衆議院

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第7号 平成14年5月20日(月曜日)

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平成十四年五月二十日(月曜日)
    午前十時二分開議
 出席委員
   委員長 瓦   力君
   理事 衛藤征士郎君 理事 金子 一義君
   理事 久間 章生君 理事 米田 建三君
   理事 伊藤 英成君 理事 玄葉光一郎君
   理事 赤松 正雄君 理事 工藤堅太郎君
      石破  茂君    岩永 峯一君
      岩屋  毅君    小此木八郎君
      大野 松茂君    嘉数 知賢君
      熊谷 市雄君    近藤 基彦君
      斉藤斗志二君    桜田 義孝君
      七条  明君    田中 和徳君
      竹下  亘君    中山 利生君
      西川 京子君    林 省之介君
      林  幹雄君    増田 敏男君
      松野 博一君    松宮  勲君
      森岡 正宏君    山口 泰明君
      山本 明彦君    伊藤 忠治君
      大石 尚子君    大出  彰君
      川端 達夫君    首藤 信彦君
      末松 義規君    津川 祥吾君
      筒井 信隆君    中野 寛成君
      楢崎 欣弥君    肥田美代子君
      上田  勇君    白保 台一君
      田端 正広君    中塚 一宏君
      樋高  剛君    赤嶺 政賢君
      木島日出夫君    今川 正美君
      東門美津子君    井上 喜一君
      宇田川芳雄君
    …………………………………
   総務大臣         片山虎之助君
   法務大臣         森山 眞弓君
   外務大臣         川口 順子君
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   国務大臣
   (国家公安委員会委員長) 村井  仁君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      中谷  元君
   国務大臣
   (沖縄及び北方対策担当大
   臣)           尾身 幸次君
   防衛庁副長官       萩山 教嚴君
   防衛庁長官政務官     木村 太郎君
   政府特別補佐人
   (内閣法制局長官)    津野  修君
   政府参考人
   (防衛庁防衛局長)    守屋 武昌君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    藤崎 一郎君
   衆議院調査局武力攻撃事態
   への対処に関する特別調査
   室長           鈴木 明夫君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月二十日
 辞任         補欠選任
  大野 松茂君     山本 明彦君
  小島 敏男君     松宮  勲君
  七条  明君     林  幹雄君
  西川 京子君     竹下  亘君
  浜田 靖一君     小此木八郎君
  林 省之介君     松野 博一君
  川端 達夫君     大石 尚子君
  桑原  豊君     大出  彰君
  渡辺  周君     津川 祥吾君
同日
 辞任         補欠選任
  小此木八郎君     浜田 靖一君
  竹下  亘君     西川 京子君
  林  幹雄君     七条  明君
  松野 博一君     林 省之介君
  松宮  勲君     小島 敏男君
  山本 明彦君     大野 松茂君
  大石 尚子君     川端 達夫君
  大出  彰君     楢崎 欣弥君
  津川 祥吾君     渡辺  周君
同日
 辞任         補欠選任
  楢崎 欣弥君     桑原  豊君
    ―――――――――――――
五月十七日
 有事法制の立法化反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二八六六号)
 同(木島日出夫君紹介)(第二八六七号)
 同(児玉健次君紹介)(第二八六八号)
 同(春名直章君紹介)(第二八六九号)
 同(松本善明君紹介)(第二八七〇号)
 同(山口富男君紹介)(第二八七一号)
 同(児玉健次君紹介)(第二九八六号)
 同(春名直章君紹介)(第二九八七号)
 有事立法と憲法改悪反対に関する請願(中川智子君紹介)(第二八七二号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 安全保障会議設置法の一部を改正する法律案(内閣提出第八七号)
 武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案(内閣提出第八八号)
 自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第八九号)


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     ――――◇―――――
瓦委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、安全保障会議設置法の一部を改正する法律案、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案及び自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として防衛庁防衛局長守屋武昌君及び外務省北米局長藤崎一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
瓦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
瓦委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。首藤信彦君。
首藤委員 おはようございます。民主党の首藤信彦です。
 きょうは、主として、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案について質問させていただきます。
 戦争というのは人類が何度も何度も体験してきたことですが、安全保障の分野では、諸国民は、自分たちが経験した、自分たちが体験した最後の戦争をモデルとして次の戦争に備える、こういうふうによく言われております。その意味で、アメリカは昨年の九月十一日の大規模テロに対して今備えているわけでありまして、またヨーロッパ諸国は、二年前のコソボ紛争の例えば電子戦やステルス戦闘機、あるいは超高高度からのピンポイント爆撃、あるいは人道的介入という人道を理由とした軍の侵攻、こうした問題をモデルとして次の戦争に備えているわけであります。
 そして、日本を別として、湾岸戦争においては多くの国が具体的に戦場に軍を送ったわけですが、そうした世界の多くの国は、九〇年代に具体化したコンピューターネットワークの破壊とかあるいは防空網の破壊、こうしたものを前提として、次の戦争、次の紛争について備えているわけであります。
 しかし、日本は、幸か不幸か、今まで直接に大規模な戦争に巻き込まれることもなく、したがって、私たちは、半世紀前に起こった戦争を最後の私たちの体験として、そして、そのもとで次の戦争を考えるというような事態になっているわけであります。ある意味で、この法律案というものは、まさにそうした私たちの半世紀前の体験、半世紀前の戦争の実態というものに対処をしているわけでありまして、そういう意味で、ある意味、この法律というものは、過去の亡霊に対処する、そういうふうに言っても過言ではないと思います。
 まず、武力攻撃事態について政府統一見解が示されたわけですが、当然のことながら、ここにおいては、昨年の九・一一テロのような大規模同時テロやミサイル攻撃、あるいは最近問題となっている電子網の破壊、そうした近代的な攻撃に対してはほとんどカバーされていないということが指摘されているわけです。
 しかし、きょうは、とりあえずまず、武力攻撃事態の伝統的で基本的な概念について質問していきたいと思います。
 まず最初の質問ですが、この法律は一体どのような武力攻撃を想定しているかであります。私は、ここにおいて三つぐらいモデルを考えてみました。
 一つは、伝統的といいますか基本的といいますか、冷戦型のモデルであります。すなわち、最大の脅威であった旧ソ連軍というものが北海道に上陸して、ずっと南下してくる。強大な戦車軍団というのを持っておりまして、日本はほとんど対抗できない。そして、ほっておけば、あっという間に日本が占領されてしまう。これは、ある意味で、日本が体験した事例としては、満州における関東軍の崩壊と大量の満州難民の発生、こういった事態を私たちは体験しているわけであります。その結果、満州という国は、当然のことながら、なくなりました。
 次の事態というのは、敵が上陸して、例えば上陸軍と日本軍の守備隊の間で激しい戦闘が長期間継続する。その間、軍民共存の空間で、民間にも多大な損害が発生する。これは、日本が体験した武力紛争の形態としては沖縄戦のような状態が考えられるんだと思います。その結果、現在でも沖縄には大変な規模で基地が残っていて、さまざまな問題が発生しているというのは私たちのよく知っているところであります。
 その第一番目を冷戦型といいますか満州型といいまして、二番目を沖縄型、こういうふうに考えますと、三番目は周辺事態型、すなわち、何らかの理由で周辺で紛争が起こり、それが一種のはね返りの状態で日本にも小規模な武力攻撃が加わる事態、このような可能性があるのではないか。
 この三つの可能性が大きく分けると考えられるのではないかと思うんですが、この法律は一体その三つのうちのどのような状況を考えてつくられているのかを最初に答弁していただきたいわけであります。
 というのは、これは、例えば我が民主党の枝野委員からも中谷防衛庁長官に対して、この法律で一体どれだけがカバーされているのか、本当に戦争、本当に戦闘が行われるような状態では、防衛庁長官に言わせれば、それは自衛隊法八十八条の基本的な自衛権、国家としての基本的な自然権であるかもしれない自衛権で紛争が行われているような状態であって、武力攻撃に対処する、武力攻撃のおそれがある、あるいは行われるかと予想されるというのは、こういうような状態に対処する法律ではないという、質問に対してのお答えがあったわけですが、そういうことを前提に、一体この法律はどういう紛争をモデルとしてつくられているのかをお聞きしたいと思います。
福田国務大臣 それでは、まず私の方から概念的なことを申し上げますけれども、まず、委員の御指摘の今後の戦争の形態という、いろいろ例示いただきましたけれども、この法律でもって考えております武力攻撃もしくは武力攻撃事態、こういうものは、我が国が外部から組織的、計画的な武力の行使を受けるに至った事態というものを考えております。武力攻撃事態というものにつきましては、まさに委員御指摘のことでございますけれども、態様の面で特に限定はございません。およそあらゆる事態を含むものであり、ある事態が武力攻撃事態に該当するか否かについては個別具体的な状況を踏まえて判断すべきもの、このように考えておるところでございます。
 より具体的なことは、防衛庁長官の方から答弁をさせていただきます。
中谷国務大臣 ここでどのような事態が発生するかという態様でございますけれども、まず、攻撃をしかけてくる主体は、国であるかもしれないし、また国際テロ集団といった国に準ずるものもございます。期間も、長期間に及ぶものもあれば単発で終わるものもありますし、地域も、世界的なものもあれば限定されたものもございます。また、攻撃の方法も、航空機、艦船、地上部隊、ミサイルなど多岐にわたりますし、意図が明示される場合もあれば、米国の同時多発テロ等のように奇襲的に行われる場合もございまして、千差万別にわたっております。
 こうしたことから、ある事例が武力攻撃に当たるかどうかは一概に言えずに、個別具体的に判断するものでございますが、我が国に対する武力攻撃の事態である限り、およそあらゆる事態を対象とするものでございまして、日本国憲法のもとに、さまざまな規模、態様の武力攻撃に対処するよう、国として、これは基本的な体制の整備、いわゆる最悪、極限の国の存亡にかかわる事態に対する基本的な国の構えというものを規定して対処するという考え方でございます。
首藤委員 官房長官、今の防衛庁長官のお答えだと、結局無限定だということですね。どんな事態にでもともかく備えよう、そういうことでよろしいわけですね、理解としては。
中谷国務大臣 これは、日本は専守防衛でございますので、我が国に対する武力攻撃の事態である限りということでございます。
首藤委員 繰り返しますが、我が国に対する武力攻撃である限り、無限定で、ありとあらゆるものをすべて含むという解釈でよろしゅうございますね、防衛庁長官。
中谷国務大臣 我が国に対する武力攻撃である限り、およそあらゆる事態を対象とするものでございます。
首藤委員 官房長官、ありとあらゆる攻撃があるならば、ありとあらゆる対処をしなきゃいけない、そういうことになりますね。
 そこで、私はこの法律を読んでなかなかすっきりしないところがあるんですよ。武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案ということでございますか、独立という言葉が入っております。私は余りこの分野は、法律の専門家でもございませんし、政治の世界に長くいたわけではありませんからよくわかりませんが、官房長官は長く、先代も含めて政治にかかわっておられて法案はよく御存じだと思いますが、一体独立という言葉を冠した法律は今までに幾つぐらいございますか、大体で結構でございます。
福田国務大臣 私も不勉強でございまして、独立という名前を冠した法律はほかにあるかどうかというふうに問われると、にわかにお答えできないので。
首藤委員 質問の意図はおわかりだと思うんですね。独立が侵される事態というのは大変な事態なんですよ。例えば戦争が起こったって、国によっては、例えばヨーロッパの小国なんかは亡命政権をつくってそれを維持する。あるいは、中世に何度も、あるいは近世にわたっても何度も戦争が起こって国が消滅した、例えばオランダでも国が消滅した、そのとき長崎の出島にオランダの旗が立って、我々は独立を確保したとオランダは主張しているわけですね。ですから、そういうふうに独立というものが脅威にさらされるというのは大変な事態でございまして、それは先ほどのいろいろなお話がありましたけれども、当然のことながら、これは国家総動員令が必要になるような大変な事例となるわけですよ。
 どうして、こんな独立が侵されるかもしれないような事態に対して、この程度の法律しかできないのか。これはもう国を挙げて国民の一人一人が理解しないと、国の独立が失われるか、そんな大変なことに、こんないいかげんなことではできないではないですか。どうしてここに独立という言葉が入っているんですか。
福田国務大臣 今回は、有事という事態に対して我が国を守る、我が国の国民、国家を守る、こういうことでございます。まさに平和と、そしてこれが、例えば占領されるということになれば、独立を守るということとは違うことになりますから、そういう意味において、平和と独立を守る、こういう記述になったと思います。
 これは実は自衛隊法の中にもそういう記述がございます。平和と独立を守る、こういうことになっておりますので、そういう意味合いもあると思います。自衛隊法に書いてあるからということでなくて、この法律は、日本の国家としての権威と、そして施政権とか、そういうものも含めた独立を維持する、確保するというための最終的な場面における法律でもあるというように思っております。
首藤委員 官房長官、これは当たり前ですよ、自衛隊法に書いてあるのは。そのためにある軍隊ですからね。
 しかし、この事態法は、地方公共団体あるいは国民に広く呼びかける法律なんですよ。ですから、国民に対して、どのような形で独立が侵されるのか、私たち国民は独立が侵される事態に対してどう対応しなきゃいけないのか、それをきちっと書かなきゃいけないし、その心構えも理解していただかなきゃいけない。それがこの法律案のどこに書いてありますでしょうか。
福田国務大臣 ですから、今御説明したとおり、これは有事のときにおける対応である、対応措置であるということでありますね。
 およそ、国家が崩壊する、そして独立を維持できなくなるということは、何も有事だけでないと思います。いろいろな要素があるんだろうというふうに思いますけれども、そういう中において、その一つの大きな原因、独立を維持できないというような事態になる原因となると思われる有事というものに対して、今回の法律は、その趣旨を申し上げているわけでございます。
首藤委員 全然お答えになっていないと思いますよ。おわかりだと思いますけれども、そんな有事だったら、そういう武力攻撃がある、それに対応しなきゃいけない、それだったら、我が国の独立はまた別の問題なんですよ。
 我が国の独立が侵されるというのは、それは、本当に日本の独立が危うくなったのは、例えば明治維新のころとか、もう本当に限られたケースなわけです。それは、西欧列強がすべて日本を取り囲んで、開国かあるいは植民地か、そういういろいろな、国の独立が本当に侵される状態の中でどういうふうに対応しなきゃいけないか、これが明治維新なんですね。あるいは、第二次大戦のときに日本軍が敗戦になって、日本が占領されている。それが独立の状態です。
 そうした、独立が侵される状態というものは、どのように我々はイメージすればいいのか。いかがですか。
福田国務大臣 再三申し上げているとおり、有事という、日本の国家にとって平和と独立を維持できなくなるような事態に対するこれは対処措置でございます。
首藤委員 全然理解できないですよね。
 例えば、九・一一テロが起こっても、アメリカは別に独立が侵されているわけでもない。あるいは、いろいろなところで戦争が起こっても、アメリカの独立というのは、アメリカは独立宣言以降、独立しているわけですね。
 だから、このように、独立を維持しなきゃいけない、確保しなきゃいけない事態に備えていなきゃいけない、そうしたものはもう全く違う法律でなきゃいけないわけですね。ですから、それは、他国が攻めてくるかもしれません、そういうような法律では使う言葉ではないわけですよ。
 かといって、これだけ優秀な方がおられるのに、ただむだな言葉として、ただごろ合わせで独立という言葉を入れていると私は思わない。一体なぜ、この独立というものをこの法律に冠しなきゃいけなかったか、そこのところを正直に言っていただきたい。
福田国務大臣 なぜそういう御質問が出るか、私はなかなか理解できないんですけれども、武力によって平和を脅かされるということ、また、武力によって我が国の、主権侵害ということもございます、独立という言葉でももちろんいいわけです、独立を損なわれるというか、危うくさせられる、そういうことがあるわけですね。有事の場合にはそういうことを目的とする場合もあるわけですから、やはりそういう事態をも想定して今回は平和と独立ということになっているわけで、それは、平和だって程度の問題があるということもあるかもしれませんよ。独立というか、その前の段階ももちろんあるかもしれぬ、単なる一部的な損害というようなこともあるかもしれぬけれども、最終的には、国家の主体に対して影響力を及ぼそうという、すなわち独立を脅かそうという、そういう事態における対応策を今回この法律でもってお示しをしているところでございます。
首藤委員 これは全く明快でないわけですよ。結局、独立ということの重さ、独立が侵されるかもしれない事態があるということの想定、そしてそれに対処しなきゃならない、それはもう大変なことですよ。日本の主権が侵されていく、それに対する対応というのは、こうした緊急に出してくる法律案じゃなくて、本当に国を挙げて国民の隅々まで理解される法律をつくらなかったら、法律にならないじゃないですか。
 これは、有事だから、たまたまもしかしたら攻めてくるかもしれないというのに対処しているのであって、一国の、日本のような巨大な国の独立を侵そうという場合は、そういう国があるとしたら、それは、同じようにその国も運命をかけてくるということですよ。ですから、それは世界史における大変な事態であって、その大変な事態に日本はどう備えるかという法律案でなかったら、こういう独立という言葉が法律に冠されるのは大変おかしい、私はそういうふうに言わざるを得ないんですね。ですから、その意味を、官房長官、よく考えていただきたいと思うわけであります。
 ただ、この問題だけ話していますと、これはもう永遠に時間がなくなってしまうということですから、その点はぜひ理解していただきたいんですが、この内容に幾つか不明な点があるので、質問をさせていただきたいと思います。
 例えば、まず二条の五ですね、指定公共機関という言葉がございます。これはもう既に何度も問題になりまして、政府からも見解を出されているわけですが、指定公共機関、すなわち軍隊以外のものがどのように関係してくるかということに大変関心がございます。
 それは、例えばさきに起こった大戦、例えば半世紀前でも結構です。それでも、どのように日本のさまざまな組織が巻き込まれていったかということを考えると、いろいろなことが考えられるわけです。
 そこで、文部科学大臣にお聞きしたいわけですが、だんだんと国立大学は独立行政法人化してくる、独法化してくると言えますね。そうすると、この指定公共機関の中に独法、独立法人というものも当然入ってくるわけですけれども、そうすると、大学も、あるいは場合によってはこの中に含まれる可能性があるのか、協力機関として含まれる可能性があるのかどうか、いかがでしょうか。
遠山国務大臣 この法律案におきましては、国の責務として国土や国民の生命、身体、財産を保護するために、組織及び機能のすべてを挙げて万全の措置を講ずるよう定めておりまして、文部科学省も、国の機関としてその責務を果たしていく必要があるものと考えております。
 法律施行後二年以内を目標として整備することとされております法制におきまして、今お話しの大学等をどのように位置づけていくかということに関しましても、この法律の成立後、内閣官房等関係省庁と相談しながら、具体的な内容を検討していきたいと考えております。
首藤委員 私は、大学教師として長年奉職した体験からも、また前大戦の悲劇からも、日本の将来を支える若者が不用意な形で巻き込まれていくのは大変好ましくない、そういうふうに考えているわけですが、そうしたことを考えると、大学というものが、あるいは大学だけでなくてもさまざまな教育機関というのが、紛争時に当然のことながら真っ先に巻き込まれていくんです。
 それはなぜかといいますと、現代の危機管理において一番重要なことは、空間の確保なんです。例えば、災害が起こったら、阪神大震災のときも、空間の確保というのが重要で、まず学校の中にテント村をつくっていったりするわけですね。そういうことを考えると、日本の中において、特に都市部においては、空間を持っているのはもう本当に教育機関しかないというようなところがたくさんあるわけです。ですから、ある意味において、真っ先にその空間が使用されていくわけであります。
 また、大学の持っている空間というのは非常に緑も多くて、御存じかもしれませんが、例えば慶応義塾大学、その日吉のキャンパスというのは、戦争中は統合参謀本部の地下ごうになっていたわけですね。そして、日吉というのは、ついこの間まで局番が横浜の〇四五ではなく〇四四だった。なぜかというと、川崎から、海辺から電話線が直通になるように、川崎の電話番号になっていたわけですね。ですから、それぐらい大学のキャンパスというのは、軍事的な行動をとるときには最も貴重な存在になっていくわけです。
 こういうものに関して、この有事対応に関して、大学の存在はどのように位置づけされているのでしょうか。文部科学大臣、もう一度お答え願いたい。
遠山国務大臣 先ほどお答えいたしましたように、大学を含めまして学校教育機関は、児童生徒、学生の安全というものを第一に考慮しながら、しかし、この法律の成立後に、関係省庁と相談しながら、具体的な内容については今後検討していきたいと考えます。
首藤委員 文部科学大臣、私は、今後決められていく細則、二年後の細則を聞いているのではないんです。文部科学大臣として、教育機関が有事に対してどう対応するかという理念を聞いているんですが、その点に関してはいかがでしょうか。
遠山国務大臣 教育機関は、もともと、そこに学ぶ児童生徒、学生たちがその教育の理念をきちんと身につけるために教育作用をあるいは研究作用を行うというところでございます。
 その中で、今委員が空間の利用という角度からの御指摘でございますが、もちろん社会的存在としての大学ないし学校の空間がどのように今後日本の国民の安全に資していくかというようなことも考えられるところでございますけれども、もちろんすべての法制あるいはすべてのいろいろな状況の中でこれらについては考えていくべきものと考えておりまして、今後、十分検討してまいりたいと思います。
首藤委員 文部科学大臣、教育は国のかなめですよ。
 二年後に確かに細則は決めていきます。しかし、その細則を決めていこうという方向性を示しているのがこの法律案ではないでしょうか。この法律案をやるときには、細則は結構です。どのキャンパスが何平方メーターで、どういうふうにして、どういうふうに協力して、それは結構です。あるいは、どのように学生を避難させていくのか、どのように協力を求めていくのか、それも結構です。しかし、そうではなくて、有事が起こったときに、国の独立が危うくなるような状況に対して、若者はどう行動したらいいのか、教育機関はどう行動したらいいのか、教師はどう行動したらいいのか、その理念を今伝えてください。いかがですか、文部科学大臣。
遠山国務大臣 今の御質問に対しまして、今の時点でどのようにお答えすれば議員の御質問に的確に対応できるのかということはなかなか難しい状況でございますけれども、しかし、教育の果たす役割、いずれにいたしましても大変重要でございますし、また、学校という施設の持っている社会的な存在の意義、そういうものを十分に勘案して、それぞれの時点において適切な判断をしていくというのが私どもの立場でございます。
首藤委員 それはちょっとひどいんではないですか。それはもうこの法律以前の問題ではないですか。文部教育はそれではだめじゃないですか。有事じゃなくたって、今、世界ではあるいは日本でもどんどん環境が変化している。それに対して、もう教育を変えていかなきゃいけないのにそんなことをおっしゃっていたら、それは一体どういう責任を持って文部科学大臣をやっておられるのかわからないと思うんですが、この問題は、やはり今の段階で方向性を決めなきゃいけない。
 もう戦争になれば、紛争になれば真っ先に使われる空間を考えると、そこで教育を受ける学生のことも考えていかなきゃならない、生徒のことも考えていかなきゃならない、当然のことなんですね。ですから、そうでなければこの法律自体が成り立たないんですよ。官房長官、いかがですか。
福田国務大臣 指定公共機関についても、この法律でもって、その協力を求める。そして、それについては、基本理念――ちょっと今すぐ出てこないので……(首藤委員「待ちますから、ゆっくりやってください」と呼ぶ)指定公共機関の責務というのは、これは必要な業務について実施する責務を有するということになっておりますけれども、一方、そういう措置は、これは国の責務として第四条に規定がございます。
 国の、国民の安全を保つため、国土並びに国民の生命、身体及び財産を保護する固有の使命を有することから、組織及び機能のすべてを挙げて、武力攻撃事態に対処するとともに、国全体として万全の措置が講じられるようにする責務を有する。これは国の責務でございます。そういうような基本的な考え方に基づいて、これから実はこの法律に基づくいろいろな具体的な国民の保護に関する法律をつくっていくわけでございます。
 二年以内ということでございますけれども、その中に、この指定公共機関の役割、そしてまた、それに伴いどのようなことをしていくか、これはもうまさに、いろいろな方の意見を聞きながら、国民的な理解を得ながら議論を進めて結論を出していく、そういうことを考えているわけでございまして、多少時間はかかりますけれども、そのぐらい慎重にやっていこうというように考えているところでございます。
首藤委員 官房長官、私の質問は、別に大学のことだけじゃないんですよ。この二条で定義されている公共性、公益性というものは何か。それにはどういう公共機関が含まれるのかということをお聞きしているわけですよ。
 例えば、国立大学の独法化という話をしました。では、私学はどうなんですか。いかがですか、官房長官。
中谷国務大臣 基本的な考え方でございますが、このような武力攻撃事態で自衛隊などが活動する場合に、いろいろな場所の必要性とかございますけれども、防衛庁として申し上げますと、自衛隊の行動が合理的に必要な範囲を超えて国民生活を妨げることがあってはならないということを基本的に考えておりまして、現に、教育現場の話でございますけれども、そういう教育を継続している場所などの土地を供する問題につきましては、その教育に重大な支障を与えることがないように配慮していくというのは当然でございます。
首藤委員 私は、防衛庁長官がなぜ席を立たれたかよくわかりません。越権行為じゃないですか、それ。私は、別に防衛庁のことを聞いているんじゃないんですよ。文部、大学のことを聞いているんですよ。どうしてそれを防衛庁長官がお答えになるんですか。それは、軍が教育に対して干渉していることじゃないですか。違いますか。おかしいじゃないですか、どう考えたって。
 どんなすばらしいことを言っていただけるのかと思って聞いていたら、結局、それは自衛隊が動いたときにどういうふうにやるかということで、それを聞いているんじゃないんですよ。学校教育機関の公益性についてお聞きしているわけですよ。官房長官、いかがですか。
福田国務大臣 指定公共機関とはどういう範囲か、こういうようなことになろうかと思いますけれども、これから政令で指定するわけでございますけれども、まず、個別の法制におきまして、指定公共機関に実施を求めることが必要となる対処措置の内容を具体的に定めた上で、個別の法制が定める事項ごとに、当該機関の業務の公益性の度合い、武力攻撃事態への対処との関連性などを踏まえまして、当該機関の意見も聞きながら総合的に判断するということでございます。
 指定公共機関については、そういうような考え方をいたしております。
首藤委員 今私が聞いているのは、指定公共機関が具体的に何をするかということを聞いているんじゃないんですよ。おわかりになるように、どういうものが公益性なのか、今だって私企業があり、NPOなんか、NGOもあったりする、どういうものが公益性なのかということを聞いているわけですよ。そして、有事のときにはどういうものが、それが公益性あるいは指定公共機関として協力しなきゃいけないかということを聞いているんですよ。いかがですか。
福田国務大臣 公益的な事業を営む法人ということを申し上げておりますけれども、これは、その業務目的が営利目的などでありますが、その業務が公衆の日常生活に密接な関係を有する法人ということであります。
 また、民間の非営利団体につきましては、指定公共機関としてではなく、国民の協力の一環として、それぞれの置かれた状況の中で、国、地方公共団体及び指定公共機関が対処措置を実施する際にできる限りの協力をいただく、こういうような考え方をしております。
首藤委員 官房長官、私は、別に揚げ足をとろうと思って言っているんじゃないんですよ。有事というものがあって、もし、おそれがあるという、そういうことが公示されたら、どうみんなが行動するかということで言っているわけですよ。そうしたら、そのときにキャンパスにたくさんいる大学生、一つのキャンパスで二万人ぐらいなのはたくさんあるんですよ、どう動かさなければいけないのか、あるいは、どういうふうに組織が対応しなきゃいけないのか。
 ですから、有事ということを言うと、二年後という、実際の細則は結構です。まず、一体何が最初に問題となってくるかということが理解されてなければ、そして法律に組み込まれてなかったら、それは二年後といったって、三年後といったってできないじゃないですか、対処は。
 では、例えば、有事という、あるいはそういう危険があるということが公表される、どうするか。福田官房長官ぐらいだったら悠然とされておられるかもしれませんが、私だったら、真っ先に銀行に走ります。銀行で現金を引き出そうと思ってしまいますよ。そうすると、では、公益的な事業を営む法人、これには銀行は入りますでしょうか。
福田国務大臣 今、指定公共機関というように考えておりますのは日本銀行ということでありまして、日本銀行以外の一般の銀行につきましては、対処措置として実施すべき業務が想定されないということから、指定公共機関として指定することは考えていないところでございます。
首藤委員 私は、最初、この冒頭に当たって、諸国民は、過去に体験した最後の戦争をモデルとして有事態勢を考えると申しました。
 まさにそうですよね、この五十年間、平和で安全な社会がありました。テレビを見てください。CNN、BBCを見て、例えば南米の国だって、ついこの間まで世界の経済の優等生と言われていたアルゼンチンとかそんな国が、もう一瞬で崩壊していく。別に他国が攻めてくるんじゃなくたって、もう銀行の取りつけ騒ぎで、商店の焼き討ちですよ。それは、もう自衛隊どころか、軍隊どころか、とめようがないというような状態になっていくわけですよね。
 ですから、当然のことながら、有事においては、国民生活に関係する主要な機関、それはどう対応するのかというのがこの基本計画の中に入っていなかったら、これは有事法制にならない。当たり前のことじゃないですか。
 武力攻撃だともっとそうですよ。武力攻撃のおそれだけで、情報だけでパニックになるんですよ、武力攻撃の場合は。当たり前じゃないですか。イスラエルがあれだけ、スカッドミサイルが飛んでくる、当たりやしないということは軍事専門家はみんな知っているんですよ。途中でばらばらになって落ちてくる、そんなもの効果がない、そんなことわかっている。しかし、それだけでも、もうイスラエル全体が湾岸戦争のときに大パニックになっていった。ですから、ミサイルが飛んでくるということだけで、やはり我々とか、一般の方々は物すごい恐怖感を持つようになるわけですね。
 先ほど、NGOに関しては、それは状況を見てという話があるわけですが、認可法人なんかはここに含まれるでしょうか。
福田国務大臣 今回お出ししている中では、認可法人としては、日本銀行、日本赤十字社ということで考えております。
首藤委員 日本銀行、日本という名前がついておりますよね。日本放送協会、日本という名前がついております。日本赤十字社、日本という名前がついております。それはそうだと思うんですね。
 しかし、皆さんよく御存じのとおり、日本赤十字社というのはIFRCの日本の支部なんですよね。ですから、言うならば、多国籍企業のジャパン・ブランチなんですよね。これは確かに認可法人でございますが、私は、定款を取り寄せてみました。国際赤十字の仕組みと日本赤十字の定款を取り寄せてみました。この定款の中においても、一体どの箇条がいざとなったときに日本政府の対応に呼応してくれる定款、その箇条が国際条約になっておりますでしょうか。いかがですか。
福田国務大臣 日本赤十字社は、日本赤十字社法及び日本赤十字社定款に基づいて、赤十字に関する諸条約及び赤十字国際会議において決議された人道、中立、奉仕等の諸原則にのっとり、赤十字の理想とする人道的任務を達成することを目的といたしております。この赤十字社法の第一章第一条「目的」もございます。それから、定款の総則の三条と、「業務及びその執行」の中において第四十七条、この条項にその該当する任務というものが記述されていると考えます。
首藤委員 今まで日本赤十字社はいろいろ日本に協力してくれました。紛争地にも行ったり、やってくれました。それは他国の災害なんですよね。しかし、日本が今度は戦争当事者となったときに、果たしてこれが今までのように機能してくれるかどうか、そこの担保はどうなっていますか。
 では、ちょっと話を変えましょう。
 日本赤十字社のそういった活動ができるのは、国際人道法に基づいているわけですね。国際人道法、一九四九年ジュネーブ四条約、それから七〇年代にできたそれの第一議定書、第二議定書。第一議定書、第二議定書も日本は批准していないじゃないですか。
 どうしてこういう状況の中において、日本赤十字社が日本の求めに応じて人道救援活動を十分にできる、そういうふうにお思いでしょうか。私の考え方、間違っていますか。法務大臣、いかがですか。
森山国務大臣 条約批准の問題は私どもの所管とはちょっと違うと思うのでございますが、御指摘の問題点はあろうかと思いますので、所管の大臣にお聞きいただいたらよろしいのではないでしょうか。
首藤委員 ちょっと恐らく質問を聞いておられなかったと思うんですが、批准の問題ではなくて、批准がなしにそういう追加議定書の一条、第一議定書、第二議定書に盛られた行為が発生した場合に、どういう基準で、例えばこの認可法人である日本赤十字社が日本政府の求めに応じて医療活動をすることになるのか、それを法務大臣としての法的な見解をお聞きしているわけです。
福田国務大臣 追加議定書のことだと思いますけれども、これは今現在入っておりません。しかし、今現在、入る方向で検討中でございます。
首藤委員 何かもう話がぐちゃぐちゃで、ちょっと私自身も混乱してよく、何を聞いていいかわからなくなってきたんですが、時間がもう半分過ぎましたので次の問題に移らせていただきます。
 次の問題は、やはり同じように大きな問題でございまして、日米安保と日米の共同対処という点について御質問させていただきたいと思います。
 これは、やはりこの法律において一番問題だと思うんですね。二年後にアメリカとのどういう協調体制、共同対処をするかということを明確化するというふうに言われておりますけれども、果たしてそんなことでいいのかということであります。もちろん二条のことは定義でありまして、具体的には二十三条に二年後に明記するというふうに書いてあるわけですが、アメリカ軍との関係ですよね。
 日米安保というものを考えると、その日米安保自体も、私たちも、ここにちゃんとありますが、この小さい字をなかなか読むことがない。しかし、読むと、ええっ本当というようなことに最初からぶち当たるわけですね。要するに、この日米安保というのは、集団的自衛権を前提として成立している条約なんですね。そして、この条約ができた前提というのは、あくまでも、冷戦が始まろうとしている、朝鮮半島が紛争になってくる、自由世界の権益や思想を……
瓦委員長 記者会見があるんですよ。
首藤委員 では、質問を変えますか。途中でいなくなるというのはちょっと早目に言っていただければ、じゃ、防衛庁長官がおられますので、防衛庁長官に言っていただくといいんですが。
 この日米安保というのは、武力攻撃事態、日本が紛争になるような状態においては、アメリカが事実上日本を統治、指導することを前提としてつくられているということがだんだんと我々もわかるようになってきました。
 例えば、それを最初にわからせてくれたのは地雷の問題ですね。日本には百万個の地雷があって、しかし、自衛隊にはどうして地雷マニュアルがないのか、地雷戦のマニュアルがないのかというと、いや、実際日本で有事になったらアメリカ軍が来て指導するということです。ああ、そうかと。日本の自衛隊法、自衛隊というのは幾つか重要なところが抜かれていて、要するにアメリカ軍とセットになって初めて行動できるということがわかってきたわけであります。
 最近、有事においてアメリカがどう行動するか、あるいは、アメリカ軍が行動したときに、その国の国民はどう対応するのかということが非常に明示的な例がございました。
 それは、最近アルカイダと、例のアルカイダグループですけれども、アルカイダと関係のあると言われているフィリピンのアブ・サヤフの掃討にフィリピン国軍が出ていく。それにアメリカ軍が参加する。これに対してフィリピン国民の大変な反発がありました。私はこれは、ああそうか、フィリピンには反米感情が強いんだな、そういうふうに思っていたわけであります。
 しかし、よく調べてみると、そうではなくて、他国の軍隊が駐留して、そこで軍事行動を自由に行動できるということは、その状態においてはその国の主権がないということがわかってきたわけです。
 では、日本ではどうなるか。日本でどういうふうになるかということを外務省に聞きました。これは、外務省から、三月二十八日付、「武力攻撃事態における米軍への国内法令の適用除外」として提出されたものです。その一に書いてある。「一般国際法上、駐留を認められた外国軍隊には特段の取決めがない限り接受国の法令は適用されない。」ということです。要するに、戦争になってしまえば、軍隊を駐留している限りは、その駐留軍は自由に行動することができる。当たり前のことが、国際法上、国際的には認められているということであります。
 もちろん、その「特段の取決め」というのは、日米地位協定などがあるわけですが、地位協定もよく読んでみますと、日米地位協定第七条、公共役務の利用ということに関しては米軍の優先権ということをきちっと書いてある。よく勉強してみると、ああ、そういうことだったのかというふうに思うわけであります。
 そうすると、そういう状況がどうなのか。そして、やはり周辺国を見てみました。例えば、日本と関係の近い韓国ではどうなるのかというふうに見てみたんですね。そうすると、韓国では、有事においては、武力攻撃が行われた事態では、韓国軍もアメリカ軍の指揮下に入るということがわかっているわけです。要するに、有事になれば、その軍隊が駐留している限り、国際法上は、その軍隊の優先権というのは認められるということであります。
 そうすると、一体、日本では、アメリカ軍との関係において、日本の憲法が何あろうが、日本の法律がどうあろうが、日本の自治体法がどうあろうが、アメリカ軍の行動が最優先されるということになるじゃないですか。中谷防衛庁長官、私の解釈は間違っていますか。
中谷国務大臣 基本的に、米軍というのは、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に我が国を防衛するということを主たる目的の一つとして、我が国との合意に基づいて駐留をいたしておりまして、お話ししたとおり、一般の国際法上、駐留を認められた外国軍隊には特別の取り決めがない限り接受国の法令は適用されませんが、その接受国の法令を尊重しなくてはならないというのが当該軍隊を派遣している国の一般的な国際法の義務でございます。このことは我が国に駐留する米軍についても同様でございまして、このような考え方に基づいて、地位協定十六条には、我が国の法令の尊重義務が定められているところでございます。
 そこで、現実に武力攻撃がされた場合の行動につきましては、日米間で日米防衛協力のための指針が取り決めをされておりまして、攻撃された場合には、日本に対する武力攻撃に即応して主体的に日本が行動し、極力早期にこれを排除する、その際、米国は日本に対して適切に協力をする、この協力のあり方につきましては、それぞれ場合によって異なりますけれども、整合のとれた共同の作戦の実施及びそのための準備、事態の拡大を抑制するための措置、警戒監視並びに情報交換についての協力が含まれるというようなことで調整メカニズムが設置をされておりまして、それぞれ日米間で調整をするということになっております。
首藤委員 それは、紙の上だったら、やはりそういうことも言えるかもしれない。しかし、私は、そうではないなということがつくづくわかるんですよ。
 例えば九・一一のテロが起こったときに、ひょっとしたらアメリカ軍の軍事施設が攻撃されるかもしれないということで、アメリカ軍の基地、例えば私の出身の神奈川でもそうですが、例えば相模原、正面ゲートに土のうを積み、重機関銃座をつくって重機関銃を据えているわけです。アラート状態です。引き金に手がかかりますよ。
 要するに、日本との共同、それこそ日本とのさまざまな、いろいろな協調もあるでしょう。しかし、たかだか、たかだかという表現は悪いかもしれぬかな、九・一一のテロがあって、アルカイダのがあって、あるいはテロがアメリカ軍の海外施設を襲うかもしれないという情報だけで、アメリカが土のうを積み、機関銃座を据えつけるわけですよ。機関銃座を据えつけるというのは、危ない何かがあっても、いや、これはおどかしですよ、ブラフですよというんじゃないんですよ。本当に、例えば火薬を積んだダンプカー、あるいは火薬でなくても突進してくるダンプカーがあれば、重機関銃を撃つ覚悟でそこへつくっているわけですよ。
 ですから、そんなふうに、紙の上ではそういうふうに打ち合わせするということになっても、たったこれだけのことですら、アメリカ軍は何にもやらずにどんどんやって、本当にちょっと間違いがあれば、あのときだって発砲していたわけでしょう。現実は全然違うじゃないですか。どうですか、現実との差は。
中谷国務大臣 今回の議論につきましては、武力攻撃事態等に対してでございますが、その際の枠組みとして、調整メカニズムがあって、日米合同委員会、日米政策委員会、これは局長級の代表者の構成、並びに合同調整グループ、課長級の代表者からの構成、並びに日米共同調整所、これは制服組の代表からの構成ということで、それぞれ調整メカニズムがありまして、指揮運用系統についての調整が行われているわけでございます。
 お尋ねの、テロに対する警戒につきましては、これは、安全保障上の認識の問題でありまして、米軍基地につきまして、米軍みずからがそのような認識に基づいて警戒監視を行ったということでございます。
首藤委員 中谷長官、よくぞ言ってくれました。米軍と日本の間は認識が違うんですよ。我々にとってみればこれは遠い遠い話であっても、世界各地にいろいろな基地を持っているアメリカ軍にとってみれば全然違う、もう本当に身近な問題なんですよ。
 具体例を言いますけれども、さっきのそういった機関銃座をつくることに関して、防衛庁は、あるいは政府はどの程度事前に相談を受けたでしょうか。長官、いかがですか。
中谷国務大臣 米側の警戒監視の度合い等につきましては、事前に調整を受けておりませんが、これはアメリカ軍の基地の保全並びに警戒監視の問題でございますので、その状況に応じて警戒をするというのは当然のことであるというふうに思います。
首藤委員 繰り返しますと、要するに、有事あるいは我々がおそれがないと思っていても、アメリカは、おそれがあると思ったらやるということですよ。そういうような状態の中で、どうしてこの法律が成立していくのかということは大変私は疑問に思うわけですが、そればかり言っていてもしようがないので、これはまた別な機会で質問させていただきます。
 次に、第五条、六条、七条には、地方公共団体や指定公共機関の責務が書いてあります。これは、私企業に関してと同様に、国民に対しても明確な責務が定義されておりませんが、一体、有事となって基本計画が発表されるときに国民は何をしていればいいのかということなんですね。
 例えば、先ほどの、国の独立が侵されていくようなところで自衛隊が動きます。国民は何をしていればいいんですか。テレビでワールドサッカーでも見ていればいいんですか。一体、それに関しては、地方公共団体それから指定公共機関に対して、あるいは国民の一人一人に対して、どういうメッセージを送られるんでしょうか。
中谷国務大臣 基本的な考え方でございますが、国として、そのような事態を防ぐための対処の措置並びに国民の皆様方が安全なところに避難をする措置、並びに米軍の行動の措置という大きな柱があろうかと思います。
 そこで、住民の皆様方は一刻も早く安全なところに避難をしていただきますけれども、この住民の避難のための警報の発令、避難の指示、避難の誘導等については、今後、国民の保護のための法制において具体的に定めていくということでございます。
 この避難誘導が必要な場合としてさまざまな状況が想定されることから、屋内避難や避難所への避難等の具体的な方法、また、関係機関の意見等を踏まえながら、住民の安全の確保のために万全の措置が講ぜられるように、国民の保護のための法制の整備の中で十分検討をしてまいる方針でございます。
首藤委員 私は、やはり日本という国の限界を、最近の瀋陽での総領事館の問題でつくづく察知したわけであります。童話には裸の王様という話がありますけれども、本当に日本は裸の王様だったとつくづく感じるわけです。
 私は、中谷長官、いろいろ話し合って、安全保障委員会でも話し合って、長官の持てる経験そして知識には最大の敬意を払うものであります。しかし、その中谷長官をしてもこの程度の理解しかないのかと、愕然とせざるを得ないわけですね。
 例えば、有事には避難をする、冗談じゃないですよ。有事になってごらんなさい、避難しちゃいけないんですよ。国民がみんな避難し始めたら大混乱になっていって、要するに、紛争地に行けばすぐにわかるのは、真っ先に行われるのはチェックポイントとカーフューですよ、チェックポイントとカーフュー。我々は紛争地に行くとき、チェックポイントとカーフュー、チェックポイントとカーフュー、チェックポイントとカーフュー、これだけ、これを守らなければ我々は生きて帰ってこれないんですよ。だから、真っ先にやるのは通行制限ですよ。
 例えば武力攻撃を行ったときに、真っ先に通行制限しなきゃいけない。避難じゃないんですよ。真っ先に通行制限しなきゃいけない。例えばそれは、この日本でもそう書いてあるんですよ。大規模地震対策特別措置法二十四条にもちゃんと明記があるんですよ。
 どうして、そういう知見がありながら、どうして、そういう体験がありながら、この法律にはチェックポイントが明記されてないんですか。いかがですか。
中谷国務大臣 このお話につきましては、民間防衛の部分に類することでありますし、また地方自治体の役割についてであろうかと思いますが、お話の中にあったカーフューというのは、外出制限というようなこと、また交通の規制も必要でございます。
 この方法につきましては、今後、国民の保護のための法制の整備に当たって検討すべき課題でございまして、本日首藤先生からいただきました御意見、また関係機関の御意見、国民的議論の動向を踏まえながら、政府として、住民の安全の確保のために万全の措置が講じられるように、早急に検討に着手をしてまいりたいと考えております。
首藤委員 検討は本当にしていただかなきゃいけないんですが、最初におっしゃった、これは民間防衛の話である、チェックポイントは民間防衛の話である。とんでもないことですよ。軍を通行させるためにチェックポイントを設けるんです。軍の行動を優先させるために、軍の部隊を優先して通すためにチェックポイントをつくるんですよ。全く話が逆じゃないですか。とても専門家の中谷防衛庁長官が言われる言葉とは思えませんが、何かの間違いでつい口が滑ったものだと解釈して、先に進ませていただきたい。
 しかし、そのチェックポイントがどんなに難しいかというのは、これは本当に難しいんです。それはおっしゃったように、国民との接点になるわけですね。きのうですか、十九日に山口で、警察が検問をしていたら、それを車が突破して、壁に激突して四人が死傷した。
 要するに、今の日本の社会の中で、五十年間平和な社会で、チェックポイントをつくっても守らないんですよ。我々は、何度も紛争地へ行けば、チェックポイントを越えたら、越えたら次の瞬間には後ろから弾が飛んでくるとわかっていますよ。しかし、多くの日本の国民にとっては、チェックポイントをつくったって、何だ、そんなものは不便だといって通っていってしまうわけですよ。
 ですから、一体、チェックポイントは、では長官、自衛隊が守るんですか、あるいは警察が守るんですか、どちらですか。
中谷国務大臣 具体的な方法につきましては、今後、国民の保護のための法制の整備に当たって検討をして、その中で整備する問題でございまして、検討いたしたいと思います。
首藤委員 いや、ちょっと待ってください。これは歴史を振り返ってください、歴史を。日本の軍が暴走していく、その中で警察とか内務省とかいろいろ対立があったわけじゃないですか。防衛庁長官、これはもうよく御存じでしょう。昭和八年、ゴーストップ事件。大阪の天神橋筋の交差点で、ゴーストップ事件というのがあったでしょう。警察と軍とどっちが優先するのか。交差点や交通や通行に関して、そこがはっきりしてなかったら、こんな法律ができたって、最初の日からだめじゃないですか。いかがですか。その事件の反省はどうですか。
中谷国務大臣 そういったトラブルが起こらないように、一つは、政府の武力事態対策本部で各省の調整を行いますし、具体的にどのようなやり方で、どの省庁が、またどのような団体がやるかということにつきましては、今後さまざまな御意見、過去の教訓等を生かしながら整備し、検討をしていく問題でございます。
首藤委員 私はそういうことを聞いているんではないんです。この事態法において、実際に市民の行動を規制するときに、警察権が優先するのか、あるいは軍事権が優先するのか。それを、昭和八年の寺内師団長の第八連隊の問題で、いわゆるゴーストップ事件と言われて、日本の軍の暴走が始まってくる最初のきっかけじゃないですか。今のこの時代において、警察権がチェックポイントにおいて優先するのか、あるいは軍事が優先するのか、それを明確に言っていただかなかったら、この法律は成立しないではないですか。私は権利の問題を言っているんです。
村井国務大臣 ただいま首藤委員御指摘の大阪のゴーストップ事件というのは、確かに、当時の大阪の師団長寺内寿一でございましたか、それと大阪府警察部長の粟屋仙吉との間の対立にまで至る大変有名な事件でございますが、これはある意味では大変つまらない事件でございまして、交通信号に従わなかった兵士を警察官が注意した、それに対しまして、兵隊が、陛下の兵士に対して何たる失礼なことをするかというようなやりとりになった。全く、平時における軍と警察との対立にすぎないわけであります。
 有事の場合ということで、今御議論をいろいろいただいているわけでありますが、私の理解するところでは、いわゆる有事といいましても、まだ一般国民がまあまあ通常の生活を営めるような状況というのは国土の上で十分あり得るわけでありまして、その部分につきましては、私は、警察が十分に機能できる部分があるんだと思います。
 その限りにおいて、例えば住民の移動につきまして、先ほど委員は、例えば通行の規制であるとかチェックポイントだとかいうようなお話がございましたけれども、自衛隊の機能のために必要なチェックポイントの設定、それの運用というのはこれまた別でございましょうが、例えば住民の避難のために警察がその誘導の任に当たるというような機能、そういうことも十分私は考えられることだと思っております。
 そしてまた、いわゆる有事という状態になりましても、通常の生活が営まれているような状況の場面における治安の維持というのは第一義的に警察の責任でございまして、そのあたりのところは、これはまず、ある意味では自明のことでありまして、現行の法制でも私はそのように理解できることだと思っておりますけれども、なお、いろいろ、この委員会でも累次御議論がございますような問題につきまして精査を遂げまして、二十二条、二十三条でございますか、この法律の案にお示しいたしておりますような問題点につきまして詰めまして、いずれ法制度の整備をきちんとしたい、そういう趣旨で議論が進められている、そういうプログラム法であるというふうに理解している次第でございます。
首藤委員 それは、今、確かに平時のときではありますけれども、実際に有事になってきている、有事のその境目が問題なんですよ。ですから、そこのところをきちっと決めておかないと、そこのところをきちっと明記しておかないと、この法律自体が機能しないんだ、そういうふうに思うわけです。
 先ほど、カーフューと言いましたけれども、外出禁止令ですよね。外出禁止令があるというのは、決して我々が体験しなかったことではないんですよ。例えば、東海村の核燃料の放射線漏れ事件、いわゆるジェー・シー・オーの事件というのがありました。このときには、その付近の住民が外出禁止になっているわけですね。それは、十分守って、住民の皆さんは中から出なかったんですけれども。
 ちょっと、最近、私はイスラエル、パレスチナへ入ったんですが、イスラエル、パレスチナは、カーフューは三時間です。三時間というのは、夜間の三時間が外出禁止じゃなくて、一日に三時間しか外出しちゃいけない。ちょっとした紛争状態にあるというのは、そうなんですよね。三時間以上やって、コンビニが閉まりそうだといって駆けつけて、閉まっちゃったからほかのところへ行っているうちに撃たれちゃう、本当に撃たれてしまう。それは、軍事というものは、有事というものは、本当にそういうものなんですね。
 そこで、何を言わんとしているか。なぜチェックポイントを言い、カーフューを言うかというと、外出禁止のことを言うかというと、ここに明記されている憲法を尊重し、憲法の枠内でという論議、一番最初の段階から、要するに宣言されてから、緊急事態が宣言されたと同時に、国民の自由と権利は最初の段階から最小限ではなくて最大限規制しなければいけない状況というのはあるじゃないですか。ですから、それをこの法律の中に何も書いていないわけですから、それはもうごまかしじゃないですか。
 現実に体験しないからそういうことはわからなかったという、そうかもしれないけれども、実際の紛争地、実際の戦争になれば、真っ先に、それが最初に出てくるわけですよ。ですから、そういうものに対してはどういうふうに考えておられるのか。長官、いかがですか。
中谷国務大臣 お尋ねの武力攻撃事態における外出禁止とか、また交通の統制のような規制につきましては、この必要性、具体的な方法につきましては、今後の課題といたしまして検討していかなければならないわけでございます。
 御指摘のように、安全確保という観点で、政府として国民の身を守るためにそのような規制をすることが適当であるのかどうか。これは、例えば、一般の家庭でも娘さんに対して十時までに帰ってこいとか、また女子寮等にも門限がございますが、これもその安全を守る一つの方法でございますが、どのような方法によって国民の安全を守るかということにつきまして、今後とも検討してまいりたいというふうに思います。
首藤委員 中谷長官、まじめな方ですからおもしろくない冗談を言われるんだと思いますが、不謹慎じゃないですか、こんなに。本当に、こちらは、弾を撃つか撃たないか、時間におくれたら撃つか撃たないかということを言っているわけですよ。
 ですから、それは結局、なぜこれを言っているかというと、後でやる、後でやる、後でやる。後でやることじゃないんですよ。紛争が起こったら、その最初に、一番最初に考えておかなきゃいけない。法律があったら、もう最初の一ページのところに、緊急事態には通行規制をする、市民の行動を規制すると書かないと、この法律自体が実は成り立たないんですよ。これから二年間ゆっくり研究するじゃなくて、そういうことを根本的に抜けていないというのは、だからざる法と言われるんじゃないですか。そこを指摘しているわけですよ。
 やはり一番問題となるのは、この五十年間、一応平和であったこの日本の社会において、一体住民がどう行動するかということの接点が一番重要なんですね。ですから、民主党は、ともかく最初から緊急事態ということを前提として、そこでいろいろ訓練をしながら、その特殊形態として有事を考えていこうという法体系を考えていたわけです。
 実際に、今の日本の社会あるいは国際社会において、地方公共団体やさまざまなNPOやNGOがどういう行動をとるかということですね。この第七条においては、地方公共団体が当該地方団体の住民の生命、身体及び財産の保護に関して最大限の努力をするということになっています。
 それでは、この私がある島に住んでいたとしましょう。これは、例えば沖縄で、前島という島だったとする。私が、たまたまそこの分校の校長だったとする。自分の生徒がたくさんいたり、そういうところの人たちを、生命や身体や財産を守ろう、そういうときにはどうするでしょうか。ひょっとしたら、そこにおいて、いや、ここは小さい島で、軍隊はおりませんから、全くおりません、どうぞ調べてくださいと。しかし、調べて、いなかったら、そのまま帰ってくださいねという、その可能性があるではないですか。
 要するに、今の国際社会においては、無防備都市宣言というのが自治体側の基本的な生存技術として確立されているわけですよ。これは、太平洋戦争じゃなくて、第二次大戦を見ればわかるように、一九四〇年のパリですか、それからローマもベネチアも、そういう文化遺産を抱えた都市はすべて無防備都市宣言をしていった、それによって侵略や破壊を免れたというのがあるわけですね。
 もちろん、この問題に関しても、第七条においては、国の方針に基づいて、こう書いてあるんです。しかし、国の方針に基づくよりも、国際的な規範や国際慣習法や理念に従えば、無防備都市宣言をしてくる自治体というのは当然あらわれてくるんだろうと思うんですね。もう既にいろいろ議会でこういうのが出ている。それは、何にもないときにそういうふうに出ているわけで、本当に脅威が迫ってきたら、多くの都市が、あるいは多くの自治体が無防備都市宣言をしてくるんだと思うんですよね。
 無防備都市宣言というのは、一九四九年のジュネーブ協定第四条約、七七年の第一議定書に国際的な根拠があるわけですが、日本もこの無防備都市宣言というものに全く直面しなかったわけではありません。一九四一年、フィリピンに侵攻した日本軍を前にしてマニラ市が無防備都市宣言をして、マッカーサー指揮下の米軍はコレヒドールへ撤退したわけですね。マニラ自身は無防備都市宣言を出した。
 それからまた、私自身はまだ確認していないんですが、先ほど言った前島という島があります。沖縄でも集団自決事件という忌まわしい記憶が伝えられている渡嘉敷島のすぐ近くの前島というところで、学校の分校長が日本軍の駐留を拒否して無防備地域を宣言して、結果的に米軍の砲撃と侵攻を免れたという事例が伝わっております。
 この二十一世紀の市民社会では、恐らく現実には多くの自治体が無防備宣言をする、あるいは無防備宣言のネットワークで新しい平和を構築しようとする動きが出てくると思うんですが、そうした状況というのは、日本の現在の自治体あるいは日本の地方行政においてどのように考えているのかということを総務大臣にお聞きしたいと思います。
片山国務大臣 今委員お話しのように、ジュネーブ諸条約ですかの第一号追加議定書か何かでそういう仕組みがあるということは私も承知いたしておりますけれども、これは日本はまだ締結していないと聞いておりますし、この条約や議定書は私の所管じゃありませんから。しかも、この決定は地方団体ではできない、こういうことのようでございますので、具体的にどういうことになるのか私も定かではありませんけれども、少なくとも、事実上、そういう意思を地方団体が表明することはあり得ると思いますけれども、それは事実上の話でありまして、扱いが、これからはこういう事態が起こればこの法律でやる、こういうことになると思います。
首藤委員 ちょっと答弁が意味不明だったんですけれども。
 先ほどの中で福田官房長官が、ジュネーブ四条約議定書はもうすぐやる予定ですというお話を聞きましたけれども、この四条約の議定書、例えば第一議定書なんか、いろいろ問題になっている、話題になっている北朝鮮ですら加盟しているわけですね。ある意味では国際社会の常識になっているわけです。まあそれは日本にはいろいろな理由があると思うんですが、それはもうすぐ本当に、先ほど福田長官がおっしゃったように、ジュネーブ四条約の議定書はもうすぐ加盟することになっているのかどうか、外務大臣にお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 これにつきましては、この法律のもとで法制の整備が行われますけれども、その中で議論をして、政府全体として議論をしていくということになります。
首藤委員 いや、外務大臣、ちょっと違うじゃないですか。福田長官は、そこに座って、帰る前に、いや、もうすぐやりますとおっしゃったんです。もうすぐとおっしゃったのに、政府がそう言っているのに、どうして外務省は反対されるんですか。いかがですか。
川口国務大臣 締結をするということで、今後進めていくわけでございます。
首藤委員 ですから、総務大臣、ますます、これはもう恐らく、別に私は推測するわけじゃありませんが、これは国内法的にも確立してくるわけですから、そうすると、当然のことながら、攻撃のおそれがありましたら、おそれのあるところ、あるいは上陸してくる可能性のあるところ、あるいはミサイルの射程距離にある都市は、一斉に無防備都市宣言をします。それはたくさん理由があります。日本は文化資産、世界遺産に登録している場所だってたくさんあるんです。国宝が残っているのもたくさんあります。北陸に近い京都なんかはどうですか。
 そういうことを考えると、もう一斉に無防備都市宣言をしたときに、一体自治体は、例えばそこへ軍隊が進行してくる、そこを通らなければ、通過しなければ、そこの道しか戦車は通れない、そこの道しか戦車を載せたトレーラーは通れないというようになったら、全くこの法律が機能しないということじゃないですか。総務大臣、いかがですか。
片山国務大臣 今言いましたように、仮に条約や議定書が締結される、こういうことになりましても、無防備地域といいますか、今委員は無防備都市宣言と言われておりますけれども、この地域を条約や議定書に基づく無防備地域にするかどうか、その決定権は中央政府だ、中央政府ないしは中央政府から委任された者だ、こういう確定した解釈があるようでございますので、地方団体自身が希望を表明することはできますよ、しかし、その地域の決定は、これは中央政府ないしはそれに類する者だ、こういう意味でございます。
首藤委員 いや、それは総務大臣違うんですよ。私がなぜ前島の例を言ったか。前島は、例えば渡嘉敷島の校長に電話したか、それから沖縄県庁の県知事に電話したか、あるいは東京に電話したか、そんなことないんですよ。紛争が起こったらどんどん攻めてくる。手を挙げて、私のところは無防備でございます、どうぞ見てください、そうじゃないですか。国家の意思とかそういうのは、戦争になったらチェックしようがないんですよ。平時だからこそできるんですよ。あるいは大震災でもできるかもしれない。しかし、戦争になったらそんなのチェックできないわけですよ。
 また、すべてが国が決めることだというのは、それは違うんですよ。今のこういう考え方は、国を超えた普遍的な原理なんです。人道法もそうなんです。人道というのは、国家の範囲しかない、それを超えた考え方なんです。だからこそセルビアやコソボに対して人道的介入というのが行われたんでしょう。それは国家や政府が、あるいは虐殺が起こったルワンダ政府も、そういう国家を超えて人道の問題とか人権の問題というのはできるということなんですよ。ですから、全然お話が違うじゃないですか。そういう事態にどういうふうに対応して、それはどのようにこの法律の中で反映されているのか、総務大臣、いかがでしょうか。
片山国務大臣 私は、法律的な点と事実上のことは違う、こう申し上げているので、当該地方団体が、委員が言われたような意思を、そういう地域になりたいという意思を表明することはあると思いますよ。ただ、その場合、その地方団体は、分校の校長さんなのか市町村長さんなのか、議会がどう関与するのか、そういうことは何にも決まっていないわけですから、ただ事実上意思を表明することはあるけれども、それを条約に基づく法的な効果のある地域にするかどうかは、中央政府ないしは中央政府に委任された者でなければできないというのが条約の考え方だ、こういうことを申し上げているわけでありまして、実際上の扱いについてはまた私は別の議論になる、それはもう大いに中でこれから議論していけばいいと考えております。
首藤委員 それで結構です。総務大臣がおっしゃるとおりだと思うのですね。ですから、私は何を問題にしているかというと、平時ではなくこういう戦時においてはそういう考えが通用しないということなんですよ。だからこそ国民一人一人が理解して、ああこういうことをやっちゃいけない、こういうことをしなきゃいけないというふうに理解しないといけない。
 そこで問題となるのが、第二章の武力攻撃事態への手続における対処基本方針なんですね。こういう攻撃事態が起こると、当然のことながら緊急事態宣言というものが出されると思っているんですが、防衛庁長官、いかがでしょうか。
中谷国務大臣 この法案によりますと、武力攻撃事態が発生をしたときは、政府が対処基本方針を定めてこれを公示して周知を図るということといたしております。また、この対処基本方針には、政府としての事態としての認識を明確に示して、国民の理解と協力を得た上で対処措置を実施していく観点から、武力攻撃事態の認定について記載をすることといたしておりまして、このような方法によりまして、事態を示して、そして周知徹底を図るということにいたしております。
首藤委員 長官、だからだめだと言っているわけですよ。もうこれは私だけじゃなくて、恐らく長官もいろいろな軍事専門家に聞かれたと思いますが、対処基本方針を公示してもしようがないのですよ。緊急事態の宣言が重要なんですよ。なぜならば、なぜ私がさっきから無防備都市宣言の話をしているかというと、国民一人一人がその責務を自覚して共同行動をとらないといけないわけですよ。市町村の実際の長とすれば、自分の住民の生命財産を守ろうと思ったら、いろいろな行動をとるのではないですか。だから、国民一人一人が理解しないと意味がないわけですよ。ですから、この基本方針の公示というのは、どうしますかということの公示であって、今は国民一人一人のアイデンティティーを問う、そういう宣言が必要となるわけですよ。
 ですから、例えばアメリカでは、緊急宣言として、プレジデンシャルプロクラメーション、要するに大統領の緊急宣言が要るわけですよ。大統領みずからが国民一人一人に向かって、今はこういうときだから皆さんはこうしてくださいと、それを言わなかったら、国民の対応なんか絶対にできないんですよ。行政機関にああやれこうやれ、やらなかったら私がやりますよみたいなことでは国民は全く動きません。国民一人一人がきちっと理解しなきゃいけない、そして国民一人一人に伝えるために、ありとあらゆる手段を通じてそれをやらなければいけないんですよね。ですから、こうした緊急事態宣言が書いてないこの法律はだめだ、これは私の意見だけではなくて、多くの安全保障問題に関係する人がほとんどすべて言っていることだと私は解釈しているんですね。
 そういうことがなぜ必要かというと、例えばアメリカよりもっと難しいのは、アメリカは戦争というものを決して国家の政策として完全に排除しているわけではないわけですね。ですから、宣戦布告だってあるでしょう。しかし、我が国の憲法の中で宣戦布告ということはあり得ないわけでしょう。そのための武力は行使しないわけでしょう。ですから、そういうことになれば、我々は攻められた敵に対してどういう形で守らなきゃいけないかということをきちんと緊急事態宣言で述べなければいけないわけですね。
 では、そういう緊急事態宣言というものは日本で全然想定していないかというと、決してそうではないんですよ。この防衛実務小六法にもたくさん載っているじゃないですか、そういうケースが。例えば、原子力災害特別措置法では、内閣総理大臣は、直ちに、原子力緊急事態が発生した旨及び次に挙げる事項の公示、原子力緊急宣言すると書いてあるじゃないですか。
 私は、この法律を読んでどこがおかしいのかと思うと、これはやはり原点が自衛隊法にあるからだ、私はそう思うのですよ。非常に読みにくい。非常に古い。もし我々の社会が多少は経験してきた、阪神大震災、あるいは、小規模であったけれども、もしかしたら大事故になったかもしれない原子力事故に対応する、そうした今までに積み重ねた緊急事態、これから、この法律からつくり上げていったら、私は、この法律はもっと読みやすい、国民が理解しやすい内容のあるものになったんではないか、そういうふうに思うんですよね。
 ですから、この法律というのは自衛隊法の改正法であって、我が国の緊急事態に対する緊急事態法制ではない。だから、そこに問題があるということを指摘しているわけですよ。例えば、先ほどの原子力緊急事態の宣言では、まず第一に、緊急事態の応急対策を実施すべき地域、あなたのところは緊急だからもう気をつけてくださいよということを言うわけですよ。これこそ、いわゆる行政のディスクロージャーなんですよ。緊急事態ですよ、北海道の先から沖縄の与那国島も緊急事態ですよと言うのではなくて、ともかくここの皆さんは特に注意してくださいということをはっきり明示しなかったら、日本国全体が右往左往するだけでしょう。
 ですから、この原子力災害特別措置法で明示しているように、緊急事態対応をすべき地域というのを言わなきゃいけない、それから緊急事態の概要を言わなきゃいけない、それから区域の居住者、公私の団体に対して周知される事項、私がこの一時間を使って言っていること、そのとおりじゃないですか。違いますか。どうしてここに原子力災害特別措置法で盛られたような、私たちの社会の知見というものがこの法律に組み込まれていないんですか。官房長官、いかがですか。
瓦委員長 到着早々ですが、いいですか。(首藤委員「いやいや、防衛庁長官に」と呼ぶ)では、防衛庁長官の後に。
中谷国務大臣 地域の指定につきましては、自衛隊法でも、自衛隊法施行令で、百七条で自衛隊の行動の地域を告示することになっておりまして、指定をするわけでございます。
 国の危機管理全般的に整備する法律をつくるべきだというお話でございますけれども、もちろんおっしゃるとおりでございますが、今回整備する法律は、国家の緊急事態への対処として、いかなる事態にも対処できる安全な国づくりを進めていくということにいたしておりまして、この取り組みの一環として、武力攻撃事態という緊急、最大な事態が生じた場合、首藤先生御承知のとおり、国際的にも武力の行使というものが認められておりまして、我が国におきましては、自衛権が発動できる国際的な組織としては自衛隊がございます。こういった国家の存亡にかかわる事態が生じた場合、武力攻撃事態を中心に国全体の基本的な危機管理体制の整備を図るということで、最大級の危機に対処するということでございます。
 そのほかの危機につきましては、これまでも、警察、海保関係、自衛隊法によって体制を整えてきているところでありまして、大規模災害につきましても、災害対策基本法によりまして、災害対策本部の設置、各種の災害対応の措置、災害緊急事態の布告の措置が設けられているところでございます。
 政府といたしましても、今後とも、武力攻撃事態以外の緊急事態に対する態勢につきまして、一層改善強化のための措置を講ずることといたしておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。
福田国務大臣 対処措置を宣言するかどうか、こういうふうな……(首藤委員「そうじゃなくて、今までの原子力事態の知見がどうしてこの法律に生かされていないか」と呼ぶ)原子力の災害ですか。ちょっと趣旨がわからないので、済みません。
瓦委員長 ちょっと聞いておられませんでしたね。では、よろしいですか。
首藤委員 いやいや、ちょっと済みません。ちょっと重要なことなので、ぜひお願いしたいんですが、この法律は自衛隊法の改正、だから読みにくいし、内容もわかりにくい。だから、我々が経験した大規模災害に対する対処とか、あるいは原子力災害特別措置法、はっきり言えば、原子力というところを武力攻撃とかえただけでも役に立つぐらい立派な法律があるわけなんですよ。言葉も我々が読みやすい言葉なんですよ。それがどうして、この知見が生かされていないのかということをお答え願いたい。
福田国務大臣 御質問の意味がわかりましたのでお答え申し上げますけれども、原子力災害のときの宣言、その考え方をなぜここに入れないのか、こういうことでありますけれども、この九条の七項に、対処基本方針を公示する、こういうことがございますね。この公示をしてその周知を図る、こういうこと……
首藤委員 そういう質問じゃないんです。
 じゃ、結構です、もう時間ですから。残念ながら、時間です。しかし、ぜひ覚えておいていただきたいんですが、アジアの先哲が言っているように、兵は国の大事なり、死生の地、存亡の道、察せざるべからざるなり。これは孫子の言葉ですよ。要するに、兵は国の大事だ、だからこそ我々がしっかり考えて、ありとあらゆることを考えていかなきゃいけない。
 だから、憲法調査会でも二年間ずっとやっているわけですよ。同じように二年後にまともなものができるというなら、本当にもう、全国民あるいは全政治家が集まって調査会をつくって、二年後を目指したらいいじゃないですか、こんなものを出すかわりに。私はそうしたことを提言いたします。
 以上で終わります。
瓦委員長 次に、中野寛成君。
中野(寛)委員 白熱した議論の後に静かに語り始めるのはなかなか難しいのでありますが、あえて冷静に御質問申し上げたいと思います。
 特に私は、一種の感慨を持ってこの有事法制の審議に臨ませていただきました。栗栖統幕議長の問題、先般石破君が触れておられましたけれども、あれが起こりました後、私どもが所属をした民社党としては、有事法制の必要性を、その間、常に唱え続けてまいりました。また同時に、その後、官房長官の御尊父であられる福田首相が、ちょうど二十五年前、一九七七年から有事法制の研究開始を命ぜられました。私も昨年暮れに二十五年の表彰をいただきましたので、ある意味では、その間、いつ有事法制は提起されるのかということを常に要望しながら今日を迎えたわけであります。
 よって、期待が大き過ぎなのかもしれません。せっかく二十五年間研究したその成果をここに今、世に問い国会に問うとするならば、単なるプログラム法ではなくて、きちっと整理されたものが出されてしかるべきではないか。何か、日ごろ勉強をしないで、試験日が迫ってきたので一夜漬けで勉強した受験生のような、そんな印象を受けないでもない。学生時代から私の親友でもあった久間君がここに座っているので、この前から、久間君も絡んでやったとすれば、これはキュウマしのぎか、こんな印象も持ちながら、せっかくの今回の法制というものを期待しておっただけに、この一夜漬けのキュウマしのぎでは何ともやるせない気持ちを実は持っているのが実態であります。
 なぜ今有事法制が必要なのか、こう問われたときに、私は、政府としてはもっと真正面から答えてほしい、こう思います。
 冷戦下において、我が国に対する具体的脅威として旧ソ連が存在をしておりました。米ソ両国の核抑止力の働きなど、一定の秩序のもとで我が国の平和と安全が保たれてきた。しかし、その冷戦終結後は、地域紛争、難民、不法侵入者、環境破壊、大量破壊兵器の拡散などが国家の安全保障上の重大な問題、課題として浮上しております。さらに、同時多発テロに見られるような秩序なき脅威に対しては、みずからの国は自分で守るという厳格な国家及び国民の意思が欠かせないものとなっております。とりわけ、国民の協力、決して参加という意味で申し上げているのではありません、国民の理解と協力、これはまさに欠かせないものであります。
 こうした国際情勢の変化があったにもかかわらず、なぜこれまで有事法制の整備が放置されてきたのかというのは、やはり国会情勢もあったでありましょうし、国民の意識の変化を待つ時間も必要であったかもしれません。しかし、なぜ今といったときに、小泉総理のように、いやいや、今までなかったのが不自然だったんですよという一言で片づけてしまったのでは、なかったのに今まで平和だったじゃないかというそれに対する反論しか戻ってこない。むしろ、そのような国際情勢の変化の中で、冷戦終結後、より一層この有事法制というものが必要になってきたのだ、すなわち今こそ整備すべき時期を迎えたのだという正面切っての前向きの政府の姿勢と答弁というのが必要ではないかというふうに思うのですが、いかがお考えでしょうか。
福田国務大臣 国家の緊急事態に対する対処、これは独立国家として当然の、最も重要な責務でございます。政府としては、昨年の米国の同時多発テロ、また武装不審船事案なども踏まえまして、いかなる事態にもすき間なく対応できるような、安全な国づくりを進めていきたいと考えているところでございます。
 その取り組みの一環として、武力攻撃事態という、国及び国民の安全にとって最も緊急かつ重大な事態が生じた場合における対処を中心に、国全体としての基本的な危機管理体制の整備を図る、そして武力攻撃事態対処関連三法案を提出させていただいた、こういうような経緯でございます。
 平和なときにこそこういうような体制の整備を進めておくことは重要でございまして、その意味で、いわゆる有事法制は国家存立の基本として当然整備されていなければならなかったものでございます。
 では、なぜならなかったのかという御質問もあったように思いますけれども、それはやはり、そういうものの必要性を感じながらしなかったという、そのことではないかと思います。
 では、なぜ今できるか。それはやはり、その必要性を国民の皆さんも多く感じられるようになったし、またそれが、国際情勢から見て、このことを持ち出しても当然のことじゃないかというような国際的な理解、そういうものも深まった結果ではないかというように思っております。ほかにもいろいろ理由はございますけれども、かいつまんで申し上げれば、そういうようなことになるかと思います。
中野(寛)委員 今我々国会で議論をしておりますのは、言うならば、我々が理解をすればいいというのではなくて、この議論を国民の皆さんがお聞きになり、またごらんになり、そしてそうだねと大方の国民の皆さんが理解していただけるように、ある意味ではその一助として議論をしているという意味で、これからもより一層前向きの正面切った説明をしていただきたいというふうに思います。
 さて、きょうは私、質問原稿をそっくりそのまま、先週金曜日の朝、政府サイドにお渡しいたしました。実は、私は立派な有事法制をこの機会につくっていきたい、そういう気持ちでおります。よって、質問の順番は変わるかもしれませんけれども、私の質問の意図は前もっておわかりいただいているのではないかというふうに思うのであります。
 そこで、中谷長官に、きょう私の質問の中で防衛庁長官への質問がほとんどないんですが、むしろ基本的な姿勢をきょうはお伺いしたいと思うんです。
 中谷長官は先月韓国を訪問されました。日韓防衛首脳会談も二十日に行われて、韓国側の理解を得る目的で、有事法制についての説明もされた。その際の韓国側の反応がどういうものであったか。これは一部の報道でしか知らないのですが、そこには、韓国側から、武力攻撃事態対処関連三法案について説明したところ、今までそういうたぐいの有事法制はなかったんですか、それじゃ今まで自衛隊はどうやって行動していたんですかと問われて恥ずかしい思いをしたと、防衛庁長官でしょうか、おっしゃったと報道されているわけであります。自衛権があるのに有事法制がないということで非常に驚かれたとされているわけでありますが、ある意味では当然だと思います。
 韓国にはこういうことわざがあるそうですね。刀を持っている人がいるとき、怖いのはその刀ではなく、その刀を持っている人の心だ。自衛隊が怖いのではなくて、自衛隊を持っている日本の国の意思、これが問われている。そして、その意思を表明するのが、ある意味では憲法や基本法や有事法制なのではないかと思うんです。
 そういう意味で、国連憲章もまた、「平和に対する脅威の防止及び除去と侵略行為その他の平和の破壊の鎮圧とのため有効な集団的措置をとること」、これは一つの武力行使につながりましょう。そして一方では、「平和を破壊するに至る虞のある国際的の紛争又は事態の調整又は解決を平和的手段によつて且つ正義及び国際法の原則に従つて実現すること。」と、こう両様書いてあります。言うならば対話と抑止ということにもなりましょうか。
 すなわち、法の支配、法治国家である限り、そして民主主義国家である限り、自国を防衛する法制は、自衛隊が存在するならば、その自衛隊とともにその法制が存在しなければなりません。そのことをより一層政府としては明確に内外に宣言をされるべき、また声明されるべきだと思いますが、いかがでしょうか。韓国へ行かれたときの感想を含めて、防衛庁長官にお尋ねします。
中谷国務大臣 韓国は、かつて朝鮮戦争がございまして、いわゆる国の存亡の危機を経験した国でもありますし、またイスラエルもそうでありますけれども、そういった危機認識が高い国におきましては、国の第一の仕事が国の防衛、危機管理でありまして、非常に国民の一人一人、また国の政府のそういう意識も極めて高いものだというふうに感じたのが率直なことでございます。
 やはり、国の独立といいますと、国民の権利や財産、生命に対して、国際社会の中で国がそれを保障して、国家の主権として主張をして守っていくかけがえのないものでありまして、国がなくなるということは、国民が難民になったり、非常に悲惨な思いで、みずからの主張ができなくなるわけでありまして、そういう意味で、改めて国家というものは大変大切なものであるということを認識いたしておりますが、これは中野先生御指摘のとおり、政府が認定すればいいものではなくて、やはり国民の皆様方お一人お一人が、自分たちの国は自分たちで守るんだという認識が必要でございます。
 そういう観点でいいますと、有事法制といいますのは国家存立の基本でございまして、自分たちの国は自分たちで守る、また政府としてもその責任を果たしていくということでございますが、これも法律に基づいて行わなければ秩序はできません。
 民主的な諸外国では既にこのような体制が整っておりますので、我が国におきましても法律においてその際の行動を担保するということは極めて重要でございまして、今回この法案を提出いたしましたので、私といたしましては、よく慎重に議論をしていただいた上で速やかに成立をしていただきますようにお願いをする次第でございます。
中野(寛)委員 日本で今日まであった有事法というのは自衛隊法だけだとよく言われますね。その自衛隊法そのものも、実は有事と平時だけあって、緊急事態対処というのが抜けているとよく言われるんですね。
 私は、こういう機会に本当は自衛隊法も、諸外国の例にも倣いながら、しっかりと整った自衛隊法というものを整備するときではないか。いろいろ、国際情勢だけではなくて国内の情勢や国会情勢、国民の意識なども考えて、かなり自衛隊法そのものも積み重ねがあったりパッチワークがあったり変形したりしている。先ほど首藤議員が言われましたが、わかりにくい自衛隊法になっていることも事実なんです。こういう有事法体系をきちっと整備しようとするときに、自衛隊法そのものも一から考え直す、組み立て直すという姿勢が本当は必要だったのではないかというふうに思うのです。
 また、国がなくなるということの意味について付言をされました。国がなくなるという、どういうことでしょう。国破れて山河ありという言葉はあるけれども、これからの戦争で日本という国がなくなるという事態は想定しにくいと思います。
 しかし、もっと広義に解釈いたしますと、これは外務省の問題にもなりますが、今回の瀋陽の事件などは、日本の国がなくなった一つのケースではないかと私は憂慮しております。そういう問題なんだということをしっかりと踏まえなければいけないのだと思います。国の主権が侵された。
 その後いろいろな具体的事例があって、我が党の調査団も行っていろいろやっておりますが、私自身の個人的な気持ちからすれば、中国が何と言おうと、日本の外務省が何と言おうと、そこに平行線をたどるときがあったら、私は外務省の言うことをうそでも信じたいとさえ思います。しかし、信じられるようにしてください。今日までの経緯を見、あのビデオの画面も見て、余りにも情けない。私は、そのことは一言申し上げておきたいと思います。
 さて、総務大臣の時間の御都合を聞いております。そこで、午前中、あと十分しかありませんけれども、その間に、順番を変えまして、総務大臣に関する御質問をいたします。
 これは官房長官と総務大臣にお聞きいたしますが、最も重大で深刻な事態である有事に際して法律の規定がない状態を解消するという意味で、基本的には有事法制は整備すべきであります。この法案は、あらゆる意味で不十分であると私は思います。すなわち、国民の生命財産を守るという意思がほとんど読み取れない。各国における有事法制というのは、戦争の惨禍からどのように国民を守るかがその主題となっており、国民の防護を考えていない有事立法などはどの国にも存在しません。
 有事の際、国民が主体となって相互の連絡や物資の配給、避難、消防などの防護活動を行う非軍事の民間防衛というのは、国民がみずからの生命と財産を守るために、国際法で認められた権利であります。ユニホームに対する扱いと民間人に対する扱いは、国際法規上もおのずからそのために区別されているわけであります。有事法制で民間防衛が規定されないということは、国民が国際法上の保護を受けられないことを意味するわけであります。
 有事法制を考えるときに、真っ先にこの民間防衛、国民をどう守るか、または避難をしてもらうか、これが先に来ない有事法制というのは、目的を抜きにして手段だけ考えている、今回の三法はまさにそうではないかと言わざるを得ないわけであります。
 また、その民間防衛の仕組みをつくることは、実は総務大臣、一番おわかりだろうと思いますが、この前から答弁が一番しっかりしているから私はそう感じるんだけれども、これの組み立ては大変ですぞ。なまじっかなことでは、法体制を整えただけではできない。地方自治体の協力体制をどうつくる、国民がどう参加する、どう訓練するの。大変な問題を抱えています。だから後送りになったのかもしれませんが、しかし、そんなことでは私は困ると思います。
 そしてまた、首相の代執行の件まで書かれています。私はびっくりしましたね、代執行という事態が生まれることはあるのかと。極めて非現実的ではないんでしょうか。すなわち、県の状態を全く知らない、国の出先機関も限られた数しかない、いわゆる手足のない状況で、国がどのような代執行を行うことができるんでしょうか。国民をどう避難させ、どう守ることができるんでしょうか。国民にどう生活の保障ができるのでしょうか。
 そして、私は、この欠陥を含んだままこの法律を通してしまったら、二年後までにと言われている、あとの充足する法体系も変なことになってしまいませんか。あとの法体系まで、ここで法律を決めると縛ってしまうんでしょう。
 そして、県によって拒否する知事が出てきたり、また、やることが県によってばらばらで、あの県へ行ったら安心だ、この県へ行ったら守ってもらえない、こんな区別があっていいんでしょうか。
 また、警察との関係というのは、先ほどからも聞いておりましたが、この前のテロ特措法で懲りたか何か知らぬが、ほとんど全部先送りという状況なんですね。
 こういうことについて一番明快な答弁をなさっている総務大臣に、ひとつぱりっとしたところを見せてもらいたい。二年待ってくれと言わずに、いや、二年待ってもらうけれども、その間にこれとこれはきちっとやるよ、こういう心づもりでいるよ、もうちょっと国民を安心させる答弁ができませんか。
片山国務大臣 今、中野委員からいろいろの御指摘、御教示を受けまして、私も同感するところが多々ありますけれども、基本的には国民保護法制が中心であることは、皆さんの認識が一致していると思いますね。
 ただ、これは、大変広範多岐にわたっていろいろな整理が要ると思いますね。それから、国民の皆さんが、五十年以上も平和な状態が続いていますから、イメージにないんですよね、有事だとか緊急事態が。この辺は意識を高めてもらう、そういう意味で熟してもらうということが、私は、同時に要るんではなかろうかと。
 そういうことのために、本来あった方がいいんですけれども、国民保護法制、二年間の猶予期間というのか、準備期間というのか、熟成期間を私は置いたんだろうと思いますし、国民保護法制がしっかりしないと有事法制は完結ということになりませんから、内閣官房を中心に、我々も協力してしっかりしたものをぜひつくりたい、こう考えております。
 地方団体は、もう釈迦に説法ですけれども、まさに地域の住民の生命、身体、財産を守る、地域の安全を確保するというのが一番大きい仕事ですから、この中では主要な役割を担わなければなりません。私は、その覚悟はそれぞれの首長さんや議会にもあると思いますね。ただしかし、ありますけれども、やはり、いろいろな調整は対策本部でやっても、どうしても間に合わないとか、うまくいかないとかということがあると思いますね。そのときのために、今の指示権だとか代執行の措置がとられているわけでありまして、これはせんだっても申し上げましたが、いわばなかなか抜かない伝家の宝刀ですね。しかし、その担保があることで全体がうまく進むのではなかろうか。
 基本的には、対策本部の総合調整で私は処置すべきだ、指示や代執行という穏やかならざる措置は、本当にどうしてもという場合以外はとるべきでない、こういうふうに考えておりまして、今後とも、内閣の中では、地方団体のサイドに立った、代弁の立場としていろいろなことを申し上げていって、いい個別法制というんでしょうか、国民保護法制をつくってまいりたい、こういうふうに考えております。
中野(寛)委員 よっぽどのことがなければ代執行というのはないと。僕は、よほどのことがあっても代執行なんというのは、それこそ代執行そのものが中途半端ですよ。実効性がないんですよ。むしろ、こういうのはちょっと横に置いておいてくれと、総務大臣、言った方がいいんじゃないですか。それで、地方は地方できちっとやるよ、しかし、国防は国の権限でやるんだから、それに対しては地方はこういう覚悟で協力をするよと。この中途半端な部分をなくしておいた方がいいんじゃないですか。どうですか。あとちょっとだけ時間があるので、総務大臣に最後の質問にしておきますが。
片山国務大臣 こういう緊急事態はやはり、指揮命令系統、意思決定とその伝達は一元的でスピードが速い方がいいと思いますね。そういう意味では、私は、この代執行、指示、代執行の意味は十分あると思いますけれども、できるだけそこに至るまでの総合調整で効果を発揮していくことが、地方分権の時代、地方自治尊重の時代ですから、その方が正しいんじゃなかろうか、両方の考え方は大変あると思いますけれども、真ん中が正しいんじゃなかろうか、こう考えております。
中野(寛)委員 きょうは問題提起だけにしておきます。この問題は本当に真剣に考えなければ、地方分権がこの有事のときに生かされるのか、地方分権というのは成り立つのかということも含め、国民みんなをどう守っていくかという深刻な時点に照らして考えると、この代執行の問題一つにしたって、よほど真剣に考えておく必要があるのではないかというふうに思っております。
 あと一分午前中の時間がありますが、中途半端ですので、午後また気分を変えて質問し直します。
瓦委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時五十九分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三分開議
瓦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。中野寛成君。
中野(寛)委員 午前に続き質問させていただきます。
 安全保障政策の基本は、言うまでもなく対話と抑止ということだと思います。対話なくして抑止だけでは国は守れませんし、また、抑止力なくして対話だけでは国は守れないと思うのであります。
 そういう意味で、この有事法制を整備するということは、有事という国の非常事態に際して、すきのない防衛体制を保持していることを内外に示す、そして、他国からの侵略の意図をくじくところにあるわけであります。すなわち、自衛隊という力を有していながら、その力を有効に行使できないということは、力の空白地帯をつくるも同然であると思うからであります。有事法制があってこそ自衛隊の円滑な活動が担保され、抑止の効果を発揮されることになりましょう。
 こうした意味で、有事法制は戦争抑止法と言っても過言ではないだろうと思います。すきをつくらないということが大切であります。
 このことについての考え方をお聞きするときに、あわせて、私は、昨今の情勢の中で一つの例として挙げられるのが、瀋陽総領事館の問題だと言わざるを得ません。まさに、あのビデオを見る限り、中国の日本国の主権を侵害している主権侵害は明々白々であります。
 一方、日本側もすきだらけであります。そして、後の対応の仕方も、また、そのミスを糊塗することにきゅうきゅうとして、大変情けない思いがいたします。
 また一方、我が民主党の調査団の調査、その調査結果に基づく幾つかの事実を明らかにしたことに対して、それを総理は自虐趣味的と言い、そしてまた官房長官は中国側の拡声器の役割を果たしているのではないか、こういう言い方を新聞紙上等では見るわけであります。もしそれが事実だとしたら、何と情けない感情論かと思うのであります。
 まず、すきをつくらないこと、そのことが何よりも大切であります。我々は、あくまでも日本国の主権を守る側であります。野党といえども与党といえども、それは同じ立場であります。そして同時に、あの今回のケースでいうと、五人の皆さんの人権をしっかりと守らなければいけないということだと思うのであります。
 私は、そういう意味で、私ども民主党の調査団の行為も決して、日本側の欠陥をあげつらうために、または中国の拡声器となろうとするために行ったわけではない。日本側のそのすきとなっている、不備となっているところ、そして国際的な信用を失わないようにするためにいかにあるべきかということを前向き、建設的に提起する、そういう気持ちで調査もし、提言もしているところであります。
 そういう意味で、政府の皆さんの最近の総理を初めとする民主党に対する軽率な発言は、私は、大変次元が低くて情けない、そういう気持ちでこの国が守れるか、そういう気持ちでいっぱいであります。官房長官の御所見をお聞きしたいと思います。
福田国務大臣 今回、瀋陽であのようなことが起こりました。あのこと自身については、テレビで全世界に報道されたというようなことで、人道上の見地からの問題もございました。しかし、あのビデオで見る限りは、いろいろな問題もあるということが判明いたした次第でございまして、私は、ああいうときに、まさにあの事態というのは危機管理の一つだというように思いますので、その辺に対する日ごろの配慮、また訓練、心構え、いろいろなことが欠けていたかもしれない、このことは政府としても大いに反省をしなければいけない、そういうようにも思っております。
 この事実関係については、今、中国とも交渉と申しますか、話し合いを続け、事実の解明ということを続けているわけでございます。
 そういうさなかで民主党の皆さんが現地に赴かれたということは、大変お忙しいところにもかかわらずわざわざ行かれて、真実を究明しようというその姿勢について、私は、大変高く評価をしなければいけない、すべきものだというように考えております。
 そういうことで、これからこの事実の解明ということ、それともう一つは人道上の問題の解決、このことに鋭意努力をしなければいけない。また、中国と何らかの妥協点を、妥協と申しますか、その人道上の解決についての妥協を図らなければいけないというように考えております。
 いずれにしても、我が国は我が国としての立場というものがありますから、この我が国の立場というものはしっかりと主張し続けなければいけない問題だと考えております。今回のことにつきましては多くの反省がありますので、今後、このようなことが発生しないようないろいろな工夫、そして対応の仕方等々について検討してまいりたいというように思っております。
中野(寛)委員 民主党の調査団のことにつきましても、官房長官として評価をする旨の御発言がありました。一応、私の質問の中ではここにとどめておきたいと思います。
 同時に、防衛庁長官への質問が少な過ぎるので、ひとつ防衛庁長官に、私、先ほど、有事法制は戦争抑止法である、そういう精神で臨まなければいけないということを申し上げました。防衛庁長官の心構えをお聞きしたいと思います。
 それから、先ほど私は、こういう機会にこそ自衛隊法、例えば有事と、そして百条でしたか、その他の雑則の中に何か災害対策などいろいろと平時の対策を書き並べておりますけれども、本当は緊急事態の状況も含めて自衛隊法をきちっと一から整理し直すという気持ちが防衛庁から出てきてもいいのではないかとさえ思うのですが、そのことについても、せっかくの機会ですからお聞かせいただければと思います。
中谷国務大臣 国の緊急事態に対する備えというものは、独立国家として当然なされなければならない最も重要な責務でありまして、政府といたしましても、いかなる事態においてもすき間なく対応できる安全な国づくりを進めていくということは当然のことでございます。
 こういった武力攻撃事態というのは、国家の存亡にかかわる事態でありまして、極限の、最大級の国家の危機であります。それに対する備えをするということは、いわゆる基本の構えでありまして、例えば書道においても楷書が基本の構え、また剣道においてもその基本の構えがありますが、これをしっかりしておくといろいろな応用的な事態に対処できるわけでありまして、まさにこの事態をきちんと整備をしておくということが肝要であるというふうに思います。そして、その備えをしていくということが抑止になるわけでありまして、そういうしっかりとした国なら侵略することもなかなか難しいということで、相手国に対する抑止的な意味も当然のことながらあると思います。
 また、自衛隊法の問題につきましては、自衛隊法ができましたのが昭和二十九年でございます。ほぼ半世紀を経まして、世の中の事態、また自衛隊に対する国民の認識、役割、変化している面もございます。防衛庁といたしましては、現在、在り方検討会議を部内で設けまして、新しい時代に備えた国の防衛のあり方、また自衛隊の役割等を検討いたしておりまして、この事態において自衛隊がどうあるべきかという点につきましては、この際、検討をする必要もございますし、各界の幅広い御意見を得まして、国の危機管理の一環として自衛隊のあり方等を検討してまいりたいというふうに思っております。
中野(寛)委員 さて、次に進みますが、この瀋陽の問題でも、いざ何かが起こったときのマニュアルというのはあるんだろうと思うんですね。マニュアルが言うなら有事法制なんですね。そして、それに基づいてやはりしっかりとした心構えを持ち、訓練をしておかなければいけない。一事が万事と言いますが、日本の国の全体の姿があの瀋陽にあらわれたと私は思っておりまして、中国の主権侵害の問題とは別に、我が国側の反省点としてしっかり踏まえて、今後の対策を講じていただきたいと思っております。
 さて、次に、また基本的な問題をお聞きしたいと思います。
 今、自衛隊法について触れましたが、日本の安全保障に関する法的枠組みというのは、自衛隊法、国連平和維持活動協力法、いわゆるPKO法、そして周辺事態法、テロ対策特措法と、個々の事態に対応して法律が制定されてまいりました。このように新法を積み重ねる方法では、法体系の変化に従って自衛隊における指揮系統も任務も変わってくる、武器の使用規定まで変わってしまい、我が国を防衛する自衛隊の活動が混乱するばかりではないかと心配するのであります。いや、もうそこはきちっと整理して防衛庁長官は考えていますよ、頭の中では整理されていますよと言うかもしれませんが、国民みんなでこれを理解していくことが必要なのであります。そういう意味では、何か古い温泉旅館が増築を重ねて迷路だらけの廊下をつくったような、そんな印象さえ思い起こすのであります。
 本来であれば、有事の対応は総括して憲法に定めるべきものでありますが、他の国から見ても、フランス、ドイツ、韓国、フィリピンなど、合理的な有事法制を整備していると思います。いずれの国も、憲法に大統領または国家元首の非常事態権限が明記されており、その権限の行使について、現実として起こり得る事態に即して、個別の法律の中で具体的に規定をいたしております。
 我が国も、憲法上にこのような規定を設け、総理大臣が安全保障に関する最終的な責任を負えるようにすることが理想的な形でありますけれども、しかし、現実、現在の日本では、まだ憲法の改正は非常に困難であります。そこで、憲法と既存法の溝を埋める、安全保障基本法ともいうべきものを制定することが現実的であろうと思います。そして、その基本法の中で、総理大臣が安全保障について最高の責任と権限を有することを明記する、緊急事態に際して、総理、閣僚、地方公共団体の責任と権限、国民の権利と義務を明確化し、日米協力、国連協力のあり方を規定すべきであろうと思うのであります。
 ところが、今回は、理念や基本方針と最低限の枠組みだけを示して、関係法令の制定は先送りされております。しかも、先ほど申し上げた民間防衛のように、国民がまず、自分たちはどうなるの、どうしてくれるのという、そのことに対する答えさえも先送りしてしまっているわけであります。いわゆるプログラム法となっておりますが、テロ、不審船対策等を含めて、あらゆる事態に対応できる包括的な基本法とならずに、プログラム法としてしか提出できなかった理由について、官房長官のお答えをいただきたいと思います。
福田国務大臣 ただいま委員からも御指摘ありましたとおり、この武力攻撃事態対処法案は、我が国に対する武力攻撃が発生した場合の対処に係る基本理念、国、地方公共団体等の責務、対処の際の基本方針の策定、対策本部の設置などを定めることによりまして、国全体としての基本的な危機管理体制の整備を図るものでございます。したがいまして、この法案は単なるプログラム法ということではないというように考えております。
 また、法案では、国民の保護のための法制などの今後整備すべき法制の検討内容等を明示しております。これらの整備に当たりましては、関係機関の意見や国民的な議論の動向を踏まえながら、十分な国民の理解を得られるような仕組みをつくる必要があると考えておりまして、法案では、法制整備の目標期間を二年以内として定めてございます。この期間内に法案の取りまとめに全力で取り組んでまいりたいというように考えております。
中野(寛)委員 これから二年かかってどういうのができるのかわかりませんけれども、何か今回のものは基本的な枠組みですから、そして、これとこれはと例示をしながら、二年以内にとなっているわけですね。しかし、肝心かなめのが抜けている。骨格しかないというか、何か骨組み、骸骨みたいなものですな。これから二年間かけてその骸骨に肉づけしていくんでしょう。間違えると、その骨がゆがんでいますと、これは肉づけしたら神経痛を起こしますな。そしてまた、肉づけの仕方によっては私みたいな醜い肥満体が生まれるかもしれませんね。そこで余り笑ってはいけない。また一方、栄養失調の法案になっても、これは実効が上がらぬということになるわけですね。
 そういう意味で、私は改めて申し上げますが、この有事法制が、その将来像を明確にしておくということが極めて重要ですし、特に国民の生命と財産の保護、権利義務、これにかかわる部分については、具体的な内容を盛り込んだ上で国民の判断を仰ぐということでなければ、なかなか国民には理解しがたいということになるんではないんでしょうか。全体像を示すということは極めて重要だと思います。
 先ほどは、午前中には総務大臣にも民間防衛のことについてお聞きをいたしました。いわゆる民間防衛といいますと、民間人が協力をしていかに防衛をなすか、こういうふうにさえ錯覚されることもあるのであります。
 民間人をどう守るか、いかに的確に避難をしてもらうか、国民をいかにして巻き込まないようにするか。それがなければ、その戦場となったところが、あの阪神・淡路大震災の悪夢を思い起こすのですが、あのようになってしまう。最悪の場合は、場合によっては、あの第二次世界大戦最後の沖縄の状況というものを思い起こす。そして、結果として自衛隊は、または国は、国民を守ってくれない、自分たちのために国民を犠牲にするという気持ちにならざるを得ないわけであります。
 その国民感情、正直な素直な国民の気持ちをしっかりと踏まえた手続、手順というものが必要だと思うのでありますが、改めてその御所見をお聞きしたいと思います。
福田国務大臣 まさに国民の生命財産を守る、こういうことは極めて大事なことであり、この法案の大きな部分でございます。有事体制における自衛隊の活動というものも当然ございますけれども、それとあわせて、国民、民間防衛と申しますか、民間をいかにして守るかということは、この法案の中で強くうたっておるところでございます。
 ちょっと説明させていただきますけれども、国民の保護のための法制は、武力攻撃事態から国民の生命、身体及び財産を保護し、武力攻撃が国民生活及び国民経済に与える影響を最小限とするため、国、都道府県及び市町村の具体的な役割分担、指定公共機関の役割、対処措置の実施を推進するための体制等について定めることとなると考えております。
 国民の保護のための具体的な措置につきましては、まず、避難に関する措置として、警報の発令、避難の指示、避難の誘導、避難地の確保等について定めていくこととなると考えております。また、被害を最小にするための措置として、交通手段や重要通信の確保、生活関連重要施設の安全確保、消火、傷病者の緊急搬送及び医療、衛生状態の保持、生活必需物資の確保、仮設住宅の設置、ライフラインの応急復旧等のさまざまな措置について規定するとともに、死傷者の取り扱い等、国際人道法の的確な実施のための措置について定めていくこととなると考えております。さらに、被害の復旧に関する措置としては、学校、病院等の生活関連施設の復旧、道路、橋梁、港湾、鉄道等の復旧等につきまして必要な措置を定めるとともに、財政上の措置について定めることとなると考えております。
 第二次大戦もそうでありましたけれども、その後の大きな戦争において民間人が戦争に巻き込まれて被害者になる、こういうウエートがますます大きくなってくるということは考えられます。そういう意味から考えても、この民間防衛ということはきちんと整備しなければいけない。そして、その細則についてはこれからの法体系の中で整備をしていこう、こういうように考えております。また、これは国民との関連において、国民の理解を得なければいけない、そういう意味においては、国民との議論ということも必要だろうというように考えておりまして、その仕組み等も考えていきたいと考えておるところでございます。
中野(寛)委員 今、官房長官が、現在出されております法案の一部をお読みになりました。そして、それだけきちっと意識しているよということを御説明になったと思います。
 しかし、その具体的な内容、法案、そういうものがどこまで、どれだけ整備されていくか、国民はむしろ先にそれを見定めたい、そういう気持ちを強く持っていると思うのであります。そういう視点から、私どもは、今回のこの法案がやはり少々、少々ではない、大変拙速だったなというふうに実は残念に思っているわけであります。
 そこで、その防衛の仕方、また国民をいかに守るかということについての形であります。現象でありますが、二十一世紀の脅威というのは随分と変わってきたと思います。
 冷戦構造時代、ソビエトを仮想敵国として、そう明示はしませんでしたが、そういう気持ちでいろいろなことを想定されてきた。しかし、それは明らかに、その戦争の方法も変わっておりますし、内容も変わっている、国際情勢も変わっております。すなわち、冷戦後は、通常戦争の比重が減って、弾道ミサイルとミサイル防衛に象徴される高度科学戦と、テロ事件、すなわちゲリラであるとかサイバーテロであるとか、非対称な手段を使った戦いの両極端に分化していくと考えられます。
 特に、今後多発すると思われますテロ等の非対称戦は、宣戦の布告もない、何が兵器として使われるかもわからない、日常生活の場がある日突然戦場となる、前線と後方地域の区別もない、だれが何の目的で攻撃するかもわからないというような特性を持っており、抑止をすることは大変に難しいと考えなければいけません。
 このように、新しい形の戦争を封じ込める方策というものがまだ何ら見えてこない。有事法制整備の中心課題として、本来これが取り上げられておかなければいけないのではないか。先般、武力攻撃事態についてということで、その概念が説明をされました。何かこの概念も、旧態依然とした戦争の形態を考えておられるのかなとしか思えない。
 例えば、先般、九・一一テロ、あの場合に、武力攻撃の予測はされておったのではありませんか。しかし、それがいつどういう形で行われるかというおそれが具体的にわからなかったということなのではありませんか。
 言うならば、相手国がミサイルに燃料を注入したとかしないとか、それが具体論として、一つの例として挙げられておりますけれども、もっと手前で、九・一一のあのニューヨークのテロだって、あれは、国際常識的にいえば、ああいう何かが起こるという予測はあった、しかし具体的なことがおそれとしてわからなかったということなのではないのかというふうに私は思うのであります。まして、この武力攻撃のおそれとか予測をだれが調査し、判断し、認定するんでしょうか。
 先般テレビを見ておりましたら、防衛庁長官が、来年には偵察衛星も打ち上げるのでとおっしゃっていましたが、それだけで足りますかね。ある意味では、日本独自の情報機関を持たなければ、それに対するおそれだとか予測というのはわからないのではないんですか。これはアメリカに頼むんですか。もしかしたら、我々は知らないけれども、日本にはそれだけ整備された情報機関がもう既にあるんですか。その予定があるんですか。
 その新しい二十一世紀の脅威を踏まえた対応の仕方についてお尋ねをしたいと思います。
    〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕
福田国務大臣 我が国として、外交ルートその他、軍事的なこともそうでしょうけれども、あらゆるルートの情報を収集するということに努めておるわけでございます。
 もちろん、国際情勢がさらに緊迫するような状況になれば、それに応じてさらにということもあろうかと思いますけれども、十分かと言われれば、決して、十分というように言い切る自信はございません。ございませんけれども、そういう、十分にと言えるようにこれから努力をしていかなければいけない部分は多いかと思います。それは今後の努力目標、目標というように考えていかなければいけないことと考えております。
 また、そういう機関を設置するかどうかという御質問もございましたけれども、今、この緊急事態対処という意味におきましては、事態対処委員会というものを安全保障会議の中に下部機構としてつくって、これはそういう事態の分析、情報収集、分析等を常時行う、こういうことで今回この法案も提出させていただいたということでございまして、そういうことを通して万全な体制を、また国民から安心し、そして信頼できるような体制の構築に向けて今後努力をしてまいらなければいけないと思っております。
中野(寛)委員 具体的に、または極めて抽象的な御答弁なのでそれを何と評価していいのかわかりませんけれども、しかしながら、有事法制とはそれほど多岐にわたり大変難しい、しかしないわけにはいかぬというもの。同時に、これはある意味ではもろ刃のやいばでもあるわけですから、国民の皆さんが十分納得できる説明がつかないといけないということをぜひ心がけていただきたいと思います。
 質問、次に行きます。
 さて、外務大臣にお尋ねをしたいと思いますが、この有事法制というのはいざというときのことですが、やはりいろいろな国際環境を私たちは見てみなければいけないと思います。そこで、国際環境として一つ、まず中国の動きについてお尋ねをしたいと思います。
 多国間安全保障も含む地域的な国際地域協力に積極的な姿勢を中国は示しております。WTO加盟を契機に国際社会への経済面での本格的参入を図ることにより、中国を戦略的競争者と表現した米国に対しては挑発的アプローチを避け、協調関係を維持しようとする意図が見受けられます。しかし、経済発展に伴い経済成長率を上回って増強を続けている中国の軍事力増強を見逃してはなりません。
 中国は、米国のハイテク戦争に対抗し得る装備の開発、配置を目指しており、新型ミサイルの開発、配備を急いでいるようであります。
 中国の二〇〇二年度予算における国防費は、前年度比一七・六%増の約千六百八十億元、約二兆六千四百億円となっております。十四年連続で一〇%以上の増加。中国の国防費は総額が発表されるだけで、その内容は明らかにされておりませんが、軍事目的に実際に支出された額の一部にすぎないとも見られております。兵器の購入、開発費は全く別の予算から支出されているとの見方もあります。中国の国防予算の総額は、実際には発表されている数字の三倍程度と推測をされ、我が国の国防費を超えていることは確実だとも見られております。まして、日中間の人件費の比率は十対一とも言われているわけでありまして、同じ金額でもその人件費の効果というものは十対一の意味を持つわけであります。
 このような中国の国防費の増大と軍事力強化は、台湾海峡情勢、東南アジアの安全保障に対する重大な脅威となり得ると考えられます。また、今後の西部大開発の成否によっては、国民の不満、関心を外に向けるという政策も予測されないわけではありません。そのときに日本がどのような状況に置かれるか。私は、実際に中国が日本に対して侵略してくるとは思っておりませんが、しかしながら、国内をまとめたり、外交の道具としていろいろな方法をとるであろうことは予測にかたくありません。
 これらのことを考えて、外務省としてはどのように考えられているか、お聞かせをいただきたいと思います。
川口国務大臣 中国の軍事予算につきまして、数字は今委員がおっしゃられたようなことだと思いますけれども、このほかに、委員も示唆なさっていらっしゃいますように、中国の軍事関係予算には発表された国防予算以外の不透明な部分もあるわけでございまして、我が国といたしましては、近年の国防予算の伸び率自体が高水準で推移をしている、一〇%を超えていること及び海空両軍を中心にしまして装備が質的に向上している、近代化が進められているということに注目をいたしております。
 いずれにいたしましても、我が国といたしましては、国防予算を含めました中国の国防政策について透明性を向上させること、軍事力強化に対しての周辺国あるいは地域の反応への配慮を促すということでございまして、従来から、多国間、二国間の場で働きかけているところでございまして、今後ともそうした働きかけを続けていきたいと思います。
中野(寛)委員 中国に対する弱腰外交というのは、今回の事件を例に出すまでもなく、これまでたびたび指摘されていることであります。むしろ、対等の関係をしっかりと保っていく、そのためにはかなり高度な外交戦略と政治姿勢が必要であります。これを忘れて、今外務大臣がおっしゃられた、これは外務省にも前もってこの原稿をお渡ししてあるので、もう少し私は前向きのしっかりした御答弁が得られるかと期待をいたしておりましたが、時間もありませんから、本当に、外務省、しっかりしてください、それだけ言って、もう一つ質問します。
 ASEANを中心とする一連の多国間枠組み協議の中で、ASEAN地域フォーラム、いわゆるARFへの北朝鮮の参加、域内紛争調停方式としてのASEANトロイカの設置及びASEANプラス3、日中韓、その協議の恒常化などが図られておりますが、中でも北朝鮮がARFへの参加を認められたことで、ARFは、東アジア、東南アジア地域のすべての国が参加する最も包括的な多国間枠組みとなりました。しかし、参加国の増大から、実質的な問題解決の場というよりも、米国のNMDやTMDに中ロが反発するなど、外交的プロパガンダの場所として利用される場ともなっております。
 ARFは、第一段階の信頼醸成から第二段階の予防外交へと進むべき時期にあるものの、今、実質的かつ具体的な成果を求めるのは厳しい状況になっていると思います。予防外交について議論を評価するとした去年のARFからほぼ一年が経過した現在、我が国の予防外交へのスタンスとその進め方、先ほど対話と抑止と申しましたが、まさに対話の柱の一つであります。
 そしてまた、先般、小泉総理も、アジア、オセアニアなど、またベトナム、豪州と数カ国に我が国の立場を説明しに行ったということでありますが、各国の反応などについてお聞かせをいただきたいと思います。
    〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕
川口国務大臣 ASEAN地域フォーラムにおける予防外交の議論についてのお尋ねでございますけれども、委員がおっしゃられましたように、ここでは、一九九五年の第二回の閣僚会合におきまして、今後の活動の方向性としまして、信頼醸成の促進、予防外交の進展、紛争へのアプローチの充実といった三つの段階に沿って漸進的に取り組んでいくということで意見が一致をしたわけでございます。
 それ以降、一段階、委員がおっしゃられましたように、二段階目である予防外交につきましての、そこでどう取り組むかということについての議論が行われておりまして、おっしゃったように、二〇〇一年の七月の第八回の閣僚会合におきまして、この点についての概念と原則についてのペーパーが採択をされたわけでございます。ということは、ARFにおける予防外交の基本的な考え方が示されたということで、今後は、この基本的な考え方を具体的な取り組みに広げていく段階にあるということでございます。
 予防外交はますます重要になってきていると考えておりまして、ARFが将来的にも予防外交の分野で重要な役割を果たすことができるように、また、そういう枠組みとして発展することが重要だと考えておりまして、我が国も、このペーパーづくりの段階ではリーダーシップを発揮しまして、貢献をしてきたわけでございます。
 ことしの七月末に次の閣僚会合がございますので、その場も含めまして、今後ともARFの作業に積極的に参加をしていきたいと考えております。
 それからもう一点、総理が訪韓、訪中、それからASEANに連休のときに行かれたときに、これについてどういう話し合いがあったかということですが、武力攻撃事態対処法案等についての特段の議論は行われなかったと承知をいたしております。
中野(寛)委員 もう一つ、我々としていろいろな判断をするときに欠かせないのが米国の存在であります。同盟国米国の変化というのは、クリントン大統領からブッシュ大統領になられて大きな変化を遂げたと私は考えております。
 実は、田中外務大臣の当時に、その変化について私なりに三つの特色があると思うがといって例示をしてお尋ねをいたしましたが、外交に変化はないという御答弁であったことは大変残念だったことを思い起こします。もっと外務省として注意深くあっていただきたいと思います。
 米国の政治イデオロギーとして、いわゆる今のブッシュ政権、保守主義とは、経済的には自由競争、社会的には伝統的規範や倫理、対外的には孤立主義と言うべきか、国益至上主義と言った方がいいでしょう。一方、リベラリズムとは、経済的には福祉等への政府支出、社会的には個人の自由裁量権の保護、対外的には国際主義を重視する立場を指すものと思われております。前クリントン政権のリベラリズムからブッシュ政権の保守主義にかわったことによって、米国の基本的な対外的立場は、国際主義から国益至上主義に変化したものというふうに私は思います。テロ以前のブッシュ政権は、米ソ間のABM制限条約、CTBT、京都議定書など、既存の対外取り決めや国際協定からの一方的離脱の姿勢が目立っております。
 このような米国の行動は、ちょっと一回で言いにくいのですが、ユニラテラリズムとされ、欧州などからしばしば懸念が表明されてまいりました。自国の都合のみを重視して対外コミットメントに対処しようとするこのユニラテラリズムの概念は、いわゆる孤立主義もしくは国益至上主義の延長線上に位置するものと言わざるを得ません。
 一方、同時多発テロによって微妙な変化が見えてまいりました。いわゆる国際協調を前面に据えるようになってまいりましたけれども、しかしながら、例えば対印パ経済制裁を解除するに当たって、制裁継続は米国の国益にそぐわないとの理由を挙げました。安全保障上の必要があればこれまでの経済通商政策を変えるのにちゅうちょしない。ブッシュ政権にとって重要なのは、外交か内政か、経済か安保かといった選択ではなくて、国益こそがこれらを決する概念になっているように思えてなりません。
 そこで、この同時多発テロ後顕著となったアメリカの国益重視の政策が我が国の有事法制整備に何らかの影響を与えたのではないか、そしてそれは、あのテロ対策特措法から始まって一連の日本の安保政策または外交政策につながっているのではないかというふうにも思いますし、この際、日米同盟における米国の国益と我が国の国益とはどのように絡むのか、一致するのかしないのか、どこが一致し、どこが矛盾をするのか、これらについては冷静に判断をし、対応をしていくことは、我が国が国際社会において主体性を持った国であるかどうかの評価にもつながっていくと思いますが、どのようにお考えでしょうか。
川口国務大臣 アメリカの政権が、クリントン政権からブッシュ政権にかわって、民主党から共和党にかわってどのように外交政策が変わったか、あるいは物の考え方が変わったかということについては、非常にこれは難しい御質問で、非常にきれいに色分けができる話でもないだろうと思います。民主党、共和党、党派は違ってもかなり共通した部分がありますし、民主党の中でもかなり共和党に近いところもあればという、非常に細かい色分けが必要だろうと私は思います。
 したがいまして、ブッシュ政権がいかなる理念を持った政権であるかというのも、一概に言うのは難しいと思いますけれども、私は、日本はアメリカとかなり共通な原則といいますか、考え方を共有していると思っております。例えば自由主義ですとか、市場経済を信じる国であるとか、民主主義ですとか、自由ですとか、人権ですとか、そういった言葉が並ぶわけでございますけれども、そういった意味で、アメリカも日本も、今の世界のあり方を守っていくということに共通の国益を持っていると考えております。
 お尋ねの、有事法制の整備にアメリカの政策が何らかの影響を与えたかということでございますけれども、日本とアメリカは、常に同盟国としてさまざまなことに、政治面から経済面、文化面、頻繁に協議をしながら、コミュニケーションを持ちながらやっているわけで、安全保障ももちろんでございますし、率直に議論をしてきている国でございます。
 他方で、小泉総理がおっしゃっていらっしゃいますように、この有事法制というのは、我が国の基本といいますか、いついかなるときに発生するかもわからない国家の緊急事態に対しては、ふだんから冷静に考えて、いざというときに対応がとれるということになっていなければいけないということで、独立国としての日本が主体的に考え、備える必要があるというふうに考えている法制でございまして、こういう考え方で武力攻撃事態対処法案を今ここで御議論をいただいているわけでございます。
 したがいまして、これは我が国が主体的に考えたものでございまして、別に、アメリカから言われてやったという話ではないということだと思っております。
中野(寛)委員 その認識をしっかりと持ち続けて行動していただきたいと私は思います。
 そして今回の有事法制で、日米関係でいうならば、例えば、米軍との関係について今回の法制ではまだ整理がされていない。しかし、日本の有事のときに、日本を守るために、米軍の存在は大変重要な意味を持っているわけであります。
 そのときに、例えば、米軍が実施する日米安保条約に従って武力攻撃を排除するために必要な行動が円滑かつ効果的に実施されるようにしなければならないとされてはいるのですが、その具体的内容には一切触れられておりません。すなわち、日米安保条約にも、日本有事における米軍の行動については何ら具体的な規定はありません。日米安保条約第六条に基づく日米地位協定が米軍の地位を規定しておりますが、ここにも、有事における米軍の行動については具体的な規定はなされておりません。
 NATOにおいては、有事の際の米軍の行動に関する有事協定というべきものがあるとされております。しかし、これは秘密協定でありますので公開されていませんが、漏れ聞くところによりますと、NATOの有事協定は、日米ガイドラインに記載されているのとほぼ同様な内容を規定しているとされております。その違いは、日米ガイドラインは署名のない単なる指針です。NATOとの有事協定は、これは秘密協定とはいえ、署名のある国際約束であります。
 このようなことがきちっと整理をされなければ、日米安保条約第五条に基づく有事の際の米軍に対する支援の方法も具体的にはわからない。日本の有事における日本国内における米軍の行動にかかわる規定も整備されていない。その協定も、むしろ、これから日米間の交渉でまとめていかなければいけない。これは並大抵のことではないと想定されます。
 これらのこと、いわゆる肝心かなめのことで、しかし難しいというものを全部先送りしているというのが今回の法案なのではないか、こう思うのであります。米軍の行動規定にしても、本来は特別の協定がなければ接受国の規制を受けないんでしょう。それで、結局、紳士協定みたいに、守られるものと信じますと防衛庁長官みたいなことを言わなきゃいけないんでしょう。それで本当に国民は安心して任せられるのでしょうかということを実は考えるのです。
 また、もう一つ、時間がありませんからまとめて、ちょっと別次元のことを言いますが、例えば、今回、国会承認というのが入っております、事前、ケースによって事後。同時に、アメリカがベトナム戦争のときに、苦い思いをして米国議会が戦争権限法というのをつくりました。これによりますと、政府がその気でやっておっても、途中でもう必要ないのにと国会が判断すればそれを終わらせる権限をアメリカは国会に与えました。今回、それは日本のこの有事法制にはありません。
 事ほどさように、多くの問題があります。よって、最後にまとめていきますが、まず五つ申し上げたいと思います。
 第一に、本法案の目的において、武力攻撃事態への対処のみならず、大規模テロや武装工作員、武装不審船などの新たな脅威を含む緊急事態への対処を明確にすること。第二に、対処基本方針及び対処措置において、武力攻撃事態のみならず緊急事態等、あらゆる事態に対応ができるようにすること。第三に、国会の関与をさらに厳密に規定し、少なくとも国会の決議で自衛隊の撤収を命令できるようにすること。これは初動の段階の話ではありません。第四に、国と地方公共団体の関係において、地方公共団体の責任と権限を明らかにし、国民の権利と義務を明確にする具体的な枠組みを構築すること。第五に、米軍との関係において、日米安保条約第五条に基づく日本有事における米軍支援と米軍の行動を規定する措置を講ずること。
 これらのこと五点が、少なくとも私の考えるところによると欠落をしている、もしくは、この際にきちっとしておかなければ、この法律をつくっていいのかどうかの判断の基準が整わないということになると思うのでありますが、最後にまとめて官房長官の御所見をお願いします。
福田国務大臣 幾つか御指摘がございました。
 まず、大規模テロなどの緊急事態への対処、また対処基本方針及び対処措置の武力攻撃事態を含むあらゆる事態に対応可能とすることということにつきまして、テロや不審船など武力攻撃事態以外の緊急事態につきましては、これまで関係法等におきまして体制を整えてまいりましたが、今後とも、これを一層改善強化するというための措置を講ずることとしております。法案の第二十四条に、政府がこれに取り組むことを明らかにいたしておるところでございます。
 次に、国会の関与の厳格化、それから自衛隊の撤収とかいったような国会との関係についてでありますけれども、これは、武力攻撃事態においては行政府と立法府の統一的な意思決定のもとでこれに対処する必要があると認識しておりますので、法案においては、現行自衛隊法で国会承認の対象とされていない防衛出動待機命令等につきまして国会の承認を得ることとするというような、適切な国会の関与ということを規定し、また仕組みとしておるわけでございます。
 また、地方自治体の責任と権限の明確化、国民の権利義務を明確化する具体的な枠組みにつきましては、これは先ほども御説明申し上げましたが、国民の保護のための法制の整備については、国民の自由と権利を尊重するということ、また、法案に定められた枠組みのもと、関係機関の意見や国民的議論の動向を踏まえながら取り組むことといたしたいと考えております。
 また最後に、米軍支援と米軍の行動を規定する措置の確保ということでございますけれども、これは、米軍の行動の円滑化のための法制についても、法案に定められた枠組みのもとに、国連憲章を初めとする国際法に従い、また、日米安全保障条約の目的の枠内でその整備に取り組む、このようにしておるところでございます。
 政府といたしましては、最善の法案を提出したものというようには考えておりますけれども、国会審議を通じて、各党会派や広く国民の理解を得るための最大限の努力を続けまして、この三法案の早期成立に努めたい、また、さまざまな態様の緊急事態への対応について必要な取り組みを迅速にこれから進めてまいりたいと考えております。
中野(寛)委員 最後に、今、私ちょっとだめ押しをしたんです、国会の関与の仕方については。例えば、有事が続いている、途中で、もう行き過ぎ、もしくは長くなって、事態はもう実質上終わっているのではないかという判断をしたときに、もういいかげんにしなさいといってとめる権限を国会に与える必要があるということを申し上げている。これはむしろ、政府側から出しにくければ、国会での議論の中で、その項目を各党間協議で入れるという交渉があってもいいと思います。これは委員長に、またその検討を要請しておきたいと思います。
 また、米軍の行動規定の問題など、大変抽象的に、ある意味では何でも抽象的に触れられているんです。あるけれども抽象的。実効が上がるのかないのか、実態は違う、さっぱりわからない。こういう事態で、官房長官が今の最後のまとめの御答弁もありましたが、言葉はある、しかし具体的な内容はまだない。これからそれらの具体的な内容について、また同僚議員とともに詰めてまいりたいと思います。
 ありがとうございました。
瓦委員長 次に、伊藤忠治君。
伊藤(忠)委員 民主党の伊藤忠治でございます。
 私は、安保委員会だとか外務委員会は久しぶりといいますか、昔はレギュラーでございましたが、したがいまして、官房長官とは結構あれなんですが、防衛庁長官とは初めてでございまして、ひとつよろしくお願いいたします。
 それで、私もこの法案を一読いたしまして思いますのは、私にとって二度目の有事体験だとあえて言わせていただきます。
 私は戦前生まれでございまして、調べてみました。閣僚の皆さん、総理を含めまして十八人おみえになります。この中で、戦前派の閣僚は十名いらっしゃいます。ですから、私が戦前の体験をもとにしてお話をしても、御理解いただける部分も多いんじゃないかと思っております。
 戦前の体験といいますのは、私、子供時代でしたが、軍国主義体制でございました。現在は民主主義国家でございます。その民主主義体制のもとで、これからの有事法制をどうするかという国会審議に今参画をしているわけでございますから、感慨ひとしおであります。
 そういう点から考えますと、我が国は戦後歴史の大きな節目に立っている、こう思います。大きなことを言うようですが、政治家一人一人の歴史観、国家観、憲法観がそういう意味では問われているときではないのかな、こう思います。余り党派は関係ありません。私はそう思っているわけです。有事法制化に対するスタンスも、そのことによって大きく左右されるということになるんではないでしょうか。その場合、戦争を体験した者と戦後の人たちとは、戦争状態といいますか、戦時について、有事についての実感の差異が、これは当然出てまいります。
 私たちにしてみれば、どうしても、ああいう経験がありますから、二度とあのような国にはしたくないという思いが非常に強く働きます。これもせんないことでございます。ところが、皆さん御承知のとおり、戦前派は総人口の三〇%に減少いたしました。戦争を知らない世代が、十人中七人なんですね。だから、私たちが余り戦時中のことを言いますと、ああ古くさい、昔のことだというふうに聞き流される。そういう状況に、日本の社会も世代が交代しつつあります。だから、かえって戦前は有事とはどういうものであったのかと、その軍国主義時代の歴史を語り継ぐ使命が、いろいろな角度はありますが、むしろ私たち戦前派の使命ではないのかな、こんなふうに思うわけでございます。
 官房長官は戦前派でございましたか。防衛庁長官は戦後派でございましたか。私が申し上げたような気持ちについて、基本的なスタンス、これについてどういう感想をお持ちなのか、ちょっと冒頭にお聞かせください。
福田国務大臣 私は昭和十一年生まれでございまして、例の二・二六事件の年でございます。あのときが契機というようにも言われておりますけれども、いろいろな段階を追ってそこに到達したということでございます。
 しかし、あの戦争を経験して、私も子供でございましたけれども、民間人の一人として経験したわけでありますけれども、もちろん実戦をしたわけじゃございませんけれども経験はしている、そういう立場で、私はああいうような状況というものを二度と見たくないという、その思いである、これは委員と全く同じ気持ちだというように思っております。
 そういう意味で、今後この日本がああいうような悲惨な目に遭うとかいうようなことを私どもは期待しているわけでもないし、また、そういうことがあっていいというふうに思っているわけじゃないし、できるならばそういうことがない方がいいということを本当に心底から思っている、そのことにおいては、これまた考え方は共有できるところではないかと思います。
 しかし、今回お示ししているいわゆる有事法というものにつきましては、これは、もし何かあったときに我が国を、また国民をどのようにして自分たちの手で守るかという極めて基本的なところをこの法案でもってお示しをしているというところでございまして、およそ独立国家としてそのような法制がないということの方がむしろおかしいのではないか。
 そういうことがありますと、すぐ戦争をするんではないかといったような、そういう懸念というものをお持ちかもしれませんけれども、決してそういうことではないし、また、そういうことができないような仕組みになっているということも事実でございますね。現行の憲法のもとでもって、専守防衛でしか自衛隊を動かすことができないということでございますので、昔の、何でもできるという時代と全く違うんだ、そしてまた、昔と比べれば今は民主国家、これだけ民主主義が定着して、そして多くの国民が非常に多くの情報を毎日すぐ入手できる。こういう時代において、中央政府がそのような、この法制ができて、そして戦争をするとか、そういうふうなことを許されるかどうか。そして、国会の機能が、その前に、これをするかどうかということについて決定するということは手続を経るわけでございますから、国会が機能しなくなることがあるのかどうか。
 そういうことも考え合わせれば、この法案が、決して心配されるようなものでない、むしろこの法制を持つことは、我が国が我が国の手で、自分で守るんだ、そういう考え方を我が国国民が持つと同時に、諸外国に対してもそのような意思表示をするということが、むしろ抑止力というような形でもって、無益な戦争をしかけてくる、武力攻撃をしかけてくるという国が、これが未然に防げるのではないか、こういうようなことを考えて今回お出しをしているわけでございますので、御理解をいただきたいと思っております。
伊藤(忠)委員 何か官房長官に演説の場を与えたみたいなものですが、いや、実は私が申し上げたのは、一面的に私は言っているんじゃないんです。
 だから、戦前だって一般の国民は――軍部の皆さんは知りませんし、為政者の皆さんは侵略戦争をやりましたよね。はっきり言って日本は、攻められたというのはもう終戦間際ですから、それまでは外国へ攻めていったわけでしょう。だから、そのときの犠牲者の数よりも、もちろん兵隊も随分死にましたよ、民間人も死んでいます。そのときの数よりも、あの本土決戦で沖縄で戦った終戦間際の、そういう死者の方が多いじゃないですか、比較しますと。
 だから、国民は、国の政策が侵略戦争なのか、あるいは専守防衛でやっているのか、そのことは関係なく、例えばこの狭い日本の本土が戦場になった場合には大変なことになりますよというのも、有事の想定としてやはり議論が必要なんでしょうね。
 ですから、そのことを私は言いたいわけですよ。だから、戦前のような侵略戦争に突っ走るというんだったら、これは、あなた、国会議員も命をかけて、それぞれ判断しなきゃいかぬじゃないでしょうか。私はそういう極端なことを言っているんじゃないんです。
 だから、沖縄だって、兵隊さんが守ってくれるんだと信じてやったんじゃないでしょうか、本土決戦に向けて。ところが、実際に戦場を見たら、私は数字を持ってまいりました。軍人軍属の死者が九万四千百三十六人、住民の亡くなったのは九万四千人、合計で十八万八千百三十六人と厚生省が言っておりますね。これが史料なんです。こういう犠牲が出るんです。アメリカに原爆を落とされたんです。だから、アメリカとは、私はアメリカ文化で育っていますから、アメリカの文化は大好き。ところが、今の一国支配がだんだん強まってくるアメリカの政治は余り好きじゃありませんね、正直私は申し上げますが。だから、そのように、私たちは子供の時代に大変な爆弾の中をくぐり抜けて、どうにか生き延びて今日あるわけです。
 東京大空襲は皆さん御承知のとおり、時間がありませんから余り触れるわけにはいきませんが、大変な数、亡くなっているんですよ。三月九日の日の大空襲、B29が何と一日に百五十機飛んできたんです。実際に焼かれた数は四〇%、家屋が焼かれているんです。その一日で亡くなった死者が七万二千人、焼け出された都民が百万人なんですよ。これぐらい大空襲を受けて、日本の国は参ったというふうにならざるを得なかったんです。大変な犠牲を払ったんですね。
 だから、戦争というものは一たん起こって拡大をすれば、好むと好まざるとにかかわらず国民はそういう中に置かれるということだけはお互い頭に置いて、それを起こさないためにどうするかというのは難しいわけです。このために知恵を絞るのはいいじゃないですか。ところが、物すごくそれは難しいから、どういうふうにやればできるのかなという問題点を私も提起をいたしたいと思っております。
 私の生まれたところは県都でございまして、藤堂高虎、三十八万石の小さな町でございますが、城下町でした。平和な町ですけれども、これもこれから恐らく警報関係が出ますので、そのとき触れたいと思いますが、空襲警報発令といったときには遅かった。B29がもう爆弾を落としていったわけですよ。
 私は至近弾を受けました。一キロの爆弾を落とされますと、ちょうどこの予算委員会の半分ぐらいの穴があきますよ。余り近いときに直撃食らったりしたら音はわかりません。至近弾ですから、爆弾が落ちてくる音がようわかりました。それで一挙に吹き飛ばされまして、防空ごうへ走っている暇はなかったんです。シェルターみたいな立派なものじゃありませんからね。吹っ飛んだ。父親は徴用にとられるわ、母親は国防婦人会にとられるわ、子供五人がだんごになってそこで縮こまってどうにか助かった。燃え盛ってくる中を逃げるんですが、目の前で爆風で、少し前まで遊んでいた同級生が三人死にました。今でも私はその状況を覚えています。そういう状況なんですね。戦争の状況というのは、そういうことなんです。
 それが終わってからどうなったか。田舎町ですら、とにかく焼夷弾が続けざまにその後落とされまして、いっぱい焼死体が出ました。どうしたか。警察の方が全部焼死体を川っぺりに積みまして、これをだびに付すまではそのまま積んであるわけですね。私は住むところがありませんから、その横の防空ごうで一週間寝起きしました。こういう体験を経ているわけです。
 だから、結論で言いたいのは、非戦闘員も大変な犠牲をこうむるんだということですね。これは太平洋戦争の話です。第二次世界大戦はもっと犠牲者が多いんですが、そういう経験を経まして、日本は戦争が終わり、民主主義国家になって今日たどり着いているわけです。ですから、戦前の経験者というのは、そういう思いをみんなどうしたって持っていると思うんです。
 問題は、自力で日本は経済が復興したと言われていますが、経済の面では、なるほど大目に見てそうかわかりませんが、やはりアメリカの核の傘で日本の経済は復興を遂げたんです。これはそのとおりです。(発言する者あり)同調されて、残念ながらと、それはそういう思いだと思いますが。だから、朝鮮戦争があり、冷戦時代があり、安保体制のもとで日本はどうにか平和的に来られたんです。で、半世紀来ました。
 問題なのは、平和外交を基本に、国連中心の、世界各国、特にアジア諸国との信頼関係を築いてきて、やっとここへ来たと思うわけであります。そういう中でさらに、まあ有事の話の前提条件は、平和外交なり信頼関係をアジアあるいは世界各国、国連を中心にしてこれからも築いていかないといけないと思うんですが、そのためには、私ども残念に思っておるんですが、小泉さんが靖国神社に物すごくこだわられると思うんです。靖国神社にこだわって参拝をされますと、これはのどに刺さったとげのように関係諸国から批判が出ます。
 私は常々思っておるんですが、ああいうことをやるよりもその前に日本の国立墓地をなぜつくれないんだろうかなと。国立墓地をつくればもっと整理ができていくんじゃないかなと私は心を痛めているわけですが、この問題について官房長官のお考えがあれば聞かせていただいて、早急にそういう積極的な施策については完成のために進めていただきたい、こう思うんですが、いかがでございましょうか。
福田国務大臣 現在、私のもとで開催されております懇談会がございます。何人もわだかまりなく戦没者等に追悼の誠をささげ平和を祈念することのできる記念碑など、国の施設のあり方について、御指摘のような施設も含めて幅広い御議論をいただいております。これまでに五回ほど会合を開催しておりまして、現状の整理を行った後に、論点整理のための自由討議を行っている、こういう段階でございます。
 政府といたしましては、この懇談会の意見も踏まえて対応を検討してまいりたいというように考えているところでございます。
伊藤(忠)委員 いずれにしても検討を急いでいただいて、こういう過去の問題を引きずって将来に走るということはよくありませんので、ぜひとも対等な関係でやっていけるように、この施策については早急にひとつ解決を図っていただきたいと強く要望いたしたいと思います。
 いずれにしましても、冷戦が崩壊をいたしまして、今度は地域紛争や民族紛争が多発をするという時代になりました。その中で、アメリカの突出した軍事力というんですか、どうしてもこれは国益を考えておりますから、一国支配の傾向を強めていると思うんです。その米国の世界戦略、軍事戦略も、エリアからゾーンに見直す必要が出まして、対日政策も、日米安保を基本に据えながら、ここのところ大きく変わってきている、変化をしてきているんじゃないか、こんなふうに私は思います。それは、事実関係で気づくわけですが。
 日米安保の共同宣言が一九九六年の四月の十七日に結ばれまして、これはクリントン政権と橋本内閣の宣言でございますが、さらに一年後の九月の二十三日に、新ガイドラインと言われます日米防衛協力のための指針が結ばれまして、宣言されまして、それから二年置きまして、九九年五月の二十八日に周辺事態法がつくられました。これは御承知のとおりであります。それで、九九年の六月二日に、いわゆるACSA、物品役務相互提供協定が日米間で結ばれているわけであります。そして、二〇〇二年の今回の有事立法化であります。
 このように経過を見ていきますと、日米軍事共同行動の展開というのは、新ガイドラインを下敷きにして、周辺事態法、次いで武力攻撃事態法案は、一体的な関係にあると判断できると思うんです。言い方によっては、これはセットだと思うんですね。ガイドラインの中身を読みますと、我が国の法律としては、周辺事態法と今回の武力攻撃事態法とは、法律は分かれておりますが、根っこはガイドラインにありますから、結局これはセットである。
 それで、今回我が国としては、これまでの議論で余り出ていなかったと思いますが、トータルとしての、つまり、有事法制化を意識されながら今回この法案が提案をされてきたように私は判断をするわけでありますが、この点、官房長官、どうでありますか。
福田国務大臣 ただいまの御質問は、武力攻撃事態、今回の法律と、それから周辺事態との関係でございますか。そのことについて申し上げますが、武力攻撃事態と周辺事態とは、それぞれ別個の法律上の判断に基づくものでございます。我が国に対する武力攻撃事態が発生しているときに、状況によっては両者が併存することもあり得るというように考えています。
 周辺事態への対応としての米軍の支援は周辺事態安全確保法によりまして、また、武力攻撃事態への対応としての米軍支援は今後整備されます新たな米軍支援法制に基づいてそれぞれ実施されることになりますけれども、新たな法制の整備に際しましては、当該法制に基づく支援対象となる米軍の行動の目的等を適切に規定することによりまして、当該法制と周辺事態安全確保法のおのおのに基づいて、対米支援を含めまして行い得るようにすることは十分可能であると考えております。
 なお、いかなる支援も、もちろん憲法の範囲内において行われるものであります。
伊藤(忠)委員 官房長官の答弁はすれ違っているわけですよ。私が聞いたのは、新ガイドラインが大もとですねと。そこで決めたことを日本として国内法で整備をする必要が生じたわけでありまして、第一段階でやったのが周辺事態法であって、第二段階は今回の武力攻撃事態法なんですねという質問なんで、そうかどうかをお聞かせいただければいいわけで、同僚議員が指摘をしましたように、武力攻撃事態法の米軍との関係は、これは抜けているわけですからね。その辺は横に置くとしましても、新ガイドラインが大もとなんですねというこのことをお聞きしておるんですから、そうですか、そうでありませんかということをお答えいただければいいんです。
中谷国務大臣 当時の日米防衛協力のための指針というのは、冷戦が終わりまして、冷戦後の日米安保、世界が東西の両陣営の二つに分かれて戦う時代は終わって、それぞれの新しい世界秩序の中でいかに日米安保があるべきかという点で、平素からの日米安保の考え方、またそういった周辺事態における日米安保のあり方、また我が国が武力攻撃を受けた際の日米安保の考え方、それをガイドラインとしてまとめたものでございまして、一つの指針を示したものであるというふうに認識をいたしております。
伊藤(忠)委員 実際はそこから始まっていると私は思うんです。なかなか公の席上でそのことを政府の皆さんが公言をされるというのは非常に難しい問題でもあろうと思いますから次に移りますが、実際、そういう脈絡なんですよ。
 なぜかといいますと、このガイドラインを読みますと微妙に違いますものね。後でまた言います。つまり、海上の話、陸上の話とそれからミサイルの話は違っていますものね、新ガイドラインの表現は。明らかに違いますよ。だから、そういう点では、言うならば、こういうことをやらないかぬなということが、基本構想というものがはっきりしていまして、ここではきちっとそういうことを踏まえた上で結ばれているんですね。何か抽象的に言われているという文面じゃありません。
 ですから、そういう意味では非常に系統的に来ているんですよ。私はそう考えたものですからこういう質問をしておりますので、その点はひとつそのように踏まえていただきたいと思います。
 そこで、次に具体的な質問をいたしますが、基本計画が閣議で決定される前にはまず安全保障会議が開かれますが、この安全保障会議の前段になるんですか、専門委員会が開かれまして、ここで情報収集ももちろんやられるということであります。それで、それの検討と答申がなされまして、閣議決定に持ち込まれまして、対処措置が開始をされる。こういう手順になっているわけですが、問題は、これは日米安保条約第五条に基づいて新ガイドラインに規定されているわけですが、安全保障協議委員会、SCC、最高決定機関、その下に防衛協力小委員会、SDC、これは両国の軍人と官僚がそれぞれ構成員になっています。それから、その下に共同計画検討委員会というのがございまして、BPCというのですか、軍人だけで構成されております。これらは常設機関であるのかそうでないのかということを、まず一点お伺いします。
中谷国務大臣 そのガイドライン等によりまして、包括的なメカニズムと調整メカニズムの二つが設けられまして、先生の御指摘は、包括的なメカニズムの中で、我が国に対する武力攻撃に際しての共同作戦計画及び周辺事態に際しての相互協力計画についての検討を初めとする日米共同作業を実施するために、自衛隊及び米軍のみならず日米両国の政府その他の関係機関の関与を得て日米両政府に構築をされております。
 SCCというのが日米両国の防衛、外務の首脳から成りまして、これは2プラス2ですね。これは年に一、二度定期的に行われております。それから、防衛協力小委員会、SDCというのも両国の外務、防衛の局長級の関係者などから成るものでございまして、これも年に数回開催をされております。それから、自衛隊及び米軍の関係者から成る共同計画検討委員会、BPC、これもこの小委員会のもとに、先ほど言いました二つの計画を進めたりする協議の場でございまして、これも年に数回開会をされておりまして、おっしゃるように常設をされて、事務局等はございませんけれども、その必要性に応じて開催をされている会合でございます。
伊藤(忠)委員 そうしますと、これは常設機関なんですね。わかりました。
 そこで、日ごろから軍事問題を中心にした日米共同作戦のさまざまなことが議論を常設機関としてなされていると。すると、この法案に出ていたかと思うんですが、日米共同調整所というのは、これはこのスキームとは違うんですか。その辺をちょっとお答えください。
中谷国務大臣 それは、もう一つの調整メカニズムのことでございまして、ガイドラインにおきまして、我が国に対する武力攻撃及び周辺事態に際しておのおのの活動に関する調整を行うため、両国の関係機関の関与を得て平素から構築するとされておりまして、平成十二年九月に構築をされました。
 この調整メカニズムには、それぞれの外務、防衛当局の局長級の代表から成って日米地位協定の実施に関する事項についての政策的調整を行う日米合同委員会、並びに、局長級の代表から成って日米合同委員会の権限に属さない事項について政策的な調整を行う日米政策委員会、そして、課長級の代表から成る合同調整グループ、そして、制服組の代表から成り自衛隊と米軍の活動について調整を行う日米共同調整所から構成をされております。この中の機関でございます。
伊藤(忠)委員 わかりました。
 これは非常に包括的なことをやりますし、それから、この共同調整所というのは、具体的なことについて日米で協議を日ごろからやる、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますね。わかりました。
 次に、具体的な話になりますが、この委員会の審議で五月九日ですか、官房長官の答弁としてあったんですが、相手国がミサイル攻撃の場合、着手の段階で我が国が反撃する場合は、これは専守防衛と認定をする、個別自衛権の行使の範囲である、こういう趣旨の発言がありました。
 つまり、その答弁の心は、手をこまねいていればやられてしまう、だから、先制攻撃もやむを得ないという論理に通ずると思うんですが、そういう理解でよろしゅうございますか。
福田国務大臣 それは先制攻撃は、個別の自衛権としても認められないことでありまして、そういう意味ではございません。
 相手の日本を攻撃する意図が明示されているとか、そのときの国際情勢、もろもろの情勢を判断して、その上でどの時点が武力攻撃の発生の時点かというのは、その個々の状況によって違うと思いますけれども、理論というか理屈で言えば、ミサイルが日本に着弾したという以前においても、攻撃の発生ということが認められるということがあり得るということであります。
伊藤(忠)委員 ようわからぬわけですが、それは論理的にはあり得るけれども、実際そういうことをやれば、これは我が国の専守防衛の方針に反する、こういう意味なんでしょうか。その辺、ちょっとわかりませんので。
福田国務大臣 ですから、今申し上げましたように、その相手の意図が明示されるとか、国際情勢とか、その国と外交がどういう形になっているかとかいったような、いろいろな情勢を判断した上で判定、認定すべきものだと考えます。(発言する者あり)
伊藤(忠)委員 ちょっと発言がありますように、これは緊急というか、ゆっくりしておれないと思うんですよね。
 例えば、着手の段階というのは、もちろんミサイルのことですから、精度はその国の技術水準にかかわりますので、飛んでからどちらへ着地するのか、それはわかりませんよ。しかし、どんとこれは打ち出されてくるなというのは、もう確実にそれは着手だという話に、ある意味ではなるじゃないですか。
 問題は、それは我が国が察知できる探査の能力があるかないかという話はまた別ですよ。そのように判断を、着手という段階で反撃する場合もあるというふうな趣旨の発言でしたから、これは実際にそういうことになると、日本の自衛隊ができるのかな、できなければアメリカ軍に頼むのかなと率直な疑問を私は持っているわけで、ちょっとそのあたり整理してお答えください。
福田国務大臣 武力攻撃事態の認定というのは、国際情勢、相手国の意図、軍事的行動などを総合的に勘案するということですね。そして、我が国自身が主体的に判断する、こういうことになります。
 弾道ミサイル攻撃について、例えばその発生を未然に回避するための不断の外交努力に加えて、攻撃の発生を事前に察知するための情報収集とか、警戒、監視の強化ということが重要でございまして、米国からの情報提供も極めて有益であるというか、それの情報も必要であろうかと考えております、今現在のことでいえば。武力攻撃事態の認定にかかわる我が国の判断は、あくまでも、先ほど申しましたように、我が国の主体的に行うことでございます。
伊藤(忠)委員 何か執拗に言うようですが、そうしますと、この着手の段階で我が国が反撃する場合は専守防衛の範囲だという趣旨の九日の官房長官の答弁は、これはあったことになるんですか、なかったことになるんですか。これはどういうふうに理解をすればいいんでしょう。
 具体的に出られたものですから、新聞にも書かれました。私もここで聞いていまして、あれ、こういう見解があるのかなと思って、非常にそういう意味では、具体的なケースに対する具体的な答弁でございましたから私は質問しておるんです。その点、はっきりしてくださいよ。いわゆる認定の抽象的な判断を聞いているんじゃありません。
福田国務大臣 私は、武力攻撃がどの時点から発生したかということについてお話ししているつもりでございます。
伊藤(忠)委員 武力攻撃とは、着手の段階から武力攻撃とみなすということなんでしょう。そうしますと、相手が着手した段階から武力攻撃という認定をすれば、我が国としてはその態勢をつくらなきゃいかぬじゃないですか。その後、そういう準備態勢に入るわけですね。これは、おそれというんですか、おそれじゃなくて武力攻撃そのものでしょう。すると、その態勢に入るわけですよ。
 だから、問題は、そこで議論になりましたのは、どこへ飛んでいくかはともかくとして、ミサイルのことなんだから、すぐそれは火を噴いてばあっと発射されるわけですよ。そのときに対して万全を期さなきゃいかぬという議論があって着手の段階というものが出てきたものですから、私は率直に質問しておるんですが、それはそういうことでいいんですね。着手の段階で武力攻撃と認定をするということなんですね。
福田国務大臣 ですから、先ほど来申し上げているのは、着手をしたときに、相手の、何で着手をしたのかというその理由があるわけですね。それは、相手が日本を攻撃するぞという明示があるということであれば非常にわかりやすいということは言えますね。そういうことであれば、これから攻撃するといって、攻撃のためのミサイルに燃料を注入するとかその他の準備を始めるとかいうことであれば、それは着手というように考えていいのではないかと思います。日本に対する武力攻撃への着手という意味であります。
伊藤(忠)委員 そうしますと、着手と認定をして武力攻撃というふうに認定をした、そこまではいいわけですね。そうすると、さらにそのままじっとしていれば飛んできますよ、ミサイルが、そのままにしておけば。どうするんですか。そのときには、こちらの反撃というのか、対応措置が要るじゃないですか。そのときは我が国はどうするんですか。着手の段階で武力攻撃と認定するわけですから。
中谷国務大臣 まず、着手のときの、憲法でどう考えるかということでございますが、これは、我が国に対して急迫不正の侵害があって、その侵害の手段として我が国の国土に対してミサイル攻撃等による攻撃が行われた場合に、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするというふうにはどうしても考えられないのではないかと思います。そういう場合には、そのような攻撃を防ぐために、万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、例えばミサイル基地等による攻撃を、防御するためにほかに手段がないと認められる限り、ミサイルの基地をたたくということは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものであるというふうに考えます。
 どういう手段があるかということにつきましては、現在、技術的には研究をいたしております。米国も、MD、いわゆるミサイル防衛ということで、ロシアなどに協議をして技術的に開発研究をいたしておる最中でございますが、我が国の場合はまだ研究の途上でありまして、これを開発して配備するという決定には至っておりませんけれども、研究はしている最中であります。
 なお、テポドン級のミサイル等につきましては、米国自身もまだ技術的にそれを撃ち落とすレベルに達していない、まだ途上であるというふうに認識しております。
伊藤(忠)委員 やはりこれはおかしいですね。結局、ミサイルに着手して、こちらが武力攻撃だと認定して、それで間髪入れず相手の方が飛んでくるわけですよ。それに対してこちらが、官房長官の言う言葉じりをとらえるわけじゃありませんが、検討しておる暇はないわけで、そのときにはどんといかにゃいかぬわけだよ、これ。それは、先制攻撃というのは専守防衛からしたら禁止されていると言いながら、防衛庁長官が言われるのは、来たらこちらはやはりやらにゃいかぬと言うんでしょう。ただ、技術的に、TMDとかなんとかという話があって、それは今後研究しますけれども、考え方としてはそういうことなんだと言われるから、実際に研究している間にそういう事態が起こった場合には、自衛隊には技術がなければアメリカに頼むのかどうするのかということを考えなきゃ、日本はやはりまぐれにでも当たるかわかりませんぜ。百発百中で当たるミサイルを持っている国ならそれは大変ですけれども、そうでない国だったら、たまには当たるかわかりませんよ。
 だから、それは、時差の関係なんですが、事実上は先制攻撃になるんじゃないですかということを僕は一番初めに聞いたわけですよ。そうしたら、それは、いや、我が国としてはそういう考え方はとらないと、実態で話していったら、防衛庁長官の言うような、一緒のことになるじゃないですか。
 では、どうするんですか、これは、そういう事態になったら。具体的に説明してくださいよ。でないと、抽象的な議論では、なかなかこれは通り過ごせないですよね。僕はそう思うんです。そのときには、自衛隊はそういう足の長いミサイルは持ってないでしょう。そうしたら、米軍に頼むんですか、これは。持っているんですか。持ってないでしょう。持てないことになっておるじゃないですか。だから、それは、持つようになるのか、持てないから米軍に頼むのか、その辺はきちっとしてくれないとだめですよ。
中谷国務大臣 これは、我が国に武力攻撃が発生した場合、着手ですから、我が国はこれに即応して行動しつつ、米国と適切な協力のもとに、防衛力の総合的、有効的な運用によって、極力早期にこれを排除するというふうにいたしておりまして、先ほどお話があったガイドラインにおきましては、日米の役割分担を含む対処のあり方を記述いたしておりまして、各種の作戦につきましては、先生のお話にありましたメカニズムに沿って、米軍は自衛隊の行う作戦を支援するとともに、打撃力の使用も含めて、自衛隊の能力を補完するための作戦を実施するというふうにされておりまして、このような場合には、日米安保体制の枠組みに基づく日米共同対処ということがまず考慮をされるべきであるというふうに考えております。
伊藤(忠)委員 早い話が、通訳をしますと、そういう場合は、これはやはりアメリカに頼むというふうに私は理解をいたしました。
 次、行きます。自衛隊法百三条の物資の収用業務従事命令。これは違反をした場合が書いてなかったと思うんです。やはり違反のケースは出てくると思うんですね、自衛隊法の業務命令違反です。その場合には、もちろん、結果的に違反のやむなきに至ったというケースは、意外と安全性の確保が問題になってそういうケースが生まれると思うんですが、これは罰則はありましたっけ、災害救助法はたしか罰則規定があったんですが、この法案にはなかったと思うんですが、どうでしたか、その辺。
中谷国務大臣 この法案には罰則規定はございません。
伊藤(忠)委員 災害救助法にあって、この緊急の事態のときに罰則規定がないというのは、どうもこれはバランスを欠いているのじゃないかというのが、一点目の私の意見でございます。
 二点目は、災害救助法とのバランスをとらなきゃいけない。災害救助法では、懲役六カ月、五万円以下の罰金になっていまして、自衛隊の方は、これは、出動待機命令発出後逃亡した場合には、七日以上のケースで逃亡した、来なかった場合ですが、懲役最高三年、あるいは、現場で上官に反抗したような場合は最高七年、こういう自衛隊としての処罰規定がございます。
 戦前のことを言うとよくないんですが、戦前は、敵前逃亡すると銃殺刑、軍法会議にかけられて死刑というようなケースもあったわけです。僕は子供のころに聞いていました。その後調べましたけれども、非常にこれは厳しいんですね。
 だから、今の自衛隊にそういうことを、僕はそんなこと言ってないでしょう、そんなことは言ってないんですが、災害救助法では民間人が懲役六カ月、五万円以下の罰金という処罰規定が設けられておりながら、有事法制の本法には罰則規定がないというのはいかがなものなんでしょうか、こういうことでございます。
中谷国務大臣 まず最初の、業務従事命令についてでございますけれども、これは自衛隊法百三条の第二項でございます。
 この二項につきましては、地域を指定するわけでございますが、一項地域はどちらかというと戦闘行為が行われる状況が高い場所で、自衛隊が行動する場所でありますが、二項地域というのはいわゆる後方支援的なことをする地域で、まだ通常の市民生活とか業務も生きている状況が高いわけでありまして、そのようなときに医療とか土木建築工事、または輸送を業とする者に業務従事命令をかけて自衛隊の任務遂行に協力していただくという観点でございます。
 これは、当該業者の専門的な知識や経験、能力を用いて能動的かつ主体的に行っていただくことが必要なものでありまして、また、当該業者が通常行っている業務をそのまま行っていただくということを基本としているものでありますので、我が国が武力攻撃を受けているような事態においては自発的かつ積極的に協力していただけるものだと期待をいたしております。
 罰則を設けなかったのは、罰則をもって強制的に業務に従事をしていただいたとしても、十分な命令の効果が期待できずに、また積極的な協力の意思のない方が業務に従事する場合には、かえって自衛隊の任務遂行に支障を及ぼしかねないということにもなると考えるからでございます。
 それから、昔の刑法との関係でございますが、敵前逃亡した場合にどのような手続で処罰されるかということでございます。
 それにつきましては、自衛隊法百二十三条第一項の規定によりまして、「正当な理由がなくて職務の場所を離れ三日を過ぎた者又は職務の場所につくように命ぜられた日から正当な理由がなくて三日を過ぎてなお職務の場所につかない者」につきましては、「七年以下の懲役又は禁こに処する。」ことになっております。
伊藤(忠)委員 次に移ります。
 二条六号と二十二条の一項に関連しますが、警報発令と避難指示なんです。
 時間がだんだん迫ってまいりましたのでもう簡潔に聞きますが、戦前は防空法で細かく決められておりました。だから、灯火管制だとか防空監視だとか、あるいは防空ごうを、細かく、どこに建設するかというものを全部決められていたわけです。これは防空体制をつくりました当時の法律がございますが、本当に細かく決められております。だから、私はこれを一口に要約して言うんですが、灯火管制だとか、あるいは防空ごうといったって、普通の爆弾を想定して防空ごうをつくるというようなことの時代じゃありません。ミサイルを想定したらシェルターだと思うんです。そういうものをそれぞれのところにつくっていく方針を当然決めることになると思うんですが、随分お金がかかります。抽象的な表現ですが、そういうお考えでこのように明示されているのかどうか、この点をお伺いいたします。
福田国務大臣 政府といたしましては、国民の保護のための法制の整備は極めて重要な課題であると考えておりまして、この法案に基づきまして、警報発令、救助、応急復旧等の必要な諸措置に関する法制を整備するということにしております。避難のための施設や食料、物資の備蓄等につきましては、今後の国民の保護のための法制の整備に当たって検討していかなければならないものと考えております。
伊藤(忠)委員 官房長官はなかなか具体的な答弁はなされないと思うんですね。一貫されていまして、抽象的に、二年間の間でつくるということで皆やられているんですが、それでは本当に困るわけで、同じく二条の六号で、生活関連物資の価格安定、配分という表現になっているんです。
 だから、私は非常に辛口で申し上げますが、これは旧内務省が大体考えていた、羅列しておりました項目とどうも流れが似ていますし、これは三矢計画そのものをある意味では丸写しみたいな感じがするんですよね。非常にこれはわかりにくい。
 例えば、生活関連物資の価格安定といいますけれども、統制経済を考えているんでしょうか。今は自由主義経済じゃないでしょうか。(発言する者あり)統制しなきゃやれないという声がございますが、それは一定期間やるのかどうするのか。統制経済にしようと思ったら、関連法案を、これは特例措置でもって、言うなら特別措置法でもってストップをかけるのか、全部切りかえるのか。何かそういうふうな法律の制定を含めて、しかもそれが法体系としてどうなのか、立法政策上どうなのかということを考えないと、ただこれだけが羅列されてきて、この法案が通った、そうしたら、後は自由にやらせていただくわというのじゃ、これは閣僚の皆さんというよりも官僚の世界ですよ。
 僕は、官僚の世界は自由にやれると思うのです。大体内務官僚がつくったのというのは、戦前のこれを見ましても大変だと思います。何センチまで決まっていますよ、防空ごうの広さは、一人当たり。大変なところまで決めているわけで、だから、農水省がこの危急存亡のときに食糧確保のためにどうやればいいのかということをあの三矢計画のときに検討したというのをうちのある同僚議員が本会議で言っていましたよ。
 どういう発想が出てきたか。今ゴルフ場は全国に千五百カ所ぐらい。それで、そのゴルフ場を全部ストップして芋畑にかえるというわけ。そして、芋を生産して国民に食べてもらう食糧にするというのは、この発想は戦前の発想ですよ。何とまあおくれている発想かなと僕は思いましたけれども。我々はゴルフ大好きですから絶対反対でっせ。ゴルフ場をつぶすの絶対反対。命をかけて私反対しますよ、そんなの。
 だから、そういうこっけいな冗談話が出るようなことが当時は真剣に考えられていたということがわかりまして、いや笑ったんですが、笑っちゃおれないと思うんです。だから、そういうふうなことを、もっと方向性、ああ具体的な中身はこうだなとイメージできるようなものを出さないと、めくら判押せというのと一緒じゃないでしょうか。僕はそう思うんです。
 続いて申し上げます。
 指定公共機関の話なんですよ。日本銀行の話が同僚議員から出ておりました。代執行の話は、これも同僚議員から指摘はなさいました。もう一点私は申し上げたいんですが、だから、それは臨時にそういういろいろな規制法案、運用を一定の期間ストップするようなものをつくるのか、そうでなければ、法律そのものを根本から組みかえるのかという質問をさせていただくのは、こういう理由によるからです。
 日本銀行の人事は、戦前はこれはもう国家統制のもとにつくられておりましたから、公定歩合も政府の認可事項、政府に相談してうんと言ってもらわなきゃできなかったわけです。これは大蔵大臣の監督のもとにあったんです。
 戦後の日本銀行は、これは政府から独立をするというので、独立性と自主性が一番大事、このことが据えられておりますから、人事も国会同意人事なんですよ。こういうものを全部否定してやっていくことになるのか。日本銀行法というのはそのままにしておいてどういう方法でこの有事体制をつくられようとしておるのか、このことを明らかにしていただきたいと思います。
 もう一点、NHKになります。NHKは国営通信みたいなものですから、国がかなり注文を出すと思います。
 大正十五年に設立されました。国家管理、統制のもとに、原稿の事前提出とチェック、これは中身も全部事前の検閲を受けないと放送はできなかったわけであります。それで、当時の工務局長をやられておりました、あの世界柔道で有名な松前重義さん、この人はこういう戦争は反対だというので、東条英機さんの前に出て私はこの大東亜戦争は反対ですと言った。そうしたら東条さんが烈火のごとく怒って、君みたいな非国民は戦場へ行けというので、二等兵でもって前線に送られました。戦後、帰ってきて初代逓信院総裁になられました。
 この松前さんという方は、無装荷ケーブルの世界で唯一の発明者でございます。だから、日本の搬送ケーブル、搬送通信というのは、画期的に先進的に進んだわけでございます。そういう工学博士の、工学博士も何も関係ないですな、戦争中は。戦争に反対だと言ったら、君はけしからぬというので結局そういう目に遭われたんですが、戦後は名誉回復されて、よかったと私は思っておりますけれども。
 そのようなNHKの使命がありますが、これは、日本銀行と同じように、法律そのものを組みかえていくのか、それとも臨時措置でもってこれをどのようにやるのか、この点は最低でも言ってもらわないと、めくら判を押せということに等しいわけです。
 それから、通信の場合、サイバーテロがありますよ。これは怖いです、皆さん。今、これはIT戦略会議で検討されるということを私は聞いておりますが、こんなのは、私はインターネットおたくじゃありませんから詳しいことは知りませんが、パソコンがあったら、優秀な人間だったら、インターネットの網というのはクモの巣ですから幾らでも侵入できますが、どうですか、皆さん。LANだったら入り口で阻止せないけませんが、これは大変な、やり方によっては防ぎようがないというようなことですから。
 そういうものも、本来ならば柱に据わらないかぬわけでしょう。ところが、肝心のところが抜けておって、どうでもいいと言ったら怒られますが、並べてある、列記しているだけだというんじゃ、大変これは、私は、検討をするには、それこそ超法規的な権限を総理大臣に与えるのかなと思いますよ。
 これは与党さんの方からも指摘が出ていました、総理大臣に非常大権を与えるということも考えていいじゃないかと。それぐらい、すっきり系統的に考えたら、そういう発言がやはり出ますよね、有事法制というのはそういう一面がありますから。しかし、憲法上そのことは可能なんでしょうかねということだって大議論になるわけです。
 ですから、そういう議論にまで発展をいたしますので、この点だけは、臨時にストップをかけて、言うならば戦時ですから、そのようにやっていくのか、それとも今の法律を全部変えるのか、その点はどうなんですか。
福田国務大臣 いろいろなお話ございましたので落ちのないようにしたいと思いますけれども、武力攻撃事態におきまして、最初に御指摘あったのは、生活関連物資などが不足したり、それらの価格が高騰するというようなことも想定されるのでありますけれども、このため、国民生活及び国民経済に及ぼす影響を最小となるようにするために、法案の第二条第六号は、対処措置として、「生活関連物資等の価格安定、配分その他の措置」を定めているものでございまして、これは、例えて言うなれば、生活関連物資等の標準価格の決定、割り当てまたは配給などが想定されるわけであります。
 いずれにしましても、その具体的な内容につきましては、現行法との関連も勘案しながら、この法制整備の過程で検討することになっております。
 この法制整備、今後、国民との関連においていろいろ整備していかなければいけないということでありますけれども、この法制整備に関しては、第二十一条に基本方針というものがございます。この基本方針にのっとって行われるわけでございますし、また、この法律そのものが超法規とかそういうようなことにならないようにするための法制だというように考えておりますので、御懸念のことはないようにしなければいけないし、また、そのように努めてまいる所存でございます。
 また、日銀がどうするのかといったようなお話がございました。これは、一つの例として申し上げれば、武力攻撃事態が国民経済に及ぼす影響を最小とするために、日本銀行が例えば通貨の円滑な供給の確保などの役割を担うということも想定されております。これも、具体的には法制整備の中で明らかにするということになっております。
 また、日本放送協会のことについてお話ございました。特に人事等については、これは日本放送協会の方で考えることでありまして、そのことにこの法制で触れることはないものであります。特に、報道の自由というものは、言論の自由それから報道の規制ということは、制限をするということは全く考えていないところでございます。
伊藤(忠)委員 念押しで結構ですが、代執行は指定公共機関に対してやられるわけですよね。この代執行というのは、言うことを聞かなければ、あんたどきなさい、国がやりましょう、直接指導いたします、かわってやりますということになるわけですが、この点はどうですか。
福田国務大臣 この法案におきましては、国民の保護のため緊急を要する場合など特に必要がある場合に、別に法律で定めるところによりまして、内閣総理大臣がみずから、または関係大臣を指揮し、地方公共団体や指定公共機関が実施すべき対処措置を実施することができる、このようにしております。具体的にどの機関がどのような対処措置について代執行などを行うことになるかにつきましては、今後、国民の保護のための法制等の整備に当たって検討してまいります。
 指定公共機関に対しましては、代執行を行う場面は極めて限られたものと想定しておりますけれども、武力攻撃事態という状況下におきましては、万全の措置を講ずるためにこうした仕組みが必要であるというように考えております。
伊藤(忠)委員 教育問題についてお伺いします。
 教育は触れられていないんです、この法案の中に。ずっと私見ましたけれども、ないんですね。教育は一番大事じゃないですか、そういう意味では。一生懸命になって行政が、自治体が一体になってやっていても、育ってくる人たちがあちらを向いていたら、これはあんた、どうにもならぬでしょう。だから同僚議員もかなり教育には時間をとって言っていたんですよ。だから、空間の話じゃないんです、私が言いたいのは。人づくりは、人間をどう育てていくかということの一番重要な話でしょう。教育は何で入っていないんですか。まずそれから大臣にお聞きします。なぜ教育は入っていないんですか。これは別枠ですか。
福田国務大臣 今回、武力攻撃事態というものに対処する、その基本方針また具体的な方策をここでお示ししているわけでございまして、お話の教育ということになりますと、こういうものに対する考え方をどうするか、こういう考え方になるんでしょうか。そういうことであれば、これは不断の努力と申しますか、その理念、考え方、自分の国は自分で守るんだといったようなこととか、一致協力してやらなきゃいけないこともあるんだといったようなことを教育の中にどうやって取り込んでいくかということになろうかと思うのであります。
 今回の法案につきましては教育ということは特に触れておりませんけれども、これはあくまでも武力攻撃事態、それに対してどういう対処をするかということでございまして、これは今後また考えなければいけないものかとも考えます。
伊藤(忠)委員 何か、教育は考えていないんだと言われれば、ああ、それは外してやっていくのかなという気もこちらはしますけれども、普通、常識で考えたら、やはり教育は関連するよなと思いますよね。どうです、文部大臣。
遠山国務大臣 この法律は、日本の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保を目的とするということでございまして、なかんずく子供はむしろこの法律によって守られるべき最も大切な存在であると考えております。
 教育につきましては、子供たちに、基本法の理念に基づきまして、国際社会に生きる民主的、平和的な国家社会の形成者として必要な資質を育成していくことは極めて重要なことと考えております。そのために、現在でも、小学校、中学校、高等学校を通じまして、世界平和の必要性や日本国憲法の平和主義の原則などについて指導することとしておりますし、また同時に、子供たちが我が国の防衛を含みます安全保障の問題などについて理解をし、国際平和と人類の福祉に寄与する日本の役割について考えることができるよう指導することとしているところでございます。このことは現在もこれからも、しっかりと教えていく必要があると思っております。
伊藤(忠)委員 お聞きしましたが、ただ私は、そんな程度で済むのかなということをどうも危惧いたします。指導要領は十年ごとに改訂しますよね。教科書改訂とこれは関連していますよね。その間は文部省の通達でずうっとやってきた。
 だから、言うならば、全体の方針がそのように決まりますと、法律は変えないけれども、指導要領、これに関連させる通達でもってやはりじりじりとやっていかないと、態勢を築こうというんですから、何か、私のところは関係ない、安全保障はどうだという一般的な勉強だけでいいんだというようなことで済むのかなと、私は逆に心配をいたします。答弁は結構ですが、私はそのように思います。そうのうてんきではおれない、私はこのようにどうも思えるわけであります。
 最後になりますが、現憲法には、国家の戦争状態というか緊急事態に対処できる明文規定が存在しないというか、その部分は確かにありません。だから、憲法を変えてやるかどうかというのは議論がありますが、一貫性からいうならば、やはり集団的な自衛権というのは国連のもとで扱われるのが僕は正しいと思いますよ。そういうことが整理されていない、憲法上は。というなら、現憲法はやはり検討する必要があるんじゃないかと思ったりいたします。
 それで、周辺をどう守るかというのは自衛隊の役目でしょう、沿岸警備なりいろいろな点は。国内の治安は、これは警察ですよね。ですから、専守防衛は自衛隊、国内は警察、集団的自衛権を発揮するという外の話は、これは国連機能強化等、国連軍創設とも関連をしていくんですが、未来は。そのように本来は整理をすべきであろうと、乱暴な言い方ですが、私はそう思っているわけです。いずれにしても、明文規定がありません。それは、我が国の軍国主義の歴史、侵略戦争の歴史の反省から生まれた民主憲法であったからそういう規定がないんだ、私はこのように理解をいたします。
 民主憲法の三本柱は、言うまでもありません、一つは戦争放棄であり、二つは主権在民であり、三つは基本的人権の確立だと思うんです。有事法制は、だから、その範囲の中で、専守防衛、まあ個別自衛権というんでしょうか、専守防衛と、それから基本的な人権擁護、この範囲内で立法化しなければならないという一つの苦労ですね。私はそうだと思うわけです。
 一方、日米安保条約が存在をしていまして、アメリカの軍事戦略と、日米軍事同盟というのは、やはり世界戦略とどうしてもこれはかかわってまいります。現状は皆さん御承知のとおりでありまして、だから、小泉さんが沖縄に行かれましても、ほとんど日本の基地が集中している沖縄の県民の切実な気持ちがわかっていながらも、十五年以内には返還してくれということが、小泉さん、なかなか言えない。本来小泉さんは、あらゆる改革を進めると言う人ですから、本当にその勇気があるならば、あそこで、沖縄の基地は十五年以内に返還するよう私は強く言いますと本当は言ってほしかったんですが、だんだん小泉さんの改革のトーンも弱くなってまいりました。
 それは、アメリカにしてみれば、沖縄はまさにキーストーンであります。沖縄を失うということは、世界戦略そのものにとって大変な打撃を受けるわけですから、そういう日本の気持ちというか要求は、アメリカはなかなか聞き入れることができないという状況で、大変これは苦労するんでありましょうが、日本の気持ちというのはきちっとアメリカに言わなければいけないだろう、このように私は思います。
 そして、ここまで言いますと自民党の諸君にやじられるかわかりませんが、艦隊を海に浮かべて本土に上陸するなんということは、実際の話、考えられぬと思うんです。ミサイルだと思うんです、私は。テロだと思うんです。冷戦後に多発しておるようなそういう不測の事態にどう対応するかという我々の体制というものを考えていくということがより大事なんではないか、このように思っております。
 だから、この法案は、私が述べましたとおり、現行法制の体系の根幹にかかわる問題が全く抽象的でありまして、オーバーに言えば白紙の状態でもあります。だから、有事だといって超法規的な行動は許さない、基本的人権を侵害するものであってはならぬというのが民主党の方針なんです。
 だから、その方針に照らしてみますと、とてもじゃないがこのざる法に賛成だというわけにいきませんから、もし自民党の皆さんがここはこういうふうに言うんだというんだったら、やはりきちっと、それはもっと詳細に法案をつくり直してやってもらわないといかぬ、こんなふうに思います。
 以上です。
瓦委員長 次に、中塚一宏君。
中塚委員 自由党の中塚でございます。
 法案の審議に関連をして、瀋陽市の領事館事件のことについて伺いたいと思います。
 といいますのも、外務省のこの「総領事館の対応に関する問題点」というのを拝見しましたときに、「意識面の問題点」というところで、「緊急事態への対応に関する意識の希薄さがある。」ということを外務省みずからもそういうふうに指摘をしているわけですね。
 先週ですか、官房長官から、武力攻撃事態対処法に言う武力攻撃事態ということについて見解が発表されたわけですけれども、そういった中にも、「ある国が我が国への攻撃のため部隊の充足を高めるべく予備役の招集や軍の要員の禁足、非常呼集を行っているとみられること」というふうなことがありまして、やはり、在外公館というのは、この武力攻撃事態というものを認定するに当たって、非常に重要な目とか、そういった用途というのを持つはずだと思うんですね。
 そういう意味においても、今回の事件、まさにこの有事法制三法案を審議しているときにこういう事件が起こって、そしてあのようなことになってしまったという、非常に残念だし、ああいう事件、事態が起こっているときにこういう法案を審議して、果たしてこれが仮に成立したとしても本当にちゃんとワークするのかなというふうにも思わざるを得ない部分というのがあるわけです。
 そして、外務大臣にお伺いしますが、この領事館への侵入事件、ジュネーブ条約違反ということはもうたびたびおっしゃっておられますが、ウィーン条約違反であるということをおっしゃっていますけれども、主権の侵害ということについての御認識というのはおありでしょうか。
    〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕
川口国務大臣 ジュネーブ条約とおっしゃったのはウィーン条約のおつもりでおっしゃられたんだと思いますけれども、ウィーン条約でこれは、在外公館、領事機関の不可侵ということが三十一条に決められておりまして、その不可侵権の違反である、そういう認識でございます。
 それで、主権というのが何かということですけれども、これは、例えば領土、領空、領海、それに主権が及んでいるということで考えますと、厳密により詳しく申し上げますと、あの総領事館のあるところ、あそこの主権は中国にあるわけでございまして、その部分について、領事館があってそこが不可侵であるという、日本側が不可侵権を持っている、それを侵されてはいけない、そういうことでございますので、日本の主権が侵されたという認識は持っておりません。
中塚委員 最近の国際法上の学説ではそういうふうな言い方もあるようですけれども、かつては、やはり在外公館といえば主権の及ぶ範囲だというふうに言われていたわけですね。
 そして、その侵入というものを阻止しなかったということについて伺いますが、その領事館前で何か騒ぎが起こっているというふうな認識であったということがこの報告書の中にも書かれています。ただ、そうであったとしても、領事館には領事館の警備員というものがいるわけですよね。ですから、武装警察官が領事館の敷地内に立ち入ったその時点において、やはりそれは退去してくれというふうに言うべきではなかったのか、そして、騒ぎを起こしている人を中に入れて、それは領事館内の警備員なりなんなりが身元を詮議するべきではなかったのかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
川口国務大臣 瀋陽の総領事館には警備員が二名おりました。この二名とも中国人でございますけれども、たまたま、その事件が起こりましたときには、一人は公用で外に行っておりまして、一人しか残っていなかったわけです。後でビデオを見ましたら、その一人は二人の人が中に入っていったのを追いかけていきまして、結果としてゼロになってしまった、そういうことでございました。
 それから、騒ぎを聞きつけて副領事が一人、査証担当の副領事が出てまいりまして、門のところに行きまして、その後は皆様がビデオでごらんのとおりでございますけれども、彼が出ていったときにはもう武装警官も三名の女性も門扉のところまで下がっていて、直ちにその人たちが中に入っていたということには気がつかなかった、そういうことでございました。
中塚委員 次に伺いますけれども、もう事件が起こってかなり日がたっている、もう二週間ぐらいたっているわけなんですが、今、日中間で交渉をされているということなんですけれども、この交渉というものが何をテーマに行われているのか、そして、どうしてここまで交渉に時間がかかっているのか、そのことについて、いかがでしょうか。
川口国務大臣 この件につきましては、国際法上、人道上の問題があるわけでございまして、私ども日本政府といたしましては、この二つの観点から、冷静かつ毅然と中国側と協議をしているという状況に今ございまして、特に人道上の問題を最優先に考えているわけでございます。これは、中国側と今お話をしている最中のことでございますので、その具体的なことについては、まことに恐縮ですけれども、お答えをするのは差し控えさせていただきたいと思います。
中塚委員 交渉というのは、やはりこっちから何かの話をしなきゃいけないわけですね。単に頼んでいるだけだったら、それは交渉でも何でもなくて、お願いをしているということであって、交渉をするということは、例えば、その中には大使の召還であるとかあるいはODAの見直しの問題であるとか、いろいろなことが含まれてしかるべきだし、もう当然だというふうに思うわけです。
 冷静かつ毅然とというふうに言われるわけですけれども、その交渉の中で、そのような条件といいますか、こちら側から何か積極的に主張していることというのはあるんでしょうか。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、国際法上の問題、人道上の問題があるわけでございまして、我が国政府としては、人道上の問題を最優先に話し合っておりますけれども、もちろん国際法上の問題も重要でございますので、それも話し合っているわけでございます。
中塚委員 不退転の決意で臨むとかあるいは冷静かつ毅然とという言葉が出るわけですけれども、では、今度は、どういうふうになればこの事態は収束をすることになるんでしょうか。どういうふうな事態になったら、これから日中両国は手を携えてこれから先のことについてもどんどんと友好関係を発展させていこうということになるんでしょうか。
川口国務大臣 中国と日本は友好国であると考えております。日中の友好関係を大局的に損なわないような形で、人道上の問題、国際法上の問題、そういった点をただいま冷静かつ毅然として中国側と協議をいたしておりますので、どういう形になったら日本側はそれでいいのかということについては、これも、恐縮でございますけれども、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。
中塚委員 では、必要最低限、どういうふうになればいいというふうに外務大臣はお考えですか。その五人が第三国に対して出国をするとかいうこと、政府の幹部が昨日テレビなんかでも発言をされているわけなんですが、外務大臣としては、どういう形になれば人道上の問題も解決をする、そしてまた国際条約上の問題も解決するというふうにお考えなんでしょうか。
川口国務大臣 これは本会議でも申し上げさせていただきましたけれども、人道上の問題につきましては、何人であっても、いかなる場合でも、みずからが迫害を受けるおそれのある国、地域に送還されてはならないという要請が満たされるということが重要であると考えております。
 先ほど申しましたように、国際法上の問題、人道上の問題について今話し合いをしている最中でございますので、これ以上のことは差し控えさせていただきたいと思います。
中塚委員 それでは、もう一つ伺いますけれども、日本にある某国の大使館で同様の事態が起こった場合、日本の官憲、機動隊というものについては、これはやはり大使館、領事館の中まで侵入することがあり得るというふうにお考えでしょうか。
川口国務大臣 在外公館は不可侵権を持っているわけでございますので、同意を与えられた場合は、その場合にはそういうことがあり得るかと思いますけれども、それがなければ入らないということでございます。それから、ウィーン条約によれば、火事等の場合については同意があったとみなされるというふうな規定もございます。
中塚委員 交渉中ということですから、詳しいお答えはいただけなかったわけですけれども、ここまで時間がかかっているということ自体、本当に冷静は冷静なんでしょう。冷静だから時間がかかっているんだと思いますよ。けれども、本当に毅然とした態度がとれているのかどうかというのは、本当に疑問に思います。
 私は、この問題はやはり二つあるというふうに思いまして、そういう点で、まず第一点目の緊急事態に対する心構えの問題ということですね。広い意味では防衛ということにもつながっていく問題だというふうに思います。
 そしてもう一つは、やはり自由を求めて日本の領事館に駆け込んできた人というのがいたわけですね。日本国憲法には、前文で、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようとしている国際社会において名誉ある地位を占めたいということを書いてあるわけじゃないですか。だから、そういう日本国憲法の前文の精神をも踏みにじる行為であるというふうに言わざるを得ないというふうに思います。一刻も早く、本当に毅然と対応をされているのかどうかわかりませんが、事態を収拾する、とにかく、何といっても原状回復ということが最優先だろうというふうに思います。
 次に、この法律について伺っていきたいというふうに思いますが、武力攻撃事態というふうなことで、どういう事態が武力攻撃事態なのかということについては、多分に政策判断というふうな観点があるんだろうというふうに思います。ただ、政策判断であったとしても、それにはおのずと限度というか類型というものがなければいけないわけであって、同様の趣旨の法案として周辺事態法というのがあるというふうに思うんですね。
 この周辺事態法あるいは武力攻撃事態法、そして昨年はテロ特措法というのが審議をされましたが、おのおの、やはり我が国の安全保障の基本方針というか、その大原則というのを定めないままに議論をしてしまっているので、本当に木に竹を接いだような形になってしまっているというふうに思います。
 政府の解釈では、個別的自衛権は行使するけれども集団的自衛権は行使をしないということになっているわけですね。つまり、自分の国は自分で守るということはもう宣言しているわけですね。それで、それを宣言しているということであるならば、本来はこの武力攻撃事態法というのをもっと早目に整備しなければいけなかったわけなんですよ、この法案かどうかは別にして。
 ただ、これよりも前に周辺事態法というのができてしまっていて、これも本当に、政府の方からすれば、集団的自衛権の行使ではないというふうに言われるのかもしれないけれども、もう集団的自衛権行使ぎりぎりのものだろうというふうに言わざるを得ない部分があるというふうに思います。
 その周辺事態法について伺いますが、周辺事態法では、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」ということを周辺事態というふうに言っているわけですね。ここで、「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える」と言う以上、これはやはり、日本の自衛権あるいは自衛権に関すること、自衛に関する事態であるというふうに考えるのが極めて普通だと思うんですけれども、防衛庁長官、いかがでしょう。
中谷国務大臣 周辺事態の定義の問題でございますが、これは、委員会の質疑の途中でこれが修正になったわけでありますが、この「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等」とは、これは平成十一年の四月二十六日に統一見解が出されておりまして、これは周辺事態を例示的に丁寧に説明したものであり、周辺事態の定義ではないと。周辺事態の定義とは、あくまでも、我が国周辺の地域における我が国の安全と平和に重要な影響を与える事態でありまして、我が国に対する武力攻撃に直接関連づけて定義をされているわけではございません。
 そして、この「そのまま放置すれば」という言葉でありますが、これも、我が国に対する武力攻撃に至るおそれがあるとしておりまして、そのときの状況が直ちに武力攻撃につながると言っているわけではない、そのまま放置すればということで、好転する場合もございます。
 したがいまして、基本的に、周辺事態というのは、努力によって我が国の武力攻撃事態にならないように対処をする、後方支援をするということでございまして、周辺事態が武力攻撃と直接関連していないことは明らかでありまして、武力攻撃の発生を含む自衛権発動の三要件を満たした場合にのみ行使できる自衛権の問題とは言えず、このような御指摘は当たらないものだと考えております。
中塚委員 だっと今御説明があって、武力攻撃事態に至る至らないというお話がありましたが、周辺事態というのは、我が国の平和と安全に関係のある事態であることは間違いないわけですね。我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であって、我が国の周りで起こる事態ということですね。その事態のときに米軍が活動するのを後方地域で支援するということが趣旨だということだと思うんですが、この米軍に対して支援ができる周辺事態というのは、我が国の平和と安全に関係をすることでなくてはいけないわけでしょう。そこはどうなんですか。
中谷国務大臣 我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態ということであります。一方の武力攻撃事態というのは、武力攻撃が予測をされるおそれのあるということでありまして、武力攻撃がありそうだということでございますが、この「重要な影響を与えるという事態」につきましては、これは、まだどうなるかわからない、影響を与えるという意味だと私は思っております。
中塚委員 だから、どういう事態を周辺事態と認定するのかというのは、それは政策判断の問題だと思うんですよ。政策判断の問題だと思うんですが、我が国の平和と安全に重要な影響を与えるということが書いてある以上、米軍が自分の関心で行動をしているときというのは含まれないわけですよね。そこはどうなんですか。
中谷国務大臣 あくまで、我が国として、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であります。
中塚委員 ということになりますと、やはりこれは我が国に関連する問題ですよね。我が国の平和と安全に重要な影響を与えるかもしれない事態なんだから、我が国の自衛とももちろん密接に関係をする事態であるから米軍の活動に対して支援をするんでしょう。違うんですか。
中谷国務大臣 「影響を与える」という言葉のニュアンスでありますが、私は、予測があるというまだ前の段階で、割と今後の推移に応じて事態が変わってくるという意味があるというふうに考えます。
中塚委員 さて、それで、今回の武力攻撃事態法というのは、まさに、「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保」ということが書かれているわけですから、自衛権あるいは自衛ということにかかわる問題ということでよろしいわけですね。いかがなんでしょうか。
中谷国務大臣 武力攻撃事態というのは、まさに、我が国の自衛権にかかわる問題であると認識しております。
中塚委員 武力攻撃事態が自衛権にかかわる問題であって、あと、周辺事態というのは、武力攻撃ではなくても平和と安全にはかかわる事態だということですね。
 ということになりますと、やはり二つの事態というのはかなり重なるところがあるはずなんですね。さっきも申し上げましたが、極東において、米軍が米軍自身の関心によって行動しているときに、日本の平和と安全に関係がない行動を米軍がしているときに、それを後方支援するということはあり得ないわけでしょう。あり得ないわけですね。それで、日米安全保障条約というのは、日本の安全、極東の平和のための条約であるということですね。ということは、米軍自身の関心の行動に自衛隊がつき合わないということは、周辺事態というのはほとんど武力攻撃事態と重なり得るということなんじゃないですか。
中谷国務大臣 それは、米国の政策判断によりまして、この周辺の地域において行動することがあろうかというふうに考えます。しかしながら、それにすべて日本が支援をするというのではなくて、周辺事態というのは我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であると認定をして、その範囲において活動をするわけでございます。
中塚委員 政府は、周辺事態法の米軍への支援の根拠というのは自衛権ではないというふうにお考えになっているわけですね。そもそもテロ特措法にしたって自衛権の問題ではないということですから、周辺事態法についても、これは自衛権の問題ではないということなんでしょうか。それとも、自衛権の問題であって、米軍を支援するのは自衛権の問題だということなんでしょうか。それとも、そうではないというふうな解釈なんでしょうか。
中谷国務大臣 通常、自衛権というのは武力の行使を国として可能にするという権利だと思いますが、この周辺事態安全確保法においても、この二条二項において、周辺事態における「対応措置の実施は、」「武力の行使に当たるものであってはならない。」とされておりまして、自衛権の発動ではございません。
中塚委員 そういう解釈をされているわけですけれども、昨年のテロ特措法のときにも申し上げましたし、この周辺事態法でも同じことだと思うんですが、後方地域支援といっても、やはりこれは自衛権の行使ということになると。ただ、そこで日本の平和と安全ということで限定をすることによって、我々としては、これは個別的自衛権の問題ではないかというふうに考えているわけです。
 当時、連立政権があって、集団的自衛権を行使できないという政府解釈のもとで、やはりこれは個別的自衛権の延長線上の問題として考えないとこういった事態に対して自衛隊が米軍を支援することはできないというふうに考えて、この修正もお願いをしたという経緯があるわけですね。
 そして、今回、武力攻撃事態法が提出されたわけですけれども、おそれということまで含まれるということになっています。このおそれを含むということで防衛出動命令が下令し得るということになっているわけなんですけれども、これは、要は、米軍に依存をしなくても自衛隊だけで対処ができるという法的根拠ができたということではないんですか。どうでしょう。
中谷国務大臣 これは、当然、アメリカと情勢等を話し合いながら実施をいたしますけれども、あくまでも、このおそれのある場合につきましては、我が国として、我が国の防衛の見地で、そのようなおそれのある状況であるというふうに認定をするわけでございますので、基本的に、米軍の事情とか米国政府の事情とは関係なくて、我が国政府として、我が国の防衛の見地から見て判断をする事態でございます。
中塚委員 いや、ですから、今回、法案に、武力攻撃事態ということについて、おそれという概念を盛り込んだわけですね。おそれということを盛り込んだということで、これで防衛出動命令も下令し得るわけですね。
 では、そのおそれとか予測というのは政策判断の問題であるとしても、我が国周辺で何かが起こったときに、その政策判断は別にして、おそれということをもって防衛出動命令が下令できるというふうな法律を今度つくるわけですね。そうですよね。
 そうなりますと、これは、米軍に依存しなくても、自衛隊だけでこういう周辺事態にも対処できるということになっていくんじゃないんですか。つまり、周辺事態というのはほとんどが武力攻撃事態に含まれることになるんじゃないですか。
中谷国務大臣 今の自衛隊法は昭和二十九年にできましたけれども、もともと、その七十六条によりまして、おそれのある事態の場合に出動できることになっておりましたので、この法律と直接関係があるわけではございません。
中塚委員 それでは次に伺いますが、おそれとか予測とかいう事態が含まれているわけですけれども、その段階から米軍と共同行動というのはとれるんですか。
中谷国務大臣 米国と共同対処をするというのは武力攻撃が発生した以降でございますが、その以前の対処につきましては、今後米側と協議をいたしまして、その支援のあり方については整備をしていくということになっております。
中塚委員 おそれあるいは予測という時点での共同行動ということについては、これはいわゆる皆さん方がおっしゃるところの後方支援ということだけなのか、それとももっと突っ込んだ共同行動というものがとれるということなのか、そこはどうなんでしょう。
中谷国務大臣 ガイドラインに基づきますと、我が国に対する武力攻撃のおそれや、予測の事態、おそれの事態といった、我が国に対する武力攻撃が差し迫っている場合には、「日米両国政府は、事態の拡大を抑制するための措置をとるとともに、日本の防衛のために必要な準備を行う。」ということとなります。
 この準備のための措置とは、具体的には、日米両国において情報交換及び政策協議を強化するとともに、日米間の共同の調整メカニズムの運用を早期に開始いたします。日本は、来援基盤を構築し、維持します。また、日米両国政府は、情勢の変化に応じて、情報収集及び警戒監視を強化するとともに、日本に対する武力攻撃に発展し得る行為に対応するための準備を行います。さらに、「日米両国政府は、事態の拡大を抑制するため、外交上のものを含むあらゆる努力を払う。」ということといたしております。
 この予測及びおそれの事態において、我が国に対する武力攻撃はまだ発生をしておりませんので、これに自衛隊及び米軍が武力の行使をもって共同で対処することはあり得ないわけでございます。
中塚委員 官房長官、周辺事態法というのは自衛権の問題ではないというふうにずっと答弁をされてきている。皆さんの言われる後方地域支援しかしないというふうに言ってきたわけですけれども、おそれ自体でも自衛権は行使はできるわけですよね。
 そういう意味で、やはり今までの安全保障の考え方というのが整合性がないというふうに言わざるを得ない、その辺をやはり交通整理するべきではないかというふうに思うんですが、いかがでしょう。
福田国務大臣 おそれの段階で自衛権を発動できるというお話でございますけれども、それはできないんです、おそれの段階では。
 それは、自衛権を発動するのは、自衛権発動のための三要素というのがございますね。あれが満たされないといけないということになっております。
中塚委員 周辺事態法で米軍を後方地域支援するということは書いてあるのに、今度の武力事態対処法では、米軍との支援関係とか共同対処ということについての規定がないわけですね、別に整備をするということになっていますけれども。
 自分の国は自分で守るという点でいけば、本来、この武力攻撃事態対処法案というのは我が国だけのことをしっかりと整備するべきであって、それとは別に、やはり米軍との協力関係というものをきちんとつくっていく必要があるはずだというふうに思うわけです。
 というのも、やはり周辺事態法、武力攻撃事態法というのが、すごくこの事態の区別というのがつきにくいし、わかりにくいし、周辺事態が武力攻撃事態へと発展することもあるというふうにおっしゃいますし、また、周辺事態と武力攻撃事態というものが併存することもあるというふうにおっしゃるわけですけれども、なかなか日本人にもわかりにくいし、そうなると周辺のアジアの国の人たちにもわかりにくいだろうし、ひいては、ひょっとしたら米軍の人だってわからないかもわからないわけですね。それもひとえに、そういう今までの安全保障の基本政策というものが、基本方針というものが打ち立てられていないということが一番大きな問題であるというふうに思います。
 そういった意味において、安全保障の基本方針というものをしっかりと整備することによって、周辺事態法というのはもう武力攻撃事態法の中に吸収をすることができるようになるのじゃないかというふうに思うわけですが、そこは防衛庁長官、いかがでしょうか。
    〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕
中谷国務大臣 先ほども定義のところでお話ししたとおり、周辺事態というのは、我が国に対する武力攻撃に直接関連づけて定義されているわけではなくて、我が国に対する武力攻撃の発生を含む自衛権の三要件を満たした場合にのみ行使できるとされる自衛権の問題ではございません。
 この周辺事態と武力攻撃事態は、それぞれ別個の法律の判断に基づくものでありまして、周辺事態が起こっているときに同時に我が国に対する武力攻撃が発生した場合には、状況によっては両者の事態が併存することはあり得ると考えられるわけでございますが、周辺事態である場合に必ず武力攻撃事態が起きるわけではないと考えておりますし、両者が併存する場合においても、自衛権の発動としての武力の行使は、あくまで武力攻撃が発生した事態において自衛権発動の三要件を満たした場合にのみ行うことができるものでありまして、周辺事態に対応して我が国が武力を行使することができないというのは当然でございます。
中塚委員 周辺事態において我が国は武力を行使することができないというふうにおっしゃったわけですけれども、後方地域支援というものが自衛権の行使に当たらない、武力行使ではないというふうに言い続けているその解釈自体が、安全保障の方針自体がおかしいんじゃないかということ、そのことを申し上げているわけなんですね。
 それで、私どもとしては、自衛権というのは、個別とか集団とかいうふうに分けるのではなくて、自衛権は自衛権であって、ただそのかわりに、それは抑制的に使うべきであるというふうに考えているわけです。だからそこで、直接攻撃かあるいはそれに至るおそれが高い事態に限ってそういった自衛権を行使するべきであるというふうに考えておりまして、日本が直接攻撃をされた場合とか、あるいはそのおそれが極めて高い場合には、同盟国である米軍と、それはみっちりと共同対処をするべきなんだろうというふうに思うわけですね。そういう考え方について、防衛庁長官はいかがでしょうか。
中谷国務大臣 それでは集団的自衛権になってしまうわけでありまして、我が国の場合には、憲法の解釈で自衛権の発動というのは、急迫不正の侵害がある、またほかに手段がない場合、また必要最小限であるということで自衛権の発動といたしておりまして、個別自衛権でのみ対応するということになっておるわけでございます。
中塚委員 その考え方が、周辺事態法と武力攻撃事態法と、余りにもややこしくし過ぎているんだろうというふうに思うわけです。
 他国を侵略しないのは、それは当たり前の話ですよ。自衛隊が海外に出ていくというのは、私どもは、国連決議があった場合だけに限るべきだというふうに考えているわけですね。それは、自衛権の問題ではない、国連決議によって出ていくんだということで、日本の主権の問題ではなく国連平和活動に参加するんだというふうに考えているわけですね。
 だから、集団的自衛権を認めろというふうに言っても、そのことによって海外へ出ていけとか、戦争に行くんだとか、そういうことを言っているんではなく、個別、集団を分けないで、我が国を防衛するときのためには同盟国である米軍とともにしっかりと協調行動をとるべきではないかということを申し上げているわけです。
 防衛庁長官はまさに自衛官として活動されていたわけですし、私も日米関係は大変重要だというふうに思います。そういった中にあって、やはり戦時に同盟国との間でしっかりとした協力関係というのができない。これは周辺事態法ですとか、これは武力攻撃事態法ですとか、これは予測です、おそれですみたいなことを話し合っている暇だってないと思うんですよ。
 だから、もっとしっかりとした安全保障の基本方針というものを打ち立てておくべきではないのかということ、そのことをお話をしているわけですが、いかがでしょうか。
中谷国務大臣 おっしゃっている趣旨はよくわかります。これも憲法の解釈の問題でありまして、できる点、できない点、いろいろと議論があるわけでございますが、政府の見解といたしましては、従来の国会でお答えした見解でございますが、やはりだれが読んでも、できる点、できない点が整理できるように、また、よりしっかりとしたものになるように、今後さらに憲法に対する議論を深めていくべきだというふうに考えます。
中塚委員 そのややこしい日本政府の考え方の延長線上に、最後に外務大臣に一つ伺いますが、戦時におけるACSAの問題というのがあるというふうに思うわけです。これにしても、やはり日本がこの独特のというかへんてこな自衛権の解釈をとっているがためにややこしい話になるわけですが、戦時ACSAについての御見解というのはいかがでしょうか。
川口国務大臣 米軍の行動の円滑化に関する法制の整備に関しまして、その内容としては、この法律に規定されていますように、米軍が日米安保条約に従って武力攻撃事態を排除するために必要な行動が円滑かつ効果的に行われるために実施する物品、役務、施設等の提供というのがあるわけでございまして、この具体的なあり方につきましては、政府全体の問題として、関係省庁間で協議の上、米側とも協議をしていくことになると考えます。
中塚委員 これから協議していくということはわかるんですけれども、今私が申し上げたような自衛権の問題というのをクリアしないと、この協定というのは改定をしていく過程においてますます話がややこしい、もう木に竹にさらに今度は木を接ぐような結果になるんではないかということを申し上げまして、私の質問を終わります。
瓦委員長 次に、木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 五月八日の当委員会での質疑に続きまして、武力攻撃事態法第二条第六号対処措置イ(1)についてお聞きをいたします。
 二転三転がありましたが、五月八日の官房長官の答弁は、このイの(1)の武力攻撃はおそれや予測を含まない概念だった、そういう答弁でありました。
 それでは、「武力攻撃を排除」、この概念についてお聞きをいたしますが、「武力攻撃を排除」、これもおそれも予測も含まない、そういう概念だと聞いてよろしいんですか。
福田国務大臣 そのとおりでございます。
木島委員 では、さらにお聞きします。
 ここには、「武力攻撃を排除するために必要な」、こういう言葉になっております。この概念も、おそれも予測も含まない概念だとお聞きをしてよろしいですか。
福田国務大臣 この文には、予測、おそれも入っております。
木島委員 非常に大事な概念ですから、確認しますよ。
 「武力攻撃を排除するために必要な」、この概念には予測やおそれも入る、そういう答弁ですか。
福田国務大臣 これは、その下にございますように、「部隊等の展開その他の行動」、この段階においては、準備活動がありますね。武力攻撃に備えるための準備行動というものがありますので、予測をする段階も入るということでございます。
木島委員 そうしますと、「武力攻撃を排除するために必要な」というこの形容句は、前回私も聞いて、官房長官も答弁しましたが、まず何よりも、「自衛隊が実施する武力の行使」、この言葉にかかるんですよ。そうすると、大変なことですね、この答弁は。「武力攻撃を排除するために必要な」、この概念の中におそれや予測を含むという今答弁が出ましたが、そうしますと、先制自衛ができるということにつながりますが、それでいいんですか。
福田国務大臣 「武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使」という表現は、ここで言う武力の行使が、憲法上認められている自衛権の発動の三要件を満たした場合における武力の行使であるという趣旨を表現したものであります。本条に言います武力の行使は、予測やおそれの事態といった武力攻撃の発生以前の段階で実施されるということはありません。
木島委員 それは前回もお聞きをいたしました。しかし、この対処措置のイの(1)の武力の行使という概念には、官房長官が今答弁したように、武力行使の三要件を満たした場合の概念なんだとおっしゃいましたが、そんなことはこの文章に書いてないでしょう。それは政府の一貫した答弁ですし、どこからそういう答弁が出てくるかと聞いたら、自衛隊法八十八条を持ってきているわけでしょう。しかし、この対処措置、イの(1)には、そんな修飾語はついていないじゃないですか。そんな修飾語はつかずに、「武力の行使」という生の言葉が出てくるじゃないですか。そして、武力行使を修飾している言葉、「武力攻撃を排除するために必要な」、この修飾句の中におそれや予測も含むと今答弁しました。そうしたら、間違いなく、武力の行使はおそれや予測でできるんだ、これはこれまでの政府答弁の根本的な転換、事前自衛反撃、予防自衛反撃、これができるんだというとんでもない解釈になってくる。それでよろしいんですかと聞いているんですよ。
福田国務大臣 よろしくないんです。(木島委員「よろしくないんでしょう」と呼ぶ)はい。これは、憲法上認められない行動をすることはできないんですね。憲法上認められるのは、三原則は、自衛のための発動三要件、これが満たされていなきゃいけない、そういうことになっております。
木島委員 そうしたら、私は、この法律のつくり方はとんでもないことになると思うんですよ。文理解釈からいったら、武力の行使はおそれや予測の段階ではできないんだという政府の一貫した答弁があります。今もここでやっています。前回もやりました。しかし、文理解釈からはそれが出てこないということになるんですね、「武力攻撃を排除するために必要な」という概念は予測、おそれも入るんだとなれば。武力行使は予測やおそれの段階ではできないんだ、日本政府としては、日本の国は先制自衛はできないんだ、先制攻撃はできないんだということは、では、この武力攻撃事態法からは出てこない。辛うじて、これまで政府が答弁してきた、武力行使の三要件があるからできないんだ、そういう答弁になるんですか。
津野政府特別補佐人 この武力攻撃事態法の第二条の定義でございますけれども、これは対処措置についての定義が定められているわけであります。
 そして、この対処措置というのはどういうことを意味しているかということが、ここの柱書きで「第九条第一項の対処基本方針が定められてから廃止されるまでの間に、指定行政機関、地方公共団体又は指定公共機関が法律の規定に基づいて実施する次に掲げる措置をいう。」ということにされておりまして、そのイといたしまして「武力攻撃事態を終結させるために実施する次に掲げる措置」ということで、(1)で「武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使、部隊等の展開その他の行動」というふうに定義されているわけであります。
 当然、その法律の解釈といたしまして、まず、憲法の従来からの政府の解釈というのは当然の前提になっているわけでありまして、このところが、法律で憲法の規定を変えることはできないわけですから、したがいまして、この部分につきまして、武力攻撃が発生していないにもかかわらず、武力攻撃のおそれとか、あるいは武力攻撃が予測されるような事態において、自衛隊が武力の行使をするというようなことは当然含まれていないわけでございますので、そこは文理解釈のみならず、これは当然、憲法の規定とか、それから、もちろん、柱書きのところにあります「法律の規定」といいますのは、自衛隊法の規定等もございますけれども、そういったものを含めて総合的に解釈するのが当然のことであるというふうに考えております。
木島委員 憲法の規定の解釈から、ここの「武力の行使」には、おそれや予測の段階ではできないということが導き出されるんだというんですね。
 それだから私は、大体、憲法九条一項、二項の解釈を、とんでもない文理解釈を政府は続けてきたではないですか。軍隊は持てないと明文の規定が書いてあるにもかかわらず、いや、あれは戦力ではないんだ、だから軍隊ではないんだという、言ってみれば、国際社会には通用しない理屈を立てて政府は憲法解釈してきたではないですか。
 憲法九条には、先制自衛ができないなんという言葉は書いてないんですよ、一言も。だから、私はこの文言を詰めているんですよ。この武力攻撃事態法の対処措置、一番肝心かなめのイの(1)、これは自衛隊がやる行動をここで律しているわけです。その自衛隊のやる行動のまず第一が、「武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使」この言葉でしょう。その「武力攻撃を排除するために必要な」という概念の中に予測やおそれの場合も含むんだ、そういう答弁がここで飛び出してきたら、これは、では憲法解釈、幾らでも政府変えますよ。そうしたら、この「武力の行使」は先制自衛もできるんだということになる。
 大変な答弁が飛び出したということだけ、きょうは私はここで指摘して、そんな解釈は到底認めるわけにいかない、そんな解釈の余地があるようなこの法律には断じてこれは賛成できないということを重ねて指摘しておきたいと思います。
 次に、対処措置イの(2)についてお聞きをいたします。
 これは、米軍に対する有事ACSAを規定したものだと思われます。これまで我が国の法律では、平時における日米共同訓練、そしてPKO、さらには三年前につくられた周辺事態においてのみ米軍への物品、施設、役務の提供が認められてきたわけであります。有事ACSAは認められてこなかったわけでありますが、この第六号、対処措置イ(2)、これは、今度はこの有事ACSAを、我が国に対する武力攻撃があったときにもできる、いわゆる有事にも拡大しようとするものであると解釈されますが、官房長官、それでいいんですか。
津野政府特別補佐人 お答えいたします。
 このイの(2)の、これはあくまで武力攻撃事態を終結させるために実施する措置でございますから、「武力攻撃事態を終結させるために実施する次に掲げる措置」で、かつ「アメリカ合衆国の軍隊が実施する日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に従って武力攻撃を排除するために必要な行動が円滑かつ効果的に行われるために実施する物品、施設又は役務の提供その他の措置」ということで、この武力攻撃と申しますのは、二条の一号の定義で我が国に対する外部からの武力攻撃と言っておりますので、まさに我が国に対する武力攻撃が起こった際の、我が国に対する武力攻撃がある際の関係の規定でございます。
木島委員 そんなことを聞いているんじゃないんですよ。だから、この条文は、今まで我が国法律上認める規定が全くなかった有事ACSAを規定したものなんですねということだけですよ。
 これは、官房長官、答弁してください。――官房長官、こんな、基本じゃないですか。そんなの、すぐ答えられないんですか。
福田国務大臣 日米安保条約第五条に基づきまして米軍が武力の行使を行うのは、我が国に対する武力攻撃が行われた場合に我が国を防衛するためでございますが、武力攻撃以前の段階において必要な準備行動をとる場合には、武力の行使に至らない活動が安保条約及び地位協定の範囲内で行われることになります。
 また、武力攻撃発生の前後を問わず、そのような米軍の行動を円滑かつ効果的なものとするために必要な諸措置を我が国がとることは、日米安保条約の目的の範囲内であると考えております。
木島委員 中身はこれからじっくり私が聞こうとしているんですよ。だから、これは有事ACSAを規定した条文ですねということだけ聞いたんですよ。解釈はこれから逐一聞こうとしているんですよ。
 だから、有事ACSAを取り決めようとする条文ですね。イエスかノーかだけで答えてくださいよ。――法制局なんか関係ないよ。解釈はこれから聞くんだから。有事ACSAですよ。外務大臣。全然こんなのだめだよ。
津野政府特別補佐人 お答えします。
 有事ACSAと申しますのは、米国と日本の間でこういった武力攻撃事態が起こった際に、いわゆる協定、いわゆる条約のような形で取り決めを結ぶのを有事ACSAというんだろうと先生はおっしゃっておられるんだと思いますけれども、それにとどまらず、これは当然……(木島委員「いや、有事において米軍に物品供与できるというのが有事ACSAじゃないかと聞いているんです。それを書いているんだろうと」と呼ぶ)協定ではなくて、我が国の法律とかそういうものに基づいてでもそういうことを整備していくということを含んだものでございます。
木島委員 全然だめですね、こんなのは。要するに、有事における米軍への物品、施設、役務の提供ができる、それを初めて法律に書き込んだ、そういうものだ。そうでしょう。(発言する者あり)いや、これから書くんでしょうが、まず基本法で書いたんでしょう。
 では、外務大臣、イエスならイエスとだけ答えてください。
川口国務大臣 有事ACSAを排除するものではないと。
木島委員 もっと素直に答弁してください。そういうものじゃないですか。
 周辺事態法において、周辺事態において行動する米軍に物品等を供与できるというのは、周辺事態法にちゃんと書いてありますよ。しかし、有事、戦時に戦闘行動する米軍に物品を供与できる法律は、いまだにないんです。これが最初なんですよ。
 そこで、聞きます。これから解釈なんですよ。
 この第六号「対処措置」イ(2)、ここにも「武力攻撃を排除」という言葉が使われております。これは、現実の武力攻撃の発生の場合だけですか。それとも、おそれや予測の場合を含むのですか。
福田国務大臣 この対処法におきましては、武力攻撃事態の中に武力攻撃のおそれ及び予測の事態が含まれておりますが、このような武力攻撃発生前の事態において、米軍は、武力攻撃事態対処法に言う我が国に対する武力攻撃を排除するために必要な行動をとり得るかどうかということについて、日米安保条約第五条に基づいて米軍が武力の行使を行うのは、我が国に対する武力攻撃が行われた場合でありまして、武力攻撃が発生する以前の段階において米軍が必要な準備行動をとる場合には、武力の行使に至らない活動を安保条約及び地位協定の範囲内で行うこととなっております。先ほど答弁したとおりです。
木島委員 いや、それは、言葉の一つ一つの定義をきっちり聞き出してから私は全体を聞こうとしているんです。
 単純な質問です。このイの(2)も「武力攻撃を排除」という言葉があるから、これにはおそれや予測は含むんですか、含まないんですかという質問ですよ。それだけですよ、まずは。答えてください。
中谷国務大臣 この武力攻撃事態における対米支援措置がどのようなものになるかにつきましては、今後、整備の中で検討されていくものでございますが、我が国に対する武力攻撃が予測される場合または武力攻撃のおそれのある場合など、我が国に対する武力攻撃が発生していない段階で、米国の武力行使と一体化するような支援措置や我が国としての武力の行使が行い得ないということは、当然のことでございます。
 他方、武力攻撃が発生した場合は、我が国防衛のために共同対処をしている米軍に対して、武力の行使と一体化していると見られる支援を含めて必要な対米支援を行うことは、我が国の自衛権行使の三要件に合致する限り、憲法上も条約上も何ら問題がないものだと考えております。
木島委員 いや、ですから、現に武力行使をしている米軍に対して、それと一体化しているような対米支援がまさにできるのかできないのか私は質問しようとしているんです。しかし、まさにできるのかできないのかを、この(2)の三行の法律、ここから読み取らなきゃいかぬのですよ。だからこそ私は、「武力攻撃を排除」という言葉にはおそれや予測は含むのか否か、まず質問したんですよ。まだ答えてないんですよ。
 では、その次に私が聞こうとしていること、「武力攻撃を排除するために必要な行動」、こういう言葉を使っていますから、では、この「武力攻撃を排除するために必要な行動」、この言葉にはおそれや予測は含むのか含まないのかということを二番目に私は聞くんですよ。事前に予告しておきますよ。
 なぜかというと、よく見てください、この法律を。(1)の自衛隊の行動を律する条文には、よく聞いてくださいよ、「武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使」という言葉になっているんです。ところが、こっちの米軍に対する有事ACSAを規定した(2)には、「武力攻撃を排除するために必要な行動」という言葉になっているんです。「武力の行使」じゃなくて、こっちは「行動」という言葉に膨れ上がっているんです。だから私は、この「武力攻撃を排除するために必要な行動」の中にはおそれや予測は含むのか含まないのかということを、まずは文理解釈から聞こうとしているんですよ。まともに答えてください。
福田国務大臣 ただいまの御質問の「武力攻撃を排除」、ここでは予測、おそれは入っておりません。しかし、「必要な行動」、これには準備活動があるわけですね、ですから予測、おそれが入っている、こういう考え方であります。
木島委員 はい、結構です。
 それでは、米軍のこの場面での「武力攻撃を排除するために必要な行動」、これには予測やおそれは含むというんですから、いつからできるのかという質問です。おそれや予測の段階からできるんですね。
中谷国務大臣 これは、武力攻撃発生の前後を問わず、そのような米軍の行動を円滑かつ効果的なものとするために必要な措置を我が国がとるということで……
木島委員 措置じゃない。措置を聞いているんじゃない。必要な行動、米軍が必要な行動をいつからできるのかという質問です。その後のことは次の質問で私します。
 だから、まずは米軍の行動ですよ、「武力攻撃を排除するために必要な行動」というのは。だから聞いているんですよ。米軍の行動を書いているんですよ、ここは。だからおそれや予測の段階でできるのかと聞いているんですよ。日本がやる対処措置はその次です。私の質問もその次に来るんです。
川口国務大臣 米軍が我が国に対する武力攻撃を排除するために必要な行動を開始する時点というのは、個別具体的な状況で決まってきますので一概には申し上げられないわけですけれども、この武力攻撃事態対処法に基づく対処措置の対象となる米軍による我が国に対する武力攻撃を排除するために必要な行動が、この武力攻撃事態が認定される時点よりも前に開始されることはないということでございます。
木島委員 おかしいんじゃないですか。これまでの答弁で、「武力攻撃を排除」、この言葉には予測やおそれは入らないという答弁が出ました。しかし、「武力攻撃を排除するために必要な行動」、これには予測、おそれ、要するに準備段階ですね、これも含むと答弁が出ました。そして、この行動には恐らく、「武力の行使、部隊等の展開その他の行動」と、非常に包括的な広い概念で行動というのは使われているんでしょう。そうしたら、今の川口外務大臣の答弁はおかしいじゃないですか。全然成り立たぬですよ。予測、おそれの段階での米軍の行動は入らない、文理解釈からそんな解釈は出てこないじゃないですか。どうなんですか。日本語としてもそんな解釈、出てこないんじゃないですか。本当にそんなことでこの法律を皆さんつくり、提案してきているんですか。
中谷国務大臣 安保条約の第五条には、「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」というふうに書かれております。この「共通の危険に対処するように行動する」ということでございますが、この第五条に基づき米軍が武力の行使を行うのは、我が国に対する武力攻撃が行われた場合に我が国を防衛するためでありますが、武力攻撃以前の段階において必要な準備行動をとる場合には、武力の行使に至らない活動が安保条約及び地位協定の範囲内で行われることになると考えております。
木島委員 よくわからない答弁ですね。安保条約第五条というのは、我が国施政下にある米軍の基地とか自衛隊の基地とか我が国のいろいろな施設、要するに我が国施政下にあるという修飾語で限定がついているんです。これは、前回私、大問題にいたしましたが、我が国施政下というのは我が国領土、領空、領海内ですよ。それに対する攻撃があったときにのみ安保条約第五条が動き出すと限定がついているんです。前回、私、聞きましたね。領海外にあっても、それが組織的、計画的な外部からの武力攻撃と認定されれば、領海外にある、公海にある、あるいは場合によっては相手国領域内にある日本の自衛艦に対する攻撃も排除されない。だから、非常に安保条約五条が大事だ、私、そういう観点でこれは聞いているんですよ。
 それじゃ、聞きます。この第六「対処措置」のイの(2)には「アメリカ合衆国の軍隊が実施する日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に従って武力攻撃を排除するために必要な行動」、そういう組み立てになっていますね。安保条約五条という縛りがこの文章から出てこないんですよ。何でですか。安保条約五条というのと安保条約全体とはちょっと違うんですよ。だから聞いているんです。
川口国務大臣 武力攻撃が発生をしたときに安保条約五条によって共同対処をするということが必要なわけでございまして、そのために準備が必要だという準備は、安保条約の第五条の範囲内であると考えているわけでございます。
木島委員 新しい、大変な、安保条約第五条の、これまで政府が再三答弁してきた答弁をとんでもなく拡大する答弁になるんじゃないかと私は感じます。その点だけ指摘しておきます。
 では、最後の結論の質問に移りましょう。
 このイの(2)の、いわゆる有事ACSAとして「実施する物品、施設又は役務の提供その他の措置」とあります。もうずばり聞きます。これは、では、おそれや予測の段階でこの提供ができるとこの定義を読んでいいですか、予測やおそれの段階ではそういう提供はできないと読むんですか。きちんと答えてください。
福田国務大臣 これは、武力の行使に至らない活動の範囲の中で、今言いました「物品、施設又は役務の提供その他の措置」をとることができるということであります。
木島委員 今の答弁の武力の行使というのは、米軍の武力の行使という意味ですか。
福田国務大臣 我が国に対する武力攻撃が発生する以前の段階、その段階において米軍が必要な準備行動をとる、そういう場合において今申し上げたことはできるということです。
木島委員 ずばり聞きますが、我が国に対する外部からの武力攻撃のおそれが認定できた、予測が認定できた、そういう局面において米軍は、もう相手方に対して武力攻撃、いわゆる先制自衛といいますか予防的自衛といいますか、それは米軍はできるんですか。
福田国務大臣 武力攻撃がなければ、これは我が国も反撃することはできないし、また当然米軍もできないんです。これは、米軍が必要な準備行動をとる場合は、武力の行使に至らない活動を安保条約及び地位協定の範囲内で行う、こういう考え方をしているわけです。
木島委員 重大な答弁だと思うんです。
 政府は、これまで一貫して、我が国自衛隊は、現に武力攻撃を受けた後でなければ反撃ができない、いわゆる武力行使ができないという答弁をし続けてきました。しかし、その武力攻撃の発生時をいつと見るかについては、確かにミサイル等の場合には、ミサイルの発射台からまさに発射されなんとするときには、座して死を待つのはいかがなものかという理屈で、いつから武力攻撃が発生したかを認定する段階では、必ずしも着弾の時点ではないという答弁は再三この国会でしてきたわけであります。
 しかし、米軍がいつの段階から、相手が我が国に武力攻撃をしようとしている段階、予測の段階、おそれの段階に対して、米軍がいつから動き出せるのか、いつから反撃、自衛できるのかについての明確な政府の答弁は、今まで私、なかったんじゃないかと思うんです。どうですか、明確にできないとここで答弁するんですね。
中谷国務大臣 我が国に武力攻撃が発生してからでございます。
木島委員 そうしますと、このイの(2)はどう読み取るんですか、結論的には。物品、施設、役務の提供その他の措置は、まさに、概念はいろいろ難しいけれども、米軍に対する有事ACSAですよ。それは、では日本としては、この主語は何かといったら、自衛隊だけじゃないですよね。よく見てください。指定行政機関、地方公共団体、指定公共機関が主語なんです。
 では、いつの段階から米軍に対してこういう物品、施設、役務の提供ができるんですか。最後の結論の質問です。
中谷国務大臣 これにつきましては、まず、米軍が我が国に対する武力攻撃を排除するために必要な行動を開始する時点は、個別具体的な状況によって決まってくるものでありますから一概に申し上げられませんけれども、武力攻撃事態対処法に基づく対処措置の対象となる、米軍による我が国に対する武力攻撃を排除するために必要な行動が、武力攻撃事態が認定される時点より前から開始されることはないわけです。つまり、予測される事態の認定がされる前に支援を行うことはないということです。
木島委員 そういう質問じゃないですよ。
 ですから、予測の認定ができたらもう米軍に対するACSAはできるのかという意味です。予測の認定の前からできるなんというのは、幾ら何でもこの法律は読めないのは、そんなのは当たり前じゃないですか。だから、予測、おそれの段階でできるのか、それとも現に武力攻撃を受けてからでないと有事ACSAは発動できないのかという質問です。
津野政府特別補佐人 この六号の柱書きをよく読んでいただきますと、対処措置につきましては、「第九条第一項の対処基本方針が定められてから廃止されるまでの間に、」と書いてございますから、第九条第一項の対処基本方針が定められてからでございます。
木島委員 米軍に対する有事ACSAは、武力攻撃事態のおそれや予測の段階からできるという答弁であります。これは大変なことですね。日本に対する武力攻撃が現に行われる前段階から、指定公共機関や地方自治体が米軍に対して物品、施設、役務の提供ができるという答弁です。
 それでは聞きます。この物品の中には武器弾薬は入るのですか、排除されますか。
中谷国務大臣 この支援の内容につきまして、いかなる支援を行うかにつきましては、今後、この武力攻撃事態対処法案に基づく事態対処法制整備の中で検討していくことになるので、現時点で予断を持ってお答えすることは差し控えたいと存じます。
木島委員 まことに重大な答弁だと思うんですね。政府は一貫して、今度の法律はプログラム規定だ、枠をつくる法律だ、これで枠がつくられた後、二年の間に具体的な個別法をつくるんだ、そういう答弁でしょう。だから、枠がどこまで、天井がどこまでかというのは決定的に大事なんですよ。だから聞いているんですよ。武器弾薬を有事に提供できるのかどうか、決定的に大事な問題なんですよ。なぜか。周辺事態法でも排除してきました。テロ特措法でも排除してきました。これはそれが排除されないのか。そんなことを今決めていないんだ、決めていないで、この法律を通してくれ、二年間の間にじっくり検討するんだ、そんなばかな答弁ないじゃないですか。こんなのはだめですよ。
中谷国務大臣 まず、発生する前におきましては我が国は武力の行使はないわけでありまして、武力の行使を伴うような支援はもちろんのことできないわけでございます。
 武器弾薬につきましては、憲法上の枠は提供することはございませんが、相手側のニーズ等ございますので、今後協議を通じて検討していくことになろうかと思います。
木島委員 我が国が、有事ACSAが武力行使と一体化していると見られるような物品の提供はできない、一体化していると見られないような物品の提供はできる、そういう答弁なんでしょう。
 しかし、そんなことこの法律に何にも書いていないじゃないですか。白紙委任をせよというのですか。要するにそういうことですか。そんな白紙委任できないですよ。法律にも書いていないんだから、勝手に解釈であなた方がそう言っているだけなんだから。
 非常に大事なところですよ。大事なところだからこそ、周辺事態法では排除したんですよ、武器弾薬の提供を。全部排除したでしょう。PKO協力法だって排除したんですよ。テロ特措法だって排除したんですよ。それはまさに憲法九条の問題があるから法律に書き込んだんでしょう、武器弾薬は除くと。これは除いていないじゃないですか、この法律。だから白紙委任せよというんですか。それで、二年間の間に状況を見て、場合によっては武器弾薬も含むこともあり得るというような法律が出てくる可能性もこの法律からは残るという答弁なんですか。
 これは本当に大事なところですから、白紙委任をしてしまうかどうかにかかわるものですから、きちんと答弁してください。
中谷国務大臣 周辺事態の安全確保法やテロ対策特別措置法で武器弾薬を除くと書いておりますのは、米側からのニーズがなかったからでございまして、憲法上それができないというからではございません。
木島委員 大変な答弁ですね。では、米軍からニーズ、要求があれば、憲法に違反しようと何しようとどんどんやるんだ、ニーズがないからたまたま周辺事態法では武器弾薬は除いただけだ、そういう答弁ですか。
 こんなに憲法九条をないがしろにする答弁というのはないと思うんですよ。まさに憲法九条で武力行使が禁じられているからこそ、政府はいろいろな理屈を立てて、武力行使と一体化するものはだめだ、この地域では武力行使と一体化すると認められるから、この地域は戦闘地域か否か区分けした、そういう非常にガラス細工のような理屈をこれまで立ててきたんじゃないですか。
 今の防衛庁長官の答弁は、これまで政府が、国際社会では通用しないんでしょうけれども、憲法違反に当たっちゃいかぬ、憲法九条に触れちゃいかぬというので、ガラス細工のような理屈を立ててきたのを全部ぶち壊して、米軍の要請があったら、もう憲法九条なんて関係ない、何でも、物品も、施設も、役務も提供できるんだ、そういう恐るべき答弁が出たということだけ指摘して、時間が来たようですから、きょうのところは終わります。
瓦委員長 次に、東門美津子君。
東門委員 私は、まず、昨日沖縄県で行われました復帰三十周年記念式典について、二点ほどお伺いしたいと思います。
 昨日の復帰三十周年記念式典で、小泉首相は、沖縄の米軍基地の整理縮小について、SACOの最終報告を踏まえ、県民の負担軽減に取り組むと述べられました。しかし、たとえSACOの最終報告が完全に実施されても、なお七〇%余の米軍専用施設は沖縄に残るということ、そしてSACOでは普天間の返還は一九九六年から五年ないし七年で行うことになっています。それなのに、今もってめどは立っていないということから、SACOは既に破綻していると言えるにもかかわらず、いまだにSACOを言い続けている政府ですが、これからどのように県民の負担の軽減に具体的に取り組まれていかれるか。
 沖縄の経済的自立、これから十年をかけて、新しくスタートした振興新法のもとで振興計画を立てて沖縄の自立を目指すというそのスタートのときに、やはり基地の整理縮小というのは絶対に不可欠だと思われます。それに関しまして、沖縄担当大臣として、尾身大臣にお願いいたします。
尾身国務大臣 現在、沖縄の在日米軍施設・区域につきましては、日本全体の七五%が〇・六%の沖縄に集中しているということで、この在日米軍の存在は、我が国はもとより、アジア太平洋地域の平和と安定に大きく寄与していることは事実でございますが、同時に沖縄県民の皆様に多くの負担をかけているというのも実態でございます。
 昨日、総理が三十周年記念式典でも申し上げましたが、私どもとしては、SACO最終合意の線に沿ってこの沖縄基地の整理、縮小、統合を進めていくということが私どもに課せられた大変大事な課題であると考えている次第でございます。
 まだ進んでいないではないかというおしかりをいただいているところでございますが、我々としては、普天間代替施設の移転も含めまして、誠意を持ってこれに取り組んでいきたいと考えている次第でございます。
東門委員 次に外務大臣にお伺いしたいと思いますが、昨日、やはりその式典でのベーカー駐日米国大使のスピーチ、私は正直言いまして、初めてあのようなスピーチをお聞きしまして驚きました。大臣はどのような感想を持たれたのか、お聞かせいただければ、お願いします。
川口国務大臣 昨日、ベーカー大使は、御自身の上院議員であったときの沖縄の返還についてのかかわり合いも含めまして、沖縄がこの地域の平和と安定のために果たしている役割について述べられたと思います。また、米軍人、その家族に対しての沖縄の県民の方々の温かいホスピタリティーといいますか、それについても感謝の念を示されたと思います。そして、ここまで、三十年の間に沖縄が来たことについての沖縄の努力、沖縄の方の努力もたたえられたというふうに私は聞かせていただきました。
 また、こういったベーカー大使の発言は、米軍の駐留に関しまして、沖縄の県民の方々が抱えていらっしゃるといいますか、負担をしていらっしゃるその負担、これを踏まえて、感謝と、これを減らしていくための努力について述べられたというふうに私は思いました。
東門委員 ベーカー大使のスピーチは、沖縄県民に対して、米軍基地があれだけ過重にあるためにいろいろ起こってくる事件、事故に対する一言の言及もありませんでした。おっしゃるのは、友人だとか友情という言葉を繰り返されただけで、前方展開している米軍にとって沖縄はホスト役として非常に重要、そういうことだけをおっしゃったように私は覚えております。
 沖縄県の中では、本当に市町村長さんたちからもいろいろなそれに対する反応が出ております。一番外務省にどうしても聞いていただきたいものは、やはり日米関係を重要視する余り、アメリカの機嫌を損ねてはいけないという配慮で、言うべきことも言わないでいる、そういう姿勢が問題ではないかという声が上がっていることを、外務大臣、ぜひ覚えていていただきたいと思います。
 その場におられなかった先生方にはちょっとおわかりにならないかもしれませんが、時間がないのでその件については別のときにしたいんですが、ベーカー大使のスピーチを伺って驚いたということを伝えておきたいと思います。
 さて、今回の法制について質疑をしていきたいと思いますが、その前に、沖縄戦について少しお話ししたいと思います。
 沖縄戦の特質を示す資料に、一九四五年四月二十日、大本営陸軍部が作成した国土決戦教令の第二章「将兵ノ覚悟及戦闘守則」というのがあります。その第十四条に、「敵ハ住民、婦女、老幼ヲ先頭ニ立テテ前進シ、我ガ戦意ノ消磨ヲ計ルコトアルベシ。斯カル場合、我ガ同胞ハ、己ガ生命ノ長キヲ希ハンヨリハ、皇国ノ戦捷ヲ祈念シアルヲ信ジ、敵兵殲滅ニ躊躇スベカラズ」と書かれています。
 国体護持、すなわち、天皇を守るためには、老幼婦女子、一般住民の生命が犠牲になることをためらってはならないということであります。敵が一般住民を盾に使ってきても、ちゅうちょせずに攻撃しろということです。日本軍の住民殺害、虐殺は、大本営の方針であったのです。
 この戦闘守則は沖縄戦で実際に適用されましたが、本土がもし地上戦の戦場になっていたのならば、このような事態が全国各地で起こっていただろうことは容易に想像がつくことであります。
 国家の県民指導方針は、軍・官・民共生共死の一体化、軍と一緒に死ねということでした。天皇のために死ぬ教育が貫徹されたゆえに、米軍の上陸を知った翌日には、集団で死を選ぶという悲劇が起こりました。
 また、牛島満第三二軍司令官は、沖縄に着任するや、現地自活に徹すべし、一木一草に至るまで戦力化すべしと訓示し、戦闘に必要なものはすべて現地調達せよと、学校、民家を次々接収し、食糧は供出させました。住民は、老若男女、国民学校の学童まで徴用され、飛行場建設、陣地構築、ごう掘り、物資や弾薬運搬などに従事させられました。男子学徒たちは通信隊、切り込み隊、女性は看護隊などに動員され、残る十七歳から四十五歳までの男性は防衛隊、女子青年団は救急看護や炊事係と、住民を根こそぎの動員でした。
 そういう戦時体制下で起きたのが、戦争の足手まといになる老幼婦女子を排除して、軍人の食糧確保の目的で強制的に疎開船に乗せ、疎開先へ向かう途中、米軍の魚雷攻撃で沈没した学童疎開船対馬丸等の惨事であり、本土出身兵士が理解できない沖縄の方言を使用する者はスパイとして処分せよという命令であり、空腹と恐怖で泣き叫ぶ乳飲み子を、敵に居場所を知られるから黙らせろと命じて絞め殺したことであり、住民が隠れている洞窟や墓を軍命で追い出して、鉄の暴風下にさらしたことであります。また、八重山では、マラリア有病地と知りながらそこに住民を強制移住させ、多くの住民がマラリアに罹患し死亡した戦争マラリア問題等々、数えれば切りがないほどです。
 沖縄戦の教訓は、軍隊が守るのは軍隊自身であり、住民を守るのではないということです。全国で唯一そのような体験をしてきた沖縄から、小泉内閣が今強行しようとしています有事法案について、四点ほど質問をいたします。
 まず、復帰して三十年。三十年もたっているのに、いまだ米軍基地が集中し、米兵による事件、事故、人権侵害が続発する沖縄の県民は、この法案の国会提案に大きな衝撃を受けております。不安と怒りが渦巻いています。こんな祖国ではなかったはずだ、平和憲法のもとへの復帰だったはずなのにと強い憤りを覚えています。有事の際には、基地が集中する沖縄が真っ先にねらわれるのではないかという不安があるからです。
 官房長官、このような県民の気持ちをどのように受けとめられますか。それとも、国を守るためにはやむを得ないとお考えなのでしょうか。ぜひお聞かせいただきたいと思います。
福田国務大臣 沖縄における戦争の悲惨さ、想像を絶するものがありまして、今お話を伺っておりまして、その光景を何か目の当たりに見るような感じがいたしました。
 その悲惨さに対して、我々は、二度とそのような戦争がないように、こういうことをこれから願い、かつまたそのために努力をしていかなければいけない、そのように思っております。そのために、当然のことながら、外交努力も必要でしょうし、さまざまな行動をとらなければいけない、世界が平和になるように努力をしていかなければいけない、そのように思っております。
 その上で申し上げますけれども、今回このいわゆる有事法案を提出させていただきましたのは、我が国が本当にそのような努力をして、しかし万が一というときに、もし他国から軍事的な攻撃を受けたときにどうしたらばよいのかというその基本的な考え方、そのときにどうすればいいか、自衛隊の活動のこともございますけれども、あわせて、国民をどのように守るか、その視点からの取り組み方、これもこの法案の極めて大事なところでございますので、軍事活動並びに国民の保護ということについてこれからいろいろと、法制整備もございますので、皆様方の御意向等も伺いながら、また国民議論を深めながら、本当に国民に理解されるような法制を整備したいと思っております。
 また、平和を維持するために我が国が自分で守るんだというその意思を明らかにするということは、他国が攻撃をしてこなくなるという抑止力につながるのではないかというように考えております。
 なお、申し上げれば、この法案は憲法の範囲の中の行動であるということでございますので、決して、先制攻撃をするとか他国と好んで戦争をするとか、そういったような趣旨でないということをよく御理解いただきたいというように思っております。
東門委員 二度と戦争はしないとうたっている平和憲法のもとに私たちは復帰したと思っておりました。しかし、憲法の保障する財産権のみならず、日々平和的生存権さえ脅かされている沖縄県民に、この法案をぜひ説明していただきたいということです。
 米軍基地が集中しているからといって、沖縄が決してぬきんでて危険な状態になるということはあり得ないのか、それともあり得るのか、それが県民が理解できるように、そして納得できるように、この法案についてぜひ説明会あるいは公聴会を持っていただきたいと思いますが、尾身大臣、そして官房長官、お二人の御見解を賜りたいと思います。
尾身国務大臣 沖縄が、あの太平洋戦争のときに二十万人の方々が亡くなられまして、まさに地上戦が行われたただ一つの場所でございまして、そういう意味で、沖縄県民の皆様が太平洋戦争において大変に大きな犠牲を受けたということは事実でございます。
 私は、この法案は、相手が武力攻勢をかけたときに日本としてどう対応するかという、まさに我が国の国民の命及び財産を守るという観点からなされていることでございまして、いろいろなところで国民の皆様に御理解をいただいた上で法案を通していただくことが大変大事だというふうに考えております。
福田国務大臣 この法案を御提出する段階におきまして、これまで全国の地方自治体の方々に御説明を申し上げるということはしてまいりましたけれども、これはまだ十分でございません。今後、全国の町村会とかそういったような地方公共団体、また大きな団体等についても十分なる説明をしていかなければいけないと思っております。
東門委員 両大臣にもう一度だけお尋ねします。沖縄県に出かけていって、そこで説明会、公聴会ということを考えていただきたいということなんですが、尾身大臣、よろしくお願いします。
尾身国務大臣 この法案は、日本全体の問題でございまして、いろいろな機会を通じて日本国民全体に、自分の問題として、一たん武力攻勢を受けたときにどうするかという観点から理解をしていただくということが大変大事だと思っておりますが、私自身は、沖縄の担当でございますが、この法案の担当ではございませんので、委員会においていろいろと御検討いただきたいと思います。
東門委員 それでは、官房長官、この法案の適用によって沖縄県民が受ける負担とはどのようなものか、どのようなものが考えられるか、お聞かせいただきたいと思います。
 要するに、私が申し上げたいのは、米軍基地があれだけあります。そういう中で、米軍基地を抱えている県と基地の存在していない県で、県民の負担の程度に差があるかというふうに置きかえた方がいいかもしれません。どうでしょう、それはあり得ますか。
福田国務大臣 特別に今より負担がふえるとかいったような、そういうものではないと思います。
 この法案は、日本全国国民に対して御協力を願うというような、そういう条項もございますけれども、これは特別に沖縄というあの地域、もちろんあの沖縄の地域には米軍基地がたくさんあるということを考えれば、その基地が基地としてのいろいろな活動をするということになれば、その分の負担というのは追加的にあるということはありますけれども、しかし、この有事法制ができて特別に何かあるかということが考えられるかどうかということであれば、私は特別な考えというか、追加的な負担というものはないように思っております。
東門委員 有事法制ができてすぐ変わりますかということではなくて、有事にはということなんですね。
 では、伺いますが、昨年の九・一一、テロリストによって米本国が攻撃をされました。日本の米軍基地は当然のことながら厳戒態勢がとられました。少なくとも沖縄はそうでした。本当に非常事態ということを感じさせるような緊迫した沖縄県内の状況でした。
 今回のこの法案はもう言うまでもなく米軍支援法だという声もよく聞こえます。そういう中で、基地があれだけある沖縄県が、全国の問題だから全国同じようにということで、特に沖縄県がぬきんでて有事のときに攻撃されるおそれがあるというふうには考えられない、要するに米軍とは無関係だというふうにとらえてよろしいのでしょうか、官房長官。
福田国務大臣 基地がございます。また、基地の警備というのは、例えばテロが起こったときに、昨年の秋のことでございますけれども、そのときに基地を警備するといったような、そういうことがあった、これはもう事実でございますね。それを負担ということであるならば、それは負担になるんだろうというように思いますけれども、今回のこの法制は、あくまでも武力攻撃があった、あるというときにこの法律を使うわけでございますので、そのときにどういうような事態が発生するか、これはなかなか想像するのは難しいと思いますね。
 例えば、武力攻撃が、沖縄でない、例えば東京にあったというようなことになれば、それは東京の方がはるかに大変な事態になるというようなことはございますので、これは一概に、ちょっと考えにくい問題、申し上げるというのは難しいことじゃないかなというふうに思っております。
東門委員 そうしたら、九・一一の米本国のテロ、ああいったことが起こったときに、あってはほしくないのですが、あの事態は、今の法案でいくと武力攻撃事態なのですか。それとも、日本の側から見ると、受けるおそれのある状態というふうに認定するのか。それをお伺いしたいと思います。これは防衛庁長官、お願いします。
中谷国務大臣 我が国に対する武力攻撃というのは、いろいろな形態がございますので一概に言えませんけれども、その攻撃が組織的また計画的なものでありまして、大変大きな被害が出た場合は、武力攻撃の一形態になり得ることもあるわけでございます。
東門委員 長官、私がお伺いしているのは、アメリカで、アメリカが攻撃をされた、本国で。それで、米軍基地が海外にあります。沖縄はそれだけたくさんあります。そうすると、さきの九月十一日の件のように、本当に厳戒態勢がしかれました。機動隊が住民に顔を向けて基地をバックにして立っているという姿はとても信じられないような情景でしたけれども、あの事態です、私が申し上げているのは。日本が攻撃されたとかなんとか言っていません。本国、アメリカが攻撃をされて、そして日本でそういう状況が起こった、それは日本はどのように受け取るんですかということなんですが。
 そのときは、関係ないというふうにとらえるのか、あるいはおそれがある事態ととらえるのか、しかし厳戒態勢に入っているから武力攻撃が行われた、発生したととらえるのか。そこをお聞きしているのですが。
中谷国務大臣 あの事態は、米国に対する攻撃でありまして、我が国に対する事態ではございません。
 なお、米国の対応等につきましては、それぞれ事態に応じて対応すると思われますが、基地内の警備につきましては、あくまでも基地の敷地内で、基地内の警護のための措置でございまして、住民の皆様方に心配をかけたり、また負担をかけたりしない、あくまでも米国基地内の警戒であったというふうに考えております。
東門委員 そうすると、別に、アメリカが攻撃されたから即日本がというふうにではないとおっしゃったと理解しております。
 次の質問に移ります。
 昭和二十一年十一月三日に公布された日本国憲法は、第九条で、戦争を放棄し、国の交戦権は認めないと明確に規定しています。そもそも憲法は、公布当時から、有事に際してどの機関がいかなる手続によって何をなし得るのかという国家緊急権の規定を明記しておらず、憲法そのものが有事を想定していないということがもちろん言えます。
 小泉総理は、武力攻撃事態における国民の権利の制限について、こうした権利の制限は、国及び国民の安全を保つという高度の公共の福祉のため合理的な範囲と判断される限りにおいては、「国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」との憲法第十三条の趣旨に沿ったものと理解されると答弁しておられます。
 確かに憲法十三条には総理がおっしゃったことが記載されていますが、もともと有事を想定していない憲法の条文に基づいて有事の際の国民の権利の制限を正当化することには大きな矛盾が感じられますが、政府の御見解を官房長官から賜りたいと思います。
福田国務大臣 憲法九条でもって戦争の放棄とございますけれども、しかし、これは必要最小限度の自衛権は認める、こういうことでございます。
 国民の権利という観点、自由と権利の尊重ということでございます。
 この法案で、基本理念として、国民の自由と権利の尊重を明記いたしております。今申しました基本理念は、国及び国民の安全を保つという高度の公共の福祉のため、必要最小限の範囲において人権を制約し得るとするにとどめてあるわけでございまして、今委員の御指摘の十三条の趣旨には沿ったものであるというように考えております。
東門委員 憲法九十九条ですが、それには、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と明記されています。法治国家であれば、権力の中枢にある者や政治家こそ、襟を正して憲法尊重擁護義務を率先して果たすべきだと思うのですが、長官、どうでしょうか。
福田国務大臣 法治国家における一員として、憲法を遵守いたしております。
東門委員 次の質問ですけれども、本当にいろいろ質疑をお聞きしていまして感じるのは、我が国は主体的に有事ということが判断できるのかなという疑問なんですが、周辺事態でも、テロ特措法でも、米国が有事と判断したとき、日本は後追いで対応しているという状態です。米国が有事と認定した事態が最終的に日本有事となりかねないというのが本当のところだと思います。
 有事認定の明確な定義がない限り、政府による都合のいい、主観的、恣意的な運用となる余地が生じます。実際に武力攻撃があればだれにでもわかるが、予測される事態というのをどうやって判断するのか。首相が判断するということですが、結局は専門家である制服組の判断に従わざるを得ず、それは、いつも言われている文民統制ではなくて、軍事統制になる可能性があると思いますが、政府の見解はいかがでしょうか、防衛庁長官。
中谷国務大臣 米軍追随というお話がございますが、これは我が国に対して武力攻撃が行われた場合でございまして、自国を守るのに相手国の意思に追随する必要はございません。日本の武力攻撃事態は、まさに我が国自身の問題でありまして、他国が協力しようがしまいが、当然協力してくれる方がありがたいんですけれども、自分で決めて最善を尽くす問題でございます。
 もう一点はシビリアンコントロールの話でございますが、この事態につきましては、内閣が対処方針を決定し、閣議にかけまして、その後、国会承認の手続がございます。国会の皆様方の御承認によってコントロールを受けるわけでございまして、民主的な手続がとられているわけでございます。
東門委員 ということは、決して制服組、いわゆる軍事統制になる可能性はないということですね。はっきりした文民統制だということなんですね。わかりました。
 自衛隊法百三条について伺いますが、自衛隊法第百三条において、自衛隊が円滑な行動が行えるよう、国または地方自治体が、物資の保管命令、業務従事命令、立入検査等を民間人に命令できるようになっています。さらに、保管命令、立入検査に関しては、これらに違反した場合の罰則規定を同法第百二十四条及び第百二十五条で規定しています。
 これらの規定は、災害対策基本法等に規定される従事命令、保管命令、立入検査及びこれらに違反した場合の罰則規定に非常によく似た規定となっていますが、今回の改正には、災害対策基本法等に準じてこれらの規定が盛り込まれたと考えて差し支えないのでしょうか。
中谷国務大臣 災害と戦争による被害というのは状況や概念も違う面がございますが、受けた被害に対して国民を守るという点では一致しているわけでございます。
 この点につきまして、百三条の罰則につきましては、まず取扱物資保管命令につきましては、物資を隠匿したり、毀棄したり、または搬出した場合、そして立入検査を拒み、妨げるなどの行為をした場合について罰則規定を整備することといたしておるわけでございますが、こういったものは、通常の犯罪と同様に、警察機関等による捜査や検察官による公訴などがされるとともに、罰則が科されるか否かは、最終的に裁判所による司法判断によるものでございます。
 この点につきましては、やはり人々を助けるという観点で、それに対する行為に対してわざと妨害をしたり、悪質に物を隠したり、そういうものについてのみでございます。
東門委員 全然私の聞いていることとは違うんですね、答えが。これは、もう時間の都合でこの次にまたさせていただきます。
 次に移りますが、国または地方自治体が物資の保管命令、業務従事命令、立入検査等を民間人に命令できるようになっているわけですが、ここで言う国の中に現場の自衛官は含まれますか。
中谷国務大臣 基本的には都道府県知事さんがされるわけでございますが、どうしてもやむを得ない場合におきましては、長官並びに政令で定める者となっておりまして、その場合にも、非常に見識を持って間違いがないような幹部クラスにとどめたいと考えております。
東門委員 ということは、現場の自衛官にはそういう役割はできないということですか。そういうことですね。
中谷国務大臣 非常に位の高い者でありまして、現場で直接号令をかけたりする者ではないということでございます。
東門委員 罰則規定が設けられていますが、違反したか否かを判断するのは現場の自衛官ですか。それも聞かせてください。
中谷国務大臣 先ほどもお答えをいたしましたけれども、この立入検査等につきまして、罰則規定に該当する行為が行われたと認められる場合には、通常の犯罪と同様に警察機関等による捜査、検察官による公訴などが行われるとともに、罰則が科せられるか否かは最終的には裁判所による司法判断によるものでございます。
東門委員 そうしたら、違反をしたというそのことを認定して罰則を科すまでのプロセスはどうなっています。
中谷国務大臣 通常の司法手続と同じでございます。
東門委員 内閣総理大臣は、地方公共団体あるいは指定公共機関等に対し、所要の措置を講じるよう指示できると定めて、所要の措置が実施されないときは内閣総理大臣みずから対処措置を実施できることになっていますが、その対処措置について内容が明らかになっていないわけです。罰則がなくとも、中央と地方の上下関係に照らせば、地方が協力を拒むことは事実上できません。
 そういう意味で、この法案は地方自治の根源的否定につながりかねないものであると考えますが、政府の見解はいかがでしょうか。
福田国務大臣 指定公共機関ですね。(東門委員「両方ですね。地方公共団体、指定公共機関等に対して」と呼ぶ)
 武力攻撃事態において、その業務について必要な対処措置を実施することは、これはその団体に求められているのでありますが、他方、このような事態においては国全体として万全の措置が講じられなければならないということから、別に法律で定めるところによりまして、内閣総理大臣による指示や代執行を求められる、こういうことになっておるわけであります。
 この指示や代執行につきましては、組織として指定公共機関等に対して行われるものでございまして、当該機関の職員個人に対して行われる――これはちょっと間違えました。
 この指示や対処措置の実施については、この法案によって内閣総理大臣に対して包括的に権限が与えられるものではないんです。個々の法律においてその要件等を具体的に定めた上で実施するということになります。
 武力攻撃事態という状況のもとにおきましては、国全体として万全の措置を講ずるということを担保するこういう仕組みが必要でございまして、地方自治等の本旨に反するというふうには考えていないというところでございます。
東門委員 国と地方公共団体が主従の関係のようになると思うんですね。それで、地方自治の根底を揺るがすと私は思うんですが、今官房長官はそうではないとおっしゃったんですが、どのような枠組みで対処措置が実施されるのか。その枠組みを構築するには莫大な予算と労力が必要とされると思いますが、今、どのような枠組みを構築するお考えなのか。そこもお聞かせいただけたらと思います。
福田国務大臣 御指摘の点につきましては、これから国民の保護のための法制というものを考えていくわけでございます。そういう中でもって、避難とか被害とか復旧とかいったような問題について細かく規定をしていかなければいけない。
 そんなことでございますので、そういう問題につきましては、国民的な理解を深めるということをしながら、また国会等の議論も進めていただきたいと思っておるところでございます。
東門委員 最後に一言だけ。
 五月十六日の本委員会で、ある委員が沖縄戦に触れられて、民間人は軍と行動しては絶対にいけない、民間人はいかに軍と別に戦場ではない安全なところへ避難するかを考えれば、あのような犠牲は起こらなくて済んだという趣旨の発言がございました。
 沖縄地上戦の実態及び本質を知らないゆえの発言で、実際は米軍は全くの無血上陸であり、民間人は隠れていた防空ごうや墓、洞窟を軍隊に追い出されて多くの犠牲者を出したのだという歴史的事実を正しく認識してほしいと思います。
 質問を申し上げてまいりましたが、私は、沖縄戦の極限状況を追体験し、戦後の米軍統治下の無憲法、無権利状態の中を生き、基地の島の不条理を見てきた者として、憲法九条の戦争放棄を実践することこそが、前文にある恒久平和を達成する道につながるものであり、人類の永久の悲願につながるものだと確信しています。この地球上に、戦争を放棄し、戦力と交戦権を否認した国日本が存在することこそ、世界の宝であります。人類初の被爆国日本だからこそ、積極的平和主義に徹すべきであります。
 有事法制制定の動きは、戦争体制の具体的準備であり、国民や自治体すべてを国の統制下に置こうとするものであることから、この三法案の撤回を強く求めて、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
瓦委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時七分散会


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