衆議院

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第12号 平成14年5月29日(水曜日)

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平成十四年五月二十九日(水曜日)
    午前十時一分開議
 出席委員
   委員長 瓦   力君
   理事 衛藤征士郎君 理事 金子 一義君
   理事 久間 章生君 理事 米田 建三君
   理事 伊藤 英成君 理事 玄葉光一郎君
   理事 赤松 正雄君 理事 工藤堅太郎君
      石破  茂君    岩倉 博文君
      岩永 峯一君    岩屋  毅君
      大野 松茂君    嘉数 知賢君
      熊谷 市雄君    小島 敏男君
      近藤 基彦君    斉藤斗志二君
      桜田 義孝君    七条  明君
      田中 和徳君    谷本 龍哉君
      中山 利生君    西川 京子君
      浜田 靖一君    林 省之介君
      増田 敏男君    森岡 正宏君
      山口 泰明君    山本 明彦君
      伊藤 忠治君    枝野 幸男君
      川端 達夫君    桑原  豊君
      首藤 信彦君    末松 義規君
      筒井 信隆君    中野 寛成君
      肥田美代子君    前原 誠司君
      渡辺  周君    上田  勇君
      白保 台一君    田端 正広君
      中塚 一宏君    樋高  剛君
      赤嶺 政賢君    木島日出夫君
      児玉 健次君    今川 正美君
      重野 安正君    東門美津子君
      井上 喜一君    小池百合子君
      宇田川芳雄君
    …………………………………
   議員           東  祥三君
   議員           中塚 一宏君
   総務大臣         片山虎之助君
   外務大臣         川口 順子君
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      中谷  元君
   国務大臣
   (防災担当大臣)     村井  仁君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   内閣府副大臣       村田 吉隆君
   防衛庁副長官       萩山 教嚴君
   外務副大臣        植竹 繁雄君
   防衛庁長官政務官     木村 太郎君
   政府特別補佐人
   (内閣法制局長官)    津野  修君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  村田 保史君
   政府参考人
   (防衛庁長官官房長)   柳澤 協二君
   政府参考人
   (外務省大臣官房長)   北島 信一君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 奥田 紀宏君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 黒木 雅文君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局長
   )            谷内正太郎君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            田中  均君
   政府参考人
   (外務省条約局長)    海老原 紳君
   衆議院調査局武力攻撃事態
   への対処に関する特別調査
   室長           鈴木 明夫君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月二十九日
 辞任         補欠選任
  大野 松茂君     谷本 龍哉君
  斉藤斗志二君     岩倉 博文君
  木島日出夫君     児玉 健次君
  東門美津子君     重野 安正君
  井上 喜一君     小池百合子君
同日
 辞任         補欠選任
  岩倉 博文君     斉藤斗志二君
  谷本 龍哉君     山本 明彦君
  児玉 健次君     木島日出夫君
  重野 安正君     東門美津子君
  小池百合子君     井上 喜一君
同日
 辞任         補欠選任
  山本 明彦君     大野 松茂君
    ―――――――――――――
五月二十七日
 安全保障基本法案(東祥三君外一名提出、衆法第二一号)
 非常事態対処基本法案(東祥三君外一名提出、衆法第二二号)
同月二十九日
 有事法制反対、憲法に基づく平和政策に関する請願(重野安正君紹介)(第三四八二号)
 同(今川正美君紹介)(第三五〇〇号)
 同(横光克彦君紹介)(第三五〇一号)
 同(伊藤忠治君紹介)(第三五三六号)
 同(今川正美君紹介)(第三五三七号)
 同(植田至紀君紹介)(第三五三八号)
 同(重野安正君紹介)(第三五三九号)
 同(今川正美君紹介)(第三五八五号)
 同(重野安正君紹介)(第三五八六号)
 同(今川正美君紹介)(第三六五七号)
 同(重野安正君紹介)(第三六五八号)
 有事法制立法化反対に関する請願(志位和夫君紹介)(第三四八三号)
 同(吉井英勝君紹介)(第三四八四号)
 同(赤嶺政賢君紹介)(第三五〇三号)
 同(志位和夫君紹介)(第三五〇四号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第三五四一号)
 同(松本善明君紹介)(第三五四二号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第三五四三号)
 同(赤嶺政賢君紹介)(第三六五九号)
 同(大森猛君紹介)(第三六六〇号)
 同(木島日出夫君紹介)(第三六六一号)
 同(児玉健次君紹介)(第三六六二号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第三六六三号)
 同(中林よし子君紹介)(第三六六四号)
 同(春名直章君紹介)(第三六六五号)
 同(藤木洋子君紹介)(第三六六六号)
 同(松本善明君紹介)(第三六六七号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第三六六八号)
 同(山口富男君紹介)(第三六六九号)
 有事立法と憲法改悪反対に関する請願(土肥隆一君紹介)(第三五〇二号)
 同(木島日出夫君紹介)(第三五四〇号)
 有事法制の制定反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三五三五号)
 同(保坂展人君紹介)(第三六五五号)
 有事法制反対、憲法九条を生かした国際貢献に関する請願(穀田恵二君紹介)(第三六五六号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 安全保障会議設置法の一部を改正する法律案(内閣提出第八七号)
 武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案(内閣提出第八八号)
 自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第八九号)
 安全保障基本法案(東祥三君外一名提出、衆法第二一号)
 非常事態対処基本法案(東祥三君外一名提出、衆法第二二号)


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     ――――◇―――――
瓦委員長 これより会議を開きます。
 この際、御報告申し上げます。
 予定しておりました去る二十七日及び昨二十八日の公聴会につきましては、諸般の事情により行わないことになりました。改めて協議の上決定いたしたいと存じますので、念のため御了承願います。
     ――――◇―――――
瓦委員長 内閣提出、安全保障会議設置法の一部を改正する法律案、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案及び自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案並びに東祥三君外一名提出、安全保障基本法案及び東祥三君外一名提出、非常事態対処基本法案の各案を一括して議題といたします。
 まず、東祥三君外一名提出、安全保障基本法案及び東祥三君外一名提出、非常事態対処基本法案について議事を進めます。
 提出者から趣旨の説明を求めます。東祥三君。
    ―――――――――――――
 安全保障基本法案
 非常事態対処基本法案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
東(祥)議員 おはようございます。
 ただいま議題となりました安全保障基本法案並びに非常事態対処基本法案の趣旨を御説明いたします。
 国民の生命と財産、自由、人権、文化を守り、国民生活を発展させることは、国家の最大の責務であります。国民生活を根底から覆す非常事態に当たっては、政府はすべてに優先して国民の生命財産等を守らなければなりません。武力攻撃であろうが、テロであろうが、自然災害であろうが、その鉄則は貫徹されなければなりません。
 本来、この最重要事項については、憲法に規定がなければなりませんが、残念ながら、現憲法にはそれがありません。
 私たち自由党は、現憲法を補うために、安全保障に関する基本法と非常事態に対処するための基本法を制定すべきであると考えます。
 日本の安全保障は、これまで、政府の憲法解釈によって、なし崩し的に、恣意的に行われてきましたが、安全保障の原則と、それに基づく自衛隊の行動原則を確立し、内外に宣明すべきであります。その土台の上に、非常事態において国家が国民の生命と財産等をどのような手段、方法で守っていくのかを定める必要があります。
 この二つの基本法により、これまであいまいにしてきた憲法解釈を確定し、国がどうやって国民の平和と安全を守るかについて基本方針を明示するものであります。
 まず、安全保障基本法案について申し上げます。
 第一に、この法律は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つとともに、国際社会の一員として国際連合の活動に積極的に寄与することを目的といたしております。
 第二に、国の防衛施策は、外交努力と国内の安全保障基盤の確立によって総合的に講じられるべきこと、自衛権は我が国が保有する当然の権利であり、国を守る崇高な機能であるとの国民共通の認識のもとに、日本国民がみずからの手で我が国を防衛すべきこと、国際の平和及び安全の維持に関する国際協力は積極的に行われなければならないこと等の考え方を基本理念として規定いたしております。
 第三に、自衛権の発動としての武力の行使は、我が国に対して直接の武力攻撃があった場合及び我が国周辺の地域においてそのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれがある事態が生じた場合に限り、行うことができるものといたしております。
 第四に、重大緊急事態が生じて一般の警察力をもって対処することができないときは、自衛隊が公共の秩序の維持に当たることといたしております。
 第五に、防衛力の整備を適切に行うとともに、アメリカ合衆国と緊密な防衛協力を行うことといたしております。
 第六に、国連の平和活動に対する協力を、国際法規及び国際連合の定める基準その他確立された国際的な基準に従って行うことといたしております。
 第七に、国連の平和活動に協力するために、自衛隊とは別個の組織として、常設の国際連合平和協力隊を創設することといたしております。
 第八に、国は、この法律の目的を達成するため、必要な関係法令の制定または改正を行わなければならないものといたしております。
 次に、非常事態対処基本法案について申し上げます。
 第一に、この法律の目的は、非常事態への対処のための態勢を整備し、国の安全と、非常事態における国民の生命、自由及び財産に対する権利を初めとする日本国憲法の保障する基本的人権の保護に資することを目的といたしております。
 第二に、非常事態とは、直接侵略または間接侵略、大規模なテロ攻撃、大規模な災害または騒乱等が発生し、かつ、これにより国民の生命、身体及び財産に重大な被害が生じ、もしくは生じるおそれが生じ、または国民生活との関連性が高い物資もしくは国民経済上重要な物資が欠乏し、その結果、国民生活及び国民経済に極めて重大な影響が及ぶおそれが生じ、通常の危機管理体制によっては適切に対処することが困難な事態であると規定いたしております。
 第三に、非常事態においては、国、地方公共団体がそれぞれの役割に応じて相互に協力し、国民の生命、身体及び財産を保護するためのあらゆる措置を講ずべきことを規定いたしております。
 あわせて、国民生活の安定と国民経済の円滑な運営の確保のために必要な措置が講じられなければならないこと、国民の自由と権利の制限は、目的達成のため必要最小限のものとすること、国民が受けた損失は正当に補償されること、国の地方公共団体への関与等は必要最小限のものとすること等を規定いたしております。
 第四に、政府は、非常事態に有効かつ適切に対処することができるよう、平時にあらかじめ基本方針を定めなければならないものといたしております。
 第五に、内閣総理大臣は、非常事態に至ったと認めるときは非常事態の布告を発することができるとしており、布告を発する場合には、原則として事前に国会の承認を得なければならないといたしております。また、六十日ごとに国会に報告し、国会が布告の廃止の議決をしたときは、直ちに布告を廃止しなければならないといたしております。
 第六に、非常事態に対処するため、組閣時に、内閣に複数名の大臣から成る常設の非常事態対処会議を設置する旨の規定を設けております。
 第七に、非常事態の布告が発せられた場合の内閣総理大臣の権限として、警察の統制、海上保安庁の統制、地方公共団体の長に対する指示、運輸、通信、エネルギー等の事業者への指示、国会が閉会中等の場合における一定の事項についての緊急政令の制定等を規定いたしております。
 第八に、国は、この法律の目的を達成するため、必要な関係法令の制定または改正を行わなければならないものといたしております。
 なお、安全保障基本法、非常事態対処基本法ともに、公布の日から施行するものといたしております。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決賜りますようお願い申し上げます。
瓦委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
瓦委員長 次に、ただいま議題となっております各案について議事を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官村田保史君、防衛庁長官官房長柳澤協二君、外務省大臣官房長北島信一君、外務省大臣官房審議官奥田紀宏君、外務省大臣官房審議官黒木雅文君、外務省総合外交政策局長谷内正太郎君、外務省アジア大洋州局長田中均君及び外務省条約局長海老原紳君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
瓦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
瓦委員長 これより質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林省之介君。
林(省)委員 おはようございます。自由民主党の林省之介でございます。
 やっとと申しますか、私は、これまで、この質問者席に一時間座って無言の討論をやってまいりました。こんな大切な法案の審議をするのに、理由のいかんは私は問いません。我々国会議員、国民の負託を受けて自分たちの最低限の責務を果たさなきゃいけない。野党の諸君の態度は厳しく批判されるべきだと私は考えております。(発言する者あり)
瓦委員長 静粛に願います。
林(省)委員 これは、私の考えではございます。
 したがいまして、きょう、やっと三度目の質問が実現したということでございますが……(発言する者あり)
瓦委員長 静粛に願います。
林(省)委員 今皆様方に撤回をする必要はないと私は思っております。(発言する者あり)
 委員長、不規則発言をとめてください。
瓦委員長 発言、質疑を続けてください。
林(省)委員 それでは、質問を続けますので、皆さん御静粛にお聞きを願います。
 これまで、我が党の石破議員あるいは浜田議員からも……(発言する者あり)
瓦委員長 議席に戻ってください。議席に戻ってください。
林(省)委員 静かにお聞きをいただきたいとお願いをいたします。
 民間防衛についてのお尋ねがございました。
 さきの大戦でアメリカの占領軍が日本に入ってきたときに、空襲の状況について調べたという資料があるようでございます。この問題についてアメリカ軍がびっくりしたのは、こんなにたくさんの民間人が亡くなっているという問題について、これは恐らく我が国における民間防衛のあり方に問題があったのではないかと、そういう大きな疑問を呈せられたというふうに言われております。
 そこで、ぜひひとつお尋ねをしなければいけないのは、我が国のいわゆる民間防衛と申しますか、この民間防衛は、決していわゆる非常事態だけではないと私は思っております。自然災害から我々国民を防衛する、そのためにいろいろと、自衛隊であるとかあるいは消防隊であるとかといった人たちが活動をしていただいているわけでございますけれども、例えば、今、我が国の市中を流れる中小の河川は、この河川は……(発言する者あり)
 ちょっと静かにしてください。委員長、質問者の質問が聞こえないんです。御答弁いただく方に聞こえないような状態では質問できません。
 今聞きたいのは、例えば、私ども、いろいろな防災訓練等に出席をすることがございます。例えば、河川敷あたりで放水をしたりとか、あるいは、ちょっとしたプレハブのようなものに火をつけて消火器でばあっと消すような訓練をしたりとか、こういう訓練が決してむだだとは私は思っておりません。
 しかし、かつて阪神・淡路大震災のこの日ちょうど私は大学の教師をしておりまして、そして、あの瓦れきの中に学生諸君を訪ねていったことがございます。ちょうどその二日後に卒業論文の口頭試問の会がございました。そして、安否がわからない、連絡がとれない、そういう学生諸君を訪ねて、本当に発生直後のいわゆる現場を目にすることができたわけでございます。
 いろいろな御意見も出てまいりました。例えばヘリコプターが、取材のヘリコプターなんか、がんがんがんがん飛ぶんですよね。そうすると、自衛隊の方などは、まず声の聞こえる方から先ですよというふうなことで、例えば私の友人の母親などは生きながらにして焼け死んだ、取材のヘリコプターの音で全然声が聞こえない、大きく声の聞こえるところから順番に助けましょうと、こんなことがあったようでございます。
 何が言いたいかというと、そういういわゆる訓練というものが、日ごろ、例えば防衛庁などの場合にはそれなりの施設を持ってなさっているんだろうと思うんですけれども、例えば消防庁のようなところは、実際どこまで、できるだけリアルな状態の中で訓練ができているのかな、あるいは、そういう訓練施設をお持ちなんであろうかなということについて、まずお尋ねしたいと思います。
瓦委員長 質疑者からの発言に問題ありとして、野党理事の皆さんから撤回を求めてまいりましたので、これらの問題につきましては、後刻理事会で御協議をさせていただきます。
 村井防災担当大臣。
村井国務大臣 いわゆる民間防衛の問題につきまして、とりわけて防災というような観点……(発言する者あり)
瓦委員長 静粛に願います。
村井国務大臣 これはもう、有事というより日常的な世界で十分起こり得ることでございますが、林委員の御体験、非常に貴重な御体験を踏まえまして御質問がございました。
 どこまで実践的にできるかというのは、実は、その訓練を統括いたします私の立場でも常々悩んでいる問題でございます。できるだけ実態に近いような状況をつくる、そしてそれに対応する訓練を施すという工夫をいろいろな機会にしているところでございますけれども、自然災害はもとよりのこと、また人為的なさまざまな災害、例えば都市における火災等々でございますが、これはやはり当初の想定を超えるような場面というのが多々ございまして、なかなか思うように進まない。これは全く御指摘のとおりでございます。さような意味で、これからもそういう実践的な訓練が行えるようにいろいろな工夫をしてまいりたい、こんなふうに思っております。
 ちょっと余計なことでございますけれども、先般歌舞伎町で起きましたあの悲惨な火災事件につきましても、あのような火事が起こりましたときにどんな程度まで温度が上がるのかということは、実は、ある程度実験をやってみて初めてわかったというように聞いておりまして、そういう意味で、災害に対する対応というのをどのように実践的にやるかというのは大きな課題で、そのために、施設面でございますけれども、通常でございますと、大きな河川敷でございますとか広場ですとかいうところでやっているわけでございますが、これは、できますれば、やはりそのための施設を工夫してつくっていくようなこともまた大切なのではないかと、今の御指摘を伺いながら感じているところでございます。
林(省)委員 今御説明をいただいたことでいささかの安心はしたのでございますが、とにかく自然の力というのは物すごいものでございます。
 私自身は、例えばジェーン台風ですとか、あるいは第二室戸ですとか、あるいは伊勢湾台風ですとか、直接に経験をいたしております。淀川のあの大きな堤防が決壊するのを目の当たりにしたこともございます。流されました。最初は、本当に、水道の水がちょうど飛び出すような感じで水が出てくるわけです。これは何だと言うて僕らは子供のころですから遊んでおりましたが、それが、見ている間に大きな穴になって、ざあっと崩れていくんです。
 こんな状況が幾らでも自然災害などの場合には想定できるわけでございまして、したがって、先ほど申し上げたように、土塁を積むのも、例えば、天気のいいときにどこかそこらの川の堤防へ担いで上がって積むというような訓練が全く生きてはこないとは思いません。しかし、少なくとも、できるだけそういう実態に即した訓練をしていただかないと。
 そんな中で、特に私が今心配をいたしますのは、我々の場合もそうなんです、私も、こういう世界に身を置きながら、例えば、今自分の家の周辺でそういう大きな自然災害が起こった場合に、どこにどう避難するのか。あなた方の地域は何とか小学校に行ってください、ここまでの御連絡はいただいておりますと。しかし、例えば道路がもうずたずたに寸断されてしまっているとか、橋が落ちているとか、いろいろな事態が当然考えられるわけでございます。こういうときに、では、例えばお年寄りだとか、あるいは幼い子供たちだとか、か弱い女性だとかいうような方々をだれがどう誘導、避難させるのか。恐らくこういう体制も、自主防災組織などをある程度持っていてやっている地域でも、私は、十分には確立されていないのではないかなというふうな気がいたすわけでございます。
 そこへもってきて、このたびの有事三法でございます。そうすると、仮に外国からの武力攻撃事態が起こった、発生をした、そういう場合に、今申し上げたように、いわゆる弱者と言われるような方々、こういう方々をどのようにだれが誘導、避難あるいは保護をするのかというふうなことは、決してこの法律案そのものが今どうも十分じゃないという、提出の皆様方の中ででも、二年ほどかけて不足の部分は慎重に討論をしていきましょう、議論を積み重ねていきましょうというお考えのようでございますから、そのときにぜひそのことを盛り込んでいかなきゃいけないと思うんですが、防衛庁長官、いかがでございましょう、こういう問題について、いろいろな具体的な御検討が内々になされているのかどうか、お聞かせをいただきたいと思います。
中谷国務大臣 国民の保護のための措置ということでございまして、これは防衛庁ではなくて内閣全体の対応に関することでございますが、この国民保護のための法制の整備ということにつきましては極めて重要な問題であると考えておりまして、この法案に示された枠組みのもとで、今後、警報の発令だとか避難の誘導、救助だとか、応急復旧等のさまざまな措置に関する法制を整備することといたしております。
 政府といたしましては、国民の保護のための措置の重要性については十分に認識をしているところでございます。
林(省)委員 それでは、先ほど防災担当大臣にお聞きをいたしましたが、自衛隊では恐らく日ごろからいろいろな訓練をしていらっしゃるんだろうと思うんですが、演習場などがある、そういうところで、どの程度に例えば自然災害等に対応する訓練のようなものが実際になされているのかどうなのか。あるいは、そういう施設をお持ちなのかどうなのか。
 私は、やはりそういう施設を国として持つべきであって、そして、消防に関係する方々、あるいは自衛隊の方たちも含めて、そういうできるだけ実践的な場面での訓練をしていただくことが必要なんではないかというふうな考えを常に持っているものですから、自衛隊についてはどの程度のそういう自然災害訓練対応所があるのかどうなのか、これをちょっとお聞かせいただけませんでしょうか。
中谷国務大臣 自衛隊の災害派遣につきましては、近年、国民の皆様方からの期待の高まりを踏まえまして、防衛庁といたしましては、さまざまな形で起こり得る災害に対してより迅速適切に対応し得るように、災害派遣体制の充実強化に努めているところでございます。
 実際には、一九九〇年に、方面単位で北海道におきましてレスキュー90ということで災害に対する本格的な訓練をしたこともございますし、日ごろから各個の基本訓練はいたしておりますが、現実に災害に対応するということにつきましては、各自治体と連携をいたしまして、演習場ではなくて、より現実に起こり得る場所等におきまして防災訓練等に積極的に参加することなどをいたしております。
 現実には、一例を挙げますが、平成十三年度は、九月一日の東京都防災訓練に、人員約二千名、車両四百両、航空機約三十機により参加したのを初めとしまして、四十七の全都道府県におきまして実動の防災訓練に参加をしたところでございます。このように、災害に対する対応等も行っているところでございます。
林(省)委員 かつて、ペルーの人質事件がございましたね、大使館の。あの事件を解決するために、我々は、これは聞いた範囲でございますけれども、いわゆる大使館と同じ建物をつくって、そして、犯人たちがここにいる場合にはここからこう入るんだと、そういうまさに仮想的な実戦訓練を十分に積んだ結果があの救出の成功ということにつながったということを聞いているわけでございます。
 私は、そういう非常事態といいますか、あるいは人心が非常にパニックになったような状況のときには、可能な限り、できるだけ現状に近い状態の中での訓練を多く積んでいるにこしたことはない。特に、自然災害などの場合にはなかなかそういう現状というのはつくりにくいんだろうと思うんですけれども、少なくとも、まして武力事態なんというようなことになってくれば、いろいろなことが想定される。
 そんな中にあって、今の日本では、少し厳しい言い方になるかもわかりませんが、すべてお上任せというようなところが国民の心の中にできてしまっている。自己防衛、あるいは自身のできること、国民として何をしなきゃいけないか、こんな議論を今やれば、恐らく、それこそかつての国家総動員法であるというような批判が出てくるんであろうと思います。しかし、自分の身を自分で守るという心を今かなり失ってしまっている我々日本人にとって、これからの有事に際する考え方というのをしっかりと持っていただくためのいろいろな啓蒙活動あるいは広報活動なども私は必要になるんじゃないかと思っているわけです。
 いろいろな地域のそういう防災訓練を見ましても、大抵、お見えになっている方はもう決まった方々なんです。ほとんど、役所の方々であり、周辺の方々であり、そして、そういうものに対してかかわっておられる方々でございます。一般の方々はほとんどお見えにならないんですね。そういう方の二、三百人がわあっとパニックに陥って右往左往すれば、恐らくいろいろな活動に支障を来すわけです。
 前回の阪神・淡路のときもそうでございました。まず、マスコミがバリバリバリ何機も何機も飛ばす。後であれは自粛したようでございますけれども、あのヘリコプターによってどれだけの命が逆に言うと救われなかったか。声が聞こえない。聞こえないと、幾らここにおるんです、動いているんですと言っても救援に来てくれなかった。自分の母親は生きながらにして焼け死んだ、自分は近くにあった石ころを持ってヘリコプターに投げつけたと言っていますよ、その男は。そういう事態がまさに現実の問題として起こっているわけですね。
 したがって、ぜひとも、絶好の、そういう意味では、国民の皆様方に自己防御意識も持っていただくという意味で、今回の法律にはそのことを、いわゆる民間防衛、こういう形で、皆さん、こんな場合にはこうしましょうよということがきちっとできる体制を、本来は防災担当大臣でございましょうけれども、お考えいただけないかなというふうに思うのでございますが、いかがでございましょうか。
村井国務大臣 広く民間防衛ということになりますと、これはまた官房長官なりの御担当になろうかと存じますけれども。
 今、自然災害を例にとってお話ございました。いろいろな場面がございましょうから、実際に起こる現象というのは区々だと存じますけれども、今、林委員まさに御指摘のとおりでございまして、現在、例えば防災訓練をやりましても、なかなか、ごく普通の方が出てきてくださるというわけにいかない。一般の方では、いわゆる町会のリーダーでございますとかいう方が御参加いただけるのが精いっぱいでございまして、そしてまた、では町会がどれだけきちんと組織できているかというと、それは、もちろん都会の場合にはなかなかこれが難しくなってきているというのは、また御案内のとおりでございます。
 それから一方、私、他方で警察を担当しております立場から申しますと、いわゆる警察官が各地域の事情をそれなりに把握しますために、お宅、どなたがお住まいですかというようなことを確認して歩く。これは防犯上非常に大事な行為でございますけれども、現実には、御協力を得られる地域と得られない地域とある。これもまた一つの現実でございまして、そういったところをどのように組み立てていったらいいか。これは、ある意味では、広い国民的な論議が大切な部分ではないか、そんなふうな感じをしながら今の御意見を拝聴していた次第でございます。
 いずれにいたしましても、何らかの危機が起こりました場合に、それにどのように国全体、国民一人一人が対応していくか。それは、ボランティア活動もNGOも大切でございましょうけれども、やはり、一方では、行政と、それからいわゆる社会を支える通常のコミュニティーというものも、それなりに果たす役割があるんだろうと思っております。
林(省)委員 今大臣のおっしゃった、そういう問題をやはりどんどんと進めていただく、国民の皆様方にも御提案もいただく、そういうことをやはりしていきませんと、今せっかくある、ある程度自然災害に対応する自主防災組織的なものを、こういうものをそのまま、私は、いろいろな方向を考えながら延長していけばいいのではないかというふうに思っておりますので、ぜひ、そういった意味の御指導、お願いをいたしたいと思います。
 話は変わりますが、きょう提出をいただきました東議員の御説明、今聞かせていただいたのでございますが、ちょっとお尋ねをいたします。
 この安全保障基本法案あるいは非常事態対処基本法案でございますけれども、この法案、今ざっと読ませていただいた、ざっとした説明をお聞きしたところでの質問でございますが、これは、直接の武力攻撃が発生していない、そういう周辺事態においても自衛権が行使できるというふうに解釈をしていいんだろうと思います。
 そうしますと、これは、従来の、政府がやってまいりました憲法解釈を大きく超えることになるのではないかと思います。この問題について、従来の憲法解釈を大きく超えるようないわゆる解釈ができる今提出された法案について、まず御説明をいただきたいと思います。
東(祥)議員 まず、林先生、突然質問していただきまして、ありがとうございます。事前に通告はいただいておりませんでしたけれども、質問していただいて、まず、ありがとうございます。
 御案内のとおり、テロ特措法のときにも申し上げました。日本の国が、唯一の武力組織である自衛隊というものをどういう原理原則に基づいて使うのか、これが明確にされていないんだろうというふうに思います。
 九〇年代におけるあの湾岸戦争があったときも、いろいろ、かんかんがくがくの議論がありました。その後、自衛隊というものを海外に派遣していくわけでありますが。
 林先生よく御存じのとおり、日本は、一番初め、あの憲法九条、これを読んだときに、だれも、陸海空の武力組織といいますか、そういうものを持てないと。また、吉田総理に至っては、御案内のとおり、自衛権すらないと初め言われておりました。それが、朝鮮動乱とともに、自衛権はあるんだ、そして、自衛権のうちでも個別的な自衛権があるんだ、集団的自衛権はないんだ。それはその後、政治家が下がってしまって、官僚が政府解釈をずっと行ってきたところであります。
 そして、九〇年代に、御案内のとおり、有名な武力行使一体化論というものが突如として出てきます。これも政治家がちゃんと議論した話ではなくて、あくまでも、今までの憲法解釈に基づく議論に基づいて、内閣法制局から出てきた話であります。
 そして、そのときできないと言っていたものが、昨年のテロ特措法によって今度できると。何でできるようになったんですか。小泉総理は、東さん、時代が変わったんだ、あるいはまた、福田官房長官に言わせれば、常識ですと。このように、めちゃくちゃな安全保障論というものの上に成り立ってきている。
 したがって、今の御質問に対しては、私たちは、まず、国民の生命と財産を守るために、いざというときに日本の唯一の武力組織というものをどういう前提に基づいて使うのかという基本原則をはっきりさせておかなくちゃいけない。
 それは三つあるんだろうというふうに思います。
 一つは、日本の国が、国あるいは国に準ずる組織が計画的に日本に対して攻撃をしかけてきたときに、そのときには、座して死を待つということではなくて、日本が持っている武力組織を使うんだ。そして、それと同時に、いわゆる周辺事態、日本には直接火は噴いていないけれども、例えば朝鮮半島で火を噴いたときに、それが直接日本の安全保障にかかわってくる。そのままその事態を放置すれば、御推察できるとおり、あの朝鮮半島における複雑性、単なる韓国と北朝鮮の戦いのみならず、当然、あそこに日本の国民がたくさんいらっしゃるわけであります。当然、韓国とアメリカとの間の防衛条約というものもできております。そういう状況の中で、当然、北朝鮮の首謀者という人間が、日本に対して、明確な形で意図を持って攻撃をしかけるという可能性はあります。しかし、しかけられてしまった瞬間、国民の生命と財産というものは脅かされる状態を推定することができると思います。そういうときにはちゃんと、日本の唯一の武力組織を武力行使を前提として使うんだということを明確にしておきなさいということを我々は言っているわけであります。
 第二番目の問題は何かといえば、御案内のとおり、いわゆる治安出動というものがございます。
 治安出動の場合でも、国内において騒乱が起きたときに、あくまでも、警察が持っている警察職務執行法、その能力を超えることはできないわけですね。ところが、私たちはもう既に経験しているわけであります。例えば地下鉄サリン事件、あのときに、武装している人間が化学兵器あるいはまた生物兵器を持ってきたときにどのように対処したらいいんですか。警察権力で対応することができるんですか。そういう、できない場合ということも当然想定できるのではありませんか。そのときには自衛隊が当然武力行使を前提とした形でもってできるんではないのか。そういう規定をせよということを言っているわけであります。
 第三番目の問題というのは、これはまさに、国連における国連決議、とりわけ安保理決議という、世界において唯一国際社会における拘束力を持っている機関における決議が出てきたときに、そのときに、国際法に照らした上で、もし必要とあるならば、当然、武力行使もせざるを得ないような状況になるかもしれない。そのときに日本は、いわゆる今までの慣例に従うならば、役人さんのその延長線上でいくならば、憲法九条の延長線上、つまり自衛権の範疇でもって国際社会の平和と安全に対してこたえようとしているわけです。
 私たちは、それは違うと。明確な形でもって、いわゆる自衛権の発動ではなくて、国際の平和と安全に対して、国際社会が一致協力して、平和が破壊されたものにどのように対処していくかというときには、その基本的な原則を明確にしておきなさいと、それをこの安全保障基本法で言っているわけであります。
 非常事態の場合でも、非常事態というものが一体どういうものなのかということを明確にここに定義させていただいております。
 既存の法律でもって対処できるものであるとするならば既存の法律で対処すればいい。既存の法律で対処できない場合というのは出てくるんじゃないですか。そのときには内閣というのはどういうふうに動くんですか。それに対して、一切、明確な形で基本法というものがこの国にはないではありませんか。それは政治家が決めていかなくちゃいけないということを一貫して主張させていただいているわけであります。
 御質問、ありがとうございました。
林(省)委員 大変懇切丁寧な御答弁をいただきまして、ありがとうございました。
 最後になりますが、それでは、今自由党さんのお考えになっているこの基本法の中で、例えば、先ほども御質問いたしました民間防衛、これについては、あるいは国民のそういう、これだけきちっとしたことをおっしゃるんだから、これはもう義務規定です、こういうときにはこうしなさいというようなものを求めていかれるのかどうなのか。いわゆる民間防衛について、最後にお聞かせをください。
瓦委員長 時間が参っておりますので、答弁者は、短くしてください。
東(祥)議員 はい、わかりました。
 林先生、ありがとうございます。
 先ほど林先生の御説明の中にありました、国の防衛というのはだれが守るのかということであります。
 それは、究極においては、自分たちの生命財産、国民の生命財産が侵されるとき、どういうふうにそれに反応するかということでありますから、本質的には、先生がおっしゃられるとおり、国民一人一人が国を守るという意識になっていかなければならないんだろうと思うんです。ところが、有事、あるいはまた非常事態というふうになったときに、個々の方々が勝手なことを考えていたならば、それは機能しません。
 したがって、内閣、とりわけ内閣総理大臣に大権を与えることによって、そしてそれは、逆に言えば、国会によってちゃんとしたチェック機能を入れることによって、その瞬間、動けるようにする。当たり前のことなんだろうというふうに思います。
林(省)委員 終わります。ありがとうございました。
瓦委員長 次に、上田勇君。
上田(勇)委員 公明党の上田勇でございます。
 きょうは、まず最初に、ちょっとこれは通告している内容ではないんですが、中谷長官にお伺いをしたいというふうに思います。
 昨日来報道がされております情報公開請求者の名簿の件について、防衛庁内でさまざまなコメントを付して回覧をしていたというようなことが報道されております。これは、私も事実関係は報道でしか存じ上げませんけれども、それを見る限りにおいて、現状でも、行政機関が持っているそういうコンピューターのデータファイル、これの取り扱いについては法律でそれが規制されておりますし、今度の国会では、新たに行政機関の個人情報保護法案が今審議をされているところでありまして、これは、現行の法律に照らしてもそれに抵触するおそれがありますし、今の審議中の法案の趣旨には、これは明らかに反するものではないのかなという感じがいたします。
 特に近年は、個人のプライバシーに対する意識が非常に高まっていて、しかも、いろいろな通信手段、電子処理手段の発達によりまして、そうした個人情報を積極的に保護していかなければいけないという時代になっているわけであります。
 しかも、これは、ちょっと別の角度から申し上げれば、今この委員会で議論されている三法案、これに批判的な意見を述べられる方の中のその根拠となっているのが、防衛庁が本当に国民の立場に立って公正でオープンな行動をしてもらえるのかどうかというところに対する不信感みたいな、信頼感のなさといったところがこの法案に対する批判的な意見の根拠になっている部分もあるわけでありますので、そういう意味では、今回のこうした行為というのは、本当に、果たして防衛庁が、法律に則して、国民の立場に立って信頼し得る行動をしてくれるのかということに疑問を投げかけるという意味では、非常に重大な事件ではないかというふうに私は考えております。
 特に、防衛庁が、何よりも、役所のいろいろな都合というようなことじゃなくて、やはり国民の側に立って行動していただかなければいけないわけでありますので、そういう意味で、今回の事件に対して、中谷長官の御所見、そして、これからどういうような対応をされていくのか、御意見を伺いたいというふうに思います。
中谷国務大臣 今回の件につきましては、情報公開の制度の趣旨からいたしまして、あってはならないことでありまして、非常にゆゆしいことで、言語道断なことだというふうに認識をいたしております。
 そもそも、情報公開の意味といいますと、開かれた政府を実現するための手段といたしまして、知る権利を与えられた住民がその権利を行使するわけでございますので、その際に、住民のプライバシーが守られること、また、権利を行使しようとする人の公平性、分け隔てなく行っていかなければならない、この二点が大切でありますが、この重要性からして、極めて不十分な対応でもございますし、また、誤解を招くような行為でございまして、防衛庁といたしましては、現在この事実を徹底的に調査いたしているわけでございますが、その事実に基づきまして厳正に対処していかなければならないと考えております。
 また、この機会に申し上げますけれども、この開示を請求された方々、また国民の皆様方に、本件につきましては大変な御迷惑をおかけしたわけでございまして、この点につきまして、担当省庁といたしまして非常に遺憾に存じております。厳しく反省をいたしまして、今後このようなことが起こらないための方策をきちんととってまいりたいというふうに考えております。
上田(勇)委員 ありがとうございます。
 従来、我が国の国民の意識というのは、こういうプライバシーの問題とかというのには、欧米諸国に比べると余り高くないというふうに言われていましたけれども、今はむしろそうした意識が非常に高まってきていて、だからこそ、今個人情報を保護するためのいろいろな法制定の動きが、今度の国会でも審議されている中だというふうに思います。
 そういう意味では、やはり防衛庁・自衛隊が、本当に国民の立場に立って、信頼されるそういう行動、組織になっていっていただくために、ぜひ中谷長官に、今度の事件、非常に重く受けとめていただいて、そしてリーダーシップを発揮していただいて、この問題の対処に当たっていただきたいということをお願い申し上げます。
 それで、次に、この法案の関係の質問に入らせていただきますが、これまで武力攻撃事態の要件だとか解釈、そういったことについては随分と質問が出ておりますので、私の方から、これは、もう通告して随分時間がたったものですから順番とかが若干違うのは御了承いただきたいというふうに思うんですが、この武力攻撃事態対処法案の中で、これから法制度を整備していくという部分、その法案のところにつきましてお伺いをしたいというふうに思います。
 そのうち、最初に、この法案とジュネーブ条約との関係についてお聞きをしたいというふうに思うんです。
 我が国は、一九四九年のジュネーブ諸条約、これには五三年の時点で加入をいたしておりまして、同時にこれは世界百八十九カ国が締結している条約でございます。しかし、我が国においては、こうした四つの条約で定められている義務を履行するための国内法の整備は、今日のところまで整っていないというのが現状であります。また、七七年には第一追加議定書、第二追加議定書が採択をされて、世界で百五十カ国以上の国が締結をしておりますけれども、我が国はいまだに未締結という状況でございます。
 法案の第二十一条においてこの条約との関係についても言及をされておりますし、これまでいわゆる防衛庁で検討されてきた有事法制の第三分類の部分についても、ジュネーブ条約の義務を履行するための法整備を行うということが言われてきたわけでございます。
 今回の法案で、二十二条に幾つかのこれから法整備をしていく事項が並べられているわけでありますけれども、ここで、この二十二条に定められている事項についてそれぞれ法整備を行うことによって、いまだ我々が日本として義務を履行することができない現状になっているこの諸条約、それから、まだ締結をしていない追加議定書、こうした条約に定められている義務を履行することが、この二十二条に定められている事項についての法整備を行うことによって、そういう条件が整うというふうに理解してよろしいんでしょうか。御見解を伺いたいと思います。
海老原政府参考人 お答えいたします。
 今、上田委員がおっしゃいましたように、そこに、国際人道法の実施とそのための国内法の整備ということが書かれているわけでございます。
 国際人道法につきましては必ずしも明確な定義があるわけではございませんけれども、今おっしゃいましたジュネーブの四条約、これは必ずしも国内法の整備ができないままに、まさに五三年に入ったわけでございますけれども、これと、今おっしゃいました追加議定書の第一議定書というものがございます。これにつきましては、まだ日本は入っておりませんけれども、これには入る方向で検討を進めてまいりたいということで、ジュネーブ四条約、それからジュネーブ追加の第一議定書、これは、いずれについても国内法の整備を進めてまいりたいというふうに考えております。
上田(勇)委員 ということは、今度の法案で二十二条のところで定められている事項について、それぞれの法整備が進めば、今、国内法が整っていないということでありましたけれども、そうした条件が整うというふうに考えてよろしいというふうに思いますが、このジュネーブ条約、いずれも非常に多くの国々が、もともとの四条約については百九十カ国ですか、追加議定書についても百五十カ国以上の国が締結をしている条約でございますので、やはりこれは、こうした人道条約に我が国としても参加することが、国際社会において義務を果たしていくためにも重要なことであるというふうに思います。
 そういう意味では、この法案でこれから法整備を行うというこの部分について、早急に検討して法案化を進めていかなけりゃいけないというふうに考えているわけでございます。
 次に、これは若干このジュネーブ人道条約と、関連性はあるんですが、少し違う視点での条約でありますが、いわゆる国際刑事裁判所、ICCにつきましてお伺いしたいというふうに思います。
 ICC設立条約は、九八年の七月にローマにおいて採択をされまして、本年、発効条件である六十カ国の批准が満たされまして、七月に発効する予定になっております。ICCは、国際社会にとって極めて深刻な罪、集団殺人罪とか人道に対する罪などを犯した個人を国際法に基づき裁く常設の裁判所ということでありまして、ヨーロッパ諸国を初めといたしまして、非常に強力に推進をし、今日まで来たというふうに承知をいたしております。
 地域紛争とか国際テロというのが国際社会において非常に大きな脅威になっている今日、このICCの役割に対する期待というのは非常に高くなっているんではないかというふうに私は考えております。国の内外でも、学識経験者、多くの方々、それから、さまざまなNGOなどもこの活動を活発にサポートしているわけでございまして、また、この条約の交渉過程においては、当時の小和田大使を初めとして、日本が非常に重要な役割を果たしてきたというふうにも承知をしておりますので、このICCについて我が国として積極的に対処していかなけりゃいけないというふうに考えております。
 というふうに考えておるんですが、ところが、我が国はこのICCの設立条約にいまだ署名をしていないわけでありますけれども、なぜ、交渉の過程から非常に積極的な役割を果たしながら、今日その署名に至っていないのか、理由をお伺いしたいというふうに思います。
植竹副大臣 委員お尋ねのICC、国際刑事裁判所でございますが、まさに現在の国際社会における最も深刻な罪を犯した者の処罰として、その発生の防止を促進するものであり、国際の平和と安全を維持する観点からも、我が国といたしまして、六十カ国によって批准寄託されましたということは大変歓迎すべきことだと思います。
 しかしながら、委員御指摘のとおり、署名期限である二〇〇〇年十二月三十一日までこのICC規程に署名しなかった理由でございますが、これにつきましては、国内法制を整備して締結するためのめどが立たなかった、そういうことであります。
 例えば、ICCが管轄権を行使し得るとされております戦争犯罪につきましては、ジュネーブ諸条約の重大な違反行為が該当すると規定されておりますが、しかし、同条約実施のための国内法令については、これまで未整備であったわけであります。したがいまして、今後、この武力攻撃事態対処法制としまして、ジュネーブ諸条約等の国内実施のための法整備が行われるということになりますれば、我が国によるICC規程締結に向けて大きな前進であると考えるところであります。
 ただし、集団殺害罪及び人道に対する罪につきましては、武力紛争が発生している事態のみでなく、平時においても犯され得る罪であります。また、ICC規程に定められております裁判手続や締結国によりますICCへの協力といった詳細な手続事項は、現在政府が検討しております武力攻撃事態法制の対象範囲を超える部分がかなりあると考えております。
 現在、政府といたしましては、このICC規程の内容や各国における法整備の状況を精査するとともに、我が国の国内法令との整合性について必要な検討を行っているところであります。七月一日のICC規程の発効及び今後の武力攻撃事態法制の整備の結果を踏まえまして、積極的に検討を加速させていきたいと考えておるところでございます。
上田(勇)委員 今、二つの質問に対して御答弁いただいたんですけれども、要約しますと、今回のこの武力事態対処法案の二十二条でこれから法整備を行うという事項が書いてありますが、これらの法整備が整うと、ジュネーブ諸条約及びその追加議定書に加盟する条件が、締結する条件が整う。なおかつ、今大変いろいろなNGO等が活発に推進をしているこのICCについても、そのための基礎的な部分の条件は整うんだけれども、その手続面において、ちょっとこの範囲、ここという範囲だけでは必ずしもその条件は全部は満たさないんだということだったというふうに思います。
 このICCの条約、最近、外務省においても非常に積極的に進めていきたいといういろいろな御意向を伺っております。先日も国会の中で行われましたPGAの勉強会においても、条約局の方が、これは一、二年をめどに何とか進めたいというような極めて積極的な発言がありまして、これは大変評価をいたしておるんです。
 そこで、この法案の二十二条で定められている項目、これは、これから二年以内で法整備をするということなんですが、さらに、それよりも範囲を超えた部分の法整備についても同じような期間の中にそれが法制化できるような、そういう方向で取り組まれておられるのか、その辺の御見解を伺いたいというふうに思います。
植竹副大臣 今、委員お尋ねがございましたこの法整備の点につきましては、一年とか二年とかそういう期限以内がどうということじゃなくて、積極的にこれに取り組んで、できるだけ可能な限り早い時点でできるように検討して、努力してまいりたいと思っております。
上田(勇)委員 ぜひよろしくお願いいたします。
 それでは次に、この法案の二十四条にあります「その他の緊急事態」のところにつきまして何点かお伺いしたいというふうに思います。
 今議論しております武力攻撃事態対処法案を初めといたします三法案、これは、昨年九月のアメリカでの同時多発テロの発生や、十一月には今度は日本の九州南西地域での不審船事件などがありまして、国民も、従来の国と国との武力衝突といったもの以外にも新しい形態のさまざまな脅威があるんだということを認識いたしまして、これからそういった事態に対してどうやって適切に対処していくのかというのが大きな関心事になりました。
 この今提案されている法案というのは、これはもう防衛庁においては相当以前の段階から研究をされておりますし、実際にこの国会でこの法案について議論をするというのは平成十一年の連立合意の中でも書かれていますように、それに沿って計画的に進められてきたというのは確かでありますけれども、そうした昨年のこういう新たな事態というのがそれの議論を促進させる役割を果たしてきたというのも、これは事実なんではないかというふうに思います。
 しかし、国民の多くは、現在政府から提案されている法案の中には、こうした新しいそういう脅威、多様な脅威といったものに対しては一番最後の二十四条という条項の中でしか言及がないといったことが、この法案に対する批判の一つにもなっているわけであります。
 そこで、まずお伺いをしたいんですけれども、この二十四条に「武力攻撃事態以外の国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態」というふうに書かれているんですが、これは私は、多分こういう大規模なテロだとか不審船事件などといったものがその念頭にあるんだというふうには思いますけれども、ここに書かれている「その他の緊急事態」というのは、その他、ほかのものもいろいろ含まれているのか、具体的にはどのようなことを指しているのか、御見解を伺いたいというふうに思います。
村田政府参考人 このたびの法案第二十四条に言います武力攻撃事態以外の緊急事態、これはさまざまなものがあると考えられますが、そこでの基本的な考え方といたしましては、発生した事案について、その形態、規模、内容等から見まして、それが国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす事態と判断される場合には、ここで言う緊急事態に該当するものと考えております。
 具体的な例はどうかということにつきましては、今御指摘のありましたような大規模なテロ、これらの武力攻撃に至らない大規模テロ、あるいは武装不審船事案といった事案が該当するものと考えております。
上田(勇)委員 今具体的に、私からも申し上げたそういう大規模なテロとか不審船事案といったものがここで言う「その他の緊急事態」に該当するんだというお話でありまして、確かにほかのことを例示しろというのは非常に難しいことなんだというのはよくわかるんですが、そうすると、この緊急事態、実際に発生した事件でもありますし、今具体的に例示として出せるこの二つのことについてどういうお考えかということを若干伺いたいというふうに思うんです。
 まず、不審船事案につきましてお伺いをしたいというふうに思います。
 ちょうど先月四月に、政府は不審船事案対処の検証結果についてといったものを公表いたしまして、今後どういうふうに対応していくかというようなことで、その中に必要な施策がいろいろ盛り込まれております。
 この検討結果の中には、法整備については、EEZ、排他的経済水域の中でどういうふうに対応していくかというような部分について法整備について検討するというような項目が含まれているんですが、そうすると、今度の、今議論している法案の二十四条の中で言っている、まあここでは具体的には法整備という言い方はせずに「必要な施策」という言い方をしておりますけれども、必要な措置という言い方をしておりますが、これから法整備が必要ということを考えれば、不審船事案についていえば、この検討結果の中に言及されている法整備のことを念頭に置かれているのかどうか、その見解を伺いたいというふうに思います。
村田政府参考人 先ほど申し上げましたように、武装不審船事案は、本条の第二十四条に言う緊急事態の一つの例だと考えております。そして、昨年末のああした不審船事案を考えましても、こうした事態が今後また発生した場合に、これにいかに迅速かつ的確に対処するかということは極めて重要であると考えております。
 この事案を踏まえまして、政府として検証を行ってきました。その結果として、当面、政府として、政府全体としての武装不審船対応要領の策定、あるいは不審船の発見、分析及び追跡能力の向上、あるいは現場職員、隊員の安全を確保しつつ対処するための装備の充実等の措置を講ずることとしております。
 今、法的な整備の問題についてのお尋ねがありましたが、いわゆるEEZ、排他的経済水域で発見した不審船を取り締まる法的根拠の問題につきましては、このEEZにおける沿岸国の権利というものが、国際法上、漁業、鉱物資源、環境保護などに限定されていることなどを踏まえつつ、沿岸国としてどのような措置をとり得るか、さらに検討したいと考えております。
上田(勇)委員 それでは、もう一つ、今例示がありました大規模テロへの対処についての御見解を伺いたいというふうに思うんですが、万が一そうした事態が生じた場合に、自衛隊が国民の安全を守るためにどのように対処するかというのは、これは国民にとって重大な関心事であります。
 現在の自衛隊法で定められている自衛隊の出動の形態というのは、防衛出動あるいは治安出動、そのほか情報収集あるいは施設の警護出動、海上警備行動などいろいろあるんですが、今度の法案の二十四条でこうした大規模テロに適切に対処していくというためには、これは現行法で定められているような出動の形態で十分というふうに考えられているのか。それとも、あえて二十四条で書いてある必要な措置の中に、こうした出動の形態についても、新たな事態に対処するためにさらに法律の整備、検討が必要というふうに考えられているのか。その辺の、これからの御見解を伺いたいと思います。
村田政府参考人 御指摘のようなテロ攻撃があった場合の対処の現在の基本的な仕組み、あるいは今後の考え方についてお答えいたします。
 まず、現在の仕組みでありますが、テロ攻撃があった、大規模テロが発生した場合、それが武力攻撃事態に該当しないと判断される場合は、そうしたテロへの対処の仕組みとして、現行法制におきましては、まず警察機関が第一に対処し、一般の警察力で治安を維持することができない場合には自衛隊が治安出動して、自衛隊と警察機関が連携してテロの制圧などに当たることとなっております。また、自衛隊におきましては、テロにより発生した被害などの状況によって、必要がある場合には、部隊を災害派遣するなどして、人命の保護などに当たることとなっております。これが現在の仕組み、考え方であります。
 今後につきましてですが、テロなどの武力攻撃事態以外の緊急事態については、今申し上げましたような警察あるいは海上保安関係法あるいは自衛隊法、災害対策関係法などによって基本的な体制が整えられてきているところであります。今後とも、こうしたものを踏まえながら、警察機関と自衛隊とのより緊密な連携を含めた運用面の改善など、これらが一層改善強化するための措置を講じてまいりたいと考えております。
上田(勇)委員 今、二つの具体的な例示につきまして、これからのいわゆる法的な整備の面での見解を伺ったんですが、今の答弁を総括しますと、これからいろいろな検討はしていく必要があるけれども、おおむね現行法の中で対応できるものであって、新たな法整備というのは、これからもちろんその必要性があるかもしれないけれども、現在は具体的なものは念頭にないというような言い方だったんではないかというふうに思うんです。
 今、この有事関連の法案を議論している中で、やはり国民の意識というのは、特に昨年いろいろな、アメリカでの大規模テロや日本での不審船事案などが発生して、そうした非常に多様な脅威に対していかにして国が国民の安全を守っていってくれるのか、そのことに非常に関心があるんだというふうに思います。
 そうしたことに対して、今度の法案に対する批判的な意見の中にも、そういったことに適切に対処する部分というのは、そういうような部分というのはずっと先送りになっちゃっている、法案の一番最後にちょっとくっついているだけじゃないかというような批判があるわけでありますので、むしろ、だから、必ずしもそういった事態に対して適切に対応していくためにすぐに念頭にある法律の改正等が必要というわけではなくて、現行法の中でしっかりと対応しているんだということ、そういったことをしっかりと訴えていただいて理解していただくということが重要なんではないかというふうに思いますし、また今後、検討の中でそういうような法整備の必要性が生じた場合には我々としても速やかに議論をしていきたいというふうに思っておりますので、何とぞよろしくお願いいたします。
 もう時間でありますので、これで終わります。
瓦委員長 次に、小池百合子君。
小池委員 保守党の小池百合子でございます。一時間、お時間ちょうだいいたしました。
 冷戦が終わりまして、そして世界がいろいろな再編成ということをこの十数年間遂げてきたわけでございますが、昨日はロシアがNATOに準加盟ということ、そしてまた、言うまでもなく九・一一のテロ、新しい事態がいろいろと起こってきているわけでございます。もちろん、インド、パキスタンの問題、中東の問題、本当に世界を取り巻きます情勢というのはいまだに不安定な情勢が続いているということでございます。
 ここで、いわゆる有事法制、今からさかのぼりますこと四半世紀、昭和五十二年、当時の福田総理の了承のもとで防衛庁において始められたものでございますけれども、当時は、有事法制の研究そのものが我が国を有事に巻き込むということで、巻き込まれ論が一部にあったことも事実だと思っております。あくまでも法制化を前提としないものとして研究が行われたわけで、研究のための研究ということだと思います。
 かつてのこの予算委員会の場でございましょうか、三矢事件なるものも取り上げられたことも、本来国家として考えなければならないことを一たんまた後ろに引き戻したというようなこともございました。ある意味で、日本の有事法制に至るまでの社会的研究というのはそれだけで研究テーマになるのではないかと私は思うわけでございます。その後、こうやって四半世紀の時を経まして、今回、この有事法制が審議されていることを、私も、ある意味で感慨深く思うところでございます。
 世論調査を見ますと、有事法制の整備が必要という答えが四九・八%、必要ではないというのが三八%と、大きく上回っているわけでございますが、一方で、この有事法制の内容についてはまだ余り知らないとかよく知らない、全く知らないという方々が六割を超えているわけでございます。このように審議がまたもとに戻ってきているわけでございますが、ぜひともこの場で、この法制の中身、これを知らしめることがまた今回の有事法制の中身、そしてその内容、意味、これを実のあるものにしていくための重要な過程であるという認識を持っているわけでございます。
 改めまして防衛庁長官の方から、有事法制の意義、そしてその必要性、さらには、もう一つ加えて伺いますが、与野党の間で今後ともいろいろな動きもあると思いますけれども、一たん、この有事法制が中途半端な形で終わるということは、日本のことは、国内のことでさえ決められないのかという話で、国際信義にももとるというふうな心配も抱いております。今の二点について防衛庁長官の方からお答えいただければと思います。
中谷国務大臣 有事法制の経緯につきましては、ただいま委員がおっしゃったように、長らく国会におきまして防衛議論を深めながら、また国民の皆様方の御理解をいただきつつ、一歩一歩進んできたというふうに認識をいたしております。
 そもそも、こういった有事事態、武力攻撃事態に対して国の備えをしておくということは必要であったわけでございますが、今回の法案は、武力攻撃事態対処法といたしまして、単に防衛庁・自衛隊だけではなくて、政府全体としてそのような事態にいかに対応するか、特に国民の避難誘導等の保護に関すること、また日米安保条約に基づく在日米軍の行動に関すること、そして自衛隊に関することなどを柱といたしておりますが、やはり武力攻撃事態というのは、まず、国と国民の安全にとって最も重大なことであり、緊要な事態でありまして、国自体としての基本的な体制の整備を図るものであるということを認識いたしております。
 もう一点は、自衛隊というものは厳しいシビリアンコントロールのもとに運用していかなければなりませんが、このような際に、法律を制定して、法律によって行動していくというのは当然のことでございまして、こういった有事法制によりまして、明確な法的位置づけをこの際しっかりするということでございます。
小池委員 今お答えの中に、私の二番目の質問が含まれてなかったかのように思います。
 つまり、今回の有事法制が審議をされて、そして成立に向けてあらゆる努力を重ねる、しかし一方で、いろいろな政治的な状況からこれが結論にまで至らないなどということになりますと、国際的な信義にももとる、みずからのことをみずからで決められないのではないかということで、非常に国際的にもマイナス、もちろんこれは国内のことでございますから、これが国民の選択であるならばそれはそれで終わってしまいますけれども、それではいけないというふうに思うんですね。もしそうなったときのことを、考えたくもないんですけれども、そういったことについての長官のお考えを伺わせてください。
中谷国務大臣 まさしく国の安全保障といいますと政府の責務でもありますし、また、自分たちの国は自分たちで守っていくという、国民自身の意識の問題であろうかというふうに思っております。
 かかる観点におきまして今回の法律を提出させていただいているわけでございまして、防衛庁長官といたしましては、この国会の会期中に、この骨格となる基本的な法案を成立していただきまして、二年以内に各種の対応措置ができる、その土台となる法律を成立していただきたいという気持ちでいっぱいでございます。私どもといたしましては、この国会で成立するように全力で御説明を申し上げたいと思いますし、その点につきまして国民の皆様方、そして各党各会派の御理解をいただきたいというふうに考えております。
小池委員 これまでの審議を私も拝見させていただいておりましたけれども、非常に、このケースはどうなるんだ、あのケースはどうなるんだ、まさにいろいろな、考えられないケースも実際には出てくるわけでございまして、その意味で、定義づけを明確にする、そしてまた法律的な、どの法律を活用するのかということの背景をしっかりしておくことがまさに有事に備えることにつながるんだというふうに思います。
 若干その辺を整理させていただきたいんですけれども、一番よくテーマになっておりました、周辺事態法から武力攻撃事態へというふうに移行する場合でございますが、これは、双方が法的に併存している場合から武力攻撃事態へと重点が移ったとき、手続上で、例えば米軍支援が不可能になることが想定もされるわけでございますが、そうなると、一時、超法規的なケースが生じるということなのでありましょうか。その点だけ明確にお答えいただきたいと思います。
安倍内閣官房副長官 ただいまの委員の御指摘は、周辺事態から武力攻撃事態に発展をした場合に我が国が対処できるかどうかということでございますが、周辺事態が推移した結果、周辺事態を引き起こしている国から我が国に対する武力攻撃が行われるに至った場合等につきましては、本法案の武力攻撃事態が発生することとなるわけでございます。この場合、武力攻撃事態への対処措置については、事態の認定や対処措置について記載した対処基本方針を直ちに閣議決定した上で実施をすることとなるわけでございます。
 どういう手順で周辺事態から武力攻撃事態にスイッチするかということで今御説明をしているわけでございますが、さらに、安全保障会議設置法の一部改正法案では、武力攻撃事態の認定等の重大な判断を極めて限られた時間的制約の中で的確に行い得るよう、安全保障会議に事態対処専門委員会を設け、これに平素から専門的な検討を行わせ、安全保障会議の審議を補佐させることといたしております。
 また、ただいま申し上げました事態においては、状況によっては、武力攻撃事態と周辺事態が併存する場合もあり得るわけでございまして、この場合、武力攻撃事態に対応する米軍への支援は、今後整備される新たな米軍支援のための法制に基づき実施されることとなりますが、周辺事態に対応している米軍への支援は、周辺事態安全確保法によるということになるわけでございます。
 政府としては、米軍支援のための法制の整備に際し、当該法制に基づく支援対象となる米軍の行動の目的等を適切に規定することにより、当該法制の周辺事態安全確保法に基づき対米支援を円滑に行い得るようにすることは十分に可能であると考えております。
 ただ、現在の段階では、委員が御指摘のように、我が国の武力攻撃事態における米軍への支援についての法整備ができていないわけでございますから、しかしながら、もし万が一そういう事態になった場合は、現在のあらゆる法令を駆使して、円滑な活動ができ得るようにしたい。
 ただ、もちろん、それができていれば、それがすべてカバーできればもう法律が必要ないわけでございますから、やはりそれでも不十分なことも予想されるという意味におきましては、一日も早く、この武力攻撃事態における米軍の行動が円滑に行い得るようにするための法律の整備を行っていきたい、こう考えております。
小池委員 今おっしゃいました、法律の整備をされるということでございますが、今回、自由党が安全保障基本法というのをお出しになっておられます。私は、全然中身の違う安全保障基本法ということを念頭に置いておりまして、その意味では、自由党がお出しになった安全保障基本法というのとは全く違う、一言で言えば、集団的自衛権の解釈を変えるという、その一行さえあればいい法律ではないかと思っております。
 ですから、今お話ございましたが、行間をお読みすると、併存はするけれども、しかしながら新しい法律は必要であるということでございますので、そのあたりを、その空間を埋めるどころか、もっと広い意味で、包括的に日本の安全を守るために必要な方策として、名称は何であれ、そういった法律の整備は、これは一刻も早くしていかなければ、まだまだ十分ではないというふうに考えるわけでございます。それについて。
安倍内閣官房副長官 ただいまの委員の御指摘は、周辺事態においての我が国の米軍への支援は周辺事態安全確保法でできる、それが、我が国が攻撃をされて、我が国事態になったときには、その米軍への支援が不十分になるのではないかと。
 それについては、これから法整備を進めていくわけでありますが、そのときに、つまり、周辺事態安全確保法の状況、周辺事態と、我が国への武力攻撃事態が併存するときに、米軍への支援をパッケージでやった方がいいのではないかという御指摘なんだろう、こう思うわけでございますが、しかしながら、そこは私どもは、周辺事態安全確保法と我が国事態に切り分けて、米軍へ対する支援をそれぞれの法律で行うことは可能である、こう考えているところでございます。
小池委員 米軍への支援ということになると、何か日本がアメリカを助けるというニュアンスが非常に日本の場合高いのでございますが、いろいろな場合が想定されますが、シーレーンの確保などというのは、これは日本にとっての必要なことでございますので、単に米軍を支援するために日本が一生懸命努力するのではなくて、やはり我が国のためにやっているということの認識をまず持つべきではないかと思っております。
 さて、先ほどもちょっとお話ございましたけれども、この有事法制、それをしっかりと実のあるものに、そして、本当に国民の生命、安全、そして国家を守るというその趣旨に沿うためには、やはり、防衛庁の今次起こっております問題、これは国民の信頼を大きく損なうものと、大変私も残念に思っているところでございます。
 一方で、防衛庁が位置づけられているこの庁というのは、防衛省というふうに、昇格というのか移行というのかわかりませんが、この辺を、やはり位置づけは明確にしておかなければ、ある意味で国家の体としてなしていない部分の一つではなかろうかと思うわけでございます。
 今回のこの事態対処法の行使等々の必要性があった場合に、防衛庁から防衛省に変わった場合、私は、何も支障はないと思うんですね。それを確認したいということと、それからもう一点、省に変わることによって何が一体変わってくるのか、防衛庁長官から伺いたいと思います。
中谷国務大臣 自衛隊もスタートいたしまして五十年になるわけでございますが、我が国を取り巻く情勢も変化をいたしておりますし、また、阪神大震災や地下鉄サリン事件、またPKO活動など、さまざまな面において、我が国としての地位、役割に応じた国際的な責務も果たしていかなければならないようになりました。
 このように、国政におきまして防衛の重要性が増大をしている中で、やはり諸外国のように国防を担当する行政機関を一省設けるということは、安全保障、危機管理に対する国の体制を強化いたしまして、これを重視している国の姿勢を内外に示すことになります。このことは非常に重要なことであるというふうに認識をいたしております。
 また、法律的な面から申し上げれば、国民の安全確保、国の危機管理のために自衛隊を運用すること、法律の制定、人事などについて、現在は防衛庁長官名で閣議を求めることができません。また、予算の要求、執行を財務大臣に求めることもできません。このような観点から、現状を改善するためにも、ぜひとも一日も早く、防衛省設置法案の成立をお願いしているところでございます。
小池委員 既に法案も出しております。ここにいらっしゃる委員諸氏のさらなるパワーアップを、私こっち向いて言っていますからね、お願いをしたいところだと思いますが、いかがでございますかとここで求めてもしようがないですが。
 さて、今回のいわゆる有事法制、パッケージでございますが、日本の有事に際しての法制、文字どおりそうでございますが、これは防衛の部分だけではございませんで、防衛が、防衛といいましょうか、武力が最終的な手段であるならば、その前が予防外交と言われるように、外交の力というのは大変重要なわけでございます。
 ここで、せんだっての瀋陽での領事館における駆け込み事件の方に話を移してまいりたいと思いますが、私は、残念ながら、初動のミスであるとかいろいろと報告書も出ておりますが、日本の外交において有事法制が機能しなかったのではないかということを感じるわけでございます。
 そして、あのビデオが存在したこと、これも実に大きな意味があるわけでございまして、あそこで映っていた二歳の女の子、ハンミちゃんというんですか、あの子がもうなすすべもなくただただ立ちすくんでいた、その姿が世界じゅうに映し出された。私は、ここで領事館でのさまざまな問題を見るとともに、何か立ちすくむ少女の姿が日本の姿に映ってしまって、重なってきているように思ったわけでございます。
 そして、今回のいろいろなことを考えますと、まず外交に対して国民の信頼感が欠けているということが、残念ながら、日本国内が一枚岩になって外務省を応援して、そして日本の国益、主権が侵されたということに対してのアピール、これの迫力不足につながったのではないか、私はこの辺を大いに指摘をしておきたいと思っております。
 その後、さまざまな映像や情報を見ておりますと、北京の日本大使館そして瀋陽の総領事館の周りに鉄条網とかそれから有刺鉄線を張りめぐらせたりしているわけですけれども、あれは一体、何から何を守ろうとしておられるのか。副大臣、いかがですか。
植竹副大臣 今委員お尋ねのとおり、瀋陽事件における根本認識は、まず危機意識の欠陥があったことが一番だと思いまして、そういう意味では深く反省しているところでございます。
 今言われましたように、あの警備というものは、不測の事態が、どういう事態が起きるかわかりません。本当にいろいろな意味で、駆け込んできているのか、また、いろいろな問題を起こそうとしているのかどうかわかりませんが、しかし、日本の領事館における防衛体制というのは確立していないと大変だということから、物々しい対応をとっているわけです。
 実は、私の子供も先日、現地に派遣して帰ってきました。そうしましたら、本当に、ピアノ線みたいな針金でめぐっておりまして、一歩も入れない。これならば、ここにどんなことを、入ろうというような心自体も起こさせないという意味で、完全にその後の対応についてやっているということを自分自身感じてきたというような、私の子供からも実感をとっておりまして、今後は万全の警備体制をとれると思っております。
小池委員 私は何か違うように思うんですね。壁を高くしようが鉄条網を張りめぐらせようが、それは、不審者を防ぐんですか、亡命者の駆け込みを防ぐんですか、どっちなんですか。
植竹副大臣 今委員お尋ねのとおり、不審者であるか亡命者であるかという点については、その本人が領事館に行ったとき、どういうような意図で来ているかということを見きわめないと、本当に不審者であるか亡命者であるかというのは、なかなか判読できないということでございます。
小池委員 根本問題は、亡命者をどうするか。政治亡命、経済亡命を含めて、我が国がどのような結論を出すのかによって答えは違ってくると思うんですが、何かこう私見ておりますと、非常にアグリーですよね。何か、有刺鉄線とか何か張りめぐらせる姿を見て、何となく、かえっておかしなぐあいだなというふうに見ているわけでございます。それぞれの当事者がその場で緊張感を持ってしっかりと対応していれば、それで済む話ではないかというふうに思うわけでございます。
 それに何よりも、途中から論理が人道主義、人道主義というふうに切りかわったことは、私、どうも判然としないんです。そもそも中国は、あの時点でもう、北京オリンピックしかり、WTOしかり、国際社会の一員となろうとしているときに、この北朝鮮に彼らを送り返すという選択肢はそもそもなかったわけでして、ですから、そこで人道的というふうに言いかえたのは、むしろ外務省として背中を見せてしまった瞬間ではなかろうかというふうに思うんですが、副大臣はどうお考えですか。
植竹副大臣 北朝鮮に送り返すというような問題、これにつきまして、外務省が背中を向けるということじゃございませんでして、これは、北朝鮮に送り返すとか返さないという問題は中国と北朝鮮の間の問題でございますが、とにかく、日本に訴えてきたあの五名の方々を、いかにしてこれを安全にほかへ移送するかということが一番五名の方々の安全を期することであり、そういう意味で人道的と申し上げた次第でございます。
 なお、先ほどもちょっと、法律的な意味でございますが、主権侵害ということではございませんで、あれは不可侵ということでございます。主権は、御承知のように古い二十世紀時代の、領土及び領空、領海に及ぼすのが主権でございまして、あの場合はウィーン条約における不可侵ということでございます。
小池委員 今、不可侵の御指摘がございましたのでついでに伺いますけれども、この不可侵権、基本的に、ウェストファリア条約以来の文明国同士のルールなわけでございますね。その後で条約として明文化されていくわけでございますけれども。
 実は、各国受けとめ方は違いますが、あのビデオが世界に流されて何がアピールされたかというと、そういう文明国同士の取り決め事、ルールを中国は守らない国なんだなということを改めて感じ取ったという人たちが、私、いろいろなメールであるとか、外交に非常に近いというかそのものにかかわっている方々から、そういったニュアンスのものをたくさんいただいたんですね。
 ですから、この部分は、明確なビデオというものがあるわけですから、一歩たりとも譲る必要も何もないんじゃないかと私は思っているんですが、この点、きのうも外務大臣も御発言がございます、この件は別にケース・クローズドではないということ、そしてまた、今後ともこの問題について日本として明確に主張していくのかどうか、その辺の確認をとらせてください。
植竹副大臣 委員がおっしゃったように、日本の主張すべき立場は、毅然として私はこれを主張していかねばならないと思っております。そして、その反面に、この問題は、いろいろ日本と中国との関係から大局的な見地においても対応していかなくてはならないと思っております。
 重ねて申し上げますが、主張すべきことは毅然としてやっていくことは、我が国の基本的な行き方だと考えております。
小池委員 前回も、予算委員会での集中審議で質問させていただいた際に申し上げたのですが、これは立場が逆だったら、日本と中国と立場が逆だったら、私は、多分、満州事変から南京大虐殺から、歴史的なあらゆることを全部出して日本の非をとがめたであろうと思います。
 我が国としてどのような対応をするかというのは、まことに超上級者編の外交的事案であろうと思いますので、本来ならば大局的という言葉と毅然というのとどうも私は矛盾するように思うのですが、そこはいろいろと、外交のテーブルの場において本当の意味の職業外交官として、また政治家として、その外交力を発揮していただきたいところだと思っております。
 それで、ついでにまた伺いますけれども、今、不可侵権ということでございますけれども、どうも外務省の中にも不可侵権を持っているところがあるんじゃないでしょうか。いわゆるチャイナスクールと呼ばれているところとさまざま報道がされているわけでございます。
 昨年の四月に、台湾の李登輝元総統が日本に来られました。すったもんだの末来られました。いろいろな、どこに行っちゃいかぬ、どうせい、こうせいという、手とり足とり、全部がんじがらめの訪日でございました。
 それをいろいろと私自身間接的に、そういう例を間近に見てきたわけでございますけれども、そのときにビザを出す出さないの話で、李登輝さんは今も有力な政治家だし、病気ではない、病気治療のために来るわけではないということでビザの発給というのが滞ったわけでございます。結果的には、がんじがらめの訪日となって、訪日そのものは実現したわけでございます。しかしながら、そこに至るまでのさまざまなやりとり、私は明確に覚えておりますし、こちらにおられる官房副長官もそういった事態についてもよく御承知のことだと思います。
 ところが、ことしの一月に、現在の台湾の国民党の党首、総裁というのかしら、この連戦さんという方が、何の問題もなくビザが発給されて日本に来ておられるわけでございます。別に病気治療ではない。李登輝さんの場合は台湾ということが一点と、それから有力な政治家であるということでビザの発給が滞っていたのですが、じゃ、この連戦さんは有力な政治家ではないのかということになってしまうわけでございます。
 ちなみに、アメリカの場合ですと、公職を離れて六カ月の人は、その人がだれであれ、それは自由な市民としてビザを発給され、現実に李登輝さんはアメリカの数次ビザを持っておられて、御自分の意思でアメリカにいらっしゃることは自由にできるわけでございますけれども、一体ビザの発行基準はどうなっているのか。そしてまた、それを阻止しようとした、私の目にはそうとしか思えなかったチャイナスクールというのは不可侵権があると私は思うのですが、いかがお考えになるのか。この二点、お願いします。
植竹副大臣 今委員がお尋ねの点、大変にデリケートな問題でございますが、その李登輝さんの日本に来られるとき、その後の問題につきましては、その場その場の状況を一つ一つ検討してみて、これが可能であるかどうかということを踏まえないとできないと思っております。
 その結果、いろいろな問題はありましたけれども、結局李登輝さんは岡山に来られまして診療を受けられて、お元気で帰られたということでございます。
 また、チャイナスクールの問題でございますが、それはいろいろな、例えば今までの系統でそういうグループがあるとかなんとか言われていますけれども、外務省としては、そういう何とかスクールということじゃなくて、外務省は常に基本的には一本でもって、いかに国際的に外交を有利にやっていくか、国益を考えて進めておるところでございます。
小池委員 副大臣になるとそうしかおっしゃれないというのはよくわかりますけれども、現実は違うと思います。
 一点、李登輝さんの場合ですが、その場その場で判断ということは、裁量ということですね。裁量に、私は日本の裁量があるとは思わないのです。どこかの影響があるんです。
 では、連戦さんのはその場その場でどういう判断でビザを出されたのか。官房副長官、何かありますか。
植竹副大臣 ただいまの件につきましては、内容、詳細な点につきましては、かなり事務的にいろいろな面でもって検討したということにつきまして、これは事務局から答弁させます。事務局じゃありません、参考人から答弁させます。
田中政府参考人 副大臣から御答弁を申し上げていますように、台湾との関係では外交関係を持たないという状況の中で、個々のケースに応じまして、そういう政治的な関係がないという前提の中で、個々のビザの申請においてそれを認めるかどうかということを決定しているということでございます。
小池委員 局長はチャイナスクールではないわけですよね。
 いつも李登輝さんのビザの申請があるときにその場その場での判断というのをやっている限り、私は日本の外交のスタンスが決まらないと思います。むしろアメリカのように、公職を離れたら何カ月後はだれでもというふうにしておくことの方が、この縛りから外務省が解かれて、本当の外交というか、日本としての外交ができるように、むしろ日本としての裁量権を確保できることになるのではないかと私は思うのですね。
 ですから、この一点を、いつもこの問題で、また出てきますよ、きっと。だって、奥の細道に行きたいといって本人がずっと前からおっしゃっているわけですから。ですから、それに対して、そのたびに日本の官邸から外務省から何とか大使館から含んで、これでぎっこんばったんしているのは、私は非常にエネルギーのむだ遣いだというふうに思いますので、これは強く主張をしておきます。お答えは結構です。
 それから、この件もそうでございますけれども、例の中国EEZの海域に沈んだままの不審船引き揚げ、これは今後とも進めていかれるんですね、官房副長官。
安倍内閣官房副長官 今沈んでおります不審船の中に何があるかということは、我が国の安全にとりまして極めて重要なことでございますから、それを調べないということはあり得ないと私は考えております。
小池委員 私は、当然そうすべきだと思いますので、よろしくお願いいたします。
 引き続き、外務省に関連してでございますけれども、今回の総領事館、現場でのあたふたぶり、大変残念に思いました。
 また、きのうも御報告があったようでございますが、いろいろと帽子を拾ったのをどうのこうのと言われているのはみんな出向者の方々なんですね。そして、外務省プロパーの方々はそのまま執務を続けておられたというのですが、ここがまず危機感のなさと連絡、コミュニケーションの悪さだと。
 それからまた、首席の領事が、不健康地なんですか、瀋陽という場所は。お休みをとっておられて、そしてすぐに引き返さなかった。飛行機の便がとれなかった等々言われておりますが、これは民間の会社で、瀋陽に工場があって、その工場が燃えている、工場長はたまたま日本に休暇で帰っている。そうしたら、その工場長はもう何が何でもすぐに帰ろうという努力というか、当然、義務ですね、努力どころじゃない、義務。それは、私は、民間の会社だったら当たり前だと思うんですね。それをそのままおられたというのは、これは危機意識と当事者感覚のなさということになってしまう。ただ、これは、ではほかの方々どうですか、その人だけの問題ですかというようなことも問われてくる。
 外交官試験が廃止をされまして、一般で皆さん一緒の試験を受けられる。このあたりは外務省も、廃止をすることに当たっては非常に抵抗感もあったと思います。しかしながら、現実はもうそうなっております。という意味で、外務省での教育、出向者も含めてでございますけれども、その後、カリキュラムを含めてどのような変化があったのか、そしてまた、外交官としての矜持、これをどのようにして教えておられるのか、この辺について伺わせていただきたい。
北島政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、平成十三年度より外務公務員採用1種試験が廃止されました。その結果、他の中央省庁と同様に国家公務員採用1種試験の合格者から1種職員を採用しておりますけれども、その結果、採用試験制度の中身が変わったものですから、国際法、経済学等が採用試験の必須科目ではなくなったということで、本年度より、入省一年目の1種職員を対象に、国際法、経済学、さらに外交史の専門科目の研修を実施する方針でございます。
 他省庁からの出向者を含めまして、在外公館への赴任が予定される者に対しましては、外務省の研修所において、在外公館に勤務するに当たって必要となる知識等について研修を行っているわけですけれども、その際には、公館の不可侵を初めとする特権・免除の問題、公館警備、緊急事態対応、邦人保護、そういった問題について講義を行っております。
小池委員 日本を代表して行っているんだというような気概というか、矜持というか、その辺のところは今のカリキュラムの中にちゃんと入って、これは、教えてできるものと、もともとセンスのない人とがいるので、いろいろあると思いますけれども、副大臣、今のお答え、何か補足することはありますか。
植竹副大臣 委員御指摘のとおり、一番大切なのは、日本人としてのアイデンティティーというか責任性を持っていくことがその基本であり、それは当然、外交官として目指す以上、やはり日本の代表である、日本の顔であるという意識を持つことが基本であります。
 したがいまして、この点については、技術的な問題じゃなくて、それ以前の問題として、強くこれを外交官たらんとする者については徹底して理解するように対応してまいります。
小池委員 何かこういう質問をするのはすごく寂しいんですよね、私、そもそも。当然過ぎる話でございますし。どの国のサービスなのかということから確認するなんという。ほかの国のサービスをするなら、それは別の意味で、スパイとかエスピオネージとかいう話になっちゃうわけですから、この辺のところの出発点の話をせざるを得ない今の状況ということをよくかみしめていただきたいと思います。
 そんな意味で、「変える会」の提言等もあって、民間人を大使にしようという動きがあちこちで起こって、既に何人かが御赴任をなさった、もしくはなさるような状況となっております。私は、外務省とすれば、何となく、どんどん自分のところは削られちゃって、またまたモラールの低下につながるのかなと思うんですが、やはり天皇陛下の認証である上はこの民間大使も、アメリカのように、大統領選で功績があったからどこそこの大使というようなのも、これも一つ考え方ではあります。
 ただ、日本の場合、その基準も何もなく、今あそこはだれがいいみたいな話になっていて、これは基準をきっちり設けておかないと、私は、日本の特命全権であるということが一つと、それから日本の顔であるということと、国益を代表して行っていただくということと、それからあと、やはり外務省職員の現地の方々も、とんでもない大使が来たなんといったら、情報が上がらなくなったりして、これはすごく危険だと思うんですね。そういう意味で、どんな基準を考えておられるのか、副大臣。
植竹副大臣 委員お尋ねのとおり、大使の基準でございますが、その基準、技術的なものを申し上げる前に、やはり日本人であるということ、その意識を持つことが基本であることは当然であり、私は、第一にその人格というものをもとにして選ぶのが基本であると思います。
 そして川口大臣も、この選び方といたしまして、外交について高い見識を有する者、また、長期間の海外出張や海外生活に耐えられる健康状態にあるということ、また、外国ですから、当然外国語の能力も有する、また、在外経験を経た者でないと対応するのに非常に困難なことから、在外経験を有する者、また、就任に当たりまして、一切の営利企業その他の報酬を得ております団体の役職を辞することができる者、また、在外公館長の場合には、就任時点で原則として六十三歳以下であるということを基準として決めるということを川口大臣もはっきりと明言しておりますので、重ねて申し上げますが、日本人としての顔、日本人としての自覚、それは持つことは当然でございます。
小池委員 いつも私はまず最低線のところから聞いているので、それだけクリアされても困っちゃうわけでございますけれども。私は、民間大使について、外務省だけでなくて、オープンな形でどこか決める部分があってもいいかなというふうに思っております。
 それで、続きまして、ODAのことについてちょっと伺いたいんですけれども、特に中国に対してさまざまな意見があって、中国に対してのODAの見直しも行われましたけれども、これまでの対中ODAって、どんな効果があったんですか。
植竹副大臣 中国に対するODAの効果でございますが、これは基本的には、日中両国の経済発展のために効果があった、それは広い意味で、大きな意味で申し上げるわけでございますが。中国に対しまして、経済効果とともに、日中の友好関係を築いていくことが、結局アジア太平洋地域の平和と安定にとって非常に重要であった。そして、中国の援助の需要、経済社会状況、また日中間の総合的な見地から検討してやっておりました。
 他方、こういう現在の状況でございますが、厳しい経済財政事情、また中国の開発の課題の変化に伴って、いろいろな意見が国内にあることを踏まえまして、昨年の十月、対中国経済協力計画を策定したところであります。そして、この策定に基づいて実施しておるところでございますが、中国側は、ODA大綱に理解と認識を深めるとともに、軍事費の問題を含めた国防政策全般及び第三国援助に対する透明性を向上させるように引き続き検討をしております。
 また、十三年度の対中国における円借款につきましても、中国経済協力計画の趣旨を踏まえまして、我が国の財政事情、中国の経済発展と国力の増大、個別案件の我が方重点分野の整合性等を総合的に勘案しまして、慎重に検討した結果、前年度比約二五%の減となりました。しかし、基本的には非常に経済も着実に伸びていると同時に、また日本も、それに伴って、総括的には全体のためにプラスになっているようなODAを実施しております。
小池委員 もっと簡潔にお答えいただければ助かるんですが。
 経済に対しての、経済発展、寄与し過ぎたと思いますね、もはや。それから友好、友好は、中国のテレビを見ておりますと、南京大虐殺を延々といまだにやっております。友好に寄与しているとは言いがたい。
 私は、ここで改めて、対中国ODA、日本から年間これまで約二千億出していて、そして二五%減ということでございますけれども、しかし、少なくとも、その中国が他のアフリカ、アジア諸国にODAを出している、その分は思い切って削減をすべきだというふうに思います。当然のことだと思います。これは別の意味のマネーロンダリングで、我々納税者はそれを認めたということは一度たりともございませんので、そこを明確にしていただきたい。
 と同時に、これもまたアメリカのケースで恐縮なんですけれども、アメリカの海外援助法というのを見ますと、共産主義国家には援助しないということの原則はまずぴしっとあるわけですね。そして、アメリカにとって何がいいかというその手段としてこのODAを活用している、時にはめちゃくちゃ人道的なこともやる。めり張りがあるんですね。私は、これを中国、対中のみならず明確にすべきだということを強く訴えをしたいと思います。
 その延長線で恐縮ですが、このODA、一律一〇%削減が中国の場合は二五パーの削減、そして、ほかの部分を見ますと一律で大体一〇%削減なんですが、一律というのは、私は思考停止以外の何物でもないと思うわけでございます。
 ついこの春先まではアフガニスタンの復興でした。今、世界の注目はまた中東に戻ってきています。でありながら、日本はこれまで中東に対して、九三年から非常に熱心に、また地道に、真摯に、中東の支援、パレスチナ支援を行ってきた。ところが、世界がこれからパレスチナ支援をふやそうというときに、日本は逆行しちゃっているんですね。
 例えば、二国間と、そして国際的なUNRWAなど、UNDPとかそういったところにこれまで拠出してきた日本のお金が、がががっと極端に減ってきて、何か日本は世界の流れと全然違う方向を見て、財政事情がありますからとかいろいろあるんですが、しかしながら、やはり世の中の流れに、また必然性、ニーズに合った形としてこの対パレスチナ支援を今こそやらなければ、さらなる自爆テロ等々の抑止にはつながらないし、本当の中東問題をさらに拡大する、そういうおそれもあるわけでございます。この対パレスチナ支援、G7、そして今後のヨハネスブルク・サミット、いろいろな節目がございます。私は、ここで大幅に思い切った対応をすべきであると思うんですが、来ますか、奥田審議官。私が指名していいんでしょうか。
奥田政府参考人 お答え申し上げます。
 今委員御指摘のとおり、これまで、九三年のオスロ合意以降、累積で六億ドル以上の対パレスチナ経済支援を行ってまいったわけでありますけれども、まさに厳しい財政事情に加えまして現地の情勢の悪化等もありまして、特に二〇〇〇年の後半以降、我が国の対パレスチナ支援額が減少しているということは御指摘のとおりでございます。
 他方、最近のパレスチナ自治区での状況にかんがみまして、支援ニーズというものは高まっているということから、国際社会におきましては、例えば国連開発計画でありますとかUNRWAでありますとかからアピールが出ておりまして、これにつきましては、それぞれ、UNDPについては三百三十万ドルの緊急援助、UNRWAについては百二十万ドルの拠出ということでやってきております。また、研修員の受け入れを通じた技術協力につきましても、従来どおり着実に実施をしてまいりたいと思っています。
 今後どうするかということでございますけれども、今、治安情勢、それから和平プロセスの動き等は大変動きが大きゅうございます。そういう中で、本当にそのパレスチナ人の需要、必要というものを見た上で積極的にこれを行っていきたいと思っております。
 さらに、最近問題になっておりますパレスチナの改革ということについても目を向けて、適切な支援ということを考えていきたいと思っております。
小池委員 ぜひとも、パレスチナ支援を強化していただきたい。
 というのは、これまで日本が極めて地道にやってきて、評判もすごくよろしいんですよね。ところが、ここへ来て、一番必要なときに減らしちゃったら、これまでのがむしろかすんでしまうというか、費用対効果からいうと非常によくない。めり張りをつけて、そして日本として何をすべきか。中東はやはり遠いけれども、重要なのはもう嫌というほど皆さん御存じなわけですから、ここでめりと張りをつけていただきたいというのは私からのお願いでもございます。
 最後に、そもそものこの瀋陽事件、先ほどもございましたけれども、日本は亡命者をどのように扱うのかという一番大きなスタンスを決めなくてはならないと同時に、今後の北朝鮮をどのようにするのかというのは、同じくG7等で日本もイニシアチブをとって、これを解決というかまとめていく方向をすべきだと思いますが、我が国において、人、物、情報、金、私は、この四点において北朝鮮との間で日本は大きな問題がある。
 人、拉致問題です。それから、今回の亡命の問題だってそうであります。国民さえ守らない国というのは一体何なんだということ。国民さえ守らない国というのは日本のことを言っているんです、拉致問題で。それから物については、不審船にしても、今回、どこかの会社がまた北朝鮮に船を売っていたんですね。きょうの新聞か何かで出ていました。
 それからお金、これが問題ですけれども、朝銀信用組合系統のお金について、公的資金でこれまで約六千億、これから約四千億突っ込むというようなばかばかしい話。それから情報、これについては、この間の日経新聞の方が、二年ほど向こうで拘束されていた方、内調、公安情報を北側が持っていたということで、よく考えたら、人、物、情報、金というのはいつも四元素と言われますけれども、いずれにしても、私は、北朝鮮にやられっ放しではないかと思うわけでございます。
 特に朝銀問題でございますけれども、金融庁、お待たせをいたしました。四つの新しい信組に、受け皿にあと約四千億の公的資金の投入ということが言われていますが、四つの信組とはいえ、朝鮮総連との関係のあった者、過去に経験した者というのもその理事長等々そういった役員から外すということをみずからの定款でうたって、そしてそういう人物を並べたはずでございますが、さまざまな調査によって、朝鮮総連との過去のつながりのあった人たちがその中にずらっと並んでいたということで、人選の見直しということが行われておりますが、現状はどうなっているのか。
 また、その選んだ方と朝鮮総連との過去というのはそもそも消すことはできない、どの人を持ってきても同じですよということを私は申し上げているんですが、そういった現状について、金融庁、よろしくお願いします。
村田副大臣 委員の御質問でございますが、ただいま、定款に定めたことが各新設の信用組合において、その役員人事において守られるように洗い直しを求めているところでございまして、もう少し時間がかかろうかと思いますが、国会等の論議を踏まえまして、確実にその人選が新しい組織の独立性を害するものでないように、その実現を求めていきたい、こういうふうに考えております。
小池委員 この問題は、人選をかえたとはいえ、かえたとしても、私今申し上げましたように、新しい受け皿の役員になる方々、通りすがりの人の名前でもかりない限り、私はなかなか難しいと思いますよ。また、これまで金融庁が先方から出してきた書類審査だけで認可をしてきたということは、これは重大な問題であるというふうにも認識をいたします。
 そしてまた、六月の末がデッドラインでございますけれども、日銀特融との関係もございましょうが、日本は何を優先して考えるのか、お金の額なのか、それよりも国家としての安全を守るのか、これも本日の有事法制の大きなテーマになるというふうに私は思うわけでございます。
 最後に官房副長官の方から、今回のこの事態対処法、これの成立を目指しての最後の決意を改めて伺って、私の質問を終わりたいと思います。
安倍内閣官房副長官 我が国の自衛隊には毎年五兆円近い予算がつぎ込まれているわけでございまして、精強性においては最高のレベルを保っていると言っていいんだろう、こう思うわけでございますが、この自衛隊が、我が国の安全が脅かされたときにしっかりと機能するように法整備をしていくというのは、当然我々の責務でございますから、この国会でぜひともこの法案の成立を期して、御助力のほどをお願いしたい、このように思う次第でございます。
小池委員 ありがとうございました。
瓦委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時十二分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時四分開議
瓦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。前原誠司君。
前原委員 民主党の前原でございます。
 法律論に入る前に、一点、在外公館の問題について質問を、防衛庁長官、外務大臣にさせていただきたいと思います。
 瀋陽の問題が起きまして、在外公館のいわゆる警備の問題というものがクローズアップをされてまいりました。日本の在外公館には、言ってみれば軍隊は駐留をしておりません。アメリカの在外公館ですと海兵隊が在外公館を守るということをやっておりますけれども、日本の場合は、その土地で雇ったガードマンなんかを警備に当たらせるということでありますが、今回は、表に立っているのが中国の武装警官、中にいたのが中国のガードマンと。ああいうお国柄の体制でありますと力関係は歴然としてくるわけでありまして、その警備体制あるいはだれを警備に配するかという問題も大きな問題になると思います。
 例えば、もちろん法律を改正しないとできないということはありますが、必要性の議論として、防衛庁長官にまずお尋ねしたいと思います。
 ウィーン条約で担保をされた治外法権、在外公館の治外法権というものを確保するために、やはり自衛隊の隊員が在外公館の警備に当たるという可能性について、防衛庁長官、どう思われるか、御答弁をいただきたいと思います。
中谷国務大臣 在外公館の警備の面につきましては、外務省が責任を負ってやっているわけでございます。
 現在、防衛庁からも、在外公館の警備対策官という身分におきまして、外務事務官でありますけれども、自衛官の身分をあわせ持ち、保有しつつ勤務をいたしておりますが、企画、計画での仕事をいたしておりまして、現実に警備の実任務には当たっておりません。
 この点につきましては、現在、自衛隊の中にそのような法律がございませんのでできないわけでございますが、実施する、しない等も含めまして、外務省から要請があったり、また、憲法的にできるのかできないかという議論を見つつ、対応したいと思っております。
前原委員 法律論とか実態の話をしているわけではなくて、あるべき姿として長官どう思われますかということをお尋ねしているわけです。
中谷国務大臣 よく国際法との関係で検討してみなければなりませんし、また我が国自体も、警察官が実施するのか、また自衛官が実施するのかという問題もございますが、警察官が実施することにつきましても、現在まだ実際に警備任務についておりませんので、その辺、政府部内で検討が必要だというふうに考えております。
前原委員 同じ質問ですが、外務大臣、実態論、法律論はもう結構でございますので、必要性、今回の事件を踏まえた必要性についてどうお考えですか。
川口国務大臣 今度の瀋陽総領事館事件がもたらしたさまざまな教訓のうち、一つ大きいものとして、在外公館の警備体制がどうあるべきかという問題があると思います。
 欧米の主要国の中には、自国の武装した警備の人を在外公館に配置をしているということを行っている国もございます。我が国としても、今回のことに学びまして、警備体制の強化ということは必要であると思っておりまして、既に、例えば増員ですとか、それからハード面の、カメラを据えつけるとか、そこに実際にフィルムを入れておくとか、そういうようなことを含めまして、いろいろ、どういったやり方がいいかということについては検討を始めております。
 おっしゃっていらっしゃる、自衛隊の人を入れるということが必要かどうかということについては、先ほど長官がおっしゃった自衛隊法の問題もございますし、それから相手国との、接受国との関係で、相互主義といいますかそういった問題もございますので、これは広く検討をしないといけない問題であると認識しておりますけれども、警備について見直していく必要があるということは、おっしゃるとおりだと思います。
前原委員 もう一度外務大臣にお尋ねをしますが、ハードなどの面での見直しを進めるということでありましたが、別に自衛隊員に限らなくてもいいと思うんです。先ほど防衛庁長官が御答弁いただきましたように、警察官ということで十分だということであればそれでもいいと思うんですが、しかし、他国のガードマンを雇うよりは、自国の、いわゆる治外法権というものをしっかりと在外公館で堅持するためには、自国の自衛隊員とかあるいは警察官などがそういう警備に当たる方が私はいいと思うわけでありますが、それも含めて御検討いただくということで結構なんでしょうか。
川口国務大臣 とりあえず、早急に改善をできること、これをやっていくことが重要だと思っておりまして、そういう意味で、カメラですとか、それから、可能であれば人員を増加するということも考えております。
 例えば警察官、例えば自衛隊といった話は、時間的には恐らく、それがいいとしても時間がかかると思いますので、とりあえず今必要なことは、今できる範囲でできるだけ警備の見直しを行うということだと考えています。
前原委員 いや、だから、その先の話を聞いているわけです。一言で結構です。
川口国務大臣 どこまで一挙に視野に入れるかという問題はあると思います。
 いずれにしても、やりやすく、コスト的にも、さまざまな意味でコスト的にもそれほどかからなくてできることをまずやっていって、それで状態を再度検討するということではないかと思います。
前原委員 本題ではありませんのでこれ以上やりませんが、たまたま亡命者であったから、こういうような、マスコミ報道も含めて国民の世論になっているわけです。逆にあれが、テレビに映っていない、あるいはテロ、ペルーの大使館等でありましたけれども、ああいう占拠をする人たちであった場合には全く逆の対応をしなきゃいけないということで、危機管理の専門家というものを在外公館に置くということは必要だと思うんですね。
 ですから、私は、ぜひそういうことも視野に入れて、必要であれば法改正を行うなどの、積極的な在外公館の治安維持というものに対して幅広く政府部内で御検討いただきたいと思いますが、官房長官、その決意を最後にお願いします。
福田国務大臣 これは、今回は中国で起こりました。数年前にはペルーで起こりました。ペルーで起こったときには、大公使館の警備ということについて見直しをするということになりまして、これはひとえに、接受国の政治情勢、治安情勢等々いろいろな、そういう国によって事情が違うということがあるわけでございまして、私は、中国の場合には、これは安全な国の方に分類されるんじゃないかと思うんですね、どちらかというと。
 そういう意味において、接受国の責任で警備をするというようなことが、今外務大臣からも答弁ございましたけれども、そういう中で、今回のように、その警備をかいくぐるか、もしくは強引に飛び込んでしまった、しかし、それがもしかして危険な人だったといったようなときにどういう警備をやるのかというようなこともございますから、そういうことも踏まえた上での検討というのは、これは必要なんではなかろうかというように私は思っております。
前原委員 しっかり御検討いただきたいと思います。
 それでは、法律の中身について議論させていただきたいと思いますが、先般、途中で切れております事柄に、基本的人権の尊重ということがございました。
 速記録をいただきまして、私なりに前回のポイントというのはこういうことだなと思うわけでありますが、官房長官が御答弁になったことで、制限される権利の内容や制限の程度と、達成しようとする公益の内容や緊急性を総合的に勘案して、その必要性を検討するということになっている、その内容については、今後整備される個別法制において個別具体的に規定をするということで、具体的内容はこれには書かれていなくて、先送りされているということが一つ。
 二つ目には、公正かつ適正な手続というのはどういうことかということで、官房長官がお答えになっていることで、具体的には、当事者にはあらかじめその内容を告知し、当事者に弁明と防御の機会を与えなければいけない、また、不利益を課す根拠規定が法律で定められなければならないなどなどということで、適正かつ公正な手続というのは、かなり周到な準備というものが必要とされるという答弁をされたということ。
 最後に、津野法制局長官がお答えになったことで、この法律自身、つまり武力攻撃事態法でありますが、この法律は、国民の権利を制限したり、あるいは義務を課したりしている直接的な、実体的な規定が置かれていない、したがって、それに関連して、この法律自身に関しまして、不服審査とか行政事件訴訟とかいうものはありませんと。
 これが、前回三十分間で議論をした大きな私はポイントであろうというふうに思っております。
 さて、それを踏まえてさらに質問をしたいわけでありますが、この間、官房長官に、ある意味で関連質問であったので、準備不足だったと思いますが、もう一度お尋ねをいたします。
 憲法が定める国民の権利、自由の中で何が制限をされ得るのか、あるいは何は絶対に不可侵なのか、また、制約され得るとしたらどういうものがあるのか、そのことについて御答弁をいただきたいと思います。
福田国務大臣 基本的には、この法案で、理念として、憲法の保障する国民の自由と権利の尊重について明記してございます。
 この基本理念は、国及び国民の安全を保つという高度の公共の福祉のため、また、必要最小限の範囲において人権を制約し得るとするにとどまっておりまして、「国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」という憲法十三条の規定などを含めまして、国民の自由や権利の保障に関する規定の趣旨に沿ったものであるということであります。
 権利の制限を伴う対処措置については、今後、個別の法整備において、この基本理念にのっとって、制限される権利の内容とか制限の程度と、達成しようとする公益の内容や緊急性を総合的に勘案して、その必要性を検討する、こういうことになっておりますので、したがいまして、制限される権利やその内容については、この事態対処法案の枠組みに従って、具体的に個別法案において検討する、こういうことでありまして、基本理念ということでもってこれを規定しているわけでございます。
前原委員 この法案の一つの大きな欠陥というのは、今まさに官房長官が御答弁をされたことなんですね。
 つまりは、憲法にのっとった法案だと、憲法に明記された国民の権利、自由。では、武力攻撃事態になったときに、どういう権利、自由が制限されて、どういう権利、自由が制限されないのかというものについては、今、まだわかりませんと、これからの個別の議論にゆだねていきますと、そういう前提になっているわけですね。私は、こんないいかげんな話はないと思うわけです。
 では、例えば、別の角度から質問させていただきますが、前回の質問の中で官房長官が御答弁になったときですが、公正かつ適正な手続というのは、当事者にはあらかじめその内容を告知し、当事者に弁明と防御の機会を与えなければならないということを御本人がおっしゃったのですよ。御本人がおっしゃったにもかかわらず、個別の制限され得る権利、自由というものが今明らかにされていないというのは、まさしく論理矛盾じゃないですか。
福田国務大臣 先ほど、この法制の基本理念というのを申し上げました。憲法のことも申し上げました。そして、憲法の範囲内で行われる、こういうことなんですね。
 今御指摘あったことについては、これはもう個別に法制整備をする、そういう中で具体的に規定をしていくということになりますけれども、国民の権利制限の内容は、そういう個別具体的に対処措置を決めていく際に、制限される権利の内容、性質、制限の程度などと、それから権利制限によって達成しようとする公益の内容、程度、緊急性、そういうようなことを総合的に勘案して定められるべきでございまして、当然その場合には、国会で十分御審議をいただかなければいけない問題だと思っております。
前原委員 要は、この法律が本当に憲法に合致しているものかどうかというのは、理念だけでは担保できないわけですよ。具体的に、今申し上げたように、どの権利、自由というものが制限され得るのか、されないのか、され得るとすれば、どういう状況で、どの程度なのか。その前提がないと個別の法案を審議しても仕方がないじゃないですか。だから、そこがしっかり出せないのに個別の法案を審議してくれと言ったって、それはできないですよ。それを出していただかないと、だって、憲法に基づく法案かどうかがわからないじゃないですか、それがないと。これから審議するなんて、そんないいかげんなことはだめですよ。
福田国務大臣 それはそうではないんじゃないでしょうか。今申し上げているとおり、そういう法整備をこれからしていくわけですよ、国民との関連に関するような問題については。そのときに、今申し上げたような基本理念にのっとって憲法の範囲内で法整備を行っていくということを申し上げているわけでございますから、これから行う法整備がそういう理念とか憲法の範囲とかいうものを逸脱することはないんだというように御理解をいただきたいと思います。
前原委員 では、別の角度から質問いたしましょう。
 この間、法制局長官が、つまりは理念の部分しか書いていないと、この法律自身。つまりは実体的な規定が置かれていないと。ということになれば行政不服審査というものにはならないと。適用除外じゃなくて、ならないと。具体的な法律に基づいてそういう不服審査というものが行われるんだということでありましたけれども。
 では、今官房長官おっしゃったような部分で、整備されるまでにこういう事態が起きたときに、全く、憲法の保障する権利、自由が侵害をされた、明らかに侵害されたとしても、そういう個別的な規定がないためになすがままになってしまう、そういうことになってしまうんじゃないですか。
津野政府特別補佐人 先日前原先生の御質問にお答えしましたが、要するに、個別法ができるまで不服申し立てができないというようなことを私の方で申しました。
 それはどうしてかといいますと、現在御審議いただいておりますこの武力攻撃事態対処法案でございますが、この法案の中身で特に先生が御意識されているのは、三条四項の基本的人権の関係で御質問をされたんだと存じます。そういうことでございますので、この三条四項といいますのは、基本理念を、武力攻撃事態への対処における基本理念を定めたものであります。したがいまして、この規定に基づいて国民の権利義務に直接影響を及ぼすことはないが、その一方で、対処措置として行われる行政処分に対する不服申し立てがこの規定に基づいてできるというものでもないわけでございます。
 今後制定されることとなります事態対処法制におきましては、この基本理念にのっとってその法整備が図られることとなりますが、それぞれの法制の中で、個別の行政処分に対する不服申し立ての可否、あるいは、可能となる場合における手続等が定められていくわけでございます。しかし、その個別の行政処分に対する不服申し立てに関しまして、今後整備される法制において特に規定を設けなければ、行政不服審査法が適用されまして、一般的には公権力の行使を行った者の上級行政庁等に対して不服申し立てができるわけでございます。
 さらに、二条六号に規定されておりますとおりに、武力攻撃事態における対処措置は法律に基づいて実施されるものでございまして、対処措置には、今後制定される事態対処法制のみならず、既に存在する法律に基づくものも含まれるわけでございます。
 このような既に存在する法律に基づく対処措置にあっては、行政処分に対する不服申し立ての可否や、それが可能である場合における手続等は、現行法に従うということになりますから、当該対処措置としてなされた行政処分に対する不服申し立ては、新たな法律が定められなくても、既存の法律の定めに従い行うことができる。これは既に法律の規定がある場合です。
 なお、以上は行政上の救済措置について申し上げたものでございまして、このほかに、行政事件訴訟法とか国家賠償法等の規定に基づいて裁判所に司法上の救済を求める道が当然開かれていくということになります。
    〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕
前原委員 この間答弁されたとおりで、時間のむだですので、もう繰り返しはやめていただきたい。
 ない場合はどうするんだという議論をしているわけですよ。ある場合はそれでいい、適用除外でない限りはそういう個別法をすればそういう対象になる、それはこの間御丁寧に答弁されたからわかりました。わかりましたけれども、ない場合はどうするんだと、そういう空白は、ないとは言えないわけでして。
 ですから、何度も申し上げているように、官房長官、この議論を審議する前提として、少なくとも、個別法の設定まではいいけれども、どういう権利、自由が制限されて、どういう権利、自由が制限され得ないのか、あるいは、されるとすればどの程度なのか、あるいは、どういう回復措置があるのか、類型ぐらいは政府で示さないと議論ができないじゃないですか。
福田国務大臣 この法律が成立しまして、そうしたらどうなるのか、国民の保護とかそういうことについてどういうように進めていくのかということなんだろうと思いますけれども、それはまさにこれからの法整備の中で、法整備でもってその考え方を示すということになるわけでございまして、それまではそういうようなことはないんですよ、そういうような取り決めはないんです。これからやるわけですよ。(前原委員「ないときが問題だと言っているんです」と呼ぶ)ですから、例えば警報とか、国民に対する警報を鳴らすとか、そういったようなことはできないんですよ。それはこれからのことなんです。
 ないときにどうするかといったらば、それは現行法で対応するしかない。そして、この措置法が通りますれば、ここの中でできる分で対応する。それから、自衛隊法の改正もございますし、そういうことをあわせてやるということになるわけですね。
前原委員 ですから、言いわけを聞いているんではなくて、官房長官、なぜ議論の前提として類型化を出されないんですか、少なくとも。どの権利、自由が制限され得て、絶対不可侵なものは何なのか、どういうときにその権利、自由が制限されるのか。それは、この理念を議論する上で示されないと、白紙委任状に判こを押せと一緒ですよ。そのことを私は何度も申し上げているんです。だから、その類型化を出してくださいよ、政府の統一見解を。
福田国務大臣 これから法整備をする。例えば、法案の二十二条に、警報の発令とか避難の指示、被災者の救助、消防等に関する措置、施設及び設備の応急の復旧に関する措置、いろいろ書いてございます。そういうことをこれからやるわけでしょう。ですから、それはそれで、そういうことを対象にしてやるんだと。もちろん、ここに書いてないものも当然出てくるかと思いますけれども。しかし、具体的な対処措置が決まっていないという現段階において、制限する権利と制限しない権利を確定的に区分して定める、これは適当ではない、まさにこれからの議論の中身だと思います。
前原委員 質問通告しているわけです。質問通告していて、その類型化をしてくれと言っているわけです。類型化をしないと私の質問ができないと言っているわけですから、質問しません、これから。出してください。
福田国務大臣 それは、なかなか難しい質問をされているんですよ。難しいということは、それは、項目ごとに、類型化、類型化とおっしゃるけれども、一つ一つ、権利の制限とか、そういうことの程度とか範囲とかいろいろな状況があると思うんですね。それを一緒くたに類型化というのは難しいということを申し上げているんです。
前原委員 これは日本の最高法規の憲法にかかわる問題なんですよ。憲法に保障されている権利、自由というものが、具体的に、ではこの法律を通したときにどう制限されるのかされないのかということを類型化できないというのは、これは、官房長官、失礼ですけれども、答弁者として失格ですよ。
 それは、答弁をする前提としてそういうものは政府で用意しておかなきゃいけない話じゃないですか。それが出せないで、後でやりますから判こ押してくれ、賛成してくれなんていうのはむちゃくちゃですよ。だから、それを出さないと私は質問しませんから。
福田国務大臣 それを、全体に対して、先ほど申し上げたような基本理念、憲法上の根拠等によりまして、その今おっしゃった権利の程度とかそういったようなことについては、今申し上げたその基本理念を中心に考えていくしかないわけです。その基本理念から逸脱することは許されない。
 そういうことでありまして、例えば権利の制限について定めるという場合には、その制限が、武力攻撃事態に対処するため必要最小限のものであり、かつ、公正かつ適正な手続のもとに行われることとなっているかどうか、適切な救済措置が確保されているかどうか等について、これは政府においても十分に検討し、さらには国会において御審議をいただく問題であるということです。
前原委員 それは、理念だけ示して、そして、ちゃんとやるから後の個別法を通してくれという議論なんですよ、今の話は。
 ですから、憲法に書かれている権利、自由、そういうものを、どれが制約されるのか、どれが制約されないのか、何度も言っているじゃないですか、それを示してくれと言っているわけです、質問通告しているんですから。
 それについて、憲法の条文の中で、どの条文が制約されてどの条文が制約されないのか言ってくださいという質問をしていて、これからやるんですという話だったら、全体の法律の根幹にかかわる問題で、今後の質問できないじゃないですか、個別の質問が。それを言っているんですよ。(発言する者あり)
金子(一)委員長代理 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
金子(一)委員長代理 速記を起こしてください。
 前原誠司君。
前原委員 実は前回も要求したんですが、憲法で保障された国民の権利、自由、どれが制約され得るのか、あるいは絶対不可侵なのか、制約され得るとしたら、どの程度なのか、また、それはどういうふうに補償、救済措置があるのか、それをすべて類型化してくださいということをお願いしたはずです。ぜひそれの政府の統一見解を出すように理事会でお諮りをいただきたいと思います。
金子(一)委員長代理 それでは、理事会でお預かりします。
前原委員 では、それをもとに、また、官房長官、あらかじめ事前通告しておきますから、その必要最小限度というのは、だれがどのような基準で判断するのか、そのこともしっかり答えられるようにしてくださいよ。
 それから、公正かつ適正な手続ということでこの間官房長官は御答弁されましたよね。そのときに御答弁された内容というのは、当事者にはあらかじめその内容を告知し、当事者に弁明と防御の機会を与えなければならないということで、かなり悠長なことが書いてあるわけですよ。
 例えば、旧ソ連があったときに、大規模直接侵略というものが予期をされて十分な準備をされるときはこういう回答はあり得たかもしれないですけれども、これ、後で質問するような、具体的な、テロが有事であったというようなときに、こんな悠長なことをやっていられないじゃないですか。その場合の公正、適正な手続というのはどうするんですか。
福田国務大臣 具体的に当事者に事前の告知をする、また弁明、防御の機会を与えるか否かというのは、行政処分により制限を受ける権利の利益、内容、それから性質、制限の程度、行政処分によって達成しようとする公益の内容、程度、緊急性などを総合的に比較して決定されるべきものであります。
 そのような機会を与えられないような場合にも、その根拠が法律に規定されることが必要であると考えておる、そういう考え方をしているわけであります。
前原委員 法律に根拠は示されても、急な事態の場合には適用されない場合もあり得るということですね。
 では、改めて答弁を求めますが、戦闘地域においては、この間防衛庁長官は、八十八条の世界である、こういう話でしたけれども、戦闘地域ではほかの法律は適用されないということになれば、この基本理念というものも、人権、権利、自由というものも担保されない可能性がありますよね、戦闘地域では。この場合は、措置といいますか、法律というのは守られるんですか、守られないんですか。言ってみれば、適用されるんですか、適用されないんですか、戦闘地域においては。
津野政府特別補佐人 お答えいたしますと、戦闘地域ということがいかなる御趣旨で言っておられるのか必ずしもはっきりわかりませんが、憲法の保障する国民の自由と権利というものは、いかなる状況のもとでも尊重されるべきものであるということは言うまでもありません。その意味で、法案三条四項の原則は、すべての地域に適用されるというものであります。
 この点は、自衛隊法第七十六条の規定によりまして防衛出動を命ぜられた自衛隊の行動に係る地域でも同様であり、当該地域において国民の自由と権利を制限するためには、法案第三条第四項の理念に従った法律の定める内容と手続によることを要するものである。現在審議中の自衛隊法改正案等が、お願いしておりますけれども、このような考え方に立った改正内容を盛り込んでいるわけであります。
 そして、自衛隊法第八十八条第一項の規定に基づいて自衛隊が武力を行使するに際しまして、これは、戦闘行為にはさまざまな活動が含まれ得ることから、その態様によっては国民の自由や権利を制約することも想定されますが、同項の規定は、国民の自由や権利について、地域による制約、地域によるという制約を許容することを定めるものではありませんで、同条第二項に規定する要件が満たされている場面に限って武力行使を認めるという限定的なものでありまして、法案第三条四項の趣旨に反するものではないというふうに考えております。
前原委員 ということは、国民の権利、自由というものが制約され得る可能性があるときは、戦闘地域にしてはいかぬということですか。そういうふうに今の御答弁では聞こえますよ。戦闘地域というのは、だれが望む望まないにかかわらず戦闘地域になり得るわけですから、そこに巻き込まれて、憲法の保障した国民の権利、自由が侵害される場合は、今の御答弁でいいんですか。
津野政府特別補佐人 お答えいたします。
 自衛隊法の八十八条は、武力を行使することができると第一項で書いてありまして、第二項で、国際の法規、慣例によるべき場合にあってはそれを遵守し、事態に応じて合理的な限度内で行使しなければならないということが書かれているわけでありまして、まさに武力の行使についての規定でございまして、特定の地域とかいうことで違法性が阻却されるとかいろいろなことが定められているわけではございませんで、まさに武力の行使という行為に着目して規定されているということでございます。
前原委員 しかし、実際問題、武力の行使が行われていて、ドンパチが行われている戦闘地域というのがあったときにどうするんですか、今申し上げた権利、自由は守られるんですかという話をしているわけですよ。法律論の話じゃなくて、実態が戦闘地域になっている場合に、守られない場合はどうするんですかという話をしているんです。だから、そういう地域にも適用されるのかどうかという話をしているわけですよ。御答弁ください。
津野政府特別補佐人 自衛隊法の武力行使の規定は、まさに武力の行使をすることができるということで権限を与えているわけでございまして、それによりまして武力の行使を行いました場合に、それはいわゆる正当行為として違法性が阻却されるということをこの前からるる御説明しているところでございまして、戦闘地域といいますか、そういう地域に直ちに着目してすべての事柄を決めているわけではございません。
前原委員 では、戦闘行為が行われている場所、まあ結局、でも地域になるわけでしょう、どうしたって、人間は浮いてやることはできないんだから。だから地域があるわけですよ、それは。地域でドンパチが行われている、その活動根拠は自衛隊法の八十八条だと。その場合に、憲法で定められた国民の権利、自由というものは、さっきの話だと除外されるんですか、つまり適用されないんですか。もう一遍、イエスかノーかだけ答えてください。
津野政府特別補佐人 お答えいたします。
 憲法十三条の規定は、まさに、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で最大限尊重しなければならないということが書いてあるわけでございます。したがいまして、その規定が、およそ特定の場合に排除されるなんということはあり得ないわけでございまして、すべて、およそいかなる場合においても憲法十三条の規定は適用されるということでございます。
前原委員 つまりは、公共の福祉ですべて逃げるという話なんですよ。要は、戦闘地域になった場合には、それは公共の福祉で、いわゆる憲法で保障された権利、自由というものが制約され得るという話ですけれども、そうなると先ほどの話に戻るわけです。絶対に不可侵のものがあるという御答弁がこの間あったわけですよ。絶対に不可侵のものがある、それから、制約され得るものがあると。その中で、今のお答えだと、絶対不可侵のものについて、では戦闘地域ではどうなるのかという話になるわけですよ。
津野政府特別補佐人 先ほどの、基本的人権が制約され得る対象を類型化しろというふうなお話と絡んでくるかと思いますが、基本的に、憲法が定める国民の権利、自由が制限され得るのは、どういう場合であり、どの程度であるかというような事柄につきましては、これは、憲法十三条で「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と定め、公共の福祉のため必要な場合には、合理的な限度において国民の基本的人権に対する制約を加えることがあり得ると解されているところでございます。
 このような権利の制約がどの範囲で認められるかは、当該権利の内容、権利を制約する必要性、その要件、制約の態様等により異なるところでございまして、どの範囲まで国民の基本的人権を制約することが許されるかを一般的に明示することは困難なわけであります。
 そこで、先ほどおっしゃられました、国民の権利、自由が絶対に制限され得ないようなものがあるではないかということでございますが、例えばそれは憲法十九条の規定する思想、良心の自由、あるいは二十条の信教の自由のうち信仰の自由の保障については、それが内心の自由という場面にとどまる限りにおきましては、これは絶対的な保障であると考えていいと考えられるわけであります。しかし、思想、信仰等に基づきまして、またはこれらに伴いまして外部的な行為がなされた場合には、これらの行為も、それ自体としては原則として自由であるものの、絶対的なものとは言えず、公共の福祉による制約を受けることはあり得るということでございます。
 さらに、憲法二十一条二項が禁止する検閲でございますけれども、検閲というのは、行政権が主体となって、対象とされる一定の表現物につき網羅的、一般的に発表前にその内容を審査した上、不適当と思われるものの発表を禁止することをその特質として備えるものであるというふうに考えておりますが、そういうものは、公共の福祉を理由とする例外を設ける余地は全くないものと解されているところでございます。
 他方で、このような絶対的な保障と考えられていない国民の権利、自由につきましては、当該権利の内容、権利を制約する必要性、その要件、制約の態様等において、制約を受けることもあれば、あるいはそうでない場合もあるわけでありますけれども、仮に制約を受けることがあり得るとしても、その範囲、程度につきましてはさまざまな場合があり得るわけでありまして、どのような権利、自由が制約を受けるか、また、その制約を受ける場合における制約の範囲等をあらかじめ一概に示すということは現段階においてはできない。これは将来、何度もお答えしておりますけれども、事態対処法制等、これから個別法制で整備していく上でいろいろ内容的に検討させていただくということであり、それについて国会での御審議を受けて、それについての判断をしていただくということでございます。
前原委員 初めからその答弁をしてくれたらいいんですよ。要は、制限され得る権利、自由、制限されない権利、自由を今初めて突っ込んで御答弁いただいたんです。内面的な自由でも、内面でとどまっている限りは絶対に不可侵だ、そういう話をしてくれということを先ほどから言っているわけですよ。
 ただ、法制局長官、先ほどの答弁の中で、つまりは、個別の事柄、具体的な事柄についてはいろいろな状況が生じ得るのでという話がありましたけれども、政府の統一見解のときは、そこまで突っ込んで、ある程度かなり類型化をした上で出していただきたいというふうに思いますよ、そこらを具体的に。どういう権限がどういう場合に制約され得るのか、そこら辺はしっかりと私は政府見解で出していただきたいというふうに思います。
 今の話も、政府の統一見解が出された上でもう一度質問をするということで、次の質問に移らせていただきます。
 防衛庁長官、ちょっと具体的なことで、武力攻撃事態に当たるかどうか、二、三質問をしたいと思います。
 尖閣列島が他国に占拠をされたとき、あるいはその予測があるとき、これは武力攻撃事態に当たるんですか、当たらないんですか。
中谷国務大臣 当然、その背景とか国際情勢等がありまして一概に言えませんが、一般論として申し上げれば、例えば尖閣列島というような、無人島でございますけれども、我が国の領土が他国に占拠されたという事態がこの法律案の武力攻撃事態となり得るかどうか。これは、あくまでこの占領が我が国に対する組織的、計画的な武力の行使と認定されるか否かの問題であります。仮にこのような占拠が武力攻撃に当たるとしても、その占拠が予測される事態が本法案の武力攻撃事態に該当するためには、そのときの国際情勢、相手国の動向、我が国への武力攻撃の意図が推測されることなどから見て、武力攻撃が発生する可能性が高いと客観的に判断されることが必要でございます。
 なお、自衛隊による武力の行使は、自衛権発動の三要件を満たした場合にのみ可能であることは当然でございます。
前原委員 では、もうちょっと絞って質問します。
 尖閣列島が占拠された場合、しかし、ほかのところにその国が武力攻撃をする意図がない場合、とにかく尖閣だけ占拠したい、実効支配をしたいという場合は、武力攻撃事態なんですか。
中谷国務大臣 これは、その占拠したものの対象にもよると思いますが、兵士じゃない場合、他国の文民が我が国の領土の一部を占拠したというような事態が本法案の武力攻撃事態となり得るかどうかは、あくまでこのような占拠が我が国に対する組織的、計画的な武力の行使と認定されるかどうかという問題でございます。
前原委員 国がと言っているんですよ。国が占拠した場合、つまりは、実力組織をもって国が占拠した場合。
中谷国務大臣 これは防衛庁長官の判断ではなくて内閣の判断でございますが、我が国に対する組織的、計画的な武力の行使と認定されるか否かという問題でございます。
前原委員 官房長官、同じ質問です。
福田国務大臣 今防衛庁長官から、そういう場合における占拠が武力攻撃に当たるかどうかということであれば、それは防衛庁長官の答弁のとおりであります。
前原委員 この国は本当にだめですね。つまりは、みずからの領土が実効支配を他国にされて、それについて武力攻撃事態だと認定するかどうかはわからないと。みずからの国土が占拠されたんですよ。実効支配している。そして、その周りの領海、接続水域、排他的経済水域、全部実効支配されるということですよ。それでもいわゆる武力攻撃事態にならないんですか。
福田国務大臣 これは想像の話ですからね、まず。想像の話でございますから……(発言する者あり)いや、もちろんそうですよ。だけれども、そういうことが起こるか起こらないかわからない想像の世界の話でありますので、ですから、具体的に相手の国を思い浮かべということであるかどうか。
 これは、結局、形として組織的、計画的な武力の行使になるかどうかということでありますけれども、しかし、同時に、その占拠がどういう意図でなされているのか、そのときの国際情勢とか相手国がどういう考え方をしているか、それからまた、もし武力攻撃が伴うということであれば、そのことについてどういう意図があるのか、そういうことを勘案した上で判断すべき問題であるということを言っているんです。
前原委員 ちょっと、具体的にもっと詰めましょう。
 例えば、組織的に尖閣列島を占拠するということになれば、前ぶれがあるわけですよね。そのときには自衛隊はどう動くんですか。そのときに、みずからの領土を占拠されないために、例えばスクランブル発進したり海上自衛隊の艦船が出るわけでしょう。そのときに黙って見過ごすんですか。そのときに、実際問題何も起こらなくて占拠されるということはあり得ないでしょう。
 有事法制というのは全部仮定の議論ですよ。仮定の議論の中で有事法制、備えあれば憂いなしということで小泉さんもやっておられるわけですから、その前提で話をしてもらって、可能性のあることを私は質問しているわけですよ。ですから、無人島であっても、尖閣列島、これが占拠されるあるいはそうなるときには、どういう動きをして、どう認定するんですか。
福田国務大臣 委員のおっしゃるような事態が一体いつ起こるのかということもあるでしょう。それは、きょうあした起こるということを想定しているわけではないでしょう。十年、二十年先なのかもしれない。ですから、そういう仮定の話をされても具体的にお答えするのは難しい。いろいろな条件を考えて判断すべき問題である。そのために、安全保障会議のもとに事態対処委員会というものをつくりまして、そういう情報等を収集して、その時々の状況、国際情勢等々よく調べた上でいろいろな判断を安全保障会議に求めよう、こういうふうなことになっているわけですから、そういう仮定の話をされても困るんですよ、実は。お答えしようがない。
前原委員 私、もうこの委員会で質疑するのがばからしくなってきた。情けなくなってきた。つまりは、具体的なことを質問して、そういうことを想定されないんだったら、有事法制やめたらいいよ。有事法制なんか整備しなくていいよ、こんな議論をするんだったら。何考えているんだ。そんな答弁する内閣に、僕は質問を続けることはできません。
中谷国務大臣 我が国の場合に、自衛権の発動として、武力の行使については三要件がございます。その中の二項目に、「これを排除するために他の適当な手段がないこと」とされておりまして、一つは、外交があるかもしれません。また、もう一つは、対領空侵犯措置とか海上警備行動とか、海上保安庁とかそれなりの国家の組織があるわけでございますので、そういったものによって対処をいたしますし、領空侵犯措置につきましてはそれぞれの手順に従って実施をしますけれども、最終的には、自衛権の発動をするか否かという点につきましては、この武力攻撃事態対処法等に基づきまして政府で決定をするわけでございます。
 あともう一点。その行動がいかなる行動かということでありますが、やはり他国の武力による侵攻であるか否かという点で、その事柄、組織的、計画的なものであるのかどうか、これはよく見きわめて判断しなければならないわけでございます。
    〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕
前原委員 個別に聞いているわけですよ、具体的に、防衛庁長官。そんなことは、ある程度勉強した人だったらだれでも答弁できますよ。防衛庁長官の答弁じゃない。実際、みずからの国の主権が、ある部分が脅かされそうになった場合に武力攻撃事態になり得ると一言答弁したらいいんですよ。僕がそっちへ行って答弁してあげましょうか。つまりは、みずからの国の主権が侵されるかもしれない中で、その可能性があるということを言い切ったらいいんですよ。それを言わないというのはどういうことですか。そのことを聞いているんですよ。
中谷国務大臣 他国の武力による侵攻で、かつまたそれが組織的、計画的な場合におきましては、この武力攻撃事態になり得るわけでございます。
前原委員 初めからそう答えたらいいんですよ。ですから、みずからの国の一部が占拠される場合、これは主権侵害ですよ、領土を占拠されるというのは。それを武力攻撃事態と認定するかどうかについて答弁できない国なんて、内閣なんて、本当にもうやめた方がいいですよ。それは、まさしく武力攻撃事態に認定をする可能性の高いものですよ。だから、あり得ると初めから答弁してもらったらいいんですよ。
 では、第二問に行きましょう。
 サイバーテロ、サイバーウオーがあって、金融とか電力、水道、交通などの経済活動が壊滅的な打撃を受けて、それがある国のしわざであるということがわかった、また、それによって交通事故やあるいはいろいろな問題で死傷者がたくさん出ている、つまりは、極めて日本に対してのダメージが与えられている、この場合は武力攻撃事態と認定されるんですか、どうなんですか。
福田国務大臣 ある事態が武力攻撃事態に該当するか否か、あるいは自衛権を発動し得るか否かということは、個別具体的な状況を踏まえて判断すべきものでありまして、今のような仮定の問題について断定的に申し上げるのは、これは適当ではないと思います。
 したがいまして、一般論として申し上げますけれども、サイバー攻撃のようなものが武力の行使に当たるか否かについて、現状は、その法的性格について国際的には定説がありません。このため、これが武力攻撃事態に該当するかどうかは、現段階で確たることを申し上げることは困難であります。このように、我が国に対する武力攻撃であると認定できなければ、自衛権発動の三要件は満たされないため、自衛権を発動することはできない、こういうことになります。
前原委員 今の御答弁ですと、今私が申し上げたような事態においては、武力攻撃事態と認定され得ない、こういうことですね。ということは、法の不備じゃないですか。
 つまりは、今後、テロ、ゲリラ、そういうものに対しての対処というものを考えていかれるということでありますが、ある国が組織的にサイバーテロ、今はサイバーウオーと言ってもいいかもしれない、その場合は武力攻撃事態ではないかもしれないけれども、しかし、多大な人的、経済的なロス、損失が起きているということについて武力攻撃事態には認定され得ないというのは、私は法的な不備だと思いますよ。
 そのことについてどうカバーしていくのか、その点について御答弁いただきたいと思います。
福田国務大臣 その規模にもよるわけでありますけれども、例えばサイバーテロとかいろいろなインフラを攻撃されるとかいうようなテロですね。これは、現状では現行法で対応するということしかないわけですね。現行法で対応します、そういうこと。そしてまた、それが委員のおっしゃるような場合には、これからの法整備を行うということについて、これは二十四条に規定をしているところでございます。
前原委員 テロ、ゲリラというのは有事に至るまでということでありますが、これだけインターネット等いわゆる情報通信社会になった以上、単に弾が飛んでくるとかいうことだけがテロあるいは戦争じゃないわけですよね。そういう観点からすると、今後整備をされるということでありますが、この点については極めて旧式の法律になっているんじゃないですか、この法律というのは。その点しっかりとぜひ議論をしていただきたいというふうに私は思いますし、その点についての有事法制の中での取り扱いというものも私は政府に求めていきたいと思いますが、その点について御答弁ください。
福田国務大臣 サイバーテロのようなものについては、これは極めて可能性の高い部分であるということは、我が国においてもそういう懸念を持っておりまして、それに対応する方策はいろいろと政府内でも検討いたしておるところでございます。
 先ほど申しましたように、この法案に規定されない緊急事態対処のための措置ということで、今後このことについて、国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態への対処、これは、迅速かつ的確に実施するための必要な施策を今後講じていく、こういうことで、今後鋭意検討させていただきたいと思います。
前原委員 最後に、自由党の提案者の方に御質問したいと思いますが、自由党案と政府案の違いというのはどこにあるのか、また、その中で、自由党案の特徴はどこにあるのかということをまず一点御質問したいのと、それから、武力攻撃事態の定義が違うということですが、自由党案と政府案とどう違うのか。その二点について御答弁いただきたいと思います。
東(祥)議員 お答えさせていただきます。
 第一点目は、けさ、午前中に自民党の林先生からもお話があった質問でありますが、まとめてお話をさせていただきたいと思います。
 まず、自由党案は、安全保障基本法によりまして、安全保障についての基本的な考え方、自衛隊の行動の原則を明示いたしております。政府案には、自衛隊をどういう場合にどのような活動をさせるのか明確な方針がないため、自衛隊の活動範囲がなし崩し的に拡大していく余地を持っている。
 二つ目といたしまして、非常事態対処基本法において、政府案のいわゆる、先ほど来前原先生が御指摘なされているところに関連するわけでありますが、古典的な意味での有事、すなわち、戦闘機や艦船を使って行われる我が国への武力攻撃事態を想定しているのに対して、我が自由党案では、我が国への武力攻撃事態を含めた直接、間接侵略、また、大規模テロ攻撃や大規模なサイバーテロ、地域全体を席巻するような大規模災害、全国的な疫病の大発生など、国民生活に極めて重大な影響が及ぶおそれが生じる事態について非常事態と認定し対処措置を講ずるもので、政府案とは対象、内容を異にするものであります。
 第三点目として、政府案では、武力攻撃事態に至ったとき、基本方針を決定して対策本部を設置することになっておりますが、我が非常事態対処基本法では、内閣にあらかじめ常設の非常事態対処会議を設置することとしており、迅速性、統率性の面で決定的に異なると思われます。
 そして四点目に、非常事態対処基本法では、非常事態に際しての内閣の権限を限定的に強化して、内閣の判断で迅速的確に非常事態に対処することを認めておりますけれども、それは、国会による厳格なコントロールのもとに行われることになると思います。
 具体的には、一つ、原則として国会の事前承認を必要とする。二つ、不承認の議決があったとき、国会が非常事態の布告の廃止を議決したときは、直ちに布告を廃止しなければならない。三つ、国会の承認を得た日から六十日ごとに国会に対し報告しなければならないこととしており、国会の議決により内閣の権限行使にいつでも歯どめがかかるようにしているところであります。
 二点目の御質問でありますが、つまり、武力攻撃事態の定義は政府案と自由党案ではどう違うのか、こういう御質問でございます。
 二つあると思います。
 第一点目は、非常事態対処基本法は、我が国への武力攻撃事態だけではなく、大規模テロ攻撃や大規模災害など国民生活に極めて重大な影響が及ぶおそれが生じる事態について非常事態と認定するものであって、武力攻撃事態に対処する政府案とは基本的に異なります。
 二つ、その上で、安全保障基本法において、自衛権の発動による武力の行使は、我が国に対して直接の武力攻撃があった場合及び我が国周辺の地域においてそのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれがある事態、いわゆる周辺事態が生じた場合に限りこれを行うことができるとしており、従来の自由党の見解とは何ら変わっておらず、自衛権の行使は極めて抑制的に解釈すべきであるというのが私たちの見解であります。
 以上であります。
前原委員 時間が来ましたので、終わります。
瓦委員長 次に、筒井信隆君。
筒井委員 民主党の筒井信隆でございます。
 海上自衛隊に行政情報の公開請求をした百四十二人について、身元調査のリストをつくっていたことが判明をいたしました。本来の質問に入る前に、その点について防衛庁長官に質問をしたいと思います。
 このリストは、行政文書の開示請求書では、氏名と住所、電話番号、連絡先しか本来ないはずなんですが、それにプラスして、それをもとに調査をして、職業とか、あるいは思想信条にかかわる、反基地運動の象徴だとか反戦自衛官だとか、あるいは生年月日、それから住所の転居先、さらに女性に関しては旧姓に及ぶまで、そういうリストで項目を整備していた。
 これは極めて大きな問題でございまして、情報公開制度そのものを否定する、こういう行為だと言わざるを得ないと思うんです。情報公開を請求したら身元調査を自衛隊からされちゃう、怖くてもうだれも公開請求なんかしないですよ。公開請求を、情報公開を認めた法律を全く死文化させてしまう、まさに否定する行為であると言わざるを得ない。
 そして、さらに、この行為は、具体的な法律に違反する行為、これもはっきりしているわけです。いろいろな法律に違反するわけですが、行政機関の個人情報保護法、これにまず違反するわけです。
 それで、具体的にちょっと、中谷防衛長官、確認したいんですが、まず、個人情報保護法の九条で、個人情報を保有する目的以外の利用、目的外利用、これはこの法律で禁止されておりますが、これに違反した行為であることは間違いないですね。
中谷国務大臣 筒井議員御指摘のとおり、今回の件につきましては、情報公開制度の趣旨からいたしまして、あってはならないことでございまして、開かれた政府を実現するための手段として情報公開を制定した法律に抵触する部分があるというふうに思っております。
 先ほどの御指摘のように、反基地運動の象徴、反戦自衛官等の記載があるものが含まれておりました。本来、この情報公開請求に対しましては、請求者個人の背景等に関係なく開示、不開示の判断を行うことは当然でございまして、情報公開の業務上必要がないにもかかわらず本件の資料に記載されている個人の情報については、所掌事務遂行上必要とは言えず、個人情報の保有の目的を逸脱しているものと考えております。
筒井委員 質問だけに答えていただきたいんですが、私、今具体的に、個人情報保護法九条の目的外利用に違反すると。これは今認められたという趣旨ですね。それはもう一度確認してほしいんです。
 それから、今前もって答えられましたが、個人情報の保有は事務遂行上必要な場合にしか保有できない、その場合に限るという規定もあります。これにも違反ですね。それが第四条。
 それから、第十二条に、みだりに他人に個人情報を知らせたり不当な目的に使用することを禁止している、こういう規定がございます。
 だから、具体的に聞いていますから、具体的に答えてくださいね。今の法律の九条、四条、十二条に違反する行為であることは間違いないですね。
柳澤政府参考人 私ども、今先生御指摘のいわゆる個人情報保護法の条文に照らして、大変不適切であったという認識はしております。
 ただ、問題は、今さらに詳しく調査をしておりますので、具体的にどの条文にどう抵触するかということは、調査の結果明らかにしたいというふうに考えてございます。
筒井委員 何を言っているんですか、一体。自分たちの行為でしょう。それに、まだ調査というのはどういう意味ですか。
 それで、具体的に先ほど私が指摘した項目のリストをつくっていた事実自体は認めているんでしょう。そういう認めた範囲で、今言った三つの条文に違反するだろうという質問なんですよ。不適切とかなんとか聞いているんじゃないんですよ。不適切なのは当たり前、わかっているんだから。法律違反行為で断定できるでしょう、今の段階で。
柳澤政府参考人 一つは、先ほど大臣からも申し上げましたところの、業務の必要を超えた個人情報の保有というところ、それからその目的外の利用ということ、それからみだりに他人に伝えたという、この三点が問題であると思います。ただ、調査の途中でございますから、いずれにしても、そういう法律に照らして抵触する可能性があるということで、私たちは今調査をしております。
筒井委員 そんな、調査の途中の問題じゃないでしょう。先ほどはっきり、事務遂行上必要でない書類だということは認めたんでしょう。では、事務遂行上必要な書類しか保有できないという規定になっているんだから、明確に違反でしょう。自分たちの今の答弁からしても違反であることははっきりしているのに、何でそれが断定できないんですか。中谷長官。
中谷国務大臣 我々の認識といたしましては、この情報公開制度の法律、これに違反をしていることを前提に調査をいたしておりますので、この法律の違反ではないかという観点で調査をいたしております。
筒井委員 初めから違反を前提に調査していると言われれば、それで一言で終わるんですよ。
 そうすると、明確に行政機関が法律違反行為をしたことを今認められました。この個人情報保護法では、官が違反なんかしないという前提で、罰則規定が全くないんですよ。今、現実に少なくともこの三つの条文に違反していることを認められたわけで、官も実際にこういうふうに、官こそ違反すると言ったら言い過ぎかもしれませんが、官もこういうふうに違反することが明確に事実として明らかになったんだ。罰則規定が必要なんじゃないですか、官房長官。
福田国務大臣 今、他の委員会でまさにその議論をしているところでございますけれども、官のそのような問題が生じたというときには、それなりの行政処分があるというように承知しております。
筒井委員 行政処分というのは懲戒処分とか、そういう、やった国家公務員に対するものでしょう。今言っているのは、罰則について、民間の個人情報保護法に関しては刑罰の対象にしておきながら、官の行政機関に関しては罰則規定が一切ないんですよ。その根拠は、官は、行政機関は、違反行為なんか、法律違反なんかしないという前提だった。だけれども、明確にこういうふうに違反行為が事実として出てきたわけですよ。そうしたら、ここにも罰則規定が当然必要になってくるでしょう。もう一回答えてください。
福田国務大臣 個人情報法の分野、法案でもございますけれども、しかし同時に、国家公務員の場合には、公務員法の違反という問題があるんですね。ですから、そこでもって罰則規定もはっきりと規定をされております。
筒井委員 国家公務員法で、法令に違反した場合には懲戒処分の対象になりますよ。だけれども、これが罰則規定はありますか。(福田国務大臣「個人情報」と呼ぶ)いやいや、国家公務員法で今罰則規定があると言ったから。
福田国務大臣 条文はちょっと覚えていないんですけれども、守秘義務違反ということになりますと、これは罰則が適用されるということになっております。
筒井委員 また新しい事実が出てきたんだけれども、守秘義務違反というのは、どこを指して守秘義務違反で、どこの部分が刑罰の対象になるんですか。
福田国務大臣 今回の事案について、私も全体を承知しているわけではございません。ですから、今回の件が、今私申しましたような国家公務員法上の守秘義務違反になるかどうか、これもわかりません、実は。ただ、国家公務員法にはそういう規定もあるということを申し上げたわけであります。
 それから、情報を定められた目的以外に使用するとか、そういう規定もあると承知しております。
筒井委員 今のは完全な誤解で、今の事務方の耳打ちが間違ったのですよ、守秘義務違反なんというのは。守秘義務違反というのは、このリストをもし海上自衛隊の公務員がマスコミに出した、そのことを守秘義務違反と言うなら、それはわかりますよ。今度のリストをつくったこと自体は守秘義務違反の対象にならないですよ。刑罰の対象に一切ならないですよ。懲戒処分の対象になるだけですよ。だから、個人情報保護法違反について、刑罰の対象になっていないから、刑罰の罰則規定が必要なんじゃないか、こういう質問なんですよ。
 だけれども、時間がますますとられるから、同時に、こういうふうに自衛隊も防衛庁も法律違反をするのだから、今有事立法を審議していますが、この有事法制つくったって、それには一切違反しないなんということは断言できるんですか。こうやって議論してつくった法律だって、また自衛隊が、あるいは防衛庁が違反するかもしれない。今回は違反したけれども、この次は違反しないなんて断言できますか。――いいです。
 それで、今これが明確に法律違反行為である、行政機関が行った法律違反行為であるという確認をしましたが、もう一つ、防衛庁が否定しているのは、個人的な行為で組織的な行為じゃないということを言っておられるので、その点についてお聞きしますが、そもそもこのリストは公文書なんですか、私文書なんですか、どっちですか。
柳澤政府参考人 いわゆる業務上の目的で、本人が自分の考えでつくったというふうに聞いておりますが、しかし、仕事の上でつくった書類でございますから、当然いわゆる情報公開請求の対象となる行政文書であり、公文書になるというふうに思います。
筒井委員 それはもう公文書であることははっきりしていると思います。
 それで、念のため確認しておきますが、このリストをもとにして、さらに別の文書がつくられていることはないでしょうね。それ、どちらなのか、答えてください。
 今の質問の趣旨、わかりましたか。もともとの請求者の住所、氏名の文書がある。それをもとにいろいろな調査をして今度のリストをつくった。このリストをもとに、さらに別の文書をつくっている可能性はないのかという点です。なかったら、ないと言ってください。
柳澤政府参考人 私どもが今まで確認しているところでは、要するにそのデータをフロッピーディスク、本人のフロッピーに入れてございまして、そのつくる体裁は何通りかあったようでございますが、そういう意味で、別の文書という意味が、定義がよくわかりませんが、いずれにしても、そのデータを一つのフロッピーに入れて、いろいろな形で整理をしたということでございます。
筒井委員 私が聞いているのは、意味、わからないですか。そのフロッピーディスクでいいんですが、今、今度認められました、いろいろな職業とか旧姓だとか反戦自衛官だとか、こういうのを項目にしたフロッピーディスク、そういう記録がある。ここまでは今認めたわけです。これをもとにして、さらに別の書類を、あるいはフロッピーディスクをつくっていることはないのかということなんです。なければ、ないと言ってください。わからなかったら、わからないと言ってください。まだ別にほかのものをつくっている可能性があるなら、あると言ってください。
柳澤政府参考人 私どもは、今、それ以上の事実は確認できておりません。
筒井委員 そうすると、今の答えは、わからないと。これをもとにしてさらに別の記録をつくっているかもしれない、別のさらにもっと詳しいものというか、別のリストをつくっているかもしれない、それは今わからないという回答ですか。
柳澤政府参考人 今、引き続き調査をしております。今まで私どもが確認した範囲では、いわゆるもとになるのはそのフロッピーであり、それをもとにして打ち出したハードコピーであるということでございます。
筒井委員 自分たちの内部のことを、まだ別の記録があるかどうか、マスコミに出てから一日以上たっていると思いますが、今のところまだわからないということ自体が非常に問題だと思います。
 公文書であることを認められましたが、これが上司である海上幕僚長の情報公開室長を含めて各部署の人たちに渡っている、これももう既に認められていることですが、これについて官房長が、この行政情報の公開の請求者はどのような人物かと上司が尋ねることはある、私も聞くことがある、この文書、この記録について、まずいと思って廃棄する人もいたが、やめろという人はいなかった、こういうふうに記者会見で述べておられますが、間違いないですね。
柳澤政府参考人 会見でそのようなやりとりをいたしました。
筒井委員 そうすると、上司が請求者はどういう人なんだと聞けば、答えるために調べるでしょう、部下は。個人的に勝手に自分の判断でやったのじゃなくて、上司の指示に従ったのと全く同じじゃないですか。
柳澤政府参考人 ただ、基本的には、その公開請求書に、お名前と御住所とあります。それ以上のことは、当然、わからなければわからないで、内容的なものであくまで決裁をしておるということであります。
筒井委員 私、そんなこと聞いているんじゃないんですよ。この請求者はどのような人物かと上司が聞くことがあるし、私も聞いたことがあると。どのような人物か部下が聞かれれば、それはこの公開請求書には書いてないんですから、当然調べるでしょう、部下は。それでなかったらその質問に答えられないんだから。そうすれば、これはその調べた担当者個人の勝手な判断じゃなくて、上司からの指示に基づいて調べたということになるんじゃないですか。そういう質問なんですよ。
柳澤政府参考人 そういう意味で、その方のいわゆる属性なり身元なりを調査しろというような指示だとは全く思ってございませんで、いずれにしろ、情報公開の判断、決裁には一切そういったものは必要ない、関係のないことであります。
 ただ、どんな方がどんな趣旨で請求されているかというのは、文書を特定したり、内容、どの文書かわからないケースもよくありますから、そういう意味で参考になるケースはあると思いますが、いずれにしろ、相手の方のその申請書に書かれていないものを、上司としてそれを調べろという趣旨の指示というふうには考えてございません。
筒井委員 事実上の指示でしょう、今そちらが認めている言葉を前提にしても。もっと具体的に私は指示したんだと思うんだけれども、今の回答からだけでも事実上の指示だろうということを私は確認しているんです。
 さらに、この防衛庁の発表によると、三等海佐は、海佐が自分で調べたんだというのですが、この三等海佐が防衛庁の事情聴取に対して、情報は海自中央調査隊が組織的に収集した、こういうふうに証言していますね。
柳澤政府参考人 先ほどそういうファクスが流れたのは私どもも承知をしておりますが、現在、海幕で当該作成者も含めて各種事情調査を行っております。現在まで海幕に確認したところによりますれば、この報道にあるような供述ないし事実関係は全くなかったというふうに聞いております。
筒井委員 防衛庁は事情聴取をこの三等海佐にしたことは事実ですね。その点の確認と、それから、その三等海佐が中央調査隊について言明していることも事実ですね。この二つはどうですか。
柳澤政府参考人 現在、事情聴取は海幕を中心に、海幕の中で主として本人を呼びまして実施をしておるところであります。そして、今私が申し上げましたのは、中央調査隊の指示でとか中央調査隊との関係で何かしていたというような供述は今までのところ出てないということでございます。
筒井委員 このリストの利用目的なんですが、大体、行政機関の個人情報保護法でも、保有目的を特定しなければならないという規定がありますので、その点についても特に確認しますが、官房長は、どうも記者会見では、上司に開示請求案件を説明する際、背景事情として使っていた、こういうふうに答えられておりますが、事実ですか。
柳澤政府参考人 それは、昨日の段階で、本人からどのように使ったのかというのを聞いた内容として、上司の情報公開室長にそういう背景説明が必要な場合にはそのデータを使っていたということでございました。
筒井委員 じゃ、職務上、まさに上司に対して説明する際にこの資料を使っていたわけで、組織的につくったということを先ほど私は確認して聞きましたが、まさに、上司も一緒ですから、職務上も組織的にこれを利用していたということですね。
柳澤政府参考人 いずれにいたしましても、情報公開の職務という側面からいくと全く関係のないことでありますので、その意味で、私どもは、法律にも触れるということを前提に今調査をしているということを申し上げているわけでございます。
筒井委員 全然私の質問に答えていないんだ。要するに、今度のこのリストは職務上つくったということは認めている、しかも、上司のそういう質問や何かがあったということも認めている、それで、職務上も、上司に開示請求があった際の背景説明として使っていた、組織的に活用していた、こういうことを認めているわけですから、まさに、個人の勝手な行為じゃなくて、防衛庁の部局が組織的につくって組織的に活用していた、こういう文書、そういう記録になるんじゃないですか。
 これは中谷長官、個人的なものだとかなんとか、今までいろいろなことで記者会見で説明しておりますが、もうそんな言いわけ通らないんじゃないですか。
中谷国務大臣 情報公開につきましては、情報公開の権利を行使する人を分け隔てなく公正に扱っていかなければならないというのが原則でありまして、この点に対しまして、そのように実施されていたのかどうか、さらに徹底して調査を行いまして、この件につきましての実施が適正に行われているかどうか、調べてみたいと思います。
筒井委員 私、そういうのを聞いているんじゃなくて、あらゆる点から、個人の勝手な行為じゃなくて、組織的につくって組織的に活用していた、こういう記録だろうと。個人の問題だ、個人の処分で終わらそうなんて、そんな言いわけ、こそくな手段はもう通らないんじゃないか、こういう質問なんですよ。
柳澤政府参考人 いずれにしても、私どもが今まで申し上げてきましたのは、作成は当人の発意でつくったんだということが一点でございます。そしてもう一つは、ではどう使ったかということは、上司にたまに、間々説明することはあった、こういうことでございます。
筒井委員 そうすると、まさにこの三等海佐個人の責任で全部済ませようとしている。こんなことは、大体防衛庁の士気にとってもよくないですよ。上司の事実上の指示に基づいて行動したのを、おまえの責任だと。
 どうも、先ほど言いましたように、中央調査隊が調査したんだというふうに三等海佐自身が言っているようですから、委員長、この三等海佐自体を参考人としてぜひお呼びいただきたい。そして、はっきり本人に今の事実関係を確認したいと思います。
中谷国務大臣 ただいまの筒井議員の質問を聞いていましても、また一連の話を聞いてみましても、本件に対しましては、情報公開の運用につきましては言語道断のことでありまして、私自身、徹底的に調査をいたしまして御報告したいというふうに思います。
瓦委員長 筒井君、先ほどの発言に対しましては、理事会で協議をいたします。
筒井委員 本来の有事法の質問に移りたいと思います。
 最初に、小泉内閣に安全保障構想というのがそもそもあるのかどうか。単なる現状をそのまま後追いして、追従していくだけじゃないか。この点、福田官房長官それから中谷防衛庁長官にもお聞きをしたいと思います。
 現在は、米軍の支援下において個別的自衛権を何とか整備していく。個別的自衛権が自国が攻撃されたときに反撃する権利とすれば、それを中心に考えていく。そして、仲間の国が攻撃されたときに、自分の国は攻撃されていないにもかかわらず一緒になって反撃する、この権利を集団的自衛権とすれば、一応これは政府は否定しておりますが、どうも周辺事態法や何かを見ると、事実上、形は否定しながら、そっちの方にどうも傾けていくような何かわけのわからないような状況、これが現在の安全保障体制だろうというふうに思うのです。
 私は、集団的自衛権はやはり明確に、実質上も名目上もはっきりと否定をして、そして普遍的安全保障体制をもっと強化していく、その点で私は自由党の案の方に近いのですが、すべての国が武力攻撃しない、こういう約束をして、それに違反した国があった場合にはすべての国が共同対処していく。国連の警察軍の方向性とかあるいはPKOなんかもその方向だと思いますが、普遍的安全保障体制を強化することをもっと積極的に日本が進めていく、こういう方向性を考えていくべきだ。それこそが私は目指すべき安全保障体制、安全保障構想だと思うのですが、政府としては、小泉内閣としては、どういう安全保障構想をお持ちなんですかという点が一点。
 それから、小泉内閣は聖域なき構造改革ということを言っておりますが、聖域なき構造改革の対象に安全保障分野は入るんですか、入らないんですか。その二点、御説明ください。
福田国務大臣 いろいろ御指摘ございましたけれども、国の安全と繁栄を維持して、国民の生命財産を守るということは、政府の最も緊要なことであり、政府の重大な責務であると考えております。
 我が国は、従来から、日本国憲法のもとでもって、専守防衛に徹しまして、他国に脅威を与えるような軍事大国とならないというこの基本理念に従いまして、日米安保体制を堅持し、適切な防衛力の整備に努めるとともに、我が国を取り巻く国際環境の安定を確保するための外交努力を行うことを安全保障政策の基本としているところでございます。
 集団的自衛権のことにもお触れになりましたけれども、従来から我が国が国際法上集団的自衛権を有しているということは、主権国家であるという我が国の立場から考えて当然でございますが、憲法九条のもとにおいて許容される自衛権の行使は我が国を防衛するための必要最小限の範囲にとどめる、こういうことであると解しておりまして、集団的自衛権を行使することはその範囲を超えるものでありまして憲法上許されない、こういう立場をとっております。
 憲法は我が国の法秩序の根幹でございます。特に憲法第九条については、過去五十年余にわたる国会での議論の積み重ねがあるので、その解釈の変更については十分に慎重でなければならないと思っております。
 他方、憲法に関する問題につきましては、これは世の中の変化を踏まえ幅広い議論が行われておりますけれども、集団的自衛権の問題につきましても、さまざまな角度から研究してもいいのではないかというようなことを考えておるところでございます。
 構造改革の中に安全保障は入るかどうかということでございますけれども、今回のいわゆる有事法案につきまして、二十数年放置されていたものを今回取り上げさせていただいた、そして、今御審議をいただいておるということは、これもやはり聖域なき範疇に入るのではないかというふうに思っております。
筒井委員 二十五年前から議論されていたものをやるのが聖域なき構造改革に入るとは全く私は思いませんが、今の説明でも、目指すべき安全保障構想、これがあるとは思えないような答弁でございました。
 それで、その上で、目指すべき安全保障構想を持った上で、この有事法をどういう形でつくるのかが問題になるわけでございまして、民主党もそうですし、私もそうですが、有事法そのものは必要である、こう考えております。
 自衛隊が必要であるならば、自衛隊は万一の場合武力行使をする軍隊なんですから、その武力行使の手続、範囲等々を規定する法律がなきゃいかぬ。もちろん、自衛隊も有事法も宝の持ちぐされになるのが一番望ましいし、そのための努力こそ最大限やらなきゃいかぬと思います。
 しかし、やはり有事法制は自衛隊と同じ意味において私は必要だと思う。だけれども、また、どんな有事法制でもいいなんていうことはもちろん政府も言わないわけでして、いろいろな内容的な制約や条件が必要なわけです。
 私は、大西さんという立命館大学の教授が、昔ですが、国家緊急権の五条件というのを出しておりまして、それを少し改定して、最低限五つの条件が必要だ、この五つの条件があれば、有事法制は最低限、ある程度賛成、言い方はおかしいですが、賛成できるんじゃないかというふうに思うわけです。
 一つ目としては、有事立法の条件、効果というのは法律で厳密、厳格に定めなければならない。この政府法案は厳密、厳格と言えるかというと全然そうじゃない。
 二つ目は、有事立法発動の決定権は議会に留保すべきである。少なくとも議会の事前承認が前提になるわけですが、この点でも政府法案は条件を満たしていない。
 それから、有事立法の終期は発動の際に明定されるべきである。少なくとも議会が廃止を発議できて、少なくとも議会が廃止を決定できる。こういうことが必要なのが三つ目の条件だと思うんですが、この点でも政府法案はその条件を満たしていない。
 それから、有事立法の範囲、効力は必要最小限を超えてはならず、また公正、適正でなければならない。これが四つ目の条件だと思うんです。必要最小限度で適正、公正、これは条文自体にはそのことは規定されているんですが、先ほど人権の関係で前原議員の方から質問があったように、これでもやはり、この条件にも、私は政府法案は不十分である。
 最後の五つ目が、有事立法の行使結果についての責任追及制度がきちんとそろっていなければいけない。これが五つ目の条件だと思うんですが、この点は全くない、政府法案には。
 だから、必要な条件を全く満たしていない、極めていいかげんな法案が今度の政府提案だ、こう言わざるを得ないので、私はやはり強く反対したい、こう思っております。
 最初に、そのうちの、厳密、厳格な規定になっているかどうかという点での質問でございますが、私は、今度の武力事態対処法で、我が国領域における武力攻撃に限っていない、この点が一つの大きな矛盾点を発生させている原因だと思うんです。
 ドイツの有事立法は、自分の国の領域における武力攻撃に限定しているんです。自分の領域における武力攻撃に対して事態認定をする、こう限定している。しかし、今度の政府法案は、我が国領域における武力攻撃に限っておりませんね。その結果、いろいろな矛盾点が出てきている。
 私は、この点と、後で質問いたしますが、予測概念まで有事概念に広げてしまった、予測概念を入れてしまった、この二つが一番大きな矛盾の原因だろうというふうに思っておりますので、まず、我が国領域に限っていないという点についてお聞きをしたいと思います。
 具体的な形でお聞きしますが、周辺事態法で、他国の領域で我が自衛隊が行動している際、他国の領域ですよ、その自衛隊の艦船に対して武力攻撃があった場合に、これは武力攻撃事態の認定もあり得る、こう福田長官は答弁しておりますよね。その場合に、武力攻撃事態、周辺事態法で、米軍にこっちは協力して支援しているわけです。そこに、他国の領域で、あるいはテロ特措法でもいいですが、米軍に対して協力している、それに対して武力攻撃があって武力攻撃事態と認定した、その場合には、米軍との共同対処行動に移ることになりますね。まず官房長官。
福田国務大臣 我が国の領域以外の地域で活動する自衛隊の部隊などに対する攻撃、これが我が国に対する武力攻撃となり得るかについては、法律論としては、当該攻撃は、我が国に対する組織的、計画的な武力の行使と認定されるかどうかという問題であります。
 しかしながら、周辺事態法とか、またテロ対策特措法に基づきます対応措置は、現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められるという条件を満たす地域において行われることとされておりまして、さらに、万一、近傍において戦闘行為が行われるに至った場合などにおきましては、活動の一時休止、避難等の措置をとることというふうにされております。
 そういうようなことでございまして、周辺事態法において、ただいま申したような考え方に基づきますれば、そこで武力攻撃が起こるというようなことはない、こういう考え方をしております。
筒井委員 前の答弁を訂正されるんですか。私が今聞いているのは、組織的、計画的な武力攻撃が他国の領域にある後方支援中の自衛隊の艦船に対してなされた場合ですよ、組織的、計画的な武力攻撃が。それはもちろん、こっちは武力攻撃を受けないだろうということで後方支援をやるんだけれども、それは受ける可能性はもちろんあるわけでして、それが組織的、計画的な武力攻撃であった場合には武力攻撃事態の認定もあり得るというふうに福田官房長官はこの委員会で、五月八日ですが、答弁されているわけですね。
 それを訂正されるならまた別ですが、訂正しないとすれば、だから、武力攻撃事態と認定されれば、これはアメリカとの共同防衛行動に入るんでしょうという質問なんです。
福田国務大臣 ただいま私申し上げましたとおりなんでありますけれども、周辺事態法とかテロ特措法とか、そういう場合には、そういう戦闘行為が行われるということを想定していないわけでございますが、しかし、万一、万が一ということがあった場合に、法律論として、当該攻撃が我が国に対する組織的、計画的な武力の行使と認定されるかどうかということで、法理論としてはあると思います。
筒井委員 だからそれを、この前そう答弁されたから、それを前提に聞いているんです。武力攻撃事態と認定される場合はあり得ると。認定される場合には、米軍との共同対処行動に移るんですねという質問なんです。
福田国務大臣 これは、我が国の法律に基づいて行うわけでございますので、周辺事態法にしてもテロ特措法にしましても、我が国の法律に基づいて行動をとるわけでありますから、我が国の政府の判断ということで、法律に基づいて行うわけであります。
筒井委員 そんなこと聞いているんじゃないですよ。武力攻撃事態に認定された場合には、まさに今審議中の武力攻撃事態対処法案の法律の規定に従ってやることになるわけだから、そこでも規定されておりますように、米軍との共同対処行動に移るんですねという質問ですよ。
福田国務大臣 外国とか公海とかいうことになりますと、これは安保条約との関係で、あくまでもこの第五条では、「日本国の施政の下にある領域における、」こういう規定がございますので、そこで決まってくるわけでございます。
筒井委員 だから、そうすると、安保条約第五条では、日本の施政下にある領域における武力攻撃に限っていますから、共同対処行動できるのは。共同対処行動できないでしょう、他国領域にある場合には。
 そうすると、米軍の支援行為をやっている最中に組織的、計画的な武力攻撃を受けた場合に、こっちは反撃する場合がある、武力攻撃事態の認定をする場合があると言われた。そのときは、単独行動しかできないことになるんですね。
福田国務大臣 そもそも周辺事態法においてもそういう事態というものは想定していないのでありますけれども、しかし、もしそういうふうなことがあった場合には、理屈の上からは、これはやはり日本は日本でということになるわけで、共同対処とかいう形にはならないものと考えております。
筒井委員 そういうことは想定していないと今言いましたが、日本本土に対する武力攻撃よりも、周辺事態法やテロ特措法で他国の領域にこっちが行っている最中に自衛隊の艦船に攻撃を受ける場合の可能性がもっとずっと強いですよ。
 それが、アメリカに対する支援のために行っている自衛隊に対して攻撃を受けた、支援中なのに攻撃を受けたけれども、しかしアメリカ軍と共同対処はできない、しかし武力攻撃事態の認定はされる、こういう形になるでしょう。これがもし、先ほど言いましたように、この武力対処法案からこういう他国の領域における武力攻撃は除けば、武力攻撃事態の認定の対象にならないんですよ。
 そもそも、アメリカの支援をしながら攻撃を受けたときに、アメリカと共同対処できなくてという、こういう結果になるのはおかしいと思いませんか。
中谷国務大臣 よく法律を読んでいただきたいと思いますが、周辺事態の場合は、そのような戦闘行為が行われるような可能性のある地域においてはやらないということになっております。仮に発生した場合においても、活動の一時休止、避難の措置をとるというふうにされておりますし、また、我が国が武力の行使を行う場合には、これは自衛権の三要件に合致するかどうか、また、内閣においてそのような対処方針を決定するかどうかという意思決定が必要でございまして、こういう事態は想定できないわけでございます。
筒井委員 想定できないという意味がちょっとよくわからないけれども、他国の領域において自衛隊の艦船が武力攻撃を受ける可能性があることは認めるでしょう。私は、そっちの方が本土が攻撃されるより強いと思うけれども。その想定ができないという今答弁じゃないですね。
中谷国務大臣 これは法律に書かれております、活動をしている場所の近傍において戦闘行為が行われるに至った場合、また付近の状況に照らして戦闘行為が行われることが予測される場合におきましては、活動の一時休止、避難等により危険を回避しつつ、行動の中断等を待つものとされておりまして、これによりまして、そういう事態も想定されませんし、これらの自衛隊の部隊が武力を行使することも想定されないわけでございます。
筒井委員 今の答弁は、そうすると、必ず逃げることができるということですか。もし逃げることができるとすれば、必ずできるとすれば、武力攻撃事態の認定もする必要ないでしょう。そういうことではなくて、もちろん逃げられれば逃げた方がいいですよ。大体私は、初めから行くべきじゃないと思っているんだ。自衛隊は日本の軍隊としては行くべきじゃない、PKOとか国連の部隊として行くべきだと思っている。だけれども、今の政府は、日本の軍隊として行くわけだから、そのときに攻撃を受けて、逃げられれば逃げた方がいいですよ、逃げられない場合だってあるでしょう。だから、逃げられない場合に、武力攻撃事態の認定をすることがあり得ると、さっき福田長官はそう答弁したんでしょう。
中谷国務大臣 その際の対処も法律に書いておりまして、自衛隊が職務を行うに際して、自己または自己とともに職務に従事する者の生命、身体防護のためにやむを得ない必要があると認める相当の理由のある場合、または、職務上武器の警護に当たる自衛官は、武器等防護のため必要と認める相当の理由がある場合、これは自衛隊法九十五条でございますけれども、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができると。これは自己保存の原則また武器防護の原則によるわけでありまして、あくまでも自分の身を守るということでございます。
 したがいまして、集団的自衛権につきましては我が国は行使しないということになっておりますので、ともに行動をして危険が予想される場合等につきましては、活動の一時休止、避難により危険を回避しつつ、行動の中断を待つものとされておりまして、そのように行動するわけでございます。
筒井委員 そうすると、今の答弁は、武力攻撃事態の認定は必要ないという答弁になりますね。あり得ないという答弁になりますね。
中谷国務大臣 それは我が国としての武力攻撃でございませんので、そのような認定には至らないというふうに考えます。
筒井委員 官房長官の先ほどの答弁とも、前回の答弁ともまさに矛盾するんじゃないですか。一方はあり得る、一方はそれはあり得ない。ちゃんと統一してください。
福田国務大臣 艦船が攻撃を受けた、それが、艦船に対する攻撃ということが我が国に対する武力攻撃なのかどうか、こういう問題があるかと思うんです。私が申し上げたとすれば、我が国に対する武力攻撃というように認定されるかどうか、この問題でありまして、艦船だけということになれば、これは、そういう事態というのは想定していないけれども、それは先ほど来防衛庁長官が答弁しておりますように、一時的な回避をするとかいったような措置を講ずるということになっております。
筒井委員 以前から政府は、自国の軍隊に対する攻撃は自国に対する攻撃である、個別的自衛権の問題である、こう答弁しているでしょう。日本にあるアメリカ軍に対して外国から攻撃があった場合には、アメリカの個別的自衛権の問題になる、アメリカの軍隊に対する攻撃なんだからアメリカに対する攻撃でもある、政府は一貫して答弁しているでしょう。日本の軍隊が、自衛隊が海外にいたとしても、日本の軍隊に対する攻撃は日本に対する攻撃で、これは個別的自衛権の問題になる、こういう結果になるんじゃないですか。
福田国務大臣 先ほどの答弁と同じなんですけれども、周辺事態法とかテロ対策特措法に基づく対応措置は、現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められるとの要件を満たす地域において行われるということでございますね。さらに、万一、近傍において戦闘行為が行われるというように至った場合には、これは活動の一時休止とか避難等の措置をとる、こういうふうなことになっております。
 この法律に基づいて活動する自衛隊の部隊等に対して武力攻撃が行われるということは、我々としては想定をしてないわけでございまして、したがいまして、この事態対処法案を適用するということも想定してないわけであります。
筒井委員 一切想定してないということですか。そうすれば、武力攻撃事態の認定もあり得ないという答弁になるはずでしょう。それで、さらにそれをいえば、日本の領域における武力攻撃にはっきりもう初めから限定しているのと一緒じゃないですか。では、初めから条文を、そういうふうに領域における武力攻撃に限定すればいいじゃないですか。だけれども、条文上は全部、どこの国にあろうが、他国領域にある自衛隊に対する武力攻撃も入るような条文になっているでしょう。いろいろな矛盾点が出ているじゃないですか。
福田国務大臣 ただいまの、自衛隊の部隊が攻撃を受けたということ、これはまあ理屈の話になるんだろうと思いますけれども、それはそういう場合もあり得るわけですね。だけれども、その場合も、今申しました周辺事態法とかテロ特措法とかいうようなこの法律のもとでは、これは一時、その攻撃を回避するということで対応する以外に方法はない、こういうことであります。
筒井委員 本当に、さっきから行ったり来たりしないでください。回避するということを前提にしている限り、武力攻撃事態の認定はあり得ないでしょう。それでは、先ほどの答弁を訂正してください。撤回してください。
福田国務大臣 先ほどの艦船の公海上の問題については、これは法理論的にはあり得る。しかし、例えばわかりやすいので言えば、PKO部隊が……(筒井委員「PKOも聞いていないです」と呼ぶ)
瓦委員長 今、答弁中ですから。
福田国務大臣 PKO部隊において国際平和協力業務をしているという場合には、いわゆるPKOの参加五原則というものが適用されるんですね。周辺事態とかテロ特措法に基づきましては、そもそもそういう事態も想定されないんじゃないかと私は考えます。
筒井委員 だから私は、先ほどからテロ特措法ないし周辺事態法で、他国領域にある自衛隊に対する攻撃に限定して聞いているんですよ。その場合に武力攻撃なんて一切想定できない、想定なんかしていないということであれば、武力攻撃事態の認定もあり得ないというふうに答弁されるなら一貫するんですよ。だけれども、この前もそうだし、きょうもそうだし、武力攻撃事態の認定はあり得ると言っているから矛盾していると言っているんですよ。
福田国務大臣 部隊が他国領域に行くということは想定されないということは、そういう攻撃もないということでありますから、もちろん武力攻撃事態、そういう考え方もないわけであります。
筒井委員 いろいろな矛盾点があるけれども、では、まず武力攻撃事態の認定はあり得ないというふうに答弁を変えるんですね。まず、その点の確認。
中谷国務大臣 周辺事態法において、自衛隊の部隊が他国の領域で後方地域支援活動、後方地域支援を行うことは規定はされておりません。
福田国務大臣 もう一回申し上げます。
 この法律に基づいて活動する自衛隊の部隊等に対して武力攻撃が行われることは想定していないから、政府としては武力攻撃事態対処法案を適用することも想定していないということであります。
筒井委員 そう言えばいいんです。それならば、しかし、今までの答弁は訂正ですよ。あり得ると言っていた答弁は訂正ですよ。訂正されるんですね。どうも、あいまいなままにしておくと、またもとへ戻っちゃうから。今までの答弁を訂正されて、武力攻撃事態の認定はあり得ない、こういうふうに訂正されるんですね。
福田国務大臣 想定はされない事態ではあるけれども、もしそういうことが想定されるならば、それは法理論としてはあり得るということでありまして、ですから、そういう意味においては、私が最後に申し上げましたように、想定されないから、こういう武力攻撃事態も、これも適用する必要もないというか、そういう事態はないというふうに申し上げます。
筒井委員 極めて不十分ですが、もう時間が来たようなので、私は質問項目を十項目ぐらい出しているんですが、一応ある程度終わったのが二項目だけですから、まだいっぱい聞きたいことがあるので、これは慎重審議で十分時間をとって審議をしていただきたい、このことを申し上げて、私の質問を終わりましょう。
瓦委員長 筒井君の質疑は終わりました。
 次に、赤嶺政賢君。
赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。
 私も、武力攻撃事態法の審議に入る前に、きょう報道されておりますとんでもない事件、事態、これについて質問したいと思います。
 防衛庁長官は、恐らく、この武力攻撃事態法が万が一にでも成立をすれば、その執行の主役は自衛隊だ、このように自認しておられると思います。もしこのような自認が前提であるならば、今起きている事件は、自衛隊や防衛庁にはそういう資格は全くないということのあらわれじゃないかということを考えます。
 非常に驚くべき事実であるわけですが、情報公開の情報を請求した人たちのリストが防衛庁の中で出回っていた。柳澤官房長はきのうの記者会見で、担当者が個人的な資料として作成したと個人を強調しておられます。法に触れるところがあれば厳正に処分をすると言うが、単に法律違反があったかどうかの問題ではないと思います。
 このことは、思想信条の自由の侵害という重大問題であります。行政の実態を知ろうとして資料を請求した国民に対して、逆に開示請求書の記載事項から身元を調査して、そして思想信条の追跡調査までやってリストをつくる、本当にとんでもないことです。思想信条を調査すること自体が許されないことでありますが、防衛庁長官はそういう認識がありますか。
    〔委員長退席、米田委員長代理着席〕
中谷国務大臣 本件につきましては、赤嶺議員と全く同感でございます。
 そもそも情報公開と申しますと、個人の知る権利をして、いかに開かれた政府を実現するか、そのための手段でございますが、その際、住民のプライバシーを守る、また、権利を行使する人を分け隔てなく公平に扱うというのが原則でございまして、この点からいたしまして、本件につきましては極めて不十分な対応でありまして、また、政府の姿勢に対しても誤解を与える点があるという点で、この点につきましては、庁内におきまして徹底して今事実関係を調査いたしております。
 調査の結果が出ましたら御報告もいたしたいというふうに思いますが、それを踏まえまして、国民の疑念に対してこたえられるように、しかるべき措置をとりたいと考えております。
赤嶺委員 あってはならないことが起きているわけです。皆さんは、個人的と言えば防衛庁の責任は免れるかのような答弁に終始をされているわけですが、決してそういうことではありません。
 そこで、具体的に聞いていきたいわけですが、このリストで、身元調査、思想調査の調査対象は、情報公開法が施行された二〇〇一年四月からことしの三月までに防衛庁に公開請求をした人が全員、そして百四十二名が対象にされている。しかも、作成をしたのが、三等海佐が担当していた海上自衛隊への公開請求分だけではなくて、陸上自衛隊、そして空自、内局など、防衛庁のすべての機関に対する請求者のリストであるわけですね。決してこの三等海佐の担当分だけではない、そういうことですね。
柳澤政府参考人 昨日の夕方までにわかったところで百四十二名と申し上げましたが、正確には百四十一名でございます。そして、おっしゃるとおり、海上自衛隊関係の開示請求のみではなくて、防衛庁、防衛本庁に関する方々の数として、そういう数についてリストをつくったということでございます。
赤嶺委員 防衛庁のすべての機関に対して情報公開請求した人のリスト全員分を、情報公開法が制定されて以来のものを全部リストとしてつくっていたということであります。
 私は、報道されている内容でいきますと、情報公開請求をした人は追跡調査をされる、追跡調査をしなければでき上がらないようなリストがつくられているということが大変重大だと思います。
 このリストに載っている方のお一人で、長谷川さんという方がいらっしゃいます。この方の行政文書開示請求書、それから行政文書の開示の実施方法等申出書、これを持ってまいりました。長谷川さんのこの書類には、住所と氏名しか書かれていないわけです。それから、新宿平和委員会という名称もあります。
 この方が請求をした情報は何かといいますと、四月二十六日付朝雲で報道をされている「好評の見学ツアー」、この好評の見学ツアーということで、市ケ谷台ツアーが非常に好評である、一日平均二百人が訪れていて、子供たちも来ている、防衛庁のよいPRになっているという報道があるわけですね。この報道に基づいて、子供たちが一体何名来ているのかということで請求をしたら、そういう内訳は公開できないけれども、月ごとに、合計三万九千二百五十人という、こういう簡単な情報が公開されているわけですね。ただそれだけの話なんですよ。
 それだけの話なんですが、この方は、リストの中では、長谷川オフィスという、自分でも何でこんなものがついたのかよくわからぬというものがつけられていたというんですね。はっと思い当たってみたら、自分のホームページにその言葉を使っていた、それが書かれているわけですね。明らかに、情報公開請求した人を追跡し、調査し、本人も余り認識していないような事柄がそのリストの中に書かれているということであるわけです。
 それと同じようなことが、市民のグループとか自衛隊関係者だとかマスコミ関係者だとか市民オンブズマン、こういうものの記号が書かれている、あるいは受験生の親、反戦自衛官、アトピーと。こういうことをやっているわけですね。
 一体、どういう身元、思想調査がやられていたのか、これを明らかにしてくれませんか。
柳澤政府参考人 今先生お触れになっているその資料で、個人のいろいろな属性に関することが記載されている部分があるわけでございますが、これは、私どもの聞き取りによりますると、まず、御本人が窓口に名刺を置いていかれたり、あるいは窓口で多少のやりとりをなされます、そういうことから得たデータ、それから、本人の、作成者の言によれば、インターネットで調べたこと、あるいは著書をお書きになっているような方であればその著書というようなことで、材料を集めてリストをつくったということでございます。
赤嶺委員 追跡調査を一生懸命しているわけですね。
 それで、きのうの記者会見では、それ以外に、このリストをつくるのに、ほかの担当者や原課から聞き取ったものということも記者会見で発言しておられますが、それはそのとおりですか。
柳澤政府参考人 例えば、物の中には、受験者であるとかそういったことは、恐らく公開すべき情報を持っている原課の方で得た情報ではないかということで私は申し上げたわけでありますが、どの部分がどういうふうな形で集められたかということは、詳細、今調査しているところでございます。
赤嶺委員 結局、各課の、情報公開室のほかの担当者だとか、あるいは原課の職員がやはりリストづくりに協力をしていたということになると思うんです。
 報道によると、三等海佐は、こうした情報を自分のフロッピーディスクに保管、これをもとに、印刷した書類やフロッピーディスクを陸、空の自衛隊や防衛庁内局の担当者に渡していたと言われているわけですが、それは、担当者が協力してフロッピーディスクに入力していたのではないかと。この点は調査しておられますか。
柳澤政府参考人 今言われました内局、陸、空の同じ情報公開の担当者に、全くこれは担当者レベルでございますが、持っていったのは、自分でこういうものをつくったから、何らか参考になるかもしれないからということで持ってきたということで受け取ったようでございますが、いずれにしても、今までの確認できた範囲では、それら受け取った者は、すぐに破棄したか、あるいは、全く自分としてはそれを使用することなく、いまだに保管しているという状況でございます。
赤嶺委員 それだけにとどまらないんですね。リストを受け取った側というのは、報道によりましても、このリストは、三佐の上司である海幕情報公開室長初め、内局情報公開室、陸幕情報公開室、空幕情報公開室、さらに情報の漏えいをチェックする側である海幕調査課保全室、中央調査隊、こういう情報の保全のところにも、保管後、渡されていたわけですね。これが防衛庁の説明であるわけです。
 情報を公開する部署と、情報を出させない、あるいは情報に近づく人たちを警戒する、こういう保全する部署や、契約業者の身辺調査までする部隊、こういうところまでそういうものが、資料が渡されて、公開請求者の動向をチェックしていた、国民を監視していた。
 私は、四月四日に、情報保全隊の、自衛隊法の問題のときにも防衛庁長官に質問をいたしました。これは民間人も対象になる、そして、防衛庁長官、基本的人権を尊重するかといえば、そういう私の質問に対して、基本的人権は尊重するということは一切答えない。答えないで、あの法律を通して今日こういう事件があるということを、あのときに防衛庁長官に厳しく指摘しました。
 結局、国民を監視していた、防衛庁ぐるみで、こういうことになるじゃありませんか。
中谷国務大臣 本件におきましては、御指摘のとおり、意識面でこの情報公開制度の趣旨がわかっていたかどうか、私も、非常にこのニュースを聞いて腹立たしく思う点がございます。
 一般の市役所とか県庁とかの官庁でしたら、常時国民と接して、生活と密着をしているわけでございますが、防衛庁につきましては、そういう機会が余りなかったということで、今回、初めての窓口業務と申しますか、情報公開の制度を設けて実施をしているわけでありまして、本来のこの趣旨をよく理解して業務を行っていく必要があるというふうに考えております。
 それから、今回の件につきましては、情報開示を求められた方、また国民の皆様に御迷惑をおかけし、また不快な思いもおかけしておりますし、不安と疑念を与えたことは極めて申しわけないと思っておりまして、真摯に、正すところは正して、新たな開かれた組織をつくっていかなければならないというふうに思っております。
 先生御指摘がありましたが、個人的な判断で行っていたかどうかという点につきましては、私も、本当に個人かなという気がいたしております。そうではないかもしれないという気がするわけでございますので、現在、そういう角度で本案の真相については徹底して調査をさせておりますので、それが判明しましたら、改めて御報告をいたしたいと思います。
赤嶺委員 これは大変なことですよ。防衛庁長官自身が、これは本当に個人的だったのかなと、こういう不安を抱かざるを得ないような実情が自衛隊・防衛庁の中に充満している、こういうことのあらわれだと思うんです。
 先ほどのやりとりの中にもありましたけれども、情報を公開請求した人の名前を出すと、上司がこれはどんな人かと聞くというような答弁がありました。
 情報の公開請求の場合に、請求している人の思想的な背景あるいはその家族の背景、そういうものがわかれば公開請求をしている情報の中身がわかるという関係ですか。公開を請求している情報の中身がわからなければ、どういう中身であるかということを突っ込んで聞くことが必要なのであって、そういう思想やその人の背景を調査したからといって、これは求めている情報の中身がはっきりする、そういうものとしてお考えなんですか。きのうの柳澤官房長の答弁だとそういうぐあいに聞こえるんですが、いかがですか。
柳澤政府参考人 情報公開請求に対します判断は、あくまでその文書の内容に即して現に私ども行っておりますし、請求された方がどういう方であるかということは、一切その判断には影響しておりません。
 そして、どういう方ですかというような質問を受けることがある、あるいはすることがあるというのは、これは、一つには、マスコミ関係の方ですとか学者の方ですとか、すぐにわかる方もおられますし、そうでない方はそれなりに判断をするわけでございまして、別にそのことが判断基準になっているということでは一切ございません。要は、請求書類にない事柄をあえて求めるようなことは、全くそういう趣旨のものでは本来あるべきではないというふうに思っております。
赤嶺委員 私、それでも、上司まで一体となって情報公開を請求した人の背景を聞くような体質、これが組織ぐるみのこういうことをつくり出しているというぐあいに、防衛庁ぐるみじゃないかというぐあいに思います。思うどころか、その不安は防衛庁長官も持っておられるということでありました。
 今度の武力攻撃事態法の中には、そういう事態のときには国民の自由と権利を制限するという項目が入っているわけですね。それで、今はその法律はできていません。この法律ができる前から情報公開を請求している人のリストがつくられて出回る、それも組織ぐるみで展開される、こういうことが、もし今度の武力攻撃事態が起きたら国民がどういう立場に置かれるか、このことも極めて重大な問題として指摘しておきたいと思います。
 私、前の防衛秘密の問題のときにも指摘したことがあるんですが、防衛秘密だとか軍事機密という言葉を聞くたびに、私は沖縄県の出身ですから、沖縄を思い出します。
 ここに沖縄県の県立平和祈念資料館のガイドブックを持ってまいりました。このガイドブックの十三ページに、「防諜=スパイ取りしまり」、こういう項目がありまして、「軍の機密は絶対に地方人(一般住民)に漏らしてはならない、というのが帝国陸軍の鉄則でした。しかし沖縄では、敵上陸を目前にひかえて昼夜兼行の戦闘準備を進めなければならず、多くの住民が陣地づくりや飛行場建設に動員されました。沖縄住民はあまりに友軍の機密を知りすぎてしまったのです。そこで軍では、たえず住民の行動をきびしく監視しました。「方言をつかう者はスパイとみなして処分する」という通達まで出されました。」
 こういう事件がありました。方言を使う者はスパイとみなすと。そのことが高じて日本軍による住民虐殺、こういう事件もどんどんどんどん広がっていきました。
 この武力攻撃事態法の審議が始まったころに、与党の議員からも、沖縄戦で住民の被害が多かったのは軍隊と一緒に歩いたからだという、沖縄戦の実相と全く違う、認識違いの発言もありましたけれども、軍の論理、防衛秘密という軍の論理は、突き詰めていけばああいう沖縄戦のような悲劇が起こるかもしれない、そういう問題であるわけですよ。そういう問題が放置されていた。
 それで、組織ぐるみで、防衛庁ぐるみでこういう事件が起こされていたということは絶対に許せませんし、あいまいにできない。歴史の流れに照らしてもあいまいにできないということで、先ほども民主党の議員からありましたが、委員長、私は、この問題について、これからも徹底的に、集中的に審議をしていく、必要な参考人を本委員会に呼んで集中審議をしていくということを要求したいと思います。
米田委員長代理 先刻も参考人の要求がございましたので、後刻理事会で検討させていただくことにしたいと思います。
赤嶺委員 それでは、武力攻撃事態法に移りたいと思います。
 まず初めに、武力攻撃事態と周辺事態の関係の問題についてです。
 法案の言う武力攻撃事態、これはどういう事態なのかという問題について、聞けば聞くほどわからなくなっていく、こういう議論の進展があるわけですが、政府はこれまで、周辺事態の六類型すべてについて武力攻撃事態と併存し得る、このように認めておりました。
 具体的にどういう事態を想定しているのか判然としないわけですが、例えば、六類型の中には、「ある国における政治体制の混乱等により、その国において大量の避難民が発生し我が国への流入の可能性が高まっている場合」があるわけですが、具体的にどのような状況になればこれが予測事態と認定されますか。
福田国務大臣 内乱とか避難民ですか、大量の避難民とか、そういったような事態が発生するといったときに、状況によって武力攻撃事態ということは、可能性はあるわけですね。しかし、状況次第でございまして、周辺事態との関係ですか、周辺事態との関係においては、武力攻撃事態と併存するか否かということは、まさに今申しました具体的な状況判断というか、状況を踏まえて判断するしかないということでありまして、あれがこうだからこうなんだというようなことを申し上げるのは、これは適当でないし、また困難であります。
赤嶺委員 官房長官、何にも答えていないですよ。周辺事態には六類型があるというのは政府の説明ですよね。この六類型すべてが武力攻撃事態に入りますという説明もあったわけですよ。それでは、その六類型のうちの一つ、難民の大量発生、これがどういう状況になれば武力攻撃事態の予測事態になるんですか。皆さんの、政府のこれまでの説明の趣旨からいえば、こういう質問が出てきて当たり前ですし、それに答えられないというのはおかしな話じゃないですか。
中谷国務大臣 あくまでも物事を見る問題の違いでありまして、周辺事態というのは、我が国の周辺において我が国の平和と安全に重大な影響を与える事態という見方であります。片や、武力攻撃事態ということの予測される事態といいますと、我が国への武力攻撃の意図が推測をされることなどから見て、我が国に対する武力攻撃が発生する可能性が高い、客観的にそう見て判断するわけでありまして、御指摘の難民の問題も確かに周辺事態の一例でございますが、その事態によって我が国に対する武力攻撃が発生する可能性がどうかという点で、これは周辺事態とは別の見方で物事を判断して決めるわけでございます。
赤嶺委員 ほとんど説明不能の状態ですね。
 六類型がすべて武力攻撃事態の予測事態に入るというのは政府の説明なんですが、それでは、六類型のうち、これはどうなんですかといったら、これがどういう状況になれば予測事態になるかといえば、それには答えられない、話をそらせてばかりいらっしゃる。恐らくこれは、政府自身も、予測事態というのは武力攻撃事態というのとどういうぐあいになっていくかというのは一部の人しかわからないんじゃないか、そういう不安を抱かざるを得ないような答弁であります。
 私、もう一つ、今度は、過去に起こった具体的な話で伺いたいんですが、過去に、九三年から九四年にかけて北朝鮮の核開発疑惑をめぐって緊張が高まりました。米軍の軍事制裁に向けた動きが活発になって、北朝鮮も軍事訓練の回数を倍近くにふやして、そして臨戦態勢を強化しているとも伝えられておりました。九四年の秋には、朝鮮半島の西側の公海上で、米空母機動部隊と中国の原潜との間で、いわば一触即発の緊張状態が起きていたわけです。
 当時の事態について、当時の石原内閣官房副長官は、米国が海上封鎖に踏み切った場合、日本がどこまで機雷掃海の活動を行うのか議論し、緊迫すれば在日米軍基地が最初のターゲットになるだろうと思ったと、こうあの事態を発言しているわけですね。
 この九四年の危機というのは予測事態に該当しますか。該当しないとすれば、ああいう事態が予測事態でないとすれば、どういう状況になれば予測事態になるんですか。
中谷国務大臣 これは特定の事態に対して言えるものではございません。あくまでも我が国に対して武力攻撃の意図、これがあるかないか、我が国を攻撃しようという、そういう国または国に準ずるものであるかどうか、そういったものと、また周辺の情勢、また相手国の軍事行動、これをすべて見まして我が国に対する攻撃が予測される事態であるかどうかということを判断するわけでありまして、中台問題とか朝鮮半島、いろいろな事例があるかもしれませんが、我が国への攻撃の意図が推測されるかどうかということで判断するわけであります。
赤嶺委員 意図が推測される、意図が明示されなくても意図が推測されるというようなことであれば、先ほど私は九四年当時のそういう軍事緊張のことを申し上げたんですが、そういうことも予測事態になるというのは排除されないわけですね、意図が推測されたら。
    〔米田委員長代理退席、委員長着席〕
中谷国務大臣 この点についてはいろいろなファクターが入るわけでありますが、これは政府が一方的にやるわけではございません。国会の承認をいただく手続がありまして、そのような事態であるということが客観的に判断される場合、しかも、内閣だけではなくて、国会の御承認を得たときに認定されるわけでございます。
赤嶺委員 政府が説明できなくて国会の論戦がこれだけ混乱しているのに、国会の承認というところに逃げ込んでみたって、これは何の合理的な説明にもなっていないと思います。
 そこで、私、やはりそういう予測事態というものがぼかされているからこんなわかりにくい議論になっていると思うんですよ。大変わかりやすい議論がさきにあったんです。
 政府は、周辺事態と武力攻撃事態は、最近は併存という言葉で一生懸命説明しておられます。しかし、四月四日の安保委員会で私の質問に答えまして、周辺事態は武力攻撃事態の予測のケースの一つ、このように答弁しておられるわけですね。周辺事態が起これば、これは武力攻撃事態で言う予測ですよというようなことを、これは防衛庁長官が答弁しておられるんです。
 併存と四月四日の私への答弁、その後、併存ということや波及ということを使い出しているんですが、やはり四月四日の答弁どおりじゃないですか。
中谷国務大臣 数年前に日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドラインができましたけれども、そのガイドラインの中にも、周辺事態と武力攻撃事態が併存する場合があり、それぞれの事態に際して行われることとなる対米支援措置が併存する場合もあるというふうに示されております。
 したがいまして、私が発言をしたことも、このようなものの一つでございます。
赤嶺委員 前の四月四日の答弁が非常にわかりやすいですから、武力攻撃事態の予測とは周辺事態のことであるという、これは長官の答弁ですよ、そういう答弁であります。
 これは防衛庁長官だけじゃないと思うんですよ。私は、そのときの答弁は、周辺事態というのはもうほとんど予測事態と認定するんだ、こういうことを念頭に置いた答弁だと思います。防衛庁あるいは外務省出身の森本敏拓殖大教授も、周辺事態は予測事態の代表例だ、こう述べておられるわけですね。
 ですから、後になって、新ガイドラインの中では、確かに併存だとか波及だとかという言葉があります。しかし、その予測事態には周辺事態ということもあり得るんだということを、はっきり、しっかり、やはりその事態について説明する、こういうことが必要だと思いますが、いかがですか。
中谷国務大臣 一つのケースであるというふうに言ったわけでありまして、周辺事態すべてが予測だというふうには言っておりません。そして、周辺事態の推移によっては日本に対する武力攻撃が差し迫った場合もあるわけでございまして、予測される事態も一つのケースとしてあるわけでございます。
赤嶺委員 私は、周辺事態というのは米軍の軍事行動が前提になっているわけですから、要するに、武力攻撃事態というのは、米軍が軍事介入を行って周辺事態になれば、その支援を行い、そして米軍の出撃地になっている日本にまで攻撃が及ぶかもしれない、そういうことになるわけです。だから、それを予測事態と認定することによって国民を動員する対応措置がとれるようにしていく、あるいは、米軍の行動や日本の支援を抜きにして日本が攻撃を受けることなんかおよそ考えられないわけですから、やはり周辺事態を念頭に置いて今の武力攻撃事態法をつくられたというのが、国民への説明としては非常にはっきりしていると思います。
 私も報道で読んだだけですが、うまい表現をするなと思いました。今度の武力攻撃事態法というのは、さきにつくられた周辺事態法とあわせて一個のまんじゅうをつくり上げたようなものだ、周辺事態法がまんじゅうの皮で、武力攻撃事態法が、一番大事なところがまんじゅうのあんこだというような、比喩的に表現しておられましたが、やはり二つで一つの法律、そういうことになるんじゃないかということを指摘しておきたいと思います。
 次に、自衛隊の部隊の行動についてですが、武力攻撃事態法の第二条六号「対処措置」のイの(1)、ここで、「武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使、部隊等の展開その他の行動」というぐあいに規定しております。この自衛隊の部隊等の展開その他の行動は、予測、おそれの段階の行動も含むということを我が党の木島議員に認めておられます。
 では伺いますが、この「部隊等の展開その他の行動」、これは予測、おそれの場合でありますが、これは具体的にどういうことを想定していらっしゃいますか。
中谷国務大臣 これは、その準備のために陣地構築をしたり、また、その他の待機命令をかけて予備自衛官を招集したり、部隊で出動のための準備をするというような、もろもろの行動であります。
赤嶺委員 もうちょっと聞きますけれども、陸上の場合、陸上の部隊展開行動としてはどういうことを想定しておられますか。例えば脅威の高い地域への部隊の集結、こういうことも含まれますか。あるいは米軍基地の警護、これも行うことができますか。
中谷国務大臣 米軍基地の行動につきましては、別個の、自衛隊法の判断で総理が承認して、その必要性があるかどうかという判断をするわけであります。主に、駐屯地以外で活動するとなりますと、陣地を構築するための活動でございます。
赤嶺委員 その場合に、脅威の高い地域、こういうところへの部隊の展開も当然あり得るわけですね。
中谷国務大臣 そういうふうな可能性のあるところにおいて陣地構築をするわけでございます。
赤嶺委員 それでは、次に聞きますけれども、海上の部隊展開行動についてですが、どのようなことを想定しておられるのか。脅威の高い海域への艦艇の集結、あるいは掃海艇による領海あるいは公海上の機雷掃海、こういうことも可能になりますか。
中谷国務大臣 当然、警戒監視などの情報収集のための活動はあろうかと思います。しかしながら、防衛出動がかかる前の行動につきましては、事態といたしまして、極力その事態を回避するというふうにこの事態法に書かれておりまして、その趣旨にのっとって活動いたします。
赤嶺委員 事態法の趣旨にのっとりながら活動していくと。
 そして、必要な場合は、海上での展開行動の場合に、地理的限定、これはありますか。地理的限定、あるいは公海上あるいは同意を得ることができたら第三国の領海、こういうところへの展開も可能ですか。
中谷国務大臣 現時点におきましても、情報収集や警戒監視、また訓練等で公海海域に出ているわけでございますが、当然のことながら、予測される場合におきましては、こういった警戒活動、監視を強化するわけでございます。
 ただし、その活動におきましては、予測される事態でありまして、まだ防衛出動がかかっておりませんので、武力攻撃の発生が回避されるようにしなければならないということは念頭に置いて行動をいたします。
赤嶺委員 空の展開行動の場合に、空中給油機の導入論議の際に政府がしきりに取り上げてきました空中警戒待機、CAP、あるいはAWACS、これによる情報収集あるいは警戒監視の強化も行うことになりますか。
中谷国務大臣 当然のことながら、警戒監視を強化いたしますので、そのような態勢をとることは十分考えられます。
赤嶺委員 ですから、予測の事態、回避する努力をしながらも、かなり広範囲の部隊展開ができる、こういう答弁でありました。
 それで、次に、先ほどの議論にもなりますけれども、周辺事態法では、米軍に対する後方地域支援は戦闘地域ではなく戦闘の行われていない後方支援で行う、武力攻撃が発生するような場合は回避する、こういうことですよね。それで、仮に、周辺事態法に基づいて米軍に対する後方地域支援を行っている自衛隊の艦艇に対して組織的、計画的な武力攻撃があり、政府が武力攻撃事態と認定した場合、その攻撃を受けた、つまり、そこは戦闘地域に変わったわけですね、そういう戦闘地域に変わった地域において自衛隊による武力の行使、こういうことが可能になりますか。
福田国務大臣 そもそも周辺事態法では、現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められるという要件を満たす地域において行われるということでございまして、今のようなことが、法理論的、理論的にはあるかもしれませんけれども、現実的にそういうものを想定しているわけではありません。
赤嶺委員 ですから、官房長官がおっしゃる、理論的にあるわけですよね。理論的にあった場合に、そういう戦闘地域では、自衛隊は、そこが武力攻撃事態と認定された場合に、自衛隊による武力の行使は、もちろん武力行使三原則も前提にした上でです、武力の行使は可能になるわけですね、理論的に。
中谷国務大臣 ただ、何度も申し上げますが、周辺事態の場合は、そういうことは法律に、活動しないということになっておりますので、そういう事態は想定はされません。
赤嶺委員 防衛庁長官、もう答弁いいですよ。前提は官房長官との間に成立しているわけですから。その場合に自衛隊の武力行使はできるんですねというところの質問ですから。前提条件は私と官房長官との間の答弁、質問で成立しています。ですから、官房長官、答えてください。
福田国務大臣 それは、自衛のための武力行使というこの三原則、それにかなうかどうか、この問題になるわけであります。
赤嶺委員 ですから、それも前提になっていると言いましたでしょう。どうぞ答えてください。前提にしているんですよ。
福田国務大臣 現実にあるかどうかということになりますと、極めて考えにくい状態でございますので、ですから、理屈の話としてはそういうことはあるのかもしれませんけれども、しかし、現実論としてはそういうことはないというように考えているわけです。
赤嶺委員 つまり、現実にあった場合は法理論上可能になるということをお認めになったことだと思います。それで……(発言する者あり)どうですか。答弁回避だという声も上がっておりますが、いかがですか。(発言する者あり)
瓦委員長 静かにしてください。
 中谷防衛庁長官。
中谷国務大臣 我が国の自衛権の発動というのは要件がございまして、その要件の中に、ほかに手段がないときということであります。そういった事態が周辺事態の地域外で仮に起こったとしたら、自衛隊法の九十五条、武器防護また自己防護によりましてそういった事態をみずから回避するという行動をまずとろうかと思います。(発言する者あり)
瓦委員長 静かにしてください。
赤嶺委員 防衛庁長官、違うんですよ。九十五条による武器使用の話じゃないんです。武力攻撃事態として認定された場所でということですから、そして自衛権の行使三原則も満たした上でということですから、そういう場合はできるんですね、官房長官。
福田国務大臣 周辺事態法では、これはもう本当にそういう状況というものがないような仕組みになっているんですね。先ほど申し上げましたように、そういう可能性がないように、排除されるように行動するということになっているわけでありますから、そこでもって今おっしゃるようなことを想定する必要はないというように考えているわけです。
赤嶺委員 周辺事態法、新ガイドラインの中では、周辺事態の中に武力攻撃事態の併存、波及があり得るということをちゃんと明記している事柄を聞いているわけですよ。
 それで、場面を変えます。場面を変えて質問します。官房長官、いいですか、場面を変えますよ。
 周辺事態法と武力攻撃事態が併存します。周辺事態がある、武力攻撃事態がある。その場合に、自衛隊の行動というのは、当然それぞれの法律に基づいて行動します。これは、周辺事態法に基づいて米軍に対する後方地域支援を行っている。一方で、武力攻撃事態で活動している自衛隊もここで存在しているわけですね。ここでは後方支援をしている。
 こういう併存があるときに、周辺事態で米軍への後方地域支援をしている自衛隊の艦艇が攻撃を受けた場合、周辺事態で後方地域支援をしていた他の自衛隊艦艇は、武力攻撃事態で活動していた自衛隊とともに武力行使を行うことになりますか、それとも引き揚げるんですか。
福田国務大臣 理屈で言えば、それぞれの法律に基づいて行動するということになると思います。その先は、状況で、その法律に基づいて判断するということになると思います。
赤嶺委員 もうその先は説明できません、答えられませんというのと同じなんですよ。こちらに周辺事態がある、こちらに武力攻撃事態がある、併存している状態、それぞれの法律に基づいて活動している、そのときに攻撃を受けた。攻撃を受けた場合は、当然、武力攻撃事態法に基づいて武力行使を展開する自衛隊の艦船が、こちらでやはり攻撃が加えられたわけですから、反撃に移るというのは当たり前じゃないですか。どうするんですか。
福田国務大臣 周辺事態法では、武力攻撃を受けるようなところには行かないということになっているわけですね。ですから、それは、一方、別に武力攻撃を受けたというのとは切り離して考えることはできるんではないでしょうか。
赤嶺委員 本当に全く説明できない官房長官の姿を見ていると、自分たちでつくった法律を納得いくような、国会に対して説明できない、そういう印象を持って仕方がありません。
 それで、まだ質問があります。この周辺事態と武力攻撃事態の重なり、併存、波及、その他自衛隊の行動、これについては引き続き私は追及していきたいというぐあいに思います。
 次に、米軍支援の問題です。
 政府が武力攻撃事態と認定することによってどういう米軍支援が可能になるかという問題ですが、七日の審議の中で川口外務大臣は、今後検討する米軍支援の一つとして、米軍が陣地として使用するための施設・区域の迅速な提供を挙げました。
 米軍の陣地のための施設・区域の提供、これはどのようなことを想定しておられますか。
川口国務大臣 まず、米軍の行動が円滑かつ効果的に行われるために、武力攻撃事態対処法案で想定いたしておりますように、米軍に対する物品、施設または役務の提供などについて、米軍の行動の円滑化に関する法制を事態対処法制の整備の中で検討していく必要があるということでございます。
 それで、五月七日の日に私が申し上げた答弁でございますけれども、そういった検討が必要であるという趣旨にかんがみまして一例として挙げさせていただいたということでございまして、今後は、先ほど申し上げたように、政府全体の問題として関係省庁間で検討をしていくということになるわけでございます。
赤嶺委員 ですから、外務大臣、一例として挙
げられた施設・区域の迅速な提供は、具体的にどういうことを想定しているんですかと、こういうことを伺っているんです。
川口国務大臣 ですから、それはあくまで一例として挙げさせていただいたということでございまして、そのことについての具体的なこと、その他も含みますけれども、具体的にどのような、米軍の行動が円滑になるように支援をしていくかということは、今後法制を整備する中で、関係の省庁が政府全体として議論をしていく、そういうことでございます。
赤嶺委員 それは外務大臣、答えなければだめですよ。
 特に、七五%の基地が集中している沖縄県民は一番そのことが不安なんですよ。四月、五月、テロ事件のあおりを受けて、事故、事件の頻発じゃないですか。ついにおとついは、嘉手納町議会主催の、町議会が主催して抗議集会をやるという異例な事態が起こっているじゃないですか。それから、SACO合意の実施として象のおりを建設しようとしたら、建設予定地の隣村の恩納村が村ぐるみで反対運動に立ち上がっている、こういう時期じゃないですか。過重負担を押しつけている沖縄県民に対する姿勢としても、米軍基地に対する施設・区域の迅速な提供というのは答えるべきですよ。全く無責任な話ですよ。答え切れなければ法律撤回すべきですよ。
 それで、ちょっと具体的に聞きますが、陣地の構築として、米軍のための陣地構築、あるいは専用施設として提供する、こういうことも考えていますか。あるいは、自衛隊のために構築した防御施設、これを米軍に、共同使用する、提供する、こういうことも考えておりますか。
川口国務大臣 まさに、先ほど申し上げましたように、米軍に対する物品、施設または役務の提供などについて、米軍の行動の円滑化に関する法制を、事態対処法制の整備の中で政府全体として検討していくわけでございまして、それはまさに、これから検討をするということで具体化していくことでございます。
赤嶺委員 私は、こういう答弁に絶対に納得ができません。米軍基地を押しつけられるのは沖縄県民です。そういう立場に立ってみた場合に、今後迅速な提供をも予定している法律をつくろうとするのに、その中身については言えません、こういうことでは納得できませんよ。迅速な提供だけ承認を求めるわけですか。
 それじゃ、今までは、これも無法な形ではありますが、米軍基地の場合には、地主が納得をしなくても、米軍特措法に基づく手続をとって、強制的に土地を収用して米軍基地をつくるということがありました。この武力攻撃事態法で施設・区域の提供ができるようになったら、実際上、米軍特措法の手続というのは省略されることになるんじゃないですか。いかがですか。
川口国務大臣 我が国の施設・区域の七五%が集中をしている沖縄の県民の方のこの問題に関する御懸念というのは、私も認識をいたしております。
 その上で、先ほど来申し上げていますように、こういった事態対処法制の整備をこれからこの事態対処法案に基づいて行っていくわけでございますので、その中で、具体的な、今委員が御質問になられたようなことは検討をされていくことになるわけでございます。
赤嶺委員 答えないことが沖縄県民に対する誠実さのなさのあらわれということを、しっかり受けとめていただきたいと思います。
 その上で、まだ聞きます。民間の空港や港湾、漁港など、既設の施設を一時的に米軍に提供することも考えておりますか。
川口国務大臣 米軍の行動の円滑化に関する法制の整備の中で、今後政府全体として検討をしていくことになるわけでございます。
赤嶺委員 時間になりましたけれども、米軍は今でも、軍事行動という視点でいえば、沖縄県民を初め、神奈川もそうですが、基地周辺市町村の住民の命と安全も無視して、自由に迅速に行動できるような体制がつくられています。その上さらに武力攻撃事態法では米軍の自由で迅速な行動を保障する、その中身は今は絶対に言えません、こういう態度で、こういう法律に納得できるはずはないということを強く申し上げて、私の質問を終わります。
中谷国務大臣 先ほど、赤嶺先生の質疑の中で一点、答弁を申し上げましたが、補足をさせていただきたいんですが、質疑の中で、本当に個人だけかという疑問があると私は申し上げました。この先ほどの答弁は、最初から個人の問題としていいかげんな調査をするのではなくて、いろいろな可能性を含めて徹底解明をするという姿勢を述べたものでございますので、この点、補足をさせていただきたいと思います。
赤嶺委員 では、最後ですが、組織ぐるみの犯罪行為という疑いは消えないことですから、そういう点でも、しっかり調査をし、なお、本委員会においても集中審議をしていただきたいということをお願いしまして、終わります。
瓦委員長 赤嶺君の質疑は終わりました。
 次に、重野安正君。
重野委員 私は、社会民主党・市民連合を代表しまして、議題となっております武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案等に対し、これら法律案と現行国内法との関係について幾つか質問をいたします。
 まず、憲法に定める地方自治の本旨に対する政府見解についてお伺いいたします。
 近年、団体自治に対する政府見解は、例えば、一九九九年七月七日の、国から独立した地方公共団体の存在を認め、これに地方の行政を自主的に処理させることと明言しました、当時の内閣法制局長官答弁、そしてまた本年三月二十六日、総務委員会におきまして、団体自治というのは、一つの団体として意思決定ができ、行動ができ、責任をとるようなこと、との総務大臣答弁に見られるように、的確に明示されておられます。また、地方分権一括法の最大の意義でありますが、中央、地方関係について、対等協力関係と定めたことにあるはずでございます。
 してみれば、一連の政府見解や一括法の意義、そして学界における定説等からいたしますと、憲法九十二条に定める地方自治は、制度的保障の法理に立っていることは明らかであります。そうしますと、地方自治制度の実体的内容を壊し、その本質的な要素を奪うような法律は、憲法上許されないことになります。
 ところが、武力攻撃事態法第五条や第十五条で、自治体に責務を課したり、内閣総理大臣の指示権、執行権などを盛ることは、どう読んでも団体自治の法理を侵すことになるわけでありまして、とても内閣の言う憲法の枠内とは言えないと思います。中央政府と自治体間の関係において、具体的に何をもって憲法の枠内と言えるのか、まず官房長官、そして法制局長官の具体的な見解をお伺いいたします。
津野政府特別補佐人 最初に私の方から御答弁をさせていただきます。
 まず、地方自治の本旨ということの内容でございますけれども、これは、憲法九十二条に規定する地方自治の本旨といいますのは、地方公共団体の運営は原則として住民自身の責任においてみずからの手で行うという住民自治の原則と、それから、国から独立した地方公共団体の存在を認め、これに地方の行政を自主的に処理させるという団体自治の原則をともに実現するという地方自治の原則をあらわしたものであります。
 ところで、ここから一般論として申し上げますけれども、憲法第九十二条は「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」と規定しておりまして、地方公共団体の行政権能がどのように認められるかということにつきましては、地方自治の本旨に基づきつつどのように国が関与するかということを含めて、いわゆる立法裁量の問題として国会の判断にゆだねられ、その制定する法律によって定められることとなるわけであります。現行の地方自治法第二百四十五条以下においても、現に各種の国の関与が認められているところでございます。
 したがいまして、地方自治の本旨に基づきつつ合理的な理由がある場合には、法律またはこれに基づく命令において、地方公共団体が行う事務について国が一定の関与を行うことを法律で定めることは憲法が認めるところであるというふうに私どもは考えているわけでございます。
福田国務大臣 ただいま法制局長官から答弁申し上げましたけれども、憲法第九十二条、地方自治の本旨の規定がございます。国から独立した地方公共団体が、その住民の意思に基づいて、みずからの判断と責任のもとに地域の実情に即した行政を展開していくということでございます。
 武力攻撃事態のような状況において、この事態そのものが――我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全確保を図るため、国と地方公共団体がそれぞれの役割に応じた責務を果たすということでございまして、これは当然のことだと思います。
 また、武力攻撃事態対処法に規定されております内閣総理大臣の地方公共団体に対する指示、またみずからの対処措置の実施につきましては、内閣総理大臣に対して包括的に権限が与えられるものではなく、その権限の行使については、国民の生命、身体もしくは財産の保護または武力攻撃の排除に支障があり、特に必要があると認める場合に限定されるとともに、その具体的な要件、手続等を別に法律で定めるということとされております。
 また、武力攻撃事態という状況下におきましては、国全体として万全の措置を講ずることを担保するこうした仕組みが必要でありまして、その要件等を定める法律を適切に定めるところによりまして、問題は生じないと考えております。
 このように、武力攻撃事態に対処するため、法律に基づき国が地方公共団体に対し合理的な関与を行うことができるとするということが、憲法の定める地方自治の本旨に反するということは考えられないのであります。
重野委員 そういうことであるなら、この点についてどのようにお考えか伺いますが、地方自治法の解釈について具体的にお伺いいたします。
 地方自治法第二百四十五条に定める代執行に至る規定でありますが、その規定は訴訟手続上の重要な要素としております。これを、訴訟手続を抜きにした代執行制度は存立できないのではないかと私は考えるのですが、私のそういう解釈は間違いかどうか、総務大臣の見解をお聞かせください。
片山国務大臣 今回の武力攻撃事態対処法は、代執行的なことを書いていますね。総合調整を本部長がやって、本部長は総理ですけれども、総合調整がうまくいかないときは指示をして、指示にも従わないときは、かわりにみずからやるか、あるいは各省の大臣を指揮してやらせると。ただ、地方自治法の代執行とはかなり違うんですね、中身が。
 そこで、今度、こういう措置をどういうふうに組み立てるか、制度設計するかは、実はこれからでございまして、これから十分地方自治法の代執行との関係も考えながら制度の組み立てをやっていきたい、こういうふうに思っておりまして、仮に、地方自治法の代執行には訴訟手続を入れていますね、高裁の判断を仰ぐと。今回、私は入れなくても、今回入れなくても、それはこういう特殊の場合における特殊の対応ですから、それは私は許されるんじゃなかろうか、こう思いますけれども、基本的には、地方自治を尊重するという視点は残しながら、制度の設計を慎重にしていくべきではなかろうか、こういうふうに思っておりまして、内閣官房を中心に、よくお互い協議してまいります。
重野委員 今の総務大臣の答弁を、はいそうですかというわけにはまいらないですね。そういうふうに安易に解釈、運用というものを続けていくということが、この法治国家、しかもその基本法たる憲法が厳然とあるという我が国においてそういうことが安易に許されるはずはない、こういう立場で伺いますけれども、そこで、事態対処法と地方自治法との関係でございます。
 事態対処法第十五条一項では、内閣総理大臣は、所要の対処措置が実施されないときは、地方公共団体の長等に対し指示することができるとし、二項では、別に法律で定めるところにより、対処措置が実施されないとき、国民の生命、身体もしくは財産の保護または武力攻撃の排除に支障があり、特に必要があると認める場合であって、事態に照らし緊急を要すると認めるとき、地方公共団体の長等に通知した上で、みずから対処措置を所掌する大臣を指揮し、かわりに当該対処措置を実施することができると規定しておりますが、これは、裁判による代執行を明記していない以上、地方自治法第二百四十五条の八に規定する代執行には当たらない、こういうふうに私は思うのですが、この点、官房長官並びに総務大臣、見解をお聞かせください。
片山国務大臣 先ほども申し上げましたが、この事態対処法の措置、これは地方自治法の代執行とは違うんですよ。だから、この中身はこれから詰めますが、特別の法律の根拠を持ってこういう新たな措置をつくるんですよ。
 どこが違うかというと、地方自治法の代執行というのは、総理大臣がみずからやることはないんです。各省大臣がやる。やれることは法定受託事務だけ、しかも、法定受託事務を違法にやっている場合、そういう場合に高等裁判所の判断を仰いでやるという、これは一般的な代執行なんですよ。
 ところが、今回は、法定受託事務であろうが自治事務であろうが、一定の手続を経て、地方団体がやらない場合に、これは大変なことになるという判断のもと、緊急事態で、もうほかに何らの方法もないという場合に、総理大臣が各省大臣を指揮するか、あるいはみずからがやれる、こういうことなんです。
 それは、法律で制度をしっかり仕組みますから、地方自治をないがしろにするようなことではなくて、ほかに方法がない、この法律では地方団体の責務も書いているんですから、国と一緒に地域の安全や住民の生命、身体、財産を守ると書いているんですから、そのためにいろいろな手だてをやっても、最終的に、いろいろな状況でなかなかそれが達成できないという場合に、こういう特別の措置をとる。
 だから、特別の法律の根拠を持つわけですから、私は、それはそれで地方自治に反することはないと思いますし、ぜひ今度の個別法制の中でしっかりした組み立てにいたしたい、こう申し上げているわけであります。
重野委員 法第十五条二項に定める、内閣総理大臣は、みずからまたは事務を所掌する大臣を指揮し、対処措置を実施し、または実施させることができるとするこの規定は、今の総務大臣の答弁によると、いわゆるいうところの代執行ではない。というのであれば、本案に規定をする内閣総理大臣の執行権限、これは、今ある地方自治法との関係でいかなる性格のものになるのか、その点を明らかにしてください。
片山国務大臣 御承知のように、地方自治法は、国と地方の関係の一般原則、基本的なことを書いているんですね。それ以外については、特別の法律の根拠で、国会にお認めいただいていろいろな国と地方の関係を決めていくということは、私は可能だと思います。
 武力攻撃事態で、国の平和や安全や独立が脅かされるような緊急の事態のときに、地方団体に総合調整やら指示をしても対応がとられない、このままでは住民の生命、身体、財産に大変な危害が及ぶ、地域の安全がこれは守られない、そういう場合に、特別の措置を特別の法律に基づいてとるということは、私はそれは憲法でも許されるし、地方自治との関係でもそこは問題がないのではなかろうか。あくまでも特殊な場合の特殊な対応、特殊なケース、こういうふうに考えておるわけであります。
重野委員 この二百四十五条に言う代執行とは違うということですね。
 そうしますと、その根拠たるものは一体何かという点であります。私は、地方自治法二百五十条の六に規定している国の直接執行であるとか、または並行権限の行使という部分がありますけれども、そういうところに依拠しているのかというふうに自分なりに思うんです。この点についてちょっと確認をしておきたいと思うんですが、そういうことではないんですか。
片山国務大臣 地方自治法に並行権限の規定があります。ありますけれども、この並行権限を行使する場合も特別の法律の根拠は要るんですよ、御承知のように。だから、結果として、今度の制度設計で似てくるかもしれません。似てくるかもしれませんけれども、自治法の並行権限そのものとは違う、こういうふうに我々は考えております。
 これから制度を仕組むんですから、おまえどうするんだ、そこのところはありますけれども、結果としては、特別の法律でそういう制度を仕組んでいきますから、自治法が想定している並行権限、似てくるかもしれませんけれども、私は、それと同じものではないと考えております。
重野委員 それでは、視点を変えて質問いたしますが、自治体の自治事務、それから法定受託事務、これは明確に違うわけでありますが、この点について、法定受託事務については、地方自治法第二百四十五条の八に定める代執行手続のうち、訴訟手続を省略する。先ほどの総務大臣の答弁は、訴訟手続の省略、そのことは間違っていない、それは今まで言われていた代執行訴訟手続とは違うんだ、こういうふうに申しました。
 そうなると、これは今ある法律に対する解釈をそういうふうな形で、同じ代執行という行為を、この法律でやる代執行、この法律でやる代執行というふうに簡単に分けられるということは一体どういうことなのか、分けるという根拠は一体法理的にどこにあるのかということを私は聞かなきゃならぬというふうに思うんですね。その点について、もう一度明確にしてください。
片山国務大臣 この武力攻撃事態対処法でも代執行とは書いていないですよね。かわって措置をとる、こう書いておりますから、代執行的ではあるんですが、自治法が想定している代執行じゃないんですね、何度も言いますけれども。
 自治法の前に、昔、マンデーマス・プロシーディングというアメリカの制度をそのまま入れたわけですよね。それをこの前の自治法の改正で少し直したわけですけれども、アメリカのものは訴訟手続が入っているんですよ、全部。だから、自治法の方は訴訟手続は残りましたけれども、ただ、今回のような場合には緊急ですから、それは、裁判所をかませるということは一つの考え方かもしれませんが、緊急にはなかなか間に合わないわけですね。そこで、いろいろな手続をとって、例えば、何度も言いますけれども、総合調整をやり、指示をやり、しかも、どうしても緊急でほかに手段がないときにはかわって措置が行える。
 だから、ここで代執行的と申し上げましたけれども、自治法の代執行とは制度としては違うんです。しかし、その根拠は法律なんですよ。この武力事態対処法の中にも条文はありますよね、措置の根拠がありますし、今度は個別法制の中でもはっきりと法律上それを書きまして、国会で御審議いただいて国会の了承を得る、こういうことでございます。
重野委員 先ほどから、今あるいわゆる代執行とは違うという点、そういう主張がされておるということはわかります。しかし、今ある代執行という制度あるいは代執行に至る手続、その中で訴訟というものが現にある。これはまさに地方公共団体の自主性あるいは自立性を侵害することを防止するための予防的な措置だ、こういうふうに僕は思うんですね。それで、国による恣意的な運用を避けること、それは避けなければならぬという点で裁判所をかませる、裁判所による客観的な判断を求め、その発動を慎重なものとするというねらいがあると思うんです。
 この精神は、私は、今いう代執行のよって立つ根拠は違うと申しました。しかし、ここにいう地方自治という視点に立った今日までの代執行に対する解釈、それを否定することはできないと思うんですね。それがあるという現実に立って、今いうところの代執行というものをどう考えるかという、そこに全く無縁のものではない。その点については、大臣、どうですか。
片山国務大臣 それは、委員言われるように、地方自治を尊重していく、地方の意向を最大限生かしていくということについては、私は、自治法の代執行も今回とる措置もそこは同じだ、こう考えておりますが、地方自治法の代執行の方には、もう御承知のように、法定受託事務だけなんですよ。自治事務はもう自由にしているんですね、自治事務は地方団体の事務だから。法定受託事務、国が受託してもらう、国の事務を地方が受託する、その事務について違法に行われている場合にこれは国が是正する、こういう仕組みですから、そこで違法かどうかの判断その他については、やはり裁判所をかませればいいという前の制度の考え方をそのまま残したものですね。
 今回のこれは、自治事務であろうが法定受託事務であろうが、緊急なときにほかに方法がない、今何度も同じことを言いますけれども、地域の安全が脅かされたり、国の独立がおかしくなったり、住民の生命、身体、財産が危ない、こういうときに、地方団体にやってくれと言ってもやらない場合に、仕方なく国が、総理がみずからやるか各省大臣を使ってやるのかというのは別にして、やる、こういうことでございます。
 何度も今までも答弁しましたように、こういうことは本来ないのがいいんですよ、指示したり、こういう措置をとることが。本来は、地方団体に要請して、総合調整をしたら、地方団体がやります、こういうのが本来の筋でございますけれども、しかし、そうやってもどうしてもという場合の私は最後の法的な担保だろうと思いまして、こういう指示や代執行が乱発されるようなことは困るのでありまして、伝家の宝刀で、最後の法的な担保で、それまでは事実上話し合いで総合調整や要請で行われるというのが本来は正しい、こう思っておりますから、運用上はそういうふうにしていただくように、私も安保会議の一員になりましたら、そういうことで内閣の中では主張していこう、こういうふうに思っております。
重野委員 地方自治法上の代執行という点に私はこだわるのでありまして、地方自治法上の代執行が国と地方公共団体の関係というものを極めて重視していることは、大臣も見解の違いはないと思うのであります。したがって、非常に慎重な制度になっている。
 それに対して、今の説明も聞きながら、本法案における代執行の規定、今後二年間かけてさらにさらに具体化していくんだろうと思うのでありますが、いわゆる国と地方公共団体の関係、まさに二十一世紀は地方の時代、いろいろな面で地方と国の関係が漸進的に議論されている。ただ、この有事法制に関しては、それとは無縁なんだというように聞こえるんですね。これは私はいささか乱暴な意見ではないのか、このように思います。
 したがって、この一連の三つの法案がありますけれども、そのすべての法案に係る問題にわたるわけでありますけれども、地方と国との関係というものをしっかり踏まえた上で事が運ばれる、このことは絶対に不可欠である、私はこのように思いますが、その点については、大臣、いかがですか。
片山国務大臣 言われるように、国と地方の関係は対等、平等であるべきですね。パートナーの関係でなきゃいかぬと思います。だから、この法案も基本的にはそういう考え方で書かれております。対等の関係でうまくいくのなら対等の関係でやるということですね。しかし、非常時に、何度も同じことを言いますけれども、緊急時にどうにもならないという場合に、こういうことで指示をしたり代執行的なことをやる。それは、より大きな国や国民の利益のためにやむなくそういう措置をとるということでございまして、これは大変限定された特殊の、非常時の場合の国と地方の関係であって、本来の国と地方の関係は一般的に言えば対等、平等で、そこはお互いの、国と地方は、私がいつも言っているようにパートナーである、パートナーという関係でなきゃいかぬ、上下の関係、指揮命令の関係じゃない、お互い協力と分担の関係だ、こういうふうに考えておりまして、だから、実はこの措置の制度はこれからなんですね、もう御承知のように。
 だから、その制度をつくる上についても、基本的な国と地方の関係を念頭に置きながら、しかし、事は非常時ですから、緊急時ですから、どういう制度がいいのか検討してまいりたい、こういうふうに思っております。
重野委員 委員長にお願いしたいんですが、今いわゆる訴訟問題について議論いたしましたけれども、この法案の条文の意味と、それからどのような事態にどのように適用されるのか、あるいは想定される事態の類型化、運用される法律の内容及びその運用、こういう点について具体的に説明できる資料をぜひ委員会に提出していただきたい。そのことが、私は、この法案を審議する上で、より具体的に議論できる素材になる、このように思いますので、その点、ひとつよろしくお願いしておきます。
瓦委員長 後ほど理事会に諮り、さように進めたいと思います。
重野委員 次に、自衛隊法についてお伺いをいたします。
 まず、防衛出動時における物資の収用等に関する現行第百三条ただし書きに言う政令、この政令は現時点で定められていないと私は理解をしておりますが、この点、間違いないか、防衛庁長官にお伺いいたします。
中谷国務大臣 そのとおりでございます。
 これの必要性につきましては、かねてから必要なものであるというふうに認識をいたしておりましたけれども、昭和五十六年に有事法制の研究におきまして、現行法令に基づく法令の未制定の問題として明記をされておりました。
 その後、世論の動向を見つつ慎重に検討を進めてきたところでございますが、このたび、国民の理解が以前に比べては格段に進んできているものというふうに考えておりまして、今回の国会に合わせまして、この法律の改正に伴いまして、この政令を制定したいというふうに考えております。
重野委員 この百三条を読んでみますと、「事態に照らし緊急を要すると認めるときは、長官又は政令で定める者は、都道府県知事に通知した上で、自らこれらの権限を行うことができる。」このように書いてございます。
 今長官の答弁で言われましたように、昭和五十六年といいますから、もう随分、この百三条、いわゆる法律ができて時間は経過しているわけでありますが、現在に至るまで定めていません。これは、都道府県知事の権限を防衛庁長官あるいは政令で定める者が代行することの是非について、これまたいろいろな角度から議論が出されている、そういう背景があるから、昭和五十六年以降今日まで制定されなかったというふうに理解をしていいんでしょうか、長官。
中谷国務大臣 これは、有事法制全体の問題といたしまして、国会の動向、また世論の御理解等をいただきながら検討していたわけでございます。
重野委員 それでは、今度は違った角度から。
 今、世論の動向ということを言われましたけれども、それだけでは非常に主体性がないというか、あなた任せの感じがいたしますね。この自衛隊法が制定されて以来今日まで、この政令が今もって制定されていない理由は、では一体那辺にあるんですか。世論の動向じゃないんですよ、理由ですよ。
中谷国務大臣 やはり、国民の権利との関係で、国民の御理解や地方自治体の御理解を慎重に見きわめて提案する必要があるということでございます。
重野委員 まだあと二年という時間がございますけれども、今、二年を含めて、この抽象的なと申しますか、それを具体化していく、そういう判断に立つ背景と、大臣として、もう具体的に政令で定めるというその政令の中身を明らかにする時期だというふうに思われる背景、くどいようですが、どのように考えていますか。
中谷国務大臣 これは、もとよりこの法整備というものは、我々の立場からいたしますと、国や国民の安全にとって最も緊急かつ重大な事態において、国の責務として、国全体として基本的な対処態勢の整備を図るものでありまして、主権国家としては当然に備えておかなければならなかったものであります。
 しかしながら、ほかの分野も含めまして、このような有事事態に対する法整備をどうするかという問題につきましては、昭和五十一年以来研究を始めまして、第一分類、第二分類、第三分類という分類分けをいたしまして、それぞれこの結果が発表されておりまして、その中に第一分類としてこの政令を研究したわけでございます。
 今般、この有事法制の審議に際しまして、その第一分類、第二分類の結果を法案化したことでございますので、その一分類に入れて研究をしてまいりました政令につきまして、これの改正が成立し次第、速やかに制定したいと考えたわけでございます。
重野委員 それでは聞きますが、一九八一年四月のいわゆる「有事法制の研究について」と題する防衛庁の文書を見ました。それによりますと、今大臣が申しましたように、研究対象について、一、防衛庁所管の法令、二、他省庁所管の法令、三、所管省庁が明確でない事項に関する法令、このように三つに区分されております。その中で、第一分類にかかわる問題として、自衛隊法第百三条に基づく政令についていまだ制定されていないことを指摘しているんですね。
 百三条は、防衛出動時における物資の収用等に関する規定でありまして、今回の自衛隊法関係の改正案では、同条の一は現行法のまま存置され、さらに新しく百三条の二が追加され、そこでも「長官又は政令で定める者」との規定が加えられているわけです。
 しかも、今指摘をしました「有事法制の研究について」と題する防衛庁文書の別紙では、この第百三条の政令に盛り込むべき内容について、「物資の収用、土地の使用等について都道府県知事に要請する者は、防衛出動を命ぜられた自衛隊の方面総監、師団長、自衛艦隊司令官、地方総監、航空総隊司令官、航空方面隊司令官等とすること。」このように明記しているんですね。
 今回の改正案においても「政令で定める者」という、この「政令で定める者」とは、この文書で明記されておりますものと変わりはないんですかという点について、確認をしておきます。
中谷国務大臣 先生御指摘のとおり、昭和五十六年の有事法制の研究につきまして、この別紙の中で、政令に盛り込む要請者として、防衛出動を命ぜられた自衛隊の方面総監、師団長、自衛艦隊司令官、地方総監、航空総隊司令官、航空方面隊司令官などが考えられる旨記述をしているところでありまして、ほぼこのとおりいたしたいと考えております。
重野委員 この有事法制研究の、百三条の政令に盛り込むべき内容についてという文書をずっと読んでいきますと、「都道府県知事の職務」という項目がございまして、防衛庁長官等が行った処分の要請の趣旨に基づいて適切な措置をする、これは読み方によっては、防衛庁長官、あるいは今申し上げました出動を命ぜられた自衛隊の、方面総監、師団長とずっとあるんですが、こういう方々が知事を指揮するということに読んでもいいんですか。読めるんですか、そのように。
中谷国務大臣 指揮ではございません。あくまでも要請でございまして、自衛隊法の百三条また百三条二におきましては、都道府県知事は、防衛庁長官または政令で定める者の要請に基づき、防衛出動時における物資の収用等や展開予定地域内の土地の使用等の措置ができることとされております。
 したがいまして、仮にこれらの規定の趣旨に基づきまして政令で自衛官が定められたといたしましても、都道府県知事に命令できる立場に立つものではなくて、あくまでも要請をできる立場にとどまるものでございまして、御指摘の御懸念はないものと考えております。
重野委員 懸念がないと。それならなぜ、この間のこれだけの時間が経過している中で、この政令を具体的に定めなかったのか、定められなかったのか。その経過はどういう経過があるんですか。
中谷国務大臣 それは、これだけの問題ではございませんでして、有事法制研究の中の対象とされまして、ほかの改正等も含めまして、ずっと研究し、発表され、そのままの状態であったわけでございまして、今回、内閣の方針といたしまして、有事法制を国会で議論できるように法案を提出いたしましたけれども、この一環としてこの問題を提案させていただいているわけでございます。全体の問題としての位置づけでございます。
重野委員 長官の言い方というのを、やはりこれだけの時間が経過した内容であるだけに、明快にすとっと胸に落ちるような説明を聞くことはできておりません。
 やはり、いろいろ申し上げましても、憲法上の論争があるという現実がある中で、いわゆる制服であります武官がそういう形において、要請という言葉を使うにせよ、ある種の指揮をするという点について、まだまだそこについての全体的な合意形成というものは困難な部分がある、そういう認識もあるんではないか、このように思うんですが、そういうことはないんですか。
中谷国務大臣 まず、特に憲法上、また法律の問題があるというわけではございません。
 そもそも、防衛出動ということが考えられる事態は大変な事態でございまして、該当の都道府県等におきましては住民の避難また保護等を始めて、非常に平常の状態ではない、異常な事態が発生しているわけでございます。
 このような観点の中で、我が国の防衛のために行動する自衛隊の任務遂行上必要とされる物資の収用等という国が本来果たすべき事務について、この点では、やはり地方の実情に精通をいたしました都道府県知事が処理することが適当ではないかというふうに考えておりまして、この際、この仕事を都道府県知事に要請をするというふうにいたしたわけでございます。
重野委員 くどいようですけれども、住民の直接選挙によって選ばれた都道府県知事が、仮に百歩譲って考えたとしても、防衛庁長官だけならいざ知らず、武官たる自衛隊員から要請されるなどということが、地方自治の基本原則からして許されるのか、安易にそういうことがやられていいのかという疑問はぬぐえません。
 これまで、法制定以来、この政令で定めるものを法令化してこなかった。これはやはり、武官が住民に選ばれた自治体の長に要請、これは、今大臣も要請という言葉をたくさん使うんですが、実態は私は命令とほとんど変わらないものだというふうに思うんです。そうした権限行使が、国民感情からも、また憲法上からも許容されるものでないという点について、いささかなりともこの認識をしてきたからではないのかな、このように思うんですが、防衛庁長官の見解を伺います。
中谷国務大臣 この点につきましては、あくまで要請でございまして、命令をすることではございません。
 これにつきましては、都道府県知事の事務といたしまして、地方自治法第二条九項一号に定める法定受託事務とされておりまして、今度の改正の自衛隊法百三条にも同じ考え方をとっているところでございます。あくまで国として国民の生命財産を守るために、いわゆる武力攻撃をしている者に対して、これの対処をするのに必要なものでございまして、恐らく、地元の自衛隊がいればいいわけですけれども、地元に駐屯地等がない場合はほかの県からその場に行くわけでありますが、この点については、やはり地元の実情を知った知事さんがそのようなことをしていただくのが適当ではないかと考えまして、知事さんに要請を行うわけでございます。
重野委員 では、地方自治を所管する総務大臣に聞きますが、武官が文民、自治体の長に要請、命令とは言いません、要請するということは、この戦後憲法に明記された地方自治の原則、それと両立するのかしないのかという単刀直入な質問に対しては、大臣、どのようにお答えしますか。
片山国務大臣 何度も同じ答弁になりますが、非常時ですね、緊急時、非常時でございまして、本来そういうことは余りいいことじゃありませんけれども、ただ、今回の場合、非常時における要請ですね。しかも必要最小限度、緊急な場合の、特別な事情がある場合の、とにかく必要最小限度の要請ですから、委員、これは命令でも指示でもない。要請というのは、これは法的な拘束力はないんですよ。お願いですから、簡単に言うと。だから、そういうことを法令上明らかにするということは、私は、それはそれで意味があるのではなかろうか、そういう意味では、極めて限定的に運用されるべきだ、こういうふうに考えております。
重野委員 これまでの官房長官を初めとする防衛庁長官の答弁、総務大臣の答弁、なかなかかみ合わない部分もあります。
 私は、事態対処法等三法案は、我々が憲法上非常に重視されている地方自治とはなかなか相入れない部分があるという疑念はぬぐえない。それは、私なりに思うに、今の日本国憲法に緊急権の規定がないだけでなく、九条その他国民の基本的人権との関係において、国内諸法令が、平和主義、基本的人権の尊重、地方自治の尊重を基本に法体系が構成されている。その結果としては、ここら辺の法律の対立は当然起こる、このように私は思います。
 そうした国内諸法令に今回のような有事立法を割り込ませてくるということは、諸法令のよって立つ原則、いわゆる日本国憲法、ここに触れる部分が出てくる、避けられない。その意味で、こうした法案を法制化することは、これはある意味では超法規立法というふうに思わざるを得ないのであります。
 いずれにいたしましても、戦後この方、こういう有事法制なるものが提案をされ、本格的に議論するのは、私は初めてでありますが、非常に時代の大きな転換点であることは私は間違いないと思うんです。
 法律は、一たんできれば、その法を運用するのは、やはり行政、あるいは今回の場合は自衛隊ということになると思うのでありますが、そうなってくると、これは抑制的であるべきこと、これは言うまでもないことでありますが、今後、この法案が成立するかしないか、我々は到底賛成するわけにはまいらないわけでありますが、いずれにいたしましても、そういう点について、長期的な展望も含めて官房長官の意見を聞きたい。
福田国務大臣 武力攻撃事態におきまして、地方公共団体が住民の生命、身体及び財産を保護する使命を有しているということにかんがみまして、国と地方公共団体がそれぞれの役割に応じた責務を果たすということは当然のことでございます。
 また、今回の法案は、我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全確保を図るため、国全体として万全の措置が講じられるよう、国や地方公共団体等の責務を定めるとともに、武力攻撃事態の特殊性及び緊急性にかんがみ、国と地方の関係について特別の定めを置いたところでございます。
 これらの規定は、日本国憲法の趣旨に反しないものであることはもとより、地方自治法の諸規定とも整合性を持つものでございまして、先ほど超法規的というように御指摘されましたけれども、こういう御指摘は全く当たらないものであるというように考えております。
 いずれにしましても、法案の三条四項に基本理念が書いてございます。「日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならず、これに制限が加えられる場合は、その制限は武力攻撃事態に対処するため必要最小限のものであり、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われなければならない。」このように書いてございますし、憲法十三条の規定も、これも当然遵守をし、また、その他憲法の範囲内で行うということでございますので、それほど時代の転換点といったような、そういう感じのものでないということをひとつ御理解いただきたいと思います。
重野委員 終わります。
瓦委員長 この際、御報告申し上げます。
 委員派遣につきましては、来る六月五日及び七日に行うことといたしますので、御了承願います。
 なお、委員派遣におきましては、東祥三君外一名提出、安全保障基本法案及び非常事態対処基本法案につきましても、意見を聴取し、審査いたしたいと存じますので、あわせて御了承願います。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時三分散会


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