衆議院

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第8号 平成14年5月21日(火曜日)

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平成十四年五月二十一日(火曜日)
    午前九時二分開議
 出席委員
   委員長 瓦   力君
   理事 衛藤征士郎君 理事 金子 一義君
   理事 久間 章生君 理事 米田 建三君
   理事 伊藤 英成君 理事 玄葉光一郎君
   理事 赤松 正雄君 理事 工藤堅太郎君
      石破  茂君    岩倉 博文君
      岩永 峯一君    岩屋  毅君
      小此木八郎君    大野 松茂君
      嘉数 知賢君    北村 直人君
      熊谷 市雄君    近藤 基彦君
      佐藤  勉君    斉藤斗志二君
      桜田 義孝君    七条  明君
      田中 和徳君    中山 利生君
      西川 京子君    馳   浩君
      浜田 靖一君    林 省之介君
      増田 敏男君    松野 博一君
      森岡 正宏君    山口 泰明君
      伊藤 忠治君    川端 達夫君
      桑原  豊君    首藤 信彦君
      末松 義規君    筒井 信隆君
      中野 寛成君    肥田美代子君
      藤村  修君    前原 誠司君
      三井 辨雄君    渡辺  周君
      上田  勇君    白保 台一君
      田端 正広君    東  祥三君
      中塚 一宏君    樋高  剛君
      赤嶺 政賢君    木島日出夫君
      今川 正美君    東門美津子君
      井上 喜一君    宇田川芳雄君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   国土交通大臣       扇  千景君
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      中谷  元君
   防衛庁副長官       萩山 教嚴君
   総務副大臣        佐田玄一郎君
   外務副大臣        植竹 繁雄君
   防衛庁長官政務官     木村 太郎君
   財務大臣政務官      砂田 圭佑君
   国土交通大臣政務官    森下 博之君
   政府特別補佐人
   (内閣法制局長官)    津野  修君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    藤崎 一郎君
   衆議院調査局武力攻撃事態
   への対処に関する特別調査
   室長           鈴木 明夫君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月二十一日
 辞任         補欠選任
  岩屋  毅君     北村 直人君
  熊谷 市雄君     松野 博一君
  小島 敏男君     岩倉 博文君
  斉藤斗志二君     馳   浩君
  西川 京子君     小此木八郎君
  山口 泰明君     佐藤  勉君
  枝野 幸男君     藤村  修君
  筒井 信隆君     三井 辨雄君
  樋高  剛君     東  祥三君
同日
 辞任         補欠選任
  岩倉 博文君     小島 敏男君
  小此木八郎君     西川 京子君
  北村 直人君     岩屋  毅君
  佐藤  勉君     山口 泰明君
  馳   浩君     斉藤斗志二君
  松野 博一君     熊谷 市雄君
  藤村  修君     枝野 幸男君
  三井 辨雄君     筒井 信隆君
  東  祥三君     樋高  剛君
    ―――――――――――――
五月二十一日
 有事法制立法化反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三一九六号)
 同(石井郁子君紹介)(第三一九七号)
 同(小沢和秋君紹介)(第三一九八号)
 同(大幡基夫君紹介)(第三一九九号)
 同(大森猛君紹介)(第三二〇〇号)
 同(木島日出夫君紹介)(第三二〇一号)
 同(児玉健次君紹介)(第三二〇二号)
 同(穀田恵二君紹介)(第三二〇三号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第三二〇四号)
 同(志位和夫君紹介)(第三二〇五号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第三二〇六号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第三二〇七号)
 同(中林よし子君紹介)(第三二〇八号)
 同(春名直章君紹介)(第三二〇九号)
 同(不破哲三君紹介)(第三二一〇号)
 同(藤木洋子君紹介)(第三二一一号)
 同(松本善明君紹介)(第三二一二号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第三二一三号)
 同(山口富男君紹介)(第三二一四号)
 同(吉井英勝君紹介)(第三二一五号)
 有事法制の制定反対に関する請願(今川正美君紹介)(第三二一六号)
 同(金子哲夫君紹介)(第三二一七号)
 有事法制の立法化反対に関する請願(金子哲夫君紹介)(第三二一八号)
 有事法制反対、憲法に基づく平和政策に関する請願(石毛えい子君紹介)(第三二一九号)
 同(金子哲夫君紹介)(第三二二〇号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 公聴会開会承認要求に関する件
 委員派遣承認申請に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 安全保障会議設置法の一部を改正する法律案(内閣提出第八七号)
 武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案(内閣提出第八八号)
 自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第八九号)


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     ――――◇―――――
瓦委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、安全保障会議設置法の一部を改正する法律案、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案及び自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として外務省北米局長藤崎一郎君及び外務省条約局長海老原紳君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
瓦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
瓦委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。東祥三君。
東(祥)委員 おはようございます。自由党の東祥三でございます。
 まず、質問に入る前に、民主党さんの御配慮を願いまして、発言の順序を変えていただきました。また、官房長官におかれましては、九時半から記者会見があるということを承知いたしておりますが、その時間をこちらの方に来ていただきまして、大変恐縮でございます。
 まず、官房長官にお尋ねさせていただきたいというふうに思います。
 今までここの場でいろいろな質疑がされてきました。どうも政府側からの答弁というのは、質問に対して誠実に答えていない。その背景には、多分、内閣それ自体が有事法制の問題について、閣僚の間でもあるいはまた総理大臣みずからも、ちゃんとした考え方を持ってつくっていないという、そのあらわれなのではないのかというふうに推察します。
 そこで、小泉総理は、総理大臣に就任したときに、いわゆる日本の安全保障の問題に関しての一つの重要なポイントであります集団的自衛権について、議論をやっていこう、こういうことを発言されました。私は、その話を聞いたときにおやっというふうに思うと同時に、本当に今まで五十数年間眠っている安全保障論議というものを政治主導のもとでちゃんとやるのかな、そういうふうに思いました。
 しかし、余り時を待たずしてそれが錯覚であったということが明らかになりました。今回の法案を見ても、総理の考えもあるいはまたリーダーシップも、一かけらも見えてこない。有事法制整備に当たっては、本来ならば根本の憲法論議、これを行わなければならないわけでありますが、そのかけらもないわけであります。極論すれば、三十年前に防衛庁の官僚の皆さんがつくった対ソ戦用、戦争用の法律案が持ち出されてきただけであります。政治の指導力というのは全く見えてこない。
 その意味で、本日、安全保障会議のメンバー、すべてがそろっているわけではありませんけれども、その方々に、まず有事法制についての基本的な考え、また有事法制を整備するに当たってどのような、総理からこれを準備する官僚に指示が与えられたのか、その点についてお伺いしたい。総理大臣いませんので、福田官房長官、まずこの点についてどのような指示を与えたのでしょうか。
福田国務大臣 小泉総理のリーダーシップということについてお尋ねがございましたけれども、そもそも小泉総理は、百五十四回国会におきます小泉総理の施政方針に明確に述べておるわけでございますけれども、平素から、日本国憲法のもと、国の独立と主権、国民の安全を確保するため、必要な体制を整えておくことは、国としての責務である。どのような理念と方針のもとで具体的な制度をつくっていくのかを明らかにし、国民の十分な理解を得ることが必要不可欠である。国民の安全を確保し、有事に強い国づくりを進めるため、有事への対応に関する法制について取りまとめを急ぐという基本的考え方に立って、法制整備を指示をいたしておるところでございます。
 国家の緊急事態に対する対処というものは、独立国家として当然の最も重要な責務でございまして、政府としては、昨年の米国同時多発テロや武装不審船事案などを踏まえまして、いかなる事態にもすき間なく対応できるような安全な国づくりを進めていく、こういうことが緊要だということで、この取り組みの一環として、武力攻撃事態という、国及び国民の安全にとって、最も緊急かつ重大な事態が生じた場合における対処を中心に国全体としての基本的な危機管理体制の整備を図るため、武力攻撃事態対処関連三法案を提出したものでございます。
 今まで、長い間有事法制の必要性というものが唱えられながら、今回、小泉総理のリーダーシップによってこのように国会に法案を提出させていただいたということは、これはとりもなおさず小泉総理のリーダーシップによるものであるというふうに理解しております。
東(祥)委員 有事法制の整備の必要性そのものについては、御案内のとおり、九七年の自自連立政権をつくるに当たって私たちから、有事法制の整備は一刻も早く必要だ、そしてまた、民主主義国家として国民の生命財産、これを守る上において、いざというときにその法体系ができていないということは、これはとんでもないことだと。独裁国家であれば別であります。民主主義国家において有事法制がないというのは、日本国だけであります。その必要性については、あまねく、この重要性について認識している政党は理解していることなんではないでしょうか。
 私が聞いている問題の本質は何かといえば、そのような重要な有事法制をつくるに当たって、官僚に任している限りにおいて、官僚には限界があるわけでありますから、政治的決断としてどのような考え方に基づいてこれをつくっていくのか。
 一方において、前々から私たちは主張させていただいております。いざというときに国家の基本、その部分が覆されるようなときに、自衛隊というのはあくまでも唯一の日本が抱える武力組織であります。その武力組織をどのように動かしたらいいのか、どのような事態において動かしたらいいのか。
 その問題に関しては、今まで、単に内閣法制局長官が来て、憲法解釈の延長線上で、恣意的なものでずっと来たんではないでしょうか。
 例えば、一方において、この武力組織をどのように使うのかというふうに考えたときに、御案内のとおり、自衛隊法の治安出動のところでは、警察権力にすべて任せる、あるいはまた、警察権力を超えた形でもってそのような治安が乱れた状況が来たときに、どのように自衛隊が対処したらいいのか、こういう議論というのは全くなされていないわけであります。
 本当に警察力だけでもって対処できるというふうにお考えなのか。あるいはまた、有事法制をつくるに当たっての一つの重要な問題であります、武力組織である自衛隊を動かすに当たって、ここで盛られているような形での、単なる武力攻撃の対処だけでいいと考えているのか。この点に関しては、官僚の皆さん方は答えようがないではありませんか。当然、有事法制を整備するに当たって、その辺の議論がなされ、この問題についての決着をつけた上で、官僚の皆さん方に指示するのが当たり前のことなんではないですか。これがまず一つ。
 そして、もう一方においては、いわゆる有事法制をつくるに当たっての、もう一つの、コインでいえば裏であります、国民の保護あるいはまた国民の避難。この点については後ほどずっと言及させていただきますけれども、この点について、果たして、武力攻撃あるいはまた大規模な攻撃、そういうものだけが国民の生活、日々の生活を脅かしてしまう問題なのか。例えば大量の難民が押し寄せてきたときに、今まで想定していない事態になったときに、今の現行の法制の中で、枠組みの中で対処することができるのか。
 つまり、既存の法律の中で対応できるものであるとするならば、別に有事法制なんというのはつくらなくていい。あるいはまた、国民の生命、生活を守るために既存の法律を利用できるとするならば、別につくらなくていい。そのような事態というのは想定されなかったのか。
 国家が突然、この国会全体が国会会期中に爆破されてしまう、国会議員全員がいなくなってしまったときに、一体、日本の指導的役割を果たすところはどういうふうになるのか、そういうことを考えた上で当然つくられるものなんだろう。ある意味で、政治家として、有事法制をつくるというふうに言った場合、当然考えることなのではないんですか。内閣のあり方、統治のあり方、こういう問題について、当然、閣議の中でも、閣僚の中でもお話をされたんじゃないですか。
 そういうことに関しての指示、官僚に対して、当然、官僚の皆さん方は政治的指導性を待っているわけでありますから、その点について総理大臣から何らかの示唆があったのか、基本的な考え方について、あったのか。そういうことは、とにかく、おれはよくわからないから皆さん方が適当に考えてくれ、こういう話なんじゃないですか。官房長官、いかがですか。
福田国務大臣 この法案を作成するに当たりまして、もちろん政府部内の協議というのはしたわけでありますけれども、同時に、あわせて並行的に党との協議もするというようなこともいたしております。その過程において総理も、その内容についての関与というものもありました。総理からの指示ということも現実にございました。そういうような経過を経て、この法案を提出させていただくという段階に至ったわけでございます。
 いろいろな事態が考えられるわけでございます。例えば武力攻撃事態に至らないような、テロとか武装工作員などによる侵入といった不法行為への対処、これは第一義的には警察機関の任務でございますけれども、一般の警察力をもっては治安を維持するということができない、そういう場合には、自衛隊は治安出動により対処するということになっております。また、事態が外部からの武力攻撃に該当する場合には、自衛隊は防衛出動により対処するということになっております。
 また、治安出動時の自衛隊には、警察官職務執行法の準用による武器使用のほか、同法を超える武器使用を行う権限が認められているけれども、昨年の臨時国会においては自衛隊法の改正を行いまして、警職法を超える武器使用を行うことができる場合を拡大して、武装工作員の侵入等の事態により有効に対処し得る、こういうような措置も講じたところでございます。
 こういうように、政府としましては、これまでも、武力攻撃事態以外の緊急事態における自衛隊の対処をより適切に行い得るよう措置をいたしまして体制を整えてきたところでございますが、今後とも、国会での御議論や世論の動向なども勘案しながら、不断に検討し、国民の安全確保に万全を期してまいりたい、このように考えておるところでございます。
東(祥)委員 通り一遍のお話ですよ、官房長官。
 治安出動時において自衛隊を派遣することができると、それは書いているんです。問題は、警察力を超える形での治安出動の要請が出てきたときにどうするかということですよ。御案内のとおり、自衛隊が治安出動のときに与えられている権限というのは、警察職務執行法を超えることはできないわけですから。
 例えば、日本においては地下鉄サリン事件というのがあった。あの地下鉄サリン事件のときに、あのときに、もし何らかの形でちゃんとした武装をした人間が、一つは、化学兵器をもとにして国民の生命とその生活を脅かすような状況が来たときに、あるいはまた生物兵器でも構いません、そういう事態が起こることも予想して、当然、国民の生命と財産を考えなければならない、そのときに、警察職務執行法のその範囲内において自衛隊を動かすとなるならば、警察力と何ら変わりないじゃありませんか。警察力で対応させればいいじゃないですか。そこに、防衛出動の中に自衛隊を派遣し出動させるというその意味は、警察力を超えた事態になったときにどのようにするか、そのようなことが盛られているんですよ。
 では、その問題に対して、どのように小泉内閣としてとらえているのか、そういうものが何にも出てきていないじゃないですか。考えたことがないんですよ。
 そこで、この議論を幾らやっていたとしても、基本的に考えていない。また、官房長官が先ほど言われたとおり、私は、事務方の方、名前は控えさせていただきます、今回の有事法制をつくるに当たって内閣から、あるいはまた小泉総理大臣から、何らかの基本的な、有事法制作成における中身についての指示というのはありましたかと、いや、ありませんと。
 では、どういうふうにしてこれをつくったのか。とにかく有事法制をつくれ、懸案の問題だと。そして、どういうものがつくれるかということは、ちゃんと報告した、一切のそういうものがないわけですよ。つまり、政治的リーダーシップというのがないんですよ。その形で行われてしまっている。ここに、まさに官僚に依存した小泉内閣の本質が出てきているんだろうというふうに思います。
 そこで、きょう、扇大臣、これからまた十時から委員会があるということで。
 扇大臣、扇大臣は自由党にいらして、私たちがどのような議論をしているか、もちろん文字どおり、政治家の間で、いざというときに我々はどういうふうに考えたらいいのか、そういう責任感を持って今日まで議論させていただいてまいりました。そのことをよく扇大臣が御存じであるので、ある意味で、今、小泉内閣にいて物足りなさを感じるんではないのかなと私は推察します。
 閣議において、有事法制をつくるに当たって、閣僚間において、どのようなことが問題になるんだろう、どのようなもとに対処していかなければならないんだろう、こういう議論というのはあったんでしょうか、真摯、率直に教えていただきたいというふうに思います。
扇国務大臣 おはようございます。
 きょうは東議員から御質問いただくということで、私もいささか、懐かしいと思いますか、残念だと思いますか、いろいろな思いが交錯しております。
 それはなぜか。私、今、東議員がおっしゃいました自自公連立のときの合意書を、かつて私たち御一緒しておりましたので、持ってまいりました。ちゃんと「安全保障」というところで、その当時、小渕恵三、小沢一郎、神崎武法と、三党首の合意事項でございます。「安全保障」で、
 一、わが国の緊急事態への対応
  政府の進めてきた有事法制研究を踏まえ、
   1第一分類、第二分類のうち早急に整備するものとして合意が得られる事項について立法化を図る。
たくさんございますから、いろいろ言いませんけれども、そして今おっしゃいましたように、私たちは、東議員御一緒に延々と、今そこにいらっしゃいます民主党の伊藤先生も、みんな一緒に勉強いたしました。そして、有事法制の整備ということで、有事の際に自衛隊等関係機関が超法規的な行動をとることのないよう有事法制を整備すると。これも御存じのとおり、平成十三年の六月二十三日。そして、まだまだ、小沢一郎党首と小渕総理のこと、ございますけれども、読むのをやめます。
 要するに、自由党と分かれますときに、私は小沢党首に申しました。我々自由党が今まで安全保障を含めて研究してきたこと、政策的には間違っていない、だったらなぜ自自公連立をやめるのだ、正しい政策を実行するためには私は与党に残ってその政策を実行しますといって小沢党首に申し上げました。そうしたら、小沢党首は、私にきちんと、申しわけなかったとおっしゃいました。
 私は、今こうして与党と野党に分かれて東議員と安全保障の論議をすることを大変不幸だと思います。私は、東議員も一緒に与党になって、あの自自公連立を組んだときのまま、政策実行のために、国のため、国民のために頑張る。
 しかも、治にあって乱を忘れずというのは女性のためにあるんです。東議員が国連の職員として世界じゅうをごらんになって、何かがあったときに一番泣いているのは何か。女、子供です。日本の第二次世界大戦のときもそうです。ですから、治にあって乱を忘れずというのは、まさに女がその意識を持って有事に備えるという認識を持つということが、私は、今の日本に、戦後五十七年間、なぜ言われなかったのか。
 今、七年前の阪神・淡路大震災、サリン事件のこともちらっと口になさいました。我々は、少なくとも有事というものをあらゆる面で想定しながら、この小泉内閣でしていかなければいけない。そのために、今までは国土交通大臣は安全保障委員になっておりませんでした。けれども、今回、改めて安全保障委員になぜ私が加わったのか。私が加わったのではなくて国土交通大臣が加わった理由は何か。それは、今回の三法の中の一本、自衛隊法の改正一つとってみても、国土交通省、十二法案の改正を伴います。それは、道路法案を初めとして十二の法案にかかわってくるから、初めて国土交通大臣が安全保障委員になったんです、安全保障会議の委員になったんです。
 ですから、東議員がおっしゃいましたように、何としても閣議の中で、安全保障会議はこれは秘になっていますから外で内容を漏らすことはできませんけれども、あらゆる面で、安全保障のあるべき姿というのは、国民の生命財産にかかわることですから、今まで先生と御一緒に勉強したことも踏まえて、私は堂々と発言し、またそれを達成するために努力したいと思っております。
東(祥)委員 今の扇大臣のお話を黙って聞かせていただきました。私たちは、自自公連立政権をつくるときに、安全保障基本法をつくると。それは、憲法、そしてまた自衛隊法、あるいはまた国連憲章、小泉総理も言われているとおり、例えば憲法における前文と憲法九条との間にすき間があるんではないか、それをどのように埋めていくのかということを政治が決断しない限り、その有事法制をつくる上での前提が埋まらないじゃないですか。そのことを今扇大臣は残念ながら言及されることなく、あくまでも、今までずっと三十年前から議論されてきた一類、二類だけ、これを踏まえた上でできる限りにおいて早く出しましょう、そこだけ強調されているんです。
 また、私が言っている質問に対して答えていないではありませんか。閣僚間において、有事法制を提出する前、有事法制の中身について議論されましたかと。それに対して、閣議、あるいはまた安全保障会議における内容というのは表に出すことはできません、それを口実にして、そして今論点をすりかえてお話をされていることに関し、私はそれを聞いていて、本当に残念でならないというふうに思います。
 そしてまた、今いみじくも、これは言葉の揚げ足をとるわけではありませんけれども、いざ非常事態になったときに、有事になったときに、最もその被害をこうむらなければならないのは女性であり子供である、そういうお話をされました。どこにその国民の保護のことが書かれているんですか。二年以内に、努力目標としてそのことを掲げているにすぎないではありませんか。もし、それほど確信を持って言われるならば、だれが担当するんですか、国民の保護を。
 二年以内にこの国民保護法制というものをつくると。後ほどじわりじわりいきますけれども、もう行かれてしまいますから、どなたが担当大臣として国民の保護法制をつくるんですか。決まっているんですか。
扇国務大臣 これは後で官房長官から総論でお答えいただくんだと思いますけれども、私は少なくとも、安全保障会議の中で二年をかけて、こうして有事法制を国会の中で論議されること自体が今までは何でタブー視されていたんですか。私は、少なくとも国会の、先輩を通じても、今在籍する国会議員の大きな役目を果たして初めて国民の前に論議できる、これだけでも、憲法の問題もおっしゃいましたけれども、やっと衆参の間に憲法調査会をつくるのに、私たち、どれだけみんなで努力しましたか。
 それは私は、今までタブー視されたことがタブー視されなくなったということだけでも、やっと二十一世紀になって国会が正常化したと言っても差し支えないと思っていますので、それは少なくとも、二年間でいろいろなことを法整備するから、最初の第一歩として今提出させていただいて御論議いただいていると思っておりますので、二年間、これらの論議を通じて、細部を私たちは詰めていきたいと思っています。
東(祥)委員 扇大臣、論議することと、内閣がつくった法案を提出して、内閣の皆さん方は今国会開会中に法案を通す、話が全然違うじゃないですか。議論をするのは幾らでも議論して構いませんよ。私が申し上げているのは、政治的リーダーシップというのはどこに反映されているんですかということをまず第一義的に問いかけているんですよ。
 ここにいらっしゃる自民党の議員の方々も、有事法制をつくるに当たって、そのお伺いに立っているとするならば、もっと違った形でつくることができたと内心思われている方々はたくさんいらっしゃいますよ。ただ問題は、一応小泉内閣のもとで、中身はめちゃくちゃだけれども、支離滅裂だけれども、内閣で提出するということを決めた以上、これを通さなければならないというので彼らはいるんですよ。断じて通さなくちゃいけないと。東さんが言っていることはよくわかる、問題がたくさん山積しているのはわかるんだけれども、内閣として閣議決定して、閣議決定のときにどういう議論があったかもしれません、閣議決定して通すということを決めた以上やらなくちゃいけない、そこで動いているにすぎないんですよ。違いますか。
 したがって、議論することと、そしてこの提出されているその法案を通すこと、全く違うことですよ。議論して、そして深めていって、そして一つ一つの問題、今の僕の質問に対しても、扇大臣、答えることができないじゃないですか。二年以内に保護法制をする、二年以内にするということは、もう努力が始まっていなくちゃいけないんですよ。内閣総理大臣のもとで、だれが担当大臣でこの国民保護法制をつくるんですか。そういうことが決まっているならば、教えてくださいよ。決まっていないでしょう。
福田国務大臣 これまで必要な関係省と協議をしながら内閣官房で取りまとめを行って、そしてここで提案をさせていただいておるわけであります。今御指摘の、国民の保護に関することについては、この国民の保護の基本的な考え方については、これは明確にこの法案の中に記載されております。
 今後二年以内にこの国民の保護に関する法整備を行ってまいりますけれども、これは、国民の保護ということで多岐にわたる内容がございますので、やはり内閣官房で取りまとめる。私が当面の責任者になろうかと思いますけれども、そのために、この具体的な作業をするチームもございますし、そこが中心になりまして作業を進めていくわけでございます。
 この法整備の内容につきましてはこれから提示するということでございますので、細目は決まっておりませんけれども、大体のイメージは昨日の委員会においても御説明を申し上げましたし、この法整備がどういうものであるかということの御理解はいただけているものではないかと思っております。
東(祥)委員 私が担当になるかもしれませんと。決まっていないんですよ。だから、一事が万事。細目は決まっていなくていいんです、大もとを決めておかなくちゃいけないんですよ、こういう場合というのは大もとを。
 そういう意味で、また、外務大臣にも来ていただいております。外務大臣は、もう十時から委員会ということでございますから。外務大臣は、有事法制を小泉内閣において提出するということが決められた後で外務大臣になられましたので、僕の質問の先ほど申し上げている部分は、外務大臣には直接的な形ではできないと思うんですが。
 そもそも有事法制というものを考えたときに、民主主義国家、例えばアメリカあるいはまたイギリス、そこではもちろん法体系それ自体が異なります。私たちも、有事法制、非常事態対処法案というものをつくるに当たって、小沢党首みずからが、いわゆる議会制民主主義の先進国でありますイギリスに赴いて、いわゆるインナーキャビネットあるいはまたウオーキャビネット、当然、日本の場合は憲法の制約があります、憲法を踏まえた上で、非常事態が出てきたときにそれに対処する対処内閣というものをどのようにつくることができるのか、こういう形で議論してまいりました。そして、その一つの考え方を今提出させていただいて、もうじき法案になるわけでありますけれども。
 外務大臣、外務大臣はあくまでも、いざ有事のときの日米安保条約に基づく米軍との協力を考えなければならない、総理大臣のもとでのその一つの重要な役割を担う役職にいらっしゃいます。例えば米軍が、いざというときに、日本の支援を行おうとするときに、日本がいわゆる国民の避難誘導、国民の保護、こういうものを一切考えていないときに、一切具体的に明らかになっていないときに、米軍は日本に対しての支援活動を行うことができると思われますか。いかがですか。
川口国務大臣 私は、今回有事法制が提出され、議論をされるようになったということは、我が国の歴史の中ですばらしいことだと思っております。そして、それが一日も早く成立することを望んでおります。
 法律のつくり方というのは、さまざまなつくり方が潜在的にはあり得るだろうと思います。いろいろな考え方があるだろうと思います。
 この法案につきましては、そういった観点からいいますと、政府と与党と御相談をきちんとした上でこのような形で御提案をさせていただいているわけでございまして、これにつきましてはこういう形が、今考えられる中で、それでよかったのではないかと私は思っております。今後二年間の間にさまざまな法制の整備が必要であるわけでございまして、それは、外務省としては、ほかの官庁との間で相談をしながらやっていく必要があると思っております。
 外交を預かる立場から言いますと、これができることによりまして、例えば有事の際の我が国がどういう行動をとるかといったことについて、ほかの国が予測可能になるということもございます。日米安保体制が実際に、まさに今おっしゃったような有事の際に機能するものである、これへの信頼が増すということもございます。それから、昨日来いろいろ問題になっていますジュネーブ条約、それに基づく議定書といったような国際人道法の、今までずっとそのままになっていました議定書の締結ができるようになる。さまざまな、いい、必要なことがこれから行われるわけでございまして、私としてはこれに全力で取り組んでいきたいと思っております。
東(祥)委員 委員長、今、外務大臣は僕の質問に対して何一つ答えていないんだろうと思うんですね。こういうことでいいんでしょうか。
 外務大臣、私が質問させていただいたのは、米軍との間に日米安保条約というのが結ばれています。そして、日米安保条約第五条に基づいて、もし日本有事の場合、アメリカは来援してくれることを条約上約束してくださっております。そのときに日本は、今のこの法案ですよ、二年以内に、これは努力目標ですけれども、国民の保護法制というのをつくっていく。努力目標ですよ。今、つくられていないんですよ。そのつくられていないときに、もし日本に有事が起こり、内閣の言葉で言えば武力攻撃事態に遭遇し、そのときに、国民の保護、誘導、避難、そういうものが明確になっていないときに、米軍は日本に来援活動として来てくれますかどうですかということを、御省のお立場ですよ、それをどのようにとらえられているんですかという質問ですよ。
 僕が質問したことに対して全く違うことをおっしゃられていて、それは余りにも情けないんじゃないですか。僕、川口外務大臣大好きなんです。だから、そうであるがゆえに、ちゃんと真正面から答えていただきたい。
川口国務大臣 先ほど、二年間で法制の整備をしていくということを申し上げたつもりでございまして、それによって日米安保体制への信頼性が増すということでございます。
 今の日米安保条約によりまして、第五条で、武力の行使があった場合には、米軍と日本は共同して対処をするということに既になっているわけでございまして、そのために、それを本当に機能、機能といいますか円滑にそれがワークするように、今後二年間で法制の整備をするということです。
 今、委員は、今それが、武力行使があったときにどうなりますかという御質問でございましたけれども、本来であれば、そういうことはとっくの昔にできていたはずのことであると私は思っております。遅いということではありますけれども、今、これが通ったことによって、今後二年間で法制の整備をやっていくということを、政府全体として、もちろん外務省もその一員として、全力を挙げて取り組むということを先ほど申し上げたわけです。
東(祥)委員 つまり、言っていることは国民の……
瓦委員長 東さん、ちょっと。防衛庁長官、引き続いて答弁いいですか。(東(祥)委員「いや、僕、今、外務大臣とやっている」と呼ぶ)そうですか。
東(祥)委員 外務大臣、外務大臣が言っていることは、どうしてこうくちゅくちゅこねくり回していくんでしょう。国民の保護が明確になっていないときに、民主主義国のアメリカですよ、アメリカは来てくれるはずないじゃないですか。それを言われているんでしょう。イエスかノーかで答えてくださいよ。外国と交渉するときに、日本的な発想で、英語もお上手だし、ところが外国の要人、欧米の人とお話をするときにそういう話をしているとすれば、僕は本当に何とも言えない寒々としたものを感じてきますよ、相手に意思というのは伝わるのかと。
 米国は、例えば冷戦構造下において旧ソ連邦が北海道に着上陸してくる、そのときに数十万の軍隊が来るかわからない、そのときに、日本の自衛隊、陸上自衛隊十八万の態勢でいかにしてそれを阻むかと。そして、どんどんどんどん日本の自衛隊というのは北上してそれを阻まなくちゃいけない、進攻してくればどんどんどんどん下がってこなくちゃいけない。それはどういうシナリオだったのかといったら、まさに本土決戦のシナリオで、自分たちがそこで旧ソ連邦の侵略を支える、その間アメリカが来てくれるだろう、そういう想定ですよ。では、そのときに米軍がまず聞くことというのは何なのかといえば、国道一号線というのは陸上自衛隊がずっと使っているんでしょう、国民の避難、保護というのはどういうふうになっているんですかと必ず聞きますよ、民主主義国家であるならば。違いますか。
 そういう視点でもって考えて言っているんでしょう、当然、防衛庁長官にしても。ではそのときに、国民の保護という、それが全く欠落してしまっている。そして、それをまた二年以内に整備する。それも、だれがどのように避難し、誘導し、地点はどういうふうにするか、そういうことは今後検討していきましょうと。めちゃくちゃな法案なんですよ、これは。そのことを外務大臣は、まず日米間においてどのようにとらえているのかということですよ。国民の保護法制がない限り、援軍が来れるはずないですよね。
川口国務大臣 私は、その委員の御質問が、それならば有事法制がなくてもいいとおっしゃっているのではないと思いますけれども、まず第一歩として有事法制をつくろう、それに基づいて二年かけて整備をしていこうということであって、本来であればもっと前になされていたことをやろうとしていることについて、それがなぜ問題であるかということを必ずしもよく理解できないんですが、日本とアメリカは信頼関係にございまして、日米安保条約はあるわけでございます。それで、第五条によって、細かいことは略しますけれども、共同対処をするということになっているわけでございまして、そのために、日ごろから信頼関係もあり、それから、日ごろからの協議も非常に頻繁に行っているわけでございます。
 今後、これが具体的に起こったときの支援のあり方について、これは二年をかけて議論をしていくということでございまして、これは先ほど申しましたように、全力を挙げてやっていく所存でございます。
東(祥)委員 いや、ちょっと余りにもひど過ぎますね。共同対処が書いてあるから共同対処してくれるだろうということを、川口大臣は希望的観測で言っているにすぎないじゃないですか。僕は、今までこの委員会においていろいろ議論されてきていることを聞いた上で、逆説的に質問させていただいているんですよ。
 自衛隊というのは国内法によって制限を受けますよね。米軍が共同対処するんですと。国内法の制限なく、接受国が、当然米軍の来援に関して、あれこれやれという制限をかけることはなかなか難しいではないですか。それも含めた上でACSA有事法をつくることによってそれなりにちゃんとつくっていきますということを、ただ川口外務大臣は、ああでもない、こうでもないと言いながら言っているにすぎないことではありませんか。
 今までの議論を踏まえていくならば、一方において、応援してくださる米軍に対して、ちゃんとした国内法の縛りというものはかからないでいいんですか。それを逆説的に言うと、その縛りというのは何なのかといえば、国民の保護誘導、こういうものが完備されていない限り、友軍であります米軍が日本の国のことを支援してくれるはずがないでしょうと。別の言葉で言えば、外務大臣、有事法制というのは何のためにつくろうとしているんですか。何を守ろうとしているんですか。どのように思われますか、外務大臣。
川口国務大臣 これは、まさに国民の生命と財産であると思います。
東(祥)委員 では、生命と財産を守る、どのように守るのかとこの法案に書かれていますか。プログラム法案で、二年以内に整備すると言っているんじゃないですか。おかしいと思いませんか。外務大臣、いかがですか。
川口国務大臣 先ほど申し上げましたように、今後二年で法制整備をやっていくわけでございまして、それについて、もっと前にできていてしかるべきであったという議論はもちろんあり得ると思います。それは今になっているわけでございますけれども、これからこの法律ができました後、二年かけてそれをやっていくということでございます。
東(祥)委員 それでは外務大臣、まさに外務大臣が言われるとおり、有事法制の最大の目的は国民の生命と財産を守るということにあると言明されました。それができていない以上、二年後にちゃんとつくった形で再提出してもおかしくないではありませんか。いかがですか。
福田国務大臣 国民の保護という観点からの御質問でございますから、私がお答えいたしますけれども、先ほども私申し上げましたとおり、国民の保護の基本的な考え方をこの法律の中でしっかり述べております。ですから、その基本的な考え方に基づいて今後の法制を具体的に規定していこうということで幾つもの法律をつくるわけでございますけれども、具体的なことはそういうことでございます。
 今、何かそういう武力攻撃があったときにどうするのか、こういうことについての外務大臣に対する御質問が再三ございましたけれども、このことにつきましては、これは米軍が、もちろん自衛隊の行動はあるわけでありますけれども、対処共同行動してくれる米軍が、これは日本の法律を尊重するということで対応してくれるということになっておりますし、また日米安保条約というものがございます。また地位協定というものもございますので、そういう法律に基づいて米軍の協力というものが行われる、こういうことになっております。
東(祥)委員 答えになっていないんですよね。
 扇大臣、お時間が近づいていますし、外務大臣、どうぞ、結構でございます。
 官房長官、有事法制は、これは何を守るためにつくったんですか。防衛庁長官にもお尋ねします。何なんですか、これは。何を守るために有事法制というのをつくろうとしているんですか。お聞かせください。
中谷国務大臣 これは、まずこの法案の名前が、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律でございまして、読んで御理解いただけると思いますけれども、我が国の平和と独立、国、国民の安全でございます。
 これにつきまして、東委員は、これの必要性は言われておりまして、早期に整備するということを言われておりまして、やはりできるところから整備をしていくと。
 並びに、この法律におきましては、全体の基本法的な法律でありまして、それの理念、定義、また国や地方の役割、またこの対処の手続、今後の整備の手順、それから補足といたしまして、その他の緊急事態のための措置ということで、大規模テロやミサイルへの対応も検討していくということを法律に明記をいたしておりまして、いわゆる包括的に、武力攻撃事態において国として総合的にどう取り組んでいくかということを書かれたものでございまして、これを基本法として今回成立をし、それに伴う各個の法律を逐次整備していくという点におきまして大変よくできた法律で、この国会でこの基本を速やかに成立をするということは大変意義があるというふうに考えております。
東(祥)委員 内閣の一員としては、中谷防衛庁長官、立派な長官なんでしょう。しかし、中谷防衛庁長官の言葉を聞く国民の皆さん方にとってみれば、本当に大丈夫なんだろうか、こういうふうに思われるんじゃないでしょうか。
 防衛庁長官、ぜひ私たちが出している考え方についての骨子を、安全保障基本法案の骨子、それから非常事態対処法案の骨子、これを読んでくださいよ。
 私たちは、まず、例えば、先日のテロ特措法でも申し上げました。九月十一日の同時多発テロ、世界を変えた日というふうに言われています。だれも想定しなかったああいう事態になったときに、米国というものはどのように機能しているか。その直近の例があるんですよ、一つは。それに対して、今回有事法制というのは、その後できてきているにもかかわらず、何も盛り込まれていないじゃありませんか。二年以内に、そういう問題に対して対処する。直近の問題、つまり、先ほど、何を守るのか。日本の国の独立と平和であり、国民の生命と財産を守るんだ、その気概、それすらも感じさせる発言ではないではありませんか。
 まず初めに、防衛庁長官であるとするならば、自分の部下の自衛隊の皆さん方をどういうときに、国の基本である独立、そしてまた国民の生命と財産を守るために、自分の部下である、武力組織である自衛隊を武力行使を前提にして動かす、そこにあなたの最大の責任があるんですよ。どのようなときに自衛隊を動かしていくのか、武力行使を前提にして動かしていくのか、そういう気概が感じられないじゃないですか。
 九月十一日の同時多発テロが起こった後の米国大統領の動きというのは、民間の航空機が離発着すること相ならぬと禁止させるんですよ。民間の航空機といえども、その禁止令に背いたとするならば撃ち落とすと言っているんですよ。その覚悟はあるんですかということですよ。
 そういう意味におきまして、安全保障基本法で、どのように武力組織である自衛隊を動かしていくのかという基本原則を決めない限り、防衛庁長官としての務めというのはできなくなるではありませんか。そういうことに関して全然疑ったことはないんですか、防衛庁長官。自分は十分に、国の基本である独立と平和、あるいはまた国民の生命と財産を守れると、この法案を通じて本当にあなたは確信しているんですか。いかがですか。
中谷国務大臣 今、アメリカのテロのお話をされましたが、アメリカは、あの事態を自衛権だということで武力の行使をしたわけでございます。
 今回、議論をいただいております武力攻撃事態というのは、まさしく国家の一番最大級の、まさに自衛権を発動しなければならない事態でありまして、今回この法律によっていろいろな国としての対処を決めること自体が、まさに緊急事態及び有事のコアの、核の部分でございます。
 これまでそのコアの部分が国会で法律として議論されることがなかったわけでございますが、今回、この点を御議論の上、整備をしていただきますと、自衛隊に対しましても、そういったテロ、大規模テロ、自衛権を発動する必要があるという事態にはきちんと対応できることになりますし、まだまだ住民の避難や米軍関係につきましては未整備の部分がございますが、二年以内に整備するということでございますので、二年をかけて速やかに整備しなければならない問題でございます。
 それから、武力攻撃に至らない事態として、一般的なテロとか不審船の事案等もございますけれども、この点につきましては、武力攻撃事態の応用問題ではありませんが、前の事態といたしまして、警察機関や海上保安庁の機関、国のすべての機関をもって対処するということが可能でございます。
 御質問の中に、治安出動によって警察を超える権限があるのかという御質問でありましたが、これも東委員が従来御指摘いただいておりましたが、昨年の臨時国会におきまして、九十条の三号を制定いたしまして、殺傷力の高い武器を所有している者が暴行、迫害を行う場合にも適用できるように、武装工作員の侵入の事態により有効に対処し得ると、警察の武器権限以上の権限を設けて対処できるようにいたしておりますし、それぞれ個別には対応、整備をいたしておりますが、まさに一番最大のコアの部分、これを制定することによって緊急事態の基本ができるというふうに考えております。
東(祥)委員 本当に僕はあいた口がふさがらなくなりますよ。今中野先生から、すれ違いだと言っているんですけれども。
 武力攻撃事態というのは、何を想定するんですか。もうここでも何度も議論が出てきていると思います。もう時間がないので、多分防衛庁長官は、国民の生命と財産を守る、それから自衛隊をどのように動かす、こういうところに頭がすべて行っているんだと思うんですが、本当に想定されるシナリオにたえることができるのかという角度から質問させていただきます。
 朝鮮半島有事が、今後想定される武力攻撃事態の例なんだろうというふうに思います。そんなことは自明なことだと多くの人々もみんなわかっているんです。今だれが、例えば極東ロシア軍が攻めてくると本当に信じることができるか。だれも信じることはできない。極東ロシア軍の地上兵力というのは、既に陸上自衛隊の三分の二まで減少している。今日、ウラジオストクのロシア海軍が日本攻撃のために艦船を集結することがあるとは思えない。それは常識ある国民にとって当たり前のことだ。
 あるいはまた、今だれが中国が日本を侵略すると考えているでしょうか。核兵器は持っているけれども、二百八十万人の人民解放軍は、いまだ旧式の装備でその身を固めた時代おくれの軍隊であります。中国の現在の経済成長率が続き、国防費の増加が続いていけば、今後十年すれば、人民解放軍は自衛隊にとっても深刻な脅威となるかわからない。しかし、今ここにある危機は中国ではない。北朝鮮の軍事的暴発あるいは北朝鮮体制の崩落、このことを多くの皆さん方は常識としてとらえているはずですよ。
 北朝鮮の抑止こそ、北朝鮮との対話の基礎であると僕は思っています。そして、我が国の有事法制も、北朝鮮の抑止をまず念頭に置かなければならない。日本が朝鮮有事に巻き込まれたときに、当然巻き込まれるんですが、そのときに有効に対処できることがこの有事法制の眼目である、このように考えるのが、僕が防衛庁長官だったらそのように考えますよ。このように考えるとき、私は幾つかの疑問を禁じ得ない、このように思います。
 まず第一に、御案内のとおり、防衛庁長官、僕ら二人で話をしているときに本音で話をするじゃないですか。政府は戦後五十年にわたって、あるときは国民の厭戦気分におもねて、あるときは厳しい与野党対決の構図の中で野党の平和主義攻勢におもねり、またあるときは米国の厳しい要求にひざを屈して、日本国憲法第九条の恣意的、政治的解釈を繰り返してきたんじゃないですか。その結果残されているものは、日本国の立憲主義の形骸化と、おとしめられた、政治化された憲法第九条の残骸じゃないですか。
 憲法第九条には、第一項に戦争の放棄が記されていて、第二項にはすべての軍事力と交戦権の放棄が記してある。そこで、吉田総理は、自衛戦争も放棄したと国会で明言されたじゃないですか。しかし政府は、朝鮮戦争の勃発後、自衛のための実力は保持できると解釈を改めましたね。政府はさらに、集団的自衛権は行使できないと条文に全く書いていない解釈を打ち出して、湾岸戦争に際しては、外国軍隊の武力行使と一体化する支援はできないという、国際的にとても通用しない議論を打ち出してきて、湾岸戦争における多国籍軍への後方支援を拒否したではありませんか。これはもう防衛庁長官、私たちが政治家になっているときですから、よく知っていることですよ。
 しかし、そのわずか数年後、舌の根も乾かないうちに、周辺事態が勃発すれば、自衛隊は日本国内と公海上に限って米軍への後方支援ができると言い始めました。そして、今般の昨年における対テロ特別措置法では、同意さえあれば自衛隊は外国領土内に上陸して後方支援ができると言い始めた。これがまさになし崩しと言わずして何と言えるんですか。
 この点に関して、防衛庁長官、自分自身の部下である自衛隊をどのように動かすかということを本来防衛庁長官は考えて、そしてそれを閣議の中で議論して、こんなことをやっている限り、我々の、国民の、国の独立、平和は守れないでしょうと言うのがあなたの使命なんじゃないですか。それを、これで完璧なんですか。完璧なんですか、これで。これで防衛庁長官は、自分の部下である自衛隊を動かそうとすることができるんですか。それを本来考えなくちゃいけない。
 それを考えないで防衛庁の役人の皆さん方に、おれはどうも頭が使えない、どうか、今の防衛庁が三十年前につくってきた、研究している、それを出して早く有事法制の形を整えてくれ、それが今回の有事法制の本質でしょう。この問題に対してどのように処理しているのか、それがまず整理されなくちゃいけないのですよ。それがまさに自衛隊をどのように動かすかということですよ。それはいわゆる内閣法制局の長官に任せていて、安全保障の専門家はいないのですから。
 あなたが、国民の生命と財産を守るためにどのように自衛隊を動かすかという最高責任者ですよ。こういうこともわかっていながら、よくぞこの有事法制を、総理、私頑張ります、内閣の一員として、最高の法律ですとよく言えますね、あなたは。
 他方、もう一つ兼ね備えておかなくちゃいけないのは、まさに国民の生命財産を守る、それはただ単に武力行使事態、それだけではありませんよ。先ほど言ったとおり、難民が大量に押し寄せてくる、国家の機能が果たせなくなる、そのときにどのように対処したらいいのか。あるいはまた、水道の中に細菌を全部まき込んで生活が脅かされてしまう、生活それ自体に支障を来す、そのときに内閣としてどのように対処したらいいのか。基本的なことは何一つ書かれていないじゃないですか。
 二年以内にそういうことを整備する、二年以内に整備するということを努力するとするならば、今少なくとも大枠において、こういう問題はだれだれが対処していく、そういうことを書いていない限り、この法案はだめだと言っているのですよ。だから、一つは時代錯誤であり、支離滅裂だし、あいまいもこだというふうに言っているのですよ。あなたは、それとは全く反対に、一〇〇%反対で、すばらしい法案ですと。
 これは、きょうも記者さんたちが一生懸命、ありとあらゆる角度から書いてくれると思いますけれども、そのことを申し上げて、ちょうど時間になりました、私の質問を終わらせていただきます。
中谷国務大臣 東委員の質問の中に、今起こったらどうするかという質問がありましたけれども、今起こったら、今ある法律で対処せざるを得ません。そういう場合に、この国会で一つでも法律を上げていただいたら、それで活動できる範囲が広がるわけでございまして、ぜひこの法案をつくっていただいて、その自衛隊の行動について御理解、活動できるようにしていただきたいと思います。
 それから、長官としては、シビリアンコントロールがございますので、国会での決まったこと、また総理の命令、また憲法とこの法律に従ってしか行動できません。そういう点で、一つでも二つでも、できるだけ早く法律を上げていただいて、我が国の安全のために資するようにしていただきたいというふうに思っております。
 それから、本音の議論の話につきましては、東委員と私は、平成二年の当選、同期でありますが、この十年以上、一つ一つ安全保障の話をしてまいりましたけれども、国会でこのような有事法制が議論ができたり、また憲法の自衛権についても議論ができるという点につきましては、本音の議論が今、国会でもできるようになったというふうに認識をいたしております。
東(祥)委員 別に反論しませんが、一歩前進だ、それは官僚、役人の皆さん方が言うのはわかります。一歩前進だということは、官房長官初め今の小泉内閣の皆さん方が、何もできていないところで何か新しいものがつくられればそれは一歩前進だという前提で議論しているとするならば、議論としては成り立つと思います。僕はそういう前提に立つことができません。
 それからもう一つは、歴史を見れば、ローマ帝国、あるいはまたベネチア、あるいはまたフィレンツェ、そういうところから見たときに、ベネチア、フィレンツェのその過去の経緯を日本国は見事になぞっているのではないのかということを御指摘申し上げ、私の質問は終わります。
瓦委員長 午前十一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十時四分休憩
     ――――◇―――――
    午前十一時四十二分開議
瓦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。前原誠司君。
前原委員 民主党の前原でございます。
 それでは、通告をしております基本的人権の問題につきまして質問をさせていただきたいと思います。
 今回のこの武力攻撃事態における云々の法律案の中に、このような規定がございます。「日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならず、これに制限が加えられる場合は、その制限は武力攻撃事態に対処するため必要最小限のものであり、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われなければならない。」こういうことが書かれているわけでございますけれども、これについて具体的な記述が他にございません。つまりは、訓示規定的なものにとどまっているということでございまして、じゃ、これを具体的にどのように担保していくのかというところについてお話を伺いたいと思います。
 まずお尋ねをいたしますが、必要最小限度というのは、だれが、どのような基準で、どのように判断をするのか、その点について御答弁いただきたいと思います。
福田国務大臣 この法案では、基本理念として、憲法の保障する国民の自由と権利の尊重について明記してございます。
 この基本理念は、国及び国民の安全を保つという高度の公共の福祉のために必要最小限度の範囲において人権を制約し得るとするにとどまっておりますが、「国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」という憲法第十三条の規定など、国民の自由や権利の保障に関する規定の趣旨に沿ったものでございます。
 権利の制限を伴う対処措置につきましては、今後の個別の法制整備において、この基本理念にのっとりまして、制限される権利の内容や制限の程度と、達成しようとします公益の内容や緊急性を総合的に勘案して、その必要性を検討するということにしております。したがいまして、制限される権利やその内容については、武力攻撃対処法案の枠組みのもと、今後整備されます個別の法制において個別具体的に規定する、このようになっております。
前原委員 私がまず申し上げたいのは、この武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びにの安全確保法案でございますが、これは従来から基本法と位置づけられていたものですよね。基本法と位置づけられたもののもとに、例えば、第一分類、第二分類、あるいは今回出ていませんが、国民の避難とかそういう第三分類、あるいは米軍の行動にかかわるものということが昔決められていたと思います。
 ということは、この法律を審議する上で、二年以内に整備をするということはかなりありますけれども、基本法の中に今後二年かけて整備するというものが入っているということは、全体像が見えてこないということを意味するのと等しいんじゃないですか。
 つまりは、個別の具体的な、自衛隊の行動に関する法律あるいは米軍の行動に関する法律、あるいは民間防衛、国民の避難誘導、そういうものについて間に合わなかったんでこれから出しますという議論はあっても、基本法、理念法のところで細かなところは二年後に出しますというのは、これは論理矛盾じゃないですか、官房長官。
福田国務大臣 これは必ずしも論理矛盾とかそういう話ではなくて、まず、このいわゆる有事法制という中で基本的な枠組み、理念それから方向、これを示したというところでございまして、国民の例えば権利と保護とかいうような問題につきましても、この法律の中に各所に盛り込まれているところでございます。
 例えて申し上げますと、例えば四条、ここには国の責務というものの規定がございます。国民の生命、身体、財産を保護する固有の責務ということであります。また、五条には地方公共団体の責務。ここにも地域住民の生命、身体、財産の保護ということが書かれてございます。また、二十一条には、この武力攻撃事態が起こったときに対処の基本方針をつくりますけれども、ここにはやはり、安全の確保のために必要な措置とか、また、二十二条には、法制整備の項目として、警報とか緊急避難とか被災者の救助、消防等々が盛り込まれている。
 そういうようなことで、国民の保護について、より詳細なる内容についても昨日委員会でお示しをしたところでございますけれども、そういうことについて、一つ一つにつき、これから国民の理解を得ながら、また国民の合意も得ながらこの法制整備を進めていくというために、あと二年の年月をお願い申し上げているところでございます。
前原委員 少し食い違っております。つまりは、私は、憲法とこの法律の関係というものを申し上げているわけであって、その憲法の中の基本的人権の理念しか書かれていない、それがどのように担保されるかという話をしているわけであって、今おっしゃっているのは第三分類の話が中心になっているわけです。
 例えば、国民の権利、自由ということになると、憲法の第三章十条以下、かなり細かいものが書かれているわけですね。じゃ、例えば、表現の自由とか信教の自由とか、あるいは集会、結社の自由とか、そういう個別のものに対して制限が加えられるものがあるのかないのか。
 私の認識ですと、精神的な自由、これはどんな場合でも憲法は制約をしちゃいけない。経済的な自由については、制約をしていいけれども、それについては補償措置というものを設けなきゃいけない。こういう大きな分かれ方がなされているわけです。
 今私が質問をしているのは、基本理念ではありますけれども、各法、つまり個別の法案というものをしっかりと議論する以前に、基本法の中の憲法との関係というものがしっかり明記されていなければいけないし、例えば、さっき申し上げたように、十条以降のいろいろな自由、権利というものについては、制限がされるのかされないのか、あるいはどういう場合がされて、そしてまた、その場合の復旧措置はどうなのか。そういうものは、個別の法律を議論する前提として、当然ながら出されなきゃいけない話じゃないですか。それは二年以内にやるから、あとは信用して、基本法、理念だけ入れさせてもらったということでは、この法案は根本的に欠陥であるというふうに私は思いますけれども、この点について御答弁ください。
福田国務大臣 国民の自由と権利の尊重と申しましても、多岐にわたるわけでございます。そして、その多岐にわたる中で、それぞれの分野においてどういうような具体的な保障と申しますか、そういうものが担保されるか、それはその法制の中で規定していくということになろうかと思います。
前原委員 ですから、私が申し上げているのは、それは個別の、第一分類、第二分類、あるいは将来、先送りをして二年後にやると言っている民間防衛あるいは米軍の支援との関係、そういう個別の法案は二年後にやるんでいいんですよ。基本法、つまり、包括法であるこの武力攻撃事態の法律において、根本的に、憲法との関連が理念しか書かれていない、訓示規定しか書かれていない。そのことについて、憲法上十条以下のすべての権利、自由については、明確な政府の方針を示されないと、やりますから信用してくださいということで、これは、要は、判こを押せというのと一緒ですよ。それを私は申し上げているんです。
福田国務大臣 これは、この法案、そしてまた、それに基づいて個々の国民の保護等に関する、その他もございますけれども、そういう法制について整備をしていくという中でもって規定していく。しかし、その規定される中身については、今回の法案でもって基本的なものは今お示ししているというふうに考えております。先ほども御説明したとおりのことでございます。
前原委員 いや、示されていないんですよ。
 では、例えば、具体的に聞きますよ。
 官房長官のおっしゃっているのは、いわゆる保護の話であって、言ってみれば、これからやろうとしている第三分類の領域の話なんですよ。私は違うんです。例えば、では具体的に伺いますよ。憲法第二十一条、集会、結社、表現の自由。集会、結社、言論、出版その他一切の表現の自由はこれを保障する、こう書いてありますけれども、一切表現の自由はこれを保障すると書いてあるわけです。
 では、これについては、この法律に基づいて制限が加えられるんですか、加えられないんですか。
福田国務大臣 この法案、そもそも現行憲法の枠組みの中で行われるということでありますから、今御指摘の点につきましては、もちろん憲法の枠の中で、そして、このいわゆる有事法制の中で行われるということでございます。
前原委員 それでは、憲法の第三章に定められている国民の権利、自由の中で、制限が加えられ得るものというのはどれですか。列挙してください。
福田国務大臣 これは憲法の十三条、先ほど申し上げました、国民の権利については、公共の福祉に反しない限り最大の尊重をするということでございますから、公共の福祉に反しないという限りにおいてはこれは許されるものというふうに考えております。
前原委員 それは理念として書かれているものと全く同じなわけです。つまりは、憲法の第三章の「国民の権利及び義務」の中の、今おっしゃった部分というのは、まさに総論的な部分なんです。その後に個別のいわゆる権利それから自由というものが書かれているわけです。その中で、どれが制限を加えられて、どれが制限を加えられないのかをお答えくださいと言っているわけです。
福田国務大臣 ですから、先ほど来申し上げているように、その個別のことについては今後の法制で整備をしていきます、個々の法制については、また具体的な内容については、いわゆる有事法制の基本理念にのっとったものであるということであります。
前原委員 つまりは、何度も申し上げます、一番初めに申し上げたことを言いますけれども、この武力攻撃事態の法律というのは、これは基本法でしょう、もともとやられたものが。包括法というか、基本的な部分が書かれているものですよ。それに基づいて、第一分類、第二分類とか第三分類、米軍の行動に関するもの、そして、あるいは、日本の国家として危機にどう対応するかというところの構えとしてこの武力攻撃事態における法律というものを持った上で、個別のものについてはどうするかということを決めるわけです。
 では、その包括法、基本的なものの中で、特に憲法とのかかわりが書いてあるところで二年以内にやるということは示さずに個別の議論をしろということで、おかしいじゃないですか。このことについてはしっかり示した上で法律の議論をやってくださいというのが本来あるべき姿じゃないですか。
福田国務大臣 今回お示ししたのは、有事におけるどういう対処をするかということでありますけれども、その基本的な考え方、そして今後個々の具体的な取り決めをする法制整備についての方向性を示しているということなんですよ。それで、この具体的なことにつきましては、特に国民との関係とか国民の生活にもかかわるようなことがございますから、ですから、これは国民合意を得るために、時間をかけて、国民の理解を得るように十分な議論をしていきたい。
 しかし、そういう法制整備をする上においても、この基本的な部分がないと一体どういうものができるのかということもわからないということじゃないかと思いますね。ですから、そういう意味においては、この法案が成立すれば、それでもってまた一つ国民の御理解もいただけるし、その後の作業も、どういうものが必要なのか、どういうようにしたらいいのかということがわかってくるんじゃないかというように思っております。
前原委員 それはおかしいんですよ、今官房長官おっしゃっていることは。
 例えば、個別の法律、今回出されている自衛隊法、それを適用するに当たって憲法で定められた基本的人権が侵害をされているというときに、じゃ、その基本理念に戻って、自分はどうすべきかと。その侵害された人間が、基本理念としてはしっかりとこの文書に書かれている、つまりは、「必要最小限のもの」でなければいけない、そしてまた「公正かつ適正な手続の下に行われなければならない。」と書いてあるのに、具体的に、じゃ、損害を受けたと思ってそのことについて訴えようとしても、理念しか書かれていなかったら個別の法律に対しての救済措置がとれないじゃないですか。つまりは、基本法の中に、武力攻撃事態法の中にそれがしっかり書かれた上で個別法をやるというのが本来の筋であって、それが書かれていないのに個別の法律を議論しろといってもおかしいじゃないですか。
福田国務大臣 それでは、議論を先に、お答えを先に進めさせていただきますけれども、例えば、公正かつ適正な手続というのは、公権力が国民に不利益を課す場合には、法律で定められた手続が適正でなければならず、具体的には、当事者にはあらかじめその内容を告知し、当事者に弁明と防御の機会を与えなければならない、また、不利益を課す根拠規定が法律で定められなければならないこと、また、当該根拠規定が明確であり、かつ規定の内容が合理的でなければならないことという要件を満たす必要があるというように考えております。
前原委員 一つ委員長にお願いしたいのは、これ以上続けても問答の繰り返しになりますので、憲法に定められた国民の権利、自由の中で、どの権利、自由が制限をされ得るのか、あるいは、どの権利、自由が制限をどのような状況においてもされないのか、そのことについての整理をしていただきたいと同時に、その制限をされる権利というものは、公共の福祉というふうに言われますけれども、どのような制限というものが加えられ得るのか、そしてまた、それについての救済というものはどういうものがあるのか、そのことについて示していただかないと、個別の法律は決めます、しかし、その個別の法律で憲法違反の疑義があるということで個人が何かを国に対して訴えたいと思っても、基本理念しか書いていないのに、具体的にできないじゃないですか。ということは、私は、法律の議論が、そこが空白である以上は詰められないと思うのですね。
 少なくとも、今申し上げたような整理を理事会で諮っていただいて、そして、政府から統一見解として出してください。どの権利、自由が制限されるのか、されないのか。あるいは、制限される場合はどういう場合なのか。また、どういう回復措置があるのか。そういう部分は二年間でやりますから待ってくださいと言われて、議論できないですよ。
 その点について、理事会で諮って、政府の統一見解を出していただきたいと思います。
瓦委員長 前原委員の質問に対しまして、理事会におきまして後刻協議をさせていただきます。
前原委員 では、三十分という細切れですので、この問題で聞きたいことを少し単発的に聞かせていただきます。
 私がお伺いをしている限りは、行政不服審査法というのは適用除外であるということでありますけれども、それはそれでいいのか。しかし、損失補償についてはこの行政不服審査法が適用されるということでありますけれども、その理解でいいのか。まず、簡単に御答弁ください。
津野政府特別補佐人 国民の権利、あるいは権利の制限、あるいは自由の制限について、あるいは義務化することについてでございますけれども、その関連で行政不服の申し立てができるかどうかということでございますが、これは一般的に、行政不服審査法という法律、その法律の適用を除外するという特別の規定を置かない限り行政不服審査法が適用されるわけでございます。
 したがって、個々の法律によって制約されることがあり得るけれども、そのような規定がない限り一般的に適用があるものであり、その場合、行政不服審査法の規定に従って、いろいろな手続が進められるということでございます。
前原委員 要は、適用除外じゃないということですね。
津野政府特別補佐人 適用除外という規定、行政不服申し立てができないというような規定を、それぞれ、そういった権利を制限したり自由を制限したりした場合に、そういう行為に対して、不服申し立てをすることができない、行政不服審査法を適用しないという規定を置くことが間々ございます。そういう規定を置かれている場合には、当然その行政不服申し立てはできないということでございます。
前原委員 だから、適用除外じゃないか、イエス、ノーで結構ですから。
津野政府特別補佐人 それで、本件の場合、ちょっと誤解があるといけませんが、この法案に書いてあります三条四項の規定でございますけれども、この規定自身は、そもそも、法制の整備とかあるいは法律の運用に当たっての基本的な考え方を示すにとどまっているものでございまして、この規定が直接に国民の権利を制約するというような根拠ではございませんので、この規定についての不服申し立てとか、そういうようなことは考えられないところでございます。
前原委員 ちょっと、済みません、理解できなかったんですが。
 例えば、武力攻撃事態と認定をされているときに、憲法で認められた権利、自由が侵害をされたと感じた人が、行政不服審査法にのっとって行政不服申し立てをすることはできるんですか。イエスかノーかで答えてください。
津野政府特別補佐人 いわゆる国の公権力の行使、それについて不服がある場合に、一般的には行政不服審査法の規定によりまして不服申し立てができるということになりますが、その場合に、その公権力の行使に伴っていろいろ権利が制限されたり義務が課されるというような規定があるわけですけれども、そういった規定は、すべて法律あるいは法律に基づく政令によって制限されているわけですね。
 そこで、いろいろな要件とか手続とか、いろいろなことがその法律の規定に盛り込まれているわけであります。その規定に違反しているとか、あるいは、憲法違反の問題は行政不服審査法の対象となることはないと思いますけれども、一般的に、法律の規定に違反しているとか、権利がそれによって侵害されているとかいった場合に、いろいろと行政不服審査法の規定に基づいて不服申し立てができるということになっているわけでございます。
前原委員 そうしたら、憲法上、基本的な人権が侵害されたという場合は、今御答弁では、この行政不服審査法の申し立てではないとおっしゃいましたけれども、では、これは最高裁、裁判所に訴えなきゃいけないということですか。
津野政府特別補佐人 お答えいたします。
 行政不服審査法の第一条で、「この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開くことによつて、簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。」と書かれております。
 このように、行政庁の違法または不当な処分、当然、憲法違反になるようなケースであれば違法なケースになる部分があると思いますけれども、この行政不服審査法自体で、異議申し立てとかいろいろございますけれども、そこで憲法違反の判断をすることは、まず考えておりません。
 これは、憲法につきましては一般的に裁判所が最終的に判断するわけでございますので、行政不服審査法自身で憲法違反であるというような認定をすることは、法律の対象とされていないところでございます。
前原委員 では、法律で、「公正かつ適正な手続の下に行われなければならない。」とされていますけれども、それで、されていないと感じたときには、それは、この行政不服審査法――憲法の問題ですよ。この法律は理念しか書いていないわけですから。さっき答弁されたように、理念しか書いていない。ということは、要は、行政不服審査法の申請はできないということですか、これに対して不服を感じた場合は。
津野政府特別補佐人 どうも、ちょっとよく御理解いただけないようですが。
 要するに、法律で、個々のいろいろな法律がございます。例えば自衛隊法もありますし、土地収用法もありますし、いろいろな法律がございます。そういう法律の規定によって処分なりなんなりがされた場合に、行政不服とか、あるいは行政事件訴訟とか、いろいろそういう手続が起こってくるわけでございます。
 この法律自身、現在武力攻撃事態法で書いてあります中で、国民の権利を制限したり、あるいは義務を課したりしている直接的な、実体的な規定は置かれていないわけでございます。したがいまして、それに関連しましては、この法律自身に関しましては、不服審査とか行政事件訴訟とかいうのはありません。
 それからもう一つ、どうしたら救済できるかということでございますけれども、これは今後、この基本理念に従いましていろいろ個別法が整備されてまいります。その中で、その事柄の性質に応じて所要の制度的手当てが検討されていくと考えられるわけでございますけれども、一般的に申し上げられることは、まず、いろいろ、その個別の規定に違反しているとかいうことがございました場合には、行政事件訴訟法に基づいて、行政処分取り消し訴訟とかその他の行政訴訟を裁判所に提起する権利がある。それから、公権力の行使に当たる公務員の違法な行為によって損害を受けた人は、国家賠償法によって、その公務員の属する国または地方公共団体に対し損害の賠償を請求できるという制度になっているわけでございます。
前原委員 今、官房長官、聞かれたように、この武力攻撃事態法の中には具体的な法律が、理念だけで、書いていないわけですよ。ですから、行政不服審査法によっての不服申し立てができない、こういう話なんですよね。
 ということは、一番先の話になりますけれども、理念だけ書いたって根本にこれがないと幾ら個別の法案をつくってもだめじゃないですかと、そのことを言っているわけです。つまりは、このことは、最初に出さなきゃいけない法律、この理念の中に具体的に書いておかなきゃいけない。そうじゃないと行政不服審査法において不服審査ができない。今、そういう話ですよ。
 それともう一つ、せっかく外務大臣来られたので伺いますけれども、米軍の行動、活動、有事というか武力攻撃事態のときに、米軍は、憲法で認められた自由と権利を米軍の活動において認めなきゃいけないんですか、どうですか。地位協定に憲法のことは書いていないはずなんですね、個別具体的なことは書いてありますけれども。米軍は国民の基本的な自由、権利を守る義務があるんですか、どうなんですか。その点についてお答えください。
川口国務大臣 武力攻撃事態におきまして、米軍は、我が国に対する武力を排除して、我が国とそれから国民の安全を守るために行動するということになるわけでございますけれども、その際に、まず、我が国に駐留する米軍は、一般国際法上、我が国の国内法令を尊重する義務があるということと、それから、この武力攻撃事態において、米軍は、日米安保条約、国際連合憲章及び国際人道法等に従って行動することになっております。
 こういったことにかんがみれば、この武力攻撃事態における米軍の行動が国民の基本的な人権を不当に侵害するということは考えられないということでございます。
前原委員 先ほどの話とあわせて、つまりは、尊重するということの国際慣習があるということで、具体的にそれがどう担保されるかどうかということが明確ではないし、翻って、米軍もあわせてでありますけれども、自衛隊の行動において、何度も申し上げますけれども、我々は有事法制そのものがだめだと言っているわけではなくて、包括法である武力攻撃事態法の中に、先ほどのように、理念しか書かれていなくて、具体的に不服審査をしようと思ったときにはできないような理念しか書かれていないというところに、私は、この法案の最大の構造的な欠陥があると思うんですね。だから、その点について、あと三十分私時間をいただいていますので、その続きを後でやらせていただきたいと思います。
 とりあえず、終わります。
瓦委員長 この際、暫時休憩いたします。
    午後零時十三分休憩
     ――――◇―――――
    午後四時三十一分開議
瓦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 再開に先立ちまして、民主党・無所属クラブ、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合所属委員に対し、事務局をして御出席を要請いたさせましたが、御出席が得られません。
 再度理事をして御出席を要請いたさせますので、しばらくお待ちください。
 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
瓦委員長 速記を起こしてください。
 理事をして再度御出席を要請いたさせましたが、民主党・無所属クラブ、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合所属委員の御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。
 この際、公聴会開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。
 各案につきまして、議長に対し、公聴会開会の承認要求を行うこととし、公聴会は来る二十七日月曜日及び二十八日火曜日に開会し、公述人の選定その他の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
瓦委員長 起立多数。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
瓦委員長 次に、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。
 各案の審査の参考に資するため、委員派遣承認申請を議長に対し行うこととし、委員派遣は来る二十四日金曜日及び二十七日月曜日に行い、派遣委員、派遣地等所要の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
瓦委員長 起立多数。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
瓦委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 各案審査のため、明二十二日水曜日、参考人として元防衛事務次官秋山昌廣君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
瓦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 この際、暫時休憩いたします。
    午後四時五十一分休憩
     ――――◇―――――
    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕


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