第6号 平成25年11月13日(水曜日)
平成二十五年十一月十三日(水曜日)午後一時開議
出席委員
委員長 梶山 弘志君
理事 赤澤 亮正君 理事 秋元 司君
理事 大塚 高司君 理事 西村 明宏君
理事 望月 義夫君 理事 若井 康彦君
理事 井上 英孝君 理事 伊藤 渉君
秋本 真利君 井林 辰憲君
石崎 徹君 泉原 保二君
岩田 和親君 大西 英男君
門 博文君 國場幸之助君
佐田玄一郎君 斎藤 洋明君
坂井 学君 桜井 宏君
白須賀貴樹君 谷川 弥一君
土井 亨君 中村 裕之君
長坂 康正君 林 幹雄君
原田 憲治君 比嘉奈津美君
ふくだ峰之君 前田 一男君
宮澤 博行君 務台 俊介君
泉 健太君 奥野総一郎君
辻元 清美君 三日月大造君
岩永 裕貴君 坂元 大輔君
西岡 新君 松田 学君
北側 一雄君 佐藤 英道君
杉本かずみ君 穀田 恵二君
柿沢 未途君
…………………………………
国土交通大臣 太田 昭宏君
国土交通副大臣 高木 毅君
国土交通大臣政務官 土井 亨君
国土交通大臣政務官 坂井 学君
政府参考人
(内閣官房2020年オリンピック・パラリンピック東京大会推進室長代理) 久保 公人君
政府参考人
(国土交通省総合政策局長) 西脇 隆俊君
政府参考人
(国土交通省道路局長) 徳山日出男君
政府参考人
(国土交通省鉄道局長) 滝口 敬二君
政府参考人
(国土交通省自動車局長) 田端 浩君
政府参考人
(国土交通省航空局長) 田村明比古君
国土交通委員会専門員 宮部 光君
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委員の異動
十一月十三日
辞任 補欠選任
國場幸之助君 比嘉奈津美君
前田 一男君 石崎 徹君
後藤 祐一君 奥野総一郎君
寺島 義幸君 辻元 清美君
同日
辞任 補欠選任
石崎 徹君 前田 一男君
比嘉奈津美君 國場幸之助君
奥野総一郎君 後藤 祐一君
辻元 清美君 寺島 義幸君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
交通政策基本法案(内閣提出第一七号)
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○梶山委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、交通政策基本法案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省総合政策局長西脇隆俊君、道路局長徳山日出男君、鉄道局長滝口敬二君、自動車局長田端浩君、航空局長田村明比古君及び内閣官房二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会推進室室長代理久保公人君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○梶山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○梶山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三日月大造君。
○三日月委員 お疲れさまです。民主党の三日月です。
私、電車の運転士をしておりました。動力車操縦者の資格を持っている唯一の国会議員であります。今も、全国各地で、また、日本と世界とを結ぶ形で、交通、物流労働者の皆様方がお仕事をなさっております。心から敬意を表しながら、議題になっております交通政策基本法案について質問をさせていただきます。
昨日まで私どもが提出いたしました交通基本法案につきましては、私ども党内で協議をし、理事会の御決定をいただき、昨日、撤回をさせていただきました。
私たち、二〇〇二年以降、交通に関する基本法というものの必要性を認識しながら、検討を重ねて、法案をつくって、二〇〇二年の百五十四回通常国会、さらには二〇〇六年の百六十五回の臨時国会で交通基本法案というものを提出してまいりました。
二〇〇九年、政権交代をした後、私どもが政権を担わせていただいたときに、政府の中で、きょうも後ほど質問をされます辻元さんなどなどと一緒にこの検討会を設置いたしまして、十三回、ヒアリング等々検討を重ねてまいりましたし、三回のパブリックコメントも行いながら、この交通基本法案の検討を行ってまいりました。
その後、私どもが政権を担わせていただいていたときに、二〇一一年三月十一日、東日本大震災というものも発災をいたしました。その三日前の三月八日に民主党政権として交通基本法案を提出いたしましたが、そこには、大災害等々に関する代替交通の必要性などなど、欠けていた部分もあるのではないか。
また、これはもう正直に申し上げますけれども、高速道路料金無料化施策との整合性などなどについて与野党で協議をされ、残念ながら、私どもが提出をさせていただきました基本法案については、成立の日の目を見ることなく、昨年十一月の解散に伴い、廃案になりました。
昨日来、参考人の方から御意見をいただき、多くの議員の方々から御質疑をいただいておりますように、人口が減る、少子長寿化が進む、さらには財政悪化が進行している、グローバル化の中でどうするのか、温暖化対策も必要だ、さまざまな変化の中で、人、物の移動でありますとか、人の生活、物の移動、そういったものに直結する交通のネットワークをいかに守っていくのか、またその力を高めていくのか、こういうことについては、与野党の枠を超えて議論もし、また、ある意味では必要な法律を整備していかなければならない大きな課題だと考えております。
昨年十二月に政権再交代となり、今、自公両党が政権を担っていただいておりますけれども、政権再交代の後も、ある意味ではいろいろな感情や考えの違いを乗り越えて法律を提出いただいているということにつきましては、私は敬意を表しながら、政府が提出をしてこられました交通政策基本法案、中身を検討したところ、私どもが考えていた法案と一〇〇%同じではありませんけれども、ほぼ同趣旨の内容であるということから、私はこの間、この検討に、また提出に、審議のために御尽力いただきました皆様方に心から敬意を表しながら、賛成の立場で、以下、質問をさせていただきたいと存じます。
まず初めに、大臣に基本的な認識をお伺いしたいと思います。
改めてではありますけれども、交通政策基本法、交通にかかわる基本法を定めることの意義をどのようにお考えなのでしょうか。
具体的に、きのうの参考人質疑の中でも、ポイントは計画と財源と人材だという御指摘がありました。ここで基本法を定め、関連する諸法案とも整合性をとり、そして計画を定め、さらにはその計画に定められた施策を実行していくためには、財源が要ります。私ども政権時代も、基本法を定めた後に、スパイラルアップということで、地方の交通路線を維持するための施策、また、国際競争力を高めていくための施策を実行する財源をしっかりと確保することを目標とさせていただいておりました。
大臣には、国の施策、特に財源の確保という面で、どのような決意で、覚悟でお臨みになるのかということが一点と、特に、地方公共団体の施策、地方自治体、都道府県もそうですし市町村もそうなんですけれども、事業者との合意形成、住民の皆様方との合意形成で、やはり交通を充実させていくための人材が要ります。この人材確保、育成、養成という点でどのような変革を期待され、また実施をされるのか、二点についてお伺いをしたいと思います。
○太田国務大臣 今、問題意識としては全く同じで、私自身も、与党だ野党だと言っているような状況を乗り越えて、本当にこの国の交通そしてまた国土のグランドデザイン、町をどう配置するか、そのネットワークをどうつくるか、そしてまた人口減少、少子高齢化、国際競争の激化、災害が多い、そしてそれぞれの町をどういうふうに再建していくか、そして生活を営む上では交通というものが不可欠なものであるということの全体像というものを捉える、そして考え方を示す、そうした法律がない、個別法に終わっている。しかし、戦略的にこれからこの国土に接し、そして働きかけて、そして生活の一番大事なものの一つである交通というものについての考え方を共有していかなくてはいけないということを強く思っているところでございます。
そうした観点からいきますと、グランドデザインをつくるということを今努力しておりますが、国土政策は、国土形成計画法と同法に基づく国土形成計画、また、交通インフラ整備では社会資本整備重点計画がありますけれども、交通政策に関する基本的な法律、計画はいまだ存在しないということで、本法案を速やかに成立させて、関係者の一体的な協力のもとで交通政策基本計画を策定、実行していくということが大事だというふうに思っているところでございます。
財源の問題は極めて大事で、その町をどうするか、交通をどうするかというのは、国全体もありますし、各地方自治体の方たち、あるいは、本当に人が少ないという集落の人たち、そうした人たちとの連携ということと、その知恵を結集する人というものが大事であり、また、そこに、運送をする人の確保ということはまた大事であるというふうに思っております。
財源の問題につきましても、これは、財政が制約されている中で極めて重要なまちづくりとも絡んでどういうふうにしていくかということを、同意あるいは合意を形成してやっていかなくてはいけないというふうに思っております。
地方バス路線や離島航路、航空路線の維持や交通施設のバリアフリー化等に対して必要な支援を行っている、個別的にはしている状況にはありますが、この法案によりまして、交通に関する施策を実施するために必要な財政上の措置その他の措置を講ずる旨も規定しているところでございます。
今後も引き続き、やはり予算というのは、私もこういう立場になるとよくわかるんですが、説得力があるというか、そういうことが非常に大事だと思いますので、この法律を成立させていただいて、なぜそこに予算が必要なのかという説得力を持って予算を確保できるよう、最大限に努力をしていきたいというふうに思っているところです。
地方自治体の件については、副大臣の方から御答弁をさせていただきます。
○高木副大臣 委員の御指摘の後段の部分でございます、すなわち、地方公共団体の施策でどのような変革を期待するのか、あるいはまた、その人材育成をどうするのかという質問でございますが、この点について答えさせていただきます。
まず、一番大きな変革の期待というのは、十二条あるいは六条にございます、先ほど委員もおっしゃいましたけれども、国、地方公共団体、交通関連事業者、交通施設管理者、住民その他の関係者、これがしっかりと連携をするということが、この基本法が制定されて、私は大きな期待を持っているところでございまして、ややもすると、地方公共団体と運行者がうまくマッチしていないというようなこと、あるいは住民のニーズが十分生かされていないというようなこともあるわけでございますが、こういったことが、連携ということをしっかりうたうことによって解消されていく、これが本法案の私は一番の変革の期待だというふうに考えているところでございます。
今、きのうも参考人に来ていただきました家田教授、あるいはまた富山の森市長らをメンバーといたしまして、交通政策審議会地域公共交通部会におきまして、その地域の関係者間の役割分担、そしてそれをどうやって合意していくかというような、その望ましい枠組みというのを今検討していただいておりまして、国交省として、来年の通常国会にはこの関連法案を出させていただいて、具体化していきたいというふうに考えているところでございます。
また、人材の育成につきましては、こういったことがあっても、人材がやはり地方にしっかりいないと施策はうまくいかない、これはごもっともな御指摘でございまして、人材育成は大変大事な視点かというふうに思っているわけでございまして、今、国としては、例えば、ポータルサイトを活用して地域のさまざまな取り組みについて情報提供を行ったり、あるいはまた、シンポジウムや研修やセミナーなどを実施しておりますし、また、民間の団体の方々も、いろいろ人材の育成塾など、学識経験者を中心にさまざまな取り組みが行われていると聞いております。
今後、ぜひこうした新しい取り組みにつきまして、国交省として、国として支援をしてまいる、そのような考えを持っているところでございます。
○三日月委員 ぜひよろしくお願いいたします。
特に、私どもも制定にかかわりました地域公共交通の活性化及び再生に関する法律に基づいて行われている事業、地域公共交通特定事業は、現在全国で七件、そして、新地域旅客運送事業については、栃木県日光市で一件のみという状態でありますし、この今副大臣が御指摘になった、法案の中でも特に九条、地方公共団体の責務を果たすための人材をしっかりとそれぞれの地域で確保、養成していくということは、私は極めて大事だと思います。
もう一点、安全について、少し順番を変えて質問をしたいと思うんですけれども、まず、私どもの法案でもそうでした、今政府の法案もそうですけれども、第一条に、「交通安全対策基本法と相まって、」と、これは昭和四十五年に定められた法律と相まって、この交通政策基本法に基づく施策を行っていこうということにしておりますけれども、安全に対する認識、定め、規定、これをどのように定め、また、具体的に実施をしていくのか。
一点、具体的な例で申し上げますと、「相まって、」と私どもが表現しました交通安全対策基本法第九条というところに、歩行者の責務というのが定められております。やはり徒歩、歩行というのも大事にしよう、歩いて暮らせるまちづくり、人の移動を最優先にという考え方もありますが、この昭和四十五年に定められた交通安全対策基本法第九条の「歩行者の責務」というところには、「歩行者は、道路を通行するに当たつては、法令を励行するとともに、陸上交通に危険を生じさせないように努めなければならない。」という定めがあります。昭和四十五年だからこういう定めになったのかもしれません。
こういう法律と相まって交通政策、基本施策を実施するということに、いささか今の時代には合わない、また国民の皆様方のニーズには沿わない点があるのではないかということを感じるんですけれども、この点、いかがでございましょうか。
○高木副大臣 御指摘のとおり、交通安全は非常に大事な観点であります。
歩行者の責務、これは今御指摘のとおりでありますけれども、交通安全対策基本法九条があるわけでございます。
本法案には、直接的に交通安全ということは実はうたってはおりません。ただ、それはそうなんですけれども、交通にとって安全の確保というのは、しっかりと国民の生命、身体、財産の保護において重要な役割を果たす意味で何事にも優先される課題であるということは、それはもう十分認識をいたしておりまして、従来から、交通安全対策基本法や道路運送法あるいは鉄道事業法、海上運送法、航空法などの既存の関係法律に基づいて実施され、安全確保に関する具体的な規定が整備されている。
すなわち、その「相まって、」というところは、ですから、こういった今申し上げたものと一つになって、相まって、この交通基本法には先ほど申し上げたとおりそういうことはうたっておりませんけれども、そういったものとしっかり連携をしながら交通安全というのを図っていく、そういう意味で、相まってというような表現がされているというふうに考えております。
○三日月委員 どうも私の質問と相まっていないんですけれども。
私の問題意識は、私どもも「交通安全対策基本法と相まって、」と表現していたんですけれども、この交通安全対策基本法というのを見てみると、九条に「歩行者の責務」と書いて、陸上交通に危険を生じさせないように歩行者が努めなければならないと書いてしまっているんですよね。
しかし、人に優しい、人に最優先の交通、まちづくりをするという観点からは、相まって施策はするんですけれども、こっちの法律の方に、いささか今の時代には国民の皆様方のニーズに合わない表記、定めがあるのではないか、このことを、確かに所管は違うかもしれませんけれども、国土交通省としても、この基本法の制定の後に、早急に改正なり、また具体的な措置の改善を図っていくべきだという問題意識を私は申し上げておきたいというふうに思います。
続いて、大事な、基本的な需要の充足ということについて確認をさせていただきたいと思います。
二条に、国民等の交通に対する基本的な充足ということが書かれているんですけれども、これは、政府案の十六条、十七条、私ども今回、政府も同じですけれども、「日常生活等に必要不可欠な交通手段の確保」という表記でありますとか、高齢者、障害者、妊産婦その他の方々で日常生活または社会生活に身体の機能上の制限を受ける方々の交通手段の確保、さらには乳幼児を同伴する方々の円滑な移動が可能となるような構造改善、設備改善、これを推進していくべきだという定めをつけてまいりました。
この基本的な需要の充足ということについての政府の見解を承りたいと思います。
○高木副大臣 委員が提出いただきました議員立法二条におきましては、「需要が適切に充足されなければならない。」と規定されている。一方、本法案につきましても、「交通に対する基本的な需要が適切に充足されることが重要である」というふうになっておりまして、議員立法では交通そのものの意義という側面からうたっていると思いますし、本法案については交通政策の推進という側面からうたっておりますけれども、私はこれは同様の趣旨を規定しているというふうに考えております。
ちょっと表現は異なっておりますけれども、先ほどもおっしゃっていただいた通勤、通学、通院、交通弱者のことも含めてございましたけれども、そういったものに対する、交通に対する基本的なニーズについて、適切な方法や内容により充足するべきであるということをいずれも示しておりまして、これは両者に私は相違はないというふうに考えております。
○三日月委員 続いて、交通運輸関連事業に従事される方々の問題です。
私どもは、法案の中に「交通関連事業従事者の育成及び確保等」と定めておりました。後ほど辻元議員の方から詳しく質問をしていただきますけれども、これは、中型免許の関係もあるのかもしれません、トラック運転手の方々も、先般法案を御質疑いただきましたタクシー運転手の皆様も、バスの運転手の皆様も、先般は岩手県交通の問題も報道で出ておりました。さらには、海の分野で、船員の方々も、これは外航、内航を問わず、高齢化が進展をしている。さらには、水先人の方々も高齢化が進展している。すなわち、陸海とも、空の分野も一部そうなのかもしれません、特に離島航空路、地方鉄道もそうかもしれません。
こうした交通、物流産業にかかわる従事者が高齢化してくる、人員確保に困難を来しているという状況について、政府はどのように現状を認識し、この基本法制定後、どのような対策を講じていかれるおつもりか、お聞かせいただきたいと思います。
○太田国務大臣 この業種に限らず、現場で働く人たちが誇りを持って日本の若者が携われるという環境を、建設業界もそうなんですけれども、交通の関係もそうだと思います。今回のこの法律ができ上がれば、一番実は背後で大きいのは、この仕事は誇りがある仕事なのだ、そして、需要があり、雇用があるということのバックアップというのが私はできるというふうに思うんです。
現在、今御指摘のように、人の不足、高齢化の深刻化というものは、公共交通をめぐっては極めて環境が悪いというふうに思います。
バス事業においても、バス事業を取り巻く経営環境が厳しい。あるいは、労働時間が長い。そして、大型二種免許保有者が減ってきている。高齢化が進んでいる。また、内航船員は年々高齢化が本当に進んできているということで、五十歳以上の船員が五割を占めている。しかし、交通ニーズというのは極めて大きいという状況にあると思います。
国交省におきましては、例えばバス事業について申し上げますと、今後、学識経験者、バス事業者、労働組合、関係省庁などとともに、運転手の要員不足を専門的に検討する場を設けて、バスの運転手の確保及び育成に係る課題や対応策を検討してまいりたいと考えております。
内航船員につきましては、海技大学校等における船員の育成や、計画的に新人船員の資格取得や試行的な雇用に取り組む海運事業者に対する費用の助成などの施策を講じているところでありますが、なお一層、全体的に、この仕事が大事だという大きな物の考え方というものをこの法律をつくり上げることによって吹き込んでいくということが極めて重要だと思っておりまして、そうした大きな流れをつけ、若者が入ってこられるようにという、そうした体制をつくりたいと思っております。
○三日月委員 大事なことだと思います。誇りを持ってもらい、そして需要もあり、働きがいがある、そのことを、法律を定めることによって、計画をつくり、国の内外に発信していく。当然のことながら、ただ発信するだけではなくて、それらが現場においてきちんと実施、施行されているのかということの確認も絶えず行っていくということが大事だと思います。
一点、角度を変えてお伺いをいたします。
私どもの議員立法でもそうでしたし、政府案でも五条に、「交通の適切な役割分担及び有機的かつ効率的な連携」というものがあります。
先ほど大臣が御答弁いただいたように、この基本法を制定することによって、交通に関する、今までなかったグランドデザインというものを定める、計画を定めていくんだ、そして財源確保にも努力するんだ、バリアフリーも行っていくんだと。もちろん、競争力強化のための施設の整備、社会資本の整備、これも一定必要でしょう。
ただ、今回の基本法制定の一つの大きな意義は、それぞれの方々が、きのうも一部ありましたけれども、どこに道路、どこに港湾ということの御要望、これは私は否定いたしません。国会の場でそれぞれの地域のお声を届けられることは大事なことだと思いますが、国全体として、人口が減り、少子長寿化が進み、何より財政が厳しいという状況下で、部分最適だけを追求していても、国家が逆にじり貧に陥っていくという状況を食いとめるために、私は、計画をつくり、可能な限り全体最適を求めていくという交通の新たなステージに入っていくと思うんです。
そういう意味で、総合交通政策をつくる第一歩を、私はこの日本においてもようやく踏み出したということだと思うんですけれども、この点で、現在政府内で検討されております高速道路料金制度、これは料金もそうですし、割引もそうです。今年度で一定の区切りが迎えられるこの料金制度、割引制度もそうです。これは、他の交通機関への経営というものに与える影響も極めて大きいと考えられますし、そこに税金が投入されているとすれば、そのことの矛盾、やはりこういったものもあると思うんですけれども、この点、政府の御認識を伺っておきたいと思います。
○太田国務大臣 高速料金を初めとする料金体系等につきましては、場所ごとに違ったり、そしてまたそれがほかの輸送というところに影響があったり、さまざまなことがあって、ちょっと継ぎはぎであったりということがあったと思います。全体像の中で、そして高速道路ということにおいても、シームレスで、そして納得がいく、こういう体系をつくらなくてはいけないという局面だと思います。
この高速道路において、過去に実施した料金割引におきまして、他の交通機関に対して大きな影響を与えたという御指摘がありますが、そのとおりで、我々の政権の時代にやったんですが、休日千円割引、これは景気対策ということがかなりあったんですが、いろいろ混乱もあったと思います。
これらの影響があったということも踏まえて、今後の高速道路の料金制度のあり方については、いわゆる寺島委員会、国土幹線道路部会におきまして、各交通機関の関係団体からヒアリングを実施するなど、丁寧な議論がなされて、ことしの六月に中間答申が取りまとめられました。
国交省として、この中間答申を踏まえまして、高速道路会社と調整しながら、他の交通機関への影響にも配慮して、来年度以降の料金割引等の基本的な内容を決定してまいりたいと考えておりまして、今、鋭意そうした観点から努力中でございます。
○三日月委員 これで質問は終わりますが、先ほど十分突っ込みませんでしたJR北海道の問題、昨日も委員から御質問がされておりましたけれども、特別監査が二回、改善指示が二回、そして報告に改ざんがあったのではないかという疑い、こういうものがあります。もし事実だとすれば論外だと思いますし、私はそもそも、国土交通行政がおちょくられ、なめられているのではないかという感覚さえ持っております。もちろん、国鉄改革以降の三島、貨物の経営のあり方がどうなのかという根本的な議論もそうですけれども、このJR北海道の今の経営問題については、当委員会で徹底した議論が必要だと考えますので、場合によっては社長の参考人招致も含めた厳重な審議を私は求めたいと思いますので、委員長においてお取り計らい、よろしくお願いいたします。
以上申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。
○梶山委員長 この件につきましては、後刻理事会で協議をいたします。
次に、辻元清美君。
○辻元委員 民主党・無所属クラブの辻元清美です。
本日は、交通政策基本法につきまして質問をさせていただきます。
まず最初に、第一条の「目的」には、「国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展を図ることを目的とする。」と定められております。この交通、人と物を運ぶ、その基本的なインフラをしっかり整備し、守り育てることは、多くの人たちの命を守る、そしてさらには、社会、そして人の人生を謳歌する、その基本インフラであると私は考えております。
そんな観点から、今回、交通政策基本法という、最も社会にとって大事な一つの基盤である交通についての憲法のような大きな法律、これは一日も早く成立をさせたいと私自身も思っておりましたし、今回、民主党、社民党も提出しておりましたが、政府が交通政策基本法ということで、今まで私たちが求めてきた法案、さらに補充もしていただいて御提出いただき、賛成の立場で、一日も早く成立をさせたいという思いで質問させていただきたいと思います。
私は、東日本大震災のとき、総理補佐官を務めておりまして、ボランティア担当、被災者支援ということで被災地に入りました。そのときも実感をいたしましたけれども、たった一台のバスが避難所と避難所の間を人を乗せて運ぶ。そしてさらには、当時、食料や水が不足するだけではなく、燃料、そして多くの犠牲者が出ましたが、御遺体の搬送など、多くのトラックが全国から東北に集結をする。そしてさらに、夜中に体調を崩した人、たった一台のタクシーが残っていた町は、夜中にそのタクシーが避難所に来てくださって、病状が悪化した人を運んでくださる。
日常から私たちは、交通というのは何だか空気のように、いつも電車が走っているじゃないか、そしてバスも走っているじゃないかと思われがちなんですが、非常時になったときには、本当に一台のバス、タクシー、そして、当時、鉄道も全部流され、また、とまってしまうという状況の中で、これは私自身の体験ですが、岩手県の花巻から遠野を抜けまして釜石までの鉄道路線が復旧したとき、どれほどうれしかったか。
ちょうどその遠野がボランティアの基地になっておりましたけれども、鉄道を使って多くのボランティアの人たちを運ぶこともできました。また、被災地に親戚がいる方々が、その御親戚が、多くのリュックに荷物を抱えて、その花巻から釜石に抜ける鉄道で、たくさんの人たちが避難所を目がけて人と物を運び、移動されていた。
私は、そういう意味でも、この交通というのは、命や、そして非常時にはなくてはならない。また、今回、大島で大きな災害がございました。離島航路も経営状態が非常に苦しいところがたくさんありますけれども、一隻の船が、災害時、また多くの人たちの日常を支えている。ここに、もちろん事業者が主体的に経営を安定していただかなければならないわけですが、それだけでは立ち行かない状況の中で、国や地方自治体そして住民までもがどういう役割を果たしていくのか、それを整理したのが今回の交通政策基本法であり、私は、社会を支える土台をつくる法案だと思っております。
さて、そんな中で、この法案自身は、思い起こせばボトムアップの法案でした。十一年前になります。この法案の必要性、現場で働く労働者の方々からまず声が上がったんです。フランスなどではこういう法律があると。そして、さらに声が大きかったのが障害者の皆さんです。障害をお持ちの皆さんも、移動弱者として、いろいろなところに行きたい、旅もしたい、そんな中で交通体系をどうしていくのかというようなボトムアップで、十一年前に初めて民主党と社民党で、交通基本法と名前は異なりますけれども、国会提出。その後、何回か国会提出をいたしましたが、残念ながら廃案。
そして、政権交代が起こり、私たち民主、社民、国民新党で政権を担わせていただき、私は国土交通副大臣につかせていただき、先ほどの三日月委員が政務官として、この交通基本法の担当を担わせていただくことになりました。
そのときに、国交省を挙げてやろうということで、一回目の検討会では、単に運輸関係だけではなく、まちづくりと交通は一体化だろうということで、建設関係も含めて省を挙げての検討になりました。
そのとき、一つの合い言葉、それぞれ、ここにいる交通行政などに携わる者が、自分が八十歳になったときにどんな町に住みたいか、自分が八十歳になったときに困りたくない、そのために交通はどうあるべきかということを自分の問題に引きつけてこの法案をつくろうじゃないかというようなことを合い言葉に検討会を進め、そして今日に至っております。
この公共交通、東日本大震災という苦しみも乗り越えて、与野党また政権がかわっても必要である。そして、さらには、それだけ公共交通が今危機に瀕しているのではないかという危機感も共有しながら、政権を超え、そして党派を超え、今日の審議に至っていると考えております。
そこで、今、大臣として本当に御尽力をいただきました太田大臣、どのような政策効果があるのか、先ほどからお話をいただきました。改めてお聞きしたいことと、そしてさらに、これから、関係の法律も微調整、または、この基本法ができたことでさらによいものにブラッシュアップしていただかなければいけないと思います。この点もぜひ、この法案が成立いたしましたら、速やかに関係する法律の点検をお願いしたいと思います。そして、財政上の措置もお願いしたいと思いますが、この点についてのまず御決意をお聞かせください。
○太田国務大臣 非常に人間の営みの原点的なお話だったと思います。また、一つの法律を生み出すまでにいろいろな方が尽力をいただいて、きょう最終的な審議が行われるまでに至ったということは、大変、多くの方に感謝を申し上げたいと思います。
人という字は、人と人がいて人になる。そして、東洋思想では人間をジンカンと読みまして、人と人との間というのが大事だというのが東洋思想の考え方であり、そして、人間と自然との間の一体化というものを不二と捉えていくというのが東洋思想であろうというふうに思います。
私は、人口が減少する中で、いわゆる過疎と言われる、そして小さな集落というところ、そこでコンパクトシティーと同じ言葉を使っても切り捨てていくような考え方がありますが、私は全くそういう考え方はとっておりません。人間は、その土地の中の文化と伝統を呼吸しながら存在する生き物であると私は思っておりまして、そうした人たちが、危機のとき、大変なとき、そしてまた人との交流があるということが、先ほどの災害時のお話のように、人と会う瞬間の喜びというものが、交流があるということがいかに大事か。心が通い合う交通、そして人がまじり合う、まさに交通というものであろうというふうに思っています。
広範にわたりますが、財政的なことも必要でしょうし、公共交通ということについて、本当に経済でうまくいかないというようなことで、もう一遍どういうふうにこれを再建しようかと、さまざまなことが、ある意味では被災地は今、モデルをつくるというような意味で行われているというふうに私は思いますけれども、財政的な面も含めて、また、そこでの交通というものの新しい形というものも、富山等でのLRTというのもありますし、鉄道が走るということがどんなにうれしいかとともに、BRTというような新しい試みがあったり、いろいろなことがあります。
新しい技術革新も踏まえて、より一層、人が住んでいるという上で、本当に心が通い合っていくという基盤づくりというものをしていかなくてはならないと強く決意をしているところでございます。
○辻元委員 今、被災地のお話もございましたけれども、交通というのは地域によって特徴がございます。
私は、ことしの夏に、全国の交通がどうなっているのか勉強し直したい、かつ、この交通政策基本法の成立に向けてのキャンペーンも張りたいという思いで、九州、四国、中国、中部、関西、関東、北海道など、現場の、特に働く労働者の皆さんと意見交換をするために、この夏はさまざまな地域に赴きました。
そうしますと、地域によりましては、バスしかないとか、それから、先ほど申し上げました、船が非常に役立っているとか。ですから、地域地域の、先ほどから出ております地方公共団体の果たす役割というのはとても大事になってくる。これが一点。
それともう一つ、これから国交省でさまざまな法律の見直しなどをやっていただく際に、利用者目線というのをぜひ大事にしていただきたいと考えております。どうしても事業者からの目線で今までは交通政策がつくられてきましたが、利用者の目線に立つ、これが非常に大事なポイントだと思っております。
そこでお聞きしたいんですけれども、一つは、地方公共団体が重要な役割をするということで、今、地方でも条例が少しずつ、この法律を待たずして成立しているところがございます。先日は、私、奈良県が交通基本条例をおつくりになりまして、知事と一緒にキャンペーンのシンポジウムなどに呼ばれまして、行ってまいりました。
これから国交省として、この法律をつくるだけじゃなく、これを地方にキャンペーンを張っていく、そしてどんどん条例もつくっていただく、そんな先頭に立っていただきたいと思います。
今、ほかにどこか条例ができているところがあるのか。それからさらに、利用者目線ということで申し上げれば、基本計画が重要になってくると思いますが、この基本計画の中に利用者の意見をどのように入れていこうとお考えか、お聞かせください。
○西脇政府参考人 お答えいたします。
まず、条例の制定の件でございますけれども、現在、交通関係条例の制定状況につきましては、市で申し上げますと、新潟、金沢、高松、福岡、熊本市ということを我々は承知しております。県につきましては、今御指摘の奈良県が制定されていると聞いております。
これらの条例につきましては、中身が、公共交通の利用促進とか維持充実によりまして快適で人と環境に優しい都市交通の実現などを目的としておりまして、例えば自治体とか事業者、市民などの責務を定めるとか、利用促進計画の策定などの状況になっております。
我々は、やはりこうした先進的な事例というのは非常に重要だと思っておりますし、ちなみに、私どもの審議会で今、新しい地域公共交通の枠組みについて検討しておりますけれども、先日も奈良県知事にお越しいただきまして、その取り組みの状況について意見交換をさせていただいたところでございまして、そういうものを政策にきちっと盛り込んでいくというのが重要だと思っております。
それからもう一点、基本計画の策定に当たりまして、利用者の声をどのように取り入れるのかというところにつきましては、まず、条文の中で、十五条で基本計画の策定手続について定めておりますけれども、その中で、あらかじめ、計画の趣旨、内容その他の必要な事項を公表した上で、広く国民等の意見を求めるということでございますので、まずこれで全般的に意見を聞くということになろうかと思います。
もう一つ、計画を策定するときには、あらかじめ、交通政策審議会と社会資本整備審議会の意見を聞くことになっておりまして、この審議会の場でも、どういう形でそうした声を取り入れていくのかというようなことにつきましても、なるべく幅広く意見が反映できるような取り組みをしたいということで、検討を進めてまいりたいというふうに思っております。
○辻元委員 地域地域で特徴を生かした条例、これから全国、ぜひ、お聞きの国土交通委員の議員の皆さんも、御自身の御地元で交通基本条例制定に向けて御努力をいただきたいなともお願い申し上げたいと思います。
そんな中で、私は、ちょうど二年ほど前の三月九日に、国会で交通基本法案について質問をしたんですね。そのとき、福岡市の事例を紹介させていただいたんです。
福岡では、福岡の都市づくりと交通を考える会というのをつくりまして、商業者、交通事業者、消費者、商店街、さまざまな角度で話せる人たちに入っていただいて、交通とまちづくりを議論する場を持ち、条例制定に向けての動きをつくっていたことを紹介させていただきました。
ですから、私は、ずっと申し上げているんですけれども、私たちが法律を成立させると、これは私たちがつくった商品と言ったら変なんですけれども、だと思うんです。これが売れなきゃいけません。つくって、ああ、終わりやじゃなくて、つくったときはスタートだと思うんですね。これでどう日本を変えていくか。ですから、ぜひ国交省を挙げまして、法律が成立いたしましても、地域地域で私たちが議論している精神がしっかり生かされるように、この商品を使っていただくところまで御努力をお願いしたいと思います。
さて、そんな中で、利用者の話が出ましたが、もう一つ、ここには現場の声をどう入れていくか。その中で、閣法の六条、国、地方公共団体、交通関連事業者、運輸事業その他交通に関する事業を行う者、交通施設の管理を行う者、住民その他の関係者が連携し、協働しつつ、行わなければならない。
この「その他の関係者」なんですが、私はぜひ、その他の関係者、今、まちづくりと交通を一体化で取り組んでいる地域のNPO。それから、先日、高速ツアーバスの大きな事故がございました。この後、国交省でも、バスのあり方検討会で、ことしの夏に新しい乗り合い制度に変えましたけれども、そのときも、現場で働く運転士の方々や、労働現場の方々にも入っていただいて議論をしました。政府のいろいろな審議会、官邸の会を見ても、例えば連合の御代表とか、現場で働いている人、そしてさらには、私は、新しく生まれてきている市民活動などをやるNPOなども、ぜひ、地域地域の協議会のようなものができればそこに入っていただくようにした方がいいものができるのではないかと思っておりまして、国交省としても、そのような観点から、それぞれの地域の皆さんと接していただきたいと思うんです。
この「その他の関係者」というところには、そういう労働者やそれからNPOも入るという理解でよろしいでしょうか。
○西脇政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、本法案の六条におきましては、国と地方と関連事業者等とともに、住民その他の関係者が連携し、協働するということの重要性をうたっております。
まず、労働組合について御指摘ございましたけれども、例えば、地域の公共交通の現場で、利用者の方のニーズとか、そのルート周辺で施設がどうなっているかというようなことに最も精通されているのは運転手の方だというふうに聞きます。
そのため、地域の公共交通の協議会などでも、運転手の方をメンバーにして、実情に合った計画づくりというようなこともやっておると聞いておりますし、NPOなんかにつきましても、やはり、例えば公共交通の利用マップをつくるとか、そういういろいろな団体、例えば福祉団体なんかもそういう計画づくりに非常に大きな役割を果たしていると聞いておりますので、この六条におきます「その他の関係者」につきましても、そうした方々が当然含まれるというふうに考えております。
○辻元委員 今御答弁にもありましたように、例えばバスの運転士の皆さんや、それから実際に鉄道の改札口でいらっしゃる方とか、利用者のニーズというのは、現場で日ごろ利用者に接している方々が一番よく御存じなんですね。ですから、その視点をしっかりと入れていく、そして、そういう人たちの声を酌み上げるために、地域地域の協議会にも入ってもらうということもとても大事だと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
さて、そんな中で、先ほども三日月委員の中にも出ました人材の育成、ここが一つのポイントになってくるかと思います。
全国を回りまして、どこに参りましても、例えばバスの運転士さんが足りないとか、離島航路も厳しい状態、タクシーは先日法案も成立をいたしましていろいろ改善も進んでいくかと思いますが、さまざまな現場で社会の基盤を支える、その支え手、担い手、私、これはこの前ちょっと厚労省の人と議論していて申し上げたんですが、医療崩壊というのがあります。医療は崩壊してもらったら困るということで、医療従事者をどのように育成していくか、国挙げて医療崩壊をとめよう。交通崩壊も同じなんです。
例えば病院に行こうと思っても、バスが走っていなかったら行けない場合もあるわけで、交通の崩壊というのは、これは社会の崩壊につながるという危機感、同等の危機感を持っていただいて、この人材育成、国交省を中心に、先ほど検討会を立ち上げるということでしたけれども、ぜひお願いしたいと思います。
特に、例えば、例ですけれども、民営バスの運転士、年間の総労働時間二千五百三十二時間、その他の産業の平均は二千百八十四時間。長時間で、不規則で、低賃金。特にお正月もありません。災害が起こっても、福島のあの原発事故のときも、バスの運転士さんは、防護服もなく、多くの避難民の方々を運んだんです。
しかし、日ごろからそういう人材を育成しておかないと、いざというときはもちろんのこと、社会が崩壊していくことにつながるという危機感を持って、先ほどの検討会を早急に立ち上げていただき、できましたら、そこに厚労省も入れていただきたいと思います。長時間労働の問題など労働条件、これは事故につながりますので、その点も含めて、厚労省も入れて御検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○田端政府参考人 お答えいたします。
先生御指摘のとおり、バス事業、やはり運転者の要員不足が各地で問題になっておりまして、特に地方の乗り合いバス事業者で著しくなっております。
バス協会でもこの原因の分析とか把握をやってきておりますが、やはり経営環境が非常に厳しい、あるいは労働時間が長いという御指摘の点、あるいは高齢化が進んでいる、こういうことが非常に運転者の確保を困難としている要因と分析もしております。
そこの状況を受けまして、国交省で、自動車局が事務局となりまして、学識の経験者、あるいはバスの事業者、労働組合、今御指摘がありました厚生労働省ももちろん入っていただくということで準備を進めておりますが、専門的に検討する場を早急に設けたいと考えております。
この中で、運転者の確保また育成に係る課題、あるいは、そういう先進事例でいい取り組みを他の分野でもやっているところもございますので、その上で、効果的な対策を取りまとめて、早急に実施に移していきたいと思っております。
○辻元委員 今、バスの点を特に強調して言っていただきましたけれども、海員も含めて、あらゆる公共交通について、これは「人材の育成」と法案にはなっているんですが、もう育成を通り越して確保という言葉が適切な状況ではないかと思いますので、この点はしっかりとやっていただきたいと思います。
もう一点、私たちは、どうしても交通というと人だけイメージしがちなんですが、物流も大事です。ですから、この法案では、人と物、両方であるということを再度確認し、その上で、特に災害時については、三条二項、二十二条で取り上げていただいているんですが、ここでは「避難のための移動」という言葉しか入ってございません。
しかし、この条文の中には、災害時の救援等のための物資の輸送、これはもう命綱なんです、ですから、「避難のための移動」という言葉しか入っておりませんけれども、物資の輸送も含めて、この条文ではしっかりと対応していくということを確認させていただきたいと思います。
○高木副大臣 人の流れ、あわせて物流というのは非常に大事な観点でありますし、あわせて、先ほど委員からも御披露ございましたけれども、災害時、東日本大震災のときにも、いろいろな形で救援物資が届けられたわけでございまして、そうしたことは非常に大事な視点だというふうに思っております。
そうした中で、本法案におきましては、避難のみならず、大規模災害が発生した場合における交通の機能の低下の抑制とその迅速な回復を図る旨を規定しております。その中で、災害時における緊急物資輸送のため、これからしっかりと国交省として関係省庁とも連携しながら万全を期していきたいというふうに考えているところでございます。
○辻元委員 次に、安全の問題です。
七条に、「交通の安全の確保に関する施策との十分な連携が確保されなければならない。」これは先ほども出ました交通安全対策基本法を念頭に置いていらっしゃると思うんですが、最近、事故などの対策だけではなく、テロ対策ということも重要になってきております。これは保安という観点が必要なんです。
特に、あってはならぬことですが、テロに狙われるのが、残念ながら航空機だけではなく、地下鉄とか駅とか、世界じゅうで被害に遭っているところもございます。ですから、この安全の確保という中に、単に交通安全とか事故だけではなくて、テロ対策も含めた保安についても、しっかり公共交通を守るという観点で、国として取り組まなきゃいけないと思いますが、いかがでしょうか。
○高木副大臣 本法案七条におきまして「交通の安全の確保」ということがうたわれておりますけれども、この中に、テロ対策の実施による利用者、交通施設等の安全確保が含まれている、そのように認識をいたしております。
○辻元委員 含まれているということで確認させていただきました。この連携は、警察その他としっかりとっていただくということが重要だと思っています。
さて、本法案では、交通ということなんですが、歩きやすいまちづくり、そしてさらには、近所は自転車で行けるかな、体にも健康にもよろしいし。そして、公共交通などを使ってさまざまな活動ができる、そういうまちづくり全体、自転車の果たす役割も見直しがされております。
最後に大臣に、このまちづくりと交通の連携の関係、そしてさらには、観光振興という側面から、これは富山の市長さんにもお越しいただいたようですが、公共交通を充実させるということは、多くの人たちが外からも来てくださる。私もフランスのストラスブールなど視察にも参りましたけれども、観光客がふえているんです。そして商業活動も盛んになるんです。ですから、本法案は、人と物の移動が活力ある町、観光、そして経済の活性化にもつながると思います。その点についての大臣の御見解を伺いたいと思います。
○太田国務大臣 全体的なまちづくり、国土全体にとっても交通は大事なんですけれども、まちづくりということの中に、歩いて暮らせるまちづくりであるとか、車を制限して、今御指摘のように、自転車を借りて、また置いていけるというような、そういう組み合わせをしていくということは非常に有効だというふうに思います。相当、高齢社会が来る中で、そうしたことを工夫して、町に活性化と潤いというものがあってというまちづくりというもの、交通というものを組み合わせてやっていく必要があると思います。
観光は、そこに魅力があれば当然観光客が来るということだと思いますけれども、私、沖縄へ行ったり北海道へ行ったり、いろいろなところへ行ったりするんですが、どうも今、日本の観光は、発信しようという意欲は出てきたと思いますが、どうも北海道に行きましても、帯広はとか、北見はとか、函館はとか、小樽はと、こう言って、私は言うんですが、北海道はということで連携をとっていかなくてはだめなんだということを言っているわけです。点から線へ、線から面へ展開するような。中部の方は、伊勢、中部国際空港からずっと上がって、最後に竜の頭になる能登半島のところまで、昇龍道プロジェクトというのがあるわけですが、そういうように点から線、線から面へ展開するという、外国の方も来ていただく、そうした観光というものの観点からも、広い意味で、交通というものは極めて重要だというふうに思って、努力をしたいと思います。
○辻元委員 最後に申し上げたいと思います。
この法案が成立いたしまして、私は先ほど新しいスタートだと申し上げました。法案は終着点ではございません。この法案、基本法ができて、日本が変わったなというように私も努力してまいりたいと思います。
ありがとうございました。終わります。
○梶山委員長 次に、西岡新君。
○西岡委員 日本維新の会の西岡新でございます。
本日は、国土交通委員会において質問の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。
きょうは、交通政策基本法ということでありますので、幾つかの質問をさせていただきたいと思います。
質問に当たりまして、まず、今回の交通政策基本法の提出については、我が党の中でも、そもそも今ごろ基本法なのかというような意見もありました。もともとは民主党の皆さんが熱心に取り組んでおられまして、平成十四年、平成十八年、そして昨年と法案提出をしてきたわけでありますけれども、昨年は衆議院の解散ということもございまして審査未了ということでありましたが、改めまして、その前の二回においても、当時は自公政権下にあったというふうに思っております。そういった中にあって、当時、自公政権下では余り積極的ではなかったように感じておりますけれども、この基本法の提出に当たって、どのような経緯があって今回の法案提出に至ったのか、その背景についてまずお聞かせいただきたいと思います。
○土井大臣政務官 近年は、人口の減少、少子高齢化が加速度的に進展をいたしておりまして、特に地方の運輸事業の経営悪化が深刻となっております。また、過疎化が進む地域の交通をどのように確保することが大切か、待ったなしの課題だというふうに認識をいたしております。
また、国際的な競争がますます激しくなる中で、国際的な人、物のネットワークを充実させていくことが喫緊の課題と承知をいたしております。
さらに、首都圏の直下、南海トラフなど、近い将来、大地震に見舞われる可能性が高い中、東日本大震災の経験を踏まえ、巨大災害への備えを万全なものとすることも緊急を要するものと考えております。
その上で、今回、交通政策基本法案は、このような待ったなしの課題に速やかに対処するための交通に関する施策の策定、実施に関する枠組みを構築するため、今般、国会に提出をするものでございます。
○西岡委員 ありがとうございます。
我が日本維新の会も、やはり基本法は大事だということで、賛成の立場でありまして、これは与野党問わずに取り組んでいきたいというふうに思っております。
今回の交通政策基本法では、徒歩、自転車、自動車、鉄道車両、船舶、航空機その他の手段による交通の適切な役割分担と効率的な連携とありますが、都市交通においては、先ほど辻元委員の方からも話がありましたが、やはり自転車というのは一つのキーワードでありまして、国交省が進めるコンパクトシティーとかモーダルシフトのような、提唱している国交省の考えにも一致するのではないかというふうに思っております。
既にもうヨーロッパの各都市では、自転車を活用した交通施策が常識となっておりますし、我が国では、今は自転車走行に対するルールがまだ徹底されていないだとか、自転車の交通事故がまだまだ多いというような現状もありますが、この委員会でも発言をさせていただいておりますけれども、私どもの地元の愛媛では、比較的自転車を活用した地域振興というのは積極的に行っておりまして、例えばことしは、自転車のヘルメットの着用の励行だとか、そういった条例を制定しておったり、先般、参考人の秋山参考人から昨日お話がありました自転車専用レーンについては、既に、ブルーラインと言われる、青い二十センチの幅のラインを引いて、自転車の交通の安全と自動車運転ドライバーへの注意喚起を行っているというような状態でございます。そういった施策によって自転車の利用者がふえているというのが実態でございます。
また、この基本法に盛り込まれている観光面においても、愛媛マルゴト自転車道というような位置づけで、中上級者向け、そしてファミリー向けに県内で二十六のコースを設定しておりまして、これは総延長約一千三百キロに及ぶコースであります。そういったコースを設定し、先般は、そのコースの一つである、愛媛と広島をつなぐ本四架橋の一つでありますしまなみ海道で、国交省そして本四会社の御協力を得て、国内で初の、高速道路の車道を閉鎖してサイクリング大会を行うというような試みをさせていただきました。
これは本当に感謝したいと思っておりますし、来年は本大会ということで一万人規模でやる予定でございますので、こういった自転車の振興もあるんだろうというふうに思っております。
自転車については、言うまでもなく、渋滞の緩和を初め、健康でありますので医療費の削減や、交通事故の激減というのもありますし、CO2を出さないということで環境への貢献ということで、数多くのメリットがあるというふうに思っております。
今、そういったメリットも考慮しながら、超党派で、自転車活用推進議員連盟というところで、新たに自転車文化の提言をしていこうということで取り組んでおりまして、これは、平成二十四年十一月に政府が示した、安全で快適な自転車利用環境創出ガイドラインに基づいて、自転車ネットワーク路線の構築も含めて、自転車を安全に、快適に利用できる環境整備を進めることによって自転車の役割を大きくしていこうというようなことであります。
ですから、政治家の皆さんも、選挙活動だけに自転車を使うのではなくて、ふだんからもぜひ使っていただきたいというふうに思っておりますし、国交省としても、この自転車を交通手段として活用するに当たって、基本法の制定でどのように施策を今後講じていくのか、お考えをお聞かせいただければと思います。
○西脇政府参考人 お答えいたします。
市民にとって身近な交通手段であります自転車、まさに委員御指摘のように、非常にたくさんの効果というかメリットを持っておりまして、当然、渋滞緩和もございますし、今御指摘のありました環境面、それから健康増進を通じて医療費の削減につながるかもしれないということと、あと、やはりサイクリングを趣味にされる方が非常に多くなっておりまして、今お話がありましたしまなみ海道というのは、まさにサイクリストにとって非常に憧れのところだというふうな話も聞いております。
そういうようなこともございまして、今回、法案の中で、自転車というものを交通手段の一つとしてまず明確に位置づけるということで、自転車を有効に活用して、総合的な交通体系の整備を図るというのを五条とそれから二十四条で書いております。
それから、もう一つは、安全対策ということも非常に重要でございまして、これは交通安全対策基本法と相まちまして、そういう安全を確保したいというふうに思っておりますが、課題もいろいろ多うございます。
今御指摘ございました、平成二十四年十一月に、国土交通省として警察庁と連携いたしまして、各地域においての自転車ネットワーク計画の作成とか、その整備とか、ルールの徹底が進められるようなガイドラインを策定いたしました。
ただ、これはガイドラインだけではなくて、空間的な、まさに専用レーンの整備でございますとか、あとそれから、何といってもネットワーク化することが非常に重要だということもございますので、そういうネットワーク化というようなことも意識しながら、空間の整備、それから関係省庁と一緒になりましたソフト面の対策ということで、自転車が非常に重要な交通手段だということを認識してこの施策の充実に努めてまいりたいというふうに思っております。
○西岡委員 ありがとうございます。
自転車の活用については、国は割合、私が言うのもなんですけれども、熱心に行っていただいておりまして、地方との温度差というのが少しあるのかなというような感じもありますが、二〇二〇年には東京オリンピックもございますので、シェアサイクルのようなものを通じて、自転車で東京、首都圏を観光していただくような仕組みなどもぜひ検討していただきたいというふうに思います。
続きまして、地域交通の維持について御質問させていただきたいと思います。
昨日の委員会からお聞きしておりますと、地域交通の維持については、地方選出の議員はもとより、多くの議員が異論のないところだというふうに思っております。今回、この基本法でもいろいろ配慮していただいておりまして、私も選挙区が山間部と島嶼部というのがありまして、やはりそこでは少子高齢化や過疎化がかなり進んでいるという実態がございます。
そういった中にあって、日常生活に必要不可欠な交通手段の確保というのは重要な課題であるというふうに認識しておりまして、高齢者や学生の通院や通学、そして生活バスや離島航路については、やはり目をそらさずにしっかりと取り組んでいかなければいけないというふうに思っております。
現場の実情を申し上げますと、生活バスについては、従来の補助要件というのがなかなか地域の実情と合っていないというところもございまして、これは距離要件が撤廃されても、輸送量要件、私どもの四国ブロックでは一日約十人の輸送量でありますけれども、補助を受けるには一日十五人の輸送量が必要だということもあり、なかなか現状とは合致していないというような印象もございますし、また離島航路については、先ほど来よりもお話がございましたが、やはり経営が厳しい。そして、原油の高騰もあってなかなか大変な状況であります。また、船はトラックよりもまだ燃料が経費に占める割合が非常に高い、三割近くあるということでございますので、そういったことも配慮しながら、この厳しい経営状態の改善というのも必要ではないかと思っております。
今回の基本法によって、国や地方自治体の補助に頼っている公共交通機関への公的負担のあり方がどのように変わってくるのか、お聞かせいただければと思います。
○西脇政府参考人 お答えいたします。
まず、地域の公共交通の現状は、今委員御指摘のとおりで、全国的にも厳しいわけでございますけれども、とりわけ、そうした厳しい状況が顕著な過疎地域におきましては、例示がございました高齢者の通院とか子供さんの通学等のための公共交通、足の確保というのが非常に重要だというふうに認識しております。
まず、現状を申し上げますと、私ども、地域公共交通確保維持改善事業によりまして、当然、過疎地域も対象にして、一定の地方バス路線、それから離島航路、航空路線の維持に対しまして、運行費の欠損の二分の一を補助するなどの財政的支援を行っております。特に、今、トラックよりも燃料費がということがございましたけれども、非常に厳しい離島につきましては支援をしているところでございます。
今回、法案の中で、二条の基本的認識を受けまして、十六条で、国は国民が日常生活を営むに当たっての必要不可欠な交通手段の確保をするために必要な施策を講ずるということを規定しております。
こうした規定を受けまして、現在、地域の関係者間の役割分担と合意のもとで、望ましい地域公共交通のネットワークを形成する新たな枠組みの構築について検討を進めておるところでございます。
今、いろいろ補助の要件等がございましたけれども、本当に地域にとって望ましいネットワークはどうあるべきかというようなことも、実効力のある措置とあわせまして検討中でございまして、この検討の結果に基づきまして新たな枠組みを提示したいというふうに思っております。
いずれにしても、法案の考え方を受け、計画も受け、新しい制度構築にも積極的に取り組んでまいりたいというふうに考えております。
○西岡委員 地域の公共交通機関の経営者の方々に聞きますと、いつもやはり財源を確保してほしいというのが一番の要望であります。
離島については、やはり離島活性化等の交付金の中で、生活交通においては、運賃の低廉化や料金軽減に係る支援等を交付金の対象事業として認めていただきたいというような考えもございます。
今回の基本法の中で、十三条に、「政府は、交通に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。」というように書いてありますけれども、これは、先ほどお話があったように、新たな枠組み、新たな財源の手当てというのは期待できるものなんでしょうか。
○西脇政府参考人 十三条の例示がございまして、財政上の措置を講ずるよう努めるということになっておりますが、我々といたしましては、先ほどちょっと大臣の答弁にもありましたけれども、まず、施策について、ある程度説得力があり、なおかつ、その効果というようなものをきちっと説明できるような制度的枠組みを示すということと、今まで、ともすれば事業者中心の支援というようなこともございましたけれども、地域の方々、あと、自治体だけじゃなくて、事業者それから住民の方も含めて、みんなで地域の公共交通をどうしていこうか、そういう合意のもとで友好的な施策が打ち出せれば、財政当局にもそれなりの理解を得られるんじゃないかなと思っております。ただ、それはやはり制度との兼ね合いかと思っております。
ただ、我々としては、今離島の交付金の例がございましたけれども、今までどちらかというとハード整備中心な離島対策について、ああいうソフトの交付金ができたというのもやはり一つの時代の流れだと思っておりますので、そういう仕組みの提示とあわせて、できる限りの財源の確保には努めてまいりたいというふうに思っております。
○西岡委員 ありがとうございます。
十三条を読むと、なかなか一般の人は、何か新しいものがあるんじゃないかというような率直な印象があるというふうな危惧もしておりますけれども、やはりそういったことも前向きに取り組んでいかなければならないというふうに思っております。
今回の基本法の目的は、「交通に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展を図ることを目的とする。」ということでありまして、第二条から七条で、交通機能の確保及び向上、災害による交通機能の低下の抑制及び迅速な回復、環境負荷の低減、適切な役割分担と連携、交通の安全確保など、その理念が網羅されていると思いますけれども、私は、この方向性というものが明確に打ち出されていないのではないかという印象を持っておりまして、何を優先して取り組んで整備していくのか、そして、なぜそれなのかというのが、やはり基本法ですから、一定の方向性を打ち出す必要があるのではないかというふうに思っております。
例えば、少し触れられておりますが、弱者優先だとか、公共性の優先だとか、持続可能性であるとか、あるいは国防上の必要性というのもあるのかもしれません。そういった哲学を示して取り組む優先順位をつけるべきではないかというふうに思っておりますけれども、その点についての国交省のお考えをお聞かせいただければと思います。
○西脇政府参考人 お答えいたします。
まず、これは基本法ということで、今委員から御指摘がありましたように、一条の目的以下、二条の基本的認識、それからそれ以下の理念ということでございます。それで、十五条に計画の規定がございますけれども、十六条以下で具体的な施策についての基本的な考え方を整理しておりまして、法律でございますので、ある程度普遍的といいますか、理念のところを整理するというのは、余り揺らがない、一定の期間有効なような考え方の整理をしております。
まず、私どもとしては、この法律の条項に基づいた計画というのは、やはり一定の年限で見直していくものだと思っておりますので、その中で、その時々の情勢を踏まえた優先度とかプライオリティーはつけたいというふうには思っております。
ただ、法案の中でも、例えば、今、交通弱者の話がございましたけれども、十七条に、そういう高齢者、障害者、そこに妊産婦とか、あと乳幼児を伴う者という方を入れておりまして、そういうような例示を見ていただければ、ある程度そういうところは重視しているな、まさに妊産婦とか乳幼児を伴うと入れているのは少子化時代に対するということで、条文の中にもそれなりの時代認識、問題意識は入れたつもりでございますが、より的確に情勢に対応するという意味では、計画できちっと対応させていただければというふうに思っております。
○西岡委員 済みません、それは、基本計画で明示をする、明確にするということでございますか。
○西脇政府参考人 明示というか、基本計画の中で優先順位がある程度出てくるような形で計画策定に努めたいという意味で申し上げたつもりでございます。
○西岡委員 わかりました。
私が申し上げたいのは、やはり優先順位をつけないと、限られた財源をどこから使うのかという問題に行き着くんだと思うんです。確かに、基本計画に一定の方向性を書き込んで、あるいは事業計画などでそれを判断するのかもしれませんが、このままでは、基本法に書かれているから、いいことをしているんだからということで、予算の分捕り合戦みたいなことが起こるということは避けなければならないと思っておりますし、財政規律を保つ上でも必要だというふうに思っております。
今回の法律は、縦割り行政に横串を刺していくというような目的もあろうかと思いますけれども、その点についてはどのようにお考えでございましょうか。
○西脇政府参考人 先ほど大臣から答弁申し上げましたけれども、今まで交通に関する総合的、戦略的な法的枠組み、計画というのはなかったということで、交通政策の中のプライオリティーもさることながら、まず、そういう交通について国なり地方公共団体の責務を定めておりますので、そういうところに施策を打っていくということについてはまず御理解をいただくということで、その上で、先生おっしゃるように、確かに財政は非常に厳しいわけで、この法律があることで何とか交通についての施策の充実に努めたいと思っておりますけれども、まさに、先ほど言いました基本計画につきましては閣議決定するということで、財政当局等もその中に入るわけでございますので、我々としては、限られた財源なので、なるべく有効に配分し使いたいというふうに思っておりますので、そういう意味では、めり張りのついた施策の運営に努めてまいりたいというふうに思っております。
○西岡委員 もう一つは、やはり基本計画作成というのは非常に重要なことでありますが、次の質問は飛ばさせていただいて、基本計画の作成に当たって、「広く国民等の意見を求めなければならない。」とありますが、これはどのような形で求めていくのかということと、また、我々国会の意思を反映する機会はこの基本計画の作成に当たってはあるのかどうか、お伺いしたいと思います。
○西脇政府参考人 お答えいたします。
本法案の第十五条の五項で、交通政策基本計画を定めようとするときには、閣議決定に先立ちまして、あらかじめ、その趣旨、内容その他の必要な事項を公表した上で、広く国民等の意見を求めるということでございます。
これが一番幅広く意見を聞くということなので、この機会においては、ほかのパブリックコメント制度とも同じですが、あらゆるところから意見をお伺いするということになると思います。
それから、先ほど申し上げました、この策定手続の中で審議会もございますので、それは審議会の意見を聞くということでございます。
それからもう一つ、これは基本計画の策定とか変更に際しての規定でございますけれども、遅滞なく国会に報告するということになっておりますし、それからもう一つ、十四条で、毎年、国会に、交通の動向、それから政府が交通に関して講じた施策に関する報告と、あわせて今後講じようとする施策に関する文書を作成するということになっておりまして、いろいろな機会に案を示す、それからできた計画、それから年次報告ということで、できる限り情報を開示させていただきますので、あらゆる機会にいろいろな方の意見を取り入れて、よりよいものにしたいというふうに考えております。
○西岡委員 わかりました。委員会とかで一般質疑の中で話をさせていただくということの理解でいいんですよね。
引き続きまして、イギリス、フランスの交通総合政策では、地方自治体にかなりの権限を与えている実態があります。特にイギリスでは、道路利用者課金、そして就業地駐車課税の権限を地方に与えて、ロンドンでは混雑課金と言われる一種の渋滞税みたいなものを導入して、交通混雑が三〇%改善されたというふうに効果が上がっているわけでございますが、我が国においても、基本計画の作成に当たっては、先ほど来よりお話がありましたとおり、地方分権の観点からの取り組みも重要であるというふうに思っております。
第九条で地方公共団体の責務について書かれておりますし、地方はどのようにかかわってくるのか、また、一律に国が基本計画を策定しても、地方の実情によって大きな違いがあって、それに合わない部分も出てくるかもしれないというふうに危惧しておりますけれども、私は、本来は、都道府県ごとや、あるいは整備局の管轄地域ごとに計画を出していくべきものなのかなというふうに思っておりますが、基本計画作成に当たって、都道府県との連携というのはどのようになっていくのか、お聞かせいただければと思います。
○西脇政府参考人 お答えいたします。
先ほど申し上げました第十五条で、基本計画を定めようとするときには広く国民の意見を求めるということでございまして、この際には、パブリックコメント制度において都道府県も当然そういう意見を募る対象となっておりますし、従来、その他のパブリックコメント制度の運用を見ておりましても、地方公共団体の方から積極的な意見が出ているということもございます。
それからもう一つは、先ほども答弁いたしましたけれども、交通政策審議会、社会資本整備審議会の意見を聞くということになっておりますので、その審議会における審議の場においても、審議の過程で有用だと思いますので、どのような形かということはこれからの検討でございますが、公共団体の意見を聞くということも十分検討してまいりたいと思っております。
いずれにしても、実は交通というのは、地域の方が主体的に取り組まないと、かなり地域とか状況によって抱えている課題が違うと思いますので、都道府県もさることながら、当然市町村も非常に重要な役割を果たしていると思いますので、我々は、逆に、先進的なところの計画の部分については積極的に国の計画に取り組みまして、また、基本計画をつくった場合は、逆に地方の方で、それをぜひ踏まえて積極的な計画策定とか施策運営に反映していただければという思いでございます。
○西岡委員 ありがとうございます。
私としては、地域間でいろいろ取り組み状況にも濃淡があると思いますので、やはり計画を都道府県で義務化をするようなことをした方がいいのではないかというふうに思ったわけでございますので、それについては地域の声をしっかりと連携していただきながらお酌み取りいただければと思います。
最後の質問でありますが、これから策定される基本計画は、非常に重要な問題であって、優先順位の問題、財源の問題、そういったものを考慮すると、国と地方との密接な連携というのは必要不可欠になってくると思われます。基本法の制定後の基本計画の策定、それの国によるフォローも含めて、大臣の御所見をお伺いできればと思います。
○太田国務大臣 この法案を成立させていただく、理念、哲学というものが出る、具体的に交通政策基本計画というもの、ここが非常に核になる、それが現実に各地域あるいは市町村におりていくときに、そこの具体的な、どうするかという、ここの知恵の発揮というものと、その知恵とそして財政ということが相まって初めてこれが前進するというふうに思います。
先ほど辻元先生のお話にもありましたが、まさに法案をつくって、基本計画をつくって、そのもとで、どう現場に行くかというところまで我々としてはしっかり見て、その一番最前線のところまで心を配って、フォローというよりは、バックアップしていかなくてはならないと強く思っているところです。
○西岡委員 ありがとうございました。
この交通総合政策というのは本当に重要なものであって、国家のグランドデザイン、そして交通のネットワーク、地域交通の維持や災害に対する対応とか、いろいろ本当に大変だと思いますけれども、ぜひ我々も一丸となって協力していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
これで私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○梶山委員長 次に、杉本かずみ君。
○杉本委員 みんなの党の杉本かずみであります。どうぞよろしくお願いします。
交通政策基本法案、今、先輩方を主体とする質疑を聞かせていただく中で、多くのキャリアの長い議員の方々が非常に思いを込めて、時に議員立法を試みられたりということの中で閣法が出てきて、審議をさせていただいて、そして一つの結論が出るということに大変敬意を表させていただきたく存じます。
大臣は、心が通う、あるいは人がまじり合う、これが交通だと言われました。そして、点から線に、そして面に、そして知恵と財政、こういう問題点、問題意識を拝聴しました。
常に庶民感覚でお伺いしたいなと思っているんですが、私、最近、地下鉄で通っているんです。地下鉄の階段を極力上がることにしておりますが、残念ながら、エスカレーターやエレベーターを使われる方が非常に多くて、幸い、すいていてありがたいんですけれども、非常に健康に実は徒歩がいい、そして、しかも階段は実は腹筋を使うのでいいなというふうに感じています。
徒歩は一つの交通手段でありますけれども、今回、二十四条に挙げられています徒歩、自転車、ここには書いていないですが自動二輪車、自動車、鉄道、船、航空機、こういった交通手段が実際あるわけでありますが、客観的に、あるいは冷静に考えてみると、一体どういう組み合わせが最適な組み合わせなんだろうかということをぜひ考えていく必要があると思います。
一方で、我が国がこれまで培ってきた、つくってきた、脈々と歴史を積み重ねて築いてきた我が国の交通網のこういうインフラがあるわけでありますから、その現状を踏まえつつ、やはりその理想型に近づけていくという意味から、ぜひ、こういった理想を追求するという意味でも、この交通政策基本法案が成立して、交通政策の基本計画が閣議決定、実行され、そしてまた、質疑の中でもありましたけれども、不断の見直しが行われるということを心からお願い申し上げたく存じます。
それでは、ちょっと個々に質問に入らせていただきますが、我が国において、国土の均衡ある発展とよく言われる言葉でございますが、この均衡ある発展と交通政策基本計画の関係をいかにお考えになっておられるか、お話をお願いいたします。
○太田国務大臣 昭和三十年代から、我が国の国土づくりについては、全総や新全総、あるいは四十年代後半の列島改造論、そして大平内閣の田園都市構想、いろいろなことがありました。しかし、一九九〇年代以降、こういう国土づくりということがなかなかなくて、その中には、国土の均衡ある発展とか国土軸ということが、あるいは多軸ということが言われたりしてきました。
私の意識の中には、二十一世紀、特に激変する災害もある、気候も変わってきている、大震災ということが懸念をされる、高齢化している、都市間競争は激しくなる、こういう中で国土づくりをどういうふうにしていくのか。それと全く同様に、同じ横にあります、あるいは一番大事な交通というものがどうあるべきかということを、二〇五〇年ごろを想定して、先ほど八十歳か九十歳になったときにという話がありましたが、二〇五〇年というのは大体そういうときだと思いますが、その中で想定して、交通とか国土づくり、まちづくりを考えていかなくてはならないと強く思っているところです。
その中に、国土の均衡ある発展ということがよく言われてきました。しかし、私は、これが人によって使う言葉が違って、東京と同じように均衡ある発展をということを考えていた時期は確かにあるんです。しかし、豊かさというものを享受しなくてはいけないが、その中で、やはり日本全体で豊かさを享受するとともに、国土が育んだ各地域の歴史とか伝統とか文化の多様性を強みとして最大限に生かしていく。そして、もう一段ステップアップした幸せ感とか豊かさというものを、そして高齢化が進みますから、生きてきてよかったなと言っていただけるような、そうした地域づくりというものをしていかなくてはならない。個性とか、コンパクト・プラス・ネットワークというような視点というのが、どうしてもかなり必要になるというふうに思っています。
そういう意味で、均衡ある発展というのは同じ金太郎あめ東京ではない。そういうことのためにも、国土づくりと交通というものを、全体的に理念を示すということが極めて重要になるということで、今回、この法律を出させていただいたという次第でございます。
○杉本委員 大変示唆深いお話を賜ったと思っております。
私も、決して、東京のような都市が各地域にできて、この後また議論させていただきますが、いわゆる人身事故が毎日絶えないような、何か、むしろ東京はハッピーではないのではないかというような思いもいたしますので、ぜひとも、その長所を生かした地域の発展、そのためにも、一番大事な交通というものを、さらに大臣の思いも込めて、計画をつくっていただきたいというふうに思っております。
二〇五〇年は私も九十、生きていられるかどうかわかりませんが……(発言する者あり)生きていそうやと。そうおっしゃっていただいて、喜んでいいのかわかりませんが、生きていて、もしLRTに乗れたときに、いやあ、あのとき大臣と質疑をさせていただいたという思い出を持っていられれば幸せだなと思っております。ありがとうございます。
次にまた、決して悪い意味ではなくて、いい意味で東京の発展を各地にばらまくという、大臣がおっしゃった、幸せ感とか豊かさみたいなのが地域に分散していくという意味から、あるいは今、東海、東南海の問題等、あるいは首都直下の問題で災害対策、まだ東日本は当然苦しんでいるわけでございますが、そういった意味からの災害対策等で、バックアップ都市機能とか、あるいは首都機能移転、首都機能分散、こういった議論もやはり九〇年代にはあったかと記憶しておりますし、私は引き続き、ある意味で適度な均衡ある発展というんですか、それ相応に大規模都市は栄えていただかなきゃいけないというふうに思っております。
こういった点において、交通政策基本計画はどのように勘案されることになるでしょうか、御教示賜りたいと思います。
○西脇政府参考人 お答えいたします。
首都機能移転につきましては、平成二年の国会等の移転に関する決議以来、一貫して国会主導の中で検討がなされておるというふうに認識しておりまして、国土交通省の役割といたしましては、議員立法でございます国会等の移転に関する法律と、超党派の国会等の移転に関する政党間両院協議会座長とりまとめというのがございますので、それに基づいて国会における検討に必要な協力を行ってまいりたい、これが首都機能移転に対する立場でございます。
一方、交通政策基本計画は、交通に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、基本方針とか講ずべき施策というものを定めることでございまして、首都機能移転については、交通以外の分野に関連いたします非常に横断的な課題でございますので、基本計画の策定過程で結論が得られるというものではないと考えておりますが、当然のことながら、首都機能移転に関する結論が得られて、その内容が明らかになった場合につきましては、基本計画においてもその内容をきちっと反映していくことが必要になってくるのではないかというふうに考えております。
○太田国務大臣 ちょっと問題提起だけさせていただきたいというふうに思うんですけれども、東京の一極集中ということに対して、これからも、人口減少してもそういうことがさらに続いていくということがあります。そこの首都機能移転といいますか、一極集中というものをどういうふうに考えるかということは、引き続き論議をしていかなくてはならない問題だと思います。
しかし、もう一方、今お話のありましたバックアップ都市機能ということについては、もう少しこれを、東日本大震災を経験した我々としては、例えば首都直下地震が起きた、立川あるいは相模原、大阪、バックアップ機能ということの内容は一体どういうことかというと、そちらに国会が移ったり、あるいは役所が移って指揮をとるという形にはならないと思います。やはり一番災害が起きたそのど真ん中のこの霞が関、このあたりというものを耐震化をしっかりして、どんなことがあってもここで指揮がとれるということをつくって、やはり災害のど真ん中で指揮をとっていくというものがなくてはならないと思います。
そういう意味では、バックアップ機能都市というもののあり方というのは、物資の問題とか、あるいは企業においてはBCPの問題とか、いろいろなことではありますが、もう一遍、バックアップ都市機能というものは何を目的にしてつくるのかということについてはぜひとも御議論をいただきたいというふうに、私は実は心の中で思っているところです。
○杉本委員 大臣の問題意識、ありがとうございます。
バックアップ都市機能、さらに当委員会でも議論をさせていただきたいと思いますが、一方で、やはり一極集中の問題、あるいは、今、首都機能移転という言葉は、今も議論をしていて何となく昔の言葉のような感じがしてきておりますので、むしろそのバックアップ都市機能的な考え方のもとに首都機能を少し分散していく、そういった考え方も、何かができた段階でその計画がということよりは、そういった考え方も頭の片隅に常々置いておいていただくというようなことをお願いしたいなと思っております。
次に、前々回の国会で、私が地元のことで引き合いに出させていただいた、高速道路ではなくて、一般道のミッシングリンクの具体例として、地元の県道予定の一宮春日井線についてちょっと言及したことがあります。
要は、道路が途中までできていてとまっていて、それで幅広道路がそこまででとまっちゃって、それこそ、この先通行どめよみたいな形で、その状態がずっと続いている。そういったところが、恐らく、全国津々浦々というか、各地にまだあるのではないかと思っています。
この後また議論があるかもしれませんが、社会資本整備重点計画というものと交通政策基本計画の関係なんですが、ある方は車の両輪という表現をされるかとも思いますが、この関係について、どのように位置づけたらいいかを確認させてください。
○西脇政府参考人 お答えいたします。
交通政策の推進に当たりましては、バスとか鉄道、航空などの、いわゆるソフトを含めた交通ネットワークの効率的な形成、維持でございますとか、運輸事業の健全な発展というのがございますが、一方で、それを支えております道路、空港などの交通インフラの整備、管理というのも適切に行っていかなきゃいけないということで、ハード、ソフト一体となって初めて総合的な施策の実行が必要となるというふうに思っておりまして、車の両輪という意味は、そういう交通インフラも含む社会資本整備については、社会資本整備重点計画法に基づきまして、社会資本整備重点計画に基づいて進めております。
一方、交通については、現在、そういう枠組みの法律なり計画がないものでございますから、この交通政策基本計画の中でそういうネットワークの効率的な形成、維持等々を実現するための計画をつくることによりまして、両者の計画の連携、協働によりまして施策の推進を図りたいということでございまして、当然、重なる部分もございますけれども、基本的には、両者がきちっとした役割分担のもとで施策を推進していくという考え方で整理したいというふうに思っております。
○杉本委員 次に、ちょっと条文ごとに伺っていく感じになるかと思いますが、第二条の関連として、きのうの参考人質疑でもありましたけれども、交通権、移動権の指摘といった問題がございました。また、安全についても言及がありましたけれども、これらの点について、今議論をしているこの政策基本法案については、その問題を包含していると解釈できるのか、あるいは今後の議論の問題なのかを改めて確認させていただきたいと思います。
○西脇政府参考人 お答えいたします。
まず、二つ論点がございましたけれども、移動権につきましては、交通政策審議会及び社会資本整備審議会の委員会の合同の審議によりまして、移動権というものを法律上規定することは時期尚早であるというふうな考え方から、移動権については規定しておりません。そういうことから、移動権そのものを包含しているということではないということで、そういう意味では、移動権そのものについては今後の課題であるというふうに思っております。
一方で、基本法案におきましては、二条で、国民その他の者の交通に対する基本的な需要の充足でございますとか、十六条で、日常生活に必要不可欠な交通手段の確保、それから十七条で、高齢者、障害者、妊産婦等の円滑な移動というような規定を盛り込んでおりまして、そういう移動権なりを検討するに至りました課題というものにつきましては、きちっと問題意識を持って規定を設け、しっかりと取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。
もう一つ、交通安全のことにつきましては、従来、交通安全対策基本法ということに基づいてさまざまな施策を実施してきております。交通政策基本法は、この交通安全対策基本法と相まちまして、その他の関係法律も含めて、交通安全の確保に関する施策と十分連携を確保した上で施策の推進を図るべきというふうに規定しております。
例えば、大規模災害への対応でございますとか、運輸事業の事業基盤の強化とか老朽化対策等、いろいろなことの施策がございますけれども、こうしたものは交通安全の確保と非常に密接に関係しておりますので、法案の趣旨に沿いまして、しっかりと施策を取り組んでまいりたいというふうに考えております。
○杉本委員 次に、コンパクトシティーと既存の疲弊ローカル線の再建という点から、きのうの小嶋参考人の事例というものが、非常に示唆に富む内容であったかと思っております。
そんな中、当委員会も、東日本大震災の現地に皆で行かせていただいて、BRTに乗せていただいたりしてきたわけでございますけれども、小嶋参考人いわくなのでございますが、私が、BRTではなくて、代替手段として鉄道が難しいのであればLRTのようなものはいかがなものかというようなことを、非公式に、参考人質疑の後に、参考人質疑ではないタイミングでちょっとお伺いしたところ、参考人からは、考え方として、とにかく、今まであった鉄道なら鉄道、あるいはバスならバスでいいんだけれども、その路線が一旦なくなってしまって時間的な途切れを持つと別の代替手段に流れてしまって、結局その路線に対する活用というものが復活しがたくなる、だから、できる限り時間的なタイムラグを置かずに代替手段なりを持つかというようなことが極めて重要なんだ、こういう示唆に富む御発言がございました。
東日本大震災の現地の問題というのはまた議論を深めなきゃいけないと思いますけれども、そういった被災路線の復活問題を含めて、LRTなどを活用した地域活性化と公共交通の役割についての御認識をお聞かせください。
○土井大臣政務官 被災地のBRTにつきましては、まさに仮復旧という視点を持ちまして、地域の足を確保する、住民の皆さん方の足を確保するということで今取り組みさせていただいております。これと鉄道の復旧につきましては、今、被災自治体、またJR、県、国、いろいろ協議をさせていただいておりますが、とにかく地域の交通手段をしっかり確保しているということに関しては貢献をさせていただいているというふうに思っておりますし、しっかりと確保してまいりたいと思います。
今お尋ねの、LRTの導入など、地域の公共交通の利便性を高めるための取り組みは、コンパクト化した拠点間を結ぶネットワーク化を高度化し、町のシンボルとして、町の魅力の向上、活性化にもつながるなど、地域にとって大きな効果をもたらすことが期待できると思っております。
こうした地域の公共交通の役割を踏まえ、地域の最適な移動手段の確保や、さまざまなバリアの解消等を図るための地域公共交通に係る取り組みに対して、LRT車両の導入等の支援を行っているところでもございます。
交通政策基本法においても、第二十条に、国は地域の活力の向上を図るため、地域内の交流の促進に資する国内の交通網の形成等の必要な施策を講ずる旨が規定されておりまして、今後とも、地域経済の活力の向上に資する公共交通ネットワークの構築等に向けて、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
○杉本委員 次に、第十一条に「国民等の役割」と書かれておりますが、いかなる方法、いかなる時期に、その役割を周知徹底されるようなお考えでしょうか。
国民の地域交通なんかに対する意識というのがないと、例えば赤字線の復活とか、そういう問題で、やはり地域のニーズとか協力というのが非常に重要だと思いますので、こういった意味の周知徹底をいかに考えておられるかを教えてください。
○西脇政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、十一条に国民の役割というのが書いてあるわけでございますけれども、周知徹底の方法、時期ですが、まず時期につきましては、一つは、この法案が成立させていただければ、当然、成立、施行後に、こういう新しい法律ができた、しかもこうした規定が盛り込まれているという、まず法案の中身について周知するということが重要でございますし、基本計画の策定、実施につきましては、それをより具体化した施策ということで、これは説明会とかシンポジウムとか、いろいろな機会がございますので、あらゆる機会を通じて積極的に周知を図ってまいりたいと思っています。
もう一つ、私が重要だと思っておりますのは、その後、地域における具体的な地域公共交通の取り組みがございますので、具体的には、そういうときに積極的にそういうものに参加してもらうとか、それに関心を持ってもらうということで、やはり具体の課題とか、そういうものを示して参加を募る、周知するということがより効果があるということで、段階を分けながら、きめ細かく周知をしていく必要があるのではないかというふうに思っております。
○杉本委員 それでなんですが、周知徹底にも影響を与えるかなと思うことで、第四条に「交通による環境への負荷の低減」とうたわれておりますけれども、象徴的な海外の例として、スイスのツェルマットの電気自動車というか、小型のバスしか走れないというような規制がかけられた地域があります。
そういった意味からも、日本でもそういった地域をつくれば、電気自動車を走らせて環境を大事にしているんだなというような思いを国民の皆さんに知っていただけるのではないかということで、実は石原環境大臣にもお話をした記憶があるんですけれども、ぜひ太田大臣も、石原大臣と協議、協力をいただく中で、ぜひとも私の思いとして、知床に電気自動車、電気バスを配備していただいて、一方で排ガス車をシャットアウトするというような思い切った施策を打っていただくことによって、国民は非常に驚きとともに関心を持ち、さらに内閣の支持率がアップしてしまうのではないかという思いもしてしまうんですけれども、それはそれで、いいことをしていただくのはいいので、ぜひともそんなことを考えておりますけれども、感想で結構なんですが、コメントをいただけるでしょうか。
○太田国務大臣 貴重な提案として検討させていただきます。
○杉本委員 ありがとうございます。ぜひ前向きに御検討いただいて、何で知床なのかという意味は、何度か私も訪れた中で、本当に大自然というものが残っていて、これはまさしく排ガス車が走るべきところではないという思いの中で考えておることでございますので、強いお言葉をいただいたと、ありがたく感謝申し上げたく存じます。
次に、ややそれるかもしれないですけれども、七条に、今も答弁がございましたけれども、交通安全対策基本法の絡みであるかもしれないですが、「交通の安全の確保」とあります。一方で、冒頭申し上げたとおり、東京の一極集中の中で、きのうだったかは浜松町、おとといだったかは横須賀線の大船と北鎌倉の間とか、しょっちゅうしょっちゅう、まことに残念ですが、山手線だったり、電車がとまるわけでございます。そういった意味で、公共鉄道での人身事故、北海道だったら鹿とぶつかって電車がとまるという感じなんですけれども、私の地元の愛知でもそんなにしょっちゅうそういった事故はないです。しかし、残念ながら、東京では非常に残念な思いがしております。
こういった点も踏まえて、安全というのもこの基本政策、基本法の中の大きなテーマだと思っておりますが、現行を含めて、担当省庁である厚労省とどんな連携をされているか。あるいは、休暇分散等で高速道路の一極集中なんかの問題についても、これは基本法に合致するようなテーマだと思いますけれども、これは内閣府に当たるかもしれないんですが、こういった他府省庁との連携、会議体の存在などを確認させてください。
○西脇政府参考人 お答えいたします。
交通安全の確保に関する施策で、密接に関連いたします交通に関する施策としては、今御指摘ございました、例えばホームドアの設置なんかもございますし、それから、休暇の分散化の話がありましたけれども、当然そういうソフト対策で渋滞の解消になるということで、いろいろな施策の効果が多様に出るというのはございます。
例えば自殺につきましては、ちょっと私も記憶が定かではないんですが、内閣全体として自殺の対策会議というのがございまして、その中で厚生労働省とも当然連携しておりますし、我々としては、このホームドアの話なんていうのは一つの大きな施策として提案しているところでございます。
いずれにしても、交通をめぐる施策は非常に多岐にわたるし、効果の発現も非常に多岐にわたりますので、こうした連携をきちっと確保するということと、情報の共有に努めてまいりたいというふうに考えております。
○杉本委員 ちょっと恐縮なんですが、幾つか質問を飛ばさせていただいて、JR北海道さんの問題はまた後刻と考えております。ぜひ、集中審議的な審議を求めたいと思います。
それで、きょうは、オリンピックの関係で質問させていただきたいんです。
やはり国土交通省は大きくかかわるわけでございますが、実際にオリンピック、パラリンピックを開くと、収支尻というのは、結局、大きなイベントとして考えられると思います。
この黒字化をぜひとも考えておかなきゃいけないと思いますが、ロサンゼルス・オリンピックやソルトレークシティーのオリンピックでは、マネジメントをする方がきちっとして、成功例であったというふうに聞いておりますが、政府として、いかなる組織といかなる方法、あるいは、いかなる責任者を置いて収支尻を黒字化する、企画、運営、管理をする御予定かをお聞かせください。
○久保政府参考人 二〇二〇年オリンピック・パラリンピック競技大会におきましては、オリンピック憲章に基づきまして、開催都市であります東京都と日本オリンピック委員会が中心となって大会組織委員会を設立いたしまして、その中に政府関係者も入り、あるいは中にマネジメント関係者も入りながら、IOCからの過去の大会運営の経験を踏まえました助言を受けながら運営に当たることとなっております。
収支でございますけれども、東京都が作成いたしました立候補ファイルによれば、大会の開催に係ります組織委員会の予算につきましては約三千億円となっておりまして、収入は、基本的に、IOCが放映権料を回します負担金やスポンサーの収入、チケット収入などによって賄われることとなっております。
来年二月までに組織委員会が設立されることになっておりますので、具体的な組織体制や人員構成については、それまで、その中で固まっていくことになってまいります。
今後、収支なども適切に管理しながら、各界各層の協力を得ながら大会運営を円滑に進めることができるように、JOCと東京都による設立準備をしっかりと支援していきたいと考えているところでございます。
○杉本委員 結びに、もう時間なんですが、先般、九月上旬に、この国交委員会で、沖縄の本島並びに石垣、与那国を回ってまいりました。
それで、交通政策基本法の審議でございますので、一つ具体的な例として挙げておきたいんですが、与那国の外間守吉町長から、与那国―石垣間のジェット機材による就航の存続要請というのが来ております。当委員会の前委員長の金子委員長宛てに私は承っております。
きのうのレクのようなお電話の中では、一応、便数がふえたりとかということは言っておるんですが、実際の要望として、ジェットを飛ばしてほしいとか、その背景にやはり貨物輸送の問題等があるということを承っておりますので、こういったきめ細かな要望があることは十分国交省さんは御認識と思いますが、改めてこの確認をお願いして、質問を終わりたいと思います。
以上です。
○太田国務大臣 承りました。
○梶山委員長 次に、穀田恵二君。
○穀田委員 私は、交通政策基本法について質問します。
まず、この法律ができる出発点。もともと、これは交通基本法ということで出発をしてきたのが経過であります。民主、社民両党が二〇〇二年に提出した交通基本法案の趣旨説明では、このように述べています。
「この間の規制改革によって、交通運輸部門の経済的規制はほぼ撤廃され、交通運輸の分野も多くは市場原理にゆだねられることとなりました。しかし、安全の問題、環境への負荷の低減、生活交通の維持、バリアフリーなど、市場原理では解決できない点も多く、規制が緩和された今、それらを包括した新たな指導原理が求められています。その答えが、私たちが提案いたしました本法案であり、中でも本法案を貫く移動に関する権利の規定であります。生存権と自由権の両面から移動に関する権利を明確にすることによって、利用者の立場に立った施策を進める基礎を築くとともに、縦割り行政の弊害をなくし、総合的、計画的に交通政策を推進し、また環境に十分配慮した交通政策を推進すること、これが本法案を策定した目的であります。」ということで、当時、細川さんが提案をなさっています。
つまり、安全の問題、環境への負荷の低減、生活交通の維持、バリアフリーなど、市場原理では解決できない問題を、移動に関する権利を明確にすることによって、利用者の立場に立った交通政策を目指していたということになると思うんですが、この点について、事実としてまず確認しておきたい。
○西脇政府参考人 お答えいたします。
交通基本法案につきましては、今委員御指摘のとおり、平成十四年に議員立法として初めて提出されたものだというふうに理解をしております。
それから、法案につきましては、ただいま委員が御指摘のとおり、まず、交通条件に恵まれない地域の住民が日常生活及び社会生活を営むに当たり安全で円滑で快適に移動すること、それから、交通による環境の保全上の支障を防止すること、高齢者、障害者等移動に関し制約を受ける者が日常生活及び社会生活を営むに当たり安全で円滑で快適に移動することなどの観点からの交通に関する施策について盛り込まれた上で、その法案が提案されたというふうに理解をしております。
○穀田委員 そこで、それを受けて、二〇一〇年六月、国土交通省が取りまとめた、交通基本法の制定と関連施策の充実に向けた基本的な考え方(案)、これによりますと、移動権について、交通基本法の根幹に据えるべきは移動権であり、全ての人が健康で文化的な最低限度の生活を営むために必要な移動権を保障されるようにしていくことが交通基本法の原点であるべきとしていたことは事実ですね。
あわせて、移動権の法定化について、現在、政府としてはどのような考えを持っているか、述べていただきます。
○西脇政府参考人 お答えいたします。
まず、今委員から御指摘がありました、平成二十二年六月の国土交通省が発表いたしました、交通基本法の制定と関連施策の充実に向けた基本的考え方(案)でございますけれども、その中身につきましては、委員が今引用されましたとおりでございます。
それから、後段の御質問でございます移動権につきましては、その基本的考え方を平成二十二年六月にまとめた後、さらに平成二十二年の後半に、交通政策審議会及び社会資本整備審議会におきましてもろもろの議論が行われましたけれども、その際には、移動権の具体的な内容についての国民の共通認識が得られているとは言えない状況、また、権利として規定するということは、利用者、運輸事業者の間に対立意識を生じさせるおそれがあるのではないか、また、パブリックコメントにおきましても、移動権についてはさらに検討が必要であるというような意見が過半数を占めたことで、審議会としては、移動権の法定化は時期尚早であるというような報告をし、それを受けた形で法案の立案をしたというふうに理解をしております。
○穀田委員 まず事実だということと、時期尚早ということを、いろいろな形でまた審議会を設けたら出てきたと。結局それでいこうとなったということですな。しかし、私は、その文書を見ていて、「とりわけ、お年寄りや体の不自由な方々にとって、移動権は極めて重要です。」これは本当に大事な指摘ですよね。
そして、きのうも参考人の陳述が行われましたけれども、多くの方々が今言っておられる日本社会のありようとの関係で、この形はとても大事だということを述べておられるわけですよね。
ですから、私は、交通基本法の原点であるとしていたことを変えることは考えられないことだということを言っておかなければなりません。
もう一つ重要な点があります。交通政策において、先ほど述べましたけれども、安全の問題それから環境への負荷の低減、生活交通の維持、バリアフリーなど市場原理では解決できない問題、過疎地の高齢者など移動が制約される方々、航路や空路が生命線の離島の方々など、国民の足としての交通のあり方に交通基本法制定の動機があった、これは誰もが認めることではないかと思うんですね。
ですから、先ほど私は若干言いましたけれども、昨日の参考人の陳述でも強調された点は大体それらのことでありました。いわば人々の移動をどうするかということを中心に交通政策のあり方を議論してきたこと、とりわけ、競争など市場原理では解決できない公共性の高い政策課題だということ、これがもともとの動機だったわけであります。
政府案は、その公共性の高い、市場原理では解決できない人々の移動の問題を中心に立案されているのかどうか、問いたいと思います。
○西脇政府参考人 お答えいたします。
幾つかの御指摘がございました。
まず、人の移動ということでございますけれども、政府案の中では第二条で、これは基本的認識のところでございますけれども、国民その他の者の交通に対する基本的な需要の充足ということを基本的認識のまず第一番に置いておりまして、そういう意味では、交通の需要を確保するということが重要と。
その具体的な内容といたしまして、第十六条におきまして、日常生活等に必要不可欠な交通手段を確保すると。その場合には、通院、通学とか例示も入れた上で、日常生活の交通手段を確保するということでございますので、ここにおいて足を確保するという概念を明確にしております。
それから、十七条におきましては、高齢者、障害者、妊産婦それから乳幼児を伴う者という、比較的移動について弱者の方についてもきちっと円滑な移動を確保するということを条文に盛り込んでおりまして、そういう意味では、人の移動を確保するということにつきましては十分に規定を盛り込んだつもりでございます。
それから、もう一点だけ、市場原理の話がございましたけれども、これは、例えば今やっております地域公共交通の維持確保改善事業、これはまさに財政支援を入れながら地域の足を確保しておりますので、そういう意味では、市場原理だけではないというようなところにつきましては、一定の合意とかコンセンサスのもとに施策を組んでいるということでございまして、十分に足を確保するという観点から施策を推進しているつもりでございます。
○穀田委員 今お話あった二条、十六条、十七条というのは、交通基本法にも書いているんですよ。別に変わったわけじゃないんです。ですから、その点をわかっているわけですね。だから、簡単に言えば、前のものを引き継いだだけだということを言っておきたいと思うんですね。
だから、問題は、基本法なんだから網羅的に課題を並べればいいということじゃない。ましてや、今お話あったように、市場原理という問題でいえば、当時の文書というのは、市場原理では解決できないということを言っている点を私どもは指摘しているわけですね。
そこで、今回の法案では何が強調されているかということであります。資料として皆さんにお配りをしました。二〇一一年三月提出の交通基本法の概要、右側の方ですね、それから今回の交通政策基本法案の概要をお配りしています。
一目見て印象が違う。法案を比べてもほとんど違いがないように見えるけれども、この概要を見比べると、明らかに強調点が違うことがわかります。念のために黄色いマーカーで線を引いておきました。「国際競争力の強化」が、背景説明でも、法案の計画の部分でも一番目になっているし、文字も目立つ。そこで、右の方を見ていただきますと、二〇一一年三月提出の交通基本法案、これで見ますと、概要にある「国民目線・利用者目線に立った行政への転換」というのもない。
なぜこれほど違うのかということについて、いかがですか。
○西脇政府参考人 お答えいたします。
まず、今委員から配付された資料の点につきまして御説明を申し上げます。
確かに、交通政策基本法案の概要説明資料の中には、前回ございました「国民目線・利用者目線に立った行政への転換」ということは明示的には言及しておりませんけれども、その趣旨というものは、今回提案しております法案の中での、先ほど申し上げました生活交通の確保やバリアフリー化、それから、関係者間の密接な連携ということで、国、自治体、事業者、国民等の役割というものもきちっと決めた上で連携するということで、そうしたものに基づいて講じられます国の施策につきましては、まさに国民目線、利用者目線に立った行政への転換というものを具体化しているというふうに考えているところでございまして、そういう意味で、交通政策基本法の中でも、国民生活の豊かさや地域活性化というものの実現を図っていきたいというふうに考えております。
それからもう一つ、国際競争力の位置でございますけれども、順番ということであれば、例えば、先ほど具体的な施策ということで条文を御説明いたしましたけれども、十六条、十七条というのを、生活の足の確保、それから、高齢者、障害者、妊産婦等の円滑な移動というものを一番目、二番目に置いているということについても十分御理解いただきたいというふうに思います。
○穀田委員 それはさっき、最後の方はもう言いましたやんか、同じことを引き継いでいるだけやといって。何をよまい言を言っているのかと思うんだけれども。
見たらわかるんです。先ほど、概要やないかというやじも飛んでいるんですけれども、概要というのは、やはり体をなすといいますか、簡単に言うと、何を言いたいかという趣旨を出す基本なんですね。だから、これをいつも持ってくるんですよ。それに基づいて説明するんですよ。だから、そこに体をあらわしているんですよ。それは誰だって知っているんですよ。そこをまず言わなあきまへんで、これが基本でっせといって。
では、言いましょうか。括弧しているところに、一番上に線を引いておきました。「国際競争力の強化」と二行目にありますやんか。そして次に「国際競争力の強化」と書いていますやんか。「例えば」というところに「我が国の国際競争力の強化のための」と書いていますやんか。次に「交通政策基本計画の閣議決定」、一番最初に「国際競争力の強化に必要な施策」と書いていますやんか。誰が見たって、全部国際競争力がキーワードで、これが最大のポイントだなと見るのは当たり前じゃないですか。そんなこともわからぬ議員がおったら、どこの者やと言いたいぐらいだわ。そして、ここの肝心なところでいうと、「国民目線・利用者目線に立った行政」というのだけはどこかに行っている、こういうことですやんか。そこを見なあきまへんで。
それでは、国際競争力ということをこれほど言っているんだから、国際競争力の強化というのはどういう定義か。交通政策分野における国際競争力とその強化とは一体全体何なのか、言っていただけますか。
○西脇政府参考人 お答えいたします。
条文で申し上げますと、十九条に、我が国の産業、観光等の国際競争力の強化のためにということで記述しておるところでございまして、例えばでございますけれども、産業の国際競争力といえば、例えば輸出産業におきますれば、日本製品の海外における競争性とか、あとは、観光につきましては、最近のいろいろな取り組みによりまして訪日外国人客なんかは若干ふえておりますけれども、全体に、国際的な地位からいうと低いというようなことで、こういうものが国際競争力の例示として挙げられるというふうに思っておりますけれども、その強化ということになれば、例えば、数そのものをふやすということもあれば、相対的地位を押し上げるというようなことが強化というような意味だというふうに考えております。
○穀田委員 わからぬな。
これほど重要な項目でいっぱい書いているのに、その程度しかないのか。驚き、あきれるよね。
十九条というのを引用されました。これは、あなた方国交省が新たに入れて、相当深く書いた文章です。今お聞きすると、産業というところでいうと、海外との比較。産業ということでいって私が聞いているのは、交通政策分野における国際競争力と聞いているんですよ。
産業の競争力というのは、別にどこだって交通政策の分野と関係ないわけで、観光だって、ふえているかふえていないかというような話でいうと、競争力というよりも、日本に魅力があるかどうかということで来るだけの話で、それが他と競争したら、どこで区分けするのか、どこでそれをはかるのか。そんなこと、わかりますか。それは、なるべくええものにこしたことはないけれどもね。
そういうことでいうと、やはり振興や活性化であって、他者で比べる競争力という形では当てはまらない。率直に言って、わからぬな。聞いている人もさっぱりわからぬと思いますよ、私は。
交通政策分野における国際競争力とは何か。もう一遍言ってください。
○西脇政府参考人 お答えいたします。
ただいま、条文に基づきまして、産業、観光等でお答えいたしましたけれども、当然、産業の競争力を上げるということでは、例えば港湾を例に挙げますと、私どもの例えば東京港、神戸港等の主要な港湾におきましては、アジアの主要な港湾と比べまして、コンテナの取扱量で大きな差が出ておるということでございますし、また、首都圏の国際空港の旅客や貨物の取扱量においても、アジアのところと非常に厳しい競争にさらされているというようなことでございまして、これは物流という観点、それから人流という観点から、産業と観光等の国際競争力と一体として構成されていると思いますので、交通政策の分野における国際競争力ということであれば、ただいま申し上げたようなものが例示になるのではないかというふうに思っております。
○穀田委員 やはりわからぬな。
要するに、そこへいくと、交通基本法の生成過程、政策を決定していく過程と随分離れた感じに聞こえると私は思うんですね。
つまり、先ほど言いましたように、安全の問題、環境の負荷の低減、生活交通の維持、バリアフリーなど、移動に関する権利の明確化によって利用者の立場に立った交通政策を目指していたということが、いつの間にか、西脇さんがおっしゃるので言うと、港湾、コンテナということになっていくんだよね。
港湾、コンテナと言ったからといって、安全の問題、もちろん、環境の負荷でいえば、そこを通る自動車が、少しましなものを通したらいいとか、それはありますよ。バリアフリーだって、市場原理で解決できない問題と余り関係ないのですね。つまり、成長戦略全体の競争力ということだったら、それはわからぬことはありませんで。結局そういうことを言っているということに帰着するんじゃないかと、はっきり言って、思いましたね。
だから、何回も私は言っているように、交通政策分野における国際競争力とは何かということがもう一つはっきりせずに、結局行き着くところ、いつの間にか港に行き着いた、こういうことだわな。
そこで、もう少し聞いておきたいと思うんですけれども、国際競争力強化に必要な施策にある「我が国の産業、」今お話ありましたよね、産業。「観光等の国際競争力の強化を図るため、国際海上輸送網及び国際航空輸送網の形成、これらの輸送網の拠点となる港湾及び空港の整備、」とあります。そして、先ほど、そのことを一生懸命、前の方で早速しゃべってはったけれども、具体的にどこを指しますか。
○西脇政府参考人 お答えいたします。
先ほど、港湾の例と空港の例を申し上げましたけれども、さらに具体的にお話を申し上げれば、我が国に寄港する国際基幹航路の維持拡大を図るために、国際コンテナ戦略港湾、これは京浜港と阪神港でございますけれども、そこにつきまして、ハード、ソフト一体となった政策展開ということで機能強化を推進しております。
また、首都圏空港、羽田、成田でございますけれども、これは二十六年度中に年間の発着枠が七十五万回化ということでございますので、さらにそれ以降の機能強化についての検討というようなことでございまして、具体の例を挙げれば京浜港、阪神港、羽田、成田になるわけでございますけれども、具体的にといえば、当然これ以外の港湾や空港につきましても、その時々の状況、地域の状況に応じまして、必要な整備というものにつながっていく場合もあり得るというふうに考えておるわけでございます。
○穀田委員 なぜこんなことを言っているかというと、結局、戦略港湾だとか中枢港湾といった話を議論したときと同じ話をしているだけだということを気づいた方はいらっしゃると思うんですね。
私は、結局こういう話になってきて、交通政策分野における国際競争力の帰着するところは何かといえば、首都圏空港だとか戦略港湾は外さないということだけを言っている、これだけは確かだということははっきりしたと思うんですね。
そこで、「これらの輸送網と全国的な国内交通網とを結節する機能」とは、具体的に何を想定しているんでしょう。
○西脇政府参考人 お答えいたします。
結節する機能ということでございますので、当然、国際の輸送網ということでは海外から人なり物なりが入ってくる、それを国内においてさらに動かしていくということでございますので、例えば国際港湾と工場が高速道路なり道路で結ばれるということになりますと、アジア全体のグローバルサプライチェーンの中でのリードタイムが短縮するというようなことが可能になりますし、また、外国人観光客からよく言われることでございますが、当然、国際空港に到着した人がなるべく早く観光地なり目的地に着きたいというようなことでございますので、それをつなげるとか、そういうような、いわゆる結節しているところというようなことが例としては挙げられるのかなというふうに思っております。
○穀田委員 だから、結局のところ、それは、つなげるところというと、まさか空気と空気の間をやっているわけじゃないから、港湾と工場、観光客がどこかへ行きたいと言ったら、結局道路ということになりますわな、想定されるのは。ということでいいと思うんですね。
では、次にもう一つ。「地域の活力の向上に必要な施策」にある、「地域における企業の立地」や「物資の流通の促進に資する国内交通網及び輸送に関する拠点の形成」とあります。「資する国内交通網」とは何か、それに関する拠点とは何を意味しているのか、お答えください。
○西脇政府参考人 お答えいたします。
今委員の御指摘がございました、地域内及び地域間の交流、物資の流通に資するということで、これは国際的なものよりも、さらに地域によってかなり事情がございますので、幅広いものがあると思いますけれども、例えばで申し上げますと、住民の方が日常生活を営むに当たって必要な例えば路線バスとか地域鉄道とか、あと、物資ということであれば宅配便のネットワークとか、いろいろな国内輸送網の例はあると思いますし、また、複数の都府県をまたがるような幹線道路とか地域外からの貨物を取り扱うような港湾等、だから、地域の中、それから地域間、両方のネットワークということでこの規定になったわけでございまして、その中の特に拠点ということになりますと、ターミナルを形成する駅でございますとか港湾とか空港等が例示として挙げられるかなというふうに思っております。
○穀田委員 国交省がイメージしている交通政策分野における国際競争力というのは、大体見えてきたといいますか、結局のところ、空港の強化、港の強化、そして道路をつくっていく、それをつなぐ何らかのターミナル、こうなるということがはっきりしたと言っていいと思うんですね、そっちが言っているのやから。
そこで、大規模災害発生時の対応についても聞いておきたいと思うんです。
「相互に代替性のある交通手段の確保、」とあります。東京外環道や新名神などの建設理由に、大規模災害時に既存の高速道路が通行できなくなった場合の代替高速道路という説明が現地でもされてきました。
今、トリプル、三重の建設が進む大都市環状道路も、代替性のある交通手段という位置づけか。また、東海道新幹線の代替としてのリニア中央新幹線が位置づけられていますが、このリニアも代替性のある交通手段となるのか、お聞きしておきたい。
念のために、鉄道局長については、リニアも入っているかどうかだけ答えてくださいね。長いから、いつも。
○西脇政府参考人 私の方からまとめてお答えをさせていただきます。
切迫性が指摘されております巨大災害に対処するため、我が国の国土が脆弱であることを認識いたしまして、危機意識を持って、交通ネットワークのリダンダンシーの確保などの防災・減災対策を進めていかなきゃいけないというふうに思っております。
今御指摘の、大都市圏の環状道路につきましては、都心に集中する通過交通を分散する共通の機能を有しておりますけれども、それぞれの道路につきましては、受け持っております交通の質で異なる役割があるというふうに考えております。
例えば、首都圏について申せば、中央環状線については都心内のふくそうする交通を緩和する、外環道については放射状道路を相互に連絡する役割、圏央道につきましては物流を含めた都市圏全体の機能を向上させる役割ということがございまして、以上のように、大都市圏の環状道路は、それぞれ異なる役割を持ちながらも、事故や災害時などのいざというときには互いに補完し合う代替性を有しているネットワークであるというふうに認識しております。
次に、リニア中央新幹線につきましては、整備計画の決定に当たり、平成二十二年三月から二十三年の五月にかけて開催されました交通政策審議会の中央新幹線小委員会におきまして、有識者の皆様に幅広く御議論いただきまして、リニア中央新幹線整備の意義等を取りまとめた同小委員会の答申におきましては、中央新幹線の整備は、中央新幹線及び東海道新幹線による大動脈の二重系化をもたらし、東海地震など東海道新幹線の走行地域に存在する災害リスクへの備えとなるとされておりまして、このような施策を通じまして、巨大災害への備えを万全なものとしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
○穀田委員 もう、ちょっと結論だけ言ってくれればええねんけれども、結局長くなったやん。リニアも入っているということだと思うんですね。
結局、国際競争力の強化として、国際戦略港湾、大都市圏環状道路、それから空港、港湾へのアクセス道路など、大型開発事業が明確に想定できる規定だということがはっきりしたということですね。
大規模災害の対応でも、今お話あったように、結局のところ、東京外環道の環状道路建設やリニア中央新幹線建設など、これらの大型開発も排除されないということがわかったということですね。
そこで、大臣に聞いておきたいんですけれども、大型開発事業は、これまでも交通政策として、基本法がなくてもさんざんやってきているんですね。いわば産業政策として、やれ一万四千キロメートルの高速道路の計画だ、スーパー中枢港湾だ、国際コンテナ戦略港湾だ、それから関西空港、中部空港、羽田空港のさらなる拡張、整備新幹線の延長、リニアと、これまでも、交通基本法がなくても、全総計画など国土計画でも位置づけられ、どんどんやってきたわけです。
なぜ、あえてこれら具体的に想定できるものを交通の基本法に入れる必要があるのか。入れることによってさらなるお墨つきを与え、大型開発事業推進の根拠にするつもりなのか。私はそう考えざるを得ないんですけれども、大臣の見解をお聞きします。
○太田国務大臣 三十年代から全総があり、そして田園都市構想があったり、あるいは国土軸があったりということで、国土をどういうふうにしていくかということについてのグランドデザインには随分変遷があったと思いますが、私は率直に、二十一世紀に入ってから高齢化が大変進んでいる、人口は減少である。人口減少社会、少子高齢社会、そして今、盛んに国際競争力ということを言われる、国際競争力の強化は私は必要だというふうに思います。そして、特に災害への備え、巨大地震がある、日本列島は東と西が分断をされているということがある。
それらのことについて、もう一度国づくりをどうするか、交通をどうするか、そして地方の、まさに穀田先生がおっしゃって、最初からこの思想の中にございますように、全国どこに住んでいたとしても、また障害者や高齢者であったとしても、全ての人に基本的な交通需要が満たされるべきであるということは、人口減少社会になってくる、そして過疎になってくるということからいきますと、極めて重要なことだということを全て込めて、今回の、こうあるべしということを交通政策基本法案として提出させていただいたということでありまして、何も大規模開発事業を目的になどということは、私は考えておりません。
○穀田委員 大臣がそうおっしゃる気持ちはわかるんですけれども、この概要を見ても、全部、中心は国際競争力とあるんですね。これは誰が見てもそうだということはおわかりいただける。その内容を問うてみたら、空だ、港だ、道路だ、こう来ているじゃないかということを言っているわけですよね。その論理的帰結の問題を言っているだけなんです。
そこで、では政策的背景はどうかと見ると、安倍内閣が閣議決定をしたいわゆる骨太方針で見ますと、「二十一世紀型の社会資本整備に向けて」という中に、「国は、国際競争力を強化するインフラ」として、首都圏空港、国際コンテナ戦略港湾、三大都市圏環状道路等を明記している。
また、「国土強靱化、防災・減災の取組」の中においては、大都市圏環状道路の整備や、代替性確保のための、先ほどあった道路ネットワークの整備も推進を例示しているんですね。
今国会で審議される予定になっています、自公が提出した国土強靱化基本法も、防災・減災の名のもとに、国際競争力の向上に資する強靱な国づくり、重要な機能の代替性の確保などを明記していて、結局、大型開発を推進するものとなる。
本法案の国際競争力の強化の条文には、こうした施策が実行可能となるようにする規定の意味も先ほど明らかになった。したがって、私は、国土強靱化政策の交通分野版にもなり得るものと言わざるを得ません。
一方、もちろん本法案には、交通施設等の老朽化対策も明記されています。私は何回も、これを先にやるべきだと言ってきたことは大臣もよく御承知です。新規の大型開発事業を続けるんじゃなくて、今やらなければならないのは、既存のインフラの老朽化対策を施策の中心に置くことだということを何回も言ってきたことは、もう御案内のことと思います。
最後に、安全問題についても少し聞いておきたいと思うんですね。
昨年の高速ツアーバス事故、そして最近では、事故、トラブルが絶えないJR北海道の問題。交通手段の一つ、高速道路でも笹子トンネル事故が昨年起こった。B787型機のトラブルを初め、空の安全も看過できない事態が頻発している。これらはまさに、交通政策が真っ先に安全確保を掲げるべきことを示しているんじゃないでしょうか。昨日の参考人の陳述で、安全を書き込まなければならないほど深刻な事態が生まれているという指摘もありました。
ところが、本法案は、交通安全対策基本法を並行的に捉え、交通の大前提に置くべき安全確保が基本理念に明記されていません。そのため、基本理念に基づく国等の責務、交通の施策から安全確保が抜け落ち、交通安全対策基本法に委ねる形になっています。これでは、交通における安全確保の位置づけが曖昧にされるおそれがあります。
そこで、伺いたい。本法案では、なぜ基本法案に盛り込まれていないのか。なぜ、国、事業者等の責務として明記されていないのか。
○土井大臣政務官 安全の確保は、国民等の生命、身体及び財産の保護を図る上で重要な役割を果たすものとして、何事にも優先をされる課題であるというふうに承知をいたしております。
従来から、交通安全対策基本法や、道路運送法、鉄道事業法、海上運送法、航空法などの既存の関係法律に基づいて実施され、安全確保に関する具体的な規定が整備されているというふうに承知をいたしております。このため、交通政策基本法案の目的そのものや基本理念には、交通安全の確保について規定しなかったところでございます。
一方、交通政策基本法案に盛り込んでいる交通施策の中にも、事業基盤の強化、人材の育成、施設の老朽化に配慮した交通手段の整備、大規模災害への対応など、交通安全の確保と密接に関連する施策が多数含まれているところでもございます。
こうしたことに鑑み、交通政策基本法案においては、交通安全対策基本法と相まって、交通に関する施策を総合的かつ計画的に推進するということとした上で、交通に関する施策の推進に当たっては、交通の安全の確保に関する施策との十分な連携が確保されなければならないと規定したところでもございます。
○穀田委員 入ってへんということだけは確かで、それで、ほかの法律に入っているからというようなことは、余り言いわけにならぬのですわ。というのは、基本法なんだから、ほかの法律よりも大事な法律だという位置づけなわけでしょう。その基本法という位置づけの中に入れるというのが大事なんですね。
あわせて私は言っておきたいんですけれども、交通運輸事業というのは、運転者などの運行従事者がいて初めて成り立つ事業であります。運行従事者の肉体的、精神的な状態、技術力が安全運行に直結します。だからこそ、安全を確保するためには、運行従事者の賃金、労働条件を適正にする必要があります。交通運輸の現場では労働者の賃金、労働条件の適正化こそ安全確保の必要条件であるということを盛り込むべきではないでしょうか。
○西脇政府参考人 委員御指摘のとおり、運輸事業に従事する交通関係労働者の処遇の改善ということは、交通機能の確保向上それから交通安全を確保する上で非常に重要な課題だというふうに認識しておりまして、本法案によりましても、国は運輸事業等の健全な発展を図るために事業基盤の強化とか人材の育成などの必要な施策を講ずるということで、その中には労働環境の改善も含まれるというふうに考えておりまして、いずれにしても、交通サービスの担い手であります交通関係労働者が安全、安心な環境のもとで働けますよう、労働環境の整備に努めてまいりたいというふうに考えております。
○穀田委員 それでは不十分だということで、私、今拝見しました附帯決議の中にも、わざわざ労働条件の環境まで書かざるを得ないわけですよね。私は、ほかは余りひどいものだから賛成をしませんけれども、しかも、交通安全基本法にわざわざ、車両等の安全な運転を図るためには運転者等の労働条件の適正化等が必要であり、国として必要な措置を講ずること、こう規定しているんですよ。だから、その意味では、交通安全基本法に書いている中身としても、本来、基本法という位置づけであれば、こういったものをつけ加える、本質的にそのことが一番大事だよということを加える必要がある、そのことを私は言っているんですね。
ですから、当たり前に、この法案について言えば、これはつけ加えるべきだったということを主張して、委員長が目でも合図していますから、時間ですので終わります。
○梶山委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○梶山委員長 この際、本案に対し、穀田恵二君から、日本共産党提案による修正案が提出されております。
提出者より趣旨の説明を求めます。穀田恵二君。
―――――――――――――
交通政策基本法案に対する修正案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
○穀田委員 ただいま議題となりました交通政策基本法案に対する修正案につきまして、その趣旨及び概要を御説明申し上げます。
交通は、人や物の交流や活動を支え、国民生活にとって不可欠なものですが、今日の交通を取り巻く社会経済情勢は、人口減少、高齢化の進展や地球環境問題の深刻化、地方の過疎化など大きく変化してきています。
交通運輸の規制緩和政策のもとで、鉄道、バスなど相次ぐ路線廃止など地域公共交通が衰退し、自家用車を利用できない高齢者等、移動が大きく制限される移動制約者が増大しています。
また、これまでのモータリゼーションの推進など自動車中心の交通施策により、交通事故、道路公害の発生などさまざまな弊害も生まれています。さらに、高速ツアーバス事故を初め、公共交通機関の事故も相次いでいます。
こうした状況を踏まえ、本法案を、国民の立場に立って、市場原理では解決できない公共性の高い政策課題に対応し、国民生活の安定向上に役立つものとするため、移動権の保障を盛り込み、基本理念の第一に交通の安全の確保を据え、さらに、「国際競争力の強化」を削除するなどの修正案を提案します。
以下、本修正案の概要につきまして御説明申し上げます。
第一に、交通政策基本法の名称を交通基本法に戻します。
第二に、移動に関する権利を明確化します。
第二条として、「全て国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営むために必要な移動を保障される権利を有する。」等の規定を新設します。これに伴い、この法律が移動に関する権利を明確にするものである旨を目的規定に明記します。
第三に、交通の安全の確保に関する規定を第一番目の基本理念として明記します。
第三条として、「交通に関する施策の推進は、安全で安心して暮らせる社会の実現に寄与するよう、交通の安全の確保が図られることを旨として行われなければならない。」を加えます。これによって、国等の責務についても、交通の安全の確保を大前提とすることになります。
あわせて、事業者等の責務についても、その業務を適切に行うことの例示として、交通の安全の確保を図ることを明記することとします。
なお、車両等の安全な運転を図るためには、運転者等の労働条件の適正化等が重要であり、国として必要な措置を講ずることを規定する交通安全基本法の実効性を求めます。
第四に、「産業、観光等の国際競争力の強化」を「産業、観光等の振興」に改めます。
地方路線の廃止や公共交通機関の事故の要因、背景にあった規制緩和等市場競争原理から脱却するため、公共交通の安全や公共性と相対立する「国際競争力の強化」を削除し、「振興」に改めることとします。
また、関連する規定を削除します。
以上が、修正案の提案理由及びその概要であります。
何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。
○梶山委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
―――――――――――――
○梶山委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。
討論の申し出がありますので、これを許します。穀田恵二君。
○穀田委員 日本共産党を代表して、交通政策基本法案に反対、修正案に賛成の討論を行います。
交通は、人や物の交流や活動を支え、国民生活にとって不可欠なものです。
交通をめぐっては、人口減少、高齢化や地方の過疎化などの進展、交通運輸分野の規制緩和政策の推進などにより、鉄道、バスの路線廃止が相次ぐなど地域公共交通が衰退し、高齢者を初めとした移動制約者が増大しています。
これまでのモータリゼーションの推進など、自動車、道路中心の交通施策による弊害も生まれ、高速ツアーバス事故を初め、公共交通機関の事故も相次いでいます。
こうしたもとで、交通に関連して、安全問題や生活交通の維持、バリアフリーなど、市場原理では解決できない公共性の高い政策課題に対応するためにも、移動権の保障を盛り込んだ基本法が求められてきました。
しかし、政府提出の法案には、移動権の保障が規定されていません。そのため、地域公共交通の衰退や、移動が制限される移動制約者の拡大に歯どめをかける施策の進展を妨げることになりかねません。ですから、私どもが先ほど述べた修正案を提出したゆえんであります。
また、バスや鉄道などの事故、トラブルが多発するもとで、閣法には、交通の大前提に置くべき安全の確保が基本理念などに明記されていません。
さらに、国際競争力の強化として、国際戦略港湾、大都市圏環状道路などが明確に想定できる規定を盛り込むなど、大型開発事業の促進の根拠として使われるものとなっており、政府提出の交通政策基本法には賛成できないことは明らかです。
以上、討論といたします。
○梶山委員長 以上で討論は終局いたしました。
―――――――――――――
○梶山委員長 これより採決に入ります。
交通政策基本法案及びこれに対する修正案について採決いたします。
まず、穀田恵二君提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○梶山委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
次に、原案について採決いたします。
原案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○梶山委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
―――――――――――――
○梶山委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、望月義夫君外七名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、日本維新の会、公明党及びみんなの党の五会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者より趣旨の説明を求めます。辻元清美君。
○辻元委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。
趣旨の説明は、案文を朗読してかえさせていただきたいと存じます。十四項目ございます。
交通政策基本法案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺漏なきを期すべきである。
一 交通に関する施策の推進に当たっては、交通政策基本法案に基づく「交通政策基本計画」と、社会資本整備重点計画法に基づく「社会資本整備重点計画」を車の両輪として取り組み、もって、今後の国土・地域づくりの指針となる、中長期を見据えた、新たな「国土のグランドデザイン」の実現に寄与すること。
二 交通においては、「安全の確保」があらゆることに優先する最も重要かつ基本的な事項であることから、道路交通の安全等陸上交通の安全、船舶の保安等海上交通の安全及び航空保安等航空交通の安全の各分野について、関係法律で定めるところにより、万全を期すこと。また、交通に関する施策の推進に当たっては、交通安全対策基本法その他の交通の安全に関する法律等に基づき実施される施策と十分に連携し、交通の安全の確保に万全を期すこと。
三 交通に対する基本的な需要の充足に当たっては、高齢者、障害者、妊産婦を含む国民が日常生活及び社会生活を営むに当たり必要な移動、物資の円滑な流通等の需要を十分にくみとられたものとなるよう最大限配慮すること。
四 豊かな国民生活を実現し、我が国経済社会が力強く成長していくためには、交通の機能の確保及び向上を通じた地域格差の是正が極めて重要であり、このことを十分に踏まえて交通政策基本計画を策定すること。
五 交通の機能の確保及び向上に当たっては、エネルギーに関する国内外の情勢の変化を含む社会経済情勢の変化に的確に対応すること。
六 人口減少、少子高齢化の加速度的な進展や、国際競争の激化の中で、地域交通の確保や、国際海上及び国際航空の競争力強化は喫緊の課題であることを踏まえ、本法の成立を受け、地域交通や港湾の分野での個別法の見直し等を含む制度改正に速やかに取り組むこと。
七 日常生活等に必要不可欠な交通手段の確保に当たっては、離島のほか、豪雪地帯、山村地域、半島地域、過疎地域といった地理的、自然的、社会的条件の厳しい地域に関する自然的経済的社会的諸条件にも十分配慮する必要があること。
八 バリアフリー施策の推進に当たっては、例えば全国一律の基準ではカバーできない場合であっても、地域の実情に応じた運用を行えるようにするなど、利用者の目線での改善に努めること。
九 運輸事業その他の交通に関する事業が健全に発展し、サービスが安定して提供されるためには、交通に関する事業に従事する者の確保並びにこれらの者の労働環境の整備が重要であることに鑑み、交通に関する施策の推進に当たっては、交通に関する事業において必要とされる人材確保や労働環境改善にも十分に配慮すること。
十 大規模な災害が発生した場合における交通への支障の発生及び拡大を防止するため、老朽化対策を推進するとともに、交通施設の耐震化の向上、代替交通手段の整備、避難のための移動及び救援のための物資の輸送への配慮に努めること。
十一 二〇二〇年の東京オリンピック及びパラリンピックの開催に向けて、地方を含む日本の津々浦々まで外国人旅客が入込む国土・地域づくりを目指して、東京のみならず、地方部を含む形での交通手段の充実、移動の円滑化、観光旅客の円滑な往来の促進等を図るとともに、万が一の大規模災害発生時における交通機能の維持、円滑な避難の確保等に万全を期すること。
十二 交通による環境への負荷の低減を図るため、JR貨物や内航海運による貨物輸送への転換(モーダルシフト)をより一層推進するための取り組みを進めること。
十三 自転車は、国民にとって非常に手軽で身近な交通手段であると同時に、地球環境にも大変優しいものであることに鑑み、関係各省庁が連携して、今後、走行環境の改善などその利用促進に向けた施策とともに、自転車による事故の減少を図るための施策を総合的に講じること。
十四 交通に関する国際協力を推進するに当たっては、開発途上地域に対する人材の派遣や外国において災害が発生した場合の交通施設の復旧等の支援にも十分に配慮すること。
以上であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○梶山委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○梶山委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
この際、国土交通大臣から発言を求められておりますので、これを許します。国土交通大臣太田昭宏君。
○太田国務大臣 交通政策基本法案につきましては、本委員会におかれまして熱心な御討議をいただき、ただいま可決されましたことに深く感謝申し上げます。
今後、審議中における委員各位の御高見や、ただいまの附帯決議において提起されました事項の趣旨を十分に尊重してまいる所存でございます。
ここに、委員長を初め理事の皆様、また委員の皆様の御指導、御協力に対し、深く感謝の意を表します。
大変ありがとうございました。(拍手)
―――――――――――――
○梶山委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○梶山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
〔報告書は附録に掲載〕
―――――――――――――
○梶山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後四時散会