稼働を上げるというようなことで、海上保安体制の強化のための所要の増員を行っているところでございます。

 今後とも、緊迫化する国際情勢等を踏まえ、しっかりとこのメニューを進めてまいりたいと考えております。

山内委員 同じく海上保安庁体制強化中長期ビジョンの中では、「陸上部署、船艇、航空機相互の情報伝達・秘匿通信体制を確保するため、現在進めているデジタル秘匿通信システムの整備を早期に完了させる。」といったような記述があります。

 そういう情報通信のシステムを強化するという項目がありますけれども、海上保安庁の中だけではなく、先ほどほかの委員からも質問がありましたが、他の省庁との連携、警察であったり海上自衛隊であったり、あるいは税関かもしれない、水産庁かもしれない、そういうほかの省庁との情報交換のための通信システムの拡充、こういったことも必要だと思うんですけれども、今後どのように進めていかれるおつもりでしょうか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 海上保安庁では、平成二十二年度からデジタル秘匿通信システムの整備を進めておりまして、これまでに全ての巡視船艇への配備を完了するとともに、航空機への配備も今現在鋭意進めているところでございます。

 御質問の他機関との情報共有につきましては、それぞれの分野ごとに行っておりますけれども、特に海上自衛隊との間では秘匿が一番問題になりますので、秘匿通信体制を確保した上で、必要となる情報を適切に共有しているほか、新たな通信設備による通信体制の確保に向けて今いろいろ検討しているところでございまして、今後ともしっかりと連携強化を図ってまいりたいと思っております。

山内委員 特に海上自衛隊と海上保安庁の関係というのは、競合する部分もあるかもしれませんので、なかなか連携も難しいといったようなことが言われることもありますが、やはりこういった尖閣諸島の問題など、特に連携が必要な部分ですので、ぜひいい関係を築いていっていただきたいと思います。

 次に、海上保安庁の情報保全について質問をさせていただきたいと思います。

 尖閣諸島沖の中国漁船が海上保安庁の船にぶつかった事件は非常に記憶に新しいわけですけれども、その後、情報保全に対して何らかの改善とか対策はなされたんでしょうか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の情報流出事案を受けまして、有識者から成る情報流出再発防止対策検討委員会を設置し、改善策に関する提言が取りまとめられましたが、この提言に基づきまして、職員の意識や理解の促進のための研修の実施、捜査書類等の情報システム上の取り扱い等に関する内部規則の制定、情報管理体制を強化するための組織の見直し等、可能なものから順次再発防止策を講じているところでございます。

山内委員 尖閣の漁船の衝突事件のときのビデオ流出事件に関しては、衆議院の予算委員会でもビデオを拝見しましたけれども、本当にあの画像、映像を非公開にする必要があったのかという議論もあろうかと思います。あるいは、今後の捜査とか今後のさまざまな対策のために、どうしても表には出せないこともあると思います。

 そこで、公開か非公開かの基準というのをしっかり決めておく必要があるんじゃないかと思います。そして、公開すべきはきちんと国民に公開をし、今後の捜査などに差しさわりがあるんだったら、それは流出しないようにしっかり守らなきゃいけない。その客観的な基準とか線引きについてお尋ねをしたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 海上保安庁では、行政文書の開示請求があった場合は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づいた審査基準に従って情報を公開しているところでございますが、一方、海上保安庁の保有する情報にはさまざまなものがありまして、特に警備や捜査に関する情報の公開については、それぞれの事案の態様を個別に判断しなければならず、一律の判断基準を設けることは困難でございます。

 例えば、御指摘がありました事案対応時のビデオ画像を公開するかどうかについては、海上保安庁の海上警備、捜査・取り締まり活動への支障や映像に記録された関係者の名誉、人権への配慮等と国民の知る権利等を総合的に勘案し、公開すべきものは公開するなど、その都度適切に判断すべきものと考えております。

山内委員 よくわからないというか、難しいお答えかもしれませんので、次の質問に行きたいと思います。

 事前に通告していなかったんですが、ちょっと長官にお尋ねしたいと思います。

 さっき公明党の富田委員から質問がありました、ヘリを二機搭載した大型の巡視船がなぜ横浜に二隻、名古屋に一隻しかないのかと。本当はもっと現場に近い沖縄なり九州なりに置いた方がいいんじゃないかと、私も富田委員と全く同じ疑問を持ちました。

 先ほどの説明だと、何か停泊する場所がないとかそういうお答えでしたけれども、それは本当なのかなと。現地に行ってみて、立派な港だったので大丈夫じゃないかなと思うところもありますし、今後六隻にふやすとなると、まさか横浜に四隻、名古屋に二隻ということにはならないと思いますから、全国に配置するんだと思います。そう考えると、やはり尖閣諸島に近いところに置いておいた方がいいんじゃないかと素人的にも思うわけです。

 台湾から尖閣諸島は百七十キロ、中国大陸から尖閣諸島は三百三十キロと、横浜から向かったらもう二、三日かかるんじゃないかと思いますから、とても間に合いません。やはり、沖縄が難しかったらせめて九州ぐらいにまでは、ヘリ二機搭載の大型巡視船、こういうものを持ってきておいた方がいいように思うんですけれども、いかがでしょうか。

鈴木政府参考人 少々内部的なお話でありますからなかなかお答えしにくいところもあるんですが、基本的に、ヘリを二機搭載できるような大型の巡視船というのは長期行動が可能でございまして、長期間無補給で行動ができます。したがって、どうしても近くに置かなければいかぬというよりは、やはり基地としてふさわしいところに置くというのが原則の考え方であります。

 一方で、沖縄の場合、この前、「はかた」から「いしがき」に名前を変えて千トンの巡視船を回すときも、何に一番苦労したかといいますと、職員の宿舎の確保でございまして、三十六人乗っておるんですけれども、その三十六人分の官舎をすぐに建てるわけにはいきませんので、民間のアパートを借り上げるというような手当てに相当な期間を要しました。

 そういういろいろな体制整備の問題がございまして、十一管区に、今後とも体制強化しようとは思っておりますけれども、いろいろな面を総合的に勘案して適切な体制を組んでいくということになろうかと思います。

山内委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

伴野委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

伴野委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 海上保安庁法及び領海等における外国船舶の航行に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

伴野委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

伴野委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、若井康彦君外五名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会、国民の生活が第一・きづな、公明党、国民新党・無所属会及び改革無所属の会の六会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を求めます。金子恭之君。

金子(恭)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 趣旨の説明は、案文を朗読してかえさせていただきたいと存じます。

    海上保安庁法及び領海等における外国船舶の航行に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺憾なきを期すべきである。

 一 近年の我が国の周辺海域をめぐる警備情勢は厳しさを増していることから、海上保安庁の執行体制を強化するため、海上保安庁の組織・人員、巡視船艇・航空機等について所要の体制整備を行い、海上の安全・治安の確保に万全を期すること。

 二 特に、近隣諸国等の海洋活動が活発化しており、今後、不測の事態の発生も懸念される周辺海域については、海上保安庁において、警備情勢に応じて大型巡視船を重点配備する等、現場における監視・警戒体制を強化するとともに、関係省庁と連携して、領海警備に万全を期すること。

 三 海上保安業務の遂行に当たっては、周辺諸国等と、現場レベルを含む各レベルでの協力を密にすること。

 四 海上保安官等が犯罪に対処することができることとなる遠方離島については、変化する治安情勢を踏まえ、遠方離島における犯罪への対処が迅速かつ適切になされることとなるよう、その範囲や警察との連携方策等について、時宜に応じた所要の見直しを行うこと。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

伴野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

伴野委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、国土交通大臣から発言を求められておりますので、これを許します。国土交通大臣羽田雄一郎君。

羽田国務大臣 海上保安庁法及び領海等における外国船舶の航行に関する法律の一部を改正する法律案につきましては、本委員会におかれまして熱心な御討議をいただき、ただいま全会一致をもって可決されましたことに深く感謝を申し上げます。

 今後、審議中における委員各位の御高見や、ただいまの附帯決議において提起されました事項の趣旨を十分に尊重してまいる所存でございます。

 ここに、委員長初め理事の皆様、また委員の皆様の御指導、御協力に対し、深く感謝の意を表します。

 大変ありがとうございます。(拍手)

    ―――――――――――――

伴野委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伴野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

伴野委員長 次回は、来る七日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十五分散会


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