第17号 平成26年5月21日(水曜日)
平成二十六年五月二十一日(水曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 梶山 弘志君
理事 赤澤 亮正君 理事 秋元 司君
理事 大塚 高司君 理事 西村 明宏君
理事 望月 義夫君 理事 若井 康彦君
理事 井上 英孝君 理事 伊藤 渉君
秋本 真利君 井林 辰憲君
泉原 保二君 岩田 和親君
大西 英男君 門 博文君
國場幸之助君 佐田玄一郎君
斎藤 洋明君 坂井 学君
桜井 宏君 白須賀貴樹君
谷川 弥一君 土井 亨君
中村 裕之君 長坂 康正君
林 幹雄君 原田 憲治君
ふくだ峰之君 前田 一男君
宮内 秀樹君 宮澤 博行君
務台 俊介君 泉 健太君
川端 達夫君 後藤 祐一君
寺島 義幸君 岩永 裕貴君
坂元 大輔君 西岡 新君
松田 学君 村岡 敏英君
北側 一雄君 佐藤 英道君
杉本かずみ君 穀田 恵二君
…………………………………
国土交通大臣 太田 昭宏君
国土交通副大臣 高木 毅君
法務大臣政務官 平口 洋君
国土交通大臣政務官 土井 亨君
国土交通大臣政務官 坂井 学君
政府参考人
(国土交通省住宅局長) 井上 俊之君
政府参考人
(国土交通省鉄道局長) 滝口 敬二君
国土交通委員会専門員 宮部 光君
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委員の異動
五月二十一日
辞任 補欠選任
岩田 和親君 宮内 秀樹君
同日
辞任 補欠選任
宮内 秀樹君 岩田 和親君
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五月十九日
建設業法等の一部を改正する法律案(内閣提出第六一号)(参議院送付)
建築基準法の一部を改正する法律案(内閣提出第六二号)(参議院送付)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
マンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四五号)
建設業法等の一部を改正する法律案(内閣提出第六一号)(参議院送付)
建築基準法の一部を改正する法律案(内閣提出第六二号)(参議院送付)
――――◇―――――
○梶山委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、マンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省住宅局長井上俊之君及び鉄道局長滝口敬二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○梶山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○梶山委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。ふくだ峰之君。
○ふくだ委員 おはようございます。ふくだ峰之でございます。
早速、質問に入らせていただきたいと思います。
まず、昨年、耐震改修促進法を成立させまして、耐震強度の不足したマンションの改修が促進されるよう法制面の手当てをいたしました。しかし、さらに進んで、耐震強度の不足したマンションの建てかえを促す法的な手当ては行われませんでした。その意味で、本改正案は、昨年の耐震改修促進法と一体をなすものと考えられると思います。
これらの法律は、民法の原則によらないで、過半数の賛成で改修、あるいは五分の四の賛成で建てかえが可能になるという点で、財産権を制限するというものになります。一方で、生命とか身体の安全というのは、最優先に考慮されるべき価値というものでもあると思います。
こうした中で、両者の調和をいかに図るかが大きな課題というふうに考えられると思うんですが、まず御所見をお願いしたいと思います。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
本法案によるマンション敷地売却制度における財産権の保障など、これについては十分な配慮をする必要があり、例えば、中古マンションを買い求めた方が入居後間もなく売却決議により退却を余儀なくされる、こういったことについて、どのような事情があれば許されるのかという観点から、慎重な検討が必要だというふうに考えております。
一方で、マンションを含む区分所有建物について、区分所有者が物理的に一体不可分な一棟の建物を区分して所有しているという関係にあり、区分所有者全体の利益も考慮する必要があることを根拠として、従来から、財産権の保障に対して、五分の四以上の多数決による団体的解決として、従後も、同じ場所に、同じ用途のマンションを含む区分所有建物が建つことを前提とする建てかえが認められてきたということでございます。
耐震性不足のマンションの耐震化が喫緊の課題ということでございまして、昨年、耐震改修法の改正により、マンションの耐震改修については、決議要件を四分の三以上から過半数に緩和したということでございます。
本法案は、耐震性不足のマンションに関し、国民の生命身体の保護を図るとの公共性の観点から、特別の措置として、これも、昨年、改正法が成立しております、被災マンション法の建物敷地売却制度と同様の五分の四以上の多数決によるマンション敷地売却制度を創設するものでございます。
○ふくだ委員 ありがとうございました。
平成二十四年時点での国土交通省の推計によりますと、昭和五十六年以前の旧耐震基準に基づいて建設されました分譲マンションは百六万戸に上って、そのうちの八〇%程度が現在の耐震基準を満たさないと言われているわけですね。
また、少し古い資料になりますけれども、平成二十年の住宅・土地統計調査によりますと、居住者が六十歳以上の者のみという高齢者世帯が、昭和四十六年から五十五年に建設されたマンションで大体四三・七%、そして、四十五年以前のものということに限定いたしますと、五〇・三%と極めて高い状況にあるんですね。
こうしたデータを見ますと、建てかえが促されるべきマンションほど、実は高齢化率が高いということになっています。一般に、高齢者ほど現状維持を望んで、マンションの建てかえなどの生活環境の変化を好まないのではないかということが考えられるわけです。
実は、質問に先立ちまして、私の両親に聞いてみたんですね、きょう、そこに見に来ていますけれども。もし建てかえを促されたらどうするのかということなんですが、答えは、子供が戻って同居してくれるのなら考えなくもないが、基本的にはそのままでいい。多分、こういう考え方が一般的ではないかというふうに思うんですね。
こうした現況の中で、マンションの建てかえを円滑に促進させるにはどのような対策が必要になるのかということにつきまして、お考え、所見を求めたいと思います。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘のように、古いマンションほど長く住まわれる方が多く、その結果、高齢化率も高いという傾向にあることは、そのとおりだと思います。そうした高齢者の方々の居住の安定を図る、これは住宅政策上の観点からも大変重要なことだというふうに考えております。
今回の制度の中では、まず区分所有者の方一般に関してでございますけれども、一点目として、できるだけマンションを高額で売れるように、開発利益を織り込んで売れるように、容積率のアップの分も織り込んで売れるように、あるいは、補助して全体の工事費を下げて、開発利益がこれも上回るように、こういう措置をしっかりさせていただいております。
二番目に、代替住居のあっせん。これは、再建マンションになる場合もございますし、周辺で流通しているマンションになる場合もございます。これにつきましては、買い受け人であるディベロッパーに区分所有者の意向をしっかりと把握していただいて、その意向に沿えるような住宅をできるだけ豊富に提供、あっせんしていただくということを義務づけてございます。
次に、個々の区分所有者の方々の負担の軽減という観点から、例えば、譲渡益が生じた場合には千五百万円まで非課税にするというような課税の特例措置も設けているところでございます。
こうした措置を講じましても、新しいマンションないしは周辺のマンションを買う場合に分配金だけでは不足するという事態は、当然起こってくる問題でございます。お手持ちの資金がどうしてもないという方につきましては、住宅金融支援機構によるリバースモーゲージ型の高齢者向けの融資、こういったものを活用していただくように用意しているところでございます。
これらの対策は絵に描いた餅では仕方がございませんので、しっかりと事業の中で御説明いただけるように、私どもも情報提供をしっかりさせていただきたいと思います。
○ふくだ委員 ぜひ、どういうことが重要なのかということを実際に落とし込んで、しっかりと資料提供等していただきたいなというふうに思います。
今回の改正案で建てかえを促してマンションが販売できると想定できるのは、都市部の資産価値の高い土地にあるマンションであって、少子化社会における都市部への集中が想定できる地域に限られるのではないかという指摘もあるところであります。
しかし、旧耐震基準のマンションというのは、高度経済成長期につくられた都市近郊の住宅地、いわゆるベッドタウン団地にも多く建設をされています。こうした団地は、分譲マンションのほかに、賃貸マンションだったり、あるいは社宅も含まれていることが多いんですね。敷地が一筆共有であったり、あるいはまた建築基準法の一団地認定の変更が困難であったり、例えば、容積率が余ってはいるけれども、建てかえても需要がない、想定できないということが多いことなど、課題が多く存在をしているんだと思うんですね。
そうしますと、今回の改正というのは、本当に東京などの都市部では建てかえには有効だけれども、郊外の団地については抜本的な対策が別途必要ではないかというふうに考えるんですが、大臣の所見を伺いたいと思います。
○太田国務大臣 全くそのとおりで、今回のマンション敷地売却制度は、いわゆる郊外での団地の建てかえに活用することはなかなか困難だというふうに思います。理由は、既に先生御指摘のように、いろいろな形の複雑な権利関係の調整を行うということが現実的に難しいということ、そして、一つの敷地に複数棟建っているということでは、土地全体が全棟の区分所有者全員の共有というふうになっておりますものですから、そこでの合意を得ていく手続というのは非常に難しいということがございます。
しかし、そういうところの老朽化や、居住者の高齢化が進んでいる団地の建てかえあるいは大規模改修で再生を図るべきだという声というのは、私も直接聞いているところであります。今回、これに対して、全員ということになれば、それはそれでいけるんですけれども、それではなかなか困難ということからいきまして、こうしたニーズは次の大きな課題であるというふうに思っているところです。
団地の再生等を進めるには、現行及び今回改正するマンション建替え法による権利調整ルールの整備だけでは困難でありますので、事業法的な観点も含めて、今後、総合的に検討していきたいと考えているところでございます。
○ふくだ委員 都市近郊に存在する団地を建てかえるということになると、今大臣が御指摘いただきましたように、いろいろな課題解決があるものですから、相当の時間と労力を必要とするということが考えられます。
横浜市の平成二十五年度団地再生支援モデル事業に選定された団地、横浜は三百七十万人の人口があるんですが、団地も多いんですが、二カ所ありまして、それが、青葉区にあるたまプラーザ団地というのと緑区にある南長津田団地。これはいずれも、たまたま私の選挙区なんですね。それぐらいニーズがあるところでありまして、課題整理のためのコーディネーターの派遣とか、あるいは団地再生マスタープランの策定支援などを現在では行っているんですね。
たまたま五月十七日に横浜でセミナーが開催されまして、この二つの団地の取り組みの事例の報告会というのがあったんですね。ここから見えてきますのは、まずステップ論がありまして、コミュニティーの再生のための拠点づくりという視点で課題を解決する、あるいは生活における現況の課題整理と解決というのがまず最初にあって、その先に、実は団地の再生とか建てかえの検討にようやく入れる。つまり、コミュニティーが欠如していると話し合いがうまくいかないので、手前から進めなきゃならぬ。
そして、建てかえの検討をしていくということが例えば管理組合で議決されて、建てかえ推進の決議から建てかえ決議まで、この中で議論されているのは大体三年から五年ぐらいかかるのではないか。あるいは、建替組合の設立から権利変換の計画の決議までに大体二年から三年。つまり、建てかえ工事実施までに大体五年から八年ぐらいかかる。そして、実際に建てかえの工事が始まってもとに戻れるのに十年ぐらいかかるんじゃないかというのが、そこで言われていることなんですね。
つまり、築六十年までに建てかえを行うということを考えますと、築五十年には議論をスタートしないと間に合わないことになってしまうということになります。ちなみに、私はことし五十歳なので、つまり、私が生まれたころにできた団地は、そろそろ議論に入らないと、実際に建てかえをするのが難しくなるということになってしまうと思います。
まさしくこれは待ったなしという状況になってきておりますので、大臣が御答弁されましたように、抜本的な対策をぜひ次回お考えいただきたいということを改めて指摘しておきたいというふうに思います。
一方、旧耐震基準のマンションというのは、古く、安全性に難があるゆえに、例えば中古で購入をする場合も、当然値段が安いし、安く購入できるわけですね。また、建築の基準が低いわけですから、建設コストは安いし、当時、新築で購入する際に、物価変動分を除いても安い価格設定となっているはずです。一方で、耐震基準の高いマンションは建設コストも高い。
ですから、今回の法改正によって、安い価格で購入した人が、売却価格に上乗せをする形で、容積率の緩和分の価値を資産として手に入れることになるのではないかという考え方もあるわけですが、そうしたところに不平等感がないのかどうかの所見を伺いたいと思います。
○井上政府参考人 お答えを申し上げます。
容積特例が不平等感を生むのではないかという御指摘だと思います。
二つの側面があるんだと思いますけれども、一つは、容積特例制度については、現在も総合設計制度というのがございまして、これは公開空地をとったりというような、ある種周りへの貢献、住環境への貢献ということと引きかえに、容積率のボーナスを与えるという仕組みでございます。
今回の容積特例は、公開空地という要件は直接は課しませんが、そのかわりに、危険なマンションを除去していただいて、周りにも安全をもたらすというような公益を評価して緩和するという趣旨のものでございます。
二点目は、では、それが個人に還元されていったときに、一般のマンションの方と不公平が出るのではないかということでございますが、今回の制度は、五分の四の多数決議で、反対者がいても賛成をしていただく、所有者全体の利益のために動かさなきゃいけない、それも安全性を確保する必要のある耐震性不足のものに限るということでございまして、従後の居住の安定をしっかり確保するために容積特例というのが必要だ、こういう側面もあるわけでございます。
この側面から見ても、一般の普通のマンションの方と単純に比較をして、こちらの方だけが利益を得ているということにはならなくて、一方で財産権の制約を受けるということの引きかえの措置だという見方もできますので、単純に不平等ということにはならないのではないかというふうに考えてございます。
○ふくだ委員 ぜひ、そうしたところも、今回の法改正とともに、得するんじゃないよということはしっかりとメッセージとして告知をしていただきたいなというふうに思います。
今回の法改正、このポイントというのは、事業が成功するか否かについては、買い受け人、つまりディベロッパーの開発能力とか市場調査能力とか、そうしたことにもあるんじゃないかなというふうに思うんですが、一定の時間を要し、あるいは代替住居をあっせんしたり、買い取りの資金調達などを考えますと、このビジネスに参入できる機会を得られるのは、いわゆる大手のディベロッパーのみになってしまうのではないかということも懸念されると思います。
私たちとしては、大手のディベロッパーもいいんですが、その地域の地元の建設会社、余り小さ過ぎてもできないと思いますが、できれば一定の規模を有する地元の建設会社もこうしたビジネスに新しく参入できるという、ビジネスチャンスを広げていくという側面も実は重要ではないかなというふうに思っています。
その意味で、今回の法改正による建てかえというのは、大企業、いわゆる大きなディベロッパーのみにビジネスチャンスが広がるのか、あるいは、違うよ、もうちょっと中小の企業にも広がっていくんだよ。どういうことなのか、御所見を伺いたいというふうに思います。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
本法案の敷地売却制度では、買い受け人であるディベロッパーは、都道府県知事等が買い受け計画というのを事前に認定しまして、それをもとに区分所有者と一緒に事業をしていただく、こういう仕組みになってございます。認定をする際には、当然、資金状況とか経営状況ということについてはしっかり押さえさせていただかないと、途中で頓挫することになりますので、そこがまず大前提としてあるんだと思います。
ディベロッパーの選び方でございますけれども、買い受け計画の認定の前に、売却の合意形成の過程、先ほど時間がかかるという御指摘がございましたが、この期間に透明な方法で、どこがいいかということを住民の方々にしっかり選んでいただくということが事前の準備として大事になるんだと思います。
そういう意味で、大手企業のみを想定するということは私ども毛頭考えてございませんで、例えば、地域の中で信用、資力があって、これまで実績もあって、地域の事情もよく知っているような地場の中堅企業みたいなところが参加されるということは、当然考えられるところだと思います。そういうしっかりした選択ができるような、ガイドラインなりを示してまいりたいと思います。
○ふくだ委員 アベノミクスもそうした地元の中堅企業にビジネスを広げていくということをこれから求めていくわけでありますので、そうした流れをぜひおつくりいただきたいということをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
ありがとうございました。
○梶山委員長 次に、佐藤英道君。
○佐藤(英)委員 おはようございます。公明党の佐藤英道です。
去る五月の十日、十一日、太田大臣に北海道を御訪問していただきました。大臣として初の北海道視察でありましたが、日程的には大変な強行軍でありました。苫小牧、白老、札幌、北斗市、七飯町、函館市と、二日間で広い地域を精力的に御視察され、多くの関係者が皆大変に喜んでおりました。心からお礼を申し上げたいと思います。
今回の大臣の北海道視察は、何といっても、ことしの四月に新体制でスタートしたJR北海道に対して、本社を訪問され、安全、安心、道民を初め全国民の信頼を再構築するための布石を打たれるということが一番のポイントであったと思います。
大臣がお話しされたとおり、新しい安全第一のJR北海道はまだ出発したばかりであります。これから何年も何十年もかけて、失った信頼を取り戻せるよう懸命な努力を続けていかなければならないと思います。
今回、JR北海道本社を訪問され、今後の安全体制の構築と信頼回復の実現に向け、いかに取り組むべきか、さまざまな御指導を大臣からされたと思いますけれども、御指導されたその具体的な中身について、一部報道もございましたけれども、改めてお伺いをさせていただければと思います。
○太田国務大臣 私が行きましたのは、四月一日から新しい体制になりました、これは、JR東からも行っているということの中で、どういう形でなじんで新しいスタートができているかということを確認したい、そして、一月二十四日に出しておりました鉄道事業法に基づく事業改善命令そして監督命令、これらが具体的にどう実行されているかということを直接聞いて確かめたい、こういう思いで行きました。
私が話を聞いて、ある意味では安全第一ということを強調したわけですが、そこの一点というものを踏み外すことなく今非常に努力をされているということを実感したところでありますが、さらに、私としては、安全第一、そして現場との乖離というのがありましたものですから、話を聞くだけではなくて、話を聞いたことに応えるという行動が大事だということも指摘をさせていただいて、さらに、安全第一ということで信頼を回復できるようにということを強く要請したところでございます。
○佐藤(英)委員 大臣は、このたびの二日間の限られた時間の中でございましたけれども、数々の日程の合間を縫って、千歳空港のWiFi接続状況、函館の観光対策の取り組み、新外環状道路並びに苫小牧の高速道路のアクセスのためのインターチェンジや苫小牧港、アイヌ民族博物館を初め白老の民族共生の象徴空間や国立博物館の予定地、札幌市内を走る、いわゆる札樽道、高速道路と札幌都心部を結ぶ車専用道路、いわゆるアンビシャスロードの構想の一端もごらんになられました。
特に私がうれしかったのは、大臣御自身、新幹線の北斗市の新駅の予定地や七飯町の総合車両基地を御視察いただけたことであります。二年後に北海道新幹線の開業を控えまして、国土交通大臣に御視察をいただけたというのは道民にとっても大きな喜びでございました。
今回の視察を通されて特に印象に残ったところなど、御感想もちょっとお聞かせいただければと思います。
○太田国務大臣 函館は一つ大事な視察の対象でありましたが、二十八年の春開業を目指して急ピッチで今工事がされている。本当にこれが二十八年の春開業しますと、東京駅から四時間十分で行く。ということは、大宮とかあるいは宇都宮ですと、三時間前後で函館まで行く。
観光を初めとして、五稜郭あるいは函館山、大沼、さまざまな意味で、見るところは豊富にありますし、非常に美しい。そして、食べ物も大変おいしい、土産物も当然あるということで、観光には、見るもの、食べ物、買い物という三つのものが必要なんですけれども、全てそろっているという感がいたしました。
そういう意味では、関東以北の観光客、そしてタイからも大勢来ているという話を聞きましたが、この新幹線の開業するという効果は恐らくかなりのものがあるということを私は実感したところです。
また、JR北海道の事故が大沼のあたりということでありましたものですから、工事が新幹線工事にとられているというようなお話も聞きまして、直接そこを見てきたいという思いでありましたが、新幹線工事にかかわっている人と保線にかかわっている人というのは全く違う業者、事業のものでありますので、そうしたことはないということも確認をしたところです。
また、白老で民族の共生の象徴空間をつくるということで、これは、北海道知事あるいはアイヌ協会の加藤理事長とも直接お話を、一緒に視察をしながら聞いたんですが、文化とか歴史とか民族学、そうしたことの非常に大きな発信基地になる、政府挙げてここは取り組む必要があるということを痛感してきたところでございます。
前田先生も一緒に函館を見させていただいたりして、私としては、北海道を伸ばすという非常に大事な、いろいろな機会になったというように思っております。
○佐藤(英)委員 本当にありがとうございました。心からお礼を申し上げまして、マンションの改正法案について、引き続き質問を続けたいと思います。
まず、今回、この改正案の前提として、新耐震以前に建てられた百六万戸のマンションについて、全戸耐震診断を実施していかなければならないわけでありますけれども、現在までに耐震診断の終わった共同住宅、これには公営住宅や賃貸アパートも含まれておりますけれども、全部で三十二万戸あります。
そうすると、耐震診断の終わっていないマンションは、少なく見積もっても八十万戸以上はある。一戸当たり十万円として、八十万戸掛ける十万円で、総額八百億円規模になるわけであります。費用は三分の一が国庫負担ですので、単純計算で所要額は二百六十四億円となるわけでありますけれども、国費は防災・安全交付金での対応ということですので、自治体に耐震診断の積極的な推進をお願いしなければならないと思います。
また、あわせて、国、地方がそれぞれ三分の一ずつの負担割合でもありますので、自治体がみずから耐震診断の補助制度を設置していただかなければならないということもあります。これについても、取り組みを注視してまいらなければならないと思います。
こうした予算の面での取り組みについて、御決意を含めて、御見解をまずお伺いしたいと思います。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘のように、建てかえを行う場合も、あるいは耐震改修を行う場合も、まず診断というのがスタートラインということだと思います。
マンション等の共同住宅への耐震診断の補助につきましては、従来から、公共団体が費用負担、補助を行う場合に、国においても防災・安全交付金及び社会資本整備総合交付金によって支援を行っているところでございます。現行では、総額約二兆の枠の中で、公共団体の御要望にほぼお応えできているというふうに考えてございます。
一戸当たり十万円という御指摘がございましたが、規模の大きいマンションだと戸当たりは安くなってまいりますので、総額はもうちょっと減るかもしれませんが、全部やろうとすれば相当な額に上るというのは御指摘のとおりだというふうに思っています。そういう意味で、予算の確保はしっかりやってまいりたいというふうに思います。
その上で、公共団体が補助をする場合に国の補助が出る仕組みでございますので、公共団体に補助制度の整備をしていただかなければいけないということでございまして、耐震改修法の改正を去年やりました、今回この改正も御審議いただいているところでございまして、これを契機に一層、公共団体にも補助制度をつくっていただくように、しっかり働きかけをしてまいりたいと思います。
○佐藤(英)委員 平成二十三年の住生活基本計画では、新耐震基準をクリアできている住宅の比率を平成三十二年までに九五%まで高めるという指標が示されておるわけでありますけれども、全国五百九十万戸のマンションのうち、その一八%に当たる百六万戸が新耐震以前、昭和五十六年五月三十一日以前に建設をされているということであります。
さらに、百六万戸のうち、実際に耐震性が不足しているマンションは恐らく六十万戸程度であると思いますけれども、そのうちの四十万戸強を耐震改修によって対応するということでありますので、計算上は残り約二十万戸であります。五百九十万分の二十万でありますので、指標の九五%をクリアできることになるわけであります。
あえて改修に加えて建てかえを推進する理由というのは一体何なのか、わかりやすく御説明いただければと思います。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
マンションにつきましては、区分所有関係ということでございまして、一棟の建物を多くの方が所有している、こういうことでございまして、改修をするにしても建てかえをするにしても、それぞれの居住者はいろいろなお考えがございます。
自分の部屋はきれいなので改修で済ませてほしいとか、もう部屋もぼろぼろなので、この際、多少お金がかかっても建てかえでやりたい、いろいろな方々のいろいろな意思を、全体の利益のためにしっかりと協議していただいて、一つの方向に向けていただく、こういう合意形成が非常に大事でございます。逆に、それが非常に難しいという面もございます。
出口として、建てかえか改修かということでございますけれども、結論といたしましては、そういうさまざまな居住者の意向あるいはさまざまなマンションの実情、こういうものがあるわけですから、出口の選択肢をとにかくふやしてあげるということがまず大事なのではないかと思います。
今回の建てかえの促進のための措置でございますけれども、区分所有者が求める改善の水準に対して改修に対する費用が多額にわたる、こんなような事情の場合には、建てかえがこの制度によって促進されるような都心のマンションなどがございますので、大変有効なのではないかなというふうに考えているところでございます。
そういった趣旨で、今回、こういう制度を新しくつくろうとするところでございます。
○佐藤(英)委員 指標達成へのアプローチは九五%じゃなくて一〇〇%、また区分所有者により多様な選択肢を提供すること。実際に、多数の組合が、費用の比較から、改修よりも建てかえを希望している実態があるということでありますけれども、引き続き、私の懸念、まだ幾つかありますので、ぜひ明快に、明らかにしていただければと思います。
建てかえたマンションに再入居するための資金が調達できない、融資が受けられないなどの場合、こうした方々の住まいの確保をどのようにしていくんでしょうか。建てかえ計画を提出する買い受け業者に代替住居の提供、あっせんを義務づけるとされておりますけれども、本当にそれで住居が確保できるのか。身内も知り合いもいない遠い地域に一人で引っ越していかざるを得ない高齢者が生まれないか、大変に懸念しております。
国が新しい制度をつくったために住居を失う人が出てきたら、極めて大きな社会問題になってしまいます。この問題についてはどのように対応されていくのか、明確に御答弁いただければと思います。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘のように、高齢者等で資金が十分でない方も、従後、しっかり代替の住居を確保していただくということは、住宅政策の観点からも最も重要なことだというふうに思います。
先ほども御答弁いたしましたけれども、事業全体の仕組みの中で区分所有者の方に還元される分配金、売却代金でございますけれども、これにつきまして開発利益をしっかり見込めるようにすること、さらに、容積率がアップできる場合にはその分もできるだけ見込めるようにすること、加えて、補助等によって工事費を逆に縮減して費用に余裕を持たせること、こんなような措置をまずやりたいと思います。
その上で、代替住居の提供、あっせんというのが重要になってくるんだと思います。これは、買い受け人であるディベロッパーが、いろいろな事情をお持ちの居住者の方がおられます、それぞれの事情をしっかりとヒアリングしていただいて、その多様なニーズに応えるような住宅のラインナップを、再建マンションだけではなくて、市場の中古住宅あるいは借家を含めまして、しっかりと用意して、情報提供し、そうしたあっせん、提供をしていただく、これが大事なんだと思います。
このことについては買い受け計画の中でしっかりチェックをさせていただいて、取り組みが不十分な場合は都道府県知事が不十分だよという勧告をし、それでも改善されない場合は、買い受け人であるディベロッパーがこういう不誠実なことをやっているということで公表するというような制度を設けていまして、こういう監督によって、できるだけ適正に、そして、しっかりした取り組みをしていただくということを考えてございます。
また、税の負担軽減についても措置をさせていただいているところでございます。
それでもどうしても手持ちの費用が足りないという方は、先ほども申し上げましたけれども、住宅金融機構のいわゆるリバースモーゲージ型の高齢者向け融資、この制度の活用が考えられるところでございまして、これらの制度を重層的に活用して、すき間がないようにしっかり取り組んでまいりたいと思います。
○佐藤(英)委員 きめ細かに対応されるということでありますけれども、建てかえ後のマンションに再入居しない高齢者など、従前の居住者の多様なニーズにしっかりと対応できるよう、重層的な住宅セーフティーネットも重要ではないかなと思うのであります。
既存制度の活用とともに、足らざるところを新たな施策を講じてでも住宅が確保できる仕組みを確立しておくべきと考えますが、御所見をいただければと思います。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど御答弁した中身でも、さらに、経済力の観点から不安がある方がいるのではないか、こういう御心配だと思います。
これにつきましては、まず、特に借家人の方が中心だと思いますけれども、公的賃貸住宅、公営住宅、URの住宅で比較的家賃の安いもの、それから、再開発のために受け皿となる住宅を整備して、あいているようなものがございますので、こういうものの提供、さらに、高齢者の方で保証人が得られない方には家賃債務保証の制度の用意もしてございますので、こういったものも活用してまいりたいと思います。
それから、市場の中でさらにバックアップをしていくという意味では、議員立法で成立させていただきました住宅セーフティーネット法に居住支援協議会というのをつくることができるようになっていまして、地域の中でのいろいろな、要支援者に対しての住宅の確保のための取り組みを官民挙げてバックアップする仕組みがございます。これに対する補助制度も用意してございますので、こういう仕組みも活用しながら、それでも不安が残るという方にできるだけ無理のないように対応してまいりたいと思います。
○佐藤(英)委員 ぜひ、高齢者の方々などに対する対応は、これでもかというぐらいの思いで、やはりきめ細かに対応していただければと思います。
次に、借家人の問題について、今回の仕組みでは、退去させられる借家人の借家権が消滅することになりますけれども、この借家権に対する措置は十分と言えるのでしょうか。また、他の賃貸アパートなどの契約更新に影響が出ることも懸念しておりますけれども、あわせて御見解をいただければと思います。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
この制度の大前提でございますけれども、危ないマンション、危険を解消するということが全体を通じて基本にあるんだと思います。
その上で、借家権についてでございますが、分配金取得計画の中で借家権の補償金を示すことになってございまして、これにつきましては、公共用地補償基準に準じた客観的な基準による適正な額の移転料、営業補償、これは営業者の場合ですが、家賃差額補償等の合計額をしっかり支払ってもらう、これは知事あるいは市長がチェックをすることになります。
それから、買い受け人であるディベロッパーに、先ほど申しましたように、これでもかというぐらい丁寧なヒアリングをしていただきまして、それぞれのニーズに応じた住宅をしっかりまず提供していただく。こういう観点から、先ほどの重層的なセーフティーネットも含めて、できるだけの措置を講じさせていただいているというふうに考えております。
これらの借家権の消滅という仕組みがあるわけでございますけれども、これはあくまでも事業法上の手続、枠組みの中で行うものでございまして、私人間の契約関係である借地借家法に基づく他の賃貸アパートなどの契約更新に影響を与えるものではないというふうに考えてございます。
○佐藤(英)委員 ありがとうございました。終わります。
○梶山委員長 次に、寺島義幸君。
○寺島委員 民主党の寺島義幸でございます。
ふくだ先生、佐藤先生にちょっとかぶる点もあろうと存じますけれども、お許しをいただきたいと思います。
マンションに関する関係法は、基礎的なものとして区分所有法があり、そして、東日本大震災等を受けて被災マンション法が改正をされてきたという中から、今回またマンション建替え円滑化法ということで、改正案には、新たにマンション敷地売却制度というものが盛り込まれているわけであります。
先ほど来お話しのように、住民の資金不足が建てかえの合意形成を拒んでいるのではないかと言われてもいるわけですし、建てかえ後に生まれる保留床を売却してその費用の大半を捻出するというのが、いわば建てかえのセオリーであろうと思うわけでありますが、先ほどもお話ありましたとおり、こうした手法を使えるのは都市部でありまして、容積率に余裕があるところなど、ごく一部ではないのかなというふうに考えるわけです。そして、マンション敷地売却によって各区分所有者が得られる分配金の見込み額が少ないというような場合も考えられるわけであります。
先ほどもお話ありましたけれども、事業への賛同を得られなくてなかなか事業が進まないというようなことも考えられるわけですが、本改正案において、敷地売却制度、どの程度その効果を期待しているのか、見込んでいるのかということをまずお伺いいたします。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
定量的、詳細にどのぐらいということを今直ちにお示しすることはなかなか申し上げにくいんですけれども、大きな枠組みのあらあらの推計ということでお答えをさせていただきたいと思います。
マンションの総数は五百九十万戸、繰り返しになりますが、耐震基準の古いものについては百六万戸、診断結果のこれまでの実績から、耐震性が不足しているものは約六十万戸というふうに推計をしております。この六十万戸については、基本的に改修か建てかえで全部解消するというのが最終的な目標でございます。
建てかえか改修かというのは、これまでのアンケート等々の結果でいうと、これもざっくりでございますが、改修が七割、掛け算しますと四十二万戸、建てかえは、今回の敷地売却も含みますが、大体十八万戸、こういうふうに分けられるのではないかと思います。
この十八万戸について、どういうふうに既存の制度とこの制度で分けるのかということでございますけれども、これもアンケート結果等によれば、ざっくりでございますが、大体十二万戸が今回の敷地売却を活用する、従来であれば改修にしかいけなかったものだというふうに思っております。残り六万戸が既存の制度での対応ということになります。
最終的には全部を解消していくという目標に向けて、さまざまな情報等々、周知を図り、しっかり取り組みが進むように頑張ってまいりたいというふうに思っております。
○寺島委員 十二万戸を建てかえていきたい、こういうお話であります。
それで、二〇一三年の分譲マンションの総合調査というのが報道でなされておりました。それによりますと、世帯主の五〇・一%が六十歳以上、〇八年の調査より一割ぐらいふえているというふうに聞いています。その中で、私は永住するつもりだ、こういうふうに答えた方が五二・四%おられるんだそうです。
マンションは一棟建てだから住みやすいとか、バリアフリーがあるからとか、あるいは利便性がいいとか、いろいろな理由があられるようでありますけれども、調査の二千三百二十四管理組合のうち四千八百九十六区分所有者が回答してくれているんですけれども、世帯主年齢からいえば、六十代が三一%、五十代が二二%、四十代が一八・九%、こうなっているというふうに言われていて、今住み続けているマンションをついの住みかとするんだというふうに思っておられる方が、年齢が上がれば上がるほど多くなられるということでありました。
そのことと、一方で、旧耐震のマンション、要するに昭和五十六年以前の基準でマンションを管理する三百八十八の組合のうち、先ほどもちょっと関連でお話がありましたが、実は五八%が耐震診断を実施していないんですね。聞いてみたら、予算がないというのが四四・四%、検討中というのが三三・八%、組合として考えていませんというのが二四%。
管理組合にもいろいろな報道があるのは御承知だと思いますけれども、管理組合としての機能が果たし得ないとか、そういう管理組合もあるようでありますけれども、そういう中で、先ほどもお話しのように、耐震診断も余り進んでいない現状も一方ではある。管理組合からすれば、予算もないし、なかなか合意形成も、そこから入っていくんだろうと思うのであります。
こういう現状の中で、十二万戸やるんだ、こういうお話であるわけでありますが、この法律改正によりまして果たして有効に機能させていくことができるのかどうか、その辺をちょっと、根拠があればお話をいただけますか。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど、十二万戸、この制度の活用が考えられるんじゃないかということを申し上げました。この中の多くは、比較的立地のいいところで、古く建っているので、場合によっては容積率が現行の基準をオーバーしている、したがって、従前のボリュームすら確保がままならない、改修にしかいけないだろう、こんなものが従来滞っていたということなんだと思います。
この十二万戸について、売却制度というのを導入することによって、権利調整が非常に容易になる、権利者間の権利調整が要らなくて、従後の建物のあっせん等はディベロッパーに委ねるということでございますから、こういう仕組みを導入する。
さらに加えて、既存の建てかえも含めてでございますけれども、容積率の特例制度は、耐震診断の結果、不足しているというものに限ってでございますけれども、これを適用するということによって事業の採算性は相当程度向上するんじゃないかというふうに思っております。
そういう意味では、十二万戸が改修にしかいけない、しかし、なかなかそれもままならないといったものが、今回の法制度の整備によって、しっかり促進できるような環境整備が図られるのではないか、こういうふうに考えているところでございます。
○寺島委員 ありがとうございます。
容積率の話が出ました。先ほどもちょっと両先生からもお話があったわけでありますけれども、今回の改正案で容積率の緩和の特例が盛り込まれているわけであります。緩和することによって、これもどの程度効果があるのかというのがあるんですけれども、二つ聞きますが、緩和することによって効果が結構上がると理解されておられるのか、容積率緩和はどの程度の容積率の緩和を予定されておられるのか、お伺いします。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
既存のデータで必ずしも明らかでない部分があるんですけれども、東京都内のマンションについてはある程度データがございまして、これを見ますと、いわゆる既存不適格の容積になっているものというのは大体二割だというふうに考えております。
非常にざっくり、東京以外も、もうちょっと低くなるかもしれませんが、同様に二割だというと、六十万戸に掛けると十二万戸ぐらい、さらに、容積は満たしているけれども今回の緩和の適用が受けられるというものもございますから、それを含めれば、十数万戸、二十万戸というオーダーでこの制度の活用の可能性があるのではないかというふうに考えております。
それから、容積のボーナスの度合いでございますけれども、これは、これからガイドラインなんかを示して公共団体が個々の事情で判断することでございますので、一概に言うことはなかなか難しいんですけれども、従来やっております総合設計制度、これが、普通は多いもので一・五倍、中には二倍なんというものもございますけれども、大体一・五倍ぐらいでございまして、マンションについても、上限は大体一・五倍というのが普通の上限ではないかなというふうに考えてございます。
○寺島委員 地方公共団体が決めることとはいえ、一・五倍から二倍というのはある意味では相当のボーナスにもなるわけでありまして、そこで、社会資本整備審議会建築基準制度部会でいろいろな意見が出たというふうに承っているわけであります。
容積緩和をする根拠がよくわからないとか、容積ルールの信頼が揺らぐ懸念があるのではないかとか、あるいはまた、容積率を認めたマンションと、そうでない周辺のマンション、先ほどもふくだ先生から関連でお話がありましたけれども、不公平感が生まれるとして、矛盾のないような制度設計というものが必要ではないのか、こういう意見が社会資本整備審議会においても出たというふうに聞いておるんですね。ということは、結構、専門家の皆様方もそれらの懸念をされているわけであります。
私のような素人が考えても、特定の容積緩和を与える方々と、そうでない一般の方々のマンションが存在しちゃうわけでありまして、そうしますと、一般的には不公平感がどうしても出ちゃうんじゃないかな、こう思うわけでありますが、その辺の担保はどのようにお考えでしょうか。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
容積率の特例制度については、事業をしっかり採算を持って進めていただくために必要だという見方と、それから、容積が上増しされることによって周りが迷惑をこうむるのではないか、場合によっては不公平ということがあるのではないかという御主張が両方あるということでございます。
そういうことで、容積の緩和制度につきましては、従来は総合設計制度というのがございますが、公開空地を供出していただくというような公益と、それに引きかえのボーナスとしての容積、そして、大前提として周りの市街地環境が極度に悪化することがないように、ただ、高いものが建つとかいろいろなことがございますけれども、総体的に見て悪化することがないようにということを地方公共団体がしっかりチェックするという仕組みになってございます。
今回の制度も、公益性については、耐震診断をした結果、耐震性が足りない危ないマンション、これは、住んでおられる方だけではなくて周りにも危ないということでございますので、この公益と引きかえにボーナスを出すという仕組みでございますので、従来の総合設計制度と考え方の根本は同じだと思います。したがって、公共団体が、これも現場の状況をしっかり見て判断をしていただくということになるんだと思います。
加えて申し上げますと、例えば、従前、今までの総合設計も、周りにある敷地を、新たに新築のマンションを建てる場合にはこれが適用されるわけでございまして、公益と引きかえにボーナスを出すという仕組みにおいては、必ずしも不公平にはならないのではないかというふうに考えてございます。
○寺島委員 次に、四番目の質問はちょっとかぶりますので飛ばさせていただいて、五番目の質問に移らせていただきます。
マンション敷地売却制度は、区分所有権の解消に必要な要件を五分の四としているわけであります。売却を望まない少数の意見が黙殺されるのではないか、先ほどのお話であります、という懸念があるわけです。
老朽化の耐震不足のマンションの居住者の中には高齢者や低所得者や借家人もおられるというふうに思うわけでありまして、耐震性不足であることを理解しながらも、現状において、なかなかそのマンションからの住みかえを望めない場合もあると思われるわけであります。
マンション敷地売却によって得られる分配金だけでは新たなマンションに移れないということでありまして、やむを得ず取り残された善良な高齢者や低所得者、あるいはまた借家人への配慮ということがやはり重要であろうというふうに思っております。
それらの方々に対する対応を、済みません、もう一度。重複で恐縮です。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘のように、高齢者の方、低所得の方、それから借家人の方、こういった方々の居住の安定を図る、これは住宅政策の観点からも大変重要なことでございます。一般的に、事業を行う中で、区分所有者の方々への売却代金をできるだけ高額にするとか、負担軽減措置を図ることは、先ほど御説明をさせていただいたとおりでございます。
高齢者の方に限りますと、その上でどうしても手持ちの資金がない方には、住宅金融支援機構のリバースモーゲージ型の融資の活用、こういうものも御用意させていただいております。
それから、借家人の方々については、これも補償金をしっかり払うということでございますけれども、それではどうにもならないという方に対しては、公営住宅等の公的賃貸住宅の提供、それから家賃の債務保証制度の活用、さらに加えて、先ほど申しました住宅セーフティーネット法の居住支援協議会などの場で、地域でよりきめ細かくバックアップしていく、こういう重層的な対応を図ってまいりたいというふうに考えてございます。
これも繰り返しになりますけれども、絵に描いた餅に終わらないように、まずは最初の合意形成の段階からこういうこともしっかり高齢者の方々に御説明をして、そして丁寧な事業運営を進めていく、これがまず基本だと思いますので、そういうことも含めて、しっかりと現場で対応できるように私どもも努力してまいりたいと思います。
○寺島委員 第六番目もちょっと似ているので飛ばさせていただいて、七番目の質問に移らせていただきます。
耐震性不足の老朽マンションの建てかえを促進するということは、私も重要なことであろうというふうに思っております。
一定の耐震性があっても、エレベーターがないとか使いづらいとか、ニーズに合わないマンションも実は多くあろうというふうに思っています。これから十年も経過すれば、三十年以上のマンションの半数が新耐震のマンションになるというふうにも聞いているわけであります。新耐震でも、エレベーターがなくて老朽化や陳腐化が進んでいるマンションも、実は多くあろうというふうに想像いたしております。
そうした中、なぜ耐震不足のマンションに限るのか、こういう意見も実はあるわけでありまして、ある意味もっともであろうというふうにも思っているわけであります。これも不公平に思えるわけでありますが、耐震条件のつかない敷地売却制度にはどうしてできないんでしょうか。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
先ほどから、財産権の問題もそうでございますし、特に住宅確保がなかなか難しい方々の対策について、重層的な支援をするというふうにお答えさせていただきました。
重層的な支援をするということは、やはり反対の方で、本当はいたいなという方についても事業に協力していただかざるを得ない、こういうことがあるわけでございまして、そういう観点で物を見ますと、事業推進の観点からはできるだけ要件はつけない方がいいというふうに思う反面、財産権、借家権の保障等、こういうことについて十分配慮していくことが必要だし、入り口のところで、危ないから仕方がないなということがやはりどうしても求められるのではないかというふうに思っております。
例示でございますけれども、中古マンションを買った高齢者の方が、実は建てかえの話が進んでいて、来年には出てくださいというふうになったというふうなことが生じるわけでございまして、耐震性不足のマンションであれば、自分も危険、周りも危険ということでございますし、また、昭和五十六年以前のものについて耐震性が不足している可能性が高いということは、かなりの程度周知をされてきているところなんだと思います。
こういう状況などを踏まえて物を考えていかなきゃいけないということでございまして、今回の制度は、従後にマンションが建つということが保証されない、従来の建てかえよりは少し踏み込んだ仕組みになってございますので、被災マンション法の特例と同じように、五分の四の決議でやってもいいだろうという判断をしたということでございます。
裏返して言えば、そういう安全ということにかかわらないものについてまで本当にこういう仕組みが適用できるのかということについては、慎重に考えざるを得ない。現状では、耐震性を有するマンションは、なかなか対象にはできないのではないかというふうな結論に至りました。
○寺島委員 時間がありませんので、一番最後の質問に移らせていただきたいと思います。これは、大臣にぜひ所見をお伺いいたしたいわけでございます。
巨大地震の発生の可能性がある中で、生命や身体の保護の観点から、耐震性不足の老朽マンションの建てかえを促すということは大切なことであろうと私自身も思っております。一方で、それらについて、ついていかれない方々もおられるというふうに思うわけでございます。つまり、善良な弱者を切り捨てることがあってはならないとも思うわけでございます。やむを得ず賛成できない人、特に老朽マンョンには高齢者の入居者が多く、こうした高齢者や低所得者への配慮というものが重要ではないかと思っております。
さらに、耐震性が不足している老朽マンションも、耐震性が確保されているわけですが老朽化や陳腐化が進んでいるマンションについても敷地売却制度が利用できるということが、ある意味公平性につながるのかなとも考えられるわけであります。
本法律案改正に当たりまして、その辺に関しまして大臣の御所見をお伺いいたしまして、質問を終わります。
○太田国務大臣 今回は、特に大地震が切迫をしていて、耐震を施す必要がある。それには、いろいろな角度でこれに迫らなくてはいけない。例えば、昨年は耐震改修促進法というのを出させていただいた。あるいは、ホテルやそういうところも改修を促進できるように、地方自治体の補助も相まって促進するようにする。では、マンションはどうか。耐震性の不足ということに対して仕組みをつくって、大体全部についてきちっとできるということをさせていただいて、団地等はなかなか難しいんですけれども、そういう仕組みでございます。
そこで、問題は、高齢者やそういう人たちに対する配慮ということ、住むところがなくなる、追い出されるという感覚では何ともなりませんから、そこをどういうふうに援助したり、配慮をするかということ、そこが一番大事なことだと思います。
そういう意味では、買い取り価格を開発利益を織り込んだ価格とするというようなこと、そして、ディベロッパーには代替住居をしっかりと提供、あっせんを義務づける。いろいろな仕組みで、配慮をしっかりするようにという仕組みをつくらせていただいたというところでございます。
また、耐震性はあるが老朽化や陳腐化が進むマンションについてということは、そのとおりでありますが、なかなか改修作業あるいは建てかえができないという今までの現状がありましたから、特に今回は、何かボーナスがなければそのインセンティブが働かないということで、容積率を緩和する。これは、現在の建てかえ制度もそうですし、今回の売却制度もそうでありますが、今回、それをあわせて容積率緩和というところに踏み込んだということでございます。これによってかなり進むことを期待したいし、また、それをしっかり徹底したいというふうに思っているところでございます。
○寺島委員 ありがとうございました。
○梶山委員長 次に、後藤祐一君。
○後藤(祐)委員 民主党の後藤祐一でございます。
容積率緩和については先ほど議論がありましたので、これについて一つだけ確認したいと思います。
今回可能となる敷地売却事業だけではなくて、従来の建てかえにも、百五条の要件を満たせば、要除却認定をして、市街地の環境の整備改善に資すると認められた場合には容積率緩和ができるというふうに考えてよろしいでしょうか。確認したいと思います。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
本法案における容積率特例制度は、マンション敷地売却事業によらない場合であっても、特定行政庁により耐震性不足の認定を受けたマンションの建てかえは全て対象となります。
具体的にでございますけれども、区分所有法に基づく建てかえ、それからマンション建替え法に基づいて組合をつくるような建てかえ、加えて、周りの敷地を取り込んで共同化して建てかえる場合も、この耐震性不足のマンションが含まれる場合には対象とできるということでございます。
○後藤(祐)委員 それによる促進もかなり期待できるものだと思います。
次に、先ほど来議論になっております、借家人が、区分所有者もそうなんですが、ほかの住みかを探さなきゃいけないということに関して、今回は、努力義務ではなくて、百十三条で、代替建築物の提供等を実施する義務が課せられたわけでございます。
この内容については、百九条で「決議要除却認定マンションに代わるべき建築物又はその部分の提供又はあっせんをいう。」というふうにされておりますが、このあっせんの内容について、流通している物件の中で、最大限、個々の区分所有者及び借家人の要望に最も近いものをあっせんするということを指すものだと理解してよろしいでしょうか。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
買い受け人によります代替住居の提供またはあっせん、これは、この事業の、この仕組みの根幹の一つだというふうに考えてございます。
御指摘のように、居住者の方にはいろいろなニーズがございます。このニーズをしっかりと個別に把握していただいて、それぞれのニーズに最大限お応えいただくように住居の品ぞろえを努力していただく、これが基本の考え方だというふうに思います。
○後藤(祐)委員 ちょっとはっきりした答弁じゃないんですが、百十条の方の定義では「区分所有者又は借家人の要請に係る」という言葉が入っていて、一人一人の区分所有者及び借家人の要請を満たすような、最大限近いようなものをあっせんするというふうに読めるんですけれども、これは認定のときの話なので、買い受け計画の認定の基準にすぎないので、百十三条で、個別の方に対して、個別の区分所有者及び借家人に対して代替建築物の提供等をするときに、その個別の区分所有者及び借家人の個別の要望に最も近いものをあっせんする、そういった義務があり、そして、これらの区分所有者、借家人は、あっせんされる権利が百十三条で保障されていると理解してよろしいでしょうか。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
ポイントは、百十三条で「認定を受けた買受計画に従い、」というふうになってございますので、認定を受ける際には、御指摘のように個別の事情をしっかりと把握して、それに応えるような形で提供するということが買い受け計画の中で表明されておりますので、そのことに拘束されるものだと思います。
○後藤(祐)委員 はっきりした答弁じゃないですね。そうすると、認定計画の中に全ての区分所有者及び借家人の要望が全部書かれるということなんでしょうか。
私が事前に聞いたときには、それはさすがに難しいから、百十三条で、実際にあっせんを実施するときに、個別の要望にちゃんと一番近いものをあっせんするということですよ、これはというふうに聞いておるのですが、ちょっとはっきりした答弁じゃないので、百十三条で言うところの「代替建築物の提供等」の解釈として、個々の区分所有者及び借家人の要望に最も近いものをあっせんする義務を負うというふうに理解してよろしいでしょうか。はっきり答弁してください。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘のように、買い受け計画は、どういうやり方でやるかという方法を主としてきちんと書いていただくということでございます。その中で、アンケートをとるなり把握をするということと、それに最大限応えるということを表明していただくということになりますので、当然、御指摘のように、買い受け計画に従って提供住宅を確保する場合には、買い受け計画で表明したやり方に拘束されて、それに従う義務があるというふうに思います。
○後藤(祐)委員 はっきり答弁してください。
そうすると、買い受け計画の中に全ての個々の区分所有者、借家人の要望が書かれるんですか。そうでないとすると、「買受計画に従い、」では、確実に担保されないんですよ。これはきのう聞いている説明と違いますよ。百十三条で、個々の要望に最も近いあっせんがされる義務を負うということですか。はっきり答弁してください。今のは答弁になっていませんよ。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
義務は、あっせんまたは提供ということでございますので、個々のニーズに最大限応えるということは、義務を負うというふうに思います。
○後藤(祐)委員 今の確認は大きいと思います。
これは現場での運用として大変大事でございます。実際、個々の要望なんて計画に書けるわけないわけですから、一つ一つの要望に最大限沿ったあっせんは少なくとも行われるよう、これは現場を徹底していただきたいと思います。そこが徹底されるから今回売却という形が通ったわけですから、ここは権利関係のところで非常に大事なところだと思います。
ただ、いわゆるごね得、過度な要請というのは私は許されないことだと思いますので、過度な要請が通るような制度設計にしてはならない。一方で、過度でない要請には、できるだけその要請に沿ったあっせん等を、代替建築物の提供等を行うというのがこの法の趣旨だというふうに考えますが、いかがでしょうか。政務官にお願いします。
○高木副大臣 過度な要求という話でございまして、市場に存在しない代替住居だとか、また追加の金銭の支払いなど、過度な要請があった場合の対応までは当然ながら義務づけるということではないというふうに考えております。
一方で、高齢者等の居住の安定を図るということは何よりも重要であると考えております。したがって、過度な要請でない限りは、最大限希望に近い代替住居の提供、あっせんを行うよう、きめ細かな対応を行う必要があると考えておりまして、このため、国土交通省としては、買い受け人の作成する代替建築物の提供、あっせんに関する計画の認定を行う地方公共団体等の参考となる判断基準を示したいというふうに考えているところでございます。
○後藤(祐)委員 失礼しました。副大臣、ありがとうございます。
続きまして、先ほど同僚議員からも議論がありましたが、耐震基準を満たしてはいるんだけれども、いろいろな理由で、エレベーターがないですとか、老朽化しているですとか、空室が多くなっているですとかいった理由で敷地売却をしたいというニーズが恐らくあるんだと思うんです。先ほど、財産権、借家権への配慮の観点から、今回は耐震基準を満たしていない場合に限定してということだというふうにお言葉がありましたけれども、この法律が通って実際に施行されて、特に残りの五分の一の方への配慮がどういった形で行われているかという実態がある程度明らかになってくると思うんですね。
そういった検証を踏まえて、今回のスキームというのは私はすごく意義があることだと思いますし、耐震基準は満たしているけれどもエレベーターをつけたいんだよねとか、いろいろな方があると思うんですね。エレベーターをつけたいは後でできるかもしれませんが、こういったさまざまなニーズを、耐震基準は満たしているけれども、ほかの理由で敷地売却を行うことについて、せめてこの法律施行後の状況を踏まえて検討をしていただきたい、要件拡大を検討すべきだというふうに考えますが、いかがでしょうか。
○太田国務大臣 今回はまさに耐震ということを中心にして、大地震が来るということに、これは他にも被害が及ぶことでありますので、ここは、立法の趣旨はその一点にあるわけで、そこには財産権の保障等の問題もあって、御指摘のものは今回の売却制度の対象とするのは困難だというふうに思っておりますが、現実問題は、今回はそういうことなんですが、もう少しこうしたい、ああしたいということがこれを機縁に出てくるという可能性は当然、要望は出てくるんだというふうに思います。そこはこれからの研究課題だというふうに思っているところです。
○後藤(祐)委員 ぜひ、施行された後、そういったニーズを研究課題として研究していただくよう御要望申し上げたいと思います。
それともう一つ、今回の法律で可能になるケースというのは、建物が一旦除却される必要があるわけです、その後建てることはあると思いますが。除却しないで、区分所有関係を解消した上で、もともとあった建物を改修して再利用する。例えば、老朽化したマンションを改修して高齢者施設にする。中にいる方は全員出ていっていただく必要があるわけですね。あるいは、業務がたくさんなされているような地域にあるマンションを、用途変更して、オフィスを中心としたような建物に中をリノベートする、こういった、除却を前提としないで区分所有権を解消するという方向への広げ方というのも考えられると思います。
これについては、調査室のつくった資料でも、社会資本整備審議会建築分科会の資料として、一般社団法人マンション計画修繕施工協会さんから、「実際には建替えよりも改修を行うことの方が多いため、改修による再生事業の推進に力を入れて頂きたい。」というような御要望もあったようでございます。
この除却しない形での区分所有関係を解消する制度の創設についての今後の検討について、坂井政務官から御答弁いただきたいと思います。
○坂井大臣政務官 委員が御指摘をいただいておりますように、本法案に関しましては、除却というものを前提に想定をしているものでございますが、これから先は、こうしたい、ああしたいという要望が出てくる可能性もございます。先ほど大臣が答弁をいたしましたように、そういったものが実際に出てきた場合には、研究課題としていくことになろうかと思います。
○後藤(祐)委員 ぜひそこも検討していただければと思います。
続きまして、今回は一棟建てのマンションだけが対象の法律なんですが、もう一つ大きな課題として、たくさんの棟、二棟でもいいんですが、複数棟の団地を建てかえる、あるいは、今回のように、住みかえる、更地にするような場合も含めてというような法制度を今後つくっていく必要があるんじゃないかということを考えなきゃいけないんですが、現行のネックになっている点として、こういった複数棟の団地全体の五分の四の賛成に加えて、個々の全ての棟で三分の二賛成がないと建てかえができないと現行制度でなっているわけで、実際、個々の棟の三分の二要件が満たせないがゆえに、全体は五分の四があるのに断念した例もあるというふうに伺いました。
今後、団地建てかえ、住みかえ法的なものを検討していく上で、この個々の棟三分の二要件を外せないかということも検討していくべきだと思いますが、きょうは平口法務大臣政務官にお越しいただいておりますけれども、個々の棟の三分の二要件が外せない、実質的な守るべき法益とは何なんでしょうか。
所有権そのものが侵害されるですとか、借家権が侵害されるですとか、こういった既にある法律上の権利というのは、それはもちろんある程度尊重しなきゃいけないんですが、例えば、容積率がほかのところに先に使われちゃうとほかの棟が使えなくなっちゃうですとか、あるいは日照の関係ですとか、そういった実質的な守るべき法益として、どういったものがあるんでしょうか。
○平口大臣政務官 お答えいたします。
現行の区分所有法の七十条で、団地関係にある建物についての建てかえの要件が定められているところでございます。
団地関係にある建物は、団地全体の利益を図るという側面から管理、処分が決定されるわけですが、その一方で、それぞれの建物が独立しておりまして、独立した各建物ごとの区分所有者の利益を図る、こういう側面からも、各建物ごとに管理、処分が決定される、このようになるわけでございます。
したがいまして、やや極端な例を申し上げますと、五分の四以上の決議のみで足りるというふうにいたしますと、仮に十棟のうち八棟の区分所有者全員が賛成すれば、残りの二棟については、仮にこの二棟が新築だったり、あるいは建てかえが著しく不利だというふうな事情があって、二棟の区分所有者全員が反対する、このような場合であっても一括建てかえが実施されるというふうな不合理な事態が生ずることになりますので、このようなことを勘案して、各棟三分の二以上の賛成という要件を設けているものでございます。
以上でございます。
○後藤(祐)委員 今のような、例えば新築のところが一部あるですとか、何か特殊な、正当な理由がある場合に限って、そういった各棟ごとの三分の二という要件を課せばいいんじゃないでしょうか。
○平口大臣政務官 挙げましたのはかなり極端な事例でございますので、実際の建てかえの側面においては、団地の形態にもいろいろな形がありますし、やはり一般的に各棟三分の二という要件も必要であるというふうに現在のところでは判断しているところでございます。
○後藤(祐)委員 現在のところではということでございますので、ぜひ、ここは長年課題になってきたところでございますが、国土交通省と法務省で、今後、本件に限らず、団地全体の、かなり面的に広いところも含めて、地域のまちづくり的な要素も含めて、団地建てかえ法的なものを考えるべきじゃないかと思うんです。そのときに、今の三分の二要件もきちんと検討の対象とした上で、国交省と法務省で共通の検討の場を設けて検討すべきだと考えますが、いかがでしょうか。
○平口大臣政務官 マンションは、御案内のように比較的歴史が浅うございまして、近年になって急激にふえたという事情がありまして、建てかえ問題が徐々にではありますが深刻な問題になってきつつあるところでございます。
したがいまして、このような建てかえの関係の実情等につきまして、国土交通省さんの方もいろいろと研究をされたり事例も御存じであろうかと思いますので、区分所有法あるいは建替え法、区分所有法そのものは法務省が所管をしているのでございますけれども、そのあたりの事情を十分勘案して、国土交通省の方とよく相談をしながら、今後、先生御指摘の点も踏まえて検討していきたい、このように考えております。
以上でございます。
○坂井大臣政務官 御指摘の三分の二要件の問題は、困難な問題だとは考えておりますけれども、しかし、団地再生といった全体の問題、まちづくりといった問題、こういった問題もともに重要でございまして、こういった総合的な検討を行うという観点から、法務省としっかり協力をして対応してまいりたいと思っております。
○後藤(祐)委員 ぜひ、これは長年の課題でございますので、今の各棟ごと三分の二の要件も含めて、総合的な観点から、複数棟の団地建てかえ、住みかえ促進法的なものをつくっていくことを念頭に検討を進めていくことを、大臣、もしよろしければ大臣の決意をお伺いしたいと思います。
○太田国務大臣 団地はなかなか合意形成が難しかったり、しかし、そこをどういうふうに建てかえ等々を進めていくかということは極めて重要で、なかなかさわれないということがありますものですから、ここは今、法務省と、これまでも法務省と連携をとり合いながら来たわけですが、さらにここは、どうすればできるかという方向でいろいろ検討していきたいというふうに思っています。
○後藤(祐)委員 大臣の決意をいただきまして、ありがとうございました。ぜひ、どうすればできるかという観点から、両省協力して進めていっていただきたいと思います。
ありがとうございました。
○梶山委員長 次に、坂元大輔君。
○坂元委員 日本維新の会の坂元大輔でございます。
先ほどから議論が行われておりますマンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律案、昨年成立をいたしました耐震改修促進法の議論の際にも、この国交委員会でもさまざまな角度から議論をさせていただきました。
やはり昭和五十六年の新耐震基準以前の基準に基づいて建てられている建築物をどうしていくかというのが課題であるという共通認識の中で、今回、マンションについてでありますが、やはり問題意識はかなり共有できている部分が多いのかなということで、私の質問もこれまでの委員の皆さんと重複する部分もありますけれども、そこは御容赦いただければというふうに思っております。
まずは、制度の概要に関してお伺いをさせていただきます。
現在、新耐震基準以前の基準に基づいて設計されて建てられているマンションのストックが約百六万戸あるというふうに伺っております。しかし、さまざまな施策がこれまでも設けられてきましたけれども、現在のところ、やはり建てかえの実績がまだまだ少なく、二十五年四月時点で百八十三件の事例、約一万四千戸のみだというふうに伺っております。
今回のこの改正に関して、国交省としては、建てかえが進まないこの現状を、どういった形でどのように分析をされて、今回の改正でどういった方向性で新たな施策を盛り込まれたのか、まずお伺いしたいと思います。
○太田国務大臣 昨年、耐震改修促進法をやらせていただいて、これによりまして、耐震性不足約六十万戸の中で四十二万戸ぐらいは対象としてあって、これをどう進めるかということになろうと思います。
現在のマンション建替え法では、御指摘のように、百八十三件の一万四千戸しか進んでいない。これは、容積率に余裕がないために建てかえ費用が回収できず、経済負担が多いということ、容積率のボーナスがつかないというようなことが一つあると思います。
それから、きょうの審議でも出ておりますが、組合において地権者相互の権利を調整する、推進するということの意思決定、あるいはまた、どこに自分は入っていくかというような非常に具体的な問題になりますから、そこのリーダーシップを組合としてとり得るかどうかというようなことは、全部財産権にもかかわってくるものですから、なかなか組合においての地権者相互の権利の調整の負担が大きくて難しいというようなことがあったと思います。
そういう意味では、現行の建てかえ制度、そしてまた今回の敷地売却制度の両方とも、容積率の緩和をすることにし、そして採算性の向上を図るということと、もう一つ、組合員の権利調整というのはなかなか難しいということがありますものですから、マンション敷地売却制度を創設して、マンションの再建や代替住居の提供ということについて、いわゆる買い受け人、ディベロッパーを中心に実施をさせる、そして、組合における地権者相互の権利調整の負担をそれによって軽減するということ。容積率、これは現行法と両方のやり方で、売却の場合と建てかえの場合と両方に容積率緩和を入れるということと、ディベロッパーをそこに挟んでさまざまな取り組みを調整させるという、主に二点を中心にして対応するということにしたわけでございます。
これによって、かなり促進されるようにと。具体的な問題になるとなかなか合意形成というのは難しいんですけれども、ここで進めたいというふうに思っているところでございます。
○坂元委員 大臣、力強い御答弁、ありがとうございました。
本当にさまざまなケースが考えられますけれども、これを進めていかなければならない中で、今回、こういった新しい選択肢ができたというのは、私も、非常に有効なのかな、有効に使っていただきたいなというふうに考えております。
今大臣の答弁でもありましたさまざまなケースというところで、具体的な事例は、本当に一つとして全く同じ状況のものはないというふうに考えられるわけでありますが、今回の改正案による新たな制度の設計に当たって、学識者だけではなくて、実際にマンションに住んでいる区分所有者、もしくは賃貸マンションに住む借家人であるとか、マンション管理業者など、実際にマンションというものにかかわっておられる関係者に対しても、さまざまな意見を当然聴取した上でされているとは思うんですけれども、改めてその点を確認させていただきたいと思います。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
まず、制度設計、これは一から始めたわけでございますけれども、その際には、建てかえの実務に当たっておられる専門家、コーディネーターと呼ばれるような方々とか、ディベロッパーあるいは建設会社、こういった方々の意見も聞きながら制度設計をさせていただきました。
その上で、学識経験者それから実務者も入っていただいておりますけれども、社会資本整備審議会の部会の中で意見を頂戴し、制度設計にこれも反映させていただきました。
その上で、御指摘の関係団体等ということでございますけれども、具体的な名前を申し上げます。
NPO法人全国マンション管理組合連合会、全国借地借家人組合連合会、一般社団法人マンション管理業協会、そのほか、コーディネーターとか学会とか、計画修繕の団体等からも意見を伺ったところでございます。加えて、日本弁護士連合会、それから一般社団法人全国銀行協会とも意見交換を実施させていただいております。
こういう御説明なり意見を頂戴する過程の中で、この制度についてはおおむね理解を頂戴したものというふうに思っているところでございますが、例えば、個々の区分所有者や借家人の方について、十分な措置が必要だという、多少慎重な意見も頂戴したところでございまして、これについてはこの制度設計にも反映しておりますけれども、足らざるところにつきましてはガイドライン等でしっかり補って、丁寧な事業執行がなされていくように努めてまいりたいと思います。
○坂元委員 ありがとうございました。
先ほどの大臣の御答弁で、組合での決議がなかなか形成されにくかったんだというお話がありましたが、今回の新しい制度の中で、買い受け計画の認定が決議よりも前に必要だというふうになっているわけであります。これは、建てかえであったり売却を前向きに進めたい方にとっては、具体的な計画が見えるわけなので、非常にいいとは思うんですけれども、反対に、懸念を持っておられる方、心配していらっしゃる方、もしくはちょっと後ろ向きな方々は、何だ、もう決まっているんじゃないかということにならないのかという声もあったんじゃないかなというふうに思うんですが、区分所有者の合意形成上、買い受け計画の認定が決議よりも前にあるということは、これは支障にはならないとお考えでしょうか。
○井上政府参考人 お答えを申し上げます。
従来の建てかえ事業においてでございますけれども、ディベロッパーの選定というのは一つの重要なプロセスでございまして、御指摘にもありましたように、一部の方だけで話が進んでおって、知らない間に事業協力者が決まっていたということが後々の事業の最大の支障になるというようなことは、よく報告を受けているところでございます。
御指摘の点につきましては、正直、議論があったところでございまして、事前にやれば、十分な措置を約束させられて、事業執行は円滑にいくんだけれども、事前に選ぶことについてはどうなんだという議論がございました。
ここは、法制的にはなかなか組み込めなかったんですが、従来の建てかえでも、同じようにでございますけれども、事前にディベロッパーを選ぶ際には、いろいろな条件を出してもらって、比較考量して決めるという透明なプロセスが必要なんだと思います。法的な枠組みではございませんけれども、こういう必要性について、これはしっかりガイドラインを定めて示してまいりたいというふうに思っていますので、それに基づいた事業執行をしていただければ、御指摘のような問題は生じないで済むんじゃないかというふうに思っております。
○坂元委員 ありがとうございました。
そうですね。これは、運用の面でガイドラインをしっかり示していただいて、ある程度合意形成ができ上がっている状態での買い受け計画の認定という方向にぜひとも持っていっていただいて、トラブルが起きないような形で進めていただければなというふうにお願いをいたします。
続いて、団地の件をお伺いしようと思っていたんですけれども、この件は、先ほども後藤委員がかなり強く御要望もしておられましたので、飛ばさせていただきます。
続いての質問ですが、具体的なことなんですけれども、現行の優良建築物等整備事業、これはマンション建てかえタイプということで、共用の通行部分、エレベーターなんかが優良建築物であるというふうに認定をされた場合、補助が出るという形になっているわけでありますが、今回つくられた建てかえの制度に関してもこれは引き続き実施をされるのかという点、確認をさせてください。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
優良建築物等整備事業における補助は、先ほど来お答えいたしましたけれども、事業の採算性の向上を図るという意味では非常に重要でございまして、マンションを除却する工事費、これも結構な額になりますし、新たなマンションの整備費の中で共同で使う部分、廊下とか階段とか、こういうところの工事費、これも補助対象にしているところでございまして、国三分の一、公共団体三分の一で、合わせて三分の二、事業費全体でいえば大体一五%から二〇%強ぐらいというような補助を行っているところでございます。
これが欠けるということになると、先ほど来の採算性向上に重大な問題が生ずることになりますので、今回の敷地売却制度の創設にあわせまして、予算上もしっかり措置をさせていただいたところでございます。
今後とも、交付金の活用によってしっかり支援してまいりたいと思います。
○坂元委員 明確な御答弁、ありがとうございました。
おっしゃるとおりで、これはやはり、実際に携わっていらっしゃる方に聞いても、結構大きいということでしたので、引き続き、しっかり補助も出していただきながら、建てかえ円滑化を進めていただければなというふうに思っております。
続いての質問でありますが、マンション建てかえ制度においては、再建したマンションへの権利変換等によって、以前に住んでいた住民の建てかえ後の住宅が確保されるのが一般的であります。
今回設けられるマンション敷地売却制度において、敷地売却後に新たなマンションが建てられない場合というのももちろん想定されるわけでありまして、建てられない場合、以前の居住者の居住の安定確保、これは先ほどからも議論になっておりますが、どのような配慮がなされるのか、もう一度確認をさせてください。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
居住の安定という観点から、先ほど来御答弁しております。かいつまんで申し上げますと、区分所有者の方々にできるだけ開発利益を還元して手取り額を多くするということ、それから代替住居をしっかり提供、あっせんするということ、税制の特例などにより負担軽減を図ること、高齢者の方々に関しては住宅金融支援機構のリバースモーゲージ制度等の活用を図ること、こういうことでございますけれども、従後にマンションが建たないということに関しては、特に留意点が二つあるんだというふうに思います。
一つは、マンションを建てないということは、そのほかの用途の方が恐らく経済合理性がある、裏返して言えば、土地代を高く負担できるということであるんだと思います。それはしっかり居住者の方にできるだけ還元していただく、こういうことになるんだと思います。
二番目でございますけれども、従前のマンションに戻れないわけです、同じ場所には。そういう意味では、代替住居のラインナップが減りますので、流通物件の中で、新築、中古あるいは貸し家ということでございますけれども、これについて、マンションが建つ場合よりも一層しっかりとした品ぞろえをしていただく。この二点だと思います。
しっかり取り組むように、ガイドライン等で示してまいります。
○坂元委員 続いてなんですけれども、これも先ほどから指摘されておりましたが、やはり古いマンション、耐震性不足の老朽化したマンションは、高齢者や低所得者の方が住んでいるケースが多いということが推測されますし、実際私も、いろいろなところを伺っても、そうだというふうに感じます。
ケースとして、やはり、マンションの敷地売却によって得られる分配金では再建されるマンションの取得が難しいという場合も想定されるわけでありますが、このような居住者に対してはどのような配慮がなされるのか、もう一度確認をさせてください。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
一般的な居住安定のための取り組みは、先ほど御説明をさせていただいたとおりでございます。
その上で、例えば、高齢の方で、手持ちの資金がどうしてもない、収入も年金だけだというような方については、お貸しするしかないわけでございますが、お貸しするにしても一般の融資の活用はなかなか困難だということで、これは住宅金融支援機構において、いわゆるリバースモーゲージ型の融資制度を用意してございます。基本的には、担保物件は当該取得されるマンションになるのですが、月々の支払いは金利のみという形で、月々の負担を非常に低くした形の制度を用意しているところでございます。
それから、借家人の方、それから持ち家の方も、中には借金をいろいろ抱えておられて、分配金を得ても手持ち資金が全くないというような方も生ずることになると思います。
これらの方については、代替住居のあっせん等で、できるだけ、まずは買い受け人に努力していただくというのが基本でございますけれども、公共賃貸住宅の活用でありますとか、それから、保証人が得られないという場合には家賃債務保証制度の用意もいたしておりますし、それでも足りない、どうしても困るという場合には、地域において設立されています居住支援協議会、こういうところで、官民挙げて、どうしたらこういう方々を支援できるかということを協議して対応していただく、こんなような枠組みも用意しておりますので、こういう重層的な取り組みをしっかり漏れなく活用してまいりたいというふうに思っております。
○坂元委員 ありがとうございました。
先ほどからの議論にもありますとおり、ごね得は私も許されないとは思うんですけれども、ごねているわけではなくて、実際にいろいろな問題があって、なかなか新しい住居を見つけるのが難しいんだという方々に対しては、最大限の配慮がなされるような、重層的な対応をお願いしたいというふうに思います。
続いて、借地借家の場合についての事例をお伺いしたいというふうに思います。
当然、マンションの中には、借地の上に建てられている場合もあります。こうした借地上のマンションについては、本改正案により設けられるマンション敷地売却制度をどのような形で適用されるのか、確認をさせてください。お願いします。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
マンション敷地売却制度は、耐震性不足のマンションとその敷地を売却するということでございますが、本法案のマンション敷地売却の定義において、マンションの敷地利用権、これは所有権と借地権ということになりますが、この利用権が借地権であるときも、マンションとその借地権を売却することができるというふうに規定をしているところでございます。
したがいまして、借地の上に建てられているマンションについても、マンション敷地売却制度が適用され、その敷地の借地権を売却することによって売却が進むということなんですが、一点、留意事項がございまして、借地権も、物権として登記できる地上権と一般の賃借権の場合がございます。一般の賃借権の場合には、通常の賃借権の売買の際と同様に、所有者の同意というのが必要になってまいります、地上権である場合には必要ございません、こういうことでございます。
○坂元委員 承知いたしました。ありがとうございます。
続いての質問ですが、借家人に対してこの制度はどのように適用されるのかという質問です。
もうちょっと詳しく言いますと、敷地売却決議は、借家契約の更新のストップや解約の理由として認められるのか、法的にも認められるのかということと、認められるとすれば、権利をストップされてしまうわけですから、借家人の権利はどのような形で保護をするのかということ。
もう一歩進んで、これは補償金という形で手当てをするしかないのかなというふうに思うわけでありますが、補償金が支払われる場合は、その算定根拠となる基準はどういった形になるのか、御答弁をお願いいたします。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
まず、本法案の敷地売却制度では、買い受け計画や分配金取得計画において、行政が一定の関与をいたしますけれども、最終的に権利の消滅期日というのを迎えることになってございます。この期日をもって、借家契約期間中であっても、借家権は消滅をするということでございます。借家権のストップがされるということでございます。
代替措置でございますが、これも先ほども御答弁したかと思いますけれども、まず、耐震性不足のものに限ったという前提の上で、補償金については、公共用地補償基準に準じて客観的に算定をするということでございます。それから、加えて、買い受け人であるディベロッパーに、借家人の要請に応じた代替建物の提供、あっせんについて、しっかりと骨を折っていただく、こういうことが代替措置でございます。
御指摘のように、ポイントはこの補償基準でございまして、誰もが納得するような基準にできるだけしていかなきゃいけないというふうに思います。法令では書き切れませんので、これも私どもの方でしっかり、判断基準となるようなガイドラインをつくりまして、現場が混乱することがないように努めてまいりたいと思います。
○坂元委員 そうですね。もちろんこれは法令では書き切れませんので、ガイドラインの中でしっかりと、客観的に公正な、誰が見てもわかりやすい形でつくっていただければというふうにお願いをいたします。
続いての質問でありますが、区分所有者、借家人への対応について、これも法令で書き切れない部分だというふうに考えておりますが、伺いたいと思います。
今回のマンション敷地売却制度を利用して建てかえ等を進める場合、区分所有者や借家人が、具体的に計画の説明を求めたり対応を相談できる窓口的なものが必ず必要になってくるかと思います。計画であったり、どういった形で自分の新しい住居が決まっていくのか、もしくは、同じ敷地に建てかえるマンションにどういった形で入居していくのかといった部分も、細やかな対応が必要かというふうに思います。
これは、買い受け人、ディベロッパーに相談窓口を設置する義務は課される形になるのでしょうか。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
買い受け人は、これも先ほどお答えしたかと思いますけれども、個々の区分所有者ないし借家人の状況をしっかり把握する、これは義務でございます。
窓口というのが、物理的な窓口なのか、担当者というようなことなのか、これはそれぞれのディベロッパーの体制等々で異なってくると思いますけれども、きっちり相談に応じて、きめ細かに対応して、困るというようなことに対して、いろいろ注文がついても、それもしっかり受けとめていくということは、事業を進める上での基本だと思います。これは従来の建てかえ事業でも同様でございまして、同じようなことがなされているというふうに思います。
今度の制度は新しい制度でございますので、ガイドラインというものでしっかりやり方は示してまいりたいと思います。
○坂元委員 今御答弁があったとおり、やはり、現実に運用していくときに、義務として課すわけではないけれども、間違いなく必要になってくる部分だというふうに思いますので、そこは、これまでの事例も含めながら、ガイドラインの中にしっかり盛り込んでいただきたいというふうにお願いをいたします。
続いて、これも先ほどから議論になっている部分でもありますけれども、今回、五分の四以上の賛成多数でマンション敷地売却決議は成立をするわけでありますが、その残りの方々、つまり、少数の反対者の方々への対応はどうなるのかという点であります。
この点、反対者への対応をどうしていくのかという点についてお伺いをさせていただくと同時に、反対者の方が、時価による売り渡し請求に応じず、居座った場合、つまり、先ほど御答弁があった、権利消滅期日を超えて残られた場合、居座った場合というのはどういうふうに対応していくのかという点について、御答弁をお願いいたします。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
従来の建てかえ制度と同じく、マンション敷地売却決議に反対された方について、賛成に転じませんかということを期間をもってお尋ねする機会、これは法定で設けなきゃいけないことになっていますが、それでも反対を続けられるという場合についての問いだと思います。
こういう方につきましては、時価によって区分所有権を強制的に売り渡していただくという、売り渡し請求権というものを付与しているところでございます。この請求が到達した時点で、法的には売買契約が成立した効果が発生するというふうにされているところでございます。
この時価については、基本的には分配金の額と同じ考えでございますが、分配金につきましては、ディベロッパーが競争して、事実上、条件で競り合うわけでございますので、この時点での時価よりは多少高くなる可能性はあるんだと思いますけれども、基本的には同じ考えで出されるものだというふうに思います。
その上で、区分所有者は分配金取得計画に定められた権利消滅期日までにマンションの明け渡しを行う、これは義務になるということでございます。しかしながら、義務は義務として、物理的にそのままお住まいを続けられるという方が中にはあるわけでございまして、これにつきましては、事業の進捗に影響を及ぼすということでございますので、最終的には、明け渡し断行の仮処分や明け渡し訴訟、こういうものを起こすという流れになるんだと思います。
従来の建てかえの中でも、大体〇・何%というオーダーでございますけれども、こういう訴訟に至るケースがあったわけでございます。訴訟されるということになりますと、する方もされる方も、費用的にも時間的にも負担がかかるということでございます。
今回につきましては、日本弁護士連合会と連携しまして、敷地売却や建てかえに関しまして、法的、技術的な専門家による相談体制、それからいわゆるADR、紛争処理体制の整備を図るべく、今検討を進めているところでございます。こういうことによってしっかりと対応してまいりたいと思います。
○坂元委員 訴訟になると、これは本当に、お金の面でも時間の面でもロスが発生することになりますので、極力そういったものを起こさないような対応をしていただくと同時に、今御答弁がありましたとおり、さまざまな相談をしながら制度をつくっていっていただきたい、対応していただきたいというふうにお願いをいたします。
続いて、容積率の緩和について何点か質問、確認をさせていただきたいと思います。
これも先ほど御質問があったかと思います。例えば、建てかえマンションの隣に新築のマンションがある場合、両者で許容の容積率に差が出てくるケースも考えられるかと思いますけれども、これは法的に不合理ではないかという点について御答弁をお願いいたします。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
容積率の特例制度につきましては、一定の公益と引きかえに容積率のボーナスを付与するということが基本になっているんだと思います。そういう意味では、現行の総合設計制度につきましても、公開空地の確保というのを公益の柱としながら、容積の特例を認めているということでございます。今回の容積特例制度は、この公開空地要件のかわりに、古い危険なマンションを除却するという公益に着目をして、容積の特例を与えているということでございます。
不合理あるいは不平等が生ずるのではないかということでございますけれども、仮に新築のマンションが周りにある場合でも、公開空地等を提供する場合には、容積特例の適用が受けられる可能性があるわけでございまして、そういう意味では、制度全体を見ていただければ、不公平ということには必ずしも当たらないというふうに思っております。
○坂元委員 制度全体で見ればという御答弁でありました。
あともう一点、このまま残しておくと危険な建築物をいかに除却もしくは建てかえていくかという点もありますので、ある程度のインセンティブはやはり必要なのかなというふうに私も考えておりますが、法的に見て合理的であるという部分も必要だと思いますので、こういった質問をさせていただきました。
続いてなんですけれども、具体的なケースとして、幾ら容積率を緩和しておりますといっても、周辺の環境の問題であったり、具体的には日照権の問題等で、増床ができない、もしくは、逆に、もともと建っていた高さよりもさらに減らさなければならないケースというのも考えられるのではないかと思いますが、そうしたケースにおいては、インセンティブが働かないので、なかなか建てかえは難しくなる場合もあるかというふうに思います。
そうしたケースにおいては、どのような形で老朽化マンションを再生していくお考えか、伺いたいと思います。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
もとよりマンションにつきましては、周りの環境なども含めて、マンションそのものはもちろんでございますけれども、いろいろな事情、いろいろな周辺環境というのがあるんだと思います。その周辺環境等も含めたいろいろな条件の中で耐震化を何とか進めたいというのが、今回の提案をした趣旨でもございます。
御指摘のように、周りの状況から、容積はもう余裕がないんだけれども、あるいはオーバーしているんだけれども、ボーナスを付与するのは到底周りの理解が得られないというようなケースも中には想定されるわけでございます。これは、そういう意味では改修という方向で検討していただかざるを得ないということになろうかなと。これはあくまでも条件次第でございますし、公共団体の判断次第でございますけれども、そういうものも中には出てくると思います。
これにつきましては、昨年の耐震改修法の改正で、耐震改修、診断の努力義務の創設、それから容積率、建ぺい率の緩和の特例、これは外づけ工法などに関してでございます、それから耐震改修の必要性を受けた区分所有建物の決議要件の特例、四分の三以上から過半数にというふうに緩和をした、こういった措置を講じたところでございます。
それでも、やはり経済的にも大変だというケースはあると思いますので、従来からございます耐震改修の補助、この補助制度を全国の地方公共団体に、今はまだ普及していないところもございますので、しっかり広げていく努力をして、こういったマンションも改修が実現できるように努めてまいりたいと思います。
○坂元委員 力強い御答弁をありがとうございました。
建てかえがなかなか難しいという場合でも、老朽化したマンションは何とかしなければいけないという課題は残っておりますので、今御説明ありましたとおり、改修に向けて、私も地元を回っておりまして、耐震改修促進法もまだ浸透できていないなというところも、正直思うところもありますので、我々も含めて、この耐震改修ということも、制度が、こういったものがありますよという普及を引き続き頑張っていただきたいなというふうに思います。
最後の質問であります。
耐震改修促進法においては、容積率だけではなくて建ぺい率の緩和も特例措置として設けられたわけでありますが、逆に、本改正案において、建ぺい率は触れられなかった、緩和されなかった理由をお伺いしたいと思います。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
耐震改修を行う場合には、既存の建築物の条件というのはあらかじめ与条件で決まっているということだと思います。
そういう意味で、容積率及び建ぺい率が目いっぱいで建っているもの、こういうものについて、最近非常に有効だと言われています外づけフレーム工法を採用するときに、どうしても容積、建ぺいがふえてしまう、これを救済しないと改修が進まないということで、昨年は特例を設けさせていただきました。
今回の法案で対象としているのは、除却とその後の建物の新築、まあ、建てかえでございますけれども、新築ということになります。
新築でありますと、設計条件というのは、一から、与えられた敷地の中で設定することができますので、容積率は経済性の面からできるだけ上積みした方が有利だということはございますけれども、建ぺい率については、設計の自由度の中で、特例を設けなくても一般的には十分対応できるというふうに考えておりますので、今回は特例を設けませんでした。
○坂元委員 理解をいたしました。
きょう、いろいろな点を確認させていただいて、最初にも申し上げましたが、新耐震基準以前の建物をどうしていくか、特にマンションはストックが多いので、さまざまなケース、さまざまな選択肢を広げた上でしっかり取り組んでいっていただくことを最後に御要望申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○梶山委員長 次に、杉本かずみ君。
○杉本委員 みんなの党の杉本かずみです。
もう六番目の質問者になりましたので、重複があるかと思いますが、できるだけ避けて質問させていただきたいと思います。
お話をずっと伺っていますと、今次法改正というものは、とにかく耐震化を通してできるところから進めていこうということと理解させていただいていますが、一方で、課題として、郊外型というか、経済合理性がうまく働かないようなところをどうするんだろうか、あるいは賃貸はどう考えたらいいんだろうか、こういった部分については今後の課題ということだと思います。そんな中で質問をさせていただきたいと存じます。
まず、現状の把握という意味から、今申し上げた賃貸の戸数なんかを確認したいんですけれども、住宅の種類別で見た場合に、分譲の数というのは今回、法案という関係で数を伺っているんですけれども、賃貸の数がどうしてもはっきりしていないんです。この賃貸の建物についても、当然、住民の命、居住の安定といったことを考えていかなきゃいけないわけでございますので、賃貸の概数で結構ですので、御当局はどういう把握をされているか、確認をさせてください。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
最新の住宅・土地統計調査、これは昨年調査が行われましたが、まだ集計されてございませんので、平成二十年の調査ということになります。
この調査によりますと、住宅全体の戸数は五千七百五十九万戸でございます。この中で空き家が非常に多くなっていまして、実際に住まわれている住宅というのは四千九百六十万戸でございます。
分譲もお答えしますが、いわゆる分譲マンション、それから御指摘の賃貸住宅、これはマンションじゃなくて戸建ても入っていますが、分譲マンションは四百六十八万戸、賃貸マンションは千四百九十四万戸というふうになってございます。
なお、一般的に、マンションの戸数五百九十万戸とか、二十年では五百四十五万戸と言っていますが、これは当初分譲マンションとして供給されたものの総戸数でございまして、実は、この中には空き家とか賃貸に転じているもの、又貸しされているもの、こういうものがあるんだと思いまして、この差はそういうものだというふうに理解をしております。
○杉本委員 ありがとうございます。
次に、大臣の御答弁にもありましたけれども、容積率に余裕があるところが建てかえができているということで、いただいたデータ、ちょっと私の質問は百八十三戸と書いていますが、百八十三件のこれまでの実行例というのがあるやに伺っています。
一種、これは先行事例というか成功例であるというふうにも考えられると思いますけれども、具体的に例えば一つ挙げると、東京の新宿区で五階建てのマンションを建てかえて間もなく二年になる、構想から十七年、区分所有者らによる約七十回の会合を経て建てかえが実現ということで、結論的なところで、日影規制などにより現状より高くはできなかったが、一部を半地下にするなどして容積をふやし、五階建て十六戸のマンションが完成したと。ただ、区分所有者は平均約二千八百万円の差額を負担したというふうにも書いてあります。
こういった事例もこの百八十三件に入っているかと思いますけれども、成功事例、先行例を整理すると、どういった要因が、大臣の答弁の容積率、それも主因だと思いますけれども、それ以外の部分で何かあるのかどうか、この点をお伺いしたいのと、これも質疑で既にあったと思いますけれども、今回の法改正によって期待される効果、具体的な数値目標、十二万戸という数字が出ていましたけれども、より具体的な目標設定をされなくていいかどうかを含めて御答弁いただければと思います。
○高木副大臣 マンションの建てかえに当たりましては、区分所有者間の合意形成、そしてその合意形成に向けての丁寧な取り組みというのが重要になるわけでありますけれども、百八十三件の成功要因としては、先ほども例を挙げていただきましたけれども、そういったことが大きかったのではないかというふうに思います。
また、容積率のことにつきましては、新たに活用する容積率が多いなどの好条件というのがあって、建てかえに関して十分な合意形成が図られた結果がこの百八十三件につながったんだというふうに考えております。
一方で、本法案による効果ということでございますけれども、特に都市の中心部に多く見られる古いマンションは、建設後に容積率制限が新設されたために建てかえがなかなか進まないという実態がございまして、それで、先ほど来話が出ておりますけれども、本法案では、合意形成が容易で、そして事業の自由度が高いマンション敷地売却制度の創設、そしてまた容積率の緩和特例を講ずるということにしたわけでございます。これによりまして、耐震性不足のマンションで合意形成の難航や容積率制限等の事情により現行制度で対応できなかったものが、建てかえが大幅に促進されるというふうに考えているところでございます。
また、効果と数値目標でございますけれども、旧耐震基準に基づいて建設されたマンションは約百六万戸、このうち耐震性不足のものは約六十万戸と推計しておりまして、本法案によって、おおむね約十八万戸が建てかえやマンション敷地売却で耐震化に対応するものと見込んでいるところでございます。
なお、目標というような話が今あったかと思いますけれども、平成十七年、中央防災会議決定の地震防災戦略等において、平成二十七年までには耐震化率を九割とするということ、あるいはまた住生活基本計画、平成二十三年閣議決定でございますけれども、これでは、平成三十二年までには耐震化率を九五%とするということがありまして、昨年の、先ほど来話がございますけれども、耐震改修促進法の改正とあわせまして、これらの目標達成にこの法案が資するというふうに考えているところでございます。
○杉本委員 どうもありがとうございます。
次に、現状把握を引き続きさせていただきたいんですけれども、今、井上局長から、空き家ということが数字の開示の中で出てまいりましたけれども、率直に言って、空き家になっている分譲のマンションのお部屋の数が、実は、建築をしてから年数がたつに従って、何か比例関係が存在するやのごとくふえているんじゃないかなという気がいたします。
また、やはり同じように、経年、月日のたつことによりまして、マンションの中で、結構、あの人知らない顔だなというような方が住んでいらっしゃったり、あれ、外国人の方も住んでいるのかとか、こういう形で賃貸の物件に回っている。又貸しまであるかどうかわかりませんけれども、なくはないのかもしれません。
そういうことで、月日を経ることによって空き家化する、あるいは賃貸化する、こういった傾向があるのかどうか。最初の質問でふくだ代議士が高齢化と年数といった感じのことをおっしゃっておられました。
ちょっとまたこれは例として適切かどうかわかりませんが、プライベートで香港に行って、中心街のホテルは高いので安いところに行って泊まると、郊外型の高層マンションみたいなところだと、実際、十階建てでもあそこはエレベーターがなくて、だから家賃が安くて、中国本土から出てきた人がああいうところによく住んでいたりするんだと。見ると、そういったところは耐震化は大丈夫なのかなというのを率直に感じたりするんですが。
ちょっとその例に当たるかどうかは別としまして、今の現状把握としての、建物の年数と空き家戸数、マンションの賃貸状況、こういったものを改めて確認させていただきたいと思います。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
冒頭、訂正でございますけれども、先ほど、千四百九十四万戸について、戸建てが入っているというふうに申し上げましたが、二階建ての低層アパートが入っているということで、戸建ては入っておりませんので、おわびして訂正をしたいと思います。
今の空き家ないしは賃貸の状況でございますけれども、しっかりとした統計データがあるわけではございません。いろいろ報告されている中で、少なくとも、築年が上がっていくに従って、居住者の方の高齢化が進む、それから賃貸化が進む、これについては、しっかり状況としては認識をしているところでございます。
この数字的な押さえでございますけれども、平成二十年のデータで押さえるしかございませんけれども、住宅・土地統計調査のマンションの戸数が四百六十八万戸になってございます。一方で、マンションだけの統計調査では五百四十五万戸マンションがある。このマンションというのは、供給当初、分譲マンションであったものということでございます。したがいまして、この差の約八十万戸というのは、空き家または賃貸住宅ということになるんだと思います。
これは、統計上の制約から、空き家と賃貸の内訳はちょっと、現在お示しすることはできませんが、全体の傾向はこういうことだと思います。
○杉本委員 どうもありがとうございます。
次に、またこれは現状把握なんですけれども、結構、管理組合の問題というのはあるという認識をしております。
管理組合の不適切な運営状況、これも建築後年数と何か比例関係があるような気もいたしますし、大手ディベロッパー関連が手がけたものについては、そのディベロッパー関連の管理会社が運営するということで適切な運営がなされているような理解もさせていただいています。
例えば豊島区の管理状況届け出義務づけ条例というのもございますけれども、こういったものについて、適切な運営管理がなされないものに対する罰則をいかに位置づけ、評価するのか、この点について教えていただければと思います。
○坂井大臣政務官 国土交通省では、平成二十五年度マンション総合調査を行ったところでございますが、マンションが高経年であるほど管理組合の運営状況が不適切となることについて、直接的な関連性はあらわれておりません。
ただし、一般的に、年がたつとともにマンション居住者の高齢化率、それから空き住戸、第三者に賃貸する住戸が増加することを考慮すれば、マンションが高経年であるほど管理組合の運営上の問題点や課題は増加すると考えております。
修繕積立金の管理運用状況につきましても、経年による変化を踏まえた調査は実施しておりませんが、平成二十五年度マンション総合調査によれば、修繕積立金の管理運用といたしましては、銀行の普通預金が七九・六%、約八割と最も多く、次いで銀行の定期預金が六五・二%、銀行の決済性預金が二二・九%、住宅金融支援機構のマンションすまい・る債が二一・二%となっております。
また、修繕積立金などの管理組合財産の横領の問題に関しましては、管理会社職員の関与によるものを国土交通省が覚知した場合、当該事実を確認の上、マンションの管理の適正化の推進に関する法律に基づき管理会社の監督処分を行っております。
同法が施行された平成十三年から平成二十五年度末までに、管理組合財産の横領事案に関して監督処分を行った件数は計四十九件ありました。
また、大手ディベロッパー関連の管理会社が管理を行っている場合と行っていない場合とでマンションの管理の状況が変わるかということにつきましては、これまで特に比較できるようなデータは聞いておりません。
○杉本委員 ありがとうございます。
昭和五十年代、等価交換方式とかいう形で結構分譲マンションが建ちまして、そういったところについては、なかなか大手がマンションをというのは、一部始まっていたと思うんですけれども、それで、管理とかそういうものについての問題意識というのは、実は、盛んになってくる前段階というんですか、そこは余りなかったので、今日的な課題として、住民自治ではあるものの、管理組合が本当に適切かどうかという問題が大きく横たわって、今後またさらに出てくる可能性もありますので、この点については、御答弁賜りましたけれども、引き続き御留意をいただければと思っております。
次に、マンション敷地売却制度、五分の四以上賛成とした根拠、これを伺いたいんですけれども、衆議院の法務委員会、昨年の五月十七日、谷垣法務大臣から、「反対する者の意思に反してでも決議を実行することの正当性を担保するためには、単なる多数決というわけにはいかないだろう、要件の厳格性が必要だろうということになる」。その後、続けて、「建物の建てかえについては、五分の四以上の特別多数決でできるということになっておりますので、これも建てかえに類するものでございますから、これと同程度の多数決要件とすることが相当だろう」等の御答弁がありますが、この五分の四とした改めての根拠。
それと、法案の百八条に、区分所有者集会において、区分所有者、議決権、当該敷地利用権の持ち分価格の各五分の四以上の多数で、こういうふうにあります。この中で、うたわれている文章の中で、理解として、頭数と利用権での持ち分と、こういった分がありますけれども、これはどちらの条件もクリアしないといけないのかどうか、この点についても確認をさせていただきたいと思います。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
本法案につきましては、先ほど御紹介のございました谷垣大臣の御答弁も踏まえながら、法務省と連携をして検討を進めてきたものでございます。
耐震性不足のマンションに関しまして、国民の身体、生命の保護を図るとの公共性の観点から、財産権、この場合は区分所有権でございますけれども、財産権の保障に対する特別の措置として、多数決によるマンション敷地売却制度の創設を行う、こういうこととしたわけでございます。
この決議要件、何を参考にしたかということでございますけれども、従来の建てかえの決議要件もありますけれども、実は、昨年改正をされました被災マンション法に基づいて、大規模な震災等によって大規模一部滅失、これは二分の一以上滅失ということでございますが、そういう滅失をした被災マンションに係る建物敷地売却制度というのが既に創設をされておりまして、そこでの多数決の割合が五分の四以上とされておりますので、直接的にはこの規定とのバランスをとったというふうに理解をしております。
次に、決議要件が三種類ございまして、どういう相互の関係かということでございます。
具体的には、決議要件が三つございますのは、区分所有権、これは頭数でございます、区分所有権者数ですね。それから議決権、これは専有部分の床面積の割合でございます。それから、最近供給されているマンションはもうほとんどこれと同じなんですが、敷地利用権の持ち分の価格、これは敷地利用権の持ち分でございまして、この三つについて、これはどれが優先ということではなくて、全部を満たさなければいけないということでございます。
○杉本委員 確認をさせていただきました。どうもありがとうございます。
次に、現行法で言うところの百二条以降に勧告のところがあるんですけれども、この部分が今回の法改正ではごっそり削られているという感じがいたしますけれども、これを削ってしまっていいのかどうか、この削ってしまう理由について確認をさせていただきたいと思います。
○高木副大臣 ただいま委員御指摘いただきました危険有害マンションに係る勧告制度、これは、多数決による区分所有者の自発的な意思ではなくて、市町村が危険有害であることを理由として建てかえを勧告する、こういう制度でございます。
当該制度は、今申し上げたとおり、市町村が建てかえを促す制度であるために、区分所有者及び借家人という権利者に対して、代替住居の入居保証の責任を市町村が負うということになるわけでございますけれども、こうした制度は、実は、市町村にとって大きな負担にもなっておりますし、また、危険有害の基準というものが非常に複雑でございまして、平成十四年の同法の制定以降、これまでに活用された事例はないわけでございます。また、私どもが把握している限り、市町村においてこの制度を適用する意向というものはないということも確認をしております。
このため、危険有害マンションに係る勧告制度を廃止することとしたわけでございますが、新たに創設するマンション敷地売却制度については、区分所有者の発意による検討や合意形成を前提として、耐震診断により耐震性が不足していることが確認されたマンションに対象を限定するということで、明確になり、わかりやすく、より実効性のある制度になると考えておりまして、危険有害マンションに係る勧告制度を廃止しても特段問題はないというふうに考えているところでございます。
○杉本委員 ありがとうございます。
活用事例がないという、高木副大臣の明快な御答弁でございました。
次に、容積率の緩和、幾度も質問に出ていますけれども、今回、適用するに値する内容というのは政令で定めるというようでございます。伺ったようなケースというのは、共用空間の拠出だとか、あるいは地域のための備蓄倉庫というような二つの例を挙げていただいているんですけれども、こういったケースだけなのかどうか、ほかに定めるケースは予定されていないのかどうかを確認させていただければと思います。
○高木副大臣 本法案によります容積率の特例でございますけれども、これは、まさに倒壊のおそれのあるマンションが耐震化されるということを最大の目的としておりまして、古いものが除去をされるという、非常に公共性の高いということ、それから、今おっしゃった、公開空地の創出、あるいは備蓄倉庫の整備だけではなくて、地域の防災性や景観等の向上に貢献する取り組みを評価して、特定行政庁が許可するというものでございまして、避難所として活用される集会所の整備、あるいは緑化措置なども想定されて、それによっていわゆるボーナスがついてくるというような考え方でございます。
また、今後、国土交通省におきまして、許可のガイドラインというのを定めまして、特定行政庁の許可が円滑に行われるように取り組んでまいりたいと考えております。
○杉本委員 景観、緑化、そしてガイドラインを定めていただくということで、よくわかりました。
次に、これももう質疑に出ているとは思うんですが、改めて借家人の正当事由と今次法案の優劣の関係を確認したいんですけれども、現行法の百十七条で言うところの居住の安定の確保、現行法の百十八条の公営住宅の提供、特にこの公営住宅の提供について、今次法改正でいかなる形に変わるのか、担保されるのか、この確認をさせていただきたいと思います。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
借家人の居住の安定の確保、先ほど来お答えしてきたところでございますが、補償金をまずしっかりと支払っていただく、これはもう基本の基本だと思います。これにつきましては、公共用地の算定方法に準じて、客観的な基準をしっかりお示しをしたいと思います。
それから、代替建築物については、まずは、買い受け人、民間ディベロッパーでございますけれども、これの努力をしっかり促すのが基本だと思っております。そういう意味では、代替建築物の提供、あっせん義務という中でしっかり提供されるように、これも努めてまいりたいというふうに思っております。
公営住宅の提供については、従来の危険マンションの勧告制度につきましては、市町村がみずから勧告するものですから、引き金を自分で引くので、その結果も自分でちゃんと受けとめろという仕組みになってございまして、提供義務がございましたが、今回は民間の発意で起こる事業でございますので、公共性はあるものの、公営住宅提供の義務づけまでは法的には措置ができなかったところでございます。
しかしながら、どうしても御事情で一般の借家には移りにくいという方については、これは当然、この事業については安全性の確保という公益性もございますので、公共団体もしっかりバックアップをすることになると思いますので、公共団体の持っている住宅あるいはURの賃貸住宅を含めて、公共賃貸住宅につきましても、そういう方々にはできるだけ活用していただくように努めてまいりたいと思います。
○杉本委員 ありがとうございます。
最後の御答弁のところ、公共住宅、公営住宅というか、そういったものもできるだけ、民間主導で今回、法案を活用いただいて建てかえを促進するということであると思いますけれども、一方で、官と民の連携というか、そういう形で逆に建てかえがスムーズにいくように御尽力をいただきたいと思います。
一つ飛ばして、次に、反対区分所有者への売り渡し請求における建物の時価というのがありますけれども、この時価とは、除却、取り壊しを前提としない建物の価値なのか、除却を前提とする建物の価値なのか、これを確認させていただきたいと思います。
それと、買い受け人がマンションを再建する場合の容積率の緩和によるプレミアムというのは時価に反映されるのかどうか、これも確認したいと思います。
次の質問とあわせて質問してしまいますが、反対区分所有者への売り渡し請求における土地の時価に、マンション除却後の土地の用途変更による価値の上昇も反映されるかどうか、二つ質問が重なっていると思いましたので、この点もあわせて伺いたいと思います。
○坂井大臣政務官 従来の建てかえの場面における時価につきましては、請求権を行使した当時の建物について、建てかえ決議がされていることを前提とした価額となります。本法案のマンション敷地売却制度の時価についても、マンション敷地売却決議があったこと、すなわち取り壊しが確実であることを前提として算出されるものと考えております。
なお、容積率が緩和される場合はこれも考慮されることとなります。このため、国土交通省といたしましては、決議前に容積率の緩和を許可することは制度上可能であること、買い受け計画の認定と並行して容積率特例の許可の手続を行うことができること、これらの運用により決議前に容積率特例の許可がなされた場合には、売却代金に緩和後の容積率を反映させることができること等について、今後作成する予定のマンション敷地売却制度に係るガイドラインで示すこととしたいと考えております。
また、その後御質問いただいた件でありますが、除却後の土地の利用方法に関しましては、この法案に関しましては特段の規定は設けておりませんので、各区分所有者にとっては、最有効使用を前提とした土地の評価額を一つの基準として売却代金が決定されます。例えば、最有効使用として、実際に事務所ビルになることを前提とした場合、各区分所有者が得ることができる分配金の額が高まることとなりまして、反対区分所有者への売り渡し請求における時価につきましても同様に考慮されることとなります。
○杉本委員 坂井政務官、ありがとうございます。
次に、これも質疑に出たかもしれないんですが、今回の法案は耐震性の不足のみを要件としておりますけれども、さっき香港で言いましたけれども、エレベーターがないというような不便な問題、あるいは設備の老朽化、あるいは当該地域の容積率変更によって経済性等の理由が起きたというような、そういったものを対象に考えなくてよいかどうかを確認させていただきたいと思います。
○高木副大臣 まず、委員御指摘のようなマンションのうち、設備が老朽化しているもの、あるいはまた容積率制限が強化されたことによりまして建てかえが困難となっているものは、おおむね昭和四十年代の高経年のマンションが多いわけでございまして、本法案の対象は昭和五十六年以前の旧耐震基準により建設されたマンションとするということになっておりますので、すなわち、おおむねこういった古いものは対象になるというふうに考えております。
また、エレベーターがないマンションについては、かつて郊外におきまして日本住宅公団や住宅供給公社などが供給した、複数棟から成る団地型のものが多いものと考えられておりますけれども、これらのマンションにエレベーターの設置を行う場合につきましては、今回、ちょうど今国会に提案をしております建築基準法の改正におきまして、エレベーターの昇降路部分の床面積を容積率に算入しない措置を講じておりますので、これにより対応することが可能であるということになります。
○杉本委員 ちょっと時間がなくなってまいりましたので幾つか質問を飛ばさせていただいて、名称なんですけれども、マンション敷地売却制度というんですけれども、中身はマンションと敷地をあわせたものの売却制度ということなので、本当にこの名称がいいのかどうかという確認をしておきたいんですが、局長、御答弁いただければと思います。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
もう少し丁寧でわかりやすい名称にすべきではないかという問いだというふうに理解をしております。
実は、これは昨年成立しました被災マンション法で、マンション、住宅に限らず非住宅の区分所有建物も対象にしておりますけれども、今回の制度と同じように、区分所有者等の五分の四以上の賛成により建物と敷地を一括売却する制度が既につくられておりまして、この名称が建物敷地売却というふうになってございます。同じような制度でございますので、法令用語としては、この建物を、今回は住宅にかわりますので、マンションに置きかえさせていただいて、マンション敷地売却というふうにさせていただいたものでございます。
この名称で、ある程度意は尽くせるんだというふうに思っておりますけれども、よりわかりやすい制度の周知というのは極めて重要でございますので、いろいろな場面でそういう趣旨をちゃんと伝えられるようにしっかり努力してまいります。
○杉本委員 もう時間のようでございますので、今次法案によって、できるところから耐震化が促進され、より成功例というか件数がふえることを切に願いたく存じます。
また一方で、冒頭申し上げたとおり、課題として残る、経済合理性のない、あるいは郊外型の問題、あるいは団地、あるいは賃貸、こういったものについてもまた引き続き検討をお願いいたしまして、質問を終わります。
以上です。
○梶山委員長 次に、穀田恵二君。
○穀田委員 マンション敷地売却法案について質問します。
まず、国土交通省が五年に一度行っているマンション総合調査について聞きます。
分譲マンションは、二〇一二年末現在、約五百九十万戸、居住人口が千四百五十万人となっています。その中で、六十歳以上の世帯主の割合と永住するつもりというお答えの割合が初めて過半数を超えました。マンション居住者の高齢化と永住志向の高まりが浮き彫りになったと言われています。
そこで、具体的にどういう調査結果だったのか、国交省としてどのように評価しているのか、まず最初にお聞きします。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
二十五年度マンション総合調査でございますけれども、五年に一遍やっていますけれども、各年度、できるだけ、サンプル等平準化するように努めておりますが、サンプル数が必ずしも大きくございません。しかしながら、この数字であっても一定の傾向というのはしっかり把握できるのではないかということで調査をさせていただいております。
まず、お尋ねの、マンションの世帯主が六十歳以上の割合でございますけれども、これは、有効回答四千八百九十六のうち五〇・一%でございます。それから、現在居住しているマンションをついの住みかと考えている区分所有者の方々の割合、これも同じく有効回答四千八百九十六のうち五二・四%ということで、いずれも初めて五〇%を超えたということでございます。
これにつきましては、マンションストック全体が築年数の高いものがふえていっているということでございまして、築年数が上がれば世帯主の年齢が上がるというのは既往のいろいろな調査からもある程度明らかになってございます。
恐らく、先生御指摘のように、年齢が上がることにある程度連動して、先々の選択の期間というのは短くなりますから、このまま住んでいたいなという永住意識も高まっているのではないか、これは推測でございますけれども、そういう傾向はうかがい知れるのではないかというふうに思っております。
○穀田委員 先々のことというふうに言われると、何かすごくつらいよね。大臣も笑っていますけれども。
私は、永住意識については、確かに、五二・四%ということ、数字はそうなんですけれども、特に一九八〇年度の調査では、約六割がいずれは住みかえるつもりと回答していた。今回の調査では、それが一七・六まで低下しているという現状をよく見ないとだめなんじゃないかと思っています。
そこで、マンションの世帯主が高齢化しているもとで、マンションの老朽化対策、建物の耐震改修など、管理面にも大きな影響が出ていることは御承知のとおりです。その質問の中で、さらに、管理組合運営における将来への不安ということについて言うならば、区分所有者の高齢化が五七・〇ということで、最多を占めています。
マンションの老朽化対策や耐震診断、改修について、調査ではどのような結果が出ているのか、これも御報告願いたい。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
マンションの老朽化問題についての対策の議論を行っている管理組合の割合、これは、年代にかかわらず聞いておりますけれども、全体有効回答二千三百二十四組合のうち八百三十四組合、三五・九%でございます。今度は、この八百三十四の内訳ということになりますけれども、建てかえの方向で具体的な検討をしたというものが二・六、改修、改善の方向で具体的な検討をしたが六二・〇、議論をしたが、全く方向が出ていない、具体的な検討をするに至っていない、これが三〇・五%ということでございます。
また、旧耐震基準によって建設されたマンション、これは有効回答数三百八十八ということでございますが、耐震診断を行った組合は百二十九組合、割合としては三三・二%ということでございます。
○穀田委員 その結果を見ますと、やはり、耐震対策も老朽化対策も、全体としては議論が不足しており、対応がおくれているということが見てとれるわけですよね。
そこで、私もいただきまして、この「平成二十五年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」、それから総合調査結果概要編というのがありますが、その中で、建てかえの検討状況について、やはり、建てかえ資金の調達が困難な区分所有者がいる、これが四〇・九%で最多であるということなんです。
お聞きしますが、では、マンションの建てかえの検討状況というのはどうか、もう一遍教えてください。
○坂井大臣政務官 建てかえの方向で具体的な検討をしたという組合は全体で二・六%ということで、この点に関しましては、委員御指摘のとおり、余り高くないということだろうと思います。
これに関しては、今御指摘のように資金面がございますが、この資金面と同時に、あとは、今の制度では、組合において地権者相互の権利を調整する負担も大きいということもございまして、これらがあってハードルが高い、もしくはできないというように捉えているということではなかろうかと思っております。
○穀田委員 それを見ますと、先ほどありましたけれども、こういうことも出ているんですね。建てかえの必要性についてという議論をしているところもありまして、それを見ますと、建物が相当老朽化または陳腐化しているので建てかえが必要であるというのが四・九%なんですね。一方、建物が相当老朽化または陳腐化しているが、修繕工事または改修工事さえしっかり実施すれば建てかえの必要がない、これが三〇%を占めているという現状もあるんです。ただ、その一方で、建物は老朽化も陳腐化もしていないから、今のところ建てかえの必要はないというのもまた六割近くを占めているという現状もある。
そういう現状認識をしっかりしながら、どう今後の方向性をつくっていくのかというのが大事なんですね。
今度の法案というのは、簡単に言うと、さっきもありましたけれども、一生懸命、マンション敷地売却を後押しして、それ行けやれ行け、こういうことになっていて、先ほどの副大臣の報告によると、そういうものが、対象が約六十万戸あって、大体十八万戸、この間にやるんだ、三割近くそれができるみたいな、割と楽観的希望を随分抱いているわけですけれども、そういうことを見ながら、ほんまかいなということで、今後、少し議論を展開していきたいと思うんです。
そこで、先ほど言ったように、分譲マンションというのは五百九十万戸あるわけですが、そのうち、先ほどるるありましたように、旧耐震基準の建物は約百六万戸だと。その中で、私も国交省からこの法案の概要の説明を受けたときに聞きました。建てかえの実績はわずか百八十三件、約一万四千戸にとどまっています。
マンション居住者、さらに周辺住民の安全を守るためには、まず耐震不足のマンションを、建てかえではなくて、可能な限り安全が確保されるよう耐震改修、修繕すべきじゃないのか。
実際、耐震改修はどれだけ進んでいるのか、御報告されたい。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
耐震改修か建てかえかというのは、基本的にこれは区分所有建物でありまして、最終的には居住者の皆さんがしっかり協議をして、どう判断されるかということに尽きるんだと思います。
先ほども御紹介ありました十八万戸という数字のもとも、本当に危ないんだということがはっきりしてから、どちらを選ばれたかということの過去のデータが、大体三割ぐらいは建てかえを選ばれているということから推計をしたものでございまして、そういう意味では、大体三分の一弱が建てかえ、三分の二ぐらいが改修に向かうんだということをお示ししたということでございます。
耐震改修の数字自体は、なかなか実績値はうまくございませんが、例えば社会資本交付金の整備の中で、マンションを含む住宅全体の耐震改修、これは十一万一千戸になっていまして、その中で、これは公営住宅も含んだ数字でしか出ないのでございますが、耐震改修をやったものは三万九千戸ということですから、実際にマンションの方は、このまた何分の一かというレベルになると思います。三万九千戸のうち公営住宅を除く部分ということになろうかと思います。
内訳は出ませんが、そういうことでございますので、これはやはりもうちょっとてこ入れをして、建てかえもでございますけれども、改修もしっかり進めていかなければいけない、こういうふうに認識をしております。
○穀田委員 私はそこだと思うんですよ。
まずマンションの居住者の安全保障といいますか、命やそれから身体だとかというものの安全の観点から、あなた方はこの問題で、導入が必要であるということでこのマンション敷地売却法案を出しているわけですけれども、私はちょっと違うという意見なんですね。
まず考えなきゃならぬのは耐震性の確保だ、これが大目的なんだということからしますと、そのところに目的を定めて、どういうメニューがあるかということをはっきり出して検討するということが必要だと思うんですね。今までうまくいっていないから、次から次へと出せばいいという問題では決してないと私は考えています。だから、危ないから敷地売却ありきということで進めちゃならぬということを言っておきたいと思うんです。
私は京都に住んでいますから、京都新聞にこの間社説が出ていまして、今回の法案について、以下のように述べています。「だが、そううまくいくのか。まず容積率緩和だが、京都市のように高さ制限する自治体もあり、条件が限られる。建て替え費用が一部減るといっても、高齢の住人にとっては、やはり重い負担だろう。建設中の仮住まい費用もかさむ。同意しない住民の生活はどうなるのか。」こう書いていまして、さらに、建てかえの課題として資金困難を挙げ、「資金面で無理せず、建物の修繕積立金の範囲内で耐震補強してはどうか。」「行政は一〇〇%の耐震を求めるが、たとえ六〇%や七〇%であっても、弱点を見つけ補強を重ねていけばいい」と提案している京滋マンション管理対策協議会の谷垣千秋代表幹事の話を紹介しています。
私は、建物の修繕積立金の範囲内で耐震補強するという現実的な対策をとることによって、そこをしっかり推し進めることで、大規模修繕、改修が進むし、マンションの延命化も図られると考えます。何かというと居住者の調整と言いますけれども、居住者の合意も得やすくなるんじゃないか。
まずこういう施策こそ大規模に推進すべきではないでしょうか。お答えいただきたい。
○太田国務大臣 まずはそのとおりだと思いますね。建物を長続きさせる、そして、住んでいる人も高齢化している、そんなに動きたいとは思っていないという方も高齢化するに従って多くなるということからいきますと、まずはそこの耐震改修ということに考え方が行くというのは、私は普通のことであろうというふうに思います。そういう面は全く否定することではなくて、耐震改修促進法の改正を昨年させていただいたというのは、そういう意図を持ってやったことです。
ただ、それだけでというよりは、地震が来る場合には、一カ所に来るわけじゃなくて、全部に来ますから、そして、マンションということになると、それが大都市部では町を、道路を塞ぐというようなことまで含めてありますから、いろいろな手だてを講ずるということは私は必要だというふうに思っております。
穀田先生おっしゃるとおり、耐震改修促進法に従ってこれを推進するということがまず第一義であろうということは、私はそうであろうというふうに思いますが、今回は、売却ということのできる制度と、あわせて、建てかえということについて、容積率が緩和されていなかったということで、そこを補強する手だてを提示するということでございます。
○穀田委員 容積率がふえた、そういうインセンティブがあれば動くということに単純になるかどうかという問題は、将来、どちらが正しかったかは、また見きわめたいと思うんですね。
そこで、現行法は、区分所有法による建てかえ決議がなされた後の具体的な手続を定めるとともに、危険または有害な状況にあるマンションの建てかえの促進のための特別措置について定めていました。この危険または有害な状況にあるマンションについてはどういう制度があったのか。
先ほど来、しきりに実績がゼロだったということを言っていますけれども、実績がゼロだったというのは何も誇るべき話じゃなくて、なぜそういうことが起こったのかという反省が必要なのであって、何か、だから変えましたなんという話は、それはあきまへんで。削除した理由に、しきりに実績がゼロだったからと。ではもともとつくったときは何を考えておったんやという反省がなけりゃならぬわけで、当時こう考えていたけれども実態に合いませんでしたというならわかるけれども、何かしきりに偉そうな話をするほどのことではないということは言っておきたいと思うんですけれども、答えてください。
○高木副大臣 偉そうにというわけでもございませんけれども、先ほどもお答えいたしましたけれども、もちろん、これまで実績がなかったというのも、これもやはり一つのなくす理由だというふうにも考えますし、それから、市町村にとって、やはりこれは非常に大きな負担になっていたということもございます。
それから、先ほども申し上げましたけれども、この危険有害の基準というのが非常に複雑で、これがこうだということを示すことがなかなか難しいというようなことがあって、そういったこともあってその実績がないということなんでしょうけれども、先ほどもお答えしたとおりでございますので割愛させていただきますけれども、今回はこうしたような法改正をいたしますので、こういったようなことをなくしてもしっかりと実効性は保たれるのではないかという考え方で、本制度を廃止することにしたということでございます。
○穀田委員 当時からその負担はわかっていたわけで、その問題を含めて、偉そうにと言ったのは、大臣が偉そうに言ったわけじゃなくて、そういうことの言い方、実績ゼロだったなんというのは誇らしい話じゃないんだということを言いたいわけですよ。がちがちだったというのは、当時もがちがちだったんですよ。
そこで、がちがちだったという話を少し進めていきたいと思うんですけれども、今回の法案では、耐震性不足と認定された要除却認定マンションが現行法の危険または有害な状況にあるマンションに当たるように見えるけれども、現行法の勧告制度にありました区分所有者や賃借人に対する住居あっせんなどの規定は今回の法案でも規定されているのか、どのように規定されているのか、もう一度お答えください。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
危険マンションの勧告制度につきましては、市町村が、これは危険なマンションであるから除却、建てかえをしてはどうかというふうにみずから手を挙げて求めていくという仕組みでございます。市町村が求めるからには市町村がしっかりその結果についてもフォローすべきだということで、公営住宅等の提供義務を課しているということでございます。
今回の制度につきましては、これはあくまでも区分所有者の発意に基づく事業でございまして、公共の関与というのはそういう意味では薄いということでございます。
しかしながら、公益性それから事業執行の適正の確保という観点から公共にも一定の関与をさせているということでございますが、公営住宅の提供につきましては、先ほどもお答えしましたように、その前に、事業関係者でございます、買い受け人であるディベロッパーがまずしっかり努力をしていただいた上で、それでも足りないところについては、これは努力義務的というふうに申し上げますけれども、公共団体にできるだけ提供をお願いしていくというのが今法案の趣旨だというふうに考えております。
○穀田委員 これも私は問題だと思うんだけれども、法定化されていないこと自身が問題であって、前はそういうふうに法定化していたわけですやんか。そこの違いを私は言っているわけですね。
賃借人及び転出区分所有者に対する代替建築物の提供またはあっせんを市町村長の努力義務として課していたわけでして、これは、今ありましたように、結局のところ民間ディベロッパーなどに託していくということになって、お話があったように、公共の関与は薄い、こう言うけれども、やはり、広い、こういうマンション自身を建てかえるということを含めて言えば公共性があるわけでして、結局のところ、行政庁などが直接関与しないことになるという意味では居住者の不安が大きくなることだということは指摘しておきたいと思うんです。
そこで、建てかえと敷地売却の違いはどこにあるのか、区分所有者は新たに建設されるマンションに優先的に入居する何らかの権利があるのか、この点についてもお聞きします。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
従来のマンション建てかえと今回の敷地売却制度の最大の違いは、従来のマンション建てかえでは、従前の老朽マンションが同じ場所で再建された新築マンションという、物に置きかわるということでございます。今回の売却制度は、これは制度上の理解というふうにお答えしたいと思いますけれども、価値はお金に置きかわるということが違うんだと思います。
したがって、今回の売却制度では、区分所有者はマンションとその敷地売却までの権利調整をすればよくて、その後のことは、組合員相互の再建マンションの入居先に至るまでの詳細な権利調整というのは大変負担でございますので、これはあらかじめ地方公共団体が認定をした買い受け人がまずはしっかりやっていただくというのがこの制度の骨格でございます。
この買い受け人の認定に際して、先ほど来お答えしておりますように、従前居住者、借家人の方も含みますけれども、状況をしっかり把握し、アンケートとかヒアリングとかこういうことをしっかりやっていただいて、そのニーズを把握した上で新しい住居のあっせん、提供を、これは義務を課しているということでございますから、その部分まではこの買い受け人にしっかりやっていただくということがこの制度の趣旨だというふうに思っております。
○穀田委員 希望的趣旨は述べられましたけれども、建てかえと敷地売却とは全く違うということははっきりしている。だから、新たに建設されるマンションに優先的に入居する権利は全くないということははっきりしているということは確認をしておきたいと思うんです。
聞きますと、開発利益を見込んだ額で売却するということがあるわけで、どの程度違うのやと言ったら、まあ、高額、高くなるというけれども一・三倍程度になればよい方かというようなことを言っているぐらいで、そんなにうまい話というのはないんだということははっきりしておきたいと思うんです。
そこで、次に、敷地売却決議五分の四要件について少し聞きます。
改正案によって、マンション敷地売却決議の、先ほど述べた五分の四ですけれども、残り五分の一未満の区分所有者は、みずからの意思に反していわば強制的に売却されることになります。それは、同時に、長年にわたって築いてきたコミュニティーを失い、買い物、病院、介護施設などの生活基盤を失うことにつながりかねないと思うんですね。
だから、こうした区分所有者が生活基盤を失わないようにするための保障というのは、どういうふうに考えていますか。
○坂井大臣政務官 先ほど参考人から答弁を申し上げましたけれども、この決議に反対した区分所有者に対しましては、もう一度、事業に参加するかどうか催告することとされておりますが、この催告に応じない場合には、最終的に組合が売り渡し請求を行い、反対者のマンションを時価で買い取る、その分のお金は渡るということになりますが、この反対者、最後まで反対をする反対者に対しましては、生活基盤の一つであります代替住居の提供、あっせんは行われないということになっております。
○穀田委員 提供、あっせんは行われない、もう一度、そこだけ。
○坂井大臣政務官 最後まで反対をして、催告を行って、一緒に組合に入りませんかということで催告を行いますが、そこでも反対だということで入らなかった反対者には、生活基盤の一つであります代替住居というものに対しての提供、あっせんというのは行われないということになっております。
○穀田委員 結局は行われないということは、やはりそういうことが出てくるということなんですね。だから、敷地売却決議に賛成した区分所有者も、事実上、住宅ローンの一括返済を強いられる上に、残債とともに住居を失うことになります。また、高齢の区分所有者にとっては、再度、マンション、戸建て住宅を購入する資力に当然乏しいわけですね、そういう実態になっている。また、賃貸住宅に入居するにしても、契約締結を断られたり、連帯保証人を得られない等の事情で安全、安心な住居を確保することもできず、悪く言えばホームレスに陥ることもこれはあり得る、そういうことまで考えなあきませんよということなんですね。
だから、そういうことが起こらないような保障をどうするかということを真剣に、やるときのことを考えておかなあかんと思っています。
多くの方々から、賃借人の権利についても随分ありました。そこで、私は、どのように保障するかという問題だと思うんですね。先ほど来聞いていると、補償金と代替の提供、それから、民間の手で、義務づけできなかったのでそれは少し努力するというような話をしているんだけれども、どんなふうにしてその賃借人の権利を保障するのかということを聞いておきたいと思います。
○坂井大臣政務官 今委員が御指摘をしたことも含めまして、まずは適正な額の補償金を支払うということであります。その次に、代替住居をしっかりと提供、あっせんすること。そして、個々の借家人の負担を軽減することということでございまして、これは移転に充てた補償金について課税の特例を設けることといたしております。また、第四といたしまして、高齢者に対しましては、別途の代替住居、これは高齢者が必要とするようなものに関しまして、公的賃貸住宅や家賃債務保証制度等も活用して、居住の安定を図るということで保障していきたい、このように考えております。
○穀田委員 先ほど来質問してきたように、現行法との違いという問題を私は指摘しましたけれども、結局法定化していないのが今日の現状なんですね。やはり、現行法でいうと、いわば公共住宅の活用ということも、ある意味では自治体自身がやらざるを得ないということがあったわけです。それも取っ払われちゃうわけですよね。だから、そう簡単じゃないんだということだと思っています。
ですから、補償金は今支払うとありましたけれども、それによって賃借権も消滅させることになります。こういうことは、マンションの賃借人は、本人は何らの契約に違反していないにもかかわらず、意に反して、補償金の支払いだけで賃借権を失うものであって、納得できるものじゃないと私は思います。
ここで、二つの問題が生じますので、意見だけ述べておきたいと思うんです。
一つは、補償金の額については、賃借人がみずからの意見を述べる機会を保障すべきだということなんです。そのために、マンション敷地売却組合の総会に参加し、意見を述べる機会を与えるべきじゃないかということが一つ。
もう一つは、マンションの耐震性不足を理由に、補償金の支払いだけで賃借権が消滅されることになりますと、賃借権は補償金さえ積めば明け渡し請求が可能であるとの認識になり、借地借家法による正当事由制度を掘り崩すことにならないかという点なんですね。これは懸念される問題です。
また、今後、マンションだけでなくて、マンション以外の建物などにおいても、耐震不足を理由にして、立ち退き料さえ払えば建物の明け渡しを請求することができる事例が横行するというようなことがないようにしなくちゃならぬと私は思っています。
そういう二つの懸念だけ言っておきたいと思うんです。こういうことが、懸念であればいいんだけれども、実際起こらないように、私どもとしては見ていきたいと思っています。
終わります。
○梶山委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○梶山委員長 これより討論に入ります。
討論の申し出がありますので、これを許します。穀田恵二君。
○穀田委員 マンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律案に対する反対討論を行います。
本法案は、マンションの建替えの円滑化等からマンションの建替え等の円滑化に名称を変えることにより、区分所有者の五分の四の決議で敷地売却制度の導入が可能となり、これまでの建てかえとは全く違う、法の性格そのものを変えてしまうものであります。
法案に反対する第一の理由は、現行法にあった危険または有害な状況にあるマンションの建てかえの勧告制度等を廃止し、居住者に対する代替建築物の提供等の行政関与を弱めているからであります。耐震不足のマンションを、建てかえではなく、いきなり除却、敷地売却を実施しようとするものであり、マンション敷地売却制度ありきにほかなりません。
第二の理由は、居住者の居住の安定よりも、買い受け人、ディベロッパーの利益が優先されるものになるからであります。敷地売却制度はディベロッパーの計画によって進めることになり、一部のゼネコン、ディベロッパーが都市開発の種地を確保し、利益優先のために区分所有者に対する強要や、管理組合に売却を求めるおそれがあるからであります。
第三の理由は、区分所有者の五分の四の決議で敷地売却が可能となることで、残り五分の一の区分所有者、賃借人は、みずからの意思に反して、いわば強制的に売却されることになり、生活基盤が失われるからです。特に高齢の区分所有者にとって、新設されたマンションの購入資力がなかったり、賃貸住宅入居でも契約締結を断られるなど、安心、安全な住居を確保することができないことも予想されます。現在マンションに住んでいる人の過半数は永住を望んでいます。
第四の理由は、改正案では、マンションの耐震性不足を理由に、補償金を払えば賃借権を消滅させることができるとしており、借地借家法の正当事由制度を掘り崩すことになりかねないからです。
最後に、マンションは必然的に老朽化しますが、その対応として、やみくもに建てかえを急ぐのではなく、管理して長く使うことを基本とすべきです。安心して住み続けられるためにも、修繕積立金の範囲内でできる耐震改修等、現実的な対策をとるべきであります。
以上で反対討論を終わります。
○梶山委員長 これにて討論は終局いたしました。
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○梶山委員長 これより採決に入ります。
内閣提出、マンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○梶山委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
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○梶山委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、望月義夫君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、日本維新の会、公明党及びみんなの党の五会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者より趣旨の説明を求めます。寺島義幸君。
○寺島委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。
趣旨の説明は、案文を朗読してかえさせていただきたいと存じます。
マンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺漏なきを期すべきである。
一 老朽化マンションについて、建替え、改修を含めた再生事業が円滑に進むよう、マンション敷地売却制度の創設による老朽化マンションの建替え等の促進効果を見極めた上で、マンションに係る権利調整や建築規制のあり方等について、引き続き多角的な観点から総合的な検討を行うこと。
二 特に、既存の老朽化マンションストックの多くを占め、更新のニーズの強い団地型のマンションについては、建替え等の促進を図るため、まちづくりの観点も含め、団地再生のための施策のあり方について幅広く検討を行うこと。
三 既存ストックを有効活用する観点から、区分所有者が改修か建替えか売却かを的確に判断できるよう、判断基準の作成、普及に努めること。
四 マンション敷地売却決議がされた要除却認定マンションの区分所有者及び借家人に対し、認定買受人が第百十三条の代替建築物の提供等を実施するに際しては、区分所有者及び借家人が過度な要請を行っていない限り、できるだけ要請に沿った提供等となるよう努めること。
五 本法による除却の必要性が認定されたマンションの建替えに係る容積率については、特定行政庁は、周辺地域への影響を十分に考慮し、地域住民の理解を得る努力をした上で、円滑な建替えが可能となるような容積率を設定するよう、国は必要な助言を行うこと。
六 近年の老朽化マンションの増加の実態を踏まえ、本法に基づくマンション敷地売却事業のほか、マンション建替事業や耐震改修などのマンション再生に向けた制度が十分に活用されるよう、地方公共団体や関係団体等と連携し、制度の周知や費用の支援、相談窓口の設置なども含め、その対応に万全を期すこと。
以上であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○梶山委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○梶山委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
この際、国土交通大臣から発言を求められておりますので、これを許します。国土交通大臣太田昭宏君。
○太田国務大臣 マンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律案につきましては、本委員会におかれまして熱心な御討議をいただき、ただいま可決されましたことに深く感謝申し上げます。
今後、審議中における委員各位の御高見や、ただいまの附帯決議において提起されました事項の趣旨を十分に尊重してまいる所存でございます。
ここに、委員長を初め理事の皆様、また委員の皆様の御指導、御協力に対し、深く感謝の意を表します。
まことにありがとうございました。(拍手)
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○梶山委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○梶山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
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○梶山委員長 次に、内閣提出、参議院送付、建設業法等の一部を改正する法律案及び建築基準法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
順次趣旨の説明を聴取いたします。国土交通大臣太田昭宏君。
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建設業法等の一部を改正する法律案
建築基準法の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
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○太田国務大臣 ただいま議題となりました建設業法等の一部を改正する法律案及び建築基準法の一部を改正する法律案の提案理由につきまして御説明申し上げます。
まず、建設業法等の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
建設業は、東日本大震災に係る復興事業や防災・減災、老朽化対策、耐震化、インフラの維持管理などの担い手として、その果たすべき役割はますます増大しております。
一方、建設投資の急激な減少や競争の激化により、建設業の経営を取り巻く環境が悪化し、いわゆるダンピング受注などにより、建設企業の疲弊や下請企業へのしわ寄せ、現場の技能労働者等の就労環境の悪化といった構造的な問題が発生しております。こうした問題を看過すれば、若年入職者の減少等により、中長期的には、建設工事の担い手が不足することが懸念されるところです。
また、維持管理、更新に関する工事の増加に伴い、これらの工事の適正な施工の確保を徹底する必要性も高まっております。
このような趣旨から、このたびこの法律案を提案することとした次第です。
次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。
第一に、ダンピング受注を防止するため、公共工事の入札及び契約の適正化の基本となるべき事項として、公共工事の適正な施工が通常見込まれない請負代金での契約の締結を防止することを追加するとともに、建設業者に対し、入札金額の内訳の提出を求めることとしております。
第二に、維持修繕工事等の小規模な公共工事についてもその適正な施工を図るため、施工体制台帳の作成及び提出を求めることとしております。
第三に、解体工事の適正な施工を図るため、建設業の業種区分を見直し、解体工事業を追加することとしております。
第四に、建設業からの暴力団の排除を徹底するため、暴力団員であること等を許可に係る欠格要件及び取り消し事由に追加することとしております。
そのほか、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うこととしております。
次に、建築基準法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
昨今、建築物において木材利用を促進するための規制緩和、建築関連手続等の合理化、エレベーター事故や大規模災害等への対策の徹底などの要請が強まっております。
これらの要請に的確に対応し、国民の安全、安心の確保と経済の活性化を支える環境の整備を図るため、所要の施策を講じていく必要があります。
このような趣旨から、このたびこの法律案を提案することとした次第です。
次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。
第一に、建築物における木材利用の促進を図るため、耐火建築物としなければならないこととされている三階建ての学校等について、一定の防火措置を講じた場合には、主要構造部を準耐火構造等とすることができることとしております。
第二に、建築主が、構造計算適合性判定を都道府県知事または指定構造計算適合性判定機関に直接申請できることとするとともに、比較的簡易な構造計算について、一定の要件を満たす者が審査を行う場合には、構造計算適合性判定を不要とすることとしております。
第三に、現行の建築基準では対応できない新建築材料や新技術について、国土交通大臣の認定制度を創設し、それらの円滑な導入の促進を図ることとしております。
第四に、容積率の算定に当たって、昇降機の昇降路の部分及び老人ホーム等の用途に供する地階の部分の床面積を延べ面積に算入しないこととしております。
第五に、建築物や建築設備等についての定期調査・検査制度を強化し、防火設備についての検査の徹底などを講ずることとしております。
第六に、事故・災害対策を徹底するため、国がみずから、関係者からの報告徴収、建築物等への立入検査等をできることとしております。
そのほか、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うこととしております。
以上が、建設業法等の一部を改正する法律案及び建築基準法の一部を改正する法律案を提案する理由であります。
これらの法律案が速やかに成立いたしますよう、御審議をよろしくお願い申し上げます。
○梶山委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。
次回は、来る二十三日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時十五分散会