衆議院

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第1号 平成15年5月16日(金曜日)

会議録本文へ
平成十五年五月十六日(金曜日)
    午後一時二十分開議
 出席委員
  経済産業委員会
   委員長 村田 吉隆君
   理事 阪上 善秀君 理事 下地 幹郎君
   理事 竹本 直一君 理事 谷畑  孝君
   理事 田中 慶秋君 理事 中山 義活君
   理事 井上 義久君 理事 土田 龍司君
      小此木八郎君    大島 理森君
      佐藤 剛男君    桜田 義孝君
      西川 公也君    増原 義剛君
      松島みどり君    山本 明彦君
      小沢 鋭仁君    奥田  建君
      金田 誠一君    鈴木 康友君
      中津川博郷君    河上 覃雄君
      塩川 鉄也君    大島 令子君
      金子善次郎君    宇田川芳雄君
  環境委員会
   委員長 松本  龍君
   理事 稲葉 大和君 理事 田村 憲久君
   理事 西野あきら君 理事 柳本 卓治君
   理事 近藤 昭一君 理事 牧  義夫君
   理事 田端 正広君 理事 高橋 嘉信君
      木村 太郎君    阪上 善秀君
      鈴木 恒夫君    野田  毅君
      鳩山 邦夫君    菱田 嘉明君
      星野 行男君    松浪 健太君
      水野 賢一君    望月 義夫君
      山本 公一君    小林  守君
      小宮山洋子君    長浜 博行君
      青山 二三君    中井  洽君
      藤木 洋子君    中川 智子君
    …………………………………
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   環境大臣         鈴木 俊一君
   経済産業副大臣      高市 早苗君
   経済産業副大臣      西川太一郎君
   環境副大臣        弘友 和夫君
   経済産業大臣政務官    桜田 義孝君
   経済産業大臣政務官    西川 公也君
   環境大臣政務官      望月 義夫君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局長)  高原 亮治君
   政府参考人
   (経済産業省製造産業局長
   )            今井 康夫君
   政府参考人
   (経済産業省製造産業局次
   長)           仁坂 吉伸君
   政府参考人
   (環境省総合環境政策局環
   境保健部長)       南川 秀樹君
   政府参考人
   (環境省環境管理局長)  西尾 哲茂君
   政府参考人
   (環境省自然環境局長)  岩尾總一郎君
   経済産業委員会専門員   鈴木 正直君
   環境委員会専門員     藤井 忠義君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第八二号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――
村田委員長 これより経済産業委員会環境委員会連合審査会を開会いたします。
 先例によりまして、私が委員長の職務を行います。
 内閣提出、参議院送付、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨の説明につきましては、これを省略し、お手元に配付してあります資料をもって説明にかえさせていただきますので、御了承願います。
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小林守君。
小林(守)委員 民主党、環境委員会委員の小林守でございます。
 この法案についての連合審査会に参加することができまして、質問の機会を与えていただきましたことに、まず感謝を申し上げたいと思います。
 早速本法案についての審議に入らせていただきたいと思いますが、御承知のように、参議院先議で、既に衆議院に回付された法案でございまして、我々は、より一層その厳密な精査をしていきたい、こんな立場で臨んでいきたいなと思っているところであります。
 御承知のように、現行の化学物質審査規制法は、化学物質による環境汚染を通じた人の健康被害を防止するため、新たな工業用化学物質の有害性を事前に審査し、その有害性の程度に応じた製造、輸入などの規制を行っているわけでありますが、国際的な化学物質管理の動向、さらにはOECDの勧告などを受けまして、環境中の動植物への影響に着目した審査規制制度を新たに加えることになったところであります。
 諸外国の動向から考えるならば遅きに失したとはいえ、これを機に、予防原則に基づく化学物質リスク管理の化学工業先進国を目指して、国際競争力を高め、地球環境の保全に貢献していくべきではないか、このような立場で質問させていただきたいと思っております。
 まず、この法案が、環境省も含めて共管化が図られたわけでございますけれども、平成十三年の一月から共管法という形で取り組みをしてきているわけでございますが、従来から、このような関係の法案について、環境の視点からの所管というんでしょうかね、そういう役割が求められているのではないかということに我々は問題意識を持っていたところでございますが、ここに来て、省庁間の連携の強化と一元化を果たしていくべきではないかというような共通認識のもとに、この連合審査も実現したというようなことではないかというふうに思いますが、環境省が共管することになったというような背景と意義について、まず経産大臣並びに環境大臣の方からお聞きをしたい、このように思います。
平沼国務大臣 小林先生にお答えをさせていただきます。
 この化審法の運用に当たりましては、御指摘のとおり、経済産業省そして厚生労働省、環境省の三省が緊密に連絡をとり合いながら一体的な対応を図っていく、このことが重要である、こういうことで認識を持っております。
 こういう認識のもとで、新規化学物質の事前審査における事業者との事前の相談から判定の通知に至るまでの一連の手続についても、三省が一体的に対応するように見直しを進めてまいりました。
 例えば、届け出を予定している事業者からの事前相談には従来から合同で御指摘のように対応しておりまして、また、三省の審議会についても本年四月から合同で対応しているところでございます。
 そういう意味で、届け出の窓口についても可能な限り早期に一元化をしていきたい、これに向かって努力をしていきたい、このように思っております。
鈴木国務大臣 先生からお話がございましたとおりに、平成十三年に省庁再編がございまして、その中で環境行政の一元化、それから強化を図るという観点から、制度の中に、環境保全にかかわるものにつきましては、これを環境省を共管省とするということになったわけであります。
 このことによりまして、廃棄物対策、これも新たに環境省の所管になったわけでありますが、このこととあわせまして、化学物質の製造、輸入から排出、廃棄に至るまでの一貫した対策を担うこととなったものであります。化学物質による環境の汚染防止策の実効性を高め、環境の保全を確保する見地から極めて意義深いものである、そういうふうに思っているわけであります。
 三省共管となったわけでありますけれども、これから一体的運用というものが重要になってくることはもちろんでありまして、環境省も関係省庁とよく連携をとりながら、この問題に当たってまいりたいと思っているわけであります。
 一つの事例でありますけれども、本年の四月から、新規化学物質の審査に当たりましても三省合同で審議会を開催することになりました。こうした運用面の改善も図っているところでございますが、今後とも三省の連携に努めてまいりたいと思っております。
小林(守)委員 ぜひそういう方向で、総合的な、体系的な化学物質の管理政策を打ち立てていっていただきたい、このように思うわけであります。
 少し確認しておきたいのは、OECDの勧告がなされたというようなことで、御承知のところだとは思いますが、昨年の一月十五日ですか、OECDの環境保全成果レビュー・対日審査報告書の「結論及び勧告」の中で、日本は、生態系保全は、日本の化学物質管理政策の目的に、一般的には健康と並ぶ形では含まれていない。そして、有害化学物質の排出削減に係る数値目標は、ダイオキシン類やその他のわずかな物質を除き設定されていない。そして、化学物質管理の効果及び効率を向上させるとともに、生態系保全を含むように規制の範囲をさらに拡大すること、このような勧告がなされた背景があるわけですね。
 OECD参加加盟国三十カ国の中で、いわゆる化審法みたいな、同じような法律を持っている国は二十五カ国だそうでありますが、その二十五カ国のうち二十四カ国は人の健康に対する影響と同時に生態系への影響を審査するというようになっているんですが、残念ながら日本は今日まで、二十五カ国のうち一カ国だけ、その生態系への影響の防止というようなものをこの審査や規制の対象にしてこなかったというところに、大きな反省しなければならない問題があるんだろう、私はこのように考えております。
 そして、特に国際的な化学物質の管理の動向が基本的に当たり前のように、人とそれから生態系というものをあわせて、その悪影響の防止ということになってきているんですけれども、既に環境基本法とか環境基本計画の中では、当然生態系に対する影響も取り組むべきだということがなされているにもかかわらず、今日までこれの取り組みがおくれてきたというところに大きな問題、反省しなければならない課題があったのではないか、私はこのように考えてならないわけであります。
 一つ、やはり経済とそれから環境の両立とか統合ということが今日の、どなたもお話に出てくる概念になってきているわけなんですが、むしろ、まだ我が国においては今日までの状況ではそこに至らずに、環境と経済というのは矛盾、対立するようなものなんだというような、実際の施策の施行の中ではそういう壁が、溝があったのではないか、それがこれをおくらせてきてしまったものではないのか。
 もちろん、それを進めるというか、省庁の縦割りの弊害があったというふうに言えると思うんですけれども、その辺をどうやってこれから解決していくのか。これだけおくれてしまったという恥ずかしい話なんですけれども、その辺をどう反省して、それを克服していくような課題として受けとめていただかなければならない、このように思うわけでありますが、その件について御所見がありましたら、それぞれの大臣にお願いしたいと思います。
平沼国務大臣 我が国の化学物質対策というのは、御指摘のように、これまで専ら人の健康被害の防止を念頭に置いて進められてきた、これは事実だったと思います。化審法も、PCBによる環境汚染問題を契機として、人の健康被害の防止を目的としてまず制定をされた、こういう経緯がございます。
 一方、これまでも、動植物への毒性がある化学物質に関しては一定の検討や取り組みがなされてはきたものの、化学物質による動植物への悪影響については、一つは評価が難しい、こういった側面がございまして、化審法などの規制体系全般における制度的な対応をしてこなかった、これは御指摘のとおりだと思っています。
 こうした中で、今般の改正は、これまでの調査研究等によって、化学物質による動植物への悪影響に関する知見も相当程度蓄積をされてきました。
 そして、国際的には、人の健康被害の防止と並んで、今御指摘がございましたけれども、OECD、そういったところの中でも、環境中の動植物への被害防止を図ることが、ある意味では主流となりつつあります。
 国内的にも、環境基本法の制定以降、平成十一年の化学物質排出把握管理促進法において、動植物への毒性がある化学物質についても排出量データ等の届け出を義務づけの対象とするなど、その重要性に対する認識が高まってまいりました。
 こういったことを踏まえまして、環境基準や農薬取締法に関する政府部内での他の制度における取り組みと歩調を合わせまして、現時点では可能な限り対応を図っていかなければならない。
 確かに、今るる申し上げましたけれども、日本はそういう意味では出おくれた。そういうことで、これからやはりトップランナーを目指して頑張っていかなければならない、このように思っております。
鈴木国務大臣 我が国において、化学物質対策が、どうして動植物に対する影響というものがなされてこなかったのかという経緯については、経産大臣が答弁されたのと全く同じ認識でございます。
 やはり我が国の化学物質対策というものが、人への健康影響というものをまず第一に、化審法もそういう視点でつくられてきた、こういうこともございます。
 そして、実際のところ、動植物に対する影響をはかるいろいろな科学的知見というものもなかったわけでありますが、しかし、先ほど平沼大臣から御指摘がございましたとおり、国際的には、そうした動植物に対する影響を評価するということが一つの主流になっておりますし、OECDのそうした御指摘というものもございました。そして、国内的にも、先ほど小林先生が御指摘になりましたように、環境基本法、そして環境基本計画、そういう中で、こうした動植物への影響というものについても化学物質の分野で触れられている。
 こういうことになってきたわけでございますので、先生が先ほど御質問の中で、おくればせながらというお言葉を使われましたけれども、今できるところで、こうした動植物に対する影響評価も含めたものを取り入れていくということになった、そういうような経過でございます。
 そういう意味ではおくれた、こういうことでございますけれども、今般の法改正によりまして、動植物への影響に着目した審査、規制を着実に行うとともに、既存化学物質の点検を効率的に進めて、さらに、化学物質の動植物への影響に係る科学的知見の集積や影響の評価方法の開発等に努めることによりまして、国際的に見ても先進的な化学物質対策を推進すべく努力をしてまいりたいと考えております。
小林(守)委員 そういう方向で、両大臣の御所見の方向でぜひ頑張っていただきたい、このように御期待を申し上げたいと思います。
 それでは次に、先ほども申し上げましたけれども、四月十七日、参議院の方の審議が終わりまして、衆議院の方に回されてきた法案であります。その際に六項目の附帯決議が付されております。
 私は、今回の法案の全体的なものに目を通し、そしてこの附帯決議を見まして、本当に問題点というのはほとんど網羅されて、しっかりとした附帯決議ではないか、こんなふうに評価をしておる一人なんです。
 そういう点で、きょうの質問については、この六項目の附帯決議をもうちょっと具体化するようなところで、どう考えているのか、どう取り組みをしようとしているのか、その辺をお伺いしたいというふうに思っております。ただ、附帯決議の一項から三項までについては、別項立てで私の質問にさせていただいておりますので、四項から五項、六項、これらについて一つ一つお聞きをしておきたいなというふうに思います。
 四項の中では、「内分泌攪乱作用が疑われる化学物質についての科学的知見の集積を促進するとともに、いわゆる化学物質過敏症に関する知見の集積を図り、その対応の在り方を検討すること。なお、良分解性化学物質のリスク評価を推進し、必要な対策を講ずること。」というようなことが押さえられております。
 内分泌攪乱作用の問題や化学物質過敏症の問題、シックスクールやシックハウスの問題もあります。大変大きな問題なんですが、なかなか、その原因とかそのような影響が出てくる仕組み、それがよくわからぬというようなところで、科学的な知見を集積しなきゃならない状況だというふうには思いますが、その被害というか、その症状の中で苦しんでいる方も現実にいらっしゃるわけでありますから、ぜひ早急な、それから何らかの対症的な支援措置、そういうことも求められている段階だと思います。
 しかしながら、やはり科学的な知見、この集積は急がれるわけでありますね。そんなことで、これらについてどう取り組みを進めているのか、また、いこうとしているのか、それをお聞きしたい。
 また、良分解性化学物質の問題も非常に重要な問題だというふうに思います。今日までの化学物質に対する対策は、難分解性の物質を非常に重要視して、環境に出た場合には、良分解性のものについては、そのうち分解してしまうんだからいいというような形で規制対象外にされてきた経過がございます。しかし、生態系の影響ということを考えると、良分解性の化学物質であっても、生殖毒性とか生物毒性というものはあるというようなことがかなりわかってきているんですね。
 そういう点で、難分解性でなければいいというようなことではなくて、良分解性の物質においても、きちっと生態系の保全というような視点に立って考えるならば、リスク評価の対象にしていかなければなりませんよというような附帯決議でありまして、これは大変すぐれた識見だというふうに思います。
 これらについて、まず四項について、どう附帯決議を実効あらしめていくのか、お聞きをしたいと思います。
南川政府参考人 御指摘の附帯決議四でございますが、まず環境ホルモン、内分泌攪乱化学物質でございます。
 これにつきましては、科学的にはまだまだ未解明な点が多いということで、OECDなどが中心となりまして、試験法の確立を初めとする国際的な共同作業を急いでおります。この中で、環境省、経済産業省などが協力して、日本の役割を果たしておるということでございます。
 また、環境省におきましては、環境ホルモン戦略計画というものをつくりまして、現在、各種の調査研究を展開しております。全国の大気、水、土壌などの実態調査、野生生物への影響調査を行っておりますし、優先物質を選びまして、有害性の評価を進めているところでございます。
 国際的な連携も重要でございまして、イギリスあるいは韓国との共同研究を推進しておりますし、また、平成十年からは、世界最大規模の国際シンポジウムを我が国で開催いたしております。
 それから、国立環境研究所に環境ホルモン研究棟というものをつくりまして、ここをぜひ世界における研究の拠点にしたいと考えておるところでございます。
 続きまして、二つ目の化学物質過敏症でございます。
 これは、ごく微量の化学物質によって体調の不良を訴える方の存在が指摘されております。このため、いろいろな調査を進めております。例えば、動物実験といたしまして、マウスに低濃度のガスを暴露させて、神経系、免疫系等にどういった影響が出るかを検査する、あるいは、暴露室に原因物質と思われるガスを入れて暴露させまして、自覚症状あるいは検査所見の変化が暴露の濃度とどういう関係があるかを調べる、二重盲検法と言っておりますけれども、そういったことで鋭意調べておりますが、まだ現状ではしっかりしたデータが出ていないということでございます。
 良分解性物質でございますけれども、御指摘のとおり、国によるリスク評価が極めて重要だというふうに感じておる次第でございます。一つは、環境汚染を防止するための対策といたしまして、PRTR制度では幅広く良分解性物質も対象にしております。その中でデータを出して、また事業者の自主的な排出抑制を促しているところでございます。さらに、リスク評価を実施し、その結果に応じまして、大気、水質の排出規制法等の個別の排出規制を行うなど排出段階における措置も行うことによりまして必要な対策をとってまいりたいということで、ますます全体的に充実したいと考えております。
小林(守)委員 それでは、五項の決議に移りたいと思います。「化学物質に関する情報を積極的に公開し、化学物質に関する情報を市民や関係者が広く共有できる体系的なデータベースを整備するとともに、リスクコミュニケーションの推進を図ること。」
 これもまた、今お話がありましたPRTR制度などの制度化の中で議論をされてきたところでありますけれども、しかし、なかなか企業秘密というか営業秘密というんでしょうか、それとの兼ね合いで難しい問題があるというふうにも聞いております。
 基本的に、生産、輸入、そして流通、廃棄というような量的な化学物質のPRTR制度は、いわゆる名称的に言うと化学物質排出把握管理促進法ということで、簡単にPRTR法と言っておりますけれども、この中で、いわゆる量的に把握をしなければならない対象物質三百五十四物質のうち、いわゆる生態毒性というんでしょうか、おそれのあるというような認定をされた五十八物質について、相当その流れがわかってきている、データベースが整いつつあるというふうに聞いております。
 そういうことで、これらについて、さらに広がっていく可能性が高いと思いますし、最も大切なリスクコミュニケーションが国民との間で進められなければならないわけでありますが、それらについてどう進めようとしているのか、現状はどうか、この辺をお聞きしたいと思います。
    〔村田委員長退席、松本委員長着席〕
南川政府参考人 リスクコミュニケーションを促進いたしまして、化学物質の有害性あるいはリスクに関する正確な情報を、多くの方にできるだけわかりやすい形で提供していきたいと考えております。
 このため環境省では、御指摘のPRTR制度に基づきまして得られた化学物質の排出量、移動量につきましてはすべて公開しておりますし、また環境リスクの初期評価、さらに環境ホルモン作用に関します有害性評価の結果などもホームページを通じて公表いたしております。特に、いわゆる環境ホルモンにつきましては、我が国におきましてノニルフェノール、四オクチルフェノールの魚類に対する作用などを世界で初めて確認いたしましたが、こういった成果もすべて公開をしておるところでございます。
 それ以外にも、よりわかりやすいということから、PRTR対象化学物質のデータベース作成、あるいは市民向けのガイドブックの作成、配布、それから自治体向けのリスクコミュニケーションマニュアルを策定しましたり、小中学生向けの遊びも含めた教材の作成、配布を行っております。また一昨年の十二月からは、行政、産業界、NGO、それから企業の方が一体となりまして公開で議論を行います、化学物質と環境に関する円卓会議というものを行っているところでございます。
 今後とも、情報提供、リスクコミュニケーションの推進に全力を尽くしてまいります。
小林(守)委員 引き続き、六項に「事前確認により製造輸入が認められる新規化学物質について、事後監視の徹底を図ること。」という項目がございます。これもまた非常に重要な項目だと思います。
 というのは、御承知のように、従来は一トン以上を対象にして、年間一トンの生産あるいは輸入、流通、これらについては事前承認、確認というような形の対象になっていたんですけれども、今回の改正で、規制緩和と言っていいかどうかわかりませんが、効率的な化学物質の審査体制というんでしょうか、そういう視点から、アメリカの例に倣ったんでしょうが、十トンを一つの柱にして、その後は届け出なしでいいですよというような規制緩和的な方向が打ち出されたわけであります。
 そういう点では、非常に効率性なり、事業活動にとっても一つのいい環境になるんだろうというふうに思うんですけれども、しかし、考えてみなければならないのは、これが不正な、不適正な化学物質の管理に悪用されるというか、抜け穴になってしまうのではないかというおそれを禁じ得ないわけであります。
 そういう点で、事後監視というものを当然求めなければならないということなんですが、こういう附帯決議の中に出てくるからには、事後監視の実効性というんでしょうか、それをきちっとやり切る体制ができているのかどうか、できるのかどうか、これが極めて重要だ、このように私は思うんですね。その辺についてどう進めようとしているのか、お伺いしたいと思います。
今井政府参考人 お答え申し上げます。
 今回の事前審査制度の見直しによりまして、環境への放出の可能性が極めて低いものにつきましては、低生産量の新規化学物質につきましても、先生御指摘のように事前の確認制度という形になります。その場合に、事後の監視、こういうものは前提としておりますし、こういうことによりまして事前の確認と事後の監視を徹底するということが、今般の制度改正の根幹にかかわることだと思っております。
 したがいまして、私どもといたしましては、事後に報告徴収を受けたりまた立入検査を行うということを規定しておりますので、今、経済産業省で化学物質の運用に、この化審法の運用に直接、間接に携わっております職員は三十二名でございますが、この三十二名を適正に配置して、関係省庁とも連携しながら事前確認、事後監視をきちっとやっていきたいと考えております。
 また、同じこの法律で、独立行政法人製品評価技術基盤機構の職員にも立入検査の権能を与えていただくように改正をお願いしておりますけれども、専門知識を持っているこの製品評価機構、四十五名が化学物質の担当をしておりますが、その専門に化学物質に従事しておられる職員の方につきましても力をかりまして対応してまいりたいというふうに思っております。
小林(守)委員 ありがとうございました。
 それでは次に、附帯決議にも二項で入っております「リオ宣言第十五原則に規定する予防的な取組方法を踏まえ、化学物質のリスク低減のための総合的管理方策の検討を進めること。また、化学物質の妊婦・子供等への影響について検討すること。」ということが第二項に附帯決議されているわけでありますが、これもまた重要なものだというふうに私は認識をしているわけなんです。
 特にリオ宣言第十五原則、これらについて、これは九二年のリオ・サミットの際に確認された国際的な一つの共通認識というふうに言えるのではないかと思いますけれども、先ごろ行われましたヨハネスブルクのサミットにおいても実施文書というものが出されて、このリオ宣言の第十五原則が再確認されているというふうに言えると思います。
 この実施文書の中では、環境と開発に関するリオ宣言の第十五原則に記されている予防的取り組み方法に留意しつつ、透明性のある科学的根拠に基づくリスク評価手順と、科学的根拠に基づくリスク管理手順を用いて、化学物質が人の健康と環境にもたらす著しい悪影響を最小化する方法で使用、生産されることを二〇二〇年までに達成することを目指すと示されておるわけであります。
 そこで、この画期的な、また二十世紀の工業文明というのでしょうか、これを大きく転換させる、価値観の転換にもなってくるようなものだと思うんですけれども、要は、予防的取り組み方法という言い方がされていますけれども、別の言い方は、アプローチではなくて原則なんだというような、予防原則という考え方もよく使われているところであります。
 このリオ宣言の後に、九八年にはウイングスプレッドで科学者が集まってウイングスプレッド宣言を打ち立てております。また、それらを受けて、二年前、マサチューセッツ大学のローウェル校というところでローウェル宣言というものも出されております。これもまさにリオの第十五原則を踏まえてウイングスプレッド宣言が広がり、そしてローウェル宣言へとつながってきているというようなことで、化学物質対策とかあるいは温暖化対策とか、そういうような科学的知見が及ばない問題についてどう政策判断をすべきなのか、政策的な決定をしていったらいいのかというようなことにかかわる非常に重要な原則なり考え方が打ち出されてきているのが世界の趨勢であります。
 そういう点で、その出発点でもありますリオ宣言の十五原則について、特に経済産業大臣の方でどう認識されているのか、お聞きをしたいと思います。
高市副大臣 小林先生おっしゃいましたとおり、このリオ宣言の第十五原則、予防的取り組み方法の考え方は、国際的に環境政策における非常に重要なものとして位置づけられていると承知をいたしております。
 日本におきましても、環境基本計画におきまして環境保全政策の指針の一つとして位置づけられておりますし、具体的な各般の施策についても取り入れられているんですが、例えば、今御審議いただいております化審法におきましても、この考え方は取り入れられております。
 具体的には、新規化学物質について製造などをしようとする者は、あらかじめ届け出ることを義務づけられており、事前の審査を経て、指定化学物質または規制対象物質に該当しないことの通知を受けるまでは新規化学物質の製造等をしてはならないとされているんですが、これはつまり、新規化学物質の有害性について何ら具体的な情報などがない時点では製造、輸入を禁止しているということになりますので、これはまさに予防的取り組み方法の考え方に沿ったものです。
 また、難分解・高蓄積性が明らかになった化学物質につきましては、これは環境汚染防止の観点から、毒性が不明な段階で一定の措置を講じることとしておりますので、これも予防的取り組みの考え方に沿ったものだと考えております。
 まさにこの予防的取り組みを怠ってしまいますと、後で莫大なコストも発生する可能性がございますので、小林先生の御指摘のとおり、これは経済産業省所管の産業政策的な面でも非常に重要な位置づけと考えております。
小林(守)委員 基本的な認識はそれでいいと思いますけれども、少しもうちょっと現実的な問題になったときにどうなのかということが問われるんだろうというふうに思うんですよね。
 少しくどいようですけれども、第十五原則をちょっと踏まえてどういう文章なのかをお話ししておきたいと思いますが、「環境を保護するために、予防的取組方法は、各国により、その能力に応じて広く適用されなければならない。深刻なあるいは不可逆的な被害のおそれがある場合には、完全な科学的確実性の欠如が、環境悪化防止のための費用対効果が大きい対策を延期する理由として使われてはならない。」というようなことなんです。
 ちょっと回りくどい言い方なんですけれども、深刻な不可逆的な被害のおそれがある場合には、科学的な確実性が欠如していても、科学的知見が及ばなくても、よくわからなくても、環境悪化防止のための施策をとりなさいということを言っているんですね。それを優先させなさいということが予防原則の考え方なんですよね。
 これは、現実の政治の意思決定の過程で考えてみると極めて重要な大きな転換になるのではないかな、このように思いますし、経済と環境との統合という概念につながっていくというふうに私は考えるわけであります。
 それらを受けて、この十五原則を受けて、九八年のウイングスプレッド宣言では例えばこういうふうに言っています。「ある活動が環境や人間の健康に害を与える脅威を生じるならば、科学的に一部の因果関係が十分に確立しなくとも、予防的方策をとるべきである。」こういう言い方がなされておりまして、そして、ある事業を行う者はその安全を立証する責任がある、科学的に、知見に応じて安全なんだ、被害は及ばないんだということをみずから立証する責任があるということをこのウイングスプレッドでは言っています。
 それらを受けてローウェルの宣言にも発展しているわけでありますけれども、ここで注目したいのは、このような予防の目標は害を防ぐためのものであって、進歩を妨げるものではないんだというような考え方ですね。「予防政策を適用することはよりよい原料とより安全な製品・代わりの生産工程の革新を育てることができると、私たちは信じる。」というような形で、まさに環境と経済の統合の姿が私はここに、そのような予防原則が経済の発展につながるんだよ、それがうたわれているんだろうというふうに思いますし、その辺を受けとめていっていただきたいなというふうに思うんです。
 具体的にもうちょっと平易な言葉に直して言うならば、こういうことなんだと思います。要は、有害性が証明できない、科学的知見がわからなくて証明できない、有害だというおそれがあるけれども証明できないときには使っちゃだめですよ、市場に製品として使ったりその技術を使ったりしてはいけませんよという考え方に立つのか、あるいは安全性が証明できるまでは使っちゃいけませんという立場に立つのかということなんですよね。有害だということが証明できなけりゃ使っていいよという考え方でいくのか、安全性が証明できなければ使っちゃいけませんよという立場でいくのかというふうに私は簡単に言うと言えるのではないかなというふうに思うんですよね。
 それで、この第十五原則は、要は安全性が立証できなければ、立証できないものは使っちゃいけません、極端に言えばそういうことになるんだろう、このように思うんですけれども、これを産業経済政策の中でどう組み込んでいくかということが大きな課題なんですよ。
 今まで日本は、有害性や危険性や毒性が証明できなければ、科学的知見が明らかでなければ使っていいですよ、規制しなかったんですね。しかし、世界の趨勢はそうではなくて、その逆です。安全性が証明できなければ使っちゃいけません、予防するのが原則なんですというようなことに価値観が転換しているというところなんですよ。そこを、特に経済産業政策を取り仕切る大臣の認識というのは、極めてこれは現実には問われてくる問題であるというふうに思うんですが、そこをぜひ御確認いただきたいなというふうに思うんですよ。
平沼国務大臣 先ほど高市副大臣からも御答弁をさせていただきました。
 先生も御指摘のように、我々は、一方においては経済活動によって快適で高度な生活を享受している、こういう側面があります。したがいまして、いかにバランスよく調和をとっていくか。しかし、その際、こういう危険な化学物質に対してはより慎重に、安全性を担保して、そして人的だけじゃなくてやはり動植物等生態系に対してもしっかり配慮していく、こういうことが必要でございまして、私は、リオ宣言の十五原則に示されている予防的取り組み方法、これは今先生がおっしゃったそういう基本的な考え方に立つべきだ、このように思います。
小林(守)委員 それでは、次に移りたいと思います。
 やはり附帯決議の第一番目に掲げられているところでありますが、附帯決議の第一は、「既存化学物質の安全性点検については、国際的な役割分担による有害性評価を促進するとともに、官民の連携による有害性評価の計画的推進を図ること。」こういうふうになっております。
 ただ、既存化学物質の安全性の点検というのは、四十八年にこの化審法ができたときに既に既存の物質が二万件ぐらいあったというふうに言われているわけでありますけれども、その間に一割に満たない数が一応検査されたというか審査されたというふうに私は聞いておりますけれども、今回新たに生物毒性、生態毒性という概念が入ってきて、枠組みが広がったわけでありますから、既存の審査済みのものであっても対象にしていかなきゃならないというふうに言えると思います。
 そういう点で、新たな生態毒性の審査、規制も加えて、新規の化学物質に対して、それから当然既存の化学物質に対して、総合的な管理政策が求められるわけでありますけれども、これについて、新旧含めてどういうふうに生態毒性を含めた審査体制を進めようとしているのか、お答えをいただきたいと思います。
南川政府参考人 小林委員御指摘のとおり、今回の改正によりまして、新規に製造、輸入される化学物質につきましては、動植物への影響の観点からも事前に審査がなされまして、その結果に応じまして必要な規制措置が講じられることになるわけでございます。
 具体的には、難分解性があって動植物全般への毒性があると判定されたものにつきましては、新しく第三種監視化学物質というものを設けまして、そこで製造者等に製造、輸入の実績の数量の届け出を求める、あるいは必要な指導を行うなどの監視措置を講ずることにいたしております。
 さらに、その中で、特に生活環境に関係のある動植物に対する影響を考慮いたしまして、物質の性状に応じまして、第二種特定化学物質、第一種特定化学物質といたしまして、製造、輸入等に係る規制を行うことといたしております。
 それから、もう一つ御指摘ございました、既存の化学物質でございます。これにつきましては、点検の効率化、加速化が重要でございます。今回の法改正におきましても、化審法に係る既存化学物質の点検にも活用できるように、事業者がみずから有害性情報を取得した場合の報告制度を導入いたしております。今後、新たな報告制度も十分に活用しながら、事業者、関係省庁と連絡をとりながら、既存化学物質の安全性点検というものを計画的に進めてまいります。
 また、動植物に対します毒性についての既存化学物質の点検につきましては、環境省におきまして、生態毒性試験を積極的に進めます。その上で、また、それに加えまして、化学構造式などから生態毒性を予測する手法の検討も進めまして、点検を効率的、加速的に進めていきたいと考えております。
小林(守)委員 そういう仕組みの中で、積極的に、前倒しぐらいの勢いで進めていただきたい、このように考えるわけであります。
 審査体制も不十分な状況の中ではありますけれども、しかし、審査のための技術手法の開発、これらについても、OECDのテストガイドラインなどが既に示されておりますけれども、アメリカのやり方、それからEUのやり方、ちょっと違う視点があるようでありますけれども、日本ではどういうような方法で技術開発をしながら、また、現在も既に環境省の方ではそういうことを進めていると思うんですね、検査の方法とか審査の仕組み。それらについて、日本としてはこういうような方向でいきたいというような、現実にはこうやっているけれどもこういうことが望ましいとか、そんなことがありましたら教えていただきたいと思います。
南川政府参考人 この分野での科学的知見の集積、それに並ぶ技術開発というものは極めて重要だと考えております。
 御指摘のとおり、アメリカはアメリカの方法がございます。また、OECDでもいろいろな方法を示しておりますが、その中で、我が国もできるだけ世界的に協調しながら調査研究を進めていくということが、結局、共通した知見の基盤の形成になるということでございまして、その中で、できるだけ積極的にコミットしていきたいということでございます。
 例えば、さっきも少し触れましたが、環境ホルモンにつきましては、世界的な最高水準の分析手法などを用いまして、ノニルフェノール、4オクチルフェノールの魚に対するホルモン作用を確認したところでございますし、また、メダカの性決定遺伝子というものの発見、同定も行っております。これにつきましては、その結果のみならず、分析手法も含めて世界に示しておるところでございます。
 また、それ以外のことにつきましても、日米欧が協力、分担しまして、新しい化学物質の評価手法、それから、環境実態の調査手法につきましても、積極的に情報交換を通じて、より質の高いものをつくっていきたいと考えております。
今井政府参考人 当省といたしましても、化学構造式から、分解性でありますとか蓄積性でありますとか、そういう性状を予測するようなシステムの開発、それから、環境残留状況を推計するためのモデル、それから、内分泌攪乱作用に関するメカニズムの解明でございますとか、その作用の有無を確認するための試験方法の開発、それから、リスク評価手法の開発、物質を所管している立場からもこういう研究を進めているところでございます。
小林(守)委員 おくれて出発することになったわけでありますが、それぞれの技術なり知見の蓄積は私はあるんだろうというふうに思います。そういう点で、相当早く到達できるというか、逆に言えば、もうちょっとすればトップランナーになれるぐらいの力は私はあると思うんですよ。そういうことで、ぜひ国際競争力という視点からも頑張っていただきたいな、こんなふうに御期待を申し上げたいと思います。
 次に、やはり、附帯決議の中にも押さえられているところなんですけれども、三項、「土壌生態系を含め生態系全体への影響を客観的に評価・把握するための研究を推進し、知見の集積を図るとともに、生態毒性試験及び審査の実施のための体制の整備を急ぐこと。」というふうに書かれております。この「土壌生態系を含め」というところに大きな意味があるんですが、当然のことながら、大気それから水、これは押さえられなきゃならないわけなんですね。
 そういうことで、今日までの化審法については、基本的には製造とそれから使用の段階における環境影響評価、人や生態系に対する影響というものに今回広がったわけですけれども、しかし、製造段階、流通段階のものが制度的には取り決められたわけですけれども、問題は、排出段階については個別法でどう対応していくのかないんですよね。
 そういうことで、OECDの勧告にもありましたように、廃棄段階においてもきちっとした規制が必要ですというふうになっていると思うんですが、廃棄段階において規制をしていくためには、大気、水、土壌というようなところになるわけでありますが、今後の、これは政令とか法改正も必要かもしれませんが、排出段階においてどう取り組んでいくのか、この辺をお聞きしたいというふうに思います。
 というのも、今回の化学物質に関する規制の関連法というのは大変なものがありまして、本当に複雑多岐にわたっている、いろいろな省庁にわたっている法律があるわけでありますが、特に排出段階にかかわるものとしては、水質汚濁防止法あるいは大気汚染防止法、廃棄物処理法、土壌汚染対策法というのもありますけれども、この辺の法律の中で排出基準等について、生態毒性の排出基準、これをきちっとやはり網羅していかなければ体系性がとれないのではないか、抜け穴ができてしまうのではないか、このように言えると思うんですけれども、この水、大気、土壌、これらについての生態毒性にかかわる排出基準、これらについてどうこれから取り組んでいこうとしているのか、その辺をお聞きしたいと思います。
西尾政府参考人 有害な化学物質につきましての排出段階での規制ということのお尋ねでございます。
 これは有害な化学物質が環境中に排出されることによる影響を防止するということでございますので、従来、大気汚染防止法や水質汚濁防止法におきましては、人の健康の保護や生活環境の保全ということで取り組んでおります。
 その中には、例えば、大気に排出される物質のうち、オキシダントは植物にも影響があります。あるいは、水質のうち、シアンにつきましては、人体にも有害ではございますが非常に強い魚毒性がある。そういうことも織り込んで規制をしておるわけでございますが、ただ、先生御指摘のように、そういう生物生態毒性といったものを真正面からとらえてきたのかというと、必ずしもこれまでそういうようには言いがたいわけでございます。
 今日、そういう広い視点にも立って考えていく必要があると思っておりますが、目下特に取り組みを急いでおりますのは、特に関係が深いのは、水生生物への影響でございます。
 これにつきましては、現在、中央環境審議会に諮問いたしまして、公共用水域に存在する生態毒性を有する化学物質に対応するということで、水生生物保全の観点からの環境基準のあり方ということを審議していただいておりまして、専門委員会での検討、現在、専門委員会で報告書案をパブリックコメントに付するという段階まで参ってきております。
 この答申が得られますれば、これに基づきまして環境基準等を設定する、そうなれば、次に、それに基づきまして排出基準等の環境管理をしていく、そういう段取りで進めていくことになろうかと思っております。
 そのほか、土壌におきます生態影響、これも昨年の土壌法案のときからの宿題にもなっております。今後、各種の知見を集め、さらに検討を深めていくということで取り組んでまいりたいというふうに思っております。
小林(守)委員 いずれにしても、排出段階においても、生態毒性の視点からきちっとした体系性をつくっていっていただきたい、このように強く要望しておきたいと思います。
 以上で、附帯決議にかかわる条項については、それぞれ細かく、実効性をあらしめるためにもお聞きをさせていただいたわけでありますが、この辺がきちっと押さえられていくならば、私は、まさにその国際水準に到達し、むしろトップクラスになるぐらいのものになっていくのではないか、またその力はあるというふうに見ておりますので、ぜひ御期待を申し上げたいと再度お話をしておきたいと思います。
 最後に、環境中の動植物への影響ということが今回の化学物質管理対策の大きな柱になっているわけでありますが、実は、つい最近の、財団法人日本生態系協会のこの冊子を届けていただきました。五月号ですが、これに、私もちょっとショックというか、ああそうかなというふうに改めて気づいたんですけれども、カエルが、これは日本に限らず世界的にも激減していると。しかも、日本のアカガエルについては絶滅の危惧にまでなってきていますよというふうに言われております。
 細かく見ていきますと、これは大変なことだなというふうにしみじみと、この記事というか、この資料を読んで、さあ今回の化学物質審査法の、実際はこういう問題が解決できるのかどうかというところまでいかなきゃならない問題なんだろう、このように思うんですね。
 そういうことで、まず、カエルというのは、例えば化学物質の毒性の試験に使われる藻とかミジンコとか魚とかとは違って、もう少し高等な、エコ体系のシステムの上の方に、食物連鎖の上の方に位置する動物だと思うんですけれども、両生類ですけれども、カエルそのものは、水や土壌、そういうところから、水も吸収できる、呼吸もできるというようなことで、非常に薄い皮膜に覆われているというんだそうですね。そういうことで、環境毒性をもろに受けやすいというふうなことも言われているんですが、オタマジャクシで水の中にすみ、えら呼吸をし、そしてその後陸に上がると肺呼吸をするというように、非常に特異な動物だと思いますけれども。
 我々、日常生活の中で当たり前に接してきた動物が大変な異変の状態にある、あるいは数が減っていくということばかりでなくて、奇形が発生しているというようなこととか、要は、開発によって、宅地化あるいは土地改良事業や圃場整備事業で生息地を追われているということは現実によく目に見えることだと思うんですが、目に見えないところで非常にむしばまれているというようなことが指摘されている。
 その目に見えないものについては、例えばオゾン層の破壊によるUV―Bの有害紫外線が、卵の段階からその量が多くなって、その遺伝子などに障害を与える、あるいは免疫機能が低下してしまうというような障害が出ていますよ、あるいは農薬の問題ですね、殺虫剤やいろいろな農薬の影響によって、これまた大変な環境ホルモン的なものが出ているのではないかとも言われているというふうにも言われておりますし、急性の毒性と同時に、慢性の毒性で、非常に、極微量の、ピコ単位の、一兆分の一グラムレベルのものによっても影響を受けてしまうというような、超微量のナノあるいはピコ、そのレベルの量によっても影響が出てきてしまうという環境ホルモンの問題も、カエルの環境の中にあらわれてきているのではないかということが指摘されておりますけれども、これらについてどのようにまず現状を認識されているのかどうか。
 今の季節でいうならば、田舎へ帰るならば、まあ夜の十時ぐらいまではうるさくて眠れないぐらいににぎやかなはずでありますけれども、それが、皆さんもぜひ、ふるさとへ帰ったときに、カエルの声が聞こえなくなったんではないかというふうなことで、ぜひ気をつけて関心を持っていただきたいなというふうにも思うんですけれども、その辺について、現実にどういうふうな状況にあるのか、環境省のレッドデータブックとかリストの中でもいろいろと調査されているとは思いますが、その辺をお示しいただきたいと思います。
岩尾政府参考人 各種の動植物の全国的な分布状況でございますが、環境省では、自然環境保全基礎調査によって把握しております。カエルにつきましては、トノサマガエル、ニホンアカガエルなど約四十種について調査をしております。しかしながら、データの精度の問題もありまして、増減状況についての単純な過去との比較は困難でございます。
 一方、環境省版のレッドデータブックでございますが、本州を中心に生息するトノサマガエルの一種でありますダルマガエルを絶滅危惧二類として掲載しておりますほか、数種のカエルをこのレッドデータブックに掲載しております。これら個体数の減少は、主として田んぼや里地、里山など生息地の縮小等によるものという記載がなされております。
 以上です。
南川政府参考人 まず、今回の改正でございますが、その中で、もちろん一つの大きな趣旨が動植物への悪影響の未然防止ということでございます。ただ、今般、いわゆる食物連鎖の上位にあるものにつきまして、一部の物質につきましては調査があるということになっておりますが、当面は鳥類あるいは哺乳類を考えております。
 それで、このいわゆるカエルでございますが、カエルにつきましては、余り世界的には研究が進んでいる状況にはございません。特に化学物質あるいはオゾン層を含めた問題とカエルの関係というのは、必ずしも世界的に研究が進んでいませんし、そもそもカエルに重点を置いた研究機関というのも極めて少ないというのが現状でございます。
 去年の十二月に、鈴木環境大臣が、広島で環境ホルモン会議がございますときに訪れましたが、そこで、広島大学の研究室、理学部の研究室を訪れております。その際に、広島大学の学長さんにお話を伺いましたけれども、広島大学では非常に立派なカエルの研究施設をつくって、世界で一、二位のカエルがここで今育っておる、これを用いてどんどん、環境省の仕事もそうだし、世界的なそういう生態系を含めた研究に寄与していきたいというお話もございました。
 そういう状況でございますので、これからでございますけれども、ぜひ、カエルにつきましても新たな知見が得られるように、そういった大学の協力も得ながら進めていきたいと考えております。
小林(守)委員 自然再生推進法なども議員立法で成立をさせていただきましたけれども、やはり里地、里山、湿地の保全というか、そういうものが極めて私たちの生活にとって、あるいはこれからの生活スタイルの中で大事なんだというような、価値観の転換みたいなものが今進められているというふうにも思うんですけれども、里地、里山、湿地、田んぼで一番接するのが多いのが私はカエルじゃないかなという感じがしてならないんですね。小さいころは、よく捕まえて遊んだ覚えもあります、悪いことをしたこともありますけれども、ここを考えてみれば、大変な状況にカエルそのものが置かれている。考えてみれば、わからないうちに人間もそういうところに追い込まれているんですよという警告なんだろうというふうに受けとめる必要があるんですね。
 やはり、エコロジーというかエコシステムの中で、その頂点に人間がいるとすれば、その中間ぐらいのところにカエルがいるわけですから、これが大変な状況になっているということは、そのうち鳥にいくとか、鳥とか、そのほかのいろいろなこういう捕食動物にも及んでくるわけでありますから、これは人間に対する、とにかく足元から忍び寄る脅威ですよというふうに言えると思うんですね。
 安全保障の問題でいろいろやっていますけれども、やはり地球環境の崩壊というんですか、生態系の崩壊というのは、私は静かな脅威だというふうに思うんですよ。テロの脅威もあります。いろいろな脅威もありますけれども、しかし、私は、静かな見えない脅威として地球環境の崩壊というか、そういうものが進んでいるというふうに安全保障の問題でもこれは考える必要がある問題だろう、このように考えております。
 そういうことで、カエルの例で大変脅威感を感じているわけですけれども、御承知のように、六〇年代のアメリカの化学物質問題で、特に農薬のあるいは殺虫剤の散布の問題で、レイチェル・カーソンという方が「沈黙の春」というものをあらわしまして大変な反響を呼んだことなんですけれども、化学物質対策は、世界はここから始まっているようにも言えると思うんですけれども、あのレイチェル・カーソンが一つの談話の中で、もし私たちがこのまま文明の道を無反省に歩き続けたら、春になっても小鳥のさえずりのない沈黙の季節を迎えることになるというようなことをおっしゃっております。
 このレイチェル・カーソンさんという方の警告というか、これを、私は、このまま文明の道を無反省に歩き続けたら、春になってもカエルの声のない沈黙の梅雨の季節になってしまうんではないかというようなことになるんではないか、このように思いまして、きょうは質問をさせていただいたということでございます。
 ありがとうございました。
松本委員長 高橋嘉信君。
高橋(嘉)委員 自由党の高橋嘉信でございます。
 化学物質は、私どもの生活になくてはならないものとして密着し、その利便性、有用性については論をまたないところであろうと思います。しかしながら、他方、毒性あるいは残留性の高さが人や環境を脅かす可能性も秘めるという一面を持っております。
 一九七三年、PCB問題を契機に制定された化審法でありますが、現行の規制及び管理のあり方はどうであったか、また、対策はどうであったか、この認識が重要であろうと考えております。
 PCB、これはもう蛍光灯や変圧器の絶縁油に使用され、DDTは、御案内のとおり、先ほどレイチェル・カーソンの話がありましたけれども、これはもう農薬、殺虫剤であります。トリクロロエチレン、接着剤、塗料、それとノニルフェノールは殺虫剤とか洗剤であります。カドミウムは電池やバッテリー、こういうことでありました。
 今までこういったものを暴露して、被害が広がってから有害性を知って規制を重ねた経過を否定できないのではないでしょうか。これらを含め、今までのあり方等々も含め、経済産業大臣の御見解を賜ります。
平沼国務大臣 これまで、先ほどの御答弁にも触れさせていただきましたけれども、我々は特に人間に対する被害というところに重きを置いてきて、その対策を講じてきた嫌いがございます。
 そういう意味では、こういう化学物質というものは、今回のOECDの勧告にもございますように、生態系、そういったいわゆる動植物、これに対しての配慮というものも必要なわけでございまして、そういう意味では、日本の場合にはそこのところを怠ってきた、こういう反省がございます。
 今回、お願いをしておりますこの化審法の改正におきましても、そういったOECDの勧告も踏まえまして、私どもとしてはやはりこの地球環境、こういうものを中心に据えて、そして生態系の維持、こういうことに力点を置いてやっていかなければいけない。そういうことで、これまでのあり方については、御指摘のように、大変いろいろな面で問題があった、そういう反省の上に立ってしっかりしたものをやっていかなければいけない、こんなふうに思っております。
高橋(嘉)委員 生態系の保全については、まさにOECDの勧告、これからの問題でありまして、今までの人体に与える影響等々の施策においても後手後手であった、この感はぬぐえないと思うのであります。
 そこで、化学物質の製造及び輸入業者が化学物質に関する有害性情報、知見を取得した場合、得た場合、報告義務を今改正案で出しておりますけれども、これを実効あるものにする担保、それはどこにあるんでしょう。また、化審法を本当に生かしていくためにも、実効あるものにするためにも、産業界との協力が不可欠であると私は考えておりますが、この点について、あわせて経済産業大臣にお伺いします。
西川大臣政務官 産業界の問題でありますけれども、化学物質のリスク管理の重要性、これは産業界も十分認識はしておる、こういうふうに受けとめています。
 産業界におきましては、開発から製造、流通、使用、最終消費を経て廃棄に至るまで、全サイクルにおいて環境、安全面について自主管理を行っている、こういう運動を推進している、こういうふうに私ども受けとめています。世界じゅうでも四十五カ国の化学産業界がこれらの活動を推進しておりますし、我が国といたしましても、社団法人日本化学工業協会が中心となって活動を展開しております。
 これからも、これらを通してしっかり推進をしていきたい、こう思っています。
高橋(嘉)委員 日本化学工業協会に入っている人たちは、そのようなことでいち早くそういう協力姿勢もとれるかもしれませが、入っていない人たちを含めては、どのようにお考えですか。
松本委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
松本委員長 速記を起こしてください。西川経済産業大臣政務官。
西川大臣政務官 確かに、化学工業協会に入っていないところをどうするかという問題はありますけれども、これからぜひ協会に入っていただいて、ともに推進をしていくように私どもは全力を挙げて努力をしてまいりたいと考えております。
高橋(嘉)委員 では、その点についてはまた後で触れる機会があろうかと思いますので。
 リスク評価の評価、すなわち生態毒性試験の実施体制の早期の確立はもとよりでありますが、年間平均三百件ほどの新規化学物質の事前審査実績があると言われておりますけれども、そこでお伺いしたいんですが、リスク評価の順位についての議論はどのようになっているのでしょうか。
 例えば、およそ七十種類の化学物質が疑われている内分泌攪乱物質についての評価を優先するとか、そのような考え方はおありなのでしょうか。御見解を、できれば経済産業大臣にお願いします。
望月大臣政務官 お答えさせていただきたいと思います。
 ただいまの順位でございますけれども、生産量の多いもの等、そういった観点に立って順位を決めさせていただきたい、このように思っております。
高橋(嘉)委員 わかりました。いずれ参議院の方の附帯決議にあった内容ですから、お答えいただけるかと思ってお伺いしたわけであります。
 では次に、ユーザーは、グリーン購入、グリーン調達、その意識が非常に強くなってきております。僕は、この法案の中で非常に不思議に思ったのは、これも参議院の方の附帯決議にありますけれども、なぜリスク評価、リスク管理に加えて、あれほど食品安全委員会の際に問題になったリスクコミュニケーション、この議論がなされていないのか。
 消費者、ユーザーを含めたリスクコミュニケーション体制をとろうと、先ほど事務方からのリスクコミュニケーション体制の話ではなくて、それは今までやってきた話を聞いてもどうしようもないので、新たな問題、生態系も含めるわけですし、その辺のリスクコミュニケーションのとり方、そういう視点はあるのかないのかも含めて、円卓会議をすればリスクコミュニケーションではありませんので、その点の考え方をお伺いしたいのです。
西川副大臣 リスクコミュニケーションは、先生も御案内のとおり、リスク管理、そういう評価、こういうものと密接なつながりがあって、経済産業省は、化学物質の属性に関する専門的な知識を持っております。それから、厚生労働省は、それらの人体、健康に対する影響、こういうものについての専門的な知見も豊富です。それから、環境省は、これらの物質が環境中に放出された場合の影響等についての知見を有しておられます。
 従前はこれら三省が一体となって連携をしてきたわけでありますが、今先生の御指摘の社会的な要請がいろいろな観点から出てきている中、従前以上に三省が連携を持ってこのリスクコミュニケーションを消費者も含めてやっていくという御指摘は非常に大事だと思いますので、私どもは、三省がより連携を強めてこれらの体制をきちっとやっていく、こういうふうに対応していきたいと思っております。
高橋(嘉)委員 西川先生にお言葉を返すようですけれども、それはそのようにお願いしたいんですが、連携という言葉は、非常に使いやすい、またいろいろな意味を含む言葉でありまして、具体的に、本当にリスクコミュニケーションの必要性を感じているのは産業界だけではありませんので、そこのところをしっかりとやっていただきたい。きょうはお願いにとどめておきますが、よろしくお願いを申し上げます。
 では次に、OECDのレビューでは、日本の化学物質管理政策に生態系の保全という視点がない旨の指摘がなされました。また、水質についても、生態系保全に係る水質目標を導入すべきだ、その旨の勧告もなされております。
 そこで、まずは経済産業大臣にお伺いいたしますが、諸外国の生態影響評価の位置づけ、また取り組みは、米国は一九七六年、カナダは一九八八年、お隣の韓国は一九九〇年となっております。なぜ日本はおくれたのか、この点について御見解をお伺いします。
平沼国務大臣 確かに、OECDの勧告にもございますように、日本の取り組みが諸外国に比べておくれている、こういうことは事実でございまして、それだからこそ勧告にも出たと思います。
 これは、先ほどの答弁でもちょっと触れさせていただきましたけれども、やはり日本の場合には、人への影響ということが重点的になりまして、そして動植物や生態系に対しては確かにおくれをとったことは事実でございます。それで、その時点では知見だとか問題意識がなかったわけでございまして、最近に至りましてそういう知見ですとか問題意識が出てまいりました。
 そして、OECDの勧告もこれあり、私どもとしては、大変おくればせでございますけれども、こういったことに本当に鋭意取り組んで、そしてしっかりとそこの体制を築いていかなければならない、こういうことでございまして、繰り返しになりますが、私どもとしては、動植物や生態系に対するそういう認識が非常に薄かった、それがおくれをとった一つの背景にあった、こういうふうに思っております。
高橋(嘉)委員 いずれ、知見がおくれていたということには僕はなかなか理解は示せないのでありますが、それでは、次に環境大臣にお伺いします。
 一九九三年の環境基本法、この中に生態系の保全がうたわれております。しっかりとうたわれております。なぜOECDの勧告を受けてからの動きになるのですか、十年もたっていますけれども。
 さらに、環境基本法に基づく水質汚濁防止法の排水基準にもまた、有害物質については健康項目としてこれのみでありまして、生活環境項目の中に動植物などの生態系に与える有害物質の基準はありません、先ほど二、三例を挙げて事務方が言っていましたけれども。
 そういう生態系保全、動植物の保全という視点が、十年前に環境基本法制定の際には高々とうたっているのに、しかも、それだけ諸外国がこのように進んでいる、そういった中でなぜおくれたのか。そして、今後この生活環境項目の中に、きちっと生態系に与える有害性物質についての調査を行っていくのかどうか。この点、二点について環境大臣にお伺いします。
鈴木国務大臣 先ほど、小林先生に対します答弁におきましても、この化学物質対策につきまして、こうした動植物に対する影響評価というものの取り組みがおくれてきたということも申し上げたところでございます。
 それは、その答弁にもいたしましたが、平沼大臣もお答えになりましたとおりに、我が国の化学物質対策といいますものが、専ら人への健康被害というものがそもそも出発点として始まった、そういう流れの中でおくれをとった。その過程におきましては、なかなか動植物に対します影響に対する評価というものを行うことの難しさもそこにあった、それが知見と申しますか、そういうこともあった、こういうことであります。
 そういう中で、国内外の動きも変わってまいりました。先生から今御指摘のございました環境基本法、その基本計画という中でも示されているわけでありますけれども、この環境基本法、十年たってなかなかという御指摘は、そのまま甘んじて受けなければならないわけでございますけれども、この環境基本法に書いてあります生態系とのかかわりの問題につきましては、非常に端的でなく大まかに書かれているものでありますから、むしろこの環境基本計画、環境基本法ができたところから、いろいろな知見と申しますか、いろいろな対応が始まったということで、結果において今日までこのような状況が続いた、そのように私は認識をいたしております。
高橋(嘉)委員 いずれ、とにかく頑張っていただきたいという話しかしようのないお話でありますけれども、最後に環境大臣に時間ですのでお伺いして、質問を終わりたいと思います。
 今までの例えばリスク管理とかリスクコミュニケーション、先ほど事務方が説明したことの内容を聞くと、だけれども、今までとは完全に違うわけですね、生態系保全に完全にシフトするわけですから。
 そういった中において、リスク管理、例えば食品安全委員会とか何かであれば専門委員を、これはお金をかけちゃいけませんから、ボランティアでも何でも全国に委嘱するとか、監視委員を委嘱するとか、要はそれぐらいのリスク管理の仕方も要求されてくるかもしれません、あってしかるべきと私は考えておりますが。
 加えて、このリスク管理体制、生態系保全、これに着目してこれからやるんだということであれば、従来とは変わってくるはずであります。リスク管理と、そしてさらには川で遊ぶ子供たちから、いろいろな意味でのリスクコミュニケーション、国交省の河川局任せでいいわけではありませんから、それらのことも含めて、リスク管理、リスクコミュニケーション、どのようにお考えか、環境大臣にお伺いいたします。
鈴木国務大臣 今回の動植物に対します影響を加味するという改正の中におきまして、環境省における化学物質のリスク評価、こういうことでございますけれども、環境省では従来から、環境基準の設定あるいは水質汚濁防止法等に基づきます排出規制、農薬取締法に基づく農薬登録保留基準の設定等の化学物質対策を行ってきたところであります。
 また、経済産業省とともにPRTR法による制度も所管をしておりまして、化学物質の排出、移動量の把握等を行っているほか、種々の化学物質について、環境モニタリング、水生生物への毒性試験、初期的なリスク評価も実施をしているところでございます。
 これに加えまして、平成十三年一月の中央省庁再編によりまして、化学物質審査規制法と廃棄物処理法を所管するようになりましたことから、製造、輸入の入り口から排出、廃棄の出口に至るまで、一貫した化学物質のリスク評価及びリスク管理を環境省も行うことが可能になったところであります。
 こうした立場を活用いたしまして、関係省庁との連携の中で、化学物質による環境汚染の防止に万全を期するとともに、化学物質のリスク評価を一層進めてまいりますとともにリスク管理を適切に行ってまいりたい、そのように考えております。
高橋(嘉)委員 済みません。リスク評価、それはもう十分わかりました。
 リスク管理の中には監視は含まれないんですか。今までの管理を規制だけにとらえようとするところに問題があるということで、食品安全委員会でも、表示制度についてのチェックをどんどんやる体制をつくっているわけですね。リスク管理の中には監視体制も含まれてくるんじゃないんですか、ましてやこれだけ生態系の全般に広がるということになると。その辺の視点をちょっと今の答弁では感じなかったんですけれども、もう一度お願いします。
鈴木国務大臣 リスク管理の中では、その監視というものも含めて考えてまいります。
高橋(嘉)委員 時間ですので終わります。
    〔松本委員長退席、村田委員長着席〕
村田委員長 藤木洋子さん。
藤木委員 日本共産党の藤木洋子でございます。
 ことし三月十七日、筑波大学附属病院の医師から潮来の保健所に対して、神栖町の住民が手足のしびれ、震えなどの症状を訴えているので井戸水を検査してほしい旨の依頼がございました。
 同月二十日、茨城県の衛生研究所が検査をした結果、A地区から、水質基準の四百五十倍の濃度、四・五ミリグラムの砒素が検出されました。引き続いて四月三日に、A地区の井戸から西の方に約一キロメートル離れたB地点で、三月二十八日から四月三日にかけて検査をした井戸六カ所からも比較的高濃度の砒素、これは十八倍から四十三倍なんですが、検出されました。このB地点を中心として半径五百メートル以内のB地区の飲用井戸の水質検査を実施したところ、比較的高濃度の砒素、これは十四倍から三十・五倍になっておりますが、五件の検出がされております。
 同月十四日に、A地区の砒素分析結果について化学物質評価研究機構から、ジフェニルアルシン化合物を検出したことが報告されます。また同月二十二日には同研究機構から、B地点の七カ所の井戸の砒素の成分分析結果、ジフェニルアルシン化合物を検出したことが報告されます。同研究機構は、この検出された有機砒素化合物のジフェニルアルシン酸が、旧日本軍が製造した嘔吐剤の分解生成物と見られるとしております。
 そこで、関係省庁の連絡会に経済産業省の化学兵器・麻薬原料等規制対策室というのが入っているというふうに伺っておりますけれども、同研究機構と同様に、この検出された有機砒素化合物のジフェニルアルシン酸というのは旧日本軍が製造した嘔吐剤の分解生成物である、そういう可能性が高いというふうに見ておられるのかどうか、そこはいかがでしょうか。
平沼国務大臣 藤木先生にお答えさせていただきます。
 本年五月九日に開催されましたさがみ縦貫道路周辺における危険物等に関する関係省庁連絡会議におきまして、茨城県から化学物質評価研究機構に委託して、井戸水から採取された試料の分析を行いましたところ、御指摘のジフェニルアルシン酸が検出された、このように聞いているところでございます。同県からは、これは旧日本軍が製造した、くしゃみ、嘔吐などを引き起こすジフェニルシアノアルシンやジフェニルクロロアルシンが分解して生成された可能性が高い、こういうことを聞いております。
 本件については、旧軍の毒ガス自体がまだ発見をされたわけではございません。汚染原因が現時点ではまだ特定をされていない、こういう背景もございまして、今、環境省において、早急に原因を究明するための調査内容を検討しているところでございまして、私どもといたしましてもその結果を見守っていきたい、このように思っております。
藤木委員 ということは、対策室としてはまだ見解も、その感触も何も出していないということのようでございます。
 このジフェニルアルシン酸は、敵の戦闘能力を弱めるために旧日本軍が製造した赤剤と呼ばれる毒ガスが分解してできたと見られておりまして、自然界には存在せず、化学兵器以外の目的でつくられる可能性はほとんどないということでございます。そしてこの井戸の付近には、かつて旧日本軍の中央航空研究所や神の池飛行場の施設がございました。茨城県の橋本知事は、この汚染原因に対して、旧日本軍に由来すると推定されるとして、十六日に国に対して原因究明や調査を要請しておられます。
 私も先日、五月二日に現地調査に行ってまいりました。岡野町長にも直接説明を受けましたし、汚染井戸を使用していた住民の方からも詳しく事情をお聞きしてまいりました。
 これまでA地区の三十三人の健康影響調査で、九〇年以降に井戸を使った住民のうち十八人が目まいや手足のしびれなどを訴え、二〇〇〇年以降七人が入院しています。環境基準の四百五十倍の砒素が検出された井戸水を飲んでいた主婦の方は、物が二重に見え、ろれつが回らなくなり、歩行困難に陥り、入退院を繰り返したと語っておられました。また、同じ井戸を利用していた主婦の場合、二人の子供さんをお持ちですけれども、この子供の症状なんですが、一歳半の下の子は原因不明の脳性麻痺になったというふうにお聞きをいたしました。
 五月八日の茨城県の健康影響に関する専門委員会の報告書でも、住民の健康障害の原因物質がこの有機砒素化合物と考えられると発表しております。
 そこで、環境省は、化学物質調査検討会を立ち上げていますけれども、これらの手足の震えや歩行障害、幼児の発育のおくれなどの症状は、県の健康影響に関する専門委員会と同様に、有機砒素化合物による症状だというふうに環境省も見ておられるのかどうか。環境大臣、いかがですか。
鈴木国務大臣 問題の飲用井戸を使用していた人たちに見られます手のしびれ、歩行障害の神経症状、それから幼児の発育障害等の原因といたしまして、県の専門家の検討によれば、有機砒素化合物でありますジフェニルアルシン酸の可能性が高いものである、そういうふうに思われます。
 環境省といたしましては、毒性に関する情報及び代謝や動態に関する科学的知見の集積にも努めておりまして、今後得られる情報や専門家の意見も踏まえて、関係省庁の協力のもと症状の原因を解明していく必要がある、そのように思っております。
藤木委員 また、このA地点から西方に約一キロ離れたB地点ですが、使用していたここの井戸水の自主検査をして四十三倍のジフェニルアルシン酸が検出された、その場所にお住まいの御主人にお聞きをしましたら、この土地は土砂採取はされていない、砂利採取はしていないと言うんですね。二十五年前から住んで井戸水を使用しているけれども、毒ガスなどが埋まっている可能性が高いというので大変心配だ、早くボーリングの調査をしてほしい、このように訴えておられました。
 岡野町長もお話をしておられましたけれども、この神栖町では砂利の採取が随分盛んだったようでして、採取後に外部から埋め戻しの土砂が持ち込まれておりまして、地下水脈はずたずたになっているということでございます。そこで、この御主人は、砂利を採取した後の土地は井戸水が濁るので、井戸水が濁らない、砂利採取をしていない土地を選んで井戸を掘ったということなんですね。ところが、ジフェニルアルシン酸が検出されたというので、大変困っているんだというふうにおっしゃっていました。
 そこで、これは経産大臣にお聞きしたいんですけれども、このA地区もB地区も砂利の採取が盛んな地域なんですけれども、砂利採取によって、採取後に外部から持ち込まれた土砂に農薬などのジフェニルアルシン酸が広範囲にまじっていたと考えられる余地があるのかどうか、また、今後立入検査を行うお考えがあるのかどうか、砂利採取を監督しておられる、指導しておられる省庁の大臣としてのお立場でお答えをいただきたいと思います。
平沼国務大臣 お答えさせていただきます。
 神栖町の高濃度のジフェニルアルシン酸が検出をされました井戸の土地においては、現在、茨城県が当該土地における砂利採取の実態について砂利の採取業者にヒアリングをするなどの調査を続行している、こういうふうに聞いております。砂利採取における埋め戻しに使われた土砂に関しても今調査中である、こういうふうに私どもは聞いております。
 砂利採取法におきましては、経済産業大臣が立入検査が行えるわけでございますけれども、それと同様に都道府県知事たる茨城県が現在、古くからの砂利採取業者も含めて従前の砂利採取の実態に関して慎重に調査をしている、こういうふうに聞いておりますので、私どもとしては、今この茨城県の調査を尊重して見守っていきたい。
 ですから、当面、私どもがじかに出向いて立入検査、こういうことは考えておりませんが、今茨城県の調査を見守りながら、その過程の中でまた判断をしていきたい、こういうふうに思っています。
藤木委員 次に、環境基準の四百五十倍の砒素が検出された井戸水を飲んでいた主婦は、二〇〇〇年ごろから症状があらわれておりまして入退院を続けてきたと語っているわけですが、この主婦が使用していた井戸から十数メートルと離れていない農家の方は、実は三年前の二〇〇〇年ごろ、体の不調から上水道に切りかえたところ体調が治ったと案内してくださった町の環境課の職員から説明を受けました。
 ということは、汚染された井戸水による健康影響は二〇〇〇年ごろから実はあらわれていたわけでして、どうしてそれに気づかなかったのかが問題だと思うんですね。下の子供さんが脳性麻痺になっているという主婦の方は、国や県や町の対応が遅い、もっと住民の声を聞いて行政が力を合わせて解決してほしい、このように訴えておられました。
 環境省は毎年、地下水質測定結果というのを取りまとめて公表しております。そこで、神栖町の地下水質測定の結果はどうかと申しますと、このA地区、B地区とも、過去十年間、すべての井戸が環境基準値以下という報告が茨城県から環境省に報告されております。しかし、今回の水質検査で基準値以上が百二カ所、そのうち十倍以上の井戸が十三カ所もございました。しかも、広範囲に点在しております。これまで茨城県が行った調査内容がどうだったのかということが問われると思うんですね。
 ところが、九九年二月に茨城県の専用水道定期水質調査でA地区の会社の家族寮の蛇口から環境基準の四十五倍の砒素が検出されておりまして、三月には井戸水を調査したところ、四十四倍の砒素が検出されております。しかし、ここでも、潮来保健所との話し合いで自然由来だということで、上水道に切りかえることだけを指導したけれども、無機化合物なのか有機化合物なのかということは調査もせずに終了いたしました。四十四倍もの砒素が検出されていながら、自然的要因と片づけてしまったところに問題があります。
 これは結果論ですけれども、少なくとも四年前に十分な汚染原因の究明や成分分析が行われ砒素汚染対策が打たれていたならば、これらの地区の汚染の拡大は防止できたでしょうし、幼児の健康被害を回避できたかもしれません。
 そこで、四年前四十四倍の砒素が検出されたときに、検出された会社の寮の井戸については上水道に切りかえておりますけれども、周辺の地域では飲用井戸水がそのまま使用され続けてきたわけです。周辺地区で調査や周知の徹底が十分行われていたかどうかというのは極めて重大な問題だと思います。また、茨城県が厚労省や環境省と連携をとりながら砒素対策がとられていたのかどうかというのは非常に問題だと思いますね。
 ですから、一応九九年三月に潮来保健所が周辺七戸の井戸の水質検査をしているようですけれども、厚労省は環境省などとも連携をとりながら健康影響調査などの十分な対策を指導すべきではなかったのかと思いますが、厚労省、いかがですか。
高原政府参考人 御指摘のお話でございます、神栖町の社宅に設置されました井戸水を水源とする専用水道の定期検査において〇・四五ミリグラム・パー・リッターの砒素が検出された事案でございますが、これは厚生省といたしましては、平成十年度の水道被害状況等調査において茨城県より報告されたものでございます。
 水道法におきましては、専用水道の設置者に原水及び浄水の定期検査を義務づけておりまして、九九年一月十二日に砒素の検出が確認され、直ちに当該専用水道の飲用停止の措置をとり、保健所の指導により十八日に、お話もございましたけれども、上水道への切りかえが行われております。
 また、茨城県におかれましては、当該専用水道を使用していた住民の健康調査を実施いたしまして、またこれもお話にございましたが、周辺七カ所の飲用井戸の水質検査を実施いたしました。その結果、給水を受けていた住民に健康影響は認められておりませず、近隣井戸の水質検査の結果でも砒素は基準値の十分の一以下であったという報告を受けておりまして、県においてその場としては適切に対応が行われたと考えております。
藤木委員 厚労省が法を犯しているということを私は言っているんじゃありません。法以上のことをやってはならないというふうに思わないでいただきたいと思うんですね。
 自然由来によってその程度の数値が出ることがあるのは私も承知しております。しかし、そこが何の跡地だったのかということからいうならば、そこまでの細心の注意を払うということがあってもよかったのではないでしょうか。
 そこで、神栖町の岡野町長さんは、一日も早い原因の究明と関係者への補償を強調しておりました。また、茨城県の橋本知事は、こうした問題は原因者の日本政府の責任で処理すべきであって、財産的な損害が出ればそれについても対応してもらいたいと話しておられます。
 神栖町の歴史民俗資料館の説明によりますと、高濃度の砒素が検出された南東には、終戦間際に鹿島灘や九十九里浜などに米軍の上陸が想定されておりまして、旧陸軍の独立混成第百十五旅団が配備されておりました。神栖町における過去十年間の地下水質測定結果というのは、今回の高濃度の砒素が検出された地区は環境基準値以下でしたけれども、南東に当たる横瀬地区では三・九倍、知手地区は二・一倍、日川地区は二・三倍などとなっております。ですから、旧陸軍の旅団が配備されていた広い範囲から砒素が検出されているわけですよ。
 そこで、まずは原因の究明が先決ですけれども、これまでの土壌調査では環境基準値を超える砒素は検出されておりませんし、A地区の四百五十倍の砒素が検出された井戸から一・五メートル離れた付近でのボーリング調査でも、環境基準値を超える砒素は検出されていないのです。これらA地区もB地区も砂利採取が盛んで地下水脈がずたずたになっているわけですから、ボーリング調査のメッシュはできるだけ細かくして、地下水脈の流れや汚染の状況を把握する必要がございます。
 そこで、環境省は、十四日の化学物質調査検討会に基づいて、レーダーを活用して地中を調査し、八月をめどに結論を出すとしておりますけれども、できるだけ早く、A地区の四百五十倍の砒素が検出された井戸付近や、B地区の四十三倍の砒素が検出された井戸付近のボーリング調査や、旧陸軍の旅団が配備されていた、これは非常に広範な地域ですが、その広い範囲についても正確に調査をして、汚染の状況や汚染の原因を究明すべきだと考えておりますけれども、環境大臣、いかがですか。環境大臣、これは政治的にお答えいただきたいんです。
南川政府参考人 この問題につきまして、政府におきまして、私が議長になりまして、取り組みを進めておるところでございます。
 この神栖町における問題でございますが、私ども、省内にも専門家の会議を設けております。その中には、化学物質、いわゆる自衛隊の化学物質関係の専門家も、あるいは医療関係の専門家も入っていただいております。鋭意検討を行っております。当面のところ、まず、すぐ、一、二カ月のうちに何をすべきか、また、その後、年度内に何をすべきか、また長期的に何をすべきかということで分けて、とにかくできるところからやっていこうということで考えております。
 したがいまして、レーダーといいますのは、当面、全体的に何があるかということを調べるということでございますが、やはり、それだけでは不十分だと考えております。今、ボーリングという御指摘が、お話がございましたけれども、ボーリングであれば、非常に緻密なボーリングが必要でございますし、あるいは、もう少し、掘削という形で、面として土壌を調べるということも必要になろうかというふうに思っておりまして、そのあたりは、原因究明も重要でございます。しかも、もう一つは、今後同じことが起きないように、同じ地点で同じ問題が起きないような形で、毒物があればその毒物を取り出すということも大事だと考えておりますので、徹底的に行う必要があると考えております。
 それから、もう一つ御指摘の、陸軍の、陸軍のみならずでございますが、軍の旅団があった場所についてでございます。
 これは、今回、私ども、もう一つ、四十八年に行いました全国的な調査のフォローアップをしたいということで準備をいたしておりまして、その中で、どういう形で、特に毒ガスに着目して軍の配置があったかということについてよく調べていきたいと考えておりまして、その中で、今の御指摘も一つの課題として入れてまいりたいと考えております。
藤木委員 もう時間が参りましたから、最後に大臣に一言お答えをいただきたいというふうに思うのですけれども、橋本知事は、こうした問題は原因者の日本政府の責任で処理してもらいたい、財産的な損害が出ればそれについても対応してもらいたいと話しておるわけですから、環境省は、ことしの夏ごろまでに調査を終えて、今年度中には結論を出すという方向で進めているわけで、今回の神栖町の砒素汚染が旧日本軍の毒ガスに由来するものという結論になれば、当然国の責任と費用負担で処理及び補償ということになるであろうと思うのですが、その点だけお答えください。
鈴木国務大臣 神栖町におけます飲用井戸における健康被害、これは本当に深刻なものがある、そういうふうに認識をしております。
 先ほど来お話がありますように、いまだに神栖町の井戸からは、例えば瓶に入った催涙剤とかそういうものが出てきていないわけでございますので、そういう意味では、いまだ因果関係ははっきりしていないということでありますが、しかし、出てきた物質あるいはそこの地歴を考えると、そうした旧日本軍の毒ガスとの関係が大変濃いものである、そういうふうに思いますが、いずれにしても、調査をして、その因果関係を明確にしなければならない、そういうふうに思っております。
 そういう中におきまして、仮に旧軍の毒ガスに起因して被害が生じた場合の国の対応、これにつきましては、その被害の発生の態様や状況等に応じまして、処理及び補償等の費用負担を含めて、必要な検討を内閣官房が関係省庁と協力して行うこととなっているところであります。
藤木委員 終わります。
村田委員長 中川智子さん。
中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。
 きょうは、冒頭に、質問通告をさせていただいていなくて大変申しわけないのですが、けさの報道にもありまして、私も一度、経済産業大臣また環境大臣にお伺いしたいことがございましたので、最初に化学物質過敏症の問題について、冒頭、お伺いしたいと思います。
 私も、何通か化学物質過敏症で苦しんでいらっしゃる方からお手紙をいただいたり、そしてまた、そのお手紙を下さった方とお会いしたりしてお話を聞いたことがあるんですが、化審法の審議をするときに、化学物質で本当に苦しんでいらっしゃる方々に対して、しっかりとした省庁の取り組みというものをぜひともしていただきたいという思いを込めて質問したいと思います。
 この化学物質過敏症というのは、私もお会いしたときなんかは、調子がよければ本当に普通の健康体のような感じなんですが、例えばこの部屋などは木などでつくられまして古い建物でございます。
 けさの新聞では、江東区の小学校の新校舎、校舎を改修して新しい校舎に入った児童が、三百四十九人の中で四十三人が、鼻がむずむずする、のどが痛い、目がかゆい、頭痛がする、吐き気がするという症状を、こんなに多くの児童が、新校舎で授業が始まってから訴えたわけなんですね。ここは、全児童は三百四十九人ですが、百五十九人が新校舎になってから健康や体調に変化があるというアンケートの調査が、けさ、新聞報道ですので、そのようにございました。
 私、この問題を最初に知ったのは、ちょうど阪神・淡路大震災、あのときに、仮設住宅が急に建てられました。つけ焼き刃でばっとつくったわけですが、そのときに、仮設に入られた方々が、どうも、震災の後の精神的なものじゃなくて、目がかゆい、吐き気がする、頭が急に痛くなった、そして、外に出るとその症状が和らぐということで、そのときはこういうシックハウス症候群とかそういう名前が全然ありませんでして、何でだろうかという話をしたことを思い出すんですが、例えばその症状を一つの言葉でいいますと、泥水の中を息をとめながら泳ぎ、何とか息つぎをして、またおぼれるような気持ちで生きている、最後は呼吸困難を引き起こしていくものです。
 これで、化学物質過敏症について、全国で今ちゃんとした調査は行われていないんですが、推定では七十万人の方が苦しんでいらっしゃる。でも、医療の手当もありませんし、そして、子供たちは、やはり感受性が強いものですから、転校を余儀なくされたり、不登校になったり。
 これが非常につらいことには、建物は国土交通、農薬などは農水、そして、環境省、経済産業省、やはり生産者の、産業の責任、そして、厚生労働省とも絡みますし、学校などでは文部科学省。縦割りで、どこも責任を持って、重篤な化学物質過敏症の被害者、患者の方々の対応ができないという状況がございます。
 ぜひとも、化審法の審議の中で、このことに両大臣、目を向けていただきたいと思って、冒頭、率直なお考えで結構ですので、平沼大臣、鈴木大臣と御答弁をちょうだいしたいと思います。
平沼国務大臣 化学物質過敏症というのは、一九七〇年代のたしか初めに、アメリカで初めて報告され、そのときは日本も全然知見も認識もなかったわけです。しかし、最近において、御指摘のように大変大きな社会問題になってきていることも事実です。
 身近な例なんですけれども、私の役所の部屋が改装をしなくて大変汚れてまいりましたので、壁紙とそれから床のじゅうたん等、全部張りかえました。私は大丈夫だったんですけれども、この役所の女性の人はもう大変体調を崩しました。ですから、やはり身近にこういうことがあるんだな、こういうことで、私も、身近な例で強く認識をしたところでございます。
 ですから、これは確かに縦割り、こういう形でいろいろなことがあると思いますけれども、既にこれはシックスクールですとかシックハウスというような問題が起こってきておりますので、省庁を超えた連絡協議会は設置をしておりまして、そういう意味では今真剣に検討しているところであります。
 したがいまして、これは御指摘のように化審法を大きく考えればその範疇にも入る、そういうことでもあると私は思っておりますので、これからさらに、こういった大きな問題については、省庁の壁を超えて、そしてその原因究明と対策、これをしっかりやっていかなければならない、このように思っております。
鈴木国務大臣 化学物質の過敏症の方のお話を今伺ったところでございますが、率直の思いといたしましては、ぜんそく患者の方もそうでありますけれども、平時のときは、普通のときはよその方から見てもなかなかそれがわからない、しかし御本人はもう大変な苦しみを持っておられる、そういうことだろうと思いまして、本当にお気の毒に思うところであります。
 今平沼大臣からもお話がございましたが、各省の連絡会議もあるということでございますが、環境省といたしましては、その中で、動物実験等、疫学調査を今しているということでございますので、そうした環境省の今の立場というものもさらに進めて、そうした方々の救済と申しますか、また環境の改善につながるように、環境省としても努力してまいりたいと思っております。
中川(智)委員 通告しておりませんので恐縮ですが、お答えがなければもうそれであきらめますが、その連絡会議というのは、どうなんでしょう、どこが責任省庁でありまして、その実態調査とか被害者の聞き取り、被害者というか患者の方々の声を直接聞かれたりとか、そういうのでしょうか。
平沼国務大臣 これはいわゆる化学物質過敏症の中で、全部に、シックスクールもその中に含まれますけれども、シックハウス総合対策、こういう形で、厚生労働省と国土交通省と、そして我が経済産業省と農林水産省と文部科学省と環境省、ここで連絡会議を設置しておりまして、これのリード役は厚生労働省がやる、こういう形でございます。
 そして、主に厚生労働省が担当するのは健康基準値と測定法の基準をつくる、こういうことです。それから、防止対策としては、主に経済産業省と農水省が担当しまして、例えば建築材料のJISですとかJASのそういった規格をどうするか、それから化学物質の使用量や放射量の表示等々をやらせていただく。それから相談体制の整備という形で、これは厚生労働省、国土交通省、そして経済産業省、農林水産省、こういった形で相談体制を、例えば保健所ですとか地方の衛生研究所でございますとか、都道府県の住宅センター等々に設置をする。それから、原因分析は主に厚生労働省が担当する。さらに、汚染住宅のそういう改修に対しては国土交通省。そして医療研究対策、これは当然ですけれども厚生労働省がやる。こういう形で今やっております。
 これはシックハウスという、そういうハウスに着目をしておりまして、シックスクール等々もございます。そういう意味ではこれが一つの出発点でございまして、これからそういった体制を強化していく必要がある、このように思っています。
中川(智)委員 突然の質問でしたのに御丁寧な御答弁ありがとうございました。
 これは、本人には本当に責任がございませんで、あすは我が身というふうにも思います。これほど化学物質が広くあちこちに使われている状況の中で、やはり健康被害をもたらしてはいけない。ぜひとも環境省には、実態調査なりそのあたりも責任を持ってしっかりとやっていただきたいということをお願いいたしまして、次の質問に参ります。
 この化審法ですが、現行法では、新規化学物質の製造・輸入業者に対する立入検査などの規定がないこともありまして、書類審査だけで済まされているのが実態ではないかというふうに考えます。立入検査の規定を設けても、中間物や閉鎖系で用いるものもどうなのかを確認したり監視したりする手段としては、事業者が提出する書類審査、それに頼らざるを得ないという現状だと思います。
 そこに置かれております職員の人数が少ない中で対象を拡大するということは、管理実態の把握を困難にするものではないかという指摘が強くございますが、現在、担当人員というのがどれぐらいいらっしゃいまして、改正でどのぐらいの人員補給というのをされるのか伺いたいと思います。
今井政府参考人 お答え申し上げます。
 現在、経済産業省の担当部局には、この化審法に直接、間接に携わっておる職員が三十二名おります。また、関連の団体としまして、独立行政法人の製品評価機構には四十五名の職員がございます。
中川(智)委員 はい、わかりました。
 それで、この化審法の中では、主務大臣が、知見によって被害が生じるおそれがないことの確認を行うというふうにされていますけれども、製造・輸入量が十トン以下の新規化学物質の毒性試験を免除された化学物質に、後になって毒性が判明した、そういう場合ですとか、蓄積性が低くても難分解性の物質であったために、特定の地域が汚染されたという被害を生んだ場合はどうなるのかというのが非常に不安でございまして、政府としては、そのための対策というのをきちっと考えているのかどうか、そもそもそういう事態というのは想定されていらっしゃるのかどうか、伺いたいと思います。
鈴木国務大臣 今回の制度改正に当たりましては、専門家の御意見というものも十分に伺った上で決定をさせていただいたわけでありますけれども、その結果、これまで、年間の製造・輸入量が十トン以下である化学物質につきましては、これは環境中から検出された実績は今までもないということが確認されていること等も踏まえまして、難分解性ではあるが高蓄積性でない化学物質であって、製造・輸入総量が十トン以下のものに限っては、毒性試験を行わずに製造、輸入ができることとしたものであります。
 ただし、この場合においては、化学物質の構造からの類推等によりまして、毒性に関し既にある知見によって、人の健康等に対する被害を生ずるおそれがあるものでないこと等を事前に確認するとともに、事後の監視、これは立入検査、報告徴収も行うことを前提としているところでございます。
 このように、この制度は、過去の実績、これを踏まえつつ、厳しい要件も課すこととしておりまして、その対象となる化学物質が環境中に残留することによって健康被害等の影響が生ずる可能性は極めて低いものと考えておりますが、万が一にもこのような被害が生ずることがないよう、個別の事前確認における評価や事後監視には万全を期するとともに、事前確認における毒性の評価方法についても、常に必要な見直しを行っていく考えであります。
 そしてまた、仮に確認後において毒性があることが判明した場合には、必要に応じて直ちに確認を取り消すとともに、審査を実施して所要の規制措置を講じていくこととしております。
中川(智)委員 それでは、今回の改正の中では、人の健康だけではなく動植物の生息や生育にも着目することが目的に追加されましたが、このことは非常によいことだと思っております。
 そこで、化学物質の管理を充実していくためにも既存の化学物質の安全性の確認というのを早急に行っていくべきだと思いますが、それに対してどのようにお考えかということが一点。そして、この化審法、制定から三十年経過しているわけですが、約二万種ある既存化学物質のうち、安全性点検が行われたのは、分解性、蓄積関係では千三百七十七、人への健康への長期毒性関係では二百四十六、極めて、全体から見ればごくごく一部にすぎません。政府としては、この既存化学物質の安全性の点検というのを具体的にどのように行っていくのかを伺いたいと思います。
今井政府参考人 お答え申し上げます。
 先生御指摘のとおり、これまで政府といたしましては、製造・輸入数量が多いもの、それから、一番危険な第一種特定化学物質に非常に構造が似ているもの、こういうものを中心に点検を進めてきたところでございます。
 なお、たくさんの化学物質があるわけでございますが、今OECDでも、世界全体で、政府それから民間企業、これが力を合わせて安全のデータを集めようということになっておりますので、そういう国際的な大きな動き。それから、今般の法律改正では、事業者が自主的に取得した有害性の情報を報告してもらう報告義務をつけましたので、そういう制度を踏まえた事業者の取り組みとの連携。それから、私ども、かねて進めてきておりますけれども、有害性評価を、例えば化学構造式とかそういうものから、分解性だとか蓄積性だとか有毒性だとかというものを評価するような開発システムを一層進める、こういうことで、既存の化学物質の検査を一層進めてまいりたい、このように考えております。
中川(智)委員 それでは、最後の質問になりますが、PRTR法というのは非常に期待しておりましたが、そのPRTR法の活用ということで一点質問いたします。
 このPRTRは、排出量の把握と管理の改善の促進という名称なので、当然といえば当然ですが、事業者は排出量と移動量を届ければいいだけになっています。そして、対象物質というのも非常に限られた物質になっておりまして、全体的な環境汚染の未然防止に今のままで役立つとは思えません。具体的な対象物質をもっとふやして、有害性が判明していない化学物質についても流れというのを常時把握しておく必要があるのではないかと思うんですね。
 そして、事業者の届け出事項というのを排出量と移動量だけに限定せずに、生産量、輸入量、そして使用量、受け入れ量、引き渡し量、これなどもきっちり届けるようにしたら、そのようないろいろな事態が起きたときに流れが的確にキャッチできると思いますし、本当にこれは伝票さえ出せばいいことであって何も難しいことではないというふうに考えるのですが、この提案に対していかがお考えかということを伺って、質問を終わります。
今井政府参考人 お答え申し上げます。
 有害性が不明な化学物質に対しまして、これもPRTRの対象物質に指定してはどうかということでございますが、やはり現行法におきまして、排出量とか移動量の届け出を行わせるということが、その事業者の義務とそれから経済活動との一つのバランスということでPRTR法をお通しいただいたというふうに私どもは理解しているところでございます。
 また、この法律、今回の化審法の改正におきまして、事前届け出制度、その後の監視制度、こういうものを徹底していく段階におきましては、製造の数量でございますとか、それからどの程度本当に使われたのかどうかということはきちっと私どもも把握する、そのように考えております。
中川(智)委員 どうもありがとうございました。
村田委員長 以上で本連合審査会は終了いたしました。
 これにて散会いたします。
    午後三時二十五分散会
     ――――◇―――――
  〔参照〕
 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の一部を改正する法律案は経済産業委員会議録第十六号に掲載


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