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第1号 平成14年6月4日(火曜日)

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平成十四年六月四日(火曜日)
    午前九時二分開議
 出席委員
  経済産業委員会
   委員長 谷畑  孝君
   理事 伊藤 達也君 理事 竹本 直一君
   理事 中山 成彬君 理事 鈴木 康友君
   理事 田中 慶秋君 理事 河上 覃雄君
   理事 達増 拓也君
      小此木八郎君    大村 秀章君
      梶山 弘志君    阪上 善秀君
      根本  匠君    林  義郎君
      平井 卓也君    増原 義剛君
      松島みどり君    茂木 敏充君
      保岡 興治君    吉野 正芳君
      生方 幸夫君    川端 達夫君
      北橋 健治君    後藤 茂之君
      中山 義活君    松原  仁君
      山田 敏雅君    山村  健君
      漆原 良夫君    福島  豊君
      土田 龍司君    大森  猛君
      塩川 鉄也君    大島 令子君
      西川太一郎君    宇田川芳雄君
  環境委員会
   委員長 大石 正光君
   理事 熊谷 市雄君 理事 西野あきら君
   理事 山本 公一君 理事 奥田  建君
   理事 牧  義夫君 理事 西  博義君
   理事 樋高  剛君
      小渕 優子君    奥谷  通君
      亀井 久興君    阪上 善秀君
      菱田 嘉明君    三ッ林隆志君
      山本 有二君    小林  守君
      五島 正規君    近藤 昭一君
      鮫島 宗明君    田端 正広君
      武山百合子君    藤木 洋子君
      金子 哲夫君    西川太一郎君
    …………………………………
   環境大臣政務官      奥谷  通君
   参考人
   (社団法人日本自動車工業
   会副会長・専務理事)   鈴木 孝男君
   参考人
   (日本ELVリサイクル推
   進協議会会長)      酒井 清行君
   参考人
   (早稲田大学理工学部教授
   )            永田 勝也君
   参考人
   (弁護士)        梶山 正三君
   経済産業委員会専門員   中谷 俊明君
   環境委員会専門員     飽田 賢一君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 使用済自動車の再資源化等に関する法律案(内閣提出第八六号)


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     ――――◇―――――
谷畑委員長 これより経済産業委員会環境委員会連合審査会を開会いたします。
 先例によりまして、私が委員長の職務を行います。
 内閣提出、使用済自動車の再資源化等に関する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨の説明につきましては、これを省略し、お手元に配付してあります資料をもって説明にかえさせていただきますので、御了承願います。
 本日は、参考人として、社団法人日本自動車工業会副会長・専務理事鈴木孝男君、日本ELVリサイクル推進協議会会長酒井清行君、早稲田大学理工学部教授永田勝也君、弁護士梶山正三君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますよう心よりお願い申し上げまして、いい参考の連合審査ができますことを心より祈願いたしております。本日は、本当にありがとうございます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、御了承願います。
 それでは、まず鈴木参考人にお願いいたします。
鈴木参考人 ただいま御紹介いただきました自動車工業会の鈴木でございます。本日は、このような機会を与えていただきまして、ありがとうございました。
 ここ数年、自動車工業会にとりまして、自動車リサイクル法制定問題は最重要課題の一つでございます。この間、会員会社との意見調整あるいは協議、対外折衝の窓口等、自動車工業会はいたしておりますので、そのような立場から本日は意見を述べさせていただければと思います。
 御案内のように、自動車はこれまで、使用済自動車そのものが有効な資源と考えられており、一般的に価値のあるものとして流通してまいりました。そのために約七五%程度の高いリサイクル率を維持してまいったわけですが、極めて過酷な条件の中で長期にわたり使用されるという自動車の特性にかんがみまして、鉄を中心とする金属が多用されていることから、その回収・再資源化が既存のインフラの中で実施されてきたことによるものであります。
 金属類の回収を中心に行われてきました自動車のリサイクルは、金属回収の残渣としてのシュレッダーダストが発生し、そのほとんどが埋立処分にゆだねられてまいりました。九〇年代の半ばに入りまして、環境基準の強化に即した埋立基準の強化、あるいは地域環境問題に根差す埋立処分場の新規着工の減少等によりまして、処分場の逼迫が加速され、処分費用が高騰する中で、使用済自動車の流通形態が次第に逆有償化してまいったわけでございます。このような既存の自動車リサイクルの仕組みがいわば機能不全に陥る兆しが見え始めましてから、自動車のリサイクルに対する考え方というのはかなり変わってきたのかなと思っております。
 そういった中で、自動車業界といたしましては、平成八年度から四カ年にわたりまして、技術開発面で、シュレッダーダストの減容化等、大規模な技術開発を実施してまいりました。また、平成九年には、当時の通産省が産業構造審議会の検討を踏まえまして、二〇一五年までに自動車のリサイクル率を九五%までに向上させるという目標を掲げました、いわゆる使用済み自動車リサイクル・イニシアティブを策定いたしました。これを受けまして、自動車メーカーも、みずから果たすべき役割を自主行動計画といたしまして平成十年一月に公表したところでございます。お手元に自動車工業会の自主行動計画を配付しておりますので、後ほど御参照いただければと思います。また、この自主行動計画に沿いまして、フロン類の回収・破壊事業、あるいはエアバッグインフレーターの回収・破壊実証事業なども展開してまいったところでございます。
 しかしながら、埋立処分場の逼迫あるいは逆有償化の傾向は一層強まる中で、ECにおける廃車指令の制定、あるいは循環型社会形成推進法の制定等の流れの中で、平成十二年夏に産業構造審議会におきまして、将来の制度化を視野に入れた自動車リサイクルの検討が開始されたわけでございます。二年間にわたりまして、パブリックコメントを含めまして、十数回にわたる会議が開催されたと思います。また、平成十三年には中環審の同様な検討も開始されたわけでございまして、このような審議会に対しまして、私ども自動車業界からも委員を派遣いたしまして、積極的に参加してまいったところでございます。
 また、審議会の作業に機動的に対応するために、自動車工業会の中にリサイクル特別委員会を設置したり、十二のワーキンググループをつくりまして、これら審議会の活動に積極的に参画し、審議会の活動の中で、新たな仕組みづくりが必要である、あるいは循環型社会に適応するためにリサイクルが一層必要である、そういう認識を自動車メーカーも強めてきたものでございます。
 このような議論の中で、今回、民間の活力をベースとしまして、適切な公的関与を踏まえまして、実効ある自動車リサイクルシステムをつくるという案が提案されたわけでございます。私ども、これは大変時宜を得たものであると思っております。
 さらに、この制度は、リサイクル処理の適正化、処理の高度化を目標に、現在の関係事業者の役割を明確にし、競争原理を活用する、あるいは既存のリサイクルインフラというものを積極的に活用する、そういった考えのもとにできているものと思っております。
 政府が閣議決定いたしました後、私ども、お手元にお配りしてありますように、四月十五日付でプレスリリースを発表したところでございます。これを御参照いただけますれば、この新たな政府の提案の制度のもとで、自動車メーカーといたしましては、リサイクルシステムの中心的な役割を果たすということで、人的、資金的経営リソースを投入し、トータルの社会コストの最小化に向け、特に次の五つの点につきまして積極的に対応したいということを表明したわけでございます。
 一つは、リサイクルに配慮した車づくりの推進、それから、総合的リサイクルシステム構築の推進、また、リサイクル法ができました場合には円滑な実施体制の整備に最大限努力する、また、これまでやってまいりました路上放棄車処理協力の取り組みにつきましては引き続き継続いたします、それから、今回の法律に対象になっておりませんが、リサイクルの必要性があります二輪車あるいは商用車の架装物に対します自主的取り組みを実施いたします、こういった形で、私ども自動車メーカーの取り組みの姿勢を公表したわけでございます。
 今回の法律は、シュレッダーダストを含めまして指定三品目の引き取り及び適正処理、再資源化といった義務、あるいはリサイクルしやすい設計なり原材料、部品等工夫する、あるいはリサイクルを促進するために関連事業者に情報を提供する等の自動車メーカーの責務があります。こういったものが大変重要な役割があるものと認識しております。
 また、この自動車リサイクル法のシステムを運用するためには、総合的な仕組みというのが必要なのではなかろうか。七千万台を上回る既販車あるいは毎年販売される六百万台の新車、これを対象にしまして、リサイクル費用の徴収、管理あるいは適正な支出等行う、このために、移動報告、いわゆるマニフェスト等の電子情報システムを使いまして関係する十数万の事業者を結ぶいわばネットワーク、インフラ整備が必要だろうと思っております。こういったものには私ども自動車メーカーが積極的に対応し、このような不可欠なインフラ等につきまして、産業構造審議会にもありますように、中心的な役割を自動車メーカーが負ってまいりたいと思っております。
 また、本年十月には、昨年成立いたしましたフロン類の回収・破壊のカーエアコンについての実施時期が参っております。昨年、いろいろな経緯で法律ができました。私どもも一生懸命、このフロン法の施行を十月までにできるように、今最大限の努力をしておるところでございます。
 このように、車づくりにおけるリサイクルというものは極めて重要であり、私ども自動車メーカーといたしましては、この法律が成立した場合には、本法の的確な実施のために必要な体制の整備に主体的に取り組み、自動車のリサイクルが一層進展するように、またその中でトータルの自動車のリサイクルコストが低減され、ユーザー負担が軽減が図れるように、一層努力をして行ってまいりたい所存でございますので、皆様方の一層の御理解と御支援を賜りたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)
谷畑委員長 どうもありがとうございました。
 次に、酒井参考人にお願いいたします。
酒井参考人 日本ELVリサイクル推進協議会の酒井と申します。
 私どもは、北海道から沖縄まで全国四十一都道府県の千二百七十社の解体業者の団体でございます。
 本日は、私ども解体業者のために発言の機会をお与えいただきまして、本当にありがとうございました。私どもの立場から今回の自動車リサイクル法案を見たときにどう考えるかということについて、述べさせていただきます。
 自動車解体業者は、全国に五千社あると言われておりますけれども、今まで余り社会の制度の中に組み込まれることなく、比較的目立たない存在で、しかし自動車リサイクルという部分においては欠くことのできない役割を果たしてきたんじゃないかというふうに考えております。
 特に、零細が多くて、私どもの調査では平均従業員数が七・七人という数字が出ておりますけれども、これはアンケートの回答者が若干偏りがあるということで、多少大目な数字が出ているんじゃないかというふうに思います。実際のところは、大体四、五名ぐらいが平均的な数字ではないかと思います。
 この解体業者、五千社の解体業者が、それぞれの経営者としての一つの自覚を持って、それぞれが、小さいながらもみずからの企業を何とかしようという形で努力しているというその機能は、全体からすると非常に大きな役割を果たしているんじゃないかというふうに思います。
 特に中古部品について私ども解体業者は役割が大きいと考えるんですが、この中古部品というのはなかなか、例えば、欲しい、ニーズが高いものを幾らでも供給できるというものではございませんで、欲しいものはなかなか見つからないというような現実があります。したがって、発生してきた使用済自動車の中からできるだけ多くの中古部品を活用していくというには、それなりの経験それから販売ルート、人脈等々が必要になります。こういったことに全国五千の、それぞれ小さいながらも経営者の自覚を持った人間が携わっているという機能は、自動車のリサイクルにおいては相当大きなものがあるんじゃないかというふうに思っております。
 特に、日本は国土が狭くて走行キロ数が伸びません。年間平均一万キロぐらいと言われておりますけれども、ということは、近年、自動車の性能が向上したということに伴って余り自動車が壊れなくなっているということが言えるかと思います。そのために、比較的中古部品の需要が余り伸びないというような現象が、特にアメリカなどと比べると言えるのじゃないかというふうに考えております。
 そういった中古部品市場における自動車解体業者の役割というものをまずこの委員会で委員の先生に御認識いただければ幸いというふうに思っております。
 次に、我々の自動車解体業者が置かれている現状というようなものについて申し上げさせてもらいます。
 いわゆるプラザ合意以降の円高によって、特に鉄スクラップの価格が非常に低迷してまいりました。殊に平成十年以降においては、ほぼ昭和二十五年ころの価格統制時代の平均価格に近いレベルになっております。また、九〇年以降のバブル崩壊によって新車の販売台数が現在二五%近く落ち込んでいるということで、使用済自動車の発生も非常に少なくなっているというような現状があります。
 こういったことで、使用済自動車の発生が非常に少ない、玉不足の状態が続いております。したがって、各解体業者は仕事量の確保のために仕入れ競争を強いられているというのが現状かと思います。
 特に、自動車の流通過程において、使用済み車両になった以降は、それぞれ売り手側がより大きな影響力を持つという売り手市場になっているというような特徴がございます。そういった状況に置かれている解体業者は、鉄スクラップの下落あるいはその適正処理の費用の高騰というようなことにより、いわゆる排出業者から費用をいただかなければ業として成り立たない逆有償の時代が続いております。それにもかかわらず、使用済自動車の発生の少なさということが、適正なる処理料金をいただけないというような状況を生んでおります。
 適正な処理をしたい人が、費用が出ないためにできずにいる。それから、適正な処理をしているかどうかということが検証できないような結果になっているということで、リサイクル・イニシアティブとか事前選別ガイドラインといった行政による指導にまじめに従おうという業者がだれからも評価されない。むしろ指導に従わない業者の方がより競争力が強くなるというようなことで、悪貨が良貨を駆逐するような現状が起きているということが言えるかと思います。
 こういった今の状況を打開するためには、私どもとしては、きちっとしたルールを設けて、ルールから外れた者にはそれに応じた制裁が加わるというような仕組みが不可欠じゃないかというふうに考えております。そして、そのルールというのは、やはり自動車という商品特性を特に配慮したルールであるべきだということで、今回の自動車リサイクル法の制定については、基本的には私どもは賛成の立場におります。
 新しい制度は、既存の関連業界の活用ということを前提に置いて、適正処理のための費用の一部を制度によって保証していこうということで、特にこの既存の業界の高度活用という考え方については、私ども零細業者が多い自動車解体業界にとっては、業界の死命を制するとも言える重要なポイントだというふうに考えております。
 現状の不公平な競争、非常に厳しい経営を強いられている私どもからしますと、できるだけこの法律を制定していただいて施行していただけるようお願いしたい。そうしないと、環境に対する負荷がますます大きくなり、まじめな業者がますます経営が苦しくなるというようなことが進んでしまうということを御理解いただきたいというふうに思います。
 今回の法案で、適正処理対象物のうちで、フロンとエアバッグ、ASRという三品目が制度の対象として取り上げられました。これは非常に私どもにとってもありがたいことで、高く評価するものですが、このほか、この三品目だけでいいのかというと、私どもはそうではないんじゃないかというふうに考えております。まだまだその対象として考えていかなければいけない品目があるんじゃないかというふうに考えておりまして、それらについては、今後、流通のインフラを整えながら検討を加えていくことが重要なんじゃないかというふうに考えております。
 シュレッダーダスト、いわゆるASRがごみになってしまうのは、基本的には、あれはいろいろなものを一度にまぜてしまうからだというふうに考えます。あれをきちんとアイテム別、物質別に分ければ、資源として使える可能性はまだまだあるんじゃないか。経済性が伴うか伴わないかということが問題なわけですけれども、技術的にはそういうことが言える。その分ける仕事というのは、私ども自動車解体業者が一番安く、確かに、的確に行うことができる立場にいるんじゃないかということを申し上げたいと思います。
 法案の中では、自動車解体業者あるいは販売店あるいは自動車メーカーさんといったそれぞれ企業規模の相当違う関連業界同士がお互い連携をとらないと、制度がうまく回らないというようなことになっております。これらの隣接する関連業界が率直に意見交換できるような、例えば、どの業界にも属さずに公平な判断ができるような方を含めた常設の連絡協議会のようなものが必要なんじゃないかというふうに考えております。今後の検討をお願いしたいというふうに思います。
 それと、法案第三十四条には、指定回収物品の再資源化及びフロンの破壊、それらの回収料金について自動車製造業者が定めるということが義務づけられておりますけれども、これらの実務をするのは、私ども自動車解体業者であります。この料金設定に自動車解体業者の意見が反映されないというようなことは、私どもは不合理ではないかというふうに考えております。私ども解体業者の、実務側の意見が反映できるような仕組みにお考えいただきたいというふうに考えております。
 それと、八十二条では、移動報告の方法について電子情報によるという規定がございますが、これは、膨大な情報量を管理して不適正な流通及び処理を排除するためには、全く欠くことができないシステムだと思います。
 ただ、いかんせん、自動車解体業者は、関連業界の中でも一番IT化のおくれている業界ではないかと思います。したがって、我々はこれに前向きに取り組むんですが、そのための準備にいろいろ御支援をいただければというふうに思います。例えば、ITに対する教育それから情報端末の導入などについての応援をしていただければありがたいというふうに思っております。
 日本ELVリサイクル推進協議会では、インターネットを使った解体業者同士あるいは解体業者と需要者を結ぶオープンな情報交換システム、ELVインフォメーションシステムと申しますが、略称ELVISと申します、これを開発して、昨年の九月から運用を始めております。こういった私どもの活動にも御理解を賜って、政府からも応援をしていただけるようお願い申し上げたいと思います。
 それと、法案の六十二条第一項では、解体業の許可基準を主務省令によって定めるということがうたわれておりますが、今現在、私どもは、都市計画法に関する問題を抱えております。
 解体作業をする上では、やはりどんなに細心の注意を払っても、いろいろ液類が作業場に漏れたりということがあります。そのために、例えば床のコンクリート化、不浸透化あるいは排水処理施設等々必要だと思いますけれども、雨の多い日本では、やはり作業場の屋根ということも、実際、快適な作業環境を確保する、あるいは環境を守るといった上で非常に重要なことかと思います。
 ところが、私どものアンケート調査によりますと、全体の約四〇%の事業者が市街化調整区域に立地しているということがわかりました。御承知のように、この市街化調整区域においては建築が制限されておりまして、なかなか作業場に屋根がかけられるような環境にならないといったことが非常に大きな問題となっております。
 これに関しては、現在、廃棄物処理法による許可を取得している業者が千六百社余りいるわけですけれども、これは各自治体さんの判断によって、屋根がなくても許可をとれている地域、あるいは屋根がないために許可がとれない地域、あるいは雨の日は作業をしないというような条件で許可をとれている地域等々、自治体のさまざまな対応によって法律の公平性というものが損なわれているという現状があります。
 したがって、解体業者の許可基準に関しては、環境を守るということを第一にお考えいただいた上で、これに障害となる既存の制度に関しては、環境を守ることを第一にお考えいただいた上で、適正なる運用をお願いしたいというふうに考えております。
 最後に、許可基準についてもう一つ申し上げたいことは、もちろん環境を守ることが大前提となって基準が設定されるのは当然のことでありますけれども、施設が幾ら立派でも、作業内容やそれに伴う管理がついていかなければ、結果的には環境に負荷を与えてしまうことになります。例えば、油水分離槽を高いお金をかけてつくったとしても、作業が全くオイルの垂れ流しであり、あるいは油水分離槽の管理もされないとすれば、これは環境を守ることにはなりません。
 したがって、施設基準というのはお金がかかる基準ですけれども、これについては私ども自動車解体業者の体力というものに十分御配慮いただいた上で、必要にして最小限のものにとどめていただき、作業基準とか管理基準というものを併用した上で、適正なる処理と公平な競争ができるような基準にしていただきたいということが最後のお願いでございます。
 本日は、御清聴ありがとうございました。(拍手)
谷畑委員長 どうもありがとうございました。
 次に、永田参考人にお願いいたします。
永田参考人 早稲田大学の永田です。よろしくお願いいたします。
 産業構造審議会並びに中央環境審議会の場で、本法案の基礎となる議論をさせていただきました。それに関与した者といたしまして、このような場で発言させていただく機会をいただきありがとうございます。
 まず、自動車のリサイクルをめぐる状況、特に循環型社会へ向かっての動きについてお話をさせていただきます。
 二〇〇〇年、循環型社会形成推進基本法あるいはグリーン調達法を初めとする六つの法律の制定、改正が行われまして、循環型社会元年と記憶されることになりました。自動車リサイクル法案につきましては、こうした中で検討された最初の個別製品に対する法制化であるという点は重要なことだというふうに認識いたしております。
 まず、この循環型とはという点について述べさせていただきます。お手元に資料を配付させていただきましたが、図の一、一ページ目でございます。循環型のイメージということで、私なりの整理したものを挙げさせていただきました。
 循環型社会、一般的な理解では、いわゆるサステーナブルソサエティー、持続的発展が望める社会というのが一番妥当な言葉だろうというふうに思っています。すなわち、社会の入り口での物質資源あるいはエネルギー資源の使用の削減、また有害物質の使用の回避、あるいはそれを循環体系の中で使って拡散の防止を図るということ、また出口ではこうしたものの排出を可能な限り抑えるというのが循環型社会の基本であろうかと思います。
 こうした流れの中での社会全体としての効用の拡大、あるいはこれは製品個々においても同じような考え方ができるわけでございまして、製品の機能を高める、あるいはそれに使う資源量を減らすということが重要な視点だろうというふうに思っております。
 端的に言いますと、大量生産、大量消費、大量廃棄ということからの脱却でありまして、また、同じ効用ならそこで使用する資源や有害物質の使用を可能な限り抑制することを目標とする社会であるということが言えるのではないでしょうか。社会の内部では、リユースやリサイクルのさまざまな取り組みが多重、多層に組み合わされて効果的に行われることになると思いますが、これはあくまでも手段でございまして、さきに申し上げた目標というものとはまた異なるわけで、この手段を使って目標を達成するということを考えていかなくちゃいけないんだろうというふうに思っています。一般に言われていますように、大量生産、大量使用、大量消費、大量リサイクルということであっては循環型と呼べないということになろうかと思います。
 一方で、さきに触れましたような法律を含めまして、循環型社会の構築に向けての我が国の法体系、これは図の二の方で示させていただきましたが、このようなたて糸、よこ糸のマトリックス構造で表現するのが一番適当かというふうに思っております。詳細は省略いたしますが、製造から廃棄・リサイクルにわたる軸を持つたて糸としての個別製品に対する法律、それからよこ糸としてそれぞれ、製造、流通・販売、廃棄・リサイクルの局面に主眼を置いた法律が組み合わされておりまして、効果的な体系を構築しているものと判断しております。
 循環型社会の構築に当たりましては、これまで廃棄物のリサイクルとか処理といった点に軸足を置いておりました対応から、より上流サイドの製品の設計や生産までを含めた包括的な対応が有効でありまして、また重要であるということが指摘されておるわけでございます。こうした点について、まだまだ十分とは言えないかもしれませんが、我が国の法体系は、基本的にはその体制を持っているということが言えるのではないでしょうか。
 たて糸の個別製品に対する法律というのは、よこ糸の各施策を連携させて、それぞれのよこ糸の意図する循環型への対応を促進させ、相乗効果を生み出すように意識して構築していく必要があろうかというふうに思っております。
 このような法体系は、製品連鎖、プロダクトチェーンの中で循環型社会の構築を目指すものとしてOECDで議論されておりますインテグレーテッド・プロダクト・ポリシー、IPPと呼ばれておりますが、これにも合致しておりまして、また先取りしたものとして評価できるのではないかというふうに思っております。
 また、循環型社会の構築に向かっての我々の行動規範といたしましては、将来へのツケ回しをしない、あるいは将来予見されるような懸念に対してあらかじめ手を打つという未然防止の思想が大切でございますし、また一方で、共創、コークリエーションなんて英語で訳す方もおられますが、自立した関係主体がともに参加、協働して新たな関係や価値観をつくって問題を解決していこうという思想というふうにも理解することができますが、この点が非常に重要なのではないかというふうに思っております。
 法案の必要性については、二点に分けて議論できるかと思いますが、まず一点は、緊急かつ短期的な視点であり、また、言いかえれば廃棄物の視点でございます。
 先ほどの話にもございましたように、最終処分場の逼迫、これはかなり深刻な状況に至っております。ASRのシュレッダーダストの問題の根本的な解決が求められている。このためには、処理過程でのリユースやより高度なリサイクルの促進が重要であります。
 また、最終処分費の高騰あるいは鉄スクラップ価格の低迷等によりまして逆有償化が進展をしており、こうした処理費用が使用済自動車の引き取りの際に十分に反映されていない、あるいはユーザーから受け取った費用が本当に必要とするところに回っていないという御指摘も受けております。こうした流れの中で、既存のリサイクル体系が機能不全に陥ったり、あるいは崩壊の危機にあるのではないかということも言われておるわけでございます。
 さらに、フロンやエアバッグの回収・処理という新しい課題も発生しまして、上記のような状況がより一層加速されております。
 このような状況から、処理ルートの入り口での不法投棄、あるいは処理ルート内部での不法投棄や不適切処理の増大が懸念されておりまして、既存のリサイクル体系の信頼性の向上も求められているところでございます。
 また、中長期的な視点あるいは循環型社会へ向かっての視点という点で見てまいりますと、市民の環境意識の高揚を背景とした循環型社会への変革の中で、さきに述べましたような原則に適合した対応が求められております。廃棄物としての処理・リサイクルの適正化のみでなく、循環型社会の目標に向けて、製品連鎖の上流での対応も加速させる永続的な取り組みが可能なシステムの制度化が必要なのではないでしょうか。
 使用済自動車の廃棄・リサイクルの過程では、基本的には適正処理ルートへの誘導、これは入り口でございまして、内部では適正処理の推進、リサイクルの高度化、さらに出口ではASRの最終処分からの脱却というのが重要な視点だろうというふうに思っています。上流側の対応としては、三Rに代表されます循環型社会に適合した物づくりの推進が重要であり、こうした対応を実現するには、関係者の役割分担や義務づけ等が求められ、また、費用徴収や支払いのあり方に関しましても明確化が必要だというふうに判断しております。これが法制化につながるということになろうかと思います。
 法制化に当たって配慮すべき事項ということで一言述べさせていただきますが、まず第一に配慮すべき人たちというのは、関係主体として最も人数の多いユーザーだろうというふうに考えております。
 さきに述べましたような使用済自動車への対応と同時に、循環型社会の構築に向けてのユーザーの役割といたしましては、適正処理ルートへの使用済自動車の引き渡しと処理費用の負担、並びに環境配慮製品の購入の視点が重要であろうかと思います。現状の抹消登録システムでは、正直者が損をするというような体制になっており、適正に処理ルートに引き渡した者が報われるシステムへの改善が必要であります。
 また、こうしたことに対応しやすいシステムとすることが求められるのではないでしょうか。幸いにしまして、家電等の一般耐久消費財とは異なりまして、自動車には登録制度や車検制度があります。この点を有効に活用していくことが重要かというふうに思っております。また、費用の徴収に当たりましては、対応のしやすいという点から、排出時点よりも販売時点にそれを求めるのが適切だろうというふうに思います。
 一般廃棄物の有料化の進展にも見られますように、廃棄物処理には費用がかかって、その負担に関しましては支払いの用意のあることが市民の意識として定着しております。ただし一方で、その費用に関しましては合理性、すなわち納得のいくものかどうかということが重要視されております。また、環境配慮製品の購入の視点からは、その費用の明示ということも重要でございます。さらには、循環型社会への変革に適合した体制整備に寄与する費用設定のあり方になっているかどうかという点も問われているかと思います。
 二番目に重要なのは、適正処理の役割を担っていただく解体業や破砕業の方々でございます。
 家電とは異なりまして、使用済自動車のリサイクルに当たっては、既存のリサイクル体系が存在します。その最大限の活用が、社会コストミニマムで循環型の構築に寄与すると考えられます。また、こうした体制の構築が、今後の循環型社会へ向かう取り組みにも大いに力を発揮するものと考えております。
 そのためには、必要なところに適正な費用が充てられ、また、環境配慮に努力した業者が報われるシステムでなければなりません。これには、既存体系を動脈態様に戻し、ビジネスとしての高度化、健全化を図っていくことが望ましいというふうに思っております。こうして適正処理やリサイクルの実施の責任を果たしていただく。また、静脈でのリサイクルの実態を的確に製品設計等に反映させていただくような製造者との情報交換も重要であろうかというふうに思っております。
 役割として見た場合には、最も重要なのが輸入業者を含めた製造業者であります。
 リサイクル・イニシアティブに定めました二〇一五年の目標の達成を目指しまして、さまざまな局面、場面で中心的な役割を果たす必要があろうかと思います。OECDのEPRでの議論では、こうした中心的役割を、最終責任あるいは一義的責任、明示的責任という言葉で表現しております。
 ASRや指定回収物品、フロン類の引き取り・処理システムの整備等の実施責任に加え、新たに今般構築されるシステムの健全な機能の維持、目標が達成できるよう、総括的な責任を有するのが製造事業者の役割であろうというふうに考えております。これには、最後のA3の表で示しましたようなさまざまな付加的な役割が加わってくる。特に先ほどの話もありました、廃棄物の物流管理として重要なマニフェストシステムの構築、あるいは費用収受の仕組みの実現、費用に係るリスクの負担、リサイクルの高度化、関係者の取り組みを促進する各種情報提供システムも含まれるかと思います。さらに、最も重要なのは、三Rに配慮した製品の開発、提供ということでございます。
 このほか、関係者といたしまして引き取りを行う者にも、ユーザーの費用の支払いの確認や次工程への使用済自動車の適正な引き渡し、リサイクルされたかどうかの確認等が求められます。加えて、上の方に書きましたように、国、地方自治体の役割も重要かというふうに思います。
 今後の課題といたしましては、自動車リサイクルを進めるに当たって、引き続き検討していかなきゃならない課題を幾つか挙げさせていただきます。
 まず、先行実施されるフロン回収・破壊法への対応です。それから、離島問題への対応、あるいは放置自動車への対応、さらに、海外への中古車やリサイクル部品等も含めた全体としての使用済自動車のフローの把握、あるいはリサイクル率のモニタリング方法の確立、加えて、ASRのリサイクル技術、特にケミカルあるいはサーマルリサイクル技術の位置づけでございます。また、既存の不法投棄されたりあるいは野積みされております車両につきましても、法制度の施行の前にこれを片づけていかなくちゃいけないものと思っております。また、現状のタイヤやバッテリーのリサイクルシステムとの連携強化を図り、これを一体的に解決していくということも求められようかと思っております。
 循環型社会を実現していく、実態として動かしていくのは、市民と動脈あるいは静脈にかかわる事業者であります。この両輪の関係がうまく機能するよう、国や地方自治体はサポートをしていかなければなりません。今般の法律をジャパン・モデルとしてその優位性を欧州の制度と比較するなら、先ほど申し上げた共創の思想に基づき、自立した関係主体がパートナーシップを組むシステムとなっていること、また、廃棄物としての処理・リサイクルのみでなく、より上流の物づくりへの効果的なフィードバックを意図したこれからの循環型社会の構築にも資するシステムになっている点を強調してよかろうかと思います。
 終わりに当たりまして、図二の下の方にも示しましたように、循環型社会の構築は、ここに掲げたような法律だけで実現できるとは考えておりません。さまざまな制度の中、社会システムの中で配慮がされることが望ましいというふうに思っております。
 以上で私の発言を終わりにさせていただきます。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
谷畑委員長 どうもありがとうございました。
 次に、梶山参考人にお願いいたします。
梶山参考人 弁護士の梶山でございます。
 お手元にレジュメがあるかと思いますが、一応この線に沿って、今四十九分ですから四分までの間でお話ししたいと思います。
 まず、私の立場ですが、廃棄物関係の紛争に四十件ばかり、現在まで弁護士としてかかわっております。一つは現場から見た問題、それから、弁護士会として十数年、今法制度の問題を研究しているグループに属しております。そういう二つの点からお話ししたいと思っております。
 まず、現時点の状況をどう見るかということなんですが、これは要するに、この法案の提案理由として述べられているところですが、まず平成九年五月に自動車リサイクル・イニシアティブができまして、この内容としては、当時の状況把握、問題点の把握という意味では一応首肯できるものがあるだろう。これに沿って自工会等が自主行動計画として、先ほどちょっとお話がありましたが、事前評価改善ガイドラインとか、ガイドラインの中で、素材選択とか複合素材の解消、材料の表示、それから解体分離の容易化などを打ち出してきたわけです。これは、その自主的な取り組みとして評価できるだろう。民間の自主的な取り組みでも相当程度のことは本来はできる、こう考えております。
 では、このままでいいのかといいますと、それは決してこのままでいいとは思っておりません。いいとは思っておりませんが、例えば、今度の法案の中で、既存の解体システムを生かしながら、エアバッグとかフロンとか、場合によっては、求めがあればASRとか、そういうものをメーカーが個別に対応していく、これはこれで評価できるシステムだろうと思います。
 しかし、法案の中身と、それから法案で言われている緊急性、不可欠性として言われている部分というのは、はっきり言いますと、問題点の解決にこの法案がなるとは考えられないというのが最初に私が申し上げたいところです。民間の自主性で、あるいは市場メカニズムを活用しながらできる部分と、公的な関与でやるべき部分とがはっきりと区別して認識されていない、過剰な公共関与であるというのが一つは私の印象であります。これはまた後で個別に申し上げたいと思います。
 釈迦に説法ですが、法制度をつくる、あるいは法制度を設計するという言葉もよく使われますが、その当該法制度を必要とする社会的事実、これを立法事実、こういうわけですね。その立法事実という観点で見ますと、この法案の中で大きなものとして三つ挙げられていると思います。
 一つは、最終処分場の逼迫です。
 最終処分場の逼迫、私は、最終処分場の現場での状況という意味では、恐らくここにいらっしゃる方の中では一番よく知っているだろうと思っています、これはおこがましい言い方かもしれませんが。平成十一年度に確かに許可件数は激減しました。残余容量がそのあおりを食って急に落ちた、これも事実であります。ただ、これは、いわゆるミニアセスメントが導入されて新法への対応がおくれたということと、駆け込みの許可申請が前年に膨らんだためであって、状況としては、ここ十数年ほぼ残余年数としては変わりはないだろう。これはまたいずれもとのレベルに戻る状況であろう。それを言うにはそれだけの根拠があるわけですが、今ここでそれだけの話をする時間がありませんので。
 それからもう一つ、実際に、岩手クリーンセンターとか大阪フェニックス等を見ていただきたいんですが、ごみが来なくて困っているという状況があります。つまり、処理コストの高いところはごみが来ないで困っている。これは現実としてあるわけです。
 それから、第三番目に、この法案が最終処分場の延命を考えている、これは当然のことですけれども、この法案の内容との関連性が大変希薄である。つまり、この法案がなくても、最終処分場の延命化、ASRの最小化、埋立容量の最小化、これは別個にできる話であって、この法案との必然的なかかわりはない、こう考えております。
 それから、不法投棄対策でありますが、不法投棄対策につきましては、道路運送車両法の十五条の抹消登録制度と公的機関による適正処理証明とを連動させるということでもって、自動車の場合には極めて効果的な対策ができるはずでありまして、まずそういうものに手をつければ、相当程度の効果は期待できる。つまり、適正処理証明がなければ自動車所有者は永久に自動車税を支払わなければならない、そういうシステムをつくるということですね。
 それから、最後に逆有償化との関連、これは確かに大きな問題ではあると思います。
 逆有償化については、この法案の最も大きな問題は、逆有償化したから、しつつあるから、その部分をエンドユーザーからお金を集めて取ろう、基本的にはそういう発想でできていると私は思うわけでありまして、この辺は大変安易な発想ではないかと思うわけです。既存の解体システムをどうやって守るかということは大変大きな問題ですが、これは後でまた申し上げたいと思います。基本的な考え方としては、逆有償化になった、では、その分、金で埋め合わせようというのは、もちろんこれはやり方によるわけですが、要するに、簡単に言うと、これから申し上げるあしきリサイクルを固定化することになりはしないかというのが私の最も懸念するところであります。
 リサイクルとか循環型社会ということがしきりに言われるわけですが、リサイクルというのは、これは資源を循環するだけではなくて、そこに資源を投入しなくてはいけない。リサイクルのための資源の投入が絶対に必要なわけであります。それから、リサイクルの過程でまた新たな廃棄物も生みます。資源の浪費も起こります。それから、環境汚染という現象も起きます。そういうトータルとしてのリサイクルというものをどう構築するかというのが最も大切な点でありまして、そういう意味でいいますと、まず、そのリサイクルがこのまま続けていいかどうかというリサイクルの、つまりあしきリサイクルとそうでないリサイクルというのは、基本的にはそのリサイクルが廃品回収業として成り立つかどうか、これがやはり、一面的ではありますが、最もリサイクルの質を測定する方法である、こう考えます。
 つまり、逆有償化ということは、それにかかるコスト、あるいはこのコストに代表される資源とかエネルギーとかあるいは環境汚染防除施設等のためにさらに新たな資源の投入を必要とするということでありまして、こういう逆有償化したリサイクルというのは、基本的には縮小していかなくてはいけない、あるいは逆有償化を根本的な部分で改めるようなシステムがそこに入ってこなくてはいけない、こういうふうに考えるわけであります。
 そういう意味でいいますと、先ほどのお話にもありましたが、逆有償化から、それを本来、つまり、そこにエンドユーザーからの金を投入しないでもリサイクルとして自立するかぎを握っているのはやはりメーカーであろう、私はこう思います。そうすると、メーカーにどういうインセンティブを与えるかということが最も大切な点でありまして、エンドユーザーから金を集めて逆有償化を補うというのでは、これは逆有償化は固定化してしまいます。つまり、そこからさらに質のよいリサイクル、簡単に言いますと、処理コストを下げながら質のよい再生資源をそこで生み出す、プラス、マイナスとしてプラスに行くようなリサイクルを生み出すというインセンティブが逆に働かなくなってしまう。つまり、エンドユーザーがそこを埋め合わせてくれるわけですから、そこまでの努力をしないでも業界としてはやっていける、あるいはメーカーとしてもやっていけるということになるわけであります。そこに一つの大きな懸念がある。
 まず、その金の集め方の問題でもって、エンドユーザーから集める理由として、受益者負担論ということがこの法案の議論の中で出てきております。私は、受益者負担論でもってエンドユーザーが金を払うべきだというのは、大きな不公平を生むことになると考えております。
 これはどういうことかといいますと、どんな製品にも、プラスの部分、つまり便益を与える部分と、それが環境に出た場合にマイナスの部分を与える、つまりプラスの面とマイナスの部分とがございます。例えば、FRPを使ったために処理費用が極めて大きくなる、それから、複合素材を使ったために処理が極めて困難になる、環境汚染を起こす、あるいは、言い方は悪いですが、意図的に短寿命化されている製品も間違いなくたくさんございます。
 短寿命化されているために処理コストがかかるというものについて、これは、エンドユーザーから見れば、自分たちはそれによって何の便益も受けておりません。しかも、自分たちは何もコントロールできない。つまり、情報もないし、本当にこれが環境に優しい製品かどうかということは、エンドユーザーから見ると、コントロールもできないし情報もない。そういう状況の部分を受益者負担論でもってエンドユーザーに負わせるというのは、これは逆にマイナス面をそのまま固定化するということになるのは、これは経済的原理からいっても当然のことであろうと思います。
 そういう意味でいいますと、まずメーカーが処理費用、逆有償化部分を負担する。その上でメーカーはそれを最小化するための努力をする。これは当然のことですね。メーカーとしては、利益を最大にするために最小化するための努力をする。それでも吸収できない分は、当然価格転嫁システムを通じてエンドユーザーが負担するわけであります。こういうシステムの方が、同時にインセンティブも働くし、受益者としては、受益者なりの負担も、応分の負担はするという意味で、最も公正な負担が最終的には実現するだろう、こう考えております。
 それで、あとちょっとだけ、何点かお話ししたいんですが、一つは、今回の法案の中で、公的な資金管理ということが出ております。これは、法案をつくる段階で、十年後に使うであろう費用をあらかじめ概算して集めて、それをメーカーが管理するのか公的な管理機関を使うのかという部分があったわけでありますが、そこには大変大きなフィクションがありまして、つまり、十年後の費用が現時点で適正に算定できるというとんでもないフィクションがここに一つ入っている。
 それから、今の企業会計の中で考えれば、これを分離して費用を十年後までとっておくというのは、極めて非効率的な企業会計の考え方であろう。簡単に言えば、私の先ほどの考えで申し上げれば、メーカーが吸収できないものは価格転嫁という考えであれば、これは生産コストの一部と考えて処理すれば何の問題もないわけでありまして、そもそも資金管理云々という話は最初から必要ないわけであります。
 それから、公的資金管理をすると、一万円で済むものが二万円になる、五千円で済むものが一万円になる。これは、管理法人の運営維持の費用も全部そこに含ませるという話になりまして、支払いシステムから何から全部そこに費用として入れてくるということになると、当然こういう非効率的な、しかも市場メカニズムを経験しない外郭団体がそういう資金管理をするというのは二重の意味で問題があるだろう、こう思います。
 それで、基本的には、今回の法案の議論の中で出てまいりました議論をちょっとだけおさらいしてみたいんですが、一つは、私の申し上げたメーカーに対する環境保全型製品設計へのインセンティブがあるかという点について、二つの指摘があったと思います。つまり、一つは、車種ごとに差別化して料金を算定するんだ、その料金を比較することによってユーザーは環境保全型製品かどうかということは区別できるじゃないか。それからもう一つは、十年後に処理費用は上がるかもしれない、上がるかもしれないんだけれども、集めたお金でもって処理するということであるから、メーカーはその間にそのリスクを最小限にするためにいい処理をできるような製品設計あるいは処理技術を磨くではないか、こういうことが言われているわけですね。私は、これはある意味では大変ばかげた話だと思います。
 車種ごとの差別化の話ですけれども、これは、車種ごとに全部差別化する、あるいはそれが適正に反映しているということを保証するすべもありませんし、それから、現実にこのような差別化はほとんど不可能であります。同じことが家電リサイクルの場合にも言われたわけですね。家電リサイクルは、差別化すると言いながら一律になりました。恐らくそういう可能性は極めて高いだろう、こう思います。
 それで、購入時と廃車時の費用変動のリスクをメーカーが負担する、これがインセンティブになるんだという話ですが、これも実はほとんど考えられない話であります。つまり、これは管理法人が資金管理するわけですね。それは企業内部に留保されているものではありません。ですから、そこで、実際に安くなるか高くなるか、両方の場合があり得るわけですが、どちらの場合にしても、環境保全型設計へのインセンティブというものは働かないと私は考えます。
 最後に一言申し上げたいんですが、三Rということが循環型社会ということでしきりに言われるわけですが、一番根元にあるリデュース、これが今回の法案でもすっぽり抜け落ちていると思います。
 一九九五年、七年前ですが、七年前にスウェーデンのボルボ社を訪ねまして、そこの環境担当役員と話をしたときに、こういうことを言っていました。ボルボ社はスウェーデン国内の車の四〇%を占めているんですけれども、その環境担当役員が、我々の車はスウェーデンの都市を破滅に陥らせている、これ以上車をふやしてはいけない、ボルボはこれから公共交通に力を入れる、こういうことを言ったんですね。
 当時のスウェーデンの国土面積当たりの車の密度は、当時の日本の約十八分の一です。その十八分の一という密度でありながらボルボ社の環境担当役員がそういうことを明言したということは、我々大変ショックを受けたわけですが、要するに、日本は車が多過ぎるんだ、やはりそこの原点に返った議論、それから車をもっと長寿命化しなきゃいけない。その場合に、産業界がもっと深刻な不況に陥らないかということは当然あるわけですが、それを両方をクリアする方法はこれは当然あるわけでして、その問題がもっと真剣に議論されなくてはいけない。やはり根元のリデュースを忘れてはいけないと思います。
 どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
谷畑委員長 どうもありがとうございました。
 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
谷畑委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菱田嘉明君。
菱田委員 おはようございます。自由民主党の菱田嘉明でございます。
 四人の参考人の皆さん方には、大変お忙しい中、きょうのこの連合審査会に御出席をいただきまして、ただいま大変貴重な御意見を賜ったところでございまして、まことにありがとうございます。
 それでは、時間もございませんので、早速質問に入らせていただきたいと思います。
 先ほどもお話のございましたとおり、我が国では、年間約四百万台の使用済自動車が解体処理をされておるわけでございまして、大変莫大な数になるわけでございますけれども、それだけに、今回の自動車リサイクル法、これは循環型社会の構築の面から大変重要な意味を持つ法律である、このように認識をいたしておるわけでございます。
 使用済自動車のリサイクルに関しましては、何と申しましても、自動車を製造するメーカーの役割が大変大きいわけでございます。自動車を製造して売ってしまえばいいというものではないわけでございまして、自動車を設計する、あるいは製造する段階から、廃棄物の発生量を少なくする、そして解体をしやすいように工夫する、こういうことが大変大事なことであるわけでございます。また、解体業者など関係する業者に対しまして、自動車の構造やあるいは解体方法などに関する情報を広く提供することも必要ではなかろうかというふうに思うわけでございます。
 そこで、自動車工業会の鈴木さんに質問をさせていただきますけれども、自動車メーカーが、このリサイクル法をきっかけとして、自動車のリサイクルにどのように取り組んでいこうとされておるのか、先ほども御意見をいただきましたけれども、改めてそこの点についてお聞きをいたしたいと思います。そして、何が一番重要な点である、どのようにお考えになっておるのかをお聞かせいただきたいと思います。また、今回の自動車リサイクル法、これは、使用済自動車の発生の抑制、あるいは再利用、再使用などに十分な効果があるのかどうか、メーカーの立場から見てどのようにお考えになっておるのかをお聞かせいただきたいと思います。
鈴木参考人 お答えいたします。
 平成十年に自主行動計画をつくりまして、今先生の御指摘のように、やはり物づくりの面からリサイクルを促進すべしという心構え、基本方針は出したつもりでございます。
 しかしながら、自動車の場合、関係事業者が大変多い、あるいは自動車のメーカーの競争も厳しい、そういう中で、リサイクルしやすい物づくりを設計段階からする、あるいは、その生産なり流通、使用済み後のものに対してどうするか、そういうリサイクルチェーンというものを構成するには、やはり自動車メーカーだけの力では難しいのかな。
 また、二〇一五年、九五%という目標を出したわけですが、この目標のためにも、シュレッダーダストを少なくする、あるいはシュレッダーダストそのものをさらにリサイクルする、そういったようなことの技術開発等も心がけてまいったわけであります。
 しかしながら、三Rを進める、あるいはリサイクル技術を向上する、そういったことについて、自主行動計画で私どもいろいろな面で関係する事業者にも働きかけ、あるいはメーカーの意識改革もやったわけですが、そういったものをさらに法律的に再確認し、そして、それをベースにして今度は関連事業者を含めました一つの体系をつくる、こういったことが今回の法案の趣旨ではないかな。それは、従来のメカニズム、民間の活力を生かしながら、しかし、ある程度の公的な管理を必要最小限やりながら、そういう形で、今の循環型社会、リサイクル率の向上、あるいは有害物質の適正な排除というものを行うのかな。
 そういった意味で、自主行動計画という形で取り組みますし、その一環でまたフロン等もやりましたけれども、そういった場合に、やはり十数万の関連事業者があり、あるいはユーザーの方に正しく理解していただく、そういった意味からいって、この新しい法案といったものは自動車のリサイクル促進に大変効果があるものと私ども確信しております。
菱田委員 ありがとうございました。
 今の御答弁の中に、民間の活力を生かす、こういう言葉があったわけでございますけれども、次に解体業者に関して質問をさせていただきたいと思います。
 今回のリサイクル法では、解体業者の許可制を導入いたしております。これは、適正な解体が行われるように、つまり環境問題の解決のためにこれは当然なことだというふうに思うわけであります。
 しかしながら、一方で、これまで長年解体業をやってきた業者の中には、許可がとれるのか、あるいは仕事が続くのか、こうした不安を持っている業者も多いと思います。現行の産業廃棄物処理業の許可をとっている業者は全体の三〇%程度だというふうに聞いておるわけでございますけれども、許可をとるためにせっかく資本を入れて設備投資をしても、仕事が回ってこなければ大変な事態になるわけでございます。今までは使用済自動車が回ってきたけれども、新しい制度になった途端に仕事がなくなった、こういうことになっては困るわけでございます。業者からは、メーカーが中古部品市場に参入をしてくるのではないかとか、あるいは系列化が進んでメーカーと取引関係がない業者は厳しいのではないか、この法律によって業者がつぶされるのではないか、こういう心配をする声もあるわけでございます。
 そこで、解体業者である酒井さんにお伺いをいたしたいと思いますけれども、解体業者の皆さん方はこの法案をどのように受けとめておるのか、また不安に思っていることはないのか、率直な御意見をお伺いいたしたいと思います。
酒井参考人 私なりの考えを申し上げます。
 今の委員の御指摘の中で、許可制にどの程度自動車解体業者が対応できるのかというような点につきましては、冒頭に申し上げた意見の中にもありますけれども、許可の基準をどう定めるかという部分にも大きくかかわってくるかと思います。過大な設備投資を強いるような許可基準ですと、これはなかなか我々の自動車解体業者の体力では対応し切れない部分も出るのかなというふうな不安がございます。
 しかし、当初に申し上げたように、設備投資をすれば必ず環境が守れるのかという点についてもよくお考えいただきたいというふうに思います。必ずしもそうではないということで、お金のかかる部分についてはミニマムにとどめていただいて、しかし環境はしっかり守れるというような基準にしていただければ、私どもは十分対応が可能なんじゃないかというふうに考えております。
 また、現状は非常に不公平な競争を強いられている、すなわち、まじめにやる人は負担がふえて、上手にやる人には、環境に若干負荷を与えても余計利益が入ってくるというようなその現状を見ますと、これは許可制度を取り入れてきちんとしたルールに乗せるということは大事かというふうに思います。
 それと、例えばメーカーさんが中古部品業界に参入すると、我々の仕事がなくなるんじゃないかという御指摘がございましたけれども、これは私はそうは考えておりません。いろいろな方が中古部品に携わることによって供給力がふえる。供給力がふえるということは、市場が拡大するということにつながってくると思います。したがって、すべて中古部品にかかわる業者にとってはチャンスがふえるのではないかというような見方をしております。
 それと、新しい制度によって一生懸命準備をした業者に仕事が回らなくなるんじゃないかというような御指摘についてですが、これは私は、この法案が着実に実行されるとすれば、きちんとした許可業者のところには、それなりに仕事は回ってくるんじゃないかというふうに考えております。
 以上です。
菱田委員 どうもありがとうございました。
 私は、二年前まで京都府の八幡市という市の市長をやっておったわけでございますけれども、ここには解体業者が約五十ぐらいございまして、全国的に見ましても業者は大変多い地域でございます。さまざま方法で解体を行っておりまして、中には必ずしも環境保全対策が十分でない業者もおったわけでございます。そのために、自動車解体を原因とする公害対策、これが長年市政の大きな課題の一つでございました。
 私の経験から見ますと、率直に申しまして、自動車メーカーさんは、しばらく前までは、どちらかといえば、使用済自動車の処理には余り関心を払ってこなかった、むしろ目を背けてきた、このようにも思うわけでございます。そのこともありまして、資本力のない零細な解体業者が、いろいろ問題もありましたけれども、長年にわたってこの廃車処理の役割を担ってまいったわけでございます。この法律によりまして、自動車産業の最終部門を支えてきたそうした零細事業者が消えざるを得ないような事態が起きないようにしていただきたい、このことを強く願うものでございます。
 そこで、今回の法案を見ますと、メーカーが解体業者からシュレッダーダストあるいはフロン類、エアバッグ、これを引き取る、つまり既存のリサイクルルートを活用する仕組みになっておるわけでございます。一方、家電リサイクル法では、使用済みとなりました家電製品そのものをメーカーが引き取ることになっております。それと同じように、自動車の場合も、使用済自動車そのものをメーカーが引き取る、こういう考え方もあるわけでございます。
 梶山さんと永田さんにお聞きをいたしたいわけでございますけれども、自動車の場合にはどちらの方法がより適切だ、このようにお考えでしょうか。また、特に永田さんは、中央環境審議会あるいは産業構造審議会の自動車リサイクルに関する議論の取りまとめ役であった、このようにお聞きをいたしておるわけでございますけれども、この点に関して審議会ではどのような議論があったのか、そういうことについても御説明をいただきたいと思います。
谷畑委員長 永田参考人。手短にお願いします。
永田参考人 先ほどもちょっと申し上げましたが、循環型社会の構築、これを社会コストをミニマムで実現するには、既存のリサイクル体系、これを活用するのが望ましいということで今回のような形になっておるわけでございます。また同時に、社会としての永続性等のような問題も配慮事項としてあったかというふうに記憶いたしております。
 家電と違いまして、自動車の場合にはこうした既存システムが存在する、これが七五から八〇%のリサイクルを達成してきたという実績、これは大きく評価できるものだと思いますが、ただ、時代の進展に伴いまして、それでは十分じゃないという認識が出てきたわけで、その既存ルートの高度化、健全化あるいは信頼性の向上というのがこれから求められる対応だろうというふうに認識しております。
梶山参考人 自動車メーカーが引き取るというシステムは、確かに欧州の方では何件もあるわけですが、私は、基本的には日本の場合には、既存のシステムを使った解体業者が引き取るべきだろうと思っております。それは、メーカーが引き取ると、恐らくこれは家電の場合と大きく違いまして、いずれにしてもメーカー自身が処理するのではなくて、やはり既存のシステムを使わざるを得ない。これは物流を複雑にするだけだということが一つです。
 それから、先ほどからお話のありました既存の業者をどうやって、先ほど、悪貨が良貨を駆逐するという話がありまして、これは産廃処理業界に限らず廃棄物処理業界に共通した困難なテーマがあるわけですが、そういう意味でいいますと、これは既存の業界をどうやってきちんと育てていくかということに関しては、やはりメーカーとの連携が大変大事でありまして、今資金管理の点で、その点今回の法案では、解体業者に直接お金が行かない、そこに若干の問題があるような気がしております。
菱田委員 貴重な御意見どうもありがとうございました。
 私は、この法律によりまして、メーカーの生産者責任、これをより拡大させた上で、メーカーから解体業者まで、いわゆる自動車関連業界全体が協力をして、リデュースあるいはリユース、リサイクル、こういう面で成果が上がる、このことを期待いたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
    〔谷畑委員長退席、大石委員長着席〕
大石委員長 川端達夫君。
川端委員 民主党の川端達夫です。
 参考人の皆さん方、きょうは、大変お忙しいところ、貴重な御意見をお述べいただいて、ありがとうございます。
 初めに、四人の皆さんにお尋ねをしたいんですけれども、自動車を廃棄したときの処理をどうしていくかという大きな国民的課題に今回法案が提出されたわけですが、それぞれのお立場での御意見の中でも、全部なのか一部なのかは御意見の差があったと思うんですけれども、ユーザーが何らかの負担をしなければならない、こういうことにおいては共通をしていたと思うんです。
 そこで、実は、ユーザーにとって自動車を持つことによる負担というのは、他国と比べて過剰な負担を税の部分においてしているのが現実であります。それで、いわゆる自動車の税負担は九兆円。それで、特にいろいろな項目で税を取られる。そして、その上に、今回、リサイクルのコストの負担をしなさい、こういうことになるわけです。リサイクルのコストの負担は当然ある部分は必要であろうということの理解は私はあると思うんですが、それならば、税金の体系、自動車に関するユーザーとしての税体系は見直してほしい。トータルとしては、要するに自動車を持つことによる税の負担は一緒ないし軽くなってしかるべきであろう。
 最近のいろいろな、永田町を中心とする、霞が関を中心とする部分の政治の不信の中に、いわゆる税が、納めているけれどもきちっと使われていない、使ってほしいところに使われずに、余計なところに使っているんではないかという批判が非常に強い。そういう中で、こういう新たな負担を求めるというときに、自動車に関する、例えば取得税というのは、一種のぜいたく税としてできたんではないのか。今、車がぜいたくなものなのかということから見て、そういうことではないんではないかという議論が我が党の中にも随分たくさんあります。
 しかも、今回のこのスキームでは、輸出をする場合には払った分は返しますということになっている。ということは、目的以外には使わないということで、目的税化しているみたいなものなんですけれども、こういう部分の観点での自動車関係諸税と今回のリサイクルのユーザー負担ということについて、どういう御見解、御見識を持っておられるか、お聞かせいただきたいと思います。
鈴木参考人 私ども自動車工業会も、昨年、自動車の税制に関する中期ビジョンをつくりまして、先生御指摘のように、自動車諸税が複雑でかつ割高である、そういったことで、できれば、取得段階、保有段階あるいは使用段階、それぞれ一つずつぐらいの税制にしたらどうか、今の取得段階で、むしろ消費税と自動車取得税というのが重複するんではないかというような意見を提案しております。また、来年度からも、道路五カ年計画、現在審議中でございますが、道路の整備も新しい考え方で必要になる、そうなれば、今の暫定税率というものはどうするんだろうかというような観点で、自動車諸税につきましては、簡素化、軽減化ということを私ども強く訴えていきたいと思っております。
 ただ、今回のリサイクル費用、これの徴収の問題とは、このコストを、ユーザー負担を軽減するということは絶対必要でございますけれども、税金の今の自動車諸税のあり方、地方財政あるいは特定財源その他いろいろな、もろもろの要素の中の自動車諸税の簡素、軽減という議論とこのリサイクルコストとは少し違うのかな、リサイクルコストについては、別の観点から今回の費用徴収というのが決まったのかなと私ども考えております。
酒井参考人 私ども自動車解体業者からしますと、いわゆる拡大生産者責任という考え方にはある理解はできるんですが、基本的にメーカー責任を余りにも追求する余り、メーカーによる系列化、寡占化ということを一番危惧いたしております。
 それと、メーカーが負担すれば消費者の負担にならないのかという点についても私どもは疑問を持っていまして、結果的には消費者も負担することになるんじゃないか。結果的に消費者が負担することになるのであれば、その負担した費用は、透明性を確保できる、メーカーの財務とは別の管理をされて、消費者がきちっと監視できるような仕組みがベターじゃないかというふうに考えております。
 以上です。
永田参考人 税の問題、直接的に自動車リサイクル法の検討の中では議論を進めたわけでございません。
 ただ、一点重要な点は、自動車重量税の還付の問題でございまして、これは、使用を取りやめた、道路を走らない車に関してはこういう税について支払った金額の中で割り振って還付していただく、インセンティブとしては非常に重要な点か、適正ルートへの誘導として、費用の面でも、そういう意味では適正な行為をした者に報われるシステムになっているんだろうというふうに考えております。
 日本全体でのお金の使い方等を含めて、これから環境へのシフトというのがもっと重要性を増してくるかと思いますが、税制の問題は税制の問題として、またその中で議論をしていただければというふうに思っていまして、今回の場合には、自動車に絡む問題としての可及的速やかな新たなリサイクルシステムの構築という視点だけで議論してまいりましたので、直接的に、先ほどお話のあった点は議論をしてきませんでした。
 以上です。
梶山参考人 二点だけ申し上げたいと思います。
 自動車関連税としては、私はむしろ、自動車取得税よりも、軽油引取税あるいは揮発油税の方が日々の負担としては大きいだろうと考えています。この燃料関係の税金というのは、道路財源にほとんど充てられているわけでありまして、むしろ道路をつくる圧力になっている。そういう意味でいいますと、不要な道路とかそういうものがいまだにどんどんつくられるというのは、一つは燃料関係の税金が大きな問題がありまして、これはぜひ見直す必要があるだろう、そう考えています。
 それから、先ほどのお話の関連で、今回のユーザー負担というのは、自動車ユーザーの一つの負担の一部として考えるべきだろうと思います。考え方としては、先ほど酒井さんの方から、ユーザーが出してそれを透明性のあるところで管理した方がいいじゃないか、こういうお話がありましたが、私はそう考えておりませんで、やはりメーカーが負担して、価格転嫁システム、二次的な負担という形でユーザーが負担すべきであろう。
 それから、透明性という点でいきますと、今の生産コストというのは、本来、透明性は最初から放棄しております。これは、今の企業会計の中で、私は不要な規制だろうと考えています。我々が買う一つ一つの製品は、例えばA工場でつくられた製品には、遠くの工場の設備投資で入ったものも全部含まれているわけでありまして、企業はその程度の裁量権がないといわゆる生産活動はできないわけであります。
 以上です。
川端委員 酒井さんにお尋ねをしたいんですけれども、どのような仕組みをつくっても、本当にいわゆる静脈産業と言われる解体業を主としてされる部分が経済的にやっていけるシステムでないと、全く機能しないということになるわけです。我々としても、その部分が今日までいろいろな状況の中で御苦労されながら頑張ってこられたことに敬意を表するものでありますが、その部分で一つ、今もおっしゃいました、いわゆるメーカーからダイレクトという部分が、系列化ということによる懸念を非常にお持ちである。これは、廃棄物でなくて本体の製造業の地点でも、いわゆる親会社からずっと系列までの部分というのはいろいろな部分で、下請、孫請という部分でもよく問題になる議論の一部であります。
 この部分で、トータルとしては賛成と言われたのですけれども、先ほど届け出許可の問題を含めていろいろ御指摘されたのですが、ここは絶対にちゃんとしてほしいという部分と、この部分に関してはどうしてもきちっとしてほしいという点、業としてやっていくのに生命線にかかわる部分が、この法律にかかわることがあるのであればおっしゃっていただきたいのが一つ。
 それから、三品目以外の部分にもう少しやればいいじゃないかという議論があります。ここの部分は、広げていくとしたら、それはどういうふうに処理していくのか、費用はどうするのかということが実はまだ全然明らかになっていないわけなんですけれども、この部分に関しての基本的なお考えをお聞かせいただきたいと思います。
酒井参考人 今回考えられている新しい法案の中で、私どもが一番不安といいますか懸念している部分は、まず、都市計画法による建築規制の問題、これによって私どもの作業環境が向上することができないというところは一番懸念するところでございます。
 それと、基本的に地方自治体に許可の権限が移譲されるというような方向で考えられておるものですから、今現在、廃棄物処理法においての許可の基準が地方自治体によって相当ばらつきがあるというところがありまして、車という商品は相当広域に流通するものですから、商品の特性にそぐわない結果になっているということが挙げられると思います。したがって、新しいシステムの中では、そういった地域によるばらつきというものはミニマムに抑えていただきたいというところが一番懸念されるところです。
 三品目以外では、タイヤあるいはLLC等については、既に私どもは処理費用を負担して処分業者に処理していただいております。環境負荷物質としては、まだほかにも廃油とかあるいはバッテリーとかラジエーターとかというような部品が挙げられるかと思いますけれども、そのほかにも、再利用が可能なものとして、例えばガラスですとかあるいはプラスチックというようなものが挙げられるかと思います。これを再利用するためのコストをどう出すのかという点について、私ども具体的なアイデアはまだ持っておりませんけれども、こういったものが流通する、再使用されるようなインフラの確立がまずは大事なんじゃないかというふうに考えております。
 以上です。
川端委員 いわゆる循環型社会という側面というか見方での自動車の今回のとらえ方と同時に、その部分で私が申し上げたかった初めの部分は、それでユーザーがどかんと負担されるというのが本当にいいのかということと、それから循環していく部分の静脈産業がきちっと成り立たなくては全く成り立たないということなんですが、もう一つの大きな社会的な関心として、不法投棄が非常に多いということが言われております。
 先ほど梶山先生は、罰則を強化するあるいは仕組みを考えればという御提示がありました。私たちも、そういう部分が一方で非常に欠けているのではないか、もう少し知恵を出すという側面が必要ではないかと思っているのですが、永田先生、いろいろな部分で、議論の中でも、いわゆる循環型社会の中での自動車リサイクルという観点と同時に、並行的に不法投棄問題というのは当然大きな問題としてあったというふうに思うのです。不法投棄をなくすためにという目的ではないにしても、間接的には相当大きな使命をこの法案は担っているはずなんですけれども、この法案で著効が見られると思っておられるのかということと、バックアップする罰則とかそういうことに対する別の側面の、先ほど梶山先生言われたような、そういう手法というのがどうしても必要なんではないかと我々思っているのですが、その部分に関しての御見解をお伺いしたいのです。
永田参考人 不法投棄については、発生原因あるいは発生場所としては、二カ所考えられるのかと。一つはユーザーが適正な処理ルートに渡さないような格好での不法投棄、それから処理ルートに入ってからの不法投棄、この二つがあろうかと思います。
 どちらかといいますと、なかなか所有者が見つからない、捨てた人がわからないというのは、後者の処理ルートに入ってからの部分でございます。そういう視点からいいますと、両方を防がなくちゃいけないんだろうということになろうかと思います。
 前者につきましては、先ほど話がありました登録制度の改正であるとか、こういう点が重要であり、また費用徴収時点というのを、排出時に取らないということも有効に寄与するというふうに考えておりますし、またルート内部での不法投棄につきましては、ここを動脈対応に戻すということで不法投棄は大幅に減少するだろう。そういう意味で、この法案によって不法投棄はほとんどなくなる方向に向かうのではないかということを期待しております。
 また、万一不法投棄が生じた場合等につきましては、それはきちっと厳しく罰していくシステムがないといけないんだろう。これは、先ほどからの話にありますように、努力した人が報われるというシステムの裏返しの話かというふうに思っています。
川端委員 時間が参りました。終わります。どうもありがとうございました。
大石委員長 田端正広君。
田端委員 公明党の田端正広でございます。四人の参考人の皆さんには、きょうは大変に御苦労さまでございます。
 最初に、永田参考人にお尋ねいたします。
 長年にわたってこの法案の取りまとめに御尽力されたことについては、大変敬意を表したいと思いますが、いろいろ先ほどお話ございました循環型社会形成推進基本法、私もこの法律の制定にかかわった一人として、これが軸になりまして関連個別の七法案がこれによって整備されたことになります。そういう意味では、循環型社会に向けての法体系が、これで一つの大きな枠組みはできたかな、さらにまた改良あるいは修正、そういったことも必要かと思いますが、しかし、二十一世紀日本の社会の枠組みとしては大きな第一歩がこれで進むことができた、こう思うわけでありますが、まず、先ほど来議論になっている拡大生産者責任という原理、それから排出者責任という原理、この二つの原理というのは循環型社会形成推進基本法の中にも触れられていることでありまして、私は、二十一世紀の日本の社会の枠組みとしてはこの二つの原理というものは大変大事だろう、こう思っております。
 そういう意味では、今回、自動車リサイクル法の中にも明確にこの二つの原理が示されたということは非常によかった、こう思っておりますが、まずその点について、今回の自動車リサイクル法の存在感といいますか、大変大きいものを感じるわけですが、永田参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
永田参考人 おっしゃられるとおり、排出者責任、あるいは便益者責任といってもいいのかもしれません、それとEPR、拡大生産者責任というのは重要な視点でございました。
 EPRの議論というのは、基本的には、先ほど申し上げたような、長寿命化を志向したような三R設計あるいは製造する責任、それから不要になった、使用済みになったものを回収する責任、回収したものをきちっと処理する、あるいはリサイクルする責任、それぞれ製品の状況によりましてこれらの責任の分担とか取り上げ方が違ってくるのかもしれませんが、そういう意味では、かなりの部分を今回自動車リサイクル法でも取り入れたというふうに考えております。
 以上です。
田端委員 それで、多少ちょっと危惧する点がございますので、審議会の中での議論等も踏まえてお答えいただきたいと思いますが、一つは、新車購入時にこの費用を負担して、そして現存している車については、流通している車についてはリサイクル券によって最初の車検時、こういうことになりますと、今これは平成十四年で、二年六カ月以内に施行となりますと平成十六年じゅうという感じになりますが、平成十六年にこれが施行になった場合に、車検が一回目来るのが平成十九年、そういうことになりますが、その平成十九年までの間に、不法投棄といいますか、そういった現象が出るんではないかという、その三年間の間に廃車になる人が、もうそれじゃ金を払わないで捨ててしまえ、こういうことになるんではないかという一つの危惧であります。
 それからもう一点は、つまり、日本には七千万台という車が現在あると言われておりますが、そういう意味で、七千万台掛ける二万ということになれば一兆四千億という大変なことになるんですか、だから、これは大変な大きな金額になるわけでありますが、ここは国民の協力、国民の理解がなければこのシステムそのものは私は成り立たない、こういう感じがいたします。
 そこで、そういう透明性、公平性といいますか、そういったことをどう国民の皆さんに理解していただくように努力をするのか、ここが大切なところだと思いますが、審議会等の議論も踏まえてお答えいただきたいと思います。
永田参考人 本制度施行まで、それから既販車に対しましての第一回目の車検が来るまでの対応なんですが、これは過渡的対応というふうに考えられるんだと思います。現状でも、廃車に対して費用負担が求められている地域が多いというふうに思っておりますし、その状況が大きく変わるということにはならないんだろうというふうに思います。
 そういう中で、できるだけ、先ほども申し上げましたようなこれまでに野積みされた車とか不法投棄されたものも片づけていく努力が必要で、ここは恐らく国、地方自治体、それから産業界あわせて協力しながら進めていかなくちゃいけない話だろう、その中の一部ということになろうかというふうに思っています。
 あと、費用負担等をお願いする国民の方々には、もちろんその意味合い等も含め、先ほど申し上げたように、納得できるものなのかどうかというようなことも含め、十分な説明をしていかなくちゃいけないし、またお預かりした金につきましては、きちっと管理できる、安全に管理できるという形、それと同時に、むだ遣いはしないんだという発想のもとでの透明性、使途ということに関して十分に監視していかなくちゃいけないだろうというふうに思っていますし、本制度でもそういう扱いになっているかというふうに思っております。
田端委員 鈴木参考人にお尋ねしたいと思いますが、鈴木参考人とは私も、昨年、一昨年来、フロン回収・破壊法の制定をめぐって大変議論をさせていただきました。それで、ことし十月からフロン回収・破壊法が施行になるわけでありまして、そういう意味では、いわばこの自動車リサイクル法の前倒しといいますか、一歩先をこのフロン回収法が行くわけでありますが、そういった意味では、これが今回の自動車リサイクル法といかに連結、連動するかということが大きな問題だろうと思います。
 そういう意味で、今フロンの方、準備が順調にいっているのかどうか、そして、フロンがまずことし十月から出発して、その二年後に自動車ということになれば、そこをどういうふうに連動させていかんとしているのか、その辺のところをお尋ねしたいと思います。
鈴木参考人 昨年のフロン回収法はまさしく自動車リサイクル法の先駆けだろうと思っております。あのフロン類の回収・破壊法のときも、排出者責任あるいは生産者責任、いろいろの議論がありました。その議論というものが自動車リサイクル法の審議会にも大変大きく影響し、その審議を促進したという面もあろうかと思っております。そういう大事なフロン類回収・破壊法のカーエアコンについての施行が十月に迫っておりますが、私どもの準備はこの十月に向けて現在鋭意やっております。
 現在、国の審議会の方もこの六月に最後の審議会があると思いますが、そこで方針が出ましたら、フロン券の話、あるいは請求の二重支払いをチェックする情報システム、そういったものの仕上げができると思っております。
 情報システムにつきましては、自動車リサイクル法のときにも参考になるのかなというふうには感じておりますが、このフロン法の情報システムだけでも、正直申して、昨年からことしまで私ども自工会で十億円以上の予算で一生懸命やっております。これがうまくいけば、先生の御指摘のように、十月のフロン法の施行というのに間に合うのではないかな。できましたら七月にきちんと説明会をやりまして、関係事業者への周知徹底、国民への理解、協力をお願いできればと思って、国の方にも準備方の促進をお願いしている次第でございます。
田端委員 この自動車リサイクル法は、これは大変そういう意味では画期的な法律であり、私は、産業廃棄物といいますか、ごみ処理における、産廃処理における最後の大きな法律だ、こういうふうに痛切に感じますが、そういう意味においては、各社がこれからどういう素材を使って、どういう設計でできるだけリサイクルできるようなシステムにするんだという技術革新といいますか競争が、どんどんやっていただくという意味では大変大事だ。そして、それが国民の皆さんに、どこのメーカーの車はどういうふうになっているということがオープンに情報が公開されていかなければ、国民の皆さんとの間の上で気持ちがつながっていかないんではないか、こういう感じがいたします。
 フロンの場合も、これはそういった意味で国民の皆さんの理解がなければこの仕組みが動かないと思いますけれども、まずフロンで動かしていただいて、そして平成十六年から施行になるこの自動車リサイクルで自動車メーカーみずからが、そういう意味ではメーカー責任としてそういった創意工夫を国民の皆さんに情報として提供して、各社ばらばらではなくて、できるだけ統一したような情報が提示されていくような仕組みをつくって、そして協力を得ていく、こういうことが大事か、こういう感じがいたしますが、その点についてお尋ねしたいということであります。
 それから、例えばタイヤとか発炎筒とかこういったことに関しての取り組みがまだ全くなされていませんが、それらはこれから課題になっていくと思いますけれども、その点について自動車工業会としてはどういうお考えなんでしょうか。
鈴木参考人 今回の法案で自動車のメーカーの責務というのが先生のおっしゃるような形で明確にされております。そういったことで、自動車メーカーも最近、産構審での審議等も踏まえながら、リサイクルに関する技術の研究所を新たにつくるとか、あるいは環境関係のスタッフを強化するとか、そういった動きが顕著になっております。そういう各メーカーのリサイクルしやすい設計あるいは原材料の工夫、そういった情報は的確に関連の事業者あるいは自動車のユーザーに伝わるように、今回の法律にもいろいろの仕組みはございますが、私ども自動車工業会もこの法律の精神を生かしながら情報の提供に努めてまいりたいと思っております。
 また、タイヤ等につきましては関連の工業会がございますが、そういった工業会ともこのリサイクル関係、緊密に連携をとっております。
 基本的には、そのタイヤ関係の工業会がさらに自主的なリサイクル促進あるいは情報の提供があろうかと思っていますが、私どもも自動車工業会として緊密に連携をとってまいりたいと思っております。
田端委員 有害物質もたくさんあると思いますね。鉛、水銀、カドミ、六価クロム等々、たくさんまだ使用されているわけでありますから、この点についても、ぜひ国民の皆さんに不安を残さないようにお取り組みいただきたい。
 それから二輪車ですけれども、これも今回は対象外になっていますが、しかし、実際問題は不法投棄の中には二輪車もたくさん含まれているわけでありまして、これもまた大きな問題かと思います。この点についてお考えがあれば、どうぞお願いします。
鈴木参考人 有害物質につきましては、EUの四品目等と同じようなことを私ども自主的にやっておりますので、先生の御指摘のようなことで、十分情報提供を進めていきたいと思っております。
 それから二輪車につきましては、先ほどのプレスリリースで、私どもの今後の取り組みの中にも最後の五番目として書かせていただきましたけれども、現在自主的な形で、法律は、自動車リサイクル法の対象にはなりませんけれども、これと同じような形で、二輪の特有性を踏まえつつ、リサイクル促進のためのイニシアチブというんでしょうか、そういったものを現在関係する委員会で議論しておりまして、なるべく早く、自動車リサイクル法の施行に合わせまして、二輪関係の自主行動計画が対外的に発表できるように鋭意努めてまいりたいと思っております。
田端委員 酒井参考人にお尋ねいたします。
 フロンの方が先に発車するわけでありまして、今そういった準備に入っているかと思いますけれども、つまり私は、経済的インセンティブがあって、そしてこれは商売になる、そういうふうに業界の方が御判断になればこのシステムがうまく稼働するんだと思います。
 そういう意味で、ぜひフロンでまずしっかりとお取り組みいただきたいと思うわけでありますが、自動車のリサイクルに関しては、なおまた設備投資が大変たくさん要るかという感じもいたします。そういう意味で、見通しといいますか、率直な御感想をお示しいただきたい。
 例えば地域的バランスなんか、五千社の業界の中、バランスがうまくいっているんだろうか、こういったことも心配でありますし、それから自動車の中に、これから廃油とか廃液とか、こういったことをどう抜き取るかといったことも、先ほど油の問題出ておりましたが、そういったことも大事だと思いますが、こういう技術についてもまたいろいろ工夫していただかなきゃならない、こう思いますけれども、その辺も踏まえて、自動車メーカーに対する御意見があればまた言っていただいて、よろしくお願いしたいと思います。
酒井参考人 フロン法に対する取り組みというか準備は、私どもことしの四月以降登録を順次進めておりまして、回収機等の導入、これは去年御支援いただいて回収機を入れた業者も二千社ほどあるというふうに聞いておりますが、準備が進んでおります。
 ただ、フロンの回収費用について、冒頭の意見陳述で申し上げましたけれども、これはメーカーさんが現在一方的にお決めになるというような中身になっておりまして、これについては私どもも少し異論があるところで、私どもの現場の意見も反映した上で回収費用は決められるべきじゃないかというふうに考えております。
 それと、今後解体業が許可制になるということで、過大なる設備投資が懸念されるという御指摘については、私は大きな設備投資がどうしても必要だというような基準は必要ないんじゃないかというふうに考えております。これは基準を設定する段階で私どもも意見を述べさせていただきますけれども、十分対応可能な基準にしていただく、しかし環境はきちんと守れるという基準ができると思いますので、そういった基準にしていただきたいというふうに考えております。
 それと、廃油、廃液等については、回収というものが設計の中に取り入れられていないといいますか、回収しやすいような設計になっていないということが挙げられます。
 例えば冷却液等は、我々、どう一生懸命回収しようとしても、どうしても三割、四割、半分近くのものは車の中に残ってしまうというような事実がありますので、こういったものについても、これは回収しやすい設計にしていただかないと、なかなかきちんとした回収が難しいのかなというふうに考えております。
 以上でよろしいでしょうか。
田端委員 梶山参考人にお尋ねいたします。
 今回の法律とEUにおける自動車のリサイクルの取り組みとの違いといいますか、その辺はどういう感じなのか。それから、先ほど来お話しになっている、あるべきリサイクルのあり方といいますか、そのことについて、なお課題として、今回、施行後、どういうところが大きな問題点になっていくのか、もしお考えがあればお示しいただきたい、こう思います。
大石委員長 参考人に申し上げます。
 もう時間がとっくに過ぎておりますので、端的にお答えいただきたいと思います。
梶山参考人 端的に申し上げます。
 EUとの一番の違いは、基本的にエンドユーザーに費用を負担させないのがEUの基本原則である、そこが一番大きな違いである。それは現実問題としては大変、かなり本質的な大きな違いであろうと私は理解しております。
田端委員 どうもありがとうございました。
大石委員長 樋高剛君。
樋高委員 自由党の樋高剛でございます。
 きょうはお忙しい中を、お時間を割いて御高説賜りまして本当にありがとうございました。
 まず、梶山参考人にお尋ねをさせていただきたいと思います。
 先生は、環境政策論御専門でございます。今回、自動車リサイクル法ということで、私は方向性としてもちろん大賛成でありますし、循環型社会、これから構築をしていかなくちゃいけない、これは時代の流れであるというふうに思うのでありますが、今回の法律案、どうしても一点気になりますのが、余りに大がかり過ぎるんじゃないか。環境に対する一つの哲学の考え方だと思うんですけれども、余りにちょっと重厚長大過ぎるんじゃないか。今やはり二十世紀を終えて新しい二十一世紀という時代の流れになって、環境政策というのは、ある意味で簡素である、つまりシンプルであるということも一方では求められている一つの哲学ではないか。
 私のような若輩者が哲学などと言うのは大変僣越な話でありますけれども、今回の仕組み、システム、費用の管理、情報の管理、それを一生懸命やろうということは私はわからないでもないんですけれども、それがゆえにどうしても全体が大きくなり過ぎてしまっているという感が否めないですし、そこの部分がどうしても一点気になるのでありますけれども、先生いかがお考えになりますでしょうか。
梶山参考人 ある意味では一般的なお話なので、私の方もそのスタンスでお答えしたいと思います。
 大がかり過ぎるというお話がありました。一言で言うと同感でございます。まずそこは何をやるかといいますと、これは、今回の自動車リサイクル法に限らず、容器包装リサイクル法、家電リサイクル法に共通した問題と私は考えておりますが、公共が関与して、コスト計算から、それからあるべきリサイクル費用まで全部旧ソ連の計画経済的な手法でもって計算できる、そういうある意味でいうと錯覚をもとにしているところに、この制度が多分実際に動き出すと、市場メカニズムをある程度らち外に置いたようなぎくしゃくした制度になるだろう。
 それと、やはり公共の事務が余りにも膨大になり過ぎて、結局事務処理の点でもお手上げになる可能性は大きい、そう考えております。
樋高委員 続きまして、鈴木参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。
 自動車メーカーさん、一生懸命努力なさって、いわゆるリサイクル率を向上させようということで努力なさっていることにつきましては、私はまず敬意を表したいと思います。
 今回の法律が施行されることによってリサイクル率が向上するというふうにお考えなのか、その理由も含めまして御教授いただきたいと思います。
鈴木参考人 私ども、自主行動計画で九五%という目標を掲げて鋭意努力してきたわけですが、それが二年前の産構審の審議の過程の中で、それをどうやって具体化するのか、こういう議論が一つあったかと思っております。
 このためには、そもそもシュレッダーダストそのものを減らす、その使用過程で中古部品とかリユースをどんどん進める、そういうことも必要でしょうし、その出たシュレッダーダストをさらにリサイクルする、それはサーマルリサイクルも含めてですね、ということだと思いますが、この辺の技術につきまして、私ども、先ほど御紹介いたしましたように、四年間かけてかなり技術開発して、その技術をASR業者にも提供しておりますが、こういった形のところについてもう一段のインセンティブが必要かなと。
 二年前に審議会をやりましてから、このASR、シュレッダーダストの問題は大変だ、これが日本においては足りないというようなことがかなり新聞等にも伝わった結果、むしろ、新規参入というんでしょうか、いろいろなメーカーが入ってきました。そういった意味で、自動車工業会が開発した技術も提供し、あるいはいろいろな既存の素材関係のメーカーさん等の既存の設備を使う、そういった意味で、私どもが二年前にこのASR施設について懸念していたよりもかなり進展してきているのかなと。
 ただ、まだ十分とは思っておりませんし、地域的なミスマッチもございますので、この施行までの間、さらにASR施設を充実させることによりまして、自主行動計画のときに立てた九五%がそういう形でより確実になるのではないかな、そういったような効果を私どもは期待しております。
樋高委員 どうもありがとうございます。
 続きまして、酒井参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。
 いわゆる最終処分場の逼迫ということでありますけれども、解体業者さんの立場からお尋ねをいたしたいのでありますが、いわゆるシュレッダーダストの処分場につきましては、今お話も出ておりましたけれども、今までは簡易型というか安定型というか、いわゆる簡単な処分場でよかったんですけれども、今度は基準が厳しくなる。その中で、その数が実は少ないという問題がありますし、また、それに向けて国としてやはりきちっとした力強い後押しが必要不可欠である。
 例えば、新たにそういう処分場をつくるにしても、付近住民の方々の理解がなかなか得られないとか、先ほど建築の基準、屋根をつくりたいけれどもなかなかできない、またそんな話もありましたけれども、こういった問題点。要するに、今後は設置条件が厳しいいわゆる管理型の処分場を、ここ二年半の間ででしょうか、早急につくり上げていかなくちゃいけないという現実に遭遇をするわけでありますけれども、問題点はどこにあるというふうにお考えになりますでしょうか。
酒井参考人 御指摘のように、ASR、シュレッダーダストの処分場の逼迫ということで、私ども自動車解体業者が直接ではないんですが、シュレッダー業者さんが処分費用が高騰しているということによって、私どもがシュレッダー業者さんにお支払いする自動車のボディーがらの処分費用が非常に高騰しております。昨年の七月ごろからはそれまでの約二倍になっておりまして、大体トン当たり八千円から一万円の処分料を払っているのが現状です。
 その処分料をお支払いすれば物が流れるのであればまだいいんですけれども、物が流れないということが私どもにとっては最悪の事態でございまして、下流が詰まってしまうと上流からのものも受け入れられなくなるということで、商売が継続できなくなるということが一番懸念されるところです。
 先生御指摘のように、最終処分場については、私どもも、公共関与による管理型処分場がもし設けていただけるのであれば、業界としてもぜひお願いしたいというふうに考えております。
 以上です。
樋高委員 続きまして、永田参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。
 今回のリサイクル法では、いわゆるユーザーさんがその費用を負担するということでありますけれども、この法律、そもそも今まだ審議の最中でありまして、まだ成立以前でありますから、理解がまだまだユーザーさんにとって乏しいというのが現実であります。
 実は国会内でも、私、党派を超えていろいろな議員の先生方に、こういうのをやっているんですけれどもと話をすると、うちの車も二万円、これから車検のときに払うのとか、新しく買うのに二万円払わなくちゃいけないと、議員の先生方でも実は知らないのが現状なんですね。
 ですから、二万円というのは、お金の変動があるのはよくわかっておりますけれども、いわゆるこういうユーザーさんに対しての理解をこれからどのように深めていくかというところが、私は一つの大きな論点であろうかと思います。やはり信頼関係というか、きちっと説明責任を果たしていくということが必要であると私は思いますけれども、こういったいわゆるユーザーさんに対しての理解をいかように深めていったらいいかということにつきまして、先生のお考えをお教えいただきたいと思います。
永田参考人 新しい制度をつくる議論の中でも、パブリックコメント等をとらせていただいて、どういう考え方に基づくものなのかというようなことは皆さんにもお知らせしてきたつもりではございますが、なかなかやはり実態として、こういうことが検討されている事実を知っていただくのは、それだけでは不十分でございましょう。家電リサイクル法のときにも、法制度ができ上がった後の広報というのも相当程度一生懸命、国の方でもやっていただきましたが、これからもそれが求められるのではないかというふうに思っております。
 また一方で、関係事業者の方も多数おられますので、そういう人たちにおいても今度の法制度を十分、もし成立しましたら理解していただき、広報活動の中に加わっていただく必要があるのではないかというふうに考えております。
 この法律も、冒頭の意見で申し上げましたように、市民の方の意識、これが、制度として機能していくかどうかということに対しては非常に重要な点でございますので、そうした視点を踏まえた上での積極的な市民に対する理解を求める活動が必要だろうというふうに思っています。
樋高委員 ありがとうございます。
 いかに理解を得て実効性あらしめるか、いわゆる意識改革をいかに促すかということが重要かと思います。
 四人の先生方にお伺いをしたいのでありますが、それでは、今回のこの法律案、今後の施行に向けて、もしくは施行後最大の課題、ちょっと漠然としたお伺いの仕方をいたしますけれども、残された課題はどこにあるというふうにお考えになるか、簡単に四人の先生方にお伺いをしたいと思います。
鈴木参考人 私ども自動車メーカーはこのリサイクルシステムの中心的役割を果たす、そういう認識のもとでいきますと、本法が成立した場合に、施行までに情報システムを、十数万の末端のネットワークをつくるという、これは多分家電リサイクル法のときに数十億かかっておりますので、その総合システムの形成、いわゆるインフラ整備ということを、私ども自動車メーカーあるいは自動車工業会が果たさなくちゃいけないのかなと認識しております。
酒井参考人 私ども自動車解体業者にとっても、情報インフラの整備というのが一番の大きな課題だというふうに認識しております。特に、インターネットを使ったコンピューターシステムの導入ということについては、私どもが一番おくれをとっているんじゃないかという懸念があります。その辺については、施行までの間にできるだけ私どもも努力をして対応準備を整えたいと思っておりますが、政府の御支援もぜひお願いしたいというふうに考えております。
永田参考人 先ほど申し上げました既に存在しております不法投棄車、野積み自動車、さらには、同じような形で堆積されております廃タイヤ等、この問題の解決を施行までにはきちっとしていかなくちゃいけないものというふうに考えております。
梶山参考人 正直申し上げて、果たしてこの法案が動き出してどう変わるかというのは大変懸念を持っております。一番懸念しておりますのは、現場でリサイクルを担う解体業者さん、恐らくここの対応が一番難しいのではないか、詳しいことを申し上げる時間はありませんが、そう思っております。
樋高委員 梶山参考人、詳しくお教えをいただけますか。済みません。
梶山参考人 一つは、これは紙のリサイクルの場合に典型的に出てきたわけですが、結局、今までのノウハウを持っているのは解体業者なんですね。ところが、今度は、メーカーがある意味ではイニシアチブをとりながら、実際には解体業者がやるということになると、まず公的な資金管理という点で、適切な料金がきちんと解体業者さんに行くのかどうか。それから、そういうシステムが動き出すために、一つ一つの車について処理費用の計算だとか、ある意味で現実離れした計算をするわけでして、それが本当に適切にできるのかどうか。一番やはりシステムの中で弱者のところにしわ寄せが来るというのが新しい制度が動いたときの通例ですので、その意味で懸念しております。
樋高委員 このリサイクルに関しまして、永田参考人がおっしゃいました、いわゆる大量生産、大量消費、大量廃棄に加えて、大量リサイクルの時代は終わったんだという意見陳述がありましたけれども、私は全くそのとおりだというふうに思います。政府の施政方針演説の中でも、大量生産、大量消費、大量廃棄は終わったんだということはありますけれども、その言葉に、大量リサイクルの時代も終わったんだ、それこそ真の循環型社会の形成なんだということでやらなくてはいけないというふうに思うのでありますけれども、ちょっとそこら辺のところをもう少し詳しく、先生、御教授いただけませんでしょうか。最後にお願いいたします。
永田参考人 先ほども申し上げましたように、製品連鎖の中で、これから循環型社会を構築するためには、上流サイドの取り組みが重要だろうというふうに思っています。メーカーの方で、先ほどからも話があるような三R設計をさらに一層強めて推進していただく、それが、我々が環境に配慮した製品を買いやすくし、また先ほどのお話のような大量リサイクルからの脱却につながるんだろうというふうに考えております。
樋高委員 どうもありがとうございました。
大石委員長 藤木洋子さん。
藤木委員 日本共産党の藤木洋子でございます。
 きょうは、連合審査にわざわざお運びをいただきまして、ありがとうございました。
 私は、この廃自動車のリサイクル問題で非常に問題意識として持っておりますのは、シュレッダーダストの中に含まれている有害物質、この問題と、それから、シュレッダーダストがマテリアルリサイクルに回される率というのは極めておくれているということが非常に問題点ではなかろうかという意識を持っているわけですね。
 そこで、まず最初に酒井参考人にお伺いをしたいというふうに思うんですけれども、解体業者と先ほどから何回もおっしゃっていらっしゃるわけですが、リサイクル業者とそれからシュレッダー業者というのが分かれておりますね。実際には、解体をされてシュレッダーに回すものはそのまま回す。そのときに、シュレッダーに有害物質が含まれないようにしようと思えば、シュレッダー以前にできるだけそれを取り除いて渡したいんだということをおっしゃっていましたね。そのネックになるところは、やはりメーカーサイドで気をつけて取り除きやすいようにしていなければならないんじゃないかというふうに思うんですね。
 実は、私、金沢リサイクル工場を拝見してまいりました。ここは、もちろんリサイクル工場はリサイクルをやっているわけですけれども、そこには日産自動車の実証試験場のようなのも付設されているわけですけれども、そこでいろいろ聞きましたら、例えばマテリアルリサイクルしようと思えばできないことはないということで、モデルカーにはちゃんと使われているわけですよ。しかし、新車にそれを使うことはできない。これは費用がかかってとても採算が合わないから、そんなことはできない。だから、実質、やろうと思えば可能であっても、それが採算ベースに乗らないというようなことがあるというふうに伺いましたけれども、先ほど伺いますと、かなり中小零細業者の方たちがたくさんいらっしゃるということですので、どのようにすればそこがコスト的にも合うような解体作業ができるのか、その問題点は何だというふうにお考えなのか、おっしゃっていただきたいと思います。
酒井参考人 まず第一点は、やはり私どもがリサイクルしている車は十数年前につくられた車で、設計思想の中にリサイクルという部分が十分には盛り込まれていないということで、分解しにくいということが一つ挙げられるかと思います。それと、分解するための費用が今どこからも出る仕組みになっていないということも一つ問題だと思います。もう一つ問題として感じていることは、分解しても、その分解したものを再使用する、再利用するインフラが整っていないということが問題かというふうに考えております。
藤木委員 では、鈴木参考人にお伺いをしたいと思うのですが、鈴木参考人のお話でも、九八年から自主行動計画を進めてこられたということですが、その一年前に、確かに経済産業省の方は使用済み自動車リサイクル・イニシアティブというのを出しまして、それぞれ目標を定めるというようなことがありましたので、それに従ってやられたことではないかというふうに思うんですね。それに従ってやってこられたということですけれども、二〇〇二年以降はリサイクルの可能率を九〇%以上にするという目標をたしか自工会としてはお立てになられたというふうに思うんですね。でも、実際、現在そうなっていないというところが大変問題であろうというふうに思うわけですね。
 そういうことから見ますと、ドイツなどでやられているEUの取り組みというのは非常に進んでいまして、拡大生産者責任という概念の中で、有害物質などによる環境負荷の予防原則、これを貫くということをやっているわけですけれども、こうなりますと、EUの場合はかなり厳しいわけですからね。車は車で値段はそのまま売るわけですけれども、しかし廃車のときには無償でメーカーが引き取るということになっていますので、恐らくそういうふうにしていらっしゃると思うんですが、それでは、リサイクルの費用は、ヨーロッパではどうされるんですか。価格の中に入れられるんですか、それとも、それと別にやはりオンをしてこれからは売るということになるんでしょうか。
鈴木参考人 EUの場合には、御案内のように二〇〇〇年にEU指令の廃車指令ができているわけですが、これはEU各国のいわゆる国内法へのガイダンスでございまして、本来でしたらこの四月末までに各国国内法ができなくちゃいけないわけですが、御案内のように、各国ともこの自動車の廃車の問題はいろいろな問題がありまして、国内法につきましても各国でまだ、私どもと同じような形で、政府と関連事業者、メーカー入れての議論が進んでいるんだろうと思います。
 そういう中で、費用をどうするかにつきましては、幾つかのパターンが分かれるのかなと。ドイツのように内部化してメーカーがやる場合と、オランダのように新車の段階でユーザーから徴収して一つのファンドでやるとか、その中間とか、いろいろな形で、多分EU十五カ国も、エンドユーザーから取らないけれども新車の段階でどうするか、あるいは今のEU指令の中で、これは各国、このEUのガイダンスをどう解釈するかで今大変な騒ぎになっているわけでございますので、そういう意味で、EUにおける車の使用状況あるいはリサイクル状況に合わせた形でのその国のリサイクルシステムづくりを今EU指令に基づいて行われているのかなと認識しております。
藤木委員 実は、鈴木参考人からいただいた資料の冊子を見ていますと、アメリカ向けに輸出している車は、少しダウンはしているんですけれども、しかしなだらかなんですよね。しかし、EUの場合は、九六年あたりからがくんとダウンしていまして、落ちていますので、そういった売れ行きにもかかわっているのではないかなという懸念を感じたんですけれども、それは全然関係ないことなんですか。
鈴木参考人 EUの場合には、いわゆる日本からの輸出とそれから現地での生産というのを日本のブランドの場合には考える必要があろうかと思います。
 それで、EUとの場合では、為替の関係でなかなか輸出が難しくなっているんですが、御案内のように、ここ数年におきましても、日本のメーカーがEUの中で現地工場をつくっておりますので、そういう意味で、日本ブランドという意味からいきますと、シェアは変わっていないと思っております。
藤木委員 それにしても、EUでそういったことが決められてまいりますと、EU参加国だけじゃなくて、すべてにそれが及ぶわけですから、そうなったら、日本でEUにEU向けの車を出そうと思ったら、将来再生できなかったりリサイクル不可能だというような物質なども含んだものは出せないというようなことになってくるんじゃないかというふうに思うのですけれども、そうなった場合でも、そういうEUで通用する車をつくることが可能なのかどうなのか、その点いかがですか。
鈴木参考人 先生の御指摘は、EUの指令の中でいわゆる四品目というのでしょうか、鉛、水銀、この問題だろうと思うんですが、EUの指令は一律に禁止はしておりません。むしろアネックスで除外規定をやりまして、その例外規定でどこを例外にするのか、これは欧州のメーカーも我々のメーカーも関心を持って今EU委員会とも御相談しているわけですが、そういう意味で、その四品目についてできるだけ使わないようにしようというのは、先ほど私も自主行動で御説明しました。
 そして、むしろ日本でも、その代替物質があったら、何かあればなるべくその四品目は使わないようにしているわけですが、それと同じようなことは、EUの指令の四品目について何を例外として認めるか、これについて今専門家の間で議論をされ、それについて国内法でどうするかということはまだ決着していないと思っております。
藤木委員 今のお話を伺っていますと、やろうと思ったらかなりやれるということに私は確信を持ったんですけれども、いかがなんでしょうか、その点は。
鈴木参考人 私どもは、四品目を使わないで済めばいいと思っていますが、その四品目を使わざるを得ないような理由がある場合に、これはEU委員会でも例外を認めておりますので、そういったような形で、実質的には日本とEUと、我々は違ってはいないと思っております。
藤木委員 私もそう思っているんです。日本でもその四品目というのは、最低これは出してはならない、使ってはならないというようなことで規制をすべき物質であろうというふうに考えていますので、そういうことがやってやれなくはない技術力といいますかそういうものをお持ちですので、ぜひそれは先駆けて進めていただくことが必要ではないかというふうに思っているんですね。
 ですから、日本の場合も、結局ユーザーがお金を払うわけで、新車を買うときというのは先に払うということにはなるんですけれども、しかし、別建てでそれを扱って、メーカー側としてはそのことに責任を負わなくてもいいというところがやはり緩いというふうに私は思うんですよね。そこがきちんと、それがメーカーとしての責任でやるのだということになれば、そのインセンティブは働いて、もっと速やかにやらなければならないと、今思っていらっしゃることの実行手段を手がけていかれるのではないか、そんな思いがしておりますので、そのことは意見として述べさせていただきたいというふうに思います。
 あと、梶山参考人にお伺いをしたいというふうに思うんですが、今回のリサイクル法では、私は、そのインセンティブは余り働かない、だからそんなに機能しないんではないかという悲観的な見方を非常に強くしているわけですけれども、この法律のどこかをちょっと直せばちょっとはよくなるというふうにお考えですか、それとも、これは抜本的に問題があるというふうにお考えでしょうか。その辺のところをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
梶山参考人 私は、基本的な部分を変えなきゃいけないと思っています。
 やはり先ほどから申し上げていますけれども、費用はメーカー負担。メーカー負担という意味はちょっと誤解を受けますが、基本的には、逆有償部分は当面メーカーが支払う。それを価格転嫁するかどうかは、これはもちろん転嫁を義務づける必要はないわけで、百円かかる、あるいは一万円かかるものをメーカーは製品の改善でもって、あるいは技術の開発でどれだけ縮小できるかという努力をした上で、やむを得ない部分は価格転嫁して回収する。この部分はやはりどうしても、基本的な部分ですが、そこを変えないと、実際にはかえって悪くなる部分も出てくるだろうと私は思っております。
藤木委員 よくわかりました。
 私も今伺っていましたら、現在段階で七五%のリサイクル率だと。これを九〇%にしていくのには、鈴木参考人の見込みでは何年ぐらい先だというふうにお考えですか。
鈴木参考人 現在は八〇%ぐらいのリサイクル率だろうと思っていますが、自主行動計画では二〇一五年九五%、これを確実にするということが現在求められているのかなと思っております。
藤木委員 そうしますと、現在問題になっているのは、二〇%ないしは二五%のシュレッダーダストが一番の問題になってくるんじゃないかというふうに思うんですね。そのシュレッダーダストに有害物質が混入しないようにしようと思えば、その四物質を使っていたとしても技術的にそれが可能になるのか、それとも、やはりそれを除外しなければならないのか、その辺はメーカー側としてどんなふうにお考えですか。
鈴木参考人 現在のシュレッダーダストは過去の車でございますので、これから、今EUの指令とか私どもの自主行動計画で極力その有害物質、四物質を使わないようにしていますが、過去のものが今出てくる廃車のシュレッダーダストというのは、やはり有害物質が入る。だからこそ、九〇年代半ばから管理型処分場となって、管理型処分場が逼迫しているというので、我々のシュレッダーダスト、今八〇から、残り二割はシュレッダーダストなわけですから、この二〇%のシュレッダーダストを一五%に圧縮して、埋立地に行くのは五%にする、こういう形の政策が強く求められ、この法律のねらいもそこの一つだと思っております。
藤木委員 もう一つ、オイルの抜き取りのことなんですけれども、私も技術的にこれはよくわからないので伺っているわけですが、スラストカッター方式というのがあるそうですね。これは何かエジェクターというのでもって強制的に吸引をしてLLCだとかあるいはエンジンオイルを抜き取るという方法で、こうなりますと、容器に残る油というのは極めて少なくなるということを伺ったんですが、これにはかなり費用がかかるのかという問題。
 それからもう一つ、もう一件拝見してきたところでは自然落下方式というのをとっているわけですけれども、それは、下の器からはね上がって落ちて、その周りの床にまで飛び散るというようなやり方なんです。あれでは恐らく残留量がかなりあるのではないかというふうに思うんですけれども、費用の点で、こういうスラストカッター方式にするわけにいくかいかないか、その辺どのようにお考えですか。
鈴木参考人 私、その面での知識がちょっとございませんので、また必要がございましたら、先生のところに私ども自工会ないしはメーカーから御説明に伺います。
藤木委員 もう時間ですので終わりますけれども、それはむしろ酒井さんにお聞きした方がよかったんでしょうか。それでは、酒井さんの方からお答えいただいて、終わりたいと思います。
酒井参考人 委員御指摘のスラストカッターについては、私の知る限りでは、燃料を抜くための装置でして、費用はおよそ百五十万円程度というふうに聞いております。これは、燃料タンクに底から穴をあけて吸引するというようなシステムでございまして、これはまず燃料タンク内にほとんど油が残らないということが言えるかと思います。
 しかし、エンジンオイルについては、このスラストカッターというようなものでは抜けないということで、自然落下が今主流でなされております。エンジンオイルについては、抜く部分から、どこから吸引するかあるいは抜くかというところが問題なんですけれども、なかなか完璧に抜くというのは難しい。費用と時間をかければ可能なんですけれども、採算性が伴ってこないというのが現状です。
藤木委員 終わります。
大石委員長 大島令子さん。
大島(令)委員 社会民主党・市民連合の大島令子でございます。
 まず、梶山参考人にお伺いいたします。
 この法案が環境問題に一番寄与しなければならない点は何だとお考えでしょうか。例えば、消費者への啓発ですとか生産者への環境に適合した自動車の研究開発など、こういう法律の効能とでもいうのでしょうか、何に対して効力を発揮すべきとお考えでしょうか。
梶山参考人 ちょっと難しい御質問で、御質問の趣旨を的確にとらえているかどうかわかりませんが、私自身は、今回の法律も含めてリサイクル法全体で眺めた場合に、まず、いつも出てくるのは、最終処分場が逼迫しているじゃないか、そのために何かしなきゃいけないという部分があるわけですが、一方で、やはりもっとトータルに環境問題というのは見なくてはいけないわけで、最終処分場の逼迫を救うために、逆に石油資源のような、あるいはエネルギー資源、その他の資源を大量に使ってとにかく小さくすればいいというのは、全体の環境負荷としてはマイナスになるわけで、やはり物事をトータルに見ますと、日本社会というのはこれ以上生産を右上がりにできない、右下がりの経済を前提にして、すべての循環資源の取り扱い、それから最終処分場の問題も考えていかなくてはいけない。
 最終処分場に関して言えば、足りないからつくらなきゃいけないというのは一方ではありますが、同時に、日本各地を見ても、処分場をつくる適地はもうほとんどないという現実にも目を向けるべきでありまして、そういうトータルの意味での環境問題の把握ということが、この法律に限らず循環型と称される法律すべてに求められる視点だろうと思います。
大島(令)委員 もう一度、梶山参考人にお伺いします。
 エンドユーザーから費用徴収はやってはいけないということであれば、この法律は最初からつまずくことになると思います。梶山参考人は、法律自体、もっときちんと整理して理論的にも納得いく形になるまで待って、国民の納得できる法律を成立させるべきとお考えでしょうか。つまり、見切り発車のこの法案は反対ですか。もしそういうことであれば、簡単に理由を述べていただけないでしょうか。
梶山参考人 結論から申し上げますと、現在の法案のまま成立させることには反対でございます。
 では、何もしなくてもいいかということは、先ほど申し上げましたが、そうは思っておりません。当面やるべきことは私なりに考えておる部分はありますが、まず、法律として考えるには、たびたび申し上げていますが、メーカー負担という形できちんとした法制度の構築はできないか。私は、これはよりずっと簡素な形でできると考えておりまして、現在の法案よりは恐らくもっとスムーズに動くいい法律は多分できるであろう、可能であろう。ただその場合に、関係者間の合意をどうやって形成していくかという大きな問題は残されております。
大島(令)委員 では、永田参考人にお伺いします。
 永田参考人は、雑誌の座談会で以下の発言をしておられますね。社会的に見ての効率性、公平性、実効性を考慮して、また、本当にそれができるのかという意味での実行性にも配慮してこれからの循環型社会へ向かっていく過程の中で、これがベストだという案で出発するのでなくてもいいから、その方向に向かっていくという流れだけはきちんとつくってもらいたいと思っていますと発言されております。
 今、梶山参考人にも同じことをお聞きしましたけれども、永田参考人は、この法律がたとえ不備であっても見切り発車でスタートさせていいとお考えでしょうか。
永田参考人 費用負担のあり方につきましては、先ほどの産構審、中環審両方でいろいろな議論がございました。そうした視点からしますと、ベストの案はないというふうに私は理解をいたしております。そういう意味で、欠陥だらけだからというような視点での私の発言ではなくて、よりベターな案は採用しながら、将来、社会も変わっていく過程の中で、我々がそれに合わせたような形でベストな行動なりあるいはベストなシステムに仕上げていくことが必要なのじゃないかということで、そういう発言を申し上げました。
大島(令)委員 それでは、永田参考人にお伺いしますけれども、よりベストな方がいいということでございますが、解体業者さんに非常にまだまだ不備な点があるということで、私どもは酒井参考人から資料をいただいております。それを読むと、私は、例えばタイヤ、オイル、バッテリー、不凍液等を指定品目にしないとか、あと、解体業者さんは、タイヤ、オイル、バッテリー、こういうものが、逆有償の解消にはならないと危惧しているなど、近い将来、ユーザーは購入時に三品目のリサイクル費用を負担し、廃車するときにはまたこれらのタイヤ、オイル、バッテリーの処理費用を要求されることになるのではないかという危惧も抱いているわけなんですね。こういうものをどのように、では次の段階で、この法案が通った後考えていく道筋を考えていらっしゃるのかお聞きしたいと思っているんです。
永田参考人 先ほども御議論がございましたように、ASR、シュレッダーダストが自動車の処理過程の中で発生します最大の廃棄物であり、また有害性も持ったものでございます。そういう視点で見てまいりますと、これに対してメーカーが引き取り積極的なリサイクルをする、私はもう最終処分場からの脱却を考えるべきだというふうに申し上げましたが、そういう体制で取り組んでいただくことは非常に重要な視点かなというように思っていますし、一方でそれが、無料でメーカーの方で処理するような静脈の中での体系からすれば、先ほど来申し上げているように、廃車がらの受け渡しの過程では、恐らく廃車がらが有価で破砕業者の方に引き渡される状況が生まれてくるだろうというふうに考えております。
 そうした費用の流れの中で、適正にリサイクルあるいは処理しなくちゃいけない対象物、先ほどから話題に上がっているようなものについては、解体事業者の中でビジネスとしてきちっとその役割を果たしていただけるものと期待しておりますし、また今後、指定回収物品、ここでは個別で対応するようなシステムがないですからメーカーに引き渡した方がいいですよとか、あるいは処理費用がそれほど大きなものにはならないとか、あるいはメーカーの努力によってはその対象物の削減が図れる、再資源化に対して寄与できるというようなたぐいのものに関しましては、またそういうものが考えられればそういうものを指定していくということも法案の中では書かれております。見直しは積極的に行われていくことになるだろうというふうに理解しております。
大島(令)委員 では、酒井参考人にお伺いします。
 関連業界が企業の大小にかかわらず意見交換ができる場を考えておられるようでございますけれども、酒井参考人のおっしゃる連絡協議会は業界だけなのか、例えば管轄の省庁、ユーザーも含めた協議会を発想されているのか、また協議会に権限を持たせることも必要と考えていらっしゃるのか、お聞かせいただきたいと思います。
酒井参考人 私自身は、関連する業者同士が情報交換できる、率直に意見交換できる場というイメージで御提案申し上げておりますが、今先生が御指摘のように、広くとらえて、ユーザーも関連の方々というとらえ方もある意味では必要なのかなというふうに思います。私自身は、その連絡協議会に強制力を持たせるような機能は必要ないんじゃないかというふうに考えております。
 以上です。
大島(令)委員 引き続き酒井参考人にお伺いします。
 この制度は電子化によってすべてを管理するということで、解体業者さんの方もこの電子化についての対応が大変だと思っているわけなんですね。支援を政府にお願いしたいとおっしゃっているその中身について、具体的な支援とはどのようなものを想定されているんでしょうか。
酒井参考人 まず、基本的に、ITといいますか、これから中心になろうとしているインターネット技術についての教育が中心になるかと思います。それと、そのシステムが制度の中に取り入れられるんだというPRもできるだけ早目にしていただきたい。
 私どもの方からも、基本的に業界の中に伝達をしているわけですけれども、法案が通っていないから当然ですけれども、実際、まだ業界の中には実感が今現在ではわいてきていない状況です。それらについて、できるだけ教育、広報という部分についての御支援をお願いしたいというふうに考えております。
大島(令)委員 酒井参考人にお伺いします。
 今回の指定品目は三品目でございますけれども、本当に業者さんとしてこれだけで心配ないのか、その辺のことを聞かせていただけないでしょうか。
酒井参考人 当面のターゲットをどこに置くかによって変わってくるんじゃないかと思っております。当面、いわゆる逆有償の解消という部分にターゲットを置いて制度を回そうという前提で考えますと、その三品目だけでどうにか回るのかなというような印象を持っております。ただし、将来、いわゆる環境負荷物質の排除というような問題については、まだ課題が残りますので、継続的に検討していくべき部分かというふうに考えております。
 以上です。
大島(令)委員 では、鈴木参考人にお伺いします。
 対象品目がふえた場合の費用負担はどうあるべきかと考えていらっしゃるのか。
 もう一点、メーカーとしては、廃車することから、そういう発想で自動車を生産しなければ、循環型社会形成推進法の理念に合わないと思うんですね。二〇一五年に九五%をリサイクルするという御発言がございました。今後、メーカーに対しても、廃車することから車を設計する、そういう意識がないと、これはいつまでたってもユーザー責任、拡大生産者責任ということがなかなか抜けられないと思うわけなんです。
 そういう観点から、対象品目がふえた場合、費用負担はこのまま、今法律の中身のように拡大生産者責任のままいくのか。メーカーとしては、廃車することから車を設計していくのか。そういうもとに、二〇一五年九五%ということを先ほど来おっしゃっているのか。この二点を質問させていただきたいと思います。
鈴木参考人 今回の、今言われています三品目は、二つの種類があろうかと思いますが、一つは、逆有償化を解消するためにシュレッダーダストをメーカーが引き取るという話、それとフロンとかエアバッグという有害物質を適正に処理する。
 今、このほかに追加品目があるのではないかというのは、多分このフロン等と同じカテゴリーかと思いますが、そうなりますと、それに指定された場合には、フロンとかエアバッグと同じように、適正な原価、コストでいわゆる能率的な経営のもとに行われる回収費用といった形でのリサイクル費用というのが、この制度の中で法律として生じてくると思います。ただ、その三品目、有害品目として指定するかどうかは、自主的なリサイクルの状況、あるいは廃車段階で生じるのかどうか、そういったようないろいろな面から品目の指定があるものと思っております。
 それから、二〇一五年の九五%に向けては、つまり、これまでの既販車の問題と、これからつくる新車の二つの側面があろうかと思います。自動車は、御案内のように、十年以上、複数のユーザーが使うという性格でございます。そういう中で、既販車については、シュレッダーダストをいかにマテリアル化するか、新車につきましては、当然、解体しやすい、三Rのしやすい車ですから、そういう形でのシュレッダーダストの減量。いろいろ新車の段階での三R、それからシュレッダーダストのリサイクル化、そういったものをあわせて、二〇一五年に九五%という大変厳しい目標を、国際的に見てヨーロッパもそういう目標を立てているわけですが、そういったものに突き進むのではないかなと思っております。
大島(令)委員 どうもありがとうございました。
    〔大石委員長退席、谷畑委員長着席〕
谷畑委員長 西川太一郎君。
西川(太)委員 最後でございます。
 参考人の先生方、まことに御苦労さまでございます。私は、この法案の審議に際して、経産省にもいろいろ質問をさせていただきました。
 まず、鈴木参考人にお尋ねをしたいと思うんでありますが、私は、自動車悪者論には立たない立場でお尋ねをするわけでありますけれども、自動車が、文明の利器として、トランスポーテーションやまたロジスティックに大変いろいろと貢献をしている、このことは言をまたない。それから、技術革新によっていろいろとすばらしい工夫をされたものが世界に輸出されることによって、いろいろな意味で、逆に地球の温暖化解消のためにも努力をしている、私はこう思うわけですね。
 だから、自動車が持っている負の側面、例えば交通事故、それからCO2等の排出、NOx等の排出による大気汚染、しかし、これらについては、ハイブリッドカーとか電気自動車とか、技術的な革新をすることによってこれを制御することも、そう遠い将来でなく実現できる、こういう楽観論に私は立っているわけであります。したがって、リーディング産業として雇用の面でも大変大きな努力をしていただいている自動車のメーカーの皆さんに、この上いろいろと要求をさせていただかなければいけない、これが環境面の重要な問題だ、こう思うわけであります。
 そこで、私は鈴木さんに伺いたいんですけれども、自動車のリサイクルの容易性というものが、解体の容易性とか、または有害物質を出さないようにするとか、これがリサイクル料金に反映される制度にするということが、自動車メーカーの競争を促進することにより、効率的かつ実効的なリサイクルのシステムを構築するものである、こういうふうに私はこの法案を位置づけているわけですね。
 そこで、自動車メーカーは、設計、開発、それから実際のリサイクル費用の低減努力、それぞれの場面においてこれから競争していかなきゃいけませんね。工業会としては、この競争をどのように見通しておられるか、具体的にどんな競争をされるのか、これを御教示いただければと思います。
鈴木参考人 今回、リサイクル費用をどう徴収するかという議論が、この審議会でも長い間議論があったわけですが、最終的には、新車時において外部化する。外部化するということは、このリサイクルの費用を各社別に幾らということですから、これはある種の、ユーザーに対して、この車のリサイクル性といったものがどうなのかが反映するわけでございます。
 今メーカーは国際的にも厳しい競争をやっているわけですから、そういう意味で、環境、安全でいい車というのが一つのセールスのポイントになりますから、そういう意味では、今回のリサイクル費用というものが外部化されているということは、メーカーにとっても大変厳しく、逆にその面での競争が、リサイクル、三Rしやすい車へのインセンティブになる、このように私どもは見通しております。
西川(太)委員 永田先生にお尋ねをさせていただきます。
 このリサイクルを成功させるためには、メーカーももとより、酒井さん初め解体業者の皆さんも御努力、大変でありますけれども、先ほどもお話がありましたように、しかし、圧倒的に数の多いユーザーに協力をしてもらわなければいけない。このユーザーがリサイクルのこのシステムにどう参加するか、どんな意識を持って行動するか、こういうことを、本法案の基礎的な部分から立ち上げに御参加をされた先生としては、この点をどんなふうにこれから実現されようとしているか。
 先ほどの先生のいわゆるサステーナブルソサエティーというものをつくっていくためにも、このことは、みんなが当然、自分たちにその結果が裨益もすれば、または、あしき結果も出てくるわけでありますから、このユーザーをどういうふうに意識させるか、このことについてお尋ねしたいと思います。
永田参考人 ユーザーの役割として、費用負担もございますし、それから適正処理ルートに車を排出していただく、引き渡していただくということが非常に重要な点として挙げられようかと思います。
 また、一方で、先ほどもお話が出てまいりました、これからの車については、三Rに配慮したものを購入するというのがグリーン購入の思想でしょうか、これを実現していただく。そのためには、価格だけではなくて、恐らくメーカーの方がこれから示していただけるでしょう、リサイクル可能率といったような数値、こういうものも積極的に情報公開しながら、それぞれ、これからの循環型へ向かって、使用済自動車の排出の時点、それから、これから購入する車に対しての環境配慮の視点、両方相まって消費者の方には努力していただかなくちゃいけないというふうに思っております。
西川(太)委員 酒井さんに伺いますが、先ほど建築基準法の問題についてお話がありました。
 特に私、伺っていて現実的に御苦労が多いんだなと思ったのは、いわゆる地方自治体の上乗せ、横出し規制、こういうもので実際に苦労しておられると思いますけれども、端的にどこをどう改めてほしいか、我々も応援したいと思いますので、この場でもう一度その点を、時間の関係がありますので端的にお聞かせいただきたいと思います。
酒井参考人 冒頭の意見陳述でも申し上げたとおり、自治体によってさまざまな対応がとられております。私どもの立場からすると、やはり環境をどうやったら守れるかという一点で法の適用をお考えいただきたいというふうに考えております。
 以上です。
西川(太)委員 最後に梶山先生にお尋ねをしますが、梶山先生の御議論は、私にとってはある意味では大変新鮮な、今まで余りそういう御議論に私は接していなかったものですから、大変きょうはお話を伺ってよかった、こう思っております。
 ただ、一点、リサイクルコストの低減に向けたメーカーへのインセンティブはこの法律では働かない、こう御指摘がございました。
 私は、自動車という商品についてはこう理解しているんです。経済活動の中で、メーカーは、徹底した合理化、コスト削減を図って、また、販売の末端でも熾烈な価格競争が、国際競争も含めて行われている。こういう実態にかんがみて、やはり私は、この法律は、むしろ逆に、先ほど鈴木参考人からも私の質問にお答えいただいたように、メーカーへのインセンティブが働くんじゃないか、こう思いますが、これは先生と全く違う考え方になるんですが、いかがでしょうか。
梶山参考人 そういう議論は私大変好むところでございます。
 メーカーへのインセンティブということなんですが、生産段階でそのような熾烈なインセンティブが働いている、これはもうまさにそのとおりであろうと思います。
 ところが、ごみ処理という段階での費用ということになりますと、これは、今までのシステムの中では、ごみ処理費用はメーカーは払わなくていいということで、結局、ごみ処理が容易なもの、あるいは環境汚染を最小限にするような部分でのインセンティブはメーカー側には全くなかった、そのようなインセンティブは生産段階での費用削減という問題とは別問題として扱われてきた、そういう理解でございます。
 そうすると、今度は、処理段階で要する費用、あるいはそれが環境に負荷を与えるのに、それを改善したり修復したりする費用、これはやはりメーカーサイドに一たん負担してもらって、その中で、車をつくる段階に最も環境保全対策というのが、技術的にも、メーカーはそういう技術が初めてできるところでございますから、そこで可能な限りの努力をしてもらった上で、やむを得ない分は消費者負担。これを最初からエンドユーザーへの負担ということになりますと、そういう努力をしないでもとりあえずリサイクルは回っていくよということが現実問題として出てきてしまうわけで、そういう意味で、私が申し上げたのは、やはりそれは最初からエンドユーザーに持たせるべきではない。
 それから、先ほど、費用の計算によって競争ができるというお話がありましたが、十年後の費用を今計算してみせたところで、これはフィクションにしかすぎないんです。それが、本当に環境負荷をきちんと反映した費用の計算ができるとは到底考えられません。
西川(太)委員 私は、国民が環境にこれだけ関心を持ってきた、環境教育によってさらにこの意識はだんだん深まっていく、そういうことになれば、商品を選定する場合に、今、環境に優しいというコマーシャルがやたらに出ておりますけれども、そういう判断は働くんじゃないか。したがって、私は、逆にこういうことはインセンティブになる、こう思っております。しかし、先生はそうではないと。
 もう時間がありませんけれども、鈴木さんにもチャンスを与えたいと思いますけれども、今のような御議論に対して自工会としてはどう反論しますか。
鈴木参考人 自動車は、ユーザーに利便性、快適性を売るだけでなくて、むしろ社会との共生ということで、環境、安全というものが大変重要なファクターになっている。その面で、これからの自動車の競争、メーカー間の競争は、まさしく環境面、安全面の競争かと思いますので、先生御指摘のように、環境に優しい、安全に優しいということをいかに技術開発してそれをセールスポイントにするか、これが今後のメーカーの販売面での課題になっているんじゃないかなと思っております。
西川(太)委員 もうこれで最後にいたしますが、私は冒頭申し上げたとおり、自動車は経済にとっていろいろなメリットもある。しかし、同時に、環境や人身事故等のデメリットもある。国土交通委員会などでは、自動車によって被害を受けた御家族も傍聴される中で深刻な議論が行われたりしております。我々はそういう点の改善もしていかなければいけない。
 しかし、そうした自動車の排気ガスでの大気汚染や、または排熱によるヒートアイランド現象とか、いろいろなものも考えますが、しかし、それとは別個にこのリサイクルの法案というのは取り出して、別のものとして、これは廃棄物を少なくしていくという方向に向かってメーカーも解体の業者の皆さんも努力をしていただきたい。そして、ユーザーもそのことを強く意識して、そういうことに努力したものを選択するという、報奨を与えることによって、パフォーマンス・アンド・サンクションという考え方で経済をやっていかなきゃいけないんじゃないか、こう思っておりますことを申し上げて、大変有意義な議論ができたと思って喜んでおります、先生方、ありがとうございました。
谷畑委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。
 この際、参考人各位に一言お礼を申し上げます。
 非常に貴重な御意見を述べていただきまして、すばらしい連合審査ができましたこと、心よりお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
 以上で本連合審査会は終了いたしました。
 これにて散会いたします。
    午前十一時五十八分散会


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