衆議院

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第17号 平成14年7月3日(水曜日)

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平成十四年七月三日(水曜日)
    午後一時開議
 出席委員
   委員長 瓦   力君
   理事 衛藤征士郎君 理事 金子 一義君
   理事 久間 章生君 理事 米田 建三君
   理事 伊藤 英成君 理事 玄葉光一郎君
   理事 赤松 正雄君 理事 工藤堅太郎君
      石破  茂君    岩永 峯一君
      岩屋  毅君    大野 松茂君
      嘉数 知賢君    熊谷 市雄君
      小島 敏男君    近藤 基彦君
      桜田 義孝君    田中 和徳君
      高木  毅君    中山 利生君
      西川 京子君    浜田 靖一君
      増田 敏男君    松野 博一君
      森岡 正宏君    山口 泰明君
      枝野 幸男君    川端 達夫君
      桑原  豊君    首藤 信彦君
      末松 義規君    筒井 信隆君
      中野 寛成君    永田 寿康君
      長妻  昭君    肥田美代子君
      平岡 秀夫君    前原 誠司君
      渡辺  周君    上田  勇君
      白保 台一君    田端 正広君
      達増 拓也君    中塚 一宏君
      樋高  剛君    赤嶺 政賢君
      木島日出夫君    今川 正美君
      東門美津子君    井上 喜一君
      宇田川芳雄君
    …………………………………
   議員           東  祥三君
   議員           中塚 一宏君
   外務大臣         川口 順子君
   厚生労働大臣       坂口  力君
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      中谷  元君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   防衛庁副長官       萩山 教嚴君
   外務副大臣        植竹 繁雄君
   防衛庁長官政務官     木村 太郎君
   政府特別補佐人
   (内閣法制局長官)    津野  修君
   政府参考人
   (防衛庁防衛参事官)   柳澤 協二君
   政府参考人
   (防衛庁長官官房長)   山中 昭栄君
   政府参考人
   (防衛庁防衛局長)    守屋 武昌君
   政府参考人
   (防衛庁人事教育局長)  宇田川新一君
   衆議院調査局武力攻撃事態
   への対処に関する特別調査
   室長           鈴木 明夫君
    ―――――――――――――
委員の異動
七月三日
 辞任         補欠選任
  林 省之介君     高木  毅君
  伊藤 忠治君     永田 寿康君
  川端 達夫君     平岡 秀夫君
  中野 寛成君     長妻  昭君
  中塚 一宏君     達増 拓也君
同日
 辞任         補欠選任
  高木  毅君     松野 博一君
  永田 寿康君     伊藤 忠治君
  長妻  昭君     中野 寛成君
  平岡 秀夫君     川端 達夫君
  達増 拓也君     中塚 一宏君
同日
 辞任         補欠選任
  松野 博一君     林 省之介君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 安全保障会議設置法の一部を改正する法律案(内閣提出第八七号)
 武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案(内閣提出第八八号)
 自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第八九号)
 安全保障基本法案(東祥三君外一名提出、衆法第二一号)
 非常事態対処基本法案(東祥三君外一名提出、衆法第二二号)


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     ――――◇―――――
瓦委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、安全保障会議設置法の一部を改正する法律案、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案及び自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案、並びに東祥三君外一名提出、安全保障基本法案及び非常事態対処基本法案の各案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として防衛庁防衛参事官柳澤協二君、防衛庁長官官房長山中昭栄君、防衛庁防衛局長守屋武昌君及び防衛庁人事教育局長宇田川新一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
瓦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
瓦委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。肥田美代子さん。
肥田委員 民主党の肥田美代子でございます。
 私は先日、本院の派遣で、国連の子ども特別総会に出席してまいりました。その総会で、ボリビアの少女、十三歳でございましたが、その少女が、私たちは子供たちにふさわしい世界を欲しております、なぜならば、私たちにふさわしい世界はだれにでもふさわしい世界ですから、そういう趣旨の演説を行いました。国連総会の演壇に子供が立ったのは、歴史上初めてのことでございます。
 私は、その演説を聞きながら、人類の歴史で起きたすべての戦争は大人が始めたものである、子供は常にその犠牲者であった、そのことを改めて思い起こしました。特に、第二次世界大戦におきまして、広島、長崎、沖縄の惨劇においても、ベトナム戦争や冷戦後の地域紛争においても、時には軍人、兵士たち以上に女性や子供たちが犠牲となっております。こうした教訓からしましても、国防の要諦、哲学は、国民の安全保障でなければならないと私は痛感いたしております。
 私は、緊急事態に当たって国家や自衛隊が超法規的な行動に走らないよう、ルールをつくって自衛隊の行動範囲を定め、かつ、それが一度も発動されないような国際環境を整えることが外交の基本であって、それがまた最大の国益だと考えております。しかし、今審議中のいわゆる有事法制三法案は、自衛隊の自由自在な行動を保障しようとしている反面、国民の安全保障に関する法整備を後回しにしたために、残念ながら国民の大きな不信を招いております。
 そこで、お尋ねをいたします。
 国民保護法制の整備につきまして、緊要性を認めながら、二年以内を目標とするという期限設定をしておりますが、なぜ、緊要性にかんがみ、同時提出ができなかったのでしょうか。
福田国務大臣 委員がいわゆる有事法制についての必要性というものを重要と考えていらっしゃるというお話でございまして、大変そのことについて私どもの考えていることを御理解いただいているというように考えて、ありがたく思っております。
 ただいまの、二年以内、こういうことでございますけれども、国民の保護のための法制におきましては、避難のための警報の発令とか、また被災者の救助、施設及び設備の応急の復旧等の諸措置につきまして、国とか地方公共団体、また公共機関等の各機関の役割を具体的に定めていく、こういうことが必要になるわけでございます。そのために、法制の整備に当たりましては、関係機関の意見や国民的な議論を踏まえまして、十分な国民の理解を得られるように仕組みをつくっていく必要があると考えております。
 法案では、法制整備の目標期間を二年以内というようにしているところでございますけれども、この法案が成立した後には、関係省庁と協議を進めまして、早急に国民の保護のための法制の策定作業に着手をしてまいりたい、このように考えておるところでございます。
肥田委員 今、官房長官から十分な国民の理解というお言葉がございましたけれども、今回提出された法案につきまして、国会審議に入りました後も、国民の大半の方々が内容を知らないとおっしゃっている。今後こういうことが絶対に起こらないように、国民保護法制の整備につきまして、国民の十分な理解を得るためにどんな手順と方法を考えておられるか、お聞きしたいと思います。
福田国務大臣 実は、今から二週間ほど、三週間になりますか、全国知事会、知事の方々に全国からおいでいただきまして、そして、そこで説明会をいたしました。それまでも、各地方自治体に対する説明ということは緊要だということでございますので、このことにつきましては、この法制の準備をして、時期的にはちょっとはっきり覚えておりませんけれども、四月ぐらいから、いろいろと説明をする機会を設けて、地方自治体に対する説明をしてまいっておるところでございます。
 今後も、十分なる御理解をいただくために、いろいろな形でもってそういう場を設けて、そして説明をし、そして国民に十分な御理解をいただくように努力をしてまいる所存でございます。
肥田委員 例えば、地方公聴会である知事さんから、この法案によって、自治体の長は国民保護の責務を負うことになります、しかし、何ができますか、住民に避難を命ずる、誘導する、消防署をどう使うのか、そうしたことは二年間待てと、そんなのんきなことになっている、そういうことをおっしゃっておられましたけれども、確かに、国民の保護法制に係る内容はすべて今後の検討事項にされております。
 そこで、不幸にして二年以内に法整備ができなかった場合は、法案に盛られた内容の多くは発動できませんから、法律の一時凍結または別途緊急法を制定するとか、いろいろ検討しなければならなくなると思いますけれども、発動できないような事態になった場合、どのような法的措置を考えておられますか。
福田国務大臣 これから二年を目標として、いろいろと御理解をいただくために説明もしてまいりますけれども、国民との関係における法制については、国民の十分な理解をいただかなければいけない。そのために多少の時間はいただきたいという考え方をしておるわけであります。
 仮に、この法制が未整備の間に武力攻撃事態が発生した場合という御質問でございますけれども、これは警察法とか消防法などございますが、現行法の規定に基づいて、国民の生命、身体及び財産の保護や国民生活の安定のための必要な措置を可能な限り講ずる、こういうことになるわけでございます。
 このような、現行法におきましても国民の生命身体等を保護するための措置を講ずることはある程度可能でございまして、武力攻撃事態においても、現行法の規定のもとに国、地方公共団体その他の関係機関が最大限の努力をするということは当然でございます。
 しかしながら、武力攻撃に伴う国民の被害への対処は、災害等の現行制度での対処とは異なる側面も多いと考えられます。そのために、政府としては、武力攻撃事態対処法案が成立した後は直ちに国民の保護のための法制の整備に着手する、こういう段取りになっておるわけでありますけれども、国とか地方などの各機関の権限、対処措置を実施するための体制とか、それから財政措置、そういうことを可能な限り早期に具体化していく、そういう考え方をいたしております。
肥田委員 国民保護法制の内容は多方面にわたり、さまざまな国内法それから国際条約との調整も必要になると思っております。そうした複雑な作業を二年以内に実施できるようにするためには、私は、今官房長官がこの法律が通ってからとおっしゃいましたけれども、既に相当の準備が進んでいるはずであるというふうに考えます。
 国民保護法制に関する法整備の検討は現在どこまで進んでいるのか、改めてもう一度お聞きしたいと思います。それから、きょうまでの到達点がもしあればお知らせください。
福田国務大臣 国民の保護に関する法制につきましては、いろいろな可能性というものは考えておるところでありますけれども、それを具体的にお示しする、そういう段階には今ございません。並行作業しなければいけないと思っておりますけれども、それも国民の御意見を聞きながらということもございますので、しばし猶予をいただきたいというように思っております。
肥田委員 すべてはこれからという御答弁でございますけれども、私が先ほどから国民保護法制にこだわっておりますのは、この法律が私権の制限にかかわる部分が相当比重を占めている、その理由からでございます。基本的人権の尊重や憲法上の適正な手続保障といった、戦時の私的制限、それに対する考え方を国民にはっきり明確に示さなければ、私はこの法案が国民の信頼を得ることはできないと思うわけです。
 もちろん、本法律案でも、その基本理念の中で、権利制限が加えられる場合は、必要最小限度のものであり、公正な手続のもとで行われると定めておりますけれども、私はこれは極めて抽象的だと思うわけです。私的制限に関するもっと具体的な歯どめ策が国民にわかるように、私は国会審議を通じてその方向性ぐらいは示すべきではないかと思うんですけれども、官房長官、いかがですか。
福田国務大臣 国民の権利、そういうことにつきましては、これはこの法制に定めております。大きな枠組みにおいては、ちょっとその具体的な場所が出てこないのでありますけれども、そういう定めはしっかりいたしておると考えておりますので、そういう大きな枠組みのもとでこの法整備も行われていく、こういうようにお考えいただきたいと思います。
肥田委員 ちょっと、私、今官房長官のおっしゃったことについて、お答えをいただいていないような気がするんです。私的制限、これに関してもう少し国会審議の中で丁寧な御答弁をしていただかないと、幾らたっても、あれはどうですか、これはどうですかというやりとりになっちゃうんですけれども、もう少し方向性ぐらい示していただきたいと思います。これ以上申し上げません。
 それから、武力攻撃事態法二十二条では、武力攻撃から国民の生命、身体、財産を保護するための措置として、警報の発令、避難の指示など六項目が列挙されております。さらに、武力攻撃事態を終結させるための措置として、捕虜の扱いに関する措置など三項目が列挙されておりますが、これだけではなく、まだいろいろな検討課題があると思います。法整備をする際の優先順位があれば教えていただきたいし、大まかな所管官庁の割り振りがどのようなものとして想定されますでしょうか。
福田国務大臣 ただいまの御指摘の二十二条各号に定めておりますそれぞれの措置につきましては、いずれも国全体としての危機管理体制の整備を図る上で極めて重要なものでございます。法案が成立した後に、これらの措置をどの省庁の所管とするかを含めまして、関係省庁と協議を進め、国民的議論の動向を踏まえながら、法案の定める二年という期間内を目標として、事態対処法制の取りまとめに全力で取り組んでまいりたいと思います。順番につきましても、二年という期限の中でございますので、同時並行ということになるんではなかろうかと考えております。
肥田委員 所管官庁の割り振りもこれからということでございますが、この法律が閣議決定されましたのが平成十四年四月十七日、その日、武力攻撃事態対処法案外二法案が提出されまして、本委員会でも論議が重ねられてまいりました。地方公聴会でも、いろいろな角度から論点が指摘されております。
 その大きな論点の一つに、国民の保護に関する法整備の問題がございます。二年以内を目標としてというのであれば、せめて、所管が不明であります、いわゆる第三分類ですね、その分野について、大まかな割り振りとか、このように考えられるとか、その構想ぐらいは私はあると思うんですけれども、いかがですか。
福田国務大臣 そのことは今検討作業をしておりますけれども、しかし、正式にどこの官庁が所管するかといったようなことにつきましては、これは、この法案が通って直ちに決定し、そして本格的な作業に入る、こういう段取りで考えておるところです。
肥田委員 これまでの御答弁を伺いながら、私は、「二年以内を目標として実施する」という条文はあくまでも目標であって、期限内に法整備が実現しなくても許されるという考えをお持ちではないかという印象を受けたんですが、本当にできるとお考えですか。
福田国務大臣 やらなければいけないと思っております。
肥田委員 それでは、具体的なテーマについてお尋ねしてまいりたいと思います。
 いわゆる子どもの権利条約、日本は既に批准しておりますが、この第三十八条におきまして、「締約国は、武力紛争において自国に適用される国際人道法の規定で児童に関係を有するものを尊重し及びこれらの規定の尊重を確保することを約束する。」と規定し、「児童の保護及び養護を確保するためのすべての実行可能な措置をとる。」と明記しております。この条文は、国際社会では、紛争下における子供の生存、成長、保護、自由のための基準になっております。
 国民の保護法制の策定に当たっては、こうした条文の趣旨は十分に配慮されるんでしょうか。
福田国務大臣 ただいま、子どもの権利条約三十八条のことに関してお尋ねがございましたけれども、当然のことながら、国民の保護のための法制の整備に当たりまして、このようなただいまの子どもの権利条約の規定を十分に踏まえて取り組んでまいるという考え方であります。
肥田委員 外務大臣にお願いします。
瓦委員長 外務大臣に同様の質問でございます。
川口国務大臣 冒頭の委員のお話を伺いながら、子供は常に紛争の犠牲者であるということは全くそのとおりだと私も思って伺わせていただきました。
 そして、御指摘のございました児童の権利に関する条約でございますけれども、三十八条でございますが、武力紛争において自国に適用される国際人道法上の規定で児童に関係を有するものを尊重すべきこと、並びに、国際人道法に基づく自国の義務に従って、武力紛争の影響を受ける子供の保護及び養護を確保するためのすべての実行可能な措置をとること等が定められているわけでございます。
 今後整備することとなる国民の保護のための法制につきまして、このような児童の権利条約の趣旨を十分に踏まえられますように、外務省といたしましても努めてまいりたいと考えております。
肥田委員 私は、この法案のもとで、子供や女性、お年寄り、心身に障害を持つ市民、病虚弱者はどのように保護されるかということに強い関心を持っております。緊急事態という混乱した中で、障害者、病虚弱者、妊産婦、乳幼児、高齢者に対しては、本当に特別の保護が必要になると考えております。国民の保護に関する法整備に当たって、有事弱者とでもいいましょうか、そういうハンディキャップを持つ市民のための緊急のインフラの整備とか特別な配慮、そういうものが必要であると思いますが、そうしたものをこの法文に明記される予定がございますか。
福田国務大臣 国民の保護についてはさまざまな状況が想定されるのでございまして、具体的な方法について、これは関係機関の意見を踏まえながら、例えば今のお話のような子供とかそれからハンディキャップを持つような住民なども含めまして、住民の安全の確保のために万全を尽くす、そういう措置を講ずるように、国民の保護のための法制の整備の中で十分検討していかなければいけないと考えております。
肥田委員 担当大臣としての厚生労働大臣からも御所見をいただきたいと思います。
坂口国務大臣 御指摘いただきましたように、非常に弱い立場の皆さん方をどうするかという問題は、非常に大きな問題だというふうに思っております。
 平素から、救急医療あるいはまた自然災害等に対しましても、この人たちを、弱い立場の皆さん方を守っていくという立場から、インフラの整備等を進めていかなければなりませんが、武力攻撃といいましたときには、その規模あるいはまた時間、すべての面におきまして、やはり規模が違うんだろうというふうに思っております。そうしました場合に、平素からやっておりますインフラの整備、それだけで十分とは言えない事態になる可能性がございます。
 また、化学兵器でありますとかあるいは生物兵器でありますとか、そうしたふだんは起こり得ないことが起こる可能性も想定をして、それらに対してどう対応するかということも考えなければならないというふうに思います。
 それら万般にわたりまして、やはり総合的に考えなければなりませんので、今官房長官からお話がございましたように、法整備の上におきましては、そうしたことも念頭に置いて、ひとつ広い角度からの検討が必要であると思っておるところでございます。
肥田委員 冷戦後の地域紛争において見られますように、非常事態にあって女性が性的暴力を受ける、そういうことが多くございます。性的暴力やその地の非人間的な行為から女性を保護するために、どのようなことを考えておられますか。官房長官に伺いたいと思います。
福田国務大臣 これも、先ほどの子供またはハンディキャップのある人という、その状況により対応の仕方というのは違うのかもしれませんけれども、いずれにしても、国民の権利というものは、これは十分に確保されなければいけないということであります。
肥田委員 私は、先ほどからとりわけということでお願いをしておりますので、ぜひ強く心の中に印象づけていただきたいと思っております。
 次に、国民の協力及び業務従事命令の対象者に十八歳未満の未成年者も含まれますでしょうか。含まれるとしたら、どのような協力を求め、どのような役割を期待していらっしゃいますか。
福田国務大臣 この武力攻撃事態におきましては、これはもう何度も繰り返すことでありますけれども、国、地方公共団体及び指定公共機関が対処措置を実施する際に、国及び国民の安全の確保のために国民の方々にも御協力いただくということを期待しておりまして、これは八条に国民の協力について規定をしておるところでございます。
 そういう中でもって、例えば、地域における住民の避難、被災者の搬送への協力、国民の生命、身体等の保護のために地方公共団体が実施する措置への協力というような内容を想定しておりますけれども、子供の協力とかそれから外国人の協力とか、そういうものを対象とすることは想定いたしておりません。
肥田委員 ということは、例えば十八歳未満で、ひょっとしたらそういう従事を求められる職業にある、例えば土木でありますとかそういうところで働いている子供でも、十八歳未満は全部除外されるというふうに見ていいんですか。
中谷国務大臣 従事命令につきましては、自衛隊法の中で規定されておりますが、これの従事命令の対象となる場所が自衛隊の行動に係る地域以外の地域ということで、戦闘が行われている地域からは離れているが、近接または周辺にある地域であって、一項地域で活動している自衛隊の部隊に対する後方支援活動が必要とされる地域であり、一般的には、住民の避難誘導がいまだ想定されていない地域ということでございます。
 そこで、法案によりますと、医療、土木建築工事または輸送を業とする者に対して業務従事命令を発することができる旨、定めております。
 これは政令で定めるわけでございますが、内容については現在検討中でございますが、例えば昭和五十六年の有事法制の研究においては、医療等に従事する者の範囲は、「災害救助法施行令に規定するものとおおむね同様のものとする」というふうになっておりまして、これらのものにつきましては、医師、歯科医師または薬剤師のように、法令に定める一定の公的資格がなければ当該業務に従事し得ないことから十八歳未満の者が想定されない場合と、大工、左官等のように、一定の技能を有していれば当該業務に従事し得ることから十八歳未満の者も想定される場合があると考えております。
 以上のことを前提としながら、今回の政令の制定に当たりましては、適切に業務に従事する者の範囲を定めるべきものと考えているところでありまして、十八歳未満ということで当然に業務従事命令の対象とはならないとは考えておりません。
 なお、労働基準法の第五十六条において、満十五歳に満たない児童を労働者として使用することを禁じておりますが、たとえ武力攻撃事態という国家の緊急事態であるといえども、そのような児童に対し業務従事命令を発するようなことは想定をしておりません。
肥田委員 防衛庁長官と官房長官のお答えが違いましたが、官房長官、十八歳未満も業務従事命令はあり得るというふうなお答えなんでしょうか。もう一度お願いします。
中谷国務大臣 官房長官は国民の協力という観点でお話しされまして、これは事態対処法の第八条でございますが、武力攻撃事態において国や地方公共団体が対処措置をする際は、国民は必要な協力をするように努めるものとする基本的な考え方を示してありまして、何ら法的義務を課しているものではございません。
 他方、自衛隊法百三条に基づく業務従事命令は、特定の技能、能力を有する者に対して一定の義務を課して業務に従事していただくものでありまして、武力攻撃事態法八条の国民の協力とは異なる趣旨の規定でございます。
 したがいまして、十八歳未満の者に対する取り扱いがおのおのの法律において異なっていたとしても、特段の問題はないと考えております。
肥田委員 それでは、改めて官房長官の御答弁をお願いいたします。
福田国務大臣 これは、指定公共機関というふうに、先ほど……(肥田委員「いえいえ、国民の協力」と呼ぶ)そうじゃないですね。一般的に国民の協力ということですね。
 それは、例えば防衛庁に所属しているということになれば、ただいまの防衛庁長官の答弁ということになりますけれども、一般的に言えば、十八歳未満の人が組織の長であるというのはちょっと考えにくいと思うんですね。
 個人に対しては、これは私はないと思うんです。ないと言ってよろしいと思います。しかし、組織の長であるとかいったようなときに、その長が十八歳未満のときに、業務に従う、そういうようなことを命令するとかいったような対象には、一般的にちょっと考えられないということでありますので、その辺は厳密に申し上げることはちょっとできないと思います。
肥田委員 私が申し上げたいことが官房長官に伝わっていないと思うんですね。
 もう一度お尋ねしますけれども、国民の協力及び業務従事命令の対象者に十八歳未満の未成年が含まれますかという問いでございます。
福田国務大臣 ただいまの、十八歳未満の人を対象に国民の協力を求めるという、そういうことであるならば、その対象には入らないというように考えております。
肥田委員 自治体と国の関係についてお尋ねしたいと思いますが、武力攻撃事態法の第七条それから八条は、国と地方公共団体の役割分担や国民の協力について触れております。具体的な国と自治体の役割分担がはっきりと書かれていないために、自治体関係者の間に大きな戸惑いがあるわけですね。
 例えば、学校現場の子供や幼稚園、保育所の子供たちを集団で避難誘導しなければならないことが起きることも十分に想定されます。しかし、教育にかかわるのは、文部科学省を初め教育委員会、都道府県の知事、市町村の長など多岐にわたっておりまして、関係機関の役割分担が明確にされていなければ、それぞればらばらに動き、現場は非常に混乱すると思うんですけれども、こういうことを私は心配するわけですが、これはあくまで一つの事例としてお尋ねしたいと思いますが、学校にいる子供集団の保護、それから避難誘導に当たって、どこが指示し、責任を負うんでしょうか。
福田国務大臣 住民の避難なども、これは一つの典型でございますけれども、こういう事態における国民の生命、身体、財産の保護のためのいろいろな措置がございますけれども、今後、国民の保護のための法制において、そういう指揮命令系統についても具体的に定めていくということになります。避難の指示とか避難の誘導に関する事項についても、その際に検討をしていくということになります。
 ただいま教育のお話がございましたけれども、教育の保護や避難の方法についても、関係省庁、地方公共団体などの意見も聞きつつ、検討をしていかなければいけないと考えております。
肥田委員 具体的なお答えがないようでございますけれども、これに関連して一つお尋ねしたいんですが、学校内にシェルターをつくろうというような考え方はあるんですか。
福田国務大臣 ただいま現在、シェルターを設けるかどうかということを想定はいたしておりませんけれども、しかし、これはやはり、例えば国際情勢とか、また、いろいろな兵器が開発されるのかわかりませんけれども、その必要があるというような状況が生じたときにはそういうことも考えるかもしれない、こういうことでございます。
肥田委員 周辺事態安全確保法の九条では、地方公共団体の長への協力要請に当たって「権限の行使について必要な協力を求めることができる。」と記されております。これは現行法令を超えた対応を求めるものではないと理解されておりますけれども、武力攻撃事態法案は現行法令を超える協力要請があると見なければいけないと思います。
 現行法令を超える協力の内容はどのようなものとして想定されるのか、お尋ねしたいと思います。
福田国務大臣 この法案の十五条一項に、内閣総理大臣の指示とは、国の対策本部長の総合調整に基づく所要の対処措置が実施されないときは、対策本部長の求めに応じ、別に法律に定めるところにより行われるという規定がございます。この対処措置は、法案の第二条六号において、法律の規定に基づいて実施することとされております。
 武力攻撃事態において必要となる地方公共団体の長などの権限につきましては、今後、事態対処法制を整備するに当たりまして具体的に検討をしていくということになっておりますが、地方公共団体が万全の措置を講ずることができるように、新たな権限が付与されることはあり得ると考えております。
肥田委員 武力攻撃事態法案の十五条の規定によりまして、内閣総理大臣は、地方公共団体や指定公共機関に対して指示権や代執行権を持つことになります。
 地方自治の本旨からすれば、代執行はないにこしたことはございません。もし代執行に入った場合、当該地方公共団体における武力攻撃を排除するための業務遂行はどのような指示命令系統のもとで行われるんでしょうか。
福田国務大臣 代執行の命令系統ということでありますけれども、それは本部長がするということ、そしてまた対策本部長が内閣総理大臣に指示をする、これは同一人物でおかしいんですけれども、法的には、形式的にはそういうことなんでありますけれども、内閣総理大臣が指示をする、直接指揮をとる、こういうことにもなるわけでございます。
肥田委員 内閣総理大臣が指示をするんですが、例えば、その知事さんが嫌だよと寝転んだ場合、総理大臣が指示して、その総理大臣の指示を受けて動くのはだれですか。
福田国務大臣 それは、結局、国の機関としてやるわけでございますから、ですから、国の機関として行うということになるわけであります。
肥田委員 ということは、総理大臣が指示して、あと担当大臣がその仕事を代執行するわけですか。ほかの大臣が代執行するんですね。
福田国務大臣 それは状況いかんでございまして、総理大臣がみずから行うこともあるし、また、担当大臣が行うこともあるということであります。
肥田委員 総理の指示のもとで関係大臣が指揮に当たるというふうにおっしゃいましたけれども、指定公共機関である輸送とか通信産業、それから日本放送協会等に関しても、この代執行の形は地方公共団体と同じように行われるんでしょうか。
福田国務大臣 指定公共機関というのは、これは国とは別の組織でございまして、国が行うという、そういう組織体でないということでございます。ですから、代執行という形にはならないと思います。それは、その組織が考えることであるということであります。
 いろいろな協力について何をするかといったようなそういう判断というのは、その組織で考えていくことであります。
肥田委員 今お尋ねしておりますのは、その組織が嫌だよと言ったときに総理は代執行されるわけですが、その代執行の仕組みは、総理が指示して、各所管大臣が地方公共団体と同じようにやはりやっていくわけですかというお尋ねです。
福田国務大臣 指定公共機関の場合に、例えば放送局を想定した場合に、嫌だというふうに言われて代執行をやろうと思っても、実際にそれを動かすような、そういうことはできないだろうと思うんですね、いろいろな技術的な問題もあろうかと思いますし。ですから、事実上そういうことはできないということになるわけです、その場合には。それは、できればやってもいいということになりますけれども、そういうのは非常に専門性がありますので、事実上はできないんだろうというふうに考えます。
肥田委員 武力攻撃事態法案の二十一条で、国民が協力したことで受けた損失に関し、財政上の措置をあわせて講じるとしておりますけれども、財政上の措置とあるだけで具体的な内容は不明でございますが、例えば、国民の土地を自衛隊が使用し、化学物質で土壌が大変汚染してしまった、そういう場合には、都道府県とか国は原状復帰の義務を負うことになりますか。
中谷国務大臣 自衛隊法の百三条に基づく土地の使用につきまして、この第一項のただし書きによりまして防衛庁長官などがみずから土地の使用権限を取得する措置を講じた場合を除き、都道府県が、通常生ずべき損失を土地の所有者等に対して補償しなければならないこととされております。その際、土地の使用により土地が使用前と異なる状態となった場合には、可能な限り原状回復を行うべきものと考えております。
 また、今般の法案によって、都道府県がこのような損失補償に要する費用については、国庫において負担するとの趣旨を明記したところでございます。
 御質問の土地の土壌汚染がいかなるものか明確でないため、確定的には申し上げることは困難でございますが、損失補償によって対応すべきものである場合には、さきに述べた考え方に基づきまして、都道府県が土地の所有者等に対して補償を行う場合も考えられますけれども、その際、可能な限り原状回復を行うこととなります。しかしながら、自衛隊員の故意、過失によりまして土地の所有者に土壌汚染による損害を与えたような場合には、国が直接土地の所有者、所有権者等に国家賠償法に基づいて賠償すべきものと考えております。
肥田委員 今回の法案は、これまでの安全保障政策の大きな転換を図り、日本国憲法や地方自治法とも抵触しかねない部分を多く盛り込んでいると思います。憲法の枠内にきちんとおさめ、国内はもとよりアジア諸国の信頼を得、あすの日本と世界を担う子供たちの未来に一点の曇りもないような緊急事態法に仕上げるためには、私は、拙速に成立を急がず、先ほど官房長官がおっしゃいましたように、国民的な論議を十分に積み上げることが必要だと思います。
 きょう、お話を伺いながら、やはり具体的な御答弁をほとんどいただけなかったというふうに感じました。ですから、秋の臨時国会をまたぎながらさらに論議を深めてほしい、そのことを申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
瓦委員長 次に、平岡秀夫君。
平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。
 これまでこの委員会では、有事法制三法案について多くの論点が出ていると思います。私も議事録でいろいろ見てみましたけれども、その議事録を読んでみても、いろいろな疑問点がさらにどんどんと出てくるようなこともございますし、さらに、これまで論議が余りされなくて、これからまだ論議をしなければならないといった問題点もたくさんあるようにお見受けいたしました。
 そこで、きょうはそうした問題の中から少し選んで質問してみたいと思います。
 まず、法律の第九条に対処基本方針ということで書いてあるのでございますけれども、この対処基本方針は国会の承認を得なければならないものという位置づけになっておりますけれども、一体この対処基本方針というのはそもそも何のために策定するんでしょうか。そして、その策定の法律的効果というのは一体どういうものなのか。この辺、最初にまず御説明いただきたいと思います。
福田国務大臣 武力攻撃事態への対処におきまして、国、地方公共団体などが国民の協力を得ながら相互に連携協力し、万全の措置を講ずる必要があるわけでございます。そのために、この基本方針は、武力攻撃事態への対処に当たりましての国としての基本的な方針を明らかにするものであります。対策本部長が、国、地方公共団体等の対処措置を総合調整するとともに、内閣総理大臣が行政各部を指揮監督するための根拠となるものであります。
 また、国、地方公共団体等が法律の規定に基づき実施します対処措置につきまして、対処基本方針が定められてから廃止されるまでの間に実施されるものであります。
平岡委員 いろいろなことを言われましたので、それぞれ何か書かれている内容によって法律的な効果が違ってくるものがあるのかなというような印象も受けたのでありますけれども、せんだっての中谷防衛庁長官の答弁の中に、この対処基本方針には、公表によって国の安全を害するような内容まで含めるということは考えていない、そういう答弁をされているのでありますけれども、本来、対処基本方針に示さなければ国としての基本方針がようわからぬとか、あるいはいろいろな、先ほど来、総合調整の根拠となるとか、あるいは地方公共団体にいろいろなことを要請していくための根拠になるとかというようなことを言っておられたのですけれども、そういうようなものが国の安全を害するような内容であるかどうかというのはちょっとわからないところもありますけれども、こういった公表によって国の安全を害するような内容まで含めなくてもいい、そういう限定をする根拠というのは、どこかに法律の中にあるんでしょうか。
中谷国務大臣 この対処方針につきましては、総理大臣が、国、地方公共団体の対処措置を総合的に調整するとともに、行政各部を指揮監督するための根拠となるものでございます。また、武力攻撃事態への対処は、国民の理解と協力を得て適時適切に行われる必要がありまして、このため、対処基本方針についてはその内容を公示することといたしております。
 法案は、このような観点から、対処基本方針において、武力攻撃事態の認定、事態の対処に関する全般的な方針及び対処措置に関する重要事項を定める旨を定めているところでありまして、公表することにより国の安全を害するような内容が含まれることは想定をされないわけでございます。
 そこで、どこに規定をするかということでありますが、この法律の目的を読んでまいりますと、「武力攻撃への対処について、基本理念、国、地方公共団体の責務、国民の協力その他の基本となる事項を定めることにより、武力攻撃事態への対処のための態勢を整備し、併せて武力攻撃事態への対処に関して必要となる法制の整備に関する事項を定め、もって我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に資することを目的とする。」というところでございまして、そもそも国及び国民の安全の確保に資することを目的とするからでございます。
平岡委員 何か、目的規定を読んだらすべて何かその目的に資することは何でもできちゃうんだというような答弁に聞こえてしまって、それではこの法律をつくる意味がどこまであるのかよくわからないということになってしまうわけで、では、もうちょっと具体的に聞いてみようと思うのです。
 対処措置の中にはさまざまなことがあるんだろうと思うのですけれども、例えば、国民の権利を制限したりあるいは国民に義務を課したりするような対処措置の場合、例えばこの法律の第三条の第四項なんかを見ますと、日本国憲法で保障する国民の自由と権利について制限を加えられる場合には、「公正かつ適正な手続の下に行われなければならない。」というふうに書いてありますけれども、この対処基本方針の中に定めるという手続自身は、こうした公正かつ適正な手続というものになるんでしょうか。
 逆に言うと、対処措置で国民の権利を制限したりあるいは国民に義務を課すことになるようなものについては、この基本方針の中でちゃんと明記してない限りはそういうことはできないというふうに解するんでしょうか。いかがでしょう。
福田国務大臣 この対処基本方針は、基本理念として、「日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならず、これに制限が加えられる場合は、その制限は武力攻撃事態に対処するため必要最小限のものであり、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われなければならない。」というふうに明記しておるわけであります。
 権利の制限を伴う対処措置につきましては、その基本理念にのっとって、制限される権利の内容や制限の程度と、達成しようとする公益の内容や緊急性を総合的に勘案して、今後策定される個別の法制に基づいて行われるということになります。
 いずれにしましても、政府としては、今後の個別の法制整備におきまして、制限される権利の内容やその手続などについて、この法案の枠組みのもとで慎重かつ適切に検討してまいりたいと考えております。
 なお、対処基本方針には、対処措置に関する重要事項について定めることとなっておりますけれども、実施することとなる個別の対処措置の具体的な内容までを定めるものではございません。また、実施することとなるすべての対処措置についても必ずしも網羅的に記載するものではございません。
平岡委員 今の答弁を聞いていますと、例えば個別的な法律というのがこれからできたら、その法律に基づいてやる限りにおいては、この対処措置のところに何も書いていなくても、その権利の制限をしたりあるいは義務を課したりすることができるんだということを意味しているわけですね。
 そうすると、では逆に、対処措置について規定をここに書きなさいというふうに言っていることの意味は一体何があるんですか。そういうことを書かなくたって、個別の法律に基づいて権利を制限したり自由を制約したりすることはできるんでしょう、今の答弁だったら。いかがですか。
福田国務大臣 私がただいま答弁しましたとおりです。基本理念というものを申し上げたわけでございますね。
 それは、「憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならず、これに制限が加えられる場合は、その制限は武力攻撃事態に対処するため必要最小限のものであり、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われなければならない。」ということが明記されておるわけでございますので、委員の御質問はそのことで御理解いただけるものと思います。
平岡委員 全く抽象論的な答えで、私が聞いていることには答えられていないんですけれども、余りやっても仕方がないかもしれませんので、ちょっと質問の角度を変えまして、対処措置に関する重要事項を定めなきゃいけない、こう書いてあるわけでありますけれども、ここの対処措置として書かれるものには、必要的記載措置、例えば、記載されなければいけない、記載されることが義務づけられ、そして記載していなければ実施できないような措置というようなもの、あるいは、任意的記載措置というべきなのかどうかはわかりませんけれども、そういうものとして、例えば、記載することは義務づけられていないけれども記載すれば実施できる措置といったような区別があり得るんでしょうか。そしてまた、逆に言えば、対処基本方針に記載されていなくても実施できる対処措置というものもあり得るのか。そこを端的にお答えいただきたいと思います。
福田国務大臣 対処基本方針は、対策本部長が国、地方公共団体等の対処措置を総合調整するとともに、内閣総理大臣が行政各部を指揮監督するための根拠となるものであります。
 そういうような観点から、この法案では、対処基本方針に必要的記載事項として、まず武力攻撃事態の認定、次に武力攻撃事態への対処に関する全般的な方針、そして対処措置に関する重要事項、この三点を記載することといたしております。
 このうち、対処措置に関する重要事項としては、法案に定めます自衛隊の行動にかかわる事項について、必要的記載事項としてこれは記載しなければならないということになっております。その他の対処措置につきましては、実施することとなります個別の対処措置の具体的な内容までを定めるものではなくて、また実施することとなるすべての対処措置について必ずしも網羅的に記載するものではないと考えております。
平岡委員 ちょっとどうもかみ合わないところもあるのでありますけれども、いずれにしても、この対処基本方針というものがどういう法律的な効果をもたらすものであるのかというところについてはやはりいろいろ疑問が残っているというふうに思うわけであります。
 そこで、今度は、この対処基本方針が国会で承認されるべき対象になっているわけでありますけれども、これが不承認された場合の効果としては、例えば第十条の第十項に、「不承認の議決があったときは、当該議決に係る対処措置は、速やかに、終了されなければならない。」あるいは「防衛出動を命じた自衛隊については、直ちに撤収を命じなければならない。」というふうに書いてあって、不承認された場合の効果ということが書いてあるわけでありますけれども、例えば不承認の場合でもいろいろな理由があるんだろうと思うんですね。
 すべての、対処基本方針の中に書かれていること全部がだめだというのもあれば、その中にごく一部書いてある対処措置の重要事項について納得いかないところがある、あるいは出動を命じられている自衛隊のこの部分について承認ができないといった、さまざまなケースがあり得ると思うんですけれども、どうしてこれは部分承認という仕組みを認めていないんでしょうか。まずそれをお伺いしたいと思います。
福田国務大臣 対処基本方針についての国会の承認の求めに対しまして不承認の議決がある、こういうときは、法案第九条十項の規定に基づいて、この議決に係る対処措置は速やかに終了しなければいけないということになっております。この国会の承認は、対処基本方針について、これを全体として承認するか否かという観点から国会の決定を求めるものであると考えておりますが、そういうことで部分承認等は想定をしておりません。
 しかし、仮に対処基本方針にかかわる国会の意思が、対処基本方針の一部についてこれを行うべきではないというものであるならば、当該対処基本方針を変更した上で改めて国会の承認を求めるなど、これを尊重して対処するということになります。
平岡委員 その変更するのにどれぐらい時間がかかるんですか。変更すること自体は多分閣議決定でできちゃうんだろうと思うんですけれども、そうすると、変更した閣議決定に基づいて、例えばここに「対処措置は、速やかに、終了されなければならない。」と書いてあるような対処措置であっても、直ちに変更の閣議決定をすることによって終了されなくても済むという事態が生じるんじゃないですか。いかがですか。
福田国務大臣 その「速やかに、終了」ということであるならば、それはできると思います。それは、その必要性に応じてということかもしれませんけれども、そういうことになるんだと思います。それは、安全保障会議を開いて、そこで方針を決め、閣議で承認を得る、そういう手続を経てやるわけでございますけれども、それに非常に時間がかかる、かけなければいけないということもあるかもしれませんけれども、急ぐ場合にはそれなりに急いでやることもできると考えております。
平岡委員 私の質問の趣旨は、不承認の議決があったら、これは不承認の議決の対象というのは基本方針そのものですから、すべての対処措置を終了しなきゃいけないということがこの法律で義務づけられるわけですね。だけれども、先に質問しておけばよかったかもしれませんけれども、この基本方針というのは、定めるのは、内閣が閣議決定して決めればすぐに決まるわけですから、不承認の対象となった対処措置を含む基本方針をすぐに閣議決定して、我々やりますよとやってしまえば、終了する必要もなく、できちゃうということになるわけですね。逆に、この終了しなければならないという義務づけをしたって何の法的な拘束力もない、そういう事態が生じてしまう、それはおかしいんじゃないか。だから、部分承認という仕組みをつくらないとこれは機能しないんじゃないかということを言っているんです。
福田国務大臣 わかりました。
 国会がこの基本方針のすべてを否決する、もう全部だめだというのであれば、これはもうそこで廃止しなければいけないわけですね。しかし、国会の判断が、その一部はだめだけれども残りはいいという判断をされた場合には、ただいま申し上げたような、これを変更した上で改めて国会承認を求める、こういうことができるわけであります。
平岡委員 今の答弁の前半部分は、部分承認を認めるという内容の答弁だと思いますね。
 オール・オア・ナッシングなんですね、この法律の承認か不承認かというのは。この部分については認めるけれども、この部分については認めない、それは審議の中である程度そういう意見がいろいろあるかもしれませんけれども、そういう採決はどこでもとらないわけです。だから、反対している人もいれば賛成している人もいて、いっぱい、委員の人がそれぞれみんな違うでしょうから、どれが国会の総意かということは議決をとらない限りわからないわけですね。そういう状態の中で不承認だということは、オール・オア・ナッシングのナッシングなんです。
 ナッシングだったら、すべての、基本方針に定められている対処措置はすべてやめなきゃいけない。やめなきゃいけないんだけれども、だけれども、定めることは、すぐにまた変更ができるわけですから、内閣がすぐにまた決定して、この部分はやりたいということをやってくれば、法律に書いてある「速やかに、終了されなければならない。」ということは実際に起こらないじゃないですか。こんな法律は意味がないじゃないですか。もう一度どうぞ。
福田国務大臣 委員のおっしゃるとおり、これはもう大原則、国会で承認を得られなければこれは廃止するしかないわけですね。
 ただ、これはその先の話でございますけれども、もし国会でもって、この部分を修正すればよろしいということであれば、それはそういうこともあり得るということであります。
平岡委員 この問題ばかりやっていても仕方がないんですけれども、我が党の質問主意書の中にも、この部分承認という仕組みを認めてもいいんじゃないかという質問主意書を出しておりまして、その答弁は否定的な答弁であったんですけれども、部分承認を認めないということと、この九条の十項の仕組みというのは矛盾した仕組みになっているということを指摘しておきたいというふうに思います。
 次に、この法律の中で民主的統制というのがどのようにできているかという点についてちょっと質問したいと思うんですけれども、この対処基本方針の中で防衛出動についての承認の求めを記載するというような形になっておりまして、この対処基本方針が閣議決定されたら直ちに国会の承認を求めなければならないということで義務づけられているんですけれども、では、いつまでに国会の承認を得なければいけないのかについては、全くこれは規定がないということになっているわけですね。
 そうすると、いつまでたっても承認も不承認もしないというような状態が続いたときには、防衛出動した自衛隊が、何らの国会の判断も受けないままに、出動した状態のままになっているということもあり得るわけでありますけれども、そういう意味でいくと、これは承認の期限というものを設けるべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。
福田国務大臣 この法案は、対処基本方針について閣議の決定があったときは、内閣総理大臣が直ちに当該対処基本方針について国会の承認を求めなければならず、また、自衛隊の防衛出動については、特に緊急の必要があり事前に国会の承認を得るいとまがない場合であっても、内閣総理大臣が防衛出動を命ずる旨を対処基本方針に記載しなければならない旨を定めているところでございます。
 他方、武力攻撃事態への対処の重大性にかんがみて、対処基本方針の承認にかかわる国会の審議については、これに期限を設けるのではなく、不承認の議決があったときには、対処措置を速やかに終了し、防衛出動を命ぜられた自衛隊については直ちに撤収させる制度とすることが適切と考えております。
平岡委員 そこは、民主的統制がどうあるべきかということについての見解の違いみたいなものがあるのかもしれません。これ以上言っても仕方ないので、ちょっと次に移ります。
 今度は、対処基本方針の廃止あるいは防衛出動した自衛隊の撤収の問題について、これもこの委員会の中で議論がされているんですけれども、国会の議決によって、内閣に、対処基本方針の廃止とかあるいは防衛出動した自衛隊の撤収を義務づけるということをすべきではないか、それが国会による民主的な統制ということのあらわれではないかと思うんですけれども、どうして国会の議決による対処基本方針の廃止とかあるいは防衛出動した自衛隊の撤収の義務づけが認められないというふうに考えておられるのでしょうか。
福田国務大臣 法案におきましては、対処基本方針の必要的記載事項とされております自衛隊の防衛出動を含めまして、対処措置を実施する必要がなくなったと認めるときは、対処基本方針を廃止する閣議決定を行う旨を定めてございます。武力攻撃事態が終了し、一連の対処措置の必要がなくなれば、対処基本方針を速やかに廃止することとなっております。
 また、仮に、対処基本方針の一部について、これを行うべきでないとの国会の意思が、議院の議決等により明示される、そういう場合には、政府としてこれを尊重して対応することは当然のことでございます。
平岡委員 確かに、今の政府は強いリーダーシップのもとにおられますから、国会の意思を尊重されるということはあるのかもしれませんけれども、一応今までの仕組みの中では、やはり国会が議決をすれば、それに対して何らかの法的な拘束力があるという仕組みにして、政府の暴走を防ぐということはあり得るわけですね。
 今、政府としては国会の意思を尊重すると言われましたけれども、尊重するという気持ちを持っておられる方が政府の中におられるのならいいかもしれませんけれども、そうでないときは、やはり国会が議決すれば、ちゃんとそれが対処基本方針の廃止やあるいは防衛出動の撤収ということについて法律的な拘束力を持つものとして存在する意義があると思うんですけれども、どうでしょう、もう一度答弁いただけませんでしょうか。
福田国務大臣 それは、日本の政治制度において国会の意思というのは、これはもう極めて重大なことであり、これを尊重しなければいけないことも当然でございます。
平岡委員 それなら、なぜこの法律の中でちゃんと法的拘束力があるものとして位置づけないのか。位置づけたっていいじゃないですか。それは尊重するということであって、国会の意思を無視することはあり得ないんだというのなら、ちゃんと法律で、国会の意思として法律できちっと決めて、そして国会がいろいろな形で示した議決という意思に基づいて政府が拘束されるという仕組みをとることには何ら問題はないと私は思います。
 そこで、これ以上やってもまた水かけ論になるかもしれませんから、ちょっと次へ行きたいと思います。
 民主的統制の問題。憲法六十六条第二項に、もうよく御存じの話であります、「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。」中谷防衛庁長官が文民であるかどうかということについては、質問主意書でもちょっと書かせていただいたことがございますけれども、それはともかくとして、武力攻撃事態になったときに、例えば今まで制服組だった人を形式的に辞職させて、その人を防衛庁長官に任命するというようなことは、憲法の趣旨に反していると言えるんでしょうか、どうでしょう。
福田国務大臣 武力攻撃事態に至ったときであるかとかそうでないということを問わず、自衛官を退職して現に自衛官の職務を行っていない者を防衛庁長官に任命したとしても、一般に憲法六十六条第二項に違反するものではないということになっております。
 しかし、枢要な職にある現職の自衛官を退職させて、すぐ防衛庁長官に任命するということは、これは政治論としてもあり得ないと思っております。
平岡委員 この法律の十一条の六項に「国務大臣が不在のときは、そのあらかじめ指名する副大臣がその職務を代行することができる。」というふうになっているんですけれども、防衛庁副長官に制服組を任命することはできますか。
福田国務大臣 副大臣、防衛庁の場合には副長官でありますけれども、国家行政組織法十六条三項には、副大臣、副長官というのは、「大臣の命を受け、政策及び企画をつかさどり、政務を処理」する、こういうことにされております。
 したがいまして、内閣は副大臣及び防衛庁副長官に、それぞれの省庁の政策の企画や国会対応等の政務を担当するにふさわしい者を任命することとなりまして、こうした職務内容にかんがみまして、これまで副大臣等には国会議員を任命してきたところでございます。政治主導の徹底、そういう趣旨で設けられました副大臣及び防衛庁副長官につきましては、こうした考えで今後とも任命に当たるべきであると考えております。
平岡委員 それはどこにも示されていない話なんで、私は、法律的に防衛庁副長官に制服組を任命することができるのか、法律的にできるのかということを聞いているんです。いかがでしょう。
福田国務大臣 これは、法律的にはやってはいけないということはありません。しかし、これは、先ほど申しましたような政治主導といったような、そういうふうな観点でこういう制度が設けられた、そういう趣旨から考えて、実際上にはないと考えております。
平岡委員 それともう一つ、第十三条ですけれども、対策本部が設置されたときには、対処措置を実施するために必要な権限を指定行政機関の長が委任するということができるようになっているんですけれども、この指定行政機関の長に防衛庁長官は含まれますか。
福田国務大臣 この法案二条三号に基づきまして、政令で定められた場合には指定行政機関というように防衛庁もなるわけであります。したがいまして、防衛庁長官は、法案に定める指定行政機関の長、こういうことになります。
    〔委員長退席、米田委員長代理着席〕
平岡委員 そうすると、防衛庁長官は、この第十三条の規定に基づいて、制服組の職員に自分の権限を委任することもできますか。
福田国務大臣 防衛庁長官は、文民たる国務大臣をもって充てられまして、内閣総理大臣の指揮監督を受けて自衛隊の隊務を統率しております。
 その権限は、現行制度においても、一定の範囲内で、自衛官を含む同庁職員に適切に委任されているところでございまして、防衛庁長官が指定行政機関の長として、防衛庁が実施する対処措置にかかわる権限を防衛庁の職員に委任するということによりまして文民統制上の問題を生ずるものではないと考えております。
平岡委員 この第十三条の規定を見ると、対処措置を実施するため必要な権限の全部をその職員に委任することができると書いてあるんですね。
 つまり、防衛庁長官は、制服組の人に対して、自分の持っている対処措置を実施するのに、対処措置というのは、前からありましたように、防衛出動とか部隊の展開とか全部あるわけですね。その権限を自分の職員、つまり制服組の職員に委任することができるという法律の内容になっているわけですね。これはそういう理解でいいんでしょう。そういうことができる法律ですよ。どうでしょうか。
福田国務大臣 防衛庁長官は、文民たる国務大臣をもって充てられまして、内閣総理大臣の指揮監督を受ける、今申し上げたとおりでございます。そういうことによって自衛隊の隊務を統括しております。そういう制度でございまして、この制度下においては、一定の範囲内で、自衛官を含む同庁職員に適切に委任されているところでございます。
 したがいまして、防衛庁長官が指定行政機関の長として、防衛庁が実施する対処措置にかかわる権限を防衛庁の職員に委任するという場合にも、同様に適切に委任されているというように考えられることから、文民統制上の問題を生じない、同じことを繰り返しておりますけれども、そういうことであります。
平岡委員 若干の見解の違いがあるから答弁は否定的になるのかもしれませんけれども、私が今質問の中でいろいろ指摘したような、実際、制服組の人が副長官として防衛庁長官を代行するような状況とか、あるいは、防衛庁長官が全権を制服組の職員に権限委任するというような事態は、本来の憲法の趣旨に私は反すると思うんですね。
 そういう意味では、そうした副長官あるいは権限の委任をされる対象となる職員には制服組は入らないのだということをこの法律の中で規定するわけにはいかないんでしょうか、どうでしょうか。
福田国務大臣 防衛庁の副長官でございますけれども、副長官は、防衛庁長官の命を受けまして、政策及び企画をつかさどり、そして政務を処理するということになっております。仮にこれに自衛官がなる場合についても、同様に文民統制上の問題を生じるものではない、このように考えております。
平岡委員 今のは、防衛庁長官が文民として存在しておって、そのもとで何か指導を受けているような副長官の場合はそうかもしれませんけれども、さっき私が言ったように、十一条の中では、防衛庁長官が不在のときには副長官がそれを代行すると書いてある。代行するときには、副長官は防衛庁長官と同じようなことをするわけですね。だから、非常に希有なケースなのかもしれませんけれども、そういう細心の注意をした文民統制、民主的統制ということをこの法律の中で図っていかなければいけないんじゃないかということを指摘したいと思うんです。
 ちょっと時間がないので、米軍の関係について少し触れたいと思います。
 私の地元は米軍基地を抱えておりまして、こういう武力攻撃事態における米軍の行動というものに対して、非常にやはり心配をしているといいますか、関心を持っているということでございますので、確認をしておきたいと思うんです。
 我が国が自衛権を発動する場合は、三要件、急迫不正の侵害、他の適当な手段がない、あるいは必要最小限の実力行使ということがよく言われておるわけでありますけれども、日米安全保障条約のもとで行動する在日米軍も、この自衛権発動の三要件が適用されて行動されるということでよろしいでしょうか。いかがでしょう。
川口国務大臣 御案内のように、一般国内法上の自衛権の発動の要件ということでございますけれども、三つございます。
 それから、国際法上、集団的自衛権というものは、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利をいうわけでございますけれども、こうした集団的自衛権の行使に当たっては、武力攻撃を受けた国の要請または同意が必要でございます。日米安保条約五条に基づきまして行動する米軍は、こうした、さきに申し上げた国際法上認められた自衛権の範囲内で行動するものであると考えます。
平岡委員 今の答弁でいきますと、在日米軍の方は出動したいと思うんだけれども、日米安全保障条約があるから、自分たちが出動するかどうかということについて日本側に同意を求める、あるいは協議があるということの中でこの自衛権発動の三要件が守られるというふうに答弁されたということでよろしいでしょうか。
川口国務大臣 先ほど申しました武力攻撃を受けた国の要請または同意というものの中には、集団的自衛権の行使について、条約等により同意をする場合というのも含まれるわけでございます。
 ということで、先ほど簡単に省略をして申しましたけれども、自衛権というのは、国家または国民に対する外部からの急迫不正な侵害に対しまして、これを排除するのに他に手段がない場合、当該国家が必要最小限度の実力を行使する権利であるというふうに一般国際法上考えられているわけでございます。そして、米国は、日米安保条約五条に基づいて、こうした国際法上認められた自衛権の範囲内で行動をするということでございます。
平岡委員 そうしますと、この前の米国同時多発テロに対して米国がとった軍事行動、あれも、自分たちは個別的自衛権に基づく軍事的行動であるというふうに説明しているわけでありまして、もしそれが、先ほど言いました自衛権発動の三要件を満たしているということであれば、例えば日本の米軍基地に対してテロがあった、あるいは日本でどこかテロがあったということになると、これは米軍は、今回のケースでいくと、アフガンなんかに出かけていって攻撃をするということは日米安保条約上も認められる、逆に言うと、日本もその三要件を満たしているということなんで、日本の自衛隊も出かけていける、こういうことになるんですか。
川口国務大臣 先ほどのお尋ねの同時多発テロ、これについて米軍がとった軍事行動ということですと、これは、個別的、集団的自衛権の行使として、国連憲章第五十一条に従って安保理に報告がなされているわけでございます。
 先ほど申しましたように、一般国際法上、自衛権とは、国家または国民に対する外部からの急迫不正な侵害に対して、これを排除するのに他に手段がない場合、当該国家が必要最小限度の実力を行使する権利であるというふうに考えられているわけでございまして、我が国として、米国から得た情報その他の各種の情報をもとに、米軍の軍事行動は自衛権の行使に当たるというふうに私どもは判断をしているわけでございます。
平岡委員 今の答弁を聞いていると、やはり何か自衛権発動の三要件というのを満たしている限りは、今回のテロのケースと同じように、アフガンまで出かけていってあんな攻撃をしてもいいというようなことになってしまうという感じがするんですよね。どうも、我が国が自衛権発動の三要件として考えているのは、そんなところまで考えてはいないんじゃないか。
 そうだとすると、在日米軍においても、やはり日本が考えているような自衛権発動三要件のもとで行動するということでなければいけないんじゃないかと思うんですけれども、それが担保されていないような気がするんですけれども、いかがでしょう、外務大臣。
川口国務大臣 御質問の趣旨を多分私はきちんと理解をしていないのかもしれませんけれども、これはまさに、この間のテロに対しての米軍の軍事行動は、個別的、集団的自衛権の行使として、国連憲章五十一条に従いまして安保理に報告がなされているわけでございます。
 この件につきましては、米軍から得た情報その他で、米軍の行動は自衛権の行使に当たるという判断を私どももしているわけでございますし、一般国際法上の自衛権の行使であるというふうに、米国のこの間のテロについての行動については考えるということでございます。
平岡委員 ちょっとかみ合っていないのかもしれませんけれども、国連憲章五十一条に基づいているのであれば、我が国が個別的自衛権を発動する形として、例えばテロがあったときに、この前と同じように、アフガンに行って自衛隊ががんがんミサイルを撃ち込むとかいうようなことをやっても、それは自衛権発動の三要件を満たしているということになるんですね。いかがですか。
川口国務大臣 昨年の九月の米国におけるテロの攻撃といいますのは、高度の組織性、計画性が見られるなど、通常のテロの事例とは次元が異なって、武力攻撃に当たるというふうに考えられるわけでございます。
 我が国は、ある国及びその国民を標的として計画的、組織的にテロ行為が継続して行われる場合には、これを総じて急迫不正の侵害と位置づけるということはあり得るという立場を従来からとってきているわけでございます。
 今回のテロ攻撃に対しまして、安保理で、一三六八号の決議、それから一三七三号が採択をされたわけでございますけれども、これは、個別的または集団的自衛権が国連憲章第五十一条で加盟国の固有の権利とされていることを認識して、今回のテロの攻撃に対応して、米国等が個別的または集団的自衛権を行使し得るということを確認したというものだと考えられると思います。
津野政府特別補佐人 ちょっと補足しますけれども、御承知のように、我が国の憲法のもとにおきましては、従来から、これは海外派兵の問題として、我が国の自衛隊の行動として議論がされてきているわけであります。
 いわゆる海外派兵につきましては、この用語についての明確な定義はないわけでありますけれども、海外派兵が憲法九条のもとにおける自衛権の限界との関連で従来から問題とされていたものでありますが、このような観点から、一応、いわゆる海外派兵とは、一般的に言えば、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣することであるというふうに定義をするとするならば、このような海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないものであるというふうに解してきているわけであります。
 したがいまして、我が国の自衛権の行使として、外国の領土において、一般的には、いろいろな武力攻撃をするということは憲法上許されていないというふうに解しているところでございます。
米田委員長代理 平岡君、質問時間が終了いたしました。
平岡委員 はい。
 その限りにおいてはわかるんですけれども、さっき私がアメリカ軍も我が国の自衛権発動の三要件というのに制約されるんですかということを聞いたのは、日本では確かに憲法があるから必要最小限の実力行使として制約はあるけれども、アメリカ軍は別に、自分の国の憲法はありますけれども、日本の国の憲法にどこまで制約されるかというのは、それはよくわからないので、やはり日本の国の憲法を守るような形で、当然、必要最小限度の実力行使というのは、日本の自衛隊が持っている三要件の中で必要最小限度の実力行使という範囲に同じようにおさまるんですねということを聞きたかったわけであります。
 ちょっと時間が来ましたので、これで終わります。
米田委員長代理 次に、長妻昭君。
長妻委員 民主党の長妻昭と申します。時間もありませんので、端的にお答えをいただければ幸いでございます。
 当委員会が五月七日、連休明けに開かれたときに、ちょうどその日の朝日新聞の朝刊に、「イージス艦派遣 対日要請促す 海幕」というような記事が出まして、この記事に関して我々民主党の岡田政調会長が中谷防衛庁長官と小泉総理に質問をしましたところ、こういう事実はない、一切ないというような御答弁がございました。
 今の時点でも、中谷長官、この新聞に書いてある事実は全く事実無根であるということは変わりないのでございますか。
中谷国務大臣 御指摘の報道につきましては、報道された本人であります防衛部長に直接事情を聞きましたところ、四月十日に本人がチャップリン在日米海軍司令官と会談をしたというのは事実でございますが、報道にあるように、米側から海上自衛隊のイージス艦やP3Cをインド洋に派遣することを要請するよう働きかけたという事実はないということを確認いたしております。
 また、今述べた点につきましては、在日米海軍司令部からも確認を得られているところでございまして、本件につきましては、事実と反する報道でございますので、朝日新聞に対して抗議をしたところでございます。
長妻委員 この朝日新聞の報道によりますと、海幕の香田防衛部長が「準備したメモ書きにそって」というようなくだりがありまして、何かメモを持っていって、それに基づいて話をしたような記述があるのでございますけれども、こういうメモというのは存在はしたのでございますか。
中谷国務大臣 報道にもあるような、米側が海上自衛隊のイージス艦やP3Cをインド洋に派遣することを要請するとのメモを作成したということでございますが、当該メモを持って米海軍関係者に働きかけるようなことはこれまでなかったことを海幕からも確認いたしております。
長妻委員 今、作成をしたメモという話がありましたけれども、では、だれかが、どなたかが作成したペーパーを持っていったということはないですか。
中谷国務大臣 これは、日米間でございますので、さまざまなレベルやチャンネルで種々の情報交換、意見交換を行ってきておりまして、この四月十日の会談もそのようなものの一つでございます。
 同会談の具体的な内容につきましては、米側との関係もありまして、防衛庁としては内容につきましてお答えを差し控えたいと思いますが、いずれにせよ、報道にあるようなイージス艦やP3Cをインド洋に派遣することを要請するようにと米側に働きかけた事実はないことは確認いたしております。
長妻委員 今の答弁はちょっと事実と違うと思うんですね。
 この香田防衛部長は、これに先立って米側から非公式にペーパーが出た、そのペーパーというのは、四月十六日にミニSSC、審議官級の日米安保事務レベル協議というのがあって、それに先立って米側が非公式的に、日本にイージス艦とP3Cを派遣してほしい、こういうようなペーパーを日本側に渡しているということであります。そして、そのペーパーを香田防衛部長が持って、チャプリン司令官と会った。そのペーパーというのは、前半には、これまでの日本のテロ特措法による支援に感謝する内容が書いてある、後半は、今後考えられる支援として、その部分にイージス艦、P3C哨戒機の派遣依頼の部分があった。
 米側がつくったペーパー、非公式でつくったペーパーということらしいんですけれども、それを防衛部長が持って、そのペーパーの存在を知らないチャプリン司令官に対して話をしたということなんですが、それはどう御認識されていますか。
中谷国務大臣 日米間における会話、また、種々の意見交換、情報交換につきましては、米側との関係もありまして、防衛庁として、その内容をお答えしたり、あるいはお示しをするということは差し控えたいと思います。
長妻委員 この国会というのがシビリアンコントロールの本当に最後のとりででありまして、今の話は、そのペーパーというのは、普通より厚い紙でA4判で、水色の縁取りがある表紙プラス三枚のペーパーだったということなんですが、これは、アメリカが非公式に日本に対して要請を出した文書だ。その文書はチャプリン司令官も知らない。その文書をどこかから制服の防衛部長さんが入手をして、そして米のチャプリン司令官に見せた。
 実は、当事者からお話を聞きましたけれども、何でそういうペーパーを見せたんですかというお話を聞きましたら、このミニSSCで、その当時は、四月十日、チャプリン司令官と香田防衛部長がお会いしたわけですけれども、その一週間後ぐらい、四月十六日にミニSSCがワシントンで開かれる、そういう予定だったわけですね。そうすると、四月十日の時点では、香田防衛部長は、ミニSSCで米側からイージス、P3Cの話は出る方向に行っているなと思った。それで、何でこのペーパーを見せたかというと、ミニSSCで話が出た後で、チャプリン司令官が聞いていない、こういうような話が出たらぶれると考えた。そして、時々情報をチャプリン司令官が知らないときがある。チャプリン司令官がおれは知らないと言うよりも、このペーパーをチャプリン司令官にあらかじめ見せて、先手を打っておいた方がいいと考えた。こういう意図のもと、このチャプリン司令官も知らない非公式文書を見せて、その文書に沿って説明をしたということであります。
 こういうことは、防衛庁長官、私は許されないと思うんですが、香田防衛部長にぜひお話をきちんと聞いていただきたいと思うんですが、いかがですか。
中谷国務大臣 四月十日のお話でありますが、四月十日に海幕の防衛部長がチャップリン在日米海軍司令官と会談したというのは事実でありますが、御指摘にあるような、その場に四月十六日のミニSSC用のアジェンダペーパー、これを持参した事実はないということでございます。
長妻委員 これは、私もミニSSCのアジェンダペーパーとは言っておりません、一言も。何でそのアジェンダペーパーという言葉が今出てくるんですか。非公式に米側が示したペーパーであるというようなことしか申し上げていないわけでございますけれども、この話は、私が直接香田部長本人から聞いた話でございます。これは、海上自衛隊という制服の組織が、幾ら米が出した非公式文書とはいえ、米の公式じゃない文書ですよね、それをアメリカのチャプリン司令官に見せて、その要請があったときにチャプリン司令官がおれは知らない、それでそれがつぶれないような、そういう先手を打って見せておこうと。
 こういうような、制服の方が文書を持ってお会いしてお話をするということは、長官、何にも感じないんですか。こういうことは別にいいことなんですか。
中谷国務大臣 これは、日米間でありまして、安全保障条約もございますし、米海軍と海上自衛隊、緊密に連携をしながら訓練、またいろいろな話し合いはいたしております。したがいまして、我が国の安全保障の観点におきましても、日米間における種々の意見交換、また情報交換について米側とあるというのは、当然あってしかるべきだと思います。
 しかし、いろいろな話し合いがあっても、政策的に決めるのは防衛庁として決定をいたしますし、また、その決定につきましては国会にもお諮りするわけでございまして、今回の政策決定につきましては、防衛庁としてそのような決定をしたことはないわけでございますし、日米間においていろいろな情報交換、意見交換、これはあってしかるべきだと思います。
    〔米田委員長代理退席、委員長着席〕
長妻委員 テロ特措法が切れるのが五月十九日でございますけれども、その前の段階でP3Cとかイージス艦を出すということは、実際には出さなかったわけでありますけれども、出すということは、基本的にはイラクに対する攻撃が米側の念頭にあったとしか考えられないわけでありまして、当然そのことは、現行法、テロ特措法ではそれは今の時点では想定していないことでありますので、その部分に関して、基本的には、アメリカからの派遣要請を確実にするために制服の方がそういう文書を持ってチャプリン司令官に会う、そして説明をする、これは一切、全く問題がないということなんですか。
中谷国務大臣 日米間においては、種々の意見交換、また情報交換についてあろうかと思います。これは、日本の安全保障を考えても必要なことであろうと思います。
 この内容につきましては、米側との関係もありまして、防衛庁としてその内容をお答えし、あるいはお示しすることは差し控えたいと思いますが、政策決定といたしましては、我が国として、イージス艦を出したりP3Cを出したりするというのは政治のレベルで決定することでございまして、現にシビリアンコントロールによってイージス艦を出さないという決定をしているわけでございます。
 したがいまして、米側との種々の意見交換、情報交換については実施をするということは必要だと思います。
長妻委員 その意見交換でありますけれども、詳細な内容はお出しできないということなんですが、大体概要、では、どういう意見交換があったんですか。
中谷国務大臣 この点につきましては、米側の事情もございます、日本側の信頼関係もございます、こういった観点で、その内容につきましてはお示しをしたりお話しするということは差し控えたいと存じます。
長妻委員 何か、結果的にP3C、イージスが出ないから、それはそういう判断だったんだというようなお話もありましたけれども、それは、結果は出なかったかもしれませんけれども、その政策決定過程で、こういうような制服の方が文書を持って米の司令官と会ってこういうような話をするということに関して、非常に鈍感過ぎるというふうに思います。
 四月の二十九日には、訪米中の与党三幹事長にウォルフォビッツ国防副長官が実際にイージス、P3Cの派遣要請をしたということもあるわけでございますので、この問題に関しましては、具体的にどういうようなやりとりがあって、そういう要請を促すということはなかったのかあったのかというのをきちんと調査を再度していただきたいと思うんですが、いかがですか。
中谷国務大臣 この件につきましては何度も確認をいたしております。米側から海上自衛隊のイージス艦やP3Cをインド洋に派遣することを要請するよう働きかけたというようなことはやっていない、事実でないということを確認いたしております。
長妻委員 それでは、米側から非公式に出たペーパーに基づいて説明をした、こういう事実は確認しておりますか。
中谷国務大臣 その点につきましては会談の内容でございます。我々が確認したところ、米側が海上自衛隊のイージス艦やP3Cをインド洋に派遣することを要請するとのメモを作成して、当該のメモをもって米軍関係者に働きかけるようなことはこれまでなかったということは確認いたしておりますし、そのような文書等の存在等につきましても、日米安保の関係もございます、この質問に対してお答えするということは差し控えさせていただきたいと思います。
長妻委員 文書の存在も言えないんですか。そういう文書があったかなかったかもそれは言えないんですか。なぜ言えないんですか。
中谷国務大臣 いろいろな情報交換や意見交換、これは必要上やっておりますが、そういったペーパーの存在ですね、これにつきましては、米側との関係もございます、その内容につきましてお話をするということは、日米関係、また安全保障上差し控えさせていただきたいと思います。
長妻委員 そのペーパーがあるかないか、ちょっとお答えいただきたいと思うんですね。というのは、このペーパーを内局ももう持っているということらしいんですね。そして、香田防衛部長が国会には出せない、そういうことで、米でも全然そのペーパーの存在を知らないチャプリン司令官に、日本側が勝手に出しているわけですよね。それにもかかわらず、そのペーパーがある、ないということも一切国会で言えないというのは納得できませんので、ちょっときちんと出すようにしてください。
中谷国務大臣 日米間で、そのような情報交換というか、意見交換、これは頻繁に行っております。しかしながら、その内容につきましては、非常に、お互いの立場もございますし、信頼関係もございます。その内容等につきましては、答弁は控えさせていただきたいと思います。
長妻委員 ちょっとあるかないか、出してください、あるかないか。
瓦委員長 再度、長妻君、質問として立って。
長妻委員 あるかないか、答えてください。
中谷国務大臣 それも含めまして、日米間の信頼関係の問題がございます。この点につきましては、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
瓦委員長 長妻昭君。――長妻君、質問をお続けください。
長妻委員 国会というのがシビリアンコントロールの本当に最後のとりででありますので、こういうことに関して、その文書があるかないか、お答えください。
中谷国務大臣 この点につきましては、米側との関係もございます。あるともないとも言えません。お答えは差し控えたいと思います。
長妻委員 では、これはどういう影響が出るのですか。
中谷国務大臣 これは会談の内容等にも関係をする可能性もございまして、日米の間での話し合いでございます。米側の立場、事情等もございますし、我が国としても、安全保障上、この日米間の会談の内容、やりとり等につきましては、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。
長妻委員 それじゃ、日本の制服の方とアメリカの制服の方が密室で話して、その話の内容はすべて一切何にも言えない、書類がある、ないも全部言えないと。それは、本当の軍事機密の最高機密であれば私も理解できないわけではありませんけれども、こういうペーパーがあるのかないのかというのを国会で聞いているわけですから、お答えください。
中谷国務大臣 この点につきましては、そういうことも含めましてあり得るわけでございまして、この場でのお答えは差し控えさせていただきたいと存じます。
長妻委員 いや、私が聞いているのは、そういうことも含めてあり得るというのは、国家機密の話だと思いますけれども、その文書というのは、米が非公式につくったペーパーで、そこには別にその国家機密という話ではなくて、日本の支援に感謝するというのと、イージス、P3C、これを派遣してほしい、こういう文書なわけですから、そういう文書があったのかないのかというのを、ぜひ委員長、理事会で御検討いただいて、あるかないかということを国会にお示しいただくようにお取り計らいをいただきたいと思います。
瓦委員長 後刻、理事会で協議をいたします。
長妻委員 いずれにしましても、まあその背景には内局と海幕とのいろいろな確執があるということも、私も、漏れ伝わってきておりますけれども、いずれにしましても、この話は非常に、制服同士、それは単なる情報交換であれば、それまでするなと言うつもりはありませんけれども、こういう非公式ペーパーを持っていってその要請を確実にする、固めをする、地固めをする、こういうようなことを制服の方がやって、それは何にも問題ないんだ、一切その内容は言えない、これは防衛庁長官として失格である、文民統制がなされていない一つの兆候が今出たというふうに私は考えておりまして、委員長にさらに要請をいたしますけれども、この香田防衛部長を初め、関係者の方々の参考人をここで要求させていただきますので、ぜひ理事会で御検討をいただきますようお願いを申し上げます。
中谷国務大臣 防衛庁の中の話でございますが、これは内局も幕もお互い信頼関係も持っておりますし、連絡や意思疎通、連携もいたしながら進めているわけでございます。
 ただ、この文書等の存在等につきましては、米側の立場、事情もございますし、日米関係の信頼もございます。この点についてはお答えできないという点は、ぜひ、こういった防衛、安全保障の観点での話でありますので、御理解をいただきたいと存じます。
長妻委員 再度、参考人の話でございますけれども、この当事者の方は、どこでも出てお話はするということも私に言っておりますから、香田防衛部長と防衛庁の増田審議官と吉川第五幕僚室長、このお三人を含めて、プラス関係者の方の参考人を委員長として理事会でお取り計らいをいただきたいと思います。
瓦委員長 後刻、理事会でお諮りをいたします。
長妻委員 この問題は、さらにシビリアンコントロールという観点で、ぜひ深く受けとめていただきたいと思います。
 もう一つは、安倍官房副長官の御発言に関して、私の方で質問主意書を何度かお出しをさせていただきましたけれども、明確なお答えがございませんので、ここでお尋ねをいたしますが、安倍副長官が五月の二十七日、参議院の予算委員会でこういうお話をされております。
 例の、早稲田大学でICBMの発言の問題に絡んで、大学の教室にサンデー毎日が盗聴器とまた盗撮ビデオを仕掛けた、こういう発言を国会でされているのですけれども、これは物的証拠というのはあるのですか。
安倍内閣官房副長官 委員から既に質問主意書を四回、そして、武力攻撃事態対処法を審議すべきこの貴重な委員会でさらに御質問をいただいているわけでございますから、委員は恐らくそれをやった実行犯について確証を思っておられるのだろう、こう私は推測をしているわけでございますが、この私が行った講義の教室には、基本的には授業料を払ってそれを聴講する学生のみ、あるいは教授だけがその場にいることが許されているわけであります。そして、そのときには、オフ・ザ・レコード、もちろん録音とかビデオを撮ることは許されていないということは確認し合っているわけでございます。学生はまさかそんなことをするわけがないわけでありますから、当然、それを発表したサンデー毎日を疑うというのが私は至極当然のことではないかなと思います。
 例えて言えば、私が家でおふろに入っているとき、私の写真をだれかが撮った。そんな写真はだれも見たくないかもしれませんが、それをサンデー毎日が発表した。そうしたら、私は、サンデー毎日がそれを盗撮したと言うのは当然じゃないですか。善意の第三者がいて、それを持ってきたというふうに、それを……(発言する者あり)答弁中だからちょっと聞いていただけますか。それをもって、私がそう言ったことをもって、あなたがそんなことを決めつけるのはおかしいと言うことが、私はおかしい。善意の第三者が突然持ってきたと言っても、私は被害者ですから、それをにわかに信じるわけにはいかないということであります。
 委員は、サンデー毎日の立場に立って今質問しておられますからそういう感じなんでしょうけれども、私はその早稲田大学において、静かな学びやであるべき教室において講義をしたわけでありまして、それをある日突然、サンデー毎日が、許されていないのにそれを掲載すれば、私がそう思うのは至極当たり前ではないかな、こう思うわけでありまして、それを非難するというのは、私にはとても理解できない。
長妻委員 今のは私もちょっと耳を疑う答弁でございますけれども、大学の教室に、サンデー毎日がという主語を言って、盗聴器と盗撮ビデオを仕掛けたと。一民間企業を犯罪者だと。これは、盗聴するには不法侵入しなきゃいけないですからね。犯罪者だということを国会で明確に答弁するからには、それも官房副長官という国家権力のトップにおられる方ですよ、そういう方が物的証拠もなくこういう発言をされるというのは、これは私は異常だというふうに考えております。
 それで、私は、いい政府というのは、やはり間違いを率直に認める。基本的には、物的証拠がなくて一民間企業を犯罪者だとこういうふうに決めつけているわけですから、物的証拠は、では、あるんですか、ないんですか。
安倍内閣官房副長官 今委員は、いわゆるサンデー毎日の編集長が何回か私に対して抗議をしてまいりました。そして、五週にわたって私を非難する記事を書いているわけであります。私は、そういう非難を覚悟で、私の政治家としての責任をかけて申し上げているわけであります。それに対して私は、本当に五回にわたってそういう抗議をされているわけであります。
 先ほども申し上げましたように、そこには学生の諸君と教授しかいない。では、委員は学生がやったと言っているのですか。
長妻委員 物的証拠があるんですかと聞いているんです、物的証拠が。
 だから、これは基本的には、内閣官房という先ほど申し上げた国家権力の中枢におられる方が、一民間企業を国会の場で犯罪者だと言ったわけですね。(発言する者あり)
瓦委員長 静粛に願います。
長妻委員 盗聴器と盗撮ビデオを仕掛けたというふうに断定をしているわけですから、それなりの証拠があるということでないとそういう発言はすべきではないというふうに私は考えておりますので、ぜひ今後も、その物的証拠があるかないか明確に、委員長、物的証拠があるかないかを私は聞いておりますので、その部分を答弁させてください。(発言する者あり)
瓦委員長 静かにしてください。
安倍内閣官房副長官 まるで私が訴えられていて……(長妻委員「物的証拠を聞いている」と呼ぶ)私が答えているんですから、黙ってください。それで、何かまるでここが裁判の場所で、私が被告人のように、物的証拠を出せと言われているんですが、その場所には、何回も申し上げますが、学生の諸君と教授しかいなかった。そこで、これは外に出さないということになっていて、学生の諸君もその約束を守ってくれた。そして、ある日突然サンデー毎日がそういうものを明らかにした。サンデー毎日を疑うしかないじゃないですか。だれだってそうですよね。それに対してサンデー毎日は私に対していろいろな抗議をしている。
 先ほども申し上げましたように、例えば写真を撮られて、ある日突然その写真が載せられた、それに対して非難をするというのは当然じゃないですか。これを記事にして、サンデー毎日は利益を得ているわけなんですね。この利益を得ているのはどこかといえば、私は、損失をこうむった早稲田大学ではない。サンデー毎日は明らかに部数を伸ばしたらしいですから、私の名前を出して。当然、サンデー毎日は利益を上げたということですから、だれが利益を上げたかを考えれば、合理的な疑いが発生するのは至極当たり前ではないでしょうか。そういうふうに思うわけであります。
長妻委員 今の御答弁が内閣官房副長官の御答弁とは私は思えないんですね。
 委員長、私は、さっきから四回質問しております。物的証拠があるんですか、ないんですかと。これに対してお答えになっておられませんので、それを委員長からもお答えになるように言ってください。
安倍内閣官房副長官 私は、国会で答弁をしている以上、確信を持って答弁をしている、私の責任において答弁をしているわけであります。では、委員は、よほど確信を持って、だれか別の犯人がこれだというふうに確信を持っているんだったらお示しをいただきたい。
 これは、サンデー毎日が私に対して名誉を傷つけられたと言って、私とサンデー毎日の間で……(発言する者あり)済みません、私が答弁中ですから、静かにしてください。私とサンデー毎日の間で、これは今議論をしているわけであります。そこへ突然、長妻委員が、どういうわけかサンデー毎日の側に立って御質問をされているわけですから、私は大変驚いているわけであります。
 私の父も、長い間毎日新聞に勤めておりました。ですから、何人も毎日新聞にも知己がいるわけでございます。ある日、私の父が、まだ生前なんですが、サンデー毎日がある人のことを誹謗中傷の記事を書いたことがありました。それに対して……(長妻委員「委員長」と呼ぶ)ちょっと、答弁中ですから、バックグラウンドを私は説明しているんですからね。名誉毀損を――座ってください、答弁中ですから。
瓦委員長 答弁者に申し上げますが、手短にお答えください。
安倍内閣官房副長官 はい、わかりました。(発言する者あり)
瓦委員長 静かにしてください。静粛に願います。
安倍内閣官房副長官 よろしいですか。今、これ……(発言する者あり)では、聞いてください。
 サンデー毎日が、名誉毀損をされて、サンデー毎日が大変困ったことがありました。窮地に陥って、明らかに裁判に負けるということで、私の父のところに、何とかしてくれと言ってきたことがあるんですね。そのとき父は当然断ったんです。ですから、そういうふうに、週刊誌が書くことは決して絶対ではないということを私は申し上げているわけでありまして。
 それで、私は確信を持ってそういうふうに申し上げているということでございます。
長妻委員 これは、私が言っているのは、一民間企業ですよ。(発言する者あり)いや、与党の皆さんもぜひ聞いていただきたいんですけれども、一民間企業を犯罪者だというふうに国会で言っているわけですから、それに関して、今物的証拠はあるんですかと何度質問してもお答えにならない。これはもう、物的証拠なしに一民間企業を犯罪者だというふうに決めつけているというふうに私は断ぜざるを得ませんので、ぜひ反省をしていただいて、撤回をしていただきたい。そして、サンデー毎日に謝罪をするということを要求をいたします。
 それでは、次の質問に移ります。(安倍内閣官房副長官「委員長、答えさせてください」と呼ぶ)これは切りがありませんので、次の質問に移りますけれども……(発言する者あり)
瓦委員長 質問をお続けください。静粛にしてください。
長妻委員 委員長、ぜひ理事会で、この物的証拠があるのかどうか、これについてぜひ安倍官房副長官に明確な御答弁を求めるような、理事会で御協議をいただきたいと思います。いかがですか。
瓦委員長 理事会で後ほど話をいたしますが、でき得る限り理解がいただけるように、答弁がかみ合うように、質問とかみ合うように御協力を賜りたいと思います。
 どうぞお続けください。
長妻委員 いや、理事会で、私はかみ合うように、質問はシンプルです。物的証拠があるんですかと、これだけですので、理事会ででも。
瓦委員長 後ほど理事会で取り扱います。(発言する者あり)静かにしてください。
長妻委員 これは安倍副長官、多分、私が考える政府高官のお立場がどういうお立場なのかということと、安倍副長官のお立場の考えが違うと思います。
 私も、それは人間ですから、皆さんもそうですけれども、だれでもちょっと言い過ぎたこととか、それはありますよ、ちょっと口が滑ったとか。ただ、重要なのは、それが根拠がなく言ったことに関しては、ああ、それはちょっと言い過ぎた、申しわけない、こういうふうに率直に謝ることが、私はそういう方が政府中枢におられる政府がいい政府だというふうに信じておりますので、ぜひ御検討を理事会でお願いいたします。
 そして、政策の質問をさせていただきますと、法案にちょっと入らせていただくんですけれども、報道の自由の問題で、福田官房長官は、報道の自由は有事の際にもきちんと担保されるというお話がありましたけれども、例えば誘拐報道のような報道協定、こういうようなものというのは、有事の際に想定はされるんでしょうか。
福田国務大臣 事態の状況に応じまして、人命尊重などの観点から、本当に必要な場合においては、報道協定などについてお願いをする、こういうことはあり得るわけであります。仮に報道協定が必要と判断された場合でありましても、報道機関の自由意思を尊重するということには変わりはありません。
長妻委員 それと、指定公共機関の指定でございますけれども、報道によりますと、ある民放が指定公共機関になるのを難色を示しているというようなことも聞いておりますけれども、結局、指定公共機関に政令で指定をするときに、そこがずっと話し合いをしても、最後、拒絶をした場合は、それは政令で指定をしないということでよろしいんですか。
福田国務大臣 実際に、いかなる機関を指定公共機関として政令で指定するかということは、今後の個別の事態対処法制に定める事項ごとに、当該機関の業務の公益性の度合い、武力攻撃事態への対処との関連性などを踏まえまして、総合的に判断をしていくということになります。
 その際に、当該機関の意見も当然聞くことになりますが、例えば、指定を拒否するとかいったような場合、そのような場合の、例えば罰則を設けるといったようなことは、これは全く考えておりません。
長妻委員 質問を終わります。ありがとうございました。
瓦委員長 次に、木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。
 六月四日にマスコミが大きく報じまして、翌五日に衆議院の決算行政監視委員会で保坂展人議員が質問をいたしました、陸上自衛隊駐屯地元司令にかかわる情報公開請求漏出事件について質問をいたします。
 事案の概要をわかりやすくするために、私が情報公開請求漏出事件関係図というものを作成しておきましたので、委員長の許可を得て配付していただきたいと思います。
 これは、新潟県在住の弁護士が防衛庁に対して行った情報開示請求の事実が、後に提起をいたしました訴訟の、民事の損害賠償請求訴訟でありますが、訴訟の相手方である駐屯地の元司令の側に筒抜けになっておったという驚くべき事件であります。
 まず、どのような情報開示請求があったのか、情報開示請求の日時、請求者の氏名、住所、電話の記載の状況、請求する行政文書の名称、請求の方法を明らかにしていただきたい。
 なお、行政文書に記載されております駐屯地の具体名や請求者の住所、電話番号は、プライバシーの関係もありますので、それは明らかにしなくて結構でありますが、それ以外の請求の具体的な中身について答弁を願います。
山中政府参考人 当該事案に係ります行政文書の開示請求の内容でございますが、昨年の十二月に開示請求が行われております。
 当該開示請求書には、開示請求者の氏名、住所、電話番号、それから請求内容が記載されておりまして、この請求内容につきましては、当該駐屯地におきます平成十三年会議費関係書類一切の件ということでございます。
木島委員 答弁漏れがあるので、私の方から補足しましょう。
 請求した日は、平成十三年十二月五日、それが、受け付けが、受理されたのが十二月十日、請求者の名前は言って結構だと私言ったのですが、言わなかったので、私から言いましょう、斎藤裕氏。それから、請求した文書はもう一種類ありまして、平成十三年前渡資金のリアルタイム、名前は伏せますが、○○駐屯地一切の件ですね。そして、請求の方法を言わなかったのですが、直接当事者が出向いたんじゃなくて、防衛庁本庁に対する郵便での請求。
 確認を願います。
山中政府参考人 ただいま御指摘のあったとおりでございます。
木島委員 二通の行政文書開示請求書で開示請求がなされましたが、請求者の氏名、住所、電話番号、請求する文書の特定など、本件は、一点の補正も必要なく、法律上全く問題のない適正な請求だったと確認してよろしいでしょうか。
山中政府参考人 さようでございます。
木島委員 こういう防衛庁本庁に対する郵便による情報開示請求がなされましたが、これは、受理の手続を行ったのは防衛庁のどの部署なんですか。
山中政府参考人 開示請求を受理いたしましたのは、防衛庁情報公開室でございます。
木島委員 長官官房にある情報公開室でございますね。
 この情報公開請求につきましては、結論を言いますと、翌平成十四年、ことしでありますが、一月九日付で、一部開示決定がなされたと思います。そして、請求者本人に文書のコピーが郵送されております。
 相違ありませんか。開示された文書と、不開示部分は何だったのか、簡潔な答弁を願います。
山中政府参考人 基本的に、請求に応じまして開示をいたしておりますが、法人の印影につきましては不開示といたしております。
木島委員 斎藤裕氏、請求者は、実は弁護士であります。しかし、彼は、請求書には弁護士という職業は書き込みませんでした。そして、彼、請求者斎藤弁護士が、自分が行った情報開示請求の事実が漏えいしているんじゃないかということを知ったのは、ことしの四月三十日、依頼者の代理人として駐屯地元司令を相手に損害賠償請求事件を起こした民事訴訟の口頭弁論におきまして、駐屯地元司令の訴訟代理人から、防衛庁に対して情報公開請求をした事実を指摘され、そして、得られた文書を本件民事訴訟で証拠として裁判所に提出しないのか、こういうことを裁判所の中で告げられたからであります。
 しかし、斎藤弁護士が防衛庁長官あての情報公開を請求した内容、今答弁がはっきりとありました、平成十三年会議費関係書類、○○駐屯地一切の件と、平成十三年前渡資金のリアルタイム、○○駐屯地一切の件、そのものであります。この内容と、斎藤弁護士が依頼人の代理人として行っている元駐屯地司令に対する損害賠償請求訴訟とを直接に結びつけるものは何一つありません。
 斎藤弁護士は、先ほど指摘しましたように、情報公開請求書には弁護士の肩書すら記載していなかったのであります。まず、その事実は防衛庁、認めますね。斎藤弁護士が請求したこの二種類の防衛庁の文書と、斎藤弁護士がある依頼者から、駐屯地の元司令に対する損害賠償をやっていた、一定の理由があってやっていた、それとは直接何の関係もない、そういう基礎的な事実は防衛庁、認めますね。
山中政府参考人 ただいま、具体的な氏名を挙げてのお尋ねでございますが、その方の請求に係りますものにつきましては、個人情報保護の観点から申し上げかねますが、お尋ねの十三年の会議費の関係書類につきましては、氏名、住所、電話番号、請求内容が記載されているのみでございます。
木島委員 まともに答えようとしませんから、どういう民事裁判が行われたか。
 もう既に当衆議院の決算行政委員会で保坂代議士から指摘されておりますから繰り返すつもりはなかったんですが、これは、斎藤弁護士の依頼者、民事訴訟の原告、その妻に対して、民事訴訟の被告たる元○○駐屯地司令が関係を強要した、男女関係を強要した。それに対する夫からの損害賠償請求であります。請求を起こしたのは昨年の十一月であります。そして、請求の裁判を起こしたのはことしの一月九日なんです。
 そういう事案と、斎藤弁護士が、この同じ駐屯地でありますが、飲食費に関する書類、この請求をしたこととは直接は全然関係ない。それは事実でありますでしょう、まあ、認めようとしませんが。しかも、駐屯地元司令、裁判の被告は、既にこのときは駐屯地にはおりませんでした。平成十一年には駐屯地司令を退任し、はるか遠く離れた陸上自衛隊、これも名前を伏せます、○○学校勤務になっておるわけであります。
 斎藤弁護士が駐屯地元司令を相手に、依頼者の代理人として民事の損害賠償訴訟を提起する前段階の手続で、内容証明郵便で具体的に損害賠償請求したのは、先ほど言ったように昨年の十一月。らちが明かないので、裁判を起こしたのはことし一月九日。ところが、情報公開請求をしたという事実が漏れた。そして、民事裁判の裁判所において、相手方弁護士から、あんた、情報公開請求しているだろう、情報公開でとった書類はこの裁判の証拠書類として出さないんですか、こんな質問を受ける。弁護士はびっくりしましたと言っています。
 これは、事案を見ますと、情報公開請求事務にかかわっただれかが、逆に斎藤弁護士とその周辺を逆調査し、斎藤弁護士が依頼者から相談を受け、駐屯地元司令、駐屯地の最高責任者です、これを相手にして民事の損害賠償請求をする準備をしている、そういう情報、これは基本的には本人以外にわからない情報でしょう。それを遠隔地にいる元駐屯地司令に伝えたんじゃないか。この情報公開請求という大変私的なプライバシーにかかわる問題をだれかが漏らしたという、だからこんなことになったんだと思えてなりませんが、防衛庁、どうですか。
宇田川政府参考人 御指摘の本件についての経緯を申し上げます。(木島委員「いや、細かいのはいいですよ、もう決算委員会で聞いているようなことはいいですよ」と呼ぶ)
 決算委員会と同じになりますが……
瓦委員長 答弁はきちんとやってください。
宇田川政府参考人 はい。本件は、御指摘のとおり、平成十三年十二月に、原告側弁護士からの会議費に係る行政文書開示請求がなされました。これを受けました東部方面総監部が、当該駐屯地の会計隊長に調査依頼をしたわけであります。
 この当該駐屯地の会計隊長は、行政文書開示請求があったことを口頭で駐屯地司令に報告しております。報告を受けた駐屯地司令は、会議費の関係でありますので総務になります、前に総務等を担当したことのある元三等陸佐に駐屯地内でたまたま会ったときに、行政文書開示請求がなされている対象期間とこの三等陸佐が担当している期間は違っていることはわかっていたわけでありますが、過去の会議費について確認しようと思いまして、会議費の執行を担当していた当時の状況につき聞きました。そのところ、適正に執行したとの回答を得たわけであります。
 その後、元三等陸佐から情報開示請求があったのかと問われた駐屯地司令は、単にあったとのみ答えております。なお、駐屯地司令は、会議費の行政文書開示請求の対象期間が元三等陸佐の総務等を担当した期間とは関係のない期間であったことなどからして、詳細については告げておりません。
 その後、十二月二十日ごろ、今御指摘の民事訴訟の被告になっております元駐屯地司令の一等陸佐が、以前駐屯地司令をしていたときの部下であるこの元三等陸佐と会合の細部日程等の打ち合わせをしたわけでありますが、このときに、元の駐屯地司令は元三等陸佐に、駐屯地でその後変わったことはないかとの問いかけがありましたので、元三等陸佐は、行政文書開示請求が当該駐屯地に来ているということを言ったわけであります。
 これはなぜかというと、駐屯地にとって行政文書開示請求というのは珍しいということからこう申し述べたものであります。
 この元駐屯地司令の一等陸佐は、十二月二十日ごろ元三等陸佐から、駐屯地に会議費の行政文書開示請求があったということのみを聞いた際、行政文書開示請求が自分の駐屯地司令在任期間中のものであると思い込んだわけでありまして、元三等陸佐が当時担当していたときの会議費についてなぜ行政文書開示請求があったのか疑問に思っているものと考えまして、元三等陸佐には、会合の翌日の十二月二十三日、移動中の車の中で、自分が訴えられるためではないかというように言ったわけであります。
 この会合後、元駐屯地司令の一等陸佐が依頼弁護士に相談に行った際、自分が駐屯地司令に在職期間中の会議費について行政文書開示請求がなされているようだということを話したため、これを聞いた弁護士が、民事訴訟の関係で相手方が請求してきたのであろうと推測をしたというものでありまして、それぞれ推測で相手に話したというのが現実でございます。
木島委員 既に六月五日に衆議院の決算行政監視委員会で保坂議員からの質問に答えて流れが答弁されておりますが、それをもうちょっと詳しく言っただけであります。
 私が皆さんに配付している情報公開請求漏出事件関係図の右側の駐屯地会計隊長、ここには文書があるので、ここまではきちっとした公的な手続でしょう。
 そして、ちょっと矢印の位置を変えました。この会計隊長から現駐屯地司令、そこに事実が漏れる、駐屯地司令から駐屯地元三佐に事実が漏れる、駐屯地元三佐から問題の、今当地にはいない、はるか遠く離れた自衛隊学校に勤務している元駐屯地司令のところに情報が漏れる。これは全部漏れた話なんです。
 決算行政委員会での宇田川局長の答弁の中には、この矢印に二重の推測があるなんと言うので、いかに根拠薄弱かを自白しているようなものなんですが、実際にここで言う、今の答弁で総務をやったことがある人物と言いました、駐屯地元三佐。これが中心に情報を漏らしたのかも知れません。
 実は、斎藤弁護士を逆調査する、そして、彼が元駐屯地司令を被告にして民事損害賠償請求裁判を起こそうとしている、そういうことまで探り当てていた。それにこの情報公開請求をした事実漏えいが一つのきっかけになったということをうかがわせるに足る重大な事実を私はつかんできました。
 斎藤弁護士が依頼者の代理人として駐屯地元司令を相手に賠償請求を提起したのはことしの一月九日。その日、ちょうど情報公開請求に対する一部開示決定のなされた日であります。同じ日。これはたまたまでしょう。そのころ、この図面にあります駐屯地の三佐、当時三佐であります、今退官していまして二佐になったようでありますが、彼が、斎藤弁護士の依頼者の身内の者に対して、裁判など起こすな、こんな圧力をかけているというんです。とんでもないことであります。二佐も防衛庁も、こういう身内の者から相談を受けたなどと言っているようであります。裁判を起こすななんて圧力をかけた事実はないかのごとく、否定を防衛庁もこの本人もしているようでありますが、そんなことはありません。
 防衛庁は、この裁判など起こすなという圧力をことしの一月上旬にかけたという事実を、斎藤弁護士や依頼者やその身内の者から事情を確認していないんですか。それとも認めますか、私の今言ったことを。
宇田川政府参考人 御指摘の案件につきまして、訴訟を起こすなという圧力をかけたというお話でございますが、当該弁護士から防衛庁の方にそういうふうなお話がありましたので、確認しましたところ、そういうことはないということで、当該弁護士にお伝えしました。また、その後、当該弁護士から来たペーパーには、それにつきましてはそうではなかったというふうな話を承知しておるところであります。
木島委員 当該弁護士とはだれですか。斎藤弁護士のことをいうんですか。
宇田川政府参考人 おっしゃるとおりですが。
木島委員 そんなことはないんです。私は直接会って確認しているんです。
 さらに、もっと大変な事実もこの弁護士は私に指摘をいたしました。この二佐は、斎藤弁護士の依頼者に対してこう言った。斎藤弁護士のいる法律事務所は問題のある事務所だ、あの事務所はこういう事件を平和運動に利用するような事務所だから訴訟はやめてくれ、こういうことなどを言って、これは斎藤弁護士と被害者である原告を離反させようとする無法な言辞さえ行っている。
 これは、私がその弁護士から直接話を聞いて確認している事実であります。防衛庁は、この重大な、大変な事実、これをつかんでいないんですか。
宇田川政府参考人 先ほどの件になりますが、二月八日付の意見書が当該弁護士から出ておりまして、○○○から訴訟妨害があったとの部分については撤回いたしますというペーパーをいただいておるところであります。
木島委員 しかし事実、そういう妨害があったことは消せない事実なんです。
 中谷防衛庁長官は、ことし六月五日の決算行政委員会におきまして、保坂議員の質問に答えて、本件については事実について重ねて調査すると答弁をしたわけであります。しかし、六月十一日の「調査報告書」、これには何の報告もない。保坂議員への調査結果報告もない。まともな調査は、中谷長官、委員会での答弁にもかかわらず、やってないんじゃないですか。
中谷国務大臣 この調査につきましては、六月四日の報道に対して六月五日に公表いたしておりますが、その六月五日の決算行政監視委員会におきまして人事教育局長から事実関係を答弁したところでありますけれども、保坂議員から、これに対してしっかり調査していただきたいという趣旨の御質問がありましたので、私の方から改めて陸上自衛隊に調査を命じまして、六月の六日に再度報告を受けたところでございます。
 その点の調査におきましては、二つ、さらに調べていただきまして、この駐屯地司令は、元駐屯地司令の不祥事について知っていたかどうか、また元駐屯地司令と元三等陸佐のやりとりはどうであったかという点について調査を命じたところでございます。
木島委員 決算行政委員会で防衛庁から当時答弁があった、現駐屯地司令からこの情報を元の駐屯地司令、要するに裁判の被告、これに情報を漏らしつないだこの駐屯地三佐、この人物と、この関係図に書いておきました一月上旬に裁判なんかやるなという圧力をかけた、この駐屯地の二佐、これは同一人物か、それとも違う人物か、答弁ください。
宇田川政府参考人 委員の配付されましたペーパーの「○○駐屯地元三佐」と、一番下に書いてあります「○○駐屯地二佐」、これは三佐でございましたが、退官するときに二佐に昇任しておりますので同一人物だと思います。
木島委員 事実は明らかですね。
 要するに、本来そんなところに斎藤弁護士が情報公開請求したかどうかなんという事実が行くはずのない人物です、この三佐、そして退官時二佐。その人物が中心に座って情報を当事者に漏らす、そして漏らしただけじゃなくて、その人物が原告になろうとしている人物に対して、さんざん裁判を起こすなというような圧力をかける、これはどういう構造だ。防衛庁、駐屯地ぐるみで元の駐屯地の司令、これの本当に不祥事ですわ、恥ずかしいような不祥事、これを裁判を起こされちゃ困る、何とか裁判を抑え込む、そういうために動き回った。そして、そのために、たまたま斎藤弁護士がこの情報公開請求をしていたということの情報が一方から流れてきたことをつかんで、それのきっかけにした。そういう構造がここから見えてくるんじゃないですか。これはとんでもない事件だ。防衛庁長官、そういう認識、この図面見て思わないんですか。
中谷国務大臣 裁判中の問題でございまして、双方の関係もございますが、現在の駐屯地司令は、この開示請求手続が行われております平成十三年の十二月十一日から十九日までの間は、この元駐屯地司令の不祥事につきましては承知をしておりませんでした。十二月の二十五日ごろ、この総務をした元三等陸佐から初めて聞いて知ったものでございまして、この駐屯地がこのような不祥事とか裁判にかかわったということはないと思います。
木島委員 根本のところは否定していますが、かかわっているんですよ。この民事損害賠償請求は純粋に民事事件ですよ。ところが、そんな民事事件に現に駐屯地の三佐がかかわってくるという、そうしたかかわるに至ったきっかけが、その弁護士が情報公開請求していたという事実をつかんでかかわってくるという事件なんですよ。
 ですから、私、今回の事件で、防衛庁の情報公開請求者のリストがつくられていた、そしてそれが保管されていた、防衛庁内のLANにずっとまかれていたということがありました。この「調査報告書」によりますと、しかし情報を受け取った方は一切使っていないというようなことをこの報告書には書かれておりますが、これは本当に最悪な情報公開請求者の身元調査がされた、弁護士だけではなくて、その依頼者の周辺にまで身元調査が及んだということをこれは示しているんじゃないでしょうか。
 では、聞きましょう。この斎藤弁護士の情報公開請求に係る事案は、今回問題になってつくられたリスト、陸海空三幕、内局、施設庁、リストに載っていますか。答弁してください。――委員長、私は事前に通告しておいたんです、リストにこれは載っているかと。
山中政府参考人 陸幕の情報公開室の担当者が作成をいたしました開示請求受状況一覧表、これは今回の「調査報告書」においても言及をされておりますが、その中の区分に記載をされております。
木島委員 リストに載ったと。では、だれが作成したどんなリストにどのように記載されて掲載されたのか、それがどのように庁内に広められたのか、それを答弁してください。具体的なリストの載せ方。
山中政府参考人 当該事項につきましては、摘要欄に法律事務所という形で業務処理状況の一覧表の中に位置づけられておりまして、陸幕のLANに掲示されていたということでございます。
木島委員 私は、今回問題になった、たくさんの、数え切れないほどのおびただしい情報公開請求、そしてそれが、みんなリスト化され、まかれていく、それにはセンシティブな情報も入っていた、そして大問題になっているわけですが、その中のたった一つの問題をきょうは指摘をいたしました。
 その情報漏れが、こんな形で、国民の裁判を受ける権利、裁判を起こす権利、弁護士としての権利、権益、それへのとんでもない侵害となってあらわれているということを指摘をしたわけであります。
 そして、これに全く触れていない今回の防衛庁による情報公開請求者リストの「調査報告書」は、まことに不十分と言わざるを得ません。委員会において徹底した真相の解明が必要だ。
 とりあえず私は、この事件というよりも、もっと基本である海幕三佐、そして陸海空三幕の室長の参考人招致を改めて求めたいと思います。
 よろしくお願いしたいと思います。
瓦委員長 後刻、理事会で取り扱います。
木島委員 はい。質問を終わります。
瓦委員長 次に、達増拓也君。
達増委員 自由党の安全保障基本法案について伺います。
 第三条で、「自衛権の発動としての武力の行使は、我が国に対して直接の武力攻撃があった場合及び我が国周辺の地域においてそのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれがある事態が生じた場合に限り、これを行うことができる。」としてあります。これは、我が国が、個別的であれ集団的であれ自衛権を有し、かつ発動できるという憲法解釈を明文化するとともに、自衛権の乱用を禁じる趣旨と理解します。
 そうしますと、経済的権益の保護でありますとか在外邦人保護のための武力行使、そうしたことを自衛権の発動として正当化することは明確に禁止されているということだと思いますが、そうでしょうか。
東(祥)議員 達増委員にお答えさせていただきます。
 御指摘のとおり、安全保障基本法第三条では、自衛権の発動としての武力の行使を、我が国に対して直接の武力攻撃があった場合及び我が国周辺の地域においてそのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれがある事態が生じた場合に限定し、それ以外の武力行使は行わないこととしております。
 戦争は、個別的自衛権の行使を大義名分に行われている。我が国も、過去において、邦人保護を名目に山東出兵し、南方から来る石油を確保するために南部仏印まで進駐してという歴史があります。このようなことのないように、自衛権の発動としての武力の行使は限定的に行わなければならないという趣旨でこの第三条の規定を設けたところであります。
達増委員 これは政府の憲法解釈も伺いますが、経済的権益の保護や在外邦人保護のための武力の行使を自衛権の発動として正当化することは禁止されているという解釈でしょうか。
福田国務大臣 憲法九条のもとで許容されております自衛権の発動としての武力の行使につきましては、政府は従来から、自衛権発動は、三要件に該当する、そういう場合に限られているという解釈をしてきておりますけれども、一般に、お尋ねの経済的権益や在外邦人の保護のための武力の行使がこの要件を満たすことはなく、我が国がそのようなことを目的として武力を行使することは許されないと考えております。
達増委員 こうした自衛権のあり方をめぐる憲法解釈、重要なものを明文化していくということは、非常に重要だと思います。
 そこで、自由党の安全保障基本法案第三条についてさらに聞きますが、これは集団的自衛権の行使についても認めているんだと思います。しかし、それを、日本とその周辺での武力攻撃あるいはそのおそれの事態に限定することで厳しく縛りをかけているということでありましょうか。
 また、そうしますと、九月十一日テロ後、中東やインド洋における日米の軍事協力というものを集団的自衛権の行使として正当化することはできないという解釈になるでしょうか。
東(祥)議員 達増委員御指摘のとおり、自衛権については、個別的であれ、また集団的であれ、国際連合憲章第五十一条において、国家の固有の権利として認められているものであって、その間に大きな区別はないというのが我が党の見解であります。
 しかし、十九世紀、二十世紀の戦争を見たときに、すべて自衛権の名のもとに戦争というものが行われてきたことにかんがみると、集団的自衛権については、その行使を認めるものの、抑制的に、自制的にとらえるべきであると私たちは考えております。
 したがって、集団的自衛権の存在及び行使を認めつつ、それを抑制的にとらえて、例えばベトナム戦争型の、国連加盟国の一部の国々が自衛権の名のもとに戦闘行動を起こしたときに、そのときにすぐさま私たちはそれに参加することはない。あるいはまた、今御指摘のように、九月十一日同時多発テロ後の中東やインド洋での日米軍事協力を行うことはない。それが三条一項の「我が国に対して直接の武力攻撃があった場合及び我が国周辺の地域においてそのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれがある事態が生じた場合に限り、」という制約であって、自衛権の行使について明確な規制をしているものであります。
達増委員 これは、およそ集団的自衛権について、権利はあるが行使はできないという政府解釈よりもはるかに現実的で、筋の通った解釈だと思います。
 さて次に、周辺事態との関係について伺いますが、自由党の安全保障基本法案第三条のこの「我が国周辺の地域においてそのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれがある事態」というのは、周辺事態法における周辺事態の定義の中にも使われている言葉であります。
 そうしますと、自由党の解釈としては、周辺事態法に言う周辺事態には我が国が自衛権の発動として武力行使を行うことができる、そういう解釈になると思いますが、よろしいでしょうか。
東(祥)議員 詳細は省きますけれども、おっしゃるとおりであります。
達増委員 そこで、政府に伺いますが、政府としては、周辺事態における自衛隊の活動を自衛権の発動としての武力行使というふうに理解しているでしょうか。
中谷国務大臣 周辺事態は、我が国周辺の地域における我が国の安全と平和に重要な影響を与える事態であり、周辺事態では我が国に対する直接の武力攻撃が発生しているわけではございません。したがいまして、周辺事態では、我が国の自衛権発動の三要件が満たされておらず、自衛権の発動としての武力行使を行うことはございません。
 また、周辺事態安全確保法でも、その第二条二項において、周辺事態における対応措置の実施は武力の行使に当たるものであってはならないとされているところでございます。
達増委員 長官に確認したいんですが、さはさりながら、周辺事態において武力攻撃事態になる場合はあり得るということですよね。
中谷国務大臣 委員会でもお答えをいたしておりますが、両者が併存する場合はあり得るわけでございます。
達増委員 この辺が、自衛権の行使としての武力行使というものが、政府の場合、どこまで、どのように認められるのかはっきりしないところであります。
 さて、次に、いわゆる集団的安全保障、国連のもとでの集団的安全保障について政府と自由党に質問をしますけれども、自由党の安全保障基本法案七条一項では次のようにあります。
 「我が国は、国際の共同の利益のため必要があると認めるときは、国際連合の総会、安全保障理事会若しくは経済社会理事会が行う決議又は国際連合、国際連合の総会によって設立された機関若しくは国際連合の専門機関若しくは国際移住機関が行う要請に基づいて行われる」、要は次のところです、「国際の平和及び安全の維持若しくは回復を図るための活動(武力の行使を伴う活動を含む。)又は国際的な救援活動に積極的に協力するものとする。」つまり、国連の決定があれば武力の行使を伴う活動にも参加していい、また協力するものとするということであります。
 政府に伺いますけれども、政府の考え方としては、たとえ国連がきちんと決めて関係国に武力行使を伴う活動を要請した場合でも、我が国がその武力行使に参加するのは違憲という考えなんでしょうか。
    〔委員長退席、米田委員長代理着席〕
福田国務大臣 自由党が御提案の安全保障基本法案第七条第一項の場合というのは、国連総会などの決議や国連などの要請に基づいて行われます国際の平和及び安全の維持または回復を図るための活動等に我が国が協力する場合をいうものと考えるのでありますけれども、従来、国連のもとで行われておりますこのような活動等の場合には、一般に、我が国に対する武力攻撃は発生していないというように考えられますので、従来から政府が申し上げております自衛権発動の三要件を満たしていない、したがいまして我が国が武力を行使することは憲法上許されない、このように考えておるところでございます。
達増委員 では、この点について自由党の考えを伺います。
東(祥)議員 我が党の安全保障基本法案第七条には「国際の平和及び安全の維持又は回復を図るための活動等に対する協力」が規定されているところでありますが、国際の平和及び安全の維持または回復を図るための活動は自衛権の行使とは全く別の概念であると我が党は理解しておりまして、国連の平和のための活動は、仮に武力を行使することがあっても、それは国際社会が平和を回復、維持するための活動であって、憲法の禁ずる国権の発動ではない、このように私たちは理解しております。
 日本国憲法前文には、自国のことばかりに専念し、他国を無視してはならない、国際社会において名誉ある地位を占めたいと規定されており、憲法で禁止されていないばかりか、国際社会の一員として、世界の平和のためには汗をかく、時には血を流すことがあっても、国連の国際社会の共同行動には積極的に参加、協力するという原則をこの第七条で明らかにしたところであります。
達増委員 では、これは政府に端的に伺いたいんですけれども、これはもう素朴な疑問であります。
 日本国憲法が国連のもとでの平和活動における我が国の武力行使を禁じている、そう解釈するのはなぜなんでしょう。
安倍内閣官房副長官 国連のもとでの平和活動については、我が国は、国際の平和と安全を実現するために憲法の枠内で協力することとしているわけでございます。
 他方、憲法第九条のもとで許容される我が国の武力の行使は、あくまでも自衛権の発動としての必要最小限度のものに限られると解されるところでございまして、従来、国連のもとで行われている類型の平和活動のうち武力の行使に当たる行為は一般に自衛権の発動としてのものではない、このように考えているところでございまして、我が国としてこれを行うことは憲法上許されないという解釈をとっております。
達増委員 憲法にそう書いてあるからというような内容の答弁だったと思いますけれども、憲法というのは所与のものではないわけでありまして、不磨の大典ではないわけでありまして、憲法制定権力というその時々の国民の総意、そういったものによって成り立っているわけでありまして、今、日本国民が、なぜ日本が国連のもとでの平和活動において武力行使を禁じているのかという疑問を国民は持つでありましょうし、そうしたことにこたえ得る政府のあり方が求められているんだと思います。
 さて、自由党の安全保障基本法案七条の二項には、この国際の平和及び安全の維持または回復を図るための活動等に対する協力は、「国際法規及び国際連合の定める基準その他確立された国際的な基準に従って行われるものとする。」とあります。
 この点からしますと、我が国のPKO法でありますとか船舶検査法でありますとか、国際基準とずれた活動の基準が設けられていると思われるわけでありますけれども、この辺は国際基準に合わせて変えていかなければならないという趣旨でしょうか。
東(祥)議員 達増委員御指摘のとおりであります。
 若干敷衍させていただきますけれども、各国が国連のもとに共同行動するときに、例えば武器使用にしても臨検にしても、ひとり我が国のみが各国と違う行動をとるならば、共同行動の規律を乱し、目的の達成に十分な成果を上げられないことも十分に考えられるところであります。我が国の国際協力が国際法規及び国際連合の定める基準その他確立された国際的な基準に従って行われるのでなければ、我が国が各国から信頼され、尊敬され、必要とされる国家になることはできないと思います。
 このような観点から、安全保障基本法案第九条に、「国は、この法律の目的を達成するため、必要な関係法令の制定又は改正を行わなければならない。」としており、それは今御指摘になりましたPKO法や船舶検査法の改正を念頭に置いたものであります。
達増委員 自由党の安全保障基本法案の第八条「国際連合平和協力隊の創設」、この国連平和協力隊の創設ということですが、自衛隊とは別に国連平和協力隊を創設するのはなぜでしょう。
東(祥)議員 我が党は、国際連合の行う平和活動に参加して武力を行使することがあっても、それは国際社会が一致協力して平和のために行う活動であって、自衛権の行使とは別の概念で考えるべきだ、先ほども申し上げたとおりであります。したがって、国際連合平和協力隊という自衛隊とは別個の組織とすることによって国連協力の部隊であることを明確にしようとするものであります。
 国連協力のために専門的に置かれている軍事組織は、いわゆる国連待機軍として北欧などで既に存在しておりますけれども、装備も訓練も通常の防衛任務に当たるものとは異なるものが必要でありまして、国連の平和活動に積極的に参加、協力しようとするためにはこのような組織を創設することが望ましいと考えたところであります。
 なお、国際連合平和協力隊は防衛庁長官の指揮監督のもとに入ることとしておりまして、我が国有事の際あるいは非常事態の際に、必要があれば当然防衛庁長官のもとに任務を遂行することができるといたしております。
達増委員 次に、自由党の非常事態対処基本法案について質問をいたします。
 この非常事態対処基本法案第二条「定義」のところにありますように、直接侵略または間接侵略のみならず、テロリストによる大規模な攻撃、大規模な災害または騒乱等々、国民の生命、身体もしくは財産に重大な被害が生じ、もしくは生じるおそれが生じ、または国民生活との関連性が高い物資もしくは国民経済上重要な物資が欠乏し、その結果、次が重要だと思います、国民生活及び国民経済に極めて重大な影響が及ぶおそれが生じ、通常の危機管理体制によっては適切に対処することが困難な事態、そういう広い非常事態に対処するための基本法ということで、今回の政府案であります古典的な国家間戦争、二十年前、三十年前から研究されていたそういうことについての有事法制よりも、より今日的課題に直接こたえるものだと思います。
 そのことについては指摘をさせていただきまして、この非常事態対処基本法案と政府の有事法制関連法案の違いの大きいところなんですが、自由党案は、国会の議決によって一たん出した非常事態の布告を廃止できるようにしてある。第五条で、政府が出した非常事態の布告を国会の議決によって廃止できるようにしてある。これはなぜでしょうか。
中塚議員 非常事態においては、内閣総理大臣のもとに権限を集中し、いかなる事態にも迅速的確に執行できる態勢をとらなければいけないというふうに考えておりますが、そういう意味で内閣の執行権を強化するということが必要になるわけですけれども、その行使はあくまでも国権の最高機関たる国会の承認を前提として行わなければいけないと考えております。非常事態自体が限界事例ということになりますが、そういう中でも、日本国憲法の基本原則の一つである国民主権というものはやはり最大限に絶対尊重されなければいけないというふうに考えております。
 したがって、第五条第五項におきまして、非常事態の布告が国会によって承認された後であっても、国会が廃止を議決した場合には直ちに布告を廃止しなければならないとの規定を設けたところであります。
達増委員 政府案では、一たん対処基本方針なるものがつくられ、それが国会の議決で承認されてしまった後は、それを途中で国会の議決で廃止することはできないようになっていますが、これはなぜでしょうか。
安倍内閣官房副長官 御承知のように、今委員が御指摘されたように、対処基本方針を定めたら直ちに速やかに国会の承認を得るということになっておりますし、また変更があった場合、あるいはまた予測事態からおそれ事態に移った場合はその都度国会の承認を受けるということになって、必要としております。
 そして、今御指摘の廃止するに際してのことでございますが、法案におきましては、対処措置を実施する必要がなくなったと認めるときは対処基本方針を廃止する閣議決定を行う旨定めておりまして、武力攻撃事態が終了し、一連の対処措置の必要がなくなれば、対処基本方針を速やかに廃止するということになっているわけでございます。
達増委員 国会と政府の関係についてはもう一つ自由党案と政府案の違いがありまして、自由党案は非常事態に関する国会報告というものを定期的に行わなければならないと義務づけてありますが、政府案の方では事態が進んでいる間の国会報告を義務づけていません。政府案は、対処基本方針を廃止したとき、事態が終わったときにはそれを報告することになっていますけれども、途中の報告はない。
 この点、非常事態というのは政府が暴走する危険性が常にあると思うんですね。したがって、非常事態において政府の暴走を国会がとめることのできる仕組みというのが非常に重要だと思うんですが、これは自由党に伺います。非常事態に関する定期的な国会報告、政府による国会報告を義務づけているのはなぜでしょう。
中塚議員 先ほど申し上げましたが、非常事態におきましては、内閣総理大臣のもとに権限を集中する必要がある一方で、国会には不断のチェックというものがもう絶対的に必要だというふうに思っております。
 内閣総理大臣は、非常事態の布告を発する場合にはあらかじめ国会の承認を得なければならないとしておりますし、非常事態の布告が廃止されるまでの間、国会の承認を得た日から六十日ごとに国会に対し非常事態及びこれへの対処に関する状況について報告をしなければならないというふうに規定をいたしました。
 もとよりこの規定がなくても内閣は国会の求めに応じて必要な報告を行うというのは当然だというふうに考えますけれども、非常事態の重要性及び権限を行使するに当たっての内閣と国会の緊張関係を常に保っておくということが必要であり、内閣に一定期間ごとに国会への報告を義務づけることが適当であるというふうに考えた次第です。
達増委員 質問の通告がちょっと後先いたしますけれども、自由党案では、平素から内閣が非常事態に関する基本計画を決めておくように規定されております。
 一方で内閣の案は、政府案は、この武力攻撃事態が発生した後に対処基本方針を決める、その対処基本方針の中にいろいろ定めることになっているわけでありまして、武力攻撃事態の認定、武力攻撃事態への対処に関する全般的な方針、対処措置に関する重要事項を対処基本方針として定める。武力攻撃事態に至ったときにそういう基本方針を定めるとなっておりますけれども、この全般的な方針というのが具体的にどのようなものかを伺いたいと思います。
 これが、例えば北海道への敵上陸を断固排除すべしといったような具体的な方針はなかなか内閣としては決められないと思うんですね。そんなことで現場を縛るのは難しい。一方で、抽象的、一般的な方針、例えば住民の避難は優先だとか、そういった一般的な方針であればむしろ平素から決めておくべきことではないかと思うんですが、この点、いかがでしょう。
安倍内閣官房副長官 対処基本方針に定める事項のうち、武力攻撃事態への対処に関する全般的な方針については、法案に定める基本理念を踏まえつつ、現実の事態に即して武力攻撃事態への対処に当たっての統一指針を示すことを考えております。
 具体的には、例えば外交上の基本的な方針、国の防衛に当たっての基本姿勢、国民の安全確保についての考え方などを現実の事態に即して必要に応じて記載することを考えているわけでございまして、基本的には、その個々の事態に応じた基本的な、外交的な姿勢等々も踏まえての指針を決めていきたい。
 なお、状況に応じて、必要とあらば個別具体的な地名等を記載することもあり得る、このように考えております。
達増委員 有事の際の政府のトップリーダーシップのあり方についてですけれども、政府案の第十五条のところで「内閣総理大臣の権限」とあるんですが、ここに「対策本部長の求めに応じ」云々とありまして、第十五条の中に内閣総理大臣と対策本部長が出てきて、内閣総理大臣は対策本部長の求めに応じこういうことができるとか書いてあるんですが、実は対策本部長というのは内閣総理大臣でありますから、同じ人なわけであります。
 政府首脳と官房長官が別々の人のごとくにやりとりして妙なことが起きた、最近そういうことがありましたけれども、総理大臣と対策本部長があたかも別々であるように規定されておりますと内閣と対策本部の関係でいざというとき混乱するのではないかと思うんですが、ここはいかがでしょう。
津野政府特別補佐人 お答えいたします。
 武力攻撃事態対処法案の第十五条におきましては、対策本部長による総合調整に基づく所要の対処措置が実施されない場合に、内閣総理大臣は、対策本部長の求めに応じまして、地方公共団体の長などに対し必要な指示等ができるという規定が置かれているわけでございます。ここで言う内閣総理大臣と申しますのは、内閣の首長たる内閣総理大臣を意味しているわけでございまして、対策本部の長たる内閣総理大臣とは法的に別人格、異なる人格を有するものでございます。
 このような規定といたしましたのは、法案第十五条の指示等を受けます地方公共団体の長等は、当該指示に従う法律上の義務を負うこととなりまして、このような強力な権限を対処措置の総合調整を主たる任務といたします対策本部の長に付与することは適当でないというふうに考えまして、内閣の首長たる内閣総理大臣の総合的な判断、強力なリーダーシップのもとで的確かつ迅速に行使することが適当であるということによるものであります。
 このように、対策本部長の権限と内閣の首長たる内閣総理大臣の権限は法律上明確に区別して記載する必要があるものであり、このような区別が内閣と対策本部の関係で混乱するというような事態はないというふうに考えております。
    〔米田委員長代理退席、委員長着席〕
達増委員 しかし、与党の議員から見ても何をするかわからないような人が総理大臣になっていたりしますと、暴走する危険性がありますし、また、内閣として総理を補佐しているスタッフ、今の内閣の官僚と、対策本部として総理を補佐する、多分防衛庁、自衛隊から来るんでしょうが、そのスタッフは全然違うわけでありまして、総理がもし優柔不断だと、スタッフ同士で総理を綱引き、右腕と左腕を引っ張るような格好になり、いずれにせよ問題であると思います。
 その点、自由党案は、対策本部のかわりに非常事態対処会議という、これは内閣の一部の閣僚が組織する、戦前で言う五相会議のような、まさに戦時内閣のような仕組みになっていて、非常にそこは現実的である。
 三十分たってしまいましたので終わりますけれども、さらにこの法案について審議していくことが必要だと申し上げて、終わります。ありがとうございました。
瓦委員長 次に、今川正美君。
今川委員 社会民主党の今川正美です。
 私は、先月の二十四日、この委員会でいわゆる防衛庁の情報請求者リスト問題に関しまして集中審議がございましたが、この審議を聞いてみまして、中谷長官を初め防衛庁の方は、いわゆる海自の三佐の個人的な発意に始まり、組織的なものではなかった、こういうふうに結論づけようとされておりますけれども、私は逆に疑念が非常に深まったと思っています。そこで、改めて、大きく三つに分けて質問をいたしたいと思います。
 まず第一点は、いわゆるこの「調査報告書」の公表経過に関しまして、一つ一つ確認をしてみたいと思います。
 まず、六月の十日の夕刻から翌十一日の深夜にかけまして、中谷長官を初め幹部が会議を開いた席で、いわゆる「調査報告書」と「調査報告書の概要」を提出するということが確認されたはずであります。その際には、いわゆる問題となりました文言、証拠隠しと思われても云々というところも盛り込んだ中身であったはずであります。
 そこで、六月の十一日の昼前、これは防衛庁が作成をしました、今回の「リスト事案等に係る発表用資料の作成経緯」、いま一つは「調査報告書等に係る事前説明等の概要」に基づいて今私は申し上げておりますが、十一日の昼前に、事務次官が首相官邸へこの文書を、報告書を持っていった。
 そして、同じく十三時三十分ごろ、一部の国会議員へ事前説明を計画し、約三十名の国会議員などに説明をしたというふうにございまして、六月二十八日、内閣委員会の理事会に提出をされた「事前説明等の概要」によりますと、少なくとも事前説明等を計画した議員等の主な所属先、これは一々全部を言いませんけれども、主なところだけを申し上げますと、自民党の政務調査会、国防部会、安全保障調査会、あるいは衆議院の当武力攻撃事態への対処に関する特別委員会などにかかわる、所属をしている与党の議員の皆さん方に事前の説明を行い、約三十名であったということでありますけれども、この事前説明を行った中に、この特別委員会の与党の理事の皆さん方は含まれているのかどうかをまず確認したいと思います。
中谷国務大臣 防衛庁といたしましては、当初の方針といたしまして、六月の十一日に、「調査報告書の概要」、「調査報告書」、防衛施設庁に関する調査結果及び「「個人情報」とは」の四つの資料を使用して官邸及び与党への説明をした上で、調査結果を正式発表する当初の予定時刻の十七時までに、与党三党の国会議員の中の防衛庁と御縁の深い議員や防衛関係の部会に所属する議員、さらに役職にある議員等、計百十一名に事前の説明を計画いたしました。
 このときには、非常に国会議員が多数に上りまして、短時間に説明などを行わざるを得ないことから、幹部職員が手分けをして説明を実施することとして、先方の都合により、アポイントがとれた一時半ごろから随時、院内や議員会館等を訪問いたしました。
 他方、事前説明の実施中の同日の十五時ごろ、防衛庁として発表用資料を「調査報告」とすることを正式に決定いたしまして、およそこのころまでに資料の説明をしたのは三十名でございました。
 これらの方々は、議員会館の事務所に在室されて説明を聞かれた議員と秘書の方に預けることとなった議員でございますが、説明を聞かれた議員の中にも、「調査報告書の概要」のみで説明を聞かれた議員と「調査報告」を一べつされただけの議員という例もございました。
 このように、防衛庁側の対応にも議員の方々の対応にもさまざまなことがございましたし、また、説明を受けた時刻に、前後、先後関係がある中で、たまたま説明を受けた、あるいは受けなかったということも、私どもの説明等の有無にかかわって無用の誤解が生じることにもなりますので、断定的に、「調査報告書」について説明を受けたとして、特定の委員会の理事であることを含めて個別に議員名を申し上げることは差し控えたいと存じておりますし、また、その中に衆議院の事態特委に所属される与党の議員も含まれたかどうかということにつきましても、私どもの説明等の計画の有無にかかわって無用の誤解が生じるということにもつながりかねませんので、お答えは差し控えたいと存じております。
今川委員 おかしいですよ。六月の十一日夕方の五時四十分から正式にこの特別委員会の理事会が始まるわけでありますが、その席で、きょうはここにお見えになっていませんが、与党の筆頭理事久間議員を初め与党の理事の皆さん方は、この防衛庁がつくった「調査報告」、四ページ物、これ以外は知らないと語気荒くおっしゃったんです。
 しかし、今、中谷長官の御説明を聞いていますと、いろいろと支障を来しかねないというような趣旨でありますが、どういう支障が生じますか。少なくとも、ここは委員会なんですから、できるだけというよりも一〇〇%正直にこの間の事実経過をはっきりしないと国民の不信を高めるばかりじゃないですか。だから、私は改めて一個一個を確認したいと申し上げているんです。
 次に、十一日の十四時から十六時にかけてとなっていますが、人事教育局長が与党の幹事長及び国対委員長へ説明をされた。その中で、既にこの間の集中審議でもそうですし、新聞報道等にもありますように、自民党の山崎拓幹事長を初め、我々がそういう報道等で知る限り、三十八ページ物のこういう分厚い調査報告はまずい、こういうものを出せば少なくとも三日間はかかってしまうだとか、「調査報告書の概要」というのも、一部、二十四日の防衛庁長官の説明書によりましても、十二ページに、「「調査報告書の概要」を若干修文した「調査報告」を作成」というふうに御説明があっているわけですが、このように、与党の幹事長や国対委員長に説明に行ったときに、この三十八ページ物は隠した方がいい、あるいは証拠隠しをしたと思われてもいたし方ないというふうな文言は削除した方がいいだとか、そういったことが言われたわけですね。
 これを圧力ととるかどうかは別の問題としましょう。おおよそ、与党幹事長、国対委員長に説明したときに、与党の皆さんからどういう話があったのかを要領よく簡潔にお答えください。
中谷国務大臣 与党の中の御意見につきましては、政府でございますので、その中身につきましては政党の議論でございます。
 ただし、私はその模様につきまして報告を受けたわけでございますが、その報告を受けた中身におきましては、「概要」は法理的によく整理をされているが、その中にある証拠隠しに係る記述については、証拠隠しを行っていないなら誤解を受けないような表現にする必要はないか、当該の記述は情緒的で回りくどいので、法理に照らしてどうなのか、もう少し明確な表現にする必要はないかという指摘がございました。
 私も、証拠隠しを行っていたと言われてもやむを得ず、不適切という記述をしておりましたけれども、この点について、誤解を受けないような表現、法理的な表現という観点で、単に不適切としたわけでございまして、文意につきましては変わってないということでございます。
 また、報告書はバックデータにすることも考えられるといった趣旨の意見もいただきましたけれども、私といたしましては、発表用資料につきましては、簡潔明瞭でわかりやすく、法理的な、端的な表現で書かれているものがいいと判断をいたしまして、この「概要」の記述をもとに「調査報告」と題する発表用資料を作成いたしておりまして、会見におきましては努めて丁寧に、この報告書に基づいて説明をいたしておりましたが、記者会見の記者の要求、また委員会においてこの報告書の提出の要求がございましたので、その時点でこの「調査報告書」を提出するということにいたしたわけでございます。
今川委員 いかにも、与党からの圧力で文言を修正したり、三十八ページ物が実はあったのに、あったと言われたくないものですから、苦し紛れの説明なんです。これは、この間の集中審議のときと同じ答弁にしかなってません。
 では、同じ日の十五時三十分、これは、そのときの官房長が与党幹事長や国対委員長へいわゆる新しい四ページの「調査報告」を提示したというようにありますけれども、そのとき、与党の幹事長や国対委員長の御意見、反応はどうだったんですか。
柳澤政府参考人 当時、私、官房長をやっておりまして、お届けをしたわけでございますが、三時ごろ、防衛庁の方で新たな公表資料をつくられていたということでございまして、私、たまたま国会の中におりまして、三時半ごろ、それを受け取って、新しい資料ができましたのでお届けしますということでお届けをしたわけでございますが、特に内容についての、私の方から報告あるいはやりとりといったものは行っておりません。
今川委員 いやいや、これはその二時から四時ぐらいにかけて、先ほど申し上げたように、与党の幹事長、国対委員長に持っていったのは、「調査報告書」三十八ページ物と「調査報告書の概要」だったわけでしょう、四ページ物。それを持っていって、いろいろ与党側から意見があり、一部修正をしたりして、今言いましたように、この「調査報告」という書きかえた四ページ物を示したときに、与党の幹事長や国対委員長はもう何もおっしゃらなかったんですか。例えば、うん、これでよろしいとか、その程度のやりとりはあっているんじゃないですか。いま一度、答弁ください。
柳澤政府参考人 私の方は、当時、基本的にはお届けするだけの形で行ったわけでございますが、そこで内容は特に私の方から御説明はいたしませんでしたが、それぞれごらんになって、はっきりした言葉を覚えてございませんが、この方がわかりやすいといったようなコメントといいましょうか、は伺ったように記憶しております。(発言する者あり)
今川委員 ちょっと黙っていてくださいよ。
 それでは、同じ日、十七時四十分から始まった事態特別委員会の理事会におきまして、調査報告書はないと言い張ったんですね。私たちは、その日、理事会が始まる前に、このような、同じ四ページですけれども、「調査報告書の概要」というふうに記されたファクスで手に入れたものがありました。野党四党ともこれは持っていたんです。
 ところが、防衛庁から示されたものは、先ほどから言いますように、「書の概要」というところが外れているんですね。私たちは、この「調査報告書の概要」という四ページ物を手にしたときに、概要という以上、あらましですから、当時、五十ページか六十ページに及ぶ調査報告書の本体らしきものがあるといううわさもこれは流れておったものですから、当然、概要がある以上は本体があるというふうに思うわけですね。しかし、実際、開かれた理事会では、この「調査報告」、四ページ物しかないというふうにおっしゃいました。なぜ、この「概要」という言葉を外されたんですか。
中谷国務大臣 その時点におきまして、それを防衛庁の正式資料とするというふうに決めたからでございます。
今川委員 いや、答えになっていない。「調査報告」なのか「調査報告書の概要」なのか、持つ意味が全然違うじゃないですか。「調査報告」だったら、あなたがおっしゃるとおり、たとえ分量が少なかろうがどうしようが調査報告ということになりますよ。ところが、そこに「概要」という言葉をくっつけておきますと、先ほど申し上げたように、「概要」があれば、本文、本体があるというふうにだれだって思うじゃないですか。だから、都合が悪いということで削ったんではないんですか。
 私は、今回の事態を非常に重大に見ます。一部報道によりますと、与党やあるいは防衛庁の内部で、今回の事件の核心は、リストを作成したことにあるんではなくて、そういう作成した経緯が、情報が漏れたことに問題があるというふうに認識しているやに一部報道もございます。
 しかし、中谷長官、少なくとも、先ほど申し上げたように、六月の十日から十一日深夜にかけて、あなたを初め幹部が集まった会議の中で、本来の「調査報告書」と「調査報告書の概要」をこの委員会にも提出をするということを一たん意思決定をされたにもかかわらず、経過の中で、与党の幹事長や国対委員長からいろいろなことを言われ、そして「調査報告書の概要」が「調査報告」というふうに文言が変わり、当初は少なくとも三十八ページの「調査報告書」の本体も隠された、こういう事態というのを私は非常に重大だと思います。
 少なくとも、長官、自衛隊の最高指揮官は総理大臣でしょう。今回のような事態、文書があるとかないとか、文言を削除したとかしなかったとか、これ自体も問題なんですが、しょせん与党の幹事長や国対委員長はこういう文書作成にかかわっては部外者でしょう。一たんこういう経過とか問題点を指摘されたときには、ごらんのとおり、そこにいたはずの与党の幹事長や国対委員長は部外者ですから、おれたちは知らぬ、責任はない、このようになってしまいます。
 こうしたほかの組織以上に厳格さが要求される防衛庁・自衛隊の指揮系統の混乱というものを長官はどのように認識をされますか。
中谷国務大臣 総理からは、国民にわかりやすく説明してくれというふうに御指示をいただいておりました。
 この報告書につきましては、発表の前の週であります金曜日の記者会見等におきましても報告書の存在を明らかにしておりましたし、また当日も報告書の提出を前提にいろいろな調整をいたしておりまして、私にとりましては、与党初めいろいろな意見を聞きまして、簡潔で明瞭でわかりやすく法理的に端的な表現で書かれているものの方がいいと判断をし、口頭で「調査報告書」の内容を説明したわけでございますが、この報告書につきましては、いずれ提出をしなければならないというふうに考えておったわけでございます。
 その後、委員会また記者からの要求に応じて提出をしたわけでございますが、当時の私といたしまして、精いっぱい判断をして努力をしたつもりでございますが、このことによりまして、国会また委員会初めいろいろなところに混乱を生じさせたことについては遺憾に思っておりまして、御批判につきましては謙虚に受けとめまして、国会の審議等の中で誠実にこの中身において誠心誠意説明をしていきたいと考えております。
今川委員 もう繰り返しませんが、この「調査報告」なりだけじゃなくて、こういう分厚い資料があった方が、より正確に具体的にわかりやすいというのははっきりしているじゃないですか。
 では、余り時間もございませんが、二点目に入りたいと思います。
 「調査報告書」の内容です。今回法的に違法とされたのは、海幕のA三佐と空幕のS及びT三佐のみ違法である、あとは言ってみれば不適切だが違法ではないという論理の組み立てでこの報告書はでき上がっていると思うんです。
 具体的にお尋ねしますが、例えば、イニシャルや名字だけで個人を特定できる情報が入っていないので個人の識別は不能であるというふうになっておりますけれども、しかしこれは、例えばほかのデータと照らし合わせれば特定できるケースもあるじゃないですか。実際に、総務省編集の逐条解説によると、一定の条件で検索して、その結果を別ファイルと照合することによって容易に本人を確認できる場合は個人情報であるというふうにきちっと規定していますよ。この点、いかがですか。
中谷国務大臣 今回基準といたしました行政機関の電算処理個人情報保護法は、行政機関における個人情報の電算処理の進展にかんがみまして、個人を識別できる情報を体系的に集積した個人情報ファイルをそもそもの対象といたしております。
 この進行管理表、御指摘のものにつきましては、まず個人名が記載されていない、またイニシャルや区分が記載されていますが、それだけでは特定の個人を識別できず、また他の情報と容易に照合して当該個人を識別できないということから、これらは個人情報を体系的に集積したものではなくて、個人情報に着目した電算処理が困難な構成になっているため、本法の規定が適用される個人情報ファイルには該当しないと判断したわけでございます。
 また、照合の点につきましては、この開示書のつづりというものは、内局及び陸海空幕の情報公開室においてそれらの室員以外が参照できないように厳重に保管をされている事情を勘案すれば、進行管理表に記載された内容は、法第二条二号の、当該情報のみでは識別できないが、他の情報と容易に照合でき、それにより当該個人を識別できる情報には当たらないということでございまして、これらを作成した者が違法行為を行ったと言えず、違法行為を理由とした処分を行っていないということでございます。
今川委員 実は、昨日、私、手に入れたんですが、我が党の保坂議員が都合五、六回、海幕及び内局各幕僚の作成した進行管理リスト一覧なり三等海佐が作成したリストなどについて提出を求めました。昨日やっと届いたんですね。この中も随分墨が塗ってありますが、先ほど私が申し上げたように、今回のリストを、それぞれ別ファイルを照合すると個人が特定できる。
 さらに、もう一点お伺いしたいと思うんですが、仮に識別できるものでも、情報公開法の事務に必要な範囲内であるという答弁も、考え方もあるようでありますが、請求書の記載以外からリストに盛り込まれた情報は、内局で百一件、陸幕で百四十一件、空幕で六件。情報公開法には職歴の確認などを定めた条文はありませんよね。しかも、総務省の個人情報保護室は次のようにしております。請求者が任意に提供した情報以外の情報をあえて収集し、電算機処理データに保有することは、情報公開法上の必要な事務の範囲を超えている。
 今回もまさにこれに該当するんではないですか、長官。
宇田川政府参考人 委員御指摘の点でございますが、それは海幕のA三佐の件とか、あるいは航空自衛隊の情報公開室のSとTだったですか、については先生おっしゃるように該当しますが、そのほかの内局、陸幕、情報公開室でつくった抵触すると判断した以外の空幕のリストについては、抵触しないというふうに判断したところであります。
今川委員 およそ答えになっていないと思います。
 今回、これは中谷長官、違法であるというふうに防衛庁が認定したのは都合四名ですね。今私が申し上げた二点を、仮に、やはり法の範囲を超える、法の規定を超えるというふうにやってしまうと、法違反者は結構な数に上ってしまう。だから、いろいろとへ理屈をつけて法違反者の数を絞り込んでしまった、私はそのように思うんです。
 いま一つお尋ねします。
 いわゆる自衛隊の調査隊の任務でありますが、その一つには、自衛隊に批判的な団体や個人の情報収集、身元調査、こういったことを任務としているはずであります。今回の事件の背景には、元調査隊員あるいは現在の調査隊員、そういったところにもともとこの海幕三佐もいたわけですね。それで、同僚と情報交換をしたとかいろいろなことが言われていますけれども、違法と知りつつも、リストを受け取ったり、あるいは上司がそれを引き継いだり、あるいは机の中に保管をしたり、なぜする必要があるんですか。違法だったら、上司に届け出る、上司の指示に従ってそれなりの処分をしてしまえば済むことではありませんか。
 たまたま今回、「調査報告書」では、別目的で利用したりしたようなことはないというふうに言いわけはされておりますけれども、問題は、そういうデータを、ファイルを保管すること自体に問題がありはしませんか。この点、いかがですか。
宇田川政府参考人 海幕のA三佐から受け取った中には、受け取って机の中に保管したりしておるのがおりますが、一切そのほかの用途に使っていないということであります。
 先生おっしゃるように、それを上司に報告すべきだという点はございます。したがいまして、それについては適切ではなかったと評価しまして、何人かは処分しているところであります。
今川委員 もう時間が来てしまいましたが、きょうの私の質問に対する答弁にしましても、長官、少なくとも、この海幕三佐、それに各幕僚の情報公開室長をこの場にきちっと呼んでください。事実の確認を一つ一つやっていきましょう。そうしないと、疑惑は全然晴れていないですよ。
 少なくとも、今回は、百名を超える情報請求をした一人一人の国民の人権の一部が侵害されたということが一番大きい問題なんです。内部で、だれがこんなことを漏らしたんだということを、犯人捜しをしているんだというばかみたいな話もありますが、冗談じゃないです。事の本質は、情報公開制度に基づいて請求したにもかかわらず、その人の身元調査までがなされてしまったという人権侵害問題なんです。そのためにも、私は、参考人をきちっとこの場に呼んでいただくことを申し上げまして、質問を終わります。
瓦委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時三十六分散会


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