衆議院

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第4号 平成13年10月12日(金曜日)

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平成十三年十月十二日(金曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 加藤 紘一君

   理事 亀井 善之君 理事 河村 建夫君

   理事 久間 章生君 理事 鈴木 宗男君

   理事 安住  淳君 理事 岡田 克也君

   理事 田端 正広君 理事 山岡 賢次君

      逢沢 一郎君    赤城 徳彦君

      石川 要三君    石破  茂君

      衛藤征士郎君    大野 松茂君

      坂本 剛二君    実川 幸夫君

      下地 幹郎君    下村 博文君

      田村 憲久君    竹本 直一君

      西川 京子君    浜田 靖一君

      林 省之介君    原田 義昭君

      松宮  勲君    三ッ林隆志君

      宮澤 洋一君    米田 建三君

      伊藤 英成君    枝野 幸男君

      鹿野 道彦君    桑原  豊君

      玄葉光一郎君    古賀 一成君

      島   聡君    末松 義規君

      中野 寛成君    横路 孝弘君

      渡辺  周君    上田  勇君

      河合 正智君    中塚 一宏君

      赤嶺 政賢君    木島日出夫君

      児玉 健次君    山口 富男君

      今川 正美君    辻元 清美君

      井上 喜一君    松浪健四郎君

      近藤 基彦君

    …………………………………

   内閣総理大臣       小泉純一郎君

   総務大臣         片山虎之助君

   法務大臣         森山 眞弓君

   外務大臣         田中眞紀子君

   財務大臣         塩川正十郎君

   文部科学大臣       遠山 敦子君

   厚生労働大臣       坂口  力君

   農林水産大臣       武部  勤君

   経済産業大臣       平沼 赳夫君

   国土交通大臣       扇  千景君

   環境大臣         川口 順子君

   国務大臣

   (内閣官房長官)

   (男女共同参画担当大臣) 福田 康夫君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当大臣)     村井  仁君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      中谷  元君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当大

   臣)

   (科学技術政策担当大臣) 尾身 幸次君

   国務大臣

   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君

   国務大臣

   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君

   国務大臣

   (規制改革担当大臣)   石原 伸晃君

   内閣官房副長官      安倍 晋三君

   内閣府副大臣       仲村 正治君

   内閣府副大臣       松下 忠洋君

   防衛庁副長官       萩山 教嚴君

   総務副大臣        小坂 憲次君

   外務副大臣        杉浦 正健君

   国土交通副大臣      泉  信也君

   環境副大臣        風間  昶君

   防衛庁長官政務官     嘉数 知賢君

   防衛庁長官政務官     平沢 勝栄君

   外務大臣政務官      丸谷 佳織君

   外務大臣政務官      小島 敏男君

   外務大臣政務官      山口 泰明君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    津野  修君

   衆議院調査局国際テロリズ

   ムの防止及び我が国の協力

   支援活動等に関する特別調

   査室長          鈴木 正直君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月十二日

 辞任         補欠選任

  大野 松茂君     三ッ林隆志君

  松宮  勲君     林 省之介君

  米田 建三君     竹本 直一君

  玄葉光一郎君     枝野 幸男君

  山口 富男君     赤嶺 政賢君

  井上 喜一君     松浪健四郎君

同日

 辞任         補欠選任

  竹本 直一君     米田 建三君

  林 省之介君     松宮  勲君

  三ッ林隆志君     大野 松茂君

  枝野 幸男君     玄葉光一郎君

  赤嶺 政賢君     児玉 健次君

  松浪健四郎君     井上 喜一君

同日

 辞任         補欠選任

  児玉 健次君     山口 富男君

    ―――――――――――――

十月十二日

 国の防衛及び自衛隊による国際協力に関する基本法案(東祥三君外一名提出、衆法第一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案(内閣提出第三号)

 自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出第四号)

 海上保安庁法の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)




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     ――――◇―――――

加藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案、自衛隊法の一部を改正する法律案及び海上保安庁法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、小泉内閣総理大臣から発言を求められておりますので、これを許します。小泉内閣総理大臣。

小泉内閣総理大臣 今回のテロ行為とウサマ・ビンラーデン率いるアルカーイダとの関係につき、昨日の審議の際にさらに御説明する旨申し上げたので、以下のとおり御報告する。

 一、政府は、日米首脳会談におけるブッシュ大統領の私への説明を初め、米国との累次の情報交換において説得力のある説明を受けている。その詳細を明らかにすることは、事柄の性質上、また、米国との信頼関係の観点からできないが、これまで米国政府首脳は、次のような発言を行っている。

  (一)九月二十日、ブッシュ大統領は、「我々がこれまでに集めた証拠のすべてが、アルカーイダとして知られている漠然と連携しているテロリスト組織の集団の関与を指し示している」旨述べている。

  (二)また、十月四日、ラムズフェルド国防長官は、「数千人を殺害した米国でのテロ攻撃にアルカーイダ・ネットワークが関与していたことは、全く疑いがない」旨述べている。

 二、十月四日、英国政府が公表した「二〇〇一年九月十一日の米国におけるテロ残虐行為の責任」と題する文書の中で、同政府は、ウサマ・ビンラーデン及び同人が率いるアルカーイダが、九月十一日の残虐行為を計画し、実行したとの明確な結論に達した旨述べている。

   この文書の中では、例えば、

  (一)ウサマ・ビンラーデンとアルカーイダは、タリバーン体制との緊密な連携により、こうした残虐行為を犯すことが可能となったこと、

  (二)今回のテロ行為に関し、十九人のハイジャック犯のうち、少なくとも三人がアルカーイダと関連があったことが立証されていること、

  (三)また、

   (イ)ウサマ・ビンラーデンが九月十一日より少し前に米国に対する大規模攻撃を準備していると述べていたこと

   (ロ)九月十一日直前、ウサマ・ビンラーデンの複数の側近が攻撃日を同日ないしその近辺と述べていたこと

   (ハ)ウサマ・ビンラーデンに最も近い幹部の一人が攻撃の詳細を計画していたこと等

  が記されている。

 三、これまでの米国の説明に対して、多くの国がウサマ・ビンラーデンが率いるアルカーイダの関与を確信させるものとしているが、主な反応は、例えば、次のとおりである。

  (一)NATOについては、十月二日、ロバートソン事務総長が、「事実関係は明白であり、疑いの余地がない。我々に示された情報は九月十一日の攻撃におけるアルカーイダの役割を決定的に示している」旨の声明を発表している。

  (二)フランスについては、十月三日、大統領府報道官が、米国から提供された情報は、「テロ事件の犯人についていかなる疑問をも残さないものだった」旨述べている。

  (三)パキスタンについては、十月四日、外務省報道官が「米側より提供された資料は法廷での起訴にも十分な根拠となるものである」旨述べている。

  (四)また、ロシアについては、十月二日、プーチン大統領が「ロシアの特務機関は、米国におけるテロ事件にビンラーデンが参加したあるいは関与していたことにつき追加的な証拠を必要としていない」旨述べている。

 四、また、ウサマ・ビンラーデンは、タンザニア、ケニアの米国大使館爆破事件に関し米国で起訴されているとともに、国連安保理決議一二六七及び同一三三三は、タリバーンに対し、ウサマ・ビンラーデンを同人が起訴された国等の当局に対して遅滞なく引き渡すことを要請している。

 五、さらに、ウサマ・ビンラーデンは、八日のテレビ放送において、ニューヨーク、ワシントンを破壊した人々は神より遣わされた旨述べ、称賛するとともに、各国よりかけられた容疑にもかかわらず、みずからの関与を全く否定していない。さらに、アルカーイダは、十日、「米国は、飛行機のあらしが静まらないことを知るべきである。」旨の声明を発出し、さらなるテロを予告している。

 六、これらの諸点を含む種々の情報を総合的に勘案すれば、ウサマ・ビンラーデンが率いるアルカーイダが今回のテロ行為に関与しているとの説明は日本政府としても十分説得力のあるものと判断している。

 以上でございます。

加藤委員長 きのうの鹿野道彦君の質疑に関連し、枝野幸男君から質疑の申し出があります。鹿野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。枝野幸男君。

枝野委員 民主党の枝野でございます。

 私は、主に自衛隊法の改正案を中心といたしまして、一時間のお時間をいただきましたので、質問をさせていただきたいと思います。

 自衛隊法改正案の具体的な中身に入ります前に、我が党の基本的な立場をもう一度確認させていただいて、それに対して総理がどういう御認識であられるのかということを御確認させていただきたいというふうに思います。

 総理も御承知だと思いますが、私どもの党は、既に、今回のテロに対して毅然として立ち向かう、そして、憲法の範囲内という制約はありますが、国際協調、そして米軍に対して可能な限りの支援を行うというような立場で新しい法律をつくってそれを行うというようなことについて、党としても確認をいたしております。

 そうした中で、どうした形の法律が今必要であるのか、それがふさわしいのかということについて今まさにこの場で議論をしているわけでありますが、総理が北京に行かれたときの飛行機の中での新聞記者さんとの懇談の中で、これは報道でありますが、我々に対して、自分が政権を担当した場合を考えれば反対するような法律ではないと強く牽制、反対のための反対という今までのような態度でなく、超党派的な対応ができればいいと協力を求めたというような報道がなされていますが、これは報道の誤解でございますよね。

小泉内閣総理大臣 一言一句そうかと言われればわかりませんが、趣旨はそのとおりであります。

枝野委員 だとすれば、大変失礼な話で、まず謝罪をしていただきたい。民主党結党以来、反対のための反対というような今までの態度と言いますが、一度たりとも反対のための反対なんてしたことありません。謝罪してください。

小泉内閣総理大臣 まあそんな興奮しないでね。ごく普通のことを言ったんですよ。政治家同士で、謝罪すべきとか、議員同士の自由な討論でしょう。自由な議論でしょう。与党、野党という立場じゃなくて、政治家同士で議論するというのが大事であって、私は別に批判的なことを言っていないんですよ。

 反対のための反対はしたことないとか言っていますけれども、そう、どれが反対のための反対だといえば、それはなかなかその時々によって違いますけれども、私は、この法案というのは、できれば多くの政党から支持されてしかるべき法案だな、民主党も政権を担当するようになればそれなりの、この政府の提案も理解してくれるのじゃないかなという意味のことを言ったまでであって、何も謝罪すべき発言であるとは私は思っていませんが。

枝野委員 私は、ですから、丁寧には申し上げました、反対のための反対というような今までの態度ではなくと。民主党について、反対のための反対という今までの態度ではなくという部分もきちんと読み上げて総理にお尋ねをしました。それで、報道の誤解ですよねというお聞きの仕方をしました。総理、論点をすりかえておられます。私は、この反対のための反対という今までのような態度というようなことを民主党に対して総理がおっしゃったのだとしたら、それは重大な話であると。その論点をずらさないでください。

小泉内閣総理大臣 そう一字一句やったら、それは一々質問者が、与党に、内閣に、これはどうかと言葉じりをとらえたら切りがないでしょう。そのぐらいは政治家として許容範囲ですよ。そんなにがちがちやったってしようがないですよ。

枝野委員 この話でこんなに長くなると思わなかったので、もっときちんと、いや、それは誤解です、いや、そういうふうには認識しておりませんと総理はお答えになられると私は思っていましたので、この話でそんなに長くするつもりもなかったのですが、これは事実に対する評価の話であれば、政治家ごとにさまざまな評価の仕方はありますでしょう。しかしこれは、事実を総理が指摘をされているという部分について、それは事実ではない、これが事実であるという部分について、そこは違うというようなお話でなかったら、それは話にならないじゃないですか。我々は、それは到底認められない。

 実際に、我々、結党以来、反対のための反対をした法案というのは一つたりともないと自信を持っております。そこははっきりさせてください。評価の話はいろいろあるかもしれない。しかし、事実の問題として、我が党が反対のための反対を一度たりともしたことはない、それはお認めいただけますね。

小泉内閣総理大臣 それは、民主党議員のあなたが言うことは認めます。しかし、他の政党がそう解釈したってたまにはいいじゃないですか。そうでしょう、政党同士で。内閣が不信任だと言っても、私は怒りませんよ。小泉総理は総理大臣の資質がないと言って、一々怒っていたらどうなるの。もう結構批判も受けて……

枝野委員 それは、今申し上げたとおり、評価の問題です。評価の問題で民主党はけしからぬとおっしゃるのだったら、それはよくわかります。事実の問題として、民主党が反対のための反対をどこでしたことがあるんですか。具体的に摘示してください。

加藤委員長 発言者は、政府側も質問者も、委員長の了解をとってから発言してください。(枝野委員「私はとっていましたからね」と呼ぶ)

 総理大臣。

小泉内閣総理大臣 趣旨ですよ。だから、反対のための反対はしないであろうと期待して言っているんですよ。そういう、反対するような法案じゃないだろうと。その趣旨を理解してもらわなきゃ。言葉だけとらえて、全体を、やはり政治家同士の自由な討論、自由な議論をお互い理解するのが議員として普通じゃないですか。

枝野委員 総理が、反対のための反対を民主党はしないだろうと期待をされる、それに対して我々も、反対のための反対は、この法案に対してに限らず過去にもしてきていませんし、これからもするつもりは全くありません。そのことをおっしゃることについては結構です。あるいは、評価の問題として、民主党が反対のための反対をしそうだけれども心配だと、評価の問題でおっしゃるのだったら、それは御自由です。

 しかし、事実の問題として、過去に、今まで反対のための反対をしたことはないということはきちんと確認をさせていただきたい。もし総理がなおそういう認識をされているのであれば、それは大変重大な問題として指摘をさせておいていただきたいと思います。

 もう一つの方のところが問題なんです。

 反対をするような法案ではないと総理はおっしゃいました。確かに、今総理がこの国がやらなければならないこととしてお考えになっていること、我々がそう考えていること、多くの方向性の部分としては一致をしていると思います。つまり、今国際社会に対してあるいは国民に対して、政治としてお示しをしなければならない料理であれば、料理のメニューについて一致をしています。

 しかも、我々野党の立場としては、その料理の味つけが、もっと塩が多い方がいいとかあるいは砂糖が多い方がいいとか、そういう話であるならば、そこは我々の意見と違っても、同じような料理を、例えばカレーライスならカレーライスを国際社会が求めている、日本の国益のためにも必要だという中で、その味つけに対しては異論があっても、それは政府の責任として、我々は政府がやられることについて協力します。

 ただ、問題は、ここで議論しているのは法律です。その法律の中身によっては、料理をする人が、例えばなべに穴があいてやけどをするかもしれない。あるいは、電子レンジが壊れていて、その電子レンジでつくったら冷めたカレーライスができて食中毒になるかもしれない。そういうふうな中身の法律であるのかないのかをきちんとチェックをして、料理をつくりましょう、味つけはお任せしますという中であっても、そのための道具である法律の中身に穴があいていたり、あるいは機能しないものであったらいけない。そこは我々としてきちんとチェックをして、国民の皆さんに、この料理をつくるプロセスでこの法律が間違っていたからあるいは不十分であったから、穴があいてやけどをしたり生煮えで食中毒にしたりしないようにという部分については、我々はとことん頑張らないといけないと思っている。

 それは、責任野党として、大きな方向性が一致をしている、しかも、国際社会が求めている責任としてやらなきゃならないということに賛成であったとしても、そのことと、法律に賛成であるのか反対であるのかという話は、実は別次元の議論であるのを、総理はいつも論点をすりかえられて全部ごちゃごちゃにしてしまっている。この論点が違っているということは御理解されますね。

小泉内閣総理大臣 どのように批判されても結構です。どのように議論しても結構です。私の反対の意見は制約しません。政府の意見に反対だったらどうぞ御自由に言ってください、それが国会ですから。私はその発言の自由を認めておりますので、自由に発言していただいて結構でございます。

枝野委員 総理、いつも答弁を拝見していて思うんですが、聞いていることにお答えいただいていないのです。全部論点をずらしているんです。

 我々は、責任野党としての責任としても、これについては与野党一致をして協力した方がいい。それは国際社会だって見ていますよ。日本の国内で、例えば国際協調をして国際協力をするに当たって、国民の代表である国会のどれぐらいの人たちが賛同してこの人たちはやっているのかということについて。野党の責任としても、可能な限りできるだけ幅広い賛成のもとで、自衛隊の皆さんが行くんだったら行っていただいた方がいいし、国際社会の中で仕事をしていただいた方がいい。だから、総理も野党の協力を求めたいとおっしゃっているんでしょう。そのことはずれていないんです。

 ただ、そこを議論するに当たって、そこで一致をしているからといって結論部分で反対するのはあり得ないんだとか、法律の問題点、ここだけは変えなきゃいけないということが、あたかも何か足を引っ張っているかのような印象を与える発言をされるとすれば、そこは留意をしていただかないと。方向性で一致をする話と、法律の中に穴があいていたらそこはきちんと埋めなきゃならないという話は別だという、その理屈はわかっていらっしゃいますねということをお尋ねしているんです。

小泉内閣総理大臣 もう十分あなたの立場は今説明しているじゃないですか。私はそれを全然とめようともしませんし、批判しようとも思いません。結構です。自由に議論していただきたい、自由に政府の案を批判していただきたい、それを私は結構ですと言っているんです。それでいいですか。

枝野委員 論点をずらさないで今のようにお答えいただけば、話は簡単な話なんですよ。いつも余計なことをくっつけられて論点をごちゃごちゃにして大事なことにお答えいただいていない。きのうの質疑を見ていても、私は大変そこのところは不安に思います。国民の皆さんに今説明責任を果たすのが我々の責任でもあるし、特に一番責任が重いのは総理なんですから、理屈としてしっかりと納得できるような説明責任をきちんと果たしていただきたい、そのことを申し上げた上で具体的な法案の中身に入ります。

 昨日、我が党の安住淳議員が総理にお尋ねをいたしました。自衛隊法の改正による警護出動の話です。

 警護出動という新しい概念をつくり、法律の条文の書き方はわけわからなく書いていますが、要するに、テロ行為が行われるおそれがあるときに自衛隊の施設と米軍基地については自衛隊が守る、守るに当たって武器も使用できるという規定を今回おつくりになりました。

 ところが、自衛隊の基地や米軍の基地は山の中にぽつんとあるわけではありません。すぐそばに民家もあるし、きのうの安住議員の指摘だと、安住議員の選挙区のところではすぐそばに町役場だとかもある。このときに、自衛隊の基地が何かされたときには自衛隊は武器を使用して自衛隊の基地は守る、米軍基地は守る、だけれども、その外側にある民家や町役場は守れないという規定になっています。本当にそれでいいんですか、総理。

小泉内閣総理大臣 これは、普通の警護活動は、警察が行えば大体おさまるものが普通だと思うんです。しかし、そうでない、治安の面に不安があるという場合は、自衛隊も治安出動を命ずればできるようになっているんです。

 今回の法案は、今まで自衛隊の駐屯地も自衛隊が守れないようになっていたんですよ。これはおかしいと思いませんか。だから今回、米軍の基地内とか自衛隊の駐屯地を自衛隊員が守れないというのはおかしいじゃないかということで、自衛隊の駐屯地ぐらいは自衛隊自身が守って当たり前じゃないかという意見も入れてこういうふうにしたんですよ。だから、ほかの場合も、もし不穏の情勢が起こった場合は治安出動できるんですから、心配は当たらないと私は理解しております。

枝野委員 また論点をずらされているんです。私は、九十五条の二の話なんかしていないんです。これから申し上げようと思っているのは、九十五条の二のところは不十分だと思っています。そういう意味ではそこはしっかりやるべきだと思っています。

 それは、自衛隊の基地は、自分の基地は自分で守るという論旨の中で八十一条の二が置かれているのであるならば、それはそれでまた別の議論です。

 しかし、八十一条の二の警護出動の規定は、自分の基地は自分で守るというような話ではなくて、治安出動には至らない、治安出動が発動されるような状況ではない、だけれども大規模なテロが行われるおそれがあるという場合に限定して、特別の警護出動という出動形態をつくっている。

 そうしたら、テロが行われるおそれがある場合に、自衛隊の基地と自衛隊の基地のすぐ外側の民間の施設と、自衛隊の基地だけが著しく襲われる蓋然性が高いというようなケースだなんて、常識的には、これは意見が分かれるかもしれませんが、国民の皆さんからすれば、常識的に考えれば僕はあり得ないと。そのときに、自衛隊の基地しか守りません、警察で守れる、危機的な状況でも警察が守れるというのは、この国の法律の規定の仕方として、ほかの部分、全部なっているわけですね。

 これは国家公安委員長にお尋ねしますが、治安出動が発動されないような状況のもとでは、日本国内の治安の維持、つまりテロなどを防止することについては、全国的に警察が責任持ってやれるんですよね。

村井国務大臣 そのとおりでございます。

 あくまで治安出動という段階になるまでは基本的に警察の責任において治安を守る、こういう立場だと思っております。

枝野委員 自衛隊の基地や米軍基地や米軍基地の周辺の民間の施設についても警察は責任持って守れるんですよね。

村井国務大臣 そこの問題につきましていろいろ政府内で議論をいたしまして、私の理解をいたしておるところでは、治安出動に至る状態ではない、しかしながら、米軍の基地あるいは自衛隊につきまして、特に自衛隊においてこれを警護するという必要が生ずるというような事態になりましたら、いわゆる警護出動という、これは治安出動より手続が軽いわけでございますが、そういう形で警護をするという機能を自衛隊に付与しようというのが今度御提案を申し上げておる自衛隊法の改正の趣旨だ、このように理解しております。

 したがいまして、それ以外の部分につきましては、あくまで警察として責任を持って治安維持に当たる、こういうことだと思います。

枝野委員 守れるんですか、守れないんですか、まずそれにお答えください。自衛隊の基地や米軍の基地について、守れるんですか、守れないんですか。治安出動が発動されるような要件を満たしていない状況で、守る能力があるんですか、ないんですかとお尋ねします。

村井国務大臣 この法律案で考えておりますような警護出動が発せられるということは、自衛隊が出ていった方が適当であろうという判断がされるようなしかるべき環境はあるということなんだろうと私は理解しております。

枝野委員 それは、法律の条文でいえば、特別な必要があると認める場合という規定の仕方をしていますね。まあ、この特別な必要の意味なんでしょう。特別な必要というのはどういう場合ですか。これは防衛庁長官でしょうかね。

中谷国務大臣 特別の必要があると認める場合というのは、大規模なテロ攻撃が行われるおそれがあって、そのテロ攻撃の形態というか状態を考慮すれば、特に自衛隊の高い能力を用いて対処する必要があるというふうに認められる場合であります。

枝野委員 多分ここは意見が分かれるところなんだろうと思いますが、九月十一日の事件の前に、九月八日に、米国筋から警報というか警告が入ったときにも、米軍基地などがねらわれる可能性があるという入り方をしたそうでありますが、現実に、その情報と同一の情報の延長線上なんでしょう、九月十一日というのは。襲われたのはアメリカの施設ではなくて、米軍や米国政府の施設ではなくて、実際に襲われたのはワールド・トレード・センターという民間の施設です。

 つまり、確かにテロの対象として最も、テロをする立場から見ればそのこと自体が不条理、不合理でありますけれども、米軍や米国政府の関係施設というのがターゲットであるというような危機的な状況、蓋然性のあるケースというのはあり得るでしょう。

 では、そのときに、テロリストの側に立って物事を考えてみたときに、米軍の施設をテロしようが、米軍の施設とかかわりのある、例えば同盟国である日本の民間施設を破壊しようが、そのこと自体についてあちらの側にとって決定的な違いがあるのかということを考えたら、米軍の施設や自衛隊の施設に対して大規模なテロが行われるような蓋然性があるというようなケースの場合は、同じように、日本の国内における民間施設に対しても同じような蓋然性で何か起こるというふうな状態と認識をすべきである、そんなふうには思いませんか、防衛庁長官。

中谷国務大臣 実際に九月十一日に行われましたテロにつきましては、米国の安全保障の中枢機構でありますペンタゴンがねらわれております。ですから、国家にとって、最終的に国民の生命財産を守る防衛施設とか安全保障施設、これはまさしく国民を守る最後の礎でありますが、テロ攻撃等を考えますと、こういった防衛施設や、まして今回の場合は米軍基地関連施設が行われる可能性は十分ございます。

 当然民間もそのような危機に際しておりますが、どこが違うかといいますと、やはり、そういう危機の際に国民を救うために活動できる施設といたしまして、安全保障の面では自衛隊並びに米軍施設という観点がございますので、そういった国民を守るための特殊な能力を有する施設を警護するという意味合いがあるのではないかというふうに思います。

枝野委員 今の答弁ではちょっと問題ですよ。

 つまり、自衛隊や米軍施設は国民の生命財産を守るその機能を果たしているところだから、民間の施設にも自衛隊施設などに対するのと同じように蓋然性があったとしても、特に守らなきゃならないというのであるならば、あるならばですよ、自衛隊の施設や米軍施設以上に守らなきゃならないのは、自衛隊に対する指揮権を発動する総理大臣なり総理大臣官邸じゃないんですか。

中谷国務大臣 そういう重要施設でございますけれども、その場合は当然治安出動をかけまして守るわけでございます。

 特に自衛隊と米軍施設に限ったというのは、先ほどもお話ししましたけれども、防衛施設であるという性格上、やはり自衛隊が警護するというのが適切であるという点と、自衛隊や米軍施設につきましては、我が国の防衛の基盤となる施設であって、万が一テロ攻撃を受けた場合には我が国の防衛にまさしく支障を生じることになりかねない、そういう事態に至っては国民に多大な被害を拡大する可能性がございます。そういう点を考慮した点でございます。

枝野委員 いいですか。この八十一条の二の警護出動の要件である大規模テロが行われる蓋然性ということで、この二つの施設と他の民間施設とを決定的に区別することはできないというようなニュアンスで今二つの答弁はされていると思います。私もそう思います。

 その上で、もう一回改めて聞きます。特別な必要というのは、どういう必要が生じた場合なんですか。

 大規模テロが行われる蓋然性があるときに、特に自衛隊の基地だけ守らなければならない、米軍基地だけ守らなきゃならないというような特別な必要があるケースというのは、私は余り考えられない。そのときには国民の生命財産も同じように脅かされているだろうし、そして同時に言えば、先ほど国家公安委員長がおっしゃられたとおり、治安出動に至らないような状況であれば、自衛隊の施設や米軍施設以外は少なくとも警察が警察の力で守れると責任持って国家公安委員長はおっしゃっているわけですね。

 そうすると、警察では守れないというようなケースがあり得るというのか。何をおっしゃっているのかよくわからないんです、この規定が。

村井国務大臣 私の立場でもう一回ちょっとお答えをさせていただきたいと思いますのは、警察は、まず一般的な治安の維持に任じているわけでございまして、テロや不法事案の未然防止のために、情報収集活動でございますとかいろいろなことを当然やっているわけでございます。それで、重要施設の警護というのも現在やっている、これは大前提でございます。

 ただ、こういうようなテロが非常に起こる蓋然性があるというような事態になりました場合に、防衛関連施設、自衛隊の施設、それから米軍の施設等につきましては、これはやはり防衛に関連するというその特殊性に着目して、自衛隊においてその施設を防護するという特別なことをやることも、これはいいのではなかろうか。ただ、それ以外の部分につきましては、警察としてきちんと責任を持って守っていくというのが基本でございます。

 警察の能力という点についてちょっと敷衍させていただきますと、例えば機動隊に銃器対策部隊というのがございましたり、あるいは爆発物処理班ですとか等々の、そういった能力を持っていることもぜひ御理解をいただきたいと存じます。

枝野委員 今の前段の部分、機能を持っているという配備の問題じゃなくて、その前の部分については、防衛庁長官、同じ認識でよろしいですね。

中谷国務大臣 同じ認識であります。

 基本的に、民間の場合は治安出動で対処するということでありますけれども、いざ治安出動がかかって自衛隊が出動した際に、その肝心の自衛隊がテロで襲われて使い物にならなければ、治安出動の対処ができるわけございません。ですから、その治安出動がかかる前に、防衛組織であります自衛隊並びに米軍をテロ等から守る必要があります。

 それから、もう一つのお尋ねの、どのような状況があるかという点でありますけれども、このテロ攻撃が強力な破壊力を有する、例えば軍事訓練を受けた者とか爆弾を搭載した車両や航空機が突入するおそれがあって、これを阻止する、防止する際には、特に警察と自衛隊は装備も性格も違うわけであります、その際に自衛隊の能力を用いる必要があると認められる場合等でございます。

枝野委員 訂正をされるならされた方がいいですよ。

 治安出動が発動されたときに、そのときに守るべき自衛隊がテロで攻撃されていたらまずいからというような趣旨のことを防衛庁長官はおっしゃるけれども、その理屈だったら、総理大臣を守らないと、あるいはあなた御自身、防衛庁長官を守らないと筋が通らなくなるので、発動するのは総理大臣なり、場合によっては、治安出動は国会承認ですから、国会自体守らなければいけないという話にその理屈だとなっちゃいますから、その部分は撤回された方がいいですよ。

中谷国務大臣 細かい議論になりますけれども、総理を守るために出動した自衛隊が使いようにならなかったら対処できません。ですから、今回設けた警護出動というのは、やはり日本の安全保障に関連する施設をテロ攻撃から守っていくために設けられた制度でございますので、その点を御理解いただきたいというふうに思います。

枝野委員 水かけ論をやっていてもばかばかしいので、もう一回だけ指摘だけしておきますが、国民の生命財産を守る治安出動のときに自衛隊は動かなきゃならない。それが、治安出動が出た段階でテロで破壊されていたらどうにもならないじゃないか的な理屈でこの規定を合理化するのであるならば、それは拡大をしないと、総理大臣や国会なども含まないと。自衛隊は自衛隊だけで治安出動できるわけじゃないんですから。最低限、事後承認の場合であっても、総理大臣と閣議の決定がなければ自衛隊は何も動きようがないわけですから。どんなに装備だけきちんと無傷でいたとしたって動けないわけですから。

 その理屈をとことんおっしゃるのであるならば、この法律は到底合理性というか、矛盾を抱えてしまうということだけ指摘をしておいた上で、わかるんですよ、私、この趣旨自体を全面的にだめだと言っているつもりじゃないです。

 先ほど来もちらちらと出てきているのですが、自衛隊が自分の基地を自分で守るということ自体は、ある意味合理的なんです。なぜならば、例えば民間の原子力発電所はだれが守っているのか。警察が守っているんじゃないんですよね。まずは電力会社の人たちが自分で自分の敷地の中を守っているんです。当たり前ですよね。それでは足りないときに警察がお手伝いをしているんですよね。ただ、民間の電力会社の人は武器は、少なくともけん銃のようなものは持っていない。

 自衛隊の場合も、自衛隊の自分の基地を守るというのは、一種の施設管理権という言い方が厳密に正しいかどうかは別として、当たり前のこと。ただ、自衛隊は民間のガードマンと違って武器を持っている。せっかく武器を持っているのに、いざというときに使えなければおかしいですよねということだから、自衛隊法の九十五条、あるいは今度改正されて設けられる九十五条の二で、自分の基地の中は何かあったときには必要最小限の限度で武器を使っていいですよという規定を置いているんですよね。このこと自体を私は否定しません。

 だとすれば、なぜ、この八十一条の二だなんという警護出動というわけのわからない概念を持ってきて、そこと全然違うところに新しい法律規定を置いて、どうして自衛隊だけしか守らないんだ、そういう国民の素朴な感情に反するようなことをなぜされるんですか。

 九十五条の二を新たにつくる。この九十五条の二に関連して、その延長線上の中で警護出動の場合に必要とされるような権限、権能を自衛隊に与えればいいんじゃないですか。

中谷国務大臣 九十五条二を使えばいいのではないかということでございますが、これは基本的にその権限が限られておりまして、限定された武器使用になっております。これだけでは大規模なテロ等に対処することができません。やはり自衛隊とか米軍に対する攻撃となりますと、相当大規模かつ練度の高い攻撃、それから航空機とか艦艇とか、そういうものもございますので、そういうものに対処するには、より武器使用権限の広がった、今回設けました警護出動による対処というのが必要になってくるということで、今回切り分けをして設けたわけでございます。

枝野委員 だから私は、ちゃんと聞いてくださいね、九十五条の二だけでいいとは言ってないですよ。だけれども、九十五条とか九十五条の二の趣旨の延長線上の概念としてだったら、この話は理屈として整理できる。

 だから、九十五条の二をどうせ新設するんだから、九十五条の三でも四でもくっつけて、ここに書いてあるような趣旨、要するに、状況に応じて、何か起こるそのリスクの程度に応じて使える武器の範囲というのは広げなきゃならないから、それを全部何でも包括的に使えるというよりは細かく書いておいた方がいいから、九十五条がある、九十五条の二がある、そして物すごい大規模なテロ攻撃のときにはここまでできるという九十五条の三をつくるというような書き方をすれば、なぜ自衛隊だけという国民の皆さんの、非常に強いですよ、この素朴な疑問は。そこのところには明確に答えられることになるんじゃないですか。

中谷国務大臣 そのような延長線上でいきますと、武器使用の権限以外に、警職法の準用規定であります質問とか避難等の措置、制止、立ち入りや、施設に対する大規模な侵害を排除するための武器の使用についても相当な措置が必要でありますので、今回新たな権限を新設したわけでございます。

枝野委員 そういうことまで含めてやったらいいじゃないですかということを言っているんですよ。

 後で言いますが、今度の修正法の七十九条の二の規定の書き方のところでも、今の警職法の準用のところで問題、矛盾があるということを指摘しようと思っていますが、そこまで含めて可能な範囲で、必要な範囲でそういう整理の仕方をすれば、国民の皆さんも、なぜ自衛隊の基地だけなの、なぜ米軍基地だけなのという疑問を持たないで、ああ、自分のうちの庭は自分で守るということの延長線上なんだからと、ちゃんと、民間の自分たちのことは警察が守ってくれるんだなと、誤解なく理解してもらえるんじゃないかということを申し上げているんです。

 まあこれも水かけ論ですから、国民の皆さんが判断されるのでこれ以上やりませんが、そこを、まあずれはあるにしても、自分の庭は自分で守るというところで必要だとしても、だけれども、きのうの安住議員が指摘をした問題点というのはやはり解決をされないんです。

 現実に、自衛隊の基地、米軍の基地、警護出動が発令されているときに、しかも大規模テロの蓋然性がある場合、大規模テロがある蓋然性があって警護出動が発動されて、自衛隊の基地や米軍基地に対して何か破壊活動が行われることに対しては、武器を使って例えば撃ち落とせる。

 例えば、今度のアメリカの九月十一日のケースのような場合であれば、ペンタゴンが日本のこの場合の自衛隊施設に該当する、横並びでいけるかどうかわかりませんが、例えばああいうふうに、飛行機が突っ込んでくるようなケースが日本国内で想定できるかどうかは別として、何らかの大規模テロが同時多発的に、一方では自衛隊の基地に対して行われている、もう一方では自衛隊基地のすぐ隣の民間施設に対して行われている。

 それに対して、この法律では、自衛隊の基地に対してなされているアタックに対しては反撃できますが、隣の民間施設に対するアタックは、目の前で見ていても、警察官が現場にいなくても、治安出動の発動を求める時間的暇がなくても、自衛隊は動けない。そして、自衛隊の人たちだけは守られて、米軍基地だけは守られて、隣の民間の施設は守られない、こういう結論になりませんか、総理。

小泉内閣総理大臣 仮定ですから、どういう形でテロが起こるかというのは、ニューヨークの例を出されましたけれども、自衛隊あるいは防衛庁にテロが起こって、近くの民家に起こった、これの被害の規模にもよりますね。これが継続的に行われるのか、単発で終わるのか、状況を見ないと。そして、このテロが、民家に行われたテロがさらに拡大していくのか、状況を見れば、自衛隊も状況を見て治安出動、活動できるわけですから。

 しかし、仮定ですから、どういうテロが起こるかわからない。一緒に、自衛隊施設と民家が同時に起こるかどうかも、仮定の話ですから、私は、この点については具体的な状況を見ないとわからない点があるんじゃないかと思いますが。

枝野委員 今の御答弁は、物すごく国民の立場から見れば問題ですよ。つまり、何が起こるかわからないじゃないか、だけれども、何が起こるかわからないのに備えて法律を整備しておくために今やっているんですから、あらゆるケース、もちろん、人間は全知全能ではありませんから、予想しなかった事態が起こって被害が出てしまうというケースはあります。しかし、ありとあらゆる可能性を想定して、それに対してできるだけの法的あるいは物理的な準備をしておくのが総理大臣の仕事なんじゃないですか。

小泉内閣総理大臣 そのとおりで、予想し得る事態に備えて法律をつくっているんですよ。特別な理由がある場合というのは、自衛隊の能力を活用する場合だということを考えているんですから。あるいは、治安出動、特別な配慮が出た場合には、ちゃんと自衛隊も出動できる規定があるんですから。それ以外は、警察で警護活動できる場合は警察がやればいいじゃないかと。

枝野委員 一般論として、今の話、私は否定しません。だけれども、今申し上げたとおり、この法律ができ上がったときに、先ほど私が申し上げたようなケースが起こったときには、国民の皆さんは守ってもらえないんですねと。敷地の線の内側の施設は守ってくれるけれども私の家は守ってくれないんですねという制度になっていますよと。

 しかも、警察だって、日本じゅう、日本全国のあらゆるところにいられるわけじゃないですから。それは、自衛隊の基地の中は自衛隊の人たちがいて……(発言する者あり)いや、常にそれを自衛隊が外でやれと言っているわけじゃないですよ。自衛隊の中を守るという法律をつくるのであるならば、その自衛隊の基地を守るのに当たって、例えば、自衛隊の権限を拡大するわけですから法律の規定の仕方は物すごく難しいと思いますが、現に認知ができて、そしていわゆる緊急事態に準ずるようなケースについては、自衛隊の基地だけではなくて自衛隊の基地の周辺も守ってあげますよという規定の仕方にしないと、法律の組み方が物すごく難しいのはわかった上で申し上げます。そうでないと、何だ、自分たちだけ守って隣のおれのうちは守ってくれないんだという国民の皆さんの疑問にこたえられないということです。

村井国務大臣 自衛隊の施設が警護出動が行われまして守られている場合に、自衛隊の施設をさておいて、その周辺の例えば民家がやられるというような事態というのはなかなか想定しにくい。自衛隊の施設がやられました場合、大規模テロによりましてやられる、それのあおりといいますか、それを受けまして周辺の民家にまで被害が及ぶというようなことになりましたら、これはそのときに、例えば警察がそれに対応していないというような状況でありましたら、当然自衛隊がある程度対応する。それは、この条文でもきちんと書いてあるわけですよ。

 そういう意味では、その地域の外に、地域の周辺において警護活動を行うことができるということをわざわざ書いてあるわけでありまして、ですから、その周辺まで含んでやっているわけですよ。そういうことをぜひ御理解いただきたい。

中谷国務大臣 その基地周辺の民家がどうかというお尋ねですけれども、この法案の条文に書いております。この法案、条文の第九十一条二の四にその区域の指定がありまして、その施設及び区域の外部においても行使することができる。これは、必要限度において、やむを得ない必要があるときという規定がありますけれども、外部においてもできるようになっております。ですから、周辺の民家に被害が及ぶというケースにおいては、自衛隊の被害の拡大防止に対処できるということになっています。

枝野委員 念のために言っておきますが、やっちゃだめだということを言っているんじゃないですよ。だけれども、やる以上は法律をちゃんとつくってください。

 この法律に書いてあるのは、「指定された施設又は施設及び区域の警護のため」に周辺に出ていけると書いてあるんですよ。周辺を守るためにじゃないんですよ。そこは法律はきちんとつくっていただかないと、自衛隊にしろ警察にしろ物すごい強力な有形力を持っているわけですから、そこはそんなあいまいな規定であいまいに発動してもらっちゃ困りますよ。ちゃんと書いてくださいよ。周辺の地域についても被害が及ぶのを防ぐためと書かないと。大事な問題ですよ。おかしいんじゃないですか。今の解釈は成り立ちませんよ。修正してください。

村井国務大臣 防護対象というのは、これはきちんと指定されるわけでございますね。それにつきまして自衛隊が責任を持つ、その周辺、それ以外のところは警察が責任を持つ、これはもう基本なんであります。

 ただ、今委員が御指摘になられましたような、緊急の事態においてたまたま自衛隊が警護に当たっている、それに関連する周辺で問題が起きますような場合にどうだということでありますから、それはやれるような体系にしてあるということを申し上げているわけで、あくまで警察は指定された以外の部分を守る、そして防衛関連の施設は、それは自衛隊が守るという形でこの警護活動という、警護出動という自衛隊の任務は規定されているという整理であります。

枝野委員 通告していないので法制局長官には聞かない方がいいかもしれませんが、おかしいんですよ。つまり、「区域の警護のため」と書いてあるじゃないですか。周辺のところで何か起こったときには対応できますといったって、自分の基地を守るためには周辺ではできるけれども、周辺には出て、もっとひどいじゃないですか。周辺には出ていくけれども、自分の基地を守るための武器の行使はするけれども、お隣にある村役場の警護のためには武器は使わないという法律のつくり方ですよ、自衛隊が。それは変ですよ、明らかに。

村井国務大臣 村役場の警護は、これはあくまで警察の仕事なんです。もしそこが警察力を超えるという判断になりましたら、それは治安出動なりなんなりできちんと対応すればいいことなんでありまして、それに至る、そういう治安出動というような状態ではない、しかしながらテロなどの重大な事案が発生しそうで、発生するというような蓋然性があって、それで防衛関連の施設はこれを守らなければならない、それについて自衛隊をして守らしめるという仕組みを、これは、今は自衛隊は自分の施設すら厳密に言えば守ることはできないわけでありますから、そこをきちんと守ることができるということを規定する、そして、あわせて米軍の施設も守ることができることにするというのが今度の趣旨であります。

枝野委員 だから、自衛隊の基地を自分で守るということはわかりますと申し上げたじゃないですか。

 では、こういう聞き方をしましょう。通告していないので答えられなければ答えられないでもいいんですが、治安出動というのは、事態が発生してから何分かかったら発動できるんですか。実際に警護出動が発動されている状況というのはいろいろなことが蓋然性がある、だけれども治安出動は発動されていない。現に自衛隊の基地や自衛隊の基地のそばの民家に対して何か攻撃がなされた、さあ治安出動ですと。一分や二分でできるんですか。できませんよね。一時間、二時間は必要なんですよね。これは担当だれなんでしょう。そうですよね、常識的には。

 その間、自衛隊や警察の権限行使には、いざというときに、どんな場合のケースにも備えて、ちゃんと正当に、適法に有形力の行使ができるように備えておくというのが国会と政府の責任だから、そういうときに、最低限、治安出動が発動されるまでの間、あるいは警察がやってくるまでの間、それは自分の基地を守っているための武器があるんだから、お隣の民家も守ってあげましょうという法体系にしておくのは当たり前じゃないですか。

村井国務大臣 同じことの繰り返しになって恐縮でありますけれども、要するに、自衛隊をどのように使うか、それから、警察をどのように使うか、実は、警察と自衛隊のデマーケーションと申しますか、どこで境界を引くかという問題は、ある意味では非常に難しい問題の一つでございます。

 現在の日本の法体系というのは、一般の治安を守るということは、これは第一義的に警察の任務であるという割り切りをいたしまして、その上で、特定の理由があるときには治安出動という形で自衛隊の出動を認めるという体系になっているわけであります。

 しかしながら、治安出動につきましては、これは御案内のとおりのさまざまな手続があるということで、緊急の場合にどうであろうかというような議論から、そこで、できるだけ自衛隊を使う方法はないだろうか。そのときに、自衛隊がみずからの基地を守る、施設を守る、そしてあわせて、自衛隊とともに日本の防衛に当たっている米軍の基地、施設等を守るというところまでは、これはより軽易な手続によって、これが警護活動ということになるのでありましょうが、これで自衛隊の機能として警護に当たらせる、そしてそれ以外の部分は警察が全責任を持つということにするというのが今度御提案をしていることの趣旨だということは、委員十分御理解の上で御議論になっているんだと思っておりますが、私は、その原点に返っていただくならば、限定的に自衛隊の機能をここで自衛隊法を改正して付加するというのは、一つの政策判断だろうと思っております。

枝野委員 だから、私は、基地の管理権の延長線上で、一定範囲でこういう形のものができ上がってくるということは先ほどから否定していないです。ただし、そこで、やるときに、いざ実際に何か万が一のケースを想定したときに、非常に矛盾をすることが起こってくるんじゃないですか、もう一条か二条つけ加えた方がいいんじゃないですかという趣旨なんですよ。

 同じような意味で、ちょっと時間もなくなってきたので、これも聞いておかなきゃいけないので、七十九条の二、「治安出動下令前に行う情報収集」のところをお尋ねしたいと思うんです。

 これはわかります。治安出動は命令されていないけれども、それが予期されるところで自衛隊が出ていっていろいろ情報収集をしないといけないと。それはよくわかります。よくわかりますが、よくわからないのは、例えば、この規定では、警職法とかなんとかの準用を全然していなくて、情報収集ができますという規定と、九十二条の二で、万が一のときは武器使用をできますという規定しか置いてないんですよね。

 これ、自衛隊、自衛官の人は、情報収集をする、しかも武器使用ができないといけないような情報収集をする、どういうやり方で、どうするんですか、防衛庁長官。

中谷国務大臣 今回、情報収集をやる目的は、治安出動において速やかに自衛隊が行動するための情報収集でございます。あくまでも、防衛庁の行動の範囲の一環として、防衛庁の行動を速やかに、迅速に対処できるためにする情報収集でございます。

枝野委員 よくわからないんですが、要するに、テロリストとかそういう人たちが変なところで準備していないかどうか、そういう情報を集めるわけですよね。

中谷国務大臣 今回行われる情報収集の目的というのは、武装工作員等が我が国に侵入して治安出動が下令されることが予想される緊迫事態、そういう際に、内閣総理大臣が速やかに、適切に治安出動下令に係る判断をされるというのに資する情報を収集するということが目的でございます。

枝野委員 現実に、自衛官の人が命令されてどうやって仕事するんですか。つまり、この法律では、情報収集ができるということが書いてあるのと、武器使用ができるとしか書いていないんですよ。

 例えば、おかしな人がいる。おかしな人がいるのに対して質問をするということは、ほかの自衛隊法の規定では、警職法、警察官職務執行法の、質問ができるという規定を準用している部分がありますから、それをあえて準用していないこの出動のときには、質問することはできないんですよね。

 あるいは、テロリスト、武装集団なんかがどこかに隠れている、これはもうちょっと包囲網を狭めてきちっとチェックしなきゃならないというときに、御近所の民間の人たちに、ちょっと危ないのでどいてくださいと言うことは、警職法の四条ですから、これは準用していないからできないんですよね。あるいは、警察官職務執行法の六条にある立ち入り権限なんかもないんですよね。

 こういう規定を全く準用していないで、ただ、要するに何の権限もなしに情報収集しなさい、ただ、最後の最後、危ないときだけ武器を使えますということで本当に機能するんですか。

中谷国務大臣 今回は、そういった警察及び司法権に係る項目は盛り込みませんでした。そういう事態に際しましては、警察当局と緊密に連携をしながら情報収集をすることになろうかと思います。

枝野委員 警察ではできないから自衛隊が出ていくんじゃないですか。どういうことなんですか。つまり、警察と協力をして、警察がやるケースであるならば、その警察のお手伝いをするという規定を書きゃいいので、これは、警察じゃなくて自衛隊として、治安出動の前提として、治安出動を想定されるようなケースについて、まさに自衛隊だからやらなきゃならないことだからこういう法律を置いたんでしょう。矛盾しますよ。

中谷国務大臣 自衛隊が行うのは、捜査とか逮捕とかそういうことではなくて、あくまでも治安出動に係ることを速やかに判断するために行う情報収集でございまして、そういう点におきましては、警察がやっている活動内容と違う目的がございます。そういう点におきまして、この目的は、情報収集を適切に行うという範囲内でございます。

枝野委員 その目的の違い、よくわかっています。そして、私も、自衛隊が何でもかんでも出ていきゃいいとも思わないし、逆に言えば、警察がどんどん大きくなってもいいとも思わない。そこのけじめの境目をしっかりさせないといけないと思っていますが、現実に、この七十九条の二の治安出動は、事態が切迫して治安出動の命令が発せられるぎりぎりの状況での情報収集のところですよね。

 例えば、ここは怪しいと。情報収集していたら、この人たちが例えば銃刀法違反で逮捕できると。押さえなきゃいけないと。押さえるのが一番いいわけですからね、テロを防ぐためには、当事者たちを。と、例えば自衛隊の人たちが調査している間に気がついても、一々それを警察に連絡して警察に来てもらわないと逮捕もできないんですよ。この「治安出動下令前に行う情報収集」とは、事態が切迫をしているというようなケースのところで、そういう手続を一々とらなければならないような仕組みで本当にいいんですかと。

 ぎりぎりのところで、大変だという緊迫しているところで、こういう権限を与えているんだから、そこのところでは、例えば身柄を押さえたいと思ったら押さえられるような権限を持たないと、実際には、見つけたけれども事を起こすまで見ていますとか、警察まで連絡して警察に来てもらうまでに、こういうときは何分とか、恐らく何時間とかという単位じゃないでしょう、何分という単位で物事が動くようなケースを想定してつくっているんじゃないんですか。

中谷国務大臣 そもそもこの法律の改正は、自衛隊が治安出動をした場合に速やかに行動できるための情報収集を行うためのものであります。

 現状はどうかというと、武器携行規定がないものですから、自分の身すら守られない危険な状態で情報収集活動を行っているものであって、それは余りにも危険だということで、この武器使用を可能にしたということを付加して情報収集を行うということにしたものでございます。

枝野委員 時間ですのでかわりますが、私は、何でもかんでも自衛隊にそういう権限を単純に持たせていいとは思っていません。それは、警察の機能と自衛隊の機能ということはあります。

 だけれども、まさに危機管理の話ですから、ぎりぎりのところで、こういう枠組みはつくったけれども、実際に本当に危機的なごちゃごちゃになったところでは超法規的行為をしなきゃならないとか、あるいは身動きがとれないとかということでは困るわけです。きちんと細かく詰めて、なおかつ、例えば自衛隊が警察機能の一部を緊急なときにはやらなきゃならないともしするんだったらば、もうちょっといろいろな枠組み、縛りをかけていかなきゃならない。

 今回の法改正は、いずれにしても中間品である。これからもう一年か二年ぐらいかけてしっかりと完成品にしなきゃならない。そのための努力を、我々もしますけれども、政府としてもきちんとして、この穴があいている中間品、それでもないよりはましだという議論がありますし、それは傾聴に値しますから、そこの部分は我々も判断しますが、しかし、穴があいているということをよく考えて、きちんと穴を埋めるような努力をしていただきたい。そのことを申し上げて、終わらせていただきます。ありがとうございます。

村井国務大臣 大変重要な問題を枝野委員ただいま御指摘になられたわけでありますけれども、私、ぜひちょっと、これは議員としての私見をあえて申し上げさせていただきたいと思いますのは、自衛隊がなぜ出てくるのかということなんでありますが、自衛隊というのは警察に比べて火力のレベルが非常に高いというところに大きな特徴があるんだろうと私は思っております。ただ、問題は、その火力のレベルが高いとしても、これを本当に使えるような仕組みがそれに伴ってきちんとできるか。

 例えば、この間のアメリカで起きましたテロの事案を考えてみましても、ペンタゴンに突っ込もうとした飛行機に対しまして、これを撃墜しようという決断をアメリカの場合はしたというような報道もございます。そのような決心をする仕組みというものが、日本の今の法律の体系の中でどんなふうに組めるだろうかというようなこともあわせて検討するのでなければ、私は、自衛隊による警備というような問題はなかなか簡単にはけりがつかない問題ではなかろうかというように感じておるわけでございまして、さような意味で、このたび、防衛関連の施設に限定して自衛隊がこれの警備にかかわることができるという形で自衛隊の機能を強めて、強めたといいますか追加するというのは、私は一つの立法判断だ、そのように考えている次第であります。

 そのことを一言だけ、今の御見解に関連して申し上げさせていただきました。

加藤委員長 この際、岡田克也君から関連質疑の申し出があります。鹿野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。岡田君。

岡田委員 総理、民主党も六時間以上議論をしてまいりました。いろいろな論点が出てまいりましたので、きょうは、私の時間が二時間ほどありますので、今までの議論を踏まえながらさらに議論をして少し論点を整理してみたい、そういうふうに思っておりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 まず、始める前に、先ほど総理の方から、ウサマ・ビンラーディンと今回のテロ事件の関係についての政府の見解が述べられました。昨日の我々民主党の、そういったことについて明快な見解を述べるべきだ、そういう要望に対しておこたえになられたことは率直に評価をしたいというふうに思います。もちろん、中身についてはいろいろ我々として十分でないと思うところもありますので、後ほど申し上げたい、そういうふうに思っているところであります。

 さて、少し議論の整理を、入る前にしてみたいと思います。

 我々もよく有権者の皆さんから、特にこれは女性が多いんですけれども、いただくのは、今回のテロは大変ひどい、そのことは十分わかる、しかし、なぜそれを武力行使によって解決しなければいけないのか、アメリカの空爆も始まっておりますけれども、そういう解決の仕方ではなくて、きちんと国連決議をして、そして犯人の引き渡しを求め、裁判にかけるべきだ、こういう議論というのは、なお私はかなり国民の中にはあるんだと思うのですね。

 民主党はそういう立場をとっておりません。総理もそういう立場をとっていないということは、今までこの委員会の中で何度も述べられておりますけれども、ともすれば、裁判にかけるべきだ、武力行使はだめだという質問者に対して、少し感情も交えながらお話しになっていたものですから、この際、少し冷静に、テレビを通じて国民の皆さんに呼びかけるおつもりで、なぜ我々はこの武力行使を、我々自身がするわけではもちろんありませんが、米国等が武力行使をするということについてこれを是とするのか、そのことについて御説明をいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 武力行使をせずにこの事件が解決してテロが根絶されれば、これにこしたことはないと思います。しかし、今回のニューヨークとかワシントンのあの同時多発テロを見てみますと、これっきりで終わるという確信はだれも持てませんね。むしろ、これからまた続いていくんじゃないかという不安の方が強い。

 そして、過去のウサマ・ビンラーディン初めアルカーイダの行動を見ますと、各地でテロを起こしている。そして身柄引き渡し要求にも応じてこない。なおかつ、このまま外交努力、あるいはテロ資金管理努力、凍結努力、あらゆる手段を講じて呼びかけても全然耳をかさない。そういうさなかに、今回のテロがまたまた発生したわけであります。

 このままそれでは武力行使しない、テロ組織を壊滅しない場合、話し合いによってテロが阻止されるのか。だれも保証はない。そういう中で、これはもう話し合っても言うことを聞いてくれないな、武力行使は最後の手段だと思いますが、そこに踏み切った。

 しかも、これが国際間の組織になっているわけですね。国際協調のもとにこのテロ根絶に立ち上がったわけでありまして、あくまでも武力行使は一つの手段であります。そのほかの手段も、有効であると思われる手段はすべて活用しよう、各国の国情に応じて、国力に応じてできるだけのことをしようというのが今の国際間の共有している認識だと思います。

 アメリカとイギリスは武力行使には参加するけれども、ほかの国は参加しない国もたくさんある。しかし、テロに対しては毅然として立ち向かおうというのが国際社会の中で圧倒的多数の国々であるということでありますので、私は、武力行使を用いずにテロ根絶という保証がないどころか、このまま手をこまねいて、話し合って、出てきなさい、出てきなさい、法による裁きを受けなさいと言っても全然言うことを聞かない相手には、今回やむを得ない措置ではなかったか、そういうふうに判断しております。

岡田委員 今の総理の御発言に若干補足をさせていただくとすると、出てきなさい、出てきなさいと言っても出てこないというのは、国連の安保理の決議があるということですね。安保理決議一二六七、ここで正式にウサマ・ビンラディンに対してその引き渡しを求めた、しかし出てこない、そういう中でこのニューヨーク、ワシントンの大規模なテロ事件が起きた、こういう流れの中で今回の武力行使がある、そういうことだと思います。

 では、もう一つお聞きしたいと思いますが、このウサマ・ビンラディンはわかったけれども、ではタリバンはどうなんだ。つまり、それをかくまっているというだけでタリバンまで攻撃をするということが合理化されるのかどうか、こういう疑問があると思います。これについてはどうお答えになりますか。

小泉内閣総理大臣 ウサマ・ビンラーディン個人一人だけの今回のテロ犯行じゃないと私は思っています。ニューヨークの、あるいはワシントンの同時多発テロにおきましても、複数のテロリストが計画性、組織性を持って攻撃したからこそあれだけの大惨事になっているわけでありまして、このウサマ・ビンラーディンの配下に属するテロリストはまだ何人もいると想定するのが自然だと思います、しかも組織的に。それを支援し、擁護している一つの組織がタリバンである。

 だから、こういう個人、ウサマ・ビンラーディン個人をたとえ逮捕したとしても、それにつながる組織が破壊されない限りは、依然として続く可能性が強い。その支援する組織、タリバンも一つであります。それを壊滅といいますか、むしろ組織性を持つことができない、テロ行為を行うことができない程度にまで破壊しない限りは、私はテロの不安というのはなくならないのじゃないか。

 今回、ウサマ・ビンラーディン個人はもとより、それを支援する組織、それを擁護する政権、これに対して攻撃を加えているというのは、私は、それなりの理由があると思っております。

岡田委員 国連安保理の決議一二六七の中で、もう既に、これはもちろん今回のテロ事件ではありませんが、ケニア及びタンザニアにおける爆弾テロ事件に関して、タリバンがウサマ・ビンラディンをかくまっている、その背後にいるということでタリバンの経済制裁を決めた。

 そして、同じく安保理決議一三三三、これは二〇〇〇年であります、先ほどの一二六七は一九九九年十月ですけれども、一三三三において、タリバンが先ほどの決議一二六七を遵守していないということで、さらに資産凍結などの、あるいはタリバン幹部の渡航制限などの制裁強化の決議をしている。

 こういうことで、まず、タリバンとウサマ・ビンラディンの関係については、今回のテロ事件ではありませんが、それ以前のテロ事件に関して既に関係を安保理として認めている。そして、今回のことについては、それは証拠がないと言えばないかもしれませんが、しかし非常に疑いが濃いということで、タリバンに対して引き渡しを求めたけれども出てこない、そういうことで今回の武力行使がある、こういう整理だと思っております。

 さて、それじゃ次に、犯人の特定の問題であります。

 先ほど総理が、冒頭の発言の中で、ウサマ・ビンラーディン率いるアルカーイダと今回のテロ事件の関係について、るるお述べになりました。ただ、今お述べになった中身は、一つは、アメリカ政府、イギリス政府あるいはNATO、フランス、パキスタン、ロシア、そういった諸外国、諸機関がこう言っている、そういう御説明だったと思います。

 それ以外のところということで今の発言を見ますと、五でお述べになったところですけれども、ウサマ・ビンラーディンは、八日のテレビ放送において、ニューヨーク、ワシントンを破壊した人々は神より遣わされた旨述べ、称賛した。それから、いろいろ各国から容疑がかけられているにもかかわらず、みずからの関与を全く否定していない。それから、アルカイーダが、米国は飛行機のあらしが静まらないことを知るべきだという声明を出して、さらなるテロを予告している。こういうふうに述べられました。

 これは、それぞれ情況証拠ではあると思いますけれども、ウサマ・ビンラーディンがみずからテロを起こしたということを言っているわけではありません。否定していないことをもってそうではないかということを言っているにすぎないわけであります。

 そういう意味で、今お述べいただいたことは、私は、国民の皆さんに政府がきちんと説明するという意味で評価いたしますけれども、これだけで我が国が武力行使に対する支援をする、そのためには場合によっては人の命もかかわります、日本人の命もかかわります、もちろん税金もかかわります、そういう中で、今お述べになったことだけで決定することはもちろんできません。そこで大事になることは、総理みずからもお述べになっているように、総理御自身が、公にはできないけれども、米国政府から確信に足るだけの情報を得ている、そこに私はかかわってくると思うのですね。

 今、米国政府からどういう中身を情報として得ているのか、そのことをここで示せなどと言う気はもちろんありません。しかしもう少し、どういう状況のもとで示されたのか、外交ルートを通じて示されたのか、あるいは日米首脳会談を通じて示されたのか、少しそのさわりの部分だけでもお話しいただいた方が国民にとってわかりやすいと私は思うのですが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 これは見解の相違になるかとも思いますが、私は、委員会冒頭で発言した内容で十分説得力があると思っております。これで説得力がないとは思いません。この私の冒頭の発言において、内容において説得力がないと思われる方がいるかもしれません。しかし、私どもは、冒頭に発言した私の内容において十分説得力があるものと判断しております。

岡田委員 今のお話は、そうすると、冒頭の発言以外に情報はないということですか。

小泉内閣総理大臣 冒頭の発言にも、話せない部分もあるがということを報告しております。

 しかし、話した中で十分説得力があると思っております。これで説得力がないと思う方もいるかもしれませんが、それは見解の相違だと思います。

岡田委員 私は、冒頭にお話しのあったことプラス、総理御自身が、話せないけれども自分自身が確信するだけの情報を得ている、その合わせたところで国民は納得していると思うのですね。

 そこで、何もお話しできないというのは、それは事柄の性格上わからないわけではありませんけれども、しかし、総理、ここで私は一つだけ確認しておきたいことは、もしこの判断が誤っていたときに、総理はその責任を負うお気持ちは当然おありでしょうねということなんですね。

 つまり、私どもも含めて国民の皆さんは、今冒頭に述べられたこの説明しか聞いていない。いろいろな国がこう言っている、それはわかりますよ。でも、それだけで判断しているわけではないと私は思うのですね、それぞれの国も。やはり日本も、同盟国として米国政府から総理に対して、言えない情報提供もあった、その総合判断の中で決めている。そうであれば、もしこのウサマ・ビンラーディンが、アルカイーダが犯人ではないということになったときに、やはりそのことについて政治家としてきちんと責任を負うということを総理がこの場でおっしゃることが、国民の皆さんが確かにウサマ・ビンラーディンだ、そういうふうに確信をするためにどうしても必要なことだと私は思うのですが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 責任を負っているのは当然であります。これだけ情報を交換し、意見交換し、総合的に判断して、ウサマ・ビンラーディンが犯人である証拠を発表できないからこの国際社会の協調体制に立ち向かうことができないといった責任の方が私は大きいと思っております。

岡田委員 総理は私の質問に答えていただいていないのですね。私が申し上げているのは、総理が……(発言する者あり)では、もう一度言ってください。

 総理は、我々あるいは国民の皆さんには入手できない情報を持って最終的に犯人を特定された。もしそれが間違っているということであれば、それはもちろんアメリカ政府の責任もあるかもしれませんが、総理御自身も政治家としてその責任は重いですよ。そのことは感じておられますね。そのことをもう一度お述べいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 最初に、冒頭に申し上げたとおり、責任を負っております。

岡田委員 重い責任ですから、もう少し重々しく言っていただきたかったのですけれども。

 それでは、次に参りたいと思います。

 この法案を考えていく中で、私は自衛権行使の正当性の問題というのを避けて通れないというふうに思っております。そこで、幾つか御質問したいと思いますが、まず、自衛権行使というのは、米国政府の個別的自衛権行使の正当性ということであります。

 米国政府は、先般、安保理に提出したレターの中で、アフガニスタン以外の国々に軍事攻撃する可能性を述べたと伝えられております。今回のこの事件に関して、今後、米国政府の、米国の武力行使が次々に拡大をしていった場合に、日本国政府として、この法律に基づいて米国政府のすべての武力行使に対して支援をしていく、この法律に基づいて支援をしていく、そういうお考えなんでしょうか。

福田国務大臣 今回の米国また英国、このとった行動というのは、国連憲章第五十一条に基づきます個別的及び集団的自衛権の行使、こういうことで安保理に報告をされております。

 これは、一般国際法上は、自衛権というのは、御案内のとおりでありますけれども、国家または国民に対する外部からの急迫不正の侵害に対し、これを排除するのにほかに適当な手段がない場合に、当該国家が必要最小限の実力を行使する権利である、こういうことになっております。

 我が国としましては、米国から得た情報その他各種情報をもとに、今回の同時多発テロに対して米軍、英軍がとった軍事行動が自衛権の行使に当たると判断しております。いずれにしても、米国は、国際法上違法な武力の行使を行わない、こういう義務を遵守しなければなりませんから、米軍等の軍事行動が必要最小限度の実力の行使を超えるものではない、このように理解しております。

 また、後段でお尋ねの、目的を逸脱するようなことがないかどうかといったような趣旨のことにつきましては、これは、米国が九月十一日のテロ攻撃によってもたらされている脅威の除去に努めるということによりまして国連憲章の目的達成に寄与するという、この目的から逸脱した行動を行うということは我々としては想定はいたしておりません。想定するのは適当でないというふうに考えております。

 いずれにしても、具体的に、どのような場合に、どのような内容の対応措置を実施するかしないかということは、これは我が国が自主的に判断することである、このように考えております。

岡田委員 今、自衛権行使についての中身をお話しになったわけですが、最小限という表現を使われました。そういう言い方もありますが、別の言い方をすれば、侵害行為と反撃行為の間に均衡性があること、これが自衛権行使に当たって必要なことだ、一般的に国際的に認められた考え方だと思います。それを逸脱することはないと官房長官は今言われましたが、それは正確じゃないので。つまり、攻撃はまだ続いているわけですから。

 発動の要件としてはよくても、やっているうちにどんどんどんどんそれがエスカレートしていけば、その均衡性が崩れる可能性というのは論理的には排除できないと思います。そこについて、もし均衡が崩れるような攻撃をした場合、例えば、このアフガンの中で一般の市民を大量に、私は、それは攻撃をしていく中で、既にそういったことが起きていますけれども、多少のことはあるだろう、そういうふうに思いますけれども、一般の市民がどんどんどんどん攻撃対象になって亡くなっているというようなことは、それはあってはならないことですが、論理的には考えられるわけですね。そういう場合、どうなんでしょうか。

福田国務大臣 今回の米軍を初めとする国々の活動というものは、これは目的は何かということですね。

 それは、九月十一日に起こったテロに起因するものでありますけれども、過去において何件かあったそういうものに対する、要するに、国際的なテロの絶滅とそしてまた抑止、こういうことがあって、それに同調する国々が立ち上がった、こういうことでございます。ですから、そのテロの絶滅ということを果たすためにどの程度のことが許されるかという問題にもなるかと思いますけれども、これは、この目的を達成するために、では何でもやってもいいんだというわけに私はいかないだろうと思います。

 いずれにしましても、やはり米国は、並びにその他の国々も、国連憲章上の義務を遵守するという大原則がありますので、我が国も、国際法上違法な軍事行動を支援する、そういうことはあり得ないはずでございます。

岡田委員 今官房長官言われた中で、これはここ数日来の政府の答弁を聞いていて、もう少し整理した方がいいと思う点が一点あるんですね。つまり、この法律でテロの撲滅を目指して行動するということなんですが、私は、法律上、二つのことを明らかに書き分けていると思うんですね。

 一つは、テロ攻撃によってもたらされている脅威の除去に努めることによって国連憲章の目的の達成に寄与する米国軍その他を支援する、簡単にちょっと申し上げましたが。そこで言うテロ攻撃というのは、テロ攻撃一般じゃないですね。テロ攻撃一般じゃなくて、この法律上書いてあるテロ攻撃というのは、「平成十三年九月十一日にアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃」というふうに特定されていますから。ですから、今の官房長官のお答えを聞いていて私はちょっと正確じゃないと思ったんですが、我々が米軍等に対していろいろな支援をする、我が国が実施をする措置というのは、あくまでもこの具体的な平成十三年九月十一日のテロ攻撃に対して、その脅威を除去するためにやるんだ。

 そしてもう一つの方の、人道的な精神に基づいて実施する措置の方はそういう限定がありませんから、一般のテロの脅威に対して行うものだ。そういうふうに明らかに法律上書き分けられていると思うんですが、いかがでしょうか。

福田国務大臣 委員のおっしゃるとおりでございまして、我々日本がこれから新法でもって行おうとする活動というのは、これは九月十一日に起こったテロに原因するものであるということでございます。

岡田委員 そうであれば、例えば今回のウサマ・ビンラーディンとかアルカイーダに関係のないテロ、ほかにも国際的なテロはいろいろあります。そういうことに関して、もし米軍等が武力行使をするということになれば、この法律に基づいて我が国が措置をする、支援をするということは、これはできないことですね。いかがでしょうか。

福田国務大臣 おっしゃるとおりですけれども、しかし、過去のものも同じ犯人または団体であるということになれば、今回の九月十一日の事件を起こした犯人、団体、これを撲滅するということが、これが目的にかなう、またこの新法の目的にもかなうことだと思います。

岡田委員 私の申し上げたことと同じことを官房長官が言われたと思うんですけれども。

 そこで、例えば米国等がこれからアフガニスタン以外の国を武力攻撃するということがあったときに、その国とこのウサマ・ビンラーディンとの関係が明確であれば、あるいはそのことについてきちんと、先ほど私は、ウサマ・ビンラーディンとそしてタリバンとの関係は過去の国連安保理の決議においても認められているというふうに申し上げましたが、同じような明確さがあれば、私は、場合によっては、そういうことが自衛権行使の名のもとに正当化され、そしてこの法律に基づいて、日本もそれに対し支援することはあり得るとは思いますけれども、しかし、それは単に協力関係にあるだけだとか、明確なきちんとした密接な関係がない場合に、もし米国がそういったアフガニスタン以外の国を攻撃したときに、日本が支援をするということは、私はこの法律の目的を逸脱していると思いますが、いかがでしょう。

福田国務大臣 これからどのようなことになるのか、いろいろ考えますと切りがないのでありますけれども、今時点において私どもは、この地域において行われていることを、これを現在は認識しているわけでありまして、その先を想定するのは現段階では適当ではないのかな、こう思っております。

 もちろん、委員のおっしゃるとおりその状況が整えばということであるかもしれませんけれども、しかし、それはあくまでも日本、我が国が自主的に考えることでありまして、そのときに今回のような証拠とかいろいろな状況が整うのかどうか、そういうこともあわせ考えて判断すべきものだと思っております。

岡田委員 私も、米国政府を、疑いを持っているわけではありませんが、しかし論理的な可能性として、米国政府がこの際ということで、直接今回のテロ事件に関係のないテロ組織まで含めて一気に片をつけてしまおう、こういうことで攻撃をしたような場合には、我が国としては、それに対してこの法律に基づいて支援することはできない、こういうことだと思っております。

 しかし、そのことについて、もう少し法律上明確にしておくべきじゃないか。もう少し言いますと、米国等の正当な自衛権の行使、その範囲を逸脱した場合には我々は協力できませんということを法律上明確な根拠規定を置いておくべきじゃないか、そういうふうに思いますが、いかがでしょうか。

福田国務大臣 どのようなことが起こるかわからないから、その事例について一々具体的な名前を挙げるとかそういうことはできないだろうと思います。

 しかし、明らかに、「テロ攻撃によってもたらされている脅威の除去に努めることにより国際連合憲章の目的の達成に寄与する」、こういうように明確に書いてございますので、これは、その趣旨に沿った我々の活動である、そしてその目的に基づいた自主的な判断に基づくものである、こういうことであります。

岡田委員 やや細かい法律論になってしまいますけれども、今おっしゃったのは、第一条の中で「国際連合憲章の目的の達成に寄与するアメリカ合衆国その他の外国の軍隊」という、そこの部分ですね。

 つまり、国際連合憲章の目的を達成するような行為を行っている場合にこの法律の対象になるんだということをおっしゃったんだと思いますが、それじゃ、そこで言う国際連合憲章の目的というのは一体何なんでしょうか。

福田国務大臣 国際の平和と安全の維持などに努めるということだと思います。

岡田委員 ここが私はかなりあいまいだと思うんですね。

 例えば、国際の平和と安全の維持に努めているとしても、しかし正当な自衛権の行使を超えているということは私はあり得ると思うんですね。そういう場合も支援するんですか。

福田国務大臣 そのことは、国連憲章に記載されているわけですね。ですから、当然のことだと思っております。

岡田委員 ちょっと今わかりにくかったんですけれども、国連憲章に何が記載されているんですか。

福田国務大臣 国連憲章五十一条です。

岡田委員 五十一条に書いてあるのは、自衛権の行使ができるということが書いてあるわけですね。私が先ほどから申し上げていることは、むしろ、端的に言うと、法律に、日本の行う協力支援活動は国連憲章五十一条に定める正当な自衛権の行使の範囲を超えるものであってはならないということを明確に書いたらどうかということなんです。

福田国務大臣 この国連憲章第二条なんですけれども、加盟国は、目的の達成に当たり、違法な武力の行使を慎むべき義務をすべての加盟国に課している、こういう条文がございます。

岡田委員 国連憲章にどう書いてあっても、今我々の国の法律の話をしているわけで、そういう一般的なことはいろいろ国連憲章に書いてありますが、実際に我が国の中で考えていくときには、我が国の法律にきちんと根拠がないとそれができないんじゃないですか。

 国民の皆さんの中にも、どこまでも米国を、何といいますか無条件に信じてついていくということに対しては、私自身も含めて抵抗があるんですね。もちろん、米国政府の判断というのはおおむね誤っていないというふうに今までのことから思いますけれども、しかし我々も同盟国として、イコールパートナーというのであれば、やはり、アメリカの言うことは全部正しいという前提に立って法律をつくるんじゃなくて、そこは、きちんと国際ルールに従って行動するアメリカに対して我々は支援するんだということをきちんと言うべきじゃないか、そういう趣旨で私は申し上げているんです。

 官房長官は、あくまでもアメリカの言うことは常に神のように正しい、そういう前提でお話しになっているんですか。

福田国務大臣 この法案は、九月十一日に起こったテロ、これのためにつくった非常に限定的な新法律なんですね。この法律が、それじゃ何をもとにしているのかといえば、やはりそれは国連憲章上の義務ということ、また義務を遵守する、こういうことは一つございます。

 またもう一つは、我々が、国際法上違法な武力の行使や国連憲章の目的達成に寄与する活動でないという――ちょっと失礼をしました。ですから、この我々の活動は、あくまでも国連憲章上の義務ということでもって活動をする、こういう内容になっているわけですから、それからもう一つ申し上げれば、日本の憲法の枠内で行うということ、そしてそれも自主的な判断に基づいて活動を規定する、こういうことになっているわけでありますから、疑問があるというのは、ちょっと私にはわからないんです。

岡田委員 私がそういうふうに思う理由の一つは、もし米国等の行う自衛権の行使が範囲を逸脱したという場合に、それは当然我が国としては、この法律に基づく協力支援活動を中止しなきゃいけないと思うんですね。しかし、その中止のための根拠規定が私はないように思うのですね、この法律の中に。だから、そういうのは頭から想定していないということになるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょう。

福田国務大臣 この法案の趣旨に反するというか、逸脱するということになれば中止するということはあり得るわけですけれども、そのやり方というか、それはそういうときに自主的に判断して中止するわけでございますから、その中止についてのいろいろなルールをつくっているわけではありません。そういうふうに自主的に判断して決めることだと思います。

岡田委員 これ以上この話はいたしませんが、もちろん自主的に判断する、主体的に判断をして日本国政府としては決めるということですが、ほかのところについては、例えば地区の指定のところなどは、規定がちゃんと法律上書いてあるわけですね。実施区域の変更ですね。実施区域の全部または一部がこの法律あるいは基本計画に定められた要件を満たさないものとなったときには、速やかにその指定を変更し、活動を中断しなければいけない、こういう規定があります。しかし、その肝心かなめのもとの行動が、自衛権の行使が正当でないという場合には、こういう規定を置かれていませんから、私はできないんじゃないかと思ってるんですね。いかがでしょう。

津野政府特別補佐人 お答えいたしますと、この法律におきまして、これは第四条で基本計画を定めることにしてございます。それで、その基本計画の変更というのが書いてございまして、これは「第一項の規定は、基本計画の変更について準用する。」ということで、基本計画は変更することができるようになっております。

 したがいまして、例えば、これを基本計画の中に、これは二つ、我が国はこのためにするいろんなことをやることができる。一つは、いわゆる米国等に対する支援協力活動ですね。それからもう一つは、難民の国際的な人道的な措置。そういった二つあるんですが、両方とも基本計画の中に入ってまいりますから、その支援活動の方についてはやめる、残りは残っているというようなケースもございますので、基本計画を変更することによって手続自身は全くできないことはないということでございます。

岡田委員 全くできないことはないというのは、かなり苦しい法制局長官としての御答弁だと思うんですが、私は、先ほど言いましたように、法律に書いておくことがベストだというふうに思います。もしそうでない場合というのを議論するのはちょっと早過ぎるかもしれませんが、例えば基本計画の中で対応措置に関する基本方針というものを書くことになっていますね。そこにそういうことを、先ほど言いました国際法上認められた、何といいますか、ルールのもとでの自衛権の行使に対する支援活動であるということをこの基本方針の中に書いておくということは、私は少なくとも必要なことだというふうに思っております。

 いずれにしましても、やや話が技術的になりましたのでこの辺にさせていただきたいと思いますが、まだ少しそういったことについて詰めていく必要があるんじゃないか、そんなふうに思っているところであります。

 それでは、次に参りたいと思いますが、この法律の中で具体的な話を幾つか取り上げたいと思いますが、まず、時限立法にしているということについて御質問したいと思います。

 この法律を時限立法とした、つまり原則的には二年で効力を失う、しかし、必要があるときには別の法律で二年以内の効力を延長できる、こういう仕組みになっておりますが、なぜこういう形で時限立法という形をとられたのか、お答えいただきたいと思います、総理。

小泉内閣総理大臣 この九月十一日に発生したテロ事件に限定しているんだから期限を区切ってもいいのではないかという、いろいろな意見に配慮したわけであります。

岡田委員 事件に限っているのであれば、むしろ期限を切らなくてもいいというのが普通の考え方だと思いますが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 そういう考えも十分理解できます。

岡田委員 何となく質問する意欲がなくなるわけですが、ただ、私は、この時限にしたことは評価すべきだというふうに思っています。与党間のいろいろな交渉の中で二年ということになりましたが、私どもは一年ということを言っているんですが、いずれにしても、こういう時限をつけたことは評価されるべきだ。

 それはなぜかというと、やはりこの法律は、今までの考え方からすると、もちろん憲法の枠の中でやっていることではありますが、我が国の自衛隊を非常に限られた場合しか海外に送らないという考え方からすると、かなり大きく踏み出したものであることは間違いがないということだと思います。

 総理が何度も説明されているように、武力行使は行わないという、そのことで憲法上の制約はもちろん乗り越えているわけですけれども、しかし、あれだけ議論したPKO、そして周辺事態法。周辺事態法は、日本周辺、日本自身の安全に重大な影響があるという限定がついていましたが、今回は、かなり遠くまで自衛隊を、武力集団である自衛隊を出す、実力集団である自衛隊を出すということですから、本来であればもう少し冷静な議論が、時間をかけて、一年、二年かけて議論すべき話だったのだろうと思うのですね。

 例えば、将来的ないろいろな議論としては、我々は周辺事態法をつくりました、周辺事態法のときにいろいろな議論をいたしましたが、周辺事態、日本の平和と安全に重大な影響を及ぼす事態ということに限定をしてああいう法律をつくりました。しかし、我々は武力行使を行わないわけですから、憲法上は、もっと幅広く、例えば米軍に対する支援活動をするということも法律はできるわけですね、同じ考え方であれば。日本周辺じゃなくて、アジア太平洋全体に、日米同盟に基づいて、あるいは日米同盟、安保条約は超えるかもしれませんが、自衛隊が後方支援していく。あるいは、世界全体というのもあるかもしれません。いろいろな議論があり得ると思うのです。そういう議論をきちんとするには、やはり一年、二年、私は時間をかけなきゃいけないと思うのです。

 しかし、今回はその時間がない、そういう中で急いでつくった法律ですから、いろいろな意味で安全を見ておかなきゃいけない。その安全の一つが今回のこの二年、我々は一年と言っていますが、その時限立法だ、そういうふうに考えるわけですが、そういう認識でいいのでしょうか。いかがでしょう。

小泉内閣総理大臣 今のような認識も、私は十分理解できます。

岡田委員 どうも総理はこの時限立法を余りお好きじゃないのじゃないかという、聞いてきてそういう感じを受けますが、私は非常に評価をしているのですけれども。

 いずれにしましても、民主党としては、今言ったような、緊急に必要な法律で、基本的な議論を少し横に置いてやっている話でありますので、そういう意味で期限を切ることは重要である、必要である、それは二年というよりはむしろ一年じゃないか、そんなふうに私どもは考えておりますので、そのことを申し上げておきたいというふうに思います。

 次に、国会承認の問題について御質問したいと思います。

 まず、ちょっと事実関係を確認しておきますが、この国会承認というのは、我々、非常に簡単に基本計画そのものの国会承認であるかのように議論しておりますが、より正確に言うと、周辺事態法においては、基本計画に基づく対応措置の実施に対する国会の承認、こういうことになっておりますので、私どもも、この法律において同じように国会承認を必要とすべきだ、こういうふうに言っておりますが、それは周辺事態法と同じ仕組みを考えておりますので、正確に申し上げれば、基本計画そのものに対する承認ということではなくて、その対応措置の実施に対する承認である、そのことをまず申し上げておきたいと思います。

 そこで、総理は、きのうもいろいろな議論の中で、国会承認は必要ないということをおっしゃいました。その中で、今の政府というのは選挙で選ばれてきているのだ、だから、そこで実際の基本計画をつくるのであれば別に国会で承認を得る必要はないのだ、こういう趣旨の答弁をされたわけですが、それは一日たっても同じようなお考えですか。

小泉内閣総理大臣 これは、政府を信用する、信用しないの問題にもかかわってきますし、時限という問題もあるし、この法案の目的という、いろいろな問題がかかわってくると思いますが、まず、基本計画というのははっきり枠がはまっているわけであります、この法案の趣旨から。武力行使はしないとか地域とか戦闘行為に参加しないとか、そういう基本計画を、この国会の議論を踏まえて極めて限定された中で、憲法の範囲内で基本計画を立てるわけでありますので、そういう点については、私は、政府というものも裁量権を持っていいのではないかと。

 国会の権利もあります。しかし、政府としての行政権、判断、しかも時限立法、二年ですから。今の日本の政府というのは極めて民主的な手続で選ばれているわけですから、私はそういう点においては、政府を、どうしてもやることが信用できないという方は別ですが、信用できないのだったら次の選挙で倒してやろうという声も出てくるでしょうし、今の政府において国民が圧倒的に反対するようなことをやるとは思わないと。与党もあるし、野党もあるし、御議論を積み重ねているのですから、その中での行政裁量権、その程度は与えてもいいのではないかと私は思っております。

岡田委員 私は、今の総理のお話に対して異論があります。きのう安住議員もいろいろ申し上げたわけですが、別の角度で申し上げますと、それじゃ、もし政府がきちんとやっているから国会の承認というのは要らないと言うんなら、なぜ防衛出動や治安出動では国会承認を条件としているんでしょうか。お答えいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 今回は、全く新しい事態なんですよ。周辺事態法じゃ対処できない、PKO法では対処できない、治安出動では対処できない、全く新しい形のテロ攻撃なんです。そういう形での新法ですから、それはしかも時限立法ですから、私は、行政の裁量権というのはこの審議を踏まえて与えられてもいいのではないかと政府としては考えているのです。

 それを違うという意見を否定しようとは思いませんよ。承認を必要とするんだという意見もわかっていますけれども、そういう中で、あえて私ども政府としては、政府の裁量権を与えてくれてもいいんじゃないかということを言っているわけです。

岡田委員 周辺事態法のときも、これも各党の協議の中で修正で国会承認というのが入りました。あのときも申し上げたことでありますけれども、やはり私は、基本はシビリアンコントロール。シビリアンコントロールと言うときに、政府によるコントロールもありますけれども、国会によるコントロールというのも重要なものについてはある。何が重要かといえば、やはり防衛出動にしろ、治安出動にしろ、PKOにしろ、あるいは周辺事態法にしろ、実力集団である自衛隊を動かすときには基本的に国会のコントロールというのをかみ合わせているという、これは我が国の基本的考え方だと思うのですね。いかがでしょうか。

福田国務大臣 委員のおっしゃることはよくわかります、わかりますけれども、今回のこの法案は、米国の多発テロ、これに対応するという、こういう非常に限定的な特別措置法であるということでございまして、この対応措置の必要がなくなれば廃止をするということが前提になっているのです。

 また、実行上、この防衛出動とか周辺事態についても国会承認が求められるのはいずれもその実施についてでございまして、今回の法案の対応措置の多様性、複雑性、流動性の観点からしますと、具体的な措置は行政府の責任において迅速になされることが、これが実際的であるということが一つあります。

 これは、非常に限定的な立法措置であるということでありますけれども、法案成立後は直ちに機動的に対応できるようにしていただきたい、こういうこともございます。基本方針を含む基本計画は、これは国会報告をするというようなこともございますし、この法案どおり御理解いただければと思っております。

岡田委員 周辺事態法でも、先ほど言いましたように、計画そのものじゃなくて、それに対する対応措置が承認にかかわらしめられているということですから、そこは同じなんですね。

 私は、余りこの問題を細かくやるつもりはありませんけれども、シビリアンコントロール、つまり自衛隊という実力集団を動かすときには、基本的には慎重に判断しなきゃいけないと。それは、慎重にという意味は、政府もそうであるけれども、やはり国会ということもかみ合わせるというのが基本的に我が国の法制の今までの例であるということを申し上げておきたいと思います。

 これに関してもう一つだけ申し上げさせていただくと、例えば、十月九日の参議院の予算委員会において、公明党の山口那津男議員が、与党ですけれども、こういうふうに最後言っておられるのですね。国会がどのような関与をすべきかということについてはまだ議論の余地があっていい、与党からもそういう意見が出ているということであります。我々もそう思っています。

 そういう中で、ここはもう一度しっかり考えていただきたい、そういうふうに思うのですが、坂口先生、済みません、今申し上げたのは、公明党の各質疑者、質問者の中で国会承認に対して積極的なお考えをお持ちの方が実はかなり多いのじゃないかという印象を私は受けております。先ほど言いました参議院の予算委員会において山口那津男議員も、国会がどのような関与をすべきかということについてはまだ議論の余地があっていい、総理が相当答弁された後もそう言って食い下がっておられるわけですね。

 考えてみれば、周辺事態法のときにも、公明党は国会承認を入れるべきだということで頑張られた。我々と一緒に頑張られたわけです。もっとさかのぼれば、PKOのときは当時の野党はみんなそれを主張したわけですね。そういうことですから、私は、これは公明党が頑張れば、我々も一緒に、協力しますから、十分国会承認ということになり得る話だと思いますが、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 突然の御指名でございますが、私は今、公明党を代表してその意見を述べる立場にはありません。小泉内閣の一員としているわけでございますから、小泉総理と寸分のすき間もないというのが現在の立場でございますけれども、しかし、先ほどからずっと岡田議員の御発言をいろいろ聞かせていただいておりまして、非常に親近感を持ちながら聞かせていただいておるのも事実でございます。

岡田委員 今の親近感というのは、同じ三重県出身だからということではなくて、中身で親近感を持っていただいているということを期待しておきたいと思います。

 それでは次に、任務の場所的な範囲についてお聞きしたいと思っています。

 ここは、問題はパキスタンです。パキスタンに行くのかどうかということですね。その件に関して、私は昨日の外務副大臣の御発言というのは非常に重要だと思います。

 ここであえて繰り返させていただきますが、パキスタンから帰ってこられて、内情は非常に複雑である、大統領は国運をかけてタリバンとの断絶を決断した、そのことの国内的な影響はあるだろう、民族も複雑だ、大変な騒擾状態が起きる可能性がある、今は平穏だがあすは何が起こるかわからないというふうに述べられました。

 田中大臣、この認識は共有しておられますでしょうか。

田中国務大臣 きのう、杉浦副大臣が今委員がおっしゃったような御報告をしたこともわかっております。

 そして、きのうのお昼に、休憩時間でございましたけれども、沼田大使のところに電話をかけました。ただ、そのときは、何が起こるかわからないというような、それは杉浦副大臣があのとき、いらしたときの個人的な印象かと思いますけれども、昨日の一番直近の大使からの報告では、きのうも申し上げましたけれども、今、日本で言っているような平穏とは違いますけれども、しばらく平穏な状態が続いているという報告を受けました。

岡田委員 今の外務大臣の御発言は、今は平穏だがあすは何が起こるかわからないという副大臣の答弁を否定されるわけですか。

田中国務大臣 もっと正確に申しますと、否定する、しないではなくて、きのうの言葉は副大臣の個人的な印象でいらっしゃるというふうに思います。今現在の報告は、全体として見ると、パキスタン情勢はコントロールされているというような表現でございます。

岡田委員 現在の話と、しかしあすは何が起こるかわからないという話は、これはちょっと違いますよね。あすは何が起こるかわからないというところは、外務大臣として副大臣の御発言を明快に否定されるんですか。

田中国務大臣 否定するしないとかそういうことではございませんで、今後のパキスタンの状況につきましては、まだ、もちろん予断を許さない部分もあると思いますし、どういう状況が起こるかわかりませんので、その推移につきましては、引き続き注意深く注目をしていかなければならないというふうにはもちろん理解しております。

岡田委員 大臣は今、まだとおっしゃったが、むしろこれからだというのが常識だと思うんですね。これから緊張感が高まっていく、そのことは私は外務大臣も否定できないだろうと思うんです。

 そこで私は、昨日の副大臣が、実際に現地を見てこられて、そして、今は平穏だがあすは何が起こるかわからないというふうにこの国会で答弁された、そのことのやはり私は意味は非常に重いと思うんですね。

 今回のこの法律の中で、こういう規定がありますね。防衛庁長官は、実施区域の全部または一部がこの法律または基本計画に定められた要件を満たさないものとなった場合には、速やかに、その指定を変更し、実施されている活動の中断を命じなきゃいけない。

 つまり、この法律で決めている、要件を満たさないというのは、基本的に、戦闘行為がない、一言で言えばそういうことだと思いますが、それがどうもきのうの杉浦副大臣の話を聞いていると、あす何が起こるかわからないという地域だったら、とても戦闘地域と一線を画したような、あるいは将来においてもそういうことは起こらないということは言えないんじゃないかというふうに思いますが、いかがでしょう。

中谷国務大臣 おっしゃるとおり、その活動をやるのかやらないかという点の判断につきましては、現実に戦闘行為が行われているかどうか、また、この期間においてその活動が行われるというふうに認めるかどうかということでございます。

岡田委員 だから、パキスタンは、きのうの発言を踏まえると、とても今自衛隊を出せるような状況にはないんじゃないかと聞いているわけです。

中谷国務大臣 まだパキスタンに自衛隊を派遣するということを決めたわけではございませんので、お答えしかねます。

岡田委員 この法律で今までと違う点は、公海上じゃなくて第三国まで広がりますよ、ここが一つの大きなポイントなんですね。憲法の禁ずる武力行使の関係からいっても、武力行使そのものじゃないかもしれないけれども、結果的にそれを侵してしまうような可能性がより高まっている、この法律は。だからこそ私は聞いているわけです。

 そして、今、じゃ第三国といいますけれども、ディエゴガルシアとパキスタン以外に具体的に何か話があるんですか。今我々は一般的な法律の話をしているのではなくて、この具体的な法律についての議論を、先ほど総理もおっしゃっているようにこの法律は具体的な法律ですから、それについての議論をしている。そういう中で、パキスタンに行くか行かないかはわからないからお答えできないというのは、私は答弁じゃないと思いますよ。もう少し明快に述べていただきたいと思います。

中谷国務大臣 仮にパキスタンに行くとしても、パキスタン政府の同意が必要でございますし、また、そのときの治安状況、いかなる態勢をもって政府が国内をコントロールするのか、また難民の状況はどうであるのか、そして諸外国の動きはどうであるのか、そういうふうな情報をすべて判断をして、派遣する場合には決定するわけでございまして、現状また将来の動向等につきましては、当然のことながら、十分情報収集をして注視しながら、やるのかやらないのか、その時点で基本計画を立てて実施されるというふうに考えております。

岡田委員 一年、二年先の話をしているんじゃないんですね。この法律が成立をすればもうすぐ行動に移るわけでしょう。だからこそ、今急いで審議をされているわけですよね。

 私は、まず申し上げておきますが、じゃ第三国に行くなとかあるいはパキスタンに行くな、それを法律論として言っているんじゃないんです。それはまた、パキスタンでも将来いろいろな状況が変わり得るかもしれない、変化はあるだろう。だから、将来的にパキスタンに行くべきでないということを言っているんじゃないんです。しかし、当面、実施計画をつくるときに、やはりパキスタンには行かないということを前提にした実施計画にすべきじゃないか、そういうふうに申し上げているわけですが、いかがでしょうか。

中谷国務大臣 将来の話ですから、今の時点で私は責任を持って言うことはできません。例えば、米国の対応次第によってはパキスタン国内の情勢が大いに変化するわけでありまして、岡田委員の言うとおり、安全かつ効果的な活動が実施し得るような条件もできるかもしれませんし、今以上に混乱して、非常にそれが実施できないような状況にあるかもしれません。これは、米国を初め諸外国の動向をよく見きわめる必要があるというふうに思います。

岡田委員 さっき長官が同意が必要だからとおっしゃったのは、私はまず納得できないということを申し上げておきます。パキスタン政府が同意すればやみくもに出していく、そういうことはまず認められません。まず日本が主体的に必要性とそして安全性を見きわめて判断する話だ、そういうことだと思うんですね。もちろん同意というのは解除条件かもしれませんが、しかし基本的には我々が決めることだ。

 そういう中で、もちろん、状況がいろいろ変われば、私は先ほど申し上げましたように絶対にだめだと言うつもりはありませんが、今の、あしたはどうなるかわからないというふうな状況を踏まえれば、今の時点ではパキスタンには出せませんねというふうに申し上げているんです。

 もう一度答弁いただきたいと思います。

中谷国務大臣 まず、この活動を実施するかどうかにつきましては、政府が基本計画をつくって今後のことを決めるわけでございますので、私も私の所感は申し上げますけれども、政府全体の判断によるというふうに思っております。

 それから、パキスタンの同意に関しましては、この法律におきましても、実際に実施する活動地域を相手国と協議して決めるというふうになっておりまして、あらかじめ我が国がこういう考えがあるということを相手国に示して、それに対する同意をいただけるということでございまして、非常に重要な意味を持つというふうに思います。

杉浦副大臣 パキスタンの状況について、私の発言がいささか誤解されている部分があるんじゃないかと思うのでございますが、パキスタンの状況は予断を許さない部分があるという意味で申し上げたわけでございます、非常に複雑でございますが。

 ただ、今のところは民間航空機も全く普通のとおり飛んでおりますし、またムシャラフ大統領を初め軍関係者も実は十分コントロールされていると、一部テロ分子と通じている勢力がおりますが、ただそれはごく一部であって、十分コントロールしているというふうに当局は言っておられますし、事態は現在のところ平穏に推移している、ただし、予断を許さない状況である、国内状況であることは間違いないという趣旨で申し上げたわけでございますので、御理解いただきたいと思います。

岡田委員 きのうの御発言とは大分違うなというふうに思いますし、民間航空機も、正常にと言いますが、欠航が相次いでいるんじゃないんですか、今は。

 ですから、これ以上申し上げませんが、総理、最後に、もちろんこれから状況がどう変わるかによって、それは、基本計画を実際につくるとき、あるいは自衛隊を出すとき、そのときの判断に最後はかかるんだと思いますが、今の状況を見ると、相当慎重にパキスタンについては考えなきゃいけない、私、そういうふうに思いますが、いかがでしょう。

小泉内閣総理大臣 この法律は地域を限定しておりません。そういう法律を考えて、今の時点で、この地域には行かない、この地域には行くということは特定できないということを御理解いただきたいと思うのであります。その状況を見て判断するしかない。

岡田委員 非常に官僚のような御答弁なんですけれども、この法律が具体的なことを対象にしておって、そして実際の対象、第三国といっても、それは先ほど言いましたように、今のところ想定されるのはごく限られているということをもう一度申し上げておきたいと思います。この点はなお議論させていただきたいと思います。

 それから、次に参りますが、武器弾薬の輸送について。

 きのうの総理の御答弁を聞いておりまして、私、まず事実認識がちょっと違っているんじゃないかというところがありましたので御質問申し上げますが、総理は、武器といってもいろいろあるんだという中で、ヘルメットとかトラックとか、こういうふうにおっしゃいました。そういうヘルメットやトラックもここで言う武器弾薬に当たるというふうにお考えですか。

小泉内閣総理大臣 今回のこの法案については、今までの武器三原則とは違った解釈をしておりますが、武器弾薬とは何かという議論をし出しますと、防弾チョッキが武器に当たるのかどうかとか、あるいは銃にしても組み立て製の銃があります、この部分は武器なのかどうなのかとか、細かい技術論に入っちゃうんですよ。

 そういうことは余りにも技術的に過ぎるし、それよりも、私は、大枠として、戦争に行くためではない、武力行使は行わない、戦闘行為には参加しない、そういう中での、隊員だけの自己保全じゃなくて周りの同僚、同じ部隊で活躍している、そういう人たちが万が一危難に遭った場合は救助できるような武器というのは限られているんじゃないか、その辺は常識の判断でできるのではないかということを言ったわけです。

 常識というとけしからぬと言う人がいますけれども、大枠がもう決まっているんですから、そういう中で武器はどれかと言い出すと切りがない。どこまで避難していいのか、さっき言ったようにメートルで、十メートル、二十メートル、五十メートル、百メートルあるうち、そこをやり出すと余りにも細かい議論になって、それは武器といえば、確かに刀も武器ですよね、火器はいいけれども、物資を運ぶ場合に安全な武器もあるんです、知らない人がやったら爆発する武器もあるかもしれない。これをやり出すと切りがないんですよ。

 そういう議論はもうお互い常識の範囲でできるのではないか、そこまで技術的にやってどうかなということをきのうの答弁で言ったわけであります。

岡田委員 恐らく総理はやや誤解されていると思うのですが、武器輸出三原則における武器というのは、確かにかなり幅広いもので、厳格に規制をしておりますけれども、自衛隊法上の武器については、既に政府見解が示されているわけですね。その政府見解というのは、もちろん法律に書いてあるわけではありませんけれども、「火器、火薬類、刀剣類その他直接人を殺傷し、又は武力闘争の手段として物を破壊することを目的とする機械、器具、装置等」ということになっていまして、そういう意味では、そんなに細かい、紛れたような話にはならないと私は思うのですよ。もし必要があれば、今のこの政府見解を法律の中に定義として書いてもいいわけですね。

 私は、こういうものを運ぶということはやはり避けるべきだ、こういうふうに思うんです。

 総理のそのときの最大の反論の根拠が、いや、紛れてよくわからないという話だったものですから、今申し上げたように、はっきり分けられますよということを申し上げた上で、それでもなお、この武器弾薬の輸送というのはお認めになるんですかということを改めてお聞きしたいと思います。

福田国務大臣 現時点においては、米国初めこの活動に参加している諸外国の軍隊などが今後どういうオペレーションをするかわからぬ、こういうことでございますので、日本側の対応措置に対するどういうニーズが発生するか、これはもちろんわからないわけでございます。しかし、武器弾薬の輸送、これは周安法の支援内容にも含まれておることでございますし、また、諸外国のさまざまなこん包方式というものがございまして、このこん包方式から推測するに、物資を一々確認するという作業、これは大変なことだと思うんです。

 一つ具体的な例で申し上げますと、例えば、百個コンテナがあります、そのうち十個が武器弾薬が入っている、こういうケースを想定した場合に、日本の船でこれを輸送しようといった場合に、武器弾薬はだめで、ほかのものはよろしいということになりますと、船を二隻調達しなければいけない、こういうことになるわけですね。ですから、そういうことが果たして許されるかどうか。また、武器弾薬は日本は運ばないということになれば、ほかの国に頼まなければいけない、こういう必要性も生じてくるわけでございます。

 そういったようなことがありますので、なかなかこれは、これを分けて輸送するというのは、こういう活動におけるオペレーションにおいては非常に困難ではなかろうかということであります。

岡田委員 とても技術的な御説明だったと思うんですけれども、やはり私は、ここは一つはメッセージ性が非常に大事だと思うんですね。つまり、日本は武器弾薬の輸送まではしませんということが、私は、日本の支援活動について、ある意味では理解をしながらも、しかしやはり一〇〇%納得できないでいる中東諸国、複雑な気持ちで見ている中東諸国に対して、いや、日本は武器弾薬の輸送はしないんですよ、そこではっきり線を引きましたよということは、私は、きちんとしたメッセージとして伝わると。

 今まで日本が、この委員会の場でもるるありましたように、中東に対してアメリカやヨーロッパとは違うスタンスにある。パレスチナにも随分経済協力もしてきた、イランにもしてきた、そういう日本としての、外交上今まで多大の税金もつぎ込みながら、努力もつぎ込みながら、もちろん外交官も本当に頑張りながら築き上げてきたこの状況を、こんなことで壊すのはもったいないと私は思うんですよ。

 だから、ここはしっかりメッセージを送るためにも、武器弾薬は運ばないということにすべきじゃありませんか。

福田国務大臣 武器弾薬の輸送、これをしないということになりますと、この輸送業務全体についての日本の信頼度というものが落ちるんではないかというふうに思っております。

 ですから、やはり効果的な輸送というものを実現するために、ぜひこのことは活動の中に入れておいていただかなければいけない。しかし、このことについては、委員の御指摘もございます、私もそう考えますが、慎重な配慮をもってやらなければいけないと考えております。

中谷国務大臣 今官房長官が言われたことに補足をいたしますけれども、どういう実害があるかという一例として、数年前にPKOでモザンビークで輸送調整支援をいたしました。そのときに飛行場にいて、国連の飛行機がやってきたときに、各国が忙しいさなかにその荷物を一生懸命おろしているんですね。そこで、その空港にいた日本のPKO要員が、ふだんからつき合っているから、忙しいからちょっと手伝ってくれと言われたんですけれども、いえいえ、日本は武器弾薬は運べませんというようなことで、中に何が入っているかわかりませんけれども、そういう一般の物資をみんな一生懸命汗水垂らしながらやっているさなかに平然と見ているしかなかったというようなことで、非常に心苦しい思いがしたというようなことが言われました。

 つまり、そういう、武器弾薬はだめであるということでありますと、各国が一般的に一生懸命荷物を運んでいる業務すら日本が現場においてできないというような実害もございますので、その点も勘案されて、実際にその地域に行った隊員がどのような苦労をするのか、こういう点も考えながら法案の御審議をいただきたいというふうに思います。

岡田委員 そういうたまたま起きた具体的なことをもって御説明になるのは、私は大臣が御説明になることじゃないと思いますよ。

 先ほど言いましたように、日本の外交のその築き上げてきたものをこういうことで壊していいんですかということが第一点。

 もう一つ申し上げると、憲法の禁ずる武力行使との関係。もちろん、武器を輸送することは周辺事態法で認められておりますが、したがって、そこで一つの整理をしているわけですけれども、しかし今回の場合は、公海上じゃなくて第三国まで行くという、そういう中でより憲法との抵触のおそれが高まる、そのことを私は憲法に違反するということを言うつもりはありませんが、しかし、急いでつくる法律ですから、少し安全を見た形にしておくことが私は必要なことじゃないか、そういう観点で申し上げております。

 官房長官、どうぞ。

福田国務大臣 私、今、武器弾薬の輸送ということでもって、ここに集中して、そこだけ考えてしまうといろいろ疑念が生じるとかいったようなこともあるかもしれぬけれども、やはりこれは原点に立ち返って考えてみる必要があるんじゃないかと思います。

 それは何かと申しますと、やはりこれはテロの根絶ということじゃないかと思います。テロの根絶のために諸外国は協力しているわけですね。そこに日本が有効な協力をするということであり、そしてまた、この協力は武力の行使に当たらない協力である、そういうように考えるべきではないかと私は思っておりますので、つけ加えさせていただきたいと思います。

岡田委員 いろいろな御説明がありますが、いずれも説得力があるとは思えませんし、一方では、慎重に考える、慎重に考えるということは、実際はやらないということなのかなと思いますが、それなら今までの説明は全部破綻するわけですね。だから、私はやはり、慎重に考えるとおっしゃるんなら法律上できないことにしてしまうべきだ、そういうふうに重ねて申し上げておきたいと思います。

 なお、昨日、河合委員の質疑の中でも、河合委員も、総理のいろいろな御説明があったけれども、この点につきましては、この国会の特別委員会の審議の中でさらに国民の理解を得るための議論が必要であると考えますというふうに述べられています。つまり、与党の中でもそういう議論があるんだ、それだけ微妙な問題なんだということをもう一度申し上げて、ここはぜひ法案修正をして、武器弾薬の輸送はしない、こういう形にしていただきたいと申し上げておきたいと思います。

 それでは、次に武器の使用基準に参りたいと思います。武器使用の問題は、総理はきのう、常識の範囲で判断するというようなことをおっしゃいましたが、若干、私は新聞の書き方も総理の御発言を誤解しているんじゃないのかなというふうに思うところもあります。

 つまり、これは、憲法の禁ずる武力行使に当たらない武器使用というものをどこで線を引くかという、いわば憲法問題なんですね。

 総理は、この法律を前提として武力行使しませんということを何度もおっしゃっています。その具体的な、私は、ある意味では最も重要な部分がこの武器使用の問題じゃないかというふうに思うんですね。そういう意味で、ルールをきちんとしておくということは大事なことだ、別に常識で判断していい問題じゃない、そういうふうに思いますが、私は、総理の発言も私と同じような趣旨だったようにもきのう聞いていて思ったんですけれども、もう一度御発言いただけますでしょうか。

小泉内閣総理大臣 そうなんです、実際は。

 誤解されている面もあるんですが、まず武力行使しない、戦争に行くんじゃない、そして戦闘行為にも参加しない、そういう中にあって、自己保全的な、周りの一緒に働いている、作業している人たちに危難があった場合に黙って見ているわけにいかないんじゃないだろうかという中での武器使用は何かということになって、それをやりとりすると余りにも技術的になるじゃないかと。そういうことは、もう今までに何回もこの議論、過去やってきたわけで、それは常識の範囲内でできるのではないかなということを言ったまでであって、余り技術論に陥ると、この本来の法律の趣旨に対して大きなところが見えなくなってくるんじゃないか、政治家同士の議論としていかがなものかということを言っているわけであります。

岡田委員 私は、今回の場合に、例えば難民がいる、その難民を自衛隊が管理しているというか、自衛隊の管理のもとで難民がいるというときに、その難民が攻撃されたときに、自衛隊自身が攻撃されてないからといってそれをみすみす放置するということは、我々の常識からいうと確かにおかしなことですね。そのことは私はそう思います。

 しかし、だからといって、常識だから、必要だからということのみを考えてきちんとした線引きができないということになると、それはまた憲法の禁ずる武力行使をいつの間にか次第次第に侵してしまうということになる。だから、そういうときには、私はむしろ、もしきちんとした線引きができないんであれば、線引きができるようなところまでしか自衛隊は活動しないということにする、こういうことだと思うんですね。

 問題は、今回のこの法律の規定が、線引きとしてきちんとしているかどうか、こういう問題だと思います。

 これは法制局にお聞きした方がいいかもしれませんけれども、私は、当選してそのすぐ後にあったPKO国会を思い出すわけですけれども、あのPKO法のときの大きな争点として、この武器使用と武力行使の問題がありました。

 平成三年九月二十七日の国際平和特別委員会理事会提出の政府見解の中でこういうふうに言っているんですね。憲法の禁ずる武力の行使に当たらない武器使用があるんだ、そして、それは、自己または自己とともに現場に所在する要員の生命、身体を守ることは、いわば自己保存のための自然権的権利であって、武力の行使に当たらないと。

 今までの答弁をお聞きしていると、基本的にこの考え方を今回も踏襲している、こういう理解でよろしいんでしょうか、法制局。

津野政府特別補佐人 今先生のおっしゃったとおりでございますが、昨日、この前提条件の若干御説明が足りなかったかもしれませんけれども、考え方としては従来どおりの考えでございます。

岡田委員 ちょっとわかりにくいのは、その自然権的権利というところなんですね。

 自然権というのは、人間固有のもの、固有の権利。例えば自分の命を守る、それはいかに国家といえどもその権利を奪うことはできない、そういう意味で自然権というお言葉を使っているんだと思うんですが。自分が攻撃されたときに武器を使って自分を守る、これが自然権だ、これはわかります。同じように、国家が攻撃されたときに自衛権を発動して守る、個別的自衛権を発動する、これも自然権、こういう説明を今までされていますね。

 それでは、難民が攻撃されたときにその難民を救うために武器を使うということが、これは自分を守るために直接つながらないとしたら自然権と言えないんじゃないかと思うんですが、ここはどういうふうに説明をされているんでしょうか。

    〔委員長退席、久間委員長代理着席〕

津野政府特別補佐人 お答えいたします。

 防護、いわゆる今申しました、だれを、どういう人を対象として自然権として武器を使用することができるかということでございますけれども、それは、一つの考え方としまして、いわゆる自己保存のための自然権的な権利として行使するのは、まず自分、自己がございます。それから、第二にございますのは、例えば自己とともに現場に所在している人、そういう人たちも当然、当然といいますか、自己と一緒に、自己の危険を一緒に共有しているわけでございますので、自己に対する危険と同様な危険に直面しておりますので、そういう人たちについても防護するということは、これは従来から、自己とそれから自己とともにその現場にある自衛官、そういうようなことで従来から入ってきているわけでございます。

 それからもう一つは、その場合、現場に入っている人たちの中でも、やはり自衛官の職務、そういったものと密接に関係がある、そういった関係がある人たちが、守る必要があるという部分がございます。そういう人たちを、いわゆる管理のもとに入ったというようなことで、今回対象にしているということでございます。

岡田委員 今の説明で、同僚の自衛官が危険を共有しているというところまでは私はわかりましたが、最後の一番肝心な、今回の法律で初めて認めた概念に対する御説明がよくわからなかったんです、実は。もう一度お答えいただけますか。

津野政府特別補佐人 この、先ほどのにつけ加えましたのは、不測の攻撃を受けた場合に、当該自衛官とともに行動をして対処せざるを得ない立場にあるというような自衛隊員以外の者が自衛官と一緒に共通の危険にさらされた場合に、その現場において、その生命、身体の安全の確保について自衛官の指示に従うことが期待される関係にある、そういうようなときにあるときは、その当該自衛官において、自己と一緒にその者の生命または身体を防護するために武器を使用する、そういうことは、なお、いわば自己保存のための自然権的権利の範疇に入るであろうということで整理をしているわけでございます。

岡田委員 ちょっと私、今の説明では納得できませんね。

 私はむしろ、ですから、今回のような難民等の場合というのは、自分自身の自然権じゃなくて、自衛官以外に、自分を、みずから守るすべを持たない人たちが日本の自衛隊の管理下にあるというときにそれを助けるということは、いわばヒューマニズムの視点から当然じゃないかというような論理立てができるんじゃないかと思うんですね。その方が常識にかなっていると思うんですよ。ですから、そういう形で御答弁をちょっと考えていただけないか。今の、申しわけないですが、法制局長官の御説明だと、私ちょっと納得できないです。

 ぜひここは、やや技術論になりますから、テレビの入っている場で余りすることもどうかと思いますのでこれでやめますが、ぜひ政府としての見解をしっかり煮詰めていただいて、そして平成三年九月のPKO法のときにも特別委員会の理事会に政府見解は提出されているわけですね、紙で。そういう形で政府の見解を、我々もわかるような論理的な見解をまとめていただいて、ぜひ提出をしていただきたい、こういうふうに思います。委員長、いかがでしょうか。

久間委員長代理 後ほど理事会で協議いたします。

岡田委員 それを見た上で、我々はこの新たな武器使用の拡大ということを認めるかどうかということを判断させていただきたいというふうに思います。

 それでは、時間も大分押してまいりましたが、個々の話はこのぐらいにさせていただいて、少し総論的な話をさせていただきたいと思います。

 私は、今回のこの法案は、これはこれで中身はこれから詰めなきゃいけませんが、基本的に新しい法律が必要だ、こういうふうに思っているということは何度も申し上げているわけです。しかし、今回の法案というのは、自衛権の行使、アメリカの個別的自衛権の行使、あるいはNATOの集団的自衛権の行使ということを前提にして組み立てられている法案だと思うんですけれども、本来、世界の平和を守っていくために、国連中心の集団的安全保障という考え方、それから各国の自衛権の発動という考え方、これはどういう関係にあるべきだ、総理はどういうふうにお考えでしょうか。

小泉内閣総理大臣 まず、国連中心、集団的自衛権が必要だという観点に立っても自衛権の確立が大事だと思います。その国、国が責任を果たす。自分たちは何にも力のある自衛隊なり軍隊なり組織を持ちませんよと他の国にお願いする前に、自分でできることはやります、できるだけの自分の体制をつくります、まずみずからの国はみずからで守るという意欲のない国にどうして他の国が援助の手を差し伸べるでしょうか。そこが必要なんです。他国が守ってくれるかどうか心配するよりも、まず自国のことは自分たちでやりますというこの姿勢を見て、初めて他国が援助の手を差し伸べると思うのであります。それが国連中心です。自分たちは何も用意していませんよ、何かあったらみんな一緒にお願いしますという態度でなく、そこをまずはっきりしておかなきゃなりません。その上で集団的自衛権、国連中心というのはあるのではないでしょうか。

 国連中心だったらば、まず自国はこれだけのことをやります、他国にもし危険があった場合に、世界の平和を守るためには自国はこれだけのことができます、しかし、自国に危険があった場合は、自分だけでできない場合は、自分は一生懸命やりますけれども他国もお願いしますというのが、私は集団的安全保障じゃないかと思います。その姿勢をはっきりして、自分のことはやりません、あとお願いしますというのだったら、まさに国際社会から信頼を失う、国際社会の中で名誉ある地位を占めることはできないと思います。

岡田委員 自分のことはまず自分できちんとやるべきだということは、それはそのとおりですね。しかし、国連憲章の理念といいますか、基本的な考え方は、どういう考え方に立っているのでしょうか。

 現実にどうかという問題はありますけれども、私は国連憲章そのものは、やはり国連中心の安全保障、悪いことをする国が出てきたらみんなでそれをやっつけるんだ、やっつけるんだという意味には武力行使も含めて最終的にはやりますよ、しかしそれができるまでの間は自分でまずやってください、そのことは認めますよと。そういう意味で、中心は、軸は国連中心の集団的安全保障、しかし、それまでの間のものとして、いわばサブとして、副として個別的自衛権、集団的自衛権の発動、こういう考え方に国連憲章自身は立っているのじゃありませんか。いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 正式に集団安全保障と自衛権については、これは今議員が言われたように、国連憲章第五十一条において「安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。」と規定されているわけです。

 そして、この規定は、自衛権の行使は集団安全保障が機能するまでの暫定的なものであると国連憲章が想定していることを示すものと考える、他方、集団安全保障の担い手として予定された憲章第四十二条及び第四十三条に基づく正規の国連軍がいまだ設立されていない、ここなんですよ。正規の国連軍はいまだ創設されていないのですよ、国連中心といっても。そこが問題なんです。

 あとのことはまたいろいろあれします。

岡田委員 まさしくそこなんですね。

 しかし、湾岸戦争のときは、これは正規の国連軍ではありませんけれども、国連憲章の例外としての多国籍軍ということを安保理で認めて多国籍軍を編成した、こういうことですね。ですから、正規じゃありませんが、それに準ずるような形で多国籍軍ができたと思うのですね。

 私は、もちろん、国連をつくったときの理想、これは大事だと思うのですね。総理おっしゃるように、しかし現実には動いていないじゃないか、それはそのとおりですよ。しかし、やはり基本的にはそういう考え方に立たないとだめだ。

 つまり、自衛権の行使というのは、最初の議論に戻りますが、正当な自衛権の行使をやっているうちはいいけれども、しかし、だれも侵略戦争をやると言って他国に武力侵入する国はないのであって、結局は、我が国も、かつても含めて自衛権の行使という名のもとに戦争が始まっている。だから、そういうことを防止するためにも、国連の枠組みをつくったというその理想というのは、私は絶対忘れてはいけないことだと思うのです。

 総理の答弁をお聞きしていると、そこがすっ飛んでしまって、何か、自衛権の行使というのは当然だから、これは当然であります、断固支持します、例えば今回のアメリカの武力行使に対しても断固支持するとおっしゃるけれども、私は、やはりそこに政治家として、本来であればこういうことは望ましくないんだ、認められてはいるけれども、一番いいのは国連中心でやっていくことなんだ、しかし、それは理想だけれども現実はなかなかそういかないんだという、いわば理想と現実の相克といいますか、政治家としてのそこに悩みとか、そういうものが少しはかいま見えた方が私はいいんじゃないかと思うんですが、総理を見ていると、やれ行けどんどんで、自衛権行使、自衛権行使だ。そこはいかがなんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 では、今、こういうテロが発生して、何もしないでテロが防止できるんでしょうか。そうじゃないでしょう。

 それで、今、アメリカが自衛権を行使して立ち上がって、国連でも安保理でも決議して認めているわけですよ。国際の平和と安全に対する脅威だと認めているわけです。そして立ち上がっている。これをアメリカ初め世界各国に日本が断固支持しないで、どうなるんですか。断固支持するのは行け行けどんどんだと言う人がいますけれども、断固支持しないで日本はどうなるんですか、この状況を見て。

 アメリカと同盟国でない国もアメリカを支持している。日米安全保障条約で同盟国で、日本がこういう事態を見て、ああ、断固支持しません、ちゅうちょします、ちょっと待ってくださいと言ってどうなるんですか。私は、断固支持するのは当然だと思いますね、今の国際社会がテロに立ち向かおうというときに。

 それを、行け行けどんどん、何々どんどん、何言っているのかわからないけれども、むしろ断固支持しない方が、日本政府、日本国民の信頼を国際社会で落とすことになると私は思っています。

    〔久間委員長代理退席、委員長着席〕

岡田委員 総理のお話を聞いていると、ほかの国もどんどん行っているから日本も乗りおくれちゃいけないというふうに聞こえますよね。私は、そういうものじゃなくて、日本として主体的に判断する話だ、そういうふうに思います。今まで、では従来我が国政府はどういう考え方をとってきたかということもやはり私は踏まえるべきだと思うのです。

 例えば、あのコソボのときに、我が国はそれに対して断固支持と言ったでしょうか。コソボに対するNATO軍の空爆に対して、我が国政府のそれに対するコメントは、やむを得ずとられた措置だと理解するという言い方です。それから、アフガニスタン、スーダンへのテロ報復攻撃に対して、十分に理解するという言い方ですね。

 支持するということを言ったことも過去にあります。しかし、そこは非常に注意深く、支持という言葉をなるべく使わないように、理解という表現にとどめてきたのは、やはりこの国連憲章の考え方があるからなんです。もし各国が勝手に自衛権の行使をどんどんし出したら、国連なんて要らなくなりますよ。

 一つ一つの事件を見るんじゃなくて、全体を見たときのバランスの中で慎重に考えてきたということだと思うのですが、私は、総理を見ていると、そういう思慮深さが全然うかがえないものですから、そして、ほかの国もどんどん行くから日本も行かなきゃいけないんだ、そういう強迫観念に駆られて行動しておられるように見えるものですから申し上げているわけですが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 それは、過去、アメリカの軍事行動に対して強く支持するということを表明しなかった場合もあります。今回は、主体的に日本が判断して、断固支持する、毅然として支持するということを言ったわけですよ、主体的に。

 今この時期に、世界が立ち向かって、アメリカが自衛権を行使してテロ撲滅のときに立ち上がっている、そのときに、日本は主体的に、今までそういう表明はなかったかもしれないけれども、今こそ断固支持するべきときだと判断したからそういう表現を使ったわけであります。

岡田委員 私は、各国の首脳もアメリカに対して無条件でどんどん武力行使をしろと言っているんじゃないと思うのです。そこは、アメリカの国の中にも、政府の中にも、当然抑制的に考えていかなきゃいけないという考え方は、今や私はアメリカの政府の中でも主流だと思いますし、各国の首脳もそういうことを述べている。

 ですから、私は、総理が日米首脳会談で行かれるときに、こういうふうに言うべきだということをテレビで申し上げたのですけれども、やはり武力行使というのは、今回の事件に対してのその部分はわかるけれども、それをきっかけにして、例えば、一時アメリカが言っていたように、テロのネットワークを破壊するためにどんどん武力行使していくんだとか、そういう形でたがが外れたようなやり方は避けるべきだ、もっと思慮深く行動すべきだということを、私は、同盟国の一員として、総理がブッシュ大統領にお会いになったときに言うべきだったんじゃないんですか、あるいは、これからでも言うべきなんじゃないんですか。いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 これは、ブッシュ大統領の会談におきましても、これはテロとの闘いである、アラブとの闘いではないし、イスラムとの闘いではない。極めて慎重なのはアメリカであります。何しろ、アメリカ自身の国民、アメリカの青年の血を流すかもしれない覚悟がなきゃ、武力行使できないんですから。

 日本は武力行使しません。今武力行使しているのはアメリカとイギリスでしょう。NATOは、これからどういう態度をとるかわかりませんけれども、集団自衛権の行使ですから。日本は、支持するけれども武力行使しないと言っているんです。それははっきりブッシュ大統領に言いました。戦闘行為にも参加しない、それ以外の分野で支援すると言っているんです。行け行けどんどんだの、戦争やれやれなんて一言も言っていませんよ。

 むしろ、日本以上に慎重なのはアメリカだと思いますよ。ブッシュ大統領は、冷静に、自国の青年の血を流すかもしれないという行為に対しては、アメリカ大統領だって、大変私は慎重だと思います、好きこのんで行け行けどんどんなんという態度はとらないと思いますよ。極めて限定的に、抑制的に、冷静に、忍耐強く対応しなきゃならないということを、ブッシュ大統領の口から言っていますから、私とのじかの会談で。

 私は、そういう、あらゆる手段を講じてテロを撲滅するという考えはわかるけれども、日本政府は武力行使はいたしません、戦闘行為には参加しません、その中でできるだけの支援をやる、アメリカがこのテロ撲滅のために立ち上がった、その態度は強く支持しますということを言っているんです。しかし、日本は武力行使しませんということを断っております。それが、行け行けどんどん、戦争やれやれなんてとられるのは、まことに心外であります。

岡田委員 私は、日本が武力行使する、しないの話をしているんじゃなくて、米国の同盟国として、米国に対してきちんと見識ある態度をとるべきだということを言っているわけです。

 先ほどから総理は、テロと闘う、テロとの闘いだとおっしゃいます。それはそのとおりなんですが、例えば、繰り返しになりますが、米国が武力行使するのは、今回の、このアメリカ合衆国に対して九月十一日に発生したテロ攻撃に対する自衛権の発動としての武力行使であって、それを超えて、一般的なテロ撲滅のためには、それは自衛権の発動ではなくて、国連全体の中の枠組みで解決していくという姿勢が私は重要だと思うんですね。そのことについて明快に述べるべきじゃないかということを申し上げているわけです。

 何かおっしゃることはありますでしょうか。

小泉内閣総理大臣 なかなか理解してもらえないので困りますが、そういう趣旨のことを私は述べていると思っていますが。

岡田委員 それでは最後に、多少時間がまだありますが、もう一つだけ申し上げておきたいと思います。

 総理は、法律に基づいていろいろなことをやっていくという、法治主義といいますか、法による支配というか、そういうことについてどうお考えなのかな、ちょっと私不安に思うことがあります。特に自衛隊という一つの実力集団について、さっきのシビリアンコントロールと同時に、法律によってこれの動きを決めていくということは非常に大事なことだと思うのですね。

 そういう視点で見たときに、例えば、一時議論されたイージス艦の派遣の問題があります。イージス艦はなくなったかもしれません、私はわかりませんが。しかし、いずれにしろ、防衛庁設置法に基づいて、調査研究名目でこういった実力集団である自衛隊を動かすということは、私は相当慎重に考えないと危ういことじゃないかと思うのですね。法律的にも、なぜそれが調査研究で読めるのかということは、基本的に疑問があります。

 もう少し、こういうことについては慎重に考えていく、そういうお考えはないでしょうか。

小泉内閣総理大臣 慎重に考えたからこそ新法をつくっているんです。今までの法で適用できると、拡大解釈すればできると言う方もいます。私はそれが無理だと思うから、法的裏づけがないと、自衛隊が活動する場合には、これはかえって不安を呼び起こすのではないか。また、自衛隊自身も、そういう国民の支持なくて活動するということに対しては快しとしないでしょう。国民もそうです。慎重であるがゆえに新法をお願いしているんです。法的裏づけというのは当然だと私は思っております。

岡田委員 ちょっと私の聞いたことと違うことを言われたんですが、今のお話は、私は周辺事態法に関する話だと思うんですね。これも私は、周辺事態法というのは、日本周辺であって日本の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態のときの法律、これはさんざん議論をして、当時の小渕総理の答弁もあるわけですね。にもかかわらず、この法律を拡大解釈して自衛隊を今回のテロ事件の対応に使おうとしたという声が政府の中にも一部あったということは、私はそれはあってはならないことだと思うんですね。そういうことは明快にまず否定してください。周辺事態法というのはこういう事態には使えないんだということを、まず総理、明快におっしゃっていただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 周辺事態法は適用できない場合の自衛隊活動が今回の事件に際してあるかもしれない、そのためにはやはり新法でその活動を裏づける必要がある、そういう面で私は新法を今提出しているわけであります。

岡田委員 間接的にお認めいただいたと思うんですが、やはり、周辺事態というのを随分議論を国会でもいたしましたが、そういう議論を踏まえて運用していただかないと、国会で一生懸命議論して法律をつくっても何の意味もなくなりますから、申し上げておきたいと思います。

 同じことが、先ほどの調査研究名目で自衛艦、船を出すということについて、私はこれも根拠は非常に希薄である、そういうふうに思うんですね。

 先ほど総理は新しい法律をつくるという今回のことを言われましたが、防衛庁設置法では、所掌事務の遂行に必要な調査研究を行うと書いてあるんですね。しかし、その所掌事務というのは、まだ法律ができていないわけですから、そういう意味では、私は今回のこの事件に関して自衛隊の船を出すということはできないんだというふうに思いますが、いかがでしょうか。

中谷国務大臣 確かに新法はできておりませんが、現在の所掌業務の中にも、海上警備行動やら邦人救出やら、またPKO活動とかいろいろございます。そういう活動等をかんがみて、まだどれを使うかはわかりませんが、情報収集をしてその所掌業務を行うという観点で艦艇を派遣するということは可能ではないかというふうに思います。

岡田委員 私は答弁を聞いてますます不安になるんですが、それじゃ、もし今回インド洋まで、アフガニスタンの近くまで船を出したとしたら、それはPKO活動のためなんですか、一体、今いろいろおっしゃったけれども、そのうちのどれなんですか。

中谷国務大臣 まだ実際に派遣するということは決定をいたしておりませんが、どのような情報を収集するかということで、考えられる点といたしましては、テロ活動の再発に関する情報、また人道的な国際救援活動、国際平和協力業務として実施するために必要な情報、また、船舶、航空機の情報、気象、海象、港湾施設の状況等が考えられるわけでございます。

岡田委員 これはよく政府の中で冷静に御議論をいただきたいと思います。

 もしこういうことで自衛隊の船をどんどん日本の外に出せるということになれば、何のためにいろいろな今法律の議論をしているのかわからなくなります。ぜひそこは慎重にお考えいただきたいということを申し上げ、最後に、総理、今ファクスで入ってきましたが、狂牛病の問題ですが、新たな狂牛病の疑陽性反応が出た牛が見つかった、そういうニュースが流れております。

 この問題は、私は政府の対応のおくれというのは非常に罪が深いというふうに思っておりますが、そのことはそのこととしてこれから議論していきますが、同時に、危機管理として、今回起きたことに対する対応も非常に大事だと思いますが、総理として何かあれば一言伺っておきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 この国会審議中、東京の食肉市場で狂牛病と見られる牛が発見されたという情報が入ってまいりまして、審議中ではございましたけれども、内々、質問を聞きながらも、農林水産大臣に対しまして、しっかり対応するように、厚生労働大臣とよく連携して、この事実関係をはっきり把握し、予防体制あるいは今までの検査体制、きちんと不安のないような体制をとるように指示したところでございます。

 今後、より事実関係を確認した上で、不安のないようなきちんとした対応をしなければならないと思っております。

岡田委員 この問題は、消費者、生産者、いずれにとっても非常に深刻な問題ですから、しっかり対応していただきたい。そのことを最後にお願い申し上げて、終わりたいと思います。

加藤委員長 これにて鹿野君、安住君、桑原君、枝野君、岡田君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。山岡賢次君。

山岡委員 自由党の山岡賢次でございます。

 総理におかれては、連日御苦労さまでございます。予算委員会、それからテロ特別委員会、連続でございますが、問題もかなり、出尽くしているとは言いませんが、たくさん出ております。

 そこで、きょうこれから一時間半近く御質問をさせていただきますけれども、我が党が申し上げたい、こういうことを先に三つ、結論を申し上げておきます。

 まず第一点でございますが、今回のテロ事件は、アメリカで起こった問題でありますが、アメリカの問題であることはもちろん、世界の問題であり、そして何よりも我が国自身の問題である、我が国は、世界と協力して、断固これに立ち向かわなければならない、それが我々の申し上げたい主張であるということをまず第一点として申し上げたいと思います。

 第二点目には、テロ等に、こういうものに立ち向かう、その際には、民主国家、法治国家として不可欠であり、なおかつ原点となる法的根拠とか国際的位置づけ、あるいは国家の基本原則、こういうものをやはりきちっと確立して行うべきである。

 今回の、これから申し上げますが、憲法解釈のすき間をつくような、ちょっと言い方は申しわけないが、応急措置的な、もっと厳しく言うと、あいまいな点のたくさんあるような、そういうものを拙速でつくっていかないで、本当にやろうとしていることに、また本当の効果が上がる、実効の上がる本格的な対応や措置を講ずるべきである、これが第二点でございます。

 第三点目は、今回の戦いは長期戦になっていく、これはもう当のアメリカがそう認識していることであり、また日本にももちろん、ショー・ザ・フラッグ、態度を鮮明にして協力が欲しいとは言っていますが、しかし、長期的に、場合によってはPKO的に、そのソフト面を含めてやれることをちゃんとやってほしい、こういうふうに言っているので、先ほど総理が言っておられたように、冷静に、忍耐強く、沈着に、こういうふうに米国自身言っているわけでございます。

 今、湾岸シンドローム、本当の意味は別な意味でございますが、湾岸戦争に行った人たちがあの爆弾の破片のウランでそういう病気になっているというのが本当の意味ですけれども、日本においては、湾岸戦争で恥をかいた、そうあってはならない、それそれと、こういうものが今蔓延しているかのように言われてもおります。早く早く、早くやるんだ、反対するやつはまるで非国民だ、古い言葉ですけれども、そんなような雰囲気。

 これは、イザヤ・ベンダサンという人が、ちょっと古くなりましたけれども、「日本人とユダヤ人」というのを書きましたけれども、空気という言葉を使いました。日本にはそういう独特の空気というものがあると。時代時代によってどこかから漂ってくるんだそうでございまして、今まさにその空気が漂っているんじゃないかと思います。

 私が名づけて言うなら、これはもう島国日本の特徴であり、悲しさでございます。島国シンドローム、こういうふうに言った方が的確なんじゃないかと思うわけでございまして、そういうものにゆめゆめ陥ってはならない、こういうことを三番目に申し上げたいわけでございます。

 結論を三つ先に申し上げましたが、先に三番目の方から申し上げてまいりますと、今国会は、大変急いでおります。ここに理事さんたちがいらして、きょうはやじらないでくれると言っていますから余り言いたくないのでございますけれども、土曜、日曜もやろうじゃないか、朝から晩までやろうと。大いに結構です。

 土曜も日曜も朝から晩までやったっていいですよ。しかし、何のためにそうしたいのか。その心が、朝から晩までとにかく時間を費やして消化しちゃえば、消化試合が終わった、だから早く上げようと、こういう動機では、一生懸命やろうというふうには感じられないわけでございまして、我々も人間ですから、徹夜でやってもできますけれども、しかし、こういうことを考えるのには、一日休んだり、あるいは人の話を聞いたり、いろいろと勉強したり、そういうことをしなきゃ結果に責任が持てないわけでございますから、そういう点では、ただただ急げ急げということはやってはならないことじゃないかと思います。

 戦争が突発したんだ、戦いが起こったじゃないかと、空気が漂ってきました。もう日本には最も効果的な空気なのでございまして、外国から何かが来た、戦争が起こった、さあというのが歴史的な日本の特徴でございます。

 先ほど言った湾岸シンドローム、湾岸戦争のときの恥をかきたくない、そういうことは私だって同じ気持ちではありますけれども、しかし、憲法を変えるかもしれない、あるいは解釈を変えるかもしれない、その論議をしており、また、政治の究極的な判断が軍隊を動かすことであるわけでございまして、軍隊というのは最終的には人を殺すために動かすことがあるわけですから、これは、政治の最後の判断、究極的な判断、最も重要な判断、そういうものをやらんとしているときに、憲法あるいは法治国家としての先ほどの位置づけとか国際的な立場、あるいは民主主義の原点、こういうものをよくよく踏まえてやっていかなければならないんじゃないかと思うわけであります。

 ところで、本当に今は、そんなに興奮して、急がなきゃならない、歴史的重大決定をこの一週間かそこらでやらなきゃならない、そういうときなんでしょうか。

 まず、今回の戦いが始まったと、それは事実ですけれども、これは突発でも何でもないことで、もう最初から予定されていた。今度の、ある意味じゃ長く忍耐強い戦いの最初の一ページを開いた、まあ戦いですからそう軽々しくは言えませんけれども、やっている方にしてみれば、まさに予定の事項が開かれただけで、突発でも何でもないわけでございました。

 そして、十一月十六日になれば、イスラムの皆さんはラマダンで断食で、正月です。こういうときに戦いをやっていけば、当然のことですが、相手も非常に感情的になる。しかも、味方になっている人たちだって、そんなときには戦力にならないわけですから、こういうときに戦いが挑めるわけがないのでございます。

 外務大臣、予告をしませんでしたけれども、今私が言ったこと、そうですよね。その点はどうお考えになります。

田中国務大臣 イスラム世界でのラマダンが、今のこのテロリズムに対して、世界じゅうの枠組みで根絶したいということにどのような影響があるかという点については、よくじっくり考えてみないとわかりません、いろいろな影響というものが想像できると思いますけれども。

 そのほかの点については、もう少し時間をいただきませんと、大変含蓄が深い質問でございますので。

山岡委員 ありがとうございました。

 余り含蓄が深い問題でもないんですけれども、一般常識ですから答えていただいた方がわかりいいかと思ったんですが、こういうときに戦いをやるということは、もう戦いの常識からしてあり得ないことであります。

 それからもう一つ、これももう十分承知の上のことですが、十月になれば雪が降るわけでございまして、四千メートルよりも上の地域ですから、富士山の上にみんないるようなものでございますから。今の日本の富士山の上に立って、これはもう大変なんですから、それを、雪が降る四千メートルの上に立って戦いなんかとてもできるわけがないのでございまして、きょうみたいな暖かいこの部屋にいたのではとてもとても想像ができないような環境の中にあるわけで、そういう点では、こんなことはもう戦いをやる者は百も承知でございます。

 したがって、ここは、軍事的に言うならば、とりあえず空爆をしていく、ミサイル攻撃をかける、そして相手の対空防衛施設をたたく、まあ、戦争のスタートの常識でございますが。そして、そこを済ましたら、地上軍をまだまだとても入れられないわけでございますから、特殊部隊を投入して、特殊部隊だと何かすべてできそうですが、私は軍事専門家じゃありませんが、あの日本よりも何倍もある国を、倍もある国を、これを何千人かで、特殊部隊だからといったって、これはなかなかどうすることもできないわけでございまして、言うなれば、ビンラーディンの居どころを捜す、そしてあわよくばそこを捕縛する、こういうことは考えて行うんでしょうけれども、そう簡単にいくわけはないわけでございまして、そういうことになれば、これは大体今のスタートはそこまで、こういうふうに考えているわけでございます。

 本格的な戦争は雪がなくなってから、最終的勝利を手に入れるのは、地上軍を投入して、そして北部同盟とも協力して地域を制圧しなければ、これはもう最終的勝利、成功ということにはならないのは常識でございますから、そういう点では、この年内に本格的地上軍を投入するという計画は当初から全くない。

 タリバンが今にも出ていくようなことがマスコミに報じられておりましたけれども、失礼しました、北部同盟がタリバンを攻めるようなことが言われておりましたけれども、そういうことも全くない。だから、当面のこの戦争が終わったら、全くないと言うと語弊がありますけれども、全くないと言うと。今やっていますけれどもね。

 しかし、私が申し上げているのは、アメリカの地上軍とともに本格的攻撃をして、本当の勝利をとるための戦いをする気配はないという意味では、戦いが全くないと言っているんじゃありませんけれども、今、専門家の目から見れば、そういうことは十分考えられているわけでございます。

 そういうことから、防衛庁長官、もうきょうは政治家同士ですから余り難しいことを聞きませんから、感想でいいから聞かせてください。そういう認識ですか、どうですか。

中谷国務大臣 今回の米軍の活動の今後につきましては、ラムズフェルド国防長官が見えない戦いだというふうに言われているように、いつ始まったかも言わないし、いつ終わったかも言わないという、非常にそういう特殊な新たな戦いであろうというふうに予想をいたしております。

 ですから、米軍の作戦ですからトップシークレットで、私も存じ上げておりませんが、私の感想は、やはり地上戦の一番の攻防はカブールではないかと。そのカブールを征する者はアフガンを征するというふうに言われておりますが、現在は、そのカブールの北にある空港の付近まで北部同盟が進出をしているというふうに個人的には考えております。

山岡委員 ありがとうございます。

 もちろんアメリカは、アメリカの戦いだと思っていますから秘密を言うわけはないのでございまして、それを知っているかとか、言ってくれということは全く申し上げません。しかし、防衛庁長官も総理に次ぐ日本国のナンバーツー総司令官ですから、これは、日本を守っていく、そういう責任者としていろいろと同じようなお考えを持つでしょうと、そういうことで聞かせていただいたわけでございます。

 そういう中にあって、アメリカは今空爆をいたしましたけれども、そうはいったって、戦争に臨むのはもちろん命がけですから、十分な用意をしてこれに臨んでいるはずでございます。そして、まだ戦争は始まったばかりでございますから、食糧も水も弾薬も、もちろん燃料も、そんなものは全部持っていっているわけでございまして、今から不足しちゃっているのでは戦いになりませんから、これはもうあり余るほど今持っていっているわけでございまして、こういうときに、日本が出ていってバックアップできるということは一体何があるんでしょうか、防衛庁長官。

中谷国務大臣 現在新法に盛り込んでいる項目すべてが役に立つのではないかというふうに思います。

山岡委員 何だって邪魔にならないものなら役に立たないものはないと思いますよ、それは。しかし、我々がやろうとしているのは、事のついでに行くわけじゃないんですから。こうやって連日連夜審議をして、ある意味では、国の重大な方針も転換して、命運をかけて行くわけですよ。

 何と何をやるんだ、何の必要があるからだと、そういうことで、今まで、こうこうこういうことをやるんだと延々と論じられてきているわけです。だから私は、あえてここでまた一々そういうことを、今まで言われたことを繰り返し言わないだけなんですけれどもね。しかし、それはないよりはましだと言えばそれまでですけれども、今直ちに日本がやろうということが必要とされているんですかと、こういうことをお聞きしたんです。総理、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 何をやるかというのは、これからの事態の推移によっていろいろ変化が出てくると思いますが、できるだけのことをやろうという法的整備は整えておかなきゃならないというのもおわかりいただけるのではないかと思っております。

山岡委員 そういう抽象的なことを、できるだけのことをって、お友達が手伝いに行くわけじゃありませんからね。

 現にこの法案を見ると、こういうこと、こういうこと、こういうこと、こういうことをやるんですと。こういうことをやっておるわけですから、何をやろうか、そのときに応じたものをやりますと、そういうわけにはいかないと思うんですよ。今、このやるものの中のどれをいつどうするか、こういう話になる選択の範囲だと思いますよ。まあ、いいです。

 そういうことで、余りこの日本が必要とされていないとは言っていないんです。しかし、アメリカが本当に必要としていることは何なのか、日本が本当に貢献すべきものは何なのかということを冷静に判断して、総理はわかっていると思いますけれども、これに対応すべきであって、言うなれば、余りこれは慌てて行っても、この法案を一生懸命ばたばたとつくった、そして向こうに駆けつけたころ、もう冬になって当分要りませんと、何ともばつの悪い話にならなきゃいいがなと。私は、反対はしているんですが、日本国のあれとして逆に心配しているぐらいですよ、本当のことを言って。

 そこで、アメリカは、とりあえずここで空爆をして制空権を握る、これは軍事的にはそうでしょうし、大義名分は立つのでございましょうけれども、政治的なうがった言い方をすれば、国や国民のバックアップというのも政治的に非常に重要ですから、やはりここでまずは端緒を開き、戦を起こし、のろしを上げ、そして国民の戦意を保っていかなきゃならない、こういう政治的配慮も私は当然あると思うのです。当然あると思うのですね。総理、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 アメリカの事情は事情があり、アメリカ国民は国民としての世論を背景に、ブッシュ大統領、アメリカ政府も考えていることはあると思いますが、日本政府としては、それはアメリカの判断でありますし、日本としては日本の判断でこれからしていきたい。

 そして、今審議しておりますこの新法、自衛隊の任務とか役割以外に日本としてはやるべきことはたくさんあるのです。外交関係、アラブに対しても中東和平に対しても、あるいはアフガン、あるいはパキスタン、アメリカの分野でできないことも、日本で場合によってはできることもあるわけです。あるいは、特に大事なのは経済ですね。経済の問題についても、我が国自身の経済的な問題もありますが、構造改革等ありますが、同時に、テロに対する資金凍結。だから、この法案以外の分野にできることはたくさんあるのです。

 本来だったら、外務大臣だって、もういろいろな行きたい外国、たくさんあるのですよ、国会が許してくれれば。副大臣もおられるのだし、全部くぎづけにしなくて、外務大臣みずから、これからの会合もたくさんある。もし委員会がお許しいただければ、私は、本来だったら外務大臣に、むしろ外国へ出て、いろいろな会合に出てもらって、この委員会は副大臣等に担ってもらえばいいと思うのです。ところが、なかなかお許しが出ない。

 そういう、日本としてはこの法案以外にできるだけのことはやっていこう。そしてなおかつ、今まで自衛隊ができなかった分野は、新しい法律で自衛隊ができる分野もあるでしょう。日本の国力に応じて、武力行使はしない、戦闘行為には参加しない、そういう範囲内でできるだけのことをやろうとしているのが今の日本の責任ではないかと思っております。

山岡委員 最後のところを聞かなければ、総理のおっしゃっていることはまことにそのとおりだな、私が今申し上げたいと思っていたことを言っておられるなと思っていたのです。

 こうやって相対して論じているというのも、私もまことに複雑な心境なのでございますが、もともとはいろいろ御指導いただいた立場ですから、ああ、なるほど、随分一致しているな、こういうふうに今思っていたところなんですが、ちょっと最後のところは異論があるからまたこれから申し上げますが、そのとおりなんですよ。この新法にそういうものがすべてカバーされているような言い方をされたから、それは違うよと言いたいのでございますけれども。

 そうじゃなくて、日本がやるべきことというのはたくさんあるわけで、この新法をつくればそれがすべてできる、そういうことじゃないんじゃないですか。そうでしょう。これは対米支援のその部分をつくっているのであって、今総理のおっしゃったことがこの中に全部入っているというのだったら、大変なことですよね、それは。

 だから私は、新法じゃなくて、そういうところはまさにそうです、日本のやるべきことはこれのみならず、また、アメリカからも世界からも、なるほど日本だと言われることはたくさんあるんじゃないですかということを申し上げようと思ったら、総理が言われましたから、まさにそのとおりだと思うのですよ。

 そこで、ブッシュさんは総理へ電話をしてこられた。まあ、この話はもうかなり行き渡っていますけれどもね。長期戦になるのも覚悟して、冷静で忍耐強い対応が必要だ、直ちにこの時期に日本にああしてほしい、こうしてほしいということはないが、日本にやってもらいたいものはたくさんあるからよろしく頼む、おおむねそんなことを言われたのですか。

小泉内閣総理大臣 日本の支援には感謝している、アメリカとしてはこういうことをやるという話し合いをしております。直接自衛隊が、ああしてほしい、こうしてほしいとか、何をしてほしい、具体的にはあれこれ指図みたいなことはしておりませんし、私どもは、率直な日本の立場、アメリカの考え方、現在の情勢について意見交換をしたのであって、同盟国日米関係というのは二国間関係だけのものではない、世界全体にとって重要なものだという、そういう全体の枠組みの中で意見交換した。

 そして、日本としてできるだけのことを、日本としては、このテロ撲滅のためにアメリカ初め世界各国と協力していきたい。アメリカは、日本自身のためにも、いろいろ経済問題等所期の目的を達成してくれれば、それは日本にとってもアメリカにとってもいいことだというような話をして、お互い同盟関係をさらに強固なものにしていこう、そして、日米関係というのが世界にとって有意義なものになるようお互い努力しようというような枠組みの中でいろいろ情報交換、意見交換をしてきたわけでございます。

山岡委員 表現は多少違っていますけれども、おおむね私の申し上げたようなことを言っておられると思いますし、表現はと言ったのは、日本に対してああせい、こうせいと、水持ってこい、物持ってこい、弾持ってこい、そういうことは言いませんがと、こういうふうに今言っているわけで、それは別な言い方をすれば、今それは必要としておりませんからという表現であって、本当に弾尽きれば直ちに持ってきてくれと言うに決まっているわけですよ、命がけの戦いをやっているわけですから。まあそれはともかく、そういう状況である。

 アメリカの、ビンラーディンというのを調査したウォーカー前国務次官補という人がいるのですけれども、この人が今回の作戦について、戦争と呼べば誤解が生じる、麻薬やインフレとの戦争と同じで、長期になると。なぜここにインフレが出てくるのかはちょっとぴんときませんけれども、要するに長期戦になる、こういうことを彼は言っているわけでございますから、日本として大切なことは、空気に惑わされることなく本当の国益を考えて、日本の、アメリカにとって一番いい、世界にとって一番いい、そしてこのテロ対策として一番有効な方法をとっていくべきじゃないかということの三番目のことを今申し上げているわけでございます。

 ところで、今回の空爆については、アメリカは各国に事前に通知をいたしましたけれども、ブッシュ大統領が直接各国首脳に電話をしたところとパウエル国務長官が連絡したところがあるわけでございますが、総理は、九月二十五日に訪米した際に、ブッシュ大統領に、攻撃のときは事前に通知してほしい、こういうふうに念を押してきた、こう報ぜられておりますけれども、それは本当でしょうか。

小泉内閣総理大臣 いろいろ緊密に情報交換、連絡していこうということをお話ししました。

山岡委員 外務大臣、御担当のような気がするので、ブッシュ大統領が、直接大統領が連絡をした先はどことどこの国でございますか。

田中国務大臣 お答え申し上げます。

 小泉総理のところには、軍事行動開始後数時間後に大統領からお電話があったわけですけれども、軍事行動前には、プーチン・ロシアの大統領、それからパキスタン大統領、ヨルダン国王、イスラエルの首相、エジプト大統領、カナダ首相、フランス大統領、ドイツ首相及びウズベキスタンの大統領に電話された旨報道されております。

山岡委員 よくわかりました。

 そして、パウエル国務長官が電話した先は、日本、メキシコ、バーレーン、オマーン、グルジア、カザフスタン、ウクライナ、タジキスタン、そしてトルクメニスタン等というふうに報じられておりますけれども、私がここで申し上げたいのは、大統領に事前通知の念を押しておいたのに、ブッシュ大統領から電話が来なくてパウエル国務長官から電話が来たから、日本がばかにされたのではないかなんということを言おうと思ってこういうことを言っているのではないのです。アメリカが日本を軽視しているとも思っていないのです。そういうふうに言う人もいるかもしれませんが、そんなことも思っていない。

 これは、今アメリカは戦争を始めて、いろいろと各国の立場があるのですよ。ともに最前線で、言うなれば集団的自衛権を持ってNATO諸国のように戦うところ、こういうところは大統領が、今一緒にやるわけですから電話をしたわけでございまして、そして同じ重要な国であっても、当面すぐお願いするわけではない、長期的に見ればいろいろあるが、またそのときはそのときに改めてお願いするけれども、忙しいから、そういうところで当面の戦いのところに大統領が電話して、そうではないところにはパウエルさんが電話をされた、こういうふうに受けとめるのが自然であって、余りこれを変に解釈するべきでないし、私もそんなことを言おうと思って言ったのではない。そういう客観情勢ではないのだろうかと。

 それでもちょっと、ちなみに聞きますけれども、田中大臣、よろしゅうございますか。パウエル長官は外務大臣のカウンターパートナーだと思うのですが、なぜ大臣に電話してこないで総理の方に電話していかれたのでしょうか。

田中国務大臣 それは、内閣の責任者は小泉総理でいらっしゃるからでございます。

 それから、つけ加えますと、チェイニーさんとかパウエルさんとか、手分けをして各国に電話をおかけになっていたというふうに承知いたしております。

山岡委員 外務大臣御自身は、いつ、どのようなルートでこの情報をお聞きになったのでしょうか。

田中国務大臣 当日、外務省の局長から電話が入りました。(山岡委員「何時ごろですか」と呼ぶ)あの日は、八日の八時十五分か――一時でしたか、あれ。済みません。午前一時十五分か二十分か、その辺でございます。正確なメモをちょっと置いてきましたので、済みません。

山岡委員 外務省は、小泉総理に連絡する前に、二時間前にそうなるという情報をキャッチしていたそうでございますが、大臣には御連絡ありましたか。

田中国務大臣 先ほど申し上げた時間が最初でございます。

山岡委員 普通は、外務省は二時間前にキャッチしたら、まず外務大臣にそれを上げて、外務大臣から総理にその話が伝わる、こういうのが常識だと思うのです。なぜそういうふうにならないのでしょうか、大臣。

田中国務大臣 もし二時間前に外務省が情報を入手したということが事実であれば、今私はわかりませんが、本来は委員がおっしゃるようなルートであるのが正しいと私は思います。

山岡委員 そのとおりだと思うのです。

 私は、田中外務大臣を責めよう、こう思って今こうやって言っているのではないのですよ。我が国の外務大臣ですから、我が国の窓口ですから、その窓口が機能しない、そういう国は非常に困った国だ、こういうことを申し上げたいのです。小泉総理、どう思います。

小泉内閣総理大臣 それは、どういういきさつかわかりません。アメリカはアメリカの事情があるのでしょう。私も、パウエル国務長官とはじかにお話ししておりますし、パウエル国務長官が小泉総理と連絡をとりたいと、事情は定かではありませんが、私は連絡を受けた。当然、外務大臣にも連絡してその後のしかるべき対応をしているわけですから、問題なく対応したと思っております。

山岡委員 総理が問題ないとおっしゃるなら、別にこれ以上申し上げませんが、やはり、それぞれ個人の問題じゃありませんから、日本国総理であり日本国外務大臣でありますから、日本国の命運がかかっておるわけですから、これはもう総理の責任において、それぞれがきちっと機能するように、そういう体制を整えていただきたい。特にこういう、場合によっては非常時になるというときでございますから、その点はよろしくお願いを申し上げたいわけでございます。

 アメリカのジョン・ネグロポンテ国連大使、この方が八日に国連安保理理事国に対して、ビンラーディンやアルカイダの追及のためにアフガニスタン以外の国にも軍事攻撃を加える可能性があると文書通告をいたしましたが、イラクを想定しているんじゃないか、こういうふうに言われておりまして、また、イギリスなどが、こんなことを今やるときじゃない、こういうことで非難をしたからとめている、こういう状況だそうでございます。

 イギリスが反対したものですから、首脳は何となく一部で否定をしたり肯定をしたり、一応は否定をしておりますけれども、なぜアメリカが、れっきとした国連大使がこういう場面でこんなことを申し出るんだろうか、何の目的でしているんだろうか。防衛庁長官、いかがですか。政治的にどういうふうにお考えになりますか。

中谷国務大臣 ただいま御指摘のありましたネグロポンテ国連大使の御発言の詳細についてはまだ承知をしておりませんけれども、米国は、七日付で国連の安保理事会の議長に対して発出した今回の軍事行動に対する書簡の中で、米国の自衛として、今後の行動の対象以外の組織や国に関してさらなる行動が必要となることが判明するかもしれないという旨、記しております。

 ただし、九日、バウチャー国務省報道官は、他国、他組織への攻撃の可能性について、同書簡の内容は将来の具体的行動を一切予見しないで述べていると。

 なお、米国書簡の言う、さらなる行動の具体的内容については明示されておらず、我が国として、米国の書簡、発言等の意味や背景についてお答えすることは適当でないというふうに思っております。

山岡委員 建前としてはそういうことということはよくわかりますよ。政治的な話をしているんだ、こういうわけで、防衛庁長官は日本の大将軍でいらっしゃるわけでございますから、そんな建前の話を聞いて、はあ、そうですかと言うのなら大将は要らないわけでございまして、その心は何かということを私はお聞きしたわけでございますが。

 アメリカの軍事筋から聞いた話ですが、その心は、空爆が間もなく終わる、冬になっちゃいますからね、雪なんかでできなくなる。そうすると長期戦をするといったって間が随分あいちゃう、春までに。もちろん、アフガン以外のそのほかのどこの国も攻めるんだと建前では言っておりますが、イギリスがそんなばかなことをするなと言う非常識なことをなぜ言い出したかといえば、そういうふうに間があいちゃうと、ここで戦争開始はしたけれども、ずっとあいちゃって、春になったころもう世の中のムードが変わってしまう、そんなことがありましたかと。

 民主主義国家というのはなかなか大変なところがありまして、国民がかあっと空気が熱いときはいいけれども、これが冷えてきたら目も当てられないわけでございまして、冷えてこないように総理も注意した方がいいと思うんですけれども、そういうことを考えて手を打っていく、それが政治であり、それが軍略になるんじゃないかと思いますよ。

 だからその間に、そのあいている間に、大義は幾らでもあるんですから、イラク等々を攻めておこう、こういうことをもくろんでいるんだとこの軍事筋の情報として言ってきていますけれども、その辺の真意はどうお考えになりますか。別に合っている違っているはいいですから、将軍の見解を聞きたいんです。

中谷国務大臣 私はシビリアンで、文民でございます。将軍ではございません。

 今回の件につきましては、湾岸戦争とは大分違った事態でありまして、米国自身も、今回の行動については、単に軍事問題のみならず、外交問題や民族問題や、すべての面での戦いだ、特に情報については非常に重視して、情報の戦いだというふうに言われておりまして、単に軍事面のみならず、周辺諸国の外交関係とか経済関係とか、物資を投下したり、非常に総合的に行われておりまして、よくよく周辺国等との外交関係も大いに見守りながら、今後の展開については注意深く注視をしている状況でございます。

山岡委員 これは現実の世界でございますから、お役所の書類を行ったり来たりすることが国会の論戦じゃないと思います。(発言する者あり)この辺でけしからぬと言っているけれども、それじゃ文書の読み合いをするのか、こういうことを私は申し上げたいのです。

 総理の言っているように、戦いというのは最前線で戦うだけが戦いじゃないんです。その他の資金を断つことも重大な戦いですし、あるいは昔からよくあるのが、心理作戦というのが一番大きな戦いになるんです。豊臣秀吉なんというのは、その心理作戦の名人で天下をとったとも言われているわけでございまして、言うなれば、そこが国民のいる世界においては戦いの一番重要な場面になる。言うなれば、戦いをする者、そのトップに立つ者は、ありとあらゆる、その国にとっては必要な、有意義な権謀術数を図るわけでございます。

 我々も応援に参加する以上、そんなことは当然、ここにいらっしゃるのはトップレベルの人たちですから、やはり頭に入れながら、文書には書いていない、お役所のあれにはない、しかし、そんなことなら政治家の討論は要らない、そういうことを私は、どんなことを認識しているか、国民の皆さんも知りたいと思うし、私も知りたいと思ってお聞きをしているわけでございます。

 確かに、このニューヨークの事件は世界的な大事件ではありましたけれども、しかし、アメリカは、これは国連の問題ではない、アメリカがやられたんだから自国の問題だ、アメリカの個別的自衛権でやるんだ、こういうふうに言っております。したがって、国連軍の出動の要請はしない、そういうことで、アメリカはそのスタンスに今立っているわけでございます。

 もちろんこのテロというのは、アメリカのみの問題ではなくて世界共通の問題でもあり、他国もアメリカとのそれぞれの関係において、その立場においてできるだけの協力をしていく。アメリカがそういう立場であろうと、それは当然のことだろうと思うわけでございまして、アメリカもそれを望んでいるわけで、その態度をそれぞれで鮮明にしてほしい、ショー・ザ・フラッグと、こういうふうに言っているわけでございます。

 したがって、アメリカは、NATO諸国に集団的自衛権によってハードな、まあ、軍事的なバックアップをしていただければありがたいと。日本は憲法や国情もあるのはよくわかっているから、PKO支援法案や難民支援のような、わかりやすく言うと、主に戦後処理的な、あるいは総理のおっしゃったようなテロの資金源の遮断といったような、今の言葉で言うとソフト面を中心にやってほしい、こういうふうに言ってきているわけでございます。

 しかも、アメリカ自身が冷静に、沈着に、長期戦に備えてと、こういうふうに言っているわけであるにもかかわらず、日本の中には、湾岸シンドロームというのがなぜか蔓延しているような感じでございますし、日本だけがかあっと燃え上がっている、ショー・ザ・フラッグとアーミテージさんに言われたら、自衛隊にZ旗を掲げて進軍しなきゃならないんじゃないか、こんなふうな勘違いをしたような、思い違いの雰囲気が漂っていたことは全く事実であるわけでございます。

 思い起こせば十一年前のあの湾岸戦争のときは、今度は逆にどうであったんでしょうか。今のこの熱気球と違って、国連の安保理が武力行使容認決議をしたんです。そして、世界が協力して平和維持のために、当時の言葉で言うと、ならず者国家イラクを国連軍、言いかえれば、我々の言葉で言うと世界警察で制裁しなきゃならない、そういう決定をしたのでございます。しかし、にもかかわらず、日本は金だけ出してまるで動かない。今と正反対に、マスコミも極めて冷淡。そして、残念ながら、国民の皆様も無関心であった、あるいは少しシュリンクしていたのかもしれませんが。

 それが一転して、今回は、国連が武力行使容認決議を行っていないにもかかわらず、国会を中心に日本じゅうが興奮をして、戦争が突発した、大変だ大変だ、とにかく早く法案を上げて、中身は憲法違反のおそれがあっても、二年間の時限立法だから、失敗すれば変えればいいや、何となくこんな雰囲気で進んでいる。私が最初に申し上げたように、島国日本国の悲しきシンドロームかな、こういうことをやはり念頭に冷静に置いて政治は対処していかなきゃならないんじゃないかと思います。

 一部の新聞も、まるで大本営発表をよいしょするような論調で書いておりますし、その新聞も、とにかく早く行け、どんどんどんどんと、反対する者は本当に国の利益に反するんだと、そうとだけ簡単に言い切れる問題じゃないと思います。政治家やマスコミが騒げば、国民の皆さんだってそうなのかなと思いますよ、それは。リーダーが騒いでいるわけでございますから。まだ記憶に新しいです。半世紀前、第二次世界大戦に突入したときのその初期の現象に、ある面では非常によく似ている、そういうことを我々は忘れてはならないわけでございます。

 総理は、この間中国に行ってまいりました。十五日には韓国に行かれると思います。我々がアジア諸国に行くと、みんな経験があると思いますけれども、あちらの政治家は我々に対して、みんな押しなべて同じようなことを言います。日本は恐ろしい国だ、いつまた我が国を攻めてくるかわからない、こういうふうに言うのでございまして、私はその都度答えているんです。

 日本がどうしてまたあなたの国を攻めるんですか、日本に一体どこにそんなムードがあるんですか、日本に行ってみたらわかりますよと。国内は、余り言いたくないが、こんなことは考えられなかったけれども、援助交際だとか、ねえ、文部大臣、文部大臣が悪いというわけじゃありませんよ、幼児虐待。そして、捕まえてみたら犯人は学校の先生あるいは検事、警察官、裁判官。一体、我が国にあなたの国を攻めようというような雰囲気がどこにあるんですか、私自身がむしろ逆に嘆いているぐらいですと。

 こういうふうに言いますと、何て答えるか。何言っているんですか山岡さん、日本はある日突然気が狂ったように変わる国じゃないですか、こういうふうに言うんですよ。言われてみるとそうかなと。どういうふうに変わるんですかと言ったら、戦前は英語を使うだけで捕まった。よしとかアウトとか、こんなふうに言っていたのが、一夜明けて戦争が終わったら、総理もキャッチボールやっていますけれども、あのころキャッチボールなんて言ったら大変だったんですから。知らない人があそこでやじっていますけれども。

 だから、歴史は繰り返すんですよ。五十年ぐらいたつとすっかり忘れて、そして同じことを繰り返すというのが人類のさが。だから、五十年ごとに戦争が起きるというのはそういうことなんですよ。あのときの雰囲気と今日の雰囲気がこれだけ違う。

 ところが、それが、一夜明けたら何と親米一辺倒に変わっているじゃないですか。私らは何となく普通のことのように思っていましたけれども、まあ、あちらから見るとそうなのかもしれませんですね。もう戦後五十年たったのに、何で過去のことをいろいろ言うのよと、まあ、私なんかは個別になるとそういうふうに言いますけれども、何言っているんだ、足踏まれた者の痛みというのは踏まれた者じゃなきゃわからぬ、こう言われると、ああ、そうかなと、こういうふうに思いますよ。

 石油がちょっと足りなくなった。トイレットペーパーをみんな買い集めちゃう。まあ、偉そうなこと言えませんけれども、私のおふくろもそうでしたからね。大豆の輸入が一時とまった。狂乱物価になっちゃったわけですね。大変だ、大変だと。

 つい六年前も、天候が不順だったんですね。お米が余りとれなかった。武部大臣いらっしゃいますけれども、そうでしたよね。そのときに、米がなくたって、パンもあり、うどんもあり、そばもあり、お菓子もあり、食べ物なんてあり余っているんです。しかし、なぜかみんな米を買い占めちゃう。東京の親戚に送ってやる。今一万五千円割って農家大変なんですよ、大臣。後でやりますけれども、頼みますよ、大臣。

 そのときに、それが、自主流通米が二万円になり三万円になり六万円になり、日本で一番高いのは八万円にもなっちゃうんです。考えられない国ですよ。そして、なぜかはやり出したのが米泥棒。みんなどこだってあけっ広げて、財布だって置いてあるのに、どうして米とっていかなきゃいけないのか。異常心理なんですよ。そういう空気が日本に漂い出すと、みんな米、米、米、米と。

 よくも悪くも、この日本のそういうムードに流されて、今度の法案が、急げや急げ、反対するやつは非国民だ、こういうことになっていかないように、ゆめゆめ、そのことを留意してやっていただきたい。

 総理、この法案を急ぐのは、素朴に急いでいらっしゃるんだとは私は思っておりますけれども、しかし本当に日本に急がれるのは、このことも大切なんですが、このテロによって日本が一番ダメージを受けるのは、もちろんニューヨークで亡くなった方はお気の毒の限りですが、しかし、日本の中にもこのことによって間接的に命を失っている人もたくさんいるわけです。言うなれば、テロによる世界不況で一番ダメージを受けるのは我が日本国であるわけでございまして、そういう点においては、言うなれば、交通事故で亡くなっている人が年間一万人、自殺は一万五千人、こういうのが言われていたことなんですが、今三万五千人いるんですよ。(発言する者あり)三万人を超えているんです。古いんだ、あなた方は。そして、その多くの人たちは経営難、生活苦ですよ。

 私、柔道をやっていましたけれども、私の同じ時代の人たちに猪熊さんという日本チャンピオンがいたんですよ。ついこの間自殺されましたよ。建設会社をやっていて、本当に一緒に戦った人が死んだとなると、まさに人ごとには思えないんですが、そういうこの不景気。

 こういうものが、このテロ対策だ、テロ対策だ、こういうことに焦点が移されて、そして、何となくこれを先送りされているんじゃないか、あるいは、非常にうがった言い方をすれば、先送りしようとしているんじゃないかとさえ考えたくなる。言うなれば、テロのことはテロのことでいいとしても、そちらの経済対策については、小泉総理、本来は、この国会はそれをやる国会であるはずだったんです。その点についても、ちょっと一言言っておいていただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 この委員会は、テロ対策特別措置法を審議するための特別委員会で、国政から考えると一部なんです。そして、経済の問題、外交の問題、雇用の問題、休みなしにやっているんですよ。しかし、特別委員会でありますから今全閣僚出席しておりますが、これだけに没頭しているわけじゃないんです。政治に休みなし、各役所休みなく動いているわけでありまして、これは国政の中の一部である。

 そして、テロ対策の問題において大きな影響が出ていますから、テロは安全保障だけの問題ではありません、経済の問題、外交の問題、内政の問題、各般に及んでいる。しかも、日本国内だけの問題じゃないからこそ真剣にこの問題に取り組まなきゃならないということでやっていることを御理解いただきたいと思います。

山岡委員 隣を見ていただきたいんですが、財務大臣、今いらっしゃらないんです。(小泉内閣総理大臣「委員会に出ている」と呼ぶ)財金に出ている。そのとおりです。私がオーケーと言ったんです。私はえらい怒られているんです、何でそんなことをするんだと。主要大臣の財務大臣を向こうに回して野党のくせに何だと、もう野党の皆さんからこてんぱんですよ、本当のことを言えば。

 だから、そういうことをちゃんと審議するなら、私は本当はこの後聞きたかったんです。しかし、行って結構ですよと、こういうふうに申し上げているからいないんですよ。(発言する者あり)偉いと言っていただかなくてもいいですけれども、偉いと言われる分だけこちらから怒られますから。

 そういう点では、小泉総理、もちろんこのテロも重大な影響もするし、大切ですけれども、本来の構造改革、いろいろ言っておられました。言っていただけじゃだめなんですよ。やっぱりやっていただかなきゃ困る、もう何カ月もたっているんですから。このテロによって一層ダメージが大きくなるんですから、そのことを本当に鋭意頑張ってやっていただきたい、こういうことをお願い申し上げておきます。

 我が党は、あした、出していた基本法をおろしていただくことになりました。皆様の御協力に本当に感謝を申し上げます。我が党は今回の法案には反対ですけれども、必ずしも対案とは言えませんが、しかし法案を、新法をつくるに当たっては、この我が方の基本法というのをよく検討して論議をしていただいて、その上でやっていただきたい、やるべきだ、こういうことを申し上げたく、また望んで、これをあえて提出させていただいたんです。

 時間がないからと言われればそれまでかもしれませんが、私に言わせれば、今申し上げたように、まだまだ長いんです、戦争は。あした水持って、物持って、食べ物持って駆けつけなくたって間に合うんです。だから、こういう重大なことをやろうというなら、そういう基本法をしっかりと研究をして、そしてその基礎の上に、本当に長もちする、またぼろの出ない、そういうしっかりとした法律をつくろうじゃありませんかと、こういうことを申し上げているので、拙速でつくる中身のものについては、私どもは賛成するには自信が持てない、こういうふうに言っているわけでございます。

 最初に申し上げましたが、私たちは、もちろんこのテロに対しては真剣に取り組まなきゃならないし、一刻も早く対応しなきゃいけない。あのワールド・トレード・センターも、私にとってはまた思い出の地で、あれができたころに私はアメリカのダウンタウンの大学院に行って、たまたまゼミが、産学協同ですから、あのワールド・トレード・センターができる前に、経営者になったと思ってあそこに行けと言われて行ったんです。そして、そのリーダーだったジョン・コスティガンというのはそこの会社に就職しました、ワールド・トレード・センターに。今回、行方不明です。間違いなく死んでいると思います、手紙も来なくなりましたから。

 だから、このワールド・トレード・センターが三十年たった今日なくなっちゃったということに対しては、私自身も本当に当事者の意識を持って臨んでいるわけでございますが、しかし、テロというのは、私が一人怒ってニューヨークへ飛んでいったって何もできない。いわんや日本国一つでもこういうものは対応できない。言うなれば、世界が一体となってやらなきゃならない、こういうものじゃないかと思います。

 そういう点においては、世界各国共通の問題であり、力を合わせてやる問題。そういうことは、やはり国連を中心に審議をする、あるいは審議をするように働きかける。もちろん国連はパーフェクトじゃない、パーフェクトのものなんかないんですから。しかし、今この世界の中で、地球の上で一番各国を共通に束ねているのが、よくたって悪くたって国連ですから、やっぱりそれをしっかり整えて、そこでこのテロ対策に取り組んでいかなければ、これは幾ら口で根絶だとか憎むとか言ったって、実際の対応はできないわけでございましょう。

 私たちは、これを国連で審議して、このテロのみならず、この間のイラクのときもそうですが、そういうあらゆる世界の人類の敵に対しては、国連でそのことを協議する、そして国連警察で、国連軍でこのことを対応していく。武力容認決議をして、そして国連軍をそこに派遣していく。日本からは自衛隊でも結構です、自衛隊が一番すぐれていますから。そうじゃなくてもいいでしょう。しかし、国連に人を派遣して、そして、そこで国連軍の一員として、世界のために、またそして、ひいては日本のために頑張っていただく、そういうことを整えるべきだということを我が党は前から主張しているわけでございます。

 もちろん我が国には憲法がありますから、憲法は何よりもこれは大事にしなきゃいけないし、遵守していかなきゃならない。そういう中から考えていくと、憲法の前文には、国際貢献をしろ、こういう精神がうたわれているわけです。総理のおっしゃっているとおりです。しかし、一方においては、九条において、専守防衛だ、外国に行って武力行使をしちゃならぬ、こういうふうに書いてあるわけでございます。

 そういうことを考えたら、我々は、国際協力として出ていって、国連が武力行使をする。主権国家たる我が国が武力行使をするんじゃない。それは九条に反しないわけですからね。そういうことを整えていかない限り、ある意味では集団的自衛権のあるなしのすき間をついて行かなきゃならない、こういうことに相なるわけでございます。

 そういう点では、日本が挙げて堂々と世界貢献をしていけるような、そういうシステムを整えていけるように日本も最大限の努力をすべきである、こういうことを私どもは申し上げているわけでございます。今度の基本法の柱の一つがこのことを申し上げているわけでございます。

 そして、もう一方の柱については、もう憲法九条のとおりでございまして、日本憲法においては、国連軍として参加する以外に武力行使が認められるのは、我が国が直接侵略を受けた場合、あるいは、放置すれば武力攻撃に至るおそれがある周辺事態における自衛権の発動によって平和活動を行う、こういう二つのことに我が国の軍隊の発動は限られる、こういうふうにすべきだと言っているのがこの二番目の柱であるわけでございまして、何も我が党の独自のユニークなものを出そうなんと思っているんじゃないんです。

 いろいろ考えたら、日本が歩むべき道は、こういう方向は憲法にもかない、世界にも貢献できる、前文にも九条にもかなうベストの道じゃないか、御審議をいただきたい、こういうことで提案をさせていただいたわけでございます。

 さらに、現実の例で具体的に申し上げますと、湾岸戦争のように国連が武力行使容認決議に基づいて国連活動を積極的に出そうというときには我々は加わっていく。しかし、ベトナム戦争というのがありましたが、あのときの大義というのは、アメリカがベトナムを攻めて、そして共産主義からの侵略に自由主義陣営を守るんだ、こういう大義でベトナムを攻めていったわけでございます、あのときは。

 今も大義は似たようなものでございまして、共産主義がなくなってこれがテロに変わって、世界のテロの脅威をなくすために我々はタリバンに行くんだ、こういうふうに言って今この個別的自衛権の大義を持っているわけで、我々はそのことは理解はします。理解はしますが、しかし、そういうことでは、アメリカが独自にやりますと言っているところに日本の軍隊を派遣するわけにはいかない、これが私どもの憲法にのっとった行為であるわけでございます。

 そういうところをよくわきまえてやっていくべきだ、こういうふうに思いますが、その基本法について、小泉総理の御意見で結構ですからお聞かせいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 湾岸戦争のときは、憲法を改正しないで自衛隊を派遣してもいいと、多国籍軍に。今回、このテロに対して、憲法解釈を変えずに、武力行使しなくても、戦闘行為に参加しなくても、自衛隊を派遣しちゃいけないという点は、なかなかわかりにくい構成だと思うんですが、一つの政党の考え方としてそれはそれでいいのかなと。

 しかしこれも、国連ならいいと言いますが、日本の憲法九条は、前文で国際協調をうたっていますが、国際紛争を解決する手段として武力行使を禁じていますね。その辺の整合性をどう整えるのか、これはまた大変な議論を呼び起こすのではないかなと思います。

 いずれにしても、一つの政党の提案ですから、各会派で御議論をいただければなおはっきりしてくるのではないかなと思います。

山岡委員 ありがとうございます。

 まあここでこの話の決着をつけようと思ってお話をしているんじゃありませんが、総理が予算委員会で我が党の中井委員の御質問に対してその憲法の前文と九条についてお答えをされましたが、確かにあいまいさは認めますよと、すっきりした法律的な一貫性、明確性を問われれば答弁に窮してしまいますよ、そこにすき間があるとおっしゃいましたが、そういうことですか。

小泉内閣総理大臣 現行日本憲法に対していろいろな解釈があるということをそういう表現であらわしたわけであります。

 現に、今のように、憲法改正しなくても国連等の多国籍軍、あるいは国連と協調する場合だったらば武力行使もいいんだという考え方もある。一方では、それはできないという考え方は他の政党持っているわけです。いろいろ解釈に幅があるんじゃないか。そういう点をすき間とかあるいは解釈の幅と表現しましたけれども、これは五十年間の議論を見ていればわかります。各政党も胸に手を当ててみれば、どれだけ自衛隊に対する考えが変わってきたか、変わっていないか、よくおわかりだと思います。

山岡委員 誤解のないように。私は、このことを言ったからいい悪いと言っているんじゃないんです。すき間というのは何ですかと聞きたかったわけでございました。

 そうすると、今までの話をずっと聞いていますと、やはりこの前文と九条、そこをどううまく対処するのかが難しいと何度も言っておられました。そして、時代も変わったんだ、新しい時代なんだ、だからそれに対応する新しい法律をつくるんだ、こういうふうにお答えもされていましたが、そういうことですか。

小泉内閣総理大臣 憲法を守りつつ、憲法の範囲内で何ができるかということを考えたわけでありまして、その点についてはいろいろな解釈の仕方もあると思いますが、私どもとしては、憲法の前文と、そして武力行使をしないという範囲内でいろいろ知恵を出した案でありまして、ともかく、武力行使をしない、戦闘行為に参加しないという定義でもいろいろ解釈があるわけですから。

 今の、合憲だという解釈もあるし、憲法違反だという解釈もある。それほど日本の憲法というのは幅広いというか、あいまいな点があるんですよ。あいまいな点がないと言った方もあると思いますが、私はあいまいさは残っていると思いますよ。そういう点を言ったわけであります。

山岡委員 私の質問をしている趣旨をぜひ御理解いただきたいんです。

 すき間がある、前文と九条の間にはすき間がある、新しい時代、新しい事態に対して必ずしも一〇〇%対応できなくなってきている、だからここに新しい法律をつくるんですと、こういうふうにお答えになりましたが、そういうことですかということで、イエスかノーかということでお聞きしているんです。

小泉内閣総理大臣 解釈によって、できること、できないことというのは、今の憲法、人によって、政党によって違うということを言っているわけでありまして、私は、憲法を守る範囲内でどの点まで自衛隊の任務が付与すること、加えることができるかということを考えた今回の新法が一つの理由であります。

 すき間があるとか解釈の幅があるということを言いますが、そういういろいろ考え方はありますから、その範囲内でやろうということを言っているわけです。

山岡委員 総理の言わんとしている気持ちはよくわかるんですよ。気持ちはよく伝わります。しかし、世の中、気持ちだけじゃ進まないんです、残念ながら。

 私は憲法の範囲内でやりたいんです、気持ちはわかりますよ。しかし、範囲内になっているのかなっていないのかということがやはり問題なんであって、私がそのつもりだからそうなんだと言われても困るんですよ。私が武力行使じゃないと言うんだから武力行使じゃないと言われたって困るんですよ、本当のことを言いますと。

 だから、総理の言いたいことはわかりますし、そういう気持ちでやっているんでしょうということもわかりますよ。しかし、ここは国会ですから、そう思うからというわけにはなかなかいかないんですよ。

 だから、そういうことからいうと、前文にも九条にも適合しないすき間だから新法をつくるとおっしゃったんだけれども、そんなことで私はどうのこうの言おうと思わないけれども、もしそういうことなら、新しい法律をつくっているつもりかもしれないが、それをするのには憲法解釈を変えなきゃいけないとか何か、だから憲法の範囲内ですと口では言っているが、その憲法に合致しないから新しい法律をつくるということは、言うならこれは憲法改正じゃないですか、言っていることが。

 範囲内だ範囲内だと自分で言っているだけで、自分で範囲内と言っていれば範囲内なら、簡単ですよ。私は三十キロを四十キロでしか走っていません、警察は六十キロです、いや、私は四十キロですから、それで済むなら、総理大臣は済むんでしょうけれども、そうはいかないんですよ。

 だから、そういう新しいものをつくろう、そういうすき間をついてと、これだったら憲法改正になるんじゃないですか。

小泉内閣総理大臣 憲法の範囲内で考えようということを言っているんじゃないですか。憲法前文で国際協調をする、しかし九条で武力行使を認めていない、その範囲内の中でできることを考えようと。何が憲法違反なんですか。憲法の範囲内でやろう、しかも現行の、今までの積み重ねた、五十年間積み上げてきた憲法解釈、集団自衛権は保有しているけれども集団自衛権を行使できない、そういう前提のもとで何ができるのかと考えているんじゃないですか。憲法は変えませんよと。おわかりですか。

山岡委員 おわかりですかというのは、私が申し上げたいんですけれどもね。

 その範囲内でと言うのは簡単ですよ。範囲内であるかどうかという論議をしているのであって、私が範囲内だから範囲内でやっているんですよ、おわかりですかと言われたって、なかなかそうはいかないんですよ、世の中。独裁者じゃないんだから、法治国家なんだから。私が思って、私がそうで、その範囲でやっているつもりだからそれでいいんだと。そうはいかない、こういうことを申し上げているわけでございます。

 だから、今度のあれを見ても、あらゆることが憲法の範囲内でやっているんですから、武力行使じゃないんですから、戦闘地じゃないんですからと、こう言っていますけれども、あるのかないのかということは、これは総理一人で決めていただく問題じゃないんですよ。客観的に決めなきゃ。(発言する者あり)そうだ。だから審議しているんですよね。だから言っているんですよ。総理のお気持ちはそうかもしれないが、そういうふうには客観的には認識できない、だから討論になっているんでしょう。総理はそうだと言って、私はそうじゃないと言っているんだから。

 例えば、武力行使じゃない、こういうふうに言っておられますよね。もう、ことごとく武力行使じゃない、こう言っている。物を運ぶ、食糧を運ぶ、あるいは武器を運ぶ、油を運ぶ、こういうのは武力行使じゃない、こういうふうにおっしゃっているわけでしょう。

 そういう解釈の仕方もあるのかもしれません、百歩譲って。しかし、古今東西、戦というのは、鉄砲だけでやる戦というのはないんですよ。だから、総理のおっしゃっているのは、まさに最前線のドンパチやっているところだけが武力行使の地域だ、こういう意味でしょう。武力行使じゃないんでしょう。最前線のドンパチやっているところのことを総理の言っている定義の武力行使と言っているんでしょう。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 そういう意味で今回の新法を形成しているわけであって、その武力行使と一体化の議論を始めますと、それは延々と切りがない部分があります。私は、武力行使をしない、戦闘行為に参加しない、戦場には行かない、戦闘が継続して行われるところには行かない、そういう範囲内の中でこの憲法の九条を守ることができるんじゃないかと言ってこの法案を提出しているわけであります。

 それは守れない、憲法違反だという意見もあるのは承知しています。もともと、自衛隊だって、戦力を保持しない、自衛隊が憲法違反だと言う政党もいるんですから。だから、憲法というのはいろいろ解釈があるということを言っているんですよ。はっきりしていないのがあるでしょう。あなたも認めると思いますよ。もともと、今の憲法の解釈についてはっきりしていない部分があるんです、解釈によって。それは認めますよ。(発言する者あり)させればいいというのでは、憲法を改正しよう、あるいは自衛隊を解散しよう、はっきりすると言う人はいます。しかし、そうではないだろうと。

 いまだに本当に自衛隊は戦力を持っていないのかといえば、戦力がありますよね、自衛隊。しかし、憲法違反と思っている政党は少ないでしょう。こういう点もあいまいといえばあいまいじゃないですか。あいまいを認めない人の方が少ないと思いますよ、今の憲法。

 そういう解釈の中で、武力行使とは何か、戦闘行為とは何か、そうじゃないという、やはり戦闘行為には参加しない、武力行使はしないという中で国際協調と憲法九条を守るという努力をしてきたのがこの新法ですよ。

山岡委員 それは何だってあいまいさはありますよ、それはね。何だってあいまいさはある。しかし程度の問題だ、こういうことを言っているんですね。

 総理、いつも言っているでしょう。常識の範囲だと、こういうふうに言っていますよね。やはり、総理の常識と一般常識が若干食い違っているんじゃないか。やはり偉い人の数の方が少ないのかもしれませんけれどもね。

 食糧、水、服、燃料、武器弾薬、こういうものを補給する、あるいは兵器の修理をする、整備をする、そして、今回は米兵ですけれども、その捜索をする、救助をする、治療をする、これは確かに最前線でちゃんちゃんやっているんじゃないが、国語的に言ったら武力行使そのものですよ。古今東西武力行使そのものだ。日本のこの国におけるこの国会のこの答弁だけだ、武力行使じゃないなんて言っているのは。

 例えば、歴史を見ていただいたらわかりますが、小泉総理の言う武力行使じゃ、みんな全滅ですよ。みんな負ける、戦いに。例えば、小泉総理も歴史が好きだから私も申し上げますが、では、漢を開いた劉邦と項羽、項羽の方が圧倒的に強かったんですよ、武力は。軍勢も多かった。ところが、彼はちゃんちゃんばらばらばかりが戦争だと思って、どんどんどんどん自分で先に進んでいっちゃう。兵たん部隊がついてこれないんですよ、強いから、行っちゃうから。ところが、劉邦というのは、自分は大して強くないけれども、そういうものを全部軍団に包みながら進んでいって、そして最後にこの劉邦が勝利をおさめているんですよ。だから、最前線だけが戦争だなんというのは、これはもう本当に戦争にならない。

 例えば、総理、わかっていただくために申し上げるけれども、武田信玄というのがいますね。家康に言わせればもう最高の武将だそうですよ。なぜ彼が天下をとれなかったか。いろいろな理由がありますよ。しかし……(発言する者あり)死んだからですよ、早くにね。それは単純だわ。これだけ単純に考えていれば物事は簡単。あなた、やじらないと言ったでしょう。約束違反はだめだよ、政治家は約束破っちゃ。

 それは、甲斐の国にいたんですよ。要するに、信長や秀吉のように、京都の近くで穀倉地帯で、すぐ兵たんがもう整っている、そういう軍勢じゃなかったんですよ、強かったけれども。騎馬武者は、あの当時日本一強かったんです、戦車隊なんですから。しかし、幾ら戦車がよくたって、油が来ない、弾が来ない、食べ物が来ない、それじゃ勝てないんですよ。勝頼も同じ轍を踏んで滅んだんです。ナポレオンだって、あるいはかつてのヒトラーだって、兵たんを無視して出ていって、最後にはみんな負けているんですよ。

 これはもう古今東西、人のやる戦争なんて決まっているの、みんな。新しい戦争なんてないんですよ。ゲリラが出てきたから新しい戦争だ、新しい法律だなんて言っているけれども、ゲリラなんというのは、徳川家康のときに一向一揆というのがあって、もう日本じゅう大変だったんですよ。国なんかないんだから。形態が変わるだけで、そんな人間なんて変わらないんですよ。そしていつも新しい戦争だって言っているの。

 この間の湾岸戦争のときに、海部総理は、これは新しい戦争だと言ったんですよ。第二次世界大戦のとき、第一次世界大戦のときも、これは新しい戦争だと言っているんですよ。そのときの人にしてみれば、みんな新しい戦争なんですよ、確かに。しかし、原点は同じなんですよ。だから、これをもって武力行使じゃないとか戦場じゃない、そんなことを言っていたら、自衛隊の皆さんかわいそうですよ、そういうことで行かされるんだったら。

 副長官のところにもひそかに来たって、どこかで副長官がしゃべったという記事がありましたけれども、多分しゃべってないんだと思いますけれども、お立場もあるから。それは、私のところにも来ていますよ。我々は軍人だから戦地に行くのは別にいとわないと。軍人だから死ぬのもいとわないと。しかし、こういう、戦場を知らない、戦地を知らない、こういう部屋でつくられた法律の中で私らは行かされるのはたまらないと、こう言っているのですよ。よくわかりますよ、そういう点では。だから、これをもって武力行使じゃないと、武力行使じゃないところに自衛隊を行かすのだ、そんなばかな法律は日本だけですね、これは。

 だから、これは本当に時限立法だからいいという代物じゃないですよ。別にそんなに緊急の、あした行かなきゃならないというものでもないと最初申し上げたでしょう。だから、今からでもちっとも遅くないんですよ、この先もあるのだから。そういう基本的なことをしっかり踏まえて検討して、いろいろな人の意見を聞いて、総理と私の意見もこうやって食い違っているけれども、長く聞いていただけば、山岡の言うこともなるほど少しは本当みたいだなと思えるでしょう、うそをついているわけじゃないのだから。

 だから、一方的に、そうなっているんですよ、その範囲なんですよ、私がそう言っているのですからと、そういうわけにはいかないのですよ。これは大変危険だ。

 そういうことで、総理、最後に申し上げたいと思います。あと時間どのくらいですか。(発言する者あり)十分前ですと書いてある。

 総理が、新法でやろう、武力行使ではない、戦闘地域ではない、こういうふうに口で言っておられる。しかし、このことは、討論するつもりはありませんけれども、意見はこうやって違うかもしれませんけれども、私を含めてかなり多数の人が、今回やろうとしていることは集団的自衛権の行使以外の何物でもないと思っているのですよ、総理は思っていないかもしれないけれども。この中で、本当だったら一人ずつ私は聞いていきたい、あなた、本当に違うと思っているかと。私のメモには書いてあったんだけれども。女性の閣僚の方もたくさんいらっしゃるけれども、私は聞いてみたいと思っていたのです。これはもう紛れもなく集団的自衛権の行使以外の何物でもないのです。

 私ども自由党は、集団的自衛権の行使は抑制的に行われるべきものだ、こういうふうに思っているのですよ。誤解しないでいただきたいのです。集団的自衛権で行け行けどんどんだ、小沢一郎と自由党はそうだと思われては困るのです。そうじゃないのです。これは、憲法にも書いてあるから、本来は抑制的に使わなきゃならない、こういうふうに思ってはいるんですよ。だから国連主義だと言っているんですよ。

 しかし、この法律をもしこの国会で通して、これを実施しようというなら、これは、今まで法制局はかたくなに否定してきた。法制局の方も本意じゃないと思いますよ。前任者が言ったから言うんだというところもあるかもしれませんよ。もうこの辺で、本当は違うと言いたかった人もたくさんいるんじゃないかと思います、今まで。

 しかし、法制局の皆さんに責任を押しつけるのは酷ですよ、仕事でやっているのですから。法制局は内閣に所属しているのですよ。内閣というのは、国民から選ばれた内閣総理大臣が最終的決定を下すのです。だから、法制局がそう言っているがと言うのは、これは政治家の逃避ですよ。法制局の皆さんがかわいそうだ、ねえ、津野さん。いや、あなたに聞いていない、かわいそうだと言っているのです。

 そこで、総理、もしこれをやろうとしたら、総理は今までの総理と違うところがある、御自身で決断をして実行できるというところが今までの総理と違いますよ。だから、ここは総理の責任において、集団的自衛権を認めて、やるんだ、こういうふうにお言いになったらどうですか。そして、それは自分一人の判断では決められないともし思うなら、総理の責任は、国民に責任を負っているのですから、国民に信を問うていただいたらいかがですか、総理。

小泉内閣総理大臣 今回のテロ撲滅に対する対応というのは国によって違いますが、日本としては、個別自衛権とか集団自衛権の行使によってこれに立ち向かおうとしているんじゃないのです。

 今、戦争という話が出ましたけれども、これは確かにテロとの戦争でしょう、言い方をかえれば。戦争という言葉は、経済戦争とか交通戦争とかいろいろ言葉は使われます。確かに、兵糧攻めという言葉はありますよ、武器弾薬を使わないで兵糧攻めという、昔から。よく御存じでしょう。そういうことからいえば、戦争の定義は広い。すべてが武器弾薬だと言えば言えないこともない。しかし、日本としては、武力行使をしないという前提であります。だから、武力行使をしない、その中で何ができるか。

 自衛隊が行くにしても武力行使しないのです、戦闘行為に参加しないのです。そういう中でこのテロとの闘いに、テロの撲滅に、防止策に何ができるかということを考えたのであって、戦争じゃないかという議論はわかりますよ、言っているのは。

 しかし、その枠内で、憲法の範囲内で、国際協調という枠内で、そして武力行使をしないという中で考えたので、私は、他の国は集団自衛権でこのテロに立ち向かっている、アメリカは個別自衛権でこのテロとの闘いに向かっている。日本は集団的自衛権でもない、個別自衛権でもない、国際協調だと。その中で日本ができること、自衛隊が新たな任務を持ってできること、そういうことで国際協調の対応でやっているという、その独自の考え方でやっていることを御理解いただきたい。

山岡委員 ではこれで終わらせていただきますけれども、総理、個人的な親近感として申し上げますが、だんだんだんだんただの総理にならないでいただきたいのです。やはり小泉総理は小泉総理であっていただきたい。ここで、この重大時にそういうことをちゃんと決断して、責任を持って、政治家総理が責任を持って、国民に対して責任を持ってやる、そういう政治をぜひやっていただきたいと思います。ありがとうございました。

加藤委員長 これにて山岡君の質疑は終了いたしました。

 次に、児玉健次君。

児玉委員 日本共産党の児玉健次です。

 質問に入る前に一つ、総理に伺います。

 本日、東京都の発表で、狂牛病に感染したと疑われる牛が、食肉市場で十日に既に解体された牛の中から見つかったということです。まだ最終的な確認はされておりませんが、消費者、畜産農家、肉の販売店や飲食業者に対して大きな衝撃を与えています。

 問題は、疑われる牛が流通ルートに乗ってしまったことです。これだけ狂牛病が問題にされている中で、なぜ検査結果が出るまで屠畜場にとどめておくことができなかったのか。こんなことをやっていたら、消費者の不安、不信はさらに広がりますし、日本の畜産業は大きな打撃を受けることになります。

 事実の徹底的な解明と、食品の安全を最優先する迅速な対応を政府に求めたいと思います。総理の御答弁をお願いします。

小泉内閣総理大臣 東京都の食肉市場で狂牛病と疑われる牛が発見され、今確認をしているところでありまして、結果が判明するのはたしかあすになるのではないでしょうか。

 詳しいことは担当大臣から答弁させます。

坂口国務大臣 御指摘をいただきましたように、現在厚生労働省が実施をしておりますBSE技術研修でございますが、その技術研修に、東京都の中央卸売市場の食肉市場から提供されたサンプルがございまして、そのサンプルのスクリーニング検査を行っておりましたところ、そのうち一検体が陽性と判明をいたしました。

 ですから、正式に検査を始めましたら、どの牛からそれが出たものかということはすぐにわかる態勢になります。今回の場合には、これは検査をするためのいわゆるサンプルとして提供された、その中から出たということなものでございますから、どの牛から出たものという決定が少しおくれているようでございますけれども、きのうそういうことが疑われたものでございますから、その疑われております牛につきましての出荷は停止してほしいということをきのう申し入れてあるそうでございます。

 現在そういう状況でございまして、今総理からお話がございましたとおり、今夜遅くかあすには正式の確定検査の結果が出るということでございます。

児玉委員 必要な措置を迅速にとっていただきたい、重ねて要望します。

 さて、アフガニスタンに対する軍事攻撃が開始されて既に五日間が経過しました。罪のない市民に犠牲が及ぶことは許されません。多くの人々が事態の推移を深く憂慮しています。卑劣なテロを根絶するために、日本が国際社会と協力して最も寄与し得る道は一体何なのか、そのことについて真剣で冷静な論議を尽くしたい、私はそう思います。

 まず、法案の内容に即して尋ねましょう。官房長官に伺います。

 この法案の目的、第一条は、九月十一日のテロ攻撃によってもたらされている脅威の除去に努めているアメリカ合衆国その他の外国の軍隊の活動に対して、日本の自衛隊が協力支援活動などを行う。「我が国が実施する措置」と言っていますね。そういう法体系になっていると私は理解しています。

 ここで言う脅威の除去に現に米軍等がアフガニスタンで行っている軍事攻撃は該当するのか、それとも該当しないのか。まず、そのことに絞ってお答えください。

福田国務大臣 ただいまの御質問にお答えするわけでありますけれども、先般のテロ攻撃は、国連安保理決議において、国際の平和と安全に対する脅威と認められております。このテロ攻撃によってもたらされている脅威の除去に努める今般の米国等による行動は、国際の平和及び安全を維持することなどの国連憲章の目的達成に寄与する性格を有しております。

 また、米国は、これは十月七日付国連安保理議長あて報告において、九月十一日の攻撃並びにアルカイダによってもたらされた米国及び米国国民に対する今も続いている脅威について説明した上で、さらに、今回の米軍等による行動が九月十一日の攻撃に対してなされ、また、米国に対するさらなる攻撃を防止及び阻止するために計画されたというものであるとしております。

 そういうようなことに対しまして、安保理においては、批判的な発言をする国はなかったと。(児玉委員「該当しているか、該当していないか、それを聞いているんです」と呼ぶ)ええ、ですから、そう説明しています。と承知しております。我が国政府としても、今般の米国等による行動が、自衛権の行使として正当なものと考えております。

 以上のことから、米軍等による現在の軍事行動は、第一条第一項に言うテロ攻撃によってもたらされている脅威の除去に努めることにより国際連合憲章の目的の達成に寄与するものであると考えております。

児玉委員 該当していると。そうなると、この問題は、予測の問題、仮定の問題ではなくて、現実の問題になります。

 そこで、第二条における協力支援活動についてお尋ねしましょう。

 まず、我が国自衛隊がこの新法によって協力支援する相手である米軍等は、脅威の除去のために現在どのような活動をしているか。私は、米軍に絞ってで結構ですから、アフガン周辺での米軍が展開している兵員、軍用機、艦船の展開状況を外務大臣からまず示していただきたい。

田中国務大臣 兵員数二万九千人、軍用機三百四十九機、両用戦部隊一個、空母戦闘群二個。以上でございます。

児玉委員 それに加えて、けさの報道によれば、横須賀を母港にする米空母キティーホークが既にパキスタン領海近辺に入ったことが確認されていますね。そして、このキティーホークは特殊部隊出動の洋上基地となる模様だ、このように報道もされています。

 そこで私は言いたいんですが、米軍は、日本時間で十月八日未明の空爆開始以来、五夜連続でアフガニスタン全土に対する空爆を集中的に実施しています。新聞報道によれば、第一派攻撃に参加したのは、B2ステルス爆撃機二機、これは米本土から出撃し、空爆後はインド洋のディエゴガルシアで給油を受けて本国に帰還しているようです。ディエゴガルシア基地から出撃したB1、B52爆撃機は合わせて十三機。洋上に展開する空母エンタープライズ、カール・ビンソンから飛び立つF14、F18は合わせて二十五機。米英の艦船、潜水艦から発射された巡航ミサイル、トマホークは五十発です。そして、ごく最近の状況としては、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストの報道するところによれば、特殊部隊の投入、ウズベキスタンに特殊部隊、山岳部隊が派遣されて、地上戦の様相が非常に濃くなっている。

 そういう状況で、この法案第二条、自衛隊は協力支援活動として、米軍に対する補給を担当することになります。官房長官、別表第一の冒頭にある「補給」、「給水、給油、食事の提供並びにこれらに類する物品及び役務の提供」、その場合に、その数量、種類、引き受け地点、引き渡し地点または引き渡し海域、それぞれの日時、それぞれというのは引き受ける日時と引き渡す日時、これらはどのように決定されるのか、米軍等との協議はどうなるのでしょうか。

    〔委員長退席、亀井(善)委員長代理着席〕

福田国務大臣 具体的なことはこれから詰めるわけでございますけれども、一般的に申し上げれば、必要のないものをこっちからどんどん送ったってしようがないわけですからね。やはり向こう、米軍及び協力する諸外国、そういうところと協議して、ただ、その中心的な活動をするところは米軍ですから、恐らく米軍になると思いますけれども、協議をしてそして何が適当であるか。そしてその供給、日本から供給できるもの、これを主体的に決めて供給する、こういうことになります。

児玉委員 長官、もう少し詰めて聞きたいんですが、既にこの問題は現実の対象になるわけだから、例えば食糧についていえば、どのような種類の食糧をどのくらいの数量で、そしてどこでそれを引き受けてどこに引き渡すか。日本が主体的、一方的に判断するわけではないでしょう。米軍とどういう協議をすることになりますか。

福田国務大臣 ですから、具体的なことはこれから詰めるわけですね。決定していかなければいけないし、その過程においていろいろ相談をしなければいけない。そういうこと、その相談によって、協議によって決めていくわけです、品目も数量も。

 今時点、きょう現在そういうニーズが発生しているというふうには私は思っておりません。

児玉委員 別表第一における「輸送」、武器弾薬の輸送、これも米軍と武器と弾薬の種類、数量を協議し、引き渡し地点まで日本が輸送することになる、その点も同じですね。長官、どうですか。

福田国務大臣 同じと考えて結構です。

児玉委員 防衛庁長官に伺います。

 そうすると、米空母エンタープライズを中心として洋上に展開している空母機動群、インド洋のディエゴガルシア基地、そこからB52とB1爆撃機がアフガニスタンに向けて出撃しています。それぞれに対して武器弾薬を自衛隊が輸送して引き渡す、法案はそういうものだと受けとめていいですか。

中谷国務大臣 具体的な艦名とか地名につきましては、まだ新法もできておりませんので、基本計画も定まっておりませんので申し上げられませんけれども、基本原則といたしましては、戦闘地域が行われていない、また将来において行われることのないと認められる地域におきましては可能でございます。(発言する者あり)戦闘行為です、戦闘行為が。

児玉委員 戦闘行為が行われておらず、かつそこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認めるところには武器弾薬を運ぶことができる、そのように長官は今答えた。

 ところで、自衛隊が米軍の武器弾薬を輸送して米軍に引き渡す、その武器弾薬がアフガニスタンでどのように使われるか、日本に対して事前に通知されますか、防衛庁長官。

中谷国務大臣 現時点において、米軍から具体的な要請もニーズも来ておりません。また、将来のことにつきましても、そういった作戦行動に関することにつきましては、我が国としてはかかわらないというふうに承知をいたしております。

児玉委員 総理に聞きますが、脅威の除去の対象が、極めて悔しいことだけれども、九月の十一日に既に惹起している。事柄は仮定の問題でもなければシミュレーションの問題でもありません。私たちはこの法案に反対ですが、あなたが既にこの法案を出している以上、法律というのは将来に予測されるさまざまな問題についてそれをカバーしなければなりません。仮定だとか予測できないという形での議論は、この際慎まなきゃいけない。

 そこで、私は総理に聞きたい。今、防衛庁長官は、アメリカからの要請もないし、米軍の作戦行動の内容にも触れることになるからという形で、私が聞いた、日本の自衛隊が輸送することになるかもしれない武器弾薬の使用の場所、何を標的にしてそれが使われるのか、そういうことについて、私が今聞いた限りでいえば、よくわかる答弁はなかった。総理、あなたはアメリカに対して、この武器弾薬を輸送することになるとすれば、それが何のためにどこでいつ使われるのか、そのことを聞くのが当然だと思いますが、総理、どうですか。

小泉内閣総理大臣 物資協力の中で、この物資がどこに何に使われるかと聞くわけないでしょう。

 それは、今回の戦争というのは全く違うんです。今までだったら国家対国家で、宣戦布告があったとしてもなかったとしても、どこに攻撃されるか目標はわかるわけですよ。相手も、どこから弾が撃ってくるか、国と国との戦いですから、戦場も大体見当がつくんです。今回は、見えない。標的はどこだと言わないんですから、テロリストは。それで、武器でない民間の飛行機も武器に使っちゃうんですから。戦場でないところでも、いつ起こるかわからない。そういう状況に、全く今までの戦争の定義に当てはまらない闘いに今世界が立ち向かおうとしている。そういう中で我々としても、戦闘行為には参加しないし、戦場には出向かない、そういう中で、できるだけの物資協力についても協力しましょうと。

 ですから、どこの基地から武器が運ばれるか、この物資が、水にしてもあるいは医療器具にしても武器にしても弾薬にしても、これ、どこで使われるから運びます、どこで使われないから運びません、そういうことはしないですよ。しかし、武力行使はしません、戦闘行為には参加しません、そういう中でできるだけの協力をしようということであります。

児玉委員 総理、あなたとは随分今まで議論をしてきたけれども、やはりこの議論は正面からやりたいんです。私が先ほど聞いたのは、物資一般について聞いたんではないんです。武器と弾薬の輸送に限定して聞きました。それが一つ。

 それから、あなたは今、見えない敵だ、標的がどこかわからないとおっしゃったけれども、現に米空軍等が実施している空爆は、明確な目標に向けてピンポイントの爆撃をしようとしているじゃないですか。標的は明白ですよ。そういう中で……(発言する者あり)ちょっと。そういう中で、この武器弾薬がどの目標に向かってどのように使われるかということの説明を求めないということは、一方では武器弾薬の輸送を担当しながら、すべてをアメリカに対して白紙委任で進めるということになりませんか。どうですか。

小泉内閣総理大臣 今、確かにアフガン、戦場になっています。タリバン、あるいはその関係するウサマ・ビンラーディンの潜んでいるであろうと思われる地点。しかし、私が今言ったのは、どこがねらわれるかわからないと言ったのは、相手、テロリストがどこをねらわれるかわからないという意味で言ったわけです。相手は、今、タリバン、ウサマ・ビンラーディン、あの拠点を攻撃しているのはわかっています。

 そういう際に、我々は、その戦場には当然、この新法ができたとしても自衛隊は派遣しません。しかし、この国内に輸送する物資、現行法でもできるんですから、武器でも弾薬でも。それを一々、これはアフガンで使われますか、どこで使われますか、そういう聞くようなことはしませんよ。

児玉委員 私は今、日本の、東京から博多に運ぶ何かについて聞いているわけじゃない。私が聞いているのは、アメリカが引き受けを求めている地点から、例えばディエゴガルシアにどう運ぶか、武器弾薬を。そのことを聞いている。

 そこで言いたいのは、武器弾薬は武力行使の主役ですね。何といっても主役ですよ。自衛隊による武器弾薬の輸送、引き渡しは、先ほどの官房長官の一般的な御説明からもわかるけれども、米軍のニーズ、求めによることになるでしょう。米軍のニーズ、求めはどのようなところから出てくるか。それは米軍そのものの作戦計画に基づいて出されるんじゃありませんか。そうなると、武器弾薬の輸送はまさしく戦闘行為、武力行使への参加そのものじゃありませんか。総理、どうですか。

小泉内閣総理大臣 共産党はそういう態度をとっていますが、我々はそういう態度をとっていないんです。武力行使に当たらない。そこを憲法の解釈でやっているわけです。そこは意見が違います。それは認めます。どこまでが武力行使か。それは、我々は武力行使ととっていないわけです。

 武力行使をしないという、そこの解釈に幅があるといえば認めますよ。今の憲法解釈、今、共産党と全然違うんですから。共産党は自衛隊も今憲法違反の存在だと言っているでしょう。我々は自衛隊は憲法合憲だと思っているんですから。同じ憲法でも解釈が違う。当然武力行使も、我々は、物資の輸送、武器でも弾薬でも武力行使に入らないと解釈しているわけです。それは解釈じゃないと言っているのは認めますよ、意見の違い。それは国民が判断するわけですから。(発言する者あり)

亀井(善)委員長代理 委員以外の方の発言を、静粛にお願いします。

児玉委員 総理、今のあなたのお答えには幾つかの大きな問題がありますね。私は、一つは、自衛隊が運ぶであろう武器弾薬の輸送の実態的な問題を今議論しているんです。憲法の解釈の問題はそのうちやりましょう。

 そこで、あなたが武力行使をしないと言えば、あなたの言葉で、どのような実態であろうと武力行使にはならない、このロジックは通用しませんよ。全く通用しませんよ。もしあなたが武力行使を行わないと言うのであれば、武力行使を疑わせるようなすべてを取り除いたらどうですか。どうですか。

小泉内閣総理大臣 疑い出したら切りがないんであって、自衛隊は合憲、自衛隊は違憲という二人でやっているんですから、それは解釈は幅がありますよ。

 だから、私は、日本政府は武力行使はしない。武器弾薬を運ぶことがあるかもしれない、ほかの物資を運ぶことがあるかもしれない。さっき食糧だって武器になり得ると言う人がいるんですから。それは解釈、幅がありますよ。

 しかし、その見解は違う。我々としては、武力行使はしない、武器弾薬は輸送しても武力行使はしない、戦場には行かない。その中で、憲法九条と国際協調のぎりぎりの日本の責任を果たそうとしているのが今回の新法なんです。

児玉委員 私は、今の総理の言葉を聞いていたら、昔の話を思い出しますね。王様がイノシシを見て、イノシシなんだけれども、これは豚だと言ったら豚になりますか、なりませんよ。実態がイノシシであれば、あくまでそれはイノシシです。

 今問題になるのは、武器と弾薬を輸送する、しかもそれは米軍のニーズによるんですから、米軍の作戦計画の実行の重要な一部を日本の自衛隊が担当することになるんです。まさしくそれを指して世界全体では武力行使、武力行使への参加と見ています。そこのところは解釈の違いではありません。どうですか。

小泉内閣総理大臣 それは解釈の違いがありますよ。

 それは、法的な定義はともかく、武器とか弾薬を現行法でも自衛隊はできる。しかし、ある地域によっては、この新法によってやった場合に、その武器弾薬、日本の武器じゃないですよ、米軍の武器弾薬を輸送した場合に、米軍がどこで使うかわかりません、日本は。それをもって戦争に巻き込まれるという議論は、考え方としてはわかります。それはもう前から行われた議論です。

 アメリカに基地を提供すれば戦争に巻き込まれるという議論は、もう日米安保条約を締結する以前から行われてきた問題です。結果的に、日本は戦争に巻き込まれないで今まで来たんですよ。だから、その議論というのは解釈の幅があります。日米安保条約を結べば必ず戦争に巻き込まれると言っていたでしょう。しかし、我々はそうじゃないと言って、今まで現実が証明してきた。

 だから、今回も、我々は武器弾薬を運ぶかもしれないけれども、武力行使はしない、戦場には行かないという歯どめをかけているんです。その中で、国際協調をしてテロにみんな世界が立ち向かっている、日本の国力に応じてできるだけのことをしようと。その武器弾薬の輸送はごく一部です。水も運ぶし、医薬品も運ぶし、いろいろな物資の中の一つに入っているかもしれない。当然、自衛隊だけじゃありません。民間のお医者さんも行くでしょう、民間のNGOも行くでしょう。外交努力、経済努力、いろいろな努力もしますよ。その中で自衛隊のできることをやろうと。しかし、自衛隊を派遣しても武力行使もしませんよ、戦場にも行きませんよ、その中でできるだけの協力は国際社会とともにしますということですから、解釈の違いは認めますよ。そもそも自衛隊が合憲か違憲かで違うんですから、あって当たり前、解釈の違いがあって当たり前ですよ。

津野政府特別補佐人 先ほどイノシシを豚と言えば豚になるというような話がありますけれども、そういうところではございませんで、武力の行使といいますのは、これは従来から政府としてはきちっと定義をして使ってございます。それは、憲法第九条第一項の「武力の行使」とは、我が国の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為をいうというふうに、従来からきちっと定義をして使っておりまして、それに当たらない行為につきましては憲法九条第一項の「武力の行使」にはならない。

 それから、ただ武力行使との一体化の議論がございまして、他国の武力の行使と一体化するような行為は武力行使と同様に法的には評価されるということで、その点につきましても、今回の法案におきましては、そういったことが起こらないようなそういった手当てをしているわけでございます。

児玉委員 国際的な武力行使の一環として行われるものとして、私は自衛隊による武器弾薬の輸送のことを今指摘しているんです。そして、一体化する行為、アメリカ軍の軍事行動は任意に行われるものじゃありません。非常によく準備された緻密な作戦計画に基づいて遂行されるものです。その作戦計画の中の最も重要な一部を日本の自衛隊が担当することになるんですから、これは一体化する行為じゃありませんか。

 私は言いたい。小泉総理は、私どもの参議院での議論の中で、今アフガニスタンで地雷を除去するためのNGOの大変な苦労がされていますね。そのNGOの拠点が先日攻撃されて、四人の現地の職員が亡くなられた。なぜだろうか。最初は、米軍の航空機に対するタリバンの側の対空砲火がもたらしたことではないかというふうなことが言われていたけれども、きのう、きょう明らかになったのは、発射された四発のトマホークのうちの三発は行方がわかるけれども、一発については不明、そういう言い方で、一発があそこにどうも命中したらしいということを極めて間接的な言い方で、今、米の当局者は判断しつつある。

 私は、そこで言いたいんです。

 武力行使をしないと言えば武力行使にならないんだったら、これは法案の審議など要りませんよ。皆さんの法案の中にどう書いているか。実に見事に書いていますよ。第二条第二項「対応措置の実施は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。」こう書いてあるんだから、何やったって大丈夫だということになりますか。決してそうはならない。こう書いてあるからこそ、それが憲法九条で厳しく禁止している武力による威嚇、武力の行使になるかならないか、そこを厳しく見なければなりません。

 私は、総理に言いたい。

 私は、今度のアフガンに対する米軍等の攻撃を本当にいたたまれない気持ちで受けとめます。恐らくあなたもそうかもしれない。私は、大変、戦争中に広島にいました。小学校の六年のときに、アメリカのグラマンという艦上戦闘機の機銃掃射から逃げまどった経験があります。そして、八月の原爆投下は集団疎開によって辛うじて生き延びて、今ここに立っています。それだけに、もし日本、自衛隊が輸送を分担する武器や弾薬によってアフガニスタンで子供や女性や罪のない市民が犠牲になるとすれば、本当にいたたまれない気持ちがする。許せません。

 この思い、小泉さんはどうですか。

小泉内閣総理大臣 それでは、テロリストを放置して、テロ組織を温存して、この組織を支援する勢力を残しておいて、これから我々はテロの危険がないと言えるんでしょうか。無関係のニューヨークの、日本人も二十数人が犠牲になっている。五千人、六千人の人が殺されている。まだテロを予告している、しかも、あの組織は。何もしなくて、これから世界が、全部、このテロ根絶のために闘おうとしているときに、日本が……(発言する者あり)

亀井(善)委員長代理 お静かにお願いします。

小泉内閣総理大臣 国力に応じて、このテロとの闘いに世界が立ち上がっているときに……(発言する者あり)

亀井(善)委員長代理 委員外の方は静かにしてください。

小泉内閣総理大臣 できるだけの支援協力態勢をしようと。しかし、ほかの国は武力行使も辞さないと言っている国がある。日本は、武力行使はしない、戦場には行かない、その範囲内、憲法の範囲内でできるだけの努力をしようというのであって、断っておきますが、自衛隊が武力行使をすることはありませんよ、絶対に。自衛隊が戦場に行くことはありませんよ。

 しかし、自衛隊が輸送した中に、物資が、実際の武力行使に使われる場合は否定しませんよ、どこか。そこまで一々……(発言する者あり)無辜の民、奪うというのは、今、奪われているんじゃないですか。何もしなくて奪われているんじゃないか、無辜の人たちは。これに対して放置しておいて、では、これからずっと……(発言する者あり)

亀井(善)委員長代理 委員外の方は静かにしてください。再三注意をいたします。

小泉内閣総理大臣 奪われないと保証できるのか。我々はこのテロとの闘いに傍観者ではあり得ません。人ごとではない。みずからの安全のために世界と一緒に何ができるかと考えているのです。これは私は、今のアメリカ初め世界がアフガンに対してテロリスト拠点を攻撃している、それは無関係の人が殺されるというのは忍びないですよ。しかし、このまま何もしないで、我々が殺されないという保証はない。いつ無関係の人がもっと殺されるかもしれない。それに対して放置しているのですか。それはできないと思います。

児玉委員 総理、私たち日本共産党がこの九月十一日に惹起した極めて卑劣で許しがたいテロに対して何もしないという言い方は、侮辱です。全く違います。

 今まで私たちがこの問題でどういう提起をしたか。首相のあなたがいらっしゃる前に、志位委員長から私たちのあなたに対する申し入れを受け取ったでしょう。その中で私たちは、何よりも許しがたいテロリズムを根絶しないことには二十一世紀の将来はない、そのことをはっきり言って、犠牲者に対する心からの追悼と、そしてこれを根絶していく道の最も確かな道として、法による裁きを私たちはあの段階で提起をした。そして、出てこないから、どうやってそれを政治的に包囲をしてそこに至るか、それが問題ですよ。

 総理、確かに今度のテロは今までに比べて比類がないぐらい深刻で、大規模で、許しがたいものです。それに対する国際的な法の裁きが、それでは無力か。

 例えば、ルワンダでどんな事態が起きましたか。フツ族とツチ族との間に起きた深刻なあの事態をあなたは御存じでしょう。八十万人から百万人の犠牲者を出した。国連の安全保障理事会が九四年十一月にルワンダ国際法廷を提起して、そして、ジャン・カンバンダ元首相に対する裁判は既に終結しました。終身刑になった。

 そして、旧ユーゴスラビアの国際法廷ではどうだったか。これまた極めて大規模な、残念な事態です。まさしく人道に対する罪です。九三年五月、国連安保理事会が人道に対する罪でこのことに対する裁判を提起して、今ミロシェビッチ大統領等が裁かれているではありませんか。

 私たちは、そこに向けてどうやって国際的な包囲を強めていくのか、そのことを問題にしている。

 そこで、私は言いたい。

 あなたは憲法の枠内でと言うけれども、憲法に対して最も謙虚でなきゃならないのはだれでしょうか。それは内閣総理大臣ですよ。そもそも憲法典は、権力担当者を抑制し制限する手段として生まれたものです。憲法の基本的枠組みは、権力の担当者によってこそ最も厳しく守られなければなりません。それを憲法の枠内だということで、解釈が違うから、これは許されないことです。

 やはり私は、具体的な問題をここで議論したいと思うのです。

 先ほど官房長官は、予測できない、想定できないとおっしゃった。今の事態は、もうそんなことを言っていられる事態ではありませんね。アメリカの国防総省が十月九日に明らかにしたところによれば、合衆国の中央軍、USセントラルコマンド、合衆国中央軍は、アフガニスタンとその空域、及びその近海、これはザ・シーズ・ニアと言っています、複数で、一つの海じゃありません。それらを戦闘区域、コンバットゾーンとして設定するように要請しました。アフガンは海に面していません。その近海といえば、ペルシャ湾、アラビア海などでしょう。

 ちょっとこれをごらんください。これがアフガニスタンです。もうよく御存じです。アフガニスタンの領域とその上空と、そして近くの幾つかの海、それを米軍はコンバットゾーン、戦闘区域として設定する。この場所に自衛隊が行きますか。この場所に自衛隊が武器弾薬を運びますか。答えてください。

    〔亀井(善)委員長代理退席、委員長着席〕

福田国務大臣 何度もお答えしていると思うんですけれども、要するに、戦闘する地域には行かないということですよね。そういうところには輸送も行わない。要するに、今度の新法によって行う自衛隊の活動の中には含まれないということであります。ですから、戦闘地域と指定されれば、そこには行けないと思います。

児玉委員 今のは非常に重要な答弁ですね。

 アフガニスタンとその領空はコンバットゾーンである。そして、ここのアラビア海、そしてペルシャ湾、もしかしたらカスピ海がどうなるか、よくわかりません。要するに、その近傍の海域、それが戦闘区域として米中央軍によって設定されるように大統領に要請された。

 トマホークはどこから発射されたか。この海にいる潜水艦その他から発射されていますね。今まで、発進した航空機が相手側の攻撃の対象になるかどうかの議論はかなりしてきました。航空機は、パイロットが操縦しているから指示があれば引き戻すことは可能です。トマホークやミサイルの場合はそうはいきませんから、この辺の艦船から発射されたら、もうそれは明白な軍事行動そのものになる。

 今、官房長官は、そういう戦闘区域にはこれは派遣もしない、輸送しない。当然のことだと思う。総理、どうですか。

中谷国務大臣 まず、アメリカの戦闘区域と、我が国の、戦闘地域というか定めるところは違います。

 それから、先ほど官房長官が言われた戦闘区域というのは、現に戦闘行為が行われていない地域でありまして、戦闘行為とは何かといいますと、現に人が殺されたり物が壊されている、そういう地域でございます。

児玉委員 総理、現に軍事行動を行っている米軍自身が、コンバットゾーンというその明示をしようとしているのですよ。それとこの法律で言う戦闘行為、戦闘という点での違いがありますか。

 そして、しかも皆さんはこの中でこう言っているじゃないですか。「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為」、まさしくそれですよ。それが行われる場所として戦闘区域を設定しているんだから、そこに行けないということははっきりしているじゃありませんか。

 この点について政府の見解を、私は、今官房長官と防衛庁長官との間に違いがあるから、統一したものを出してほしい。

福田国務大臣 先ほどおっしゃったのは、米軍が言っている戦闘地域ですね。コンバットゾーンというんですか。専門用語でちょっと私もよくわからなかったんですが、この米軍の指定と、それから戦闘行為が行われない地域という新法で決めているこの地域というのは、定義は意味が違うんだ、こういうように御理解いただきたいと思います。

児玉委員 それではだれも納得しませんよ。現に今軍事行動をやっている米軍自体がみずから戦闘区域と指定している、そこに入っていくのかどうかという問題なんですよ。この点は非常に重要な問題だから、私は総理の見解を求めます。

小泉内閣総理大臣 これははっきりしているんですよ。米軍が指定するコンバットゾーンと、日本が今この法律で指定している戦場と、定義が違うんです。

児玉委員 定義が違えば、あなたたちが出している定義というのははっきりしていますよ。「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為」。米軍のトマホーク、米軍のピンポイントの空爆、人を殺傷し、そして物を破壊する行為じゃありませんか。それを戦闘区域、コンバットゾーンと言っているんです。

 この点は非常に重要ですから、私は政府の見解を続けて求めていきます。

 次に、捜索救助活動について入ります。

 この法律に基づいて行う対応措置の一つが、自衛隊による捜索救助活動です。法案第三条、捜索救助活動は、「諸外国の軍隊等の活動に際して行われた戦闘行為によって遭難した戦闘参加者について、その捜索又は救助を行う活動」、これであって、自衛隊部隊が行うことになっています。要するに、アフガニスタンの戦闘行為で遭難した米兵を自衛隊が捜索救助し、その米兵を輸送する活動を行う、そういうことですか。

 そしてもう一つ、防衛庁長官に聞きたいのは、この捜索救助活動に派遣する自衛隊の部隊はどのような部隊が考えられるか。海上自衛隊ではどうか、航空自衛隊ではどうか、陸上ではどうか。どんな航空機、艦船、車両が予定されるか。長官、お答えください。

中谷国務大臣 この法律で行う捜索救助活動を決定する仕組みにつきましては、この捜索活動を実施する具体的な状況と、その活動のニーズ、これをよく情報収集し、判断した後に基本計画を策定いたしまして、例えば、その基本計画に掲げる事項とされている、この法律の中の第四条第二項第三号ホの、その他捜索救助活動の実施に関する重要事項と定めまして、その方法を基本計画に定めて実施するということもできます。

 実際に陸上、海上でどのようにやるかということにつきましても、具体的なニーズによって計画を定めるわけでございますが、一般的に言いますと、例えば、戦闘行為に参加した諸外国の軍隊の戦闘機やヘリコプター、これが帰投する中で捜索救助活動の、洋上とか陸上の実施区域内で墜落した場合に、該当の戦闘機、ヘリの乗務員を救助するというようなことなどが考えられるわけでございます。

児玉委員 帰投中の被弾した航空機が洋上や陸上にあるいは不時着し、またはパイロットがパラシュートで脱出する、そういった場合に捜索救助活動に当たると。どのような航空機、艦船、車両が予定されているかお尋ねしたんですが、お答えください。

中谷国務大臣 これは具体的にまだ決めておりません。

 ただ、法律の枠組みとしては、米国を初めとする諸外国の軍人であるかもしれませんし、また、現地の一般の民間人であるかもしれませんし、はたまた敵国というか相手国の兵士かもしれません。いずれにしても、この捜索救難を行う趣旨は、ある程度人道的に人間的な意味で、近くで瀕死の状態になっている人を救うのは当たり前であるというようなことから行うものでございます。

児玉委員 防衛庁長官、あなたが今おっしゃった問題で、私は、戦闘行為によって遭難した兵員の命を救うことは非常に重要だと考えています。これはもう当然のことです。ただし、救助したその兵員が、生死の境を言ってみれば往来したんですから、ふるさとに平和のうちに帰還することになるのであれば、まさしくそれは人道上からいっても非常に重要なものだと思いますね。

 ところが、どうでしょう。一九九八年九月三十日アメリカ海軍の教本「戦闘捜索・救難」、これを私読んでみました。何て書いているか。戦闘捜索・救難活動は、重要な兵員を味方のコントロール下に奪還し、奪い返し、再び戦闘に参加させることにより、戦闘能力を強化する。はっきり書いていますよ。ふるさとに帰すんじゃないんですよ。すぐまた前線に、飛行機の操縦をさせる。まさしくこれでは戦力の補強です。(発言する者あり)

 閣僚の席から当然だと言う人がいるけれども、例えばあなたたちの先輩である後藤田さんがこの種の問題についてどう言ってきたか。後方支援とかなんとかと言っているけれども、やりと同じだ、穂先とそれを持つ柄がある、そして、特に戦闘行為として明白なのは、例えば野戦病院での治療、傷を治して速やかに前線に復帰させる、これでは作戦行為そのものだから決してできないと言下に言っているじゃありませんか。これが世間の常識です。

 そこで、私は言いたい。防衛庁長官、この捜索救難活動は米軍等と共同して行うことがありますか。

中谷国務大臣 そもそもこの捜索救難活動が始まったというのは、周辺事態法案、ガイドラインのときにこの話が始まったと思いますが、基本的には、行動している近傍で飛行機が落ちたり船から落ちたり、人間として、助けを求めている人を近くにいながら黙って見ていることが本当に許されるのだろうかというところから起こっておりまして、それが米軍の兵士であろうが民間人であろうが敵国の兵士であろうが、やはり人間として救いの手を差し伸べる手段を持とうというところから来ているわけでございます。

児玉委員 防衛庁長官、私がお尋ねしているのは、他の国の軍隊と捜索救助活動を共同して行うことがあるかないか、それを聞いています。

中谷国務大臣 米軍から要請したり調整したりすることはあるかもしれませんが、いずれにしましても、戦闘行為の行われている地域ではやりません。戦闘行為の行われていない地域のみでやるわけでありまして、武力行使の一体化というふうになる御心配はございません。

児玉委員 防衛庁長官はどうも鋭敏でいらっしゃって、私が聞こうとしていることの五歩先をお答えになる。

 要するに、捜索救助活動を他国の軍隊と共同して行うことが排除されるか排除されないか、それを答えてください。

中谷国務大臣 これは、現在PKO活動等をやっておりますけれども、日本の行う活動と他国の行う活動が同じ場所であったら一体化するかというような議論だと思いますが、この活動において他国と同じように行動することはあるかもしれませんが、それぞれ各国の独自の判断によってやることでございますし、現に戦闘行為が行われていない地域でやるわけでございますので、御指摘のような武力の一体化にはなりません。ただ、各国と横並びでやるということは想像できます。

児玉委員 捜索救助活動を他の国の軍隊と共同して行うことがある、そういうふうに今お答えになったと私は聞く。

 そこで、次の問題です。

 今、この捜索救助活動ですが、周辺事態法のときは公海。潮の流れによっては他国の領海に入ることがあるかもしれないけれども、そのときはその領海を有する国の了解を得てという議論があった。今アフガニスタンで起きている事態というのは相当違う。そして、長官の先ほどからの何回かの答弁でも明らかなように、陸上ということが非常に起こり得る蓋然性の高いものとして想定されている。

 現在、アフガニスタン周辺に特殊部隊、山岳部隊が投入されて、次第に地上戦の様相が濃くなってきています。そういうとき、公海上とは捜索救助活動の様態は大きく変わります。戦闘行為が行われている地域、地上でですよ、その近傍での活動ということになると、どんな事態が予測されるか。このことを当然、皆さんは法案を提出している以上、厳しく見ていると思う。

 自衛隊が米兵を捜索、そして見つけて救助する、その米兵を輸送する。この米兵は自衛隊の管理下にあると判断できますか、官房長官。

福田国務大臣 その職務に伴い管理のもとに入った者、こういうことでもって、今、米軍というふうにおっしゃったですね、輸送中、要するに自衛隊の手によって輸送が行われているというときに、同乗している米軍の兵士はそこに入ると思います。

児玉委員 長官。(津野政府特別補佐人「委員長」と呼ぶ)いや、必要ありません。

 長官、官房長官。

 一つ一つの実体的な議論を私はしたいんです。

加藤委員長 法制局長官。

児玉委員 皆さんは覚えていらっしゃるだろうけれども――いや、必要ありません。

加藤委員長 いや、答弁者の挙手が挙がっていますから。

津野政府特別補佐人 先ほど御指摘がありました、捜索救助された方の方ですね。

 その捜索救助で、負傷した方が、何といいますか、管理下に入るか、これはもちろん一般的には入ると思います。ただ、救助された方がみずから守るというような武装をしていて、そういう人たちがみずからを守ることができる能力がある、そういうような場合には、これは自衛隊の方で、救助した方で管理しているというわけには入らないと思います。

児玉委員 皆さんは、コソボの空爆の一番初期の段階を記憶されていると思う。米軍のパイロットが、被弾してパラシュートで脱出する。その脱出したパイロットを目がけて、捜索救難活動に当たる部隊と、そしてその地域の武装集団とが集中していく、どっちが早くそこにたどり着くかと。まさに激烈な争いでした。

 既にお話があったように、陸上での捜索救助活動というのは、地上戦という性格を持つことになります。自衛隊は、米兵を捜索救助し、その米兵を輸送する。その最中に米兵が攻撃された場合、輸送中であれば管理下だと長官は言われたけれども、その輸送のジープに乗ってもらうというのは、もうそこのところというのは極めて微妙だけれども、やはり管理下でしょうね。

福田国務大臣 戦闘行為が行われていないという地域が前提にあるわけですね。そこにおける輸送行為だと。それから、非戦闘地域というのは、その以降も戦争が行われないだろうというふうに想定される地域、こういうことになっているわけですからね、そんな委員のお考えになるほど危険な地域ではないというように私は思っております。

児玉委員 そこにはならないので、非常に事態は厳しいですね。

 それで、総理、私はお聞きしたい。一昨日の本会議で、日本共産党の木島日出夫議員の代表質問に対して、あなたは、散発的な発砲やテロは、この法案第二条三で言う戦闘行為、国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷しまたは物を破壊する行為には当たらない、こう答弁された。私は、その答弁を自席で聞いていて、あれと思いました。この答弁は、捜索救助活動を展開しているとき、散発的な発砲や突発的なテロに対して、自衛隊は必要で合理的な反撃をする、避難、撤収することはしない、そのことをも意味していますか。

小泉内閣総理大臣 どういう状況でテロ行為が発生するか想像できませんよね。そのテロ行為が散発的か、継続的か、組織的かというのは、実際のところ、どこで起こるかわからない。その状況で判断するしかないですね。今みたいな、アフガンみたいなはっきり戦闘状況がわかっているところは自衛隊は行かないんですから。輸送でさえもしないんですから。あるいはコソボを今例に挙げていましたが、コソボというように、本当に国同士で紛争している、あそこにも行きませんから。

 しかし、テロというのは、ニューヨークでも起こったように、どこで起こるかわからない。あるいは、全く民間の方々が難民支援をやっているときに起こる可能性も否定はできない。そのときに、そのテロ行為が単発か、二発か、三発かわからない。終わった後敵が見えて、テロリストたちが見えて、継続的に襲うのかというのもわからない。ニューヨークみたいに一発で終わるのか、二発で終わるのかもわからない。その状況を見ないとわからないですよね、これは。

児玉委員 私は、アフガンの領内で自衛隊の捜索救助活動が行われるとは、この法律を読む限り読めません。そういうことはないでしょう。問題は、もしパキスタンが同意をして、そして自衛隊がそこに赴いた場合に今のことが問題になるんです。

 そして、総理が今いみじくも言われたように、相手は俗に言う正規軍ではありませんね。正規軍ではない。武装した集団ないしは、いうところのゲリラないしはその他さまざまな要素かもしれない。そこが問題です。

 米軍とタリバンの戦争のもとで、戦闘で遭難した兵士の救助。これは、タリバンを支持する勢力からすれば、もしかしたらパキスタンの領内で、それはその人たちにとって、タリバンに対する戦闘行為で遭難した兵員ですから、敵になるかもしれませんね。遭難した米兵をどちらが確保するか。パキスタンで先ほどのコソボのような事態が起きるかもしれません。まさに地上戦の様相を示すことになります。

 そこで、私はもう一歩進めたいんだけれども、アフガンを取り巻く諸国は陸上です。もちろん近くに海もありますけれども、陸上の問題。つまり、外国領土内での自衛隊の捜索救助活動の問題になる。外国領土で米軍に対して自衛隊が捜索救助活動を行うということになります。

 派遣先の当該外国の同意を得てというふうに法案には書かれています。PKOの場合、停戦合意、これがもう最大の前提ですね。そして、受け入れ国と、双方の同意が得られている。受け入れ国とは軍隊受け入れの地位協定も結ばれる。

 さて、もしある国に自衛隊が捜索救助活動の部隊を送るとすれば、先方が主権国家ですから、そこで日本の軍隊が活動する以上、当該国との間に何らかの地位協定は必要ではないかと思う。外務大臣、どうですか。

田中国務大臣 お答えいたします。

 本法案に従いまして外国の領域に自衛隊員が派遣される場合、我が国は、派遣期間の長さも考慮しつつ、任務の円滑な実施のため、受け入れ国との関係で隊員の法的地位の確保を検討する必要があります。

 以上でございます。

児玉委員 それは、例えば地位協定のような形になりますか。

田中国務大臣 受け入れ国側の意向にもよるんですけれども、現時点では一概には申し上げられないんですね。先ほど言いましたように、これは派遣期間の長さも考慮に入れなければいけませんし、隊員の法的な地位の確保も検討する必要があります。

児玉委員 その程度の検討でこの法案が出されていることは深刻な問題ですよ。そのことを私ははっきり指摘しておく。

 その上で、外務大臣、もう一つお尋ねしたいんだけれども、捜索救助活動は、十月三日にアメリカからの支援要請を受けてNATOの大使級理事会が決定した米国に対する八つの分野の支援には含まれていない、私はそう読んでいます。いかがですか。

田中国務大臣 はっきりとは明示はされていないと思います。

児玉委員 はっきりも何も、明示されていない。

 そこで、この捜索救助活動について、今まで私たちは、どちらかといえばアフガニスタンの問題に絞って考える傾向がありました。今、米軍の軍事作戦で捜索救助活動が取りざたされているのはウズベキスタンとタジキスタンですね。ウズベキスタンには米特殊部隊が既に到着して飛行場の整備が行われているという報道もあります。

 アメリカのラムズフェルド国防長官は、攻撃開始直前の十月五日、ウズベキスタンを訪問して大統領と会談されている。そこでの協議の中身の一つ、米軍の航空機、ヘリコプターのための飛行場及びその関連施設に、捜索救助活動、訳し方によっては捜索救助作戦、これに当たる要員の飛行場使用のために同国の飛行場を一つ提供する、こういう二項目の合意がされたと私は聞いておりますが、外務大臣、御承知でしょうか。

田中国務大臣 それは承知いたしておりません。

児玉委員 タジキスタンに対しても、米国は領土の使用を要求して、特に捜索救助部隊を置くことを要求していると報道されています。

 委員長。ちょっと外務大臣、私は、今あなたが承知されていないのを承知していないと率直に答えられるのは仕方がないと思いますが、後ほど答えていただければ結構ですから、そのようにしてください。

 委員長、質問を続けます。

加藤委員長 はい、どうぞ。

児玉委員 タジキスタンに対しても、米国は領土の使用を要求し、特に捜索救助部隊を置くことを要求していると私たちは報道を通して承知しております。

 このアメリカとウズベキスタンの会談の直後に、小泉総理の特使として鈴木宗男氏が隣国のタジキスタンとウズベキスタンを訪問されている。多分その結果については総理に対して報告されていると思います。

 日本として、この両国で、それぞれの同意があれば、自衛隊部隊が捜索救助活動を行うことは想定されますか。総理、お答えください。

小泉内閣総理大臣 どこの地域に自衛隊を派遣するかどうかというのは、その状況を見て判断するんですよ。

 誤解しないでいただきたいのは、捜索救助隊みたいなものを派遣するつもりはないんです。自衛隊が一緒に活動して、他の人が災害とか遭難に遭われた、そういうときに、見て見ぬふりはできないでしょう。そこで捜索する場合があるのであって、わざわざ、何かあって、戦争地域に行って、捜索救助隊を、自衛隊を派遣する、そういうことじゃないということをおわかりいただきたい。

児玉委員 総理、この法案に何が書いてあるかということを私も少々承知しています。そして、私が言うのは、捜索救助活動を行う他国の領土、その国の同意がある、しかもそのことが現実の問題になる以上、一定の具体的な条件が出てくるでしょう。そういう場合に、もしタジキスタンやウズベキスタンが該当すれば、そして、その国の同意があれば自衛隊が派遣されることはあるかどうか、この点です。

小泉内閣総理大臣 諸般の情勢を見て、可能性といえば、それはどこの地域でも、戦闘行為にならない、日本が武力行使をしない、そういう前提のもとで要請があった場合に検討しますよ。しかし、その時点で判断するので、今から、その地域だから派遣します、派遣しない、そういうことは言えません。

児玉委員 今のことからも、事態の発展によっては自衛隊の派遣が地域的には無限定に広がっていく可能性がある、あなたがよくおっしゃるように。国際的なテロというのは六十なんということも言われてもいるし、そういう中で、そういうことがあってはならないけれども、事態がもし広がるようなことがあれば、今のあなたのお言葉によれば、そこも対象になる、こう理解せざるを得ませんね。どうぞお答えください。

小泉内閣総理大臣 どこの地域かといえば、それは無限定、どこでも行けるのですよ。しかし、限定があるのです。武力行使はしない、戦闘行為が行われていない。地域としては、可能性としては、テロがどこで起こるかわからないのだから、どこで被災民が出るかわからないのだから、それは可能性としてはありますよ。そういう点でいえば、確かに共産党の言う、限定がない、無限定といえる。しかし、しっかりと歯どめがついているんです。武力行使はしない、戦闘行為が継続的に行われていない、戦闘行為に参加しない、こういう前提のもとでやると。

 結びつければ、さっきお話を聞いたんだけれども、傷病兵を管理して、その人が治れば戦闘行為に結びつくというけれども……(児玉委員「前線に送り返せば」と呼ぶ)前線に送り返せば。そうしたら、今野戦病院で看護婦さんが治療していますよ、その看護婦さんの治療まで戦闘行為と結びつけるまで発展しちゃうでしょう。そこまで言ったらこれは何にもできなくなっちゃうじゃないですか。野戦病院なんというのはまさに戦闘行為が行われているんですよ。それは敵だろうが味方だろうが看護婦さんは治療しますよ、お医者さんは治療しますよ。それが治ってまた戦場に行ったら、治療行為は戦闘行為だと言われたら、それは何にもできなくなっちゃう。

児玉委員 総理……(発言する者あり)ちょっと、横から口を出さないでくれ。

 小泉総理の最初の私の質問に対する答えは、二つのことを一つにして言っているんです。地域的には無限定、地域の面では無限定、これは一つのカテゴリーです。戦闘状況にあるかどうか、これは別のカテゴリーですね、状況に関するカテゴリーです。それを一つにまとめておっしゃっているところにあなたの特徴がある。

 そしてもう一つ、今あなたが野戦病院とおっしゃったから私は言いましょう。人道上の見地のとうとさについては私たちも深く考えています。しかし、このことについて日本政府は戦後どのくらい悩んできたか。

 文芸春秋の九〇年十月号を総理、お帰りになったら読んでください。後藤田官房長官、以前のです、何と言っているか。「医療といっても戦傷者の治療はダメだ。輸送、通信といったって、それは兵站部隊じゃないか。」こう言っているんですよ。そして、アメリカの野戦における医療支援の教本を私は読んだけれども、そこで、医療活動の尺度は何をもってはかるかはっきり書いています。一日も早く治療して、できるだけ前線に近いところに送り届ける。だから、後藤田さんがこういうふうに、それはだめだと言下に言わざるを得ないんです。そのことと人道上の問題を混在してはなりません。

 そこで言います。総理、もうそろそろ時間がなくなってくるので率直に聞きますけれども、現在アメリカが日本に対して支援を要請していることの中で、現行法でなし得ないことが何かあるでしょうか、お答えください。

小泉内閣総理大臣 今、具体的に要請を受けていませんから、それはどうお答えしていいのかちょっとわかりませんね。要請を受けてから考えるしかないですね。

児玉委員 例えばテロリストの資金についての凍結の問題だとか、あなた自身がブッシュ大統領とお会いになったときに……(小泉内閣総理大臣「ああ、そういう意味」と呼ぶ)そのことです。どうぞ。

小泉内閣総理大臣 そういう意味ならわかります。

 それは、日本として、今、テロの資金を管理するあるいは凍結するためにできるだけ金融機関は協力してその資金を凍結しようという協力は、米国のみならず国際社会は今、国連でもするようにと言っていますから、そういう協力はしています。

 今私が受け取ったのは、ちょっと勘違いしていて、自衛隊に対する要請と受け取ったから、それはないと言っているということを御理解。ほかにも要請はありますよ。経済とか、内部の、早く構造改革を進めてくれとか、そういうのはありますけれども、自衛隊に対する要請ということをちょっと勘違いしたもので。そういうことは今ありません。

児玉委員 では、その面で認識が一致したようですから、そのことを含めて、アメリカが日本に対して支援を要請していることの中で、現行法で現在なし得ないことが何かあるでしょうか。

小泉内閣総理大臣 今、現行法で、テロリストの資金の流れというのはなかなか把握できない点もある、今検討しているんだが、あるようです、現行法で。そこら辺を詰めているんです。確かにテロリストたちの、あるいは組織の資金の流れをどう突きとめるかというのは、現行法で無理な点もあるようです。その点を詰めています。

 果たして国際社会の中でそういう体制が今金融機関に整っているかというと、今、全部整っているとは言えない面もあると思います。そういう点も含めて今検討作業を進めているので、国際社会が要求していることに対して全部こたえる体制になっているかどうかというのは、この時点でまだはっきりできない、できない部分もあるでしょう。できるだけ国際社会の要請にこたえるような法整備をこれからも日本はしていかなきゃならないと思っております。

児玉委員 私は、今、国際勢力が本当に一致結束してテロを文字どおり根絶していく、そのことが求められている。テロリストの逃げ場をなくしてしまう、そのことが非常に重要だと思うんですよ。そのとき、米軍等の軍事攻撃によって、これまでテロ根絶で結束してきた国際世論に亀裂と矛盾が入りつつあることを私は本当に憂慮します。

 ちょっと総理、これはある新聞の夕刊です。九月の二十二日。「NY「平和望む」」上にメッツの新庄氏も祈りをささげています。その下に、タイムズスクエアに集まった若い女性その他が訴えている。このプラカードに何と書いてあるか。「ウオー イズ ノット ジ アンサー」、テロに対して戦争だけが答えではない、こう書いていますね。そして、日本の多くの若者や女性や国民の間で、今どんな声が広がっているか。それは、テロも戦争も許さない、これですよ。

 そこで、私たちは、法と理性による裁きをどうやって国際社会の中で広げていくか、そのために日本の政府がどれだけ寄与するか、これが一番問われているのであって、この法案の撤回を厳しく求めて、私の質問を終わります。

加藤委員長 これにて児玉君の質疑は終了いたしました。

 次に、辻元清美君。

辻元委員 社会民主党、社民党の辻元清美です。

 トイレですか、総理。ちょっと我慢して。

 私は、本日は、テロの温床を断ち切るためにはどのような方法が有効か、そのためには日本は何をすべきか、そして何をしない方がよいかという視点で質問をさせていただきたいと思うんです。

 例えば病気を治すときも、いきなり劇薬をがんがん飲ませても、後からいっぱい副作用が出てきたり、余計悪化する場合もあると思うんですね。やはりこのテロ問題もきちっとした処方せんを立てる、そしてこの処方せんにのっとって、どういう薬をどういう形で与えていって治していくのがいいかということをきちっと議論して進めていった方がいいと思うんです。

 そういう中で、私は、日本の役割なんですけれども、日本は東洋、アジアの国ですが、日本は、劇薬というよりもじわじわと効く漢方薬のようなテロ包囲網を腰を据えて、じわじわ漢方薬のようにテロに対応していく、そういう政策を立てていきたいと思っています。ですから最初、テロの温床を断ち切るというようなことを申し上げたのです。それで、そういう漢方薬の役がいいだろうと思っている。それが日本はふさわしいのじゃないかというふうに思います。

 例えば、もうすぐワールドカップでサッカーもありますけれども、サッカーの試合でも、みんな、わあ大変だといってボールのところに走っていっても、トータルに包囲をして試合を進めなければいけないわけですから、そういう意味で、日本はどういう位置に行けばいいか。私は、後で自分のアイデアも紹介しながら質問をしたいと思うんです。

 なぜそういうことを申し上げるかといいますと、アメリカによるアフガンへの武力行使についてまず総理にお伺いしたいんです。

 それは、ブッシュ大統領は、対アフガン攻撃について、特定の期間は設けない方針というように発言をしました。そして、一カ月、一年、十年かかろうと戦うんだという発言も九日にされています。そしてさらに、そのやり方として、地元勢力を支える肩がわり戦争を進めるとも言及しているわけです。

 これはどういうことかといいますと、ラムズフェルド国防長官が詳しく言っているんですけれども、反タリバン勢力の北部同盟とか、南部のパシュトゥーン人勢力とか、タリバーン内の反体制派のグループなどに支援を与えるということをすると言っています。ここが私ちょっと問題だなと思うんです。

 アメリカは、今までこのようなやり方、要するに、相対する勢力に支援を与えて武器を与えるというやり方でいろいろなところで戦争をやってきましたね。私は、果たしてこのやり方がいいのかといえば、今まで、これは新たな火種を生むその温床を育ててきたとも言われているわけです。

 そこで、かつてアメリカは、ソ連によるアフガン侵攻のときも同じような方法で、アフガンのときはソ連と戦う、そのときはオサマ・ビンラーディンたちにCIAが資金を与えて、そしてアメリカの武器を運んで戦わせたわけです。今度は、そうすると、その副作用といいますか、オサマ・ビンラーディンが反アメリカになっています。イラクのフセインも同じなんですね。

 ですから私は、今回、対テロということですけれども、結局、アメリカが今とろうとしている方法というのは、今までと同じような戦争の形態で対処しようとしているところに、今後、言ったら今までのような泥沼化、または新しいテロを生み出す温床を、今までそういうやり方で失敗してきているわけですから、温床をつくりかねないというふうに思うんです。そこをすごく心配しているわけですね。総理、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 そういう点を非常に心配していると思うから、アメリカは今回かなり慎重ではないかと思っています。過去の、敵を倒すための支援が逆に新たな敵を生み出しているという歴史的事実を思いますと、非常に難しい対応を迫られているんだと思います。そういう点にも配慮をして、このテロとの闘いに対応していかなきゃならないと思います。

辻元委員 この間のアメリカの発言を見ていますと、先ほど、アメリカは個別的自衛権の発動ということで今回スタートさせたという議論がなされていましたね。確かに、アメリカは個別的自衛権と言っています。ところが、やはりさっきからも議論になっているように、この個別的自衛権の発動も、国連では五十一条で、武力攻撃が発生した場合は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとる当分の間となっているわけですね。

 ですから、このテロの対応について、アメリカは武力行使をした、それで今まで泥沼化していった例もあるわけですから、私は、やはりここできちっと国連で、この武力行使について、当分の間ですよ、五十一条で認めているのは。私は、武力行使に賛成しているわけではありません。しかし始まりました。そうなってくると、このルールでいくならば、きちっと国連の場で、どう対応するのかという議論をしてしかるべきだと思うんです。

 十年かかっても続けるんだと、これ、ブッシュ大統領おっしゃっている。おっしゃりたい気持ちは理解する人はいるかもしれませんが、その方向性を持ってアメリカがどんどん突っ込んでいくということをきちっと国連の場で防ぐ、ブロックしていくことを考えなきゃいけないと思います。いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 現在の武力行使は認めている、これ以上の国連決議は必要ないと我々は考えております。

辻元委員 今のはちょっと質問の意味とは違うんですが、ちょっと、総理、どうぞ、お手洗いに行ってください。官房長官とその間議論をさせていただきます。どうぞ。失礼しました。ちょっと最初はどうしても総理に御見解を聞きたかったんです。

 といいますのも、やはり今までのいろいろなテロというのは、今回規模が大きかった、しかし、この前の質問でも申し上げたんですが、昨年だけで四百二十三件、アメリカだけで二百件発生しているわけで、ですから、言ってみれば、ある意味でもう既に報復の連鎖のような形で始まっているという見方をきちっと基礎に据えて議論していかないと浮ついた議論になるし、言ってみれば、テロの温床まで断ち切ることにはなれないと思います。

 さてそこで、官房長官、今回の法案についてお聞きしたいと思うんですが、今回の法案では、諸外国の軍隊等の活動に対して我が国が実施する措置と人道的精神に基づいて実施する措置が柱になっていると思います。この諸外国の軍隊等の活動に対してという諸外国は、主にアメリカを指すと理解してよろしいでしょうか。

福田国務大臣 この法律は、九月十一日のあの米国で起こったテロということであります。そしてまた、これに対して米国が個別自衛権の発動ということになったわけですね。それからまた、NATOなんかも集団的自衛権でもってこの活動に参加するということでありますけれども、主たる活動、主たる活動と申しますか、活動の主たる国は米国であるというように思っております。

辻元委員 もう一問お伺いします。

 それでは、人道的精神に基づいて実施する措置ということは、想定されることは、先ほどからも議論されていますが、確認させていただきます。主にパキスタン領内のアフガンからの被災民の救援などということでしょうか、いかがでしょうか。

福田国務大臣 人道的な措置の中心は、やはり被災民であると思います。

辻元委員 それでは、先ほどからもパキスタンの情勢、それからアフガン被災民をめぐる情勢についての議論があります。その点から、この人道支援をまず検討していきたいと思います、この二つが柱ですので。

 現在、被災民が激増してきている、この理由は、どのような理由で激増してきていると官房長官はお考えでしょうか。――じゃ、田中眞紀子外務大臣。現在、アフガンの難民がふえてきている理由は何でしょう。何とお考えでしょうか。――じゃ、官房長官で結構です。

福田国務大臣 被災民というわけですから、被災をした、こういうことになろうかと思います。しかし、その中には、アフガンで長年続いた飢餓ですね、これが大きな原因になっていると思います。ですからそれは、理由は一つではない、いろいろな理由があると思います。また、この米軍の攻撃というものによって出てくる被災民というのも当然あるだろうと思っております。

辻元委員 現在、やはり直接的にふえてきている被災民は、米軍の攻撃があるかもしれないという状況から、攻撃がかけられたということで被災民が増加しているということは事実だと思うんです。

 そこで、私は非常に懸念を持って見ているんですが、ニュースなどでも、この被災民と、それからパキスタンの領土内での反米感情が高まっているという厳しい状況に直面しつつあると私は思うんですが、総理はこの点、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 各地で反米運動が展開されているということは承知しております。現に、テロリストたちも反米の感情からこういう行動を起こしているわけですから、そういう感情があるということは理解しております。

辻元委員 続きまして、パキスタンに現在取材している記者なども、今度はアメリカだけではなく、アメリカを支援する国の人またはそういう団体に対しても、やはり反米感情とともに、いい感情を持たなくなってきていると。これは日本も含まれるわけです。そういう状況が広がっているという厳しい認識を持ちながら、私たちは何をすべきかということを決めていった方がいいと思っているわけですね。

 先日もインドネシアで、これは総理、御存じだと思いますが、日本大使館が抗議行動を受けたということで、空爆を実行している米国の同盟国日本に抗議する、アジアの国だから一緒にアメリカを支援するのをやめてほしいというような、インドネシアの主にイスラム圏の人たちを中心に、マカッサルの領事館の敷地内に乱入して旗をおろすというような事件があったと聞いているんですね。

 今後、日本はいいことをするんだという状況で支援策を考えようと今議論しているわけですが、私は、主に、政府が提案されている法案の中身、これから議論させていただきますけれども、これは決して、外から見たら、反米感情の高まりとともに反日感情も高まっていく、そういう厳しい状況に直面するというように考えるんですが、総理、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 テロ撲滅、根絶のためにアメリカが立ち上がり、世界の各国が協力していろいろな活動をしようというときに、アメリカを支援するとテロの反撃を受けるのじゃないかといってアメリカの支援から手を引いた場合、どのようになるかを考えていただきたいと思います。

 私どもは、今回のテロとの闘いについて、傍観者の立場には立つことはしません。アメリカと一緒に、世界各国と協調して、テロ根絶のためにできるだけの支援態勢をとりたい。アメリカに協力すれば日本もテロの攻撃に遭うぞというおどしに屈してはならないと思っています。

辻元委員 私は、おどしとかおどしでないという話をしているわけではなくて、一般の民衆の話なんです。

 それは、インドネシアのこれも特徴的なんですけれども、今回の世界じゅうのいろいろな反応を見ていますと、各国首脳はかなり勇ましく、テロ撲滅で武力行使容認と発言しているんですが、イスラム諸国だけではなくて、アジアやそれからヨーロッパなどでも反戦運動が広がってきているという話も出てきています。どうもやはり、一般の民衆とそれから政府の決定というところの乖離が今後広がっていく可能性があるんじゃないかというところは、かなり厳しく認識をしなきゃいけないと思っているわけです。

 でないと、これ……(発言する者あり)今、一部だという御発言が出ましたが、その認識は私は甘いという立場に立っております。そういう認識でこれから物事に対応していくというのは、平和ぼけの産物ではないかと思います。

 さて、そういう中で何を一番気にしているか。特に人道支援ですね、人道支援で日本はいいことをしよう、こう考えているわけですが、被災民やそれからパキスタン領内の民衆から見たら、この法案の中身は、一方は米軍への支援、先ほどからあります、武器弾薬の輸送も含む米軍への支援というのをやりますと言っているわけです。一方で、人道支援をやりますと言っています。ここに矛盾を来すんですよ。

 どういうことかといいますと、この武器弾薬の定義は、先ほどからも出ておりますが、自衛隊法上の武器については、火器、火薬類、刀剣類、その他直接人を殺傷し、または武力闘争の手段として物を破壊することを目的とする機械、機器、装置等と、これが定義と紹介されましたが、これを一方で運ぶわけですね。その武器弾薬を使ってアメリカはアフガンを攻撃するわけです。そして、その攻撃のために被災民が出てくるわけです。

 ですから、日本は、一方で自分たちを攻撃する武器弾薬を運んで、そして出てきた被災民に、ああ、皆さんお助けしましょうと言っても、私は非常に厳しい見方をした方がいいと思うんですが、パキスタンの中やそれから被災民の中で、自衛隊が行って人道支援をするということが成り立つでしょうか。私は、成り立たないと思います。総理、いかがですか。

 ここのところ、非常に慎重に、洞察力を持って、今後何が起こるかわからないわけですから、検討しておいた方がいいと思いますよ。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 これは大事なところでありまして、このテロが起こった時点から、日本政府として、私も、今回はテロとの闘いであり、イスラムとの闘いじゃない、アラブとの闘いじゃない、これからアラブ外交は非常に重要だ、イスラム教徒との友好関係を図ることは非常に大事だと思っております。そういう点において、日本が外交分野あるいは経済支援等でできることはかなりあると思っております。まず、それが第一点。

 そして、今回パキスタンに自衛隊機がテントとか寝袋とか送りましたけれども、私は、自衛隊のみならずいろいろな分野で支援ができると思いますよ。今回の法案も、自衛隊が何ができるかということの法案でありますが、それ以外にいろいろな支援態勢ができる、その点も考えていただきたい。

 一番大事なのは、テロとの闘いだ、アラブ諸国、イスラムとの闘いじゃない。日本としては、これからアラブ諸国とも友好関係を維持発展させるためにできるだけ努力します。イスラム教徒とも当然仲よくしていかなきゃならない。これをやはり混同してはいけない。これはブッシュ大統領との会談でもはっきり申し上げましたし、ブッシュ大統領もそれを明らかに言明しています。アラブ諸国、イスラム教徒、平和の祈りでも、イスラム教徒の牧師を招いたり、アラブ諸国を招いたり、それはアメリカも非常に配慮していると思います。

 だから、テロとの闘いは、決してアラブとの闘いではない、イスラムとの闘いではないということをはっきりして、日本としてもそういう態度でこれから外交努力等の面で努力する面がたくさんあると思います。

辻元委員 それでは、私が、人道支援と、今度、米軍等への支援が矛盾するのじゃないかと申し上げたその根拠もおいおい議論していきたいんですが、それでは総理にお聞きしたいんですけれども、つい先日、アメリカが空爆と同時に食糧投下を行いました。この米軍の活動を総理はどのように評価されているでしょうか。

小泉内閣総理大臣 今回のテロとの闘いが極めて複雑であるという一面をあらわしているんだと思います。

 それは、アフガニスタンが今攻撃の対象になっている、テロリストとアメリカとの対決の場になっている。しかし、アメリカは、アフガニスタン国民を敵にしているのではない、テロリストが敵なんだ、その拠点が敵なんだ、それを支援する勢力が敵なんだと言っているんです。恐らく、タリバン政権の中にもむしろ被害を受けている人がいるだろう、アフガニスタンの国民も被害を受けているのではないか、そういう配慮から、できるだけ関係のない人に犠牲になってもらいたくないという点から、私は、ああいう食糧投下と武力攻撃を一緒にやらざるを得ない、極めて複雑な様相の一面を典型的にあらわしている事態ではないかと思っております。

辻元委員 私は、ちょっと違う見解を持っているんですよ。現場から、例えば、今アフガンで地雷の除去をしているNGOの団体がありまして、アフガン地雷キャンペーンです。ファゼルさんという人が今アフガンの中でまだ頑張っているんですよ。メールが来たんです。

 そうしますと、アフガンにはいっぱいまだ地雷がありますので、あちこち散布されると、子供が何だろうといってとりに行ったり近づいたりして、地雷の被害者が広がる可能性があるから投下はやめてほしいというようなことで、いろいろな世界にメールを打ったり、それからもう一つ、旧ソ連が侵攻したときには、地雷を空からまいたらしいですね。ですから、やはり空からまかれたものというものに対しては非常に信頼感が薄いとか、さまざまなそういう現場からの声もあるんです。

 さて、なぜそういうことを聞いたかは後で説明しますが、そういう中で、今地雷除去のNGOのことも御紹介しましたけれども、アフガンでは、特に医療活動ということでNGOが頑張っています。それは、空から食糧を降らすとかと違うて、きめ細かに、アフガンの人を助けたいと一生懸命やっています。

 その中で、国境なき医師団という大きな団体、御存じだと思うんですが、総理は御存じでしょうか。そして、どのように評価されているでしょうか。

小泉内閣総理大臣 承知しておりますし、設立されてから約三十年間ですか、非常に高い評価を受けているというふうに意識しております。

辻元委員 現在、昨年は約三百三十億円程度の予算で、それで二十カ国程度に基地を置いて、三千人ぐらいのすぐ動ける医師も配置して、世界のあちこち援助活動に出ている、ノーベル平和賞を数年前にとった団体なんです。

 この団体が先日声明を上げました。今もアフガンでも活動、一九七九年からアフガンで活動しているのですが、これはアメリカの食糧の投下についてこういう声明を上げました。ちょっと長いけれども聞いてください。

 米英軍は十月八日、六千人の犠牲者を出した九月十一日のワシントン、ニューヨークでの同時テロに対抗し、アフガニスタンへの空爆を開始しました。並行して、いわゆる人道作戦が、この攻撃への世論の支持を得るために行われました。しかし、これは人道主義とは全く異なるものです。アメリカが主導する軍事作戦に国際的な承認を得るための宣伝活動の一部にすぎないと思います。

 深夜の空爆の最中、だれに回収されるかもわからずに医薬品と食糧を投下するこの行為は、実質上意味がないばかりでなく、アフガニスタンの人々にとって危険なものです。片方の手で引き金を引いておきながら反対の手で薬を渡すという行為に、一体どのような意味があるのでしょうか。アフガニスタンの人々は、今後、人道援助の裏には軍事的な攻撃が隠されていないことをどのようにして確かめることができるのでしょうか。軍事作戦と、ここから大事なんですが、人道援助が同一機関により実行されることによって、既に相当に複雑な状況の中で進められている人道援助活動の危険性が増し、活動の可能性が狭められてしまうのです。

 国境なき医師団は、一九七九年からアフガニスタンでの活動を行ってきた人道援助団体として、ブッシュ米大統領とブレア英首相の要請で計画された軍事攻撃と人道援助の同時作戦を厳しく批判し、人道援助活動は絶対的な独立の立場から行われなければならないということを強く主張します。

 特にアフガンのような複雑な事情を抱えているところでは、前回も指摘いたしました、人道援助をしたいというなら、本当に中立、独立ということをしないとかえってトラブルを持っていく、そして、同一機関によって、一方では別のことをやり、そして一方では人道援助というのは、現場から見ますと、特に複雑であればあるほど成り立たない話である、これは前回の予算委員会でも指摘させていただいているのですね。

 そこで、総理にお聞きしたいのですが、私は先ほどから、やはりこの人道援助というのは、信頼も大事だし、現場を知っていなきゃいけないと思うのです。私は、あの食糧をまかれたときに、すぐこれはちょっとまずいなと思いました。今、日本が援助を、人道援助でパキスタンに自衛隊を送りたいと言っていますが、私は前回もこれには反対しました。それは、自衛隊という軍隊であるということ、それから米軍を支援しているということで中立性に欠ける、かえって攻撃の対象にされるのではないかというように指摘させていただいたのです。

 総理、そこで、この国境なき医師団、本当に、ノーベル平和賞もとって、世界じゅうのいろいろな紛争の現場を知っています。こういう声明を上げていることについて、どのようにお考えでしょうか。

小泉内閣総理大臣 人道支援の重要性はわかりますが、今回、中立の団体の方がいいというお考えですが、日本としては、このテロとの闘いに中立の立場はとりません。傍観者の立場はとりません。米国と世界諸国と協力して、テロとの闘い、これには断固として立ち向かわなきゃならない。テロと米国、関係諸国を初め、同列に置いていません。今回も、テロリストはアメリカを標的でしょう。アメリカを攻撃する、アメリカ人を殺すと言っていながら、アメリカ人以外の人の多くを殺しているわけですよ。こういうことに対して、テロと中立の立場は日本はとり得ません。

辻元委員 そうなってくると、この人道援助というのは、非常に幅が狭められ、やりにくい立場になるということは自覚した方がいいと思います。

 というのはなぜかといいますと、パキスタンの情勢、これも、パキスタンの国境地帯に、避難民の中にタリバン側が招集令状のようなものをかけて、親タリバンのパキスタンの兵士もいると言われていますが、非常に複雑な状況になってきているというような情報もあります。

 私、田中眞紀子外務大臣にお聞きしたいんですが、このような国境地帯の情報を外務省はどのようにキャッチされているんでしょうか。そういう情報をおとりですか。

田中国務大臣 きっちりと正確なことは困難でございますけれども、九月二十八日に国連のアナン事務総長から発出されましたアピールの中で、最悪のシナリオとして、どのぐらいの人々が今回の事態で影響を受けるかというふうな発表がありますけれども、周辺諸国へ避難する難民が百五十万、国内で居住地を追われるいわゆる避難民が二百二十万、それから、居住地を追われないまでも人道支援機関の支援に頼らざるを得ない状況にある人々が三百八十万、すなわち、全部足して約七百五十万人ぐらいであるという数字は把握いたしております。

辻元委員 今のは私の質問の御答弁になっていないと私は思います。

 今のパキスタンの国境地帯の状況、これはかなりシビアに見た方がいいと私は思っているわけです。

 そして、私は、人道支援、中立ということにこだわりましたが、やはり、自衛隊を出すということは軍です。武器使用について、今議論がされています。これは本当に心配というか懸念といいますか、そういう形で自衛隊を現場に派遣して、日本サイドはいいことしている、いいことしているという、非常にナイーブな議論だと思います。国際社会では通用しないと思いますね、そういうことは。実際に、現場で、避難民やそしてパキスタンの反米感情が高まり、その中に、人道支援だから、私たちはいいことをしに行くと言われているからとは成り立たないと思うんです。

 むしろ自衛隊が行くことによってトラブルが起こったときに、例えば武器使用の話で、自己の管理下に入った者に対しても武器を使用することに拡大しようという議論が出ていますね。自衛隊が行くから、そこで小競り合いがあって発砲がある。もしくは、今タリバンと反タリバンということで避難民のキャンプも緊張した状態になったときに、自己の保護下にあるという避難民とタリバン側と言われる避難民の小競り合いがあったときに、自衛隊が発砲する可能性が出てきます。

 私がなぜこういうことを申し上げるかといいますと、私たちの日本は、過去何回か戦争に参加しているわけですが、自国を攻められて起こした戦争はないと、この前も申し上げたと思うんです。いつも、居留民の保護とか邦人保護といったところでの小競り合いから大きな火種に発展していくという歴史を持っていますので、ここは、この歴史から学ぶことは多いと思うんですよ、総理。

 ですから私は、人道支援、人道支援、いいことするんだよと日本人が思っていても、それは相手があることですから。そして、そういう形で、一方でアメリカサイドでやります、戦います、しかし、一方で人道支援させてもらいます、この二つはやはり成り立たないと思うし、総理、いかがですか。(発言する者あり)いや、どうやったら何ができますか、じゃ自衛隊を被災民のキャンプに送って。何がどういう形でできるんでしょうか。ちょっと具体的な総理のイメージをお聞きしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 今回も自衛隊が物資を輸送しましたね、パキスタンに。これは、これから医療活動あるいは医療の物資で活躍できる場があるかもしれない。これは、人道支援というのは自衛隊を使わなくてもできる場合がある、NGO、今みたいな国境なき医師団もある。しかし、日本がテロと闘っているからその人道支援が喜ばれないかというと、これはまた別次元の問題じゃないか。

 テロとの闘いは、毅然として立ち向かう、同時に、テロで被害を受けた人に対しては、人道的な支援を行う、これは、私は当然だと思うんですけれどもね。

辻元委員 別次元だと総理が思っていらっしゃっても、私はそうではないというように、今のこの現場の、実際アフガン、パキスタンで活動している人たち、これは一部じゃないですよ、という見方をしない方がいいと思います。私は、政府の認識の方が甘過ぎると思います。情報収集能力も少ないと思います。ですから、成り立たない。

 今、物資の話をされましたね。これも前回の予算委員会で私は指摘させていただきました。C130六機で、テント三百十五張り、毛布二百枚、給水容器四百個、スリーピングマット二十枚、ビニールシート七十五枚を百四十人で自衛隊の方で運ばれた。テント二つぐらいと、それから何でしょう、毛布を一枚半ぐらいと、スリーピングマットは二十枚ですから、百四十人で分担して持たれたんでしょう。

 さて、このテントが一番、水の次に大事です。この自衛隊百四十人でC130を六機飛ばして運んだテントは、メード・イン・パキスタンだと聞きましたが、官房長官、いかがでしょうか。

中谷国務大臣 パキスタン製でございます。

 それから、この機会ですけれども、自衛官は本当に一生懸命物資を運んでおります。確かに能力的に至らない面がありますけれども、すべての力を出して一生懸命やっておりますし、問題は、だれが運んだのではなくて、何のために運んだかということでありまして、米軍の食糧投下も、いろいろ御意見がありますけれども、やはり米国人としての温かい思いやりを被害に遭った市民に対して持ったことでもありますし、確かにNGOの方もそういう意見を持っているかもしれませんけれども、それが全部ではないと思います。やはり問題は、何のために行っているかというその精神だと思います。

辻元委員 援助というのはオリンピックではありません。参加すれば意義があるんじゃないんです、効果です。やはり同じ、例えば三百十五張りのテント、メード・イン・パキスタンです。パキスタンで買い付けた方がずっとたくさん買えますし、私、これ単価を調べましたよ、二万五千六百円、テント一つ。パキスタンと物価差があって、パキスタンの方が安いです。そして、C130を六機飛ばしたわけですね。この費用を合わせたら、私は、本当の人道支援というのは、いかに迅速に多く、確実に手に届けるかというところだと思うんです。

 やったことに意味があるとか気持ちだと、日本人というか日本政府はそういうお立場なんでしょうが、もっと厳しくやれることをきちっと点検して、人道支援だ、人道支援だと言っていて、全く相手には、何なんだろう、これはと。もしくは、現場をきちっと調査していないからトラブルを巻き起こすということに、今の状況だったらなりかねないという非常に大きな懸念を持ちながら、私はここで質問をさせていただいているわけですね。

 パキスタンのテントを三百十五張り、それは持っていかぬよりいった方がええやろという意見もありますよ。しかし、本当に何がしたいんですか。本当に被災民を助けるために何がしたいのか、日本政府は。こういう内容でしています、UNHCRにお金も拠出しようとされていることも存じ上げています。しかし、本当の意味で人道支援というならば、もっと内容を濃く、総理も、特殊法人の改革、むだ遣いをなくすと。これはむだ遣いですよ。私は、このお金があれば、現地で買い付けて、もっと有効にお金が使えるというように申し上げたいと思うのです。

 さて……(発言する者あり)一生懸命やっているとか、そういう精神論で今回の事態に対応しようと思っていること自体、間違っていますよ。甘いですよ。

 私はこう思うんです、総理。先ほどから、パキスタンの現状についてもかなり厳しく見た方がいいと。反日感情も悪くなるでしょう、反米感情に引き連れて。そして、ある評論家の方も指摘されていましたが、パキスタンは核兵器を持っています。

 そして、事情のわからない、この間、自衛隊員、パシュトゥン語をしゃべれる人、いるんですかと。どうもいないようですが。事情がわからない武器を持った他国の軍隊が入っていくということによって引き起こされたトラブルが発端で大きな火が広がる。特に、今クーデターを非常に気にしていますね、パキスタンでは。それは皆さん御承知のとおりですよ。そして、核を持っていますから、この核をだれがパキスタンの中で管理するか、持つかというのは、ずっといろいろな人たちが国内でも駆け引きしている中に自衛隊を入れようとしているわけです。そこまできちっと情勢を厳しく見て、それでも自衛隊が行くんでしょうか。

 私は、中谷さんがこういう発言をされたのでびっくりしたんです、防衛庁長官。自衛隊もお役に立てる場合があるのではないか、きのうそうおっしゃったんですよ。そんなのんきな話じゃないですよ。私はそう思います。

 私の申し上げていることは、防衛庁長官として、厳し過ぎる見方だと思われますか。

中谷国務大臣 自衛隊のやることに対して何でもかんでも反対というような感じで聞いておりますが、実際、ルワンダに難民救援支援に行ったときも、辻元さんは恐らく反対されたんじゃないでしょうか。しかし、結果としては、数千人の人の命を救うというか治療もいたしておりますし、自衛隊には手術車とか天幕とか、お医者さんもたくさんいます。それから、日ごろから、電気もない、水道もない、そういうところで訓練をして、そういう厳しい条件の中でも一カ月も二カ月も夜も寝ずに訓練をして、そういう野外において自分たちが自活をしながら生存するというトレーニングもしております。

 ですから、国家として、国家の持っているそういう力を、難民とか困っている人たちに対して貢献をするということは、どうして反対されるのか、私は理解がしかねます。

辻元委員 防衛庁長官はまたルワンダの例を挙げられて、先日も私は反論させていただきました。ルワンダの例と、今回のパキスタンに派遣されようとしていることとは全然違います。ルワンダの場合は、日本はどちらかのサイドに、明らかに今回はアメリカサイドで行きますと言っているわけですから、違うんですよ、中立性の意味からいえば。それを今回の、ルワンダの例とかザイールの給水活動の例もおっしゃいましたけれども、それと今回のパキスタンに送るということを同列で認識されている防衛庁長官というのは、私は、防衛を任せて大丈夫かしらというように非常に懸念を持つということは指摘させていただきたいと思います。

 さて、そういう中で、少し話を進めたいと思いますが……(発言する者あり)

加藤委員長 御静粛にお願いいたします。

辻元委員 この法案の中身は、一番最初に官房長官にお聞きしましたが、主たる活動内容、諸外国の軍隊等、特に米軍に対して我が国が実施する措置と人道的精神に基づいて実施する措置を挙げているわけですが、この二つは私はやはり両立しないと思います。結局、一方で自衛隊が武器弾薬をアメリカ軍に運び、アフガニスタンを攻撃する米軍をサポートする立場で活動する内容を含み込むことによって、人道援助をするときに最も必要な要件である中立性を放棄することになるからなんです。ですから、この法案は二つのことを入れていますが、相矛盾することをこの法案一つに入れているわけです。

 これは何でかなと考えたら、これは推測ですけれども、人道活動といえば何だかいいことをしに行くんだろうというように思う人も多い。そういうお気持ちで出されたのでないかどうか知りませんが、ですから人道も入れておこうかというようだったら私は大問題だし、かつ、この人道支援と米軍支援、この相矛盾する二つを入れて一体何がしたいのかと。ですから私は、この場でもう一度、これを廃案にして一から考え直しましょうというように申し上げたいですよ。

 さて、それでは何をすべきかというところなんです。

 私は、先ほど漢方薬と申しましたが、日本は徹底的に人道援助に徹するというのがいいと思います、徹底的にね。武器弾薬を運んでとアメリカからも言われてへんと先ほど総理大臣もおっしゃっていました。日本が運ばぬでも、アメリカはある一定の期間やるでしょう。それで何をしに行くんですか、そこに。また、やる気を見せるとか、さっき、意思を確認する。だから、オリンピックじゃないですし、そうであるならば、日本ができる立場は、人道支援をきちっとやりましょうというところを担保できる立場に日本のポジションを置くということが私のアイデアなんです。

 先ほど申し上げましたように、パキスタンの中のUNHCRや赤十字、NGO、活動しています。この前も、人を送るんだったら国際機関の資格に切りかえて送ったらどうかということも申し上げました。物資も、今のように自衛隊の飛行機で、六機飛ばして運ぶよりも、現地で業者が買い付けていますよ、現場へ行けば。私、パキスタンの大使館員の配置も調べましたけれども、現地の職員の方も多数おられるのですね。ここは現地の職員の方、ちょっとこういう援助に通じた方、買い付けに通じた方を日本政府は特別職員として雇ってもいいと思います。現地できちっと活動する、そういうことができると思います。

 そして、さらに総理にお聞きしたいと思うのですが、アフガニスタンの内部への支援ですね。アフガニスタンはことしの冬までに全土で七百五十万人が飢餓に襲われると国連のWFPが発表しています。そうなってくると、あした参考人で来ていただきますが、現地で医療活動をしてこられた方のお話の中にも、日本はアフガニスタンを、小麦粉で本当にあふれるぐらい、そういう支援を望んでいるというような率直な意見もあるわけです。

 そこで、間もなく総理は上海のASEANの会議に出かけられると思うのですが、私は、ここで総理が参加国にアフガン復興基金というのを呼びかけられたらどうかと思います。これはどういうことかといいますと、十日にカタールの首都ドーハで行われたイスラム諸国会議機構、OICの緊急外相会談で、議長国のカタールのハリファ首長が、アフガンの民間人支援のための基金設立を呼びかけられたのですね。

 私は、ASEANへ行かれてこれはきちっと呼びかける、そういうことをされたらいかがかと提案したいのですが、どうですか、総理。

小泉内閣総理大臣 今後、日本としては、いろいろな人道上の支援策を考える必要がありますし、被災民に対してどのような対応をとるかというのは、各国の意見を聞きながら、また、いろいろ日本としての立場も考えながら、今回のテロとの闘いは、アラブとの対決でもないし、イスラムとの対決でもないし、アフガニスタンとの対決でもないという視点から努力をしていきたいと思います。

辻元委員 この復興基金のようなものを、だれが手を挙げて呼びかけるか。例えば中国とか韓国、呼びかけるかもしれませんよ。みんなやはり外交でのアピールも考えていますからね。ですから私は、早目に呼びかけられたらどうかということを提案しているわけです。

 特に、この一番最初の漢方薬論なんですけれども、テロの温床、これを断ち切るにはどうすればいいか。結局、一般市民とテロリストを切り離すということがすごく大事だと指摘されています。結局、テロリストを温存しておく社会であったり共同体をつくらないということだと。

 そうなってくると、結局、今回のアフガンの例もそうですが、内戦や権力の空白ができたところにテロの温床ができるとよく言われるわけですね。この前、ソ連がアフガンに侵攻した後、内戦や戦乱が続いたわけです。その中で、やはり憎悪が残ったり、それから、いろいろなテロリストの温床となる勢力が入り込めるというような余地をつくってしまう例は、世界にも幾つかあると思います。ですから結局、先ほどの劇薬で処理しようとした、しかしその後が大事だと思います、テロの根絶ということからいえば。

 そうすると、このアフガンの復興というのは、非常に日本にふさわしい位置にあると思います。そのためには、やはりどちらかのサイドに加担したのではなく、中立でやった、もう徹底的に人道でいきますと、そのかわり、それは何でもやらせてもらいますというのが日本の立場で、ですからアフガンの問題を私は今申し上げているわけです。

 さて、そこで総理にお聞きしたいのですが、総理は日本国憲法のことをよく引き合いに出されて、「私は、憲法の精神に沿って、これから、国際社会の中で名誉ある地位を占めるような行動とは何か、」これは総理の御発言です、「国際社会の一員として責任ある発言と行動をとって、憲法の精神を生かしていきたいと思います。」

 私たちのこの憲法の精神というのは、そういう人道支援に徹しようとか、武力で紛争は解決しない位置に行こうというのは、武器弾薬を運ぶことが武力行使か武力行使でないかという議論は先ほどからさんざん行われました。私は、武力行使と一体化だと思いますが、しかし、あらゆる紛争、どんな立場に置かれても、あらゆる紛争を武力で解決するというサイドには立たず人道に徹しよう、そして日本がやれるポジションをきっちり国際社会の中でつくって、そしてほかの国にはできないことをやろうというのがこの憲法の精神だと思っているのですよ、総理。ですから私はそう申し上げているのですけれども、総理、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 法による裁き、今までウサマ・ビンラーディンに対して、国連も身柄の引き渡しを要求したけれども、言うことを聞かない、耳をかさない。そうこうしているうちに幾つかの地点でテロが発生し、今回、またニューヨーク、ワシントン等で多発テロ事件が起こった。それでは、このまま、出てきてください、人道支援に徹して、私たちの言うことを聞いてくださいと言って、出てきてくれてテロリストの組織がなくなるのか。私はそう思いませんね。アメリカとの闘いはこれからだと言っているわけでしょう、テロリストたちは。

 そういう中で、アメリカも、もう今回の事態を放置することはできないということで、個別自衛権を発動して今回のような事態になっている。それに対して、国際社会が一緒に闘おうと。どの国も一国でこのテロ組織と闘うことができないほどテロ組織がかなり深く潜行し組織を広げている。こういう事態に至っては、私は、日本もテロとの闘いに毅然として闘わなきゃならないし、米国に対する闘いとは受けとめていない。日本自身の問題である、この今回のテロ攻撃は。しかも、日本はアメリカと同盟関係を結んでいるんです。非武装中立という考えをとらないんです。日本の安全を図るためには、アメリカと日米安保条約を結んで日本の安全を図ろう、その同盟国が世界と一緒になって闘っていく。

 そういうことを考えると、私はこのテロとの立場に、アメリカ勝手にやってください、世界勝手にやってください、日本は人道支援だけに徹しますということでいいんだろうか。私は、日本の国力に応じて、武力行使はしませんよ、戦闘行為には参加しませんよ、しかし、国際社会の一員として、国力に応じて、このテロとの闘いには毅然として立ち向かうということを考える方が大事ではないかと思っております。

辻元委員 私は、アメリカと友人関係を保てばいいと思っているんです。ですから、アメリカがやりにくい、できないポジションを日本がやったらどうかと申し上げているわけです。

 じゃ、ちょっと総理にお聞きします。

 テロの温床という問題で、もう一点、中東問題がありますね。私は、この中東問題でも日本が外交のイニシアチブを発揮するべきだと思っていますが、総理はオスロ合意についてどういう御見解でしょうか。

 総理、今のこのアメリカに対するテロの問題を議論するときに、オスロ合意についての見解を御自身で述べられないならば、それは非常に深刻な事態だと思う。それでテロの対応策を――いや、中東問題、実際にアメリカは今パレスチナ国家樹立についての発言をちらちら見せ出したり、パレスチナ、イスラエルのこの問題にどういうふうにコミットメントしていこうか。

 総理、じゃ、ちょっとお聞きします。総理、総理になっちゃうから静かにしますけれども、総理はオスロ合意は御存じでしょう。それをお聞きしたいと思います。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 名前は聞いたことはありますが、それは今、質問があって、読めば判断はできますよ。今まで読んだことはありますから、背景は。しかし、突然オスロ合意何ぞや、これは今背景説明を聞けば判断はできますが、このテロの背景、これについて、私はよく知っている人に答弁してもらいたい。

辻元委員 このテロの背景、いろんな論調も出ていますが、このパレスチナ、オスロ合意の問題は新聞などにも出ているし、普通の国際社会を見ていたら私は常識の範囲の質問だと思います。特に、貧困問題と中東問題のこの基礎で、国会議員の皆様の中にもオスロ合意について御自身の見解をお持ちでなければ、これは非常に深刻な事態ですよ。それぐらいこの中東問題のかなめなんですよ。

 じゃ、総理にお聞きします。

 アメリカとイスラエルの関係というのもこの間ずっと議論されています。きのうの、例えば日本の報道でもそのことについて議論されていましたね。このアメリカとイスラエルとの関係について、総理はどのようにお考えですか。これは大事な話ですね。

小泉内閣総理大臣 アメリカとイスラエルは密接な関係を持っておりまして、それがパレスチナとの問題で非常に、今回のテロの中に全く関係はないとは言えないと思いますが、私は、アメリカもイスラエルとパレスチナとの中東和平については真剣に考えておりますし、今回のテロの背景に全くないとは言い切れないと思いますが、今後とも、アメリカとイスラエルの関係は非常に強い、そういう中でパレスチナ問題があり、中東和平の問題がある。これはもうイスラエル建国以来深い歴史がありますから、なかなか難しい問題だと思います。

辻元委員 オスロ合意のことを申し上げましたのは、私は、東京合意みたいなことを、改めて、この中東和平でイニシアチブをとって仲介役を果たして、かつてカンボジアのときは東京フォーラムというのを東京で持ちました。そういうことをリーダーシップをとってやるという働きを始めるというサインを出すだけでも、随分国際状況は変わってくるわけですね。ですから、先ほどのアフガンの復興の問題や、それから今の中東の問題、これは一つの、私は、日本がとれる、とらなきゃいけない大事な問題だと思っています。

 最後に総理。総理は、いろいろなところの御発言で、土井たか子党首が、総理が靖国に行かれた件で、靖国に行って二度と戦争をしないということを誓われたのに戦争に参加しようとしているのかというような代表質問をしました。そういう意見は私もよく耳にするわけですね。それに対して総理は、日本は孤立しちゃいかぬ、かつて孤立したから戦争に突っ走っていったんだとおっしゃいました。そういう答弁をされましたね。

 私は、ここでちょっと反論をしておきたいんです。かつて孤立したから戦争に突っ走っていったんでしょうか。日本は、日独伊三国同盟を結んでいました。そして、朝鮮や台湾を植民地にしていました。私は、枢軸国側ということで、日本はやはり覇権をとっていこうという意思のもとに前の戦争は起こっていると思いますよ。それを、日本が孤立したからという歴史認識をお持ちで、今回それと混同して、その歴史認識も私は違うと思いますけれども、私とは見解が違います。

 そういう御認識で、日本は孤立したくないから今回は行くんだというようなことは、私、歴史認識、それから現状認識、先ほどから、オスロ合意の話やそれから援助の現場の話、それから非常に厳しく国際情勢を見た方がいいということも申し上げましたが、熟慮していただかないと困るということを最後に申し上げまして、今回の法案は考え直しましょと、皆さん、もう一度人道援助に徹して何ができるか考える委員会を開きたいということを申し上げて、質問を終わります。

加藤委員長 この際、今川正美君から関連質疑の申し出があります。辻元君の持ち時間の範囲内でこれを許します。今川正美君。

今川委員 私は、社会民主党の今川正美です。

 今回の新しい法律を議論するに当たりまして、まず冒頭に一言申し上げておきたいのでありますが、小泉総理、実は、一昨日、私は本会議の代表質問をいたしましたが、そのときに、例えばきょうのこの委員会の席でもそうなんですが、この法案に少しでも反対の意見を出すと、おまえはテロに味方をするのか、あるいは、おまえは赤軍か、こういう本当にみっともないやじが飛んでくるわけであります。このような、与党の中の本当に浮かれたような、そういうふうな議員心理の中でこういう法案が審議をされるということは非常に残念に思いますし、そういうやじそのものが、この法案の危うさ、危険性をそのままあらわしているように私は思うのです。

 さて、具体的に小泉総理に伺いたいと思いますが、まず最初に、先月の十九日にいわゆる政府としての方針七項目を示されましたが、とりわけ、今お聞きしたいのは、米国に対する支援策に関してであります。

 実は、自衛隊を中心にしながらいろいろな協力をやっていくというふうにうたわれているわけでありますけれども、肝心の日米間の協議がいつ、どんな形で行われているのか、そのことをまずお伺いしたいと思います。

福田国務大臣 米国との間でどのような協議、連絡があったかということでございますけれども、この九月十一日のテロが発生して以来、米国との間では緊密に連絡をとってきております。

今川委員 それでは全然話にならぬのですね、答えになっていません。

 これほど重要な、米国に対するあるいは米軍に対する支援をやるということであれば、昨日来の総理以下の答弁を聞いていますと、まだ具体的なことがわからないということのようでありますけれども、そういうことはおよそ考えられません。

 例えば周辺事態法でいきますと、日米間の調整メカニズムということがありますね。そのように、今は既にアフガニスタンに対する空爆がもう始まっているわけでありますので、少なくとも、この法律が仮に成立をするとするならば、その以前に幾つかの事態を想定しながら、日本がどこまでやれるのか、あるいは米側がここら辺をこうやってくれという程度の協議といいますか打ち合わせぐらいないことには、それこそできるだけ迅速にと言われている総理の立場からしても間に合わないんじゃないですか。いかがですか、その点は。

福田国務大臣 いろいろ協議を続けておりますけれども、事態も日々変化する、そういう状況でありますので、これは、この法律を成立させていただくころには、いつになるかわかりません、一日も早くと、こういうふうに思っておりますけれども、そのころにはその概要を詰めていかなければいけない、こういうふうに思っております。

 今現在は、米軍から、米国から、ニーズとかそういったようなものを協議して、また向こうから要求があるとかいうような状況にはないということでございます。

今川委員 例えば、これは十月四日付の朝日新聞でありますが、アーミテージ国務副長官ら複数の米政府高官の側から、いわゆるテロ対策特別措置法による自衛隊の米軍支援活動に関連して、自衛隊の活動の内容や地域について、できる限りの柔軟性を持たせることが重要だということを日本政府側に要望していることがわかったという記事がありますが、公式か非公式かを問わず、こういうことが、私、これでよしとはしませんけれども、そういうことがお互いにあって当たり前だと思うんだけれども、この件はお認めになりますか。

小泉内閣総理大臣 日米安保の重要性は常に考えています。その中で協議しているんです。緊密な同盟関係であることは、日本にとっても重要なことだと思っています。

今川委員 いや、今私が問うたのは、アーミテージ国務副長官ら米政府側から、恐らく武器や弾薬の輸送なども念頭に置いた要望だと思うんだけれども、できる限りの柔軟性を持たせるようにということが、実際にそういう打診があったのかどうかをお聞きしているんです。

小泉内閣総理大臣 いろいろな打診とか協議というのは常に続けていますよ。表に出せることと出せないことがあります。常に緊密な連携をとっていかなければならない。新聞報道が事実とは限りません。今までの例においても、イージス艦の発表においても、イージス艦、まだ派遣していないし、用意もしていないし、いろいろ、あることないことを新聞報道は書きますが、新聞報道だけではない面もたくさんあるんです。その中で、協議はしますが、表に出せるもの、出せないもの、いろいろあると思います。

今川委員 どうしてもこういう場でも明らかにできないものは仕方がありませんが、では、私が今指し示した今月四日付の朝日新聞の記事はうそであるということですか。

小泉内閣総理大臣 私はその新聞を読んでいませんから、わかりません。

今川委員 次に、総理は事あるたびに主体的に、積極的にとおっしゃっています。では、肝心のこの対米支援策に関して、日本政府内部で、いつから始めて、具体的にどのような検討の経過をたどっているのか。今総理もおっしゃいましたが、イージス艦派遣、まだやっていない、それはそうでしょう。しかし、これは十月の十二日、朝日新聞でありますが、この中でも、複数の米政府幹部側から、あらかじめ特定の艦船を除外するのは問題だというようなことが記事になっています。この点いかがですか。

小泉内閣総理大臣 私も、その記事を読んでいませんからわかりませんけれども、これからの展開によって、イージス艦を派遣した方がいい場合は派遣するし、派遣する必要がなかったら派遣しません。具体的な展開を見て日本政府としては判断したいと思います。

今川委員 しかし、この間、九月十一日にああいう大変な事件があった後、ずっと時系列的に状況を見てみますと、先月の二十七日の段階で、政府・与党は情報収集を目的としたイージス艦などの自衛艦のインド洋派遣を当面見送りというのが二十七日付の記事です。それから、翌二十八日に、日米共同の情報収集活動のため、来月、つまり今月のことですね、二十日までにインド洋へのイージス艦派遣を検討するよう米国より要請を受ける。いろいろなそういうふうな流れがあるではありませんか。

 そうした場合に、仮にイージス艦を、当初、派遣するのかという段階では、防衛庁設置法の中の調査研究に基づくというふうにありましたけれども、例えばの話です、防衛庁設置法のその調査研究というのは、あくまでも防衛庁という組織の運用にかかわる法律であって、自衛隊という組織の運用にかかわるものはあくまでも自衛隊法じゃありませんか。この点いかがですか。

中谷国務大臣 防衛庁設置法で十分可能であります。これは、第五条十八に「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究を行う」ということで、この所掌事務の中に防衛庁の防衛出動とか治安出動、PKO、邦人救出、こういう所掌事務がございます。そういう行為に対して円滑な業務を行うということで、調査とか情報収集は可能であるというふうに思います。

今川委員 例えば、このイージス艦は、今、日本に四隻ありますが、自衛隊は四隻保有していますけれども、このイージス艦を導入するときの経過から見ますと、少なくとも海上自衛隊にとって日本の平和と安全のためには四隻は必要であるという経過があったと思いますね。仮に二隻ぐらいインド洋あたりに派遣をしなければならないということが出てきた場合に、肝心の日本本土の防衛というのは一体支障があるのかないのか、いかがですか。

中谷国務大臣 陸上自衛隊、航空自衛隊、海上自衛隊、それぞれ情報収集能力を持っております。総力を挙げて実施をすれば可能ではないかというふうに思います。

今川委員 今、情報収集能力とおっしゃいましたが、これは通常陸海空三自衛隊が米軍との間に行っている合同演習ではないんですね。

 今回、仮にですよ、長官、今後の日米の協議の中で、インド洋方面まで例えばイージス艦なり護衛艦なり輸送艦が行く。今おっしゃったように、情報活動とおっしゃるけれども、実際的にはアメリカは既にイギリスなどとともに軍事行動を組んでいるわけですから、そういう具体的な戦争行為の中の情報作戦という不可欠の部分を担うということになりはしないんですか。

中谷国務大臣 これは、あくまでも我が国が独自で主体的に判断することでもございますし、艦艇の派遣というのは、自衛隊の任務を円滑に行うために実施するものでございます。

 例えばどういうものが考えられるかということにつきましては、今回の事態を受けて周辺国の状況が非常に悪化をします。そうなりますと、邦人救出の可能性も出てきますし、また、避難民が大量に発生した場合には現地に物資を届ける。前回は航空で行いましたけれども、海上で行う必要も出てくるかもしれません。そういう場合に、港湾の状況、気象それから海の状況、並びに船舶と航空機の航行状況ですね、こういったことを調査する必要性は生じてくるのではないかというふうに思います。

今川委員 もう余り時間がないので、いま一つ大事な点を、これは総理にぜひお伺いしたいと思います。

 実は、三年前にインドやパキスタンは、核実験をやった際に、アメリカもそうでありますが、日本も制裁措置を施しましたよね。これが今回、九月の二十一日ですか、インドやパキスタンへの制裁解除はしていないと思いますが、いわゆる四千万ドルほどの資金援助をするということが行われていますけれども、この問題、アメリカは既に制裁を解除しているようでありますが。

 実は、昨日のこの委員会の中でも、田中外務大臣の方から答弁があっていましたが、現在のパキスタンのいろいろな状況はどうなのか。いろいろな説明の中で、現時点では、今の日本とは違うけれども、一応平穏であるということをおっしゃっていましたけれども、今、いろいろなマスメディアの報道によりましても、もともとタリバーン政権と近いところにあったわけですから、事の展開次第で、総理、パキスタンの中で今の政権が何らかの手段で覆されて、タリバーン政権と通じるような政権でもできたら、これは、言われるところのテロ集団とのつながりを含めて、思いもしない形で、いわゆるミサイルなりパキスタンが保有していると言われる核兵器がテロ集団の方に渡ってしまいかねないという大変危険な要素をはらんでいるんじゃないかということを懸念するわけです。

 そしてまた、これは同時に、米国に協力するならばということでインドなりパキスタンに資金援助ということのようでありますけれども、しかし、これは長年日本政府が一貫してとってきた非核政策との整合性から考えてもおかしいんじゃありませんか。これは総理、どう考えますか。

小泉内閣総理大臣 パキスタンがタリバンと友好関係を築いてまいりましたけれども、今現在こういうような敵対関係に変わっている。そういう中で、日本としてはパキスタンに経済措置をとっておりましたけれども、これは核実験の関係もあるんですが、今回、事態が変わってまいりまして、パキスタンも我々アメリカ関係諸国と一体となってテロと対決するという姿勢を鮮明にしております。

 そういう中にあって、我々としてもパキスタンに必要な経済支援をしようということでありまして、今まで核実験によってとってきた経済措置と今回の緊急支援というのは別次元の話であります。

今川委員 それでは、次に移ります。

 いわゆるゲリラ戦も含めた一般の戦争防止政策と、それから今回のような国際的なテロ、いわゆるテロを根絶するための政策との共通点なり相違点を総理はどのように認識されていますか。

小泉内閣総理大臣 ゲリラとは違うんですよね、今回のテロ攻撃は。全く新しい形の、想定できないような対応を余儀なくされているんです。

 というのは、大体ゲリラというのは一国内で政府転覆あるいは反政府活動が多いんです。今回の場合は、あのテロリスト、今ウサマ・ビンラーディン属するアルカーイダというのはアメリカを敵にしているんですからね。アメリカを敵にする、アメリカ人を敵にする。アメリカの本土だけじゃない、全世界に散らばっている大使館とか、あらゆるところを敵にしているというんだから、全く対応が違う。しかも、あのアルカーイダにしても、一国ではない。国ではない、政権でもない、拠点が全世界に散らばっている。どこにあるかわからない。こういう、今までのゲリラとはやはり違っていますね。だから、それだけに難しいんだと思います。

今川委員 実は、このテロに対して、今回ブッシュ大統領は、今も目の前で進行中のように、軍事的に制裁を加えていく、攻撃を加えるというやり方をしていますが、実は、例えば米軍の中東情報の専門家であるスティーブンという陸軍中佐は、軍事的手段だけでテロを根絶することが不可能であることは歴史の教訓であるとも言われていますし、また、米陸軍の教範、テロ対策の中でも、米陸軍のドクトリン及び合衆国政府の政策は、テロの脅威に対する純粋に軍事的な解決法があるとは述べていないとまで指摘されているわけですね。

 つまり、こういう凶悪なテロをどう防止し、根絶をしていくかという意味では、むしろそういう軍事的な手段の発揮する効果は極めて低いということを指摘されているわけですが、その点いかがですか。どう考えていますか。

小泉内閣総理大臣 いろいろな視点があると思います。

 確かに、軍事的手段だけではテロを根絶できない。しかし、他のあらゆる手段を講じても法と正義が実現し得ない場合は、国際社会は軍事的手段も認めていると思います。

 今回、そういう立場からアメリカと国際社会が立ち上がったわけでありますが、見方についてはいろいろある、我々の見方とは全く相反する見方もあるということを否定するつもりはありません。

今川委員 もう時間が来てしまいましたが、私は最後に、ブッシュ大統領は傲慢にも、今度の事件では国際社会が米国側につくのかテロの側につくのかという二者択一的な物の申され方をされたけれども、これは誤りだと思います。

 私は、少なくとも、今回のアフガンであれパキスタンであれ、そこにミサイルを撃ち込まずとも、既に飢えで死んでいく人たちが何十万人単位でいる。そういう一番弱っている難民のところに視点を据えながら、今回みたいに、先ほど総理もおっしゃいましたが、国連が何度犯人を引き渡すように決議をしても渡さないじゃないかという理由であれば、今回行っているように米英中心の軍事行動でよろしいというふうにはなっていないと思うんですね。国連がまだ十分なものじゃないにしても、あくまでも国連中心にやるべきことであって、国連が頼りがないからといって、米軍中心で勝手にやらせていいということにはならないと思います。

 そのことを最後にお聞きしたいと思いますが、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 米国は攻撃されたけれども、米国に対する攻撃だけにとどまらないと私は思っているんです。日本自身の問題だと、このテロとの対決は。国際社会もそうだと思いますよ。人ごとと思っていない。日本もこのテロとの闘いに傍観者の立場はとりません。米国と一緒になってこのテロと闘わなければいけない。

 そういう面で、私は、今回の米国を初め世界がこのテロとの闘いに、武力行使はしませんが、戦闘行為には参加しませんが、できるだけの支援協力態勢をとりたいと思っております。

今川委員 もうこれで終わります。最後に、今、総理が最後におっしゃったことに関して、この一点だけ申し上げておきます。

 私が言いたかったことは、国連憲章の基本理念なり本筋というのは、こういう場合も含めて、いわゆる集団安全保障措置という本筋を歩くべきであって、あくまでも、憲章五十一条にうたっている個別的ないし集団的自衛権というのは一定期間に限られたわき道、例外規定にすぎないということをはっきり申し上げておきたい。我が社民党として、あくまでも、せっかく冷戦が終わったというのに、そういうわき道にそれるのではなくて、今こそ集団安全保障の方に進んでいこうではないかということを申し上げたいのであります。

 これで質問を終わります。

加藤委員長 これにて辻元君、今川君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明十三日土曜日午前九時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四分散会




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