衆議院

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第3号 平成14年5月7日(火曜日)

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平成十四年五月七日(火曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 瓦   力君
   理事 衛藤征士郎君 理事 金子 一義君
   理事 久間 章生君 理事 米田 建三君
   理事 伊藤 英成君 理事 玄葉光一郎君
   理事 赤松 正雄君 理事 工藤堅太郎君
      石破  茂君    岩倉 博文君
      岩永 峯一君    岩屋  毅君
      大野 松茂君    嘉数 知賢君
      熊谷 市雄君    小島 敏男君
      近藤 基彦君    斉藤斗志二君
      桜田 義孝君    七条  明君
      田中 和徳君    西川 京子君
      浜田 靖一君    林 省之介君
      増田 敏男君    松島みどり君
      森岡 正宏君    山口 泰明君
      伊藤 忠治君    枝野 幸男君
      大石 尚子君    岡田 克也君
      川端 達夫君    桑原  豊君
      首藤 信彦君    筒井 信隆君
      中野 寛成君    前原 誠司君
      三井 辨雄君    渡辺  周君
      上田  勇君    白保 台一君
      田端 正広君    中塚 一宏君
      樋高  剛君    藤井 裕久君
      赤嶺 政賢君    木島日出夫君
      志位 和夫君    今川 正美君
      土井たか子君    東門美津子君
      井上 喜一君    宇田川芳雄君
    …………………………………
   内閣総理大臣       小泉純一郎君
   総務大臣         片山虎之助君
   法務大臣         森山 眞弓君
   外務大臣         川口 順子君
   財務大臣         塩川正十郎君
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   厚生労働大臣       坂口  力君
   農林水産大臣       武部  勤君
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   国土交通大臣       扇  千景君
   環境大臣         大木  浩君
   国務大臣
   (内閣官房長官)
   (男女共同参画担当大臣) 福田 康夫君
   国務大臣
   (国家公安委員会委員長)
   (防災担当大臣)     村井  仁君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      中谷  元君
   国務大臣
   (沖縄及び北方対策担当大
   臣)
   (科学技術政策担当大臣) 尾身 幸次君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君
   国務大臣
   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君
   国務大臣
   (規制改革担当大臣)   石原 伸晃君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   防衛庁副長官       萩山 教嚴君
   外務副大臣        杉浦 正健君
   国土交通副大臣      佐藤 静雄君
   防衛庁長官政務官     木村 太郎君
   政府特別補佐人
   (内閣法制局長官)    津野  修君
   衆議院調査局武力攻撃事態
   への対処に関する特別調査
   室長           鈴木 明夫君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月七日
 辞任         補欠選任
  近藤 基彦君     松島みどり君
  西川 京子君     岩倉 博文君
  枝野 幸男君     三井 辨雄君
  首藤 信彦君     岡田 克也君
  肥田美代子君     大石 尚子君
  中塚 一宏君     藤井 裕久君
  赤嶺 政賢君     志位 和夫君
  東門美津子君     土井たか子君
同日
 辞任         補欠選任
  岩倉 博文君     西川 京子君
  松島みどり君     近藤 基彦君
  大石 尚子君     肥田美代子君
  岡田 克也君     首藤 信彦君
  三井 辨雄君     枝野 幸男君
  藤井 裕久君     中塚 一宏君
  志位 和夫君     赤嶺 政賢君
  土井たか子君     東門美津子君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 安全保障会議設置法の一部を改正する法律案(内閣提出第八七号)
 武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案(内閣提出第八八号)
 自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第八九号)


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     ――――◇―――――
瓦委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、安全保障会議設置法の一部を改正する法律案、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案及び自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。衛藤征士郎君。
衛藤委員 自由民主党の衛藤征士郎であります。
 今回上程されております、いわゆる有事関連三法案につきまして、自由民主党を代表いたしまして、総理並びに各閣僚に質問をいたします。
 昭和五十二年、福田内閣、このときから有事法制の研究が始まりました。既に二十五年たったわけであります。福田内閣は、有事法制の研究結果を国会に報告いたしました。次の三点が指摘されております。第一点は、自衛隊の行動にかかわる法制、第二点は、国民の保護にかかわる法制、第三点は、米軍の行動にかかわる法制、この三点が指摘されたわけであります。
 今次、小泉内閣におきましては、いわゆる有事関連三法律案を提案されましたが、まさに福田内閣のときに指摘されたこの研究報告の三点と近似しておるわけでございます。
 また、自衛隊が、自衛隊法を創立、昭和二十九年でありますから、約五十年たちました。この間、我が国国会における安保論議といいますと、自衛隊の行動が実力行使に当たるかどうか、あるいは自衛隊の行動が集団的自衛権の行使に抵触するかどうか等々の議論が大半を占めてきた、このように言っても過言ではないと思います。
 今次、小泉内閣は、歴代の各政権がなし得なかった積年の課題である外国からの武力攻撃に対する対処の仕方等々、いわゆる有事関連三法律案を提案したわけであります。そういう意味で、私は、小泉内閣と小泉首相に対し、最大の敬意とまた最大の信頼を寄するものであります。こういう立場に立って、私は、以下の点についてお尋ねをいたしたいと思っております。
 第一点でありますが、国家の緊急事態に対する対処は独立国として当然の責務でありまして、これに対処する態勢は、平素から国の備えとして当然に整備すべきものと認識しておりますが、総理は、緊急事態への対処のあり方についていかようにお考えでございますか、まずお尋ねをいたします。
小泉内閣総理大臣 武力攻撃を想定するということは、国民にとって非常に、できれば避けたい事態だと思います。しかし、いついかなるときに国家の緊急事態が発生するかわからない。そういう事態に対して、起こってからどうやろうかと対策を練るのではなく、ふだんからいわゆる一朝事がある場合に対して、いわゆる有事に対して、冷静に考え、しかるべき対応をとるということは、政治の要諦であり、国家として最も必要な仕事ではないかと思っております。
 今回、そういう緊急事態に対して、多くの国民の理解を得つつ、国会議員の皆さんから十分な議論をいただき、どのような態勢をとったらいいかということで、今回この法案を提出して御審議をいただくわけでございますが、私としては、この問題について、なぜこのときに出すのかという批判が一部にありますが、むしろ、今までなぜこういう準備なり法案を提出してこなかったのかということにこたえる責務があると思いましたから、今回私は提出して、国会議員並びに国民の方々の十分な関心と議論を持って、有事に備える態勢を独立国の日本としても備える必要があるということで提案したということを御理解いただきたいと思います。
衛藤委員 また一方では、既に冷戦が終結したにもかかわらず、なぜ今このときに武力攻撃事態に対処するための法制を整備する必要があるのか、こういう素朴な国民の声もございます。
 これらの法案を整備する必要性を国民にどのように御説明されるのか、総理にお尋ねをいたします。
小泉内閣総理大臣 今、最初に答弁したとおりでありまして、泥縄式という言葉があります。泥棒を捕らえてから、縄はどこにあるんだあるんだと探したってしようがない。それではいけない。やはり治にいて乱を忘れずというのは、昔から、国家の責任ある立場に立てば、あるいは各独立国の立場としては、平和なときに乱を考えて、その乱を未然に防ぐためにはどうしたらいいか、乱が起きた場合にどういう備えがあればいいかということの方が、むしろ私は当然ではないかと思うのであります。そういう点から、いわばもう冷戦で武力攻撃を受ける事態やおそれはないんだと考えることの方がどうかしているんじゃないかと。
 現にテロなんというのは、昨年九月十一日起こったあの事件、だれも予測し得なかったことですから、今予測し得ないから何もしなくていいんだではなくて、予測し得ないことに予測すべきだというのが、むしろ私は当然ではないかと思うのでありまして、いわば平和のときに、乱が起こった場合、緊急事態が発生した場合にどう考えておくかということの議論をしっかりとしようということが今回の法案でもありますので、そういう点をじっくりと議論してみたいと思います。
衛藤委員 ただいま総理の御答弁にございましたように、昨年十二月の不審船事案の発生等を考慮すれば、武力攻撃事態よりも、大規模テロであるとか不審船事案に対処する法制を急ぐべきではないかという、そのような国民の声がたくさんございます。また、戦後我が国に、二十一回にわたりまして外国の不審船が我が国の近海を周回しておる現実があります。総理はこのような国民の声に対してどのようにお答えされますか、お尋ねを申し上げたいと思います。
小泉内閣総理大臣 昨年九月のテロ事件にしても、あるいは武装不審船事案にしても、こういう事態を想像し得ない、普通の平和な事態においてはだれも予測し得ないことだったと思います。しかし、現実に起こった。こういう点についても、私どもとしては、このような予測し得ない事態が起こったときには、国民の生命、安全を守るためにどういう態勢をとったらいいか、どういう対応をすればいいのか、あるいはその活動に当たる機関がどのような装備をしておけばいいのかということも十分議論する必要があると思っております。
衛藤委員 有事におきましては、国民の生命財産の保護が極めて重要な課題でございます。しかしながら、武力攻撃事態対処法案におきましては、国民の生命、身体及び財産を保護するためのいわゆる国民保護法制が先送りされています。このことにつきまして、総理のお考えを承りたいと思います。
福田国務大臣 今回提案されております三法案、これは武力攻撃事態への対処を中心に国全体としての基本的な危機管理体制の整備を図る、こういうものでございまして、国民の保護などのための法整備についても、この法案に示された枠組みのもとで整備の方針、項目を示しながら包括的に実施していく、こういうことになっております。
 国民の保護のための法制の整備につきましては、関係機関の意見のほか、国民的議論の動向を踏まえながら、十分な国民の理解を得られるような仕組みをつくる必要があるというように考えておりまして、政府といたしましても、こういう法制の重要性にかんがみまして、今後、法案の定める二年という目標期間内に法案の取りまとめに全力で取り組んでいきたい、このように考えておるところでございます。
衛藤委員 有事におきましては、国民の理解と協力が不可欠であることは論をまたないわけでありますが、武力攻撃事態対処法案第八条におきまして国民が行うよう努めることとされておる必要な協力としては、具体的にいかなる内容を想定しておられるのか、お尋ねをいたします。
福田国務大臣 武力攻撃事態におきましては、国、地方公共団体、また指定公共機関とか、そういう団体が対処措置を実施する際には、国及び国民の安全の確保ということを目的として国民の方々にも御協力をいただけるもの、こういうように理解をいたしております。
 この規定は法的に拘束するものではございませんけれども、国民の方々に、それぞれの置かれた状況の中で、避難や被災民の保護等に関してできる限りの協力をお願いしたい、このように考えておるところでございます。
衛藤委員 私どもの憲法第十二条には、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」と。また、憲法第十三条には、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」このように明記されておるわけであります。
 この観点からいたしましても、自衛隊法一部改正案における処罰の問題がございますが、武力攻撃事態における国民の人権の保障に関する重要問題であります。本法で新たに設ける罰則の考え方につきまして、憲法第十二条、憲法第十三条を踏まえて、いかようにお考えであるか、お答えをお願い申し上げたいと思います。
中谷国務大臣 今回の自衛隊法の改正の罰則につきましては、国民の人権保障に配慮しつつ、武力攻撃事態における自衛隊の任務遂行を確保するための必要最小限のものに限定をいたしております。
 例えば、物資の保管命令は、自衛隊の任務を遂行する上に必要とされる物資を確保するために必要なものでありますけれども、これに関する罰則は、この保管命令に違反して保管物資を隠匿、毀棄または搬出するという悪質な行為を行った場合に限り、科すようにいたしております。
 このように、この罰則につきましては、自衛隊の円滑な任務の遂行を積極的に妨害するような悪質な行為に科するなど、公共の福祉を確保するための必要最小限のものであるという内容にいたしております。
衛藤委員 次に、地方公共団体との関係についてお尋ねいたします。
 有事におきましては地方公共団体の協力が不可欠でありますが、法案では、内閣総理大臣が地方公共団体の長に対して指示やいわゆる代執行することができるとなっております。もし都道府県知事が防衛庁長官等の要請を拒否した場合の対応はいかになされるのか、防衛庁長官にお尋ねをいたします。
中谷国務大臣 自衛隊法の百三条に規定をいたしておりますけれども、この防衛出動時という国家の緊急事態におきまして我が国を防衛するために行われるものでありまして、この処分が適切になされない場合には、自衛隊の任務遂行に大変大きな支障が生じて、ひいては国家の存亡にもかかわることとなるおそれがありますので、このような事態においては、当然のことながら、都道府県知事の協力を得られるものだというふうに考えております。
 この百三条の一項規定によりまして、自衛隊の行動に係る地域、これは総理大臣の承認を得て指定をされるものでありますけれども、この地域においては、事態に照らし緊急を要すると認められるときは防衛庁長官等がみずから措置できるというふうになっております。
 また、拒否した場合でございますけれども、防衛出動という国家の緊急時において知事の協力が得られるものと考えておりますが、どうしても協力が得られない場合につきましては、法定の受託事務について地方自治法に定める手続に従いまして、内閣総理大臣が是正の指示及び代執行の措置をとることとなるものが考えられます。
 その他のものにつきましては、この法律の議論等を通じて行うということになろうかと思います。
衛藤委員 防衛庁長官にお尋ねいたします。
 防衛出動との関連でありますが、武力攻撃事態対処法案の対処基本方針に防衛出動待機命令や予備自衛官の招集についてまで記載することになりました。これらにつきましても国会の承認が必要となったわけでありますが、自衛隊の円滑な行動の確保の観点から問題はないのか、防衛庁長官にお尋ねをいたします。
中谷国務大臣 これまで、防衛出動や予備自衛官の招集命令等につきましては国会承認が必要でございませんでした。しかし、今回、これを国会承認に係るようにいたしましたのは、やはりこういった事前の準備措置等をすることも我が国の防衛の強固な意思を内外に示すものでありますし、また、立法府と行政府が統一的な意思決定のもとでこれらの措置を実施するために、今回の法律では国会承認を求めることといたしたわけでございます。
 この国会承認は事後の承認であることから、これらの措置について国会の承認を得ることとされていなかったこれまでの法制と比べて自衛隊の円滑な行動の確保の観点から問題があるかというふうに聞かれれば、このような手続が行われるということでかえってこの根拠が明確になったということで、我々としては支障がないというふうに考えております。
衛藤委員 続きまして、防衛庁長官にお尋ねいたしますが、防御施設構築の措置に関してお尋ねいたします。
 今回の自衛隊法の一部改正案では、事態が緊迫し、防衛出動が発せられることが予測される場合に、防衛庁長官は防御施設構築の措置を命ずることができるというふうに、新たな自衛隊の行動が追加されました。
 なぜ新たにこうした行動が追加されたのか、お尋ねをいたしたいと思います。
中谷国務大臣 これは、現時点におきましては、防衛出動がかかってから自衛隊が出動して準備をするわけでありますけれども、しかし、現実的に考えますと、この防御施設を構築するには相当な時間がかかる、また、脅威や武力攻撃の形態が非常に多様化をいたしておりまして、防衛出動がかかってから行うのでは間に合わないという場合も想定されるために、事態が緊迫をしてきて防衛出動が発せられることが予想される状況になりましたら、閣議また国会での承認等もいただきながら、この防御陣地を構築するというふうにいたしたわけでございます。
衛藤委員 また防衛庁長官にお尋ねいたします。
 本法律案は、旧来型の脅威しか念頭に置いておらず、時代おくれではないかという指摘もございます。武力攻撃事態としてどのような事態を防衛庁長官は念頭に置いておられるか、お尋ねをしておきたいと思います。
中谷国務大臣 ある事態が武力攻撃に至るかどうかということにつきましては、国際情勢とかそのときの状況で判断をするわけでありまして、どのような事態が武力攻撃に当たるかというのは、その規模とか形態の面で特に限定はなくて、あらゆる事態を考える必要がございます。
 現法制につきましては、テロとか不審船等につきましては、警察機関や海上保安庁機関もございまして、治安出動の形態で、防衛出動に至る前の段階の措置でありますけれども、そういう措置を実施したとしても、テロや不審船の事態がさらに拡大悪化をして武力攻撃に至るということもございます。この武力攻撃に至る段階の措置というものがなされていないという点で、テロ、不審船の対応等を行う場合でも、対処し切れない場合がある場合に、武力攻撃事態として、国家として、最悪、極限状態の態勢をとって対処できるわけでございまして、いわば防衛の根幹、基本をつくるという観点で、国の安全保障のいわば基本の構え、これをきちんと整備した上でそういうテロとか不審船等にも対処できるように、国全体の安全保障の体系を考える上での中核になる体制を整えるという点で非常に必要である、重要であるというふうに認識をいたしております。
衛藤委員 本法律案が適用される武力攻撃事態には、武力攻撃が予測されるに至った事態が含められておりますが、これによりまして事態の範囲が拡大してしまうのではないかという懸念もございます。武力攻撃が予測されるに至った事態を武力攻撃事態に含めた理由は何か、官房長官にお尋ねをいたしたいと思います。
福田国務大臣 我が国に対する外部からの武力攻撃に対しまして、武力攻撃を有効に排除するとともに、国民の生命、身体及び財産を保護するというために万全の措置が講じられなければならない、これはもう当然のことでございます。
 このような見地から、本法案は、我が国への武力攻撃が発生する可能性が高いと客観的に判断される予測の段階から、国民の被害を防止するための警報の発令、避難の指示などの措置を講ずるとか、また武力攻撃が現実に発生した場合に自衛隊がとる措置の準備を開始する、こういうようなことができるようにしているものでございます。
衛藤委員 国民の保護法制が未整備の状態でありますが、こういう状態のときにもし外部からの武力攻撃が、その事態が発生した場合には自衛隊はどのように対応するのか、防衛庁長官にお尋ねをしておきたいと思います。
中谷国務大臣 この法案が未整備の段階において武力攻撃が発生した場合ということでございますけれども、当然のことながら、自衛隊は、武力攻撃の排除に全力を挙げるわけでございます。この際、現行の自衛隊法の第九十二条の規定がございまして、国民の避難等の措置を行い、国民の生命、身体及び財産の保護等に可能な限り努めるということでございます。
 この対処によりまして、速やかに国民の皆様方が安全な地域に避難できるように努めるのは当然のことでありますが、政府といたしましては、武力攻撃事態における国民の生命、身体、財産の保護に関して万全を期していく必要があることから、国民の皆様方の御理解をいただきながら、今回早期に必要な法整備を行うということといたしておりまして、防衛庁といたしましても、できる限りの協力を行う所存でございます。
衛藤委員 防衛庁長官にお尋ねいたしますが、周辺事態と武力攻撃事態が併存しておる状況下で、周辺事態安全確保法に基づきまして支援可能な米軍の範囲はどうなるのか、また自衛隊の活動範囲はどうなるのか、この点についてお尋ねをしておきたいと思います。
中谷国務大臣 周辺事態というのは、我が国周辺地域におきまして、我が国の安全に重大な影響を及ぼすことのある事態ということでございます。その際、米軍が行動する場合に、法律で定められました、武力の行使に至らない範囲で、また集団的自衛権にならない範囲で後方支援を行うという内容でありまして、その際は、周辺事態が我が国有事にならないように全力で努力をするわけであります。
 武力攻撃事態というのは、我が国に対する武力攻撃が発生する、または予測される事態でありまして、その事態がともに併存をするという事態も考えられるわけでございます。
 この際、米軍等の支援に関しては、我が国としましては、個別的自衛権の行使として自衛のための必要最小限度の武力を行使することができるとともに、我が国を防衛するために行動している米軍に対する我が国の支援については、その支援が米軍の武力行使と一体化をすることであっても、我が国の自衛権発動の三要件に合致する限り、憲法との関係で問題が生じることはない、また日米安全保障条約との関係で問題が生じるというものではないわけでございます。
衛藤委員 ただいま長官は、外部からの武力攻撃に対しては、我が国防衛のために共同対処している米軍に対し武力の行使と一体化していると見られる支援をやったとしても、こうした必要な対米支援というものは憲法上もあるいは条約上も何ら問題はない、こういうことでございますか。もう一度お尋ねしておきたいと思います。
中谷国務大臣 このような我が国及び米国による我が国防衛のための共同対処行動としての武力行使は、国連憲章第五十一条との関係でも問題がございませんし、この米軍の武力行使と一体化するものであっても、我が国の自衛権発動の三要件に合致する限り、憲法との関係で問題が生じることはないというふうに考えております。
衛藤委員 ただいま指摘されている外部からの武力攻撃事態が発生した場合に、日米で共同する対処の武力行使というものが国際連合憲章第五十一条に許されているところの自衛権の行使、今長官がおっしゃったいわゆる個別的自衛権の行使にこれは何ら抵触するものではないし、また国連憲章第五十一条には、「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。」こういう規定があるわけであります。
 しかるに、この規定からいたしますと、外部からの我が国に対する武力攻撃事態が発生したときに、日米が共同して対処するこの武力行使というものは、この国連憲章に言う、五十一条に言うところの自衛権の行使、個別的自衛権、集団的自衛権の行使に抵触するものではない、結果的にはそういうことになるんではないかと私は思うのです。ここはポイントだと思うのですが、防衛庁長官のお考えを承っておきたいと思います。
中谷国務大臣 国連憲章五十一条に、個別的及び集団的自衛権が書かれております。我が国に対して外部からの武力攻撃が発生した場合においては、自衛権発動の三要件に該当する場合には、我が国は個別的自衛権の行使として自衛のための必要最小限の武力を行使することができますし、また、この武力攻撃を排除し、我が国を防衛するために行動している米軍に対する我が国の支援については、この支援が米軍の武力行使と一体化するものであっても、我が国の自衛権発動の三要件に合致する限り、憲法の関係で問題が生じることはない、また日米安保条約との関係で問題が生じるものではない、また広く国連の憲章に基づいて国際的にも何ら問題が生ずるものではないということでございます。
衛藤委員 私は、あえてここで確認しておきたいのですが、外部からの武力攻撃に対して自衛権を行使することは認められておる、これは当然でございます。また、今指摘ありましたように、国連憲章第五十一条の関連で我が国も個別的または集団的自衛権の権利を持っておる、これも間違いないと思います。また、自衛権と言われるものは、今大臣御指摘されたとおり、三つの要件が必要とされておるわけでありまして、第一点は、我が国に対するせっぱ詰まった、急迫不正の侵害がある場合、もう一点は、これを排除するために他の適当な手段がないとき、もう一点は、必要最小限度の実力行使にとどめなければならない。この三つの要件が満たされておれば、我が国は自衛権を行使できるわけであります。これは間違いないと思います。
 そこで、自衛権というものは、国民の生命財産を守るために行使されるものであって、憲法によって禁止されている国際紛争を解決する手段としての武力行使には当たらない、こういうことであります。これは、あえてここで申し上げておきたいわけであります。
 憲法第九条には、御案内のとおり、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」こうなっておるわけであります。また、御案内のとおりでありますが、自衛権を行使した国は、国連憲章第五十一条に基づきまして、国際連合安保理事会に報告することが義務づけられておることも、そのとおりでございます。
 世界の国々を見ますと、どの国といえども、武力攻撃に対処する法律を持っておるわけでありまして、むしろ、我が国が今まで外部からの武力攻撃に対する法律を持っていなかったということは、極めて、私どもの国会の責任であるし、また我々の努力不足でもあった、その責めを問われても仕方がない、私はこのように思うわけであります。
 さて、次にお尋ねを申し上げますが、米軍との関係でございます。
 福田内閣の研究報告の中の一点に、米軍の行動にかかわる法制を整備すべきである、このように二十五年前に指摘を受けたわけであります。今回も、この米軍の行動についての明確な、いろいろの法制の整備がここに出ていないわけでありますが、今後の米軍についてどのような法制の整備を行っていくか、お尋ねをしておきたいと思います。
川口国務大臣 今国会におきまして、米軍の行動に関する法案は御提出をしていないわけでございますけれども、今後、武力攻撃事態対処法案に規定をしておりますとおり、日米安保条約に従いまして武力攻撃を排除するために必要な行動を実施する米軍に対しまして、物品、役務、施設の提供あるいはその他の措置を実施するために必要な法制整備を行うことを検討いたします。
 その際には、米軍の行動は、我が国に対する武力攻撃を排除し、我が国及び国民の安全を守るためのものでございますので、それを考慮しつつ、米軍が自衛隊と同様に円滑な行動を行えるように、これに対する支援を検討する必要がございます。
 また、法制整備に当たりまして、我が国の支援は、日米安保条約の目的の枠内及び憲法の範囲内で行うこと、また国連憲章を初めとする国際法に従って行うことといった考え方に基づきまして検討をしていくことといたしております。
衛藤委員 いわゆる駐留軍はその国の国内法が適用されない、このようになっておるわけでありますが、この場をかりまして、あえて、なぜ駐留軍は国内法が適用されないのか、これは問題はないのか。
 さらには、大臣にお尋ねをいたしますが、米軍に対する支援について、具体的にどのような支援をするということを法で明記しておかなければならないのか、お尋ねをしておきたいと思います。
川口国務大臣 まず、米軍につきましてでございますけれども、米軍は、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に、我が国を防衛することを主たる目的の一つといたしまして、我が国との合意に基づきまして駐留をしているわけでございます。
 一般国際法上、駐留を認められた外国軍隊には、特別の取り決めがない限り接受国の法令は適用をされませんが、接受国の法令を尊重しなければならないということは、この軍隊を派遣している国の一般国際法上の義務でございます。このことは我が国に駐留をいたしております米軍についても同様でございまして、このような考え方に基づきまして、日米地位協定十六条におきまして我が国の法令の尊重義務が定められているわけでございます。
 それから、今後の検討課題の、どういう分野でということでございますけれども、対米支援、あるいは日本政府が米軍へ陣地として使用される施設・区域をより迅速に提供ができるような、あるいは緊急通行についても今後検討していく必要があるということでございます。
衛藤委員 近隣の諸国におきましては、このいわゆる有事関連三法案につきまして、一部懸念をしているという、表明をしている国もあります。これらの国の理解を得るために、政府として近隣諸国に対してどのように説明をされるのか、官房長官にお尋ねをしたいと思います。
福田国務大臣 武力攻撃事態に対処するための法制は、外部からの武力攻撃に備えまして、我が国の独立と主権、国民の安全を確保するためのものでございまして、主権国家として当然整備すべきものでございます。
 武力攻撃事態対処法案等につきましては、諸外国でも関心を持っているというように承知はしておりますが、政府といたしましては、このような本件の法制の基本的な考え方や法制の全体像について各国に随時説明をしていく、今までもしてまいったのでありますけれども、また今後も必要に応じて説明をしてまいりたいと考えておるところでございます。
衛藤委員 本法律案では武力攻撃事態としてどのような事態を念頭に置いておるのかということは、いろいろの事態があるということはお答えいただきましたが、昨年九月十一日の米国における同時多発テロというものは、世界じゅうに新たなテロの脅威を印象づけました。仮にこのような事態が我が国において発生した場合、これは武力攻撃事態となるのか、武力攻撃事態対処法案はこのような事態にまで対応することを想定して上程されておるのか、お尋ねをしたいと思います。これは、官房長官また防衛庁長官にもお尋ねをいたしたいと思います。
 防衛庁長官、先にどうぞ。
中谷国務大臣 昨年の九月十一日の米国の同時多発テロにつきましては、米国はこれをみずからに対する武力攻撃であると認識をいたしておりますし、また、国際社会においてもこれが武力攻撃に該当することについては広く認められているわけでございます。
 今回定めます法案の武力攻撃事態ということにつきましては、我が国に対する武力攻撃の事態である限り、規模とか態様の面で特に限定をすることはなく、およそあらゆる事態を含むものでございます。
 この事態が該当するかどうかということにつきましては、その時々の国際情勢や個別具体的な状況を踏まえて判断すべきものでございますが、米国の同時多発テロについて先ほどの状況であったということを踏まえましたら、仮に同様のテロ攻撃が日本で発生した場合に、本法案に言う武力攻撃事態に該当するかどうかと言われれば、該当する場合もあり得るというふうに考えるわけでございます。
衛藤委員 次に、事態対処法制についてお尋ねをしたいのでありますが、武力攻撃事態対処法案におきましては、事態対処法制の整備の目標期間を二年としております。国家の緊急事態への対処態勢というものは早急に整備されてしかるべきものだ、このように考えておりますが、それぞれ担当の大臣から、大臣のお考えまた決意を承っておきたいのであります。
 なぜならば、目標期間を二年というのは、御案内のとおり、私ども、衆議院の任期になるわけであります。当然私ども、選任されたこの任期中に、課題であるところのこの有事関連三法案の法律案の整備をすべき、こういうことでありましょう。
 それぞれの担当大臣から承りたいと思いますが、まず国土交通大臣、お尋ねをいたします。また、具体的にこうこうこういうような問題もちゃんと整備すべきだというお考えがあれば、お尋ねをしておきたいと思います。
扇国務大臣 冒頭に衛藤議員からおっしゃいました、今日まで戦後五十七年間、よくぞこういう法案がなくて平和に過ごさせていただけたということ、私は感謝しながらもなお我々は反省するとおっしゃったことに感銘を受けて、私も今回は何としても、この武力攻撃事態対処法案に対しては、法整備というものを含めて、少なくとも事態対処の法案の中には輸送でありますとかあるいは船舶または航空機等々、国土交通省にかかわる法案、少なくとも私は十二法案にかかわっております。
 そういう意味では、国土交通省としては大変重要な事態法案であり、なおかつこれを国民の生命財産の保護のために何としても全閣僚の協力のもとにという中では、特に国土交通省として強力にこの法整備を含めて前進をさせ、国民の安全、安心を図るために一層の努力をしていきたいと思っております。
衛藤委員 ありがとうございました。
 片山総務大臣にもお尋ねいたします。
片山国務大臣 事態対処法制というんでしょうか、国民保護法制、私は大変重要な法制だと思いますので、二年という目標年限は定められておりますけれども、できるだけ早く対応したらいいと思いますね。ただ、大変幅広いのと、いろいろな法制との整理が要りますから、時間がかかると思いますが、内閣官房を中心に、私どもも積極的に参画して、いい法制にしたい。
 私どもの方でいえば、消防の関係ですね、救助を含めて、あるいは国と地方団体の連絡調整、あるいは通信、そういうことについてしっかりした対応をいたしたいと思っております。
衛藤委員 川口外務大臣にもお尋ねをしておきたいと思います。
川口国務大臣 期間内に国民の多くの皆様の御理解が得られるような法制をつくるべく全力で取り組んでまいります。
衛藤委員 では、村井仁大臣、危機管理担当大臣にお尋ねをいたします。
村井国務大臣 防災問題はちょっと別にいたしまして、とりわけて治安維持という観点から申し上げさせていただきますと、武力攻撃事態ということになりましても、いわゆる通常の市民といいましょうか国民の安全を確保し、治安を維持する、この任務はやはり警察においてきちんとしなければならない対応だろうと思っております。その関連でさらなる法整備が必要であれば、それまた国会におきましていろいろ御議論をちょうだいしながら進めるべき問題だろうと存じます。
衛藤委員 二年以内ということでありますが、私は、それを前倒ししてでも、できるだけ速やかに法整備をしておく必要があると思うのであります。
 今、各大臣から決意が語られましたが、それを集約される、総括される官房長官のお考えを承っておきたいと思います。
福田国務大臣 ただいま各閣僚から決意が述べられましたけれども、国家の緊急事態につきましては、外部からの武力攻撃のほか、大規模テロとか武装不審船事案とか、そういうような事案を含めまして、さまざまな事態に対して全体としてすき間なく対応するということが必要でございます。
 武力攻撃事態に対処するための事態対処法制につきましては、国全体としての危機管理体制の整備を図る上で極めて重要と考えておりまして、法案の定める目標期間内に、国民的な議論の動向を踏まえながら、多くの国民の御理解を得られる法制の整備に全力で取り組んでまいりたいと思っております。
 そしてまた、できるだけ早くという御指摘でございますけれども、これは、ただいま申し上げましたように、国民的な理解を深めていただくということが極めて大事な法制だろうというように思っておりますので、ある程度の期間は必要なんではなかろうかと思います。しかしながら、二年という期間の中でもって準備を進めていくという考えをいたしております。
 また、これもいろいろ指摘をされる問題でございますけれども、武力攻撃事態以外の国家の緊急事態につきましては、これまで警察とか海上保安関係法、自衛隊法、災害対策基本法などによって体制を整えてきているところでございますけれども、今後ともこれを一層改善強化するための措置を講じてまいりたいと考えております。
衛藤委員 国民の協力についてお尋ねしたいわけでありますが、災害対策基本法にうたわれておるいわゆる緊急時における国民の協力あるいは責務、今次における、この武力攻撃事態対処法案における協力、片や災害対策基本法の中には、協力の責務がうたわれておると思います。我が国のいわゆる武力攻撃事態発生のこの事態における国民の協力、それは責務というよりも協力になっておるわけであります。なぜこのように協力ということにしたのか、これをお尋ねしておきたいと思います。
福田国務大臣 武力攻撃事態におきましては、国、地方公共団体また指定公共機関等が対処措置を実施する際には、国及び国民の安全の確保のために国民の方々にも御協力いただけるものという期待をいたしておるところでございます。
 この規定は、法的に拘束するものではございませんけれども、国民の方々に、それぞれの置かれた状況の中で、避難や被災者の保護等に関してできる限りの協力をいただきたい、こういうような考え方をしているわけでございます。
衛藤委員 この法律案には、武力攻撃事態発生のときには、国のとるべき責任と義務、また地方自治体がとるべき責任と義務、また指定公共機関がとらなきゃならない責任、義務がうたわれておるんですね。私は、もっと明確に国民の協力について、責務についてもしっかりうたい上げておく必要があるのではないか、こういう感じがするんです。
 なぜならば、私のところに国民の皆さんから電話がかかってきまして、いざというときには私たちは自衛隊が守ってくれる、あるいは海上保安庁の皆さんがしっかり守ってくれる、国が守ってくれる、当事者の立場といいますか、そういうものを全く感じさせないような発言が多々あります。
 今次、この法律案に明確にこの国民の協力にしろうたい上げたことは、私は、一歩前進だったと思うんですが、もう少しその辺のところを明確にしていいのじゃないか、このように考えておりますが、官房長官のお考えをお尋ねします。
福田国務大臣 この法案の第八条に国民の協力ということについての規定を盛り込んでいるわけでございますけれども、このような基本理念を踏まえるとともに、国及び国民の安全を確保することの重要性にかんがみまして、武力攻撃事態において国や地方公共団体等が対処措置を実施する際は、国民は必要な協力をするよう努めるものとするとの基本的な考え方、これを明らかにしておるわけでございます。この規定によりまして、国民が法的に拘束されるものではございません。
 国民につきましては、国民の生命、身体及び財産に危険が及ぶ武力攻撃事態において、過重な役割を課すことは困難であるというように考えられるものでありますので、国民の責務を今回の法案に規定することは適切でない、このように考えた次第でございます。
衛藤委員 いずれにいたしましても、みずからの国はみずからが守るというその責務というものは極めて大事である、このように申し上げておきたいと思います。
 最後に、総理にお尋ねをいたします。
 緊急事態に的確に対処するためには迅速な意思決定が極めて大事でありますが、今回の法案の提出に当たりまして、総理の決意をお尋ねしておきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 いかに緊急事態に迅速に対応するかということでありますけれども、今回提出した法案においては、安全保障会議の機能を強化する、そして対処基本方針の迅速な策定を図るとともに、対策本部長たる内閣総理大臣に総合調整権を付与することにより、対処措置の的確かつ迅速な実施を図ることとしております。
 政府としては、これらの法案の成立に向けて全力を挙げたいと思っておりますし、法案に定める制度の運用についての研究等を平素から怠りなく進める、そして国民が安心して暮らせる国づくりに真剣に取り組んでまいりたいと思います。
衛藤委員 このたびのいわゆる有事三法律案は、日本国憲法の保障する国民の自由と権利を尊重して、もしこれに制限が加えられる場合には必要最小限とすることが明記されております。また、その手続というものは公正かつ適正に行わなきゃならないことが明記をされております。
 一方、日米安保条約に基づきましてアメリカ合衆国と緊密に協力をしつつ、国際連合を初めとする国際社会の理解並びに国際社会の協調的行動が得られるようにしなければならないことがこれまた明記されております。
 また、外部からの我が国に対する武力攻撃に対処する国と地方公共団体の責任と義務、及び指定された指定公共機関の責任と義務、また外部からの武力攻撃に対しての国民の立場からする国民の協力の必要、またこうした国、地方自治体、指定公共機関、国民、相互に連携協力をして武力攻撃事態に対するこの対処に万全の措置が講じられなきゃならない、こういうことが明記されておるわけでございます。
 私は、以上の観点から、このたびの小泉内閣の提案による有事関連三法律案、一つは、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案、自衛隊法一部改正案、そして安全保障会議設置法の一部改正案、この三法律案に対して全面的に賛成し、またこの法律案の速やかなる審議と可決成立を強く求めまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
瓦委員長 次に、岡田克也君。
岡田委員 民主党の岡田克也です。
 まず、本題に入る前に、総理に少しお聞きをしておきたいと思います。
 連休中にいろいろな事件が起きました。とりわけ、参議院の前議長の秘書が逮捕され、議長自身も議員辞職を表明するということになりました。あるいは、衆議院の前議運委員長である鈴木宗男氏の秘書が逮捕され、事務所が家宅捜索を受ける、こういうことも発生をいたしました。
 いずれも国会に対する国民の信頼を大きく損なうもので大変な事件だ、こういうふうに考えておりますが、総理として、この二つの事件についてどういうふうにお感じになり、そして対応しようとしているのか、御見解をお聞きしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 政治の不祥事、いわゆる政治家にまつわる不祥事に対しまして、国民の信頼を大きく損なうものだと憂慮しております。
 この問題について、このような不祥事を起こさないような対応策はどういうものが必要か、また、現行法についての改善策はどういうものが必要かということにつきまして、真剣に今、自民党におきましても与党内においても協議をしているところであり、今国会において、このような不祥事を反省しつつ、再発防止のためにどういう体制がいいかということについて、今まで以上の、一段の改善策が必要であると思っております。
岡田委員 とりわけ鈴木宗男氏の件でありますけれども、公設秘書が逮捕され、事務所が家宅捜索を受ける、そういう事態になりました。連休中には、与党の中からも、鈴木氏は議員辞任をすべきであるという声も出ております。
 鈴木氏は、言うまでもなく自民党の議員であり、総理は自民党の総裁でもあります。(発言する者あり)今は違うと言われるかもしれませんが、事件を起こしたときは、明らかに自民党の議員として起こしております。その鈴木宗男氏に対して、この際、議員辞任を求めるそのリーダーシップを総理は発揮すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 本来、自身の出処進退については本人が決めるべき問題だと、私は今でも思っております。そういう観点から、この問題について、私も、いろいろな状況を勘案しながら、鈴木氏本人が決めるべき問題であると。
 国会でも、今後、新たな公設秘書の逮捕という問題が出てきて議論されていると思いますが、私は、そういう点についてよく議論をしていただきたいと。私自身もこの問題については大変大きな関心を持っておりますし、私は、そういう点から、御本人がしかるべき判断をされるのではないかと思っております。
岡田委員 議員の身分というのはいろいろ保護されていますから、最後は本人がやめると言わない限り、これは身分は保持されます。しかし、それに対してどう思うかという、そういう、我々同じ国会の議員として、あるいは日本国総理大臣としての考え方を示すということは、これはできるわけであります。
 今の総理の御答弁を見ていると、最後はそれは議員が決めることだと。当たり前です、そういうふうになっているんですから。しかし、総理はどうお考えかということをお聞きしたいわけであります。
小泉内閣総理大臣 私は再三再四言っているんです、国民から選ばれた議員が自分の出処進退を判断できないはずがないと。
岡田委員 判断は、それは人間ですから、どちらかにしろするでしょう。しかし、総理はこの事件についてどう考え、鈴木氏の出処進退についてどうあるべきだというふうに考えるかをお聞きしているわけです。
小泉内閣総理大臣 本人が判断すべきなんです。
岡田委員 総理がこの鈴木宗男氏の事件について深刻に受けとめていない、かばおうとしているという印象を受けたことは――もしそうでないなら、はっきり言われたらどうですか、いかがですか。そうでないというなら、はっきりおっしゃってください。
小泉内閣総理大臣 真剣に考えているから言っているんです。議員たる者、国民から選ばれたその責務を持っているなら、自分で判断すべきなんです。当たり前のことじゃないですか。
岡田委員 それじゃ、今申し上げたこの二つの事件に加えて、加藤元自民党幹事長の事件もありました。政治と金の問題が大変大きな議論になっているわけであります。このことについて、国会としてしっかり対応していかなきゃいけないという問題だと思います。
 我々野党四党は、既に、政治資金規正法の改正を初めとする法律案を、衆議院の法制局と調整が終わりまして、そして、この連休明けの国会に提出をすることにしております。
 その中には、総理御自身も問題があるとかつて言われた話、例えば、政党支部をどんどんどんどんつくって、献金の上限や下限をつくってもそれが意味のないものにしてしまう。自民党は六千の政党支部があると言われています。そういうことに対して規制をすることでありますとか、あるいは、インターネットで政治資金収支報告をきちんと出して、そしてきちんとチェックできるようにする話でありますとか、それから、公共事業を受注している企業からの献金を制限する話でありますとか、そういうことが含まれているわけであります。
 いずれも、総理がかつてそういうものが必要だということをおっしゃりかけた話でもありますし、私は、中身は極めて合理的なものだ、こういうふうに思いますが、我々がそういう法案を出したときに、総理としてはそれについて賛成をしていただけますでしょうか。
小泉内閣総理大臣 そういう問題点があることは、私も認識しております。そういう点も含めて、今、自民党初め与党で協議をしてもらって、一段の改善策を講じるように指示しております。
岡田委員 私は平成二年の初当選でありますが、我々は、リクルート事件ということをきっかけにして、そして政治の改革を訴えて、当時の、私は自民党でありましたが、自民党も社会党も多くの新人議員が当選をいたしました。そして、いろいろな政治改革の議論をしてまいりましたし、政治資金規正法の改正もしてまいりましたが、今思うと、一体何をしてきたのか、一体どこにそれだけの成果が上がったのかという、残念ながらそういうことを思わざるを得ないわけであります。
 我々が出しております先ほどの政治資金規正法の改正案、それから、あっせん利得処罰法の強化法案、あるいは、今回の先ほど言った三つの事件はいずれも談合に関するもので、それに対する口ききビジネス、こういうことがもし全国で起こっているとすれば、大変な税金のむだ遣いであり、とんでもないことだと思うわけで、そういう意味で、談合をいかに防止していくかということについても我々は法案を持っておりますが、そういうことについて、今、与党の中で検討だとおっしゃいましたが、会期もありますから、早く検討していただいてしっかり国会の場で議論していく、そういうお覚悟をぜひ聞かせていただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 前から申し上げていますように、今言った点も含めまして、与党、野党、いろいろな問題点を指摘されております。今国会中に、この不祥事再発防止のために一段の改善策を講じていきたいと思います。
岡田委員 これは自民党の危機であるとともに政治の危機でもある、そういうふうに思います。ぜひ国民からしっかり政治の信頼を取り戻すように自民党も危機感を持って考えていただきたい、そのことを申し上げておきたいと思います。
 それでは、法案について幾つか聞いていきたいと思います。
 先ほど総理の方から、あるいは官房長官の方からいろいろな答弁が示されましたが、ちょっと確認をしておきたいと思います。
 まず、今、我が国を取り巻く国際情勢の問題でありますが、例えば、ミサイルによる攻撃でありますとかあるいは大規模テロということが我が国に起こり得るというふうにお考えでしょうか、それとも、そういうことはないんだというふうにお考えでしょうか、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 何が起こるかわからない。予測し得ないことが起こる。これは起きない、これは起こる、予測し得ないことが起こるということも予測しなきゃならないのが現在の状況ではないかと思っております。
岡田委員 私はもう少し危機感を持っているわけですね。そういう一般的な話ではなくて、ミサイル攻撃やテロなどはかなり、かなりと言うと言い過ぎかもしれませんが、しかし、世界的な目で見たときに、やはり東アジアはかなり緊張感が高い地域である、そういう認識は持ってないといけないんじゃないか、そういうことをまず申し上げておきたいと思います。
 その上で、今回、この法案といいますか、有事法制全般というふうにまずは申し上げておきたいと思いますが、この具体的な今回出されたものではなくて、有事法制の整備についていろいろな議論があります。例えば、具体的な危険がないからそういう整備は必要がない、こういう意見があります。それについては、私が先ほど申し上げたようなことでお答えをしたいと思いますけれども、総理は、この具体的な危険がないから法案整備がないという考え方について、基本的にどういうふうにお答えになるんでしょうか。
小泉内閣総理大臣 私は、今岡田議員が質問の前に言われたことについて、やはり野党第一党として責任ある立場に立ってこの議論をしようという姿勢をうかがうことができたと思うんです。
 当然、何が起こるかわからない、それに対して備えるということは必要だという観点からの御質問だと思うんですが、私は、冷戦が終わって、もう武力攻撃は起こらないんだというような観点からこの法案を見ている方もいるのも承知しております。
 しかし、どのような時代におきましても、緊急事態あるいは一朝事があったときにどういう備えをしておくかという、いわば備えあれば憂いなしということについては政治の大きな責務ではないかと思っておりますし、その点は、むしろそういう議論をされると水かけ論になっちゃうんじゃないか。武力攻撃なんか起こらないんだ、日本は平和なんだ、日本を武力攻撃する意図を持っている国とかグループはないんだと言われちゃうと、そうじゃない、ああじゃないといって、これはもう水かけ論になっちゃうと思うんで、そういう議論は、私は本当は、政権をとろう、一国の責任を担おうという政党であれば、そういう考えはとり得ないのではないかと思っております。
 ですから、この問題については、備えあれば憂いなしという観点から、いろいろ建設的な議論を進めていきたい、民主党からもいい提案があれば、私はよく検討したいと思っております。
岡田委員 冷戦が終わって、具体的な危険が今はもうないんだ、だから、こういう有事法制、有事に備える法制というのは基本的に必要ないんだ、そういう意見がありますが、私は、そういうことを言う人が、では、冷戦期には、いや、ソ連が攻めてくることなんかあり得ないんだ、だから、そもそも日本は自衛隊も要らないし、非武装でいくんだ、そういうふうに同じ人が言っていたような気もするわけですね。
 だから、それはやや無責任じゃないか、私はそういう気はするわけであります。やはり、そこは、少しでも可能性があるんなら、そのときに備えてしっかり対応しておくということは、これは政治の基本的な責任である、そういうふうに考えております。
 我々は、同時に、なぜこの有事法制が一般的に必要だというふうに考えているか。その備えの問題と、しかし同時に、いざそういう武力行使事態があって自衛隊が動くときに、それが国民の権利の制限につながるという側面は、これは入ってきます。しかし、そのときに、それが必要以上に国民の権利を制限することになったら大変だ。そういう意味でも、あらかじめきちんとルールをつくっておくことが法治国家として当然ではないか、そういうふうに考えているわけですが、総理も、そこのところのお考えはいかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 私は、岡田議員の今の指摘、全く同感なんです。こういう議論がなされてこそ、野党としても責任ある、これから政権を担おうとする意欲を感じられる。私は、このような議論がなされることにより、できれば、有事法制というのは、本来、与党と野党第一党が対立する問題じゃない。お互い、これからの日本の独立国としての体制をどう備えをしていくかという件については、今のような議論をしていただくならば建設的な議論ができるのではないかと期待しております。
岡田委員 入り口の議論はそういうことで、今私が申し上げたとおりなんですけれども、その上で、我々民主党の基本的立場として、一般論として緊急事態に備えた法制が要るということは党としてしっかり確認をしているということをまず申し上げた上で、しかし、今回の法案についていろいろ問題があります。そういうことについて具体的にこれから議論していきたい、そういうふうに思っております。
 そこで、まず、法案の個々の中身に入る前に、総理の基本姿勢についてお伺いしたいと思うんですが、総理は、国家権力と国民あるいは個人との関係というものを一体どういうふうに認識しておられるのか。どうも、個人情報保護法もそうなんですけれども、今回の有事法制を見ても、国家権力というものが時として個人の、国民の権利を侵害する、そういう非常に危うさ、危険を持っているものだという認識がやや薄いんじゃないか、そういう印象を受けるわけですが、基本的にこの国家権力と個人、国民との緊張関係ということについてどのような認識でしょうか。
小泉内閣総理大臣 国家は国民のためのものであり、国民も国家あっての国民であるというお互いの協調関係、責任関係を持っていい国をつくり上げていこうということが大事だと思います。
 ある国家においては、国家の権力を背景に国民を苦しめている、あるいは権利を奪っている国もなきにしもあらずであります。専制と隷従、これが国家権力によって圧迫されていると感ずる国民も世界の中ではかなりいるでしょう。私は、そういう面において、国家は国民あってのものである。国民の基本的な人権というものを保護することが国家として重要である。
 また、その国民の基本的人権を破壊しようという組織なりグループに対しては、国家権力をもって排除して国民を守らなきゃならない。国民の基本的人権を守らなきゃならない。こういうことを考えますと、この国家権力の行使というものに当たっては、多くの国民の基本的人権を守るんだというこの観念を常に持たなくてはいけないと思っております。
岡田委員 総理のお考えはわかりますが、外部から、あるいは第三者が国民の権利を侵害しようとするときに、国家がそれを守る責任がある、当然のことであります。
 私が申し上げたのは、その国家自身が国民の権利を侵害するということは往々にして起こる。そもそも憲法というのは、これは国家と国民の関係を規定しているわけで、例えば基本的人権を保護する、これは国家権力が個人の基本的人権を侵害しないように憲法の規定がもともとは置かれている、そういう歴史的経緯があるわけですね。そこのところについての総理の認識をぜひお聞きしたいと思うんです。
小泉内閣総理大臣 今、重複するかもしれませんが、基本的人権を守る、これは憲法にも国家としての責務として規定されているわけでありますが、同時に、国民の中には、その国民の基本的人権をじゅうりんするという勢力も一部には否定できないわけであります。そういうことに対して、国家としても、多くの国民の基本的人権を守るために国家権力を行使しなきゃならない場合もあるわけであります。その点をどう考えるか。
 いわば、日本国民としては、さまざまな基本的人権をいかに国家として守っていくか、これが重要でありまして、今回の有事法制につきましても、いわば国民の生命財産、これをいかに守るかという観点から考えているのでありまして、これを基本に考え、国家の独立と尊厳、そして武力攻撃が起こった場合には国民の基本的人権が破壊される面が多々出てくるわけでありますから、これに対してどのような国民の基本的人権、生命財産を守る体制をつくっていくかということは、まさに国家として最大の責務ではないかと思っております。
岡田委員 どうも議論がかみ合っていないように思うんですが。
 私は、やはり国家の権力行使に対する謙虚さといいますか注意深さというものをちゃんと政府は持つべきだというふうに思うんですね。例えば、あの民主主義国家であるアメリカ合衆国でも、過去にはマッカーシー旋風などというのも起こりました。やはり、個人の権利を、きちんとしたいろいろな憲法や法律を持っている民主主義国家ですら不当に侵害するということは常に起こり得ることである。そのことに対してきちんと手当てをしておかなければいけない。
 そういう視点でこの有事法制についての議論も進めていかないと、総理がおっしゃるように、攻められたときに日本の国民の生命財産を効率的に自衛隊が守っていかなきゃいけない、それはそのとおりであります。しかし、その面だけで考えていくと、私は絶対に誤ると。そういう面と、しかし、武装集団である自衛隊が、一つの国家権力の塊が個人の権利を侵害してしまう、不当に侵害してしまう、そういうことのないように両面からきちっと見てバランスをとっていかないといけない。そういう視点がないと、私はこの有事法制についての議論は間違うと思うわけですが、いかがでしょう。
小泉内閣総理大臣 その両面の視点が大事だと思っております。
岡田委員 そういう意味で、若干最近気になることがありますので、お聞きしたいと思います。
 まず、この法案そのものとは離れるわけでありますが、不審船の問題で、これにどう対応するかという議論が行われている中で、先般の防衛庁長官の記者会見などを見ますと、不審船対応で海上保安庁が一義的に対応することに法律上はなっておりますが、自衛隊はどうするのかという議論のときに、準備行動という名のもとに自衛艦をその現場に早く派遣しておくという話が進んでいるようでありますが、これは事実なんでしょうか。記者会見の中ではそういうふうに防衛庁長官はお述べになっているようですが。そして、そのことが問題がないというふうにお考えなんでしょうか。
中谷国務大臣 昨年末の九州の南西海域における不審船の事案の事例を振り返りまして、防衛庁並びに海上保安庁等でその対処についての検討を行いました。そして、その教訓を生かして、やはり当初から、武装工作船の可能性の高い不審船については不測の事態に備えて、政府の方針として当初から自衛隊の艦艇を派遣するというふうに取り決めというか、したわけでございます。
 これは、海上警備行動の発令によって海上自衛隊の対処が行われるわけでありますけれども、九州南西海域の事案に見られるように、その地点に行くまでに半日ないし数時間かかるわけです。基地においてその海上警備行動の発令を待って出るとなりますと、もう事態が大変な事態に発展する可能性もありまして、速やかに対処に移れるためには、その近傍海域まで所要の準備をして待機し、そして、その時点においては、内閣総理大臣の命によりまして海上警備行動に移れる方が対処がより確実に行われるという観点から、この海上警備行動の発令が必要になった事態に至った場合に自衛隊が迅速かつ適切に対処できるようにあらかじめ備えるために措置をするわけでございます。
 この措置につきましては、その準備時点におきましては公権力の行使を行うものではないし、こうした準備が行われることが、海上警備行動が自衛隊法の八十二条で定められている以上、当然のことであって、この条以外の特段の法律上の規定が必要であるというふうには考えていないわけでございます。
岡田委員 その際、だれが命令をするんですか。そして、その法律的な根拠はどこにあるんですか。
中谷国務大臣 防衛庁長官がこれを命じるわけでございます。
 この例としましては邦人救出の例がございまして、かつて、インドネシア等で治安が悪化したために邦人が国の離脱をする必要の際に、やはり邦人救出の一環として近傍において自衛隊機が待機をいたしましたけれども、この際もそのような措置をとったわけでございます。
岡田委員 今、法律的な根拠についてはお話をいただけなかったわけでありますが。
 こういうふうにしてどんどん拡大をしていくわけですね。私はインドネシアのときも問題だというふうに申し上げたんです。今回は、特に問題になるのは、フル装備していくわけでしょう。不審船に対処できるように武装して出すわけですよ。そして法律の根拠がない。長官命令だとおっしゃられますけれども、長官が命令するという規定は法律上ないはずです、準備行為について。本来、海上警備行動であれば長官が総理大臣の承認を得た上で発動する。その前段階だと言いますけれども、現場にそういった武装したフル装備の自衛隊を出す、この場合船ですが、ということについて事実上ノーチェックじゃないですか。そういう形でどんどん法律を超えて拡大をしていくということが非常に問題があるというふうに私は申し上げるわけです。必要性は私も認めないわけでありません。しかし、法律の根拠がなく、解釈でやっていくというやり方には非常に違和感を感じる、そのことを申し上げておきたいと思います。
 もう一つ申し上げます。きのうの朝日新聞の一面トップであります。
 新聞をお読みでない方もいらっしゃるかもしれませんが、今のテロ特措法に基づく海上自衛隊の派遣について、今回、イージス艦の派遣、それからP3C哨戒機の派遣について、海上自衛隊の幹部が米軍に対して、そういうことをした方がいいという働きかけをした、そういう記事であります。
 これは事実なんでしょうか。
中谷国務大臣 私も昨日の朝刊を見まして、その事実を読みました。この事実につきまして、早速、在日米海軍、また海幕の担当者、本人ですけれども、に直接事情を聞きましたところ、四月十日にチャップリン在日米海軍司令官と会談をしたことは事実でありますし、これは月に数度そのような会合は行っております。報道にあるように、米側から海上自衛隊のイージス艦とかP3Cをインド洋に派遣することを要請するというふうに働きかけをしたということはないということで事実を確認いたしました。米側にも確認をいたしました。
 よって、その内容につきましては事実と反する報道でありますので、その新聞を報道した新聞社に対して抗議を行ったところでございます。
岡田委員 今、事実に反する報道だと明確に言われました。もしこれが事実であれば、長官は責任をとらなければいけませんよ。このことが事実であったとすれば、あるいはこれに近いことがあったとすれば、私は非常に大きな問題があると思うんですね。
 まず、官房長官は、イラクに対する米軍の攻撃があった場合に今のテロ特措法の中でそれができるかどうか、基本的には、今の法律の中ではできないという趣旨のことを言われていると思うんですね。それをいわば、しかし先取りする形で、イージス艦やP3Cを出すということは、これはイラク以外に考えられないわけですね。もうアフガンの話はほとんど終わりつつあるわけで、今さら新しい、そういう高性能な艦船や飛行機を出す意味はないわけですから。そういう意味で、政府が慎重に決めなければいけない政治的な問題について海上自衛隊がそれを先取りをした、あるいはこれは国会が承認をする話、それについて現場が独走した。
 ですから、もしこれが事実だとすれば、これは大変大きな問題である、これは内閣そのものを揺るがすような問題だというふうに思いますが、総理、総理もこれは事実に反するということで明言されますか。
小泉内閣総理大臣 今、新聞の記事に基づいて質問されていると思うんですが、その新聞の記事の事実はないと言っているんです。これからの問題は、状況判断しながら適切に判断したいと思います。
岡田委員 それでは、新聞の記事については事実に反する、そういうふうに総理からも述べられたと理解します。
 それでは具体的な、中の法案について入っていきたいと思いますが、まず、この法案の中で、非常にわかりにくい法案なんですが、外部からの「武力攻撃のおそれのある場合」と「予測されるに至った事態」、そういう言葉が使われているわけですが、それぞれについて、ちょっと具体的に、違いがわかるように中身を述べていただけませんか。
中谷国務大臣 この法案における武力攻撃のおそれのある場合と予測される場合の違い、これにつきましては、武力攻撃のおそれのある事態というのは、現行の自衛隊法の七十六条に防衛出動下令の規定がありますけれども、これと同じでございます。武力攻撃のおそれのある場合において防衛出動ができるという場合でございます。すなわち、この時点における国際情勢や相手国の明示された意図、軍事的行動などから判断して、我が国への武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していることが客観的に認められる事態を指すものでございます。
 これに対して、事態が緊迫をして武力攻撃が予測されるに至った事態というのは、自衛隊法の七十七条の防衛出動待機命令等を下令し得る事態です。すなわち、その時点における我が国を取り巻く国際情勢などから防衛出動命令が発せられることが予測をされる事態と同様でございまして、この区分につきましては、現行の自衛隊法と同じ事態が書かれているというふうに御理解していただいて結構でございます。
岡田委員 今の予測されるに至った事態の御説明が非常にわかりにくかったんですね。予測される事態ということを説明されるのに予測される事態という言葉を使っておられて、いわば同義反復というか、全く定義したことになっていないと思うんですが、もう一回言っていただけませんか。
中谷国務大臣 ここで言う「武力攻撃が予測されるに至った事態」というのは、防衛出動が予測される事態と同じでございます。
岡田委員 それでは、防衛出動が予測される事態というのは一体何ですか。
中谷国務大臣 武力攻撃が発生することが予測される事態でありまして、で、その予測というのは、国の危機管理で、この内閣としても、また国会としても、自衛隊の出動、すなわち防衛出動が必要であるということを決断する前の段階です。
岡田委員 ちょっと、私もある程度何を聞くか、少しは事前にも述べていたつもりですし、余りにもお粗末な答弁じゃないですか、今のは。何も語っていないに等しいと思いますよ。こんなことじゃ、これは議論する意味ないじゃないですか。もっと明確に述べてください。
中谷国務大臣 武力攻撃というのはいろいろな事態がありまして、いわゆる着上陸の事態だとか、またテロとかゲリラとかそういう事態が国内で発生して、武力攻撃の条件に該当する場合がございます。この際は自衛隊が出動して武力行使ができるという規定がありますけれども、その事態からおそれのある事態に防衛出動をかけられるということであります。
 その防衛出動をかける前の段階に、ある程度、自衛隊の待機命令をかけて、予備自衛官の招集とか事前の陣地の構築とか、それの準備をする必要がありますけれども、いわゆるその準備に着手する際に、今回、国会承認とかの手続を設けたわけでありますけれども、いわゆる防衛出動を下令する前の準備行為を開始する時点が、予測される事態ということであります。
岡田委員 今長官が言われた、待機命令をかけるとか、あるいは予備自衛官の招集をかけるとか、陣地をつくるとか、それは、このおそれが予測される事態の中で何ができるかというその中身なんですよ。その中身を使ってこの予測される事態を説明するということは、説明したことに全くなっていないんですよね。もっときちんと説明していただけませんか。
中谷国務大臣 防衛出動をするかどうかというのは非常に大きな問題で、国家の意思が働くわけでありますけれども、その防衛出動をかける前の段階の準備の段階で、その時点で防衛出動がかかったら速やかに自衛隊が行動できるために、あらかじめ予備自衛官を招集したり、また陣地構築をしたり、また待機命令をかけたり、その準備の作業というものはどうしても必要ではあります。その準備に着手してもいいかどうか、これも国家の意思にかからしめるわけでありまして、その準備行為を始める段階でございます。
岡田委員 私は、従来の自衛隊法に言う予測される事態であれば、また、待機命令をかけたり予備自衛官の招集をするということで法律効果も限られていますから、今のような説明でも通ってきたのかもしれませんが、今回、陣地構築、外に出ていくわけです、自衛隊が。外というのは、基地の外に出ていく、一般市民と接するという意味ですね。そういう新しい効果を認めるのであれば、やはり定義はもっとかちっと客観的にしておかなければいけないんじゃないか、そういう問題意識で申し上げているんです。
 今の答弁は、全く答えになっていないじゃないですか。もう一回答弁されますか。
中谷国務大臣 現行の自衛隊法でも、防衛出動の待機命令という規定がありまして、その時点において待機命令をするわけでありますが、今回の法律は、それをより厳格、明確にして、閣議の決定や国会の承認を必要としたものであります。
 で、どういう事態かということでありますけれども、事態というものはもう千差万別でございます。いろいろと、航空攻撃の侵攻とか海上の侵攻とか陸上の侵攻、また弾道ミサイル、同時多発テロ、ゲリラ、これらの組み合わせ等がありますし、また、大規模であるのか小規模であるのか、また、国なのか国に準じるものなのか、広範囲、限定かという場合もありますし、予測される場合もあれば、予測されずにいきなりする場合もあるわけです。
 ですから、どういう事態かということを明確に言葉で言うのは難しいわけでありますが、一般的に申しますと、予測される事態というのは、自衛隊法の七十七条の防衛出動待機命令を下令し得る事態でありまして、事態が緊迫して防衛出動が発せられることが予想される場合と同様であります。
 すなわち、防衛出動命令より時期的には前の段階ですね。その時点における我が国を取り巻く国際情勢の緊張の高まりなどから、我が国への武力攻撃の意図が推測をされ、我が国へ武力攻撃が発生する可能性が高いと客観的に判断される事態を指すものでございます。
岡田委員 これは全く答弁になっておりません。政府としてのこの予測される事態についての定義の明確化、そして具体的な事例の例示、これをこの委員会にしっかり示されるということを委員長に求めたいと思います。
瓦委員長 後ほど、理事会におきまして協議をいたします。
中谷国務大臣 この定義というのは、その時点における我が国を取り巻く国際情勢の緊張の高まりなどから、我が国への武力攻撃の意図が推測をされ、我が国への武力攻撃が発生する可能性が高いと客観的に判断される事態でございます。
岡田委員 今委員長に求めましたので、理事会でぜひ協議をしていただきたいと思います。
 では、先ほど長官の答弁を聞いていてこれもよくわからなかったんですが、例えばテロとかミサイル攻撃というのは外部からの武力攻撃に当たるんですか、当たらない場合もあるんですか、どうなんでしょうか。
中谷国務大臣 世界で起きている武力攻撃の事態というのは千差万別でありまして、一概に言えないものであります。一般的に武力攻撃というのは国家の主権、国民の生命財産に大きな影響を及ぼす事態でありまして、いかなる事態にも備えることが大切でありますが、我が国としては、武力攻撃事態の認定につきましては、従来からと同じでありまして、いわゆる自衛権の発動の三要件に該当するものであるのか、すなわち、計画的、組織的なものによる武力侵攻であるかどうかというような点を勘案して認定をするわけでございます。
岡田委員 私は、自衛隊法七十六条の規定と、今回の法制の中に、基本的にこれは同じだという説明を政府の側はされていると思うんですが、違うんじゃないかというふうに思うんですね。つまり、自衛隊法七十六条は、外部からの武力攻撃に際して、我が国を防衛する必要があると認めるときには防衛出動を命ずることができる、「わが国を防衛するため必要があると認める」ときはというのが入っているわけですね。しかし、今度の法案はそういうのは入っていないわけですよ。そこは違うと思うんですよね。同じじゃないと思うんですが、ここをどういうふうに説明されるんですか。
 今の説明でいくと、そうすると、我が国としては、我が国を防衛するために必要があるというふうに認めないときも、この新しい法案には乗っかって対処基本方針をつくったりするということになるわけでしょうか。
中谷国務大臣 委員がお話ししたとおり、自衛隊法の七十六条の一項には、「内閣総理大臣は、外部からの武力攻撃に際して、わが国を防衛するため必要があると認める場合には、」防衛出動を命ずることができるというふうになっておりまして、この「わが国を防衛するため必要があると認める場合には、」との規定は、外部からの武力攻撃が発生した場合において、例えば外交努力などその他の手段を尽くしても外部からの武力攻撃を中止させることができないといったふうに、我が国を防衛するためには自衛隊の出動が必要であると内閣総理大臣が判断した場合に、必要な手続を経た上で自衛隊にその出動が命ぜられるという趣旨でございます。
岡田委員 私の質問に答えていただきたいんですが、今回の法案は、そういう必要があると認めるときという規定を入れていませんから、そうすると、外部から武力攻撃があれば自動的にこの対処基本方針というのをおつくりになる、こういうことですか。
中谷国務大臣 今度の対処法におきましては、自衛隊の出動ができるという手続を定めているものでありまして、この趣旨等につきましては、自衛隊法の中の七十六条に、岡田委員が述べられたように、「わが国を防衛するため必要があると認める場合には、」というその趣旨が残っているわけでございます。
岡田委員 質問に全くお答えいただいていないと思うんですが、外部からの武力攻撃がありました、そのときに、では、対処基本方針はこの法律に基づいてつくる、何も条件はつけていませんから、外部からの武力攻撃があったときにはつくるというふうに書いてあります。対処基本方針はつくるんだけれども自衛隊の防衛出動はしないことがある、こういうことですか。そういうことを想定しているわけですか。
中谷国務大臣 対処基本方針をつくっても防衛出動が行われないということはあり得るわけでございます。
岡田委員 そうしますと、しかし、自衛隊を出すということについて、やはり非常に慎重な手続も要るし、あるいは自衛隊も効率的に動かなきゃいけないということでこの法案をそもそも目指したんじゃないんですか。
 防衛出動がないということについてもこの法案が適用されるということになると、先ほどの外部からの武力攻撃についての定義も余り明確ではなかったんですけれども、非常に抽象的な状況の中でこの法案が適用される、入り口が非常に不明確だということになりませんか。
中谷国務大臣 自衛隊法の七十六条には、「必要があると認める場合」というのが残っておりまして、その場合に命令をできるということになります。そして、その認定をするかどうかということで、防衛出動を命じる時期と武力攻撃事態対処法における「おそれのある場合」の認定の時期が一致しないというのもあり得るわけでありますし、また、自衛隊の対処措置だけではなくて、武力攻撃事態の対処につきましては、武力攻撃の発生を回避するための外交上の措置、国民の被害を防止するための警報発令等の措置等が武力攻撃事態の認定とともに迅速に実施されることが重要でありまして、このため、武力攻撃事態に至ったときは、防衛出動命令等の必要性のいかんにかかわらず、これらの対処措置をとり得るようにするために、対処基本方針を定めるということにしたわけでございます。
岡田委員 ですから、そもそも、政府としては防衛出動をする必要がないというふうに認める場合でも必ずこの対処方針をつくらなければいけないというこの法律構成に、私は非常に問題があるということを申し上げているわけです。きょうはこの辺にしておきます。
 それから、終わった後の話もあるんですよね。対処措置実施の必要がなくなったと総理が認める場合に、この基本方針を廃止するということですが、総理が認めるというのも非常に抽象的なところで、私は、こういう国民の権利を制限するような、権利を制限するような法案ですから、初めと終わりがしっかりしてなきゃいけない。いつまでもだらだら続いて、相手からの武力攻撃が終わったにもかかわらずこういった特別な権利関係が続くということは、ある意味で非常に危険なことだ、そういうふうに考えるわけですが、ここはもう少し客観的に書けないんでしょうか。総理が認めるというのは、私は極めて恣意的だと思いますが、いかがでしょうか。
福田国務大臣 武力攻撃事態におきまして、その事態の態様に応じて、自衛隊の防衛出動とか、被災者の救助、被害の応急復旧などさまざまな対処措置が実施される、そういうことが想定されるわけでございます。
 したがいまして、対処措置の必要がなくなったときというのは、例えば、防衛出動の終了をもって対処措置が終了する場合とか、それから、防衛出動の必要はなくなったけれども、引き続き被災者の救助が必要であるというような場合とか、また、武力攻撃事態の態様によってさまざま考えられるわけでございます。ですから、そういう時点において個別具体的な判断をしなければいけないというように考えているわけであります。
岡田委員 私は、防衛出動の行われているそういう状況と、そして、外部からの武力攻撃が終わって、しかしまだ、今おっしゃったような、被害の復旧とかあるいは被災者の救助を続けなければいけない事態と、かなり質的に違うんだろうというふうに思うんですね。
 今、後者の場合というのは、これは災害における対応とよく似たということだと思うんですね。それはやはり、法律の中でもそういう二段階設けておかないと、ある意味では、いつまでも武装した自衛隊がずっといるとか、そういうことにもなりかねないわけで、ここはもう少し私は一工夫を要する、こういうふうに思うんですが、そういう検討はされなかったんでしょうか。
中谷国務大臣 これは自衛隊法をお読みいただきたいと思いますけれども、防衛出動の終了要件としましては、現行の自衛隊法の七十六条三項におきまして、内閣総理大臣は、国会の不承認の議決があった場合、または出動の必要がなくなった場合に、防衛出動を命じた自衛隊の撤収を命じなければならないとされております。
 一方で、今回の三法案におきまして、このような自衛隊の撤収を命じなければならない要件について、武力攻撃事態対処法第九条第十項の規定において国会の不承認の議決があった場合を、改正自衛隊法案第七十六条第二項規定において出動の必要がなくなった場合を明記したところでございます。
 こういった改正を踏まえまして、議員御指摘の出動の必要がなくなったときについて申し上げれば、改正自衛隊法第七十六条二項に規定する「出動の必要がなくなつたとき」とは、現行の第七十六条三項に規定するものと同じ意味でありまして、防衛出動の趣旨にかんがみますれば、武力攻撃が終局、発生せず、そのおそれもなくなった場合や、武力攻撃が完全に排除されるに至った場合を指すものでございます。
 このように、「出動の必要がなくなつたとき」との規定は明確な意味を有するわけでありまして、武力攻撃事態法第九条の規定と相まって、現行の自衛隊法七十六条三項と同様な、明確な撤収要件を示していることから、政府としては、これらのほかに防衛出動の終了についての規定を自衛隊法に設ける必要はないというふうに考えております。
岡田委員 もう少し整理した上で議論した方がいいと思いますが、今のお話ですと、私の理解では、自衛隊が防衛出動をやめるということになれば、新しいこの今回の法案についての対処方針ももうそこで終わるというふうに受け取れたわけでありますが、法律上はそういうふうになっていないということであります。
 それからもう一つは、国会の不承認とおっしゃいましたが、それは最初のときの話でありまして、途中で、これは終わったから、あるいは事態が変わったからということで国会が何らかの意思表示をしてやめさせるということも、やはり私はそういう規定が要るんだろうと思うんですね。そういうことについて議論が必要だということを御指摘申し上げておきたいと思います。
 時間も限られておりますので先に参りますが、メディアの問題というのがあるんですね。この法案では、指定公共機関として、公共的機関と公益的事業を営む法人というふうに言っているわけでありますが、NHKについてはこの公共的機関の中に明示的に書いてあるわけですが、その他の新聞やテレビなどのマスコミ機関、新聞社やテレビ局、こういうものは、ここで言う公共的機関あるいは公益的事業を営む法人に入らないということは断言されますか。
福田国務大臣 法案の第二条第五項において、公共的機関として、独立行政法人、日本銀行、日本赤十字社及び日本放送協会、こういうふうになっておりまして、また、公益的事業を営む法人としては、電気、ガス、輸送または通信を営む事業者をそれぞれ例示をいたしております。
 実際にいかなるものを指定公共機関として政令で指定するかということにつきましては、その業務の公益性の度合いによりまして、武力攻撃事態への対処との関連性などを踏まえて、当該機関の意見も聞きつつ総合的に判断する、こういうことになっております。
 民間放送事業者につきましては、公益的事業を営む法人として、警報等の緊急情報の伝達のために指定される可能性はございますけれども、現時点では、その機能は公共的機関である日本放送協会を主として考えております。また、新聞社等につきましては、もし新聞社ということになれば、その性格上、警報等の緊急情報の伝達の役割を担うことは一般には考えにくい、こういうことで整理をいたしておるところでございます。
岡田委員 この法律上、指定公共機関というのはかなりいろいろな意味で制約がかかることになっているんですね。
 まず第六条、「指定公共機関は、国及び地方公共団体その他の機関と相互に協力し、武力攻撃事態への対処に関し、その業務について、必要な措置を実施する責務を有する。」責任が生じるわけですよ。
 そして、十五条、対処措置の実施の指示というのがあります。総理大臣、または所管大臣を通じてその実施すべき措置を、総理大臣または所管大臣は対処措置を実施できる。つまり、機関がやらないときに自分でできるということになっているんですね。これは非常に強い規定だと私は思うんですが、そういうものについて、今の御答弁で口頭で、例えば民放やあるいは新聞社は入らないと思うとかいろいろおっしゃいましたが、やはり非常にこれは私は危険なことではないか。もっときちんと限定列挙すべきだ、もし必要があるんなら。
 今おっしゃった避難通知をする、これはやはりテレビとか、やってもらった方がいいですよね、どこどこ危ないから避難しなさい。しかし、それだけのことならそのことを法律に書いておけばいいわけです、こういうことができると。こういうふうに全体に投網をかけるような規定が置いてあると、まさしく、こういう緊急事態においてマスコミ統制をやるという根拠になるわけですね。いかがですか。
福田国務大臣 警報などの緊急情報の伝達のために放送事業者が指定公共機関に指定される、そういう可能性はあるんでありますけれども、テレビや新聞などのメディアに対しまして、報道の規制などの、言論の自由を制限するとか、そういうようなことは全く考えておりません。
岡田委員 今、平時において国会で官房長官が答弁されても、いざというときに、やはり先ほど最初に申し上げたことなんですが、権力というのは恐ろしいものなんですね。だから、いざとなればそれはいろいろなことをやる、そういうことに備えてきちんとしておくということが国会あるいは法律の役割だと私は思います。
 そういう意味で、もし、おっしゃったような警報の通知ということであれば、警報の通知についての規定をきちんとこの法律上置いておけばいいんで、そのほかのことについて一般的に投網をかけるようなやり方は、これはぜひやめるべきだと思いますが、総理大臣、いかがですか。そのぐらいの御見識ありませんか。
福田国務大臣 今回の法制につきましては、いわゆる有事事態に対応する根幹的な考え方を示したということで、今後、国民の安全とか保護とかいうものにつきましてより詳細にわたる体制を整えるために二年間の猶予をいただいた、このようなことでございまして、それの中でその問題も対応すべきではないかと考えております。
岡田委員 これは、この法律の中に書いてあるから言っているんですよね。これからやる話じゃなくて、法律の中に既に規定があるから申し上げているわけであります。
 これは、委員長ぜひ、ここは非常に大事なところなんで、まず公共的機関の定義の問題、これも今はっきりしませんでした、指定公共機関の問題ですね。それから、民放や新聞社が入るのかどうか、そのことについてまず政府としてきちんと見解をまとめていただきたい。
 その上で、私は、法案を、これは変えないと無理だと思います、ここのところは。しかし、その前提として、政府としてどう考えるかということをもう一度きちんと出していただきたいと思いますが、理事会で御協議いただけませんでしょうか。
瓦委員長 理事会で協議をさせていただきます。
岡田委員 続いて、三条の関係について、時間も限られておりますが、参りたいと思います。
 かなりこの法案、私、いいかげんだと思うのは、「万全の措置」なんという言葉が出てくるんですね。万全の措置というのは災害対策基本法にあるといえばそのとおりなんですが、私は、これも随分、国は万全の措置をとらなきゃいけないということになると、何でもやるということですから、これも権利侵害の可能性という意味においては非常に危険なことだと思います。
 具体的な質問も考えておりましたが、時間の関係で省略をいたします。
 ここで、一つ基本的なことを聞きたいと思いますが、武力行使をするときの民法や刑法やあるいは行政法の関係というのは一体どうなるんでしょうか。ここが、私は、いろいろな官庁の説明を聞いても必ずしもはっきりしないわけですね。武力行使時において、相手が敵であるというときにはこれは余り議論はないのかもしれませんが、例えば国民に対してどういう関係になるんでしょうか。
 ただ、戦闘行為が行われている最中に、これは一つの例ですけれども、たまたま自分が日ごろから気に食わない市民が近くにいたからこれをやっつけた、あるいは住居を、その人の住宅を壊した、これはもちろん通常の刑法や民法の適用になるというふうに考えるわけでありますが、戦闘行為に関連して、例えば、個人の住宅の中に敵がいる、この個人の住宅を破壊しないと戦えない、こういう場合は民法、刑法の関係というのはどうなるんでしょうか。
中谷国務大臣 まず、基本の認識でありますけれども、我が国に侵攻する他国の軍隊が攻撃を行って自衛隊がそれに対して対処するような地域におきましては、民間人に対する避難誘導を適切に実施をして、民間人に被害が及ばないように措置をするというのが基本でございます。
 その上で、自衛隊による行動がございますけれども、それにつきましては、国際法規、慣例を遵守し、「事態に応じ合理的に必要と判断される限度をこえてはならない」という法的な制約を課しているわけでございます。
 そこで、武力行使による敵の殺傷が、自衛隊法八十八条に基づく正当行為であるとはいえ、不可抗力による場合を超えて、仮にも故意によって民間人に危害を加えるようなことがあれば、そのような行為はもはや適法に行われた正当行為とは言えないわけでありまして、その意味で、自衛隊法八十八条は自衛隊に超法規的な権限を与えるものではございません。
 さらに、具体的に、武力の行使に当たる自衛官に対しては、こうした法的制約を担保するため、違法な命令をした場合や上官の命令に違反した場合には、他の公務員にはない厳しい罰則が科せられるところでございまして、このように行動をしてまいることでございます。
岡田委員 基本的に民法や刑法の適用はあるんですか、ないんですか、戦闘行為のときに。
中谷国務大臣 これは、正当防衛ということを考えていただきたいと思いますけれども、外国から我が国を侵略されたときに、自衛権に基づいて武力の行使ができるというのは、これは国際法、国連憲章にもございますけれども、認められている行為でございます。そこで、自衛隊法の七十六条の一項の規定がございますけれども、防衛出動を命ぜられた自衛隊は、我が国を防衛するため、八十八条に基づいて、国際の法規、慣例を遵守し、かつ事態に応じて合理的に必要と判断される限度において必要な武力を行使することができる、いわば国家の正当防衛行為でございます。
 ところが、外部の侵略者はどうするかというと、こういった国内の法規とか国際法を無視して我が国の国民の生命財産を脅かすものでありまして、自衛隊は国民の生命財産を守るために敵を排除するという戦闘行為を行うことになります。このような戦闘行為に際して、この八十八条の要件を満たしている限りにおいては、行政法規等の法律、法令に従わない場合があるとしても、それはこの八十八条に基づく緊急事態における正当行為として許されるものであるというふうに考えているわけでございます。
岡田委員 私は、民法、刑法の関係はと問うたのに対して答えていただいていないと思いますので、また同僚議員が改めてこの点については厳しく質問すると思いますが、今、最後におっしゃった行政法規の関係も、そうするとこういうことですか。
 例えば、今回、自衛隊法の改正で、河川法の問題がありますね。事前に協議しなきゃいけない、河川に構築物をつくるときに。しかし、それはできないから通知でいい、こういうことにいたしました。こういう規定も、戦闘行為の最中は、常識的には、そんな、知事を捜して通知するというのは困難なことだと思いますが、しかし、では、通知しなくていいということは何を根拠に言えるんでしょうか。法律上の根拠は置かれているんでしょうか。
中谷国務大臣 繰り返しますけれども、この事態というのは異常な事態でありまして、そもそも、外部の敵の侵入者は、我が国の法律とか国際法を無視して、あらゆる手段を使ってくるわけでございます。これに対して、これを排除しなければならないわけでありまして、その行為が自衛隊法八十八条でございまして、これは正当行為として許されるものでございます。
 しかし、超法規的かどうかといいますと、やはりこの行為につきましては、不可抗力による場合を超えて故意に民間人に危害を加えるような行為や、上官の適法な命令に故意に背くような行為は、かかる行為を禁じた刑法または自衛隊の規定に違反するものでございまして、完全に超法規であるということではございません。
岡田委員 こういう基本的なことは、政府としてぜひ整理された方がいいと思うんですよね。今の話を聞いていますと、ですから、敵の武力行使があった、そしてその前後、自衛隊が陣地を構築したり、いろいろ現場に駆けつける、そこは今回の自衛隊法の改正で手当てをするんだけれども、戦闘行為になったらもうそれは関係ないんだというお話でしょう。
 その根拠は何かといえば、この八十八条の二項で、「合理的に必要と判断される限度をこえてはならない」、だからその範囲ではいいんだ。しかし、それは本当の法治国家なんですか。それこそまさしく超法規じゃないですか。今回、この有事法制をつくるというのは、そういうことがないためにつくっているはずが、結局、非常に限定されたところについては法律を整備するかもしれないけれども、戦闘行為のときにどういうふうに考え方を整理するのか。
 私も、そういうときに一々知事を捜して通知するとか、それは非現実的だと思いますよ。でも、そうならそうで、どういう場合にはどういうことができるかということを法律で明確にしておくということが、これは有事法制の意味ですから、そこの肝心な部分が全部抜けているんじゃないですか、この法案は。いかがですか。
中谷国務大臣 個人にも正当防衛というものがありまして、自分の命に危険が及ぶ場合には、法を超えて自分を守るということは認められているわけでございます。国家にも、やはりそういう外国の勢力によって、日本の法律等を無視して我が国民を殺傷する場合に、その事態をいかに排除をして国民を守っていくかという行為自体が必要でございまして、その場合に際して、本当に緊急事態でございますが、自衛隊法八十八条の規定で、そういった国家の防衛行為を行えるということによって、国民を守る行為をするわけでございます。
 しかしながら、何でもやってもいいかといえば、故意に民間人に危害を加えたり、また上官の命令に背いて勝手な行動をしてはならないというように自衛隊法に規定をしておりますし、刑法や自衛隊法の規定に違反をしないように、そのようなルールを設けて、実効性の担保を図っているわけでございます。
岡田委員 私は、今の議論というのは、これは専門的な法律家の議論にたえないと思うんですね。ですから、ぜひここのところ、つまり、戦闘行為における民事法、刑事法あるいは行政法との関係をどう考えるのか、そしてその法的根拠は何かということについても、きちんと政府として検討して示していただきたい。何か、自衛権があるからとか、そういう話じゃないでしょう、これは。一番基本的なところじゃないですか。
 では、総理、総理はさっきからずっと他人事のような顔をしておられるから、官房長官でも結構ですが、いかがですか、今の議論を聞いていて。――いや、内閣法制局長官に聞くつもりはありません。いや、今聞くつもりはありませんから。
中谷国務大臣 正当防衛行為というのは、民事、刑事を超えて認められている行為でございますので、法理論的にはそのように説明ができるのではないかというふうに思います。
津野政府特別補佐人 若干、法的な、専門的な話ですが、先ほどから、刑法というお話がございました。この刑法の関係につきましては、まず、当然のことながら、刑法上、正当業務行為というものにつきましては、違法性阻却で、これは刑法上の罪責に問われるというようなことにはならないということが、これは自衛隊法八十八条の武力行使についても適用されるわけでございます。これは十分御理解できると思います。
 それから、民法の関係でございますけれども、これは、御承知のように、国家の適法行為について、先ほどいろいろ違法行為につきましての議論がございましたけれども、違法行為であれば、適法なものでなければ、当然、国家賠償法とか、そういった民法上の、国賠法上の責任が出てくる。それ以外の適法行為につきましては、事案によりましては、例えば、適正な損失補償をしなければいけないようなケースがあり得るというような関係に立とうかと思います。
 それは、あくまで国家の、国の公務としての正当行為でございますから、それに対しての規制というところでございますので、その関係では、戦闘行為、いわゆる武力行使が行われるような場面におきましては、それは正当行為としての評価を受けるわけでございますので、もちろんいろいろの、例えば憲法の二十九条のような規制を受けるような面もございますでしょうけれども、そういったところで判断をしていくということになろうかと思います。
岡田委員 今の御説明は、そうすると、刑法や民法は原則的には適用されるけれども、刑法であれば、正当業務行為ということで違法性がなくて罰せられることはない、民法あるいは国賠法上も故意過失がない限りはそういう責任を問われることはない、そういう説明だというふうに理解をしたんですが、行政法の場合、どうなんですか。
 先ほど言いました河川法、今回、自衛隊法の改正の中で河川法を変えますね、知事に対して通知するということになっていますね。こういう戦闘行為の場合も通知するんですか。しないなら、その根拠は何なんですか。
津野政府特別補佐人 これは、先ほどから防衛庁長官も行政法規等につきましてはお話をしておりましたが、例えば、先ほど言われましたような河川法上の通知の問題でございますけれども、こういったものは、これはあくまで戦闘、いわゆる武力行使を行われている場所を離れた場合における規制を、特例を設けているわけでございます。
 当然、戦闘行為が行われているような場所におきましても、そういった余裕があるかどうかという問題はございますけれども、そういう余裕があるならば、それはできる場合もあるかと思いますけれども、基本的に、事態は、戦闘という非常に緊迫した中で、しかもどういうふうに変化するかわからない。そういった状況の中でそういった行政法規を適用されるということは、これは自衛隊が正当な武力の行使をしている以上は、そういうことにもしも適用を、何といいますか、適用に対して違反したとしても、適用しなかったとしても、それは正当な業務行為として、何ら法的に問題を生ずるというようなことはございません。
岡田委員 そもそもの発想が、有事においてきちんと自衛隊の活動が法律に基づいて行われるようにということで今の有事法制の提案がされていると思いますが、今のお話は、戦闘行為のときには、それはもう正当事由かどうかで判断するんだということで、いわばノンルールじゃないですか。それでは、私、やはり説明になっていないと思うんですよ。法律上の根拠がやはり要るんじゃないか。具体的妥当性について、その場合、一々知事に通知しなきゃいかぬとか、そういうことを言うつもりはありませんよ。しかし、それならそれで、きちんとそういうものがルール化されていないと、結局、超法規で何でもできるという話につながりかねない問題だ、そのことを最後指摘申し上げて、同僚議員にかわりたいと思います。
 終わります。
瓦委員長 この際、玄葉光一郎君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。玄葉光一郎君。
玄葉委員 民主党の玄葉光一郎です。
 私は、緊急事態に備える法整備は必要だというふうに思っています。ただ問題は、できばえだということだと思います。実効性が余りになかったり、あるいは過度のあいまいさとかごまかしがあったりするならば、つくり直して出し直してもらった方がよいのではないか、そう考えています。率直な御答弁をこれからお願いしたいというふうに思います。
 各論に入る前に、総論を一つだけ聞いておきたいというふうに思うんです。
 それは内閣の情報体制という課題であります。
 これは、この有事関連法制に密接に関連をすると同時に、ある意味ではそれ以前の最重要課題だと言っても過言ではないというふうに思うんです。情報が、この場合、インテリジェンスという意味での情報というニュアンスが強いですけれども、情報が的確に収集をされて、分析をされて、もちろんその前に伝達されて、活用されなければ、そもそも武力攻撃事態の認定もできなければ、あるいはその後の的確な対応ができなければ、あるいは、我々とても大事にしていますけれども、事前に紛争の芽を摘むということもできないわけであります。
 この内閣の情報体制について、果たして総理は、現在十分であるというふうに考えておられるか、まずお伺いをしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 これはなかなか難しい問題でして、情報が十分かどうか。
 情報の持つ重要性というのは今も昔も変わらないと思います。特に専守防衛という体制をとっている我が国におきましては、まず、いかに国際情勢あるいは安全保障情勢、国内の危機に対する情報を収集していくか、その機関なり体制を整えていくか、人員をどのように的確に配置していくか、これは大変重要な問題であります。
 その情報の収集と分析については、いかに十分な体制をとるかということは、まあ限度がないと思いますけれども、できるだけの体制をとって、誤りない情報の分析、収集に努めていきたいと思います。
玄葉委員 私は、率直に言って、現状は、残念ながらお粗末だというふうに思っています。
 例えば、日米安保の将来という議論をするときに、私自身も大事だと思っていますけれども、戦略対話だ、こういう話が出てきます。あるいは情報の共有だ、こういう話も出てきますね。だけれども、私も当選して以来、アメリカの担当者と話をすると、戦略だ、情報の共有だと言ったって情報が筒抜けになるじゃないかと、直接、間接によく言われます。こういう問題がまず一つありますね。
 それに、逆に、例えば情報を漏らさないようにというふうに仮にしたとしても、我々は、残念ながらといいますか、米国に情報を依存している側面が強いと思います。そうなると、逆にアメリカに振り回される、こういう危険も率直に言ってある。
 あるいは、もう一つ例を挙げますけれども、今引き揚げ中の不審船、この不審船が発見されたときに、一体、当初、官邸はどういう判断をしたか。これは中国の密輸船ではないか、中国の密航船ではないかというふうに判断をしたのではないかというのは、いわば公然の秘密と言ってもよいのではないかというふうに思うんですね。
 ですから、これは全くお粗末な状態ではないかという危惧を持っているわけですけれども、課題は何だというふうにお考えになっておられますか。
小泉内閣総理大臣 これは、表に出せる情報と出せない情報があるといった、今玄葉議員の指摘、確かにあるんです。
 官邸としては、この武装不審船の問題につきましてはそれぞれの場合を想定して、またある国のことを想定して、どのような態勢をとるべきか、海上保安庁がやるべき問題、自衛隊がどこまでやっていいかという問題、いろいろ含めて対応したわけでありますが、こういう観点から、私は、最近の情報の重要性を見ると各国との共有という問題も非常に重要だと思っております。
 そこで、各国との情報の交換、共有というような場合、情報の交換と同時に情報の秘密をいかに守るかということも非常に重要だということを、私はいろいろな各国との首脳の会談でも経験的にわかってまいりました。どの程度こちらが言っていいのか、また相手の情報をどの程度公表していいのかというのは非常に難しい問題であります。
 こういう問題もありますから、それだけに日本国内だけの問題ではない、相手国の問題のある場合、相手国が一国だけの問題、複数に絡んでいる問題、こういう問題につきましても私は、情報の共有と、情報の秘密をいかに守って国民の安全を確保するかというのが非常に重要でありますので、情報の重要性というものを、これは日本としてもよりこの情報収集体制、分析体制について細心の注意、強化が必要だと思っております。
玄葉委員 課題はたくさんあると思うんです。
 これは先ほどの戦略対話とか情報の共有という意味からは、総理も御答弁されたように漏れるという話がある。先ほどの不審船の話からは、十分に正確に伝達されないあるいは分析されないという側面も現状だ。率直に言ってお粗末だというのは、これは言わざるを得ないというふうに思います。
 ですから、ここは私は、早急に検討チームをつくって検討に入るというふうにしないと、武力攻撃事態に万全の措置をとるんだ、こう法案に書いてありますけれども、その前の情報収集、分析、活用の体制に万全の措置がとられなければ何にもならない、これが大前提ですよ。
 今、やじというかお話の中に、機密漏えい防止策の話も出ていました。これは非常に繊細な問題です、率直に言って。漏れるという話からはそういう議論は出てくると思いますよ。これは知る権利との関係だ、あるいは表現の自由との関係だ。
 誤解なさらないようにしていただきたいんですけれども、例えば個人情報保護法案によるメディア規制というのは、私は反対ですよ。私は反対です。だけれども、もっと言えば、情報公開法の機密の範囲なんというのももっと限定した方がいいと思っていますよ、私は。ただ、より限定された本当に守らなきゃいけない機密に関しては、ここは本当に守れるんだという防止策は私自身はつくらなきゃいけない、そう思っているんですよ。いかがですか。
小泉内閣総理大臣 これは一見矛盾しているような話だけれども、重要な指摘だと思っています。
 というのは、情報を公開するということは、守らなきゃいけない、公開してはいけない情報もあるんです。その線引きというのは非常に難しいんです。この点は、その時々の問題によって、ある人によってはそういう情報は公開すべきだということも言うでしょうし、その情報が公開されることによって非常に安全に対しても、あるいは個人の場合はプライバシーの問題について被害を受ける場合がある。第三者は全く被害を受けない場合がある。
 こういう点において、情報を公開すべきだという一般論については私も賛成ですけれども、同時に、秘密を守らなきゃならない、公開すべきでない情報もあるという、その両面の対応が私は大変重要ではないかと思っております。
玄葉委員 ですから、個人情報保護法のように、表現の自由あるいは知る権利などとの調整を図る必要がないところで図っていて、本当は表現の自由との調整を、いわば本当にぎりぎりのところで収れん点を見つけていかなきゃいけないテーマがこのテーマだと、私自身はそう思っているんです。ぜひ、こればかりやっているわけにはいきませんから、御認識を改めてしていただきたいというふうに思っています。
 それでは、各論に入りますけれども、岡田政調会長の質問内容とできるだけ重ならないようにしたいというふうに思います。
 一つは、古典的な武力侵攻よりも周辺事態の方が蓋然性は率直に言って高いと思いますので、周辺事態の関係についてお伺いをしたいというふうに思います。
 まず、周辺事態法というのは、周辺事態法第一条でこう書いてあります。「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」ということであります。武力攻撃事態とは、これもこれまで議論されてきたとおり、予測の事態、おそれの事態、実際に武力攻撃が発生した事態ということでありますけれども、では、どういう事態が周辺事態と武力攻撃事態と重なる事態なのかということです。重なることは、あるいは併存することは既に答弁で聞いておりますけれども、どういう事態を併存する状態、事態というのかということであります。
 例えば、確認したいんですけれども、武力攻撃事態、その前に周辺事態があった、周辺事態がすなわち武力攻撃事態になる、すなわちイコールだということではないということは、普通に考えればそうかなというふうに思うんですが、そのことを確認したいということと、もう一つは、わかりやすい例示として、先ほど申し上げたように、周辺事態法の一条に書いてあるんですからね、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等」と書いてあるんですが、このわかりやすい例示として示されているこのような事態は、これは武力攻撃事態になるのですか、重なる事態なんですか、確認をしたいと思います。
中谷国務大臣 なる場合もあれば、ならない場合もございます。
 御質問にありました、この「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態」というのが周辺事態の一例でございますけれども、そのまま放置をすればということでありまして、周辺事態の際に適切に処理をすれば、我が国の武力攻撃事態またおそれの事態に至らない事態で終わる可能性もありますし、その対処がまずければ、我が国の武力攻撃に発展する可能性もあるわけでございまして、この場合は周辺事態でございますが、事態によってなる場合とならない場合があるわけでございます。
玄葉委員 本来、先ほど議論されていた予測される事態というのは例示されるべきだというふうに思いますけれども、なかなか、今例示するというわけにいかないでしょうから、あえて、わかりやすくするために幾つか聞きたいと思います。
 周辺事態というのは、六つ例示をされています。これは御存じのとおり、平成十一年の四月に、政府統一見解として六つ例示をされているわけでありますけれども、それぞれ、その周辺事態のケースが武力攻撃事態に当たる可能性について言及をしていただきたいんです。簡単に申し上げますけれども、六つ。
 一つ目は、「我が国周辺の地域において武力紛争の発生が差し迫っている場合」、これで平和と安全に重大な影響を与えればこれは周辺事態で、我々は、後方支援をし、捜索救助活動をし、また避難民救援活動をするわけですけれども、この(1)。
 そして(2)の紛争発生ケース、「我が国周辺の地域において武力紛争が発生している場合」、こういう周辺事態の場合はどうなのか。
 あるいは、周辺の地域において武力紛争そのものは一応停止した、一応停止したけれども、いまだ秩序の回復、維持が達成されていない。こういう周辺事態は武力攻撃事態に当たるのですか、どうなのですか。
 あるいは、内乱、内戦が拡大していったケース。これも周辺事態に当たる場合があるわけですけれども、これは武力攻撃事態にやはり当たる可能性はあるのですか、どうなのですか。
 五つ目は、大量避難民が流入したケース。これも周辺事態に当たる可能性があるわけですけれども、武力攻撃事態に当たる可能性はあるのですか、ないのですか。
 そして最後に、安保理による経済制裁ケース。経済制裁を行ったときに、これは周辺事態、船舶検査をする可能性があるわけですけれども、そういう事態も武力攻撃事態に当たる可能性があるのですか、ないのですか。
 以上、お答えいただきたいと思います。
中谷国務大臣 今、周辺事態の概念に関する政府の統一見解によりまして、事例を六つ挙げていただきました。
 内乱や内戦等の事態が発生し国際的に拡大している状況とか、大量の避難民が発生し我が国への流入の可能性が高まっている状況のようなものまで武力攻撃事態に該当することがあるかどうかというふうに御質問をいただきましたけれども、これは、この六つのケースすべて、状況によっては、我が国の武力攻撃のおそれのある場合、または事態が緊迫して武力攻撃が予測される事態に該当することとなる可能性が完全に排除されているわけじゃございませんので、一概に入るか入らないかというのは、その状況等の推移をよく注視をしなければならない問題であると考えております。
玄葉委員 私は最初に、周辺事態イコール武力攻撃事態じゃないでしょう、だからそれをできるだけ国民の皆さんの前で説明をしていただいた方がよいのではないかと思って、丁寧に、できるだけ皆さんのことを考えてある意味では聞いてあげた側面もあるのですが、今の御答弁だと、周辺事態六つ、全部可能性は排除できないと。果たしてそうなのかなという感じが私はしますけれども、ということは、ほとんど重なってくる、その可能性はあるというふうに理解をしていいということですね。
中谷国務大臣 周辺事態というのは、周辺においてそのような事例が起こっている事態であって、極力我が国の有事に発展しないように、大ごとにならないように努力をしてその状況を回避するわけでありまして、それがもう武力攻撃になるというのは不幸な事態でございまして、極力武力攻撃事態にならないように、周辺事態で対処をしなければならない問題であります。
 イコール武力攻撃事態になるかどうかという点につきましては、よくその状況推移等を判断して、これはまさしく周辺事態ではなくて我が国の武力攻撃事態で国内防衛の見地から実施するということで、概念的にも違っておりますけれども、周辺事態において極力武力攻撃事態にならないように努めるわけでございます。
玄葉委員 ますますわからなくなっちゃうんですよ、逆に。そうなると、武力攻撃事態というのは、もう本当に拡大しちゃうんですよ。
 つまり、何で聞いているかというと、周辺事態だけの発生ではできないことが、事態が併存することで、つまり武力攻撃事態とあわせて認定されることでできることというのはたくさん出てくるわけですよ。だから、そうじゃないんだということを言ってもらおうとして聞いているのに、全部可能性があるんだ、こういう話ですね。私は、果たしてそうなんだろうかというふうに思いますよ。
 状況の推移によっては――そんなの当たり前ですよ。状況が推移したらそれはどうなるかわかりませんよ。だけれども、この時点でこういう周辺事態が発生しているときに、今具体的に申し上げたわけですから、武力攻撃事態になるんですか、その可能性はあるんですかと聞いているのです。
中谷国務大臣 例え話で誤解を招く面もございますが、例えば、周辺事態を近所の火事としますと、それが三軒先か十軒先かわからないんですけれども、風向きによっては我が家に火がうつってくるわけであります。ですから、その風向きの要素もありますし、事態の状況を見て判断しなければなりませんが、武力攻撃事態というのは、まさに我が家の火災に対していかに火を消して住民を安全に守るかという観点でありまして、まさに我が家に火がうつる事態が武力攻撃事態であり、うつりそうな段階が予測される事態でありまして、周辺事態というのは、その近所の火事の状況に対して、いかにその消火に対して支援をするかという事態ではないかと私は考えております。
玄葉委員 中谷長官、総理も笑っていますよ。いや、率直に言ってわからない。
 私、こればかり本当はやりたくないんだけれども、では、この六つの事態はすべて予測される事態になり得る、この時点でなり得る可能性があるんですか。では、イエス、ノーで答えてください。イエスという答えをしていると思うんですけれども、本当にそうですか。
中谷国務大臣 まさしく状況を見なければなりませんけれども、完全にあるかどうかというのは全く言えないわけでありまして、ほとんどないと思いますが、完全に排除できるというふうに言い切れる状況でもないわけでございます。
玄葉委員 ちょっと答弁、ひどいですね。
 今の答弁になっていくと、何か率直に言って、周辺事態はイコール武力攻撃事態だというふうに聞こえなくもない。そういう答弁に聞こえなくもないですよ。可能性はほとんどないとはっきり、きちっと言えばいいんだけれども、そういうところがある。
 これはまた別の機会にやらせていただきたいと思いますが、米軍との関係、関連しますから一言申し上げたいと思いますけれども、御案内のとおり、我が国に武力攻撃事態が発生したらば、特に日米安保の五条で米軍と自衛隊が共同対処行動をとるということになっているわけでございます。これは、米軍に対してどう支援するのか、あるいはその行動の円滑化をどう図るのかということで、先ほどの質疑の中にもありましたけれども、これは支援法、具体的にどういうふうに、どういう法整備を考えておられるのですか、外務大臣。
川口国務大臣 お尋ねに対してでございますけれども、米軍に対する支援のあり方といたしましては、武力攻撃事態対処法案に規定をされていますように、日米安保条約に従いまして武力攻撃事態を排除するために必要な行動が円滑かつ効果的に行われるために実施をする物品、施設または役務の提供などが考えられるわけでございますけれども、より具体的には、事態対処法制の中で、この法制を整備する中で検討をすべき問題であると考えております。
 その場合には、次に申し上げるような考え方に基づいて検討されるべきものだと思っております。
 まず一に、我が国の支援が日米安全保障条約の目的の枠内で行われるということでございます。
 二番目に、我が国の支援が我が国の憲法の範囲内において行われるということでございます。
 三番目に、我が国の支援が国際連合憲章を初めとする国際法に従って行われるということでございます。
 四番目に、米軍の行動は、我が国に対する武力攻撃を排除し、我が国及び国民の安全を守るためのものでございますので、米軍が自衛隊と同様に円滑な行動を行えるように、また国民への影響が最小限になるように、米軍に対する支援を検討する必要があるということでございまして、いずれにいたしましても、今後、政府全体の問題といたしまして各省庁間で協議の上、米側と協議をしていく予定でございます。
玄葉委員 今、支援法の話と、少し行動の円滑化の話も触れておられますけれども、行動の円滑化の話では、よく言われるように、米軍は、一般国際法上は接受国の国内法の規制は受けないということになっています。だけれども、自衛隊は、今回適用除外の法律を審議することになりますけれども、しかし、国内法の規制は何らかの形で受けていくわけです。しかし、米軍は受けないということなんですけれども、この調整はどうするのか。日米地位協定では尊重義務がありますけれども、尊重義務であって、それは尊重するということであって、守らなきゃいけないという話ではありませんので、何らかの取り決めとか法整備がここも必要になってくるんじゃないかと思いますけれども、いかがですか。
川口国務大臣 日米地位協定との関係でお尋ねでございますけれども、先ほど申しましたように、武力攻撃事態における米軍の行動を円滑かつ効果的なものにするための措置のあり方につきましては、今後、この武力攻撃事態対処法案に基づきます事態対処法制の整備の中で検討をしていくということでございます。そのような措置をとるために日米地位協定を改正するということは検討はいたしておりません。
玄葉委員 それでは、先ほど周辺事態と武力攻撃事態が併存する事態について話をしましたけれども、その事態、いわば重複事態というか併存事態において整理されなければならない課題というのがかなりあるのではないかというふうに思うんです。自治体、民間との関係とか、さまざまあると思うんですけれども、例えばこの場合はどうなるんでしょうか。
 武器弾薬の提供という議論がございます。つまり、周辺事態法では、たしか第三条だったと思いますけれども、我が国は米軍に対して、周辺事態にあっては武器弾薬の提供はできない、しないということになっています。もっと細かいことを言うと、戦闘作戦行動の発進準備中の云々、こういうこともありますけれども、例えばの例で、武器弾薬の例で話をしたいと思いますけれども、武器弾薬の提供はできない。
 しかし、今後、今外務大臣がおっしゃったように、米軍への支援法とかあるいは有事ACSAのようなものが整備されていくと、当然、そもそも我が国の武力攻撃事態なわけですから、我が国の武力攻撃事態にあっては武器弾薬の提供はしますよね。そこはいいですか、ちょっと確認のため。当然だと思うんですが、どうぞ。
川口国務大臣 具体的な内容につきましては、これから検討する中で検討をしていくことです。
玄葉委員 いや、具体的な内容といっても、これは少なくとも、武力攻撃が我が国に対して発生して自衛権の問題が発生した、こういうときに武器弾薬の提供というのは私はできるんだと思っているんですけれども、米軍に対してですよ、米軍は私たちの国を守ってくれているんですよ、そういう場合、それもこれから検討するんですか。
川口国務大臣 国内的な法制ということについては、ございませんので、それを検討していくということでございまして……(玄葉委員「武器弾薬について」と呼ぶ)武器弾薬について、自衛権の行使の範囲内でそれはできると思いますけれども、それをやっていく国内的な法制、それをこれから検討する、そういうことでございます。
玄葉委員 例えば、こういう事態のケースを考えたときにどうなんでしょうか。
 あえてわかりやすくするために、これはわかりやすく議論しないとなかなか国民の理解を得られないので、あえて特定します。朝鮮半島で事態が起きちゃった。それで、それは周辺事態と認定した。同時にそれは我が国の武力攻撃事態にも認定した。そうなったときに、米軍から武器弾薬の提供を求められた。こういう場合米軍は、朝鮮半島で、朝鮮半島でですよ、日本側が提供した武器弾薬というのは、これは使えるんですか、使えないんですか。
中谷国務大臣 その場合は、朝鮮半島における周辺事態の支援とまた我が国の武力攻撃事態における米軍の支援と、それは区分をして支援を行うわけでございます。
玄葉委員 そうすると、どうですか。五条事態、つまり武力攻撃事態でこの米軍に対する武器弾薬の提供を読むのであれば、その武器弾薬は、米軍は朝鮮半島でも使っていいんだということなんですか、それともそうじゃないんですか。
中谷国務大臣 武力攻撃事態における米軍の支援につきましては、あくまでも我が国の自衛権、すなわち自衛権発動の三要件の認定があって、それに伴って行動する米軍に対する支援でございますので、我が国の米軍への支援は我が国の防衛に関するものに限定されるわけでございます。
玄葉委員 そうすると、朝鮮半島で米軍はそれを使用してもいいということですね。どうなんですか。もう一回確認したいんです。
中谷国務大臣 そういうことは一概に言えないわけでございます。(玄葉委員「一概に言えない。どっちなんだよ、これは。答弁になっていない」と呼ぶ)
 我が国の武力攻撃に対する米軍への支援は、あくまでも我が国の武力攻撃に限定されるわけでございますので、ほかの地域の周辺事態には使わないわけでございます。
玄葉委員 いや、率直に言って答弁になっていないところがあると思います。これは後で、追って同僚議員にバトンを渡しますけれども、なぜ私がこういうことを聞いているかということなんです。つまりそれは、やはり私たちの国の安保政策というのは、フィクションというか虚構で成り立っているという側面が率直に言ってあるんだと思うんです。
 例えば今、法律を使い分けるみたいな話ですよ、そこもまだよくわからないんだけれども、仮に使い分けるとしたら、オペレーション上は全くナンセンスですよね。全くナンセンスだ。だから私は、そういうことも含めてきちんと正面から説明した方がいいんじゃないかと。今、私たちの国の国益を考えるとすれば、集団的自衛権の問題もあります、ただ、今それを改正するわけにはいかないし改正するべきじゃない、だけれども、国益上、今使い分けすることがベストなんだ、そういう正面からの説明を聞きたいと思って、そういう意図で一つは質問をしているんです。
 ただ、これは一つの大きな課題だと思いますから、全く答えられていませんので、後でまた質問をさせていただきたいというふうに思います。
中谷国務大臣 使い分けができるかどうかということでございますが、我が国の武力攻撃事態におきましては、共同作戦計画や相互支援計画等をつくりまして、軍事面でのオペレーションにつきましては日米間で調整をして行うということになっております。
 こういう点で、先ほどの周辺事態との区分けについて区分をしてまいりたいと思いますけれども、もう一度申しますけれども、予測される事態またはおそれのある事態においては我が国は武力の行使を行うことはなくて、このような状況においては米軍の武力の行使と一体化するような支援は憲法上容認されないと考えておりますが、安保条約五条に定めることに従って我が国自身が武力を行使して米国と共同対処することになる武力攻撃が発生した場合におきましては、我が国の対米支援については、いわゆる一体化論から生ずる制約を受けることはないと考えられまして、このような場合におきましては我が国の支援が憲法の範囲内で行われるわけでございます。
玄葉委員 いや、先ほどの私の具体的な質問には残念ながら答えてもらっていないんです。ですから、そこは多分何度聞いても同じなんでしょうから、ぜひこれはこれから整理をしていきたいというふうに思っています。
 あと、周辺事態と武力攻撃事態が併存する事態において、地方自治体の対応、あるいは国以外の者、そういう方々との対応、これも一つの問題になってくるんだ、論点だというふうに思います。
 つまり、周辺事態においては、地方自治体に対してまさに必要な協力を求めることができる、あるいは国以外の者に対しては依頼をすることができる、このレベルなんですね。だけれども、先ほどほとんど重なるような御答弁でしたけれども、予測される事態だというふうになった時点で、先ほど来から議論が出ているような、総合調整権を総理に与える、あるいは指示権を与える、あるいは代執行権を与えるということになっているわけですけれども、これも事態が重なったときには使い分ける、こういうことなんですか。いかがですか。
福田国務大臣 基本的にはそういうことなんですね。
 周辺事態と武力攻撃事態、それぞれ別個の法律上の判断に基づくものでございまして、周辺事態安全確保法による協力の求め、そして武力攻撃事態対処法による指示などについても、それぞれの法律に基づいて行われる、こういうことになっております。
 仮に、これらの事態が併存する場合におきましても、それぞれの法律に定める要件に基づく措置が講ぜられる、こういうことになっております。
玄葉委員 関連して、地方自治体との関係を少しお尋ねしたいんですけれども、地方自治体との関係については、五条と七条に、地方公共団体の責務ということが書いてあり、同時に地方公共団体と国との役割分担というのが書いてあるわけです。具体的には何も書いてないと言っても過言ではないというふうに思いますけれども、一体地方自治体は武力攻撃事態があったときには何が求められるでしょうか。いかがでしょう。
片山国務大臣 地方公共団体の責務につきましては、今後の個別法制の整備の中で具体的に決めていくことになると思いますけれども、地方団体は一般的には、住民の生命、身体、財産を守るという使命がありますから、想定されるものとしては、例えば避難のための警報の発令、伝達や、被災者の救助や、あるいは施設設備の応急的な復旧や、そういういろいろな措置の場合の中で地方団体は国との関係で一定の役割を果たす、こういうことになると思います。
 具体的には、個別法制をやる場合に、私は、地方団体の意向を十分体してその法制の中に盛り込みたい、こういうふうに思っております。
玄葉委員 いわゆる地方自治体にそういう役割を負っていただくということになるのであれば、当然それなりの権限を例えば知事さんなり市町村長さんなりが持たないとできないという側面もあるのではないかというふうに思いますし、あるいは警察とか消防なんかとの関係も出てくると思うんですけれども、そこはいかがですか。
片山国務大臣 御指摘の点を含めまして、内閣官房を中心に関係省庁集まりまして、その点は整理しながら個別法制を整備してまいりたい、こういうふうに思っております。
玄葉委員 ですから、米軍との関係なんかもそうなんですけれども、国民の皆さんにとって大事な、いわゆる住民の避難だとか誘導をどうするかとかということが抜け落ちているんですね。これはやはり重大な欠陥だというふうに言わざるを得ない。一緒に出すというのが本来なんじゃないかと思うんですけれども、総理、いかがですか。
小泉内閣総理大臣 不備な点があったらば、ぜひ提言していただきたい。よく検討したい。
玄葉委員 ですから、なぜ一緒に出さなかったのかということ。それは間に合わなかった、こういうことですか。
小泉内閣総理大臣 本来もっと早くやるべきだという意見だったら、これは大変建設的な議論だと思います。私としては、今まで備えが不十分だったんじゃないかという点を考えて、今回この法案の審議をお願いしているわけでありますので、今回、不十分であるともし思われるんだったら、十分な提言も出していただき、私どももよく検討させていただきたいと思います。
玄葉委員 ですから、これを出すならば、本来は、俗に言う第三分類、それも一緒に出してほしかったということであります。優先順位の問題としては、先ほど、今回の武力攻撃事態に当たらないテロとか不審船の問題もある。もっと言えばサイバーテロの問題なんて何も対応できていないと言っても過言ではないというふうに思うんですけれども、それはまさに優先順位をどうつけるかという話で、同時並行で進めなきゃいけない話だ。だから本来一緒に出してほしかった、こういうことを実は申し上げているということでございます。
 もう一つ、先ほど岡田委員の方から質疑がありましたけれども、武力攻撃事態の終わりの認定ですね、これはぜひ国会が関与できるようにしなければならないんだろう。やはり泥沼化を防ぐ手だてというのは法律に内在させておかなきゃいけないというふうに思っています。せめて、これは最低限国会決議があればそれはやめます、こういうことだろうというふうに思いますけれども、それは総理、いかがですか。
福田国務大臣 武力攻撃事態が終了しまして、一連の対処措置を継続する必要がなくなったという場合には、政府は対処基本方針を速やかに廃止して国会に報告する、こういうことになっております。その際、政府が対処基本方針についての国会の審議等を通じて示された国会の意思を尊重することは当然でございます。
玄葉委員 そうすると、仮に終わりの認定について総理と国会の意思が乖離をして、そのときに国会が決議して、もう引こう、やめよう、少なくとも武力攻撃事態ではないというふうに認定しよう、認定というか終わりを決めようということであれば、それはもう尊重するということですね。
福田国務大臣 政府が対処基本方針を廃止し、そして国会に報告する、こういうことになりまして、国会の審議等を通じて示された国会の意思を尊重する、こういうことであります。
玄葉委員 いや、もう余りやりませんが、アメリカでも、例えば国家緊急事態法なんかでは、それは連邦議会が決議すればやめるということになっているわけですよね。そこは、やはり我々としては最低限求めなきゃいけない話だというふうに思っています。
 以上です。
瓦委員長 午後一時十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    正午休憩
     ――――◇―――――
    午後一時十六分開議
瓦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。藤井裕久君。
藤井(裕)委員 私は、激動の昭和という真っただ中に生まれました。そして、濁流の中で何とか生き長らえてきた。そして、自由党の安全保障政策の基本は、第二次大戦の反省の上にすべてができています。ですから、第二次大戦の反省の上に立った自由党の政策を私自身の経験とオーバーラップさせながら私どもの考えを申し上げますので、総理におかれては、その我々の考えに対して御意見をいただければありがたいと思っています。
 私が生まれた一カ月前に五・一五事件があったんです。それは、総理が今いらっしゃる公邸の一隅で、時の総理大臣犬養毅は、海軍の少壮士官によって、話せばわかるというのに対して、問答無用ということで命を失われました。これをもって戦前の政党政治は終わったと言われております。
 また、官邸で、加えて申しますと、二・二六事件、昭和十一年二月二十六日のあの事件の銃弾の弾痕がございますね。これは、陸軍の少壮士官が陸軍の一部を使って反乱を起こし、当時の平和を求めていた高橋是清、斎藤実、この二人の命を奪い、終戦のときの総理大臣をやられた鈴木貫太郎に重傷を負わせた、こういうことですね。
 私は、そういうのを見てまいりまして、軍というものは、日本の本当の国民の生命を守り、日本の平和を守るという組織であることは間違いなく事実でありますが、もし一たん指導者が誤れば、国民を塗炭の苦しみに陥れる集団であることも否定できないと思っております。
 今総理は、政治の最高責任者であるとともに、三軍の長なんですね。明治憲法においては、統帥権の独立という形で総理のところをバイパスしていたんですね、軍事問題は。それについて、けしからぬ、それを侵犯したぞということでやったのが五・一五事件ですよね。勝手に政治が中に入ってきて、ロンドン軍縮条約を勝手にやった、こういう話ですよね。
 今、そういうことは全くありません。全くありませんから、総理におかれては、特にこういう法律を出されて、総理の役割というのはますます大きくなるというこの原案なんですよね。ひとつ、どうか総理、三軍の長としての覚悟を述べていただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 まず、政治として、総理大臣として一番留意しなきゃならない点、それは、二度と戦争を起こしてはならないことだと思っております。そういう過去の忌まわしい、避けなければならなかった戦争事態に突入して、国民は悲惨な苦しみに直面した。こういうことから、戦後、いろいろな反省の上に立って、今日、日本はこのような平和のうちに先進国の仲間入りを果たすことができたと思うのであります。
 今後、総理大臣としては、戦争を起こさないということと同時に、もし不慮の事態が起こったならば、未然に防ぐ、あるいは被害を最小限にとどめる、緊急事態に対しては常に備えておくということが大きな責任ではないかと思っております。
藤井(裕)委員 私は、総理にもう一つ言っていただきたいことがあるのですが、それはきょうのメーンテーマでありますから、徐々に申し上げます。
 私は、小学校六年から中学一年にかけて、東京直下の大爆撃の真下にいました。もう高射砲も撃てなくなっちゃっていたですね。そしてサーチライトだけが爆撃機のパイロットの顔をよく映していたんです。そのくらい低空飛行で爆撃が行われました。私は防空ごうの中で、もし生あれば、こういう社会に絶対してはいけないということを幼心に誓ったんです。今、不思議に命長らえてこういう場に立っているというのが実感なんですよ。そして、戦争の悲惨さというものを後世に訴え伝えることも非常に大事ですが、なぜこのような悲惨な事態が起こってきたのかということをもう一度はっきりさせて、これからの世代につないでいくということが我々の役目なんじゃないかと私は思っているんです。
 そして、それは、はっきり言いますと、政治があるいは指導者が原則というものを全く無視して、安全保障の基本はどうあるべきかとか、自衛権というのはここまでだとか、そういうものは全くなかったんですね。あるものは国威発揚の閣議決定だけなんですよ。国威発揚というのは、どんどん出ていけという話です。それしかありませんでした。
 そこで、簡単に昭和のことを申しますが、昭和二年、三年の山東出兵は邦人保護なんですよ。邦人保護の名においてよその国に土足で入るということは、国際法上許されていないのです。これをやりました。昭和六年の東北地方、満州でもいいですが、その地域における軍事行動によって、昭和七年には満州国をつくりました。それは国際的な常識からいえば全く反するということで、結局国際連盟から離脱せざるを得なくなった。
 そしてその同じころ、熱河作戦といって、これはまたどういう理由があるのか、全く理由がないけれども、山海関を南下して、そして河北省だとかあるいは蒙古、内蒙古、こういうところに出ていっちゃった。これも全く理由がない。
 さらに、盧溝橋事件を機として、昭和十二年には中シナ、今の言葉じゃないけれども、昔は中シナですよね、それへ上陸して、揚子江をさかのぼって南京まで占領しちゃったんですね。これだって全く大義名分がありませんね。全くありません。
 それから、蒋介石政権が重慶に移ったら、蒋援ルートと称して、重慶の蒋介石を助けるということで、昔の言葉で言いますが、北部仏印に出ていっちゃった。その明くる年には、南方から来る石油を確保するために、南部仏印まで出ていっちゃった。そしてついに日米開戦のきっかけになった。こういう歴史を持っているわけですね。そこにあるのは無原則ですよ。単なる国威発揚だけなんですよ。
 だから、私たちはそこのところが一番大事だと思っています。物事は原則を持って、これは絶対やっちゃいかぬということをはっきりさせることによって、どうか国の最高責任者は軍という最大の力を持ったグループをリードしていただきたい。このことについて、御意見があったら伺います。
小泉内閣総理大臣 一国の軍隊、日本は自衛隊を軍隊とは呼んでおりませんが、外国に例をとりますと、一国の軍隊というのは自国の独立と平和と安全を確保するために存在するんだということで、各国が軍隊を保持しているんだと思います。
 日本におきましては、自衛隊も独立と平和を守る大事な組織として、現在いろいろな点から、国民の支持のもとに、国民とともにある自衛隊として、国民を守るための訓練や装備の拡充や、あるいは有事に対してそれぞれ対処していかなきゃならない、いわば国民の安全を確保するための重要な組織であるということから、日々国民とともにある自衛隊という意識を持ちながら精進、訓練にいそしむべきだと思っております。
藤井(裕)委員 どうか今申し上げたような歴史観を正確に持っていただきたいと思うんです。
 あえて伺いますが、私が申し上げたような歴史観について御印象をおっしゃっていただければありがたいと思います。
小泉内閣総理大臣 それは、いろいろ日本が、当時の政治状況として、日本の生きる道を探った中で国際社会から孤立していった、それを断じて避けなきゃいけなかったと私は思っております。
 そういうことから、日本は戦後、国際社会から孤立してはならない、国際協調を大きな外交政策の柱としてやってきたわけでありまして、今藤井議員が指摘されたような、戦争突入に至る間、国際社会から孤立したという、国際社会の非難に耳をかさずに国際連盟から脱退したというようなことは、今後もしてはならないと思っております。
藤井(裕)委員 政治家の背骨は歴史観だと思いますから、どうか正しい歴史観を持って軍をリードしていただきたいと思います。私は軍隊とあえて申しますが、自衛隊で結構です。
 そこで、そういう時期には、確かに日本にあったのは熱狂的ムードだったんですね。そして、その熱狂的ムードを、はっきり言えば、あおったのが指導者だったと思いますよ。反面において、冷静に世界における日本の立場、そして、日本はいかにあるべきかとちゃんと冷静に理解していた方もあるんですね。これは指導者にもあります。軍の関係の方にもあります。そして、一般国民の中にはそういう方がいっぱいいらっしゃる。ところが、そういう一つのムードの中に流れた。
 余り冷静に見られた方のことを一々申しませんが、例えば総理の選挙区におられた井上大将ですよ。井上大将は最後の海軍大将ですね。この方が海軍兵学校の校長をしておられたときに、英語を最後まで教えられたでしょう。教えられたんですよ。そして、どうせ敵性語を、しかも海軍兵学校という軍の中枢の若いやつを育てるところで何をやっているんだという物すごい非難があった。そのとき井上大将は、いずれ戦争は終わる、そのときにこれからの日本の中枢をなすのはこういう若い人だ、そしてその人たちは英語を知らなきゃいかぬと言って頑張り通されたんですね。今総理の選挙区のことだけ申しましたが、そういう方もいっぱいいらっしゃったんですよ。もちろん一般の方の中に随分冷静に見ていらっしゃる方がいらっしゃったんですね。
 ところが、何でこんなことになったかというと、さっき申し上げたように、私は、基本的なルールがなくて、それがために熱狂的なムードにあおられるような社会がどんどんできていってしまったということじゃないかと思うんですね。
 ですから、はっきり言って、この基本原則というものをつくった上でこの緊急事態法制というのを考えるのは私は正しいと思う。緊急事態法制がなぜ正しいかといえば、これはだれも言うことですが、政治家として国民の生命と日本の平和を守るためにはこれがなきゃいけないという意味においてもそうですし、もう一つ、これをやらないでおいたら必ず超法規になるんです。超法規というのは民主主義の根幹に一番反することになるんだと思うんです。民主主義というのは、法の支配、法治国家というのが民主主義の一番の基本なんであって、これはどうしてもやらなきゃいけないと私は思っているんです。
 ところが、そこだけが突出しているんですよ、今のは。要するに、自衛隊の行動だけが突出して、その自衛隊の行動に対して国民がどれだけの制限を受けなければならないということだけが突出しているということは否めないんですね。
 日本の中で、これから安全保障、安全保障というのは、日本の平和、そして国民の生命を守るのは、こういうこととこういうこととこういうことがあって、その中の自衛隊行動だというまず位置づけをしなきゃいけないと思うんですね。さらに、自衛隊行動は、戦前の例からいえば、全く自衛権という限界を超していろいろな行動をしたことなどを考えれば、これはどうしてもそういう基準が必要だと思うんですよ。
 だから、私たちは、こういう緊急事態法制は絶対に必要だと思う。しかし、その土台がないんですね。突然この自衛隊の話だけが出てくる。そうじゃなくて、土台、基礎というのは何かといえば、安全保障政策の全体像である。この全体像をしっかりやっていただきたいというのが私どもの強い期待なんです。
 そうでございますから、私たちは別の法律を出します。それは緊急事態に対する対策を否定している法律ではありません。緊急事態に対する法制は絶対必要だけれども、その基礎の中に、今の土台がない。それではだめだということをあらわした法律を出しますので、ひとつ、今のような物の考え方について御理解をいただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 政党政治、このあるべき姿というのは、批判も大事ですけれども、対案を出すということから考えると歓迎すべきことだと思っております。そういう対案があってこそ建設的な議論ができると思いますので、この緊急事態に対してどのような備えをすべきかという点につきましては、藤井議員の考え方あるいは自由党の考え方、大いに展開していただきまして、これからあるべき有事態勢はどういうものかという議論を深めていきたいと思っております。
藤井(裕)委員 実はきょうのメーンテーマじゃないんですけれども、去年、テロ対策法がありましたね。我々はあれに反対しましたね。それはどういうことかというと、もちろん総理には総理のお考えがあると思うんだけれども、僕らから見ると、今の基本的国際ルールに反しているというふうに考えて反対をしたんです。
 なぜかというと、これはアメリカの自衛権だということになっているわけですね。これは国際的に認められているわけです。それに対してヨーロッパが一緒に共同行動をとることは当たり前なんです。これはNATO条約五条によって、集団自衛権といいましょうか、一国が攻撃を受けたら、それは全体が攻撃を受けたこととみなして行動するんだということですから、ヨーロッパが出るのはいいんです。
 ところが、日本は、安保条約にはそういうことがありません。また、憲法の解釈でもそれがありません。そして、といって、国連の平和活動への決議もありません。あのときの御議論は、後方支援だという話になっているわけですね。後方支援というものが、一体、武力行動かどうかという議論はあったんですね。しかし、これは、国際司法裁判所では、後方支援は武力攻撃ではない、コンバットという言葉を使っていますね、コンバットじゃない、しかし、これが武力による威圧とか武力行使であるという考えについては否定できないということも言っているんですね。
 そういうことですから、私は、きょうのメーンテーマじゃないけれども、そういうことがあったわけでして、よりやはり国際ルール、そして秩序というものに慎重に取り組んでいただきたいというのが私たちの気持ちなんですが、それはメーンテーマじゃございませんので、きょうはこれ以上申しませんが、もう一つここで申し上げておきたいことは、平成十年から十一年にかけまして、自自連立あるいは自自公連立というのがあったわけです。そのとき第一にやったのが国会議員の削減でありましたので、そのために少しおくれましたが、この両合意書には、今私が申し上げたような形の緊急事態法制をつくるべきだということがどっちにも明記されていたんです。そして、その中で、プロジェクトチームはまじめに勉強されたと思います。
 ところが、平成十二年の四月になりまして、これは亡くなった方で大変恐縮ですが、小渕総理が私どもの党首に、君たちとの合意は正しいと思っている、日本の将来のために正しいと思っている、しかし自民党が動かないんだ、勘弁してくれ、こういうことを言われたんですよ。これは間違いない事実なんです。ですから、今の小泉総理がこう言っておられるということとは別に、二年間のうちにそんなに変わってしまったんだろうかという奇異の感じも持っています。
 そこで、どうか総理が、一々このときはこうだったなんというのは結構なんでして、思いのままを、今のこれは事実でございますから、おっしゃって、感想を述べていただければありがたいと思います。
小泉内閣総理大臣 本来、緊急事態に対してどのような備えをしておくべきか、あるいは有事に対してどのような対応を考えておくべきかというのは、もっと早くやってしかるべきだったと思います。そういう状況だったからこそ当時の自由党も、自民党の小渕総裁に対してそのような有事態勢の整備を進言したのではないかと思っております。
 しかし、政治課題というのは、いろいろその時々によって山積しております。恐らく、小渕総理にとってみれば、小渕総理自身の当時の判断によって、自分としてはほかのこともやらなきゃならない、自由党の提案なり提言は正しい認識だと思うけれども、その当時の政治課題に上げるのは時期がまだ早いといいますか、熟していないと思ったのかもしれません。それは私の憶測ですから、今、小渕総理がどう言っているかわかりませんが。
 ともかく私は、いつの時代においても、平和のときにこそ、いざ乱が起こったとき、一朝事が起きたときに、冷静に考えておくべきものだと思っておりますので、今回も、むしろ今までそういう備えをしてこなかったという反省の上に立ち、国民的な議論の中で有事に対してどのような態勢をとっていくべきかということを議論する、また、法整備をしていくということは大変重要なことだと認識しております。
藤井(裕)委員 もう一度念を押しますけれども、私どもは、この緊急事態法の基礎にある安全保障政策の根幹とか、あるいは自衛権の限界というものを明確にした上でこれをやっていただきたいということがあることをもう一度ここで申し上げておきたいと思います。後で、時間の範囲でこの問題に触れます。
 とにかくきょうは、この具体的な法の内容は同僚の議員に任せまして、そのことは申しません。申しませんが、いろいろ問題があることは事実ですね。
 きょうも午前中に出ていたように、「予測される」というのは、もしかするとアメリカとの協力関係の法律じゃないのという意見もありますね。それから、新しい緊急事態であるのをどうして先送りにしているのとか、それからもう一つ、国民の皆様にいろいろなことをお願いするのに今の憲法の公共福祉という抽象的な概念だけでいいのとか、いろいろあります。しかし、きょうはそのことは申しません。私どもの同僚が次の機会に必ずこれを申し上げますので、きょうは申し上げることは差し控えまして、次の問題は安全保障の基本方針の問題なんです。
 私どもは、安全保障の基本方針は少なくとも法律をつくって書くべきだということを言っておりまして、おおむね三つ。
 一つは、何といったって自衛権でございますよね。みずからの国をみずからが守らないようでいて、これは独立国家ではないわけでありますから、最大のものは自衛権です。
 そして、しかしそれは日本の自衛権だけで事を運ぶということになれば、自主独立、何というんですかな、自分だけで防衛をやるということになりまして、これは世界の大勢から見てもおかしいことの上に、有権者、なかんずく納税者の方にこれはやはりいかぬことだと思うんですよ。やはり防衛力というのは簡素にして精緻であるということが大変大事なことであり、納税者の方に過重な負担を強いるということはやはり問題があるのであって、そういうときにこれを補完する形でほかの施策を考えていかなければならないということだと思います。
 しかし、基本は自衛権です。みずからの国はみずからで守るというこの気概ですね。これが一番ですね。そこで補完的にあるのが、やはり日米共同防衛体制です。これも大事なことです。きょうはそこの話に余り入りませんが。そして、日米共同防衛体制の根幹をなすのは日米安保条約でございますが、その日米安保条約の第十条には、国連の機能がこの日本の地域に充実した場合にはこの効力はそれまでだよということまで書いてあるわけです。
 ということは、国連の平和活動というものを日米安保においても想定しているわけです。そして、国連の平和活動というのは国連憲章の中の物すごい重要なファクターだと私は思っています。なぜならば、第一次大戦後の国際連盟の中では、これはなかったわけですね。経済制裁しかなかった。
 そこで、どういうことが起きたかというと、昭和十年のムソリーニ・イタリーのファシズムがエチオピアを侵略した。何にもできなかった。それを黙って見ていた。昭和十三年にはナチス・ドイツがチェコ、ズデーテン、これに侵略に入った。その年の早くにはオーストリーも併合しちゃった。これに対しても何にもできなかった。何にもできなかったわけですね。
 そして、言われているミュンヘン会談というのがありますね。あれは結局、ヒトラーとムソリーニに、イギリスの総理はチェンバレンですね、それからフランスの総理がダラディエですね、これは言いくるめられちゃったわけですね。ところが、その総理大臣たちが、イギリスやフランスに帰ったら、平和の天使として迎えられているんですね。これなんですよ。これは大変な歴史の教訓なんですね。
 だから、そこに生まれたのが第二次大戦後の国際連合であり、そこの中核をなすのが私は国連憲章だと思うんです。このことはやはり今の平和秩序の中に十分組み込まれていて、それを日本としても三つ目の重要な柱として考えていかなければならないと思っておりますが、私どもの安保基本政策三つについての御意見と、私が法律をつくらなきゃいけないと申していることについての御所見を伺います。
小泉内閣総理大臣 今藤井議員が言われました三つのこと、いわば、自衛権、みずからの国はみずからの力で守るというその重要性、しかしそれには限度がある、日米協力して安全保障体制、日本の独立と平和を守る、さらにもう一歩進んで、それは国際社会と協調していくべきだ、この点については私ももっともだと思っております。
 これからの安全保障政策におきましても、日本としては専守防衛、第二次大戦の反省を生かして、どのようにこれから平和と安全を確保していくかということで、今まで努力されてきたのは先輩方であり、またその先輩方の努力を我々もしていかなきゃならないと思っております。
 そういう点において、まず日本の独立と平和と安全は我が国自身の力で確保しなきゃならないといういわゆる気概ですね。しかし、これについて、それには限界がありますから、今、日米安全保障条約ということによって、日本の足らざるところ、アメリカと協力しながら日本の安全の確保を図っていこうということでありますので、私は、今後、これらの日本の防衛政策の基本を踏まえながら、今言った、国際協調の中で、日本としては国力にふさわしい、平和活動にも、お金も出しますけれども人も出そうということで、今自衛隊の諸君は海外に出て平和活動に従事しているわけであります。私は、これも、藤井議員が指摘されたように、日本独自の力とアメリカとの協力と、一歩進んだ国際協調の一環だと思っております。
 十年前に、自衛隊を海外に出すということは大反対だという、徹夜までして、牛歩までして反対された政党もありましたけれども、今うそのように、自衛隊が海外で平和活動をしていることによって、多くの国民は支持を与える。私も東ティモールに行って、あの暑さの中、各国の軍隊と共同して七百名近い自衛隊の諸君が、女性自衛官も交えて、汗を流しながらあの東ティモールの国づくり、いろいろな国土の整備に取り組んでいる姿を見まして、大変心強く感銘いたしました。
 私どもは、今後、このような日本の平和と安全の重要性、それをいかに確保していくかという点からも、今言ったような、国際社会と協調しながら、経済大国になっても軍事大国にならないということを念頭に置きながら、国力にふさわしい国際社会の中での日本の役割は何かということを真剣に考えていくことが、また日本の平和と安全のためにも大変重要ではないかと思っております。
藤井(裕)委員 私が国連の平和活動と申しましたのは、おっしゃるPKOはもちろんその中でございますが、もっと、国連の平和活動そのもの、武力行使というものまで入るということを今申し上げたつもりであります。
 これは自衛権とは全く関係ありません。これは自衛権とは全く関係ない世界の問題であって、後でもう少し申し上げますが、九条とは関係ないという議論もあるわけですね。要するに、前文の、国際社会の一員として、自国のことのみ考えて云々という、いつも総理が言われているものですね。こういうことからいえば、九条というのは自衛権の話なんで、これは自衛権とは全く関係ない話なんだ、その武力行使は国連憲章上許されているんだということからくる議論なんでございますね。そのことを今申し上げたかったわけですよ。
 ですから、PKOは結構です。私は、PKOでもまだおかしいと思っていますよ。国際基準に従って武器が使えないなんというのを、またこれ憲法九条の解釈だなんというのはおかしいです。おかしいですが、きょうはPKOの話はもういたしません。
 もっとある国連の平和活動について私は伺ったつもりなんでございますが、もし御意見があったらお教えいただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 この国連の平和活動について、これは自衛権と別だから、もっと武力行使も認められるんじゃないかという考えもあるのは承知しております。
 しかし、私どもとしては、自衛隊の武力行使あるいは戦闘行為については、いろいろ国民の気持ち、さらには世論の動向、そして海外における影響については非常に注意深く、また慎重でなくてはならないということもあり、そういう中で、憲法の範囲内でどこまで可能かということで、一歩一歩、国際社会の中で自衛隊の活動が、各国の軍隊の中で、極めて制約した中でも、日本の役割として果たしていかなきゃならないということでやってきたわけでありますので、今の時点で、国際社会、国連の中だったらば自衛隊も武力行使可能ではないか、あるいは戦闘行為が可能じゃないかということについては、私は、もう少し慎重であるべきじゃないかと、そこまでいきますと憲法の改正議論にも踏み込んでいきますので。これは、私は否定しません、議論は。しかし、今回の有事の関連法案につきましては、私は、憲法改正にまで踏み込んでおりませんし、従来の憲法解釈を変えるつもりはありませんので、その点についての議論については確かに御不満もあると思いますけれども、議論の中ではされるのは結構だと思います。
藤井(裕)委員 昭和三十一年に日本は国連に正式に加入いたしましたね。一部の人の中には、あの加入したときに国連平和活動は適用除外だというふうに言ったんだという人もいますが、それは全く違いますね。全く違います。無条件で加入したことは間違いないわけでありまして、総理の口から、あれは無条件だったということをまず言っていただけますか。
福田国務大臣 加盟したときに何らかの留保をした、そういう条件をつけていることはございません。
藤井(裕)委員 そのとおりなんですよ。何の条件もついていないんですよ。
 では、国連憲章に何て書いてあるかというと、さっきの柱は第七章ですよね。武力行使は例外ですよ、武力行使ができるのは国連が決議したときというこの例外があって、あとは自衛権の話と、この二つしかないわけですね。さっきのテロの問題はそれをちょっと踏み外しているということを言ったんですが、きょうのメーンテーマじゃないからそれは言いませんけれども、例外的にこれが認められているんですね。そして、それが国際連盟のときはなかった、しかし国際連合のときにはできたという非常に重要な規定なんですね、これは。非常に重要な規定なんです。そして日本は参加した。
 二条には何て書いてあるかというと、誠実に加盟国はこれを遵守しなければならないと書いてあるんです。もう一つ、日本国憲法九十八条二項には、日本が締結した条約、確立した国際慣例については誠実に遵守しなければならないと書いてあります。これとの関係は一体どうなんでしょうか。――待ってください。法制局長官が個人的に嫌だとかいうことではないんです。僕は津野さんはよく知っているんです。だけれども、そういうときに限って法制局長官が出てこられて、今、基本的な話なんですよ。基本的な話なので、そのときに法制局長官、これは官房長官の管下にあるわけなんです、少なくとも官房長官が答えていただかなければ、何で政治家議論になるんでしょうか。ひとつ、どうぞそういうふうに。
福田国務大臣 これは、私が平成十三年に国会で答弁をしていることでございますので申し上げます。
 PKF本体業務の凍結解除、これは我が国の国連加盟の際の条件に反し、憲法九条を否定するものではないかというお尋ねがあったときの言葉でございますけれども、「我が国は、昭和二十七年六月十六日付岡崎外務大臣発リー国連事務総長あて書簡をもって国連に対する加盟申請を行いましたが、加盟に当たって我が国が何らかの留保を付したとは考えておりません。」ということであります。
 他方、我が国が憲法九条に禁ずる武力の行使または武力による威嚇を行い得ないことは当然でございます、いわゆるPKF本体業務の凍結が解除されても、自衛隊の部隊等は、我が国が国連平和維持隊に参加するに当たって憲法で禁じられた武力の行使をするとの評価を受けることがないことを担保する意味で策定されたPKO参加五原則に沿って制定された国際平和協力法に基づいてこのような業務を行うこととなりますので、憲法上問題にはならない、こういう答弁を実はしておるわけでございます。
藤井(裕)委員 総理も官房長官も、話がPKOの話になっちゃうんだよね、ここになると。これ、今PKOの話をしているんじゃないんです。それから、PKFの話をしているわけでもないんです。PKFというのはPKOの本体業務の話ですから、要するにPKOの話ですよね。そうじゃなくて、国連の平和活動というのは、例外的に武力行使が認められている、特に国際連盟にはなかった仕組みなんですね。そして、それはナチやファシズムというものを退治するために絶対必要だということでできた仕組みなんですね。全然違うんですね。今、福田さん、もう一度言いますけれども、PKOの話とかPKFと称するものの話をしているんじゃありませんから。その点はもう一度お答えください。
福田国務大臣 国連憲章四十二条及び四十三条に基づく国連軍につきましては、これまでの憲法九条の解釈、運用の積み重ねがございます。
 すなわち、まず第一に、自衛隊については、我が国の自衛のための必要最小限度の実力組織であり、したがって、憲法第九条に違反するものではないこと。
 第二、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣するいわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないことである。
 第三、我が国が国際法上、集団的自衛権、すなわち自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力をもって阻止する権利を有しているということは、主権国家である以上、当然であるが、憲法九条のもとにおいて許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しておりまして、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されないこと。
 第四に、国連の平和維持隊への参加は、当該平和維持隊の目的、任務が武力行使を伴うものであれば、国際平和協力法におけるいわゆる五原則のような格別の前提を設けることなくこれに参加することは憲法上許されないこと。
 以上のような憲法九条の解釈、運用の積み重ねから推論すると、我が国としてこれに参加することについては憲法上疑義がある、こういうふうに考えているわけであります。
藤井(裕)委員 その話なんですよ。要するに、国際協調主義ということが非常に大きな原則になっているのに、九条というものを非常に曲げて解釈するがゆえに、今のような福田さんの話が出てくるんですよね。本当はもっと素直に考えて、国際協調主義というのは前文に書いてあるんですよ。総理がよく使われる言葉なんですよ。自国のことのみに専念して他国を無視してはならない、そして、国際社会において名誉ある地位を持ちたいと思う、これは総理がいつも言っておられることですよ。そして、九十八条二項というのには、はっきりとそういうものを遵守しなければならないと書いてある。国内法がまずそうです。国際法でどう書いてあるのか。入った以上は守りなさいと書いてあるのですよ。そこで、日本の九条というのを非常に曲げて解釈するから、今の福田さんのような話になっちゃうんだよね。
 ですから、私は、総理も福田官房長官もわかっておられると思うんですよ。それが、今までの積み上げとおっしゃっているけれども、例えば、もしそれを踏み外したようなことを言うと、国会でやられちゃうんじゃないかという話ですが、それもあえて申し上げますよ。憲法九十九条には、総理大臣も一般大臣も国会議員も、平等に書いてあるんですよ。そして、それは職務を遵守するための義務なんですよ。改正の議論をするななんということはどこにも書いてないし、憲法九十六条には改正のことが書いてあるんですよ。だから、過去においてこれに関連していろいろな暴言を吐いた方もいますから、それはおやめいただくことはいいですよ、暴言吐いた人は。しかし、まじめに憲法の今の問題点を議論した人をけしからぬというのは、では、国会議員もみんなやめてもらわなければならないですよ。
 今、憲法調査会では、憲法のここに問題があるという議論をどんどんしているじゃないですか、衆議院においても、参議院においても。それと総理のお立場は、憲法九十九条上、何の違いもありません。どうか、どちらでも結構ですから、そうだと、やはりおかしいと思っているということをおっしゃっていただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 憲法改正の議論は、するのに何らおかしいことはない、私は常々言っているんです。解釈を変えるんだったら憲法を改正した方がいいということも私ははっきり言っているんです。今の憲法のまま解釈を変えるのはかえっておかしくなるというのが私の立場です。解釈まで変えるのだったら憲法を改正すべきだと言っているのが前々、私の一つの主張でありますし、これが直ちに改正に結びつくものではない。
 議論を封殺するのはおかしい、議論は大いに結構だ、しかし、今の時点で私は憲法改正を政治課題にのせる考えはないということを言っているのも事実であります。
藤井(裕)委員 それでは、改正する気は、政治課題としてはないというのはわかりましたが、やはりおかしいなと思っておられるかどうかだけは言ってください。
小泉内閣総理大臣 それはおかしい点がたくさんあります。例えて言えば、憲法九条もそうです。いまだに自衛隊について、解釈の点において、一切の戦力は保持してはならないということを言っていますけれども、果たして自衛隊が戦力でないと国民は思っているでしょうか。しかし、法律上の問題でこれは戦力じゃないと規定しているのであって、一般国民は、多くの国民は自衛隊は戦力だと思っているのは、常識的に考えてそうだと思いますね。
 しかしながら、これは、この議論をするとほかの議論が、ほかの法案が課題になるぐらいいろいろな政治上の問題も出てきますから、いろいろな解釈の積み重ねで、日本の国際社会での役割、あるいは日本の平和と安全を確保するのはどういうことかということで先輩なり我々が今努力してきて、ようやく最近は、こうして憲法改正議論も堂々とできるような状態になってきたし、自衛隊も海外に出て平和活動に寄与している点においても、多くの国民が批判するような状況ではなくなってきた。やはり積み重ねというものもきいてきているわけですね。
 私は、そういう点において、憲法改正論議はタブーじゃない。憲法を改正すべきでないという議論も結構、憲法を改正すべきだという議論も結構、大いにするのが国会議員の役割じゃないでしょうか。
藤井(裕)委員 まず、すき間という言葉はやめてくださいよ、もう使わないでくださいよ。すき間というのは、人によっては、これは憲法違反のことをやっているととっている人はいっぱいいますよ。そうじゃなくて、今おっしゃったように、憲法はおかしいんだ、だけれども今直してないからしようがないんだということになれば、やっちゃいけないということなんですよ。それは守らなきゃいけないんですから、やっちゃいけないんですよ。だから、またテロ法の話になっちゃうけれども、あれはやっちゃいけないことをやったんだというふうに申し上げるわけですよね。
 そこで、次の話は、自衛権の話に行きますけれども、今自衛権の話も出ましたから。
 自衛権というのは、本当に、自衛権の名において何でもやってきたわけですね、過去の世界は。例えば十九世紀のヨーロッパ帝国主義というのは、宣教師が殺されたといっちゃ中国を侵略したんでしょう。これは自衛権でやっているわけですね。
 私は日本でもいい例があると思うのは、山県有朋はこう言っているわけですよ。日本には生命線と利益線があると言っているわけでしょう。生命線というのは本当の意味の領域ですよね。利益線というのは、いや、そこまでとっておかないと危ないよという話でしょう。それから何が出たかということです。日韓併合はそれから出ているんですよ。そして、さっきちょっと言いましたが、熱河作戦と言ったけれども、満蒙がその生命線だと言ったのはそれから出ているんですよ。
 つまり、自衛権というのは、本当に考えようによってはどんどん拡大していくんですね。そして、その弊害というのがあるんですね。ですから、自衛権というのは、我々は抑制的に考えなきゃいけない。今のようなことは一方にあると同時に、個別の自衛権というのは抑制的に考えなきゃいけないというのが我々の立場なんです。
 けさの議論でも出ていましたが、何というんですか、必要最小限で他に方法がないとき、しかも日本が直接侵略されたとき、あるいは侵略されるおそれが極めて高いときということは、我々がずっと言ってきたことなんです。僕は、総理に、それだけおっしゃるならば、法律に書いてくださいよ。
 というのは、近隣諸国は、さっき言ったように日本の過去の行状に対して非常な不信感があるんですよ。ですから、さっき話も出ていたけれども、武力行使事態というようなのが、それがどこまで入るかという議論も大事ですよ。しかし、根っこで本当に自衛権はここまでだということをはっきりさせるならば、ああいう問題は起きてこないんですよ。だから、まず、自衛権はここまでだということをはっきりさせていただきたいなと思っておりますが、いかがでしょうか。しかも、それを法律に書いていただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 今議論しております有事関連三法案は、自国が攻撃された場合なんですよ。(藤井(裕)委員「予測はどうですか」と呼ぶ)予測を含めて。自国が攻撃される、予測される事態、これを議論しているんですから、まさに日本の独立と平和と安全を守るというその議論ですから、私は憲法の中でも範囲内で当然これはできる問題ですし、また、やらなきゃならない問題だと思っております。
 自衛隊を海外に派遣するという問題ではなくて、自国が攻撃を受けた場合にどうやってその安全を確保するかという話なんですから、そこを混同しないでいただきたいと思います。
藤井(裕)委員 ちょっと逆の混同だと思うんですよ。
 さっきいろいろ議論に出ていた中に予測というのがありましたね。予測は直接、攻撃じゃないのですね。私どもは周辺事態法のときに、私どもの党が言って直していただいたのはそれは何だというと、自国が直接攻撃されたのでなくても、そのまま放置すれば間違いなくやられてしまうというのをあえて入れていただいたわけですね。そこまでが私は個別自衛権のぎりぎりの範囲だと思っているんですよ。ところが、今度の予測というのは、きょうはその法律の中の議論はしないことにしていますからやりませんけれども、予測というのはもっと上の話なんですね。だから、その大前提として、自衛権はもうここまでだと言えば、予測がどうだとかおそれとどう違うかという話のもう一つ前なんです、本当は。それをしっかりやっていただかないと困るという意味で私は自衛権の話をあえてここで申し上げているわけなんですね。
 日本だって戦争のとき、自衛権と言ったのですよ。しかし、僕らの小学校のときに軍歌がありまして、「断固膺懲堂々と」というのがあったのですよ。膺懲というのは懲らしめですよ。日本は、戦争を始めるときには自衛権と言って、僕ら子供にはこれは懲らしめで今やっているんだと教えているわけですよ。そういうのが現実なんです。だから、自衛権は本当に厳格に考えないといけないということをもう一度申し上げておきたいと思いますね。
 それから次に、自衛権というのはそういう意味で、さっきちょっと総理も言われましたけれども、非常に限定的に解釈し、抑制的に解釈しなければいけない。そして、それは我々は法律をつくるべきだということを申し上げておりますが、もう一つ、自衛権そのものの定義がまだはっきりしていないのですよね。それは何から来ているか。日本の憲法の由来と、その憲法の文字がなかなか難しいというかわかりにくいから解釈をふらふらするんですね。この両方だと思いますよ。
 きょうは憲法改正の議論を正面から言いませんけれども、マッカーサーというのかな、GHQが原案をつくったわけでしょう。GHQがつくった原案のうち、日本で変えてもらったのは二つしかないのです、大きなところで。一院制というのを二院制にしてもらったことと、土地及び天然資源は国有とすると書いてあるのを、余りにひどいじゃないかといってやめてもらったのがありますが、あとはほとんどそのままできているわけですね。
 それで、マッカーサーの三原則の第二項目には、あれはイエローペーパーというんだね、イエローペーパーというのには何て書いてあるか。難しい言葉は使いません、自衛の戦争も侵略のための戦争も、ともにだめだとマッカーサーのイエローペーパーには書いてあるんですよ。それをケーディスという実際にこれを仕切った人間が、これはちゃんと日本の調査団が言っていますよ、ケーディスがそれは余りに非現実的だと言って、自己の責任で消しちゃったんですよ。
 ですから、これまた本当は難しい言葉だけれども、日本の憲法九条には、学者ならわかるという、国際紛争解決の手段としての戦争は放棄すると書いてある。ところが、前文に何て書いてあるかというと、全然違うことが書いてあるわけでしょう。全然違うことが書いてありますね。これも総理の言葉で言えばすき間なんですけれども、すき間じゃなく、おかしいと言っていただきたいのですね。だって、諸国民の公正と信義を信頼しでしょう。前文というのは憲法の全体像を出すのですから、少なくともそこに一言、日本はまずみずから自分を守るんだ、その上に立って諸国民を信頼するんだ、これならわかるんですよ。一つも書いていない。ということは、マッカーサーの思想がそのまま出ているんですよ、これは。そのまま出ているんですね。
 だから、あのときに、昭和二十二年、僕は中学三年なんですが、ニューヨーク・タイムズにはこう書いてあるんですよ。これはユートピアの社会だ、日本が悪いことをしなけりゃ世界は平和なんだねと皮肉たっぷりにニューヨーク・タイムズは言っているんですよ。
 僕らは教わりましたよ。同じことに、もうこれからの世界の国々は日本を攻めてくるなんてあり得ないんだから、日本は無防備でいいんだと教わった。しかし、僕らの先生は立派な方ですから、本質はわかっていたと思いますよ。本質はわかっていたけれども、そう言わざるを得ないんです。だって教科書がみんなそうなっちゃったから。つまり、そこに物すごいギャップがあるんですよ。
 九条の言葉だっておかしいでしょう。あれは普通の日本人じゃわからないんですよ、九条の言葉というのは。「国際紛争を解決する手段」というのは、どこから持ってきたかというと、昭和三年の不戦条約から持ってきているわけですね。不戦条約から持ってきたけれども、その不戦条約を、実際中心になったのはアメリカとフランスですわな、ケロッグ・ブリアン条約。戻ったら、これは何だ、これは自衛権もだめなんじゃないかとフランスとアメリカで怒っているんですよ。わからないんです。それをまた翻訳しているんですから、ますますわからないんです。現に、昭和八年には、この侵略定義条約をつくらないとこれはもう不戦条約はもたないというところまで行ったけれども、結局そんな話になると、だめになっちゃったんですね。というぐあいに、非常に難しいことなんですよ、まず。
 そこで、今の前文は、もうあれは無防備の前文ですよ。そして、九条というわかりにくい不戦条約から持ってきた文章を日本語に翻訳していますから、あそこもわからないんですね。
 日本の普通の方に聞いてください。あれは自衛権も否定しているんじゃないかと言う方が結構いますよ。なぜならば、日本に攻めてくるのだって、おまえの国が欲しいよと来るんじゃないんですよ。何か理屈がついているんですよ。何か理屈がついて押し寄せてくるわけでしょう。今はそういうことはない、ほとんどあり得ないと思いますけれども、何か理屈がつくんですよ。そうすると、これも国際紛争解決じゃないのと思っている方は、日本人の普通の良識のある方に意外にいらっしゃいますよね。
 ですから、非常に憲法の文言が悪いということはまず申し上げておきます。どうか、すき間じゃなくて、おかしいと思うとそれをまず言っていただけますか。
小泉内閣総理大臣 いろいろ解釈の幅があるということで、すき間もあると言ったわけでありますが、今言っているように、今の憲法でも、詳細に勉強、研究された学者の間でも、自衛隊は憲法違反だと言っている人もいるんですよ。しかし同時に、この憲法九条を読んで、自衛権まで否定していないんだ、だから自衛隊は合憲なんだと言う学者もいるわけです。学者が、頭のいい、勉強に勉強して学問を積んだ学者の間でも、同じ文章で、これは憲法違反、合憲、違憲、議論があるんだから、一般国民が惑うのはおかしいことではない。むしろ、惑ったり、おかしい点があるのは私も認めます。だから、私は将来憲法は改正した方がいいということはかねて言っている。そういう点においては憲法改正論者であります。
 しかし、現実の政治家として、ましてや総理大臣として、今憲法改正しましょうと言ったらどうなりますか。そのぐらいのことはよくわきまえていますよ。国会の状況もよく御理解いただきたいと思います。
藤井(裕)委員 さっきから言っているように、政治課題にするかどうかというのはわかっているんですよ。だけれども、憲法九十九条違反でも何でもないんだから、堂々と言ってくださいよ。堂々と言ってくださいね。僕らの党は決して、そんなことおっしゃったからといって責任追及するなんて言いませんよ。絶対言いませんよ。だって、これはだれだって自由なんだから。現に、憲法調査会、各党みんな好きなこと言っているじゃないですか。だから、それはそれでいいんです。ですから、余り心配なさらないでどんどん言ってください。
 政治課題か云々というのはわかります。それは結構です。しかし、本当は政治課題にまで持っていくのが筋だと思いますよ。思いますが、今の総理の言葉は、それはそれで理解しますけれどもね。
 そこで、次なんですが、今言ったような自衛権から何が出てくるか、もう総理は先に言われましたけれども、戦力なき軍隊というのがあるんですね。こんな非常識な言葉はないんですよ。だけれども、今政府の公式解釈はそれなんですよ。ですから、総理、こういうことを出してきているんですから、まずそれから変えましょうよ。
 これはどういうことかというと、芦田修正とかなんとかは別としまして、あの憲法の条文は本当にわかりにくいというのは今お話しのとおり。吉田さんは、これは自衛権ないと言ったんでしょう。それは、総理も言われたように、読み方なんですよ。あの難しい言葉を一応侵略戦争としましょうか。侵略戦争はやっちゃいけないと書いてあるんですね。それから、もう一つ後の方には、戦力は持っちゃいけないと書いてある。戦力は持っちゃいけないんなら自衛の戦力も持てないんだろう、こういうのが吉田議論なんですよ。それは後ろにいる法制局がちゃんと振りつけたと思いますよ、吉田さん時代に。
 それが、昭和二十九年になって自衛隊ができちゃったんですね。そうすると、これはとんでもないという話になって、解釈から変えていかなきゃならない。こういうふらふらした解釈がおかしいんだけれども、二十九年の解釈、統一解釈ですよ、どう書いてあるかというと、自衛隊は国土防衛の実行部隊だと書いてあるんですよ。国土防衛隊なんです。そして、それは何も変えていませんから、今の自衛隊は国土防衛隊なんです。何でそれがティモールやなんかに行っているんですか。私は、行っていることが悪いというのと逆なんですよ。
 今でも昭和二十九年の解釈をそのままとっているんですよ。第二項に何て書いてあるかというと、近代戦力を持っていないんだからこれは戦力じゃないと言っているんですよ。これは統一解釈ですよ。昭和二十九年ですよ。あれから四十五年、五十年近くたって戦力なき軍隊という、普通の人からいうと非常識。
 よく、総理も今言われましたけれども、政治不信と今いろいろなところで騒いでいる、出ているでしょう、これも政治不信の根源だと思いますよ。だけれども、普通の人が考えてわからないことをこういう場だけで言っているんですよ。これ、政治不信の最たるものだと思いますよ。
 総理、そこいらは、あれはやめた、戦力なき軍隊なんておかしい、イージスの話も例に出すまでもないんですよ。あれはミサイルを搭載しているんですよね。そしてミサイル攻撃能力があるんですよ。しかも高高度の探知能力もあるんですよ。これは戦力じゃないんでしょうか。アメリカと日本しかないんですよ、イージスは。それで戦力なき軍隊と言ったら、これほど政治不信はないんじゃないでしょうか。私は、そこいらからも政治不信を直していただきたいですね。
 総理、こういうのを出してこられたんだから、いや、昭和二十九年のは間違っていた、こう言っていただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 今の議論はともかく、今お話しの趣旨はよくわかりますよ。だからこそ私は、テロ対策法のときに、あいまいな点があると。日本人というのはあいまいさをうまく包容する国民であるというのは、いい例が憲法だと私は思っています。私の答弁も、あいまいだ、あいまいだと批判する人がいましたから、それはあえて、では自衛隊はどうなのかと言って戦力の問題を出して、もっと私を追及してくれると思ったんですよ、当時。だれも追及しない。私の方が拍子抜けしちゃった。
 だから、そういう点で、私は今までいろいろなお話を、議論を聞いておりまして、確かに日本の憲法にはあいまいな部分がかなりあります。憲法九条も、自衛隊は違憲、合憲論が分かれている点からとってもそうであります。しかも、戦力の点一つとっても、一般の常識から見れば、自衛隊が戦力なかったら自分の国を守れないじゃないか、これ、常識ですよね。しかし、法律上の議論からすると、これは戦力ではないということになっているわけです。
 だから私は、そういうあいまいな点を含みながら、現実の政治から、かといって、国防上、安全保障上、独立と安全を守るためには、現行憲法が改正できるような状況でないんならば、現実の政治にどうしようかということで積み重ねてきたのが今の議論なんですよ。今、見てごらんなさい。国会の状況から見て、憲法改正できる状況じゃありませんよね。それも現実、政治家として判断しなきゃならない。
 憲法、すべきだという議論はいいですよ、議論は大いに。しかし、現実においてそれが可能でないという状況であるならば、私は、今までの議論を積み重ねた上で、日本としてふさわしい対応をしていかなきゃならないということを言っているのでありまして、私は、今の憲法はおかしいんだという藤井議員の指摘に異論を唱えるものではありません。
藤井(裕)委員 総理は自由に物が言えるということもおっしゃった。そして、何でも改革しようとおっしゃっている。では、政治課題の問題は別としまして、僕はこれは改革すべきだと思うんだ、こう言われるだけで日本の世論は動くんですよ。反対もいますよ。反対もいたっていいじゃないですか、あなたは何でもやるとおっしゃっているんだから。そして堂々と、僕はこう思う、僕はこう思う、こういうことを言っていただくことが私は今大事だと思います。
 決して非常識なことをやろうとしているんじゃなくて、もう五十五年変わらなかった国というのはないんですよ、ゼロですよ。不磨の大典である明治憲法でさえ五十五年なんですよ。あれは不磨の大典なんですよ。それと同じ長さまで来て、世界にこんな例がないんですね。それを世の中の人の方がわかっている。しかも、戦力なき軍隊なんというのは国会だけで通用する議論なんですから、総理はどうか、僕は政治課題にはしないけれどもおかしいと思うともうさっきおっしゃいましたね、おっしゃいましたからちゃんと新聞にも載ると思いますけれども、おかしいということをもう一度おっしゃっていただければありがたいと思います。
小泉内閣総理大臣 私は、総理大臣として憲法改正を現実の政治課題にのせる気はありませんが、最初の選挙から憲法改正論者で通っております。
藤井(裕)委員 今解釈論がありましたから、もう一つ解釈論を聞かせてください。(発言する者あり)
瓦委員長 ちょっと静かにしてください。
藤井(裕)委員 昭和五十三年なんですけれども、核は憲法の上からいって、もちろん防衛核ですが、合憲であるということを言っています。これはそのままでよろしゅうございますか。
小泉内閣総理大臣 それは合憲論をとっております。しかし、日本は核は持たないと。政治論。
藤井(裕)委員 そこで、今まで議論した中に憲法の話が大分出ましたので、きょうの主たる議題は憲法じゃないかもしれないけれども、憲法について少し伺いたいと思うんですよ。
 僕は、日本の憲法の今の問題点は大きく分けて二つだと思っているんですよ。一つは古過ぎる、一つはマッカーサー司令部でできた原案であるということ、この二つなんですよ。
 第一の古過ぎる。日本は古い方から十五番目の憲法です。今百八十国ぐらい、イギリスみたいな不文法の国がありますけれども、百八十国ぐらいは憲法を持っていると思います。そのうち古い方から十五番目です。そして十四番まではみんな改正しています。そして、日本より新しい憲法を持つフランスもドイツも、何十回となく改正しています。
 それが古いがためにどういうことが起こっているかというと、今、私は人類の最大の問題は世界の平和と地球環境の保全だと思うんですよ。その環境という言葉が一言半句出ていないんですよ。こんな憲法はおかしいですよ。そういう意味で、古いというのが一つの欠点です。
 もう一つ本当はあえて欠点を言いますと、国の機構の問題なんですよ。初め出たときはともかく、今、参議院と衆議院は同じ仕組みなんですよ。ところが、同じ仕組みであって、かつ衆議院優位になっているんですよ。こんな国はゼロですよ。
 アメリカは連邦とそれから代表ということがありますからちょっと違いますが、アメリカは対等ですよね、上院と下院は。いろいろなことで、やれ何だ、条約の承認権とかなんとかありますが、あれはバランスとっていますよね、バランスとっている。そして、法案については廃案になるんですよ、あれは。それからイタリーもそうです。イタリーも全く廃案になるんですよ。そういう意味で、非常に日本の国会のあり方というのが問題だということもあえて申し上げておきます。
 それから第二は、やはりGHQの原案をもとにしているということなんですよ。GHQの原案をもとにしているということはどういうことかというと、一つは、まず第一に人に日本の憲法をつくってもらった国なんてないんですから、それはまずもう皆さんおわかりだから、それは言いません。
 もう一つ問題は、あれは御承知のように一週間で二十五人でつくったんでしょう。そのうち四人が秘書と通訳でしょう。つまり一週間で二十一人でつくったわけですね。総理の言葉じゃないけれども、どんな俊秀だって整合性のあるものなんかできるわけないんですよ、一週間で二十一人ですから。だから、さっきのような、前文と九条の違い、前文と九十八条二項の違いというようなものが出てきているんですね。
 そして、もう一つは、翻訳でしょう。だから、翻訳なるがゆえのわからなさがあるんです。
 我が大先輩の山本有三先生が、あなたは文豪なのに何で参議院議員なんかになるのと聞かれたときに、僕は日本語の憲法をつくりたいと言われているわけでしょう。そして、山本さんが書かれた憲法前文というのがあるんですが、実に雄渾ですよ。日本人らしいですよ。
 だから、GHQがつくったということはいろいろな意味があるんですね。二十一人で一週間、拙速。二番目に、日本語でない、したがってわかりにくい。それからもう一つは、物すごい抽象的なんですね。
 大体、地方自治のとき、地方自治の本旨に基づきというあれは何ですか。何にもわからないですよ、地方自治の本旨に基づき。社会保障だって、最低の文化的生活を維持すると言っているんでしょう。ここはわからないです。
 僕らは、地方自治ならば、何のために地方自治をやるんだということを憲法に書くべきだと思うんですよね。例えば地域文化というものをしっかりやるということとか、それから、本当に地域の特性を生かすとか、いろいろなことがありますわな。
 それから、社会保障だったら、僕らと総理とは違いますけれども、基礎年金と介護と高齢者医療は国の責任において保障すると書いて初めて憲法に値するんですよ。「健康で文化的」じゃわからないんですよ。
 教育だって、教育を受ける権利と義務と書いたって何にもわからないんですよ。僕らは、やはり教育の目的を書くべきだと思いますね。自制ある自由のもとにおいて個性豊かな人間をつくるとか、日本の文化と伝統を受け継いで後世に伝えるとか、そして、さっきも言ったように、環境とか世界平和のために尽くすのは人類の職責であり、そして日本人の義務であるとか、そういうことを書かないで、教育を受ける権利と義務があるなんて書いたって何もわからないんですよ。
 いろいろ申しましたが、限られた時間の中で、今の防衛政策、安保政策を少し超えるかもしれませんけれども、憲法の、私が言った、古いということと、よその国の人がつくって、しかも拙速につくったということ、この二点についての総理の御意見を伺いたいと思います。
小泉内閣総理大臣 五十年間以上一度も改正していない憲法というのは、古いといえば古いと言えるし、もっと柔軟に変えるべきことは変えてもいいと思うんですが、これがまた日本が普通ではないと言われる一つの理由になっているのかもしれません。古いといえば古いです。もっと改正すべき点はいろいろあると思います。
 それと、確かに、この憲法は日本人自身の手によってすべて書かれたという点でないということは、今までの憲法調査会の議論、いろいろな議論を聞いても、それは私は当たっていると思っております。
藤井(裕)委員 ひとつ、憲法の問題については、ぜひ総理が先頭になって、政治課題じゃなくていいですよ、やはりおかしいんだと。
 結局、これは、国会の三分の二といいますが、しょせん発議権にすぎないんですよ、国会議員のやることは。問題の本質は国民の皆様なんです。有権者の皆様なんです。有権者の皆様に理解をしていただく直接の行動をとるべきだと僕は思っているんですよ。だから、もちろん発議者のいろいろな合意をとるということは大事だと思いますが、同時に、有権者の方そして国民の皆様に理解していただければ、これは過半数でございますから、どうかそういうお気持ちでこの憲法問題には対処していただきたいなということを強く思っております。
 そして、きょうは法律の話はしないつもりでおりましたが、若干時間がありますので、後の人に譲る意味において若干申しますが、この法律の持っている一つの難点は、さっきからずっと申しましたように、自衛隊の行動だけが先走っていて、そして、その中で国民の皆様に対するいろいろな制約を求めようとしているということだと思っているんですよ。
 さっき申し上げたように、安全保障の基本方針というものを土台としてしっかりつくって、あるいは、自衛権というのはこれだけが限界だという土台をしっかりつくって、その土台の上に、こういうこともあるんだよということを説明して初めて、近隣諸国あるいは日本の国民の皆様への理解が深まるはずなんですね。ですから、そういうところが抜けているということについて私どもは非常に疑念を持っています。ですから、独自案を出します。こういうものを含めた独自案を出します。
 それからもう一つは、これはいろいろな方が議論されていると思うんだけれども、今の異常事態というか緊急事態というのが、確かに総理も一番の尊敬しておられる福田総理の時代に、昭和五十二年にその指示によって動き出して、そして、五十六年、五十九年に案ができて、それから三十年間ほったらかしておいたという問題なんですね。ただ、その時期には、確かにその時期から考えれば当然かもしれませんが、旧ソ連、もうなくなっちゃった国が大挙して北海道に押し寄せてくるという一つの前提があったことは、これは否定できないんですね。そのことが今回の案にもずっと残滓として残っていることは間違いないんです。
 どこかのテレビで言われていたけれども、これはファンダメンタルなものなんだからいいんだと。私は、ファンダメンタルかどうかは別として、いろいろな新しい緊急事態というのがあるということも頭に置いておいていただきたいと思うんですね。そういうことをやらなきゃならないときに、ファンダメンタルと言われているのか何か知りませんが、今から三十年前の緊急事態を前提としたものだけを今回やろうとしているということ、そのことについて疑念があります。第二に疑念があります。
 それからもう一つは、国民の皆様に対していろいろな制約を求めるときには、今世界のルールは二つあるんだと思うんですよ。一つは、同じ戦敗国のドイツです。ドイツは憲法でやっていますね。憲法で非常事態というものを置いて、憲法に基づいていろいろな制約をお願いするという形になっている。もう一つがアメリカ型ですね。アメリカは憲法にありません。アメリカは憲法になくて、大統領が、例えば我が国でいえば総理大臣ですね、が、非常事態というか緊急事態を宣言して、その上で一種の制約をお願いする、こういう形なんですね。これの二つのどちらかでなきゃおかしいんですよ。今、緊急事態を宣言する規定もこの中には入っていません。武力行使の認定だけなんですね。認定だけなんですよ。そうじゃなくて、やはり、こういう時期が緊急事態だということをはっきりさせるということによって多くの国民の皆様に理解をしていただくということが必要なんだと思うんですね。
 そうして、そこの、制約する原点が公共の福祉なんですよね。これは問題だと思いますよ。公共の福祉というのは極めて抽象的で、私はさっき憲法の改正のときに、公共の福祉という言葉はやめた方がいいということを言おうと思ったんですが、世界人権宣言にしろ、国際人権条約にしろ、あるいは欧州人権条約にしろ、そういう言葉で使っていないんですね。みんな、民主主義国家の道徳に従ってとか、他人の権利とか他人の信義を害しない範囲においてとか、表現の自由に至っては、国土の保全に反するようなことを言っちゃいけないとか、そういうようなことがみんな書いてあるわけでして、僕はやはり公共の福祉という抽象的な言葉だけでこれをやるということにも疑念を持っているんです。
 恐らくそういうところに入っていかれるんだと思うんだけれども、いずれ我々の党の代表がそこいらもお話しすると思いますけれども、そこいらについて、きょうはそっちが主流の話じゃありませんけれども、概略、総理のお気持ちをおっしゃっていただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 ある点においてはむしろ抽象的な表現の方がいい場合もあると思うんです、余り具体的に列挙できない場合もありますから。公共の福祉といえば、あいまいだといえばあいまいかもしれません。じゃ、人権だといったって、あいまいといえばあいまいな点があるでしょう。だから、そこまで全部、具体的に、限定的にやれというと、かえって無理な場合もあるから、私は、抽象的な議論で、文言においてもいい場合もあるんではないかと思っております。
藤井(裕)委員 私は、話したいことはもうこれですべてなんです。私は簡単明瞭に話すのが好きなもので、若干時間を残しておりますけれども、今まで申し上げたことは、簡単ではあるけれども、私たちとしては、大変大事なことを言っているつもりなんです。どうか、そういうことを御理解の上、これは修正じゃありません、我々は独自案でございますから、その独自案に対してひとつ謙虚に受けとめていただきたい。
 最後に、ひとつお気持ちをお聞かせください。
小泉内閣総理大臣 これだけ、現職の総理大臣が憲法改正論議も踏み込んで議論を議員と闘わせるというのも、今までの国会では珍しいことですよね。これは非常に、私は、大きな議論であって、大事な議論だと思っております。
 今後、憲法改正議論が必ずしも直接、憲法改正に結びつくものではありませんが、議論としては、大いに自由にこういう委員会の場でもするということはいいことだと思っております。
藤井(裕)委員 終わります。
瓦委員長 次に、志位和夫君。
志位委員 私は、有事法制三法案について、日本共産党を代表して、小泉首相に質問いたします。
 自衛隊を海外に派兵する法案としては、既に周辺事態法が九九年に強行されたわけでありますが、この法律は、できないことが二つあります。この法律というのは、日本に対する武力攻撃がなくても、アメリカがアジアのどこかで介入戦争をやった場合に、自衛隊がその戦争に参加できる仕組みをつくるものでしたが、できないことが二つあった。
 一つは、自衛隊が米軍の活動を支援する際に、武力の行使を行ってはならないということが建前とされておりました。もう一つは、この戦争に日本の国民を動員する際に、強制力をもっての動員は許されない。協力とか依頼ではあっても、強制してはならない。この二つのできないことが周辺事態法ではあったわけであります。
 今、国会に提出されている有事法制三法案というのはこの二つの点がどうなるのか、私は法案の条文に即してこの点をただしていきたいと思います。
 まず、自衛隊による武力の行使、これはどうなるのかという問題です。
 武力攻撃事態法案の第二条では、法案で使われる用語の定義について規定しております。その第二条第二号では、武力攻撃事態とは何かについて、武力攻撃が発生した事態、武力攻撃のおそれのある場合、武力攻撃が予測される事態、この発生、おそれ、予測、この三つのケースを包括した規定だと定義しています。
 それを受けて、「定義」の第二条第六号では、そうした武力攻撃事態に対する対処措置とは何かについての定義を定めています。この第六号のイ、武力攻撃事態を終結させるために実施する措置というのを定めておりまして、総理、見ていただきたいんですが、その(1)として、「武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使、部隊等の展開その他の行動」を規定しています。つまり、自衛隊は、この定義によりますと、武力攻撃事態を終結させるために武力の行使ができるという規定になっております。
 そうしますと、ここで規定されている、武力攻撃事態を終結させるために自衛隊が行う武力の行使というのは、武力攻撃事態の三つのケース、すなわち、武力攻撃が発生した事態、武力攻撃のおそれのある場合、武力攻撃が予測される事態、このすべての場合で武力の行使ができるということになりますが、これはいかがですか。
小泉内閣総理大臣 それは、我が国が武力攻撃を受けた場合は武力の行使ができますよ、攻撃を受けた場合は。そのために自衛隊があるんですから。しかし、予測する段階で武力の行使なんか必要ないでしょう、必要な備えをするんだから。いろいろな、どういう部隊を展開するか、どういう予防措置をつくるか、これは武力の行使じゃないんです。
志位委員 総理の答弁は、要するに、武力攻撃が発生した場合に限られる、おそれや予測ではできないということですね。(発言する者あり)おそれはいいんですか。どっちなの。
小泉内閣総理大臣 それは、武力攻撃がない、おそれがある場合に、武力行使なんかする必要ないじゃないですか。
志位委員 要するに、おそれや予測では武力の行使はしないということを、あなた、言われました。
 ただ、私、この法案について聞いているんですよ。この法案の中身について聞いているんです。この法案では、先ほど言ったように、武力攻撃事態、発生、おそれ、予測、全部を含んだ武力攻撃事態を終結させるために、その全体を終結させるために対処措置として武力の行使ができると一般的に規定しているんですよ。
 じゃ、総理の言うように、武力攻撃が発生した事態のみにしか武力の行使ができないというのであるならば、その根拠になる規定、これはこの法案の定義の中にありますか。あったら言ってください、根拠になる規定。
中谷国務大臣 我が国の場合に、武力の行使ができる組織というと自衛隊だけでございます。この法律は、自衛隊法とこの武力攻撃事態法案と二つが必要でありまして、武力攻撃事態法にはその手続を書いているわけでありますけれども、自衛隊の行動につきましては、自衛隊法の七十六条の中に、自衛隊の活動できる規定といたしまして、武力攻撃を受けた場合という規定があります。この両方によって自衛隊の行動が律せられるわけでございます。
志位委員 答えてないんですよ。この武力攻撃事態法案の中に、おそれや予測の場合では武力の行使ができないという規定があるかないか、これを聞いているんです。自衛隊法の問題を聞いているんじゃないんです。この法案の中にあるかないかを聞いている。
 なぜこれを問題にするかといいますと、この武力攻撃事態法案というのはプログラム法でもあるわけでしょう。つまり、これがもし法律になったとするならば、二年以内に、事態対処法案としてさまざまな法律を改正する必要があるわけですよ。そのとき、自衛隊法だって改正する必要がある。自衛隊法のもと案にもなるんです。だから、自衛隊法に規定してあるかどうかを聞いているんじゃない。
 この武力攻撃事態法案の中に、発生の場合のみしか武力の行使ができないというんだったら、根拠になる規定があるかないか、あるんだったらどこにあるんだと聞いているんです。どうですか。この法案のことを聞いているんですよ。
中谷国務大臣 この法案につきましては、自衛隊のことだけではなくて、国民の避難誘導とか、その他のことを含めまして包括的に決めております。この中で、自衛隊の記述はございますが、その際の国会承認等の手続を書いておりますし、委員御指摘のくだりもございます。
 しかしながら、自衛隊が可能な行動につきましては、自衛隊法がございまして、この八十八条によりますと、「出動を命ぜられた自衛隊は、わが国を防衛するため、必要な武力を行使することができる。」ということになっております。そして、出動を命じられる場合には、さまざまな要件がつけ加えられますし、また、国会の承認も必要でありまして、こういう点で自衛隊の行動は律せられるわけでございます。
志位委員 質問に答えてくださいよ。自衛隊法のことを聞いているんじゃない。この武力攻撃事態法の中に、おそれや予測の場合には武力の行使をしてはならないという明確な条文の規定があるかどうか聞いているんですよ。それを聞いているんです。イエスかノーか。
中谷国務大臣 この条文には書かれておりませんが、自衛隊が防衛出動をして武力行使をするということは、自衛隊法に書いております。ですから、この法案の手続等によりましても、そういう予測の場合におきましては武力の行使ができないということでございます。
志位委員 それでしたら、私、自衛隊法の問題を聞きたい。
 私は、自衛隊法にあるからといって、ここに規定がないことを合理化できないというのは先ほど言ったとおりです。ここにその規定がないということを今防衛庁長官は認められましたけれども、おそれや予測の場合には武力の行使をしてはならないという規定がなければ、その規定に合わせて事態対処法制として自衛隊法も変えられてしまう。だから問題にしてきた。
 では、自衛隊法との関係を次に私聞いてみたいと思うんですよ。
 自衛隊法では、武力行使の要件、このように定めております。「武力行使に際しては、国際の法規及び慣例によるべき場合にあつてはこれを遵守し、かつ、事態に応じ合理的に必要と判断される限度をこえてはならないものとする。」自衛隊法八十八条二項であります。
 今度の武力攻撃事態法案の三条三項、見ていただきたい。三条というのは、武力攻撃事態法案の中で、基本理念、すなわち武力攻撃が起こったときの行動原則を決めた部分であります。これを見ますと、こういう規定ですよ。「武力の行使は、事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてなされなければならない。」
 これ、重大な違いがあるでしょう。つまり、「国際の法規及び慣例によるべき場合にあつてはこれを遵守し、」というのがすっぽり抜け落ちているわけですよ。あなた、自衛隊法に則してやるとおっしゃったけれども、自衛隊法の武力行使の規定と今度の武力攻撃事態法案の規定は違う。「国際の法規及び慣例」が取り外されている。これ、何で取り外したんですか。何で取り外したんですか。
中谷国務大臣 この武力攻撃事態法案というのは、基本理念を定め、それぞれの事態対処のための手続を書いております。それによりまして自衛隊が行動するわけでありますが、実際の自衛隊の行動につきましては自衛隊法の中にございまして、その際も、七十六条の中に、我が国を防衛する必要と認める場合には防衛出動を命じるというふうに記述を書いておりますし、八十八条の条文には御指摘の国際法規を遵守しという規定がございますので、それに従って行動するわけでございます。
志位委員 全然答弁になってないんですよ。何で落としたかを聞いているんです。
 武力攻撃事態法案の中で、自衛隊の武力行使の要件を書いたのはここだけですね。これ、間違いありませんね。うなずいているから、ここだけなんですよ。武力行使の要件を書いたのはここだけなんです。ここだけで、何でわざわざ落とす必要があるんですか、国際の法規及び慣例の遵守。なぜ落としたのかを聞いているんです。今のじゃ答弁になっていません。なぜ落としたのか。
中谷国務大臣 自衛隊法には、自衛隊の方の根拠を書いております。そして、武力攻撃事態法案にはその理念を書いておりまして、武力攻撃事態に際しましては、自衛隊のみならず、いろいろな省庁また公共団体等の行動を決める必要がございますので、その基本的理念を書いているわけでございます。
志位委員 ともかく、自衛隊法と今度の武力攻撃事態法というのは、武力攻撃事態法がいわば基本的な法律になるんですよ。これに基づいて、二十一条、二十二条、二十三条の事態対処法制で自衛隊法も変えられるんですよ、二年以内にそういうことになっているじゃないですか。
 だから、なぜこれを落としたのか。今度の法律で落としたら、自衛隊法だって落とすことになるんですよ。国際の法規及び慣例の遵守をなぜ落としたのか、全く説明になっていない。ちゃんと説明してください。
中谷国務大臣 自衛隊の行動につきましては、自衛隊法に基づいてやるわけでございます。それで、今回、この武力攻撃事態処理法というのは、こういう武力攻撃を受けた事態に自衛隊のみならずほかの機関も対処する必要がありますので、政府として、全体の対処を基本的に定めた法案でございます。
 それによりまして、自衛隊法の七十六条の防衛出動の記述も、自衛隊が出動する際の手続がこの武力攻撃事態処理法案によって始まる記述の変更はございますけれども、その他の自衛隊の基本理念につきましては、その根拠として残しているわけでありますし、また、八十八条におきましても原文のままでございますので、自衛隊の行動に関して変化するところはいささかもないわけでございます。
志位委員 何でこの問題を私がきちんとただしたいかといいますと、先ほど私は、武力攻撃事態法案の定義の、つまり第二条の問題点から問題にいたしました。ここでは、武力攻撃事態というのは三つのケースを包含している、発生とおそれと予測、これを包含している事態だと規定し、その全体を終結させるために自衛隊は武力の行使ができるというふうにかかっているというふうに私は聞きました。
 それに対して総理は、これは発生だけだ、武力攻撃が発生したときじゃないと武力の行使はできないとお答えになりました。そこで私は、では、それはどの条文によって規定されているんだ、この法律の中のどの条項によって規定されているんだというふうに聞きましたら、結局、この法案の中には、おそれや予測の場合での武力の行使を禁止する規定の条項はないというのがさっきの答弁だったでしょう。だから問題にしているんですよ。
 というのは、おそれや予測で武力の行使をやったら先制攻撃になるんですよ、これ。国際法違反になるんですよ。そして、おそれや予測での対応というのは、周辺事態法とも重なり合ってくる。日本に対する攻撃がなくても、アメリカが軍事行動を起こしたら、自衛隊がその戦争に参加する。これはまさにおそれや予測という事態と重なり合ってくる。こういう事態でも日本が武力の行使ができるというところに道を開いてくるんじゃないか、そういう規定なんじゃないか。だから、このおそれや予測の問題はあいまいにできない問題だから聞いているんです。
 これを禁止する条項はないんですよ、あなたが認めたように、この法案の中には禁止する条項がない。一方で、国際法の遵守を落としてしまっている。これは一体どういうことなのかということを聞いている。
 先ほどの自衛隊法八十八条二項の「国際の法規及び慣例によるべき場合にあつてはこれを遵守し、」これを歴代の政府が何という意味に説明してきたのか、これを御存じですか。どういう意味でこれを説明してきたのか、歴代の政府は。御存じですか。
中谷国務大臣 まず、この法案の中で自衛隊の行動に関する記述はほかにもございまして、第三条の三に、「武力攻撃が発生した事態においては、武力攻撃を排除しつつ、その速やかな終結を図らなければならない。この場合において、武力の行使は、事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてなされなければならない。」という記述もありますし、日本国憲法の保障するものに従うということもございます。
 それはそれとして、この法律によって自衛隊の出動の要件が定められております。自衛隊は、防衛出動がかからない限りにおきましては武力行使をすることもできませんし、また、武力行使をする場合におきましても、総理から承認をいただいた自衛隊の活動できる地域においてのみできるわけでございまして、これまでのこの審議でのやりとりにおきまして、武力の行使ができるということは防衛出動が起こってから、すなわち、武力攻撃を受けてからでないと武力の行使はできないということはお答えをいたしておりまして、この基本原則は何ら変わるものではございません。
志位委員 また質問に答えていないですね。
 私が聞いたのは、自衛隊法の八十八条二項にある国際の法規及び慣例の遵守、これをどういう意味の条項だとこれまで政府は説明してきたのかということを聞いているんですよ。ちゃんと答えてくださいよ。ちゃんと質問に答えさせてください。関係ないこと答えてもしようがない。
中谷国務大臣 それの条項の意味でございますけれども、原則として、国会の事前承認を得て、防衛出動命令が下令されて、自衛権の発動の三要件に該当する場合に限られておりますし、この武力行使は、国際の法規、慣例によるべき場合にあってはこれを遵守し、事態に応じ合理的に必要と判断される限度を超えてはならないという要件を課しております。
 その国際法規及び慣例には、ジュネーブ条約の記述とか、ヘーグの陸戦法規とか、毒ガスの禁止に関する議定書とか、対人地雷条約とか、そういうものが含まれるわけでありまして、武力の行使が我が国を防衛するために必要最小限度の範囲内にとどまるべきとの趣旨でそのような記述がされているというふうに理解をいたしております。
志位委員 今、ジュネーブ条約などの国際人道法を守る規定だというふうにおっしゃいましたが、そういう意味だけですか。そういう意味だけですか。そういう意味だけなの。
中谷国務大臣 その趣旨というのは、自衛隊というものが国際的なルール、法規に従って行動するものであるという意味でございますが、例えば、ジュネーブ条約に関しましては、武力の行使の対象は戦闘員に限られますし、軍事目標に限られる。また、民間人や民間施設を攻撃の対象としてはならないこととされておりまして、そのような国際的なルールを守って自衛隊が行動するということでございます。
志位委員 そうすると、全く矛盾した説明になるんですよ。
 この武力攻撃事態法案の第二十一条、「事態対処法制の整備に関する基本方針」というのがありますが、その第二項では、「事態対処法制は、国際的な武力紛争において適用される国際人道法の的確な実施が確保されたものでなければならない。」と書いてありますね。つまり、そういうジュネーブ条約などの国際人道法を守る事態対処法制を二年以内につくるということが書いてあるわけですよ、法律で。それを書いておきながら、基本理念の中に、その基本になる国際法の遵守を落とす理由はないじゃないですか。落とす理由がないじゃないですか。ここにそういう事態方針をつくるというんだったら、何でここから落とす必要があるんですか。
中谷国務大臣 自衛隊法にそういう記述がなければ書く理由がありますが、もう既に自衛隊法の中に記述がございますので、書く理由はございません。
志位委員 そういう軽々しいことで落とせるような条文じゃないんです、これは。これは、政府はこれまで、この八十八条二項の、この前段の部分の国際の法規及び慣例の遵守という項目の意味について、繰り返し国会で答弁していますよ。これはどういう意味かというと、(パネルを示す)この赤い文字で書かれた文は、日本の側からの先制的な武力攻撃はできないんだということを保証する条文なんだということを繰り返し言っていますよ。繰り返し言っています。
 例えば、一九六〇年三月一日、これは衆議院予算委員会、この場ですけれども、林内閣法制局長官、自衛隊法八十八条第二項について、これは国連憲章第五十一条の要件に当たる場合以外には武力の行使をしてはならないということを書いているものだと説明しています。
 すなわち、国連憲章第五十一条で述べている武力攻撃に対する自衛反撃以外の武力の行使、すなわち先制的な武力の行使、まあおそれや予測の場合での武力の行使、これはやってはならない規定なんだということを繰り返し言っていますよ。つまり、武力行使の三要件でいうならば、武力攻撃が発生したということをあらわす規定なんだということを言っていますよ。繰り返し言っています。
 これを今度の法律では取り外してしまった。これは、政府の従来の説明に照らしても、国際法規と慣例の遵守、これをわざわざ落としたということは、武力攻撃が発生しなくても、武力攻撃のおそれや武力攻撃の予測がされる場合、これでも武力の行使ができるところに道を開いたということになるじゃありませんか。
 だって、これまで先制攻撃ができない最大の担保、保証がこの赤い、国際法と慣例の遵守と説明していたんですから。それを落としちゃったら、先制攻撃できるということになっちゃうじゃないですか。おそれや予測の場合でも、これはできるということになっちゃうじゃないですか。そういう重大な条文になっている、今度の法案は。どうですか。
中谷国務大臣 この条文に書かれていなくても、自衛隊法や自衛隊出動の許可がなければ、自衛隊は行動できませんし、武力行使もできません。したがいまして、そのおそれの場合は、防衛出動はできますけれども、武力攻撃が発生しなければ武力の行使はできないわけでございますし、この自衛権の発動の三要件につきましては、従来から、憲法第九条のもとにおいて認められる自衛権の発動としての武力行使については、三点、我が国に対する急迫不正の侵害があること、これを排除するために他に適当な手段がないこと、必要最小限度の実力行使にとどまるべきことというのが定められておりまして、これは憲法の九条のもとに決められたことでございますので、これに従って行動するというのは従来どおり当然でございます。
志位委員 なぜ落としたのかの理由を聞いているんですよ。なぜわざわざ落とす必要があったのかの理由なんです。自衛隊法に書いてあったら、そのまま書きゃいいじゃないですか。そんなに軽い条文じゃないんです。先制攻撃をやっちゃならないということの保証になる条文だと説明できた極めて重大な条文なんですよ。なぜわざわざ落とす必要があったのかと聞いているんです。自衛隊法に書いてあるからというのは説明にならない。落とした理由を聞いているんです。
福田国務大臣 先ほど来防衛庁長官が再三答弁しているとおりなんでございますけれども、この先制攻撃云々というお話でございますが、その前に申し上げますと、今度のこの武力攻撃事態法においては基本理念を述べているわけでございまして、そういう意味で、それでは先制攻撃のことを何にも触れてないじゃないかということになりますれば、それはこの「事態に応じ合理的に必要と判断される限度」、こういうことを述べて、これはまさに委員のおっしゃっていることを防ぐためにある条文だ、こういうように考えるべきである、このことは防衛庁長官がただいま述べたとおりでございます。
志位委員 この「事態に応じ合理的に必要と判断される限度」というのは、武力の行使をやることが前提にあって、それをこれだけの限度でやらなきゃなりませんよということを書いてあるだけなんですよ。武力の行使はもう前提になっているんですよ。その限度を書いてあるだけなんですよ、これは。
 その前にある文章をなぜ落としたのかというのを聞いているんです。前にある文章があったでしょう、国際の法規及び慣例の遵守。なぜ落としたんですか。なぜわざわざ落とす必要があったのか。何でこんなこと答えられないの。
福田国務大臣 要するに、必要最小限度の自衛権の行使、こういうことを述べているわけでございますからね。ですから、今赤く書いてあった部分、国際法規云々というようなことについてはそこで十分カバーできるんだというように考えていいのではないかと思います。
志位委員 カバーできないんですよ。
 だから、国際法の遵守をもって、この国際法の遵守というのは国連憲章五十一条の遵守なんだと。国連憲章五十一条では、武力行使が現に発生した場合にのみ自衛の反撃が許される、これが国際法規の遵守の意味なんだと。だから、これがあるから、おそれの場合では武力行使はできません、もちろん予測の場合でもできません、こうやって政府はこれまで答弁してきたんですよ。
 これをなぜわざわざ落としたのか、落としてしまったらおそれや予測でも武力の行使ができるようになるじゃないかと、少なくともこの法案ではそういう構造になっているじゃないかということを問題にしているんです。官房長官、あなたが出している法案でしょう。
津野政府特別補佐人 御説明を官房長官の御答弁の前にさせていただきます。
 まず、この武力の、先ほど防衛庁長官からも答弁がございましたけれども、我が国に憲法第九条のもとにおいて許容されております自衛権の発動、これにつきましては政府は従来から、いわゆる自衛権発動の三要件として、我が国に対する急迫不正の侵害があること、すなわち武力攻撃が発生したこと、これがまず第一要件として掲げられているわけでございます。それから第二に、この場合にこれを排除するために他の適当な手段がないこと、及び第三として、必要最小限度の実力行使にとどまるべきことに該当する場合に限られているわけでございます。
 そして、今回いわゆる武力攻撃事態法案も提出、提案したわけでございますけれども、あるいは自衛隊法も現にございますが、これらはいずれも憲法の規定の解釈、そういったものを前提といたしましてできているわけでございまして、決して先制攻撃ができるというようなことでそういった規定をつくったわけではございません。そして当然、その自衛隊法上、武力を行使する場合には、先ほどの御指摘のような文言が自衛隊法上もございますわけでございますから、御懸念のような先制攻撃を許容しているというようなことはさらさらないということでございます。
志位委員 あなたがどんなにこの解釈をやっても、私が聞いたことに全然答えてないんですよ。なぜ落としたのかということですよ、国際法の遵守を。国際法の遵守、必要ないから落としたんじゃないですか。するつもりがないから落としたんじゃないですか。そうとしか言いようがないですよ。
 だって、この法律全体通して武力攻撃事態というのは非常に広く規定されています。武力攻撃が発生した事態だけじゃなくて、おそれの事態、予測の事態、三つを全部包含している。そのときに、定義で、それを終結させる、武力攻撃事態を終結させるというのは、発生も終結させる、おそれも終結させる、予測の事態も終結させるということでしょう。この全部を終結させるための対処措置として自衛隊ができることは、武力の行使ということが無規定に入っているんですよ、無限定に。
 そして、この武力の行使というのは、明示的に、おそれや予測の場合ではやってはならないという規定は、法案の条文、定義の中でも、法案の全体を通しても、どこ一つないでしょう。どこ一つないところに、あわせて持ってきて、国際法規の遵守を落とすということになったら、これは無法な先制攻撃に道を開く法律だというふうにとられたってしようがない法案に私はなっていると思います。
 私は、結局、これだけ聞いてもはっきりしたことが二つあるんですよ、二つあるんです。一つは、この法案全体を通して、おそれや予測の事態で武力の行使をしてはいけないという規定がないこと。第二に、先ほど言ったように、国際法の遵守という項目を武力行使の要件から落とすという重大な変更をしておきながら、合理的な説明はだれもできなかった、防衛庁長官も、官房長官も、法制局長官も説明できなかった。私は、そういう点で、まさに国際法を守る意思を持っていない法案だと断ぜざるを得ません。
 私は、次に進みたいと思うんですが、こういう極めて危険な内容を持つ武力攻撃事態法案が周辺事態法と合体したらどういうことになるかという問題について、次にただしていきたい。
 総理は、周辺事態と武力攻撃事態が重なり合うことを繰り返し認めておられます。これは、一つの事態に対して、周辺事態法と武力攻撃事態法がいわば組み合わさって発動されることがあるということになります。
 周辺事態法というのは、日本に対する武力攻撃がなくても、アメリカがアジアのどこかで介入戦争を始めたら自衛隊がその戦争に参加する法律でした。ただ、周辺事態への対応として、自衛隊が、例えば米軍への補給とか輸送とか修理とか医療とか、いわゆる後方地域支援、これをやれることができるとされていたけれども、自衛隊は、周辺事態法によりますと、派兵先で決して武力の行使をしてはならないという縛りがかかっていましたね。これは間違いありませんね。どうですか。
福田国務大臣 今の質問にお答えする前に、先ほどなかなか理解できないというお話がありましたので、もう一度申し上げますけれども、委員は、第二条、「定義」のところで言われているわけですね。
 しかし、この法律の基本理念、第三条にございます武力攻撃事態への対処に関する基本理念、ここには、この第三条二項に、「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態においては、武力攻撃の発生が回避されるようにしなければならない。」こう書いてございます。第三項には、「武力攻撃が発生した事態においては、武力攻撃を排除しつつ、その速やかな終結を図らなければならない。」このようにも書いてあるわけですね。その法律の基本理念がここに書いてあるわけですから、この理念を持ってこの法律を施行していく、こういうことになるんだろうと思います。
 また、もう一つ申し上げれば、この第十八条、ここには、「我が国が講じた措置について、直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。」こういうふうに規定されているわけであります。
 ですから、こういうことからわかりますとおり、国際法規を無視するとかそういうことでは全くなく、むしろ積極的に事態の排除というか、戦争の、武力の排除とか終結とか、こういうことをもっと重く考えるべきではないかと思っております。
志位委員 今の質問への答えは。
瓦委員長 引き続いて……(志位委員「じゃ、もういいです」と呼ぶ)いいですか。
志位委員 今の官房長官の説明は、全く成り立たない説明なんですよ。
 二条で、さっき言ったような規定を定義したわけです。その定義を受けて対処措置というのが定義されたわけですね。それを、全体を受けて、第三条の基本理念の第一項で、「万全の措置が講じられなければならない。」とあるわけですね。この万全の措置の中には、当然、武力の行使が入るわけですよ。
 それで、その後に、例えば第二項に、もうこのことは説明されましたけれども、「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態においては、武力攻撃の発生が回避されるようにしなければならない。」と書いてありますよ。しかし、この回避の手段については書いていないでしょう。武力を行使して相手側の武力攻撃の発生を回避するという手段だってとり得るんですよ。とっちゃいけないとどこにも書いていないじゃないですか。それを書いていないということを問題にしているんです。
 武力の行使ができるという一般的な規定をして、それで万全の措置をとる、そして、そういう基本理念をやっておきながら、この基本理念のどこにおそれや予測の場合では武力の行使をしてはならないという規定があるかといえば、どこにも書いていない。書いていないどころか、国際法を守るということも書いていない。ですから、この問題を問題にしたわけです。
 さっきの質問に答えてください。周辺事態法について、これは武力の行使をしてはならないという原則がありますね。いいですか。まあ首振っていますから、そういうことでしょう。周辺事態法は、武力の行使をしてはならないという基本原則があるんですよ。
 これは、これまでの自衛隊を海外に出す法案、いろいろありました。PKO法九二年、それから周辺事態法九九年、テロ特措法が二〇〇一年。これすべて、武力の行使をしてはならないという規定が入っていますよ。ところが、今度の武力攻撃事態法にはその規定が全くないというのが私は問題にしているわけですよ。
 それで、私、先に進みたいんですけれども……(発言する者あり)いいですか、先に進みたいんですけれども。
 ですから、周辺事態法では、米軍を支援する自衛隊の艦船というのは戦闘地域に行っちゃならないという決まりがありましたね。戦闘地域、つまり武力攻撃を受ける可能性のある戦闘地域で後方支援活動をやっちゃいけない。補給とか輸送とか、これをやっちゃいけない。もっと後ろの方の安全な後方地域でのみ許されるんだというのが周辺事態法の建前でしたね。ですから、米軍への支援活動を自衛隊がやっている最中に武力攻撃がされる危険が生まれたら、その支援活動を中断しなきゃならない。中断してその場から逃げて、攻撃に遭わないようにしなきゃならないというのが周辺事態法の定めですね。これは間違いないですね。簡単に。
中谷国務大臣 おっしゃるとおりであります。
志位委員 ところが、私は、武力攻撃事態法のこの法案の体系でいくと、違ったことになるんじゃないかと。
 この法律が発動されたら、米軍への支援活動を例えば自衛隊の艦船がやっている、補給の活動をやっている、輸送の活動をやっている、こういう活動をやっていたとしますでしょう。そのときに自衛隊が武力攻撃がされる危険が生まれても、その場から逃げるわけにいかなくなるでしょう。この武力攻撃事態を終結させるために武力の行使も含めて万全の措置をとるという法律の定めに従うならば、その場にとどまって米軍への支援活動を継続しなければならなくなるというのがこの法律だと思いますが、いかがでしょうか。
中谷国務大臣 日本が武力攻撃をされているときは、そのとおりであります。
志位委員 日本が武力攻撃をされているときはという条件つきで聞いたんじゃないんですよ。米軍への支援活動をやっている際なんですよ。
 武力攻撃事態法というのは、武力攻撃事態を終結させるための法律でしょう。武力攻撃事態には、さっきも何度も言っているように、三つのケースが入るんですよ。日本が攻撃されている場合、それから、おそれがある場合、予測の場合、三つ入るんですよ。
 この武力攻撃事態を終結させるために、米軍が海外で動いた。そのときに、自衛隊が支援活動をやっている、それが危なくなってきた、例えば、武力攻撃のおそれがある場合、予測される場合も武力攻撃事態に入るわけですから、そういう場合には逃げるんですか、どうですか。その場合は逃げるんですか、それともその場にとどまってやるんですか。
 武力攻撃事態で、武力攻撃がまだ発生していない、しかし武力攻撃のおそれがある、あるいは予測がある、それで出ていった。出ていったときに、海外で自衛隊の艦船が危なくなった、そのときは逃げるんですか、それともその場にとどまって戦うの。どっち。
中谷国務大臣 米軍が行動できるというのは、我が国が攻撃された後であります。自衛隊も、これも武力攻撃があった後、武力の行使をするわけでありますので、そういう際の米軍の行動に際して支援も行う必要がございますし、日本を防衛する米国軍を防衛するというのは当然のことであります。
志位委員 私の質問に全く答えないんですね。
 つまり、武力攻撃のおそれがある事態、武力攻撃が予測される事態、こういう場合ですよ。こういう場合に、米軍がこういう場合でも行動できるでしょう。武力攻撃事態を終結させるために実施する措置というのが、さっき言った第二条「定義」の第六号「対処措置」のところにあるわけですけれども、その一は、さっき言った自衛隊の武力の行使などの活動、二は、自衛隊の行動及び米軍が安保に従って武力攻撃を排除するために行う活動、それを支援する活動とあるんですよ。
 だから、米軍は、武力攻撃事態が発生したら、日本有事でなくたって、日本が攻撃されていなくたって、武力攻撃事態というのはおそれや予測を含むんですから、行動できるんですよ。そうやって行動している米軍に日本の自衛隊の艦船が後方支援をやっていた、兵たん支援をやっていた、危なくなった、そのときに逃げるのか逃げないのかということを聞いているんです。ちゃんと答えてください。
 武力攻撃があった場合は、それは日本に対する武力攻撃ということで応戦するんでしょう、あなた方の論理からいえば。それを聞いているんじゃない。もうそれはさっき答弁をもらいました。おそれや予測の場合でもどうなるんですかと聞いているんです。
中谷国務大臣 お尋ねの我が国に対して武力攻撃が発生していない段階でありますけれども、武力攻撃が予測をされる場合、または武力攻撃のおそれのある場合におきましては、米国の武力行使と一体化するような支援措置や我が国としての武力行使が行えないことは当然でございまして、一体化するような支援措置が行えないということであります。
志位委員 逃げるか逃げないかを聞いているんですよ。
 そうすると、逃げるんですね。逃げるということなの。一体化する活動ができないということは、逃げるということですか。
瓦委員長 中谷防衛庁長官、ちょっと待ってください。逃げるとか逃げないというのは、わかりますか。
中谷国務大臣 我が国におきましては、集団的自衛権を行使しないということになっております。
志位委員 ちゃんと答えてくださいよ。
 だから、その場合は、支援活動を中断して撤退するんですか。
中谷国務大臣 我が国といたしましては集団的自衛権を行使し得ないということでございます。その地域を離脱するということでございます。
志位委員 結局そういうふうに答えたわけですけれども、そうすると、何のために武力攻撃事態法をつくったか。日本に対する武力攻撃を排除する排除すると言っておきながら、肝心のときは逃げてくるというんじゃ話にならないじゃないですか。
 これは、私は、一つの事態なんですよ、一つの事態。これは一つの事態なんだけれども、周辺事態から武力攻撃事態へと読みかえると、自衛隊の対応が変わってくるんじゃないかということを問題にしている。周辺事態法では禁止されていた武力の行使を明示的に禁止する条文がないんですよ、この法律には。これを禁止する条文が全くない。ですから私は、これは米軍が行う戦争に日本が一体になって戦争をやれる道を開くものじゃないか。法案上はそうとしか読めない。あなた、幾ら否定しても、法案の構造と矛盾した答弁ですよ。矛盾した答弁です。
 おそれや予測ではこれは武力行使しないんだということをおっしゃいました。それは結構ですよ。しかし、おそれや予測でどんどん武力行使をやっている国がありますよ、世界に。アメリカですよ。私、総理に、それだけやらないと言うんだったら、アメリカに対する基本姿勢を聞きたい。
 アメリカがこの間行ってきた戦争というのは、例えば一九八三年のグレナダ侵略、八六年のリビア空爆、八九年のパナマ侵略など、国連総会の決議で国際法違反と糾弾されるような先制的な軍事力行使、何度も何度もやっています。それで、そのたびに日本政府は、残念ながら、情けないことに、理解だとか支持とか、ただの一度もノーと言っていません。
 それで、そのアメリカが、ブッシュ大統領は、ことしの一月二十九日に行った一般教書演説で、イラン、イラク、北朝鮮を、テロを支援している、大量破壊兵器を開発している、悪の枢軸と決めつけて、こう言いました。私は、危険が高まっている折に、何か出来事が起きるまで待つことはしないだろう。これは明らかに、先制的な軍事力行使も辞さない、テロのためだ、大量破壊兵器のためだということになれば先制攻撃も辞さない戦略をとることを世界に公言しているということになります。
 それで、ラムズフェルド国防長官、最近、フォーリン・アフェアーズ五、六月号で、「変化する任務、変貌する米軍」という論考を寄せています。これを見ますと、備えあれば憂いなしとか、総理と同じようなせりふを言っていますけれども、これもアメリカ製だったのかなと思いながら読みましたけれども、その中でこういうふうに書いていますよ。「アメリカを防衛するには、予防戦略、そして時には先制攻撃も必要になる。すべての脅威を相手に、いつでも、どこででも防衛策を講じるのは不可能である。テロやその他の姿を現しつつある脅威から国を防衛するには、戦争をも辞さない覚悟を持つべきである。攻撃は最大の防御であり、時に、それが唯一の防御策である場合もある。」こうはっきりアメリカは述べているわけですね。
 総理に伺いたい。総理は、ブッシュ大統領のいわゆる悪の枢軸発言、これについて理解するという発言をされてきましたけれども、ラムズフェルド国防長官のこの御発言、これは質問通告してありますからお読みになっていると思うのですけれども、はっきり先制攻撃と言っていますよ。先制攻撃と言っている。こういう先制攻撃は絶対に容認できないと日本政府としてはっきり言うべきだと思いますが、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 それは、ラムズフェルド国防長官の発言は発言として、アメリカの安全保障上戦略としてあらゆる選択肢を残しておくということだと私は理解しております。
志位委員 あらゆる選択肢として先制攻撃を理解するということですね。大変重大な発言です。そういうことですね。
小泉内閣総理大臣 事態によっては、アメリカはアメリカの立場を表明していると私は理解しております。
志位委員 私は、先制的な軍事力行使をこれだけはっきり理解すると言ったら大変な発言だと思いますよ。
 ブッシュ大統領の悪の枢軸発言に対しては、ロシアも中国ももとより、ヨーロッパ諸国、EUも、すべてこぞって反対している。東南アジアも中東も、世界みんな反対していますよ。例えばEUの国際担当委員、EUの外務大臣に当たるパッテンさんという方、御存じだと思うんですが、この方はイギリスの保守党の幹事長を務められていた、イギリスの保守政界の重鎮ですよ。このパッテンさんも、このブッシュ発言については、世界に対する危険な絶対主義的で極度に単純化された立場だと、これを激しく非難しています。
 世界の主要国の首脳の中で、総理、このブッシュ発言に理解を示したりラムズフェルド国防長官の発言まで理解を示すという人は、これは恐らくちょっとほかに見当たらないんじゃないかと思うぐらい、これは、アメリカに対して本当に言いなりの国だということがよくわかりました。
 それで、私は、この論戦全体を通じて、政府は、武力攻撃のおそれの事態や予測の事態では武力の行使をしないと繰り返した、先制攻撃はしないと繰り返した。それは結構ですよ。しかし、先制攻撃をお家芸としている米国に一言の批判もできないで、理解ということをはっきりするような、そういう政府がこういう先制攻撃は幾らしないということを言ったところで、私は何の保証にもならないと思う。そして、現に法案はそういう道を開くものになっております。私は、非常に深刻な法案の本質が浮き彫りになったと思う。
 この法案は日本の国民の安全を守るものじゃありません。アメリカが行う先制攻撃の戦争、ラムズフェルド氏が言うような戦争、介入の戦争、これに対して武力行使をもって自衛隊が参戦する法案だと思います。武力攻撃が発生した場合だけじゃなくて、武力攻撃のおそれの場合、予測の場合で、先制攻撃、先制的な武力攻撃への道を開いたこと、つまり、明示的な禁止がなく、禁止条項をわざわざ取り外してその先制的な攻撃への道を開いたこと、そして国際法規と慣例の遵守を法案から一切取り外したこと、先ほどのこれですね、この国際法規と慣例の遵守を一切取り外した、これは私は国際法無視の、米軍の戦争への参戦を想定しているからではないかと。そうとしか説明つかない。私は、この法案というのはそういう本質を持っていると思います。
 さて、もう一つの大きな問題に進みたいと思います。周辺事態法では、戦争に国民を動員する際に強制力を持って動員はできないという建前があったわけでありますが、これがどう変わるかという問題点です。
 先ほども述べたように、周辺事態と武力攻撃事態というのは大きく重なり合ってくる。それは、一つの事態を周辺事態から武力攻撃事態へと読みかえることができるということになります。そういう読みかえをしただけで、米軍の戦争への国民の強制動員が可能になってくる、こういう仕組みではないか。
 政府の法案どおりにこれは整理をしたものです。(パネルを示す)それで、左側が周辺事態の場合です。周辺事態の場合は、自治体に対して協力を求めることができる、ここまででした。民間に対しては協力を依頼することができる、ここまででした。私もあのガイドライン法のときにさんざんここで議論をやりましたけれども、自治体には強制できないんですとさんざん言ったものでしたよ。民間には義務づけないんですとさんざん言ったものでした。
 ところが今度は、事態は同じ、一つの同じ事態なのに、それを武力攻撃事態と……(発言する者あり)重なり合うから同じ事態になるんですよ。武力攻撃事態と読みかえただけで、自治体について国が指示、実施できるようになる。
 それから国民については、すべての国民に協力を義務づけることになっています。第八条ですね。(発言する者あり)すべての国民ですよ。何の制約もありません。それから、施設管理、土地などの使用、物資の収用、取扱物資の保管命令を出せることになっています。それから、保管命令違反者などに対しては罰則を科せられるようになっています。
 それから指定公共機関、例えばNHKとか、NTTとか、ガスとか、電気とか、これは幾らでも広げられるわけでありますけれども、この指定公共機関に対しても国が指示、この指示に従わなければ実施ができる。それから、医療、土木建設工事または輸送の業務に従事する者、これに対しては業務従事命令が出せる。
 これだけ変わってくるわけですね。(発言する者あり)ただ、事態は一つなんです、重なり合う事態があるのですから。周辺事態と武力攻撃事態というのは重なり合ってくるということを認めているのですから、事態は一個なんですよ。事態は一個なのに、それを周辺事態から武力攻撃事態に読みかえただけで、これだけ国民を強制動員できる仕掛けになっている。
 私、そういう中で幾つかただしたい問題があります。
 特に深刻な問題が幾つか出てくるのですが、第一は、自衛隊が防衛出動をしたもとで、取扱物資の保管命令に従わなかった国民には罰則が科されるという問題です。これは、改定自衛隊法百二十五条にはこういう規定があります。「取扱物資の保管命令に違反して当該物資を隠匿し、毀棄し、又は搬出した者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。」というのがあります。
 ここで言う取扱物資というのは何でしょうか。法律でこの取扱物資とは何かという規定がありますか。法律で規定がありますか。
中谷国務大臣 食料とか、水とか、燃料とか、建設資材等でございます。
志位委員 私が聞いているのは、法律に規定があるかと聞いているのです。早く答えてください。
中谷国務大臣 法律では物資と規定をいたしておりますが、自衛隊の行動に必要なものでございます。
志位委員 要するに、何でも入るということなんですよ。自衛隊が必要だと言ったら、何でもこの取扱物資に入ってくる。自衛隊が燃料が必要だと言ったらガソリンスタンドも、これはもう強制の中に入ってくる。それから、食料が必要だとなればコンビニエンスストアも入ってくる。お米が必要だとなれば米屋さんもかかってくる。こういう仕掛けでしょう。水が必要だとすれば水道業者もかかってくる。つまり、規定がないということですよ。無規定、無限定ということですよ。
 戦前、一九三八年に国家総動員法というのがありますね。国家総動員法というのは、総動員物資というのがちゃんと規定されていますよ、法律で。法律で規定されています、これとこれとこれとこれと。この国家総動員法よりも、法律でもその物資についての規定がないというのは、もっと悪いと思いましたよ。
 次の設問に入りたい。
 政府は、保管命令に違反して保管物資を隠匿、毀棄または搬出するという悪質な行為を行う場合に限り、罰則を科すという答弁をされましたね。悪質な行為に限るというのですけれども、こういう場合はどうなるのか。私は戦争に協力できないという信念を持っている方がいるとしますでしょう。そういう、戦争には協力できないという信念から物資の保管命令を拒否した国民は、悪質な行為となるんでしょうか。例えばお米屋さんが、取扱物資に米が指定された、そのときにお米屋さんが、私はこの戦争には協力できないという信念から、みずからの思想、信条から保管命令を拒否して、通常どおりお米の販売をやったとしますでしょう。この場合、悪質な行為になるんですか。
中谷国務大臣 これは本人の内心には関係ございません。事実行為といたしまして、わざと物資を隠匿したり使用できないようにする悪質な行為が行われた、すなわち、その行為に基づいて考えるわけでございます。
志位委員 悪質な行為とあなたが言ったから、悪質な行為に入るかどうか聞いたんです。どっちなんですか。入るの、入らないの。一々こういうことを何度も聞かせないでくださいよ、時間がないんですから。
中谷国務大臣 その者の行為の概要に照らして判断をするわけでございます。(志位委員「だから、悪質に入るか、入らないか」と呼ぶ)行為に係るわけでありまして、悪質は入りません。
志位委員 悪質じゃないとしても、では、保管命令に違反して保管物資を隠匿、毀棄、搬出すれば処罰の対象になるわけですね。なるわけですね。(発言する者あり)それを悪質と言うんだという今答弁がありましたよ、どこかの座っている人から。それを悪質と言うんですか。それを悪質と言うとしか、これはあなたの答弁は理解できませんね。
 それで、内心の自由に立ち入らないということを言いましたけれども、戦争に協力できないという信念に基づいて保管命令を拒否した国民を犯罪者として罰するということは、戦争への非協力、戦争への反対という思想、信条を処罰の対象とすることに私はなると思います。憲法十九条の「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」という条文に違反する、基本的人権の侵害行為になると思います。いかがですか。
中谷国務大臣 これはいつも起こるわけではございません。国家の存亡の危機、もう究極な段階で、まさに我が国に武力攻撃が起こって、目の前でいろいろな被害が発生をしている場合に、国として、国民の生命財産を守るという責務に基づいて行う行為でございます。同じ日本人、また日本に住んでおられる方として、やはりこういった事態につきましては御協力をいただくというのが当然のことでございます。
 それから、この行為に係るわけでございますが、隠匿、毀棄、または搬出した者と書いておりまして、隠匿というのはやはり故意をもって隠す、毀棄というのもそういうことで壊すということでございまして、この行為をした者にかかるということでございます。
志位委員 今の防衛庁長官の答弁には不正確な点があるので、一つ訂正しておきたい。
 日本に対する武力攻撃がまさに起こって、それに対する事態だと言いましたけれども、防衛出動というのは起こらない前から出動できるんですよ。おそれのある場合だって出動できるんですよ。それで、そのおそれのある場合でも今の罰則が来るんですから、そこは訂正しておきたい。国民の皆さんに誤解を招くそういう発言は、慎んでいただきたいと思います。
 私はさらに聞きたいんですけれども、今きちんと答えなかったけれども、思想、良心の自由というのは、これはどなたもお認めになると思うけれども、いわば絶対的自由ですよ、内心の自由。これは国家権力といえども絶対立ち入ることのできない自由だというのは、これは異論はないと思います。そして、思想、良心の自由の中には、沈黙の自由も含まれるでしょう、沈黙の自由。つまり、自分がある思想を持っている、それを言うときには表現の自由の問題に行くわけですけれども、言わない自由も含まれるわけですよ、沈黙している自由。これが含まれることは間違いないと思うんです。
 しかし、戦争、つまり、さっきの私の設問にかかわって言いますと、戦争に協力できないという信条を沈黙している自由は絶対的に侵すことはできないと思うんですよ。ところが、物資の保管命令が罰則という強制をもって一律に課せられたらどうなるか。そうしますと、戦争に協力できないという信条を持つ国民は、その信条を沈黙している自由を侵害されてしまうんじゃないでしょうか。つまり、無理やりその信条を行為として表現しなきゃならなくなる。つまり、この保管命令には協力できないという行為として示さなきゃならなくなる。そして、行為として示したら、罰則という、お縄になるという、そういうところに追いやられることになる。
 これはまさに思想、信条の自由、内心の自由、沈黙の自由、これを奪っていくということになるんじゃないですか。いかがでしょうか。
中谷国務大臣 それは、我が国に対する武力攻撃をいかに考えるかということでありまして、これは放置をしていましたら、非常に被害や損害、また死傷者がふえていくわけでございます。ですから、そういった侵略をいかに早期に排除し、それを終結するかという行為を行っているわけでございまして、我が国を守るということにつきまして国民の皆様方がこの点を御理解いただいて、そういう際には御協力をいただかないと、国というものも守れないし、また、国としても国民を守れない。お互いに協力をし合って国としての防衛を果たすということに尽きるのではないかというふうに思います。
志位委員 あなたは私の聞いた質問に答えないですね。私が聞いたのは、こういうふうに一律に罰則つきで強制を課したら、それは思想、良心の自由、沈黙の自由を侵害することになるんじゃないですかと聞いているんですよ。
 あなたは、日本に対する武力攻撃をともかく排除するためだと繰り返して言うけれども、さっき明らかになったように、周辺事態法と、それからこの武力攻撃事態法というのは重なり合って発動することがあり得るわけですよ。日本に対する武力攻撃がなくたって、おそれのある事態、予測の事態とすればもう発動できるんですよ。アメリカの戦争に協力できるんですよ。アメリカの戦争に協力するとなったら、反対する人がたくさん出るのは当たり前なんです。その反対する人が、保管命令に違反したら犯罪者とされてしまう。
 私は、本当に、この罰則つきで国民に強制するというのは許されないと思います。日本は、憲法九条を持つ国ですよ。憲法九条は、戦争をやってはならない、戦争に協力してもならない、戦争をやることが犯罪だというのが憲法九条です。その九条を持つ国で、戦争に協力することを拒否する国民を犯罪者とするというのは、これはこれ以上の違憲立法はない、私はこのように思います。
 もう一つの点を申し上げますと、第二に、二つ目の問題です。武力攻撃事態のもとでは、国民の権利と自由をいわば無制限に制限できる仕組みがつくられるという問題であります。
 武力攻撃事態法の基本理念を定めた第三条の第四項では、次のような規定があります。「武力攻撃事態への対処においては、日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならず、これに制限が加えられる場合は、その制限は武力攻撃事態に対処するため必要最小限のものであり、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われなければならない。」この規定がございますね。
 それで伺いたいんですが、ここで「公正かつ適正な手続」と述べられているのは、この個別法を定めるということですね。防衛庁長官、そうですね。――うなずいていますから、ではもういいです。そういう説明でした。
 それでは伺いますけれども、日本国憲法の保障する国民の自由と権利に、この条項では、三条四項の条項では制限が加え得ると規定されているんですが、その制限はどこまで許容されるんでしょうか。どこまでの制限が許されるんでしょうか。憲法には三十条の条文にわたって国民の基本的自由と基本的権利、これを詳細に規定しているわけでありますけれども、どの範囲まで人権が制限できるのか。私が聞きたいのはあなたの解釈じゃありません。法律にそういう規定があるかどうかです。武力攻撃事態法に、そういう国民の権利の制限はどこまでできるという法律の規定があるかどうか。
福田国務大臣 権利の制限を伴う対処措置につきましては、個別の法制整備において、この基本理念にのっとり、制限される権利の内容、性質、制限の程度等と、権利を制限することによって達成しようとする公益の内容、程度、緊急性などを総合的に勘案して、その必要性を検討するということを考えております。
 したがいまして、制限される権利とかその内容については、今後整備する法制において個別具体的に規定することが適切であると考えております。
志位委員 ということは、つまり、この武力攻撃事態法には、この法案そのものには規定がないということですね。そういうことですね。ちょっと、ちゃんと答えてください、ないかどうか聞いているんですから。
福田国務大臣 武力攻撃事態への対処においては、日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならない、それで、「これに制限が加えられる場合」、こういうことでありますけれども、「その制限は武力攻撃事態に対処するため必要最小限のものであり、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われなければならない。」こういうことになっているわけですね。そして、個別の法制整備もこのような基本理念のもとで行われることとなりますから、そういう意味で、国民の権利制限はすべて個別法に任せるということにはなりません。
志位委員 私は制限が法律に規定されているかどうかを聞いたので、あなたの今の答弁だと、「武力攻撃事態に対処するため必要最小限」という以外にはないということですね。――早く答えてください。イエスかノーかでいいです。
福田国務大臣 御指摘のとおり、基本的には、この基本的な理念をここに述べております。
志位委員 では、それ以外にないということですね。それ以外に制限する条項はないということですね。
福田国務大臣 ですから、ここでもって基本的な方向性というものが理念として示されている、こういうふうに考えてください。
志位委員 要するに、これ以外にはないということですよ。つまり、武力攻撃事態に対処するため必要最小限と政府が認定したら、どんなに個別法を広げてもつくれるわけですよ、武力攻撃事態に対処するために必要なと。
 必要最小限というのは何の歯どめにもなりはしない。あなたが必要最小限、必要最小限と言って、世界第二の軍隊をつくっちゃったじゃないですか。だから、必要最小限というのは何の歯どめにもならない。つまり、個別の法律をつくったら、そして武力攻撃事態に対処するために必要とされるならば、国民の権利と自由が個別法によって無制限に制限されるということになるんですよ、この法律では。
 私は、これでは戦前の大日本帝国憲法とどこが違うのかと。戦前の大日本帝国憲法の一番の反省というのは、国民の権利や自由を並べた項目はあった。あったけれども、これはみんな全く形骸だった。なぜならば、全部、法律の定めに従ってとか、法律のよるところに従ってとか、全部法律で制限されたからです。個別の法律さえつくれば国民の権利や自由が制限されるとなったら、大日本帝国憲法と変わらなくなるじゃありませんか。どうでしょうか。そういうことでしょう、その点では。答弁できないようですね。そこは同じになるんですよ。
 個別の法律さえつくれば国民の権利と自由が制限できる、そういうやり方で最後やったのが治安維持法じゃないですか。暗黒政治じゃないですか。この暗黒政治をやったために侵略戦争への道が開かれて、あんな惨害を生んだんじゃないですか。その反省に立って、あの新しい憲法では、基本的人権を、侵すことのできない永久の権利として十一条で明記して、法律の抜け穴さえあれば基本的人権を制限できるという考え方を排除したんですよ。これが今度の憲法なんです。
 時間が来ましたので、私の質疑、ここで大体終わりになりますけれども、私、きょうは、有事三法案について、条文に即して問題を明らかにしてまいりました。そうしますと、結局、アメリカが海外で引き起こす介入戦争に自衛隊が武力行使をもって参戦する、憲法違反、国際法違反の参戦法案となる。そのために、憲法で定められた国民の自由と人権あるいは地方自治に重大な制約を加え、首相に権力を集中させる、戦時体制をつくるという点でも、憲法を踏み破るものになる。
 私は、冒頭に、周辺事態法には二つの縛りがあったと。武力の行使はできないという縛り、強制動員はできないという縛り、この二つの縛りを取り外す、これに今度の武力攻撃事態法案を中心とする三法案の恐るべき内容がある。これは廃案にするしかないということを最後に強調して、終わりにいたします。
瓦委員長 次に、土井たか子君。
土井委員 いわゆる有事法制というのは、一言で言えば戦時法制と言われるのですね。しかし私は、戦争時代に育っているものですから、たしか総理は三歳でいらしたと思うんですよね、戦争の終わったとき。したがって、戦争になればどういう状況になるかをつぶさに知っております。日本が他国から攻められて戦場に化したときとなれば、阿鼻叫喚のちまたですよ。そのときになってどうしようこうしようではあるまいと実は私は思います。
 憲法を見ておりますと、戦争放棄をしっかりと決めている第九条ですから、したがって、それを具体的に生かしていくことのためには何が大事かということが問われているわけなんです。かつて小渕総理のときに、党首討論で私は取り上げて、この問題をお尋ねする機会がございました。そのときに小渕さんは、平和に対しての政治の要諦は平和外交であると言われたんです。総理はどのようにお考えになりますか。
小泉内閣総理大臣 外交も大変大事であります。同時に、我が国が武力攻撃を受けた場合、どのような対応をするかということも大事であります。そして、日本としては、いかに戦争を起こさないかということで、戦後一貫して我々も先輩も努力してきたわけでありますし、今後とも、その考えに変わりありません。
土井委員 そうおっしゃる総理ですから、それではお尋ねをしますけれども、私ども、平和外交の中では、わけても近隣諸国との間の交流を緊密にして、お互いの平和友好というのを具体的に促進するということが常に私は大事だと思うんですね。
 我が国は、七二年の年に、日中共同声明を国交正常化に当たって締結をいたしております。そしてまた、七八年の年に、日中平和友好条約を結んでおります。その都度、中国政府を唯一の合法政府と認めて、台湾は中国の一部であるということを理解し、尊重するということを確認いたしております。
 これは、実はアメリカの台湾に対する立場は違っているわけでありまして、アメリカには台湾関係法がございます。台湾への武力攻撃はアメリカの重大な関心事であって、特にブッシュ政権になってからは、台湾の防衛の意思を明確にいたしております。
 そうした中で、中台間で武力紛争が起こったといたしますと、これはあってはならないことですが、アメリカは台湾への軍事協力を行うでしょう。当然、我が国に対しても周辺事態としての後方支援というのが求められてくるであろうと思いますが、この場合、我が国は何ができるのか。中国との平和友好条約がありながら、アメリカ軍に対しての後方支援ということが考えられてよいはずはないと思うんです。
 ことしはちょうど日中国交正常化三十周年でありまして、有事法制を整備する前に、東アジアの平和と安定のための話し合いの場を設けたり、信頼醸成措置や予防外交というのを展開するという、外交、政治面での努力が真っ先にこれは必要とされているものではないかと思うんですが、総理はどのようにお考えになりますか。
    〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕
小泉内閣総理大臣 中国は中国の考えがあるということは承知しておりますし、しかしながら、台湾を武力解放するというふうには思っておりません。あくまでも話し合いで平和裏に解決してほしいというのが日本の立場であります。アメリカにはアメリカの立場があるでしょう。日本としても、ことしは日中国交正常化三十周年の節目を迎えます。いろいろな交流事業を進めて日中友好発展を図る考えに変わりはありません。
土井委員 そうおっしゃるのなら、先日来、中国との間で外交問題、政治問題化していることがございます。申し上げるまでもございませんけれども、総理の靖国神社参拝問題。中国側からこれに対して強い抗議の意思が示されておりますが、防衛庁長官の訪中まで延期になっているということでございまして、本来は外交問題になり得ない事柄がこのようになっているということを考えてみますと、総理は、春の例大祭に行かれてしまったんですけれども、来る八月十五日、さらに秋の例大祭の参拝というのをどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
小泉内閣総理大臣 この靖国参拝と日中友好、交流を促進しようという考えとは別物であります。靖国参拝は、私の信条からしたことでございます。
土井委員 これは、平和外交とか、一方で外交に対してしっかり取り組みながらとおっしゃっている中身からすると、どうもまだまだ総理御自身の御理解というのが違っていると私は思いますね。過去に目を閉ざす者は現在を見ることができないという有名な言葉がございます。バイツゼッカー元大統領の言葉でございますけれども、常に、やはり外交問題、政治問題というのは、この観点というのと、この認識というのと、この問題に対しての自覚というのが大事なんじゃないでしょうかね。そういうことがしっかりわきまえとしてなければ、今回の有事法制の中身も、アジア近隣諸国からすると脅威にこそ感ずれ、これに対して歓迎する向きは、全然これは望めないだろうと思いますよ。
 このことをまず最初に申し上げておきまして、一体日本に対してどこの国が攻めてくるかという、これは、冷戦時代のソ連がなくなった後は日本を攻撃するような国は見当たらない、防衛庁がこういう認識を持っておられる。また、防衛庁の方のお考えとして長官からこれを承りたいと思うんですが、どのようにこの問題に対してはお考えをお持ちですか、御認識をお聞かせください。
中谷国務大臣 私にも家がありますけれども、では、どこの人が泥棒に入るかと質問されても、答えられません。しかし、そういう犯罪行為や災害というものは常にあるわけでありまして、やはり備えをしておくということは必要でございます。国家の歴史も、人類の有史以来、いろいろな事態が起こっております。こういった文明が発生した時点においても、さまざまな紛争やテロ、ゲリラ、不審船、発生しております。そういう事態に、国家として国民を守る備えはどこの国であろうともしておかなければならないと考えております。
土井委員 驚きましたね。天変地変と違うんですよ、これは。そして、ある日突然起こったという出来事でもないんです。長官は、つい先日、三年から五年の期間では想像できないとおっしゃったはずではなかったんでしょうか。そういうことからすると、大分、この立法をせんがために、以前に出しておられた見解をお変えになってきているなというのが、ただいまのお答えの中からうかがい知れるところですよ。
 そうして、今回のこの法案を見ますと、どうもあいまいな点が多いんです。
 まずお聞かせいただきたいのは、武力攻撃事態ということに対しての認識なんです。法文は、やはりその定義があるでしょうし、定義に従って概念というのをしっかりつかみ取っていないと、法律自身に対して、これはわけがわからぬということになっちゃうんですね。的確に行うこともできないでしょう。
 この武力攻撃ということに対しての認識はどのように持ったらいいんですか。武力攻撃事態ということに対してどういう認識を持ったらいいんですか。いかがですか。
中谷国務大臣 武力攻撃事態といいますと、武力攻撃、これはおそれの場合も含みますけれども、それが発生した事態と、事態が緊迫して武力攻撃が予測されるに至った事態というものを指すわけでございます。
 このうち、最初の武力攻撃が発生した事態というのは、自衛隊法の七十六条の防衛出動を下令し得る事態でありまして、この武力攻撃のおそれのある事態というのは、今の自衛隊法の武力攻撃のおそれのある場合と同じでございまして、その時点における国際情勢、相手国の明示された意図、軍事攻撃などから判断して、我が国への武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していることが客観的に認められる事態でございます。
 そして、同じく、もう一つの予測される事態というのは、自衛隊法七十七条の防衛出動待機命令を下令し得る事態でありまして、事態が緊迫して防衛出動が発せられることが予測される場合と同様でございます。この時点はどういう時点かといいますと、国際情勢の緊張の高まりなどから、我が国への武力攻撃の意図が推測をされて、我が国への武力攻撃が発生する可能性が高いと客観的に判断される事態というふうに定義をいたしております。
土井委員 今の長官の御発言を承っておりましても、わかりませんね、これは。
 予測される事態というのは、またおそれがあるという事態とは、具体的にどう違うのかを御説明いただきたいんですね。
    〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕
中谷国務大臣 わかりやすく説明いたしますと、武力攻撃というものがあります。これは、破壊行為とか人が死んだりする大変な事態ですね、国内において。それに対して、おそれの事態からやはり自衛隊を出動させて対処する必要がありますので、その自衛隊が出動する事態を武力攻撃のおそれのある事態というふうに呼びます。それから、さらに自衛隊が出動する前の段階で、やはり防衛出動の待機命令とか、予備自衛官を招集したり、また陣地構築をしたり、また地方公共団体等、国民の皆さんに危ないですよという警告をして、逃げてくださいという避難の措置をする必要がありますけれども、それがその防衛出動が予測される前の段階で、それを武力攻撃が予測される事態というふうに呼んでおりまして、いわゆるA段階、B段階、C段階というような、事態の段階に応じて対処し得るために区切りをつけるための表現でございます。
土井委員 これはいよいよわからなくなりましたね。Aランク、Bランク、Cランクというのはどこにも法案には書いてございませんで、一体それは、Aランクは何なんですか、Bランクは何なんですか、Cランクは何なんですか。いよいよわかりません。
中谷国務大臣 まず、では最初の段階からお話ししますと、事態がどんどん推移をしまして、我が国への武力攻撃が発生する可能性が高いと客観的に判断される事態におきましては、これはそろそろ自衛隊の出動のための準備をしなきゃいけないということで、予備自衛官を招集したり、また政府としてもそのための備えをする段階であります。
 次の時点が、武力攻撃が発生する明白な危険が切迫している段階で、これは、いよいよ防衛出動をして自衛隊を出動させるという段階でありますけれども、この時点は武力攻撃が発生した段階ではございません。これは、おそれの段階でありまして、実際に自衛隊が出動して、地域を区切って、この地域で自衛隊が活動する、そこにいる人たちは安全なところに避難してくださいというときであって、さらに、その中で行動している、中で実際武力攻撃が発生した際に武力の行使ができる段階でありまして、こういうふうな三段階に区分して、いろいろと政府としての対処をし得る区間の定義をいたしているわけでございます。
 御理解いただけましたでしょうか。
土井委員 なかなか理解は難しいですね、今の御説明でも。どんどん御説明いただければいただくほど、わかりにくくなります、これ。
 この予測できる事態というのは、予測される事態というのは一体どういう状況かということになると、防御施設等々もつくることができるんでしょう。大体は、おそれがあるというふうに言われている場合と、今の予測されるというふうに言われている事態とでどう違うかというのは、国民の立場から見てどう違うかということを言っていただかないとよくわからぬのです。大体は、有事法制というのは国民の生命と財産を守るというのが至上命題じゃないですか。そういう点からいうと、ただいまお答えいただいた中身というのは、やはり国民不在ですよ。
 だれが決めるんですか、これは。予測されるという状況であるとか、おそれがあるとかいうのは、だれが決めるんですか。
中谷国務大臣 その段階は非常に大切な段階でありますので、政府が決めまして、国会承認で国会の承認をいただくことになっております。
 一般の方々がわからないということでありますが、非常に稚拙な事例でありますが、火事が自宅で発生したとすれば、緊急自動車が出動するその時点が自衛隊が出動する時点、そしてその緊急自動車が出動するためには、その乗組員とか対処する人を集めなきゃいけませんし、いろいろな準備も要ります。その準備を始めてもいいというのがこの予測される事態でございまして、例としては不適切でございますが、準備に入る段階、それから実際に……(発言する者あり)
瓦委員長 静粛に願います。
中谷国務大臣 出動する段階、そして実際に火事の現場で消火に当たる段階というふうに、段階ごとに時程を考えていただければ御理解いただけるのではないでしょうか。
土井委員 どうもこれは不適切な説明でと御自身おっしゃるとおり、これは正直なことだと思うんですが、わかりづらいですね。
 これは具体的には、政府とおっしゃるけれども、政府のどこで決められるんですか。
福田国務大臣 武力攻撃事態対処法案九条ですね、九条に記載してありますけれども、武力攻撃のおそれの場合、また武力攻撃が予測されるに至った事態、両方含めまして、この武力攻撃事態の認定というものは対処基本方針に定める事項とされておりまして、この対処基本方針は、閣議で策定された後直ちに国会の承認を求める、こういうことになっております。閣議で決定するものであります。
土井委員 先ほど来、どう違いますかといって、おそれとそれから予測されるというのを承ったら、わからぬですよ、結局。まことにわかりづらい。あいまいと言ったっていいと思うんですが、それをお決めになるのが、結局は事態対処専門委員会という場所ですね。これがあるのは、安全保障会議の中で新設されるという格好ですか。この事態対処専門委員会というのをどういう人員構成でつくられることになるんでしょう。
福田国務大臣 緊急事態に際しまして、政府は、事態の認定、対処に関する基本的な方針の策定などの重大な判断を極めて限られた時間的制約の中で的確に行うことが必要となります。このような政府の意思決定におきます安全保障会議の重要性にかんがみまして、同会議に、内閣官房長官のもとに、専門的な調査分析をして同会議への進言を行う、こういう組織を設けることによりまして、事態発生時に迅速かつ的確に対応できるよう平素から専門的な検討を行わせ、会議の審議を補佐させるということにしております。
 この委員会の委員については、内閣官房及び関係省庁の中から局長級以上の関係者を任命することを想定しておりまして、その人数等については、今後、具体的に定めていくということにしております。
土井委員 防衛庁、自衛隊からのメンバーはこの中に入るんですか。
福田国務大臣 自衛隊も、これはその持つ情報、知見を必要とするということでありますので、当然入るべきだと思っております。
土井委員 これは制服の人だろうと思いますがね、恐らく。そうでしょう。
福田国務大臣 それは特に定めておるわけでありませんけれども、その知見、情報を有する者ということでお考えいただきたいと思います。
土井委員 日本に対する武力攻撃のおそれや予測をされるような事態ということになりますと、これはやはりアメリカ軍が関与しているとか関係しているということが当然のことながら考えられるのですが、むしろ、先にアメリカ軍が関係する武力紛争が起こっていて、その影響が日本に波及してくる事態というのがおおよその中身ではないかというふうに思われるのですが、このように認識をしていて、長官、間違っていますか。
福田国務大臣 この法律ができまして、すぐこの法律が発動するとかいうことではないわけでございまして、この法律は、今後五年、十年、二十年、三十年、場合によったらもっと長い期間使わなければいけない法律であるということを考えますと、特別な国を限定して、指定して、その影響下とかいうようなことを言うべきではないのではないかというふうに私は思っております。
土井委員 どうも今の御答弁もはっきりしないのですけれども。いわゆる周辺事態が存在して、日本の武力攻撃事態というのがそれと併存するということを長官も先日来お答えの中でおっしゃっているわけですが、概念的な区別じゃなくて、実態論としてそれをここでもう一度御説明いただきたいと思います。
中谷国務大臣 周辺事態というのは、我が国の周辺の地域において我が国の平和と安全のために重大な影響がある場合でございまして、そういう場合には、我が国といたしましては、当然のことながら武力行使はできませんけれども、我が国としての憲法の範囲内で後方支援をして、そういう事態が我が国有事にならないように努めるわけでございます。
 武力攻撃事態というのは、まさに、我が国に対する武力攻撃に及んで、我が国として自衛権に基づいて対処する、国を挙げて、いろいろな機関で国民を守っていく行為でございます。
 こういう二つの法律をいかに運用するかということでございますが、当然、その事態にかんがみますと、それが併存するようなケースもあり得るわけでございますが、それぞれの法律に従いまして、その内容に基づいて対処をするということでございます。
土井委員 そうすると、具体的に言えば、周辺事態法に従って行動をとっている、アメリカ軍の後方支援をしているという状況下で、予測することができるという日本のいわゆる武力攻撃事態もあるわけですね。そういう状況もあるわけでしょう、可能性として。
中谷国務大臣 そういう事態もございます。
土井委員 そういうことになると、周辺事態法に従って行動をとっている自衛隊の行動も、後方支援から、むしろ積極的にアメリカに対して協力をさらにすることが要請されるという場面が私は出てこようと思いますよ。そういうことになれば集団的自衛権の行使ということに当たりますが、そういう不安というのは当たらないとお考えですか、どうですか。これは現実の問題としてありますよ。
中谷国務大臣 周辺事態の場合は、当然のことながら憲法の枠内で武力行使をしない範囲でございます。これが併存する場合につきましては、我が国の武力攻撃事態におきましては、我が国の武力攻撃の部分といたしまして米軍に対して支援を行うわけでありますし、事態が、我が国に武力攻撃が発生した場合におきましては、米軍と安保条約の五条に基づいて共同対処するわけでございまして、それぞれ事態というものは法律に基づいて実施をするわけでありまして、併存する場合において、仮に周辺事態が続く場合におきましては、その分野におきましては、集団的自衛権にならない範囲での支援になるというわけでございます。
 これはどう切り分けるかというのが疑問に思われると思いますが、この点につきましては、周辺事態の法律のときに日米の調整メカニズムというものをつくりまして、日米の協力のあり方についてそこで調整を行うわけでありますし、我が国の武力攻撃事態におきましても、そういう共同の作業所がつくられまして、米軍の支援に関するものにつきましてもそこで調整をするということで区別して行っていきたいと思いますが、一般論といたしまして、我が国に武力攻撃が差し迫ったり、発生した場合におきましては、当然のことながら、武力攻撃事態、すなわち我が国の有事事態を優先するというのは当然のことでございます。
土井委員 さあ、そこで承りたいんですが、今回出ている法案は三法案です。本来、四つの法案を出すと言われ続けてきました。私の覚えに間違いなければ、四月八日までは与党の方の協議会でその問題が討議されていたはずであります。四月の八日以後、この四つ目の法案は幻の法案になりました。この四つ目の法案というのはなぜ消えたのか、どういう法案を考えられつつあったのか、明らかにしていただきたいと思います。
福田国務大臣 米軍の法制に関する法案のことですか、委員のお尋ねの四つ目とおっしゃるのは。そういうことですか。(土井委員「私は見ておりませんから、わかりません」と呼ぶ)そうですか。では、それを前提としてお答えを申し上げます。
 今国会では、米軍が自衛隊との共同対処行動において円滑な行動をとり得るよう、米軍に適用のある法令に関し特例措置を講ずる必要があるか否かを検討したのであります。おっしゃるとおり、検討したのであります。その結果、現行の法律の範囲内で対応し得ることが明らかとなったということで、今回は法案提出は行わないということにしたのでございます。
 よろしゅうございますか。
土井委員 先ほど政府が定義をされた有事とは、有事を認定する対象を広くとらえておられるために、攻撃が予測される事態と日本周辺での武力紛争のうち、日本への武力攻撃に至るおそれのある周辺事態並びに予測される周辺事態との境界が重なる部分があるということをさっき認められたんです。これは、今回の法案で言ったら二条六号イ(2)で、これはもうなかなかややこしい法案ですが、対処措置の定義として、合衆国の軍隊が実施する日米安保条約に従って武力攻撃を排除するために必要な行動が円滑かつ効果的に行われるために実施する、こういうことがこれは保障されてあって、一方、安保条約とここで言われている中身は、恐らく安保条約五条なんですね。五条を見ますと、「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、」「共通の危険に対処するように行動する」ということになっておりまして、「日本国の施政の下にある領域における、」となっているんですよ。
 今問題にしているのは、日本の施政の領域を外れて周辺事態行動としてなされている作戦行動の中で、米軍がこういう行動をとるということも考えられるわけですから、したがって、安保条約の五条という条文以外にこの安保条約について見当たりませんですね、根拠になる条文は。安保条約の五条で決めているところにはこれは合致しないというふうに考えていいんですか。
中谷国務大臣 先ほど周辺事態と重なる場合という御質問がございましたけれども、周辺事態への対応としての米軍の支援は、周辺事態法に基づいてやります。
 また、我が国の武力攻撃事態への対応としての米軍の支援は、今後整備されます武力攻撃事態時の米軍支援のための法制に基づいてそれぞれ実施されるわけでございますが、後者の武力攻撃事態への対応ということにつきましては、安保条約の五条に基づくものでございます。
土井委員 簡単に言うと、我が国の施政下にある領域でないところで米軍が活動することも、この五条の中に言う、日米安保条約に従って行動をとるということになるんじゃないんですか。
中谷国務大臣 その場合におきましては、周辺事態への対応としての米軍の支援は、周辺事態法に基づくわけでございます。我が国の防衛のために行動をする場合につきましては、今回整備をされます武力攻撃事態時の米軍支援のための法律に基づいてそれぞれ実施するわけでございます。
土井委員 それは、先ほどから周辺事態法と併存する部分というのが今回の法案にはあるということをおっしゃっていることを前提として私は話を進めているんですよ。
 つまり、これは、安保条約上は日本国の施政のもとにある領域における武力行使となっていながら、有事を武力攻撃が予測される事態まで拡大されたことによって、安保条約第五条の決めている中身と完全に矛盾しているというふうに考えなきゃならぬ事態が出てきたんです。このことを……(発言する者あり)お隣でそれはそうだとおっしゃっていますよ。そのことを御認識されているかどうか。いかがですか。
川口国務大臣 御質問が、我が国に対する武力攻撃以前の段階における必要な行動と安保条約との関係ということでございましたら、まず、日米安保条約第五条に基づいて米軍が武力の行使を行うのは、我が国に対する武力攻撃が行われた場合に我が国を防衛するためであるということでございますけれども、武力攻撃以前の段階において必要な行動をとる場合には、安保条約及び地位協定の範囲内で行われることになるわけでございます。
 また、武力攻撃発生の前後を問わず、そのような米軍の行動を円滑かつ効果的なものとするために必要な措置を我が国がとるということは、日米安保条約の目的の範囲内でございます。
土井委員 今の外務大臣の御答弁、おかしいです。武力攻撃事態以前の状況とおっしゃるけれども、これは、予測できるということがもう認識された途端から武力攻撃事態ですよ。
 したがって、この今回の法案を見ておりますと、アメリカ軍との関係からいえば、周辺事態法下にある日米の、日本の自衛隊とアメリカ軍、それぞれは、やはりこの立場からするとお互い周辺事態法に、日本でいえば日本の国内法である周辺事態法に従っての日本側の自衛隊の行動であって、アメリカ軍はアメリカの国内法に従っての行動であって、そして、先ほど来からおっしゃるように、メカニズムがきちっと相互間であるわけですから、これはガイドラインに伴うメカニズムのことをおっしゃっていると思いますが。
 したがって、それからすると、その周辺事態法の中で動いている途次予測されることが、具体的に、これは非常にわかりにくい御説明を初めにずっといただいたわけですが、武力攻撃事態だという認識を持てば、安保条約はアメリカ軍に対しては第五条しかないんです、問題になるのは。
 しかし、日本の施政権下にある場所ではありませんよということ、これははっきりしているじゃないですか。いかがですか。
川口国務大臣 この安保条約の第五条でございますけれども、これは、我が国に対する武力攻撃がいまだ発生していない時点において、米軍が我が国に対する武力攻撃を効果的に排除するために安保条約の範囲内において必要な行動をとるということを想定していると考えております。
 そのような米軍の行動を円滑かつ効果的なものにするために必要な措置を我が国がとるということは、日米安保条約の範囲内であるというふうに考えております。
土井委員 もう繰り返し繰り返しになりますが、必ずしも日本国の施政のもとにある領域じゃないのですよ、これは。そこで起こる問題なんです。もう一度安保条約の五条を見てください、どう決めているか。(発言する者あり)
瓦委員長 静かにしてください。
土井委員 もうこれは待つだけ時間のむだです。
 よろしいですか。これははっきりした答えを用意して、私ももう一度ここに立ってその御答弁を聞きますから、きちっとしていただきたい。
 実は、周辺事態法のときから問題だったのです、これは。参議院の方で質問主意書が出ております。それに対しての政府からの答弁というのは、それについて触れられていないけれども、具体的にこれに対して実行することができるという中身ですよ。
 はっきり申し上げますけれども、条約で触れられていないことであったら何でもできるんであったら、条約を結ぶ意味がない、条約の条文の意味がない。特にこのような軍事問題が絡むようなことに対して、そういう認識とそういう解釈、そういう対応というのはゆゆしいものだと私は思いますよ。これははっきりすべきだと思うから、もう一度おさらいしてください、そのあたり。そして、お答えを改めて聞きます。委員長、よろしゅうございますか。
中谷国務大臣 安保条約五条というのは、日本の施政権下への攻撃が定められておりまして、そういう場合に米軍が共同対処できるということでございます。
 この範囲につきましては、自衛隊の場合は我が国の領海、領空と公海、公空の範囲で行動するわけでありますが、いわば日本は盾の役割をするわけでございますが、米軍につきましては、やりの役割等もするわけでございまして、その範囲等につきましては、この安保条約で言う施政権下というのに限られたわけではございません。
土井委員 お答えになっていないです、今のは。もう行き違いですよ、全く。こちらの質問に対して正確にキャッチしていただいていない。これは、盾だ、やりだというような表現というのはわかりにくいです。ひとつ、もう一回これはおさらいをして、きちっと出直していただきたいと私は思います。
 今までに全くないのならいいですよ。しかし、質問主意書が出て、それに対する答弁というのをそのままで置いておくわけにはいかない問題が、今回の法案ではいよいよ濃くなったんです。したがって、私はここにその質問をしたわけであります。
 委員長、よろしゅうございますか。
瓦委員長 後ほど理事会にお諮りをいたします。
土井委員 法文というのは言葉が大事なんですね。今回のこの法案を見ておりまして、まことにわかりづらいのは、まず言葉なんですが、使い方、相当これは法案を用意される方は苦心されたに違いないと思うんですけれども、条文を見ておりますと、随所に政府というのが出てくるんです。内閣でなくて政府となっているんです。十六条から二十二条まで、すべて主語は政府となっているんです。
 私は、古い人間だと言われるかもしらぬけれども、ここで思い起こすことがある。国家総動員法では、政府という用語を全部使っていたんですね。今ここに持ってまいりました。これが国家総動員法ですね。官報で出された中身を見てみますと、確かに政府になっていますよ、ずっと条文は。
 日本国憲法では、政府ということを用語として使っている条文はないんです。みんな内閣ですよ。ただ一カ所だけ政府という表現が使われているのは、前文の箇所なんです。政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないように決意しというくだりです。これは、明治憲法下の政府が起こした、また、大正、昭和と来て、この国家総動員法が働いている間に起こした戦争という歴史的反省を込めた用語として、前文の箇所にはもちろん政府という気持ちを込めた用語として使われているという説が多数意見なんです。
 政府と内閣の違いは何ですか。お聞かせください。
津野政府特別補佐人 お答えいたします。
 政府と申しますのは、一般的に、内閣及びその統括のもとにある行政機関を総括した意味で一般的には使われております。
 それから、内閣と申しますのは、これは、憲法上使われております行政権の帰属主体としての意味で使われているわけでございます。
土井委員 わざわざ、今御説明になった中で、政府という用語をおとりになった意義はどこにございますか。
福田国務大臣 本法案でもって政府という言葉を使っておりますけれども、政府が負っている役割は、対処基本方針を作成すること、対処措置を総合的に推進すること、損失に関する財政上の措置を講ずること、対処措置について安全を確保すること、国際連合安全保障理事会に報告を行うというようなことでございまして、これらの役割を政府に負わせているのは、これらの行為が、法律の執行、予算の作成、外交関係の処理に関することであり、行政府に負わせるのが適切であるというふうに考えておるということであります。
土井委員 これではお答えになりません。今おっしゃるようなことだったら、内閣ということにしても同じですよ。わざわざ政府になっている意義を聞いているんです。いかがですか。
福田国務大臣 この法律では、政府という言葉をわざわざ使ったということでありますけれども、これは、内閣だけでなくて国全体が一体となって行うべき武力攻撃事態の対処である、このような観点からこの政府という言葉を使ったわけでありまして、政府による措置は、国民の理解と協力を得て効果的に実施していかなければいけないというように考えております。
土井委員 そうすると、私は古いかもしれないがと言った国家総動員法に「政府ハ」と使われてきたことと無関係ではありませんね。今回も国家総動員という意味をやはり持つんですね。今の御説明ならそうなりますよ。
福田国務大臣 この政府というのは、もう一度申し上げますけれども、内閣及びその統括下にある行政機関を総括した意味ということでありまして、これは行政府、こういう意味でございまして、国の機関から立法府及び司法府の機関を除いたもの、こういうことになります。
 今、国家総動員法という話がございましたけれども、そういうお話は初めて聞いたので、全くそういうことを意図してやったものでもなければ、もしその国家総動員法に政府という言葉を使っているのであれば、これは政府という言葉は一般的によく使う言葉でございますので、偶然の一致だろうというふうに思っております。
土井委員 それは、終わりの方は何かおかしいことをおっしゃいました、今。冗談じゃないですよ。ここで、法案に対してまじめに審議をしている場所で何をおっしゃっているのか。終わりの方の御発言というのはおかしい、私はそう思います。そうですよ。だけれども、こういう御答弁を聞いていて、私、質問するというわけにいかない。後の方で何をおっしゃったんですか。大体、こちらはまじめにやっているんですよ。そして、大事な問題をこれから言おうと思っておりましたが、次回に私はこれを譲ります。
 一言、総理には申し上げたい。先日、この法案が議院運営委員会で諮られた上で本会議に出たときに、自民党の席は半数ぐらいに減りましたよ。非常に空席が目立つ中で、提案趣旨説明が行われて、そして各党の代表質問があったんです。我が党の金子代議士が、そのことに対して触れて、どう思われるか総理というふうに聞いた気持ちは、まことにやるせない気持ちです。
 私たちにしてみると、本来憲法からしたらこういう法律はつくる法律じゃない。国民からしても、どこからどのような攻撃があるかと聞いたら、真剣にそのことを今考えなければならないという状況じゃないです。もっと真剣に考えるべきは経済や景気じゃないですか。今国民生活からすると緊急を要する問題じゃない。(発言する者あり)それじゃ、自民党の方々そうおっしゃるのならば、本会議場にもしっかり出て、そうしてこの問題にしっかり取り組むべきじゃないですか。(発言する者あり)
瓦委員長 静粛にしてください。
土井委員 そういうことを考えると……(発言する者あり)
瓦委員長 静かにしてください。
土井委員 私は、この法案に対して、中身が、大事なところが全部後回しになっていて、例えば、一番大事なのは、先ほど私申し上げましたけれども、国民がどのように守られるかという問題でしょう。自衛隊や米軍の活動の円滑化という問題もあるかもしらぬ、そればかりじゃないですか、今回の法案は、一言で言ってみれば。そして、自治体に対しても、自治というのがまるで考えられないやり方というのが出てくるし、そして国民に対しては協力を要請されていて、必要な協力の内容が一向に明らかじゃないんです。
 総理大臣は、私の本会議での代表質問に対して、総合的に全体がわかるような形でこれに対してはしっかり取り組みたい、国民の皆さんが理解していただけるような法案でこの問題に臨みたいということを答えられたんですよ。肝心のところがないんじゃないですか。
 したがって、この法案に対しては、どうか撤回をお願いします。撤回をしていただくということが大事だと思う。欠陥法案だと申し上げたいと思います。
 委員長、時間がまだありますけれども、残余の質問は次回に、私、回します。
小泉内閣総理大臣 国会の本会議には多くの議員が出席して質疑に参加するのが望ましいことは、言うまでもございません。
 また、今回の法案は、欠陥法案だと言いますが、有事のことについては平和のときから考えるのが政治の要諦なんです。全く有事に対する法案を出す必要がないという立場の方もおられますが、私はそうは思わないんです。
 そういう点から、今回、平時から有事のことを考えようということで議論をしていただいているんであって、私どもは真剣にこの法案を国会で議論していただきたい。また、国民の協力を得て、備えあれば憂いなしという対応を政府としてはしたいということから提案しているんであって、私どもは、立場は違ってもこの問題について真剣に議論をしていただきたいと思っております。
土井委員 繰り返しいつもそれをおっしゃるのが総理です。
 最初に私は、備えあれば憂いなしの備えとは何であるかということを申し上げました。したがって、そのことが軽く考えられ、憲法をしっかり尊重してこれを生かしていくという努力がないがしろにされる中では、全く国と国民の立場や将来を守っていくという政治にはなり得ないと私は思います。
 このことを申し上げて、今回は、その観点から見れば、この法案は、二年がかりであと法案を用意されるというところの部分が大変大事な部分ですから、なぜ拙速にこの法案を提案して審議を急がれているのかよくわからないという人たちが多いですよ、町中では。そのことを申し上げて、私は終わります。
瓦委員長 土井たか子議員の持ち時間は終了いたしております。
 次回は、明八日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時五十四分散会


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