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第6号 平成26年4月2日(水曜日)

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平成二十六年四月二日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 梶山 弘志君

   理事 赤澤 亮正君 理事 秋元  司君

   理事 大塚 高司君 理事 西村 明宏君

   理事 望月 義夫君 理事 若井 康彦君

   理事 井上 英孝君 理事 伊藤  渉君

      秋本 真利君    井林 辰憲君

      泉原 保二君    岩田 和親君

      大西 英男君    門  博文君

      國場幸之助君    佐田玄一郎君

      斎藤 洋明君    坂井  学君

      桜井  宏君    白須賀貴樹君

      助田 重義君    谷川 弥一君

      土井  亨君    中村 裕之君

      長坂 康正君    林  幹雄君

      原田 憲治君    ふくだ峰之君

      藤井比早之君    宮澤 博行君

      務台 俊介君    泉  健太君

      後藤 祐一君    寺島 義幸君

      三日月大造君    岩永 裕貴君

      坂元 大輔君    西岡  新君

      松田  学君    村岡 敏英君

      北側 一雄君    佐藤 英道君

      杉本かずみ君    穀田 恵二君

    …………………………………

   国土交通大臣       太田 昭宏君

   国土交通副大臣      野上浩太郎君

   国土交通大臣政務官    土井  亨君

   国土交通大臣政務官    中原 八一君

   国土交通大臣政務官    坂井  学君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  小澤  仁君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            池田 唯一君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官)            岡村 健司君

   政府参考人

   (財務省理財局次長)   上野 善晴君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    山崎 達雄君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           藤井 康弘君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁廃炉基盤整備総合調整官)    藤原 正彦君

   政府参考人       

   (国土交通省都市局長)  石井喜三郎君

   政府参考人

   (国土交通省国際統括官) 稲葉 一雄君

   国土交通委員会専門員   宮部  光君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二日

 辞任         補欠選任

  中村 裕之君     助田 重義君

  前田 一男君     藤井比早之君

同日

 辞任         補欠選任

  助田 重義君     中村 裕之君

  藤井比早之君     前田 一男君

    ―――――――――――――

三月二十八日

 港湾法の一部を改正する法律案(内閣提出第一九号)

同月二十七日

 不要不急の大型開発事業をやめ、防災・老朽化対策を優先することに関する請願(穀田恵二君紹介)(第三六二号)

 タクシー適正化及び活性化特措法等の一部を改正する法律に基づく厳格な運用並びにその附帯決議に対する履行に関する請願(三日月大造君紹介)(第三九六号)

 同(高木義明君紹介)(第四〇四号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第四〇五号)

 同(辻元清美君紹介)(第四二一号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第四二六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 株式会社海外交通・都市開発事業支援機構法案(内閣提出第一八号)

 港湾法の一部を改正する法律案(内閣提出第一九号)


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     ――――◇―――――

梶山委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、株式会社海外交通・都市開発事業支援機構法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省都市局長石井喜三郎君、国際統括官稲葉一雄君、内閣官房内閣参事官小澤仁君、金融庁総務企画局審議官池田唯一君、金融庁総務企画局参事官岡村健司君、財務省理財局次長上野善晴君、財務省国際局長山崎達雄君、厚生労働省大臣官房審議官藤井康弘君及び資源エネルギー庁廃炉基盤整備総合調整官藤原正彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

梶山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

梶山委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。桜井宏君。

桜井委員 おはようございます。自民党三重三区の桜井です。

 質問の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございました。

 株式会社海外交通・都市開発事業支援機構法案、閣法一八号について、賛成の立場から質問をさせていただきます。

 まず、資料をごらんください。資料でちょっと訂正があります。海岸になっていますけれども、海外の間違いです。大変失礼いたしました。それからあと、資料ナンバーテン、九までなんですけれども、十を追加しております。これは海外投融資のJICAの資料でございます。

 それでは、質問させていただきます。

 まず、この法案、いろいろ日本がインフラ輸出するために非常に重要な法案であるというふうに思います。また、私も前に所属していた大成建設とか、一緒に仕事をやった安藤ハザマとか、そういうところも非常に待望しておりまして、また、ちょっと私も経験しましたJICA、そういったところのとり合いをよくやって、それでより大型の、それから受注の回数を非常に多くできるということで期待している法案でございます。

 それで、資料一をごらんください。

 これは、総理からもいろいろ、トルコに行ったときに演説された中のボスポラス・トンネルです。資料の左手、赤線のところの鉄道を地下に沈埋トンネルを用いましてやった例であります。右側にその断面が出ております。沈埋工法でコンクリートのブロックを現場に行って沈設する、それでつないだものであります。それには非常に高度な技術が要ります。

 それから、ナンバーツーをごらんください。

 これはハノイの、今、完工が近い工事であります。上は空港ターミナル、下はエプロンとその施設の模様でございます。大体これが五百億円ぐらいの工事です。前者のものは一千億円ですけれども。

 それから、このナンバースリーは、安藤ハザマのビルの建築でございます。シティーセンターの新築工事で、ツインタワーになっておりまして、その一本をハザマ、それからアメリカの業者と、JVでやったものであります。これは当時世界一の高さを誇ったものでございます。

 それから、次は、ベトナムのダイニン水力発電プロジェクトで、これはいろいろJICA等もやっておりますけれども、ハザマですね、施工管理がうまくいって、非常に収益が上がったという工事でございます。

 日本の企業は非常に活躍しているんですけれども、一つ、最近、資料五をごらんください。これは、地域ごとの海外インフラの受注国のランキングです。

 二〇〇二年はアジアでもトップだったんですけれども、十年たってナンバーファイブです。中東においては三位、二位、最近は七位。それから、TICADとかアフリカのがいろいろ去年ありましたね。そういったところで力を入れているんですけれども、日本は二〇〇二年には四位にいたんですが、それがどんどん落ちて、今度十一位ということになりました。

 それで、また下の方を見ていただきますと、プラントの受注状況で、日本は横ばいですね。それに対しまして、韓国、中国は非常に伸びております。それから、アメリカも伸びているんです。日本だけが伸びていない。非常に問題になります。

 それから、ナンバー六の資料をごらんください。

 ここには、分野別、交通の案件とか石油、それから建築、発電、水とありますけれども、日本は大体、交通では六番目、それから石油関係で五番目、六位、七位と比較的優位な地位にいたんですけれども、だんだん順位が下がってきている。また、地域別でも、例えば、下の図ですね、アジアにおいても五位に甘んじている。中国等々は伸びているんですが、非常に順位を落としつつある。

 これの一つの要因としては、円高ということもあるんですけれども、受注の案件がオペレートも運用もかかわるものになって、非常に高度な経営を要するということになってございます。

 それで、資料の七をごらんください。

 これは、海外における主要プロジェクト、これから予想されるものなんですけれども、短期、中期、長期がございまして、例えば高速鉄道だと、インドだとかマレーシアの案件がございます。また、中期においてはインド等、結構あるんです。それから、長期にわたっては、アメリカのリニアとかそういったものを受注できるように、民間を活用して、そういうケースを検討しております。

 それから、資料八が、この法案ができることによって、それの枠組みが決まっております。

 従来は、下の緑色の部分、下物、これは大体箱物のところなんですけれども、そこに力を入れていたんですけれども、これからは、受注の可能性をふやすにはやはりオペレーションを、例えば地下鉄をやったら、その運営、それからお客さんの需要を呼び込むとか、そういったところの上物の経営にも力を入れなければならなくなっております。

 それで、右側を見ると、例えば下のような港の案件だと、防波堤とか港設備をよくつくりまして、それから上のように運営をしていく。

 それから、次の図ですけれども、ナンバー九です。この法案では、交通と都市インフラ、今まで大きな範囲で受注していたんですけれども、それを運営をやってみる、さらにお客さんを呼び込んでいく。そうすると、リスクが必ず存在してまいります。

 それで、この法案ができたら、そのようなものに関しましてどのような効果があるのか、大臣に御所見をお伺いできればというふうに思います。よろしくお願いします。

太田国務大臣 詳細に説明をいただきまして、まさにそのとおりです。

 この間、昨年の十月の終わりでありましたが、ボスポラス海峡に、地下六十メートルのところに沈埋トンネルをやりまして、鉄道が動いているんですけれども、そうした非常に技術力がある日本でありましたが、だんだんおくれをとってきているという状況にあります。ますますインフラシステムの海外展開が政府の重要な政策の一つとして上がっておりまして、私も、そうしたことについて、東南アジア各国を回りましてトップセールスを行ってきたところです。

 技術力は日本はすばらしい、しかし価格が高いということがまず一般的に言われているという状況にあります。

 さらに近年、新興国を中心に、いわゆる運営ということについても、インフラ事業においては、今まで日本はODAで下の基礎インフラをつくってきて援助という形でありましたが、運営型のインフラ事業というのが増加している。そこへ我が国の企業の参画が期待が高まってきている。そして、我が国企業のすぐれたノウハウが生かせるという効果がある。

 他方、長期にわたるということがありますし、運営段階の、いわゆるどれだけ利益が生ずるかというような需要のリスクというものもあり、また、現地政府の影響力ということがありますから、向こうの政府とこちらの政府と、あるいは公的なものが、話し合いが進んでいって政治リスクを避けていくという必要があるというようなことがありまして、民間だけでは参入が困難という状況が生まれています。

 このために、この法案によりまして、現地事業体に対して、私たちが新しい機構を設立しまして、民間との共同出資、役員、技術者の派遣、事業に関する相手国との交渉、こうした支援を行おうとしているところでございます。

 こうしたことをやることによって、リスクを、政治リスクやあるいは災害リスクや商業リスクというものがあると思いますが、そこをカバーして、リスクの低減を図って、そして受注を得ていくというようなことを力を入れてやっていこうというのが今回の趣旨であります。

桜井委員 ありがとうございました。

 これから、いろいろ需要が高まっているんですけれども、それを海外にもやはり振り向ける必要があるかと思いますので、ぜひよろしくお願いします。

 それでは、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 海外で仕事をすると、いろいろなトラブルがある。例えば、入札実態が厳しく、コストぎりぎりでやっている。それから、施工条件とデータが違っている。例えば地盤が全然違っている。それでかなり追加費用がかかって、利益がなかなか出てきづらい構造がある。それで非常に困っている。それから二番目に、相手国が、設計変更や仕様変更をしても、その費用負担をしてくれない。それから、工事用地、土地を収用していないのに入札が始まっている。

 それで非常に困っているんですけれども、国土交通省としては、そのようなことに関してどのような対応をとっていただいてきたのかということを、よろしくお願いいたします。

中原大臣政務官 お答えをいたします。

 委員御指摘のとおりでございまして、本邦企業がかかわる海外のインフラプロジェクトにおきまして、支払いの遅延、未払いなどのトラブル等が少なからずあると承知をいたしております。

 国土交通省では、これまで本邦企業の海外展開を支援してきておりますけれども、平成二十一年には、これらのトラブルの相談窓口といたしまして、海外建設ホットラインを設置したところでございます。これまでに六十七件の相談を受けております。

 この種の事案につきましては、大使館を含む外務省や国際協力機構、JICAとも連携をして、トラブルやその背景となる課題に応じまして、大使館等を通じて相手国政府へ申し入れる、また、大臣初め政務三役が相手国を訪問したときに解決を要請する、それから、二国間経済連携協定、EPA等に基づき制度改善を申し入れる等の取り組みを行っております。

 このような対応につきましては、政府の果たすべき役割として、引き続き適切に実施してまいりたいと思います。(桜井委員「ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします」と呼ぶ)

梶山委員長 質問者、済みません、指名してからにしてください。

桜井委員 失礼いたしました。

 ありがとうございました。

 それから、次の質問に移らせていただきます。

 資料十ですけれども、JICAが従来からやっていました。それからJBIC、国際協力銀行もやっておりました。これらの関係とはどのようになりますでしょうか。よろしくお願いいたします。

稲葉政府参考人 この機構とJICA及びJBICの役割について御質問をいただきました。

 機構は現地事業体に出資し事業参画する、これを主な業務としております。これに対しまして、JBIC、国際協力銀行は主に融資を、JICA、国際協力機構は主にODA、円借款などの業務を行っておりまして、三者は相互補完の関係にございます。

 典型的な事案、これは機構による出資と円借款と協調する事案でありますけれども、これについて見てみますれば、JICAは相手国政府に対して下物整備の資金を円借款として供与する、JBICは上物の現地事業体に融資する、機構は上物の事業体に出資して事業参画する、このような関係になります。

 実際のプロジェクトにおきましては、機構は、我が国企業チームの競争力が強化されますよう、JICA及びJBICとよく連携して対応してまいりたいと考えております。

桜井委員 ありがとうございました。

 それでは次に、これが可決されると相当な予算が要るかと思うんです。大体数百億円ぐらいかかるんですけれども、予算は十分確保されるのでしょうか。よろしくお願いいたします。

稲葉政府参考人 予算についてお尋ねがございました。

 予算につきましては、平成二十六年度財政投融資計画におきまして、産業投資五百八十五億円が確保されております。これが、新しく設立される機構に出資されるということでございます。

 なお、この出資されました金額でありますけれども、この機構からさらに現地事業体に出資いたしますが、これは全体の事業費から見ればその一部でございます。そのようなものに充当される、こういう性格のお金でございます。

桜井委員 どうもありがとうございました。

 それから、この法律は、例えば都市エネルギーインフラ、発電事業、特に原発の受注では適用外とは思いますが、今、原発の輸出等、総理も積極的に行っておりますけれども、日本政府としての取り組みはどのようになっておりますか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 福島第一原発の事故の経験と教訓を世界に共有することによって世界の原子力安全の向上や原子力の平和利用に貢献をしていく、これは我が国の責務であると考えております。

 御質問の原子力発電所の輸出に関しましては、以上の考え方を踏まえ、相手国の事情や意向を踏まえつつ、安全性の高い原子力技術、ノウハウを提供してまいる所存でございます。

 安倍内閣におきましては、昨年十月に総理がトルコを訪問した際に、日本企業とトルコ政府との間で発電所に関する商業契約の合意がございました。また、ことし二月、アラブ首長国連邦、UAEのムハンマド皇太子が訪日した際には、人材育成や東電福島第一原発事故の教訓に基づく安全性の向上及び緊急事態対応等の分野における協力を促進するために、経済産業省とUAEの外務省との間で協力の覚書が署名されております。

 このような形で、原子力の分野においても着実に協力を進めているところでございます。

 原子力発電所につきましては、いかなる事情よりも安全性を最優先すべきと考えております。これを実現するためには、高度な技術を維持すること、また、高いスキルと安全意識を持った人材を確保することが非常に重要であると考えておりまして、政府としても、原発輸出先の国において適切な安全確保が実現されるように、相手国の求めに応じて、制度設計等の基盤整備や人材育成の面でも最大限貢献してまいる所存でございます。

桜井委員 ありがとうございました。

 原発の事業にしても、やはり道路とか港が要りますので、そうすると、プロジェクトとして、縦割りになると、書類を二カ所に出さなくちゃならなくなる、そういったことのないように、シームレスに対応できるように、事業者も、いろいろ建設会社等々、あるいはコンサル、お願いしているところがありました。これに対してどのような対応がなされるでしょうか。よろしくお願いいたします。

野上副大臣 今、先生からは、原発を例にとられまして、港湾や道路等との連携の中で効率的な運用をしっかりしていくようにという話もございました。

 従来から、日本政府としましても、現地政府によるマスタープランづくりに対する支援ですとか、あるいは構想段階から関係プロジェクトの一体的な検討を促すというような、そういう取り組みも行っております。

 そういう意味で、先生の今の御指摘も踏まえまして、しっかりとその構想段階から関係プロジェクトとの連携を促しながら効率的な運営を考えていきたいというふうに思います。

桜井委員 シームレスになるように、いろいろ国交省としてもお取り組みをお願いします。

 いろいろ関係者の方、どうもありがとうございました。質問を終わります。

梶山委員長 次に、伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉です。

 質問に先立ちまして、この三十日に東京都の沖ノ鳥島の港湾係留施設の建設現場で事故が発生をいたしまして、残念ながら、五人の方がお亡くなりになり、現在も二人の方が行方不明と聞いております。お亡くなりになられた方、そしてその御家族の皆様に心から御冥福をお祈り申し上げますとともに、行方不明者の発見、そして原因究明、再発防止に全力を挙げていただきますことを、まず冒頭お願いを申し上げたいと思います。

 それでは、今回の法案でございます株式会社海外交通・都市開発事業支援機構法案の質疑に入らせていただきます。

 今の御質問の中にもございましたとおり、海外でのインフラの市場は、世界の交通インフラの整備需要だけでも年間約六十兆円、都市開発が年間十一兆円と言われております。

 この法案の中で、まず第一条においては、この目的として、我が国事業者の当該市場への参入の促進を図る、そのために、いよいよ政府が前面に立って乗り出す、これがこの法律の根本的な眼目だ、こういうふうに思いますけれども、政府は、インフラの輸出の受注額、二〇一〇年十一兆円だったものを、二〇年までに三倍の三十兆円にふやす、こういう目標を掲げておられます。現時点において、この海外交通・都市開発事業の市場規模あるいは受注目標額、どの程度と想定をされておられるか、国交省にお伺いをいたします。

稲葉政府参考人 海外における交通と都市開発分野のインフラプロジェクトに関し、市場規模と受注目標額についてのお尋ねがございました。

 まず、市場規模につきましては、さまざまな推計がございますが、よく引用される代表的なものとして、OECDによるものと、アジア開発銀行によるものがございます。

 OECDの推計によりますと、全世界のインフラ整備需要、これはエネルギー、通信等も含んでございますが、年間二百三十兆円程度と見込まれております。このうち、交通と都市開発につきましては、先ほど先生御指摘のとおり、年間約七十兆円程度と見込まれております。

 アジア開発銀行の推計によりますと、アジアのインフラ整備需要は年間八十兆円と見込まれております。このうち、交通分野は二十四兆円と見込まれております。

 次に、受注目標額でございます。

 委員御指摘のとおり、昨年五月に、関係閣僚によって構成される経協インフラ戦略会議が、インフラシステム輸出戦略という文書を決定しております。この中で、政府は、我が国企業による海外インフラシステムの受注額を現在の十兆円から二〇二〇年には三十兆円にふやすことを目標として設定しております。また、この三十兆円の前提となる交通分野及び基盤整備分野の推計値は九兆円とされているところでございます。

伊藤(渉)委員 続いては、機構の運営についてお伺いをしたいと思います。

 これは、政府が関与して株式会社をつくっていくわけですので、さまざまな取り決めにおいて、バランスが非常に難しいといいますか、そこに対しての細心の注意が必要になると思います。

 まず、第四条では、政府の株式の保有を二分の一以上と定めまして、当該機構に対する政府の後ろ盾、関与を明確にしています。これは、従来から民間企業からもいわゆる期待があったものでございます。

 一方で、機構の運営については、決してコンサーバティブにならず、民間主導で積極的な市場参入を図る、こうしたことが必要になるわけですけれども、機構の運営について、国土交通省の現時点でお考えの方向性についてお伺いをいたします。

中原大臣政務官 お尋ねの機構の運営についてでございますけれども、本機構は株式会社という組織形態をとっております。これは、海外のインフラプロジェクトについて豊富な知識と経験を持っている経営陣が、その責任において支援に値する事案を判断し、また、その案件に最も適切な内容の支援を実施することを期待しているものでございます。

 そして、国は、株式保有を二分の一以上ということで機構の最大株主となるものの、株式会社の原則であります所有と経営の分離に基づき、日々の業務の執行につきましては経営陣に委ねることとなります。

 また、本法案は、支援基準の策定など、国による機構の監督に関する規定を設けております。これらは、機構による支援があくまで国の政策に沿ったものであることを確保するために、国が必要最低限の関与を行うというものでございます。

 このようにして、機構の運営に関しましては、経営陣の責任と判断に基づき、迅速かつ効果的に業務を遂行することとしております。

伊藤(渉)委員 ぜひとも、今御答弁にあったような方向で、株式会社自体の運営は自主的なものに任せまして、後ろから大株主として大きな視野で見ていく、そういう体制を整えていただければと思います。

 次に、機構による支援と我が国のODAの連携について、これは大臣にお伺いをしたいと思います。

 質問に先立ちまして、外務省、JICAから資料を要求いたしまして、現在の円借款の我が国の調達実績なるものも調べてみました。最近の外貨建ての調達部分における調達先の国籍別比率の実績は、二〇一〇年から二〇一二年度の平均で、日本は約三三%、OECD各国、いわゆる先進国が二二%、開発途上国が四五%。

 基本的に円借款はアンタイドでございますので、この数字は自然にこうなってきた、こういうことではございますけれども、一方で、支援と我が国のODAの連携ということはやはり期待されるところが大でございます。技術によって日本が国際社会に貢献をしていくということと同時に、外需を我が国に取り込んでいく、これが極めて重要な観点かと思います。

 そこで、大臣にお伺いをいたしますけれども、我が国は世界有数のODA供与国でございます。新興国などの経済成長に大きく貢献をしておりますけれども、今後は、機構によるインフラシステムの輸出の支援と我が国のODAが連携をして、相手国の経済成長を我が国に取り込み、いわゆるウイン・ウインの関係を実現していく必要がある、こう考えますけれども、大臣の所見をお伺いいたします。

太田国務大臣 ODAとの連携は極めて重要だというふうに思っておりますし、また、このインフラの輸出というのは、その相手国にとっても極めて重要で有益な事業、そして我が国の企業にとりましても大変なビジネスチャンスということがあろうというふうに思います。

 私も、昨年、ミャンマーやタイやベトナムやインドネシア等に訪問しましていろいろな現場を視察して、日本企業の方々から意見も聞いてまいりました。日本に対する期待というのは現地では非常に高いということを実感するとともに、日本企業の方からは、法制度とか商慣行が異なっているとか、なかなか支払いが遅延するとか、中には、契約をしたけれども、現実には土地の買収までやるんだということを言われて、それはもう大変な状況にあるというようなこともあります。

 そういう意味では、多くの不安があるわけで、インフラの海外展開を進めるということではこの法案が大事だというのは、相手国政府にODAを供与して、基盤の整備、下物を支援するとともに、現地合弁企業に機構が出資して、インフラの運営事業、上物の方を支援する、運営というものをやっていくということが極めて重要だという、そこの組み合わせだというふうに思っています。

 リスクを低減しながら、ODAとの連携もしっかり図りながら、運営型のもので相手国にも我が国企業にも利益が得られる、ODAとの連携とそこの推進というのが非常に大事だというふうに思っているところです。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 私も実務でいわゆる新幹線の海外の輸出ということにもかかわったことがございまして、政府が前面に出ていただけるということは、事業者から見ても大変にありがたいことだと思います。

 一方で、これは、いわゆる業界を所管する国土交通省として、いろいろなところでまた御相談に乗っていただきたい、また御指導をお願いしたいと思うのは、やはりODAを打っていく場所は途上国のことが多く、日本の持っている技術力はある意味高過ぎて、そんなに立派なものじゃなくてもいいのでもう少し安くしてくれ、こういうことを言われたり、輸出する先によっては、例えば新幹線でいうと、日本の新幹線は専用軌道ですから、新幹線にトラックが衝突してくるということはありませんが、平場を走らせる諸外国に行くと、例えばトラックがぶつかってきても脱線しないのかとか、予想しないような質問を受けたりします。

 つまり、出そうとする外国の状況をやはりよく政府は理解をしているわけですので、そういったことも民間企業にアドバイスをしていただきながら、また、私も技術屋の端くれですので思うのですが、どうしても日本人は職人気質がございまして、いいものをつくることには物すごく情熱を傾けられるんですが、安くていいから物を下げてくれ、質を下げてくれと言われるオファーに実はなかなか応えられない。自分自身もそういう経験をしてきたことがございます。これも実は、今後、物を外に出していく上では非常に重要な技術力の一つになってくると思いますので、行政庁としてそのあたりの指導の方もぜひともお力を発揮していただきたい、こういうふうに思います。

 続きまして、法案の中で、これもやはり機構の運営にかかわってくることでございますが、支援基準及び撤回要件についてお伺いをいたします。

 第二十四条では、国土交通大臣が支援基準を定めることとしております。先ほどもございましたとおり、民間主導という方向性と支援基準は政府が定める、このバランスをどういうふうに考えているのか。

 また、第二十六条で、支援決定の撤回要件を定めています。ここで明示されているもの以外にも、さまざまな状況により撤回の判断が必要になるケースもあるだろうと考えられますが、その際の判断基準、機構の意思決定のあり方についてどのようにお考えか、御答弁をお願いします。

稲葉政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、支援基準と民間主導の関係についてお尋ねがございました。

 政府は、機構に資金を供給するとともに、支援基準を定めて、機構が支援すべきプロジェクトに関する基本的考え方を示します。その上で、機構がその考え方に従うことを前提に、具体的な業務は民間主導で行わせようというのがこの法案の考え方でございます。

 民間主導は業務の展開に当たりまして重要なキーワードでありますけれども、二つの意味がございます。

 一つは、機構の運営に関する民間主導でございます。機構の日々の業務については、国は必要最小限の関与にとどめ、基本的には経営陣に委ねます。第二は、個々のプロジェクト推進に関する民間主導でございます。機構は、プロジェクトに対する民間企業との共同出資を前提にするなど、熱意と意欲ある民間企業を支援することに徹します。国土交通大臣が定める支援基準にはこのような点も盛り込むこととしております。

 次に、機構が撤退するケースについてお尋ねがございました。

 委員御指摘のとおり、さまざまな事情から、プロジェクトが期待したように進捗せず、事業の継続が困難になる場合も考えられます。このような場合の機構の対応については、個別の事情に応じて判断する必要がありますが、一般的に申し上げれば、機構は株主として他の株主等と協議しつつ、事業の改善と継続のためにあらゆる努力を尽くすことになるものと考えられます。その上で、他に方法がなければプロジェクトからの撤退についても検討する、このように進むものと考えております。

伊藤(渉)委員 次は、細かい話ですが、機構のネーミングについて伺いたいと思います。

 第七条では、商号について日本名の文字を定めておみえになります。「商号中に株式会社海外交通・都市開発事業支援機構という文字を用いなければならない。」こういうふうに第七条に書いてあるわけですが、このネーミングは、この機構がターゲットにするのは海外のマーケットですので、対象マーケットを考えると、むしろ英語名の表記が極めて重要になるんだろうというふうに思います。

 これまでも日本にはさまざまなエージェンシーがございまして、先ほどもありましたが、JBIC、ジャパン・バンク・フォー・インターナショナル・コーポレーション、あるいはNEXI、こちらはニッポン・エクスポート・アンド・インベストメント・インシュアランス、要するに英語で表記されている。

 名は体をあらわしますので、英語をぱっと読んだらこの機構が何をやるところなのか、海外の方がよくわかるようにネーミングをしなければいけない。余計なお世話かもしれませんが、大変気になりましたので御質問をさせていただきますので、国交省のお考えをお伺いしたいと思います。

稲葉政府参考人 委員御指摘のとおり、機構の業務の性格を考えますと、英語の商号も大変重要であると考えております。

 英語の商号を決める手続について申し上げますと、機構は株式会社でございますので、発起人が定款を作成しますが、その定款に機構の商号を英文も含めて記載する、このようになっております。この定款は、国土交通大臣による設立の認可が行われた後、登記される、このようなことになっております。

 このような次第でございますので、国土交通省としては、発起人の方とよく相談し、機構の業務内容を適切に表現し、かつ、わかりやすい英文商号になるように工夫してまいりたいと考えております。

伊藤(渉)委員 次に、他省庁所管の機構等との情報の共有についてお伺いをいたします。

 それから、第二十八条で「国の援助等」というところがございまして、国土交通大臣及び国の行政機関の長に助言、援助の努力義務を課しております。今の質問でも紹介をいたしましたが、我が国にはJBIC、JICA、NEXI、NEDO、ジェトロなど関係機関がたくさんございます。

 これは我が党の国土交通部会の中でもさまざまに議論があったところで、商社などで海外のインフラの整備などの経験がある方から見ると、要するに、どこが一番いいのかとか、そういうのが実はわかりづらい。行っては冷たくあしらわれて次に行くというようなことが散見をされたという中で、それをきちっとやっていただくことが、これからこうした機構、それぞれの機構に特徴があるわけですが、そこを利用される方にはわかりにくいというところがあります。

 先日も、これは三月六日の日経新聞ですが、そんな中で、政府は、事業ごとに異なる各府省の窓口を内閣官房にまとめ、海外展開を目指す民間企業と橋渡しをする、政府開発援助、ODAも使って新興国で事業を受けやすい環境を整え、成長戦略と位置づけるインフラ輸出の拡大につなげる、こんなことも取り組みがなされているようでございます。

 ぜひとも、関係機構ごとにも、持っている情報を共有して総合力を上げていく、これが極めて重要であり、その中の当機構はインフラシステムの輸出ということを専門にする、こういう取り組みが極めて重要だと思いますので、実効性の高い仕組み、体制を整えていく必要がある、こう考えますけれども、国交省の見解をお伺いいたします。

野上副大臣 今お話ございましたとおり、インフラシステムの海外展開におきましては、JBIC、JICA、NEXI等々、関係機関がそれぞれ今重要な役割を果たしておりまして、この機構も、その関係機関としっかり連携をとっていくことが重要だと思います。

 本案におきましても、支援決定に関する関係大臣への協議が規定をされているところでありますが、既に、関係府省庁及び関係機関の間では、さまざまな場を通じて情報共有と連携の確保が図られております。

 まず、関係府省の間では、官房長官が主宰する関係閣僚会議である経協インフラ戦略会議が開催をされております。

 また、インフラの分野ごとに、海外展開を推進するための協議会が設置をされておりまして、この協議会には、関係府省、関係企業に加えて、JBIC、JICA、NEXIなどの関係機関も参加をしておりまして、情報共有を図っているところであります。

 さらに、個々のプロジェクトについては、在外公館を中心に、関係機関が連携をとり合って、プロジェクトの発掘段階から情報交換をしております。

 まずは、今後、これらの仕組みを十分に活用して、情報交換、連携を進めたいと思いますし、必要に応じて、さらに実効性を担保するための仕組み、体制を検討したいと考えております。

伊藤(渉)委員 もう一問残しておりましたが、時間になりましたので、質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。

梶山委員長 次に、寺島義幸君。

寺島委員 民主党の寺島義幸でございます。

 順次、質問をさせていただきます。

 先ほどのお話のように、今回の法案は、インフラ分野における我が国企業の海外展開を支援する、こういうものであるわけであります。我が国は、御案内のように、少子高齢、人口減少社会であるわけでございまして、国内経済のパイは縮小傾向にあると思います。一方、アジアを初め世界各国では、インフラ整備はまだまだ不十分であろうと思うわけでありまして、さらなるインフラ整備というものが求められているということであります。

 このため、インフラ海外展開への取り組みは大変重要であるということでございまして、かつての民主党政権下におきましても、これらを強力に進めてきた経緯があるというふうに聞いております。平成二十二年の九月には、官房長官を議長とするパッケージ型インフラ海外展開関係閣僚会合が設置されまして、十八回にわたって議論を重ねてきたとお聞きをいたしました。これらを通じて、政治レベルのトップセールスの実施、あるいはまた政府関係機関の機能の強化、さらに、在外公館にインフラプロジェクト専門官を置いて情報収集を強化する、あるいは共有化をするというような、さまざまなことをしてこられたと思います。

 そこで、今回の法案は、このような流れの中で検討、提出されたものと私は理解をするわけでありますが、この点について確認をさせていただきたいと思います。すなわち、政府においてどのような検討を経てこの法案に至ったのかを、まずお伺いいたします。

稲葉政府参考人 この法案の検討経緯について御質問がございました。御説明させていただきます。

 国土交通省では、以前よりインフラの海外展開について取り組んでまいりました。また、委員からお話がありましたように、平成二十二年九月には、パッケージ型インフラ海外展開関係大臣会合も開催されたところでございます。

 このような流れの中で、さらにインフラの海外展開を進めるため、平成二十四年五月に、民間企業の代表者にお集まりいただきまして有識者懇談会を開催いたしました。その後、何度か会議を開催し、御意見を承ったところでございます。そして、その懇談会での御指摘を踏まえ、今般、機構の設立を検討し、予算を要求し、このたびの法案の提出に至ったものでございます。

寺島委員 ありがとうございます。そういうことだと思うんです。

 次に、ちょっと伊藤先生の御質問にかぶって大変恐縮でありまするけれども、政府は、平成二十五年五月十七日のインフラシステム輸出戦略、それから、二十五年の六月十四日に閣議決定された日本再興戦略において、我が国企業のインフラシステムの受注を二〇二〇年に約三十兆円にすることを目指すということでありました。このうち、交通分野は七兆円、そして、都市開発分野は二兆円程度という目標だというお話でございました。

 そこで、この目標達成のために、今度つくられる機構としてどの程度貢献できると想定をされておられるのか、その点についてだけ、ちょっとお伺いいたします。

稲葉政府参考人 お答え申し上げます。

 政府としての三十兆円の受注目標など、今委員が御指摘のとおりでございます。

 お尋ねの、機構の貢献度についてでございますけれども、機構が支援の対象としております、いわゆる運営型のプロジェクト、これは近年、新興国において急速に増加を見ております。したがって、この機構が設立され、この種の事業を獲得することができれば、政府の目標の達成に大きな貢献ができるものと期待しております。

寺島委員 ちょっとわかりづらかったんですけれども、全ての目標値に機構がかかわるわけではないですよね。その中でどのくらいやろうとしておりますかということなんですけれども。

稲葉政府参考人 失礼いたしました。

 インフラプロジェクトにはさまざまな類型がございます。この機構が対象といたしますプロジェクトは、整備をするだけではなくて、その後、運営まで伴うプロジェクトでございます。

 この運営を伴うプロジェクトの分野を見てみますと、近年、とりわけアジア、中南米を中心に、大変な勢いで増加しております。これをどれぐらいとれるかは、競争相手もありますし、また、日本の企業の努力もありますし、それから、プロジェクトの成熟度合いにもよりますので、ここで数字を申し上げることはできませんけれども、このふえていくパイを狙うわけでありますので、これを獲得することができれば目標の達成に大きな貢献をすることができる、このように考えてございます。

寺島委員 やる以上はという言い方では失礼ですけれども、できるだけ頑張っていただけるようにお願いをしたいというふうに思います。

 次に、これは桜井先生と伊藤先生にちょっと質問がかぶりまして恐縮でありますけれども、類似機関との相違についてであります。

 インフラ海外展開を推進するに当たっては、現状においても、先ほどもお話がありました国際協力機構、JICA、国際協力銀行、JBIC、そして日本貿易保険、NEXIなどにより、日本企業の海外進出を支援するためのさまざまな取り組みが行われているわけであります。こうした状況の中、なぜ新たな組織が必要なのかということであるわけでありまして、これらの類似組織との相違点あるいは役割分担がどうなっているかということであります。明確ではないように思われますので、確認をさせていただきたいというふうに思います。

 一つとして、まず、JICAの事業との相違についてであります。JICAは、日本のODAの実施機関として、開発途上国の国際協力を行っているわけでありますけれども、その一環として、専門家の派遣や、開発途上国で事業を実施する企業等に対して出資や融資により資金を供給する、海外投融資を実施しているということであります。

 そこで、今回新たに設立されることになる機構は、支援する側の対象国を限定しておりませんが、JICAによる専門家の派遣や海外投融資と機構が行う支援とでは、どのような違いがあるのでしょうか。まず、それを一つお願いします。

稲葉政府参考人 お答え申し上げます。

 JICAと機構との業務の違いについてお尋ねがございました。

 まず、基本的に一つ申し上げられることは、目的が違うということがあろうかと思います。JICAの場合には、国際協力を目的とする機関でございまして、機構の場合には、我が国企業の海外進出を支援することを目的とする機関でございます。

 それからもう一点、先生も御指摘ありましたように、JICAも海外投融資を制度上できることになっておりますけれども、対象国が途上国に限定されております。機構の場合には、対象国の限定はございません。

 それから、もう一点申し上げますと、出資した後の相手先、出資先の企業への人材派遣、それによる経営支援でありますけれども、機構はそれを行うことを主な目的としております。JICAは、これまでそのような分野の活動は、それほど多くなかったものと承知しております。

寺島委員 そしてJBIC、この事業との相違でありますが、インフラ海外展開に当たっての支援メニューがあるわけであります。例えば、日本企業が海外において行う現地生産、販売事業やインフラ事業、あるいは海外MアンドA等を行う際に、JBICから資金の融資が行われることがあろうと思います。また、海外において事業を行う日本の法人の出資法人や、日本企業等が中核的役割を担うファンドに対する出資も行っているというふうに聞いています。

 こうしたJBICの融資あるいは支出と、機構が行う支出及び融資との違いは何でありましょうか。

稲葉政府参考人 お答え申し上げます。

 JBICと機構の違いについて御質問がございました。

 御指摘のとおり、JBICも制度上、企業に対して出資をすることができることとなっております。一番の大きな違いは、出資した後、相手国、出資先の企業に人を派遣して経営に関与するかどうかというところであろうかと思います。

 機構の場合には、途上国に設立されました相手国との合弁企業に出資をするだけではなくて、出資したことに基づきまして、株主として技術者、役員等を派遣して、その合弁企業がきちんと経営が行われるように確保しよう、こういうことを主な狙いとしております。ここが機構の特徴であろうと考えております。

寺島委員 次に、NEXIについてであります。

 インフラの海外展開においては、いろいろリスクがあります。海外市場における発注者側のリスクを受注者側に転嫁するような片務的な契約を求められることも多いというふうにも聞いております。また、発注者等との交渉が難航し、契約に基づき支払われるべき代金を発注者が支払わない等のトラブルもあるというふうにも聞いております。要するに、事業が円滑に進まない、さらに、需要不足による投資回収のリスク、政権交代等による、政策変更による政治的リスクなど、さまざまなリスクがあるというふうに聞いているわけであります。

 日本企業が海外取引に伴うリスクをカバーする保険として、NEXIによる貿易保険があるわけでありますが、輸出、投資、融資等の多様な対外取引を行うに当たって、送金停止等の非常リスク、あるいは取引相手の破産等の信用リスクに起因した損失をカバーするものであろうというふうに思うわけであります。先進国においても、日立がイギリスにおいて取り組む都市間の高速鉄道プロジェクトにおいて、NEXIが海外事業資金の貸付保険を引き受けている実績もあるというふうに聞いているわけであります。

 そこで、インフラの海外展開において発生するリスクの軽減に当たって、機構はどのような役割を担おうとしているのか。そして、NEXIの貿易保険によりカバーされるリスクと機構によりカバーされるリスクの違いはどこにあるのか、教えていただきたいと思います。

稲葉政府参考人 御説明申し上げます。

 日本貿易保険、NEXIと機構との違いについて御質問がございました。

 海外インフラプロジェクトを行うに際しましては、さまざまなリスクがございます。政治リスク、商業リスク、自然災害リスクなどが主なものでございますけれども、日本貿易保険は、民間企業が主体となって輸出や投融資を行う際に、万が一、政治リスクなどによって実際に損害が生じた場合に、それを保険金によって補填しようというものでございます。損害が発生した後の対応でございます。

 これに対しまして、機構は、事業に参画してリスクを軽減しようといたしますが、それは、その損害を現実化しないように、事前に発生を防止するために活動するものでございます。例えば、相手国政府と交渉いたしまして、相手国政府が出資先の合弁企業にとって必要な権限等を、許認可等を撤回しようとするようなときには、それを思いとどまるように交渉する、このような支援をすることを考えております。

 そのような意味で、貿易保険と機構との役割は、リスクに関しても異なるところがある、このように考えてございます。

寺島委員 ありがとうございました。

 そういうことなんでしょうけれども、多少、その相違を踏まえた上でも、今お話のとおりだと、海外輸出を支援する点では共通する部分もあるわけであります。したがいまして、機構とJICA、JBIC、NEXIは、現地事業体の支援に当たっては緊密な連携を図るということも必要だと思いまして、必要に応じて協力していくということも大事ではないかというふうに思っております。

 そこで、機構とそれぞれの機関との、では今度は連携ですね、相違に対しての連携はどのように図っていくおつもりなのか、お伺いできますか。

稲葉政府参考人 御説明申し上げます。

 機構とJBIC、JICA、NEXI等の関係機関との連携についてのお尋ねがございました。

 委員御指摘のとおり、実際のプロジェクトの実施に当たりましては、我が国企業チームの競争力を強化するためには、これらの関係機関が情報交換し、戦略を共有し、協力することが不可欠でございます。今後そのようなことを進めてまいりたいと思います。

 具体的な方法といたしましては、先ほど野上副大臣からも御説明がありましたけれども、分野ごとに官民の連絡協議会がございます。ここには、関係事業者、関係府省、それから、これらの関係機関の方にも入っていただいております。例えば、このような場を通じまして情報交換し、目標を共有いたしまして連携を密にしていける、このように考えてございます。

寺島委員 ありがとうございます。

 次に、機構の組織についてであります。

 財政制度等審議会に国交省が提出された資料によりますと、機構を組織する人材として、交通関係企業等に加え、商社、民間金融機関、国の職員等を専門的人材として確保することを想定しているということでございます。機構の具体的な組織づくりは今後のことになると思いますが、政府が目指す機構設立の目的、我が国の経済の持続的な成長に寄与する、これを達成するためにどのような方々が機構の運営に当たられるのかというのは、ある意味、重要なことであろうというふうに思います。

 そこで、機構を組織する際に、どのような条件を満たす人材を確保していこうと考えているのでしょうか。そして、国の職員として具体的にどのような人を派遣することを想定しているのか。国土交通省等のOBが機構の職員となることもあるのでしょうか、お伺いいたします。

稲葉政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、機構をつくった後、それがどのように運営され、どのような案件に対して出資していくか、これが極めて重要でございます。そのためには、その機構を運営するための経営陣、職員に、よい人を得ることが極めて重要である、欠かせない、このように考えております。

 機構の役員と機構の職員とで多少性格が異なると存じますけれども、機構の役員につきましては、インフラの整備、運営実務、あるいはプロジェクトファイナンス、法務、企業経営等について豊富な知識と経験を有する方々に御就任願うことを想定してございます。

 機構の職員については、機構の経営陣の御判断にもよりますけれども、金融機関、交通や都市開発の事業会社、商社、国等からの出向により必要な人材を確保することを想定してございます。

 例えば、国から出向する場合にどのような人材を派遣するかということにつきましては、機構の経営陣からどのような御要請があるかということにもよろうかと思います。

 なお、退職公務員を機構に受け入れることは考えてございません。

寺島委員 機構を運営するに当たって、効率的、効果的に運営するためには、まず人材確保というのが大事だというふうに思いますので、その意味においては、幅広い人材をしっかりと確保していくことが重要であろうというふうに思います。

 次に、対象事業等の定義についてでありますが、時間の都合で、ちょっとこれはカットさせていただきます。済みません。

 その次の、対象事業者及び支援内容の決定の透明性とか公平性についてお伺いしたいと思います。

 支援方策の一つとして、機構が行う対象事業者への出資については、機構と民間企業が共同して出資を行うというふうになっています。この共同出資する民間企業は、例えば、対象事業が新幹線であればJRだとか、都市開発であればゼネコンであるとかが考えられるわけでありますが、対象事業者は、いかなる企業が行えるのか。新幹線であればJRということに、関与する事業体であるわけでありますが、都市開発であれば建設事業専門というふうに想定がされるわけですね。

 そこで、このような共同出資をする民間企業と対象事業者の関係の場合、機構が出資することによって、共同出資する民間企業の利益誘導とならないのかということが懸念をされるわけでもあります。言うなれば、機構の出資とは、対象事業者ではなく、共同出資する特定の民間企業のために行われることとならないかということでございます。

 このようなことを防止するためにも、海外交通・都市開発事業委員会で行おうとしている対象事業者及び支援の内容の決定は、非常に重要な位置づけになっているんだろうというふうに思います。まさに、これらを国が認可するに当たって、慎重に行うことが望まれるわけでありますが、対象事業者及び支援の内容の透明性そして公平性の観点から、これらについてどのように行おうというふうに考えておられるのか、お伺いをいたします。

 続けて聞きます。

 二つとして、先般の新聞報道によれば、鉄道建設のコンサルタント会社が、ベトナムなど三カ国で受注したODA事業に絡み、相手国の政府関係者など事業関係者にリベートを提供していたという報道がなされていました。機構が行う支援についても同様な事案が発生しないとも限らないことから、その抑止のために、どのように行おうと考えているのかお伺いをし、さらに、国の公的資金を使って事業を行おうとしていることから、国民への必要に応じた適時適切な情報開示ということも必要であると考えますが、これらについてどのようにお考えなのか、お伺いいたします。

稲葉政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、出資の公正な意思決定について御質問がございました。

 委員御指摘のとおり、機構がどのようなプロジェクトに出資するか、これは公正に決定される必要があります。このために、この法律案におきましては、機構は公正中立な立場から対象事業者やその支援内容を決定する、これを担保するために海外交通・都市開発事業委員会というものを設けております。このメンバーは、代表取締役一名、社外取締役一名、その他の取締役のメンバー、合計三名から七名で構成されるということになっております。

 その上で、この委員会につきましては、委員はそれぞれ独立して職務を執行する、すなわち自分の判断で結論を出すということ、それから、決議に関して、その案件に対して特別な利害関係を有する委員がいれば議決に加えることはできないということ、加えて、この委員会の議事録は本店に備え置くこととされております。このようなことで、委員会による決定の公正さ、中立さ、透明性は確保されているものと考えております。

 次に、機構が行う支援における不正抑止のための方策についてお尋ねがございました。

 この法案の第四十一条に、賄賂の供与、申し込み、約束をした者は罰せられる旨、定められております。これは外国人であっても処罰されますし、また、国外で犯した場合でも処罰されます。このような条文が設けられておりますけれども、これらを含め、機構が支援を行うに当たりましては、不正が行われないように取り組んでまいりたいと思います。

 さらに、機構の情報開示についてお尋ねがございました。

 国のお金を預かる機構でございますので、情報開示は大変重要であると思います。

 その点につきましては、まず、機構の財務諸表などの計算書類等につきましては、会社法の規定に基づきまして作成し、公告することとなります。さらに、本法案の三十六条におきまして、機構の業務の実績等につきまして国土交通大臣が毎年度評価を行い、その結果を一般に公表することとされております。国土交通省は、この評価をきちんと行いたいと考えております。

 またさらに、政府全体で定めております官民ファンドの運営に係るガイドラインというものがございますけれども、ここにおきましても情報開示について定められております。この機構が設立されましたならば、このガイドラインに服するものと考えておりますけれども、いずれにしましても、このガイドラインの趣旨に沿いまして、適切な情報開示を行ってまいりたいと考えております。

寺島委員 同委員会の中立的な判断とか運営というのが非常に重要であろうと思います。そうしたことがきちんと担保できるように指導監督をすることが重要だというふうに思いますので、申し上げておきたいと思います。

 次に、機構は、現地事業体に専門的な知見を有する技術者、専門家を派遣することができるとしております。現地での事業が円滑かつ確実に行われるためにも、技術者、専門家の果たす役割は重要でありまして、専門分野における知識や経験の豊富な優秀な人材が必要であろうというふうに思います。

 関連する業種の企業、団体出身者が候補と考えられると思いますが、一方で、民間で成功しているような優秀な人材を民間は手放さないのではないかと思うわけでありますが、優秀な技術者や専門家が本当に集められるのかどうか、ちょっと私的には不安であります。

 技術者、専門家を集めることが可能なのか、また、そのような人材を、ではどういうところから、先ほどちょっとありましたけれども、集めてこられるのかということについて、ちょっと細かくお伺いをいたします。

稲葉政府参考人 御説明申し上げます。

 委員御指摘のとおり、この機構は、支援対象であります現地の合弁企業に役員や技術者等の専門家を派遣いたしまして、その合弁企業の運営を支援する、このようにしております。これはなぜかと申しますと、現地合弁企業の的確な運営を支援することでプロジェクト全体を成功に導くことができるからだ、このように考えたからでございます。当然、その際は、現地の事業に適した人材を確保することが重要になります。

 具体的にどのような人材かと申しますと、交通事業や都市開発事業の経営に十分な経験を有する方、あるいは、これらに関する高い技術を有する方を必要といたします。関係企業などから機構が採用し、あるいは機構に派遣を求めることによって確保してまいりたいと考えております。

寺島委員 次に、技術流出ということについてであります。

 これはぜひ大臣にお考えをお聞きしたいんですけれども、我が国は、御案内のように、世界一の技術大国だと言われていて、私もそのように思っておりますし、また、今日まで蓄積された経験と技術の中には、世界に誇る、世界最高の技術もあると思うわけであります。

 これから、それぞれの企業は思う存分、技術力を持って、交通あるいはまた都市開発事業を海外展開するんだろうというふうに思います。そのことは大変結構なんですが、他方で、一抹の懸念もあるわけであります。せっかく長い間蓄積してきたさまざまな技術を、一瞬とは言わないんですけれども、海外に出してしまうことになるわけであります。例えば、最高の技術が海外の他の分野に利用されるようなことがあれば、将来において国内経済や国内の雇用にまで影響があり、その上においては国益を損なうことにはならないかということであります。

 したがって、こうした事態に至らないような手だてをした上で、我が国の豊富な経験や技術が十分に発揮される事業展開が安定的に継続されるように配慮することが重要であると考えるわけですが、大臣のお考えをお聞きいたしたいと思います。

太田国務大臣 これは大変重要な問題だと思います。

 これまでも、新幹線など鉄道におきましても、そしてまたダムの工法ということにおきましても、これから都市開発ということがこれに加わっていきますから、そうしたことになりますと、住宅のつくり方から、スマートシティーをつくっていくということにおいても、日本のすぐれた環境技術というようなことが、合弁をつくりますから、余計にこの流出するということが大変懸念をされているというふうに思います。

 民間レベルでというのと政府間においてという両方の縛りが必要だというふうに思っておりまして、民間では、機構が我が国企業と共同して、合弁の現地事業体を、出資して合弁をつくる、そのときに、必ず各企業の知財戦略というものを重要視して、相手国の合弁事業者との間で適切に契約を入れていくということ。

 そして、国という政府間におきましても、個々のプロジェクトに係る知的財産の取り扱いに関する協議というものを明確に、知財の協議というのを行うという、この民間レベルと政府間という両面において、ここに技術流出の起こらないように対応するということが重要だというふうに思っております。

寺島委員 国益ということを考えると、大臣のおっしゃるとおりだというふうに思います。

 かつて、何とは申し上げませんけれども、例えば、いろいろな家電でもそうですけれども、日本が何十年とかけて開発した技術が、もちろん、安くつくりたいという企業意欲があられるわけなんでしょうけれども、海外に出ていってしまう。終わってみたら、日本ではほとんどつくっていなくて、海外でつくっている。振り返ってみたら、雇用は減っちゃって、日本経済にも影響するというようなことに、大上段に構えますと、そんなふうにも考えられるのかなというふうに思いますので、そういう点にどうぞ御留意をされて、お願いをいたしたいというふうに思うわけであります。

 次に、川上から川下に至る一貫した取り組みへの支援という観点から大臣にお伺いいたしたいと思います。

 我が国では、プロジェクトの調査、設計や施工の段階、物品の調達段階では、技術面での競争力、実績を有する主体が要るわけでありますが、一番の川上であるプロジェクトの構想段階、あるいは川下である施工後の管理運営段階においては、欧米とか中韓との間では十分な競争力を有する主体は質、量ともに少し不十分ではないか、このように指摘をされております。

 このため、インフラシステム輸出戦略では、我が国の先進的な技術を生かした機器の売り込みや建設・プラント事業の受注といった、いわゆる川中での取り組みのみならず、案件発掘、あるいはまた形成等、川上や、施設の運営、維持管理、サービスの対価徴収といった川下に至る一貫した取り組みに対して支援を行い、新たな案件を受注につなげていく必要があるというふうにしております。

 そこで、お伺いしますが、交通事業及び都市開発事業の海外展開を図っていくに当たりまして、本法律案により設立されるこの機構は、案件発掘、形成から運営、維持管理に至る各過程において、どのような役割を担うことになるのでありましょうか。また、特に案件発掘において、外務省あるいは大使館や経済産業省との役割分担ということが大事だと思うわけでありまして、どのように図られるのか、お伺いをいたします。

太田国務大臣 このプロジェクトは、まさにいいプロジェクトを発掘する、そして、そこでのリスクというものを低減させる、そうしたことが極めて重要だというふうに思っておりまして、先生おっしゃるとおり、まず案件の発掘、形成の段階で、在外公館を中心にして、JICAとジェトロ、商社などが情報収集を実施して、案件の形成に向けた情報の共有ということがまず第一に極めて重要だと思います。

 今度は、事業が実施されるということにおきましては、機構は現地事業体に対する出資及び事業参画等を行うわけですが、このときに、融資を行うJBICとの密接な連携ということが、同時にその時点で出てくるということになります。

 非常な、自然災害リスクであるとか政治リスクとか、あるいは商業リスクという、いろいろなことの低減を図っていくということが極めてこの事業では大事でありますので、その点、今御指摘いただきましたように、国交省は、関係する外務省とか財務省とか経済産業省、こうしたこととの連携もしっかり図っていくというような、さまざまな段階に応じた手を打っていかなくてはいけないということを強く思っているところです。

寺島委員 ありがとうございます。

 次に、機構の存続期限についてであります。

 官民ファンドは、一般的に存続期限が定められているわけであります。例えば、産業機構及びPFI機構の存続期間はおおむね十五年、クールジャパン機構の存続期間はおおむね二十年とされております。

 また、日本再興戦略の中では、国の関与によるモラルハザードを防止する観点から、官民ファンドによる公的支援の指針が示されているわけでありまして、「ファンドの存続には期限を設け、個別の投資案件は時間軸を設定し、民間に適切に引き渡すことを前提とする。」とされているわけであります。しかし、今回の機構について、存続の期限が設けられておりません。

 そこでお伺いいたしますが、機構について存続の期限を設けないこととした理由は何でしょうか。永続性を前提としているのでしょうか。官民ファンドが民間投資の呼び水としての役割であるならば、一定期間後、民間に引き渡す必要があるのではないかと考えますが、民間に引き渡すことを想定しているでしょうか。機構の将来的なあり方についてどのようにお考えになっておられるのか、大臣に伺います。

太田国務大臣 今回、交通・都市開発ということをテーマにしておるプロジェクトでありますものですから、これはかなり長期のプロジェクトになるということがございます。これは二十年とか三十年以上にわたるという、町をそのまま開発するということになりますと、かなり長期にわたるということがございまして、それが一つ、存続の期限を設けないという理由でございます。

 そしてまた、そのやっているプロジェクトの期間について、かなり相手国政府との信頼を醸成しながら出資と事業参画を行うというような、ずっとつなげていって、信頼がそのまま残っていくということが極めて重要でありますものですから、その点もございます。

 ただし、そのことの留意点はありまして、これにかわる措置として、五年ごとに、機構の組織及び業務のあり方など法律の施行状況について検討を加えて、その結果に基づいて必要な措置を講ずる旨の規定、附則第四条を置いているところでございます。この際に業務が完了したと判断されれば、これは解散ということになります。

寺島委員 わかりました。

 時間がありますので、カットした対象事業の定義についてお伺いしますが、大丈夫ですか。三番目か四番目に戻ってもらいたいんですけれども、いいですよね、通告してありますので。

 機構が支援する対象事業は、海外において行われる交通事業もしくは土地開発事業またはこれらの事業を支援する事業とされています。例えば、水道事業は支援の対象となるんでしょうか。

稲葉政府参考人 御説明申し上げます。

 機構の支援対象事業についてお尋ねがございました。

 上水道事業は、現時点では機構の対象事業に含まれてございません。

寺島委員 もしおわかりになるのであれば、その理由をお聞かせいただけますか。

稲葉政府参考人 現時点で機構の対象に上水道事業を含めていない理由は、海外事案の実態あるいは民間企業のニーズ、これらを見た結果、現時点ではこの機構の対象とする必要性がないと考えたためでございます。

 もし将来、具体的な案件が出てまいれば、関係省庁とも協議の上、対象に含める可能性について検討してまいりたい、このように考えてございます。

寺島委員 今の議論をしているのは、大体、国土交通省のものがほとんどなんですけれども、ある意味では重要ではないかというふうに思いますので、ぜひ、各省庁間で連携を図られるということが大事だと思いますので、検討の方をよろしくお願いします。

 そして、今度つくられる機構については、機構が支援する事業については、いわゆる収益が余りすぐには見通せないというような事業について支援をするというふうに承っております。つまり、ハイリスクなわけですね。そういう事業について機構が支援をしよう、こう相なるわけでありまして、つまり、ハイリスクということは、相当の覚悟を持ってやっていただかなければ、なかなか難しいんだろうというふうに思います。

 そういうこと、人材の問題、あるいはまた運営の問題等、海外で行われることでありますので、なかなか管理監督ということもあれなんでしょうけれども、さはさりとて、株式会社とはいえ、国土交通省がしっかり責任を持って監督していくということがまさに重要だというふうに思いますので、その指摘をさせていただきまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

梶山委員長 次に、松田学君。

松田委員 日本維新の会の松田学でございます。

 よく最近の日本をあらわす言葉として、課題先進国という言葉があります。これは、日本が世界で最初に人類共通の課題に直面する国である、そういう意味での先進国になったと。課題を最初に解決した国は、その分野で世界一、ナンバーワンをつくっていけるんだという意味で、非常に前向きの日本をあらわす今の現状ですが、そういった中で、日本の課題というのは、世界に応用できる課題というのは、それぞれいろいろなものがあると思います。

 私は、日本のリーダーシップというのは、どういうものが世界共通の課題なのかを日本がみずから定義するというか、アジェンダ・シェーピング・リーダーシップといいますけれども、それを解決するモデルをつくるモデル・ビルディング・リーダーシップ、そしてそれを世界とコラボレーションして世界の課題解決に向かっていく、この三つぐらいのリーダーシップがこれからの日本のリーダーシップじゃないかと常々思っているんです。

 そういった意味で、インフラの面も世界じゅうのいろいろな課題解決というものが入っているわけですから、私は、こういったものをつくるというのは大変意義があるものだというふうに、基本路線はそうだと思います。

 ただ、この課題というのは、それぞれ多様な課題というのが生じるわけなので、何も交通とか都市整備に限られない。それこそ、どういう課題が起こるかわからない。特に、これからは、アジア全体で共通の課題、解決しなきゃいけない分野というのは、環境から資源エネルギーから医療も含めて、いろいろな分野に拡大していくわけなので、私は、どうせこういうものをつくるのであれば、もう少し政府で統合的な司令塔みたいなものをつくって、そのもとにいろいろな分野の課題解決があり、いろいろな分野のインフラ、海外インフラ輸出というものがあり、そしてそれぞれの支援体制があるということで、日本は、戦後システムというのは省庁主導の、どちらかというと中央分権システムだと言われてきたんですが、どうも今回の機構の誕生の仕方を見ても、省庁主導でできてきているなという感じが否めないわけであります。

 その点では、順番からいえば、全体があって、国家の戦略があって、その中に国交省所管のこういうものもあるというのが、最初にこれが出てきてというのはちょっと順番が違うのかな、そういう違和感が否定できないという面はあろうかと思います。主として、こういった観点からいろいろな質問をさせていただきたいと思います。

 まず、一般論として、こういった海外インフラ投資というのはいろいろな分野があると思うんですが、国があえてカバーすることになじむリスク特性が何であるかというふうに理詰めで考えていった場合に、交通と都市整備という分野に特定されることには普通はならないというふうにも考えられるわけですが、交通や都市整備が有するリスク特性というのは、他のインフラ分野とどういう違いがあるのか。あるいは、海外にも、交通とか都市整備とかに限定したような、こういった似たような仕組みというのはあるのか。その辺の理屈について、ちょっと教えていただければと思います。

稲葉政府参考人 機構の支援の対象となる分野の特性についてお尋ねがございました。

 機構は、交通事業及び都市開発事業を支援対象分野としておりますが、これらの分野は長期の整備期間があるということ、それから、運営の段階に入りますと需要リスクがあるということ、それから、現地で長らく事業をいたしますが、その間、現地政府の影響を受けることが大きいということ、このような特性があると考えてございます。

 また、外国の同様のインフラファンドの事例についてお尋ねがございました。

 海外の事例を探しますと、中国、韓国、シンガポール、それから欧州諸国に、それぞれの国の外のインフラ事業に出資を行うような政府出資機関が存在いたします。その対象分野を見てみますと、分野も限定されていることもございますし、地域、対象国が限定されていることもございます。限定がない場合もございます。そのように、対象はさまざまである、このような現状であると考えております。

松田委員 アジアのインフラ投資でも、エネルギーとか電力とか、そういった分野がすぐ思い浮かぶところでありまして、いろいろと国交省からもお話を聞いたんですが、電力というのは需要の予測ができる、交通とか都市開発の分野というのは需要の予測が非常に困難で、リスクというのがなかなかつかみにくいんだという説明も受けたんですが、いわゆるリスクテークの必要性、あるいは投資採算性といったものでやるかやらないかというのは、私は、そもそもこれは国家の外交戦略とか、そういうものと密接に絡んだスキームの中で考えていくべき問題ではないかと。そう考えていくと、資源開発であるとか、あるいは、最近では病院インフラ輸出というのも、これもいろいろな所管にまたがる、省庁横断的な発想というのがもともと必要ではないかと思うわけですね。

 今回、同じ都市開発でも、先ほども質問が出ておりましたが、水道が、上水道は入っていなくて、下水道は都市開発だから入っている。これもまさに省庁縦割りでやっているということの、広く言えば示しているような感じもします。上水道は厚労省所管であるということになるわけなんですが、どうもこの辺の、もともと戦略性があって、そのもとにやっているというようなあれが見えないんです。

 大臣にお尋ねしたいんですが、政府全体として、最初からこういった大きな、広く対象をとって、こういう仕組みを考えるなら考える、こういう順番で、安倍内閣を構成する一閣僚としてのお立場でちょっと御答弁いただきたいんですが、その方がよろしいんじゃないかという気がするんですが、いかがでしょうか。

太田国務大臣 十兆から三十兆という目標を安倍内閣で掲げまして、そして、昨年の三月からだったと思いますが、経協インフラ閣僚会議というのを開くようにして、関係閣僚が集まって会議体をつくって、随時いろいろなテーマに従って論議をしてきました。今回のこの機構につきまして、交通と都市開発ということになりましたのは、それ以前からかなりこの分野については、寺島先生から話はありましたが、ずっと議論をして詰めてきたということがございます。

 ただ、閣僚会議で、例えば今、上水道の話がありましたが、これは極めて日本はすぐれていて、そのまま水道の水を飲める、そういうことは技術の最先端ということになる。同時にまた、漏水が極めて少ないということが、日本の水道管の技術というのが極めてすぐれているということにもなって、これを輸出しようという試みも当然なされているわけです。

 これを担うのは、横浜市なんかはそうなんですが、横浜市と東南アジアの何々市とかいうことで、担う主体が地方自治体、特に大きな地方自治体ということがありまして、これをどういうふうに支援をしていったらいいのかという、そうした取り組みということについては今なされていて、閣僚会議でも行われています。

 ただ、先行的にこうしたことを我々としてはやってきたということがありますし、そういう意味では、もともと機構の今回の支援対象は、当初は必ずしも国土交通省の所管分野に限定するものではなくて、幅広い検討をし、そして昨年から安倍内閣におきましても、幅広い経協インフラ輸出というものが大事だという認識を持って議論をしているところであります。

 まずは、その結果、都市及び都市開発分野において、新興国を中心にして多数のプロジェクトが具体化しつつあり、しかも、世界から、ある意味では集中的にそこにもう既に行われて、激しい争奪戦があり、ODAということで下物はつくったけれども、運営とかそういうことは全部とられてしまっているというような現状もある。

 ここは、そうした論議の詰めというものもありまして、そして、新興国を中心に多数のプロジェクトが具体化して、今激しい競争にさらされているということもありますものですから、今回は、整備が長期にわたって、運営段階の需要リスクがあること、現地の政府の影響力が大きいなどの特性を持つこの分野ということについて、民間だけでは参入が困難であるということを受けて、早く手を打たなくてはいけないということもございまして、今回はこういう形でスタートをさせていただいている。

 問題意識は十分、これは本当に全体のものがありますが、それをまたやると動きが余りに遅くなって進んでしまってはならないということもありまして、まず今回、ここの分野においてスタートをさせていただきたいということでございます。

松田委員 ありがとうございます。

 安倍政権は、国家という言葉が大変お好きな、国家戦略特区とか、地方のやるところについてまで国家戦略というのが出てくるので、むしろこういうことこそ国家戦略という名にふさわしい分野だと私は思いますので、今大臣の方からありましたように、今、緊急性に迫られてこういうものをつくると。まさに日本の国は状況対応型、後手後手に対応してきている一つの事例になりかねないのではないかという心配もありますので、そこは、国家戦略としての海外インフラ支援をどうするかという発想をこれからぜひ持っていただきたいというふうに期待をしたいと思っております。

 それで、これと関連してなんですが、ちょっと国交省の所管から外れる話に入りますけれども、いわゆるソブリン・ウエルス・ファンド、国富ファンドというのが、特にリーマン・ショックの後、非常に大きくなりまして、運用資産にして、世界全体で二から三兆ドルぐらいある。

 アジア諸国の場合は外貨準備というものを原資としている場合が多い。あるいは中東諸国やノルウェーなんかは石油といった天然資源収入を原資にしているということがあって、そういったソブリン・ウエルス・ファンドとしては、例えば、アブダビ投資庁であるとか、シンガポールの政府投資公社であるとか、中国投資有限責任公司であるとか、いろいろなものがあるわけですね。そういったところが、いわゆる通常の金融商品の運用だけではなくて、プライベートエクイティーやヘッジファンドなんかにも投資している。インフラについても、エネルギー分野なんかは結構多いということなんです。

 ただ、いろいろな問題も指摘されていて、情報開示が少ないとか、あるいは政治的な、外交的な手段として使われるとか、市場のルールとは異質であるとか、そういったいろいろな議論が行われてきたんですが、最近、このソブリン・ウエルス・ファンドに対して規制強化論もいろいろ聞かれたんですが、国際的な議論の場でどんな議論になっているのか、ちょっとお聞かせいただければと思います。

岡村政府参考人 ソブリン・ウエルス・ファンドの国際的な議論の動向についてお尋ねをいただきましたので、金融庁からお答えを申し上げます。

 ソブリン・ウエルス・ファンドにつきましては、松田先生御指摘のとおり、国際金融システムのますます重要な参加者となってきているという共通な認識のもとに、二〇〇七年の秋と、それから二〇〇八年の二月でございますが、G7の財務大臣・総裁会合で議論されまして、それを受けて共同声明が発出されたわけでございます。それを受けまして、二〇〇八年の十月にIMFが、政府系ファンド、ソブリン・ウエルス・ファンドに係る行動規範・慣行に関する原則合意というものを策定しております。これは原則合意ということでございますが、ソブリン・ウエルス・ファンドについての透明性の向上でございますとか、あるいは組織構造、リスク管理、説明責任などにつきまして、そのベストプラクティス、最良慣行を定めているというものでございます。

 この原則合意が今も生きているということでございまして、ただ一方で、規制強化という意味での、G20や金融安定理事会などで、直接的にこの活動を規制しようというような議論については承知しておらない、国際的に行われているということを承知しておらないということでございます。

 以上でございます。

松田委員 恐らく、ソブリン・ウエルス・ファンドというのが、それなりに世界経済の発展に大きな役割を果たしている、最初は脅威論がありましたけれども、今はかなり大きな役割を果たす存在として、各国とも、こういうものは機能しているという状況がだんだん定着しているんじゃなかろうかというふうにも想像します。

 その中でも、日本の国というのは、長年にわたってアメリカに物を輸出して、それで稼いだお金をアメリカにまた、いわゆる米国債を買って、金の面でも物の面でも一生懸命アメリカに供給して、アメリカは日本から供給された物と金で高い生活水準を営んでいる。アリとキリギリスの物語というのがありますが、アメリカは得をしているキリギリスで、日本は損しているアリだという話をよくしてきたんですけれども、最近は、いわゆるアジア新興国もそういう状況になって、経常収支の黒字がどんどん膨らんで、それをアメリカの米国債に投資してきた。ただ、米国債に投資してきてもこれは決して有利な運用ではない、むしろアジア域内の社会開発に投資した方がいいだろうというような議論もいろいろあったように思います。

 そういった中で、例えばシンガポールではGICというところが、米国債よりも有利な分散投資、外貨準備の分散投資を求めてソブリン・ウエルス・ファンドをつくった。あるいは、中国のCICといったところは、外貨準備資産の投資先の集中リスク、為替リスクを回避する、ヘッジするということでソブリン・ウエルス・ファンドをつくったということなんですが、日本の外貨準備については、そういった議論というか、必要性についての議論というのは全く行われていないんでしょうか。これは財務省だと思いますが。

山崎政府参考人 一般的に、ソブリン・ウエルス・ファンドは、ちょっと例に挙げられた、例えばGICのように財政余剰を財源としたり、あるいはアブダビ投資庁のように原油収入を財源にするなど、基本的には負債を伴わない純資産を財源とするなどして、ある程度収益性の高いものに重きを置いた運用をしておるわけでありますけれども、これに対しまして、我が国の外国為替資金特別会計の外貨資産、これは、政府短期証券を発行いたしまして調達した円貨を、介入で、市場で売却した対価として外貨を保有しているものでございまして、いわば負債を伴うものでございます。

 したがいまして、この外貨資産は、外為法に規定する外国為替相場の安定のために保有しているものでありまして、その運用においては、安全性及び流動性に最大限留意した運用を行い、その制約の範囲で、可能な範囲で収益性を追求する、こういう運用を行う必要があるものと考えております。

松田委員 おっしゃるとおりで、日本の外貨準備はこれだけあるんだから、どんどんいろいろなことに使えばいいという俗論がよく出るんですが、日本の場合は、今ありましたように、政府短期証券で、負債を建ててアメリカ国債を買っているということなので、それは簡単にほかに使えるお金ではないということだろうと思います。

 そういった意味で、今回、この機構も財源というのを産投出資に求めているというのは、そういうのは非常に理解できるところなんですが、一方で、こういった資金ということで考えていくと、年金資金というもの、これは日本も相当な年金資金があるわけですが、そもそもこういった海外インフラというのは長期の投資なので、調達側が長期で運用側も長期というのは合理的という意味では、まさに年金資金こそこういったものになじむんじゃないかという観点もあろうかと思うんですね。

 日本の場合、その年金基金の運用がどうも国債に偏っているということは常々指摘されてきたことなんですが、例えばアメリカの投資ファンドなんかを見ますと、これはコールバーグ・クラビス・ロバーツというところなんですが、集めた資金の半分以上が年金基金であるという話もあります。日本の公的年金は、一切、オルタナティブ投資、プライベートエクイティーだとか、そういったところには投資してこなかったんですけれども、どうもリクイディティーに偏っていて、短期であって、しかも運用利回りが低い。これに対して、プライベート・エクイティー・ファンドの場合は投資期間が結構長くて、そういったプライベート・エクイティー・ファンドに出資している投資家のかなりの部分が公的、私的年金であるというのが、諸外国では結構見られている。

 例えば、イギリスの英国年金保護ファンドというのは、不動産やプライベートエクイティー、インフラというのは当然の運用対象になっていて、最近は農地とか森林とか、そういったところまで入っているという話なんですけれども、こういったオルタナティブ投資というものについて、もう少し日本の年金も考えていいんじゃないかという気がしないでもないわけであります。

 そういった意味で、そもそも年金というのは、私は、産業投資というものが本当は基本にあるもので、国民経済の成長の果実を分配するのが年金だという考え方をもう少し取り入れていくべきだということも考えていきますと、世界最大の機関投資家であるGPIF、この資金を日本の国の国家戦略というか、そういうものに活用していくということの一環で、先般の新聞報道で、IFCと協調して海外インフラ投資に活用するというような報道もありましたが、この年金資金をこういった分野に、海外インフラに活用していくことについてどういうお考えをお持ちか、お聞かせいただければと思います。

藤井政府参考人 お尋ねの、年金積立金の管理運用につきましては、厚生年金保険法等に基づきまして、専ら被保険者の利益のために安全かつ効率的に行うものとされておりまして、運用に特化した専門の法人でございますいわゆるGPIFに寄託して行っておるところでございます。

 御指摘の海外インフラ投資を含めまして、運用対象の多様化につきましては、あくまで分散投資効果によります運用リスクの低減を期待して行われるものでございまして、専門的な観点からGPIFにおいて検討されるものでございます。

 ただ、やはり、年金積立金は強制的に徴収をいたしました保険料の一部でございまして、将来の年金給付の貴重な原資となるものでございますので、その運用につきましては、いわゆる受託者責任等の観点から、被保険者利益以外の他事考慮と申しますか、ほかのことを考慮するようなことは法律で禁止をされておりまして、専ら被保険者の利益のために、公的年金事業の運営の安定に資することを目的として行うものとされているところでございます。

松田委員 OECDなんかも、年金ファンドといった機関投資家は調達が長期なので、運用は長期が合理的だということなので、オルタナティブ資産を中心とした投資の多様化というのを提言しているようでありますので、日本もこういった分野に年金資金、長期資金を主導的な立場に立たせるということを、もう少し考えてもいいんじゃないかというふうに私は思っております。

 一方で、日本の銀行が、最近は世界のインフラ共同主幹事ランキングで結構上位を占めているということでありまして、プロジェクトファイナンスは量的には世界トップクラスであるということも指摘されておりますが、かつて日本の銀行というのは量的にばんばん拡大して、果たして、必ずしも収益性が高かったかどうかとか、いつもそういう議論があるんですけれども、それなりの運用成果、リターン、パフォーマンスを上げているか、欧米金融機関と比べてどうかについて、お答えいただければと思います。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、プロジェクトファイナンスに係ります主幹事の引き受け総額のランキング、いわゆるリーグテーブルにおきまして、我が国の三メガバンクは、近年、いずれも上位を占めているものと承知をしております。

 お尋ねの、プロジェクトファイナンスにおける運用成果やリターンの状況及びそれらに係ります欧米金融機関との比較については、一概に申し上げることは困難なのでありますけれども、一般に、海外におけますプロジェクトファイナンスは、欧米金融機関も含めまして複数の金融機関の間で組成をされますので、我が国の金融機関のみが特に不利な条件で案件を獲得しているということは考えにくいかと考えております。

 また、国際業務におけます貸出利ざやは、国際業務特有のリスクが勘案される必要はあると考えますけれども、一般に、国内の業務における貸出利ざやよりも大きいものとなっているというふうに承知をしております。

 いずれにしましても、我が国の金融機関におきましては、プロジェクトファイナンスを通じたインフラ整備に対する支援など、我が国の主要行ならではの金融サービスの提供を期待すると同時に、適切なリスク管理、リターンの確保等もあわせて求めてきているところでございます。

松田委員 今、大変力強い答弁がありましたが、国内より、むしろ海外のプロジェクトファイナンスの方がもうかっているというのは、これはどんどん民間の金融機関に、こういうところに協力してもらう可能性があるということで、日本の国内は今長期金利も低い、アベノミクスで無理やり市場の長期金利を抑えているぐらいなので、利ざやが私も大変心配なんですが、海外であれば、そういった収益機会もあるということかと思います。

 ちょっと話題をかえまして、官民ファンドというのが最近どんどん設立されている。日本維新の会は、この官民ファンドが乱立されることに対して大変ネガティブな立場をとっているんですが、先般もクールジャパン機構ができまして、今般も官民ファンドということですけれども、政策ツールとして、この官民ファンドというものの存在意義とか、あるいは政策ツールとしての効果、評価についての政府の見解をお伺いしたいと思います。

稲葉政府参考人 政府の見解を国土交通省が申し上げるのも適当かどうかわかりませんが、御質問の点につきましてお答えしたいと思います。

 先生おっしゃいますとおり、最近、さまざまな政策目的を実現するために官民ファンドが設立されております。今御提案しておりますこの法案で設立される機構も、そういう意味では一種の官民ファンドに分類されようかと考えております。国土交通省の立場から見ますと、それぞれの官民ファンドにはそれぞれ目的がございまして、それに応じた出資を集めて設立されている、このように映ります。

 また、この官民ファンドに対して御批判、御指摘があろうかと思いますけれども、昨年九月に、関係閣僚会議におきまして、官民ファンドの運営に係るガイドラインが決定されておりまして、政府全体としては、このガイドラインに従って、いわゆる官民ファンドの活動をチェックしていく、このような体制になっていると承知しております。

松田委員 私は、官民ファンド、日本の場合は、本来は、リスクテークというのは民間がやるのが基本だけれどもということなんですが、やはり日本には必然性があると思っています。

 先ほども御答弁ありましたように、年金が非常に保守的な考え方でなされている限り、年金資金が出てこない、リスクテークが出てこない。一方で、日本では、長年にわたって銀行の方は護送船団方式で国がリスクテークをしていた。預金者、家計、個人はリスクテークのマインドが全くない。こういったところで本当にリスクテークをするには、ある程度、官がリスクを分担していかないと、実際はなかなか投資が起こらない。これが日本の実態ではないかと思いますので、そういった意味で、ある程度日本には必要じゃないかなというふうな気はしております。

 そこで問われるのが、本当の政策効果、存在意義ということなんですが、今回、この機構をつくる際に、やはり問題意識として、これまで欧米とか中国、韓国との受注競争に日本が結構負けてきたということがあると思うんですね。ですから、この機構があればこういうことが起こらなかった、日本がとれたというような事例にも即しながら、本機構があるとどうなるのかということについて、ちょっと御答弁いただければと思います。

稲葉政府参考人 御説明申し上げます。

 仮定の話ではございますけれども、もし機構が存在したのであれば、また違った結論になったかもしれないという事案を、一例御紹介申し上げたいと思います。

 これは平成十三年の事案でございますけれども、タイのバンコク地下鉄ブルーラインでございます。バンコクで初めての地下鉄でございました。

 この地下鉄につきましては、トンネル工事等の土木工事部分は円借款により建設されました。日本の企業が建設いたしました。

 一方、そのトンネルの中を走る車両、機器、それから運行システムの調達に関しましては、日本企業を含む企業グループが最終的には優先交渉権までは獲得いたしたわけでございますけれども、しかしながら、最後の段階でドイツ企業に案件を持っていかれております。

 この間の事情につきましては、優先交渉権を獲得した日本企業グループが、タイ側と出資等の条件をめぐって交渉しておりましたが、なかなか合意に至らず、先方から交渉が打ち切られた、このように伝えられております。

 仮に当時、機構がありましたならば、出資等の条件交渉はもっとスムーズにいった可能性があると考えております。

松田委員 この機構、先ほども質問が出ていましたが、なぜこの機構が絶対必要なのかといったときに、既に日本にはJBICがあるではないか、あるいはJICAがあるではないか、いろいろな議論があると思います。私は、もともとこのJBICというのは、もう少しリスクテークに向けて機能を強化してもよかったんじゃないかというふうな思いがずっとしています。

 昔、バヌアツのある植林事業、これは日本の民間事業家の方が二十年かけて植林をしたんですが、せっかく育てたところを中国がお金を出してかっさらっていく。JBICにもいろいろ言ったんですが、スキームがないということで、もう少しJBICが前に出てくれば、例えば、日本にとっても貴重な木材資源を確保するという国家の戦略にも資するわけですし、地球環境保護という面でも日本は大きな貢献ができる。いろいろなそういうチャンスを日本が失っているなという感じが非常に、つくづく感じたことがありまして、中国に奪われてしまうぐらいだったらJBICが出した方がいいんじゃないかというようなことも思うわけなんです。

 本機構の設立の前に、まず、JBICも出資機能を持っていますね。これも本機構ができると融資で関連してくるというんですが、出資と融資を同じ機関がやるのは利益相反だということで、だからこの機構が出資機能を別に持たなきゃいけない、そのために別の組織が必要だという説明を受けているんですけれども、しかし、市場、いわゆる民間金融機関であれば、そういうことは確かにそうかもしれませんが、国家が司令塔をつくって、そこで決めたことに対して、本当にそこまで、利益相反というのは言われることなのかという気もしないではないんですね。

 だから、どうしてもJBICではできない理由について、もう一度、ちょっと整理をした答弁をいただければと思います。よろしくお願いします。

中原大臣政務官 お答えをいたします。

 プロジェクトファイナンスにおきましては、出資者は低い金利で借り入れたいと考える一方、融資者は高い金利で貸し付けたいと考えるなど、出資者と融資者は利益相反が生じやすい関係にあります。このため、同一機関が両者を兼ねることは望ましくないという考え方が一般的であると承知しております。

 したがって、金融機関であるJBICとしては、あるプロジェクトに融資を行う場合に、同じプロジェクトに対して、機構のような事業参画を前提とする出資を行うことは困難であると理解しております。

 御指摘のとおり、JBICと機構は、いずれも政府が株主となりますけれども、それぞれが独立して組織として意思決定を行いますので、基本的に利益相反の問題は生じないと考えております。

松田委員 JICAの方でも、いわゆる海外投融資機能といいますか、最近はそういうのがあるということでもあります。

 これは、一つの事例として港湾事業を考えてみた場合、港湾設備については国がやる、JICAが円借款で対応する、この運営については民間の会社があって、これは本機構が対応するという形での一種の役割分担があって、民間がやることについてはJBICも絡んでくるというようなことなのだろうと想像されるんですが、こういった、官民一体で海外プロジェクトを支援するというのは、各国それぞれの体制があろうかと思います。

 アメリカやフランスや中国というところでは、国家に発展何とか委員会とかそういう委員会があって、そのもとにいろいろな公的金融機関がバックアップしていくというような体制がとられているようです。それから、ドイツなんかでは経済協力開発省というところがあって、KFWといいますか、クレディトアンシュタルト・フュア・ビーダーアウフバウ、いわゆる復興金融公庫というのが、これは有名な公的金融機関ですが、その復興金融公庫グループというのがいろいろな機能を果たして、一方でユーラーヘルメスというところが投資保険でリスクカバーをしているとか、そういった体制が組まれて、その司令塔みたいなものはちゃんと政府にあるというようなことになっているかと思います。

 本機構ができますけれども、全体像、こういった海外プロジェクト支援を、政府全体としての体制として、どこが全体を整合的に設計し、調整していくのか。どういう体制になるのかについて、いま一度、その姿についての明確な御答弁をいただければと思います。

小澤政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど大臣からも言及がございましたとおり、政府としての、一体としてインフラの輸出、重要資源の獲得、それから経済協力、これらを統合して話し合う場としまして、安倍政権のもと、昨年の三月に経協インフラ戦略会議を立ち上げました。そのもとで、これまで九回開催しておりまして、会議においては、国別に、例えばミャンマーとか、そういう国・地域別の課題と、それから、第五回にやりましたけれども、日本方式普及のためのODAなどの活用といった事項別、分野別の課題を選定して、関係閣僚間で取り組み方針を議論してきております。

 それから、先ほど大臣からも言及がありましたけれども、昨年の五月にインフラ輸出戦略というものをつくりまして、それに基づきまして、二〇二〇年までにインフラの輸出を二〇一〇年の十兆円から三十兆円に拡大するというための目標と、それから、その手段としての戦略をつくりまして、その達成ぐあいを定期的にレビューするという形になっております。

松田委員 ぜひ政府の司令塔を機能させて、そのもとに、こういった機構が他の機関と整合性をとりながら、いろいろな政策金融機関とも連携をとっていく姿が見えるようにしていくというのが私は大事だろうと。先ほども申し上げましたけれども、改めて強調させていただければと思います。

 最後に、ちょっと大臣にお伺いしたいんですが、日本の国は、先ほど私は、課題先進国であるというのが日本の強みだというふうに申し上げました。例えば都市交通でも、やはりそういう面があろうかと思います。

 既にアジアでは大都市への人口集積が大変進んでいて、いわゆる人口爆発都市といったものがあちこちにある。そこでは、道路渋滞、交通事故、排ガス問題、エネルギー消費の問題、いろいろな問題があって、道路投資は進んでも、それ以上に車がふえていくということで、なかなか難しい問題がある。そこで、道路や自動車主体から鉄道への転換が求められているということがあるわけですが、一方で、鉄道投資がなかなか進んでいないわけです。

 これに対して、東京圏では人口が三千万人、路線の長さが二千五百キロ、一日当たりの利用者が四千万人という東京圏の鉄道は、人類史上最大のものであるという指摘もあります。また、その運営についても、質的にも世界最高水準の鉄道ネットワークがあるということで、新興国の各国は、この東京圏の鉄道ネットワークに大変大きな信頼と憧れといいますか、そういうものを持っているという話も聞いております。

 ただ、一方で、鉄道事業については厳しい国際競争もあって、中国や韓国に日本が必ずしも勝ってこなかったという指摘もあるわけでございまして、新興国各国は、鉄道ノウハウというような、いわゆる細部にわたって、個別具体的な提案や実行、運営というところに関心がある。ある意味で、日本が輸出する場合はターンキー方式がいいんじゃないかという説もありますけれども、そういった都市鉄道の強みを生かしていくということもあろうかと思います。あるいは、都市整備にも同様な問題もあろうかと思いますが、こういった点についての大臣の御所見を伺えればと思います。

太田国務大臣 現実に、東南アジア諸国に行ってきますと、日本の鉄道は極めて正確で、時間どおり。もう既にインドなどでは、そうしたことで、ODAでありますけれども、大変進んできているわけでありますけれども、そのさらに次の段階に来て、よりよいものと同時に、その地域に合ったものという、そのあたりが極めて難しい問題になっているというふうに思っています。

 ただ、鉄道事業は、我が国にとっては極めて先進的であり、こうした首都圏の状況は本当にありませんから、そうしたことのよさというものを今売り込んできているという状況でございます。

 都市開発については、日本の場合は、モータリゼーションの中で、都市に変遷があったり、いろいろしました。そうした意味では、その問題自体が課題先進国であったというふうに思いますので、それを短期間でそこに持っていこうという、今、東南アジア諸国にとっては極めて重要な判断材料であるし、それをリードしていくということが大事であるというふうに思っています。

 この機構の支援ということで、各国におきまして我が国の強みが活用されるように取り組んでいきたいというふうに思っているところです。

松田委員 では、最後の最後に、リニア新幹線について、JR東海の葛西会長が「正論」の三月号で、リニア新幹線は高性能であり、かつ高コスト、この超電導リニアシステムの先端技術が効果を発揮するのは、東京―名古屋―大阪間と、ワシントンDC―ニューヨーク間ぐらいであろうと。いわゆる、この日本の先端技術を米国の東部海岸に提供する、これが日米同盟の強化にも貢献するのではないかということを論じられておりますが、国交省として、これに対してどういうスタンスで、推進されるのかどうか、バックアップされるのかどうか、大臣にお伺いしたいと思います。

太田国務大臣 昨年の二月二十二日、日米首脳会談で、この超電導リニア、マグレブの問題は大変いい話題になり、そして具体的に進めようという動きが始まっています。

 マサチューセッツ州の知事が昨年来たときも、私と超電導リニアの話になり、そして、現在動いているところの市場ということについても、大変興味を持ったりしている状況にございます。

 また、その東海岸を初めとして、民主党や共和党、それぞれのリーダーであった人たちが去年来られまして、会議を開いて、このリニア一点に話題が集中しまして、翌日、山梨で乗ってもらって、大変感動したというお話もあったりしまして、具体的にこれは進んできているという状況にあります。

 米国の東部で実現できれば、確かに、おっしゃるように、日米協力の象徴として、両国にとって大変すばらしいことになるんだというふうに思いますし、世界にも日本の技術水準を大いに示すことになるというふうに思っております。

松田委員 本機構が契機になって、日本がこういった意味で、日本の課題先進国としての力を世界に向けて発信できるように期待したいと思います。

 以上で質問を終わります。どうもありがとうございました。

梶山委員長 次に、杉本かずみ君。

杉本委員 みんなの党の杉本かずみです。どうぞよろしくお願いします。

 まず、伊藤議員からもお話がありましたが、国交省の関連する沖ノ鳥島の工事での事故、五名の方が亡くなられ、二名の方が行方不明という状況でございます。一刻も早く見つかること、また、亡くなられた方にお悔やみを申し上げますとともに、そしてまた事故の原因究明、再発防止を心からお願い申し上げます。

 また、昨日になりますが、ずっと議論をしてまいりましたJR北海道、経営新体制がスタートをされました。国交省はずっとチェックを続けていきます、こういうお話を賜っておりますけれども、新経営陣で新たにスタートを切って、事故等のないことを心からお願いしたいと申し上げたく存じます。

 今、松田議員から、課題先進国というお話がございました。この課題先進国という言葉を今考えたんですけれども、いい意味でいえば、課題解決先進国でありまして、しかし解決できないと、課題直面先進国でそのまま厳しい状況が続いていくということかと思いますので、非常に総論的な話でありますが、課題解決先進国となるように皆様とお力を合わせて頑張っていきたいと思っております。

 今、リニアのお話もございました。一昨日ですが、これは私ごとで恐縮ですが、地下鉄銀座線でちょっと浅草に行く用事がありまして、雷門を見学している外国人の若い女性に地下鉄で乗り合わせました。どこの国からいらしていますかと聞いたところ、私どもは目の関係の会合がありまして東京フォーラムの方に来ているけれども、オーストラリアから来ていますということをおっしゃっていました。今、実は、こういう法律のことをいろいろ考えているんだけれどもという話をしたら、この地下鉄のように、値段も安くて非常にパンクチュアルだ、時間が正確だ、オーストラリアにも輸出してほしいよ、こういうことを言われました。

 今回、対象とする国が主に開発途上国というか新興国というようなところかもしれませんが、今のリニアのお話、私もボストンからニューヨークのアムトラックというのに乗って、それなりの乗り心地は感じておりますが、私が乗った後、大きな事故があったりとかいうことでありました。

 今、東海岸でのビジネスチャンスのお話がございました。私が申し上げたオーストラリアでもそういったチャンスがまた生まれてくるかもしれませんので、日本全体として、このビジネスチャンスを捉えるように協力をさせていただければと思っております。

 さて、私の問題意識は、我が党はそもそも小さな政府という考え方でございまして、なかなか官民ファンドというものはポジティブに考えにくいことがございます。

 そんな中で、とにかく、安倍政権も言われていますけれども、まず経済が一番である、そしてデフレ脱却が一番であるということの中で、昨日、また消費税が上がりました。そして、麻生財務大臣のきのうの記者会見でも、政府の財政上の信認ということが大事だというお話もございました。

 そういった意味で、ビジネスチャンスを捉えていくということは極めて大切であり、今回のこの機構の問題も、そういう側面からはポジティブに受けとめたいと思いますが、一方で、政府の信認というか財政の健全化、そういった意味から、本当にリスクをどんどんとっていって大丈夫なのか。申し上げた課題解決先進国になるために、我が国の財政のこの大変な危機的状況をどう捉えて、どう乗り越えて解決していくのかという問題があると思っていますので、そんな問題意識を背景に持ちながら、質疑をさせていただければと思っております。

 さて、私の順番になると質問は出尽くしている感じもあるので、もう寺島さんがされていますけれども、日本再興戦略、平成二十五年六月十四日閣議決定の中で、官民ファンドによる公的支援の指針が示されて、「ファンドの存続には期限を設け、個別の投資案件は時間軸を設定し、民間に適切に引き渡すことを前提とする。」こうされております。

 まず、今回、株式会社形式をとっているということの理由をお聞かせいただきたいと思います。

太田国務大臣 率直な言葉で言いますと、役人がやりますと、本当に目ききができるか、そして効率性ということ、ビジネスチャンスを生かすことが本当にできるかという、そうしたスピードのこともありまして、的確な判断ということや、競争性の中でもまれた人たちの判断ということが極めて重要であるというふうに考えておりまして、そういう意味では、株式会社という、民間がそこで運営していくということが必要であろう。

 同時に、リスクが、案件においては、政治リスクも自然災害リスクも商業リスクもありますから、そこの低減をするということで国が出ていくということが極めて重要である。

 相手国のところへ行きますと、我々も政府の関係に会いますと、必ずそこで、あそこをどうしたい、ここをどうしたい、港をどうしたい、道路をどうしたい、そういう案件ということに全てがなってくるようなところがありまして、全面的に、計画自体が実は国が大きな構想のもとでやるという事業が多いものですから、国と国、政府と政府、関係者が会うというようなことの中で信頼性を獲得していくという、事業の遂行の面でも大事であるとともに、常に公正という、公的資金が投入されるわけでありますから、公正あるいは透明ということからいきまして、経営は民間のプロに、そして、そうした点での監視ということについては公的な機関が出ていくということの両面を相まってやろうとしているのが、今回の株式会社ということを冠としてつけたものでございます。

杉本委員 非常にわかりやすい説明で、ポイントをついて、ありがとうございます。

 それで、先ほども質疑がありましたけれども、出口戦略というものを考えていく必要があると思いますが、大臣の答弁、先ほども伺っておりました。長期にわたって二十年以上なんだ、相手国の信頼、今もお話ございました。そういった意味で、五年ごとの、附則の四条での見直しをされるということを言われました。

 ただ、しかし、民間の企業ですと、ゴーイングコンサーンという、永続企業体という表現を使って、ずっと企業は存続し、長い間あり続けたいというのが企業の逆に目的でもありますけれども、逆に、こういう役割が今の世界情勢を見る限りは当面続くと思いますけれども、最終的に終わることもあり得るかどうか。存続期限は設けていないということはわかっておるんですけれども、そういった前提、最終的な出口戦略というものは、現時点では正確な答弁はないかもしれませんが、あり得るかどうか、こういう点も含めて御答弁いただければと思います。

稲葉政府参考人 お答え申し上げます。

 機構としての存続期限及び出口戦略についてお話がございました。

 これは、先ほど大臣からも御答弁申し上げたところでございますけれども、この法案におきましては、機構に関しまして存続の期限は設けておりません。

 その理由はなぜかと申し上げますと、この機構の業務が二十年あるいは三十年以上にわたる長期のプロジェクトを対象とするということが一つ。それから、その期間を通じて、相手国政府の信頼も確保しつつ、同時に、出資と事業参画を継続的に行うものであること。このような事情から、あらかじめ具体的な業務の完了期限を明示することは適切でないと考えたためでございます。

 しかしながら、これにかわる措置としまして、五年ごとに、機構の組織及び業務のあり方など法律の施行状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる旨の規定を置いてございます。先生御指摘のとおり、附則四条でございます。

 この見直し、検討を加え、必要な措置を講ずる際に、業務が完了したと判断されれば、そのときにはこの機構は解散することになる、このように理解しております。

杉本委員 御答弁ありがとうございます。

 さらにちょっと確認をしたいんですけれども、機構の組織、規模みたいなところなんですけれども、当面は二、三十人でスタートをして、私の秘書がレクチャーを受けたところだと、事業採択ごとに必要な人員を確保して、正社員もいれば、期間を区切った社員になられる方もいるやに聞いております。

 これは、答えがなければないで、また改めて教えていただければと思いますけれども、想定すると、どんどんうまくビジネスがとれていけば、規模はどんどん大きくなっていくなというふうに思います。そうすると、いろいろ、ずっと今議論になってまいりましたJICAだとかJBICだとか、そういう組織に匹敵する、あるいは凌駕するまでにいくことがあり得ると思いますけれども、最大どのくらいの組織になり得ると考えておられるか、お願いします。

稲葉政府参考人 機構の組織の規模についてお尋ねがございました。

 当初は、出資業務でありますので、この機構は、大きな収入もなく業務を続ける期間がございます。したがって、設立当初は最低限でスタートすることになるのであろう、このように考えております。その場合の規模といたしましては、ほかの類似の機関なども参考にいたしますと、恐らく二十人から三十人程度の規模になろうかと考えております。

 もちろん、事業が拡大いたしまして人手が必要になりますれば、この規模は拡大していくことになるわけでありますけれども、予算が二十六年度で五百八十五億円、これが今後どれぐらいこの事業がふえていくか、現時点で予測することは困難でございますので、最大限どれぐらいになるかという点につきましては、現在、明確なことは申し上げることができません。御容赦いただきたいと思います。

杉本委員 想定された回答でありますし、むしろ、これがうまくいってそういうふうに大きくなっていければというふうに、一種、逆に期待を申し上げたく存じます。

 今、出資というお言葉がありましたけれども、次に、リスクマネジメント、リスクガバナンスというか、そういったところを確認させていただきたいんです。

 ずっと御答弁でも、政治リスク、自然災害リスク、商業リスクがあると。そして、長期にわたるし、運営型であるということは理解をさせていただいておるつもりなんですけれども、非常に初歩的な確認でございますけれども、ずっと議論になりました、JBICと比べてどちらが大きなリスクをとることになるのか、これを確認させていただきたいと思います。

稲葉政府参考人 お答え申し上げます。

 一概に比較するのは困難な面もあろうかと思いますが、JBICは融資を主といたします。それに対しまして、機構は出資を主といたします。

 これを一般的に申し上げれば、出資の場合には、場合によっては、出資した分が毀損することも可能性としてはあり得るという意味で、リスクマネーと言われております。それに対しまして、融資の場合には、基本的には元本と金利が返ってくる、もちろん不良債権もあり得るわけでありますけれども、返ってくるわけでございます。

 そのようなことを比較すれば、一般的に申し上げれば、融資機関の方がリスクは少ないと言うこともできようかと思います。

杉本委員 御答弁ありがとうございます。

 本当に、俗に言うデットとエクイティーということで、融資と出資という意味からいきますと、やはり出資がリスクを負う、そして融資はその次にリスクを負うという理解で私もさせていただいておりますので、整理いたしますと、やはり本機構はかなりリスクをとらざるを得ないということかと思います。

 それで、大臣の御答弁でもありました、リスクを低減するようにこの機構が存在するんだということでありますけれども、相手国があって、それに理解を深めて、信頼性を高めてということはわかるんですが、実際に、リスクの低減というのは、言うはやすし行うはがたしで、例えばウクライナを見ても、我が国がもし取引をする可能性があったとして、ああいったクリミアの問題が急遽発生してしまって、予兆があったとしてもなかったとしても、このリスクを低減するということがそもそも大変難しいのではないかというふうにも感じます。

 そこでなんですけれども、案件があったら一生懸命取りかかっていくということでこれはよろしいかと思うんですけれども、一方で、ちょっと御紹介すると、これは今どういう状況なのか、ことしの三月の新聞記事でございますけれども、「タイの憲法裁判所は十二日、同国の景気刺激策として期待されていた総額二兆バーツ(約六兆五千億円)の交通インフラ整備事業のための資金調達法案は違憲だとする判決を言い渡した。日本も注目していた高速鉄道網をはじめとする大型公共事業は、政治的な混乱に巻き込まれる形で頓挫する公算が大きくなった。」こういう記事がございます。

 こういったリスクを低減していく、心意気はわかるんですけれども、やはりこれはコントロールしなきゃいけないし、分散しなきゃいけないと思うんです。

 例えば、政治的なリスクでいうところのカントリーリスクが各国に存在しますし、今申し上げたウクライナ以外でも、例えば中東、北アフリカに我が国がチャレンジをしていたとしても、例えばジャスミン革命のようなものが起きてしまうと、あるいは、大分さかのぼって、具体名を申し上げて恐縮ですが、三井物産さんがイランのIJPCで大変な状況に陥ったということもございますが、こういったカントリーリスクのようなところをいかに分散させて、ポートフォリオを分けていくのか。

 こういったリスク分散、あるいはリスクを定量化して、どういう形でコントロール、マネジメントしていくのか、こういうことが機構に実は求められることではないかと思っておるんですけれども、こういった部分についてはどういったことをされていく予定か、教えていただきたいと思います。

中原大臣政務官 お答えをいたします。

 カントリーリスクの分散ということでございますけれども、先ほど来答弁をさせていただいておりますけれども、機構は、民間がリスクをとって出資しようとするプロジェクトに対して、民間と共同で出資を行い、先生が述べられたような、それぞれリスクを分担するものでございます。

 また、機構は、出資先の現地合弁企業について、知識と経験豊富な人材を派遣して、不適切な経営によるリスクを低減する、また、相手国と交渉して、相手国政府との義務違反や制度の変更、そうしたもののリスクを低減する、こうした役割を機構としては果たしてまいります。

杉本委員 リスクの低減ということで、この機構はでき上がるわけでありますが、大臣もおっしゃられたとおり、政府と政府の間で実は話が始まったり、情報をとってきていただいたりということで、これは外務大臣かもしれないし国土交通大臣かもしれませんけれども、こういうリスクという点も含めて、あるいはビジネスチャンスというのももちろんそうなんですけれども、この機構は株式会社の形態をとりますけれども、むしろ、外務省なり国交省なりと極めて連携を密にして情報をとっていただかないと痛い目に遭ってしまうということだと思います。

 それで、ちょっとこれはお願いなんですけれども、やはり、株式会社という形態をとると、リスクをとっていって、まして出資をする形でリスクをとりますので、最悪の事態、バランスシートを見ますと、債務超過に陥って倒産リスクにさらされ、さらなる出資が必要になったり増資が必要になったり、こういうことが最悪のシナリオとしては想定されると思います。

 こういったことをスタートを切られることは、一つの、やはり日本国が隆盛をきわめていく、あるいは課題解決先進国になっていくために、経済を再興していくために必要だと思いますけれども、一方で、行け行けどんどんの陰で、リスクコントロール、あるいは最悪のリスクシナリオといったものも準備をしておいていただくということも必要かということをお願いしておきたいと思います。

 そんな意味から、今回の経営の方のお話でございますが、最近、メガバンクなんかも、入れた、入れないなんという話がありますが、社外取締役、こういった存在が確保されると思うんですけれども、どのような人物を想定しておられるか、まだ具体名は当然ないと思うんですけれども、教えていただければと思います。

中原大臣政務官 お答えをいたします。

 適切な人材の確保についてでありますが、社外取締役につきましては、幅広い視点から機構の経営に参画していただくことを期待しております。

 具体的には、インフラの整備、運営実務、プロジェクトファイナンス、法務、企業経営等について豊富な知識と経験を持っている方々に御就任願うことを想定しております。

杉本委員 そういった方がいそうでいないのかもしれないので、いろいろなケースが最近あるのかなという個人的な考えを持っておりますので、人選に当たってはよくよく調査をしていただいて、着任をしていただくということにしていただければと思います。

 次に、これも寺島さんから質問がありまして、天下りの温床にならないかなというような懸念がございますけれども、私、質問の項目として挙げませんでしたが、現役出向を想定されておられるかどうかを確認させてください。

稲葉政府参考人 お答え申し上げます。

 機構の職員としてどのような者を受け入れるか、採用するかは、まずは経営陣の御判断であろうと思いますけれども、機構の経営陣から求めがあれば、官庁からの現役出向もあり得るものと考えております。

杉本委員 ありがとうございます。

 我が党としては余り現役出向に前向きではないんですけれども、私が申し上げた意味では、政府と緊密に連携をとっていただかなきゃいけない部分でもあるので、微妙な考えを持っておりますが、適切な人員配置がなされることをお願いしたく申し上げます。

 次に、財政投融資の中で、産業投資のお金が今回も五百八十五億出ております。この産業投資については、これも二月の日経さんの記事でございますけれども、産業投資の残高は昨年末で四兆六千六十九億、前年比一三%増、過去最大、こう書いてあります。そして、調査室の資料によると、その中の産業投資は、「財政融資が確定利付の融資を行うのに対し、産業投資は政策的必要性が高くリターンが期待できるものの、リスクが高く民間だけでは十分に資金が供給されない事業に対して、投資(出資および貸付け)により」、貸し付けも入っているんですけれども、「資金を供給している。」ということです。この貸し付けの方がJBIC経由であり、出資の方が当該機構であるという解釈でいいかと思うんです。

 今回、JBICの産業投資予算が概算要求で四百六十億であったんですけれども、最終的に三百十億に削減されておりますけれども、今回の機構の発足と予算上何か連関性が、概算要求から減ったということにおいて何かあるかどうか、確認をさせていただければと思います。

稲葉政府参考人 お答え申し上げます。

 国土交通省の立場でお答え申し上げるのも適切かどうかわかりませんが、今回の財政投融資計画の策定に当たりましては、各省から出された要求を財務省で査定して調整されたもの、このように理解しております。

 その調整の過程でどのような御判断があったかつまびらかではございませんけれども、私どもの五百八十五億の要求について申し上げれば、これについて財務省の中でさまざまな考慮がなされた上で御判断いただいたもの、このように考えております。

杉本委員 ちょっと質問が飛んでしまって、毎度のことなんですが、申しわけなく思っております。

 それで、次に、私の認識ですと、こういったプロジェクトというのは、先ほども水道事業、上水道について取り組んではというお話がございました。将来的にはそれも当該機構の対象になることも私は期待したいと逆に申し上げますけれども、一方で、民業の圧迫という点を考えなきゃいけないと思います。従前ですと、総合商社というのが非常に情報を持っていて、それこそ外務省よりも情報があるということが言われたりしますし、今回の、ビジネスチャンスを発掘してくるところは引き続き商社の機能に期待するところは大きいと思うんですけれども、こういった大きなプロジェクトを組成するに当たって、商社のビジネスチャンスを逆に阻害するといったことになっていないかどうか、この辺の認識を伺えればと思います。

稲葉政府参考人 お答え申し上げます。

 インフラプロジェクトに関する日本チーム組成の進み方を見てみますと、先生今御指摘ありましたように、最初に商社が種を見つけてきて、それを育て、関係企業を引き込んで日本チームを組成する、そういう成り行きをたどることが大変多うございます。そういう意味では、情報を収集する能力、それから関係企業をオーガナイズする能力、そのあたりは商社がすぐれているように思います。

 今後も、機構ができた後も、日本チームを組成するに当たっては民間企業主導で行っていただきたいと考えておりますので、引き続き商社は一定の役割を果たすものと考えております。

 なお、今回の機構の構想を検討する段階で、関係の企業の皆様の御意見も伺ったわけでありますけれども、その中には商社の方からも多数の御意見をいただいております。商社の皆様は、今回のような制度をぜひお願いしたい、これは商社にとっても望むところである、このような声が大半であったと承知しております。

杉本委員 ありがとうございます。状況はわかりました。

 次に、これも質疑にありましたけれども、競合する国々において、この機構に類似するような組織体が、株式会社の形式あるいは公社という形を問わず、存在するやに伺いました。中国、韓国、欧州。分野、地域を問わずといったことがあるんですが、もしちょっと御答弁の用意がなければまた追って教えていただければと思います。

 こういった、国丸ごとに近いような形でこういったビジネスに取り組んでくるようなイメージも強いかと思いますけれども、規模で見て、ここは非常に大きい組織体なんだというような例示が、例えば中国とか韓国は非常に規模が大きい、まあファンドなのかどうか、こういった規模という点で教えていただければと思います。

稲葉政府参考人 先生御指摘のとおり、競合する国々でこういうファンドのようなものがございます。例えば、中国、韓国、シンガポール、欧州諸国などは、海外のインフラ事業に出資を行う政府出資機関が存在してございます。

 我々が把握しました限りで、出資残高、投資残高が最も大きいのは、シンガポールのテマセク社、これは政府一〇〇%出資の会社でございますが、ここの会社の出資残高が一番大きかったと思います。

杉本委員 ありがとうございます。

 もう終わりの時間でございますので終わりますが、リスク、ここを十分考えていただきたいというのと、やはりトップセールスというような形で政府からの情報、そして逆に、民間が入りますので情報の漏えい的な部分、こういった部分にも気をつけていただければと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

梶山委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 私はまず、今回の問題について、今の国交省三役のトップセールスの問題について聞きたいと思います。

 海外交通・都市開発事業に関するインフラ輸出は、安倍政権の成長戦略、海外展開の柱の一つであります。実はこれは民主党政権の時代に、パッケージ型インフラ輸出、こういう政策を出していましたけれども、それを強化して、インフラシステム輸出戦略として取り組んでいると言われているものです。現在十兆円程度の受注を二〇二〇年に三十兆円までに拡大することを目標にしています。

 昨年五月には、安倍首相が、トップセールスと称して世界各国を訪問し始めました。日本経団連を筆頭に、大企業百十二社、二百人を同行させる異例なものでありました。

 国土交通省も大臣を筆頭にトップセールスを行っているようですが、大臣就任後から今日までの間の実施状況について、国交省の政務三役が実施した回数、主な訪問先など例示されたい。

稲葉政府参考人 事実にかかわる御質問でございますので、私から御説明させていただきます。

 国交省政務三役のトップセールス実施状況についてのお尋ねがございました。

 平成二十五年から平成二十六年三月の間に、国土交通省の政務三役におかれては、十七回のトップセールスを実施しております。訪問先といたしましては、インド、ミャンマー、ベトナム、インドネシア、バーレーン等の十一カ国に及んでおります。

穀田委員 その海外出張、トップセールスに同行し、セミナーなどに参加した民間企業は何社あるのか、どういった企業か、あわせて、例えば建設業関係の会社を数社挙げてもらいたい。それは、今お話あった十一カ国の中で、例えばセミナーなんかをやっているわけですけれども、参加した民間企業は、自社の製品や開発計画の提案内容などをプレゼンテーションしたりなんかしているんですか。その概要なんかもあわせて報告いただきたいと思います。

稲葉政府参考人 これも事実関係でありますので、御説明させていただきます。

 トップセールスに同行した民間企業についてのお尋ねがございました。

 一例御紹介させていただきたいと思いますが、昨年二月に、インドのアーメダバードでインド高速鉄道セミナーというものを開催しております。この際、日本側からは、企業関係者として、川崎重工業、JR東日本など十四社の民間企業が参加しております。また、そのセミナーにおきましては、インド側に対して、政府、関係企業から、新幹線の整備スキーム、経済効果、安全に関する技術等についてプレゼンテーションを行ったところでございます。

穀田委員 先ほどありました十一カ国を含めて、私、いろいろ調べさせていただきまして、一覧表をつくってみますと、同行した民間企業は、今ありましたところでいいますと川重やJR東日本とありましたけれども、大手の企業が中心になって行っているということばかりで、大体それで売り込みをしているというのが現実ですね。それは大体そういうことだと。

 そこで、トップセールスとして、その後、インフラ事業を受注した案件はあるのかということについて、事実もこれもちょっとお聞きしたいと思うんです。

 一つは、受注事業名と受注企業名、受注額がどうなっているかということ。もう一つは、この中に受注額は非公開となっている案件があると聞きますが、この法律案では、今後、受注企業の企業名、受注額など、情報公開制度の対象として整備されることになるのか。この二点を御報告ください。

稲葉政府参考人 トップセールス後に受注契約に至った案件についてお尋ねがございました。

 一つの事例でございますけれども、ベトナムにラックフェン港という港がございますけれども、この港の整備がトップセールス後に受注契約に至った案件でございます。

 ベトナム政府に対しましては、平成二十五年九月に太田国土交通大臣が訪問され、トップセールスを実施しておられます。その後、平成二十六年二月に三井住友建設と現地企業二社のJVがアクセス橋梁工事を受注しております。受注額は三百六十億円と伺っております。

 次に、機構の情報開示についてお尋ねがございました。

 機構の情報開示は、次のような制度に従って行われることになります。

 まず第一に、機構は、会社法の規定に基づき、計算書類等を作成し公告いたします。また、この法案の第三十六条におきまして、国土交通省は、機構の業務の実績について毎年度評価を行い、その結果を一般に公表することとされております。また、政府が策定しております官民ファンドの運営に係るガイドラインに沿って適切な情報開示を行う、このような形で情報開示が行われます。

穀田委員 今ありましたけれども、いずれにしても、現段階では情報公開がされていない現実もある。それから、今ありましたように、ベトナム、それから、調べますとシンガポールだとかタイだとか、それなりにそれを受注している。そこで私は、情報公開というのは、国が関与することになるわけだから、当然それは対象になるのは当たり前だし、きちんとしてもらわなければならないと考えます。

 そこで、先ほど来問題になっているリスクの問題です。

 大臣は政治リスク、自然リスク等々言っていましたけれども、法案の概要説明によりますと、こう書いています。「交通や都市開発のプロジェクトは、大きな初期投資、長期にわたる整備、運営段階の需要リスクという特性があるため、民間だけでは参入困難。」と書いてあります。

 先ほどは、もっと大ざっぱな、大くくりで大臣はおっしゃっていましたけれども、わかりやすく具体的な事例を示していただいて報告いただき、それらを全て現段階ではリスクと考えていいのかどうか、お答えいただければと思います。

野上副大臣 今お話のございましたリスクについてでありますが、一般的に、海外でのインフラ事業には、今御指摘がありましたとおり、政治リスク、商業リスク、そして自然災害リスクがあると言われております。

 政治リスクとしましては、政治暴動、内乱やストライキなどが考えられます。それから、商業リスクとしては、資金調達などが考えられます。自然リスクとしては、地震や台風などが考えられます。

 これらのうち、特に、相手国で長期にわたってインフラ事業を運営する場合には、想定した需要が確保できない需要リスク、あるいは事業会社の運営能力、技術が不十分な操業リスク、それから相手国政府の義務違反という政治リスクが大きな課題であると考えられております。

稲葉政府参考人 リスクにつきまして、今副大臣から御説明申し上げたとおりでございますけれども、私から若干補足をさせていただきたいと思います。

 政治リスク、商業リスク、自然災害リスクがございますが、政治リスクには、さまざまな分類がありますけれども、代表的なものとして四つ挙げられようかと思います。

 一つは、政治暴力リスク、例えば暴動、内乱、革命、テロ、ストライキ、このようなもので事業の継続が困難になるものであります。

 次が、収用リスクと言われているものでありますけれども、資産が正当な補償なく相手国政府によって国有化されるような場合が該当いたします。

 また、相手国政府の義務違反リスク、これは副大臣から御説明があったとおりでございます。

 それから、制度リスクあるいは制度変更リスクと呼ばれるものがあります。これは、そもそも、途上国におきまして、法制度が未整備で十分機能しない、このような場合であるとか、あるいは制度が途中で変更される、このために事業の継続に支障を生じる、このような場合を含んでおります。

 次に、商業リスクについてでございますが、商業リスクにつきましては、代表的なものとして資金調達リスクがあります。これは、事業を組成する際に一定の金額、条件で資金を調達することを計画しているわけでございますけれども、この計画どおりの資金調達ができない場合を指してございます。

 また、極めて大きな課題として、完工リスクと言われるものがあります。これは、施設を整備することに関しまして、予定した期間、予定した予算、予定した性能で完成できなかった場合のリスクでございます。

 それから、操業リスク、これは事業会社の経営能力、技術が不十分な場合でございます。

 また、需要リスクについては、先ほど副大臣から御説明があったとおりでございます。

 自然災害リスクについて簡単に申し上げますれば、地震、台風、火災などで事業が影響を受けることを指してございます。

 以上でございます。

穀田委員 大臣、詳しく説明があったんだけれども、これは今も昔も別に変わっていないんだよね。このリスクというのは、今報告があった内容でいうと、今突然こういうリスクが生じたというわけじゃないんですよね。その政治リスク、商業リスク、自然リスク、分け方を一生懸命やって、事例を一生懸命述べてはいるんだけれども、それは前からあったわけですよね。十年前も二十年前も変わらぬということだと思うんです。それは、深化はありますよ。深刻さとか、色はありますよ。

 問題は、そもそも、個々の民間企業が収益や利益を上げようと思えば、何らかのリスクはつきものなんですね。そのリスクを勘案して事業化したり受注したりするのが、もともとの資本主義じゃないのかと私は思うんですね。

 だから、つまり、リスクが大きくてなかなか手が出せないというんだったら、手を出さなきゃいいし、仮にそれでやろうとするなら、いろいろ知恵を絞って、民間事業者間で協力し合うなどしてリスク回避、軽減するのが筋じゃないかと私は思うんですね。

 だから、このリスクがあるから民間だけでは参入困難というのは、政府、国民にかぶってもらうということじゃないのかと思うんですが、いかがでしょうか。

太田国務大臣 昔から予想されたということは、それ自体、事実だと思います。

 しかし、それがあったがゆえに、民間だけに任せていたがゆえに発注できないとか、ODAでやったものがせっかくできているのに、実際の運営という面では、さっき答弁させていただいたわけですが、ほかの国にそれが行ってしまう。そういうようなことがあって、ODAで、看板一つ掲げられて、これは日本によるものですと言っただけで終わってしまうというようなことがあって、世界の激しい競争の中で、本来は日本がとるべき、また仕事ができるということがだんだん少なくなってきているという状況があります。そこをよく分析してやってみるということが大事だろう。

 本当に、支払いがなかなか遅延している、そして、具体的にそれを執行しているという政府の誰かに、要人に会いたいといっても、民間企業がなかなかそこに、交渉にも、会いに行くという立場にないというようなことを初めとして、さまざまなことがありますから、そうした点で、仕事が獲得できるというためには、相当、国の信頼を獲得するということもまた必要なことだというふうに思っているところでございます。

穀田委員 他の国に行ってしまうというわけだけれども、他の国の企業に行ってしまっているというだけなんですね。ODAと言っていますけれども、では、ODAをやったからその上にやるというのは、もともとそういうことが決まっているわけでもないし、ODAで援助しているんだからよこせや、そういう筋があるのかどうかというのはまた別の話で、もともと競争社会なんだから、それは競争の原理でやったらいいと私は思います。

 簡単に言うと、採算性の見込めない基礎インフラ部分は今言ったように公的資金で整備し、採算性の見込まれる部分への投資や運用は民間で行うという日本経団連の身勝手な要望がある。

 何でそんなことを言っているかというと、彼らは非常に言いたいことを言っていまして、二〇一〇年の十月十九日、「アジアにおけるインフラ・プロジェクト推進に向けて」ということで言っているわけですけれども、そこには、今お話ししたように、「インフラ整備は莫大な資金を要することから、基礎インフラ部分をわが国のODAをはじめとする公的資金で整備し、採算性の見込まれる部分への投資や運用を民間で行う手法を活用していく。」あけすけにこう言っているんですね。だから、そのことに使われているということが現実じゃないかと私は思います。

 そこで、海外インフラプロジェクトは、高速道路だとか高速鉄道、港湾、空港など交通施設やその周辺の都市開発をパッケージ化したもので、いわば大規模開発、大型開発なんですね。日本でいえば関西国際空港や東京湾アクアラインなどにも匹敵する、あるいはそれ以上のものだと思うんです。イメージ的に言えば、過大な需要予測で建設したため、埋立事業など巨額の建設債務が足かせになって、運営、維持管理などで苦労している、こういうリスクが海外インフラ事業にはあるということだと。

 ところが、関空やアクアラインの場合もそうですけれども、建設工事を受注したゼネコンや、建設資材を販売した鉄鋼、セメントなどの素材大企業、そして資金を供給した大銀行などは確実に利益を上げました。

 同じように、交通・都市開発プロジェクトの場合にも、民間事業者は、工事を受注したり資材や鉄道車両などを販売したりすることで確実に大きな利益が得られる。片や、機構に出資した日本政府への収益はどうなるか、どう還元されるのか。

 では、この問題について、同じような利益や同じような還元がされるのかどうか、答えていただきたいと思います。

中原大臣政務官 お答えをいたします。

 仮に機構が出資した事業に関しまして損失が発生した場合には、その事業への出資額の一部が毀損する可能性がございます。

 このような事態を避けるためには、機構は、民間との共同出資、客観的な調査、機構に設けられた委員会による支援決定、継続的な事業参画等を行うことにより、個々のプロジェクトの収益性を確保することに万全を期すこととしています。

 これらに対し、国土交通大臣は、出資に関する認可を行う際には、機構がこれらの措置を講じていることを確認することとしております。

 また、機構が出資した事業が収益を得た場合には、機構は出資先プロジェクトからの配当収入を得ることができるほか、将来的には出資持ち分の売却による収入も期待することができると考えております。

穀田委員 収益性に万全を期すと。アクアラインだとか関空も、そうやって収益性に万全を期すと言っておったんですよ。だから、万全を期すと言ったからといって、何かそれで担保があるというわけじゃないんですよ。ましてや、外国のところへ行ってやっているわけだから。

 そういう意味で、利益ということでも、仮に配当とかなんとかといったとしても、長期間の整備期間中はあり得ない。それから、巨額の建設費を回収するには当然時間がかかる。さらに、運営を開始して利用料金収入が思ったように出ない需要リスクもある。したがって、結局、交通・都市開発プロジェクトのリスクは日本政府が客観的には負うことになって、国民負担を拡大しかねないと私は考えます。だから、国や国民には、メリットどころか、リスク負担だけが押しつけられることになりかねないということを言っておきたいと思います。

 さらに、海外インフラプロジェクトというのは、先ほど述べたように、大規模開発事業にほかなりません。日本では、当然のこととして、大型開発事業には環境影響評価だとか地元住民との合意形成などが必要になります。

 法案に関連して聞きますけれども、対象事業者に出資や人材派遣する支援機構が、環境影響評価手続や住民合意形成にどこまでかかわるのか、条文上はどこに当たるのかも明示いただきたいと思います。

中原大臣政務官 お答えをいたします。

 海外のインフラプロジェクトを支援する際、環境面及び社会面への配慮を適切に行うことは重要と考えております。

 例えば、世界銀行におきましては、環境面や社会面の配慮について定めた一連のセーフガード政策と呼ばれる文書を策定し、これに沿って支援対象事業の評価を行っていると承知しております。

 我が国でも、例えば、国際協力機構、JICAや国際協力銀行、JBICでは、環境社会配慮に係るガイドラインを策定しており、これに基づき、適切な環境社会配慮がされた取り組みを支援しているところでございます。

 なお、いずれも、プロジェクトの環境社会配慮についての責任につきましては、相手国等にあることが前提となっております。

 機構においても、これらの機関の取り組みも参考としつつ、適切に対応してまいりたいと考えております。

穀田委員 ただ、結論は、相手国の状況によるということも一つの大きなファクターであることだけは確かだと。うんと言っていますから、そうでしょう。

 条文上はどないかという話は、言うたんやけど、答えてはれへんのやけど、よろしいか。

稲葉政府参考人 この法案でございますけれども、法案は、機構の設立、機構の業務、それから機構の国による監督についての規定を置いているものでございます。

 そのような意味で、業務の実施方法に関する点、今議論になっておりますような環境、社会面への配慮に関する根拠条文は置いてございません。むしろこれは組織一般としての原則に従う、このようなことかと存じます。

穀田委員 二つ言っておきましょう。

 一つは、対象国が、相手の国がどういう状況にあろうとも、六〇年代、高度成長期の日本のような、公害垂れ流しなどがあっては絶対ならないんですよ。二〇一二年の国連持続可能な開発会議でも提唱された、環境を優先するグリーン経済への移行が強調されています。

 途上国の開発事業を行っていく上で、日本が先進国として到達した環境保全や住民合意形成にかかわる当たり前の民主主義的な水準を守っていく責任がある、このことが一つ。

 もう一つは、条文ではどう考えてもそういうことはない。今、業務の話がありましたけれども、そこまで読むことは、業務の話について書いていますけれども、その内容について言うならば、残念ながら、二十三条関係で業務の範囲というのがありますけれども、そこの中には、助言だとか、必要な交渉及び調査と書いているだけで、そういうものが配慮をきちんとしなくちゃならぬということの文言はないということは指摘しておきたいと思います。

 そこで、次に、私は、日本の海外進出、海外生産はどうなっているかということについて聞きたいと思います。

 内閣府がまとめた二〇一三年度の企業行動に関するアンケート調査によりますと、日本のメーカーの生産額に占める海外比率は一二年度実績で二〇・六%と、前の年度から三・四ポイント上がって、一九八七年調査開始以来最高です。

 国交省も、我が国企業の海外展開が一層進展し、国内外を一体的に捉え、調達、生産、販売を適地で行うグローバルサプライチェーンの動きが深化しているとまでしています。

 海外インフラ整備は、当該対象国にとってだけでなく、対象国に進出した日本の企業の生産拠点を整備することになります。これは結局、日本企業に対して、どんどん日本から出てインフラ整備した対象国に呼び込むということになる、そうじゃないかと思うんですね。だから、海外インフラシステム輸出は、インフラ受注そのものに加えて、対象国に進出する日本企業の生産活動の基盤整備にもつながるということは当然ですね。簡単に。

稲葉政府参考人 インフラシステム輸出の推進は、相手国の発展にとって有益である上に、我が国企業の事業展開につながるものでございます。

 インフラシステム輸出には三つの経済効果があると考えております。第一に、我が国企業が海外の優良な交通や都市開発のプロジェクトに参入することによって、これらの事業の収益が日本国内に還元されるということ。第二に、これらのプロジェクトに我が国企業が参画することに伴って、関連部品や機器といった日本製品の受注機会が拡大することが期待できます。また第三に、委員御指摘のとおり、相手国の交通や都市インフラの整備により、現地に進出している日本企業の事業環境が改善されます。

 このように、インフラシステム輸出は、世界のインフラ需要を積極的に取り込むことによりまして、我が国経済の成長を通じて、国内産業の生産や雇用の誘発が期待できるものであります。このため、必ずしも国内産業の空洞化の問題が生じるようなものではない、このように考えてございます。

穀田委員 それでは、実態を見てみましょう。資料を出しておきました。日本企業が海外生産拠点化を進めれば、日本国内での生産が減少するのは自明です。電機産業を初め自動車産業でも、完成品製造だけでなく部品メーカーも、国内の工場閉鎖、リストラが相次いでいます。海外インフラ整備によって日本国内の産業が空洞化されているのは明白であります。

 先ほど言いました資料を見てください。「自動車産業の海外生産シフトと製造業における国内雇用の空洞化」という資料を出しまして、これは塩川議員が作成したものを使ったものです。グラフをつくりました。棒グラフの方が自動車の生産台数、日本自動車工業会の資料をもとに載せました。海外生産が薄い色で、国内生産が黒。

 棒グラフ、九〇年度から二〇一二年度まで、見ていただいたらわかりますが、国内の生産台数は、一九九〇年度千三百四十九万台が、二〇一二年度には九百九十四万台、一千万台を切っています。一方、海外の生産台数は、一九九〇年度三百二十六万台が二〇一二年度には千五百八十三万台と、約五倍に増加しています。

 折れ線グラフの方が、自動車産業を含む製造業の就業数、従業員数です。国内の就業数は、一九九二年をピークとして大きく減少して、一九九〇年度千五百五万人が二〇一二年度には千三十二万人と、三分の二になっています。一方、海外の常時従業者数は、一九九〇年度の百二十四万人が二〇一一年には四百十一万人と、三倍以上に増加しているんですね。

 だから、国内雇用が減少し、海外雇用が増加している。過去二十年において進んだのは、多国籍企業化が進む中で、国内産業と雇用の空洞化が生じたという事実を、この数字とこのグラフが示しているではありませんか。

 だから、インフラ輸出というのはこれをさらに加速することになりやしないかということを、大臣の見解を問いたいと思います。

太田国務大臣 まず、交通と都市開発ということを考えて今回のテーマを設定している。橋をつくって便利にします。そして、そこで都市を開発します。あるいは、港を整備いたします。鉄道というものをつくって、あるいは地下鉄が欲しいということで進出しますということですから、それはそれで、我が国の技術水準というものを海外に展開するということで、私は重要なことであろうというふうに思います。

 その問題と、例えば自動車ということがありましたが、自動車がそれによって、海外で生産拠点を持つゆえに日本が空洞化するのではないかというのは、ちょっと次元の違うお話ではないかというふうに思っているところです。

穀田委員 次元は一緒でして、橋をつくっていって便利になる、橋をつくる人たちは、別に下請企業を一緒に連れていくわけじゃないんですよ。だから、日本だって、橋をつくって、大きな橋をつくったからといって雇用がふえたわけじゃないので、それは三年前の予算委員会でやりましたけれども、私は、そういう事実はないということだけ言っておきます。

 だから、海外インフラ整備による効果はどうかといいますと、インフラ建設の大部分は、当然現地で資材を調達し、現地の労働者を当然使うわけですよね。下請企業にもほとんど回らない。だから、例えば新幹線の輸出だって、アメリカなどは、発注先の企業がアメリカの国内に車両工場を設立して生産することを希望しているんですね、鉄道とか言わはったので言っておくと。

 だから、わずかな中枢部分だけは国内で生産するかもしれないが、日本の国内生産を増加させる効果はほとんどない、この戦略を発信、要求し続けたのは日本経団連だということを改めて先ほどの話をして、リスクは国と国民に、もうけは、利益は大企業へ、残ったのは国内産業と雇用の空洞化では踏んだり蹴ったりだということだけ指摘して、きょうは終わります。

梶山委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

梶山委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。穀田恵二君。

穀田委員 株式会社海外交通・都市開発事業支援機構法案に対する反対討論を行います。

 本法案は、海外の交通や都市開発分野の大規模開発事業を日本企業が受注しやすくするため、インフラ整備にかかる莫大な費用や整備、運営に伴うリスクを軽減するなどの支援を行う機構を設立しようとするものであります。

 法案に反対する理由の第一は、海外インフラ事業に参入する大企業の利益を保証するための支援策であり、インフラ整備にかかる莫大な費用や整備、運営に伴うリスクを日本政府が引き受け、国民の負担を拡大することになりかねないからであります。

 この海外インフラ事業は、高速鉄道、高速道路、港湾、空港などの交通施設やその周辺の都市開発などをパッケージ化した大規模開発事業であり、参入する企業はゼネコン、鉄道会社や総合商社などの大企業です。大規模開発事業が持つ莫大な資金等のリスクが軽減されれば、事業に参入する大手企業は受注機会が増大し、受注した企業は、開発工事や資材、鉄道車両などの販売により確実に大きな利益が得られます。

 一方、大規模開発事業が持つリスクは、日本政府が負うことになります。

 採算性の見込めない基礎インフラ部分は公的資金で整備し、採算性の見込まれる部分への投資や運用は民間で行うという日本経団連の身勝手な要望を正面から受け入れ、それを実施するものにほかならないからであります。

 反対理由の第二は、海外の大規模開発事業においても自然環境と現地住民への悪影響に対する配慮は当然必要ですが、機構の支援にはその視点が全くないからです。

 海外インフラ事業の対象は、アジア総合開発計画に組み込まれたインドや東南アジアなど開発途上国が多くを占めています。開発途上国への支援は、大規模開発や資源開発によって、環境破壊と住民の貧困化や、水、食料を奪われるような悪循環に陥ることがないように、生物多様性の維持や環境保全を前提にすべきです。二〇一二年の国連持続可能な開発会議でも提唱された、環境を優先するグリーン経済への移行が強調されています。

 しかし、機構の業務にはこうした視点はありません。環境と現地住民への悪影響に対する配慮の視点がなく、ただ大型開発事業の受注支援を推し進めるばかりです。

 反対理由の第三は、日本企業の海外生産拠点づくりを支援し、日本の産業の空洞化を加速することになるからです。

 海外インフラ整備は、当該対象国のみならず、日本の自動車産業などの海外進出企業にとっても利用しやすい基盤を整備することになります。これは、日本企業が現地から海外に輸出する生産拠点を整備することにもつながります。日本企業が海外に生産拠点を移せば、日本国内での生産が減少するのは明らかです。電機や自動車などが、部品メーカーも含め、国内の工場閉鎖、リストラを相次いで実施しているのが実情です。海外インフラ整備により、日本国内の産業空洞化が加速されるのは明白です。

 以上で、本法案に対する反対討論を終わります。

梶山委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

梶山委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、株式会社海外交通・都市開発事業支援機構法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

梶山委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

梶山委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、望月義夫君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、日本維新の会及び公明党の四会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を求めます。寺島義幸君。

寺島委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 趣旨の説明は、案文を朗読してかえさせていただきたいと存じます。

    株式会社海外交通・都市開発事業支援機構法案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺漏なきを期すべきである。

 一 株式会社海外交通・都市開発事業支援機構が海外における交通又は都市開発事業の支援を行うに当たっては、民業補完の観点から、民間のニーズを適切に把握し、我が国事業者の参入促進に資することとなるよう努めるとともに、事業の進捗に応じた適時的確なモニタリングを行い、支援の効果の把握に努め、所期の目的が達成されたと判断したときは、民間に引き渡す等適切に対応すること。また、機構の将来的な在り方について適宜検討を行うこと。

 二 機構と他の類似機関との機能分担を明確にし、関係省庁間及び関係機関との間で密接な連携と協力を図ることにより、施策の効果的な実施に努めること。

 三 機構が支援する対象事業については、交通・都市開発分野における我が国の知識・技術・経験が十分活用され、投資事業全体として長期収益性の確保が図られるものとなるよう配慮すること。また、これらの考え方を明らかにした支援基準を早急に定めること。なお、対象事業の範囲については、関係省庁間で協議の上、柔軟に検討し、必要な場合は拡充を行うこと。

 四 機構が対象事業の支援を適正に行う上で、支援の対象となる事業者及び支援の内容の決定等を行う海外交通・都市開発事業委員会の役割が極めて重要であることに鑑み、同委員会の客観的・中立的な判断や運営が確保されているかを含め、機構に対し必要な監督を行うこと。

 五 機構がその機能を十分に発揮するためには、民間の専門的な能力を有する人材が必要となることに鑑み、機構の業務運営を成功させるために必要な人材の確保及び積極的な活用等が図られるよう必要な支援に努めるとともに、人材育成や相手国との人的ネットワークの構築に積極的に取り組むこと。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

梶山委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

梶山委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、国土交通大臣から発言を求められておりますので、これを許します。国土交通大臣太田昭宏君。

太田国務大臣 株式会社海外交通・都市開発事業支援機構法案につきましては、本委員会におかれまして熱心な御討議をいただき、ただいま可決されましたことに深く感謝申し上げます。

 今後、審議中における委員各位の御高見や、ただいまの附帯決議において提起されました事項の趣旨を十分に尊重してまいる所存でございます。

 ここに、委員長を初め理事の皆様方、また委員の皆様方の御指導、御協力に対し、深く感謝の意を表します。

 まことにありがとうございました。(拍手)

    ―――――――――――――

梶山委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

梶山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

梶山委員長 次に、内閣提出、港湾法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。国土交通大臣太田昭宏君。

    ―――――――――――――

 港湾法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

太田国務大臣 ただいま議題となりました港湾法の一部を改正する法律案の提案理由につきまして御説明申し上げます。

 近年、コンテナ船の急速な大型化等により、アジアから北米、欧州に直行する基幹航路の絞り込みが進んでおり、我が国の企業活動に不可欠な広域インフラである国際戦略港湾においても、基幹航路の減少に歯どめがかからない状況となっております。

 基幹航路の減少が続けば、物流コストの増大により、我が国の産業立地競争力が低下し、国民の所得と雇用も影響を受けることとなります。このため、国際戦略港湾の競争力を強化することにより、我が国への基幹航路の寄港を維持拡大していくことが必要であります。

 また、大規模地震の発生が懸念される中、我が国の産業立地競争力を維持するため、災害時も港湾機能を維持し、サプライチェーンを確保する必要があります。このため、民間事業者が所有する護岸等が災害時に損壊し、航路を塞ぐことにより、船舶の交通に著しい支障を及ぼさないよう、護岸等の改良を促進する必要があります。

 このような背景を踏まえ、必要な対策を講ずるため、このたびこの法律案を提案した次第であります。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、国が前面に立って国際戦略港湾の競争力を強化するため、政府は、国際戦略港湾の港湾運営会社に対し、出資することができることとしております。また、国際戦略港湾の近傍に立地する倉庫の整備に対し、政府は、無利子貸し付けをできることとしております。

 第二に、政府は、災害時における港湾の機能を確保するため、民間事業者が所有する護岸等の改良に対し、無利子貸し付けをできることとしております。

 そのほか、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案を提案する理由であります。

 この法律案が速やかに成立いたしますよう、御審議をよろしくお願い申し上げます。

梶山委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る四日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十五分散会


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